HARUTO~原作のないNARUTOの世界へ (ゆう☆彡)
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第一章~ハルト誕生
誕生!!辛い人生かと思ったら……?



ずっと書いてみたかった、NARUTOに転生!!
前小説が一段落したから、こっちにいこう!!みたいな感じです。


もちろん、完結目指して頑張ります。
一週間投稿を目標に頑張っていきます!!お願いしまーーす!!


 

 

 

 

―――ああ、これは転生か。

 

 

俺がそう気づくのに、そんなに時間はかからなかった。だってそうだろう……。

 

「おぎやぁぁ!!」

 

俺は赤ん坊じゃない。そこから否定できる。そして赤ん坊はこんなに考えられない。

俺は天寿を全うした、幸せなことに老衰という形で人生を終えた。

生まれ変わることが嫌なわけでないし、むしろ大歓迎だが、一からやり直したいだろ。前世の記憶持って生まれるのは、生まれ変わりと言うよりは、転生だ。

 

 

そしてもう一つ、これが転生だと気づいた理由。

 

 

 

 

 

「やった……っ、やったよ、クシナ!!」

 

……まじですか。

 

 

 

はい、死亡フラグ大量発生のNARUTOの世界に来てました。しかも、俺この人たちの子どもかよ。えっ、何?じゃあ、ナルトとして生きるの??嫌だよ?そんな里から疎まれながら生きるのなんて。

……ってか、そうなら、そろそろ仮面の男ならぬうちはオビトが来るんじゃ……?

 

 

そんな赤ん坊が心配するような内容ではないことを考えているうちに、

 

「よし、封印完了!クシナ、よく頑張ったね。」

 

何事もなく、終わった。……ん??いいのか?

 

まぁ、親が死ぬことを望む訳では無いし、生きててくれるのはすごく嬉しいんだけど。

 

 

「生まれてきてくれてありがとう、ハルト。」

 

……。

あぁ、なるほど。俺はこの世界に新しい住人として生を受けたわけですか。

 

 

 

 

 

―――まじかよ。

 

 

てか、俺、転生能力とか貰ってないんですけど……。

えぇぇ…、NARUTOの世界で能力がないのはきつくね?

 

 

どうしよう……、考える暇もなく修行するしかないよな。

元一般人でも忍術とか出来んの?

 

 

 

心配事しかない、俺の第2の人生。

でもまあ、やるしかない。それに、せっかくのNARUTOの世界。それもナルトの生まれる前。やりたいこと、やれることはたくさんありそうだ。

 

 

 

―――こうして、俺、波風ハルトの第二の人生が始まった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

「ハルトー、お父さんのこと起こしてきてってばね。」

「はーい。」

 

波風ミナトとクシナの間に俺が生まれて、はや3年。ハルトこと俺は、2人の愛を受けてすくすくと成長した。

 

「父さん、起きて。」

「んー?……ハルト、おはよーっ!!」

「ぎゃっ!?」

 

布団の中に引きずり込まれて、そのまま抱き枕状態。いやぁ、ミナトの父親姿って、もちろん原作で見たことなかったけど、想像以上に親バカなんだな。

 

 

「……。」

 

あ、寝た。

 

「父さん、今すぐ起きるのと、母さんに殴られるの、どっちがいい?」

「クシナー、朝ごはんー!」

 

弱い……。完全にかかあ天下だ。

 

 

 

 

 

 

「ミナトー、行ってらっしゃーい!」

「行ってくるよー。」

 

父さんはまだ火影ではなく、上忍の忍。多分だけど、今日も通常の任務をこなしに行ったんだと思う。

 

「母さん、僕も出かけてくるけど、何か用とかある?」

「んー、あっ!じゃあ、ミコトにこれ渡してきて欲しいってばね。」

「うん、わかった。」

 

俺は明らかに3歳児に頼むような大きさではない風呂敷を、母さんから受け取った。

まぁ、ほかの3歳児とは違うって気づいて頼んでいるみたいだし、仕方ないんだけど。

 

 

 

父さんが任務に行ってから、昼ご飯までの時間、俺は2歳になってからの1年間の半分以上は散歩という名の情報収集に出ている。

 

と言うのも、まだ判明していないのだ、“時系列”が……。

……チートあって、神様に会ってたら、分かったかもしれないのに……。

 

できる限り調べて分かっていることで、最も時系列がわかることと言えば、

 

 

『第三次忍界大戦が終わっていない』

 

 

忍界大戦は始まってるのかは知らんけど、仮面の男、すなわちうちはオビトやカカシ先生の所在も不明だった。ただ、第三次忍界大戦終了後に波風ミナトはすぐに火影になった気がしていた。つまり、忍界大戦の大一番“神無毘橋の戦い”は終わってないってこと。

そこまで分かってんなら……、なんて思うかもしれないが、過去の詳しいことは原作に出てきてないし、出てきたとしても俺の頭にはない。

 

 

「っても、なかなか出てこないんだよなぁ。情報……。」

 

1年のうち半分しか情報収集してないとはいえ、出てきたのがこれしかないってのは、結構つらい。父さんは火影じゃないから、重要な巻物は読めないし。

 

 

 

そして情報収集をしていない、1年の半分は何をしていたのかというと。

 

「重いし、飛雷神で行こっかな。」

 

生まれた時に誓ったように、ただただひたすら、修行に明け暮れた。

親が天才の父と封印術に長けた人柱力の母だからなのか、それとも知らず知らずのうちに特典として付いているのかはわからんが、忍としての、忍術に関する才能とチャクラの量は溢れていた。……もちろん無限では無いが。

飛雷神の術も高等忍術だからか、一般人が閲覧可能の巻物なんてなかったけど、見よう見真似だ。人間、やろうと思えばなんでもできる。

なるべく鮮明にくわしく、原作を思い出してやってみた。……それだけだ。

 

出来るようになった術はいろいろあるが、それはおいおい話していこう。

 

 

 

 

 

「えーっと……ミコトさんの家は……」

 

うちは一族の集まりの入口に飛び、ミコトさんの家を探す。まだ九尾襲来事件の前だから、ここの集落にもたくさんの人がいる。

 

「あっ。イタチの年齢見れば、どれ位の時系列かわかるか。」

 

 

そう、これから行く“ミコトさん”はイタチとサスケのお母さん。既に結構遊びに行ってたりしてるし、原作でも母さんと仲良かったからな。

 

さてと、急ぐか。……てか、中身なんだよ、これ。重すぎる……。

 

 

『これからのミコトに絶対必要なものだってばね。』

 

母さんの伝言だけじゃあ、俺には中身を理解出来なかった。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「こんにちはー、波風ハルトですけど……。」

「あら、ハルトくん?いらっしゃい……って、どうしたの?その荷物…」

「ミコトさんに、母さんからお届けものです。」

「あらあら、すごい量をごめんなさいね。」

 

そう言って俺から荷物を受け取ろうとしてくれたミコトさんから、少し逃げた。

 

「ハルトくん??」

「あ、いや……、なんか……違和感が……。」

 

なんで逃げたのか、俺にもよくわからない。

何となく、ミコトさんの動きがいつもと違った、気がした。

 

「……お腹?」

「!!」

「なにか庇ってるんですか?」

「すごいなぁ、ハルトくん。クシナが羨ましい……。」

「??」

 

ミコトさんは優しく微笑んで、お腹をさすった。

 

「ここにね、赤ちゃんがいるの。」

「えっ?」

 

 

 

―――まじですか。

 

その言葉を声に出さなかった俺はえら

 

「クシナからの荷物は、きっとそれね。初めての子どもだから、何も揃えてないって言っちゃったから、くれたんだわ。」

「まじですか。」

 

……偉くねぇぇぇぇ。

言ってしまったよ!あまりにも衝撃的すぎて!!だってそうだろ……

 

「えっと……初めての子ども、ですか?」

「そうよ。」

 

 

……まじかぁぁぁぁ。

サスケどころかイタチも生まれてねぇぇぇ。

ってか俺、イタチよりも年上かよぉぉぉ!

 

「ハルトくん、この子と仲良くしてあげてね。」

「あ、はい。もちろんです。」

 

イタチと仲良く……かぁ。小さい頃って、どんなんなんだろう。

 

 

 

 

そんな衝撃的な1日……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は、まだ終わらない。






なんかノリがすごいな……。これから落ち着かせていこう……っと。


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瞬身と呼ばれた忍との出会い

たくさんのお気に入り、ありがとうございます。
感想もいただけてとても嬉しいです。

感想でもあったのですが、このままいくとミナトとクシナの年齢がおかしなことになりますが、子どもの年齢を優先的に考えた為、大人の年齢はだいぶ偽りが強いです。
ご了承ください。


……まぁ、タイトルが『原作のないNARUTOの世界へ』ですから。


 

……昼ごはんまでもう少しあるし、どっかで修行して行こうかなぁ。

 

 

ミコトさんにお届けものをした帰り道、俺は修行場所を探していた。まだまだやってみたい術やらは、たくさんある。それに、オリジナルの術とかも作ってみたい。

 

 

うちはの集落の中でそんなことを考えながら、歩いていた時……

 

 

―――シュンッ!!

 

「……。」

 

後ろから突然、クナイが飛んできた。まぁ、そんなものに当たるほど生ぬるい修行はしていないつもりで、飛んできた方向も見ずにかわした。

関わらないでそのまま去ってもいいかな、とも思ったが、チャクラ的に子ども(俺も見た目は3歳だけど)だったので、いたずらをし返しに行った。

 

あっ、ちなみに。俺は人並み以上に感知が得意だ。

 

 

 

「何やってるの?」

「うわぁ!?」

 

マーキングを施したクナイは、相手からすれば気づいた時には自分の横にあったという感じだろう。飛雷神でとぶと同時にクナイもキャッチした。

 

クナイを投げてきたのは、俺と同じくらい小さいやつだった。

 

 

「すげぇな、お前!!」

 

いやいや、お前の方がすげぇよ。一体いくつでそんなもん投げてんだ。

ってか投げる相手考えろ、俺じゃない3歳児だったら死んでたぞ。

 

「……どうもありがとう。どうしてこんなもの投げるの?」

「んー、お前ならかわせると思ったから!!」

 

―――なんの自信だよ。

 

「なぁ! 俺と友達になってよ!」

「はぁ……」

 

目の前の俺よりも小さな少年。見た目もいる場所も、この歳にしては忍らしいことに関しても、すぐにうちは一族の子だとわかった。

 

にしても、随分喋るな……。

 

 

 

 

「俺の名前はうちはシスイ! 俺と同じ歳のやつあんまいなくて、お前見つけて嬉しかった!」

 

…………はぁ。

 

 

 

 

 

 

はぁぁぁぁぁああああ!?!?

えっ、うちはシスイ?あの別天神を使う、瞬身のシスイ??確かにイタチよりも兄っぽいとは思ったけども!

俺、シスイと同い年!?

 

「ちなみに、いくつ?」

「俺? 俺は2歳!」

 

 

―――年下かよぉぉぉ!?

 

ってか、2歳児にクナイ持たせてんじゃないよ。

 

 

「お前は?」

「僕は波風ハルト。僕でいいなら友達になるよ。」

「やったぁ!! よろしくな、ハルト!!」

「うん、よろしく。」

 

2歳児、そんな喋んねぇよ。

 

 

 

こんな感じで、ものすんごい出会い方だったけど、俺はうちはシスイと友達になった。

この後結局、ずっと喋り続けて、修行はお預けになった。……けどまぁいっか。

 

 

 

 

 

 

 

あぁ……。俺は3歳なんだって言ったら「じゃあ、兄ちゃんだ!!」って喜ばれて、嬉しかったのは秘密だ。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「ただいまー。」

「おかえりってばね、ハルト。」

 

シスイと別れた後、タダで帰してくれる訳もなく、またすぐに会う約束をしてきた。

 

喋りすぎたのか、外は夕方になっていた。

 

「……? ハルト、なんかいい事あったの??」

「……うん。うちはの中に、同じくらいの年の子がいたんだ。」

「そう。よかったわね。」

 

 

さすが、ナルトの母さん……。すぐ気づかれた……。

 

 

「そうだ! ハルト、さっき、ミナトから連絡があったってばね!」

「ん?」

「明日、ミナトの班が忍の学校に先輩として訪問するらしいの。ハルトも遊びに行ってみれば??」

 

忍の学校と言えば、アカデミーに間違いないとは思う。

けど……あれ?ミナトって、このタイミングで班持つことあったっけ??

 

 

「父さんの班……??」

「ミナトも遂に班を持つことになったってばね!!」

「そうなんだ。」

「すごいかわいい女の子と、天才とバカ。みんな中忍だけど、可愛いのよ。」

 

絶対、リンとカカシ先生とオビトだぁ……。

え、その三人が組むのって忍界大戦じゃなかったっけ!?今、そんな佳境なの……!?

 

 

「今は平和だから、そんなことも出来るのね。」

 

……もはや原作は無視か。

 

 

「僕が行ってもいいのかな?」

「今日、ミナトに聞いてみるといいわよ。ハルトが忍に興味を持ったって、泣いて喜ぶわよ。」

 

原作がそのレールを走ってないことには、もはや驚かなくなっていた。だって、俺っていう存在自体が、そのレールを無視してるんだから。

 

アカデミーか……。確かに、カカシ先生たちの年齢を見れば、どんな感じかわかるかな。

 

 

 

俺は全くわかってなかった。

アカデミーで起こる大きな変化を。

 

 

 

 

 

ちなみに……、帰ってきた父さんにアカデミーの見学に行きたいと伝えたら、

 

 

「クシナーー!!! ハ、ハルトが忍に興味を持ったよ!!!」

 

と泣いて喜んでた。

 

……これ、飛雷神出来るとか言ったら、どうなるんだろ。





短めですみません。


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未来変革の起点者

こんにちは。たくさんお気に入り登録をして頂き、そして感想をいただき、とても嬉しいです。

ありがとうございます。これからもどんどん投稿していきます。よろしくお願いします。


 

「じゃあ、頑張ってね。」

「でも、僕は見てるだけだよ。」

「それだけでも大事なことよ!」

 

アカデミーに行く日、俺は父さんと一緒に出る。

いつもよりもしっかりした、けど動きやすい格好で、白い襟付きのシャツに黒い半ズボンで出かける。ナルトというよりは、どっちかというとサスケに似てる配色だなー……。

 

「さてと。ハルト、行こっか。」

「うん。母さん、行って来るね。」

「行ってらっしゃい!!」

 

 

もちろん、飛来神が出来るなんて言ってないから、歩いて向かう。……んー、いつ言おうかな……。

 

「ハルトはどんな修行をしてるんだい?」

「へっ!?」

 

な!?え!?バレてんのっ!?

 

「クシナが言ってたよ。ハルトの服がたまにボロボロになってるから、いじめられてるのかと思った、ってね。」

 

……ってことは、母さんも知ってるのか。

さすが、ナルトの父さんと母さんだ。

 

 

「隠してたわけじゃないんだよ?」

「ん! 修行することは悪い事じゃないし、ケガしてないならとりあえず良しとするよ。」

「ありがとう。」

 

父さんは、俺の頭を撫でてくれた。……あぁ、これはナルトにも味わって欲しいなぁ。

 

 

「それで、ハルトは一人でやってたのかい?」

「うん。」

「よしっ。じゃあ、今日は色んな人とやってみよっか!」

「??」

「今日はね、アカデミー生と僕の部下が手合わせをするんだ。ハルトもやってみなよ?」

「えっ……、そんなの出来るわけないよ。」

「そんな、弱気になんないの。ハルトなら出来るよ。」

 

 

いや、そこじゃなくて。

絶対、先生が許可しないし、変に目つけられたくないんだけどなぁ……。

 

先生よ、頼むから許可しないでくれっ。

 

 

「ハルト、残念だけど講師は俺だからね。」

「……ココロヨマナイデ。」

「あはは! ハルトもまだまだだなぁ。」

 

だめだ。なんか、フラグ立ってる気がする……。

 

 

 

もはや、諦めながら集合場所のアカデミー学校の校門に向かった。

 

「お、いたよ。」

 

 

父さんの目の先にいたのは、想像通りの人たち。

 

 

 

「ミナト先生ー!!!」

 

まだ、闇堕ちしてないオビトが大きな声で、こちらに声をかけた。

横にいるリンさんとカカシ先生は、すぐに俺の存在に気づき、疑問の顔を浮かべた。

 

「おはよう。今日は、時間通りかな。」

「先生。その子は誰ですか。」

 

 

……おぅ、そんなに敵対視しなくても。一応、見た目は子どもなんだから。

 

「そんなチャクラの量の子どもは見たことありません。」

 

……すんません。俺が悪かったです。

 

 

「初めまして。波風ハルトです。」

「あー! ミナト先生の息子さんですか??」

「そうだよ。まだアカデミー生じゃないけど、連れてきちゃった。」

「きちゃった、じゃないですよ、先生。」

「まーまー! カカシ!! いいじゃねぇかよ!

 

 

俺はうちはオビトだ!! 先輩だから、なんでも聞いていいぞ!!」

 

カカシ先生の冷たい視線を遮るように、オビトが自己紹介をしてきた。

 

「私は、のはらリンよ。よろしくね。」

「お願いします。」

「こいつははたけカカシ。愛想ねぇけど、怖がる事ねぇからな。」

「あ、……はい。」

 

 

「なんで、俺の自己紹介をお前がしてんだよ。」

「どうせ、お前言わないだろ!!」

「もー!! カカシもオビトも喧嘩しないの!!」

 

原作でも見たことのある光景。それを見て気づいた。

 

 

もしかして、オビトを闇落ちさせなければ、ナルトが狙われることもないんじゃないか。

オビトがトビなわけで、オビトが木の葉にいればナルトを狙うやつもいなくなる……??

 

 

安易な考えかもしれないけど、試してみる価値はある気がした。

 

 

 

「はいはい、そこまで。3人とも行くよ。ハルトも着いておいで。」

「っしゃー!! ハルト! 一緒に行くぞ!!」

「あ、はいっ。」

 

……これは、ナルトと息が合いそうだな。

 

 

───────────────────────

 

 

「ってことで、少ない時間だけど君たちに教えられることがあれば、教えるからね。」

「「「「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」」」」

 

「よーし! 後輩たちよ!! 俺になんでも聞けよー!!」

 

「うわぁ、あの人がカカシさんかー!」

「アカデミーを首席で合格した、すげぇ人なんだろ!!」

 

 

「ここでもカカシかよ!!!」

 

カカシ先生って既に有名なんだな……。

 

「とりあえず、手合わせしてみようか。」

 

 

何やかんやで始まった組手。カカシ先生やリンさんはもちろん、相手にされていなかったオビトさんも、結局はこの時代にアカデミーを卒業した人たち。アカデミー生はうまく受け流され、その差は歴然だった。

 

 

カカシ先生たちの動きを見るのに夢中で、俺は気づかなかった。

 

 

 

3人の動きを見ている俺のことを、

 

 

 

「……。」

 

 

 

 

父さんが見ていたことを。



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三年の成果

たくさんのお気に入り、そして評価。さらには感想まで、ありがとうございます!

どれもとても嬉しい限りです!
今回も、みなさんの期待を裏切らない内容であることを祈っています。


 

 

 

「あそこで、悠々と見てる餓鬼は誰だよ!!」

 

始まりはそんな言葉だったか。

 

 

多分、クラスの中で一番実力があって、なおかつ一番威張っていたやつなんだろうな、とすぐに分かった。

散々、周囲を馬鹿にして、そんなクラスの前で初めて負けたところを晒したのだから、八つ当たりしてるのだろう。

 

……だからって、俺にしなくても。

 

 

「あんなチビが、なんでこんな所にいるんだよ!!」

「チビで悪かったな。」

 

あ、やべ。声に出しちゃった。

 

「ハルト!?」

「いい度胸してんな。来いよ、俺が手合わせしてやるよ。ちゃんと手加減もしてやるぜ?」

「ハルトはまだアカデミー生でもないんだぞ!」

「ここにいるからにはそれなりの覚悟があるよな?」

 

 

え、何?挑発されてんの?俺。

 

 

忘れないで欲しい。

俺は、見た目は3歳児だが、中身は原作知識ありありのガッツリ大人だ。なんの努力もしてないのなら、言われてもしょうがないが、少なくともお前よりはやってる。

 

「わかりました。お願いします。」

「ハルト……」

 

「「……。」」

 

カカシ先生と父さんにすごい見られてる気がしたけど、止める気は無いようなので関係ない。というより、ここまで来たら、俺の実力を知ってもらういい機会かもしれない。

 

 

そんなこんなで、俺は今、アカデミー生の一人と向き合ってる。

もちろん武器は禁止で、体術だけ。と言っても、俺のことを知らない人は、その体術ですらやってないと思っていると思うが。

……まぁ、そんな訳はない。

 

「僕が危険だと思ったらすぐに止めるからね。

 

 

じゃあ、始めっ!!」

 

 

「くたばれ、クソガキ!」

合図と同時にまっすぐ突っ込んできた。アカデミー生ならもう少し冷静に戦えよ……。

 

──パシッ!!

 

 

「!?」

「!!」

「……!!」

 

向かってきた手首を軽く横に弾き、よろけたところに横から蹴りを入れた。

 

手でガードしたようだが、押されて後退し、少し気を抜いたところを見逃す俺ではない。

すぐに間合いを詰め、パンチをくり出す。当たって重心が偏れば、どんなに体格差があったって、脚を払える。

脚を払えば、支えるものがなくなり、そのまま重力に従って倒れるだけ。

 

 

「甘ぇな!!!」

「おいっ!! 武器は禁止だろ!!!」

 

オビトがそう叫んでいた。

俺の前で倒れたのは分身で、背後の木の上からクナイが投げられた。

 

父さんの方を見たら、……助ける気は無いのかな??

 

まるで、「お前なら大丈夫だろ?」と言わんばかりの笑顔でこちらを見ていた。

 

 

「まあ……、いっか。」

 

さっきまで授業で使っていたのであろう、木に刺さっていた手裏剣を抜き、クナイに当てて相殺した。

 

「なっ!?」

「おぉ……、」

 

勢いを失い、落下するだけのクナイを空中でキャッチし、近くの木を蹴る。

 

 

 

──チッ

 

完全に背後をとった。木の上のため、他の人からある程度の距離はあった。

 

 

 

「アカデミーで習ったでしょ。

 

ルールや掟を破るやつはクズだ、って。」

「!?!?!?」

 

 

 

 

 

「そこまで!!!」

 

小さな声でそう囁いた後、タイミングを見計らったように、父さんが止めの合図を言った。

 

───────────────────────

 

 

「……。」

 

あの後は俺が出ることもなく、カカシ先生たちとアカデミー生が組手をしていたのを見ていた。

それでも、時折、女子生徒たちが「すごいよねー。」と俺の方をチラチラ見ていたのは、すごく気になった……。

 

 

「ハルト。どうだった?」

 

帰りはゆっくり二人で帰っていた。

 

「楽しかったよ。カカシさんたちの動きを見てるのも、勉強になったし。」

「……。」

 

そう言うと、突然、黙られた。

変な事言ったかな……、と思って父さんの方を見ると、

 

 

「ハルトって三歳だよね?」

「……そうだよ?」

 

本当のような、嘘のような……。

 

 

「ハルトはどうしたい?」

「……。」

「ハルトの実力なら、アカデミーどころか中忍も行けるんじゃないかな?」

 

いやいや!すらっと下忍をとばさないで!?

 

 

と言いつつも、確かにアカデミーに入学したいのは山々だった。独学じゃ限界があるし、何より、忍になれば実践が積める。この時代だし、年齢なんて関係なく、きっと本番に出してくれる。

 

それでも……、

 

 

「僕なんてまだまだだよ。だから、アカデミーはまだいいや。

 

父さんが暇な時に、修行つけてくれたら嬉しいけど……。」

「もちろん、いいよ。分からないことがあったら、聞きにおいで。」

「うん!ありがとう!!」

 

アカデミーにはまだ入れなかった。

俺にはどうしても一緒に入学したい奴がいた。

三歳児とは思えない記憶を持ってるとはいえ、現時点で、俺と組めるのは一人しかいないと思っている。

 

 

 

「後、三年たったら入学するよ。」

「ん?三年??」

 

 

うちはシスイ。

 

あいつしかいない。というより、あいつに俺を選ばせるくらいの忍になりたいと思った。

 



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忍としての才


こんにちは。
たくさんのお気に入り、本当にありがとうございます!とても、嬉しいです!
感想もお待ちしております!




 

 

──サワァ……

 

 

髪の毛の間を風が通り過ぎて、耳元でサラサラと聞こえる音に心地よさを感じながら、俺はそのまま地面に仰向けに倒れた。

 

 

「うわぁーーんっ!!」

「!?」

 

木の葉にある人気の少ない、小高い丘。今日は、母さんと父さんとピクニックに来ていた。父さんも母さんも任務が久しぶりに無かったから。

 

まだ準備するから、俺は遊びに行ってきていいと言われ、やって来たのは木の葉を一望できる丘のてっぺん。たまに吹く風が、すごく気持ちがよかった。

そんな中、俺の耳に届いた泣き叫ぶ声。すぐに起き上がり、周囲を見渡すと、少し先にある大きな木の下で子どもが泣き、お母さんがあたふたしていた。

子どもが泣いて指さす方には、木に引っかかった風船。多分、お母さんは忍じゃないんだろう、とってと泣いて喚く子どもをあやしていた。

 

 

 

「大丈夫ですか?」

「僕、迷子かな??」

「あ、いえ。泣いてるのが聞こえたので……。」

 

とりあえず来てみたら、逆に心配されてしまった。

 

「この子が風船離しちゃったのよね……。」

「僕がとってあげますよ。」

「……えっ!」

「ほんと!? 兄ちゃん!!」

 

いや、ちょっと待て。多分、お前は同い年か年上だぞ、……身長的に。

 

「ちょっと待ってて下さい。」

 

 

そう言って、俺は木の方に向かった。跳べば届きそうだけど、どうせなら修行の成果を使うのもありだ。

 

そう思って、そのまま木の側面を地面と水平になりながら歩いた。そう、サスケとナルトが競って修行したあれ。

 

 

 

「僕、忍だったのね。」

「はい。……これ、どうぞ。」

 

登りきって、風船をとったあとは、そのままジャンプして地面に降りた。

 

「ありがとう!!」

「今度は、離しちゃダメだよ。」

「うん!!!」

 

 

 

 

 

「さすが、ハルト!」

「すごいってばね! ハルト!!」

 

男の子とお母さんが行ったあと、やって来たのは俺の父さんと母さん。

 

「……いつからいたの?」

「大丈夫ですか?、の辺りからかな。」

「父さん。それ最初だよね?」

 

そうだったかな?ととぼける父さんと、

 

「いつの間に、チャクラコントロールそんなに上手くなったの!」

 

と、興奮しながら俺に抱きつく母さん。

 

「か、母さん……、苦しいよ……。」

「もう! さすがハルトだってばね!!」

「んー、やっぱりアカデミーに入れたいなぁ……。」

「ミナト!! ハルトはまだ子どもだってばね!!」

「わ、わかってるよ……。」

 

 

……相変わらず、母さんの前では弱いなぁ、父さんは。

 

そんなこと思いながらも、そんな2人が大好きなんだ。

 

 

───────────────────────

 

 

──パシャ、パシャ、パシャ

 

 

「……。」

 

目を閉じ、神経を集中させ、胸のあたりで印を組む。

 

 

──ザーーーッ!!!

 

「おぉ……、」

 

俺の周りの水が、俺を中心に周囲を水の壁で覆った。

 

 

「ハルトは細かいチャクラコントロールが上手なのかもね。」

「そうなの?」

「木を昇るのも、水面に立つのも繊細なチャクラコントロールをするための第一歩なんだ。」

 

俺と父さんが話している場所は大きな湖の上。俺が木登りが上手いのを見て、別の日に父さんと一緒にここに来ていた。

俺がやったのは術の名前とかはなく、自分のチャクラを水に馴染ませて、壁を作る。……まっ、そんな感じ。

 

 

「もっと勢いをつければ壁になって“水遁・水陣壁”の術になるよ。その為には大量のチャクラがいるから、今はまだ無理しなくていいんじゃないかな。」

 

 

……きっと出来る。

何故かわかんないけど、そんな確信があったから、後でやってみよっと。

 

「後は……“分身の術”かな??」

「!! ……もう?」

「ハルトなら出来るよ!」

 

わぁ、スパルタとかそういう話じゃないよ、もう。

 

「と言っても、分身はチャクラの量じゃないからね。実践よりも、知識が先かな?」

「うん。」

 

やった、と俺は心の中で思った。

三歳児しかいない家庭に教科書はないし、忍術の本も、家で見たことなんてなかった。

 

 

 

 

 

帰ったら俺のを見せてあげるよ、と言われ、早く見たかったので、今日はもう帰ろうということになった。

 

「あ、丁度いいしチャクラ紙、使ってみる??」

「……、」

「……あぁ、忘れてた。チャクラ紙ってのはね、」

 

 

……危なっ!!普通にうん、とか言っちゃうところだったよ!!!

 

チャクラ紙ってのは、人が持っているチャクラの性質をはかる紙。火・水・風・雷・土。この五代性質のうち、大抵の人は何かしらの性質を持って生まれる。チャクラ紙はその性質を紙の変化で知ることが出来る。火なら燃えるし、水なら濡れる。風は一直線に切り込みが入り、雷は紙にシワができる。土はボロボロになって崩れる。まっ、こんな感じの説明をされた。

 

あぁ、原作にはなかった設定として、チャクラを流し続ければ、表れる性質は一つじゃないらしい。

 

「はい、じゃあこれね。」

「父さんがやったらどうなるの?」

「ん? そうだね、見せてあげるよ。」

 

……なんで、ちょっとドヤ顔なの?

 

 

父さんが持つチャクラ紙は、チャクラが流れた瞬間、真っ二つに切れたかと思ったら、シワになって、最後には燃え尽きた。

 

「俺は風をメインとした、火と雷の性質を持ってるんだ。」

「へー!」

 

まさか、三性質持ちだとは思わんかった……。

 

 

「じゃあ、ハルトもやってみて。」

「うん。」

 

身体の前で持ち、チャクラを流した。

 

「……おぉ。」

「……、

 

 

 

 

クシナーーー!!!! やっぱり、ハルトのことアカデミーに入れよう!!!」

「急に何言ってるてばね!!!」

 

父さんが、もう見えていた家に向かって叫びながら走っていった。

父さんが興奮するのも無理はない。……ていうか、だからさっき、水陣壁の術が使える気がしたんだ。

 

 

 

 

俺の持つチャクラ紙は真ん中で切れた後、シワになってから、……濡れた。

 

「僕も三つか……。」

「さすがだよ! ハルト!!!」

「ぐえっ、」

 

すごい勢いで戻って来た父さんに、抱きつかれた。

 

 

 

これはチートなのか??神様にも会ってないのに、チートなんて持ってていいのか?

 

……まさか、フラグだったりしないよね!?

 

 

 

正直、他の人とは違うところで心配している俺だった。

 



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シスイとの日常

 

 

「ハルトォォォォォォ!!!!」

 

 

──ヒョイッ

 

「ギャァァァァァァ!!!」

 

俺の横を突っ走っていたやつを遠目で見守ってると、しっかりとUターンして戻ってきた。

 

「止まれるスピードで走ってよ。」

「ハルトがかわさなければ、止まれたぞ!!」

「それは止まれるって言わないの。」

 

うちは一族の集落の入口で、俺が待っていた相手は、騒がしいこの男。うちはシスイ。

 

「やっぱり慌ただしいね。」

「そりゃあ、うちは一族の警務部隊長の家族が、増えるってんだからな!」

「だからシスイは追い出されたんだね。」

「追い出されてねぇ!! 俺はハルトと遊びたかったんだー!」

「はいはい。」

 

うちはは厳重警戒の感じだ。なんせ、警務部隊長に第一子が産まれるんだから。

大人たちはその行く末を見守っているので、子どものシスイは御用なしということで、俺と一緒にいる。

 

 

 

 

「っし! やりに行こうぜ!!」

「そうだね。」

 

そう言って走り出した俺達が向かったのは、森に覆われた演習場。

 

「いつも通り、忍術は俺は分身だけ、ハルトは飛雷神だけな! 後は体術と武器だけ!」

「いつも思うけど、僕は飛雷神使っていいの?」

「俺は飛雷神をかわしたいからいいんだ!!」

 

同時に後方に跳び、構える。

 

 

「行くぜ!!」

 

──ザッ!! …キーーンッッッ!!

 

目にも止まらぬ早さで体をぶつけあい、クナイや手裏剣が甲高い音で弾かれ合う。

かわし、かわされ。ぶつけ、ぶつけられ。

 

それを繰り返すうちに、段々とズレが出てくる。それは、常人なら見逃すほどの些細なズレ。

 

 

「……。」

「やべっ!!」

 

無意識に交わしたクナイが、その囮だと気づいた時には、もう遅い。投げるクナイの全てに、印が仕組まれており、それは目印となって中にとどまる。

 

 

──シュンッッ

 

目の前にいた影が、そこにあったチャクラが、一瞬で背後に感じる。

 

──ダンッッッ!!!

 

 

「ぐっっ!!?」

 

重力に従って、そのまま地面に落下する。

落ちた地面では砂埃が舞い、一人はそこに降り立った。

 

 

 

 

「くっそー!! また負けたー!!」

「僕も危なかったよ。まさか、飛雷神を見破られると思わなかった。」

「やるってわかってんのに、動けねぇ!!」

 

飛雷神の存在を、俺は、シスイにだけは教えてた。というか、初めて会った時に思わず使っちゃって、それをまさかのシスイが覚えてた。……お前、二歳児だろ。

 

最近始めた、俺とシスイの遊びいう名の修行。忍術を使うと、明らかに公平さに欠けるから、お互い一つの忍術以外は体術と手裏剣術のみ。

 

 

そんで、こっから……

 

 

「っし、準備できたぞ!」

「わかった。」

 

目を閉じて集中し、周囲を認知したところで、高く跳ぶ。八個の手裏剣を投げ、続けざまに四個の手裏剣を投げ、最初に投げた手裏剣に当てる。

 

「おぉ!!!」

 

あちこちに隠された十二個の的の全てに当てる。体力を消耗した後に、いかに精密さを欠かさないか、という修行。まぁ、その内容はイタチとかがやってたパクリなんだけども。

 

「木の裏にもきっちり当ててるなー!」

「木の裏は回転かければ当たるけど、視界から縦に重なってる木の方が難しかったよ。」

 

 

「よっしゃ! 俺の番!!」

「ちょっと待ってよ。」

 

シスイとは違うところに、十二個の的を取り付ける。

 

「いいよ。」

「よっしゃ! 行くぜ!!」

 

 

 

さっきまでの騒がしさはどこいったのか、と

言いたくなるくらい、静かに集中する。

 

 

──シュンッッ!!!!

 

俺と同じように高く飛び上がり、手裏剣を投げ、後から追加で四つ投げる。

 

キーンッ!という甲高い音が響き、ぶつかりあった手裏剣が方向変えて、的に当たる。

 

 

「どうだ!」

「んー、残念。一個、ズレてるかな。」

「何っ!? 絶対、いけたと思ったんだけどなー!!」

 

いや、二歳でそこまで出来りゃ、すごいだろ。

 

 

 

 

 

「ハルト! 俺、決めた!!」

「!? ……何を?」

 

的を片付けていると、シスイが急に叫んだ。思わずびっくりしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「絶対、ハルトのパートナーになれるような忍になる! んで、二人で班になろうぜ!!

 

ハルトに合わせられるのは俺だけだ、って周りにも、ハルトにも言わせられるような忍になってやるよ!」

「……。」

「ハルト??」

 

 

 

 

 

声が出なかった。反応出来なかった。

ほんのつい最近、誓ったことをまるで見透かしたように、この男はすぐに答えてみせた。

 

 

「あはははははっ!!!」

「!? ハルトが壊れた……。」

 

さすがだ。さすが、あのイタチが兄のように慕った男だ。

笑いすぎて、涙が出てきた。

 

「ありがとう。」

「!? ……なにが?」

「……

 

僕に出会ってくれて?」

「!?!? ……だったら、俺もありがとうだ!!」

「!?」

「俺と友だちになってくれてありがとな!!!」

 

 

 

 

 

二歳児に泣かされてていいのかよ、俺。

 

こうやって、人をひきつけていく。

持ち合わせているカリスマ性と、見合う実力。それは、善人も惹きつけ、……悪人も引きつける。

 

 

 

 

 

『じゃあ、兄ちゃんだ!!』

『絶対、ハルトのパートナーになれるような忍になる!!』

 

 

慕ってくれてるやつを殺されるほど、呑気ではない。

俺だって、慕ってくれてるやつには、それ相応に応えたい。





《謝罪》
今回、必須タグである“オリ主”のタグを付けておらず、運営側から警告を受けたため、一時的に、この小説が非公開となっていました。
オリ主のタグが付いていなかったことで、不快な思いをされた方、そして、応援してくださる読者の方には、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

最早、言い訳にしかなりませんが、オリ主タグは決して悪意があって付けなかった訳ではありません。完全に、必須タグだということを忘れていました。必須タグではなく、普通のタグで掲載してしまっていたため、検索除外に引っかからなかったのが今回の問題です。

申し訳ありませんでした。
これからは、一層、そういう点に気をつけて小説を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。


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誕生した兄は、俺にとっちゃ弟


たくさんのお気に入り、評価や感想、ありがとうございます!



 

 

「ミーコートっ!」

「クシナ、来てくれてありがとう。」

「ううん! ……おめでとう!」

 

 

だいぶ容態が落ち着き、会いに行けることがわかると、母さんに連れられて、すぐにミコトさんとイタチの元に向かった。

 

部屋にはミコトさんと、多分、看護師さん的な方が二人。イタチのお父さん、フガクさんは一族の仕事でいないらしい。

 

「ハルトくん。来てくれてありがとう。」

「いえ。おめでとうございます、ミコトさん。」

「ふふ、ありがとう。相変わらず、クシナよりもしっかりしてるわね、ハルトくんは。」

 

 

それからミコトさんと母さんが二人で話しているのを、出してもらったお茶を飲みながら横で聞いてると、

 

「ぅー、」

「……。」

 

うわぁ、可愛いなぁ……。

かけられていた布団から、小さな手を出して俺の指を握っていた。……もちろん、イタチが。

 

握られていない指で、赤ちゃん特有のすべすべの肌を撫でると、少し笑ったような気がした。

 

 

こいつが、この男が、木の葉の闇を背負い、一族を滅亡させ、そして大罪人となるのか……。

 

──いーや、そんなことはさせない。

 

俺のあとに生まれたからには、絶対にそんなことはさせない。今回は、シスイだって一緒に守ってくれるはず。

傲慢と言われても、その代わりにどこかで知らない人が死んでるとしても、

 

 

 

 

 

自分の手の届く範囲は、守りたい。

忍としても、一人の人間としても。命に対してそれ相応の覚悟を持って、この世界を生きると、

 

この時、俺は決めた。

 

 

 

「プレゼント。一緒に、頑張ろうな。」

 

周囲に聞こえないような小さな声でささやき、イタチの手を握った。

 

 

そして、

 

「キャー、キャッキャツ!!」

「あらあら、イタチ。もう、ハルトお兄ちゃんに遊んでもらってるの?」

「ハルトも、もう仲良くなったの?」

「うん。早く、イタチくんと遊びたい。」

「ふふ、まだ気が早いってばね。」

 

 

まだ弱い、けど、確かに流れてるチャクラに逆らわないように。驚かせないように。

 

 

 

そっと、俺のチャクラを流した。

 

 

───────────────────────

 

 

「“火遁・豪火球の術”!!!」

「“水遁・水陣壁”。」

 

 

 

──ドカーーンッッッ!!!

 

火と水が、ものすごい勢いで反応し、辺りは真っ白な水蒸気で覆われる。

 

 

──ブン

 

低い音が響いたと思いきや、白い煙の中から、ハルトが一気にシスイに近づき、攻撃する。

 

「はっ!? また新しい術かよ!!」

「“真空剣”。風のチャクラを纏わせて、その殺傷力をあげる。」

「どわっ!?」

 

普通のクナイでは防ぎきれずに、後ろに吹っ飛ばされるが、水面の上を弾かれるように跳ねる。

 

「……沈めばいいのに。」

「なんか、すげぇ怖いこと聞こえたんですけど!?」

 

一定の距離を保って、構える。辺りはまだ、若干モヤがかかっていた。

 

 

「言い忘れてたけど……」

「?」

「“真空剣”の効力は殺傷力を上げるだけじゃないよ。むしろ、それは後付けだから。」

「……。」

 

剣だからといって、間合いをとっていれば安全という訳では無い、というのがこの術の真骨頂。

 

 

──シュンッッ!!!!

 

その場で勢いよく、剣が空を切る。すると、

 

 

 

──ゴワッ!!!

 

「まじかよっ!」

「この術は、ある程度間合いがあっても、剣を振った衝撃波を相手にとばすことが出来る。」

「あぶねっ!!!」

 

 

高くとびあがり、その攻撃をかわす。

下にいるであろう相手に目を向けるために、目を凝らすが……

 

 

「!?」

 

その時、目の前にあったのは、ハルトの使う特注のクナイ。ハルトの十八番、飛雷神の術式が書かれているクナイが、シスイの目の前に迫っていた。

 

が、以前とは違う。何が起こるかわかっているシスイは、交わしてはいけないことを知っている。かと言って、そのクナイを弾き飛ばそうとするが、時すでに遅い。

 

 

「勝負だ!!」

 

──シュンッッ!!!

 

 

 

クナイを構えた先に、飛雷神で飛んできたハルトが現れた。

 

 

──キーンッ!

 

クナイ同士がぶつかり、下から弾かれたハルトのクナイが、ハルトの手から離れる。

 

 

「っし!」

「残念。」

 

飛雷神の術を交わしたと思ったシスイは、背後から聞こえてくる声に一瞬、反応が遅れた。

 

「なっ!?」

 

上から蹴りを食らって、重力のままに落下した。

 

 

──バシャーーンッッッ!!!

 

 

 

 

 

 

「くっそ、絶対、防げたと思ったのに……。」

 

シスイが弾いたクナイを持っていたのは、ハルトの分身で、そのクナイにも飛雷神の術式が仕込まれていた。弾かれたクナイは、そのままシスイの背後にとび、そこにハルトがとんだのだった。

 

 

「忍術を使ってやんのは、やっぱ楽しいなー!」

「体術だけの方が、いいんだけどなぁ。」

「なんでだよ!!」

「……疲れる。」

「そんなハルトに勝てないのが辛い。」

 

体術から始まった、俺とシスイの修行は、既に忍術を使ってでのものになっていた。

 

そして、

 

「的のセット、完了!」

「いくよ。」

 

 

的当てゲームも、的が二十個にまで増え手続いてた。

今では二十個も、俺もシスイも余裕でクリアできる。……そろそろ増やそうかな。

 

 

 

イタチが生まれてから一年が、シスイと出会って、二年が経とうとしていた。



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契約の儀式


たくさんのお気に入り、ありがとうございます!
独自設定、独自解釈がどんどん入っていきます。
そして、ハルトくんはどんどんチート化していきます。


 

 

「……。」

「父さん? 僕の話、聞いてる??」

 

 

俺、なんか変な事言ったかなぁ。

 

目の前にいるのは、全く反応しなくなってしまった俺の父親である波風ミナト。

 

 

「……ハルト。」

「……はい。」

 

急に神妙な顔になり、何を言われるのかと思わず構えてしまった。

 

 

 

「やっぱりアカデミーにはいろう!」

「!?」

「ミーナートー!!!」

思わず突っ込む前に、母さんが止めにきてくれた(父さんの息の根を)。

 

 

「クシナ! ハルトに口寄せの術を教えて、って言われたんだよ?」

「へー! ハルトってば、もうそんなこと知ってるのね!」

 

そう。俺は、父さんに口寄せの術を教えてもらおうとしてたのだ。こればっかりは、想像で出来なかったから。

 

そもそも、契約とかよくわかんないし。

 

 

まぁ、まだ子どもの俺が口寄せとか言い出したら、興奮する気持ちはわかるけども。出来れば、落ち着いて欲しい。

 

「ハルトは、ミナトに教えてもらいたいのよね?」

「うん。」

 

 

 

この後、親バカ全開の父さんは、「ほんとに可愛いんだから……」と言いながら、教えてくれることになった。

 

 

 

『木の葉の黄色い閃光』っていう異名が、似合わないなぁ。

 

 

───────────────────────

 

 

「口寄せの術は、異空間にいる口寄せ動物を、こちらの世界に呼び寄せること。

そのためには、口寄せ動物と契約を結ばなきゃいけないんだ。契約の方法は、その動物次第なんだ。」

「父さんの口寄せは?」

「ん、俺の見せてあげるよ。やり方も見てるといいよ。」

「うん。」

 

そう言うと、父さんは親指を噛み、血を垂らして印を結ぶ。

 

 

「“口寄せの術”!!」

 

地面に父さんを中心に術式が展開して、巨大な煙が発生して、その中からは想像した通りの動物が現れた。

 

 

『なんじゃあ、ミナト! なんか用か?』

「おぉ……。」

 

想像よりでけぇ……!

 

「ごめんよ、ガマブン太。ハルトがお前を見たいって言うからさ。」

『あぁ? ハルトぉ?』

「ん! 僕の息子さ。」

 

そう言うと、目を下に向け、俺のことを見下ろしてきた。……うわぁ、迫力やば。

 

『こいつ……、ほんとにガキか? チャクラの量、どうなっちゃがる。』

「そこは、僕の息子だからね!」

『……お前は、ほんとに呑気じゃな。』

 

 

父さんとガマブン太が話しているのを横目で、俺は自分の口寄せ動物を考えていた。

 

『ワシと契約するわけじゃないようじゃな。』

「ハルトのチャクラ量なら、自分のチャクラだけで呼び出せそうだからね。

 

それでお前が呼ばれたら、それはその時だよ。」

『ほうか。まっ、頑張るんじゃな、ガキ。』

「? はい、ありがとうございます。」

『おまんのような強力なチャクラなら、やばい口寄せ動物が引っかかる可能性もあるじゃろう。

 

半端な気持ちなら、死ぬで。』

「頑張ります。」

『……。ミナトによう似とんな。』

「え? そうかなぁ。」

 

──呑気なところが、と言っていたのは聞こえなかったことにしよう。

 

 

「じゃ、ハルトもやってみようか。」

「うん。……ガマブン太さんは解除しなくていいの?」

『ワシは興味があるだけじゃ。気にすんな。』

「はぁ……。」

 

 

父さんに教えてもらった印を結ぶ。

 

口寄せ動物は流されたチャクラの質と量に応じて、引き寄せられてくるらしい。

大きければ強いという訳では無い。カカシ先生のパックンも小さいけど強いし。

 

 

 

「“口寄せの術”!!」

 

煙の量は大きくない。が、

 

 

『こりゃあ、当たりよった!』

 

ガマブン太の反応からすると、……あたったらしい。

さてと、契約内容は何かな……。

 

 

煙の中にいる口寄せ動物の気圧で煙が吹き飛び、その姿がはっきりと浮かび上がる。

 

 

『まさか、尾獣と同族がやって来るたぁな。』

「これは……、俺の知らないハルトの実力を、口寄せ動物が感知したってことかな?」

 

よく分からないけど、話の内容からすると、尾獣の同族、つまり狸とかタコとかそういう動物の口寄せは、レベルが高いということか。

 

 

そんで、俺の前にいるのは……、

 

「狐……、白い狐?」

 

白狐。白い狐は、幸せを呼ぶ幸運の狐だけど、この世界じゃ、九尾の九喇嘛と同族ってことか。

 

 

『お前が……、我を呼び出したのか。』

「はい。僕と契約を結んでくれますか。」

 

まぁ、無駄だとは思うが、とりあえず交渉。

 

『お前のような子どもに、我を操れるとは思えんな。』

「どうすれば契約してくれますか。」

『……諦めぬのか。

 

ならば、我を屈服させてみよ。死んでも知らぬが。』

 

 

なるほど。つまり、この白狐と戦って勝てばいいわけだ。

 

「わかりました。」

『良い返事だ。

 

 

 

 

 

……ゆくぞ。』

 

うーん。俺はここで気づいた。

 

父さんとガマブン太がそんなに反応するってことは、この白狐の実力は相当ってことだ。

つまり、かなり本気でやらないといけない。……バレるよなぁ、まぁ、いいんだけど。

 

 

 

『ほうけてる場合ではないぞ。』

「!?(はやっ!)」

 

ちゃんと視界に捉えていたはずなのに、気づいたら横にいた。

 

『“狐火”』

「!?」

 

え、火遁とか使えちゃう感じ!?

 

と、驚いてる場合じゃない。白狐の周りに円形で浮かぶ火の玉が、次々とこちらに迫っている。九尾の同族と言われているだけあって、相当な威力の火遁だった。

……しょうがない。父さんに言い訳するのは大変そうだけど、今はそんな事考えてる場合じゃなさそうだ。

 

 

「“水遁・水陣壁”」

「!!」

『ほぉ……。』

 

水蒸気となって相殺する。……シスイと同じ威力か。

 

 

 

『どんどんゆくぞ。“雷獣”』

 

次は雷遁かよっ!

 

「“真空剣”」

 

全身に電気をまとった獣と化した白狐は、硬化した身体で突進してくる。風遁のチャクラをまとった真空剣じゃなければ、突進を防いでも感電死だ。

 

『よく防いだな。』

「……。」

 

 

どうしてこんなに早く感じるのか。一つだけ可能性はあるけど、早すぎてその瞬間が見えない。それに追いつくには、自分も同じ速さでついていかなければならない。

 

「ない、なんて確証はないか。」

『……何?』

 

 

腰のポーチから巻物を取り出し、白狐に向けて開くと、空中にたくさんのクナイが放り投げられる。

巻物を捨て、すぐに印を組む。

 

「“風遁・花散舞”」

 

花びらをまとった強風が、辺り一帯に広がり、視界を遮る術だが、

 

『クナイも一緒にとばすたぁな。』

 

風の威力で、中に放り投げられていた大量のクナイも、周囲に突き刺さる。

 

 

『こんなものに当たるとでも?』

「まさか。……“雷遁・風華雷光”!!」

 

飛ばしてある花びらに雷をまとわせ、攻撃する。雷の威力は術者のチャクラによる。俺は最大限のチャクラで攻撃した。

これは、俺の最も得意とする術。なぜなら、派手でかっこよくて、すごい練習したから。理由がダサい?……使えりゃいいんだよ。

 

 

『子どもとは思えん術だ。

 

が、我に当たることはない。』

「それはどうでしょうか。」

『! ……では、追ってこい。』

 

 

ここだ。あの速度の移動。そして、チャクラごと捉えることが出来なくなるあの感覚。

 

そんなのは、あの術しかない。

 

 

 

 

 

 

 

──タン

 

 

 

『!?』

「捕まえました。」

「!!!」

『あのガキ……。』

 

 

白狐の身体に背後から触れた。

 

白狐が使っていた術は、間違いなく飛雷神の術だった。その速度に追いつけるように、俺も飛雷神を使ったまで。

ただ、白狐には納得いかないようで……、

 

『なぜ分かった。我がここにとぶこと。』

「……僕がそこに誘導したからです。

 

僕の術は完全に見破られると思いました。なら、それを逆に利用して、抜け道を作ればいいと思ったんです。雷を流し続ければ、わざわざそれにあたる場所に出てくるとは思えなかったので、流れてない場所を作って、あなたがそこにとんでくるよう仕向けました。」

『なるほど。』

 

そう言うと、白狐は満足したかのようにふっ、と笑い、俺の前に座った。

 

 

『お前を主と認める。

 

 

名はなんという。』

「!」『ほぉ……。』

 

「波風ハルト、です。」

 

『ハルトか。

 

我との真の契約方法は、名の交換。互いの名を認知することで我と契約を結ぶ事ができる。』

「はい。」

 

……ってことは、戦う必要なかったのかよ。

 

 

 

『我の名は【弥白(やしろ)】。

 

お前を主と認め、従うことを誓う。』

「!! はい、お願いします。」

 

こうして俺は、無事に口寄せ動物との契約を済ませた。……しかし、

 

 

 

 

 

 

「ハルト。」

「何、父さん。」

「飛雷神なんて、どこで覚えたの!?」

「あ、……いや、」

「風遁だけじゃなくて、水遁と雷遁まで……!」

「それは……、」

 

 

 

 

「俺に隠さなくてもいいじゃないか……。」

「そこ!?」

 

目の前で、ものすごーく落ち込まれた。

いや、ほんとに。【木の葉の黄色い閃光】っていう通り名、返上したくなった。



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君が生まれる日のために。


お気に入りがものすごい増え、嬉しいです。
ありがとうございます!

それに比例して、低評価も増えていくのですが……。やはり、嬉しさの方が大きいですね(笑)

これからもよろしくお願いします!




……あ、次回から新章です


 

 

「……。」

『……、』

「おぉ……、」

『……、』

 

 

──バッ!!

 

「可愛いなぁぁぁぁぁあ!!!」

『た、助けっ、主ぃ!』

「おわっ!? 喋れんの!? こいつ!!」

「喋ってるわけじゃないよ。頭の中に語りかけてるだけ。

 

弥白、僕は助けられないから、頑張って。」

「お前、やしろって言うのかぁ!!」

『ぎゃぁぁぁぁ!!』

「……シスイ、死んじゃう。」

「ほえ!?」

 

少しだけ腕の力を緩めたすきに、弥白はシスイの腕から飛び出して、俺の背後に逃げた。

 

「大変だね、人気者も。」

『……、』

「嫌ではないんだね。母さんは帰ってくるの楽しみにしてたよ。」

『!?』

 

 

口寄せ契約をした白狐の弥白を、初めて母さんに見せた日にも、今日と全く同じことが弥白の身に降りかかった。

 

『モフモフされるのは、もう、ごめんだ。』

 

帰るなり、いきなりガン見されて、お互い見合ってたはずなのに、弥白が先にジリジリと後退し出して、母さんが急に抱きついた。

 

 

 

「すごいなー! ハルト!!」

「父さんに教えてもらったんだよ。契約するまでは、大変だったけど。……ね、弥白。」

『……。』

 

申し訳ないのか、恥ずかしいのか、ふいっ、と顔を背けられた。……だいぶ、被害受けたのは、こっちなんだけどなぁ。

 

弥白と死闘を繰り広げたせいで、父さんには飛雷神の存在などもろもろバレるし、風遁だけじゃなくて水遁も雷遁も扱ってしまったから……。

あの後、色々と説明するのはすごく大変だった。

 

 

「まっ! ハルトの父ちゃんに知ってもらえたなら良かったじゃんか!」

「んー、そういうことでいいのかな。」

「小さいこと気にすんなって! それより! 早く修行しようぜ!!」

「うん。」

 

最早、恒例となった、出会ったらまず一対一から始める。謎のルール。

 

 

 

──キーンッ!!!!

 

もはや、合図すらなく始まり、中心でクナイがぶつかり合う。

忍術も繰り出そうとしたが、

 

 

 

 

 

「ハルト! シスイ!!」

「「!?」」

 

それは、突然呼ばれた俺たちの名前によって遮られた。

 

「イタチ?」

「なんで、お前、こんなとこにいるんだ?」

 

木陰から出てきたのは、まだ一歳になったばかりのイタチ。

 

「ミコトさんに言ってある?」

「……? 母さんはいなかったよ。」

 

だからと言って家から出てきていいわけじゃない。

 

「しょうがない、今日は終わりだな!」

「そうだね。」

「俺も修行する。二人と一緒にやる。」

「お前はまだ一歳だからダメだ、イタチ!」

 

二歳で、俺に向かってクナイ投げたお前が何言ってんだ。

 

「二人だけずるい。」

「イタチももう少し大きくなったらね。そうしたら、三人でやろう?」

「じゃあ、見てるだけならいい?」

「まぁ……、それなら危なくないしいいんじゃないか?」

「とりあえず、今日はダメ。ミコトさんが心配する。」

「そうだな……。」

 

結局、イタチの家で三人で遊ぶことになった。シスイも修行したいだろうが、初めて出来た弟的存在のイタチにはとことん甘い。

 

 

この時の俺の言葉に嘘はない。

シスイもやってたし、イタチが二歳になったら、三人で修行したいと思っていた。

 

 

 

……でも、それが叶うのはもっと先のことになるとは、この時の俺は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、

 

「ハルト、」

「ん?」

 

 

「……こいつに触ってもいいか?」

『!?』

 

「触りたいの?」

「……、

 

 

もふもふしてる……。」

「優しく触ってあげてね。」

「!! うん。」

 

 

あぁ、写真に収めたい。

優しく弥白に触るイタチと、今まで最も優しく触られて、気持ちよさそうな弥白の、癒しの絵が広がっていた。

 

 

───────────────────────

 

 

「……。」

『……。』

「……んー、」

『……、

 

 

 

 

 

 

主。』

「ん?」

『暇だ。』

「……解除する?」

『主と一緒にいたいのだ、我は。』

「……。」

 

なんだそれ。ちょっと可愛いな。

 

「じゃあ、弥白も一緒に考えよ。」

『さっきから、主は何を悩んでいるのだ?』

 

 

今日は久しぶりに外出せず、家の中で一人で考え事をしていた。基本的に外にいることの多い俺が家にいるのは珍しく、弥白も不思議がっていた。

 

……口寄せ動物と一緒にいるなんて変?そんなこと、俺が一番感じてるよ。俺が解除しようとすると、弥白がものすごい悲しそうな顔するんだよ!解除なんて出来ないよ!!

 

 

「封印術を作ろうと思って。」

『そうか、封印術か……。

 

 

 

 

 

封印術を作っておるのか!?』

「そうだよ。」

『主。封印術に限らず、術を考えるというのは難しいということを知っているか?』

「知ってるよ。」

 

俺のオリジナル忍術である“風華雷光”も結構、時間がかかった。でも、俺は既に取得のコツは掴んでいる。

 

 

 

それはイメージが重要であるということ。

 

基本的に誰からも教わってない俺が、忍術を使えるようになったのは完全に元の世界での完成体のイメージを知っていたから。

つまり、オリジナル忍術も、世界の理論に反さないように作れば、イメージを固めるだけで簡単に出来るということだ。……というか、既にそういう風に作ったことがあるんだから、間違いない。

 

 

「既にある強力な封印術は、どれも代償が大きすぎる。だから、強力で命を落とすことのない封印術を作ろうと思ったんだ。」

『……主が決めたことならば、我は口を出さぬ。協力しよう。』

「ありがとう、弥白。」

 

この封印術は、もちろん九尾の封印に使うためのもの。原作では、ナルトには九尾の陽の方を“四象封印”で半分を封印したけど、もう半分の陰の方は父さんがその命を代償にする“屍鬼封陣”で自分の身体に封印した。

 

多分、陰の方が強力だから四象封印じゃ抑えきれないから、命を代償にする封印術じゃなきゃいけないんだろうな。

 

 

しかし、それでは意味が無い。

何が起こるのか分かっているのならば、それの対応策を考える。それが俺の役割だ。

 

 

「と言っても、命と同等の代償ってなんだろう……。」

 

九尾の陰の方を封印するための封印術となれば、それ相応の代償が必要だ。命以外に……、ね……。

 

 

『例えば、封印したいものをチャクラ量で抑え込むことは出来る。』

「じゃあ、大量チャクラを封印術式に組み込むとかは?」

『が、日が経てばチャクラは自然と減少する。封印された者が、チャクラが吸い取られることに耐えれればの話だ。』

「そっか……。」

 

 

そもそも九尾をチャクラ量で抑え込むこと自体、無謀か……。

 

「そういえば……、封印術って鍵式だよね?」

『そのような形のものもあるが……。主、どうしてそれを知っている?』

 

やべっ。

 

「まぁ、それは気にしないでよ、弥白。」

『……よいが、』

「封印術自体は強力じゃないけど、その鍵を強力にするのは?」

『なるほど……、しかし、封印術と鍵のレベルがある程度、同等でないと、鍵を開いた時に封印していたものが一気に溢れるぞ?』

「鍵を段階式にして、少しずつ開くようにする。」

 

 

いいぞ、いいぞ。どんどんイメージが出来てきた。

 

『主の考えることは、新しくて面白い。』

「そう?」

『あぁ。そして、筋が通っている。不可能なことではない。』

 

俺よりも絶対に知識のある弥白からのお墨付きを貰い、俺の頭の中で既にそのイメージはできていた。

 

「弥白。協力してくれる?」

『我に出来ることであれば何でも。』

 

 

 

 

封印式はそんなに難しいものじゃない。鍵に細工をする。

命に代わる代償を、忍術の性質の量にする。

例えば、基本性質なら五段階で開け閉めができ、逆に言えば、五重で鍵を閉めているということ。

それに、時が経てばヤマト隊長とかの木遁とか、いれればいい。

 

初期段階は、俺と弥白の風・水・雷・火。そして、カカシさんの土の五段階。

チャクラ量しだいで、封印の鍵を強く出来るようにすればより一層いい。

 

 

「……あれ。」

『?』

 

だめだ。原作では、父さんが先に屍鬼封尽で陰の方を取り出して、残りをナルトに封印していた。でも、今のままじゃ、ナルトに封印することが先になってる……。

 

 

「上手くいきそうだったのに……。」

『主は誰と戦っておるのだ?』

 

その言葉で、弥白の方をはっと見る。

 

『!?』

「弥白は九尾の同族なんだよね?」

『? ……そうだが。』

「九尾と、直接関わりとかってあるの?」

『そうだな……。

 

 

同族の我らは、その恩恵を、僅かだが受けることが出来る。』

「恩恵?」

『簡単に言えば、チャクラを分けてもらえるということだ。』

 

 

なんと。

 

「それは陽の方?」

『……なぜ知っているのかは、もはや聞かぬが。その通りだ。』

 

つまり、弥白は九尾の陽の方と結合出来るということ。俺が四象封印を覚えて、その細工を父さんにしてもらえば、弥白が引っ張り出す九尾の陽の部分を、先に封印出来るかもしれない。

 

 

「……、うん。うまくいきそうだな。」

 

母さんに、怪しまれないように教えてもらおう……。

 

『主。』

「ん?」

 

俺の頭の中を書き出していると、弥白が声をかけてきた。

 

『主の父には言わぬ方が良いぞ。

我を呼び出した時と同じことが起こる。』

「……そうだね。秘密にしておくよ。」

 

 

 

 

母さんにもふもふされる弥白と、父さんに質問攻めにされる俺。

 

そんな未来が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな未来を……、見ていたかった。

 





「では、近日中にでも決行いたしますか。」
「そうしてくれ。小さいうちから取り込めば、操りやすい。」
「はっ。」




膝まづいていた者がその場から消え、残ったのは杖をついた男だった。



木の葉の闇の部分で、静かに事が動き出そうとしていた


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第二章~波風ハルト、誘拐事件
まだもう少し


お待たせしました、新章です。

事件も大事。こういうのを乗り越えて強くなっていきます。


 

 

それはなんの予告もなく、起こってしまった。

 

 

いつも通り、父さんは任務に行き、母さんにはシスイとイタチと遊んでくると伝え、うちはの集落の中でシスイと1歳になったイタチと遊んでいた時だった。

 

 

「暗くなってきたし、そろそろ帰るよ、シスイ。」

「えぇー……、もうちょっとやりたかった。」

「また明日ね?」

 

色々と文句を言ってるシスイと、まだ見ているだけのイタチを抱えて歩き出す。一応、俺が一番歳上なんで、2人を送り届けてから帰る。

 

 

 

「……。」

「でな! そん時の父さんが……って、聞いてんのか? ハルトー??」

 

いつもなら楽しく色んなことを喋りながら、帰るけど、今日は違った。

 

―――シュンッ!!!!

