孤独を受け入れてくれるパレット (ロクでなしの神)
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第1章 希望とのReunion
1.幼き日のBAD MEMORY


はじめまして、ロクでなしの神と申します。
ハーメルンでたくさんのssを見ていると、自分も書きたくなったので書いてみた次第です。上手い人と比べると雲底の差がありますが、自分の好きなように綴っていくので温かく見守ってください。
もしかしたら、貴方の運命を狂わせる物語かもしれませんよ…?


『こっちに来るんじゃねぇ!この泣き虫!』

『アハハ!違うだろ!コイツは◯◯だろ!』

『『『アハハハハハ!!!』』』

ー どうして。どうして、笑うの?僕はただ、普通に生きてるだけなのに。ー

また次の日も。

『友達になろう!』 ー 何で?ー

『ワハハハ!嘘に決まってるだろ!?』 ー 知ってる。でも、辛い。涙が止まらない。ー

そんな事が、何日続いたことか。僕がここに来て、教室が最初と変わったから、多分、1年は過ぎてるはず。始めの勉強が終わって休み時間。いつもの3人が目の前に来る。笑ってる。でも、嫌いな笑い顔。

ー 今日もまた笑われるのか。ー

そんな風に思っていたら、思った通り、また僕を悪く言って笑う。

『なんでそんな事するの!かわいそうじゃない!』

……最初、分からなかった。この長い時間、僕に味方してくれる子なんていなかったから。でも…

ー だめだよ、そんな事言ったら、君までみんなから悪くされちゃう。僕に…関わらないで…ー

『何だおまえ?遠い所から来たってだけで、女がやりあうってのか?なぁ皆、コイツ面白いな!』

部屋が笑いに包まれる。けれども、彼女は。

『人を笑ってそんなに楽しい?貴方達がこの事をどう思っているかは知らないけど、これは立派なイジメなんだよ!?』

ふんわりとしたピンクの髪を持った少女は言う。

『大丈夫。私は絶対、貴方の味方でいるよ?』

周りからしたら、何を言っているんだ、という風に思えただろう。でも、その言葉が、僕には…

『………グスッ…ぅん、ありがとぅ…』

ー 何より、嬉しかったんだー

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

「…………夢…か。えらく懐かしいもんを見たな…」

(漫画やアニメでよくある夢オチ、まさかリアルで体験するとはな)

時計はまだ6時にも指していない。もう少し寝たかったというのが本音。しかし、登校初日から寝坊するやら遅刻やらで恥をかきたくないので、タイマーを切り、ベッドから飛び降りる。その高さ、役70cm。普段なら難なく着地できるのだが…

「痛ッ…デェ!」

まんまと失敗、バランスを崩しそのままタンスの角に勢いよくデコをぶつける。

ー ガンッ!ー

「…プッ…ちょ、ちょっと待ってヒャハハハ!痛て痛て痛てハハハ!」

誰もいないし何もないから何を待てというのか。痛みと同時に襲う笑いの波。いつからこんな癖がついたのかと、自分でも分からん。

「ハーッ、ハーッ、プププ。あーヤベw朝っぱらから大事故ですよw 辞めたくなりますよもぉ〜」

過呼吸になりながら息を落ち着かせる。独り言が多い?んなの、しょうがねぇだろ、そういう生い立ちなんだよ。

「だぁ〜もう!最ッ悪だ。この先どうなっちまうんだろ〜ねぇ。俺の学校生活」

起き上がりながらぶつけたデコを手で触ってみる。

(…うん、こんだけのダメージなら、問題ないだろ。はぁ、ちょっと一安心)

バランスを崩したといっても、足首は挫いてないし、不幸中の幸いとはこの事か。

「じゃあま、とりあえず、朝飯にするか〜。久しぶりに何か作ってみようかな〜」

部屋を出て階段を降りる。1階に着いた瞬間、何かの気配を感じた。

それは…

「おっはよ!十矢君!早いお目覚めだね。も〜ベッドに潜り込んで、慌てる顔見たかったのに」

「おはよう、紅桜ちゃん。残念ながら、そうはいかんざきってね。ていうか、どうやって家に入ったよ?」

別の部屋の影に隠れていた女の子。

腰まである綺麗な黒のロングストレートヘアーを左右に揺らしながら「ん〜別に。普通にピッキングしただけだよ?」

普通の人が聞くと、犯罪レベルのトンデモ発言だ。

「はぁ、ま、今に始まった事じゃないし。慣れたし。朝飯、一緒に食う?」

「うん、食べるー !」

そう言って俺に抱きついてくる。そこそこある柔らかなその柔肉で腕が挟まれる。それ即ち、非常にマズイ。

「ん〜どうしたの十矢君?顔が赤いよ〜?」

笑いながら言ってるあたり、わざとだ。ま、さっきも言った通り、慣れた。だが、この感覚は慣れない。これだけは別物だ。

(む〜、そうだ、こういう時こそ、自分が何者か思い出すんだ)

・名前…真紅 十矢(しんけつ とおや)

・年齢…16歳(高2)

・性別…男(当たり前)

・履歴…思い出したくない、今日から花咲川女子学園に入学

ま、こんなところか。頭を使ったら柔らか感覚はなくなっており、

「ほら、早くご飯食べよ!」

いつのまにかリビングの扉の前で手招きをしている。

ついでに、彼女の事も整理整理っと。

・名前…杉田 紅桜(すぎた ててら)

・年齢…16歳(高2)

・性別…女

・履歴…杉田財閥の令嬢。大学卒業レベルの知能を持っており、いわゆる人生勝ち組というやつだ。何やら俺にゾッコンらしく、猛アピールをしてくる?ちなみに俺はノーサンキュー。おまけに

『十矢君の面倒見たいから、高校行かない』とか言って、結局この家にいる。

それを許す親と俺よ…ま、子とよく似て、親も中々に凄いんだけど。

とりあえず、この事は後にして、飯作ろう。頭使ったら腹減った。

(はぁ、この先、どうなっちまうんだか)




はい、バンドリ!のキャラは出てきません。子供時代は出てきたけど。
タイトルと説明文で分かった人もいるはず。
つまりはそういうことさ。(薫風に)
次回、次次回には出します(当たり前)


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2.早朝のBREAK TIME

前回初投稿にもかかわらず、4人の方にお気に入り登録されました!
メタナイトさん、フユニャンさん、べっこう飴ツカサさん、峰風さん、ありがとうございます!


俺は今、キッチンに立っている。そして、朝飯を作っている。と、ここまではいい。問題なのはこれだ。

 

「えへへ…十矢君の匂い…♫やっぱり落ち着くなぁ…」

 

紅桜ちゃんに背中から抱きつかれている。オマケに今、彼女は下着を着けていない。だから直にソレの感触が伝わってくるのだ。それに高2(学校に行ってはいない)とは思えないほど、デカイ。今俺の顔は、この感触に耐えるため恐ろしいぐらいの真顔になっている事だろう。

 

「あのさぁ、紅桜ちゃん…今料理してるからさ、危ないんだよ。お願いだから離れてくれない?」

「えぇ〜、久しぶりに十矢君に会ったのに…こうやって、十矢君の温もりを感じたいの〜」

 

確かに、紅桜ちゃんの言う通りだ。この家に住んでいるとは言っても、常にいると思ってもらってはいけない。彼女には、ここから遠く離れた場所に住んでいる双子の妹がいる。妹の方はちゃんと学校に行っているので、アパートを借りて一人暮らしなのだ。寂しい思いはさせたくない、という紅桜ちゃんの気遣いから、2ヶ月のうち3/4、つまり、1ヶ月半は一緒に過ごす事になっている。そこまで思うんだったら、ずっと一緒に暮らせやと思う。

 

「はぁ…分かった分かった。今日はずっと家にいるんでしょ?学校終わって帰ってきたら好きなことしていいから。離れて?」

「え!?本当!?やったーー!!」

 

そう言うと、すぐに離れてリビングの机の周りを走り回る。

 

「ちょっと!あまり走り回らないで!ホコリ舞うじゃんかー。……よっと!はい、出来上がりましたよー」

 

フライパンからオムライスの卵を空中捻りさせ、ケチャップライスの上に覆わせる。今は余裕で出来るようになったけど、練習時代は本当にキツかった。捻りすぎて、頭に被さった事もあった。( ◠‿◠ )

 

「おお〜!カッコいい!ちゃんと出来るようになったんだ〜」

 

アニメによくある、目がキラキラしている、という表現が正しいと思うほどこちらを目を見開いて見ていた。

 

「さ、とっとと食っちまおう。登校準備もあるしね」

 

そう言って、2人分のオムライスを机の上に置く。そして洗浄機の中からコップ、冷蔵庫から麦茶を取り出す。机に置き、コップに注ぐ麦茶は、光が反射してとても綺麗だと思った。

 

「うん、じゃあ…

 

「「いただきます!」」

 

