漆黒が仕える! ー親衛隊 異界の地で斯く国防せりー (YJSN)
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第1話 親衛隊の帰属

ー門が開く約一年前 帝国領 某地にてー

 

とある遺跡の地下深く...

途轍もなく古く、年月が経ち、壁の砂岩でできた石はボロボロ。

通路のいたるところの壁に訳のわからない文字や記号 マークが示されてる。

 

そんな中を、一人の国家元首 皇帝が近衛兵と共に歩く。

もう入口から1,2時間は歩いてるであろうその遺跡の中を歩く。

 

ひたすら迷路のような遺跡の中を歩き続ける皇帝が持つのは 死者の書。それに記されている細かな道を鍵に道を歩んでいく。

 

最初にこの遺跡の死者の書に書いてある道とは別のルートに地形の把握、そして未開拓の土地として探索を行おうと地図を取ろうと行った者は、帰らぬ人となった。

道中もかなりのトラップに十数名が犠牲となった。

 

それでも皇帝は何の遺憾も示さず、進む。

 

何もない通路の暗闇の中を松明と魔法による少しの明かりで進む。

 

して、やがて目的の場所に着いたのだろう。

 

暗くて見えないが、どこか大きな広場に出たのであろうそこは帝国の庭園にも匹敵する広さを誇る。

 

その広さに、暗くてよく見えないが石の像のようなものが何体も隊列を揃えて佇んでいるように見える。

 

よく見てみると、左右に灯をともす松明が間隔よく置かれていた。

 

「...明かりを灯せ...。」

 

そう皇帝が言うと生き残った近衛兵達がトラップに怯えながらも左右の松明に順序良く火を灯していく。

 

すると段々と全容が見えるようになり、奇妙な形をした鉄帽を被った真っ黒の制服の兵士たちが、ある一点を見つめているのが見える。

 

顔や皮膚はミイラ化しており、骨だけのような兵士たちが一点を見ている。顔を上げ、異常な程に見つめている。

 

「...衛兵、ここで待っておれ...。」

 

そう皇帝が告げると、近衛兵は通って来た通路の警戒を行い始める。

 

コツ...コツ...コツ...

 

皇帝が前の兵士たちが一点を見ている方向へと近づいていく。

何があるのか、何を見ているのか。

興味本位と皇帝としての威厳を保ちながらゆっくりと近づく。

 

すると、程々近くまできたのち、ぼんやりと一人の兵士が見えてきた。

 

それは他の兵士と違い少し背が低く、鉄帽ではなく丸い円型の帽子を被り、奇妙な鉤十字のマークの腕章を他の兵士と同様に身につけた、かつては少年だったであろう顔が伺える子供であった。

 

その子供だけ左手を腰にかけ、右手を何故か高く掲げている。

 

それを凝視する周りの兵士たち。錆びた鉄の筒をもった兵士たち。

 

「...始めるとするか...。」

 

皇帝は意を決したように呟き、近衛兵に警戒をさせながら、ゆっくりと黄金で出来ているかのように輝く死者の書を開いた。

 

そして、数ページ開くと、通ってきた通路の左右に描かれていた奇妙な文字や記号と同じ物を読んでいく。

 

「Ghuatge fameerßä......」

 

繰り返していくうちに、どこにも隙間などないのに、風が吹く。

 

近衛兵達は異様な光景に警戒心をさらに増す。

 

そうした状態が数分続き、ある節を読み上げるところになると、皇帝は声を張り上げだす。

 

「Yattöwei Yattöwei Yattöwei!!!! Yattöwei!!!! Yattöwei!!!!」

 

そう叫んだ。

 

 

 

すると、風が増していく。周りに黒い砂...否、空間の歪みのようなものが見えてくる...。

何かおぞましい、生理的に受け付けられないものを感じるそれは、明かりを灯す炎を弱め、周囲の石の兵士へと染み渡っていくように見える。

 

そして、一番前のその少年に、一際激しく染み込んでいく。

 

「うっ....ヴォェ...。」

 

近衛兵達は堪らず嘔吐している。

 

皇帝は何食わぬ顔でその時を待つ。

 

...

 

......

 

.........

 

数分の沈黙の後、

 

 

 

 

カラン...ガンッ...ガンッ...

 

と、前方の少年...だったものから音が鳴り始める...。

 

 

ガンッ...ガンッ...バリッ...

 

音は次第に大きく鳴り響き、近衛兵は畏怖しながらも構えの姿勢をとる。

が、

 

「得物をおさめよ...。」

 

そう皇帝が宥めると、渋々近衛兵達は自らの得物を鞘にしまった。

 

ガァァァンッ

 

その時だった。その少年が石の像だったように固まっていたその少年が、動き出した。

 

「●X#•\*%^#{][!!!!」

 

訳のわからないドス黒い声で叫ぶ。周りの兵士たちも、スーッ ハッ スーッ ハッと息を吹き返したように呼吸を行い、鉄の筒を肩に掛け、少年に向けて右手を高く掲げ出した。

 

すると少年は入り口で警備をしていた近衛兵を見ると、

 

 

 

 

一瞬で彼の元まで 移動した

 

黒い霧のようなものを体の周囲に巻きつかせながら

 

そして、近衛兵の首を掴む。周りの近衛兵は恐怖で顔が引きつっており、動作ができない。

 

掴まれた近衛兵は苦しそうに顔を歪ませている。

周りのミイラのような兵士たちは微動打にしない。

 

すると、少年はそのボロボロの得体の知れない皮膚で出来た口を大きく開き、

 

「ヴォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

そう近衛兵に叫ぶような仕草をすると、黒い霧が近衛兵と少年の口を繋ぐようにして現れ、

 

少年へと近衛兵の肉を吸い取るかのように吸引する。

 

「グガ...アァ.......。」

 

兵は声にならない阿鼻叫喚を出し、萎れていった。

そして、恐らく死んだであろう。

ミイラのように細くなり、肉体はボロボロになった近衛兵であった亡骸が少年から手放された。

 

一方、少年の方は肉体が回復したかのように復元され、その美貌が露わとなる。

 

それをジッと見つめる皇帝に少年は気づき

 

 

「......何の用?」

 

と、子供らしい声で聞いた。

 

 

これが彼ら(帝国)と、我ら(SS waffen)の、初めての出会いであった...。




これが多分元にした男の娘キャラの子
https://goo.gl/images/4zBZjd

これがモブ親衛隊隊員
https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn:ANd9GcSG5iT6zIh4zFFjNL4oyGGobLLo4V-sXbV90TTJlGmgqRDrYhM

これが男の娘が纏ってる制服だと思う
https://goo.gl/images/Wpu6Ba

これがミイラの状態のだいたいの容姿
https://goo.gl/images/CQnwN1


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第2話 契約

只今ぼくの頭の中は絶賛混乱中であった。

 

「主よ...突然ですまぬが、我は皇帝 モルトだ。此度の帰還、誠に嬉しきことである。」

 

そう目の前の威厳ある君主の権化は言う。

 

それに反応できずに睨みつけるような形となっていることに気づき、改めて体勢を立て直す。近衛兵も恐怖に顔を歪めて腰を引かしてる者もいる。

 

一応なりとも戦闘の心構えをしてる者も多くいるようで感心である。

 

「えっと...その前に、ここはどこなのだろうか...。」

 

ぼくはここがどこなのか全く覚えていない。

 

あるのは終戦直前に親衛隊残党の現場における最高司令官である親衛隊長官の地位を授けられたこと。

 

そして然るべき行動 闘争 を行なったこと。

総統閣下への忠実なる兵士として、ぼくの指揮下であり、戦友である師団 SS waffen .1-2bc division が我が命とともに散ったこと。

 

それだけだ。

 

「意外と素直であるのだなお主は...ここは我が帝国領内の巨大遺跡跡地だ。

主はここに置いて先程の邪悪なる呪詛によって、封印されていたと見受けられとうあるのだよ。」

 

...まさか自分がそんなことになってるとは思いもしなかった。

最期、友人や同僚の事を心残りにして、華々しく散れたと思ったのだが...。

 

「ということは...ぼくは亡者とでもいうの...?」

 

「大まかなることはそうなるな。だが、お主は今先程、我の兵を無断で吸収したであろう?

貴君の肉体は復活を遂げ、その全貌を露わにした。

 

つまるとこ、貴君は人間の肉体は取り戻したのだ。

見た目については何らヒトとは変わり得ない。...周りのお主の私兵は無理そうだがな。」

 

そう言ってモルト皇帝はぼくの後ろを見据える。

ぼくもそれにつられて後ろを振り返る。

 

そこにはかつて死んだであろう何人もの顔見知りの同志達 戦友 部下が507名がぼくに忠誠を誓うかのように右手を掲げ、Stg44を肩に掛けている。

 

なぜ人数が分かるのかは不思議だけど、何となく全ての隊員を覚えている。知っている。そんな気がした。

 

今はもう生気が感じられないまるでミイラのような肉体となっている。が、それでも、死してなお忠誠を誓う様子は、なにか胸が締まるような魅力を感じた。

 

そうやってぼくが大隊に目を取られていると不意に

 

「その者達と何があったかは知らぬ。余は貴君と契約を結びにきた。この死者の書と共にな。」

 

そう真剣な声で皇帝は言う。

 

...契約?

 

そうとぼけたような顔になってぼくは首を傾げた。

 

「なに、難しい話ではない。貴君らに 我が私兵 近衛兵となって欲しいのだ。帝国軍とは独立した指揮系統の中で、な。」

 

「...いきなりですね...。」

 

内心、出会って早々なにを言っているのだと思った。

僕らが総統命令でもないのに、見も知らずの帝国の指揮下に入るだと。

 

笑わせるなと、失笑してやりたいくらいだった。

 

「...帝国では 門 というものがあるのだ。門は常に聖地 アルヌスというところに数百年 数千年置きに開き、こことは異界の地へと繋がっておる。

 

帝国はこの門との関わりが深いのだ。

近いうちに門が開くと言う予見が出ておる...魔法師が言うには、あと1年もしないうちに新たなる門が開かれるというのだ。

 

門が開かれる度に怯えるなどとは帝国の威厳を示せんのでな。だからこそ貴君が必要なのだ...。」

 

「要は用心棒として、僕らを雇うと...?」

 

「無論、タダとは言わん。

必要なものがあればこちらに要請すれば何だって出すぞ。

 

余は貴君の、呪われた兵の、古の軍を信じておるのだ。この死者の書、ここにはこう書かれておる。

 

この書開く者 亡者の扉開くこと覚悟せよ。

 

この書開く者 汝は下界から全てを還らせようとしているのだ。

 

この書開く者 我が契約者となる。

 

...余の勝手な推測ではあるが、貴様は何処ぞの誰かも知らぬ奴にこの死者の書と共に売られたようだな。」

 

嘲笑うかのように言われ、若干イラっとした。

 

「なんて野郎だよ、Shïschun...。」

 

そう少しの苛立ちを加え入れて言い捨てる。

勝手に人の駒として契約者とさせるなど、親衛隊への不敬にも甚だしい。

 

「それもいいが、まずは余の契約者となるのだ。よいな。」

 

了承を求められる。

 

一瞬、後ろめたいむず痒い気持ちとなり、後ろの同志達を見返すが、何ら魂がこもってないかのような、そんな感じがする。

まるでぼくに機械のように従うような、主従関係に感じれた。

 

 

 

昂ぶる...

 

何故かまた闘争を同志達と行えると思うと、気分が抑えきれなかった。

祖国の心配もあったが、どうせあの世界での役割は果たしたんだから、少しくらい好きに生きてもいいよねと思っちゃったりした。

 

ぼくは頷き、

 

「...わかったから、それを。」

 

そう言うと陛下は死者の書を放り出した。明後日の方向に。

 

嫌がらせするなよなぁ...ふんっ。

 

不機嫌になりながらぼくは若干囚われの身になったような状態の代償として得た生物兵器としての役割を再起させる。

 

本当ならば宙へと投げ捨てられた死者の書は物理法則に従って落ちていく...はずだった。

 

ぼくは右手をクィっと手前に引き、漆黒の悍ましい ナニカ でそれを引き寄せる

 

「ほぃっと。」

 

ぼくはそう言い、死者の書を手に取った。

 

「...この先も、期待しておるぞ...。」

 

そんな期待されても困るよ...(焦)

 

死者の書を開きながら、そう内心呟く。

して、三ページ目を開き、

 

「Amshutem Augusta der turesz pusutidzh....。(契約は受諾された。)」

 

サァーーッ...

 

すると禍々しい黒の砂が死者の書から吹き出し、皇帝とぼくを包み込む。

 

不思議なことに呼吸は苦しくないし、むしろ心地よいとまでいえる。

 

...サァーーッ...

サァーーッ...

サァーーッ...

 

数分、それが続いた後、黒砂はやがて死者の書へと帰っていった。

 

「ふぅ...で、突然のことだらけでまっっったくこの世界についてわかんないから、教えてよね。

 

あ、あと食事は要らないよ?

