【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 (ちょっつー)
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炎上汚染都市 冬木〜『運命の雫』〜
1


ウルトラマンジード〜つなぐぜ願い〜発売日!!
ジード本編後の、ウルトラマンとして認められた朝倉リクが、自分はどんなウルトラマンなのかを決意する。そんな素晴らしい作品です。
そこ、ジャグさんとオーブニカパイセンが目立ち過ぎとかいわない!!

拙作ですがよろしくお願いします


『すぐに凍結保存に移行しなさい!! 死なせないのが最優先よっ!!』

 

「至急手配します!! 」

 

 僕、ロマニ・アーキマンは焦っていた。人為的な破壊工作によって危篤状態へと陥ってしまった47人のマスターたちの凍結保存のために人員を割く、被害にあった職員の対処、カルデアの機器の整備確認など、やることがありすぎて頭が追いついてくれない。

 ()()()がいつか来ることは分かっていたじゃないか!! しっかりしろロマニ・アーキマン!!

 

 こんなんじゃ医療チームのトップ失格だ。 所長のあの指示がなかったら危うく47人全員を見殺しにしてしまうところだ。 けど、全体の8割もの機能が停止してしまったカルデアでは彼らを救うことは出来ない。

 

 僕より上の階級の人は爆発に巻き込まれてしまったため、なし崩し的に指揮を任されているけど、レイシフト先──炎に包まれている2004年の冬木市に所長がいてくれて助かった。

 

 48人目のマスター、藤丸立香ちゃん。所長のお怒りを喰らって実験チームを外されたことで運良く爆発に巻き込まれなかった彼女だけど、彼女は数合わせとして呼ばれた魔術のことやサーヴァントのことについてまるで知らない一般人「素人」だ。

 それに加えてマシュがデミ・サーヴァントとしての力がこのタイミングで成功するなんて…………

「素人」のマスターに、いくら英霊の力を宿していたとしても戦闘は「素人」のマシュ…………

 何が起きているのかわからないこの状況で2人だけじゃなかったのは幸運だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸運だなんて言うんじゃなかった!!!

 特異点Fで行われた聖杯戦争、その聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントが立香ちゃんたちを追ってきてる!!

 

 

 竜牙兵のような敵性エネミーなら戦闘経験の少ないマシュ一人でなんとかなるかもしれないが、相手がサーヴァントなら別だっ!!

 戦闘経験の少ないマシュでは敵わない、しかも所長と立香ちゃんを守りながらなんて尚更だっ!!

 

「ドクターっ!!! 」

 

「要件は手短にっ!! 今は特異点での観測が最優先だっ!! 」

 

 駆け込んできたのは…………爆発に巻き込まれてしまったマスターたちの凍結保存をダヴィンチちゃんと一緒に行ってた職員の一人だ。 息を切らして入ってきたということはそれ程の要件なんだろうと、モニターに集中しながら耳を傾ける。

 

「Aチーム、ならび危篤状態のマスターたち()()4()6()()の凍結保存を完了しました。 」

 

「ああ 、ありがとう。 君は他に不備がないかの確認を………… 」

 

 あれ? 今彼はなんて言った? 46? 彼女、藤丸立香ちゃんを含めてマスター候補は48人いたはずだ……。 それを46人? 間違えている可能性だってある。

 マシュたちの前にランサーと思わしきサーヴァントが現れたが仕方がない。

 

「それは……マシュのことも数えての……ことかい? 」

 

「いいえ、デミ・サーヴァント マシュ・キリエライトを抜いたマスター適正を持ったレイシフトメンバーの人数です。」

 

 あ、ありえない…………。 あの爆発が起きたのカルデアの中央部、コフィンに入っていたマスターは全員巻き込まれてしまったんだぞ!?

 あの状態から抜け出せるなんて絶対にありえない!!

 そっ、そうか!!!

 

「Aチームの誰かかい!? 彼らの才能なら何とかなった可能性は 」

 

「違います。 」

 

 管制室で作業をしているみんなが彼の言葉に驚いている。

 きっとここにいるみんなも僕と同じ考えだったんだろう。生き残れるとしたら、マスター候補の中でも頭ひとつもふたつも抜けたAチームの誰かだろうと……。

 

()()()()()()4()7()()()()()()。 藤丸立香同様レイシフトした形跡が残されています。 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

 

『私の狩場に迷い混んだ獲物をどう扱おうと、私の自由ではないですか』

 

 肌を照り付ける、都市全体が炎で包まれた特異点という場所に来てしまった私、藤丸立香は今絶対絶命のピンチに陥ってる。

 今まで襲ってきた骸骨の化物たちとは違う、意思を持って私たちを殺そうとする大きな鎌を持った女性のサーヴァント。

 そのサーヴァントは、私たちの恐怖を煽るように、笑いながら、石になった人間の頭をいとも簡単に引きちぎって見せた。

 

「ひっ! 」

 

「うっ! 」

 

「先輩、所長。私の後ろに下がっていてください!! 」

 

 人間が石になっていたのは表面だけだったみたいで、顔をとられた体からは、血が鯨が潮を吹いたみたいに飛び出した。

 石になった人間たちは、鎌のサーヴァントがコレクションするように作り出しているようで、すくんで震えている私たちのこともコレクションの一部にするために襲いかかってくる。

 

『ほらっ!! ほらっ!! どうしたのですかっ!! 守るだけでは私は倒せませんよっ!! 』

 

「くっ!! 」

 

 相手は本気で私たちのことを殺そうとしてくる。 殺気に当てられるってこういうことを言うのかな? 心臓の音が鳴り響いて、さっきとは違う、死んでしまうかもしれない。ここにある石の人間たちと同じようになってしまうと考えるだけで、恐怖で体が震えてる。

 

 マシュが手に持ってる大きな盾で鎌を受け止めてるけど、防戦一方で決定打になる攻撃は当てることが出来ない。

 

「わたしではこのサーヴァントには敵いません。 逃げてくださいっ先輩っっ!! 」

 

「マシュ…… 」

 

 力強く、私やオルガマリー所長を守ろうとしてくれる女の子のことを、その背中を見て……なんでって不思議に思った。

だってさっきまで私と同じただの女の子だったんだよ? それなのにどうして戦えるの?

 デミ・サーヴァントになったからってマシュと私ってそんなに違うの?

 

 

 

 怖く……ないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

「肩慣らしぐらいにはなるか 」

 

『ッッ!!? 』

 

 マシュ一人を置いていくなんて絶対に嫌だけど、どうすればいいのか分かんなくて立ち尽くしていた

 傷を追っていくマシュを見ていることしか出来なくて、心のなかで『誰か助けて』と、そう叫んだ時、その人は現れた。

 地の底を這い上がるような低い声、それと一緒に私たちの後ろを通りすぎて敵サーヴァントに光の球体が当たった。

 

「まさか、この程度で終わるほど脆弱ではないだろう? 」

 

『キサマ……っ!!』

 

 男の人……。 お父さんと同じくらいの年の人かな? 私が着てるカルデアの制服とは別に最初に渡されたピッチリスーツの色違い、黒と赤の戦闘服を見に纏った、髪の毛をかきあげオールバックにしてるおじさんがそこに立っていた。

 

 そのおじさんは、私たちが逃げられないように張られた無数の鎖を、手に持ってる鬼の金棒の鉄の所が上にも下にもついてるみたいな武器で壊してマシュの隣に立つ。

 

「あ、あのっ!! 」

 

「邪魔だ…… 」

 

「えっ? 」

 

「邪魔だと……言っている!! 」

 

「キャアアアアっ!! 」

 

 あのおじさん、マシュに攻撃してきた!! 振り向きながら野球のバットを振り回すみたいにしてマシュのこと吹き飛ばした。

 

「マシュっ!! 」

 

「何をするのよ貴方!! 」

 

「勝てないと口に出したヤツが隣にいるだけで虫酸が走る。 そんなヤツをどかして何が悪い 」

 

「大丈夫? マシュ? 」

 

「はい、……わたしは大丈夫です 」

 

「まったく、なんなのよ彼は…………。 」

 

 マシュに駆け寄り安否を確認していると、敵サーヴァントとおじさんが戦闘を始めてて、鎌と金棒がつばぜり合ってる。

 サーヴァントと渡り合ってるその人は、私から見るとただの一般人のようにしか見えなかったから、マシュと所長の二人に聞いてみる。

 

「あの人も何かの英霊なの? 」

 

「いいえ、違います先輩。 彼は英霊ではありません、そのはず……です 」

 

 あのおじさんのことをマシュは知っているみたいな口振りだ。 マシュは盾を支えに立ち上がると、おじさんのことを教えてくれる。

 

「彼は先輩と一緒で、今回のレイシフト実験で呼ばれたマスターのうちの一人の方です。 」

 

「「えっ!? 」」

 

「それは本当なのマシュ!? あの男がマスターの一人ですって!? 」

 

「写真と少し髪型が変わっていますが、今回召集されたマスター48人の顔は覚えていましたので間違いないと思います 」

 

『つ、繋がった!! 立香ちゃんにマシュ!! 今の状況を教えてくれ!!! 』

 

 繋がったドクターの顔はさっきサーヴァントが襲ってきた時とは違う意味で焦った表情をしていた。

 今目の前で起きたことを教えると、ドクターからもあの人は本当に私と同じマスター候補だった人だって証明された。

 

『やはりレイシフトしていたのか…………。 けどサーヴァントと互角の戦闘を繰り広げてるだって!? 所長どうなってるんですか!? 』

 

「私にも理解できてないわよっ!! でもあれは、どうみても………… 」

 

『サーヴァントだろうな、あのおっさんは 』

 

 またまた突然声が聞こえたと思ったら、キャスターのクラスを名乗るサーヴァントが現れて私たちの味方をしてくれるって言ってくれて、仮契約として私がキャスターのマスターになった。

 

 ああもう、いきなり色々なことが起こりすぎて頭がパンク寸前だよ!!

 

「まあそう落ち込むなよお嬢ちゃん。 確かに力量じゃあ嬢ちゃんはランサーには敵わねえが、度胸で言ったら勝ってたんだ。 顔をあげな 」

 

「はっ、はい!! ありがとうございますキャスターさん 」

 

「おっ、どうやら奴さんも決着つくみてえだな。 」

 

『くっ!! 何処のだれとも知らない英霊ごときがっ!! 』

 

「この体の使い方にも慣れたところだ。 貴様はもう消えていいぞ? 」

 

『ぐっ!! 舐めるなっ名も知れぬ英霊がああああ!! 』

 

 敵サーヴァントが不死殺しだっていってた鎌を私の目じゃ捉えきれない速度で振るう。

 

「ヒュー、やるじゃねえかアイツ 」

 

『なにっ!? 』

 

「英霊というのは、名を残した武器や逸話が召喚された時の力になるのだったか? だが、どうやらコイツは貴様の手には余る代物らしいな 」

 

 

 何度か鉄と鉄が衝突する音があちこちで鳴って、止まったと思ったら敵の振るった槍を片手で軽々と受け止めながら話してる。

 手に余る、そう言っておじさんは金棒でランサーの鎌を真っ二つに叩き折る。

 叩きつけるようにしたその勢いを殺さずに、金棒から最初に出した光弾を鎌の形に変えると、敵サーヴァントのことを真っ二つに斬ることで倒した。

 

 斬られた敵サーヴァントは粒子の光のようなものになって空に消えていくその姿を見るおじさんは、残念そうに呟く。

 

「名を刻んだ英霊といっても所詮はこの程度か………… 」

 

「嬢ちゃん、構えとけよ。 アイツが敵なのか味方なのかはわかんねえんだからよ 」

 

「はっ、はい!! マシュ・キリエライト戦闘態勢に移行します!! って先輩なにを!? 」

 

 私は何でだろうかおじさんがキャスターの言うように敵だとは一切思わなくて、近寄ってみることにした。

 

 本当は、吹き飛ばされたマシュの体に触れたとき、マシュ……震えてた。 やっぱり私と一緒でマシュだって怖かったんだだって思って

 

 なら今度は私がマシュを守る番だ~とか、吹き飛ばしたのは本当は戦うのが怖いマシュを戦闘から遠ざけるためだったんじゃないかな~なんて思って声をかけた。

 

「あの、貴方は何て言う英霊……なんですか? 」

 

「…………べリアル。 オレの名はべリアルだ。 貴様らに力を貸すかどうかは………そうだな、このオレの興味を引かせることができたその時にでも、考えてやる 」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジードオオオオオオオ!!!! 」 怒りや憎しみに囚われながらも、戦士は力を求め続けた。 

誰にも見下されない絶対の力を。 生きとし生きるもの全てを支配する最強の力を…………。  

だが、その野望はあるものによって止められた。それは、かつて戦友と呼べたものではなく。それは、かつて宿敵と呼べるものでもなかった……。それは、自分と同じ血が流れた"息子"という存在 。 定められた運命を覆すその輝きを、ありありと魅せられた。

そうして、全てを失った戦士は運命に抗う物語に組み込まれる。 これは、全てを失った戦士が今まで知ることの出来なかった"ナニか"を掴むことができるかもしれない物語…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「……ダヴィンチちゃんに呼ばれて来てみたはいいけど、何ここ? それに後ろの巨大なガチャガチャなにこれ? 」

「先輩は英霊たちの知識について何も知らない新人マスターさんです。なので! このガチャマシーンから出てきた英霊を不詳このマシュ・キリエライトが掻い摘んで紹介していくコーナーです! 」

「おお!! これで私も『あの剣は……◯◯のもの!!』みたいなことが出来るんだ!! 」

「いいえ、紹介させていただくのは先輩の契約したことで、このカルデアのデータベースに登録された者。 もしくは敵として一度は戦ったことのある相手だけのようです 」

「え〜 」

「それでは、次回から始まらせていただきます英霊カプセルナビ 」

「次回も見てね〜 」

「よろしくお願いします!! 」


※後書きは本編とは関係ある時とない時があります。


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2

FGOフェス1日目ですね。
雨にも負けず作者も並んでますが、暇つぶしにでも読んでくれると幸いです。



『進め……』

 

『進め……』

 

『進め……』

 

『進め……』

 

『進めえっ……』

 

『『『『『進めっ!! ─────!』』』』』

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

(…………何が………起きたのだろうか? )

 

うっすらと、ぼんやりとだが意識を取り戻した。

今にも意識が飛んでしまいそうなほど朦朧とした意識の中で、誰かに進めと、立ち上がれと言われた気がした私は、自分がどんな状況になってしまったのか思い出していた……

 

 

"人理継続保障機関フィニス・カルデア"

2016年をもって人類は絶滅する……らしく、その原因を解決するためにレイシフトと言うタイムマシンを使って過去に飛んで間違った歴史を正す。

そのために集められたうちの一人が私だった。 日本の都内で警察官として働いていた私は、署に来ていた献血サービスを興味本位で受けてみたところいつの間にかここ、カルデアに連れてこられていた。

 

どうやら献血サービスというのは名ばかりの真っ赤な嘘で、本当はタイムスリップをするための人材を探す適正試験だったのだ。その試験に偶然通った私は、担当の人に協力を要請された。

もちろん最初は丁寧に断らせてもらった。私には結婚してもうかれこれ20年になる妻に、今年で高校を卒業する娘、10才の息子というごく普通の家庭を持っているのだ。出世の話があっても自分の任された地域を守りたいという単なる我儘で巡査部長どまりのまま42とずいぶん歳を重ねてきたが、後悔はない。

小さな頃から憧れだった光の巨人─ウルトラマン─を、娘や息子と共有した趣味で楽しめるのはうれしいからな。

ギンガとビクトリーの後に続くウルトラマンはどんなウルトラマンなのか楽しみだというのも1つの理由だ。

だからと、断ったはずだったのだが…………

 

悪い癖なのだろう、相手が本当に困っているとつい手を差し伸べてしまう。このせいで警察でありながらなんど通販詐欺にあいかけ妻に叱られたか…………

 

まあ、そんなこんなで私は出張という扱いでこのカルデアにやってきた。

 

集められた適性者は合計で48人いるらしく、どうやら私は47番目らしかった。集められた殆どのメンバーが魔術や過去の英雄を召喚することに詳しく、まったく知らないのは私と48番目の娘と年の近い女の子だけで、私たちは数合わせとして呼ばれた補欠なのだとか……

48番ちゃんはカルデアについたばかりで疲れていたのか、ミーティング中に立ったまま眠るという器用なことをして実験のメンバーから外されてしまった。

 

私も知識が追い付いていないので辞退させて貰おうとしたが、なんでも私のタイムスリップするための適性率は非常に高かったので参加は強制なんだと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時、無理にでも断っておけばこうはならなかったかも、知れないな…………

 

50が見えてきたおじさんには恥ずかしい体の線がハッキリと出る、月刊ヒーローズに連載してる「ULTRAMAN」に出てくるウルトラマンスーツみたいで少し興奮を覚えたが……

そんなスーツを来てタイムスリップするためのポットに入り起動を待っていると、聞いたこともない音と光に包まれていた……

 

 

気がついたときには体はピクリとも動かず、タイムマシンの割れた隙間から見えたのは炎に包まれる空間だった…………

目に映るのは炎、炎、炎。 熱さを感じないことからもう私は長くないんだと……そう予期させる。

 

(ああ…………私はこのまま死んでしまうんだな…………? )

 

 

天寿を全うしたいという気持ちはあったが、もう42だ。 充分生きたほうだろう。

綺麗に視界が開けたのは一瞬で、目の前の映る景色はおぼろ気で、いつ意識が飛んでもおかしくないような状態だ…………

 

『貴様は、そのまま死ぬのか? 』

 

何処からか、声が聞こえた…………

死ぬときは走馬灯というヤツを見ると聞いていたんだが、ああ最期だから幻聴でも聴こえてしまうようになったか

それともこの年になってまでウルトラマンが好きすぎて幻覚でも見ているのだろうか……?

 

私の目の前に、球体のようなものが浮かんでいるように見える。

 

『理不尽な死を貴様は受け入れるのか? 否定もせず、抗いもせず、生を放棄するか? 』

 

(ははは、こんな状況で奇跡が起こるわけでもないんだ……。 だてに42年も生きてきてないよ、現実ぐらいみえる)

 

『この惨劇を起こしたものに復讐したいとは思わないのか? 憎しみを、妬みを、恨みを抱かないのか貴様は』

 

(恨みっていっても…………誰が起こしたのかもわからないしな………。そもそもこれ、事故なんだろ? それならしょうがないだろ…………。 毎年事故でどれだけ人が死ぬのか知ってるからな………… )

 

『つまらない……。 偶然に呼ばれたかと思えば、オレの声が届いたのはこんなにもつまらない存在だったとはな。 ──興醒めだ 』

 

(ああでも………… )

 

『──なんだ、オレは気が長くもつほうではない。 言いたいことがあるならはやくしろ 』

 

(ははは、私の幻覚だというのに手厳しいものだな……そうだな、2017年以降の未来が訪れない、だったか…………? それは嫌だなと思ってな…… )

 

『────それは何故だ? 生を放棄した貴様に、未来など元より無いだろう 』

 

(娘の花嫁姿をまだ見ていないんだ。どんな人を連れてくるかは分からないが、絶対に一発殴ってやると、決意していたんだけどなあ…… )

 

『…………』

 

(しかもさ、娘は私のことを見て警察官を目指すっていってくれてな……。 警察官になった娘と並んで写真……撮りたかったな……

私はさ、ウルトラマンの宇宙警備隊ってあるだろ? あれに憧れて警察官になったからさ。 娘のおかげで、ようやく自分も憧れられる側になれたんだな~って……)

 

何でこんなに自分のことを語ってるのか、自分でも分からなかった。 けど、不思議と止める気にはならない。

 

(息子はさ、まだ10才だから将来の夢とかそういうのは明確じゃあないんだ。 けどさ、毎年ヒーローになりたいってそう言ってるんだ。まるで昔の私みたいにさ……。 ウルトラマンにはなれないけど、警察官や消防士、どんなヒーローを目指していいから、それを助けてやれたら、最高だろうな…… )

 

本当に些細なこと、自分がやり残したというよりは、思っていただけで口には出していなかったこと……

 

(私のせいなんだがな? イベントや劇場を見に足を運ぶことばかりで、夫婦2人の時間があまり作れていないんだ。 こんなウルトラマンをずっと諦めなかった男と、小さな頃からずっと一緒にいてくれた大切な人だからな、この仕事から帰ってきたら2人だけで旅行しようって話をしてたんだ……… )

 

何よりも大切な家族のこと……。 2017年以降の未来がないと言われた時、一番考えたのはやっぱり家族のことだった。 だから、そのことを一番に伝えたかったのかもしれない。

 

(姪や甥もな、ヒーローおじちゃんなんて言ってくるもんだから可愛くてついおもちゃを買い与えたりして、姉さんや兄さんによく怒られたりしてな…… )

 

(後輩のほうが役職が上なくせに、私に頭を下げたりするんだぞ? やめてくれと言うんだが皆やめてくれなくてな )

 

 

遺言のような、家族のこと伝えてからは、他愛もない話を続けることにした。

喋ることを止めてしまったらもう目覚められないと思って、私が見てる幻覚だっていうのに……

 

娘のこと、息子のこと、妻のこと……甥や姪、仕事の後輩のこと等たくさんのことを話続けた……

 

『…………ふっ、いいだろう。──貴様に見せてやる。──何の価値もない平凡で平和な未来とかいうつまらないモノをな 』

 

 

その声を聞いて、私の意識は閉じてしまった。

最期に感じたものは、火の手が自分の手を燃やし尽くす感覚と…………燃える炎よりも赤黒く輝く光の球体が私を包み込む熱さだった…………

 

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「記念すべき最初のサーヴァントは……こちら!! 」

「わたし、『マシュ・キリエライト』についての説明ですね。 頑張ります! 」

『マシュ・キリエライト 英霊と人間が融合したデミ・サーヴァントです。 身の丈以上の円形の盾を武器にして戦います』

「と、言っても私に力を貸してくれた英霊の真名もわかっていない未熟者なのがわたしです 」

「それでも、マシュは私のサーヴァント。 頼りにしてるよ!! 」

「はいっ! 先輩!! 」

「それじゃあ今日はこのへんで〜 」

「「次回も見てねえ〜(見てください! ) 」」


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3

ナイトフェス最高だったんじゃ~~!
作者、今日はファスチケ当たったんでゆっくり並べます。

拙作ですがどうぞよろしくお願いします。


『まだだ………… 』

 

『まだ……!! 』

 

『オレは、まだっ!! 』

 

『まだっ!! 飛べる!! 』

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

 

 

 私たちはキャスターの案内の下、無人になった学校のひとつに身を寄せていた。

 

 そこでなら説明も出来るだろうって、この特異点で何が起きてるのかキャスターが教えてくれた。

 

『聖杯戦争』

 7人のマスターが"セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー"の7騎の英霊のうち1騎を召喚して、生き残りをかけた闘いをする。

 その勝利者には、願いをなんでも叶えてくれる万能の力をもつ聖杯の所有者になれる。

 

 それがこの特異点でも行われたらしいんだけど、いつの間にか違うモノにすり替わってたらしい。

 

 残ったサーヴァントはセイバーとキャスターの2騎だけだったみたいで、さっきのランサーもセイバーに倒されたことで手駒になっていたんだって

 

「ではキャスターさんがセイバーを倒すことが出来れば…… 」

 

「この街の聖杯戦争は終わるだろうよ 、そのために動いてたんだが、いかんせん戦力が足りなかった 」

 狂った聖杯戦争の終結。それは私たちの目的と一致しているから、キャスターは私たちに正式に協力してくれることになった。

 

「貴方との話は何とか纏まったわね。 次はアナタよ!! 47人目のマスター!! 」

 

 47人目、私の一個前のマスター候補のベリアルさんだけど、所長に指さされても無視して答える気はないみたい。 その代わりにドクターがベリアルさんのことを教えてくれた。

 

『宮原博樹、今年で42歳を迎えるこのカルデアの中でも年長の内に入るけど、その高いレイシフト適正から選ばれた実験メンバーのうちの一人。立香ちゃんのように運良く爆発に巻き込まれていないのなら可能性はあったけれど……。 きみがコフィンの中に入ったのは情報として記憶されている』

 

「そこの藤丸立香同様、魔術の知識はゼロ。 数合わせで呼ばれた47人目の補欠のマスター。 そのアナタがどうしてサーヴァントと契約して!! しかもデミ・サーヴァントになっているのよ!! 」

 

「黙れ女。 オレがコイツの身体を使っているのは単なる気まぐれに過ぎない 」

 

 分からないことがあると隣にいるマシュが教えてくれるんだけど、所長があんなに怒ってるのには理由があるみたい。

 

 『デミ・サーヴァント」────今のマシュがそれなんだけど、人間が呼び出したサーヴァントと一緒になった存在をそう呼ぶみたいで、べリアルさんもそのデミ・サーヴァントらしい。だけど……

 

 そのデミ・サーヴァントの研究ってかなりのお金がかかってた見たいで、偶然それらしいことが可能になったベリアルさんに怒り心頭って感じかな?

 

「"英霊を呼ぶのに相応しい魔術回路と無垢な魂を持った子供"を用いることがデミ・サーヴァントの条件のはずでしょう!? この男はそれをどちらも満たしていないじゃない!! 」

 

「コイツがオレを呼び出し、それにオレが応えた。 ただそれだけの話だ 」

 

「ただそれだけって…………。それにっ!! べリアルという名は本当にアナタの真名なの!? アナタのマスターの意識はどうなってるの!! 」

 

「いちいち質問の多い女だ。あまり他人に好かれんだろう貴様 」

 

「んなっ!! 余計なお世話よっ!! 」

 

「まあいい、コイツは今は眠っている。 オレが入る前は死に体だったんでな、いつ目覚めるかは知らん。 そして 」

 

 べリアルさんは目の前でぷりぷり怒ってる所長の頬を右手で挟みながら顔を寄せる。

 

「このオレを舐めているのか? 名を偽る理由など存在しない。 オレの名はべリアルだ、それ以外の名を名乗る気はない 」

 

 そう言って所長を掴んでた手を離すと、べリアルさんは教室の隅っこのほうに移動して机に腰かけた。

 

 そう言えばべリアルって名前よくゲームとかで聞いたことある。

 

「確か……べリアルって悪魔の名前だっけ? 」

 

「はい、堕天使と記されている書物もありますがだいたいそのイメージであっていると思います。

べリアル、有名な所ですとソロモン王のが使役する72の悪魔のうちの1柱がそう呼ばれています。 」

 

『一説では高位の天使だったって話もあるし、ああでも立香ちゃんのいたところでは高位の魔王って認知のほうが強いかな? 彼の手に令呪があるから正式に契約されていることは確かだ。その真名が本当で、彼が僕たちに力を貸してくれるんなら強力な味方であることは間違い…………。 その筈だ…… 』

 

「まあいいじゃねえかどうでもよ。 今はこの聖杯戦争を終わらせんのが先決だ。 それによ、特異点とやらになった原因があるとしたらあそこ以外はありえないだろうな。この土地の"心臓" 大聖杯 」

 

 

 所長とドクターがべリアルさんのこと本当に味方なのか怪しんでるけど、キャスターが声をかけると、べリアルさんはニヤリっと笑った。

 

「そこにセイバーの野郎が陣取ってやがるが、アンタも戦ってくれんだろう? べリアルさんよお 」

 

「……ジロジロとこちらを監視してきている、気持ち悪い弓兵の相手をするきはないがな 」

 

「えっ!? ちょっと何するのよ!! 」

 

「嬢ちゃんっ!! マスターを連れてここから出なっ!! 」

 

 べリアルさんが所長のことを脇に抱えて教室から飛び出してくのを見てると、キャスターの指示で私もマシュに抱えられて外に飛び出す。

 

 すると私たちがさっきまでいた教室が突然爆発してしまう。

 

「珍しく表に出てきたと思ったら随分なご挨拶じゃねえか。 セイバーの側にいなくていいのかよ信奉者さんよ 」

 

 校庭にはいつのまにか白い髪の褐色肌のサーヴァントがいて、キャスターの出した魔術を剣で弾き落とした。

 

『信奉者になったつもりはない。 だがつまらん来客を追い出す程度のことはしよう』

 

「へっ、そりゃそうかよっ!! 」

 

 キャスターの魔術と相手のサーヴァントが出した弓矢がぶつかり合う。

 

「ついてこい盾の女。 」

 

「へっ? ですが、キャスターさんの加勢をしたほうが 」

 

「宝具も解放できない半人前がいくらいようと邪魔なだけだ。 はやくこい 」

 

「っ!! …………了解 …………しました。 」

 

 最初から戦う気がなかったべリアルさんの後を追うように私たちも戦線から離脱した。

 

 べリアルさんの言葉に辛そうな顔してたけど、大丈夫かなマシュ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふっ、漸く出来た戦力にも見放されるとはな。 貴様はつくづく運がないようだなキャスター!!! 』

 

 

 ルーン魔術によって放たれる炎を牽制として使い、杖を槍を持つようにして夫婦剣を振るうアーチャーと互角に渡り合っている。

 

「ばーか、違ぇよ。 泥にまみれて判断力も低下しちまったか? 」

 

『なに!? これは!? (ルーン魔術による拘束!? ならばっ!! ) 』

 

 キャスターは最初からコレを狙っていた。

 一人になったキャスターを確実に処理するためにアーチャーは弓よりも使いなれた方法をとってくると。

 

「はなっからテメーが襲ってくんのは予測してたんでね!! 喰らいやがれ!!」

 

 予測は的中し、予め仕掛けられたルーン魔術によって拘束される。

 その隙、腕も足も使えなくなったアーチャーから少し離れると、キャスターは魔術の詠唱を始める。

 

【我が魔術は炎の檻 茨のごとき緑の巨人 因果応報 人事の厄を清める杜ー 】

 

 

灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!】

 

『っ!! (ルーンだけではない、なんだこの光の帯はっ!? )』

 

 巨大な藁の人形。 キャスターの指示によって動くそれは、拘束されているアーチャーのことを掴み、腹部にある檻に入れる自らを炎で焼き上げると共に、アーチャーのことも消滅させた。

 

「…………ちっ 」

 

 セイバーの待ち構える大聖杯。 その場所に行くには必ず邪魔をしてくるこのアーチャーを倒すことが必須だった。

 

 それだと言うのにキャスターは、喜ぶ様子もなく、アーチャーが拘束されていた場所で悪態をついていた

 

最初(ハナ)っから全部あの野郎の思い通りだったってワケかよ……。 気に喰わねえ…… 」

 

 ルーン魔術の拘束だけでは、アーチャーに途中で破られることを予見していたキャスターは、腕の一本でも差し出す覚悟を決めていた。

 

 だが、赤い鎖とは別の、光の帯のようなものもアーチャーのことを拘束しており、その光の帯だけは終始破られることはなかった。

 

(アーチャーの野郎を見たのはあれが初めてだった。 それをあの野郎、オレと弓兵がどう戦い、どう動くかまで完璧に予想……いいや、あんなもん予知のレベルだ )

 

 キャスターは溜め息を吐きながら重たい腰を上げると、立香たちが走っていった方向へと目を向ける

 

「あの親父、一体なにもんだ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今日紹介して貰う英雄は……コチラ!! 」

「『キャスター クー・フーリン』さんです。 特異点Fでは仲間として協力してくれました 」

「クー・フーリンについてちょっと調べたんだけどさ、どっちかっていうと槍のほうが有名だからランサーのクラスで召喚されるんじゃないの? 」

「はい。 本来ならその筈なのですが……特異点Fの異変がクラスにも生じた……というのがカルデアでの見解です。 あ、でもルーン魔術を使いこなす戦士でもあったのでキャスタークラスの適正はあるのかと 」

「ふむふむ。 逸話によっては複数のクラスを持つ英霊がいるってことだね!! おっけー覚えた!! 」

「それでは今日はこの辺りで…… 」

「「次回も見てください!! 」」

「先輩!? 」

「へっへ~ん。 マシュのマネ~♪ 」


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4

3周年記念の約300で無事スカディ引けました!
聖杯も捧げて無事100レベルにも、やっぱり能登さんの務めるサーヴァントは最高ですね!!


『守るべきものがある……!! 』

 

『オレは── 』

 

『ウルトラマンだっ!! 』

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

「あれが、宝具…………!! 」

 

 べリアルさんの後を追いながら、キャスターが出したであろう藁人形がパワーアップしたみたいなのを見てマシュがそう呟いた。

 

「宝具っていうのは……? 」

 

「『宝具』というのは、英霊ならば必ずしも使える武器や能力のこと。 その英霊が成した伝説や功績を象徴するモノよ。 その全てが今の魔術・科学を遥かに凌駕する“力”を持っているわ。 まったく、こんなの常識も常識よ!! これだから“素人”のマスターはっ!! 」

 

「あはは、ごめんなさい。 じゃあマシュもその宝具を? 」

 

 マシュに聞くと、落ち込むように首を横にふる。

 

「わたしに力を託してくれた英霊は、最後まで真名を告げることなく消滅してしまいました。 だからわたしは自分がどこの英霊なのか、宝具であるこの盾がどのような名前をもち、どのような力を持っているのか、現時点でまるでわからない…………べリアルさんの言ったようにわたしは"半人前"のサーヴァントです。 」

 

「マシュだけのせいではありません。 本来マトモなマスターなら自分のサーヴァントの保有しているスキル、宝具がどんなものか解析することだって出来るものなんですから 」

 

 そういわれてしまうと返す言葉がないって言うか、この状況で自分は本当に何にも出来ないんだって自覚してしまうから。 (なんでもない、なんともない)って心を落ち着かせて、所長のことをからかう言葉を出す。

 

「うう……未だにべリアルさんに抱えてもらってる所長に言われても………… 」

 

「そ、そうよ!! いい加減離しなさい!! きゃあっ!! 」

 

 べリアルさんが立ち止まると言われた通り所長を抱えていた手を離して、所長が地面とキスしてる。

 

「ちょ、ちょっと!! もっと優しく…… 」

 

「この先だ。この先に大聖杯とかいうヤツがある 」

 

 べリアルさんはそう言いながら、武器の先端をマシュの肩に置いた。

 さっき自分のことを吹き飛ばしたそれにマシュは驚いてビクッって身体を震わせちゃってる。

 

「いくぞ、受け止めてみせろ 」

 

「へっ……。────っ!! 」

 

 まただ!べリアルさんがまたマシュのことを攻撃した。

 前とは違って突然じゃなかったから、盾を構える時間があったけど、その衝撃で5~6メートルは後ずさった。

 

「ほら、どうした。 次々いくぞ!! 」

 

「っ!! くっ!! 」

 

 右だ、左だと、次にどう攻撃するのか知らせてからマシュを攻撃するべリアルさん。

 それを何度か続けると、べリアルさんは攻撃しながら語り出す。

 

「いいか盾の女。 その武器を持った瞬間から貴様は戦士。 ついてくるついてこないは勝手だ。だがな、その盾を持つというなら先のような失態をこのオレは赦さない。 闘えないならその盾は今ここで置いていけ 」

 

「わた……しは…………くうぅっ!! 」

 

『なっ!! べリアルきみはなにをっ!! 』

 

「そうよっ!! そんな勝手なことは所長として認められませんっ!! 」

 

「貴様らは口を挟むな。 オレはコイツに聞いているんだ、さあ答えろ盾の女 」

 

 邪魔だと言ってドクターの通信を切って、所長のことは睨んで黙らせたべリアルさんは、マシュの手に持つ盾を吹き飛ばす。

 そうして武器を使ってマシュを地面に叩きつけると、マシュのお腹を容赦なく蹴りあげた。

 女の子だから、戦いの初心者だからなんて甘えは存在しない。 ベリアルさんは本気でマシュのことを攻撃してる。吹き飛ばされて盾を手放してしまったマシュに問いかける。その言葉はマシュの心に戸惑いを生んだのか、盾を伸ばす手が止まってしまう

 

「貴様は闘うのか? それとも尻尾を巻いて逃げるか? 闘うというのならば盾をとれ 」

 

 蹴り上げられ飛ばされた先には、マシュの盾があって、その盾を取ろうと伸ばした手は、ベリアルさんの問いかけで止まってしまう。

 

「わたしは、わたし……は………… 」

 

 戸惑いながら、ボロボロになりながらマシュは顔を上げると、私に視線を向けた。

 すると、マシュは立ち上がって深く深呼吸をしてから、落ちてる盾を拾って立ち上がる。

 手を震えさせて、息を吹き掛けたら倒れるトランプタワーように、ボロボロになっても……マシュは盾を構える。

 

 逃げていいのに、ベリアルさんの言うように諦めていいはずなのに……。 それでもマシュは……

 手は震えて、今にも盾を落としてしまいそうなほどボロボロなのに……

 なんでそんなにまでして闘うんだろうって、立ち上がるんだろうって思っていると、マシュが口を開く。

 

「わ……、わたしは、べリアルさんやキャスターさんのような凄い力を持たない半端なサーヴァントです。 でも、わたしはそれでも、先輩と契約したサーヴァントです。 サーヴァントとして先輩(マスター)を守るために、わたしはこの盾を持っていたい。 それが今のわたしに出来る精一杯だと、そう思うんです…… 」

 

 戦うことが得意じゃない、好きじゃないマシュが勇気を出して振り絞った言葉がそれだった。

 自分のために戦うんじゃない、誰かのために戦うんだって強い意思を持った眼。

 しかもその誰かっていうのは私のこと何だって分かっちゃうから、自然と口角が上がるのがわかる。

 その言葉を聞いたベリアルさんは、つまらなそうに、だけどどこか期待をしているような表情をしてる。

 

()()()()()()()()()()()()()か、恐怖で震える弱い心を持っていることに変わりはないが…………お前はオレよりも()()()()に近いようだな 」

 

 べリアルさんは意味深のこと呟きながら、武器の棒を自分の肩に担ぎなおすと、大聖杯があるっていう洞窟のなかに進んでいってしまう。

 え? 戦闘は? 終わったって……いうこと?

 マシュも私と同じようにベリアルさんの行動に疑問を抱いたらしくって、洞窟の中に入って行ったベリアルさんの名前を呼ぶ

 

「えっ、あの、べリアルさんっ? 」

 

「ついてくるかどうかは、貴様らの勝手だとオレは言ったはずだぞ? 」

 

「「「……………」」」

 

 て言うことは……認めてくれた……の? う〜ん、何か違う。付いていくことだけは許してくれたって感じかな?

 そうと決まったら、私はまだ呆然としてるマシュの手を握って、洞窟に向かうように引っ張っr。

 

「行こうよマシュ!! 私の……サーヴァント!! 」

 

「!!………はいっ!! 先輩(マスター)!! 」

 

「ちょ、ちょっと!! 私のこと置いていくんじゃありませーーんっ!!! 」

 

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今日のサーヴァントは……こちら!! 」

「ベリアルさんですね。 クラス、真名、宝具全てが謎に包まれている私たちに協力してくれるわたしと同じデミ・サーヴァントです 」

「カルデアのデータベースで調べても何にもわかなかったんだよね 」

「はい、なのでベリアルさんに関してだけはこの旅で知っていければいいなと思っています 」

「そうだね! それじゃあ今回はこのへんで!! 」

「また見てね〜〜! 」

「よろしくお願いします!! 」



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5

この小説は、ジード本編後の陛下が、陛下であって変わっていく陛下の姿を描きながらも、グランドオーダーはマシュと主人公の物語であることを忘れずに書いていきたいというスタンスで書いてます。
至らないところばかりですがよろしくお願いします。

誤字報告、ご指摘ありがとうございます。
とても助けになりますのでこれからも間違っている箇所がありましたら教えてくれると嬉しいです。

感想、評価などもお待ちしてます。





 

『何故……奪うだけで 守るものを持たないんだ……』

 

『お前だってっ!! 』

 

()()()()()()だろうがっ!!!』

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

『…………来たか』

 

 洞窟を抜けた先の拓けた場所、光の柱のようなものが立っている岩山の上に、キャスターが言ってた最後のサーヴァント、セイバーが剣を地面に突き立てながら立っていた。

 

『ほう盾か、面白い。 』

 

 冷たい眼差し、最初に戦ったランサーとは比べもにならないくらいの威圧感……

 黒い鎧を纏った、声からして女性のセイバーは、岩山から降りてくるとその手にもつ剣を構えた。

 

『盾を構えるがよい名も知れぬ娘よ。 その守りが真実かどうか、この剣で確かめてやろう。 』

 

「敵セイバーとの戦闘、開始します!! 」

 

 地面をひと踏みするだけで、マシュとの距離を詰めたセイバーが振り下ろした剣。

 その一撃一撃をマシュはしっかりと目で捉え、盾で剣を弾くようにして返していた。

 

「ベリアル!! 何をしているの!! アナタもマシュと一緒に戦いなさい! 」

 

「断る 」

 

 腕を組んで戦闘を見ているだけのベリアルさんに所長がそう言うけど、キッパリと断られた。

 

「コレはあの盾の女の戦いだ。 盾を持ち、闘うことを選択したのなら……オレが闘う必要はない 」

 

 ベリアルさんはそう言うけど、マシュはさっきの戦闘で結構なダメージを負ってる。 私が今着てるこの制服に専用の魔術が組み込まれてるらしくって、その中にある回復魔術を所長のアドバイスと一緒に使ったお陰で少しは回復してるかも知れないけど、そんなの気休めでしかない。

 

 その筈なのに、セイバーは一向にマシュに決定的な一撃を喰らわせられずにいる。

 

『マシュの動きが、さっきよりも良くなっている? 』

 

「(落ち着いていられる。 ダメージを負ったぶん、余計な力が入らないお陰でセイバーの攻撃に対処していられる……。 ここっ!! )はああああっ!! 」

 

 盾に全体重を乗せたタックルでセイバーの隙をついたマシュは、その勢いを殺さずに盾を薙ぎ払ってセイバーのことを吹き飛ばす。

 ドクターが言ったように、ベリアルさんと戦って疲労している筈のマシュはランサーと戦った時よりも動きが良くなってる。

 

 マシュの攻撃を受けて、目元を覆っていたバイザーが砕けたセイバーは、マシュのことを睨みながら剣を両手で握りしめる。

 

『少しは出来るようだな、ならばこの剣の真名、解放してやろう 』

 

「魔力反応増大、先輩、所長わたしの後ろに隠れていてください!! セイバーの宝具がきます!! 」

 

 セイバーがマシュにそう言うと、両手で握った剣から素人の私での目に見えるくらいの魔力が溢れでる。

 その凄さがわかる所長は腰を落として震えているから、逆に分からなくてよかったのかも知れない。

 

「ほう、光を呑む闇の力か…… 」

 

【卑王鉄槌 極光は反転する…………光を飲め!!! 約束されし勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)!! 】

 

 これが宝具…………キャスターの宝具も充分凄かったけど……これは……この闇は……。

 闇の極光は真っ直ぐに私たちを飲み込まんと地面をいとも容易く削りながら迫ってくる。

 

『約束されし勝利の剣だって!? ということはあのサーヴァントの真名はかの有名なブリテンの王 アーサー・ペンドラゴンかっ!! みんな逃げるんだ!! 分が悪すぎる!! 』

 

「そんなこと言ってももう遅いわよ!! べリアル貴方があれを何とかしなさいよっ!! 」

 

 宝具の名前からセイバーがどの英霊かを理解したドクターと所長が慌てて指示を出すけどもう遅い。

 ベリアルさんも動く気はないらしくて、マシュが私たちを守るために正面に盾を構えるのをじっと見ているだけ。

 

『な、なななな何をやってるんだべリアル!! 君は英霊だから死んでも座に還るだけかもしれないけど、憑依している宮原さんの体は生身のものだ、宝具の直撃を受けてしまえば死んでしまうだぞ!! 』

 

「そうだろうな、人間の身体というのは総じて脆い……。 ほら、来るぞ盾の女 」

 

「っ!! 宝具、直撃……来ますっっ!!!! 」

 

 セイバーの宝具がマシュの盾に直撃した。

 その宝具はマシュの盾を(ひかり)で飲み込み、塗りつぶそうとするのを苦痛の声をあげながら耐えている。

 

「あ、あああ、あああああ!!! 」

 

「マシュ……!! 」

 

「お前は見ているだけか 」

 

「ベリアルさんっ!? 」

 

 マシュがセイバーの宝具を受け止め、それを見ている私の隣にベリアルさんが立つと、私の頭に手を置いてきた。

 

「ただそこに立っていることしかできないお前に、面白いものを見せてやる 」

 

「っ……!! 」

 

 ベリアルさんが手に力を込めたのがわかって目をつぶる。 そうすると、頭の中に何か、これ……声だ!! 声が、聞こえてきた。

 

(怖い……怖くて、逃げ出したい…… )

 

「これっって……!! 」

 

 マシュの声、そう理解した私はベリアルさんのほうに顔を向けるけど、何も言ってくれなくて、私はマシュの心の声に集中することにした。

 

(わたしたちの存在そのものを赦さない、重い一撃……!! )

 

 それなら、やめたっていい!! 逃げたっていい!! そう思うけど……口に出すことはできなくって……

 どうすればいいのかわからない、何をするのが正解なのかわからなくって悩んでると、ベリアルさんの手が私の肩に移って、顔を耳元に寄せてきた。

 

「あの女を助けたいか? 」

 

「たす、けたい……! 助ける方法があるなら、助けてあげたい!! 」

 

「なら諦めろと、そう言えばいい 」

 

 ベリアルさんが私に言ってきたその一言は、とても、とても魅力的な甘い囁き。

 けど、それをベリアルさんが言うのが信じられなくて、ベリアルさんならセイバー相手にも戦えると思ってたから、その言葉がより一層信じることができず固まってしまう。

 

「声を聞いただろう? あの女は今恐怖に怯え、逃げたいとそう思っている。 だからこそ、マスターであるお前が一言『諦めろ』そう呟くだけで、あの女は軽く折れる 」

 

「…………あ、あ…… 」

 

 ベリアルさんの言う通りだ。 今日あったばかりで、なんでこんなにも私のことを信頼してくれるんだろうって不思議に思うけど……。

 きっと、ううん。私が諦めていいって言ったら、マシュはきっと迷いなく諦めてしまう、その確信だけはあった。

 

「う……うあああああっ!!! 」

 

「ましゅ…………!! 」

 

 瞳に浮かばせながらも、その盾を持つ手を離さずに、しっかりと大地を踏みしめて私たちのことを守ろうと必死になってくれてるマシュを見て、私は()()()()()()

 

「ふんっ!! 」

 

「な、なにやってるのよ!! こんな時に自分の顔を殴るなんて、とうとう頭もいかれたのあなたは!! 」

 

「どうした。 諦めろとは、言わないのか? 」

 

 思いっきり自分の顔を殴ったから鼻から血がつーと流れてくるのがわかる。 けどこれで、何となく落ち着いた。

 だから私は、ベリアルさんの目を見て、はっきりと言ってやる。

 

「まだマシュは、()()()()って言ってない!! だから私も、マシュなら絶対に打ち勝つって信じる!! 」

 

 肩に添えられたベリアルさんの手をはじいて、私は怖くて震えてる、けど私たちを守るために盾を構えるその手を後ろから強く握りしめた。

 

「せん……ぱい…… 」

 

「ははは……やっぱり怖いやマシュ 」

 

 強く、強く握りしめて、怖いけど逃げないって、一緒に立ち向かおうって言葉にできない気持ちをマシュに伝える。

 

「せんぱい……先輩っ!! 」

 

 伝わるって、信じてた。 だから私は所長に使うなって言われてた右手に浮かんだマスターの証『令呪』を使用する。

『令呪』 私のような素人のマスターでも使える魔力の結晶。 3画あるそれは、サーヴァントに使用すれば1画消費するだけでも大量の魔力が送られて一時的なパワーアップに繋げることができる。

 だけど、それにはデメリットが存在する。 これは私が素人のマスターだってせいでもあるんだけど、この令呪は私の中にある魔術回路っていうのと連結してるから、まともに魔術を使ったこともない私が使えば激痛が走るって教えられてた。

 

 けど、そんなのマシュが味わってる恐怖や痛みに比べれば、怖くなんかない!!!

 

「マスター立香。 指示を!!」

 

『令呪をもって命じる!! マシュ!! この攻撃……防ぎきろう!!!』

 

 手に浮かんでる3画の令呪のうち、一つが滲んで消える。

 体中に痛みが入る。 体中の血が沸騰したみたいな激痛、それを耐えて真っ直ぐ前を見つめる。

 

(偽物でもいい。…………みんなが、先輩が消えてしまわないように! この力を貸してください!!)

 

「はははははっ!!! やはりお前らは()()()()かっ!! 良いぞ、見せてみろ!!

 元よりその盾に力を入れる必要などない。 必要なのは心、精神とかいう不安定で形のないものだ」

 

「【仮想宝具疑似展開!! 】 はああああああっ!! 」

 

「このオレにその輝きを見せろ!! ()()()()()()()()()() ()()()()!!!」

 

 結論から言えば、満開の花のように開いた透明で巨大な盾は、マシュの出した宝具はセイバーの宝具に打ち勝った。

 ただ守ろうとしてしたマシュの願いに応えてくれた宝具は、お伽噺みたいだって所長は言ってたけど、宝具に名前がないと不便だからって"人理の礎(ロード・カルデアス)"なんてカッコいい名前つけてくれて、さっきの言葉が照れ隠しみたいなものだったってわかった。

 

「はあ、はあ、やりました先輩!! 」

 

「うん、うんっ!! やったよマシュゥゥゥ 」

 

「先輩!? 」

 

 令呪を使った影響だからか、立ってられる力がなくってその場に座り込んでしまう。

 マシュも私と同じで、何とか盾から手を離さないけどその場にへたり込む。宝具を受け止めただけど、まだセイバーは健全なのに……!! 

 立たなきゃ、立たなきゃって思ってると、私の頭に暖かさが広がってきた。

 

 べリアルさんの言ったとおりで、立っていられなくて座り込んじゃった。

 マシュのことを見上げてると、立ち上がったべリアルさんが、マシュの頭に手を置いて、ぽんぽんってしてあげてた。

 

「…………?  ベリアル……さん? 」

 

「…………? あの、この手は……? 」

 

「ああそうか。 これは()()()()()()か 」

 

 私とマシュ、二人の頭に手を置いたベリアルさんが一番驚いた顔をしてるのがなんだが可笑しい。

 こいつの記憶ってことは宮原博樹さんの記憶に引っ張られたとか、そういう感じなのかな?

 ベリアルさんは、その行為を鼻で嗤うと私たちの頭をわしゃわしゃと撫で始めた。

 

 やってもらったマシュも、やった本人も驚いた顔してるのがなんだが可笑しいけど、べリアルさんは鼻で嗤うと今度は無造作にマシュの頭を無造作に撫で始めた。

 

「あの程度、出来て当たり前だ。マシュ・キリエライト、藤丸立香 」

 

「………はいっ!! べリアルさん………… 」

 

「だが、有意義なものを見せた礼をしてやる。 あの雑魚の相手はオレがやってやろう 」

 

 私たちの頭から手を離したベリアルさんは、武器の金棒を肩に担ぎマシュの盾の先へと向かっていった。

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回は〜〜こちら!! 」

「アーチャー・エミヤさんですね。この方なんですが……他の英霊の方たちとは出典が異なっているようです 」

「? 冬木でキャスターが戦ったアーチャーだよね? あの時みたいに顔に線みたいなのないけど 」

「はい。 彼は本来“守護者”と呼ばれる存在であるらしく、名もない人々が選出した正義の味方……のようなものなんだそうです 」

「……みんなが仮◯ライダーって呼んでくれるから、仮◯ライダーは正義の味方なんだよ!! 的な感じ? 」

「概ねそれで合っていると思います。それでは今回はこのあたりで…… 」

「次回もよろしくお願いします!! 」

「私も英霊の力が宿ったアイテムとか使って変身出来たりしないかな? 」


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6

セイバーとの決着、そしてFGO2次創作の分岐点とも言っていい所長が生存するか否か……

作者、所長のマナプリ礼装が出た時も直ぐに凸らせたりと所長のことが大好きですけど……

ベリアルさんならどうするか考えた結果が今回の話になります。

誤字脱字、ご指摘がありましたら教えてもらえるとありがたいです。

感想や評価もお待ちしてます。


『やだ!! これがいいの!! 』

 

『そう言ってもそれダークザギだぞ? と〜っても悪い敵なんだからな? 』

 

『やだ!! だってカッコいいんだもん!! 』

 

『────っ、絶対ノアの方がカッコいいと思うけどなぁ…… 』

 

 

『見てみてお父さん!! 取ったよ!! 100点!! 』

 

『本当か!? 良くやったぞ〜偉いなぁ〜 』

 

『えへへ〜、これでザギ様のフュギュア買ってくれるんでしょ? 』

 

『う!?………まあ約束だしな、よし今から行くか!! 』

 

『この時間どこのお店も閉まってます。 早くお風呂に入ってきて? 』

 

『『は〜〜い 』』

 

 あの時、勝手に手が動いたのはこれが原因か……? 無意識で手が伸びるほどに、この男はアレをやっていたというのか?

 …………深く、潜ってみるか……

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

『くっ!! 』

 

「どうした? 貴様は名のある英霊で、セイバーのクラスを冠するほど剣の扱いに長けているのだろう? ならばこのオレに一太刀でも浴びせてみろ 」

 

 マシュと一緒に盾の隙間から覗くように、ベリアルさんとセイバーの戦闘を見てるけど…………ベリアルさん、やっぱり凄い。

 目にも止まらない剣の連撃を、ベリアルさんは身体をほんの少しずらすだけで避けてる。

 ギリギリで避けてるんじゃない、どんな軌道で剣が振るわれるのか予め分かってるように避けてる。

 

「おーおーなんだアイツ。 あの騎士王相手に彼処まで余裕とか、魔王ってのもあながち間違いないじゃねえのかもな 」

 

「キャスターさんっ!! 無事だったんですねっ!! 」

 

「槍を持ってねえからって、弓兵ごときに遅れをとっちまうオレじゃあねえよ。 しっかし……。 どうやら宝具出せた見てえじゃねえか嬢ちゃん、いや……嬢ちゃん1人の力じゃあねえみてえだな 」

 

 アーチャーとの戦闘を終えてここまで辿り着いたキャスターが、ベリアルさんの戦いを見て驚きの声をあげてる。

 やっぱり、セイバー相手にあんな事普通は出来ることじゃないらしくて、視線はベリアルさんたちに集中しながら私たちに話しかける。

 

「まさか、嬢ちゃんだけじゃなくてマスターのほうもバカなことするとは思いもしなかったぜ。 だが、俺は嫌いじゃあないぜそう言うのよ? 運命を掴む天運、ソイツを前にした時の判断力。ソイツを持ってるお前さんにゃあ星に加護ってのがついてくるもんなんだぜ? 」

 

 運命を掴む天運……判断力……。あの時、後先考えずに行動したけどそれは良かったってこと?

 キャスターの言ってる言葉は私には少し難しくて理解出来なかったけど、褒められてるってことだけは分かったから自然に笑顔になる。

 

「和んでないで集中しなさい!! 貴方たち今の状況がわかってるの? 」

 

「ん~~。そうかりかりすんなよ姉ちゃん。 多分だが…… 」

 

 私たちの少し後ろから注意してくる所長の言葉を、キャスターは軽く流しながら、さっきよりも目つきを鋭くしてベリアルさんの戦闘を見始めた。

 キャスターの話に集中してたから見るのを忘れちゃってたから、私とマシュはベリアルさんの方へと視線を戻す

 

「もう十分だ。 騎士王と言ってもたかが知れるな…… シェアッ!!! 」

 

『何っ!? くっ!! 』

 

 宝具じゃないけど、剣から放たれた魔力の塊……って言うのかな? ベリアルさんはその塊を片手を前に突き出すだけで消してみせた。

 そんなことされるなんて思ってなかったのか驚愕の表情をみせたけど、その一瞬でセイバーは距離を詰められてた。

 

『しまっ!! 』

 

「遅い、ヘアッ!! 」

 

 一瞬でセイバーとの距離を縮めたベリアルさんは、武器の金棒を使ってセイバーの剣を弾き飛ばした。

 武器がなくなったセイバーはすぐに下がろうとするけど、ベリアルさんがそんなことを許す筈がなくて逃げようとするセイバーの髪の毛を鷲掴みにして逃げれないようにする。

 

 サーヴァントは身体能力だけじゃなくて、筋力とかそういった部分も強化されてるから、例にもれずセイバーもその強化された筋力でベリアルさんから抜け出そうするけど、一向に抜けだせる気配がない。

 

「本来こんなことをしなくても、貴様程度葬れるが……。 ()るからには徹底的にだ。

 

『グアアアアアアアアッ!!! 』

 

 鎧の隙間部分に突きつけられた金棒の先端が光り出して、金棒の先端が光だして、そこから放たれた光弾がセイバーを貫通して岩山にぶつかって消える。

 セイバーの宝具のように規模が大きいわけじゃないけど、密度が違かったのか? 凝縮された放たれた光弾はセイバーの腹部を貫通して、セイバーは消えていった。

 

 

「アーサー王相手にも無傷で勝つなんて……本当にあのサーヴァントはなんなの? 」

 

「セイバーのヤツがいなくなって聖杯戦争は終わったからか…………。はあ、結果から見りゃあ全然活躍できてねえなオレは……。 マスター、短い間だったが結構楽しめたぜ。 次に呼ぶときにゃあランサーで呼んでくれや 」

 

 勝利を喜ぶ暇もなく、キャスターが笑顔を浮かべながらセイバーと同じように光の粒子のようになって消えていった。

 闘いを終えたべリアルさんもこっちに歩いてくるけど…………

 

「グランドオーダー────、はっ、戦場はここだけではないということか。 そうでなくては面白くない 」

 

「グランドオーダー? 」

 

「べリアルさん、それはいったい? 」

 

「……冠位指定……なぜ貴方がその呼称を知っているのよっ!!! 」

 

「あの騎士王がベラベラと勝手に喋っていたんでな 」

 

 グランドオーダー、私もマシュもそれが何なんか分からず首を捻るなかで、所長だけは焦ってベリアルさんに詰め寄るけど、そんな所長のことを気にとも止めずに、ベリアルさんは所長のことを脇に抱えた。

 すると、ベリアルさんは振り向きざまに金棒から光弾を岩山に向かって放つ。

 

「なっ、何してるのよ貴方っ!! 」

 

「小汚い眼でコチラを見るな、虫酸が走る 」

 

「ほう、流石はかの騎士王を破っただけのことはある、ということか。サーヴァントを宿した47人目のマスター適合者。 そして48人目も、まったく見込みがないと善意を見せた私の失態だよ 」

 

 ベリアルさんが光弾を放った先、土煙の上がった岩山の頂上から1人の男が姿をみせた。

 その男は、カルデアに来てマシュの次に会った人物、深い緑の服を着たレフ教授と呼ばれた人物だった。

 

「ロマニも生き残ってしまったようだし、どいつもこいつも統率のとれていないクズばかりで吐き気が止まらないな 」

 

 レフ教授は、人間は定められた運命からズレたがるんだと、まるで自分は人間じゃないような口振りで私たちに言葉を吐きかける。

 所長はそんなこと関係なしにレフ教授がいることに喜んでるけど、べリアルさんが襟元をつかんで近づけない。

 

「ちょっと!! 離しなさいよ貴方っ!! 私はレフに話がっ!! 」

 

「あの皮を被ったヤツは、死人と語ることはないらしいがな 」

 

「へっ!? 死人って…………貴方なにを言ってるのよ 」

 

「はははははははっ!!! 流石はサーヴァント、同じ死人のことは理解できるということか!! そうだよオルガ、爆弾は君の足元に設置したんだ、避けられるはずもない。 君の肉体はとっくに死んでいるのさ 」

 

 カルデアに設置されている装置のうちの一つ『電子演算装置 トリスメギストス』が、肉体が死んで残留思念だけになった所長のことをこの特異点に送った。

 レイシフトの適性を持っていなかった所長がここにいること事態が証明なんだって。

 カルデアに戻ったら意識が死んでしまった身体に戻って……所長は……

 その事実に、私とマシュは只々驚くことしか出来なかった。 ベリアルさんは、最初からそのことを知っていたの?

 

「嘘よ……嘘よねレフ。 私が死んだなんていうのも何かの……冗談、よね? 私がいなくなったらカルデアはどうなるのよ!! アニムスフィアの悲願は……!! 」

 

「なら見せてやろう!! 生涯をカルデアに捧げた君に、今のカルデアスの映し出す未来をっ!! 」

 

 レフ教授……ううんレフは手に持ってる金色の杯を光らせると、後ろの空間が歪んで、マシュやみんなが爆発に巻き込まれた場所にあった球体が現れた。

 

『…………』

 

「 そこで見ているなら分かるだろうドクター・ロマニっ!!これが 人類の生存を示すカルデアスの現状だ!! そこにあるのは燃え盛る赤色だけ!! 未来は焼却されたのだっ!! 」

 

 レフの言葉とカルデアスの姿を見て現実から目をそらすことでなんとか立っていた所長は力なく崩れ落ちてしまう。

 これは人類史による人類の否定だって、人間が無意味だからって、無能だからって、カルデアはカルデアスの磁場で守られてるから2016年の間だけなら私たちは大丈夫だって

 

「我らが王の寵愛を失った故に!!何の価値もない紙くずのように、跡形もなく燃え尽きる!! …………このようにな 」

 

 ゲスな笑みを浮かべると所長の身体を包み込むように光が表れて……カルデアスのほうに……

 

「君ならわかるだろうオルガ。 カルデアスは高密度の情報体、人間が触れれば分子レベルで分解される地獄の具現だ。 最期なんだ、君の宝物に触れるといい 」

 

「いや、いや、いや、助けてっ!! 誰か助けてっ!! 」

 

 褒められたことないって、認めてくれないって…………さっきキャスターさんが私にしてくれたことをしてもらったことがないのが嫌なんだって涙を流しながら行き場のない手を伸ばし続ける所長。

 助けにいきたくて身体を必死に動かそうとマシュと一緒に頑張るけど……私たちじゃ間に合わない。

 

「ははははははっ!!! さようならだオルガっ!! 最期まで、君は耳ざばっ!! 」

 

 所長のことを貶すレフ。所長がカルデアスに呑み込まれるの今か今かと悪い笑顔を深めるその顔に、光の弾が直撃した。

 直撃を食らったレフは生きてるけど被ってた帽子は吹き飛んで、顔の半分は焼け落ちて黒い目玉みたいなのが見える。

 光の弾を打った張本人であるベリアルさんは、いつ間にか岩山の頂上まで移動していて、レフが手放した杯もベリアルさんが掴んでる。

 カルデアスが引き寄せられていた所長も引力がなくなったのか岩山の上で止まってくれた。

 

「化けの皮の裏も単なる化物か……芸がなくてつまらんな 」

 

「ぐっ……!! ま、まあいい。 この特異点も時期に崩壊する。 このまま時空の歪みに呑み込まれるのだ、最後の抵抗と受け取っておこう 」

 

 レフは岩山に飛んで、対面するべリアルさんに攻撃しようとしたんだろうけど、地震……というか見渡す限りの空間全部が揺れ始めると高笑いをしながらどこかへ消えた。

 

「ドクター!! 至急レイシフトを実行してください!! このままでは…… 」

 

『わかってる、もう実行しているとも!! でもゴメン、そっちの崩壊の方が早いかもだ!! 』

 

「っ、先輩っ!! 手を!! 」

 

「マシュっ、でもあのふたりが……っ!! 」

 

 揺れが強くなって声が聞こえなくなっちゃったけど、べリアルさんと所長がっ!!

 白い光のようなものに包まれて、私は何も見えなくなっていつの間にか気を失っていた……

 

 

 

 

 •

 •

 

 

 

 

 

「あ、ははははは………。 これがカルデアスの未来……。 アニムスフィアの悲願の末路………… 」

 

 

「ねえべリアル、私は本当に死んでいるの? その聖杯に願ったら、生き残れたりしないかしら………… なんて意地汚いにもほどがあるわね……。 こんなんだから嫌われるのよね………… 」

 

「選べ、()()()()()()()()()()()()()()

 

「へっ? 」

 

「貴様という存在を生んだ場所からも見捨てられ、守ろうと躍起になっていたものたちからも裏切られ、貴様は身体を失った。 それは変えようのない真実だまあ────死に方ぐらいは選ばせてやる。 このままこの特異点の崩壊に巻き込まれて死ぬか、カルデアに戻り、肉片になった身体に戻って死ぬか……、このカルデアスに呑まれて死ぬか……もしくは…… 」

 

「貴方が私を殺してくれる……か…………。 ────いいわ、どうせ死んならレフが言ってたみたいに私の宝物の中で死んでやろうじゃない。 でも………… 」

 

「私は臆病で意地汚くて、誰からも好かれることなんてないくらいに性格が悪いから…………ここに飛び込むなんて絶対に無理……だから…………だからっ!! 」

 

 もう後はない、自分は未来がないと理解しているからこそ……いや理解していても死にたくないからなのか大粒の涙を流す。

 その涙を隠さず、止めようとしても止まらないからこそ、オルガマリーは涙を拭わず真っ直ぐとベリアルのことを見る。

 

「────ふう。これは私の、カルデア所長の最後の命令です。 サーヴァント べリアル。 ────私のことをカルデアスで殺しなさい 」

 

「このオレに命令するとはな、随分と上から見ているなあ……。 だが興が乗った、その誘いにのってやる 」

 

「カルデアのこと…………、みんなのこと……お願いね。反英霊だろう貴方にこんなこと言っても無駄かしら? そうね、みんなじゃなくてもいいから──────── 」

 

「縛り付けられた運命から逃れられない哀れな貴様には目も向ける気にはなれないが……死してなお生に執着したその姿……オレは存外好ましく思うぞ、オルガマリー・アニムスフィア 」

 

「ありがとう。こんなことで褒められるなんて……思っても見なかったわ 」

 

 

 

────のこと、守ってね? べリアル

 

 

「軽い……あれが地球人1人の命の重さか……。 アイツらが守ろうと躍起になるわけだ…… 」

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回の英霊は〜〜こちら!! 」

「セイバー アルトリア・ペンドラゴン。 伝説に名高い騎士王アーサー王です。様々な逸話に名高いその力はとても凄まじいものでした 」

「エクスカリバーだっけ? ゲームとかでも有名な武器の持ち主ってことだよね 」

「そうですね。 あの時受け止められたこと自体奇跡に等しいものでした…… 」

「そのアーサー王相手にでも余裕で倒したベリアルさんって本当に何者なんだろうね? 」

「分かりません。 これから知っていけるのでしょうか? それでは今回はこの辺りで! 」

「次回もおっねっがっいしま〜〜す !! 」


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7

お気に入り100件突破ありがとうございます。
今回で特異点F終了になります。
ここまでは1日更新でやってきましたが、オルレアンからは週2〜3くらいの投稿スピードに落とさせてもらいます。

誤字脱字、ご指摘など教えていただけると嬉しいです。
感想、評価もお待ちしてます。


『ぼく、うちゅうけいびたいみたいになるっ!! 』

 

これが、この身体の持ち主の始まりの記憶……宮原博樹だったか、オレが憑依した地球人の男の記憶……

この世界では映像媒体によってウルトラ一族の物語が伝わっている、そういう宇宙か……

……だが、アイツやこのオレについては伝わっていない世界……

 

『僕は、みんなを守るウルトラマンのような、そんな正義の味方になりたいです!! 』

 

ガキの時から持ち続けていた夢。笑われようと、貶されようと周りの有象無象に何を言われようとも曲げずに、ただひたすら夢に向かって進み続けた。

 

『僕は警察官になるよ。 ウルトラマンのように日本中は守れないけど、守れる範囲で人々を守りたいんだ。 』

 

特別なナニカがあるわけでもなければ、特出した能力も持ち合わせていない。

 

『有難い申し出ですが、本官は地域に寄り添う警察官であるため、この話は辞退させて戴きます!! 』

 

上に意味を持たず、ただ自分の夢だけを見て進み続けたバカ……それがこの男か……

 

────◇◆◇────

 

「あ、おはようございますベリアルさん 」

 

「ちゃんとノックはしたんですよ? ベリアルさん眠ってるみたいだったから…… 」

 

冬木の特異点から無事にカルデアへと戻ってきた立香たち。

ベリアルも少し遅れたがその手に聖杯を持って戻り、ロマニや他のカルデア職員が質問攻めしたが、それら全てを無視してマイルームで疲れを癒していた。

ベリアルは横になって眠るのではなく、武器を肌身離さず、足を組んだ状態で眠りマイルームに入ってきた立香とマシュの存在に気づけなかった。

 

「…………敵意も何も感じない奴らだな…… 」

 

「そういえば、ベリアルさんってウルトラマン好きなんですかっ? 部屋の至る所にフィギュアあるし 」

 

「ウルトラマン……? 」

 

「ああマシュは知らないっか!! ウルトラマンって言うのはね── 」

 

ベリアルのいるマイルール──宮原博樹の使うマイルーム──は最初他の部屋と同じで白色の殺風景な場所だった。 そんな殺風景だった部屋は今では、銀と赤の戦士や青色の戦士など沢山のウルトラマンたちのソフビ置かれていた。

 

「全てこの身体の物だ……知りたいなら、ここにある記録媒体でも勝手に見ていろ 」

 

「え、でもここの私物ってベリアルさんじゃなくて宮原博樹さんのじゃ……。 うおっ、ビデオにDVD、BD……もしかしなくても殆どのウルトラマン作品あっちゃったりするの? …………本物のウルトラマンオタクなんだ……宮原さん…… 」

 

宮原博樹の私物だと分かっているのに、ウルトラマンからこの世界で公開されているウルトラマンギンガsまでの全記録媒体を見て若干引きながら楽しそうに物色し始める立香の後ろからどのような物があるのか視線を動かすマシュ。

そんな2人のことを放って置いて、ベリアルは1人マイルームを出て行ってしまう。

 

「あっ!! これこれ、ウルトラマンメビウス!! これだけはリアルタイムで全話見た記憶あるから教えられるかも! 」

 

「先輩、ベリアルさんの姿がありません! 私たちも急いでブリーフィングルームへ!! 」

 

 

 

 

 

『特異点』

 

“この戦争が終わらなかったら ”

“この航海が成功しなかったら ”

“この発明が間違っていたら ”

“この国が独立できなかったら ”

 

人類の歴史を決定づける究極の選択点(ターニングポイント)

人理焼却を起こした元凶は“その過去が変わってしまえば人類の歴史が大きく狂う”とされる時代と場所。

狂った歴史が特異点と呼ばれ、その数は計測から7つあるとされた。

その歴史を正しいカタチへと戻すことが人類を救う唯一の方法なのだと集まった立香とベリアルへと伝えるロマニ・アーキマン

 

「レイシフト出来るのは立香くんと、宮原くんの身体持つベリアル、君たちだけだ。 」

 

レイシフト適性──世界各国を調べても48人しか見つからないほど希少な存在。 レフの爆破事故によって他のマスター候補は再起不能。

人類の未来を救うために、強制にも近いかたちでロマンは2人に語る。

ベリアルは何知らぬ顔をしているが、炎に包まれた街を見て、人がいとも簡単に死ぬ光景を初めて見た立香にとってその使命は、余りに重すぎるものだった。

 

「………… 」

 

「私は、一般人です。 魔術も使えなければ知恵もないです。…………けど、それが私に出来ることなら 」

 

ベリアルが沈黙を続ける隣で、立香は決意に満ちているようでどうすれば良いのか分かっていない、そんな顔を向けながら人理修復を行うと、いつまで続くのか分からない旅をすること決めた。

 

その立香の覚悟を隣で聞いたべリアルは、片手で立香の頬を掴むと自分の方へ顔を向けさせた。

 

「藤丸立香」

 

「ほへ、へりあるはん!?」

 

「貴様は無力だ。 ここにいる誰よりもだ。 知識もなければ力もない、死にゆく命があれば見過ごすことしか出来ない……いや()()()()()()。それがお前だ 」

 

ベリアルは、カルデアにいる職員の誰もが思っていたことを包み隠さず言った。ここに生き残った職員は、マスター適正はないが選ばれた者たち。

『私のほうが出来る』『俺がやったほうがいい結果を生み出せる』立香を見てそう思ってるものが殆どだ。

 

「じゃ、じゃあさ。 私はどう、すればいいんですか? 魔術の使い方を覚えればいい? それとも戦術の勉強? 何をすれば…… 」

 

「進め 」

 

「へ? 」

 

「進めと、歩き続けろと言ったんだ藤丸立香。何もない貴様にできるのはそれぐらいだ。才あるものでもない、それが唯一お前に許されたものだ。 素人の貴様が付け焼き刃で何か覚えたとしてもそんなものゴミでしかない。 幸いここには貴様を守れる奴らが十二分に集まっている。後ろで悩み続けて、貴様はきさまの答えを見つけるように進み続けろ。その足を止めることは、このオレが許さない 」

べリアルは、魔術も何も出来ないままでいいと、今のままでいいから歩き続けろとそう言った。

言い切ると、べリアルはブリーフィングルームを後にした。

 

「歩き続ける……それが私に出来ること…… 」

 

「先輩……」

 

「よっし!! 行こうマシュ!! いつまで続くか分からないこの旅を!! 」

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

ここではない何処か……

辺り一面には花が咲き誇り、美しくも儚さを感じさせる、夢を見ているように錯覚してしまうような世界。

その場所の中心にそびえる一本の搭から、一人の男性が何かを覗く()ていた。

 

「こうして、彼女らの物語は幕をあげたと……。う~~む、どんなお話を紡いでくれるのかな? 」

 

「誰の記憶にも残らない開拓記。 ああ楽しみだ!! 今までいくつもの物語を見てきたがこんなにも先が予測出来ないのがこんなにも楽しみなものだとはね 」

 

楽観的、他人事、重みのない言葉を紡ぐ男性はにこやかな表情を変え、思案する目線を向ける

 

()は誰だ。 ボクの目に映らない……いいやわかってる。

彼は宮原博樹、何処にでもいる普通の人間だ。 今の人間が歩む当たり前の道を歩いた、見飽きたといってもいい有象無象(ただの)人の子。 それにしては珍しいくらいに真っ直ぐな男性だけどね 」

 

男性には世界の全てを把握できる『眼』を持っていた。その時代、そこに生きる者たちの顛末をも読み取れるその眼を持ってしても、見通すことの出来ない存在を見つめていた。

その存在と、()()()()()

 

『オレはジロジロと見られる趣味はないぞ。 花の魔術師 』

 

「…………ははは、これは驚いたな。 ああ安心してくれ、確かに君に興味はあるけど私が見たいのは君じゃない。 彼女たちだ 」

 

『……まあいい。 見ているだけの夢喰いに用はない 』

 

「これは手厳しいねえ 」

 

花の魔術師と呼ばれた男性は、そうして()るのを止め嬉しそうに笑顔を作った。

 

「ボクが()るのは彼女たちの物語だ。 その物語の隅に、たまたま君が入ってくるならまあ、仕方がないかな? 」

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今日の英霊は〜〜こちら!! …………って誰? 」

「ライダー・メドゥーサさんですね。 私たちが特異点F戦ったランサーのサーヴァントの別クラスの方のようです 」

「へ〜、ライダーだからあの鎌も持ってないんだね 」

「はい、宝具を複数個有する英霊もいるらしく。 その宝具が他のクラスの象徴となっている方もいるらしく、メドゥーサさんもその内の1人らしいです 」

「ほへ〜〜。 あ、それじゃあ今回はこの辺で〜〜 」

「次回もよろしくお願いします!! 」

「へっ!? 次回はこのコーナー休みなの? そんな〜〜 」



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ベリアルレポート1

これは、ベリアルという名に誰よりも警戒している男の手記。
誰にも提出することがないためレポートと言うよりかは感想に近いもの






ベリアル……彼の名前を聞いた瞬間、僕の身体から冷や汗が止まらなかった。

それの名前は僕にとってとても意味ある名前であり、最も遠い存在であったはずなのに……

彼は……ベリアルはこうして僕たちの目の前に姿を現した。

 

彼の監視は、僕の使命と言ってもいいものだ。

ベリアルのことを記す前にまず、憑依されてしまったマスター“宮原博樹”について記す。

 

身長173cm 体重 68kgと身長に対して少し体重が重いけれど、それは筋肉量による重さ。 40代前半の男性でここまで体型を維持できている人もそう多くはない。

カルデアに来る前の職業は警察官、役職は巡査部長だという。

飲酒歴や喫煙歴はなし、過去現在患っている病気などもなく至って健康。

魔術回路や彼の家の血統を古くまで調べて見たが、魔術に関してはここカルデアに来るまで一切関わりのない生活をして来たことだけがわかった。

 

家族歴としては、妻と今年18になる娘さんと小学生の息子さん、一応調べては見たけれど奥さんの方にも魔術的な関わり、そして()()との縁や関わりは見つけられなかった。

 

駄目だ、『宮原博樹』──ベリアルを憑依召喚した彼のことをどんなに調べても出てくるのは一般的な家庭のことのみ。

ベリアルは本当に、偶然によって彼の元に召喚された存在と見て間違いないようだ……。

 

他に彼に特出する点があるとすれば……ウルトラマンオタクだということだろうか。

ここ、カルデアに来るマスター候補は長期滞在を目的とした生活用品に加えて、家系特有の魔術関係の道具や、召喚したいサーヴァントの触媒を持ってくる。

その中で宮原博樹だけは違った。 ダンボールを何個も積み上げてここにやって来たため僕も運ばされたから強く記憶に残っている。

余りに気さくな人だった物だから何をこんなに持ってきたのか聞いてみたところ

 

『こんな歳になって恥ずかしいんですがね、ウルトラマンのグッズなんですよ 』

 

ダンボールの中にはこれでもかというほどのソフトフュギュアや指人形、中にはウルトラマンへ変身するための道具まで入っていた。

他にもウルトラマン全作品の映像媒体やソフビとは違う細かく出来たフュギュアまである始末……。

僕もマギマリの追っかけをやっててグッズを集めるオタクの気持ちは分かっているけど……これは年期が違うなと見せつけられた。

 

彼だけだよ、あの殺風景な部屋に所狭しとグッズが置いてあるのなんて……僕だってポスターとかだけで我慢しているのに……

 

でも、そんな少ない時間しか関わらなかったというのに彼がとても優しい人物だったということがわかった。

立香ちゃんのように半ば強制のような形でカルデアに連れてこられたんじゃない、しっかりと事情を聞いた上で家族がいるというのにカルデアに来ることを選んでくれた人だ。

 

『仕方ないですよ、頼まれちゃいましたから 』

 

頼まれたからって、いつまで続くのか分からない遠い地へ行くことを決める人なんてそうそういない。

ましてや家庭がある人がだ……。 優しすぎるんだ、宮原博樹という人は……

 

 

話を戻そう。 次はベリアル本人についてだ。

彼については未だに不明な点ばかりだ。 今現在で分かっていることは少ない

まず1つ目は真名。 自分からその真名はベリアルと名乗ったが、それが本当に真名なのかは定かではない。

ベリアル──ソロモン王が使役していた72柱のひとつ、序列68番目の強大な悪魔。

だけど、だけどだ。 彼がもし本当にソロモンのベリアルだとしたら、名前を答えるはずがない。

宮原さんが令呪を使って命じたのなら可能性はあるが、彼の令呪は3画とも健在している。

召喚した際、嘘をつく。 それがベリアルという悪魔だ。 だからこそ神の力を使ってその嘘を封じる、現在だと令呪を使用してになるけど。

そうして嘘をつけなくしなければいけない筈のベリアルが、嘘をついていないことを証明している。

そもそも、ここカルデアの令呪は本来の聖杯戦争で使われる令呪とは異なる単なる魔力の結晶だ。

 

2つ目はその宝具──黒き鋼──だ。

彼が唯一答えてくれたことが、手に持っていた武器、彼を彼たらしめんとする宝具の名前だった。

黒き鋼……これだけだと真名に辿り着くのはとても難しいが、あの宝具はとても強力だ。

かのアーサー王の剣撃を正面から受け止めて傷一つ出来ることはなく、死角からの攻撃でもまるで宝具自身に()()()()()()()()()()動いていた。

それだけではない、黒き鋼から放たれる光弾。 アレには魔力が含まれていないということも特出しなければいけない点だ。

光の球だけではなく、鎌のように形状変化する特徴を持ちながら、岩山を軽く削ることも出来る威力を持ったその力は魔力に依存していない。

 

 

今、ベリアルに関して分かっていることはこれくらいだ。

これからも警戒を怠らないようにしよう。

 

 




要はキャラ紹介のような何か……
続くかどうかはわかりません。


Q 何でぐだ男ではなくぐだ子なのか?
A ぐだ男だと絶対にcv宮野真守の光の戦士が憑依して暴れ回る未来しか見えなかったから

感想や評価、誤字脱字やご指摘などお待ちしてます。


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邪竜百年戦争オルレアン~模造された憎悪~
1


お気に入り200、UA10000突破ありがとうございます。

今回から第1章の始まります。
べリアルさんが関わることでどう変わっていくのか……


オルレアン……最初に当たった牛若ちゃんと単発で来たキャットとヴラパパとで駆け抜けた記憶……

感想、評価お待ちしてます。


「とっ、ここは……森の中? 」

 

「そのようです。 レイシフト、無事完了です。」

 

人理修復する決断をして1週間くらいで、最初にいく特異点の測定が終わった。

私は、最初に着ていた制服から黒いローブを羽織ったいかにもって感じの魔術礼装に着替えて、民間人との接触も視野にいれてべリアルさんもカルデアの制服に着替えてる。

 

準備を終えて、無事に1個目の特異点にレイシフトした私たちは、マシュの持つ計測器で色々調べて貰ってる。

何故かフォウくんも着いて来ちゃったみたいだけど、大丈夫……だよね?

 

「時間軸の座標の確認から今はどうやら1431年ですね。 」

 

百年戦争────簡単に説明してもらったけど、フランスとイギリスの国境線が決定した戦争だっていうことで、今は戦争休止中で名前の通り100年続いてたわけじゃないっぽい。

 

「そんなご託はどうでもいい。 マシュ・キリエライト、この地球には空に光の輪があるのか? 」

 

「光の輪? いえ、そのようなものは……っ!! 」

 

べリアルさんに言われて私とマシュ、それと通信が繋がったドクターたちと空を見てみると、言っていた通り空に光の輪っかのようなものが出来ていた。

 

ドクターの見解でじゃ未来が消失した理由の一端になったっていってたけど、何も分からない私たちに出来ることはない。

そう言うことだから、今はこの特異点について知るために現地の調査を進めることになった。

 

 

 

 

 

「おい貴様。 起きろ 」

 

「ひっ!! ひいっ!! や、やめてくれっこ、殺さないでくれえ!! 」

 

「わああべ、べリアルさんっ!! それは酷すぎるよっ!! 」

 

しばらく歩くと崩れた砦に辿り着いた私たち。

中へと入るやいなやべリアルさんが武器の棒を使った横になって倒れていた兵士の一人を持ち上げて脅し始める。

その方法で情報収集をするのを止めようとするのけど止めることなんて出来るわけもなく、隣で話を聞くしかなかったけど、この特異点の原因が何なのかは何となく検討がついた。

 

”竜の魔女の復活”

ジャンヌ・ダルク。 私でも知ってるすごい人……最後は戦争相手のイングランドに捕らえられて火刑に処されてしまった彼女が蘇った。

 

「じゃ、ジャンヌ・ダルクは今ではオルレアンを根城にしてフランス中を攻撃してるんだ!! ど、(ドラゴン)を使ってっ!! 」

 

何か、魔術側では竜種の存在は当たり前らしいけどこの15世紀のフランスに竜は存在していない。

蘇ったジャンヌ・ダルクが竜をこの時代に呼び寄せてるらしくて、そんな芸当が出来るのは聖杯の力に他ならないだって

私からすれば竜が実在してたってことすら信じられないんだけど……

 

すると、突然兵士の1人が慌ただしく部屋に入ってきた。

 

「竜の魔女がここまで来やがった!! みんな逃げろっ!! 竜に喰い殺されちまうぞっ!! 」

 

「………………フンっ 」

 

「あわわわわっ!! 」

 

忙しなく動き始める兵士たち

充満していく血の匂いが土や火薬の匂いと混ざりあう。

 

血の匂いには馴れてるって思ってたけど、戦場に広がる匂いは私が知っているものよりも気持ちの悪いもので吐き気を催してしまう。

 

マシュも私と同じみたいで顔色を悪くしてるけど、特異点の原因かもしれないジャンヌ・ダルクが来たんなら向かわなきゃ

 

「「!!!? 」」

 

顔を上に上げると同時に、壁に何かを思いきり叩きつける音が響いてきた。

私とマシュだけじゃなくて、残った兵士たちも音のした方に顔を向けていて、土煙が風と一緒に消えるとそこ立っていたのはべリアルさんだった。

 

べリアルさんが、砦の壁を容赦なく壊してくれたお陰って言っていいのかわからないけど、大きく空いた穴から吹き付ける新鮮な風が入ってきてくれて、さっきよりかは気分が幾分良くなった。

 

『あんな無茶な壊し方をして……この砦が崩れでもしたらどうするつもりだったんだ彼はっ!! 』

 

ドクターはそう言ってるけど、べリアルさんがそんな間違いをするとは思えない。

ここを壊せば崩れないって位置を的確に狙ってやったんじゃないかな?

 

「………… 」

 

「!! マシュ!! 」

 

「はい先輩!! 」

 

そうこう考えている内に、べリアルさんが外に飛び出していった。

飛び出していくその一瞬、私たちのことを一瞥してきたのを私もマシュも見逃さなかった。

だからすぐにマシュに声をかけて、2人でべリアルさんの後を追って飛び出した。

 

「あれは………… 」

 

そうして外に出ると、そこには無数の竜と1人で戦っている人いた。

戦ってる最中に顔まですっぽり覆ってた布がはだけたからか、一つに纏められた綺麗な金髪を揺らしながら、手に持った槍……違う、あれ旗だっ!!

 

べリアルさんも既に戦い始めてて、複数の竜相手を相手取ってる。

 

「よっし!! 私たちも戦おうマシュ!! 」

 

「すうーはぁー。 はいっ!! 敵性は竜種──ワイバーンと戦う女性を加勢します!! 」

 

そうして、少し遅れてだけど私たちもワイバーンとの戦闘を始めた。

 

ワイバーンの炎を他のワイバーンから切った尻尾でガードするって……べリアルさん、それ酷すぎない?

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

瞳に映るのは、深い、深い炎の闇

 

どんなにもがいても抜け出すことの出来ない底なし沼に浸かってしったような感覚

 

ただ、心だけは止まらずに動き続けていた。

 

憎しみ、妬み、嫉みといった負の感情が津波のように何度も、何度も押し寄せてくる

 

 

 

ここはどこだろうか?……確か私は……爆発に巻き込まれて……それから……

 

 

動こうにも、何かに締め付けられているのか身動きがとれない。

爆発音が響いて、目の前の強固な扉が壊された。

そこにいたのは、ニセウルトラマン……。 初代ウルトラマンに良く似た容姿をした偽物のウルトラマンは、もう隠す必要はないのか元の姿に戻ってこちらに接近してくる。

凶悪宇宙人ザラブ星人。 その手に持っている武器、ギガバトルナイザーの存在からこのザラブ星人はメビウス外伝 〜ゴーストリバース〜 で出てきたザラブ星人みたいだな。

そのザラブ星人はこちらにギガバトルナイザーを向けると、今まで動けなかった身体が解放された。

 

『目覚めろ()()()()()()()()()()、光の国が生んだ暗黒のウルトラ戦士! 最恐・最悪のウルトラマンよ!! 』

 

ベリ……アル? そんなウルトラマンの名前聞いたこともない。 それに暗黒のウルトラ戦士だって? 光の国にそんなウルトラマンいるはず……

そう思っていると、ザラブ星人は私にギガバトルナイザーを手渡してくる。 私の身体なのに無意識に動いていて違和感を覚えるが、渡されたギガバトルナイザーの使い方を知っていたのか、鉄アレイサイズの大きさから元の身の丈以上の大きさへと瞬時に戻すことが出来た。

 

『うがああああああ!!!! 』

 

ギガバトルナイザーが本物だって分かると、私はその力を試すようにザラブ星人をいとも容易くその手にかける。

なんだ……この姿……!? 私の全身を鏡のように綺麗な鉱石で確かめると、その姿に驚きが隠せなかった。

確かにその背格好はザラブ星人の言っていたようにウルトラマンに酷似しているが、それ以外はまるで違う。

充血したように血走った目、鋭い爪に大きな手、体色はまるでダークザギのような真っ黒な身体に血液のように全身を駆け巡る赤

これが……今の私……なのか? なんでこんな姿になってしまったんだ……!?

 

『ベリアルっ! 監獄に戻るんだっ!! 』

 

『ああ? 準備運動にはなるか 』

 

タロウっ!! ベリアルはまるで下にした口で舐めているが、タロウは宇宙警備隊の教官を務めている。 ウルトラの父と同じ超戦士の証“ウルトラホーン”に加えてウルトラ兄弟一のパワーを誇ってるんだ。 この身体、本調子じゃないみたいだし、タロウなら私を、ベリアルをきっと止めてくれるはずだ。

 

『ストリウム光線!! 』

 

『はあっ!! 』

 

一緒に向かってきたタロウの教え子たちをものの数分で蹴散らし、今(ベリアル)はタロウと一対一で戦っている。

タロウは七色に発光し、腕をT字のように組んで放つ必殺光線“ストリウム光線”を繰り出すが、(ベリアル)はそれを背を反らすだけで簡単に避けてみせた。

嘘……だろ? 本調子じゃないっていうのにあのタロウと互角……いや、それ以上の力で渡り合ってる。

 

『くはははっ!! 帰ってきたぜ!!! 』

 

倒したタロウを片手で投げ捨て、光の国へと降り立った。 憧れだった光の国に来れたっていうのに、ちっとも嬉しくない。

(ベリアル)が来ることは予め予期していたのか、沢山のウルトラ戦士が(ベリアル)の前に立ちはだかった。

パワードやマックス、ゼノンにユリアン。私が知っているだけでもこれだけの勇士が立ち向かうが、その手がベリアルに届くことはない。

メビウスやヒカリも加勢にきたがベリアルに手も足も出せずに倒されてしまう。

テレビの前で何度も見たウルトラマンたちが倒れるその姿は、地獄でしかない。 しかもそれをやったのは…………私だ……

 

(やめて……くれ……)

 

駆けつけた初代ウルトラマン、ウルトラセブンすらもベリアルの力には敵わず、唯一宇宙警備隊隊長のゾフィーだけが1人残ってしまった。

頼むゾフィー!! 私を止めてくれ!!

 

『胸の勲章、警備隊隊長の証か……。ようやくまともな奴が現れたと思ったが……。 とんだ期待ハズレだぜ 』

 

『もうあの時の私ではない、貴様はここで止める!! 』

 

(やめてくれ…… )

 

ベリアルの方はわからないけど、ゾフィーはベリアルのこと知っているような口ぶりだ。

右手を前に突き出して放つ最強光線“M87光線”を繰り出すけど、ギガバトルナイザーを自分の目の前で回転させることで盾の役割を果たし、光線を分散させたベリアルはその勢いのままゾフィーに襲いかかり、いとも簡単に倒してみせた。

 

『有象無象の雑魚を、このオレがいちいち覚えてると思うな 』

 

(やめてくれ…… )

 

みんな、みんな倒れてしまった……。 光の巨人、正義の味方であるウルトラマンが、たったひとりの悪のウルトラマン、ベリアルの手で倒された。

ギガバトルナイザーから放たれる雷撃を使い光の国を破壊しながら、ベリアルはこの国を照らしている人口太陽が保管されているタワーへと足を進めた。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

「私の真名は──“ジャンヌ・ダルク” 」

 

ワイバーンとの戦闘を終えた私たちは兵団から逃げるように一緒に戦ってくれた女性と森の中に入って休憩していた。

 

しばらくすると彼女はボロ布を脱いで名前を教えてくれて真名をジャンヌ・ダルク本人なんだと言って。

 

何でも目の前にいるジャンヌさんはフランスを襲っているジャンヌ・ダルクとは別の存在らしくて、それを確かめるためにオルレアンに向かっている。

 

目的は一緒だから私たちは、ジャンヌさんと行動を共にすることになった。

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回の英霊は~コチラっ!! 」

「ジャンヌ・ダルクさん。 フランスを勝利へと導いた救国の聖女と呼ばれる方です 」

「特異点では2人のジャンヌ・ダルクがいるんだもんね。 何か違ったりするのかな? 」

「どうなのでしょうか? それでは今回はこの辺りで 」

「次回もよろしく~~! 」


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2

Q 現在のベリアルさんは何処まで強いの?

A 今のベリアルさんは一度死んで、そして博樹さんの身体に入ることで何とか生きてる状態。その為身体が馴染むまでは黒き鋼を主体に戦うスタイルをとっている。

つまりはウルトラ銀河伝説で初登場したベリアルさんくらいの強さをサーヴァントレベルに換算された状態

他のサーヴァント? 名付き(マン兄さんやメビウス)レベルだったり戦闘系ウルトラ一族レベル

後は……わかるな?



