クソ眼鏡は光を求めた (コズミック変質者)
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前編・クソ眼鏡は光を求めた

能力を一部曲解しました。


日本の首都、東京。

 

そこはビルが立ち並び、人々が無限のように闊歩し、昼夜問わずに様々な人間が存在していた場所だった。

建物が倒壊し、瓦礫で地面は埋め尽くされ、人気がないこの一体も、そこもまた東京の一部だった。そこは数時間前まで国会議事堂と呼ばれた場所。

 

真実は限られたものしか知らない。そこで何があったのか、何が起きたのか。

 

上空にはこの惨状を不謹慎ながらもチャンスだと思い、カメラに映して画面の前の人々に届けているヘリの群れ。よくまだ事故が起きていないと言えるほど、かなりの数が飛んでいる。

 

カメラが捉えたのは二人の男。一人は拳を握り、所々が破れ、赤く染まったヒーローコスチュームを纏った、まだ幼さが残っている青年。

もう一人は煌めく大剣を構え、同じく破れ赤く染まった、軍服とも呼べる黒い服を身に纏い、黒縁の眼鏡をかけた容姿端麗な男。

 

青年の名は緑谷 出久。

男の名は楽土 審。

 

彼らは拳を、剣を、互いの命へ向けて振るっていた。これで終わりだ。その程度か。何度も繰り返される必殺の応酬。無傷で済むなどお互い思っていない。肉を切らせて骨を断つ。忠実にその言葉に従った攻防が繰り広げられている。

 

彼らは友だった。彼らは同じヒーローを目指す仲間だった。架けていた思想は違えど、互いに切磋琢磨して高校という青春を駆け抜けた仲だった。

彼らは決裂した。一方的に、なんの理解もなく。

 

男は目指す。正しき者が正しく評価される楽園(エリュシオン)を。青年は止める。男が目指す楽園(エリュシオン)を。

自分が正しくないかもしれないなど理解している。だが止まらない(止める)。正しいかもしれない。現に一定の理解を国民から、社会から得ているのだ。

 

「君の理想は・・・間違っている!!確かに、社会は正しくないものが多い!世界には悪が多い!君のいうことも理解できる!僕だって正しい人に救われてほしい!でも、一度悪に落ちた人も救いたいんだ!」

 

「善も悪も見境なしに救うなど、そんなものはお伽噺に聞かせる英雄譚だけなのだよ。現実は違う。正義と悪は相入れてはならない。悪は正義を堕落させ、悪にしてしまう。やがて悪は巨悪となり、社会を回す円盤になったのだ!

断じて許せないのだよ!他者を食い物にして平然と生きている彼らが!光の道を歩く者の邪魔をする者が!」

 

瓦礫が爆発する。爆発した瓦礫は岩弾となり出久を襲う。計算され射出された岩弾を、人差し指をデコピンの形にし、弾いた風圧で消し飛ばす。

背後に迫っていた審の剣を拳で逸らす。瞬間、拳には十の衝撃。十の斬撃。これが審の必罰の聖印(スティグマ)。付与すれば衝撃を重ね、たとえ軽い攻撃であろうとも重く、速く鋭い攻撃が繰り出せる。触れなければ使えない、使いづらい能力だが、優秀すぎるほど優秀とさえ称された彼が扱うのだ。それは果てしないほどの凶悪な能力となる。

 

「私とて理解している。私の求める世界は誰しもに笑われ、否定されるのだと。人の進むべき方向性を最初から決める。人を正しさの奴隷にする。様々な解釈を通せば、自然とそう思われるし、そう見えるだろう。それでも私は創りたいのだ。あの人のような・・・君のような(正義の味方)が報われる世界を!」

 

砂塵を振り払い剣を振るう。出久は自らの両腕をクロスして、最大限にまで『個性』で強化した筋肉で受け止める。瞬間、上から襲い来る十の衝撃。それだけではない。砂塵を突き抜けて飛来した無数の何かが出久の体に叩きつけられる。

この一帯にどこにでもある礫。

計算高い審があらかじめ飛ばし、聖印(スティグマ)で幾多もの反射を得て出久を狙ったのだ。

改めて思う。審が天才だと。反射する位置、時間、威力共に正確。その全てが偶然ではなく必然として襲い来る。

 

身体に礫が当たったことで力が緩む。膝にいくつか当たった衝撃。唇を噛み締めて痛みを堪えるも、膝は無残に地面に崩れる。

体勢が崩れた隙を審が見逃すはずはない。剣を引き戻し、流れるような美しい剣技と、力強い暴風のような剣技で出久を潰しにかかる。

振るわれた剣に少しでも触れる度に発動する聖印(スティグマ)。対応策はない。誰もが策を考え、穴をみつけようと挑んできた。だが結果は同じ。誰も彼の聖印(スティグマ)を破るに叶わず。

誰かが言った。彼は最強だと。誰かが言った。彼は無敵だと。

 

「君は間違っている!他人の進む方向を決めるなんて、誰にもしちゃダメなんだ!確かに君の言う方向は光あるものかもしれない!その先に美しい世界が広がっているかもしれない!」

 

人は言った。その世界はきっと正しいのだと。今の世界を唯一、完璧に否定できる楽園(エリュシオン)だと。

 

「それでも結局は管理なんだ!正義という言葉で人を飼い殺して、ダメにしてしまう!僕は君みたいに頭も良くない!理解も遅い!でも分かる!君が言う世界は、まだ歩いてもいない人たちさえもダメにしてしまうと!」

 

「その中に、悪がいるかもしれないのだぞ!?」

 

「分かっている。だからこそ、僕達が導くんだ。本当に正しい、あの人が言っていたような世界へ!」

 

「そうだ!私とてそれくらい理解している!だからこそ、私は私の方法であの人のような人が救われる世界を実現させるのだ!その為に———」

 

「その為に、こんなことをしたっていうのか」

 

拳と剣が鍔迫り合いを始める。出久がたとえ強化を施そうが、常時腕に来る衝撃。少しづつ拳を切り裂く斬撃。

痛い。痛くて仕方が無い。痛みはいくらでも、これまで背負ってきた。でも今は違う。他者の痛みではなく、自分の痛み。久しぶりに背負う痛みが、更に出久を刺激する。

だが逃げない。ここで逃げれば負けなのだ。ここで一歩でも引けば、あの人の想いが無駄になるから!