 

それに親衛隊といっても帝国領内で国防のために活動するだけだから、

積極的攻勢とか、諜報とかは相手を見てからにするからね。

 

それからあとはーーーーー 」

 

そう追加条件をダラダラと垂れているぼくを、皇帝は呆れながら聞いていくのであった。

 

 



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第3話 帝都防衛と門と

短い...のかな?


「んんん...ふわぁぁ...ねむ...。」

 

目の前の執務室での皇帝への報告書を始末し終わり、あくびと背伸びをいっぺんに行う。

 

昨日の夜から徹夜で業務していたおかげで、今月の仕事は片付いた。やったぜ。

疲労や眠気は一切ない。何せ一度死んでいるのだから、そんな概念吹き飛んでいる。

 

「それにしても...あっという間だな...こんな生活がかれこれ1年も経つとは...随分と暇だったけど...。」

 

あの日からもう1年近く経とうとしているくらいには、帝都やこの世界での暮らしに慣れてきた。

 

ピニャ殿下やゾルザルなどの皇族も見かけたけど、ぼくにはあんまり関係なさそうなので、積極的には関わろうとしてない。むしろ避けてる。

 

ただ、突然現れたから、最初は警戒されてたけどね。

 

それに色んな人種や幻想のような 魔法 というものを見かけた。

 

魔法についてはぼく自身覚えなくていいと思っている。

使えるかどうかも怪しいしね。

 

そもそもぼくにはこの憎らしい死者の書があるから、へーき...なのかな...?

 

興味がわかないこともないんだけど、そこまで深入りする気にはなれなかった。

 

トントンッ

 

「失礼致します。」

 

ぼくの執務室に一人のこの城に配属されたであろう近衛兵が入ってくる。

 

スゥゥーッ ハァーッ

 

扉の両隣で門番をしていてくれてる二人の戦友 同志に手をあげて許可を出すと彼らは扉から退いた。

 

「何の用〜?今やっと終わったとこなんだ。

朝食にでも行こうと思ってたんだー。」

 

ほんとなら食事も必要ないけど、人間らしい生活はして起きたかったから。

 

「はっ、お疲れの所申し訳ありません、親衛隊長官。しかし、モルト皇帝が直ぐに謁見の間に来るようにとの通達でありまして。」

 

「皇帝が...?」

 

契約の日以来、何らぼくらは建前だけかのように威厳だけ示す近衛兵よりも腕の立つ亡者兵のように扱われ、いるのかいないのかはさほど気にならない程度には放置されていた...ような気がした...。

 

モルト自身、ぼくらにばかり頼るというのも帝国の強力なる君主の印象を与えられないから、控えているのか...?

 

まぁそれはいいとして、

 

「はっ、詳しくは皇帝陛下に直接お聞きください。では、失礼致します。」

 

最後にそう伝え、兵は帰っていった。

 

...ぼくを呼び出すということは、そういうことでしょぅ...荷が重いよ...。

 

菜食主義の代表メニュー サラダの昼食を後回しにして、謁見の間に向かう。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

コツ...コツ...コツ...

 

軍靴を鳴り響かせながら陛下へと近づく。

何歩か進んだところで、止まる。

 

して、右手を高く掲げて、(契約への)忠誠を誓う。

 

「 Heil 」

 

そういってから、右手を下げる。

 

「...楽にしてよい...。」

 

そう言われ、いつものようなちょっとダラけた姿勢になる。

 

「ありがと、昨日から仕事してたから。」

 

「そうか、実によいことだ。帝国の為に励んでくれているのだからな。」

 

「うん。...それで、用件はなに?」

 

手短に要求する。さっさと終わらせたかった。

 

ぼくがそう言うと、皇帝はより真剣な顔となり

 

「うむ...実は一週間前にアルヌスに門が開いてな。」

 

「...早くない?もうちょっとのびのびしておきたかったな。諜報から聞いてはいたけど。」

 

「流石は主だ。この情報をもう掴むとはな。」

 

「まぁ...ね...。」

 

ぼくの同志は君の近衛兵よりかは優秀だし、多少は...。

 

そう心の中で一言多く呟く。

 

「して、アルヌスの門の向こう側、異界の地へと送る軍を編成し、既に待機させておる。お主にも 」

 

「そこへ行き、陛下の軍と共に攻め入ろ...って感じ?

 

それは時間を要する上に多分拒否する。

それに殺し合う相手もわかないんじゃ、闘争心のカケラも出てこない。」

 

例え契約があろうとぼくはガン無視で仕事の値切りを始める。極度のめんどくさがりから、へっぽこ長官と同志に呼ばれたこともあった。

 

「...それは承知しておる。余が望むのはお主の殺戮などではない。余は情報を欲しておる。何ら門の向こう側は我らが立ち入ったところでないのだ。」

 

「...向こう側を調査してこい...ってこと?」

 

「そうだ。」

 

皇帝は大きく頷き、ぼくの了承を待つかのように鋭い目でぼくを見据える。

 

うぅむ...門...か...。

確かに興味は出る。こことは全く違ったところと繋がってるなど、食指が出ないわけない。

 

ちょうど暇な頃も合間って

 

「わかりましたよ。契約は契約です。

中世こそ我が名誉 My homie is loyalty にかけて。」

 

「そう言ってもらえると助かるな。」

 

渋々了承した。

皇帝は裏がありそうな笑顔でニンマリとしてる。

...こいつだけはムカつく...ふんっ

 

「けど、短期間だけですよ?

もし仮に軍が壊滅状態となれば、偵察不可能とみなして迷いなく帰って来るよ?」

 

「よかろう。ただの捨て駒に過ぎん。」

 

「...ではこれにてぼくは失礼します。そうゆうことならば早速支度せねばなりませんし。」

 

部下を粗末に扱うのは戦時中でも見たし、そうゆう奴はどこにでもいる。

 

けど、戦略上必要なところに必要な量だけ死にに行かせるなど、戦術として使う者もいた。

ぼく自身そうだった。

そう言ったものがCrazyでPsychoな奴なんだって、死んだ部下が逝く直前に吐き捨てて言ってた記憶が蘇る。

 

...今更こんなこと思っても無駄、か。

さっさと支度をして、門へと向かおうかな。

 

そうやってぼくは、数名の同志達を携えて、門へと向かうのであった。




主人公の名前を考えるのをド忘れする筆者の屑

ほんとに名前なしで進行させてた()
それでもいい...のか...(困惑)


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第4話 門の内側と外側

主人公や親衛隊が使用する銃火器には呪詛によってマガジン部分が黒い霧で覆われております。
よって弾は無限(適当設定)

それと親衛隊隊員は銃も神エイムでぶっ放しますし壁も四足で這いつくばりながら登ったり物凄いジャンプ力や腕力、反応速度で銃弾を避けたりもできます

銃弾を食らってもへーきへーき 大丈夫でしょ って感じで突っ込んできます


ーアルヌスの丘 門前ー

 

スゥゥーッハァァッ スゥゥーッハァァーッ

 

そうガスマスク越しに息をうるさくしながら後ろの同志達5、6人は隊列を保ちながらぼくに付いてくる

周りの帝国兵やオーガなどに異様な視線を向けられながら

 

「む...親衛隊長官 お早いですな。」

 

近くまで来ると、ここの帝国兵の現場最高指揮官である将兵が出てくる

 

「いぇいぇ、ちょっと遅れちゃったくらいですよ。」

 

「そんなことありませぬぞ。それに、そなたらが付いてきてくれるとは、一騎当千でありますな。ハハハ!」

 

苦笑いでぼくは返す。

そんな大らかに期待されても...

 

そう思いながら帝国兵の横に隊列を組む。

 

ザッ ザッ ザッ ザッ ガッ

 

後ろから付いてきてた同志達の軍靴の音が止まり、隊列を組んだことを知らせる。

 

それから数分が経ち、

 

「前進!!」

 

ブォォォォ

 

ラッパが鳴り響き、ようやく準備が整ったのか、帝国軍が門へと前進していく。

 

「それにしても...ほんとに大丈夫かな?ぼくらはただ視察(?)するだけであって、戦闘をするとは一言も言ってないんだけど...。」

 

その為にぼくらはワザと後ろの方に居る。

まぁそこは帝国兵を信じようと、任務に真っ当になるのであった。

 

 

 

ー東京・銀座ー

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「助けて!!助けてくれ!!!お願...ぁ...。」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

響き渡る民の悲鳴 阿鼻叫喚 怒号

 

そしてそれを追う帝国軍

 

真昼間の東京の銀座で、殺戮が行われていた。

それも中世の兵士や、ファンタジックなオーガやゴブリンによって。

 

異常な光景だった。

が、一人の少年はそんなこと気にも留めずに市街地を見て回っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

まさか...まさか...

 

「...まさか友邦国の民を虐殺するのを目の当たりにさせられるとは思いもしなかった...。」

 

ウォェ...気分が悪い...

 

まさかまさかのそのまさかだった...

ぼくの前世(?)の 元の世界に まさかこの門が繋がってるとは思いもしなかった

 

しかも友邦国 Jäpanに

 

同志として、友邦として、我らと共に血を流し、浴びた者達の死に様を見せられるなど、なんの罰であろうか。

 

ぼくは、ここが 東京 であると、再確認させられたのだった。

 

「しっかし...契約は契約だしな...仕方ないよ...。」

 

そう免罪符のようなことを呟いて、帝国軍がまだ進んでいない区画に先に着いて銀座の街並みを見渡しながら略図を手に持っている手帳に書き込んでいく。

 

特徴や、今は何年なのか、技術力 あとご飯が美味しいかどうか...etc...

 

そうやって歩いてると

 

「止まれ!! 止まらなければ無条件で射殺する!!」

 

そう大声で怒鳴られた。誰だろ...。

 

顔を上げて確認してみると、緑の迷彩服に身を包んだ兵士達が銃口をこちらに向けて構えていた。

 

日本軍...なのかな?ぼくが知ってる日本軍とはだいぶかけ離れてるけど、その心意気...ヤマトダマシイ といったのかな...それは確固たる意志で引き継がれてるようにみえる。

 

それに銀座で起きている騒ぎをもう聞きつけて来たとは、対応も早い。いい兵士だ。

 

「...。」

 

後ろの同志達は左右のビルに四つ足で登り散開、いつでも同時多方面戦闘 ゲリラ戦を仕掛けられるようにスタンバッてる

 

けれどぼくはそれを止めさせてる

だって友邦諸君らに失礼だし、同志同士で殺し合うなんて、嫌だから

 

「〜♪ ♪」

 

ぼくは聞こえなかったふりをしてそのまま略図を完成させようとする

 

「聞こえなかったか!!投降しろと言ってい 」

 

パリンッ...ガシャッ

 

不意に彼らの指揮官であろう者が持っていた拡声器が割れて落ちた。

 

「ッーーーー!!」

 

彼は絶賛謎の現象に驚き中であった。

 

「うるさいなぁ...。」

 

犯人はぼくだけど、気づいてないしセーフ。

 

バレなきゃ犯罪じゃないんですよ

 

 

 

パァン...

 

 

 

乾いた音がした

 

けれど、それはぼくのすぐそこの地面を僅かに掠ったに過ぎなかった

 

おそらく、威嚇射撃であろう

 

ぼくが帝国兵とは違い裏道の狭いところで何かを書きながら歩いてるだけで、殺傷行為や大した武装をしていないから、まだ射殺はしないのだろう...そもそも射殺できないと思うけど...

 

そろそろめんどくさくなってきたので、門近くまで戻ることにした

 

「...Ade...Mein Kameraden...」

 

そう言い残し、その場を同志達と去った

 

黒い霧と共に

 

「なっ...どこへ...!?」

 

突如として消えた少年に、動揺する小隊だけが取り残されたのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

サァーーッ...

 

黒い霧が晴れ、同志達と共に門の前に着いた。

 

「...やけにややこしいことになっちゃったな...。」

 

そう自分がきた世界に後悔を垂れるのであった。

 

「いや!! 助けて!!!! 離して!!!!」

 

ん...。

 

叫び声が聞こえる。女性のだ。

 

着いて早々何なんだ...。

 

声がした方向を見てみるとすぐそこで友邦国 ニッポン の臣民であろう黄色人種の肌をした女性が帝国兵に囚われていた。

 

「大人しくしろ!」

 

3人がかりで女性を押さえつけようとしている。

 

帝国法上、捕虜への虐待および暴行 殺害 殺傷は許されない。

 

親衛隊は野戦憲兵としても機能する。

 

「...。」

 

ぼくはジッと見つめる。

どうしても、心残りである。

 

かつて同志であった国家の者が、虜囚の身となろうとしてる。

 

その事実が、ぼくを抉るような感覚がする。

 

...助けてはあげれないけど...

