暁切歌と、その兄貴 (カエル帽子)
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暁切歌と、その兄貴

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暁剪理(あかつきせんり)

暁切歌の実の兄。

大学生、リディアンの近くにある料理学校の生徒。

二課のこととかは周知済みで皆とも仲良し。

そういうことで切歌の過去が変わることになります。



※この作品は作者が勢いで作ってしまったものです。駄文にしてめちゃくちゃな内容かもしれません。それでも良いかたはどうぞ。




突然だが、人間ならば誰だって好きなものはあると思う。体を動かすことが好き、音楽を聴くことが好き、ゲームをすることが好き、料理することが好き、美味しいもの腹一杯食べるのが好き、などなど挙げていけばキリがないだろう。ちなみに今挙げたものは俺が好きなものだ。でも一番じゃない。

 

「兄さんとお買い物、デースっ!」

 

繋いだ俺の左手を満面の笑みで、ぶんぶん振り回す金髪ショートヘアでバッテン髪止めを付けている我が妹の暁切歌。この俺、暁剪理(あかつきせんり)がこの世界で一番好きなもの、と言えるだろう。というか一番好きとかそういう次元じゃないから。天使だから。マイラブリーエンジェルきりかたんだから!あーもう今すぐ思いっきり抱きしめたい!

 

「ほら剪兄、早く歩くデスよ!スーパーのタイムセールが始まっちゃうデス!」

 

「おっとと!?ちゃんと急ぐから引っ張らないでくれ~。」

 

怒ったような切歌の表情もまた可愛いなぁ。知ってるか?これ俺の妹なんだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、着いてしまったな。」

 

「うん、着いてしまったデスよ。」

 

普段なら通うことのない大型スーパーの入り口付近で俺達は最終確認を行う。

 

「切歌。今回の俺たちの任務はなんだ?」

 

「晩御飯のカレーを作るために食材を確保する事デス!」

 

「よろしい。だが心せよ。これから始まるのはタイムセールという名の...戦争だ。」

 

「なんデスとっ!?」

 

「この時間帯のこのスーパーは他所様のスーパーと違い、桁が一つ分少ないのだ。つまりは激戦区。周りをよく見てみるんだ。」

 

「デ、デース?...あっ。」

 

俺の言葉に周りを見渡す切歌。

 

「気づいただろう?あそこで談笑してる奥様方も、あっちで携帯いじってる奥様も向こうで野菜を物色してるおばさんも目の前を見てるようで見ていない。そう、タイムセールの掛け声を今か今かと待っているのだ。」

 

「なんとぅっ!?さすが剪兄ぃデース!」

 

「そんな誉めてくれるな我が妹よっ!そういうわけで兄さんは、あの奥様方と血で血を洗う争奪戦に参加してくるから、切歌は俺がとってきたものを籠にいれて死守するのだっ!」

 

「死守デスか!?」

 

「そうだ、この戦争に参加する奥様方は基本スポーツマンシップに則り、他人が手に取ったものを取ることはしないのだが、たまに他人のかごから奪おうとするトンデモな輩もいるのだ!」

 

「そんな人がいるなんて、許せないデス!」

 

「だからこそ、切歌には俺がとってきた食材達を死守してほしいのだ、この重大任務...やれるな?」

 

「任されたデス!海賊船に乗ったつもりで任せるデース!」

 

「頼んだぞ我が妹よ!」ワシャワシャ!

 

「あぅぅ、あんまりワシャワシャしないでほしいデスー!」

 

はっはっはっ!頭撫でて照れる妹可愛いなぁ!

でも俺が海賊船に乗るんなら俺が他所様のかごから食品奪う悪い輩になるのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザワ...ザワ...。

 

「剪兄ぃ...!」

 

「あぁ、店員さんが動き出したな。周りの奥様方も動きだしている。それじゃあ、行ってくる!」

 

「ご武運をっ、デース!」

 

店員さんが何食わぬ顔で野菜コーナーの一角に立つ。そして、

 

「タイムセール始めますっ!まずはこの玉葱!」

 

戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「玉葱とったどぐふぉ!?誰だ肘鉄してきやがったぐふっ!」

 

「剪兄ぃ!?」

 

「大丈夫だ、この程度かすり傷。さぁ次行くぞっ!」

 

 

 

 

 

「その人参もらったぁぁぁぁ!!!がはぁ!?今度はアッパーカットだとぉ...!?」

 

「剪兄ぃ!?」

 

「何も問題はないぞ我が妹よ!こんなところで立ち止まっているわけにはいかんのだっ!」

 

 

 

 

 

 

「最速でがはっ!最短でぐっ!真っ直ぐにぃだはぁっ!?一直線にぃぃぃぃぃぃ!!!じゃがいもを掴むぅぅぅぅ!!!」ガシィ!

 

「剪兄ぃ!?大丈夫デス!?」

 

「大丈夫だ、問題ない。」

 

「その返事は問題しかないデスっ!?」

 

「さぁ次がラストだ切歌。油断せずに行こう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のこの手が光って唸る!お肉を掴めと輝き叫ぶぅぅぅぅぅ!」ガシィ!

 

「だめデスよ剪兄ぃ!技名叫んでから掴まないとっ!」

 

「ハッ!?やってしまったぁ...!あ、クリスちゃんこれどーぞ。それではっ!」

 

あの戦争の間に飛び込む前に、視界に入った銀髪女の子、というかクリス先輩に取ってきたお肉を手渡しする。

 

「へ?あ、オイ待てって!?あー行っちまった...ってあの中に飛び込むのかよっ!?」

 

「今剪兄ぃはやってはいけないことをしたデス。だからここは心を鬼にして送り出さなければならないのデスっ...!」グッ

 

「いや、全然わけがわからないんだが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし切歌、確認するぞ。」

 

「おっけーデスっ!」

 

「玉葱!」

 

「デースっ!」

 

「人参!」

 

「デースっ!」

 

「ジャガイモ!」

 

「デースっ!」

 

「お肉!」

 

「デースっ!」

 

「つまりは?」

 

「「ミッションコンプリート!」」デース!

 

いやぁ長かった。いや辛かった。主婦の皆さんの執念(家計的な意味)ちょっと舐めてたわぁ。主に物理ダメージが酷い。俺は体育会系ではないしなぁ。

 

「その返事でよく伝わるな?」

 

「当たり前だ、俺の妹だぞ?」

 

「当たり前デスよ、剪兄ぃデスから!」

 

「この妹にしてこの兄貴あり、かぁ。」

 

「よせよ照れるぜ///」

 

「照れちゃうデスよ~///」

 

「誉めて無いんだけどなっ!」

 

何故かまだ残っている、きねクリ先輩からお褒めの言葉をいただいた。やったね!

 

「で、どうして残ってたんだ?」

 

「う、あーまあ、なんだ。あの争奪戦の中に飛び込んでいきやがったから、その...怪我してないか気になっただけだ。まぁ大丈夫そうだし!?アタシは帰るからなっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁剪理の家

 

「第六回!」

 

「チキチキ!」

 

「カレー大作戦はーじまーるよー!!!」

 

「デース!」

 

ひゅーひゅーどんどんぱふぱふぅ!あ、俺のセルフ音声でございます。

 

「...なぁ?」

 

「んー?」

 

「どうしたデスかクリス先輩?」

 

クリス先輩の一声に同時に首を傾げる俺達。

 

「どーしたもこーしたもなんでアタシは此処にいるんだよ!?帰るって言っただろっ!?」

 

「いやぁ、結局買った食材全部使いきるにはクリス先輩いてくれた方が助かるんだよねぇ。」

 

「だから拉致ってきたデース!」

 

「さらっと拉致ったとか言うんじゃねーよ!つか兄貴は大学生だろうがっ!?先輩呼びしてくれるなよっ!?」

 

「かびーん!?もうクリス先輩って呼んじゃ駄目デスかぁ!?」

 

「ちげーよ!お前じゃなくて兄貴のほうだよっ!?」

 

「この前S.O.N.Gの人達から「剪理さんって子供よねぇ」とか言われたから精神年齢はきねクリ先輩より下のはずっ!」

 

「それで先輩呼びしてて悲しくならねぇのかよ!?」

 

「むしろ若返ったことに歓喜。青春時代よ!私は帰って来たぁ!」

 

「帰れよ!青春18きっぷ使って元の居場所に帰れよぉ!」

 

「青春時代って何歳から何歳までのことを言うんデスかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第7回!」

 

「チキチキ!」

 

「カレー大作戦はーじまーるよー!!!」

 

「デスデス、デース!」

 

「はい拍手~!」

 

「...。」パチパチ

 

あ、クリス先輩、無言で拍手してる。心なしか目のハイライトが暗くなってきてる?

