カチューシャと愛里寿の朝鮮戦争 Ep.1 北鮮軍地吹雪の電撃的奇襲、ソウル占領「栄光の大祖国戦争の勝利、ソウル解放!」 (Brahma)
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その1 李一味、米帝をたたく正義の奇襲(大演習)はじめるんだから!

【推奨BGM;ベムラーゼパレス】

1949年3月5日、中華人民真理(プラウダ)共和国連邦の首都莫斯科(モスクヴァ)では、肌寒い中にも春のうららかな日差しがさしていた。

朝鮮真理(プラウダ)主義人民共和国、すなわち北朝鮮の指導者、金髪の小柄な少女金喀秋莎(カチューシャ)は、その日莫斯科を訪れていた。彼女は、抗日の英雄として国家主席の地位にある。莫斯科での会談の相手は、中華真理共和国連邦の国家主席、長身、黒髪長髪の美人で毛諾娜(ノンナ)といった。

「南朝鮮には。いまだに島田米利加軍が駐留しているわ。わが北朝鮮への策動を狙っているにちがいないわ。強力なT34/85部隊はあるけど海はがらあきだから。助けてよ。」

「島田米利加の部隊はどのくらいいるのですか?同志カチューシャ、いえ国家主席。」

「一万五千から二万くらいだわ。」

「南朝鮮には軍隊がいるのですか?」

「六万人くらいね。」

「その数字には、常備軍だけなんですか?警察隊は含まれないのですか?」

「常備軍のみの数字だわ。」

「日本によって作られた造船所はあるのではないのですか。」

「あることはあるけど規模が小さすぎるの。」

「わかりました。援助します。でも、軍用機は用意してください。それから南朝鮮にはスパイは侵入させているのですか?」

「侵入させているけど....今は姿を現す時期じゃない。」

「それでいいです、でも北にもスパイが潜り込んでいるかもしれません。南側が侵入してきていくつかの拠点が奪われた話は聞いています。それを奪還したとお話を聞いていますがそれは事実なのですか。」

「スパイについては警戒しているわ。必要な措置も講じてはいる。江原道に敵が侵入してきたのを退けたわ。」

「南側を追い払ったのですか?それとも南側が自ら退却したのですか?」

「戦って、南を撃ち破って、退却させたに決まってるじゃない。」

1949年5月...

「ノンナ、コホン、ノンナ主席、南朝鮮を攻めるのに朝鮮人民軍の強化と技術的装備が必要だわ。組織化計画に関連する追加依頼にこたえてくれないかしら。航空機を除く機械化部隊は今月中に、航空隊は9月に追加編成を終わらせる予定よ。」

「ノンナ先輩、北朝鮮では、機械化旅団として、おのおの33両の戦車を持つ二個戦車連隊、16両のSU-76を配備した自走砲大隊、砲兵大隊、駆逐対戦車大隊、自走砲連隊を49年5月までに完了させるとのことだべ。」

「戦車33両を持ってる独立戦車部隊は元山に配備するそうだべ。それから戦車搭乗員の訓練用に独立連隊として戦車訓練連隊を確保するそうだべ。各砲兵師団内には、SU-76自走砲大隊を編成するそうだべ。ZIS-3型火砲24門をもつ砲兵連隊を編成するそうだべ。攻撃機および戦闘機を各43機づつ保有する二個連隊で構成される混成航空師団を編成するそうだべ。航空師団の編成は9月に実施するとのことだべ。北朝鮮は、戦車搭乗いいと考えているようだべ。」

「南の同志たちの動きはどうですか?同志カチューシャ。」

「あたしたちが攻撃すれは、一斉に蜂起する手はずになってるわ。李一味をこっぱみじんにできる。」

「わかりました。同志カチューシャ。援助しましょう。ただし、島田米利加の軍事力は世界最強です。わたしたちが背後にいることがわかれば容易に手出しはしないでしょうが綿密に作戦計画をねって下さい。また一層の軍事力の増強をはかってください。」