 

 

 

同志達と共にそこへ近づいた

 

スーッ ハッ スーッ ハッ スーッ ハッ

 

そう獲物のStg44やMG42を構えながら後ろに控える戦友諸君ら。

 

不意に帝国兵の一人がこちらに気づき、顔が強張る

 

「何してるの。」

 

少しの怒りを込めて言う。

 

帝国兵は畏怖しながらも

 

「は、ハッ ゾルザル様のご命令で、この女を捕虜にせよと...。」

 

「ゾルザル皇太子が...?」

 

異国の民、それも女を捕まえて交渉材料にもする気なのだろうか。

使えないなら奴隷市場へ...ということか。

 

...下衆な男だ。

 

「...暴行や破壊活動に出てみろ。我々は一度たりとも許したこともなく、例外なく公開処刑にする。

 

わかったな...ッッ。」

 

「は、ハッ。」

 

恐怖に顔を強張らせながら、女を今度は丁寧に運んでいく。

 

どうやらぼくが一年前、近衛兵の肉体の吸引を行った時以来、それが知れ渡っているようだ

命が惜しくあれば関わるなということだ。

 

ぼくにできることはこれくらいだった。

 

女性はぼくに助けを乞うように目を向けてくるが、ぼくは拒絶の意を示し、首を横に振った。

 

彼女には申し訳ないけど、ぼくは契約の元、親衛隊としてここにいる。

助けてはあげられない。

 

「...さて、と。さっさとこちら側の世界の情報を収集しよっと。」

 

そう言いながらぼくはぼくが知っている東京とはちょっと時代のズレた銀座を少しの間楽しむのであった。

 

 

 




いつの間にか1000UA超えてた
えぇ...(困惑)

こんな駄文が晒し上げられてるとか恥ずかしくないのかよ(歓喜)


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第5話 敗残兵(大嘘)になっちゃいました

https://youtu.be/D6dBFRHo6-o
これが親衛隊隊員の威嚇?音の元

かっこいい(小並感)



あと逃亡者は銃殺される(にほんへ並感)



ーアルヌスの丘から五キロ離れた道沿いー

 

 

スーッ ハッ スーッ ハッ スーッ ハッ

 

同志 親衛隊員のガスマスク越しの呼吸音が響く。

 

「ぐぅぅう...帰るのに何日かかるのやら...。」

 

そう愚痴を垂れながら渋々と歩き続けるぼく...と同志達が道沿いに歩き続けていた。

 

実を言うとあの気持ち悪い黒の霧はだいぶ吐きそうになる。

例えればスイカとうどんとハンバーグを一気に口の中で混ぜられた感じ。

 

要は物凄く気分が悪くなる。負担が大きい。だから普段はあまり使わない。

 

よって今こうして歩いてるわけだけども...。

 

「だぁぁるぅぅぃぃぃ...あぅ...。」

 

項垂れているのである

 

門の向こう側 元の世界が...確か ジエイタイ とかいう日本軍...?によって制圧され、軍が壊滅、敗走していたのを目の当たりにし、ぼくはお早く情報をある程度集めたら門に戻り、アルヌスから出ようと思った。

被害は六万の将兵 下士官 兵士ら。酷いものだった。

 

帝国兵から、小王国軍の援軍が二、三日後には到着すると伝令で伝えられたが、待ってもいられない。

その間に彼らは塹壕を掘り、陣地を建てているだろう。

 

そうなれば帝国軍の唯一の距離無し戦闘のゲリラ戦は困難となり、彼らでは勝てないであろう。...まぁ友邦が勝ってくれるのは嬉しいけど。

 

そんなこんなで出発したのだが...

 

こうも長い道のりだとは思わなかった。

 

行きは馬車に乗せてもらい仮眠を取っていたのでそこまで長くは感じなかった。

 

けど歩きではもう酷いのなんの。めんどくさがりなのも合間ってますます暇になって来る。

 

「あついぃぃーーー...ぐがぁーーー...。」

 

日中の気温もぐんぐん上がってくるし、真っ黒の服装だしで最悪だ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

さてと、あれから少し経って、最寄りの村 コダ村まで辿り着いた。

 

アルヌスから一番近い集落と言えばここくらいだし。

しばらくここでちょっと遊ぶのもいいかな。

 

村の人は最初はこの真っ黒の服装に尚且つ後ろに控えている同志達の様子を鑑みて、あまりよい顔はしなかったけど、徐々に馴染んできたりした。

 

それにすごく親切だ。帝国国内とは全く違う。

今では鬼ごっこもしてるくらい。

 

ぴょん ぴょん

 

「ニャーゴ。ニャーゴ。」

 

黒い野良猫がぼくの肩に飛び乗って来る。

 

「...にゃ、にゃーご...。」

 

ぼくも合わせて共鳴してみるけど、

 

バシッ

 

寧ろパンチをくらった。

 

「む、むぅ...。」

 

こ、こいつ...

 

「クスクス」

 

「なぐられたー!あはは!」

 

「何やってるの兄ちゃん」

 

そう周りの取り巻きの子供に笑われる。

 

こんの猫野郎 ちょっとばかし可愛いからって...。

 

こんな風に村の人たちとじゃれ合ったりして、ぼくは暇を紛らわすのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そんなこんなで一晩お世話になった。

寝場所は木の上という最悪の居心地だったけど...ガクッ。

 

けど、楽しいといえば楽しいし、充実している。ちなみにまだ親衛隊ってゆうのはバレてない。服装がちょっと変なだけのいい人って呼ばれてる。帝都からは離れてる田舎だから、親衛隊がどんなものなのかはあまりよく知らないのであろう。

 

もうここで一生暮らしたいなぁ...欲望が出て来る出て来る...。

 

あと一日くらい...

 

 

スーッ ハッ スーッ ハッ

 

 

と、一人の同志が村の外側の木と木を四つ足で物凄いスピードでジャンプしながら目の前まで来た。

 

諜報のためにアルヌスの丘を監視させていた同志だ。

 

... ... ...

 

ぼくの前に膝をついて平伏している。無言で。

 

ぼくらは同志だ。だからこそ何ら言葉は必要ない。喋れなくても、言いたいことはわかる。もう彼ら自身には人間的な個性の魂はないけど。

 

任務に忠実な解答が渡されるだけ。主従関係 契約でしか働かないモノ。それだけ。

 

内容はアルヌスの丘に派遣された小王国軍が壊滅、撤退。敗残兵として残りは散り散りとなった模様とのことだった。

被害はまたも計6万

 

帝国はこれで12万もの兵を失ったことになる

 

「皇帝陛下は何をしているのか...。」

 

呟きながらぼくは同志には下がらせ、子供達とじゃれ合わせたり、輪に入らせたりしておいた。

 

こうやって少しでも人間の時の感覚を取り戻して欲しいのだけれど...望みは薄そう。

冗談や戯言を言っていた頃が懐かしいよ...。

 

胸がキュンッてなってくる

 

いかんいかん...そんなことでは親衛隊は務まらない...

 

気を入れなおしてぼくは村の手伝いをしにいく

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

村の手伝いもある程度進み、昼過ぎになり再び子供達とじゃれ合ってた時、村の人たちが一斉に家に隠れ出した。

 

じゃれていた子供達を母親が家に匿っていく。

 

...?

 

「何かあったんですか?」

 

そうぶっきら棒に聞くと、

 

「緑の人たちが来たのよ。アルヌスの軍勢を打ち破ったっていうじゃない。恐ろしくて堪らないわ。」

 

そう母親の一人が答えてくれた。アルヌスにおける敗退の報せは各地に届いてる様だ

 

「そう...ですか...。」

 

ぼくの立場を考えると、緑の人たち...いわゆる ジエイタイ は本来ならば敵兵だ。ここにいるのは危ない。

けれど、この先道のりはちょっと長め。もう少し暇潰しをしておきたいという欲望がぼくをここに引きとどめる。

 

「あなたもどこか隠れなさい。...隠れるなら、村はずれのカトー老師にお世話になればいいと思うわ。」

 

と、ご親切に忠告と勧めをしてくれた。

 

「ありがとです。ではぼくはこれで。」

 

「えぇ、気をつけなさい。」

 

そう言って彼女とは別れた。

 

老師...魔法使い...なのかな

 

まぁどちらにしろ、ここにいればいずれ見つかる

森に同志達を隠れさせて、自分もカトー老師にジエイタイが居なくなるまでお世話になろう

 

今後の方針を決め、少し安堵しながらぼくはカトー老師の家にいくのであった



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第6話 老師のお宅

今回割と適応











 

 

 

 

コンコン...

 

「すいませーん、誰か居ますかー?」

 

ひっそりとした村はずれの木々の中に建つ一つの一軒家にノック音が響き渡る。

 

ガチャ...

 

鍵が開いた音がした

 

ゆっくりと扉が開くと...

 

「...誰...。」

 

...あれ?

 

出てきたのは水色の髪をショートにした如何にもな魔法少女みたいな子供だった。

 

老師って...この子?

 

若干勘違いを挟ませながら思考に老けていると

 

ギィィィ...

 

扉が徐々に閉められていく...。

 

「...。」

 

...。

......。

.........。

 

 

「ってちょっと待ってよ!?」

 

予想外の出来事に脳が追いついてなかったけど、やっと機能し始め、扉が閉まる済んでのところで軍靴を挟み、無理やりこじ開ける。

 

「...誰かもわからない見かけない顔の人を家に入れる理由はない...帰って...。」

 

「だから少しくらいは話を聞いてよ...お願いぃ...。」

 

「...わかった。聞く。ここで。」

 

「あぅ...。」

 

だいぶ不審がられて家に入れてもらえないようだ。悲しいなぁ...。

 

とりあえず、今はジエイタイに見つからないようにする為に必死に懇願するしかなさそう。

 

せ、誠心誠意を込めて...

 

「えっと...昨日この村に来たばっかの旅人(?)なの...で、その、今緑の人ってゆうあまり出くわしたくない人たちが村に来てるの...要約すると...ちょっとだけでもいいので匿ってくれないかな...お願いします。」

 

そういってぼくは頭を下げる。

 

「...。」

 

水色の髪の女の子はいつまで経っても無言で見つめてくる。

 

お願い...村の外の木々の上でやり過ごすとか居心地悪すぎるのじゃぁ...。

 

一晩だけコダ村の木々で寝て腰がガックガクになったぼくは必死にお願いする。

 

「んん?なんじゃレレイ。お尋ね者か?」

 

家の奥から年のいった声が聞こえる。

 

「師匠...この不審者が家に居候させてくれと。」

 

不審者とか扱い酷くない...居候って直球すぎて...萎えそう...。

 

すると奥から老人が出てくる。

今度こそ彼、カトー老師が出て来たのかと安心した。

 

「ふぅむ...あんた、どこから来たのじゃ?」

 

そう聞かれ、一瞬答えるのを迷ったが、ウソをつくのも良くないので正直に答えることにした。

 

「アルヌスです。」

 

「アルヌス...あの門が開かれた聖地からかの。まぁ良い、入った入った。」

 

!! 何とも嬉しいことに匿ってくれるらしい。やったぜ。

いいおじさんダナー

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「良いってことよ、見た所悪い奴じゃなさそうじゃし、その緑の人?という人達に追われているのかは知らんが、好きにしていけば良いぞ〜。」

 

カトー(メチャクチャ可愛い美少女じゃないか!!(歓喜)レレイより胸はないが...じゃがあのどこかキュンッとした所とか、ボンッはないけどそのキュンッがいいのじゃ!!)

 

どうやら純粋な真心で許可したわけでは...なさそうだった...。

それに性別を間違える辺りただの変態...であった。

 

「ちょっと師匠。いいの、入れても。」

 

「あぁー、構わんよぉ〜...ぐへへへへへ。」

 

ドォンッ

 

突然、水色の髪の女の子がカトー老師に向けて水玉の様なものを打ち出した。

 

「ちょ、ちょっとレレイ!やめんか!魔法とは神聖な物で乱用するものでは グォッ 」

 

そう悲鳴が聞こえて、老師の言い訳はおさまった。

 

「老師が変なこと考えるから...。」

 

「だからってじゃのぉ...冗談が通じない子じゃ...。」

 

「あはは...。」

 

苦笑いになりながらもぼくは老師の家に避難させてもらうのであった...。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「へぇー...すごいな...。」

 

「だから動力化できるの。先ほどの水の様な形をしたあれも、あの杖からーーーーーー」

 

と、あれから数時間くらい、机の上で本を開きながら色々と魔法について詳しく教わっていた。

 

ぼくには出来そうにないな...。

 

そう恨めしそうに目の前の魔法少女を見ていると

 

「...ん...どうしたの。なにか顔にでもついてる...?」

 

ジッと見てたのがバレちゃって、不思議がられた

 

「い、いや、なんでもないよ。」

 

「そう...。今日はここら辺にしておく。」

 

「どうもありがとう。」

 

と、この少女、いつまで経っても真顔で話すから、表情筋がぶっ壊れてるのかと心配になってしまう。

 

そんな睦じい様子を影から老師が

 

(成長したなぁレレイ...わしは...わしは嬉しいゾィ...)

 

と、見守って(ストーカー)いたのである。

 

コンコンッ

 

ん?