 

「テンション低いですな~クリス先輩ぃ?」

 

「...お前らにいちいちツッコミ入れてたら永遠に終わりそうにないからな。あと腹減った。」

 

「あー確かに。俺もあの戦争の後で流石に腹減ったわ。」

 

「あたしもお腹空いたし、調もそろそろ帰ってきちゃうデース。」

 

我が妹もお腹が空いているらしい。ならばふざけている場合ではないか。

 

「んじゃま、ぱぱっと作ろうかぁ!」

 

「デース!」

 

「お、おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間後

 

「うん、これならいい感じじゃね?」

 

「ほわぁ、これぞカレー!って感じデース!」

 

隠し味~とかやってもよかったんだけど、味がどう変わるかもわからないのに試すわけにはいかないよねぇ。今度一人の時に試そうっと。

 

「あーいい匂いだな。というか兄貴は普通に料理できるんだな。」

 

「こんなんでも一応、料理学校の学生なんでね。これぐらいはできるわな。むしろクリス先輩ができることに驚きだわ。」

 

「アタシはまぁ、昔いろいろあったのと、今も独り暮らしで自炊してるからな。生活に困らない程度にはできると思うぞ?」

 

 

 

ピンポーン

 

クリス先輩と話してたらインターホンが鳴った。タイミングどんぴしゃだね。

 

「きっと調デース!」

 

「空いてるから入っていいぞー。」

 

「おじゃまします。あ、カレーの匂い。」

 

うむ、予想通りに調ちゃんだった。もし郵便とかのお兄さんだったらロシアンシュークリームの刑に処してやるところだったが。女性だったら?何もしないよ。

 

「お帰りデース調ぇ!」ダキッ

 

「ただいま切ちゃん。まぁ私たちの家じゃないけどね。」

 

「おつかれさん。メディカルチェックは問題無かったか?」

 

「クリス先輩!?どうしてここに?」

 

さすがに調ちゃんもクリス先輩がいることまでは予想だきていなかった模様。まぁ確かに偶然会っただけだからなー。

 

「戦争で勝ち取った戦利品が思ったよりも多くてね、人数増やすために拉致ってきたZE☆」

 

「買った食材が思ってたより多かったから全部食べきるにはもう一人必要だったと。」

 

調ちゃんの言葉にクリス先輩が凄く驚いた顔をする。

 

「お前、よく今の発言でコイツの言いたいことがわかるな。」

 

「だって思考回路が切ちゃんと大体同じだから。」

 

「青春時代よ!私は帰って来た!」

 

「元の場所に帰れよぉ!?」

 

「クリス先輩。ここは剪兄ぃの家ですよ?」

 

「今ここでマジレス返すんじゃねぇよぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

カレーは普通に美味しかったデース!by暁切歌

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

切歌ちゃんを書きたかったはずなのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。


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兄貴と調の鑑賞会

この間ゲーセン行ったら奏者とエルフナインのぬいぐるみがあったので全員獲ってきました。出費?アハハ、結構デマシタヨー?


『お次はお洗濯デース!』

 

「...。」

 

『えっと洗剤の分量は決まってるって調が言ってたデスが...。』

 

「よかった、覚えてた。」

 

『えっと...あったあったデス!ふー、適当に入れたら服を駄目にしちゃうデスからねー。あの時は大変だったデスよ。』

 

「前に偉い目にあったもんね...。」

 

「俺にも泣きついてきたもんなー。」

 

『柔軟剤と漂白剤?どっちを入れれば?ど、どーするデス!?』

 

「あ、教えるの忘れてた。だいじょうぶかな...。」

 

『ここは両方キャップ一個分で入れるデース!』

 

「ホッ...。」

 

それでも少し多いかもしれないけど許容範囲かな。

 

『これで確かいいはずデース!電源入れて、ポチッと、デース♪』

 

「「ぐふっ!?」」

 

切歌の「ポチッと、デース♪」の声が可愛すぎて横にいる調ちゃんと二人して吐血してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、俺達が今何をしているかについて説明しようか。

まずここは俺の家だ。俺の横には調ちゃんがいて、テーブルの上にはビデオカメラとパソコン。そしてケーブルはパソコンからテレビへと。そしてテレビからはさっきの音声と映像が流れている。

これで大体は察しがついただろう。そうさ、これは切歌と調ちゃんの二人の家に仕込んであるビデオカメラの映像だ。

ちなみに今流しているのは、我が妹の切歌が家に一人でいる時の映像である。

あ、もちろん調ちゃんが俺と一緒に鑑賞会してることから、調ちゃんはこちら側の協力者だよ?

【暁切歌はマジ天使同盟】を結んでいる間柄だ。調ちゃんからは自宅での切歌の様子を教えてもらい、俺からは撮った映像の編集と鑑賞会のための場所の提供をする。そういう関係であり、今は月に1.2回ある鑑賞会の真っ最中ってなわけさ。

 

「いつもいつもありがとうございます。」

 

「いやいや、礼を言うのはこっちの方だよ、調ちゃんがいなかったら、こんなに可愛い切歌の映像なんて見れないからな!」

 

「そんなこと言ったら、撮った動画を編集してより見やすく、コンパクトにまとめてくれる上にディスクやメモリの管理もしてくれて、感謝してもしきれません。」

 

そう、今までの編集した動画はUSBに保存した後、金庫的な物に入れて、俺の部屋の人目につかないところに厳重保存しているのだ。

 

「動画編集は知り合いから頼まれてやり始めただけだったが、まさか役立つ日が来るとはなぁ。今度アイツにデザートの試作持ってってやるか。」

 

学校で何故か知らんが、作った料理の記録のために俺が動画編集の技術を叩き込まれた。あのときはちょっと迷惑だなぁとか思ったが、今の状況考えるとすこしは感謝している。

 

「じーっ。」

 

「もちろん切歌や調ちゃんにも試作品の試食をお願いするからね?」

 

「やりました。」

 

ホントに嬉しいのか笑顔を見せる調ちゃん。この子も美少女だよなぁ。というかシンフォギア奏者は皆美少女ばかり。一人は成人してるけど、アイドルやってるしな。

 

「...あ、あの。」

 

「ん?...あ。」

 

調ちゃんに声をかけられて気づく。右手が調ちゃんの頭にあった。

 

「すまん、ついな。そろそろ続きを観ようか。」

 

「はい、りょーかいです。」

 

というわけで半ば強引に元の路線に戻し、一時停止した映像をリスタート!

 

『洗濯機が回ってる間に掃除機をかけるデース!と、その前に。』

 

お?何やらゴソゴソと...あ、あれはっ!?

 

『これで完璧デスッ!』

 

「ごほおっ!?」

 

頭に三角巾をつけて、緑の下地に白いバッテンの入ったエプロンを装着した我が妹の姿があった。

 

「調ちゃん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「グッジョブ!いいセンスだ!」

 

俺は調ちゃんとがっちり握手をする。さすが調ちゃん、切歌に似合う物をバッチリと選んでくれてお兄さん大歓喜!

 

「大好きな切ちゃんのためなら、これぐらいは当然です。」

 

言い切ったよこの子。でもだからこそ安心して切歌を任せられる。たやマさんや他の皆も信用してるけど、切歌のことに関しては、やっぱり調ちゃんが一番だ。

 

「うむ、これからもよろしく頼むぞ。」

 

「任せて。」

 

『コイツでホコリを吸いとってやるデスよ!』

 

画面の中では切歌が掃除機を使い始めた。だが、引っ張りだしたコードは乱雑に放られており、このままだと、

 

『わ!?わわ!?』ガタン!

 

掃除機のコードに足を引っ掻けて見事に前に倒れた切歌。

 

「やりやがったよ。コードに引っ掛かって倒れる人初めてみたわ。でも」

 

『いたたー...。掃除機に、こんな罠が仕掛けられているなんて。お掃除も油断ならないデスね...!』

 

「「涙目切歌(切ちゃん)可愛い。」」パン!