感想、評価などお待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘などございましたら迷わずどうぞ


ジャンヌさんと協力することになった私たちは、近くで一番大きな街であるラ・シャリテで情報を集めた。

戦争相手であったイングランドは既にフランスから退去していること。

国王であるシャルル7世も殺され、国家機能も壊滅、オルレアンを占拠したもう一人のジャンヌ・ダルクは、各都市を襲撃し虐殺を繰り返している。

ここラ・シャリテは、今現在都市として機能してい数少ない街で、襲撃を受けながらも奇跡的に生き延びた人たちがこの街を拠り所として避難していたこと……。

 

そんな場所に、彼女は現れた。 無数のワイバーンと、巨大な黒い竜を引き連れて……。

一瞬だった。 オルレアンに向けて朝早くにそこを出ていた私たちは、街一つを炎で包み込むその光景を遠くから見ていることしか出来なかった……

 

「あそこには、沢山の人達がいたのに……!! 」

 

何とか生き延びた人達だって、被害の出ていないラ・シャリテに行けば安全だと思って必死でやって来たのに……それなのに……

遠くから、街が焼けるのを、人が簡単に死んでしまうのを見ていることしか出来なくて……そのせいで、敵がすぐ側まで来ていることに気づけなかった。

 

「まさか、こんなことが起こるなんて…… 」

 

私たちのことを見て……ううん、こちら側にいるジャンヌさんのことを見て黒いジャンヌ・ダルクはそう言った。

私やマシュのことをジャンヌさんの従者だと勘違いした黒いジャンヌは、自分の従者だと言って私たちを囲い込むように4基のサーヴァントを呼びつけた。

突然のことで何も対処出来なくて、逃げようにも退路も塞がれてしまってる。

 

『嘘だろ……!?。 彼女の言う通り、そこにいる4人全員サーヴァントだ!! 敵いっこない!! どうにかしてそこから逃げるんだ!! 』

 

「逃げるって言っても…… 」

 

「応えなさい。 貴女は本当に……私なのですか? 」

 

八方塞がりの状態で、私たちの前に出たジャンヌさんは、黒いジャンヌにそう質問した。

フランスを滅ぼす。 その思想に至ることすら自分では考えつかないと言って、だからこそ目の前にいる自分に語りかける。

けど、返ってきたのはジャンヌさんのことを見下す冷たい声だった。

 

「この国は私を裏切り唾を吐いた、だから滅ぼすのです。 人類種という悪しき種を根本から刈り取り、フランスを沈黙する死者の国に作り替える 」

 

それが、黒いジャンヌのしようとしていること……

何故だか理由は分からないけど不完全な霊基で召喚されたジャンヌさんと、黒いジャンヌの思想は完全に違うらしくって“本物”は私なんだと言って腰に差している剣を抜いて斬りかかってくる。

 

「恐怖も、憎悪も知らない小娘がよく喚く 」

 

「っ!? 何っ!! 」

 

黒いジャンヌの一撃を受け止めたのはベリアルさんだった。 剣を受け止めれたことに驚いた黒いジャンヌだけど、直ぐに態勢を立て直すために後ろに下がる。

 

「そこの狂った剣士、お前たちだけで相手取れ 」

 

「え? 貴方は……もしかして!! 」

 

「……分かりました!! 先輩!! 」

 

「うん! 行くよマシュ! ジャンヌさんも戦う準備を! 」

 

黒いジャンヌ以外の4基のサーヴァントがこちらに向かって駆け出してくるなかで、ベリアルさんはそう言って羽帽子を被った剣士の一人だけを通して、残りの3基……ううん、黒いジャンヌも合わせて4基を相手に戦い始めた。

 

そんな絶体絶命の中で、焦ることなくそう言ったべリアルさんは、セイバー以外の4騎を相手に駆け出していった。

流石に無謀だと思った私たちだったけど、べリアルさんのいった通り、ジャンヌさんとマシュの2人でバーサーク・セイバーって狂化された相手と戦うことになった。

 

「はあっ!! 」

 

「これで……、倒れて!! 」

 

『…………』

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

タワー内部へ侵入を果たしたベリアル()のことを待ち構えていたのは3人のウルトラ戦士だった。

A(エース)、ジャック、80だ。 特に80はテレビ放送内では怪獣に負けたことのない無敗のウルトラマン。

 

80は私が初めてリアルタイムで見ることのできたウルトラマン……だから、勝ってほしい私を止めてほしい!!

だけど、そんな3人を相手にしても、ベリアルは余裕で立ち向かっていく

 

『合体光線だっ!! 』

 

Aのメタリウム光線、ジャックのスペシウム光線、80のサクシウム光線が合体した光線が襲いかかる。

私からすれば夢のようなその技に興奮を隠せないが、ベリアルはギガバトルナイザーを前に突き出すことで受け止めると、その光線を跳ね返すことで3人を倒した。

 

嘘だ……あの3人がこんな簡単にやられてしまうなんて、あっていいはずがない!!

 

立って、立ち上がってくれA! ジャック! …………80!!!

 

どんなに叫んでも、私の声は届かない……。

3体のウルトラマンの瞳から光が消えるのを見届けると、私は大きく跳躍する。

 

『今度こそ、オレのものになれっ!! 』

 

人工太陽『プラズマスパーク』を眼前に捉えたベリアルがその手を伸ばす。

今度こそって言う事は、ベリアルは過去にもプラズマスパークを狙ったことがあるのか?ベリアルの手が届くかという時、その手は誰かに掴まれてしまい止められてしまう。

 

『これ以上罪を重ねるなっベリアルっ!! 』

 

父……ウルトラの父だっ!! ベリアルを止めてくれたのはウルトラの父だ!!

父はベリアルと知古なのか、怒りの中に悲しみを交えた目で私を見てくる。

けれど、その言葉はベリアルに届くことはなく、ウルトラ戦士としての誇りなど失くしたと豪語し父と戦闘を始める。

 

(お願いだ!! 私を……べリアルを止めてくれ!! )

 

私の願いは聞き届くことはない。

けど、父は流石という強さをベリアルの前で発揮した。

ギガバトルナイザーの特性を知っていたのか、それとも脱獄したばかりで調()()()()()()()()()ことに気づいていたのか、光線系の技は一切使わず格闘能力だけでベリアルを押していく。

 

『お前の罪は私の罪だ! 今回こそ、この私の手でお前を止めてみせる!! 』

 

『それでその姿ってワケか……。 だが、弱点を抱えたままの甘ちゃんに……このオレ様が負けるかっ!! 』

 

ああっ!!!

ギガバトルナイザーが父の脇腹に当たり、先端から出た雷により父の身体に激痛が走る。

ウルトラの父の弱点、かつてウルトラ大戦争と呼ばれる戦いの中で、怪獣たちを率いた悪の帝王──エンペラ星人との一騎打ちで負った古傷。

ウルトラ一族の中でも知っているものは限られているその場所を寸分狂わず狙ってみせたベリアルによって父は倒れ、抵抗してきたウルトラの母も成すすべなく倒れた。

ケンって……ウルトラの父の名前ってウルトラマンケンだったのか……

はは、こんな事で知りたくなかったな……

 

『遂に手に入れたぜ、これで全宇宙はオレ様のものだ!! 』

 

ウルトラマンが、ヒーローが負けてしまった……

プラズマスパークを手に入れたベリアルが光の国を去っていくと、その力の加護によって光を与えれていた光の国はまるで氷河期のように氷に覆われた国へと豹変してしまう。

終わり……なのか? ここで終わってしまうのか……?

だから、ギンガやビクトリーといった違う世界のウルトラマンの話になってしまったのか?

 

 

違う、そんな筈がない!!

私の知っているウルトラマンは、どんな絶望の中でも諦めたりしない!!

諦めずに何度も立ち上がって、そうして勝利を掴みとってきたんだ!!

なら、今回だって……!!

 

 

────◇◆◇────

 

“狂化”

その名前の通り、英霊に狂気を付与する能力。

おおよそ全ての能力が向上する代わりに、理性を失いマスター言いなりなってしまう……。

 

この場合、マスターは黒いジャンヌで他の4基の英霊は彼女のサーヴァントとして全員“狂化”がかけられてる。

2人で戦っている剣士も自分のことを“バーサーク・セイバー”って名乗っているけど、理性は失ったてても冷静さは失っていないのか、マシュとジャンヌさん二人がかりで攻めても決定打となる一撃が与えられない。

 

「細剣でどうしてそこまでの守りが……!! 」

 

『君たちは純粋だ……。 だから、動きを見切ることは容易い!! 』

 

こちらの動きを見切って、こちらの攻撃をいなし隙を見て攻撃してくる。

マシュが危ない時はジャンヌさんが、逆にジャンヌさんが危ない時はマシュがって形でフォローし合っているからこちらも大きなダメージは見られない。

拮抗してるって言うのかな……? ベリアルさんはこうなるって分かってて私たちにバーサーク・セイバーの相手を……?

そう思いべリアルさんの方に視線を向けると、凄まじい光景が映りこんできた。

 

「くっ!! 何をやってるのです貴方たちはっ!! さっさとソイツを殺しなさい!! 」

 

『はあっ!! 』

 

『せあっ!! 』

 

黒い貴族服に槍を持った男性が地面から杭のようなものを出現させ、十字架のような杖を持った女性はベリアルさんに向けて無数の魔力の塊を打ち出した。

それに加えて黒いジャンヌも違う方向から炎を出してべリアルさんのことを襲う。

 

「…………こんなものか 」

 

その怒涛の攻撃を、べリアルさんは全て対処した。

黒き鋼──べリアルさんの持つ武器を片手で回転させることで盾の役割を果たし魔力の塊を全て払い、何処に出現するのか分かっているかのように杭を片手間といったように足で壊していく。

 

黒いジャンヌの炎に至っては、避けようともせずに空いている腕をつき出して片手だけで消し去ってみせた。

 

『男に使うのは私の性分ではないのだけど……そうは言ってられないようね 』

 

もう一人、仮面で素顔を隠した女性がそう言うと何処からか女性を象ったような鉄の……なんて言うんだろう?

 

鉄の処女(アイアン・メイデン)!! と言うことは彼女の真名はかのエリザベート・バートリーか!! 立香ちゃん、マシュとジャンヌ・ダルクの2人には絶対に彼女に近づかせないようにするんだ。 逸話どうりなら、あの宝具は女性に対して絶大な効果を発揮するものだ!! も、もちろん立香ちゃんもだからね! 』

 

ドクターがあのサーヴァントの説明をしてくれている内に、その中に無数の刺を取り付けられている"鉄の処女"がべリアルさんののことを喰らった。

 

あの形状だと、閉じ込められてしまったべリアルさんは刺を避けられずに串刺しになって……

 

「な、なんですって!! 」

 

『ありえない……!! 』

 

「こんなちゃちな玩具で、このオレを殺せると思うな。ヘアっ!!! 」

 

べリアルさん……刺を両手で掴んで強引に拷問器具をこじ開けた。

全開まで開くとその手を離して、もう一度"鉄の処女"が閉じるより早く黒き鋼でその宝具を壊してしまう。

 

「あら? 助太刀を……と思ったのだけれど……お邪魔だったかしら? 」

 

「ひゃあっ!! えっ!? 貴女は? 」

 

「ヴィヴ・ラ・フランス! 」

 

「び、ビビラフランス? 」

 

「何やってるんだいマリア。 ほら、そこの君たちも逃げるんならこの馬車に乗りな 」

 

突然耳元で甘い声が聞こえてきて驚いて振り向いてみると、いつのまにかそこには大きな丸い帽子を被った美少女が私に向かって微笑みかけてた。

挨拶されたっぽいから挨拶で返して見たけど……、どうやら彼女ともう一人は黒いジャンヌに敵対してるサーヴァントらしくって、宝具であるガラスの馬車を使って私たちを助けに来てくれたっぽい。

それに黒いジャンヌも気づいたのか、後ろで構えていた巨大な竜に命令する。

 

「ッッッ!! ファブニール!! アイツを、いいえこの際よ! あの聖女も纏めて灼き殺しなさい!! 」

 

『ふぁ、ファブニールだって!! 最上級の竜種じゃないか!! いくらベリアルだからって敵うはずがない、立香ちゃん、マシュもみんな出来る限り遠くへ逃げるんだ!!』

 

「いえ、ドクター……見てください…… 」

 

「あの竜……動こうとしてない…… 」

 

ファブニールの巻き添えにならないように敵全員が後ろに下がっていったけど、当のファブニールはまるで借りて来た猫のように大人しくなってる。

主人であろう黒いジャンヌの言うことを聞かず、だたその場で唸り声をあげているだけ……

これには黒いジャンヌ本人も驚いていて、声を荒げる。

 

「何をやっているのですファブニール!! 早くアイツらをオマエの炎で灼け!! 主人であるこの私の命令よ!! 」

 

「…………覚えておけ 」

 

「!? 」

 

「“本物”の恐怖と憎悪を……貴様のその空っぽの塊に刻み込んでやる 」

 

どんなに黒いジャンヌが命令しても動かないファブニール。

それを横目に、ベリアルさんは黒いジャンヌにそう言ってこちらに向かって踵を返した。

 

「っ!! 待ちなさい!! 」

 

「フッ!! 」

 

ベリアルさんのことを逃さないために出した黒い炎。

それを黒き鋼から出た光弾で衝突させることで生まれた煙を使って、私たちはこの戦線から離脱することに成功した。

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回は〜〜コレだ!! 」

「アサシン カーミラさんですね。 『血の伯爵夫人』と呼ばれた連続殺人者、吸血鬼伝説のモデルとなったと言われている女性です 」

「あれ? ドクターはこの人のころエリザベート・バートリーって呼んでたけど? 」

「カーミラは彼女の変名……。 血を追い求めた生涯を表したものだと言います。 何故こちらの名前で登録されているのか、と言うのには理由が…… 」

「ブタども!! ライブを始めるわよ!! 」

「ああああ!! 今日はこの辺りで!! 」

「今回もお読み下さりありがとうございました!! また次回!! 」




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3

Q ウル銀のベリアルさんはどうして光線技を使わないの?

A 元々牽制技としてウルトラ一族が一番最初に覚えるのが光線技。 それを必殺技まで昇華させたのがマン兄さん。 マン兄さんたちが活躍している間、ずっと監獄に囚われてたベリアルさんにとって牽制技である光線技は撃つ必要がない。

昇華させる時間があれば、無限に再生を繰り返す相手だろうが消滅させるだけの威力を誇るという……

感想、評価いただけると舞い上がります。

ご指摘、誤字脱字の報告もお待ちしてます


 ラ・シャリテから南東にある木々生い茂る場所まで逃げ切った私たち。

 ガラスの馬車から降りると、私たちのことを助けてくれたサーヴァントたちが自己紹介をしてくれた。

 

「わたしは“マリー・アントワネット” クラスはライダーよ。 そちらの男性の方もよろしくね 」

 

「………… 」

 

「おいおい、マリアに手を振られてなびかないなんて彼、男性として機能してるのかい? ああ、ボクはアマデウス。 “ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト” クラスはキャスターさ 」

 

 無知な私でも流石に知ってる有名すぎる2人の英霊に加えて、黒いジャンヌに敵対しているサーヴァントは他にもいてくれた。

 

「“清姫”と、そうお呼びください。 クラスはバーサーカーですのよ? 」

 

「“エリザベート・バートリー” クラスはアイ……ランサーよ 」

 

「……あれ? エリザベート・バートリーって確か…… 」

 

 私のことをねっとりとした視線で見つめてくる着物を着た清姫ともう一人、頭に角のようなものが生えた女の子が、自分の真名をエリザベート・バートリーって名乗った。それってあの時ベリアルさんが戦ってたサーヴァントのうちの一人じゃ……

 

 そう思っていると、私の目の前までエリザベートがやってきて私怒ってます!って腰に手を当ててる。

 

「そうなのよ!! 敵のアサシン、アイツってばアタシと同一人物なのよ!! ああけど!! アタシの方が肌とかピチピチだし、若さとか全然勝ってるから! 勘違いしないでよね子ジカ!! 」

 

「え、あ、う、うん……子ジカ? 」

 

「まあまあ、火を吹くしか能の無いトカゲはコレだから困りますわ。 ねえ、安珍さま? 」

 

「え? ……安珍さま? あの私の名前藤丸立香っていうんだけど…… 」

 

 マシュに助けを求めようにも、あっちはジャンヌさんとマリーさんと一緒に会話してるからどうにか出来そうもない。

 な、ならベリアルさん!!! …………あれ?

 

「ドクター、ベリアルさんはどこに? 」

 

『ああ、彼なら……』

 

 ベリアルさんに助けを求めようとしたけど、辺りを見渡してもベリアルさんの姿がなくなってた。

 

 

 

 

 

「………… 」

 

『ちょちょちょっと!! ベリアル、君も立香ちゃんたちと一緒に…………っ!! 』

 

 立香たちが会話を弾ませている合間に、ベリアルは馬車が進んできた道を戻っていた。

 単独行動をされては困ると、ロマニがベリアルに注意しようとしたが小心者の彼は一睨みされて何も言えなくなってしまう。

 

「オレは貴様らの指示に従う気はない。 試さなければいいけないことがあるんでな…… ふんっ!! 」

 

『んなっ!!! 』

 

 ベリアルにはベリアルの目的があるのか、映し出された立体映像の通信を、手を軽く振るっただけで遮断させると黒き鋼を担いで森の中へと進んでいった。

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 レイオニクス

 かつて全宇宙を支配していたとされるレイブラッド星人の因子を受け継ぐ者。

 その因子を受け継ぐものはバトルナイザーという特別な道具を通して怪獣を自在に操ることができる。

 

 命を落とした怪獣や宇宙人の魂が眠るとされている謎多き場所“怪獣墓場”へとやってきたベリアルは、プラズマスパークの強大な力によって怪獣たちを復活させ、ギガバトルナイザーの本来持つ力──100の怪獣を操り、その力を極限まで高める──を使い自分の手駒を一瞬のうちに作り出した。

 

 ギガバトルナイザーの力を最大限まで発揮できるその姿を見て確信した。 べリアルもレイブラッドの因子を受け継ぐレイオニクスなんだ。

 

『ベリアル! 貴様の好きにはさせんぞっ!! 』

 

 氷漬けにされなかったウルトラマンたちが、ベリアルの企みを阻むために怪獣墓場へやってきた。

 やっぱりウルトラマンはそう簡単にやられるものか! 

 ん? あれって……確か……。

 初代ウルトラマン、セブン、メビウスの3人の隣にいる人物に注目してみると、その人物に見覚えがあった。

 大怪獣バトルの主人公 最強のレイオニクスと言われた怪獣使いのレイだ!!

 

 そうか、目には目を歯には歯を。 レイオニクスにはレイオニクスを!! ウルトラマンたちはレイオニクスであるベリアルに対抗するためにレイに協力を仰いだんだ。

 

 そんな彼も加わり、相棒のゴモラとともにベリアルの従える100の怪獣たちとの戦闘が始まった。

 

『どんなにいい子ちゃんぶったところで、レイブラッドの因子に逆らえるかな!! 』

 

 100の怪獣の中にはマグマ星人のような星人タイプも含まれていて、ソイツらがレイを襲いはじめる。

 

 けど、そんな相手遅れをとったりするレイじゃない。

 レイが雄叫び上げると、青を基調とした“真のレイオニクス”の姿に変身して戦闘に加わる。

 

 自分と同じ存在レイオニクスで、その力を評価したべリアルは、直接レイの前まで赴きレイブラッドの邪悪な因子をレイの身体に打ち込こんだ。

 

『ぐ、グアアアア!! 』

 

 レイの中にあるレイブラッド本来の邪悪な力が目を覚ましてしまう。

 穏やかな青色だったレイの身体は、暴走を示す赤へと変わってしまう。

 

『いいぞ、それが本当の姿か! ははははは!!! 』

 

 暴走し、敵味方関係なく攻撃を始めたレイを見て、ベリアルは喜んでいる?

 

 流れてくるこの感情は……なんだ?

 喜びと一緒に、何か別の感情も混じっているけど、それが何なのかわからない……

 

『ぐわっ!! 』

 

『くっ! 』

 

 意識を戦闘に戻すと、レイの操るゴモラがレオニクスの力によってレイオニックバーストをしたゴモラに進化してウルトラマンたちを苦しめていた。

 

 レイブラッドの後継者を決める戦い、レイオニクスバトルを勝ち抜き、最強のレイオニクスとなったレイの扱うゴモラのレイオニックバーストは普通の怪獣とはわけが違う。

 

『お前の相手はオレだっ!! 』

 

(っ!? ウソだろ……? なんで、なんでこの宇宙に≪ダイナ≫がいるんだ!? )

 

 絶対的不利な状況で現れたのは、レイの仲間 ZAPの輸送船と、この宇宙にいるはずのない別の宇宙にいるウルトラマンだった。

 

『ウルトラマンダイナ』

 そうか!! テレビの最終回で何処か遠くへと旅立った彼は、光の国があるこっちの宇宙まで来ていたんだ!!

 

 ZAPのみんなは、レイが暴走していることに気づくとレイの目を覚ますために動き出してくれる。

 仲間思いなその姿を見て、苛ついたべリアルは直ぐに迎撃しようとしたが、ダイナがそれを止めてくれた。

 

『少しはやるようだが……まだ青い!! 』

 

 くそっ!! ダイナでもべリアルを止めることは出来ないのか……?

 

 けど、ダイナが時間を稼いでくれたお陰でレイの暴走は収まった。

 けど、レイは暴走の代償で仲間たちに肩を貸してもらっている状態だ……。

 

 まさか!? やめろべリアル!!

 

『セブンにトドメを刺せっ!! 』

 

 卑怯にも動けないレイたちに怪獣を仕掛けた。

 レイたちの一番近くにいたセブンが、自分の周りにいる怪獣たちを倒して守りに来てくれたけど……無理だ!

 

 流石のセブンでも10を超える怪獣を一人で相手どることは不可能だ。

 

 勝ってほしい……そう思っても現実は非情で、攻撃を受け続けたセブンは傷つき倒れ、額にあるカラータイマーの光が無くなってしまう。

 

『ああん?』

 

(あれは……ウルトラマンなのか? でも……誰だ……あれ? )

 

 光が失われるその一瞬で投げたアイスラッガー。

 それを便りに、一人のウルトラマンが怪獣墓場の地に降り立った。

 

『ゼロ……。 ウルトラマンゼロっ! セブンの息子だっ!! 』

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

「クソっ!! セイバーとアサシンはまだ帰らないの!? 」

 

 オルレアン────竜の魔女ジャンヌ・ダルクによって支配されたその都市は、空には竜がひしめき合い、暗雲に包まれたその街は、かつての面影はなく、無数の蛸の足のようなおぞましいナニカが城や建物に絡まり、より一層不気味さを増していた。

 

 その中心にそびえる城の玉座で、ジャンヌ・ダルクはカルデアの者たちを処分するように命じた3騎のサーヴァント、セイバー、ライダー、アサシン、いずれも狂化を施し能力を向上させたサーヴァントの帰りを待っているようだった。

 待っているといっても、そこに余裕はなく逆に焦っているようだった。

 

 3基のサーヴァントに追撃を命じたジャンヌ・ダルクだったが、既に命を出した日から数日が経とうとしていた。

 命じたその日のうちにバーサーク・ライダーが消滅してしまったことは聖杯を通じて理解していたが、セイバーとアサシンは未だ消滅していないにも関わらず、城に帰ってきていない。

 

 補充という形で新しく2基のサーヴァントを召喚させたジャンヌ・ダルクだが、安心した様子はなく。 もう一人のジャンヌとあった時のような余裕な表情は既に作れていない。

 

(弱いはずだった。 もう一人の私も、カルデアから来たアイツらも雑魚でしかなかったその筈だった。 なのに、なのになんであんな怪物がいるのよ!! )

 

 ジャンヌ・ダルクは、数日前、もう一人の自分と邂逅した時のことを思い出していた。 

 自分自身も合わせた7騎のサーヴァント、圧倒的力を持つ邪竜ファブニール。 もう一人の自分に、どんなに足掻こうとしても無駄だと、圧倒的な力の差を見せつけるはずだった。

 それが蓋を開けてみればどうだ。

 

『どうした、そんなものか? 』

 

 圧倒的な力の差を見せつけられたのはこちらのほうだった。

 自分にではない、その傍にいた小さい存在でもない。 一人の男に見せつけられたのだ。

 

 自分も含めた4基のサーヴァントで戦っているというのに、コチラをバカにしているかのように立ち振る舞い、最初に行かせたバーサーク・セイバー以外誰ももう一人の自分がいる方へ近くことが出来なかった。

 

 攻撃全てを対処され、アサシンの宝具すらも容易く壊してみせた。 やろうと思えば、あの男ならコチラのことを全滅に追いやることは容易だったのではないか?

 

(違う、そんな筈がない!! )

 

 どんなに否定しても、ジャンヌ・ダルクではその男に勝つ為のヴィジョンが浮かばない。

 ファヴニールを使おうにも、相手の宝具による力なのか、聖杯を使って従わせているはずのファヴニールの支配は奪われてしまう。

 

 だからこそジャンヌ・ダルクは呼び出したサーヴァントたちを可能な限り強化することに徹した。

 狂化はもとより、一撃必殺ではないその身を高める宝具を持っているものにはその宝具の使用を強制させた。

 

『ウウウウッ…… 』

 

『アアアアッ…… 』

 

 その最もたる例が、バーサーク・ランサーとバーサーク・アーチャーだろう。

 2基の使う宝具はとても強力だ、狂化を施していてもなお理性が残っていたサーヴァントの理性を完全に消失させてしまうほどに。

 

(大丈夫、私はこの戦いに勝利する。 そして続けるのだ、この戦争を永遠に…… )

 

 ガコンっ!! と、玉座へと続く扉から音が聞こえた。

 ジャンヌ・ダルクがその音に反応して下げていた頭を上げる、扉が人一人通れる分だけ開かれており、そこからバーサーク・アサシンの姿が見えた。

 見れば、バーサーク・アサシンが顔を隠していた仮面が無くなっているが、戦闘で無くなったのだろうと深くは考えず、ジャンヌ・ダルクは戻ってきたアサシンに高圧的な言葉をかける。

 

「遅かったわね。それで? ここまで時間をかけたのです。 もう一人の私のことはちゃんと始末したのでしょう? 」

 

『………… 』

 

「? 何か言ったらどうなのですか。呼び戻しにも応えず、ここまで日が経った理由を説明なさい 」

 

 ジャンヌ・ダルクがどう言おうともアサシンは応えなかった。 そこでようやくジャンヌ・ダルクはその異変に気づいた。

 まるで誰かに背中を押されたように、アサシンは広場へと出てきた。

 

「……逃……げ……な……さい ……… 」

 

「ッ!!!? 」

 

 それだけ言って、バーサーク・アサシン カーミラは消滅した。 ジャンヌ・ダルクはその時ようやく自分の失態に気づいた。

 ルーラーというクラスのスキルとして、サーヴァントの反応を追うことの出来るスキルが反応していないほどに、バーサーク・アサシンの霊基が限界まで疲弊されていたことを……

 そしてその側に、バーサーク・セイバーの反応も感じられることに……

 

「主人の元に帰って来たんだ。 随分と良いしつけをしているじゃないか竜の魔女。 いや……祭り上げられた哀れな女 」

 

「あな……た、は………… 」

 

 ゆっくり、首を回しながらジャンヌ・オルタの方へと歩いてくる。

 黒き鋼と呼ばれる武器にバーサーク・セイバーを吊るし、その男は悠々と、誰にも邪魔されずにジャンヌ・ダルクのまえまでやってきた。

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回は〜コチラ! って沢山出てきた!! 」

「故障でしょうか? マリーさんに、アマデウスさん清姫さんにエリザベートさんですね 」

「そう! 今回はこのアタシ!! エリザベート・バートリーよ!! 」

「マリーさんは悲劇のフランス王妃、オーストリアの偉大な音楽家であるアマデウスさん。清姫さんは怒りの余り竜に変化した女性ですね。 そしてエリザベートさんですが…… 」

「あっちのアタシと一緒にしないでくれる? アタシはアイドルなんだから!! 」

「それじゃあ次回もよろしく!! 」

「ちょっと!! 無視するんじゃないわよ〜〜!! いいわ、今からアタシの歌を愚民どもに…… 」



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4

作者の主観ですが、レオやアストラといった格闘主体の戦士ならウル銀ベリアルさん相手に勝てると思ってます。
ゼロが勝てたのも丁度ベリアルさんとの相性がよかっただけという考えです。
(初登場補正とかは考えたらダメ)

感想や評価など頂けると励みになります。
ご指摘や誤字脱字などございましたら教えてください。


(なによっ!! 何よなによなによっ!! なんなのよコイツはっ!! )

 

『す……まな……い…… 』

 

放り投げられ、ジャンヌ・ダルクの目の前まで転がってきたバーサーク・セイバーは己の不甲斐なさに涙して消えていく。

ジャンヌ・ダルクは目の前で起きたことが未だ信じられないのか、放心した状態で玉座に座ったまま。

 

「ジャンヌ! ……お前たち!! あの侵入者を殺しなさい!! 」

 

ジャンヌ・ダルクにいくら声かけても反応がなかったため、側近であるバーサーク・キャスター “ジル・ド・レェ”が他のサーヴァントたちに命じベリアルを襲わせた。

 

『ガアアアアアアアアアッ!!!! 』

 

『Aーーurrrrrrッ!!!!! 』

 

ジル・ド・レェによって洗脳を施され、魔獣の力を我が物とする宝具(アグリオス・メタモローゼ)を発動させたバーサーク・アーチャーである“アタランテ”と、新たに召喚されたバーサーク・バーサーカー “ランスロット”が咆哮をあげベリアルに突撃していく。

 

「フン、ヘアッ!! 」

 

手に持ったただの剣を、己の宝具である騎士は徒手いて死せず(ナイト・オブ・オーナー)によって疑似的な宝具へと変えベリアルに斬りかかるランスロット。

バーサーカーと思えぬ剣技を繰り出していくが、その剣がベリアルに届くことはなく、全て防がれていく。

 

宝具を解放したことによって生物の領域を超えた動きが可能となったアタランテも、サーヴァントの目ですら追うことが難しいスピードでベリアルに攻撃していくが、その動きすらもベリアルの目では捉えているのか、身体を動かすだけで避け、目の前のランスロットの攻撃をいなしていく。

 

『グアアアアアアッ!!!! 』

 

「姿が見えなくなったと思ったが、種が分かればつまらないな……吸血鬼!! 」

 

バーサーク・ランサー “ヴラド三世” フランス兵の人喰いを強制させることで“吸血鬼ドラキュラ”としての宝具を目覚めさせられた彼は、闇に紛れてベリアルを襲うが、それすらも予期していたのか黒き鋼を大きく振るいランスロットとアタランテを遠ざけた一瞬で、光を纏わせた黒き鋼を使ってヴラド三世を地面に叩きつけた

 

「まず……1体!! 」

 

「ッッ!! 行きなさい!! 」

 

叩きつけたヴラド三世を、黒き鋼から放たれた光によって包まれ跡形もなく消え去った。

そこでジル・ド・レェはベリアルの脅威を理解したのか、タコにも似た海魔を大量に召喚して向かわせる。

 

「そうか……キサマか…… 」

 

ベリアルは海魔を召喚したジル・ド・レェに狙いを定めたのか、海魔を一蹴しながらランスロットとアタランテの攻撃を簡単にいなしながらジル・ド・レェに向かっていく。

我が身大事と海魔を密集させ、大きく厚い壁のようなものを形成するが、黒き鋼を振るうだけで全て壊し、黒き鋼から伸びる光の鞭のようなものでジル・ド・レェのことを捕える。

 

「キサマは……邪魔だっ!! 」

 

「じ、ジルッ!! 」

 

ジル・ド・レェは消されることなく、城に出来た大きな穴から外へと放り飛ばされた。

召喚者がいなくなったことで海魔が消えると、ベリアルは明後日の方角に黒き鋼を投げ飛ばしたかと思えば、縦横無尽に動き回るアタランテが壁に押さえつけられていた。

 

『グウウウッ!!! 』

 

「眠ってろ……シャアアッ!!!! 」

 

黒き鋼で抑えられ、動けなくなったアタランテの心臓ー霊核ーを右腕で貫いて終わらせる。

残ったサーヴァントは、ジャンヌ・ダルクとランスロット。

武器を担ぎ直したベリアルは、ランスロットに向かって在ろうことかその武器を投げ渡した。

 

「この身体にも少しは慣れてきたところだ。使わせてやる、このオレを殺してみせろバーサーカー 」

 

相手を舐めているのか、バーサーカーに黒き鋼を投げ渡してそう言ったベリアルが構えると黒き鋼を使ったランスロットとの戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

突如現れたそのウルトラマンは、べリアルのように見たことのない姿をしたウルトラマンだった。

セブンX寄りの悪い目つき、2本のアイスラッガーを携え、肩から胸にはプロテクターが、母親側の遺伝なのか体色は青が全体を占めている。

 

その、自分のことをセブンの息子だと名乗ったウルトラ戦士、ウルトラマンゼロがベリアルに向かって走っていく。

 

『親父同様、地獄に落としてやる……。 行けえいっ!!! 』

 

『はああああっ!! 』

 

 

ゼロの前に、壁のように立ちはだかる怪獣たちは意味をなさず、多彩な光線技、洗練された格闘技術の前に成すすべなく次々と倒れていく。

 

あの格闘技……レオと同じ宇宙拳法か?

 

怪獣軍団から少し距離をおくと、ゼロはその頭にある2本のアイスラッガーに手を添える。

 

『シェアッ!! 』

 

セブンが使うアイスラッガーと同じく、自在に操ることで怪獣たちを倒したゼロは、その2本を自分の手に収める。

 

二刀流って言って良いのか? その技でゼットンといった名だたる怪獣たちを翻弄し、最後にはお馴染みの光線技で蹴散らした。

 

(ああ、これだ。 このドキドキだっ!! )

 

どんなに歳をとっても忘れない、忘れることのできない胸のドキドキ。

新しいウルトラマンが登場して戦う、このドキドキだけは今も昔も変わらない。

 

『小僧、オレ様が相手だ 』

 

『キサマだけは……絶対に許さんっ!! 』

 

怪獣を倒したゼロとべリアルの戦闘が始まった。

ゼロはスラッガーを、べリアルはギガバトルナイザーを巧みに使った一進一退の攻防が続いていく。

 

『ヘアッ!! 』

 

これ以上の接近は許さない。その為にギガバトルナイザーを使った衝撃でゼロを後退させ、衝撃によって削れた岩の一部がゼロに迫る。

 

けれど、ゼロはスラッガーでそれを壊すことで冷静に対処し、べリアルのギガバトルナイザーを掴みとった。

 

『くうっ!! 』

 

『シェアッ!!』

 

先に飛ばしたスラッガーを使い、べリアルの手からギガバトルナイザーが手離された。

 

ウルトラの父との戦闘でもわかっていたが、今のべリアルにとって至近距離での戦闘は何よりの弱点。

 

それを戦闘中に理解したのかもしくは勘だったのか、ゼロの本気の攻撃がべリアルのことを苦しめていく。

 

『だああらああっっっ!!! 』

 

それでも持ち前のセンスで何とかゼロの攻撃についていくべリアルだったが、レオキックに似たゼロのキックが決まり手となった。

 

『これで止めだ!!』

 

怯んだことによって生まれた隙を逃さず、ゼロは2本のスラッガーを胸のカラータイマーと合体させ胸から放たれた光線技をもろに喰らう。

 

ギガバトルナイザーもなく、光線を受け止めきれなかったベリアルのことを怪獣墓場にある溶岩へと叩き落としてくれた。

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

 

『……Ar……thur…… 』

 

円卓の騎士最強と謳われたランスロットすらも、その霊核を貫かれることで消えていった。

 

(うそだ、うそだうそだうそだ!!! )

 

何度も見てもその光景が信じられず、心の中で拒絶の言葉を呟き続ける。

けど、それが本当だということは2基のサーヴァントを貫いたことで手を真っ赤に染め上げた目の前の男を見るだけで分かる、分かってしまう。

 

勝てる筈だった、負けることなど想像すらしなかった。

サーヴァントを従え、ファヴニールという強力な手札をもった私は、この戦争を永遠に続けることが出来ると信じて止まなかった。

 

もう一人の私でも、この特異点を正そうとする小さな虫が相手でもこちらの勝利は確実だった。

 

それがなんだ、この惨状は……!!

呼び出したサーヴァントは全て目の前の男に無惨に殺され、側に支えるジルもどこか遠くへ飛ばされてしまった。

 

「どうした? キサマは闘わないのか? 」

 

「ひっ!! 」

 

男がランスロットに渡した自らの宝具を拾い上げると、玉座から立ち上がれない私に向かってそう言ってきた。

殺される。 その目を見ただけで直感した私は怯えながらも歯を食いしばって何とか立ち上がり、男に向けて復讐の炎を出す。

 

「来るなっ!! 来るな来るな来るなくるなっ!!! 」

 

眼前に映るモノ全てが炎に包まれる。場所なんて関係ない!! 私さえ生きていれば聖杯の力で何度でも新しいサーヴァントは呼び出せる!!

私がいれば……私さえ生き残ればこの戦争を続ける事が出来るのよ!!

 

だから燃やした、これだけの炎であればいくらアイツだろうとタダでは…………

 

「ヘアッ!!!!! 」

 

ッッッ!!!!

肌が焼けるほどの熱風と、物凄い勢いの衝撃が私を襲う。 旗を地面に突き立てることで立っていられるが……眼前に広がっていた炎の海には、一本の道が出来ていた。

 

「はああああああああ 」

 

「あ、ああああああ!!! 」

 

怖くなって、私は遂にその場に腰を落とした。

その身体には一切の傷も、炎によって受けた火傷の痕も見受けられない。

炎によって乾燥したことによって、赤く染まっていた両の手は黒く変色し、大きく息を吐いているその口は不気味に嗤っているように見えた。

それ以上に、恐れたのは……その目だ。 周囲で燃え盛る炎を反射しているからなのかは分からないが、その目は赤く揺らめいている。

 

「あ、あ、悪魔………… 」

 

本物を見たこともないけれど、悪魔という存在がいたらきっとコイツのような存在のことをいう。

ざっ、ざっとゆっくりコチラに近づいてくるその姿を見て、私は目の前の男が異形な姿をした化け物にしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今日は出番がなかったからね!! 気合い入れて回すよ〜!! ホイッッ!!! 」

「ヴラド三世、串刺し公と呼ばれるワラキア公国の王様。 以前紹介したカーミラさんと同じくドラキュラのモデルとなった人です。 シュヴァリエ・デオンさんは、男であり女、女であり男と言われたフランスの伝説的スパイです 」

「え?え? 結局デオンくんなの? ちゃんなの? 」

「それは……間をとってデオンくんちゃんでいいのではないかと…… 」

「デオンくんちゃん……以外と語呂がいい…… 」

「それでは今回はこの辺りで 」

「次回こそは出番をおおおおおお!!! 」

「先輩!? 」



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5

ベリアルさんがいることによるオルレアンの変更点

邪ンヌが怖がってサンソン以外の他サーヴァントたちを出撃させていない。
これによって邪魔がなくなりマリーさん生存。
マリーさんの馬車による移動時間短縮


感想や評価頂けると昂ります

誤字脱字、ご指摘などありましたらよろしくお願いします。




 ベリアルを前にし、完全に戦意を失いその場に座り込んでしまうジャンヌ・ダルク。

 そんなジャンヌ・ダルクを見て、目の前までやってきたベリアルは心底つまらないといった表情を見せるジャンヌ・ダルクに向けた。

 

「ほらどうした? 何もしなければキサマは死ぬぞ 」

 

「あ、ああ、うああああああっ!!!! 」

 

 ジャンヌ・ダルクは死にたくないという一心で立ち上がると、支えにして立ち上がった旗をベリアルに向けて振り下ろした。

 なりふり構っていられない、といった所だろうか技も何もない一撃。

 そんな攻撃とも言えない無駄なことを、ベリアルが止められないはずがない

 

「同じ造られた存在でもこうも違うか……。 いや、ここからかっ!! 」

 

「がはっ!! 」

 

 左手で旗を軽がると受け止めたベリアルは、空いている方の手を強く握りしめジャンヌ・ダルクを殴り飛ばした。

 玉座の背もたれも折れ、壁に叩きつけられたジャンヌ・ダルク。

 胸の甲冑は砕け落ち、口から血を吐き出した勢いで頭につけていた装飾品もずれ落ちる。

 

「があっ!! 」

 

 受け身も取れず、地面へと落ちるジャンヌ・ダルク。

 砕けた甲冑のカケラが落ちた場所に自身も落ちたことで、身体中に剣で刺されるのと同じかそれ以上の痛みが走る。

 

「哀れだな……。 産み落とされた真実も知らず、貴様は傀儡として動き続けていた 」

 

「…………何を、何を言っている!! 」

 

 ベリアルの言っていることの意味が理解出来ず、何とか逃げ出そうとするがジャンヌ・ダルクはその白にも近い銀髪を乱暴に掴まれ持ち上げられてしまう。

 

「は、離せっ!! 離しなさい!! 」

 

「お前の中にあるのは埋め込まれた憎悪。 囚われ、民衆から疎まれ、炎に炙られながらも自分が救った者たちへの憎しみを募らせた 」

 

「そうだ! それが私、ジャンヌ・ダルクよ!! 裏切られたというのにこの国を救おうとする紛い物とは違う!! 」

 

「真実も知らずに消されるのは嫌だろうからな……教えてやる!! 」

 

「ガッ……はっ……!! 」

 

 偽物はもう一人の(ジャンヌ)だと声を荒げるジャンヌ・ダルクだったが、ベリアルにみぞおちを殴られ口を止められる。

 掴まれた髪を離され、地面に落とされたジャンヌ・ダルクは俯き、口から胃液を吐き出しながら嗚咽をもらす。

 

「お前は模造品だ。 そうあってほしい、そうであると信じて止まなかったヤツは願望機に願い、そうして産まれ落ちた。 それがお前という存在だ 」

 

「な……にを……言ってるの……よ! 私が……ジャンヌ・ダルク……ぐっふっ!! 」

 

 嗚咽を落ち着かせ、ベリアルのいう言葉を否定しようとするが、それすらも許されず腹を横蹴りされて床を転がっていく。

 

「お前が本物だというなら証明してみろ。 その憎悪の炎でこのオレを焼き殺してみせろ 」

 

「がはっ……バカに……してっ!! 」

 

 血反吐を吐きながらも、ベリアルの言っていることこそが紛い物だと、嘘だと否定するために憎悪の炎を生み出しベリアルに向ける。

 何度も、何度もなんども……。 どんなに思い出そうとしても幼少の時の記憶が曖昧でも、どのように神から啓示を初めて貰ったのか思い出せなくても……

 私こそがジャンヌ・ダルクなのだと知らしめるために炎を焚き続ける。

 

「これがお前の限界だ。 造られただけの心を振りかざしているだけのお前に、このオレを焼き殺すことは不可能だ。 シェアッ!! 」

 

「あがっ!! 」

 

 どんなに炎を焚きつけても、ベリアルはその炎をロウソクの火を消すように容易く払い、ジャンヌ・ダルクの頭を掴むと、その整った顔を地面に叩きつける。

 守る間もなく叩きつけられたジャンヌの顔は、鼻が曲がり血を流していた。

 

「何も知らずに、強大な力だけを貰った赤子……それがお前だ 」

 

「────っ!!!! 」

 

 地面を這ってでも、べリアルとの距離をとろうとしていたジャンヌ・ダルクの右足に強烈な痛みが走る。

 見れば足先を守っていた甲冑はボロボロに砕け、足先そのものは原型を留めておらず血に染まり、動かそうにも激痛を感じもう動かない。

 

 

「覚えろ。 この痛み一つひとつが、戦争で戦った者が、何の力もなく死が訪れた者たちが味わった痛みだ。 お前はソレを何一つとして知らずに、植え付けられた復讐の炎を燃やした 」

 

「な、ない……す゛るのっ!! やめっ……やめっ!! ────────ッッ!!アアアアーーー!!!! 」

 

 もう立ち上がることすら出来なくなったジャンヌ・ダルクの眼前に立ったべリアルは、ジャンヌ・ダルクの細腕を持ち上げ、身体の持ち主本人が見ているその目の前で、小指を粉々に握りつぶした。

 

「────────ッッッ!!! (イタイ、いたいいたいいたいいたいっ!!!! ) 」

 

 1本、また1本とジャンヌ・ダルクの指をゆっくりと、しかし確実に潰していく。 右の5本が終われば左の5本を同じように、それ以上の痛みを感じるように潰す。

 

「勝ち負けなど関係ない、どちらにせよ犠牲はでる。 それが戦争だ。 聖女と祭り上げられていようが、何人もの命を奪い、見殺しにした。 お前は恨まれて当然だ、憎まれるべき存在だっ!! 」

 

 死にたい。 ジャンヌ・ダルクは心に中で何度もそう願った。

 だが、普通の人間ではなくサーヴァントとして産まれたばかりに死ぬことが許されない。

 だからこそ、どうせこのまま死ぬのならとジャンヌ・ダルクは意識を手放した………

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

 不思議…………じゃないか、ウルトラマンの身体、だもんなあ……

 マグマの中へと落とされたベリアル()だったが、頑丈なウルトラ族の身体は熱いと感じながらも溶けることはなかった。

 

 むしろその熱さ以上のものが濁流のように私の頭の中に流れ込んでくる。

 

 力を求めて、触れてはいけないとされていたプラズマスパークに触れた一人のウルトラマン。

 けど、プラズマスパークはそのウルトラマンに力を与えることはなく、逆に拒絶した。

 光の国を照らし続けるプラズマスパークを独占すること。 それは大罪に他ならない

 大罪を犯したそのウルトラマンは、キングによって光の国を追放され、遠い宇宙の彼方へと消えていった……

 

 伝わってくる……怒りが()()()が……

 

 自分を追放したキングへの怒り、自分のことを認めなかった他のウルトラマンへの深い憎しみ……

 その負の感情が、ベリアルの中にあるレイオニクスの力を暴走させた。

 

 怪獣墓場の中心部まで落ちたベリアルは、その力を墓場全体に行き届かせ、眠れる怪獣たち全てを呼び起こした。

 10、40、80、100いや、それ以上の怪獣たちがベリアルのレイオニクスの力に引き寄せられてくる。

 

『ああああああっ!! オレには絶対に勝てない!!! 』

 

 そうして溶岩から舞い上がって来たのは、無数の怪獣たちを合体させることで悪魔のような悍ましい姿へと変貌を遂げた怪獣だった。

 その大きさは50数メートルであるウルトラマンたちが小さく見えるほど巨大で、額に中心であるベリアルがいる形になっている。

 

 レオやアストラも加勢しに来てくれたけど、1つに凝縮された怪獣の圧倒的な力の前に手も足も出せない。

 

『100の怪獣たちよ、俺の声を聞け!! 』

 

 ベリアルの意思によって封じられた怪獣たちがあらがい始めた!!

 レイが自身のバトルナイザーを通してギガバトルナイザーを起動することで、操られている怪獣たちに声を届けたんだ!!

 

(あれは……!? ふざけるなっ!! 何故そんなひよっこを認める!! )

 

 これは……嫉妬? 見れば、プラズマスパークの放つ聖なる光がゼロのことを選んだのか、2本のアイスラッガーを弓のような形をした大きな1本の剣へと変えていた。

 ふつふつと沸き上がってくるその嫉妬心のせいで、怪獣たちはより一層の拒絶を始め、ベリアルは動けなくなってしまう。

 

『オレは……不死身だあああああああ!!! 』

 

 ゼロの一撃を喰らった後でも、ベリアルはプラズマスパークの力を求めたのか、その手を伸ばし続けた。

 だけど、その手が届くはずもなく悪魔のような姿をした怪獣は、ベリアル共々爆発した……。

 

 良かった、良かったんだ……。 これで光の国に平和が戻る…… 

 

 

 けどなんでだろうか? ベリアルがしきりに言っていた“全宇宙の支配”

 ウルトラ一族への復讐を目的としてたベリアルがそれを目指すのは、どこかおかしいように感じた……

 

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ!! 」

 

「くっ、待ちなさいジルッッ!! 」

 

 私たちは今、ようやくたどり着いた敵の根城。 オルレアンの城を駆け抜けている

 聖女マルタとの戦闘を通してファヴニールを倒すための切り札であるジークフリートさん、そしてその道中で出会った聖ゲオルギウスさんを仲間にしたことで準備万端といった感じで乗り込んだオルレアンだっただけど……

 

『ジャンヌうううううううううウウウウッッッ!! 』

 

 とまあ、辿り着いた矢先に光の輪っかのようなもので拘束されていた敵のキャスターが、拘束されながらも召喚したタコみたいなのと一緒に城の中に戻っていくのを見て、追いかけてるって感じ

 

 途中、ファヴニールが立ちはだかったけどジークフリートさんとゲオルギウスさんそれに加えてエリちゃんと清姫が残って戦ってくれることになったけど……大丈夫だよね

 

「不安そうな顔をしてるわね立香。 あの方たちなら大丈夫、信じて前に進みましょう 」

 

「うん、マリーさん 」

 

 ジークフリートさんを探している最中、生前の知り合いっていうかなんか色々あったっていうバーサーク・アサシンと戦って落ち込んでいたみたいだったマリーさんだったけど、調子を戻してくれたみたいで私のことを励ましてくれる。

 

「っ!! これでっ!! 」

 

「道を阻む海魔はもういません、行きましょう立香!! 」

 

 マシュとジャンヌさんが道を阻んでいたタコを倒し終えたことで、道が出来る。

 走り続けて上がった息を整えながらみんなの後を着いていくと、開かれた大きな扉が見える。

 

「いぎゃあああああああああっっ!!!! 」

 

「「「「「!!!!! 」」」」」

 

 さっきのキャスター、ジャンヌさんが言ってたジルの叫び声が扉の奥から聞こえてきた。

 それと一緒に、扉から炎が飛び出してくる。

 

「──皆さん、行きましょう!! 」

 

「あれって……もしかしてべリアルさんが……? 」

 

 マルタさんとの戦闘があった日、あの日からいなくなってしまったべリアルさん。

 ドクターたちが言うには存在証明は出来てても何処にいるのか分からない状態って言ってたけど……もしかしてこの先に……?

 

 

「な……何故ですか……ジャンヌぅうう 」

 

「感謝しているわジル、私のことを産み出してくれたこと 」

 

「貴女は……何故それをっ!! 」

 

「でもね、そのせいで私はこんな痛みを、怨みを知らなきゃいけなかった。……だから貴方は……私の手で殺してあげる、はあああっ!!! 」

 

 何が……起きてるの?

 扉の先では、黒いジャンヌが黒い槍で串刺しにしたキャスターのことを黒い炎で包んでいた。

 

「……あら、ようやく来たのですかカルデアのマスター? 」

 

 

 キャスターのことを倒した黒いジャンヌが私に向かって話しかけてきた。

 あれ? 最初に会ったときと服装変わってない?




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回の英霊は〜〜こちらっ!! 」

「ジークフリートさん、竜殺しとして最も有名な英雄、『ニーベルンゲンの歌』の主人公です。ゲオルギウスさん、聖ジョージとして名高き聖人で聖剣アスカロンが有名ですね。 そして最後が聖女マルタさん、悪竜タラスクを鎮めた素晴らしい聖女です 」

「仕方ないけど、怖かったよね。 タラスクだっけ? 亀みたいなあの竜のことベイ◯レードみたいに回してくるんだもん 」

「そう、ですね。 マリーさんにジャンヌさんがいなければ止められませんでした 」

「それじゃあ、今回はこの辺りで! 」

「次回もよろしくお願いします!! 」






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6

今回でオルレアン終了!!

次回セプテム編ですが、色々とリアルが忙しいので2週間ほど更新できません。
代わりとはいかないにしても活動報告の方で色々あげたいと思います

感想、評価など頂けると舞い上がります。
誤字脱字、ご指摘ありましたら報告ください


 一人の女が、処刑場に向かって歩かされている。

 鉄で出来た手枷に腕の自由は奪われ、繋がっている鎖を引いている兵士の後を着いていくことを強制されている。

 

 そうか、これは処刑されるジャンヌ・ダルクを見ていた民衆の目…………

 

『裁きを受けろ!! 』

 

『この魔女めっ!! 』

 

 あちらこちらからジャンヌ・ダルクを魔女だと罵倒する声が聞こえてくる。

 けどアイツは国民も兵士も、誰一人として憎みもしなければ怨みも抱かなかった。

 

『すいません、どなたか十字架ををいただけませんか……? 』

 

 怒りすらも抱かずに、アイツは神へ祈りを捧げるために十字架を求めた。

 そうして、奇跡を遮る炎に包まれているなかでもアンタは神への祈り続けた……

 

『主よ、この身を委ねます…… 』

 

 誰一人として見捨てない。 ただ何も出来ない主への祈り

 主の嘆きを、悲しみを癒すために…………

 

 

 

 

 は、ははは、はははははははっ!!!

 あーっはっはっはっはっはっはっはっ!!

 

 ばっかじゃないの?

 ああそう、今のでよーくわかったわ。

 私はあの女にはなれない、別物。 アイツが言っていたようにジルによって造られたジャンヌ・ダルクの模造品、それが私……

 

 何も知らないくせに、罵倒してくるヤツらが憎い

 

『な゛に゛も゛し゛ら゛な゛い゛く゛せ゛に゛……は゛と゛う゛し゛て゛ん゛し゛ゃ……な゛い゛わ゛よ゛っ!! 』

 

『そうだ、ソレが本物だ。 憎み、妬み、嫉まれる。見下され哀れまれた、それがお前だ 』

 

 可哀想だと、哀れみを向ける国民たちが憎い

 

『か゛つ゛て゛に゛……あ゛わ゛れ゛ん゛て゛ん゛し゛ゃ……あ゛い゛わ゛よ゛…… 』

 

『その憎悪を一心に受け、民衆によって焚きつけられた炎によって死ぬ。────それがお前の運命だ 』

 

 自分たちこそが正しいのだと、自分勝手な正義を振り回す者たちが憎い

 

『ゆ゛る゛さ゛な゛い゛………ゆ゛る゛さ゛な゛い゛ゆ゛る゛さ゛な゛い゛ッッッ!!!!』

 

『変えられるものか、模造品であるお前に……その運命を 』

 

 私の憎悪に反応して現れた炎が、辺り一面が炎の包み、私のことさえも燃やし尽くそうと襲ってくる。

 

(これが私を殺した炎……。 ああ──消えていく……私の存在も。私の生命も。 私の精神も。私の概念も──── )

 

 鎧も、旗も、その服も、私を形成するすべてが燃やされていく……

 そんな私の目の前に出来た1本の道、その先には金に輝く杯が見えた。

 

「そうよ、こんな所で……死んでやるものですか!! 」

 

 炎が杯への道を阻むが、私は足を止めない。 炎にその足を踏み入れながらも進み続ける。

 炎にその身を委ね、裁定者としてのクラスが焼き捨てられても、私は聖杯をその手に掴んだ。

 

「お前が願いを叶える願望機だというなら私の願いを叶えなさい!! 」

 

 願うのは、力

 

「私を産み落とした存在を! 私が産まれることとなった原因を!! 私にこの痛みを本当の憎悪を教えたアイツを!! 全てに復讐するための力を!! 」

 

 寄越しなさい、復讐の果す力を!!

 

「確かに造られたものよ。 けど、この身体は! 復讐を願うこの心は私のものよ!! 」

 

 私の産み出した復讐の炎。 私を燃やす憎悪の炎

 それら全てを私は聖杯へと焚べる。

 

「何れ何処かで朽ち果てる……けど!! それは今じゃない!! 私の命はっ! 運命は!! 」

 

 

 聖杯が全ての炎を取り込むと、杯は光輝き私のことを包み込む……

 

 

 

 

 

 

「私が決める!!!!!!!!!! 」

 

 私は今生まれ変わった、裁定者(ルーラー)としての私自身を焼き払った私のクラスは既に変化している。

 そうね、俗世にまみれた人間なら今日が私の誕生日とでも言ったところかしら?

 

 私は、いけ好かない笑みを向ける男に旗の切っ先も向けながら咆哮を上げる

 

「私は復讐の魔女、ジャンヌ・ダルク……"ジャンヌ・ダルク・オルタ"!! それが私、私の歩む運命よっ!! 」

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

「え? あの〜今なんて? 」

 

「はあ〜? まったく、要領の得ない子ですね貴女は。 いいですか? この私が貴女のサーヴァントになってあげると言っているんです 」

 

 黒いジャンヌ・ダルク、自分のことをジャンヌ・ダルク・オルタと名乗った彼女の言葉が信じられなくて聞き返すと、嫌そ〜な顔をしながらもう一度教えてくれた。

 私と契約してカルデア側のサーヴァントになる。彼女は確かにそう言った。

 

『まままま待ってくれ!! 君はこの特異点を作り出した原因だ! そのキミが仲間になるだって!? そんなこと信じられるわけがないじゃないか!! 』

 

「うじうじうじうじと女々しい男ですね。 何を言おうと、貴方たちは私と契約する他ないのよ 」

 

『!! も、もしかして………… 』

 

 ジャンヌ・オルタの言葉を聞いてカルデア側が急いで何かを調べ始めた。

 私のほうは何もすることがないし、理解が追いついてないからもう一度ジャンヌ・オルタのことを見てみることに……

 黒かった鎧は紫がかっているものに変わって、その上には首元が暖かさそうなファーが付いたマントを羽織ってる。

 ジャンヌさんの今着ている鎧を豪勢にしたって感じかな? 結構可愛い感じになってる。

 

『聖杯と霊基の完全な同調……いや、霊基が新しいものに変化している()()()()とでも呼べばいいのかな……。 こんなことが起こり得るっていうのか……!? 』

 

「え? え? つまりはどういう事? 」

 

『その姿になる以前、彼女のクラスは裁定者 ルーラーだった。 それが今の彼女からはそれは全く違う反応……クラスすらも別のものになってるんだ 』

 

「じゃあ、ジャンヌオルタのクラスって? 」

 

「アヴェンジャー、復讐者のクラス……ルーラーと同じくエクストラクラスってヤツよ 」

 

 ジャンヌオルタの霊基は、聖杯と完全に同化しているから取り出すには倒すしかない……。 けどジャンヌオルタ本人に戦う気はなくって何故か私たちについてくる気満々。

 私と彼女が契約する事で、聖杯の所有権はカルデア側に移るからこの特異点は修復されるんだけど……。

 

「ねえ、ジャンヌオルタ 」

 

「何ですか? ようやく私と契約する気になりましたか? 」

 

「うん、契約するよ。 多分それが一番血が流れない道だから…… 」

 

『ちょ、ちょっと立香ちゃん? 分かってるのかい? その子はこの特異点の原因となった竜の魔女なんだぞ? 』

 

 ドクターの言ってること最も。 ジャンヌオルタはこのフランスの地を絶望に追いやった存在。 いく先々でジャンヌさんに憎しみの目を向ける人たちを見て、どれだけのことをやったのか分かってる。 けど仲間になってくれると言ってくれたその手を拒みたくはない……

 

 私はジャンヌオルタの手を掴んでの綺麗な瞳を見つめる

 

「私が間違ってるって思ったこと。 それをジャンヌオルタがするって言うなら……私はそれを全力で止めるから!! 」

 

「ふふっ、小さき手弱いアンタに何が出来るって言うのよ。 いいわ! 私の復讐が終わるまでアンタのことはこの私が守ってあげようじゃない!マスターちゃん♪ 」

 

 ドクターやダヴィンチちゃんに教えてもらった、サーヴァントと契約を交わすための詠唱。

 令呪に魔力を込めながら、私はその詠唱を唱える

 

「──告げる 」

 

 [いいかい立香ちゃん、カルデアのシステムのお陰で魔力のない君でも契約したサーヴァント……君の場合マシュのことだね。 彼女に魔力供給をすることが可能だ ]

 

「──汝の身は我が下に──我が命運は汝の剣に 」

 

 [もしマスターのいない……魔力供給の受けてないサーヴァントがいたら契約をもたらすことできる ]

 

「──聖杯の寄るべに従い──この意この理に従うならば 」

 

『止めるんだ立香ちゃん!! 僕が言ったのは理論上の話、2騎以上の同時契約でキミにどんな負担がかかるかわからいんだ!! しかも彼女は聖杯と一体になっている特殊例だっ!! 何が起こるかわからない!! 』

 

 ドクターが必死に止めるように声をかけるけど、私は止めない。

 

「──我に従え!! ならばこの命運──汝が“(憎悪)”に預けよう!! 」

 

 私とジャンヌオルタとの間にパスが繋がる。 私……っていうかカルデアから来る魔力がジャンヌオルタに流れるのと同時に、私の中にジャンヌオルタの魔力が流れ込んできて…………

 あれ? 違う…………これ、ジャンヌオルタの魔力だけじゃない……

 

「先輩!! ────ぱいっ!! 」

 

 マシュの声が…………遠のいて、い……く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マシュ!! ジャンヌオルタ!! 立香ちゃんのことを離さずに掴んでいてくれ!! 彼女と契約したことで歴史の修復が始まったんだ!! 』

 

「先輩! 先輩!! 」

 

「まったく、私のマスターになるならもっとしっかりしなさいよね!! 」

 

 立香がジャンヌオルタと契約した直後、彼女は突然倒れ込んでしまった。

 既にその理由は分かっていた。 彼女はジャンヌオルタと契約すると同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()して見せたのだ。

 ジャンヌ・ダルク、マリー・アントワネット、アマデウス、エリザベート、清姫、ゲオルギウス、ジークフリート、立香と仲間になってくれたサーヴァントたちと一挙に契約する形になったことで、負担が一挙に押し寄せてきたために倒れてしまった。

 

『まさか、こうなることも君のシナリオ通りだって言うのかいベリアル? 』

 

「………… 」

 

 時代修復が始まり、立香にマシュ、サーヴァント全員が元の時代へと戻されている中で、ベリアルはダヴィンチの声も無視しながら歩いていた。

 ベリアルはジャンヌオルタが転輪を果たした場所、霊基を燃やしたことで生まれた塵の山に手を突っ込んだ。

 

「やはり、オレは()()()からは逃れられないか………… 」

 

『(なんだアレは……? ()()()()のような形をしているが、何で作られているだいアレ!? この天才である私に分からないものが存在するだと!? )』

 

 ベリアルが手に持った、カプセルのような形をした黒色のソレ。

 見たこともないその物体の構造に芸術家であるダヴィンチは興味を示すが、ベリアルはその物体に描かれた存在を見て、悲しいような辛いような分からない表情をしていた。




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今回はガチャを回さず、来てくださったゲストさんを紹介したいと思います! 」

「ゲストの方は〜こちら!! 」

「サーヴァント、ジャンヌ・ダルク・オルタ。 クラスはアヴェンジャーよ 」

「ジャンヌオルタさんはオルレアンを恐怖に陥れた原因でしたが、今回私たちの仲間に加わって貰えました! 」

「仲間? 違うわ。 私は私の復讐のために貴女たちを利用しているに過ぎない、馴れ合いはしないわ 」

「とか何とか言っちゃって、ジャンヌオルタゲストに呼ばれてウキウキしてなかった? 」

「んなっ!! …………どうやら、燃やされたいようねマスターちゃん? 」

「やばっ!! 今回はこの辺りで終わらせようマシュ!! 」

「あ、はい! 次回もよろしくお願いします!! 」



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ベリアルレポート2

ようやく連載再開です。
といっても気持ちを小説に戻すためにベリアルレポート2から

ルーブのフィギアーツが発表されるたびに、ベリアルさんやマグニフィセントはいつ出るんだろうと思い悩む日々……。 でもきっとダークネスヒールズのイベントで発表されるはず! (アーリーも出して! カラータイマー付け替えでジードにも出来るヤツ!! )

んなわけでよろしくお願いします。

感想、評価下さると気分が高揚します。

誤字脱字、ご指摘ございましたら迷わず言ってください。



 可笑しい……ボクは何度も画面に映るカルデアにやって来たばかりの宮原博樹さんのデータを見ながら首を捻らせていた。

 次の特異点の特定を職員に任せ、いっときの休憩を取らせてもらっているこの時間の中で、ボクは宮原博樹さんに起きた変化に驚いていた。

 

 レイシフト適性──レイシフトするのに必要不可欠なこの適性を持っている存在は極めて少ない。 その中でも立香ちゃんは適性率100%という驚異の数値を叩き出した。 適正値が高ければ高いほど、レイシフト先で存在証明による乱れが起きにくくなるからこそ、この人理修復の旅の中で立香ちゃんはとても頼りになる存在だ。

 

 

 けど、けどだ……

 宮原博樹さんが最初に測定されてでた値は90%前後、そのはずだった。けど、彼にべリアルが憑依召喚されてから、数値が明らかに高くなっている。そうじゃなきゃカルデアの計測から逃れることなんて不可能だ。

 

 特異点にいることはわかっていても正確な居場所がわからないなんてことは立香ちゃんのように適正が100%の人間にしか不可能だと言われてる、それを彼は可能にしたんだ。

彼の能力がベリアルを召喚したことによって向上した? もしくはベリアル本人にもレイシフトに対しての適性があった? そんな馬鹿な話があってたまるか

 

 立香ちゃんたちから離れ、カルデアからの連絡を遮断したべリアル。彼がその間何をしていたのかは、ジャンヌオルタから聞いた話でしか知ることが出来なかった。それだってにわかには信じられないことだ。

 

 

 サーヴァント2体を倒し、その後に5体のサーヴァントを相手に傷ひとつつけられずに無双したという。

 確かにベリアルは強い、強すぎると言っても過言じゃないほどに特異点Fでボクたちに見せつけた。

 けど、5体だぞ? 5体ものサーヴァントを相手にして無傷で勝利するなんて誰に言われたって信じられるものか!!

 

 それに加えて、ベリアルはジャンヌオルタが聖杯によってその霊基を変化──聖杯転臨──が起こることが予め分かっていたかのように行動したという。 詳細まではジャンヌオルタからはどんなに聞いても分からなかったが、他のサーヴァントは一瞬のうちに消滅させたのに反して、ジャンヌオルタだけはじわじわと追い詰めるように攻撃を加えて行ったという……。

 

 そのおかげでジャンヌオルタを始めとした8体のサーヴァントをカルデア側に引き入れることが出来たけど……それだって契約を行った立香ちゃんにそれ相応の負担がかかることになった。

 聖杯そのものと霊基が溶け込んだジャンヌオルタと契約したことによる前代未聞の“8体のサーヴァントとの同時契約“ Aチームですら、いや現在の魔術師のですら出来るかどうか分からないそれを、立香ちゃんは成し遂げた。

 

  大量の魔力が流れ込んで来たことで約1週間もの間眠り続けることになってしまったけど、カルデアの魔力に置き換わったことを踏まえてもその間に契約が途切れることはなく、今も問題なく続いている。職員もサーヴァントのみんなも戦力の向上だと前向きに捉えてはいるけど……油断は出来ない。

 

 ベリアルが何故それを行なったのか、その事に対しての答えがまだ出ていない。 戦力うんぬんのことを言うのなら正直言ってベリアル1人で事足りているんだ。

 もしかしたら聖杯を使って何かを企んでいるのかも知れない……その実験のために立香ちゃんたちを利用して……?

 

 考えていても仕方がない、ベリアルの動向にはくれぐれも注意しておこう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう………… 」

 

「あっドクター! ここにいらしたんですね? 」

 

「うわあっ!!! ま、ままままマシュ!! どどどどどうしたんだい? 」

 

「? いえ、これから先輩のお部屋で宮原博樹さんからお借りしたウルトラマンティガを観賞するのでドクターもどうかと思いまして 」

 

「ああああそうか!! ティガ、ティガか……。 ボクは以前見たことがあるから遠慮しておくよ ははは 」

 

 

 

 




2章の予告を活動報告の方で更新してますのでよかったらそちらもどうぞ。

1章の中でもありましたが、眠りについている宮原博樹は“ウルトラマンベリアル”が辿って来た歴史を見るとになります。 なので必然的に次は…………

独自設定
※魔術回路がまだ未熟だった立香ちゃんは、同時契約によって魔術回路が常人を遥かに超えたレベルで開いた。その事によって複数のサーヴァントと同時契約を行なっても弊害が起きない。 炉心である回路は広いけど魔力の出し方も使い方も覚えずに強制的に開かされたため魔術は魔術礼装を着た状態でしか使えない。


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永続狂気帝国セプテム~王の在り方~
1



今回からようやくセプテム編スタートです。
正直プレイした当初はあんまり話が入ってこなかったこの特異点だったため再履修……。

おお? 意外とベリアルさんと相性がいい……しかも皇帝……コレや!!

んなこんなでよろしくお願いします!!

感想、評価いただけると心が踊ります。

誤字脱字、ご指摘などございましたら心が震えております。


 

「ん、ここは…………? 」

 

 知らない天井だ。っていうことにはならなかったけど、なんで私カルデアのマイルームで寝てるんだろう?

 

 確か……ジャンヌオルタと契約した時、予想していたより物凄い量の魔力が流れ込んできて、それから……

 

「あら、ようやく起きたのですか? 」

 

「ジャンヌオルタ……おはよう 」

 

 声のした方を振り向くと椅子に座りながら本を読んでいたジャンヌオルタがいた。

 形から入るタイプなのか眼鏡をかけながら本を読んでいてその本の題名は……

 

「"唱えて覚える日本の漢字"? 」

 

「ッッッ!! 」

 

 あっ、つい声に出して本のタイトルを読んじゃった。

 恥ずかしかったのか、ジャンヌオルタは顔を真っ赤にしながら持っていた本を燃やしてしまう。

 

「ひ、ヒマだったから!! あ、あ、あアンタがいつまでたっても起きないからヒマで仕方なく読んでいただけです!! べ、別に漢字を覚えたくて読んでたとかありえませんから!! 」

 

 ものすっごい早口で言い訳っていうかあんというか、もうそれじたいが答えいってるみたいなものだよ……って言いたいけど、このまま言ったら今度は私が燃やされちゃうよね

 

「そっか。 ねえジャンヌオルタ、私が倒れてからのこと教えてくれない? 」

 

「え、ええっ!! いいでしょうとも!!! 」

 

 話を反らせることに成功したわやった!て顔してる、オルレアンで敵だったのが嘘みたいだな~~。

 

 

 

 小学4年生の漢字ってどんなのあったっけ?

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

『大変ありがたい話ではあるのですが……申し訳ございません 』

 

『…………本当にいいのかい宮原くん。 この話を蹴ったら君のこれからの昇進はないかも知れないぞ? 』

 

『それでも構いません。 私のような者では、あの場所が手一杯ですから 』

 

 笑いながら、上に進むための道を自ら断つ男…………。 気にくわないな……

 なぜ認められる力がありながら、その力を存分に振るうべき場所で振るおうとしない。 まるで()()()のように……

 

『そうか……君を慕うものは大勢いるからな、この話を聞いたらとても残念に思うだろうな 』

 

 慕われ、認められておきながら立つべき舞台への階段を登ろうともしない軟弱者

 力は振るうべきものだ、持つべきものが振るわなければ意味がない!! 存在する意味すらそこにはない!!

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあねおじさ〜ん! 』

 

『慌てずに帰るんだぞ〜 』

 

 これが、この男が階段から降りてでも守ろうと思ったもの……。

 自分の身を守ることすら出来ないガキどものことを見守り、不審な輩が出ないように勤める。困っている人間がいれば助け、悩んでいるものがいれば相談に乗る。

 一つひとつが他愛もないものだ。 そんなことは部下に任せればいい。 ……だがコイツはその繰り返しを楽しんでいる。

 毎日飽きることもせず、全力で自分のやるべき事を全うしていた……。

 

 これが……コイツの守り続けるべき世界か……。 オレの力があれば簡単にひねり潰せるちっぽけな世界

 

『どうして宮原さんは、いつもそんなに元気なんですか? 毎日同じことの繰り返しで辛くなったりしませんか? 』

 

『ん〜〜。 子どもたちの笑顔とかおばちゃんたちの笑顔、あれあるだろ? あの笑顔を見るだけでな、明日も頑張るぞって元気が貰えるんだ。 私が現役のうちは毎日でも続けたいもんさ。 まあ、休みの日は家族の笑顔を守らなきゃいけないんだがな 』

 

 何故毎日やっているのかと、研修にきた部下から聞かれてコイツは迷わずに答えた。 コイツの曇りのない笑顔は他の誰かもつられて笑ってしまうもの。

 平坦な道をただただ歩き続けているつまらない男……それは間違いだったか……。

 果ての見えない道には、”花“が咲いていた。 飽きる事のない、鬱陶しいまでに一輪ごと全てが違う花……

 

 

 オレが毟りとってきたもの。 一度として咲かせたことのない……()()()()()()()

 

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

「ん〜〜〜っ!! よっしっ!! 」

 

 マイルームで軽い準備体操をし終えて気合を入れる。

 目を覚ましてからかれこれ1か月、 遂に次の特異点が発見されたからそこに向かう準備も怠らない。

 

 最初の1週間はみんなと一気に契約した疲労で倒れたから何も出来なかったけど、それからはシュミレーションルームを使った戦術の訓練に、レイシフト先で倒れないように自分の身体もそれなりに鍛えてきた。

 

 確かに戦うのは私じゃない、マシュやサーヴァントのみんなだ。 けど、何もできないままなのはイヤ。

 戦う相手も、戦ってくれるみんなも私なんか一般人とは比べものにならないくらい凄い力を持ってる。

 だけど……そこに生きてる人たちは違う。 私とおんなじ、ただの人間……

 

 その人たちのことを1人でも多く助けることが出来るように……不測の事態に陥っても焦らずに行動できるように気合を入れる。

 

「フォウ!! 」

 

「うわっぷ!! ってフォウくん? どうしたの!? ってそれ私のヘアゴム!! 」

 

「ホウホウ!! 」

 

「あああああブリーフィングまで時間ないんだからあああ!! 待て〜〜〜!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!? 私を連れていけないなんてどういう事ですか!! 」

 

「すいません遅れました!! ……ってどうしたのジャンヌオルタ? 」

 

 何とかフォウくんからヘアゴムを取り返した私が少し遅れて入室すると、なんでか分かんないけどジャンヌオルタがドクターの襟元を掴みながら怒鳴っていた。

 

「少し黙れ 」

 

「──ッ!! 」

 

 怒りを爆発させてたジャンヌオルタが、首を摘まれた猫みたいにビクッと身体を震わせて黙っちゃった。

 と言うより……ベリアルさんの今の一言でお通夜なのかってほど静まり返っちゃったてる……。

 

「少し、大人しくしていろ 」

 

「へっ!? きゃあっ!! 」

 

 ベリアルさん、機嫌悪いのかなぁ?

 ジャンヌオルタのことを睨みつけながらベリアルさんが手をかざすと、ジャンヌオルタの身体が突然浮きがって強制的にジャンヌさんとマリーさん、2人が座っている間に座らされてしまった。

 

「──!! ──!? ────────!! 」

 

「ゲホッゲホッ!! 魔術じゃない……超能力? 君は本当になんでもありだね 」

 

 何か喋ろうとするジャンヌオルタだけど、口にチャックでもされてしまったのかんーんーと呻くことしか出来なくなってる。 しかも身体のほうも動けなくされてるのか両脇の2人が頭を撫でるのに抵抗出来ず心底嫌そうな顔をしてる……。

 

 その間にマシュの隣まで移動した私は、魔術と超能力って同じじゃないのかマシュに耳うちする。

 超能力って催眠術とかテレキネシスとかああいうのだよね。 あれも魔術でやってたりするんじゃないのかな?

 

「超能力は魔力を使用することのない、ヒトがヒトのまま扱える特異的な能力のことを言います。 魔眼などがそれに当てはまるので存在は知っていましたが、使用する所は私も初めて見ました 」

 

「へ〜じゃあ私も教えてもらったら使えるとかそういうのではないんだ 」

 

「んんっ、それじゃあ立香ちゃんも来たことだし改めて説明させてもらうよ。 これから観測が完了した第2特異点に立香ちゃんとベリアルの両名にレイシフトしてもらい、人理修復を行ってもらう。 以前の特異点で大幅な戦力の補充があったけれど、今現在のカルデアのシステムではレイシフト先に各マスターが連れて行けるサーヴァントは一騎だけになる。

 

 レイシフト先でマシュの盾を使い召喚サークルを設置するまではこれが続くことになる。だから必然的に立香ちゃんと最初にレイシフトするサーヴァントはマシュでなければならない。

 サークルが設置できればコチラから物資の補給もできるし、ジャンヌオルタや他のサーヴァントたちも増援として送ることが可能になる。 わかってくれたかい? 」

 

 今カルデアにいるサーヴァントは全員私と契約したことになってるし、ベリアルさんはそもそも宮原博樹さんと一心同体だから何が起こるかわからない。

 だから、だからね? そんな眼力だけで人のこと睨み殺せるような目で私のこと見ないで! 横2人に笑顔で頭撫でられるのが嫌なのはわかったから!!

 

 

 

 

 

 

 

 




「ど、どうしようマシュ…… 」

「どうしたんですか先輩。 いつものように英霊! カプセルナビ!! から始めないんですね 」

「石が……石がないんだ…… 」

「石? このガチャマシーンを動かすためのもの聖晶石のことでしょうか? 」

「そう……影でこっそり回してたらさ……みんな被っちゃって……ムキになって回してたら石無くなってたんだ…… 」

「…………皆さんも、聖晶石の使用には計画性を持って使ってくださいね 」

「な〜んでジャンヌオルタが連続で5体出てくるのさ〜私のこと好きすぎでしょ〜〜!! 」




※ベリアルが『ウルトラ念力』を使えるようになった。


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2

今回の過去編はベリアル銀河帝国に続く前日談、ショーでしか語られなかった部分をリスペクトしてお送りします。 気になった人は【ベリアル銀河帝国 前日談 】とでも調べたりすれば出てくるはず。

そんなこんなで今回もよろしくお願いします。

感想、評価。 誤字脱字、ご指摘などありましたら送ってくださると幸いです。


 引き込まれる……吸い込まれるっていうのかな? 小さい頃に掃除機で手とかお腹とかを吸って遊んでたあの感覚。

 それを全身で感じるのも一瞬で、目を開くと周りに木や建造物のない平野に辿り着いてた。

 

「レイシフト、無事成功しました。 調子が悪くなったりはしていませんか先輩? 」

 

「うん、大丈夫だよマシュ。 ベリアルさんは…………あれ? 」

 

 私とマシュは無事にレイシフトに成功した……んだと思うんだけど。 周りをどんなに見渡してもベリアルさんの姿が見えない。

 もしかして……ベリアルさんだけレイシフトに失敗しちゃったとか?

 

『繋がった。 無事レイシフトは完了したみたいだねマシュ、立香ちゃん 』

 

「ど、ドクター!! た、大変です!! ベリアルさんが……ベリアルさんがいません!! 」

 

『え!? ええええええええええええええ!!!!!! 』

 

 通信越しに絶叫が響いてくる……。

 私たちがレイシフトできたことに安心したドクターの顔が一気に青ざめていく。

 

「む? 奇妙な声が聞こえると思ったら、こんな場所に女子2人で何をしている? 」

 

「!!! え、え〜と……あなたは……? 」

 

「うむ……? このローマの地で余の名を知らぬとは……。 だがいいだろう!! この余の名を、その胸に刻み込むがよい!!! 」

 

 豪華な赤いドレスのようなものに身を包んだ私やマシュよりも小さな女性。

 だけど、威厳というかカリスマっていうかそういうのがビシバシ感じるその人が両手を広げると、錯覚なのか薔薇が舞い広がったような光景が見えた。

 

「余こそがローマ帝国第5代皇帝、ネロ・クラウディウス・ カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクスであ〜〜る!! 」

 

 太陽を背にしながら女性──ネロは堂々とした名乗り、満面な笑みで私たちのことを見てきた。

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 ドクン、ドクンと心臓の鼓動が聞こえてくる……。

 宛もなく、闇の中を歩き続けていた私のことを導くようにその音の響く所へと歩いていく……。

 

 

『こ……こ……は……? 』

 

 

 宇宙を漂う巨大な岩石の上に、瀕死でありながらもべリアルは息をしていた……。

 プラズマスパークの聖なる一撃を受けながらも、べリアルは死んではいなかったんだ。

 

 べリアルを乗せたその岩石が、要所要所にエメラルドグリーンの輝くを放っている星に不時着した。

 

『ウルトラマンべリアル……。 あの憎っくきレイブラッド星人の力を受け継ぐもの……。 いいでしょう、このヤプールの支配下に置いてやろう!! 』

 

 流れ着いた星にいたのは、異次元超人のヤプールだった。 お前何回復活してるんだって言いたくなるヤプールは、また宇宙を侵略しようと企んでいた。

 ヤプールが言うには、この宇宙はM87星雲の存在しない宇宙『アナザースペース』っていうことがわかった。

 

 ヤプールはベリアルを支配下に置くために、蛾超獣のドラゴリーを差し向けてきた。

 ドラゴリーは自慢の火炎とミサイルを放ちながらベリアルに迫ってくる。

 

『テメーごときに……やられる、かよっ!! 』

 

 傷ついた身体でありながら、ベリアルは迫ってくる火炎とミサイルを両手で切り裂き、ドラゴリーと組み合った。

 ドラゴリーは巨大魚怪獣ムルチをバラバラに引き裂いてしまうほどの怪力の持ち主だというのに、ベリアルは一歩も引かずに逆にドラゴリーのことを殴り飛ばした。

 

『いやはや恐ろしい……。その身体でよく動ける……ならば、ダークゴーネ!! 』

 

『はっ!! 』

 

 ドラゴリーを倒したベリアルの前に現れたのは……私も知らない宇宙人だった。

 ダークゴーネは、手を自在に変化させることができるらしく、その手を鋭い剣に変えベリアルに斬りかかってくる。

 

『ちっ! はあっ!! 』

 

『甘いですね 』

 

『なにっ!? グアアアッ!!! 』

 

 手を変化させる能力だけじゃない!! ダークゴーネはベリアルの影の中へとその身体を隠し、その隙をついてベリアルのことを拘束した。

 手を触手のように伸ばしてベリアルを拘束したダークゴーネは更にエネルギーまでも吸収してくる。

 

『ほお……やるじゃあ……ねえか。 テメーほどの力がありながら、なんであんな小物に従ってんだよ 』

 

『なに? 私は強い者の下につく。 ヤプールが私よりも強者だっただけのこと…… 』

 

『はっ、だせええなっ!!! 』

 

『ぐあっ!!! 』

 

『っ!! まずい!! 超獣たち、そしてザウラー貴様も行けっ!! 』

 

 ボロボロになってもまだ、まだ立ち上がってその力を振るうベリアル。

 ダークゴーネの拘束から逃れたベリアルにトドメを刺さんと、ヤプールは大量の超獣を差し向けてきた。

 

 攻撃を受けて倒れたダークゴーネを倒さずに一瞥する。

 

『はあ……はあ……そこで見てろ。 本当に()えーのが誰か、教えてやるよ…… 』

 

 光線技も超能力も使えない、頼れるのは己の肉体だけだと言うのに、ベリアルは諦めることなく、挫けることなく向かって行った……

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

ドクターたちが大急ぎで調べたところべリアルさんのレイシフトは一応成功はしてるらしい。

 

だけど、機械の調子が悪かったのかどうかはわからないけどべリアルさんだけが別の場所に転送されてしまったらしい。

 

らしいっていうのは、オルレアンと同じでべリアルさんの正確な居場所がわからないからこのローマの地にいるってことしかわからないかららしい。

 

「うむ! 先の戦い見事だったっ! 褒美をとらせることができないのが残念なほどになっ!! 」

 

 ネロに付き従う軍勢を見て、確かにこの人はこの時代のローマを治めている皇帝その人なんだって理解できた。

 首都ローマに向かってることを伝えると「一緒に着いてくるがよい!! 」って言ってくれたから便乗させてもらうことにした。

 

 道すがら、ローマ兵に似た……ていうかまるっきり同じ鎧を着た軍勢が襲いかかってきて、私とマシュも一緒に応戦した。

 どうして同じ軍同士が戦わなくちゃいけないのかネロに聞いてみると、ネロたちは今『連合ローマ帝国』って名乗る相手と戦っているみたい。

 

 その連合は“皇帝”と自ら名乗る人たちが指揮しているらしく、その誰もが人間離れした力を持っている。

 それだけでその皇帝たちが聖杯によって呼び出されたサーヴァントだってことが確定したし、この特異点の原因だってことがわかった。

 

『敵の皇帝の側に仕えているという魔術師……レフ教授。 いや、レフ・ライノールである可能性が高いだろう 』

 

「レフ・ライノール。 彼は所長の命も、たくさんの犠牲者を出した元凶です。 許すことはできません 」

 

「……ネロ。 私たちも一緒に戦わせてもらうことってできるかな? 」

 

 特異点の修正、そしてレフ・ライノールを倒すこと。 そのためにも立ちはだかる皇帝たちを倒さなければいけない。

 だから、私たちはネロと協力して連合ローマ軍と戦うことに決めたんだ。

 

 レフ・ライノール……あなただけは、絶対に許さない!!!

 

 聖杯を使って連合ローマ帝国を作り出したのは、レフかも知れないって情報が掴めた。

 聖杯を求める私たちとネロの利害は一致しているから、ネロの帝国軍の客将として戦うことにした。

 

 レフ……所長やみんなの仇……絶対とってやる!!

 

 

 




「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「よっし!! ようやく石が溜まったから回してくよ〜それ!! 」

「ネロ・クラウディウスさん。 第5代ローマ帝国皇帝にして生涯を謀略と毒とに彩られた悪名高き暴君だと伝えられていますが……まさか女性だったなんて 」

「現実では男性として伝わってるけど、本当は女性だったってことだもんね。 特異点Fで戦ったアーサー王もそれだったし、結構そういう人って多いいのかな? 」

「どうなんでしょう? それを楽しみにするのもいいかも知れませんね! 」

「それじゃあ今回はこのへんで!! ばいば〜い!! 」

「次回もよろしくお願いします!! 」



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3

BOXガチャのための周回の大変さ……。 現在60箱分は集めました。

今回は99%ベリアルさん回。 セプテムで一番ベリアルさんと相性が良い相手との戦いになります。

感想、評価いただけるとギル祭り周回速度がUP
誤字脱字、ご指摘などございましたらお願いします!!


 その男は、いつの間にかそこにいた。

 嵐の前触れのように不自然な静けさに包まれていた訳でもなく突然に──

 

 ガリアを征服していた連合ローマ軍は、たった一人の男の存在によって壊滅にまで追い込まれていた。

 

 魔術の類か、その男は突如として兵たちの前に現れるとその手に持つ黒い鈍器を使い近くにいた兵士から殺していった。

 

 あるものは心の臓を貫かれ、またあるものをリンゴを握りつぶすのより容易く頭を握りつぶされた。

 

 どんなに堅い防具を持っても意味はない。どんなに屈強な身体を持ってしても止められない。

 

 兵たちは皆一様に恐怖を覚えた。 ローマの存続のため、あの方が認めてくれたからこそ戦っていた兵士たちの誰もが、その手に持っていた武装を地面に落としていた。

 

 戦う意思がないと分かれば、あの悪魔のような存在を前にしても自分たちは助かるかも知れないと、恐々と身体を震わせていた。

 

「…………死ぬ覚悟も持ち合わせていない雑魚どもが 」

 

 悪魔は、そう言って戦意を失った兵たちを無視して奥へと進んでいった。

 

 あの方のためなら命を賭けることなど惜しくない!! そう思っていても、身体は金縛りにあったかのように動かず、今命があることに安堵して自然に涙を流していた……。

 

 

 

「狂気を孕んだ目をしていると思ったが、あれだけのことで折れるとはな 」

 

 立香たちとは離れた場所にレイシフトしてしまったべリアルは、連合ローマ軍を統べる"皇帝"の一角と合間見えていた。

 

「始祖による統率も、死の恐怖の前では心を保てないようだな 」

 

 その男は一言で言えば──太かった。

 動くのに邪魔になるはずの体型をしているが、喋るときに手を動かすことを見るに邪魔ではないらしい。

 

「何時までも来ないと思ったが、傀儡の兵に情はないようだな 」

 

「バカが、王であるこの私が前線に出るなど有り得ん。 待っていたのだお前が自らこの私の元へとやって来るのを 」

 

 流石と評するべきだろうか。べリアルが自分の指揮する兵たちのことを蹂躙したことを分かっていながらも、その口数が減ることはない。

 

 

「どんなに話を長引かせたところで、貴様が死ぬことに変わりはない。 女との約束ひとつ守れない名ばかりの王が 」

 

「…………そうか、そうまで知った上で、この私に剣を執らせるか。 まあ、いいだろう 」

 

 抑えていた魔力が解放される。

 鎧を纏い、地面に突き刺していた黄金の剣をその手に持つと、べリアルに切っ先を向ける。

 

「────私の名はカエサル。夢半ば、裏切りによって朽ちた憐れな男だ。 この私から名乗ったのだ、貴様の名も聞いておこう 」

 

「はっ、既に貴様の賽は投げられている。 そんなお前に名を伝える意味はない 」

 

「ふむ……そうか。 ならばその賽を目を良い方へと転がるように精進しようではないか 」

 

 最初に仕掛けたのはカエサル。太ましい身体に見合わない速度でべリアルに剣を振り下ろした。

 

 不意を突く形での攻撃、しかしべリアルは瞬時に対応し右手に持つ黒き鋼で受け止めた。 その流れで空いた左手を使い攻撃を加えようとしたが、カエサルはそれを読んでいたのか、こちらも左手に纏った大理石の腕でべリアルの腕を掴み投げ飛ばす。

 

「…………ハッ!! 」

 

「っ!! はああっ!!!! 」

 

 

 宙に放られたべリアルが黒き鋼から複数の光弾を放つ。

 一撃でも受ければ致命傷は免れないことを目で見て感じ取ったのか、黄金剣で使い地面を割り直撃を間逃れる。

 

「少しは場数を踏んでいるか。 ハアッ!! 」

 

「グッ!!! 」

 

 しかし、べリアルはカエサルの死角を襲い腹部に蹴りを入れる。

 鎧は砕け、石ころのように地面を転がっていくカエサルに追い付く。

 

「くっ!! はああっ!!! 」

 

「ふっ、甘いな!! 」

 

 反撃するために振るった黄金剣は届かない。 大理石の腕を掴み、カエサルのことを地面に叩きつける。

 

「皇帝なんぞを名乗っていても、やはりこの程度か 」

 

「はあ…………、はあ…………。 分かってはいたが……まさかここまでとはな………… 」

 

 クレーターの中心。 鎧は砕け散り、身体の至るとことから血を流しながらもカエサルは立ち上がった。

 

 諦めず、執念のようなその姿勢を見たべリアルは、クレーターの上からカエサルのことを睨み付けた。

 

「何が貴様のことをそうさせる? 傀儡の兵を操ってでも杯に望む願いはなんだ 」

 

「…………傀儡の兵か、確かにな。 完璧な統治、統率、それは意思のない群体だ。 恐怖で解かれてしまう弱さはあったがな。

 

 ────だが、それを使ってでも私は掴まなければいけない!!! 抱き上げなければいけないのだ!!! 愛することを誓い、抱き締めなければいけない!!!  我が息子(カエサリオン)をっ!!! 我が愛しき妻(クレオパトラ)のことを!!!」

 

 べリアルの恐怖を浴びながらも顔をしかめるだけだったカエサルが感情を露にする。

 

 普段ならば認めることが出来なかったカエサリオンのことを、愛多き男の初恋の女性の名前を馬鹿正直に公言することはない。

 

 相手の心の隙間を窺う嘘の言葉ではない。カエサルの本音。

 それを聞いたべリアルはクレーターの中に自ら入り、カエサルに歩み寄っていく。

 

「自らの、王の名によって抗えない血の宿命を背負わされ、傷つき、そして死した息子への救済か……いいだろう()()()()!! このべリアルは貴様を認めよう!!! 」

 

「ははは……いいだろう。 ならば、この黄金剣を抜くとしよう 」

 

 その言葉に反応して、黄金剣から眩い輝きを解き放たれた。

 

「行くぞべリアル。 宝具解放──“黄金の死(クロケア・モース)!!! ” 」

 

「…………来い!!! 」

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

『はあ……はあ……はあ……どうしたこんなもんか超獣とかいうのは? 』

 

 ありえない……。 数十体といた超獣たちのことをべリアルは倒しきった。

 

 けど、流石に身体は限界に達してしまったらしく、倒れてしまう。

 

『フハハハハ!!! いいぞ、べリアルを倒せザウラー!! 』

 

 赤いクリスタル状の突起に黒い身体の竜の怪獣、ザウラー。 彼は主君であるヤプールの命に背き、動こうとしない。

 

『何をしているザウラー!!! 』

 

『俺ハ雑魚ニ興味ナイ。 ダガ強者ハ別ダ 』

 

『ちっ、どいつもコイツも使えない!! いい、ワタシがやる!! 』

 

 ダークゴーネもザウラーも、べリアルの力に魅いられたのかヤプールの命に従わない。 業を煮やしたヤプールは自ら動きだし、べリアルへと接近していく。

 

『何をそこまで拒む。 超獣になればさらなる力を手に入れることが出来るのだぞ!! まあ、このヤプールの支配下に置かれるがな!!! 』

 

(この程度の雑魚が、このオレ様を支配するだと……フザケルんじゃねえ!! )

 

 カニの爪に似た右手を振り下ろした。

 もう動けないべリアルは避ける素振りも見せず、直撃は免れない。

 

『な、なにっ!? 離せ! 離せえ!!! 』

 

『…………力! 力!! 力!!! 力こそが全てを凌駕する絶対のものだ……テメーごとき三下が、このオレ様を支配できると思ってんじゃねえ!!! 』

 

 殴る、殴る、殴る!!腕を掴まれ逃げられなくなったヤプールの顔の芯を何度も、何度も殴り続ける。

 

 闇に堕ちてでも力を追い求めた執念。その思いがべリアルの持つ復讐の心を増大させていく。

 

『あ、アイアロン!! お前だ!! この私を守れ!! 』

 

『…………断る 』

 

 鋼鉄の身体をもつアイアロンという武人気質の怪獣に助けを求めるが、即断される。

 

『べリアル……いや、べリアル様。 オレはアンタの強さに惚れた。 オレを……いやオレたちをアンタの下につかせてくれ 』

 

『私にとっても強さこそが全て。 貴方様はヤプールよりも遥かに強い 』

 

『アンタノ下ニ尽キ闘イタイ』

 

 アイアロン、ダークゴーネ、ザウラーの3体がヤプールのことを裏切り、べリアルの配下になることを選んだ。

 

 レイオニクスとしての力なのか、それともべリアルの持つカリスマがそうさせているのかは分からないけど……

 

『グハハハハハッッッ!!! そういうことらしいぜヤプールっ!!! 』

 

『グゥッ!! 貴様らああああああ!!! 』

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

「は、はははははは!! 甘く見ていた!!まさかこれだけの力を持っていようとはな!!! ガイウス!!! 」

 

「うむ……これでも届かないとはな……面倒だ…… 」

 

『黄金の死』 カエサルの持つその宝具は、自動的に必中する一撃に加え幸運の判定を「失敗するまで行い」、連続成功したその数の連続攻撃を可能にした見敵必勝の攻撃。

 

 成功した幸運判定の数は有に50を越える超連続攻撃に発展した。 幸運のステータスがCのカエサルにとってその数は異常と言ってもいいもので、運が完全にカエサルの味方をしてくれたのか、相手の幸運が余りにも低かったのか分からないが、確かにその超連続攻撃はべリアルに届いた。

 

 現にべリアルは両の肩から血を流し、身体の至るところには剣による傷が付いている。

 

 だが、それだけだ。カエサルの宝具はべリアルを倒しきるまでには至らなかった。

 

 これでカエサルにはもう打つ手が完全に無くなった。 それでも王としての矜持なのだろうか、カエサルは背中を見せることも腰を落とすこともなく両手を大きく横に広げて、いつものように喋り出す。

 

「まさか貴様のようなものと一戦交えることになるとはな。 人の身体を借り受けながら、サーヴァントですら歯にかけぬ強さ……。超常の力を振るいし人、"超人"とでも呼べばいいか 」

 

「超人……ハハハハハっ!!! やはり貴様は面白い、このオレを楽しませてくれるなあガイウス!!! 」

 

 楽しそう、本当に楽しそうにべリアルはそう言うと手に持っていた黒き鋼を消した。

 

「お前には見せてやろう。 このオレ様の本気をな…………ハア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッ!!!! 」

 

 右手に黒い雷を纏った赤黒いオーラが集束を始める。

 

 左手を平行に置き、右手を使いL字に近い形を作り手のひらをカエサルへと向ける。

 

「ハァァァァ…………シ゛ェ゛ア゛ッッッ!!!! 」

 

 その手から放たれたのは破壊そのもの。

 それを前にしながらもカエサルは怯えることなく、いつものように口を開いた。

 

「うむ、べリアル。 貴様にも愛すべき宝玉はあるか? 」

 

「…………ああ、宝玉と呼ぼうも拒絶されたがな 」

 

「そうか。 それは……残念だ 」

 

 笑顔を浮かべたまま、カエサルは破壊の奔流に呑み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ま、待ってくれ。 その報告は本当かい? 聞き間違いとかじゃないんだよね 』

 

「本当だ、遠見の魔術師よ。 余も正直半信半疑ではあるがな…… 」

 

 ネロのいる謁見の間に集められた私たちは、そこで兵士の一人の報告に驚くことしか出来なかった……。

 

「まさか、ガリアの山のうちの1つが消滅するとはな 」




※あとがきは時系列無視で進んでいます。

「「英霊! カプセルナビ!! 」」

「今日の英霊は〜〜こちら!! 」

「ガイウス・ユリウス・カエサル。 皇帝の名をローマに根付かせたとてもすごい方です 」

「へ? よくベリアルさんこと食事に誘ってる姿見るけど……? 」

「彼もローマの皇帝の1人として呼ばれていても不思議ではありませんでした。 もしかしたらベリアルさんが1人で戦っていたりしたのでしょうか? 」

「う〜んどうなんだろうね? 」

「それでは、今回はこのあたりでお開きとします!! 」

「次回もお楽しみに〜〜!! 」



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4

200箱分集めるの、大変。

理由は察してくれると助かりますが、まあ遅れました。


感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘ございましたらお願いします。



「ほへ~~ 」

 

「ちょっと何やってんのよ!! そんな所に落ちるとかあり得ませんからね? 」

 

地面を大きく抉って出来たクレーターを覗き込みながら変な声を出してたらジャンヌオルタに注意された。

 

ガリアの山の消滅。 その異常事態を調査するために、私たちはこうしてガリアの地を訪れていた。

 

召喚サークルを確立させて、カルデアから喚んだ2人のサーヴァント──ジャンヌオルタとマリーさん。 マリーさんの馬車を使えば、移動時間を大幅に削れるから私たちだけでガリアに赴くことになった。

 

ガリアを取り戻すために近くで設置されていた野営地で指揮をとっていたでブーティカさん、呂布の2人のサーヴァントに案内してもらいながら見て回ってる最中なんだけど……

 

「先輩、次は消滅した山の方へ行きましょう 」

 

「うん、わかっ……たあああああああ!!! 」

 

落ちた!! 落ちてく!! やばい、身を守らなきゃ!!