 

「ハァァァァアアアアアアア!!!!」

 

「なんだと!?しまっ———」

 

思いっきり、刃を掴んで振り上げる。疲弊し、壊れかかった脚を全力で使う。掌の肉が切り裂かれた感触。だが構うものか。手足の一本で、彼の計画を止められるなら安いものだ。

審の大剣が宙を舞う。十mほど離れた場所に突き刺さる。審が逆転されたことで出来た一瞬の空白。そこに壊れかかった脚を全力で起動させ、高速で踏み込む。

拳は構えた。殴り方は知っている。あとは腹に力を込めて、思いっきり叫び振るうのみ。

 

 

「SMAアアアアアアアアSHッ!!!!!!」

 

 

自分の、始まりの技が審の腹部にめり込む。歯噛みと共に口から血を出す。肋骨がいくつか臓器に突き刺さったのだろう。殴られた鈍痛と、鋭い激痛が審の脳を駆け巡る。

痛みで思考が停止する。痛覚を刺激するエラーを処理しようと全力で動き出す。その間にも、出久は止まらない。審を止めるために、審を倒す。

 

「SMAアアアアアアアアアSHッ!!!!」

 

「グゥゥッ!ガハッ!」

 

続く二発目、三発目のSMASH。右腕で襲い来る拳を両腕で止める。無理に動いたことで喀血し、大量の胃液混じりの血が口から出てくる。続く左腕。両腕は右腕を止めるために使った。この状況では聖印(スティグマ)は使えない。審の聖印(スティグマ)は付与するものがなければ使えない。

 

滑空し、瓦礫に頭から突っ込む審。殴った出久も膝をつく。いくら鍛え、筋肉を強化しようとも手足にかかる負荷は半端ではない。今も尚、成長中の出久は100%の全力を使い続けることは困難なのだ。

 

「まだ・・・だ・・・!」

 

そう、まだだ。まだ審は、敵は立ち上がる。立ち上がってしまうのだ。どんなに肉体が傷つこうとも、彼らは立ち上がるのだ。そうしてきた人を、英雄を、正義を、光を見てきたのだから。どんな敵が現れようとも、どんなに己が傷つこうとも、守るべき人達がいる。倒すべき存在がいる。目指す理想がある。

 

「そう・・・まだだ」

 

審の声が響く。芯の通った、力強い声。出久も審のいる方向を見る。砂塵は少しづつ晴れている。うっすらと見える人影。しっかりと地に足をつけ、出久を睨んでいる審が見える。

 

「私の魂は、私の心は、私の星はまだ輝いている!」

 

「・・・!?」

 

聖印(スティグマ)が光を取り戻す。飛び出し、計算された礫や瓦礫が互いにぶつかり合い、縦横無尽に出久の周りを駆け巡る。

 

「ハァァァァッ!」

 

デコピンを地面に向けて打ち、風圧で全てを吹き飛ばす。出久の周りの地面は出久を中心に円形に薄く抉れている。

審は何をしたかったのか。礫はこういった形で対処されるのは簡単に予想がついていたはず。出久に分かったのだ。審に分からないはずがない。

一体何が目的で・・・?

 

「考えている余裕があるのかね?」

 

反射的に背後を振り向く。そこにはいつの間にか大剣を構えた審の姿。なぜ大剣を持っている?審がいるのは大剣があった方向と反対側のはず・・・。

答えはすぐに出た。先程の計算された礫。それらは出久を狙って撃たれたものではなく、大剣に当たり、審の手元に戻るように計算されていたことに。分かっていたことだが、ここまでとは。

 

再び始まる拳と剣の応酬。先程よりも数倍激しさを増した鋼と肉の攻防。先程のような拮抗ではなく、徐々に、確実に審の方が有利なっている。聖印(スティグマ)による多重の衝撃。出久の肉体にかかった疲労。そして何より、

 

「さっきより、強くて速い!?」

 

審の攻撃が苛烈さを増している。まるで一瞬前の自分を、出久と一緒に切り伏せているように成長している。

恐るべき審の執念。

出久は咄嗟に回避行動を取るも、ワンテンポ遅れてしまった。その遅れは、審を前にした時、絶対にやってはいけないものだった。

 

「これで、終わりだ!」

 

銀閃が空をかける。狙いは出久の肩口から心臓に目掛けて。いくら個性があろうとも、審には聖印(スティグマ)がある。軽い斬撃が、少しでも触れただけで幾重にも重なり、すぐさまビルをも両断する斬撃と化すのだ。

出久は死を確信する。迫り来る刃は、出久の首を容易くはねるだろう。

 

しかし、

 

「なんだと!?」

 

必殺かと思われた斬撃は、出久に触れる前に第三者の手によって止められた。

 

「かっちゃん・・・」

 

刃と出久の間に介入したのは出久の幼馴染にして、審と出久のクラスメイト。そして現在、トップヒーロー《爆殺卿》として名を馳せている爆豪勝己がそこにいた。

 

「なに勝手にコイツ殺そうとしてんだクソ眼鏡ェ!!」

 

「くっ・・・!」

 

勝己の手が個性により爆発する。勝己の腕の篭手に刺さっていた刃ごと、審を押しのける。審は勝己の爆発の威力をよく理解している。雄英体育祭の決勝で、ぶつかったからだ。

 

「死ねやァ!」

 

左腕を後方へ突き出し、掌から爆発を生み出して急速に加速する。すぐに審の目の前まで辿り着き、右腕から爆発を起こして威力を増したフックを審に打ち込む。

 

「君の行動はいつだって分かりやすい。感情に身を任せて戦う癖が、抜けきっていないからな」

 

咄嗟に現れたことには驚いたが、審はそこまで勝己を強敵だとは思っていない。確かに爆破という個性は恐ろしく、勝己の才能も恐ろしいものがあるが、所詮はそこまでだ。

 

勝己の拳を大剣の腹で受け止め、突き出された右腕を掴み振り落とす。振り落とされた勝己は地面に接触する直前、左腕で爆発を起こして地面に接触する前に浮き上がる。そしてそのまま審の首に足を巻きつける。

 

「吹き飛べ!!」

 

掌との接触面から連鎖して爆発が起こる。普通の(ヴィラン)ならば一撃で倒せる爆発を何度も何度も。文字通り消し飛ぶまで撃ち続ける。

 

「やはり、まだ甘い」

 

「ゴッ・・・バグァっ・・・!?」

 

審の手が勝己を叩くように当たる。それだけで勝己は横へ吹き飛び、地面を何度も転がる。

開放された審は服の埃を払い、眼鏡に指をかけるも、フレームの感触はなく地面に壊れ落ちているのを薄く見た。困ったな、と思いつつ、新しい眼鏡を懐から取り出す。

 

「どうやって君が私の用意した者達を倒したのかは分からない。まぁ、君のタフネスを考えての配置だったのだがな。素晴らしい、賞賛しよう。君は私よ用意した試練を乗り越え、一歩確実に進めたのだ。実に素晴らしいことだ」

 

審は勝己の元へ歩いて行く。勝己は起き上がっており、いつでも迎え撃てるように両腕を構えている。

 

「だが———」

 

審の姿が消える。どこに、と思った時にはもう遅い。既にケリはついたのだから。

 

「ここにおいて、君は邪魔者でしかない。だから、退場していてくれないかな」

 

「あ・・・?あ———」

 

ズブリ、と柔らかい音と共に、審の姿が現れる。勝己のすぐ近く、真正面に。勝己の胸に大剣を突き刺した状態で。

審がゆっくりと大剣を抜く。空いた穴から血が溢れ、地面に赤い模様を悪戯に刻んでいく。赤は広がり、瓦礫の隙間を通っていく。勝己の命が無造作に撒き散らされている。

 

ビチャリ、と勝己が自分の血で作った水溜りに倒れる。審が大剣を震えば三日月状にさらに地面に赤い絵具が撒き散らされる。

 