命有った者への感謝を口にし、スプーンで運ぶ。何やら箸で食べる人もいるらしいが、慣れないと絶対難しいと思う。ちなみに、このスプーンは紅桜ちゃんがプレゼントしてくれたものだ。箸よりスプーンやフォークを主流で使う俺にと、高校復帰祝いとして貰ったのだ。そんなに大層なことじゃないんだけどね…あと、いつスプーン置いたよって思うか?だいたいこういう事は紅桜ちゃんが用意してくれるんだよねー。気がききますよ本当に彼女は。

 

「んーー!!美味しい!料理する度に上手くなってるよ!」

「へへ、そりゃどうも。ま、何回も作ってりゃ上達するさ」

「またまた〜謙遜しちゃって〜あははは!」

「ハァ…」

 

軽いため息を漏らす。側から見たら何言ってんだコイツらって思われるけど、これが俺と紅桜ちゃんの一般会話だからしょうがないね(諦め)。そこから最近のニュースやらドラマやらの話を聞いた。昔と比べると圧倒的にテレビを見る時間がなくなったから、近頃の情勢は一切分からない。だからこうして情報を仕入れているのだ。

 

「ーーーでね、だから私は強ち間違いじゃなかったのかなって思うんだけど」

「なるほどね、確かにその考えもアリだよ。…さて、ご馳走さまですっと、じゃあ俺、準備してくるよ」

 

スプーンを置き、立ち上がって自分の部屋に行こうとする。

 

「あ、分かった。食器の片付けは任せておいて」

「ん、了解。じゃあお願いね」

 

先に食べ終わっていた紅桜ちゃんは自分とオレの分の食器をキッチンに持って行く。片付けは、任せるとしましょう。

 

「さーて、制服、着てみますか?学ランじゃなくて、ブレザー型なのか…ま、どうにかしたら着れるでしょ」

 

階段を上りながらそんな事を呟く。生憎、俺はこれまで学ランしか着たことがない。だから着こなし方が一切分からないのだ。いざとなったら、紅桜ちゃんに頼もう。うん、そうしよう。なんて事を考えながら部屋の扉を開け、クローゼットの中から制服一式を取り出す。

 

「むー、これ、上のシャツ結構小さくね?そういうの嫌いなんだけど…あら?思ったより余裕あるや」

 

寝間着の上はシャツの下に着る下着なのでそのまま着て問題なし。何という時間短縮でしょう。やはり俺は天才だ。ズボンの事を言うと、じゃあお前…履いてないのか!?って言われそうだから予め言っておくが、下はちゃんと寝間着を着てる。しっかりして寝間着を脱ぎ、ズボンを履く。

 

「おお、悪くないじゃんか。学ランとは違う…何か模様入ってるし、やっぱ洒落てんなぁ」

 

鏡の前で制服を着た自分を見てみる。そこには、真新しい制服を着た、左目のない自分が映っている。

 

「………やっぱ、これが不安要素だよなぁ。目ん玉が無いなんて。どう怖がられるか分かんねぇもん」

 

リュックサックを背負って、部屋を後にする。既にリュックの中に筆記用具やらは入れてある。要するに、準備完了という事だ。階段を下り、向かう先はリビングとは違う方向。そこにはーー

 

「……婆ちゃん、俺、もう一回、学校行ってみるよ。もちろん、何が起こるかなんて分からない。正直、怖いよ…でも、こんな時から燻ってちゃ何も始まらない。………こんな時、婆ちゃんだったら、何て言うんだろうね?俺の事、応援してくれるのかな?それとも、無理すんなって論されるのかな?フッ…今となっちゃ、もう、何もかも分かんないや…」

 

ーー優しい顔で写っている俺の婆ちゃんがいる。どんな時でも、俺の味方をしてくれた、世界で一番優しい人。ま、この話は、また今度にしようか…

 

「駄目だなぁ…こうやって話すだけで涙が、グスッ…止まんねぇや…いい加減…慣れなきゃヒグッ…いけねぇのに…」

 

流れる大粒の涙を打ち切り、出ることを告げにリビングに向かう、その前に、

 

「じゃ、婆ちゃん、行ってきます!」

 

出かける時には必ず言う言葉を言い、今度こそリビングに向かう。既に片付けは終わったのか、明日に座って新聞を読んでいた彼女はこちらに気付く。

 

「あ、十矢君。準備できたんだね、おぉー似合ってるよ!細身の十矢君にはピッタリのデザインだね!」

「俺は細身…なのか?176で60ってのは…?」

「いや、細身すぎるよ…なのにそこそこ筋肉ついてるし…元は女子校だったんでしょ?絶対モテラッシュだよ」

 

いや、それは無いんじゃないかなぁ。そう言いながら時計を確認する。7時15分…そろそろ出るか。

 

「じゃ、そろそろ行くよ、留守番よろしくね?」

「ん、任せて。そっちも頑張ってね、朗報を期待してるよ!」

 

あざとくウィンクをする彼女に呆れながら玄関まで行く。ドアに手を掛け、

 

「それじゃあ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」




はい、反省してます。みなさんの思っていることはこうだ。
「バンドリ キャラ出てないじゃん!」と。
すいません許してください何でもしますから(何でもするとは言ってない)
家は出たんで次回は確実に出演します。お待ちください。本当に申し訳ありません。


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3.退屈しないCLASS ROOM

やーっと、バンドリキャラ出せた…文の構成がもうグチュグチュになってもうこれわっかんねぇな。新たにお気に入りしてくれた人、ありがとうございます!また、まとめてお礼を述べさせていただきますね!
とりあえず、こんなキャラじゃないぞってのがあったら教えて下さい。


「ッ…眩し。こんなに晴れなくてもいいのにねぇ」

 

玄関のドアを閉めて前を向くと、太陽が永遠の輝きを主張するかの如く、そこに存在している。まるで、“お前の行う事など、我の前では全てお見通しだ”と言わんばかりの存在感だ。

 

「ケケッ…傲慢だねぇ」

 

分かる人にしか分からないネタを言い、俺は遂に地獄へと歩き出す。家から学園まで、だいたい徒歩15分。かなり近いと思う。前は自転車で40分だったからなぁ。

 

「こうやって学園に近づくほど、これまでの事を思い出しちまう。ダメだねぇ、俺は。1番昔でも約10年前だってのに」

 

子供の頃からあんな環境の中で育ったからなぁ、忘れたと思ってても、心の奥底にはまだ残ってんだな。子供の記憶力は凄い!

 

「そういや、あの子も俺と同じ高2か…元気にしてっかな…」

 

あの時、俺に一筋の光をくれたあの子。お礼を言う前に何処かへ行ってしまったけど…

 

「この広い世界だ、もう二度と会えないかもしれないけど…いつかちゃんと、お礼を言わせてね、彩ちゃん」

 

立ち止まって太陽を見上げる。ちょうど雲に隠れる瞬間だった。なんでか分からないけど、その一瞬、ある記憶が頭をよぎった気がした。

 

「ッ!?」

 

一瞬だったため、何の記憶か全く分からなかった。でもま、思い出せないなら大した事じゃないでしょ。止めていた歩みを再び進める。今気づいたが、チラホラと制服を着た生徒を見るようになった。学園までもう少しという証拠だ。

 

「とりあえず、着いたら職員室だな。挨拶しねぇと」

 

他の生徒に聞かれないよう小声で呟き、見られないように学園へ急いだ。十字路を左に曲がれば、正面には花咲川学園の校門がそびえ立っている。校門に近づくと、

 

「え、誰あの人。ウチの学園の制服着てるけど…」

「この学園にあんな人いたっけ?」

 

マズい、目が自分に集まり始めた。正直な話、俺は誰かに見られるのが好きではない。昔のように、笑われているように感じるからだ。そんなことはないのだろうが、どうしても意識してしまう。俺はさっさと門をくぐり、ある事に気づく。

 

「あ、職員室の場所分かんねぇ。ヤバ」

 

真紅 十矢、痛恨のミスを犯した。どうする、誰かに聞くか?一緒に自分の事を探られるのは嫌だ。正面玄関に入ったら見取り図があるか?見に行って無かったら無駄足になる。

 

「しゃーねぇ、誰かに聞くっきゃねぇか。んー、あんまり人のことを詮索しなさそうな人はーっと………お。あの人なら」

 

周りを見渡し、目を付けたのは、ショートカットの黒髪をしている女生徒だ。何やらスマホを睨みつけてるけど…

 

「あのーすいません。職員室ってどこにもありますかね?」

「職員室なら、2階中央にありますよ」

 

こちらに見向きもせず、淡々と答える。ま、今はそっちの方がありがたい。2階中央か…

 

「どうも、ありがとう!」

 

お礼を言いながら早足で正面玄関へ向かう。

 

「んー?あの人…見たことないな。…もしかして、不審者とかじゃ…ないよね?それより、こころ…ミッシェルに迎えに来てほしいって、無理言わないでよ…」

 

正面玄関の重い扉を開け、早速2階へと向かう。ちゃんと靴は邪魔にならない場所に置いて、上履きは持参したものを履く。その時、ある物を見つける。

 