クレーターのギリギリで見てたから足場が崩れたんだ!!

 

「イッタタタ…… 」

 

「先輩っ!! 大丈夫ですか!! 」

 

「大丈夫!! んっ、なにこれ? 」

 

魔術礼装のお蔭でそこまでのダメージはなかったぽい。

マシュの言葉に答えながら立ち上がろうとすると、土の感触とは違うものを手で感じ取った。

 

「カプセルかなにかかな? 何も書いてないからわかんないやってわあっ!! 」

 

拾ったカプセルみたいなのが勝手に手を離れて飛んでっちゃった!!

 

飛んでいくカプセルを目で追っていくと、そのカプセルは一人の男の人の手に収まった。

 

「べリアルさんっ!? 」

 

「まさか、アイツからも作られているとはな…… 」

 

カプセルを手に取ったのは、レイシフトの失敗で何処かに行っていたべリアルさんだった。

 

けど、それ以上に驚いたのはその風貌。

魔術礼装のいたるところに剣かなにかでつけられた傷が出来てて、血が流れたのか赤黒く染まっている。

 

そんな中でも一際目が行ったのはカプセルを握りしめた右手。

何が起きたらそうなるのかわかんないけど、べリアルさんの右手は痛々しく、炭のように真っ黒になっていた。

 

あれ? 何でだろう……。 胸の動悸が、ドクン、ドクンて大きく鳴って止まらない……。

 

「──ぱいっ、先輩!! 」

 

「っ!! マシュ、どうしたの? 」

 

「呼び掛けても応答がなかったので……大丈夫ですか? 」

 

「ああううんっ!! なんでもない、なんでもないよっ!! 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

エメラル鉱石──この宇宙、アナザースペースで使われるエネルギー物質。

ヤプールはそのエメラル鉱石を動力源として、エースロボット増産計画を企んでいた。

 

その計画を乗っ取ったべリアルは、機械に自分の記憶を読み込ませ、数々のウルトラ戦士のデータを学習した、ゼロに姿を似せた『ダークロプスゼロ』を造り出すことで、数々の惑星を侵略していった。

 

そうしてダークロプスを大量生産したべリアルの軍は、星の全てがエメラル鉱石で構成された『惑星エスメラルダ』の侵略を開始した。

 

 

ベリアルの闇──ギガバトルナイザーを失った代わりにベリアルが手に入れた力。 レイオニクスの操る力を自身の爪から対象に流し込むことで配下にすることの出来る凶悪な技。

べリアルはその力を使い、エスメラルダを最後まで守ろうとした鏡の戦士『ミラーナイト』にウイルスを注入した。 しかし、ミラーナイトは操られる自分自身のことを恥じ鏡の国に自分を封印させた。

 

ミラーナイトを失ったエスメラルダはベリアル軍に完全に侵略され、元々鉱石採掘用だったロボットを“レギオノイド”という戦闘用ロボに改造し各惑星の侵略を早めていった。

 

そうして集めたエメラル鉱石を使い、星をまるごと掴むような手の形をした要塞を構えることで“ベリアル銀河帝国”は完成した。

自分の名も『カイザーベリアル』に変えて……。

 

 

 

でも……一つだけ不可解な点がある。

どうしてべリアルは、エスメラルダの国民たちを放っておくんだ?

 

ミラーナイトが最後の力を振り絞り、鏡のバリアで全国民を守ったとしても、それは一時的なものだ。 べリアルの力なら簡単に崩せる。 それなのにどうして?

 

『陛下、あの者たちはいかがなさいますでしょうか? 』

 

『捨て置け。 アイツらにもう反抗する力は残されていない 』

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ!! 」

 

どこ? どこ? どこにいるの、べリアルさんっ!!

 

『うむ、気に入った!! そなたも余の将の一人として励むがよい!! 』

 

『笑わせるな。 オレは他者の下に就く気はない。 特にお前のような王の下にはな 』

 

ネロと対面したべリアルさんは、そう言ってローマの街へ消えていってしまった。

 

「べリアルさんっ、べリアルさんっ、べリアルさんっ!! 」

 

ガシッ! と、ローマの街を走り続ける私の手が強く握られた。

 

「べリアルさんっ!? 」

 

「はあ~? この私のことを間違えるなんて、いい度胸ねマスター 」

 

「ジャンヌ……オルタ 」

 

(冷たい。 顔からは馬鹿みたいに汗を垂らしてるってのに……。あの時私の手を握ったものとはまるで別物ね )

 

私の手を握って離してくれないジャンヌオルタは、何を考えてるのか私のことをじっと見つめてる。

 

「丁度いいや!! ジャンヌオルタもべリアルさんのこと探すの手伝って!! 」

 

「はあ~~? なんで私が逃げ出したあの男のことを探さなくちゃいけないんですか? そもそも、あの男が戦わないと言ったんです、探してどうこうできる問題でもないでしょうに……。 それよりも…… 」

 

ジャンヌオルタの目付きがグッと強くなって、私ののことを……私の目を見てる?

 

「汚れた瞳ね。 助けを求め、恐怖を抱いてる卑しく穢い瞳。 何? アンタはアイツがいないと負けるとでも思ってるのかしら? 」

 

そう言われて、胸がドキッと音をたてる。それが図星だって……わかってるから。

逃げたいと思っても、ジャンヌオルタの握った手は振りほどけない。

 

「…………だって、だって仕方ないじゃん!! ジャンヌオルタだって見たでしょう!? ガリアのあの惨状を!! 」

 

振りほどけないから、胸の中だけに留めていた弱音が爆発する。

 

「この先、あれだけの力をもった敵が出てくるかも知れない、べリアルさんにあれだけの傷を作った相手が。 そんな相手、私たちだけで勝てるわけないじゃん!! 」

 

言った、言ってしまった。マシュやドクターたちの前では絶対に言わないように()()()()()()って強がってたのに……

 

「…………はあ~ 」

 

俯いていると、ジャンヌオルタが大きなため息を吐いたのが聞こえた。

顔を上げてみると、至極呆れた顔で私のことを見ていた。

 

「ば~っかじゃないの? 」

 

「んぐっ!! ひゃんぬおうた? 」

 

「いいですかマスター。 私の願いはあの男を、べリアルを越えることです。その為にも、相手が誰だろうと負ける気はありません 」

 

私の頬を摘まみながら、燃えるような瞳でそう言う。

 

「あの男が傷を作るほどの強敵? はっ、願ってもないことね!! だったら私は無傷で倒してやろうじゃないの!! 仕方がないから、この私がアンタに勝利をもたらしてあげようじゃない!! 」

 

「…………にひひっ 」

 

何だろう、自然と笑顔が込み上げてくる。 今まで張り詰めていたものが解けて、いつも通り()()()()()が湧いてくる。

 

「ありがとうジャンヌオルタ。 私のこと、励ましてくれて 」

 

「は、はあ〜? とうとう頭までイカれたんですか。 だ、だれがアンタなんかを励ますもんですか!! 」

 

「ん〜、じゃあそういうことにしとくね!! 」

 

「そういうことってどういう事ですかマスター!! 待ちなさいマスター!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんのようだ。 マリー・アントワネット 」

 

「ふふふ、ベリアル。 少し、時間を頂いてもよろしいかしら? 」

 

 




今回の話は、ベリアルさんがいる事で逸般人に慣れていない、一般人に毛が数本しか生えた程度の立香ちゃんの勘違いから始まった心情。

ベリアルさんの手が黒焦げだったのは、本来ならまだ身体が馴染んでいないため使えない力を使ったため、その弊害として手が焼け焦げてしまった。

その怪我のこともあって、山を消滅させたのも、クレーターを作り出したのも敵サーヴァントだという勘違いを起こす。

ベリアルの強さに信じきっていた所もあり、心の弱い部分が露見してしまった。

【何故呼び出したサーヴァントが2基だけなのか】
これは、セプテム終了後のベリアルレポートでも伝えますが、カルデアの魔力供給をフルで活用出来るサーヴァントの数が3基が限界という独自設定。
&立香ちゃんが指示を出せるのも3基が限界(セプテムではマシュにしかまともに指示できていない)

もし召喚されたサーヴァントがやられてしまった時すぐに駆けつけることが出来るよう、カルデアにいるサーヴァントたちが控えている。(ここの設定が使われることはまずない)
ゲームで前線に出れるのは3基までなのでそこを考えた結果。





最初に出てきたカプセルは、起動前の無地だ考えてもらえれば……


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5

「この星に来て、弱点を作ったようだな!! 」

ウルトラマンジード24話 ベリアルvsゼロ



感想、評価いただけると幸いです。
誤字脱字、ご指摘いただきありがとうございます!





「まあ! ここからなら、この街を一望出来るのね、素晴らしいわっ!! 」

 

 石造りの屋根の上、マリーが言うように市場、広場など、サーヴァントの目を持ってすればローマの都市が一望できるその場所にべリアルは座っていた。

 

「何をしに来たのかと、オレは聞いている 」

 

 べリアルは、隣でキラキラとした顔を浮かべるマリーに睨みを利かせるが、なに食わぬ顔でマリーはべリアルを見つめる。

 

「やっぱり……。 ねえ、べリアル? 貴方はどうしてそんなにも悲しい目をしているの? 」

 

「…………キサマは何を言っている? 」

 

「だって、貴方のその目から……ひどく孤独を感じるもの 」

 

「孤独……こどくか…… 」

 

 マリーの言葉を聞いたべリアルは、その腰を上げると、その指先をマリーの首に突きつけた。

 

「いいかマリー・アントワネット。 強さとは孤高の上に成り立つものだ。 友情だの愛情とかいう生温いものは弱点にしかなり得ない!! 」

 

 オレの力ならお前の首を簡単に落とせると、断頭台によって死を迎えたマリーに向けて殺意を向ける。

 

 けれどマリーは臆することなく、向けられたその手を両手で包み込むように掴む。

 

「貴方の言うとおり、愛は弱点になるのかも知れない……。フランスそのものしか愛せなかったから、だから私は愚かな王妃として生涯を終えた 」

 

「ならキサマは憎くないのか。乞うて王妃にしたにも関わらず、捨てられたキサマは民が憎くないと言えるのか 」

 

「ええ私は、私を殺した民を憎んでいません。 だってそれが望まれたことだもの 」

 

「望まれた……か。 ならそのレールの上にはなかった息子の死はどう説明する 」

 

 揺るがない王妃の瞳に、陰りがさす。 聖女のような考えを語るマリーは、ベリアルの言葉を聞いて王妃ではなく、ひとりの親としての感情を露わにする。

 

 王妃を処刑するために利用され、王子であることを否定され殺された“愛のキャベツ” 。 彼のことが脳裏に浮かんだのであろうマリーは、いつも浮かべる天真爛漫な笑顔を潜めた。

 

「ええ──それは、そうね。 ──ほんの少しだけ憎んでいるわ 」

 

「それが弱点だと言っている。 どんなに綺麗事を並べようと愛なんてものを持つからこそ、弱点を突かれ落ちていくことしか出来ない。 この国もそうだ、あの女の愛は民には理解されず、滅びゆく未来しかないなかで平然と笑っている。 」

 

「けれど──それは愛の中にある一側面でしかないわ。 愛には恐怖や不安、悲しみ、絶望から立ち上がる力をくれる。 だから私はこの首が落とされるまで毅然としていられたのだもの 」

 

「ああそうか。 それがお前か、()()()()()()()

 

 マリーに掴まれた手を払いのけると、べリアルはマリーに背を向けて離れていく。

 

「ふふふ、マリーとは呼んでくださらないのかしら? 」

 

「……その名は、このオレが最も嫌う名の1つのだ。 キサマをその名で呼ぶことは決してない 」

 

 そう言ってべリアルは、マリーの視界から見えない場所まで一瞬の内に離れていった。

 

 

 

「愛を嫌うのは、その愛を知らないから……。 でも、貴方が彼女たちを見るあの目は……私があの子たちへ向けていたものに、とても近しいものよ。 べリアル 」

 

 

 

 

 ────────────

 

 

(これが、オレが望んでいた宇宙支配か? 終わってみれば呆気なかったが──何故だ? 満たされない……何かが足りていないのか? )

 

 銀河皇帝を名乗り、各惑星を侵略していったベリアル。 カイザーベリアルとしてマントを羽織るようになったからか、その姿がどこかエンペラ星人と被る時がある。だけど、そんなベリアルの心は晴れていなかった。

 

 空は厚い雲に覆われ、その下には雨が降り続いている。 やっと分かった、ベリアルの精神を私が共有しているなら、これは彼の心の形なんだ。

 

 宇宙を支配しても、ベリアルの心は満たされない。 だからこそその飢えを満たすために、別宇宙へと侵略する装置を開発して、ダークロプスを光の国へ送り込んだんだ。

 

『陛下。 炎の海賊どもを始末しようとしている中、ダークロプスによく似た青色の戦士が邪魔を……陛下? 』

 

『ようやく、テメーもこの宇宙に来たかあ……。 疼く、疼くぜこの傷がああ!! 』

 

 ダークロプスに込められた憎悪の念を辿って来たんだろう。 ダークゴーネの言葉から、ゼロがアナザースペースに足を踏み入れたことを理解したベリアルの心が荒ぶり始めた。

 降りしきる強い雨の中に、怒りを現しているような黒い雷が鳴り始めた。

 

 プラズマスパークの力によって受けた一撃、顔に出来た一生の傷を抑えながら、その憎悪の感情が増大していくベリアルは、今まで満たされる事のなかったなかった何かが満ちていく感覚に笑みを浮かべ興奮していた。

 

『やはりこのオレ様の心を満たすのは戦いと、ウルトラ戦士どもへの憎しみだけか!! 』

 

 違う! 間違ってる!! それは埋め尽くされてしまっただけだ! 足りなかったものなんかじゃない!! 復活を果たして、ゼロに敗れた怒りを憎しみの力へと変えるベリアル。 止めたくても、私の声は……ベリアルに届かない……、こんなにも近くにいるのに……何も出来ない……ただ見ていることしか……出来ない……。

 

 自分の不甲斐なさに涙していると、人間の身体を借りたゼロを捕らえることに成功したという報告が届いた。 セブンのようなメガネ型の変身アイテムを奪い、ウルトラマンへの変身することすら許されないゼロに対して、ベリアルはゼロがこの宇宙を渡っていく中で出来た仲間が消えていく様を見せていた。

 

『ベリアルの思い通りにはさせないよ! 必ず助けに行くからね!! 』

 

『ゼロ! 気をしっかり! 必ず助けますからね!! 』

 

 けれど、ゼロとベリアルの目に映ったのは絶望なんかじゃなかった。 数えるのも億劫になるほどの帝国軍に襲われながらも、ゼロを助けることを諦めない希望だった。

 

 ぽちゃん

 

 憎しみで染まった暗闇の中に、一粒の雫が落ちてくるような、そんな感覚。 その雫は暗闇の中に波紋を広げ、大きく広がって行く。

 希望は伝染する。 どんな小さな命でも、諦めず立ち向かう心があるなら、その希望は誰かの心に新しい希望の花を咲かせることができる。

 

『ずいぶん、探しましたよ 』

 

 自分よりも小さな命、守らなければ行けない彼らが諦めずに、ゼロを助けようと死力を尽くしている。

 人の持つ心の強さに感動し、どうしてセブンたちが人を守ろうとしたのか理解したゼロが流した一筋の涙。

 

 それを見て、ベリアルの心が揺らいだ。

 

(何なんだ? 何故コイツらは諦めねえ。 疼きやがる……ゼロにやられた胸の傷じゃあねえ、これは……オレのカラータイマーか? )

 

 その涙が起こした奇跡、ベリアルの闇に囚われたはずのミラーナイトが、帝国軍の包囲網を潜り抜けてきた2人の友達がゼロのこと助け出した。

 絶対にありえないと、そう確信していたベリアルはその奇跡の連続を見せられ胸が苦しみだした。

 何かを拒むように、ベリアルの心が、闇が暴れ出した……。

 

『ゼッテエ許さねえっ!!! 』

 

『地獄に堕としてやる!!! 』

 

 カラータイマーの、心の疼きに目を向けることなく始まってしまったゼロとベリアルの激闘。 お願いだゼロ!! ベリアルを、この人を闇から解放してやってくれ!!

 けど、私の声は届かず、その願いも叶わない。

 ここに来るまでに、成長し、強くなったゼロの攻撃は怪獣墓場で戦った時よりも洗礼されていくが、ベリアルはその上を行っている。ギガバトルナイザーは失った状態でありながら、いや無くなったからこそ、ベリアル自身の本当の力の前にゼロは苦しみながらも立ち向かっていく。

 

『デエヤッ!!!! 』

 

『はっ! ゼアッ!! 』

 

 ベリアルの前では必殺技──ツインゼロシュート──すらも届かない……。 ベリアルが腕をL字に、手のひらをゼロの方へと向けて放つ光線技──デスシウム光線──。復活した時に戦ったウルトラ戦士が使っていたのを見ただけで覚えたその技は、ゼロの必殺技すらも覆いゼロに襲いかかった。

 

 

 

 ────────────

 

 

『ウオオオオ! ネエェロォオオ!!! 』

 

『こうして戦場の真ん中で話がしたかったんだ。 ネロ・クラウディウス、君とね 』

 

  あれから私たちは、ネロの叔父さんだというバーサーカーの皇帝“カリギュラ”。ネロと話をするためだけに戦いを迫ってきた“アレキサンダー”と“諸葛孔明”という2人組のサーヴァントを打ち倒した。

 

 完全勝利って言うには程遠いけど、勝つ事が出来た私たちがローマに戻ってくる頃には、次の進軍のための準備が整えられていた。

 ステンノ様っていう女神様と出会えたお蔭で、今までどこにあるのか分からなかった連合帝国の首都がどこにあるのかが判明した。

 そのこともあって、流れは完全にこっちに来てると確信したネロは、直ぐにでも進軍出来るようにした。

 

「皆の者!! ここまで良くぞ頑張ってくれた!! これで最後だ!! 連合ローマの首魁を討ち倒し、余のローマこそが真のローマであると知らしめようではないか!! 」

 

 ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

 

 みんな凄まじい熱気を帯びている。

 

 

 けど、その熱気は打ち倒すべき相手、連合ローマの首魁が現れたことで急激に冷まされてしまった。

 

 

 

 

 

 

「過去、現在、未来。 すべてのローマがお前を愛している。 さあ、おいで 」

 

 その声は、それが当たり前なんだって、自分に間違いはないんだって、そうネロに語りかけた。

 兵たちを鼓舞するネロの声、その声に反応するように堂々と現れたのが、そのサーヴァントだった。

 手に持っていた槍のような武器を地面に突き刺し、両手を大きく広げなら、大地を噛みしめ、ゆっくりと歩き、戦場の中心でそのサーヴァントはネロに語りかけた。

 

 ローマを守る必要なんてない、永久に続くことが約束された連合帝国に来いって

 行く必要なんてない、そうしたら今までの戦いが無駄になる。 私でもそれが分かっているけど、私の隣に立っているネロはその言葉に耳を傾けてしまう。

 

 神祖“ロムルス” あの英霊は、連合帝国を統べる首魁、そしてローマそのもの。 ローマという国を建国した王であるロムルスの声は、その姿はローマに生きる人々にとって絶対的な存在感を示してみせた。 現にネロはロムルスの姿を見ただけで怯え、震えてしまってる。

 ブーティカさんが言った虫が集まる光のようだって、まさにその通りでロムルスの存在そのものが抗うことの出来ない誘惑になってる。

 

 何とか動ける私たちだけでもって思って、駆け出そうとした。

 

「え!? なんで…… 」

 

「身体が……動きません!! 」

 

「何だってのよ……!! 」

 

 突然として、私たちの身体が動かなくなった。 ロムルスの威圧感に圧されて動けなくなってしまったとか、怖くて足がすくんで動けないとかそんなんじゃない。

 まるで金縛りにあったみたいに、動かそうとしても指の一本も動けなくない。

 

 こんなことできるのって……。 頭の中である人のことを思い浮かべていると、私の肩に誰かが手を置く感触が伝わってきた。

 

「お前たちは邪魔だ。 そこを動くな 」

 

「ベリ……アルさんっ!? 」

 

 やっぱり、私たちのことを動けなくしたのはベリアルさんだったんだ。 ベリアルさんはロムルスの方へ1人歩いていく中で、いつも持っている黒き鋼を後ろに向かって放り投げた。

 

「持っていろ 」

 

「え!? ちょ、ちょっとベリアルさん!? 私動けない!! あれ? 動ける!! ってわあああああ!!! 」

 

「先輩!! 大丈夫ですか!? 」

 

「な、何とか……キャッチ出来た…… 」

 

 

 

 

「何用だ。 愛しき我が子の1人を殺めたお前が、我が前に立つその意味分からぬわけでは無いだろう 」

 

「当たり前だ。 だがな、貴様にこのオレを殺すことは不可能だ建国王。 だが、貴様の邪魔をする気はない、ただこの問いに答えるだけでいい 」

 

ネロではなく、ベリアルが現れたことで溢れんばかりの殺気が漏れ出すロムルス。 現に、その殺気を浴びたローマ兵の集団が一度に倒れてしまうほどの殺意。

そんなことなど御構い無しといった様子で、ベリアルは余裕綽々にロムルスに語りかける。

 

「只の人間から神にまで至り、始まりの王となった貴様だからこそ答える義務がある。 貴様にとって光とはなんだ? 闇とはなんだ? 」

 

「……ふ、フハハハハハハハハハハハ!!!!!! そうか、そうであったか!! 」

 

笑い。 ベリアルの問いに対するロムルスの返答は大きく口を開けて笑う事だった。

貶しているのではい、蔑んでいるのではない、()()に納得したようにロムルスは嬉しそうに笑った。

 

「他者の身体にやどり木としたその魂、黒く澱み、醜い物だと思っていたが……そうか、汝もやはりローマであったか 」

 

「……残念だな健国王。 オレは貴様の言うようなローマではない、貴様が愛する人間。 それを超越した存在。 ローマを脅かす絶対の強者だ 」

 

「いや、ローマだ 」

 

「如何に人の身を超えたとしても、その根源は変わらず人である。 ならばそれはローマに他ならない。 見誤るな、浪漫(ローマ)と愛はあらゆる人に宿るもの、故にお前にも宿っている 」

 

「ククク、クハハハハハハハハハ!!!! 」

 

理屈じゃない、ロムルスがローマである。 だからこそ出せるその言葉を聞いて、今度はベリアルが大きく笑い声をあげた。

 

()()()()()() 貴様にとって、光だの闇だの、正義だの悪とかいう物は関係ないというか!! 総て等しく受け止める……そうか、だから貴様はあの老いぼれの(キング)よりも強いと感じたはずだ 」

 

ベリアルはロムルスの在り方に納得したのか、攻撃するでもく、無防備に背中を向けて立香たちのいる方へと歩いて行く。

 

「王たるもの、玉座に構え待っていろロムルス。 お前が望む……あの女のローマはそこで見ろ。 邪魔者はこのオレが蹴散らしてやる 」

 

「フッ、お前が言うのならそのようになるのだろうな。 いいだろうベリアル。玉座で、我が愛しき子を待とう 」

 

そう言って、ロムルスも同じように背中を向けて消えていった。




「「英霊! カプセルナビ〜!! 」」

「前回出来なかった分、今回は多めに行くよ!! それ!! 」

「勝利の女王、とても暖かいブーティカさん。 叛逆の剣闘士、スパルタクスさん! 歴史を変えていたかもしれない暗殺者 荊軻さん! 若き日の征服王 アレキサンダー3世 !! 」

「ん? ねえマシュ、この諸葛孔明だけなんか現代っぽいてかスーツ着てるんだけどなんで? 」

「はあ、はあ、その方は擬似サーヴァントなようで、デミ・サーヴァントである私に近い。 召喚する際に自分と相性のいい現代の誰かに憑依して召喚されたサーヴァントだそうです」

「へ〜ってもう時間がないよ!! 今回はこのあたりで!! 」

「次回もよろしくお願いします!! 」

「マシュ、よく頑張った!! 」



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6

今回は独自解釈強めかも知れません。

それでも良ければよろしくお願いします。

感想、評価貰えると嬉しいです。

誤字脱字、ご指摘ございましたら迷わずお送りください。


 剣と槍がぶつかり、火花を散らす。

 建国王 ロムルス

 第5代皇帝 ネロ・クラウディウス

 2人の王の戦いに迷いはなかった。 全てがローマだと謳うロムルスを前にしても、ネロは自身の愛すべきローマをその胸に秘めて、その思いを炎のように爆発させながら剣を振るう。

 一人で勝てるなど、ネロは最初から思っていない。 民あってこその国だと掲げるからこそ、共に戦ってくれる仲間を信じる。

 

「マシュ! ブーティカさん!! 」

 

「はいっ!! 」

 

「守ることなら任せなよっ! 」

 

 立香が率いるカルデアのサーヴァント、かつては敵でありながらも力を貸してくれる勝利の女王たちと一緒になってロムルスと戦っている。

 

「貴様が思い描いていたシナリオ通りには、ならなかったようだな 」

 

「…………キサマはああっ!!! 」

 

 嘲笑うベリアルに、聖杯を手に持つレフは憤怒の表情を向ける。 この特異点を作り出した原因、オルガマリー所長や他のマスターたちを亡き者にした元凶。

 そのレフだが、特異点Fでベリアルから受けた傷が癒えていないのか、帽子で顔の半分を隠すようにしながら言葉を口にする。

 

「無能な48番目のマスター、未熟なデミサーヴァント……。 カルデアのシステムは安定せず、人理の修復など不可能。……のはずだった!! 」

 

「キサマだっ!! 我らが同胞の名を騙るキサマさえいなければっ!! 完全なるイレギュラーであるキサマがいなければこんな問題にはならなかった!! 」

 

「だからこそここでキサマを殺すっ! そのためのサーヴァントの召喚は完了している!! 47番目のマスター共々死ぬがいいわっ!! 」

 

 レフが聖杯を掲げると、2人の間にサーヴァントを召喚する陣が浮き上がり、1体のサーヴァントが召喚される。

 輝く銀の髪、褐色の肌に白い礼装を纏ったその少女とも、女性とも見てとれる儚げな彼女は、召喚されたばかりだからか元々なのかは分からないが、虚ろな眼差しをしていた。

 

 レフは、そんな彼女が意識を覚醒させるよりも速く、背後から自分の持つ聖杯を取り込ませた。

 

「うっ! 」

 

「さあ! 破壊の大王“アッティラ”よっ!! このローマの地を破壊しろっ!! それが貴様に課せられた使命だっ!! 」

 

「……邪魔だ 」

 

 そう一言いって、ベリアルは動き出した。 何が邪魔だったのかは分からない。もしかすると、先刻ロムルスに向けて言った言葉を守るためだったのかは定かではないが、ベリアルは聖杯を無理矢理に埋め込まれ、身体から魔力が溢れ出しているアッティラのことを、黒き鋼から伸びたエネルギー状のロープのようなもので拘束すると、丁度立香が指示を出している真後ろの壁を、手のひらをそちらへかざしただけで破壊し、アッティラを外へと放り飛ばした。

 

「何っ!! ぐわっ!!!! 」

 

「アイツとの義理立てがあるんでな、貴様はそこでことの顛末を眺めていろ 」

 

 切り札として召喚したアッティラのことをいとも簡単に吹き飛ばして見せたベリアルに驚いたのもつかの間、ベリアルの超能力によってロムルスとの戦いが一番見やすい高さの壁に縛り付けられるレフ。

 

 超能力から抜け出そうとするレフに興味をなくし、アッティラを追って自身で空けた壁へと向かう途中、ベリアルはマシュと立香、2人の頭の上に手を置きながら言葉を残す。

 

「アイツとの決着は、お前たちがつけろ。 マシュ・キリエライト、藤丸立香 」

 

「「〜〜〜〜!! はいっ!!! 」」

 

 

 

 

 

 

 

『危険すぎる! レフのせいで取り込まれたあの聖杯は暴走を始めていた。 いくらベリアルでもあのサーヴァントを1人で止めるのは 』

 

「大丈夫ですドクター。 ベリアルさんならきっと、いいえ必ず聖杯を掴んで戻ってきます! 」

 

「そうよ、どうせ余裕綽々っていったムカつく顔して戻ってくるのよあの男は、だから心配するだけ無駄よ無駄。 その分白髪が増えるわよ 」

 

『んなっ!! 言っておくけど、僕はまだ白髪が生えたことはないからね! 』

 

 この特異点の最後の戦いだって言う時なのに、冗談が言えるくらいに落ち着いていられる。

 アイツとの決着。 目を閉じるだけで昨日のことのように思い出してくる。 照りつける炎の熱気、瓦礫に潰されながらも私に笑いかけてくれたマシュの笑顔。

 

 そして──所長、オルガマリーさんのこと。 確かに口調は刺々しくて、いつも怒ってるようなヒステリックな人なのかなって思ってたけど……本当は自分に自信が無くて、ほんのちょっと怖がりなところがある、どこにでもいる普通の女性だった。

 

 すごく短い時間だったけど、何にも知らない私に、マスターのことやサーヴァントのこと、色々な大切なことを教えてくれた。

 だから……だから……!! この機会を私たちにくれてありがとう、ベリアルさん。

 

「レフ・ライノール!! そこでじ〜っくり見てろ!! これが終わったらお前のこと、私たちがぶっ飛ばす!! 」

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

 

 ゼロを打ち倒したべリアルは、ゼロや他に戦っている敵を更なる絶望へと陥れるために、その姿を……ウルトラマンの姿を捨てた。

 

 アークベリアル────要塞に溜め込んだエメラル鉱石全てを吸収することでその姿を変貌させたベリアルの新たな姿。

 

 以前のような怪獣たちが合わさった化物というよりも、ベリアルがそのまま怪獣になったかのようなその姿……。 竜に似た容姿は、元々あった赤い血管のような部分が浮き出たように隆起していて、背中には大量に吸収したエメラル鉱石が露見してる。

 

 

 

『身体の底から力が漲ってきやがるっ! これで全宇宙はオレ様のものだっ!! 』

 

 

 降り続けていた雨は雷に変わり、先に何があるのか分からない闇の中……

 

 

 ウルトラ一族の誇りを捨てた。

 ウルトラマンである名前を捨てた。

 そして、最後に残っていた超人の姿すらも、捨ててしまった。

 

 闇の中で、勝利を、圧倒的な力を掴み取るためにもがいてもがいて、もがき続けたベリアルが出した答え……

 

 べリアル……確かに貴方は強い。 ゼロも、他の戦士たちも手も足も出ない絶望的な状況だ。

 

 

 

 

 だけどさ、それじゃあ、光を……希望を消すことは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 ゼロから始まったベリアルへの反乱。 それは怯えていた人たちの心に勇気の火を灯していた。

 

  炎の海賊団、鏡の星、それ以外にもこの宇宙にある多数の星々に生きる者たちが立ち上がり、ベリアル軍に反旗を翻した。

 

 だからだろう。諦めない人びとの心は光になって、絶望に倒れそうになっているゼロに降り注いだのは。

 

 その光は、私がテレビの前で何度も、何度も見たことのある。 希望の光だ。

 

 ガタノゾーアの闇を打ち払ったみんなの光の結晶グリッターティガ。

 

 絆を重ね続け、みんなの声援によって本当の姿を取り戻したネクサス。

 

 それ以外にも何度も見てきた、闇に立ち向かうその姿が光になって、他の誰かを照らしている。

 

 ベリアルはその光が何なのかを知らない、だから、だから……貴方はゼロたちには絶対に勝てない。

 

 

 

『これが、俺たちの光だっ!! 』

 

 

 

 この宇宙の人々の心一丸とさせたゼロの元に集まったその光は、ゼロに新しい力を与えた。

 

 バラージの盾……確か、初代ウルトラマンに出てきたバラージには、ノアの神って呼ばれるウルトラマンによく似た存在がいた。

 この宇宙でもそれが伝わっていたのか、ウルトラマンノアの力が込められたその盾はゼロの鎧となってアークベリアルに牙を向いた。

 

 

 

 ノア──キングに並ぶほどの力を有した神と呼ばれるウルトラマン。 その力が込められた鎧を纏ったゼロの力は圧倒的で、アークベリアルはその光によってその身体は消滅してしまう。

 

 

 

(なんだ……この光は……。 なんで雑魚が集まっただけでこの光を生み出せる……。 この力だ……オレはこの力が欲しいんだ!! なんで、アイツが持ててオレにはねえんだぁあああああああ!!!! )

 

 

 

 光に包まれながら消えゆくベリアルの、後悔や嫉妬の籠った叫びが響いてくる。

 

 

 王国を作って、王様になれたとしても……貴方は何処まで行っても独りぼっちだったんだ。

 

 自分のことしか見れない、他の誰かの為の気持ちを持たない貴方に、その力は絶対に宿ることはないんだ。

 

 

 

 

 ────◇◆◇────

 

 

 

「う、うううう!! 破壊……全てを破壊する!! 」

 

「まさか、破滅を齎す存在である貴様が、欠片の一部ではあるにしても人として召喚されるとはなあ 」

 

 聖杯から供給される無尽蔵と言っても過言ではない魔力の渦。 その渦によって意識が保てないのか、アッティラは、レフが願った“破壊”という一文字を成すだけの兵器になってしまっていた。

 

 連合首都より離れた荒野に降り立ったベリアルは、アッティラのことを知っているのか面白い者を見るような目で見ていた。

 

「破壊……する!! 破壊……破壊……破壊!! 」

 

「来い、破壊を招く貴様ごときでは破壊できないものがあることを、その身をもって知るがいい 」

 

 まるで4足を走る獣のような、地面に顔がついてしまうのではないかと思う前傾姿勢でベリアルに向かっていくアッティラは、手に持った三色に輝く剣が尻尾のように伸び上がり意思を持っているかのように襲いかかる。

 

「があああああああ!!! 」

 

「どうした、貴様の力はそんなものか!! その内に埋め込まれた聖杯の力をもっと引き出せ!! 」

 

 鞭のように連続で放たれるアッティラの剣。 それら全てをベリアルは黒き鋼を使わず素手だけで対処していく。

 ベリアルから先に攻撃することはなく、右肩に攻撃が向けられたのなら相手の右肩を狙い、腕を狙われたのならば腕といった感じで、攻撃してきた場所を寸分狂わずアッティラに返していく。

 

 破壊しようとしても、ベリアルは剣が届くよりも速く弾いているため身体には傷一つ付いていない。

 逆にアッティラの方は、自分が狙ったはずの人間の部位が逆に傷ついていくという理解出来ない状況が作られていく。

 

「あ、あああああああ!!!! 」

 

「そうだ!! もっと引き出せ!! 根源を破滅させるその力の片鱗を、このオレに見せてみろ!! 」

 

 アッティラの叫びとともに、アッティラの瞳、そして身体の紋様に変化が生じ始める。

 目の色彩は赤く染まり、瞳孔の周りは白に。 身体の一部分にだけ見えていた紋様は全身に広がっていき、発光を見せ始める。

 

 その変化によって、目に見えた魔力の波動が、大地を、地に張る植物たちを無作為に破壊していく。

 

「そうだ!! その力だ!! その力でこのオレを破壊して見せろ!! 」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! 」

 

 突きの構え、軍神の剣の鋒をべリアルさんに向けると、宝具の解放なのか刀身部分が回転を始め、アッティラの出す破壊の魔力と混ざり合い、虹色の魔力光が溢れ始める。

 

 それを見たべリアルは愉しそうに、嬉しそうに、()()()()()()()()()()()ように笑顔を浮かべ、両手を包み込むように鋭い紅い爪をもった黒いオーラのようなものを出現させる。

 

「あ、ああああ【フォトン…………レイッッッ!!!!!!!】 」

 

「……………… 」

 

 螺旋の軌跡を描き、大地を抉りながらベリアルに向けて突進を開始するアッティラ。

 流星の如き力の塊が迫って来ている中で、ベリアルは構えるのではなく自然体でただ立っているだけだった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。 オレが求めていた“力”は、ここまで弱く儚いものだったか……。 アイツらに勝てないわけだ。 フンっ!!! 」

 

 ほんの僅か、長さにしたら5cmにも満たない。 それが、アッティラの剣がベリアルに届いた距離だった。

 アッティラの発動した宝具を、回転し続ける軍神の剣をオーラを纏った左手で握りしめ、自力て止めて見せた。

 完全には止められなかったからか、胸の中心には確かに軍神の剣がほんの少しではあるが突き刺さっている。

 

 痛みを感じないのか、ベリアルは何かを悟ったようなことを口にすると、空いている右手で躊躇なくアッティラの心臓部(霊基)を貫いた。

 貫かれたその手にはアッティラに埋め込まれた聖杯が握られており、力を無くしたアッティラは剣を握っている力すら無くなり、ベリアルの肩に頭を預けるようにして倒れる。

 

「何故……だ。 何故、お前は破壊……されない 」

 

「……お前もオレと同じだ。 運命を変える力を持たない、だからこそ破壊できない 」

 

「運命を……変える……ちから? それは……どうやれば……手に入る…… 」

 

 

 掴んでいた聖杯を投げ捨て、アッティラの血で染まったその右手を彼女の頭の上に置きながら答える。

 

「ヒトを知り、人間(ヒト)になれ。 お前は、破壊を招く兵器ではあるが……破壊するはずの存在から愛情とやらを貰っているだろう 」

 

「愛……情…… 」

 

 彼女の記憶は、ある遺跡で眠っていたところをフン族の人間たちに拾われたことから色づいた。

 何も知らない、覚えていない。 ただ持っていた剣で破壊することしか出来なかった彼女を、確かにフン族は愛情を持って育てた。

 

 そうでなければ、よそ者であるはずの彼女が王になることなどあり得ない。

 その事を、薄れゆく意識の中でうっすらとだが思い出したアッティラは、涙を流しながらベリアルに訴える。

 

「わた……しは……私は! 破壊だけ知って……終わりたくない!! 花嫁のような煌びやかな衣装で、着飾ってみたい!! おいしいものだって……食べてみたい!! 作ってみたい!! ……もっと! もっと……愛が……知りたい……。 壊すだけの運命を……変えたい…… 」

 

人間(お前)がそれを望むのなら、叶わない道理はない。 ────運命は変えられる。 その様を誰よりも見ていたオレが証言する 」

 

「ああ……なら……消えるまえに1つ……人間(ひと)のように、わがままを言っても、いいだろうか 」

 

 もう、身体の殆どが消えかけているアッティラは、子どものような甘い願いを言って、消えるその最後にわがままを言う。

 ベリアルはそれを否定することなく、アッティラの口が開くのを待つ。

 

「アルテラと……呼んでくれ。 アッティラという名前は……響きが可愛くないから…… 」

 

「ふっ……。 眠れ()()()()、次に目覚める場所は、お前が人間(ひと)になれる場所だ 」

 

 可愛くない。 女の子らしいわがままを聞いてもらったアルテラは、ベリアルの胸の中でその顔をくしゃっと歪ませながら消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・アルテラ=根源的破滅招来体

どちらも宇宙から飛来する、文明を破壊しようとするシステムのようなもの。
ゾグ(第1形態)と◯◯◯◯の巨人がどこか似ていると感じたことから来た独自解釈。
ガイアの世界とFate世界では天の川銀河に現れる周期が違ってくる。
◯◯◯◯の巨人は神々をも破壊するため66m〜の大きさを誇る、ゾグに至っては敵が地球の大地、海の化身に加え、怪獣たちも相手だったため最初の姿から127mという、対処する相手によって送り出す尖兵のレベルが変わってくる。

まあ、根源的破滅招来体の正体が不明だからこそ使えたと言ってもいいです!!

・なぜネロとベリアルの対話が無いのか
そも、セプテムで出会うネロは完成されていない。
この時のネロは、自分がローマの民を愛しているから、ローマ市民も自分を心から愛していると信じてやまない。 それは愛を知らないベリアルにとっては何よりも不快なことであるため、ベリアルと相容入れない。
マリーやカエサルといった裏切りや策略によって転落しながらも、誰かを愛せる存在であったからこそベリアルは認めることが出来た。
ベリアルと対話するとすれば『暴君』として完成したネロで無ければ難しい(認めるかどうかも分からない)

しかも、暴君ネロは◯◯◯◯適性があるかも知れないと噂されてるため対話出来るかすら怪しいところ


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べリアルレポート3+α

1日だけでしたがランキングにこの小説が入っていました。
評価やお気に入りなどなどくださりありがとうございます。

結構前ですがベリアルが憑依している宮原博樹さんのイメージを活動報告の方であげています。
宜しかったらそちらもどうぞ。

前回でセプテムは終わり。 正直魔神柱がどう動くのとか書ける自信ないし!!

感想、評価などこれからもお待ちしてます。
明日の18:00あたりには3章の予告的な何かを活動報告の方であげる予定なのでよろしくお願いします!!


第二特異点、ローマでの戦いが終わった。

ローマに特異点を作り出した原因であるレフ・ライノール。彼が姿を変えた魔神柱フラウロスはジャンヌオルタが多大な損傷を受けながらも、その宝具で止めを刺した。

 

マシュや立香ちゃんたちが今回も無事に帰って来てくれて良かった。

 

フラウロス…………ソロモン十二柱の一柱に数えられる1体だ。 ソロモンがこの人理焼却の犯人であることは考えられないけど、レフはべリアルのことを「同胞の名を騙る存在」だと言っていた。

 

もし、人理焼却を行う者が複数いる組織だと考えると、レフの言動からべリアルは完全に別個の存在だ。

 

だからと言って完全に信頼するのは有り得ない。 信用を得るための作戦かも知れない……別の目的で人理を焼却しようと目論んでいるのかも知れない……。

 

そもそも、ガリアの地で起きた惨状。 あれはべリアルが起こしたものじゃないのかと僕は睨んでいる。

 

確かにべリアル本人が見たこともないような怪我をしていたのは事実かも知れない。けど、それは宝具を出すことで起きた代償だと考えたらどうだろうか? それなら、山を1つ消し飛ぶだけの力が出せても可笑しくはない。

 

彼、べリアルの力は本物だ。 それだけは認めなければいけない。 べリアルが最後に戦ったあの英霊はアッティラ・ザ・フン、フンヌの王であの手に持っていた剣は軍神マルスの剣だ。

 

それに加えてレフによって埋め込まれた聖杯の暴走。 あれに立ち向かうなんて嵐の中に飛び込めって言っているようなものだ。

 

それだと言うのに、べリアルは胸の中心に丸い穴のような傷が出来ただけで聖杯を手に入れた。

 

 

それと不可解な点がもう1つだけあった。 ロムルスを倒した際に出てきた光の塊だ。

 

最初はロムルスほどの英霊だから魔力の塊が残ったものだと思ったけど、その光の塊は意志を持っているかのように飛んでいってしまった。

 

飛んでいった方角は、べリアルがアッティラを飛ばした方向と一致していた。

 

戻ってきたべリアルにそのことを言及してみたけれど、やっぱり教えてはくれなかったけど、彼は僕たちに隠れて何かをしていることだけは確証が得れた。

 

 

あと気になることがあるといえば、女神ステンノが残したあの言葉だ。

『巨人には気をつけさなさい』別れ際、彼女は立香ちゃんたちに確かにそう言った。

巨人……あの魔人柱と呼ばれた存在は名前の通り柱のような形をしていたから巨人というには違いがありすぎる。 北欧に伝わる霜の巨人や山の巨人、ギリシャではヘカトンケイルやサイクロプスなんかが伝承として後世に伝えられている……。 他に何かあるとしてもアッシリアの『セファールの白い巨人』何かだろうか?

 

人理焼却の犯人が巨人としてレフのような存在を支配していた? それともこれからの旅の間に巨人と呼ばれるほどの脅威が僕たちの前に襲いかかってくるのだろうか……。

 

 

────◇◆◇────

 

 

なんで、べリアルはあんなにも力を望んでいるんだ……。

 

どんなに道を踏み外しても、ウルトラマンとしての自分を捨ててでも、べリアルは絶対的な力を望んでいた。

 

何があったんだ。何があって彼は、闇に、力に溺れてしまったんだ。

 

過去が知りたい……べリアルの過去が……。

 

今の黒い巨人になってしまう前……光の巨人だった頃のべリアルのことを……私は知りたいんだ!!

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

「…………… 」

 

ローマから帰って来たべリアルは、宮原博樹のマイルームで休息を取っていた。

 

そんなべリアルは、超能力を使って目の前にカプセルを3つ浮かせてそれを見ていた。

 

「アルテラ……アイツからこのカプセルが生まれることは予想がついていた。化物ではなく、天使としての顕現となったがな…… 」

 

第一特異点で手にいれたカプセル同様、黒色のカプセルは、その中心にべリアルが言った通り天使のよう美貌をもった存在が描かれていた。

 

第一特異点のカプセルと一緒に何処かへ消すと、残されたもう1つのカプセルを手に取った。

 

「ガイウスとロムルス……そしてアントワネットの復讐の心、と言ったところか? まさかこのような形で、過去のオレを見ることになるとはなあ 」

 

そのカプセルには、王のような威厳を感じさせる黒き戦士が映されている。

 

べリアルはそのカプセルを暫くみた後、目を瞑ったと思うと、自嘲気味に笑みを溢した。

 

「ふはっ、もう思い出せねえなあ。 ケンの野郎と戦っていたあの時の姿は…… 」

 

 

 

 

 




「「英霊!! カプセルナビ!! 」」

「では! なーーーーーいっ!!! 」

「うわっ!! どうしたのネロ!! 」

「どうしたもこうしたもあるか!! なあぜ!! ローマでの戦いだというのに、この余の出番が少ないっ!! 可笑しいではないかっ!! 」

「それは……まあ、ベリアルさんとネロって相性っていうの? 結構悪いじゃん? そこが原因なんじゃない? 」

「何をいうか!! あちらが勝手にこちらを遠ざけているだけだ!! 余はいつでもウェルカムである!! 」

「ど、どうしましょう。 ネロさんが来てしまったせいで英霊を紹介することが出来ません! 」

「どうしたマシュ 」

「あ、貴女は! カルデアに呼ばれてからベリアルさんに話しかけるタイミングを見計らってはいるものの何時も後一歩が踏み出せないアルテラさん!! 丁度いいところに来てくれました! 」

「ちっ! 見計らってなどいない!! ベリアルがいい文明なのか悪い文明なのかを確かめていただけに…… ん? これを一緒に読めばいいのか? 」

「「次回 、Fate/Grand Order〜Bの因子〜第3章 『ぼ く の な ま え』 」」

「次回もよろしくお願いします!! 」

「これがここの文明か……」




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封鎖終局四海オケアノス〜ぼ く の な ま え〜
1


第3章〜ぼ く の な ま え〜始動です。
今回も出来れば6〜7話くらいで纏めていきたいと思っています。

過去編はアーリー時代から何故ベリアルの乱を起こすまでに至ったか、少ない情報から引き出す基本独自解釈、独自ストーリーの過去編に……

感想、評価いただけると幸いです。
誤字脱字、ご指摘ございましたら改善に繋がりますのでお気になさらずお送り下さい。


「それじゃあ野郎ども!! 新たに仲間になったコイツら──あれ? そういや逆だねえ。 新たに仲間になったアタシらに── 」

 

“乾杯だっ!! ” その声から宴の幕が上がった。

海に囲まれた第3の特異点──オケアノス──にやってきた私たちが最初に出会ったのがこの豪快な女性が“フランシス・ドレイク”という人だった。

マシュとドクターに聞いたところ、ドレイク船長は人類で初めて、生きたまま世界一周を成し遂げた偉人なんだって。 実際は男性として伝わっていたらしくてそのことを知ってる人たちは驚いてた。

 

カルデア側の推測だと、行けども行けどもこの海域からドレイクさんたちが進めないことから『フランシス・ドレイクが世界一周を果たせない』っていうことが歴史の乱れらしいから、ドレイクさんの率いる海賊団と協力してこの海を渡ることになった。

 

ドレイクさん……男以上に男らしいって言えばいいのかな? その豪快な性格やニカッって歯を見せて笑う顔がカッコ良くて、昔の人がドレイクさんのことを男性と間違えて伝えたっていうのにも頷ける。

 

「ますたあ〜、こちらのものもお飲みになられてはいかがでしょう? 」

 

「清姫、私未成年だからお酒勧められても飲めないって 」

 

ドレイクさんと出会えた島にちょうど霊脈があったお陰で、すぐにサーヴァントの召喚にありつけたのも今回運が良かったことのひとつだね。

だけど……呼び出せたのは目の前で私にお酒を勧めてくる清姫……だけなんだよねえ……。

本来なら2基のサーヴァントまでカルデアから特異点に呼べる筈なんだけど、召喚システムの不具合らしくって清姫を喚んでから他のサーヴァントが召喚出来なくなってしまった。

 

明日の朝にはこの島から出発するから、どうにかなってほしいけど……どうなることやら……

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

べリアルの過去が知りたい……そう思っていながら暗闇の中を漂っていると、いつの間にか優しい光がそこら中いっぱいに広がる街のような場所に立っていた……。

そうだ、ここは光の国だ……。 べリアルが攻め行った時に見ただけだから分からなかった。

 

『何故見逃したんだケンっ!! あいつらを生かしておく必要などなかった筈だっ!! 』

 

『ベリアル……何度も説明したはずだ。 彼らは親の過ちを見た。 何が悪くて、何が正しいのかを学んだんだ。 そんな未来ある子どもたちを殺める必要はない。 』

 

ベリアルっ!? そう呼ぶ声に反応すると、目の前にいたのは一人のウルトラマンだった。ケンって確かウルトラの父の名前だったよな……。 そう言われれば未発達なウルトラホーンに髭は生えていないけど、何処と無くウルトラの父と同じ雰囲気を感じる。

自身の身体を見渡すように身体を見渡して見ると、その身体は銀と赤という一般的なウルトラ一族の身体をしていた。

 

光の国の建物は鏡面性で出来ているお陰でその全身を確認することが出来た。

銀と赤の一般的なウルトラ一族の身体をしているが、何度も休まずに戦っているのか、そこら中に生傷が絶えない。

そんな中で一番特徴的なのはその鋭い目だ。 黒いべリアルの目はニセウルトラマンなんかの悪者を彷彿とさせる目をしていたけど、このベリアルの目はガイアやアグルなんかの目を思い出させる。 ()()のウルトラマンの目を……。

 

そうこうしている内にべリアルとケンの言い争いはヒートアップしていき、どんなに言っても聞かないケンに痺れを切らして思いのたけを爆発させる。

 

『だからテメーは甘いんだよケン! 悪に染まっているヤツの心は何処まで行ったって悪のままだ!! そのガキだって同じだっ! 親を殺られた憎しみを募らせて、いつしかオレたちに復讐しに来る! いいかっ! 平和を望むなら他者を蹴落とさなければいけない!! その力がオレたちにはある!! 平和を掴み取る絶対の力がっ!! 』

 

昔から、べリアルは力こそが全てだって考えで動いてたんだ。平和は力あってこそ築けるものだと信じて止まなかった。

 

絶対的な力による全宇宙の平和。 それがべリアルの正義、べリアルだけが持った正義の心。

その思想は光の国に生きる者たちの中でも異端していた……だから誰もべリアルの気持ちを理解できるものがいなかったのか……。

 

いないまま、あの戦争が始まってしまったんだ……。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

 

「先輩、こちらだと先程来た道に戻ってしまいます 」

 

「うそっ! う〜めんどくさいねこの迷宮…… 」

 

ドレイクさんの船に乗って海を渡っていた私たちが偶然立ち寄った島。 その島に降り立った瞬間に、サーヴァントの宝具らしきものに閉じ込められてしまっていた。

島から出ないことには何も始まらないから、サーヴァントの反応が一番高かった迷宮の中をマッピングしながら進んでるんだけど……。 行けども行けども出口に辿り着けない。

 

「先輩、先が行き止まりであることがわかっているのに進むのは……何故なのでしょうか? 」

 

「そ、それは…… 」

 

い、言えない! ダンジョン系のゲームはどこにアイテムが隠されてるかわかんないからマップ全部埋めなきゃ気がすまないなんてマシュには言えない!!

あああ、でもこのまま進んでいったらいつかは気づかれるよね。 マシュに軽蔑されるのだけは避けなきゃ行けない……ここは正直に言ったほうが!!

 

「あ、あのねマs「──下がってろ、藤丸立香 」しゅ〜? 」

 

「うおおおおおお!!!! 」

 

うおおおおお!! びっくりしたっ!! 歩きながら思案してたらいつのまにか開けた場所に出てたみたいで、突然の叫声が私の耳にダイレクトに直撃してきた。

聞いただけでちょっと頭がクラクラしてきたけど、何とか前を見てみると、そこにいたのは仮面をつけた巨人だった。

ホッキョクグマで最大が3mぐらいにまでなる個体がいるって聞いたことあるけどそれ位かな?

そんなこと考えてるうちに相手が私たち目掛けて突進してきた。 大型車両が意思をもって突撃してくるのを、ベリアルさんは黒き鋼を地面に思い切り叩きつけて岩の壁を即席で作り上げる。

 

「うがあああああ!!! 」

 

「それぐらい……出来て当然だ 」

 

目の前に現れた壁を容易く破壊すると、手に持っていた2丁の斧を一番前にいるベリアルさん目掛けて振り下ろされる。

その一撃を黒き鋼で受け止めたベリアルさんだったけど、その巨体から繰り出された攻撃はそれだけ強力で、受け止めたベリアルさんのいる地面がクレーターのように大きく凹む。

 

「牛頭人身の化け物……脱出不可能の迷宮(ラビリンス)……。 先輩! ベリアルさん!! 彼の真名はミノタウロスで間違いないと思われます!! 」

 

「ミノ……タウロス…… 」

 

「それって確か── 」

 

マシュが教えてくれたその真名は、流石の私でも聞いたことのある名前だった。

ミノタウロス──ゲームとかでもダンジョンのボスだったり、宝箱を守ってる敵キャラクターとして出てくることが多いその英霊だったけど……。

べリアルさんにミノタウロスと呼ばれた時のその目は……なんだか私には悲しそうに見えた。

 

 

「……あああああああっ!!! 」

 

「────っ!? 」

 

「ベリアルさんっ!! 」

 

身動きが取れなくなってしまったベリアルさんが反撃に出るより速く、丸太よりも太いミノタウロスの足がベリアルさんに襲いかかって、迷宮の壁まで蹴り飛ばされてしまう。

 

「んにゃろ! やってくれるじゃないかい!! 」

 

「ますたあ、お下がりを! 」

 

「戦闘態勢……これはっ!! 」

 

「貴様らは邪魔をするな…… 」

 

マシュたちが戦おうと武器を取ったと思ったら、全員光の輪で身動きが取れない状態になっちゃった。 こんな事できるのはベリアルさんしかいないと知ってるから、蹴り飛ばされてしまった壁を振り向くと、頭から血を流しながら肩を慣らすベリアルさんがこちらに歩いて来てた。

 

「 コイツの相手はオレだ 」

 

「ううう…… 」

 

「貴様、真の名はミノタウロスではないな? ただの化け物なら、もっと形振り構わず暴れているぞ 」

 

そういえば、ミノタウロスは身動きの取れないマシュたちのことを1回も攻撃しようとしてない。 やろうと思えば簡単に倒されてしまうのはこっちなのに……どうして?

ミノタウロスも、ベリアルさんもお互い目線を逸らさず睨み続けると、痺れを切らしたのか、ミノタウロスがさっきみたいに突撃を始める。

 

「同じ攻撃が、このオレに通用するとでも思ったか? 残念だったなっ!! ジェアアアッ!!! 」

 

「ッッッ!! 」

 

あの巨体を振り回した!? ミノタウロスの巨体を飛び越えたと思ったら、その両角を掴むと勢いに任せてミノタウロスのことを地面に叩きつけた。

その衝撃でミノタウロスの被っていた仮面が割れて、その素顔が露わになる。

 

「立て、人間臭いその目が言ってるぞ。 守るべきものが在るとな…… 」

 

「──!! うああああっ!! 」

 

露わになった素顔は、意外にも幼い子どもみたいな顔をしてた。 そのミノタウロスは、ベリアルさんに言われたことが怒りに触れたのか、武器を持って振り回し始める。

守るべきものがある? ミノタウロスにも守りたい何かがあるの? 

 

「クハハハハっ!! 良いぞ!! もっと怒れっ!! その()()をぶつけて来い!! 」

 

「まも、る!! ぼくが、()()()を……まも、る!! 」

 

ベリアルさんに弾かれるのを最初から予期していたように斧を投げつけるのと同時に、アステリオスは斧を弾いたその一瞬の隙をつくように巨腕を振り下ろした。

ドゴォンッ!! と音と一緒に土煙が上がってしまって視界が遮られたけど、べリアルさんが避けるようなそぶりすら見えなかったけど……。

 

「名乗れ、化け物(ミノタウロス)なんぞではない。 お前の真の名を、だ 」

 

「ぼく、は…… 」

 

()()()()()()っ!! 」

 

土煙が上がると、ミノタウロスの腕を片足で押さえ、その首に黒き鋼を突きつけているベリアルさんの姿があった。

ミノタウロスがベリアルさんの問いに応えようとしたその時、ミノタウロスが行かせまいとしてた道から声が響いてきた。

……て、あれ? あの人って……ローマの特異点で私たちを助けてくれた……

 

「ステンノさん? 」

 

「わかったわよ! アンタたちについて行けば良いんでしょ!! だからアステリオスから離れなさいよ!!」

 

「……アステリオス。 それがお前の真の名か。 藤丸立香、あの駄女神の勘違いを解け 」

 

ベリアルさん、ミノタウロスの本当の名前──アステリオスだって分かったら迷宮の壁に腰掛けちゃったよ!!

アステリオスの盾になろうとしてるステンノさんに瓜二つのその人は、頭に血が上がっちゃってる感じだ……。

説明……できるかなぁ?

 

 

 

 

 

 




ウルトラマンベリアルアーリースタイル

ベリアルがレイブラッドの闇に堕ちる前、光の国の戦士だった頃の姿。
ショーとかでたまに出てくるのでその戦闘を参考にすると
銀河帝国ゼロ〈カイザーベリアル=アーリーベリアル〈アークベリアル〈ウルティメイトゼロ
ぐらいの強さを持っていることにしています。

ベリアル強さランキング
S ベリアルの乱、オメガ・アーマゲドン時のベリアル
A アトロシアス(ストルム器官あり)、ゼロダークネス
B カイザーダークネス、アークベリアル、アトロシアス(ストルム器官なし)
C カイザーベリアル、アーリーベリアル
E ウル銀ベリアル、ジード16話ベリアル

Eでも殆どのウルトラマン太刀打ち出来ないという意味不明なベリアルさん。
カイザーダークネスはウルティメイトゼロと互角で渡り合うためアークベリアルよりは上

絶好調のウルティメイトゼロを完全に倒しているオメガ・アーマゲドン時のベリアル。
キングが出てくるまで誰も止めることが出来なかったベリアルの乱のベリアル(父が本気出さなかったってのもあるけど)

アトロシアスに関してはストルム器官の有無で振り幅が大きいけど、ストルム器官が無くなってもケンに勝てる実力があるからこそBランク。

正直Eランクでも並みのウルトラマンじゃ太刀打ち出来ないレベルだからベリアルの強さは異常。

この強さランキングは完全に独自解釈なんでここはこうじゃね?的な意見もくれると反映される可能性があります。


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2


そういえば、ウルトラアーツでベリアルが出ることが決定しましたね。
プレバン限定特典でいい……頭部、手差し替えパーツとベリアルマントも付けて下さい。


感想、評価お待ちしてます。

評価、ご指摘頂けると励みになります


「〜〜〜〜♪ 」

 

女神の歌声が波風とともに船を包む。誤解が解け、同行することになった女神の神格を持ったサーヴァント エウリュアレの歌声を聴きながら一行は航海を続けていた。

行く宛がないと言うよりは、今はただ進むしかないと言ったところだろうか。

 

「べ り あ る 」

 

「────なんのようだ 」

 

「あ す て り お す。 ぼ く の な ま え、 あ す て り お す 」

エウリュアレの歌に心を落ち着かせ、戦いの傷の治療として全身に包帯を巻いているアステリオス。

そのアステリオスは、先の見えない遠くの海の先の先を見つめていたベリアルに話しかけた。 話しかけられたベリアルは、アステリオスが既に知っている名前を教えて来たのは、あの迷宮内で『名を名乗れ』と言った答えを今になって返しに来たと思ったのか、小さく笑った。

 

「オレはキサマのその傷を作った張本人だぞ。 そのオレが恐ろしくないのか 」

 

「う ん、ぼ く は、ベ リ ア ル の こ と、こ わ く、な い。 な ん、で か わ か ら な い、け ど、こ わ く、な い 」

 

「────そうか 」

 

アステリオスの言う言葉には嘘も蔑みも、貶すような言葉も何も含まれていない。

ベリアルはアステリオスの言葉を簡単に返すと、また遠くの海へと視線を移した。普段であれば誰も近づかせたりせず1人でいることの多いベリアルは、隣に腰掛けたアステリオスのことを拒まず、しばらく海を眺めるとその瞳を閉じた。

 

 

────◇◆◇────

 

また、この記憶か……。

宮原博樹の記憶の断片……、何が条件でこれを見せられる……。

 

 

『はっ、はっ、はっ! 』

 

男が──宮原博樹が息を切らして走っている。

病院内の一室の前に着いた宮原博樹は、心を落ち着かせようと深呼吸をしているが、心臓の鼓動が落ち着くことは知らず、何の意味もなしていない。

壁にかけられている名前には『宮原千愛』────そうか、コイツの妻の名か……

表面上ではあるが落ち着かせた宮原博樹が扉を開けた先には、横になっている女。そしてその傍には小さな赤子が抱えられていた。

 

『女の子ですよ 』

 

女と赤子を見て放心した宮原博樹に向かって看護師とかいう職の女が声をかける。

言葉をかけられ、ようやく実感というものが湧いたのか、宮原博樹は言葉を発するに至る。

 

『……()の、子供か…… 』

 

『ふふふ、ヒロくん僕って言ってるわよ 』

 

妻にからかわれながら、赤子を抱くように促される。 訳もわからず動揺しながらも抱き上げた赤子は、脆かった。

少しでも力を入れれば簡単に潰せる命。 守られることが当たり前だと安心しきったその寝顔を見て、オレは湧き上がるその感情が何なのか理解出来なかった。

気づくと、宮原博樹はそんな赤子を見て涙を流し始めている。 この赤子に他を傷つける力があると言うのか? 力を使った痕跡なぞ無かった筈だが……

 

『なんて、言えばいいんだろうな……。 は、はじめまして? パパ? お父さんだぞ? 』

 

『ヒロくん、名前考えてくれた? 』

 

『…………ああ。 千愛の愛って字をとって“(まな)”。 誰からも愛されて、その分だけみんなに愛を振りまける。そんな子に育って……ってなんだよその顔は 』

 

『だって……ヒロくんが余りにまともな名前を言うものだから。 てっきりウルトラマンに出てくる女の人の名前からとってくるものだとばかり思ってたから 』

 

女が笑うと、それに釣られるようにして宮原博樹も笑い始めた。 抱かれている赤子も眠りながらもそれが伝わったのか笑みを浮かべ始めた。

名前……名前か、確かアイツにも大層な意味が込められて名が与えられていたな……

 

運命を引っ繰り返す……ジード……このオレの息子────

 

────◇◆◇────

 

「ほんぎゃああああ!!! 」

 

「だ、大丈夫だったマシュ!? 」

 

「はっ、はい。 未だ鳥肌は止まりませんが、ベリアルさんが助けてくれました 」

 

私たちがエウリュアレの綺麗な歌声で癒されてた所にその男は突如として現れた。

黒ひげ、エドワード・ティーチ。相手の狙いはエウリュアレみたいで、守らなくちゃいけないんだろうけど……

喋り方とか表情とか、もう全部が気持ち悪すぎてドレイクさん達すら放心してる中で動けたのがベリアルさんとアステリオス。

 

「ちょっとちょっと!! 何するでござるかそこのおっさん!! イケおじ属性とか先生と拙者だけで充分間に合ってます〜〜 」

 

「ねえ、コイツやっぱり落としちゃっていい? 」

 

「駄目よメアリー。 こんな気色悪い男でもこの船の船長なんですから 」

 

ベリアルさんが放った光弾。 それをギリギリで避けた黒ひげがこっちの船に侵入してこうとしてくる。

エウリュアレだけじゃない、相手はドレイクさんの持つ聖杯も頂こうとしてるんだ!!

そんな中で、まるで弾丸のようにこちらの船に降り立った一体のサーヴァントが襲いかかってきた。

 

「…………コロス、ウオオオオオ!!!! 」

 

「────し ね!! 」

 

敵サーヴァントの真名は“エイリーク・ブラッドアクス” ヴァイキングの王と呼ばれるそのサーヴァントがエウリュアレを狙って斧を振り下ろしてくる。

けど、エウリュアレのことを絶対に守ろうとしてくる仲間がこっちにはいるんだ!!

エウリュアレの盾のように振るわれたおのを止めたアステリオスだったけど、ベリアルさんとの戦闘で負った怪我が痛むのか辛そうに顔をしかめてる。

 

そんなアステリオスとエイリークとの間に割って入っていったのはベリアルさんだった。

ベリアルさんはエイリークの顔を鷲掴みにすると、船に傷がつかないように気をつけてくれたのか、宙に放り投げて黒き鋼を使って相手の船に殴り返しちゃった。

 

「お前はそこの駄女神を守ることだけ集中していろ 」

 

「ベ リ ア ル……。 う、ん!! わ かっ た!! 」

 

「ちょっと!! 前も言ったけどこの私が駄女神っていうのはどう言うことよ!! 」

 

エウリュアレがベリアルさんの呼び方に抗議してるけど、聞く耳持たない様子でベリアルさんは私の方を向いてる。

 

「へっ? ベリアルさん私の顔に何かついてます? 」

 

ますたあ(安珍様)への不貞は、この私が許しませんよ 」

 

「マシュ・キリエライト。 そこの槍使いの相手はお前たちがしろ 」

 

「──っ!! いつの間に!! マスターは下がっていてください!! 」

 

「っ! 手取り早くマスターを始末しようと思ったんだけどねえ。 まさか気づかれちまうとは思わなかったぜ 」

 

いつから私の背後に立ってたのか分かんないけど、清姫が接近していた敵のランサーを迎撃してくれた。

ベリアルさんも最初から気づいていたのか、マシュに指示を出すと黒ひげたちのいる船に飛び移っていった。

 

 

 

 

「ウ……ウウウウウウ…… 」

 

「ちょっと何やってるでござるか〜 」

 

「霊基が殆ど消えかけていますわ。 これだけの威力をあの一瞬で……? 」

 

「──っ!! 来るよ!! アンっ! 船長!! 」

 

ベリアルに殴り飛ばされ船に戻ってきたエイリーク。 そのエイリークの事を下敷きにする形でベリアルは黒ひげたちの船に降り立った。

今のでエイリークの霊基は耐えきれなくなったらしく、エイリークが消滅すると、船員たちが侵入者であるベリアルに向けて銃口を向ける。

 

「撃ってみろ。 それでこのオレを殺せる自身があるならな 」

 

「随分と……自信がおありですことっ!! 」

 

1番に撃ち出したのは、サーヴァントの一人 アン・ボニー。 マスケット銃から発砲音が鳴り響いたのを皮切りに、他の船員たちも発砲を開始した。

それを見てベリアルは焦るでもなく……笑って見せた……。

 

「──っ!! 野郎ども!! 伏せやがれっ!! 」

 

「っ!! 銃弾を弾き返したっ!? 」

 

黒ひげが怒号を上げるが、もう遅かった。ベリアルが黒き鋼を横一閃に振るうと、弾き返された弾丸がそのまま船員たちを襲った。

かろうじて反応出来たアンですら銃弾が顔を掠め血を流している。

 

それでも曲がりなりにもサーヴァント。 身体を転倒させながら魔力で銃弾を補充させると、直ぐに次の弾を撃ち出した。

1発では防がれたからこそ、次は散弾で。 何発も、何発も

 

「こちらに気を引かせ、死角からの攻撃かっ!! 甘いっ!! 」

 

「ぐあっ!! 」

 

「メアリーっ!! 」

 

死角からベリアルの首を斬り落とそうと接近していたアン・ボニーと同じく召喚されたメアリー・リード。

2人の連携もベリアルの前では無意味に等しく、メアリーの持つシミターを指2本で止めるとその小柄な身体を容赦なくアン目掛けて蹴り飛ばす。

 

あらかた片付くと、ベリアルは黒き鋼をしまい込み。 いつ拾ったのかも分からない銃を構えて振り向いた。

 

「このオレの頭に銃を突き付けるとは……幾分やるようだなあ 」

 

「うぷぷ〜、無双系主人公とか今時流行りませんので〜。 ──まあ人さまの船でこれだけやられてはいそうですかって納得できるほど、俺さまは甘くねえよ 」

 

パアンッ!! と自分に銃が向けられていると言うのに、黒ひげは躊躇なく銃の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーおー、こいつぁ派手にやられたもんだな 」

 

黒ひげとは別に、ドレイクたちの船に単身突っ込んてきた無精髭のランサー“ヘクトール”は宝具によって造られ、少しずつ消えかかっている船の惨状を見て軽口を叩いていた。

 

「まあ、心臓を止められて消えかかってるアンタらに言っても意味ねえか 」

 

ヘクトールは苦笑いをしながらそういうと、黒ひげの手からこぼれ落ちたように転がる聖杯をその手に掴んだ。

 

「どんなに強くても、この船長が聖杯の持ち主だったってことには気づけなかったみたいだな。 あばよ船長、あんがいアンタとの船旅は悪くなかったぜ 」

 

そう言って、小さな船で何処かへと消えていった。

 

 

 




妻、娘の名前、そして普段は出さないようにしているが本来の一人称は僕な宮原博樹。

アステリオスがベリアルさんのことをこわくないと言ったのはベリアルさんの中にあるレイオニクスと、アステリオスの中にある獣の部分が反応した為。

正直、黒ひげの処遇はどうすればいいのかが一番の悩みどころだった。
普通に倒してもいいけどアイツ聖杯持ってるから倒して聖杯回収しちゃったらオケアノス速攻終わっちゃうしで……


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3

ウルトラ大戦争──エンペラ星人が光の国に怪獣軍団と共に攻めてきたウルトラの歴史において語られる大きな戦争の1つ。

感想、評価お待ちしてます。

ご指摘、誤字脱字などあったらご報告ください。


あの気色悪い海賊、黒ひげの事をベリアルさんが倒してくれたらしく、海域から離れた私たちは、辿り着いた島で食料調達をしている。

ドレイクさんが言うには船が勝手に動き出したっていうけど気のせいだよね。

 

ますたぁ(安珍さま)、こちらなどどうでしょうか? 」

 

「清姫、それ毒キノコ。 毒が無くてもなんか嫌な予感するから捨ててね? 」

 

今私は清姫と2人っきりで島の中を探索しながら食料になるものを集めているんだけど……さっきから清姫が見つけてくるのは変なものばかりで困ってる。

 

清姫──私のことをとても慕ってくれるいい娘だけど……その目は私のことを見てくれてない。

何故だかわからないけど、生前一目惚れした安珍さまっていう人の生まれ変わりが私なんだって信じて止まなくって、だから私のことを呼ぶ時も安珍さまって呼んでくる。

 

「? いかかがなさいましたか安珍さま? 」

 

カルデアのデータベースで事前に調べたし、マシュから話も聞いたから清姫が生前どんな娘だったのかは大体は知ってる。

知ってるから……私のことを安珍さまだって慕ってくれる勘違いも、人理修復が終わるまでの短い時間ぐらいは……て思わなくもない。

 

「ねえ清姫 」

 

けど、それじゃダメなんだ。 マシュが私のことを先輩として慕ってくれるように、人類最後の希望とかそんなの関係なく私は私だって、藤丸立香って呼んでくれるベリアルさんがいるから、私は清姫に、立香ってちゃんと名前で呼んでほしい、見てほしい。

 

「そう言えばさ、ちゃんと私の方から自己紹介ってしてなかったよね 」

 

「ええ、ですがご安心下さい。 私はあなた様(安珍さま)の事なら既にご存知ですので 」

 

「────私の名前は立香、藤丸立香。 ごめんね清姫、私は安珍さまじゃないんだ 」

 

言った、言ってやった。 ドクターからサーヴァントがマスターを殺したっていう事例もあるって聞いていたから、良好な関係を築くようにって言われてたのに、私は自分からその良好な関係を壊しにいった。

 

「ふふふわかっていますわ。 あなた様は安珍さまの生まれ変わり、ですから私にとって 「違う!! 」 」

 

「生まれ変わりだとか、安珍さまだとか関係ない!! 私は私として、藤丸立香っていう一人の人間として清姫に名前を呼んでもらいたい、見てもらいたいの 」

 

そうは言ったけど、そこから先の言葉が思い浮かばなかった私は、逃げるように来た道を走って戻った。 正直言って後悔してるし、言わなきゃ良かったって思うけど……こうしなきゃ前に進めない、ただゲームみたいにストーリーを終わらせてクリアするんじゃないんだから……。

 

 

 

────◇◆◇────

 

あれから数百年の時が流れた。地球人の私からすればそれは味わうことすらない長い時間だったが、うん万年も生きるウルトラ一族からすればたった一瞬の出来事だったのかもしれない。

 

今まで平和な時を過ごしてきた光の国が、炎によって包み込まれた。

 

建物は崩れ落ち、戦えない人々は怯えながら一刻も速くと逃げ、無力な子供たちは泣くことしか出来ない……。

 

その中心で恐怖の感情を美酒にして笑っているのは、闇そのものを具現化したような絶対の存在”エンペラ星人”

 

これは、この光景はウルトラ一族が宇宙警備隊を結成することになった戦争“ウルトラ大戦争”が始まったんだ。

 

 

 

『はあ……はあ……はあ……人の国を、勝手に荒らしてんじゃねええ!! 』

 

 

みんなが恐怖に呑まれる中で、べリアルは一人で戦い続けていた。

 

倒して、倒して、倒し続けた。

仲間であるウルトラ一族が倒れてしまってもその腕を、足を止めることなく、迫ってくる怪獣たちを倒し続けた。

 

攻めてきた怪獣や星人、立ち向かいながらも倒れていってしまったウルトラ一族で一つの山ができ始めたころ、ようやく迫ってきた敵を全て倒したらしいべリアルは、疲労からその場に倒れ付してしまう。

 

(まだ……終わってねえのに……身体が思うように動かねえ……。 守らなきゃいけねえってのに……オレの国を…… )

 

立ち上がろうと力を入れようにも、一人で数百の敵を倒したべリアルの身体は既に限界を迎えていた……。

 

そんなべリアルを囲うように、新たに現れた怪獣、星人たち。

 

『ようやく見つけたぞ……父の仇である貴様を!! 』

 

『よくも俺の親友を殺しやがったな!! 』

 

(コイツら……は…… )

 

べリアルは覚えていない。けど、一緒に数百年の時を見てきた私はすぐに分かった。 今ここにいるのは、べリアルに家族や大切な存在を殺されてしまった者たちだ……。

 

そんな者たちがべリアルに復讐するために、この戦争に参加し機会を伺っていたんだ。

 

『ああ……そうか……そういう……ことか……。 は、ははは……ハハハハハハハ!!!』

 

『へっ、死ぬ間際で頭が可笑しくなっちまったか! やるぞ!! 』

 

『ジェア゛ッッ!!! 』

 

突如笑い声を上げ、フラフラになりながらも立ち上がったべリアルは、復讐者たちの思い思いの必殺技を前に、手を思いきり振るうだけで弾き飛ばして見せた。

 

『ヒィィッ!! ば、ばかなっ!! 貴様はもう動けがぼおっ!! 』

 

 

復讐者たちのリーダー格だった星人は、べリアルの接近に反応することすら出来ず、胸の貫かれて絶命した。

 

死体となったその身体を投げ捨てながら、べリアルは何かを悟ったような、そんな顔をしている。

 

『やっぱりそうじゃねえかケン。 餓鬼だろうが何だろうが、悪は種ごと潰さねえと……平和は訪れねえ!!! 』

 

限界は越えている。だというのに、べリアルは暴れることを止めない。

 

私には、平和だった光の国を燃やすこの炎が、今のべリアルの心を表しているようにしか……見えなかった。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

「あの……先輩…… 」

 

「どうしたのマシュ? 」

 

「清姫さんと……その、何かあったのでしょうか? 」

 

あの話の後、これから向かい打つであろう敵との交戦を考えた私たちは、竜の鱗を素材にしてこっちの船を補強した。

その間、清姫が近寄ってこなかったことに申し訳なさと、清姫なら関係なく近寄ってくると思ってたから逆に不気味っていうかなんていうか……

 

その事はマシュにもわかってしまうほどだけど、別れることなく着いてきてくれるから、清姫から寄ってきてくれることを待つことにした。

 

「大丈夫……うん、大丈夫だよ 」

 

「知らない旗だね~。 アンタらアイツらのこと知ってるかい? 」

 

「うんにゃ知らねえなあ。 ギリシャっぽい船の身なりしてるけどな 」

 

「う~ん、誰かから聞いたことある気がするけど忘れちゃった  」

 

改修した船に乗って進んでいくと、対面からドレイクさんも、さっきの島で仲間に加わってくれた女神さまと熊のぬいぐるみ……オリオンとアルテミスも知らない船が姿を現した。

 

「なっ!! 岩を投げた……!? 」

 

「ぬ、あ あ あ あ あ っっ!!! 」

 

その船から、突如として大岩が投げつけてきた。 その大岩はアステリオスが受け止めてくれたから此方に被害は出なかったけど、相手からの戦線布告ってことだよね。

そうして、何が起きてもいいように臨戦態勢へと移ると、近づいてきた相手の船から馬鹿にするような高笑いが聞こえてきた。

 

「あっはっはっは!!軽々と受け止めて見せたか! あそこにいる蛮人は……何だ、アレ。 獣人か? 」

 

金髪碧眼の男と、淡い紫髪をポニーテールにして纏めた女の子。男は女の子にアステリオスのことを教えてもらうと、軽蔑の目を向けて罵り始めた。

 

「人間の出来損ないか! 英雄に倒される宿()()を背負った滑稽な生き物!! 」

 

ーーーーっ! 許さない。 アイツはアステリオスがどんなに優しい心を持った子なのかも知らずに、ミノタウロスだって理由で罵った。 見ればマシュもエウリュアレも、この船でアステリオスと関わったみんなが怒ってる。

 

「あ~~ありゃあやべ~な。 オレ以上にやべー人格してる馬鹿じゃねえか 」

 

『勢いづいているところ申し訳ない。 撤退を推奨するよ……確かに数の利ではこちらが勝っているかもしれないが……。 相手は人類最古、最強の海賊団”アルゴノーツ”だ 』

 

リーダーであるイアソンとその妻だというメディア。アッチは完全にコッチが悪者で、自分たちは正義の味方だって思ってるらしくて勝ちを確信しているように話す。

その自信は、ドクターが慌てずに、逆に落ち着いていて教えてくれた理由と同じだった。

 

イアソンとメディアの後に控えている巨漢の大男。ギリシャ神話最大の英雄だって言われてる”ヘラクレス”その人らしくって、さっきの大岩も彼が投げてきたものだった。

 

「はははは!! 勝てるものか!! 醜い獣を従えなければいけないほどに人材不足な君たちに! お前たちは退治される側なのさ!このヘラクレス(大英雄)になっ! 」

 

イアソンの目的は女神であるエウリュアレらしくて、エウリュアレを引き渡せばヘラクレスのことをけしかけないと私たちに交渉……もとい脅してきた。

ま、答えなんて最初から決まってるけどね!

 

「絶対イヤ!! アステリオスのことを醜い獣だなんて言うアンタみたいな人に、うちの女神さまを渡すもんですかっ!! 」

 

「貴女のものになったなんて一言も言ってないのだけど……よく言ったわ立香 」

 

素晴らしい、カッコいい、正義の味方のようだとイアソンは私の返答に賞賛してくる。 してくるけど、全然嬉しくない。

むしろその人を小馬鹿にしたような言い方にムカムカしてくる。

 

「塵屑風情が生意気な。 サーヴァント諸共、全員消えてくれるか? 」

 

「塵屑は貴様だろう。 己が運命も変えることの出来ない男が 」

 

「「「「────っ!!! 」」」」

 

私も、ドレイクさんたちも、敵であるイアソンたちも一様に驚いた。 大英雄だってイアソンが豪語していたヘラクレスだって気づけてないんだもん当たり前……だよね。

いつの間にか、アルゴー船の甲板の上にベリアルさんが立って、イアソンの眼前に黒き鋼を向けていた。

 

「へっ、ヘラクレスっっ!!!! 」

 

「────────!!!! 」

 

「こ、この船はメディアの魔術壁で守られているんだぞっ! それをどうやって突破した!! メディアお前も何故気づかない!! 」

 

「す、すみません!! 一切反応なく現れたもので 」

 

「ビービー喚くな。 雑魚どもが 」

 

自分の命の危険を感じたイアソンは、即座にヘラクレスに命令してベリアルさんを退けよう動いた。 人類史上最強の英雄を前にしても、ベリアルさんは焦ることなく棒立ちのままヘラクレスと向かい合う。

 

ヘラクレスの持つ巨大な斧剣がベリアルさんに向かって真っ直ぐと振り下ろされる。

 

「──!? ──────!! 」

 

「なにっ! 何をした貴様っ!! 」

 

眼前、あと数センチ動けば届くという距離で斧剣が止められていた。 しかもベリアルさんは手も足も使わずに、ただ強く睨むだけで止めてる。

ベリアルさんの力を知っているから私たちすれば超能力で止めたことは明白だけど、相手からすれば驚愕ものでしかないよね。

 

そうしてベリアルさんは、自分の掌からエネルギーの塊を出してそれをヘラクレスの胸元に押し込んだ。

 

「──────!!! 」

 

「はっはっはっはっ、残念だったな!! どれだけ強かろうがそれだけだろ!!だからどうした!ヘラクレスは神から与えられた十二の試練をしたことで、それだけの生命を有してるんだよ!!」

 

そ、そんなの反則だっ!! どんなにべリアルさんが強くても、さっきの攻撃で削れたのは1つ分の命……まだ11回生き返るってことでしょ?

 

「ふっ、大英雄とまで呼ばれているのだろう? それぐらい化物染みてなければ面白くない。 ふんっ!! 」

 

「────────!!!? 」

 

12の命があると聞いても焦ることなんてなくて、むしろ笑みを浮かべながらヘラクレスのことを超能力で縛り上げた。

 

縛り上げられたヘラクレスは船の外へと放り投げると、放り投げた先にはいつの間にか一隻の船が置かれてる。

 

べリアルさんもそんなヘラクレスのことを追ってアルゴー船から身を乗り出すと、顔を此方に……違うあの目が見てるのは……。

 

「ああそうだ!! その目だ()()()()()()!! 来い!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




迷いを捨て去り、限界を超えたベリアルの前に遂にあの男が姿を現した!
暗黒大皇帝エンペラ星人。 圧倒的な闇の力を前に、どうなるベリアル!!

次回ウルトマンベリアル列伝『絶対的な闇』
Fate/GrandOrder ~Bの因子~もよろしくっ!!

↑見切り発車の次回予告、続くかどうかは知らない

メインストーリーとは別に、幕間としてイベント編やったりしたほうがいいんでしょうか?
メインに関わりがあるイベント(監獄島とか)とかあるしで……悩み中です


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4

エンペラ星人──ウルトラマンたちにとって因縁の相手、最強の名に相応しい強さを持ち、彼いわく光の国の戦士には負けない。

ウルフェス2018で復活した時には全てが終わった後のロイヤルメガマスターですら手も足も出せないほど……
挿入歌もあったりして格好いい

感想、評価お待ちしてます
誤字脱字、ご指摘ございましたらよろしくお願いいたします


嵐が、吹き荒れる……。 船の舵はきかず、それだけで暴力と言っていいほどに勢いを増した波によって行き場もなく海の上を進んでいる船の上で、英雄と化物が戦っていた。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!! 」

 

「おおおおおおっ!!! 」

 

その船の上で行われる激しい戦い。雨に打たれることなど気にも留めず、視界を阻む雨粒を払いのけ、両者とも目の前に立ちはだかる相手だけを捉えている。

 

人類史上最強と名高い英霊----ヘラクレス。

 神々や数多の怪物を倒し、誰もが彼を認める、認めざる得ないほどの偉業を成した半人半神の大英霊。 バーサーカーとして召喚されたためにその知能や理性は失われているが、それすらも余りある一撃と卓越した反射神経を有しているヘラクレスを止められるものは殆どいはいわしないだろう。

 そして、彼の宝具はその最強の力に更に拍車をかけている。

十二の試練(ゴッド・ハンド)』ー彼の生前の偉業が宝具となったその力は、ヘラクレスに十一の命を与えた。これによってヘラクレスを完全に超えるには十二回ヘラクレスのことを殺さなければいけない。

 

「うがああああああ!!!! 」

 

その命も、べリアルの最初の攻撃によって4つ削られていた。

脱出不可能の迷宮に住まう主、人々に恐れられ英雄に打ち倒されることを宿命づけられた怪物ーーミノタウロス

 だが、彼はミノタウロスであってミノタウロスではない。自分は人間なんだと、父親が気まぐれで付けた人としての名ーーアステリオスなんだと叫ぶ。

人が見れば英雄が怪物を倒す、そんなありふれた英雄譚に見えるかもしれない。

 

「ぼくはっ!! おまえを……こえて、みせ る!! 」

 

これはごくありあふれた英雄譚では決してない。 怪物と呼ばれた子ども(アステリオス)が、英雄と讃えられた怪物(ヘラクレス)を打倒す物語。

伝える者はいない、記憶にも残らず、記録にすら記されない。 それでもアステリオス猛々しく戦っていた。

 

「ああそうだ!! 貴様にはあんなもの(ミノタウロス)よりも大きな”本当の名前”がある!! 怪物と罵られた程度で止まるな!! その行為は、このオレが認めない!! 」

 

ただ一人、べリアルだけがこの戦いを見守っていた。 

無限に近い財宝があるわけでもない、黄金の剣の記憶をそのまま使えるわけでもない、アステリオスにあるのは二丁の斧と生まれ持ったその身体だけ……

それでもアステリオスは止まらない。

 

「貫き通せアステリオス。 怪物としてしか刻まれなかった生まれもって怪物であったその宿命を──変えてみせろ!! 」

 

逃げも隠れもしない。 アステリオスの真っ直ぐな攻撃がついにヘラクレスの心臓を穿った。

それに追い打ちをかけるようにアステリオスは心臓が再生し、再生していく胸に覆われるよりも早く、そのむき出しになった心臓を掴み握りつぶした。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️!!! 」

 

「っ!!う、ううう!!! 」

 

2度殺されただけでは、大英雄は止まらない。 生き返ったヘラクレスはアステリオスの首を絞め殺そうと動き、その首を掴み取った。

 

「やってみろ大英雄。 黄金の獅子を絞め殺した時のように、ソイツの父親を捕えてみせた時のように、ソイツを止めてみろ!! 」

 

苦しみ、もがきその身体を殴られてもヘラクレスは組んだ腕を外さない。 

しかし三日間ネメアの獅子を絞め殺して見せたその胆力を見せるヘラクレスの眼前に映る光景に驚きを隠せなかった。アステリオスからすれば背後にべリアルが立っていたのだ。

 

べリアルはその腕に持つ黒き鋼でヘラクレスのことを攻撃するのではなく、その先端をアステリオスの背中に当てる。

 

「お前が誰なのか、その大英雄(かいぶつ)に教えてやれ!! 雷鳴がごとき轟でっ!! ”ミノスの牛”ではないと叫べ!! 」

 

「ぼ……く、は…………!! ぼく、は…………っ!! 」

 

全身に電撃が走り、力が抜けたアステリオスは意識を手放した……。

 

 

────◇◆◆────

 

 

 

復讐者たちも倒し、襲ってくる敵を倒しながら前に進み続けたべリアルは、誰よりも早く、この戦争を始めた張本人の元に辿り着いた。

 

『辿り……ついたぜ……エンペラ星人ッッ!!! 』

 

 

『光の国の中にも、ここまでの実力者がいるのですねえ 』

 

『ほう……光の国にも、うぬのような存在がいるとはな 』

 

暗黒宇宙大皇帝 エンペラ星人。 絶対的な闇の支配者にして光の国を滅亡させようと企む真の悪者。

メビウスたちによって破れるけれど、今は過去……この戦争でウルトラの父と一騎討ちの結果脇腹に致命傷を負うはず……。

 

それよりも前に、べリアルはエンペラ星人と戦ってたっていうのか?

 

でも、限界を既に越えていて満身創痍って言っても過言じゃないべリアルの攻撃がエンペラ星人に当たることはなく、まるで虫を払うかのようにエンペラ星人は手を振るう。

 

ただそれだけでも、エンペラ星人という相手は強大なんだと思い知らされる。

 

『ぐ……ガアアアアアッッ!!!! 』

 

『闇の素質はあるが……貴様も光の国から生まれた光の住人……死んでもらう 』

 

建物を1つ、2つ、3つを貫通させようやく止まった4つ目の建物崩れ落ちてべリアルはその下敷きされてしまう。

 

太陽を失い、光を失った星でただ一人生き続け、闇の力を手にいれたからこそ、光を持つもの全てに嫉妬し、深い憎しみを抱えたエンペラ星人の攻撃によって、戦い続けたべリアルはとうとう倒れて……ないっ!?

 

『この我の技を受けて、死んでいないだと……? 』

 

『………………はあぁぁぁぁぁ 』

 

意識が……ない。 エンペラ星人の攻撃を受けて耐え抜いたべリアルは意識を飛ばしてもなお、本能だけで立ち上がってエンペラ星人に向かって歩いていく。

 

『目障りだな貴様……フンッ!! 』

 

『ガアアアアアッッ!!! 』

 

エンペラ星人の超能力、メビウスの協力者たちの殆どを打ち倒したと言っても過言じゃないとても強力な技。

 

意識のないべリアルは獣のような咆哮を上げると、腕が傷つくことなんてお構い無しで向けられた超能力を振り払い、エンペラ星人との距離を詰める。

 

『クッ! 』

 

『悪は……滅ばな……きゃいけねえ…… 滅べ……亡べ……ほろべえええええ!!! 』

 

本能だけでエンペラ星人の攻撃を避け、徐々に攻撃を加えていくべリアル。

 

そこで今まで余裕だったエンペラ星人に余裕が消えた。

群れで集まる光の国の住人が、個人で自分に並ぼうとする者が現れると思っても見なかったからだ。

 

次第に鎧にヒビが入り、リフレクターマントすらも破かれたことで焦り、漸く本気を出した。

 

『一介の雑魚……いいや認めなければいけないな貴様のことは……。 だが、我が貴様ら光の戦士に負けることはない!! これで終わりだっ!!! 』

 

『ぐがああああああああ!!! 』

 

エンペラブレードでカラータイマーを突き刺そうとしたが直撃は避けたのか、剣が肩に突き刺さった。

 

そのまま持ち上げられたべリアルは、無防備になった身体に極大の闇の力を浴びせられ吹き飛ばされてしまう。

 

それでもまだべリアルは生きていたが、吹き飛ばされた先は、エンペラ星人の闇の力と同等かそれ以上の力を秘めているプラズマスパークが鎮座されていた。

 

べリアルが吹き飛ばされたのはプラズマスパークタワーだったんだ。

 

『オレにもっと力があれば……。 アイツのような……絶対の力……この力さえ……あれば…… 』

 

意識を戻したべリアルは、瀕死と言っていいその身体で、エンペラ星人の力に憧れを抱きながら、その手はプラズマスパークに伸ばした状態で遂に完全に倒れた。

 

 

これがあったから……べリアル、貴方は絶対的な力を求め続んだな

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

ここは……らびりんすだ。 ちちうえが、ぼくに、ここにいろって、ここにくる、にんげんが、おまえのえさだって、そういって、ぼくを、おいていっ、たばしょだ。

 

でも、ちがう……、ちちうえの、せいじゃない、ぜんぶ、じぶんのせいだ、ぼくのこころが、かいぶつ(みのたうろす)、だったんだ、

 

アア、ウマイナア、ウマイ、ウマイ、ウマイ、ハライッパイダア!!