「さぁ、再開しよう。社会の在り方を決める、私達の———」

 

審の姿がまた消える。同時に出久の姿も。

 

「最後の戦いを」




感想欄に「クソ眼鏡○○」を期待しています。


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中編・クソ眼鏡は光に焦がれた

続いてしまったクソ眼鏡×ヒロアカ短編。今回を中編、前回を前編として、次回は後編とさせてもらいます。

【注】能力を一部曲解しました。


審と出久が戦闘を行っている場所以外にも、審が作り出した戦場は無数にある。それぞれのヒーロー達が揃っている場所に、一斉に彼らに相応しい(・・・・・・・・)(ヴィラン)を与えた。俗に、それは試練というもの。

 

審は信じている。光あるものならば超えられると。先に進むこと(努力)をすれば必ず超えられると。故に遠慮はしない。街が破壊されても、人は必ず元に戻す。一般人は死なない。そういう風に教えこまれたから。

 

問題はヒーロー達が審の用意した敵を倒せるか否か。無論、審は倒せると信じている。だか、審の要求は異常なまでに高かった。

 

故に、誰も審の場所へは辿り着けず。

 

 

 

 

 

 

風が頬を切り裂く、雨か全身を打ち付ける。雪の礫がじわりと来る。

 

出久や勝己と同じく、審のクラスメイトである轟焦凍もまた、審の用意した敵と戦っていた。炎と氷を扱えるという強力極まりない個性で、彼は現在No.2ヒーローとしてその名を轟かせている。

故に、優秀だからこそ相応しい相手か与えられた。

 

「ほらほら、立ち上がらなくていいのかヒーロー。敵である私はここにいるぞ?お仲間を助けに行かなくていいのか?」

 

凛、という音が似合いそうな女はそう言った。彼女こそが審の用意した敵であり、轟に与えるのにふさわしい相手。その名は天津 チトセ。

審の仲間だからか、同じ黒軍服を纏い、片目には眼帯をしている。

 

「黙ってろ・・・!」

 

炎と氷を同時に襲いかからせる。だが彼女は不可視のバリアがあるかのように押し通らない。避けていく。

都合、数十回目の失敗。またも傷は与えられず、闇雲に体力だけが減っていく。

 

「はぁ・・・全く、馬鹿の一つ覚えのようにそう闇雲にやられてはな。こちらも対応に困ってしまう。この程度なら、私ではなく他の奴らが適任なんじゃないのか?」

 

まるで敵として見なされていない言動に、歯噛みしながら向き直る。確かに強い。だが敵の能力も分かっている。やりようによっては逆転できるのは容易い。なのに、勝てない。

 

「言ってろ・・・!」

 

氷塊を作り出し逃げ場を塞ぐ。同時に噴射された十を超える炎弾がチトセを狙う。そして更に氷壁から隆起した氷の槍。四方八方からチトセを襲う。

 

「もっと工夫を凝らしてみたらどうだ、ヒーロー」

 

手に持った蛇腹剣を振るう。それだけで炎は消え失せ、氷は砕ける。これが安易に接近できない理由。能力だけではなく、チトセは剣捌きさえも一流。そして蛇のようにしなる蛇腹剣の特徴が、更に攻撃を複雑化して辺りを危険地帯と化す。

 

「これだけか?ならばこちらから行かせてもらおう」

 

「・・・っ!」

 

弾丸のごとき速度でチトセが走り抜ける。轟はギリギリではなく、余裕を持って避ける。だが轟の鼻から一筋の線が走り、そこから小さく血が吹き出る。

 

「ハァッ!」

 

蛇腹剣が風を切る。轟は横に転がって避け、すぐ迫る二撃目を氷の氷塊を出して防ぐ。防いでもなんの意味もなく、雨の如き連撃が叩き込まれる。何度も氷塊で防ぐも、まるで紙のように砕かれる。左の炎は出しても蛇腹剣の前では壁にもならず。

 

「遅いぞ、マヌケ」

 

「なに・・・?———ガァァァアアアアアアアアア!!??」

 

攻撃の合間に、空から降り注ぐ雷。雷はまるで意思があるかのように轟を追い、光の速度を避けられるはずもなく直撃する。幸いにもそれほどの威力はなかったから大怪我はないが神経が麻痺してしまう。だがこの程度で済んだのが相手の手加減によるものだと、轟は大いに理解している。

 

「ふっ、この程度か。本当に呆気ないな」

 

「ク、ソ・・・が」

 

地に伏せる轟に近寄り、上から見下ろす。正に絵面は勝者と敗者。上に立つ者、下で這う者。

 

「あの胡散臭い眼鏡ならば、ここで激励の一つでも贈るのだろうが、生憎と私はクソ眼鏡とは違ってね。努力が報われるとは思っていないし、人が常に正しくあり続けるなど狂気の沙汰でしかないと思っているよ。そこの感性はお前達と同じでね。常に光を信じて進み続けるなんてバカバカしいよ。でもまぁ、」

 

歯切れが悪く声を小さくし、眼帯に覆われている目を撫でる。まるで愛しい人にキスされた場所を撫でる乙女のように、その姿は可憐だった。

 

「アイツがこっちに着くと決めたんだ。ならば、アイツを愛している私がコチラ側に着くのは道理だろう?」

 

アイツ、とは審のことではない。審の部下につき、下っ端の様なことをしている男。戦闘力はそこまで高いものではないが、チトセの目を奪い、審が賞賛した男。普段は酒と女に弱いダメ男。

 

「あいつにも出来たんだ。お前にも出来るだろう?ほら、立ち上がって見せろ。私を少しは楽しませろ」

 

「くっ・・・言ってろ!」

 

炎を最大噴射。辺り一面を焼き尽くす豪炎をたった一人の人間に向けて放出する。それがどうなるか、普通ならばチトセは焼き殺されるだろうが、彼女の能力は炎を容易く防ぐ。

 

「気流操作・・・そこまで応用力が利く能力とはな・・・」

 

氷が触れられないのも、炎が避けていくのも全てチトセの持つ『気流操作』という能力のせい。この能力は名前にすれば轟の能力と同じくらい単純に聞こえるが、その応用性は天と地の差がある。

積乱雲を起こせば先程のように雷を自在に引き起こし、炎を雨で鎮火し、体に風を纏わせればあらゆる攻撃から身を守る壁となり、足りない身体能力さえも上昇させる。

正しく万能と言える能力。

 

「強ぇ・・・能力の練度も、単純な力量もテメェの方が上だ」

 

「分かっているのなら起き上がるな。そこで無様に這っていろ」

 

「だがな、」

 

轟は瞑目して思い出す。目指すべき背中、超えるべき背中。それはかつて平和の象徴と呼ばれた男であり、その後継者であり、社会を守ってきた数多のヒーロー達であり、そして今は亡き父の背中。

 

「ヒーローは、テメェら(ヴィラン)には負けねぇんだよ・・・!」

 

「ほう・・・」

 

轟は立ち上がる。足は震え、今にも倒れそうなほど頼りないか、それでも二本の足は大地を踏みしめ、熱意を燃やした両目は衰えることなくチトセを射抜いている。

 

