一言で言うと、理不尽 (火影みみみ)
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一言で言うと、理不尽

 世界には多くの理不尽であふれている。

 例えどれほど完璧な予定を立てようとも想定外の災害で崩されたり、仲良く付き合っていた友達が急に癇癪を起こしたり、昨日まで元気だった知人が急に亡くなったり。

 事実は小説より奇なりともいうように、時には人の想像を超えた事態に直面することもあるかもしれないわ。

 昨今の小説にあるように、何らかの要因で主人公が死亡したりはたまた死亡せずとも別世界に移動したり転生したりという普通の人間が聞いたならば正気を疑い、その人物を病院へ連れて行くであろう出来事でもその人からしたら紛うことない真実かもしれないということ。

 まあ、それを証明する手段があればの話だけど。

 俗に言う転生特典なんてものがあれば話は早いのだけど、ただただ記憶をもって転生しただけならそれは他の人から見れば狂人の妄言そのものだし、話しても信じられないのが普通ね。

 けど、ほんとうに転生特典なんてものがあったとしても、それが使えないものだったならばそれは記憶だけをもって転生した人と何も変わらないと思うわ。

 例えばそうね、……王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)無限の剣製(アンリミテッド・ブレード・ワークス)くらいわかりやすい能力なら一発で信じられるかもしれないけど、超能力や魔法がない世界で幻想殺し(イマジンブレイカー)や令呪の無限所持、極端なもので爪楊枝を一日一本生産する能力など、役に立たない能力だとどうしようもないものね。

 これも一つの理不尽といったところかしら、転生した上に役に立たないものを押し付けられて哀れみを感じるわね。

 まあそれもその人の運命といって諦めるのも一つの手段かもしれないけれど、私としてはあまり好みじゃないのよね、そういう展開。

 運命のせいにして自分から解決の道筋を閉ざすのはあまりにも愚かで、それはただの怠け者と変わりがない。

 ただ自身の運命を恨む気持ちはわからないでもないわ。

 ある種類の人間はどうしようもない出来事に直面した場合、その内に抱いた負の感情を自身が見ることができない、存在すらも感じることができない別の存在への怒りや憎しみとして変化し、自身を保とうとすることがあるらしい。

 自分ではどうしようもない出来事、たとえば天変地異だとわかりやすいわね。地震、噴火、津波、爆発事故、はては隕石かな? 自分たちがいくら気をつけていたとしてもそれらの災厄から逃れる術はなく。巻き込まれたが最後運が悪かったと諦めるしかない。

 しかし、ただ運がなかったという理由で大切な者を失った人間からすれば納得できるようなものではないわね。

 昔両親を事故で失った少女相手に『運がなかっただけ』と話し、説き伏せた破戒僧がいたけれど、それはその破戒僧が特別に悟っていただけで、普通の人間だとまず失敗するといってもいい。

 

 まあ、ここまでぐだぐだと一人語りしたわけだけれど、私が言いたいのは大きく分けて二つ。

 この世界にはどうしようもない理不尽があるということ、それに遭遇してしまったのは運が悪かったということ。

 

 運が悪かったと理解して、次へ歩みを進めなければ何も始まらないし何も面白くもない。

 いもしない神をうらむより、今目に見える現実で何をするかを考えなければならない。

 私はそう思う。

 

 

 …………

 ………………

 ……………………けどね。どうしても一つ言いたいことがあるの。

 

 

 ある日火事に巻き込まれて死ぬのは、苦しかったけどまあいいわ。

 私が前世でよく遊んだゲームキャラそっくりの容姿に転生したのもこの際置いておく、実際美人になれて気分はいいし。

 転生した先が現代日本にそっくりだったけど、よくわからない鉱石や動くハニワが存在するへんてこ世界だったのも、特別問題があったわけじゃないからこれもパス。

 幼馴染が来水美樹と小川健太郎だったのは、すこしいらいらすることもあったけど許容範囲内。

 

 けどね。

 

 いきなり現れたへんなおっさんこと、魔王ガイさん。

 

 

 なんで美樹ちゃんじゃなくて私を浚った上に魔王なんて厄ネタを継承させちゃったの?