 

そうだ、あれが、ぼくだ…………。 らびりんすに、おくられてくる、じゅう、よんの、こどもを、ころした、たべた……。

 

けど、けど!! みんなが、よんで、くれた、みんなが、わすれた、ぼくのなまえ、を、

 

『アステリオスの旦那!! 』

 

だから、もどらなくっ、ちゃ。 ゆるされなくても、みにくくても……。

 

ナンデソッチニ、イクンダヨ。 コッチノホウガ、タノシイ! ナニモカンガエナクテイイ、ハライッパイ、ダアッ!!

 

置いて行くの? しあわせになるの? ぼく(わたし)たちのこと喰べたくせに?

そこにいる人たちだって喰べるんでしょ?

 

『ははっ!! 随分と力持ちじゃないかいアステリオス!! 』

 

くさりは、おいていかない……。 これを、はずすと、ぼくは、わすれちゃうから、わすれてまで、しあわせに、なりたくない、から

 

けど、たべたり、しない!! みんな、ぼくの、おともだち、だからっ!

 

どれいくも、ましゅも、りつかも、えうりゅあれも!! みんな、ぼくのともだちだ!!

 

『アステリオスさんっ!! 』

 

でも、ぼくは、おまえを、きょぜつする……!!

 

キョゼツスル? オマエガ、ノゾンダ、コトノクセニ? オマエガ、クイタクテ、クッタクセニ?

ムリダ、ムリダ、ムリダ!! ドンナニ、キョゼツシテモ、オマエハミノタウロス、コロシテ、クッテ、ミンナガ、ソウヨンデ、オソレタ!!

 

『やったねアステリオス!いえーいっ!! 』

 

アノニクハ、イツモクッテル、ヤツニ、ニテテウマソウダ! アノイチバン、キラキラシタヤツ、タベタラ、ゼッタイニウマイゾ!!

 

ぼくの、からだは、どこまでいっ、ても。 みのたうろすだ。 だけど、みんなが、よんで、くれた、だから、もどるん、だ!!

この、こころは! なまえは、ぼくのものだ!!

 

『あなた、アステリオスね? 』

 

クエ!! クエ!! クエ!! クエ!! クエ!!

 

ぼくは、つよく、なる!! みんなが、なまえを、よんで、くれた、からっ!! はじめて、できた、()()()()()だから!!

 

おまえは、ひとりぼっち、だ。 けど、ぼくには、なかまが、いる、よんでくれる、なまえがある……。

 

ぼくは、らいこう。 ちちうえがつけてくれた、ぼくの、なまえっ!!

ぼくは……! ぼくは……っ!!

 

ぼくはっっ!!!!

 

 

 

 

 

「ぼくは、あすてりおすだああああああああ!!!!!」

 

 

 

それが、だいすきな、みんなが、おもいださせて、くれた、なまえ、だっ!!!

 

 

 

 




・レゾビューム光線とかいう対ウルトラマン最強技を持っていて、ザムシャーやヒカリを超能力だけで圧倒したり、太陽を闇に葬ったりと普通に考えて覚醒したばかりのケンが一騎討ちの末相討ちになったとかありえない。

・ゾフィーの父親がウルトラ戦争で戦死したという情報があり、キングとかマリーなら生き返らせること出きるじゃん。それでも出来ないってことはレゾビューム光線の餌食になったとしか考えられない。
目の前で友達を光にされたらそりゃケンさん覚醒しますわ

・べリアル自身も意識を飛ばした状態での戦闘だったためエンペラ星人との戦闘の記憶はない。
最後に見たプラズマスパークの光とエンペラ星人の闇の力両方に魅いられたからからこそ…………という解釈

・fateの英霊たちの中で数少ない『黒き鋼』に適合することの出来るのがアステリオス。 自分が戦ったほうが強い、他の怪獣はただの駒としか見ていなかったころのべリアルとは違うため、『黒き鋼』に秘められている『進化』の力が扱えるようになった。

ただしその力を使うには、『べリアルが認めた者』、『人であること』といった条件があるため使用するのは難しい。

FGO風に言えば霊基再臨、ウルトラマン風だと『レイオニックバースト』や『EX進化』

・作者にとってミノタウロスは、『モアもペガも、誰一人として友達、仲間が出来なかった朝倉リク』。朝倉リクは、友達や仲間、大切な人がいたからベリアルの闇に打ち勝ち、キングに認められる『ウルトラマン』になれた。 だけどそれは逆に考えれば、モアと出会わずジードを知らず、ペガやライハ、誰とも関わりを持たなかった場合、リクはベリアルの闇に負けてミノタウロスと同じ『心無い怪物』に成り果てていた可能性が大きい。 ミノタウロスはアステリオスという『なまえ』を呼んでくれる人がいたからこそ人間に戻れたし、『ともだち』がいるお陰で『心無い怪物』には決してならない。

だからか、今回の最後はジード12話や17話のリクのセリフをイメージしたり、幕間や2部1章なんかを参考にしながら書いた作者の思うアステリオス。


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5

ベリアルとエンペラ星人との激闘は誰も見たものはいない。
ベリアル本人も意識を失っていたため唯一知っているのはエンペラ星人だけだが、プライドの高い彼が自分の口から恥を話すわけはないため誰もベリアルの活躍を知る者はいない。

count the Life ベリアルによる攻撃−4 アステリオスの攻撃−2
ヘラクレスの残りライフ=6

ジードとかオーブみたいなサブタイの影絵が作れるような才能がほしい

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、御指摘ございましたらよろしくお願いします。


「■■■■■………… 」

 

「う…………うぅ………… 」

 

 約3mもあった身長は膨れ上がり、今やその身長は5mにも届くほど大きくなり、それに伴って筋肉も膨れ上がったアステリオスのその姿は最初見たときとは少しであるが変化していた。

背中を全て覆うほどの量の髪の毛は、身長が伸びるとともに大きく膨れ、まるで白く雲のように見えるが、所々毛先は雷のように鋭く黒みがかっている。 赤く変色した頭蓋から伸びた角の先端は発光した光のように白く変色するといった変化が見られる。そんなアステリオスは今、全身を血で濡らし、満身創痍といった様子でありながら同じく傷だらけとなったヘラクレスと睨み合っていた。

 

2人が行ったのは、純粋な拳と拳の殴り合いだった。 殴られれば殴り返す。避けず、離れず、ただどちらかが倒れるまで殴ることを止めないただの殴り合い。

 しかし、黒き鋼の力によって覚醒したアステリオスは、その力を使い1つ、2つ、3つとヘラクレスの命を削っていった。

 

 殺された攻撃に対して耐性を付けていくヘラクレスでも、人のみでは決して到達することの出来ないその力を耐える肉体も、その肉体を貫く剛力も出すことは出来ず、アステリオスのその純粋な拳だけで、最後の1つまで命が削られていた。

 

他の英霊が相手ではこうはいかなかっただろう。

『天性の魔』 生まれもって怪物であったアステリオスだからこそ持つことが許された人知を越えた筋力、そして耐久力があったからこそ、ここまでのことが成せたのだ。

 

「■■■■■ 」

 

「そうか──お前は負けを認めるというか、ヘラクレス 」

 

あと1つ。 この命が削られれば完全に死ぬという状況下のなかで、ヘラクレスは笑っていた。

 

互いに全力を出した戦いが出来たからなのか、大英雄とまで呼ばれた自分に正面から立ち向かい、あろうことか死ぬ寸前まで追い詰められたからなのかはわからない。 しかし、大英雄と呼ばれたヘラクレスは確かにアステリオスのことを勇しき者であることを認めた。

 

バーサーカーとして呼ばれたことを、ヘラクレスはむしろ感謝していた。 理性や知性が残っていたならば、英雄らしく策を講じ、目の前の存在をただの怪物として打ち倒していただろう。 そうでなかったからこそ、馬鹿らしく愚直なまでに真っ直ぐな殴り合いをこの英雄とすることができた。

 

だからこそヘラクレスはこのまま消えることを、死ぬことを選ぶのだ。 限界まで戦ったアステリオスにはもう、自分の最後の命を削ることは出来ないと悟ったからこそ、生前ですら1度2度味わったかどうかという満足のいく戦いを、付けられたこの傷を無かったことにはしたくなった。

 

そんなヘラクレスの考えを汲んだのか、ヘラクレスの名前を呼んだべリアルは、その手に黒い雷光を集める。

 

(ああ、それを使えば…………私のもつ全ての命を一撃で削ることが出来ただろう。 そう思わずには入られないほどの強大な力。 一体どれだけの時を刻めばソコに至れるのか )

 

その力は、如何に神へと至ったヘラクレスですら到達することが出来ないと分からせるほど絶対的な物だった。

 

こうして、12の命を持つ人類最強の英霊は黒雷に包まれて消えていった。

 

「べ、リア…………ル 」

 

「眠っていろアステリオス。 今はその傷を癒せ 」

 

消えていったヘラクレス、そして眠りについたアステリオスの胸から光の球体のようなものが出てくる。

 

その光がべリアルの元に届くと、その手には今までで見てきた黒いカプセルとは違う、()()()()()()が形成されていた。

 

「…………何だこのカプセルは? 確かに起動している。それなのに何故存在が確認出来ない……? 」

 

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

ウルトラ大戦争は、あれから私のよく知る歴史通りに辿っていった。

 

ゾフィーの父を殺されたケンは、超戦士の証を覚醒させエンペラ星人との一騎討ちの果てに追い返したこと……

 

ウルトラ長老たちが造り出した秘宝『ウルトラベル』の力で怪獣軍団を退け、その記念としてウルトラタワーが設立された。

 

この襲撃のこともあって宇宙の平和を保つ宇宙警備隊が結成され、エンペラ星人を退けたという多大な功績からケンは宇宙警備隊の初代隊長に任命された。

 

 

誰よりも深い怪我を負ったべリアルが目覚めたのは、そんな全てが終わった時だった…………。

 

『クソッ!! 』

 

べリアルとケン。どちらもエンペラ星人と激闘を繰り広げた戦士であるというのに、その扱いの差は正に雲泥といっていい。

 

ケンはエンペラ星人と引き分けという形で退け、名誉の傷を作った英雄に。

 

そしてべリアルは……怪獣軍団に負けて、死にたくない一心でプラズマスパークの所まで逃げおおせた負け犬扱い……。

 

『いつも厳しく叱ってきてたくせに、戦争では誰よりも早く負けたらしいぜ 』

 

『何が力こそが全てだよ。 必要なのはケンさんのような正義の心だっての 』

 

別に、名誉や栄光が欲しくてべリアルは戦っていたんじゃない。 けれど、目覚めた後の光の国はべリアルのことを白い目で見た。

 

元々素行が悪く、常々平和のためには力が必要だと他のウルトラマンたちに暴力によって訴えていたべリアル。

 

そんなべリアルも戦争では何の活躍も出来ず、怪獣に倒されてプラズマスパークの所まで逃げた負け犬と呼ばれるようになってしまった。

 

だから……だからこそべリアルは……より一層力を求めることに執着したんだ。

 

『力だ……力が欲しいっ! ケンも……エンペラ星人もっ! キングさえも越える絶対の力がっ!! 』

 

それが罪であることを理解していても、力を求めるべリアルにとっては関係のないことだった。

 

だからプラズマスパークタワーに侵入して、その力を手に入れようとしたんだ。

 

『越えてやる、オレを見下したアイツらを!! 』

 

だけど……プラズマスパークはべリアルに力を与えることはしなかった。

その心に巣食ってしまった悪の心、エンペラ星人に誰よりも近づき、その闇の力を受けても耐えた、耐え抜いてしまったべリアルの身体には、プラズマスパークが拒絶する闇の一片が芽生えてしまっていた。

 

 

 

その身を焦がす激痛が全身に走り、光を拒絶する身体になってしまったべリアルは、大罪を犯したという理由で光の国を追放され……プラズマスパークの光が届かない宇宙の果てへと消えていった…………。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

藤丸立香が清姫に本心を打ち明けてから少し経ち、一人船へと戻ってしまった立香を追いかけようと足を進めていた清姫。

 

 

 

 

 

 わたくしにとって、その恋こそが始まりで全てでした。 屋敷の外に出ることすら許されなかったわたくしが出会ったあの人。 その人のことを想うだけで胸が焼けるように熱く燃えだし、あの人のことしか考えられないほどにこの脳は溶けていった……。

 

 好き、好き。 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き

愛してる、愛してる。 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる!!!

 

その想いで焼けるのならば、堕ちるのならば本能だと心の底から想った。 あの方もわたくしと同じ感情を、愛を持って想い焦がれているのだと信じてやみませんでした。

 

『生まれ変わりだとか、安珍さまだとか関係ない!! 私は私として、藤丸立香っていう一人の人間として清姫に名前を呼んでもらいたい、見てもらいたいの 』

 

あの時の安珍さまの言葉にわたくしが嫌いとする嘘偽りはなかった。

ああ…………ああっ、ああっ、あああっ!!

嫌だ……拒まれるのは嫌っ!! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

「憐れだな、蛇の娘 」

 

「あなたは……っ!! 」

 

音も気配もなく現れたこの男……べリアルでしたか? 安珍さまが彼のことを慕っていることは調査済みだったわたくしは、その顔を見ただけで炎の浴びせる。

 

「この程度の炎で嘘を拒むとは……嗤わせるな 」

 

「何……をっがはっ!! 」

 

わたくしの炎を意にも介さないこの男は、武器である棍棒を使いわたくしのことを地面に押し倒し、その先端で首を抑えられ声を出すことすら阻まれる。

 

「ハハハハハッ!! たかだか数十年しか生きただけの人間がそこまで汚れた眼を持つか 」

 

反論も、口から炎も吐き出せないわたくしの眼を見て、この男は意味の分からない言葉を吐き出す。

 

「嘘を何よりも拒絶する貴様が、嘘を好んでいるその様、実に滑稽だなあ!

 ──覚えていろ娘。自分だけの嘘で塗り固め、憧れ、慕い崇拝する。 そうやってアイツの真実から眼を背け続けみろ。 貴様は必ず、アイツを失う 」

 

 

わたくしが……嘘を好んでいる?

 

 

◆────

 

 

 

 べリアルさんとアステリオスの2人が、ヘラクレスを連れて嵐の中へ姿を消してから、この嵐の中ではイアソンたちと戦闘を継続することが出来ないと判断した私たちは、近くにあった島でイアソンたちと決着を付けるための準備をしていた。

 

 そこで私たちは、偶然だったのか分からないけど2人のサーヴァントと出会うことになった。

一人は生前イアソンのアルゴナイナタイに参加していたっていう弓の名手のアタランテさん。 そしてもう一人はイアソンにとって……ていうより持ってる宝具がなんだけど、その宝具アークに女神であるエウリュアレを入れることでこの特異点を破壊させることが真の目的なんだって

けど、そんな大事な役割だっていうのに当の本人──ダビデは何て言うか……軽い人だった。

 

 まあ、それはそういう性格だからいいとして……。 イアソンの狙う契約の箱とエウリュアレ、その両方を有してる私たちを狙って、向こうは必ず仕掛けてくる。

それを逆手にとる形で、逆にイアソンから聖杯を奪い取ってこの特異点を終わらせる。 何だかこの旅で一番海賊っぽいやこのやり方。

 

べリアルさんもアステリオスもいない……だけどこっちの戦力は充分!!

 

「行こうみんな!! これが最後の戦いだ!! 」

 




力を求めた罪、光の国を追放されたベリアルは宇宙の果てへと姿を消した。
しかしそれはこれから起こる事件のただの前哨でしかなかった!!

次回ウルトマンベリアル列伝『黒き王の誕生』
Fate/GrandOrder ~Bの因子~もよろしくっ!!


・ジード最終話で言った「超えてやる、オレを見下したアイツらを!! 」というケンと並ぶ、戦闘能力だけならその時のウルトラ戦士一といっても過言じゃないベリアルさんを見下すって何? という事からウルトラ大戦争の後、こんなふうなことが起きたのかな〜と。

ウルトラ戦士は全員が全員清廉潔白なヒーローではない。 父がメビウスに地球行きを決めたりする事から地球に行くウルトラマンは基本性格が出来てる人が選ばれてるんだと思う。
まあ勘違いだからってアストラのこと殺そうとするからねウルトラ兄弟。

・EXアステリオス(仮称)はアステリオス×ミノタウロスのアステリオス寄りのフュージョンライズといった感じ。殺されたらその攻撃に対して耐性をつけていくヘラクレス、死ににくくなるからと言っても死なないわけじゃない+EX化アステリオスに対しての耐性を一から作っていかなきゃ行けない状況。 5回削られても仕方ないと思いたい。

・前半最後に出てきたカプセル。
この作品で初めて出てきた白いほうのカプセル。べリアルがいうには起動はしているらしいが、そのカプセルに何の、誰の力が込められているのかは分からないらしい。


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6

2部3章が配信されたら更新が絶対に遅くなります。


感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字報告いつも助かってます!!


「先輩っ!! 」

 

「マッ────っ!! 」

 

 私に向かって伸びてくるマシュの手がどんどんと遠ざかっていく。

 

 遂に始まったこの特異点最後の戦いは、聖杯の力を使い無限に沸いてくるシャドウサーヴァントを相手にしながらも優位はこちらにあった。

 

 ただ、戦況が変わったのは一瞬だった。 本当の敵はイアソンじゃなくてメディアだったらしく、彼女は聖杯の力を使ってイアソンのことを魔人柱へと変貌させて私たちに襲いかかってきた。

 

 前回の魔人柱との戦いでは他に邪魔してくる相手がいなかったから相手1体集中できたけど今回は違う。 シャドウサーヴァントに加えてどんなに魔人柱に攻撃を加えても魔術で回復してくるメディアがいる。 シャドウサーヴァントを呼び出しているのもメディアだから最初にメディアを倒そうにも、防御に徹したヘクトールの壁を越えることは難しくて苦戦を強いられる結果になってしまった。

 

 べリアルさんなら簡単に突発できた。 もしくは前見たいにジャンヌオルタのような高火力の攻撃があればって焦り始めてしまった。

 

 だからなのかな、現れたアサシンのシャドウサーヴァントに隙をつかれてしまったのは……。魔力強化で何とか腕を掴んで抑えてたけど、相手の蹴り技にまで対処できなくて、お腹に直撃した衝撃と共に海に放り飛ばされてしまった。

 

 シャドウサーヴァントを倒して助けに来てくれたマシュの手も届かなくって、ばちゃん!! と水に叩きつけられた私の身体は海の底に沈んでいく…………。

 

「────がはっ!! 」

 

 水面に上がろうにも、お腹に受けたダメージと叩きつけられた衝撃のせいかうまく力が出せず、一気に口から酸素が吐き出されてく。

 

(嫌……だ!! 死にたくない!! 誰か助けて!! 誰かっっ!! )

 

────(安珍さま)

 

 声が出ない、酸素が無くなって胸を締め付ける強い痛みが走ってくる。 礼呪を使って助けを呼ぼうにも、素人の私じゃ水の中で魔術を行使するなんて無理な話で、ただただもがくことしかできない。

 

 オルレアンで見た殺されてしまった人々、ローマで見た命を賭けて死んでいった兵士たち……そして何も知らずに爆発に巻き込まれてしまったマスター候補のみんなやカルデアの職員さんたち…………。

 

 嫌だ! 嫌だ嫌だ!! あんな風になりたくない!! 誰かが名前を呼んでくれるのに反応できないないなんて嫌だ! 先輩って笑顔で呼んでくれるその顔が見れなくなるは嫌だ!!

 

────────────────(安珍さま、さあお手を。)

 ────────────────(このわたくしめの手を掴んでくださいまし)

 

声? 声が……聞こえてくる……。 甘く蕩けて、絆されてしまいそうな魅惑的な声……。 誰かが、助けに来てくれたのかな?

 

でも、何を言ってるの? 全然……わかんないよ……。

視界もぼやけて誰なのかすらわかんないし、水の中だからなのかな? 苦しいから? 理由はよく分からないけど、何を言ってるのか私の耳には届かない。

 

────────────────(さあ、求めてくださいこの清姫を。)

 ────────────────(この手を熱く、蕩けるほどの愛を籠めて……)

 ────────────────(強く、つよく握ってください)

 ────────────────(あなた様は安珍さま、わたくしの愛しき人 )

 ────────────────(だからどうか、この手を掴んでください!)

 ────────────────(愛しているのだと証明してください!!)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(安珍さま、安珍さま、安珍さま、安珍さま)

 ────────────────(どうして手を握ってくださらないのですか!)

 ────────────────(極限の中でこそ芽生えるものこそが真の愛!)

 

 

 

 

 ──────────────────(わたくしを愛して……)

 ──────────────────(どうかわたくしに愛をくださいまし!)

 

 

 声が聞き取れないまま、こほっと身体に残った最後の酸素が身体から吐き出されて、私の意識も遠のいていく。 むしろ、私にしてはよく頑張ったほうじゃないかな?

 

マシュやドクターは誉めてくれるかな? べリアルさんは……誉めてくれると嬉しいなあ……

 

『────っ!? 』

 

「…………………!!!!! 」

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 プラズマスパークの光すらも届かない宇宙の果て……その光に蝕まれていても、光がなければ活動出来ない身体になってしまったべリアルは、今にもカラータイマーの光が消えてなくなりそうなほどに弱っていた。

 

『力を求めて……何が悪い……全宇宙の平和を望んで……何が悪い…… 』

 

 悪くない……べリアルのその真っ直ぐな目標は何も悪くないんだ……。

 

 ただ闇を拒絶する光の国と、力の為なら光でも闇でも関係ないという考えを持ってしまったから……

 

『光の国が憎いか? 』

 

『だ、だれだ……っ? 』

 

『私はレイブラッド。 全宇宙を支配する者 』

 

 レイブラッド……本人!?

べリアルがレイオニクスだってことは知ってたけど、亡霊の身となったレイブラッドがべリアルの前に姿を現した。

 

『お前に力をくれてやる。 全宇宙を征服する、支配する力を…… 』

 

『ぐ、ぐああああああ!!! や、やめろおおおおおお! 』

 

 亡霊がべリアルの身体の中に入り、闇の力をその手にしたべリアルは、銀の巨人を黒の巨人へと変えた。今まで私が良く目にしてきた姿、光の国を恐怖のドン底に落とし、アナザースペースを侵略して見せた闇の姿……。

 

 

『身体の支配が出来ないだと!? まあいい、精神だけは……抗えまい……ハハハハハハハ!!! 』

 

『コイツは…… 』

 

 如何にレイブラッド星人でもべリアルの身体を乗っ取ることは不可能だったらしい。

 

 自分の中に秘めていた力を闇によって目覚めさせたべリアルに反応したのか、宇宙の彼方からギガバトルナイザーが、主人を認めたかのように現れ、べリアルはギガバトルナイザーの力すらも自分の物とした。

 

 

 

 そうして、無敵の力に加え100の怪獣軍団を操れることが出来るようになったべリアルは、光の国への復讐を開始した。

 

『(そうだ、宇宙を支配するためには光の国が邪魔だ。この宇宙から消し去るのだ) 』

 

『べリアル!! ゼアッ!! 』

 

『ゾフィー!! 』

 

『宇宙を支配するのに、テメーら雑魚は邪魔なんだよ!! 』

 

 まだ胸にスターマークがないことからまだ新米なんだろうけど、レイブラッドに精神を汚染され宇宙平和を宇宙支配に塗り替えられたべリアルは、果敢に挑んできたゾフィーを一蹴し側にいたウルトラウーマンマリーも簡単に倒した。

 

 …………けど、そうだよな。 誰よりもべリアルの未来を心配していた貴方が出てこないわけないよな。

 

『やめろべリアル!! ここはお前の故郷だぞ!! 』

 

『故郷? 知らねえな。 そんなもの滅ぼしてやる、オレはお前ら復讐の為に帰ってきたんだ!! 』

 

 友としての情なのか、ケンは覚醒しているはずの超戦士の証を使わずにべリアルを止めようと挑む。

 

 けど無理だ! 今のべリアルを止めることが出来る戦士は光の国にはいない。 たとえケンが覚醒したとしても倒せない……

 

『があっ!? テメーはっ!! キングゥゥッッ!!! 』

 

『べリアル、光の国を汚すな 』

 

 キング……エンペラ星人が攻めてきた時ですら姿を現さなかったウルトラマンキングがべリアルのことを抑えた。

 

『闇のなかで永遠に罪の報いを受けるがいい 』

 

 …………如何にべリアルでもキングの力に抗うことは出来ず、高密度に圧縮した怪獣たちの亡骸を使い、宙にべリアルただ一人を封じ続けるための監獄『宇宙監獄』を造り出した。

 

 こうして、ザラブ星人によってその封印が解かれるまでの数万年の間、べリアルは監獄の中で憎しみを募らせることになった…………。

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 霧が晴れていく。 今までで真実から逃げ続け、自分の愛するまま想うままの世界しか見ようとしなかった狭いせまいわたくしの世界……。

 

 怖かったのです……。 安珍さまがわたくしから逃げてしまった時と同じように拒絶されることが……。 だからわたくしは、この心を灼いた感情に自分が最も嫌う『嘘』を付くことにした。

 

 あの方は、わたくしが名前をどんなに愛おしく呼んでも、笑顔を見せてはくれなかった、頬を赤らめてはくれなかった。 恐怖で強張った顔をして、まるで生気を感じられないほど青い顔をしてわたくしを拒絶した。

 

 だから、あの方と同じこの想いを抱いたますたあの、その名前を呼べば拒絶されると思ったのです。

拒絶されるのならば、いっそ狂ったほうが楽だ。 彼女を初恋の人(安珍さま)として見て、接すれば、きっと怖がらせなくて済む、わたくしに微笑むを向けてくれる。

 

 けど違った。 あのお方は、安珍さまとは違かった。 こんなにも愛に、恋に、憎しみに狂ったわたくしのことを正面から受け止めようとしてくれた。

 

 どんなに求めても届かなかったこの手を、あの方は、マスターは、立香さまは……強く握り返してくれた。

 

嬉しい、嬉しい。 うれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしい!!!

 

あの方は安珍さまではありません。 立香、藤丸立香さま……。 わたくしは、あなた様に恋をしているのですね……。

 

 

 

◇────

 

 

 

「かはっ!!! 」

 

 身体の中に入ってきた水が一気に口から吐き出される。

風を感じる、呼吸ができる。息を整えながら私は、自分が生きてるんだって実感から目から涙が溢れてくる。

 

『大丈夫だったかい立香ちゃん!!?』

 

「ドクター、私どうやって助かったんですか? 誰かに名前を呼ばれて……その手を掴んだことまではうっすらだけど覚えてるんですけど………… 」

 

『あああ立香ちゃん!! 今説明する時間はないんだ、目の前の彼女に抱きつくんだ!! 』

 

「へっ!? こ、こうですか!! 」

 

 ドクターに言われて反射的に目の前に見えた白色の何かにギュッと強く抱き着いた。 それは、私が両手を広げても全体の半分にも満たないくらい大きな円柱形の何かで、モゾモゾと動き出したかと思ったら、重なるように連なっていたひし形の何かが広がって……って彼女?

 

「わっ!! わああああああああ!!! 」

 

『ふふふふ、わたくしのこと強く抱き締めて離さないで下さいましね。 ますたぁ 』

 

 水面を高速で、這うように動き出したそれに振り落とされないように身体全体に力を入れていると、頭の中に響いてくる……この声って清姫? あれ抱き締めてってことは……。うねるように動くその動きに慣れてきたから顔を上げてみると……

 

 

 そこにいたのは大きな蛇。 先端部分が青みがかった白色の鱗をした大きな蛇が魔人柱相手に焔を吐いて攻撃してた。

 

「え!? き、清姫なの!! 」

 

『はい。 本来ならここまでの力は出せない筈なのですが…………これもますたあとの愛の力でしょうね 』

 

 言ってる理由はよく分かんないけど、本来なら清姫はこの蛇の姿にはなれないのかな?

 

んーーーなんだか理解が全然追い付いてないけど!!

 

「やっちゃえ清姫!! 」

 

『…………怖くは、ないのですか? 今の私のこの姿が 』

 

「え? 」

 

 頭に直接語りかけてくれるお陰かな、清姫が喋ってても戦闘に支障はないっぽいけど……怖い?

 

『この姿は、わたくしが愛憎の果てに安珍さまを灼き殺した醜き姿……あなた様も、灼き殺してしまうかも知れないのですよ? 』

 

「…………な~んだ、そんなことか 」

 

『そんな……こと? 』

 

「清姫、醜いって言うのは今目の前にいる魔人柱見たいなヤツのことを言うんだよ。 今の清姫は醜くなんてない、むしろ綺麗だよ! 」

 

 黒い巨大な柱、その柱を内側から喰い破るように幾筋もの裂け目から覗かせる無数の赤い目玉が観察するかのように私たちのことを狙っている。

 何を考えているのかわからない、だから私は魔人柱のことを怖いって思うんだ……。

 

 それは……少し前の清姫も同じだった。 私のことを安珍さまとしか見てくれない清姫、どんなに熱のこもった瞳で見つめられても、何を考えているのか分からない。 そんな清姫が私は怖かったんだ。

 

 だけど、今は違う。

 

「ねえ清姫。 私の名前……呼んでみてくれない? 」

 

『え?……あの、その…………立香……さま 』

 

「よっし行こう清姫!! 魔人柱を倒して、この特異点を終わらせるんだ!! 」

 

(ああ……こんなにも、簡単な事だったのですね。 燃えるような、灼くような恋を知っていても、わたくしは愛というものが何なのか理解していませんでした……。 ふふふ、これでは本当に子どもですね )

 

 話をしながら清姫の身体の上を移動して、首元までやって来た私は、清姫の頭を撫でながらこの戦いを終わらせるための指示を出す。

 

(恋を知り、愛を持っていた育む。 それが恋愛!! 恋だけに焦がれていたわたくしは幼稚でしかなかったのですね。 立香さまのお陰で気づくことが出来ました、焼けるようなこの恋の焔を燃やし、その焔が消えないように愛を作る……ああっ、ああっ!! なんと素晴らしい事なのでしょうか!! あのお方との出会いはとても衝撃的でした……ですが、これはそれと同じ、いいえ越えていく強く熱く溶けてしまう感情の波!! ああ立香さま。 恋しい愛しいわたくしの番……。 一緒にいたい、はしたないと思われようとあなた様のことがもっと知りたい!! わたくしの事ならどんなことでもお教えします!! ああ、ああっ!! )

 

『いつまでも、この身が滅びようとも……あなた様をお慕いし続けます、立香さま 』

 

 

 

 




・清姫の白蛇転身
 FGOの宝具『転身火生三昧』は竜へ転身を果たすが、その姿は短時間しか維持できないため青い炎の竜にしかなれない。 ある要因と、精神的な成長がキーとなり長時間の転身を可能にした。大きさ的にはモンハンのガララアジャラと同等かそれより一回り大きいくらいのサイズ。

・ギガバトルナイザーについて
 ジードの映画にてクシア人の発明したギガファイナライザーのプロトタイプということが判明した万能武器。 ギガファイナライザーがリクくんの想いに反応してその力を目覚めさせたことから、ギガバトルナイザーはべリアルがレイオニクスに目覚めたことに反応して目の前に出現した。
 攻撃武器としては担い手の力を通しての使用なためヒカリやザラブ星人でも扱うことが可能。 怪獣使役はレイオニクスの力が必要、だからレイバトスはタイラントを復活させることが出来た。
100体使役、ウルトラマンを倒す程のエネルギーはべリアルにしか不可能。

 バトルナイザーはべリアルが封印されたため、レイブラッドが開発。 全知全能でも数万年の時間を費やした。


・ジャンヌオルタを連れていく→ジャンタ生まれなくなっちゃうからダメ。 アステリオスのことEX進化させるんだからもう1体→清姫。 清姫に立香って呼ばせたいという願望から今回の同行メンバーは清姫オンリーに


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7

今回でオケアノスも終結。
いつもよりも短いですがよろしくお願いします。

感想、評価いつでもお待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字の報告有難うございます。


「これで……終わり!! 」

 

 

 世界最古の海賊船──アルゴー船は今、炎に包まれ燃え続けていた。 蛇へと転身した清姫の勢いを止められるものはおらず、数えるのも億劫なほどいたシャドウサーヴァントも燃やし、メディアに回復の隙も再召喚の隙すらも与えない勢いで焔が上がっている。

 

 そして、最後に残った魔人柱に止めを刺したのは、船を揺るがすほどの大声と共に上空から落ちてきたアステリオスだった。 アステリオスが進化したことに伴い、大きく巨大になり両刃斧へと戻った『ラビュリス』で文字通り真っ二つに斬り倒して見せた。

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛…………何故、なぜなんだ。 このおレは王になるべくして生まれてきた存在だ。 そのおレが……なんで!! 』

 

 メディアを守り続けていたヘクトールもマシュたちが倒し、残ったのは若かりし時のメディアと……魔人柱の贄とされ、もう人のかたちをしただけの肉片と化したイアソンだけだった。

 

(この炎の中を歩いてきた……。 さも平然と、まるで平野を歩くのと同じように )

 

『き……キサマばっ! 』

 

「べリアルさんっ!! 」

 

 アステリオスがここに来たのだ、彼もいて当然である。 しかし、そんなべリアルの異常さを知らないイアソンとメディアは、その顔を驚きに染めていた。

 

 まるで生きているかのように動く炎の中を、汗のひとつもかかずにべリアルは歩いてイアソンたちへと近づいていく。

 

「運命を変える力も持たない貴様ごときが、王に、王として認められるわけがないだろうが、身の程を弁えろ 」

 

『このおレに、王の資格がないだと!! キサマのような素性も位も無に等しいヤツに何がわかる!! わかってたまるものか!! 』

 

 王の子として生まれながらも叔父にその座を奪われた。

 ケンタウロスの馬蔵に押し込まれながらも才気を養った。

 アルゴー船を組み上げ、英雄たちをまとめあげ偉大な功績を残して見せた。

それだけの事を成した自分は、王になるのが当然なんだとぶちまける。

 

 確かに充分だろう、イアソンは自分で誇るように偉業を成し遂げた。

 

 

 だからこそ、べリアルはそんなイアソンのことを否定する。

 

「求めすぎた力の先にあるのは崩壊だけだ。 運命を変える力を傍らに携えながら、それを裏切り捨てたキサマには何もない、何も残りはしない 」

 

 べリアルは一瞬ではあるが、メディアのことを一瞥すると肉片となったイアソンに黒き鋼を向ける。

 

「力こそが全てだ。 他者を圧倒し、その力で平伏させる。 …………だがな、捨ててはいけないものまで捨てた、その裏切りの果てには…………何も残らない 」

 

(イアソンに言ってるはずなのに……何だがまるで…… )

 

清姫の上からいく末を見守っていた立香が感じた違和感。 べリアルの物言いは確かにイアソンに向けられたものであるが……それはまるで自分に語っているような儚いものだった。

 

 エネルギーの塊でイアソンのことを完全に消し去り、その手に持った聖杯を立香に投げ渡したべリアル、そこ残っているメディアには一切手を下さず、空へと消えていった。

 

 自然に消えることを待つだけとなったメディアは、空へと消えていったべリアルのことを見つめながら、立香に向けて言葉を呟いた。

 

「アナタたちでは、彼には絶対に敵わないものと思っていました……。 けれど…………彼の者ならば…………。

 カルデアのマスター、星を集めなさい。 幾つもの輝く星を……。 彼の者の宙には、小さな星が輝きはじめています。 だから────消えぬ闇の大地を照らす輝く星を──── 」

 

「あっ、まってメディア!! 」

 

 それは、自由を奪われた彼女の遺した唯一の抵抗だったのかも知れない。 手を伸ばす立香に笑顔を浮かべた彼女は、アルゴー船と共に炎に包まれて消えていった。

 

「今の言葉……どういう意味だったんだろう…………? 星を、集める? 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

闇を見た…………

 

深い深い憎しみの果てに生まれた、何処までも深く、終わりのない暗黒を……

 

光を見た…………

 

どんな光にだって負けない、強く輝く大きな光の始まりを……

 

 

善を見た…………

 

誰にも理解されない、誰も共感してくれない。それでも、自分の中の正しさを為すために進み続ける真っ直ぐすぎる正義を

 

悪を見た…………

 

他者の気持ちを顧みず、自分勝手な正しさを振り回す悪を……。

悪によって善が捻じ曲げられてしまうのを……

 

闇の中には悪しかない、善は光ある所にしか生まれない……そう思っていた、思い込んでいた……。

 

けど違う、空を覆う雲の先に青空が広がっているように、月のでない真っ暗な夜の中でも、星が輝いているように……そこに光はあるんだ……。

なんで忘れてたんだろうな……『例え人の心から闇が消えることはなくても、人間は自分自身で光になれるんだ 』そうですよね、ダイゴさん……。

 

べリアル……いいや、()()()()()()

この場所が貴方の心の中だっていうんなら、ありますよね?

心から闇が消えることがないなら、光だって同じだ。

 

手に取れないほど小さくても、簡単に消えてしまいそうなほど弱々しくても……

 

光が…………絶対ある。

 

必ず見つけてみせる、その光を、その輝きを……

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はべリアルレポート&過去編の次の行先を少し

・イアソンの生前の行いを見ると運命に抗い続けはしたがその方法を間違えた結果、自分を過信し続けたせいで陥る最後。 どこかべリアルに通じるものがありながら、やっぱりイアソンの性格がクズ過ぎるせいで認められることはない。



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ベリアルレポート4+α


感想、評価いつでもお待ちしてます。

ご指摘、誤字脱字の報告助かってます。


 第三特異点の修復が無事に終わった。 カルデアから立香ちゃんたちを助けるためのサーヴァントが何故か清姫一人しか向かわせることが出来ないという問題があったけどね。

 けど、未だ分からず仕舞いなのはベリアルがどのような方法を用いてヘラクレスを攻略したのかという部分と、アステリオスと清姫2人のサーヴァントの霊基が変化……いや『進化』とでも呼んだ方がしっくりとくるものになったことだ。

 

 ヘラクレス──人類最強の英霊、その強さだけでも充分だというのに、その宝具の能力によって合計12の命を削らなければ倒せないという無理難題にも程がある強力無比のサーヴァントだった。 そのヘラクレス、そしてアステリオスのことを連れて嵐の中へ消えていったベリアル。 映像はそこで途絶えてしまった……。

 

 けどそこで起きたこととアステリオスの『進化』は繋がっている。 ベリアルは何らかの方法でアステリオスの霊基を書き換え、もう一つの真名であるミノタウロスに近しい霊基にしたんだ。 だけどそれだけじゃ収まらない。 アステリオスはミノタウロスになりながらも理性や知性を失っていなかったんだ。 本来のミノタウロスとしての召喚ならば、完全に理性や知性を有していない本当の怪物としてのはずだ。 それなのにアステリオスは心を失っていなかった、『ミノタウロス』の身体を『アステリオス』として扱っているって所かな?

 

 もう一人の進化対象である清姫。 彼女に関してはベリアルとの関係性が見出せなかったが、上記の事を踏まえるとベリアルがいつの間にか接触していたと考えていいだろう。

蛇としての転身、それは元から清姫が持っていた宝具だ。 その宝具は清姫の伝説を体現した一撃、安珍のことを燃やし尽くし最後には自分も死んだ……それが彼女の宝具『転身火生三昧』だ。蛇となったのが一瞬だったからなのか、その宝具は長時間維持することは無理だと彼女本人が言っていた。

だと言うのに、彼女自身がその常識を覆して見せた。 何だアレ? 魔神柱と戦う姿なんて怪獣大戦争そのものだぞ? アステリオスも最後には加わって更に拍車がかかったし!!

 

ああ〜〜もう!! 警戒すれば警戒するほど次から次へと問題が舞い込んでくる!! 何だって言うんだ彼は!!!

 

 

「あの……ドクター。 今、お時間よろしいでしょうか? 」

 

「!? ままま、マシュか。 こんな時間にどうしたんだい? 特異点での疲れも残っているだろうし休んでいた方が…… 」

 

「はい、そうした方が良いとは分かってはいるのですが。 どうしてもドクターから彼の話が聞きたくて 」

 

「彼? ああベリアルのことかい? 僕から話せる事なんてほとんど何もないよ、むしろ一緒にいる時間の長い立香ちゃんやマシュの方が 」

 

「いいえ、違うんです。 聞きたいのはベリアルさんの事ではなくて……その宮原博樹さんの事で 」

 

 博樹さんのこと……そう言えば、彼との初対面も立香ちゃんと同じ感じだったっけ?

まあ、そう言っても見ただけで年上ってわかる人だったからね、そんなに強い言葉は出してないんだけど

 

『ああそうだったんですか。 今日からここに赴任したので隣の人にご挨拶をと思ったんですが 』

 

 引っ越しの挨拶なんて、日本の昔からの習慣をやって来る人なんて彼くらいだよ。

ああその後かい? 貰った菓子折りを一緒に食べて僕のことを紹介して……ちゃんと仕事に戻ったんだ!

 そうそう彼が『こんなに凄い施設の中で全員の命を預かってる立場にいるなんて尊敬します 』なんて言われたのが嬉しくてついついやる気でちゃんだよね。

 まあ、その後彼のウルトラマングッズを運ぶのに駆り出されて大変だったんだけど。

 

 ベリアルと比べて……かい? そうだね、彼はベリアルとは正反対と言ってもいい人物だろうね。 ベリアルは誰かと仲良くはなろうとしないだろう? けど博樹さんは違ったよ。 魔術のまの字も知らないからって怯える事なんて無くて、むしろ積極的にマスター候補のみんなと仲良くなろうと交流を深めてたくらいだからね。

 

 君も見なかったかい? Aチームの何人かと話してる彼のこと、成績は優秀だけど変わり者が多いあの子たちとだぞ? 立香ちゃんが来るまでの数週間って短い間で距離を詰められる人なんて初めて見たよ。

 

 ああけど、彼の仲良くなると立香ちゃんの仲良くなるは違うものだとと僕は思うよ? 僕も友人が多かった訳じゃないからその違いまでは上手く表現できないけどね。

 

もしも彼が目覚めたら……そうだね。 これは希望的観測でしかないけど……

 

 

「彼なら、ベリアルとでも仲良くなってくれるんじゃないかって……そう思っているよ 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 私は幾度も幾度も暗闇が続いていく中を、当てもなく歩き続けていた。

 

 何年、何十年……もしかしたら何百何万と月日が流れてるかも知れない。 そんな感覚がおかしくなってでもまだ、私は探し続けていた。

レイブラッドの怨念に呑まれてしまっていても、必ず光があると信じて……

 

『オレは完全なる復活を遂げた……光の国のヤツらへの復讐の時だ!! 』

 

 この声は…………ベリアルさん? でもどこに……?

 

『私にはかつての友としての情がある……。 誰が許さなくても私だけはお前を……だから…… 』

 

『オレにも野望がある!! 誰もオレを止められねえのさ!! 』

 

『それでも止める!! 平和のために!! 』

 

『やってみろおおおお!!! ケエエエエエエエンッッ!!!!! 』

 

『私はもうケンではない。 宇宙警備隊大隊長……ウルトラの父だ!! 』

 

『『はああああああああああ!!!!! 』』

 

お互いが譲れない、正義と野望(正義)の激しいぶつかり合い、なんだなんなんよこれは!?

何だ、この記憶は…………この感情は……怒り?

 

『これだけの事を仕出かして……まだテメーは満足しねえのかよっべリアル!! 』

 

『満足? するわけがねえだろ!! この憎しみがそんな簡単に取り払われるわけがねえだろっ!! 』

 

『そうかよ……なんだったらその悪も、闇も!! このオレが取っ払ってやらああ!! ベリアルっ!! 覚悟しやがれええええ!!! 』

 

『今のオレを、お前ごときが倒せると思うなっ!! ゼロオオオオオオ!!!! 』

 

止められない、止まらない。 太陽のように輝くその光じゃ、暗黒を止められない。

 

『ふははははは、来ると思ってたぜ……キング 』

 

『ベリアル……自分がしている事が何なのか理解しているのか 』

 

『誰よりもよく理解しているさ。 この爆弾はオマエですら止めることが出来ない。 だが、オレのやる事なす事全てを否定してきたアンタだ、身体張ってでもこの宇宙を守ってみせるんだろう? これでオレの復讐は終わりにしてやるよ!! だから……テメーと一緒に死んでやる 』

 

 そうして起きたのが、この暗黒の世界すらも破壊してしまうほどの爆発。その中心に出来たブラックホールのようなものに逆らうことも出来ず、私は闇のなかに引きずり込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(ん……、ここは……どこだ? )

 

 目が覚めると、辺り一面に広がる光景に衝撃を受けてしまった。 だってそこは何もないただ真っ白な空間に立たされていた。

 

 どうすればいいのか分からず、足跡すら残らないその場所を歩いていると、遠くの方で何が落ちてくるのを見つけた。

 

『────!! 』

 

 落ちてくる何かを確かめるために足を進めていくと、何か声のようなものが聞こえてくる。

知らない筈なのに、どこか懐かしくて胸の奥が熱くなってくる……そんな声

 

『これは……黒い……雲? いいや、違うっ!! 』

 

 落ちてきたその物体は、黒雷を纏った雲のような形をしていた。 その雲はまるで大きくなるのを待つように漂い、来るものを拒むように雷を鳴らす。

けど、私の目には確かにそれが映って見えた。 その雲の中にある、小さなちいさな光の欠片が……ずっと、ずっと探し求めていたものが……

 

『オギャア! オギャア!! 』

 

 白い空間に歪みが生まれ、そこから外の景色が伺えた。天文台と……親に捨てられてしまったのか、泣き声を上げることしか出来ない小さなちいさな赤ん坊。

 

そうか、君が私のことを……この場所に呼んでくれたかい?

 

 




焦がれ、追いかけ、求め、叛逆した
だが、その叛逆はついぞ果たされることはなかった。
叛逆の騎士を名乗りながら、終わる景色にはいつもあの人が立っていた……。
王を超える為に生まれながら、成し遂げられなかったその宿命……。

へっ!! だったらここで越えてやる!! 起こしてやるよ! オレの『ジード』ってヤツをなあ!!


次回 、Fate/Grand Order〜Bの因子〜第4章 『GEEDの証』

「あれを王と認めねえんだったら、オレにテメーの真の耀きを見せやがれ!! クラレントオオオオッッ!!!! 」


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死界魔霧都市 ロンドン~GEEDの証~
1


今回から4章~GEEDの証~開始です。
実際頭のなかではこう書こうというイメージやプロットは出来上がっているのですが如何せんむずかしい……。

感想、評価のほどお待ちしてます
ご指摘、誤字脱字ありましたらご報告ください。


『はじめまして、昨日就けでカルデアに赴任した宮原博樹です。 よろしくお願いします 』

 

 自然な笑顔と言うのを初めて見た。それが私が宮原博樹さんに初めて出会った時の印象でした。

 

 局員の方たちと、同じマスター候補として選ばれた人たち全員に挨拶をして回っているらしく、戦闘訓練が出来ず談話室で休憩していた所に邂逅し挨拶をしてくれました。

 

 ドクターを含めて局員の方たち、そしてマスター候補として選ばれた46人は、笑顔を見せてくれても、それは気を使っている相手の様子を伺っていると言ったようなものでした。

 

 だから、何の企みもない……悪く言ってしまえば何も考えていないその笑顔はとても眩しく感じました。 ただ、お歳が離れていると言うこともあって何を話せばいいのか話題を持ち合わせていなかった私は、挨拶を返してその場を後にしました。

 

 その事もあったからなのでしょうか? 先輩と初めて出会った時に見せてくれたその自然な笑顔にとても安心感を覚え、信頼をよせることが出来たのは……

 

 

 

「マシュー入るよ~ 」

 

「先輩…………おはようございます 」

 

「おはようマシュ。 よく眠れた? 」

 

「はい。 …………もし目覚めたら、今度は私の方から声をかけてきちんとお話ししたいと。そう思える夢を見ました 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 天文台で捨てられてしまったのか、誰の子どもかも分からない彼は、町長だった人が預り戸籍を編制した。

 

 子どもの名前は『朝倉(リク)

 

 大きくて、とても大切な想いが込められた名前を貰った彼は、朝倉家に事情があって物心つくころまでは孤児院で育った彼は、弟が欲しいとぐずる娘さんのいた愛崎家に引き取られことになった。

 

 リクくんはすくすくと大きくなっていくけれど、やっぱり親がいないってことはリクくんの心を傷つけてしまう。

 

 お父さんもお母さんもいない、拾われた子。 リクくん自体、環境があったのかも知れないけどあんまり自己主張が強い子ではなかったから、どうしても同年代の子からイジメの対象になってしまった。

 

 けど、暴力を振るうなんて出来ない優しい子だったリクくんは、心に悲しみを溜め込むことしか出来なかった。

 

 真っ白な空間の空から振る雨はどこか暖かくて、この手がリクくんに触れられないのがどうしようもなく……不甲斐ない。

 

 黒雷の雲が大きくなってる? この雨を受けて大きくなってるのか!! だめだ、だめだリクくん!!

 

『ジーっとしてても、ドーにもならないよっ!! 』

 

 他の人とぼくは違う。 その気持ちが強くなってしまうリクくんは、他人とどう関わればいいのか分からない、友達って何なのかわからなくて踞ってしまっていた。 でも、そんなリクくんの支えになってくれたのが一緒に暮らしていた姉同然の幼馴染み──愛崎モアちゃんだった。彼女が教えてくれたその言葉が、降り注いでいた雨を止めた。

 

ジーっとしてても、ドーにもならない。立ち止まってるだけじゃ何も始まらないぞっていう意味が込められたその言葉を合言葉にして、リクくんは自分から声をかけるようになった。

 

 それでも、空は雲に覆われた状態のままだ……。モアちゃんの言葉のお陰で少しだけ前に進むことが出来たリクくんだけど、その顔の表情に笑顔が浮かべることは少ない……。 子どもっていうのはみんな笑顔を浮かべてるものだ。

 

『お前となんて友達になんてなんねーよ!! 』

 

『お前パパとママいないんだろ? だっせー 』

 

 "みんなと違う"それはリクくんにとって何よりも辛いことだった。どうしてぼくはみんなとちがうの? なんでおとうさんとおかあさんはいないの? その気持ちをぶつけられる誰かがいないから、リクくんは一人我慢して泣いていることしか出来なかった……。

 

『君の笑顔を取り戻す。 Heae we go!! 』

 

 晴れた!! だけじゃない……何もない空白の世界に太陽が射し込み、大地には花々が咲いた。 憧れ、こんな風になりたいって気持ちがリクくんの本当の笑顔が取り戻したんだ。

 

 私にとっての憧れがウルトラマンだったように、『ドンシャイン』がリクくんの未来に光を差してくれた。

 そんなリクくんの心の変化に呼応するように雲は消え、少しだけ大きくなった光の欠片とそこに纏う黒雷だけになった。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

「おらあっ!! 」

 

 十九世紀のロンドン。 人類史のターニングポイントとして産業革命が起きたその時代が4つ目の特異点となる場所だった。

 

 レイシフトの方も何の問題もなく成功したんだけど……ロンドンに来て早々に戦闘が始まってしまう。 最初は敵対する意思は感じなかったんだけど、その人はべリアルさんの顔を見るなり携えてた剣を向けて襲いかかってきた。顔を見る感じだと私やマシュとそう年も離れてないように見える、重そうな鎧を着た騎士。

 

 突然のことだったけど、それに反応できないべリアルさんじゃない。黒き鋼を出すまでもなく寸の所で剣を避けた、ていうか今も避け続けてる。

 

「なんの真似だ貴様 」

 

「ああ!? 知らねえなぁ!! オレの直感がテメーのことをぶった切れっつってんだ、大人しく斬られてろ!! 」

 

 理不尽!! そう思わざる得ない行為だけど、相手の剣技はとても洗礼されていて、どこかで見たことがあるそんな既視感を覚えるものだ。 どこで見たんだっけ?

 

 そう思いながら、増援しようにもタイミングが分からないマシュと一緒に戦いの行方を見守ってるけど、べリアルさんが一向に攻撃をする素振りを見せない。

 

 いつもならひょいひょいっと相手の攻撃の隙をついたりして思いきり攻撃を喰らわせるのに、何だか変な感じだ。

この霧のせいで調子が悪かったりするのかなべリアルさん?

 

 一方で、ずっと振り続けてるのに疲労も、剣技が鈍ることもない相手だけど、その表情はどんどん怒りに染まっていく……。

 

 そりゃあそうだよね。 どんなに振っても自分の剣が当たんないんだもん

 

"────────"

 

「? マシュ、今なんか言った? 」

 

「いいえ。 何も言っていませんが、どうかしたんですか? 」

 

 気のせい……かなあ?今、誰かに呼ばれてるような声が聞こえたと思ったんだけど……

 

「ちっ!! 余所見してんじゃねええ!! 」

 

 ごめんなさいっ!! って私に言ったんじゃない? 見てみると、騎士の持つ剣に魔力が込められたのか赤い雷を纏ったその強力な一撃がべリアルさんに向けて振るわれてる瞬間だった。

 

()()()に似ていると思い、少し興味があったが……この程度か 」

 

「くそがっ!! 」

 

 流石はべリアルさんだ。赤い雷を纏ってるはずの剣を片手だけで受け止めてみせた。…………アイツ? アイツって誰のことを言ってるんだろう。

 

  だけど、相手も剣を失ったくらいで止まるわけもなく、べリアルさんの腹目掛けて魔力で強化した拳を向ける。

 

「叛逆の騎士……嗤わせるなっ。 "()()()"を成し得ていない貴様に叛逆者を名乗る資格はない 」

 

「ガッ、ハッッ!! 」

 

 その拳も、べリアルさんには届かない。 本当規格外って言ってもいい強さを誇るべリアルさんは、相手の騎士の逆に鎧越しに腹部を殴ぐって吹き飛ばした。

 1つ、2つ、3つと建物を壊しながら吹き飛ばされていったけど……大丈夫かな?

 

『や、やっと通信が回復した!! べリアル、今すぐ戦いを止めるんだ!! あの騎士はこの特異点の事情を知ってる、情報を聞いて対策を……』

 

「向かう場所が出来た。 あの出来損ないの対処は任せたぞ 」

 

「え? へっ!? べリアルさんっ!! 」

 

 ドクターの話も聞かずに(いつものことだけど)べリアルさんは霧の濃い街の中に姿を消していってしまった。

 

「おい!! 待ちやが……れ………… 」

 

 ベリアルさんが投げ捨てた剣を呼び寄せて、それを支えに立ち上がったけどその口から垂れ流れる血を見るとそれだけべリアルさんの一撃が強力だったのが見て取れる。それでもベリアルさんの攻撃を耐えきったその騎士は、霧の中に消えていったべリアルさんに向けて吼えながら意識を失い倒れてしまう。

 

「先輩……どうしましょうか? 」

 

「放っては……置けないよね 」

 

 そう言えば……べリアルさんがあの騎士に言った一言……ジードってどういう意味だろう?

 

 




爆裂戦記ドンシャイン
『ウルトラマンジード』の物語世界における特撮ヒーロー番組。 全52話放送(サブタイトルもあり)
実際はリクが生まれる少し前の時代に作られた番組だが、幾度かのブーム再燃の時期がありリクはそれの握手会に参加した。

52話あるなかでドンシャインの正体は最後まで謎のまま、一応正体についての推測が出されるがドンシャインはイエスともノーとも明確に答えていない。


握手会のシーンは何度見ても泣けるし、ドンシャイン神対応すぎるしでもう……好き!!


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2

ライダーは仮面を被っているからその表情が読み取れない。
反面ウルトラマンはずっと見ていくとその顔と変身者の顔が被って見える。ジードの目は他ウルトラマンとは違うからそれが顕著に出てる気がする。

感想、評価いただけると嬉しいです。
ご指摘、誤字脱字ありましたらご報告ください。


 マスターのいないはぐれのサーヴァントとして喚ばれたモードレッドは、自分以外がアーサー王の国であるこのロンディニウムを汚すことは許さないという無茶苦茶な理由からこの特異点を作り出した元凶と敵対していた。

 

 そんなモードレッドは霧の中の異端を止めるために散策をしていた所で立香たちと遭遇した。

 

「ああ? 何だお前ら、この霧ん中を普通にいるなんて…………!!! 」

 

 突然と霧の中に現れた立香たちから悪意を感じないことを分かっていながらも、元々の性分で威嚇しながら近づいていったモードレッドはべリアルを見た瞬間、毛が逆立ち心臓が燃え盛るほどの激情に包まれた。

 

 後先考えず、自分の感情を爆発させたモードレッドはべリアルに襲いかかった。

 

(その目だ!! 俺を透して俺じゃねえ誰かを見てるその目が気に食わねえんだよ!! )

 

 鍛えてきた剣が一回も当たらないから、相手が一度も攻撃してこないから、確かにそれも一因としてあるかも知れないが、モードレッドがもっとも怒っているのはべリアルのその目だった。

自分のことを見ているのにまるで眼中にない、今戦っているのは自分なのに他の誰かを見ているその目が気に食わなかった。

 

(俺を見ろ!! 俺を見ろ!! この()を見ろっっ!!!! )

 

 怒りをぶつけている、不意にべリアルが顔をどこか遠くへ向けた。 それがいけなかった。

 

「っ!! 余所見してんじゃねええよっ!!!!! 」

 

 自分のことを見ていないということを顕著に行動として示された。その行為が何より許せなかった。

 怒りの爆発と共に、べリアルに攻撃が入るとしたらここしかない。そう直感的に感じたモードレッドは『魔力放出』によってべリアルとの距離を一気に詰め、クラレントに赤雷を纏わせた強大な斬撃をべリアルの首めがけて降り下ろした。

 

 「()()()に似ていると思い、少し興味があったが……この程度か 」

 

「(クラレントを片手で受け止めただと!? )くそがっ!! 」

 

 クラレントを受け止められた所でモードレッドは止まらない。剣から手を離し、べリアルの腹目掛けて拳を振るう。

 

「叛逆の騎士……嗤わせるなっ。 "()()()"をなし得ていない貴様に叛逆を名乗る資格はない 」

 

「ガッ、ハッッ!! 」

 

 その拳すらも届かない、逆に鎧越しに腹部を殴られたモードレッドは建ち並ぶ建物に吹き飛ばされる。

 

(何でだ……何でこんなに苛つく……心が荒ぶる…… )

 

 腹部を殴られ、肋骨も折られ口から血を吐き出しながらモードレッドは考えていた。 どうして自分はこれ程までにべリアルに怒りをぶつけているのかと

 

(皮を被っちゃいるがあんなヤツ、生きてた頃に見たこともねえ。 何度か喚ばれた記憶の中にだっていやしねえ。 それなのになんで……なんでだっ!! )

 

 思案しながら、腹部を抑えて立ち上がったモードレッドは、呼び寄せたクラレントを支えにしてべリアルに向かおうとする。

 

「向かう場所が出来た。 あの出来損ないの対処は任せたぞ 」

 

「(出来損ないだと……!? ふざけんじゃねえ!! ) おい!! まちやが……れ…… 」

 

 怒りで頭の血管が切れてしまったのか、モードレッドは霞む景色のなか遠くへ消えていくべリアルを睨みながら意識を手離した。

 

(なんで……なんでだ……。 姿形……声だって似ても似つかない……それなのになんで………… )

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 ”クライシス・インパクト”『巨大隕石の落下による大崩壊とそれに伴う環境異変で地球が危機に瀕した』大事件。私がいた地球ではそんなことは起きていないから、この地球、宇宙はアナザー・スペースのような所だってことが分かる。

 その大事件は時代の流れとともにビフォア・クライシスやアフター・クライシスと呼ばれていた時期もあったけど、ここ数年でクライシス・インパクトで落ち着いてきた。

 

 リクくんの心にドンシャインっていう光が差し込んでから、リクくんは19歳になるまで成長していた。

19年か……ははは、長いなぁ。 あの小さかったリクくんが 、もう愛より大きくなっちゃったんだなあ。

 

 そんなリクくんは高校卒業と同じに愛崎家を離れ、銀河マーケットっていう駄菓子中心のお店で住み込みでアルバイトとして働きながら夢を探してるってところだ。

 

『店長は君が一人で住んでいると思っている』

 

 リクくんの影から出てきた宇宙人。彼はペガ、立派な大人になるためにこの地球にやって来たペガッサ星人の一人だけど、あることがキッカケでリクくんの一番の友達になってそれからずっと一緒に暮らしてる。 リクくんが中学生の時に出会ってからずっとだから……6年くらいになるのか? 最初は日本語なんて話せなかったペガくんも今じゃ普通に日本語を話してるんだもんな、そりゃあ時間の流れを感じるか。

 

 ペガくんが最初に地球にやってきたタイミングと、初めて起きた怪獣の出現、それによって命を落とした人がいたっていう事件の時期が近かったからもしかして……と思ったこともあったけど、すぐにペガくんはそんなことする子じゃないってわかった。

 

『本当にいるのかな? 宇宙の平和を守るためにべリアルっていう悪者と戦ったっていう──"ウルトラマン!! "』

 

 この宇宙にウルトラマンは存在していない。宇宙人であるペガくんが都市伝説だって言ってることから地球に来ていないじゃなくてこの宇宙には光の国すらないってことがわかってくる。

 

 けど、今リクくんの口から出た一人のウルトラマンの名前──べリアルさん。 彼だけは写真に残されたその残忍な姿から、テレビや雑誌で何度も取り上げられていて『クライシス・インパクト』を引き起こした張本人、大悪人と報じられている。

 

『僕に力があったら、町を守れたのに……』

 

 ペガくんと2人、平凡な生活を送っていたリクくんの日常は突然に終わりを迎えた。 6年前に1度だけ確認されてから姿を現さなかった怪獣がその姿を現したからだ。 見たこともない、けど何処か既視感を感じるその怪獣はまるで狙い定めたかのようにリクくんの住む銀河マーケットを意図も容易く破壊した。

 

 そんな怪獣を前にして、リクくんは自分に力がないことを嘆いた。 力があったらドンシャインのように敵をやっつけるヒーローになれたのにと……

 

『こういう時は"ジード"だ。 ジーっとしててもドーにもなんないっ 』

 

 家をなくしたリクくんは友達を頼ったけど誰も良いとは言ってくれなかった。 ペガくんは『本当は友達なんかじゃなかったのかも』なんて暗い発言をするけど、リクくんはそのことを前向きに捉えて、自分が拾われた天文台近くで野宿することにした。

 

『Bの因子、確認。 基地をスリープモードから通常モードへ移行します 』

 

 野宿の準備を終えて一息つこうとしたリクくんの前に現れた球体型の偵察機、報告管理システムだというその機械は、リクくんのことをマスターと呼び地下にある機械施設へと招いた。

 

『これはあなたの運命です』

 

『マスターはウルトラマンの遺伝子を受け継ぐものです 』

 

 やっぱり、そういう運命だったんだね……リクくん。 自分に戦う力が、怪獣を止める力があるんだって知ったリクくんは怪獣を止めるために、報告管理システム──レム──からライザーと装填ナックル、そしてウルトラマンの強大な力が込められたカプセルを2本受け取って、変身を試みた。

 

『ジーっとしてても、ドーにもならねぇっ!! 』

 

1本は、最初に地球へやってきた初代ウルトラマン。

 

そしてもう1本は……ウルトラマンべリアル。 彼の力が込められたカプセルだった……。

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

ロンドン ソーホー

 変わらず霧に包まれたその場所では、他の場所とは違う異変が起きていた。

────醒めない眠りへ落とす魔本。その存在を知ってか知らずか毎度のことのように個人で動いているべリアルはソーホーにある古書店へと立ち寄っていた。

 

「む、救援を呼んだには呼んだが些か早すぎるな。 何者だ貴様 ……まあいい、読みたくもない小説を1冊目で終わせることが出来たからな 」

 

「……サーヴァントか 」

 

 一見するとその小柄な体躯から、魔本から逃れた子どものように勘違いしてしまいそうだが、べリアルはそんなことはなく彼──アンデルセンがサーヴァントだということを最初から見抜いた。そんなべリアルは、アンデルセンと言葉を交わすことなく、古書店の二階へ続く階段へと歩みを進めていく。

 

「あの男……本の結末だけを見てその道程は省くタイプか? まあいい、こんな状況だ。問題を先送りさせるより幾分かはましだろう 」

 

 

 

 

「お前か。 このオレを喚んでいたのは 」

 

──暴れていた魔本の正体、それはマスターを探すはぐれのサーヴァント。 べリアルの後を着いてきたアンデルセンは既にその結論に達していたらしく、魔本に実体を持たせ倒すために『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』という題名をつけた。

 

 題名をつけられた魔本は実態を持ち合わせ、金属の光沢を持ち周囲の光景が映り込んだ鏡のような黒いドレス、人ではないことを強調している球体関節の手足を持った可愛らしい幼女の姿をとる。

 

 実態を持ったその本を見て、べリアルは自身を呼んだのはナーサリー・ライムかと問い掛ける。 モードレッドとの戦闘中、べリアルが不意に目線を逸らしたのはかの本の声が聞こえきたからだ。

 

「──違う。 あなたはありすじゃない けどとってもありすに似ているわ。 あなたもありすと一緒で居場所(身体)がないのね 」

 

「!? 」

 

「ほう、読み手に合わせてその姿を変えるか……。 しかしその姿はなんだ? 読み違いにしても語弊が有りすぎるぞ? 」

 

 アンデルセンは誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)が変化して見せたその姿に苦情を漏らすが、映し出された本人であるべリアルの表情は驚愕の一言だった。

 

 どんな相手を前にしてもその表情を大きく変化させることのなかったべリアルが見せる表情。 きっとこの旅でべリアルをずっと見てきた立香やマシュが見ていたらそれだけで足を止めてしまうほどの衝撃だっただろう。

 

「なぜ……何故キサマがその姿を知っている!!! 」

 

 その姿を見て狼狽えたべリアルは、誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)に向けて襲いかかる。しかし、それよりも速く誰かの為の物語の攻撃ともいえない攻撃がべリアルを襲った。

 

「変身するわ、変身するの。 私は貴方、貴方は私」

 

『変身するぞ、変身したぞ。 オレはおまえで、おまえはオレだ 』

 

「『さあ、夢の世界へご招待 』」

 




Q 何でリクくんってフリーターだったんだろう? スーツアクターにでもなればよかったのに

A 身体能力がフルで反映すると自分が人間じゃないってことが謙虚に出てしまう、誰かに拒絶される恐怖がある。とか考えると仕方ないとしか言えない。

ジードを最初みた時の感想。 あ、あのアニキっ!とか言ってた子がこんなにおっきくなって……しかもウルトラマンに!?


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3

ルーブのEXPOステージ。 ルーブメインだし足を運ぶのは〜と思い行きませんでしたがツイッターで「ジードが〇〇〇〇〇〇〇〇〇を使用した」という情報を見つけ一気に行きたい欲が高まってしまいました。


感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ございましたら教えてください


「はっ!! あの野郎はっ!! 」

 

「やあ、目覚めたかいモードレッド 」

 

 べリアルさんの攻撃で意識を失った騎士──モードレッドさん──のことをマシュに背負って貰って、霊脈のある場所までやって来た私たちは、この霧を晴らそうとしている現地民であるジキル・ハイドさんのペンションに招かれた。

 

 ジキルさんがモードレッドさんに事情を説明してくれたお陰で、何とか協力してくれることになった。

 

「協力はしてやる、但し条件がある!! 」

 

「条件? 」

 

「べリアルっつたか? アイツともう一度戦わせろ、先は油断したが次はそうはいかねえ。 ぶっ潰してやる!! 」

 

「はっ 」

 

 手伝ってくれる条件としては同意していいのか分からないものだったから少し頭を悩ませてると、カルデアから喚んだうちの一人であるジャンヌオルタが、モードレッドさんの発言を鼻で笑っちゃう。

 

「ああ? なんだテメー 」

 

「あら気分を害したのなら謝るわ。 負け犬がわんわん吼えていてつい可笑しかったものですから 」

 

「…………よしわかった表出ろ。 先ずはお前からぶっ殺してやるよ 」

 

「殺れるもんなら殺ってみなさいよ。 この私が負け犬風情に遅れをとるなんて有り得ませんから 」

 

 …………モードレッドさんにああは言ってるけどジャンヌオルタもべリアルさんに負けてるはずだから負け犬って立場じゃ同じなんじゃ……

 

「マスター、変なこと考えてると貴方から灼き殺すわよ? 」

 

 手から炎を出しながら私に微笑んでくるジャンヌオルタ。そ、そう言えば、べリアルさん今ごろ何してるのかな~

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 朝倉リク、彼は確かにウルトラマンの遺伝子を受け継いでいるけれど、他のウルトラマンたちのように自力で変身できるわけじゃない。 考えても見てほしい、あのウルトラマンボーイだって小学生でありながら2000歳を軽く越えている。 けどリクくんは? 地球人としてなら19歳は成人近い年齢だけど、ウルトラマンとしてはまだ赤子も同然だ。

 

 そんなリクくんがウルトラマンとして戦うためにウルトラカプセルがある。 まるで最初からそうあるべきだと用意された2本のカプセルをライザーに読み込ませ、ウルトラの力を身体に流し込む。 少し強制的かも知れないけれど、そうでもしないとリクくんはウルトラマンの姿に変身できない。

 

" ユーゴー! "

ジュア

" アイゴー!"

ヘアッ

" ヒアウィーゴー!!"

 

" 決めるぜ、覚悟!! "

ウルトラマン ウルトラマンベリアル
フュージョンライズ!

 昔からヒーローになることを夢見ていたリクくんだ。 自分の考えてた『さいこうにかっこいいへんしん』をやって見せる。 それは震えるその手を抑えるためか、怪獣に立ち向かう自分を鼓舞するためのもののようにも聞こえたけれど、ライザーはしっかりと反応しリクくんにウルトラマンとべリアルさんの力がリクくんの身体に融合していく。

 

『ジィィィィドっ!!』

 

" ウルトラマンジード プリミティブ!!"

 

 ウルトラマンとしての名前を『ジード』に決めた自分の名前を大きく叫ぶと共に、人間からウルトラマンジードへと その姿を変えた。

 銀と赤の基本的なシルバー族のウルトラマンの配色にまるで縫い付けるように身体の所々に黒が加わり、一番の特徴であると思われるその瞳はべリアルさんの鋭い目に酷似していた。

 

『建物も道路も柔らかい、砂で作ったみたいだ 』

 

 ウルトラマンに変身した自分に戸惑いながらも、敵である怪獣に果敢に立ち向かう。戦いかたなんて分からない、喧嘩だってしてこなかったリクくんの戦いかたはひどく不格好だ。 けど、だからこそリクくんは『憧れたヒーロー』のようにみんなを守るためにがむしゃらになって戦っている。

 

『はあああああああ!!!! 』

 

 未成熟なウルトラマンであるジードは、例え他のウルトラマンから力を借りていてもその力を長く扱えない。 3分で活動限界に達してしまう、そしてもう一度変身するには20時間身体を休ませなければいけないというデメリットがある。

 

 だからこそリクくんは怪獣を"今"止めるために必殺の一撃に賭けることにした。 頭の中に浮かんだイメージを形にしていく、腕を胸下で交差させ身体全体を震わせるように両手を大きく広げていく。 そうして身体全体から放出させたエネルギーを両手に集め、手先が少し曲がったL字を作り出す。

 

『デアッ!! 』

 

 《レッキング・バースト》スペシウム光線に黒い雷が纏わりついた光線技で怪獣を無事に倒すことに成功した。

けど……あの怪獣の胸の紋様に赤く浮き出た血管のようなもの……まるでアークベリアルになったべリアルさんのようだった……。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

『べリアルの本当の姿を見たああ!!!? そ、そそそれは本当なのかい!!! 』

 

「締め切り間際で1行も話が進んでいない作家どものような眼をしている男が、いちいちこれくらいのことで喚き散らすな 」

 

 ハンス・クリスチャン・アンデルセン。世界三大童話作家である彼もはぐれのサーヴァントとしてこの特異点に召喚されていたらしく、しかもジキルさんの協力者としてこの霧を晴らすために動いてくれていた。

 

 そんな彼が戻ってくると、彼はべリアルさんらしき人と出会いしかもその本当の姿を見たという。ドクターが声をあげて驚くのも頷けるよ、声に出してはいないけど現に私もマシュも相当に驚いてるもん。

 

「いいからさっさと教えろよ童話作家 」

 

「貴様もあの男と同じで結末だけ知ろうとするタイプか? まったく、ここに喚ばれてから嫌なヤツばかりに会うな 」

 

 急かすモードレッドにそう言うと、アンデルセンはジキルさんのソファーに腰かけ用意された珈琲に口をつける。

 

「あの男がどんな人物でどんな思想を持っているのかなど一瞬しか言葉を交わしていない俺には想像すること位しかできん。 だがあの姿形は俺のここにしかいないような怪物(クリーチャー)のようだっがな 」

 

「ここ……べリアルさんの姿は、アンデルセンさんの偶像でしか存在しないような怪物だったと? 」

 

 アンデルセンが自分の頭を指してべリアルさんのことを怪物だって表現した、自分の想像の世界にしかいないような怪物だって……

 

「簡潔に表現するのは癪に合わんが、情報が少なすぎるからな──凡人どもに理解しやすいように説明するなら……あれは悪魔とでも言ったところか 」

 

「悪魔…… 」

 

『…………やっぱり』

 

 悪魔っていうと最近知ったのでいうと……確かソロモンの……

 

『…………立香くん、マシュ。 2人に聞いてほしいことがあるんだ 』

 

 べリアルさんのイメージを固めていると、神妙な面持ちでドクターが私たちに話があるという。

マシュはドクターが何を言おうとしているのか分かっている見たいでその表情はくらい。

 

『べリアル…………。 その名前は彼が言ったように悪魔に連なるものの名なんだ 』

 

「べリアルさんが? 」

 

「そうです先輩…………。 べリアル、聖書に名前が記されるほど強大な力を有した高名な悪魔だと言われています。 

そして…… 」

 

『ソロモンの悪魔、その68番目に数えられている 』

 

 その一言で、ドクターが何を言いたいのか理解した。ローマとオケアノス、2つの特異点で私たちの前に立ち塞がった魔神柱。 その魔神柱の名前はどちらもソロモンの悪魔からとられていた

 

 だから言いたいんだ。 べリアルさんは人理焼却を企てた黒幕の仲間かも知れないって

 

「で、でも!! ドクターも言ってたじゃないですか!! 魔神柱とソロモンは関係ないって!! それに、べリアルさんは今までの特異点でずっと私たちと一緒に戦ってくれた!! 」

 

『それでもだ。 彼が特異点を回る中で、魔神柱と戦ったことがない、それが仲間だからと考えたら? 今までの行為は立香ちゃんたちの信頼を得るための演技だとしたら? 』

 

「けど……!! 」

 

 否定したい、否定しなきゃいけない。 だけど、それが本当だって確証できない。 べリアルさんが仲間だって証明は私たちがそう思っているだけだから……。

 

 仲間だという形がないから何にも言えなくて、だけどドクターの言ってることを信じたくなくて、だから通信を見ないように顔を俯かせる。

 

「すみません先輩…………。 私も気になって調べてはいましたが確証がなかったので…… 」

 

『直ぐに遠ざけることは難しいかも知れない。 それだけ彼は2人の心に入り込んでいた。 だからお願いだ、警戒だけはしていてほしい 』




皮肉屋だけど何だかんだ人を気遣うことを知っているアンデルセン。 立香とマシュの様子を見てベリアルがナーサリーの固有結界に閉じ込められたことは伏せた。


べリアル編よりも先にモードレッド編から~とか思いながらマシュと立香ちゃんにも問題を持っていく

『建物も道路も柔らかい、砂で作ったみたいだ。』
ジード1話でジードが言ったこの台詞、ウルトラマンに変身したリクくんの戸惑いもわかりやすくまた視聴者側にもウルトラマンに力の強さがどれだけのものか理解しやすく好きな一言。


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4

ニュージェネクロニクルで久しぶりにペガと仲良く会話しているリク君を見て笑顔が止まらなくなる作者です。 OPで特に好きなのはシェパードンセイバーに目を向けるビクトリーと、雨を受け止めた先に光があるという最高演出のジード。

本年もよろしくお願いします。
感想、評価などお待ちしてます。

ご指摘、誤字脱字ありましたらお願いします。


「「………… 」」

 

「あ~~っ!! たく辛気臭せえなっ!! お前らアイツのサーヴァントなんだろ? 何とかしろよな 」

 

「それは契約上の話です。別に私はべリアルが敵であろうが関係ありませんから 」

 

「ううう……ますたぁ……、ましゅ…… 」

 

 ジキル邸で聞かされた『べリアルが敵かもしれない』という話しは、今までの特異点をべリアルと共に歩き、大きな信頼を寄せていた立香とマシュ、2人の心に重しとなってのし掛かっていた。

 

 この特異点を修復するための調査にも身が入らず、そんな暗い雰囲気を背中にビシビシと受けるモードレッドの苛立ちは噴火寸前だった。 どうにかしようとカルデアから喚ばれたジャンヌオルタ、アステリオスに声をかけるが、ジャンヌオルタはどうでもいいと興味を示さず、アステリオスはどう声をかければいいのか分からずに狼狽えていた。

 

 

「────あ~~~~!! くっそっ!! 」

 

「きゃっ!? モードレッド……さん? 」

 

「今の、俺がコイツで立香のヤツを狙ってたら、ソイツは死んでたぜ 」

 

 いよいよもって噴火したモードレッドは、マシュのことを蹴り飛ばし剣を突き付ける。 冗談などではなく、本気の殺意を向けて……。

 

「おら、構えろよ盾野郎。 同じ騎士として、サーヴァントとして、テメーのこと思いっきり叩きのめしてやるよ 」

 

「────っ!! 」

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

"燃やすぜ勇気!! "

 

"魅せるぜ衝撃!! "

 

 父親がべリアル。 それが彼がウルトラマンに変身できたレムが言っていた"Bの因子"の正体だった。 この宇宙でも、どの宇宙でもか……誰もが悪の象徴であると認知されているべリアルさんの息子という真実は、ヒーローを目指しているリクくんにとって受け止めることからも逃げたくなる辛く、過酷な運命…………。

 

 けど、そんな運命にも負けずにリクくんはウルトラマン(正義の味方)として戦い続けた。殆どの人が認めてくれないそんななかでも、応援してくれる人がいたから……。

 

 "リトルスター"この宇宙に生きる生命の体内で生成される高純度のエネルギー物質が結晶化し、感染した宿主に特殊な力を与える不思議な状態。 そのリトルスターを分離する方法は『宿主がウルトラマンへ祈る』こと。

 ジードの戦う姿を見て、「守って」「負けないで」といった思いによって分離したリトルスターは、ブランク状態のウルトラカプセルを起動させる。

 

 その新たに起動させたカプセルを使うことで、リクくんはプリミティブとは別のフュージョンライズを成功させた。

セブンとレオのカプセルを使ってフュージョンライズした"ソリッドバーニング"。

コスモスとウルトラカプセルを開発したというヒカリのカプセルを使用することで変身する"アクロスマッシャー"

 

 別宇宙からウルトラマンゼロも現れて、そんなゼロにも支えてもらいながらウルトラマンとして成長していくに連れて地球の人たちがジードのことをウルトラマンとして認めていってくれた……そんな矢先に事件が起きた。

 

『19年前、赤ん坊の君を天文台に置いたのは私だ 』

 

 伏井出ケイ──地球人に化けていた彼の正体はストルム星人という宇宙人であり、べリアルさんの部下である彼はレイオニクスの力を授かったことで、ゴモラとレッドキングが融合した怪獣"スカルゴモラ"やエレキングとエースキラーが融合した"サンダーキラー"にフュージョンライズを果たし、人々を襲っていた張本人だった。

 

 彼の目的、それはべリアルさんの完全なる復活。べリアルさんほどのウルトラマンが復活するには合計で8本ものウルトラカプセルが必要であり、そのためにリクくんのことを操り人形のように操っていたのだという。

 

 ウルトラマンにしか譲渡されないリトルスターによって起動するウルトラカプセル。そのカプセルを集めるためだけにべリアルさんの遺伝子を使い造り出された命。

 

 それがウルトラマンジード、それが朝倉リク。

 

『これで、エンドマークだ』

 

 リクくんの使うジードライザー、装填ナックルと瓜二つの道具を取り出した伏井出ケイは、キングジョーの怪獣カプセルとゼットンのカプセルを使用し、その力をレイオニクスの能力で増大させて融合した怪獣"ペダニウムゼットン"にフュージョンライズし、リクくんに襲いかかってきた。

 

 

 

────◇◆◇────

 

 先輩とはまったくに逆、それがベリアルさんでした。『敵意や悪意が全くと言っていいほど感じられない』それが先輩だとすればベリアルさんから感じたのは『敵意や悪意それそのもの』。 特異点Fでランサーとの交戦中に突然姿を現したベリアルさん。 隣に立たれたあの時、全身から危険を知らせる警報が鳴り響いている中で、ベリアルさんの放つ威圧感、恐怖に飲み込まれた私の身体は動くことを許してくれなかった。

 

『あの、貴方は何ていう英霊……なんですか? 』

 

 恐怖に包まれたベリアルさんへの印象が薄れたのは、ベリアルさんへ恐れずに手を伸ばした先輩の一歩とそんな先輩へ向けたベリアルさんの瞳でした。 伸ばされたその手が何なのか、初めて知るようなそんな瞳をしていたベリアルさん。 未だにそれが何を意味するものなのかは解明していません、ですは何でかこの人は信用できる人なんだとデミである部分……私自身がそう感じたんです。

 

 そんなベリアルさんが教えてくれた……この盾の振るい方、力の使い方……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「オラオラオラっ!! どうした、そんなもんかマシュっ!! 」

 

「くっ! (一撃一撃が重く、速く、そして鋭い!! 手加減なんて存在しない。 これがモードレッドさんの本気!! この攻撃をべリアルさんはあんなにも簡単そうに……) 」

 

 自分とべリアルの力量の差、その差は絶対に追い付けない先にあることを理解していながらもマシュは比べてしまう。 もしもべリアルが本当に敵だとしたら、モードレッド以上の敵をべリアルなしで戦わなければいけない、それがどれだけ難しいことなのか思案して。

 

「お前が一歩下がるごとに、立香(ソイツ)が死ぬのが速くなるぜ? 俺はそこいらのヤツらみてーに甘くねえからな、使えないと思ったらソイツがどんなヤツだろうが殺す 」

 

 モードレッドの発した言葉を受けて、その剣を受けて後退していく足が止まる。 『立香が死ぬ』その言葉が届いた瞬間、今までの考えていたべリアルについての悩みが吹き飛んでいく。

 

「先輩は……マスターは私が守ります! それが、私がこの盾を授かり振るう理由だから!! 」

 

 悩みが吹き飛んだマシュの頭の中に浮かぶ思い。 それは特異点Fで行われたべリアルとの戦闘、その時に決めた覚悟だった。 立香を守るために強くあろうと決めた覚悟を思いだしながらマシュはモードレッドの剣撃を後退することなく受け止めていく。

 

(ドクターが言っていたように、べリアルさんは敵……なのかもしれません。 けどっ、あの時べリアルさんが理解させてくれたこの覚悟に変わりはありません。 だからっ!! )

 

「うおっ!! 」

 

マシュが受け止めた剣、それを盾を下から持ち上げるようにして弾き返しながら、モードレッドに覚悟を決めたその眼で見つめる。

 

「私は藤丸立香のサーヴァント。 この盾はマスターを守るためのもの。 そう使うと()()()に決めた私の覚悟です!! 」

 

「マシュ……そうか、そうだよね 」

 

 マシュの言ったあの日。 その言葉を聞いて蹲っていた立香の心も覚悟を決めた。『べリアルさんが敵であろうと関係ない、あの日から私たちのことを守ってくれたあの人を信じ続ける』他の誰かが聞いたら笑いだすような馬鹿みたいな覚悟を。

 

 令呪を見つめ立香が顔を上げると、狙っていたのかモードレッドと目が合う。 悩みが吹っ切れた立香の顔を見てモードレッドはニヤっと歯を見せて笑う。

 

「たっく、やっと吹っ切れた見てーだな。 手間取らせやがってよ 」

 

 




本当はジードクローのくだりとか、ソリッドバーニングにアクロスマッシャーも書きたいけど書ききれないんで仕方なしに……。

特にジードクローとかその鋭利な爪の形から色々想像できるしやばいんや!!

ウルトラマンに出てくる地球人の民度は低いと思う。 特にメビウスやジード


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5

劇場版ルーブの公式サイトの朝倉リクの説明文に「異なる宇宙で活躍している」
ゼロはM87ワールドかアナザースペースに戻ってる筈だからリク君のことを送り迎えすることは出来ない……もしかしてノアクティブサクシードが出る!! 劇場版オーブでエメリウムスラッガー出たみたいに!! と期待に胸を膨らませる作者です。

感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字の報告助かっています。


 『魔霧計画』聖杯によって産み出されたこの霧その物がサーヴァントを召喚する術式みたいで、それによって召喚されたのがモードレッドやアンデルセンといったはぐれのサーヴァントたちだった。 どうやらランダムで召喚されてくるサーヴァントの中に特異点を破壊する力を持つ者がいるため、敵である魔術師たちもそれを待っているらしい。

 

 このロンドンの異変を調べていく中で魔霧計画の首魁の一人「P」を打ち倒した私たちは、フランケンシュタイン──フランの案内を頼りに魔術師「B」と対面していた。

 

「ヴィクターの娘…………! 逃げ……ろ……! 」

 

 魔術師「B」彼の真名はチャールズ・バベッジ。 自らの身体を機械へと変え蒸気王を名乗る彼だけど、彼も私たちと同じで人理焼却を嘆いていた。 だから対話が出来る、彼を止めようと叫ぶフランの声は確かに届いた。そのはずだったのに…………

 

 バベッジさんは聖杯が組み込まれたこの霧の影響で暴走を始めてしまう。 モードレッドは「思いが届かず、刃で決着を付けざるを得ない」っていうけど……私はそんな簡単に割りきれないよ……。

 

「オオ、ォ……!! 」

 

「────っ! アステリオス!! 」

 

「まか……せて…………っ!! 」

 

 どうにかしたい。けどそんな力なんてない歯痒い気持ちになりながら、相手の巨体を受け止められるアステリオスに指示を出す。 それを皮切りに他の皆も戦闘を開始する。

 

『立香くん? 立香くんっ!! 』

 

「っ、なんですかドクター 」

 

『彼はもう会話不可能な状態。 暴走が聖杯は依るものだとしたら、もう彼を倒す以外はない!! 』

 

 ドクターたちの解析から、バベッジさんの暴走は令呪による強制的なものに似ていると教えてもらう。……それって誰かがバベッジさんを暴走させたってことだよね?

仲間を道具のように扱うなんて……ひどすぎる!!

 

「バベッジさん……助けて上げられなくてごめんなさい。 フラン……倒すね 」

 

「…………ゥ 」

 

 「お願い、止めて 」フランのその言葉を叶えるために私はサーヴァントのみんなに指示を出す。

 

「いこうマシュ、みんな!! 」

 

────◇◆◇────

 

 

 ウルトラマンとして戦ってきたことで、今ではもう欠片とは言えないほどに大きな球体になった光の輝きが鈍っていく。

 

 リクくんという存在が怪獣を呼び寄せ、街や多くの人たちが犠牲になったのはジードに変身したからだと、台本通りのストーリーを歩いていたんだと真実を突き付けられる。

 憧れて、自分の意思でヒーローになった筈なのに、その気持ちすらも嘘だと言われたリクくんは力を上手く扱えなくなり、強力な力を有したペダニウムゼットンに敗北し、7つのあったカプセルのうち6つのカプセルを奪われてしまう。

 

『これをやったのは……僕……』

 

 敗北しカプセルを奪われたこと以上にリクくんの心に突き刺さったのは、ペダニウムゼットンとの戦いで破壊されボロボロに崩れた街の惨状だった。今まで戦闘中に物が壊れてしまうことはよくあったけど、少しでもそうならないように気を付けていたけど、今回は違う。 道路、ビル、車、辺り一面の物全てがボロボロに壊れてしまっている……もしかしたらその中に人も巻き込まれたかもしれない。

 伏井出ケイの言った通り、自分がこの光景を作り出したんだって、そう思ったリクくんの心の中を大きな雨雲が覆い始めてしまう。

 

 残ったカプセルは1つ。 それ1つではウルトラマンに変身出来ない、変身した所で僕は伏井出ケイに造られた操り人形……その思いに埋め尽くされたリクくんは失意のドン底に落ちていく。

 

『19年前……、君は赤ん坊だった。 “朝倉陸”その名前を付けたのは……私なんだよね 』

 

 失意のリクくんに届いた1通の手紙。 その手紙を出したのは、赤子だったリクくんを拾い、名付け親である朝倉錘さんだった。

 

 ああそうか、貴方もリトルスターに感染していたんですね。 そして宿ったその力でずっとリクくんのことを見守り続けていた。 その為だけにしか力を使わなかった。

 

『逃げなさい陸くん 』

 

『でも……!』

 

 奪った6つのカプセルを体内に取り込み暴走するペダニウムゼットンは、錘さんの持つリトルスターを狙って暴走を始める。 止めなければならない……けどウルトラマンに変身できないリクくんは錘さんを連れて逃げることしか出来ない。

 

 追い詰められ、ピンチに陥ってしまう2人。そんな中で錘さんは相手の狙いは自分だから、病気で後数ヵ月の命だからリクくんだけでも逃げろという。

 

 だけど、リクくんは動けない。錘さんのことを置いていけないって気持ちは確かにあるけど、それ以上にべリアルの息子として生まれて、街を壊す元凶である自分はいないほうがいいんじゃないか、このまま死んでしまったほうがいいんじゃないかって……その気持ちがリクくんの足を止めてしまう。

 

『しっかりしろ陸っ!! …………陸。私と家内とで考えた名前なんだ。 男の子が産まれたらつけようってね……この大地にしっかりと足をつけて立つ、そしてどんな困難な状態にあっても、絶対に再びまた立ち上がる。 そういう想いを込めて 』

 

 だから生きてくれって、命を捨てないでくれっていう錘さんの気持ちを貰って、リクくんの心を覆っていた雨雲が消え去った。

 だから、だからこそリクくんは、錘さんのことを見捨てるんじゃない、一緒に助かる未来を諦めなかった。

 

『ウルトラマンになんかならなくても、こんな所で錘さんを死なせたりしない!! 』

 

『陸、頼む。 生きてくれ! 』

 

 リクくんに生きてほしい。 ウルトラマンへの祈りじゃない『朝倉陸』という一個人への祈りが形となってその姿を現した。 その大きな想いを受け取ったリクくんは、ウルトラマンじゃない、べリアルの息子じゃない、『朝倉陸』という人間として、自分に生きる希望を、立ち上がる力をくれた人や仲間を守るために、リクくんはそのカプセルを手に取った。

 

” ユーゴー!“

ゼヤアッ

 

” アイゴー! “

ドアアッ

 

” ヒアウィーゴー!! “

フュージョンライズ

 

” 守るぜ! 希望!! “

 

 

────◇◆◇──── 

 

 

 バベッジさんを倒した時、この霧を産み出している場所を教えてもらった私たちはその場所に向かって進んでいた。

 ロンドンの地下鉄よりも更に下、何層にも続く迷宮とも言えるほどに要り組んだその先には、冬木の大聖杯が置かれていた場所に良く似ている場所だった。

 

「あれがアングルボダ…… 」

 

 ついて直ぐに目に付いた、心臓のように動悸を繰り返しながら血液の変わりに蒸気を吹き出し続けるそれこそがロンドンを霧に包み込んでいる発生源。 巨大蒸気機関「アングルボダ」

 

「とっととぶっ壊しちまいてーとこだが、テメーが最後の親玉か 」

 

 そんなアングルボダを守るように最後の魔術師「M」が姿を現した。 私たちの今までの歩いてきた道のりはここで終わりだと、自分の悪逆によって駆逐されるのだと……

 

「そんな御託なんてどうでもいい!! 貴方が、お前が「M」なんでしょ? 」

 

「私はマキリ・ゾォルケン。 お前の言う「M」にして魔霧計画に於ける最初の主導者である 」

 

 M……マキリ・ゾォルケンはそう言いながら自分が企てた計画の全貌を明らかにする。 ロンドン全域を覆った魔霧、それを使って英国全土を破壊する、それを為すことが出来るサーヴァントがもうじき召喚されるんだと。

 

「それこそが我らが王の望みであり、我らが諦念の果てに掴むしかなかった行動である 」

 

「だからっ!! 我らが王とかそんなのどうでもいい!! 私は聞きたいことは他にあるんだ!! 」

 

『えっ? ちょっ立香ちゃん!? 』

 

「ドクターは黙っててください! …………バベッジさんを暴走させたのはあなたでしょ? なんでそんなことをしたの、仲間じゃなかったの!! 」

 

 Mに会ったら絶対に言おうとしていたことをぶちまける。 どうして仲間のはずのバベッジさんのことを切り捨て暴走させたのかそのことを聞いたけど、相手は顔色一つ変えずに答える

 

「貴様は何を言っている。 英霊は『人類史の影法師』言わば使い捨てのきく道具。 役目が終われば捨てる、そこに何の問題がある 」

 

「────っ! イタッ 」

 

「落ち着きなさいよ馬鹿マスター。 貴女が飛び込んだところで死ぬだけじゃないの。 それにアイツの言ってることは正論よ 」

 

 怒りで今にも飛びかかりそうな私の頭を小突いて止めてくれたジャンヌオルタはマキリの言葉を肯定した。 けどその顔は心底嫌そうな顔をしてるから理解はしてるけど納得はいってないんだってのが読み取れる。

 

「ただの道具ですって? そんなのまっぴらごめんよ!! それにこの馬鹿マスターが許さないでしょうしねえ 」

 

「────うん! サーヴァントのみんなは道具なんかじゃない、私たちの大切な仲間だもん !! 」

 

 

 

 

 

「それだ。それこそが我が王が至った結論の姿。 最後の英霊を目にすることなく、我が王の力を以てお前たちを消去しよう 」

 

 破滅の空より来たれ。我らが魔神──。 これまで私たちが倒してきた魔神柱と同じ詠唱……嘆くようにマキリはその姿を魔神柱へと変貌させた。

 

「いいじゃない、機械や本ばかりを相手しててつまんなかったところよ!さあマスター指示をよこしなさい、あんなヤツ私の炎で燃やしてあげるわっ!! 」

 

「ますたあ、ぼくも、がんばる!! 」

 

「マシュ・キリエライト戦闘を開始します! やりましょう先輩!! 」

 

 いつもよりやる気を出してくれてるジャンヌオルタややる気満々なアステリオスたちと一緒にマシュが魔神柱へと立ち向かっていく。

 マキリ、お前に見せてやる私たちの力を!!

 

 

 

 

 

「サーヴァントは仲間……か、甘いもんだな立香のヤツ…… 」

 

 




色々書ききれないけど「僕の名前」はジード好きとして、朝倉リクのことを書くにあたって妥協しちゃいけない部分だと思ってます。 本当神回すぎるから見てない人見て……前半最後として最高の話だから!!