「軍事力の増強は切実な願いだわ。ノンナ主席、とりあえずは、金属、貴金属10万トンに引き換え115万丁の小銃を用意して。」

「南には、平和的統一を望む使者と文書を送ってください。おそらく受け取らずにはねつけるでしょうから、それが付け目です。」

「わかったわ。」

「それからわたしたちの顧問団を派遣します。鷲理江武と歩須戸忍呼武です。よく話し合って綿密におこなってください。」

---【推奨BGM;ベムラーゼパレス】終わり

6月8日、韓国労働党によってビラがまかれ、李一味を除く全朝鮮半島統一についての演説を各所でおこなわれた。李承晩は、これを無視した。国連挑戦委員会は、調停しようとしたがどうにもならなかった。

6月10日、「朝鮮独立戦争の長老」曹晩植ととらえられた工作員李と金を交換してほしいとの申し入れをした。

6月19日、統一政府樹立のための協議団を派遣してほしいと申し入れたが、李承晩は冷笑し、形だけ応じさせて、はねつけた。

1950年6月下旬

【推奨BGM;ボラー連邦のテーマorBOLAR】

「いよいよ全師団をあげて、一大演習を行うことになったわ。わたしたち朝鮮人民軍が創設されて以来、この演習は、最大かつ最重要な演習になる。だから完璧に行うことが必要なの。演習がどれくらい続くかわからないけど、みんなは数週間続いてもいいように下着や靴下を十分用意しておくこと、持ち物は重要なものに限ること。来るべき「演習」は、最重要国家機密だから、奥さんにもお友だちにも親戚にも話しちゃダメ。いいわね、」

「はっ。同志カチューシャ」

「李一味の傀儡軍は、一週間前に後方の武器補給所に修理のために送っている。しかも陸軍会館の落成式で飲んだくれている状態よ。いまこそ米帝からの自由と独立、民族統一のための正義の大祖国戦争をおこない、米帝の配下李一味の傀儡軍をたたきつぶすチャンスよ。」

「第二軍金光侠(キムヴァンショップ)の第五師団馬相喆(マションチョル)は、東海岸沿いに南下して三陟(サムチョク)に進出、」

「はっ。同志カチューシャ」

「第十二師団の崔忠国(チェチョンググ)麟蹄(インジェ)から洪州(ホンチョン)をへて原州(ウオンジュ)に進出。第二師団の李青松(イチョンソン)は、春州(チュンチョン)を占領したのち、漢江沿いに水原(スウォン)に進出し、傀儡軍の退路を絶って、これを撃滅。」

「「はっ。同志カチューシャ」」

「第一軍、金雄(キムウン)の第三師団李英鏑(イヨンポ)は、抱州(ポチョン)から議政府(ウィジョブ)を経てソウルを占領。第1師団崔光、あんたは、高浪浦(コウワンポ)汶山(ムンサン)から漢江(ハンガン)から北岸沿いにソウルを攻撃、第6師団万虎山(パンホサン)は、開城から漢江南岸沿いに、金浦(キムポ)を経て永登浦(ヨンドンポ)を占領、李権武(イグオンム)、第四師団を率いて東豆川(トンドウチョン)から、議政府を経てソウルを占領せよ。」

「「はっ。同志カチューシャ」」

「それから、柳京洙。」

「あんたの第105機甲旅団、金雄についておもいっきり暴れてやりなさい。T34/85の威力で、島田米利加のあやつり人形の李承晩がびびって逃げていくのをこのカチューシャ様に見せるの。わかった?」

「はっ。同志カチューシャ。」

「じゃあ、攻撃は、25日0400から。祖国を李一味から奪還する正義の戦いよ。」

「マンセー、マンセー、マンマンセー!」

カチューシャは微笑み

「解散!」と宣した。

 



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その2 T34/85は、かーぺーたんには劣るけど私が乗ってた強い戦車なんだから!