 

「「!?!?」」

 

突然、大量のクナイが俺らのいた場所に突き刺さり、僅かにかすりはしたが、イタチとシスイを一緒に間一髪でかわした。

 

「誰だ!」

 

すぐに、飛んできたと思われる方向にクナイを構える。

 

 

出てきた相手に、俺は目を疑った。

 

「……暗部のお面。」

 

いや、暗部は今は三代目の配下にあるはず。

 

 

……ってことは【根】のやつらか。

 

 

 

いろんな動物の面をつけた5人もの忍の姿。

チャクラを抑えているのか、チャクラ量が少ないようにみえた、が、そんなことはあるはず無かった。……クソっ、子どもだからって馬鹿にしやがって。

 

 

 

「シスイ、走れる?」

「へっ? なんで??」

 

正直、この部隊に囲まれた時点で、逃げるというのは無謀だった。飛雷神を使ったとしても、正直逃げ切れる自信が無かった。

 

守りながら戦えば、結果は目に見えてる。ならば、戦力を削ぐことを覚悟で一人でやるしかない。

多分目的は、幼いが将来有望なシスイだ。最悪、イタチも狙われかねない。考えられる最善の策だった。

 

「僕がすきを作るから、シスイはイタチを連れて全力で逃げて。」

「で、でもっ!!」

「うちはの集落に着いたら、すぐにイタチのお父さんにこのことを言ってほしい。

 

 

お願い、シスイにしかできない事なんだ。」

 

その言葉でわかってくれたのか、渋っていたシスイも納得した。シスイにイタチを渡す。

 

「“影分身の術”」

 

既に身につけた影分身を出す。出した分身は11。そのうち1人をシスイたちにつける。

 

 

「行くよ、シスイ。」

「おう!」

 

俺、波風ハルト。

本戦の初陣はVS根。

 

 

 

……レベル高すぎんだろ。

まぁ、新しく覚えた術を使える場って思うことにしよう。

 

 

 

そんな文句をたれながら、素早く印を組む。

 

「“水遁・爆水衝波”!!」

 

俺の背後から、大量の水が津波のように押し寄せる。根のやつらは難なくかわし、シスイたちも俺の分身が避けさせた。だが目的は、別に当てることではない。

 

 

 

辺り一帯を、水気の多い地帯にすること。

おかげで得意性質が水じゃない俺でも、水のないこの地帯で、楽に水遁が使える。

 

 

「“水遁・雨刺氷(あめしひょう)”!!」

 

上空で急激に冷やされた大量の氷が降る。暗部たちは消し飛ばそうとするが、どんなに粉々になっても殺傷能力が消えることがないのが、この技の特徴だ。攻撃すればするほど、粉々になって攻撃数が増えるだけ。

 

暗部が上空に気を取られている間に、シスイたちは逃げた。

 

 

「追えっ!」

「「「「はっ!!」」」」

 

ちっ、やっぱり狙いはあいつらか。だが、

 

「行かせるわけねぇだろ。

 

“雷遁・感激波”!」

 

先程流した水を通って電流が流れ、その衝撃で水が電気の通った壁のようになる。これを使うためにさっきの水遁をやったと言っても、間違いではない。

 

 

「通れるもんなら、通ってみろ。通りきる前に感電させて、永眠させてやるよ。」

 

諦めたのか、先に俺を始末した方が早いとわかったのか、五人が一斉にこちらに向かってくる。

 

 

「行くぜっ!」

『『『『『よっしゃぁ!』』』』』

 

オリジナル+影分身が動き出す。分身が腰の刀を抜き、印を組む。

 

 

『“真空剣”』

 

最早、得意忍術となった風遁の一つの術をくり出す。

ちなみに、オリジナルの俺は戦ってない。基本二対一で、俺は援護だ。

すきを見て、印を組む。

 

「“雷遁・感激波”!」

 

技発動と同時に、分身が高く飛び上がる。そして空中で印を組む。

 

『“雷遁・雷鼠激震”!!!』

 

上空から、十人×無限発の電気の弾が落ちる。

 

 

これが、俺が修行で最も重きを置いて行ったこと、“一人コンビネーション”

その名の通り、分身体とコンビを組む技で、話の合うやつが全員幼くて戦えないとわかり、必死に考えた結果だ。

いやぁ、チャクラが多くてよかった。

 

敵がほとんど痺れて動けなくなり、後は大人たちが来るまで待つだけ。

木の葉の暗部が攻め込んだとなれば、何かと揉め事になりかねないが、戦闘を行ったのが俺ならば、うちはが拗ねることもない。

幸い、俺の父さんは波風ミナトなわけで、ちゃんと話せば、うちはとの溝が出来るなんてことないと思う。

 

そんな呑気なことを考えながら、待っていた時だった。

 

 

「っっ!?!」

 

突然、身体に力が入らなくなる。確かにチャクラは結構使ったが、こんなになるまで使った覚えはない。

それに、これはチャクラの消費によるものではない。

 

「チャクラが暴れてんのか……!?」

 

俺の身体ん中で、チャクラの流れが乱れていた。

攻撃を受けた覚えのない俺が、思い当たるのは一つだけだった。

 

「最初の……っ、毒付きクナイかよっ!」

 

シスイとイタチに負担がかからないようにと、回避のスピードが少しだけ遅くなっていたのは事実だった。

立っていられなくなって膝をつく。嫌な汗も出できた。

 

戦闘中に毒が回ることがなくてよかった。……とりあえず、全員倒したから大丈夫だろ、

 

 

 

 

 

 

そう、気を抜いたのが間違いだった。

 

 

 

「ほう、手練の駒をおくったが、このような小僧にやられるとはな。」

「なっ!?」

 

バク転でかわす。俺の元いた場所で、刀が空を切った。

 

「反射神経も上々、感知能力も高いか。うちはの小僧は逃したが、お前を捉えればむしろ良い結果が得られそうだ。」

「誰がてめぇの言う通りにするなんざ言った。勝手に話進めんな。」

「あの毒を受けてなお、自我を保てるとは大した小僧だ。」

 

 

正直、強がり100%だ。立てているのも、自分が一番驚いている。

 

目の前に現れた男は、先ほどの敵と同じような面をしており、すぐに暗部だとわかった。しかし、チャクラの量がさっきのヤツらとは比じゃない。

 

 

―――くっそ、万全だったらこんなやつ……

 

「てめぇ、何者だ。」

「面をしている者が、自ら名乗ると思うか。」

「……、

 

 

 

 

 

 

 

いーや、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力づくで聞くまでだ。」

「!」

 

俺は先の戦闘で放っておいたマーキング、新たな敵の後ろのクナイに飛んだ。敵の刀とクナイが交わり、キーン!!という甲高い音があたりに響く。

 

 

「“風遁・花散舞”!」

 

後ろに跳びながら印を組み、台風のような強風が、大量の花びらを巻き上げるようにして敵に向かう。

暗部ほどの感知能力であれば、目くらましにとならない……が、その弱さが肝。

 

「“忍法・漂花睡”!」

「!!……ちっ、」

 

 

漂花睡は花びらを使った、俺が初めて覚えた幻術の一つ。花びら一枚一枚に幻術をかける術が仕込んである。

 

「“雷遁・風華雷光”!!」

 

かわす必要のない弱い術と、避けようにも避けられない幻術の花びらに、一気に最大級の威力を持つ術を施す。

 

 

俺の得意性質・風以外の性質で最も得意とする術だった、

 

……が、

 

 

 

 

「くっそっっ!!」

「チャクラが全快であれば、今の術で死んでいたかもしれぬな。」

 

完璧に決まっていた。タイミングも、力の配分も、何もかも。

ただ、毒で乱され、消費していた俺のチャクラでは、最大級の威力は出なかった。

 

 

「……っっ、」

 

腰の刀を抜く。正直、チャクラは練りたくねぇけど、そうも言ってられない。

 

「“雷華刀”!!」

 

 

刀が雷をまとい、チャクラをまとっているような色になる。ただ違うのは、時々バチバチという高音が鳴ることだけ。

 

 

 

目の前の敵と、俺自身のチャクラ。

結果的に俺はこの二つを相手にしていた。

 

なるべくチャクラを練ることを避け、体術で攻め込む。

 

「……ぐっっ、、」

「動きが鈍くなってるぞ。」

「なっ……!?」

 

背中を取られ、クナイが振り下ろされる。

 

―――ボフンッ

 

 

「分身か……、あの状態でまだチャクラを練れるとはな。」

「うるせぇ、死にたくなかったら、その口閉じろ。今すぐにでも、てめぇの首飛ばしてやろうか?」

 

立場は逆転。俺は敵の背後をとった。

 

 

 

 

面を外し、顔を確認しようとした時だった。

 

 

「「「「“雷遁・四柱しばり”!!」」」」

「はぁっ!?」

 

俺と敵の四方位から、巨大な岩の柱が出てきて、囲むように電撃が流れる。

実質、出られないようになってしまった。

 

 

飛び上がり、逃れようとしたが、

 

「“弐の式”!」

 

そう言うと、二つの岩から電撃を纏った縄のようなものが出てきた。その縄が、俺の両腕を縛る。

 

「……っ、」

 

 

気絶するほど強いものではない。かと言って、逃れるほどチャクラがあるわけでもない。俺にはただ、大人が早く来ることを祈ることしか出来なかった。

 

 

 

「……しぶといな。…………、やれ。」

「はっ。」

 

俺が戦っていたやつの指示で、四人の忍が再び印を組み直す。

 

「“雷遁・十六柱しばり”」

「……っ、

 

 

 

 

ぐぁぁぁあああああ!!!」

 

意識が飛びそうになる。腕だけじゃなく、足や腰にも電撃を纏った縄が巻き付き、さっきまでとは全く比べ物にもならないほどの電撃が、俺の身体に流れる。

 

 

 

―――やるしか……ねぇか。

 

最後のチャクラを使い、俺の腕を拘束している電撃が流れる縄を引きちぎる。

 

 

「……なっ!?」

 

まさか引きちぎられるとは思ってなかったようで、印を組み直すのが少し遅くなる。

そのすきを見逃すほど、アホじゃない。

 

 

 

「“口寄せ”っ!!」

 

親指を噛み、血をもう片方の手のひらに付けて、口寄せの術式を檻の外に展開する。

狙い通り、電撃の檻の外に弥白が表れた。

 

『主!』

「弥白! 頼むっ!!」

 

その言葉を聞くなり、弥白は走り出した。

 

指示をせずとも、何をするべきなのか、あいつには分かっていた。

 

「追え。何かは知らぬが、捕まえて消せ。」

「白狐は九尾の同族。てめぇらなんかに捕まるかよっ。

それにあいつの逃げる場所は、こっちの世界じゃねぇ。」

「……。」

 

 

そう言うと諦めたのか、リーダーの男がこちらを向き、言った。

 

「なるほど。

 

口調が違って気づかなかったが、その見た目と忍びとしての才、時空間を操る術……、

 

 

 

 

貴様が、噂のミナトとクシナの子か。」

「……。」

「黙れば余計に分が悪くなることを知らんのか。」

「……。」

「まぁよい。貴様を連れていけば、全てわかることだ。」

「……るせぇよ。」

「何?」

「てめぇの方こそ、べらべらべらべらうるせぇよ。俺の親がどうした。

んなもんに怯むくらいなら、今すぐ消えやがれ。」

「……。」

 

次は向こうが黙った。

 

 

行かせる訳にはいかない。

 

気付かれる訳にはいかない。

 

 

そして、巻き込む訳にはいかない。

 

 

 

早くしなければ、父さんたちよりも先にうちはが来る。今ここで、木の葉とうちはの溝を作る訳にはいかない。

 

 

 

木の葉の根と、

 

「…………様、」

「!!」

 

 

 

 

 

 

そうか、あんたかよ。

 

 

声は聞こえなかったが、その口の動きではっきりと分かった。

 

 

 

なおさら出会わせるわけにはいかなかった。

 

 

 

再び集中を高め、遠くにいる最後の影分身に意識をつなぐ。

 

 

 

―――気づかれてはならない、と。

 

 

うちは一族を足止めをして、すぐに父さんの所にでも行けばいいんだけど、それよりもうちはがこいつらと争うことの方が避けたかった。

 

 

「(やべぇ……意識、きれる……。)」

 

ナルトの誕生まであとどれくらいだろうか。

いや、その前にサスケか……。

 

その前には帰ってきたいな……。

 

 

……いや。それよりも、

 

 

 

 

まだ、もう少し……

 

 

 

父さんと母さんと、いたかったなぁ。

 

 

 

俺の意識は完全に切れた。



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誤解を解いて


たくさんのお気に入り、感想、ありがとうございます!!

【オリジナルヒロイン】のタグを追加させていただきました。登場はまだまだ先ですが……。


 

 

「???」

「ミナト?どうしたの?」

「いや……、何でもない……かな?」

 

突然、不思議な感覚を味わったミナトが、窓の外に目を向ける。

外は既に夕日が沈みかかっており、暗くなっていた。

 

「ハルト、遅いわね。」

「そうだね。いつも、こんなに遅いのかい?」

「んー、シスイくんとイタチくんを送ってるみたいだけど、こんなに遅くなったことはないわね……。」

 

 

ミナトとクシナの心に、少しばかりの不安が浮かんだ。

 

 

 

 

 

『……ナト!!』

「!?」

「えっ!? なんだってばね!?」

 

家のリビングに、突然、時空間の穴が出来た。

 

「クシナ、下がって。」

 

すぐに、クシナを守るようにミナトが構える。が、そこから出てきたのは、

 

 

『ミナト!!』

「え!? ……弥白??」

 

時空間の穴から出てきたのは弥白。そのことにミナトとクシナが安心出来たのは、一瞬のことだった。

 

 

『うちは一族の集落の辺りを探れ!!』

「「!?」」

 

普段、落ち着いている弥白からは考えられないほど焦ったように言われ、只事ではないとすぐに感じ取った二人は、すぐにうちは一族の集落、ハルトがシスイやイタチと一緒に遊んでいる場所に、意識を向けた。

 

 

 

 

「何これ……、結界でも張ってあるの? 全然、感じれない……。」

 

顔を歪めて、結界が張ってあることに疑問を感じるクシナとは違い、感知能力が高いミナトには、

 

 

 

 

「ハル……ト……っ!?」

「!?」

『主……っ!』

 

 

ハルトのチャクラが、感知出来なくなる瞬間を感じてしまった。

 

 

「ミナト!? 何!! ハルトがどうしたってばねっ!!!」

「……うそっ……だろ……っ!」

 

いつも冷静なミナトが、まるで信じられないものを見たような顔をしていた。

 

 

『案内する。ついて来い!』

「あぁ。誰か、他に連絡しているのか。」

『シスイがイタチと共に、イタチの父に。と言うより、主がそのように指示して、二人を行かせるために一人で残ったのだ。』

「その二人は?」

『主の分身がついておるが……。』

 

「ねぇ! ミナト!! ハルトに何があったってばね!!」

 

全てを理解して、それでもなおミナトが冷静でいるのは、彼が、【忍】だから。

 

「……。」

 

 

それに対して、クシナは忍である前に【母親】だ。

 

「ミナト!!」

「っ、

 

落ち着いて聞くんだ、クシナ。……ハルトのチャクラが感じられなくなった。」

「……どういう、い……み……?」

 

クシナも優秀な忍。その意味を理解できない忍ではなかった。

 

「俺が確認してくる。」

「私も行く!!!

 

ミナトが何と言おうと、ついて行くってばね!!」

「……、

 

 

分かったよ。一緒に行こう。弥白、案内してくれ。」

『分かっておる。』

 

既に時間がなかったのと、クシナが言い出したことを、ミナトが止められたことは無い。

 

クシナの心が強いことを信じて、現場に向かった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

「フガクさんっ!!!!」

 

既に暗くなっており、辺りも静かになっている時間。──そろそろイタチたちも帰ってくるかしら、とミコトが言っていた頃。

 

その家の扉が、突然、激しく開いた。

 

 

「シスイか?」

「どうしたの!? 大丈夫??

 

それに……ハルトくん?」

 

玄関の床に手をついて、息を切らしているシスイの後ろにいたのは、何に怯えているのか、その腕の中で震えているイタチを抱いたハルトだった。

 

「ハルトは、影分身か。」

「はい。

すみませんが、時間が無いのでイタチのことをお願いします。それから、出来ればシスイのことも家まで送ってあげて下さい。」

「えぇ、それは構わないけど……。」

「ハルト!!! 今はそうじゃねぇだろ!!」

「……シスイ。落ち着け。何があった。」

 

まだ四歳と三歳のハルトとシスイ。それでも、いつもうちはの集落で修行してる二人のチャクラを感知していたフガクには、二人の実力が、既に一人前の忍と同等かそれ以上だと分かっていた。

 

 

「突然、木の葉の暗部が攻撃してきたんだ!!」

「……。」

「木の葉の暗部が……?」

 

フガクは気づいた。シスイが言ったその瞬間に、まるで──その言い方はまずい、と言わんばかりの顔をしたこと。

 

「フガクさん。彼らの狙いは、僕じゃなくてシスイとイタチ、そしてうちはにいる優秀な子どもたちです。

 

僕のことは気にしなくていいので、その子たちを守って下さい。」

「ハルトはどうなるんだよ!!!」

 

 

この時、ハルトの影分身は気づいていた。

自分のオリジナルが、新たに現れた敵に捕まり、瀕死の状態であること。

最後の力を振り絞って、弥白を口寄せしたこと。

 

自分が消えるのも、もう間もなくだと。

 

そして、オリジナルがうちはとの溝を作るなと叫んでいること。

 

 

「大丈夫。

 

ここからは大人に任せておいて。僕の父さんにも、もう連絡はいったから。」

 

そう言って、半ば強引にイタチをシスイに渡した。

 

 

 

 

「慌ただしくてすみません。後はお願いします。

 

 

 

……どうか、木の葉を疑わないで下さい。」

「!? どういう……。」

 

 

 

──ボフンッ!!

 

「!!」

 

目の前で煙となった影分身は、明らかに術者が解除した消え方ではなかった。

 

 

「……っ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っ、ハルトォォォォォォォ!!!!!」

 

 

優秀な忍であるシスイだからこそ、それが何を意味するのかを理解するのに、時間はかからなかった。

 

悲痛な叫びが、夜の空に響き渡った。



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悲劇の賜物


長らくお待たせしてしまって申し訳ありません。
少しだけ、夏休みを謳歌しておりました。

今日からまた、投稿続けていきますので、よろしくお願いします。


 

 

 

「シスイ! 待て!! 落ち着け!!!」

「落ち着いてられるかよっ!! ハルトがっ、影分身を解かなきゃならねぇ事態なんだぞ!!!」

「そのハルトをそのような状況に追い詰めた敵の前に、お前単身で乗り込んで、何になる。」

「っ!!!」

 

厳しい言葉。ただ、それが現実だった。

 

 

「ミコト。二人を頼む。」

「えぇ。」

 

 

 

 

 

 

「……俺も行く。」

「……。」

「シスイくん……。」

 

 

「ハルトは俺らを守ったんだ。俺がもっと強ければ、ハルトだけが残ることなんてなかったんだ!」

 

 

 

 

その叫びは、【自分への失意】。そして、幼い頃から目標であり、憧れであり、兄であったハルトからの【大きな友愛の喪失】。

 

 

 

「!! シスイ、お前……、」

 

“写輪眼”

 

うちは一族が持つ、三大瞳術の一つに数えられる最強瞳力。

 

大切な者が開眼に関わるこの瞳術を開眼させるということは、つまり、波風ハルトという存在が、シスイの中でそれほど大きなものだったのだ。

 

普通ならば、写輪眼を開眼したことは、その過程が如何なるものでも喜ばしいことのはずだった。

しかし、

 

 

「なんでっ!! 俺はまだ!

 

 

 

ハルトのことを失ってなんていねぇ!!!」

 

口に出していても、頭では理解している。だからこそ、それが、瞳術という形で表れてしまったのだ。

それは、ハルトの凄さを一番知っているシスイだからこそ、あの影分身の消え方だけで、全てを理解してしまったのだ。

 

 

 

 

「……シスイ、ついて来い。」

「!!」

「あなた……、」

「イタチを頼む。

 

それから、シスイの親に伝えておいてくれ。」

「……わかったわ。」

 

 

この時、フガクがシスイを連れて行くことを決めたのは、この写輪眼が大きな負の感情の中で生まれるものだから。負の感情の中で手にした強大な力は、術者に多大な影響を与え、暴走を引き起こす場合もある。

 

それは純粋な子どもであればあるほど、その力にのまれてしまうのだ。

 

 

 

だから、その監視。……そう、思い込むようにした。

 

 

 

 

 

本当は見てみたかったのだ。

 

うちは一族の天才忍者と言われるシスイに、写輪眼を開眼させるまでの影響力を持つハルトが、最後に言ったあの言葉の、

 

 

 

 

 

『……どうか、木の葉を疑わないで下さい。』

 

 

その意味を。

 

 

───────────────────────

 

 

「……ハル、ト……っ、」

『主……っ。』

「くそっ、遅かったかっ!」

 

 

うちは一族の修行場所の一つ。ミナトたち一行がそこについた時には、既に人の影も気配もなかった。

 

広がるのは、先程まで戦闘が行われていたことがわかる、クナイや手裏剣の残骸。

そして、その凄まじさを語る、……赤。

 

 

 

『クシナっ!』

「!?」

 

 

──ボフンッ!!

 

弥白がギリギリのところで、大きくなって倒れかけたクシナを支える。

 

「ごめんなさい、ミナトっ。……ありがとう、弥白。」

『構わぬ。このまま、乗っておれ。』

 

その言葉に甘えて、クシナはそのまま弥白の背中に乗った。

 

『感知できぬところに行ったか……。』

「あぁ。ハルトのチャクラももう感じない。残留チャクラはまだかなり残っているから、結界を張って移動している可能性が高いな。」

 

 

地面に刺さっている一本のクナイを引き抜く。

 

「これは……、」

『主の血だ。』

 

それは、ハルトが最初に攻撃を受けた毒付きのクナイ。

 

「かなり強力な毒だね。」

『主のチャクラが途中から乱れ始めていた。その毒のせいだろう。』

 

 

──そんな中で、弥白を口寄せしたのか。

 

チャクラが乱されている状態、つまり、自分の意識でチャクラを操れていない状態で、口寄せをすることなど、不可能に近い。というより、どんな術も発動することは難しい。

 

「お前は消えそうじゃないかい?」

『あぁ。主からのチャクラの供給は切れておらん。今も、微弱ながら送られ続けていることはわかる。』

 

そんな中で、口寄せ動物を口寄せするだけじゃなく、その存在を維持し続けている。

 

ハルトの実力はかなりのものだと認識していたが、ここまでだとは予想していなかった。

そして、そんなハルトがやられた敵の姿が、全く見えなかった。

 

 

 

 

 

 

「弥白っ!!!!」

『!? ……シスイか??』

「シスイくん、それに……フガクさん?」

「久しいな、ミナト。」

 

 

 

 

「……お二人だけですか?」

 

うちは一族の集落で起こった出来事。ハルトがシスイにうちはの大人、それも警務部隊長に伝えに行くように言った時点で、警務部隊が動くと思っていた。

 

「お前の息子から、言われたのだ。」

「!? ハルトからですか?」

 

そんなミナトの疑問を見透かしたように、フガクは答えた。

 

「木の葉を疑わないでほしい、とな。どういう経緯かは知らんが、木の葉とうちはの間にいざこざがあることを、あいつは知っていたのだろう。

だからこそ、シスイとイタチと一緒に自らの影分身も付けた。」

 

 

──シスイから言われたことが、捻れて伝わらないように。

 

「その意を組んで、来たのは二人だけだ。うちはの者には、何もされていない。こちらが怒る理由も無いからな。」

「ハルト……。」

 

 

最早、どこまでもハルトは考えていそうだった。

うちはの優秀な二人に攻撃されれば、問題になりかねない。しかし、攻撃されたのが次期火影と名高いミナトの子どもならば、話は別。

 

 

『おそらく主は、そこまで考えておる。』

「!!」

『自らの父は、里を不安に陥れるような問題にすることはないだろうと信じ、自己犠牲を選んだのだろう。』

「……そうか。」

 

 

 

 

「ミナト……。」

 

子どもが、自分を信じてそこまでしてくれた。そのことを蔑ろにする訳にはいかない。

顔をあげたミナトは、決意をした強い眼をしていた。

 

「大丈夫だよ、クシナ。ハルトは俺たちの息子だ。

 

ハルトを信じよう。」

 

巨大化した弥白に乗るクシナに優しく語りかけた。

 

「ミナトさん、……俺っ、」

「シスイくん。ハルトとの約束を守ってくれてありがとう。」

「!!」

「きっと、君だからハルトも任せられたと思うんだ。

 

それに、君の瞳はきっとハルトを助けるのに役に立つよ。」

「っ! ……はいっ!!」

 

 

そう笑顔でシスイに言うと、立ち上がり、改めて気を引き締める。

 

「木の葉で捜索隊を出してもらう。この事を知れば、三代目もお許しくださるだろう。

 

フガクさん、ここには木の葉の者が来るまで、誰も近づけないで貰えますか?余計な混乱は避けたいので。」

「あぁ。分かった。」

 

「弥白。お前は、ハルトから送られてくるチャクラに変化があったら教えてくれ。

 

今は、お前だけがハルトの生きてる証だからね。」

『分かっておる。』

 

 

 

 

 

 

「……。」

『顔を上げろ、シスイ。』

 

クシナも加わり、大人たちだけで話している時、少し離れた場所でハルトがいたであろう場所を、シスイが俯いて見ていた。

 

「弥白、大きくなったな。」

『そんなことが言えるなら大丈夫、

 

 

 

 

……でもないようだな。』

 

弥白が下から見たシスイの目には、大粒の涙が溜まっていた。

 

どんなに天才と言われている忍だとしても、まだ幼子。

そして、その年齢で兄と慕っていた人をなくしたのだ。そういう感情になるのは普通のことだった。

 

 

弥白のふわふわの毛が、シスイの俯いていた顔を上げさせる。

 

『泣くでない。

主が我を残したのは、お主らに主自身が生きていることを見せるためだ。

 

お主が泣けば、主のしたことは無駄な事になる。』

「弥白ぉ……。」

『……仕方ない。』

 

 

弥白の首に抱きつき、涙を流し、そして誓った。

 

 

 

 

──絶対、ハルトは帰ってくる。

 

───次は、俺も隣に立てるようになる。

 

 

 

『……

 

 

 

 

お主はよい忍になる。』

 



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静かな決意

短くてすみません……。
作者的に、区切りたいところで区切ってるので……、お許しください。

たくさんの評価、コメント、お気に入り登録、ありがとうございます。


 

 

 

──ペタ、ペタ、ペタ

 

冷たい床を歩き、

 

 

 

──キーーー

 

重たい金属の扉を開け、

 

 

 

 

──ガシャン!!

 

その扉を閉められる。

 

 

 

「解っ!」

 

 

「……。」

 

術が解かれると、俺の視界は初めてクリアになる。

 

 

「今日は終わりだ。明日まで大人しくしていろ。」

 

 

──バタンッ

 

 

「っ、!!!」

 

俺を連れてきた忍が出ていき、扉が閉まると同時に、壁に寄りかかった。

 

──今日は随分と抜かれたな……。弥白へのチャクラ、足りてるか?

 

 

何日経ったのか、今がいつなのか。そんなものは、初めて目を覚ました日から既に、分からなくなっていた。

 

木の葉の根の連中に連れ去られた後、目が覚めた場所は、どこか地下牢のような場所だった。

 

 

それからは毎日、同じような生活。

決まった時間に牢から出されて、冷たい鉄の上に寝かされ、チャクラをとことん奪われ、そして、何か変な薬を打たれる。

もちろん、チャクラは練れないようになっている。どんな仕組みかは知らんが、練ろうとすると、全身が燃えるように熱くなる。

だから今は、口寄せしてきた弥白を維持するための、微量のチャクラしか送れない。

 

 

「あー、きっつ。」

 

打たれてる薬も、もちろん何かわからんくて、とりあえず、身体を流れるチャクラに異物が流されてる感じだ。それが、一層、チャクラを練るのを阻害してる。

 

弥白が見たり、感じたりするものを俺が認知するには、弥白の口寄せを解かなきゃならない。そして、解いてしまえば、弥白を口寄せすることは出来ないことは、今の自分の身体を考えれば当然のことだった。

今、弥白の口寄せを解けば、俺は死んだ扱いになるかもしれない。そう考えると、怖くて解けなかった。

 

考えが無いわけじゃない。

俺を縛ってるこの術も、縛られ続ければ慣れてくる。そうすれば、ここの檻を壊して逃げることくらいは出来る。

 

ならば、今出来ることは、絶対に奴らに屈しないこと。それだけを目的に、毎日生きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だいぶ慣れてきたようだな。」

「そろそろ次の段階にいけるか……。」

 

俺が思っていた以上に、根の奴らは手強かった。

 

チャクラを練ることを阻害する術の威力は、強まったりはしていない。むしろ、そちらの方は慣れてきていた。しかし、俺に打ち込まれる異物は、適当な期間ごとに違うもののようだった。

俺は、そっちの方になかなか適合できずに、かなり苦戦していた。

 

 

「これで最後か。」

 

……最後?どういう意味だ??

 

 

「これに適合したら、あの方もお喜びになるだろうな。」

「ここまで来た者も数少ない。それに、こいつほど拒絶反応が少なかった奴も初めてだ。」

 

まぁそれは、俺が必死に耐えてたからなんだけど。

 

 

 

「じゃあ、打つぞ。」

 

余程、興奮しているのか。いつもなら、タイミングなんて分からせずに打つのだが、今回は勝手に教えてくれた。

 

 

 

 

──ドクンッ!!!

 

「!?」

 

──まじかよっ!!!

 

 

いつもの比じゃない。全身がその異物を取り出そうと、戦っている。完全に、チャクラが俺の中で暴れ回っている。

 

 

「っあ……、くっ……そ、がっ……!」

「……いつも通りの反応だな。」

「後は牢に入れておけ。耐えれなければ、こいつもそこまでだ。」

 

っ!……慣れたような反応しやがって……っ!

 

こちらの状況に全く狼狽えていないことを見ると、想定内らしい。一体、どんだけの人にこんなことしてきたんだっ、こいつらっ!!

 

 

「!! くそ……っ、……っ!!!」

 

慣れた手つきで、いつも通りの牢に入れられる。

 

「解。」

 

 

 

 

 

いつも通りに術が解かれ、クリアになった視界で捉えたあいつの顔を、俺は忘れることはない。

もちろん、面をしているから本当に顔が見えた訳では無い。それでも、

 

 

 

 

「絶対ぇ、生き残ってやる……っ!!」

 

明らかに人を見る目ではなかったことは分かった。

 

また失敗作か……と、軽蔑するような目。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その目を、俺は絶対に忘れない。

 

お前らのその面を剥がし、黒幕を見つけるまで、絶対に死なない。

 

 

 

お前らが俺に与えた力で、お前らを必ず、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この手で。



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異物は弊害か。それとも、


評価が少し上がって、モチベが上がっている作者です。
感想、お気に入り登録もありがとうございます!

いい意味で、皆さんを裏切れたらと思っておりますが……。まぁ、どうでしょう……。


 

 

「……。」

 

 

──ハァ、ハァ、ハァ、ハァ

 

 

結論を言おう。俺は、死ななかった。

自らの中に侵入した異物に、俺は勝ち、そしてそれは、この施設の中で初めての事だったらしく、俺の実験をしていた根のやつは、それはまあ、本当にお前忍か?と言いたくなるくらいの喜びようだった。

その後の指示なのか、一旦熟成でもさせたいのか、しばらくの間、俺は何もされなかった。

 

 

この期間は俺にとって、最高の時間となった。

 

 

おそらく、この薬に耐えた時点で、俺の精神は崩壊してる算段だったのだろう。加えて、あの後の俺は、全く喋らず一日中壁際で黙って座っているだけだったため、一層、精神崩壊の信憑性は高まっていた。

 

まぁ、こんなに喋れてるんだから、そんなわけないんだけど。

 

 

この実験に耐えた俺は、俺の中に適合した(らしい)異物の正体を突き止めようとしていた。根の奴らがやることなんだから、絶対に弱くなるような物じゃない。であれば、俺が逃げるために使えるものかもしれない。

そう、見込んで。

 

 

「全然わかんねぇな……。不死の力とか、そういう事じゃないのか?」

 

最初に疑ったのは、延命とか不死とかそういう力。俺に適合したその力を、黒幕に移植して同じ力を得る、みたいなこと、考えそうじゃん?

 

 

でも、心臓とかそういう血管系に、何かが侵食したみたいな形跡はなかった。

なりを潜められていたらどうしようもないけど、今も、異物の感じはあるってことは、感知出来なくなるわけじゃないらしい。

 

「後は……、チャクラか?」

 

でもチャクラの変化ってなんだ?チャクラがめっちゃ増えるとか?……これ以上、増えてもなぁ。

 

 

 

「……!!」

「“禁”!!」

 

──今日から再開か。

 

 

いつも通り、視界を何かの術で奪われる。

 

 

「……。」

「来い。」

 

──!?

 

 

いつもなら、入ってこない牢の中にまで、監視の忍が入ってきて、腕を掴まれた。

 

 

そうか……。俺は今、精神崩壊してる状態なんだっけ?

 

……もしかしたら、これは使えるかも?

 

 

───────────────────────

 

 

「やはり耐えたか。」

「はい。初めての被検体です。」

 

いつも通り、固いベッドの上に寝かされた。しかし、今日は、いつもなら感じない新しいチャクラを感じた。

 

「最終段階だ。」

 

 

 

「“解”!!」

「!?」

 

突然、術が解かれて視界がクリアになる。

 

 

視界捉えた相手を……、

 

「てめぇっ!?」

「“写輪眼”!」

「!?」

 

叫ぶ前に、そいつの持つ目・写輪眼の幻術にかけられた。

 

 

 

 

 

 

いや、正しく言おう。

『かけられたフリ』をした。

 

 

……。危ねぇ!!反射的に幻術解いちゃったよ!?

幻術を解く力は、俺の場合は先天的なもので、すぐに使えるようになった。その力を、まさか反射的に使ってしまうとは……。

 

「かかりましたかね?」

「うちはの幻術だ。かからないわけなかろう。」

 

しかもここにはチート付きだぁ……。

幻術にかかれば、流れるチャクラは乱れるし、写輪眼はその流れも見ることが出来る。それが全く読まれてないということは……、

 

 

……そういうことだ。

 

 

「では、始めますか。」

「あぁ。

 

 

波風ハルト、着いてこい。

そして儂の前で、その力を証明して見せよ。」

 

やっと会えた。

やっと見れた。

 

 

全ての首謀者であり、黒幕。

 

 

 

 

 

「ダンゾウ様。」

 

──志村ダンゾウ

 

根の設立者であり、シスイやイタチを闇へと葬った張本人。

 

 

連れていかれたのは、俺が閉じ込められている牢よりもさらに深い地下。

 

 

──なんだ、これ……。

 

眼前に広がっていたのは、エメラルドの液体に入れられたたくさんの小さな子どもたち。

 

 

「過去の失敗作を残しておいて、正解だったようじゃな。」

「こいつらと、被検体を戦わせます。」

 

面のやつととダンゾウが、何やら話し終えたあと、ダンゾウは再び俺の方を向いた。

 

「よいか。お前は今から、こやつらと戦う。

お前に適合した力が本物なら、その力を見せてみよ。」

 

 

──つまり、殺し合いをしろと。

 

話によると、俺と同じ実験をされた忍たちと戦って、その力を見せてみろということらしい。……俺自身、どんな力か分かってないのに、なんて無茶ぶりだ。

 

「本気で殺しにいかなければ、お主が死ぬ。そうなった時は、お主がそこまでだったということだ。」

 

 

 

……どこまでも腐ったヤツらだ。

 

可哀想だが、情を捨てるしかない。

 

 

 

 

お前が俺に与えたこの未知の力が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前を必ず苦しめることになる。

いや、必ず俺が、そうする。



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最強の成功作


こんにちは。
今回の話は、結構悩んで作らせていただきました。

かなり地雷だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり、私的に書きたいように書かせていただきました。
不愉快に思われた方がいらっしゃったら申し訳ありません。

戦闘描写が沢山あるので、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


 

 

「ちっ、最期まで使えん奴らだ。」

 

 

男、志村ダンゾウの声が、俺の耳まで届いた。

背を向けているため、どのような顔をしているのかは分からなかったが、それでも、何を指しての事かはすぐに分かる。

 

 

 

 

 

「この……っ、化け物め……っ!」

 

──ザシュッ!!!

 

赤い飛沫が俺の身体を染める。

周囲は既に、血の海と化しており、その全てが俺が切り捨てた忍たちであったものだった。

 

 

新たな力が開花したのか。……否。

 

俺と他の奴らとの差があまりにもありすぎて、俺の本来の力だけで制圧してしまっていたのだ。

せめてもの救いは、ここにいる忍の全てが木の葉の者ではないこと。それが無情になりやすくしており、目の前の地獄絵図を作り出していた。

 

 

 

「仕方あるまい。例の奴らを全員出せ。」

「!? ですが……、あれは我々にも制御できるものでは……。」

「奴も連れて来ればよいだろう。実験の成功を伝えれば、直に来る。」

「はっ。」

 

根の部下が下がり、俺とダンゾウだけが部屋に残る。

 

 

俺は微動だにしない。どのように写っているのかは知らないが、今の俺は幻術にかかっていると思われている。ならば、あえて疑われる行動はしたくない。

 

その様子を見て、放っておくことにしたのか、杖の音が遠ざかるのが聞こえ、背中越しでもダンゾウが離れていることが分かった。

 

 

 

 

……気づかれないように、そっとその姿を見る。

 

その背中を今すぐ刺して、ここから逃げ出したい。が、今はまだその時じゃない。

 

 

ふつふつと、確実に湧き上がるこの気持ちを抑え込み、冷静に自分の中の異物を感じていた。

 

 

 

 

 

「ダンゾウ様。お連れしました。」

 

根の忍の声がした方を見ると、明らかに先程の忍とは質も量も桁違いの忍が四人程並んでいた。

 

「奴は。」

「後から来るそうです。」

「そうか。

 

 

全員であやつを殺せ。出来なければ、お前たちが死ぬ。」

「……。」

 

 

全員!?いやいや、ふざけんなよ。

 

 

忘れないで欲しい。俺はまだ四歳なのだ。

対して、目の前に立つ忍は全員大人。

額当ては木の葉ではない、様々な国の忍。全員操られているのか、その目に生気は無かった。

 

 

 

「奴の最高傑作のお手並み拝見とゆくか。」

 

その言葉を合図に、全員が戦闘態勢に入る。

 

 

「“熔遁・灰石封(かいせきふう)の術”。」

「!?」

 

熔遁って、血継限界だろ!?

 

相手が口から石灰を吹き出し、瞬間的に固まっていく。

 

「“水遁・ 爆水衝波”っ!」

 

俺の背後から、巨大な波が相手に向かって押し寄せ、石灰を足元に来る前に、水ですべて固めきる。

 

 

 

──チャクラ、全開で使えんの楽だなぁ。

 

もっと悪戦苦闘すると思っていたのだろう。俺にかけられていた、チャクラを練ることを阻害する術は解かれていた。……幻術はかけられていることになっているが。

 

 

 

捕えられないと分かると、別の忍二人が接近戦に持ち込んできた。

 

 

「“真空剣”!」

 

刀がチャクラをまとって、殺傷力をあげる。金属がぶつかり合う甲高い音が、連続して響く。先程まで相手していた、忍とは桁違いのスピードだっだが……

 

 

──連携、というものを知らないのか、こいつら……。

 

 

「“影分身の術”!!」

 

二対一が逆転する。連携する気がない二人をバラバラにすることは容易だった。

 

二人を抑えている間に、熔遁使いを先に叩く。血継限界相手はさすがにきつい。

 

 

「“氷遁・ツバメ吹雪”」

「!?」

 

 

ちょっと待て。お前もかよ!?

 

接近戦に参加しなかった忍が仕掛けてきた術は、氷遁。原作では確か、白が使ってたっけ。その中に、こんな術はなかったから、多分、俺の原作外の知識だ……、映画かなぁ……。

 

氷のツバメがものすごい勢いでこちらに向かってくる。氷なんだし、火遁が効きそうだが、生憎、火遁は使えない。

 

「“風の刃”」

 

指先に集められた風のチャクラが真空の球となって、そこを中心に縦横無尽に無数の風の刃が飛び散る。氷くらい脆い物質なら、これで粉々だ。

 

おまけに、熔遁使いにも攻撃できた。が、

俺の頭の中では、最悪の状況が出来上がっていた。

 

 

「“木遁・挿し木の術”」

「“嵐遁・励挫鎖苛素(レイザーサーカス)”」

「ちっ……!!」

 

1ミリの狂いもなく、予想が当たってしまった。……こいつら、全員、血継限界使うのかっ!

木遁なんて、ヤマト隊長が初の成功者じゃないのかよっ!!

 

 

 

「“風遁・風壁の術”っ!!」

「「「「“雷遁・風華雷光”っ!!!」」」」

 

“風壁の術”は俺のオリジナル忍術。風の刃が俺の眼前で縦横無尽に飛び回り、通過するものすべてを切り刻む。

 

 

 

 

──くっそ……っ、

 

さすがに血継限界、しかも四人を同時に相手するのはきつい。

肩で息をして、額からは汗が流れる。

 

……ってか、ここまでしても俺の中の異物の正体はわかんねぇのかよっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「手こずってるようね。」

 

──!!

 

「来たか。」

 

 

なるほど。根の奴らだけで行う実験にしては、おかしいとは思ったが、裏であんたと繋がってるってんなら納得だ。

 

 

「最後の手段ね。」

「死んでも知らぬぞ。」

「こんなもので死ぬようなら、そこまでよ。」

 

 

高いところから見下ろす、そいつの顔を睨みつける。

 

 

──俺はまだ、

 

 

 

「やりなさい。」

「「「「……。」」」」

 

 

──死ぬわけには、……いかない。

 

 

 

「“木遁・木龍の術”」

「“氷遁・破龍猛虎”」

「“熔遁・灼河流岩の術”」

「“嵐遁・励挫鎖苛素”」

 

 

もう一人の黒幕による指示で、全員の強力な攻撃が一斉に、向かってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちくしょぉぉぉぉ!!!!」

 

 

叫びが打ち消されるほどの爆発音が、周囲を包んだ。



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新たな力~“晶遁”


もうタイトルから、拒絶反応が出そうな人は、読まれないことをおすすします(>_<;)

たくさんのお気に入り登録、ありがとうございます!本当に大きな励みになっています!


 

 

「!!」

「……来たわね。」

 

 

激しい爆発と、大量の白い煙が辺りを覆う。

その中でダンゾウは、血継限界の四人以外のチャクラを感じることが出来ずにいた。

 

が、隣の奴の言葉で確信する。──成功したのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「“晶遁・水晶牢の術”」

 

木遁使いの忍の足下が丸く光りだす。

一瞬、反応が遅れ、次の瞬間にはピンク色の物質が、その忍を包んだ。

 

 

 

「まさか、ここまで使いこなすとはね。」

 

ダンゾウの隣の忍の目線の先に写ったのは、ピンク色の物質に守られながら、敵を粉々にして倒したハルトの姿だった。

 

 

───────────────────────

 

 

 

「……危ねぇ、、、」

 

おそらく各々の最も強力な術を放ったんだと思う。正直、今までの俺の力では防ぎきれなかった。

 

 

ならば、なぜ生きているのか。もちろん、俺の中の異物の正体が判明したからだ。

 

 

──ピンクの硬質な物質……、晶遁?……か??

 

 

本能のままに繰り出された、俺を守る水晶の壁。

原作の紅蓮が使っていた術。幸い、晶遁は個人的に好きだったため、どんな術があるかというのはすぐに思い浮かび、俺を守るこの術は“紅の果実”だということも分かった。

 

「“氷遁・破龍猛虎”」

「!!」

 

少し考えているうちにすぐに攻撃が始まる。が、その攻撃が俺に当たることは無かった。術同士がぶつかり、爆発で起きた白い煙が晴れ、晶遁が盾となって全てを弾いた。

 

ハルトの周囲が、砕けた水晶でキラキラと光る。

 

ここまで強力な術も、全て防ぐ。……なんかすげぇ力手に入れた??

 

 

 

「……今度はこっちの番だ。」

 

そんな呑気なことを言ってる場合ではない。腰の刀を引き抜き、素早く印を組んだ後、刀で空を切る。

 

「“晶遁・一糸光明”」

 

刀で切り裂いた空間から、結晶のビームが敵に向かって放たれる。が、単純な攻撃に当たるほど優しい忍ではない。

 

 

 

「逃がすかよ。……“影分身の術”」

 

刀を持った分身が、瞬身の術で敵を取り囲むように移動する。

 

「「「「“晶遁・一糸光明”」」」」

 

 

四方向から放たれた結晶のビームは、また一人を仕留める。

 

「“水遁・爆水衝波”」

「“氷遁・氷河の術”!!」

 

氷遁使いが、俺の“雷遁・感激波”を封じようと、水自体を凍らせてきたが、残念ながら一度見せた連携を防がれることくらいは想定済みだ。

 

この術なら、凍らされたところで問題ない。

 

 

 

 

「“晶遁・御神渡りの術”」

「「!」」

 

 

 

 

 

 

「へぇ、……やるじゃないの、あの子。」

 

俺をこんな目に遭わせた張本人が満足そうに見ていることが腹立たしかったが、今はそれどころじゃない。

 

凍らされた水もすべて結晶化し、最終的に氷遁使いを串刺しにした。

 

 

 

──後、一人か……。

 

だいぶ、手詰まりだった。一度やった連携が通じるほど、生易しい敵ではないことは分かっている。

 

 

 

「!!」

 

ある……、一つだけ。

実戦でも、修行でもやったことなんてないけど。

 

応用は必要だが、どんな連携よりも、一番見てきた、一番憧れた連携が。

 

 

 

 

 

「俺は……負けない。」

「!」

「“熔遁・熔石拳(ようせきけん)”」

 

熔遁使いの右手の拳に、チャクラが集約され、熱を帯びているのか煙があがっていた。

 

 

 

──やるしか……ない。

 

───きっと、出来る。

 

 

────なんたって……

 

 

 

「“晶遁・結晶六角手裏剣”」

 

左手に巨大なピンク色の手裏剣を作り出し、右手は刀を持つ。

 

 

 

──ザッ!!!

 

双方が一斉に走り出す。

 

 

「当たれっ!!」

 

水晶の手裏剣を、思いっきり投げる。が、

 

 

「ふんっ、」

 

当たり前のようにかわされる。そりゃあ、そうだ。当たれなんて叫んだら、かわせって叫んでるも同じだ。

 

けど、

 

 

「かかった。」

「!?」

 

 

熔遁使いの拳が俺に触れるギリギリのところで、

 

 

 

──シュンッ!!!

 

俺はそいつの目の前から消えた。

 

 

 

 

 

 

「こっちだ!」

「なっ!?」

 

先程、熔遁使いがかわした水晶の手裏剣のところにとび、回転する手裏剣の上に乗る。

 

 

──なんたって、俺は波風ミナト(黄色い閃光)の息子だから。

 

 

 

そう。ミナトが仮面の男にやった、飛雷神の術を使った連携攻撃。すり抜けの術がない敵には、クナイを投げても弾かれるだけだから、弾かれない術に隠して、クナイも一緒に投げた。

 

とぶ前に印は組み終わっていた。刀を空中で切る。

 

 

「“晶遁・一糸光明”」

 

超近距離で敵の心臓を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ハァ、ハァ、ハァ、ハァ

 

 

 

 

疲労する中で、俺はこの時、もう一つ気づいていたことがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──俺の異物は、まだ解決されてない。



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木の葉の“表”と“裏”



こんにちは、お待たせ致しました。

今回の話はミナトが【根】の存在を知らない前提で書かせていただきました。もし違ってたら、すみません。

たくさんのお気に入り登録、感想、ありがとうございます!!


 

 

「……ただいま。」

 

絶対にいるはずなのに、真っ暗な自分の家。もしかして……と、嫌な想像ばかりする自分がいた。

 

 

「帰ったよ、クシナ。」

「……! おかえりなさい、ミナト。」

 

ついさっきまで泣いていた跡が、隠しきれていない。クシナは必死に隠そうとしているみたいだけど、

 

 

「俺の前では我慢しないでよ、クシナ。

 

隠す必要ないよ。」

 

目元の涙の跡を、優しく撫でる。

 

「大丈夫。ハルトは俺たちの自慢の息子だ。

 

弥白もいるんだから、あんまり泣いてると後でハルトにバレるぞ?」

『そうだぞ、クシナ。主が頑張っておるのに、お主が泣けば主も泣くぞ。』

「……、ふふっ。それは困っちゃうってばね。」

 

若干ぎこちないけども、少し笑顔が戻ったクシナに安堵する。

 

 

ハルトが誘拐されて、かなりの月日が経った。

あの後俺は、その場をフガクさんと弥白に任せて、三代目に全てを話しに行った。

その時に衝撃的な事実が判明した。

 

 

「それは……【根】の仕業かもしれぬ。」

「【根】……ですか?」

 

上忍の俺でも聞いたことのない部隊の名前だった。

 

「【根】の存在を知っている者は数少ない。なぜなら、その部隊はワシが既に解体したからじゃ。」

「ですが、実態はまだ残っていると……。」

「あぁ、ここまで来てしまえばもはや【根】の長の考えに心酔しておる、とも言えるのじゃろうな。」

 

火影の椅子から立ち上がり、窓の外を見たかと思えば、こちらを振り返る。その瞳には、なにか決意が宿っていた。

 

「ミナト。ワシはお前が次期火影だと目にかけておる。」

「ありがとうございます……?」

「時が来れば話さなければとは思っておったが、そう悠長なことも言ってられぬようじゃ。

 

話しておこう、木の葉の“表”と“裏”を。」

「……。」

 

 

 

 

 

そこから三代目から聞いた話は、どれも信じ難く、そして根深いものだった。

 

「タカ派とハト派がいるのは薄々気づいてはいました。

 

ですが、暗部の養成部隊の【根】という組織のことは知りませんでした。」

「暗部の養成部隊であれば、暗部の面と間違えても仕方あるまい。」

 

それはシスイがフガクに伝えたこと。

 

 

「そしてそこの長が……、」

「間違いない。

 

志村ダンゾウだ。」

「ダンゾウ様が……。」

 

三代目と同じく二代目火影・千手扉間を師として仰ぎ、その能力もさることながら、火影とほぼ同等の権力を持つと言われる、間違いなく木の葉に多大なる影響を与えている人物であった。

 

 

「本当にダンゾウの仕業であるのであれば、手際の良さも追跡が困難であることも納得がいく。」

 

そりゃあそうだ。木の葉の人間なのだから。

 

そのせいであらゆる面で障害が生じる。

もし、その部隊の模倣犯の仕業で、【根】が何も関与していなければ、こちら側の問題になってしまう。

逆に、本当に【根】の仕業であるのであれば、それはそれで問題である。

 

 

「すぐに捜索隊を編成する。

事の大きさと根の関与している可能性を考えて、事態は極秘に捜査しようと思うが、よいか。」

「はい。お願いします。」

 

 

本当は大々的に捜査して欲しかった。

 

しかし、

 

『木の葉を、疑わないでください。』

『お前の息子に言われたのだ。』

 

 

 

「……(ハルト……、頑張ってくれっ)。」

 

息子の願いを、親が壊すことなど出来なかった。

 

ハルトは既に、“木の葉の忍”であった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

『!!』

「弥白??」

 

ミナトが通常任務に着いてる時も、弥白はなるべくそばを離れずに、ついて行くようになっていた。

万が一、戦闘が始まったらすぐに時空間に逃げること、というクシナとの約束(という名の脅し)があるため、消えることがないように配慮はされていた。

 

そんなことをしたら、我が主に怒られる、と言った弥白を笑顔で黙らせたクシナの顔は記憶に新しい。

 

そしてそれは、ミナト班はハルトの事情を知っているということ。もちろん、木の葉の裏側は知らないが、オビトたちは木の葉で唯一、ハルトの事件を知る下忍だった。

 

 

弥白が突然なにかに反応し、止まってしまった。既に任務も終え帰り道だったため、特に急いでいなかったので、全員が止まった。

 

『まただ。』

「そうか……。」

『しかも、今度は強くなってる。』

「!? ……それはおかしいね。」

 

 

「強くなってるって、ハルトのチャクラがってことですか?」

 

ミナトと弥白の僅かな単語のやり取りだけで、カカシは何を言っているのかを察した。

 

『さすがだな、はたけカカシ。』

 

弥白が目を細めて、カカシを褒める。

 

「そういうことだよ。最近、弱まることが多かったんだけど、強くなってるっていうのは初めてでね。」

「囚われてる身である以上、回復してもらうってことは無いですよね……。」

『主の今の力では、自力で回復するのも難しいであろう。』

 

班の中で医療忍者としての役割を持つリンも、真剣に考える。

 

 

 

「……考えたくはないけど、何かしらの方法で新しい力を手にしたのかもね。」

「じゃあ! ハルトは実験みたいなことされてるってことかよっ!」

 

「落ち着いて、オビト。まだ可能性の話だ。」

 

と言いつつ、他に何も考えることが出来ないのも事実だった。唯一、喜ばしいことは、ハルトが生きているということだった。

 

 

『チャクラが回復したというよりは、今まで抑えられてきた何かが無くなったという感じだ。

 

そのおかげか、主が少し元気になっているのが伝わってくる。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、ハルトが手に入れた新しい力であることを、

 

まだ誰も知らなかった。



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意志と覚悟


──……やしろ。



『!?!?』
「弥白?」



──やっと、……、、、、。



『クシナ!!』
「!?」
『ミナトに連絡しろ!!』
「どうしたってばね!!」
『主の……、

ハルトの意思が聞こえている!』



その日は、ようやく訪れた。



 

「そうか、弥白が……。」

「三代目! すぐに捜索隊を出して下さいっ。」

「分かっておる。お前の気持ちもわかるが、焦るなミナト。」

 

クシナからの伝達を受けて、火影室にはミナトと三代目・猿飛ヒルゼンの姿があった。

 

「すぐにでも出したいのだが……、今、里の上忍は別の任務でいないのだ。」

 

 

この件が【根】の暗躍であること、そして、うちはが巻き込まれかけたこともあって、里の中でも極秘扱いとなっており、担当している忍は上忍ばかりだったのだ。

 

「俺だけでも行きますっ!」

「そんなことは里の長として許可できんっ。」

「っ!」

 

ミナトも分かっている。火影という立場で、民を危険な目に合わせるわけには行かないことは。

分かっていても、どこかで私情が入ってしまっていた。

 

 

 

 

「落ち着け、ミナト。お前が焦れば、出来ることも出来なくなる。」

「「!!」」

 

火影室の扉のところにいたのは、イタチの父、フガクだった。

 

「フガクさん!?」

「警務部隊か……。確かに戦力としては申し分ないが……、」

「いえ、今回は俺だけです。」

 

うちは一族の力は借りたかったが、今回は事が事だけに容易には頷けないところではあった。

 

「我らの一族が狙われていたことは既に承知しています。その事を理解している俺が一番適任かと。」

「じゃが、二人というのも……」

「後は、ミナトの部下を連れて行きます。」

「……なんじゃと?」

 

ミナトの部下といえば、もちろん、カカシとリン、そしてオビトのことだ。

 

 

「残っている忍の中で、事を理解しているのはあいつらだけです。」

 

幼いハルトでは、関わった人物はそう多くはなかった。が、関わった人物にとっては相当印象に残る忍でもあった。

そのため、ミナト班のメンバーは、すぐにハルトがいなくなったことに気づいた。

 

「確かに、彼らはハルトの身に何かが起こっていることも理解しています。

 

上忍がいない中でこなせるのは、彼らだけです。」

 

 

 

結局、その三人を同行させた計五人で、ハルトの捜索に出ることになった。

 

「三代目。」

「なんじゃ。」

「今回の出来事の真実を、俺はフガクさんには話しておくべきだと思います。」

「……なんのことだ。」

 

それは、木の葉の裏側のこと。

ミナトですら知らなかったこと。であるならば、うちは一族は知っているはずなかった。

 

「今回はハルトが攫われたので、うちはと木の葉の関係は悪化しませんでした。しかし、本当の狙いがうちはであるならば、フガクさんにだけは話しておくべきかと。

 

 

この人なら信頼出来ます。

うちはと木の葉の関係が、これ以上悪化してはならない。

 

……とれる、最善の策かと思います。」

 

ただの上忍が、火影に進言したところで通ることのない話。だが、それをしているのが波風ミナトであるならば、話は別なのだ。

 

いずれ、彼が長になり守っていく国を、彼なりに良いものにしようとする、その進言を蔑ろにはできない。

 

 

「相わかった。ミナト、お主がそこまで言うなら話そう。

 

じゃが、今は時間が惜しい。すぐに出発の準備をせい。移動中に話すほうが良い。」

「わかりました。」

 

極秘情報を扱っているにも関わらず、移動中にその会話を許す。

 

 

 

それは三代目なりの、彼らへの信頼の表れだった。

 

 

───────────────────────

 

 

「これが俺が聞いた真実です。」

「“暗部育成の根の存在”と“火影と同等の力を持つ志村ダンゾウ”か……。

 

確かに、俺ではないうちはの者が聞けば、怒り心頭だろうな。」

「そうですね……。うちはに限らず、木の葉全体に混乱を起こしかねません。

 

そしてその混乱の矛先は……」

「あぁ。志村ダンゾウによって、うちはに向くだろうな。」

 

ハルト捜索任務のため、移動中のミナトとフガクは、カカシ、オビト、リンを同行させて、先頭で話していた。

 

 

フガクには話した。しかし、だからといって何かが解決する訳ではない。

 

「……っ、」

 

ミナトは自分の無力感を悔いた。

 

 

 

──ドガーンッ!!!!

 

「「「「!?」」」」

「先生っ!!」

 

 

突然、先の方で黒い煙があがった。

 

「ハルト……っ!」

『あぁ……間違いない。主のいる場所だっ。』

「っ!!」

 

 

 

──やっと……、見つけたっ。

 

「急ぐよっ!」

「「「はいっ!!!」」」

 

隊のスピードが一気にあがる。

 

 

 

「ミナト。」

「!!」

 

ミナトの横を急ぐフガクが、話しかけてきた。

 

「今は余計なことは考えるな。お前の身に何かあっては、任務は失敗だ。

 

それから、俺は今回、お前が絡んでいる任務だからこそ、同行に名乗り出たのだ。」

「!!」

「うちはと木の葉の関係が良い方向に向かっていないことはわかっている。それを知った上でお前の息子が、身を挺した。

 

 

俺もお前の息子と同じことを考えている。」

「どういう……」

「お前だから信じているということだ。」

「!!」

 

 

それは木の葉のせいで何かと不便を強いられてきたうちはの者からは、聞けないと思っていた声。

 

「ミナト。お前が火影になって、里を変えると、俺は信じてる。

 

そしてお前なら、言葉だけじゃなく行動で示してみせる、とな。」

 

 

──これもその一つだと思え。

 

そう付け加えられたフガクの言葉。

 

 

 

 

 

これが、後に火影になる波風ミナトの全ての行動に繋がっていく。

 

 

『言葉だけでなく、行動で示してみせろ。』




たくさんのお気に入り、評価、ありがとうございます!
これからも頑張っていきます!!