発祥はタロウだけど、ニュージェネから技名叫ぶようになってくれたのは好きな部分。その時の感情が強く出たりするからね。 特にレッキングバーストは気持ちが込められててめっちゃ好き。 ザナディウム(大喜利部分も合わせて)とかも結構好きな部類……。



あと今のジャンヌオルタの絆レベルは6.5くらい


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6

「僕の名前」はまだ終わらない。 そうしてやっと始まるモーさん編
4章も終盤に近づいていってます。


感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字助かってます


────鉄のぶつかり合う音が響く。 幾人もの血で染まり、赤黒く変色したその丘の上で叛逆の騎士モードレッドはその剣を相手に振るっていた。

 『カムランの丘』──アーサー王伝説の終局の地、モードレッドにとって運命の地であるその場所で相対するのはただ一人、アーサー王を置いて他ならない…………はずだった。

 

「ふざけるな!ふざけんな!この場所で、この丘で! 私が戦うのはアーサー王只一人だ!! 勝手に上がり込んでんじゃねえっ!! 」

 

「惨めだな。 いくら焦がれた所で騎士王がここに現れることは決してない。 定められた運命にも抗えず、その命を散らした模造品が 」

 

 黒い金棒を降り下ろしモードレッドへ詰め寄る戦士。彼が放った『模造品』というその言葉は、ホムンクルスとして自身の生を恥じているモードレッドの感情が爆発するのは当たり前だった。

 

「────っ! 私の手によってブリテンは崩壊した!! 私が死のうが関係ない、この私の叛逆は完遂された!! 」

 

「それを叛逆だと思い込んでいる、だからこそ貴様はジードを成せない 」

 

「ガッハ……ッ!! 」

 

 魔力を増大させた剣すらも容易く弾き飛ばし、金棒でモードレッドは鎧ごと貫かれる。 生前の最後、アーサー王の持つ聖槍に貫かれたその時と同じ終わりだった。

 

「叛逆の意味すらも履き違えてる貴様は、誰が相手であろうと同じ最期を迎える。 それが……貴様の宿命だ 」

 

 

・・・・・・・・・・

 

「────はっ!! …………クソッ、サーヴァントは夢を見ねえんじゃねーのかよ 」

 

 魔神柱を打ち倒してからの記憶が曖昧なまま目が覚めたモードレッドは苛つきながら立ち上がると、瓦礫の山をどかしているマシュとジャンヌオルタへ歩み寄る。

 

「あらやっと起きたわけ? 随分と長いお眠りだったこと 」

 

「うっせー芋女。 そこに立香のヤツ埋まっちまったのか? 」

 

「はい、アステリオスさんが守ってくれたので先輩のバイタルに異常はありません……ですが 」

 

 死ぬ行くマキリ・ゾォルケンが最後に残していった切り札。狂化を施されて召喚されたサーヴァント『ニコラ・テスラ』 登場した彼の魔力によって山が崩れ立香とアステリオスが埋まってしまい、近くにいたモードレッドは彼の放つ雷の直撃によって気絶してしまっていた。

そんなニコラ・テスラがこの特異点を破壊するために地上を目指しているという。

 

「わーった、オレが先に行く。 テメーらは立香のこと速く助けとけ 」

 

「モードレッドさん! 」

 

「あ? 」

 

「その……気を付けて下さい…… 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

"ウルトラマンジード マグニフィセント"

 

 ゼロと父、べリアルさんと因縁のある2つのカプセルを使って再び立ち上がった『強大な力を秘めた崇高な戦士』

 

 一度は負けた相手、しかも相手は暴走しているとはいえ、6本のウルトラカプセルを体内に取り込んだ強力な敵ではある、けど逃げない。 2本の足で大地を確りと踏み締めてペダニウムゼットンを迎え撃つ。

 

 泣いてた頃の小さな自分を抱き上げてくれた大切な人に、自分は大きくなったんだとその成長させてくれた姿を見せながら……

 

『造られた道具がっ!! 創造主に刃向かうというのかぁ!? ひざまづけ!! 地を舐めろ額を擦り付けて許しを請え!! 終わるときが来たのだぁ!! キサマの首をべリアル様への手土産とする!! 』

 

 ペダニウムゼットンから、変身者である伏井出ケイの声が聞こえてくる。ウルトラの父のカプセルを起動させたことでべリアルさんが復活するのに必要だという8つのカプセルが揃ったから、リクくんは要らないのだと

 

『キサマの価値はあ! べリアル様の遺伝子をもっていることぉ!! それ以上何物もでもない模造品だぁあ!! 』

 

『模造品なんかじゃない!! 僕はリク! 朝倉陸!! それが僕の、名前だぁ!! 』

 

『キサマの人生に価値などなぁぁい!! お前という肉片に命を与えたのはこの私だぞ? 産声を上げる瞬間に磨り潰すことも出来たのだぁぁ!! 』

 

 勝手に言っていればいい。 どんな言葉で罵ろうと、陥れようとしたってもう無駄だ。 自分の生きる意味を、貰った名前の意味を知ったリクくんには通用しない。

 

『貴方にはわからないんだ! 人の幸せが!! 僕には! 仲間がいる!! 帰る場所も!! 』

 

 互角の勝負を繰り広げていた両者の攻防に亀裂が入る。ペダニウムゼットンがジードの攻撃に押され始めたんだ。

 

『僕は僕の人生を生きてる! 誰にも価値がないなんて言わせない!! 』

 

『キサマが価値あると信じている全てのものはクズだ! 薄っぺらい貴様のような存在にはお似合いだがなァ!! 』

 

 それでも伏井出ケイはリクくんのことを否定しつづける。 そのむき出しの感情からは怒りと、そして嫉妬が入り交じっているのがわかる。 べリアルさんが求めているのはジードで、自分じゃないことへの身勝手な嫉妬心を剥き出しのして

 

『可哀想な人だ……! 貴方には何もない! 空っぽだ……! 』

 

 自分は独りじゃないと理解したからこそ、リクくんは人の心が分からない独りぼっちに敗けやしない。

 

『ビックバスタウェイ!! 』

 

 放たれた必殺光線が、ペダニウムゼットンのバリアを容易く打ち破り、宿敵とも言える伏井出ケイを撃破した。

 

大きくなったね……リクくん……

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 道行きを邪魔してくるホムンクルスやヘルタースケルターを薙ぎ倒し突き進んでいったモードレッドは地下迷宮を歩いて進むニコラ・テスラに追いつきその剣を降り下ろした。

 

 ニコラ・テスラの放つ雷は周囲の魔霧を活性化させる力があるらしく、他者の魔力を吸収するという性質を持った霧へと変化していた。 その霧をモードレッドは自身の宝具『我が麗しき父への叛逆』の真名解放による大量の魔力放出を吸収させることで吹き飛ばすという荒業を使い戦闘を行っていた。

 

「ははははは! クラレント、その剣は素晴らしいものだ。しかし────君自身に迷いが見えるようだね、モードレッド卿 」

 

「────迷いだと? テメーをブッ飛ばす以外に考えることなんてあるわけねえだろ!! 」

 

 傍目から見ても分からない、敵意を向けられるニコラ・テスラだからこそ気づいたほんの少しの心の迷い。 それを指摘されたことを紛らわすように声を荒げるモードレッド。

 

(あんなんただの幻覚だ。捨てろ、忘れろ、思い出すな!! )

 

───誰が相手であろうと同じ最期を迎える。それが……貴様の運命だ。

 つい先ほど頭の中に流れ込んできた景色、想像、妄想……どう言えばいいのか分からないそれが、モードレッドの心の迷いの原因だった。 そのせいもあってかモードレッドは攻めきれず真名開放によって払った霧がまた展開を始めてしまう。

 

「此度の余興はここまで! ……君はその剣に見合う騎士ではなかったようだ!! 」

 

「待ちやがれ!! 」

 

 そして、自身が何処へ向かい何を為そうとしているのかを告げ地上に向かって歩いていった。それを果敢に追いかけようとしたモードレッドだったが、足を止めると壁にもたれながら座り込んでしまう。

 

「オレが、クラレントに見合わねえか…………。 そんなこと父上から奪った時からわかってただがな…… 」

 

 王位継承権を示す剣である我が麗しき父への叛逆。しかしモードレッドは王と認められてこの剣を授かったのではない、アーサー王の武器庫から強奪し今の今まで使用していた。

 

 見合わない、認められていない。そんなことはモードレッド自身が誰よりもよく知っている、知った上で使っている。 今更誰にどう言われようが心を乱すことはなかったはずだ…………。

 

「────オレは叛逆の騎士モードレッドだ。 アーサー王の国を終わりへと導いたのはこのオレだ。 だから、このロンディニウムを壊していいのはオレだけなんだ…………。無駄な考えは切り捨てろ、オレは円卓の騎士にてアーサー王へ叛逆した騎士── 」

 

 

────その影法師だ

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははははははははは! ははは!! 最早、私を止める者は何処にも現れはしないか! 」

 

「と~っても長い階段ね♪ 空へと続くこれは巨人の家へと続く豆の木のよう! 知っていて? あの先には幸せが待っているのよ! そうは思わない、怖いおじさま? 」

 

「……だ、そうだ。 あの先に辿り着くのが貴様の、いや貴様を召喚した屑の幸せだというのなら、このオレはそこへ届かせない障害となってやる。 ありがたく思うんだな 」

 

「君は……人、地、星どれにも当てはまらない君が私を止める勇者になるか! 」

 

「それはこのオレに最も遠いものだ。 アイツらが戦うのにそれが邪魔だからな、払いに来ただけだ 」

 

 

 

 

 




金時さん&玉藻は霧に喚ばれることはありませんでした。金時は「子どもを守る英霊」であるように、彼女は「子どもの夢を守る英霊」だもの。 そう思うと彼女は本来その為にロンドンに召喚されたのでは?


ジードのフュージョンライズの好きな順(テレビ未登場形態は除く場合)は
ウルティメイトファイナル≧プリミティブ=マグニフィ≧ソリバ≧アクロマ=ロイメガといった感じ。
マグニフィセントは登場時のその格好良さに惚れるし、ジードお得意の開幕蹴りも好き。

ロイメガは嫌いなわけじゃないけどちゃんと理由があるんでロイメガ回の時にでも……




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7

魔神柱戦もだけどテスラ先生との戦闘はショートカット。本題はテスラ先生じゃなくてその後だから……

感想、評価いつでもお待ちしてます
誤字脱字、ご指摘ありがとうございます


 

『まただ、またニコラ・テスラの動きが止まったみたいだ 』

 

 アステリオスが守ってくれたお陰で瓦礫の下敷きにならずにすんだ私は、人理を破壊するよう暴走させられたニコラ・テスラを止めるために、みんなと一緒に地上に向かって走っていた。……て言ってもアステリオスに背負ってもらってるんだけどね。

 

 そんな折にドクターからでニコラ・テスラの動きが止まったていう情報が届けられる。 またって言った通り彼が止まるのはこれで二度目、一度目はモードレッドだろうけど、彼女の魔力反応はまだこの地下にあるみたいだから、モードレッドじゃない誰かがニコラ・テスラを止めてるんだろか?

 

「先輩、モードレッドさんです!! 」

 

「────やっと追い付いてきたか………… 」

 

「あら、こんな所でちまちま歩いてるなんて余裕じゃないの 」

 

 モードレッドに追い付くことが出来たけど……私たちのほうを見る彼女の表情はどこか固い。 でも何かが吹っ切れた……吹っ切れたっていうのかな? 邪魔な何かを切り捨てたようなそんな表情……。

 

「アイツの足はまだ空に届いていないんだろ? なら無駄話してないで速く向かうぞ 」

 

 口調も固い。さっきまでの彼女だったらジャンヌオルタの嫌みに何かしら返すのにそれをせずに地上へ向けて歩いていく……どうしちゃったんだろう?

 

「────待っていろ。 このブリテンを終わらせていいのは、オレだけだ 」

 

 

 

 

「来たようだな。 ────彼がいっていた通り、君たちが私を止め新たな神話を築かんとする勇者となるか!! 」

 

 雷の階段。 バッキンガム宮殿の上空へと向かって伸びるその階段の途中で、私たちはやっとニコラ・テスラに追い付いた。 狂化を施されたはずの彼だけど、その意識は落ち着いてるようで私たちのことを勇者と称してくる。

 

「モードレッドさんの口述あった魔力を吸収する活性化した魔霧の存在は確認できません。 今なら彼を叩けます!! 」

 

 マシュの言っているように、ニコラ・テスラを守る魔霧は無くなっていた。 あれをどう攻略するかが鍵だと思ってたんだけど、ドクターが言ってたニコラ・テスラの動きが止まったときに反応があったっていうサーヴァントが消してくれたのかな?

 

「ふむ。 どうやら、先の迷いには蓋をしたようだね。 クラレントを持つ騎士よ 」

 

「うるさい、その口を開くなニコラ・テスラ。 このブリテンを亡ぼしていいのはこのオレ、叛逆の騎士モードレッドだけだ! 」

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

『息子よ、迎えに来た。 父べリアルのもとへ来い 』

 

 べリアルさん……。 彼は、黒く怪しい雷雲と共にその姿を地球に現した。 クライシスインパクトで傷ついた身体を完全に復活を果たすため、ギガバトルナイザーをその手にリクくんのことを誘惑する。

 

 その姿を見て、リクくんは理解した。 理解してしまった。 べリアルさんが自分の父親なんだって、今まで生きてきた中で一度も感じることななくても、誰よりも憧れた感情が胸を締め付けていくことが……

 

『僕のことを息子って呼ぶなっ! 』

 

 でも、べリアルさんはクライシスインパクトを引き起こし、一度はこの地球……宇宙を破壊した張本人で、ゼロやレムの口から語られる極悪非道の大悪人。

 だから自分の感情を理解したくなかった。 暴れまわるべリアルさんのことを自分の父親だってことを……。 リクくんは、べリアルさんと戦うゼロとの連携も考えずに飛び込んでしまい2人一緒に倒れてしまう。

 

 そんなリクくんへまるで追い討ちをかけるように、べリアルさんは2本の怪獣カプセル──ファイブキングとゾグ第二形態──を使用してその姿を変えた。

 

 アークベリアルの時とは違う。上半身はべリアルさんの姿を残した下半身は獣のおぞましさを出した『キメラべロス』と名乗る化物は、ジードのことを体内に取り込み月へとその姿を隠した。

 

 

 

 黒い雷雲と降りしきる雨の中で並び立つリクくんとべリアルさん。お前は敵なんだ、僕はお前の息子じゃない、父親って言うなって、そんな強い拒絶を込めて攻撃するけれどべリアルさんにその攻撃は届かない。

 ジードの攻撃を全て弾き飛ばし、無防備になった彼へべリアルさんの爪が襲い掛かる────ことはなかった。

 

『オレはお前の……父親だ』

 

 止めを刺すんじゃなくて、リクくんのことを抱き締めるべリアルさん。まさかそんな行動をべリアルさんがしてくるとは露とも思っていなかったリクくんは驚きの表情を見せる。伝わってくる心臓の音を聞いて落ち着いている自分がいることを、否定できないほどに自分とべリアルさんは繋がっているんだって……その実感がリクくんの心を占めていく。

 

『地球人はお前を完全には受け入れていない臆病なヤツらだ 』

 

 だから錘さんは他の人にリクくんを預けた。愛崎家に預けられたその日「めいわくをかけないようにします」って言ったのも他の人とは違う自分は受け入れて貰えないって怯えたから、高校を卒業してすぐに愛崎家を出たのもリクくんが疎外感を感じたから……。ウルトラマンになって皆を助けても、地球の人たちはもしその手が自分たちに向けられたらって怯えている、受け入れてくれない……。

 

『心の奥底では求めていたはずだ。 本当の家族を……』

 

 べリアルさんの甘い誘惑が、今までヒーローとして歩んできたリクくんの足を止めてしまう。 そうして自分の身体の支配権をリクくんに預け、ゼロと闘わせる。

 そうだ、リクくんはずっと孤独を感じて生きてきた。それはずっと君を見てきたから分かるよ……けど違う、そうだろリクくん!!

 

『忘れないで、仲間のことを! 地球のことを! あなたのの夢を! あなたはみんなのヒーローなんだから!! 』

 

 鳥羽ライハ……ウルトラマンキングに呼ばれたリトルスターの発症者である彼女は、キングの力を借りてリクくんとべリアルさんの精神世界へと浸入し、リクくんには呼び掛ける。

 リクくんは、ウルトラマンジードはみんなのヒーローなんだって……その声が届いたのかベリアルさんと同じ赤い目になっていたジードの動きが止まった。

 

『泣いているのかい? 』

 

 ────っ!!!!! これは、これはリクくんの思い出だ。 みんなの笑顔を守るヒーローになりたいと思うようになった原点の場所。

近くのデパートへ来ていたリクくんは、自分と同じくらいの子どもの周りには必ずお母さんかお父さん、おじいちゃんやおばあちゃんといった家族がいた。 だけど自分にはそんな一緒に笑ってくれる家族がいなくて、どうしようもなく悲しくなっちゃったリクくんは、彼が出てきてもずっと俯いて泣いていたんだ。

 

『君の笑顔を取り戻す。 ヒアーウィーゴー 』

 

 泣いてる子がいたら手を差し伸べる。そんな当たり前だけどカッコいい『ヒーローの証』を見せてくれた目の前のヒーローが、ドンシャインがリクくんの中で太陽のように輝く存在になった瞬間。 そんな自分の原点を思い出したリクくんは、自分が為すべきことを為すために立ち上がる。

 

 

『ジーッとしてても、ドーにもならねえっ!!! 』

 

 ────────がんばれ、ウルトラマンジード

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 何とかニコラ・テスラを退けた立香たちではあったが、魔霧は意思を持っているかのように、マキリ・ゾォルケンの望みを叶えんためにまた新たな英霊を召喚された。

 

 バッキンガム宮殿の上空に魔霧が集束していき、まるで台風のような渦巻きを作り出す。その中心からサーヴァントが姿を現した。

 

「────」

 

「アーサー、王? 」

 

「…………はい、間違いありません。 彼女から感じる強大な魔力、威圧感は冬木で受けたものに類似しています 」

 

 生気の感じられない黒馬に跨がり、禍々しき槍をその手に携えた騎士王アーサー・ペンドラゴン。

 冬木の特異点で彼女と相対したマシュと立香には彼女がアーサー王だと直ぐに気づけた。

 

「はは……ははは、はーっはっはっはっ! そうか、そうだよな!! 」

 

「モー 」

 

 立香の声が届くよりも速く。地を蹴り一瞬でアーサー王の元へと赴いたモードレッドは間髪いれずに剣を降り下ろす。 だがアーサー王も只やられる訳はなく、その手に持った槍で応戦する。

 

「そんなにオレが憎いか! 貴方の国を壊したこのオレが、そんなにロンディニウムを救うのが気に入らないか!! 」

 

「──── 」

 

 確かに、アーサー王はモードレッドを否定するために召喚されたのかもしれない。だからこそ彼女を穿ち、殺した槍を携えている。

 

 だが、それは結果論にしか過ぎずアーサー王自身には関係ない。現にアーサー王はモードレッドの問いに何も答えることはなく、その目にはただの障害にしか見えていない。

 

「何か言え……応えろ、答えろ……アーサーっ!! 」

 

『そうか! あの槍は聖槍ロンゴミニアドか! アーサー王伝説でモードレッドのことを殺害した、世界の表裏を繋ぎ止めるモノとさえ言われる伝説の槍だ! みんな逃げろ、魔力の量から考えても勝ち目なんてない!! 』

 

「────お前らは逃げていいぜ、アーサー王の相手はオレがいればそれでいい 」

 

 魔力の衝突によって立香たちの側へ飛ばされたモードレッドが口にしたのはお前たちは邪魔だという意が込められた言葉だった。

 

「オレは叛逆の騎士モードレッドだ。 何度でも、何回だろうが()()()()()に叛逆してやるよ!! 」

 

 アーサー王しか見ていない彼女の目は濁りが見える。そんな暴走ともとれるその行動を、遠くから眺めている者たちがいた。

 

 

 

 

 

「アラアラ、彼女あのままじゃダメよ。 だって一人ぼっちなんだもの 勇者さまが魔王をたおすにはひとりじゃできないものね怖いおじさま♪ 」

 

「────分かっている頭の中で喚くな。 これが最後だ……アイツと同じ存在が、同じく運命を変えられるのか見極めてやる 」

 

 

 




ライハはヒロインというよりはおかんとか保護者の立場。リクくんが生身で戦えないぶんの殺陣をする役割何だろうけど作者は正直あまり好きなキャラとは言えない。 あとキング宅急便の臨時社員だしね。

キメラべロスは最初見たとき「ええぇ、ファイブキング要素どこよ」とかでちょっと苦手ぎみだったけど、見慣れるとアークベリアルとはまた違った良さ、味があるから好きです。

ドンシャインについては言うことなし。 好き!! 神対応!!



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8

上海で行われる魂ウェブのウルトラマンイベントでフュギュアーツの赤目ジードで限定販売ってなに? 一番欲しいフュギュアーツなんだけど!!

須賀川でのExpoで販売すると信じてる!!


そんな感じで今回もよろしくお願いします。
感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘くださりいつもありがとうございます。


 激昂しているモードレッドの目には、自らの宿命である黒馬と槍を携える騎士王しか見えていない。だからこそ接近してくる存在に気づけなかった。

 

「がはっ……!! 」

 

 モードレッドと黒馬に駆る騎士王との戦闘。卓越した剣技と槍技の激突の間に突如として割って入ってくる者がいた。

 その男は、燦然と輝く王剣(クラレント)黒く禍々しい最果ての槍(ロンゴミニアド)を素手で受けとめ登場すると、騎士王のことは超能力で吹き飛ばし、モードレッドへは容赦のない蹴りが放たれ両者ともに吹き飛ばされる。

 

『べべ、べリアル!! どうしてモードレッドにまで攻撃を……、やっぱり彼はっ!! 』

 

「待ってくださいドクター! あれは違います……違うと、思うんです…… 」

 

 何棟もの建物を突き破っていったモードレッドを追うように消えていったべリアルを見て、彼の事を敵だと睨んでいるロマニは通信越しに慌て出すが、彼の事を現地で見たマシュは声を荒げて否定した。

 

「べリアルさんのあの目は……。 ────っ、飛ばされたアーサー王復帰してきます!! 」

 

 

 

 

 モードレッドを吹き飛ばした場所へと降りてくると、直ぐ様魔力を放出させた剣が迫ってくる。

 

()()……また邪魔しやがったな!! オレの叛逆を邪魔するんじゃねえっ!! 」

 

「あのまま続けていたとしても、貴様は同じ運命を辿っていただけだ 」

 

「同じ運命。 ────っ! オレが、この私があの槍に貫かれ潰えると言うかっ! 舐めるなよっ、今の私は生前の時とは違う!! 」

 

「違うものか 」

 

 剣技に時折拳や脚での攻撃を混ぜてべリアルへ向けたとしても、一撃として届く気配がない。 べリアルは完全にモードレッドの動きを見切り、最小限の動きで避け続けている。

 

「貴様はこの世に産まれ落ちた時から何も変わっていない。 何一つもだ 」

 

 モードレッドの攻撃を避け続けていたべリアルが動いた。片手だけで彼女の剣を掴み取ると、モードレッドが素手での攻撃へと転じるよりも素早い動きで黒き鋼を腹部へ当て、そこから放出されるエネルギーの塊を零距離でぶつける。

 

「ガアアアアッ!! 」

 

 爆発によって今いた建物は崩れ落ち、着ていた鎧のおかげか消滅を間逃れたモードレッドは地面に倒れ伏せていた。

 

「創造主の目的の為だけに造り出され、決められた道を歩くことを強いられた 」

 

 倒れている彼女の頭の上に足を乗せながら、相手を確実に陥れるそんな悪意の籠った声で語り出す。

 

「人ではない自らの存在を恥じ、王に焦がれ一度は真っ当な騎士になろうと目指したお前は、自らの真実を知り父親に拒絶されたことによって、定められた道を歩むことになった 」

 

「うる……せえ…… 」

 

「自らの命と引き替えに騎士王の歴史を終わらせた? 驕るのも程々にしろ、貴様は只決められた道を駆け抜けただけだ 」

 

 分かっている、言われなくても分かっている。 モードレッドが謀叛を起こさなくてもブリテンは崩壊の一歩を辿っていた、モードレッドはその時をただ早めただけにしか過ぎない。

 

 それでも彼女にはそれしか道がなかった。 ただ偉大な父に一個人として、息子として認めて貰いたいという幼子のような想いも、自分を見てくれない、息子と認めてくれなかった憎しみの籠った愛憎。

 その全てを、目の前の男に見透かされているほどに自分の一生は軽いものだったんだと自覚したモードレッドは悔しくて知らぬうちに頬を涙が伝っていた。

 

「なら……どう、すれば……よかったんだよ…………! 」

 

 地面を涙で濡らしながら弱音を吐くモードレッド。その髪を強引に掴み顔を持ち上げられる。顔を向かい合う形にされたべリアルのその目は、とても冷たいものだが確りとモードレッドの目を見て言葉を口にする。

 

「運命を変えろ。誰でもない、お前自身の運命をだ 」

 

「オレの運命を、変える…… 」

 

「造られた存在である恥を捨てろ、短命を乗り越えてみせろ。 己のに定められた運命をひっくり返せ。 それが、ジードだ 」

 

 ジード、その言葉の意味をようやく理解したモードレッドは、そんな力を自分にあるのか悩んでしまう。 そんなモードレッドの思案などお構いなしにべリアルは掴んでいた彼女の髪から手を離し立ち上がる。

 

「ジードを成すというのなら立て。 そしてあの剣を抜いて見せろ、まずはそこからが始まりだ 」

 

 べリアルの視線を辿ってみると、そこには彼の攻撃によって手から離れていた燦然と輝く王剣が、崩れてできた巨石に深々と突き刺さっていた

 『勝利すべき黄金の剣』のようだと、その突き刺さる剣を見て彼女はそう感じた。アーサー王が引き抜き王となった選定の剣、直接その瞬間を見たわけではないが、聖杯への願いだったからこそ、そこへと思いたった。

 

「ぐっ……あぁぁ!! 」

 

 軋む身体に鞭をうちながら立ち上がったモードレッドは、使い物にならなくなった鎧を消し、弱々しい足並みで石に刺さる剣へと向かっていった。

 

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

────ジーっとしてても、ドーにもならねえ!!

 

 自分に勇気をくれるその言葉を胸にキメラべロスから抜け出したリクくんは、家族のような仲間がいるから、たとえそれが本物じゃなくてもソレが本当なんだと証明するため自分の運命と戦うことを選んだ。

 

 レッキングバーストを使い、キメラべロスごとと一緒に地球へ戻ってきたジードは、べリアルさんのことをそして彼を連れてきたんじゃないかとジードのことを恐れる人々の目を受けながらも戦うと決めたからこそジードは立ち上がる。父を前にして恐れないための勇気を燃やして(ソリッドバーニング)

 

『ストライクブースト!!!! 』

 

 地球に住む人々に、そしてキメラべロスに向けて生まれたその日から決められていた、その向かい風に抗う衝撃を魅せていく(アクロスマッシャー)

 

『コースクリュージャミング 』

 

 戦場にたたずむ大きな影を前に怯むことなく立ち向かっていくジードに、みんな希望を見出していく。 そんなみんなを、希望を守る(マグニフィセント)ためにその力を振るっていく。

次第に恐れていた人々はジードに声援を送る、そんな声がジードに力をくれる。

 

『僕は、あなたを越えてみせる!! 』

 

 自分がべリアルの息子だってことを認めた上で、リクくんはべリアルさんを越えると宣言する。

その覚悟に、想いに伏井出ケイも、べリアルさんすら予想もしなかったウルトラカプセルが起動する。

 

"ユーゴー!! "

 

1本目は、今自分が相対している越えると宣言した父親────ウルトラマンべリアルのカプセルを。

 

"アイゴー!! "

 

2本目は、全てを超越している王の力────ウルトラマンキングのカプセルを使用する。

 

"ヒアウィーゴー!! "

我、王の名の元に!!

 

 今までのフュージョンライズとは明らかに違う。リクくんの目の前に出現した杖のような剣──闇を切り裂く王の剣を手にその姿を変える。

 

"変えるぜ運命!!"

 

 闇に染まる前のべリアルさんにキングの鎧と風格を纏った定められた運命を引っくり返す姿『ウルトラマンジード ロイヤルメガマスター』

 

『貴方は強い。だけど、間違っている!! 』

 

 戦いの舞台を空へと変え、邪魔なものが無くなった2人の戦いは熾烈を極めていく。

 

『オレをどれほど否定しようと、お前はべリアルの息子。 生きている限りオレの名前からは逃れられん 』

 

 自分のことを否定してきたウルトラマンキング。 そのキングが力を貸すほどに認めたジードのことを、もう一度吸収するのではなくキメラべロスは、ベリアルさんは一体の怪獣として立ちふさがる。

 

『逃げるつもりはない! この身体が貴方から造られたものでも、この魂は……僕のものだ!! 』

 

『変えられるものかっ! 運命をっ!! 』

 

『変えてみせる!! 僕の運命は……僕が決める!! 』

 

 それでも、与えられたものではない。自分で決めた自分だけの運命を歩むと決めたジードは彼の力にも言葉にも負けず超えていく。最初はジーッとしてても、ドーにもならなかったからこそなったジードじゃない。遺伝子のGENEと運命のDESTINYを組み合わせた名前『GEED』を胸に、運命をひっくり返すその一撃をキメラべロスへ刻み込むことで勝利を収めた。

 

運命を引っくり返す。 だからGEE⇆D。 ……そうか、それが君の歩むヒーローとしての道なんだねリクくん。

 

 

…………でも、支えてくれる頼もしい仲間がいなかったら、生きる意味を見つけられなかったら、ジードという言葉がなかったら…………憧れとなるヒーローが存在しなかったら──

リクくんはきっとなっていたんじゃないのかな、孤独を満たしてくれる唯一の肉親を守る──そんなウルトラマンに……

 

 

 

────◇◆◇────

 

 

 

 

『貴公には、王としての器がなかったからだ 』

 

「はあ、はあ、はあ………… 」

 

『何を遊んでいるのですモードレッド! 』

 

 覚束ない足取りながらも、石に突き刺さった燦然と輝く王剣の前へと辿りついたモードレッドの頭には、父と母、二人の言葉が何度も何度もループしていた。自分を息子と認めてくれない父、自分のことを息子ではなく復讐の道具としか見てくれない母の声が……。

 そのせいなのか、モードレッドの伸ばした手は剣の柄の前で止まってしまう。

 

(燦然と輝く王剣……王位継承を示すお前も、言うならば選定の剣だ。 何ビビってんだよ、コレはオレが何よりも望んでたことじゃねえか)

 

 目の前にある刺さるクラレントを彼女は握ることすら出来ずにいた。 どうしても手が震えて動かなくなってしまうのだ、コレを抜いて本当に運命を変えられるのかと脅えている。

 

『貴公は王になる資格はない 』

 

『モードレッド、貴方はアーサー王のブリテンを滅ぼす。 そのためだけに私が産み落としたのです 』

 

(無理だ……やっぱり無理だ。 オレを認めていないコイツを引き抜くなんて…… )

 

 役目をこなす人形。 入るはずのない両親の幻覚を見るモードレッドは、自分では燦然と輝く王剣を引き抜くことは出来ないと思い込んでしまう。 蛇のように絡み付く母に支えられながら剣を握り、抜こうと力を込めるが抜けないようにアーサー王がクラレントを抑え込んでいる限り、その剣は抜けないんだと……。

 

『貴公を認めるものは誰もいない。それはこの剣も同じだ 』

 

『貴方の運命は決められています。 その通りに、母の望み通りに進めばいいのです 』

 

(…………ほらな、やっぱりだ。 やっぱりオレなんかに、運命を変える力なんてねえんだよ )

 

 燦然と輝く王剣を引き抜けず、自分にはジードの力はないんだと諦め俯いてしまうモードレッドの思考は闇のなかに沈んでいく。

 そんな彼女のことを引き止める、不思議な温もりがモードレッドのことを包み込んだ。

 

「大丈夫だよモードレッドちゃん。 ジードは、運命を変える力は誰にだってあるものなんだ 」

 

(なんだ……これ。今まで感じたこともない気持ち悪い何かが手から、背中から伝わってくる…………。 でも何でだ、気持ち悪いはずなのに……嫌じゃねえ )

 

 優しい、柔らかな声と一緒にモードレッドの背中に手を添え、彼女の手を包み込むようにクラレントを握っていたのはべリアルだった。だが、今のべリアルからは父や母と同じく感じた感情とは別の、生前では感じたことのない()()がモードレッドの心を占めていく。

 

「一人ぼっちじゃ誰だって出来ることに限界がきてしまう。 けど、こうやって! 」

 

「あっ! 」

 

 べリアルの握る手の力が強くなり、反射的自分の手にも力が入るモードレッド。背後から聞こえてきるんーっとしまりのないその声と一緒に、巨石に刺さっていたクラレントが引き抜かれていく。

 突然のことでどうすることも出来ないモードレッドはクラレントが最後まで引き抜かれるのを見ているしかない。

 

「ほら、3()()でなら簡単に抜けた 」

 

「な、なんで………… 」

 

 選定の剣。王を選ぶ剣は一人で抜かなければ意味がない。それなのにそれを簡単に抜けるんだ、さが認めたのか…………色々な事が頭の中で渦巻いて、まとめることが出来ずそんな一言しか出せないモードレッド。すると、手を離し彼女と正面から向き合ったべリアルは、幾分小さい位置にあるモードレッドの頭に優しく手を置いた。

 

「”ジーっとしてても、ドーにもならない!”だからね 」

 

「はあ? なんだよ、それ…… 」

 

「運命を変えるための合言葉……みたいなものかな? どうすることも出来なくて立ち止まってしまった時、一歩前に進むための力になるんだ 」

 

 驚きを通り越して呆れていると、頭を撫でながら人の良さそうなその顔を向けながら恥ずかしかったのか、モードレッドはべリアルの手を払いのけて少し後退る。

 

「ああ、わーったよ!! 見せてやる、見せりゃあいいんだろ! やってやるよ、ちゃんと見てろよオレのジードってヤツを!! 」

 

「はは、うん楽しみだよ 」

 

 

 

 

 

 

 

 

「モードレッド! 大丈夫……って訳でもないのかな? 」

 

「ああ? こんなん掠り傷だ、唾つけときゃ治るっつーの。 ────それよりもだ 」

 

「??? 」

 

「オレと契約してくれ、藤丸立香 」

 

 

 




モードレッドがどんな答えをジードを見つけたのかは次回。 正直ベリアルって書いてるのに優しいとか柔らかなが自分的にも違和感あるけど仕方ないとしか言えない……。

ロイメガはショーで映えると思ってる。TV本編だと基本晴天で輝いてるイメージ強いけど、ロイメガは実際暗く所でスポットライトに当たりながらマントを輝かせるのが一番好き(ジードExpoを見て!!)

後初登場回が全フュージョンライズ大盤振る舞いの挿入歌『フュージョンライズ』のお披露目で全部持ってかれてると思う。後ドンシャイン

嫌いじゃない! 嫌いじゃないんだけど……惜しい……それがロイヤルメガマスター


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9

ルーブの映画が楽しみ過ぎる……。 グルーブのフルCGもさることながら後輩の背中を押す側になってより大きくなった朝倉リクを見ると本当に胸がドキドキする。

今回もよろしくお願いします。
感想、評価お待ちしてます
誤字脱字、ご指摘くださりありがとうございます。


「オレと契約してくれ、藤丸立香 」

 

「…………私で、いいの? 」

 

 呆気にとられたっていうか、私から契約を持ち掛けることはあっても彼女からその言葉が出てくるとは思っていなかった私はつい気のない言葉を返してしまう。

 

「バーカ、お前だから良いんだよ。 ……父上が守ろうとした民草に最も近いお前だからこそ、オレみたいな中途半端なバカが仕えるには丁度いい」

 

 私の言葉に怒るではなく、軽い調子でそう言った彼女は、防戦一方で攻めあぐねいている戦場を、アーサー王へと視線を向ける。

 

「オレはあの槍に貫かれて死んだ。 何度生を受けても同じ末路を辿る、それがオレだ。 だけどな、今ならその宿命を引っくり返すことができるかもしれねえ、一人で突っ走ってた昔とは違う今ならな 」

 

 さっきまでの彼女とは明らかに違う。 自分は死んででもアーサー王を倒そうとしていた彼女じゃない、自分の運命を受け入れた上で、それを越えていく覚悟を決めた強い眼を彼女から感じる。

 

「ジーっとしてても、ドーにもならねえからな。 これは王への叛逆じゃねえ、オレに定められた運命への叛逆だ。 それを成すために、力を貸してくれ立香 」

 

 右肩に剣を担いだまま、拳を握った左手を私に向けてくるモードレッド。 私は、この旅が始まって刻まれた令呪をじっと見つめ、大きく深呼吸してから自分の右手をモードレッドの左手に合わせる。

 

「モードレッド。 じゃあさ、私の叛逆にも力を貸してよ 」

 

「はあ? お前の叛逆? 」

 

「うん。 私の足ってさ、いつも震えて止まりそうになっちゃうんだ。 そんな自分を誤魔化しながら、叛逆しながらここまで歩いてこれた。 だけど、この足がもしも止まっちゃった時、そんな時はモードレッドが私のことを引っ張っていってよ 」

 

 多分、マシュやみんなにも言ったことのない私の弱音。それを正面から言えたのは、彼女の覚悟を決めた言葉がどことなく弱音にも聞こえたから……。

 

 冷静になってくると恥ずかしくなってきた私は誤魔化すようにして微笑みながら言葉を紡ぐ。

 

「じゃあ、力を貸すじゃ可笑しいよね。 私とモードレッド、それにみんなと力を合わせて叛逆を成そう!! 」

 

「…………あ~、あの野郎がな~んでお前らと一緒にいるのかやっと分かったぜ 」

 

 頭を掻きむしりながら何かをぼそっと呟いてたモードレッドは、拳を合わせるんじゃなくて、私の手を強引に開いてぎゅっと握りしめてきた。

 

「人が悩みまくって出した結論を、軽い感じで越えてくんじゃねーっつの。 ────いいぜ、契約成立だ! 一緒に叛逆を、ジードを見せてやろうじゃねーか()()()()!! 」

 

 

 

 最近慣れてきたお陰かサーヴァント契約をさくっと終わらせると、モードレッドは私のことを掴んだまま雷の階段を一直線に駆け抜けていく。

 

 引っ張られる恐怖を押し隠しながら正面に顔を向けると、マシュがアーサー王の槍を盾で防御していた。

 

「マシュ!! 一度弾いてその盾右に向けろ!! 」

 

「────! ハイッ!! 」

 

 駆け抜けながらモードレッドが指示をかける。 彼女からの指示に一瞬だけ驚いたマシュだったけど、私と目があった時に送った『大丈夫』が伝わってくれたのか、指示通りアーサー王の槍を弾いて盾を誰もいない右へと向けた。

 

「へへっ!! オラよっと!! 」

 

「────っ!! 」

 

「マシュ、だい、じょうぶ? 」

 

「はい、アステリオスさんが受け止めて下さったの「アステリオ──スっ!! 私も受け止めて──ー!! 」先輩っ!! 」

 

 盾を横にしたマシュの隣へと辿りついたモードレッドは迷うことなくマシュごと盾を蹴り飛ばした。 飛ばされた先にアステリオスがいること前提で蹴ったんだろうけど、マシュのこと蹴ったのと同時に私のことも放り投げるのはどうかと思うよ!?

 

「よーしっ!! 準備完了!! 目の前で見せてやるよ父上! ここからオレは、オレ自身を越えてやる。 コイツらと一緒になっ!! 」

 

 アーサー王と鍔迫り合いながらそう宣言するモードレッド。 その表情は、綺麗な歯が見えるほどに満開の笑顔を作っていた。

 

 

 

 ────────────

 

 

 

『オレはウルトラマンべリアルアトロシアス。 かつてこの宇宙を崩壊させたのは、オレだ 』

 

 べリアルの後釜を狙おうとする宇宙人、そして因縁の相手である伏井出ケイと戦い、その度に成長し勝利を納めてきたリクくんたちの前に、ロイヤルメガマスターに敗れたはずのべリアルさんが悪意と共にその姿を現した。

 

 ストルム星人だけが持つ位相変換を行うストルム器官。ジードとの度重なる戦闘で最大まで強化されたソレを伏井出ケイから奪い取ったべリアルさんは、絶大な力を有する2本の怪獣カプセルを使うことでその姿を変えた。

 

 地球人に、自分は悪の象徴なんだと、捨てたはずの『ウルトラマン』の名前を紡ぎながら恐怖を刻ませる。ゼロも、ジードも自分と同じ存在なんだと知らしめるかのように…………。

 

 彼は言った、自分はもうじき究極になると。一度はクライシス・インパクトによって崩壊しかけたこの宇宙は、ウルトラマンキングがその全てを使って繋ぎ止めている継ぎ接ぎの宇宙だ。 べリアルさんはストルム器官を使ってその糸をほどき全てを吸収しようと目論んでいた。

 

 そんなべリアルさんを止めるために、ゼロや星雲荘のみんな、AIB、そしてリクくんが動き出した。 吸収したカレラン分子を分解する酵素を撃ち込み、超時空破壊神ゼガンの光線とジードの光線がぶつかることによって生まれる時空の裂け目。その先にべリアルさんを追放するという作戦。

 

『光の国も、この星も、てめぇには指一本触れさせねえ! オレとジードがな! 』

 

『ジード……、息子の力を吸収出来ていればより完璧だったが。 フッ、どうやら反抗期のようだ 』

 

 最初に始まったのはべリアルさんとゼロの長きに渡る戦い。ゼロは即座にビヨンドへと強化変身し果敢に挑んでいくが、当のべリアルさんじゃ酷くつまらない表情で迎え撃つ。

 

 どんなにゼロの攻撃が届いても、進化したべリアルさんには一切ダメージが通らない。伏井出ケイが人質をとろうがとるまいが関係ない、それほどまでに今のゼロとべリアルさんとでは戦力の差が大きかった。

 

『家族を弱点と言ったな。それは違う! 守るべきものがあるから、オレたちは戦える!! 』

 

 地球に来て弱くなったと公言するべリアルさんに対してのゼロの返し。その言葉が癇に障ったのか、人質のせいでまともに動けないゼロ相手に容赦のない連続攻撃を浴びせ、 作戦の要である宇宙船の追撃すら許さず、撃墜し見ている人々全員に絶望を植え付ける。

 

『オレの血を受け継ぎながら、敵対する愚か者め』

 

『べリアル、僕が相手だ!! 』

 

 そんな絶望のなかで唯一人、ジーっとせずに、この状況をドーにかするために、ジードがべリアルさんの前にたった。

 親と子の対決……。ジードを前にしたべリアルさんの瞳は、どこか笑っているように見えた……

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 

「いいぜ! いいぞマシュ!! 怯むな、脅えんな立ち向かえ!! お前の盾は、アイツを既に越えてんだ!! 」

 

「……はああああっ! お願いしますっモードレッドさん!! 」

 

 モードレッドはマシュに力を貸してくれた英霊について何か知っているのか、自信満々でマシュのことを励ます。その励ましに力を貰ったのか、アーサー王の繰り出す槍の猛攻を凌ぎきったマシュは、最後にはその槍を大きく上に向けて弾いてみせた。 それだけでは止まらない、マシュは直ぐ後ろで控えていたモードレッドに向けて手を伸ばす。

 

「よおっしっ! 引っ張れマシュ!! 」

 

「はいっ!! 」

 

 伸ばされた手を強く握られた事を確認すると、マシュはハンマー投げの要領でモードレッドのことを投げ飛ばした。 投げられた勢いを生かし、モードレッドは空中で1回転という器用な事をして剣を降り下ろす。

 ギリギリの体勢で立て直し槍で防御されたため直撃とはいかなかったが、衝撃だけでもかなりのダメージが入ったはず。

 

 まるで昔からの知古のように息のあった攻守を立ち替わり入れ替わりしながらの戦闘によって徐々にではあるがコチラ側が有利になってきている。

 

「────父上、アーサー王よ。 貴方は強い……貴方の行いはブリテンに住むもの皆の憧れであり常に正しき道を指し示していた。 だが、その完璧すぎるまでの正しさを、オレは否定する!! 」

 

「────!! 」

 

「貴方と違いオレは不完全だ。 例えこの身体が貴方を写した模造品だとしても、オレは一生貴方のようにはなれない。 ましてやオレは普通の人間でもなければ、誇れるような騎士でもない 」

 

 戦闘を行いながら、彼女は自身の思いの丈をぶつけていく。 その言葉が届かなくても、何も応えてくれないとしても、自分で決めた道を迷わず進むために。

 

「そんなオレが貴方を越えるにはどうすればいいのか。 悩んだ、スゲー悩んだ…………、だけど判ってみると簡単なことだったんだ。 オレには、コイツらがいる!! 」

 

 モードレッドの攻撃で生まれた一瞬の隙、マシュもそれを見逃すことなく二人同時に与えた攻撃がアーサー王を捉えた。 腹部へと直撃した二人の攻撃を受けて、彼女は吹き飛ばされていく。

 

「怪物と恐れられ、勇者に討たれることを宿命づけられた牛頭人身の大馬鹿野郎!! 」

 

「…………ぼく? 」

 

 剣を肩に担ぎ直しながら、モードレッドが叫ぶ。 アステリオスのことを悪く言っているけど、その言葉に悪意は込められていない、むしろそのことを誉めてるっていうか……

 

「復讐のためだけに生み出された、聖女の代わりにすらなれねえ田舎娘!! 」

 

「…………いいわ、この馬のこと倒したら次はアンタよ! そっちの女に負けたら承知しないわよ!! 」

 

 次はジャンヌオルタだ。 言われた本人もいつも通り噛みついてるけど、モードレッドの言葉に含まれてる意味を理解しているのか本気では怒っていない。

 そうやってモードレッドが宣言をしていると、風の流れが変わり始めていることに気づいた。このロンドン全域を包み込んでいた霧が風に乗り、まるで台風のように渦を巻いて収束しいく。 その下で、アーサー王が槍を天へと掲げ宝具を放つ準備をしている。

 

「マシュ!! コッチも宝具を!! 」

 

「────っ!! 」

 

「……心配すんなよマシュ。 お前ならあの嵐を止めんのなんて立香の足を止めるよりも簡単だ。 ホムンクルスでデミサーヴァント、人間でも英霊でもない半端者。 んなこと気にすんな!! お前の持ってるモン、守りたいと思うその気持ちを貫き通せ!! 」

 

「モードレッド……さん。 ────はいっ! マシュ・キリエライト、宝具展開します!! 」

 

 励ますことは出来ても、共感することは出来ない部分。モードレッドだから贈ることの出来るその言葉に勇気を貰ったマシュは、槍から放たれる濃密な魔力の嵐を受けとめるための『人理の礎』を展開する。

 私もマシュに貸すために令呪を一画消費して、その分のカルデアからの魔力を気持ちと一緒にマシュに送った。

 

「ありがとうございますマスター立香っ! ────所長、私に皆さんを守る力を! はああああ!! 」

 

 このロンドン全てを覆っていた魔力を収束した槍から、歯向かうもの消滅させんとする嵐が高速で向かってくる。 吹き飛ばされるのを何とか堪えながら、マシュがその嵐を塞き止めているのをその目に焼き付ける。

 声を荒げ叫びながら、精一杯自分に出せる全部の力を振り絞りながら嵐の行く手を阻み続ける。

 

「──────!! 」

 

「通しません、この先にはジキルさんたちが、ジャンヌさんやアステリオスさん、モードレッドさん。 ……そしてマスターがいます!! だからこそ、絶体に守り抜きます!! 」

 

「はははっ!! そうだ、魔術のまの字も知らねえ半端なマスターだから守る価値が、一緒に歩く意味がある!! 」

 

 盾を構え嵐を抑え続けるマシュの後ろで、豪快に笑いながらモードレッドは肩に担いでいた剣を両手に持ち替え、胸の前で構えてる。

 

「そんな中途半端の不完全なヤツらがいて、ようやくオレは一端の騎士になれるんだ。────だから力を貸せ、クラレント 」

 

 強く、さらに強く剣を握りしめると、クラレントの一部が口を開き彼女を中心に魔力が舞い上がり始める。

 

「お前が選定の剣だというのならば、アレを王と認めないというのなら! オレに、()()()()に力を貸せクラレント!! 剣の中の王とさえいわれたお前の、真の輝きをこの私に見せてみろ!! 」

 

 モードレッドの言葉に応えるように剣から眩いまでの魔力が放出される。一辺の曇りもない白銀の輝き、今が戦いの最中であることを忘れてしまいそうなほど綺麗なそれは、ロンゴミニアドの荒々しく禍々しい魔力とは正反対もので、モードレッドが求めていたもの何だろうけど、何が気に食わないのか舌打ちしている。

 

「────お前もつくづく面倒くさい剣だな!! わーったよマスターみてーなこと言うな!! 合わせりゃあいいんだろお前とも!! 」

 

 クラレントも意志があるのか、白銀の魔力が弱くなったり強くなったり点滅したりしながらモードレッドと会話してるっぽい?

 合わせる……、力を貸すんじゃなくて合わせるんなら良いってことなのか、モードレッドが力を込めると白銀の輝きを包み込むように赤黒い魔力が放出を始める。 白銀だけだった時は静かだったそれは赤雷を周囲に纏い始めると、赤子が産声を上げた時のような大きな音を鳴らす。

 

「“────これは王への叛逆に非ず、我が血に宿命づけられた運命への叛逆である!! ” 」

 

 胸の前で構えていたクラレントを、両手で握ったまま切っ先が地面についてしまうのではというところまで腰と一緒に下ろしながら、言葉を紡ぐ。

 

「“────これこそは、民草を守護せし王剣!! ” 」

 

 剣に最大限まで高まった二種類の魔力によって、地面を抉り持ち手であるモードレッドの束ねてあった髪もほどけていく。

 そうして、モードレッドの宝具が放たれることを理解したマシュは気合いを入れて嵐を少しだけ前に押し出しモードレッドが入れる隙間を作る。

 

「【我が忌まわしき(クラレント・ブラッド)宿命への叛逆(ジード)!!!!!!!】」

 

 マシュが作ってくれた隙間へ入り、大きく横薙ぎに振るった剣から極大まで溜まった魔力が放出されていく、

 今までモードレッドが使ってきた【我が麗しき父への叛逆】とは違う真名解放。 運命を引っくり返す、その意味が込められた言葉と一緒に放たれた魔力は赤雷を纏った一本の図太い線になってアーサー王へと向かっていく。

 

『────!! 』

 

「がああああああああっ!! 」

 

 マシュの宝具の盾が消滅すると、赤雷を纏う白銀が漆黒の嵐の行く手を阻み始める。これで、勝敗が決まる……。伝承通りにアーサー王の槍に貫かれて負けてしまうのか、ジードの名の下に、宿命への叛逆を成すのか。 ぶつかり合う魔力の衝撃に目を覆いそうになってしまうけど、私はその決着をちゃんと見届けなくちゃいけないんだ!! これからもモードレッドと歩いていくために!! 

 

 

 

 

 




アーサー王を討ち取り、自身の運命をひっくり返したモードレッド。
全てが終わったかに思えたカルデアの面々の前に、最大の悪が姿を現わす。
圧倒的な力の前に立ちすくむ中で、ただ1人立ち向かう者がいた……。
貴方は……

次回Fate/Grand Order〜Bの因子〜
「スタートラインはここからだ!! 」

その時始めて……巨人が姿を取り戻す……



【モードレッドが霊位解放権『宿命に叛逆せし者』を入手しました。】

【我が忌まわしき運命への叛逆】
自分の運命に叛逆することを決めたモードレッドの新しい宝具。 クラレントの持つ本来の白銀の魔力とモードレッドが使う赤黒い憎悪の魔力を混じり合わせて放つ。
簡単に言えばモードレッド版レッキングバースト


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10

自分は絶対強者だと信じて止まない相手の鼻っ柱を粉々に砕く。 そんなスタンスでお送りします。

魂ウェブのゴールドラッシュ。あれの対象商品の【?】部分にウルティメイトファイナルのフィギアーツが来ること信じてます。 映画公開だからってグルーヴかグリージョだしたら許さんからなぁ!!

カイザーベリアル改造セットだったら? 神、一生ついていきます。

そんな訳でよろしくお願いします。
感想、評価頂けると幸いです。

ご指摘、誤字脱字の報告ありがとうございます。


「よっし!取ったぜマスター、ホラよ! 」

 

「わわわっ! ほっ、とっ 」

 

 令呪を一画切った最後の一押しだと言わんばかりのモードレッドの宝具によって、嵐も、アーサー王すらも呑み込んで勝利を収めた私たちは、アングルボダのある地下空間まで戻ってきていた。

 

 理由としてはニコラ・テスラを追うことに夢中で忘れてた聖杯を確保が目的。 だからってアングルボダから取り外した聖杯を投げ渡さなくたっていいのに、()()()()()()()()()()ガサツなのは変わらないんだから……。

 

 そう、今のモードレッドはさっき戦ったアーサー王と同じくらいに成長していた。身長はさることながら、髪の毛は纏めてないと地面に届いてしまうほど長くなり、顔からあどけなさが消えてキリッとしてる。まあ、胸の方はアーサー王みたいには大きくならなかったみたいだけど……。

 

 そんな驚異的な変化はドクターたちの見解では、いつの間にかモードレッドの霊基に埋め込まれていた冬木で獲得した聖杯が何らかの変化をもたらしたことで今の姿に霊基が変わったんだという。

 

 聖杯はダヴィンチちゃんが他の誰にも悪用されないように管理しているから持ち出せる人なんて一人しかいないんだけど……、なんでモードレッドに貴重な聖杯を持ち出してまで使ったんだろう。

 

 

 聖杯を回収して大円団で終わるはずだった第四特異点の旅。そのはずだったのに……

突然としてカルデアからの通信が音声だけしか拾えない状態になってしまい、地下空間の一部が歪んでできた穴のなかからソイツは私たちの前に姿を現した。

 

「あ、あれは────ヒト? 」

 

「下がってろマシュ。 お前は後ろでマスターのこと守ってろ。 行けるかアステリオス、セイショジョ様? 」

 

「見くびられたものねぇ。 ちっ、ふざけた魔力……これじゃあまるで──── 」

 

 悪魔、天使すらも越えると、この場所に集まったサーヴァントの一人であるシェイクスピアが言った。無尽蔵とも感じる魔力の量、存在するだけでこの領域を圧し潰してしまうほどの支配力をもった相手だと。

 

「無様にも。無惨にも。無益にも。生き延びている無力な船 」

 

「ぐあっ! 」

 

「ガッ! 」

 

「っ、ふたりとも、あぶないっ!! 」

 

「みんな!! 」

 

 歩きながら伸びてきた槍のようなものがシェイクスピアとアンデルセンを容赦なく貫いた。 そして、その槍のようなものに唯一反応したアステリオスは、ジャンヌオルタとモードレッドを守るために盾となって貫かれてしまう。

 

 突然の出来事に驚くばかりだったけれど、串刺しにしたサーヴァントたちを持ち上げたそれは、一本一本が魔神柱そのものだった。

 みんなが消えてしまうのと同じくして、全体が見えたその褐色の男は、自分が作り出したこのこの惨劇に驚愕している私たちを嘲笑いながら自らの名前を口にする。

 

『我が名は()()()()。数多無象の英霊ども、その頂点に立つ七つの冠位の一角と知れ 』

 

 発する声一つひとつに押し潰されてしまいそうなほどの圧がかかってくる。屈しろ、ここで諦めろと言うように……。

 

『楽しいか、問うのか? この私に、人類を滅ぼす事が楽しいかと? ああ────無論、無論、無論、無論、最ッッ高に楽しいとも! 楽しくなければ貴様らをひとりひとり丁寧に殺すものか! 私は楽しい。貴様たちの死に様が嬉しい。貴様たちの終止符が好ましい。その断末魔がなによりも爽快だ! そして、それがおまえたちにとって至上の救いである。なぜなら、私だけが、ただの一人も残さず、人類を有効利用してやれるのだから────』

 

 その圧倒的なまでに絶大な魔力に屈しかけた自分の心を奮い立たせ、私はソロモンへと疑問をぶつけた。 そうして帰ってきた答えは酷く歪んだ、狂っているもの。 全人類を、自分自身に快楽の為だけに滅ぼし、そに考えが私たちの救いだと本気で思っているイカれた思考回路。

 

 その考えが許せなかった、許してはいけない。 だから闘いを挑むけれど、私たちの力は全くといっていいほど歯が立たない、ソロモンに届かない。 こっちには聖杯の力を有しているジャンヌオルタにモードレッドだっているのに……それなのに!! こっちは、喰らい付いていくのに精一杯だ。

 

『そう悲哀するな娘よ。 そも、この私と貴様ら非凡な英霊共では英霊としての格が違う、届くわけがないだろう 』

 

遊ばれている。手を抜かれている。手加減されている。

そうだと言うのに、それが分かっているのに私たちはソロモンに傷一つつける事が出来ない。四体の魔神柱を前にどうすることもできない、何か出来たとしても相手は後六十八体の魔神柱を召喚出来る余裕さえ残してる。

 

『フッハッハッハ!! 心が折れたか娘よ!! ならば良い! 祭壇を照らす篝火だ! 盛大に燃えるがよい!! 』

 

 四体の魔神柱の目玉が不気味に輝き、私たちを襲おうとする。

炎が、あの時私以外のマスター候補を、人理を焼き払った業火、篝火がついに私のことを燃やしにきた。

何も出来ない、諦めるしかなくて体から力が抜けて崩れ落ちていく……。

 

「オレが、コイツらがお前のこと引っ張ってってやる。 だから、諦めんじゃねえよマスター!! 」

 

「モードレッド……!! 」

 

 そんな絶望に思考が染まりそうだった私の身体をモードレッドが受け止めてくれて、叱咤してくれる。 足を止めるなって、契約する時に決めた約束を、モードレッドは守ってくれた。 けど、放たれる炎をどうにか出来る力は私たちにはない。

 

「そうだ、それでいい。 どんな絶望の中であろうと、その弱々しい足を止めるな──ジェアッ!!!! 」

 

 その言葉と一緒に、私たちを影が横切った。その影は私たちの前に立つと、手に持つ武器を一振り……たった一振りしただけでその炎を消し去って見せた。 それは、絶望の雨にうたれている私たちの道を晴らしてくれる。 希望に見えた……

 

「ベリ……アル……さん…… 」

 

 ベリアルさんならソロモンを相手でも何とかしてくれる。 そんな安堵から視界が歪むのを必死で抑えながら、魔神柱から放たれた炎がまさか消されるとは露とも思っていなかったソロモンの表情が驚愕に染まっている。

 

『馬鹿な……。 焼却式・べレトを消し去っただと……! 貴様、一体何者だ!! ────待て、何者か、だと? 』

 

「どうした、その眼でこのオレのことを見通して見せろ 」

 

『あ、ああありえぬ、ありえぬありえぬありえぬ!! この私が見通せないだと? 何もわからないだと! この千里眼を持って何故貴様ごとき英霊風情が見通せない!! 』

 

「答えは貴様自らが吐いただろう。 ──格が違うんだ、オレと貴様ごときではな 」

 

 何もかもを見透かしている。そんな気色の悪い余裕を見せていたソロモンに焦りが見える。 どうやらソロモンでもベリアルさんのことは何もわからないみたいで、その事が許せないのかソロモンは子供のような癇癪を起こしている。

 

「うふふふ♪ 未来を真っ赤に燃やしてしまった悪者でもそんな表情をするのね? ねえ、良いおじさま。 早く見せてくださいな、悪いおじさまの本当の姿を♪ 」

 

「え、誰? 」

 

 場違いにも程があるほど陽気で、くるくるとその場所で回り続ける黒いドレスを纏った小さい女の子。 ここにいるって事はサーヴァント何だろうけど、彼女は可愛らしい足取りでベリアルさんの所まで歩いていくと、その手に見たことのないような物体が握られていた。

 

何かを差し込む穴が2箇所空いている長方形の物体に、もう一つは握力計の形に似たナニか。 黒を基調として所々には赤色の装飾が使われているその物体を、ベリアルさんが笑顔で……笑顔!? を浮かべながら感謝と共にそれを受け取る。

 

「やっぱりコレがないと始まらないわよね。 ヒーローもヒロインも素敵な姿に変わるその瞬間が一番ステキなんだもの!! けどごめんなさい、色違いのものしか用意出来なかったわ 」

 

「そんなことない百点満点だよ()()()()()()。う〜ん、黒いから『ベリアライザー』ってところかな? 」

 

「応えろ! 貴様は何だ? 我が瞳を持って見通せない貴様は何者だ!! 」

 

「────魔術王ソロモン……でしたっけ? 貴方は立香ちゃんたちに言いましたよね、『知る必要はない、ここで終わる貴様らには』と。 馬鹿なことを言わないでくれ、立香ちゃんたちの未来はこんな所で何て終わらない、それに私たちは───ここからが、スタートラインなんだ!! 」

 

 柔らかな口調、優しい目。 その雰囲気から分かった。 あの人はベリアルさんじゃない、ベリアルさんが憑依していた身体の本当の持ち主である宮原博樹さんだ。 彼は、女の子から受け取ったベリアライザーと呼んだその道具を胸の中心にかざすと、赤い球体のようなモノに全身が覆われていった。

 

中で何が起きているのかは分からないけど、赤い球体を白い光が膜のように覆うと、それら全てを遮断するように黒い闇が包み込んだ。

黒い球体は一度大きく膨張すると、次第に小さくなっていく。 そうしてある程度まで小さくなったその塊は見る見る内に四肢の生えた人間に近しい貌へと変わり、言葉に表せない奇声を上げ始めた。

 

【────! ────────!!!! 】

 

 おおよそ人間の喉から出てはいけないその声は、痛みや苦しみの感情に他に、自分を蝕んでいる何かに抗っているように見える。

そんな異様な光景に、誰も動けない。 目の前で起きている意味のわからないその光景から目が離せなくなっている。

 

【────! ぐうっ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!!】

 

 声が聞こえた。 私たちでも理解できる声が。痛みに耐え抜いたのか、それとも打ち勝ったのかはわからないけど、喉が潰れてしまう程の大声を出し切った瞬間何かが切れた。

ヒトガタの身体から力が抜け、糸の切れた操り人形のように腕がダラーンとぶら下がる。

 

『フハハハハっ! どうやら、儀式も徒労に終わりただの見かけ倒しだったようだな!! 』

 

【だから、貴様のその眼は節穴だと言っている 】

 

 動かなくなった博樹さんであろうヒトガタをソロモンが嘲笑う。けどその瞬間、心臓を鷲掴みされたような圧のある低い声が耳を通り越して頭に響く。

ぐん、ぐぐん、ぐぐぐぐんっ!!

エネルギーの集まりのようなヒトガタが、その大きさを変えていく。1度目はアステリオスよりも少しだけ大きくなったように見えたけど、それだけでは留まらない。

見る見る内にヒトガタは巨大になっていき、一分もしない内に高層ビルと同じくらいまで高く、大きくなっていた。

 

【知りたがっていたな。 このオレが何者であるのか……。 今のオレは気分が良いからな、教えてやる 】

 

 巨大化が止まると同時に、エネルギーだった身体が実体を持ち始める。全てを呑み込んでしまうような漆黒に、全身を這うように血のように濃い赤のラインが走る。

鋭利な爪、強靭な顎、溶かされてしまいそうな程赤く鋭い眼。 今まで、こんな生き物を見たことが無いはずだけど、私は目の前に現れた巨人にどこか既視感を覚えた。

 

確かに、見たことのない凶悪な見た目をしているけど……胸の中心に赤く光る流れ星のような輝きを放つ結晶体に、巨人の身体……。

どうやら、マシュとジャンヌオルタもおんなじ結論に至ったみたいで顔を見合わせる。

テレビの中でしか見たことないけど……きっとあの巨人は……

 

────このオレの名は

 

 

【ウルトラマン】だ

 

 

 




"ここからが、スタートラインだ!"
宮原博樹が変身前に言った一言。べリアルと一緒に歩いていくという意志表明と共に、伏井出ケイがべリアル融合獣に変身する時に言っていた『これで、エンドマークだ』をひっくり返した覚悟の言葉。

"ベリアライザー&装填ナックル"
宮原博樹が変身する際にナーサーリー・ライムから受け取った変身アイテム。 ライムが、陣地作成のスキルで応用することで造り出した舞台装置。 当然のことながら変身する機能は備わっていないが博樹とライムいわく『気持ちが大事』らしい。

プレバン限定のリデコ商品。多分べリアルさんのボイスが多数収録されており、ボタン長押しで(宮迫さんver・小野さんver・少ないが高塚さん、藤原さんverもある)声を変更できる。 オリジナルのカプセルが4本収録。

”モードレッド〈宿命に叛逆せし者〉”
ジードを成したことによって、いつの間にか埋め込まれた聖杯が発動したことによって成長した【短命を乗り越えたモードレッド】。
胸がないのか、本当はあるけどサラシで巻いているのかはイメージしだい。


次回「あたし(ありす)あたし(アリス) あなたと僕 」

べリアルVSナーサーリー・ライム戦。 結果はもうお察しだけど……ね?
何故ライムが味方としているのか、ベリアライザーを造り出せたのか、目覚めた博樹は何故ライムのことをアリスと呼んだのかなどをちゃんと掘り下げる回……の予定


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11

前回のベリアルさん変身回では沢山の反応ありがとうございます。
今回はベリアルvsソロモンではなく、何故宮原博樹はベリアルさんに変身することが可能になったのか。
ナーサリー・ライムが仲間になった理由を深掘りしていく話。

キーワードとしては「宮原博樹は他マスター候補同様意識不明の重体であるということ」

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字の報告いつもありがとうございます、ご指摘ありましたらお気軽に




 ロイヤルメガマスターに変身したジードすらもベリアルアトロシアスは圧倒していく。カプセル一つに込められたキングの力と違い、アトロシアスが次々に吸収し強化しているキングの力はこの宇宙と同じだけの量がある。 そんな誰が見たって力の差は歴然だ。

 手も足も出ない、そんな矢先に光明が舞い降りた。ジードとの戦闘に集中していたアトロシアスの一瞬の隙をついたゼロがカレラン分子分解酵素を打ち込むことに成功した。それによってアトロシアスはキングの力の吸収は止まり、体内に留まっていた力もアトロシアスの身体から粒子となって放出された。

 

『私がこの場を引き受ける。 一旦引いて態勢を整えるんだ 』

 

『またオレの邪魔をする気か、ケン 』

 

 キングの力が無くなったとしても、アトロシアスの持つ力は強大だ。 ゼロは肩を貫かれ倒れ、ジードも基本形態へと戻ってしまう。 そこにやってきたのがウルトラの父もとい、ウルトラマンケンだった。 彼は別宇宙からアトロシアスの存在を感知し、抑え込むためだけにやってきたのだという。

 ケンは自分とベリアルさんを光の繭──ウルトラコクーン──を展開し、ジードたちが態勢を立て直すための殿を務め始めた。

 

 そうして、ジードの再変身が可能になる20時間が経ったのと時を同じくして、光の繭が消え去りその中からアトロシアスと疲弊したケンが姿を現した。

 

『老いたなケン。 お前にオレは止められない 』

 

 ずっと超えたいと思っていたケンと自分がこんなにも差がついていた事に落胆の声を漏らすアトロシアス。 これが最後の戦いだ、最大の覚悟を決めたリクくんがプリミティブへ姿を変えアトロシアスに背後から姿を現わす。

また邪魔をするのかと、ジードがなんて返してくるのなんて分かっているのに息子と呼びながら問く。

 

『僕はジード。 ウルトラマンジードだ! 』

 

 初めて息子と言われた時のような拒絶ではない。 自分がベリアルの息子であることを否定せず、受け入れた上で自分はウルトラマン何だって、みんなを守るヒーロー何だって堂々と答える。 そうして、ゼガンと作り出した次元の狭間へちベリアルさんを追放するための最大最後の戦闘が始まった。

 

 キングの力を失い、残っているのはカプセル込められたエネルギーと地力のみ。 だというのに、アトロシアスの強大な力はジードのひとつ上を行く。

 レッキングリッパーにはアトロスリッパーを、レッキングロアーにはアトロスロアーとジードの必殺技に対して瓜二つと言っていい技を繰り出し、その全てがジードの攻撃を超えている。

 

『所詮お前は実験体。 父親であるオレを超えられるわけがない。 諦めろ 』

 

『諦めない! お前との決着は僕がつける!! 』

 

 それで終わりか? お前の力はそんな物かと、何かを期待しているように挑発。安い挑発だ、けどそれに敢えて乗る。 絶対に諦めないんだという強い意志を現したリクくんに呼応するように他のウルトラカプセルが作用、起動した。

 それは、奇跡の輝き。 他の誰にも出来ない、『誰かの力と一緒に戦い続けた』朝倉リクが歩んできた軌跡が形となって発動した。

“ジードマルチレイヤー”ジード全てのフュージョンライズ形態が同時に実体化した。 同時に実体化したジードは、本体であるプリミティブの合図と共に戦闘を始める。

 

『ヒア、ウィー、ゴー! 』

 

 五体のジードのよる目まぐるしい攻防がアトロシアスを追い詰めていく。

ソリッドバーニングのストライクブースト

ロイヤルメガマスターのロイヤルエンド

プリミティブのレッキングバースト

マグニフィセントのビックバスタウェイ

アクロスマッシャーのアトモスインパクト

 アトロシアスを止めるために、全員の必殺光線が同時に放つ“ジードプルーフ”が襲う。アトロシアスはその技をウルトラマン三体の合体光線を受け止めたことのあるギガバトルナイザーで受け止めるが、ジードプルーフはその威力すらも超えギガバトルナイザーを破壊して光線を直撃させた。 それでもアトロシアスからベリアルさんの姿へと戻るだけ……規格外にもほどがあるけど、今までにないほど疲弊しているベリアルさんと最後の決着をつけるために、次元の狭間へ一緒に飛び込んでいった。

 

 

『これは……記憶なのか? 』

 

『力だ……力が欲しい………っ!! 超えてやる……!! オレを見下したアイツらを!! 』

 

『伝わってくる……怒りがっ、悲しみが………っ!! 』

 

『何度も何度もっ、あなたは生き返り……その度に、深い怨みを抱いて……っ!!』

 

『疲れたよね……っ。 もう、終わりにしようっ!! 』

 

『分かったようなことをいうなあああっ!!!!!!! 』

 

『レッキングバーストォォッッ!! 』

 

『ジーーードォォォォォッ!!! 』

 

 

────ああそうか、貴方が最後に呼んだのは唯一の肉親であるジードの名前だったんだな。ゼロやケンでもない、自分に最後をもたらしてくれた彼の、ヒーローの証である名前を。

そうして光が弾けたその先を歩いていくと私は、僕は3つに別れた道にたどり着いた。

 

「この場所は……? 」

 

「ここは選ぶ道によって未来が変わるふしぎなふしぎな道。 さあ、あなたの未来はどこかしら? 」

 

 楽しく、弾む声が聞こえてきた。 声のする方を振り向くとそこには誰もいないけど、声の幼さを考えて視線を下に向けるとその子が私に笑顔を向けて立っていた。 白いドレスを来た人形のように可愛らしい女の子。 私はその子がこの場所について知っている様子だから、目線を合わせるために腰を下ろして話しかける。

 

「私は宮原博樹。 よかったら、この場所について教えてくれないかな? 」

 

「ふふふ♪ わたしはありすよ。 ここに誰かがくるなんて思ってなかったら、と〜ってもうれしいわ♪ 」

 

 ここには、私とありすちゃん以外誰もいない。 こんな小さな女の子がひとりでいるのは明らかにおかしいんだけど。 ありすちゃんはそんなこと知らないといった笑顔を浮かべているから深くは聞かない方がいいんだろうと思い、ありすりゃんの言葉に耳を傾けることにする。

 

「ここから先はきらきらかがやく光の道。 まばゆい想いがきっとあなたを照らしてくれる♪ でも気をつけて、くるくる回るメリーゴーランドみたいに酔ってしまうかも 」

 

 可愛らしい足取りで右側にある道の前まで行くと、おもちゃを貰った子どものようなキラキラとした笑顔で光の道を教えてくれた。 光の道……その道を見続けると、奥の方で光が輝いて目を閉じると、女の子の姿がなくなっていた。

 

「ぐすっ……この先は、くら〜いくらい闇の道。 塗り返せない黒色はきっとあなたはつよくなる♪ けどけど、迷い込んでしまったら出られない迷子の道とも繋がってるわ 」

 

 気づくと、ありすちゃんは左側にある道の前で落ち込んでいるのが見てわかるように、足を組んで座っていた。 叱られて悲しくて泣いてる子どもみたいに涙をすすりながら教えてくれた。

闇の道……きっと昔の私なら、何も聞かず何も迷わず光の道を進んで歩いて行ってたのかもしれない。 けど今は違う、ベリアルさんという闇だけど、闇だけじゃない存在をしったから……無暗な選択はしない。

 

「ああよかった。 おじさまはさいごまでわたしのはおはなしを聞いてくださるのね 」

 

「うん。 最後まで聞いて、しっかり悩んで……決めたいんだ 」

 

「おじさまはとても良い人なのね。 それじゃあ、さいごの道へ行きましょう♪ 」

 

  はきはきとやる気の満ちた表情で真ん中の道に向かって行くありすちゃんの背中を追っていく。 その元気が伝わってくる幼さは、今までで一番子どもらしいと感じた。光の道では蝶よ花よと育てられた温室育ちのお嬢様のような立ち振る舞いで、闇の道では身内や友人からの心無い行動で無気力で、生きることを諦めてしまった……そんな子どもに見えてしまった。

だけど、今目の前を駆けているありすちゃんは違うように見える。 どこがと言うには当たり前すぎる、何度も見た元気に学校に通う子どもたちと同じ姿。

 

「う〜ん、この道の説明はむつかしいわ。 だって通る人で変わってしまうふしぎな道なんですもの 」

 

「変わる? 光と闇の道のように進むべき道が決まっている単純なものじゃないってことかな? 」

 

「ええそう。 そうなのだけど……ああっ! そうだわ、あの子がいたわ!! おじさまがず〜っと見てきた男の子!! ジーっとしてても! 」

 

「ドーにもならない! ……そうか、リクくんはこの道を進んでいったんだね? 」

 

 腕を組んで、身体を揺らしながらああでもないこうでもないと悩んでいたありすちゃんは、妙案が閃いたらしく私にリクくんが使っていたジードの言葉を求めてきた。

リクくんの物語を何でありすちゃんが知っているんだろうって疑問は関係ないと言わんばかりにありすちゃんは嬉しそうに話しかけてくれる。

 

「そうリク! 朝倉リク、ウルトラマンジード!! 彼が進んだ道がこの道なのよ!! 彼が進んだ道がこの道なのよ! 彼が選んだのは雨上がりの道、光と闇が溶け込んだ夕暮れの道! 」

 

「そうか、選んだ人によって未来が変わる。 その姿形を変える道がこの道なんだね? 」

 

「そう! そうなのよ! さあ、おじさまはどの道を進むのかしら? 」

 

 ありすちゃんは両手を身体いっぱいに広げながら、私がどの道を歩いていくのか問いかけてくる。

正しい行い、太陽のように輝き続ける光の道。

悪しき行い、暗い感情に呑み込まれやすい闇の道。

進む人によって在りようを変える、光と闇の両方を孕んだ道。

 どれを選べばいいのか分からなくなってきた私は、目を閉じてまぶたの裏にまで焼き付けた、憧れ続けたヒーローたちのことを思い出していく。

怪獣の侵略から何度も地球を、人間たちを守り続けてくれた沢山のウルトラマンたち。

生まれ落ちた時から運命を変える変えるそに時まで見続けたジード。

そして、そうして……。 始まりから終わりまで、私はあの人が歩んできた軌跡を見続けてきたんだ。

 

 

「うん。 決めたよ、私の進むべき道は──── 」

 

この先に何が待ち構えていても、私は……僕は絶対に後悔しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次元の狭間……。 何も存在しない、生物も存在しない。 あるとすれば偶然にも開いた穴から吸い込まれ浮遊した岩くらいなものだ。

ロンドンにいたはずのその男は、気がつくとその岩に上で目が覚めた。

 

「何故ここに戻ってきた……。 この身体は未だ宮原博樹と繋がっている…… 」

 

『簡単なことだ。 その繋がりも、貴様の全ても。 このオレがいただくためだ 』

 

 契約者である宮原博樹とのパスは繋がっている。それなのに男は自身が朽ち果てたこの地で目覚めたことに頭を悩ませる。 何か異常が起きていると察した彼は探索を始めようとしたが、聞き覚えのある声が届き、中断する。

鋭い目、凶悪な爪や牙。 漆黒の身体には這うように赤いラインが入っている。 そんな相手の姿を見て、彼はただただ驚くことしか出来ない。

 

「このオレだと……!? 貴様は誰だっ!! 何者だっ!! 」

 

『何者か、だと? それはは貴様が良く知って……いや知るはずもないか。 すでにお前の名はこのオレのものだ 』

 

「何っ? その姿はこのオレベ҉リ҉ア҉ル҉っ!」

 

 自分の名前、目の前に現れたソイツに本来の名前を叫ぼうにも声に出ない。 男は慌て、頭をフルに回転させて名前を思い出そうとするが、その名前は元からなかったもののようにどんなに思い出そうとしても思い出せなくなっていた。

 

『ここは名無しの森。 お前の名前も、その頭の中にある知識も、自我さえも全て、消滅する 』

 

「消滅する……このオレが? 」

 

『既に、知識の消失が始まっているだろう 』

 

 ベ҉リ҉ア҉ル҉の言う通り、どんなに知識を引き出そうにもその機能が失われた始めているのか、頭の中が真っ黒の石のようになっていく感覚が襲う。

今まで味わった事すらない現象に戸惑っていると、ベ҉リ҉ア҉ル҉が男の頭を掴み投げ飛ばした。

 

「ぐはっ!! 」

 

『本来ならば、貴様が消滅するまで姿を現さなければいい筈だった。 だが、その記憶だけは貴様を葬らないと手に入れられないようなんでな 』

 

 何とか態勢を立て直し、襲いかかるベ҉リ҉ア҉ル҉の攻撃を受け止める。 そこで男は気がついた、自分の腕が、身体が既に宮原博樹から借りた物ではなくなっていることに。

銀色の手に、縫合しているような赤い腕。 その一部分を凝視しベ҉リ҉ア҉ル҉の瞳に映る自分自身の顔を見て、自分が今どんな姿なのか理解した。

 

「この姿は……ジードかっ!! 」

 

『フハハハハっ!! 貴様を倒し、このオレは完全なる復活を果たす! そして、そしてオレはありすに会う!! 」

 

「──くっ!! 」

 

『クハハハっ!! そんなものかっお前の力は!!』

 

 ウルトラマンジードとウルトラマンベリアル。 両者の激しいぶつかり合いは、時間が経てば経つにつれてベリアルの方が優勢になっていった。

最初は、戦闘経験の差からジードの方が優勢だった。 相手の攻撃を読み、それに合わせた最適の攻撃を浴びせ攻め込んでいった。 その戦闘は知らず知らずのうちに逆転していった。

 

「(抜け落ちていく……今まで積んできた闘いに知識が、記憶が……オレはどう戦っていた!? )」

 

“知識を引き出す機能”の消失。それは、戦闘にも影響を及ぼしていた。拳の突き出し方、蹴りの放ち方、相手の攻撃の避け方すらも。 時間をかければかけるほど、今まで積み重ねてきた戦闘の知識が引き出せず、苦戦を強いられていく。

今のジードは戦闘の初心者。そんなジードがベリアルに勝てる見込みは……ゼロだ。

 

『叶えるべき願いがあるわけでもない。 貴様ごときが何故闘い続ける!! 大人しくその記憶をオレに明け渡せ!!! 』

 

「ガハッ!! 」

 

 闇を集結させ、どんな物をも切り裂くその爪によってジードは胸を貫かれる。どうにか反撃するために胸を貫いた腕を掴むが、長きに渡る闘いで数万年に及ぶ知識は消失しているジードに反撃の手立てはなく。 腕を引き抜くために蹴り飛ばされたジードは無様に岩を転がっていく。

 

『早く捨てろ、いつまで息子の記憶にこだわっている 』

 

「渡す……っ、ものか………っ!! 」

 

 貫かれた胸の空洞から、光が泡にように飛び散っていても、ジードは顔を苦痛に歪ませながらも立ち上がり、目の前に立つベリアルに戦意を失っていないことを証明する。

どんなに時間が経ってもジードから抜け落ちない記憶。絶対に切れないように雁字搦めに結んでいるその記憶を、ベリアルは求め続ける。

 

「この記憶は……っ! 光はっ!!!! このオレが触れても、唯一拒絶しない温もりだ!! このオレの全てを貴様が手に入れたとしても……この光を渡してなるものかあああああ!!! 」

 

『ならば跡形もなく消してやる!!貴様は何処にいようと迎える結末は決まっている!! 貴様のゴールは、いつもいつまでもバットエンドだっっ!!!! 』

 

 二人のウルトラマンの身体から、滲み出るほどのエネルギーが放出される。ジードからは青と赤が混じった光線と、ベリアルの闇の光線がぶつかりある。

ジードに至っては自我はもう殆ど残っていない状態で出している正真正銘の最後の一撃。 けれど、光線同士のぶつかり合いは拮抗することすらなく、ベリアルの光線が完全にジードを勝り呑み込んでいく。

 

「がああああああっ!!! 」

 

『ハハハハハっ!! 消えろ!! 消えてしまえ! これで貴様は終わりだ!!! 』

 

 ジードは闇に呑み込まれ、完全に光の粒子となって消滅を始めてしまう。完全なる敗北、自我も、知識も、自分の名前も思い出せないジードは諦め、目を閉じてしまう。

 

 

「終わりなんかじゃない。 そうですよね、()()()()()()

 

 

知っているようで知らない、そんな温もりを持つ光と言い切るには覚束ない明かりが、拒絶され続けたオレの事を、掴んだ。

 

 

 

 

 

 




「名無しの森」こそがサーヴァントの中で唯一と言っていいほどベリアルさんに抵抗できる力。
4章はモーさんの他にもライムこそが最大の敵で、最後の道しるべになるから

「僕はジード。 ウルトラマンジードだ」
ジード全25話の中で一番好きなセリフ。
その後のアトロシアスの目が楽しそうに笑っているような印象を受けることも一因しているかもしれない。

結構勘違いしている人が多い“ジードマルチレイヤー”
演出的にキングが起こした奇跡のように見えるけど、本当はジードの個人技というチート技。
ジードプルーフもあって最強レベルなんだけど……ベリアルさんは耐えるという凄さ。

次回「選んだ道。 ベリアル、覚醒の時!! 」


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12

祝え! 全てのウルトラマンを凌駕し、全ての怪獣を従えし覇道の王! ウルトラマンベリアル、ここに再誕の時である。

とまあ黒い方の人の真似はここらへんで。
今回は、ライムがいるならやってみたかったこと、博樹さんが掴んだベリアルの手。
そして、変身時の内部!! と、結構詰め込んだ感じ……。

感想、評価頂けていつもありがとうございます。
誤字脱字の報告いつも助かっています。


「私が……()が進むのは、この道だ 」

 

「…………おどろいたわ。 だってだって、そんな選択をするひといないもの! 未来を選べる道があるのに、あなたは()()()()()()()道を選ぶのね? 」

 

 ありすちゃんが驚きながら口にしているように、僕が選んだ道は光、闇、中間のどれでもない。 僕がこの場所に辿り着くまでに歩き続けた道、戻り道だ。

ありすちゃんは3つの中から選んでくれと言ったのに、その中から答えを出さなかったのは反則なのかも知れないけど……これが僕の進みたいと思った道。歩いて行きたいと思った()()なんだ。

 

「未来? どうして未来なの、その先は過去へつながっている道よ? 」

 

「…………過去は変えられない。 もしも変えることが出来たとしても今までの自分がなかったことには絶対にならない。 だからきっと、こっち側の道も未来へ続いてると僕は思うよ 」

 

 折り返す、引き返す選択は過去へ戻る選択肢だとありすちゃんは言ったけど、僕は違うと思う。 だから疑問を投げかけてきたありすちゃんの前までいって、しゃがみ込みながら、可愛らしい帽子と一緒にその銀に輝く小さな頭を優しく、馴れた手つきで撫でる。

 

「ずっと、ずっと前を進んでいるものだと、そう思い込んでた。 あの人は闇の道の終着点にいるんだって、一瞬信じてしまいそうになった。 けど、違うんだ 」

 

 未来行きの3つの道、そのどれにもベリアルさんはいない。何でか分からない、もしかしたらずっと彼の記憶を見続けたから分かったのかも知れないけど確かな証明はないけど、そうだってその筈だって僕の心が訴えていた。 だからこの道を、過去行きの道を選ぶんだ。

 

「あの人がいるのは前じゃない、後ろにいたんだ。 この場所に初めてきた時の僕は闇は絶対悪だ、悪いモノなんだって信じていたから、振り返れば見える位置にいたベリアルさんのことを見つけてあげられなかった。ずっとず〜っと、あの闇の道よりも真っ暗で、どこにも道しるべのない場所で、迷子になってるんだ 」

 

「じゃああなたが、あの悪いおじさまの道しるべになってあげるの? 彼をここまで導いてくれるの? 」

 

 ありすちゃんの事を抱き上げながら、話をしながら過去へ続く道の前まで歩いていく。 今思えば、すごく遠い回り道だった。 だって、ベリアルさんは目と鼻の先にいたんだ、それなのに僕はそれに気づかないで、気づけばこんなにも遠い場所まで一人で歩いてきてしまった。 けど、それを後悔だと決して思わない。 歩いてきたからこそ、僕はベリアルさんの事が知れた、ジードの事が知れた。 闇の全部が悪いモノじゃないってことを知ることが出来た! だからこの回り道は、無駄なことなんかじゃない。

 ありすちゃんの言葉に、彼女を抱きかかえている手とは逆の手をぎゅっと、血が出ても構わない位に強く握りしめる。

 

「そうしたい。 そう出来たら良いなって思ってる。 後ろから背中を押すんじゃない、手を引いて前を歩いていくんじゃない。 ベリアルさんの隣に並んで、一緒に、悩んでもいいから少しくらい迷ってしまってもいいから、それでも一緒に、歩いていきたいんだ 」

 

 それが僕の決めた覚悟。 僕が進みたいと思った唯一の道。 そんな僕の覚悟を隣で聞いたありすちゃんは、憧れるような羨ましいような顔を僕に一瞬だけ見せると、抱きかかえていた腕の中から飛び降りて、過去行きの道の前に立った。

 

「すごいわ。 もう一つの新しい道を見つけるなんて……でも、きっとおじさまならあたし(アリス)を救ってくれる 」

 

「……これは、扉? 」

 

 ありすちゃんが過去行きの道へ手をかざすと、ゴゴゴゴと音を立てながら、今にも崩れ落ちそうな大きな扉を出現させた。

その扉を出現させると、ありすちゃんは身体をこちらに向き直し、ドレスの両端をヒラっと持ち上げて、ペコっと可愛らしくお辞儀をする。

 

「この扉をくぐれば、悪いおじさまの所に直ぐに行けるわ。 だけど気をつけて、その先で彼はかれじゃないかも知れない。 おじさまもおじさまじゃなくなってるかもしれない。──それでも、いいならこの扉を開けて? 」

 

 ベリアルさんがベリアルさんじゃない、僕もぼくじゃなくなってしまう? ……意味は良く分かっていないけど、きっとそれは大切な事であるとありすちゃんの目を見て分かる。 それが分かった上で、僕は扉を開くために両手を添える。

 

「……ありすちゃん? 」

 

「ごめんなさいおじさま。 やっぱりあたしは悪い子だわ。 こんなに必死で、頑張っているおじさまにわがままを聞いてほしくて、足を止めさせてしまうのだもの 」

 

 扉に手をかけた僕の服の端を、ありすちゃんが掴んでいた。 泣くのを必死に我慢しながら、自分のわがままは言っちゃダメな事なんだと思ったのか申し訳なさそうな顔をしている。

大人っぽいと思っていたありすちゃんが見せてくれた素の、子どもらしい感情。

 

「ありすちゃん。 わがままを言うのは子どもの特権で、それを叶えるのが大人の役目なんだ。 僕にできることなら教えてくれないかな? 」

 

「────。 お願い、お願いおじさまっ! あたしの一番大切な親友を! バットエンドへ向かってるアリス(あたし)を救ってあげて!! 」

 

「任せろ!! 」

 

 

 

────────────────

 

 

「ベリ……アル……? 」

 

「そうだ、貴方はベリアル。 ウルトラマンベリアルだ 」

 

 バケツ一杯に入った水を頭から被った時のように、消失しかけていた自我が、封印された知識が勢い良く身体全身に染み渡る。

ウルトラマンベリアルという名前を思い出したことによって、ナーサーリー・ライムが作り出した固有結界が崩壊を始める。今のベリアルは全てを取り戻したことで本来の姿を取り戻していた。

 

「────このオレが消えた方が、お前にとっては都合が良かった筈だ。 そのオレを、オレの名を何故呼んだ()()()()

 

「…………ああっ!!そうだ、僕の名前は博樹!宮原博樹だっ!! は〜っ、思い出せて良かった〜〜 」

 

 “名無しの森”の効果を受けていたのはベリアルだけではなかった。 この固有結界に入った時点で、ベリアルと繋がっている博樹本人も知識の封印、自我の消失が行われていた。

そうだというのにベリアルの目の前で笑顔を浮かべている男は、自分の全てが消える中でベリアルの名前ただ一つだけの保ち続けて彼の名前を呼んだのだ。

 

「初めまして……ではないか。 あの燃え上がる炎の中で会ってますもんね僕たち 」

 

「何故オレの名を呼んだ!! 何故助けたのかとオレは聞いている!! オレは悪役だ! 地球を恐怖に陥れた敵だ!! 貴様が最も忌み嫌う存在だぞ? そんなオレを何故助けた!! 」

 

 博樹と同じように、ベリアルも博樹の記憶と繋がっていた。だからこそ理解している、宮原博樹は悪を最も嫌う、ウルトラマンのような正義の味方を愛する彼がウルトラマンの敵であるベリアルを救うことはあり得ないと確信していた。 だがそれは、ベリアルの記憶に触れる前の宮原博樹だ。

 

「ははは。 確かに、地球を脅かす悪役、みんなを傷つける敵役。 それが嫌いな私にとって貴方は天敵といってもおかしくない。 ──けど、それは役として貴方を見た場合だ! テレビを通してしか知ることが出来ない、ヒーローにやられる為に悪事を働く役だから好きになれない……だけど貴方は違う!! 」

 

 博樹は感情を隠さず、思い切りぶつけながらベリアルの咆哮に、怒りに臆することなく目の前まで歩いていく。 そうして握り拳を作った腕を、ベリアルの胸に押し当てながら彼の瞳を見つめる。

 

「現実の世界に、ウルトラマンのような完全無欠のヒーローなんて存在しない。みんな悩んで、迷ってる。喧嘩や争いごとだって終わらない。 けどそれが人間らしいって事で、そんな人間同士だから……仲良くすることが出来るんだ。────だからベリアルさん、貴方とだって 」

 

 胸に当てた手を、ベリアルの鋭い手を掴もうと伸ばす。 その手を払いのけ、拒絶しようとするベリアルだったが、自分が傷つく事なんて御構い無しに博樹はその手を強引に握り、握手の形を取る。 握られたベリアルは、握り返せば容易く潰せると思いながらも、本来の身体で()()()()()()()()()()()()()()()博樹の身体を借りていた時には感じることのなかった、伝わってくるその熱に動揺していた。

 

「貴方とだって、僕は仲良くなれると思う。 そう思えたからここまで来た、貴方と一緒に歩きたいと思ったから貴方の名前を呼んだんだ!! 」

 

「歩く? お前もアイツと一緒で、このオレの闇を受け止めるとでもいうのか? 」

 

「う〜ん。 それはリクくんにしかジードにしか出来ませんよ。 ん〜そうだな、ベリアルさんの隣に立って、一緒に歩いて行きたいっていうのが僕の望みかな? 」

 

「このオレの隣……。 お前のような小さな存在がか? 」

 

「立てるさ、 だって貴方は私と同じ人間で、“父親”だ 」

 

 

 ────その男は、永遠に近い時間、気が遠くなるような時のなかでずっと、ず~っと復讐という名のいばらに閉じ込められていました。 出ようにも出ようにも、いばら消えてはくれません。

だけど、ある時そのいばらは一つ残らず消えました。 男にとって最愛の息子が、彼を閉じ込めていたいばらを取り払ってくれたのです。 男はようやく外の世界へ歩き出せる……その筈でした。 その筈だったのです。

いばらを抜けた先にあったのは真っ暗闇な森。 地図も、道しるべもない森の中をどんなに歩いても、男は決して出口へは辿り着けません。 入り口に戻ってきてしまいます。

そんな男の前に、小人が現れてこう言いました。

 

『僕が隣で一緒に歩けばもう迷わないね』

 

男は小人に聞きました。 この森を抜けるにはどうすればいいの? と

 

『簡単だよ、空を見ればいいんだ 』

 

そう言われて、男が空を見上げると真っ暗な空にポツポツと、小さな星が、眼を凝らさないと光っているのか定かではない星が両の手より少ない数、輝いていました。 もしかしてあれが? と男は疑問に思いました。

 

『今は少ないけど、歩いていけばあの星は増えていくんだ。 ほら、森を迷う中で君は他の誰かと出会っただろう? 』

 

そう言えば、と男は思い出します。 出口を探して歩いている内に男はこの小人とは別の小人に出会っていたのです。

何も持っていないけど笑顔が特徴的な小人。

力は無いのに、心に大きな盾を持った小人。

消えてしまいそうな小人のことを奮い立たせたこともありました。

他の小人より大きいのに、いつもおどおどしている子。

思い出しながら歩いていると、いつの間にか隣の小人の側に小さな人形が増えていました。何でも一緒にハッピーエンドを見るためについてくるのだとか。

そして隣の小人に出会う前に、男は出会っていたのです。 いばらを消してくれた男の息子によく似た小人を。

 

『なら、最初はその子に会いにいかなきゃ!! 何処にいたのか教えてよ、僕も一緒に探すから!! 』

 

 そう言って隣の小人は繋いだ手を勢いよく振りながら男と同じ速度で歩いて行きます。誰かが自分の隣を、一緒の速度で歩いてくれる。 誰でも経験があるようなそんな当たり前の行為が、何故だが嬉しくなって男は笑顔を浮かべて隣の小人と一緒に歩いて行きました。

男はもう、迷いません。 空に輝く星を見つけることが出来たんですから。

 

そして、息子に良く似た小人を見て男は決めました。 森を抜けることを、隣で歩いてくれるこの小人と一緒に─────

 

 

 

『ここからが、スタートラインだ!! 』そう言って球体に包まれた博樹は、粒子が舞う不思議な空間に足を踏み入れていた。

そうして、何処からとも無く1本のカプセルを取り出し、前に突き出して起動させる。

 

「“レイブラッド星人!! ” 」

 

 『レイブラッド星人』べリアルにとって何よりも因縁のある相手。 何処へ行こうとどんなに離れようとしても決して逃げることが出来ないと思われていた相手。 その力が込められらカプセルを、アリスが渡してくれたナックルに装填する。

 

「ウルトラマンべリアル!! 」

 

 二本目のカプセルは、べリアルではその姿を見ることが不可能だった過去の姿。他のウルトラマンたちの姿が似ていたが、孤独に力を求め続けたそんな姿が込められたカプセルを起動させた。

 

そうして二本目のカプセルをナックルへ装填し、レイブラッド星人とべリアルのカプセルをライザーに読み込ませる。

 

”デモニックフュージョン!!”