「何だ、見取り図あるじゃんかよー。ハァ、無駄足無駄足」

 

愚痴りながら中央階段を上がっていく。なんだか精神をすり減らされたような感じだ。

 

「2階中央ってことは、上ったらすぐそこって事だよな…よし、ビンゴ」

 

2階に着くと、職員室と書かれたプレートが掛けられた比較的大きな部屋があった。作法の通り、3回ノックして、扉を開ける。

 

「失礼します。今日からこの学園に転入してきました、真紅 十矢といいま…す…」

 

緊張からか、語尾が弱くなってしまった。呼吸をしてと、コーヒーの良い香りがした。すると、部屋に入ってすぐ左側には休憩スペース的な場所があって、そこにいる1人の白衣を着た先生らしき人が

 

「おぉ!お前か!今日から入ってくるっていう男は!待ってたぜ〜。コーヒー飲むか?」

 

コーヒーを片手に、まるで長年待っていた欲しいゲームが手に入った子供のような顔をしながら話しかけきた。

 

「あの…すいません。貴方は?」

 

「………ハハハハハハハ!」

 

何か可笑しな事を言っただろうか。コーヒーをこぼしそうになりながら思いっきり笑っている。でも、この笑いは悪意のない笑いだ、そう直感した。

 

「悪りぃ悪りぃ!ほとんどの奴は“いえ、結構です。”とか言うからよ、先に名前を聞かれるとは思わなくてな!」

「そ、そうですか…あ、コーヒーは結構です」

「ハハ、了解。さて、ようこそ、花咲川学園へ。俺は一ノ瀬 瑞穂。お前のクラス、2ーAの担任だ。」

「え!クラス担任の先生でしたか…」

「おいおい、そんなにかしこまんなって!俺は上下関係とか嫌いなんだよ、めんどくせーからな!」

 

ちょ、その言動は教師としてどうなのだろうか。まぁ、面白い先生でよかった。まずは一安心。それからは他愛もない話をしていた。好きなものとか、趣味だとか。あと、“クラスにいる時とかサシの時はタメ口でいいぜ”とか言われた。いいのか、本当に。あとサシって、言葉遣いが…

 

「ーーーでさぁ、どうなったと思う?もう、最高の結末でさぁ!」

「へぇー、そんな話があるんですか!」

「お前にも貸してやるよ、また今度な。おっと、そろそろ開会式の時間だ、終わったらまた戻ってくるから、待ってろよ。自己紹介の内容でも考えときな。じゃあな!」

 

先生は言い終わると同時に職員室から出て行った。部屋を見渡すと、俺以外、誰もいなくなってた。そりゃそうか、開会式の準備とか生徒の誘導があるもんな。……先生は大丈夫なのだろうか?まぁ、多分平気でしょう!

 

「さて、自己紹介の内容ねぇ…学校行事で1番嫌いなのが自己紹介なんだよねー、ま、ノリでどうにかしましょう」

 

そう言いながら、職員室の最奥にある机に向かう。何をするのかって?漁りさ。何も機密情報を漏らすなんて事はしねぇよ。ていうか、そんなのあるのか、ここに?俺が欲しい情報は1つ、生徒数だ。詳しく言うと、男女比率だな。ここは、去年まで女子校だった。それが、今年から男女共学になったんだと。で、俺はこの学園に2学期、つまり、9月から転入生としてやってきたという訳だ。

 

「全校生徒数の書類はどこかねーっと。おお、あったあった」

 

案外簡単に見つかった。積み上げられた書類の上のファイルの中に入っていた。

 

「ほおほお、そうだな。だいたい8:2ってところか?女子多いな、いや当たり前か」

 

共学になってまだ1年も経っていない。そう考えると妥当な数字だろう。欲しい情報は手に入った。あとは、漁った痕跡が残らないように戻してっと…

 

「そろそろ開会式も終わるか?もうちょいかかるか」

 

まだ10分ほどしか経っていない。最低でもあと10分はかかりそうだ。暇だねぇ………………………

 

「おう!お待たせ、十矢。早速教室行くぞー。準備はいいな?」

 

勢いよく扉を開けて入ってきた先生が尋ねてくる。…腹、くくるか。

 

「はい!いつでも行けます!」

 

ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…ザワザワ…

 

「じゃ、俺が呼んだら入って来い。いいな?」

 

職員室を出た俺たちは、2ーAの扉前にいる。さっきから教室の中が騒がしい。俺の事を見た奴が噂してんのか?

 

「はい、分かりました」

 

ふぅ、ここまで来たら逃げる事なんて出来ないからな。緊張を落ち着かせる為、腹式呼吸をする。これで予想以上に緊張が解けたりする。おススメだ。一通り終わらせたところで、

 

「十矢!入って来い!」

 

先生の声が扉越しに聞こえてくる。お呼びだな、さて、行きますかな!

 

ガララ…

 

引き戸式の扉を開けば、クラス全員の視線(ほぼ女子)が俺に集まる。予想はしてたけど、これほどか。緊張をほぐしておいてよかった。扉を閉め、先生の隣へ行き、黒板に名前を書いていく。

 

「皆さん、はじめまして。真紅 十矢といいます。親の都合で西の方から引っ越して来ました。珍しい名前…というか、初見だと妙な名前だと思う人が大半だと思います。まぁ、2学期からの転入ですが、よろしくお願いします」

 

とりあえず言い終わったので、15度ぐらいの礼をする。その後、待ち受けていたのは想像を遥かに超えるものだった。普通なら、少し抑え気味の拍手なのだろうが、なんと

 

「キャアアアアア!イケメーーン!!」

「名前カッコいいーー!」

 

なーんて、9割がたの女子が騒ぎだすのだ。もう、ビックリよ私。一人称が変わるぐらい。驚いていると先生が

 

「どうだ?俺の自慢の生徒だ。面白い奴らばっかりだろ?」

 

って自信ありげな顔で言ってくる。全くこの先生は…

 

「あぁ…最ッ高だな!」

 

席案内が終わって休み時間となると女子が一気に寄ってくる。何かを言っているのだが、人数が多すぎて聞き取れない。俺は聖徳太子じゃないんでな。すると、綺麗に整った金髪?をした女子が

 

「もう、落ち着いて皆。彼が困っているじゃない。」

「あ、白鷺さん」

「ごめんなさい、転入生、それに男の人は珍しいから、皆テンション上がっちゃって」

 

白鷺、と呼ばれた女子が謝ってくる。いや、アンタが誤るスジじゃないだろ。

 

「いや、構わない。ん…?アンタ、白鷺さんか?どっかで見たような…?」

 

他の女子が「白鷺さん、女優なんだよ!」と教えてくれた。そういえば、朝に紅桜ちゃんがスマホの画像で見せてくれたな、今やってるドラマのキャスト集。その中にいたのが、この人か。なるほど。

 

「あら?あまり驚かないのね、芸能人がクラスにいるなんて普通おもわないでしょう?」

「確かにな。でも、ここにいるってことは少なからず今のアンタは高校生の白鷺さんだろ?それに、別に芸能人だろうが関係ない。普通に接するだけだ」

 

すると、白鷺さんは周りの誰にもバレないように一瞬だけ笑みを浮かべて「ありがとう」と俺に囁いた。驚いている俺を他所に、水色の髪をした女子の方へ向かっていった。……いったい、何だったんだか?あと、突き刺さるほんの少しの男子の視線は気にしない事にした。ま、退屈はしなさそうだ、この生活。悪くない。




4000文字も書いたの始めて〜。
あ^〜脳みそ壊れる〜^
キャラ崩壊注意、ハッキリわかんだね。


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4.本物か偽物か UNINTELLIGIBLE

はぁーあ。こんなにバンドリキャラ登場しないSSって他にあるのかねぇ?ま、本番は2章からなんで。1章は余興に過ぎませんよ〜。オリキャラとか、主人公の出で立ちとか、そういうのを整理していくのが、1章の役目です。


花咲川に転入して、3時間。今日の主な内容は開会式と宿題の提出だった。ま、俺に宿題は無かったけどね。今はーー

 

「これで今日の学校は終わりだ。宿題忘れた野郎は明日持ってくるように。よし!じゃあ解散!」

 

ーーちょうど放課後になった瞬間だ。さて、時間は12時前。紅桜ちゃんには間違って帰るのは夕方って言っちまったからな、どっかで時間潰さねぇと。リュックサックを片側だけ背負って帰ろうとした時、

 

「あの、真…紅君」

「あ?」

 

眼鏡をかけ、肩甲骨辺りまでの長さの黒髪を三つ編みにした、いかにも大人しそうな雰囲気の女子が話しかけてきた。

 

「そ、その…この後、何か予定とか、ある…?」

 

あー、これあれだわ。完全に怖がられてるわ。そりゃ目悪いから細めてるし、なにより左眼がないんだから無理ないか。ん?眼が…ない?