 

心地よい時間を止めるかの様に、扉から来訪者を知らせるノックが響いた。

 

「また...今日で二人目...。」

 

「今度はなんじゃ。」

 

本日二度目の来訪者を渋々拝見しようとレレイと老師が扉へと向かう。

 

ガチャ...

 

そこには村の男が何やら真剣そうな顔で佇んでいた。

 

「ーーー。ーーー。ーーーーーー。」

 

声が小さくて聞き取れなかったけど、男が真面目な話をしてるのは明らかだった。

 

「なんじゃと...。」

 

カトー老師が目を細めて困った様な様子を見せる。

 

何だろ...?

 

「じゃぁ、あんたらも気をつけてな。みんなは向こう側の道で順番に並んでるから、来るなら早めにきてくれよ!」

 

そう言って男は村の方向に走っていった。

 

ぼくは不思議に思い

 

「カトー老師、何かあったんですか?」

 

聞いてみると、老師は渋い顔をしながら、

 

「炎龍じゃ...。まったくこんなときに出てこなくてもええのにのぅ。傍迷惑な奴じゃ...。」

 

とブツブツと文句を垂れながら家の本やら食料やらをまとめ始めた。

 

「えっと、炎龍って...?」

 

ぶっきら棒に知らない単語について詳しく聞いてみると

 

「炎龍を知らんのか?よっぽど田舎から来たのかのぅ。

炎龍というのは、ある周期ごとに出てくる恐ろしき龍のことじゃ。

 

話によると森のエルフの村は其奴によって焼き払われ、生き残ったのはわずか一人の小娘らしい。

人の味を覚えた炎龍は村や集落を襲うに決まっとる。

だからわしらはこうやって夜逃げするんじゃよ。」

 

「そうだったんですか...。」

 

随分とその炎龍とやらは暴れてるご様子だった。

 

この世界に来てから、炎龍については名前だけしか知っていなくて、具体的なものは身近でもないから知ろうともしてなかった。

 

「じゃぁ、ぼくも手伝いますよ。」

 

ジエイタイから匿ってくれた恩を少しでも返そうと思い、申し出る。

 

「そうしてもらえるとありがたいのぅ。レレイ、大切な魔導書やら全部積み込むぞぉ。」

 

「全部は無理だと思う。」

 

「それでもやるのじゃ。ここにある本は手放せないものなのじゃぁ!!」

 

我儘をいう子供のように老師は本を山積みにして、外に止めてある荷馬車へと積み込んでいくのであった。



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第7話 大遠征(難民避難)

いつもよりちょっとだけ、長め
ほんのちょっと

先っちょだけだから♡


...ヴォェ!(自己嫌悪)









「よいしょっと。」

 

最後の荷物を積み終えた。

 

「おぉ、手伝ってくれてありがとのぉ。それと、あんた、どうするのじゃ?わしらはここから離れるつもりじゃが、付いてくるかの。」

 

「えっと...。」

 

ぼくは迷う。もうそろそろ帝都に戻り、報告をしなきゃならない。けれど、もう少しここの人達と関わったり、交じりあいたい。

 

その思いがぼくの予定を狂わせる。

 

...あとちょっとだけならいいよね...。

 

「はい。少しだけ、付いて行かせてもらいます。途中で降ろしてもらって結構ですから。」

 

「そうかそうか。わかったのじゃ。じゃぁ、乗りなはれ。」

 

荷物を積み終わり、車軸が今にもギリギリいいながら車輪が若干地面に埋もれている まるで路上の超重戦車MAUSみたいな馬車に乗り込む。

 

ぼくが乗り込んだことを確認して、老師が手綱を引くが

 

...

......

.........

 

馬(?)は最初動こうとはして見せたものの、己が運べるものではないわいとばかりにすぐに前に進もうとするのを諦めた。

 

 

 

「...。」

 

「...。」

 

「...進みませんね...。」

 

そう落胆しながら言う。

 

「...重すぎたようじゃの...。」

 

「積めといったのは師匠...。」

 

「ぐぬぬ...わしらは魔道士...この程度のこと...」

 

そういって魔法を使用しようとする老師だが、

 

「魔法とは、神聖なもの。乱用したりしてはいけない。お師匠の言葉。」

 

と、少女 レレイが釘をさす。

 

「うぅ...じゃがのぅ...。」

 

「あはは...。」

 

ぼくは失笑するしかなかった。

 

「こうなることは予測できた。でもこの際仕方ない。」

 

ホイッ

 

そう言うように少女は杖を軽く振り、魔法を使用した

 

すると荷馬車が青い光で包まれてから、地面に埋まり込んでいたのが、浮いた。

 

「すごいね...こんなこともできるのか...。」

 

魔法に興味津々の様子でぼくはその光景を見ていた。

 

すると、やっと馬(?)が進みだした。

 

「...すまんかったのぅ...。」

 

そう老師が残念そうに謝る。

 

かわいそうに。

 

「いい。お師匠がそう言う人だと知ってる。」

 

少女は切り捨てるごとく老師にグサリと胸に矢を突き刺す。

 

「...。」

 

えぇ...(困惑)。

 

この少女、Sっ気ダナ...。

 

 

 

 

 

 

カサカサ... スッ ハッ スーッ ハッ

 

カサカサ...

 

 

 

 

 

「ん...なにか聞こえる...。」

 

あ、やば...

 

レレイが木の葉と葉を掠れる音を聞き取る。

 

「風の音...じゃないかな...。」

 

と、若干焦りながら返すと、

 

「...そう。」

 

怪しまれたような目をされたが、とりあえずは誤魔化せたようだ。危ない危ない。

 

コダ村の周りの木々を伝いながらぼくの護衛を務めてくれてる同志達に気づかれなくてすんだ。

 

念には念を入れて護衛を付かせてる。

 

そろそろこの暇つぶしの旅も終わらせなきゃな、と思いもう少ししたら適当に離れて帝都に戻ろうと決める。

 

そんなこんなありながら、村に向けて馬車を走らせるのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

暫く馬車に乗っていたら、コダ村に着いた。

見ると言われた通りに馬車が通りに並んでいたので、僕らも並ばせてもらった。

 

が、途中から一向に前に進まなくなった。

頭の上に?を浮かべながら待ち続ける。

 

「んぁ?この先はどうなっておるんじゃぁ?」

 

ぶっきら棒に老師が呟くと

 

「カトー先生、レレイ!」

 

と、老師と少女の顔見知りであろう男が来た。

 

「実は、荷物の積みすぎで車軸が折れた馬車が、道を塞いでいるんです。」

 

と、男は困ったように言う。

 

ぼくらと同じように荷物積みすぎをした同志がいるようだ...かわいそうに

 

すると、

 

「伊丹隊長は村長から出動の要請を引き出してください!」

 

「わかった!」

 

そう聞き慣れたJäpanの声がした。

 

「ゲェッ...。」

 

思わずそう呟いてしまうほど会いたくなかった人物No.1が目の前を走っていく。

 

緑の迷彩服...Stg44の延長系統に見えるAsalt rifleで武装した集団...

 

 

 

ジエイタイだ...

 

 

ぐぁぁぁぁぁ

ここまで来て旅を邪魔されるのかぼくはぁぁぁぁ!!

 

いや、待てよ まだバレてないバレてない...ならこのまま隠し通せるのでは...

 

銀座では一瞬だけしか見られてないし、制帽を深くかぶっていたお陰で顔バレもしてない...

 

大丈夫...落ち着け...落ち着くんだぼく...!!

 

そう自己暗示していると、

 

「お師匠...様子を見てくる...。」

 

ぴょんっ

 

そう言って少女レレイが飛び出していく

 

「えっ、ちょっ、レレイ!!」

 

そう老師が待ったをかけるが、レレイは止まらずに前の方へと走っていく。

 

ぼくも荷馬車から立ち上がり、

 

「老師、ぼくも行ってきます...。」

 

ぴょんっ

 

「ちょ、お主!!」

 

レレイには色々と教えてもらったのもあるし、このまま放り出しておくってのも後ろめたい。

 

ジエイタイのこともあるけど、気づかれないようにフード付きの真っ黒の親衛隊のジャケットを纏いながら、制帽と姿をある程度隠して着いていく。今はこれしかないので我慢する。

 

 

 

 

そこそこ走ったところで、人集りができていた。

 

「すみません...通してください...。」

 

そう言いながら人集りの中を進んでいくと、真ん中に...脳震盪 要は頭蓋骨との形状と脳の位置を一致させていない状態に一時的になり、前頭葉が激しく揺さぶられたであろう少女が苦しそうに息をしていた。自分の目の黒い霧を通して、すべてが見えていた。

 

意識はおそらく朦朧としているであろう少女。

 

「危険な状態...。」

 

そうレレイがその子の前まで近寄り、呟く。

 

確かに危険な状態だった。このまま放っておけば脳内出血が引き起こされているかもしれない。

 

そう思案していると、二人の兵士がこちらに急行してきて、

 

「...この子は脳震盪を起こしています。肋骨にヒビが入っている可能性も。」

 

片方の...女兵士...? がその子の容態を報告する。

 

日本軍には女性兵士もいるのか...そう観察しながら注意深く見る。

 

衛生兵か...医学に長けている。わずか数秒で彼女の容態を見れるとは、よく訓練されてるな...。

 

「君、危ないから下がって。」

 

そうもう一人の男の兵士に日本語で言われるレレイ

 

が、レレイは理解できてないであろう

その言葉に反応せず、ここの言語で

 

「医術者...。」

 

と、レレイは目の前の女性兵士を見つめながら呟く。

 

興味津々なレレイの思案が続いていると不意に

 

ヒィィィンッ

 

車軸が折れた馬車に倒され、足が挫けてた馬が痛みのあまり悲鳴を出し、暴れ出した。

 

...

 

サァーーーー...

 

ぼくは無意識のうちに、黒霧を馬にまとわりつかせていた。

 

そして、小さな声で...

 

「Tueï Tueï ... Isarüntß...」

 

そう死者の書の五ページ目の節を読見上げる

 

すると

 

...ドサッ...

 

暴れていた馬が、急遽倒れた

 

男の兵士は小銃を構えていたが、ここでお命が一つ散らされなくて済んだ

 

馬はいびきをかきながら、一時的な睡眠状態に陥った。5,6分もすれば起き上がり、いつも通りとなるであろう。

 

「あなた、大丈夫...?」

 

そう女性兵士がレレイに近寄って、安否を確かめる。

 

ぼくはレレイに近寄って、手を引いて、立たせてあげる。

 

「大丈夫?」

 

そう声をかけて、老師の方に連れて行こうとする。

 

そして、女性兵士に

 

「ありがとう。」

 

...あ...

 

 

 

と、ついウッカリ

 

 

日本語 で返してしまった。

 

 

 

「...!?」

 

女性兵士は最初こそ驚いたが、自分の任務を果たそうと馬の状態や馬車を確認するためこちらを見ながら離れていく。

 

「レレイさん。大丈夫ですか?」

 

そう放心状態のレレイに聞き直す。

 

「...あ、...うん。平気。ところであの人達があなたの言っていた 」

 

「そう、緑の人って呼ばれてる。」

 

「緑の...人...私を...助けようとしてくれた...。」

 

「そ、そうだけど...は、早く老師のところに戻ろう、ね?きっと心配してるし...。」

 

そう必死にこの場から離れようと歩きながら荷馬車の方に戻っていく

 

恐らくあの女性兵士は、ぼくが日本語を喋ったと上官に報告をするであろう。

 

親衛隊だと仮にバレてしまっても村人達には問題はないが、今はジエイタイがいる。

 

もうここを離れなければ...けれど、この人混みの中ではバレてしまう。そうなれば不審がられる。

どこか隙を見て帝都に戻らなければ暇潰しどころの問題じゃなくなってくる。

なにせ帝国の中枢の部隊の幹部がここにいるんだ。狙わないはずがない。

 

それにぼく自身、彼らと殺し合いたくはない。できるだけ交戦拒否の姿勢を示したい。

 

最初から親衛隊だと隠し通そうとしたのが、ここまで大ごとになるとは。

 

一応同志に伝令の手紙を持たせて自分がアルヌスから帰還途中であり、 向こう側の緑の人達 ジエイタイ の内情調査や占領地域における民情などを把握するために少し遅れるというなんともそれらしいことを書いて帝都に向かわせたから皇帝からの信頼は落ちてはないと思うけど...。

 

 

 

 

そんなこんな心底苦労しながら、大遠征という名の避難を僕らは開始するのであった。

 

 

 

 




.............。












予想外にもお気に入りとUAが来てたから投稿続けることにしたゾ
見切り発車だけど許してヒヤシンス(激寒)


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第8話 炎龍

更新が早いのは最初だけ(ボソッ
戦闘描写は上手くないのでお察し








「うぁぁぁい...喉が渇いたわい...。」

 

この避難という名の逃避行が始まってから数時間、

天日干しにされた老師が愚痴る。

 

「しばらく休めそうもない...。」

 

そうレレイは答える。

 

確かにこの様子じゃぁかなり時間をくいそうだった。

 

コダ村の木々で護衛をしていた同志達は岩と岩を行き来してこちらの護衛に務めてくれている。

それにジエイタイの装甲車、自動車化部隊に先導もしてもらっている。

安全は確保されている...はず。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

途中、泥にハマって動かなくなった馬車を緑の人達が押し上げて運んでいったりと、中々進行は思ったようには進まなかった。

 

更には車軸が折れてしまった馬車までいて、燃やす以外なかったりもした。燃やさなければならなかった家族は泣きながら生存しようと義務を全うしていた。悲しいけど、これが現実だった。

 

そんなこんなあったが、やっとロチェの丘が見えてくるくらいにはだいぶ前に進めた。

 

けれど、後ろを見返してみると、物凄い馬車の行列だった。

 

「...。」

 

太陽は前世(?)で見たときの太陽の大きさより少し大きいくらいで、暑苦しい日光に照らされてボーッとする者も多かった。

 

ぼくはひたすら逃げるタイミングを計る。どこで逃げようか。どのような逃走経路か。護衛の配置は...etc.