 

「超えるぜ、覇道!! 」

 

 博樹は強く叫ぶ。 ベリアルが今まで歩んできた、生きとし生きるモノ全てを蹂躙してきた覇道を超えたその先に行くんだと。 強い意志を言葉に乗せる。

 

“レイブラッド星人!!“

 

 ライザーからその音声が流れるとともに、まるで怨霊のようにレイブラッド星人が博樹を背中から抱きしめてくる。

 

『ふはははははっ!!! 良くやった!! これで私は蘇る!! 手始めにこの地球を支配してやろうか!!! 』

 

「────!! ────────!! 」

 

 レイブラッドの怨念が博樹の中へと侵入し、身体の支配を、精神を復讐という感情で蝕んでいく。その痛みは言葉に出来ないほどの苦痛が博樹の全身に駆け巡る。

 

(痛い! 痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!! 憎い!! ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイ!!!! )

 

 怒りが、憎しみが博樹の精神を蝕んでいく。 ただそれだけを考える殺戮兵器に変えるために、自分の手駒にするために……。

それでも、その思いが駄目なものだと知っているからこそ、博樹は拒み続ける。

 

(駄目だ!! 駄目だニクイ! 駄目だ駄目だニクイ駄目だ!! コワス! 駄目だ! コワス! ニクイ! 駄目だニクイニクイニクイニクイコワスコワスコワスコワス!!!!)

 

否定しようにも、思考が悪性へと呑み込まれていく……。 全てを壊す、目に映るもの全てが憎い。 全身を駆け巡る痛みはソイツらを消滅させれば和らぐんだと……。

 

 

 

 

 

『『『『『警察のおじさん、おはよー!! 』』』』

『『『『博樹さん!! 』』』』

『お父さんっ!! 今度のショー楽しみだね!! 』

『もう、しっかりしてよお父さん!! 』

 

 

 

『大丈夫よ、ヒロくんは私のヒーローだもの』

 

「────! ぐうっ! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

『何っ!? この私の闇を超えたとでもいうのかっ!!ただの人間如きが? 馬鹿なっ!! 』

 

 フラフラになりながら、身体から出て行ったレイブラッドの怨念に身体を向ける博樹。駆け出しながらその拳をレイブラッドへ向ける。

 

「はあ、はあ! あの人と歩くために、お前は邪魔なんだああああああああ!!!!!! 』

 

“ウルトラマンベリアル アーリースタイル!!”

 

「一緒に行こう、ベリアルゥゥゥゥゥッッッ!!!!! 」

 

 完全にレイブラッドを消し去った博樹がライザーの起動ボタンを押しながら叫ぶ。

そうする事で只のエネルギーとなったレイブラッド星人の力と光のベリアルの力が博樹の身体を包み込んだ。

 

『レイオニクスにそしてこのオレの息子に退けられながら、何も学んでいなかったようだな。……良くやった宮原博樹 』

 

「さあ、行きましょうベリアルさん!! まずは目の前のアイツを、超えるんだ!! 」

 

 

そうして、全宇宙から恐れられた闇の巨人は、その姿を取り戻した。

 

 

 

【さあどうする!! コイツを倒すのにどれだけの時間を費やす!! 】

 

『そんなの決まってるじゃないですかベリアルさん。 …………3分間だっ!!! 』

 




“超えるぜ覇道”
ベリアルさんが今まで歩んできた道が覇道。その覇道を超えて、隣でベリアルさんと歩くと決めた博樹さんの覚悟の言葉。 超えるぜの部分は決まっていたけど、覇道の部分は色々悩んだ末にこれが一番かな~と。

“デモニックフュージョン”
アトロシアスの場合はここにアンリーシュが追加される。 フュージョンライズはジード及びベリアル融合獣の音声、ネオフュージョンライズはゼロビヨンド。 ならベリアルさんは? と考えた時これしかないと思ったため使用。 この小説を書くときに一番最初に決まったのはここら辺だと思う。

“宮原博樹vsレイブラッド星人の怨念”
ジードが完全に分離したため目の前に現れたの怨念の残渣のようなものかも知れないが、誰かを知ってる宮原博樹だから勝利することが出来た。 王道展開が大好き!




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13

マグニフィセントォォォォォ!!!!(ウルトラアーツ発売を知って)
ウルティメイトファイナルゥゥゥッ!!(ルーブの映画を見て)

ジード好きにも堪らない映画でしたね劇場版ルーブは! もう、20歳になった朝倉リクが……リクくんがあああ(語彙力down )

今回で長かった4章もようやく終結。
キーワードは「目が縦になって頭の付いたガンQ(コードNo.2)」

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字の報告いつも助かっています。


「あぎゃっ!! 」

 

「だ、大丈夫ですか先輩! すみません、私もとっさの事で反応できず…… 」

 

「いいよいいよ、反応しろって言う方が難しいし……。 ここは、アングルボダがあった高台? 」

 

 着地に失敗して打ったお尻をさすりながら辺りを見渡す。 私たちに背中をみせいるのがウルトラマンだって名乗ったベリアルさんで、目の前にいるソロモンと向かい合っているのを見て、ここがアングルボダが設置されていた高台だってことが分かる。

 

『────立香ちゃんっ!? ようやく繋がった、そちらは今どうなってるんだい? 』

 

「ドクター! カルデアとの通信回復しました先輩! 音声だけですが…… 」

 

「ええと、ウルトラマンが私たちを助けてくれました!! 」

 

『へっ? …………ももも、もう一度聞いてもいいかな立香ちゃん。 どうやらまだそっちとの通信に不備があるみたいなんだ 』

 

「はい!! ベリアルさんの正体がウルトラマンで、そのウルトラマンになったベリアルさんが私たちのことを助けてくれました! 」

 

 包み隠さず、ソロモンが来て今私たちの目の前で起きたことを話したんだけど、映像が届かないのにカルデアの方が慌ただしくなってるのが分かる。 まあそりゃあテレビの中だけの存在が現れたって言われても普通信じないよね。

 

『……ん〜、ちょ〜っとロマニが放心状態になったから変わるね〜。 マシュ、立香ちゃんは冗談を言ってる訳じゃあないのかい? 』

 

「はい、ベリアルさんの契約者である宮原博樹さんが目を覚ましていたらしく。 彼が協力者であるサーヴァントから不思議な道具も譲り受けたと思ったら…… 」

 

『目の前に、存在しないはずに巨人が現れた……と。 う〜ん、それだけの質量を生み出すならカルデアの魔力ソリースが大量に消費されていて問題はない。 が、問題なのはその魔力が一つとして使われていないと言うこと。 使われていてもサーヴァント一人分との契約魔力しか使われていない。 それ程までにウルトラマンという存在は私たちの常識から逸した存在だとでも言うのかい? あ〜〜!! 直ぐにでも其方へ行きたいが、ここは我慢だ。

 マシュ、少しでもいいから情報が欲しい、今から起きること、既に起きたことでも何でも構わない。 君が見て思ったこと、口頭で伝えてくれ 」

 

「わ、わかりました。 宮原さんの部屋にある情報媒体にある光の巨人とは大きく印象は変わりますが、50メートルはゆうに超える巨体に、胸に光る球体を持っていること、そしてベリアルさん本人が自身のことを“ウルトラマン”と名乗ったことから、目の前に現れた巨人はウルトラマン、他のウルトラマンの方々と同じ敬称を付けるとすればウルトラマンベリアルだと推測しました 」

 

 マシュがベリアルさんと宮原さんのことをダヴィンチちゃんに説明していると、ソロモンの方にも動きがあった。アイツは手を大きく広げると、地面に大きな魔法陣が形成される。そこから、大量に出現した魔神柱が文字通り生えてきて、一本一本が集合し、形を作っていく。足を、腕を、胴体を、そして頭を、一本一本が元から巨大だった魔神柱は、いつのまにかウルトラマンへと変身したベリアルさんと同じくらいのサイズをした人型の化け物へと姿を変えていた。

 

 手の先から足の先、全身の至る所に目玉がギョロギョロと忙しなく動き、首元から股下までぱっくりと開いたそこには巨大な目玉が鎮座している。 その完成を見たソロモンが浮き上がり、その巨大な目玉の中へとトプリと、お風呂に浸かるような感覚で全身を浸からせると、ただ赤いだけだった目玉に黒い十字の亀裂が入り、その巨体が動き出した。

 

 見ているだけで吐き気を催すほど醜いその化け物を見て、きっと私たちだけであのもう柱とは到底呼べない魔神を前にしたら、手も足も出せなくて、絶望して、身も心も敗北していたんだと思う。

だけど、遠くから見ているからかも知れない、その渦中に私たちがいないからかも知れない。 不思議と、恐怖も絶望も感じていない私がいる。

 

 魔神を前にしても何も驚いていない。 身体を慣らすように肩を回し、首をゴキゴキ鳴らしながら歩いていくベリアルさんを見て、絶対大丈夫だって安堵の感情しか浮かび上がってこない。

 

「…………がんばれ……、頑張れっっ!! ベリアルさんっ!! そんなヤツけちょんけちょんのぐっちょぐっちょにしちゃえっ!! 」

 

 だから、せめてもの思いでベリアルさんのことを応援することにした。 力量的にも、サイズ的にも一緒に戦えないなら、せめてこの声援が少しでもいいからベリアルさんの力になればという気持ちを込めて、腹の奥底から力を込めて精一杯叫んだ。

 

「そう、です!! ベリアルさん!! ソロモン王は間違っています!! その間違いを肯定しないためにも、負けないでください! ベリアルさん!! 」

 

「はんっ! そんなでかい図体をしているんですもの、目玉だけの化け物に負けるなんて許しませんからね!! 」

 

「テメーにも、それと契約してるおっさんにも言いてえことが山程あるんだ、無様に負けたら容赦しねえからな!!! 」

 

 私の言葉につられてか、他のみんなもそれぞれの方法っていうか、ジャンヌオルタとモードレッドのそれは声援って言うのかな? って感じだけど、ベリアルさんに向けて声を届ける。

ふと気がつくと、博樹さんに不思議な道具を渡したサーヴァントらしき女の子が私の前にやってきていた。

 

「ふふふ、やっぱりおねえさんはスゴイ人ね。 こわいおじさまのことを見て、怖がらずに応援するんですもの! 尊敬しちゃうわ 」

 

「え? う〜ん、確かに私の知ってるウルトラマンとはまるで違うし、見た目も怖い見た目をしてるけど……ベリアルさんだって分かってるもん。 怖いはずないよ!! 」

 

「あはははははっ!! ステキ! やっぱりステキよ!! きっとそのステキな心が、怖いおじさまがウルトラマンになるための力になるんだわ!! 」

 

 

 

 

『…………聞こえますかベリアルさん。 立香ちゃんたちが応援してくれるこの声が 』

 

【…………ふっ 】

 

 人理を完全に焼却させるために、我らが悲願を成すための最大の障害と判断した。そう言ってソロモンは数え切れない数の魔神柱を召喚し、巨大な人型の化け物になった。

目の前に立ち塞がる壁……ベリアルを倒すために度量を同じくするために変わったのだろうが、当のベリアルも、彼と一体になっている博樹すらも、ソロモンの話を聞いてすらいなかった。

 

 二人の耳に届いていたのは、このままでは巻き込まれてしまうことを考慮して瞬間移動させた立香たちがベリアルへ向ける声だった。

聞いたことはあった、何度も、何度もその声を目の前で聞いたことはあった。しかし、その声が自分に向けられたことは一度としてなかったベリアルの心の乱れを感じた博樹は、彼にこれが声援なんだと、応援なんだと伝える。

 

 ウルトラマンへと向ける応援の言葉。 自分たちを守ってくれるヒーローを信じているから送る言葉。ウルトラマンたちはいつも、何時も何時もいつも、どんな絶望的な状況ですらその声援が届くだけで立ち上がっていた。 その声援が、ベリアルに向けて送られている。

 

『ベリアルゥゥ!! 我らが同胞の名を語る愚かな者よ!! 貴様はこのソロモンが! 72の魔神全ての力を持って消滅させよう!! 』

 

【…………耳障りだ、死体に巣食う蛆が 】

 

 ゆっくりと、しかし確かに苛立ちを見せながら魔神ソロモンへと向かっていくベリアル。 久しぶりの本来の肉体だから、肩を慣らし首を回しながら歩いていく。 一歩、また一歩歩くだけでその威圧は増していき、魔神もその姿に息をのんでしまう。

 

『我が、我らが蛆だと……! 巫山戯るな!! 蹂躙されるべき、存在を間違えたのは人間どもの方だ!! 低脳な虫とはアイツらの事において他ならない!!! 』

 

 魔神の背後に数十、数百の魔法陣が一瞬のうちに生み出され、それぞれ違う性質を持つ魔術がベリアルに向けて放たれる。 一撃一撃が大都市を一発で破壊できる程の威力を秘めた魔術。 対策をしようにも、撃ち出される魔術一つ一つが別物のため、一つ対策している内に十の魔術の直撃を受けてしまう。

 

『アーッハッハッハッハッハッハッ!!!! どうだ!! これこそが我らが力!! 人類を滅ぼす焼却式!! 人間は愚か英雄も!! まして神ですら耐えることは不可能だ!!! 』

 

【そんなものか、人類を滅ぼす業火とやらは 】

 

『──────!!!!!!! 馬鹿な……有り得ん、有り得ない!!! 】

 

 魔神によって放たれた大魔術によって辺り一面が炎の海と化した。その中をベリアルは平然と、一切のダメージなく歩いている。 それだけではない、驚愕に染まる魔神の視界は、その後方にもあった。

 アングルボダがあった高台。 ベリアルが立香たちを移したその高台が、バリアのような膜で守られているのだ。 誰がやったのかなど考えるだけ、目の前でその爛々と輝く瞳を持つ巨人において他ならなかった。 自分たちの放った最強の一撃を、無傷はおろか背後にいる小さきものたちすら守る力すら簡単にやっておけたのだ。

 

【今度はコチラが行くぞ。 耐えて見せろよ、魔術王 】

 

『ぐうぅ!!! 我らを舐めるなあああああっ!!! 』

 

 ベリアルの挑発に乗り、三十を超えているであろう魔神柱を右腕だけに集結させその肥大化した腕をベリアルに向けて振り下ろすが、そんな努力すら無意味だと言わんばかりにその腕を、片手を軽く前に突き出すだけで受け止める。 そしてあろう事か、受け止めた腕を軽く握っただけで、まるで砂のようにサラサラと消滅させた。

 

 ソロモンは理解出来ない。 いくら魔神柱の数だけ思考を持っていても、その誰もが眼前で起きた一瞬のことに意思が追いついていかない。 そんな事御構い無しに、ベリアルはソロモンの腕を握り潰した手とは逆の手の先、五本の鋭い爪で魔神の胴体を切り裂く。 苦痛すら感じる余裕すらなく、足を前に突き出して蹴りつける──ヤクザキックで後方に蹴り飛ばされ、ようやく魔神は痛みを知覚出来た。

 

『『『『『グアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!』』』』』

 

 地面に転がりながら、消滅した腕先、切り裂かれた胴体を修復しようにも、ベリアルの力なのか直ぐに行うのは不可能だった。 レフ──フラウロスも顔面を傷つけられ修復するのに長い時間を掛けていたことを思い出しながらも、引くことのない痛みに声を上げる。

 

【所詮、人間を虫同然と笑う貴様には、それが限界だ 】

 

『見せてやりましょうベリアルさん。 ウルトラマンの力を、ベリアルさんの力を!!! 』

 

【ふっ……。 魔術王、貴様らに教えてやる。 これが次元の違いというものだっ!! 】

 

 博樹の言葉に応えるように、ベリアルは首を回しながら右手に痛々しく、禍々しい赤いエネルギーを込め始める。 その余波により大地は割れ始め、欠けた大地は重力から解き放たれ浮き上がる。

 ベリアルを前にしても闘う意志があったソロモンも、それは駄目だと全魔神が叫んでいる。 あれはダメだ、アイツは我らの計算式から完全に外れた存在。 この地球に本来存在してはいけないモノだ。 あれを受ければ、我らの悲願は達成しない。 いくらカルデアの者たちでは残り3つの特異点を渡って来ることが不可能だとわかっていても、我らが完全に敗北を、消滅をしてしまえば計画が泡となって消えてしまう。

 

『『『『『否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否、否』』』』』

 

【デエヤアッ!!!!! 】

 

『デスシウム光線!!!』

 

 べリアルと一体となっている博樹も、同じ動きを完全にシンクロした状態でとる。

 両手を十字になるように組み、エネルギーを溜めた右手の掌を相手へと向けて放たれたベリアルの必殺光線。あまりにも強大なその光線は大地を抉り消滅させながら魔神へと向かっていく。 その直撃を何とか避けようと幾重にも防御壁を展開した魔神だったが、そんなものは無意味だ。 元から何も無かったかのように防御の陣を壊しながら、漆黒の稲妻を纏った赤の光線は魔神を包み込んだ。

 

『やった……んですか?』

 

【逃げ足だけは一級品のようだな。 ……それにこちらもどうやら時間のようだ 】

 

 ベリアルがそう呟いて変身を解除すると、博樹は自分の身体が光っていること以前に、自分の身体にのしかかってくる疲労と、全身を針で刺されたような痛みで膝をつきそうになる。

 

「勝者が膝をつくな。 …………今度の眠りは浅い、お前は休んでいろ宮原博樹 」

 

『ははは、それじゃあ……あとは、お願いしますね……ベリアル……さん…… 』

 

 

 倒れそうになる博樹を支えるため、身体の主導権を博樹から奪い。 博樹の心を休ませ、自身は聖杯を獲得したことでカルデアに戻るレイシフトの光に包まれるのを、起動した一本のカプセルを見ながら待つ。

 

「べリアルさ~~ん!! 博樹さ〜〜ん!! ありがとーーー!! 」

 

「………いつも五月蝿いな、アイツは」

 




【魔神ソロモン】
まだ冠位のキャスターの皮を被っているソロモンがベリアルに対抗するために、72全ての魔神柱を召喚し魔神となった姿。 前書きに書いたように”目が縦になって頭の付いたガンQ(コードNo.2)“なイメージ。
本当なら長々と召喚の口上を言っていたり、魔神柱はソロモンがいる限り無限に再生を繰り返すことが出来るとか色々大事なことを言ったはずなんだけどベリアルさんと博樹さんのどちらとも聞いていないのでカット。
最強クラスの力を持ってる筈がベリアルさんの前では只のかませになってしまった可哀想で不憫なボスキャラ。

【ウルトラマンベリアル】
言わずもがなな最恐最悪のウルトラマン。 ステータスが上限が10なのに平気で15とか叩き出すバグキャラ。
既に肉体が崩壊しているため、カプセルの力を使うことで仮初めではあるが肉体を取り戻した姿。 と言ってもカイザーベリアルかそれ以上には強いためfate世界で太刀打ち出来る存在が皆無。
骨格基盤や、肉体は博樹をベースにした変身なため特に変身時間に制限はないが、博樹への負担がとてつもないため長時間の変身は現在の所現実的ではない。
それにこのウルトラマン主兵装であるギガバトルナイザー、まだ使ってない状態である。

【ウルトラマンジード ウルティメイトファイナル】
ギガファイナルライザーを使って変身するジード究極進化形態。オーブオリジン見たいな「本来の姿」ではないで注意。 本来の姿を究極進化させた姿。使用するカプセルは「エボリューションカプセル」
・腕力を除く全てのスペックが全形態最強。
・今までの形態全ての上位互換技が使える。
・活動限界は無く、リクの想いが強くなればなるほど強くなる。
ギガファイナライザーには「善の心をエネルギーに転換する力」があるため、ウルティメイトファイナル自体その力を使うことが出来る。
正直言って神トラマンたちすら太刀打ち出来なくなる可能性無限のチートラマン。
変身した最初は弱いかもだが、戦う内に進化していく。その最もな例が劇場版ルーブで見れるのでそこをチェックすると素晴らしい。

使用する技の中に「ウルティメイトファイナル」という詳細不明の謎の技が存在するんですが、これがジードマルチレイヤーの進化版なんです?


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べリアルレポート5+

自分の中で4章が一種のゴールラインのような物だった事もあって現在燃え尽き症候群のような状態に……。
ちゃんと最終章までは終わらせますのでご安心ください。 5章のストーリーの大まかな流れが決まらないことも原因なんや……
あ、お気に入り600件突破ありがとうございます!!


感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字の報告いつも助かっています。


 全長は目測でも50メートルを優に越え、黒幕として現れたソロモン王が、『七十二柱の魔神』全てを召喚し使役した敵の攻撃を受けてもダメージを一切受けない強靭すぎる防御力。 ただ握っただけで何十もの魔神を潰す攻撃力。 そして、魔神全てを一瞬で亡き者にした測定不可能な膨大な光線……。

 

「はあ…………。 こんなの、誰だって分かるわけないじゃないか………… 」

 

 僕、ロマニ・アーキマンは酷く後悔している。 黒幕が絶対に有り得ないと思い込んでいたソロモン王だったことは勿論だけど、問題は正体がウルトラマンという日本の特撮番組に出てくる空想上の存在だなんて……誰が想像できるっていうんだ。

 

「マシュや立香ちゃんに会わせる顔がない……。 あ~~~!! 明日からどうすればいいんだ~!! 」

 

 頭を抱えながら、パソコンを使って調べられる限りウルトラマンについて調べることにした。

ウルトラマン────銀河系から300万光年離れた所に存在するM78星雲にある通称「光の国」から地球にやって来た”光の巨人”。 オリオン座にある反射星雲にもM78星雲は実在しているけど、それとは違うあくまで架空の星雲だ。

 そこからやって来たウルトラマンは、地球侵略を企む宇宙人や暴れる怪獣を倒して地球の平和を守っていくっていうのが、『ウルトラマンというお話』の大まかな流れ……

 

「う~ん。 べリアル、ウルトラマンべリアル……。 どんなに検索しても引っ掛からないな~ 」

 

 最初に放送されたウルトラマンにウルトラセブン、エースに帰ってきたウルトラマンだったり個性豊かなウルトラマンが沢山いるけど、どんなにパソコンを使って検索してもウルトラマンべリアルに関しての情報が出てくることはない。

どうしたものかと悩んでいると、突然僕の部屋の扉が開く音が聞こえた。 ロックしてるから外部からの干渉で開くことはないはずの扉が

 

「当たり前だ。 べリアルという名はこの地球では語られていないからな 」

 

「っ!? べべべべべ、べリアル!! 君か、僕の部屋のロックを勝手に解除したのは!! 」

 

 入ってきたのは、問題の張本人であるべリアルだった。纏ってる雰囲気とか口調とかのお陰で博樹さんと区別することが用意だけど……厳重なロックをかけていた扉を簡単に解除して堂々とべリアルが僕の部屋に侵入してきた。

 

「んっん! 語られていないっていうのは? 」

 

「そのままの意味だ 」

 

 驚くことに、べリアルは隠すことなく彼自身のことを教えてくれた。 僕たちがいるこの宇宙の他にも外には別の宇宙が存在していて、何らかの影響でウルトラマンという存在が伝わったのがこの世界で放送されているウルトラマンという番組らしい。

 M78星雲が本当に存在する宇宙には確かにウルトラマンや怪獣が存在し戦っている。 にわかには信じられない話だけど、べリアルという実例がいる以上信じるしかない。

 

「じゃあ、べリアル。 君もそのウルトラマンたちと同じ、正義の味方……って言うことでいいのかい? 」

 

「フハハハハハッッ!! 嗤わせるなよ──── 」

 

「ッッ!? ガッハッ!! 」

 

 僕の発言の何が可笑しかったのか分からないけど、べリアルが一瞬で僕との距離を詰め、首を絞めながら身体を持ち上げられる。

けど、それ以上に驚いたのはべリアルが呼んだ名前だ。 間違いじゃない、確信を持ってべリアルは僕のことをその名前で呼んだんだ。

 

「!? …………やっぱり……っ、君は、知っていたんだね…… 」

 

「当たり前だ、ロマニ・アーキマン。お前だからこそ、べリアルの名に怯えることは分かっていた。 お前なら、オレを誰よりも警戒するだろうとな 」

 

 どうして、とかそんな疑問は湧いてこなかった。べリアルにソロモン王の千里眼が効かなかったけど、その逆は? べリアルならばそれは有り得る。 特異点Fでレフと相対した時も、べリアルは最初からその正体、その裏にいるソロモンのことも見透していたんだと思う。

 

 けど、それ以上に今知らなきゃいけないことはその事じゃない。べリアルにベットに放り投げられた僕は直ぐに顔を上げて彼に話す。

 

「この、事は……博樹さんには…… 」

 

「伝えていない。 今もコイツは眠っている、オレが知識を共有しない限り知ることはない 」

 

「そうか……。 それなら!! べリアルお願いだ!! この事だけは誰にも話さないでくれ!! 」

 

恥とかそんなの気にせず頭を下げる。 博樹さんを信じていないとかそう言う事じゃない。 これは僕の問題で、誰にだって漏らしては行けない事項なんだ。

 

「…………それは、このオレの気分次第だ。 ロマニ・アーキマン 」

 

「────ッ!! 君は、正義のウルトラマンじゃないのか!! 」

 

まるで弄んでいるような悪い笑みを浮かべながらそう言うベリアルについ頭が上がってしまい怒鳴ってしまう。そしてベリアルは否定して来た、自分は正義の存在ではないんだと……

 

「────いいか。 このオレは70億なんぞ小さく思えるほどの命を奪い、ひとつの宇宙を崩壊させた大罪人だ。 他のウルトラマンと同じと思うな。

今現在は、この身体がなければ活動出来ない状態だからこそ、仕方なく付き合っているだけに過ぎない。 やろうと思えば、いつでも此処にいる人間、サーヴァントも合わせて全滅に追いやることだって出来る 」

 

 脅しとか、そんなんじゃない。 今一言でも喋ろうものなら確実に殺されると解る殺気を放ちながら、べリアルは僕の髪を着かんで強引に眼を合わせてきた。

 

「藤丸立香やマシュ・キリエライトの未来を按じるなら、いつまでも逃げ続けるなロマニ・アーキマン。 お前も、覚悟を決めろ 」

 

 それだけ言って、べリアルは僕の部屋から出ていってしまった。僕は、べリアルがいなくなったことで強張っていた身体の力が抜けて、ベットに腰を掛ける

 

「覚悟を、決めろ…………か。 ────もうとっくに、決めたはずだったんだけどなぁ…… 」

 

 有り得るかもしれない未来。そうしなければ行けない未来を想像するだけど、身体の震えが止まらなくなる自分がいることに気づいた僕は、ただ布団のなかに身体を隠すことしか、出来なかった。

 

 

 

────────────────────

 

 

 

「あれ……ここは…… 」

 

ウルトラマンベリアルに変身して、巨大な人型の化け物になったソロモンを倒してから……それからまた眠ってしまった筈なんだけど……ここは?

目が覚めてあたりを見渡すと、ただただ広いいくつ物岩が密集して出来たであろう空間に立っていた。

確かここって……

 

「怪獣墓場。 ウルトラ戦士によって倒された怪獣、星人の魂が流れ着く地 」

 

「ベリアルさん!? でも、どうして!! 」

 

ベリアルさんが、私と一体になっているはずのベリアルさんがウルトラマンの姿になって私の前にやって来た。 するとベリアルさんはその手にもつギガバトルナイザーを地面にに押し当てて光を放つ。

 

「ギャアアアアア!!!!!! 」

 

「べべべべ、ベムラー!!!!? 」

 

『宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣』と呼ばれる、ウルトラマンが地球に来て初めて戦い倒した怪獣であるベムラーが、地面を割って出現した。

全身に鱗と鋭い棘が生え、小さな前肢と長い尾を持った、後にティガに出てくるヤナカーギーやビースト・ザ・ワンのモデルにもなった怪獣。感動しながら私は何故か等身大のベムラーに近づいてペタペタと触って見たりしているとベムラーと目が合う。

 

「ギャアアアアア!!! 」

 

「青い球体になってマッハで移動することも可能なんだよなぁあ……え? うゔぇっ!! 」

 

 撫で方かな? 触り方か? 何か気に食わなかったのかベムラーが尻尾で私のことを攻撃して来た。何の前触れもなく来てしまって避けられず攻撃を顔に受けた私はそのまま吹き飛ばされてしまう。怪獣墓場にいるからこれは夢だと思ってたけど……痛い!!

 

「いつまでふざけてるつもりだ宮原博樹 」

 

「ああベリアルさん。 ここってまだ夢の世界じゃないんですか 」

 

「そうだ、夢の世界である事には変わりはない。 違うとすれば、このオレが創り出したという所だがな 」

 

ベリアルさんが創り出した? え、何?ベリアルさんレベルのウルトラマンになるとそんな事も出来てしまうのか!?

キングとかノアの規格外の力を思えば、これくらい簡単かっ!!

 

「で、私をここに連れてきたのには何か理由が? 」

 

「お前は言ったな宮原博樹。 このオレの隣で一緒に歩くと、ならそれ相応に強くなってもらう 」

 

「………………はい? 」

 

確かに隣を歩きたいとは言ったけど、ベリアルさんの言いたいことが上手く理解できないっていつのまにか私の手にギガバトルナイザーがっ!!

 

「この夢の中なら身体が疲労することはない。 既にお前の身体はその動かし方をオレがお前の身体を使っていたことで覚えているからな。 お前に足りないのは精神での経験だ。 この夢の怪獣墓場で、存分に経験を磨け宮原博樹 」

 

「え? ちょっと待ってください!! ベムラーを倒せって? 私に!? い、いきなり怪獣と戦わせるなんてレオを鍛えるセブンよりも鬼畜じゃないですか!!! 」

 

「文句を言ってる暇があったらさっさと戦え 」

 

「ひーーーー!!! 」

 

 

 

こうして、眠っている時はベリアルさんによる怪獣や星人たちを相手にした実戦式の特訓が開始された。

 

隣を歩きたいって、こういう事じゃ無かったんだけどなあああああ!!

 

 

 

 

 

 

この時の私は思いもしなかった。 この特訓のお陰でベリアルさんに身体の支配権を預けなくてもサーヴァントと渡り合えるようになるなんて……

 

 

 

 

 

 

 




ロマニの受難はまだまだ続く……。

宮原博樹人外化計画始動。既にベリアルさんと一体になってるから身体能力ヤベーイ! だし精神もベリアルさんの記憶ウン十万年辿ってきた博樹さん……。 そんな人が戦闘経験を積む、モノスゲーイ! 人になっちゃう!?

5章に入る前にやっぱり監獄島イベやりたいし、ちょくちょく幕間の物語(イベント編)が入るかも知れません。

現在の立香ちゃんメイン鯖
1:マシュ・キリエライト
2:ジャンヌ・ダルク・オルタ(聖杯転輪済み)
3:アステリオス(EX進化)
4:モードレッド(ジードver)

マシュは確定として、大体はこの3人の中もしくは他の鯖1人を特異点へ連れて行く感じ。
6章は既にダヴィンチちゃんが付いてくる事が確定してるので、付いてくる鯖は一枠(決まってるけどね!! )
作者やっぱりダイナvsニセダイナとかティガvsイーヴィルティガみたいなの大好きなんです。


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復讐鬼は監獄塔に哭く〜私が私であること〜
1


ランキングに載させて頂いたお陰で一気にお気に入り登録者が増えて嬉しい。
幕間……というよりはやっぱりメインストーリーに絡んでいるイベントである監獄島イベはやろう。 ここラストで大切になる!!

キーワードとしては、マスターが2人であるからこその悩み

感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字の報告いつも助かってます。


【心を覗け。 目を逸らすな。】

 

なん……だろう? 声が、聞こえてくる……

 

【 それは誰しもが抱くがゆえに、誰ひとり逃れられない。 】

 

心に羽根がついたみたいに軽く、野鳥のように自由に飛んでいってしまうような、そんな感覚……。

 

【他者を羨み、妬み、無念の涙を導くもの。 】

 

羨む、妬む……そんな気持ちが、私にもあるのかな? 考えた事もなかった……

 

【──嫉妬の罪 】

 

 

「……先輩? 」

 

「どうかしたのかい、立香ちゃん? 」

 

 ()()()()()、マシュと博樹さんの2人が心配そうにな顔をしながら私の顔を覗いていた。 どうやらまた、立ったまま意識を失っていたみたい。

ロンドンの特異点を修復してからかれこれ数ヶ月。ロンドンに行ってる間に年を越していて、あの後も色々な事があって大変だったから疲れてるのかな?

あの後っていうか、ロンドンに向かう前から結構大変だった記憶しか思い出せないんだけど……。

特に、エリちゃんのハロウィン騒動とぐだぐだ問題とか頭が痛くなることばっかりだったからな〜

 

『イタイイタイイタイイタイ頭が割れちゃう〜〜 だずげで〜まずだああああ〜〜 』

 

『あぎゃあああああイタイっ、イタイはこのボケ!! あ、すまん今のは謝るから強くせんでくれええええええええ!!!! 』

 

総じて原因になったサーヴァントはベリアルさんに頭鷲掴みにされて悶絶する羽目になってたけどね……。 エリちゃんもノッブもあれからしばらく大人しかったし。

 

「会話の途中で意識を失うなんて疲労が溜まっている証拠です! 」

 

「そういえば、所長さんの話を聞いてる時も、立香ちゃん立ったまま眠っていたっけ? 」

 

「あ〜その事は掘り返さないでください〜 」

 

「と、ともかくまずは先輩の部屋へ。 直ぐにドクターを呼んできますので── 」

 

そこで、私の意識は暗転した。

 

「ま……しゅ……? 博樹……さん……? 」

 

 

 

 

「先輩!! 先輩!! 聞こえていますか!? 先輩!! 」

 

 突然、本当に突然に立香ちゃんが立ったまま、しかも目を開けたまま意識を何処かへ飛ばしてしまった。 マシュちゃんと一緒に何度も呼びかけているけど反応がない事から、急を要することだと理解した私は、一体化しているベリアルさんの手を借りるために胸に手を当てて彼に呼びかける。

 

『恩讐の彼方へと連れて行かれたか 』

 

『おん、しゅう? それって── 』

 

『そんな事はどうでもいい。 藤丸立香を即刻自室へ連れて行け、このままだと死ぬのが早くなるぞ 』

 

ベリアルさんの言っていたおんしゅうの意味とかは良くは分からないけど、死ぬという単語に強く反応して彼の言う通り立香ちゃんを抱き上げて、急いで自室へと連れて行く。

以前までの私だったら立香ちゃんぐらいの子を抱っこしたまま走ったら直ぐに息切れしていただろうけど、これもベリアルさんと一体になった事による恩恵に感謝しながら廊下を全力疾走で走り抜ける。

 

 

 

 

 

 

「先輩……!! 先輩…………!! 」

 

 あれから優に2日間もの時間が経っていた。 立香ちゃんが起きる気配はなく、マシュちゃんはそんな立香ちゃんのことを付きっ切りで見守っている。

 

「立香ちゃんのバイタルに異常は見られない。 魔術回路にもだ……眠り続けている以外は至って健康だ。 今はた“眠っている”と言うしかないが…… 」

 

ドクター、ロマニさんはそう言いながら私の方へ視線を向けてくる。……ああ、ベリアルさんの事を見ているのかな?

あれから、ベリアルさんは私に応答にも応えてくれなくて、助けたいけど私では何も出来ない。

 

「ベリアル。 君は今の立香ちゃんの状況が……何が起きているのか全部分かっているんじゃないかい? 」

 

「すいませんロマニさん。 どうにもベリアルさん何か考え事してるみたいでどんなに呼びかけても出っ! ……藤丸立香は今、魔術王を名乗っていたあの蟲の策略の檻に囚われている 」

 

出て来てくれるとは思っていなかったら心の準備する間も無く、身体の支配権がベリアルさんへ移った。 まだ、この感覚慣れてないからイキナリは辞めて欲しいんだけどな〜。

そんな事を考えてると、マシュちゃんとロマニさんが顔色を変えて詰め寄ってくる。

 

「ままま、魔術王の罠だって!? 今の立香ちゃんはサーヴァントすら連れていけない状況なんだぞ!! も、もしかしてこのまま…… 」

 

「ドクター!! 滅相もない事を言わないでください!! ベリアルさんっ!! 先輩を助ける方法は無いんですか? 」

 

「……何をしなくてもアイツは出てくるだろうと踏んでいた。 だが、コイツは今、自分が目覚めることを良しとしていない 」

 

立香ちゃんが目覚めることを否定してる? そんな……そうだったら既に魔術王の罠で死んでしまっているんじゃ……。

そんな事を考えていると、ベリアルさんが2人の事をどかして立香ちゃんが眠っているベットへと近づいていく。 そうして、マシュちゃんが座っていた椅子に腰をかけるとベリアルさんが立香ちゃんの手を握る。

 

「聞いているだろう宮原博樹。 藤丸立香が目覚めるまで、この手を離すな 」

 

これ位の言伝なら口に出して言わなくても伝わるのに、わざわざ口に出したのはマシュちゃんとロマニさんにもちゃんと聞かせるためもあるんだろう。

ベリアルさんが立香ちゃんの手を強く握り始めると、私の意識が表に出るのと同時に、一体になっているベリアルさんの魂のような物が手を通じて立香ちゃんに流れていくのを感じる。

 

『蟲如きの思惑通りにならないことは分かっている。 だがしかし、このオレが先に目を付けたんだ。 たかだが14年復讐を募らせただけの奴にそう簡単に渡すと思うな 』

 

 

 

 

 




【立香ちゃんの精神への侵入】
ノアの人から人へ移っていくあの力? 能力の代用のような事をやってのけている。
ベリアル自身の肉体が完全に失われている今という状況だから出来る荒技。
博樹と契約しているため彼の魂から蜘蛛の糸を垂らして立香ちゃんの精神へ侵入しているといった感じ。

7つの罪渡り歩くと絶対に長くなるので、今回はメインだけどイベントということに着手して3〜4話で終わらせる予定。


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2

隣の芝生は青い。
それを本人が知るのは誰かが教えてくれた時。

正直、7つの裁きの門全てやるとなると全7話なんか軽く超えちゃうんで、漫画版監獄塔をリスペクトしたような形でパパッと進めていきたいと思います。

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘いつもありがとうございます


『本日付けでマスターの1人として復帰? しました宮原博樹です。 至らぬ点ばかりだとは思いますがよろしくお願いします! 』

 

 宮原博樹さん……。 私と同じカルデアに呼ばれたマスター候補生の1人。 日本出身で、魔術のことはカルデアに来るまで何も知らなかった私と同じ境遇の一般人。 だけど、違う所は確かにある。

 

 年齢、人生経験の差という決して覆すことの出来ないもの……。

博樹さんは今42歳と私の2倍以上の歳を重ねてきた人生の先輩、それに仕事の方も警察官という正しい人生を歩んできましたよっていうお手本のような人だ。

 

 もちろん人柄も良くて、目覚めたばかりだけどカルデア職員の人たちとは直ぐに打ち解けたし、サーヴァントのみんなとも関係も概ね良好みたい。

 

 私も合わせてこれからの特異点ではマスター2人態勢で行われるからマシュやみんなの負担も減っていい事三昧! で、喜ばなきゃいけない筈なんだけど……。

 

朝起きて、博樹さんがマシュや職員のみんな、私が契約したサーヴァントのみんなと仲良く話してる姿を見て、何故だが胸を奥がチクっと痛んだし、謎の不安が押し寄せてきてた……。

 

そんな折だった、私がこの監獄島に閉じ込められたのは……

 

 

「…………? 」

 

「どうかしましたか立香さん? 」

 

「ううん、何でも……。 今誰かと繋がったような……誰かが手を握ってくれてるような、そんな温かいものを感じた……ような気がして 」

 

「クハハハ! マスター、お前の魂は此処に囚われているが、身体は以前カルデアに存在している。 大方可愛い後輩が先輩のことを想って手を握り、お前の身を案じているのかも知れないな 」

 

 今私は、監獄塔を脱出するのを協力してくれるこのクハハハと特徴的な笑い方をする深緑のコートを羽織った、クラスをジャンヌ・オルタと同じ『アヴェンジャー』を名乗る英霊と、この監獄とうで記憶を無くし行き場を無くしてたアヴェンジャーに“メルセデス”って名前を名乗れと言われた女性と一緒に行動してる。

 

 第三の裁きへ向かって歩いている最中に、アヴェンジャーが私に問い掛けてきた。

 

『────怠惰を貪ったことはあるか?』

 

 って、そりゃあカルデアに来る前の普通の女子高生だった時は、宿題をサボったり、授業中に眠ったりそういう抗えない誘惑的なのに負けたことはあるけど、こっちに来てからは毎日が大変で、休むなんてこと考えたこともなかった。

 

『だけど今は? 今は博樹さんがいる。 私一人が頑張んなくたって、大人の博樹さんが何とかしてくれる。 だってあの人は、べリアルさんと契約してるんだもん 』

 

「っ!!!? 」

 

「どうした、幻覚でも見えたか? 監獄の中に囚われ、絶望に伏した者どもは在りもしない幻想に囚われる。 お前も奴らと同類かマスター 」

 

────────っ!!!! 違う、違うちがうちがう!! 私はそんなこと考えてない!! 今のはきっと私の魂をこの監獄塔で殺そうとしているヤツの罠だ!!

 

『サーヴァントのみんなは個性的で、指示はちゃんと聞いてくれるけど日常会話とかするのに時間がかかった人たちの少なくなかった。 そんなサーヴァントのみんなとも直ぐに打ち解ける博樹さんを見て羨ましいと思った』

 

耳を閉じていても聞こえてくるその声から逃げるように監獄の中を走り抜けていく。 確かにそう思った、けどそれは良い方向で!! みんなと博樹さんが仲良くなって良かったって思ったんだ!!

 

『このまま行けば、私がわざわざレイシフトする必要もなくなる。 魔術もロクに出来なければ戦術も何もわからない、そんな私が行ったって邪魔なだけ。 これからもっと辛くなる事が予測されてるのにレイシフトするなんて死にに行くようなものじゃん!! だったら博樹さんが行ったほうがいい!! だってあの人にはベリアルさんが付いてるんだもの!! 』

 

 思った! 思ったよ!! このまま全てが終わるまでカルデアに籠ってた方が安全だって!! 全部博樹さんとベリアルさんに任せておけば大丈夫だって思ったよ!!

私はまるで私が蓋して隠していた本心、弱い心の部分を真正面からぶつけられてるこの幻聴から早く逃げ出したくて、監獄の中をあてもなく走り続ける。

 

「はあ……はあ……はあ……。 誰かが戦ってる……? 」

 

 運が良かったって言うのかな? 走り続けていたら偶然にも第三の裁きが待ち構えている場所に来ていたらしく、呼吸を落ち着かせながら歩いていくと、戦闘が行われている音が聞こえてくる。鉄格子の扉を開けて入ってみると、人の形をした赤黒い物体がキャスターのジル・ド・レェが心臓部を貫いていた。

 

「堕落するがままに魂を腐敗させた存在。 それが怠惰か……。 なら、こと罪においてこのオレを越えられるヤツはいないだろな 」

 

「グハッ!! ……まさか、帰還叶うものと希望に満ちた魂……眩き輝きをもった魂の姿すら拝めず、地獄へ向かうとは……。 ああ、まるであの時のようだ…… 」

 

 その相手にジル・ド・レェの霊核は完全に潰され、核を潰した相手はその消えゆく霊基のような物を身体に取り込ませると、実態が形成されていく。

黒と赤が占めるその強靭な身体、鋭い爪。 胸に紫に輝く結晶を持った離れていても感じる絶大な力を持った存在。 そんな人、私は1人しか知らない!

 

「べリアルさっ!! 」

 

「貴様……どうやって此処へ来た。────そうか、貴様があの男が最も危惧していた…… 」

 

 私がべリアルさんの名前を叫ぶよりも速く、雷のごとき速度でいつの間にか追いついていたアヴェンジャーがべリアルさんへ迫っていった。 ここは私のシャトー・ディフだってアヴェンジャーは言っていたから、べリアルさんがこの監獄塔にやって来たことに驚きが隠せないようだ。

 

 そんなアヴェンジャーの蹴りも、防御する価値すらないと判断したのか避けようともせず、右肩に直撃したべリアルさんだったけど、攻撃を受けてダメージを負った様子も無ければ、そのままアヴェンジャーの足を付かんで地面に叩き付けた。

 

「グハッ!! 」

 

「どうした巌窟王。 貴様の憎悪は、怨念とやらはそんな者か? 」

 

 巌、窟王……。 アヴェンジャーをそう呼んだべリアルさんは私の方へと歩み寄ってくる。 助けに来てくれた安堵から私もべリアルさんへと駆け足で向かう。

 

「がっ!? はっ!! べリ……アル……さん……!? 」

 

「藤丸立香。 オレは言った筈だぞ、歩みを止めるなと 」

 

────首を絞めて、持ち上げられた。

誰に? 誰が? 頭がパンクしそうになるくらい混乱していくけど、その凶悪な爪に持ち上げられてることで必然的に首から血が流れていくことが理解できて不思議と冷静でいられる。

目の前に立っているのはべリアルさんで、私の大切な仲間。 その彼が片手で私の首を絞めたまま簡単に私の身体が持ち上げられた。

 

 

 

 




ベリアルさんが立香ちゃんを助けに来たと思った?
残念、ベリアルさんによるスパルタ教育でした!!

【現在のベリアルの状態】
博樹さんと繋がっている状態で、無理矢理立香ちゃんとのパスを作り監獄塔に侵入している。
その為、デメリットが存在している。「 赤黒い人型をした物体」だったのもジルを倒して【怠惰の罪】を吸収したのもそのデメリットがあるから。

【二人目のマスターのを存在。藤丸立香の嫉妬】
 唯一無二のマスターという重圧では無くなったからこそ生まれた心の余裕。 ゲーム本編では殆ど見せることが無い負の感情。アルジュナ的に言えば“悪”の部分。
宮原博樹は、既に社会に出て、家庭を持ち、それを支える父親という存在という高校生だった立香にとっては学校の先生以上に大きく見える存在&ベリアルと契約しているというのが楔となって嫉妬の感情が見えてしまった。
 命を預けると決めたマスターと、隣の言ってしまえば他人である博樹とでは見せる顔が違うけど、一般人で高校生の立香はそれを気づけない。 例をあげるとお客に良い顔してるクニキとマスターに見せる主従の顔は別やでって感じ。


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3

問題
 貴方使えるサーヴァントは2基。 敵は1ゲージ20万のHPを持っています。 こちらの攻撃は全てweak、相手からの攻撃はクラス関係なくnormalです。 どうやって攻略するでしょう? エネミーのチャージは5、宝具なしのEXアタック。
また、礼装の選択は自由。 マスター礼装はカルデア魔術礼装固定とする。

感想、評価お待ちしてます。
誤字脱字、ご指摘ありがとうございます。


「貴方は、人の生命を脅かしましたね。 私は一切の害ある者を赦しはしない!! 」

 

「かはっ!! はあ、はあ……メルセデス、さん? 」

 

 ベリアルに首を絞められ、持ち上げられ意識が朦朧とする中で、突然ベリアルさんの事をメルセデスさんが吹き飛ばした。

メルセデスさんの正体はサーヴァントだったらしく、彼女の治療を受けた私は意識がはっきりとしてくると、メルセデスさん、それと復帰したアヴェンジャーがベリアルさんと向き合っていた。

 

「本性をあらわしたようだな。 マスター、お前はこの女をか弱い人間だとでも思っていたようだが、此処に迷い込むは罪に爛れた魂のみ。 この女こそが“傲慢の罪”を背負いし女だ 」

 

「メルセデスさんが……裁きの……じゃああのベリアルさんも! 」

 

 ベリアルさんもメルセデスさんや、今まで超えてきたファントムやフェルグスさんの様な、私の知っている人を象った罪何だと思ったけど、それは間違いなのかアヴェンジャーは嗤う。

 

「クハハハ、それは間違いだぞマスター。あれは正真正銘お前の知っている男その者だ。怠惰、強欲、暴食、そして憤怒!! お前が超えるべき4つの罪を喰らうことで、漸くその身体をこのシャトー・ディフに現す事が出来る欲深き者。 まさか、このオレをも超える恩讐の持ち主がいようとはなっ!!! 」

 

「マスター、アレは全ての生命を脅かす存在です。 私はそれを赦す訳にはいかない、指示をお願いします 」

 

 アレはベリアルさん本人。 私が超えるべき筈だった4つの罪を持って此処までやって来た。最初は助けに来てくれたのかと思ったけど、そんな事のない。 ベリアルさんが向けてくるその殺気が本当のものだって、ずっと近くで見てきたから分かる。

 …………ベリアルさんは、私が歩く事を止めているって言った。 けど、私は今も歩き続けてる。 現に、この監獄塔から脱出するために奮闘していたんだから。 なら、今ここで証明してみせる。

 

「ベリアルさんを超える!! お願いメルセデスさん!! アヴェンジャー!! 」

 

「了解 」

 

「任せろ 」

 

 メルセデスさんとアヴェンジャーがベリアルさんに向かっていく。 地面を駆けていくメルセデスさんとまるで瞬間移動しているように移動するアヴェンジャー。 それを見てベリアルさんは自身の宝具である黒き鋼──たしか正式名称はギガバトルナイザーだっけ?──を呼び出して反撃の構えを取る。

 

「アヴェンジャー!! ベリアルさんの手から武器を離して!! 」

 

「クハハハ!判る判るぞ!! 貴様はこのオレと同じだ!! 復讐こそが本懐の獣!! あの男から話には聞いていたが、まさか此処までとはなっ!! 」

 

「……魔術も、力も、知識も何もない。 他のマスター候補どもと比べれば、アイツ……宮原博樹はお前に最も近しい存在だ。 だからこそ、自分よりもアイツの方が上だと、比べる 」

 

 青黒い怨念の炎をレーザーの様に放射させながら得意の超光速移動でベリアルさんに接近するアヴェンジャー。手をベリアルさんと似た爪の形に変えて彼に迫っていく。

ナイザーを一回転させる事でレーザーを無効化させたベリアルさんは、迫るアヴェンジャーの爪をナイザーで受け止める。

 アヴェンジャーの言葉に耳も傾けず、最近……博樹さんが目覚めてから思い始めていた気持ちを、見抜いた上で喋るベリアルさん。

 

「クククっ!! 案ずるなマスター!! 其れこそが愚かな人という生命だ。 他者と比べ、嫉み。 自らの成功の為ならば誰であろうが人の生を地獄へと堕とす!! 」

 

「ソレの愚かさを理解している。 だからこそお前は停滞を選ぼうとしている、宮原博樹に全てを預け、殻に閉じ籠ろうとな 」

 

 光速で地面を、空中を自在に動きながらベリアルさんに攻撃していくけど、それら全てを予知しているかのようにベリアルさんは捌いていく。 閉じ籠る……。 博樹さんに全てを任せればもう命のやり取りが紙に字を書くように簡単に行われる場所に赴かなくていい。 そう思うと気が楽になる……けど、今の居場所を博樹さんに渡すのは……

 

「健康な状態で生きているという事はそれだけで素晴らしい。 わざわざ、生命を墜とそうとする行為を、私は賛成しません 」

 

 良いの? 閉じ籠っていても、生きているなら私は戦わなくても良いのかな? メルセデスさんの言葉は、今の私の心に直接響いてきて、博樹さんに全部任せても良いのかなって気持ちが強くなってくる。

 メルセデスさんがレーザーが飛び交う中へ掛け行けていく。 アヴェンジャーも理解しているから当たる事は無いけど、迷わず当たってしまうかもという恐怖すら見せずベリアルさんとの距離を詰めたメルセデスさんが、彼の胸部に手を添えた。

 

「その外見に少々戸惑いましたが、どうやら体内の構造は人体と然程違いはないようですね。 私では、身体全体に存在する治療不完全な傷を開く事は出来ませんが……はっ!! 」

 

「ベリアルさんの肩をっ!! 」

 

 手を添えて何かをしたメルセデスさんは、ベリアルさんの両肩を掴み、ガコッ!と人為的に肩を脱臼させた。けど、そんな事にも動じずにメルセデスさんの事を蹴り飛ばしたベリアルさんの瞳は私のことを見続けてる。

 

「逃げたいのなら逃げろ。 それがお前の歩む道の答えならな 。 だが、遂げた後に残るのは空虚。 何も満たされない無惨な心だけだ 」

 

 ────空虚、何にも満たされない……心……。 言われても分からな……くない……。 カルデア来るようになってから見るようになった夢。 隔離された個室で、外の世界を知らずに何も知らない『空白』の心。 あの心は、とてもとっても寂しそうだった。

 

 そんな思想に耽っていると、肩を脱臼していたベリアルさんは超能力でナイザーを操りアヴェンジャーの事を倒し、ナイザーを無理やり自分の腕にぶつける事で脱臼も直していた。

 

「それを望むのならそうすれば良い。 捨てるのは簡単だ 」

 

「マスターっ!!! 」

 

(身体が宙に……!? 声も出せない…… )

 

 ベリアルさんが手を前に出すと、私の身体が金縛りにあった様に自由が効かなくなり、空中に浮かんで行く。メルセデスさんとアヴェンジャーが助け出そうと動いてくれるけど、独りでに動くナイザーに行く手を阻まれている。

そうしているうちにベリアルさんはもう片方の手も使い出し、超能力を使って監獄塔の瓦礫や石が私の周囲に集まっていく。

 

「貴方は彼女に何をしようと言うのですか!! 」

 

「孤独になる事を望でいる。 だからこそその手助けをしてやってるだけだ、身体を動かすことも、喋ることも出来ない只一人だけが収容される監獄に閉じ込める為のな 」

 

 閉じ込める!? じゃあこの瓦礫は私のことを、私だけの事を閉じ込める為の監獄を作る為の材料。 この監獄塔に閉じ込めらたけど、まだ自由があった。 脱獄するための方法や、歩く道があったけどベリアルさんが今作ろうとしてる監獄にはそれがない。

 

 その事を考えるだけで湧き上がってくる恐怖に抗う為に、如何にかしてでもベリアルさんの超能力から抜け出せないか全身に力を入れて抗う。

 

「どうした? 全て捨てると決めたんだろう? 宮原博樹に全て託し、自分は投げ出すのだと!! 」

 

 私がまだ抗おうとしてる事に気づいたベリアルさんが、無駄な足掻きは止めるように諭してくる。 博樹さんに全部任せて、私自身は眠っていろって物理的な方法で迫ってくる。

 

「全て、全て、全て渡してしまえ!! カルデアから背負わされたその使命も!! 」

 

 ベリアルさんのその言葉を聞いて頭の中を駆け抜けていくカルデア職員のみんなの顔、私なんかに本当に人理を世界を救えるのかって思ってる不安な顔。

 

『────う〜ん、今の僕に出来ること……。 あ、僕秘蔵のお菓子が欲しいって言ってもあげないぞ、もう何個君にあげたと思ってるんだい 』

 

 そんな中で、私に一際優しくれる頼りないけど、朗らかな笑顔を向けてくれる人がよぎる。

 

「お前が契約したサーヴァント供との信頼も!! 」

 

『────まあ、私も暇ですから? コイツが起きた時文句言うために此処にいてやるわよ 』

 

『────たっく、こんな所で立ち止まってんなってのマスター。 その背中叩いてやっから早く起きろよな? 』

 

『────ますたー。 ぼく、ずっとそばに、いる、よ? 』

 

 声が、聞こえた気がした。 私が……こんな私と契約してくれたサーヴァントたちの声が……。 そうだ、モードレッドと約束したんだった……私のジードを手伝って貰うって、このままここで諦めたらその約束も無駄になっちゃう。

 

「お前があの時手を取った、マシュ・キリライトとの絆も!! 全て渡してしまえ!! 」

 

「……だ 」

 

 あの日、炎に包まれる中で、自分が死んでしまうという状況でも私の身を案じてくれた優しい女の子。 いつも震えた手で盾を持って、戦えない私の代わりになって戦ってくれる少女。ずっと一緒に歩いてきたマシュとの絆も博樹さんに渡してしまえって、ベリアルさんが叫ぶ。

 

『────先輩、私は信じています。 先輩は必ず帰ってくると 』

 

「いやだっ!! それは全部私の、私だけのものだ!!! 」

 

 動かなかった身体が動くようになって、空中に身を投げ出された私だったけどアヴェンジャーが受け止めてくれて怪我なく地上に下ろしてくれる。

そうして私は、ベリアルさんに向かって私が今感じた感情をぶつける

 

「死にたくない! 誰かに全部任せて逃げ出したい!! けど、渡したくない!! 確かに私には何もない!! 他のマスター達が残った方が最善の結果を残せるかも知れない、博樹さんの方が世界を救う才能があるかも知れない!! だけど! 私が築いた絆は私だけのものだ!! 」

 

 どんなに行ったって、きっと私は博樹さんや才能ある他のマスターと自分の事を比べて、私自身の事を下に見てしまう。 けどサーヴァント達は別だ。

どんなに博樹さんや他の誰かと仲良く喋ってても、目に見える絆(令呪)も、目に見えない絆も築いてきたのは私自身だ。 それを誰かに渡すなんて絶対いやだ。

 

「他の人から見たら不恰好で、かっこ悪くて、醜いかも知れない。 最善だって言える道なんて私は選べない。 だけどそれでも良いって言ってくれた仲間がいるから!! 世界が救えなくても、私は私が進みたいって思った道に向かって、一歩ずつ地道に進んで行くんだ!! 」

 

 一気に本丸を叩くと、向かった特異点の問題を一瞬で解決するなんて事出来るはずない。 だから今まで通り、手探りで自分に出来ることを見つけながらその答えを地道に見つけていく。 多分、それが私には一番合ってると思うから。

 

「────そうだ。 その目だ 」

 

「えっ? ベリアル……さん 」

 

 今までピンピンしていたはずのベリアルさん身体が突然薄くなっていく。 サーヴァント達が消える時と一緒の現象なんだろうけど、なんで? メルセデスさんの攻撃やアヴェンジャーの攻撃が少しは当たってたのは分かるけど、消えるまでではないはずだよね!?

 

「後はソイツに出口まで導かれろ藤丸立香 」

 

「────ククク、こうまで俺とあの女を殺しておいて良く言う 」

 

 今気がついたけど、アヴェンジャーもメルセデスさんも立っているのが不思議なくらいの重傷を負ってる。 もう戦う理由もないから、ベリアルさんは一人勝手に帰るって言ったのかな? そんな事を考えていると、後数秒すれば完全に消えるベリアルさんが私に話しかけてくる。

 

「覚えておけ藤丸立香。 何も考えずに伸ばしたお前のその手に、救われるヤツもいる事をな 」

 

 それだけ言って、ベリアルさんは消えていった。

 

「クハハハ!! そうか、そうかそうか!! 理解したぞベリアルっ!! 種の罪、悪性全てを被った男よ!! 不完全な状態で何故この場に姿を現したのかと思ったが……そうか!! あの男が お前のファリア神父かっ!! 」

 




回答
 メルセデスが倒れないようにスキルや宝具を使いながら、アヴェンジャーで星出しまくって人型特効でぶん殴る。

・今回のべリアルさんは4つの裁きを吸収する事でどうにか姿形を保っている状態。 それでも並みのサーヴァントじゃ相手にならないレベル。 メルセデスさんの人型特効はやっぱり強いよ。

『触診』 漫画版監獄塔で見せたメルセデスのスキルのひとつ。 対象の身体に触れるだけでその肉体の弱点、傷口などを一瞬で理解する。


次回は監獄塔エピローグ



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4

新しいウルトラマン、「ウルトラマンタイガ」が発表されましたね。
正直な話、フーマ、タイタス、トレギアよりも気になるのはギンガとの関係性
未来から来たとされてるギンガ。 本編では何かとタロウと絡みがあったし、もしかしたらその息子のタイガの弟子がギンガなのかも? とか考えるだけでワクワクします。
もしくはトレギアがギンガの中の闇を見出し、抜き取ることでルギエルを生み出したとか、ギンガに続く物語だったら最高だな〜っと



感想、評価お待ちしてます。
ご指摘、誤字脱字ございましたらよろしお願いします


「オレは1度でも味わってみたかった。 かつてオレを導いた敬虔なるファリア神父のように…… 」

 

 絶望に負けない者が、彼の希望として送り出すこと。 勝利を知らないでいた、勝利の味を知らないそれが巌窟王。

 

 べリアルさんも、メルセデスさんもこの監獄からいなくなって、最後に残ったアヴェンジャーが、なんで私がここから出る事に協力してくれたのか教えてくれた。

 

「オレはオレをもて余した。 だからこそ、復讐に身を染めた存在は希望を見ることは叶わないと思っていた 」

 

「その考えが、変わったの? 」

 

「勝利を選ることは不可能だった!! だが、オレはお前に希望を見た!! 永劫の復讐に呑まれた者が希望と認めるほどに“耀き”を! お前はこのオレに魅せた!! 希望を見るには、充分な結末じゃあないか 」

 

 アヴェンジャーは、私とべリアルさんをファリア神父が希望を見いだした自分(エドモン・ダンテス)のことを重ねたのかな?

アヴェンジャーは希望を見つけたから、このまま消えて私のことをこの監獄から出そうとしてくれる。

 

「……べリアルさんは私のファリア神父なのかどうかは、今もわかんないよ。けど私は歩き続ける、あがき続けるよアヴェンジャー、世界を救うためにじゃない。 自分が結んだ絆を絶たないために 」

 

 そう言いながら、私はアヴェンジャーに向けて手を伸ばす。 この監獄塔で結んだ絆もここで終わりにしたくないから。

そんな私の事を見て、アヴェンジャーは有り得ない物を見るような目を一瞬だけ私に向けるけど、直ぐに「ああそうか」って小さい声で納得すると、この監獄塔で見慣れた高笑いを始める。

 

「クハハハハハハっ!!! そうか、お前は光りも通さぬこの監獄で掴んだものすらも離さないというか!! あの女のような強大な願望には届かないにしても、人ひとりが持つには十分な傲慢じゃないか!! 」

 

「また、会えるよね? アヴェンジャー 」

 

「ふっ、再会を望むならオレはこう言うしかあるまい 」

 

 

 

 待て────しかして希望せよ

 

 

 

 ────────────────

「んっ…… 」

 

 久しぶりに、感じる光がとても眩しく感じながら目を覚ました。誰かが私の手を強く握っている感触に目を向けるとその綺麗で大きな瞳に涙を浮かべながら安心した顔をしたマシュが立ってた。

 

「先輩!! 良かった!! 本当に良かったです……!! 」

 

「ごめんマシュ、心配かけちゃったよね……」

 

 目元に浮かぶ隈から何日も寝ずに私の事を心配してくれてたんだなって分かる。

泣いてるマシュの事をあやしていると、マシュが握っていたのとは逆の手に誰かがさっきまで握ってくれてた温もりが残ってることに気がついた。

 

「アイツならお前がすぐに目覚めるっつって外に出ていったぜ? 」

 

「モードレッド。 アイツって……べリアルさん? 」

 

「はい。 先輩の意識が囚われていた場所、そこにべリアルさんが向かっている間、博樹さんが眠らずに先輩の手を握り続けていたので睡眠をとりに行ったのかと……先輩っ!? すぐに立ち上がるのは危険です!! 」

 

「ごめんマシュ……私は今、博樹さんに言わなきゃいけないことがあるんだ…… 」

 

 ベットから降りようとする私の事を止めようとマシュ、それにドクターが止めにくるけど、私はそれを断って無理矢理にでも立とうとする。 結構長い時間眠り続けていたせいで腕に力が入らない。

 

「たっく。 ほらよ 」

 

「わっとと……モードレッド? 」

 

「アイツんとこ行くんだろ? だったら早いとこ行くぞマスター 」

 

 マシュの後ろに控えてたモードレッドが腕を掴んで私の事を強引に立ち上がらせ、支えてくれる。

 

「マスターの事支えんのはお前の仕事だろマシュ。 片側空いてっからお前も支えんのは手伝え。 重いったらないぜ 」

 

「は、はいっ!! 」

 

「モードレッド……私、そんなに重くないんだけど…… 」

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

「博樹さんっ!!! 」

 

 立香ちゃんが目覚めると言って、身体の主導権を握ったベリアルさんは立香ちゃんが目覚めるのを見ることなく部屋から出て行ってしまった。 私の身体から離れている間何があったのか聞いてもベリアルさんは答えてくれないもんだから、流石にずっと起きてたから眠ろうとすると、後ろから声が聞こえてきた。

 

 その声が聞こえたかと思うと、突然ベリアルさんが身体の主導権を私に返してきたもんだからびっくりして躓きそうになってしまう。

それを何とか耐えて後ろを振り向くと、そこにはモードレッドちゃんとマシュちゃんに両肩を支えられながら、その後ろではロマンさんが心配そうに見守りながら立ってる立香ちゃんがいた。

 

「良かった立香ちゃん。 目が覚めたんだね 」

 

「はい。 マシュから聞きました。 ベリアルさんの事をあの場所に送るために、ずっと手を握ってたって。 ありがとうございます 」

 

 だけど!! と、そう言って立香ちゃんは支えてもらってるモードレッドちゃんの肩か離れると、その腕を私に突き出してきた。

 

「私、負けませんから!! ただそれだけ、今言っておきたかったから…… 」

 

 それだけいって、立香ちゃんは珍しく怒ってるロマンさんに連れられて医務室に向かっていった。 私もそれに着いていった方が良かったのかも知れないけど、まさか立香ちゃんから「負けない」なんて競うような言葉が向けられるとは思わなくてその場に立ち尽くしてしまう。

 

「は、ははは。 負けない、負けません……かあ 」

 

(なんだ、気でも触れたか )

 

「いいえ、そうじゃない。 そうじゃ、ないんです…… 」

 

 今の言葉で、立香ちゃんがどうして眠り着いていたのか何となくだけど分かってしまった。立香ちゃんはきっと、同じマスターっていう立場の私と自分の事を比べてしまったんだ。 私よりも、自分の方が劣っているってそう言う風に思ってしまった心を狙われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 そんなことあるはずないのに……。

 私は、肩を担ぐのが面倒くさくなったのかモードレッドちゃんにお姫様だっこされて連れていかれてる立香ちゃんの事を見ながら、思い出していた。

 

 ベリアルさんが私と契約してくれたのは偶然で、私は最初、悪のウルトラマンであるベリアルさんの事を拒絶していた。彼の記憶と向き合っていくうちに、私はベリアルさんの事を受け入れる事が出来たんだ。

 

 だけど、立香ちゃん。 君は違う

 

『あの、貴方は何て言う英霊……なんですか? 』

 

 怖かったと思う、誰とも分からないその人に。 誰も出来なかったことを一番最初にやったのは君なんだ。

 だから立香ちゃん、私は君が何よりも羨ましく映るんだ。ベリアルさんの手を最初に掴んだ君のことが……

 

 

 




次回はナーサーリー・ライムの幕間を予定してます。

ゲーム本編では自身を導き、最後には監獄塔から脱出した主人公に希望を見出し縁を結んだ巌窟王でしたが、この小説ではベリアルと立香ちゃんの関係に希望を見出す事で、そして立香ちゃんの強引な手により縁を結びました。…………立香ちゃんのメイン鯖にはならないよ?


ウルトラヒーローズEXPO2019 in SUKAGAWA にいってきました。
ジード好きは見たほうがいいとの事で見に行ったら……ジードが最高でした。 新フォームと言っても過言じゃない最高の戦いかた、あんなん惚れるに決まっとんやろ!!


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幕間の物語4.5
【自分たちの為の物語】


今回の幕間は博樹さんがべリアルさんを助けた後、ナーサーリー・ライムはどうなったのか。 そんな部分の話。


「あっ、おねーさん! ごきげんよう 」

 

「ははは、今日も来たんだねライムちゃん 」

 

「ええ! 今日もおねーさんのお話、聴かせてちょうだい 」

 

 そろそろ就寝の時間だって時に私の部屋に訪れてきたこの子はナーサリー・ライム。 第四特異点、あの霧のロンドンで博樹さんが契約したサーヴァントだ。

 

 彼女、どういうわけか数日置きに私の所に来て話を聞きに来るんだよね。 しかもその内容が、私が今まで旅してきた特異点での事。

最初は私じゃ上手く話せる自身ないから他の誰かに頼んだほうが良いよって言ったんだけど……

 

『そんなの気にしないわ。 私はおねーさんの目で見て感じた物語を聞きたいんだもの 』

 

 そう言われたから、誰かに言い聞かせるっていうよりかは、私が本当にその時感じた事を振り替える話し方で特異点の事を物語るようにしてる。

 

「それじゃあ、前はどこまで話たんだっけ? 」

 

「オルレアンで悪いおじさまが一人何処かへ行っちゃった所で終わったの。 わたしと会った時も一人だったし、悪いおじさまはきっと一人が好きなのね 」

 

「ははは、そうなのかも知れないね。 じゃあ────」

 

 

────────

 

 自分の名前を忘れてしまう空間。 べリアルさんが名前を思い出したことで怪獣墓場を舞台とした空間が崩壊していく。 空には亀裂が入り、ロンドンの街並みが覗くなかで、アリスちゃんは崩れた岩の1つにぺたんと力なく座り込んでいる。

 

『お願い、お願いおじさまっ! あたしの一番大切な親友を! バットエンドへ向かってるアリスあたしを救ってあげて!!』

 

「お願いが、あるんだけど……いいかな? べリアルさん…… 」

 

 私自身も、この空間に入ったことで1度名前を失った。 そのダメージは思いの外大きかったみたいで全身が今にも動かなくなりそうな痛みが走ってくる。

そんな痛みを誤魔化しながら、私はべリアルさんにある提案を出す。

 

「あの子を、アリスちゃんをこのまま放っておいたら消えてしまう……。 だけど、このまま消えてしまうのを何もしないで見ていることなんて出来ない 」

 

「助けると言うのか? アイツを、人ではない写し鏡であるあの英霊を 」

 

「ああ。 貴方と歩くって決めたんだ。 女の子とした約束ひとつ守れなかったら私は私を許せなくなる。 だから、アリスちゃんを救うために、力を貸してほしいんだ 」

 

「ふっ…… 」

 

 べリアルさんは馬鹿なヤツを見るように、呆れながら苦笑しながらもその手を動かし、崩れた岩を集めてどんどんと離れていくアリスちゃんへと続く道を作ってくれた。 私は一分一秒でも無駄にしない為に身体に渇をを入れて岩場に向かって駆け出した。

 

岩場に体重をかけると直ぐに崩れ始めてしまう。崩れるよりも速く、はやく脚を上げて次の岩場へ移っていく。

 

「こないで、こないでこないでこないで!!!! 」

 

「っ!! 」

 

私が走ってくるのを見つけたアリスちゃんが攻撃を仕掛けてくる。来ることを拒絶してくるその攻撃だけど、止まってしまっては落ちてしまう。それと、絶対助けてくれるって信じてるからそのまま走り続ける。

 

「とっととその娘を止めろ、宮原博樹!! 」

 

「ありがとう!! べリアルさん!! 」

 

岩場の道を形成しながら、アリスちゃんの攻撃を消滅してくれるべリアルさんに感謝を伝えながら走り抜け、ようやくアリスちゃんが座り込んでいる岩場までやってくることが出来た。

 

「どうして……どうしてここまで来たの? バットエンドが決まった物語になんて、ありすに会えないこんな世界なんて嫌!! あたしはいたくないの!! 」

 

 バットエンドが決まってる……そうか、アリスちゃんは全部知ってるんだ。人理が焼却されてしまったこと、2018年から先の未来が存在しないこと……だからバットエンドだって、ありすちゃんに会う事が出来ないって嘆いてるんだ。

 

 

「…………君に、物語を書いて欲しいんだ 」

 

「え? 」

 

 

 しゃがみこんで、アリスちゃんに目線合わせながらそう伝える。 けどアリスちゃんは言葉の意味が理解できていないのか顔を上げて私の事を見てきた。

 

「ああ、書いて欲しいじゃ可笑しいのか。 う~ん記してほしい? 伝えてほしい? なんて言えばいいんだろう? 」

 

「違う、ちがうわ。 私は本、誰かが書いた物語を綴じる栞。 そんな私が物語を書くなんて無理よ!! 不可能に決まってるわ!! 」

 

 アリスちゃんは自分の英霊の在り方として、物語を書くことなんて出来ないと否定する。 けど、それこそ有り得ない。 だって彼女の記憶のなかにはずっとありすちゃんとの思い出が残っているんだ。それを、栞なんて思わせたくないから、否定する。

 

「不可能なもんか。 作家さんが書いたお話だけが物語じゃない。本を読んで、こうしたい、こうなったらいいなって思って誰かが書き加えたそれだって立派な物語だ。 子どもが書いたラクガキだって、知らない人からしたらただのラクガキでも、その子の中には壮大な物語がある。 物語を描くのに資格なんていらない、誰にだって物語は描けるんだ!! それが例え物語を綴じる本だって 」

 

 何を話せばいいのか、どう説明すればいいのか考えたなかで、一番に思い浮かんで来たのはやっぱり、家族との思い出だった。自分も通った道だけど、娘と息子が書いたオリジナルのウルトラマンや怪獣の絵。あれだって物語のひとつだ。

 

『こうやってゼットンのことたおすんだよ!! 』

 

『誰もザギ様のことたすけてくれないからわたしがたすけるの!! 』

 

 

 後は、結婚式の事だ。自分がどんな子供だったのか、どんな人生を歩んで妻との馴れ初めはどんなだったのか。 それを綴った写真の数々だって私だけの物語だ。

 

だからこそ、物語は誰にだって書くことが出来る! 描けるんだ!!

 

「誰かの為の物語は、”自分の為の物語”に変えることが出来る。 だから、結末がバットエンドって決まった物語だって、その人の気持ちひとつでハッピーエンドに書き換えることが出来るんだ 」

 

 目の前でポタポタと零れる涙を手で拭ってあげながら、いつも学校に向かう子どもたちへ向ける笑顔を作る。

 

「ぐすっ……でもわたし、貴方たちの物語を最初から知らないわ 」

 

「それなら知ってるみんなから聞けばいいんだよ。 虹みたいに、沢山の綺麗な色が連なった物語が出来る。 それってとっても素晴らしい事だと思わないかい? 」

 

「ふふ、ふふふ……。 おじさま、と~っても欲張りさんなのね。 わたし、バットエンドが大嫌いなの!! だから絶対ハッピーエンドを迎えなきゃ許さないわっ!! 」

 

 何かの隠しているような笑顔じゃない、心のそこからん笑顔見せてくれたアリスちゃんを見て、釣られて頬が上がる。

 

「ずっと、ずうっと。 何度も何度もバットエンドを迎えてきた人が漸く掴むハッピーエンドの物語だ!! 誰が邪魔してこようが、運命がそれを許さなくても掴みとる!! どうだい? わっくわくするだろうアリスちゃん!! 」

 

 いつかどこかで、アリスちゃんしか知らない物語を誰かに語ることが出来るように……

そのために、ここでアリスちゃんを消さないために契約を結ぶ。

 

「…………べリアルさんっ!! サーヴァントとの契約ってどうすればいいんですか!! 」

 

と、思ったけど私自身サーヴァントとの契約ってカルデアで一瞬で触れただけで何も知らないんだよな。べリアルさんとの契約もいつの間にかだったし。

 

すると、呆れた様子で私の隣まで降りてきたべリアルさんが私の手を掴んでアリスちゃんに手を翳すように前に出す。

 

「魔力を流す感覚はお前の身体が覚えている。 後はオレに続け 」

 

べリアルさんが言うように、身体の中にあるであろう魔力、そして手に浮かんだべリアルさんの顔のような令呪に力を入れると、血のような”ナニか”が身体を伝っていくのが分かる。

 

「告げる 」

 

「────告げる 」

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に、聖杯の寄るべに従い、この意この理に従うならば 」

 

「──汝の身は我が下に──我が命運は汝の剣に──聖杯の寄るべに従い──この意この理に従うならば 」

 

後は、べリアルさんの言葉を聞かなくても分かる。何故だか理解できる。私とアリスちゃんとの間に魔力の繋がりが出来ていく感覚が教えてくれる。

 

「──我に従え、ならばこの命運──汝が“物語”に預けよう 」

 

あたし(アリス)あたし(ありす)が見てるゆめだから。かがみの中のあたし(ありす )だから。あたし(ありす)とあえないこのせかいで、あたし(アリス)あたし(ありす)でいるのはいけないよおもっていたの。 だけど、あたし(アリス)がゆめを見てもいいのね? あたし(ありす)のまま、物語を描くハッピーエンドを!! 」

 

結んでいた髪はほどけて、綿菓子のように広がる。 そして彼女の目の前に現れた大きな本は、これからアリスちゃんが物語を紡いでいくからか、題名も表紙も書かれていない白紙の本だった。

 

 

【まっていてねありす。 あなたへおくるためのさいこうのハッピーエンドの物語をえがいてみせるからっ!!】

 

 




と、言うわけでライム……アリスはべリアルさん以外で博樹さんが契約した唯一のサーヴァントです。(これから増えることは絶対にないです)

第3再臨のライムのスカートに写ってる「不思議の国のアリス」の意匠。 FGOマテリアルでワダアルコ先生が言うにはあの部分はライムが使用する「物語」によって意匠が変わるというものがあったので。
この小説のライムの意匠はまだ白紙の物語だけどバットエンドを見続けたべリアルを写しているから、真っ黒なまま。

【博樹さんがありすに会えた理由】
 べリアルさんがライムの固有結界である"名無しの森"に囚われたことで、ナーサリー・ライムというサーヴァントの霊基に刻まれた記憶と実際は生死の境をさ迷っていた状態の博樹だったからこそ起きた偶然。


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5章予告

────5章が、難しいです……。
博樹さんも目覚めたことで“ゼロとレイトさん”とは違いベリアルさんとの絡みも必要だし。
あと5章は意外と出てくるサーヴァントが多いこと多いこと……


まあ、一番はルーブも映画を見て影響されたのが事実


 第5の特異点、レフの爆破から目覚めた宮原博樹にとって初めてとなる特異点修復は、独立戦争時のアメリカ。

東西連合軍とケルト軍が激突する中で、戦争という病と戦い続ける白衣の天使と呼ばれる女性と出会う。

 

「博樹さんとベリアルさんのレイシフトに不具合が起こった!? な、なにやってるんですかドクター!! 」

 

「全ての生命を救うことは確かに不可能なのかも知れません。 現に私は、ある1人の少女が抱えた病を切除することが出来ませんでしたから。 青い瞳をしたあの娘を…… 」

 

 それは、ほんの少しだけの誤差。 ベリアルが、ウルトラマンが認知されたことによって白衣の天使は友であった少女との記憶を有していた。

 

 

「貴方は…………? 」

 

「憐れだな。裏切られ、その命を落とした貴様はそれでも信頼を寄せているその姿は、余りに惨めだ 」

 

「そんなことない。 そんな事ないよベリアルさん。 …………シータさんは、ラーマさんのこと大好きなんですね? 」

 

 一方で、宮原博樹とベリアルはたった1人の、大切な人が助けに来てくれることを待ち続ける少女──シータとの出会いを果たしていた。

 

 強くなる。 誰よりも強く……。 そんな強さの深みから抜け出した戦士は、その少女と出会いこの特異点を回ることで理解することが出来なかった感情を知る事になる。

 

「あれは、仕方がない事でしたから 」

 

 強かで、真っ直ぐな想い

 

「シータがすぐそばにいるのだ!! 邪魔をするなああああ!!! 」

 

 どんな痛みをも跳ね飛ばし、立ち上がる力をくれるもの。

 

「ああクーちゃん!! 私のクーちゃん……愛しているわっ!! 」

 

 自らの理想の存在へと向ける歪んだ感情。

 

その全てが、戦う事、強くなることでしか喜びを感じなかった戦士に別の強さをもたらす。

 

 

 

 

「愛を知らないなんてそんな筈がない。 だって貴方は──── 」

 

 

そして、今明かされる。 1本のカプセルの出自………

 

 

『貴方からの命令は第一に優先するものとマスターからプログラミングされています 』

 

『今ここで起きたこと、全てを忘れろ……はあっ!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは……ウルトラコクーンで出来たバリアの内部か? アトロシアスへ進化したベリアルさんと、ジードたちの時間を稼ぐために彼らの地球へやってきたウルトラの父が向かい合っている。

 

 

『お前はいつもいつも、オレの邪魔をしに来やがる。 ケン 』

 

『────ここしか、ないと思った。 キングも、宇宙警備隊の誰も、私のこと“ウルトラの父”として見るものがいない。 この瞬間しか、ないと思ったんだ 』

 

 

 

『私はウルトラの父でも、宇宙警備隊大隊長でもない。 1人の戦士、ウルトラマンケンとして…………私の友と、話をしに来たんだ 』

 

 

 

次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜

 第5章 北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム〜この宇宙を回すもの〜

 

近日公開予定!!

 

 

 

 




5章サブタイ〜この宇宙を回すもの〜はどっかの風来坊さんのお話に出てくる非常に印象深い一言から&O-50繋がりで進めたいと思ったからです。



fgoでも2部4章が配信されてインド組(アルジュナ、カルナ、ラーマ&シータ)に対しての印象が変わったりするかも知れないので投稿は作者が4章を終わらせてからです。



もうひとつお知らせ!! 第5章でも、ベリアルさんはちゃんと巨人サイズで変身、戦闘します!!


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北米神話大戦イ・プルーリバス・ウナム〜この宇宙を回すもの〜
1


ようやく始まりました第5特異点〜この宇宙を回すもの〜
2部4章のインド組のお陰で彼らへの理解も深まり、どうベリアルさんと絡んでいくのかお楽しみにください。

と、言っても授かりも施しも最初は出番ありませんが………

感想、評価お待ちしてます。

誤字脱字、ご指摘ございましたらよろしくお願いします。


【古き友は言った。

 

 物事を始めるチャンスを、私は逃さない。 

 

 たとえマスタードの種のように

 

 小さな始まりでも、芽を出し、根を張ることがいくらでもあると 】

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜っ!! 」

 

 痛い……。 カルデアにコフィンの中からレイシフトを開始する音声が流れたと思ったら一瞬で別の場所に移ったものだから驚いて転んでしまった。 ベリアルさんの記憶ごしにではあるけどレイシフトは何度も見ていたから大丈夫だと高を括ったのだが駄目だったみたいだ。

 

「ははは、ごめんね立香ちゃんマシュちゃん。 来て早々かっこ悪い所見せちゃって……あれ? 立香ちゃんとマシュちゃんは? 」

 

(ここにはいない。 どうやら別の場所に飛ばされたようだな )

 

 私の中にいるベリアルさんが軽い感じでそう言うけど、辺りを見渡してみても立香ちゃんたちの姿が見えないから本当のことのようだ。

慌てても何も始まらないため、私は深呼吸をして落ち着いて辺りをよく観察する事から開始する。 石造りの灯りも何も付いていない暗い道、ベリアルさんとの一体化のお陰で暗くてもハッキリと見える暗くても平気だけど……天井が見えるからどうやらここは室内のようだ。

 

「う〜ん、ロマニさんたちが言っていた話と違うぞ? レイシフトは安全を十分に考慮して拓けた場所に転移するようにしているんじゃなかったのか? 」

 

 目覚めてから今日に至るまで、立香ちゃんよりも魔術面でもレイシフトに関しても知識で劣っていたため、時間があれば勉学に励んでいた。その事から室内に転移されることは可笑しいと感じる事が出来たけど、カルデア側で何か不具合が起きたのか? 通信しようにもそちらの方もまともに機能しないため確認の使用もない。

 

(他の人間がいようがいまいが関係はない。 いいから進め )

 

「確かにベリアルさんの言う通り、ただ立ち止まっているよりかは少しでもこの特異点の状況を調べておいたほうがいいかな、どう思うアリスちゃん? 」

 

『悪いおじさまの考えにさんせいね。 この先にわたしたち以外のサーヴァントの反応をかんじるからそこへいってみましょう? 』

 

 私の服の腰にかけてある本。 正確には本の英霊であるアリスちゃんにも意見を聞いてみたけどどうやらベリアルさんの考えに賛成みたいだ。

立香ちゃんがマシュちゃんを連れてレイシフトを行うようにアリスちゃんを連れてきたけど、この特異点修復大丈夫かな〜?

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

「君が、ここに囚われているサーヴァント? 」

 

 あれから前を先行してくれるアリスちゃんの後を付いていくとそこには本当にサーヴァントがいた。 途中ここに来るまで私たちがレイシフトした場所が監獄だってこちは分かっていたけどその不自然さに目がついた。

この監獄に収容されているのは目の前にいる女の子を除いて誰一人としていなかった。それはまるで赤い髪を2つ結びにした女の子を囚えるためだけに機能しているようにみえる。

 

「……私はシータ。 コサラが王、ラーマが后です 」

 

 后……お姫様ってことか! シータちゃんは最初私たちにことを警戒していたようだけど、どうやら私たちが人理を修復するために来たって事が分かったみたいで友好的に話しかけてくれた。

そのお陰でわたしたちへ、この特異点の問題とシータさんが囚われている理由を教えてもらった。

 

「そう、だったんだ。 じゃあいまからこに牢屋を壊しちゃうからそのラーマさんに会いに行こう!! 」

 

「────それは非常に嬉しい提案ですが……無理なのです。 私がラーマ様に会うことは、不可能なんです 」

 

「えっ? なん「呪いよおじさま。 とっても、と〜っても悲しい呪いよ 」アリスちゃん? 君は知ってるの? 」

 

 寂しそうな、悲しそうな顔をしているシータちゃんにその理由を聞いてみようとすると、同じように悲しんでるアリスちゃんが本の姿に変わり私の手に収まった。

 

「“ラーマーヤナ”…………? これを、読めばいいのかな? 」

 アリスちゃんが私の言葉に反応するように本が開かれる。 そこにはラーマさんとシータちゃんの2人に話が、英雄の知識が殆どない私にも分かりやすいように簡潔にまとめられていた。

 

 【唯一人間でしか倒せないと謳われる羅刹の王ラーヴァナ。その魔王を倒すためにヴィシュヌという神様は、自分の全てを忘れて1人の人間に生まれ変わった。その人がシータちゃんが言っていたラーマさん。 皇子として生まれたラーマさんだったんだけど色々な障害によって后であるシータちゃんと一緒に国を追放されてしまう。

不幸はそれだけでは終わらない。シータちゃんがラーヴァナによって連れ去られてしまったんだ。

 

 連れ去られたシータちゃんを取り戻すために、ラーマさんは14年間もの間戦い続けて、遂に魔王ラーヴァナを倒しシータちゃんを救い出した

 

「………… 」

 

 普通なら、シータちゃんを助けたラーマさんは幸せに暮らしました。 そうなるのものだけど、それじゃあまさラーマさんの不幸を終わることはない。

アリスちゃんが言っていたとても悲しい呪いはここからが本当の始まりだった。

 

『貴方はたとえ后を取り戻すことができても、共に喜びを分かち合えることはない。 絶対に 』

 

 14年も戦いの中で起こしてしまった失策、敵を背中から騙し討ちすることで勝利を掴んだことで、敵の妻から掛けられた呪い。

その呪いによって取り戻したシータちゃんとラーマさんは永遠に引き離されてしまった…………。 】

 

私は、最後まで読みきることは出来ず本を閉じシータちゃんに話をする。

 

「────呪いは、今も2人を? 」

 

「“離別の呪い” 死した後、サーヴァントになっても私とラーマ様の呪いは消えることはありません。 ですが、この人理の危機という特殊な状況ならもしかして、あの方に会えるのでないかと期待をしたのです。……可笑しいですよね 」

 

(変われ )

 

えっ? ベリアルさん!? ラーマさんとの再会を信じているのに、諦めているようなシータちゃんに可笑しくなんてないと答えようとしたら、突然ベリアルさんに身体の支配権を奪われてしまう。 ベリアルさんは手に持っていたアリスちゃんのことを後ろに放り投げると、鉄格子に手をかけシータちゃんの事を上から睨みつける。

 

「もうひどいわっ! 悪いおじさまでしょ!! レディにちゃんとやさしくしないとダメなのよ!! 」

 

「貴方は……? 博樹さんとは、違いますね…… 」

 

「哀れだな。 裏切られその命を落とした貴様は、それでもなお信頼を寄せているその目は、余りにも滑稽だ 」

 

「────あれは、()()()()()()()でしたから 」

 

 ベリアルさんに詰め寄られたシータちゃんは、その圧にも負けずに自分が命を落とした原因をたった一言で片付けてしまう。 スゴイと……その真っ直ぐな瞳を見ながら私はただただ驚くしか出来なかった。

仕方がない、それを言うのは誰にだって出来る簡単な一言かもしれない。 けど、民の疑い、ラーマさんの疑い、ベリアルさんの言う通り裏切りだって思うことの方が普通なのに、憎むのでもなく、悲しむのでもなく、その事実を受け入れてシータちゃんは『仕方がない』の一言で片付けしまうほどに強かな想いを見せてくれた。

 

────ああ、そっか……

 

「シータちゃんは、ラーマさんのこと本当にほんとうにっ、大好きなんですね 」

 

「はい。 私はラーマ様のこと愛しています 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは……星雲荘? …………いいや違う。 リクくんの私物や生活用品が一つも置いていないし、何よりここで誰かが生活している様子も感じられない。

 

(ってことはリクくんがウルトラマンに変身出来るようになる前の時間なんだ。 でも何で今になってここに? )

 

 星雲荘は元はと言えばストルム星人である伏井出ケイが乗っていた宇宙船で、彼はここで盗み出したライザーとウルトラカプセルを解析して怪獣カプセルの開発をしていたと思うから、伏井出ケイがいるものだと思っていたけれど、一向に姿を現わすことはない。

 何も起きないことに疑問を抱いていると、突然この基地の報告管理システム──のちのレムが起動し始めた。

 

『何者かの侵入を確認。 照合を開始します──────完了。 思念体ではありますが照合の結果貴方はマスターが懇意にしている存在、ウルトラマンベリアルですね 』

 

『御託はいい。 ストルム星人が生み出したこのオレのクローン……いいや、オレの息子が戦士に変わるための道具を出せ 』

 

 秘密基地へ侵入してきたのは、思念体のため身体が透けているが確かにその姿はベリアルさんだった。

彼は報告管理システムにリクくんが変身するための道具、ライザーや装填ナックル、そしてウルトラマンのカプセルだけが起動していて残りはブランク状態のカプセルを出させた。

 

一体、何が起こるっていうんだ?