 

「あーまぁ、とりあえず野球部の方に行ってみようかなって。少ない男子で頑張ってんの、見てみたくて」

「あ……そっ、か。ご、ごめんね!急に話しかけちゃって!」

「いや、それは構わないけど…1つきいていいか?」

 

それは、この学校に来た時からずっと感じていた違和感。今、その正体が分かった。

 

「俺の顔見て…何も思わないの?」

「え!?え、えと、それは…その……」

 

何だ?急に顔真っ赤にして。…あ!これゃあ聞き方が悪かったな。

 

「ごめんごめん!聞き方が悪かったな。じゃあ直で聞くけど、左眼が無いことに何も思わないの?」

「あ…それは…瑞穂さんの教えがあるから…」

「教え?何それ」

「えっと、『人は生きていると、様々な出来事に遭う。その中には、どんなに信用してる奴にも話したくない物もある。だから、自分から深く聞き入る事はするな。背中を押し、相手を聴くんだ」って言うのを、あの人はいつも言っていて…」

「そか。分かった、ありがとね。あとごめんね、何かは知らないけど、誘い断って」

「う、ううん!こっちこそ、ごめん。そ、それじゃあまた明日!」

 

そう言ったら、その子は急いで教室から出て行った。…何だったんだろ、用件は。聞くだけでも聞きゃよかった。とりあえず、グラウンドに行ってみるか、野球部いるかねぇ。

 

「なぁお前!野球部に興味あるのか?俺が案内してやるよ!」

 

声のした方へ振り向くと、炎のエースストライカーみたいな髪型をした茶髪のイケメン君がいた。

 

「まぁ興味っつーか、見てみたいだけさ」

「構わねぇよ!俺は葛城 優大(かつらぎ ゆうだい)だ、宜しくな、転入生!」

 

自己紹介をしながら近づいて来る男。まぁ、ステキでフレンドリーなお方ですこと。おっと、おカマになっちまったぜ。

 

「あぁ、宜しく頼むよ。あと呼び方は十矢でいい」

「なら俺も優大で結構だ!よし、早速行こうぜ!野球部の部室に案内してやるよ!」

「はぁ!?ちょ、おい!引っ張んじゃねぇよ!服伸びんだろうが!」

 

袖を引っ張るもんだから、まず止めて、歩きながら行く事にした。つか、走ったら駄目だろ。

 

「そういや優大、お前気になんないのか?」

「何がだ?あ、分かった、女子に話しかけられて嫉妬してんじゃねぇかって事か!?」

「ちげーよ、てか、お前も十分イケメンじゃねぇか。クラスにいる男子、お前だけだぞ。顔いいの」

 

事実だ。2ーAには男子が俺を除いて6人ぽっちしかいない。その中で顔が良いのはこいつだけだ。他は…平均というのを知らないのか、言えば悪いが、良いのはいない。多分、元女子校ってのを利用してハーレムしようとしてたんだろうな。

 

「おお!?嬉しい事言ってくれるじゃん!女子からはよく言われるけど、男から言われたら説得力あるもんだな!」

「いや、それはそれで気持ち悪いわ…てか、女子に質問攻めにあってた時の視線はやっぱりそいつらだったのか」

 

仲良くしてくれなさそうだ。ま、交友はぼちぼちね。

 

「で?結局気になる事って何なんだよ」

「あぁ、その話だったな…いや、左眼が無いこと、気にならないのか?」

 

これはクラスにいる時ずっと思ってた事。何十人もが俺のことを見たのに、誰も目の事に触れなかった。別に構ってちゃんではない。これまでずっと聞かれてきたから、不思議に思っただけだ。

 

「あーそれはな。先生の持論さ、『人間生きてると色々な出来事に遭う。その中には、どんなに信用してる奴にも話したくない事もある。だから、深く聞き入る事はするな、背中を押して、相手を聴くんだ』ってな。だからクラスの連中は誰も聞かなかったのさ。触れないのがきになったんだろ?」

「ああ、出会ってきた人、全てに聞かれたからな」

 

『背中を押して、相手を聴く』…か。三つ編みの子と同じ内容だ。先生、良い持論を持ってんな。ますます気にいったよ。その話の後は、学園の強い部活とか、日々の練習の内容を聞かせてもらった。やっぱ練習ハードだなぁって改めて実感した。そんな時ーー

 

「………え?」

 

視界に入った1人の女子。たったその1人の女子で、思考が止まった。その理由はーー

 

「!おい!十矢、何処行くんだよ!」

「悪りぃ!そこで待っててくれ!すぐに戻る!』

 

視界から消えてしまった女子を探しに駆ける。ブーメランなんて、今は関係ない。さっきの子…あれは、まさかとは思うけど…!

 

「ハァ、ハァ、ハァ。くそッ!見逃した……嘘だろ?あの子は…もしかして……」

 

まだこの学園の構造を理解していないから迷って見失ってしまった。だが、あの制服は花咲川のモンだ。いつか分かる時がくる。とりあえず今は優大の所に戻んないと…

 

「おーい、どうしたんだよ急にー!幽霊でも見たか?」

 

追いかけて来たのか、待ってろって言ったのに。

 

「んなわけねぇよ。昔の知り合いに似た奴がいたから追いかけただけだ。ま、見失ったけどな」

「ほー、初恋相手か?」

 

悪戯好きな悪ガキみたいな表情になってニヤニヤしてくる。鬱陶しい。

 

「馬鹿言え。ほら、早く行くぞ」

「はいはい、分かりましたよーっと」

 

その後は野球部が紅白戦やるというので、特別に中継ぎとして登板させてもらった。ファースト、キャッチャー、そしてピッチャーはできるんでね。変化球も、ま、多少はね?是非とも入部してくれ!と言われてしまったが、正直、今日はそれどころじゃなかった。だってーー

 

「嘘だろ…まさか、花咲川にいるのか?彩ちゃん」

 

ずっとお礼を言いたいと思っていた子に会えるチャンスが巡ってくる。転入初日からこんな事が起こるなんて…これも定められた運命か…この出来事のせいで、彩ちゃんの事をずっと考えてしまい、1日中集中できなかった。紅白戦も自責点1という結果。そして、1番酷いのがバッティングセンターでの事。130kmの球を捕っていると、球の軌道を見損ねてしまい、グラブにかすって右眼に球が直撃してしまった。クソ痛い。

 

「はぁ、まだ涙止まんねぇや…絶対腫れるわこれ。ハッキリ分かんだね」

 

家に帰ったら、眼を見た紅桜ちゃんが泣きながら抱きついて来た。とりあえず、朝の約束もあったので夜は一緒に寝ることになった。別に何もシねぇよ、本当だかんな!

 

「とにかく失明しなくてよかったー。右眼も無くなったら生活できないわ」

 

鏡で眼を確認しながら呟く。そんな時でも考えるのは彩ちゃんの事だ。本当にあれは彩ちゃんだったのか?あの頃と変わらないピンク色の髪で判断しただけじゃないのか?分からない。

 

「十矢君ー?もう寝るよー?」

「うん、今行くよ」

 

花咲川にいるのなら、必ず会う日が来る。その日を、待ってみるとしますか。

 




やっとハーメルンの機能が理解できるようになってきたロクでなしです。次回で1章終わり…かな?やっとバンドリキャラとの掛け合いができる…!(感涙)


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5.最悪のREUNION

これで1章閉幕っと…やっと本番だよ。さーって、ここからどうしていくのかな?


「はぁ〜あ、やってらんねぇなぁ〜」

 

転入初日のあの出来事のせいで、勉強にも遊びにも、全く集中できない。学園に来て1週間が経過した。彩ちゃんとは、それから1度も会っていない。そもそもあの時見た子が彩ちゃんかどうかも分からないんだけどね…

 

「なーにシケた面してんだよ!もっとテンション上げてこうぜ、なぁ!」

「優大。そんな事言ってもよ、俺にも色々あんだよ」

「ふーん、どうせ、初日の急に走りだしたのに関係あるんだろ?」

 

何故分かったよ…読心術でも持ってんのか?とりあえず適当に誤魔化しとくか。

 

「んな訳ないだろ。それに、あれはただの見間違いだったよ。」

「ほー、ま、構わないさ。それより聞いたか?職員会議があるから今日午前中で終わるらしいぜ!」

「ほぉ、それゃありがたいね。どうも今日は集中力が入らない」

 

2時間の授業が終わった。先生に当てられはしなかったが、解説はほぼ頭に入ってこなかったほどだ。自分でも予想以上に彩ちゃんの事が気になってるらしい。…こんな言い方したら恋してるみたいだな。

 

「おい、お前ら!今日は職員会議があるからこれで終わりだ、とっとと帰っちまいな!」

 

瑞穂さんが教室に顔だけ出してそう言うと、すぐに何処かへ行ってしまった。クラスの皆はというと、全員が喜びに満ちていた。中には荷物を持って颯爽と帰って行く奴もいる。挨拶というのは無いのか。

 

「じゃ、俺たちも帰るか!部活もないから今日は楽だぜ〜」

「その分の皺寄せがいつか来そうだけどな…」

 