私事ですが、早くヒロインを出したいあまり、書きだめでヒロイン登場を書いてしまいました(笑)
皆さんに見せられるのはいつになることやら……。
これからも見捨てずに、応援していただけると嬉しいです。

~追記
タイトルつけ忘れていました(汗)申し訳ないです。


【ナルト、お誕生日おめでとうっ!!!】


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この時を待っていた


こんにちは。たくさんの方に読んでいただいており、とても嬉しいです。
投稿スピード、これ以上は遅くならないように気をつけます。今後もよろしくお願いします!


 

 

──ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

 

 

──キーーー

 

 

「おい、出ろ。」

「……。」

「……ちっ、」

 

──ザッ、ザッ、ザッ

 

「おいっ!!」

 

 

──ガンッ!!!

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

地面に力なく倒れた根のやつを見下ろす。

 

──上手くいってよかった……。

 

 

俺の中の能力が判明してからも、実験は続けられた。それは次第に定期的になり、実験と実験の間隔も同じものになっていた。

 

そうすればだんだん分かってくる。

今日は誰が俺を迎えに来て、誰が連れて帰るのか。

そいつの特徴や、実力。

 

時間をかけて情報を集めていった。

 

 

そして選んだのが、今日。

俺のことを連れ出す際、中に入ってきた時に牢の鍵を閉めない唯一の人物。まぁ、忍としてはダメだが、俺にとっては好都合。

 

 

 

「さてと……行くか。」

 

捕まった時にとられた武器を取り返せないのは痛いが……、まぁまた作ればいいか。

ということで、足下に転がっている忍が持っていた刀と、クナイなどをいくつか頂戴した。

 

もはや布でしかない布団を羽織り、大きく一つ息をつく。

ここからはスピード勝負。根のアジトだ。チャクラ探知なんて簡単に出来てしまうだろう。チャクラを練った瞬間から、追跡が始まる。

 

たくさん集めた情報の一つ、──脱出経路。

やってくるやつの足音の方向、響き方。そんな些細なことで、ある程度目星はついていた。

 

 

 

 

目を閉じて、遠くに意識を向ける。気づくかどうかはわからないが、一応、伝えておく。

 

 

 

 

──やっと……、かえるよ。

 

 

「……よし。」

 

 

 

胸の前で十字型に印を組む。

 

「“多重・影分身の術”!!!」

 

かつてない量の影分身を出現させる。陽動と万が一の戦闘に備えて。オリジナルの俺は出口に向かって一直線に走る。

 

 

 

 

 

「!」

 

影分身は、その術が解ければその記憶やらがオリジナルに伝わる。走り始めてすぐに、影分身が解けたのが分かった。

 

「もう、戦闘が始まってるってことか……。」

 

避けては通れぬ道だとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。……さすが、根の本拠地。

 

一瞬でも戸惑ってる暇はない。

俺が脱走した時点で、幻術はかかかってないことに気づくだろう。てことは、殺してでも俺を止めに来るというわけだ。さすがに、ここにいる根の忍を全員相手してたら、……死ぬ。

 

 

影分身の目的は、陽動と戦闘だけじゃない。オリジナルの俺が出口に向かうまでの時間稼ぎもある。

 

──ドガーンッ!!!!、という爆発音が響き、地面が揺れる。どこかで大規模な戦闘が繰り広げられてるんだ。

 

 

 

大量の影分身を引き連れて、出口の手前、大きな広間のようなところに出る。

 

 

「やっぱり、一筋縄ではいかねえよな。」

 

アジトというのは、出口が複数箇所あっては意味が無い。敵の侵入も逃亡も防げないからだ。

一箇所しかないからこそ、最終的にはそこに戦力を集めれば敵を叩けるってわけだ。

 

 

──集まってくる前に逃げたかったんだけど、やっぱ無理か。

 

 

出口手前の広場に、大量の根の忍が集まっていた。

 

 

「止まれ、波風ハルト。傷つけないようにお前を連れ戻すのが、我々の任務だ。

大人しく捕まれ。」

「あんな実験されたところに、大人しく戻るとでも思ってんのか。」

「……交渉決裂だな。お前を止める。」

 

そう言うと、一斉に根の忍たちが動き始めた。……え、止めるって何を?俺の息の根?

 

 

 

「どっちも止められるわけにはいかねぇな。

 

 

行くぜっ!!!」

「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」

 

 

「“風遁・花散舞”!!」

「“雷遁・風華雷光”!!」

 

もはや十八番となった俺の連携術。影分身と合わせて二チームでほぼ同時に術を繰り出すことによって、今までのタイムラグを失くした。

 

全員を殺れるわけではないが、若干でも数の有利が向こうにあるならば、広範囲攻撃をするのが最善の策だ。

 

 

「“水遁・爆水衝波”!」

「「「“水遁・水龍弾の術”!!」」」

 

水遁の中でもかなりの高等忍術に分類されるこの術。爆水衝波で辺り一帯を水気の多い状態にしても、影分身と一緒に一体を繰り出すのが精一杯だ。

それでも、この術の威力はその代償に見合う。

巨大な龍が出現し、根の忍を大量に呑み込んでいく。

 

 

そんな水の襲撃に紛れて、一気に接近戦に持ち込む。数も、ようやくほぼ互角になる。

 

 

 

「「「「「“真空剣”!!」」」」」

 

相手は暗部、しかも根の忍だ。あちこちで俺の影分身が消え、その情報が入ってくる。その量に、処理が追いつかなくなりショートを起こしそうになる。

 

それでも……

 

 

「“多重影分身の術”っ!!」

 

例えきつくても、俺は諦めるわけにはいかない。

 

 

 

 

「くそっ、まだ増えるのかっ!!」

「絶対に通すなっ!!」

 

まるで誰かが来るまでは、止めておかなければと言わんばかりの気迫。まぁ、それを悟られてる時点でどうかと思うが。

 

 

「「「「“雷遁・四柱しばり”」」」」

「!!、 くそっ!!」

 

オリジナルに向けて、確実に雷遁を繰り出してくる。大量の影分身の中から、オリジナルを勘だけで当てるなんて不可能だ。

 

「“晶遁・紅の果実”」

 

何度も同じ術に捕まってるようじゃ、ただのバカだ。雷をまとっているロープのようなものを弾く。

 

 

 

 

「来たか……。」

 

勘ではないとすれば、誰かが見破っているということになる。

 

それが可能な人物で、一番最初に思い浮かぶのは……

 

 

 

 

 

「ダンゾウ様。」

 

──志村ダンゾウ

 

その両の瞳は本来ならば輝くはずのない赤色であった。

 

 

 

「随分と暴れてくれたらしいな、波風ハルト。」

「……

 

 

あんたを引きずり出すためだよ。」

「何?」

 

 

 

俺はここに連れてこられて初めて、ダンゾウを直接見た。

 

「あんたには聞きたいことが山ほどあるんでな。」

「……、聞き出せるものなら聞き出してみろ。」

 

 

 

 

「……もちろん。そうさせてもらうっ!

 

“晶遁・一糸光明”!」

「“風遁・真空波”」

 

 

 

 

──お前が俺に与えたこの力で……。

 

 

 

 

 

 

術がぶつかり合い、爆発が起きた。



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新たな力~鏡眼


たくさんのお気に入り、ありがとうございます!
みなさんの期待に応えられるよう、頑張ります!

またまたオリジナルの術です。
やっぱり、地雷の方はご注意くださいm(_ _)m


 

 

 

──ハァハァ、ハァハァ、

 

 

「どうした、へばったか。」

「……っ、クソっ!」

「まぁ、ワシ相手にここまでやったのだから、充分だろう。」

 

術の威力は負けていない。むしろ勝ってる。

が、この間まで忍なんて二次元の世界と思っていた元一般人であり若干四歳の忍と、数々の修羅場をくぐり抜け、三代目火影と共に成長した忍とでは、経験の差がありすぎた。

 

 

「お前を外に出すわけには行かんのでな。」

「それは……、俺がここの存在を知ったからか。」

 

そう聞くと、ダンゾウは僅かに目を開き、膝をつく俺を見下ろした。

 

「お前の口を封じておく手などいくらでもあるわ。

 

お前が適合させたその力が最初から目的だ。まぁ、あわよくば暗部に引き抜こうとは思っていたがな。」

 

 

やっぱりそうか。

 

血継限界にも分類される晶遁。その力を適合させた俺の身体を調べ尽くしたいのだろう。どうやるのかは知らないが、それを別個体に移植。

 

……考えただけでも悪寒がする。

 

 

 

「んなこと、されてたまるか。」

「口ばかり強がるな、弱く見える。」

 

 

ダンゾウと一気に間合いを詰め、体術で応戦する。が、本来持つはずのない写輪眼の前では、すべて見切られる。

 

「その写輪眼……、一体どこで手に入れた。」

「それを知ったところでどうする。

 

 

……ワシを殺すか?」

「……。」

「すべては木の葉のため。

 

木の葉がうちはを抑えておくためには、それと同等、もしくはそれ以上の力を持っていなければならぬ。……ヒルゼンは甘すぎるのだ。」

 

 

 

そう。これがこいつのすべての行動に繋がっている。

 

一概に悪いとは言いきれない。木の葉を守るための行動としては、何も悪すぎる策ではない。

ただ、最良の策でもない。

 

その中に生まれた僅かな犠牲者が、いつの日か木の葉に大きな影響を与えるとは知らない。──いい例がうちはサスケだ。

 

 

「何を言ってもお前とは分かり合えなさそうだな。」

「お前が波風ミナトの息子であるならば、尚更であろう。」

 

 

 

──いーや、そういうことではない。

 

俺は、父さんやナルトのように里のために自分を犠牲になんて出来ない。

 

「俺は、自分の大切なやつが傷つくのが嫌なだけだ。」

 

 

いつの日か、お前がシスイやイタチを苦しめることになるから、お前を憎んでいるだけ。

お前が持つ写輪眼も、今、奪っているということではなく、未来でそれに巻き込まれる大事なやつがいるということに、納得いかないだけ。

 

 

「……それだけで、俺の戦う理由は充分。」

 

 

 

そう思うと、何故だか心が軽くなった。

 

それが、何かのきっかけだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「気を抜いたな。」

「っ!?」

 

拮抗していた体術の応酬が、僅かに上回られ、首を掴まれ息が出来なくなる。

 

「いつの日かのために、お前には施しておいた方が良いようだな。」

「!」

 

 

 

痛みは感じない。なんの違和感もない。

 

 

──やめろっ

 

それでも本能が何をされたのか分かったようだった。

 

「お前がワシのことを話そうとすれば、術が発動して、話せなくなる。」

 

 

呪印だ。サイが施された術と同じものか?

 

 

 

「っぁ……! ケホッ……っ!」

 

酸素が回らなくなり、思考が遅くなる。意識が朦朧としだす。

 

 

「この状態であれば、幻術もかかるであろう。」

 

距離ゼロ。チャクラもほとんど使いきった今の自分に、あの幻術破りのチート能力が発動するかどうかは分からなかった。

 

 

 

「くっ……そっ……!!」

 

目を背けようとしてもそんな力はもう残っていなかった。

 

 

 

こんなとこで……また捕まるわけには……

 

 

 

──キーンッ

 

「!!」

「……なんだ。」

 

甲高い金属音がなったかと思ったら、身体を電流が駆け抜けたような感覚。

 

そして、

 

 

 

──ダンッ

 

「なっ……」

 

 

──ザッ!

 

──キーンッ!!

 

まさか抜け出すとは思っていなかったのだろう。蹴りを入れられた一瞬のうちに、俺はダンゾウの手から逃れた。

 

 

「ゲホッゲホッ……っ、」

 

自分の顔を鏡もなしに見ることは出来ない。それでも、何が起きたのかすぐにわかった。

 

はっきり見える。相手がどこを警戒し、どこを庇っていて、どんな動きをしようとしているのか。

ただ、見れば見るほど目に痛みが走り、既に少ないチャクラもどんどん消費されていく。それでも、何故かスッキリと感じている自分もいた。まるで、身体にあった異物が取り除かれたかのように。

 

 

 

「そっちも目覚めていたか……。」

 

ダンゾウの顔にうかぶのは驚愕。

が、知っていたかのようなその口ぶりに、再び怒りを覚える。

 

 

 

 

 

 

 

 

クナイに反射して写る俺の瞳は、ダンゾウと同じ赤だった。

 

 

「なんだ……、これ……。」

「“鏡眼”

 

……大蛇丸が研究しておった、新たな瞳術だ。」

「こんな、やばい術も作ってたのかよっ!」

 

 

 

本当に吐き気がする。しかし、今はそんなこと気にしている場合じゃない。

 

「俺は誓った。

 

お前が俺に与えたこの力で、お前を苦しめる。」

 

 

そして、今がその時。

 

 

 

 

 

 

「“晶遁・六角手裏剣”」

 

“鏡眼”と呼ばれるその瞳術の代償に奪われた残り僅かなチャクラを全開で使う。

 

写輪眼を宿すその瞳は、チャクラまでも見切っていた。どの程度のチャクラ量で、二種類のチャクラ性質は均衡を保つのか。

 

 

 

 

──キーンッ!!!

 

甲高い金属音が、周囲一帯に響きわたる。

それは晶遁だけではない。風の性質チャクラが、晶遁の手裏剣を纏うようになっていた。

風の勢いでより一層回転が早くなる。

 

 

 

 

 

「次にお前に会う時は、必ず決着をつける。」

「これを防げば、お前はワシのものだ。」

 

 

「防げるもんなら防いでみろっ。

 

 

“晶遁・螺旋六角手裏剣”っ!!!」

「“風遁・真空大玉”っ」

 

 

 

 

 

──ドガーンッ!!!!

 

 

巨大な爆発に紛れて、外に逃げる。

その音の中で僅かに聞こえたのは、

 

 

 

 

 

 

 

──ハルト……っ!

 

 

 

 

「父……さん……っ。」

 

久しぶりに聞いた、大好きで大切な人の声だった。



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待ちわびた存在


この一週間でお気に入りがたくさん増え、ランキングにも載ることが出来ました!

ありがとうございます!これからも頑張ります!

しかし、今回は短いし遅いし……。申し訳ないです。


 

 

「ちょっ、先生っ!!?」

「ミナト、本当に合っているのか。」

 

爆発があった場所に向かう、ミナトを含めたハルト捜索班。が、そこに向かっている途中に、それは起きた。

 

「リン、まだ何も感じないか。」

「……うん。爆発があった直前に、ハルトくんのチャクラが大きくなったのは感知できたんだけど。」

 

感知タイプのリンや、上忍のフガク、そして弥白でさえも、その爆発の直後から、ハルトのチャクラを感じることがな出来なくなったのだ。

そんな中で……

 

 

「こっちで合ってるよ。小さいけど、ハルトのチャクラを感じる。」

 

ミナトだけがハルトのチャクラを感じ取り続けていた。

それでも時間が経つにつれて、ミナトの顔も歪んでいく。間違いなく、それは小さくなっているのだ。

 

「くそ……っ。」

 

──シュンッ!!

 

飛雷神でとぶミナト。それについていける忍は、この場にはいなかった。

 

「ミナト先生っ!」

『我が追いかける。我のチャクラを辿って追ってこい。

それでよいな、うちはの者。』

 

忍は追いかけることは出来ない。が、飛雷神を使う弥白は別だ。

 

「分かった。すまない。」

『気にするな。ミナトの親バカは今に始まったことではない。』

 

そう言うと、弥白も飛雷神を使って同じ速度で追いかけ始めた。

 

 

 

 

 

『おい、ミナト。』

「やっぱり、弥白が着いてきてくれると思ったよ。」

『……そこまで考えていたか。』

「俺もそこまで冷静さを欠くわけにはいかないからね。

俺が抜けても、上忍のフガクさんがいてスリーマンセルの状態は維持出来てる。敵襲が来ても、大丈夫だよ。

それに、リンにはマーキングを施したクナイを渡してある。」

『そうか。』

 

話しながらも、とにかくミナトは前に進み続ける。

 

その目に、迷いは一切なかった。

 

 

『……、(我でも感じ取れない主のチャクラを……。

ミナトをさすがと言うべきか、……親子だからか。)』

 

その強い眼差しを見て、弥白は思うのだった。

 

 

───────────────────────

 

 

 

──ザッ、……ザッ、……ザッ

 

足取りが重い。

もはや残っていないチャクラを最大限隠して、上に羽織っている布で懸命に顔も隠し、出来る限り周囲に配慮して歩いていたが、その集中力も間もなく切れそうだった。

チャクラも無ければ、武器もほとんど残ってない。今の俺に出来るのは、気配を隠して歩くことなのだが……

 

「隠すにも、チャクラいるよなぁ。」

 

 

疲れた。止まってしまいたい。いっそのこと、ここで休んでいこうか。

 

意識朦朧のまま歩いていたからか、ここが暗部のアジトからどのくらい離れているのか、木の葉にどれくらい近づいているのか、分からない。

その事が止まることを恐怖に感じさせた。

 

 

 

──ガサ

 

「!」

 

僅かな風と小さな草の音。細心の注意を払っているからこそ気づけた、人の気配。

そして、そこまで研ぎ澄まさなければ感じることが出来ない、その人物の実力。

 

 

──ここまで来たってのに……、くそっ。

 

 

 

できるだけ離れた木の陰に隠れ、クナイを構える。

 

──後、五歩くらいか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

数を数えていき、ゼロになったところで

 

 

──シュンッ!!!! ──ボンッ!!!

 

仕留められなくていい。少しでも隙ができれば、それでいい。

クナイと煙玉、そして俺の残っているチャクラでできる限界だった。しかし、

 

──ヒュンッ!!!

 

「!」

 

それに全く臆することなく、まるで見えてるかのように、煙の中から人影が現れ、そのまま真っ直ぐこちらに向かってきた。

 

 

 

──……ここまで……か。

 

クナイは構えつつも、俺のチャクラはもう一つも残っていなかった。立っているのも限界になり、そのまま前に倒れていく。

 

世界がとても遅く見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ボフッ

 

「……?」

 

感じたのは固い地面の感触ではなく、

 

 

「……見つけた、ハルト。」

「!」

 

温かい腕の感覚。目を開けて、見上げる間もなく、そのまま抱き寄せられた。

 

 

 

「……とー、さん?」

「ハルトっ……、、」

 

 

あぁ、久しぶりだ。

どうやったって力が抜ける、この感覚。安心しきってしまう、ここは安全だと認識してしまう。

何もかもが、俺の機能をオフにしてしまう。

 

 

 

 

「っわ、」

 

父さんによしかかったままの俺を、抱っこしてくれた。

 

「着くまでゆっくり寝てていいよ。

 

 

帰ろう、母さんが待ってる。」

「……ぅん。」

 

父さんの安心する声を聞いて、俺の意識は完全に落ちた。



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暖かい重み、冷酷な力

この一週間でお気に入りがたくさん増え、ランキングにも載ることが出来ました!

ありがとうございます!
これからも頑張ります!!


「チャクラ、尽きちゃったかな。」

 

腕に感じる重み。それは、全く苦ではない、むしろ、喜びや嬉しさに近かった。

 

実際に、ハルトが行方不明になってから一年近く経っていたのだ。

ミナトが感じるそれは、久しぶりに感じるわが子の愛しい重みだった。抱きかかえた腕の中で、肩に寄りかかって眠る姿は、何処かクシナに似ていた。

 

 

 

──ガサガサ!

 

「!?」

 

突然、草木が音を立てる。敵の接近には気づかなかった。すぐに、音の聞こえた方向から離れ、クナイをかまえる。

 

 

『ミナトっ!』

「弥白っ!?」

 

現れたのは、ハルトの口寄せ獣である弥白だった。

 

『主は……、無事か。』

「あぁ……、無事だけど……、」

 

そこに弥白が現れることは、本来であれば、ありえない事だった。なぜなら……、

 

 

「弥白、消えそうじゃないのかい?」

『……我も驚いておる。気を失ってなお、我へのチャクラの供給は途切れておらぬのだからな。』

 

術者のチャクラによって呼び出されている口寄せ獣は、その人物のチャクラが無くなれば自然と消える。気を失うほどチャクラを使えば、本人の意思に関係なく、消えるのが定石であった。

 

 

「まさか、ここまでとはね……。」

『消えることの恐怖から、本能でやっているという可能性もあるが……、主の場合そうでは無いな。』

 

「ここまでくれば、俺も認めなきゃならないよ。」

 

 

──波風ハルトは天才である、と。

 

それは才能の宝であり、敵から狙われる危険な代物でもある。

 

 

 

『主のチャクラの量は、元来、不均衡であった。』

 

ハルトを抱えたミナトと弥白が歩き出しながら話す。

 

『我を呼び出す時……、あれは、術者自身も気づいてない眠っている力に引き寄せられて、口寄せされる。

主の場合、その気づいてない力と、自覚している力の均衡があまりに偏っていた。そして、主はその力を稀に無意識で使用していることがある。』

「君に勝てたのも、そのお陰ということかな?」

『……まぁ、それも無くはない。』

「?」

 

突然、言葉を濁す弥白の方を見ると、

 

『主に仕えたいと、……我が強く思ったのも理由の一つだ。』

「へー。」

『ニヤニヤするな、顔がだらしない。』

「弥白のデレ、ハルトが見たら喜ぶよー。」

『絶対に見せぬ。』

 

周囲も、そして本人も気づいていない。

未知の力を持つ息子を、ミナトは優しく抱きしめた。

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

──……

 

夢の中……??

 

だって、いくら忍だからって中にふわふわと浮くことなんて出来ない。

でも、すごい心地いい感じで浮いてた。

 

 

『精神世界だ、主の。』

「!」

 

久しぶりに聞いた、その声。

 

「弥白!」

『久しぶりだな、主。』

 

弥白のことを抱きあげて、ぎゅーっとしといた。弥白も、嫌がらないでもふもふの毛をすりすりとしてくれた。

 

 

 

「弥白が解除したの?」

 

気絶した時も、弥白へのチャクラの供給がきれないようにしていたはずだった。

 

『そうだな。主の体力が回復した頃を見計らって、解除した。寝ていたこともあって、記憶もゆっくり循環したようだ。』

 

 

目を閉じると、弥白が見た映像が流れてきた。

 

「僕……、忘れられてなかったんだね。」

『そんな薄情な者が、主の周囲にいるはずなかろう。』

 

そうだね、と言う前にハルトの目から涙が零れた。

 

「帰ったら……、母さんに謝んなきゃなぁ。」

『そうだな。』

 

器用にハルトの肩まで登ってきた弥白が、ハルトの涙を拭った。

その涙は、戻ってこれた喜びと、味わうには恐ろしすぎた体験を物語っていた。

 

 

 

 

 

 

『その前に確認したいことがあるのだが……。』

「弥白にも何か変かあった?」

『いや。我自身には何も無いが、主のチャクラが乱れたのは感じた。』

「そっか。」

 

それは弥白が想像していた以上に落ち着いた声だった。

 

その乱れを初めて感じた時、弥白が滅多に感じることがない恐怖に近いものを感じた。

それを自らの身体に入れられたハルトの苦しみは、想像出来ないものだと考えていたのだが……。

 

「もう受け入れたよ。それに、

 

 

 

 

……僕が使いこなせることが出来れば、間違いなく強力になる。」

『!』

 

 

弥白は自らの主に対する評価を改めた。

 

今までも、決して低かったわけではない。契約したのだから、それ相応に使役もしていた。

 

それでも、……尾獣と同族である弥白でさえ、その評価を最高にしなくてはならないほど、波風ハルトは忍として秀でていたのだ。

 

 

 

「弥白に、僕のチャクラの流れを見てほしいんだ。」

『? ……構わぬが、何をするのだ。』

「僕の身体への負担がかかっている場所、わかんないかなぁと思って。」

『了解した。』

「一つ目。血継限界の“晶遁”を手に入れた。もう、だいぶ使いこなせているから、身体への負担はほぼ無いはず。」

 

そう言うと、ハルトは印を組んで結晶の手裏剣を出す。

 

『血継限界か……。火影に報告する必要がありそうだな。』

「そうだね。外交問題にでもなったら、たまったもんじゃないや。」

 

そんな風に笑って話せるのはここまでだった。

 

 

 

「二つ目。ここから……かな。」

『一体……、何を入れられたのだ。』

「これは、僕もはっきりと発動できるわけじゃない。それに、あんまり発動したくないしね。」

 

そう言って、次は目を閉じる。開けた時には、ミナト譲りの青い目ではなく、銀色の鏡のような瞳だった。

 

「これは……ねっ、……っ、鏡眼って言って……っ、瞳術をコピーする、新しいっ瞳術だってさっ。。」

『主! 今すぐ解除しろ!!』

「……っ!」

 

 

発動していた時間はわずか数秒。それでも、解除した瞬間、ハルトは肩でゼイゼイと呼吸をし、汗の量も尋常ではなかった。

 

「やっぱり……、まずい?」

『まずいどころの話ではない。目に集中的にチャクラが集まりすぎだ。

 

痛みは何度もやれば慣れるとしても、そんなことを続けていれば、失明しかねない。』

「そっか……、結構やばいんだね。」

 

 

 

弥白は見逃さなかった。

 

自分の主が、その目を覆うように手を当てた瞬間に、

 

 

まるで新しいおもちゃを手に入れたかのような、……そんな顔をしたことを。

 

 

そして恐ろしいと感じた。

 

自分が仕えた主が、一体どこまで考えているのか。

どこまで自分を犠牲にしようとしているのか。

 

 

──全く想像出来ないことに。



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第三章~アカデミー入学
決着はまだ先



普通の少年ならこんなこと言えませんが、まぁ、ハルトくんはチートですから。


 

 

「うん! かっこいいってばね!!」

「別に、普通でいいんだよ、母さん。」

 

 

「ハルト、準備できたかい?」

「うん。」

 

 

結構、朝早い時間。そんな時間から、何を騒がしくしているのかというと、

 

「俺と母さんは、後から行くからね。」

「わかった。」

「分からないことがあったら、先生に聞くのよー!」

「大丈夫だよ。」

 

今日から俺は、忍者アカデミーに入学するのだ。

退院してから、一ヶ月ほどしか経っていない。なぜこんな急な時期になったのかというと……、こんなことがあったから。

 

 

 

『“晶遁”はともかく、主の瞳力は、あまりに危険だ。使うべきではない。』

「なるほどな。」

 

退院してからすぐに、俺は、三代目火影に色々と事情を聞かれていた。

一体どこまで話すと呪印が発動するのかが分からなかった為、ほとんど弥白に話してもらった。……てか、精神世界で色々話しちゃってたけど、危なかったのかなぁ。

 

 

「事情は相わかった。ハルト、辛い思いをさせてしまって済まなかった。」

「い、いえ。火影様が謝ることではありません。」

 

目の前の里の長に頭を下げられたことに驚いて、慌てる俺。だが、これがこの人とダンゾウの決定的な違いなんだろう。

人を人として見ており、駒として扱わない。簡単なようで、上に立つ人間になればなるほど、意識することが難しいことだと、俺は思っている。

 

 

 

「ダンゾウのことは儂らが責任をもって対処する。」

「……。」

 

ヒルゼン様に敬意を表している時に言われた言葉に、一瞬、思考が止まる。

 

──うーんと、ちょっと待てよ?

もしここで、ダンゾウが物語から消えたとして、このあと色々とやばくないか?

 

【根】のことも木の葉の裏のことも、もろもろ全部、火影に降り掛かってくる。それは、次の火影である父さんへの負担も増えるってことだ。

 

「あの……、火影様。」

「ん? なんじゃ。」

「ダンゾウ様に何かしらの処分を下すのは待っていただけないでしょうか。」

「!」

「!?」

 

火影様も父さんも驚いていた。

そりゃあそうだろう。今回のことで、ダンゾウに一番怒りを覚えるはずの俺から、擁護の言葉が発せられたのだから。

 

「ダンゾウ様は、木の葉の裏の部分を抑えている、言わば鎖です。今、その鎖を壊してしまえば、木の葉に与えるダメージは計り知れません。

その時は必ずきますから、それまではダンゾウ様の力を借りておくべきだと思います。」

 

俺がそう言えば、納得せざるを得ないだろう。火影様も父さんも馬鹿ではない。ダンゾウが、木の葉の裏を制御していることくらいわかっている。分かっていて、彼を処分しようとするのは、単に俺のため。

長として、父として、俺に出来ることはこれぐらいだと分かっているからだろう。

 

 

 

──だが、そんな簡単に退場させてやるわけにはいかない。

 

お前にはもっと辛い苦しみを味わってから、退場してもらう。

 

 

……そういや、大蛇丸はどうしよ。大蛇丸はかなり大事な人物なんだよなぁ。

なんて、呑気なことを考えてたら言いそびれた。……まっ、何かやらかしたら俺が何とかすればいいか。

 

 

「ハルト、お前の指摘通りじゃ。

お前にまで、理解をさせてしまって申し訳ない。」

「いえ、気にしないでください。」

 

うん、俺が今、一番気にするべきは、横で俺をめっちゃ見てる父さんへの言い訳くらいだろう。まっ、誘拐された時に色々聞いたって言えばなんとかなるかな。

 

「それで、火影様。僕からお願いがあります。」

「ふむ、言ってみよ。」

「僕をアカデミーに入学させてほしいのです。」

「アカデミーか……。お主の年齢と実力を考えれば、何も難しいことではないな。」

「アカデミーにいれば、“晶遁”の練習もしやすいと思うのです。」

「そうじゃな。

ならばちょうど良い。もうすぐ行われる入学式に参加すると良い。」

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……と、まぁ、こんな感じ。

 

日付感覚忘れてたけど、なんと、入学式のちょっと前だったみたい。転校生は嫌でも目立つからちょっどよかった。

 

そこからはもう急ピッチ。父さんと母さんに説明するのはもちろん、シスイにもその話をして、一緒に入学した。というより、させた。

 

『あんなにも、無理矢理な主は初めて見た……。』

「いやぁ、必死だったからね。」

 

まさか一族ってだけで、シスイの両親だけでなくフガクさんやうちはのお偉いさんの承諾もいるとは思わなかった。フガクさんはすぐに終わったけど、それ以外がまぁ大変。

 

 

 

 

「ハルトォォォォ!!! 弥白ぉぉぉぉ!!!」

『……うるさいのが来た。』

「弥白ぉっ!! 今、めっちゃ失礼な事考えただろ!!」

『事実を考えただけだ。』

「おいっ!!」

 

まぁ、その苦労が実ったのだからいいだろう。

 

 

 

 

桜の花が舞う道を、二人と一匹が歩く。

 

 

──忍者アカデミー 入学式──

 

 

 

必ず、大切なやつは守る。

俺は、火影みたいに見知らぬやつらまで家族だなんて言えないけど、そんなふうに思う忍を守っていくことが俺の役目。

 

 

そして、お前は、ダンゾウだけは必ず俺の手で地獄に落とす。

 

 

 

 

 

 

様々な思いを持つハルト。そして、ハルトを慕うシスイ。

ここから始まる二人の天才忍者の話を、まだ誰も知らない。

 





ありがとうございます。


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知ってたけど、俺は火影に向いてない性格



前話、結構地雷覚悟だったんですが、たくさんのお気に入りが増えて、すごく嬉しかったです!
本当にありがとうございます。


 

 

「あぁぁぁぁ、疲れたぁぁぁぁ!!」

「シスイ、うるさい。」

「ハルトが最近、俺に対して冷たい……。」

「事実を言ってるだけじゃん。」

「それが冷たいって言うんだよ!」

 

アカデミー入学後も、相変わらず俺はシスイと一緒にいた。

正直に言って、アカデミーはとても楽しかった。原作知識をなんとか思い出すだけで補ってた知識の穴が、少しずつ埋まっていった。

 

でも……

 

「次の時間は実技だぞ! 各自、準備して外に出ておくように!」

 

……これだけはつまらなかった。

 

元気よく、はーいと返事する生徒達が大多数。と言うより、俺以外。隣にいるシスイも楽しそうにしてる。

 

「シスイ。そんなに実技楽しい?」

「座ってるより楽しいぞ!!」

 

そんな嫌か。

だってそうだろ? 俺とシスイは戦闘の基本なんて、とっくに終わってる。アカデミーでやる練習なんて、暇で暇でしょうがなかった。実技の時間は、図書館で借りた本を読んでることがほとんどだった。

 

 

「次! 波風ハルト!!」

「はい。」

 

今日は初めて、授業でクナイを扱っていた。俺も初めての時はかなり練習したけど、クナイを的に的確に当てるのは結構難しい。他の生徒はみんな、苦戦していた。

そんな中で、今までほとんど参加していたのかもよくわからない雰囲気の俺が指名された。そんな俺には様々な視線が向けられる。まぁ、多いのは男からの嫌悪の目だが。

正直、乗り気ではないが、父さんに迷惑をかけるわけにもいかない。この世界は実力がすべて。俺がもといた世界とは違って、強ければいいのだ。楽でいい。

 

クナイを取り出し、的に向かって投げる。まっすぐ勢いよく投げるのも難しい。それは、自分たちがまさにやっていたのだから分かっている。その自分が苦戦したことを何なりとやってのけた。そして、

 

「よし、満点だ。」

「ありがとうございます。」

 

ど真ん中に的中させて見せた。

周囲に響く感嘆の声と舌打ち。いやぁ、二極的で面白い。

 

 

──あれ。俺、かなり冷酷なやつ??

 

 

───────────────────────

 

 

「明日から、また任務に行ってくるよ。」

「分かったってばね。気をつけてね。」

「うん。ハルト、しばらく、母さんのことよろしくね。」

「分かってるよ。」

 

俺がアカデミーに入学してからしばらくした頃。父さんを含めた上忍、そしてその下につく中忍や下忍が任務のために里の外へ行くことが多くなっていた。

 

 

「父さん。」

「ん? どうしたんだい?」

「また……、

 

戦争が起きるの?」

「!」

 

俺は何の気なしに聞いたことだったけど、父さんからすればまだ六歳の息子が、戦争を感づいていることに驚いてるのだろう。

それでも、誰よりも俺のことを認めてくれている父さんは、すぐに教えてくれた。

 

「そうだね。

まだ小さな争いだけど、近いうちに大きな戦争になるかもしれない。それを今から、小さく少なくしとかなきゃいけない。そうしないと里にも影響が出るかもしれない。」

 

父さんはわかりやすく教えてくれた。第三次忍界大戦の知識は少なかったからありがたい。

 

「木の葉の里には結界が張ってある。それでも、何かあった時には、頼むよ。」

「うん。」

 

 

俺は少し不思議だった。原作では知らないけど、あまりにも露骨に外へ戦力を出しすぎな気がした。里の結界はそんなに信用高いのか?え、俺が疑い過ぎ??

 

その時の俺には、それ以上の事を考える力はなかった。

 

 

───────────────────────

 

 

《ミナトside》

 

『また、戦争が起きるの?』

 

任務へ行く前夜、ハルトから聞かれた。

最早、一忍びとしての実力と思考も持ち合わせているハルトから聞かれたことに、驚く自分と当たり前かと思う自分がいた。敏感なハルトであれば、気づくだろうとも思っていたからだ。

 

次の戦争は、前の戦争が消しきれなかった小さな争いが長く続いてきたことが原因にある。いつ、どこで大きな戦争になってもおかしくない状況なのだ。そしてそれは、木の葉も例外ではない。

ハルトにはきちんと説明し、クシナのことを任せた。ハルトなら安心して任せられる。

 

 

 

「さてと……、ハルトはどこまで俺と同じ考えかな。」

 

ハルトが部屋を出る時に、若干、納得出来ない顔をしていたのに気づいた。

里に、同じような顔をして今回の任務を受けている上忍がいる。俺も、その一人だ。

今回の任務では、明らかに里の外へ派遣する忍の数が多い。そのことを懸念する忍が多少なりともいた。

 

 

火影様から受けた任務を無視することは出来ない。それでも今回は、なにか嫌な予感がした。だからこそ、ハルトに隠さず話した。

 

 

 

──何かあった時は、頼むよ、ハルト。

 

 

自分の息子に、色眼鏡なく高く評価できることが嬉しく感じながら眠りについた。



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初めての、



お気に入りが2000件を突破しました!ありがとうございます!
今回は、最後のオリジナル人物の登場です。

そして、またいつ出せるかもわからない書きだめが……。


 

 

「ハルトー!!」

「うるさいよ、シスイ。」

「辛辣!?」

 

その日はアカデミーが休みの日で、いつも通りうちはの集落に遊びに来ていた。特に変わったこともなく、イタチを迎えに行って三人で修行する日になるはずだった。

 

 

「お! アオイじゃん!!」

「へっ!? あ、お、おはよう!!」

「?? 今昼だぞ?」

 

うちはの集落で出会った少女。アカデミーで見たことがあった子だった。けど、まさか、うちはの人だとは思わなかった。

なんせ、彼女の髪は、うちは一族特有の黒ではなく、若干、青みがかっていたから。

 

 

シスイのなんの気なしの天然発言に、とてつもなくあたふたしている彼女が、あまりにも可哀想になって、

 

「シスイ。彼女、困ってるから。」

 

助け舟を出した。とりあえず、シスイの弾丸トークには入らずに済んだようだ。

 

 

「あれ、ハルトはアオイのこと知らないっけ?」

「見たことはあるよ。同じクラスでしょ。」

 

アカデミーで、自己紹介はしないから名前は知らなかった。それでも、シスイが何度も叫ぶ“アオイ”というのが、彼女の名前だと気づくのに時間はかからなかった。

 

 

「初めまして、波風ハルトです。」

「あ! は、初めまして! うちはアオイですっ。よろしくお願いしますっ!」

 

 

「……。」

 

自己紹介しただけなのに、すんごく驚かれた。多分、彼女はそういう人なんだろう。緊張しいなタイプだ。

そんな彼女の自己紹介の後に、僅かに黙ってしまったのは、決して嫌悪した訳では無い。

 

 

 

 

 

 

──めっちゃ可愛い……。

 

むしろ真逆。

前世で、俺には奥さんがいた。もちろん、彼女も可愛かったし好きだったけど、目の前のアオイという少女とは少し違った。

俺は、これの名前を知っている。

 

 

 

波風ハルト。若干六歳にして、

 

 

──初めて一目惚れをしました。

 

 

「……うん、よろしくね。」

 

きっと、人生で一番の笑顔だと自負している。

 

 

 

 

ちなみに……、

 

 

「シスイは、アオイさんとどういう関係なの?」

「そうだなー、小さい頃からよく一緒にいてくれた姉ちゃんって感じかなぁ!」

「……そうなんだ。」

 

 

幼馴染か……。これはかなり強敵なライバルだ。

 

「え、ハルト? 俺、なんか悪いこと言った??」

「言ってないよ。」

「なんか怖いっ!!!」

 

……アオイさんにはバレないようにしよう。

 

 

───────────────────────

 

 

「……。」

「ハルトー?」

「……、、、。」

「ハールートーー!!?」

「…………。」

「ハルトッ!!!!」

「!? ……ごめん、どうしたの?」

「遂にハルトに無視されたのかと思った。」

「ごめんって。」

 

もちろん、シスイのことを無視していたわけじゃない。ただ……、

 

「最近、すごい疲れる。」

「衝撃、防ぎ切れてないもんなー。ハルトは人一倍、敏感だし。」

「僕も、シスイくらい鈍感がよかった。」

「別に鈍くないぞ!?」

 

木の葉の里には、結界が張ってある。その結界が、里の外で行われている戦闘の激しいチャクラのぶつかり合いによる衝撃を緩和している。その為、普段なら里の人たちに被害が出ることなんてない。

しかし最近は、戦争が近づいてるのかその衝撃が結界で緩和されきっていない。少し前に気づいたことだが、俺は人一倍、チャクラ感知が得意らしい。それが今回は裏目に出てる。

 

「夜は一層激しいもんな。」

「外に出ている木の葉の忍びも多いから、割増かな。」

 

相変わらず、木の葉の忍は外に沢山駆り出されており、どんどん里の守りは弱くなっている気がした。

 

 

「うちははそんなに手薄になってる感じしないなぁ。」

「……そうなの?」

「おう。フガクさんはうちはの長ってことで、外に行かないのは納得出来るけど、それでも極端に少ない気がする。」

「……。」

 

なんだそれ。今は、上忍の手が足りないと言わんばかりの状況ではないのか。うちは一族だけ使われていないなんて、そんな都合のいいことがあるか。

 

 

 

 

『何か裏があるな。』

「!」

 

目の前に広がっているのは、一面水が広がる場所。俺の精神世界。

 

「弥白もそう思う?」

『今、木の葉が攻められれば、間違いなく、木の葉に残っているうちはの者たちが、責められるであろう。』

「……そんな汚いことを考えるのは、」

 

──志村ダンゾウ、か。

 

 

「またあいつか……。」

『主が穏便に済ませたことで、抑えきれぬようになっているようだな。』

「……めんどくさいなぁ、全く。」

『諦めるでない、主。』

「分かってるよ、大丈夫。

いざとなったら、助けてね。」

『あぁ。』

 

 

薄ら目を開けると、目の前にシスイの顔があった。

 

「あ、戻って来た。」

「……別にどこも行ってないよ。」

「は? 精神世界行ってたよな?」

「……。」

 

まじか……。もう口寄せ契約してるのかよ。精神世界のこと知ってるってことは、そういうことだよなぁ。うわぁ、さすが天才忍者だぁ……。

 

「ごめん、ごめん。

そうだよ。弥白と話してた。」

「だよなー! 俺、間違ったかと思ったわ!」

 

 

 

──うーん、俺が思ってた以上に俺がシスイに抜かれる日は早いのかもしれないなぁ。

 

 

 

 

 

なんて思っているハルトが、実はアカデミー内では一番の有名人であることを本人は知らない。



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戦争の飛び火


んー、短いなぁ。
……申し訳ないです。


 

 

それは、特に何かあった訳でもない。

 

普通に暮らし、普通に終える一日、

 

 

 

 

 

 

 

……になるはずだった日。

 

 

───────────────────────

 

 

上忍が通常よりも少なく、戦力が落ちてると言わざるを得ない木の葉の中で、

 

 

 

わずかに残る忍の中のまたさらに僅かな忍と、

 

未だ日の目を見ない、才能溢れる二人の忍びだけが、

 

 

 

 

その異変に気づく。

 

 

 

 

 

「「「「“土遁・大地動核”!!!」」」」

 

岩隠れの忍が、気配を消して木の葉を囲み、結界に対してゼロ距離から力づくで木の葉に攻撃を仕掛けてきた。

 

それは、奇襲には向かない明るい昼間である故の弱点。一般人が動くため、小さなチャクラを感知できなかった。いや、本来であれば出来たはずなのだが、今の木の葉にそれに気づくだけの実力者は少なすぎたのだ。

 

そして昼間の奇襲は、いきなり大きな被害が出なくとも、混乱から被害は拡大していく。

結界を無理矢理突破し、土遁を使った忍、即ちまさに今木の葉と争いの最中にある岩隠れの忍が木の葉の里に攻め入ってきた。

 

 

 

里のほぼ中心に位置するアカデミーにも、敵襲の情報はすぐに舞い込む。生徒を一箇所に集め、全教師で一つの場所を死守する。

 

そこでは、俺の住む世界では当たり前にすることをしない。いや、いつもならするのだが、今日はしていない。木の葉に上忍が少ないというのは、こうも影響を出すものなのか。

 

 

「どうだ?」

「うん……、やっぱり点呼しないなぁ。気づかれてないみたいだよ、僕らがいないこと。」

 

今は都合がいいから気に止めないが、うちの教師陣大丈夫か?

 

「気づくの早かったなー、ハルト。」

「シスイも同じくらいでしょ、アオイさんを引っ張ろうとしなければ。」

 

アカデミーの中で、誰よりも早く俺とシスイは外の異変に気づいた。その場で全員に声をかけてもいいんだけど、……この中じゃ混乱しか見えなかった。

シスイが反応したのは分かったから、天井を指して行こうとしたら、まさかのアオイさんの方へ走った。いや、走ろうとした。

 

その時の瞬神の速度は、過去最高だと思う。

 

俺だってアオイさんを助けれるものなら助けたい。それでも、俺には彼女が殺されない確信があった。

それは、奇襲を受けてからの敵の動き。

 

 

「やっぱり、真っ直ぐ向かってきてるね。」

「アカデミーを狙うなんて、珍しい戦法をとるやつもいるんだなー。」

 

木の葉に侵入した忍のほとんどが、一直線にアカデミーに向かってきていたのだ。忍としては一番戦力には向かない、……まぁ未来を見れば価値はあるけども。戦争において、一番最初に狙う標的ではないと思う。それでも敢えて、アカデミーを狙う理由。

 

「人質ってとこかな。」

「まっ、火影の体面考えても、無視出来ないよな。アカデミー生の人質は。」

 

上忍がいないとはいえ、五大国の中でも上位に存在する木の葉を、奇襲に裂ける最大限の人数だけで落とすのは無謀な話だ。ならばこちらの都合のいいように使える人質を取ればいいって話だ。

 

「で、ハルトー?」

「ん?」

「まさか、逃げるために屋根裏に隠れたわけじゃないよな?」

「……。」

 

 

ここにいる限り、滅多に戦場へ送り込まれることのないアカデミー生のシスイと、新たな力を試したい俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もちろん。」

 

 

誰よりも修行を積み、試したいことがたくさんある俺たち。

 

「もう少ししたら動こうか。」

「おう!」

 

 

隠れている身で大きな声は出せないが、意気込んだシスイの顔は、決意に満ちた笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、もう一つ。

 

「……弥白は上手くやってるかな。」

「なんか言ったか?」

「なんでもないよ。」

 

 

奇襲を受けてすぐ、ハルトのもとを離れた弥白。それは、以前に弥白と話した危惧していたこと。

 

『これは……どういうことだ。』

 

 

アカデミーとは違うところで、もう一つ事件が起きようとしていた。

 



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二種の影


遅れてしまいました、申し訳ありませんっ!

作者、39℃の熱が出ました。既に治りましたが、皆様も体調にはご注意ください。


 

《アオイside》

 

「くそっ、こんな時に……っ!」

「うるせぇ! 殺されたくなかったら、大人しくしてろっ!」

 

 

先生とクナイを構えている敵が、言い合っているのをどこか他人事のように聞いていた。

 

アカデミーの中の一番大きな教室に、アカデミーにいた生徒と先生の、全員が集められていた。……いや、正確に言えば全員じゃない。他の人たちは先生も含めて気づいてないみたいだけど、私はすぐに気づいた。

 

「(ハルトくんとシスイくん……、どこ行っちゃったんだろう。)」

 

額当てからして岩隠れだと思う忍たちは、あっという間にアカデミーにいた人たちを人質にしてしまった。そしてその中に、二人の姿はなかった。

 

 

 

「まだ交渉は終わんねぇのかよ。」

「知るか。

だが、合図がなければ殺していいと言われてるんだ。もう少し待て。」

「そうだな。」

 

私の近くにいた忍が小声で話しているのが、たまたま聞こえてしまった。

 

 

「(交渉……、殺す……。誰とかはわからないけど、殺されるのは私たち……だよね? ここには先生達もいるけど、それでもかなわないの?)」

 

聞こえてしまったことで、より一層不安が募る。

それでも何故か、どこかで安心している自分がいた。それは、ここに二人がいないことによる安心。

 

──たくさん過ごしたわけじゃないけど、二人は群を抜いてクラスではすごかった。

──シスイくんの性格上、みんなをおいて一人だけ助かろうなんてしない。

 

 

──そして、あの二人は……強い。

 

 

 

それだけで大丈夫のような気がした。

 

 

 

 

 

 

────ドガーーンッッッ!!!

 

 

大きな爆発と煙。視界が見えなくなっていく中で、

 

優しい二つのチャクラを感じた。

 

 

───────────────────────

 

 

「でもよ、俺たちだけで大丈夫か?アカデミー内はなんとかなるとしても……。」

「シスイがちゃんと考えてる……。」

「バカにすんなー!!」

 

いやぁ、シスイはもう少し年齢に見合う思考回路を持った方がいいよ。誰だよ、こんな小さな子に物騒なこと考えさせるようにしたのは……。

 

 

……俺だな。

 

 

「大丈夫だよ。もう、手は打ってある。僕らもアカデミー内が終わったら、向かうからね。」

「? どこにだ?」

 

ある情報が来るまで、しばらく待機していたところ、アオイさんの近くにいた忍が話していたことが、口パクから色々とわかった。

 

──交渉、──殺していい

 

 

どこかで交渉しており、失敗すればここにいる人質を殺すのだろう。簡単に想像できる。

 

 

「まぁそれは、ここをおさめてからね。」

「おう!」

 

多分、ここを制圧するのは簡単だ。シスイもかなり強いし、ある程度解放すれば、先生方も戦えるようになるだろう。

でも、俺はこの戦闘を少し利用しようと考えていた。

 

「シスイ。本気でいきなよ。」

「! ……気づいてるってことか?」

「逆に、なんで気づかないと思ったの?」

 

シスイは意外にも、写輪眼を開眼したことを俺に話さなかった。別に、それがどうということではないけど、理由はわからなかった。

 

「別に言わなくてもいいよ。

 

今日、僕も新しい技を見せるから。本気でいってほしいなって思っただけ。」

「分かった!」

 

 

俺は見せようと思った。シスイにだけは。

それは、未来のため。

 

──俺はシスイの相棒でありたいし、

 

──シスイの相棒は俺でありたかったから。

 

 

 

その為に、この力を君に認めてもらいたかった。

 

 

───────────────────────

 

 

「“水遁・水陣壁”」

「“火遁・豪火球の術”!!」

 

ハルトが人質となっている木の葉の忍の周囲に水で壁を作り、シスイの火遁で岩隠れの忍に攻撃する。

 

「感触は?」

「……全滅は無理だな。」

「充分だよ。」

 

「お、お前たち、何してるんだ。」

 

何も無いように話し出すハルトとシスイに、講師の忍が話しかける。

 

「助けに来たんだ! もう心配しなくていいぞ!」

 

 

そのシスイの言葉は、生徒には安心できるのものだが、講師にとっては純粋に喜べない言葉でもあった。

それでも何も言わないのは、守ってもらったことは事実であるから。そう認識する忍は問題ない。

問題なのはそういう認識よりもプライドが先行する忍だ。

 

「うちはになんぞ助けてもらわなくとも、我らだけでどうとでもなった!!

余計な手出しは無用だ!!」

 

 

 

──ブチッ

 

「……やば。

 

“風遁・風の刃”」

 

 

ハルトを中心に広がる風の塊は、みんな手を縛っていた岩隠れの忍の術を器用に壊していった。

しかしシスイによって一人の忍だけはその術が届く前に、その手に掴まれていた。ハルトの術はシスイが防ぎ、手は縛られたままだった。

 

「げっ……、」

「じゃあ、何とかしてみろよ。」

「!?」

「俺らの手を借りるまでもないんだろ? じゃあ、大人しく縛られてないで一掃してやってくださいよ、先生。」

「あ……っ、いやっ……。」

 

それは、普段のシスイからは考えられないほどの圧。

うちはが貶されたことで、普段温厚なシスイの中で何かが切れたのだ。

 

 

「頼みますよ、先生。」

「や、やめろ……っ!」

 

周りは驚きと恐怖の声があがる。先生たちにどうにかしてと懇願の視線が生徒から向けられる。

 

「シ、シスイくん、やめて!」

「シスイ、やめろ!」

 

少ない生徒たちが必死に止めようと声をかける。しかし、その言葉もシスイには聞こえてないようだった。

シスイの手が講師の忍を持ち上げ、その身体は中に浮く。

 

 

「他の先生方もどうにかしてくださいよ。

 

“風の刃”」

 

ハルトの操る風が、器用にシスイの手から講師の忍をかっさらった。

 

「ハルト!!」

「今なにかしても、何も変わんないよ。

理不尽な力で聞かせるより、実力を見せてやればいいんだよ。」

「……ごめん。」

「シスイは間違ったことしてないよ。」

 

ハルトの手が自然とシスイの頭を撫で、笑った。

闇の覆われていたシスイの瞳には光が戻り、普段、表情をあまり変えないハルトの意外な姿に、生徒たちは少しざわつく。

 

シスイが落ち着いたのを見ると、ハルトは風を操りゆっくりと講師の忍を下ろして、その手を縛る術も解いた。

 

「た、助かった……。」

「……、」

 

下ろした忍は、ハルトに礼を言うために顔を上げると、そこにハルトの姿は無く、

 

「……

 

二度目はないと思え。今ここに、彼(シスイ)がいることに感謝するんだな。」

「!?」

 

いつの間にか、背後から首筋にクナイを当てられていた。

 

「ど、どうして……、うちはの者に……っ!」

「……未来、わかる日が来る。いや……、

 

 

俺が来させる。」

「どういう……!?」

 

 

 

後にも先にも、ハルトの決意を聞いたものは、この者しかいない。

 

 

ハルトは感じた。シスイはナルトに似ていると。

周りがなんと言ってようと、大切なものは守る。

熱くなりやすい。

そして、仲間想い。それは木の葉の人という単位で。

 

違うのは、才能を見せ始めたのが早すぎて、幼少期から目をつけられてしまったということだ。

 

 

──そんな忍を木の葉の闇で消させない。

 

 

──シスイを支えていく。

 

 

波風ハルトが、

 

 

 

──うちはシスイを火影にすると、

 

 

誓いを立てたことをまだ当人ですら知らない。



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二人の天才を支えられる力


前回の話は地雷だった方が多かったようです。申し訳ないです……。シスイが切れちゃったのがダメだったか……。
シスイも幼いし、まだ一族思いの思考でもいいと思うんです。


そんなシスイ、もはや何歳か忘れそう。……幼いはず。
今回はそんな話です。


 

 

「すごい……。」

 

誰かがそう呟く。

それは、まだ幼い二人の忍に守られてる彼らの中から漏れた言葉。

 

彼らの視界には、最初にハルトくんが放った水遁の術が、未だに壁として存在していて、最前線に立つ二人のチャクラ量は、既にアカデミー生としてのそれを超えていた。

 

 

 

──キーンッ!!

 

「!」

 

水の壁を通って投げられた手裏剣だったが、二人は全く動揺することもなく弾いてみせた。

 

 

「──、────。」

「──? ──!!」

 

ハルトくんが何か言うと、シスイくんはハルトくんの方を見て、表情をコロコロ変えて話している。

次の瞬間、水の壁は無くなりシスイくんの最初の火遁で生き残った忍が表れた。

 

 

「シスイ。残念だけど、この瞳はあんまり長く使えないんだ。だから、最初っから全力で。」

「そうなのか? わかった!」

 

 

数が少なくなったとはいえ、明らかな人数差がある戦闘。その危険と絶望に、悲鳴や心配の声をあげる人たち。

 

私もその中で声をあげた。でも、悲鳴や心配の声ではない。

 

 

「あれ……?」

 

疑問と驚きの声と言った方が近い気がする。

 

一瞬だったけど見えたのだ。

ハルトくんとシスイくんの瞳が、

 

 

──同じ色に光っているのが。

 

 

───────────────────────

 

 

──シュンッ!!

 

いくつかの手裏剣を敵に向かって投げた。明らかに数は足りてないけど、まぁ、問題ない。

 

 

「“手裏剣影分身”」

 

少なかった手裏剣は、倍以上の数になる。だが所詮は分身、と侮ってもらっては困る。

 

「“火遁・鳳仙花爪紅”っ!!」

 

シスイの火遁の術、鳳仙花爪紅は放った手裏剣に小さな火球を纏わせるもの。分身の手裏剣にもかなりの殺傷力がつく。

 

「シスイ。」

「おう!」

 

陽動と多少の戦力が減少できれば、後は力技で押しきる。

所詮、アカデミーの人質確保に回された忍。そんなに大量に強い忍がいるようにも思えない。

 

 

圧倒的な数の差を埋めるには、質を高めれば良い。そんなことはどこの世界も共通。

二人という数で、大多数に勝つには、その連携が全ての結果を呼ぶ。

幼くともうちはの天才忍者であるシスイに、俺がついていくためには、これしかない。

 

いや、これはシスイやイタチについていくための力なのかもしれないな。

 

頭は痛いし、目にも異常な程の力がかかってるけど、三回目にもなればだいぶ慣れてきた。

 

「ハルト……。」

「シスイがメインで行っていいんだよ。僕はそれに合わせてまわるから。」

「その目って……。」

「うん。シスイの写輪眼だよ。ちょっと借りてるね。」

「……、」

 

うん、あまり理解が追いついて……

 

「すげぇ!!」

 

 

……なくもない?

 

「すごい?」

「なんかよく分かんねぇけど、すげぇ! 俺、あんま考えてないのにハルトが全部合わせてくれるっ!」

 

うぉぉぉぉ!と叫ぶシスイを呆然と見ていた。

 

「そうだ……、理解よりも先に本能が勝つんだった。」

 

いやぁ、これがイタチが尊敬するあのうちはシスイになると思うと、人生わからないなぁ。

 

 

 

「シスイ。残念だけど、この瞳はあんまり長く使えないんだ。だから、最初っから全力で。」

「そうなのか? わかった!」

 

忍術をある程度見せたところで、再び構え直す。

俺たち二人が得意とする分野は忍術ではない。むしろ、忍術の連携は最近やり出したもの。

 

出会った時から、ほぼ毎日のように二人でやってきたのは“体術”。

シンプルで、連携はしやすが崩されやすい。しかし、相手の力量を上回ればなんの問題もない。

 

 

写輪眼で相手がどう動くのかを予測して動くシスイの動きを、予測して動く俺。

 

勝敗はすぐについた。

 

 

 

「ここ、お願いしてもいいですか?」

「あ、あぁ。わかった。」

 

ようやく動けるようになってきた先生方が生徒の介抱をしたり、警備を強化してる。その中の先生の一人に縛り上げて忍の監視をお願いした。

 

「シスイ、行くよ。」

「どこにだ?」

 

正直、時間がかかってもいいならわざわざ“鏡眼”を使う必要はなかった。今回、それを使ったのはなるべく早くここを片付けたかったから。

 

 

「本拠地。」

「?」

 

岩隠れの忍の話から、アカデミー生は何かしらの交渉の人質だった。であるならば、木の葉のどこかで交渉が行われているはず。

 

「木の葉と交渉するなら、するべき人は一人しかいないからね。」

「……、三代目様か!?」

「そういうことです。」

 

三代目の実力もかなりのものだ。それを抑えるために、アカデミーを占拠したのだろう。それを出されては、何も手出し出来ていない可能性がある。

 

「僕が行けば三代目も反撃出来ると思うので、行ってきます。」

「わかった。気をつけて行けよ。」

「はい。シスイ、行くよ!」

「おぅ!!」

 

既に俺たちの実力を見た先生も、俺たちが行くことを止めなかった。自分が行くよりも早く着くと考えたんだろう。頼りないけど、……まっ、正解か。

 

 

 

アカデミーを飛び出して、急ぐ。飛雷神の術を使えば速いのだろうけど、そんな一気に近づいたら逆に気づかれそう。

 

「なぁ、ハルト。」

「ん?」

「俺たちだけで大丈夫かな?」

「……心配?」

「……いや! そういうことじゃねぇ!!」

 

どうしてそこで強がってしまうんだ……。まぁ、面白いしいいんだけど。

 

「大丈夫。心強い味方が向かってると思うよ。」

「いつの間に……。」

 

 

 

 

 

 

──もう一つ。

 

──倒せる敵を倒しておきたい。






たくさんの感想ありがとうございます。読者の方にハルトの外見のイメージを聞かれました。
ハルトは、髪型はミナトの幼少期の耳前の髪をなくして自然に流した黄色の髪色です。目の色とかは決めてないですが……、いいのがあったら教えてください(笑)
小さい頃は可愛い感じです。大きくなるにつれて、クールなイケメン路線にいけたらいいな。


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性質結界封印術

最後の投稿から一週間たった一昨日、突然お気に入りが増えました。嬉しいのですが、どうしてなのか全然わかりません。……誰か、分かりますか?

今年、最後の投稿になります。
2018年、ありがとうございました!2019年もよろしくお願いします!みなさん、良いお年を!!


 

「さぁ、三代目火影。どちらを選ぶか決まったか?」

 

木の葉を見渡すことの出来る、最も高い建物が火影の執務室である。

普段であれば、火影とその側近、そして関係のある忍のみが立ち入りを許されるる場所は、今は岩隠れの忍に占拠されていた。

 

三代目火影・ヒルゼンの実力であれば、このような事、造作もなく片付けられるのだが、アカデミーの生徒を人質にとったと言われ、手出しが出来なくなっていた。それが偽りかもしれないが、真実かもしれない。

木の葉の将来を担う若い忍を、ヒルゼンは見殺しに出来なかった。

 

「早くしなければ、アカデミーを爆破する。

されたくなければ、木の葉に捕えられている岩隠れの忍を解放してもらおうか。」

「奴らは木の葉に害を与えた罪人であるぞ。裁かれず、みすみす返すと思うか。

それに、そちらが爆破するならばこちらもお前たちに返す理由はなくなるというわけだ。」

 

さっきからこの調子で、全く話が進まない。ヒルゼンは、この程度の会話で時間を稼げるのであれば構わないのだが、岩隠れの忍の交渉のレパートリーがあまりにも少なすぎることが気にかかった。

 

──誰かにやらされているようであるのだ。

 

 

今回の襲撃の手口も気になる。

まるで木の葉の警備が手薄であることを知っていたかのように、そして、木の葉の地形を熟知していたかのように抑えるべきところを抑えて木の葉を襲撃してきた。

戦争期で国同士との国交が少ない、ましてや、渦中にある岩隠れとの国交など断絶しているに等しい。そんな中で、こんなにも手際よく木の葉が襲われたことがヒルゼンは気になっていた。

 

「(それもこれも、この状況をどうにかしなければ解決せんのぅ。)」

 

上忍やアカデミーの実力者でさえ出払っている、八方塞がりのように思えるこの状況で、ヒルゼンには一つだけ考えられる光があった。

明確に実力を見たことはない。血筋を信じているのかと言われれば、否定もしきれない。

 

それでも、里の長である自分に己の意見をはっきり述べるその若い忍に感銘を受けていた。

 

 

「(誰かが来るか……、それとも……」

 

 

 

 

未知の忍にヒルゼンは僅かな期待をよせ、

 

 

──ガシャーンッッ!!!