「ならば私を倒して見せろ。それが、ヒーローというものなのだろう?」

 

チトセがここに来て構えをとる。単に早く終わらせたいだけか、それとも轟を少しは認めたということか。どちらかは本人しか分からない。もしかしたらどちらも違うのかもしれない。

だが、そんなことはどうでもいい。最後に至る結末は、一つしかないのだから。

 

「勝つのは、俺だ・・・!」

 

 

———————————————————————————————

 

 

「ハハハハハ!!もう打ち止めか?君の本気はその程度なのかな?」

 

審の斬撃が何度も何度も空を切る。個性による強化でさえも足りないほどの攻撃に、出久はずっと耐えている。勇ましく攻め込んだものの、反撃することは叶わず。反撃したとしてもその度に審はまた速く、強くなる。

まるで限界を知らない審の実力は、正しく最強。未だに五体満足なのが不思議なくらいだ。

 

「ふっ」

 

軽い声と共に大剣が振るわれ、出久の右肩を浅く切り裂く。この攻撃自体は浅く弱いものだが、既に数十もの斬撃をその身に受けているのだ。たった一度の攻撃さえも、今の出久では致命傷にもなり得る。

 

「ぉぉおおおおおおお!!!!」

 

「威力も速度も先程よりも落ちているぞ?」

 

肉を切らせて骨を断つ。必死の拳で殴りにいくも、容易く大剣に拳は防がれ、審の蹴りが出久の足を穿つ。何度も味わった、骨が折れる感覚がした。

 

「ハッ!」

 

「うぐぁっ・・・!!」

 

審が出久の腹部に大剣の柄を叩き入れ、そのまま地面に叩きつける。なすすべもなく叩きつけられた出久は血混じりの唾液を吐き出しながら無様に地にひれ伏す。

 

「どうした?なぜ立ち上がろうとしない?目の前で友が傷つけられたのだぞ?私を許せない『悪』だというのだろう?ならばなぜ立ち上がらない?大切なものを守る為にどんな傷を受けても雄々しく立ち上がり、敵に立ち向かう。それが君の目指すヒーローとしての在り方だったのだろう?そうしてきた人に憧れ、見てきたのだろう?

無理を覆し、無茶を捻じ曲げ、信念を貫き、立ち上がり、運命を砕き、もっと先まで押し通す。素晴らしき『Plus Ultra!!(さらに向こうへ)』。

オールマイトなら出来たぞ?オールマイトなら出来たぞ?オールマイトなら出来たぞ?ならば、君にもできるだろう?」

 

まるで神を讃える賛美歌を歌うように審は喋る。その目にはいつもと同じどこまでも純粋な『善意』。

 

「どうやら、ここまでのようだな。期待外れなど勿論言わないとも。やはり君は強かったよ。いつだって、君は私よりも強く気高かった。だが最後には私の努力と本気が勝った。友よ、私の手で、君を最後の犠牲にしよう。そして君を犠牲に、この無秩序な社会に真の光が訪れるのだよ。・・・また君かね」

 

審が沈黙する出久の首に大剣をかけ、最後に言葉を投げると、またも邪魔が入った。いや、邪魔には入っていない。なぜならその人物はただ立ち上がっただけなのだから。

 

「動けば命に関わるかもしれないのだがね。まぁ、それでも君は、やると言ったことは曲げないか」

 

立ち上がったのは審に斬られた勝己。勝己は自らが作り出した血のキャンパスから足を踏ん張って立ち上がり、そのギラつく瞳は衰えずに審を射抜いている。

顔色は悪い。言葉はなく、カヒューカヒュー、と掠れた吐息だけが聞こえる。立ち上がったせいで穏やかに流れていた流血が、さらに激しく身体から漏れ出ている。脚は今にもガクガクと震え、少し触れただけで倒れてしまうだろう。

だが、立った。

爆豪勝己は審の予想を超えて立ち上がったのだ。

 

「・・・ぶっ・・・殺・・・す・・・!」

 

掠れるように声が漏れ出て、勝己は掌を後に突き出して爆発を起こして審に向かって加速する。更に血が漏れ出て、明らかに危険域に達しようが止まらない。全ては、敵を倒すため。

勝己の持つプライド。生まれながら強個性を持ち、さらに才能が豊富だったこともあり、更に高いプライドが上長されている。

故に倒れない。倒れても立ち上がる。自分の信じたモノ(プライド)のために。守るのではなく押し通すために。

それは奇しくも、光を掲げる審と少しだけ似通っていた。

 

だが似ていても、弱い。勝己では審には届かない。それはずっと前から、何年も何年も繰り返されてきた真実。届かない実力。

朦朧とする勝己の耳に、誰かの声援が聞こえた。幼く、頼りなく、拙いものだ。近くには誰もいないから幻聴かもしれない。

 

「羅ァっ!」

 

勝己の掌と大剣がぶつかり合った瞬間、何十回もの爆発音が響く。それは審の聖痕(スティグマ)によって発動された多重攻撃と、それに合わせて爆破する勝己の掌。重なり合う無限の衝撃。

審の目が驚愕に見開く。今まで審は何度も勝己と戦ってきた。その度に審は何度でも余裕を持って勝己を打ち倒し、格の差を見せ続けてきた。お前程度を倒すなんて赤子の手を捻るの同じだと言うかのように。

 

用意した試練を乗り越えてきた勝己を見ても、審はまだ手を叩いて賞賛した。賞賛するだけの余裕があった。だがここに来て、初めて審は真実、驚愕した。

 

「ありえん・・・。まさか本当に、私の聖痕(スティグマ)と同等の速度で爆破させているのか!?」

 

審の聖痕(スティグマ)は一度触れるだけで十でも二十でも連続で、かつ高速で重ね、発動させることが出来る。それに対して勝己の爆破は手から出るニトロを率いて爆破させているため、威力を弱めて爆破することは出来ても、審のように瞬きする間に発動することは出来なかった。理論的にも、審は自分と同等の速度で爆破することなど不可能だと断じていた。

だがここに来て、勝己は永遠の課題とも呼べた爆破速度を審と同等にまで上昇させたのだ。

 

土壇場の状況。瀕死の状態。壊されたプライド。そういった、今までの人生でも最高で最悪クラスの状況に立たされたからこそ、勝己は己の前に立ち塞がる審という幻影の壁を打ち砕いた。

 

「グッ・・・!ガァッ——!」

 

「吹き・・・飛べ」

 

審の腕を爆破で弾き飛ばし、空いた審の胴体に爆破させて加速した拳で殴りつける。鈍痛と共に突き刺さる痛み。見れば勝己のコスチュームの砕けた篭手の破片が審の腹部に刺さり、肉を喰いちぎっている。

突き刺さる拳をさらに爆破で奥へ奥へと突き進ませる。審の肌が爆破で焼かれ、煙を出して吹き飛ばされる。

 

(まずい・・・!この状況では聖痕(スティグマ)は使えない!クッ、ならば攻めてもの抵抗を———)

 