学園を出て、校門前で優大と別れた。今から向かうのは近場のスーパーだ。冷蔵庫の中にもう食料がないから補充しておかないと。昼前というのもあって、交差点はいつもより人が多く感じる。人混みを抜け、さっさと買い物して帰ろうと思った時ーー

 

「あ、あの!すいません、やめてください!」

「あ?よく見たら嬢ちゃん、結構いいカラダしてんじゃん!今から俺たちと遊ばんな〜い?」

 

人通りが少ないアーケードの方で、1人の女子が3人組の男たちに囲まれていた。女子の方は学生だろうか?制服を着ている。確かこの辺の学園の制服な気がするんだが…

 

「真昼間から何やってんだ、あいつら。オマケに学生に手ェ出すとか馬鹿なのかね」

 

とりあえずこのままだとあの女子がレ○プされかねん。ゑ?俺の勝手な妄想?知らんわそんなん。

 

「あー、ちょっとアンタ達?学生さん相手に何やってんの?」

「アァ!?何だお前!つかテメェも学生だろうが」

「まぁ確かに。それでも、側から見りゃその子を強姦しようとしてる風に見えたもんだからさ」

 

男たちに近づいて話しかけたらいきなりアァ!?って言われた…ちょっと悲しみ。ま、そんなのどうでもいいや。敵は3人。見たとこ、大した実力のない見た目だけの奴らか。

 

「ヘッヘッヘ〜、よく分かったな。性欲に時間なんて関係ねぇんだよ!邪魔すんならお前、殺すぜ?」

 

3人の内の長身がよく使われる常套句を口にする。あーあ、弱い奴らで決定っと。

 

「あんた、離れときな。ちと暴れるからよ…」

「え、あ、はい!」

 

眼鏡を掛けた女子をまず逃す。そうじゃないと、思う存分楽しめない。

 

「邪魔した事、後悔するぜ………死ねェェ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

喧嘩が始まって約1分。形勢はーー

 

「ハァハァ、お前ら、こいつに1回でも攻撃与えたか?」

「ひーひー、いや、与えれねぇ…」

「つーかこいつ…はぁ、はぁ、攻撃もしてこないぞ…」

 

ーー優勢。それも俺は回避行動しかしていない。こいつらが勝手にバテただけだ。3人ならではのコンビネーションを持ってるが、俺には及ばない。

 

「そろそろ、躱すのも飽きた。終わりにするか…」

 

そう言って俺は疲れて座り込んだ3人に近づく。別に攻撃をしようという訳ではない。されてないのにしたら、暴行罪だからな。あくまでも、俺がするのは、『正当防衛』の時だけだ。怯える3人を前に、俺はーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

事が済んで、買い物に戻ろうとした時、

 

「あ、あの!すいません、助けていただいて!」

 

さっき襲われかけてた眼鏡の女子がわざわざお礼を言いに来た。別に何も礼を言われる事はしてないんだけどねぇ。

 

「あー構わないよ、あんたの方こそ、怪我とかしてない?」

「はい、ジブンは大丈夫です!あの…さっきの人達は…」

「ん?アイツらなら勝手にどっか行っちゃったよ?」

「そ、そうですか。よかったぁ、本当にありがとうございました」

「いんや、結構結構。んじゃ、気をつけてな〜」

 

その言葉を後に、俺は買い物に向かう。運動したら腹減ったなー、とりあえず、昼は適当に作られてるモンを買って帰るか。晩はポテトでも作ろっと。今日から紅桜ちゃんは妹の所にいくので、しばらくは俺1人だ。凝った飯を作ることもないから楽でいい。たこ焼きも食いてぇなぁ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ただいまーっと。さて、飯にするかね」

 

リュックサックを部屋に置き、リビングのソファに座った俺は買い物袋からたこ焼きと枝豆、コーラを取り出す。既に作られているやつだから、すぐに食えてありがたい。そして美味い。

 

「いただきまーすっと。……うん、美味しい!よかったわぁ、このメニューにして。やっぱ、たこ焼き枝豆コーラ…最高やな!」

 

このレオリオは本当に美味い。このレオリオを考えた奴は天才だろう。食す事、15分。最後にコーラを飲みきり、ゴミを捨てる。

 

「はぁ、なーんもやる事ないなぁー。……街に彩ちゃんでも探しに行こうかな?なんつって」

 

独り言を言っていると、スマホが鳴る。誰からの着信だ?画面を見ると、そこには幼稚園時代からの親友の名前が記されていた。久しぶりな連絡に少し驚くが、すぐに電話に出る。

 

「もしもし、久しぶりだな。……あぁ、元気にしてるさ。そっちも特に異常は無しか?……………そか、ならOKだ。で、用件はなんだ?声が聞きたいって理由で電話をかけるお前じゃないだろ?………!?本当か?………分かった、ちと探してみる。ありがとな、わざわざ。………あぁ、そんじゃな!」

 

電話を切って確信する。

 

「やっぱり…彩ちゃんはこの街にいる!」

 

必要最低限の物を持って部屋に行き、ショルダーバッグの中に詰め込み、戸締まりといつものをして、家を飛び出た。そうだ、あの時見た女子…やっぱり彩ちゃんだったんだ!さっきの電話で教えてもらった情報は2つ。この街に住んでるって事と…

 

「まさか彩ちゃん、アイドルになってるなんて…世の中何でもありだな!」

 

走りながらそんなことをぼやく。所属する事務所は教えてもらった。グループ名も分かった。だから今俺はその事務所に全力疾走している。幸いなことに、家から走って20分程度の距離だったので、すぐに着く事ができるだろう。そんな事考えているとーー

 

「な!?っと、なんだこれ。楽譜?と歌詞カード?」

 

横道から2枚の紙が飛んで来たのだ。そしてちょうど顔の横側に当たったもんだからもう驚き桃の木。

 

「ごめんなさい、大丈夫ですか!?」

 

…なんか、今日はよくハプニングが起こる日だ。……タグ回収(ボソッ

女の人の声が聞こえる。多分この紙の持ち主だろう。返そうとして横を振り向いた時ーー

 

「えぇ、大丈夫です…よ…?………え?」

「?あの…どうか、したんですか?」

 

そこにいたのは、あの時のーー

 

「嘘…だろ?いや、覚悟してたけど…ここで?」

「え?どういう意味ですか?」

 

ーー昔、俺に光をくれた、ずっと会いたかったーー

 

「彩……ちゃん……」

「え、どうして…その呼び方を男の人が言うのは…ファンの方か、あの子しかいないのに…」

 

動揺してる。やっぱり…この子が、彩ちゃんなんだ…思わず涙が零れる。ここで会う事ができるなんて…今だけは、神に感謝してもいいと思った。しかし、俺の心は一気に、南極に放り出された。

 

「どうして…○○君が……ここに………?」

「え…?」

「だって、○○君は…ここには、いないはずなのに……ほ、本当に○○君なの!?何で、何で○○君がここにーー」

「やめろ!!」

 

気づけば、自分で驚くほどの大声を出していた。こんな声、何年ぶりに出したことか。でも、仕方ないんだ…その名前は…彩ちゃんはとても驚いている。当たり前だ、急に大声で論されたのだから。

 

「え、どうしたの、○○君?わ、私だよ。丸山 彩だよ?」

「分かってる!でも、その名前は…俺には、聞こえないんだ…聞きたくないんだ…」

 

そう言って俺はその場から逃げ出す。最悪だ、最低だ。ずっと探していた人に会えたのに、心から喜べない。自分が…嫌になる……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ま、待って!○○君!」

「どうかしましたか?」

 

急に逃げちゃった○○を追おうとしたら、事務所の警備員さんがさっきの大声を聞きつけて来てくれたみたい。事情を話さないと…でも、○○君…どうしたっていうの……?