──ボンッ!!!

 

 

 

「なんだっ!?」

 

その期待は目の前で現実となる。

 

 

執務室が真っ白な煙に覆われ、視界が奪われる。殺られるまいと岩隠れの忍がクナイを投げるが、ヒルゼンはそれを防ぐことなく、後退していた。

 

─していた、決して自らの意志でした訳では無い。煙が充満してすぐに、腕を引っ張られたのだ。

 

 

 

「“晶遁・紅の果実”」

 

煙が晴れ、ヒルゼンの目に最初に入ったのは乱反射する、ピンクのガラスに映る自分であった。

すぐにそれが忍術であること、そして、目の前の忍が発動していることを理解した。

 

風になびかせる父親譲りの黄色い髪と、振り返ってこちらを見る母親譲りの空色の瞳。

 

 

──波風ハルト

 

若き天才忍者が、ヒルゼンの期待通り現れた。

 

───────────────────────

 

 

「大丈夫ですか、三代目!」

「シスイか……。すまんの、助かった。」

「!!

いえっ!!」

 

アカデミーでは迫害されたから、礼を言われて嬉しいんだろうな。そんな、ぱぁぁ、って聞こえそうな笑顔向けなくても……。

 

シスイが窓から投げた煙玉と一緒に、術式を組み込んだ俺のクナイをも執務室に一緒に投げ、飛雷神でとんだ。

まさか、何も見えない状態でクナイを投げられるとは思わなかったけど、シスイが咄嗟に三代目様を引っ張ったのを見て、術を発動した。晶遁が見られたのは……仕方ない。

 

俺が結晶に触れると粉々に無くなる結界。煙が晴れ、六人ほどの岩隠れの忍が現れた。

 

「……てめぇら、どっから来やがった!!!」

「お前らが襲ったアカデミーからだよ!!今頃、お前らの仲間はアカデミーで捕まってると思うぜ?」

「なっ!?」

 

叫んでそのまま、シスイが三代目様に色々と話しているのをみて、説明は任せることにした。……不備があったら後で言えばいい。

 

「どうすんだよっ……、」

「ってか、なんでうちはの奴がいるんだよっ。」

「知るかっ、そんなこと!」

 

明らかに焦っている岩隠れの忍。だが、大丈夫だろっと言った忍の言葉で、全員が急にやる気になった。

 

 

「こんな餓鬼が、二人来たところで何になるってんだ!」

「少なくともアカデミーは既に無事だということですね。」

「そういうことじゃねぇよ。」

「……どういうことだ。」

 

三代目様も何かを察したようで、チャクラが高まっている。

 

「木の葉を襲うってのに、俺らだけで、しかもこことアカデミーしか襲撃しないわけねぇだろ!!」

 

 

 

──ドガーーンッッ!!!

 

「「!?」」

 

窓から見える木の葉の里から黒い煙が上がるのが見えた。

 

「早く決めねぇと、大事な里の奴らが死ぬぜ?」

 

勝ち誇ったように岩隠れの忍が笑う。里を守る忍が一人もいない訳では無い。それでも、すべてを対処できるほどの忍もいない。

 

三代目様が解放を決意しようとした時、

 

 

 

 

 

「敵の本拠地に攻めいるのに、僕ら二人で来るわけないじゃないですか。」

 

横槍を入れるように言った。

 

や、普通に考えてアカデミーとここにいる人だけで攻め入るなんて思わんよ。てか、攻め入ってたらだいぶアホだよ。

 

「木の葉には里が誇る、

 

 

“警務部隊”がいるんです。」

 

 

先程、黒煙が上がった場所から、人が運ばれているのが見える。うちは一族によって、里の人たちが安全な場所に運ばれ、岩隠れの攻撃を防いでいた。

 

 

 

 

 

「ハルト、礼を言うぞ。」

「こちらこそありがとうございます、フガクさん。」

 

執務室の入口から入ってきたのは、警備部隊隊長であるうちはフガクと、俺が頼んでうちは一族に全てを話した弥白であった。

 

「三代目、里の安全は我らが守っております。奴らの交渉に答える必要はありません。」

「うむ、そのようだな。」

 

岩隠れの忍が後退しようとするも、挟まれていて逃げることが出来ない。

 

「っ、なんでうちは一族がここにいるんだ!!」

 

突然、弾かれたように叫ぶ。

 

「……どういう意味だ。」

「うるせぇ!

最初から全部嵌められてたってことかよ!」

「うちは一族は来ないって言ってたじゃねぇか!!」

 

 

──誰に言われた

 

誰もがそれを聞こうとした。しかし、

 

「!?」

「なんだよ、これっ!!!」

 

突然ら岩隠れの忍の身体に何かの術式が浮かび上がり、だんだんと身体が膨張していた。

 

「シスイ! わしの後ろにおれ!

ハルト!! 下がるのだ!!!」

 

大人たちがその術が時限爆弾のような術だと気づき、構えだす。しかし、俺はそこから動かなかった。

 

 

「ハルト!!」

 

シスイが叫んだのが聞こえたけど、俺はここで爆発させるのを防ぎたかった。

そして、試してみたいこともあった。

 

 

「弥白。」

『わかった。』

 

弥白と対角線上に立って、岩隠れの忍を俺と弥白の直線を直径に形成された半球に閉じ込める。

 

 

 

「『“性質結界封印術(せいしつけっかいふういんじゅつ)(らい)”』っ!」

 

それは弥白と考えた、あの九尾を封印するためのオリジナル術。チャクラ性質を結界に流し、鍵をかける封印術。

今は、俺と弥白の共通性質である“雷”の性質を地に手をつく形で二重に流した。

 

透明だった封印の膜が、紫色がかる。そして、

 

 

 

──ドガーーンッッ!!!

 

 

分散するはずの破壊の力が、一点集中で爆発した。

 





毎度毎度で、うざいかもしれませんが……。
地雷だった方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。

お読みいただきありがとうございます。
2019年も一週間投稿を目指していきます!


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非人道的に恐怖を捨てる

 

 

「何が、起こったのだ……。」

 

爆発の煙による視覚の異常はない。しかしこの場合、それは一概に良い結果とは言いきれない。

 

 

「……。」

 

──ザッ

 

ハルトと弥白の足下を軸にした結界であるため、ハルトがその場から動くとそれの効果は消える。結界が消えたことにより、充満していた煙が一気に広がる。

 

 

「っ!」

「なん……だよ、これ……。」

 

結界が解かれた中にいた忍、いやもはや忍だったもの。その惨状が、爆発の威力のすべてを物語っていた。分散するはずの破壊の力が全て一点集中になったのだから、当然といえば当然。しかし、目の前の光景はその言葉で済ませるにはあまりにも地獄だった。

 

うちはフガクや三代目でさえも顔を歪める。

まだ幼いシスイが若干後退する。すぐそばにいた三代目がそれに気づき、シスイと共にハルトも自分の後ろへ隠そうとする。

 

 

 

しかし、三代目・ヒルゼンは気づいた。

若干とはいえ、顔を青ざめるシスイに対して、

 

後退することも目を背けることもせず、無表情でその現場を見つめるハルトの姿を。

その目が、あまりにも冷酷であることを。

 

その光景を見て、一人の若く優秀な忍びが育っていることを嬉しく思う反面、

その思考が読めないことに恐怖を感じていることも、また事実だった。

 

───────────────────────

 

 

「……。」

『主、どうしたのだ。』

 

 

あの後、うちは一族や里内の忍が三代目の統率のもと岩隠れの襲撃を抑え込んだ。うちはの実力はやはり凄いもので、共に戦った忍たちは全てが終わったあと、談笑している姿も見られた。……これで、少しはうちはとの溝が無くなればいいと思う。

 

その夜。家に帰った俺に、母さんは何も聞かなかった。母さんほどの忍であれば、近いうちに三代目から詳しい概要を聞くと思うから、聞く必要が無いと思ったのか、それとも帰ってきた俺がそんなことを聴けるような雰囲気ではなかったのか。

残念ながら、分からない。

 

俺は自分の部屋で空を眺めていた。そこに、弥白がやってきて冒頭のセリフだ。

 

 

「弥白もやっぱり、言わない方がいいと思った?」

『……主が、迷っていたからだ。主が言えと我に言えば、迷わず言った。』

「そっか。」

 

あの岩隠れがアカデミーを襲撃してきた時に、俺はすぐに弥白を口寄せして、うちはの集落に向かってもらった。

シスイの言葉、“うちはが外にあまり駆り出されていない”。そして、そのタイミングで木の葉が攻撃される。偶然とは思えないタイミングがとても気になった。

 

「うちは一族が気づかない結界って、かなり上級の術だよね。」

『そうだな。内側の人間は絶対に気づかないよう、上手く細工されていた。外側の人間であっても、あのように巧妙にかけられていれば、気付かぬかもしれぬ。』

 

弥白が向かったうちはの集落には、巨大な結界のようなものがかけられていた。そのために、岩隠れが攻め込んできた直後にはうちは一族の動きが見えなかったのだ。

 

「もしあのまま、うちは一族が動かなかったら……。」

『今回の被害はさらに甚大になっていに違いない。そして、そんな状況で動かなかったうちは一族は、どのような非難を浴びることか。』

「……。」

 

考えただけで恐ろしい。こうやってうちはは木の葉で、少しずつ孤立していくのか。

 

『だが、主のおかげで逆になったようだな。』

「そうだね。まさか仲良くなるとは思わなかったけど。」

『よいことだ。シスイのアカデミーでの立場も、かなり良くなる。』

「それは本人が一番喜んでたよ。」

 

そう言うと、弥白は少し安心そうに笑った。

 

 

「?」

『やっと笑ったな、主。』

「……僕?」

『顔が強ばっていた。何かあったのか?』

 

全然気づかなかった、といえば嘘になる。自覚はあった。

 

 

 

「……何も思わなかったんだ。」

『??』

 

「初めてじゃない。前、ダンゾウのもとから逃げる時も。

人の命を奪っているのに、それに対して恐怖や嫌悪がない。何も感じない。

人として、おかしいのかな……。」

 

人として、当たり前の感情が抜けている気がする。人を殺しているのだ。もう少し、なにか思うことがあってもいい気がした。

 

 

『我は良いと思うが。人間の中で、それは悪いことなのか?』

「どうだろ、悪くは無いんじゃない?変なやつだと思うけど。」

『では、感情で不安定になるよりは良いと思うぞ。それが、強さに繋がっているのであれば、尚更だ。

 

我の契約者がそのような強いものである、という事実は我にとっては嬉しいことだがな。それに、忍である以上、情けをかけている場合ではないであろうからな。』

「……そっか。」

 

この辺はこの世界とは感覚の違う世界で育った記憶のある俺と、この世界が当たり前である弥白との差だろう。

 

 

どこぞの世界で、“恐怖は戦士に必要なものである”と聞いたことがある。

正直、それに納得できたことは無かった。

 

「この世界で生きるのには、丁度いいかもね。」

『??』

 

相手を殺すことに恐怖し怯えれば、自分が殺される。ここはそういう世界だ。

 

「ありがとう、弥白。」

『主の悩みが解決できたのであればそれで良い。』

 

 

覚悟しよう。

この世界は、綺麗事を並べて生き残れるほど優しいせいではない。

 

そして自覚しよう。

 

 

──俺はこの世界で、冷酷に生きていけると。





あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


早速、一週間投稿を守れなかった作者を誰か殴って(泣)
滑り出しがもう……(怒)なんやねんっ!笑笑


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第四章~中忍試験
これって誰かが通らなきゃならない道?



遅くなってしまい申し訳ありませんっ!
作者、テスト期間に入ってしまい、通学時間という貴重な執筆時間がテスト勉強なんかに奪われてしまいました……っ。
……まぁ、普段から勉強してない私が悪いのですが。

次も少し遅くなるかもしれませんが、それが過ぎれば通常に戻れると思います。もうしばらく、見捨てずにいただけると嬉しいです。


32

 

 

「行ってくるね、母さん」

「行ってらっしゃい! ハルト!! 頑張ってね!!!」

 

動きやすい服装に、小さなポーチを身につけて家を出た。

いつもの光景、前と違うのは、その額に銀色が光ること。

 

 

岩隠れによる木の葉襲撃の後も、岩隠れとの争いが収まるわけでもなく、逆に過激になっている気がした。このまま原作通り、第三次忍界大戦が始まるのかなぁ、と思ってはいるがなんせ今の俺に出来ることはない。

 

木の葉に直接襲撃してきた岩隠れの忍は、尋問にかけられてはいる。しかし、爆破された忍がいることを認知した時から、何があっても話さなくなってしまった。こっちもこっちで、無理に話させようとして爆破でもされたらどうしようもないので、言ってしまえば動けない状態になってしまっていた。

 

 

しかし、悪いことだけではない。良いこともあった。

まず、今までは一族の集落に主にいたうちは一族が、木の葉の里で普通に見られるようになった。この時代、まだうちは一族が特に何かをしたというわけではなく、嫌悪を露わにする人も少なかったため、先日の活躍でうちは一族はかなり受け入れられていた。

 

そして、岩隠れの忍を爆破させた起爆装置が、呪印であることが分かった。

あの爆発が起こる瞬間、写輪眼を勝手に鏡眼でコピーさせてもらった。写輪眼の基本は、チャクラを視ること。誰の眼であろうと、そのステータスはついている。まぁ、シスイのなんだけど。

術者までは分からない。どうせ、あいつだとは思うが、憶測だけで話しても、誰も信じてくれないだろうから、誰にも言っていない。

 

 

それでも結界で守られている木の葉には、少しの復興期間のあとには、日常が訪れた。アカデミーもすぐに始まり、下忍になるための試験を受けた。

そう、あの例の“分身の術”だ、ナルトが苦手な。言わずとも、余裕だけど。影分身とかしてるし。

この試験で学んだことは、分身の術は簡単であるということくらいだ。……ナルトにちゃんと教えとこ。

 

 

 

「ハルト、おはよー!!」

「おはよう、ハルトくん。」

 

しばらく歩いたところにある橋の上の人影が、俺に手を振っていた。

 

「おはよう、シスイ、アオイ。」

 

同じ額当てをしているこの二人ももちろん下忍になっていた。ちなみに、班も俺とシスイとアオイという、素晴らしい組み合わせだった。

そして、

 

「相変わらず、時間ピッタリだな。お前らは」

「シカク先生! おはようございますっ!!!」

「「おはようございます。」」

 

この班、第七班の教官は奈良シカクさんだった。そう、あのシカマルのお父さんの。まだ火影補佐にはなっておらず、教室に迎えに来た時は本当にびっくりした。

 

 

「今日に限って遅刻なんてしないぜ!!」

「……朝から元気だなー」

「ハルト!! お前はもっと元気を出せ!!」

 

朝早くから集まったのは、俺らが任務に行くからではない。

 

 

「全員、ちゃんと持ってきたか?」

「もちろん!」

「はい」

「わ、私も!」

 

その手に握られているのは中忍試験の受験用紙。

 

「っし、お前らと同期は誰もいない、が、俺はお前らが見劣りするなんて欠片も思ってねぇ。

全員で中忍になってこい。」

「「「はいっ!!」」」

 

 

 

あの岩隠れの襲撃事件から、しばらくたった話じゃない。決して、任務の話を省略してるとかじゃない。

 

本当に、わずかの期間だった。任務も両手で数え切れるほどしかこなしていない。

 

それでも、火影の推薦も必要とされる中忍試験を受ける資格を俺たちは手に入れていた。それほど、俺たち第七班は抜きん出ていた。

 

 

「行ってこい」

 

「っしゃあ! 行くぞ!」

「うん!」

「おう」

 

 

俺たちは全員で、試験会場に向けて走り出した。

 

 

───────────────────────

 

「では、第一次試験を開始する!!」

 

会場に入った瞬間、俺が思ったことは、

 

 

──あぁ、これか。

 

だ。

学校のように机が並べられており、鉛筆と消しゴムが置かれている。アオイは右側の机の通路側真ん中より少し後ろ、シスイは左側の机の一番後ろの窓側、俺は丁度シスイと対角線上になる右側の前から三番目あたりの席だった。

 

なるほど、この時代にもペーパーテストがあるのか。そんな関心をしていたところに、飛んできたさっきの言葉。なんだか聞いたことがある……

 

「第一次試験、試験監督の森乃イビキだ。もしかすると、俺よりも年上の忍がいるかもしれないが、ここでは俺が監督であることを忘れるな。」

 

……やっぱり、あったわ。

森乃イビキ。ナルトの時にも試験官であった人物。確かに若いけど、え、いくつかわかんな。

 

この人がこの試験の監督なら、やることは、だいたい想像がつく。

 

「第一次試験は筆記試験だ。忍たるもの、忍術や体術だけを極めていれば良い訳では無い。頭脳を使ってこそ、一流の忍である。

 

今からお前たちにやってもらう試験。その最中に、三回不正が見つかった場合、そいつとそいつと同じ班のやつは失格だ。お前らの周りにいる中忍がお前らを判断する。」

 

 

『三回、見つかれば』

つまり、見つからなければいい。見つからないように不正をしろ、それが今回の試験の目的だ。

 

うん、原作知ってるからかなぁと思ったけど、これなら、俺でも気づけそう。ナルトはほんとにバカなのか……。

そんなことを考えてたら解答用紙が配られて、試験官の始めの合図が出された。

 

 

正直に言おう、めちゃくちゃ簡単だった。

実技の時間のほとんどを読書に費やしていた俺的には、すべて習ったことだった。なんだ、不正しなくても解けたじゃん。ちなみに、最後の問題はナルトたちと同じく、後ほど発表すると書いてあった。

 

とりあえず、一通り問題を解いたところで、他の二人の様子を見てみる。

 

 

 

「“晶遁・結晶化”」

 

片手のみで発動できるようにしたこの術。指の腹を剃り合わせることで細かい結晶の欠片が中に浮き、結晶の乱反射を使って、離れたものを見るオリジナル術。

偵察に使えるかなと思って考えた術が、まさかこんな所で使えるとは。

 

 

──アオイは……、さすが、頭いいな。

 

全部は解けてなくとも、満遍なく解けている。

 

このテスト。最後の問題以外はあまり重要に思えないかもしれないが、そうではない。

 

ここで重要なのは、自分はここまで解けたという自信、そうでなければナルトのように白紙でも乗り切れる度胸のどちらかだ。

……アオイは後者かな。

そう、言うほどアオイのことは心配ではない。問題は……とりあえず勉強が好きではなかったシスイの方だ。

 

 

 

──さすがに一問くらいは解けてるかな……。

 

見る前から若干、フラグをたてていたのかもしれない。

 

 

「……。」

「……。」

 

──ほんとのバカがここにもいたー!!!

 

 

 

遠くから叫びそうな自分を必死にこらえる俺の目には、シスイの真っ白な解答用紙が写っていた。



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波風ハルトの実力

投稿、遅れてしまい申し訳ありません!
そして、そんな中でお気に入り数が2300に近づいてきました!ありがとうございます!!

次回は、戦闘シーンかなぁ。投稿日、遅れそうですね……、頑張ります。


33

 

「では、最後の問題を発表する。」

 

教室にいた二分の一ほどの忍がカンニングで退場になった頃、試験官の森乃イビキが動き出した。

 

ちなみに、シスイの解答用紙はひとつも埋まってない。ナルトと同じ状態だ。

ナルトと唯一違うところといえば、

 

 

──なんで、そんなに自信満々な顔してるのかなー

 

ビビってたナルトとは違って、シスイの顔はそんなに焦っていなかった。安心するような、不安が増すような……。

 

 

 

「最後の問題を発表する前に、お前たちには選んでもらわなければならないことがある。

それは、この問題を聞くかどうかということだ」

 

会場が少しざわつく。

説明されたことは、ナルトたちと同じ。もし、この最後の問題を受けないことを選択すれば、持ち点はゼロになり、班員全員が失格。

受けることを選択した場合、その最終問題が不正解であれば、今後一切の中忍試験受験資格を剥奪する。

 

そのルールを言われた瞬間、たくさんの野次が飛ぶ。あらかた、今までの問題も解けていないやつらだろうな。

 

 

──なるほど。つまり、最終問題だけが解ければいいわけだ。

 

冷静に今の監督の話を聞けていれば、全ては最終問題にかかっている。つまり、受けないなんて論外であることが推測できるのだが。

 

──永久剥奪なんて言われたら、そんなとこまで気が回んないのか。

 

 

最初は黙っていた試験会場も、一人が手を挙げたことを皮切りに、次々と脱落者が現れる。

 

さてと、シスイは……

 

 

「……。」

 

相変わらずなんでそんなに余裕そうなのかなぁ……。

 

とりあえず、手を挙げる気はないらしい。そこはナルトと違うところだな。

 

 

脱落者の波はまだ途切れないようなので、俺はある問題を解き始めた。

それは最終問題の一つ前。

 

“基本的な知識を用いて、封印術を一つ書け。”

 

これはオリジナルでなくてもいいわけだが、ちょっとからかうつもりで、オリジナル術である“性質結界封印術”を書いておいた。なんか反応してくれるといいなぁ。

 

 

 

結局、シスイが動揺することはなく、最初の受験者数から四分の一になった頃に、扉が閉められ、

 

「では、

 

 

 

ここにいるものを中忍試験一次試験、合格とする!!」

 

一次試験の合格を伝えられた。

 

 

「この試験、第九問目までの問題は、到底下忍の君らでは解くことの出来ない問題だ。

つまり、否応なしにカンニングをしなければならない状況である。情報とは、いついかなる時もその価値が高く、その奪取は命の危険すらある。カンニングという情報収集を第三者に気づかれた時点で、その情報は既に奪うことに失敗したということだ。

一つの情報が、仲間の、里の命に関わるのだ。」

 

確かに情報とは、その価値が非常に高い。そして、効果的な取引要素にもなる。

 

 

「そして、第十問目。

忍には確かに、忍術や体術、そして頭脳も必要だ。しかし、最も必要なものはそんなものではない。

 

今回は中忍試験受験資格を永久に剥奪する、という選択肢だったが、もし君らが中忍になったとして、目の前に差し出される選択肢はそんな生ぬるいものではない。

命を危険に晒す、ましてや情報もほとんどない任務で、君らはその任務を受けないという選択ができるか。

 

……答えは否だ。

 

中忍に求められるのは、いついかなる時も勇気を示し、困難に打ち勝っていく。それが、中忍に求められるものだ。」

 

 

小隊を率いることもある中忍には、上忍には及ばずとも、その隊に課せられた任務をこなすための度胸が必要ってことか。

 

「ここにいる者には、その度胸はあるということだ。

 

 

第一次試験、合格おめでとう。」

 

 

「よっ……」

 

 

 

「「「「「「しゃぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」

 

会場内が、一気に騒がしくなる。

そりゃあ、四分の一しかいない合格者の一人に選ばれれば嬉しいだろう。……これで終わりじゃないけど。

 

「第二次試験、いや最終試験は明日の早朝から行う!

明日の試験は模擬戦だ! 各自しっかりと準備しておくように!!」

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 

俺らの時代には、試験が二つしかないらしい。しかも、ラストはナルトたちの最終試験みたいなものだ。トーナメント方式かなぁ。

 

 

「ハルト! 帰るぞ!!」

 

最後の方まで残っていた俺を、出口から大きな声でシスイに呼ばれた。

 

「うん。 行くよ。」

 

 

帰り際に、試験監督である森乃イビキの視線を感じたけど……、まぁ、見ないふりをした。

 

 

───────────────────────

 

 

オレンジ色の夕陽が照らす教室は炎が赤く燃え上がっているように見える。そこには、机の上にあるテストの解答用紙を回収して回るイビキの姿があった。

 

 

「なるほど……、まさかこのテストを白紙で通るやつがいるとはな……。」

 

それはシスイの解答用紙。

イビキの目から見ても、カンニングする様子もなく終始自信をもって座っていたように見えた。

 

「初めからこの問題の意図を分かっていたのか……、それともただ単に……。」

 

少し笑いながら、他の生徒の解答用紙も回収していく。

 

 

そして、

 

「!

 

なるほど……。」

 

手にしたのはハルトの解答用紙。

こちらも、カンニングする様子はなく、それでも回答の手が止まることがなかった人物であった。

 

そこにあったのは、きっちり埋められた満点の回答。

そして、特別上忍であるイビキだからこそ、すぐに気づく問九に書かれた術の正体。。

 

「……あの歳で、オリジナル忍術を書いてくるのか。

無意識か、挑発か……。」

 

答えが決まっている試験という状況で、オリジナル性を出してくるのは、賭けである部分もある。それは、これがオリジナル忍術であると気づかれなければ、不正解にもなりかねるからだ。

 

ハルトは、それを見越してオリジナル忍術をこの問に書いたのだ。自分の試験監督はこれを見抜けるかどうか。

結果として、点数は表示されることもないし、合格してしまったので、ハルトがその真意を知ることは出来ないが。

 

 

「面白いやつが二人も、そして同じ班にいるとはな。」

 

今回、イビキが中忍試験の監督を務めることを火影から聞いた時に、同時にこんなことも聞いていた。

 

『今回の試験に、まだ下忍になりたての班が一組だけ存在しとる。

お主なら心配ないと思うが、贔屓目で見ずに評価してやってくれ。』

『分かっています。ですが下忍になりたて……というのは、早すぎるのでは?』

 

イビキがそう言うと、火影・ヒルゼンは立ち上がって木の葉の里が見える窓の方を見た。

 

『そうだな。

三人全員というのは、少し早すぎるのかもしれぬ。

 

しかし、うち一人は既に中忍のレベルも超えていると、わしは思っておる。』

 

忍。それも一国の長である火影が、贔屓などで人を判断しないことは分かっていた。

 

確かに、もう一人のうちはアオイのレベルも頭脳という点でいえば、既に中忍のレベルであり、総合的に見てもこの班のレベルは申し分ないだろう。

 

 

 

 

「ミナトの息子か……。」

 

そんな班の中、いや、この中忍試験を受けている全忍の中でも、波風ハルトのレベルは頭一つ分抜けていた。

 

そんな彼に、次期火影候補である波風ミナトを重ねてしまうのは、仕方の無いことだった。

 

 

 

 

「挑発に乗ってやるか。」

 

中忍試験、最終試験が始まる。



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森乃イビキの応え

あれ、戦闘シーンじゃないのに遅くなってる……。
すいません、ほんと作者がアホすぎて。

そして、そんな中でもたくさんお気に入りが増えていく……、嬉しい限りです!!
頑張ります!!!


 

「おはよう。」

「おーっす!!」

「おはよう! ハルトくん」

 

中忍試験第一次試験の次の日、早朝。

 

無事に一次試験に合格した俺らは、二次試験の会場である木の葉の里の中心にある闘技場のようなところに来ていた。

最終試験は実技試験、つまり一対一の模擬戦。

 

机に座っているよりも身体を動かしている方が好きなシスイにとっては、今日の方が調子はいいだろうなぁ。

 

 

「あ」

「どしたー?」

 

俺は、シスイにずっと気になっていたことを聞いてみた。

 

「シスイ、一次試験の解答、何も書けてなかったよね?」

「ギグッ!!! なんでバレてる……」

「そりゃあ、シスイの見たし」

「カンニングか!?」

「シスイの見て、何になるのさ……」

 

悔しいが、一つも間違ってることを言っていない俺の言葉に、シスイは言いよどんでいた。

 

──やっぱり、特に考えてなかったか……

 

 

「まっ、もし、中忍試験を受けることが出来なくなっても、ハルトとアオイと俺ならなんとかなる気がしたからだな!」

「……はい?」

 

堂々と威張っているが、俺は全くもって理解出来ていなかった。

 

「だーかーら!

もし、中忍に永久になれなくても、任務とかたくさんこなして、俺たちの実力を認めざるを得なくさせればいいかなって思ったからな!

俺たち三人なら、そんなこと余裕だろ!」

 

 

何を根拠に……、いや、シスイには合理的とかそういう考えがないんだろう。

どこまでも仲間を信じる、例え、不合理なことがあろうとも、自分が信じていることに疑いを持たない。

 

「そうだね。」

「だろ!」

 

どこまでも似ている。

だからこそ支えたくなるし、傷ついて欲しくないと思う。

 

忍という世界で、一つも傷つかないなんてことは不可能だけど。

それでも、その力と性格によって、理不尽にその存在を消されたりして欲しくない。

 

 

 

決意を新たにして、最終試験が始まる。

 

 

 

───────────────────────

 

 

「一次試験に合格した諸君! 合格おめでとう!!

だが、ここにいる者全員が、中忍になれるわけではない! 最終試験であるこの模擬戦、共に戦ってきた班のメンバーも、今回ばかりは敵だ! 思う存分、戦ってほしい!!」

 

 

──うーん、どこかで見たことある……。

 

「では、全力で行こうではないかーーー!!!!」

「……。」

 

「あの試験監督、つい最近、中忍になったらしいぜ?」

「知ってるー、しかも、中忍がほとんど駆り出されてるこの時期だから受かったって噂だろ?」

「俺は、この試験のためだけに受かったって聞いたぜ?」

「えー! そんなのありなのかよ?」

 

受験する下忍に完全に舐められてる……。

 

 

「今回の試験監督である、俺はマイト・ダイ! 君らが正々堂々と戦う姿を楽しみにしている!!」

 

……あぁ!思い出した。ガイ先生のお父さんじゃん。

原作では一生下忍だった気がするけど、中忍になったのか。噂の真相は置いといたとして……。

 

 

「では! 今回の試験のルールを説明する!

 

この試験は、一対一の模擬戦形式で行う。相手を追い詰めるか、降参させることが勝利の条件だ。決勝戦は三つ巴戦を行う!

トーナメント形式で行うこの試験は、上位三名、そして、模擬戦の中で会場にいる忍からの推薦を受けた数名のものを、正式に中忍とする!」

 

 

なるほどね……。上位三名は、実力で無条件に合格。後は、個人的な推薦で中忍を決めるというわけか……。

 

「トーナメントを発表する!!

 

トーナメントは、一次試験の点数を参考にして作られている! 」

「!」

「最終試験の受験者は七チームの二十一名。よって、最も点数の高かった一名は、一回戦を免除される!」

 

ここで使ってくるのか……。

 

正直、オリジナルの忍術を書いたところで、それを認識してもらえたかどうかなんて、知りようがないと思ってた。

 

 

「一回戦を免除される忍は……

 

 

 

シカク班! 波風ハルト!!」

 

まさか、知る方法があったとは……。いや、それとも……?

 

 

──おおぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

今日任務のない忍や、アカデミーで一緒だった友達のいる客席が、大いに盛り上がる。

 

 

「ハルトすげぇなぁ!!!

 

 

 

……ハルト???」

 

 

その騒がしい会場には目もいかず、俺の視線はある一点で止まった。

それは多分、来賓席みたいなちょっと偉い人方が座る席。そこにいた人物が俺を見て、薄く笑っていた。

 

 

「……げっ、バレてる?」

 

「気づいたか。」

 

 

 

これは、ハルトが試験監督である森乃イビキを試した、あの問九の問題。その、彼からの答えだった。

 

「挑発ってバレちゃったか。」

「ハルト……、お前誰に挑発したんだよ……。」

 

 

 

バレたことによる悔しさと、それを自分に教えてくれた敬意を表して、小さく会釈した。

 

なんか勝ち誇られた。悔しいから、最終試験がんばろ。

 

 

───────────────────────

 

「ハルトぉぉぉ!!」

「!? ……どうしたのさ」

「俺ら……、アオイとも決勝で当たっちまう……」

「……いいじゃん、決勝までいけば中忍になれるよ」

「やだぁ!! アオイとは戦いたくないぃぃぃ!!」

「知らん」

「ひどい!?」

 

すごい考え事してるシスイを放っておいて、俺は改めてトーナメントを見る。

 

 

……チャクラ的に、凄そうなやつは一次試験の時には見つけられなかった。このカカシ先生たちの代と、ナルトたちの代の間って、情報なさすぎてわかんないんだよなぁ。

 

 

──チッ

 

「!?」

 

振り向いて、少し離れたところにいる最終試験の受験者たちの集まりを見る。

 

今感じたのって、……殺気、だよな。

 

しかも、かなり強かった。

 

俺は他の人とは結構離れたところにいる。つまり、明らかに俺に向けて放たれたということだ。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、あの子が。」

 

その声は俺には聞こえなかった。



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光遁

投稿が遅れて申し訳ありません。
戦闘シーンを書くかどうか迷いながら書いていました。オリジナル術がまだまだ出てくると思いますが、お付き合いよろしくお願いします。

投稿がなかった間にも読んでいただいてありがとうございました。


 

「勝者、うちはシスイ!!」

「よっしゃぁぁぁぁあああ!!!」

 

「勝者、うちはアオイ!」

「やった……」

「おぉぉぉぉぉおおお!!! アオイィィィィ!!!」

「シスイ、うるさい。」

 

一回戦を免除された俺と違い、二人は二つとも勝ち上がり、あと一つ勝てば無条件に中忍になれるところまで来ていた。

そして、一回戦を免除された俺の、実質初戦は、

 

 

「……。」

「……まだ続けた方がいいですか?」

「あ、……いえっ!

 

勝者、波風ハルト!」

 

 

──オオオォォォォォォ!!!

 

ほぼ瞬殺で、結構大きな歓声をもらった。

 

 

「流石だなぁ、ハルトは。」

「そうだね! ……シスイくん?」

「……負けねぇ!」

 

自分の知らないところで、俺の尊敬している相手に尊敬されているとは思っていなかったが。

 

 

 

 

「次勝てば、中忍かぁ!」

「そうだね! 頑張ろう!」

 

中忍という称号が手に届くところまで来ていること。そして、一回戦と二回戦をあまり苦戦せずに突破したことから、緊張もなく最高の状態でここまで来ていた。

 

それでも……

 

 

「シスイもアオイも、次の相手は気をつけて。」

「?」

「別に、誰が来ても手なんて抜かねぇよ! でも……、そんなやばそうな相手だったか?」

「うん。

 

少なくとも、今回の試験に参加している中では、一番強い。」

「ハルトがそういうこと言うとか、怖っ!!」

 

その忍の一回戦の様子を見ていたからだけではない。

 

あの、試験が始まる前に感じた殺気。

それを放ったと思われる人物が、彼ら以外に考えられなかった。

 

「アオイ。」

「どうしたの?」

 

シスイに聞かれないようにアオイを呼んで、小さな声で言った。

 

「本人だけじゃない。」

「え?」

 

「対戦相手と同じ班の忍にも気を付けて。」

「どうして……」

「ごめん、僕にもはっきりとは分からないんだ。でも、注意しておくことに損は無いと思う。

シスイはそんな器用なこと出来るかわからないけど、アオイなら出来ると思って。」

「……うん、わかった。 ありがとう!」

「頑張って」

 

 

今、アオイに言ったことの半分は本当だ。それはもちろん、敵に関する情報のこと。

 

それでも、もう半分は嘘。

 

 

シスイが定かかも分からない敵を注意することが出来ないということ。

シスイは確かに、頭で考えて動くタイプじゃないが、戦いの中で本能的に色々なことに気づいていく。

きっと、勝手に気づいていくと思うから、言わないだけなのだ。今言ったら、逆に混乱すると思うし。

 

 

「アオイぃぃぃぃ!! 頑張れよぉぉぉぉ!!!」

「ねぇ、すごい注目浴びるからやめてよ。」

「アオイを応援するためだ! ほら!ハルトもやるぞ!!」

「……頑張れー」

「気合が足りない!!」

 

 

 

……評価、撤回したい。

 

───────────────────────

 

 

始まった、アオイの三回戦は……

 

「……っ『火遁・豪火球の術』!!」

 

 

「『光遁・乱反射』」

 

 

圧倒的だった。

 

アオイはうちは一族であり、同じ年頃の者は選ばれていない中忍試験にも参加しているのだから、忍術だけでなく体術にも優れている。むしろアオイは、特筆するようなところはなくとも、平均的に全てにおいてレベルが高いタイプの忍だった。

それは強みはないが、弱点もないということ。レベルが拮抗しているであろう中忍試験であれば、最も強く、そして最も有利なタイプであると思っていた。

 

 

「光遁って、なんだよ……っ!」

「僕も初めて見たよ。 多分……、火影様たちも初めて見たんじゃないかな?」

 

そう言って、関係者席を見る。誰が送り込んできたのかくらいは、見当がついてると思うけど。

 

 

今、発動された術。『光遁・乱反射』は、相手の術を完全に断ち切り、そのままはね返すというもの。しかも、はね返された術の軌道は様々であり、自分が強力な術を出せば出すほど自分を苦しめていくのだ。

 

 

「勝者! ……オウギ!!」

 

歓声と動揺。二種類の声が、会場を包んだ。

 

 

 

光遁……って言ってたか。名前から普通に考えれば、血継限界か血継淘汰……。でもまぁ、あいつらが関わっているとすれば、それに限ることもない、か。

 

 

 

 

「!!」

 

試合に夢中になっているたくさんの観客の中から、一人。

 

 

俺に向けて、何か視線を送っていた人物がいた。

いや、視線というよりは……

 

 

「……殺気、か。」

 

 

まだ何かが隠れているような気がした。

 

 

 

「なぁ、ハルト。」

「! ……どうしたの?」

「もし俺が戦ってる時に、関係ない人達まで巻き込みそうになったら、頼んでもいいか?」

 

普段は明るいシスイの顔に暗い影が落ちており、その中で赤い瞳が光っていた。

その頼みは自分の力が制御できないかもしれないという不安と、……覚悟。

 

 

「もちろん。」

「次の試合を行う! 試験生は前へ!!」

 

そのアナウンスで、シスイが柵を乗り越え真ん中の会場に降り立った。



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うちはシスイVSアオギ

投稿期間が一定しません……。
でも頭の中で、どんどん話だけは進んでいきます。
この妄想がいつの日か皆さんに見せれたらいいな、と思っています。

何が言いたいかというと、頑張ります。


 

「それでは只今より、うちはシスイとアオギの試合を行う!!」

 

一つ前の試合で負傷したアオイは、そのまま救護室に運ばれた。その過程を見つけたシスイが、試合を放棄するんじゃないかくらいの勢いで会場を出て行こうとした時は、流石に焦った。

結局は俺が代わりに見に行くと言って落ち着かせたけど……。

 

アオイはしばらくすると意識を取り戻して、状態も安定した。命に別状は無いと言われたことと、アオイ自身にシスイの試合を見てきて欲しいと言われたので、俺は会場に戻ってきた。

 

 

 

──ま、シスイに頼まれたこともあるし……。

 

『もし俺が戦ってる時に、関係ない人達まで巻き込みそうになったら、頼んでもいいか?』

 

 

自分が関係の無い人まで巻き込んでしまうかもしれないという、自分の弱さを認めたともとれる発言。それほど怒ってると考えれば、まぁ分からなくもないけど。

……それとも敵の能力でなにか気づいたのか??

 

 

 

「それでは……始めっ!!!」

 

 

 

「『火遁・豪火球の術』っ!!!」

 

始めの合図とほぼ同時にシスイが術を繰り出す。

 

「ふっ……、うちは一族も結局はこの程度か。

『光遁・乱反射』」

 

アオイがやられた戦法と全く同じだ。違うのは、不意打ちでやられている訳では無いシスイには、はね返ってくる自身の術を全てかわせるほどの体力と余裕があるということ。

 

「でもこの術はこれで終わりじゃない……」

 

そう。この術の本質はここから。

第一陣ではね返された術をすべて交わしても、ある一定置までいくとそのまま戻ってくるのだ。しかも、その一定置までも不規則ときた。

正面でかわした術が、背後から不規則にとんでくる。これを交わすのは結構厳しいものがある。

 

 

「……っ、」

 

だがシスイは落ち着いてすべてをかわしていく。その瞳は赤く光っていた。

 

「お、……本気だ。」

 

全てを躱せばその術は、はね返したアオギに向かうのだが、そりゃあ正面から戻ってくる術に当たる程、敵もバカではない。

 

 

たった一撃。されど一撃。

今の一つの戦いの流れで、よく分かったことがある。それは、体力という観点でシスイが圧倒的に不利であるということ。

躱し続ければいつの日か体力が尽きる。それが、シスイが負ける時だ。

 

そして、そのことをシスイも気づいていた。

 

「それを回避するには……」

「短期決戦だなっ!」

 

 

シスイが再び印を結ぶ。だが、今までに見たことのない印だった。

 

「新しい術じゃん、……まじかっ!」

 

優雅に見ていた次の瞬間、シスイのチャクラが飛躍した。そして、シスイが一瞬ではあったが俺の方に目をやった。ちょっと何の術を出すのかはわからなかったけど、嫌な予感がして影分身を試合会場の四方にとばす。

 

 

「『火遁・豪火滅却』っ!!」

 

まじかよ!? 豪火滅却なんてマダラしか使っているの見たことないんだけど!?

確かに攻撃範囲が広くして敵にあたる面積を広げ、なおかつチャクラ量でごり押しで乱反射の術を突き破るのが、短期決戦においては一番いい戦法かもしれないけども!!

 

「うわぁぁぁ!?」

「こっちに来るぞ! に、逃げろぉ!!」

 

慌てふためく観客席。あれ、そういえば普通にとんでくる術防ごうとしてるけど、失格になったりしないよね?

少しだけ心配になって、関係者席を見てみると、

 

「……。」

「……。」

「……(グッ)。」

 

いやいや、グッじゃないから。

 

三代目が笑顔で、試験監督であった森乃イビキがこちらをニヤニヤしながら見ていた。唯一、この試験の監督であるマイト・ダイだけが慌てふためいていたが……。

 

「とりあえず認めてもらえたというふうに理解しますよ。」

 

聞こえるはずもないと思うが、まぁいっか。

 

 

「『口寄せ』」

 

親指を噛み、弥白を呼び寄せる。

 

「何度も呼び出してごめんよ。」

『別に構わぬが何を……、なるほど。』

「わかってもらえて嬉しいよ。

あの術、多分、防御にも使えると思うんだ。ちょっと応用して逆向きになると思うけど……」

『うむ、どちらも問題ない。』

「おっけー。ありがと。」

 

そう言うと、弥白も飛雷神でとび、その間に分身していたらしく二体に増えていた。

 

 

前に使用した時は、結界だったからドーム状にした。けど、それだとシスイをも傷つけてしまうかもしれない。

であるならば、観客の方に結界を張れば良いのだ。ドーム状ではなくその周りを囲む観客に結界が張られるようにドーナツみたいな形で。

 

「『『性質結界封印術・雷』』」

 

第一陣で薄い紫色がかった膜が、観客を守るように張られる。

そして今回は、念には念を入れて……

 

(すい)!」

()

 

紫色だった結界が、赤色と青色も混ざった色になる。

 

結界の中にいる観客にはシスイの術の影響は全くないらしく、俺はこの封印術にチャクラを断絶することが出来る能力があることを初めて知った。

 

「なんか、こういう使い方もあるみたいだね」

『主が作った術だからな。 未知の部分があっても仕方あるまい』

「そうだね」

 

乱反射ではね返されたシスイの火遁は、俺の結界に当たったものはそのままそこで消滅した。

 

それでも俺は気づいた。

 

 

「……ん?」

『どうしたのだ、主』

「いや……、なんで今回は第一陣で(・・・・)終わったんだろうって」

 

乱反射の術の能力だと思っていた、第二・第三の自身の術が今回は無かった。つまり、シスイに背後からの攻撃がなかったのだ。

 

『確かに……』

「シスイも気づいたみたいだ」

 

 

「……、」

 

会場の中心で、考え込んでいるようなシスイがいた。多分、理性で考えているというよりは本能で考えているのだろう。

 

 

「『光遁・光加速(こうかそく)』」

「「!?」」

 

──ザシュッ!!

 

人が斬れた音と、赤い血が飛び散る。

今、極限まで高められているシスイの集中力をも上回る、そのくらいの速さでアオギは移動した。

 

「名前の通り、光の速さってわけだ」

『まずいな』

「そうだね」

 

シスイの現状よりも、俺にはもっと気になることがあった。

 

 

なぜ、先程の『乱反射』の術では第二陣以降がなかったのか。

どうして今になって、自ら攻撃を仕掛けてきたのか。

 

そこにはシスイの短期決戦を危険視するよりも、

 

もっと深い意味があるような気がした。

 

 

「『光遁・光加速』!」

「……っ! 『水遁・水陣壁』っ!!」

「……甘いな。

 

 

『雷遁・雷球』っ!!!」

 

ほぼゼロ距離で、しかも相性の直接的な優劣がないとはいえ、性質的には水が弱い雷が撃ち込まれた。

 

 

 

 

 

──うちはシスイが三回戦で姿を消した。



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波風ハルトVSアサギ

前回の投稿は地雷だった方が多かったようで、申し訳ありませんでした。
今回は、そのことと今まで遅れてしまっていたことへの謝罪も込めてちょっと早い投稿です。

……さぁ、中忍試験編ももうそろそろ終わりですかね?


 

 

「シスイ。 おつかれさま」

「ハルト……」

 

試験監督による試合終了の合図と同時に、俺は試合会場に降り立った。

敵の雷遁の術により、シスイは壁に強く打ち付けられて敗北した。

 

 

「くそっ……、い゛っ!?」

「無理して立とうとしないの。 一応、出血すごいんだから」

『アオイのところまで連れて行ってやる』

「弥白……」

「頼むね」

 

歩くのも痛そう、というか俺があまり歩かせたくないのもあり、弥白に救護室までシスイを運んでもらうことにした。

 

「ハルト!」

「?」

 

弥白に乗って向かう直前に、シスイが叫んだ。

 

「気をつけろよ……」

「大丈夫だって」

「あと……」

「??」

 

 

シスイは少し目をそらしたかと思ったら、じっと強くこちらを見つめて、

 

「負けんなよ!!」

「あったり前」

 

 

 

「続いての試合を行う!

 

アサギVS波風ハルト!!」

 

既にこの時点で、中忍が確定している二人が同じ班であり、俺と戦うアサギというやつもその二人と同じ班であることから、俺がここで負ければ決勝は行わないのだろう。

逆に言えば、俺がここで勝てば決勝は実質二対一になるということだ。

 

 

「どっちもめんどくさそうだ……」

 

さてと、俺がこの試合で確かめたいことは一つ。……『光遁・乱反射』の能力。

先程の最後の試合で、どうしてシスイの火遁は第二陣が無かったのか。

 

 

「それでは、試合開始!!!」

 

「……」

「……」

 

開始の合図が出ても、向こうは全く動く気配がない。やっぱり、彼らの戦闘スタイルは乱反射からのカウンターなんだと思う。

……んー、見れば見るほどさっきの試合の謎が深まるな。

 

「仕方ない、こっちからいくか。

 

『水遁・爆水衝波』!」

 

俺の背後から、大量の水かアサギに向かって押し寄せる。

 

「『光遁・乱反射』」

 

もちろんアサギ自身は水を浴びることもない。水気の多い地帯にするための術とはいえ、殺傷能力がない訳では無い。

 

「やっぱり返ってくるよなぁ。 ……そんで、」

 

目の前にはね返ってくる自分の水遁をかわし、そのままアサギに背を向ける形で、水遁の行く先を見る。

 

「!?」

 

さすがに敵に背を向けられるとは思っていなかったのだろうか、アサギはちょっとだけ怯んでいた。まぁ、俺にとっては都合がいい。

 

「んー、火遁がダメだったのか? それとも威力の問題??」

 

俺の水遁は普通に第二陣として帰ったきた。

 

「『雷遁・感撃波』」

 

自分の水遁、しかも帰ってくるとわかっているんだから、多少は手を抜いておいた。はね返ってきた大量の水は、雷遁に弾かれ重力に逆らわずに落ちた。

 

──ボフン

 

「?」

 

なんだ、今の音。

 

水が落ちるバシャバシャという音に隠れて、ものすごく小さかったけど、確かに聞こえた。……まるで、何かが消える音。

 

「……『光遁・光加速』」

「!?」

 

 

──ボフン

 

「影分身か」

「ほんとに見えないなぁ……」

 

それは先程のシスイ戦で見た、超高速で移動する術。実際、受けてみると本当に見えない。

 

でも……、どうして今、発動したのか。

 

彼らの戦闘スタイルがカウンターを狙ったものであることは間違いない。であるならば、今の『光遁・乱反射』は俺にダメージを与えられなくとも、攻撃自体は成功していたはずだ。シスイの時とは明らかに状況が違う。

 

──もっと他のことが要因か?

 

 

「『光遁・光加速』!」

「……かわせないなら、全方位守ればいいんだよ。

 

『風遁・風の刃』」

 

俺を中心に周囲に風が巻き起こる。

 

それは敵にとって、想像以上の範囲だったようで。

 

「っ! 『分身の術』!!」

「……は?」

「……『『『『雷遁・雷球』』』』!!!」

 

かなりの方向から雷遁がとんできたが、『風の刃』で防いでいるのでなんの問題もない。むしろ、分身を出したところで全員消えるだけなので、無駄にチャクラを消費しただけのように感じる……。

 

ボフンという音と共に、大量のアサギの分身が消える。

 

 

「あ……」

 

そうだ、この音だ。一番始めの攻撃の直後に聞いた音。

多分、水遁に雷遁をぶつけたから感電して分身体が消えたんだと思う。

え、でもあの時あそこにアサギの分身体なんていたか……??

 

「ま、考えてるよりもやってみた方が早いな。」

 

チャクラ、結構使うからあんまり使いたくないけど……

 

「『水遁・水龍弾の術』!」

 

俺の背後に巨大な水の龍が形成される。以前は、影分身と共に一体を作るのが限界だったが、今では一体ならオリジナルだけで出せるようになった。

 

「『光遁・乱反射』!!」

 

予想通り俺の技は全部はね返され、俺は全てを難なく避ける。

 

「芸が無いな……、同じことを何度も……」

「それはどうだろね」

「……何だと?」

 

ジャンプして避けた空中で、俺は再び印を組む。いつもより集中してチャクラを込めた。

 

「『雷遁・感撃波』!!!」

「何!?」

 

第二陣ではね返ってきたものではなく、第一陣で俺がかわした術に雷遁をのせた。つまり、今の水遁の術は感電させる威力を持つということだ。

 

「この水遁と雷遁の組み合わせの目的は、水遁を当てることじゃない。

 

水遁が弾かれたとしても、若干の水気を敵に残すことだ。」

 

水気を残しておけば、後は勝手に雷遁が反応して感電を起こす。

 

──ボフン!!!

 

 

会場の至る所で、分身体の消える音がした。

 

第二陣の攻撃がなかったこと、そして、あまりにも大量の分身体の消える音によって、忍はもちろん観戦していた一般客までも、俺が乱反射を打ち破ったことがわかったらしく、会場はざわついた。

 

 

 

「まさか、この術を見破るとはな」

「姿が見えなかったのは、想像でしかないけど光遁の術。 『乱反射』を利用すれば、自分の姿を消すことなんて難しくもなんともない」

「そうだな」

「だけど……

 

 

 

 

 

それが全てじゃないよね?」

「!?」

「とっくに、マーキングは完了してるんだ」

 

一般客には分からない。が、関係者席から見ている上忍はすぐにその意味を理解した。

 

見つけたのだ。会場のある二点に、父親譲りの独特の形をしたクナイが刺さっているのを。

 

「っ!」

「……お前ら、誰の差し金だ。」

「……何のことだ」

 

先程までとは明らかに違う俺の雰囲気に若干押されたのか、相手が一歩引く。

 

「とぼけんなよ、この二次試験が始まる前から俺に殺気を向けてたのはお前だろ?

 

お前ら三人、特にお前の実力は中忍試験に出るには突出していた。」

 

「それが分かっていて……、答えるとでも思ったかっ!!

 

『光遁・光加速』!!!」

 

目の前からアサギが消える。

 

 

「その術だけどさ……、

 

 

光って音よりも速いんだよ。 逆を言えば、お前が光の速さで動いた後、少し後で聞こえる音がお前の場所を示す。」

 

 

そんで、

 

「俺は光なんか関係ない。

 

移動する場所は時空間なんだから。」

 

 

 

俺が次に現れた場所は、アサギの背後。

 

 

 

 

──そして、会場の北側と南側の客席の一番後ろにいた、アサギと同じ班であるオウギとアオギの背後だった。





※前回の話で『水遁は雷遁に弱い』という記述がありましたが、読者様からの指摘で間違いであることが発覚しました。申し訳ありません。
ご指摘を受けて、『属性的に優劣はないが、相性的に水は雷を通してしまう』というように解釈を返させていただきました。失礼致しました。


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正体と決着

遅くなり申し訳ありません!
お気に入りがとても減り、若干落ち込んでいた作者です。
それでもまた、少しずつ増えていったので、それを糧に頑張りました! 読んでくださる方、本当にありがとうございます!!


さて、中忍試験編もまもなく終了です。
次の章も既に考えてありますが、前作品には見られないほどシリアス感が続きます。忍は、これくらいのシリアスはあるだろ、という考えの上での投稿なので温かく受け入れてくださると嬉しいです。



 

 

「あの分身体はアサギ、君のじゃないんだよね?」

 

試合会場の中心、アサギの背後からクナイを向けて話しかける。呆けているのか、それとも上からの命なのかは知らないが、試合が止められることは無かった。

 

「……何を言っているか分からないな」

「最初に違和感を感じたのは、シスイの火遁が第二陣ではね返ってこなかったことだ。

君たちの戦闘スタイルは間違いなくカウンターを狙うもの。 ならば、あの強力な術をはね返さない(・・・)のは理にかなっていない。 何か理由があるとと考えた。

 

つまり、はね返せない(・・・)理由があった」

「……、」

「そして僕の試合。 次に違和感を感じたのは、君らがカウンターではなく直接的な攻撃を仕掛けてくるタイミングだ。

第二陣が無かったから直接攻撃に移ったのかとも思ったが、それなら今の試合で僕に使った理由が無くなる。

 

それで考えついたのが、僕らに考える時間を与えないため。

シスイの時は第二陣が無かった理由、そして僕の時は……

 

水の音に隠れていた、何かが消えたような小さな音について。」

「……ちっ」

 

シスイも自分の攻撃が、どうして二度目のはね返りが無いのかは不思議に感じていた。 もう少し時間があれば、きっと色々な可能性にいきついていただろう。ただ、何度も乱反射による攻撃をかわし続けたことによる体力の消耗と、初めて見せた直接攻撃に対応しきれなかった。

 

「だが……それによって、なぜ俺と同じ班の者に刃を向ける。」

「……さっき言っただろ?

 

 

あの第二陣からの乱反射は、君と同じ班の二人の分身体だね。」

 

いつ間にか静まり返っていた会場から、ざわついた声が聞こえる。

 

「君がこの試合で分身を使ったのは一回、『雷球』を複数方向から繰り出したあの時だけ。 あの時、分身体を消されたオリジナルの君には、確かに分身体のダメージが与えられていた。

でも、乱反射を使用した時には、まるでダメージが無いように見えた。」

「……。」

 

アサギが押し黙る。もはや、黙秘が肯定と同等の意味を示していた。

 

「だから僕は、乱反射を起こしているのは別の分身体じゃないかと考えた。

 

そこからは早かったよ。 光遁を使えるのは、この会場に君たちの班しかない。 そう考えれば、シスイの試合の時に乱反射が発動しなかったことも説明がつく。」

「……どういうことだ」

「シスイの火遁から会場の観客を守るために使ったあの結界、チャクラを完全に分断するんだ。 あの時、結界の中にいた君とオウギは僕の結界によって、自分の分身体へのチャクラ供給が途切れて、乱反射が発動しなかった。」

「……ちっ!!」

 

ここでようやく、試合を中断するのかどうかの審議に入るようだった。まぁ、関係者席に座っているイビキ先生と三代目は、面白そうに笑みを浮かべているが。

 

 

 

「……さてと、改めてお前に聞きたいことがある。」

「!」

 

観客の目が、試合に集中しなくなった頃を見計らい、俺はアサギの耳元で囁いた。自分で言うのもあれだが、多分、チャクラの雰囲気とか別人だと思う。

 

「お前、誰の差し金だ? 光遁なんで、誰が作った?」

「っそんなこと、言うとでも思ったか!」

「言わなくてもいいけど、お前の仲間がどうなっても知らないよ?」

 

アサギの背後で、クナイの動く音が響く。

 

「どうせ、ダンゾウあたりだろ」

「!」

「それとも大蛇丸か?」

「……」

「その両方か

 

まぁ、どっちにしろお前は捕えられる。 負けた時点で、救助は望めないし、光遁のこともきっちり聞かれると思うから覚悟しとくんだな。」

 

 

「試合は中断!! この試合は、不正を行ったアサギの敗北とし、勝者は波風ハルト!!!

 

なお、他二人についても審議が終了次第、発表とする!!」

 

審判のマイト・ダイさんが勝敗を述べた。っていうか、この人が審判だってこと忘れてた。

 

とりあえず、俺がここにいる意味はなくなったので、救護室にでも向かうことにした。アサギと同じ班のやつも直に木の葉の上層部が捕らえに来るだろ。

 

 

 

「なぜだ……!」

「……は?」

 

背中を向けたアサギから突然、チャクラが巨大化するのを感じた。

 

「なぜ、俺ではなくお前なんだ!!! なぜお前はこんな小さな里を選ぶのだっ!!

 

 

最高傑作と言われているお前がっ!!! どうしてっ!!!」

 

そう言うと、アサギは突然、クナイを握って俺に襲いかかってきた。

 

 

 

「どうして……ねぇ。」

 

そのアサギを、俺は体術だけで抑えた。……自分の成長具合に驚いていたのはここだけの話だ。

 

 

「お前が敬愛するやつよりも、そばにいたいと思える人たちが俺のそばにはいたから……かな。」

 

 

 

 

 

「ハルト!!! おめでとぉぉぉぉぉお!!」

「寝てろ、けが人。」

「けが人には優しくして!?!」

 

「おめでとう、ハルトくん!」

「ありがとう、アオイ。

二人の結果についても、後々発表するって。 でも、最終的にどうするかを決めるのはそれぞれだと思う」

 

救護室にいた二人には、俺が勝ったことだけは伝わっていたので、二人の対応については俺から話しておいた。

 

「ふーん。 まっ、それはそうなった時に考えようぜ!!」

「……結構大事なことだと思うんだけど」

「それよりも今は、ハルトくんの勝利祝いだよ!!」

「そうだよな、アオイ!!」

「そりゃあ……、ありがと」

「照れんなって! ハルト!!」

「うるさい」

「いってぇ!!!!」

 

 

 

 

そばにいたいと、守りたいと思うのは

 

―きっと同情なんかじゃない。

――未来を知っているからじゃない。

 

短い期間かもしれないけど、共に過ごした中で

 

 

あぁ、こいつらと一緒に生きたい

 

って思えたから。



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それぞれの影としての決意

私的には、こんな長いの久しぶりに書きました。

ですが、ほかの書き手さんを見ると、私のは意外と短いんですね……。なんか長いと読むの面倒くさくなるかなぁと思って短くしていたのですが、実際のところ、どっちの方が読みやすいのでしょうか?