 

無言のハイタッチ。

 

「よくハイタッチわかったね?」

 

「剪理お兄さんの思考回路は切ちゃんと大体一緒だから。」

 

うん、兄妹だからね。当然だね。え?ちがう?

 

『ピンポーン』

 

「あ、もしかして...。」

 

『あぅぅ、このタイミングでお客さんデスか。ちょっとお待ちくださいデース!』ドタドタ

 

『はーい、どちらさまデスかー?』

 

『よーっす...ってなんで若干涙目なんだよ?なんかあったのか?』

 

やってきたのはビニール袋を引っ提げたクリス先輩だ。

 

『実は掃除をしていたのデスが、コードに足引っかけて転んじゃったデスよー。』

 

『掃除機のコードですっ転んだぁ?ハハハッんなことやるやついるんだなぁ!』

 

『そ、そこまで笑わなくてもいいじゃないデスかぁ!』

 

『わりぃわりぃ。とりあえずぶつけた所冷やしとけ。掃除機はアタシがやってやるからよ。』

 

「やっぱ、きねクリ先輩は優しいよなー。」

 

「うん、言葉と食べ方は汚いけど優しくて頼りになる先輩。」

 

「調ちゃん言うねぇ。」

 

なんだかんだ言いつつ手伝ってくれるきねクリ先輩まじでツンデレ過ぎて可愛い。

結局クリスちゃんの押しに勝てなかった切歌はソファに座り、掃除機はクリス先輩が終わらせた。

 

『うっし終わりっと。』

 

『先輩ありがとうございましたデス!』

 

『気にすんな。アタシが勝手にやっただけだからな。』

 

『お茶をどうぞデス!それで今日はウチに何しにきたデスか?』

 

『あ、そうだった。あの馬鹿からオマエにだ。あの時はありがとうってよ。確かに渡したぜ。』

 

「響のやつ、切歌に何をしてもらったんだ?」

 

「確か人助けを手伝った、とか言ってたかな?」

 

いつもの趣味の人助けかぁ。響の場合は趣味じゃなくてもはや病気レベルだけどな。

 

『そんな気にしなくていいデスのに...でもなんでクリス先輩が持ってきたデスか?』

 

『アイツまた相方のやつとの約束すっぽかしやがったみたいでな。これ持って慌ててた所に出くわしたらアイツ有無を言わさず頼んでいきやがった。』

 

『あはは、響さんらしいといえばらしいデスね。』

 

『明日あったらぜってぇ締めてやる。魚みたいに。』

 

『待つデスよ!?それじゃあ死んじゃうデス!ほどほどにしてあげるデスよ!?』

 

「うわぁ、クリス先輩だいぶ怒っていらっしゃるなぁ。これは後日どうなったの?」

 

「宣言通り、朝一で響さんは活け締めされました。倒れた響さんピクピクしてましたね。」

 

いつものツッコミの延長線上のやり取り、目に浮かぶわぁ。響も、もう少し落ち着きがあればなー。あーでも元気印が美点でもあるから、やっぱりあのままの方がいいな。

 

『あーそうだ。アイツの話してたら思いだしたが、そっちのクラスも近いウチになんかテストあるんだろ?準備はできてんのか?』

 

『うっ!?クリス先輩嫌なことを思い出させないで欲しいデス...。』

 

『おいおいなんだよ、そこは全く問題ないデス!って元気よく言うところだろ?』

 

『思ってたより勉強難しいデスよ。ついていくのがやっとデス。』

 

『お前んとこの兄貴に頼るのは駄目なのか?』

 

『うー、剪兄ぃなら頼めば何でも引き受けてくれる気がするデスが...なんでもかんでも頼んでたら剪兄ぃに迷惑になっちゃうデス。だから、大抵のことは自分達の力でどうにかしたいんデス!』

 

切歌のやつそんなこと思ってたのか。俺としては頼ってくれたりとか何時でもいくらでもカモーンって感じなんだが、あーやっべ嬉しすぎて涙でるわ。

 

「今の発言に全世界の俺が泣いたわ。あとでこの部分だけ音楽データとして残そう。そして墓まで持っていってやる。」

 

「切ちゃんとっても優しいから。私にもよく剪兄ぃは自慢のお兄ちゃんデース!って皆にもよく言ってるよ。」

 

涙でるところじゃないな。今ならこの部屋を涙の海で一杯にできるかもしれない。

 

「それは物理的に無理だと思います。」

 

「まだ何も言ってないんだけどな。」

 

「切ちゃんと思考回路は同じ。」

 

そうだったね、納得しました。

 

『なかなか殊勝な心がけじゃねぇか!しかたねぇ、アタシが見てやるよ。このまま帰ってもなんもねぇしな。』

 

『え!?でも先輩にも悪いデスよ!』

 

『気にすんなよ、ほらわかんねぇとこの問題見せなって。』

 

この後、結局クリス先輩は調ちゃんが帰ってきた後も二人の勉強を21時ぐらいになるまで見ていったのでした。やっぱりクリスちゃんツンデレ可愛い。

 

「それで、テストはどうだったの?」

 

「先輩のおかげでバッチリ。ぶい。」

 

「おーけー!ならばテスト突破祝いを用意しようじゃないか!くふふっ、みなぎってきたぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「先輩の後ろにオーラが見える...!」

 

「というわけでまずは買い出しからだっ!調ちゃん手伝ってくれるか?皆の好みがわからんからな、アドバイザーを頼みたい。」

 

「もちろん、喜んで。お兄さんの料理には学ぶことが多いから。」

 

小さな鑑賞会の後片付けをしっかりした後、テスト突破祝いを俺の家で盛大にやりました。

 

「あれ?私のだけ小さくない?」

 

「ん?響はテストの平均点下回ったから皆のより小さくしたぜ。」

 

「そんなぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うっせぇバカ!」スパーン!

 

「はうっ!?」

 




また気が向いたら投稿するかもしれません。
お読みいただきありがとうございました~。


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暁切歌の一大事、デース!

私、暁切歌は怒っているデス!これは今までの人生の中でも5本の指に入るぐらいに一大事デース!

冷蔵庫にしまっていたプリンが賞味期限切れてたりとか、授業中にシャーペンの芯が切れたりとか、間違って水溜まりを思いっきり踏んで制服汚れたりとかそういうのとは比べ物にならないほどに大変なことが起きてるデス!

 

「剪兄ぃからの連絡が少なくなっているんデスよ調ぇ!?」バンバン!

 

「うん、とりあえず落ち着こうか。お店の人達に迷惑だからね。」

 

 

 

 

 

 

 

「ごくごく、ぷはぁ!やっぱりファミレス来たらメロンソーダが一番デース!調もそう思わないデスか!?」

 

「メロンソーダも好きだけど、一番となると私はオレンジジュースかなぁ。」

 

「調の言うとおりオレンジジュースも捨てがたいデスね...。」

 

他にも白ぶどうとかもあったはず。いつかは、あのドリンクバーとかいう機械に入ってる飲み物全部飲んでコンプリートしてやるデス!F.I.Sにいた頃はこんな物があるなんて知らなかったデスし。剪兄ぃやマリアが連れてきてくれなかったら、一生知らないままだったかも?

 

「ドリンクバーの存在は私も衝撃的だったけど、とりあえずお兄さんの話をしよう切ちゃん。時間が来ちゃうよ?」

 

「はっ!?そうだったデスよ!一大事なんデスよ!」

 

危うくドリンクバーの存在で剪兄ぃのことを忘れるところだったデース。

 

「剪兄ぃから...。」

 

「お兄さんから?」

 

「剪兄ぃから来てたLINEの連絡が1日3回から1回に減っちゃってるんデスよぉ!」

 

毎日必ず送ってくる剪兄ぃのLINEが減るなんて天変地異の前触れデス!近いうちに槍の雨が降ってくるかもデス!?

 

「えっと、お兄さんにだって忙しい時ぐらいあるんじゃないかな?」

 

「でもでも!アタシは見ちゃったんデスよ!剪兄ぃが響さん達とファミレスや喫茶店に入っていく所をっ!しかもこっそり尾行して話を聞いてみたら新しく作るケーキの案の相談デスよ!?」

 

「そこまでは不思議なことじゃないかもだけど?」

 

「違うんデスよ調っ!剪兄ぃは響さんやクリス先輩には聞いてるのにアタシには一切その相談が来てないことが問題なんデス!なんでアタシには聞いてくれないんデスよぉぉぉ!!!」バンバン!

