魔法少女リリカルなのはFechter (草ナギ)
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1振り 全てはこの出会いから始まったの!

いっけね!やっちゃったんだぜ☆
……いや、真面目にすみません。
自分が読みたくて書きました。後悔はないです。
伊達組しか出ないのは純粋に私の好みと、あまり刀剣男子を出し過ぎると混乱してしまうという理由もあります。
因みに題名の「Fechter(フェヒター)」はドイツ語で剣士と読みます。
どうかメンタルがオブラート位の私なので優しく見守って下さると嬉しいです。
よろしくお願いします!


ある夕暮れ時、そろそろ夜になるといった時間に公園にて一人の少女が居た。

恐らく見た目から3,4歳の年頃だろう。

茶髪の髪をツインテールにした藍色の瞳をした少女。

だが、通常ならもう帰る時間を過ぎているというのに、その少女は帰るそぶりを見せない。

そう、公園にはすでに他の子供達や、保護者達は帰っており少女以外誰もいない。そして、様子がおかしいと思ったらその少女は泣いていた。

ブランコに座り、たった一人で広い公園で泣いていた。

ここに居れば自分の保護者が迎えに来てくれると信じているのだ。

だが一向に誰も迎えに来ない。

それが少女を孤独にさせていた。

だが、

 

「にゃぁー」

 

「……え?」

 

少女の後ろから猫の声がした。

しかも近い。

少女は声が気になり、振り返る。

そこには

 

「ねこさん…」

 

案の定猫が居た。

ただし、まだ大人になりきっていないが子猫というには成長しているだろう。

中途半端な成長をした黒猫だった。

猫は少女に近寄り、足にすり寄ってきた。

頭を撫でれば手を舐めてくる。

首輪をしてるところから飼い猫だろう。毛並みがサラサラで綺麗だ。

猫にしては珍しく人懐っこい猫である。

 

「わぁ……、ねこさん、まいごなの?それとも、もしかしてなぐさめてくれてるの?」

 

そう少女が言うと

 

「にゃぁー」

 

と、一鳴きした。

猫は少女の足に尻尾を絡ませ手をチロチロ舐める。

 

「ふふっ、くすぐったぁい」

 

少女は猫に夢中になり泣いていた事も忘れて笑っていた。

その時

 

「ミツ」

 

少女の目の前、1人の少年がいつの間にか正面に立っていた。

少年は少女と同じ年頃だろう。

褐色肌で濃い焦げ茶の髪にやや釣り目がちな金の瞳をしている。

 

「あ……、このねこさん、あなたのねこさん?」

 

少年はコクリと頷く。

 

「あ、ごめんなさい。でも、ねこさんはなのはにかまってくれてただけなの。おこらないであげて…」

 

少女は猫を抱き上げ、少年に渡そうとする。

だが、少年は受け取らなかった。

 

「ミツが……」

 

「え?」

 

「…ミツが人に懐くのは珍しい。少し、構ってやってくれないか?」

 

「え?いいの?」

 

そう少年がいうと少女は嬉しそうに聞き返してきた。

 

「ああ」

 

少年から猫を構う事を許され、少女はブランコに座り直し嬉し気に猫を構いだした。

 

「あなた、”ミツ”っていうのね。ふふふっ、かわいい」

 

「猫はあまり構い過ぎると逃げるから気を付けろ」

 

「え、でもミツちゃん「ミツはオスだ」ミツくんはこんなにひとなつっこいよ?」

 

「だから、”珍しい”と言った」

 

少女はその言葉を聞くと抱えている猫のとって特別になったみたいで嬉しくなった。

しばらく猫と遊んでいた少女は少年に言う。

 

「……えっと、き、きかないの?」

 

「?」

 

「こんなじかんまでなにしてたーって」

 

「聞いてほしいのか?」

 

「え……、ううん。でも、きにならないのかなって」

 

少女は猫の背を撫でながら気持ちを落ち着かせていた。

 

「慣れ合うつもりはない」

 

そんな言葉が少年から聞こえてきて

 

「そ、そうだよね……ごめ「だが」…?」

 

「”つもり”がないだけで、慣れ合わないとも言ってない」

 

それを聞いた少女は驚いた顔をして少年を見た。

少年は外方を向いている。

 

「……ぷっ、ふふふっ、あははは」

 

少女は笑い出す。

少年の言った言葉がおかしかったから。

 

「それって、とってもおかしいの!」

 

「……ふん。何とでも言え」

 

「わわ、おこらせちゃった?ごめんなさい!」

 

「……良い、気にするな」

 

「あ……、う、うん」

 

少年が優しく言うと少女の顔が赤くなる。

微笑んでくれた訳ではないのに声だけが優しかった。

それだけでも少女は嬉しかった。

最近、家庭の事情により家はピリピリしていて余裕がなく少女に構ってくれるハズの家族は少女を見ない。いや、みれないと言っておこう。

だからか、少女はなんとなくこの少年に自分が言いたい事を聞いてほしいと思った。

 

「あの、もしよかったら、おはなしをきいてほしいの……」

 

そう言うと隣のブランコに手でポンポン叩く。

少年は黙って指定してきたブランコに座り少女から見ても少年は話を聞く体勢に入っている。そういうところもとても嬉しいと感じる。

曰く

 

・父親がとある仕事で大怪我し、入院して目が覚めない。

・家は喫茶店を経営していてそれなりの人気店の為、母親と姉は大忙し。

・兄は何処に居てもピリピリしていて怖い。

 

というのだ。少し省略しているが大まかにはこういう状態らしい。

それを聞いた少年は

 

「話はしたのか?」

 

「え?」

 

「その話からしてあんたは家族に構ってほしいと聞こえる。間違っていないか?」

 

「で、でも、なのはは”良い子”でいなきゃいけないの。めいわくかけちゃうのはダメだよ」

 

「迷惑をかけて何が悪いんだ?」

 

「……え?」

 

「はっきり言うが俺達はまだ子供だ。親に迷惑をかけて何が悪い?このまま成長していけばどちらにしろ迷惑……あんたの迷惑とは我が儘の事だろうが、今、この瞬間にも段々と言いたくても言えなくなってくる。ならば、ちゃんと自分の言葉を伝えないと周りは気付かない。だからこそ話せ。あんたにならそれが出来るはずだ。

まぁ、俺が言える事ではないがな。因みにこの言葉は受け売りだ。気にしないも、気にするもあんた次第だ」

 

「おはなし……」

 

少年はじっと少女を見つめる。

少女は少年の言葉を聞いて黙り込む。

 

「……うん、そう、だよね。こわいけどおはなししてみるの。ありがとう!あ、えーと……」

 

「……から」

 

「?」

 

「伽羅廣光(から ひろみつ)だ」

 

「……ひろくん」

 

「廣光」

 

「ひろくん」

 

「廣光」

 

「ひろくん」

 

少年、廣光は”廣光”と呼んでほしいと何度も言うが少女はアダ名で呼びたい様だ。何度も修正したが全然治らないので仕方無しに諦める事にする。

 

「……はぁ、好きに呼べ」

 

「! うん!ひろくん!」

 

「で、お前は?」

 

「?」

 

「名前だ」

 

「あ、そうだね!名前は……なのは!高町なのは(たかまち なのは)です!」

 

こうして元刀の付喪神、現人神の伽羅廣光【大倶利伽羅廣光】と

その【主】となり、将来の魔導師となる高町なのはの出会いであった。

 




本当にやっちまったんだぜ……。
この小説は何日か間が空く書き終わったら投稿していく亀更新になるのか、翌日には書き終わり即投稿の兎更新になるかわかりませんが、出来るだけ早く投稿しようと思います。
あと、なるべく感想を見て私が気付かなかった誤字脱字など、気になった場所があったら直します!それから返信もしたいのですが、もしかしたらまだらに返信するか、全くしないかもしれません。勝手で申し訳ありません。どうか、どうかよろしくお願いします!


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2振り あれから数年が経ったの!


こんなの大倶利伽羅じゃぬぇ!
大倶利伽羅はもっと一匹狼で慣れ合わないんだ!
亜種かな?転生してお爺さん、お婆さんに育てられて少し変わったのかな?
そんな訳あるかー!
大倶利伽羅ー!帰ってこーい!
………すみません、取り乱しました。
とりあえず、次回から本格的に本編が始まるかな?って感じです。
どうか見守っていてください。何卒!何卒、よろしくお願いします!


 

早いモノであの公園の出来事から数年が経ち、小学校3年生になった。

あれからなのはと廣光【大倶利伽羅】はずっと一緒に居る。ただ、いつも一人で行動しようとする廣光を制御できるのがなのはしか居ないので先生方は仕方なく、なのはと廣光を同じクラスにする事が多い。

 

「伽羅~、高町さんに構ってもらわないと一人きりで寂しいなー?」

 

「お前ばっかり高町さんに話しかけてもらってよぉ。ずりぃよな~」

 

なのはは男子だけでなく女子から見ても”美少女”のカテゴリーに入る為、陰では異性にとてもモテている。

その事から廣光は妬まれたり、からかわれたりするが全無視である。

 

「………」

 

「ちぇ、感じわりぃの!」

 

「あっち行こうぜ!」

 

男子に何か言われても全く気にしない廣光。

そんな廣光を遠くから見つめるクラスの女子達。

 

「伽羅君、無視してるけど気にしないのかな?」

 

「ただ単に怖いだけじゃない?」

 

「伽羅君、大人な対応…、素敵……」

 

「カッコイイよねぇ…」

 

そう、廣光も今は人間として生まれ変わったが元は付喪神。

その事からかは分からないが、生まれ変わる前と今も見た目は変わらず、見目もかなり良いので猫の様に気分屋でクールな所がカッコイイと言われている。

そういうところも男子から妬まれているのだが、本人は気にしない。

しかもそれだけではないのだ。

 

「あなたも相変わらずねぇ。」

 

「……バニングスか」

 

「まぁ、全くもって気にしてないみたいだけど。あなた、ちゃんと私達以外で友達居るの?特に男子」

 

「アリサちゃん、いくらなんでも失礼だよ」

 

「すずか、こういうヤツはね、はっきり言わないと分かんないのよ」

 

「慣れ合うつ「”慣れ合うつもりはない”でしょ?あー、はいはい」……」

 

「あ、アリサちゃーん」

 

この2人はアリサ・バニングスと月村すずかという。

この2人とはアリサがすずかのカチューシャをとって苛めていた時に、なのはがアリサを引っ叩いてお説教をし、後に取っ組み合いの喧嘩に発展したが廣光が二人の首根っこを掴み引きはがして終了となったという馴れ初めがある。

結果として親友になった女子3人に+1人(?)。

そう、何が言いたいかというとこの2人もかなりの美少女なのだ。

アリサはツンデレ系金髪美少女。

すずかは和風大人しい系美少女。

ちなみになのはは、元気おちょこちょい系美少女だ。(おっちょこちょいは余計なの!)(え?)

そんな3人から構われているのでは同性の友人はかなり少ない。

そう、一応ぎりぎり友人と呼べる同性は居るのだが、ほとんどが別クラスなのであまり接点がない。

そういった友人は「伽羅も苦労してるな」っと労わってくれるので、ちょっぴり嬉しいなんて思ってない。(笑)

まぁ、とにかくそんな美少女達により、男子からも女子からも遠目から見られるのであった。

ちなみになのはだけその事に気が付いていない。

友人について言うと、アリサは「ちゃんとした友達が厳選出来て良かったでしょ!」っと言い張り、すずかは「ごめんね。伽羅君」と言いつつ構ってくる。

もう、気にしない事にする廣光であった。

 

「廣光、次の授業終わったらお昼でしょ?屋上に集合ね」

 

「……行か「来ないと、なのはに連れてきてもらうからね」……」

 

そう言うとアリサとすずかは去って行った。

ここまで話た通り、何故かなのはに頭が上がらない。

理由は分かっている。

自分は今人間だが付喪神だった頃の力が残っているのか、驚いた事になのはと縁が結ばれており、主従関係になっている。

簡単に言えば審神者(さにわ)と刀剣男子(とうけんだんし)の間柄だろう。

詳しく知りたい場合はググれください。

そうして次の授業も終わり、お昼休みになったので屋上へ向かう。

正直行きたくないが、なのはの為である。

大分ゆっくり歩いてきたので屋上に着くとアリサに

 

「遅い!!あたし達半分も食べ終わっちゃったじゃない!」

 

と言われ、来ただけでも良いではないかと思う廣光。

 

「まぁまぁ、アリサちゃん来てくれただけでも良いじゃない?ね?」

 

「むー、ふん!なのはに感謝しなさいよ!しょうがないから許してあげるわ!」

 

この女、どれだけ上目線なんだとか思った。

とりあえず食事をしないと時間がなくなるという訳でご飯を食べる事にする。

お弁当をカバンから取り出し蓋を開けた。

 

「わ!廣光君、相変わらず美味しそうなお弁当!」

 

すずかが横から覗き込んでくる。

廣光のお弁当箱は2段になっており、上の段には、まっ黄色の焦げ目の少ないだし巻き卵、ホウレン草とベーコンの炒め物、エビの大き目なチリソース、ナスの生姜焼き。

おかずの献立はバラバラだがかなり美味しそうである。

下の段にはご飯の中央に梅干しが乗っており、その周りに軽くフリカケがかけてあった。

 

「そんな凝ったモノを作ってくれるなんて、お婆さんに感謝しないとダメよ?」

 

そうアリサが言っているのは廣光の両親は事故で亡くなり、親戚が居ないので祖父母に預けられて育ったという経緯がある。

その為、アリサは料理が出来るとしたらお婆さんしかいないと思ったのだった。

 

「全部手作りだ」

 

「見りゃわかるわよ」

 

「作ったのは俺だ」

 

「は?」

 

「作ったのは俺だ」

 

「「ええ~!?」」

 

アリサとすずかは思いっきり驚く。

まさか廣光が料理が出来るとは思わなかったのだ。

廣光は無表情で「いただきます」と言うとお弁当を食べ始める。

 

「あ、ひろ君、だし巻き卵とから揚げ交換しよー」

 

「………」

 

無言で隣に居たなのはのお弁当にだし巻き卵を入れる。

なのはも廣光のお弁当にから揚げを入れた。

 

「あ、あなた達ね~。熟年夫婦か!しかも、なのは!その反応は知ってたわね!」

 

「まぁまぁ、アリサちゃん。でも、本当に驚いたよ。廣光君、料理出来たんだ」

 

「爺さん婆さんには、世話になってるからな。家事は一通りできる様になった」

 

「「………」」

 

「えーっと、そういえば皆、作文の宿題どうするか決めた?アリサちゃんとすずかちゃんは決まってそうだね」

 

なのはがちょっと無理矢理ではあるが、話題を変えようと先ほどの授業で出た作文の話題を持ち出した。

 

「え?あー、うん。そうねぇ。うちは、お父さんもお母さんも会社経営だし、沢山勉強して跡を継がなきゃって事だけど」

 

「私は機械系が好きだから、工学系で、専門職がいいなって思ってる」

 

「ひろ君は?」

 

「なのは」

 

「へ?」

 

「その事はあんたが知っていればそれで良い。そこの2人なら他言はしないだろうが……後は知らん」

 

そう言うといつの間にか食べ終わっていたのか廣光はお弁当を片付けてカバンにしまい、屋上から出て行った。

 

「なのはちゃん、なのはちゃん」

 

「にゃ、はにゃ!?」

 

「うんうん、混乱してるね。大丈夫?」

 

「う、うん。大丈夫!」

 

「顔、真っ赤よ?なのは」

 

「にゃ、にゃははー!」

 

あんな事を言われたら流石に照れるというか、恥ずかしい。

 

「「で?」」

 

「で?」

 

「廣光のなりたい将来って何よ?」

 

「なのはちゃんは翠屋の跡を継ぐ感じかなって分かるけど」

 

「……先生以外には内緒だからね?」

 

「「うんうん」」

 

「うちの剣術?の跡を継ぎたいんだって」

 