気が向いた方いらっしゃったら、教えていただけると嬉しいです。


 

―――コンコン

 

「入れ」

「失礼します」

 

静かに書類整理をしていたヒルゼンのもとを訪ねてきたのは、ハルトだった。

 

「お忙しい中、申し訳ありません」

「構わん。 お主がくだらない要件で来るとは思っておらぬ。

 

中忍昇格、おめでとう」

「ありがとうございます。 あれから、あの三人がどうなったか聞いてもよろしいですか?」

 

ハルトの言うあの三人とは、もちろん光遁を使う三人のことだ。

 

「お主が暴いたのだ、構わぬ。

 

まぁ、結果から言えば何も話さないといったところだ。木の葉の忍登録から、三人が木の葉の忍では無いということは分かったが、どこの里の者かは分からん。」

「山中一族の術をもってしても、知ることは不可能だったということですか」

「あぁ、根本的に封印の術式が組み込まれているようでな。 捕まることも想定済みだったという事だ。」

「……なるほど」

 

ある程度、ハルトには想像がついていたことだった。

試合中、ハルトがアサギとだけ話していたこと、小さな声で話していたことをもちろん上層部にも伝えていた。つまり、今入手している情報の九割はハルトが手に入れた情報であるという事だ。そのハルトに情報を隠すメリットがないため、話されていることはわかっている全てであると思われる。

 

―――まぁ、何も分かってないってことか。

 

 

結局、至る結論はそこだった。

 

 

 

「それでいて、ハルト」

「はい」

 

「本当の要件はなんだ?」

「お見通しですか」

「これだけならば、内容が薄すぎるからかの」

「……

 

 

僕を火影直属の“暗殺特殊部隊”に推薦してください」

 

今日ここに来たのは、誓いのため。

 

 

そして、現実と離れるため。

 

俺にはまだ力が足りない。それが、ハルトが中忍試験で実感したことだった。

 

「ミナトやクシナは知っておるのか?」

「まだ言っていません。 ですが、火影からの命であれば、納得するかと」

「ミナトはともかく、クシナはどうかの……」

 

クシナの親バカぶりは木の葉の里でも有名だった。というよりも、ハルトも両親のことが大好きであったため、仲のいい家族ということ自体が有名だった。

 

そんなクシナが最愛の息子の暗部への入隊を許可するとは、到底思えなかったのだ。

 

 

「……それでも、俺はやらなきゃいけないんです」

「ハルト……」

 

何が、彼をこんなにも追い詰めているのか

 

何が、彼にこんなにも貪欲に力を求めさせるのか

 

 

ヒルゼンには理解できなかった。

まだ若い、実力も年齢的に見れば頭一つ分抜け出てるハルトが、何に焦って強くなろうとしているのかを。

 

「ハルト、一つ聞いてもよいか」

「なんでしょうか?」

「お前は、なんのために力が欲しい?」

 

ハルトが進もうとしているのは茨の道。ただ単純に力が欲しいのであれば、ハルトには家に最高の教師がいる。

だが、ミナトにではなく暗部に入ることで実力をつけたいと申し出るのは、明らかに実戦を目的としているから。

 

“人の命を奪う”

 

それは、まだ六歳の子どもにはあまりにも過酷すぎる選択だった。

 

 

「……守りたい人がいます」

「守りたい……?」

「いつか必ず木の葉を導く存在になる人を、闇から守りたい

 

それが俺が力を欲する理由です」

 

抽象的にも聞こえるハルトの言葉を、ヒルゼンはある程度理解していた。

木の葉の闇を知っているハルトだからこそ、そこから大切な人を守りたいと思ったのだ、と。

 

 

「お主の気持ちはわかった。 近いうちに手続きを済ませよう」

「ありがとうございます」

 

 

しかし、それが全てではない。

 

ヒルゼンが考えていた“木の葉を導く存在”は、ハルトとは異なっていた。

 

しかし、それは仕方の無いこと。

ハルトが見ていた相手は、

 

 

 

木の葉に迫害されているうちは一族の若き忍、

 

そして、まだ生まれてもいない未来の火影であったから。

 

 

───────────────────────

 

「全員、中忍合格おめでとう」

「「ありがとうございます」」

「俺とアオイはおまけみたいなもんだけどなー」

「まぁ、中忍になるって決めたのはお前らだけが、推薦も貰ってんだから自信持てよ」

「おっす!!」

 

中忍試験が終わり俺は優勝ということでそのまま中忍試験に合格、シスイとアオイは敗退したが相手の不正発覚で審議の余地ありということで保留されていたが、結局は会場にいた上忍からの推薦を受け、自分の意志と共に合格した。

 

「さてと、中忍に合格したってことは、このフォーマンセルは解散する。 が、またチームを組む時はこの四人になることもあるだろうからな、コンビ忘れるんじゃねぇよ?」

「そんなバカじゃないぜ!!」

「や、シスイが一番心配だよ」

「なんだとぉ!?」

「驚いてることに逆に驚きだよ」

 

「まっ、里の外の状況は落ち着いてるとは言えねぇ。 しばらくは里内の護衛の任務とかが多いとは思うが、中忍になった以上、外で実戦をすることもあるだろう。 そこからはもうお遊びじゃねぇ事忘れんなよ。」

 

―――まっ、お前らなら大丈夫か

 

 

そう言った俺たちの担当上忍であるシカクさんは、笑って俺たちを撫で回した。

 

「さぁて、焼肉でも食いに行くか!!」

「っしゃあ!! 先生の奢りー!!」

「お前らが出世したら払ってもらうさ」

「えぇ! 器が小さいぞ!」

「うるせーよ」

「二人とも落ち着いてよー」

 

三人が歩く背中を、少し遠くから眺めた。

 

この光景を忘れないように、しっかりと記憶するために。

 

 

───────────────────────

 

 

―――ハルト、ちょっと歩くぞ

 

 

合格祝いをした後、うちはの集落に帰るシスイとアオイと別れ、ハルトを連れ出した。

 

 

「お前、一体何考えてんだ?」

「……なんのことですか」

「とぼけんなよ、俺が気づかないとでも思ったか。

お前だけだよ、中忍になってからの任務予定が全く不明なのは。 シスイとアオイには護衛の任があるのにも関わらずだ。

まさか、お前だけ任務がないなんてことは無い、ってことは表沙汰に出来ない任務ってことだ。 お前の両親のことを考えれば、あの二人が許す表沙汰にできない任務……、

 

 

そりゃあ、暗部に所属することぐらいだろ」

「なんだ……、ちゃんと正解までたどり着いてるじゃないですか」

「……、」

 

まるで問題なんでないだろ、と言わんばかりに即答するハルト。 確かに下忍の頃からハルトの能力は未知数だった。

うちの班は任務をする時、特攻隊長のような役割を果たすシスイが他二人を引っ張っているように見える。 現に、他の班からすればそう見えるらしい。

だが実際は違う。 シスイが引っ張っていない訳では無いが、どちらかというとハルトが後ろから押しているというのが正しい。

特攻隊長として、そしてうちは一族として前線で敵を翻弄するシスイとアオイの影で、確実に敵を減らしていく。

 

影に徹するというのは、言うほど簡単ではない。 それもこの年頃であれば、忍であろうとも前線で目立ちたいと思うものだ。 男児であればなおさら。

その役割を嫌がることも無く、淡々とこなしていく。

 

 

光と影。

 

実力のある二人がその役割を意識した時、それは、

 

火影と補佐。

 

そこまで発展する。 二人にはそこまで発展できる可能性がある。

 

 

だからこそ危惧した。 光はともかく、影は一歩踏み間違えれば、奈落の底へ落ちる。 俺自身がどちらかと言えば影に徹する側だからこそ断言出来る。

 

そこまで辛い影に、ハルトがなりたい理由が分からない。

 

 

「暗部に入隊して何がしたい」

「……

 

 

 

先生みたいになりたい」

「!?」

 

まさか自分が出てくるとは思ってなかった。驚いて、思わずその場に立ち止まった俺に気づいたハルトが、数歩先で止まってこちらを向いた。

 

「そして、先生みたいになりたいと思える、光がいるから。

 

暗部に入隊するのは、手っ取り早いと思ったから。

影の過酷さと、光の偉大さを知れるかなって。」

 

 

月がハルトの背後から照らし、ハルトの姿が影になる。

 

 

 

 

―――大丈夫だ

 

こいつは間違った方向に落ちたりはしない。

 

光がいると認識出来ているなら、迷いはしない。 むしろ、ハルトが導く側になるのだろう。

 

 

「そうか。

 

まっ、迷いそうになったら帰ってこい」

「!! ……ありがとうございます!」

 

後は信じてやる。 自分の班の、自分が認めた大切な部下の一人。

 

自分のようにりたいと言ってくれた、可愛い後輩。

 

 

ハルトが迷わないように、俺がきちんと歩いてやる。

 

 

 

 

 

―――俺が、火影補佐の話をきちんと受けようと決めたのはこの時だなんて、誰にも言ってやらねぇが。

 

 

 

 

そして数年後、火影補佐になると決めたきっかけをくれたやつの父親の補佐になるとは、到底思ってもいなかった。





第四章~中忍試験、次回の話で終了となります!
ここまでお付き合い頂いた方、本当にありがとうございます!

さて、この章が終わったあとの章を皆さんに考えていただきたいです!多かった方を書こうと思っております!

活動報告の方に載せますので、答えていただけると嬉しいです!
注意:感想欄に書いてしまいますと、消されてしまいますので、活動報告の方にご回答お願い致します。


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あなたのため、あなたと共に


“第四章~中忍試験”終了です!読んでいただきありがとうございました!!
そして、前回の活動報告にご回答して頂いた皆さん、ありがとうございます!アンケートはまだ続いてるので、もし気が向いたら書いていただけると嬉しいです!!

さて、章の終わりですが……過去最長となりました!!
色々と地雷が多そうで、……相変わらずハルトの年齢を忘れそうになりますが。広い心でご覧下さいm(_ _)m

さて、次章をお楽しみに!


 

 

「ハルトー!!」

「うるさいよ、シスイ。」

「辛辣!?」

 

最初に見かけたのは、私が六歳の時。彼がシスイくんと一緒にいるところだった。

 

木の葉の里と、子どもには分からない歪みがあったはずだったけど、彼だけはうちはの集落によく来ていた。

 

「おっ! アオイじゃん!」

「へっ!? あ、お、おはよう!!」

「?? 今、昼だぞ?」

 

 

「シスイ。 彼女、困ってるから」

 

輝くような黄色い髪に、透き通った青い目。身長からして同い歳くらいだと思う彼は、もういくつも上のような雰囲気だった。

 

「あれ、ハルトはアオイのこと知らないっけ?」

「見たことはあるよ。 同じクラスでしょ。

初めまして、波風ハルトです」

「あ! は、初めまして! うちはアオイですっ。よろしくお願いしますっ!」

「……、」

 

──なんかまずった???

 

「……うん、よろしくね」

「!」

 

 

素敵な笑顔とは彼のためにある言葉だと、この時ほど思ったことは、後にも先にもない。

 

───────────────────────

 

 

「じゃあ、次。 うちはシスイ、……と」

「おっす!! 見てろよ、ハルト!!」

「僕も横でやるんだけどね」

「なにぃ!? ……よーし、勝負だっ!!」

 

 

アカデミー。 実技は二人ともクラスで一番、いや、アカデミー始まって以来の天才と言われてた。

勉強もできたハルトくんは、最初はちょっと冷酷な人と噂もされていたけど、岩隠れの襲撃の一件を解決したことと、元々の格好良さでたちまち人気者になっていた。

クナイを構え、さっきまで騒がしさはどこへいったのか。真剣な目つきになる。

 

 

 

──シュンッ!!

 

──キーンッ!!

 

「はぁ!?」

「勝負だって言うから」

 

同時に投げられたクナイは、シスイくんはまっすぐ的に向かって、ハルトくんは一本をシスイくんの投げたクナイの方へ投げた。

ぶつかって、方向を変えられたシスイくんのクナイは的には当たらなかったけど、ハルトくんの方向を変えたクナイはしっかりと的に当たっていた。

 

 

周囲の歓声なんて気にせず、

 

「勝ちー」

「くっそー!!!」

 

そう言って、シスイくんに追いかけられている彼の笑顔から目が離せなかった。

 

「?」

「!!」

「僕の顔になんかついてる?」

「あっ! いや……」

「??」

 

ずっと見てたら気づかれてしまった。恥ずかしい……

 

「次、うちはアオイ」

「は、はいっ!」

 

名前を呼ばれた瞬間に聞こえる、いろんな言葉。

同期、といっても私よりも三つ年下のシスイくんがいる中、私はうちはとしてはかなり落ちこぼれだった。それを象徴するかのように、私の髪はうちは一族に伝わる黒ではなく、少し青みがかっていた。

 

「例の落ちこぼれか」

「だから髪色も違うんでしょ?」

 

もう慣れていた。一族の中でも言われ続けてきた私は。

 

 

 

 

 

 

「頑張って」

「!!」

「上手なんだから」

 

 

見ててくれた。それだけで、すごく嬉しかった。

 

「ありがとうっ。」

 

 

 

結果は七割くらい。うーん、いつもよりは多かったけどまだまだかなぁ。

 

「さっすが、アオイっ!! お疲れー!!」

「ありがとう、シスイくん。 ……って、あれ? ハルトくんは??」

「ん? あー、あそこ」

 

そう言って、シスイくんが笑いながら指さした方向を見ると、ハルトくんが一人の男子生徒の腕を掴んでいるのが見えた。

 

何か言ったらしく、その男の子はちょっと青ざめてから、すごい勢いで首を縦に振っていた。何を言ったかは聞こえなかったけど、

 

 

「アオイがバカにされてるのが我慢ならないんだとさ。」

「!?」

 

よく見ると、確かに私のことを色々言っていた生徒だった。

 

「アオイもハルトが応援してくれたから、いつもより上手くいったとか思ってるんだろ?」

「えっ!? そ、そんなことないよっ!?」

「えー? ほんとかぁ?

 

あ、ハルトこっち来たぞ」

「ほえっ!?」

 

 

なんだか終わったのか、振り返ってこちらに戻ってきた。周りの女の子たちが黄色い歓声をあげてる中、見向きもせずに真っ直ぐこちらに近づいてきて、

 

 

「お疲れ」

「あ、ありがとうっ」

「……、」──グイッ

「!?」

 

ハルトくんに突然、腕を掴まれて引き寄せられる。多分、シスイくんには私たちの顔が見えない。

 

「これ、あげる」

「わぁ……、綺麗……!」

 

ハルトくんの手にあったのは、水色の花が入っている桃色の水晶。

 

 

「何かあったら、僕が守るから」

「!」

 

私はやっぱり、彼の笑顔には弱い。この時の私の顔は、絶対真っ赤だったと思う。

 

 

 

───────────────────────

 

 

……こんな時に、何思い出してんだろ。

思い出の中の私は、まだ額当てもしていない未熟者だったけど、今の私は額当てもしている。そんな成長を感じてる場合じゃないけど。

 

 

「おらっ、立ってさっさと歩けっ!」

 

決して大きな声ではない、それでも、威圧感を含んでいる声。背中の後ろで手を縛られているせいで、転んでもうまく立ち上がれない。

 

 

 

うちは一族の中では、落ちこぼれの私。

虐げられる青みがかった髪。

そして、中忍試験でそこそこの実力が証明されたが、写輪眼は開眼していない私は、敵里にとっては格好の獲物だった。

 

里の中心から少し離れた森の中を一人で歩いていた時、急に背後から襲われた。声を上げる間も、助けを呼ぶ間もなく私は国境まで来てしまった。

 

 

 

──誰か、気づいて……っ。

 

みんなが揶揄したこの髪色も、私は好きだった。

 

『髪色なんて関係ない。

それに、青くて綺麗な髪だと思うよ』

 

 

彼が、褒めてくれたから。

もしかしたら、この髪の毛に気づいてくれる人がいるかもしれないと、わずかな願いを込めて落としていった。

 

 

──ダメだなぁ。

 

気づいてくれるはずない。それでもどこかで期待していた。

 

気づけば、国境は目の前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハル……ト……くん……っ」

 

そう思った瞬間、私の胸元のポケットが淡く光った。

 

そして、

 

──シュンッ!!

 

──ザッ!!! ──ドサッ

 

 

「!!」

「誰だっ!」

 

──ザシュッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫」

 

一瞬で。私を連れていた四人の忍は力無く倒れていた。

顔をあげ月明かりが照らされた所には、彼がいた……多分。

 

 

「……、」

「君を助けに来た」

「ハルトくん……だよね?」

「……そうだよ」

 

多分と言ったのは、その顔に見慣れない面がついていたから。 それでも、暖かいチャクラの雰囲気と、不安がる私を感じて面を取り笑った彼を見て、助かったんだと分かった。

安心した瞬間に、思わず身体の力が抜けた。

 

 

「……っと。 帰ろっか」

「えっ! ちょっと……っ!」

 

倒れる私を飛雷神の術で優しく受け止めて、俗に言うお姫様抱っこをしてもらい、森を飛び出した。いつもとは違う感じがしたけども、月明かりに照らされる彼は本当にかっこよかった。

 

 

 

「ねぇ、どうして分かったの?」

「これ」

 

彼の手に握られていたのは、私の髪の毛。

 

「月の光に反射して、青く綺麗に光ってた。

君のだってすぐに分かったよ」

 

それはいつの日か君に褒められた髪。

 

「それだけで……っ?」

「!!」

 

そう聞くと、急に顔を赤く染めてふいっとそっぽを向いた。

 

「?」

「えっと……

 

 

 

 

 

 

君に渡したそれ、まだ持っててくれたんだね」

「!」

「君の、助けてっていう声が聞こえた。

 

君を守りたかった、君を失いたくなかった。 ……大切だから。

約束、ちゃんと守れてよかった」

 

“必ず守る”

もらったあの日から、肌身離さず持っていたハルトくんから貰ったお守り。

綺麗な結晶の中に淡い水色の花が入っていた。

 

呼んでないよねー、と言って笑う君の顔は、今まで見てきた中で一番輝いていた。

 

 

「呼んだよ、……ハルトくん」

「!」

 

綺麗な結晶を大切に握りしめる。

 

「ハルトくんを呼んだ。 ……ありがとうっ!!」

 

首に抱きついた私を優しく抱きしめてくれた。

 

 

 

 

 

「最後に君を守れてよかった」

「……さい、ご?」

 

うちはの集落の入口まで私を送ってくれたハルトくんが言った。

 

「うん、しばらく長い任務に出るんだ。 多分、一年くらい帰って来られないと思う」

 

 

直ぐにバレる嘘をついた。

長期任務なんて嘘。私でも、ハルトくんが持ってるお面が何を示しているのかは分かった。

 

「どうして……?」

「?」

 

「ハルトくんは充分強いよ。 私もシスイくんも分かってる!

危険なところにわざわざ行かなくても、ハルトくんは充分……っ!」

 

そこまで叫んだところで、ハルトくんの手が私の頭を撫でた。

 

「足りないんだ、まだ。

大切な人を守るためには、もっと違う強さが必要なんだ。

 

 

もしかしたら、守られたくないのかもしれないけど、

 

それでも僕が守りたいから、……君のことも」

「!」

 

次の瞬間、ハルトくんの後ろには同じような面をつけた忍がたくさん現れた。

 

「出発するぞ」

「はい」

 

こちらに背中を向けて、ハルトくんが歩き出す。

 

初めて会った時から、どこか大人びていた。

いつも落ち着いていて、冷静に状況を判断して。

 

そんなハルトくんの背中にいつも隠れていた。

 

 

「そんなことないよ」

「!」

「自分のこと責めないで。 僕も君に守られてた」

 

お面をつけていても

そうやって、いつも見透かして。

私が安心出来る言葉を言ってくれる。

 

でもちょっと悔しくて。

いっぱい悲しくて。

 

 

「私は! ハルトくんの横にきちんと立てるように……っ!!

 

ハルトくんに支えられないで一人で立てるようになるからっ!!

私のことを守ってくれるハルトくんのことは私が守るからっ!!」

「アオイちゃん……」

 

 

お面をつけていたハルトくんが、お面を外してこちらを向いた。

 

「僕が君にとって、大切な人であったことが嬉しいよ。

 

その事実でさえも僕のことを守ってる」

「これ……っ」

 

こんな事で気づきたくなかった。

 

ハルトくんは私にとって、それほど大切な人だったということ。

そして、そう思わないようにしても、思ってしまうハルトくんを失ったという感情。

 

守られてばかりいる【自分への失意】と

愛する人からの【大きな愛の喪失】によって花開くもの。

 

【写輪眼】

 

うちは一族伝わる最強の瞳力

 

「まっ、失ってなんていないけどね」

 

笑ったハルトくんは、私に近づいて

 

 

 

 

額に軽く口付けをした

 

「必ず戻ってくる、……君の元へ。

 

俺は君を悲しませたくないから、……大好きだから」

 

 

―――だから待っててね

 

そう言って、ハルトくんは今度こそ姿を消した。

僕から俺に変わったのは、きっと彼なりの決意とけじめなのだろう。

 

 

 

―――強くなろう

 

次に彼と会った時に、横に並べるように。

堂々と、胸を張って。

 

彼の感触が残る額をそっと触って、……誓う。



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第五章~千の塔を誇る塔の街・楼蘭
千の塔を誇る街・楼蘭


活動報告にたくさんのコメント、ありがとうございました!
多数の意見を頂いた【ザ・ロストタワー編】に突入致します!なお、その後に一番も見たいという意見もたくさんありましたが、元々その予定だったので、一番を見たい方はもう少しお待ちください!

※前話の【ハルトとアオイ】のミナトリスペクトのハルトくんが、以外にも好評で嬉しかったです。ありがとうございました!!


 

「波風ミナト、秋道チョウザ、油女シビ、

直ぐに楼蘭へ向かえ」

「分かりました」

 

三代目・ヒルゼンの火影室。未だ沈静化の予兆すらない木の葉の里の外でのいざこざの対処の任務にあたっていたミナトが木の葉に呼び戻されるのは、息子に暗部になる命が下った時、そして今回が二回目だった。

 

「それで、三代目。 今度の任務、このはたけカカシも加えたいのですが……」

「何か考えがあるのか?」

「えぇ。 まだ若いですが、優秀な忍です」

「ふむ……、やはりお主らは親子なのだな」

「……どういうことでしょうか?」

 

親子という言葉を聞いて、ミナトには直ぐにハルトの顔が思い浮かんだ。

 

「今回の任務、ハルトに木の葉の部隊と合流するよう伝えてあるのだ。 その時に、もしよければ木の葉の部隊にはたけカカシを加えて欲しいと言われておった。 まさかお主の方から言ってくるとはな。」

「ハルトが……今回の任務に?」

 

ミナトには、カカシを連れて行くという考えがハルトと一致した事よりも、任務とはいえ半年ぶりに息子に会えることの方が嬉しかった。

 

「あぁ。 それに今回は……」

 

 

───────────────────────

 

「ミナト、もう少しで到着だぞ」

「あぁ。 気を引き締めていこう」

「一番引き締めるべきは、ミナトかもしれんがな!」

「大丈夫だよ。 息子の前で恥ずかしい姿は見せられないしね」

 

シビやチョウザがミナトを少しからかう。ハルトが暗部に入隊し、長期任務の命を受けた時のミナトの落ち込みようは激しかった。

それでも、上忍であるミナトが任務に支障をきたすことは無く、淡々とこなしていった。それでもやはり同期から見れば、いつもと様子は違い、そしてそれを隠すように無理をしていることもよく分かっていた。

だからこそ今回の任務で、少しだけでも元気

になるミナトを見れることは嬉しいことだった。

 

「楼蘭に入ったら、カカシは任務通りに頼むよ」

「分かりました」

「俺たちは先に入ってるハルトと合流しよう」

「「了解」」

 

お面をつけ、楼蘭の街へと近づく。砂漠に囲まれたこの街には、門番や護衛などはいなくすんなりと中に入ることが出来た。

 

「随分と、あっさり入れるもんなんだな」

「……あまりにもあっさりし過ぎてる」

 

チョウザの言葉にミナトが警戒を高めたその瞬間(とき)だった。

 

 

「上だっ!!!」

「「「!!」」」

 

ミナトの声に反応して、全員がその場から回避する。

 

「なんだあれは……」

「傀儡……!?」

 

あちこちから現れる傀儡の攻撃を回避しながら、全員が術者を探していた。

 

傀儡であるということは、チャクラ糸でそれを操る術者がいるということ。その人物と傀儡の間のチャクラ糸を切るか、術者を倒せば傀儡の動きは簡単に止められる。……しかし、

 

「術者が全然見つからない……っ」

 

操っていると思われる術者は全く見つからなかった。

攻撃して破壊することは出来るが、直ぐに復活する傀儡。少しずつではあるが、追い詰められていた。

 

 

 

「“手裏剣影分身の術”」

 

横から投げられたきた大量の手裏剣。その全てがチャクラを纏って青い光を放っていた。

 

繋がる先もわからないチャクラ糸が切れる音がする。ミナト班を追い詰めていた傀儡のその機能を確実に止め、目の前でバラバラに崩れて落下していく。

 

 

「こっちです、着いてきてください」

 

ミナトたちの前に現れた忍は、そう言うと直ぐに姿を消した。

 

「行こう」

 

一瞬しか見えないその姿を、ミナトだけは確実に捉えた。と言うよりも、ミナトがいるからこそ、その忍は一瞬しか姿を見せなかった。

 

たとえ一瞬だとしても、お面をつけていても、隠そうとしなければチャクラを隠せる訳では無い。

 

 

「(成長したね……、ハルト)」

 

旅だった日から、明らかにチャクラ量が違う息子の背中を追った。

 

───────────────────────

 

 

「ここは街の中心から少しだけ離れているので、あの傀儡たちも入ってきません。

 

改めて、今回の任務でご一緒させていただきます、波風ハルトです。 よろしくお願いします」

「久しぶりだな、ハルト」

「お久しぶりです、カカシさん。 シスイの件、色々とありがとうございました」

「ほんとだよ。 ま、どっちかというとオビトの方が貢献したかな」

「オビトさんにも戻ったらお礼を言っておきます」

 

ほぼ、黙って木の葉を出た俺にシスイは最初、動揺と怒り心頭で大変だったらしい。 カカシ先生とオビトが何とかしてくれたと後から聞いた。 大変、感謝している。

お面を外して、まるで任務に関係ない話ができるくらい安全なところに逃げてきた俺たち。

だが、そんな呑気な話が出来るのもここまで。

 

「三代目からどのくらい話は聞いていますか?」

「こっちで君から聞いてもらう、今はとにかく早く出発して欲しいということで、残念ながら情報はゼロかな」

「なるほど。 分かりました。

俺が調べてわかった範囲だけですが、お話します。

 

この街、楼蘭は少し前まではこんなにも発展した場所ではありませんでした。 周囲は砂に囲まれ、資源も限りなく少なかったこの街が、約六年前にやって来た一人の男によってあっという間にここまで栄えた街になりました。

この街にあった少ない資源、それが今回の任務に関わってくる“龍脈”です」

 

今回、俺が暗部として任務を遂行している時に火影から名指してこの任務を受けた時、なんという運命かと思った。

なんたって、前世の記憶で聞いたことのある街の名前が出てきたのだから。

情報集めも簡単だった。 自分の記憶にある情報と違う点がないかを確認していくだけ。 ……結果から言えば、無かったのだが。

 

予定よりも早く終わった情報集めの後に、俺が危惧した事が二つあった。

一つは、俺が帯同することによってカカシ先生がこの任務に関わらないということ。 カカシ先生とヤマト隊長がどこいるか、何をしていたのかはちょっと分からないから、その辺は任せたかった。

この問題は、火影に直接文書を送ることで解決した。

もう一つは、この街にやってくるであろうナルトがどの世界のナルトなのか分からないということ。 世界を超えてやってきたのであれば複雑なことになりそうだし、世界が同じで未来のナルトがやって来るのであれば、恐らく俺の事も父さんのことも認識するはずだから、それも隠すのが大変そう……。

もう一つの問題は、前もって手が打てない為、若干運任せなところがある。 ……まぁ、仕方ない。

 

「この街を治める女王は、龍脈の力を辿ることが出来るのですが、六年前にやって来た男が、その龍脈を効率よく使うことを提案しました。 ですが、その龍脈の力を傀儡兵器にまで使っているのではという疑惑が上がり、俺に単独任務の命令が下りました。 それの詳しい調査のためです。

 

そちらの任務は、女王の護衛と事の真相を確かめることでしょうか」

「うん、そうだね」

「なるほど。 任務内容は違えど、おそらく向かう方向は一緒ですから、ご協力よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼むよ」

 

とりあえず、ナルトが来るまではできないことも多いかなということで、特に何かをしたという訳では無い。 原作の知識がある俺には、色々と問題が起こる前にことを全て対処しておくことも出来た。自慢するつもりではないが、それくらいの力が今の俺にはあった。

それでも何もしなかったのは、原作の流れをなるべく壊したくなかったから、……という思いが七割くらい。

 

後は、早くナルトに会いたかった、という思いが三割。 異世界から来たナルトであれば、より一層会いたい思いは強かった。

 

 

 

「あ、これ渡しておきます」

 

俺はホルダーに入った、特殊な形のクナイを手渡した。

 

「チャクラ刀です。 使い方はご存知かとは思いますが、チャクラを流せば、チャクラ糸を切ることができます。 ただ、ここの傀儡は術者ではなく、龍脈が流れる無数の管にチャクラ糸が繋がっています。 龍脈の流れは女王の血筋しか見ることが出来ないので、チャクラ人の発見は目を凝らして頂くか、傀儡にチャクラを流して逆説的に糸を見つけるしかありません。 慣れればそんなに難しくはないので……」

 

この任務受けるにあたって、チャクラ刀は必須アイテムだった。 しかし、原作で父さんたちがそれを持っている様子はなかったので、一応こちらで用意したのだ。

 

「説明は以上ですが、なにかありますか?」

「あ、一つだけ。 今回の任務で、はたけカカシは別働隊として動いてもらうんだけど、いいかな?」

「分かりました。 考えがあるのなら、構いません」

「ありがとう。 じゃあ、カカシ。 頼んだよ」

「はい」

 

父さんが言うと、カカシ先生はその場から消えた。 任務内容は知らないが、まぁ、原作通りなんだろう、これも。

 

「俺からもいいか」

「はい、どうぞ」

「チャクラ刀でもない、しかも影分身の手裏剣にチャクラを纏わせて、チャクラ刀と同じようにチャクラ糸を切るというのは聞いたことがないのだが」

「あぁ、それは……」

 

どうやら、最初に会った時のことを言っているようだ。 んー、時間が余って暇だったから考えて練習してただけどなぁ。 この世界では、異端なことだったか……。

 

「手裏剣にちょっとだけ細工してあるだけですよ。 皆さんが来るまで、時間があったので」

 

まぁ、適当に流しておこう。

 

 

その時に驚いた顔をしていた三人に、俺は気づかなかった。

 

そんなことよりも、

 

 

「!」

「「「?」」」

 

―――ドガーーーンッッッ!!!

 

「街の中心部ですね。 少し遠いので急ぎましょう」

「そうだね」

 

 

感じだ事の無い、それでも本能がそうだと叫ぶ、……自分と似ているチャクラ。

 

もう少し待たなきゃいけないかと思っていたけど、ちょっと早く会えるかもなぁ。

 

 

この世界の主人公であり、

 

自分の大切な存在である忍のチャクラの方に気がいってしまったから。




「ハルトに敬語使われるの辛いなぁ……」
「……仕方ないでしょ。 敵に、僕たちの関係を知られたらめんどくさいんだから」
「!!」
「まぁ、敵がいなきゃいいけど……」
「ハルトぉぉぉ!」
「危なっ!?」


ほんとにこの人が4代目火影で“木の葉の黄色い閃光”なんて呼ばれる日が来るのだろうか……。

まぁ、父さんの前だと俺って言うのに慣れてない、自分もどうかと思うけど……さ。


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不可能だった出会い


“平成”が終わります!!
後14時間後には“平成”じゃないなんて……、なんか不思議な感じですね。きっと、私自身が何か変わるということはありませんが。

平成最後の日!って思って投稿しました!
令和最初の日!って投稿出来たらいいな、なんて思ってます。


 

「外部の者かな……」

「そうだね。 もし楼蘭の民なら、傀儡に攻撃されているのはおかしい……」

 

街の中を急ぐ四人。カカシ先生がいなくなって、実質フォーマンセルを組むことになった俺たちは、今現在、激しいチャクラのぶつかり合いが起きている街の中心部へ向かっていた。

 

―――そうだ、と本能が俺に告げる。

 

もちろん、そんなこと言えるわけがないが、俺にはこのチャクラが誰なのか分かったよう

な気がした。そしてそれが正しければ、物語が動き出すという訳だ。

 

 

―――ドガーーーンッッッ!!!

 

再び響き渡る轟音。遠くても感じる、乱れているチャクラ。

 

「あれか……」

「随分と目立つ恰好だな。 潜入……という訳じゃあ無いのか?」

「……あの額当て、木の葉のものじゃないか?」

 

そしてそんな遠くから、よくもそんなにも小さいものが見えるものだ。額当ての模様を言い当てたのは父さんだが、だからといってこんなに遠くから場所を特定して格好まで見えるなんて、シビさんとチョウザさんもまぁまぁ気持ち悪い。

 

「木の葉の忍が、父さんたちの部隊以外に来ることは聞いてないよ」

「でも、木の葉の額当てが乱用されているとは考えにくい」

「じゃあ……」

 

 

「うん、助けに行こうか」

「「「了解」」」

 

分かっていた応え。助けに行くことは、決まっていた。

それでも、父さんの口からそれを直接聞くことは、俺にとってなんだか特別な感じがした。

 

 

 

 

―――ドガーーーンッッッ!!!

 

「木の葉の額当てはしているけど、万が一のことも考えて顔は割れないように。」

「分かってるよ、心配するなミナト。」

 

おそらくナルトが落下して行った場所に、ほぼほぼ垂直に急降下していく。

 

 

―――これ、間に合うか?

 

真上から見たナルトと傀儡の距離は、急降下しているとはいえ、間に合うかどうか微妙な距離だった。

 

 

「……俺が、木の葉の忍を救出します。 皆さんで、傀儡の足止めをしてください。

 

ミナトさん(・・・・・)、二人をお願いします」

「ん! 分かったよ」

 

多分、父さんも間に合うかどうか心配する距離なんだろう。何をするかを言わなくても、直ぐに二人の背中にとんだ。

 

「じゃあ、とぶよ。 降りたら、二人とも頼むね」

 

 

父さんがそう言うと同時に、俺と父さんはチャクラをおもいっきり投げる。父さんはほぼ真下。俺は……

 

 

 

「くそっ!!」

 

―――シュンッ!

 

「!?」

 

チャクラ刀を構える、ナルトの横に。

……忘れてた。ナルト、俺よりでかいじゃん。

 

まぁ、関係ないのだが。軽々とナルトを抱え込み、再び跳ぶ。少し高いところにとんだため、父さんたちが傀儡たちを追い返したのが見えた。

 

 

 

「誰だってばよ!?」

 

俺を見てそう言うってことは、おそらく原作の世界からきたナルトなのだろう。成長したからといって、チャクラの本質が変わる訳では無い。俺のチャクラを認識できないということは、そういう事だ。

 

 

―――あぁ、ようやく会えた。

 

俺が強くなろうと決めた要因。俺が守りたいと誓った相手。

 

「心配するな。 俺たちは敵じゃないよ」

 

座り込んでいるナルトの頭を撫でる。呆然とするナルトを笑って見ていた。

 

───────────────────────

 

 

「な、何するんだってばよ!?」

「あぁ、ごめんごめん」

 

大量の傀儡に襲われて、不本意ながら足を怪我して動けなくなったところを、突然助けに入ってきた四人の忍が見えた。

そして、そのうちの一人が俺のことを抱えて連れ出してくれた訳だが……

 

明らかに俺よりチビの忍に頭撫でられたってばよ!?……木の葉丸と同じくらいか??

 

「い゛っ!!」

「応急処置するから動かないで」

 

そう言うと、そいつは俺の足に手を当てて治療し始めた。

 

「お前ってば、医療忍者だったのかよ」

「ん? 違う違う。 出来るようになっておくことに、デメリットはないから覚えただけだよ」

「……」

 

サクラちゃんと比べてもこいつの腕がいいことは分かる。それに、さっき助けて貰った時の動きも無駄がなかった。

 

 

こいつ……すげぇ強ぇ?

 

「大丈夫かい?」

「はい、応急処置は終わってます」

 

さっきの傀儡の大軍を相手していた奴らも戻ってきた。

 

 

「君は……木の葉の忍だね?」

「お、おう。 (あん)ちゃんたちは何者なんだ?」

「その質問には応えられない。 でも、僕達も木の葉の忍だ」

 

面の下から木の葉の額当てだけ見せられた。

 

「じゃ、じゃあ、ここはどこなんだ?」

「ここは楼蘭だよ」

「楼蘭!? そんなはずねぇってばよ!!」

 

少なくとも俺の見た楼蘭は、こんなにたくさん建物があったりはしなかった。でもまぁ、傀儡がいるっていう点では同じなのか……?

 

「詳しい話をしている暇はない。 君には、僕たちが任務を終えるまで、街の外に出ていて欲しい。

任務が終われば、話せることも増えるだろう」

「え、えぇ……?」

 

 

「では、僕が彼に付きます」

 

多分、この四人の中じゃ隊長を務めている(と思う……)(あん)ちゃんが話をどんどん決めてく中で、一番小さいガキが提案した。

 

「我々の任務は三人で充分かと」

「んー、そうだね。 じゃあ、君に任せるよ。出口まで頼むね」

「分かりました」

 

ものすごーく自然な感じで決まってったから、思わず呆然と見ていた。

 

「えっ、やっ! 俺ってばこんなガキに守られなくても、大丈夫だってばよ!!」

「さっき君を助けたのは俺だけどね」

「ぅぐ……っ」

「それに彼は君より強いよ。 心配しなくても足を引っ張るなんてことはしないさ」

「そ、そうなのか……?」

 

この(あん)ちゃんが言うならそうなのかもしれない……。

……って!俺ってば、なんでこんなに話聞いてるってばよ!?

 

 

「出口、こっちだよ?」

「うおっ!?」

「任務終わるまで、楼蘭から出ていて欲しいって言われたよね?」

「……そんなこと出来ねぇってばよ。 俺と一緒にこっちに仲間が来てるはずなんだ。 その人を探さねぇと……」

 

結局俺の意見は通らず、隊長(だと思われる)(あん)ちゃんは、一番小さいやつを残して任務に行っちまった。

あの兄ちゃんは強いとか言ってたけど、俺はこいつに構ってる暇はねぇ。ついて来れないだろうスピードでその場から逃げたはずだったのに……。

 

「……なんでいるんだってばよ。」

「ん? 気にしないで。

ちなみに君の仲間がいる場所で、思い当たるところは?」

「……、」

「無いんだね」

「う、うるせぇってばよ! 出ちまうよりは見つけられるだろ!」

「んー、それは困ったなー」

「何が……!」

 

―――何が困ったのか、そう聞こうとして思いとどまった。

こいつはあの(あん)ちゃんに【俺をこの街から出す】という任務を受けている。そして、この街から出ないという俺の意思は、今話してしまった。

 

力づくで、連れてくつもりかっ……!?

 

 

「じゃあ、この場所を一番知っている人に聞きに行こうか」

「……は?

お、俺を連れ出すんじゃねぇのかよ?」

「連れ出して欲しいなら、連れ出すけど?

 

まぁ、あちらの任務を邪魔しなければいい訳だから。 それに……、」

「それに?」

「んー、なんでもない」

「??」

 

そんな緩くていいのか……。

 

「……ここを一番知ってる奴って誰だってばよ。」

「んー、あの人とか?」

 

そう言って、やつが指さした方向にある高い塔を見ると同時に、下から大歓声が聞こえた。

 

 

「ここをよく知るには、ここの一番偉い方に聞くのが一番早いんじゃない?」

「……、」

 

ちょっと思考が止まった。

 

 




―――可愛いなぁ

『!? ……どういう意味だ?主……』
「んー? いつかわかる日が来るよ。 今は内緒」
『……楽しそうでなによりだ』
「ありがと」

見たことない主人の姿に驚いている弥白であった。


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一応、暗部所属だから

“令和”最初!と思って頑張りました!笑
ちょっと短いのはご勘弁ください。

みなさんはどのような“令和”の迎え方をしましたか?
作者は朝の七時から仕事だったので、そんな時間まで起きている場合ではありませんでした。起きたら“令和”でした笑

“令和”の時代が皆さんにとって良い時代であることを願っております。
そして“令和”もこの小説をよろしくお願いします。


 

「あ! あいつ……」

「ん? 知ってるの??」

 

女王・サーラがいる塔にナルトと向かっている時に、塔に近づいたことでサーラの顔がはっきり見え、ナルトが会ったことがあることを思い出したみたいだった。……ま、知ってるんだけどさ。

 

 

(あん)ちゃんたちに助けて貰った場所で見たってばよ。 あいつを追いかけて行ったら、あの変な傀儡に襲われたんだ!」

「そうなんだ」

 

あの地下で彼女が歌っていた光景を思い出してるんだろうなと、ナルトを見て笑いながら向かっていた時だった。

 

 

「きゃっ!」

「「!!」」

 

まだ遠いからかその声は小さかったが、間違いなく聞こえた悲鳴。

そして見据えていた塔の上の部分が突然崩れ始め、そこに巻き込まれている女の子の姿が見えた。

 

「やべぇ!!」

「あ、ちょっと……。 早いな……」

 

迫るスピードをあげたナルトに、難なくついて行くハルトは考えていた。

 

「(おかしい……、本当ならもっと余裕があったはず。 ナルトは近くの塔から助けに行ってた……、少なくともここよりは近くの塔に。

 

やっぱり、少しずつずれているのか)」

 

―――それも悪い方向に。

 

 

初めてナルトに会った時も、あそこで間に合わないなんてことは無かった。そして今もそうだ。

たった二回。……されど二回だ。

 

 

 

―――ガンッ、ダンッ、ザーーッ!!

 

「くっそ……」

「あ、考えすぎた」

 

実際よりも遠かったこと、それによってスピードがかなり上がっていたこと。

色々と重なって、残りの落下距離では止まれないほどの速度で壁を降下していく。

 

「やばいやばい」

 

ナルトが落ちてくる先の壁に、高速で移動した。

 

 

「大丈夫?」

「な!? お前、どこからっ!」

 

ナルトがなんだか騒いでるが、ちょっと放っておく。ナルトと共に落ちながら、大きな柱を見つけ、その影に向けてクナイを投げる。

 

「しっかり持ってて」

「どういう……!?」

 

 

ナルトに触れた瞬間、飛雷神の術でとんだ。その先の柱にナルトはそのまま寄りかかって座り込む。何故ここを選んだのかというのは、ここが見たことある場所だったから、……原作で。

 

「大丈夫ですか? 二人とも」

 

声をかけると女王様は顔を上げた。別に他意は無い。ただ、声をかけた次の瞬間に、まずったなとは思った。

声をかけたのは俺だけど、彼女が顔を上げた時に見えるのはナルトだけだ。

 

「い、いやぁぁぁぁ!!」

「ぶへっ!?」

 

ナルトの両頬に手型がくっきりついた。

 

「この! 無礼ものっ!!!」

「落ち着いてください、女王様」

 

さすがに顔面パンチをくらうのは可哀想だと思って、彼女の手を掴んで止める。

……細っ!?もう少しギュッてやったら折れそう……。

 

「!?」

「我々は怪しいものではありません」

「そうだぞ! 塔から落ちてきたあんたを助けただろ」

「そ、そうだったのですか。

ひとまずそのことには感謝しますわ、ありがとう」

「……お前、本当に女王か?」

「そうです、私がこの街・楼蘭の女王サーラです」

「サーラか! 俺はうずまきナルト、でこっちが……」

 

ナルトが俺を紹介しようとして、名前を聞いていなかったことを思い出したらしい。

 

「俺は他国の忍です。 任務のため、名前は言えませんが」

「こいつもお前のこと助けてくれたんだってばよ!」

 

ナルトからの援護射撃で、どうにか信用してもらえたらしい。

 

「それで、お前ってばどうしてあんな所から落ちてたんだ?」

「っ! それが……、誰かに押されたような気がしたのです」

「なっ!?」

「あなたの命を狙っている奴がいるということですか」

「そんなことあるはずがありませんわ! この街の民たちはみな、私をこんなにも歓迎して下さっているのですよ! 」

「ではなぜ、あなた様が塔から落ちそうになった時、誰も取り乱さなかったのでしょうか」

「っ、それは……」

「確かに、何事もないように歓声送ってただけだったってばよ」

「き、きっと取り乱してそれどころではなかったのでしょう!」

 

うーむ、意外と現実が見られない方のようだ。いや、ナルトとの出会いで変化があるのだから、それも致し方ないことか。

 

 

「全く、街の外に出ていて欲しいと頼んだはずだったんだけどね」

「!?」

「すみません、緊急事態と判断しました」

「……まぁ、君が判断したなら間違いないんだろうけど」

「はぁ……」

 

無条件の信頼は嬉しいものだが、ここまでくると不思議になってきてしまう。

 

 

「一体、何者ですか! あなた方は!! 楼蘭になんのなんの用ですか!」

「女王が知らないってことは……、お前たちがサーラの命を狙ってる奴らか!!」

「……あら、」

 

俺の事は信頼してもらうために援護射撃してくれたから、父さんたちのことも擁護してくれると思ったけど、そこは原作通り進むらしい。まぁ、ナルトの頭なら仕方ない。

 

 

「一体、何者だってばよ! お前ら!!」

 

ナルトがクナイを取り出して、父さんたちに向かっていく。父さんがやられることは無いし、制圧もするのだが、ナルトについていろと命を受けたのは俺なわけで。そんな中で、ナルトが第三者に攻撃するのはちょっと問題があるわけで。

 

 

―――『お、俺を連れ出すんじゃねぇのかよ?』

―――『連れ出して欲しいなら、連れ出すけど?

まぁ、あちらの任務を邪魔しなければいい訳だから。 それに……、』

―――『それに?』

 

 

―――キーンッ!!

 

父さんに向かっていくナルトの目の前に現れ、下から迫ってくるクナイを上からクナイで相殺した。

 

―――「それに、君があちらの任務を邪魔しそうになった時は……

 

俺が全力で止めればいいだけの話だから」

 

ナルトの手からクナイは落ち、握っていたその手は若干痙攣してクナイを握れるような状態ではなかった。

 

 

忘れないで欲しい。

俺は、ただの六歳児ではないし、ただのナルトの兄でもない。

 

これでも一応、暗部に身を置く忍なのだ。

 




―――僕の息子かっこいい!

『ミナト、顔がだらしない。 直接見えなくてもわかる』
『精神世界にわざわざ言いに来てくれたの?』
『直接言ってもよかったのか?』
『んー、それは困るなぁ』
『……、』


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大きくはしたくないが、利用したい


投稿、遅くなってしまって申し訳ありません。平成→
令和で頑張りすぎました(笑)

今回は会話が多くなってしまいましたが、意味があっての事です。この話は多少読みずらいかもしれませんが、ご了承ください。


 

「……」

 

全員が沈黙するある塔の中。ナルトが父さんたちに攻撃したのを俺が止めた後、どこか安全に話が出来る場所に移動しようということで、ここにやって来た。外でバレないように弥白に見張らせているが、多分大丈夫だろう。

 

 

「ごめん、まだ痛む?」

「あ、いや。 大丈夫だってばよ」

 

分かっていたとはいえ、実際に見たナルトのスピードが速くて、攻撃を防ぐときにちょっと手加減をミスっていた。

俺に防がれた方の手をじっと見つめていたから、まだ痛むのかと心配したが、そうではないようで安心した。

 

「ここまで来たら仕方ないね。 本当は話したくなかったけど、できる範囲で説明しようか。

君もそれで構わないかな?」

 

俺の方を向いて同意を求めてくる。

……そうか、父さんが説明する内容は、ほとんどが俺が提供した情報なのか。

 

「大丈夫です」

「分かった。

俺たち三人は木の葉から極秘任務を受けてこの街に来た。 確かにここは、君の知っている楼蘭ではない、僕の考えが正しければ、君は未来から来た人だからね」

「……未来っ!?」

「あぁ、君に話したくなかったのは未来の人間がこの時代に関わることで、時の流れが大きく変わってしまうからさ。 ここは君のいる時代からおそらく十五年ほど昔。

 

そして六年前にも未来から来た忍がいる、君と同じく突然ね」

 

そこまで言うと、父さんは僕の方を向いた。何か付け足すことはあるかってこと?……ゆうてない、名前くらいだ。

 

「その忍の名前はムカデ。 女王陛下にも分かるように言うのであれば、この街の大臣を務めているアンロクザンという男です」

「……!!」

「俺たちが追ってたやつもムカデだってばよ!!

 

……あ゛ーーっ!?!? 何が何だか分かんねぇ!?」

 

ま、今のナルトの頭じゃ仕方ないか。

 

「君のいた時代で何があったのか話してくれないか? もしかしたら何かわかるかもしれない」

 

そこからナルトが話したのは、俺が原作で知っていること。龍脈までムカデを追い詰めたが、封印式を体内に取り込んでしまったらしい。

 

「なるほど。 君もムカデも時空間忍術で未来から過去に遡ってきたってわけだ」

 

まぁ、そりゃあ、実は世界まで違うなんてことはわからないよなぁ。

ナルトの世界では、おそらくミナトが封印を行ったから、時空間忍術が発動したのだと思うが、それだけではナルトが世界まで超えた理由に説明がつかなくなる。どこかで何かしらのズレがあるはずなんだけど……。

 

「……よく分からねぇけど、それじゃあ俺ってば元の世界に帰れねぇのか?」

「うん、でもムカデが体内に術式を取り込んだのなら、奴を倒せば術式も元に戻って、君も元の世界に帰れるんじゃないかな」

「本当か!」

「とにかく、急いでムカデを倒さなければ、時代がさらに大きく歪んでしまうだろうね」

 

「あぁっ!! 思い出した!!」

 

びっくりしたぁ……!……そっか、この展開は忘れてたな。

 

(あん)ちゃんの顔、どっかで見たことあると思ったら、四代目火影の顔岩とそっくりだってばよ!

 

それにそっちの二人も……ぶへっ!?」

「はい、そこまで。今は三代目だから、君が未来から来たことは間違いないみたいだね。 でもそれ以上、未来のことを話されるとどんな影響が出るかわからないから、この話はおしまいです」

 

思わずナルトの口を抑えてしまった。まさか、そこまで言うとは思わなかった。チョウザさんもシビさんもナルトの友達の父親であることは分かっていたが、元の世界の君はそんなこと気づかなかっただろ……。

 

「い、息できねぇっ!!」

「あぁ、ごめんごめん」

「謝罪が感じられねぇってばよ!」

「感じてるよ、多少は」

「盛大に感じてくれ!!」

 

まぁまぁ、とナルトを落ち着かせて、この後の動きを父さんと決めようとしていた時に、俺の事をじっと見ていたナルトが口を開いた。

 

 

「そういや、お前は何者なんだってばよ」

「ん? 俺?」

「そうだってばよ。 お前だけ面とらねぇし、そういや兄(あん)ちゃんも“俺たち三人”って……」

「意外と聞いてたんだね」

「バ、バカにすんなってばよ……」

 

最後、ちょっと自信なさげに言うなよ。

 

「んー、そうだね……」

「! いいのかい? 見せても」

「??」

 

俺が面を外そうとしたことに、少しだけ驚いた父さんに聞かれた。

そりゃあそうだ。俺は父さんたちの火影直属の命ではなく、秘密裏に動いて欲しいという言わば極秘任務だ。暗部への任務、それも俺に依頼するということは、色々とめんどくさいことがあるのだろう。そんな任務で、どこぞの者かわからない人に正体を明かすのは得策とは言えない。

 

「大丈夫です。 問題ありませんし、いざとなったら自分でなんとかしますから」

 

だが、今回は相手が誰かわからない者ではない。父さんたちにとってはそうであっても、俺にとっては大切な弟なのだ。

それに……どうせ記憶は消される。

 

俺は面を外し、ナルトの方をむく。俺の顔を見て、直ぐに父さんの顔を見たあたり、やはり直感がよく働くようだなぁ

 

「俺も木の葉の忍だよ、だけどこっちの三人とは任務の内容が違うんだ。 三人の任務は楼蘭での真実を突き止めること、そして女王陛下をお守りすること。

 

対して俺の任務は、楼蘭で作られている傀儡兵器の真相をつきとめ、あわよくば破壊すること。 後は、こっちの三人の案内係ってとこかな」

「お前みたいな小せぇ奴一人で、そんな任務受けてんのか!?」

「そうだよ」

 

若干バカにされた気がするけど、気にしないでおこう。

 

 

「お黙りなさい! さっきから聞いていれば、あなた方は嘘ばっかり!!

アンロクザンはムカデという男ではありませんわ! あの男はお母様の意志を継いで、この国のために力を尽くしてくれています。 平和を愛するあの男があなた方の言うような兵器など、作ったりするはずがありません!!」

「女王陛下、残念ながらあなたは騙されています」

「どうしてそんなことを言うのですか! あなた方のほうがずっと怪しくて、騙しているように見えます!」

 

んー、それには言い返せないなぁ。

 

「あ、おい! どこ行くんだってばよ!」

「……私が直接、確かめて参ります」

「おまっ! さっき命を狙われたばっかりだろっ!! そのアンコロザンって奴のせいかもしれねぇんだぞ!!」

「残念だけど、アンロクザンね」

「おんなじようなもんだ!!」

 

いやいや、原作よりも離れちゃったから。あんころ餅かな?

 

 

「二手に別れよう。 君にはサーラを守って欲しい」

「それはいいけど……、俺ってば早くムカデを捕まえなきゃなんねぇし、元々俺らが取り逃しちまったせいでこんなことになってるんだからな」

「でも、この時代の楼蘭の事なら俺たちの方がよく知っている。 始めに彼から情報ももらってるからね」

「ん? お前が提供したのかよ!?」

「ん? そうだよ」

「お前……何者だよ」

 

ナルトの俺を見る目がだんだん、いち忍として認めざるを得ないみたいな目になってきた。俺としてもいつまでも弟に舐められたままってのも嫌だしなぁ。

 

 

「とにかく、君を三人と同じ任務につかせる訳にはいかない。 途中で人数を増やすことは出来ないって、木の葉の忍なら分かるよね?」

「まぁ……、サーラを守るってのも大事だろうけど」

「だから俺は、君と一緒に行こうかな。 それでもいいですよね? というより、むしろ、そっちの方がやりやすいですよね? 人は増えなくて済みますし……」

「またお前とかよぉ」

「一人で動くより、役に立つと思うよ?」

 

最初より、あからさまに嫌がられたり拒否ったりしないところを見ると、だいぶ認められたかな。

 

 

「君にこれを渡しておくよ」

 

そう言って、父さんがナルトに渡したのは、あの特製クナイ。

それを見てナルトが何かを思い出したように、顔をあげた。

 

「これを持っていれば君がどこにいても駆けつけることが出来る。 俺の特製クナイだよ」

(あん)ちゃんってば、やっぱり」

「早く行け、時間が無いよ」

「……わかったってばよ」

 

そう言ってナルトは後方に走って行った。

 

 

 

分かってる、きちんと。

頭では理解している。

 

ナルトに正体を明かせば、時代が変わってしまうことも、

世界が違う中で、知らないはずのことを知ってしまうことが危険であることも、

 

 

「ハルト? 追いかけないの?」

「ん、追いかけるよ」

 

先に走っていたナルトのそばまで来る。

 

「お前の名前も、なんとか“ルト”なんだな!」

「!? ……どうだろね?」

「いーや! 聞き慣れてるから間違いねぇ!」

 

 

―――記憶を消さなければならないということも。

 

 

それでも、どうしても、

 

「じゃあ、俺のことはルトって呼んで」

「は?」

「だって、ずっとお前って呼ばれるのは嫌だからね」

「んー、まぁそれもそうか!」

 

 

ナルトに何も教えてやれないというのは、心苦しかった。

 

 

この世界の歪みを知っている俺が、この街での決着をつけなければならないということを、

 

利用できないかと考える自分にも気づいていた。





『……、』

口寄せ契約を結んでいる口寄せ獣とその術者は、精神世界で繋がっている。
意識しなければ、互いの心の内が互いに伝わってくる。

彼は意識して制御しているため、向こうに流れてはいないだろうが、彼の術者からは、その心が流れてきた。

そして、彼はとても賢かった。


『一体、何を隠しておるのだ……、主』


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信じるべき相手を信じて

 

「くっそ、あいつどこ行ったんだ?」

「忍でもない彼女の足じゃ、そう遠くへは行けないと思うんだけど……」

 

高い塔がそびえる街を見下ろして、サーラを探す。エレベーターに乗ってたことは覚えてるけど、……こりゃあ自分で探すしかないな、エレベーターありすぎる。

 

 

「……あっ! ルト、あそこだってばよ!」

「ん?」

 

……よく見えるなぁ、おい。

 

ナルトの指さした方向にある塔で、エレベーターに乗ったサーラを見つけた、……最早、気配で。

 

「で、サーラ様に近づいてどうするの?」

「んー、連れ出すってのもおかしいからな……、とりあえずそばにつくだけでいいってばよ!

なんかあった時は、俺たちで何とかすればいいだろ!」

「……そうだね」

「俺ってば、なんか変なこと言ったか?」

「ううん、何も」

 

無意識に、自覚なくそういうことが出来てしまうのは、やはり主人公だからか。

 

「行くぞ、ルト!」

 

“俺たち”と言われて嬉しいのは、

 

 

「うん」

 

可愛い弟だからか。

 

 

「入口、こんな高い場所にはないよね」

「……だぁぁぁぁ! だからってあんな下から入って、上まで登れるか!!」

 

サーラを見つけて、その塔まで来たのはいいが、建物の入口とは本来、地上にあるものだ。屋根の上などを移動してしまう忍用に上に入口がある、なんてサービスのいい建物はない。

 

「気配を察知しておけば、下から行っても見失わないんじゃないの?」

「そうだけどよぉ……」

 

どうしたもんかと唸っているナルトをのんびりと見ていたら、

 

 

「きゃぁっ!」

「「!!」」

 

サーラが部屋に引っ張りこまれた。

 

「ルト」

「うん」

 

ナルトに呼ばれただけで、何をするのか分かった。お互い顔を見合わせて、

 

 

「「せーのっ!」」―――ガッシャーーンッ!!!

 

 

二人で窓を突き破り、そのままの勢いでサーラが連れ込まれた部屋の扉を押し開けた。

 

「お前ら、何者だ!!」―――ドサッ!

 

 

……、

 

ドサッ?

 

ナルトがチャクラ刀を構え、黒い布のマスクを被った集団からサーラを守る。俺の知っている原作通りの話が目の前で展開されていた、

 

 

「……、」―――カタ

「?」

「!?」

 

俺の足もと以外では。

そういえば、俺が立ってるここって、村の人が電気をつけるスイッチがあるところだ。

でもそのそばに居るのは、俺よりも小さい子ども一人。スイッチに手が届くわけがない。

 

俺に気づかれたとわかったその子どもは、少し震えながらも必死に何かを訴えてきた。

 

「……あ、ぁの」

「どうしたの?」

 

ここは見た目が子どもの特権だ。一緒に屈んで目を合わせて聞けば、小さい俺になら多少なりとも心を開いてくれる。

 

「あ、あそこのぼたん、おしてほしいの……」

 

子どもが指さす所にスイッチらしきものを見つけた。

 

「いいよ、でも……」

 

明るくなった時に、俺がつけたって思われたら混乱が起きる気がした。だから、

 

「!?」

「一緒にね」

 

子どもを抱っこしたまま少しジャンプしてスイッチを押した。

 

 

「「「「!!」」」」

「……、」

「あー……、まぁ、電気はついたってことでいいよね?」

 

抱っこしてもしなくても、結局不思議そうな顔で見られることには変わりなかったみたいだ。

 

 

 

サーラとナルトが村の人と話している時も、その子は俺から離れようとしなかった。なんだか随分と懐かれたようだ。

 

「ルト! 俺たち、ちょっと地上に行ってくるってばよ!」

「分かった。 他の人たちも連れて、追いかけるよ」

 

おそらく、外で行われているパレードを見に行ったんだろう。その後、確かどっかに行っちゃうからついて行かなきゃダメだな。

 

 

「君はここにいたの?」

 

ナルトとサーラ、そして村の二人が出て行った後、部屋を片付けている時に、スイッチの上に小さい子どもが乗れるくらいの板が取り付けてあるのを見つけた。

 

「うん」

「ここから電気をつけるつもりだったんだね」

「どあがあいて、びっくりして、おちちゃったの」

「それは……ごめんね」

 

間違いなく俺たちのせいだ。

 

「んーん、おにいちゃん、やさしいから大じょーぶ」

「ありがと」

 

「こんな感じですかね」

「んー、はい。 多分、バレることは無いと思いますが、証拠は消しておくに限りますからね。

 

我々も上に行きましょうか」

「……、」

 

誰も動こうとはしない。そりゃあそうだ、見知らぬ国の見知らぬ奴に言われても、ついて行く気にはなれない。

さっきは少なくともこの街の女王がいたから、落ち着いただけ。いない今、信じる要素は何もない。

 

それでも……

 

「信じてください」

「……、」

「俺ではなくて、あなた方の女王様を」

「……!」

「そして、……一緒にいる少年を。

 

必ずこの街の力になってくれますよ」

 

 

守らなければならない。

この街を、この街の人を。

 

その信頼を。

 

俺のことは信じてくれなくても、自分たちの女王様まで疑わないで欲しい。

 

 

俺が生きていることで起こっている悪い流れによって、

 

これ以上の犠牲を払わないで欲しいから。

 

 

「サーラ様も、うずまきナルトも、

 

強いですよ」

「……!!」

「上に急ぎましょう」

 

上に向かって走る村の人たちの背中を見て……誓う。

 

―――犠牲は出させない、と。

 





「おい! サーラ!!」
「……逃げられたの?」
「おまっ!? 逃げられたとか言うなよ! ……だぁぁ、見てろよ!」
「あ、ちょっと……」

来るのが遅かったか、サーラが既にこの街の真実を知り、傀儡の群衆の中へ逃げ出たところだった。
そして、それを一目散に追いかけて行ってしまったナルト。……村の人たちをこのままにしておく訳にはいかない。

「“口寄せの術”」───ボフン

「弥白、悪いんだけど今の黄色い髪の忍、追いかけて」
『分かった』
「あー、弥白」
『?』

この時の発言は、確信と疑いが半々。

「その忍に触れないでね」
『……

分かっておる』

ほんと、俺の口寄せ獣は賢くて助かる。


───ナルトと俺には何かしらの関係がある

弥白がそう勘づいていると完全に確信した。
そしてそれに気づいていながらも、何も言わずに従ってくれる。

それは、俺も信頼されてるって思っていいのかな。


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異世界での歪みの影響


投稿、遅くなってしまって本当に申し訳ありません出した。

あまり期間をあけると何の話か忘れられてしまうので気をつけてはいるのですが……。
次投稿は頑張ります。

そんな中でも応援してくださっている方、ありがとうございます!!感想・お気に入り登録がやる気につながっています!!