 

なぜかわからないけど剪理兄ぃはアタシには新作のしの字も話題に挙げてはくれなかったデス。何故アタシだけ仲間外れなのデスか!

 

「どうどう、とりあえずメロンソーダ飲んで落ち着こうね切ちゃん。」

 

「ごくごく、ぷはぁ。やっぱりメロンソーダは最高デース!」

 

「うーん、とりあえず皆がどんな感じでお兄さんと話をしてたか聞かせてくれる?」

 

「えっとデスねー...。」

 

 

 

 

 

 

 

 

剪兄ぃ&ひびみくの場合

 

「なんだかこうして3人で出かけるのは久々だね!」

 

「剪理さん、ホントに奢りでいいんですか?」

 

「あぁ構わないよ。その分、俺の話にちゃんと付き合ってもらうだけだから。」

 

「兄さんの奢りなら遠慮はいらないよね?今日はたーっくさん食べちゃうよ!」

 

「もう響ったら!」

 

「いいって。軍資金はそれなりにあるからな。じゃんじゃん食べるといい。」

 

「やったーーーー!!!!」

 

 

 

20分後

 

「さて、そろそろ話をしたいところだが。」

 

「はむはむもぐもぐもきゅ!」

 

「うん、響はそのままでいいや。未来ちゃんは新作のケーキについていい案ある?」

 

「うーん、やっぱり色は緑で...。」

 

 

 

10分後

 

 

 

「ごちそーさまでしたっ...!」

 

「お腹空いてたのはわかるけど、この量。剪理さんお金ホントに大丈夫です?」

 

「ん、問題ないよー。それより響はホントよく食べるよなー。というか今日はいつもより多くない?」

 

「昨日は遅くまでレポートをやってたから、寝坊して朝ご飯食べ損ねちゃいまして、たはは。」

 

「なるほどねぇ...そしてまぁほっぺにご飯粒はお約束かぁ。」ヒョイパク

 

「ふぁ?な、なに?お兄さん今何したの?」

 

「ほっぺについてたご飯粒を取っただけだよ。」

 

「...くぁwせdrftgyふじこlp!?」ダッ!

 

「あ、行っちゃった。やっぱ恥ずかしかったか?ねぇ未来ちゃん?」

 

「...私が食べたかったな。」ボソッ

 

「 うん、聞かなかったことにしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

剪兄ぃ&クリス先輩の場合

 

「よーっす。」

 

「おう、呼び出すような形になってすまないな。」

 

「気にすんな。そのぶん一杯食わしてもらうからな、覚悟しとけよ?」

 

「あーうん。響を越えることはないだろうから怖いことは何もないね。」

 

「アイツどんだけ食ったんだよ。」

 

「まさか3人で1万いくとは思わなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、切歌達の勉強をみてくれてるって聞いたぜ。ありがとうよ。」

 

「べ、別にたまたま時間があって、たまたますることが無かったから、やってるだけだ。あとはまぁアイツにも一応頼まれたってのもあるしな。」

 

「マリアさんか。あの人も最初に顔合わせた時は常識人だと思ってたんだけどなぁ。切歌と調ちゃんが絡むとあんなに性格変わるとは思わなんだ。」

 

「お前それ鏡見てから言えよ。」

 

「まぁとにかく。切歌の面倒をみてくれてる礼にコイツをあげるぜ。」

 

「おいおい礼なんていらねぇってのに...んでこれの中身はなんだ?」

 

「うたずきん変身セットだが。」

 

「ぶっは!?なんつーもん買ってきやがるんだてめぇ!?というかよく買えたな!?」

 

「俺の人脈をなめるなよ?大学の俺がいるクラスは色々と濃い面子多過ぎて混沌と化しているからな。コスプレ服用意するなんて軽い軽い(笑)というかそれ手作りだから大事にしろよ?」

 

「しかも手作りとか凝りすぎだろう!?というかサイズは大丈夫なのかよ?」

 

「その辺は問題ない。サイズは響達から事前に調べてもらって奴に渡したからな。あぁ、俺はクリス先輩のスリーサイズは聞いてないし、奴もクリス先輩が着ることは知らんから安心しろよ?」

 

「とりあえずアイツらには後で感謝の絨毯爆撃(物理)をしてやるか。」

 

「ま、ほどほどにな。」

 

「お前も入ってるからな?」

 

「まじか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ざっとこんなもんデスかね!」

 

「新作の相談話が2割を切ってた気がする。」

 

「クリス先輩のうたずきん、早く見てみたいデスよ~。」

 

絶対に可愛いと思うデス。というか剪兄ぃの知り合いって一体どんな人達なのか、ちょっと気になるデスね。

 

「それには凄く興味あるけど、その前に私達は感謝と言う名のミサイルから逃げ切らないといけないんだよね。」

 

「あう~そうでした。でも調と二人なら乗り切れるハズデース!」

 

「そうだね、切ちゃんと一緒なら、もう何も怖くない。」

 

なんか今すごい寒気がしたデスが気のせいデスかね?

 

「あ、もうこんな時間。切ちゃん、そろそろ行かないと間に合わなくなるよ?」

 

「いけないデス!それじゃ調、行ってくるデスよっ!」

 

時間に遅れたらS.O.N.G.の皆さんに迷惑かけちゃうデスからね。全力でぶっとばしていくデスよー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...という感じらしいですよ?」

 

「まぁそうなるよなぁ。」

 

切ちゃんがお店を出ていったのを確認した後、私は自分の後ろの席に聞こえるよう声に出す。すると後ろの席のに座っていた男性がさっきまで切ちゃんがいた席につく。バンダナにだて眼鏡をしているけれど、間違いなく剪理お兄さんだ。

 

「切ちゃんがいるってわかってましたよね?」

 

「もちろん。後ろでメロンソーダ美味しいデース!なんて騒いでればなぁ。毎回メモ帳スケッチブックでスルーしろとか書きながら普通に会話とかね、右手首が少し痛いぜ。ついでに言えば切歌を尾行してた調ちゃんにも気づいてました。」

 

「やっぱりお兄さんにはかないませんね。」

 

そう、私は尾行する切ちゃんをさらに尾行してました。さすがに細かい会話内容までは聞けなかったけど。でもお兄さんの手書きスピードには驚いた。なんか残像が見えたし。

 

「そういえばあんな会話内容でケーキの案は大丈夫だったんですか?」

 

「それなら問題ないよ、後日また相談しにいったしな。ふふん、期待してくれていいぜ?」

 

「あ、そうなんですね。そしたら、わざわざあの時に聞かなくてもよかったんじゃあ?」

 

「...。」ニヤリ

 

私がそう聞くとお兄さんは悪い笑顔を浮かべた。あぁうんなるほど。

 

この人、単純に切ちゃんの反応を楽しんでただけだわ。

 

 

 

 

 

 

 

新作ケーキは切ちゃんをモチーフにした色合いのものでした。皆にも大好評、とても美味しかった。

 




あれおかしいな?調ちゃんをこんなキャラにするつもりなかったのに、どんどん変な方向へ。調ファンの方すいませんです。

今回もお読みくださりありがとうございました。


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暁剪理のいる新年のお祝い

新年あけましておめでとうございます!
こんな気まぐれ小説を読んでくださっている方々、今年も気紛れなるままにのんびり書きますのでどうぞよろしくお願いいたします。



巫女さん切歌が可愛すぎて可愛すぎてやばい!!!


切歌side

 

「新年あけまして!」

 

『おめでとうございます!』

 

S.O.N.Gの食堂にて、あたし達奏者と司令達で新年の挨拶デース!元日ではないデスが、皆とこうして新年を祝えるのは嬉しいデース!