審の聖痕(スティグマ)は付与する何かがなければ使うことは出来ず、また拳や大剣に使おうにも、拳は既に間に合わず、大剣では射程が合わないためこれも同様。

故に審は何の抵抗もできず、頭から壁だったコンクリートに突っ込んでいった。

 

爆煙が晴れる。晴れた先には右の拳を突き出している勝己の姿。焼け落ち、露出したコスチュームから見える肌は限界を超えた爆破により焼き焦げ、プスプスと煙をたてている。もう血を出し尽くしたかのように顔面は蒼白で、コスチュームの腹部は元の色が分からなくなる程に赤くなっている。

 

でも立っている。爆豪勝己は(楽土審)を倒し、そこに立っていた。崩れ落ちそうでも。瀕死でも。最後に爆豪勝己は勝ったのだ。長年追い続けてきた、常に先にいて、勝己に目すら向けずに前へ前へと進んでいた審に。

 

「かっちゃん・・・!凄いよ。やっぱりかっちゃんは凄いよ・・・!」

 

そんな勝己の背中を見て、出久は折れた足を引きずりながら傷口を抑えて少しづつ、勝己の背中に近寄っていく。通った道に残る赤の軌跡は少なく、出久の命に別状はない。だが勝己はどうだろうか?限界を超えた個性の使用に、腹部からの大量出血。

下手をしなくても死んでしまう。でももしかしたら、少しでも、自分に出来ることがあるはずだ。

 

「・・・最悪の気分だよ・・・。まさか、こんな風にしか勝てないとは」

 

それは本来であれば聞こえないはずの声。打撃と連続爆破を無防備に受け、瓦礫に頭から突っ込み、頭部の出血などの類で気を失っていて当然の筈なのに。何故、聞こえるんだ?

 

「かっちゃ———」

 

出久が勝己へと手を伸ばす。先程聞こえた言葉の意味を鮮明に理解できない。ただありえないという現実しか認識出来なかった。故に、気付けなかった。

空から勝己へ垂直に振ってくる、審の大剣(・・・・)の存在を。

 

 

 

天から降りた銀色の軌跡は勝己の左肩を正確に捉え、

 

 

 

肩口から容易く肉を食い破って突き刺さり、

 

 

 

勝己の心臓を無惨に破壊した。




チトセの口調が全く分からない・・・。ちなみにアイツとは、やる気なし金なし職業なしの駄狼です。

感想欄に「クソ眼鏡○○」お願いします。


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後編・クソ眼鏡は光を掲げた

「か、かっ・・・ちゃん?」

 

舞い散る血が出久を染める。とめどなく流れ吹き出る血が世界を染める。鍛え上げられた肉体は剣によって腰まで容易く切り裂かれ、心臓は一刀両断され、破壊されている。

ふらり、と体が揺れる。バランスを崩し、自らが作り出した赤に仰向けに倒れる。血で濡れた体が更に赤く染め上げられる。

 

「かっちゃん・・・!かっちゃん・・・!」

 

歯を食いしばって身体を引き摺り、芋虫のように這って勝己へ手を伸ばす。出久の手が勝己の頬に到達する。血の気がなくなった、冷たい肌。それは生者の色にあらず。生命を失った色に変貌した。

 

「ね、寝ているだけなんだよね?個性の使いすぎで疲れただけなんだよね?ちょっと無茶しただけなんだよね・・・?」

 

身体を揺する。当然、反応はない。

 

出久の瞳から大粒の涙が血溜まりに零れ落ちる。何度も何度もとめどなく。

 

「ほら、いつもみたいに怒りながら僕のことをデクって呼んでよ。いつもみたいに悪態をついて立ち上がってよ。ねぇ、いつも・・・みたいに・・・」

 

声が震える。言葉が掠れる。もう声は届かない。爆豪勝己はそこにはいない。もう二度と、勝己の声は聞けない。勝己の身体を揺らす手、出久の声が止まる。

 

「やだよかっちゃん。かっちゃんがいなくなるなんて、そんなの・・・!」

 

爆豪勝己はいつだって緑谷出久の憧れだった。幼い頃、無個性だった出久。強力な個性だった勝己。オドオドした性格と豪快な性格。水と油のような関係で彼らは存在していた。

勝己にとって出久は人生の道の石ころでしかなかった。でも出久にとっては、勝己はいつだって憧れで、ヒーローだった。

出久は知っている。勝己がみんなの何倍も何倍も努力してきたことを。裏では誰よりも、自分に厳しかったことを。いつも言っていた、頂点になる、一番になる。それは自分への戒めだと、出久は知っていた。

 

背中しか見れなかった。オールマイトから個性を引き継いでも、追い越せたように思えない。隣に立てたとしか思えなかった。どんなにすごく成長しても、勝己はいつも、出久の前に存在していた。

あの人(オールマイト)と同じように。

 

「・・・審!」

 

痛みを堪えて立ち上がれ。手足が動かなくても動かせ。敵を倒すまで倒れることは許されない。

 

出久は正しくないかもしれない。光ある未来は審の描く未来に存在するのかもしれない。いや、するのだろう。誰もが未来を見て進める光の世界が、審の理想の先にはあるのだ。きっとその世界はヒーローも、(ヴィラン)も存在しない世界で、全ての人々が努力し続けるそんな世界が———。

 

「巫山戯るな・・・!」

 

認めない。そんな世界を緑谷出久は認めない。誰もが未来を見て努力し続ける世界。嗚呼、言葉にすればなんて素晴らしい世界だろう。努力し、成功すればプラス何点。怠ければマイナス何点。

何もかもが正しさという点数で評価される世界。そんな世界はクソくらえだ。人は正しく居続けることは出来ない。オールマイトでさえ完璧な正しさはなかったのだ。

それは無限の如く強いるなど、それは輝く世界とは言えない。人を努力の、光の奴隷に陥れる行為にほかならない。

正しく居続けられないから人なのだ。正しさの中に迷いも悪もあるから人でいられるのだ。

ヒーローとして矛盾していると言われればそうだろう。そんなことは百も承知。矛盾しようがどうしようが、緑谷出久は光の奴隷を認めない。

 

「行くぞ・・・!勝つのは僕だ!」

 

出来ることは、ただ己の信じた(ヒーロー)を貫くのみ。

 

 

———————————————————————————————

 

 

「ぉぉぉぉオオオオオオオオオオ!!!」

 

ワン・フォー・オール(一人はみんなのために)』、全力100%で稼働。目にも止まらぬ速さで出久が審へ近づいていく。ここに来て、その速度はかつてないほどに早く、鋭い突撃。

 

「全く・・・こうもままならないとはな」

 

対する審は呆れながら迎え撃つ。大剣を拾う暇などない。武器に固執する必要もない。大剣がないなら拳で戦え。拳がないなら脚で戦え。脚がないなら頭で戦え。輝く未来を求める限り、(光の奴隷)は決して屈しない!

 

(単調な。速さはあってもまともに当たらなければ———これは・・・!?)