 

 

まるでネオン街のような夜の街。それは、偽物のサーラを祝うパレードの光。人の形をした大量の傀儡もともに、同じ方面へ進んでいく。

そこから少し離れた通路を、逆走するナルト。

 

「くっそ、あいつってばどこ行ったんだ?」

 

人で溢れるこの状況で、チャクラを持たないサーラを見つけるのはかなり困難だった、

 

「~♪ ……♪」

「この歌……」

 

ガヤガヤと騒がしい通りの中から、かすかに聞こえた歌声を見つけるまでは。

 

 

「その歌、初めて会った時も歌ってたな」

「お母様が、この歌をいつも歌ってくれていたんです」

 

聖母マリアを連想させる鮮やかなステンドグラスがある塔の中にサーラはいた。

 

 

 

「……お母様に、龍脈の力を民のために使うことを進言したのは、アンロクザンでした。

お母様の龍脈を操る力と、アンロクザンが持ち込んだ技術によって、楼蘭はあっという間に千の塔のある街に発展しました。」

 

かつての、砂漠の中の資源も何もかもが枯渇していた街からは考えられない変貌。おかげで人々は、以前よりずっと安寧な暮らしをしていると思っていた。

 

「しかし、お母様は夢半ばで亡くなってしまい……、一人ぼっちになった私の側にはアンロクザンしかいませんでした 、……ほかの誰も、」

 

幼かったサーラにとって、アンロクザンだけが自分の唯一の見方だと思っていたのだ。そのアンロクザンでさえも味方ではないかもしれない、サーラは本当に一人ぼっちになってしまったのだ。

 

「俺にも親はいねぇ」

「!」

 

ナルトがサーラにひかれたのは、きっと成り行きなどではない。自分と境遇があまりにも似ていたからだ。

一人という孤独に押しつぶされそうになっている心を、必死に取り繕う姿が。

 

「でも、エロ仙人っていう師匠がいる、

 

……死んじまったけどな」

「ナルト……」

 

つい先日、木の葉にとって脅威となる暁を討とうとして帰らぬ人となってしまった自分の大切な存在。

 

「でも俺は、師匠から大事なことをたくさん学んだ、一度決めたことは絶対に曲げねぇ“ど根性”っていう忍道も、師匠譲りのもんだ」

 

それでも、その意志が消えることは無い。それは、彼が育てた大切な存在によって、確実に受け継がれていくのだから。

 

 

「お前も、お前の母ちゃんが守ろうとしていた大事なものをもらってるんじゃないのか」

「大事なもの……、……!」

 

サーラの脳裏に浮かぶのは、慎重な母が、長年触れられていなかった強大な力を使ってでも、守りたかったもの……

 

「母ちゃんが大事にしていたものを、今度はお前が守る番だってばよ」

 

……この街の民の顔。

 

「お前がやるべきことをやるんだ、絶対に曲げることなく」

 

ナルトの目がまっすぐ前を見据えており、その姿が、サーラの目には今まで見たことの無いナルトを見た気がした。

 

そして、その姿に押されるように決意する、……この街をともに育ててくれた者を疑うこと、そしてその者を疑えというこの忍達を信じるということを。

 

「まずは、この街の真実の姿を確かめなくてはなりません。

私たち女王には、龍脈の流れを感じ取る力があります。この街は張り巡らされているあの管を通って、龍脈の力を供給し動いています。中心のあの塔が、供給源となる核の部分、あそこに行けば何かわかるかもしれません。

 

ナルト、あそこまで連れて行ってもらえますか」

「おぅ! 任せとけってばよ!」

 

 

『その任務、我らも同行してよいか』

「「!!」」

「ごめんね、立ち聞きしたみたいになって」

「ルト!? ……と、何だ?」

『……、』

「俺の口寄せだよ、

 

サーラ様をあの塔に連れて行くんでしょ? 俺はこの街の情報、結構集めてるから力になれると思うよ」

 

ナルトは少し考える素振りをしたが、すぐに顔をあげた。

 

「そうだな! ルトは強ぇし、その口寄せなら問題ないってばよ!

いいよな? サーラ!」

 

サーラもサーラで考えているみたいだが、そんな時間はないと分かったのか直ぐに了承した。

 

「ありがとうございます。

 

向かう前に、外にいるお二人にここで待っていて欲しいと伝えてきて頂いてもよろしいでしょうか?」

「二人?」

「俺から言うよりも、あなたから言って頂いた方が良いと思います、

 

“必ず連れ戻してくるから、信じて待っていて欲しい”と」

 

ハルトがそこまで言うと、サーラは何かに気づいたようで建物の外へ向かった、

 

 

……母が、そしてその意志を受け継ぐ自分が守るべき民のもとへ。

 

 

───────────────────────

 

 

「俺たちも外に行くってばよ」

「そうだね、

 

その前に……ナルト。 君に渡しておきたいものがある」

 

サーラ様を民の説得へ向かわせたのは、ナルトと二人きりになるため。

記憶は消えてしまう、この世界のことをナルトがナルトの世界へ持ち込むことは無い。

 

ならば、多少介入してしまっても、それはこの世界の歴史として刻まれるだけなのではないか、

いや……、あの時父さんが施す封印術は、父さん自身の記憶をも消していた。ということは、結果的にこれからここで起こることは、

 

 

―――俺の記憶として刻まれるだけなのではないか。

それは、例え世界線が違っていたとしても。

 

 

「渡したいもの?」

「はい、これ」

 

記憶にも記録にも残らない。ならば、小さすぎる介入ならばきっとなんでもないのだ。それが支障をきたすのなら、俺という存在が一番厄介だということになる。

 

 

「なんだ、これ?」

 

俺が渡したのは小さな赤いお守り。

 

―――

『ハルト。 これ、母さんからお届け物だよ』

『? ……お守り?』

『今回、ハルトが単独任務だって言ったら、

“じゃあちょっとぐらい私情を挟んでも大丈夫だってばね!”

って言われてもらっちゃったんだ』

『あはは……、ありがとう』

 

 

父さんたちの班に会ってすぐに貰ったお守り。それには若干だったけど、母さんのチャクラが込められているのを感じた。

 

「お守りだよ。 まぁ、その辺にあるお守りよりも強力だと思うけど」

 

それをナルトの首にかける。

 

「きっと、ナルトの力になってくれる時が来るよ」

 

 

母さんのチャクラが込められているということは、そこに多少なりとも九喇嘛のチャクラも含まれているということ。

 

チャクラというのは、使用主の実力によってその最大値が上がっていくもの。実力を考えずに最大値をあげていけば、逆にマイナスになりかねないが、多少九喇嘛の最大値が上がっても、全く問題ないだろう。 ……むしろ、気づかなさそうだ。

 

「なんかよくわかんねぇけど……ありがとな!」

「うん。 じゃあ行こうか、案内頼むね」

「案内?」

「ナルトに頼んでないよ。 俺の口寄せがしてくれるんだ」

「おぉ、頼むってばよ!」

『うむ……よろしく頼む』

 

……うん、弥白ってこういうとこ真面目だよなぁ。口寄せ獣って、結構プライドとか高いかと思ってたんだけど、弥白のそういうとこあんまり見た事ない気がする。

 

 

 

 

『……人くらい選んでおる』

「ん?」

 

弥白のその言葉の意味に、俺はきちんと気づいてなかった。



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家族の共鳴~母

お待たせしました。
作者、本気を出して映画の漫画を買いました。

『ザ・ロストタワー』編、終わらせに行きますよ!!


……もう少しお付き合い下さいm(_ _)m


 

 

『ここから入る。

傀儡を操っていたチャクラ糸が繋がっていた管は全てここに集まっておる』

「確かに、ここが龍脈の力を一番強く感じます」

「よし! ここから入って行くってばよ」

 

四人がたどり着いたのは巨大な排気口のそばにある、鉄格子のかかった小さな窓。ナルトがその格子をクナイで外して下におり、その後弥白が下りた。

 

「サーラ様、失礼します」

「え? わぁ……!?」

 

一緒に下りられればサーラを危険にしないのだが、なんせ窓が狭い。なので、

 

「失礼します」

「きゃぁ!」

 

そのままサーラ下に投げた。

 

「ルト!?」

 

ナルトが焦るなか、空中でポフッいう音と共にサーラの身体は受け止められた。

 

「ルトの口寄せ!? なんか大きくなってるってばよ……」

『……弥白だ』

「俺が考え無しに、サーラ様を投げるわけないでしょ」

 

少し大きくなった弥白がサーラをキャッチして優しく地上におりた。

 

 

「これは……」

 

そこから更に下で煙が巻き上がる。その煙が晴れて見えてきたのは、たくさんの街の男の民。足にも手にも錠をかけられ、そばの見張りをしていると思われる傀儡は武装していた。

 

「信じられません……、兵器をつくるためにアンロクザンが民の力を利用しているなんて……」

「どうする? サーラ」

「こんなこと絶対にやめさせます」

 

そう言うとサーラは下をキョロキョロと見渡した。

 

「あそこに連れて行って下さい。 あそこでなら龍脈の力を断ち切ることが出来ます」

「よしっ!」

「わかりました。 ナルト、君は俺と一緒に行くよ」

「おぅ! ……へっ!?」

「サーラ様は彼に跨ってください」

 

弥白が屈み、その背中を空ける。

 

「なるべ隠れながら進みます。 しっかり捕まっていてください」

「は、はい」

「行くよ、ナルト」

「おう!」

 

更に下へ降りる。あちこちを武装した傀儡が歩いており、柱に身を隠しながら進む。まぁ、どうせこの先で見つかるのだからなぁと思っているのだが、だからといってわざわざ見つかりに行くのもよく分からない。

 

 

「ありがとうございます。 皆さん、少し離れていてください」

 

とりあえず何にも見つからずに到着した。

弥白がサーラを降ろして、その場から少し離れる。

 

「女王の名のもとに命じます。

汝 龍脈の流れを断ち 汝の力を抑えたまえ」

 

サーラが手をかざすと、施されていた術式は一度紫色に輝きを放つとその力を中心に封印されたように、傀儡を作る機械はその動きを止め、感じ取れていた流れは止まった。

 

「よし、今のうちにあそこにいる人たちも……」

 

『……主』

「うん……、ナルト!!」

「!」

 

俺が叫んだことで、ナルトも周囲の異変に気づき、サーラ様を守るように立つ。

 

「女王様、そんな所で何をなさっているのです!」

「アンロクザン!?」

「あいつが……!?」

 

ナルトが驚くのも無理はない。ナルトにしてみれば昨日ぶりに会っている男のはずが、様変わりしていのだから。

 

「龍脈の流れは止めました! 女王として命令します! 傀儡兵器の開発をやめ、労役を課していた民達をすぐに解放するのです!」

「なるほど、そこまで知っておられたか。 ならば、生かしておくわけにはいかない。

あなたの代わりは傀儡人形で十分! 既にあなたの龍脈を操る力は必要ない!!」

 

龍脈の流れを断ったはずの工場内で、動かないはずの傀儡兵器が動き出した。

 

「サーラはみんなを連れて逃げろ! 俺があいつを捕まえて傀儡を止めてやる」

「はい!」

 

「俺様は今や楼蘭の大臣……

 

アンロクザン閣下だ!!!」

「何が閣下だ!! ムカデのくせによっ!!」

 

ナルトが自分の目の前の傀儡を踏み台にして、アンロクザンに近づこうとする。しかし、龍脈の流れを断った場所で傀儡を操るアンロクザンの力は、以前とは比べ物にならない。

アンロクザンの指先からチャクラ糸がのび、遠くの動かなくなった傀儡がサーラの行く手を塞ぐ。

 

「っ!」

「サーラ!!」

『“狐火”』

「“手裏剣影分身の術”」

 

サーラに向かっていた傀儡を炎が包み、ナルトの背後から迫っていた傀儡はチャクラ糸が切られ、崩れて落下した。

 

「俺らがいることも忘れないでね」

「ルト! 弥白も助かったってばよ!」

「道を開けますので全力で走ってください、彼がついて行きます。

弥白、頼むよ」

『わかっておる。

 

“狐火”』

「“風遁・風切り”!!」

 

弥白が放つ炎を風の力で威力を上げて範囲を広げる。

 

「今です!」

「はい!」

 

サーラの後を追う傀儡のチャクラ糸をチャクラ刀で切っていく。

 

『“雷獣”』

「“雷華刀”!」

 

俺を抜けても、弥白がしっかり守ってくれていた。しかし

 

 

「くっ……おわぁっ!!」

「ナルトっ!!」

「ちっ……、弥白! サーラのことだけ守れ!」

 

あの弥白でさえ、この状況に苦戦する。

 

この工場に入った時から気づいていた。俺の知っている世界よりも、傀儡の数が異様に多いことに。俺のせいで異変が起きることには慣れていたが、正直、弥白に頼らないと対処しきれない数だった。

傀儡に捕まったナルトのことを助けに行けないほど、俺の周りにいる傀儡の数も増えていた。そしてナルトのチャクラがどんどん減っていくのを感じる。

 

「おやめなさい! アンロクザン!!」

「今までのお礼を申し上げますよ、サーラ様。 あなたは亡くなられた母君と比べてとても優れた傀儡だった。 あの女を直ぐに切り捨てて正解でしたよ」

「まさか……、あなたがお母様を……?」

「えぇ。 そろそろ本物の傀儡と交代していただきましょうか」

「うっ……」

 

サーラの目に涙が溜まる。信じていた側近に裏切られ、大切な母上を殺された事実は、少女の心に重くのしかかった。

 

 

「サーラ! しっかりしろっ!!」

「『!!』」

 

暗く沈んた空気を断ち切るように声が飛ぶ。

 

「お前は……お前は傀儡なんかじゃねぇーー!!!」

 

サーラの目に若干、生気が戻る。しかし、ナルトにはより一層傀儡が覆いかぶさっていき、アンロクザンがチャクラ糸で折れた刀を持ち上げた。

 

 

 

「(くそ……っ、頼む……っ。 共鳴してくれっ……!!)」

 

原作でなら跳ね返す傀儡の鎧が、ナルトをどんどん包んでいく。 ……その中で、

 

 

―――グワンッ!!!……――バキィーン!!!

 

「……きた」

 

オレンジ色のナルトのチャクラが膨らんでいく。その中に、僅かに感じる母さんのチャクラ。ナルト本体から吸い取っている傀儡の影響も、母さんのチャクラが込められている御守りにはない。

目の前のその現象が、俺の目には奇跡のように映っていた。違う世界、それでも親子だからと似ているチャクラ同士が共鳴した。

 

それは、世界が違くとも目の前にいる【うずまきナルト】が自分の【弟】であるという事実を証明してくれていた。

 

「君は……、俺の……」

 

ナルトのチャクラが跳ね上がることで、爆発とともに傀儡の檻が壊れていく。その激しい音の中で、俺の言葉と涙は消えた。

 

 

「なんだ、このチャクラの量は!!」

「サーラ……、泣いてる場合かぁ!!

 

おめえはやるべき事を真っ直ぐ貫け! そいつは俺が……、ぶん殴る!!!」

 

ナルトの言葉で、自分が若干笑みを浮かべていることが、自分でわかった。

 

「やったことないけど……やってみるか」

 

まだ全ての檻を壊せた訳では無い、ナルトを包む傀儡を見て決意し、胸の前で十字を作り影分身を出す。

 

 

「“雷伝”!!」

 

自分と影分身の間に雷撃が走り、そのまま傀儡の集団に突っ込む。

ナルトは傀儡の上の方に捕われてるから、……下の方なら大丈夫だよな!

 

「ナルト!!」

「ルト! って……そのまま突っ込むのかよぉ!!!」

 

巨大な爆発と、大量の煙が巻きあがる。

 

「ムカデェェェ!!」

 

ナルトの足下ギリギリを雷撃で破壊し、ナルトを助け出した。ナルトはそのままの勢いでアンロクザンの顔を殴りつけた。

 

「なんだ……こいつの身体……」

「……ちっ!」

 

人間ではありえない形で、顔が壊れ、中が空洞になっていた。 ムカデの近くにいたナルトを抱え、その場を離れる。

 

 

「この桜蘭で俺の力は無限だ!!」

 

倒れたムカデの体にばらばらになっていた傀儡の破片がくっついていく。相変わらず、龍脈の力が通っていない場所で傀儡兵器は動き、そしてムカデ自体も攻撃力を上げて暴れていた。

 

『乗れ』

「弥白様……」

『逃げるぞ』

 

傀儡兵器に囲まれたサーラは弥白が助け出した。

 

「どうするってばよ……」

「……もう少し、のはず」

「何がだってばよ」

 

 

そう、もう少し。

俺の知っている知識なら……もう少しで、

 

 

―――ドォォォーン ―――ドォォォーン

 

 

「きた」

 

待っていた人達が。

君を大切に思う人が、……来る。

 



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異変のために最善の手をうつ


お待たせしました、……と言ってもそんなに進めていない。

ごめんなさい……、もう少しお待ちくださいm(_ _)m


 

 

「爆!」―――ドガーーーン!

 

突然、工場のあちこちで爆発が起こる。ムカデも突然のことであまり理解ができていないようだった。

 

「無事かい?」

(あん)ちゃん!」

「彼も上手くやったようですね」

 

別行動をしていた父さんたちが、やって来てくれた。そして、姿は見せないがチャクラで感じるカカシ先生の存在。

 

「やつが手間取っている間に女王様を!」

「! サーラ早く行けっ! みんなを連れて地上へ逃げろ!」

「はい!」

 

サーラが鎖に繋がった民達のところへ走った。と同時にナルトはムカデに攻撃を仕掛ける。

 

「弥白、サーラ様について行って」

『分かった』

 

一人にする訳には行かないので、弥白を向かわせてナルトとムカデの戦闘を見る。

 

「サーラめ! 逃がすか!!」

「「いくぜ!!」」

「!」

 

初めて見る、その術。 この世界において、そして俺にとってその術もまた家族という繋がりを感じる特別な術。

 

「“螺旋丸”!!」

 

独特の青い光を放ち、乱回転する高密度のチャクラが一点に集まっている。ムカデに比べると小さなその術、それでもその巨体をはね返し、壁にたたきつける。

 

「どうだってばよ……」

「油断しない方がいい、やつの能力はまだ底知れない」

 

傀儡のムカデがバラバラになりながら床に落下する。普通ならば、動きを停止するような壊れ方だが、ここで普通は通用しない。

 

「……、」

 

サーラの方へ向かわせた弥白を見ると、鎖を解き民達を一緒に地上へ誘導していた。……とりあえずあっちは、きちんと進んでるかな。

 

 

「こんな程度で……俺を倒したつもりか! 俺の力は無限だと言ったはずだ!!」

「「「「!!」」」」

 

バラバラになった傀儡の部品が、チャクラ糸に引っ張られて一箇所に集まっていく。バラバラだった部品が、すでにムカデのもとの形をなしていた。

 

「こいつ……っ! “多重影分身の術”!!」

 

ナルトがムカデに突っ込んでいくが、簡単に弾き飛ばされてしまう。

 

「チョウザ!」

「まかせろ! ……“部分倍化の術”!」

 

チョウザさんの巨大な拳がムカデに直撃し、そのまま壁にたたきつける。

 

「シビ!」

「“忍法・虫玉”!」

 

壁に埋まっていたムカデを大量の虫が包み込む。そのまま落下すると思ったのだが……

 

「そのまま虫たちの餌になれ」

「うぬぅ……!!」

 

シビさんが青いオーラを纏って、チャクラを吸い取っているのがわかった。攻撃のつもりかもしれないが、今は逆効果だ……。

 

「これしきのチャクラなど、くれてやるわぁ!!!」

「……虫たちでも吸いきれないほどのチャクラだと!?」

「……っ、

 

虫たちをあいつから離してください!」

「!」

 

チャクラを吸われればそれを回復させようとして、より強力な力を手に入れることになる。虫たちで、下に落として貰えるだけでよかったんだけど……、まぁ仕方ない。

 

「“風遁・風の刃”」

「……何っ!?」

 

大量の虫たちがムカデから離れた瞬間、壁から落ちないように支えていたムカデの足付近にのみ風が巻き起こる。

殺傷力があっても、ムカデ本体を傷つけられるほど大きな術にすればここが壊れかねない。ならば、とりあえず落とすことにだけ集中する。

 

「ぎゃぁぁああー!」

 

巨体を支えていた足が壁から離れ、穴へ落ちていく。

 

「やったか?」

「……、」

「……まだだ!」

 

俺が叫ぶとほぼ同時に、ムカデの一部だったものが怪しく紫色に光り、ムカデが落ちた穴に吸い寄せられるように引っ張られていく。

そして轟音とともに、床に亀裂が入り煙が勢いよく上がる。

 

「俺が造り上げた究極の傀儡回旋撃!!

 

見せてやろう、わが新しい肉体を!!」

 

先程までの蜘蛛のような形から、足は太くなりもはや二足歩行を可能にしている。

 

「なんか……土偶みたい……」

「どぁぁあ!? ルト!見てる場合じゃねぇってばよ!!!」

「地上に逃げるよ!」

「こっの、ムカデ野郎ぉぉぉ!!」

「ナルト!?」

 

ナルトが天井をつきぬけて地上に出ようとするムカデにしがみつき、そのまま見えなくなった。

 

「とりあえず追いかけようか」

「そうですね」

 

――――――――――――――――――――――

 

「サーラ! ここはなんとかすっから、みんなを連れて逃げろ!!

 

お前がみんなを守るんだ! 女王だろ!!」

 

地上に上がると、影分身だと思われる大量のナルトが巨大なムカデを捕まえているところのようだった。

 

 

「ジャマをするな! 木の葉の小僧!!!」

 

そのナルトを一振で退けると、すぐにサーラの方へ近づこうとする。そのサーラは、高い塔に囲まれている中央広場へ民とともに逃げていた。ムカデほどの巨大であれば、そこに近づくのはかなりの困難であるが、それでもそこを突き進む。

 

「ムカデのやつ……、なんであそこまでサーラを狙うんだ?」

「何が特別な理由があるってことだね。

 

ナルト、もうしばらくサーラ様を守っていてくれ。 僕たちにはやることがあるんだ」

「おう! まかせとけ!」

 

ミナトがその場から離れると、入れ替わるようにハルトがやってくる。

 

「や、ナルト」

「おわぁ!? 驚かせるなってばよ、ルト!!」

 

ナルトがハルトと視線を合わせるためにしゃがむ形になる。

 

「俺もちょっと離れるから頼むね」

「ルトもいなくなんのかよ!」

「ちょっと助けてあげるから、……許して」

 

そう言ってハルトはナルトの肩に手をのせる。

 

「!」

「じゃ、任せたよー」

 

ハルトはそのまま下の方へ降りていった。

 

 

「んー、(あん)ちゃんに言われて従っちゃうのはいいとして、ルトに言われて従っちゃうのはなんでだ?」

 

ナルトは手を握りしめ、身体の中を流れるハルトから受け取ったチャクラを実感していた。

 

「……ま、いっか!」

 

 

そうしてナルトは中央広場へ近づくムカデと戦い、やることを済ませたミナトたちもナルトに合流していく。

そして、サーラ自身が龍脈の源を止めることが出来るため、ムカデに狙われていることに気づく。

その龍脈のもとへこれから全員で向かおうと、地上で話し合われている中……、

 

 

 

―――シュンッ

 

「ここか……」

 

ハルトが見下ろした先には、龍脈を吸い上げ供給する役割をする塔が存在する空間。

 

『主、ここで何を?』

「先に手を打っておこうかなと思ってさ」

『……?』

「行こうか」

 

階段を降りずにそのまま地面まで飛び下りた。

きっとたどり着くであろう場所で、最善の策で大切な人を支えるために。



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最後の決着のつけ方

作者史上、ベスト3に入るほどの長編です。ぜひ、飽きずに最後まで読んでやってくださいm(_ _)m

そして、前回の小説にたくさんのお気に入りを頂きました!ありがとうございます!!

《千の塔を誇る塔の街・楼蘭》編、残りあと僅かです!!


 

―――タッタッタッ

 

―――タタタタ……

 

 

地下に存在する龍脈の根源。その傍にある、龍脈の力が唯一及ばぬ場所。そこに向かうために、忍ではない楼蘭の人々は長い長い階段を一段ずつ降りなければならなかった。

そんな彼らでも降りきれるように、地上ではチョウザとシビが残り、ムカデを足止めしていた。……しかし、

 

「!」

 

ミナトの元にやってきたのはシビの虫たち。

 

「どうかしたのか?」

「うん、やつは龍脈の力を取り込んでいたんだ。 龍脈を封印しない限りチャクラは無限大だってことだよ」

「なんだって!?」

「でも、無限大だとしてもどこかに弱点があるはずだよ」

 

争いの耐えない忍の世界において、チャクラ量が無限であるというのは、最強と言っても過言ではない。それでもミナトは冷静だった。

 

 

―――ゴゴゴ……

 

「「!!」」

 

その地下に響く、大きな音。地上を破って現れたのは……、

 

「……アンロクザン!?」

「サーラ! 早くみんなを!!」

「はい!!」

 

もはや人間の形をしていないアンロクザンの姿に一瞬戸惑ったサーラも、ナルトの言葉で再び地下を目指す。

 

 

 

「ここを通すわけにはいかねぇんだよ!!」

 

影分身を出し、ナルトの手に集められるチャクラ。

 

 

「!!」

 

その乱回転する青い光を、ミナトはよく見た事があった。

 

「螺旋丸!!」

 

しかし、その強力な術もムカデの前に倒れてしまう。壁に打ち付けられたナルトのもとにムカデからの攻撃が迫った、が、

 

―――シュンッ

 

「大丈夫かい、ナルト」

「あ、あぁ……」

「正面からいっても無駄だよ、やつにも弱点は必ずある。 君はサーラを守るんだ」

「けど! それを知る方法は……」

「大丈夫。 僕よりも優秀な忍がもう調べてると思うよ」

「……?」

 

ミナトが柔らかく微笑むと、地下の一番下の地面を少し見た。

 

 

「サーラ!!

お前だけは逃がさんっ!!」―――ドガーンッ!!

「なっ!?」

「サーラ!! 急げっ!!!」

 

ムカデは地上に位置する天井を、その巨体で崩し地下の一番下にいるサーラたちに向けて岩を落とし始めた。

 

「くそっ! ……間に合わねぇ……っ!」

 

ナルトもすぐにサーラのもとへ急ぐが、重力に任せて落下するだけの岩を全て防ぐ手立てがなかった。

 

 

その落ちていく中でナルトは見た。

 

自分と同じ位置にいたミナト(あんちゃん)が全く動かず、特段心配したような素振りも見せずに、下を見ているのを。

 

 

「言ったろ? 僕よりも優秀な忍がいるんだよ」

 

塔を挟むように立つ一人と一匹。

 

「……弥白」

『わかっておる』

「“性質結界封印術・(ふう)”」『“()”』

 

下を見るナルトの前に広がる、赤と緑の色を帯びた半球。そしてそれが、全ての岩を弾いていた。

 

 

「さすがだよ、……ハルト」

 

ミナトのその声は完全に信じきり、安心していた。

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「これ……」

「大丈夫? ナルト」

「やっぱりルトの術か!?」

「そうだよ」

 

ナルトのもとを離れ、先にサーラたちが逃げ込むはずの塔がある地下を訪れた。

ここまで、多少であれども原作との違いが出てきている。それでも、決定的に大きすぎる違いは出ていない。出るとすれば、最終決戦の場でもあるここの筈だと思い、先に結界の準備をしておいたのだ。それを予想したように、にこやかに動かなかった父さんは……もう人間じゃないんだと思う。

 

全ての岩を弾いたとはいえ、もちろんナルトを弾いたりはしない。落ちてきたナルトはそのまま結界を通り抜け、地面に足を着いた。

 

この結界で最近気づいたことが二つ。一つは、結果で防ぐものとそうでないものを選ぶことが出来るということ。ただ、チャクラの扱い方が難しすぎるので、対象が多すぎると上手くできない。今回はナルトだけだったから上手くいった、というだけだ。

もう一つは、結界に流す性質の相性がよければ、相乗効果で威力が上がるということ。俺と弥白でやるのであれば、【火と風】【雷と水】である。これも、チャクラ量のバランスが取れなければ打ち消しあってしまう危険もあるが、その辺は抜かりない。

 

 

「サーラ様、急いでください。 この結界も無限に持つという訳ではありません」

「あ、はいっ!」

 

何度か加えられるムカデの攻撃には耐えれるが、どんどんきつくなっていく。……重さのままに攻撃されるのには弱いようだ。

建物の歪みによって開かなくなってしまった扉に苦戦しているサーラ様が見える。……持つと思ったんだけど、無理か。

 

「ナルト、構えて」

「?」

「結界、破られる……っ」

「おっしゃぁ! 暴れてやるってばよ!!」

 

 

「サーラぁぁぁぁ!!!」

 

結界が消えたのを見たムカデがこちらに向かってきた。俺の横では、影分身をしたたくさんのナルトがムカデを見据えて戦闘態勢に入っていた。

 

「いくぜぇぇっ!!」

「「「「「「おぅ!!!」」」」」」

 

原作よりはチャクラが残っているとはいえ、無限のチャクラを持つムカデの前では、その差は微々たるものでしか無かった。

 

 

「……行くか」

 

扉がいつ開くかは分からない。あとは彼女を、そして彼女を信じるナルトを信じるしかない。

 

―――シュンッ!!

 

ムカデのすぐ近くの壁へ飛雷神の術を仕込んだクナイを投げ、とぶ。

 

 

「“晶遁・一糸光明”!」

「!?」

 

ナルトが反応しているのが分かったが、ここには見ているのが父さんしかいない。晶遁を使うにはうってつけだ。

 

「あまいわぁ!!!」

「“螺旋丸!!”」

「うぉぉぉ!!!」

 

 

「……くそっ」

 

どんなに攻撃しても、全く止まることの無い攻撃と、弱まることの無い威力。

全てを防げる訳もなく、防ぎきれなかった攻撃が少しずつ民を傷つけていく。

 

 

「お願い……開いて!!」

 

そして、その光景に心を痛める女王の願いが通じる。それを開くための鍵は、本来ならばこの世界にいない異端の者。しかし、その出会いが運命を動かす。

 

 

 

―――ブンッ!!

 

「おわっあ!?」―――ドーンッ!!!

 

「ナルト!」―――シュンッ!!

「大丈夫?」

 

地面に落ちる前に、ナルトを受け止める。

 

「みんな、安全な送庭へ避難しました」

「そうか!」

「後は龍脈の源を止めるだけです! 私が必ず止めます!!」

 

そう言うとサーラは龍脈の源へ走っていく。

 

「あいつは、ここで俺たちが食い止めるってばよ!」

「俺たちって、俺のこと?」

「そうに決まってるだろ!?」

 

そう言うと、ナルトはこちらに向かってくるムカデへ近づいていく。そしてそのままの勢いで巨体の下に潜りこんだ。

 

「『多重影分身』!」

「「「止まれぇぇぇ!!」」」

 

大量のナルトがムカデのあちこちにしがみつきその巨体の動きを止める。

 

「ルト!」

「!!」

 

こういう時のナルトは突然、本当に頭が回る。

そして、会ったばかりの俺をありえないほど信じる。

 

オリジナルのナルトが、ムカデから離れたのが見えたのだ。

 

「俺、出来るなんて言ってないんだけどね。

 

“晶遁・結晶五角牢”!!」

 

ムカデの足下の地面から垂直にピンク色の水晶が成長し、その中にムカデを閉じ込める。

 

 

おそらく紅蓮と同じ術だと認識したのだ。その身をもって、晶遁の拘束力などを理解しているからこそ、それを当てやすいようにムカデの動きを止めに行ったのだろう。そして、オリジナルがその術に当たる訳にはいかないから離れた。……これだけ見たら、普段のバカな様子が嘘なんじゃないかと思ってくる。

 

 

「さすがだぜ、ルト!!」

「それはナルトだよ」

「??」

 

……けど、嘘じゃないんだよなぁ。

 

 

 

―――バチバチバチっ!!!!

 

「「!?」」

 

「こんなもので私をとめられると思うなァァ!!!」

「まだ復活すんのかよっ! 何度やったって、ここは通さねぇってばよ!!」

「くたばれ、木の葉の小僧!!

 

龍脈豪龍火(りゅうみゃくごうりゅうか)”!!」

「ナルト!?」

 

原作よりもかなりの近距離からその術をくらっていた。チャクラが残っているとはいえ、あれはかなりまずい。

 

 

慌てて、ナルトのもとへ向かおうとしたが、……やめた。

 

 

「ハルト、最後の仕上げだ」

「!」

「決着をつけよう、……三人(・・)でね」

「! ……はいっ」

 

 

最後の決着は……【親子】で。……【家族】で



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太極螺旋手裏剣!!


楼蘭編も、後3話……だと思われます。

次の章の構想もねり始めております。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m
活動報告の方に、作者の素朴な疑問を掲載させて頂きました。皆さんの意見、ぜひ聞かせてください。


 

「くそっ……」

「ナルト!?」

「気にすんな、サーラ!!

お前のやるべきことをやるんだ!!」

 

ムカデの強力な攻撃、“龍脈豪龍火”をかなり近い距離で受けたナルトは、龍脈の源を封印できる塔の内部まで吹き飛ばされた。

 

「っ! ……動けねぇ……っ!」

「死ねぇぇぇ!!!」

 

狭い扉を突き破り、巨大な爪がナルトを攻撃しようと近づいた。

 

 

―――シュンッ!!

 

「“晶遁・結晶五角牢”!!」

「!」

 

ムカデが囲んでいたナルトがいる中心にとびこみ、ミナトはそのままナルトを担いで飛雷神で外へ逃げ、ハルトはそこから術を展開し一時的にでもムカデの動きを止めてそこから逃げ出した。

 

「大丈夫かい?」

(あん)ちゃん! ルト!!」

「僕がやつの弱点を突いて、ルトが君を援護する。

君が螺旋丸を叩き込め!」

「そうしたいんだけど……、もうチャクラを練れねぇんだ……」

「大丈夫! 僕が力を貸すよ」

「無理だ、螺旋丸は四代目火影の術で、エロ仙人と俺しか作れねぇ……」

「ん? だから僕にもできるのさ!」

「え!?」

 

 

ハルトの結晶にビビが入る音がする。

 

「結晶が割れれば、中の物体も粉々になるはずなんだけどなぁ……」

『超速で再生するやつには関係がないという事だ……』

「……一応、展開しておこうかな」

『分かった』

 

弥白を残し、ハルトが弥白と逆側へ飛雷神でとぶ。

 

「『“性質結界封印術・雷”』」

 

復活する前の部品としてバラバラになったムカデを、大きな結界に閉じこめる。

 

「この術、使い過ぎて上手になってきたなぁ」

『いい事ではないか』

「いや、そうなんだけどさ」

 

―――一応、オリジナル術だからもっと苦戦するかと思った

 

なんて、切羽詰まった状況で場違いなことを考えていたことは、本人と弥白以外は誰も知らない。

 

 

「さ、ナルト。 右手を出して」

「あ、ああ……」

 

ハルトと弥白の後ろで、巨大なチャクラの収集を感じる。青い光が球体となって乱回転しており、まさにそれはナルトの螺旋丸そのものだった。

 

「まだチャクラが残っていたか!!」

 

ハルトと弥白が展開した封印の中で、ムカデがナルトとミナトの術を見て叫ぶ。

 

「……もう復活したのか」

『結界を破ってくるのも時間の問題だ』

「うん。 弥白、もうひと仕事だ」

『あぁ』

 

 

チャクラの残っていない自分の、その手の中に螺旋丸があることに驚くナルトの目の前で、また一つ驚くべきことが起こる。

 

「なんで(あん)ちゃんが、螺旋丸を!?」

「まぁまぁ」

 

驚くナルトを他所に、にこやかにナルトをいさめる。

そして、その力は共鳴する。

 

その事実こそ、二人のチャクラ性質が似ているという証明。

 

 

「……、」

 

巨大に膨れ上がる青い螺旋丸と、エメラルド色の螺旋丸。その様子をハルトは、愛おしい気持ちで見ていた。

 

―――自分の大切な【弟】を大切に思う人が、言葉にせずともそれを表す。

ハルトにとってそれが、目の前の巨大な螺旋丸だった。

 

「性質の近いチャクラが接近すると共鳴し合う……、

 

そして互いのチャクラが融合した時……、最強の螺旋丸ができるんだ!!」

 

二人を二人が持つ色が包み込む。

 

「なんだ……これ?」

「これが最強の太極螺旋丸!!」

 

二つの巨大な螺旋丸が混ざり合い、異常な乱回転をする螺旋丸は、二人の色を帯びてナルトの手におさまる。

 

 

「なんだその術は?

サーラの前にお前達から葬ってやる!!」

 

塔がバチバチ!という音をたて、稲妻がムカデの体を包み込む。

 

「俺の最大の術を見せてやる!!

“龍脈・超豪龍火の術”!!!」

 

ナルトとミナトがいた場所に、龍脈の力を最大限に利用した巨大な火力がはなたれ、黒煙がたちあがる。……しかし、

 

「なに!?」

「結界破られて、見逃すわけないでしょ」

 

黒煙とは全く別の場所から声がする。ハルトがナルトとミナトを飛雷神できちんと避けさせていた。

 

「ナルト、頼むよ!」

「おう!」

「ルト、後はよろしく」

「はい」

 

ハルトはナルトの前に残り、ミナトは覆っていた螺旋丸のオーラの中から抜け出し、ムカデに向かって跳ぶ。

 

「“手裏剣・影分身”!!」

 

投げられた数個の手裏剣が無限に増え、ムカデに襲いかかる。

 

 

そして塔の中心では、サーラが女王の力を使って龍脈を封印した。塔を染めていた怪しげな紫色が、すぅーっと沈静化していく。

 

「“超速再生”……っ! くっそ、サーラめ!!」

 

龍脈を封印したサーラによって、ムカデの巨体の中の小さな弱点が晒された。

 

「ナルト! ルト! あとは君たちに託した!!」

「おう!!」

「……、」

「んぁ!? ルト……?」

 

ムカデに向かって構えるナルトとは逆方向、つまりナルトの方へハルトが歩いてきた。

 

「……(あん)ちゃんとも出来たんだから、俺ともできるよね」

「何言って……」

 

戸惑うナルトを他所に、ハルトはナルトを包むオーラの中に入り、太極螺旋丸に手を添える。

 

「太極螺旋丸といっても元は同じなんだから……、きっと出来る……!」

 

 

【親子】という形から【家族】という形へ。

ハルトの得意性質も風であり、そして世界は違えど、ナルトは全く会ったことがなくとも、そこに必ず存在している【絆】が今、目の前で形となって表れた。

 

「これは……っ!」

「風の性質変化を加えれば……、さらに強力な“風遁・太極螺旋手裏剣”の出来上がりだ!」

 

青とエメラルドのだった螺旋丸に、緑色の手裏剣の形をしたチャクラが加わる。

先程までとは比べ物にならないほどの轟音があたりに響き渡る。 しかし、そんな強力な術を使っているナルトは平然とした顔をしていた。

本来なら術者にも大きな負担を強いるこの術も、ハルトがそこに気を使わないはずもなく、ナルトへの負担を最小限に抑えるためにきちんと細工をしていた。

 

「弥白のチャクラが役に立った、ありがとう」

『そんなことを思いつくのは主くらいなものだ』

 

九尾と同族である弥白のチャクラには、九尾の陽のチャクラと結びつく性質があることを思い出したのだ。風の性質の中にそれを流し込めば、ナルトの負担を減らすために、わずかに尾獣チャクラを利用できると考えたのだった。

 

 

「さて、最後の仕事だよ、弥白」

『あぁ』

 

ハルトは剣を抜き、ナルトの前へ立ってムカデに相対した。

 

「“真空剣”!!」

『“雷獣”』

「ナルト! ついて来い!!」

「おう!!」

 

明るいナルトの声を聞き、ハルトは僅かに口角をあげた。

【弟】を守る【兄】として、ハルトはそこにいた。

 

 

「うぉぉぉ!!!」

 

巨大なチャクラの術を展開するナルトに向かうムカデの攻撃は……、

 

「ここは通さないよ」

「なんだとっ!?」

 

ハルトと弥白の完璧な攻撃で全て防がれる。

そして、ハルトと弥白の陽動によって出来た、一瞬のムカデの弱点の守りが弱くなった瞬間。

 

「おおおおっ!!!

 

“風遁・太極螺旋手裏剣”!!!」

 

ムカデの少し後方に立っていたミナトのもとで、ハルトと弥白もその光景を見ていた。

 

「いけ……、ナルト」

 

 

ナルトのてにおさまる三色に輝く手裏剣が、ムカデの小さな弱点を破壊した。

 



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君のような忍になって欲しいと願い、そして叶った

投稿、遅くなってしまい申し訳ありません!!
夏休み満喫しておりました、作者です。
ここからの数本は早く投稿できると思います!

三人称で一本書いたのは初めてでした。初めてで読み辛い点もあるかもしれませんが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

次回が【千の塔を誇る街・楼蘭】編は終了です!長い間、お付き合いいただきありがとうございました!!次回編も、ぜひよろしくお願いします!!


 

―――ドォォォン!!

 

ムカデの持つ小さな弱点を破壊し、巨大な傀儡が力なく崩れる。再生し、組み直されていたその身体も、サーラによって龍脈の流れを止められた今となってはその力は発揮されない。

 

 

「やったか!?」

「……いや、まだだ!!」

 

破壊し、再生も防いだのだが完全に戦闘不能に陥らせることが出来たわけではなかった。

 

「ただでは……死なんっ!!!」

「「!?」」

 

僅かに動ける力を、そのまま龍脈の力が満たされている塔の下に身を投げる力に使う。

ムカデの身体が大きな音を立ててその中に落ちた。大量の龍脈の力を持っていたムカデの身体によって、龍脈の本来の容量を超えてしまう。紫色の蒸気が爆発のように大きく発生する。

 

「まずい! 龍脈の暴走だ!!」

「! サーラ!! 早く逃げろ!!」

「!?」

 

細くなった支えだけの中心の土台にいたサーラの元に繋がる道もまた、細いものだけだった。

ムカデが落下したことによる爆風と、龍脈が波打つ力でその脆い通路も崩れていく。

 

「くそっ!」

 

今にも崩れそうな細い中心部へ、ナルトが迷わず向かっていく。

そのナルトの目の前で、サーラの足下が崩れ氾濫する龍脈へ落ちそうになったが、間一髪のところでナルトがその腕を掴んだ。

 

「く、そっ……、離すんじゃねぇぞ!!」

「ナルト……っ」

 

掴んだのだが……

 

「うわっ!」

 

振動と爆風でいっそう脆くなっていた細い道は、ナルトの重さに耐えられず無残にも崩れ落ちる。

 

「危ない! ……あっ」

 

そして、慌てて駆けつけようとしたミナトの足下の道も崩れてしまった。

三人が暴走した龍脈へ落ちていく。

 

 

……そう、三人だけが。

 

 

「“飛雷神の術”」

 

遠くから見ていたハルトがナルトとサーラのもとへとんだ。そして、

 

「隊長だけ、お願いします!!」

「分かった」

 

ハルトが叫んだ後方、後ろからやって来たのはヤマトとカカシ。二人が原作通り援護にかけつけ、ヤマトの木遁の術でミナトを落下から救い出した。

 

そしてハルトは、

 

「ナルト、しっかり持っててよ」

「おう!!」

 

落ちていくナルトに触れると、予めマーキングしておいた中心部へ二人を連れてとんだ。

 

「助かったってばよ、ルト!」

「君にあげたお守りが役に立ったよ」

「お守り??」

 

ハルトがナルトに渡したお守りには、実は予めハルトがマーキングを施していたものだった。それを頼りにハルトはナルトの元へとんだのだった。

 

 

「みなさん!! 無事でよかった……!」

 

ナルトが突破ってきた入口の所には、足止めを引き受けたチョウザとシビ、そしてサーラによって安全な部屋へと避難していた楼蘭の民たちが集まっていた。

彼らを見たサーラは、緊張していた肩の力が僅かに抜けほっとしていた。

 

 

―――ガラガラガラ!!

 

暴走している龍脈へ落ちてしまうことは防げたが、まだ根本的な解決には至っていなかった。龍脈は暴走を続け、塔は今にも崩れてしまいそうなほど、崩壊を続けていた。

 

「「!?」」

「まだ龍脈の暴走は止まっていないんだ、これから龍脈を完全に封印する」

 

 

……ここだ。

 

ハルトが決意をした目で、その場を見すえていた。

 

ここは原作のナルトの世界ではない。ハルトが生きる世界なのだ。龍脈の暴走を防ぐためには、原作では完全に封印するしか方法がなかったのかもしれないが、今ここにはハルトが生きている。

 

そして、

 

「……説明をつけるためには、ここしかないよね」

「……」

「ルト? なんか言ったか??」

 

「……ここは俺が封印します。

元々、俺の任務だったので構いませんよね?」

 

ミナトがナルトからクナイを受け取ろうとしていたところにハルトが待ったをかけたのだ。

 

「あぁ、構わないよ」

 

そして、信頼している息子からのお願いを蔑ろにするミナトではない。

 

「ありがとうございます。

龍脈には特殊な封印術を使います。 ちょっと手伝って欲しいのですが。他にはカカシさんと、後はヤマトさんとナルトも手伝って 下さい」

「……俺も?」

「俺たちも入って大丈夫なんでしょうか?」

 

ヤマトは自分が未来から来たことをきちんと理解しているようだった。そんな存在である自分達が、封印に携わってしまうことで歪みができることを心配しているのだ。

しかし、原作を知っているハルトにしてみれば、ここは世界観すら違う場所。今更、チャクラがどうこうなどと言ってもあまり驚かないのだ。

 

それに、ハルトがこれからしようとしていることは、この先の未来で実際に使うかもしれない、むしろ本来想定していた使い方とかなり近い状況であるため、ハルトにしてみれば試さない理由などなかった。

 

「それぞれ、二時・四時・八時・十時の位置に立ってください。

ナルトは二人で風の性質チャクラを、カカシさんは土の性質チャクラを、ヤマトさんは木の性質チャクラを流すイメージでお願いします。

 

この術はチャクラ性質を鍵として使う封印術です。 風の性質チャクラを基礎とするので二人は全力でどうぞ」

 

ナルトはよく分かっていない。カカシとヤマトもよく分かっていなかったがとりあえずチャクラを流せばいいことだけは理解したらしい。

 

ハルトは自分がマーキングをする時に使うクナイを中心に突き立てた。

 

「それでは始めます、……弥白!」

『あぁ』

「『“性質結界封印術”』」

(ふう)(らい)(すい)()(もく)

 

向かい合って立ったハルトと弥白が、最初に円で囲まれた後、次々と四人を結び大きな円になる。それぞれが指示されたチャクラ性質を流し、一番強力な【風】のチャクラがエメラルドの色を放って半球を彩った。

これこそが、ハルトが九尾が暴走してしまった時に使用しようとしていた方法。……まぁ、九尾の封印が解かれないのが一番なのだが。ナルトのために編み出した術をナルトと共に使う。ハルトには感慨深いものがあったのか、ナルトの方を愛おしく見ていた。

 

展開されていた術式が、龍脈の根源へと集まるように収縮していく。そして、完全に小さくなったところで封印は完了し、暴走していた龍脈も沈静化され、赤黒い色から綺麗な青色へと変化した。

 

 

「ん、問題なく終わったみたいだね」

「はい、ご協力ありがとうございました」

 

ハルトもミナトに笑顔を見せた。……そして、

 

「お? なんだ!?」

 

ナルトとヤマトの身体が透け始め、元の時代に戻る時が来た。

 

「うん、術式を戻したことで時間が揺れ戻しを起こしているんだろうね。

カカシ! 無事に任務をやり遂げたようだね」

「え……、カカシ先生!?」

 

ナルトは自分が知っているよりもかなり幼い師を、信じられないようにまじまじと見ていた。

 

「お会いできて光栄です」

「え!? ヤマト隊長、この(あん)ちゃんてば……」

「残念だけどお別れだね。

 

歴史を変えないためにも、ここでの記憶は全て失くした方が良さそうだね。 互いに全てを忘れる術式を施すけどいいよね?」

 

ナルトの言葉を遮るようにミナトが話す。サーラは残念そうにナルトを見た。

 

「ナルト……」

「サーラ! お前はやるべき事をやったじゃねぇか! もう立派な女王だってばよ!! 俺達がいなくてもお前なら大丈夫だ!」

 

「それじゃあ、いくよ

 

“滅”」

 

ナルトがサーラを励ますとほぼ同時に、ミナトが術式を展開した。

 

(あん)ちゃん! その前に俺の話を聞いてくれってばよ! 今言わなきゃ、もう言うことは出来ねぇんだ!!」

 

薄々感づき、そして未来から来ているナルトだからこそ、奇跡のようなこの時間。そして聞いてみたいたくさんのことを知っているであろう人。

会えなくなってしまう人。

 

「いや、きっともう一度、君に会える時がくる、いつかきっと。

その時にたくさん聞くよ」

「……っ、」

 

ナルトたちの身体が輝き始める。もう時間はない。

 

(あん)ちゃんってば、ひょっとして……」

「僕の息子にも、君のように育って欲しいと思っていたんだ。 そして今、君のように育っているよ」

「!」

 

ミナトが優しくハルトの方を向いた。ハルトは気まずそうに顔をそむけたが、その頬は少し赤くなっていた。

 

「ナルト! あなたが言っていた通り楼蘭の街は滅びるのかもしれません! でも私には楼蘭の民がいます! 民のために自分のやるべきことをやり遂げます!

ナルトが教えてくれたことだから!」

「おう! おめえのド根性があれば、必ず出来るってばよ!!」

 

ナルトたちの体は光に覆われ、既にこちらからは見えないほどになっていたが、

 

「ルト!!」

「!」

 

最後の最後に、ナルトは今回の任務で最も一緒にいたハルトの方を向いた。

 

「お前ってば……」

 

なにか言おうとするも、既にその声は聞こえない。しかし、それは向こう側からの声に限ってのことだった。

 

 

 

「ナルト!」

「!!」

「……、

 

 

 

もう少しだけ話そうか」

 

年齢に不相応な大人びた笑顔をナルトに向けながら、自分の足下にミナトが発動したものとは違う術を展開する。

 

「ごめん……」

「いいや、行っておいで。 ハルト」

「! ……うん」

 

ミナトが笑顔で送り出したのと同時に、ナルトとヤマトの姿も完全に光の中に消えた。

 

 

原作と違うことは……、

 

同時にこの世界に住む者も一緒に消えたこと。

 

 

 

 

―――まだ、俺は君に伝えたいことがある

 



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心に残る正体


【千の塔を誇る街・楼蘭】編、最終話でございます!!
読者の皆さんのご意見で書かせて頂いた章でしたが、想像以上に楽しく書かせていただきました!ありがとうございます!!

次回からは予告通り、【第三次忍界大戦】編に突入します!
よろしくお願いします!!


そして、ついこの間、最長記録を更新したかと思いきや、今作品も更新しました。
間違いなく、作者のNo.1最長作品でございますm(_ _)m
今回の作品は完全、オリジナルです。何か、よくわからない点や間違ってると思われる点は指摘していただけると嬉しいです。返事はできる限り、書かせていただきたいと思っています。


「……、」

「……、」

「ヤマト隊長ぉ!? ここどこだってばよ!?」

「あの人が、術式を間違えるとは考えづらいし、何よりまだ記憶が消えていない……。 一体……」

 

「すみません、俺のせいです」

 

ナルトとヤマトが目覚めた場所は、自分たちが元いた世界ではなく、何も無いただただ黄色い空間が広がる世界。そして、記憶は消すと言われていたのに消えていない記憶。

 

そこに現れたのは……

 

「ルト! 弥白!!」

「君たちは……」

「心配しなくても、あなた方をどうにかしようとかそういう訳じゃありません。 ただ、色々説明しとかないといけないと思いまして」

 

ヤマトの方を向いて、少し笑った。呼び止めたのは、主にヤマトのためだと遠回しに言ったのだ。

 

「ここでのことも消えるということかな?」

「そうですね。 今、あなた方の記憶が消えていないのは、あの時に展開された術の上から俺が別の術かけたからです。 ここを出る時には、記憶は消えます」

 

言われても信じられない話だった。

ヤマトには、ハルトが一緒にいたのが誰なのか分かっている。間違いなく四代目火影である波風ミナトだ。

若くして火影になるほどの実力と、その妻・クシナから得意とする封印術を学んだ彼の術を上から塗り替えるなど、普通の忍には出来ない。

そして、この世界に来てからヤマトが最も気にかかること。

 

それは、目の前にいる彼だけが、自分の記憶にはないということ。見たことも聞いたことも無い。唯一、似ている人は誰かと言われれば、それは間違いなく“若かりし頃の四代目”である。

 

「質問、といっても聞きたいことだらけだと思うので、俺から説明します。

 

まず、あなた方がやってきたこの世界は、本来のあなた方の過去ではありません」

「「!?」」

「まぁだからこそあなた方が元の世界に戻る前に、世界と世界の間の空間に俺の空間を作り出せたんですが。

全く違う世界とは言いきれませんが、言うなれば平行世界というやつです」

 

ナルトは既についてこられているか怪しいが、理解はしようとしている。ヤマトは逆に、理解ができているからこそ信じられなかった。

 

「いいかな」

「なんでしょう?」

 

それでも、聞かなければならないことがあった。それは隊長という立場からすれば当然の行動だった。

 

「もし仮にここが、僕たちの本来の過去ではないとしても、僕たちの世界でムカデが封印術式を取り込んだという事実は変わらないよね? 僕たちはムカデを倒したけど、それでは意味が無いということかな?」

「いいえ、意味はあります。 それが、この世界があなた方の世界と全く違うと言いきれない点です」

 

そう。ここが自分たちの世界ではないのであれば、元の時代、元の世界に戻ったとしてもなんの解決もしていないということになるのだが、それでもハルトはヤマトの疑問に即答した。

 

「今回倒したムカデという男は、あなた方がいた世界にいたムカデです」

「……言いきれるわけがあるみたいだね」

「俺の世界にムカデがいたとして、その男が過去に遡ってこれるはずがないからです」

「……」

「……全然、わかんねぇってばよ」

 

ナルトの頭は既にパンク寸前だった。が、それを放っておくハルトではない。

 

「わかりやすく説明するよ。 ナルトの世界では龍脈の封印術は四代目火影のものだったんだよね?」

「そう……だってばよ」

「でも、この世界で封印術式を施したのは俺だよね?」

「あぁ!」

「いや、封印術式を見ただけで誰が施したかは、術をかけた本人にしかわからない。 ムカデに取り込まれていた時点で誰の術かは……」

「いえ、取り込まれていた時点で俺のではありません」

 

ハルトはナルトの世界で、ムカデが倒されているという何かしらの証拠が欲しかった。だからこそ、龍脈の封印はハルト自身が行ったのだ、説明ができるように。

 

「あの封印術式は、取り込もうとしても取り込めないように組んであります。 むしろ、取り込もうとした時点で、その人が逆に封印されるように。

 

あなた方の目の前で封印術式を取り込んだ、つまり、取り込める封印術を組み込んだあなた方の世界のムカデだということになります」

「なるほどだってばよ……」

 

ナルトにも少しは理解出来たようだ。

 

 

「いや……、まだ少し足りないよ」

 

しかし、実はハルトが示したこの仮説にはもう一つ重要な事象が必要だった。それにヤマトは気づいていた。

 

「封印術というのは、圧倒的なチャクラ量もしくはその封印術に対する知識があれば、その効果をあまり発揮させずに解くこともできる。

君の能力は未知数だから。 四代目の封印術を解いたムカデの知識はとんでもない。 君の封印術を完璧に攻略されていたとしたらどうなる?」

 

それは、ハルトの実力。

ムカデよりも明らかに上であると認識できなければ、今の封印術による説明は完全ではないのだ。

 

「さすがですね」

「……君の正体が不明瞭すぎるからね。

 

疑ってはいないけど、信じ切ることも出来ない。

僕らの世界で何事も無かったとしても、その歪みがどこにどう表れるか知っておきたいんだ」

 

 

「……そうですね」

 

ヤマトの言葉にハルトは、今までの真剣な張り詰めた雰囲気を解き、柔らかで穏やかな笑みを浮かべた。

 

「「……?」」

 

「最初にここでの記憶は消えると言いましたよね?」

「ええ」

「では何故、俺があなた方を呼び止めたと思いますか?」

「それは……」

「消える記憶なら、こんな話もしなくていい。 どんなに心に違和感を感じたとしても、あなた方の世界でムカデが倒されていなければ、あなた方はなんの疑いもなくもう一度ムカデと戦うんです。 この世界の記憶が無いんだから」

「「!!」」

 

「呼び止めた理由……、それはたとえ記憶が消えても心で覚えてしまった部分で、自分の現状と差異が出てしまうと思ったからです」

「差異……?」

「『いるはずのない(・・・・・・・)存在が、心に記憶されている。』

 

そうすることで起こる混乱を避けたかったんです」

 

ハルトが話しても全く理解できない。それはハルトが若干、難しく言っているせいでもある。

 

 

 

 

「俺と弥白はあなた方の世界にはいない、

 

この世界だけの存在です」

「「!?」」

 

消えるとわかっている記憶。

 

その心には、……どうか、その存在を、少しでも。

 

 

───────────────────────

 

 

「俺の名前はハルトと言います。

 

 

……波風ミナトの息子です」

「!?」

「やっぱりなんとか【ルト】だったってばよ!」

 

ヤマト隊長だけが異様な反応をする。それもそうだ。波風ミナトすなわち四代目火影の息子といえば、それは今、俺の目の前にいるうずまきナルトだからだ。

ミナトの名前を知らないナルトはその事には反応できない。

 

「俺の名前。 聞いた事ありますか?」

「……いや」

「ナルトも俺じゃなくて、君の隊長の言葉なら信じられるだろ?」

「ん? お、おぅ!」

 

ナルトが笑顔で答える。

 

「そんな君の隊長なら分かるはずだよ。

俺の封印術を取り込むなんてことは不可能だって。

 

父と母からチャクラ量と封印術を受け継ぎ、

そこから改良してオリジナルの封印術を作ったんだから」

 

ぶっとんだ話、自分でもわかってる。それでも、ナルトの世界で四代目火影とクシナの実力を考えれば信じられない話でもない。

それを最大限利用させてもらった。

 

 

ちなみにこの話。 実のところ、本当かどうか確かめる術はない。それでも自信満々に、ナルトの世界でムカデが倒されていないということは無いと言い切ったのには、理由がある。

 

それは、俺の世界ではナルトが楼蘭を訪れる時に、俺がついて行けばいいと思っているから。つまり、未来の俺がなんとかすればいいと思ってるから。

きっと何かしらが起こっても対応できるし、それに、世界というのは不思議なものだ。

 

世界が違う時点で親子関係などないミナトやクシナとナルトの間に、共鳴という形で親子関係が示されたりする世界同士が全く切り離して考えられるものでは無い。

ならば、この世界での出来事も多少なりともナルトの世界に影響を及ぼすはず。その要因として、最も考えられるのが俺だというわけだ。

 

 

「……分かりました、と言ってもここでのことも忘れてしまうのだから意味が無いか、」

「いえ、さっきも言った通り記憶には無くても心には残っています。

きっと、元に戻った世界がどうであれ、何かしら腑に落ちる部分はあると思いますよ」

 

一通り、このとんでもない話をヤマト隊長は信じてくれた。

さすが、ヤマト隊長。

 

 

 

―――ポワァ……

 

「「!!」」

「そろそろ時間ですね」

 

ナルトたちの身体が再び透けてきた。俺が父さんの上からかけた術の効果がきれそうなのだ。

 

 

「ハルト!!」

「!?」

 

多分、話がよくわからないからだろうが、静かにしていたナルトが大きな声をあげた。

 

「俺ってば、ハルトが話してたこともよくわかんねぇけど、ここでの記憶は消えちまうんだよな?」

「そうだね」

 

 

 

 

―――きた。

 

……そうだよ、ここでの記憶が残らないことをこんなにも強調したのは、ナルトに気づいて欲しかったから。

記憶が消えるなら、あの(あん)ちゃんは何者(父親)なのか聞いてもいいのではないか。

 

その質問に答えてあげたかったから、

 

 

「じゃあ……っ!

 

お前は、俺のなんだってばよ!!」

「……お、れ??」

「おぅ!