【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲orソビエトマーチ】

1950年6月25日早朝。ソウルのやや北方の山野には濃い霧が立ち込め、静粛そのものであった。

ドガーン、ドガーン、ドガーン、ヒューン、ヒューン、ドガーン、ドガーン、ドガーン

北朝鮮軍の砲600門、迫撃砲1000門が一斉に火を噴く。

「信号弾あげーい。」

「第4師団、信号弾確認。砲撃開始。」

ドガーン、ドガーン、ドガーン、ヒューン、ヒューン、ドガーン、ドガーン、ドガーン

「第3師団、信号弾確認。砲撃開始。」

「なんだ、何が起こった。」

韓国軍の陣地は慌てふためく。

「き、北の攻撃です。」

北朝鮮の第105機甲旅団は、第109機甲連隊、第203機甲連隊、第107機甲連隊に分かれてT34/85の大軍が怒涛のように38度線を越えていった。

【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲orソビエトマーチ】おわり

 

「蔡参謀総長、第17連隊より報告。北の攻撃を受けて現在壊滅の危機です。」

「なんだと??全軍に非常呼集だ。」

午前7時、第一師団長白善燁大佐の自宅にも電話がかかってくる。

「白師団長でいらっしゃいますか。」

「そうだ。」

「緊急事態です。本日未明、北の大軍が大砲を伴って進軍、開城を攻め落とし、高浪浦でなおも戦闘中です。」

「わかった。直ちに司令部へ向かう。各部隊は、予定された壕に入るよう指示せよ。指令部は手順通り坡州の国民学校まで前進する。崔慶禄大佐はどこにいるか?」

「崔大佐は。市内のご自宅です。連絡が取れません。」

「では、自分が崔大佐を拾っていく。」

白大佐は、陸軍本部へ向かおうとする。当時はタクシーなどは簡単にひろえない。白大佐は通りがかりの車に声をかけた。

「すまないが、乗せてくれ。」

「軍人さんか。お急ぎのようだがどこまで?」

「龍山郵便局の陸軍本部までだ。」

「わかった。」

午前8時ごろだった。

「うい~。」

「なんだ、その態度は。」

「昨日、陸軍会館の落成式があったんですよ。遅くまで飲んでいたものだから。」

「こまったものだな。今どういう状況かわかっているのか。」

「なんすか。なんか隕石でも降ってきたんですか。」

「北の攻撃だ、」

「なんだって。いっぺんに酔いがさめた。どうなっているんだ。」

陸軍本部も将校たちが右往左往していた。白大佐が二階へ行くまで7,8人と肩がぶつかったという。

「蔡参謀総長」

「なんだ。」

「第一師団の指揮をとってよろしいでしょうか?」

「こんなときにのんきなことを!早く行け。」

「了解。」

「第二師団、第三師団、第五師団にソウルに集結するように命じる。」

白大佐は、ソウルの北西、水色の第一師団司令部へ向かおうとするが、やはり足がない。

「ロイド中佐。」

「白大佐、なにごとかね。」

「緊急事態です。北が攻め込んできました。」

「なんだと。」

「崔大佐のところへいきます。」

「わかった。」

「どうしたんだ。お二人とも。日曜日の朝ですよ。」

「崔大佐、緊急事態だ、北が攻めてきた。開城はすでに陥落、北は大砲や戦車をともなって進撃中だ。」

水色の司令部には、第六砲兵大隊の盧載鉉中佐と指弾通信中隊長の薫弘旭大尉が玄関口で待っていた。

「水色の部隊は半数が外出中。非常呼集で呼び集めています。」

「土曜日に外泊を許可したのか。どうして...。」

「師団長、金曜日の24時に警戒待機が解除されまして、外泊、休暇の許可をだしたのです。こんなことになるとはおもいませんでしたので...。」

「まさか第12連隊や第13連隊も...。」

「師団長、がっかりしないでください。第13連隊の第一大隊は、紫下里で、野営中ですから敵に立ち向かえます。みんなすぐに集まってきます。」

午前8時半ごろである。

「蔡参謀総長、今度は第七師団から緊急電報です。」

「なになに、北朝鮮が猛砲撃を繰り返し、大軍が進撃している。敵は陣地の主要部に侵入、守り切れない。至急来援を請う、だと?。」

午前9時半ごろ

「張昌国作戦局長。おそいですぞ。」

「おそくなりました。すみません。蔡総長。」

「第一師団は、臨津江南岸の陣地で敵戦車隊と遭遇、なおも交戦中。」

「第七師団第一連隊が突破されましたが、第二連隊が東豆川と抱川北岸で敵戦車隊と交戦中。」

 