タイトルの通り、最悪の再開での終了。2章の予告、もしかしたら出すかも。


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5,5.第2章予告台詞

第2章 予告台詞

 

「彩ちゃん…あの人は何者なの?」

 

「久しぶりだな、○○」

 

「何で何も言ってくれないの!?○○君!」

 

「俺は…あの頃とは違うんだ。君の知ってる○○は、もういない」

 

「お前は天秤を創った。それには1人の命と大勢の命が賭けられた。お前は“誓い”を破り、1人の命を救った。…違うか?」

 

「…俺の存在理由は…何なんだろうな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が、第2章の予告台詞となっております。だいたいの内容は頭に入っているので、すぐに書き上げる事もできると思います。しかし、自分は高1なので、部活やら宿題やらで、毎日ヒーコラ言ってます。それに暑いし。家から学校まで約9kmを自転車で登校するのは、中々厳しいものです。家にいるとクーラーが迎え入れてくれますが、道中がキツイです。教室にもクーラーついてますが、威力が弱いので、ほぼ意味なしです。ハーメルンは、最低1000文字打たなければならないので、適当にずらずら並べていっていますが、無視してくれて構いません。むしろ、無視するべきです。あ、そうだ(唐突)ここで、オリキャラの設定を説明しておくゾー。現段階で分かっている事、もしくはストーリーにあまり関係ない事だけ記します。

 

主人公

名前・真紅 十矢(しんけつ とおや)

性別・男

年齢・16歳

誕生日・10月1日

身長体重・176cm,65kg

経歴

・過去に名前のせいでイジメを受けていた。丸山 彩のお陰で生きる希望を見出せた。真紅 十矢という名前は、裁判によって変えたもう1つの名前。祖母の事をとても愛しており、生きていた時、常に自分の味方をして、望む物全てを与えてくれたことから、生涯をかけて恩のお返しをしていこうと思っている。左眼が無い。ピアノ、バイオリンを弾く事ができる。

 

サブキャラ

名前・杉田 紅桜(すぎた ててら)

性別・女

年齢・17歳

誕生日・7月18日

身長体重・160cm,秘密

経歴

・主人公の幼馴染。幼少期、実家が火事になり妹と死にかけたが、主人公が救った。この事から、主人公に自分の全てを捧げる事を決める。そこそこの胸を持っており、いつも主人公を照れさせている。俗に言う、デレデレ。

 

名前・一ノ瀬 瑞穂(いちのせ みずほ)

性別・男

年齢・26歳

誕生日・11月16日

身長体重・183cm,75kg

経歴

・早稲田大学を卒業、その後2年間ニート生活を謳歌していたが、飽きたので、教職員試験を受け合格。1番得意の化学の教師に。かなりのオタクで、マニアックなアニメやマンガ、ゲームを知っている。巧みな会話術で生徒をやる気にさせる教育術ではなく、本質から理解をさせるスタイルで、生徒からの信頼も厚い。

 

1000文字越えたんで、ここで終わります。優大はまた今度って事で。では、第2章でお会いしましょう。

 

 

 

第2章 崩れゆくMy World

 

 



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第2章 崩れゆくMY WORLD
6.襲いくる Fear


やっと2章出せる…大変お待たせしました!待っている人はいるのか?5話の最後の通り、大体彩ちゃん視点での情景描写になります。あと、○○というのは主人公の昔の名前です。1章は主人公視点だったので○○と記しています。が、2章は彩ちゃん視点なので名前を記そうか迷いました。結果、記します。まぁ、イジメの原因は名字の方なのでいいかなって。


小学生の頃、イジメられてたあの子を見た時、体が勝手に動いてた。よくある表現だよね、許せない物を見た時の。あの頃の私はただただ、皆に笑ってほしかったからあの子を助けたんだと思う。でも、あの子は私に言ったの、「君もイジメられちゃう」って。あれ、ちょっと違うかな?…私は驚いた。だって、小学1年生なんて普通、目の前に希望が現れたら戦隊ヒーローみたいに笑顔になると思ってた。私もそんな立場ならそうだったから。でもあの子は、現れた希望を心配した。偏見かもしれないけど、そんな子はいないと考えてた。でも目の前の子がそうなんだから、分かるしかないよね。…その日の翌日、あの子はいつもよりほんの少しだけ元気だった気がした。私はその子が気になって、少しずつ話をするようになっていった。そして…中学年くらいの時かな、家族の都合で遠くに引っ越すことになったの。さよならの挨拶がしたかったけど、時間がなくてそのまま。いつかまた、話ができたらいいなって思ってた。そして、その子と再会した。相変わらず背が高くて、スラっとしてて、可愛かった顔はカッコよくなってた。でも……

 

「いったい、どうしちゃったんだろう。映透君…」

「その、エイト君って誰?」

「えっ!?」

 

口に出てしまっていたのか、ある1人の女の子に聞かれてしまった。その子は、芸能人として尊敬し、友達としても大好きな人。

 

「まさかボーイフレンドじゃないわよね…」

「ち、千聖ちゃん!ち、ちがうよ!断じて!」

「ふーん、あのね彩ちゃん。ボーイフレンドじゃなかったとしても、一般人、特に男性との付き合いは気をつけてって言ってるわよね?」

 

有無を言わせない笑顔で私に言ってくる千聖ちゃん。怖すぎて頷く事しかできないよ…

映透君がどこかに行っちゃってそれから私は、そのまま事務所に行ってパスパレの皆とレッスンをしていた。映透君の事が相当気になってたのか、歌詞の入りを間違えたり、ターンでつまづいたりしてしまった。普段間違わない所なのに間違えちゃったから、皆から心配されて少し早めの休憩を取ることにした。いくら集中しようとしても、頭の片隅でどうしても気になってしまう。迷惑かけるわけにはいかないのに…

 

「集中できてないのも、その人のせいなの?」

「ううん、私のせい…だと思う」

「?確信はないの?」

「うん、映透君は昔の友達で、さっき久しぶりに会って…それで名前を呼んだら、急に…大声でどこかに行っちゃって」

「名前を呼んだら?…どういう意味かしら」

「分かんない。でも、私が映透君に嫌な思いさせてしまったんだったら、ちゃんと会って謝らなきゃ。だって…大声を出した時の顔は、怒りというより、悲しみ…寂しさが伝わってきたから……」

 

千聖ちゃんは呆れたようにため息をついて、私に言った。

 

「分かったわ、今日は夕方までのレッスンだからその後は探せる。私でよかったら、一緒に探しましょうか?」

「え!いや、悪いよそんなの!それに、千聖ちゃんは別に理由もないんじゃ…」

「理由がなかったら、やってはいけないの?」

「そ、そういうわけじゃないんだけど…」

 

なんだか千聖ちゃんは理由もない事はしないと思ってたよ…あ、こんな事言ったら怒られちゃう。危ない危ない…

 

「(どうしてか分からないけど…その映透って人、なんだか危険な人の予感がする。彩ちゃんより先に見つけて、判断しなきゃ…)」

「?どうしたの千聖ちゃん。急に黙っちゃって」

「!いえ、何でもないわ。そろそろ、再開しましょう。大丈夫?」

 

千聖ちゃんは立ち上がって手を差し出してくる。私はその手を取って、残りのレッスンをこなしていった。言ったらスッキリしたのか、始めた時よりしっかり出来たと思う。夕方になってレッスンが終わる。私と千聖ちゃんを除いた皆は用事があるみたいで、送迎車に乗って帰って行った。

 

「それじゃあ行きましょうか、彩ちゃん」

「う、うん。あ、あと映透君の特徴なんだけど…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「さて…どうしましょうか…」

 

彩ちゃんからその、映透さんの特徴を聞いたのはいいけど、聞く限り、あの転入してきた…真紅…だったかしら。似ている気がするわね…

あの後、彩ちゃんと別れた私は変装をして通学路を歩いている。彩ちゃんと映透さんが会ったのが事務所の近くで通学路の方に走って行ったと聞いたからこうして探している…のだけれど…

 

「そう簡単に見つかるわけないわよね…正直、探す方法を考えてなかったわ…」

 

いくら変装をしてるからといっても、勘のいいファンがいたらバレてしまう。早めに見つけないと…

前言撤回、それどころじゃなくなってしまったわ…

 

「ヘヘヘヘヘ………」

 

黒ニットの帽子、サングラスにマスク…典型的な強盗、誘拐犯の姿の男が後ろからついてきてる。周りには他に誰もいないから、目当ては私?この辺りに警察署あったかしら、諦めてくれたらそれで今はいいのだけど…

 

「おい!テメェ詫びの挨拶も無しか!」

「え?」

 

突然その男が大声をあげる。振り返ると、黒の半袖シャツにジーンズを履いた人が新しくいた。その姿に見覚えがあってーー

 

「あれは…真紅君?」

「おい!聞いてんのか!1発殴らせッ!?」

「…………………」

 

一瞬だった。男が拳を振りかざして殴ろうとした時、真紅くんが、男のみぞおちを目に映らないほどの速さで殴っていた。分からなかった。何が起きたのか。気付いた時には、男は地面に倒れていて、真紅君は何もなかったようにそこに立ち尽くしていた。私は怖くなってーー

 

「………?…あぁ、白鷺さんか。目ェ悪いんで、誰か分からなかったよ…ハハ」

 

ーー地面に座り込んでしまった。それで彼に気づかれて近づかれて話しかけられて。今すぐにここから逃げ出したかった。でも、足が震えて動かなかった。ドラマで喧嘩のシーンなんかは見た事があったけど、本物は初めてだし…なにより、演技では決して出す事が出来ない本当の『殺気』があった。私の目の前でしゃがむ彼。何も思わなかったのに今だけ…無い左眼が恐ろしく思えた。

 

「ハハ、レッスンの帰り?大変だねぇアイドルも。でもま、楽しくてやってるなら、それが1番だよねー。……ストーカーには、気をつけてね?今回は俺が偶々居たからよかったけど、何されるか分かったもんじゃないから」

 

何も言う事が出来ない私を前に喋っている。顔は笑ってる。でも、それは偽り。私もそうする時があった。でも、私とは違う。言葉では言い表せない様々な感情が彼の顔から伺えたから。悲しみ?寂しさ?もしかして、真紅君が……?