「剣術?確かになのはの家に道場があったわね」

 

「うん、お父さんからお兄ちゃんとお姉ちゃんも習ってるんだよ。私は運動音痴だから習えないけど」

 

とほほーっと項垂れるなのは。

廣光が何故なのはの家の剣術を習いたいかというと純粋になのはを守りたいからというのもあった。

元刀の付喪神(刀剣男子)として強さも求めてしまうのはこの際、性と言えるだろう。

学校の先生には「今習いに行ってる剣道?道場を継ぎたい。もしくは手伝いたい」としか作文に書く気はない様だ。

実はなのはと初めて出会ったあの日。

家まで送って行った時に出会ったなのはの兄、恭也を見た瞬間、直ぐに剣術を習っている事がわかった。

歩き方、何気ない仕草、洗練された動きを見て廣光は直ぐに頭を下げた。

「自分に剣術を教えてほしい」っと。

その頃まだピり付いていた恭也は最初は断った。

だが、言葉少なに必死に願い続ける廣光に少しの興味を持った恭也は道場へ連れて行く。

ピり付く前の冷静な恭也なら気付いただろう。

廣光もまたその頃は幼いが、元とはいえ”刀剣男子”なのだ。移動している時に廣光の仕草で気付いていたハズだった。

そして軽く痛めつけて再び断ろうとしたのだが、確かに勝った。勝ったのだが大苦戦しての勝利だった。

まさか3歳位の幼子に苦戦するだなんて思わなかった恭也はピり付いた空気が晴れ、冷静に考え直す。

そして、しばらく仮門下生として剣術を習う事になったのであった。

だがしかし、苦戦したのは仕方ないのだ。

彼は生まれ変わったとはいえ刀剣男子として過去を守る為に戦っていた記憶がある上に何故か辛うじてではあるが、どういった戦い方をしていたかという感覚が恭也との戦っている時に思い出せてきていたからだ。

だが、3歳という幼い身の上に腕や足のリーチが短くて違和感が酷過ぎてしまい負けたという訳もある。恭也には内緒だが。

そして、どこかこのままではいけないと思っている自分(廣光)が居る事に気が付いたのだ。

そしてやはり本格的な刀の使い方を今世で改めて身に着けなければと思い、師事をお願いした次第だ。

どうやら正式名称【永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術】という2振りの小太刀を使って戦う剣術流派らしく、今まで刀1振りで(本体で)戦っていたのでこの際慣れるしかない。

努力しようっと誓う廣光であった。

そうしてしばらくしてなのはの父親、士郎が目覚め、元々の素質があるので直ぐに本門下生となった。

だが、士郎は退院した後、剣の道は捨てパティシエ一本で生活することになった。

恐らく家族にこれ以上迷惑を掛けたくないという気持ちからだろう。

決して奥さんの桃子とイチャイチャした新婚夫婦の様な事がしたかったとかではないハズだ。………だよね?

まぁ、とにかく時は学校に戻り、お昼休みが終了した。次の授業の為に教科書、ノートを用意すると、ふと昨日夢で見た内容を思い出していたなのはであった。

 

「(助けてって言ってたよね?誰だったんだろう……)」

 

こうしてなのはの物語が少しづつ動いていくのだった。

 




大倶利伽羅が慣れ合っているのは、なのはが原因なのもありますが、お爺さん、お婆さんの教育もあったと思います。多分。恐らく。


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3振り 白い鳥さんとの再会、フェレットくんとの出会いなの!

ここで白い鳥さんとフェレットくんの登場です。
白い鳥さんは今回出ますが当分出ません(ネタバレ)。
とりあえず、登場させたかったのが本心です。すみません。
ついにフェレットくんも登場して本編の始まりです!
これからもよろしくお願いします!


伽羅廣光【大倶利伽羅】は学校の帰りに図書館に寄って本を借りに来た事を後悔していた。

何故なら……

 

「《お~い!伽羅坊!か~ら~ぼ~うぅ~!こっち向け!ほら、良い子だから!》」

 

小声ではあるが叫んでる事には変わりない。この声には聞き覚えがある。

まさか【ヤツ】まで人間に生まれ変わっていたとは思わなかった。

 

「《……何か用か【鶴丸国永】》」

 

そう、年は同じ位だろう。色白で白髪に金の瞳、まさに廣光とは正反対の容姿をした絶世の美少年だった。

そして彼もまた元刀の付喪神で名を【鶴丸国永】という。

真っ白なパーカーのフードで頭を隠していたが廣光を見つけた瞬間取り払い、コンタクトしようとしてきた。

それはまだ良いのだが、今居る場所は図書館。

例え小声でも叫んではいけない場所だ。

静かにしていないと追い出されるぞ?

 

「《やーっと、こっち向いてくれたな!久しぶりだな伽羅坊!俺が居て驚いたか?》」

 

「《ああ、あまりに場違いなヤツが居て驚いた。……これでいいか?》」

 

「《おいおい、相変わらずそっけないな!まぁ、今回は見かけたから挨拶に来ただけだ。俺は付き添いなもんでね》」

 

「《付き添い?》」

 

そういうと廣光は【鶴丸】の背後から近づいてくる少女に気が付いた。

 

「つる?」

 

おそらく【鶴丸】のアダ名であろう。

それに足が不自由なのだろう、少女は車椅子に座っていた。

”つる”と呼ばれ少女から後ろに向いていた【鶴丸】はポケットから鼻眼鏡を取り出し、顔に身に着けて少女に振り向く。

 

「呼んだかい?お姫様?」

 

そう言うと少女は何処から取り出したか分からないハリセンで【鶴丸】の頭をはたいた。

廣光はこっそりと心の中で少女がやった事を称賛する。

 

「言葉と行動が矛盾しとる、やり直し」

 

「手厳しいな、人生には驚きが必要なんだぜ?」

 

「それはかまへんけど、時と場所を選びぃ」

 

「すまん、すまん。まぁ、ここじゃなんだ。場所を変えようぜ」

 

ここは図書館の為、話をするのは不適格なので移動することにした。

図書館の隣に小さなカフェがあったのでそこで話をする事にする。

 

「改めましてすみません、うちのつるが……ご迷惑かけました」

 

少女が【うちのつる】という言葉で一瞬顔を赤らめるが直ぐに通常に戻り謝ってくる。

 

「いや、気にするな。大丈夫だ、慣れている」

 

「え、俺が悪いの前提で話が進んでる?」

 

「えっと、つると知り会いなんですか?」

 

「スルーか!まぁ、いいか。……ふっふっふー、”知り合い”なんてもんじゃないぞ。はやて、こいつと俺は旧知の仲なんだぜ」

 

「ふふーん」っとドヤ顔だったので廣光は【鶴丸】の額に力いっぱいデコピンする。

すると悶えはしなかったがテーブルに顔を伏せる形で額を押さえ、痛みでガクガク震えていた。

 

「まぁ、腐れ縁みたいなものだ。気にするな」

 

「え、あ、はい……」

 

「つる、大丈夫かいな?」と、【鶴丸】が額を押さえている為、代わりに後頭部をさする少女。

 

「たったった…、少しは手加減しろよ。はやて、もう大丈夫だ。ありがとう」

 

「いやいや、気にせんといて。たださする事位しかできへんもん」

 

「それでもだ、ありがとう」

 

廣光は思った。

なんだ、俺は場違いな所に来てしまったのか?この逢引きに居合わせてしまった空気はなんだ。帰っていいか?とか思っている廣光であった。

 

「そうそう、今のオレの名前は”五条国永(ごじょう くになが)”だ!”つる”っていうのは、アダ名だぜ。よろしくな!伽羅坊!……伽羅でいいんだよな?多分…」

 

「ああ、俺の名は”伽羅廣光”だ」

 

「えっと、私の名前は八神はやて(やがみ はやて)いいます。よろしくお願いします」

 

「ああ、八神、こいつを頼む。驚きを求めて公園に落とし穴など掘るかもしれないからな」

 

「え?つる、そないな事するの?」

 

「いやいやいや、そんな事しない!《伽羅坊~!》」

 

「《お前なら本当にやりそうだ》」

 

「《だからって誰かが怪我しそうな話をはやての前でするな》」

 

「《何をそんなに慌てている?……まさか》」

 

「《そのまさかだっと言ったら?》」

 

そう、”まさか”というのは審神者と刀剣男子の関係。主従関係だ。

国永はまさに廣光と同じ状況にあるのであった。

 

「《俺と同じか》」

 

「《まさか、伽羅坊も?》」

 

「《ああ》」

 

「なぁ、つる」

 

小声で喋っているだけあって国永と廣光の距離は近い。

これでは”腐”の付いた女子や貴婦人さん達に目を着けられてしまう。

はやてはそう思い、慌てて話題を作ろうとした時、カフェの柱にかけてある時計を見てはやてが国永の袖を引っ張る。

2人してはやての方を振り向いた。

 

「いきなりごめんな?伽羅君。なぁ、つる、そろそろ行かんとタイムセール始まるで?」

 

それに慌てたのは国永だった。

どうやら事情は知らないが、はやてと暮らしているらしい。

そして国永はスーパーでの買い物担当との事。

時計を見ると後15分でスーパーの野菜のタイムセールが始まるのだ。後、トイレットペーパーのセールも。

なので、国永は廣光に必死に謝り、再会の約束をしてはやての車椅子の取っ手を握り、お勘定をして去って行った。携帯の番号とメールアドレスが書かれたメモを残して。

 

「(ああいう事をするのはてっきり光忠だろうと思っていたが……以外なヤツだな)」

 

※遠くのある次元にてクシャミをした少年が居たとか居ないとか。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

【鶴丸国永】と再会した日の翌日の夕方、なのはに呼び出された廣光。

そこには今まで居なかった生き物が存在し、1人と1匹?は真剣な眼差しでこちらを見つめてきていた。

 

「で、俺を家に呼んだのはそのフェレットの事か?それとも何か緊急事態にでも陥ったのか?」

 

「すごい、ひろ君。よくわかったね」

 

「……そもそもフェレットなんてこの辺りじゃ珍しいからな。飼い主が探し回るだろ?俺が知らないだけかもしれないが、そんな素振りを見せたヤツなんて居なかった……何よりそいつは頭が良い。俺達の話を理解している様だし、その度に反応している。まるで人間を相手にしているかのようだ」

 

そう言って怖がらせない様に気を使っているのがわかる仕草でフェレットにそっとゆっくり手を伸ばす。

 

「………」

 

「お前、もしかして話せるんじゃないのか?勘……だがな」

 

「!」

 

「なのはがお前を「ユーノ君っていうんだよ」……助けたのはちゃんと理由があるハズだ。

それは恐らくユーノ、お前を助けたい、何かを手伝いたいという純粋な想い。

それとも、なのはを考え無しに捨て駒の様に利用しようとしている訳ではないのだろう?」

 

「は、はい!僕は決してなのはをそんな…捨て駒なんて事させませんし、しません!!って、あ!」

 

つい喋っちゃった!みたいな感じに慌てだすが、廣光はユーノの頭を優しく撫でる。

 

「慌てる必要はない。なんとなく、普通のただ事ではないだろうと思っていた」

 

「ただ、それだけだ」そういうとユーノは「は、はい」と頷く。

 

『ね、ねぇ、なのは。この人、すっごく話の分かる人なんだね。疑ったりしないのかな?それに、すごい魔力?なんかオーラ的な何かを感じるんだけど、何か知ってる?』

 

念話でユーノが話かけてくる。

自分も昨日の夜に初めて魔法を知って使った身。

まだそういった感覚が分からないので、どう言えばいいのか、なのはも分からなかった。

まぁ、生まれ変わっても付喪神だった力は残っている訳で、それが魔力(本当は神気)の様に感じているという訳である。

それに自分自身が普通ではない存在なので大抵の事は直ぐに理解してしまうのであった。

 

『ユーノ君、とにかくひろ君に話してみよう?昨日の出来事、これからの事とか』

 

『そ、そうだね』

 

ユーノは話した。

曰く、

 

・自分は発掘で生計を立てるスクライア一族の出でユーノ・スクライアいう者。

・ユーノ自身で最近遺跡から発掘したものこそジュエルシードだった。

・青く輝く美しい宝石の名がジュエルシード。

・今は滅んでしまった魔法文明の産物、所謂ロストロギアと呼ばれる代物だったのだ。

・手にしたものに幸運を呼び、望みをかなえる力があると言われているが、その代償に持ち主から様々な物を奪い、場合によっては次元震(名前の通り次元に影響する地震の事である。これが起こると次元が消滅する恐れさえあるとの事)さえ引き起こすと言う危険な物。

・そんな危険物を管理封印するため、時空を渡る輸送船で移動させていた所、船が謎の事故を起こしてジュエルシードが封印を開放された状態で放出されてしまったのだ。

・落ちたのは第97管理外世界と呼ばれる、異世界の存在すら認知されていない世界。(つまり、なのは達のいるこの世界である)

・ユーノは発掘者として責任を感じて自ら散らばってしまったジュエルシードを探して封印する事にしたのだ。

・だが、ジュエルシードが落ちた世界には魔法は伝承のモノで存在しない世界だった。

・なので、ジュエルシードが引き起こす災害に対して適切な対応など不可能だと思い必死に探した。

・でも、1つも封印出来ずに逆に死にかける羽目になった。

・このままではいけない!そう思ったユーノは念話で助けを求めた。それに答えたのがなのはであった。

・彼女にはこの世界の住人にはないと思われていた魔力を宿していたそれも膨大な。

・そして、なのはに自分の持っていたインテリジェントデバイス(喋る魔導師の杖)を渡し、魔法使いになってもらってジュエルシードによって生み出された怪物を倒し、無事にジュエルシードの封印に成功した。

 

っと、いうのが昨日から起こった事である。

それを聞いた廣光は目を閉じ、少しして目を開けた。

 

「士郎さん達には話をしたのか?」

 

「え、ううん。話してないよ。時間がなかったのもあるけど、話をしたら止められるって思って」

 

「俺が止めるとは考えなかったのか?」

 

「え、ひろ君、お手伝いしちゃダメなの?」

 

廣光はため息をした後、なのはを真っ直ぐに見つめる。

 

「いや、止めはしない。そもそも、この状況を考えるとジュエルシードの暴走、封印はなのはしか出来ない様だからな。だが、士郎さん達には話しておけ。俺達だけでは限界がある。俺も説得に協力しよう」

 

「「は、はい」」

 

『ねぇ、なのは、この人本当に9歳なの?なんだか大人の人を相手してるみたいに感じるんだけど』

 

『ひろ君は昔っからこうだよ?』

 

『そ、そうなんだ……』

 

こうしてなのは達のジュエルシード探しの物語が始まるのである。




なんか無理矢理な終わりの書き方してません?大丈夫でしょうか?
一応アニメ沿いですがほとんどがオリジナルです。
ほんと文才無くてごめんなさい。
もっとがんばります!!


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4振り ジュエルシード探しは大変なの!

ついに本編の開始です!
ただ、アニメでやっていた一部をすっ飛ばしてしまいました。
戦闘シーンを私に期待しないで下さいね!すんごく苦手なんです……。
でもなるべく書く様にがんばります!