 

 

 

 

 

 

 

 私、ジュリエット・ヴァイオレットがこの世界がどういうものなのかを察するのにそう時間はかからなかった。

 なにせ幼馴染に将来のリトルプリンセスと魔人がいるのだから気づかないほうがおかしい。

 未来のことを考えていったん距離をとるべきかともおもったけれど、家が近くなのだからそうそう関係が途切れることなく中学まで楽しく幼馴染を続けていたわ。

 ならいっそ自分もあちらの世界についていこうかとも思ったけれど、自分の容姿から察するに私はFateシリーズの女神、ステンノに転生したのだと思う。けどそれっぽい力は無いし魔力もステータスも感じない。

 明らかに戦闘向きじゃない。もしかしたらステンノじゃなくてただのステンノのそっくりさんかもしれないわ。そんなのじゃあ鴨がネギを背負って向かうがごとく、そんなただの美少女があんな野蛮極まりない世界に行けばどうなるか火を見るより明らか、だから私は彼女らを見送ることに決めた。

 そこまではよかったの。何も問題はなかったのよ。

 ある日私は一人で街を散歩していたらデート帰りの二人に遭遇したわ。まあ、この前告白していたのだからデートくらいするでしょう。

 ただ、その場に私たちとかかわりがない、いや無かった第三者が現れたわ。

 そう、魔王ガイよ。

 私は思ったわ、ああもうそんな時期なのね、と。

 魔王相手では私なんて蟻以下レベルの雑魚なのだから、私は何もできない。

 ここは涙をこらえて美樹を見送ろう、そう思っていたら彼はすぐに動き出し、目にも留まらぬ速さでさらって言ったわ、私を。

 

 ? ?? !? !!?

 

 一瞬何が起こったか理解できず、いったん自分の状況を確認し、少し遠くに美樹と健太郎がいて、自分がガイに浚われていることを理解した。

 そしてあれよあれよという間に事態は悪化していく。

 魔王は継承され、健太郎は突如現れた不審者から美樹をかばっていたためこちらへ来ておらず、年号はLPではなくSTへと移り変わる。

 もはや正しい歴史を求めることは困難極まりなく、私にあるのは皮肉にも魔王を継承されたことで目覚めた新たな力と、一つの日本刀。

 果たして、私は無事に人間へ戻ることができるのか。

 ケイブリスやホーネットたちから逃げ切ることができるのか。

 それとも魔王となってこの世界に君臨してしまうのか。

 それは誰にもわからないけれど、一つだけ言いたい。

 

 

 

 

―――――――理不尽にもほどがあるわ!!

 

 

 

 

 




ジュリエット・ヴァイオレット
   ↓
魔王ステンノ 

現在レベル:1
才能限界:無限

技能レベル:弓戦闘LV1 忍者LV1 美女LV3 神魔法LV1 幸運LV2
魔王継承で追加された技能:魔法LV2 魔王LV2

保有スキル:
気配遮断(A+) 吸血(C) 魅惑の美声(A) 女神のきまぐれ(A) 対魔力(A)
女神の神核(EX) 生まれながらに完成した女神であることを現す固有スキル。神性スキルを含む複合スキル。あらゆる精神系の干渉を弾き、肉体成長もなく、どれだけカロリー摂取しても体型が変化しない。

宝具:女神の微笑(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)


設定;ジュリエットことステンノに転生した少女。人間時代はただの美少女だったが魔王を継承することによってサーヴァントの力に覚醒する。
   スキル・女神の神核のおかげで未覚醒状態を維持できているが、油断すると覚醒しそうになることから元に戻る方法を探して日光とともに旅に出る。
   忍者技能はアサシンクラスから、オリジナル技能美人は単にシルバレルのブスを反転したような感じ。
   また、対魔力Aというスキルのせいでたとえ結界がなくても並大抵の魔法を無効化してしまう。


急募:ランスシリーズの美樹たちの動向って分かりにくいので詳しくわかるもの


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魔王? いやよ死にたくないもの

 ねえ、私の話を聞いてくださる?