 




5章はメインタイトルに〜この宇宙を回すもの〜としていることもありO-50……というよりナイチンゲールの友だったであろう女の子を少し……。

そしてもう一つはベリアルさんが知らない感情を持っているであろうサーヴァントたちとの関わりをメインに添えていく章になると思います。

2部4章のアルジュナ(オルタ)、アイツ簡単に言えばルーゴサイトみたいな存在だったと感じずにはいられませんでした。 てかそう思ってから第3再臨辺りの姿が擬人化ルーゴサイトに見えてくる不思議。


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2

お久しぶりです……!!
タイガが始まってから最強フォームのトライストリウムが登場するまで投稿することが出来ずすいませんでした。 5章は元から難しいのに詰め込みたい要素が多すぎて……

あ、作者はジード、ベリアルさん大好きなんでトライスクワッドではタイタスが大好きです。

今回でようやくベリアルさんのクラスが決まります(暫定)

感想、評価お待ちしています。

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく〜


【古き友は言った。

 

 人の思いは、言葉に変わることで無駄にされているように思う。

 

 それらは皆、結果をもたらす行動に変わるべきものなのだと 】

 

 

 

 

 愛している。シータちゃんがラーマさんを思うその強かな想いを聞いた私は、隣に並ぶアリスちゃんと目を合わせると自然に笑顔を浮かべていた。

 

(後ろだ、宮原博樹)

 

「えっ?────っ!!」

 

 突然ベリアルさんがそう言ったと思い後ろを振り向こうとすると視線の先に何かが私に迫ってくるのが見えた。

私は夢の中で何度も特訓して頭に覚えさせたやり方で、瞬時にギガバトルナイザーを出すことで振り下ろされたそれを受け止めた。

 

「はっ、完全に気配を消してた。それに反応するたあお前ら、何者だ 」

 

 鈍器のような剣を振り下ろしてきた相手が私たちのことを詮索してくるけどそんなことよりも今の状況をどうするか打開策を考えるので頭がいっぱいだ。

明らかに敵意を持ったその攻撃を防げたのはベリアルさんが気付いてくれたおかげ、次に攻撃してくるとしたらどう防御すれば……

 

(変われ)

 

「!!お願いします!! ────邪魔だ、どけろ 」

 

「(んだコイツ、突然圧が変わった? まるでさっきとは別人みてーに)──ガっ!?」

 

 身体の支配権をベリアルさんに渡すと、振り下ろされた剣を受け止めていたギガバトルナイザーを消すと、剣を拳で吹き飛ばし考える時間を与えずに相手の腹部に拳を叩きつけた。

その一撃だけで相手は立っている出来なくなってしまい膝をついた。

 

「殺しはしない。 そこで寝てろ」

 

 もう一度その手に呼び出したナイザーで相手を壁に叩きつけると、追い打ちをかけるように光弾を浴びせる。

殺しはしないって言うから威力は抑えられているだろうけど、相手に反撃の余地も与えないあたり容赦ないよなあ~ベリアルさん。

 

「あのベオウルフを、いとも簡単に……!?」

 

 一瞬で襲ってきた相手を倒したことに驚いているシータちゃんを他所に、鉄格子越しに彼女を睨み付けるべリアルさん。

 

「その瞳は、アイツと同じものだ。 興味が湧いた 」

 

「へ? 」

 

「お前にその瞳を映させるラーマとかいうヤツに興味が湧いた言ったんだ 」

 

 それだけ言うとべリアルさんはシータちゃんに背中を向けるとナイザーを天井に向け、光弾を放った。

何時もの光弾とは種類が違かったのか、ぶつかって爆発するのではなく天井に人一人が通れるような穴を穿っていた。

 

「ふっ!! 」

 

(えっ? ちょっとべリアルさん!! シータちゃんのこと忘れてません!? )

 

ただの跳躍。 それだけで穿った穴を通り抜けるとそこは監獄の外へと繋がっていてやっと出てこれたのは良かったけど、シータちゃんのことをそのままにして来てしまったことをべリアルさんに問い掛けるけど

 

「あの女がいては意味がない。 ただそれだけだ 」

 

 そう言って私たちは、海に囲まれている島であることを気にも止めず空を飛んでシータちゃんの夫だというラーマを探し向かうことになった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

「「ウルトラマン? 」」

 

「そう、ウルトラマンべリアル。 それがサーヴァントの皆から言う真名に値するもの。 まあ光の国を追放されているから厳密にはウルトラマンではないんだけどね? 」

 

 第4特異点からのレイシフトが終わり、落ち着きを取り戻したカルデアで健康診断を終わらせた博樹さんの口から出てきたのは、正直信じられない話だった。

 

「待ってくれ!! べリアルがウルトラマン? そもそもウルトラマンといったら日本の人間が考えた空想の産物だ!! それが本当に存在するなんてあり得ていい話じゃない!! 」

 

 ドクターはウルトラマンの存在を否定しているけど、きっと彼も、あの戦いを見ていた人たちなら全員理解している。 べリアルさんが巨大になったあの姿に名前をつけるのなら、それは正しくウルトラマンだって。

 

「信じてくれないとは思いますけど、本当のことなんです。 べリアルさんのこと、ウルトラマンのこと、私が話せることを皆さんにお伝えするために、ここに集まって貰ったんです 」

 

 そう言って、博樹さんは私たちに沢山のことを話してくれた。 この宇宙とは別の宇宙が確かに存在していること、その宇宙の中にウルトラマンが存在する宇宙があること。 そして……光の国を追放された悪のウルトラマン、それがべリアルさんだってことを……

 

 説明が難しかったりするときは、博樹さんが契約したナーサリー・ライムちゃんの宝具を使うことでべリアルさんの記憶を疑似体験させてもらうことで教えてもらったりもした……。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「先輩っ!! 」

 

「あ、マシュ。 どうしたの? 」

 

「いえ、先輩の姿が見えないと思ったので……。 星を、見ていたのですか? 」

 

 第5特異点に着て数日が経って、少しだけどようやく落ち着ける時間が作れた私は、外に出て日本の都市部に住んでたら絶対に見ることが出来ない夜空に広がる満点の星を、正確にはある星があるであろう場所だけを見つめていた。

 

 そんな私のことを心配してくれたのか、様子を見に来てくれた私はマシュに問いかけることにした。

 

「ねえマシュ。 あの星座の中にM78星雲があるんだよね 」

 

「オリオン座……。 そうです、M78星雲は地球から1600万光年離れた場所で観測されています 」

 

『だが、現実にあるM78星雲は紫外線が多過ぎておおよそ生命が住めるような環境ではない。 それに光の国は銀河系から300万光年離れているって話じゃないか、名前が同じだけで観測されているものとは別物さ 』

 

「ダヴィンチちゃん。 そう……だけど、少しだけでもべリアルさんに近づけるかなって…… 」

 

 博樹さんの話の後、ドクターとダヴィンチちゃんからべリアルさんには最大限に注意するようにと、私とマシュのこと心配して言ってくれた。

 

『いつ人類に牙を向くか分からないから信用してはいけない 』

 

 二人の言いたいことは分かる。 光の国への侵略に銀河一つの完全支配に、一度はひとつの銀河を消滅させたという想像すら出来ないほどスケールの大きな事を成してきたべリアルさん。 本来なら人類の脅威である『人類悪』に部類するかもしれないとさえ言っていた。

 

『べリアルの生前の所業を聞くところによれば歴とした”人類悪”だ、だが彼はそれと一緒にウルトラマンという人類にとっての”必要悪”としての側面もあったのだろう。 彼のサーヴァントとしてのクラスが基本の7基、ましてやエクストラクラスにすら該当しないのはそういう異常性をが関係しているんだろう。う~ん、しいて付けるとするならば”超越者(イレギュラー)”とでも言ったところかな? 』

 

「イレギュラー…… 」

 

「それが、べリアルさんのクラス 」

 

 

『さあ、明日はラーマの怪我を治すために動き出すんだろう? このアメリカ大陸は広大だ、休めるときに休んだほうがいい 』

 

 そうダヴィンチちゃんに言われた私たちは、言われた通りに休むことにした。

 

 

 みんなはああいうけど、私にとってべリアルさんは…………。 マシュは、どう思ってるんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……これでっ……ひゃっ、くっ!! 」

 

 

 海に囲まれた刑務所、アルカトラズ刑務所から空を飛んでアメリカ大陸へと辿り着いた博樹は、数字を数えながら、森の中で襲ってきた双方向の角を持った二角獣“バイコーン”を打ち倒しナイザーを杖代わりにして荒れた息を整えていた。

 

「おもいだしたわ!わたし、悪いおじさまにず〜っと聞きたいことがあったの 」

 

「なに、かな? アリスちゃん 」

 

 近くの綺麗に折れた切り株の上に座っていたアリスが、両手を叩きながら博樹に……いや悪いおじさまと言っているからベリアルのことを指しているのだろう。ベリアルが受け応えしないことを分かっている博樹は、代わりにその話を聞くことにした。

 

「どうしておねーちゃんやカルデアにいる人たちにジードの事を話さなかったのかしら? 」

 

「ーーーーああ、それは私も思っていたんだ。 言うタイミングが無くて聞いていなかったけど、何でだったんですか? 私にも喋るなって口を閉ざされたし 」

 

 立香やカルデアにいる職員たちは、博樹の口から語られたベリアルの話で全てだと思っているがそれは違う。

ベリアルはどうしてか博樹にもアリスにも自分の息子であるジードが関わる全ての話をすることを禁じていた。

 

 そんなベリアルは、2人にその話をする為なのか身体の支配権を博樹と変わり倒したバイコーンに腰掛けながら話し出す。

 

「アイツらが求めていたのはこのベリアルが何者であるかどうかだ。 あれは息子の……ジードの物語だ、このオレが語ることは何もない」

 

「ん〜〜、じゃあそういうことにしておくわ!!」

 

「宮原博樹。 これで最後だ、やれ。ーーーーはい 」

 

 要件が終わるとベリアルは支配権を博樹へと戻しながら何かを命令する。 博樹もそれが何か分かっているらしく、先ほどまでベリアルが腰掛けていたバイコーンに向けてギガバトルナイザーの先端を突き当てる。

 

「ごめんな、君の意思もなにも関係なくこの行為を行う私の事を恨んでくれてもいい。 はあっっっ!!!!! 」

 

 ギガバトルナイザーから鈍い光が放たれ、それがバイコーンの事を包み込んだ。

少しすると、まるで博樹との戦闘が何もなかったかの様に立ち上がると、その顔を博樹へと向けて頭を下げた。

 

「この特異点を修復するために、よろしく頼むな? アリスちゃんも、お願いね 」

 

 バイコーンの頭を撫でながら、後ろにいるであろうアリスに顔を向けながら声をかけると其処には異様な光景が広がっていた。

 

「ええおじさま♪  ふふふ♪ こんな景色、本をかいているだ〜れもおもいつかないでしょうね♪ 」

 

 そこには、鎧を身に纏ったケンタウロスナイトと魂を喰らうソウルイーターたちの大群が列をなして並んでいるのに加えて、その背には♡、♢、♧、♤のマークをつけた多種多様のトランプの兵士たちが跨っていた。

 

 

 

 

 

 




【ウルトラマンベリアル】
クラス:イレギュラー(超越者)
人類悪にして必要悪。 善の者からは復讐者と恐れられ、悪の者からは善を裁く裁定者と崇められる。 またあるもの達からは救世主と崇拝されることもある。自らの法を震い裁く番人でもある

 その為、キングの力によって封印したとしても、ゼロが何度倒しても蘇ったのは必要悪としての側面、彼を必要とする者たちが存在し続ける以上永遠に行われる循環の理。

 そんな彼を止められるのは彼と同じように人類悪と必要悪を携えながらも闇を受け止め、悪を抱き締めることが出来る存在だけ…………




最後のシーンはナイザーの本領発揮現場。
6.7章では使うのが難しい&5章は軍勢の争いだからこその出番。 それにナーサリー・ライムのスキルを掛け合わせることで…………


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3

トライストリウムが出たと思えばタイガが終わり、ゼロ&ジードクロニクルが始まっていた……時の流れが早過ぎる……。お久しぶりです、生きてます。

感想、評価お待ちしています。

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく〜


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 夢を見た……。 それは、カルデアのマスターになってから良く見る真っ白な部屋にいる真っ白な少女の夢とは違うもの……。

 

 おぼろげな闇の中で、ランプを手にした婦人が長い長い寝床の列をひとつひとつ確認しながら歩いている。

 その寝床に横たわる人のすべてが大小構わず怪我を負い、身体中の至るところに包帯を巻いている。

 

「お前は何故、ここまで人間に尽くす必要がある。 コイツらの為にお前が睡眠の時間を割く必要はないはずだ」

 

 そんな彼女の側には、いつしか黒い服を着た綺麗な青の瞳をした、どこか人間離れした美しさを持つ女性が寄り添って歩いていた。

 

「人間は愚かな生き物だ。土地を手に入れたいがために同族同士で争い、血を流しそして死んでいく。 それで出来た惨状がこれだ、自ら招いた愚骨によって死んでいく人間に何故お前は手を差し伸べる?」

 

 婦人は、少女の問いに応えることなく部屋の中を見回り、異常のきたした患者がいないことを確認するとその部屋を後にする。

 しっかりと扉が閉まったことを確認すると、婦人は少女へ身体を向けて話をする。

 

「○○○○、私が人を救うのは──────

 

 そこで、夢を見ている私の意識が途絶えた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ねえ、ナイチンゲールさん 」

 

「どうしましたか立香。体調を崩しましたか? それとも歩行中に何処か怪我をしましたか? 」

 

 夜が明けて、仲間に加わったロビンとビリーの二人のサーヴァントの案内のもと次の町へと向かい、小休止している時に私は夢でのことをナイチンゲールさんに話すことにした。

 

「ああ違うの。 ナイチンゲールさんに聞きたいことがあって 」

 

「私に? なんでしょうか 」

 

 私は夢で見たことをナイチンゲールさんに話した。

 患者を看護しながら黒い服着た、青い瞳の少女と話をしていたことを。

 

 そしたら、ナイチンゲールさんは驚いたように目を見開いて少しでも動いたら顔がくっついてしまいそうなくらい顔を寄せてきた。

 

「何故、なぜ貴女が彼女のことを知っているのですか。 彼女を知っているのは私ただ一人のはずです 」

 

「へ? なんでって言われても……夢で見たってしか説明できないし…… 」

 

『夢……契約したサーヴァントの生前の記憶を見るってことがあるっていうのは聞いたことがあるけど……。ナイチンゲールはこの特異点で喚ばれたサーヴァントで立香ちゃんとは契約も魔力経路も通っていないから…………ん? んん!! 』

 

 なんでナイチンゲールさんの夢を見たのかは私にも分からないから、詰め寄ってきた彼女にどう説明すればいいのか悩んでいると、通信越しに話を聞いていたドクターが突然慌て始めた。

 

 どうしたのかとナイチンゲールさんと二人で慌てるドクターの様子を観察してみる。

 

『驚いた。立香ちゃん、君とナイチンゲールの魔力経路がいつの間にか繋がっている。これなら彼女の夢を見たっていうことに理由もつく。立香ちゃん 、いつマスター契約をしたんだい?』

 

「えっ? 」

 

「私には覚えがありません、立香貴女は? 」

 

「私も思い当たる節は…………あっ 」

 

『ななな何かあったのかい立香ちゃん!! 』

 

 私とナイチンゲールがいつの間にか契約している理由に心当たりがないと思っていたけど、ふと1つだけ思い当たることがあった。

 

 監獄塔だ。

 

 あの場所で私と契約してべリアルさんと一緒に戦ってくれたのはメルセデスさんだったけど、その姿はナイチンゲールさんと瓜二つだった。 根拠はないけどその契約がまだ続いているんだとしたら……

 そう思い、私はドクターにそのことを話してみた。

 

「此処ではない何処かで、私は立香と縁を結んでいたということでよろしいですね? 」

 

 私がナイチンゲールさんの夢を見た理由が分かったとなると患者であるラーマさんを寝させている場所へ戻ろうとした彼女に、最後の質問として声をかける。

 

「あのっ!! ナイチンゲールさんはあの女の子のこと、どう……思ってたんですか? 」

 

「…………彼女は、私が振り捨てたものの一つ。 ただそれだけです 」

 

「それだけって…… 」

 

「現に、私は彼女の名前すら思い出すことが出来ません。そう言うことですよ、立香 」

 

 そう言い残して、ナイチンゲールさんはラーマさんの治療へと向かっていった。

 

 振り捨てた……だから夢の中で女の子の名前を呼ぶときだけノイズが走ったみたいになってたってこと? 

 

 それならどうして、ナイチンゲールさんはあんなに寂しそうな顔をしていたんだろう? 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『どうしたんですかべリアルさん? 』

 

 シータちゃんが囚われている島から空を飛んで離れてから数分。 べリアルさんは木々が生い茂る森の中に降りた。

 

 人に見られることを考慮した? べリアルさんがそんなこと考えるとは思えないし、もしかしてここにラーマさんがいる……? 

 

「宮原博樹。 サーヴァントに襲われた時、お前はどう守れば、どう防げばいいのか考えていたな 」

 

『え? それは突然のことでしたし 』

 

「夢の中でお前を鍛え続けてきたが、やはり実戦が足りないようなだからな。 ここで積ませてやる 」

 

 そう言ってべリアルさんは、ナイザーを地面に突き刺すように置くとテン、テン、テンとメーターが上がるようにナイザーに光が点り、そこに溜まったエネルギーをこの森全体に広げるようにして放った。

 

 辺りが更地になったりしてないことから破壊のエネルギーを振り撒いたってわけじゃないのはわかるけど、何をしたんだ?

 

「ある程度の力をもったモノ共を百体呼び寄せた。 ソイツらを一体残さず平伏させろ 」

 

『ひゃ、百体!!? そ、そんなの無っ』

 

 理に決まっている、何て言ったところでべリアルさんが聞いてくれる訳がないことは判りきってる。

 

 ん? そう言えば、殺せとは言わないんだな。何か考えがあるのかな? 

 

 そんな事を一人で考えていると、べリアルさんは腰に下げている大きな本に変わっていたアリスちゃんのことを放り投げ、アリスちゃんの姿になって着地した彼女にナイザーを突きつけた。

 

「貴様も、覚悟を決めておけ 」

 

 それだけ言ってべリアルさんは、身体の主導権を私に戻し百体の魔物を倒さなければいけなくなってしまった。

 

「ふーっ。 アリスちゃん、巻き込まれないように離れていて 」

 

「………… 」

 

「アリスちゃん? 」

 

「へっ!! あ、わ、わかったわおじさま!! 」

 

 少し変な様子のアリスちゃんが離れていったのを確認して、百体の魔獣討伐が始まった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「ああもう!! 鬱陶しいわねっ!!」

 

「うむ、余の舞台を観に来た者たちなら歓迎するが、心を持たぬ者たちがこうも多いとは……なっ!!」

 

 二つ町を巡り、エリザベートとネロ……ネロは第二特異点で生前に会ったから向こうは私たちのことを懐かしいと感じはするけど覚えていないけど顔見知りと言っていい2人のサーヴァントが味方に加わってくれた。

 

 そこで戦い、倒した敵のサーヴァントから手に入れた情報によるとシータさんは脱獄不可能の監獄アルカトラズ島にいるらしい。

 

 まさか夢の次は現実で監獄島に行くことになるとは思わなかったけど……。

 

 そうして私たちは監獄島へ向かうメンバーと、女王メイヴが街でパレードを開くということから暗殺にいくメンバーとで別れようとした、その矢先だった。

 

「チッ、こうやって正面からやり合うのは性に合わないんですがねえ」

 

「いくらサーヴァントだからって、この数の敵を相手するの……はっ!! 流石に骨が折れるねえ!!」

 

 まるで私たちの動きを予知していたかのようにアメリカ軍とケルト軍が私たちを挟むようにして戦争を始めた。

 少しでも速くラーマさんとシータさんを再会させて上げたいと言うのに、戦うことを強いられた私たち。 

 サーヴァントのみんな頑張ってくれているけど……流石に数が多すぎる。

 

「ドクター!! 何処かに抜け道とかないんですか!!」

 

『ごめん立香ちゃん!! こっちも全力で探して入るけど見つからない!! 意図的に退路を封じられていると見ていいだろう!! なんせ相手はフィン・マックールとディルムッド・オディナだ!!』

 

 どうにか退路を見出そうとするけど、無限に沸き続けるケルト兵の存在がそれを邪魔してくる。運悪くそうなってるのかと思ったけど、そうじゃないみたい。

 

 今ケルト側を指揮しているのはフィン・マックールは親指を噛むことであらゆる情報、状況を整理し「最善の答え」を導くというドクターやマシュが真顔で説明してくるから最初はふざけるのかと思ってたけど……どうやら本当みたい。

 

 この特異点に来て一番最初に戦ったサーヴァントでいきなりマシュに求婚してきた頭のおかしい人だと思ってたけど……実力は本物だって思い知らされた。

 

『令呪を使う? だとしても誰に……エリちゃんやネロの宝具で道を切り開けたとしてもそれを相手が予想してない筈がない。 ディルムッドが動いてないのはきっとそう言う時のためにだと思うし…… 』

 

「あらあらうふふ♪ どうやらお困りのようねえ立香?」

 

 どうすればこの状況を打開出来るのか頭を悩ませていたそんな私の頭上から聞いたことのある声、けど少し大人びた声が聞こえてきた……。

 

「っ、おいおい……。悪趣味だなあ、誰の趣味よ」

 

「うっそ!! 何よそれイメチェン!?」

 

「…………ライム、ちゃん?」

 

 ロビンやエリちゃん、それにネロも驚いた顔をしているけどもしかして面識があるのかな? けど、そんなことよりも驚いたのはライムちゃんのその姿だ。

 

「ふふっ、あはははははははは!!! さあ悪夢への一頁を捲りましょうか」

 

 以前の綺麗なお人形の女の子という印象を受けた姿とは一変して、紅い唇を三日月の形にして微笑むその姿は、御伽噺に出てくる悪役のようだった……

 

 

 

 




3話というよりは3話前といった感じ。
ナイチンゲールが生前出会っていたという女の子は一体誰なのか?
ライムを活躍させるためにフィンとディルには生贄になってもらいます。


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4

新ウルトラマン、『ウルトラマンZ』が発表されましたね!!
 ゼロの弟子にしてブルーとレッド族のハーフのような見た目、ジードは出てくるんでしょうか?

まあそんな事よりも作者はウルトラマンベリアルの胸像を買おうかどうか絶賛迷い中です。

感想、評価お待ちしています。

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「本当に、ライムちゃんなの? 」

 

 私たちの前に優雅に降り立った彼女へ聞いていると、微笑みを浮かべながら頷いた。

 前のライムちゃんは8歳くらいの可愛らしい姿をしたんだけど、今は15歳くらいの美しい姿へと成長している。 それに加えて綿菓子のようにフワフワだった髪の毛先や大きな瞳は赤く染まり、黒地に波うつような赤……巨人(ウルトラマン)巨人になったべリアルさんを彷彿とさせるようなドレスを着ていた。

 

「ぼく……みたいだ 」

 

「アステリオスみたい?」

 

 今回カルデアから喚んだアステリオスが、姿が変わったライムちゃんを見てそんなことを呟いた。

 

 そうだ、今のアステリオスの姿はべリアルさんがオケアノスで彼に何かしたことで変わったものだったはず。じゃあライムちゃんも? 

 

「うるさくて静かに話もできないじゃない。殺りなさい、私の下僕たち 」

 

 そんなことを考えていると、ライムちゃんが瞳を輝かせて指示をだす。すると、遠くで砂嵐をおこしながらケルト軍とアメリカ軍を蹴散らしていく姿が見えはじめた。

 

「さあ、私のトランプ兵団よ!! その塵を掃除なさい!! 」

 

 ハート、スペード、ダイヤ、クローバーのトランプ兵。小さいころにアニメで見た面白おかしいトランプ兵とはまるで違う、兵士のように武装した見た目の怖いトランプ兵がエネミーであるケンタウロスたちに騎乗しながらケルト軍とアメリカ軍を蹂躙していく。

 

『ははは……。みんな、彼女がナーサリー・ライム本人であることは間違いない。ただ、霊基からべリアルの力が感知できたからアステリオスのようにべリアルの力が強く影響しているみたいだ』

 

「けどアステリオスはあんまり変わってないのに、どうしてライムちゃんはあんなに?」

 

『そこは博樹さんとの契約関係が影響しているんだろう。

 べリアルとナーサリー・ライム、2体のサーヴァントは博樹さんと直接魔力経路(パス)が繋がっている、それによって流れ込んできたべリアルの力が深く染み込んだこと、そして姿形が自由に変化できる彼女自身の特性が今回の彼女の異様なまでの変化に繋がったんだろう。

 …………だからって、従えている42体ものトランプ兵1体1体がシャドウサーヴァントに引けをとらないレベルなんて…… 』

 

「ウフフ、アハハハッ!! これで終わりなわけが無いでしょう? おいでなさい“バンダースナッチ”!」

 

 闘っているトランプ兵たちの戦力に驚いてばかりではいられないと言わんばかりに、ライムちゃんは更なる戦力を追加した。

 バンダースナッチもアリスに出てくる怪物に名称だったはず。

 現れたのは2本の角を持った身体が赤黒く染まった獣と、黒い触手のようなものが束なって4本脚の獣の形をとった化物が召喚された。これ全部が“バンダースナッチ”なの? 

 

『そうか!! バンダースナッチは“ジャバウォックの詩”の中で語られただけで、その姿形や性質にいたっては明言されていない。2種類のエネミーを“バンダースナッチ”という絵本のキャラクターに落とし込む事で完全なる使役、強化を行っているんだ。でもトランプ兵が乗るケンタウロス、そして今召喚されたバイコーンとソウルイーターたちの数は合計して────99!? これだけのエネミーを従えているのに疲れ一つ見せないなんて……ウルトラマンってのは何処まで規格外なんだ…… 』

 

 バンダースナッチが加わったライムちゃんの軍勢は更にその勢いを増し、気がつけばアメリカ軍の機械兵たちの姿はもう殆ど残ってないし、無限に起き上がってきていたケルト軍の方も次第に数が少なくなっているように感じる。

 

「さてと。立香貴女たちが困っていたようだから手を貸してあげたのだけれど……邪魔だったかしら?」

 

「────ううん、全然、 私じゃさっきまでの状況をどうすればいいのか判らなかったから本当に助かったよ、ありがとうライムちゃん!!」

 

「…………本当に、こんな姿になった私にすら恐れを抱かないなんて。竜の魔女や他のサーヴァントが貴女を懇意にするのが良くわかった気がするわ」

 

 私の返答に少し驚いた顔をしたライムちゃんは、その表情を綻ばせると何もない所から波紋が流れ、そこから取り出した剣を腰当てごと私に投げ渡してきた。

 

「ライムちゃん、これは?」

 

「むっ! マスターその剣むぐっ!!」

 

「全くダメじゃない花の皇帝様。種明かしをする事を私は許してないわ」

 

 どうやらライムちゃんから渡された剣のことをネロは知っているようで、何も知らない私たちに教えてくれようとしたんだけどライムちゃんのルールなのか答えを話そうとしたネロの口が魔力か何かによって閉じられてしまう。

 

「さあ立香、貴女たちを襲ったサーヴァントを倒すとしましょうか。 私をエスコートなさい」

 

「え、エスコート?」

 

「あら、もしかして私1人で迎えというの? フフフっ、そんなのつまらないでしょう立香。その剣は私をエスコートする騎士様の証なのだから」

 

 私に手を伸ばすライムちゃんはそんな事を言って微笑む。どうすれば良いのか分からなくてマシュや他のみんなに顔を向けると喋れなくてムームー言ってるネロ以外“任せた”って顔をしている。

 ……少し考えて、渡された腰当てを巻き剣を腰に下げた私はライムちゃんの小さな手を取ってテレビなんかで見るように腰を下ろして頭を下げる。

 

「エスコートのマナーとかはよく分からないけど、それでも良いなら……喜んで」

 

「フハハハハッ!! それじゃあ行きましょうか」

 

 ライムちゃんの手に引かれて立ち上がると、ボコボコボコッとまるでコチラに進めといってるかのように鉄条網のような茨が左右から生えてきて1本の道を造り出した。

 そうして私は、この道を造り出したライムちゃんの手を引いて茨の道を進んで行った。

 

 

 

 

 

「君と顔を合わせるのは初めてかな? 黒薔薇お嬢さん」

 

 茨の道をエスコートした先には、美丈夫な2人のサーヴァント、私たちのことを襲ってきたフィン・マックールとディルムッド・オディナが待ち構えていた。

 けど、何て言うんだろう……戦意がないって訳じゃないんだけど、この特異点に来たばかりの時に戦った時よりも圧を感じないというか……

 

「ご機嫌よう高潔な騎士さま方、私からの贈り物は喜んで頂けたかしら?」

 

 フフフ、と邪悪な笑みを浮かべるライムちゃんに応えるようにフィンが持っていた石ころを後ろに方へ投げると、私たちを導いた茨が今度は相手の道を遮るように瞬く間に生えてくる。

 

「こんなにも過激ば歓迎は婚姻を断られた以来の衝撃だ! そうだろうディルムッド」

 

「…………それは、その……」

 

「ハッハッハッハッ! 冗談だよディルムッド。こうでもしていないとやっていられなくてね、流石に私の『親指かむかむ智慧もりもり(フィンガン・フィネガス)』でも彼女とあの軍勢の登場は予知できなかった」

 

 それはそうだなって思う。突然空から降りてきて、1体1体が強力な兵を従えて形勢を逆転されたんだもん。最善の一手を導き出すよりも早く王手を打たれたたらどんなに強力な宝具でも泡になって消えてしまう。

 

「あら♪ それじゃあ何もせず殺されてくるのかしら? それなら余計な手間が省けていいわね」

 

「そうしたい気持ちは山々なんだがまあこれでも私は王に仕える騎士なものでね。最善の一手が見えないとしても、抗わせてもらおうなあディルムッド? 」

 

「はっ、貴方と共に闘えるのならこの私はどこまでもついていきましょう!! 」

 

 2人のサーヴァントは武器である槍を構え、その動きに反応してマシュや他のみんなも武器を構えようとしたけど、ライムちゃんが「そこで見ていなさい」といい前にでる。

 

「勇ましいわね、でもどうせなら諦めて欲しかったわ。…………切り札(ジョーカー)を切らなきゃいけないじゃない”ジャバウォック!!”」

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『こちらが、貴方様の息子がウルトラマンへと変身するための道具、ライザーとカプセルです。 計算では2本のカプセルの力が必要という結果が出ているためあと1本、ウルトラマンの力が込められたカプセルが必要となります』

 

 レム、まだリクくんに出会っていないから心ない機械であるシステムが光の国から奪ったライザーとウルトラマンのカプセル以外ブランクのカプセルをベリアルさんの前に出すと、思念体である彼は超能力か何かでブランクのカプセルを1本掴むと、おもむろに力を込め始める。

 

『…………はっ!!!』

 

『コレは──カプセルの起動を確認。ウルトラマン、ウルトラマンベリアルの2本のカプセルが揃った事によりフュージョンライズが可能になりました』

 

 そうして生み出されたのが、リクくんが最初に手にするカプセルの内の一つであるベリアルさんのカプセルだった。 

 それで満足するのかと思ったけれど、また右手を前に出した事から違うらしく何かが形成を始める。

 あれって……

 

『このオレと同じ土俵に立てた所で、その力は赤子同然だ、コレ(・・)は貴様に預ける』

 

『計算上、ウルトラマンになった御子息は攻撃力が不足することが予測されています。 その為の兵器だというのなら譲渡は変身して直ぐで宜しいでしょうか?』

 

 ベリアルさんの鋭い爪を模したようなその武器の名前は『ジードクロー』、ジードが全てのフュージョンライズ形態で使い戦闘能力の向上に一役買うことになる、レムから渡された専用武器であるそれは、伏井出ケイが作ったものじゃなかった……。 ベリアルさん自らの手で作り出していたんだ。

 

『気が熟した、そうお前が感じたのなら譲渡しろ』

 

『それは……』

 

 聞き返そうとするとベリアルさんはシステムの中から今起きた事のデータの全てを消去させ、カプセルとクローの両方は伏井出ケイが準備したという別の記憶を用意する。

 

 多分、伏井出ケイの方にも同じような記憶を埋め込んだじゃないかと思う、そうやってベリアルさんは自分が準備したことを無かったことにしてまで、ジードに力を残していた……。

 

 

 本当に、不器用な人だなあベリアルさんは…………。

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「まさか…………ここまでとはね……ガハッ!!」

 

 ライムちゃんが召喚した『ジャバウォック』と呼ばれた人型の化物は、その規格外の力でフィンとディルムッドを圧倒して見せた。

 ディルムッドの卓越した槍捌きもその宝具による攻撃も、フィンが槍から出した水の奔流もジャバウォックに傷一つつけることは叶わなかった。

 

 そうしてその力の前にディルムッドは既に霊基を消失され、何とか意識を保っているフィンもジャバウォックの剛腕に胸を貫かれその状態のまま吊るされている。

 

「ウフフ、答えは直ぐそこにぶら下がっていたのに……。哀れね、貴方」

 

「はっはっは……、理性なき怪物を唯一討つ事が出来る『ヴォーパルの剣』、それが一番守りの硬い所にあるのは……些かインチキが過ぎるんじゃないかい?」

 

「あらあら、いつの時代も物語でも、最強の武器を手に入れるには試練が必要なものでしょう? その試練があなた達の場合、最後の敵だっただけよ」

 

 ヴォーパルの剣、一番守りの硬い場所……。血反吐を吐きながらライムちゃんの最後の話をするフィンの言葉でピンッときた。

 ヴォーパルの剣、それって私がライムちゃんから渡されたこの剣だったんだ!! 確かに、サーヴァントのみんなもいるから安全である事は間違いないけどそんなに大切なもの軽い感じで私に渡してたのライムちゃん!? 

 

「はっはっはガハッ!! …………覚えておくといいカルデアのマスター、その剣は『理性ない怪物』に有効な武器だ。……流石にここまで喋るのは……不敬にあたってしまう、かな……?」

 

「さあ、これでおしまいね」

 

 消えゆくフィンは、このヴォーパルの剣に秘められた力の事を私に教えて消えていった……。『理性のない怪物』? フィンを倒した事で役目を終え消えてしまったジャバウォックのような存在が他にもいるって事なのかな……? 

 

 そんな考えを過らせていると、戦いを終わらせたライムちゃんがジャバウォックを消して私たちの方に振り返りながら微笑むと、彼女のことを光が包み込み元の可愛らしい女の子の姿へと戻っていた。

 

 だけど、あの姿は魔力の消費が激しかったのか、ライムちゃんがふらふらと身体を揺らしていると思っていると後ろの方へ倒れ込んでしまう。

 

「ライムちゃっ! って博樹さんっ!? 」

 

「ととっ。よく頑張ったね、アリスちゃん」

 

 このままだと地面にぶつかってしまうライムちゃんを助けるために走りだそうとしたその時、いつから、何処から来たのか行方知らずだった博樹さんがさっと現れ、ライムちゃんの事を受け止めた。

 

「おじさま…………わたし、ありすを忘れていない?」

 

「言っただろう? 大好きで大切な人のこと、そう簡単に忘れるわけないんだ」

 

「ええ、ええ……! よかった、本当によかったわ」

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「覚悟は決まったか?」

 

 私が百体のエネミーを倒し終えると、ベリアルさんはケンタウルスたちに騎兵するトランプ兵たちを召喚していたアリスちゃんにそう問いかけながらギガバトルナイザーを突きつける。

 

 ベリアルさんが今からやろうとしてること、それはナイザーによる霊基の変質による強化だ。失敗に終わったけれど、ロンドンでベリアルさんになり変わろうとしたことでアリスちゃんの霊基には”ベリアルの闇”の残滓が残っている。 その残滓をナイザーによって増幅させることで霊基を強引に変質させようということらしい

 

「ねえおじさま、お願いがあるの」

 

(お願い、それは……)

 

「変わってしまう私のことを、ありす(・・・)と……呼ばないでほしいの」

 

 契約しているからなのか、表に出ていない私の問いに悲しさを浮かべながらアリスちゃんは答えてくれた。

 

「この力を目覚めさせた私は、きっと残忍で残酷とても怖い存在になると思うの。 変わってしまったらありすの姿を忘れてしまうかもしれない! ありすとの思い出が泡になって消えてしまうしまうかも知れない!! もう戻れないかもしれないの!!」

 

 そうか、ギガバトルナイザーによって力を目覚めさせるのはただのパワーアップとは訳が違う。闇の力、それを増大させることだ。

 

 怖いんだ、闇を目覚めさせたらありすちゃんの姿に戻れないんじゃないかって。

 だから英霊として召喚された本の姿じゃなくて、ありすちゃんの姿をしたままでギガバトルナイザーの力を浴びることを望んだ。 ありすちゃんを忘れない、戻れる可能性に賭けて……

 

「話は終わったな。 ハアッ!!」

 

 痺れを切らしたのか、ベリアルさんがナイザーの力を解放させ闇の力を目覚めさせる。

 そんな中で私はアリスちゃんへ想いを伝えるために支配権がベリアルにある中で、身体を動かそうと力を動かそうとする。

 

「…………なに?」

 

「アリス、ちゃん……!! 忘れない、忘れるわけがない!!」

 

 偶然なのか、左手だけ動かせた私は、アリスちゃんの小さな手を強く、強く握りしめながら精一杯思いを伝える。

 

「大切な人、大好きな人の事そんな簡単に忘れるわけない!! だって、それが大好きってことなんだから!!」

 

「くっ、ううううっっ!!!! お願い、ね……わたしの、マスター 」

 

 自分でも何を言ってるのかわかんなくなってたけど、ちゃんと伝わってくれたのか、アリスちゃんはギガバトルナイザーによって力が目覚めていくその苦痛に耐えながら笑顔を浮かる。霊基が変わっていくその様を、私は目を背けることなく最後まで見届けた。

 

 

 

 

 




藤丸立香は『ヴォーパルの剣』を手に入れた!!
"ヴォーパルの剣" 理性のない怪物に有効な剣、ライムが立香に渡したが使うときは来るのだろうか?
ライムが退去しない限り存在するため立香の専用武器のようなものに……(7章とかで活躍するかも……?)

EXナーサリー・ライム
 彼女自身の持つスキル「自己改造」と「変化」そして第4特異点での交戦により得た「べリアルの闇」をギガバトルナイザーの力で目覚めさせることによってEX進化した姿。
 身体も15歳程度の女性の身体に変化し毛先、紫だったリボンや裏生地部分が赤くなり、その大きな瞳も赤く染まりハイライトが消えている。

 べリアルの闇との相性が良いのと、博樹を通じた魔力経路があるためかべリアルの闇の扱いが非常に巧い。
自身の強化は勿論だが、召喚したトランプ兵やジャバウォックも強化されている。

『トランプ兵』
絵本:不思議の国のアリスに出てくるトランプ兵。
トランプ兵の見た目は絵本に出てくるような憎めない悪役ではなく、全身鎧のような見た目に鎌のような鋭利な槍を持っている完全な悪役。
べリアルがギガバトルナイザーで操り、ライムが強化したケンタウロスに跨がり騎兵隊となって戦う、その1体1体がシャドウサーヴァントに引けをとらない。

『バンダースナッチ』
ジャバウォックの詩やスネーク狩りで言及される謎多き化物。"非常に素早い生物"であり"燻り狂った顎"を持っている複数の生物を指すことが示唆されるが正確なところはわかっていない。
不確かな部分を使い、バイコーンやソウルイーターをバンダースナッチという登場キャラクターに落とし込みことで支配、強化しているバイコーンに至ってはエンペラーコーンにまで変異。

『茨の森』
絵本:眠れる森の美女の眠る城を覆う侵入者を阻む茨。
ライムの強化された魔力によって何処までも何処からでも這い出て道を阻み、触れれば対象の魔力を吸収するためサーヴァントでも中々手が出せない。


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5

ご唱和ください我の名を!! ウルトラマンゼーーット!!
 そんなことよりもギャラクシーライジングって!! モノクロにするとアトロシアスに見えるあのボディなんなんですかね? 

 作者はやるかどうかも分からないこの作品の2部の妄想をしながら新章ごと進めていく変態。
オリュンポスの敵はウルトラマンの敵としても変換しやすかったので違う意味でも楽しかったです。

感想、評価お待ちしています。

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


パンッ!! 

 

「何の真似だ、貴様?」

 

 ライムちゃんが眠るように本の姿に戻り、博樹さんの腰当てに下げられ一息つこうとしたその時、耳をつん裂くような銃声が私の横を通り過ぎた。

 その銃弾は迷いなく博樹さんを狙って放たれた様だけれど、表に出てきたベリアルさんが銃弾を握りしめて止める。

 

『なななな何をやっているんだい()()()()()()()!! せ、説明が遅れたかも知れないが彼は…………味方と言っていいのか分からないが少なくとも敵ではない!!』

 

「敵、味方など関係ありません。彼は重体です、ラーマ貴方と同じ程の……です」

 

 ドクターの慌てようから振り向くこともなく、誰が銃弾を撃ち出したのかは分かった。 まあそれ以前にこんな突飛な事するのは1人、いやあと2人ぐらいいるか。

 そんなナイチンゲールさんは博樹さんの事をラーマさんと同じくらいの重体だと自信を持って言い放つ。 

 

 重体って、博樹さん全然元気だけど……なんで? 

 

「貴方……そう、()()ですね。その身体に無茶をさせる腫瘍は」

 

「ナイチンゲールさんっ!!」

 

 私やほかのみんなの静止の声も聞かず、銃を連射しながら博樹さんの事を蝕む腫瘍と判断したベリアルさんへと接近していく。

 まあ、如何にサーヴァントの持ってる銃だったとしてもベリアルさんに傷を付けるどころか、着弾する前に超能力か何かで止めて地面に落としていく。

 

 けど、何だろうベリアルさんのあの目……ナイチンゲールさんの事を見ていないような……? 

 

「明言します。 貴方はその身体の持ち主を蝕む腫瘍、病気です。大人しく治療を受けなさい!!」

 

「────邪魔だ、今用があるのは貴様ではない」

 

「っ!? ナイチンゲールさんっ!!」

 

 接近したナイチンゲールさんだったけれど、ベリアルさんがひと睨みするだけで地面に叩きつけられてしまう。

 その勢いで背負っていたラーマさんが宙に投げ出され、その首をベリアルさんが掴んだ。

 

「シータとか言ったな、貴様が探して止まない存在は」

 

「────っ!? お前、はっ!! 会ったというのか!? 余の妃シータに!!」

 

「ああ、会った。 檻に囚われ、何も出来ず為すための力も持っていないヤツにな」

 

 べリアルさんはシータさんに会ってた。ていうことはレイシフトした場所が監獄島だったのかな? 

 シータさんと出会ったはずのべリアルさんが彼女のことを連れてきてない、助けていないことを知ったラーマさんがその身体にむち打ちながら「何故助けなかった!」と叫ぶけど、べリアルさんは聞く耳を持たずラーマさんの口を閉ざす。

 

「救う、助けると宣うその女のことを、貴様はどう思っている? オレはそれを問いにきた 」

 

「なに……っ!?」

 

「その傷を癒すためか? 己が力を振り回すためか? 何のために貴様は、あの女を救おうとする」

 

「あな……たは……っ!!」

 

「口を開くな、黙っていろ」

 

 ラーマさんのことを刺激するその言葉を閉ざそうと、ナイチンゲールさんがベリアルの力に抗おうと立ち上がろうとしたけれど、その頭をベリアルさんが踏みつけて黙らせる。

 傷を癒す、大英雄であるラーマさんの力を振るう……けどそれは私たちカルデアが望んでることであって────

 

「それは違う!!!」

 

「ほう……、ならなんだというんだ」

 

「お前の言うそれらは全て"目的"であって"過程"であって、余の"望み"ではない!! 余がシータのことを求めるのは────『愛している』からだ!!!」

 

「…………」

 

「力などいらない! 玉座など誰にでもくれてやる!! 余はシータが、シータだけいてくれればそれだけで良かったんだ!! だからこそ、もう一度会えるかも知れない微かな希望に、奇跡に懸けてこの地へと降り立ったんだ!! 余はっ……余はっ「もういい、十分だ」ガ……ッ!!」

 

「「ラーマさんっ!!!」」

 

 ラーマさんの心からの叫び、願いを聞いたべリアルさんはその言葉を最後まで聞かずに満足したらしく、マシュの方へとラーマさんを投げ飛ばす。

 踏み付けていたナイチンゲールさんの事は手も足も使わないで私たちの方へ突き飛ばしたベリアルさんは、心底楽しそうな表情で「ハッハッハッハッハッハ」と大声を上げて笑い出す。

 

「お前も同じようだな()()()っ!! お前も()()()と、()()()と同じ瞳をするか!!」

 

 瞳? それにあの女って言うのはシータさんの事だとしても、アイツって言うのは……? 

 ラーマさんの決意、覚悟を決めたその瞳を見て何かを感じたのか笑う今のベリアルさんを見て、私は彼が話で聞いたような最低最悪もウルトラマンのようにはどうしても思えなかった……。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『『ハアッ!!』』

 

 あの時、次元の狭間で行われたリクくん(ジード)とベリアルさんの最後の戦い。

 ベリアルさんが歩んできた闇の道を戦いの中で共有し、彼が感じた悲しみ、怒りや憎しみを理解したからこそその心を受け止めたリクくん(ジード)

 

『伝わってくる……怒りがっ、悲しみが…………っ!! 』

 

 だけどねリクくん。君だけじゃないんだ、君がベリアルさんの記憶を共有したようにベリアルさんもリクくんの記憶を見ていたんだ。

 いいや、記憶を見なくたって知っていた、彼はリクくんの事をずっとずっと見ていたんだから……

 

 他の子ども達よりも強い力を持って生まれてしまったばかりに孤児院には馴染めず、引き取って貰った愛崎家でも"愛情"を知らないリクくんは心からの笑顔を見せなかった。

 そんな環境を作り出したのは自分自身だ、だからこそリクくんは自分のことを憎むと、ベリアルさん自身が光の国へ宿している怒りと同じほどの感情をぶつけてくるのだと、そう思っていたんだ。

 

『何度も何度もっ、あなたは生き返り……その度に、深い怨みを抱いて……っ!!』

 

『(なんだその目は? その瞳に何を映している? 怒りでも、怨みでもない……!! その瞳に映る感情はなんなんだっ!!)』

 

 そう、あの時リクくん(ジード)が見せたその瞳こそがラーマさんとシータちゃんが見せてくれた相手の事を想う、力強いその瞳と同じもの。

 けれど、ベリアルさんはその瞳に込められた想いが何なのか分からなかった。だからあの2人に興味を示したんだ。

 

『疲れたよね……っ。 もう、終わりにしようっ!! 』

 

『分かったようなことをいうなあああっ!!!!!!! 』

 

 あの時の拒絶は確信だ。抱き締めてくれたその自分よりも細い身体を抱き返してしまったら自分は光へと戻ってしまうと……。

 だけどそれはベリアルさんの決めた覚悟とは違うもの。リクくんを『ジード』というヒーローにするために、消える事を……伸ばされたその手を拒絶する事を選んだんだ……。

 

『ジーーードォォォォォッ!!! 』

 

 ジードの事を想うベリアルさんにその"心"も、ラーマさんとシータちゃんそしてリクくん(ジード)が映した瞳と同じモノだという事を、ベリアルさんはまだ知らないんだ。

 だから知りたい、理解しようとする。"愛"っていう()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 あの後、()()()()()()()()()()()()を説明することでナイチンゲールさんの暴走を止めて貰った私たちは、話し合って二手に分かれて行動することになった。

 まず、立香ちゃんたちの方は当初の目的の通り、ラーマさんとシータちゃんを再会させてあげるためにアルカトラズ島へと。 そして私の方はと言うと、ジェロニモさんたちサーヴァントと一緒にこの特異点を作り出した原因である敵が近くの街でパレードを開くという情報を頼りに暗殺を仕掛けにいくメンバーとで別れた。

 

 ベリアルさんの事だからそのままラーマさんの方について行くものだと思ってたけど、あの瞳をラーマさんも見せたことで、どうやら既に2人への興味は失くしていたらしい。

 

「呵々ッ! まさかここまでの強者がいようとはなっ!! この地に喚ばれた意味があったと言うものよっ!!」

 

 そんな折、街へと向かう最中に私たちの目の前に1体のサーヴァントが立ち塞がってきた。自分の身長以上の長さはある槍を携えた彼は、どうやら敵という訳ではない。

まあ、だからと言って簡単に通してくれるんだったら私たちの前に現れた理由がない。「強い相手を探してこの荒野を彷徨っていた」という彼は、他のサーヴァントのみんなには目もくれず一目でベリアルさんが強者だと判断し勝負を挑んできた。

 

 珍しくベリアルさんもその挑戦を了承すると、他のみんなは邪魔だとギガバトルナイザーを使って吹き飛ばし勝負が始まった。

 

「人の身ひとつで、ここまで技を極めた奴がいるとはなぁ!! 」

 

 李書文と名乗ったサーヴァントの放つ槍術は、夢の中で何体もの怪獣やべリアルさんと戦ってきた私でも、その動きが捉えることが出来ないほどのものでべリアルさんすらも一目置いている。

 だからなのか、李書文を相手取るベリアルさんは私と同化してからこれ迄の中で1番戦うのを楽しんでいる。

 

「フッ! ハアッ!!」

 

「シッ!!」

 

 ベリアルさんの攻撃的で直線的な棒術とは違う、2メートルは超えている長い槍をまるで手足の様に自由自在それでいて驚く程精密に扱いベリアルさん相手に互角の攻防を繰り広げている。

 相手が魔術などの小細工を使って来ないからベリアルさん自身もエネルギー弾などは使わずに戦っていく。

 

「認めてやる李書文。 貴様は……面白いっ!!」

 

「クッ!! 何のっ!!!」

 

 槍と棒のぶつかり合いが何度も何度も続き、どちらも決定的な一打が与えられず続いたその打ち合いを破ったのはベリアルさんだった。

 自身の心臓目掛けて振るわれた槍を右手で掴み取ると、ギガバトルナイザーでその槍を吹き飛ばした。 そうしたベリアルさんは瞬時に李書文の顔面目掛けて爪を向けれど、李書文はその爪目掛けて拳を振り上げ攻撃を逸らしたかと思ったその瞬間、彼の身体一瞬ぶれたかと思うと、肩が触れ合う距離まで近づいてきた。

 

「良いぞっ!! もっとだ、もっと見せろ!! 生を賭けて磨き上げたその“才”を!! このオレにぶつけてこい!!」

 

「呵々ッ! ならば見せてやろう我が八極! 己が限界に牙を剥き続けた愚か者の極致を!!」

 

 もうベリアルさんの手にギガバトルナイザーはなく、両手で、全身で李書文の全力を受け止めると笑顔を浮かべ、李書文も自身の全力を打つけることの出来る最高の相手を前にしてか笑みを隠さずにその拳を振るった。

 

「──百の奥義ではなく、一の術理を持って、敵を打ち倒す。これ无二打(にのうちいらず)!! はあああっ!!!!!」

 

 

 

 




【べリアルが求めていたもの】
シータの瞳を見てからずっと追い求めていたモノの正体は最後にジードが見せた瞳。 愛情を知らないべリアルでは理解出来なかったことを、博樹と同化したことで彼の家族へ向ける思いなど知っていくことで理解を深めていっている最中。
次の標的は~~~あの狂った女王様!!

【ベリアルさんのデレポイント】
ラーマさんとナイチンさんの事を吹き飛ばすときちゃんと立香ちゃんたちのいる方へ飛ばしている。
昔(特にゼロダークネス時代)だと興味無くした瞬間容赦なく殺すからね♪

【李書文】
 制限付きだとしても人間体ベリアルさんと互角で渡り合える数少ない英霊。
自分の限界を定めず才を磨き続けた格闘能力だけだったら英霊でもトップクラス。
特撮で例えるとゲキレンジャー5人+理央様を一人でこなしているみたいな人だから強いのは当たり前
アンブレイカブル・ボディ、オネスト・ハート、ファンタスティック・テクニック、アイアン・ウィル、アメイジング・アビリティ、猛きこと獅子の如く。強きこと、また獅子の如く。 流石にラブ・ウォリアーまでは……


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6

皆さんこんなご時世ですがご機嫌如何ですか?作者はお気に入りが700件を超えてとてもうれしいです。


 少し遅いような気がしますが皆さんは星5交換は誰を交換しましたか?
作者は恒常で持っていないのはアルジュナ、アキレウス、オジマン、石像の4基。
この中なら性能面も鑑みても、色々な部分も考えてもオジマン一択でしょうね。






不夜キャスの宝具を5にしました。


感想、評価お待ちしてます

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「────我が絶招、届かなかったか……」

 

「いいや、お前の拳は確かに届いていた。()()()であったのらば死んでいただろうな」

 

 李書文の放った拳。生涯を賭けて鍛え上げたというその洗練された一撃は、ベリアルさんの言う通り私たちの心臓へと届いていた。

 一撃必殺のその攻撃を受けても尚、平然と立っていられるのは拳が直撃する寸前にベリアルさんが()()()()()()の姿となったからだ。

 

 拳が届いた時にはウルトラマンの姿になっていたから私に伝わったのはほんの少し痛いぐらいの感覚が来たぐらいだったけど、それだって本当に凄いんだ。

 ウルトラマンの姿になったベリアルさんに痛みを与えるなんて……サーヴァントだからってこの人ならダダやバド星人くらいなら倒せるんじゃ? 

 

「その変容、その姿こそがお主の本当の姿か……」

 

「フッ────3分だ」

 

 ウルトラマンへとなった姿をみて驚きはするけど、決して戦意を失ったりせず次はどう動けばいいのか考える李書文。

 そんな彼の姿勢がますます気に入ったのか、嬉しそうに首を鳴らしながらその鋭利なって爪を3本突き立てる。

 

「面白いものを見れた礼だ。3分間だけ、このオレの本気を貴様に見せてやる。 殺しはしないが……精々壊れないよう、耐えてみせろ」

 

「────呵々っ! この拳がどれだけ通用するのか……胸を借りると思って試させてもらおう!!」

 

 ずっと、自分の生涯を賭けてまで磨き上げた拳のその先が見える。英霊になっても自分の限界を定めない李書文にとって、至高とも言える3分間が始まった。

 

 

 

 

 

 

 ────時間は少しだけ、2組で別れたその日の夜……。

 

 

 

 

 

 

「………………ふう。あ、マシュもしかして起こしちゃった?」

 

「いいえ。先輩は剣を、振るっていたんです?」

 

 野営地から少し離れた場所、辺りが見渡せる開けたその場所で立香はナーサリーから貰った“ヴォーパルの剣”を鞘に入れたまま振るっていた。

 無言で剣を振るっていた彼女は、マシュの存在に気がつくといつもの人懐っこい笑顔を浮かべて近づいてくる。

 

「嫌な夢見ちゃってさ、せっかくこの剣貰ったし振るってたら何も考えないで済むかな〜って、ほらよく本であるみたいにさ」

 

「先輩も……夢を見たんですか?」

 

 どうやらマシュも立香も目が覚めた理由は同じらしく、先に起きた立香はその夢のことを忘れる為に身体を動かしていたようだ。

 同じ理由で起きたのだと知った立香は、マシュを連れて近くの岩場へと移動して話をする。

 

「…………ベリアルさんにさ『お前は用済みだ』〜って捨てられる。今日ラーマさんがやられたみたいな事が私自身にも起きる。そんな夢見ちゃってさ」

 

「私も同じです! ベリアルさんに捨てられる。そんな事ない! ……そう、信じたいんですけど……」

 

「最低最悪のウルトラマンって知っちゃったもんね。……それに、博樹さんとの同化のことも」

 

 マシュは静かに頷く。 それは2人がベリアルのことを知った、知ってしまったからこそ生まれた悩み。博樹から聞いたものではあるが、ベリアルが行なって来た数々の悪行、非道な行いに思うところがあるのか、つい考えてしまう。もしもベリアルが敵になってしまったらと…………。

 

 そしてもう一つは博樹とベリアルの同化についてだ。執拗に迫るナイチンゲールを前に、博樹との同化を解いてみせた。その時に分かったのが、ベリアルと博樹はどちらか一つが欠けてもいけない存在だということ。

 肉体が完全に消滅し、赤黒い球体の姿で召喚されたベリアルは博樹と同化していなければ現界を保てない。そして博樹に至ってはあの爆発によって身体の5割以上が使い物にならないなっていたことが発覚し、ベリアルが同化していないと生命活動を維持することが難しい身体なのだという……。

 

 

「……生前は確かに最低最悪のウルトラマンだったかも知れないけど、今は違うんじゃないかなって剣振るいながら考えてたんだ」

 

「今は違う……ですか?」

 

「モチロン、皆を助ける正義の味方になったって訳じゃないよ? むしろベリアルさんにそんなの似合わないしね。 最低最悪のウルトラマンかも知れないけど、私たちは一緒に旅して回って来たベリアルさんの事を知ってる」

 

 星を見上げながら話をする立香に伝えたいことが分かったのかマシュも立香に続いて話をする。

 

「怖くて、厳しい。ですけど、背中を押してくれました。 この盾をどう振るえばいいのか、敵に対してどう立ち向かえばいいのかを教えてくれたのは、ベリアルさんでした」

 

「何を考えてるのかし、何をするのか分からない人だけど、確かに私たちのことを助けてくれた」

 

 フランスでは、ローマでは、オケアノスでは、ロンドンではと2人はベリアルと歩んできた旅路を話し合った。

 

「本能寺とかテェイテ城の時なんてさ〜」

 

「はい、あの時も」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「止めないのか? お前の事だ、夜更かしは健康を害する! とか何とか言うと思っていたんだがな」

 

「バレンタインの時とか、ベリアルさんびっくりしてたよね」

 

「両者とも1度は睡眠をとっているようですのでまだその時ではないかと…………それに」

 

「はいっ! 先輩と2人でサプライズした甲斐がありました!」

 

 マシュとりつかの会話を木陰から見守りながら聞いているナイチンゲールとラーマ、そして重体のラーマを抱き上げているアステリオス。

 実はこの3人、立香が一人で剣を振るっていた時から見守っていた。

 

「チョコ食べたのはじめてだったんだろうねビックリしてたもん!」

 

 そんな中、ナイチンゲールは仲良さそうに話している2人を羨望の眼差しで見ているようだった。

 

「もしかすると、彼女たちがベリアル…………彼を治療する特効薬なのかも知れませんね…………」

 

「『甘いな……なんだコレは』と言った時、心無しか喜んでいたような気が」

 

「とっこうやく……? マスター と マシュ が クスリ? 」

 

「マシュもそう思った! 実は私もそう思ったんだよね!」

 

「────今のは失言です、忘れなさい。 立香っ! マシュっ! いつまで起きているのですか、強制的に眠らせますよ!!」

 

「ナイチンゲールさんっ!? いつから!!」

 

「いつから? ああ銃を向けるのはやめてください!!」

 

「ははは、慕われているんだなベリアルは」

 

「う ん。 ボクが この 姿になれたのは ベリアルの おかげ、だから 」

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「…………………… 」

 

 スゴいという言葉しか、出てこない…………。

 結論だけ言うと、李書文はウルトラマンへと姿を変えたベリアルの攻撃を3分間耐え抜いた。 李書文は、ベリアルさんが殺さないと言ったその一言が真実であると理解した上で、心臓と脳への防御を捨て自身の技の全てを使ってベリアルさんの攻撃に縋り付いていった。

 

 その一撃一撃が致命となるベリアルさんの攻撃を手が、腕が砕けようと、足が折られたとしても「四肢が残っているなら諦めるには至らない」言い切り、その痛みを表に出さずに耐えて耐えて耐え続け、彼からすれば永劫とすら思えるほどの長さの3分間を耐え続けた。

 

「ははは、笑いしか出ないとはこの事だな。数千年と生きてきたが、これほど迄の強者が存在しようとはな」

 

「コイツは面白い。治療しておけ、影の女王」

 

「この儂をよもや足に使うとはな。まあよい、久方ぶりに心躍る戦いを見せてもらった礼だ」

 

 ベリアルさんが視線を向けた先、誰もいないと思われたその空間が歪んだと思うと、まるでバキシムが出てきた時みたいに空間が破れてそこから全身黒タイツで身を包んだ女性が姿を現した。

 

「お主ならばこの儂を殺すことが出来ようが……此度はこの異常を正す方が先決だ、我慢するとしよう」

 

 女性はベリアルさんへと向けていた殺気と両手に携えていた槍をしまうと、倒れている李書文に魔術による治療を開始する。

 ベリアルさんが壊し過ぎたからなのか、治療の時間が長くなることを見越したベリアルさんははじき飛ばしたナイザーを呼び寄せる。

 

「なんだ、行くのか?」

 

「お前はアイツら(立香たち)を見ろ。狂った弟子を倒したいのならな」

 

 彼女にそう伝えると、ベリアルさんはジェロニモさんたちが向かっていった街の方へと飛んでいく。

 

「ふふっ、そうか。儂ではあの馬鹿弟子を殺すことは叶わないか…………。 さて、弟子をとるには久しいが異邦の者たちはこのスカサハを楽しませてくれるかな?」

 

 

 

 

 

「あっはっはっはっは!! 愚か、哀れ、惨めねえ貴方たち!! たったそれだけに戦力で私に、私のクー・フーリンを暗殺しようだなんて笑わせてくれるわ!!」

 

 コノートの女王。この特異点を作り出した原因でもあるメイヴが、ネロの大魔術宝具『招き蕩う黄金劇場』によって作られた玉座に座りながら嘲笑っている。

 

 ネロの宝具に誘い込み、弱体化した相手を打ち倒すその作戦は聖杯によって“王”であることを願われたクー・フーリンともう1人……

 

「『炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)!!』」

 

 インドの大英雄、授かりの英雄であるアルジュナが立ち塞がり、形勢が逆転していた。

 宝具によって有利な状況であるにも関わらずクー・フーリンに圧されるネロ。ジェロニモ、ロビン、ビリーの3基で挑んでいると言うのに物ともせず一撃一撃が宝具級の威力を誇る矢を放つアルジュナ。

 

「あははははっ!! どう? これが永遠王の力!! たった1人で覇を唱え、国家を成立するに足る武力!! 貴方たちのようなちっぽけな英霊たちなんかじゃ到底敵うはずがない絶対の王よ!!」

 

「グググっ!! そんな者、王の資格などっ『面白い事やってるじゃねえか』──っ!? この声はっ!!」

 

「へっ!? 何よこれ、アルジュナっ! アンタがやったの?」

 

 自分が酔狂しているクー・フーリンへの感情をメイヴが爆発させていると、ネロが作り出したこの黄金劇場に火の手が上がり始める。

 ネロたちが何かをした素振りは見せなかった、ならば炎を操るアルジュナが? と声を上げるメイヴだったが、如何にアルジュナであろうと真名開放させた炎神の咆哮を使ってもこの大魔術は破壊出来ない。

 

 ならば誰が? そう考えていると火の手が最初に上がった黄金劇場の入り口。誰も出られないように強固に閉ざされたその扉を壊して誰かが入ってくるのが見えた。

 

「────ソコっ!!」

 

『はっ、小賢しい』

 

 千里眼のスキルにより誰よりも先にその存在に気付いたアルジュナが爆炎を纏った矢を放ったが、小賢しいとその一言だけ言ってその矢を片手だけで受け止め、握り潰してしまう。

 

 

『唯1人で覇を唱え、他を圧倒し屈服させる。確かにその力は国家を、()()を築き上げるには充分なものだ。けどなあ、只それだけだ。つまらねえ』

 

「…………ベリアル」

 

「あのアルジュナの矢をいとも簡単に制するなんて、どんな化け物だよ奴さん」

 

 彼──ベリアルは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()歩きながら話すと、ベリアルに殺気を放ち続けるアルジュナとクー・フーリンを完全に無視した彼の瞳は、メイヴの事を捉えていた。

 

「だが、憎しみでも妬みでもねえ()()()()で、たった()()()()()()()で王を生み出したお前には興味が湧いた」

 

 

 

 

 

 




博樹さんは李先生ならダダやバド星人に勝てるかもと言ってますが、多分李先生なら人間サイズに変身出来るウルトラマンたち相手でも互角に打ち合えそう。

今回はあまり話が進んでいないような気がしますが、ベリアルさんの弱点を晒す?為にも必要な回。
弱点が2つほど露見したベリアルさんだけど……これ弱点かなあ?


本文に関係ないですが、作者は王特攻が付こうが付かまいが異聞帯の王は全て不夜キャス(真名は隠しときます)でトドメを刺すというよく分からない縛りをしているレベルには不夜キャスが大好きです。
ロシアと中国の王が大変だったことだけは伝えておきます……

生存能力の高さと味方全体にガッツ付与、そして特出した王特攻という宝具。選ばない訳がない


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7

やっぱりジードってイケメンだよな〜と、Zのスペシャルムービーに出てくるライジングギャラクシーを見て思いました。

難産ばかりの5章でしたが、後多分3話くらいで終わるような目処が立ちました。長かった……。

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「ベリアルゥゥゥ!!!」

 

 堅く閉ざされ、外部からの侵入者を拒んでいた黄金劇場への扉。その扉を力だけで強引にこじ開け中へと入った私たち。 ベリアルさんが侵入した影響なのか、黄金劇場には火の手が上がり崩壊が始まっている。

 

 そんな中で、この劇場を創り出した張本人であるネロさんが大粒の涙を瞳に貯めながら駆け寄ってくる。

 

「お主、余の劇場を燃え上がらせるとはどう言う事だ!! 入ってくるにしてももっと、こう……やり方というものがあるだろう!! 確かに、侵入も脱出も認めない劇場を創ったのは余なのだが……

 

「邪魔だ。 お前に用はない」

 

「ぬおっ!?」

 

 彼女に謝ることもせず、頭を掴み上げてジェロニモさんが戦闘している方へと放り投げ、自分は敵であるメイヴへ向かって歩いていく。

 

「どうやってる。貴様はどうやってその感情を振りまいてやがる、コノートの女王?」

 

「なっ、何よ何なのよその目はっ!! そんな目でこの私を見るんじゃないわよ!! クーちゃん、ヤっちゃって!!」

 

 ベリアルさんから向けられる目を見て怯えているのか、彼女は自身の人差し指を刃物で切り、漏れ出て来た血を地面に落とすとそこから大量の兵士が産み出す。

 

 一気に数十を超える軍勢を創り出し、その軍を率いるように前に出てきたのが、さっきベリアルさんが言った作り出された王──クー・フーリンが私たちの前に立ち塞がる。

 

「そうか、アレでケルトの兵士たちを増産していたのか」

 

「奴さんを止めなきゃ何も止まんないってのは本気もんだったって訳だ!!」

 

「流石にあの数じゃ彼でも不味いんじゃないの?」

 

「しかし!! コチラもアルジュナを止めることで手一杯だ! どうするベリアル!!」

 

 アルジュナを止めている4人がベリアルさんを心配する声をかけてくるけれど、心配はいらないと思う。 

 

「死ね」

 

「貴様に用はない、邪魔だ」

 

 変な感覚だ。目の前に立っているはずのクー・フーリンの事を、ベリアルさんは映していない。ぼやけて見ている

 振るわれた槍を虫をはらうように片手ではらい飛ばすと、相手の反応速度を超える速さで動き殴り飛ばした。

 

 殴られたクー・フーリンは防御もできずメイヴの後方へと叩きつけ、残りの軍勢のことはギガバトルナイザーを大きく振るうだけで発生する衝撃波だけで全員一瞬で消滅させた。

 まあ、次いでと言ったらあれだけど劇場の崩壊がまた進んでる

 

「ああああ余の劇場がああああああ!!」

 

 ごめんネロさん。 ベリアルさんが……ウルトラマンが建物を壊さずに相手を倒すなんて多分無理だと思う。

 

 

 

 

────良い男が好きだ

 

────強い男が好きだ

 

────それが自分に屈服しない男ならば、更に好きだ

 

────いたぶり甲斐がある男ほど大好きだ!! 

 

「(何よ……何なのよ、コイツはっ!?)」

 

 コノートの女王、恋多き女であるメイヴが必然的に湧き上がる感情。男を見たら必ず品評し、その価値、クラスを決定づける。

 それこそがメイヴが英霊としての特性のようなもの。しかしメイヴは目の前に立つ男──ベリアルに対してそれが出来なかった。

 

 恐怖────メイヴが男を見て最初に湧き上がった感情がそれだったことなど、これまで一度もなかった。

 

 けど、クー・フーリンなら? 自分が今まで見てきた男たちに中で誰よりも、何よりも強い私の王なら何とかしてくれると……そう思った。

 兵士たちを産み出したのはクー・フーリンへの不安ではなく、肉壁として役立てだてばいいと思ってのことだった。

 

「(クーちゃんを一撃で……!? コイツ、何なのよ!!)」

 

 だから目の前で起こった惨状がメイヴには理解出来なかった。 クー・フーリンをたったの一撃で沈め、産み出したのはケルトの軍団は一瞬で塵へ還された。

 ケルトの勇士たちも荒唐無稽な事を為す存在はいるが、この男はそれを遥かに逸脱している。勝てる筈がない、そのビジョンが浮かんでこない。

 

 インドの大英雄であるアルジュナを呼ぼうにも、ネロが加わった4基のサーヴァントを相手取るのに手間取っていてコチラに力を貸すのは無理だ。

 

「さあ答えろ、お前の振るうその感情の根本を」

 

「はあ? (コイツ何言ってるのよ? 私がクーちゃんを産み出した理由? その感情ですって?) そんなの決まってるじゃない! 私がクーちゃんのことを()()()()()からよ!!」

 

 ベリアルに迫られたメイヴは自信満々にそう答えると、続けざまに自身の思いを爆発させる。

 

「アルスターの男たちの中で、唯一、私が『欲しい』と思っても私のものにならなかった男がいた。それがクー・フーリン!! この私の顔に泥を塗った、なびかなかったあの男を手に入れるために聖杯に願ったのよ!! 私だけの「長い」んぐっ!」

 

「どれだけのモノを持っているのかと期待したが、先の2人と比べてれば、お前は何処までも薄っぺらいな」

 

 メイヴの熱意は、話している最中に口を掴まれて強制的に中断される。

 そうしてベリアルは、掴んだメイヴのことをゴミをポイ捨てするように投げ捨てる。

 

「薄っぺらいですって……? 私のクーちゃんへに思いが薄っぺらいですって! ふざけてんじゃないわ!」

 

「真実だろう、だからこの程度のヤツしか産み出せない」

 

「グアアアアアっ!!」

 

 メイヴの怒りに対して、ベリアルは壁に叩きつけたクー・フーリンを打ち上げ、彼の腕をメイヴの目の前で引きちぎって見せた。

 

「あ、あああ、クーちゃん……」

 

「たった1人へ向けたその程度の感情が、お前の本音だと? 笑わせるなよ」

 

「────ッ!!」

 

 事実だった。 メイヴにとってクー・フーリンは確かに、他の男たちと比べたら特別なのかも知れない。唯一自分になびかなかった男、自分の物にならなかった男、しかしそれだけでしかない。

 全ての男の恋人であるメイヴにとって結局の所、クー・フーリンすらもその中の1人でしかない。

 

 けどそれは、他の誰かに指摘されていいものでは決してない。メイヴという英霊にとっての本質…………

 

「知ったような事言ってんじゃないわよ……!!」

 

 だからこそ、怒りが爆発した。

 先程までベリアルへの恐怖で動けなかったはずのメイヴは、()()()()()()()だけでその恐怖を払い退けてみせた。

 そして、ただ怒りをぶつけるのではなく、逆に冷静さを取り戻したメイヴはベリアルが何を考えているのかを思案する。

 

(なんでコイツは、こんなにも責め立ててくるくせに手を出してこないの? コイツ程の力ならクーちゃんや私、それにアルジュナのヤツだって一瞬で殺せるはずなのに……)

 

 ────ああ、そうかと

 女として何人もの男を落とし、見てきたメイヴだからこそベリアルが何を求めているのか気付けた。

 コイツは私の口から聞きたいんだ。私の人生すべてを埋めたこの感情が何なのかを、嘘偽りのない本音を求めているんだと……

 

(はっ、じゃあ見せてあげようじゃない。女王メイヴのホ・ン・ネってヤツを!!)

 

 ならば乗ってやろうと、男に求められたなら応えるのが私だと言わんばかり、メイヴはベリアルへ向かい合う。

 コイツは言葉を求めているから攻撃はしてこないと確信があるからできること

 

「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私はメイヴ! コノートの女王、全ての男に愛されるものよ!!」

 

 自分を変えない。男に良い顔をしている時こそが本当の自分なんだと言わんばかりに、堂々とベリアルへ自己紹介を始める。

 

「一目見て惚れさせるだけじゃだめ、私に尽くし、私にすべてを捧げる男にするために、私自身が女を磨くのよ!! 誰よりも美しく、誰からも愛されるために! 誘惑し魅了できる最高の自分を作り出すのよ! それが女王メイヴにとっての愛ってものよ!! いい、私は男たちを愛する以前に、私自身のことが大好き! 愛してるのよ!」

 

 愛されるために、誰よりも自分のことを愛し、磨き続けることを怠らない。 

 自分が努力している姿を決して他人には晒さないメイヴが、ベリアルにはそれを伝えた。

 

「はっ────はははははははははっ!!! そうか、そうか! それが愛情という感情か!」

 

 メイヴの言葉を受けたベリアルは、笑いながら今まで理解できなかった愛情を知ることが出来たと喜びの声を上げる。

 そんなべリアルの表情を見て、メイヴはきょとんとした。

 

「あらなによ、アンタそんな顔できたの? いい顔するんじゃない」

 

()()()お前に言葉により、オレは愛情という感情を知った。 その礼だ。お前らで言うところの“ゲッシュ”を立ててやる」

 

 ベリアルの唐突な一言に、メイヴは目を見開いて驚いた。

 それもそのはずである。ゲッシュとはメイヴたちが生きたケルトの時代において、厳守すれば神の祝福が得られるが、一度破れば禍が降りかかると考えられた最も尊重しなければならない制約である。

 メイヴはこのゲッシュを用いることでクー・フーリンを破滅へ追い込んだ歴史があるため、誰よりもゲッシュの恩恵、恐ろしさを知っている。

 

「アンタ、本気で言ってるわけ? この私にゲッシュを立てるなんて……」

 

 ベリアルはどこからか紙を取り出すと、そこに文字を書き連ねていく。

 書き終えると、その紙をメイヴへと渡し彼女に読ませる。

 

「『この特異点が存在しづける間、ベリアルとその契約者は、ケルト軍を殺してはならない』……ははは、こんなん笑うしかないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 ────まただ、また夢を見てる……

 見ているのはナイチンゲールさんの夢のなんだろうけど、そこに私の知るナイチンゲールさんの姿はない。

 そこにいたのはベットで横になっている老婆の姿だった。

 

 今にも目が閉じて、永遠に開かなくなってしまいそうなほど年老いたそんな彼女の前に、以前の夢でナイチンゲールさんと一緒にいたあの青い瞳をした少女が音もなく現れた。

 

「やはり、人間の一生とは短いものだな。それでよく、全ての病を根絶すると宣ったものだナイチンゲール」

 

 ナイチンゲール!? え、じゃあこのおばあちゃんがナイチンゲールさん本人だっていうの!? 

 確かナイチンゲールさんは90歳で亡くなったらしいからその姿なのかも知れないけど、()()は? 彼女はどうして前見た夢の時から姿を変えていないの? 

 

「病は、根絶しますよ……。 私の意思を受け継ぐ誰かが、他の誰かへその意思を繋いでいく……。 そうすることで、いつか、必ず、この世から病はなくなります……」

 

「無理だ。病とは人の悪意そのものだ、人が人である以上悪意は無くならず、病は伝染しつづける」

 

 会話が成立していると思ったけど違った。もうナイチンゲールさんの耳に彼女の言葉は届いていなくて、自分が伝えたかった言葉だけを彼女に伝えてるんだ。

 

「あなたの、その胸に巣食う病も  いつか、必ず……あなたを 受け止めてるくれる誰かの手によって……  完治する、はずです……」

 

 言いたいことだけを伝えて、ナイチンゲールさんは永遠の眠りについた。

 そんなナイチンゲールさんの最後を見届けた青い瞳の少女は、近くのテーブルに置いてあった何枚も重ねられた手紙を取り、その中身を確認する。

 

「……ただその日何があったのかを書き連ねただけの、宛名も書いていない手紙。 馬鹿な女だ、ナイチンゲール。お前にとって激動だったあの3年を付き添った私のことなど、忘れればいいものを……」

 

 宛名のない、けれど誰へ向けた手紙なのか少女は理解したらしく。ナイチンゲールさんが残した手紙をすべて読み終えると、1枚も残さず暖炉の中へと放りなげ燃やしてしまう。

 

「こんな手紙ごときでは、お前が言ったこの病は治らない。 私の胸を焦がすのはこの炎と同じだ。復讐という種が消えない限り燃え続ける……。この炎を受け止めてくるものなど、存在しない」

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「ほらほらどうした!! お主の力はこの程度ではないだろう!!」

 

「はい!! いきますっ!!」

 

 アルカトラズ島で、シータさんの霊基を使用することでラーマさんの怪我を治療することに成功してから数日。

 エジソンを説得することに成功した私たちは、いよいよ明日へと迫ったケルト軍との決戦に向けて最後の特訓を行っていた。

 

 マシュと私のことを見てくれるのはスカサハ師匠、そしてアステリオスのことを見てくれているの李書文先生だ。

 この二人はアルカトラズ島から大陸に戻ってきた時に出会って、何でもベリアルさんに頼まれたから私たちを師事してくれるといってくれた。

 ありがたい申し出だと思い、私は二つ返事で了承したんだけど…………

 

「呵々ッ! 傷つくことを恐れないのは利点ではあるが、そればかりに頼っていては守れるものも守れんぞ。お前はもう、ミノタウロス(化物)ではないのだろう? アステリオスよ」

 

「う ん ぼ くは アステリオスだっ!!」

 

 ベリアルさんの力でパワーアップしたけど、完全にはその力を使いこなせていなかったアステリオスも、李先生のおかげで力の使い方がわかってきたみたい。

 それに、マシュの方もスカサハ師匠が武器なら何でもござれの人のおかげで武器によって盾をどう振るえばいいのか理解してきている。

 

 そんな中で私自身も、スカサハ師匠からとっておきの()()()を教えてもらったんだけど、成功と失敗を繰り返している感じで実戦で使うには危険すぎる状態だ。

 

「ナイチンゲールさん」

 

「立香。……貴女も見たようですね、私の最後の時を」

 

 気分を入れ替えるというのと、明日の決戦で戦力に割り振りを任されたって言う事もあって、それを考えるために歩いていると、明日の治療に向けての準備をしているナイチンゲールさんにあった。

 どうやら私の表情を見て何を話したいのか分かった見たいだから、私は頷いて返す。

 

「世界の崩壊を止める責務をただ1人に負わせるなど、本来は正気の沙汰ではないのです」

 

 それは絶望的な所業に他ならなくて、自分のように狂わなければ耐えられないものだと、そうナイチンゲールさんは言う。

 

「ですが、貴女は決して1人ではありませんl。マシュが、そしてあの男……ベリアルとそのマスターもいます。幻だったかも知れない、けれど確かに私の側にあの子がいたように」

 

 この特異点の修復が、引いては人類の未来が掛かった戦い。 絶対に成功させなくちゃいけない、失敗は許されないんだという、そんな責任に押し潰されそうな私の心を癒してくれるかのように語りかけてくれる。

 

「貴女は十二分に努力しています、試続けています。だからこそ、重荷を背負う必要はありません」

 

 そんな私だから、もっと気楽に、そして誠実に決めたのだったら皆んなが応えてくれる。

 そう優しく微笑んでくれたナイチンゲールさんだったけど、その表情は少しだけ曇っているようにみ見える。

 

「こんな言葉を、あの子へ向けることが出来たら、何か変わっていたのかも知れませんね」

 

 それは、私が初めて聞いたナイチンゲールさんの弱音の様なものだった。

 彼女の事を振り捨てた、気にしていないような素振りを見せていたけど……やっぱり心残りがあったんだ。

 

「なら、また会って伝えればいいじゃないですか」

 

「え?」

 

「あの子、ナイチンゲールさんが年老いていても何も変わってなかったじゃないですか! なら今も何処かで生きてるのかも知れない、ナイチンゲールさんはサーヴァントとしてかも知れないけど、いつかどこかで再開できる! そんな運命を信じたっていいじゃないですか!!」

 

「ですが、それは計算的にも不可能な……」

 

 ナイチンゲールさんは私の事を言葉で癒してくれた。なら私は? 治療することは出来ないかも知れないけど、その心に希望を宿すことは出来るかも知れない! そんながむしゃらな思いを込めてナイチンゲールさんへ言葉をぶつける。

 

「死者が世界を救うために戦うような世界、宇宙人が本当に存在するような世界ですよ? 確実な計算式以上の事だって起きるはずですよ、きっと!!」

 

「…………ふふっ、私では治療不可だと診たベリアルが、どうして貴女やマシュを選んだのか理解できたような気がします」

 

 

 

 

 

 




メイヴちゃんをいつもの様にスパルタベリアル講座させるのは簡単でした。
けど! メイヴちゃんは邪ンヌのようなチョロインとは違う!! あの娘は“いい悪い女”なんだ! ベリアルさんの恐怖にだって打ち勝てる!!

という謎の信頼から今回のような会話になりました。

ベリアルさんがどのような『愛』を学んだのかの答え合わせはもう少し後で……。


ベリアルさんがいる事で戦力不足だった立香ちゃんたちは2人にハイパー師匠がついた事でそれを補います。立香ちゃんの必殺技? スカサハ師匠が教えてるんだ、スゴイものに決まってるだろおう?


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8

コロナでウルフェス が中止なんて……!!
今回は早めに投稿出来ました。まあ、5章をやるにあたって1番書きたいと思ってた部分でもあるんでね

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「それじゃあ、私たちは行くわね。 また会いましょうベリアル。今度は私が支配したこの大陸で会いましょう?」

 

 ベリアルさんが衝撃のゲッシュを立てた後、女王メイヴは気を失ったクー・フーリンをアルジュナに担がせ街を後にする直後。

 

「おい、授かりの英雄」

 

「……私ですか?」

 

 ベリアルさんが授かりの英雄と呼ばれるサーヴァント、アルジュナを呼び止めた。

 

「求められる英雄像に悩み続けるか、宿敵との決着をつけるか、どちらか一つに決めておけ。もし、決着を求めるんだったら……」

 

 

最高の舞台を用意してやる

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「宇宙警備隊大隊長ってのは随分とヒマみてえだな、ケン」

 

「────今しか、この瞬間しかないと思ったんだ」

 

 アトロシアスとなったベリアルさんとの最終決戦。ジードのピンチに現れたウルトラの父が張ったウルトラコクーンの中で衝突する2人は、距離を取り言葉を交わしていた。

 

「誰の邪魔も入らない。キングの介入すらあり得ないこの瞬間しか、お前と話しをする機会はないと思ったんだ」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 ────大地は灼き焦げ、遠くから見ていてもその周りの空間が震えているのが分かる。

 

「あれが、インドの大英雄同士の衝突……!?」

 

 アメリカ特異点での最後の戦い。南軍と北軍とで別れて進軍を開始した私たち。

 暗殺へ向かったサーヴァントたちは、アルジュナにやられた傷が完全には癒えなかったから後方で支援に回ってもらっているけど大丈夫、絶対に勝てる。

 

 現に、カルナとアルジュナの宿命の一騎打ちはカルナの方に分があるみたいで、このままいけばカルナの勝利は間違いな────

 

「────『抉り穿つ塵殺の槍(ゲイ・ボルク)』」

 

 

「……気に入らねえな」

 

「え……?」

 

「ベリアルさん……いつの間に!?」

 

『サーヴァントの反応が突然現れたのもそうだけど、ベリアルがなんだって? また彼が何かしたのかい!?』

 

「一体どんな()()()()を使いやがった。因果の逆転をどうやって止めやがった」

 

 何が、起きてるんだろう? 私が辛うじてわかったのは、突然現れた敵の王であるクー・フーリンと、さっきまで私たちの後ろをついて回っていたはずのベリアルさんが、クー・フーリンの武器であろうトゲトゲした()()()()()()()()()()()()という事だけ。

 

 後から聞いた話だけどクー・フーリンの宝具であるゲイ・ボルクは因果の逆転現象、『心臓を刺した』っていう結果を起こしてから武器である槍を放つ絶対に命中する宝具なんだという。

 それを槍を物理的に握るだけで止めるってベリアルさんの何したの? 

 

「メイヴに誓ってやったからな。殺さないでおいでやる……元いた場所に戻ってろ」

 

「ガハッ!?」

 

 握った槍を砕いたベリアルさんは、クー・フーリンとの距離を詰めると彼の頭を掴み地面に叩きつける。

 そして続けざまにクー・フーリンを彼方へと蹴り飛ばしてしまった。

 

『べべべ、ベリアル!? 何をやってるんだ君はっ!! 忘れた訳じゃないだろ、君自身がゲッシュを立てたんだぞ“ケルト軍を殺さない”なんて馬鹿な誓いを!!』

 

「だから殺してねえだろ。殺さねえ程度に痛めつけただけだ、それにアイツは聖杯を埋め込まれてる分他より頑丈だからな」

 

 ベリアルさんが私たちと別れていた内に女王メイヴと交わしたというゲッシュ『この特異点が存在し続ける間、ベリアルとその契約者は、ケルト軍を殺してはならない』というもの。

 ベリアルさんが言う通り、殺さなければゲッシュを破ったことにはならない。まあ、ベリアルさんの力なら殆どの敵が手を出した瞬間に死んでしまうから、今クー・フーリンに攻撃する時も随分と手を抜いているようだったし。

 

 邪魔者をどかしたベリアルさんは、膝をついているアルジュナへと近寄っていく。

 

「出来もしねえことをやろうとするからその有様だ。無様だな、授かりの英雄」

 

「はあ、はあ……ベリアル……」

 

「本当に勝ちてえんだったら捨ててねえものが一つあるだろ……なあっ!!」

 

「ふぇ!?」

 

「アルジュナ……!」

 

 グサッと、ベリアルさんの手がアルジュナのことを貫いた。

 私も含めてみんなが驚く中で、ベリアルさんはその手から何かをアルジュナの霊基の核へと注入していく。

 

「うぐっ……! こ、これは……!」

 

「因縁に決着(ケリ)をつけてえんだったら、テメエが拒絶した()すら力にしろ」

 

 その言葉は、まるでベリアルさん本人が拒絶していた誰かの力を自分の物としたことがあるかのような台詞だ。

 

「そうか、(クリシュナ)か……!」

 

「クリシュナ? それって確かアルジュナの従者とかなんとかってドクターが」

 

「マスターが知っているクリシュナとは別だ。(クリシュナ)とはアルジュナの中に潜む闇、アルジュナが受け入れることが出来なかった側面。それを引き出そうというのか、ベリアル」

 

 博樹さんに聞いていたけど、ベリアルさんが今アルジュナに注入しているのは“ベリアルの闇”と呼ばれる因子だ。

 因子を打ち込まれたからだろうか、アルジュナの黒かった髪が部分的に白色に染まり、浅黒い肌にはウルトラマンとなったベリアルさんのような赤いラインが入っていく。

 

「はあ……はあ……カル、ナ……!!」

 

「いいか、周りの目なんぞ気にするな。何をしようが、どんな手を使おうが勝てばいい」

 

 ベリアルさんはそう言うと、博樹さんの手の甲にある令呪を2画使い、カルナとアルジュナへと魔力を送って見せた。

 

『カルデアの魔力リソースを勝手に……』

 

「お前もこのまま決着(ケリ)がつくのは許せねえだろ、施しの英雄。アメリカを背負うだろうケルトを滅ぼすだろうが、人類の未来だろうが関係ねえ!」

 

 ベリアルさんが手を高く上げると、カルナとアルジュナを包み込むように巨大なドームが形成されていく。

 誰の邪魔も入らない空間で、カルナとアルジュナに決着をつけさせてあげるってこと? 

 

「ケンのヤツほどの強度はねえが、サーヴァントごときがどれだけ暴れようが絶対に壊れはしない。存分に暴れろ!!」

 

「ふう……ああ感謝だ。この力を憂いなく扱える日がこようとは……いくぞカルナ、この力を使ってでも私は、()()はお前に勝つ!!」

 

「ああ、どうやらベリアルのお陰で如何なる天魔といえども、邪魔は入らない。 施しの英雄であるオレ、まさか施しを受けるとはな……。 アルジュナ、お前の勝利はオレが奪う!!」

 

「カルナああああああっ!!」

 

「アルジュナああああっ!!」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「はっはっはっ、その為だけにこんな大層なもん作りやがったてのか」

 

 父────ケンは、ベリアルさんと話すためにアトロシアスの攻撃ですら破壊できないコクーンを作り出した。

 その中でケンは、自分の想いを語るため口を開こうとすると、ベリアルさんがケンに向けて拳を放つ。

 

「話があるなら、闘いの中で語れ。死ななかったら最後まで聞いてやるよ」

 

「ふっ、そうだな。お前も私も、()()()()()()()だからな」

 

 ────っ! 気づいてたんだ。ベリアルさんがアトロシアスになった理由、地球へと降り立った理由を。

 そうして、武器や光線を使ったりしない2人のウルトラマンの単純な殴り合いが始まった。

 

 ぶつかり合う拳と拳。最初に相手の体へ届かせたのは、ベリアルさんだ。

 

「どうやら、古傷のほうは完全に治してきたみたてえだな」

 

「お前と語らうのに、名誉の負傷など残しておく価値はない。 お前と全力でぶつかるために、私はここに来た!!」

 

 想いを込めたケンの拳がベリアルさんに届き、ベリアルさんのことを後退させる。

 

「今も! 昔も!! どれだけの時が経とうと変わることはない!! お前は私の憧れだ!!」

 

「気に入らなかった!! 地位も才能も!! 確約された未来も!! 最初から全て握っていやがったテメエが!!」

 

「お前が私の先を歩いてくれる。そんなお前に追いつきたくてがむしゃらになれた!! 才能に甘んじていた私に、お前が努力することを教えてくれた!!」

 

「いつもいつもお前はオレの先に立ちふさがる。誰からも慕われ、誰もがお前に憧れた! 生まれた時から一人だったオレに絶対に手に入れられねえものだ!!」

 

「憧れた!!」「妬んだ!!」「嬉しかった!!」「悔しかった!!」「一緒に隣を歩きたかった!!」「追いつき、そして超えたかった!!」「私にはない力を持つお前と!!」「オレにはない才能をもつお前を!!」

 

「「お前のようになれたらと、何度も思った!!」

 

 お互いがお互いをどう思っていたのか、殴り合いながら拳と共に想いをぶつけていく2人。言ってることは真逆かもしれないけど、感じていたことは一緒だったんだ。

 

「言っても無駄だとは分かっている。だが、私は何度も夢を見た!! あの時お前の手を掴んでいれば! 自分の立場などかなぐり捨てる覚悟があれば!! 今もお前と並んで歩いていたんじゃないかと!! ありえないもしもをっ!! 何度も夢見たんだ!!」

 

「はっ!! やっぱりお前はあまちゃんだなケン!! まあだが、その甘さを超えられねえと思ったからこそ! オレはこの力を手にしたんだ!! 光の国への復讐? 全宇宙の支配? 違うな、オレが一番求めてたのは、全力を出したお前を倒すことだった!!」

 

 ケンへの恨みってそういう事だったんだ。初めて闇の力を手にした時も、復活して対峙した時も、ケンはベリアルさんに対して本気を出せなかった。それが悔しかったから、ベリアルさんはケンのことを恨み続けていた。けど、その恨みも今ようやく晴れる。

 

 24時間なんて、ウルトラマンたちにすればほんの少しの時間かも知れないけど……2人は息を切らしながらもその手を止めようとせず殴り続けていた。

 

「はあ、はあ……もう少しでこのバリアも限界が近いな……。 私の力だけでは、止められなかったか」

 

「はあ、はあ……ふっ、戦線を退いてたくせにここまでよくやったじゃねえかケン」

 

「────消えるつもりなんだろう、ベリアル」

 

 もうコクーンの残り時間もわずかだと言うタイミングで、ケンがベリアルさんへ確信を持っていう。

 

「私との闘いに素直に応じたのも、吸収したキングの力を消費して彼──お前の息子だというジードがお前のことを倒せるまでに弱体化するため。そうだろう?」

 

「はっ、お前には何もかもお見通しってわけか。ああそうだ、オレはここで終わる。息子の手によってな」

 

 そう、ベリアルさんは自分で自分の終わりを決めたんだ。ケンやゼロ、ましてやキングによって終わるんじゃなく自分の息子であるジードの手によって終わることを望んで。

 ケンとの戦いも、分解酵素を打ち込まれたことでキングの力を放出すことで、ジードが自分に勝てる可能性を増やしていた。だからケンとの闘いは今までにないくらいに全力で挑んでいた。

 

「これで本当にさよならだ。最後の最後でお前と話しが出来てよかった。友として、お前の最後を見届けよう」

 

「はっ! まだこんなオレのことを友呼ばわりするとはなあ。 馬鹿なんじゃねえのかケン?」

 

「馬鹿じゃないさ。光の国には共に戦った仲間や慕ってくれる部下たちは何人もいるかもしれないが。 私にとって友達と呼べる相手は、一生涯かけてただひとりだけ。宇宙警備隊大隊長でもなく、ウルトラの父でもなく、ただの一人の戦士であるケンと呼んでくれる大馬鹿者だけだ」

 

「ふ、ふっはっはっはっは!!! じゃあなケン。楽しかったぜ」

 

 これが、ウルトラコクーンの中で起きていた2人の戦士の最後の語らい。ケンとベリアルさん、そして私しか知ることのない一幕。

 深い闇に堕ちてしまおうが関係ない、ケンにとってベリアルさんはいつまでも最初で最後の友達であり続けていたんだな……

 

 

 

 

 

 

 




アルジュナ(inベリアル因子)
 ベリアル因子を身体に注入された事で、拒んでいたはずの黒を受け入れてしまった状態。
気分的には酒に酔っているような感じとおんなじなため、黒を見たものは全て殺すということも忘れてカルナとの全力の死闘を楽しむことしか考えていない。
 fgo本編に実装されているアルジュナ(オルタ)とはまるで違うので注意。

ベリアルコクーン(仮称)
 ケンのウルトラコクーンをベリアルさんが再現した技。見た目は赤黒い色をしたウルトラコクーンまんまだが、ケンがベリアルさんと語らうために練り出した物よりも練度は低い。 といっても神霊クラスのサーヴァントですら壊すことが出来ない強度なため普通に強力。


狂ニキは因果の逆転を止めたのにカラクリがあると言っていますがそんな物はありません。ただ純粋な力が因果を捻じ曲げるほどだったというだけの話。


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9

まさかまさかのフュージョンファイトでゼロ新形態の登場!
ゼロ10周年はベリアルさんの10周年でもあるんだから融合獣でもいいんで出ませんかね?

ジードの変身アイテムでもあるんでゼットライザーは買います。
ご唱和ください我の名を!!


ベリアル!!!! 


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「これで、最後ですっ!!」

 

「うっ、くうッ!!」

 

 マシュの盾による会心の一撃が届き、ようやくメイヴが倒れた。 

 首都ワシントンの最後の戦い、メイヴは無限の兵を産み出して自分は後ろから攻撃をしてきたけど、全快のラーマさんにナイチンゲールさん。そして、スカサハ師匠と李先生に十分に鍛え上げられマシュとアステリオスの攻撃によって、産み出すよりも早い速度で兵を倒していくことで勝利を収めた。

 

「ああもうっ! これもそれもベリアルのせいよ!! アイツのせいでクーちゃんってば王としてじゃなくて戦士として目覚めかけてるんだもの!!」

 

 残酷冷徹な王としてメイヴが作り出したはずのクー・フーリンは今、というか首都に到着してからずっとベリアルさんだけを執拗に攻撃してきた。

 と言っても、ベリアルさんは興味がないのか視線も合わせずにクー・フーリンの攻撃をいなしながら私たちの戦いを見ているようだった。

 

 そのおかげでメイヴ一人に集中できたんだけどね。

 

「この特異点でクーちゃんのことを超えられる戦士はいなかった。だから、王として成り立ってたの」

 

「あっ!! ここにベリアルさんが来たから」

 

「そ、アイツの存在がクーちゃんを変えてしまった。ううん、戻ってしまったって言った方がいいかしらね? 自分よりも強い相手を超えたいっていう戦士にね」

 

 そうこう話をしているうちにメイヴの退去が始まる。 メイヴの体が薄くなり少しずつ光になっていく。

 

「逝くのか、メイヴ」

 

 えっ、ベリアルさんっ!? さっきまでクー・フーリンの相手をしていたはずのベリアルさんがいつの間にか消えゆくメイヴの前に現れた。

 クー・フーリンの方を見ると、ギガバトルナイザーの力で両手両足を縛られて身動きが取れなくなっていた。

 

「ええ、ベリアル。 でも、役割は果たしたわ……。アンタの事だから、私が何をしたのかなんて分かってるんでしょうけど」

 

「ああ、だが止めねえ。 アレはお前の最後の覚悟、決意。女王としての意思を貫き続けた何よりの証だ」

 

「ふ────何よそれ、惚れちゃうじゃないのやめなさいよね」

 

 ベリアルさんとメイヴの2人が意外に仲良く別れの話をしているんだけど、どうしても聞き逃せない台詞があったものだからつい突っ込んいく。

 

「アナタは、何をしたっていうの?」

 

「あら? まだ気づいてないの、鈍感ね。 ま、それくらい鈍感な方が瞳の輝きを鈍らせないからいいのかも知れないけど……。()()()()よ」

 

『────っ。そうか! そういう事か!! こんなこと、ソロモンですら試そうともしない試みだぞ!? ていうか知っていたなら対処できただろうベリアル!!』

 

 メイヴの言葉に即座に反応したであろうドクターが大慌てで通信を入れてくる。

 

『“二十八人の戦士(クラン・カラティン)”。女王メイヴの伝説に刻まれたその存在を枠に収めることで、彼女は魔神柱を丸ごと二十八体召喚して見せたんだ』

 

「二十八っ!!?」

 

 28体の魔神柱。ネロ達が異常に気付いているなら北部戦線に向かって対処しているだろうけど、どう考えたって倒しきることは不可能に近い。

 ウルトラマンになったベリアルさんなら絶対に勝てるんだろうけど、あの様子だと行く気はないみたいだし……

 

「さようなら。ベリアル。────ああそうね、立香とマシュといったからしら? 喜びなさい、この私を倒した貴女たちにゲッシュを誓ってあげる♡」

 

「「────え?」」

 

「“1度だけ、貴女たちがピンチの時に助けに入らなければならない”ま、この特異点を修復出来たらの話になるでしょうけど。じゃあ、ばいば~い」

 

 なんか釈然としないまま消えていったメイヴだけど、その消失を目の前で見ていたベリアルさんの表情はどこか嬉しそうな笑みを浮かべていた。

 

「ふははは!! 最後まで興味が尽きない相手だったなあ。だからこそ────気に入らねえ」

 

 ────突然、ベリアルさんから感じる圧が変わった。息が詰まり、私たちに怒ってるわけじゃないのに冷や汗が出てくるほどの圧が

 その態度のままホワイトハウスを後にしようとするベリアルさんに声をかける

 

「ベリアルさんっ!!」

 

「待ちやがれええ!! お前は、オレが殺す!!」

 

「……藤丸立香、マシュ・キリエライト。そいつは過去のオレだ、超えて見せろ」

 

 ────!! 超えろ? ベリアルさんが私たちにクー・フーリンを倒せって、超えて見せろって()()()()()()? 