「所でユーノ」

 

「何ですか?廣光さん」

 

「……タメ口でいい、さんもいらない」

 

「え、でも……」

 

「でもも何もない。で、なのはは知っているのか?」

 

「あ、はい…じゃない、うん、えっと何を?」

 

「お前が人間であるという事だ」

 

「ああ、知っているハズだよ。初めて会った時だけどジュエルシードの怪物と最初に戦ってた時は人間の姿だったし、その時に見てるハズだ。ただ、今は魔力が足りなくなってこの姿で回復してるだけだから」

 

「………そうか」

 

「(嘘は言っていないな)」と嘘に関しては勘がそう言っているので多分大丈夫だろう。

その時はそう思ったが後でそれが間違いであったと知るのであった。

 

「でも、廣光には僕が人間なのは話してないよね?なんでわかったの?」

 

「………勘だ」

 

「え」

 

「勘だ」

 

「でも」

 

「勘だ」

 

「ア、ハイ」

 

まさか、魂を見ただなんて言えない。

たまに人間か、そうじゃないか魂を見て分かるという能力を持つ刀剣男子が居ると聞いたことがある。

前世の頃なら納得するがなぜ人間である自分が見えるのかが不思議だった。だが、これで分かったがどうやら付喪神だった頃の力が使える様だ。

まさか本体(刀)も呼べるか?とも思ったがそこは流石に呼べなかった。

後、幼い頃から体の中に何か籠っているモノがあると感じている。それが本体ではないか?と思っていたのだが違う様で……。ユーノから聞いたがどうやら俺にも魔力の様なものがあるらしい。もしかして籠っていたモノとは魔力の事か?と思いユーノの指導の下、念話を試してみた。そしたら直ぐに使える様になった。

どうやら本当に魔力の様だ。

その事はいい、この後が大変だった。

 

「で、このフェレットが原因でなのはは危険な目に遭わないといけない訳か」

 

その言葉から高町家のユーノ・スクライア被告人の裁判の様なモノが始まった。

結果から言わせてもらえるとユーノの勝利に終わった。

”辛くも”っと付くがな……。

失禁しなかっただけすごいと言っておく。一流の剣士2人の本気の殺気に当てられて一般人(今は動物)が平気な訳がない。

俺からの援護もあり、なんとかジュエルシード集めを許してもらった。

本当は恭也さん達もジュエルシード探しに協力したいと言ったのだが、なのはが自分と俺に任せてほしいと言ってきた。なのはの必死な説得により俺となのは、ユーノで探すことになった。

ただし、俺は死に物狂いでなのはを守らなければならない。

それは良い、問題ない。

なのはを守るのは俺の役目、俺の使命。

何も問題はない。

……どうやら今回、生まれ変わりとして人間になってから大分丸くなったものだなと思う。

刀剣男子の頃は「一人で戦い、一人で死ぬ」や、「俺は一人で戦う。お前らは勝手にしろ」などよく言っていたものだ。

今でもたまに思うが口に出して言おうとは思わない。

むしろ言ったらなのはが悲しむのではと思い、言えない。

アイツが泣くのは流石に堪える。

……実は今存在している俺は【大倶利伽羅】の亜種か、偽物なのではと思ってしまう。

それほど俺は他人と慣れ合う様になっている。

(それでも学校では「俺一人で十分だ」と言って本当にこなしてしまうのであった。2人作業の場合、仕方ないのでなのはか、ある程度の交友のあるクラスメイトとしている)

そんな色々な毎日を送りながら、ジュエルシードは順調に集まっていた。

神社での戦いや、犬?との戦いも無事に終了している。(主に俺が弱らせて、なのはが封印するという形だが)

なのはに聞くともうあれから5個集まっていた。

今まで怪物相手だったのであまり気にしなかったのだが、まぁ、とにかく今何を言いたいのかというと

 

「人間が使用するとこうなる訳か……」

 

そう、今現在、ジュエルシードの暴走によって樹が暴れだし、街を襲っているのだ。

暴走している樹から離れた場所に佇む2人と一匹。

ユーノ曰く、「強い思いを持った人間が発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから」との事。

その結果が樹の暴走。今までは運が良かったのだ。

 

「ユーノ君、こういう時はどうすればいいの?」

 

「え?あ…」

 

「ユーノ」

 

「あ、うん。封印するには接近しないとダメだ。まずは元となっている部分を探さないと。でもこれだけ広い範囲に広がっちゃうと、どうやって探していいか……」

 

「ユーノ、改めて聞くが、これは人間が”元”と思っていいんだな?」

 

俺からも問いかけられ答えるユーノ。

 

「え、うん。多分だけどね。間違いはないハズだよ」

 

「ならば、なのは」

 

「あ、はい!」

 

「この正面の太い樹からやや右側を調べろ。見つけたかもしれない」

 

「ホント!?」

 

「ええ!?」

 

「急げ」

 

「うん!」

 

[Area Search(エリアサーチ)]

 

「リリカル、マジカル…探して!災厄の根元を!」

 

目を閉じてなのはが集中する。

少し1,2分したか、しないかの短い時間に、

 

「見つけた!」

 

「本当!?」

 

廣光の言う通りの場所に2人の少年少女が抱き合って眠っていた。

 

「すぐ封印するから!」

 

「ココからじゃ無理だよ!近くに寄らなきゃ!」

 

「なのはなら大丈夫だろう」

 

「廣光!?」

 

「ひろ君……うん!出来るよ!大丈夫。ね、レイジングハート!」

 

レイジングハートを根元の正面の空に掲げる。

 

[ShootingMode、set up(シューティングモード セットアップ)]

 

すると、レイジングハートは今、なのはが必要とする姿へと変形する。

 

「行って!捕まえて!」

 

1発の砲撃が根元に撃たれ、ジュエルシードの力が弱体化する。

 

[Stand by Ready(スタンド バイ レディ)]

 

「リリカルマジカル!ジュエルシード、シリアル10!……封印!」

 

そう、なのはが叫ぶと極太の砲撃が放たれた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

こうしてシリアル10、ジュエルシードを封印出来たなのは。

だが、なのはの父親、士郎のオーナー兼コーチを勤めるサッカーチーム【翠屋JFC】のゴールキーパーがジュエルシードを持っていた事に気付いていたはずの事実。

割れた地面と壊れかけた街……こんな事になる前に止められていたかもしれない現実。そのことに心を痛め、やはり、士郎達に助けてもらわないと無理なのかと落ち込むなのは。

 

 

「前もって防ぐ事が出来なかった事を後悔しているのか?」

 

「え?」

 

「落ち込むなとは言わないし、後悔するなとも言わない。何より、今回、俺はほとんど何もしていないからな」

 

その場にずっとしゃがみこんでいたなのはの前に立つ廣光。

廣光の言葉に顔を膝に埋めていたなのはは直ぐに顔を上げて叫ぶ。

 

「そんな事ないよ!私が探索魔法を使う前から2人の事、見つけてたじゃない!すごいのはひろ君だよ!」

 

それは樹の中に人間が居て、それが根元となっているなら人の魂を探せばいい。

そう思い、魂の輝きを探すと直ぐに見つかった。それだけである。

 

「だが、俺ではジュエルシードを封印する事は出来ない。それに、俺は魔法を使えないし、基本接近型だ。遠距離攻撃出来ない。出来るとしたらナイフを投擲する位だろう」

 

「(僕的にはそれもすごいと思うけど)」

 

ちょっと場違いだが素直にそう思うユーノ。

廣光は封印の後からずっと落ち込んでいるなのはの手を取り、立ち上がらせる。

 

「なのは、これからもまた同じ事が起きるかもしれない。それでもユーノの手伝いをしたいと思えるか?」

 

「え……?」

 

「これはある意味強制みたいなモノだ。ジュエルシードを封印出来るのはレイジングハートを扱えるなのはのみ。恐らくこれから同じ事……いや、それ以上の事が起きるかもしれない。それでもやれるか?」

 

「ひろ君……」

 

「出来れば俺が扱えたら良かったが、そうもいかない。だが、あんたの事は俺が守る」

 

「ひ、ひろく「だから、”精一杯頑張る”じゃなく、これからは俺達の出来る”全力で頑張る”でいいんじゃないか?」!……あ」

 

廣光となのはは見つめ合う。そこには真剣になのはを廣光なりの気遣い、優しく見つめる眼差しがあった。

それを真正面から受けたなのはは自分の顔が赤くなるのがわかる位火照ってしまう。

お忘れかもしれないが廣光は相当な美少年だ。語られてはいないがたまに変態(特に痴女)が目の前に現れたりする位だ。(必ず穏便に(気絶させて)済ませ、警察に引き渡している。近場の交番では顔を覚えられる程だ)

そんな少年に見つめられ、優しい声で「俺が守る」と言われてしまえば誤解する所だろう。(っと、なのはは思っている)

 

「もう二度とこんなことが起きない様に、な」

 

「……うん!」

 

「だが」

 

「?」

 

「無理だけはするな、全てを抱え込むな、ホウレンソウを大事にしろ。以上」

 

「ひ、ひろ君!?結構、学校でひろ君に言われたくない事ばっかりなの!」

 

「あんたは時に俺より酷いからな。これ位言わないと聞かないだろ」

 

「むー!それは酷いの、ひろ君!」

 

「………だな」

 

「にゃ?何か言った?ひろ君」

 

「いや、なんでもない。帰るぞ」

 

怒る元気があればもう大丈夫だろうと判断した。

しかし、これからなのはにもっと困難な出来事が待ち受けていた。

そして、それは廣光にも言える事で……。

これからどうなるのか、それはまだ誰も分からない。

 




結構駆け抜ける感じで書いてしまった感がしますね。
そんなところを直したい今日この頃……。
何度も言いますが、文才が欲しいです……。


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5振り もう一つの出会いと再会なの!

とにかく、文才が欲しいですー!(切実)


 

とある放課後、帰る支度をしていた廣光【大倶利伽羅】はアリサとすずかに呼び止められていた。

 

「お茶会?」

 

「そ!次の週末にすずかの家でお茶会を開くの。あなたは強制だから断っても意味ないわよ」

 

「何故だ」

 

「なのはの為のお茶会だから」

 

「………」

 

確かに樹の事件から気持ちを持ち直した様に見えたが流石にまだ元気が出し切れていない。あの状態では隠そうとしても周りはすぐに気が付くだろう。

なので親友のアリサとすずかは気が付いたのだろう。

なのはに悩みや心配があるなら話をしてほしいという気持ちからのお茶会というのだ。

ならば逆に異性の廣光は邪魔ではないのか?と思ったのだが、

 

「私の見立てではあなたには辛うじて話してるみたいだからね」

 

むしろ共犯です。なんて言えない空気だ。

そしてよく廣光はその事を知ってる事に気が付いたなとも思ったのだった。

 

「何よりズルいわよ。あなたに話して私達には何も話さないなんて」

 

「………」

 

悔しそうに顔を歪ませるアリサ。

それを心配気に気遣うすずか。

廣光はそれをジッと見つめた後に

 

「はぁ……その茶会、なのはには話してあるのか?」

 

「え、ええ。真っ先に誘ってあるわ」

 

「言っておくが、なのはが話すか話さないかはアイツが決める事だ。だが、ある程度説得……しておく」

 

「!」

 

「わ、ありがとう!廣光君!」

 

「何度も言うが、話すと決めるのはなのはだ。あまり期待はするなよ」

 

そういうと廣光は教室から出て行った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

学校が終わった後、修行の為に高町家に来ていた廣光は、なのはにまず話があるとなのはの部屋に向かった。そこで今日の帰りがけにあった話をする事にした様だ。

 

「え?2人にジュエルシード集めの事を話すか、話さないか……」

 

「あんたの事が心底心配なんだろうな。俺はどちらでもいい、なのはが決めろ。ただ、デメリットもあるだろうが、アイツ等の気持ちの事も考えてやれ。”自分がもしバニングス達の立場だったら”とな」

 

「あ……」

 

ため息を1つした後、廣光は立ち上がり、なのはの部屋から出て道場に向かう。

廣光が出来る事はココまでだ。

後はなのはが考え、2人に伝えるか否かを決めるだろう。

2人がどんな反応をし、確率はかなり低いが、もしなのはに何かあっても

 

「俺はあんたの味方であり続ける……」

 

「ただ、それだけだ」そう、窓から入ってくる風の音に消える程の声で呟く。

その風に吹かれ首元まで伸びている髪が揺れた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

週末の日に廣光となのはだけでなく、なのはの兄、恭也も月村家に行くことになっていた。

廣光は知らなかったが月村家長女、忍(すずかの姉)と恭也は恋仲なのだそうだ。

……とりあえず別の部屋でよろしくやっててくれと廣光は密かにやさぐれた。

だが、この後廣光にとって天国の様な状況になる事を知らなかった。

 

「ようこそ、なのはちゃん、廣光君、恭也さん」

 

月村家は、なのは達が住む海鳴市の結構な古くからの資産家の家系なのだそうだ。

広い庭のある大きな屋敷に住み、メイドも少数ではあるが存在する。

そして、いきなりだが、すずかは無類の猫好きなのである。

捨て猫や、迷子の猫を見つけてしまうと拾わずにはいられない性格で里親が見つかるまで世話をしているのだが、大抵見つからず月村邸で飼う事になるので数多く猫が居た。

そして、廣光もまた猫が好きだ。

すずか程ではないと思いたいが、結構、いや、やはり無類の猫好きだ。(見かけによらず(笑)、猫だけでなく動物は好きだ)

自分の家にもミツ(ミツに関して詳しくは魔法少女リリカルなのはFechter 1振りを参照をお願いします)がおり、休みの日に修行以外で過ごす時、1人と1匹で縁側でのんびりするのが定番になっている。

それはさておき、恭也は忍と別の部屋に行き、なのはと廣光はテラスの方へ通された。

お茶会は穏やかに始まり、皆ゆったり過ごしている。

だが、その時間もすぐに終わってしまう。フェレットのユーノが猫に追い掛けられて追加のお菓子を持ってきたメイドのファリンが巻き込まれてしまった。

それを見て廣光が立ち上がり走り回る猫を素早く抱き上げ、猫も最初は暴れていたが猫の楽な体制にしてやる事で撫でてやると落ち着いたようだ。

ユーノの方を見るとファリンの足元でため息をはいた。

 

「廣光君、すごいね。その子、中々懐かない子だったのに」

 

「………猫は好きだ」

 

「ね!可愛いよね!」

 

「ああ」

 

すずかと廣光が今までにない程意見が合っている。

しかも通常よりも廣光の表情や声も穏やかだ。

そんな光景を見ていたなのはとアリサは

 

「むむぅー…!」

 

「(なのは……はぁ、まったくもう)」

 

なのはは腕を組み頬を膨らませ心なしか拗ねている感じで、アリサはその反応を見て「この子、こんな反応する癖に自分の気持ちに気付いてないのよね……」とか思っていた。

 

「あ、そうだ。お天気もいいし、庭に行かない?廣光君、庭の方が猫いっぱい居るよ?」

 

その言葉を聞いて縦に頭をコクコク動かす廣光。しかも早い。

 

「じゃぁ、決まりだね。なのはちゃん、アリサちゃん、廣光君、行きましょう」

 

こうして下にある庭の方で改めてお茶会を始める4人だった。

ただし、その中の1人はどこから取り出したのか分からない猫じゃらしで大勢の猫と遊んでいたと追記しておこう(笑)

しばらく、またのんびりとお茶会を楽しんでいると

 

「(え、これは魔力?まさか、この近くにジュエルシード!?)」

 

『なのは!』

 

『あ、ユーノ君これはもしかして!』

 

『ああ、ジュエルシードだな』

 

『……猫じゃらしで遊びながら念話に入ってこないでください』

 

『気にするな』

 

『『気にするよ』』

 

『………』

 

とにかくにもジュエルシードを探しに行かなければならない。

そこで咄嗟にキョロキョロとユーノが周りを見渡す。

そして庭の奥へ走って行った。

 

「ユーノ君!」

 

慌てて立ち上がるなのは。

 

「ユーノ、どうかしたのかしら?」

 

「何か見つけたのかも、ちょっと探してくるね」

 

「一緒に行こうか?」

 

「大丈夫、直ぐに戻るから」

 

『時間をずらして追いかける。先に行け』

 

『うん、わかった!』

 

そう念話で会話した後、しばらくした時に、

 

「やっぱり気になるから見て来る」

 

と、返事を待たずに走り出す廣光。

 

「少し遅れてしまったが、すでに封印はしたのか……?」

 

走ってしばらくすると恐らくユーノの結界だろう魔法が展開されているのが見える。(本来は見えるものではない)

結界に入るとガキィンッ!という甲高い音が聞こえた。

誰かが誰かと戦っている?