午前10時

「大統領。」

「何事かね。」

「北が攻めてきました。一師団は、臨津江南岸の陣地で敵戦車隊と遭遇し、交戦中。第七師団第一連隊が突破されましたが、第二連隊が東豆川と抱川北岸で敵戦車隊となおも交戦中。」

「そうか。ここは安全なのか?」

「なんともいえません。」

「逃げるのだ。金喀秋莎は真っ先にわしの身柄を狙うだろう。死刑にされるかよくて捕虜だろう、わしは死にとうないし、北の捕虜なんかになりとうない。ソウルを明日には退去するぞ。したくしてくれ。」

このことは李承晩はかくそうとしたが、あっという間に市民レベルにひろがった。

 

ある新聞社で、ある記者が話はじめた。

「鉄道会社に勤める友人が言っていたな。大統領は明日未明退去する予定だそうだ。」

それを聞きつけた近くの同僚たちはいっせいに

「まさか」と口にだした。

「どうした?」

さらにそれを聞きつけたと同僚たちが寄ってくる。

「大統領が逃げるそうだ。これは鉄道の情報だから絶対だ。鉄道をおさえない限り、遠くへは逃げるられないからな。」

「大統領が逃げるだって?それじゃあソウルの命脈がつきたも同然じゃないか。」

「そうだ、やつらはソウル市内を蹂躙した後、テレビ・新聞・ラジオの接収にかかるだろう。われわれは新聞を出せなくなる。それからどうなるか...想像するだけでも恐ろしいな。」

「いっそ、大統領にならって...。」

「市民に事実を知らせないうちに脱出するのか?それでは、大統領のことをとやかく言えないぞ。」

「そういったことは政府や軍部が考えるべきことだ。」

 

記者たちは報道すべきかどうか議論をはじめた。しかし、情報に通じている自分たちは、北の連中にとっては不都合だ、粛清されないよう身の安全のために逃げるしかない、との結論に達した。記者たちはどう逃げようかの算段をはじめた。

 

【推奨BGM;ボラー連邦の奇襲】

一方、開城の東方24km、高浪浦は、北朝鮮第203戦車連隊を率いる崔光少将の攻撃を受けていた。

「よし!撃て!」

「李一味の傀儡軍をたたきのめし、どちらに正義があるか明らかにするのだ。」

「マンセー、マンセー、ウオオオオオ...。」

四十台のT34/85がつきすすんでいく。

此処を守っていたのは第1師団の第13連隊であった。

「37ミリ対戦車砲だ。これで撃て。」

「了解。」

兵士たちはそれぞれ戦車を狙って撃つ。

爆音が響き、砲弾が戦車にあたるが

キーン

カーン

かえってきたのは、砲弾が空しく弾き飛ばされる音ばかりだった。

 



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その3 春川の戦いで..何言ってるの!カチューシャの人民軍快進撃続くんだから!

【推奨BGM:ボラー連邦のテーマ】

崔光と部下たちはほくそえむ。

「そんな石ころのような砲弾がこのT34/85に効くと思っているのか。傀儡軍に正義の鉄槌をくだしてやる。」

T34/85の85ミリ砲が一斉に火を噴く。

ドーン、ドーン、ドーンと轟音が響き、土けむりがいくつも上がる。

韓国軍は、柄付き爆弾やもっていのちがけで戦車を爆破しようと試みる者もいたがばらばらと敗走するしかなかった。

 

さて、李英鏑(イヨンポ)少将率いる北朝鮮第三師団と第109戦車連隊が梁文里をへて抱州(ポチョン)から議政府(ウィジョブ)へ向かう。李権武(イグオンム)少将率いる北朝鮮第四師団と第107戦車連隊も哨城里をへて東豆川(トンドウチョン)から議政府へ向かう。