今回こっちの世界に来て、俺ってばずっと自分より小さいお前の話ばっかり聞いてだってばよ。

お前ってば、絶対俺と関わりある!!」

 

 

本当にいいのか、そんなことで。

それを知っても、俺は君の世界にはいない。君にはなんの力にもなれない。

 

「お前、俺がヤマト隊長の言葉なら信じられるとか言ったけど、俺はルトの言葉でも信じてるってばよ!!」

「!」

 

なるほど。だからちょっと躊躇ったのか。

 

 

「ルト!!」

 

ナルトたちの身体がさらに消えていく。

もう時間はなかった。

 

自然と、口角が上がるのがわかった。

 

 

 

 

「ナルト、お前に言いたかったことがある」

「? ……なんだってばよ」

「これから先、俺はお前のそばにはいてやれない。それでも、どうか忘れないで。

 

どんな時でも俺はお前の味方だ。

……俺は、お前を信じてる。

 

 

 

 

 

 

お前は、俺の……自慢の弟だ」

 

父さんがナルトに自分の息子の話をした時に、俺の事を少しだけ見た。考えれば、俺が兄ならミナト(あんちゃん)は父ということに気づけるだろう。

 

ナルトが手を伸ばす。

あれ、俺の方が小さかったはずなのに、同じところに目線がある。

 

ナルトが見てる幻影か、時空の歪みのせいか……。

どっちでも構わない。

 

高くて届かなかった頭に手を当てて、

 

「また会えるよ、必ず」

「にい……ちゃん……っ!」

「……ありがと」

 

 

ナルトの暖かな気配を一瞬感じたあと、その姿は本当に消えた。

 

 

「父さんと呼び方、ちゃんと分けてくれるんだなぁ」

『主』

「うん、そろそろ戻ろっか」

『うむ』

「戻ったら、ちょっと俺の話に付き合ってね」

『もちろんだ』

 

 

 

きっとまた会える。

 

俺の、世界で一番愛しい弟に。

 

 

 

 

一つ、大きな秘密を共有した【(弥白)】とともに術を解いて、外に出た。

 

大きな光のもとへ、歩くために。





弥白との会話は、次の次で明らかになります。
次の話では明らかになりませんが、しばしお待ちください。


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第六章~第三次忍界大戦、参戦
第七班、再結成!!



新章・【第三次忍界大戦、参戦】編スタートでございます!!
この章は、原作でほぼ書かれていないのと、作者的に大きな分岐点だと思っているので、大きな原作ブレイクがたくさん出てくると思います。地雷の方もいるかもしれませんが、広い心で読んでいただけると嬉しいです。

なにかご意見などありましたら、言っていただければなるべく答えさせていただきます。

それでは、新章!!よろしくお願いします!!


 

「おーい! アオイー!!!」

 

木の葉にある、唯一里外との出入りを許す、【あ】と【ん】の文字が書かれた大きな門の前で待つ少女の耳に聞き慣れていた、それでも懐かしい声が響いた。

 

「おはよう、シスイくん。 久しぶりだね」

「お互い任務で忙しいからな、あんまり里にいないことの方が多かっただろ」

「うん。 でも、私は基本的に後方支援だったから……、里に帰ってくる機会も多かったけど。

シスイくんみたいに前線の補給に行ってたら、それこそあんまり機会はないよね。 さすが、シスイくん!」

「まぁな! でも後方支援も大事だろ、アオイもすげぇよ!」

「ありがとう」

 

一年越しの再会。幼さの残っていた二人の忍は、下忍だった頃に行っていたものとは比べ物にならないレベルの任務に着いていたこともあり、忍らしさが見える優秀な忍に育っていた。戦争という悲劇が生み出してしまったと言えばそれまでだが、この世界ではそれによって獲た力が、自分の価値を図る。

この世界では二人は、既に優秀というレベルにいた。

 

 

「よぉー、相変わらず早ぇなぁ」

「シカク先生!?」

「おはようございます、先生」

 

ただどんなに優秀であっても、まだ六歳と九歳の子ども。一年越しに自分の恩師に会えれば、嬉しいものだ。

 

「二人とも、任務の実績は聞いてんぞ。きちんと班をもって、隊長もやってるらしいじゃねぇか」

「もちろんっすよ! なんたって、火影補佐の生徒っすから!!」

「先生、火影補佐就任、おめでとうございます!」

「おう、ありがとな」

 

あの第七班を中忍に合格させ、卒業させた後、シカクは自らにずっと依頼としてきていた火影補佐の就任の件を受けた。三代目火影・ヒルゼンも含め、木の葉の上層部たちはずっと保留にしていたのに突然どうしたのだと騒いだが、長年の依頼が承諾という形で落ち着いたのだからとすぐにその騒ぎもおさまった。

 

―――もちろん、まだ六歳だった自分の生徒のおかげで決心がついたという事実を知るものはいないが。

 

 

火影の近くで仕事をしているシカクには、一番に任務の達成状況が入ってくる。意識はしなくとも、やはり自分の生徒の達成報告は嬉しいもので、一番に確認していた。……ちなみに、火影に言われるまでシカクは全くの無意識だったが。

 

 

「すみません、俺たちの方が遅かったようですね」

「「!」」

 

三人が談笑していると、自分たちの後ろから声が聞こえた。

 

「いや、時間通りだ。 気にすんな、ミナト」

「カカシさんに、オビト!?」

「てめ、シスイ!! オビトさんだろ!!」

「リンさん!」

「アオイちゃん、また同じ任務だね!」

 

そこにいたのは、波風ミナトを隊長とするミナト班。

本来ならばこの大戦で結成されるはずだったこの班も、ハルトの存在する世界では既に班を結成しており、チームワークも申し分ないレベルの班になっていた。

 

「今回の任務は、ミナト班との合同任務だ」

「おぉ!! 合同任務!!」

「感謝しろよー、シスイ!!」

「なんでだよ!! 俺はカカシさんと一緒に任務できるのが嬉しいだけだ!」

「そっちの方がなんでだよ!」

「上忍になった人だぞ! オビトとは格が違う!」

「俺は火影になる器なんだよ!」

 

「カカシさん、上忍昇格、おめでとうございます」

「あぁ、ありがとう」

「おめでと! カカシ!!」

 

シスイとオビトが幼稚に言い合っているのを他所に、リンとアオイはカカシの上忍昇格を祝っていた。

 

「これ、私とアオイちゃんから! 簡易医療キットね!」

「カカシさん、危険なところへ任務に行くこともあるって聞いたので……」

「ありがとう」

 

リンが渡していた医療セットは、アオイのても加わりより高性能なものになっていた。

 

「カカシ、俺からはこれ! 特注のクナイ!

 

俺の飛雷神の術式が埋め込んであるし、君にも扱いやすいと思うよ」

「ありがとうございます、ミナト先生」

 

ミナトが渡したのは、あの独特の形をしたクナイ。殺傷能力はそのままで、カカシでも扱いやすいようにと少しだけ軽くなっている。

 

「カカシさん! 俺とシカク先生からは特製の手裏剣!!

うちはが使ってるやつをよりカカシさんに合うように、シカクさんが見てくれたんだ!」

「ありがとな、シスイ。

シカクさんもありがとうございます」

「おう」

 

シスイからは、手裏剣術を得意とするうちは一族の手裏剣。シスイだけでは、改良することは出来なかったので、そこはシカクの力も借りていた。

 

 

「で?」

「はぁ?」

「ん」

「ん、って言いながら手を出すんじゃねぇ!!!

なんで俺がお前に、用意しなきゃならねぇ!」

「まっ、期待してないからいいけどね」

「はぁ!?!?」

 

そんなくだらない会話をするカカシとオビト、そしてそれを止めようとするリンと苦笑いしながら見ているミナト。

 

 

「なんか、リンさんたちを見てたら会いたくなっちゃうね」

「……ハルトにか?」

「うん……」

 

シスイとアオイとシカク。この三人が集まれば、後もう一人。否応なしにいるはずのハルト。いないのも仕方が無い、ハルトは今、暗部として里外の任務についているのだがら。

 

「俺に、危険なところへ任務に行くって言ってたけど、俺なんてハルトに比べれば安全すぎるくらいだと思う」

 

オビトと言い合っていたカカシが、いつの間にか二人の元へやって来ていた。

 

「まぁ……、大丈夫だって、アオイ!!

俺がちゃんと守ってやるからな!

 

それに、ハルトはちょっと……まぁ、変だからな! 死んだりはしないだろ!」

「ふふっ、ありがと、シスイくん」

 

何故だかシスイが自信満々にアオイに言い張り、アオイも笑顔を浮かべたが、

 

シスイの言葉に引っかかった人物が一人。

 

 

「俺がなんだって?」

「「「「「!?!」」」」」

 

シスイがアオイを励ましたとほぼ同時、二人の頭上から声が降ってきた。知らなかったのか、ミナト班の生徒も驚いている。

 

 

「……ハルト!?」

「ハルトくん!」

「久しぶり、二人とも」

 

あの大きな門の上から降りたハルト。

 

「いやいや! いつ帰ってきたんだよ!」

「ん? さっきかな」

「さっき!?」

「そ、この任務に参加するために帰って来たからね」

「そうなのか!?」

「俺は一度もお前ら二人で終わりだなんて言ってないぜ?」

「勝手に俺がいない感じで話進めるから、焦ったよ。

 

そんで、シスイ? 俺が変なやつってのはどういう意味かな?」

「げっ!? ……聞いてたのか」

「随分、自信ありげだったけど、俺に勝てるようになったのかな?」

「もちろんだぞ!」

 

久しぶりに揃った第七班のシカク班。アオイとシスイはお互いの成果くらいは聞いていたが、ハルトに関しては誰もその成果を聞いたことがなかった、それこそ、親であるミナトと火影補佐てあるシカク以外は。

 

それでも、何も聞かずとも感じる、以前との明確な差。ハルトが扱うチャクラの量も桁違いに変化していたが、何よりもその瞳が護衛任務や補給任務を行ってきた自分たちとは明らかに違う瞳をしていた。

それは、殺傷を見ただけでは絶対に手に入れられない、覚悟のある瞳。

 

「まっ、そんなことよりも……」

「うん!」

「……?」

 

しかし、そうであっても彼の中の忍道までもが変わった訳では無い。ハルトの中心はいつだって、シスイとアオイ【目の前にいる二人】なのだ。二人が人間的に変わってしまわない限り、ハルトだって変わることは無い。

そんなハルトが大切にする二人だからこそ、ハルトがどんな任務をこなしてこようと、何も気にとめたりはしない。

 

「「おかえり! ハルト(くん)!!」」

 

ただ笑って、彼を出迎えるのだ。

 

 

「うん、ただいま!」

 

ここに史上最速で中忍になり、稀に見る優秀な班と既に認定されている第七班が、再結成された。

 





ちなみに、今日は作者が勝手に決めたハルトくんの誕生日です!!
ハルトくん、おめでとう!!!


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投稿、遅くなりましたm(_ _)m 人生で初めて、海外に行ってまいりました!感じたことは……日本語って素晴らしい( ;∀;)

予告通り、弥白とのおしゃべりの回です。
疑問があった方もいたかもしれない、弥白が口寄せされていない時にどうしてハルトとおしゃべり出来るのかを解明している回になります。
オリジナルの設定が盛り込まれているので、地雷の方はご注意ください。


 

 

「俺はね、この世界のことを知っているんだ」

『そうか』

 

結構すごいことを言ったはずなのに、表情一つ変えずに言葉が返ってきた。

 

「……あれ、そんなに衝撃的じゃない?」

『いや、充分におどろいている』

 

 

ナルトに別れを告げ、自分の作った空間から戻ってきた後、木の葉から来ていた父さんたちを見送った。

もちろん、父さんの記憶も消えているわけなのだが……

 

「……色々と終わったみたいだね」

「!?」

「僕たちは木の葉に戻るよ。

ありがとう、ハルト」

 

父さんに関しては、本当に記憶が消えているのか疑わしかった。なんの説明もなく、一人で全て納得しちゃったよ……。

ここまできたら、最後のありがとうも何に対してか怪しくなってくる……。

 

そんなこんなで、俺と弥白だけが楼蘭に残り先程の会話だ。

確かに、ナルトたちに「自分と弥白はこの世界にいるはずのない存在だ」とは言ったけども、だからと言って全く驚かれないのも変な感じだ。

 

『主の言葉であるなら、疑いはせぬ。 言葉は事実として受け入れるだけだ』

「……ありがとう」

『なぜ照れる』

「言わなくていいよ……」

 

変な感じというよりも、もはや恥ずかしい……。信頼を完全に向けられるというのは嬉しいものだが、何だかこそばゆい。

 

 

「俺は全く違う世界の人間だった。 その世界で死んで、目が覚めたらこの世界にいた。

この世界のことを俺は前の世界で見た事がある。 だからこそ、俺は過去で起こったことも未来で起こるであろうこともある程度想像出来る」

『なるほど、結界を下に張る準備をしたのもそのためか』

「……いや、そうじゃないんだ」

『……?』

「俺の知ってる世界がそのままここにあるなら、あの時にあの結界を発動する機会はなかったはずなんだ」

『それでも主は発動した』

「あの時だけじゃない。 ナルトが傀儡に捕まった時も、あれはあんなに苦戦するはずじゃなかった。 ……少なくとも母さんの助けがなくとも何とかなっているはずだった。

 

楼蘭の人達が働かされていた場所で大量の傀儡兵器に襲われた時も、俺が加わらなくても何とかなるはずだったのに」

『結果的に、我も加わったということか』

「うん」

 

やっぱり、楼蘭の街だけで考えても異常なことが起きすぎていた。

 

「俺が関わった【根】との事件も、誰かが俺の代わりに受けたっていうのは記憶にない。 ましてや新しい瞳術なんて聞いたことない」

『岩隠れの者どもが襲撃に来たのも、うちはの集落に結界がはられていたのも……』

「全部イレギュラーなことだ」

 

こうやって、改めて話すと色々なことが起きてる。

そして、誰かにこうやって話せる日が来るなんて思いもしなかった。

 

『うむ、考えなくとも主のせいだな』

「うぐっ……、随分とぐっさり刺すね、弥白」

『だがその全てを主が片付けておるのだから、問題は無いだろう』

「下げてから上げるのね」

 

弥白と見合って、笑いあった。誰かに話すことでこんなにも心が軽くなるものなのか。

確かに、話す前までは起こる全てのことに対処しなくてはと焦っていたのかもしれない。これからは、弥白にも頼むことが出来る。そして弥白は、疑問に思わずにそれに協力してくれるのだ。

 

 

「……」―――ヒョイッ

『!?』

 

横で一緒に座って話をしていた、相変わらずふわふわで真っ白な毛で包まれている弥白を抱き上げ、腕の中におさめた。

 

「これからも頼むね、弥白」

『あぁ』

 

決意を新たに前を向く。

これからは弥白と一緒に未来を作っていけるのだ。

 

 

「あ、もう一つ言うことがあった」

『?』

「俺、弥白のことは初めて見た」

『……!? 我は存在していなかったのか』

「んー、そういうこと……って、そんな落ち込まなくてもいいじゃん!?」

 

何の気なしに言ったのだったが、当の弥白はズーンって音が聞こえそうなくらい落ち込んでいた。

 

 

「いいじゃん、弥白は初めから俺だけの相棒だって決まってたんだよ、きっと」

『……! そうだな』

 

耳がピーンっと立って、ゆるりゆるりと尻尾が揺れた。……喜んでもらえて何より。

 

 

『……、なるほど、主のせいだと思えば納得がいくこともある』

「ねぇ、俺のせいにを乱用しないで?」

『いい意味でだから気にするな』

「いや、するでしょ……」

 

弥白が納得げに言うと、俺の肩に乗ってきた。

 

『主はこの世界の常識は知っているのだな?』

「んー、まぁ多分、わかると思うけど」

『では、口寄せ獣とは普段どこにおるか知っているか?』

「口寄せ獣……?」

 

んー、ナルトだったらガマ吉とかってことだよな……、ガマ吉は普段はガマの国にいるよな、あの仙術の修行する場所……

 

「それぞれ好きな場所にいるんじゃない?」

『……まぁ、間違いではないが。 口寄せ獣は本来自分の住む世界にいるものだ、例えばミナトの場合なら口寄せはガマだからガマの国にいるというようにな』

「うんうん、」

『では、我はどうだ?』

「ん? 弥白は……、弥白って自分の住む世界に帰ってる……っけ?」

 

弥白が本来なら自分の住む世界に帰ってる時間……、すなわち俺が口寄せしていない時間のことだ。

 

「弥白……、俺と会話してる時あるよね?」

『してる時、というより我は主と契約してから自分の世界に戻ったことは無い。 普通、口寄せしていない口寄せ獣と話をすることなど出来ない。

ましてや、主の考えていることが我の中に流れてくることなどありはしない』

「じゃあ、なんで……」

『だが、一つだけ例外がある。 口寄せ獣ではないが、術者の精神世界で繋がっていられる存在。

主も知っていると思うが』

「んー? ……あ!

 

尾獣……」

『その通りだ。 奴らは封印された者の精神世界に住まう。 だからこそ、協力することが出来れば互いの思考などを共有することも出来る』

「……!」

『その顔は、そのような場面を知っているという事だな』

「うん」

 

八尾の牛鬼も雲隠れのキラー・ビーと協力関係にあって、幻術にかかったビーさんを話しかけて起こしたりしていた。

九尾の九喇嘛もナルトの精神世界にいたし、そこからナルトのことを見ていたって言っていた気がする。

 

 

『……主?』

 

あまりにも普通に話していたり、何かと弥白の方から助けてくれた事で、弥白が俺の中にいることに全く違和感を感じていなかった。

あまりにも当たり前に弥白を頼っていた自分に無力さと、弥白を縛っていたことへの罪悪感が生まれた。その事を知らずに、自分の秘密を弥白に話してしまった。重荷を背負わせたのだ。

 

 

「ごめん、弥白」

『どうしたのだ』

「なんも気づかなくて。

弥白も自分の住む場所に戻りたいよね」

 

弥白にとって俺の精神世界はあまりに狭すぎる。そしてそれは同時に、弥白から故郷を奪っているのだ。

 

『主、我が主のもとを窮屈と感じていれば、すぐに主にこの話をする。 主なら我が頼めば、おそらく故郷に戻れるようにするだろう。

 

 

しかし、そうしなかったのは我が望んで主のもとにいたからだ』

「……、」

『主のもとは落ち着く。 それに、

 

 

我は主の傍にいたいのだ』

「……、」

『自信が認めた主と意識を共有し、共に戦えるというのは、我にとっては心地よい。

 

主が気にすることでは全くない』

 

自分がもといた世界とはかけ離れた場所で、知っている人物にばかり会う中、自分と同じ新しい存在に出逢えたことが嬉しかった。幼いながらに色々と理解していくことは、同時にわずかな孤独をも生み出した。

 

「弥白、これからも俺と一緒にいてくれる?」

『何を当たり前のことを』

 

 

───────────────────────

 

『主、大丈夫か?』

「……今の全部聞こえてた?」

『……、そうだな』

 

話している俺の声は、前を走るシスイたちには聞こえない。弥白と会話する時は基本的に、頭で会話してる感じだ。

 

「意識しないと弥白に考えてること筒抜けなの、何とかならないの?」

『意識すれば良いのだが……』

「……無意識で恥ずかしいこと考えちゃうじゃん」

 

 

少し照れながらも、弥白だからいいかと納得した自分に苦笑しながら、再び前を向いて前の背中を追った。



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夢をのせて

皆様、遅くなってしまい本当に申し訳ありませんでした!!
作者、夏休みを存分に満喫しておりました。
ここから、きちんと週一投稿、していきたいと思います。

そして、久しぶりの一作目。……既に、地雷多し。
どうか、広い心で呼んでやってくださいm(_ _)m

なにか意見があれば、反映できる限りはしていきますので、ビシバシとお願いします!!


「そういえば、ハルト」

「ん?」

「母さんには帰ってくること伝えてあるのかい?」

 

ハルトも揃い、今回の任務・神無毘橋への増援に参加する二班が集まった。あとは出発するだけだったのだが……、

 

「伝えられてないんだ。 この任務に参加するって聞いたのも二日前だから、急いで帰ってくるだけで精一杯だったよ。

まぁ、任務が終わったらちゃんと会いに行くよ」

「クシナさんも会いたがってたよ、ハルトくんに」

 

つい先日、クシナに会っているリンたちは、ハルトに任務で会えないことに隠してはいるが悲しんでいるクシナのことを知っていた。

ハルトも、本当ならすぐに母に会いに行きたい。見た目では分からないが、父であるミナトに会えたことも、実はハルトにとっては凄く嬉しいことなのだ。それでも、私情で任務を遅らせる訳にもいかない。それはハルトが一番よく分かっていた。

だからこそ、任務が終わるまで我慢しようと思っていたのだが……

 

 

「じゃあ、驚かせちゃうかな?」

「ミナト、お前言ってないのか」

「あはは……」

「……??」

 

ミナトとシカクの話の内容が理解できていないハルトたちの耳にとびこんだのは、聞いたことのあるその声。

 

「よかった! 間に合ったってばね!!」

「「クシナさん!!」」

 

門の所へやってきたのは、まさにハルトが一番会いたかった人。

今回の任務に参加する人数分の軽食を持ってきてくれたのだ。……七人分。

 

「みんなの分、小分けにしてたら遅くなっちゃった。 間に合ってよかった!」

 

そう、七人分なのだ。クシナは今回の任務に、ハルトが参加することを知らなかった。もちろん、いるとも思っていなかった。

 

「母さん……」

「えっ??」

 

一年ぶりに見る息子の姿。半年前にミナトから元気にやっていることは聞いていたが、それでも聞いただけ。実際に会えるのはまだまだ先だと思っていた。

 

「いつ帰ってきてたの?」

「さっき。 この任務の招集がかかって急いで戻ってきた」

「もーー!! 戻ってくるなら、来るって言いなさいってばね!!」

「ご、ごめん……」

 

クシナがすごい勢いでハルトに近づいてきた。思わず身体を強ばらせたが、その身体は優しく包まれていた。その優しさはハルトに、無意識で身体の力が抜けさせる。

 

「おかえり! ハルト」

「うん、ただいま」

 

ハルトがクシナの腕の中で顔を上げて笑って言った。元気そうな息子の姿を見たクシナは、もう一度ハルトを強く抱きしめた。

 

 

───────────────────────

 

「そろそろ出発するか」

「そうですね。 クシナ、お弁当ありがとう」

「「ありがとうございます、クシナさん!!」」

 

リンさんとアオイちゃんが、母さんに笑顔でお礼を告げていた。そんな二人を見て、母さんが自分の子どものように撫で回していた。

 

「みんな、しっかりね! 頑張ってくるのよ」

 

母さんの言葉にしっかりと頷く、……オビト以外が。

 

「あと……オビト」

「んぁ?」

「あんたは、おっちょこちょいで、慌てんぼうで、ドジで、バカで間抜けなんだから、人一倍気をつけること!」

「オビト、めちゃくちゃ言われてんじゃんか!」

「シスイ! あんたもとんでもない所でドジで間抜けな行動するんだから、気をつけなさいよ!」

「お前も言われてんじゃねぇか、シスイー!」

「へん! オビトよりはいわれてねぇよーだ」

「だから、オビトさんだろ!」

 

母さんが注意してたのに。そっちのけで二人で喧嘩を始めていた。……二人とも、横で九尾化しそうな勢いの母さんに気づいて。

 

「どっちもどっちだってばね!!!」

「「いってぇぇ!!!」」

 

……オビトはともかく、俺の知ってるシスイはこんなバカなやつだったかなぁ。まぁ、前向きに考えて年相応ってことでいっか。

 

「はぁ、まったく……。

 

いい? 怪我でもして帰ってきたら、ゲンコツじゃ済まないからね!!」

 

 

母さんのその言葉を聞いて、突然、現実に引き戻された気分になった。

そうだ、これから行く神無毘橋はオビトが戦死されたと思われる戦い。その事を知ってる俺からすれば、最早、母さんのセリフはフラグにしか聞こえない。

 

 

 

「へっ! 俺を誰だと思ってやがる! 俺は火影になる男、うちはオビト様だぞ!!

心配なんていらねーよ! 絶対、任務を成功させて、そんで……怪我なくみんなで帰ってくる!!

 

約束だ!!」

 

心底、みんながオビトと母さんを見ていてくれてよかった。俺は多分今、ものすごく場違いな顔をしているに違いない。俺の知っている通りにことが進みすぎている……。

 

「そーそー!!」

「!!」

 

そんな、かなり絶望的な気分になっていたところに聞こえてきたのは、……俺にとっての希望の声。

 

「オビトが帰ってくるってことは、みんな無事だから心配しなくて大丈夫だって!」

「はぁ!? どういう意味だ、シスイ!!」

「それに……」

 

オビトが怒ってシスイを追いかけて、こっちに向かって来た。……こっちに向かって来た!?

 

 

―――ガシッ!!

 

「……なに?」

「俺たちがバカで間抜けでも、ハルトがいるから大丈夫!!」

「!!」

 

俺の肩を組んで、何故かシスイが自信満々に母さんに言いきった。

 

「な! ハルト!!」

 

俺のすぐ横に、満面の笑みを向けたシスイがいた。

引っ張られる、この存在に。沈みそうになっても、無理矢理にでも引っ張りあげようとしてくれる。

 

 

そうだ、沈んでいる場合じゃない。

変えられないんじゃない、……変えなきゃいけないんだ。

 

「うん、ちゃんと皆で戻ってくるよ。 ……絶対に」

「ふふっ、……約束だってばね!!」

 

母さんも、俺の言葉を聞いて笑顔になってくれた。

 

 

「っし、行くぞ!」

「「「「「「はいっ!!!」」」」」」

 

こうしてまた一つ、俺は新たな誓胃を胸に、神無毘橋の戦いへと向かった。




「……、」

……いつか、クシナと話したことがあった。

『そういえば、ずっと聞きそびれてたけど……』
『ん?』
『何故、君は彼を……、いや、最近は彼らを、そこまで気に入ってるんだい?』
『……あの子たちは、ハルトと真逆だから』
『ハルトとかい?』
『ハルトは賢くて、忍として見ても親からの贔屓なく優秀な忍だと思うわ。 その賢さで忍の悲しい部分を知っても、それでも、あの子が真っ直ぐ歩けているのは二人がいるからだと思うの。

私がハルトに夢をのせてるように、ハルトはオビトやシスイに夢を乗せている。 その夢がきっと、ハルトを真っ直ぐな忍に育ててる。
そんな三人を見てたら、私もまた夢をのせたくなったの』
『夢?』
『いつかあの三人が、この世界を、次の世代のためにもっともっと良くしていってほしいって。 』
『……そうだね』

『そして私たちに、もう一人子どもが出来たら……

頭が良くなくてもいい、生意気でもいい。
明るくて、仲間を大切にして、真っ直ぐに歩いていけて。
そして、ハルトと支え合って、引っ張っていけるような、強い意志のあるあの二人みたいな忍に育って欲しい。

あの子たちには、ハルトと同じくらいたっくさんの夢をのせてるから』


「真逆か……」
「どうしたの、父さん」
「いや、なんでもないよ」

神無毘橋に向かう道中、クシナの話を思い出した時に、俺の脳裏に浮かんだのは、出発前のハルトの顔だった。オビトの声で、多少明るくなったあの場で、ハルトだけは暗い顔をしていた。

「夢をのせる……、もしかしたら、ハルトは夢を導くとこまでやっちゃうかもね」


―――あの暗い顔からの決意の顔が、ミナトの予測をさらに確信に変えていた。

―――木の葉において、ハルトの実力を一番きちんと理解し認めているのは、同班の教官であるシカクでも、幼い頃からともに修行したシスイでも、ましてや火影でもない。

―――父であるよりも前に、忍としての類まれなる才を持ち、その上で父親でもあるミナトだった。

―――そのミナトのハルトに対する評価は、間違いなく最高評価であり、そしてそれは決して過剰評価ではなかった。


波風ハルトは、既にそこまでの評価に値するレベルにまできていたのだ。そんな彼に、夢を描くことも導くことも、容易な事のようにミナトには思えたのだ。


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その後の話、これからの話

会話が多めですが、タメ口で話している時はアオイかシスイと話してると思って欲しいです。

話は進まず、ハルトくんの暗部時代の話になります。
走りながらこんなに話せないだろ!、とか暗部の話していいのかよ!とかは気にしない方向でお願いしますm(_ _)m


「そういえば、カカシさん」

「何?」

「上忍昇格、おめでとうございます。 言いそびれてました」

「あぁ、ありがと」

 

カカシがおめでとうと祝福されているにも関わらず、今一つ表情が晴れないのは、おめでとうと言っている人物が一番上忍に近いところにいるからだった。

 

「お前も受けてたら、昇格してただろ」

「……そうですかね」

「んな事あってたまるかー!! 俺が先に上忍になるっ!」

「ハルトー!! 置いていくなんて許さねぇ!!」

「なんだ、お前ら……」

 

ハルトと話していたはずなのに、何を聞きつけたのかオビトとシスイが群がってきた。嫌悪感を滅多に出さないハルトの顔から、ものすごいオーラが伝わってきた……無表情という形で。

 

「すいません。 俺、合格祝いとか用意してなかったんですけど、カカシさんって何か欲しいものありますか? あんまり想像できなくて……」

「確かに!! カカシの欲しいものって、分からないよね!

同じ班の私でも、あんまりピンと来なかったし……」

 

小隊の後ろを走るリンも会話に参加してきた。

 

 

「なんでもいいのか?」

「……俺のできる範囲でお願いします」

 

カカシは少し考えた後、ん、と思いついたように言った。

 

 

 

「あの後、楼蘭の街で何をしてたのか聞きたい」

「俺、あの後もあそこにいたなんて言いましたっけ?」

「いたんだな」

「嵌めたんですか……」

「まっ、お前があのまま楼蘭(あそこ)から離れるとは思えないっていう確信もあったしな」

「いやいやいや!!

それはさすがに無理だろ!? ハルト、暗部の任務で行ってただろ! なぁ!?」

「いいですよ、そんなことでいいなら」

「ほら見ろ……って、いいのかよ!?」

「カカシさんも参加してた任務ですし、話しても大丈夫です」

 

ねぇ?とでも言いたげにハルトはミナトの方を向いた。

 

「ミナト先生が行った任務なら、先生から聞いたけど、その後の話は知らないかも……」

「俺も知らないからね」

「特に話すようなことは無いですから。

火影様にも伝書で報告したことですし……」

 

んー、とあったことを思い出すように考えていた。

 

「特に何も無かったのか」

「はい。 隣街に襲われたくらいです」

 

ハルトは本当に何事も無かったかのようにすんなりと言った。

そんなハルトを見て、カカシが口を開いた。

 

「……ハルト」

「はい?」

「それは何も無かったとは言わない」

「でも、俺一人で事は済みましたから」

「それはお前だからだよ」

 

ハルトはよく分かっていなかった。が、この任務が終わったら火影様にきちんと報告しなければならないことだということが、ミナトやシカクの苦笑いする反応を見て察した。

 

 

「話す価値があるようなので、この話にしますね。

 

シスイたちは知らないと思うからざっくりとだけ言うと、楼蘭という街に流れるチャクラと同様の力を持つ不思議な力“龍脈”を悪用しようとした奴がいたんだ。

傀儡を操るチャクラ糸を龍脈を使ってほぼ無限に使いこなし、操った傀儡兵器で忍界を治めるとか言ってたかな」

「夢デカイな!!」

「感想はそこなの……。

 

とりあえずそいつは倒せた。 けど、また同じように龍脈を悪用しようとするやつが現れるかもしれない。 それを危惧した楼蘭の女王が、龍脈を封印することを決意したんだ」

「俺が封印しようとしたんだけど、結局ハルトが封印したんだよね」

 

「はい。

実はあの時、俺がその龍脈に施した封印は、その力を完全に使えなくするのではなく、その放出能力を極限まで制限するもの。

だからミナトさんやカカシさんが里に戻った後、俺は楼蘭に残って、龍脈のこれからの使い方とコントロールの仕方を考えていたんです」

「そんな封印術があるのか……」

「ですが、その放出量は限りなく少なくても、使用できることに変わりはない。 その力の存在を察知して、楼蘭は隣の街から襲撃を受けたんです」

「大丈夫だったのかよ……」

「俺がまだ、楼蘭にいたので。

 

おかげで、龍脈の有効な使い方も思いつけました」

「有効な使い方?」

 

オビトの心配も他所に、ハルトは話を続ける。

 

「龍脈の力を楼蘭を守る結界に使うことにしたんです。

チャクラと同じ力を持つ龍脈の良い点は、誰かの力を犠牲にすることなくその力を使える点です。 楼蘭を治める女王の意思一つで操ることができます。

楼蘭の規模があまり大きくないことと、出入りする人間が少ないからこそ可能なことですが」

 

 

このハルトの発言に、特別な反応を示した忍が三人いた。

 

「どういうことだ?」

「楼蘭の人には攻撃から身を守る術はほとんどありません。 襲撃を受ければなされるがままというのが現実です。

なので、守りに特化した結界を張ることにしたんです、出入りが難しいくらい強力なものに」

「そんな結界が作れるんだね」

「木の葉でも作ろうと思えば作れますよ。 でも、木の葉は外界との接触を遮断する訳には行かないから、出入口がありますよね?」

「私たちが出発してきた、あの門のこと?」

「うん。 結界は意図的に作っているとはいえ穴があるとその効力は落ちるから。

多分、火影様もそれをわかっているから、木の葉の結界は防御に特化したものじゃなくて、探知に特化したものになっているんだ。

防御に特化していれば、あの岩隠れからの襲撃も無かったと思う」

 

思い出されるのは、ハルトたちがアカデミー生だった時の“木の葉襲撃事件”。

探知に特化した結界ではゼロ距離の攻撃は防げないが、防御に特化していればそれに限らない。

 

「楼蘭に張った結界は、穴を一つも作らないものにしたんです。 それが、出入りする人間が少ない楼蘭だからこそ出来た理由です」

 

リンやアオイ、シスイは今の説明で納得した。しかし、カカシだけは違った。

 

「だがそれだと、全く出入りが出来ないよな? 出入りする人間が少ないってとこは、多少はするってことだろ?」

「そうですね。 閉鎖的な桜蘭でも、やはり外に出る人はいます。

 

ですが、それも限られた人だけです」

「そういう人はどうしたんだ?」

 

 

カカシのその質問に、ハルトが一瞬答えることをためらった。それは、この結界の話を始めた時から何も質問してこない上官二人が気になったことに、理由の一つがあった。

 

「……、

 

結界にチャクラを練り込ませたんです」

「??」

「結界とはすなわち、異物を拒絶する力です。 ならばその結界に、対象の人物を異物と認識させなければいいんです。

 

外に出る可能性のある人、例えば楼蘭の長のチャクラを結界に混ぜたんです。

混ぜる方法を教えれば、その長が許可した人だけが楼蘭に入れるようにすることが出来ます」

 

この世界で生きている以上、チャクラがゼロである人間は限りなく少ない。

 

“わずかな量でも結界に認知させれば、拒絶されることはなくなる”

 

それがハルトの張った結界の正体だった。

 

 

カカシも納得した様子を見せ、シスイらはハルトを褒めたたえた。

それを後ろ目で見ながら、先頭を行く上官二人が火影から聞いていた話を思い出した。

 

「……ミナト、火影様の話おぼえてるか」

「俺も、同じことを思い出してました」

 

 

それは、ハルトからの楼蘭での出来事を伝書で受け取った火影に、二人が召集された時の話だった。

 

『木の葉に張ってある結界の特性を見抜いただけでなく、その結界と異なる効力の持つ結界を他里で作り、その成果を見せたらしいな』

『『……、』』

『波風ハルトが考えた結界、木の葉でも適用出来ぬわけではあるまい。 儂はこれを取り入れようと考えておる』

『『!!』』

 

里を守るための重要な結界。はるか昔から変わっていない結界を、まだ七歳の子どもが考えた結界に変えると里の長が言っているのだ。ミナトもシカクも驚かないはずがない。

 

木の葉の結界に関することはまだ秘密の情報のため、この場にいる中でハルトの話に驚けるのはミナトとシカクだけのはずであった。

 

 

―――そのはずだったのだ。

 

 

 

「なぁ、ハルト」

「ん?」

 

ハルトの話が終わり、シカクとハルトとシスイが最後尾に着く形で走る中、シスイがハルトに話しかけていた。

 

「さっき言ってた結界、木の葉でも取り入れればいいのにな?」

「「……、」」

 

シカクも先頭を走るミナトも、シスイの言葉を聞いていた。

 

「……、

 

俺の話聞いてた? 人の出入りが少ない楼蘭だからこそできた結界なんだよ。 大量の人が出入りする木の葉では、結界にどれだけの人のチャクラを認知させなきゃならないか分からないだろ」

「んー? でも結界に認知させれるってことは解除もできるよな??」

「「!!」」

 

シスイが何の気なしに言った言葉。それはミナトやシカクも考えていたことだった。だが、ハルトの施した結界がハルトのオリジナルであるということから、それが可能かどうかも分からなかったのだ。

 

それにも関わらずシスイは、まるで当たり前かのように言った。

 

―――ハルトになら出来ると言わんばかりに。

 

 

「……、」

「ハルト??」

 

シスイを真剣に見ていたハルトが、その表情を崩して笑った。

 

「そうだね、できるよ」

「だよなぁ! だったら入って来る人は認知させて、事がすんで木の葉を出たら解除するってのを繰り返せば木の葉も守れそうだな!!」

 

そう言うと、シスイは満足そうにハルトの少し前を走り始めた。

 

 

 

「さすがシスイ、正解だよ」

「!」

 

最初からその答えを望んでいたかのように。

そう言ったハルトに気づいたのは、シカクだけだった。




次回からは進みます!!

よろしくお願いしますm(_ _)m


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この世界のシカク班

 

「そろそろですね」

「あぁ、そうだな」

「「「「「??」」」」」

 

先頭を走る父さんとシカクさんが、二人で話し始めた。すると、すぐに、

 

「一旦、下に降りるよ」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

 

父さんの合図で、木をつたって走っていた俺らは地上に下りる。

 

 

「ここからは二手に分かれる。

 

迂回するが敵を避けれるだけ避けて、前線の状況を把握し補給や戦闘援助に出る部隊と、そいつらが前線に着くまでの道中の敵をひきつけ、なおかつ木の葉に侵攻させないための囮部隊だ。

 

囮は俺の班とミナトの五人、最前線に行くのはカカシを隊長にオビトとリンで行け、いいな」

 

……なるほど。この世界ではこんなふうに別れるのか。

正直、原作で父さんと三人がバラバラで行動した理由は思い出せなかった。それに、俺たちの班もいるから二つに分けるならシカク班とミナト班でわかれるかもしれないとも思っていた。が、カカシ先生が上忍になったことで、カカシさんを隊長にしたスリーマンセルを組むことも出来る。それに……

 

 

「頼むぜ、カカシ隊長!」

「頑張ろうね!」

「……おぅ」

 

ミナト班は、原作とは比べ物にならないほど良いチームワークの班として有名だった。スリーマンセルを組ませることに疑問などわかないだろう。

 

「うん! 君たちなら問題ないよ、俺が保証する」

「「「はいっ!」」」

 

「お前らに不満がある訳じゃないが、お互いの状況は知れていることに越したことはない。 俺たちの方で何かあった時はすぐにお前達に報告するようにする」

「……? どうやって……」

 

オビトとが純粋に疑問を口に出したが、頭の良いカカシ先生でもその方法は分かっていないみたいだった。そりゃあ、忍界に携帯なんて便利なものは無いから。

 

「ハルト」

「はい」

 

シカクさんは俺の方を向いた。ちなみに、申し訳なさそうに父さんも。

 

「ハルトの口寄せをカカシ達につけてやってくれ」

「どういう……」

 

カカシ先生の疑問の声をかき消すように、俺は弥白を口寄せした。

 

『提案したのは……ミナトか』

「ごめんね、ハルト、弥白」

 

「おぉ! 弥白ぉぉ!! 久しぶりだなぁ!!!」

『相変わらずだな、お前は』

「お久しぶりです、弥白様」

『様はやめてくれ、アオイ……』

 

シスイとアオイは、一年ぶりに弥白のことを見たせいか、いつも以上に弥白のことをもふもふしてた。

弥白は助けを求めているような気がしたけど、ちょっと放っておいた。

 

「弥白は口寄せの中でも少し特殊らしくて、離れた場所にいても俺と意思疎通ができるんです。

弥白にカカシさんたちと一緒に行ってもらえれば、俺を通じてお互いの様子がお互いに分かるんです」

「ミナトから聞いた時は信じられんかったが、本当なんだな」

「はい、実際に使ったこともありますから」

 

 

そう俺が言うと、一瞬だったが父さんの顔に影がかかったのが分かった。

もちろん、実際に試したことがあるというのは俺がダンゾウら【根】に誘拐された時のことだ。俺としては新しい力を二つも手に入れさせてもらったし、無事に帰ってこられたのだから、そんなに気にしてないのだがやはり息子が連れ去られたというのはあまり思い出したくないらしい。

 

……まぁ、それを思い出してシカクさんに提案しているのは父さんなのだが。

 

 

「何があったのかは……ま、いつか聞かせてくれ」

「……分かりました」

 

シカクさんがその話を躊躇ったのは、父さんの雰囲気を感じ取ったからだけではない。

 

「……ねぇ、シスイ。 すんごく重いんだけど」

「我慢しろ」

「……、弥白はカカシさんの方に行くんだよ?」

『分かっておる』

「ほんとに……?」

 

その話をした途端に、シスイが急に俺の腕に絡まり、弥白も俺の肩に乗っかったきたのだ。

シカクさんもカカシ先生たちもあの件には関わっているとは思う。けどこの様子を見ると、詳しくは聞かされていないんだろう。ここにいる中であの事件をきちんと理解しているのは、父さんとシスイ、そして弥白だけという事だ。

 

二人がこんな行動をすれば、誰でも聞くのを躊躇う。シカクさんの言う通り、いつの日か言えばいい。

 

 

「出発しようか。

カカシ、ここからは頼むよ」

「はい」

「お前達三人は、木の葉の最前線まで敵との交戦は極力避けろ。 俺たちは、向かってくる敵全てを相手する気で行くぞ」

「「「「「はい!!」」」」」

 

シカクさんの合図で、それぞれの部隊に分かれて走り出した。

弥白はカカシ先生達についてる。そして向こうの班は、原作以上のチームワーク力を発揮するだろう。

 

―――この時の俺は、少し楽観的だった。

 

 

もしかしたら、オビトの闇堕ちは事件すら起こらないのではないか。

起きたとしても、弥白が傍についている限り、俺にはすぐに情報がくる。大怪我も負わないのではないか。

 

 

 

考えていなかったのだ。

敵側にも新しい戦力がいた時のことを。

 

 

───────────────────────

 

 

「“影縫いの術・黒彼岸花(くろひがんばな)”」

「“風遁・風の刃(かぜのやいば)”」

 

シカクの影が彼岸花のように広がり、触れた敵をその場に縛り付けた。動けなくなった敵をミナトが一網打尽にしていく。二人だけでも、充分戦えていた。それは二人の実力がそれ相応のものであるというのもある。しかし……

 

 

「思ったよりも苦戦しませんね」

「そうだな、敵が想定していたよりも少ないってのもあるが……」

「はい。 あの三人の力は想定以上でしたね。

 

さすがシカクさんの班ですよ」

「茶化してんのか、ミナト」

「まさか、本音ですよ」

 

前線でハルト、シスイ、アオイが戦い、そこから逃げ出した敵を後ろで待ち構えているシカクとミナトが倒すという戦法を取っていた。

……取っていたというのは、語弊があるかもしれない。勝手にそうなっていたのだ。

ミナト班のチームワーク力は木の葉では有名で、チームの力としてはそれに勝る班は無いというのが、今の木の葉での認識だった。ミナトもシカクも先程まではそう思っていた。

 

しかし、シカク班はそれを遥かに上回っていた。その三人が戦っているところには、例え上忍である二人でも介入しない方が良いと思えたのだ。そんな三人の元を抜けて、ミナトとシカクの元にやって来る敵の数はたかが知れていたのだ。

 

 

「“水遁・爆水衝波(ばくすいしょうは)”」

「“雷遁・地走り(じばしり)”!!」

 

ハルトが出現させた大量の水は、敵である岩隠れの忍の足止めをすると同時に波で襲う。そこに、アオイの雷遁を発動することで、水で通りやすくなった忍達を痺れさせる。

 

「俺も負けてらんねぇ!

“烏分身の術”!」

 

シスイの口寄せである烏を媒介にした分身。影分身よりもチャクラを使わないので大量の分身を作ることが出来る。

大量のシスイの分身が戦場を駆け回る。

 

「……ねぇ、まさかとは思うけど」

「大丈夫! アオイのことは巻き込まない!

 

 

烏分身大爆破(からすぶんしんだいばくは)”!!」

「あのやろ……っ!

 

ごめん、アオイちゃん!」

「えっ!? ハルトくんっ!?」

 

ハルトはアオイのことを抱き上げ、飛雷神で爆発から逃れた。

 

「さすが、ハルト!! 信じてたぞー!!!」

 

分身一つ一つが爆弾となるこの術は、戦場のあちこちにいたシスイの分身による爆発の威力は凄まじかった。そんな中でもシスイが自信満々にアオイは巻き込まないと言ったのは、ハルトがそばにいるなら逃げることなんて容易なことだと分かっていたから。

だからこそ、味方がそばにいながら爆発させることはないだろうという、敵の心情の裏をつけたのだが……

 

 

「……アオイちゃん、やっていいよ」

「あー、、、シスイくん!」

「お?」

「逃げてね!」

 

シスイが呼ばれた方向を見ると、苦笑いして手を合わせているアオイと、親指を立てたハルトがいた。

 

「シスイ。 俺も信じてるよ」

 

その顔は笑っているが、何故だか悪寒がした。そして、立てていた親指は下に向けられていた。

 

 

「“火遁・爆風乱舞(ばくふうらんぶ)”!」

「なっ!? てめぇ!ハルトォ!!」

「お互い様だ」

 

アオイが放った火遁の術の炎は、シスイの烏分身大爆破の爆風にのって僅かに息のあった岩隠れの忍にトドメをさした。

 

「俺まで息の根、止められそうになってるんですけど!?」

「信じてたぞ」

「あの顔は信用できねぇ!!」

 

 

戦場とは思えない少し気の抜けた会話かもしれない。だが、それが逆に敵に動揺を与える。大多数の目からは、誰も意識していないような偶然起こったことのように見えることだが、ある一人によって必然的に起こされていることには気づかない。

ここの能力も、三人のチームワークと互いの信頼も、木の葉だけに限らず既にこの戦場においてもトップレベルであった。

 

 

そのことに気づけるレベルの忍が、感心と若干の畏怖を抱いていた。

 

 

「(さすがだよ、ハルト……)」

 





『主!!』
「!! ……カカシさん達の方で動きがあったらしいです」

俺たちの目の前の敵をあらかた倒し、さらに前に進もうとしていた時だった。

『想定していた数よりも多い。 三人と我だけでは対処しきれていない!』

珍しく聞く、弥白の焦った声。


「先生! 任務には直ぐに戻ります!! なので、許して下さい!!」

その後ろから、突然聞こえてきたのはオビトの声。そして、走り去る二人分の足音。

「弥白、今のはどういうこと」
『……、


岩隠れの襲撃を受け、戦いの中でリンが連れ去られた。 二人で助けに行くらしい』
「「「「!!」」」」



ここでもまた……違うことが。


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この世界のミナト班


お待たせしました。
これから、話がだいぶ進んでいけそうです。第三次忍界大戦は、作者的に一番の原作ブレイクの話です。どうかこれからも見捨てずによろしくお願いします。



 

「止まれ」

「「!!」」

 

隊長の一言で全員が動きを止める。

二手に分かれ、カカシを隊長とした三人は作戦通り敵を察知すればなるべく回避しながら、木の葉の前線へ順調に進んでいた。

 

ここまで、敵にほぼ出会わなかったのは間違いなく三人とそして、弥白の探知能力が敵の隠密能力よりも上回っていたから。しかし、戦場であるここにはもちろん、各里の実力者が送られてくる。木の葉の前線を抜けてきて、より木の葉に近いこの辺りに潜む敵の実力は相当なものなのだ。

 

 

「弥白……」

『あぁ、おるな……』

 

静かな竹林に囲まれた、小さな池の所で突如立ち止まったカカシ班。隊長のカカシ、そして弥白がいち早くその存在に気づいた。

その会話でオビトとリンも辺りに集中してみれば、僅かにチャクラが揺れるのを感じる。

 

二人分がその存在を察知したと同時に、周囲で紐のようなものが切れる音がいくつもした。

 

「トラップ!?」

「任せろっ!

 

“火遁・豪火球の術”!!」

 

竹林の中で紛れるように、竹のトラップが次々と襲いかかってきたが、オビトの火遁でカカシたちに辿り着く前に全てが池の中に落ちた。

炎と水が反応し、白い水蒸気があたりを包む。視界が奪われた中で、研ぎ澄まされるのは……音。

 

 

―――バキッ!!

 

「「!!」」

 

水中に潜んでいた岩隠れの忍が二人、トラップの竹を足場にカカシたちに襲いかかった。

 

「っ!」

『“雷遁・雷獣”』

 

一人はカカシがクナイを抜き、もう一人は弥白が雷遁を纏って応戦した。

 

「リン! 離れろっ!」

「っ!?」

「“火遁忍法(かとんにんぽう)火走り(ひばしり)”!!」

 

さらにもう一人、隠れていたのであろう忍がリンの背後から近づいていたが、それに気づいたオビトはリンと敵の忍の間に炎の壁を走らせた。

 

「ほぉ、思った以上にやるようだな」

「確かに、想定外もあるみたいだな。 だが……予測できていれば、既に想定内の話だ!」

 

弥白もいれれば、こちらは四人。医療忍者のリンがいるとはいえ、数的に有利な立場にあったカカシたちは、このまま押し切れると思っていた。しかし……、

 

 

「「「「「「“土遁・裂土転掌(れつどてんしょう)”!!!」」」」」」

「「「!?!」」」

 

姿を隠していた複数の岩隠れの忍によって、四人は既に囲まれていた。中心にいる四人に向かって亀裂が伸びる。池の水の中を走る亀裂は、水を押し上げながら進んだ。

 

「くそっ! 隠密が得意な忍ばっかりじゃねぇか!!」

「……っ、」

 

 

応戦しながら、カカシは気になった。あまりにも自分たちが狙い撃ちされているようだと感じること。そして、先程の岩隠れの忍の言葉のこと。

 

―――予測できていれば、既に想定内の話だ

 

「(誰かが、俺たちの動きを敵側に伝えてる? いや……今回の任務自体がほとんど極秘任務のようなものだ、敵側に情報をリークできる人物が少なすぎる……)」

「きゃあ!!!」

 

 

カカシが考えを巡らせていたところに響いた悲鳴が、その考えを全て止めた。

 

「リンっ!!!」

「こいつは預からせてもらう」

 

良いチームワークを築いていたとしても、そこには経験の差というものがある。加えて、大きな数の差。リンを守りながら戦うことにも限界があった。

 

 

「っオビト!!」

「わーってる!!

 

“手裏剣影分身の術”っ!」

「“雷遁・綴雷電(つづりらいでん)”!!」

 

オビトが投げた大量の手裏剣をつたうように、カカシの雷遁がその殺傷能力をあげる。雷の性質を持つサスケが一人で使っていた術を二人がかりで使う。互いに実力が足りていないのかと思えそうだが、そうではない。

 

一つのことに一人が集中できることで、一人で使っていた時よりも攻撃力は高くなる。しかしそれは、二人の力を拮抗させなければならない。カカシとオビトには、それが出来るほどの実力と信頼があった。

 

 

「弥白! 頼むっ!!」

『カカシ、ミナトのクナイを投げろ』

「分かってるっ」

 

カカシが上忍祝いにミナトから貰ったクナイを、リンを捕らえた忍たちに向かって投げた。

 

『“火遁・狐火”』

「なっ!? どっから現れやがった!!」

「人質を渡すな!! 」

 

弥白は突然、岩隠れの忍の目の前に現れた。時空間を操り、尚且つ口寄せ獣の中でも上位に位置する弥白にとって、時空間の術式がミナトのものであってもそこに大きな違いはなかった。

 

弥白の火遁が命中し、陣形が乱れ始めた岩隠れの忍たちのもとへ、カカシとオビトがリンを助け出すために突っ込んだ。……しかし、

 

 

「「「「「“土遁・土流槍(どりゅうそう)”!!」」」」」

「なっ!?」

「何人、ここに費やしているんだっ!?」

 

二人の進行方向の地面から大量の槍が飛び出し、その行く手を阻む。弥白も回避しなければ、串刺しになる所だった。

だがそれ以上に驚くべきは、ここに費やされている岩隠れの忍の人数だった。なるべく敵に出会わないよう進んでいるカカシの班は、少なくともハルトたちの方よりも戦禍の激しくない箇所のはずであった。

 

 

「リンっ!!」

 

行く手を阻まれ、手間取っている間に、リンを捕らえた忍たちが姿を消した。

 

「っどうするよ、カカシ……」

 

リンは連れ去られ、相変わらず敵の数は多い。そして、本来の任務はここで岩隠れの忍を倒すことではない。

 

「俺に聞くことか? どうせ、何を言ってもお前は突っ走るだろ」

「へっ! 分かってるじゃねーか!!」

 

そして、本来ならばここで、カカシとオビトの意見が割れ、対立するはずだった。

 

「弥白、向こう側に繋いでくれ」

『分かった』

 

戦いながらも弥白は、自分の主へと意識を向ける。

 

 

「弥白? どうかした??」

 

弥白と話しているであろうハルトの声が、カカシやオビトの頭に直接響く。

 

『想定していた数よりも多い。 三人と我だけでは対処しきれていないっ』

 

目の前の敵を対処しながらの行為に、いつも落ち着いている弥白の声も、どこか上ずる。

そんな弥白の雰囲気を感じとったのか、それとも本能的か……、オビトが叫んだ。

 

「先生! 任務には直ぐに戻ります!! なので、許して下さい!!

 

カカシっ! 行くぞっ!!!」

「あぁ!」

 

弥白はついてくると信じ、敵の集団の突破を試みるカカシとオビト。

 

「弥白、今のはどういうこと」

『……、

 

 

岩隠れの襲撃を受け、戦いの中でリンが連れ去られた。 二人で助けに行くらしい』

「……、わかった。 弥白もついて行って」

『分かっておる』

 

ハルトとの通信を終え、弥白は全速力で二人を追いかけた。

 

───────────────────────

 

 

「俺がカカシさんたちに合流します。 二人だけでリンさんを救いに行くというのは無謀過ぎますっ」

 

俺は今までにないくらい焦っていた。

リンが連れ去られるというのは想定内だった。だからこそ、弥白を通信係としてカカシ先生たちについて行ってもらった。そうすれば、事が起こってからでも対処できると思っていたからだ。

しかしそれには、カカシ先生とオビトが喧嘩をする時間も含まれていた。始めからリンを助けに行くということになれば、リンのいる場所に辿り着くのはより一層早くなる。今から全力で向かって、間に合うかどうか分からなかった。

 

「俺が抜けても皆さんはフォーマンセルを維持できます。 俺は向こうで弥白と合流してから行動しますから」

「いや! 俺もついて行くぜ!!」

 

シスイが突然、ドヤ顔しながら言った。なぜ、そんなに得意気なんだ

 

「はぁ? 何言ってんのさ……」

「だって、俺がついて行けば弥白とスリーマンセルを組めるだろ? それに、残ったアオイもスリーマンセルだ!

弥白に会う前に敵と遭遇したらどうすんだよ」

「……なんとかする」

「ハルトならなんとなっちゃうんだろうけどよ……。

 

まっ、アオイの方には隊長(・・)が残るから心配ないな!!」

「!!」

 

シスイのその言葉で冷静になる。そして、自分がどれだけ無理なことを言っているのかを理解する。

そう、この班の隊長は父さんだ。俺はその指示に従わなければならない。俺がどんなに行くと叫んでも、隊長が許可しなければそれは許されない。

そんな当たり前のことを、シスイに言われるまで忘れてるとか、……俺やばくね。

 

 

「すみません、でしゃばった真似をしました」

「いや、構わないよ」

「ごめん、シスイ」

「ハルトに謝られるとか、気持ち悪っ!」

「……、」

 

俺の感謝の気持ちを返して欲しい。

 

 

「まぁでも、あの報告を受け取って俺たちから何もしないってのは出来ないね。 ハルトが言っていた通り、弥白の居場所がわかるハルトと、ハルトと弥白について行けるシスイが行くのが一番妥当かな」

「!」

「っしゃあ!」

 

父さんは笑顔で言った。俺の言う通りというよりは、シスイの言う通りだ。

 

 

「二人とも気をつけてね!」

「おう!」

「アオイちゃんも」

「大丈夫!!

 

 

行ってらっしゃいっ!!」

 

アオイに見送られ、俺とシスイはカカシ先生たちの元へ急いだ。

俺がこの時に考えていたことは一つ。オビトを死なせてはならない。

あのチームワークがあるミナト班で、オビトが亡くなればそのダメージは原作以上に違いない。

 

 

逆に言えば、それしか考えていなかった。

 

まさか、父さんたちの方でも俺の知らないことが起きるとは思っていなかったんだ。

 





オリキャラが、アオイちゃんで終わりと言っていたんですが、もうちょっと増えそうです。

……だって、味方側だけが増えてったら敵側に勝てる要素ないんだもん……。許して下さい……。


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嫌な予感は何か


お待たせしてしまい、申し訳ありませんm(*_ _)m
作者、海外に行っておりました。時差……大変ですね。

1ヶ月は空けられないと思い、書かせて頂きました。次の話はなるべく早く投稿したいと思います。

この章は、作者的に最もブレイクしたい所なので。


 

 

「そんな、急ぐ必要があるのか?」

「うん……、敵側の狙いがはっきりしてない以上、助けに向かってる二人にも危険が及ぶ可能性は十分にある」

 

シスイと二人でとびだし、俺が弥白のチャクラを辿って走っていた時、シスイが聞いてきた。

このスピードに着いてこれない訳では無いが、俺がこんなにも焦ってる理由が知りたかったんだろう。……もちろん、この後どうなるか知ってるから、なんて言えないが。

 

「リンさんは医療忍者だ。 人質には都合がいいかもしれないけどすぐに殺される可能性は低い、敵側にも需要のある人質だから。 それに、医療忍術のような繊細なチャクラコントロールを得意とする人から、幻術で無理矢理情報を聞き出すのも時間がかかるだろうから、そういう意味ではリンさんはむしろ安全だ。

むしろ、助けに向かってる二人の方が危ない。

 

……いや、もしかしたら最初から、二人が目的だったかもしれないけど」

「二人が?」

「写輪眼が開眼するかもしれないうちは一族と、木の葉の白い牙の息子だから。 里外でも有名な話だと思うよ」

「そっか……」

 

うちは一族に対する俺の心配には、目の前の人物にも当てはまるのだが、きっと分かってないんだろう。

 

 

「とにかく急ごう、弥白の話じゃ敵の数は相当多いみたいだから。

シスイ、無謀に突っ込まないでよ」

「無謀じゃなければいいんだよな?」

「……? まぁ……」

「ハルトがいるなら大丈夫だ!」

「いや、そういう事じゃなくて……」

「?? 俺、なんか間違ってる??」

 

嫌味かとも思ったが、本気でその疑問を口にしているのだと分かった。

 

「……そうだね」

「頼むぜ! ハルト!!」

 

シスイの信頼の声を受けながら、さらにスピードを上げた。

 

 

『主!』

「弥白、どうかした?」

「!」

 

俺は敢えて、弥白からの通信に声を出して応えた。基本的に、俺と弥白の会話は声を出さずとも出来る。が、今はシスイにも聞かせなければならない。

 

『リンのチャクラを辿っていた途中で、待ち構えていた岩隠れの忍の奇襲にあった。 カカシが左目を負傷、オビトが……』

「写輪眼、開眼したんだね」

『あぁ』

 

俺が声を出して反応したことによって、弥白も自発的にシスイの方にも声が聞こえるようにしてくれた。本当に出来すぎたパートナーで助かる。

 

「カカシさんの傷の具合は?」

『問題ないらしい。 簡易的な手当だけはしてある。 襲ってきた敵も殲滅して、間もなくリンのところに着く』

「わかった。 難しいかもしれないけど、二人のこと少しでも足止めしておいて」

『……期待はしないで欲しい』

「大丈夫、俺たちも急ぐよ」

 

珍しい弥白の弱気な発言に、少し肩の力が抜けた。

 

 

「オビト、写輪眼が開眼したんだな……」

「そうみたいだね」

 

オビトのこともそうだが、写輪眼の開眼要件はやっぱり難しいし曖昧だと思う。

 

“失意”と“喪失”

 

写輪眼に関しては、それは命に限ったことではない。実際、シスイもアオイちゃんも俺が開眼のきっかけみたいだけど、俺は死んでない。

写輪眼はその失意に対しての、自身への力への渇望が実体化したものだと思う。だからこそ、写輪眼を手に入れた時の反応は二極化する。

 

新たな力を手に入れて自信にするもの。そして、失意や喪失に後ろめたさを感じて純粋に喜べないもの。

おそらく、圧倒的に前者が多いのだろう。俺の周りには後者しかいなかったが、……目の前の人物も含めて。

 

「誰かが死んだわけじゃないんだから、落ち込むな」

「わかってる」

「でもオビトさんの写輪眼が開眼したってことは、敵の目的の達成が近くなったってことだ」

「そうだよな……」

 

原作で、カカシ先生たちが狙われた理由は……ちょっと思い出せない。でも、少なくともこの世界との目的は違うのだろうと俺は思っていた。

かけている数が違いすぎるし、今の三人は仲違いを期待できるようなチームワークではない。

 

つまり、成り行きではなく明らかな目的を持って三人を狙っているように見えるのだ。

 

 

『……、……っ、』

「……??」

「ハルト? どうかしたか??」

 

走りながら僅かに首を傾げた俺に、シスイはすぐに気がついた。

 

「いや……弥白との繋がりが雑になった」

「……?」

「妨害されてる感じ……、っ!!」

「えっ、ハルト!?!?」

 

シスイなら着いてくると信じて、無理矢理スピードをあげた。

俺と弥白の繋がりは、もちろんチャクラを介することで可能にしているものだ。つまり、それが悪くなるということは弥白に何かあったか、もしくは、

 

「結界の中か……っ!」

「は? どういうことだよ!」

「……、

 

カカシさんとオビトさんはやっぱりおびき寄せられてる、でなきゃリンさんが囚われている場所に着いた途端、チャクラを遮る結界なんて張れない」

「いやいや、なんでカカシさんたちがリンさんの元に着いたってわかるんだ!?」

「当たり前だろ……、カカシさんたちはリンさんのチャクラを追っているはずなんだから」

「!」

「リンさんのチャクラを追えるってことは、結界なんて張ってないってこと、なのに弥白との繋がりは突然悪くなった。 そもそも、リンさんを捕まえている場所に結界を張らないのもおかしな話だと思ってたけど、本当の目的がカカシさんとオビトさんなら、それも納得できる。 リンさんじゃなくて二人が追跡されないことが本来の目的なんだ!」

「二人がそこに着いたから、結界を張ったってことか!」

 

まずい……、そこまでして二人を狙う理由がわからない。二人ももちろん実力者だが、もっと狙いやすい人物はいただろう。どうしてこの二人を、このタイミングで狙ったんだ。

 

―何か……嫌な力が働いている気がする……。

 

───────────────────────

 

「カカシ、……お前にこの瞳をやる。 俺だけ……上忍祝い、やってなかったからな」

「っ!」

「いやっ、……やだよ、オビト!!」

 

リンの幻術を解き、見張っていた岩隠れの忍も倒し、あとは脱出するだけだった。しかし、外側のチャクラの気配が突然、感じにくくなったその空間ではカカシやリンだけでなく弥白までもが、外で陣形を組んでいた岩隠れの忍の存在に気づくことが出来なかった。

 

岩隠れの忍による土遁の術により、三人のいた洞窟が崩されるという原作と同じ展開になっていた。

 

最初は渋っていたカカシとリンも、オビトに諭されその目の移植をしていた。

そんな中、弥白だけは冷静に周囲を見ていた。

 

 

『……、主の気配が突然、感じにくくなった。 外で何が起きてる……』

 

考えながら、天井を見上げて気づく。自然の力ではないということに。

 

『っ!! カカシ!リン!!逃げろっ!!