 

「(なのは!)」

 

いつもより速く走る廣光。

たどり着いた場所で横になって倒れている巨大な猫。

黒を強調しているバリアジャケット(防護服)を着た金髪ツインテールの少女がなのはに襲い掛かっているのが見えたので勢いで胸もとに隠してあった小さなナイフ3本を少女に投擲する。すると

 

「させないよ」

 

[Protection(プロテクション)]

 

そんな声が聞こえてきて少女の背後に紺色の魔法陣が展開されナイフを弾く。

 

「ありがとう」

 

謎の少女が聞こえて来た少年の声にお礼を言う。

 

「どういたしまして、怪我は…?」

 

「ないよ」

 

「良かった」

 

少女は一旦なのはから離れる。

するとそれをきっかけに少年自身も木々の間から出てくる。

 

「女の子の背後から攻撃なんて恰好悪い、よ……?」

 

出て来たのは眼帯を右目に着け、黒い表地に燕尾部分の裏地の華やかな赤い模様が印象的な燕尾服を身に着けている。廣光と同じ年位の美男子だった。

機械的な1振りの刀を腰に掛け、柄に手を置きながら喋っていたが廣光を見て驚いている。

そして、廣光も驚いていた。

 

「伽羅ちゃん……?」

 

「……光忠(【燭台切光忠】)か」

 

そう、刀の付喪神(刀剣男子)だった頃の仲間、幼い姿ではあるが恰好は刀剣男子の頃の戦装束のままであった。

ここにまた2振り(2人)の再会がなされた。




フェイトちゃんともう一人の刀剣男子の登場です!
やっと出せました出したかった2人!特に燭台切さん。
次回も出来れば週一更新目指したいです。頑張ります!


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6振り デバイスGETなの!

別に俺TUEEE系を書くつもりではないのですが、いつの間にかこうなっていました。
無意識って怖いですね……。


 

「伽羅ちゃん……」

 

「……光忠か」

 

2人の少年は見つめ合う。

廣光【大倶利伽羅】は無表情ではあったが心で大いに驚いていた。

まさか国永【鶴丸国永】以外にも元付喪神(刀剣男子)が居るとは。

 

「光忠……、知り合いなの?」

 

謎の少女が光忠【燭台切光忠】の隣に降り立つが、こちらに警戒しながらも光忠に問いかける。

 

「うん、何ていうか…旧知の仲というか……」

 

「ただの腐れ縁だ」

 

「伽羅ちゃーん!」

 

「もう!相変わらずだなぁ…」という感じでこちらに言葉を掛けてくる。

謎の少女が光忠の隣に降りて来た様になのはも廣光の隣に降り立つ。

 

『あの子、優しそうな子だね。もしかしたら話し合いしてくれるかも』

 

なのはが穏やかな空気を纏う光忠を見てホッと一息いれた。

 

『いや……』

 

『え?』

 

『ヤツはああ見えて』

 

「ねぇ、伽羅ちゃん」

 

こちらに笑顔で話しかけてくる光忠だが、次の言葉でなのはとユーノが固まる。

 

「あの巨大な子猫のジュエルシード、僕達にくれないかい?じゃないと君でも容赦しないよ?」

 

『実戦向きの男だ』

 

『『え!?』』

 

そう念話で話した後、廣光は全神経を光忠に向ける。

そして、光忠もまた、廣光に全神経を向けた。

 

『こいつは俺が相手をする。なのは達は黒い女を相手していろ』

 

『ひろ君……』

 

「猫のジュエルシードを渡す気はない」

 

「まぁ、そうだよね。負けないよ!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

光忠の言葉を聞いて、『廣光がんばって!』っとユーノが念話で応援してくる。

しかし、こちらはもう会話する余裕はない。

刀剣男子だった頃と同じであれば負ける可能性がある。

機動や隠蔽はなんとか勝てるが体力と打撃などは負けていた。

だが、今の光忠と相対して分かる事があった。

どうやら小太刀二刀御神流を習っていた事は無駄ではなかったらしい。

恐らく、光忠もああ言ったが分かるハズだ。

今、一瞬でも隙を見せたらヤられる代わりに隙さえ見せなければこちらが勝っていると。

だからこそ隙は見せない、身体が震える。光忠も震えていた。

どうやらお互いに”武者震い”しているらしい。

光忠だって今まで何もしてこなかった訳ではないと思う。恐らく魔法の訓練はしているどろうが、剣に関しては訓練しきれなかったのだろう。予想では剣については独学で修業したのだろうと思うが、剣術でならこちらの方が上。

 

「どうやら…伽羅ちゃん、刀剣男子だった頃より強くなったみたいだね」

 

「いつまでもそのままな訳があるか。お前こそ、さらに腕を磨いたようだな」

 

「僕こそ、そのままなんて事はないよ。でもどうやら一歩、伽羅ちゃんに届かないみたいだね。諦める気はないけど」

 

ユーノ曰く、魔法には攻撃、防御、捕獲、結界、補助と色々種類があるらしい。

その中で先ほど見せた防御魔法。

光忠の事だ、きっとあの少女をサポートする為に覚えた魔法に違いない。

 

「魔法を覚えたのは先ほどの女の為か?」

 

「そうだけど……あの子の事、そういう風に呼ばないでくれる?」

 

「……光忠、お前。まさか」

 

「……そのまさかだよ。伽羅ちゃんだってそうでしょ?」

 

どうやら俺や国永と同じで光忠もあの少女と主従関係になっている様だ。

しかし、こんなに伊達政宗公に縁のある刀が集まっている様だが何かあるのか?

このままだと貞のヤツ【太鼓鐘貞宗】もそのうち会いそうだな……。

 

「もしかして今、同じ事考えなかった?」

 

「ふん、どうだろうな」

 

「もし居るなら貞ちゃんと鶴さんにも会いたいなー」とか呟いている。

ブレないヤツめ。そして国永なら居るぞ、教えないがな。

しかし、剣では確かに俺の方が上だがそれで勝てるとは思わない。

そう、魔法に関しては俺はまだ素人だ。

そこを付け込まれれば負けるかもしれない……。

捕獲魔法というモノもあるというからそれにも注意だな。

そう光忠から目を離さず、どう動くか考え始めた時

 

ドガァンッ!!

 

背後から金色の魔力砲撃がぶつかる音と魔光。

敵?に背中を見せるのは負けにつながるが、そんな事を気にする余裕はない。

すぐさま後ろを振り返り一目散に走る。

振り返った瞬間目に入ったなのは。

先ほどの砲撃で吹っ飛ばされたのだ。

 

「(間に合え!間に合え!間に合え!)」

 

全速力で走る。

恐らく今の俺は普通の人間より速く走っているだろう。

だから何だというのか。

なのはを守れない事になんの意味がある。

とにかく走る。

後少しというところで届かない。ならば!

 

「ぐっ!!」

 

スライディングをする。

思いっきり勢いをつけてのスライディングの為、ズボンがダメージジーンズの様になった。

後悔はない。

落ちて来るなのはをギリギリ受け止められた。

すぐさまなのはに怪我が無いか確認する。

擦り傷どころかあまりバリアジャケットも汚れていなかった。

ユーノもなのはの元に着いたらしく、なのはの状態を教えてもらえた。

今まで怪物相手だったり、人間が原因だったとしても樹相手だったりしたので気にしなかったのだが、どうやら【非殺傷性設定】というモノがあるのだとか。

………早く言ってくれ。

とりあえず座り込み、あぐらをかいて膝になのはの頭を乗せる。

 

「………」

 

なのはの様子を見ていたが横で巨大な子猫に魔法をぶつける少女。

容赦なく砲撃し、ジュエルシードを取り出し封印。

手際は良いのだが、あまりにもの容赦のなさに少し引く。

封印が終わった後、少しの間こちらを見つめて来た。

敵意はない様だ。

その後、直ぐに光忠を連れて飛行し、(光忠、お前も飛べたのか…)消えて行った。

因みに光忠は飛行して消える際、こちらに手を振っていた。

思いっきり顔を背けておいたがな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

あの後、転んで気絶している所を保護したと誤魔化し(なのはは運動音痴の為、”転んで気絶”というのはあり得る話なので皆に信じられた)、廣光はなのはをおんぶで運び、高町宅まで送り届けた後にユーノに相談する事があると呼び出していた。

 

「え?デバイス無しで出来る魔法を教えてほしい?」

 

「無いのか?」

 

「うーん、あるにはあるけど、廣光には難しいと思うよ。念話は魔導師の初歩的魔法で誰でも出来るもので……廣光みたいに3分で覚えたのは異常だけどね」

 

「やはり、デバイスが必要になるのか……」

 

「そうだね。基本、魔法を使う為には廣光の言った通り、デバイスが必要だね。あの光忠っていう少年も”ストレージデバイス”を持ってたし」

 

 

※ストレージデバイス:魔導師の使う一般的なデバイスで、通常は意志を持たない非人格型の事である。

 

 

そこでふと廣光は思い出した。普段の祖父なら興味のないプラチナの腕輪を妙に磨いて大事にしていた事を。

あの時は「(骨董品か?まぁ、俺には関係ないか)」っと生暖かく見守っていたが、もし、多分、きっと、あれがデバイスだったなら?それに祖父はたまに話してくれるのだ。

”ミッドチルダ”という世界の物語を。

 

「ユーノ、もう1つ聞きたい事があるんだが……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

廣光は伽羅宅に帰ると直ぐに祖父を探した。

まぁ、昼寝をしている所だったので直ぐに見つかったが。

寝ている所を気にせず祖父を叩き起こす孫。

 

「爺さん、質問がある」

 

「げっほ、げほん!あー、なんだ藪から棒に。いきなり叩き起こしおって」

 

「爺さんが大事にしてるプラチナの腕輪、”ストレージデバイス”っていうのか?」

 

「……お前、どこでその名を知った?」

 

「”ミッドチルダ”の知り会いから教えてもらった」

 

「! そうか…」

 

しばらく胡坐をかき、何か考えている素振りを見せていたが、しばらくして廣光の祖父はタンスから木箱を取り出し、廣光に渡す。

 

「そのストレージデバイスの名は【ドラゴンソウル】(竜の魂)だ」

 

「【ドラゴンソウル】……」

 

「昔、ワシが使っていたモノだ。……まだ早いとは思ったが…必要なのだろう?それをお前に託そう」

 

そう言われ木箱からそっと腕輪を取り出し、自然な動作で右腕に嵌める。

すると腕輪の中央に付いている宝玉に反応があった。

それを見た時、自然と瞬間叫んでいた。

 

「⦅竜の魂を宿し剣よ!その力を、守る力をこの手に!【ドラゴンソウル】!セットアップ!⦆」

 

[stand by ready.set up(スタンド バイ レディ、セットアップ)]

 

濃い紫色の光に包まれ、光が消えると左肩甲骨から左腕にかけて不動明王の化身・倶利伽羅竜を宿し、学ランを思わせる洋装に草摺と赤い腰布を身に着けている。唯一変わらないのは普段、服の下に着けていた不動明王を表す梵字のペンダントが表に出て来た位だろう。

その姿はまさに刀剣男子だった時の戦装束であった。

そして腰に紫色の鞘に収まる機械的な1振りの…大きさを確かめてみると恐らく打刀であろう刀が差してあった

 

「おお、無事にセットアップ出来たな……しかし廣光よ、お前呪文を勝手に略称するんじゃない」

 

「……名残が残ってるだけでもいいだろ」

 

「お前、どのくらい略そうとしたんだ。……セットアップ出来て良かったが普通呪文が違えば不発だからな?」

 

「………」

 

そんな事より廣光はとにかくこれで魔法を使う事が出来るとちょっぴり嬉しいと思ったので気にしない事にした。表には絶対出さないが。

 

「しかし、廣光、よくドラゴンソウルの事を覚えていたな。最後にお前に見せたのは2歳の頃だぞ?」

 

「……覚えてたから取りに来た、それだけだ」

 

バリアジャケットを解いた廣光は短く祖父に礼を言って高町家へ向かうのであった。




中二病全開のデバイス名。ドラゴンソウル……。
もっといい名前があったかもしれないのに……。
ごめんね大倶利伽羅さん。


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7振り 温泉旅行なの!

温泉回です。微ネタバレあります。


 

謎の少女と光忠【燭台切光忠】との戦闘の後、ぱったりとジュエルシードの反応が途絶えた。

ただ単に暴走することなく何処かで安置か、放置されているのか、もしくは少女達がなのは達より先に回収しているかだ。

その間、廣光【大倶利伽羅】は剣の修行と共にユーノに教えを請い、魔法の練習をしていた。だが、早い期間でユーノはお役御免となる。

例えるなら、廣光はまるで水を吸うスポンジの様に直ぐに覚えていったのである。

 

「なのはもすごいけど、廣光もすごいね!こんなに早く魔法のほとんどを覚えちゃうなんて!攻撃魔法以外だけど……」

 

ユーノが絶賛する。

”こんなに”と言ったのはたったの”3日”でサポート系の魔法をほとんど覚えたからだ。

普通ならもっと日にちを必要とするのにである。

まぁ、”ほとんど”であるのでまだ覚えていない魔法もあるが。

ユーノの魔法は大体がサポート系魔法を扱う。

その為、攻撃魔法は習っていない。

だが、元々の剣術の腕と”小太刀二刀御神流”という剣術流派を習っているので剣の腕が鈍る様な事はない。

あと、小太刀二刀御神流は名前の通り2振りの小太刀を扱うので本門下生になった時に「変態撃退用に」と刃の部分を潰して切れなくした2振りの小太刀を恭也から受け取っている。

因みに刀とは関係のないとっておきもあるのだが、それは後日。

そうやって剣と魔法の両方を習い、少しづつ強くなっていくのが分かるが、ここで付け上がる訳にはいかないのだ。

付け上がったら絶対に光忠に勝てない。

だからこそ、油断もなく、隙もなく、己を研ぎ澄ます様に修行をする。

なのははそんな廣光を見ていると父親が入院している時の兄を思い出し、不安になったのだが、修行以外の時はいつもどおりの廣光だったのでホッとしている。

そんな日常が続いたある日、

 

「温泉?」

 

「ああ、忍達も行くから廣光もどうかと思ってな」

 

恭也からのお誘い。

廣光は少し新鮮に感じていた。大体がなのはとアリサによって選択肢が無く、いつも強制だったのでこうやって聞かれる事が新鮮に感じるのだ。

 

「……向こうでも稽古をつけて下さいますか?」

 

普段ならお断りするのだが久々の選択肢。

普段しない事をしてみたいと思ったので条件付きで行く事にした。

 

「お前はほんと、ブレないなぁ……ああ、勿論。こっちも勝ちこしが落ちて来たからな。負けられない」

 

そう、廣光は何度か恭也に勝っている。

今まで廣光が恭也と試合いした回数は丁度100回。

20勝44負36引き分けである。

勝率は少ないが試合いをすると大体が”あと少しの負け”なのだ。

恭也も兄弟子として負ける訳にはいかない。

しかし、今は人間で子供ではあるが刀剣男子の頃の実戦経験、刀を扱う強さにそうそう負けるハズがない廣光に勝ちこしている恭也は正直人間止めてると思う。

 

どこか遠い三角ハート世界から「【戦闘民族高町家】だから仕方ないね!」という声が聞こえた気がしたが気のせいだろうとスルーした。

 

と、いう訳で休日を利用して温泉に行く事になり、車で移動。

旅館に着いた。

女性の多い旅行の為、各自自由となり思い思いの行動をとる事にしたのだが女性陣は全員すぐさま「温泉!」と言い、入りに行こうと足を向けたが、

 

「なのは」

 

「うん?なぁに?ひろ君」

 

「ユーノは俺が預かる。なのは達と行くのは嫌みたいだからな」

 

実際温泉に行くと言ってなのはに捕まれて手の中で暴れているユーノ。

「(なのはは本当にユーノが人間で、男である事を知っているのか?)」と疑問に思う廣光だった。

 