 

「さて、俺はもう行くね。用があるから。そうそう、そんな座り方してたら、パンツ見えちゃうよ?」

「あ…ぁ……」

 

最後まで笑いながら彼は去って行った。角を曲がって姿が見えなくなってようやく、私は体の自由を取り戻した。1分もない時間経過の筈なのに、何十分も拘束されていたみたいな感覚。

 

「!千聖ちゃん!大丈夫!?何があったの!?」

 

別の角から彩ちゃんがやって来て、私の側に来てくれる。それで糸が切れてしまったのか、思わず泣いてしまった。

 

「う、うぅ…あ、彩…ちゃん……グスッ」

「え!?ち、千聖ちゃん?」

 

その後は、しばらく彩ちゃんの隣で泣き続けた。人前で泣く事に対しての羞恥心を失くすほど、彼は怖かった。彩ちゃんに彼の事を話すか迷ったけど…おそらく、真紅君が…

 

「グスッ……ごめんなさい、彩ちゃん。急に泣いちゃって」

「ううん、平気。千聖ちゃん、何があったの?」

 

私は意を決して、彩ちゃんの目を見て言う。

 

「彩ちゃん…私、映透君に会ったわ…」

「え!本当!?ど、どこに行ったの!?」

どこに行ったか。私が伝えたいのは、それじゃない。

 

「映透君は……今学期、私のクラスに転入して来た、真紅君よ…」

「え………?」




待たせたな!誰も待ってない。
後半千聖視点になっちった。次になったら戻ってますよ。
あー真紅、怖いねぇ〜。つーか、千聖のパンツって何いr((
ちなみに我らが高校の女子はスパッツとかいうものを穿いてるらしいです。そっちなのかな?
エイト、という名前は、新聞を読んでると赤ちゃんの名前が記されてるページがあるんですけど、そこから頂きました。


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7.過去との Confrontation

やぁ皆、ロクでなしおじさんだ。今日は第2章の2話をお届けするぞ。この辺りから、「このキャラこんな事言わないよ」っていう現象が多発するから、注意だ。ロクでなしおじさんとの約束だぞ。


『映透君は……今学期、私のクラスに転入して来た、真紅君よ…』

『え………』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー通学路で千聖ちゃんと別れた私は、家に帰って着替えもせずにベッドに横になっている。まだ千聖ちゃんから聞かされた事が、頭の中をグルグルしている。今日は頭をよく使う日だ。

 

「転入して来た人がいるとは知ってたけど…まさか映透君だったなんて…」

 

A組の方に行く用事も特に無かったし、千聖ちゃんとは廊下とかで話をしてたから全く気にしてなかった…

 

「でも、もしクラスに行って映透君に話しかけても、結果は変わらなかっただろうな…それに、真紅…か。どうして名前、変えちゃったんだろう…」

 

   

 

考えていると、スマホが鳴りだした。誰からだろうと思ってスマホを手に取ると、画面には『千聖ちゃん』の文字が。どうしたんだろうと思って受諾ボタンを押す。

 

「もしもし、千聖ちゃん?どうしたの?」

『彩ちゃん、ごめんなさい。急に。さっきの事なんだけど…語弊があったから訂正しようと思って』

「語弊って?」

「確かに私が見たのは真紅君よ、でも、彼が映透君とは限らないって事』

「じゃあどうしてその真紅って人が映透君だと思ったの?」

 

千聖ちゃんは少しの間を置いた。何かあるのかと思ったけど、私には何なのか分からなかった。

 

『……ただ、あなたから聞いた情報と一致していたからよ。だから、彼が映透君と確定するには、まだ早いんじゃないの?』

「そう…なのかな?」

 

実際、私もそう思う。でも、あんな悲しい顔をさせてしまった罪悪感が、私を急かしてくる。「早く謝れ」って。だから、違う可能性があったとしても、私は目の前にある可能性に賭けたい。

 

『実を言うとね、彩ちゃん。私が手伝ったのは、判断するためなの』

「判断?」

 

さっきより少し低いトーンで言う千聖ちゃん。なんだか背中に寒気がした気がする。

 

『彩ちゃん…あの人は一体何なの?』

 

「…………てんて」

 

『…彩ちゃんに対してどんな影響を与える人物なのか。それを決めるために、今日は手伝ったの』

「………それで、どうだったの?」

『まだ確信はしてない。でも…彼は少なからず、あなたに悪影響を与えるわ。もし、真紅君が映透君だったならの話だけどね』

 

その言葉は、私を何とも言えない気持ちにさせた。映透君はそんな人じゃないって、言いたいのに。私は黙って千聖ちゃんの話を聞く事しか出来なかった。

 

『……嫌なら思いをさせたなら、謝るわ、ごめんなさい。でも、現に今日のレッスンは普段しないミスをしていたわ』

「………うん」

『…しばらく、気持ちの整理が必要ね。私の方でも、なんとかしてみるわ。それじゃあね、彩ちゃん。おやすみなさい』

「…うん、おやすみ、千聖ちゃん」

 

耳からスマホを離すと私は、何も考えられなくなった。確かに千聖ちゃんの意見ももっともだ。…これは幼馴染故の一種の贔屓なのかもしれない。勝手に考えて、勝手に決めて、勝手に批判する。長い年月が経ったのだから、何かしら性格が変わっていてもおかしくないのに。昔のままだと期待して、正当化しようとする。最悪だ、最低だ。私が…嫌になる…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「ハァッ、ハァッ、ハァッ……クソッ!」

 

壁を思い切り殴りつける。脆い壁だったのか、拳が当たった場所を中心に円形に割れていた。

 

「何でだ…!何でだ…!何で俺は逃げ出した!」

 

狭い通路に声が響き渡り、その場に座り込む。あの時、彩ちゃんから逃げ出した俺は来た道をそのまま戻って脇道の路地裏に入った。長い道のりを走ってきたので、心臓がバクバクと休息を求めようとしてくる。今はその申請を受け入れて暫しの休息を取ることにした。

 

「はあ…せっかく会えたっていうのに…また、ふりだしか…」

 

この1週間、いや、小学生の頃からお礼を言おうと思っていたにもかかわらず、俺は昔の名前を聞いただけで逃げ出す始末。このままでは、お礼を言うどころか、話すことすら出来ない。話にならないとは、この事か。

 

「…とりあえず、家に帰ろう。何もする気が起きねぇ」

 

そう言って路地裏を出る。その時、殺気を感じた。白いシャツを着た男が、右にいる。俺は、その男を知っている。忘れるわけがない。忌々しいーー

 

「久しぶりだな…映透」

「もう会いたくねぇんだけどな…兄弟」

 

ーー俺の希望を潰した、張本人。




まーた新しいキャラですよ、それにオリ。ま、多少はね?
書く気があったらどんどん書けるんだけど、1回書かなかったら書けなくなってく。負の輪廻ですね(?)


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8.突きつけられしWorld & Truth

1話みたいに上手く書けている気がしない。
貴方もそう思う?
文の構成も投げやりだし。


「久しぶりだな…映透」

「もう会いたくねぇんだけどな…兄弟」

 

着ている白いシャツより更に白く輝く髪を、風が靡かせる。所謂、アルビノという奴だ。こっちの事情も知らないで、コイツは近づいてくる。

 

「どうしたよ、そんな面して。折角のイケメンが台無しだぜ?」

「……そりゃどうも」

 

…分かる。自分でもコントロール出来ないほどの殺気を互いに出し合っている事が。塀の上を歩いていた猫は驚くほどの速さで走り去って行った。

 

「あ?お前、義眼入れてないのか?生活出来んのか?」

「何も不自由なんてねぇよ。ただ1つ、お前がここにいる事以外な」

「ハハハハ、そりゃそうだ。お前は俺の事大嫌いだもんなぁ」

 

分かってんじゃねぇか。それを知ってて俺の前に現れたんだろうけど。何かの用か?そんな俺の思ってる事を読み取ったのか、話を続けてきた。

 

「話したい事があってな…どうだ、ちょっと付き合わねぇか?」

「断る。話すだけなら、ここで言えばいい」

「お、しっかり自分の意見言えるようになったんだな。嬉しいぜ」

「勝手に喜んでろ。言わねぇなら帰るぞ」

 

そう言って、後ろに向かって回転蹴りをかます。気配を隠せてるつもりだろうが、いまの俺には無意味だ。側頭部に入れらてた男はそのまま壁に激突して気絶した。

 

「ひゅー、やるねぇ。何年経っても、喧嘩の腕は変わらず、か。罪神の「それ以上言うな。言ったら…今ここでお前を殺す」

 

空気が切り裂かれた。人間技じゃないけど、そんな表現が正しいだろう。蹴った後、そのまま後ろを向いていた状態からいきなり前を向き殴りかかる。その拳は白髪の男の顔を捉えていた。

 

「っと…油断したぜ。これほどとはな…分かった、話はまた今度にしよう。だが…これだけは言っておこう」

 