 

振られた拳を余裕でパン!と逸らす。同時に審の顔が歪む。審が使った技術は衝撃を完全に逸らし、逸らした手に来る衝撃を0にする、特殊な格闘術。審が本気の末に、とある武術家に頼み続け、教えを受けられたもの。

 

「バカな・・・!なんだ・・・」

 

審の手に鈍い痛み。手は鈍器で殴られたように痛覚を脳へ伝えていく。だが戸惑っていても行動は止まらない。逸らし、横から反対の手を突き出して出久の手首を掴み取り、一本背負いで投げつける。

 

「ウゥっ!」

 

出久が地面へ背が当たる前に、その二本の脚でイナバウアーで大地へ踏ん張る。あまりの投げの勢いに脚が地面に少しだけ埋まるが、これはチャンスとなる。

 

「ハァァァアアアアアア!!!!!」

 

「有り得———ゴァッ!」

 

そのまま、力技で身体を起こして審を地面へ叩きつける。審は言葉を言い切る間もなく地へ叩き付けられ、口から血を吹き出す。

 

「まだだ・・・!」

 

折れたであろう背中の骨に気を使う余裕など既に審から消えた。想定外の出久の一瞬での成長は、審から余裕を完全に奪っていった。

脚を出久の足に絡めとり、そのまま関節技でキメようとする。だがその寸前、またも力技で投げ飛ばされる。

 

地面を何度も転がる。三半規管はグチャグチャになり、急激に気分が悪化する。着ていた軍服は何箇所も破れ、そこから血が滲んでいる。骨もたった数瞬の戦闘で何箇所も折れてしまった。

一瞬で満身創痍になった審。だがその瞳に輝く闘志は一分も衰えずに爛々と輝き続けている。

 

「は、はは、ははは、はははははははははは!!!素晴らしいぞ緑谷君!幾度も努力を重ね限界を超えてきた君が、とうとう、とうとうあの人を超えたぞ!!」

 

拳を受けて理解した。対面して直感した。緑谷出久は至り超えたのだと。誰も到達出来ず、空に浮かぶ月のような手を伸ばし、重ねることしか出来ない場所に、緑谷出久は足を踏み入れたのだ。

 

「あぁ、やはり爆豪勝己を斬り捨てたことは間違いではなかった!彼の成長と目まぐるしいものがあったが、君には及ばない!やはり君しかいないの!幾多もの困難を乗り越え、悲しみを踏み越えた・・・あの人のようなヒーローになれるのは、緑谷出久しか存在しないのだよ!!感謝するぞ爆豪勝己!君の死が、新たな光をこの世界に齎したのだから!」

 

近くに刺さっていた大剣を抜き、両手を上げて喝采する。これまでよりも盛大に、これまでよりも敬意を込めて。

無論、審は己の理想を忘れた訳では無い。だが素晴らしいではないか。今宵この時この場所で、先代の英雄を超えた英雄が、努力の果てに誕生したのだから。

嗚呼、素晴らしきかなハレルヤ。やはり努力は人を裏切らない。人は努力がなければダメなのだ。

 

「黙れ」

 

喝采する審を睨みつける。何が喜ばしいんだ。人が死んだんだ。勝己が死んだのだ。その死を、感謝だと?巫山戯るな巫山戯るな。そんな戯れ言認めない。誰かの死が感謝されるなんて、あってはならない。

ただ生きて欲しかった。そのためならこの個性をなくしても、出久は勝己に生きて欲しかった。

 

「オオオオオオオオオオ!!!」

 

大剣が振りかざされる。全力を超えた力を集約させた右腕で迎え撃つ。力はこちらが上。拮抗せずに押し抜くも、聖痕(スティグマ)が衝撃を送り込み、右腕の筋肉を破壊する。

だがその程度の痛みはもう慣れた。引こうとする脚を無理矢理進まれる。左腕に120%の力を込め、殴る。左拳は大剣にその道を阻まれ、すぐに引き戻す。同時に身体を沈め、ローキック。だがキックは審の足に当たらず、審は跳び、出久の頭にかかと落とし。

両腕を交差させてガード。そのまま力で弾き、同時に全身に個性を10000%で使用。これで決める。その意思を固め、両の拳を振りかざす。出久はもう戦いを引き伸ばすつもりは無い。ここで、今、審を倒す。絶対に。

 

「素晴らしい速さだな———まだ伸びてくれるか」

 

一発一発の拳は、常に進化している。力の込め方。力の伝導。単純な力の量。更に向こうへ(Plus Ultra)

だが忘れるなかれ。楽土審は光の奴隷。敵が強くなり、自分の力が及ばないのならばそこに辿り着くほど力を出せばいい。出せないのなら気合いを出せ、本気で本気を超えろ。更に本気を(Plus Ultra)

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

出久の拳と審の大剣が交わり会う。火花は焔と見間違えるほどに迸り、血はとめどなく宙へ撒き散らされる。

だが緩むどころか更に過激さを増していく両者の攻撃。彼らは防御など一切考えていない。ただ己の攻撃した所に敵の攻撃があった(・・・・・・・・)だけなのだから。ぶつかり合えば即座に引き戻し、更に次へ繋げていく。

削れていく出久の両拳。ぶつかり合う、と言っても審の攻撃には全て聖痕(スティグマ)が付与されている。故にたった一回ぶつかり合うだけでも数十回分の衝撃を受けているのだ。既に骨は粉々になっているだろう。

対する審も無傷とはいかず。出久の攻撃を受けたわけではないので。審は出久の拳を全て手に持つ大剣で相殺している。それが問題だった。出久の攻撃は左右の拳。攻撃範囲は狭いが手数は二倍。だが審は攻撃範囲は広いが一本の大剣だけである。だが得意の攻撃範囲はこの超近接では意味は無い。そして出久の攻撃を拳で受けようものならそれは大きな隙となってしまう。そもそも、成長し続ける出久の攻撃を、マトモに受けるわけにはいかない。結果、審は本気を出し続ける。そして己の身体が耐えきれず、自壊してしまう。

 

止められない。止まらない。もう二人は互いを倒すことだけに全てを注いでいる。それこそ、かつてのオールマイトとオールフォーワンのように。ただ一心不乱に己の全てを賭け、己の全てを以て。違うのは、二人とも誰かのために戦っていることだけ。

 

「はああああああああああ!!!!!」

 

「ハハハハハハハハハ!!!!!」

 

拮抗していく実力。突き放すことは出来ない。突き放そうとも成長すれば互いはすぐに追い抜いてしまう。正に無限の如き拮抗。致命傷はどちらも与えることは出来ず、ただ傷が増え、体力だけが減っていく。

 

「ギァッ———」

 

だが、それも終わる。人に無限はない。どんな力も必ず限界は訪れる。それは誰もが承知している、何においても当然の事実。故に大剣から身を守り続けてきた出久の右拳は、とうとうここに来て崩れた。

 

「フッ・・・!」

 

これは致命的すぎる。今この状況、かつてないほどに力を出している審の前では、少しでも無防備を晒すなど、自殺行為に等しい。

だが、死ねない。緑谷出久はヒーローなのだ。故に負けるわけにはいかない。

 

「うわぁあああああああああ!!!!!」

 