 ええ、ええ、それでいいの。

 あの外道二重人格魔王ことガイにより異界に浚われ、厄ネタを押し付けられた可愛そうな人間(?)こと私、ジュリエット・ヴァイオレット。世間では魔王ステンノとも言われているわね。

 私が意識を取り戻したときにはね、もうすべて終わっていたわ。

 目の前には元魔王ガイ、そして頭を垂れる魔人が数名。

 ええ、もうすべてを察したわ。

 ここは魔王城、あの白くじらが支配する悲劇で満ちたハードモードの世界だと。

 そして本来美樹が継承するはずであった魔王は私が継承したということ。

 状況を理解したことで私はますます混乱に陥ったわ。

 だってそうでしょ? いくら転生経験があるとはいえ私は普通の女の子。魔王なんてできるはずがないわ。

 だから私がとった行動は一つ。

 

 逃げたわ☆

 

 ええ、それはもう全力で、生まれてこの方出したこと無いような全力を振り絞って逃げたわ。

 さすがに継承したばかりの魔王がそんなことをするとは思わなかったようで、呆気にとられた魔人たちの顔はそれはもう愉快なものだったわ。

 まあそれはさておき、魔王城をあちこち逃げ回っている間におかしなことに気づいたの。

 いくら魔王化しているとはいえ、私の体はこんなに軽かったかしら?

 それにまだおかしなことはあったわ。

 ここは敵地だもの何人か魔人や使徒とすれ違うことなんて当然あったわ。

 けどね、すぐそばや天井付近に張り付いた私をだれも見つけることができなかったの。

 素人のスニーキングなんてすぐにばれそうなものだけど、と思っていると。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

   名前【魔王ステンノ ジュリエット・ヴァイオレット】

ステータス【筋力:E 耐久:E 敏捷:B 魔力:EX 幸運:E 宝具:B】

保有スキル【気配遮断:A+ 吸血:C 魅惑の美声:A 

      女神のきまぐれ:A 対魔力:A 女神の神核:EX】

   宝具【女神の微笑(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 このような文面が視界に浮かび上がったの。

 なるほど。今の今まで私が誰にも見つからなかったり、身体能力がやけに伸びてると思ったらこれのせいね。

 高ランクの気配遮断に加え、アルトリア(剣)やイシュタル(弓)と同レベルの敏捷があればこのくらいの隠密など赤子の手を捻るように簡単にできてしまうと言うこと。

 

 まあ、だからと言って安心する私ではないわ。

 だってそうでしょう?

 いくらサーヴァントの力があるとはいえ私はいわば生まれたての子鹿、この力を使いこなせるようになるまでまだまだ時間が足りないもの。

 

 たから私は逃げたわ、逃げて逃げて逃げ続けて、とある場所にたどり着いたの。

 そこはまるで、いえまさに激しい闘いがあったようで部屋中のいたるところに深い傷が刻まれ、まだ真新しい血液がちりばめられていたの。

 この場所の異様さに困惑していた私だったけど、部屋の角の方に誰か倒れていることに気づくとすぐに駆け出していたわ。

 うつぶせに倒れたその人は残念なことにもう事切れていたけれど、全身に刻まれたその傷跡から彼がこの場所まで必死になってたどり着いたことは用意に想像できたわ。

 こんな大陸にも勇者(システム的な意味ではなく)はいるのねと軽い感動に似た感情を胸にさあ逃げようと思ったその時だったわ。

 

 彼からすこし離れところに一本の日本刀が落ちているのを見つけたの。ええ、見つけてしまったの。

 その時の私の感情をどう表したらいいかしら? あって困るようなものではないけれど私には使いこなせない特攻武器って始末に困るわよね、とてもそう思うわ。

 

 

 ええ、はい、あったのよそこに、対魔人用特攻武器が。

 魔剣カオスと対になる聖刀日光がね。

 正直なところすこし迷ったわ。

 だってそうでしょ?