 

それから数十分間そうやって思案していると...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バサッ バサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな翼のような音がする。

 

 

 

不意に、僕らのいた部分がぽっかりと雲でもかかったかのように影に呑まれる。

 

 

「ん?」

 

ゆっくりと上を見上げてみると

 

 

「ぁ...。」

 

 

...少女レレイと老師も見てしまったのであろうその光景。

 

 

炎龍がちょうどぼくらの真上を飛んでいたのだ。

 

して、ぼくらのすぐ前で着地すると、

 

 

 

グワァァァァァァァ!!!!!!

 

 

 

耳が少しキィーンとなるほど殺し合いの咆哮を叫び出す炎龍。

 

そして近くにいた村人らに向けてブレスを放つ。

 

ボォォォォ

 

そう唸るような炎に人や馬車が包まれていく。怒号や悲鳴が聞こえる。

 

 

 

ブロロロロロ...

 

 

 

ジエイタイの装甲車と自動車化部隊が速度を一気に上げ、二方向からの同時攻撃 クロスファイア をその持ち前の機動戦によって素早い電撃戦展開を行い始めた。

 

ぼくもそれに合わせて、

 

「老師、ここで降りさせて頂きます!レレイさんもご無事で!」

 

トンッ

 

荷馬車から軽くジャンプして降りた。

 

「おいお主、なにをしておるバカモン!さっさと戻らんかい!!」

 

老師は静止の声をかけるが、ぼくは止まらずに黒霧を身体中に纏わり尽くし、ドラゴンの死角の場へと瞬時に移動する。

 

「...!?」

 

レレイは驚いたような顔をしたが、炎龍の追っ手もあって何かを言う前に老師と共に必死に逃げ回る。

 

 

 

...そう言えば、まだ誰にも名前...言ってなかったな...

 

 

 

 

 

パン パン ババン ババン

 

2点バースト、三点バーストなど様々な発砲音がジエイタイからけたたましく鳴るが、どれも致命的なダメージは一切与えられず、炎龍の皮膚は貫通できていなかった。

 

この際仕方ない。このまま帝国領内の臣民を死に導かせるのは親衛隊としても、あまり気分の良いものではない。もちろん、ジエイタイがもし帝国臣民を殺傷しようと言うのであれば同じように殺したであろう。けれど、彼らはそんなことはしない。そう信じてる。

 

ぼくはドラゴンの真横の岩裏に隠れ、宙からパンツァービュクセを取り出した。

 

「Shüttèm!! Estlingëur!!」

 

丘上の岩裏に護衛として張り付かせていた同志達にも電撃戦展開を命じる。

 

すると、

 

スーッ ハッ

 

と、凄まじい速度で左右を駆け巡り、丘上から電撃的なクロスファイアをかける。K弾(対戦車用炸薬増加試作弾)を彼らは発射し、足止めしてくれている。

 

すると、ジエイタイも少し標的を変えたようだった。

効果的に、目を射撃し始めた。当たりこそしないが、炎龍は顔を小さな手で覆い被せ、怯んでいる。

 

して、ジエイタイの装甲車から一人の男がパンツァーファウストに似た形状の対戦車榴弾投擲武装を肩に背負い、何故か後ろを一度向いてから炎龍にむけて撃った。

 

けれど...あの弾道じゃどう見ても外れるのは決定していた。

 

 

 

...!?

 

 

 

ジエイタイの自動車化の中から一人の神官が出てきた。

 

 

 

本で読んだことはあるけど...まさかここでお目にかかれるとは...。

 

彼女は、名をロウリィ・マーキュリーと言う。エムロイの使徒であり神官であった。

 

そんな彼女は今ジエイタイの自動車の上に立っており、そのクソデカイ鎌を投げ出した。

 

 

ビュンビュンビュンビュンッ...

 

そう空気が切れる音がしながら回転し、速度を増す鎌が、炎龍に向かって飛んでいく。

 

...なるほどね...。

 

あぁすればいずれ、彼女の目測通りにあの対戦車榴弾は弾道が逸れずに炎龍の左手に当たるであろう。

 

ちょっと、イタズラしてやるかな...

 

そんな無邪気な心からぼくは横から炎龍の目が完全に覆われていない部分に照準を合わせる。

 

して、3秒後

 

息止めを行いアイアンサイトのレティクルにピンポイントで収まった時

 

 

ガゥンッ...

 

 

引き金を引いた代償として凄まじい反動が肩にかかる。が、全てリコイルはコントロールする。

 

今の0.37秒の間に4発も7.92mm弾を撃てばそうなるに決まっていた。

 

「当たった...?」

 

そうドラゴンの方を向いて確認を行うと、

 

 

 

うまぁぁく瞼を閉じて弾いたようだった。

 

しかし、代償として瞼に4発全弾が集中着弾し、焼け焦げた様に赤く血が出ていた。

 

「...ちぇっ...。」

 

惜しかったと言わんばかりにぼくは舌打ちをした。

 

しかし、炎龍はぼくの企み通りにぼくから顔を背ける様に体ごと左側に向いた。

 

ロケットの弾道は、左手から、胸へと向かって直進している...。

 

彼女...ロウリィはこちら側を笑いながら見ていた。

 

「Boom...。」

 

 

 

ドォォォォォォォンッ...

 

グガァァァァァァァァァァァァッ

 

 

大きな爆発音と共にそれに同等かそれ以上の悲痛の叫びが聞こえてきた。

 

 

煙が晴れると、予想通りに炎龍の胸は赤く燃え上がり、皮膚がただれていた。

 

同志達はそこを狙ってK弾を集中着弾させようと狙撃を行う。ジエイタイも引き続きぼくらの方向を訝しみながら継続してそこを狙い撃つ。

 

焼けた皮膚を抉るかの様に銃弾はいくらもいくらも着弾し、炎龍は悶える

 

 

 

バサッ バサッ

 

 

 

この焼ける様な痛みに耐えきれず、逃げる様だ

 

同志達はめげずに狙撃を行うが、背を向けた炎龍の硬い皮膚に着弾するばかりで、効果はなかった。

 

なので、ぼくは彼らへの攻勢命令を止めた。

 

すると同志達は丘の上で

 

スーッ ハッ

 

と、ぼくを待つかの様に列を整え、直立した。

 

「同志達には頼りっきりで悪いけど、助かったな...。」

 

そう感謝の念を想いながら、丘の上へと自分も上がる。

 

一方ジエイタイは車から降り、ぼくらに近づこうと手を振っている。

 

...が、本来ならば僕らは敵である。

 

どちらにしても、会いたくはない相手同士だった。

 

よって、ここからは精神的な負担が大きいけど、黒霧で、大人しく帰ろうと思った。

 

ぼくは彼らに向かって手だけ振り返して、そこから同志達と共に去った。

 

「Ade...。(さようなら)」

 

そう言い残して 黒霧に包まれる

 

 

 

 

老師とレレイはうまくやっていくだろう。

村のみんなも、失った友邦のことは悲しいけど、全てを面倒見きれるわけでもない。

 

自立してもらうしかない。だからこそ、ぼくはこのまま帝都に帰る。

後ろめたくはありながらも...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ー帝都・元老院前ー

 

 

 

「これより、党大会第45集会を行う...ーーー」

 

と、鉤十字の腕章をつけた者が、演説台の上に登り、淡々と読み上げていく祝辞。

 

集会所の後ろや周りには幾多もの鉤十字に、赤い旗が掲げられており、集会所の前には何千もの党員が赤い鉤十字の旗を掲げ、そして鉤十字の腕章をつけた者が大勢おり、異様な光景であった。

 

巡回の帝都の衛兵は時折不安な顔をしている。

 

して、数分後、祝辞を終えると

 

「諸君 労働者諸君 我らが同志諸君。 私は党宣伝省 リービヒアだ。今日 諸君らに集会してもらったのは、他でもない。我々の現状を見るためだ。ーーーーーー」

 

そうして、宣伝省を名乗る男が演説を行い始める。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

30分が経とうとした頃、演説はうなぎ登りに有頂天へと達した。

 

「同志諸君らよ!!

我々が過去二千年間を費やし得たものを思い出すのだ!!

 

過去数年の短かき苦悩は忘れ、帝国二千年の歴史を見るのだ!!」

 

そう必死なる顔と口調で熱弁し、手やアクセントをつける宣伝省の男。

それに合わせ、静聴している帝都の民達は熱狂的に右手を掲げHeilと叫ぶ。

 

「この強大な国家は、今やたったの数百人規模の商人や商業者、大資本家によって支配され、分断させられている!!

 

人々の憎悪と闘争を駆り立て、国家を国家なきものにするのだ!!!」

 

男は汗をかこうがなんだろうが、ひたすら狂ったかの様に同志諸君らに伝えていく。

 

「帝国民族よ!!民族を思い出すのだ!!!!

 

我々がいて、諸君らがいる!!

 

彼がいて、食料を作り

彼女がいて、家族ができ

老婆がいて、縫い物ができ

子供がいて、気力が湧く

 

工場は武器を作り、畑は大地を潤す!!

 

明日を生きる義務と共に

 

この1つの強大な民族共同体を思い出すのだ!!

 

 

 

分断された国家を再び1つの、真の帝国とするのだ!!!!

 

 

 

それこそが、我々が夢見る ドイツ第三帝国なのだ!!!!」

 

 

 

そう男が締めると、野次馬や観客は熱狂し、会場は熱に包まれた。

 

そして、男が民衆を手を上げて鎮めると、

 

右手を高く掲げ、こう叫んだ

 

 

 

 

「我らの生存に、栄光あれ!!!! SIEG HEIL!!!!!! SIEG HEIL!!!!!!

SIEG HEIL!!!!!」

 

観客も男に合わせる様に全ての右手を掲げ、あらゆる同志諸君らに忠誠を示すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

これが 少年が一年かけ急速に成長させた

 

 

国家社会主義帝国労働者党 の全てであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




パンツァービュクセ
ドイツ軍が使用した対戦車ライフル
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%82%AF%E3%82%BB

それと黒霧は主人公の耐性が無いため500〜600mずつしか移動できません。





最後の集会のパレードの想像はだいたいここから
https://youtu.be/Jf-HZz5Qv8E


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第9話 帰還 そして報告

遅くなっちゃったゾ





「ふわぁぁ...やっと帰ってこれた...。」

 

そう項垂れながらぼくと後ろの数名の親衛隊員は帝都内に門をくぐって入る。

 

途中門の警備兵に敬礼されながらあの霧の呪詛による移動によって滲み出た気怠さで倒れそうになりながらも何とか踏ん張って自分も返礼する。

 

一般兵の中にも国家社会主義信奉者は増えており、同志がいることは既に承知済みだ。

 

我々はあらゆる人種 民族 種族の壁を超えて集産主義理論化をはかる。

これは我々の生態系であり、最善の生存方法なのだ。

 

...ただし、ユダヤは許さないけどね

 

 

 

 

 

 

そう思案しながらぼくは護衛の親衛隊員を別の任務に就かせて、執務室で軽く報告書の整理を行う。

 

皇帝に指令された任務の報告だ。

 

そうやってぼくは暫くの間執務室でペンを走り続けさせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

数枚の書類を書き終わり、目を通して、謁見の間に赴こうと準備する。

 

一週間前までの何ら変わらないものが改めて少しだけ新鮮に感じる。

すぐ慣れるだろうけど

 

そう思いながら謁見の間の前の扉が横の近衛兵によって開けられていく。

 

それを見ながらぼくも中に入って行き、暫く会っていなかった契約者とご対面する。

 

そしてぼくは右腕を大きくあげて

 

「 Heil. 」

 

そう我らへの忠誠を確認し合う。

 

「...楽にして良い。」

 

渋い声でそう返ってきた通り、いつも通りの自分に戻る。

 

この敬礼はもう10年以上させられてきたから、体に染み付いて取れない。

 

こっちの方がイギリス兵よりも見た目も良いしね。

 