情けない声を出しながら、足をバネのようにして個性を最大使用。身体はバネのように跳ね上がり、審の大剣に自ら突き進んでいく。だが跳ねると同時に、突き出された左拳。さしもの審も、こんな状況で個性を使用するなど思っていなかったのか、眉がピクリと動く。

 

「スマァァァァァァァァァァァァッシュ!」

 

叫び、殴る。それだけで気合が入り、同時に無意識に力が増幅する。そして振られた拳は大剣とぶつかり合い、聖痕(スティグマ)が起動する。出久の拳はまたも強大な衝撃に襲われ、左拳も右と同じように壊れる。更に脳がアドレナリンを分泌するが、足りない。

だが、多大な効果はあった。

 

バキり。

 

軽い音と共に審の大剣が半ばから折れた。何年もそばに居て、審と戦ってきた武器がここに来て壊れた。だが審は武器に固執しない。折れた大剣を手放し、己も拳を握り、出久に拳打をいれようとする。

 

「グォっ———折れた切っ先を・・・!」

 

出久はすぐさま足元の大剣の切っ先を蹴りあげる。折れた切っ先は一直線に飛び、審の腹部に突き刺さる。だが審は止まらない。筋肉が迸り、逆に力が満ちていく。

 

「ヴっ———」

 

強力な右ストレートが出久の頬に入る。足に力を込め、仰け反る体を留まらせる。だがどうしてか、体が思うように動かない。力が完璧に入り切らない。

戸惑っているうちに何十もの審の拳打が出久を穿つ。同時に拳に付与された聖痕(スティグマ)が出久の身体を衝撃で浮かす。三半規管は狂い、口から胃液が漏れでる。

 

「ふん!」

 

「ズバァっ」

 

二ーキックが心臓を穿つ。息が出来なくなり、呼吸困難で苦しみがます。同時に疲れとは違い、流れ出る嫌な汗。

反撃しなきゃ、反撃しなきゃ。でも身体は言うことを聞かない。

 

「これで———ッ!」

 

「うごぉっ・・・」

 

「終わりにしよう!」

 

強烈なアッパーが決まり、出久は衝撃を受けながら宙を舞う。空が近くなり、浮遊により身体の感覚がなくなる。それを認識した次の瞬間、視界には審がいる。

 

「ガッ———」

 

審の最大の拳が出久の心臓に突き刺さる。それは心臓を破壊するには十分な威力。出久は地へ落ち、更に上から聖痕(スティグマ)の合わせ技。後頭部から思いっきり。かつてない程の痛みで全てが支配される。患部を抑えたくても身体は動かない。完全にダウンしてしまった。意識が身体から切り離される。血を流しすぎた。最悪、このまま死ぬだろう。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

出久を見下ろす審は肩で大きく息をする。それもそうだ。出久の個性の防御を上回る攻撃を放ち続け、限界以上に筋肉を動かして身体能力を向上させ、更には限界以上の聖痕(スティグマ)の行使。極めつけに腹部の大きな傷。動いている途中に切っ先が外れたため、審は大量に血を流していた。

 

「まだだ・・・!」

 

崩れ落ちそうな膝に喝を入れる。勝ったという実感を得てしまったせいで、マトモに動くこともままならない。だが、倒れるわけにはいかない。叶えるべき理想があるのだ。救うべき世界があるのだ。それが叶うまで、審は倒れるつもりはない。

 

血を流した。だからどうした?意識が途切れそうなら本気で堪えろ。

身体が自壊した。だからどうした?痛いのならば本気で治せ。

筋肉が壊れた。だからどうした?これをバネに本気で鍛え直せばいい。

 

空を見る。空には数機のヘリコプター。本気で目を凝らして見れば、リポーターがカメラを見て何かを伝えている。恐らく、今のこの状況、審の勝利を知らせているのだ。

これで全てがようやくスタートラインに立てる。光ある未来にようやく辿り着ける。正しき者が救われる世界が、ようやく訪れる。

 

審はこの瞬間、確かな未来を手に入れた。

 

 

———————————————————————————————

 

 

まるで水の中にいるみたいだ。ふよふよと漂う感覚。手足の感覚はもうない。感じているのは、心。目を開けば真っ暗な世界。奥へ行けば行くほど、どんどん真っ暗になっていく。抗うことは出来ない。緑谷出久の魂は、暗い世界へ進んでいく。

 

 

———————————————————————————————

 

 

ヒーローがいる。何人ものヒーロー達が、(ヴィラン)と戦って、勝って、誰かを助けている。地位や名声のためじゃなくて、ただ単に誰かのため。

どんなに身体が壊れても、拳を握って立ち上がる。それはまるで審やオールマイトのように、カッコイイ。

 

みんな、邪悪と戦っていた。何人もの人達を殺してきた(ヴィラン)の頂点と、死にものぐるいで戦って、最後にみんな殺された。まるで運命とでも言うようにらみんなその人に倒された。

 

それは個性の記憶。ワンフォーオールが紡いできた、歴代のヒーロー達。

 

光があった。どこまでも美しく、神々しく、力強い光が。見るものに希望を与え、力を与えてくれるその光は、いつだって誰かのために戦っていた。その光は、原初の憧れ。緑谷出久という存在が、初めて世界に抱いた憧憬。

 

『私が来た!』

 

画面越しに聞こえるその言葉は、無個性(虚無)だった緑谷出久に力を、希望を与えた。誰よりも深く、強く。だからその人の背中を目指した。少しでも近づきたくて。

そして運命に出会えた。憧れの人から力を受け継いで、そこから全てが始まった。緑谷出久というヒーローは、そこから始まることが出来たのだ。

 

行かなきゃ・・・。

 

思い出す。そうだ、自分は審と戦って、審の拳と聖痕(スティグマ)で意識を落としたのだ。ダメだ、自分が倒れちゃダメだ。全てが無駄になってしまう。みんなの努力も、爆豪勝己の存在も。

そんなこと、認めていいはずがない。だから必死に起き上がろうと足掻く。でも足掻くだけ。深くまで潜りすぎた。

 

溺れるように沈んでいく。

 

意識はここでも途切れ、強大な眠気に身を委ねたくなる。

 

ここで、緑谷出久は終わるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『がんばれ!』

 

 

 

 

 

 

誰かの声が聞こえた。とても小さく、心細い声。でもその声はたしかに出久に届いた。だが、それだけだ。出久が目を覚ますことはない。

 

 

 

 

 

『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』

 

 

 

 

 

声が増えていく。倍々で増えていく声に、意識だけは開かれる。でも動かない。動けない。もうここで負けたのだと、緑谷出久は受け入れてしまった。

 

 

 

 

 

『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』『がんばれ!』

 

 

 

 

たくさんの声。世界中から届けられた、緑谷出久(ヒーロー)へ送られた声援。立ち上がって!負けないで!数多の声が緑谷出久をこの世界から抜け出させようとする。

 

 

(そうだ)

 

 

(まだ負けられない)

 

 

(僕はまだ、戦える!)