今も司令からの挨拶が終わって、これから待ちに待ったおせち料理!...のはずなのデスが。これはどういうことなのか早速、司令に質問をしたいと思うデス。

 

「はいはーい!さっそく質問デース!」

 

「うむ、なんだろうか切歌君?」

 

「剪兄ぃはどこにいるデスか?」

 

『うんうん。』

 

あたしの言葉に頷くみんな。朝早くに出ていったはずの剪兄ぃの姿が何処にも見当たらず、皆も不思議がっているデス。

 

「切ちゃんは、お兄さんから何にも聞いてないの?」

 

『用事があるから先に行ってくれ、始まる頃にはそっち行くから。』

 

「って言ってたデスが...。皆は何か聞いてないデスか?」

 

調からの質問が来たデスが、これ以上のことは教えてくれなかったので答えようがなく。皆も顔を見合わせてる辺り、やっぱり誰も知らなそうデス。

 

「まぁ剪理のことだ、何か皆を驚かせようとしているのではないか?」

 

「同感ね。彼ならやりかねないわ。」

 

「間違いないな。アイツはこういう時、絶対何かやらかすはずだからな。そこまで心配することじゃねぇだろ。」

 

「そういう割にはあんまり落ち着いてるようには見えないけどなぁクリスちゃん。さっきから足をとんとんしてるし。」

 

「なっ!?ばっ誰がアイツの心配なんかしてるってんだ!あぁ!?」

 

「痛い痛い痛い!待ってクリスちゃん頭グリグリしないでぇ!」

 

翼さんの言葉に、マリア、クリス先輩が続いて発言。響さんが絞められてるのはともかく、あたしも間違いなくそうだとは思うのデスが...。

 

「あー痛かった...。でもでも、剪理兄さんが時間に遅れるなんて珍しくない?」

 

「いつもなら遅れることなんてほとんどないもんね?」

 

クリス先輩のロックから抜け出した響さんと未来さんが言うとおり、剪兄ぃはあたし達と待ち合わせする時は必ず先に来てるデスから、こういった日に遅れるっていうのはどうにも引っかかるデス。

 

「あぁ、剪理君についてだが」

 

ピピピ!ピピピ!

 

「わっ!?なんデスか!?」

 

司令が何か喋ろうとしたところで急に携帯が鳴り出したデス。何か事件が起きたデスか?

 

「あぁ俺だが...ふむ了解だ。到着を待っているぞ。」

 

「何かあったのですか叔父様?」

 

翼さんも皆も身構える。が、司令の顔は険しくなることはなかった。

 

「安心してくれ。剪理君が、もうじき到着するという連絡だ。」

 

司令からでた言葉にほっとする皆。

 

「よかったねクリスちゃん!」

 

「そうだな...ってアタシは心配なんかしてねぇって言ってんだろ!」

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

あっちのコントは置いておくデス。

 

「司令は剪兄ぃが遅れること知ってたデスか?」

 

「あぁ。つい1時間前のことにはなるのだがな。元々は皆の言うとおり既に到着してるはずだったんだが、少々トラブルがあったようでな。さっきの連絡はもう近くまで来た、というものだ。」

 

「そうだったデスか。事故とかじゃなくてよかったデスよー。」

 

「でもトラブルってなんなんだろう?」

 

調の言葉にあたしも頷く。確かにちょっと気になるデスね。

 

「それは本人から聞いてみるといい。なんだか学校の方で何かあったらしいのだが、俺も正直な所よくわかってないからな。迎えにいった緒川の方がまだわかると思うぞ。」

 

「「「「「あー。」」」」」

 

「「「「?」」」」

 

司令の言葉に一部を除いて首を傾げる皆。その一部である響さん、未来さん、クリス先輩に調とあたしは目線を交わす。『学校』というワードでなんとなく察したデス。

 

「切歌達は何か知ってるの?」

 

「まぁ...うん、たぶん剪兄ぃのクラスメイト関係で何かあったと思うデス。」

 

「むしろそれしかない。」

 

「だよなぁ。」

 

「ですよねー。」

 

「だよね。」

 

マリアからの質問にあたし、調、クリス先輩、響さん、未来さんの順に返事をして、意見は見事に合致。あたしの場合は、この前、好奇心が勝って剪兄ぃの部屋に入ったからだし、調はたぶん料理関係でよく一緒だから。クリス先輩は、この前の『うたずきん変身セット』関係で間違いないデス。響さんと未来さんは剪兄ぃの入学と同時にリディアンに来ているハズですから知ってるのは不思議ではないデスね。

 

「なんだか私達だけ仲間外れのようで少し寂しい感じだな。」

 

「そうね。ここに長く留まれない分、彼のことを知らないのは確かだし。来たら聞いてみましょうか。」

 

「うむ、そうだな...む?」

 

翼さんがマリアとの話し合いが終わった所で食堂の外が騒がしい。なんだろうと思った所で扉が勢いよく開かれた。

 

「失礼しまーす!あけましておめでとうございまーす!遅れてすいませんでしたぁ!」

 

そして、元気のいい声と共に剪兄ぃが入ってきたのを見て、あたしは剪兄ぃの元へ駆け出したデス!

 

 

 

 

 

 

剪理side

 

たはー。参った参った。まさか一時間前には現場入りするつもりが30分も遅れることになろうとは思わんかった。

 

「剪兄ぃ!」

 

「おおっと!?」

 

部屋に入った途端、切歌に駆け寄られ抱きつかれた。あぁ~幸せ~。この温かい感じ、最高だっ!

 

「もー剪兄ぃ遅いデスよ!皆剪兄ぃのこと待ってたデスよ!」

 

怒った顔もやっぱり可愛いので頭ナデナデ。今日も我が妹は最高だな。

 

「悪い悪い。ちょっと想定外の出来事が起きてな。思いの外時間がかかっちまった、すまないな。」

 

「むぅぅ...。」

 

顔を見られるのが恥ずかしいのか、俺の胸に頭をぐりぐり押し付けてくる切歌。どことは言わんが柔らかい感触が素敵!

 

「おらそこ!そういうことは家でやれ!まったく...。」

 

「クリスちゃん顔がニヤけてるよ?」

 

「なっ!?ニヤけてなんかねぇ!?」

 

「よほど心配だったんだな雪音。」

 

「先輩まで何言いだすんだよ!?」

 

信号機カラー三人組は平常運転で安心安心。

 

「あーっとすまん。皆も待たせちまって悪かったよ。ほら切歌、離れてくれ。俺が動けん。」

 

「あぅぅ、仕方ないデスね。」

 

そう言うと残念そうに離れる切歌。俺としても離れるのはちょっと惜しいが仕方ない。...ごめん嘘ついた。結構惜しいです。だから調ちゃんは無言で見つめないで。

 

「オホン。それでは皆さん!待たせちまったが、そのぶん通常の2倍は驚いてくれること間違い無しの俺からのお年玉なのぜ!スタッフさんお願いします!」

 

俺の言葉を皮切りにスタッフさんが少し大きな四角い箱を運び込んできてテーブルに並べていく。

 

「もしかしてもしかしてこれってまさか...!」

 

並べられた箱を見て目をキラッキラッさせる響。ホントご飯には目がないね。

 

「そうさ!もしかしなくても、この箱全部!おせち料理だぁぁぁ!!!」

 

そう、スタッフさんが運んでいたのは、おせち料理の入った重箱だ。

 

「やったあぁぁぁ!!!剪理兄さんのおせち料理食べられるぅぅぅ!!!」

 

「うっせぇ騒ぎすぎたバカっ!」スパーン!

 

「きゃうん!?だから叩かないでってばクリスちゃん!」

 

響のテンションが吹っ切れそうなところで、きねくり先輩が止めに入った。騒ぎすぎではあるけど、ここまで喜んでくれると作ったが側としても嬉しいわな。

 

「剪理の料理が食べられるとは嬉しい限りだが...なぁ剪理?」

 

「はいはいなんでしょうか?」

 

翼さんが周囲を見渡しながら俺に訪ねてきた。まぁ次の言葉は予想がつく。

 

「この重箱、何個あるんだ?」

 

「15個ですね。」

 

「もしかしなくても遅れた理由というのは。」

 

「あはは、ちょっと量が増えちまってね。」

 

うん、そうなんだ。最初は多くても5個のはずだったんだがなぁ。うちのクラスメイトのバカ共が料理作ってる俺のところに押し掛けてきて、あれもこれも作れだなんだと言われ、ならば手伝えと言った結果、何故か10個も増えちまったんだ。

 

「これ、アタシらだけで食べきれんのか?」

 

「残った場合はスタッフの皆に分けて回るから安心してくれ。」

 

クリスぱいせんの呟きに司令が答えてくれた。いや、ほんとすいません。お手数おかけしますね。

 

「すいません司令。予定よりもかなり多くなってしまって。」

 

「気にするな、それに俺も君の料理は美味いという評判が気になっていてな。」

 

「まじですかー。ならば存分にご賞味あれ!といいたいんですけど、今回はクラスメイトとの合作なんで、今度ちゃんとしたものを作りましょう!」

 

「ほぅ、ならば益々期待ができるな。さて、これだけの数となると一つ一つ取るのは大変だろうから立食形式としよう。個人で皿を一つ持って食べたいものの所へ行くように。」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

司令の言葉に動き出す周りの人達。さて、俺も皿を取りますか!