「え?そう?ユーノ君温泉嫌い?」

 

『ぼ、ぼ、ぼ、僕、廣光と入りたいです!なのはさん!』

 

「んー、わかったよぉ。はい、ひろ君。ユーノ君をお願いね?」

 

「ああ」

 

ユーノを手渡されて皆が待つお風呂に向かうなのは。

姿が見えなくなったところでユーノが廣光に念話で話しかけてくる。

 

『た、助かったよ。廣光!ありがとう!』

 

「貸しにしておいてやる」

 

『う、うん!』

 

そして、温泉に入る前に恭也の元へ向かい、一汗掻きに行くのであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

恭也との稽古で汗を掻き、温泉で汗を流そうと風呂場まで向かうと廊下が騒がしい。

目線をそちらに向けると、なのはが見知らぬ女性に何か言われているところだった。

廣光はユーノを抱える体勢から近くにあったテーブルの上に降ろす。

そして走り出した。

小走りに近いが、十分に速い速度だ。

あっと言う間に女性となのはの間に入り込む。

 

「誰だ、お前」

 

キッと女性を睨みつける。

 

「ひ、ひろ君」

 

「おやおや、ちょーっと遅い王子様の登場だねぇ」

 

その言葉を聞いた廣光は今度は女性のみを対象に殺気をのせて再度睨みつけた。

 

「あ、あ、あーっと!ご…ごめんね~人違いだったみたい。知ってる子によく似てたからさ」

 

女性はその殺気に当てられ冷や汗を掻いている。

どうやらこれで去るつもりらしい。

だが、廣光を見ない様にしながらもなのはに念話を送る。

 

『子供はいい子にしてないとガブッといくよ』

 

ジト目で女性を見送り、念話の内容は分からないハズなのにまた鋭く睨まれる。

 

「(こ、このガキんちょ怖い……)」

 

「(光忠とどっちが怖いかな…?)」っと思いながら小走りで風呂場に入っていった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「なのは、平気か?」

 

「う、うん。ありがとう、ひろ君」

 

さっきまでの無表情の睨みから一変、なのはを見る目は穏やかで。

先ほどの廣光の雰囲気は嘘の様に消えた。

ちょっぴりそんな廣光にドキドキするなのはだった。

 

「何だったのかしら、あの人」

 

「さぁ…?気にしなくていいんじゃないかな?」

 

皆が先ほどの女性の感想をのべているところで廣光は、なのはとかなり近い場所に立っている事に気が付き、離れる。

 

「すまない、なのは。汗臭いだろ」

 

「え?……! ううん!全然大丈夫だよ!ひ、ひろ君はこれからお風呂だよね」

 

「ああ」

 

『分かっているとは思うが、さっきの女に気を付けろ』

 

『う、うん』

 

『ユーノは俺が稽古をつけている時に先に入ってもらった。安心しろ』

 

『ん?……うん』

 

”先に入ってもらった”という言葉で疑問に思ったが”ユーノを先に洗ったと解釈し、そこでユーノをなのはに渡して温泉に向かう事にする廣光。

 

「じゃぁ、また後で」

 

そう言って風呂に入りに行った廣光だった。

だったが、

 

「はー、良い湯だねぇ」

 

物凄く見覚えがある人物がそこに居た。

 

「早く身体洗ってコッチ来なよー」

 

まさか、こんな所にもジュエルシードがあるというのか?

 

「ね!伽羅ちゃん」

 

温泉に浸かる光忠が居た。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

髪と身体を洗って無表情で温泉に浸かる廣光。

夜空を見ながら笑顔でいる光忠。

実は今温泉に居るのは2人だけであった。

どうやら廣光が入る瞬間に結界を張ったらしい。

確かに入る時に違和感を感じたが結界だったのに気付かないとは気が緩み過ぎたかっと舌打ちしたくなったのだった。

 

「今頃、フェイトちゃんと白い女の子、戦ってるだろうね。」

 

そう言われ廣光が身体を洗って温泉に浸からずに、すぐ様なのはの元へ行こうとしたら

 

「多分、魔法を使える様になっただろうけど、覚えたてで練度が足りないでしょ?この結界、そう簡単に突破できないよ?」

 

っと、言われ仕方なしに温泉に浸かっているのである。

そして、さっきの続きと、言わんばかりに語りだした。

 

「この結界は僕オリジナルの結界でね。外敵から守る結界じゃなくて捕縛結界なんだ。結構上手く出来てるでしょ?ここから出る方法はね……」

 

星を見上げていた光忠と視線が合う。

 

「僕を倒すしかないんだよね」

 

光忠は立ち上り、脱衣所まで行って少ししたら戻ってくる。手には黒と見間違うほどの濃さを持った紺色の三日月の形をした宝石を持ち、握り叫ぶ。

 

「ムーンウィル(月の意志)!セットアップ!」

 

[stand by ready.set up(スタンドバイレディ、セットアップ)]

 

一瞬でバリアジャケットを身に纏う。濡れていた髪も渇いている。

しばらく廣光も戦う姿勢を見せるまで待つ。

しかし、こちらを見つめてくるが中々立ち上がろうとしない。

 

「どうしたの?伽羅ちゃん」

 

反応もしてもらえないので本当にどうしたというのか。

白い女の子が心配じゃないのか。

そして、やっと立ち上がる廣光。

 

「光忠」

 

真っ直ぐ光忠の瞳を見つめて来る。

 

「いいんだな?」

 

その言葉を聞いた瞬間わかった。

こちらの状況をいつの間にか理解されていた様だ。

 

「うん、いいんだ」

 

廣光にまるで”仕方のないヤツだ”と言わんばかりに頭を横に振られた。

それを見て苦笑する。

廣光が脱衣場に入って行ったその瞬間

 

ガシャンッ!

 

っと窓が割れ、すごい速さで小さなナイフが投擲される。

その後に

 

ドカァンッ!!

 

という音が響いた。

思わずポカーンっとした顔で監視の為の小型機械の残骸が温泉に落ちるのを見た光忠は、次の瞬間大笑いしていた。

 

「あはははは!こんな!あっけなく!結構すばしっこくて、光学迷彩で見えないうえに、すごく小さいし、壊すのは無理かなって思っていたんだけど……!」

 

光忠が笑っている横を脱衣所からバリアジャケットを着た廣光が出てくる。

 

「光忠、笑い過ぎだ。うるさい」

 

「だ、だってぇ!」

 

「あんなに頑張ってたのに!」っと中々笑いが収まらないのは安心からくるもので、監視の事で何もかも諦めていたのかもしれない。

いくら実戦向きでも温厚な光忠がいきなり襲い掛かってくるのはおかしいと思っていたのだ。

ならば、その原因は何かという事を見定めてみなければならない。

そしたら案の定というか、監視されていた。

ご丁寧にも光学迷彩で見えないという要らないオマケつき。

空気が震える感覚と景色が一部揺れる様に見える事で発見できた。

廣光が見つけたのは、まさに偶然の産物と言って良いだろう。

監視の目が無くなり、光忠は話してくれた。

一緒に居る女の子の名は【フェイト・テスタロッサ】。

その使い魔で人間に化けれる本来の姿は犬の【アルフ】。

そしてジュエルシードを必要とし、フェイトとアルフ、光忠に探させている黒幕、【プレシア・テスタロッサ】。

プレシアはフェイトの母親にして、捨て子だった光忠、長船光忠(おさふね みつただ)の育ての親なのだそうだ。

名前がテスタロッサではないのは単に拾われた時に名札があったからそのまま使っているだけなのだった。

その名前なのは良いのだが、使った理由が不満というのは本人談である。

それはいいとして、(よくないよ!)

そもそもプレシアが何故ジュエルシードを必要としているかは理由を知っているが話せないという光忠。

光忠はプレシアからヤンデレの如く愛されているらしく、外(街)に出ると光学迷彩によって姿が消える小型機械で常に監視されている。

なんとか影ではちゃんとフェイトの助けになる様に色々と行動しているとの事。

 

「それにね伽羅ちゃん。プレシア義母上は病気なんだ。末期らしくてもう治らない…フェイトちゃんにも言えない。どうしよう」

 

「………方法がない訳じゃない」

 

「! 本当?」

 

「ただし、最終手段だ。絶対とは言えん。期待はするなよ」

 

「うん、でも、ありがとう!」

 

「後、ジュエルシードとテスタロッサに関しては、なのはが納得するまでジュエルシード争奪戦は続くだろう。それまでは光忠、俺はお前に集中する事にする。

その方がお前も都合がいいだろう?」

 

「………そうだね。真剣勝負だし、僕も負ける気はないよ」

 

「望むところだ……」

 

その会話が終わった時には旅館の風呂には誰も居ないかの様に静かであった。

 

 




普通こんなに敵対している相手に話す訳がない燭台切くん。
こんな口の軽いのが燭台切のハズが無い!と、思う方。すみません。反省します。


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8振り 負けられない戦いなの!

戦闘の描写ってすっごく難しいですね……。(´;ω;`)


 

今日、なのはとバニングスが喧嘩?した。

喧嘩というかバニングスが一方的に怒っていただけだが。

どうやらなのははジュエルシードやテスタロッサの話を2人にしていない様だな。

あの2人なら上手く隠して相談に乗ってくれそうだが、そうは問屋が卸さないという事か。

それになのはだけではない。

俺もバニングスに怒鳴られた。

曰く、

 

「なんで!なんで、なんで!あなたばっかり!!」

 

との事だった。

それは当事者の1人だからな。

俺自身の事は俺自身で決着をつけなくてはいけないから。

すずかを連れて何処かに走って行ってしまった。

引き留めようとしているのか教室を出て行ったバニングスに手を伸ばしかけ、少しづつ下げていく。

仕方ないので無言で手を伸ばしていた方の手を取る。

 

「……え?」

 

そして、しっかりとその手を握り、

 

「バニングスの事を気にするなとは言わない。だが、あんた達の友情とはこんな事で壊れたりしないだろう?この間の旅行の時の事を気にし過ぎてしまったのはあんたが悪い。だが、今頃バニングスもさっき言った事を言い過ぎたと後悔しているハズだ。まぁ、ハズというだけで確信がある訳でもないがな。」

 

「………ふふふっ、ひろ君の言葉はいつも矛盾してるの…ごめんね。ひろ君、いつも頼ってばっかりで。強くならないといけないのに…負ける訳にはいかないのに…」

 

「今の俺に言える事があるとすれば…」

 

「……?」

 

「あんたの思った通りの事をしろ。例え、どんな事をしても、身体が遠くに離れていても、心はいつも共にある。俺にしか頼れないなら思う存分に頼れ。絶対にあんたを1人にはさせない、孤独になんかにさせない。それはきっとあの2人も同じ気持ちだろう」

 

「ひろ君……」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

廊下から教室に入ろうとして入れなくなった一部の生徒達の会話より。

 

「お、おのれ、伽羅。許すまじ…!!」

 

「おい、誰かあの教室で見つめ合ってる2人に爆弾投げろ」

 

「ダイナマイトとかは?」

 

「いや、ここは手榴弾だろう」

 

「無理無理、きっと本当に爆発物投げてもバリアー張ってそうじゃん」

 

「くっそー、高町さん!絶対アイツに騙されてるよ!いくらヤツがイケメンでもコミュ障じゃねーか」

 

「「「コミュ障の何が悪い!!」」」

 

「うおっ!?す、すみません!」

 

「やっぱり、伽羅君かっこいい~」

 

「あんな言葉かけられてみたいよね」

 

「では、オレが!」

 

「「「いりませーん」」」

 

「orz」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

夕方のとあるマンションにて。

 

「ただいまー、アルフー居るかい?」

 

「はいはい、居るよ。って、そんなに買って1人でよくココまで持ってこれたね」

 

トートバック2つにビニールの買い物袋が3つ。

どうやらスーパーでセールをしていたらしい。

 

「僕、こう見えて力持ちだからね。それに女性に荷物持ちさせる訳にはいかないよ」

 

「じゃぁ、なんで私を呼んだのさ」

 

「ふっふっふー、これを見てよ」

 

1つのビニールの袋を開けてがさがさと探す。

するとアルフに”それ”を見せた。

 

「そ、それは!?まさか!」

 

「そう、”スペアリブ”さ!」

 

近くのスーパーでのスペアリブの相場は100グラムあたり190円台のところを130円で売っていたので勢いで買ってしまったが後悔はない。

とりあえず、この間買った圧力鍋で煮込む事にする。

 

「アルフには調味料を使わずに焼くだけでいいよね?」

 

「ああ!是非そうしておくれよぉ!」

 

「肉!肉!お・に・くぅ~♪」っと嬉し気に部屋に戻っていく。

光忠も荷物を持ち直し、アルフと同じ場所へ向かい、リビングの横にあるキッチンの冷蔵庫に戦利品を入れていく。

大体片付け終わった時、フェイトがリビングに入ってきた。

 

「あ…光忠、お帰りなさい」

 

「うん、ただいま。フェイトちゃん…ちゃんと休めた?まだ疲れてそうだけど」

 

「休めたよ、大丈夫。早く母さんの為にジュエルシードを集めないと……ごめんなさい」

 

フェイトは恐らく光忠の言葉に”余計な心配をかけている”と思ったのだろう。その事を察した光忠は苦笑してフェイトの前まで歩いて近づいていく。

 

「フェイトちゃん、僕はね、君の事が大好きだから心配してるんだよ。だから”ごめんなさい”じゃなくて、別の言葉が聞きたいな」

 

「え……別の、言葉」

 

「うん」

 

「えっと……」

 

「うん」

 

「……あ、ありがとう」

 

「うん!」

 

フェイトは光忠の笑顔を見ると顔を赤らめて床に視線を落とす。

そんなフェイトの反応に光忠は照れてるんだなっと理解していたので「今日はアルフの好きなお肉がメインのご飯だよ!」っと、話題を変えてリビングのソファまでエスコートしてフェイトと共に座って向かい合う。

 

「いくら早くジュエルシードを集めないといけなくても21個もあるんだ、長期戦になるだろうし、食欲が無くても少しでも食べないと身体に悪いからね」

 

「でも、食べてる時間も勿体無いよ。ご飯は携帯食でいい……いえ、何でもない」

 

フェイトの発言を聞いてると少しづつ光忠はジト目になっていき、フェイトを見つめてくる。

まさに「何言ってるのこの子」という感じだ。

 

「フェイトちゃん、僕の作るご飯は美味しくない?」

 

「え?すごく美味しいよ」

 

「うん、良かった。もう!携帯食なんて許しません。残しても良いからちゃんとした食事を食べてね!ジュエルシード集めはその後。オーケー?」

 

「は、はい…」

 

その返事を聞いた光忠は「じゃぁ、夕飯の支度しちゃうね!」そう言うとソファから立ち上がり、キッチンに入っていく。

その姿を見つめていたフェイトは仄かに微笑み

 

「ありがとう、光忠」

 

と呟いた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「リリカル、マジカル!」

 

「ジュエルシード、シリアル14!」

 

「封!」

 

「印!」

 

時刻は深夜、フェイト達は高いビルの上からジュエルシードを早く見つける為に周辺に魔力流を撃ちこんで強制発動を試みる事にした。

そこで光忠は待ったをかけ、広域結界(術者が許可した者と、結界内を視認・結界内に進入する魔法を持つ者以外には結界内で起こっている事の認識や内部への進入も出来ない。魔法戦や訓練が周囲に被害を与えたり目撃されたりしないよう、使われることが多い)を使った。一般人を巻き込む訳にはいかない。

準備が整い、アルフが魔力流を打ち込む事になり、結果、シリアル14のジュエルシードが発動した。

丁度そこになのは達もたどり着き、すぐさまバリアジャケットを纏い、遠距離からの封印を試みる。

そしてフェイトとなのは、二人の砲撃で封印は成功した。

ジュエルシードに一番近かったなのは達だったが手に入れる前にアルフに邪魔される。

フェイトと向き合うなのは。

前回のぶつかり合いで、なのはは思わず自分の意志の歩みを止めてしまうかもしれない程悩んだ。友人と喧嘩?したとしても悩んで悩んで…そして、改めて進む事に決めたなのはは、

 

「この間は自己紹介出来なかったけど、私、なのは。高町なのは!私立聖祥大附属小学校、3年生!」

 

そう自己紹介する。だが、

 

[scythe form.set up(サイズフォーム セットアップ)]

 

フェイトは戦闘する事を選んだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「始まった様だね」

 

「………」

 

2人の少年は少女達少し離れた場所で会話する。

お互いに守るべき少女達には「「あの男は俺/僕が相手をする」」と、伝えてある。

 

「伽羅ちゃん、持ってきた?」

 

「ああ。お前は?」

 

「ココに」

 

2人がポケットから取り出したのはジュエルシードだった。しかも未発動のジュエルシードである。

何故持っているかというと、2人は同時に「「偶然」」と言うだろう。

実は本当に偶然なのだ。

光忠は買い物の帰り、近道として公園の林を歩いていたら茂みに落ちていたのである。

廣光に至っては幸運だったのだ。

早朝のランニングしている時に散歩をしていた犬の首輪にはめ込まれていたジュエルシードを見つけて飼い主に必死に頼み込んで譲り受けたという経緯がある。(発動していなかったのは正に奇跡だった)

しかも、その事は少女達には内緒だが。

何故かって?勝負事に景品があった方が燃えるだろう?