 本来の持ち主(予定)だった健太郎は剣道の経験があったから多少なりとも使いこなせていたわけだけれども、私は生まれてこの方運動なんてしたことがなかったくらいにはインドア派だったのよ、そんなもの手にいれたって宝の持ち腐れになることは目に見えていたわ。

 けれど、ここで見逃せば日光は魔人たちの手に渡ってしまう。カオスが封印されている今、ここで日光を失うのは人類側にとって大きな痛手になることでしょう。

 ……いいえ……いいえ……嘘です。

 確かにそれも理由の一つだったけれども、本当の理由はそこではないわ。

 

 

 私は寂しかったのよ。

 

 

 たった数十分とは言え見知らぬ場所でたった一人、魔人たちから逃げ続けて、私は少し疲れていたのね。

 だから無機物とは言え話ができるモノ、簡潔に言えば話し相手が欲しかったのよ。

 もちろん本人からの許可も取ったわ。最初は怪しんでいたみたいだけれども、私の必死の説得と他に選択肢がないこの状況から最後には共についてきてくれることになったの。

 表面上はクールを装いながら内心とても喜んでいた私はすぐに彼女を手に取ったわ。

 

 さあぐずぐずしている時間はない、さっさと逃走を再開しようと思ったまさにその時だったわ。

 背後から誰かに声をかけられたのよ。

 私は恐る恐る慎重に、しかしそれを悟られないように華麗に振り向いたわ。

 

 私の予想通り、そこには魔人がいたわ、それも五人。

 ケッセルリンクにサテラ、ノスにアイゼルと……よくわからないのが一人。誰だったかしらあの白髪の男。魔人シリーズはだいたいマグナムくらいまでなら熟知していたと思ったけれども私もまだまだというわけね。

 

 まあいいわ、えっとどこまで話したかしら……そうね、話しかけられたところからだったわね。

 奴らは私にこういったのよ、「魔王さま、早くお戻り下さい」ってね。実際はもっと長かった気がするけれど要約すればだいたいこんな感じよ。

 もちろん、そんな要求に屈する私ではないわ。ここで捕まったが最後、ランスや勇者あたりが殺しにくるまで正気を失ったまま悪逆非道な魔王に成り下がるのは確実だと思ったからよ。

 ランスならまだしも勇者が私を生かしてくれるはずもないし、これはどうあっても頷くわけにはいかないわ。

 しかし目の前の魔人たちは私の一挙手一投足を注意深く監視していて、逃げるそぶりを見せただけでも捕まってしまいそうだった。

 

 だからね、私は賭けにでたの。

 幸いにも相手は五人中四人が男、元女がいるけど、ならば私の本領発揮できる場は整えられていたと言っても過言ではないわ。

 幸いホーネットならまだしもサテラならまだ逃げきれそう。そう感じた私は自身の美貌が曇らないように、美しく笑えるように、(あまりない)胸を張って彼らにこう言ってやったわ。

 

 「お生憎さま、私はこんなところに収まるような女ではないのよ」とね。

 

 そして言い終わると同時に私は微笑んで、魅力を全開にして彼らに向けて解き放ったわ。

 だいたいなにをどうすればいいのかなどはこの体が教えてくれた。霊基に刻まれた記憶といった物かしらね。不思議と以前から使えていたような錯覚すら感じたわ。

 結果? 聞くまでもないでしょ。私が今ここにいるのだから成功したに決まっているじゃない。

 

 まあ、サテラにまで効いたのは予想外だったけれど、そう言えばぐだ子も魅力されていたしこういうものなのかしら?

 そんな些細な疑問はキュケオーンにでも混ぜておき、一目散に私は逃げたわ。

 宝具を使っても良かったけれど、後々の歴史にこれ以上のイレギュラーは作りたくなかったもの、仕方ないわよね。

 こうして私と日光の二人旅は幕を開けたというわけ、なにか質問あるかしら?

 

 ……

 …………

 ………………今私がどこにいるのかですって?

 

 もちろんリーザスに決まっているじゃない。

 ヘルマンやゼスは論外、カスタムも最初は危険だったはずだし、ここはリーザス安定よね。

 まあ、なにか忘れているような気がしないでもないけど、今は久々のまともな休息を満喫してもバチは当たらないわよね。

 




なお、現在ST1年、つまりLP1年。

白髪の魔人=バークスハム

サテラに魅力が効いたのは主に美人LV3と魅力が仕事したからです。fgoで例えると女性や性別なしにも魅力が通ります。ただし宝具は即死になりません、魅力のみです。


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