 

 

 

 

 

 

おせち料理は皆に大好評。さすがに全部は食べきれなかったものの、残りは司令の宣言通りにS.O.N.G.の皆さんにおすそわけすることとなり、全て美味しく食べてもらえることとなった。

それと、この日の後から、しばらくの間、奏者の皆がランニングする光景が外で見られるようになった。

 

 

 

 



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暁剪理は振り返る

XDでマルチを頑張っているのですが、真の結晶全然でないー。最大レベルの上限突破がいないとアリーナもマルチのハードも厳しくて困る。

今回、後半ちょっと真面目な内容となっております。



「よいしょーっと。すまんな切歌、せっかくの休みなのに掃除手伝ってもらっちまって。」

 

「いいんデスよ剪兄ぃ。それに二人でやれば早く終わるデース!」

 

 

 

今日はS.O.N.Gの仕事がお休みの日。調と何処かへでかけようと思ったのデスが、調は用事があるみたいなので、一人で剪兄ぃの家に遊びに行ったのデス。でも剪兄ぃはちょうど家事を始めたところだったらしく、ゲームでもしていてくれとは言われたデスが、剪兄ぃが一人掃除している前でゲームも落ち着かないので、お手伝いを申し出た、という次第デース。ふふふ、今まで培ってきたアタシのお掃除力を見せてやるデース!

 

「あ、転ばないように気をつけてなー。特にコードとか。」

 

「うっ、って何で剪兄ぃがコードで転んだこと知ってるデスか!?」

 

「...前に自分で転んだって言ってたぞ?覚えてないのか?」

 

「あれ、そうだったデスか?うーん...?」

 

少し返事が遅かったけど考え事でもしてたデスかね。でもアタシ調にもコードで転んだなんて言ってないはずデスけど...まぁいいか。

 

「じ、じゃあ俺は風呂場を片付けてくるから、ある程度片したら寛いでていいからなー。」

 

「了解デース!」

 

こっちを見ずにスタスタとお風呂場に向かう剪兄ぃに元気よく返事をして、剪兄ぃがお風呂場に入ったことを確認。さて、それじゃ掃除の続きを...ん?

 

「今なら剪兄ぃの部屋に入れるのでは?」

 

普段は調と二人でよく遊びに来てるデスが、剪兄ぃの部屋には一度たりとも入ったことがない。部屋には入っちゃダメと剪兄ぃに止められているから入らないようにしていたデスが。

 

「やっぱり気になるデース!」

 

 

 

 

 

というわけで、やって来ました剪兄ぃの部屋。勉強机の教材、本棚にたくさん入ってる料理本や、何か大事な物を保管してるのか金庫みたいな物?を見れば普通デスね...それだけ見ればデスが。

本棚の上の方に飾ってあるフィギュアってアタシの記憶が確かなら前にクリス先輩が店頭で欲しがってた「うたずきん」の限定フィギュアだったよーな?(本人は否定したデスが)

そんでもってその隣に何故かあるミニモアイ像×3にマトリョーシカが中身全部並べられてたり、壁には魚拓とかいうんデスかね?が飾ってあり、その横には日の丸の国旗。さらに横にはいつか見た「うたずきん」のコスプレ衣装が。あれ?衣装はクリス先輩が持ってるハズなのに何でここに?

机の上にも何か見たことあるような無いような小物が何点か、もういいや。一つ一つ見てたらキリが無いデース。

 

「とりあえず剪兄ぃが普段読んでる本でも漁ってみるデスか。」

 

そうして本棚を見て、写真が飾ってあることに気づいたので手に取ってみる。これはたぶん剪兄ぃの大学の旅行の時の集合写真デスかね。でも集合写真って普通カメラにピースしてたり笑顔だったりするデスよね?なんで鼻血でた時みたいに鼻にティッシュ突っ込んでる人がいたり、取っ組み合いしてる人がいたり、フード被って水晶玉覗きこんでる人がいたり、コスプレして漫画本読んでる人がいたり、ショック受けたのかorzしている人がいたりするんデスか。記念写真なのに記念って感じが一ミリも感じられない写真なんてこの世にあるんデスね。

 

あ、orzしてる人、剪兄ぃだったデス。

 

 

 

 

 

 

 

気を取り直して本を漁り始めてみるデスよ!んー料理本がたくさんでてくるデスね、特にお菓子の本については沢山あるデス。七割ぐらいはそうなんじゃないデスかね。

 

「あれ、これ料理本じゃないデス?」

 

料理本に紛れて、表紙も何も書いてないノートみたいなのを見つけたデス。ちょっと中身を読んでみるデース!

 

「さてさて、何が書いてあるデスかね~...」

 

 

 

 

 

 

△△△△ねん◯がつ◯にち

 

おとーさんから、のーとをもらいました。にほんごのべんきょうにもなるといわれたので、これからまいにちにっきをかいていこうとおもいます。

 

 

 

 

 

「これ剪兄ぃの日記デスか...?」

 

よくみたら日付が何年も前のデス。剪兄ぃは確か日本に来たとき記憶喪失だったと言ってたデス。もしかしてその時の日記?そしたら、これを読んでいけばアタシがF.I.Sにいる間の剪兄ぃのことがわかる...?

 

「...み~た~なぁ~?」

 

「ぴぎゃあああああ!?って剪兄ぃ!脅かさないでほしいデース!」

 

日記のことに集中しすぎて、剪兄ぃの気配に気づかなかったデース。心臓が飛び出るかと思ったデスよ!

 

「だいぶ集中してたみたいだから、ちょっとやってみたくなった。とりあえずは~っと。」

 

「ほえ?」

 

そう言いながら両の手をグーにしてアタシのこめかみに当ててくる。あ、これもしかしなくてもやばいやつデス!?

 

「言い付けを守らない悪い子にはオシオキだ♪」

 

「ま、待つデス謝るデスちゃんとごめんなさいするデスから待ってぎゃああああああああああああ!!!!!!?????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...おうふ。」

 

「まったく、部屋には入るなとあれほど言ったろうに。あと女の子のだしちゃいけない声だぞ。」

 

「それならもう少し加減してほしいデースっ!」

 

うぅ~まだ頭がじんじんするデスよ~。剪兄ぃのアイアンクローは孤児院にいた時よりも、さらに強力だったデス。

 

「んでまぁ、この部屋を見た感想は?」

 

「混沌としてるデース!」

 

「だよなぁ。自分でもそう思うわ。」

 

「なんでこんなカオスな部屋なんデスか?」

 

「それはだな...。」

 

聞いてみると、この部屋の飾り物のほとんどは写真に写っていた剪兄ぃのクラスメイトからのプレゼントということ。あの写真だけ見るとちょっと怖い印象デスが、なんだかんだで仲はいいみたいデス。ちなみに「うたずきん」のコスプレ衣装はクリス先輩のではなく剪兄ぃ用の衣装で、一度だけ着たことがあるらしいデース。

 

「見てみたいデス!」

 

「ダメだぜっ!」

 

むぅ、剪兄ぃのけちんぼデース。

 

「まぁ俺のクラスメイトのことはいいんだ。切歌が気になってるのは日記の方だろう?とりあえずリビングに行こうか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事用のテーブルの上を片付けて、いつもの俺の席に着く。そして、さも当然のごとく切歌が俺の上に座る。

 

「えっと、切歌さーん?その、この体勢だと、ちょっと読みづらいんだけども。」

 

「読むのはアタシがするデース!だから剪兄はアタシの質問に答えてくれればいいデスよ!」

 

そう言われてもなぁ、切歌の柔らかい感触や髪の香りに俺の理性が揺さぶられるんですが!だがここは我慢だ俺。こんなとこで発情してみろ、「剪兄ぃなんて嫌い!」とか言われて俺の人生ジ.エンドである。

 

「...あ、もしかして嫌だったデスか?」

 

「絶対にそれはない。」

 

「そ、そうデスか。よかった。」

 

不安げにこちらを見てきた切歌に即答してやった。確かに社会的に抹殺されそうな絵面ではあるが、昔から絵本を読んだりするときは決まって俺の膝の上に乗ってきていたので、切歌としては、昔のように甘えたかっただけなんだろう。だからまぁ髪をわしゃわしゃするのは間違ってないハズ。