そんな風に考えていると不意に皇帝の方から話を切り出す。

 

「久しぶりではないか、親衛隊長官。届いた手紙から事情は察する。」

 

コダ村から部下によって運ばれた手紙は皇帝に通達されていたようで少し安堵する。

 

「えぇ...門の向こう側も、そしてあの緑の人達や奴らの活動区域についても大凡のマークが付きました。

 

それと、奴らの諜報活動についてなのですが...如何しましょうか。」

 

そう簡易的に報告をしていき、数々の敵工作員による諜報活動がここに来る道中の帝都内でも見受けられた奴らへの対処を請う。

 

皇帝は少し思案する。

 

すると、

 

「...泳がせておけ。」

 

「...帝都から叩き出すことも可能ですが。」

 

そう聞くと、

 

「...ならん。最初期の傀儡國の10万の軍勢が一瞬にして死屍累々となってしまったのだ。

これ以上奴らとの殺し合いにおける勝利は余も見込んでおらん。

今はこの戦争を早期に好条件で集結させることが最善手であろう。」

 

皇帝はそう今後の外交を述べる。

 

「そう...ぼくとしても彼らは元は旧友...余り殺し合いたくはありません。」

 

そう自分の見解も示すと、皇帝は怪訝な顔をして

 

「...旧友...前々から気になっていたのだが、お主は門の向こう側の人間と何か関係があったのか。」

 

ぼくは少しだけ考えてから

 

「えぇ、少しだけ。私は彼らの、元は門の向こう側の人間でした。

 

その時に、彼らと共に殺し合ったのですよ。ユダヤ人とそれらを匿う人間相手に、ね。

 

それだけです。

 

それにぼくの知る彼らと今の彼らは随分とかけ離れているし、

恐らく向こう側では長い年月が経っている。

わたしの持ち得る彼らの情報ではなんら役に立たないでしょう。」

 

そう話を区切ると皇帝は納得したような顔をして

 

「...そうか。もう下がってよいぞ。」

 

皇帝は口角を上げながらぼくの報告を終わらせる。

 

「...Heil。」

 

ぼくも右手を上げてから、謁見の間から出る。

 

今後の任務は彼らの諜報活動の内容の調査ってとこかな。

 

予め帝都には親衛隊員を広範囲に配置しており、内部の監視状態は完璧だ。

 

あと、それとは別にやることがあるな...。

 

「次は党本部での演説...だったかな。」

 

手に持つファイルを見ながら今後の予定を決め、ある場所にぼくは向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある帝都内の一角へと足を運んで十数分経つと、目的の場所が見えてきた。

 

その場所の看板には大きく " 帝国労働者党 " という文字が描かれ、そこを出入りする人間は多かった。

 

ぼくも周りから右手を上げて敬礼されるのを軽く返礼で返しながら扉を開け中に入っていく。

 

すると受付嬢であろう1人の若娘がぼくを視界に入れると、

 

「 Heil. 」

 

と右手を上げて綺麗な敬礼をしてきた。

 

ぼくも軽く右手を上げて返礼をしてから

 

「やぁ同志。久しぶりだね。宣伝省長官は今どこかな。」

 

そう聞くと彼女は強張ったその美貌を引き立てる顔で、

 

「お久しぶりです Mein Füluer。

彼はそちらの事務室で今後の予定の打ち合わせ中であります。」

 

そう丁寧に言葉を紡いでくる。

 

「そうか、ありがとう。Heil。」

 

「Heil。」

 

そんなやり取りを経てからぼくは事務室の扉の前まで行き、

 

コン コン コン

 

とノックをする。

 

「お入りください。」

 

そう返ってくると、ぼくは扉を開けて、会議室のような殺風景な場所を視界に入れる。

 

「か、閣下でしたか。」

 

そう慌てながら中にいた数名の党員が右手を上げて我らへの忠誠を確認し合う。

 

ぼくも返礼をしながら、前に進んで行き、お目当の人間を見つける。

 

「やぁ、久しぶりだね。宣伝省長官 リービヒア。」

 

そう言うと彼は上げていた右手を下げ、

 

「久しぶりです総統閣下。今日は演説の件でこちらへ?」

 

そう言いながら彼は手元の予定の書かれたファイルを読む。

 

「そうだよリービヒア。今はえっと... 」

 

「午後四時半ですね閣下。演説予定は五時、集会場の前です。もうすぐですし、ご一緒して行きましょうか。」

 

そう、今日はぼくがこの世界に来てから、国家社会主義帝国労働者党の立ち上げた日でもある。

 

党大会が開かれ、ぼくが演説台に立つ時だった。

 

普段は宣伝省に丸投げなんだけど、親衛隊長官=総統閣下みたいな等式が出来ているみたいで、今年はぼくが担うことになった。

 

「そうだね。じゃぁ、ご一緒してもらうとしよう。」

 

ぼくもそう言いながら、集会場の予定地に彼が出かける準備をするのを待つのであった。

 

 

 

 






次回は演説

ユダヤを排斥せよ。


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第10話 敵の明確化

今回はちょっと短いです





あれからリービヒアの支度ができて、数名の親衛隊員も携えながらぼくは集会場へと赴く。

 

「確かぼくの役割は終盤だったよね。」

 

そう予定の確認をし合う。

 

「そうですね閣下。

 

この集会は国内の国家社会主義政党の勢力を増すいいきっかけとなるでしょう。」

 

「そうだね。」

 

そうぶっきらぼうに答える。

 

この十数年間、国家社会主義帝国労働者党は順調に勢力を伸ばし、

言論院の1/3がNational Socialist(国家社会主義者)となった。

喜ばしいことだ。

 

そう思案していると、集会場の近くまで来たようで、人集りが徐々に出来ている。

 

ぼくは暫くの間役割が回ってくるまで待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間が経つのは早く、リービヒアと党本部から歩いて来たのが遥か昔のようだった様に過ぎていく。

 

党幹部の祝辞やその他諸々が終わって行く様を見届けるだけの作業だった。

 

その中で党大会の終了が近づいていき、ぼくの役割が回ってくる。

 

ぼくは席から立ち上がり、空けられた道を通っていく。

カツカツと軍靴が地面を蹴る音が響く。

 

(...改めて見てみると集会場を埋め尽くすほどの人数で大衆は来ているな...。)

 

周りの嬉々とした声が大らかに聞こえながら、ぼくはその間に空いている演説台までの道を進んでいく。

後ろに親衛隊員数名を携えながら。

 

そして演説台の上に立ち、音響技術を駆使したマイクなどが置かれた殺風景な場所を視界に入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分待ち、観衆の昂りが収まるのを待つ。

 

そして観衆が静まり返ったと同時にぼくは息を深く吸い、その口を動かし始めた。

 

 

 

 

「今日 この日に集まった同志諸君らには感謝する。

 

...そしてこの集会場にいる人種は

民族共同体を十分な程に体現している。________ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辞令をして行きながら、ぼくは演説を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして中盤に差し掛かった頃に、

ぼくは彼らの生存競争本能を最大限に引き出す段階に入る。

 

「何故、何故に我々の中に、

この国家の中に2人に1人の割合で貧困の人種が出来ているのか。

 

何故に諸君らは必死なる労働を担っているにも関わらず、

諸君らは何故にその労働による生存の栄光をもたらされていないのか。

 

誰が!! 一体誰が諸君らの労働を略奪しているのか!!!!」

 

体が火照っていくのが感じる。

 

「Judaea!!!!!!(ユダヤだ!!!!!!)」

 

そう大衆の1人が叫ぶ。

 

「そうだユダヤ人共だ。

 

私が言うユダヤ人とは!!!!

 

民族・人種・種族に囚われた者ではない!!!!

 

私の言うユダヤ人とは、我が生存のみを考え我欲に塗れた大資本家!!

 

ボロ儲け主義者共だ!!

 

奴らはこの国のすべての労働者と工場を手の内に収め、

そして究極的に国民を支配している略奪者だ。」

 

そう息を荒くしてぼくは続ける。

 

ナニカに操られてる感覚が体を走る。

 

「奴らは!!!!

 

何ら 何ら直接的に労働の手を加えずとも、

いとも簡単に金が入る。

 

金とは!! 生存のための生産の努力を変換した物だ!!!!

 

だがその金は、その労働は、生産は、

 

どこから来たと思う?

 

 

 

 

 

 

元を辿れば我々からだ!

我々の生産を奴らは経済という箱庭で略奪を開始し、

いくら我々が必死な労働と格闘を行なっても何ら略奪は止まらない。

 

奴らは経済という盾を使い、

我々から搾取を止めない!!!!

 

そんな連中が!!

 

経済という砦における略奪者が!!!!

 

 

 

成功者だと?

勝者だと??

 

 

 

笑わせるな!!!!」

 

 

そこまでいうと民衆は大いに闘争本能を叩かれ、我らの真の敵を認知し始めた。

 

「私は、我々は、

 

給与や我が身可愛さの為に労働をするのではない!!!!

 

諸君らのためにのみ行動するのだ!!!!!!

 

 

 

 

奴らは、我々を撲滅することをも厭わない!!!!

 

奴らは我々を殺すことをも厭わない!!!!!!!!

 

だが我々は決して降伏しない!!!!!!!!」

 

民衆は敵への憎悪を膨らませ、

これまで数世紀に渡り我々人間という人種を貪り尽くしたユダヤ人への殺意を持ち始めた。

 

周りからはHeilという声が聞こえる。

 

だが私は続ける。

 

これが私の義務だ。

 

「諸君らの持つこの世界で最も貴重で、大切なものとは!!!!

 

諸君らの民族である!!!!!!

 

この民族のために!!

 

この民族の利益のために!!

 

我らは格闘し、闘う!!!!

 

決してその力を緩めない!!

 

決して疲れを知らない!!

 

決して休むことはない!!!!

 

そして!!!! 二度と絶望しない!!!!

 

 

 

 

全ては我らが民族共同体に Sieg Heil !!」

 

そう締めくくると、彼らは右手を上げ、Heilと繰り返す。

 

 

 

 

 

______Sieg(勝利)とは 我らの生存である______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのようにして党大会は締めくくれられ、

ぼくは今絶賛執務机の大量の仕事に戻る。

 

あまりいい気分ではない。

 

「今日だけであれだけの民族にTruth(真実)を伝えられたんだ。

 

我々にとってもきわめて利益的だったと思う...

 

そうは思わない?総統閣下。」

 

そう冷めない闘争本能の働く中でぼくはコツコツと書類の整理と任務報告を見ていくのだった。

 

 

 



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第11話 イタリカにおける民族浄化

今日はちょっと長め。

原作をど忘れしたアニメ見ながら描いてます。




「...んっくううぅぅ...ふぅ...。」

 

そう高く背伸びをして眠気を覚ます。

 

寝間着はカッターと下着を着てるだけの軽いもの。

ネクタイはしたままにしてる。めんどくさいし。

 

そんな寝間着なんて存在がないぼくは鳥の囀りと共に訪れた朝を迎え入れ、

早速普段着の親衛隊将校の制服に着替えていく。

 

そしてそのまま執務室に繋がる扉を開けて、

執務机君にご挨拶をしながら紅茶を淹れる。

 

イギリス野郎じゃないけど、この味は暖かみがあっていい。

 

少し肌寒いこの朝にはピッタリだ。

 

そしてそんな湯けむりを立てる紅茶を眺めながら今日も仕事だ仕事だとせっせと書類に目を通していく。

 

その繰り返しだ。

 

それと親衛隊の配属や配置、日本の工作員の動向も。

 

昨日、演説による精神的な疲労が少し来ていた。

 

ナニカに操られる感覚に陥ると、

ぼくはそれに赴くままに忠誠を誓い、

操られる。

 

気分は悪いがそれから離れることはできなかった。

 

そんなひと時の苦渋に眉を曲げながら思い老け、ぼくは時間を執務机と共に過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして優雅な時間を過ごしていたが、

 

急に回廊に繋がる扉からドタドタという荒々しい音と共に執務室の扉が開かれた。

 

「長官!親衛隊長官殿!!」

 

そう若娘の声が響き渡る。

 

入って来た失敬者は2人のようだ。

 

1人は銀髪のショートヘア。もう1人は金髪のロングヘア。

 

...第二皇女のピニャ殿下の騎士団の連中か...。

 

そう思いながら適当にあしらうために口を開く。

 

「...うるっさいなぁ...まだ昼前だぞ...。」

 

そう欠伸をしながら書類の片付けを再開する。

 

「そんな呑気にしている場合ではありません!」

 

そう銀髪の女が言う。

 

「なんだなんだー。まーた面倒事ならお断りだゾ〜。」

 

そうあしらっていると、彼女は鬼のような形相で

 

「早馬が来たんです!