 

「では、ジュエルシードを賭けて」

 

「いざ、尋常に……」

 

「「勝負!」」

 

2人はお互いの掛け声で動いた。

2人は同時に相手に向かって飛んだ。

「ドラゴンソウル!」

 

[Protection Attack(プロテクションアタック)]

 

光忠に向かって走る際、廣光は防御魔法を展開した。

だが、ただの防御ではない。

防御魔法を展開しながら勢いよく光忠に向かって走っていた。

名前の通り防御魔法でのアタック(タックル)が目的だろう。

 

「ムーンウィル!」

 

[Defense(ディフェンス)]

 

すぐさま光忠も防御魔法を展開する。

それは廣光と違い、本当にただの防御の為の魔法。

だが、それだけで十分だった。

防御魔法同士がぶつかり、パリンっと崩れる。

その崩れる瞬間、咄嗟に光忠はコンクリートを蹴ってムーンウィルを思いっきり突き出した。するとムーンウィルの剣先に物凄い衝撃を感じる。

それは廣光のドラゴンソウルの剣先だった。

どうやらプロテクションの魔法陣を盾としながら走り出し、お互いの魔法陣がぶつかりあった瞬間、消えると同時に貫くつもりだったらしい。

そう簡単に貫かせてもらえないのは分かっていたので別段驚いていない廣光。

むしろ、それが当たり前だった。

逆に今ので光忠が貫かれていたら「腕が鈍った」っと言うだろう。

 

「ふう、危ない危ない」

 

「普通、剣先同士でぶつかり合いになんてならない。流石だな。光忠」

 

「前にも言ったでしょ?僕だって何にもしてなかった訳じゃないよ」

 

「ならば、これはどうだ?」

 

ドラゴンソウルを腰に戻し、2振りの小太刀を抜く。

光忠がその小太刀に違和感を感じ、良く見つめて見るとその小刀は刃の部分が潰れていた。一瞬舐められてる?と思ったが廣光の眼は真剣だった。

 

「これが避けられるか?」

 

廣光がそう言うと自ら光忠の間合いに入ってきた。

光忠は一瞬悪寒を感じ、後退しようとしたが、間に合わず、廣光は距離を詰めるのが目的だった。

光忠との距離を小刀で切りながら近づいてくる。プロテクションを使おうにも廣光が近すぎて使えない。

そう、ほぼ0距離での攻撃を全て受けているといっても良い。

光忠は必死に全身を使って避ける。隙間が出来たらムーンウィルで受け流す。

だが、そのほとんどが出来ていない。この連続切りでは刃を潰してあるが刀は刀。当たれば痛いし、もしこの技に突きなんてあったらすぐさまお陀仏になりかねない。

何より、これが道場を構えているとはいえ普通の人間が編み出した技にしては強力すぎる。刀剣男子だった自分だから耐えられる技であると光忠は思う。

実はその事は廣光も習った時に思ったとは光忠は知らない。

そこでついに技が完成する。

 

 

「御神流奥義之弐」

 

刃は無いが、切る。

切る、切る、切る、切る、切る。

2振りの小太刀を使い、暴れるように切る。高速連続斬り。それが

 

「虎乱」

 

 

そして、廣光が最後に小太刀を振り上げた、その瞬間。

鼓動の様な、膨大な魔力を感じた。

それは封印したハズのジュエルシード。

どうやらなのはとフェイトの争奪戦を行っていた時に使っていた魔力に反応して暴走しかけている様だ。

それを止めようとなのはとフェイトはジュエルシードの元に駆け付けたが、お互いのデバイスがぶつかって重なった瞬間。

世界から音が消え全てが静止する、止まった世界に響く何かが割れる音。

2人のデバイスに亀裂が入る。

そして、今までと比べ物にならないレベルの膨大な魔力が放たれ、白い閃光が辺りを包み込んだ。

廣光と光忠は躊躇もなく光の中へ入り、それぞれ大事な少女達の元へ駆けた。

 




虎乱ってただ単に乱れ切りしてるだけじゃね?なんて思ってしまったバカは私です。ごめんなさい!士郎さん、恭也さん!


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9振り 驚きの展開なの!

皆様、お久しぶりです。
遅くなり申し訳ありません。
いい訳を言わせていただくと最近忙しく、執筆が遅れております。
今回はご都合主義満載かもしれません。お許しください。
後、週一更新を狙っていたのですが、ダメでしたね……。残念です。
でもちゃんと無印だけでも完結させたいので遅いけれど更新頑張ります!


 

「なのは!」

 

「フェイトちゃん!」

 

再度起動し始めたジュエルシード。

その膨大な魔力によってなのはとフェイトは吹き飛ばされかけた。

廣光【大倶利伽羅】と光忠【燭台切光忠】はそれぞれの主の元へ駆けつけて受け止めた。光忠の方は若干傷だらけだが。

 

「光忠……? !? 貴方、傷だらけじゃない…!」

 

「ああ、コレ?大丈夫、ただのかすり傷だよ」

 

もう一方で

 

「あ!ひろ君!大丈夫!?」

 

「あんたはまず自分を気にしろ」

 

そして少年達は青く輝く宝石を見た。

 

「なのは、先に謝っておく」

 

「フェイトちゃん、ごめんね」

 

 

 

「「あの、クソ石、たたっ切ってくる」」

 

 

 

「「「「へ!?」」」」

 

少年2人は怒っていた。

危うく大事な主が大怪我するかもしれなかった状況に怒っていた。

それだけでなくそれぞれの彼女達の近くに居なかった事を後悔し、そんな自分に怒っていた。そうすれば少女達が吹き飛ばされる事はなかったかもしれないと。

別々の場所に居るのに思っている事も言っている事もハモる二人の少年とその言葉に一体何を言っているのかと驚きの声をあげる2人と2匹。

 

「行くぞ、光忠」

 

「オーケー!任せて、伽羅ちゃん」

 

そしてその言葉を皮切りに2人の少年は徐々に輝きを増していく宝石に向かって走る(飛ぶ)。

そしてジュエルシードに向かって少年達はストレージデバイスを思いっきり振り上げ勢いを付けてジュエルシードに切りかかった。

 

「「ひろ君!/光忠!」」

 

一瞬また閃光が辺り照らす。

すぐに閃光も収またが、もうほとんど暴走しかけているジュエルシードは2振りの刀型のデバイスを受け止めていた。

しかし、普通のデバイスならば今の受け止めた時点で破損していただろう。

けれど、2人のデバイスは壊れる事なく、ひび割れもない。

だが、ジュエルシードも傷付ける事も出来ていない。

口惜しい事にデバイスから1㎝先にジュエルシードがあるのだ。

あと少しだというのに届かない。

それでも諦めない2人は気付いていないがデバイスに魔力(神気)を送り、刀身に強化を付属させつつ少しづつだが確実に前へミリ単位で押し出す。

 

「「うおおおおおおおおお!」」

 

思わず叫ぶ。

そうする事で身体の芯から力を出す為に。

そしてついに

 

ピキッ

 

と小さな音がした。

 

「ええ!?」

 

「ま、まさか!?」

 

ジュエルシードの魔力は計り知れない程のモノで、無意識だったとはいえ強化の魔法を使ったとしても、そう簡単には壊れるハズがない。

それに万が一壊れたりした時は魔力が行き場を無くし、結局暴走となってしまう。

では、何が理由でジュエルシードにデバイスの刃が届き、魔力の暴走が起きず、ひび割れができたのか。

理由は3つ、まず1つは彼らの魔力である。

今は現人神と言えるだろう、末席とはいえ神だった前世があるのだ。

そう簡単にはその力は消えない。その為、その魔力の質は特殊なのである。

もう1つは2人のデバイスが特別だから。

光忠のデバイスは育ての母、プレシアが光忠に合わせて作った専用の特注品である。簡単には壊れない様に改造されている。

そして、廣光のデバイスはほぼ謎。昔、祖父が使っていたというモノを譲り受けただけである。ただし、専門の人が見たら興奮して「調べつくしたい!」と言うかもしれないが(勿論廣光はそんな事を知らない)。

と、言う様に2人のデバイスはある意味では特別な品物なのだ。

そして最後の1つは、切りつけている2人がジュエルシードの魔力を吸収しているのだ。

何故そんな事が出来るのか?

普通、魔力を使いながら相手の魔力を吸収するだなんて出来ない。

だが、それを出来てしまっていた。ある事が原因で。

それはジュエルシードの魔力と混ざり、最初に封印に使った己の主、少女達の魔力の残留。それを吸収しているのだ。

改めて説明すると、少年達の前世【刀剣男子】とは【刀の付喪神】である。

【主】として仕える者の霊力(この世界ならば魔力と同じモノと考えてもいいかもしれない)を取り込み、顕現する。

つまり、彼らは無意識にその刀剣男子だった頃の仕組みを利用しているのだ。

刀剣男子の力(神気/魔力)が足りない。だが、今、主から力(霊力/魔力)を受け取る余裕がない。…ならば目の前にある主の残留した力を吸収すればいい。っと、そういう訳である。

これは特殊な例(魔力の残留)があったからこそ出来た事なので今回しか使用出来ない事である。

なので今の2人の魔力は本来持っている魔力の限界を超えているのだ。

それでも大丈夫そうに見えるのは2人が現人神であるからと予想する。

 

「って!2人共!!ストップ!ストップだよ!そのままじゃジュエルシードが本当に壊れちゃう!!」

 

ユーノが必死に2人にストップをかける。

だが、聞いていないのか、無視しているのか分からないが切りかかり続けている。ユーノからは死角で見えないが、実はジュエルシードはもう半分も切れていた。そして……

 

「「はああああああああああ!!」」

 

その掛け声とともに力いっぱい振り下ろした。

 

パキーンッ

 

そんな音がしてジュエルシードは三等分になった。

 

「「わあああああああああああ!!」」

 

それを間近で見たユーノとアルフは絶叫する。

けれどもジュエルシードの魔力が暴走すると思っていたのだが、何も起きない。

彼らの主、魔導師の2人も唖然としていた。

誰も、動けなかった。

またしばらく静寂が辺りを包む。……そしてやはり何も起きない。

少女2人と2匹は信じられない思いで佇む2人の少年を見つめる。

何故なら、魔力を吸収していたので最小限に魔力の暴走が止んだが、あんな無理矢理な力業でジュエルシードの暴走が止まるとは思ってもみなかったからである。しかもそのジュエルシードは2人によって切断された。三等分に。

 

「はぁ…、すっきりー「「”すっきりー”、じゃない!!」」わわっ」

 

いつの間にか近くに来ていた動物2匹はそれぞれの仲間である少年に詰め寄る。

 

「何て事してくれたんだ!!再封印すればいいのに、なんでかこのジュエルシード、もう魔力の魔の字も無くなってるよ!どうするんだよー!!」

 

魔力が無いのは(以下略)

 

「そうだよ!これじゃぁ、あのクソバッんんっ!ごほんっ。『アイツに報告しに戻った時どうする気だい!?この事でフェイトに何かあったら、あたしは許さないからね!』」

 

「……ユーノ、反省はしている」

 

「当たり前だよ!」

 

「だが、後悔はしていない」

 

「してよ!!」

 

「ユ、ユーノ君、まぁまぁ」

 

まるでコントを繰り広げているユーノと廣光。怒っているユーノを何とか落ち着かせようとするなのはと、

 

「でも、危うくフェイトちゃんが怪我するかもしれなかったんだよ?許せる?」

 

「うっ、そ、それは…。確かに許せない…。あ、いや、でもねぇ。再封印すれば良かったんじゃないかい?」

 

「それはどうだろう。暴走も引き起こしかけてたし、何よりフェイトちゃんのバルディッシュ(デバイス)は破損してるから再封印は難しいと思うよ。仕方ない処置さ」

 

「ううっ」

 

「アルフ、報告する時の事気に掛けてくれてありがとう。私なら大丈夫だから」

 

こちらも内容は違えど、責めて来るアルフを正論っぽい事を言って言いくるめる光忠と、ジュエルシードを求める母親のプレシアに報告する時の事を心配してくれるアルフに「大丈夫」と言い続けるフェイト。

そして、しばらくやいのやいのとそれぞれの仲間同士で話をしていたが、

 

「光忠」

 

突然、廣光が光忠に声を掛けると

 

「受け取れ」

 

何かを投げて寄越した。

それを受け止めて手の中のモノを確認する。

 

「これは……」

 

その光忠の手に収まっているモノを見て驚き困惑気味のフェイト。

 

「良いのかい?あの時の勝負は圧倒的に君の勝ちだろうに」

 

そう、それは先ほどの三等分にしたジュエルシードの欠片と、勝負する時に廣光が持っていた未発動のジュエルシードだった。

 

「ふん!同情ならお断りだよ!もっとも、今更返せと言われても、もう返さないけどね」

 

アルフも最初は驚いていたが、舐められていると思ったのか少しキレ気味だ。

そして、2人と1匹は去って行った。

さっきの会話の内容を聞いて理解したユーノは

 

「廣光!?隠してたなんて酷いじゃないか!なんで渡しちゃうのさ!」

 

と、やはりと言うかお怒り気味である。

 

「なのは」

 

「え?は、はい」

 

ちょっと話に付いてきていなかったなのはも、また困惑していたが廣光に呼ばれて返事をする。

 

「後で説明する」

 

「あ……うん」

 

こうして今回の争奪戦は終了した。

しかし、ユーノは叫ぶ。

 

「もう!僕の話を聞いてー!」

 

…終了したのだ!




私はどうやら無理矢理終わらせる展開に持って行くのが得意なようです。
……治したいです。(泣)


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10振り 迷いなの!