 

「わっ!?剪兄ぃ日記読めないデスよぉ♪」

 

ほらね。読めないとか言ってても抵抗は全然しないし。

むしろ楽しんでる節が見えるぐらいだし。背格好が多少変わっても、この笑顔は昔と変わってないなと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺こと暁剪理は、ちょっとした小国のちょっとした街のちょっとしたいいとこの子供として産まれた。小さい頃の記憶は生憎とそんなに覚えてはいないけど、父さんと母さんはとっても優しい人だったのは覚えてる。俺が転んだりして大泣きしたときも、悪いことして怒った時も、最後には必ず笑顔で頭を撫でてくれた。父さんはちょっと力強くて、母さんは柔らかくて、でも二人ともとっても暖かくて、だから切歌が生まれてきた時には俺が同じ事をしてあげるんだ!なんて思ったりしてたんだ。

この時の俺は4歳。この後に起こる悲劇を知る前の、俺がまだ純粋な子供だった頃のこと。

 

 

 

 

切歌が生まれてから一年が経つ。支えが必要ではあったものの切歌はちょっとずつ歩けるようになった。

その日もまた、切歌を可愛がっているときに、とつぜん奴等は現れた。

後に認定特異災害‘ノイズ’と呼ばれる化け物達が突如として街を襲ってきた。

俺と切歌は父さんと母さんに連れられて逃げ出したけれど、その途中で父さんはノイズに刺されて目の前で灰になった。そして母さんもまた、逃げ込んだ建物の中で俺に切歌を託して灰になった。

けれど、託されたとはいえノイズに囲まれた状態でどうやって生き残れというのか。諦めかけていたその時、ノイズ達は突然体が崩れ去り、その場から消え去ってしまった。

後から聞いた話でわかったけれど、ノイズは時間で消滅するらしい。つまりは、あのタイミングで街に現れたノイズは時間切れとなり、一斉に消え去ったということだ。

何が起きたのか全くわからず暫く呆然としていた俺。何の音も聞こえなくなった建物の中で切歌の泣き声だけが響いていた。

あの日あの時、あの瞬間のことを俺は一日たりとも忘れたことはないし、忘れることは絶対にないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノイズが消え去った後、俺達はすぐに国の人間に保護され、孤児院へ預けられることになった。子供の数は俺達を入れて二十人で、先生は三人だった。

始めこそギクシャクしていたけれど、打ち解けてからは本当の家族のような仲となり、皆で力を合わせながら日々を過ごすようになった。

月に一度、健康診断と称して別の施設に連れてかれるのだけは不思議に思ったけど、当時の俺はそこまで気にしなかった。

実際は聖遺物の研究のためのモルモットにされていたわけだが。聖遺物に対しての適正チェック及び適合者ならば適合係数をあげるためのリンカーの投与。他にもいろいろと、俺達が気づいていないレベルで実験されていた。時々先生が暗い顔をしてることがあったのはこういうことだったんだな、と今更ながらに理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両親はいなくなっちゃったけれど、俺達は幸せだった。けれど、幸せは長く続かない。奴等はまた俺達の前に現れた。

 

「みんな!早くにげ!?」

 

先生が最初に灰になる。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!???」

 

子供達も次々とノイズに灰にさせられ、気づいた時は一人で港町を走っていた。とにかくノイズから逃げる一心で。絶対にここで死ぬわけにはいかない、ここで死んだら今度こそ切歌は一人になってしまう。

幸か不幸か、この時、切歌は健康診断で別の施設に移っていた。だからこそ諦めるという言葉は俺の頭には無かった。足が動く限り走り続けろ、もっともっと速く!そして気づいた時には右側からの突然の衝撃にぶっ飛ばされ、何かに叩きつけられ、そこで俺の意識はなくなった。

 

何が起きたのかは今じゃ推測でしかないが、建物のガスか何かが爆発、その余波でぶっ飛ばされて、港にあった船の一隻に突っ込んだっぽいのだ。

海を漂流していた俺を乗せた船を漁師の人が見つけて保護したって言ってたし。

 

そして何処とも知らない病院のベッドの上で目覚めた俺は記憶喪失状態で、国籍も何もかもわからない俺を引き取ってくれたのが日本人の人、つまりは今の俺の親父だ。だれ?って聞いたらボランティア団体の人だ、なんてはぐらかされたけど、悪い人ではないなって思った。

だって週に三日ぐらい必ず顔を見せにくるんだもの。暇なんだねって言ったら困ったような笑顔が返ってきたし。

だから、行く宛がないのなら日本に来ないか?と言われた時に、この人なら信用してもいいって思った俺は日本へ行くことになり、今の親父と母さんの家族として迎えられることになった。この時俺は十二歳。そしてこの三年後にツヴァイウィングの悲劇が起こるのだが、それは別の話か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「剪兄ぃってば!!!」

 

「おおう!?どうした切歌?」

 

俺を下から見上げるような形で頬を膨らませている切歌の顔があった。あらかわいい。

 

「どーしたじゃないデスよ!何度も呼んでるのに返事が無かったデス!」

 

「すまんすまん、考え事してたわ。」

 

「もー!しっかりするデスよ剪兄ぃ。」

 

そういえば日記のことを聞かれていたんだった。もう一度、切歌の髪をわしゃわしゃしながら、当時のことを振り返る。

 

「確か、この時に響と未来に合ってだな...。」

 

お父さんお母さん、先生、皆も。ノイズと戦ったりしてるけど、俺達は今、幸せだよ。

 

 

 



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暁剪理と映画館

皆さんお久しぶりです。
現在、新たに作ったSSをメインにしてるので、さらにこちらの話を作るのが遅くなりますが、今後ともよろしくお願いいたします。


「ふんふんふーん♪」

 

今日は休日、切歌が遊びにくる日という事でクッキーを作っているところだ。ちなみに紅茶の葉を混ぜた紅茶クッキーだ。

ふふ、切歌の「美味しいデースっ!」って言う顔が目に浮かぶわな。

 

ぴんぽーん。

 

お、来たっぽいな。焼き上がるまでは少し待ってもらうかね。ドアの鍵を外した途端、勢いよく扉が開けられ、今日も元気一杯な笑顔の切歌の顔が。そして、

 

「剪兄ぃ!映画館に行くデスよっ!」

 

開口一番、そんなことを我が妹がのたまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずわけがわからなかったので家の中に入ってもらって理由を説明してもらった。

 

「司令から余った映画館のチケットをもらったデース!『映画は家じゃなく映画館で見る方が迫力があって見応えがあるぞ!』って言ってたデス!クッキー美味しいデース!」ハグハグ

 

ふむ、切歌の言いたいことはわかった。そして今度は隣で同じようにクッキーを食べるせんぱいの番だな。

 

「なるほどね。じゃあクリスぱいせんが一緒な理由はなんだ?」

 

「その会話してたところにアタシも出くわして、一緒に行ってくるといい。っておっさんに言われたから、仕方なくな...ほんとだからなっ!?仕方なくだからなっ!?別に行ったこと無かったからとかじゃないからな!?しかしうめぇなクッキー。」ハグハグ

 

まぁうん。司令はアクション映画のことを言っていたんだろうけど、切歌は聞いてなかったか。でもま、クリスぱいせんが一緒ならアクション映画を見ることはないか。

あと凄い勢いで作ったクッキーが減っていってるが、まぁ気にしない。俺の分が無くたって気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぇ~映画館ってこんな風になってるデスかぁ。」

 

「へぇ、結構デカいもんなんだな。」

 

というわけでやってきました映画館。この辺で一番大きな映画館だから施設もちゃんとしていて、初めて来ると結構驚くだろう。俺も響と未来に連れられて来た時は今の二人と同じ反応してたしな。

 

「そういやここまで来たのはいいけど、何見るか決めているのか?」

 

「あ、何も考えてなかったデスよ。」

 

「やってる映画ってのはあそこに映ってるやつか?うわっ結構な数あるじゃねぇか。」

 

「ここは、この辺で一番デカい映画館だからな。最新のやつから、ちょっとばかし古いやつまでならやってるんだぜ?」

 

「結構詳しいなおい?何回か来てるのか?」

 

「あー...まぁなぁ。クラスメートの一人がアニオタでな、ちょっと付き合わされたことがあったんだが...ハハッ。」

 

あの日のことは今思い出すだけでもゾッとするわ。まさか一日ぶっ通しで映画館に籠る日が来るなんて思わなかったし。あぁ、キャラメルポップコーンが嫌いになる日が来るとは思わなかった。

 

「お、おい、大丈夫か?」

 

「はっ!?大丈夫だ、問題ない。」

 

「剪兄ぃホントに大丈夫デスか?少し休むデース?」

 

心配そうに俺を見上げる切歌。俺のことを心配してくれて、お兄ちゃんは嬉しいけど、心配させてしまったことには反省はんせい。

 

「そんなわけにいくかよ、せっかくの切歌とのお出かけ、一分一秒無駄にする気はないっ!」

 

「剪兄ぃ!なら時間が惜しいから、見る映画はアレに決定デース!」ビシィ!