つい先程、報告によるとピニャ殿下一行がその...門の向こう側の軍勢の調査のために出ていたのですが、

フォルマル伯爵領のイタリカにおいて門の内外における敗北により出た敗残兵が集団で攻勢をかけており、

戦況は劣悪になりかねないとのことなんです!」

 

そう息切れ切れに話す金髪の女が言う。

 

前までぼくが調査のために出てたからもういいって言うのに、姫様は好奇心旺盛で困るよ。

 

そう思いながらぼくは溜め息を大きくついて、

 

「...で、おおよそここからじゃ馬では3日かかるからぼくらにも行って欲しい、ってことでしょ?」

 

「そ、その通りです。姫様がいつまで持つかわかりません。

早く支度をしてください!」

 

荒っぽく言われ、投げやりになったぼくは親衛隊の役割を果たすために仕方なく

 

「はいはい、わーりましたよーだ。百合百合部隊が...(小声)。」

 

そう文句を垂れながら支度をする。

 

「なんですって...?」

 

銀髪の女の頭にイライラマークが出るが、

それもつかぬまに、彼女達は愛する姫様のために自分達も準備をし始めようと出て行った。

 

はた迷惑な奴だあの皇女様は。

 

そう思いながらぼくは親衛隊を6人1分隊の構成で編成し、召集する。

残りの隊員は帝都の防衛任務に就かせ、用意をする。

 

帝都は広く防衛に向いてるため、

ここの守備を固めて置かねばいざという時契約者(皇帝)に死なれては困る。

 

そして隊員の装備を決めるにあたって恐らく敗残兵ということで接近戦くらいしか仕掛けてこないであろう。

しかも数は多い。

 

だからこそ火炎放射器兵を2人ほど入れてある。

 

射程も短く耐久性もないが、近接集団戦においては絶大的な火力であり、銃火器による射殺よりも死体が腐臭しなくて済む。

ちょっとしたクッキングだ。

 

残りの4名はStg44やMG42を装備している。

 

万全な状態になったら、あのウザったらしい騎士団に出発の報告をせずにさっさとぼくの黒霧で移動する。

 

気分は悪いが、任務には変えられない、仕方ないと割り切った。

 

そうしてぼくはイタリカに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして3時間後.........

 

 

「ぅっ...ぅぉぇぇ...げほっ...。」

 

城壁に手をつけながら嘔吐を繰り返すぼくの姿がイタリカにあった。

 

「よ、ようやく到着したぁ...。」

 

そう思いながらぼくら親衛隊ぼく含め7名はイタリカに着いた...

 

 

がしかし、壁を四つ足で登り、見てみるが誰もいない。

 

「...えぇ...お出迎えはなしですか...。」

 

フラフラな気分の中、

視界にふと入った人集りができている北門を見て恐らく向こう側で戦闘が起きたのだろうと推測し、向かう。

 

少し距離があるがその強靭な生物兵器としての足がぼくらを風の如く目的地へと運ぶ。

 

「うっ...またきそう...。」

 

嘔吐がまた来るか来るかと焦りながら向かい、やっとこさ人混みの中...民兵達の背後へと少し荒々しく降りた。

 

「な、なんだお前は!」

 

そう急に驚かれ、武装を向けられるが、

 

「...その真っ黒な服...噂では聞いていたが...あんたら親衛隊の者か...?」

 

と、民兵の1人がつぶやく。

 

ここイタリカはそこそこな商業街であり、交易のあるここでは情報の流通も激しい。

 

親衛隊の見かけや情報は伝わっていたようだ。

 

「あ、あぁー、そうだね...所で姫様はいまどこ?」

 

そう民兵にぶっきらぼうに聞くと

 

「そ、そこだよ...。」

 

と、気まずそうな顔をしながら指を指す。

 

民兵の間を掻き分けながらぼくらは進み、南門の方は近づいて行くと

 

「...な、なんだこれ...。」

 

そう呟いてしまうほどの状況だった。

 

姫様が南門の扉を開けて、そしてその先にはコダ村で見た魔法少女レレイと神官のロウリィが佇んでいたんだから。

 

「...げぇっ...。」

 

そして更に問題だったのが...

 

「緑野郎...なぜここに...。」

 

そう項垂れながら目の前にいる日本軍...ジエイタイの野戦服を着た床にぶっ倒れた男を見据える。

 

そして当の本人 ピニャ皇女は気まずい顔で苦笑いだった。

 

新しいことが起きすぎてよくわからない混乱した頭を抱えながらぼくは事を成り行きに任せるのであった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた何のつもり!?」

 

そう怒りっぽいこれもまた若娘のエルフの声でぼくは脳を再起させた。

 

「扉の前に誰かいると思わなかったの?

 

ドワーフだってコモノートだって気をつけるわ。

 

確認しないなんてゴブリン以下よ。」

 

荒々しい声とともに、

先程の扉によって気絶させられたジエイタイの隊員が持っていた水筒の水を隊員にぶっかけ、叩き起こそうとしていた。

 

当の姫様はどうしたらいいのか困惑している。

 

そして神官様はと言うと、その男の顔を覗き込んでいた。

 

すると

 

ガバッ

 

「...わぁっ...んぅ...ん...?」

 

ジエイタイの男が突然起き出した。

 

ぼくはこのよくわからない状況の中、姫様に到着の報告をしようとタイミングを計らう。

 

「ここは...門の中なのか...?」

 

そう男が言うと、

 

『隊長、送れ。

 

隊長 応答してください!』

 

そう彼の身につけていた無線機がいきなり作動する。

 

それを確認した彼は無線機を手に取り、

 

「伊丹だ。」

 

そう日本語で返答した。

 

彼の名前は伊丹というのか...しかも隊長といったな...恐らく大尉辺りのの階級かな...。

 

そう推測するが、それよりも姫様...。

 

「ぁ、あのぉー...。」

 

そう丁寧に声をかけるが、反応は返ってこない。

 

萎えながら事が収まるのをぼくはまったのだった...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ぼくはピニャ殿下に無事到着の報告を行い、

炎龍を迎撃した時見かけたこの伊丹とかいう隊員と共に

イタリカについての説明をピニャ殿下からご教授していた。

 

この時、ジエイタイの連中からあからさまな視線を感じた。

 

(...なぜ旧友と殺し合わねばならないのか。)

 

そればかりを考えながら、ピニャ殿下のいうことを軽く整理していく。

 

異世界への出兵による徴兵で、イタリカの治安は低下、防衛すらままならなくなったこと。

 

ここの現当主のユイがまだ11歳の幼き領主であることから、ピニャ殿下自ら指揮を執っていること。

 

で、今絶賛この陸自の男 伊丹とコダ村の避難民である少女たちが竜の鱗を売却に来たが、

それどころじゃないということで助太刀してくれるそうだ。

 

今は戦闘計画立案をピニャ殿下が行っている。

 

具体的には配置先だ。

 

「いいだろう。お前達には南門の守備を任せよう。」

 

そうして緑の人達 ジエイタイの配置先が決まった。

 

「...で、親衛隊長官...お前の力量はどれほどなのか妾は知らんが、

できるならば緑の人達と同じく南門の城壁の護衛を務めてくれ。」

 

ぼくは右手を上げて

 

「 Heil 」

 

そう親衛隊として任務を全うするべく返礼するのだった。

 

そして、その後ピニャ殿下がフォルマル伯爵家の部屋から退出すると、少女たちや伊丹が改めて口を開く。

 

「えっと...君。」

 

そう伊丹に名指しされ、

 

「あの時、炎龍を追い払ってくれた奴だよな。」

 

そう問われ、あまり関係を持ちたくないがために、

 

「ぃ、いやぁ何のことですかな...。」

 

そうあしらうが、

 

「惚けないでくれよー...あん時は助かったんだから...。なに、お礼を言いたいだけさ。

 

えっと...名前は?」

 

親切に話してくれてはいるものの、彼は自分を信頼しきっていない目だ。

 

つまり情報を聞き出そうとしている。

 

「...名前は...無いや。」

 

「え?」

 

そう少し驚いた顔をされた。

 

だからぼくはとりあえずの仮名を適当に考えて、

 

「...エルでいいよ。エルって呼んで。

それと、勝手に話を進めないで。」

 

そう少し語気を強めて伝える。

 

「わ、わかった。エル...階級は?身長的に年下だとは思うけど、

もし少佐クラス以上ならヤバイ話し方だからね、ははは...。」

 

イタミ...といったか 苦笑いしながら情報交換を求めてくる。

 

「...。」

 

ニコッとしながら諜報任務の一環として進める日本軍に対してぼくは顔を伏せながら沈黙する。

 

自分の階級は親衛隊長官 全国指導者に任命されている。

 

つまり親衛隊上級大将かそれ以上の階級だけど、これは親衛隊内のことでしかなく軍部とは一切関わりがない。

 

だから階級は特別関係ないのだ。

 

あまり伊丹を驚かせたくないためおし黙る。

 

「...あー、答えたくないなら別にいいんだ、気にしないでくれ。

 

それに、その服装 まるで、というか正に、というか...ナチス...みたいで...

 

あーいや、ここの世界の人らにしては変だなと思ったり色々思うことがあってな...。

 

...ま、とりあえず今はやれることをやろうぜ、親衛隊長官殿。」

 

ぼくらの服装を怪訝に思いながらもニカッと笑いながら共同作戦となることからある程度の信頼性を保持しようと試みてくる。

 

彼らはまだここが異世界で、僕らがナチスだという確証は得れてないらしい。

 

まだ異世界にドイツ軍と似た親衛隊と呼ばれる部隊がいる、ということしか知らない...好都合だ。

 

「...うん。よろしくね。」

 

握手を求めると、伊丹も喜んで手を取ってくれる。

 

案外優しい人なのかもしれない。

 

けれど、懸念もあった。

 

(あぁ...ピニャ殿下は彼らを一応は信用して共同体を組織しているけれど、

今は戦時中...いつ殺されても何も言えないんだよな...。)

 

質問責めにあうのはいやだったし、死ぬことはない体にしろ彼らの我々より進歩した重装備が裏切る可能性を考えると相当痛みを味わうことになる。

 

厳密に言えば我々は敵同士だ 仲良く停戦だなんて皇帝陛下があれば別だができん

 

それにきっと、向こうの門の内側では、我々が敗者として掲げられ、

批判と憎悪の的になっている。

 

そんなことすぐに推測できる。

 

戦犯裁判にでもかけるつもりだろう。

 

そんなことは御免だ。絶対に。

 

世界に蔓延るユダヤ人共を殺し尽くすまでは。

 

奴らは、我々を殺すこともせず、生かすこともしない。

 

経済を通して略奪する、そしてそれを護衛し、金というものを釣り餌にする。

 

貧困は生まれ、誰もが我が身可愛さに溺れ、我が生存しか考えない。

 

そんなドイツは 祖国はもうごめんだ。

 

ぼくはこの世界で、ユダヤ人のいない潔白な世界を夢見る。

 

そう強い意志でぼくは準備を行うのだった。

 

 

 




次回はイタリカ攻防戦


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第12話 WesterWaldーWesterWald

今回は少し長め




南門に部隊配備が完了し、陸自と共に親衛隊ぼく含め7名が配置に着く。

 

そして指示を各自に出している伊丹が不意に持ちかけてきた。、

 

「...なぁ、エル。」

 

「ん?なに?」

 

ぶっきらぼうに答えると、

 

「その格好は?

それにその腕章...俺たち自衛隊は、別の世界から来たというのは知ってると思うけど、

 

こっちの世界のとある国の軍にそっくりなんだ...何か心当たりは?」

 

彼の目は単純に探りでもなんでもなく、不思議な感じで聞いてきているといった風だった。

 

事前に彼らが異世界から来た 門から来たという情報はどこにでも伝わってるのですぐに彼の言うことを察する。

 

...彼らニッポン人は恐らく我々がどう見ても...ナチス、にしか見えるのだろう。

 

わかる。むちゃくちゃわかる。

 

そして恐らく向こうの世界では祖国ドイツと枢軸国はあの様子じゃ敗戦しているはずだ。

 

向こう側の人間であることが悟られればぼくは恐らく連合国側に捕らえられ、戦犯として殺されるだろう。

 

それは許されない。ぼくにはまだ任務がある。新たにこの世界で、生を受けたその理由が、明確な動機が存在する。

 

この帝国に存在する民族の救済だ。

 

そして、

 

「...僕らのシンボルだよ!」

 

笑顔で返すと

 

「そ、そうか...偶然もあるもんだな。」

 

なんとなく返してくる伊丹。

 

僕らがこの世界で自然に発生した人達、ということにしてくれた方が楽だ。

 

もちろん、向こうの世界とたまたま似た親衛隊だなんて偶然にも程があるけど、ここは都合のいいことにファンタジックな世界だ。

 

この世界に来てから、異常なものを見てきたので、これが普通だと彼らに信じ込ませることもできるだろう。

 

しかし、やっぱり少し無理があったようで、

 

「...でもなぁ...こんな偶然ありえるか?いやでも、異世界だしな...うぅん...。」

 

と、当の本人 伊丹は首をひねり、もしかしたら...の可能性を疑うが、一応はぼくのことを信じたらしく、首を縦に振って納得してくれた。

 

少し間を置いてから

 

「ちなみに、階級は...内緒っていうなら言ってもいいよ?」

 

と先ほどの質問に答えると、

 

「お、おう!秘密は守るぜ 長官!」

 

と元気よく答えてくれた。

 

「耳、貸して。」

 

そう頼んで、伊丹が物々しそうに僕の方に耳を近づけてくる。

 

「親衛隊長官 全国指導者 兼 親衛隊上級大将。肩書きに過ぎないよ。」

 

そうゆうと

 

「...なんだ上級大...うぇぇええええええええええ!?!?」

 

そういきなり大声でのけぞりました。

 

「しーーっ、しずかに!」

 

そう人差し指でしーーっの合図をすると伊丹は開いた口を手で塞いで、ゆっくりとこっちに近づいてくる。

 

驚くのも無理はない。恐らく彼の所属する師団の最高司令官と同等の階級 権限だからだ。

 

けど、僕にはもうそんな配下の部隊は存在しないし、そもそも終戦直前にヒムラーの亡命やらなんやらで、成り行きで僕になっただけだ。

 

「只の肩書きだよ。そんなすごいことじゃないし...それに、今じゃたったの数百人規模でしかないよ、親衛隊は。」

 

そう簡潔に答えると

 

「そ、そうなのか...?いやでも...恐ろしいな...。

てか、階級制もこっちの世界と同じなのか?」

 

そう深く聞かれ始めて

 

「あ、あはは、まぁね...。」

 

誤魔化して答える。

 

「...なんか訳ありっぽい感じがするのは気のせいか?