かなり遅れました!ごめんなさい!
でも、また遅れそうな予感……。どうかご了承下さい……。(泣)



「こんな短期間で6つもジュエルシードを集めるだなんて流石、私の息子ね。昨日のジュエルシードの事は仕方ないわ。光忠、気にしないでね?フェイト、貴女も見習いなさい」

 

「はい、母さん」

 

「義母上、僕が集めたんじゃないですよ。コレらはほとんどフェイトちゃんが集めたんです。僕は何もしていない」

 

「光忠、貴方は謙虚過ぎよ。あの厄介な坊やの相手をしていたじゃない。少しは誇っても良いのよ?それに比べてフェイト、貴女はあんな素人染みた魔導師に手古摺るなんて、母さんを失望させないでちょうだい」

 

「は、はい…」

 

フェイト達が居るのはなのは達が居た世界とは違う別次元に存在する空間。名を【時の庭園】という場所であった。

そしてその場所の主にして光忠【燭台切光忠】の育ての母であり、フェイトの母親であるプレシア・テスタロッサの城である。

今日は定期連絡の日。

フェイトは母が喜んでくれるかもしれないと光忠にお願いしてミニケーキを作ってもらった。

そして、ケーキを持参し、【時の庭園】に着く。

城をしばらく歩くと1つの部屋にたどり着き、アルフを廊下に残して部屋に入る。

するとそこにプレシアが居た。

すぐにケーキを渡そうとプレシアに近寄り、ケーキの入った箱を差し出した。

「光忠が作ってくれました」と言うと、叩き落そうとして振り上げた手を下げ、静かに箱を受け取った。それにホッとした表情をするフェイト。

そして、ジュエルシードを渡し、冒頭の話に戻るのであった。

 

「フェイト、貴女はこの部屋から出ていなさい。光忠と話があります」

 

「……はい」

 

「……ケーキ、ありがとう」

 

「! はい!」

 

部屋を出て行こうとしたフェイトにプレシアはケーキのお礼うを言う。

その言葉を聞いたフェイトは輝かんばかりの笑顔でプレシアに返事すると部屋を出て行った。

少しの間、2人は話さない。そしてやっと言葉を発したのは光忠だった。

 

「……義母上、フェイトちゃんに嫌われようとワザと冷たくするのは止めて、認めたらどうですか?”アリシア”ちゃんの事は諦めきれないのも分かりますが、フェイトちゃんだって義母上の娘です。アリシアちゃんとフェイトちゃん、2人は別の人間なんだから別々に愛せないんですか?」

 

「……黙りなさい、光忠。あの子は私を慰める為のただのお人形。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

「じゃぁ、さっきのお礼の言葉は何ですか?」

 

「………」

 

「あれはどう聞いても”僕”に言った訳じゃないでしょう?引き離すなら言うべきではなかったですね」

 

「……ただの気まぐれよ、私の家族はアリシアと貴方の2人だけ。それ以外は居ないわ。それより、貴方が相手をしていた彼、何者なの?……貴方で実験なんて出来ないから彼を捕らえて試すのも、手かもしれないわね」

 

”実験”。その言葉を聞いた瞬間、光忠は驚きで目を見開き、思わず怒鳴ってしまう。

 

「!? 義母上!」

 

光忠は自分の代わりに廣光【大倶利伽羅】を捕まえて実験なんてさせないと怒る。

それに分かっていたっという風にプレシアは苦笑して光忠の頭を撫でた。

 

「ごめんなさいね、貴方と同じで特殊な魔力だから、研究者として興味を持ってしまったの。それに冗談よ、貴方と旧知の仲なのでしょ?手は出さないわ」

 

それを聞いて嘘ではない様なので安心した。

だが、

 

「さぁ、そろそろ行って。どうか母さん…アリシアの為にジュエルシードを集めてきて頂戴」

 

「……はい」

 

彼女はフェイトの事が気になっているのに、自らの気持ちに蓋をして頑なに認めようとはしない。

フェイトもまたプレシアが作りだし、生み出した存在だというのに。

なんとかしたいが、プレシアは病に侵されている。それも不治の病に……死期が近いのだ。

それが彼女の焦りになり、周りが見えていないのである。

アリシアが死に、アリシアの”クローン”として生まれ、代わりとしてのフェイトだったが色々な所でアリシアとの違いを見せられ、娘と認めたくなくなった。だが、光忠が居るおかげなのか、気にはなるし、やはりこの子も…と心の奥底で思っているのに素直になれない。影ではとても思い悩んでいた。

そして、少しの時が流れ、ついに決断してしまう。

アリシアを蘇らせようと。

光忠はプレシアが病に侵されている事と、ジュエルシードを使ってアリシアを蘇らせようとしているのは知っているが、そこまでである。

どういう使い方をするのかを全く聞かせてはくれなかったからだ。

そこが心配だが、今はとにかく言われるがままに集めるしかない。

とても口惜しいが”家族の為”と思い動こうと、そう思うのだった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

ジュエルシードを廣光達が切った翌日、なのはは前に進むと決めた。

ちゃんとフェイトとお話したい!そう覚悟し、まずはアリサとすずかに謝った。

魔法の事以外の話せる範囲まで話した。

悩んでいた事、心配かけてしまった事。

とにかく、色々だ。

それを聞いてアリサとすずかは顔を見合わせ苦笑し、アリサは「こちらこそごめん」っと謝り返してきた。こうして無事に仲直り出来て一安心である。

そして学校の授業も終わり、家に帰る4人。

家に着いたなのはは真っ先に自分の部屋で回復したレイジングハートをユーノから受け取った。そんなレイジングハートに問いかけるなのは。

「また一緒にがんばってくれる?」

 

[All right, my master!(オール ライト、マイ マスター!)]

 

「うん、よろしくね!」

 

「そういえば、なのは。廣光は?今日は話があるんだってね?

昨日の切っちゃったジュエルシードの事かな?それとも廣光が内緒で持っていたジュエルシードの事かな?ふふふ」

 

っと黒い表情で笑うユーノ。中々に怖い。

廣光は一旦、祖父母の居る家に帰ってから行くっとなのはに伝えてある。

確かに無理だろうと思ったジュエルシードの切断。

なのは達に内緒で持っていたジュエルシード。

気にならない訳ではないが、話す内容が気になるなのはであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「「え!勝負をする為の対価?!」」

 

「何もないんじゃ、本気にならんだろう」

 

その言葉を聞いて慌てたのはユーノだった。

 

「いやいや!他の物を対価にしてよ!なんでよりによってジュエルシードなのさ!」

 

「アイツとの勝負はジュエルシードを賭けるに相応しいからな」

 

「賭けって言った!?」

 

「無論、アイツもジュエルシードを対価としていた。何も問題ないだろう」

 

ふとなのはは光忠が言っていた事を思い出した。

 

「でも、えっと光忠君だっけ?あの子、ひろ君の圧勝とか言ってなかった?」

 

「……気のせいだ」

 

「え」

 

「気のせいだ」

 

「でも」

 

「気のせいだ」

 

「ア、ハイ」

 

あれ?なんかデジャヴなの?とか思ったなのはだった。(魔法少女リリカルなのはFechter 4振り目を参照)

 

「とにかく!もう、隠すのは止めてくれよ?改めて言うけど、ジュエルシードは危険な物なんだから」

 

「……わかった」

 

その間の空いた返事を聞いたなのはとユーノは「「本当にわかってるのかなぁ?」」とか思っていたりする。

 

「じゃぁ、どうやってジュエルシードを切れたかだけど」

 

「………その事なんだが」

 

「「うんうん」」

 

「自分でも分からない」

 

「「はい?」」

 

意外な言葉が出て来た。

しかし、廣光は本当に分かっていない様子だ。

それはそうだ。

光忠もではあるが”無意識”だったのだから廣光にも分からない。

 

「ただ」

 

「「ただ?」」

 

「なのはとテスタロッサのおかげだろうという事は確かだと思う」

 

なのはは「え?!」っと心底驚いている様である。

ここで自分の名前とフェイトが出て来た事が信じられないという感じだ。

あの時なのはとフェイトはただ見つめる事しか出来なかった。

なのに自分とフェイトのおかげとは??

なのはの頭の上にハテナマークが乱列している。

 

「廣光、とりあえずなんでココで、なのはとあの魔導師の子のおかげなのか話してよ」

 

ユーノの質問に無言になる。

ここで前世の話をするべきか、なのはとは主従関係にあるという話をするべきなのか、果たして信じてくれるかが謎だった。悩んだ結果は。

 

「俺はこれから稽古だ。話はここまで」

 

自分なりの誤魔化し方?で話を中断させて、立ち上がり、なのはの部屋を出て道場に向かうのだった。

 

「なのは、彼は本当に何者なんだい?最初は魔導師じゃなくてただ協力してくれる人って感じだったけど、昨日の彼のストレージデバイス、【ドラゴンソウル】だっけ?いきなり出して来たよね?彼の考えてる事や、自分がやている事を理解しているかい?」

 

「デバイスの事は私も知らなかったよ。でもひろ君が考え無しに行動してる訳じゃないのも分かってるの。ユーノ君、少しでもいいからひろ君を信じてあげてほしいの」

 

「なのは、彼の事、信じてるんだね」

 

「うん!”信用”もしてるけど、”信頼”もしてるの!」

 

ニッコリとユーノに微笑みかける。

その表情はとても輝いていたと後に語るユーノだった。




プレシアママンの迷いでした。
果たして彼女はフェイトを本当はどうしたいのか。
こんなのプレシアじゃない!とお思いの方々、すみません。
どうか見守ってくださると嬉しいです。


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11振り 介入なの!

投稿が前回と同じでかなり遅れてすみません!
なんとか書けましたので投稿しました。
さてはて、何が介入なのかな?


 

なのはは廣光【大倶利伽羅】と話をした後、ジュエルシード探しに出かけた。

なのは達は知らなかったのだが、その日は稽古は無くなのはの家の裏手の扉から抜け出した。

なのはは夕方過ぎ頃の時間に家を抜け出した。

絶対にフェイトの事を考えながらジュエルシードを探すハズっと、睨んでいたので陰ながらなのはを追いかける。

すると公園の方からジュエルシードが発動した事を感知し、直ぐに向かってバリアジャケットを纏う。

同じくらいの時に公園に着いたらしいフェイトと光忠【燭台切光忠】、アルフの2人と1匹が現れる。

そこでジュエルシードに取りつかれた樹にフェイトは攻撃魔法を放つが、樹はバリアで防いでしまった。

 

「生意気に、バリアまで張るのかい」

 

「うん、今までのよりも強いね。それに……あの子も居る」

 

そう最後に言った言葉を呟いた時、樹の近くに居たなのはを攻撃する為に木の根を地面から鞭の様に使ってきた。それを避ける為に

 

[Flier fin.(フライヤー フィン)]

 

高く飛行する。だが、高さが足りないらしく

 

「翔んで、レイジングハート!もっと高く!」

 

そうなのはが言うとレイジングハートが答える。

 

[All right!(オール ライト!)]

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「フェイトちゃん、少し離れるけど良いかい?直ぐに戻るよ。」

 

「私1人で大丈夫。彼の事でしょ?気を付けてね」

 

「うん、ありがとう。フェイトちゃんも気を付けて。一筋縄ではいかなそうだからね」

 

そういうと直ぐに居なくなる。廣光を探しに行った様であろう。

そして、それを見送ったフェイトは攻撃方を変える為にバルディッシュに言い放つ。

 

「アークセイバー……!いくよ、バルディッシュ」

 

[Arc saber.(アーク セイバー)]

 

フェイトの攻撃魔法、ブーメランの様な形をしたその魔法は樹の根を切り裂いていくが、樹本体に対してはバリアを張って防がれてしまう。

一方、高く舞い上がったなのはは空中にて

 

[Shooting mode.(シューティング モード)]

 

レイジングハートが形を変えて攻撃系の魔法を放つ準備が終わる。

 

「いくよ!レイジングハート!……打ち抜いて!ディバイン!」

 

[Buster!(バスター!)]

 

魔法(と、いうか魔砲、砲撃と言った方が良さそうである)が放たれ、上からの攻撃に樹の動きはなのはの魔法によって潰されながらも妨げられる。だが、ココでその隙を見逃す訳もなく、フェイトもまた魔法を放つのであった。

 

「貫け轟雷!」

 

[Thunder smasher!(サンダー スマッシャー!)]

 

その魔法もまた強力で樹も2人からの攻撃に耐えようと必死になっているのが分かったが、その努力は空しく、2人の攻撃によってジュエルシードが樹から出て来た。

 

[Sealing mode Set up!(シーリング モード セットアップ!)]

 

[Sealing form, set up(シーリング フォーム セットアップ)]

 

「ジュエルシード、シリアル7!」

 

「封印…!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ここからが本番だな。」

 

「そうだね、僕のみに付いていた監視がなくなった今、僕に出来る事は見守る事だけさ」

 

「それで良いのか?」

 

「僕が知って見たところ、彼女達は相当頑固みたいだからね。2人はお互いに譲れないモノがある。だから、争う訳だけど……本当は止めたいよ?いくら【非殺傷性設定】があるからとは言っても、怪我しないか心配するよ」

 

彼らがいるのは、なのは達を肉眼で見える範囲にある公園の林の中だ。

隠れる事には適した場所である。

何故隠れるのか、それはただ単に、少女達の決着が付くのを見守る為だ。

自分達(廣光と光忠)が近くに居ては”少女(主)を守る”と誓った事が逆に邪魔になると判断したからである。

そう、前世の時ではあるが、【主】を守るという”刀剣男子”の本能。使命が彼女達の戦いに介入してしまわないかと思ったのだ。

それでは意味がない。

ちゃんと彼女達自身で戦い、どちらかの意思を貫き通した方が勝ちである。

だからこそ、離れる。ギリギリの範囲で。

 

「始まっ「ストップだ!」!?フェイトちゃん!」

 

「なのは!」

 

無事にジュエルシードを封印した後、少し会話していた様だが特に問題はなかった。

けれども、その後。

なのはとフェイトがお互いにデバイスを振り上げて突撃した瞬間。

2人の間に1人、少年がなのはのデバイスとフェイトのデバイスを受け止めて戦闘行為を中止させた。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

そう言って飛行していた、なのはとフェイトを地上に降ろす。

いきなりの介入に驚きと共に彼女達の決着を台無しにされて怒りが湧く。

 

「名前からして何処かの組織か。政府みたいなモノか?」

 

「どちらかというと政府というより、うーん、政府と検非違使(警察)を足して割ったら管理局になる感じかな?」

 

「そうか」

 

「でもあの子どういうつもりかな、フェイトちゃん達の戦いを邪魔するなんて。水を差された感じがするよ」

 

「確かにな。だが、今はなのは達の元へ行くぞ」

 

「うん」

 

そう会話すると2人はそれぞれの少女(主)の元へ走る。

 

「このまま戦闘行為を続けるなら…「なのは!/フェイトちゃん!」!他にも仲間が居たのか」

 

少女の元へたどり着いたらデバイスを手に取り時空管理局執務官、クロノに対して抜刀出来る様にデバイスの柄に手で握る。

 

『一旦引き上げるよ。フェイトちゃん、悪いけど、目の前にあるジュエルシードは諦めて。彼、多分だけど見た目に反して、フェイトちゃんより強いよ。』

 

『そんな!』

 

『アルフ、フェイトちゃんの事任せたよ』

 

『あいよ!任せな。…あんたも気を付けるんだよ』

 

『ふふっ、ありがとう。すぐ帰るからのんびり待っててね』

 

そう念話で会話し、アルフは人間の姿でなんとかフェイトと共にその場を離脱しようとした時、青い色の攻撃魔法弾が放たれるが、全て光忠のデバイスで切り落とす。

顔だけ軽く後ろを振り返り、アルフとフェイトが無事に離脱した事を見届けると

デバイスを腰に差し直し、柄から手を放した。

 

「逃げる事を諦めたか」

 

「逃げるのを諦める?いいや?僕はただの殿さ」

 

そう言うとポケットから何かを取り出し、地面に叩きつけた。

そして叩きつけた物から強烈な閃光が照らされる。

 

「くっ、閃光弾か!」

 

あらかじめ閃光弾を叩きつける事を伝えられていた廣光は、なのはを後ろに隠して自身も片腕を目の前でかざし、眼を閉じていた。

閃光が止む頃に目を開ける。

辺りを見回すと、光忠は……居ない様だ。

 

「え?光忠君、いつの間に…」

 

「大丈夫か。なのは、ユーノ」

 

「うん、私は大丈夫」

 

「僕も大丈夫。廣光が盾になってくれたからね」

 

「そうか……」

 

そうの後、ちょっとほのぼのした空気を壊す声がする。

 

「ちょっといいだろうか?君達だけでも話を聞かせてくれ」

 

なのはとフェイトの戦いに介入してきた少年が話しかけて来たのだ。

いきなり介入して上目線で話を持って行こうとする。その態度が気に食わなかった。

 

「……慣れ合うつもりはない」

 

「な、何?僕はただ、話を聞きたいと言っただけだろう。ちゃんと答えてもらうぞ」

 

「……その態度が気に食わないと言っている。それがモノを訪ねる者の態度か?」

 

そう言うが、学校での廣光も人の事が言えなかったりする。

ただし、目上の人にはちゃんと敬語で話したりするので意外と真面目でもあったりするのである。

 

『ひろ君、ひろ君。ブーメラン、言葉のブーメランなの』

 

『黙っていろ』

 

『は、はい!』

 

念話でツッコミを入れるなのはだったが、直ぐに黙されてしまった。

 

「敬語も使えないとなるとお前、執務官とか言っていたが、お前を教育した人物の話をちゃんと聞いていたのか?教育者が泣くぞ」

 

「な、な、なぁ!?」

 

「こんな事は言いたくないが、執務官、向いてないんじゃないのか?まだ子供だろう?」

 

「き、君だって子供だろう!少なくとも僕は君より年上のハズだ!」

 

「え?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

少年、クロノの言葉で一瞬空気が固まった感じがしたがすぐに再起動する。

年上?