後ろに下がりながら、白髪の男は呆れたような態度をとる。しかし、油断していたのはこっちの方だった。直後ーー

 

「お前、なんて世界に迷い込んだ。俺の力でもこれは流石に無理がある。……こんな酷い世界をお前が選ぶなんてな…」

 

ーーまるで、過去も、今も、その先の未来さえ見据えた瞳が俺を見つめる。動揺が隠せない。いや、その瞳だけじゃない。言葉もだ。

 

「何?どういう意味だ。…言っておくが、俺はもう“あの力”を使ってはいない。それより、世界って何だ?」

「!自覚なしか…?いや、確かに力を使ってもこんな事は不可能だ…しゃーねぇ、やるしかねぇか…」

 

白髪の男はそのまま去って行く。一瞬。それだけでそこから奴の姿はなくなっていた。気づけば俺も殺気を抑える事が出来ていた。たった数分間の会話だけで、多くの分からない事ができた。話したかった事。世界とは何か。奴がやりに行った事は何か。ついでに、俺を襲って来たクソ男は一体何だったのか。面倒だから、このまま放置でいっか。

 

「情報整理…といきたいが、まだショック残ってるな…心臓が鎖で締められてる。いつもの表現だな」

 

昔から精神的に参ってしまうと、心臓が鎖で雁字搦めにされてるように感じてしまう。まるで、鉄のハインリヒだ。

 

「とりあえず、家に帰ろう…チッ、アイツのせいで余計に疲れた」

 

如月 要…それが、アイツの名前だ。中学生の頃、親に嫌気がさして家出した時に出会った。境遇が似てたからかな…すぐに友達…いや、仲間になったよ。それからはずっと一緒にいた。朝と昼のうちは、親が捜索願を出したらしく、サツがウロウロしてるから“秘密基地”で待機。夜になっては自由な町を散策したり、おやっさんのラーメン食ったり。楽しくて仕方なかったよ。なのに…アイツは裏切った。俺の希望の夢を邪魔したんだ。何で?…それしか言葉が浮かばなかったさ。側から見たら、そんな事でって思われるかもしれない。けど、俺とアイツとの“兄弟”の関係が分からなくなったから。

…結局、それ以来要と会う事は無かった。こんな時に会いたくなかったけど。

なんて考えながら帰路についていた時、“音”が無くなった。俯いていたので何があったのかと思い見上げると、そこには“黒”が存在していた。いや、他のモノが一切無くなっていた。

 

「は?…何処だよここ。おい!誰かいないのか!?」

 

声が空間にこだまする。数秒待っても返事がこない。俺しかいない、という証明だ。…いや、違ったな。もう1つある、返事のない事から導ける証明が。

 

「ご無沙汰しております、総統。希望との遭遇は致しましたか?」

 

俺をこの空間に閉じ込めた奴がいるって事…

 

「お前は…?」

「おや、私を覚えていらっしゃらない。まぁ当然ですか、あの記憶は抹消されていますから」

 

目の前に現れた爺は、執事のような喋り方をしていながら、その見た目はまるで戦神。顔こそ年老いているが、ただそこに存在するだけで気圧されてしまうほどの威圧感。

 

「ホホホ、戸惑うのも無理はありません。しかし、あまり時間がないので端的に。今から貴方にあるイメージを送ります。それが、要殿が伝えたかった内容でございます」

「おい!勝手に進めるな!だからお前は何モン「では、参りますよ…」

 

爺は、俺が話しているにもかかわらず遮って喋る。そして、俺の頭に手を乗せてーー

 

「ーーッ!!」

 

気が付いたら俺は家の自分の部屋にいた。もちろん、驚くべきシーンだ。だが、そんな余裕はない。あるはずなかった。

 

「は…?嘘……だろ?こんな、事はーー」

 

あの爺に見せられたイメージ、それはーー

 

 

 

 

 

 

 

ーー花咲川の生徒が皆、俺の事を憎んでいたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれからの俺は、どうしちまったんだろう。ーー

ーー何だか、あの、家出の時の服に着替えて…ーー

ーー白鷺さんに会ったような…ーー

ーー体が、自分で動かせない、勝手に動いてる。ーー

ーーまぁ…いっか、どうでも。ーー

 

 

 

 

ーー助けてーー

 

 

 

 

 

 

 

ーー俺の世界が…壊れていくーー




何も書く事ないや。
あ、あったわ。
まだ2章続きますからね。


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9.もう一人の Main Character

約一カ月の時を経て、帰ってきたロクでなし。謝る事は何もな(殴


彩ちゃんとの電話を終えた私は、机とセットになっている椅子に座り、夕方の出来事を思い出してみる。

 

「…明らかに様子がおかしかった。見た目は真紅君なんだけど、そうじゃないというか……考えれば考えるほど分からないわね」

 

そういえば、目の色が変わってた気がするわね…最初に会った時は黒と赤が混ざったような色だったけど、あの時の彼はダークブルーな暗い目の色をしていた。雰囲気も…人が変わったような、という表現があるけれど、本当に人が変わったと思わされた。

 

「彼の事を全く知らない私からすれば、分からないのも当然かしらね…」

 

明日、もう一度彩ちゃんと話してみましょうか…何か、考えついた事があるかもしれない。

 

そう考えついた私は、もう寝ることにした。想像以上にあの時の恐怖が体に影響を与えていたらしい。そういえば…

 

「私、真紅君に下着見られた?………ーーーッッッ!///」

 

…忘れていた事さえも思い出してしまった…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

町外れにある廃工場。周りには電灯一本の灯しかない。そこに一人の男と一台のタクシーがいた。男はタクシーの窓をノックし、乗り込む。

 

「……どちらまで?」

「そうだねぇ…じゃあここまでお願いしよっかな」

 

男は一枚の紙を運転手に見せる。運転手は驚いた表情をして言う。

 

「お客さん、幾ら何でもこれは遠すぎます。かなりの日を跨ぎますし、会社に何と言えば…」

 

男、目を鋭くし運転手を睨む。

 

「妙な芝居はやめたほうがいいんじゃない?黄泉の水先人さんよ」

 

運転手はこうなる事が分かっていたかのように嗤う。

 

「ヘヘッ、ご存知でしたか。流石は罪神の双秤、何でもありですね」

「何でもありなんて、この世にはないよ?それとも…黄泉にはあるのかい?そんな話が」

 

嗤う運転手。しかし、その嗤いかたはあくまでも相手の下に出ようとするものだ。本心は如何なものか。

 

「ご冗談を。そのような名前も、勝手に付けられたのですから。迷惑ですよ全く。ま、名前も明かさない、顔もろくに見せない。乗れば最後。いつのまにか死んでいる。偶々生き残った者が死に際に放った一言だけで、ここまで広がるなら、コソコソやるのも馬鹿馬鹿しくなります」

 

運転手は特に、顔を隠すサングラスやマスクの類は一切していない。なのに何故顔が見えないのか。それは運転手本人しか知らない。

 

「フフ、本当だね。で、だ。行けるよね、この場所」

「勿論ですとも。……して、一つ質問してもよろしいですか?」

 

エンジンをかけ、動き出すタクシー。手慣れたハンドル捌きでターンをし、前進。

 

「ん、何?」

「今の貴方はどちらでしょう?狂秤、それとも、暴秤?」

 

男、面白い事を見たか、卒然と笑い出す。これまで細めていた眼を見開いて、答える。

 

「ククク、決まってるじゃん、“僕”だよ。今、兄ちゃんは……」

 

陽気に答えていた男、急に何か命と同等のものを失ったかのような声で、

 

「……辛い事があったんだろうね、『閉じこもっちゃってる』よ…」

「…そうですか、それは、失礼しました」

 

運転中だというのに関わらず、主は頭を深く下げる。長く、長く。一体、どれほど頭を下げていたのだろうか、いつのまにか窓の外は朝日が差し、目的の場所に付いていた。男はこれに子供のように無邪気に驚き、

 

「おぉ、これが水先人のトリックって訳か〜!これは凄い!」

「ヘヘッ、お気に召されたなら、良かったです。…あの方に会いに?」

 

感激している男を、まるで孫の遊びを見守る祖父母のように運転手は嗤う。

 

「うん、この世界に一緒に入って来たのはあいつらだし。あの老人の事、何か知ってるかも」

「おっと、失礼。二人も入って来ていたのですか…どうか、ご武運を」

 

タクシーから降りながら答える男と一緒に運転手も降りる。そして、子の旅立ちを見送る親のように深く一礼した。

 

「うん、運転、お疲れ様!帰りも利用させてもらうよ!」

「はい、お待ちしております」

 

ダークブルーの眼を持つ男は歩き始める。兄の親友の元へ。

 

「僕の方でも頑張ってみるから、そっちも頑張ってよね…十矢兄ちゃん」

 

運転手の腕に付いてある時計は、男が乗り込んだ時間から、6時間しか経っていなかった。東から西へ、東奔西走とは、よく言ったものだ。

 




後半ちょっとこれまでとは違う書き方をしてみた。これからも採用するかは不明。


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