 

「えっと、どれどれ...?」

 

そう言って並んでいる看板のうちの一つを指差す切歌。あー、うん。あれか。

 

「ちなみにだが切歌?あれが何の映画かは知ってたりするか?」

 

「いや、知らないデスよ?」

 

「ふーん、そうか...。」チラッ

 

そうだよねー直感だよねぇ。中身知ってたら絶対、切歌は選ばないジャンルの映画だもんねぇ。切歌が看板の方に目が行ってるのを確認してクリスぱいせんの方を見ると。

 

「...。」プルプル

 

あ、こっちは中身知ってるわ。無言でプルプル震えてるし、変な汗がめっちゃ噴き出してるもん。

 

「な、なぁおい。マジであれ見る気か?お前も中身は一応知ってるんだろ?」

 

「もちろん知ってますよ。看板詐欺と言えるホラー映画でしょ?」

 

「おまっ!?それなら何で止めねぇんだよ!?」

 

なんで止めないか、ねぇ。そんな野暮な質問に答えなきゃならんのかぁ...。でも答えてあげる!

 

「そんなもん決まってんだろ。切歌が選んでくれたやつを俺が断れるわけないだろう!」ドヤァ!

 

「そうだったよ!コイツはそういうやつだったよ畜生!」

 

「剪兄ぃ!クリス先輩!早く行くデスよー!」

 

いつの間にか先の方へ歩いていた切歌が俺達を呼んでいる。あぁあんなに目を輝かせる切歌、最高だっ!

 

「あんな楽しそうな切歌を悲しませるような真似...クリス先輩ともあろう人がやったりしないよねぇ?」

 

「うぐっ!?あぁわかったよ!行ってやろうじゃねぇか!ホラー映画の一つや二つ、どうってことねぇってとこ見せてやらぁ!」

 

そう言ってズンズンと切歌の所へ歩いてく、きねくり先輩。やはりちょろい。けど、そこがまたいいんだよな、響達が可愛がる理由がよくわかる。

さて、俺も早く追いつかなくては。一度、休憩席の方にいる黒髪の女の子に手を振った後、急いで切歌の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ...これでもお兄さんには見つかっちゃうんだ。変装は完璧のはずだったのに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、売店でそれぞれ食べ物と飲み物(きねクリ先輩と俺はポテトフライ)を用意して自分の席に着く。なんでポテトフライかって?きねくり先輩にポップコーン渡したら床が酷いことになりそうだったからさ。

 

「さぁて、どんな映画なのか楽しみデース!」

 

「そうだな、だけどここではもうちょい静かにしような切歌?」

 

「おっとと、そーでした。静かにするデース。」

 

俺の右側に座る切歌は楽しみでしょうがない様子。さてさて、それとは対称的な様子を見せる俺の左側の人はというと。

 

「...。」ガタガタガタ

 

さっきよりも更に震えと汗が酷いことに。少しは緊張を解しておくか。

 

「やれやれ、手でも握っておいてやろうか?」

 

「ばっ!?んなひひ必要ねぇっての!」

 

いや声まで震えてて何を言ってるんだと言いたいが、本人がいいというならやめておこう。しかし小さく怒鳴るなんて器用な真似するなぁ。

 

 

 

 

ブー!

 

 

 

 

 

「お、とうとう始まるな。」

 

「始まるデスね!」

 

「お、おう!」

 

さてさて、最初は皆元気に生活しているが、だんだんと怪しくなる展開。そしてその時が来る時には既に。

 

「...デース。」ギュッ

 

「...。」ギュゥゥゥッ

 

俺の両手は塞がっていた。片方の人。ちょっち強すぎませんかね?

 

そしてついに最初の被害者がでた瞬間。

 

「デェェェス!?」ギュッ!

 

「ひぃぃぃぃぃ!?」ギュゥゥゥゥゥゥッ!

 

俺もビビってるよ?だって生まれてこのかた、ホラー映画なんざ見たこともねぇんだから。でもさ、俺の左手がもうやばいぐらいに握られてめっちゃ痛いんだ。片手だったのが今両手で握られるようになったし。ホラーよりも、この痛みが続くことの方が怖いんだ。

 

そして二人目、三人目と消えていくメンバー達。そして最後の一人の番になるまでには。

 

「剪兄ぃ...!」ダキッ!

 

「~~~ッッッッッ!!!!」ダキッ!ギュゥゥゥゥゥゥッ!

 

手どころか腕にしがみついて頭も俺の肩に乗っけている切歌。腕に柔らかい感覚があるけど、その感覚に浸っている訳にはいかなかった。問題は俺の左側にあるわけで。

うん、切歌と同じように腕は完全にロックされ、切歌以上に柔らかい感覚。さらに頭は乗っけてるんじゃなくて押し付けてきている。もう完全に画面は見ておらず、終わるまで絶対に動かないつもりのようだ。しかし周りの客や切歌の悲鳴にいちいち反応する度にびくっと動くので柔らかい感覚と腕を絞める痛みという相反する二つの感覚が襲ってくる、人生で滅多に経験出来ないことを俺は今、経験しているのではないだろうか?

 

 

 

 

 

ブー

 

 

 

 

 

 

二時間という俺にとっては長すぎる時間がようやく終わり、お客さんが各々感想を言い合いながら帰っていく中。

 

「怖かったデスよ剪兄ぃぃぃ!うわーん!!!」

 

と終わったと同時に泣きつかれてしまった。やっぱり切歌にはだいぶ堪えたようだなぁ。

 

「よしよし、よく頑張ったなぁ。」

 

と、ホントなら声をかけてやると同時に頭を撫でてやるんだが...。

 

「...。」ギュッ

 

きねくり先輩がさっきからずっと、俺の腕を持ったまま動かないので撫でることができないのである。

 

「ほ、ほら、クリス先輩?映画終わったんだぜ?」

 

「...ん。」

 

顔が見えないので恐る恐る声をかけてみる。するとゆっくり顔を上げて俺のことを見るクリスちゃん。ただ普段からは全く考えられないぐらいに、しおらしいクリスちゃんがそこにいた。いつもの吊り目で勝ち気なクリスちゃんが行方不明になってしまった。と、とにかくまずは場所を移そう。いつまでもここにいたらスタッフ達にも迷惑だしな。

 

「ほら、切歌もいつまでも泣いてないで、そろそろ行くぞ?とりあえず、どっかの店で一息つこうぜ?」

 

「ぐすっ、デース...。」

 

「クリスちゃんも、腕を掴まれたままだと動けないから、離れてくれるとありがたいかなーって。」

 

切歌は泣きながらも、俺から離れて飲み物食べ物を片付けに動いてくれた。クリスちゃんも腕を解放してくれたのはいいんだが。

 

「...ん。」

 

また俺の左手を握ってきた。今度はそっと握ってくれてはいるんだが、その手はしばらく離れそうには無く、結局は俺の家に帰るまで手を離すことはなかった。

俺の家に戻ってからも美味しいもの作ったり、面白いテレビを付けてもクリスちゃんは元に戻らず、そろそろ帰った方がいいんじゃないかと言っても首を横に振るばかり。その日はリビングに布団を引いて三人で一緒に寝ることになった。

 

さすがに女の子の寝顔を直視する勇気は無かったので、クリスちゃんに背中を向けて寝ようとしたんだが、いつの間にか俺の背中にぴったりくっついて眠っていた。

 

「...今日は徹夜かねぇ。」

 

絶対寝れねぇなぁと思いつつ、時計の針が3を回った辺りで俺は意識が無くなった。

 

 



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