 

「……失礼を承知で聞くが、お前、何歳だ?」

 

見た目だけなら、クロノは9歳のなのはとあまり変わらない身長をしている。

若干、廣光の方が高い。

 

「……歳だ」

 

「ん?」

 

クロノは廣光を睨みつけながら言う。

 

「14歳だ!」

 

「……………すまない」

 

「あ、謝るなぁぁぁー!僕が惨めだろう!この際笑え!笑ってろ!」

 

廣光はクロノの肩に手を置き、言った。

 

「男は女より成長が遅い、気にするな。これからが本番だ」

 

「慰めは要らない!少し高いからって調子に乗るな!」

 

「……多分俺も人の事が言えなくなるだろうからな。他人事ではない」

 

廣光は刀剣男子だった頃は日本人にしては(?)高い方の175㎝だったが、背を伸ばしたい気持ちはよくわかるつもりである。

 

「何を言って!⦅クロノ!⦆は、はい!」

 

クロノの横に空中に浮くモニターらしきモノが現れる。

そのモニターには少し、クロノに似た雰囲気の女性が映っている。

 

⦅突然の出現失礼します。

私は時空管理局巡行艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督です。

我が局員が失礼しました⦆

 

流石に”艦長”と名乗っているあたり、頭は下げられないがしっかりと言葉で謝罪するリンディ。

 

「母さ…艦長!謝罪は不要です!こんな失礼なヤ⦅クロノ⦆……失礼しました」

 

⦅どうか話を聞かせていただきたいのです……我が時空管理局の艦船【アースラ】へ来ていただけないでしょうか?⦆

 

廣光は正直赴くのは却下したいのだが、今は仕方なしとして頷くしかないのか…っと悩んでいると

 

「ひろ君、私とユーノ君は大丈夫だから行こうよ。お話で解決できるなら、それに越したことないもん」

 

「うん、なのはの言う通りだよ。僕達は大丈夫。行こう、廣光」

 

「なのは…ユーノ…」

 

しばらく考えていたがこうなっては自棄だと

 

「わかった。その申し出、受けよう」

 

こうして艦船【アースラ】に赴く事になったのであった。




はい、時空管理局の介入です!
クロノくんキター!クロノくんや、リンディさん達、大好きではあるのですが、つい、ツンとした態度をとらせてしまいます。
さて、次回はどんな感じになるのか。謎ですね!(書いてるのお前やろ)
次回にご期待!(いつになるかわかりませぬ…。すみません)


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12振り アースラで・・・なの!

明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
そして、お久しぶりでございます。
今年もがんばります!


で、廣光【大倶利伽羅】は、なのはの手をしっかり握り、艦船【アースラ】に転送する為の魔法陣に乗る。

すると一瞬で視界が変わり、SF小説で読んだ転送ポッドの様な場所に移動したのが分かった。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ」

 

「僕も平気」

 

これまた何処かのSF小説では転移する時、体調が悪くなる事もあるとか書かれていたから少し気になったのだ。

顔には出さないが、3人とも何もなくて良かったっと安堵する廣光。

 

「3人共、元の姿に戻ってくれないか?……そう睨むな、僕もバリアジャケットを解除する」

 

武装を解除されるとういとは抵抗感があるので思わず睨んでしまった。そうして見つめていたら、相手も武装解除する様だし、言われてすぐにバリアジャケットを解除したなのはを見て

 

「(仕方ないか……)」

 

眉間にシワを寄せて渋々と元の姿に戻る、そこでなのはがある事に気が付いた。

 

「ん?3人?」

 

なのはが困惑気味だ、廣光はまさか…っと思い、ユーノを見つめる。

 

「君も元の姿に戻るといいんじゃないか?」

 

クロノはユーノに改めて言う。

そして

 

「それもそうですね」

 

そう言ってユーノが光りだす。

 

「え?」

 

まだ困惑から戻らず、ユーノを見つめるなのは。

そんななのはを見て

 

「(やはりか……)」

 

と、廣光はユーノに初めて会った時からちゃんと聞いたのにどうやら認識の違い?みたいなものを発動してしまった様だ。

そしてしばらくして光も収まり、1人の少年がなのはの隣に立っていた。

 

「この姿を見せるのは、久し振りになるのかな?」

 

「久しぶりじゃないぞ」そう言う前に

 

「え、ええええええええええええええ!!!!?」

 

なのはの驚きの大声が【アースラ】に響き渡った。

その驚きに驚き返すユーノ。

 

「ユーノ君って、ユーノ君って、あの、その、なに~!?」

 

「あ、あれ?最初にあったとき、この姿じゃなかった?」

 

「最初から、フェレットだったよ!」

 

「なのは、ユーノはフェレットにしてはあまりにも仕草、言動、魔法の行使、どれを見て聞いても人間と変わらなかっただろう?何か違和感とか感じなかったのか?」

 

仕方ないのでユーノを援護するが

 

「違和感なんて分からないよ!普通のフェレットなんて身近に居なかったし、魔法世界の動物って喋るんだーとか、魔法使えるんだーとか思ってたもの!」

 

「……。それもそうだな。すまない、なのは。俺が間違っていた」

 

「廣光!?」

 

いきなりの手のひら返しに「そんな!」と声をあげるユーノ。

 

「そもそも、ユーノ、俺は聞いたはずだぞ?”なのははお前が人間であると知っているのか?”と」

 

「………あ」

 

深くため息を吐く廣光。

とりあえず、なのはを落ち着かせる為に驚きで大慌てだったので深呼吸させる。

そんなやり取りを離れて聞いていたクロノに廣光は向き直り

 

「すまない、待たせたな」

 

「君も意外と苦労している様だな」

 

「慣れ合っているつもりはないんだがな」

 

「”つもり”、なんだろう?」

 

「………」

 

「それから、管理局は原則質量兵器の使用を禁じている。腰に差してある小太刀を預けさせてくれ」

 

廣光の眉間がシワを寄せて渋々聞いてみる事にしたらしい。

 

「嫌だと言ったら?」

 

「君だけ【アースラ】から追い出される…というところかな」

 

「……分かった」

 

そういうと年上のお姉さんの様な人が受け取る為に一歩前に出る。

そして自己紹介を始めた。

 

「私は【アースラ】の通信主任兼執務官補佐をしているエイミィ・リミエッタと言います。よろしくお願いします!」

 

とりあえず握手だけして小太刀2振りを渡した。重かった様で少しふらつくエイミィ。

 

「おおっとっと!」

 

「気を付けてくれ、刃は潰してあるが剣先は鋭いままだから突く事は死に直結する。特に大事なものだ、雑に扱ってくれるなよ」

 

「は、はい!」

 

「……とにかく、艦長の元に行くぞ。着いて来てくれ」

 

そう言われ、クロノに着いて行く3人。

するとそこには、盆栽、茶器、鹿威し、畳と、茶室と言って良い和風で構成された部屋に連れてこられて抹茶と羊羹で歓迎される。

 

「いらっしゃい。時空管理局、次元空間航行艦船【アースラ】にようこそ。

お疲れ様!まぁ、3人共どうぞ、どうぞ楽にして!」

 

リンディ提督に出迎えられた3人の内2人は「はぁ…」っとちょっと驚いている。

その3人の内の1人である廣光はそんな出迎えも無表情で正座し、静かに話を聞く体勢に入っている。その姿を見てなのはとユーノも正座して話を聞く事にする。

話はこうである。

曰く、

 

・恐らく、ジュエルシードは【次元干渉型のエネルギー結晶体】。

・複数発動させることで次元空間に影響を及ぼす【次元震】を引き起すかも。(それは知ってる)

・場合によっては、いくつもの並行世界を壊滅させるほどの災害【次元断層】のきっかけにもなりうる。

・1つのジュエルシードの、全威力の何万分の一の発動でもあれだけの災害が発生する。

・悪意をもって発動させるものがいれば大変な事態になりかねない。

 

と、いうものだ。

それを1人で集めようとしていたユーノは無謀だとクロノは言う。

その言葉を聞いた廣光は

 

「ならば、時空管理局はユーノに感謝をしないといけないんじゃないか?」

 

「なんだと?」

 

「なぜなら、今まで時空管理局は何をしていた?ユーノはすぐに事態が危険な事だと理解していたから無謀でも”自分が発掘したから責任がある”というだけでジュエルシードを集めようとした。だが、時空管理局はどうだ?

さき程まで何もしてこなかったじゃないか」

 

「それは君達の居る世界が第97管理外世界だったからで」

 

「管理外の世界はどうでもいい、仕方ない事。そう聞こえるが?」

 

「!!」

 

「ひろ君!」

 

「クロノ!」

 

一触即発になりかける少年2人。

クロノは掴みかかろうと立ち上がりかけるが、廣光は動く事はしなかったが鋭くクロノを見つめる。

それを止める、なのはとリンディ提督。

クロノはハッとし、廣光は深くため息を吐いた。

 

「お前が言った言葉はそういう意味に聞こえる。気を付けろ」

 

「……ああ、すまない」

 

「わかったならいい、もし、謝るつもりなら俺ではなく、ユーノに謝ってくれ。こちらも言い方が悪かった。すまない」

 

まさか謝る言葉が廣光から出て来るとは思わなかったクロノは驚く。

 

「! あ、ああ。ユーノ、僕も何か他に言い方があっただろう。言ってしまった言葉は取り消せないが、すまなかった。」

 

「え!僕はそんな…気にしないでください」

 

なのはとリンディ提督はホッとして話を進める。

しかし、廣光はある事に気付きリンディ提督の言う言葉より早く言い放つ。

 

「ここで”これからは時空管理局が全権を持つ”なので”俺達は今回の件は忘れ、それぞれの世界で元通り平穏に暮らせ”とかぬかそうとしている……そうか?」

 

「「!!」」

 

リンディ提督は驚いた、なぜ言おうとしたことが全て分かっているかの様に話すのか。

一応、この少年について調べた方が良いかもしれないと思ったのであった。

クロノも驚いていた、後半の廣光のセリフは自分が言うつもりだったから。改めてこの少年は一筋縄ではいかないと実感する。

 

「提督、もし、俺が言った通りならば本心で話してほしい。お前達は本当は”なのはに協力してほしい”のだろう?クロノは俺達より年上で実力もあるだろう。だが、結局は14歳の子供だ。その子供が執務官という役職持ち。何かあると考えても不思議ではないだろう?つまり、【アースラ】は人手不足という事になる」

 

「!?」

 

「な、そんな訳あるか!君達は大人しく全権を「クロノ!」!! か、艦長?」

 

リンディ提督は改めて思う。この少年が恐ろしいと。

まさか言おうとした事を言われ、本心では廣光の言う通り、なのはに一晩猶予を与え、考えさせてなのは自身で言ってくる事を待つという事を考えていたのだ。

まさかその事までお見通しだとは……!と戦慄する。

当の廣光は少し呆れていた。

組織とは皆同じなのかと。

前世ではあるが同じような組織があったのだ。

名を【時の政府】という。

説明は正直面倒なので、【審神者】に時間遡行軍を追伐する命令を下している機関という説明で納得してほしい。

場所によって仕事内容がホワイトだったり、ブラックだったりとにかくややこしい場所なのだ。ちゃんと説明しきれるか分からないのでここまでとする。

前世の時、一度似た様な事があったのだ。

その時はなんとかなったが、その後も同じ事の無い様にしっかりその時に居た神格の高めなメンバーで【政府】に脅しておいたので事なきを得たのだった。

 

「で、お前達はなのはに”何を”やらせたいんだ?

ちなみに、俺達はジュエルシードを集める。そこは協力しよう。ただし、現場に向かった際は好きにやらせてもらうぞ。ジュエルシードと同じ位の案件を俺達は持っているからな」

 

廣光のその言葉にハッとされたなのは。

フェイトの事だと分かり、嬉し気に廣光を見つめる。

しかし、そこでやはりと言うか反論の声が響く。

 

「そんな事、認められるか!せめてこちらの要求を呑んでもら「クロノ」………はい」

 

リンディ提督はため息を吐き、

 

「わかりました。けれど、クロノの言う通り、全てを飲むわけにはいきません」

 

「……それもそうだろう、言いたい事があるなら言ってくれ。従うかは俺達自身で決める事には変わりはない」

 

「君は管理局に喧嘩を売りに来たのか!?」

 

「俺はただ、なのはの決着が付きさえすればいいと思っている。俺にとってジュエルシードは……きっかけであり、オマケだな」

 

「「オマッ!?」」

 

廣光の言葉で色々ビックリさせられて言葉を途切れさせるクロノ。

ユーノの方はジュエルシードの事をオマケ扱いであったのを聞いて驚いている。

 

「はぁ、わかりました。でも、身柄を一時、管理局の預かりとする事、後、少しはこちらの指示には従ってもらいます」

 

「少しか、良いだろう。少しなら俺は指示に従おう。一時、身柄を管理局の預かりとする事も」

 

内心ホッとするリンディ提督。

クロノは納得いかない思いで廣光を見つめる。

 

「2人も良いか?」

 

「うん、大丈夫だと思うよ」

 

「僕もだね」

 

「なら、家族に話して了承を貰いに行くぞ。荷物も取りに行かないといけないからな」

 

「「はーい」」

 

その返事を聞いて少しリンディ提督とクロノと話し、エイミィから小太刀を返してもらい、転送ポットに入り、帰宅する廣光達。

リンディ提督はなんとか笑顔で「明日には家付近の公園で待ち合わせしましょう」と言えたと心で安堵する。

とにかく約束を取り付けた事に安堵する。

でも、そこで納得のいかないクロノがリンディ提督に話しかける。

 

「何故、あんな向こうが有利になる事の条件を飲んだんですか。他にも色々あったでしょう!」

 

「あれでも私なりに出来る限りの事をやったつもりです。彼の眼を見た?嘘や誤魔化しが効かないと思ったわ。もし何かまずい言葉を言っていたら彼、協力関係は無くなって【アースラ】内で暴れまわるかもしれないわ」

 

「そんなの、僕が対応しますよ。素人の魔導師に負けたりしません」

 

「……クロノ、それは本心から言っているの?」

 

「……正直分かりません。ヤツの戦闘を見たわけでもないので余計ですね」

 

クロノも一応警戒しているようだ。

恐らく、彼に敵と判断されたら容赦などない。

あの少年の瞳はそう訴えていた。

もし、彼が自分達の事を敵として相対していたら……。

少し身震いするリンディ提督だった。

それにクロノの言う通り、彼が戦っている所は見た事が無かった。

未知数の存在。

今は協力関係にあっても不安は拭えないのであった。




昨日投稿するつもりが年が明けてしまいました!(両手で顔を覆う)
多分また遅くなるでしょうが、今年の目標はなのは無印×とうらぶ完結です!
どうか生暖かく気長に見守って下さい。


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