「師団は、右翼の第一師団、左翼の第三師団と連携し、ソウルへ向かって攻撃する。師団の前方には工兵の支援を受けた戦車隊と自走砲隊がいる。当面する敵カイライ軍陣地を突破した後、議政府からソウルへ向かう。各員奮励努力せよ。」

「マンセー!マンセー!マンマンセー!」

「撃て!」

ドーン。ドーン。ドーン。ズガーン。ズガーン、ズガーン

T34/85とSU-76は、突進していく。

韓国軍第七師団第一連隊は蜘蛛の子を散らすように逃げていくしかない。

「工兵隊、敵トーチカを爆破せよ!」

「イエー(了解)」

ドガーン、ドガーン

東豆川では、韓国軍第一師団第三連隊が粘っていたが...

「ほほう。やりおるな。しかし。」

北朝鮮第16連隊の崔仁徳大佐はほくそえむ。

T34/85とSU-76が火を噴く。

ドーン。ドーン。ドーン。ズガーン。ズガーン、ズガーン

「た、退却だ...。」

さて、一方、さらに東方の春川である。

北朝鮮人民軍第二軍団を率いるのは、金光侠少将である。

「第二師団は、北方から春川を速やかに攻撃して占領せよ。そしてソウルへ向かう。」

「マンセー!マンセー!マンマンセー!」

「第七師団は麟蹄から洪州へ向かって進撃し、敵の退路を遮断せよ。清津の戦車部隊と五台山のゲリラ部隊に支援させる。」

「マンセー!マンセー!マンマンセー!」

第二師団の司令官は崔賢少将、参謀長許波大佐である。

「敵は、400~500mの切り立った山にトーチカをもつ野戦陣地を構えている。韓国軍の陣地の北方8kmの土屯里に陣地を構えようか」

「南側に標高470mの山があります。カノン砲が使えません。122ミリ榴弾砲か迫撃砲のような曲射砲しか使えません。」

「それでは、敵トーチカが攻撃できないな。わかった。第4連隊に敵正面を攻撃させる。その隙に第6連隊に北漢江の河川敷を通過させて敵陣地の中央を突破させよう。」

「マンセー!マンセー!マンマンセー!」

 

【推奨BGM;戦車道行進曲】

春川(チュンチョン)では、あんこう独立義勇軍が守っていた。

「敵は、こちらが切り立った山に陣地を築いているので、カノン砲の攻撃ができません。もし火砲の攻撃がないなら、正面からおとりを使って、北漢江を使って攻撃してくるに違いないです。」

指揮官である一両のⅣ号戦車の車長である栗色の髪の少女は、部隊に命じた。

「ですので、カバさんチームは、105ミリ砲の部隊とともに北漢江を守ってください。」

「御意。」「心得た。」

「うさぎさんチームの部隊は、トーチカ陣地を守ってください。」

「はーい。」「わかりました。」

 

ドーン、ドーン、ドーン、ダダダダダダ...

「!!」

「マスターズ・オン、ファイアー!」

ズッドーン

「て、敵です。」

北鮮第6連隊は、蒼くなって絶望感につつまれる。

「断崖に囲まれ、前にも後ろにも逃げられません。」

 

さて、トーチカ陣地を死角から攻撃しようとした北鮮第4連隊だったが、背の高いM3リーに発見される。

「あ~敵発見。」

「やっちゃえ、やっちゃえ。」

「あや、あゆみ、撃って。」

ドーン、ドーン、ドーン、ダダダダダダ...

M3リーの主砲と副砲が火を噴く。それを合図にトーチカを守るうさぎチーム部隊は砲撃と銃撃を行った。

「連隊長、接近できません。」

「別の場所から突撃できないか。」

第4連隊は突撃を繰り返す。

「またくるよ。」

「しつこいなあ。」

ドーン、ドーン、ドーン、ダダダダダダ...