 

この世界から来たわけじゃなかったりする?

 

あり得ないけど、終戦直前に門が現れてそこからこの世界まで来ましたーとか。

元は俺たちと同じ世界の人ですよー...とか。」

 

鋭い勘をお持ちのようでなにより。

 

「ふーん、そんなことよく思いつくね!

そっちの世界じゃそうゆー物語とか、あったりするのかなー?」

 

と、わざとらしく誤魔化す。あんまり言いすぎると、この服装だけでも明らかに怪訝なのに世界大戦から来た親衛隊員ですなんて言ったら連行されそうだ。

 

正体がバレれば、ぼくらは向こう側の世界に連れていかれ戦争犯罪などと呼ばれる戦勝国の裁判で裁かれ、幽閉されるだろう。

 

この世界の住民の命運を放って...ぼくは新たな民族共同体に 帝国に忠誠を誓った。

 

この世界を離れるわけにはいかないのだ。

 

そう固く決意すると、運良くタイミングよく

 

「...へぇ〜、面白いわねぇ...。」

 

と言いながら漆黒のゴスロリ少女 例の神官さん ロゥリィ・マーキュリーはこちらに更に近寄り、ぼくの体の周辺から出ている黒霧を触り始める。

 

「...っ、くっ、くすぐったいからやめろっ...。」

 

「いいじゃなぁぃ、ねぇ?伊丹ぃ。」

 

今度は伊丹の方向に近寄っていく。

 

「いや、まぁ...あはは...。」

 

伊丹も苦笑いしながら流す。

 

「ところで、エルのその黒いやつ、なんなんだ?魔法か何か?」

 

そう色々問われる。

 

「これは...まぁ、お友達。」

 

「お友達?」

 

伊丹が不思議に思って返すが、それ以上は答えない。

 

「ふーん...ま、異世界だし、こんなこともありなのかな。」

 

そう納得する。

 

あれ、伊丹って...

 

「ねぇ伊丹。この世界の言葉がわかるの?」

 

「ん...いや、まぁ細かな単語はわかんないけど、なんとなくはわかるよ。」

 

ソーナノカー。

 

「じゃぁそっちのジエイタイの通訳にもなれるね!」

 

「はぁ!?これ以上仕事が増えるなんて嫌だぞ!?」

 

「いいじゃぁん、国家に仕えれるんだよぉ?」

 

そうにやけ顔で言うと彼は休暇を望む如く空を仰ぐ。

 

そんなこんなで戯れながら我々は敗残兵の出現を待つんだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えるな。」

 

そう伊丹が言う。

 

時刻はもう夕方を迎えていた。

空は真っ赤に染められ、鳥の鳴き声が聞こえる。

 

「斥候の様ですね。

後方に本隊が見えます。数は5、600と言ったところですかね。」

 

そう敵兵の情報を報告する。

 

ぼくも彼らを手持ちの双眼鏡で視認する。

 

「狙いはこの南門かな。」

 

「そうですね...。包囲するには、敵の勢力も少なすぎます。

切り立った崖に面してる北側は除くとして、

残る三方の何処かに戦力を集中させてくるはずです。」

 

そう相手方の先手を読み取る...おやっさんと呼ばれてる彼。

 

ぼくも少し思案し、

 

「...重心戦術...だね。

最大の補充と最大の火力 航空支援を持って敵最前線の同時多方面攻撃を意味する戦術...。

 

 

...あっごめん。少し昔を思い出しただけ...。」

 

そう口を挟んだことに礼を詫びる。

 

「いや、いいってことよ。」

 

...この部隊長は気が物凄く軽いから話しやすくていいや。

 

そう思いながら佇んでいると、再び彼らは会話を再開する。

 

「しかし...それ以上に気になるのは...。」

 

そうおやっさんがつぶやく。

 

「...わかってるよ。俺たちは囮だ。

一度は突破された南門を守るのは、我々12人と親衛隊7名のみ。

 

ここを手薄に見せて敵を誘い込み、

奥の二次防衛線を決戦場にする気だよ。

あの姫様は...。」

 

そう、彼女は我々親衛隊とすら深く関わったことのない純潔な姫様だ。

 

ぼくたちへの優先度は低い。

 

「敵が上手く乗ってくるでしょうか。」

 

おやっさんが心配するが、

 

「はぁぁ...。」

 

そう深くため息をしてから伊丹は

 

「...一応ここの指揮官はお姫様なんでしょ。

だったら従っといた方がいいんじゃない。

 

あっそうだ、篝火はここで最後かーーーーー 」

 

そう彼は戦闘計画立案をそこで終わらせ、再び準備に取り掛かり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、我々は夜になるまで待ちに待ち、夜間の奇襲に備えた。

 

 

 

 

 

そして遂にその時が来た。

 

ワァァァァァァ

 

そう遠くで雄叫びが聞こえた。

 

周りを見回してみると、炎が聳え立つ場所が見えた。

 

「...あっちか。」

 

双眼鏡で視認すると、敵の奇襲は南門ではなく東門 だった。

 

炎矢によって城壁に焼夷が行われ、明らかなタイミング良しの最善の夜襲だった。

 

「なぁんでぇ?ここに攻めて来るんじゃなかったのぉ?」

 

そう隣にいるロゥリィが愚痴をこぼす。

 

「03:11 夜襲には絶妙な時間かな...。」

 

そうまた隣の倉田...夜襲準備の時の挨拶で知り合った彼が言う。

 

「盗賊といっても元は正規兵だ。その辺は心得ているのだろう。」

 

そうおやっさんが推測する。

 

「東門からの応援要請は?」

 

伊丹が率直に聞くが

 

「まだ、何も。」

 

おやっさんが残念そうに答える。

 

「そうか...。」

 

ぼくも再び双眼鏡で視認すると、敵兵が既に城兵との白兵戦となっており、非常に劣勢であった。

 

さらに城内にすら侵入を許す始末。

 

「これだから民兵は信頼できない。」

 

そう呟きながらぼくは城下にいた親衛隊員6名に

 

「DaväiDaväi!! Schutz Efön Dëmen!!」

 

そう叫び、彼らを東門へと向かわせる。

 

スーッ ハッ

 

彼らは指揮統制に自ら組み入るようにその足で住宅の屋根に四つ足で登り、東門へと尋常ではない速度で走り始める。

 

「うぅぅぅんっ 」

 

そう色っぽい声を出し始めた横のロゥリィを無視して、

 

「伊丹二尉 我らは先に。」

 

そう言って壁上から住宅の屋根に飛び移り、自分も走る。

 

「お、おい待て!!」

 

静止させようとする伊丹の声も待たずに。

 

「帝国における民族を 同じ共同体を見捨てる訳にはいかないよ。」

 

そう言いながら必死に東門へと走っていると、

先程の神官が後ろから自分と同じくらいの速さでニヤリと笑いながらついて来ていた。

 

「私もまぜてぇよぉ〜?」

 

そうねちっこい言い方でついてくるこの神官とは思えない奴に無言で合図しながら、東門へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして僅か十数分後...

 

 

「ふふふっ...ほほほほほっ。」

 

そう馬鹿げたお上品な笑い方をしながら親衛隊7名及び神官は、

まだ乱戦の中の東門城内へと着地する。

 

「うるひぇえ!」

 

そう着地の時に噛み噛みになりながら文句を垂れるぼく。

 

そんな彼女はぼくを無視して、

彼女はその着地の時に地面に刺さったその大きな鎌を再び持ち上げ、

 

鎖と鉄の鉄はうを繋いだ武装をする仮面の男が襲って来たのを難なくかわしてその大男を地面に叩きつける。

 

 

ズザザザザザァーーッ

 

そう男と地面が擦れ、少し地鳴りがするほど凄まじい馬鹿力だった。

 

そして突然に現れた謎の少女...?と

 

スゥゥゥーーーッ...ハァァァァーーーッ....

 

黒服に身を包んだ7名の人間の登場によって乱戦は静まり返り、我々に注目が浴びせられる。

 

だが次の瞬間

 

ドォォンッ

 

「ぐはぁぁ!!」

 

大きな地鳴りと爆音とともに、城外の敵兵が吹き飛んだ。

 

ドォォォォォ

 

再び空を見てみると、うるさいほどに我々の試作兵器段階であった仮名 " ヘリ " であろう物が

その対戦車ズーニーロケットと6連装になっているMGを撃ち放していた。

 

「...試作兵器の設計図、戦後取られたんだ...。」

 

自国の物が略奪されたのは気に食わないが、今はそれどころではない。

 

「Körr Shund 」

 

ぼくがそう告げると、前方にいた我らが親衛隊員6名のうち2名が敵兵に近づいていく。

 

「な、なんだあいつらは...。」

 

「か、構うものか!やれ!やれぇぇ!!!!」

 

そう敵兵は脳のない猿のように30,20,10mとその2名へと近寄る。

 

そしてその2名が持つソレに指がかけられると

 

 

 

ボォォォォ

 

ゴォォォォォ

 

 

 

そう恐怖の炎が射出口から出る。

 

「う、うわぁぁ、がぁぁぁぁ!!」

 

「熱い!!熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!!」

 

そう敵兵の阿鼻叫喚が聞こえ、火で覆われた敵兵は数秒後には動かない肉塊となっていた。

 

ババンッ

 

ババンッ

 

バラララララララララッッ

 

後方の4名もMG42汎用機関銃とStg44突撃小銃の後方射撃を行う。

 

ぼくも黒霧を身体から出し、近くにいた数名の敵兵にまとわりつくす。

 

「な、何を...貴様ッ!!!!」

 

その中の1人の敵兵が戯事を言うが、

 

グギィィィッッ

 

ガギッギギギギ

 

「ぐ、がぁがが...。」

 

「が...はッ...!」

 

そう耳が痛みそうな音が聞こえたと同時に敵兵の4肢はありえない方向にそれぞれがぐちゃぐちゃになりながら曲がる。

 

「「がぁぁぁぁ!!」」

 

わけのわからない叫び声を出しながら

 

 

 

一瞬ぼくの視界と聴覚が失われる。

 

 

 

 

その後、再び目を見開くと、敵兵の身体がバラバラになり、原型も留めず臓器や鮮血が周りに飛び散った。

 

「ヒッヒィッッ!!」

 

周りの民兵や敵兵はこれを見て酷く怖がっていた。

 

「 ...Sieg Heil... 」

 

そう告げると、親衛隊員は更に火力を増し、フルオートに、絶え間なく銃弾と炎を更に浴びせ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうやってわずか数時間後、

イタリカ攻防戦は緑の人達と親衛隊によって終焉を迎えた。

 

「元は同志だった正規兵だと思うと、殺すのは気分の良いものではないな...。」

 

そう言いながらぼくは真っ赤に染め上げられた制服を黒霧で元の漆黒に戻す。

 

クリーニングだなこりゃ。

 

「あぁー、ひっどいっ。」

 

そう言いながら服についた血の匂いが凄まじく、もう一度黒霧で洗い試すほどだった。

 

途中、ジエイタイの女が戦乱の中に混ざって来たが、無視して虐殺を続けた。

 

その結果、最終的には投降意思を示した捕虜まで殺戮したため、伊丹に静止させられたが

 

それ以外の、ジエイタイからの心情はあまり良くはなかったという点以外はなんら問題なかった。

 

同志の生存の妨害を叩き出す者は生きて返さない。

 

それがぼくらの報復のカタチだった。

 

 

 

 

 

 




戦闘描写はクソザコなのでお察し


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