これは忍術だ、意図的に起こされているものだ!!』

「「「「「「“土遁・岩宿崩し(いわやどくずし)”!!!」」」」」」」」

 

 

弥白が叫んだタイミングと岩隠れによる術の襲撃が同時に起こる。カカシの目に移植が完了していた。右半身が潰され、左目をカカシにあげたオビトには既に光は映っていない。しかし、弥白の切羽詰まる声と周囲の轟音から、リンとカカシに逃げるように叫ぶ。

 

「オビトっ!!!」

 

リンの悲痛な叫びが、岩が次々と落ちる洞窟内に響くのと、

 

 

「“晶遁・紅の果実”!!」

 

逃げ出そうとしていた天井穴から押され、洞窟内に戻されたカカシとリンの後ろから声が聞こえるのはほぼ同時だった。

 

 

洞窟には似合わない桃色の輝きが、洞窟の内部を覆う。

 

「ハル……ト……?」

「……、

 

 

 

 

間に合った……っ!!」

 

 

焦ったり、急いだりしないその忍の額には、うっすら汗が滲んでいた。

 





そういえば、今日は勝手にアオイちゃんの誕生日なんです  
……出してあげられなくてごめんね(> <。)


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木の葉の赤い白狐

お待たせしました!
作者的原作ブレイクの大きさトップ3に入る回でございます。

そして、その長さもトップ3に入ります……もし長すぎと感じた方いらっしゃいましたら、遠慮せずに教えてくださいーm(*_ _)m

ハルトくん大大大活躍の回になっております!それでは、どうぞ!!

訂正させて頂きました
→属性の優劣を勘違いしていました!申し訳ありませんっ!!土属性は雷属性に強くないんですね……。


「どういうことだ! なぜ洞窟が崩れないっ!」

「分かんねぇっ、中の様子が何かに遮られるように見えなくなってんだ!!」

 

たくさんの忍の数を費やして組まれた陣形から繰り出された土遁の術は、間違いなく中にいた忍の息の根を止められる威力だった。

しかし、それはその目の前の洞窟が崩れればの話。彼らの前で、それは同じ形を保ったままだった。

 

「何か、結界が張られてんのか!!」

「違う違う。 あんたたちは自分のチャクラを見ちゃってんだよ」

「「「「「!!」」」」」

 

突然、とはこの状況を説明するためにあるのかもしれない。

 

気を張った今の状況で、近くで聞こえてきた声はあまりにも突然すぎた。

 

「貴様っ、いつの間にっ!!」

「俺が来たのは今だよ、それよりも先に俺の仲間が来てただろ?」

「仲間?

はっ! そんなやつは見てねぇ! いたとしても、全員あの中で生き埋めだ!!」

「崩れない洞窟で、生き埋めは無理だろ」

「なんだとっ!」

「それに、俺の仲間が来ていることに気づけてない時点で、お前らにあいつを殺すのは無理だよ」

 

突然現れた木の葉の忍、シスイは手裏剣を両手に構えた。

 

「 俺が現れたことにもなかなか気づかなかったんだから、ハルトに気づくなんてもっと無理だな。

 

……まぁ、お前らにハルトのことを見る機会なんて二度と訪れないけど。

 

 

“うちは流手裏剣術・〝(いかづち)影連(えいれん)”っ!」

 

シスイが放った手裏剣はその数を十倍以上に増やし、全てが雷をまとった状態でシスイの周りを囲む岩隠れの忍を倒していった。

 

「ハルトじゃなくて俺に会えたのは幸運だったかもな」

 

 

外から崩れていない洞窟を見て、シスイは呟いた。

いつも冷静な親友が、ごめんと一言だけ残して見たことの無いスピードで自分を置いて行った。ただ、冷静さを欠いている訳ではなく、自分もたどり着けるようにチャクラの痕跡は残しながら。

自分には見えないところまで、きっとその親友には見えている。だからこそ、いつも最悪の事態を考えながら動いている。

もしかしたら、その歴然の差に落ち込む人もいるかもしれないが、シスイは違った。

 

そこにあるのは尊敬と、そんな忍が自分を認めてくれているという誇り。だからこそ親友であると同時に、ライバルであり自分の目標でもあるのだ。

 

 

「相手はガキ一人だ! 始末して中の状況を確認しろ!!」

「……、悪かったな」

「あぁ??」

「……、

 

今からそのガキに、お前らは殺られるんだよ!!」

「なっ! 写輪眼っ!?」

「俺をガキ扱いしたこと、後悔しやがれぇ!!!」

 

ガキという言葉に反応した訳では無い!、と後でその親友に言い訳することになるとは、今は考えてもいなかった。

 

 

───────────────────────

 

 

「ここは俺に任せて、三人は離れたところで待っていてください」

「ハルトくん……」

 

崩されそうになり、オビトが生き埋めになろうとしていた洞窟の内側に、脱出を試みていたリンさんとカカシ先生を押し戻し、晶遁の術を展開して崩れるのを防いだ。

結晶は、内と外のチャクラを乱反射することで感じ取ることを難しくさせる。それは、俺たち側からも難しくなるということだったが、外ではシスイが何とかしてくれているから問題ないだろう。

 

「あの量の敵を、お前だけで相手するのか? あまりにも無茶すぎるだろ……」

「多分、既にシスイが半分ほどに減らしています。

カカシさんたちはこっちのことより、オビトさんのことをお願いします」

「でも……、オビトの上には岩が……」

 

リンさんが絶望的な顔で、オビトのことを見る。今、オビトが生きていられるのはオビトの生命力と、リンさんの医療忍術による治療のおかげだ。

 

「オビトさんだけを、俺と一緒に飛雷神でとばします。 恐らく上手くいきます」

 

俺の言葉に、少しだけほっとするリンさん。だが、安心するのはまだ早い。

 

「むしろ、その後の方が大変です」

「?」

「オビトさんと一緒にリンさんとカカシさんも同じ場所にとばします。 俺の分身が今、木の葉から医療術者を連れてきています。 到着するまでの間、オビトさんの治療と周辺の警戒をお願いしたいんです」

「「!!」」

「二人だけで出来そうですか?」

 

その確認は歳下の俺からするには、少し生意気かもしれない。でも、生意気だと思ってもらってでも出来ると言ってもらわなければならなかった。

 

「出来るとかじゃない、やる」

「……、お願いします」

 

 

そんな俺の生意気な質問にカカシ先生ははっきりと答え、リンさんも涙を拭った。

 

「では急ぎましょう。

 

弥白、俺が離れたらこの結界は解けるから。 シスイのこと頼むね」

『分かっておる』

 

洞窟が崩れたら、驚くであろうシスイのことを弥白に頼み、オビトに触れる。

 

「ハル……ト……、」

「もう少しですから、頑張って下さいっ」

「……、

 

 

あり……が……とな、」

「……元気になってから、聞きます」

 

 

それは祈りにも近い言葉。今ここで、こんな形であなたを失いたくないのだ。

 

未来のためにも、あなたのためにも。

 

 

「カカシさん、リンさん、俺に触れてください」

 

二人が肩に捕まったのを確認して、俺は飛雷神でとんだ。

 

 

───────────────────────

 

「くそっ、どんだけ湧いてくんだよ……っ」

『なんだ? もうへばったのか、シスイ』

「はぁ!? へばってねぇし!」

 

ハルトの術が解け洞窟が崩れた後、ハルトの予想を通り越してシスイは軽くパニックに陥ってた。もちろん、弥白が蹴りを入れて落ち着かせたが。

 

シスイ一人だった時よりも、弥白が加わったことでより倒しやすくはなったが、それでも数は減っているように感じれなかった。

 

「減ってるどころか……増えてんなっ!」

『写輪眼で何か見えぬか』

「……、わかんねぇ。 全員、分身でないってことくらいだ」

『では、主が来るまで待つだけだ』

 

チャクラの消耗を抑えるため、体術だけで戦う。苦戦している訳では無いが、永遠に続けられる訳でもない。

 

 

「“風遁・花散舞(はなちりまい)”」

 

背中合わせで応戦するシスイと弥白の周囲を、守るように桜吹雪が渦巻いた。

 

「なんだっ!?」

 

次第に花びらは二人を中心に広がり、岩隠れの忍たちの間を埋めていった。

 

「“雷遁・風花雷光(ふうからいこう)”」

「っ!?」

 

 

「「「「「ぐわぁぁぁぁあああ!!!」」」」」

 

それはシスイが昔見た術と同じかと疑うほどの威力。ハルトの指先から出た雷は、花びらを伝うように伝雷し、辺りの敵を一掃した。

 

「お待たせ」

「ハルト!!」

『オビトらの様子は』

「木の葉の医療部隊が着くまでの応急処置の仕方は、リンさんに教えておいた。後はオビトの生命力次第だけど、木の葉からの応援もすぐ近くまで来ていたから、多分大丈夫じゃないかな」

 

ハルトの報告を聞き、安堵したシスイと弥白。ハルトの術で、減らない敵はほぼ倒されていた。

 

「シスイは、広範囲忍術を身につけた方が良さそうだね」

「ぅぐっ……、火遁の延焼、抑えられないんだよなぁ……」

「修行あるのみ」

「押忍っ!!」

 

 

感知能力が比較的高い三人が揃っていた。そのだれもが周囲に敵はいないと認識していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

───もっと踊ってくれよ、波風ハルト

 

「!?」

「どうした? ハルト!」

 

突然、頭の中に響いた声。それも、ハルトにしか聞こえていないようだった。

 

 

 

───まだ……、終わってない(・・・・・・)よな?

 

原作の知識を探っても聞いたことの無い声、全てを知っているかのような断定的な言葉。

 

「終わってない……。 第三次忍界大戦において、まだ重要なことがあるってことか?」

 

シスイたちの不思議そうな視線にも気にすることなく、考えをめぐらせていく。その言葉がハルトにしか聞こえていないということは、ハルトにしか分からないことなのだと、直感的に気づいていた。

 

 

「……、そうだ、リンさん」

「リンさんがどうかしたのか?」

「(……、

 

第三次忍界大戦で死ぬのはオビトだけじゃない。 その後、リンさんも亡くなる……。 でも、リンさんのところにはカカシ先生も木の葉の忍もいる、誰も知らないあの場所が狙われるとは考えにくい……)、

 

 

 

!! 違うっ、そっちじゃないのかっ!」

「!?」

『……主?』

「シスイっ、弥白っ! 直ぐにシカク先生のところに戻るぞ!!」

「はぁ!? 急にどうしたんだよ!?」

「全部終わってから、話してやるっ!!」

 

第三次忍界大戦で、起こること。それは、【リンの死】ではない。

 

 

「……三尾の暴走かよっ」

『!』

 

小さな声だったが、弥白には聞こえていた。が、自分の主の様子を見て深く聞くことはやめた。

 

 

 

「はっ! お前らを戻させるわけには行かねぇ!」

「全員、ここで死んでもらうぜっ!!」

 

戻ろうとした三人の前に現れたのは、応援に来た岩隠れの忍。すかさず応戦しようとしたシスイを、ハルトは止めた。

 

「シスイ、弥白と一緒に今すぐ戻って」

「ここはどうすんだよ」

「俺が一人でやる、事態は一刻を争う。

 

……走れっ!!」

「っ、弥白! 行くぞっ!!」

 

一人で残すことなんで出来ない、そうシスイが叫ぶ余裕さえハルトは与えなかった。

 

 

「逃がすなっ、追えっ!!!」

 

もちろん、二人を見逃すことは無いが、追いかける忍を捕まえないハルトでもない。

 

 

「“晶遁・紅の果実(くれないのかじつ)結晶探知(けっしょうたんち)”」

「なっ!?」

「なんだこれはっ!?!」

 

“晶遁・紅の果実”。本来なら味方を守るための防御壁となる結晶の壁。それを、ハルトのあみ出した術“結晶探知”で、全ての敵の居場所を把握し、全員を包み込む壁を作った。ハルトを含め、全員がその中にいた。

 

「術者のお前を倒せば、この壁は壊せるよな?」

「さぁ? 試したことないので」

「ふんっ! やれぇぇぇぇ!!!!」

 

 

たった一人のハルトに対して、全員で襲いかかる。

 

「……試したことないよ、この術さえも初めて使うんだから」

 

 

───シュンッ!!

 

結晶の壁の外にマーキングしておいたクナイのもとへ、ハルトだけがとぶ。

 

「本当なら、一人は残して情報を聞き出した方がいいだろうけど……、

 

 

もういい、俺が自分で探す」

「……何をする気だっ」

 

結果的に閉じ込められた岩隠れの忍の何人かは、その結晶の壁を壊そうと試みていたが、ハルトへの交渉に転じた者もいた。

 

「それ、俺がそっちに置いてきた巻物」

 

ハルトが指さしたところには、開いた状態で置かれている巻物。

 

「本当なら使い方が違うけど、俺はまだ死にたくないから。

 

 

起爆札自体に別の起爆札を口寄せさせる術式を書いといたんだ、爆発と同時に作動するように」

「!?」

「爆発は、永遠に続く。 逃げられるなら、逃げてみろ。

 

互乗起爆札(ごじょうきばくふだ)”」

 

結晶の壁の外から、絶望の合図が落とされる。

逃げられる余地があるのであれば、その術の詳細など教えたりしない。堂々と教えるということは、すなわち、その術に絶対の自信があるということ。

 

もはや脱出不可能の要塞と化したその中で、爆発が永遠と続いていた。

 

 

 

「貴様っ、……まさかっ!!」

 

爆発の中心から逃れた忍が、壁越しにハルトの前までやってきた。

 

「口寄せの白い狐に、時空間を操る忍術……。

 

 

貴様があの……っ!!」

 

 

そこまで言われて、ハルトは腰のポーチに入れていた面を取りだした。

 

「っこんな餓鬼が……っ!!!」

「そんな餓鬼に、お前らは負けたんだよ」

 

 

ハルトの暗部時代の白い狐の面をつけ、未だに爆発を続けているその場所を僅かに振り向いた後、その姿を消した。

 

 

 

────幸せを運ぶ白い狐、それと一緒に戦場をかける忍

 

───その姿は、まるで戦地とはかけ離れた綺麗な姿だと

 

──それを確かに伝えられる者はいない

 

──誰も生きて帰らせない

 

─命からがら、僅かに逃げた者が伝えた事は

 

 

 

 

────そいつが通る道は(あか)で染まる

 

─────誰も見ることが出来ない……〝木の葉の赤い白狐〟

 

 

「赤の、本当の意味を知る人は……いるのかな」




《オリジナル忍術などの説明》
“結晶探知”
ハルトの支配下にある微小の結晶が周囲にいる敵を探知し、それに向けて忍術を発動させる。今回は“紅の果実”と一緒に使ったが、もちろんそれ以外の忍術でも使用可能。ただし、晶遁の術としか組み合わせることは出来ない

“互乗起爆札”
二代目火影考案の術を、ハルトなりに改良。起爆札に起爆札を口寄せする術式を仕込み、巻物に封印して持ち歩いている。巻物が使い捨て。
爆発の威力が、今は制御出来ないため、結界などで場所を限定しないと味方まで巻き込む。ハルトは飛雷神でとんで逃げる。

“うちは流手裏剣術・〝雷〟影連”
シスイのオリジナル忍術。分身させた手裏剣に伝雷させ威力をあげる。手裏剣影分身と雷の性質のチャクラを高速で操る必要があるため、かなり難易度は高い。これに似た術を、オビトとカカシが使っている(前話・【この世界のミナト班】参照)
ちなみに、元ネタはサスケの“うちは流手裏剣術・〝雷〟三連”。シスイは三連続ではなく、無限に投げれる。きっとサスケにも教えてくれる。


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三尾の暴走


お待たせ致しました!!
本当に申し訳ありません、恥ずかしながらめちゃくちゃ悩みながら書いておりました。
文才がいつも以上にないかもしれませんが、読んでくださると嬉しいですm(*_ _)m

第三次忍界大戦編も、まもなく終了です!


 

「どうなってんだよ……これ」

『間に合わなかったということなのか……っ』

 

 

ハルトにせかされて、ミナトたちがいる場所に戻ったシスイと弥白が見たのは、まさしく【戦場】というのにふさわしい光景だった。

ハルトたちが離れた頃は、多少なりとも起伏があった地形は全て平らになり、全ての忍がその地に倒れていた。

 

そう、……全ての忍が。

 

 

「シカク先生! ミナト隊長!!」

『しっかりしろ、何があったのだ』

 

倒れているのはほとんどが敵の忍、岩隠れの忍だったがその中にミナトとシカクの姿もあった。

弥白が二人に触れると、二人の体はエメラルドのチャクラに覆われた。

 

「弥白……医療忍術も使えんのか?」

『医療忍術とは少し違う、我を介して主のチャクラを流しているだけだ。 言うなれば、我の術ではなく主の術だということだ』

 

 

「……うっ、」

 

弥白が簡単に説明していると、ミナトが僅かに意識を取り戻した。

 

「ミナト隊長、大丈夫ですか!」

「シスイ……? ……!!」

 

目を覚ますと、すぐに何かを思い出したかのように周囲を見渡して何かを探し始めた。

 

「……アオイに会わなかったかい?」

「『!!』」

 

 

あまりにも目の前の光景に衝撃を受けすぎて、忘れていた。全員が倒れているこの現状で、アオイの姿だけが見えなかったのだ。

その事実はつまり、

 

「これ、アオイがやったんですか!?」

「そう……だね、」

 

ミナトの僅かな間に弥白は気になったが、今はそれを追求している場合ではなかった。

それに、弥白には若干思い当たるところがあったのだ。

 

 

「!? ……逃げろっ!!」

「「『!?』」」

 

それは、弥白の治療を受けていたシカクが叫んだ言葉。治療を受けることに専念していたシカクだったからこそ気づけた、突然発生した巨大なチャクラ。

 

 

「『水遁・水手裏剣』」

「!?」

「くっ……!! 『土遁・土流壁』っ!!」

 

水属性に強いはずの土属性の壁、しかもその術の発動者はあのミナトである。それを容赦なく破壊しようとする。術発動で聞こえてきた声は、知った声と知らない声が重なっていた。

 

「アオイ……どうしたんだよ!?」

 

聞こえた声や姿は、間違いなくシスイが知っているアオイだった。しかし、感じるチャクラは禍々しく強大なものだった。

 

「今のアオイには何も届かねぇ……、突然、見境なく攻撃し始めたんだ」

「確かに……、アオイは水属性は持ってなかった」

 

少し考えていたところにアオイが突っ込んできた。

 

──ドカーンっっ!!!

 

アオイの実力が劣っていたとは思っていない。少なからず、同期の中では上位に食い込む実力の持ち主だ。

それでも、ここまでの威力やスピードではなかった。

 

 

「(何が起きてる……、なにかに操られているようだけど……。 そんな術が展開しているところも見てはいない……)」

 

ミナトとシカクはアオイと共にずっといた。上忍の中でも上位の二人でさえ、アオイに何かした形跡や人物を見つけてはいなかった。

しかし、それでも間違いなくアオイの身には何かが起きていた。そうでなければ、相手がアオイだということで本気を出せない四人だとしても、アオイのことを取り押さえることが出来ないというのは説明がつかなかった。

 

 

『シスイ! シカク!! 少しの間、二人だけでアオイの相手は出来るか』

「……!! ハルトか!!」

 

アオイが少し距離をとった隙を狙って、弥白が二人に問いかけた。その質問だけで、シスイはハルトが何かしら考えたのだと気づいたのだ。

 

「教え子からの頼みを断るほどおちてねぇよ」

「任せとけっ!!」

 

弥白、ミナトとアオイの間に素早く入り込み、シスイとシカクが構えた。

 

『ミナト、我に触れろ』

「わかった」

 

ミナトは言われるがままに、弥白に触れた。

 

───────────────────────

 

 

「父さん、聞こえる??」

「ハルト!」

 

弥白を介して、聞こえてきた父さんの声。弥白が俺のチャクラで回復させたおかげか、声からはその疲労は感じなかったことにとりあえず安堵した。

 

「弥白を介して、そっちの状況はだいたい理解してる。 アオイちゃんを操ってるのはおそらく尾獣チャクラだよ」

「……尾獣!?」

『我は多少であれば、尾獣チャクラを感じ取ることが出来る。 アオイからそれを感じる』

「でも、そんな様子、俺もシカクさんも見ていない……」

 

何者かがアオイちゃんに尾獣を仕込んだのは間違いない。だが、その姿を父さんでさえ見つけられていない、そして俺にも分からないというのが、今の状況だった。

 

「誰にやられたのかは分からない。 でもとりあえず今はそれよりも先に考えることがある……」

「……尾獣をどうするか、だね」

 

一度、尾獣を体内に宿せばそれを抜かれた時点で、人柱力は死に至る。母さんやナルトが原作で死ななかったのは、回復力の高いうずまき一族であったから。うちは一族のアオイちゃんが尾獣を抜かれて死に至らないという確信はない。

 

「隊長、俺に考えがあります」

「! ……話してみて」

 

 

その呼び方を変えたのは、これから話す考えがあまりにもリスクが高かったから。

そして、俺の独断で出来るようなことではなかったから。それこそ、火影がそれに近い人でないと判断できないようなこと。

 

「このまま、アオイに尾獣を封印します」

「『!!』」

「彼女に尾獣を仕込まれた時点で、敵が誰かわからなくとも木の葉に何かしらの被害をもたらそうとしているのは間違いありません。 でなければ、強大な尾獣の力をみすみす敵に渡したりしませんから。

ならば、今のアオイの状態は封印してあると言うよりは、押さえつけられているだけの状態ということです、何かのきっかけですぐに解放できてしまうような」

「なるほどね……」

 

リンの時もそうだった。原作と敵が同じかどうかは定かではないが、木の葉に何かしらの被害をもたらすために尾獣を使っていることは間違いなかった。そうならば、そのまま放置しておくわけにはいかない。

 

 

『真意は違うであろう??』

「!」

 

すぐ側にいるにも関わらず、わざわざ頭の中に話しかけてきた。つまり、父さんにも聞かれたくない話であるということ。

 

……いや。

 

聞かれたくないのは俺の方か……。

 

 

「俺は誓ったから。 何があっても守るって」

 

そのために力をつけてきた。大切な人を守れるようにと。尾獣を抜かれて、死んでしまうなんて絶対にさせない。木の葉で暴走させるなんてもっての他だ。

 

『だが、実際にアオイに封印することは出来るのか?』

 

俺の意思を聞いて納得したのか、父さんにも聞こえるように弥白が聞いてきた。

 

「大丈夫。 そのために用意してきた術があるから」

「『??』」

「二人にも、……いえ、シスイにもシカク先生にも手伝って頂かなければなりませんが……」

 

アオイちゃんに使う予定はなかったが、尾獣に対して使う予定の術ならある。

 

 

「もう少しで、飛雷神でとべるところまで行きます。 あと少し、耐えて下さい」

 

 

 

絶対に……誰も死なせたりなんてしない。

 

 

 

 

 

 

──踊ってくれよ、俺が飽きないように

 

「!?」





シスイとシカク先生の戦闘シーンを、この章が終わったら最後に書きたいなぁなんて思ってます。


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師の存在

お待たせしました、間が空いてしまって申し訳ありませんっ。

2019年ももう少しで終わりますね……、2019年内には、この章を終わらせて、次の話に入っていきたいです。頑張ります。


「シカク先生っ! アオイのチャクラがっ!!!」

「っ、……分かってる。 なるべく忍術を使わせるなっ!」

 

ミナトと弥白の代わりに、アオイの相手を引き受けていた二人の元に戻ると、戦況は未だに膠着状態だった。

いや、おしているはずのシスイとシカクの方が、神経をすり減らして戦っていた。

 

「戻りました」

「ミナト、ハルトはなんだって?」

「……、アオイに封印されているのは……尾獣ではないか、ということでした」

『それもかなりの高確率だ』

「「!?」」

 

 

その存在だけで、隣国の脅威となる。一国の権威を何倍にも何十倍にもする。忍界のパワーバランスでもある存在、尾獣。

もちろん、手中に治めることは難しく押さえつけることで人間が手にしている力。それを、気付かぬうちにアオイの中に存在させる。尾獣の存在以上に、それをやってのける敵の方に脅威を覚えた。

 

『主には何かしらの手があるように思えた。 間もなくこちらに戻ってくる』

「じゃあハルトが来るまで、アオイのことを傷つけないように抑えとけばいいんだな!!」

『そういうことだ』

 

簡単に言っているが、それは想像以上に難しい。それでも、シスイのその言葉で全員の目が変わった。

 

「俺と弥白でアオイに近づきます! ミナト隊長とシカク先生は後ろから援護をお願いします!!」

「!」

「わかった。 けど相手は尾獣のチャクラだ、無理はしないように」

「後ろに二人が控えてるなら大丈夫です!」

 

ミナトは何の気なしにその提案を受けたが、下忍の頃に同じ班として任務に当たってきたシカクからすれば、その提案は意外なものだった。

 

『シスイも冷静になったということだ』

「……知らないうちに、成長してくってことか」

『師がいるという安心感が後押ししているのかもな』

「!!」

 

下忍の頃、シスイが自ら作戦を口にしたことは無かった。シスイは特攻で突っ込み、後からそれを活かすようにハルトが作戦を考えていた。しかし、それもシスイが成長するにつれて作戦を伝えるまでの時間が短くなり、ハルトが何度も注意していたのを、シカクは見た事があった。

 

『シスイはむしろ、主がいることで甘えていた部分もあったのかもしれぬ』

「甘え……?」

『あの二人は長い時間、共に居たからな。 作戦を考えるのは主の役目、自分がどんなに暴走しても主ならついてこられる。 そういう考えが、シスイの思考を止めてしまっていたのかもしれぬ。

ただ、中忍になり班が解散になると、小隊長として考えなくてはならない機会も増えただろう。 そんな中での、今回の任務だ。

 

シスイにとって主は親友であろう、信頼のおけるな。 それでも、そこには間違いなく好敵手(ライバル)であるというプライドがある、無自覚であってもだ。 そんなライバルに中忍となった今、下忍時代と同じ注意をされるわけにはいかないと無意識に意識する。

そんな状態で今は主はおらぬ、いるのは自分よりも実力のある忍、それも自分の師だ。 いつもより冷静に、そして、間違っていても助言があるという安心感がシスイのことを、決定的に変えたのだろう』

 

「弥白! おいてくぞ!!」

『……、まだまだおぬしの力が必要であるということだ、シスイにも、……主にも』

 

そう言うと、弥白に叫び続けているシスイのもとに移動していった。

 

シカクは、自分が思っていた以上に頼られているということを知り、喜んでいる自分に驚いていた。

アカデミーの同世代に限らず先輩にあたる他の班からも、班を結成した時には既に一目置かれていたシカク班。そして、異例の速さで中忍に昇格したことにより、班自体の結成期間はとても短い。自分の元から卒業してすぐに舞い込んでくる教え子たちの活躍。自分の教え子に厳しい目で見たとしても、とても優秀な忍だった。それは喜ばしいと同時に、どこか寂しかったのかもしれない。

 

 

「それでもまだ、頼ってくれんのか」

 

それはとても誇らしく、そして彼自身を奮い立たせた。

 

───────────────────────

 

 

「はぁ、はぁ、……くそっ!!」

 

アオイ自身のチャクラが切れそうだったため、シスイと弥白は連携して体術でアオイに相対してた。しかし、乗っ取られる形とはいえ三尾の力で動いているアオイに対抗するためには、体術だけでは限界が見えていた。

 

「……、今って、アオイは三尾に操られているんだよな??」

『そうだな』

「でもアオイの中で納まってるってことは、三尾(あいつ)は今、自立できないってことなのか?」

『!』

「確かにシスイの言う通りだね、尾獣は人の手に縛られることを嫌うはず……、しかも今は、アオイによっては縛られていない」

「敵さんがどんな術を使ったかはわからんが、今の尾獣はアオイありきなのかもな」

 

ミナトとシカクの助言により、シスイは確信を持ったのかクナイを取出して構えた。

 

「アオイの存在が大切ってことは、アオイに攻撃してもアオイの中のやつが応戦してくるってことだよな! なら、多少は本気でいっても大丈夫じゃないか?」

「……そうだな」

 

この時、シスイには言わなかったが、三人は同じことを考えていた。

例えシスイの想像が間違っていても、それは本能的なものによって何かしらの対処がされるということ。どんなに相手が強いとしても、多少なりとも人は抵抗する。シスイは本気でいくと言ったが、それでも百パーセント後からではない。操られていたとしても、本能的にアオイなら充分に防ぐことのできる、三尾の力があるならばより簡単な威力のものだった。

 

「”火遁・鳳仙火(ほうせんか)の術”!!」

 

判明している水属性の相手には、効果の低い火遁の術。全ては万が一のため、細心の注意を払った結果のはずだった。

 

 

 

 

 

 

──それを待ってたんだよ

 

「「「『!?』」」」

 

その場にいた全員の聞こえた声。しかしそれは耳から聞こえてきたというよりは、頭の中に直接語りかけられているような感覚。

 

 

 

「アオイ!? よけろっ!!」

 

そしてその不思議な声が聞こえると、さっきまで見境なく攻撃していたアオイが、一切の動きを止めた。

起こってほしくない、しかしあまりにも可能性の低い事が、目の前で起きてしまっていた。

 

───それは本能レベルでの支配

 

 

 

「アオイ!!」

 

────ドガーーーーンッッ!!

 

 

 

アオイに向かってまっすぐとんで行った火の玉は、大きな爆発音とともに白煙を上げた。

敵が潜んでいるかもしれなかったが、その白煙の中にシスイはとびこんだ。

 

 

「アオイ……っ、!!」

 

近づいたシスイが見たものは、倒れたアオイでもケガを負っているアオイでもなかった。

 

 

同じ場所に立ったままの、何の衝撃も受けていないそのままの姿だった。

違うことは……、

 

 

 

「”晶遁・紅の果実(くれないのかじつ)”」

 

その周囲を、桃色の結晶で守られており、その上に人影があることだけだった。

 

 

「ハルト!!!」

「間に合った……」

 

シスイの方は見ずに、誰もいない一点をただ見つめていた。

 

 

 

 

──────さぁ、君に止められるかな

 

 

 



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封印

お待たせしました。おまたせしすぎて申し訳ありません。
あけましておめでとうございます。去年までに終わらせたかったのに、終わらせられなかったダメな作者ですm(*_ _)m

このお話で、この章は終了です!
やっと新章に入ります!! あぁ、長かった。次も頑張る。


 

―――ピキッ

 

「!」

「……マジか」

 

―――ドカーンッッ!!

 

ハルトは自らが張った結界の上に立っていたのだが、内側から破壊されそうなのを見て離れた。次の瞬間には破壊され、周囲はものすごい爆風に襲われた。

 

 

結界とは外からの攻撃に対するものであり、内側からの攻撃には多少もろくなる部分もある。しかしそれも見越して、中で複数回の爆発を起こす互乗起爆札を発動しても壊れることのない“晶遁・紅の果実”を選んでいたのだが、尾獣の力の前ではあまり意味をなさなかった。

 

「なぁ、ハルト。 アオイに封印されてるのは、マジで尾獣なんだよな?」

「そうだよ、残念だけど間違いなくね。 疑いたくなる気持ちはわかるけど、それを感じ始めたら敵の思うつぼだよ」

 

アオイには三尾が封印されている。それはハルトが原作を知っているからだけではなく、弥白もそのチャクラに反応しているのだから間違いないことだ。それでもシスイが疑ってしまうのは、今のアオイの姿にある。

普通、もはや意識のないレベルで尾獣に乗っ取られているのであれば、すでにその人柱力は人の形をしていない。尾獣の影のように、赤黒いチャクラが人柱力を覆う。それは憎しみの塊であり、人柱力自身を傷つける。

しかし今のアオイの姿は、人柱力となる前の姿となんら変わりなく、アオイ自身が傷ついている様子もない。仲間の姿で襲ってくるのを止めることなど、そう長い時間続けられるものではない。

そしてそれこそが、敵の思惑。一瞬の油断もあってはならない。

 

 

「さて、お前の考えを教えてもらおうか」

「……俺の考えというよりも、後はシカク先生の判断次第です」

「……?」

 

ハルトがこの場にやって来てから、ようやく全員が合流することが出来た。アオイは、操られているのか見定めているのかは分からないけど、俺たちから距離をとってこちらを見ていた。

 

「尾獣が封印された時点で人柱力になったアオイから、三尾を引き抜くというのはその人の死を意味します。

 

なので、尾獣をこのまま彼女の中に封印します」

「「!?」」

 

ミナトは予め聞いていたから驚いていなかったが、初めて聞いたシスイとシカクは驚いた。

 

「そんなこと出来んのか」

「皆さんの力を借りることになりますが、術的には問題ありません。 それよりも……」

「【里】としての心配か」

「はい」

 

尾獣。それは一個体としては忍界では最強を誇り、その里の力でありながらも忍界のパワーバランスである存在。尾獣を持つ里と持たない里ではその立場には上下が出来、尾獣を持つ里の隣国への影響はとても大きい。

 

「木の葉は既に尾獣を持っています。 同じ里で複数持つというのは、事例がなくしかも木の葉は大国の一つです。

隣国の小国だけでなく、他の四つの大国を挑発する形になってしまう場合も考えられない訳ではありません」

 

しがらみが増える。その判断を、子どもであるハルトがくだせるわけが無い。それは誰もが理解していること。

 

 

 

「(……子どもがそこまで考えるか、普通)」

 

それでもシカクは驚きを隠すことが出来なかった。若干七歳の子どもが、尾獣の存在だけでなく、それによる影響、しかも【国】という単位で配慮する。それに対する判断を、下す力を持つ可能性のある大人に冷静に話す。仲間が敵に囚われているという今の状況で、それを実践できるというのは考えられることではなかった。

 

「……俺に話すってことは、ミナトは許可したってことだな?」

「はい」

「なら、俺も同意だ。 隊長はミナトであり、尾獣のことに関する判断は俺よりもミナトの方が的確だろう」

「ありがとうございます」

 

しかし、そんな年齢離れした提案をしてくるハルトに対して、怯んだりなどはしない。彼は自分の教え子であり、助けようとしているのも自分の教え子だ。シカクにはそれを拒否する理由も、ハルトの出来るという言葉を疑う要素も何も無かった。

 

 

「アオイに封印されている尾獣の主な性質は、おそらく水です。 優劣だけでいえば、土属性が一番いいですが、このメンバーでなら正攻法では無い方がいいですね」

『属性では攻めぬということか?』

 

ハルトが何をしようとしているかを、理解している弥白が問いかける。

この術を作っているのを見ていた時から弥白は気づいていたことだが、チャクラの属性が鍵になること、そしてある性質だけを強くすることが出来ることを考えれば、本来属性など付与されない封印術にも性質が存在することになる。それは多少のチャクラの差ならば、優劣次第で勝ることも出来るということだった。……逆も然りだが。

他の封印術にはない、その特徴をハルトは使わないと言っているのだ。

 

「難しいかもしれないけど、チャクラ量で抑え込みます」

「尾獣相手にか!?」

「普通に考えればありえないかもしれませんが、今回は状況が違います。

 

尾獣をアオイの中に抑えておくために、敵によってそのチャクラ量も制限されているはずです。 アオイの中に抑えておけるレベルの尾獣であれば、弥白を含めた五人のチャクラ量で抑えつけられます」

『メインは風のチャクラでいくのか?』

「そうだね、俺と父さんとシカク先生がメイン。 シスイと弥白は火の性質で頼むよ。 尾獣のチャクラを抑え込めないなら、アオイ自身のチャクラ性質を抑え込むまで。 アオイの中にある風と火のチャクラ性質を攻撃する」

 

 

普段の任務中であれば、ミナトのことを『父さん』と呼んだりはしない。冷静を装っているようで、ハルトも内心焦っているのだ。今目の前で起きていることは、ハルトの知っている事実の中にはないものだ。一番類似している事実を取ってしまえば、その結末はアオイの死。ハルトが追い詰められるのも無理はなかった。

 

「っし! さっさとやろうぜ!! アオイがあのままなんて我慢ならねぇ!!」

「……そうだな」

 

それは本能レベルの信頼と、無意識の絆。シスイのハルトへの全面の信頼が無意識にその言葉を発させた。焦るハルトの心を落ち着かせる、仲間からの信頼というのは今のハルトにとっては最も良いものだった。

 

「隙を見て、皆さんを定位置にとばします。 全員で全力でチャクラを流してください」

「「「了解!!」」」

 

 

見計らったようにアオイからの攻撃が再び始まり、全員が散り散りになる。

 

「そうだ、ハルト!!」

「!? ……びっくりした」

 

なったかと思いきや、すぐにシスイはハルトのもとへ戻ってきた。

 

「弥白には言ったみたいだけどよ、俺にも言ってくれよ!!」

「は?」

「……、

 

 

誓ったんだろ???」

「!」

 

笑いながらハルトを見てそう言うシスイの真意を、ハルトは察した。

シスイにとって、どちらも大切な仲間。どちらにも、変に重荷を背負って欲しくない。その想いの一心だった。

 

 

 

 

「何があっても守る、アオイちゃんと約束したことだから。

 

これから先、何があっても。 ずっと」

「その言葉、忘れんなよ!!!

 

“火遁・豪火滅却(ごうかめっきゃく)”!!」

「“風遁・風の刃”」

 

ほぼ全快の三尾を封印することは厳しい。悪あがきと思われようと、多少なりともダメージを与えることが狙いだった。そのためには、自分のチャクラの消耗量が激しくても強力な術で攻撃するしかなかった。

 

「半端な攻撃だと、アオイちゃんが防ぐことを止められるかもしれない。 そうすれば、尾獣のチャクラは減らないのにアオイちゃんだけが傷を負っていくことになる」

「尾獣にもダメージを与えられるような術じゃないと、尾獣がチャクラを使わないってことか!」

「そういうこと」

 

ハルトとシスイの強力な攻撃は、属性の相性によりさらに強大になり、相殺しようとしたアオイの攻撃によって、あたりは濃い水蒸気でおおわれた。

 

 

「若いヤツらにばっかり仕事はさせられぇな」

「そうですね」

「一瞬だからな、見逃すなよっ

 

“影真似手裏剣の術”!」

 

シカクのチャクラが仕込まれた手裏剣が、アオイの影を捕える。ただ、尾獣のチャクラによってその量が何倍にもなっているアオイの動きを止めておくことは容易ではない。一瞬ではなくとも、それに近い状態だった。

 

ただその一瞬で、敵との距離をゼロにすることが出来る忍がこの場にはいた。

 

 

「“螺旋丸”っ!!!!」

 

ハルトとシスイの連携術とミナトの最強術が重なり、アオイがこの戦いで一番弱った状況を作り出した。

 

「今っ!!!」

 

そうハルトが叫んだ時には、ハルトの分身が三人の体に触れていた。

 

 

「『“性質結界封印術・風”』」

 

弥白とハルトの声とともにアオイの周囲に大きな円が、五人が立つ位置を小さく囲うように術式が展開し、エメラルド色に光った。その光を伝うように五人が指示されたチャクラを流すことで、さらに違う色がその結界をおおった。

 

半球になって発動したその結界の、中心にいるアオイ向かってオリジナルのハルトが歩いた。

 

「ごめん、アオイちゃん」

 

誰にも聞こえない小さな声でハルトは呟く、と同時にアオイの体に触れた。

 

 

「“性質結界封印術・風火水”」

 

その声に反応するように、大きく広がっていた結界はアオイの体に小さく収縮した。

 

 

 

 

 

 

この時、ハルトに予想出来ていなかったことが二つあった。

 

一つはここまでの過程で、敵が全く手を出してきていないということ。

 

もう一つは、ハルト自身のチャクラと体力が、とっくに限界を迎えていたということ。

真っ白な水蒸気におおわれた中で、ミナトがアオイのそばにタイミングよくとべたのは、実はミナトの力だけではない。

外から、シスイの写輪眼をコピーした自身の鏡眼でアオイのチャクラを見つけ、タイミングよく術式が組み込まれているクナイを投げたのだ。そして、封印術では、風と火の性質のチャクラが相乗効果を起こせるように、双方のチャクラ量を調節しながら、それらを消さないように水の性質のチャクラを流す。

 

とにかく、ここまでのハルトの行動はチャクラ量が尋常でないことももちろんだが、全てのことが針の穴に糸を通すような行為ばかりだったのだ。

集中力がきれることは無くとも、乱れるは仕方の無いことだった。

 

そして敵は、その僅かな乱れを見逃すような忍ではなかった。

 

 

 

 

―――ザシュッッ!!!!

 

それは何度聞こうと聞きなれることの出来ない音。人を貫いた音。

 

 

「……ハル、ト……くん……??」

 

アオイの意識が浮き上がり、その目を開き、最初に見た光景は、自分の仲間が自分に寄りかかって倒れているもの。その脇を掴んで起こそうとしても、全く動くことがない。

無理やり自分の真下を見て、ハルトが動かない理由を探ろうとした。

 

 

「何……? これ……」

 

ハルトの腹を貫通する、どす黒い何か。しかし、アオイが驚いたのはその未知なる物体にでは無い。

 

「……わたし、が……?」

 

ハルトを貫通しているその何かが、自分から繋がっていることにだった。

 

 

 

「あ……っ、いや……っ!」

 

直接触れているからこそ伝わる、ハルトの命が弱くなる気配。

 

しっかりと感じたハルトの死、そして、自分が殺したという感覚。

 

 

 

 

 

 

「俺は……。 君にどんなに恨まれようとっ、俺は君に生きて欲しい。

君がどんなに嫌がっても、……俺が君を、守りたいか、ら」

 

名前に由来するように、鏡のような瞳に自分が映るのが見える。死んでしまったと思った大切な仲間が、顔を上げたことの喜びと、その目に映った自分の姿の恐怖。しかし、次の瞬間にはハルトの鏡のような瞳は赤く染っていた。

 

 

 

 

「“鏡眼・万華鏡写輪眼”」

 

その言葉をつぶやくと、ハルトの体は完全にアオイにもたれ、ギリギリを保っていた意識を完全に手放した。




あーあ、とられちゃった。

まぁ、いっか。 これからも俺と遊んでよな、……波風ハルト



「……遊ぶ気は無い。 お前に遊ばせる気も……無い」


それが俺の最後の記憶だった。

聞こえてきた声の持ち主の姿ははっきり見えなかったが、ある部分だけはしっかりと見えた。

「……なんだ、その瞳」

気味悪くニヤリと笑ったような気がした。


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第七章~誕生
第三次忍界大戦の終結



新章に入りました!!今回のお話は、全く触れてませんが……

やっと本編に近づいてきました!!作者、頑張ります!


 

『ごめん、アオイちゃん』

 

 

謝罪は、君を守れなかったことに対してではない。

君の意志を全く無視してしまうことに対して。

 

優しい君は、どんなにその方法を話しても絶対にやろうとしない。その力を手にするくらいなら、死ぬまでいらないと言うだろう。

賢い君は、自らがここで命を断てば全てが解決するということをすぐに理解するだろう。

 

 

 

 

―――俺は君のその優しさと賢さを利用した。

 

優しい君は、その状況を見れば【自分が殺した】と意識するだろう。

賢い君は、その状況を見て自害しようとするだろう。

 

その意識を利用し、その意志を止めるという理由を使い。

 

 

君に嫌われても、拒絶されても、

 

 

 

 

 

 

―――失うことだけは嫌だった。

 

 

───────────────────────

 

 

―――ピッ、ピッ、ピッ……

 

ガラス越しの部屋から聞こえるのは、無機質な機械音。命の音を聞いてるみたいで苦手なこの場所に、毎日通っている。

 

 

「……早く、起きろよ」

 

そこで寝ているのが、仲間じゃなければどれほど良かったか。どちらか一人だけでも、俺のそばにいてくれればどれほど心強かったか。

 

 

第三次忍界大戦の戦場の中で、最も大きな被害をもたらした【神無毘橋門(かんなびきょうもん)の戦い】。この戦闘が実質最後の戦いとなり、全滅させた木の葉の事実上の勝利と歴史には刻まれることになった。

 

生き残った俺たちの班の隊長であるミナトさんは、すぐに木の葉の上層部の元へ行った。シカク先生も。

ミナトさんの班であるオビトたちも木の葉の救護部隊に助けられていた。

二人とも心配だろうけど、俺たちに負担がかからないように率先して話している。きっと話せないこともあって、そこに俺がいたら上手く話を合わせられないから、ということだと思う。

 

 

 

『難しいことを考えるでない』

「俺、お前がいなかったらダメだったかも」

『主にはお見通しということだ』

 

不思議なことに、ハルトが倒れても弥白は消えなかった。口寄せである以上、ハルトが死んでしまえば消えるらしいが、そうでない限りは存在を保てるらしい。

それ以上の仕組みは教えてくれなかった。というより、弥白にも分からないらしい。

 

 

『主は誓ったのだ、必ず生きると』

「そうなんだ」

『……? 何を言っておる、お主に誓っただろ』

「?」

 

『『何があっても守る、アオイちゃんと約束したことだから。

 

これから先、何があっても。 ずっと』

 

お主が主に言わせたのだろ?

あの言葉で主は誓ったはずだ。 必ず生きなければならない、と』

「俺との約束……?」

 

未だにその言葉を信じられていないと思われたのか、弥白はさらに話してくれた。

 

『……主は死ぬ気だった』

「!?」

『死ぬ気だったと言うと語弊があるかもしれぬが、命に変えてもアオイのことを止めようとしていたのは間違いない。 それは主にとって大切な存在だからだ。

 

しかし、それをやめた。 お主に誓ってしまったから。 必ず生きて守る、と。

 

そろそろ自覚しろ。 お主は主にとって、言葉一つでその意志を変えられるほどの存在なのだ』

「……っ!!」

 

 

それは……ずっと言って欲しかった言葉。

自分とは比べ物にならないほどの才能と頭脳を持ち、出会ってからずっと追いかけてきた。その横に立てる日が来ることを願っていた。

中忍になり、少しはその横に立てたかもしれないと思ったけど、今回の戦いでその自信はなくなった。むしろ、背中がさらに遠くなった気がした。

自分の言葉など届かない、走り続けなければいつか置いていかれるかもしれない。次第に焦るようになった自分がいた。

 

 

『置いていくことなどない。 お主らはお互いがお互いにそう思っているだけだ』

 

弥白が呆れたようにため息をついていたけど、俺は構わず弥白に抱きついた。

 

───────────────────────

 

 

……、

 

「……、」

 

久しぶりに来たその場所。相変わらずふわふわとしていたけど、あの時のような心地の良い感覚はなかった。それは、それほどまでに俺がおいつめられていたか、それとも意識が大人になったからなのかはわからないけど。

 

 

『!』

「弥白、久しぶり……なのかな?」

 

長い時間眠っていたという自覚はある。アオイちゃんとはいえ、尾獣に攻撃された、しかも完全に命を狙った攻撃を。

 

「俺、どのくらい寝てた?」

『まもなく一年になるところだ』

「……一年!?」

 

まさか、それほどだったとは。

 

 

「俺が目覚める前に、弥白から聞きたいことが色々あるんだけど」

『我が説明できる限りであれば、構わぬ』

 

それほどの時間が過ぎたということは、俺が干渉出来なかった出来事があるかもしれない。正直、第三次忍界大戦が終わったあとの大きな出来事というのは、あまり思いつかなかった。

 

 

「大戦はどうなったの?」

『終戦した、実質木の葉の勝利ということでだ。 主が参戦していたあの戦いが、敵の戦意を喪失させたらしい』

「まぁ、一瞬で味方がやられるのを見たら……、するよね」

『【神無毘橋門の戦い】の勝利の貢献ということで、火影がミナト班とシカク班を称えたいと言っていたが、まだ何かをしているという訳では無い』

 

俺も含めて、眠っている人がいる中、賞賛を贈るということはしないだろう。だが、俺の意識はそこよりももっと別のところにあった。

 

「……神無毘橋門の戦い?」

『あの戦いがあった場所が、神無毘橋よりも木の葉側の場所だったということだ。 ……何か違和感があるのか?』

「違和感というか、俺が知ってる名前とは違ったから……」

『戦にはその土地の名称がつく。 今の時代しか知らぬ我からすれば、適当な名であると思うが』

「そっか……」

 

異端の俺が参加したにも関わらず、神無毘橋の近くでことが起こったのは奇跡だったのか……、それとも第三者によって作為的に……。

 

 

 

「アオイちゃんは……?」

 

正直、これが一番聞きたいことだった。考えてやった事とはいえ、最後は意識を失った。弥白の様子から、上手くはいったと思うけど、それでも万全かどうかはわからなかった。

 

『命に別状はない、既に目も覚ましている。 アオイが言うには、尾獣の状態も落ち着いているらしい』

「! 何も無く……ってこと?」

『主が封印を施したあと、ミナトもその上から違う封印を施したのだ。 尾獣のチャクラごと封印するのではなく、少しずつアオイに還元できるような術式だ』

「……あぁ、五行封印?」

『!? その通りだ』

 

俺がアオイちゃんに施した封印術は、三つのチャクラ属性をそのまま三つの鍵にした封印術。奇数の封印術には、奇数の封印術をかけなければ逆効果になってしまう。……さすが父さん。

 

 

 

『起きぬのか、主』

「……起きるよ。 それが俺の責任の取り方だから」

『……、』

 

精神世界とはいえ、ここまで俺と会話出来ているなら、もう既に目覚めれるまでに回復しているということくらい、弥白にでも分かるだろう。

それでも、俺は起きていない。無意識に起きることを恐れているのか。

 

 

『待っているぞ、みなが』

「……、」

『ミナトも、クシナも、シスイもシカクも。 カカシやオビト、リンも。

主が助けた全員が主を待っている。

 

 

……アオイもその一人だ』

 

そう言うと、弥白は俺の肩に乗っかった。そこから、弥白が見ていた風景が見えてきた。

 

 

「……君だったんだね、」

『……?』

「……、行くよ。 もう迷わない」

 

ある日から、右手に感じ始めた温もり。それも途切れることなくずっと感じていた。

何度か意識が遠のきそうになっても、その温かさをたどっていけば意識がはっきりするのを感じた。

 

 

 

―――君が待っててくれたなら、俺はもう逃げない。

 

 

 





「弥白」
『?』
「俺が気を失っていた間も、口寄せされてたんだね」
『!? 主がやったことでは無いのか』
「んー、シスイの側にいて欲しいなぁとは思ったけど。 まさかほんとにできるとは思ってなかった。

術者から独立してきてるのかな……、そんなことある?」
『ないな』
「だよねぇ……、」


まぁ、弥白がいつでもいてくれるなら嬉しいしいいかな。

『!』

久しぶりすぎて、考えていることが弥白には筒抜けだということをすっかり忘れていたハルトの声を聞いて、ゆるりと柔らかなしっぽを揺らした弥白だった。


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心配という絆の形、託すという信頼の形

「……」

 

 

広い草原でアオイは精神を研ぎ澄ましていた。無に気持ちを落とすことで、自身の精神世界の深いところまで入り込む。そして、アオイがそれをやるには理由があった。

 

 

『……、またお前か』

「何度でも来るから覚悟しておいてよね」

 

アオイの眼前には、ハルトとミナトによって封印された三尾が青い檻のようなもので区切られた空間にいた。

 

 

『お前のチャクラ量では、尾獣を扱うことなんて一生かかってもできぬ。 大人しくしているから、ここに来るのはあきらめろ』

 

三尾は尾獣の中でも比較的おとなしく、また人間に対して理解しようとする尾獣であった。それこそ、アオイの中に強制的に移されてからその後、知らぬ間に封印されていたことには腹も立ったが、アオイの前に三尾の人中力でありアオイの体内に強制的に移したやつよりかは、アオイの中は落ち着いており、施されている封印は優しいものだった。

三尾はここを気に入っていた、だからこそ忠告する。アオイが自分を手中に収めようとすれば、自分を抑えられぬ限りはその結末は暴走であり、自滅である。

 

アオイのことを認めていないわけではないが、尾獣の本能とは難しいものなのである。

 

 

「いつか、あなたに認められるような忍になるから」

『……、何がお前をそこまで動かす?』

 

初めて自分に会いに来た時から、アオイには恐怖というものが見えなかった。それは、三尾にとっては初めてのことだった。その第一印象があったからこそ、三尾はこの場所をそこまで嫌わずに済んでいるというのもある。しかし、次第になぜその目に恐怖が映らなかったのか、疑問に思うようになっていったのだ。

 

 

「あなたは、自分に施されいるその封印術は嫌い?」

『封印術を好む生き物などいない。 しかし、縛り付けるだけではない封印術であれば、感じ方も変わってくるというものだ。

私に施されている封印術は、私自身を否定してくるものではない。 それは私たち尾獣にとって、力を否定されていないことと同じであり、信頼されていると感じることもできる。

その点でいえば、私はこの封印術は嫌いではない』

 

そう自分の気持ちを素直に伝えると、アオイは少し微笑んだ。

 

「その信頼に応えたいんです。

まるで、君にならあなたのような大きな力を上手に使えるようになる。 私利私欲のためではなく、正しいことに使ってくれると信じていると言われているようで。

大切な人が目を覚ました時に、その選択肢は間違いではなかったと思ってもらいたいんです」

 

 

その瞳は、三尾が今までに向けられたことのない強く、真っ直ぐな瞳だった。

 

『なるほど、ではお前は私の力を自分のもののように使えるようになりたいということだな』

「んー、傲慢に言えばそういうことかもしれません」

 

アオイは少し首を傾げた後、閃いたように言った。

 

「自分のものにしたいというよりは、あなたの力を上手く借りられるようになりたい、というほうが正しいでしょうか。

尾獣という大きな力が、なんの発展もない忍に縛られているのはあなたにとっても不本意でしょうから、あなたの意志に負けないような忍になります」

 

そこに宿るは、決意の強い意志。

その決意に折れたのか、三尾は話し始めた。

 

『……私のチャクラを扱えるようになりたいなら、戦闘で屈させるしかない。 私も協力できないことは無いが、尾獣の本能で身体は動く』

「! ……ありがとうございます」

『?』

 

お礼を言われた理由が、いまいち分かっていない三尾の檻の前まで歩く。すると、アオイの足下野水が渦になって、アオイを封印式のあるところまで押し上げる。

初めてこの場所に来た時に、アオイが持っていた気持ちはハルトの期待に応えたいというものだけだった。しかし、毎日訪れるうちに三尾の見えづらい優しさに気づいた。その身に宿すまでは、恐ろしく強大という認識しか無かったはずのその力は、アオイの中で大切な存在となっていった。そして、自分が上手く扱えるようになれば、忍界とまではいかなくても木の葉の里だけでも、尾獣への意識を帰られるのではないかと考えるようになった。

 

それは、アオイの中でハルト以外への気持ちが生まれた瞬間だった。

 

 

───────────────────────

 

「「「「「!?」」」」」

 

その突然のチャクラに、ほとんどの木の葉の忍が反応した。

 

 

「……アオイ!?」

 

しかし、あまりにも大きすぎるそのチャクラの中から、その持ち主を探り出すことは難しく、また彼女の存在を知らない忍であれば、突然強大な力が襲ってきたように感じられた。

 

「シスイ! 何があったんだ!?」

「わかんないっす……。 でも、何かあったらここに来て欲しいってアオイから言われてた場所からです、このチャクラは……」

「行くぞ……っ!」

「はい!」

 

シカクとシスイが、そのチャクラを感じる点を辿って近づく度に、その強さは圧となって二人に襲いかかる。

 

「あそこにいんのは、ほんとにアオイなのか……?」

「何がどうなってんだよっ!?」

 

激しい風が吹き荒れる。しかし、その中心のアオイ自身が激しい動きをしている訳では無い。その内に秘めるチャクラだけが、アオイの内におさまらず外側の空気を震わせる。

唯一救いと思える点は、アオイのいる場所が広大な草原であり、近くに人がたくさん住んでいるような場所かないという点だ。

 

 

「アオイっ!! しっかりしろ!!!」

 

暴風によってアオイに接近できないため、遠くから叫ぶことしか出来ない。

シスイらには、アオイがこうなっている理由が何となく分かっていた。というのも、アオイが目覚めて十分に回復した頃、シスイはアオイから尾獣のチャクラを扱う練習をするということを聞いていた。もちろん危険があることも理解しており、火影や同じ任務についたミナトにも知らせていることだった。

ミナトによる封印術が組み込まれていること、そして既に木の葉にいる九尾の人柱力であるクシナを支えていることもあって、何かあった時にはミナトや火影による対処が行われていたが、今回のアオイのチャクラの膨張は過去に見た事のないものだった。それは……

 

 

 

『……しっかり意思を持て、呑まれるのではないぞ』

 

決して、アオイが尾獣に負けてしまったからではない。むしろ、今まで以上にアオイへの協力する姿勢を見せたことによって、今まで触れたことの無い所まで三尾からの尾獣チャクラがアオイに流れ込んでいたのだ。

 

三尾の眼下には封印を解かれたことによって、流れ込んだ三尾のチャクラ量を必死に身体に馴染ませようとしているアオイの姿だった。

三尾の戦闘本能は、アオイが解除していない封印・ハルトが仕込んだ封印術によって抑えられていた。

 

 

この修行において、間違ったことは何も行われていない。アオイは周囲への被害や自分の力量を考えて場所や封印を解く範囲を決めていたし、周りの人への認知も行っていた。三尾のチャクラ量も、なるべく多すぎない量を供給する努力をしていた。

 

それでも、力量を正確に図ることは出来ない。それも、未知の点が多すぎる尾獣の力。こうなることの可能性をゼロにすることなど不可能だった。

今、アオイ自身が行動で暴走していないのは、尾獣のアオイへの協力意識があったからだった。

 

「周辺の被害状況は」

「! ……地理的要因により、人的被害は今のところ報告はありません」

「なるほど。 周辺への警戒を弱めるでないぞ!」

「「「「はっ!!!」」」」

 

「俺の封印術が、全く効力がなくなったわけじゃない。 ただ、抑えるにはもう一度かけ直す必要がありそうだね」

「ただ、あそこに近づければの話だな」

 

現場に到着した火影・ヒルゼンの指示により火影直属の暗部組織が動く。そして、この現状を理解出来るミナトも集まった。

ただ、すぐに何かができる訳では無い。それほど、尾獣というのは未知の力だった。

 

 

 

 

アオイを見ながら戸惑うシスイの横を、小さく風が吹き抜けた。

 

「みなさん、構えてください」

「「「「!?」」」」

「『性質結界封印術・雷』」

 

アオイのチャクラがさらに膨張したと同じタイミングで、その周囲が紫色の膜で囲まれた。今まで地上の全方位に吹き荒れていた暴風が、開いた上空に集中して吹き抜けた。それは直接的ではなくても一点集中になったその爆風は、その勧告がなければ吹き飛ばされてしまう勢いだった。

 

 

そして、その声にいち早く反応したのは……もちろんシスイだった。

 

「……ハル、ト?」

「……おはよう。

 

ひさしぶりだね、シスイ」

 

 

 

近づけなかったアオイの周囲の一番近い場所から、結界を張ったハルトが振り返って小さく笑った。



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