「白旗上がらないんだね。」

梓はたしなめるようにM3リーの乗員に告げる。

「あの、これ、戦争だから。」

 

ところで北朝鮮第6連隊である。

「隊長、わが軍は、すでに半数が失われました。」

「仕方ない。予備兵力の第17連隊を突撃させろ。」

しかし、戦果はあがらない。

 

一方、韓国第8連隊を打ち破って快進撃を続ける北朝鮮の第7師団である。

「崔仁閣下。」

「なんだ。」

「わが第二師団の第4、第6連隊が春川にて苦戦中です。」

「わかっておる。洪川へ向かって、敵第六師団の退路を絶つ。」

「そのことですが、ただちに麟蹄に引き換えし、春川の東方へ進出し第二師団と協力して敵を討てとのことです。」

「うむ。わかった。そちらへおもむく。」

 

「みぽりん、敵の第七師団が接近中。東海岸の韓国第八師団が敗退したって。」

「西住殿、このままでは敵中に孤立します。」

「わかりました。ここは撤退します。江陵から原州へ退却中の第八師団を援護します。」

 

【推奨BGM;孤独な戦車乗り】

愛里寿は、早朝寝室で電話が鳴ったのをとった。

「隊長、いえ元帥。」

「なあに。」

「お休みのところすみません。今朝、午前4時に北朝鮮の大軍が38度線を突破して南侵してきました。」

ルミは愛里寿の部屋に来て

「元帥、何かご命令は?」

「電報を本国へ打って。お母様に話すの。」

「はい。」

「それからムチオ大使から連絡があった。在韓米国人の避難を援助。それから武器弾薬を送ってあげて。」

「はい。」

 

「大統領。」

「なあに?」

大統領と呼ばれた美しい夫人は優雅な物腰でふりむいた。

「今朝、午前4時に北朝鮮の大軍が38度線を突破して南侵してきました。日本駐留軍の愛里寿元帥より至急伝です。」




地名や人名の正確な読み方がわからないものは、そのままです。ご容赦くださいm(_ _;)m

わかった場合、順次書き加えます。


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その4 わたしは前線に行ってみたい。

いよいよもう一人の主人公登場です。


島田米利加合衆国大統領チヨ・シマダは。優雅な物腰でふりむく。

「至急、国家安全保障会議を招集して。」

「はっ。」

6月25日、日曜日午前11時ごろ、チヨ・シマダは、早い昼食をとろうとしたときだった。

「アチソンさんですか。」

「はい。国連の安保理が緊急会議を招集しました。北朝鮮軍は大規模な攻勢をかけており、侵略行為はあきらかです。停戦決議がなされるでしょう。」

「至急、陸海空三軍の参謀長と話し合ってちょうだい。わたしが勧告文を出せるように準備して。」

大統領チヨ・シマダは、エア・フォースワンを降りたところアチソンやジョンソン国防長官に迎えられ、ブレアハウスに向かう。

「わが軍事顧問団が確認した韓国軍の報告によれば、25日午前4時未明、数地点において韓国領内に侵攻、戦車を先頭にした部隊が展開、6時には甕津(オンチン)、開城、春川(チュンチョン)地区を進撃。東海岸、咸何の南方でも敵が上陸しました。午前9時には開城が占領されました。東海岸の戦況等わが軍事顧問団と韓国官憲が確認中。」

「愛里寿に伝えて。在韓島田米利加人は、金浦空港からひきあげさせる。空軍に守らせて。韓国軍には物資、弾薬を補給してあげるように。」

「第七艦隊は、キャビテ軍港から台湾海峡を警戒しつつ北上するように。」

27日夜

【推奨BGM;好敵手です!】

「お母様から訓令?」

「はい。」

「指揮下にある空海の兵力をもって、38度線以南で韓国の援助をするように。」

「元帥?」

「ヴォイテク号を用意して、わたしは飛ぶ。」

「はい。」

愛里寿はヴォイテク号で、水原(スウォン)にとんだ。

「これはこれは、島田愛里寿元帥。」

出迎えた韓国の蔡総参謀長の説明は要領を得ないように思われたので、

愛里寿は、

「前線に行ってみたい。」

と言った。愛里寿の一行は、漢江を見下ろす小高い丘に上に立った。

韓国兵が盛んに壕を掘っている。眼下に見下ろす対岸のソウルは、ところどころに炎と煙でかすんで見える。

愛里寿は、壕掘りに余念のない兵士に話しかける。

「漢江はいつまで守れる見込み?」

兵士は軍服に黒いプリーツスカートをはき、年齢の割に知的に見える愛里寿を見て驚いたが、襟の階級章をみて二度驚いた。

「閣下、私は一介の兵士にすぎませぬ。中隊長の命令に従い守れと言われれば命がけで守り、撤退しろといわれれば退きます。ですからいつまでとおたずねになられても答えられません。中隊長にお聞きください。」