 

 

「———!」

 

 

声にならない雄叫びをあげ、見えた光へ手を伸ばす。だが深くまで潜りすぎた。どんなに手を伸ばしても、未だ届かず。光はまだ先にある。

 

 

トン、と誰かに背中を押された感覚。ふと後ろを振り返れば、そこにはアメリカンなヒーローコスチュームを纏い、力強く、みんなを元気づけさせる笑顔をしているヒーローの姿。

 

 

『行ってこい、緑谷少年!』

 

 

「オールマ———」

 

 

出久は言葉を全て話せずに、意識は覚醒へと至る。

 

 

 

——————————————————————————————

 

 

「バカな・・・」

 

審は目の前の現実を否定しようとする。だがどうしようもなく現実である。審は今、現実を直視している。それは———緑谷出久が立っているのは夢でも幻でもない。

 

「有り得ん」

 

頭蓋骨が陥没してもおかしくなかったはずだ。心臓が破壊されていてもおかしくないはずだ。聖痕(スティグマ)による攻撃は全身へ浸透し、立ち上がることも困難なはずなのに。

 

「なぜ立てる・・・!」

 

その声には歓喜が混じっていた。戸惑っているはずなのに、審の声は喜色が混ざる。嬉しいのだ。緑谷出久(ヒーロー)が立ち上がったことが。彼がまた本気を出し、さらに先へ進んでくれたことが。

 

「だが今だったところで———」

 

音を超えて審が移動する。その足さばきは縮地と呼ばれる奥義。一瞬で出久に接近。拳を構え、その身体に向けて放つ。即座に意識を、命を刈り取る拳は更に早い速度で出久の胸へとび、

 

「———!?」

 

宙を穿った。出久の身体が斜めに沈んだせいで、拳は出久に当たらずにそのまま空気を切り裂いたのだ。予想外の出久の回避に絶句するも、審は止まらずに二発目を放つ。

 

「グゥッ———!?」

 

今度も避けられた。それどころかクロスカウンターを当てられ、後ろへ押し飛ばされた。足を地面に押し付け、地面を削りながら後方へ吹き飛ばされる。殴られた肩にはかつてないほどの痺れが残っている。

 

「彼に、何が起きたと———」

 

言葉は最後まで続かない。審の縮地以上の速度で瞬間移動のごとき移動をした出久が、既に審の懐にいた。まさかの接近速度に、流石の審も肝を抜かれ、戸惑ってしまい行動がワンテンポ遅れてしまう。そしてその失態に気づいた頃にはもう遅い。

 

「1000000%———

 

 

 

 

DELAWARE———」

 

 

出久の拳に全てが込められる。それはかつての『ワンフォーオール』の所有者たちの全てが込められた究極の一撃。

意識が『個性』へリンクする。その事で更に『ワンフォーオール』は出久へ力を与える。100%や1000%ではぬるい。出久の今の力は、1000000%。

 

その力を見て、審は自然と頬が緩む。まるで何かを諦め、安心したかのように。

 

「嗚呼・・・やはり君は、私の———」

 

 

 

「———DETROIT SMASH!!!!!」

 

 

世界を揺らす一撃が、審の胸に突き刺さった。

 

 

 

———————————————————————————————

 

 

 

壊れそうな身体を必死に動かしながら、審の前へ立つ。出久の身体はボロボロで、最後の一撃を放った右腕はかつてないほどに破壊されている。それ以外も滅茶苦茶で、見ることさえ痛々しい。

積み重なった瓦礫の山に、審は背中を預けていた。大量に吐血したのか、口元は真っ赤になり、軍服も血で染まっている。顔も生気が失われ、生きているのか判別することも難しい。

 

「僕の勝ちだ」

 

「そうだ、君の勝ちだ」

 

前に立ち、宣言する出久に審は笑って話す。その顔に悔いや苦痛は感じられない。むしろこれ以上ないほどに清々している。

 

「ああ、信じていたとも。君なら私を倒せると。君なら私の理想を超えられると」

 

審は知りすぎていた。光も闇も、善も悪も。だからこそ、光を求めた。正しいことを知っていたから。そしてそのすぐあとに、光に目を焼かれたのだ。歪んだ審というヒーローのルーツは、世界最高のヒーローが与えたものだった。審の思想は危険なものだ。それこそかつて審が葬った『ヒーロー殺し』以上に。

だからこそ、審を止める人が必要だった。誰もがそう思った。本人である審でさえも。

だが審は止まれない。審は自分を止めたいが、それ以上に止まることを許さない。だからこそ出久に賭けたのだ。彼ならば、本気を出した審でも止めてくれると。

 

そのために成長させた。試練を与え、苦しませ、大切な友まで奪った。その果てに、出久は審を止めたのだ。

こんな結果、出久が喜ばないのは重々承知している。それでも、審は出久に救われて欲しかった。正しき者が報われて欲しかった。

 

審とてヒーローなのだ。正義を愛し、悪を許せないヒーローなのだ。ただその思想が過剰なだけで。

 

「私が負けた以上、私の部下達は戦闘を停止し、各々撤退するだろう。彼らのことは追わないで欲しい。皆この社会に想いがあっただけなんだ」

 

敗者の懇願が惨めだと理解している。だが、彼らは審が巻き込んでしまっただけなのだ。

出久が静かに頷くのを確認すると、審は安堵する。

 

「行け。君はこれからの社会の英雄となる。辛いこともあるだろう。悲しいこともあるだろう。たくさんの悲劇を目の当たりにするだろう。苦痛はこれ以上になるだろう。それでも———」

 

 

 

「止まらないでくれ。救いを、光を求める者達のために」

 

 

そう言うと、審はゆっくりと目を閉じた。優しく冷たく、穏やかな寝顔をしている。彼はもう目覚めない。彼はもう喋らない。彼はもう動かない。審は負け、敗者となって死んだのだ。

 

審から離れていく出久。彼の道筋には、幾多もの透明な雫が落ちていた。

 

 

 

———————————————————————————————

 

 

 

楽土 審が起こした革命は、日本に大きな変化を与えた。

 

正義の、ヒーローの在り方。悪の、(ヴィラン)の定義。

 

審は己と、爆豪勝己を中心とした数多の犠牲の果てに、より良き社会を世界へ提示した。

世界は初め、犯罪者と認定された審の言葉を聞かなかった。だが緑谷出久という平和の象徴の働きかけが、社会に大きな変化を齎した。

 

世界は確実に平和になった。審の目指した楽園(エリュシオン)とは違っていても、確実に世界は、光の道を歩き始めた。




この度はクソ眼鏡×ヒロアカ短編を読んでいただきありがとうございます。
今作のオリキャラ、楽土審はシルヴァリオ・トリニティのギルベルト・ハーヴェス(光の奴隷)を元にして作成しました。ですが本気での限界突破などは同作品のファヴニル・ダインスレイフ(光の奴隷)の方が近いものになり、出久(英雄)に倒されたがるなど、やはりファヴニルの要素も強くなってしまいました。
完璧なギルベルトを求めて読んでいた方々、申し訳ありませんでした。
それでも自分なりに光の奴隷感を出せていたと思っています。

次回作の予定は今のところありませんが、もし書くのならばとある3期を記念して聖餐杯(オリキャラ)をまじえたものを書こうと思っています。

その時はどうぞ、よろしくお願いします。


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