「わかった。島田米利加の陸軍部隊をここへ派遣する。それまでもちこたえて。」

元帥の階級を持つ少女は兵士の泥だらけの手を笑みをうかべて握った。

 

「アズミ、ルミ、お母様のご命令は、38度線以南の敵をたたけということだけど、それより北にいる北朝鮮軍をたたかないと意味がない。」

「出動ですか。」

副官たちは色めき立つが愛里寿は首を横に振る。

「わたしたちが出たら目立つ、それに出るまでもない。B29で爆撃する。」

 

【BGM:ボラー連邦の戦い】

開城の東、24キロの高浪浦(コウワンポ)を守備していた韓国第103連隊に精強な北朝鮮の第203戦車連隊が襲いかかる。

「あ、あれは...。」

「北朝鮮の第203戦車連隊です。」

韓国軍は、37ミリ対戦車砲を構える。

「撃て!」

カアーン、カアーン...

しかし、すべてT34/85の装甲に全く効き目がなく空しく弾きかえされるだけだった。

 

そのときだった。亀マークのついた38tヘッツアーがT34/85におそいかかり砲塔の付け目を巧みに狙い撃破し、履帯を切って擱座させる。韓国軍は快哉をさけんだが、T34/85は、砲塔をヘッツアーに向け、集中砲火をあびせた。ヘッツアーは横転する。

「や~ら~れ~た~。」

「西住さん、あとはたのみます。」

T34/85は、韓国軍を蹴散らしてなおも進撃していった。

 

「高浪浦のカメさんチームから連絡だよ、みぽりん。やられたって。あーそれから東豆川(トンドウチョン)のカバさんチームからの報告がはいったよ。」

「西住殿。我、奇襲に成功セリ、とのことです。」

東豆川の韓国第7師団とカバさんチームは、寝込んでいた北朝鮮軍を撃破した。三号突撃砲の48口径75ミリ砲が火を噴き、北朝鮮軍は大混乱に陥った。しかし...

 

抱州(ポチョン)に敵影なし!」

「よし、進撃だ!」

無人になった抱川へ北朝鮮軍の李英鏑少将率いる第3師団がT34/85で突き進む。

「敵戦車隊発見。南下してきます。」

「よし、道路わきから挟み撃ちだ!対戦車砲かまえ!」

「撃て!」

韓国第5連隊は、37ミリ対戦車砲を撃つ。

しかし、カアーン....カアーン

「全く効き目がありません。」

「そんな石ころのような砲弾がこのT34/85に通用するとでも思っているのか。撃て!」

ズドーン、ズドーン、ズドーン

「よし第7連隊は、やつらを包囲しろ。」

北朝鮮第7連隊は、韓国第5連隊を包囲し始める。

「だ、だめだ、退却!」

 

「敵、抱川を突破。第5連隊は壊滅。」

韓国第7師団劉載興少将と赤いマフラーを着けた少女、ドイツ風の軍帽をかぶった少女、六文銭の鉢巻を着けた少女、いくぶんぼさついた頭をして和服を着た少女が顔を見合わせる。

「これは、退却ですな。このままだと包囲されてしまう。」

「山中にわけいるしかないぞ。」

「源平の合戦に敗れた平家?」

「いや山崎の合戦に敗れた明智軍?」

「いやチャルデイラーンの砲戦に敗れたが雌伏するサファビー朝のタフマースプ2世」

「それだ!」

韓国第7師団とカバさんチームは撤退するしかなかった。

 




しばらくEp.1は休止になるかもです。すみません。


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