 私は隣にいるマシュと顔を合わせ頷くと、ホワイトハウスの出入り口を塞ぐように、ベリアルさんが出ていくのを邪魔されないように立つ。

 

 そうして、拘束が解かれベリアルさんを狙うクー・フーリンと対峙することになる。

 

「邪魔するんじゃねえよ。オレが用あるのはベリアルだけだ。殺すぞ」

 

「はっ! 殺せるものならやってみればいい!! こっちは師匠に弟子の不始末を、それにベリアルさんに任されたんだ!! 絶対に通さない!!」

 

「はい!! クー・フーリンを倒し、この特異点の聖杯を回収します!!」

 

 自分でも単純だって思う。だって仕方ないじゃん! あのベリアルさんが私たちに任せてくれるなんてありえないと思ってたから!! 

 スカサハ師匠から学んだ全部、全部ぶつけてクー・フーリンを倒す!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが……“二十八人の戦士(クラン・カラティン)”の魔神柱」

 

 ワシントン首都から出ると、まだ北部戦線へは遠いというのにその巨大さが目に入った。

 あたり一面を覆うほどの魔神柱たちが空をうごめき、大地に向かって攻撃している。

 

 その場所へ向かって走りながら私は、ベリアルさんへと質問をする。

 ただ、カルデアの人たちに話が聞こえないように心で

 

『メイヴ、ラーマさんにシータちゃん。他にもいろいろな人たちを見てきて学んだベリアルさんの愛って何なんですか?』

 

『────力だ』

 

『力? 愛情は力と同じだって、そういうことですか?』

 

『誰が持とうがその形は変わらない、振るい方によってその色を変える。光だろうが使い方によって悪になる、闇も扱い方では善へと至る。担い手によって強く輝くこともあれば深く濁ることもある。力も愛情も変わらない、等しく同じものだ』

 

 力と同じ。力を追い求め続けたベリアルさんが、愛情をそう言うに捉えているとは思わなかった。でも、間違いじゃない。

 行き過ぎた愛情が救いようのない事件を起こすことだってある、ティガに出てくるカミーラだって歪んだ愛情があのような形で現れていたりする。

 

 形はみんな一緒で、それを振るう色が違うかあ

 

『──きさん!! ──ろきさん!! 博樹さん!?』

 

「うわ、どうしたんですかロマニさん」

 

『どうしたもこうしたもあるもんか!! 何回話しかけても応えてくれないもんだからびっくりするじゃないか!!』

 

「すいません。ちょっとベリアルさんと話をしてて」

 

 北部戦線へ向かう速度を落とすことなくベリアルさんと話をしていたものだから、ロマニさんからの連絡に気付かなかった。

 

『んんっ!! そんなことよりもだ! メイヴと交わしたゲッシュがある君たちが、彼女が最後に召喚した“二十八人の戦士(クラン・カラティン)”の魔神柱を倒していいのかい?』

 

「────もうあれは、メイヴの“二十八人の戦士(クラン・カラティン)”じゃねえからな」

 

『何を……? て、な、なんだこの数値は!? 何が起きてるっていうんだい!!?』

 

 不規則に動いていたはずの魔神柱たちが、空に向かって螺旋を作り始める。

 渦の中心に他の魔神柱とは見た目の違う、銀色の体色と菱形の目を持つ魔神柱が出現した。

 その魔神柱は遠くからでも聞こえる声で確かに言った。

 

────平和を望む心を持つ者たちよ、絶望せよ

 

 銀の魔神柱を中心にして名もなき魔神柱は1本残らず吸い込まれていく。そうして合計二十九本になった魔神柱はロンドンで対峙した時のような人型の魔神柱へと変化した。

 でも、どうやらそれだけでは終わらないらしい。

 

 上空、はるか空に浮かんでいる光帯から膨大なまでの魔力が降り、その魔力すべてが魔神柱へと降り注いだ。

 そうして魔力を吸収した魔神柱はその姿を変えた、私がよく知る存在に

 

()()()()()()()()()……」

 

 ウルトラマンコスモスにおいて秩序をもたらすために作り出された人工生命体、全ての生物の意識を一体化させるという目的が()()()()()によってねじ曲がり沢山の星を死の星へ変えていったウイルスーカオスヘッダ──。そのウイルスが、ずっと自分の目的を邪魔してきたコスモスを倒すために進化し続けた最強にして最後のカオスヘッダーであるカオスダークネス。その擬きが、目の前に現れた。

 

『さあ行くぞ宮原博樹。アイツの()()()を穢した蛆を嬲り殺す』

 

「はいっ!! 行くよ! アリスちゃん!!」

 

 まだ回復しきれてないから本のまま私の目の前にベリアライザーを出してくれるアリスちゃん。それを掴み、全力で走りながら二本のカプセルを起動させる。

 

ウルトラマンベリアル!! レイブラッド星人!! 

 

 走っている私の背後に、飛びながら本来のベリアルさんとレイブラッド星人が現れる。

 二本のカプセルを装填し、ライザーに読み込ませその力を一つに混ぜ合わせる。

 

ウルトラマンベリアル!! レイブラッド星人!! 

 

デモニック・フュージョン!! 

 

超えるぜ! 覇道!!! 

 

 2体の力を完全に混ぜ合わせたライザーを私自身の胸元へ寄せ、その力を体へ注入する。

 

ベリアルウウウウウウウッ!!!! 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ぐっ……!? カハっ!!」

 

「だから言っただろう、お前ら如きじゃ俺には勝てない」

 

「ナイチンゲールさんっ!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私たちの方を睨むクー・フーリン。

 メイヴとベリアルさんがいなくなってからと言うもの、残酷冷徹なまるでロボットのような面と、怒りに身を任せた暴れ馬のような面の2つを振り回しながら向かって来るクー・フーリン。

 

 聖杯によるブーストもあって、傷を与えたとしても即座に回復するクー・フーリンは痛みを、四肢を失うことだって恐れない。

 そんなクー・フーリンに致命の一撃を与えられないまま続いた戦いで、ナイチンゲールさんが刺されてしまった。

 

「(落ち着け、落ち着け。まだ、終わりじゃない。考えろ、思考することを諦めるな。 道を見つけるんだ、()()()()()()()()()()()()()を!!)」

 

 私は思考を無理やりにでも落ち着かせるために、()()()()()()()()()()()()()()()冷静さを失わないようにしてる。

 クー・フーリンの槍は確かに届いてる。だけど、真名解放したものじゃなかったから心臓を穿つまでには至ってない。現にナイチンゲールさんは退去していないしその兆しすら見られない。

 ならまだ負けじゃない! 短い付き合いだけどナイチンゲールさんは自分の腹が貫かれたくらいで諦めるような人じゃない!! 

 

「(アステリオスはいつでも宝具打てるように準備していて。ラーマさんとマシュはクー・フーリンに隙ができるその瞬間を逃さないで)」

 

「(うん、わかった)」

 

「(了解した)」

 

「(分かりました先輩)」

 

 一瞬の隙、私たちにとって最後のチャンスを逃さないためにクー・フーリンへと目を背けない。

 そうしていると、槍を刺されぐてっとしてたナイチンゲールさんの意識が戻ったようだった。

 

「勝てない……だから諦めろと? それ、こそ……!! 有り得ない!!」

 

「くっ!」

 

「────っ!! マシュ!! ラーマさん!!」

 

 意識を戻したナイチンゲールさんは、懐から手榴弾を取り出し口で安全ピンを外し距離なんて関係なしに殴りつけ爆発させる。

 そこしかないと確信した私は二人に指示をして突貫してもらう。 爆炎の中でもクー・フーリンの居場所は変わらないから、マシュとラーマさんの二人の攻撃が直撃し相手のことを吹き飛ばす。

 

「アステリオス!! 宝具をお願い!!!」

 

「う、ん!! 【万古不易の迷宮(ケイオス・ラビュリントス)!!】」

 

 ナイチンゲールさんを救い、クー・フーリンと引き離せたその瞬間を狙いアステリオスに宝具を発動してもらう。

 オケアノスでも見せてくれた迷宮を形成し、態勢を立て直すためにも私たちとクー・フーリンを引き離した。

 

「ナイチンゲールさん!! すぐに治療を!!」

 

「不要です立香」

 

 腹部を貫かれてしまったナイチンゲールさんのことを治療しようとしたら本人から止められた。

 

「時間がありません、立香すぐに治療の準備をお願いします。ここで、決めるのでしょう?」

 

「────! うん、終わらせる!! この迷宮で勇士を討つ!!」

 

 この迷宮は、アステリオスが負けるか、侵入者であるクー・フーリンを倒すかどうかで解除されるもの。

 態勢を整えるのに加えて、ここならアステリオスのいる私たちに分がある。

 

 

 だから、ここで終わらせる!!




【カオスダークネス(魔神柱)】
 アメリカ特異点を任された魔神柱であるハルファスがメイヴが召喚した二十八人の戦士(クラン・カラティン)の魔神柱を吸収&天に伸びる光帯の力も使ってカオスダークネスへとなった存在。
 なんでカオスダークネスなんかは……ご想像にお任せします
 ソロモンは手を下さない?それはカルデア(立香ちゃんたち)に言ったのであったベリアルさんは別なんです。(てかソロモンにとってベリアルさんが一番の障害だから……)

 まあカオスダークネスはベリアルさんの逆鱗に触れたからね。次回をお楽しみに!!

【オルタニキ戦】
 ここでようやくアステリオスが大活躍。この為に5章はアステリオスだったのです。


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10

フュージョンファイトゼットヒート1弾に登場するジードのUR。まさかのジードプルーフに絵柄が神過ぎてコレクションとして欲しい……。プレイしてないけど……

今回は前半は「フュージョンライズ」、後半からはルーブ「Redclose」か「Bluespring」もしくは2つが合わさった「Ready to beat」が流れているようなイメージで書きました。

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「道徳を緩め、血肉を求め、略奪に努め」

 

 カオスダークネスへと変貌した魔神柱はそう言って、地面に向かって両手から光弾を放ち大地を抉る。

 北部戦線にいるサーヴァントたちを一層するための攻撃、エクリプスモードのコスモスですら苦戦するカオスダークネス、本物じゃないにしてもその威力はサーヴァントが耐えられる訳がない。

 

 ま、それはここにベリアルさんがいなければの話だけどね

 

「む? ぶ、無事なのか?」

 

「ま、まあ!? アイドルの私があんな程度の倒されるわけないじゃない!!」

 

「これは、高出力なバリアか? あの一瞬でこれほどまでものを!?」

 

「すごい! すごいわ!! これってとってもマハトマを感じるわ!!」

 

 サーヴァントの誰も、いや北部戦線にいた誰もカオスダークネスの攻撃で傷ついていない。

 ベリアルさんがウルトラコクーンと同じ強度を持つバリヤーを張って守っていたから。

 

「お前如きが命を削るなんてのは気に入らねえからな。はっ!!」

 

 照れ隠しとかそんなんじゃなく本気でそう言ったベリアルさんは、バリヤーで包んだ北部戦線にいる人たちを邪魔にならないようにごみをポイ捨てするかのように、自分の後ろへと放り投げる。

 荒っぽいにも程があるから怪我をした人もいるだろうけど、カオスダークネスが傷つけた訳じゃないからいいんだろう。

 

「メイヴの覚悟を踏みにじってまで得た力だ。どれだけの物か見せてみろ」

 

 

「ベリアルウウウウウウウッ!!!」

 

 相手を舐め切った様子のベリアルさんの態度に怒り、カオスダークネスは手と手の間に高出力のエネルギーを溜め込み始める。

 あれってエクリプスモードのバリアも容易く突破して見せた破壊光線かな? 

 

 溜めに溜めた末に放ってきたその破壊光線をベリアルさんは避けるでも、防御するのでもなく直立のまま受け止める。

 

「どうした、まさかこの程度だとは言わねえよなあ」

 

「────ッ!! ガアアアアッ!!!」

 

 コスモスのバリアも突き破り吹き飛ばした光線も、ベリアルさんの身体に傷一つつけることは出来ない。それに、直立していたベリアルさんのことを動かすことすら出来ていない。

 流石のカオスダークネスも少しは傷つけられると思ってたんだろうな、叫び声を上げ両手から光球を連射しながら突進してきた。

 

「肉共互いを赦し高め尊び、されど慈愛に至らず孤独を望む。もはや我らの理解は彼岸の果て」

 

「確かになあ、人間ってのは理解しがたい生き物だ」

 

 両手を重ね叩きつけてきたカオスダークネスの攻撃を片手で受け止めながら、ヤツの言葉に返していく。

 

「ならば何故守る、生きる価値もない闘争するしか能のない定命の者(にんげん)共を」

 

「理解できると思っているからお前らは弱い」

 

 腕をはじきカオスダークネスの頭を掴み地面に叩きつける。

 ベリアルさんの手から逃れようともがこうにも、カオスダークネスの力じゃベリアルさんの手から逃げることは出来ない

 

「巣食ってた人間一人の考えも分からねえヤツが、人の感情を理解できると思うな」

 

 完全なコピーではないにしても、その質量からくる重さは同じだと考えてもカオスダークネスの体重は7万6千tあったはず……。

 そのカオスダークネスのことを片手だけで容易に持ち上げて見せるベリアルさん。いや、5万5千tあるタロウのことも片手で持ち上げてたし出来なくはないのか……? 

 

 持ち上げたカオスダークネスのことを空高くへとぶん投げると、ベリアルさんはトドメの準備を始める。

 ただ、デスシウム光線でトドメを刺す気はないらしく、腕を胸の前で交差させるように重ねる。

 

「お前ごときには、これで十分だ。ヘアっ!!!」

 

 “デスシウムリッパー”重ねた腕を広げるようにして放ったそれはジードの“レッキングリッパー”のベリアルさん版と言えるその攻撃は一直線にカオスダークネスへ向かっていく。

 相手もどうにか耐えようとバリヤーを張るけれど、そんなもの無いものように何の障害にもならずリッパーは綺麗にカオスダークネスのことを切断した。  

 

「べ、リ、ア、ルうううううううッ!!! 

 

『お疲れ様ですベリアルさん。……ベリアルさん?』

 

 綺麗に爆発して消えたカオスダークネスを他所に、ベリアルさんはどこか遠くを見るように首を曲げている。

 一体何を見てるんだろうか? 

 

「そうだそれでいい藤丸立香!! マシュ・キリエライト!! お前たちは()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり人間という生き物は愚かだ。螺旋の如く闘い続ける、その螺旋が止まる日などくるはずがない」

 

「あな、たは……」

 

 クー・フーリンの槍が自身の腹部を貫かれたはずのナイチンゲールは、気が付けば何もない白い空間に立っていた。

 意識がはっきりとしないでいると、目の前に二度と会えないと思っていた少女が、()()()()()()()()()()()姿()で立っていた。

 

「この世から理不尽が消えることはない。この世から戦いが消えることはない。あの戦争を歩んだお前なら、分かっていることだろう?」

 

 ここが何処で、何故二度と会えないと思っていた少女が現れたのか、考えなければならない事が無数にあるがナイチンゲールはそれら全てを放棄して彼女の問いに応えることにする。

 

「────いいえ、違います。否と、幾千幾万と叫びましょう。失われた命よりも、救われる命が多くなったとき、螺旋の闘争はいつか終端を迎えるはずです。それが、サーヴァントとなった私の使命ですから」

 

「やはり、お前は変わらないな。()()()()()()()()()()と同じ輝きを放っている」

 

 ナイチンゲールの答えに少女は、微笑みながら彼女に寄って行く。

 

「ならば、こんな所で立ち止まるなナイチンゲール。何度、何百と倒れようと無辜の存在の為に立ち上がれ!!」

 

「勿論そのつもりです。この体が貫かれようと、骨が折れてたとしても治療は最後まで遂行します!!」

 

 そう言うとナイチンゲールは少女の後ろに出来た光を放つ扉のようなものへと歩き出す。

 

「お前は私の()の目指す夢そのものなんだ。行ってこい!!」

 

「ええ。────()()()()()

 

()()()()のその兄たちが言った」

 

 

()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()() 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「────ミノスの迷宮か……俺をこんな場所に閉じ込めやがって……」

 

 アステリオスの宝具によって迷宮へと送り込まれたクー・フーリン。彼は迷宮の出口を探そうとはせず、何時いかなる時敵が襲い掛かって来てもいいように槍を構えていた。

 その理由は簡単だ、この迷宮を抜け出すのには出口を探すよりも簡単な方法があるからだ。

 

 宝具を、この迷宮を作り出したアステリオスを倒す。ただそれだけだ。しかも相手は自分のことを絶対に倒しにやってくる、それが分かっているからクー・フーリンはカルデアの者たちが自分を倒しにくるのを待っている。

 

 しばらくすると通路の先からコチラに向かってくる足音が寄ってくる

 

「あの時は苦渋を舐めさせられたが2度はないぞクー・フーリン!! 余にはシータがついている!!」

 

「ラーマ、お前ひとりか。いいぜ、もう一度お前の心臓を貫いてやるよ、今度は生き残れる可能性もない程に徹底的にな!!」

 

 駆けてきたのはラーマ一人。立香たちの姿が見えないが彼はリベンジと言わんばかりにクー・フーリンへと向かっていく。

 走りながら手をかざし、クー・フーリンの四方八方を囲むよ光り輝くに長剣や短剣に槍や棍棒、戦輪(チャクラム)や斧を出現させ同時にクー・フーリンへ向かって射出する。

 

「コイツはあの時は出さなかったな。だが、当たると思ってるのか」

 

【矢避けの加護】相手を視界に捉えた状態であれば、どのような投擲武装であっても肉眼で捉え、対処できる。このスキルが存在する限りクー・フーリン相手に遠距離からの攻撃は通じない。

 現にラーマの放った投擲武器は一つとして当たらない。それはラーマも承知だったのか直ぐに剣で襲い掛かる。

 

「なに小手調べというヤツだ。ここからは余が持ちうる武器全てを持ってお前に挑もう!!」

 

 クー・フーリンの槍とラーマの剣がぶつかり合う。ラーマは剣だけではなく槌や鞭と種類豊富な武器でクー・フーリンの槍へ対抗していく。

 そうやって戦闘を行いながらラーマは剣に魔力を溜め込んでいく。

 

「ソイツは本来なら矢だろ? そんなのが俺に届くとでも?」

 

「八ッ!! コレは余が生まれた時からある魔を滅する刃だ。魔の王へと堕ちたお前に届くと思ってな!!」

 

 他の武器を出し続けクー・フーリンの足を止めたラーマは、不滅の刃を円盤状の光へと変える。

 見る人が見ると完全に「八つ裂き光輪だ!!」と喜びそうなソレをクー・フーリン目掛けて放つ。

 

「羅刹王すら屈した不滅の刃、その身で受けてみよ! 【羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)!!!】」

 

 強大な魔力の塊が放たれ、クー・フーリンへと向かっていく。どんなに全ての投擲武器が避けられるからと言ってその余波までは避けることは出来ずクー・フーリンを傷つけていく。

 だが、肝心の羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)はクー・フーリンは届かず彼の後ろへと飛んでいく。

 

「あと言い忘れていたが」

 

 自身の宝具を外したというのに悔しそうな顔を見せないラーマはクー・フーリンへ何か言おうとしたその時。

()()()()()()()()まるで地形そのものが変わってしまうんじゃないかとすら思えるほど大きな揺れが

 

「どうやら、この迷宮はミノスの迷宮ではないらしいぞ」

 

 油断もなにもしていなかった。元々複数人で挑んできた敵が突然一人で挑んできたのだ、絶対に何か仕掛けてくることは容易に想像できた。

 迷宮の主が迷宮を作り替え自分の前に突然姿を現す、一瞬の隙をついてトドメを刺してくる。そんな浅はかな作戦だろうと予想はついていた。

 

 だが、幾千の戦場を駆けてきたクー・フーリンでもこれは想像できなかった。

 殺気と長年の経験から背後を振り向いた彼の前にいたのは……

 

回転し続ける羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)をその手に携えるアステリオスの姿だった。

 そしてそんなアステリオスの肩に乗る立香がクー・フーリンに向かって豪語する

 

「この迷宮は、()()()()()()()()()だ!!」

 

「ウオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

「余の羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)を握りしめるだと!? アステリオス、自分が何を言っているか分かっているのか」

 

『自分が何を言ってるのか分かってるのかいアステリオス。ラーマの宝具を握りしめるってことは、()()()()()()をその身に受けることになるんだぞ!』

 

 アステリオスからの突飛な提案にラーマさんもドクターも驚きながら止めさせようとする。生まれついての魔(ミノタウロス)であるアステリオスにとって魔を滅するラーマさんの宝具は天敵と言っていいものだ。

 だけど、無茶も承知の上でアステリオスはやり通すんだと強い意志を私たちに見せる

 

「ア イ ツは、父上 と同じ、だ。だ か ら、僕が、アイツを 止 め る!!」

 

 この特異点を作り出した王であるクー・フーリンを見てアステリオスは父親であるミノス王と被って見てたんだ。

 アステリオスを迷宮へ閉じ込め、迷宮に少年少女を生贄として捧げていた王様。その父親とクー・フーリンのことを同じように見ていたから止めたいって思ったんだ。

 

 なら私は、アステリオスの意思を覚悟を尊重したい! 

 

「やろうアステリオス、やりきろう!!」

 

「うん! マスター!!」

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

 

 迷宮を造り変え、羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)が目の前へくる場所へと出た瞬間に私は令呪を1画輝かせる。

 

「令呪を持って命ずる!! 【人を示し続けろ!! アステリオス!!】」

 

「ウオオオオオオオオオッ!!!!!!」

 

 アステリオスの瞳が炎のように揺らめき()()()()()()()。それは人間としての理性を示しているのか彼の中にあるベリアルさんの力を最大まで引き出しても、理性を失わず羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)をその手で握りしめた。

 

 アステリオスの手が焼け焦げる音が聞こえるけど、アステリオスはその痛みに堪え完全に虚を突かれたクー・フーリンへとその一撃を加える。

 

「ガっ! ぐあああああああっ!!!」

 

 クー・フーリンへと届いたその一撃は彼の身体を抉り、身体の内側にある霊核と聖杯が混じり合ったものが目視できるほどの所まで削っていく。

 このまま勝てる! けど、そうはさせてくれないよね……

 

「勝った気になってんじゃねえええええ!!! 全呪解放【噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)!!!】」

 

 クー・フーリンは頭部と両腕に禍々しい鎧を纏う。人の原型を留めた怪獣へと変貌したクー・フーリンは胸が抉られる痛みなんて気にしていないかのようにその鋭利に変わった両腕でアステリオスを貫こうとする。その危険性を察知したのかアステリオスはすぐに羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)を放り投げ両腕でその攻撃を押しとどめる。

 

「あああああっ!!!」

 

「アステリオス!!」

 

「────っ!! させません!!」

 

 羅刹を穿つ不滅(ブラフマーストラ)を耐え続けたことで脆くなってしまったアステリオスの両手を槍のように鋭い爪が貫く。

 腕を止められたクー・フーリンは、今度は足を使ってアステリオスのことを貫こうとしてきたけれど、2人の巨体の間に入り込んだマシュが宝具を使ってその進行を止めてくれる。

 

 何か自分にできることはないか考えていると、ふと腰に下げた剣―ヴォーパルの剣―が何か言ったような感覚が走った。

 

『覚えておくといいカルデアのマスター、その剣は【理性なき怪物】に有効な武器だ』

 

(フィンが言ってた理性なき怪物……もしかして!!!)

 

「先輩っ!?」

 

「マス、ター!? 

 

 後先なんて考えず、私はアステリオスの背中からクー・フーリンへ目掛けて飛び込む。アステリオスの巨体のおかげでもあって丁度クー・フーリンの後頭部に回り込むように飛び込むことに成功した私は、腰に下げていたヴォーパルの剣を引き抜き、技術とかそんなの関係なしにクー・フーリン目掛けて思い切り叩いた。

 

「────ああ!?」

 

「クー・フーリンの鎧が!!」

 

「くだ、けた!!」

 

 想像していた通りのことが起きた。ヴォーパルの剣で叩いた場所からクー・フーリンが宝具の使用で纏った鎧がその役割を終えたかのように砕け散り、粒子へと変わった。

 けど!! このままじゃ終わらない!! 胸にある聖杯を取るまで私たちの勝ちにはならない!! 

 

 私は残った令呪の1画分の魔力すべてを自分の指先へと込める。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

『よいな立香。お前に教えるルーンの魔術は言わば想いの力だ』

 

『想い、ですか? なんかこう難しい術式とかそう言うのじゃなくて?』

 

『その一文字に込める意味を理解し、深淵よりも深き想いを打ち込め。なあにお前は感情が先走るようだからな、儂のルーンとは相性がいいだろう』

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 結局教えてもらったのは一つだけ。カルデアの魔術礼装に刻まれているルーンを応用した魔術を自分のものとして落とし込んだもの。

 完全に発動させるのには私のもつ魔力じゃ足りないからカルデアの魔力を使うことでようやく使うことが出来る文字通り一発だけの『必殺技』

 

 その必殺技を地面に落下していくなかで受け身も取らずに私はクー・フーリンへと狙いを定める。

 

「【穿て!! ガンド!!】」

 

「ガっ!! これは……師匠の……!? 貴様あああああああ!!!」

 

 相手の動きを一時的に止める本来のガンドは違う。令呪1画分の魔力を槍と化して相手を()()()()()()()()ことで全身の自由を奪う。スカサハ師匠が言うには成功すればガンドの魔力が尽きるまで相手は身動きできなくなるって言ってた。

 

「とっ!! まったく、無茶なことをするマスターだなお前は」

 

「ありがとうラーマさん。 これで、最後だ!!」

 

 地面に衝突するのをラーマさんに助けてもらった私は、残った最後の令呪を切る。

 

「令呪を持って命ずる!! 【手術を完遂しろ! ナイチンゲール!!!】」

 

「了解。これより、聖杯摘出手術最終工程へ移行します!!」

 

「────ああクソ。ここまで完璧に負けるときたか……」

 

「ええ。貴方はどうやらベリアルの事ばかり見るばかりで、立香をことを少々舐めすぎていたようですね」

 

 令呪による後押しによってナイチンゲールさんの手がクー・フーリンの霊核へと届き、同化している聖杯を引っこ抜く。

 聖杯を失い、もう驚異的な回復能力を失ったクー・フーリンは負けを認めた潔い顔で静かに消えていった。

 

「聖杯、切除を確認。手術完遂しましたマスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【EXアステリオス(青目ver)】
 アステリオス自身がEX進化する際に注入されたベリアルの闇を最大解放させ本来なら理性を失い暴走する中、【人間】として意思を保ち続けた事で至った姿。
 ラーマの宝具を持って耐えられたのも青目の時は【人間】としての側面の方が表に出ているため。

【藤丸立香の必殺技】
 立香がスカサハから教えてもらった唯一の魔術。本文で言っていた通り使用に令呪1画分の魔力を消費する分、その魔力が尽きるまで相手を空間に縛り付けるというまさに必殺技。
 令呪使用が前提のため本当にピンチだったり、トドメを刺す時にしか使えない。 


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エピローグ

5章エピローグ(ベリアルレポートもあるよ!!)
タイガが始まってゼットが始まるこの時期……約1年かけてようやく5章を終わらせることが出来ました。


感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「う、うううう……!!」

 

「アステリオスさん!!」

 

「マスター、マシュ。 手、よごれる……」

 

「「そんなの関係ない(ありません)!!」

 

 怪物の鎧を纏ったクー・フーリンの一撃を決死の思いで止めてくれたアステリオス。

 アステリオスの持つ驚異的な回復力でも貫かれた両手が閉じることはなく、だらだらと血が流れ続ける。

 

「……どうやら、これが本当に最後の治療のようですね」

 

「ナイチンゲールさん!!」

 

「もう身体が……!!」

 

 令呪を使い切ったことで一時的な治療もできなくて歯がゆい思いをしていると、人理の修正も始まっていないのに身体が消えかかってるナイチンゲールさんが、後ろから私とマシュの事を包み込むようにアステリオスの両手を握る。

 

「貴方たちとの出会いを、そしてこれからも続く旅路へ祝福を【我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)

 

「傷が……塞がっていく!!」

 

 最後の残された魔力を使い切るように発動されたナイチンゲールさんの宝具が私たちのことを包みこむと、ラーマさんにマシュの傷も、そしてアステリオスの手に空いて穴も塞がっていく。

 ナイチンゲールさんが消えてしまう前に感謝の言葉を伝えようとすると、ナイチンゲールさんは拒むように首を横に振る。

 

「感謝は不要です。その代わりと言っては何ですが……」

 

 ナイチンゲールさんはそう言って、握ってくれた私たちの手をさっきよりも強く、つよく握ってくれる。

 

「このまま別れること許してください。連れ添った患者が退院する時、こうやって手を握りあうのが、私の密かな楽しみだったのです」

 

「ナイチンゲールさん。何か今いい笑顔してますね」

 

「……まったく、この喜びは隠せていたと思っていたのですが……貴方を侮っていました、マスター」

 

 前のような暗い表情じゃない、心の底からの笑顔を浮かべながらナイチンゲールさんは最後にと、私たち2人に言葉をくれる。

 

「いつか、病気は根絶される。あのベリアルの中に巣食う病も……」

 

「それ!! ベリアルさんの中に巣食う病っていったい……」

 

「絶望、怨磋、怒りは人を狂わせる最もたる病。ベリアルはそれを巻き散らし、他人へ感染させる病原体。すぐにでも治療しなければならない存在だと思っていました。ですが……それは不要だと判断しました」

 

 私たち2人のことを正面で向かい合うように姿勢を正す、一人ひとり視線をちゃんと合わせて微笑みかける。

 

「貴女たち2人が希望。()()()()の時間を生きる人こそ、彼を癒す特効薬になりうる……。 それでは、さようなら」

 

「特効薬……私たちが?」

 

「まったく、医者というのはみなああいう者なのか? 病気というものに罹ったことがないからわからんな」

 

「へ~師匠って身体丈夫なんですね。……って、スカサハ師匠!? いつからいたの!!」

 

 ナイチンゲールさんが消えていったと思ったら、いつの間にか私の隣にスカサハ師匠が、それにマシュの隣には李先生が立っていた。

 さっきまで気配もなにもなかったのに何時からここに……。

 

「何、弟子と弟子の戦いを見届けたいと思った師匠心というヤツだ。 戦闘に集中しているヤツらから隠れるだけなら容易い」

 

「それで……2人はどうして? あ、お別れの言葉を言いに来てくれたんですか!!」

 

「馬鹿を言うな立香。お前たちのいるカルデアに着いていくために来たに決まっておろう」

 

「「『え?』」」

 

「お前たち2人の指導が付け焼刃で終わってしまっているからのお。それに、儂はまだベリアルと一戦交えていない。故に、お前たちに着いていくことにした。どうした? (こうべ)を垂れて感涙に咽べ」

 

「呵々ッ! 儂も、ベリアルとの闘いを経たこの身体を失うのは惜しいでな。立香、マシュ、お主たちへついていこう」

 

 

「ええええええええええええええええっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 召喚された地から退去した英霊は、自身の霊基が登録されている英霊の座へと戻る手筈になっている。

 だが、ナイチンゲールは座へとは戻らず光に包まれた空間へとまたやってきていた。

 

 

 

「なんだ、また来たのか? 座、というところに還らなくていいのかナイチンゲール?」

 

「私の人生は目的地に向かってただひたすらに歩くだけの道でした。ほんの少しの寄り道も、偶には許されるでしょうグリージョ?」

 

「その名で呼ぶのはよせ。それは、友に預けてきた名だ。そうだな……美剣沙姫。サキでもなんでも呼ぶと言い」

 

「そうですか。ならツルちゃんと」

 

「お前もその名で呼ぶのか!?」

 

「駄目でしょうか? ()()を渾名で呼ぶというのにほんの少し憧れを持っていたもので」

 

「────どうしてこう私を友人と名乗るヤツらは少しおかしなヤツらばかりなんだ……」

 

「私が貴女へ書き連ねた手紙を読んだのでしょう? なら、今度は貴女の話を聞かせてください。ツルちゃんが今の表情を作れるようになった話を」

 

「……いいだろう、私の歩みを。この地球に来てからの1300年の歴史をお前にじっくり聞かせてやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツルちゃん。貴女は今、幸せですか?」

 

「ふっ。ああ、()()()()()()()

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

【ベリアルレポートEX】

 

 

 

 

 

 

 

何故だ

 

 

 

何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故ナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼナゼ

なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故

 

 

 なぜ勝てない。アレは我らが悲願の妨げになるもの、絶対の障害なり。排除しなければならない。カルデアなどどうでもいい。ヤツだ。ベリアル。空想の域でしかなかった外宇宙の存在。ウルトラマンを名乗る規格外の存在。倒さなければならない。滅さなければならない。一つの歴史を燃やす熱量を以てしても適わなかった。千里眼で網羅した中にヤツを倒せる存在はいないか。

 完全生命体イフ。再現不可。根源破滅天使ゾグ。2体のウルトラマンにより敗北。ダークザギ。ウルトラマンノアにより敗北。邪神ガタノゾーア。光を滅する神。ベリアルは闇。

 

不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能不可能

 

 今の我らに勝つ術はない。否、勝たなければならない。我らが宿業を為すために。ならばどうする。神代にて目覚める獣。最大の支援による増大を提案。一つでは足りない。複数の聖杯を獣へ捧げよ。鍵となる聖杯は一つ。他は無尽の魔力を強化するだけのもの。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ベリアルさ~~~ん!!」

 

 アメリカでの特異点修正が完了し、カルデアへと戻ってきた私とマシュはベリアルさんへと駆け寄る。

 

「私たち勝ちました!! クー・フーリンに!!」

 

「当たり前だ」

 

「え?」

 

「あの程度の相手、倒してあたりまえだ。────そして」

 

 ベリアルさんへ報告していると、不意にベリアルさんが私の後ろ……マシュの方へって

 

()()()()()()()()()()()()()()()勝者は最後まで立ち続けていろ」

 

「ベリ、アルさん……すい、ません……」

 

 さっきまで何ともなかった筈のマシュの口から血が流れて始めた。ベリアルさんが受け止めてくれなかったらそのまま地面に倒れていたかもしれない……。

 ベリアルさんはそのまま意識を失ったマシュのことを肩に担ぎ、ドクターのいるであろう医務室へ向かうに私もついていった。

 

 

 マシュに残された時間が短いって…………どういうこと? 

 

 




【スカサハと李書文が仲間になった】
メイン章で活躍することはないだろうけど、陰で立香ちゃんたちのレベルアップに貢献していてくれる。

【ベリアルレポートEX】
 ゲーさんも頑張ってる。ちょっとベリアルさんが規格外すぎるのと彼を倒せそうな怪獣たちも総じて規格外すぎて再現できないという現実。多分カオスダークネスが一番再現しやすかったのかも知れない。
 7章に不穏な影が……

【ベリアルさんのデレ】
 「当たり前だ」=「よくやった」
 「あの程度の相手、倒してあたりまえだ」=「よくあの頃のオレを超えたな」
倒れるマシュのことをちゃんと受け止めて医務室まで運んであげるなんて行為もデレの現れ。

【クー・フーリン・オルタへの興味】
 ベリアルさんがオルタニキに興味を示さないのは彼の在り方が、カイザーベリアル時代の自分と同じ王を目指そうとしていたから。すでに過ちだと気づいているベリアルさんにとってオルタニキから学ぶものはなにもないため興味が湧くことは決してない。まあ立香ちゃんたちの障壁としてはいいかな~くらいの考え



明日はゼット放送日なので、6章予告上げると思います!!


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6章予告

新ウルトラマン、ウルトラマンZが本日から始まりました!!
見逃した人はYouTubeの見逃し配信を見ようZ!!

あ、ゼットライザーも買いました。早くライジングギャラクシーのメダル出して

感想、評価お待ちしてます

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「次の特異点。オレは一度として表には出ない。宮原博樹、お前の足で見届けろ」

 

「え!? 嘘ですよねべリアルさん!! ベリアルさんっ!!!」

 

 第6の特異点。第九次十字軍が終了し、エルサレム王国が地上から姿を消した直後の時期。

 観測結果があまりにも安定しない、時代証明が一致しないどころか観測そのものが出来なくなる時があるほどの異常が起きている特異点。

 

 その異常な特異点へ赴くのは希代の天才と…………叛逆の騎士。

 

「現場は任せたまえ、そっちは頼んだよドクター・ロマニ♪」

 

「マスターを守るのはお前の役目だ。オレは切り開くしかできねえからな!」

 

【乾いた大地、吹き荒れる熱風、大気は焦げるように熱く、生命の気配はない】

 

 本来存在しないはずの広大な砂漠に足を踏み入れたカルデア一行は、銀の腕を持つ一人の騎士と出会う。

 

「私の名はルキウス。主のいない、サーヴァントで……貴方はっ!?」

 

「ああ? ルキウス。何言ってんだよ優等生」

 

 聖抜。そう呼ばれる儀式の中で、ベリアルの助けがない博樹はその力が目覚めかける。

 

「アナタは、自分が何してるのかわかってるのか!!!」

 

「獅子王から仰せつかった我が聖抜の儀を邪魔するとは……覚悟はできているのでしょうね」

 

「それは……こっちのセリフだあああああああっっ!!!!! 」

 

 人理は崩壊し、「あってはならない」歴史を作り出した獅子王とそれに従うは、円卓の騎士。

 その狼藉を食い止めるため、砂漠の王が、山の民が……そしてカルデア一行が立ち向かう。

 

「何だよ、何だよ何だよ何だよ!!  ()()()()()()()()()()!!」

 

「はあ、残念だぜ。父上に従ってるってんだったら他の円卓のヤツらだと思ってんだけどなあ。よおオレ、()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 暴走のギフトを授けられた叛逆の騎士と、自身の運命を引っくり返した叛逆の騎士の衝突。

 

「……この為に、オレは呼ばれたんだろうな」

 

 獅子王による星をも穿つその一撃を砕くため、東方の大英雄はその持ちうる全て賭ける。

 

「頼むっ!! 頼むベリアルさん!! 変身すれば!! ウルトラマンになれば!! あの一撃を止められる!! アーラシュさんのことを救うことが出来る!! だから……だからどうか……力を貸してくれ…………!!」

 

 ────それは叫び。

 

 力がないから、すがることしか出来ない一人の男の叫び。

 

「与えられたこの力をどう使えばいいのか……。ベリアルさんに任せっきりだった私にはわからない」

 

 ────それは叫び。

 

 他を守るためなら、その生命を燃やすことも厭わない英雄の叫び。

 

「ありがとな。────最後までひとりじゃなかったのは、初めてだ」

 

 ────それは 叫び

 

 従ういう理由で己が運命に叛逆した騎士と、叛逆を為し運命を覆した騎士の叫び

 

「オマエはオレだろっ!!! わかるだろう、この痛みが!!!!」

 

「オレはオマエだ。だけどな、オマエはオレにはなれねえ」

 

 ────それは叫び

 

 自分の中にいる英霊を知り、宝具を授けられたその意味を、生きる意味を叫ぶ

 

「私はっ!! この盾を授けてくれた英霊に誇れるように!! この盾を振るいます!!」

 

 ────それは 叫び

 

 いくつもの後悔を積み重ね、過ちを正すために……騎士は叫ぶ

 

「私は今度こそ……この手で、我が王を殺すのだ」

 

 

 

 

 

 

 次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜

 神聖円卓領域キャメロット~ShOut! ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなにも心優しい騎士の手を、同胞の血で汚させはしない!! 私の全部を使ってでも……アナタは私が倒す!!!」

 

 

 




難易度EXの特異点で表に出ないという最高のスパルタ方式を持っていく気のベリアルさん。

そして付いてくる立香ちゃん側のサーヴァントは知っていたでしょうあの子!!
5章のアステリオス以上に活躍する……はず!!

サブタイトルのShOut!はウルフェス 初出のジードの事を歌った最高の挿入歌。聞いたことのない方たちは絶対聞いて!!最高だから!!

6章は舞台やってたりして題材媒体が多い&シナリオ密度が濃いので更新は早い予定。
ライジングギャラクシーが出るまでには始まりたいですね




「5章裏話」
実の所、ソロモンが介入していなかったら二十八の魔神柱が勝っていたかもしれないという真実。
対処できるはずのカルナorアルジュナは決着がつくまでベリアルさんが作り出したコクーン内で戦っていて、メイヴちゃんが召喚した魔神柱へは攻撃しないベリアルさんなので誰も邪魔出来なかったはずなんです。

アルジュナとカルナは人理修正まで決着付かずの戦いをしていたと思います。決着は2部4章で


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神聖円卓領域キャメロット〜ShOut!〜
1


Zが期待以上に面白くてウルトラ最高です!!
セブンガーが可愛すぎる……。
あと絶対ヘビクラ隊長あの人ですよね…………

感想、評価お待ちしてます

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「よっ!マシュ」

 

「モードレッドさん、どうしてんですかこんな所で?」

 

「ちょっとお前と話したいことがあってな。今時間いいか?」

 

 これから第6の特異点攻略のためのブリーディングの為に管制室へと向かっていた私に、モードレッドさんが声をかけてくれました。

ですが、確か今回の特異点攻略……

 

「あの、私の記憶違いでなければモードレッドさんも次の特異点へ向かうメンバーの一人だったと思ったのですが……」

 

「ああ?んなこと気にすんなって、少し時間に遅れたからってとやかく言うヤツらでもねーだろ?」

 

「それは……そうかも知れませんが。やはり決められた時間を守るのは大切かと」

 

「んだよやっぱ怖えのか?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

―――――っ!!モードレッドさんは確信めいた口調でそう私へ言ってきた。

私に残された時間がもう殆どないことを、モードレッドさんは知っている。でも、なんで……

 

「なんでって思ってんだろ? 言っとくがあのロマニ(弱腰野郎)とかに聞いたわけじゃねえからな。オレもお前と一緒の命だったから言ってんだよ」

 

そうだ、モードレッドさんも私と同じで目的を完遂させるために産み出された存在、アーサー王の遺伝子から生まれたアーサー王を終わらせる者。

デミ・サーヴァントになる為に遺伝子操作によって作られた私と同じ……。だから、私の寿命についても理解していた……。

 

「んな不安そうな顔すんな。誰かに言ったりなんかしねえよ、だからわざわざ他の奴らが出歩いてねえこのタイミングを狙ったんだろうが……」

 

「あ、ありがとうございます。気を使わせてしまったみたいで……」

 

「(ま、んなこと言わなくても立香たちもそろそろ知ってるころだろうけどな)マシュ、お前認めてんのか?」

 

「認めている……ですか?」

 

「このまま自分の命が終わんのを、素直に認めてんのかって聞いてんだよ」

 

 モードレッドさんにそう言われて、私は考え込んだ。認めているか否かと答えるとすれば、それが私という存在に与えられた時間である以上仕方がないという答えしか出せない。

 

「あ、あの、その……」

 

「今のオレのこの姿は、()()()()()()()()()()だ。ま、だから~その、なんだ」

 

 モードレッドさんは言い淀んでいるというよりかは、どう言葉にすればいいのかわからないといった様子で頭を掻いている。

 

「死人のオレなんかが運命を超えられたんだ!!今を生きてるお前が超えられねえわけねえだろ!!だから簡単に認めんな!!わかったな!!」

 

「えっ、あっ、は、はい!!」

 

 私の頭をガシガシと乱暴に撫で、私が返答したのを確認するとズカズカと管制室の方へと向かって先に走って行ってしまう。

 

「ま、待ってくださいモードレッドさん!!」

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

「とにかく、とても大変なことが起きている。 シバから返ってくる観測結果があまりにも安定しなかった、時代証明が一致しない、時には観測そのものができない時もあった。まるでベリアルみたいだ。……とっ!!今のは別にけなしているとかそういう類の意味で言ったんじゃないからね!!」

 

「あはは、そんなに慌てなくてもわかってますよロマニさん。ベリアルさんもその程度で怒る……時は怒るか」

 

「あああ博樹さん、何とか落ち着かせてくれないか!!僕はまだ死にたくない!!」

 

 管制室へ27分遅れで入ると、ドクターと博樹さんのそんなやり取りが始まる。

次の特異点の時代は十三世紀、場所は聖地として知られるエルサレム。第九回十字軍が終了し、エルサレム王国が地上から姿を消した直後の時代のはずですが第6特異点はカルデアスの表面に存在しない異常ともいえる状況になっているのだと言います。

 

「んんっ、いいかい。今回の特異点はそれそのものが『あってはならない』歴史になりつつあるんだ。そんな状況ということもあって今回もカルデアからできるバックアップは少ない。何が起きているかまったく分からない―――― 」

 

 それでも行ってくれるかと、ドクターは私たちに問いかけてきますが、私たちの答えは『はい』と決まっています。

ですが、そんな中で博樹さんが恐るおそるといった様子で手を上げました。

 

「あの。言いづらくて今の今まで言えなかったことがあるんですけど……」

 

「どうしたんだい博樹さん。あ、もしかしなくてもあれかい?またレイシフトした時に自分たちだけ違う座標に飛ばされることを心配してるのかい?それなら心配しなくても大丈夫さ!今回こそはそうならないようにカルデア職員全員で調整に調整を重ねたからね――――」

 

「あ、それはありがたい限りなんですけど違くて」

 

 どうやらドクターの懸念していた事と、博樹さんの報告することは違ったみたいです。ですが、博樹さんが言えなかったこととはいったい何なのでしょうか?

 

 

「ベリアルさん。次の特異点で絶対に表に出てこないらしいです」

 

 

え?

 

 

「「えええええええええええええっ!!!!!!!」」

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

「次の特異点。オレは一度として表には出ない。宮原博樹、お前の足で見届けろ」

 

「え?ベリアルさん?じょ、冗談ですよね」

 

 最近では日常となった夢の中でベリアルさんの呼び出した怪獣を相手取る特訓。ガイアに出てきた超ゴッヴと戦っている最中にそんなことを言うものだからびっくりしてゴッヴの攻撃が直撃してしまい吹き飛ばされてしまった。

 

 馬乗りされ、その鋭利な爪で引き裂いてくるのをナイザーでガードしながらベリアルさんへなんでなのかと問いかける。

 

「次の特異点。見るものがあるからな、それにはオレが表に出たら意味がねえ。それと……」

 

「それと……?」

 

 超ゴッヴを足で退かし、ナイザーで両爪を叩き折りその身体に光弾を叩きこんで倒す。

 

「今まで鍛え上げてやったんだ。少しはその成果を見せてみろ」

 

「う。……善処します」

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレの闇。本当に受け止めることができるか見ていてやる」

 

 

 

 

 




【fate世界】
 博樹や立香たちが住んでいる次元、地球の事。
何故かベリアルの事が浸透していないため映像作品ではゼロ関係の作品が一切放送されていない。
ギンガやビクトリーは普通に放送している(10勇士はなし)。

Zに出てくるリクくんがなんでジードライザーじゃなくてゼットライザーなのか悩んでいたんですけど。
・ジードライザーは本来ヒカリ博士が作った他のウルトラマンが使いパワーアップするためのアイテム(ゼロビヨンドが本来の使い方)。あと本来ライザーだけでジード付けたのはリクくん本人。

・ゼットライザーも光の国で作られたゼット専用ではなく、デビルスプリンターへ対抗するために開発された強化変身アイテム。

・ジードは光の国に認められてるから普通にアップグレードとしてゼットライザーを渡された。

 という事個人的な結論をつけました。早くリクくん出てきて


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2

今までのウルフェス のバトルステージが無料配信……!?
 ジード関係は基本良いですし、去年の第一部だった『受け継がれる光 僕らの光』も好きです。
EXPOも素晴らしいの揃ってるんですけど……。

立香ちゃんとモードレッドの絆Lvの向上によりモーさん呼びになってます(ちょっと事情があって……)

高評価頂きありがとうございます!!

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「いきなさい、スフィンクス!! この者たちに偉大なりし太陽王の裁きを!!」

 

「ああたく面倒くせえ!! 話聞けよこの間抜け者!!」

 

「まぬっ!! ファラオである私の前で外蓑で顔を隠すアナタのような不敬者に言われる筋合いはありません!!」

 

 レイシフトした矢先、私たちを襲ったのは今回の特異点修復に同伴することになったダヴィンチちゃんとモーさんが言う通り先も見えないほどの勢いの砂嵐。砂漠地帯だった。

 カルデアとの連絡も安定しないけど、ドクターが言っていた通り今回は博樹さんがちゃんと隣にいるけど、逆にその事に違和感を感じてるんだけど、どうやらレイシフトの方ははちゃんと成功していたみたいだ。

 

 レイシフトした矢先に謎に手強い騎士やスフィンクスと戦闘になることがあったけど、モーさんやベリアルさんに鍛えられてるお陰で素の状態でもある程度戦える博樹さんがいてくれるから苦戦を強いられるってことはなく、私たちはダヴィンチちゃんのナビゲートの元、湖のある都へと向かっていたんだけど……

 

 どうしてこうなってるのかなあ……

 

「ああっ!? 暗殺者にあっさり眠らされて攫われそうになってる王様のどこが間抜けじゃねえってんだよ!!」

 

「────っ!! やはり、私の失態を見た貴方たちを許すわけにはいきません!! 行きなさいスフィンクス!!」

 

 髑髏の面を被った暗殺者(アサシン)のサーヴァント、多分沢山いるらしいハサンの内の一人が今敵対してる彼女、女王ニトクリスのことを気絶させて攫おうとしていたのを助けたはずだったのに……。

 彼女を起こそうとモーさんが何度も頬を叩いたりするから、こっちの事を敵とみなして攻撃してくることになってしまった。

 

 今だって、砂嵐と真名を隠すために外套を纏いながら戦うモーさんと言い争いしてるし……

 ニトクリスは寝起きで正常な判断が出来てないし、モーさんの方は彼女が起きた時に頭ぶつけられた事に怒ってるんだろうし……、何とか両方とも落ち着かせるいい方法ないかな~~

(度重なる特異点の修復、そしてベリアルの突飛な行動のせいかそんじょそこらの事では驚かなくなってしまった立香)

 

「四つ足の怪獣とも幾度となく戦ってきましたからね。遅れを取るつもりは……ないっ!!」

 

「そこの棍棒を振り回す男!! スフィンクスは怪獣ではありません!! 偉大なるオジマンディアス王の神獣です!! 間違いを悔いなさい!!」

 

「あ、すいません!! 。神獣……シェパードンや魔デウスのような存在ってことでいいのかな? あ、シェパードンは聖獣か! う~ん怪獣との区分がわからない

 

「スフィンクスの数、さらに増大!! 流石にこの数を相手にするのは……!!」

 

「大丈夫。貴女の盾はいかな神獣であろうと砕けない」

 

 倒されても倒されても復活してくるスフィンクス。ニトクリスの方はまさかここまで倒せるとは思っていなかったのか、慌てて増援を呼び出してきた。

 ベリアルさんに鍛え上げられてる博樹さんもスフィンクスと戦えてるけど、流石にこれ以上数が増えるのはと思っていた矢先、砂嵐の先から1体のスフィンクスを切り伏せながら見知らぬ騎士が現れた。

 

「見るに見かねて口を出してしまいました。私はルキウス、主のいないサーヴァントです」

 

「ああっ? ルキウス?」

 

 銀の隻腕をした騎士、自らをルキウスと名乗った彼はどうやら私たちが善意でニトクリスのことを助けたのを見ていてくれたらしく、誤解を解くのに協力してくれると言ってくれた。

 あれ? 何故だか知らないけどモーさんの手が止まってる。ってああ!! 

 

「モーさん! 前! 前!!」

 

「ああ? ったく邪魔すんなよ、なっ!! おい、ルキウスっつったな!! コイツのこと黙らせんの手伝え!!」

 

「仕方ありません。助太刀します!!」

 

 

 

 

 

 

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「う、ぐ。……私を山の民から助けてくれたこと、感謝しております。…………ごめんなさい。私の短気が、また……」

 

 ルキウスさんの参戦のおかげで、ニトクリスが呼び出したスフィンクスは全て倒し。本人にもやっとこさ誤解をといてもらうことに成功した。

 けど、ルキウスさんのあの腕『銀の腕(アガート・ラーム)』って言ったけ? あの腕全体が金の光を纏ったと思ったら手刀でスフィンクスのことを両断してみせたあの威力。ただものじゃないよね……

 ルキウスって真名なのかな? 

 

「風よ、しばしその任を解くがいい。ニトクリスの名において、天空の見晴らしをここに!」

 

「嵐が止みました、先輩!! 空が────澄み渡るような、一面の青空です!」

 

 話を聞くとどうやらニトクリスは天空の神であるホルスの化身であるらしく、その権能を使い砂嵐を巻き起こしたり、今みたいに雲一つない青空を作り出すことが出来るらしい。

 助けてくれたお礼のために、私たちの事をここから二時間ほど歩いた先にある大神殿、らむ、らむせりうむてんてりうす? に連れて行ってくれるらしい。

 

「では、私はこれで。皆さんの旅に善き巡り合わせがありますように」

 

「いやいやいやいや、待てよおい」

 

「────! な、なんでしょうか? 私は大神殿には用事がありません。また、皆さんが行かれるのなら止める理由も……」

 

 このままいつもの流れでルキウスさんも仲間になってくれるのかと思っていたけど、彼には彼の用事があるらしくこのまま別れることに……なると思ってたんだけど、そんな彼を引き留めたのはモーさんだった。

 

「何がルキウスだよ。馬鹿にしてんのか優等生」

 

「え?」

 

「剣の腕だって二流止まりだったお前が、わざわざそんな腕まで付けて何しにこんな場所にやってきたんだって聞いてんだよ!」

 

「モーさん、もしかしてルキウスさんと知り合いなの?」

 

「モーさん……はっ!! その乱暴な口回しに横暴な態度!! まさかアナタは!!」

 

「んあ? そういや外套(コレ)羽織ってっからオレの事はわかんねーか。そうだよオレは……」

 

 どうやらモーさんとルキウスさんは知り合いだったらしく、モーさんが外套を剥ぐのと一緒に彼女の正体に気が付いたらしいルキウスさんが驚いた顔でその名前を叫ぶ。

 

「モードレッド……卿……?」

「へっ? モードレッド……」

「ああっ!? なんだよその態度は!! お前ふざけてんのか()()()()()()()()!!」

「べ、べディっ!!」

 あれ? モーさんの事を見たルキウスさん? ベディヴィエールさん? の反応が著しくない。まるで自分の記憶の中と一致しないものが現れて驚いているみたい……。

 

「い、いえ!! わ、私の記憶違いでなければモードレッド卿はその、もう少し目線が……その……それと顔立ちのほうも少し凛々しくなっているといいますか……本当にモードレッドなのですか?」

 

 あ。そっか。今のモーさんって確か“短命を乗り越えた”モードレッドで、身長も150㎝くらいから170㎝くらいまで大きくなってるし、顔つきも大人っぽくなってるから昔のモーさんの事を知ってるベディヴィエールさんが困惑した表情を見せるのも仕方ないんだ。モーさんもモーさんで彼の態度が気に食わないのか怒り心頭だけど、さっきから後ろでニトクリスが「円卓の騎士……しかも2人も……!! どどどどどうしましょう! ああ、ですがファラオたるもの一度言ったことを曲げるのは……」って多分一番慌ててる声が聞こえてくる。かわいい

 

 

 

 

 

 

 ・

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「────と、いう経緯で異邦からの旅人をこの大神殿へと招待する運びとなりました」

 

「フフフフ…………ファハハハハハハハハ!!!! それでお前は!! 愚直にも余の大神殿に円卓の騎士を呼んだというかニトクリス!!」

 

 砂漠を抜けた先に現れたトンデモ建造物。オジマンディアス王の居城にして宝具らむ、【光輝の複合大神殿(ラムセウス・テンティリス)】へと招かれた私たち。

 どうやらオジマンディアス王が支配していた紀元前の砂漠そのものがこの十三世紀に転移しているらしく、ドクターと連絡が取れないのもそのせいなんだという。

 

 で、玉座まで連れてこられた私たちなんだけど、当のオジマンディアス王は…………

 

「ファハハハハハハハハハハハ!!! ファハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

「ファラオ・オジマンディアス! どうかお収めください、客人がいらしています!!」

 

「これを笑わずしてどうする!! ファハハハハハハハハハハ!! おっと……」

 

 ニトクリスの話を聞いて大爆笑してる。しかも今!! 首がズルってずれた! 本人はまったく気にしてない様子で笑ってるけど……周りにいるみんなにも同意を求めるように顔を向けると全員うんうんって同意してる。

 

「遅い!! 遅すぎるわ!! 貴様らが訪れる前に、この時代の人理は崩壊したわ!!」

 

「オジマンディアス王……!? それは一体……」

 

 突然笑いを止めて叫びだしたオジマンディアス王は、この時代は本来なら聖地であるエルサレムを奪い合う戦いがあった。けど、その聖地奪還は起こらず、人理を完膚なきまでに破壊した者がいる。

 オジマンディアスの持っている聖杯を私たちが確保したところで、この時代の歪みを作り出した存在────()()()()()()と名乗るその相手を倒さないと人理は修復しないのだという。

 

「よし! ニトクリス!! 次はお前だ!!」

 

「はっ、ファラオ。覚悟はできております」

 

「お前はあろうことか円卓の騎士たちをこの余の大神殿へと招き入れた。その罪の重さ、招致しているな!」

 

 どうやら、オジマンディアスたちにとってモーさんやベディヴィエールさんたち「円卓の騎士」は招かるざる客人だったらしく。その事を理解したうえでここへ連れて来てくれたニトクリスが罰を受けるのだという。そんなのって!! 

 

「では告げるぞニトクリスよ! お前はそこな()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はい!! ファラオ・オジマンディアス!!」

 

「────え?」

 

 聞き間違いかな? 今すっごくさらっとニトクリスを連れていけって言われたような……。ニトクリス本人も何も疑問に思っていないみたいだし、流石に気のせいだよね~~~。

 え? 気のせいじゃないの? 

 

 

 

 

 

 

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「いいいいやっほおおおおおお!!!!」

 

「も、モーさん!! 少し、スピードをおろろろろろ!!」

 

「こ、このような乗り物……! やはりスフィンクスのほうがああああああああ!!!」

 

 大神殿を追い出された私たちは、ダヴィンチちゃんが作り出した万能車両オーニソプター・スピンクスに乗って砂漠地帯を進み続けているけど……

 運転手モーさん、ガソリンとなる魔力も聖杯が中に入っているモーさんの物だからか、100㎞は出ているであろうスピードで爆走してた。

 

 モーさんの運転が荒すぎて同行することになったニトクリスも含めて全員グロッキー状態になってる。

 

「も、モードレッド!! あの砂丘を超えるとこの時代“本来”の風景が見れる!! 一度止まってくれたまえええええ!!」

 

「ああっ!? いいやこのまま突っ切ってやるよ!!!」

 

「「「うわああああああああ!!!」」」

 

 ダヴィンチちゃんの言葉虚しくさらに加速したバギーは砂丘を超えて大ジャンプする。そんじょそこらの絶叫マシーンなんかよりよっぽど怖い思いをする私たちの目の前に広がるその光景は、地獄そのものだった。

 

「これは……これが、十三世紀の中東なのでしょうか。 うぷっ

 

「ううう……どれどれ……。気温48度、相対湿度0パーセント、大気中の魔力密度0.3ミリグラム……うえっ。うん、とても人間が生きられる環境じゃあないね」

 

 色々な物が口から出てきそうなのを耐えながらこの惨状を目にする。 乾き切り、ひび割れた大地。魔術礼装ごしでも汗が出るほどに熱い大気。近くに倒れた木を触ってみたら砂のようにパラパラと砕け散ってしまうほどだ……。

 

「まったく無知にも程がありますね貴女たちは、これがこの地の有り様。オジマンディアス様の領地から離れたこの地は、まさしく地獄というに相応しい場所でしょう。貴方は知っていたのでしょう? ベディヴィエール」

 

「……はい。立香さんたちと違い、私が最初に召喚されたのはエジプト領ではなくコチラ側でした。人が……いいえ、生きとし生ける物全てを否定するこの地獄は、あまりに辛すぎる……!!」

 

「ヒ、ヒヒヒヒヒヒ!!」

 

「「「「!!!!」」」」

 

 現状確認のために水分補給しながら立ち止まっていたからか、いつの間にか私たちは囲まれてしまっていた。 外套で身を包んだ人型のエネミーだと判断して、モーさんとマシュに指示を出そうとすると、博樹さんが前に出てそれを止めてきた。

 

「よく見るんだ立香ちゃん。あれはサーヴァントや化け物じゃない。ただの人間だ」

 

「えっ!?」

 

「博樹くんの言う通りだ立香くん。けど、こうなってしまってはヒトとしてもう駄目だ。話は聞いてくれるなんて理性は持ち合わせていない。さあ、どうするんだいマスター?」

 

 どうすればいい。同じマスターである博樹さんに意見を求めるように顔を向けると、割り切りたくても割り切れない、微妙な表情を作っていた。

 ああ、きっと私も同じような顔してるのかな? そう、思うと少しだけ手の震えが落ち着いて、みんなへ指示を出す。

 

「戦闘。────峰打ちで!!」

 

「了解しました!!」

 

「おっし! テメエらなんて素手で十分だ!! かかってきやがれ!!」

 

 

 

 

「(腕を震わせ、自分の中の恐怖と戦いながらも救いを求める……。マシュもそうでしたが、その恐怖から逃げずに奮い立つことが出来る。この二人は強いですね……)」

 

「間抜け者の次は怠け者ってか!! オレたちに着いてくるんだったらお前もしっかり働けニトクリス!!」

 

「んなっ!! ファラオに向かってなんですかその口の利き方は!! 私は怠け者などではありません!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回でトラウマまで行きたかったので一気に進ませました。
【ベディヴィエールの逃げる。しかし、回り込まれてしまった!】
モーさんがいるんだ、逃すわけはない!!最初から仲間や!!
そして円卓2人も連れて来ちゃったせいでニトちゃんも味方に。

この章には作者の中でアーチャー1、2位を争うくらいに好きなサーヴァントが出て来てくれます


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3

レッドファイッ!なベータスマッシュ。マッシブボディ系ウルトラマンっていいですよね……。
 ギガスを倒すことでゼットの踏み台、前座にさせないの本当好き。

 ゼットは最終フォームはゼット(Z)、ゼロ(Z)、ジード(Z)のアルファベットの最後の文字3枚を使った「オメガ○○○」になると予想、アルファ、ベータ、ガンマだしね

感想、評価お待ちしてます

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「大丈夫ですか?」

 

「あ、はい……私は……」

 

「おかーさん、お腹すいた──!!」

 

 聖都へと向かう最中に出会った、村が焼かれてしまい同じく聖都へと向かう難民の方たちと一緒に進む次いでに情報収集している中で、私はまだ年端もいかない子供を抱き上げながら歩く女性、近くには父親らしき影も見えないその親子と話をしていた。

 

 男の子の方は、照り付ける大地の熱、押し寄せる熱風から守るために目元以外全て布で守られている。その証拠と言っては何だけど、男の子は痛みを嘆いたりせずただ普通に空腹を訴えていることからこの子が大切に守られてきたんだってことが分かる。

 

 私は警察時代から懐に常備している飴玉を取り出して男の子へと分け与える。

 

「はい、口を開けて」

 

「? あーーんっ!!

 

「口の中でコロコロ~って転がして食べる物なんだ。他の人たちには内緒だよ?」

 

 ドクターや他のみんなに怒られてしまうかも知れない、ベリアルさんに至っては呆れるかも知れないけどつい手が伸びてしまった。

 ん~っと美味しそうに飴を舐める顔を見ると、こちらも自然と笑顔になっていく。

 

「す、すいません。貴重な食料を……!!」

 

「いいえ、善意でやっていることなんで気にしないでください」

 

 ────強いなと、素直にそう思った。

 こんなにも絶望的な状況でもこの人は弱音一つ見せない。子供を不安にさせないために、息子に笑顔でいてほしいから。そんな愛情が見て取れるほど溢れている。

 娘を抱きかかえている腕は熱に負けて色が変色するほど酷い火傷を負い、ずっと地面を歩き続けたその脚は焼け爛れ倒れてしまっても可笑しくないはずなのに、それを周りに悟られないように歩くペースを合わせ続けている。

 

 自分も同じ状況に陥った時、娘と息子に対して同じ事が出来るのかと言われたら出来ると、口では即答出来るけど本当に出来るかはわからない。

 だから、目の前の彼女を見てただただ誇らしいとさえ思った。

 

『他の奴等からすれば、其処の親子は邪魔でしかないだろうな』

 

「(ベリアルさん。邪魔って……そんなこと!!)」

 

『邪魔でしかないだろう。力もない女に、貴重な食糧を消費するしかない子供。言葉通り命を賭けて聖都へ向かう奴等からすれば……一番に切り棄てる存在だ』

 

 ────っ! 反論したいけど、出来ない。ベリアルさんの言う通りだ。この極限状態の中でみんな仲良く、手を取り合って生き延びようなんて虫が良すぎる。

 

『絶望の中で、殆どの人間は簡単に腐り落ちる。 他を蹴り落とし、自分だけが助かる道を見つけようと必死になり、命を奪う事すら躊躇らわない』

 

 でも、それでも!! 今日を生きる事で精一杯な中で、子供に傷一つ付けないために頑張り続けているこの人のことを!! 私は、否定したくない……!! 

 

『忘れるな宮原博樹、此処はお前が住んでいた平和ボケしていた場所とは違う。人間の命は紙よりも軽い』

 

 違う、違うんだベリアルさん!! どんな環境でも、どんな絶望的な状況であったとしても!! 命の重さは変わらない、変えちゃいけないものだ!! 

 

「おじさん?」

 

「────っ!? な、何かな?」

 

「ありがとう♪」

 

「ど、どういたしまして」

 

 

 

『(絶望の中にありながら、腐り落ちずに歩き続けるヤツほど……()()()を目覚めさせるだろうがな)』

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「すごい……! ここが、聖都エルサレム……!!」

 

 遠目から見てもわかるほど巨大な壁。まるで外部からの一切を拒絶しているかのような白亜の城壁が見えてきた。

 難民の人たちを魔獣なんかから守りながら来たからもう日が沈んで夜になってしまったけど、正門に人が集まっているところを見るとどうやらここで行われているという“聖抜の儀”には間に合ったみたいだ。

 

「いやあ、ものすごい数の難民が集まっているねえ。千人は軽くこえているんじゃないのかい?」

 

『いい機会だ、僕たちもその中に紛れさせてもらおう。 サーヴァントが一斉に集まっていると悪目立ちしそうだからできる限り離れた形でね』

 

 ドクターの言う通り、相手にこちらがサーヴァントだと悟られないように分散することになった。私はマシュとダヴィンチちゃんと、博樹さんはベディヴィエールさんと、そしてモーさんはニトクリスのあの耳みたいな髪を掴んで引っ張っていった。

 

「よっし! じゃあ私たちも準備しようか!」

 

「はい! 難民の方たちの集団へ混ざり込むならやはり端の方でしょうか……?」

 

 モーさんが被っていたのと同じダヴィンチちゃん製魔力遮断外套(マント)を羽織り、難民群の中へ紛れ込むことに成功した私たちは、周囲を囲んでいる騎士たちへの警戒を怠たらずに様子を見ることにした。

 

 高濃度の魔力を纏った騎士は、一体一体がシャドウサーヴァントと同等の力を持っている強敵で、生半可に挑んでは負けてしまう可能性のある脅威。モーさんなら相手が剣以外の武器を使ってきたとしても制圧できるけど……

 そんな考えを張り巡らせていると、突如として空が明るく────っ!! 

 

「突然昼になった!! 何これ!?」

 

「目の錯覚ではありません。夜だったのに突然昼になりました!」

 

 ゲームの日付変更の裏技を使ったかのような昼夜逆転のその現象に私たちも、難民の人たちも慌てていると正門から誰かが姿を現した。

 何かを話し始めるだろうからスカサハ師匠から学んだ聴覚強化のルーンを自分にかける。

 

「これこそは我が王が私に与えたもうた祝福(ギフト)。“不夜”の祝福(ギフト)

 

()()()()()()!! 円卓の騎士、ガウェイン卿だ!! 聖抜が始まる、聖都に入れるぞ──!!」

 

 ガウェイン卿……? 円卓の騎士? 聖抜を取り仕切っているであろう騎士の登場に喜びの声を上げながら難民たちがテントから出てくる。

 円卓の騎士っていう事は、モーさんやベディヴィエールさんと一緒の……? 

 

「我らが聖都は完全、完璧なる純白の千年王国。この正門を抜けた先には貴方たちが望む理想の世界が待っています。我が王はあらゆる民を受け入れます。異民族であっても異教徒であっても例外なく」

 

 ────ただし、我が王からの赦しが得られば、の話ですが

 ガウェイン卿がそういうと、正門の上から尋常じゃないほどの威圧感を放つ存在。獅子の兜を被った大きな槍を携えた騎士がそこに立っていた。

 もしかして、あれがオジマンディアス王の言っていた純白の獅子王? 

 

「────最果てに導かれる者は限られている」

 

 その言葉の重みが、ズシリと胸を貫いてきた。

 言葉を聞いているだけで息がつまりそうになるその威圧感は、全然違うけどベリアルさんのことを彷彿とさせる。

 まるでヒトではない、()()()()()が話をしているような感覚……

 

「生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間を」

 

「────何この光っ!!?」

 

「攻撃ではありません。なんでしょうこの光は、こんなにも強い光のはずが少しも眩しくありません!!」

 

 獅子王が槍を天に掲げると、辺り一面が光に包まれる。

 目を瞑ってしまいそうなほど明るい光のはずなのに、眩しくない。その光の中で目を開いていられる。

 

 その光が何をするのか見ていると、難民の中にいる人たちの何人かに光が降り注いでいる。その光の数は()()

 

「聖抜はなされた。そこにいる三名のみを招き入れる。回収するがいい、ガウェイン卿」

 

「……御意」

 

 ガウェイン卿の傍に控えていた騎士たちが、光に、獅子王に選ばれた3名の難民たちを正門奥へと連れて行こうと動く。

 

「……? 何か、揉めてる……?」

 

「子連れの親子のようですが……?」

 

 あの親子って確か、ここに来るまでの間に博樹さんが話をしてた親子……? 彼女たちがどうしたんだろうか、ガウェイン卿に何かを訴えている。

 

「その子供は置いていきなさい。聖抜に選ばれたのは貴女だけです」

 

「騎士様……どうしても、駄目なのでしょうか? この子は私の宝、私の人生(いのち)そのものなんです!! どうかこの子も聖都へ!! ダメなのなら、私ではなくこの子だけでも聖都へ!」

 

「なりません。我が王の決定は絶対。聖抜に選ばれたのは貴女ただ一人、その子供を忘れ聖都へと歩みなさい」

 

「────なら、私は聖都へ行きません。せっかく選んでいただきましたが、辞退させていただきます」

 

 その返答が驚きだったのか、ガウェイン卿は目を瞑ると一人頷き片手を挙げて騎士たちへ指示を出したようだった。

 

「この聖抜を拒んだのは、貴女が初めてです。その高貴な魂が、王に選ばれた所以なのでしょう。────これより、()()を始める!!」

 

 ────その声が引き金となった。

 難民たちを囲んでいた騎士たちが、ガウェイン卿の指示を受けて何の罪もない難民たちを斬り殺し始めた。

 

「何これ……!? 何が起きてるっていうの!!」

 

「落ち着きたまえ、マシュ、立香くん。彼らは最初からそのつもりだったんだよ。だから、誰一人として逃げられないように囲んでいたんだ」

 

 私はダヴィンチちゃんの言葉を聞きながら、別の場所で控えているモーさんへと念話を繋げる。

 

(モーさん!! ソッチにいる難民の人たち、ニトクリスと一緒に任せていい?)

 

(お前ならそう言うと思ってたぜマスター! あの筋肉ゴリラも()()()も気に入らねえからな!! こんなクソみてーな儀式、ぶっ潰してやる!!)

 

「(よし!! やるよ! モーさん!!)マシュ、ダヴィンチちゃん! みんなの突破口を開くよ!!」

 

「はい!! マスター!! わたしは、絶対に負けません……!!」

 

「……やれやれ。まっ、こうなるであろうことは分かっていたことだが、いくら万能だからといって骨が折れてしまいそうだ」

 

 分かってる、この行為がどんなに無謀なもので、どんなに偽善に溢れてるのかなんて。

 けど、ここでこの人たちを見捨てたら私は私のことを嫌いになる!! だから、自己満足かも知れないけど助ける! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴンッ!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 気合十分! と騎士に向かって行こうとしていたら、何かが壁にぶつかる、違う。叩きつけられた大きな音が響いた。

 騎士たちも何ごとかと音が鳴った方へと視線を向けると、まるであり得ないものを見たかのように握られた剣が止まってしまっている。

 

 それもその筈だ。私だってこんなに驚いているんだもの。

 音の発生源へと目を向けた私の瞳に映ったのは…………

 

()()()()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()()()()姿()だった。

 

「何をやっているんだよ……アナタはああああああ!!!!! 

 

 穏やかな性格をしている博樹さんからは考えもつかないほどの怒号が響き渡る。

 その瞳を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 




こっちもレッドファイッ!!
 理不尽には暴力という理不尽で立ち向かっていくスタイル。

妻子持ちの博樹さんがあんな絶望を許すと思うなよガウェイン!!
次回!不夜のガウェインvs赤目博樹!!


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4

7/8にジードが3周年、そして今日はウルトラマンの日という事で投稿です。
ジードからもう3周年って本当です?

さあさあ、レッドファイッ!!の始まりです。

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 それは、ガウェインの掛け声と共に聖罰が始まってすぐだった。

 今すぐにでも難民の人たちを助けるために動きだそうとしていた私の手を、ベディヴィエールさんが掴んで抑えてきた。

 

(落ち着いてください博樹殿。私たちの目的は聖都への侵入です、難民を助ける事ではありません)

 

(そんな! 見捨てろっていうんですかここにいる人たち全員!!)

 

(人理を正し! 元の歴史に修正する!! それが貴方の使命のはずです!! それを忘れてはいけない。……人理を修復すれば、この聖罰の犠牲も無かったことになる。自分の使命を忘れず、どうか落ち着いてチャンスを待ってください)

 

 ────ッ!! ベディヴィエールさんの言ってる事は正しい。人理を修復する、その使命を全うするためなら、今から失われる命は見捨てて最善の道を選ぶことの方が確かに大事だ。

 

 言われていることの意味は理解できる。みんなを、家族の事を助けるためを思えばそうする事が一番だから……。その為なら、一時の感情に蓋をすることだって……。

 

 そうやって私はベディヴィエールさんの言う通りにしようとしたその時。あの親子の声が聞こえてきた。

 

 獅子王の聖抜を拒んだ母親サリヤさんは、周りで始まった聖罰から自分と息子のルシェドくんがこの後どうなるのか理解して、足が震えて動けないのかへたり込みながらも、ルシェドくんの事を守ろうと強く抱きかかえながら目の前に立つガウェインを見ている。

 

「獅子王の聖抜は聖なる儀。この滅びゆく世界で唯一無二の安住の地、それこそが獅子王の治めるこの聖都。()()()()()()()()()()の為に我が王の選択を否定した貴女の処罰は、私自らが執り行いましょう」

 

 ────は? 

 

(たかだが子供一人の命だと……!?)

 

(博樹殿……?)

 

「恨むのなら、親子ともども聖抜に選ばれなかったその不運を恨みなさい!!」

 

 ガウェインが親子に剣を振り下ろすその時、「お母さん?」と何が起きているのか分かっていない子供を抱きかかえながら、母親は同じ言葉をずっと繰り返し呟いていた。

 

「どうか、この子だけは……どうか、この子だけは……!!」

 

 ────助けて

 

 その声が、私には妻の声と重なって聞こえた気がした。

 

『フハ、フハハハハハハハ!! 逆鱗に触れたなぁ!!』

 

 ベリアルさんが頭の中で何か言っているようだが、どうでもいい。

 気づけば、ベリアルさんが動かしている訳でもないのに身体が勝手に動き出しガウェインへと向かって行っていた。

 

 目視できない程の速さで、知覚できないほどの鋭さで、ガウェインの顔面目掛けて全力の拳を放つ。

 

 

 

 

 

 

ドゴンッ!!! 

 

 

 

「ガ……ハッ!!!?」

 

 

 

『さあ、見せてみろ宮原博樹!! お前の怒りを!! その猛りを!!!』

 

 

 

「何をやっているんだよ……アナタはあああああああっ!!! 

 

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

(何が……起きたというのです!?)

 

 難民たちも、傍らに控えていた騎士たちも、ガウェイン本人すらも理解できなかった。

 獅子王の聖抜を拒んだ親子を粛正しようとしたその瞬間に、正門に叩きつけられていたのだから。

 

(あの男が、やったというのですか……!!)

 

 ガウェインの目に映るのは、表情からも、その身から放たれる威圧からも分かるほどに強大な怒りを向けてくる相手だった。

 ガウェインが叩きつけられた壁からズルズルと自然に落ちると、そんな彼のことを守ろうと粛正騎士たちが博樹の前に立ちふさがる。

 

「貴様!! 円卓の騎士であるガウェ「邪魔なんだよ、貴方たちに用はない」え?」

 

 粛正騎士たちが言葉を言い終わる前に、博樹は回し蹴りで騎士の事を地面へ叩きつけもう一方の騎士へはギガバトルナイザーを投げつけ、その身体を貫通させて倒した。

 

(私の騎士たちを、こうも容易く!? 何だ、この男は!?)

 

なあ、貴方はあの親子を見ても、何も感じなかったのか? 

 

「……貴方が異邦から来た旅人、人理を正すべき訪れたマスターですね」

 

 ガウェインの問いに答えずに、博樹は彼の目の前に立つ。

 今度は油断することはないガウェインは、近づいてきた博樹の事を斬るために聖剣ガラティーンをその自慢の腕力で振り下ろす。

 

「なっ!?」

 

(ガウェイン卿のガラティーンを片手で! しかも素手で受け止めた!?)

 

質問してるのはこっちなんだよ。先にこっちの質問に答えろ

 

 博樹はガウェインの質問に答える気は一切ない。腹部へ向けられてた蹴りをガウェインは左手で受け止めたが、そんなことはお構いなしに博樹はガウェインの事を強引に蹴り飛ばす。

 

なんであの人の手があんなにも黒いと思う? なんで足が焼け爛れていると思う!! 

 

「ガっ!?」

 

 最初喰らった一撃のように吹き飛ばされることはなかったが数メートルほど後ろへ下がらされたガウェイン。追撃に対して即座に反応しようと顔を上げると一瞬で目の前へと移動してきた博樹がナイザーを振り下ろしていた。 ガウェインは剣でその攻撃を受け止めるがその攻撃の重さに地面が割れる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()と思う!! 

 

「グっ!! (武器を扱う腕は二流、それを振るう技術も拙い。それなのに何故、ここまでの力が出せる!?)」

 

 ガウェインに休ませる、考えさせる暇など与えさせない。博樹はまるで暴れ回るようにギガバトルナイザーを振るい、ガウェインはその攻撃を何とか防いでいくことしか出来ない。

 

 

 博樹の腕が一流のそれには及ばないことは理解できる、だというのに付け入る隙が見当たらないその矛盾に頭を悩ませながらガウェインは博樹の攻撃を防いでいく。

 

自分はどうなってもいい、死んでも覚悟で守り続けていたんだぞ!! 

 

「グっ!!」

 

 打ち合っていた博樹の腕から突然ナイザーが消え、ガウェインへと頭突きを浴びせる。

 予兆もなく行われる突飛な行動に流石のガウェインも反応できずに顔面に直撃し、最初に顔面を殴られたのも合わせて二枚目な顔には血が滴っている。

 

それを貴方は、『たかだか子供1人の命』だと? ふざけるなっ!!! 

 

 更に怒りを増していく博樹の感情に合わせるように、ギガバトルナイザーから溢れる闇がその深みを増していく。

 

どんな絶望だろうが、どんな地獄だろうが親にとって子供っていうのは()()なんだよ!! 自分の人生そのものなんだよ!! 

 

 獅子王から“不夜”の祝福(ギフト)を授かり、常に3倍の力を発揮できているはずのガウェインが手も足も出せずに目の前の人なのかサーヴァントなのかも分からない存在に圧倒される。

 それは誉れある円卓の騎士として、獅子王の騎士としてあるまじき行為だ。 ガウェインは己を奮起させ、魔力を更に引き出す。

 

「貴方が何を語ろうと獅子王の意思は変わらない!! 子を守る親ですって? そんな者たち、この正門の前にごまんといましたよ!!」

 

 魔力を引き出したガウェインの一撃が振り下ろされる。疑似太陽を搭載されたその聖剣に灼熱の炎を纏わせて斬りつけてくるその攻撃を博樹はナイザーで受け止める。

 

「我々は我々の正義に基づいて行動している!! 獅子王の選択は絶対!! その絶対を覆すことは決してあり得ない!!」

 

────ああそうか、だから貴方はそんなにも機械じみているんだな

 

 ガウェインの灼炎と博樹のナイザーから振るわれる闇がぶつかり合う。基本を忠実とした洗練され自分の流儀へと昇華させたガウェインの剣と、型も技もないただの暴力である博樹の力という真逆のもの衝突しあう。

 

与えられた責務を全うする、獅子王に従う心ない機械人形。それが貴方だ

 

「それの、何が悪いというのですかっ!」

 

 博樹とガウェインの衝突は次第に勢いを増していき、ぶつかり合った灼炎と闇が2人の四方を囲んでいく。そんな状況の中でも2人は一歩も引かずに戦い続ける。

 

「私は誓ったのだ!! 自らの全てを我が王に、獅子王に捧げると!! その為なら私は心を捨て、機械でもなりましょう!」

 

 ガウェインの強烈な一撃、博樹の事を包み込む勢いで迫ってきた灼炎をナイザー使い払ったが、視界が見えなくなってしまったその一瞬の隙を、突かれてしまった。

 

「獅子王の選択に一切の例外は許されない」

 

「ルシェド、お母さんが絶対に守るからね……」

 

 粛正騎士の生き残りが、サリアとルシェド親子へ向けて剣を振り下ろそうとしていたのだ。その事に気づいた博樹は目の前のガウェインのことなどどうでも良くなり、2人の事を助けるために背を向けてしまった。

 

「しまっ!!?」

 

「御免っ!!」

 

 すぐに助けに向かおうと動き出す博樹。しかし、その隙を見逃すほどガウェインは甘くない。

 

 灼熱と共に無防備になった博樹の背中へ剣が届き、肉を焼き斬った。

 

「ぐっ……!! ガアアアアッ!! やら、せるかああああ!!! “ベリアルデスサイズ!!! ”

 

 それでも、意地でも親子には触れさせないために、背中に感じる痛みを度外視してナイザーを振るい、博樹は親子を襲う騎士を消滅させる。

 

「はあ……はあ……」

 

「貴方をこのまま放置するには余りに危険すぎる!!」

 

 瞳の炎は消え、先ほどまで感じていた圧を博樹から感じなくなったガウェインだったが、もし万が一獅子王の障害になりえるかも知れないと考え魔力を最大解放する。

 

【この剣は太陽の移し身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎】そう言いながら、ガウェインは聖剣を天に昇る太陽と重なるように空に投げる。

 宝具の展開。博樹のことを障害と捉えたガウェインは、完全にトドメを刺すために博樹へ向かって太陽の聖剣を振りかざす。

 

「【転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)!!!!】」

「ここまで外道に堕ちたかガウェイン卿!! 【一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)!!!】」

 

「ぐううううっ!!! これは……私のガラディーンを押し負ける!!」

 

 倒れる博樹のことを守るように、ベディヴィエールが右手にある銀の腕を開放しガウェインのガラディーンを打ち破った。

 本来ならば、いくらベディヴィエールの銀の腕がヌァザの腕そのものだったとしても押し退けるので手一杯だった。しかし、ガウェインは博樹との戦闘による消耗によって体力を消耗していたことも相まって、軍配はベディヴィエールに上がり、ガウェインのことを払いのける事に成功した。

 

「ぐ、っぅぅぅぅうううう……!」

 

「ベディ、ヴィエールさん……貴方、腕が……!」

 

「心配しないでください博樹殿。立香たちが道を切り開いてくれました、撤退しましょう!!」

 

 銀の腕の内部が焼けようとも、ベディヴィエールはその痛みに耐え、倒れている博樹の事を担いで戦線から離脱していく。確りと、あの親子もつれて……

 

「ま、待ちなさい!! ベディヴィエール卿!! 貴方ほどの騎士が何故……!! 王に叛逆するというのですか!!」

 

 片膝をつきながら叫ぶガウェイン卿の言葉を無視して、ベディヴィエールは戦線を離脱していった。

 

 

 

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 ・

 

 

 

 

 

「はっはっはっはっは!! おいおいマジかよ!! ガウェインのヤツ。あの傷で、父上の一撃を喰らってもまだ生きてやがる!! どんだけ頑丈なんだよアイツ!」

 

 獅子王へと今回の聖抜の儀の不手際を報告したガウェインへ下された処罰は、獅子王自らの槍をその身で受けるというものだった。

 聖槍の一撃によってしばらくは再起不能になったが、何とか生きているらしいガウェインはそれで、今回の罪は赦された。

 

「……しかし、ガウェイン卿をあそこ迄追いやった相手というのは誰なのでしょうか? 人間でも、サーヴァントでもない不確かな者という情報だけ……」

 

「詮索は不要だトリスタン。今問題なのは太陽王ただ一人だ、貴公らは奴との決戦に備えよ」

 

 それだけ言って獅子王は騎士たちの前から姿を消した。

 そして王の補佐官であるアグラヴェインは難民たちは無視し、外部からのマスターたちの排除を命じていた。

 

 ────その中で難民たちがどうなろうと、不可抗力だと言って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ……!! はあ、はあ、はあ……。ベディヴィエール卿……、そしてヒロキ……と呼ばれていましたね……。貴方たちは、私がこの手で必ず……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【獅子王に従う心ない機械人形】
 6章のガウェインの心情、6章舞台でガウェインがロボットダンスを披露していることから選んだ言葉。
感情のまま怒りをぶつける博樹さんにそれを言われるという。

【赤目博樹】
 怒りが限界突破したことでベリアルの力を博樹が解放させた状態。
博樹の本来の性格かベリアルが抑えてくれているのかは定かではないがそのお陰か、ヤベーイ!ハザードやメタルクラスタ、サンブレのように当たり構わず暴れ回ることはなく、敵と認識した相手にだけ一切の容赦なく潰す。

 多分全クラスに2倍weak、防御無視(というより貫通?)コマンドカード5枚全部バスターに毎ターンスター50発生くらいのぶっ壊れ状態なためみんなのトラウマ相手でも1人で戦えていた。

【ベリアルデスサイズ】
 ギガバトルナイザーから放たれる鎌状の光線。あんまり出番のないような技かもしれないが、ジードの回想シーンで光の戦士たちをその技だけで一掃したり、ウルティメイトゼロに致命の一撃を与えたりと威力だけなら最高クラスの技。


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5

 やっぱりジャグさんじゃねーかヘビクラあああああ!!
まあそんな事より、リクくんのアクセスカード+レオ、セブンでソリバ認証するという神使用なんですけど、実はSGウルトラメダル01にウルティメイトゼロとネクサスジュネッスのメダルがあるんですよね……。ノアクティブサクシード……

 話のテンポを良くする都合上、割と飛ばすところは飛ばしてますんで気になる人は実際にプレイするか、舞台とかで保管をば……

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく



『サーヴァントなんて、ほんとは一日や二日で別れる、使い捨ての消耗品さ』

 

 博樹さんの活躍にモーさんの暴れっぷりのお陰で、別の箇所から逃げた難民が三百人、そして私たちと一緒に逃げている難民が二百人と正門に集まっていた人たちの大体半分の人たちを救うことが出来た。

 全員を救う事が出来なかったのは悔やまれるけど、流石にそれは望み過ぎだってことはわかってる。

 

 そんな私たちは今、彼らの案内の元、山岳地帯にあるという山の民の村を目指して進んでいた。

 

『私はちょっと、それが長かっただけさ。いや、長すぎたのかもしれない』

 

 ニトクリスが魔術で召喚してくれたメジェド様たちが難民たちの両脇を固め、比較的進行はスムーズに進んでいたんだけど。そうは問屋が卸さなかった。

 早馬に乗って私たちの事を粛正騎士、そして円卓の騎士の一人である“ランスロット”が迫ってきた。

 

 こっちのサーヴァントだけで立ち向かうなら倒せないことはないかも知れなかったけど、難民たちがいる。

 彼らの事を守りながら円卓の騎士と戦って勝つのは不可能に近い。

 

 だから、ダヴィンチちゃんがあの方法を取るしかなかった。

 

『チヴェディアーモ♪ ドクター・ロマン、そして立香ちゃん、マシュ! 博樹くんも、その身体であまり無茶をすんじゃないよ』

 

 ────大丈夫、天才は不滅だ! 生きていたら必ず会おう!! 

 そう言ってダヴィンチちゃんは、連中を一掃するためにバギーを自走爆弾へ改造したソレと一緒に突っ込んでいってしまった。

 

「ダヴィンチちゃん…………」

 

「まったく、マシュも立香もいつまでうじうじしてんだよ!! 相手はあの女好きのランスロットだ、もしかしたら突っ込んでくるダヴィンチの事見て咄嗟に助けてっかも知れねーだろ?」

 

「も、モードレッドそれは不謹慎にも程がありますよ!!」

 

「何故でしょう? ランスロット卿の逸話を考えればありえないかも知れないのかも知れませんが、無償にむかむかします」

 

「ランスロットって、そんなにアレな人なの……?」

 

『ああ。そう言えば立香ちゃんも博樹さんもアーサー王伝説を詳しく知っているわけじゃなかったね。円卓の騎士が2人がいるのにあれだけど、僕から説明させてもらうね』

 

 私たちの暗い雰囲気を少しでもどうにかしようとしてくれるのか、モーさんやドクターたちが励ましてくれる。

 

「そもそも! 彼女の中にいる英霊の事は話していないのでしょう? それなのに貴方ときたら……!」

 

 アーサー王と円卓の騎士の伝説。アーサー王は勿論のこと、円卓の騎士それぞれが偉業とも呼べることを成し遂げている英雄集団だという事。

 

「冗談だ冗談。ランスロットの事言ったのは悪かったが、マシュは気づかねえって」 

 

「そ・れ・で・もです!! まったく、身体ばかり大きくなって中身は変わっていませんね貴方は」

 

「ああっ!! マーリンにその腕つけて貰わなかったら他の円卓たちとまともに戦えねえくせに威張んなベディヴィエール!!」

 

 大まかな話、敵として立ち塞がってくる事が分かっているガウェインとランスロットの事を聞き終えたタイミングで、先頭を歩いているニトクリスから知らないサーヴァントを見つけたと報告があった。

 少なくとも円卓の騎士ではないみたいだけど……誰だろう? 

 

 

 

 

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「立香!! それにベリアルも!! まさかこんな場所で会えるなんて思いもしなかったわ!! 御仏の導きに感謝しなくちゃ!!」

 

 ドクターやマシュ、それにモーさんを以ってしても面白いサーヴァントと言わしめた彼女の名前は“玄奘三蔵”。あの有名な西遊記の三蔵法師その人だった。

 彼女が最初から友好的なのには理由があって、実はこの特異点に来る前に私は彼女と知り合っていた。

 

 具体的には彼女の心の世界に迷い込んだことがあって、その時ベリアルさんも来てくれたから一緒に三蔵ちゃんの抱えていた問題を解決したんだよね。

 まあ、あれが西遊記の旅の再現って言っていいのかわかんないけど……

 

「え? ベリアルじゃない? ベリアルと同化している人間本人……? それじゃあ今回は悟空にはなってくれないのね……残念……」

 

 そう!! 何故だか知らないんだけど、三蔵ちゃんの真っ直ぐ過ぎるあの性格はベリアルさん苦手だったのか、逆に気に入ったのか分かんないんだけど、あの悟空が頭に巻いてる緊箍児をつけて悟空役をやってくれてた! ギガバトルナイザーも如意棒ぽかったしね!! 

 

 そんなんだからか、三蔵ちゃんってばベリアルさんの事結構気に入ってたのか、博樹さんの口からベリアルさんが出てこない事を聞いて結構本気で落ち込んでる……。

 

「わっはっは! 三蔵がそれほどまで気に入った相手がいるとはな。内に秘めた力は悪人のそれに近しいものを感じるが……うむ、顔を見見ただけでわかる!! お前たち、三蔵に負けぬほどの善人だろう!!」

 

「ちょっとトータ!! みんなに失礼でしょ!! 私の弟子なんだからもっとちゃんとしなさい!!」

 

 そしてもう一人。左肩をはだけさせた朱色の着物を纏った偉丈夫。服装からして日本系のサーヴァントと分かる彼の真名は“俵藤太”

 彼はどうやらこの土地に召喚されて三蔵ちゃんと出会うや否や弟子にされたらしいんだけど、嫌な顔一つせずに三蔵ちゃんと仲良く話をしてる。

 

『俵……俵藤太か!! こいつは丁度いい!! 二百人もの難民を受け入れてくれようにも食糧難である事には変わりはないからどうしようか考えていたけど、そんな悩みも吹っ飛ばすほど最適なサーヴァントじゃないか!!』

 

「ドクター?」

 

「それは、どういう意味でしょうか?」

 

「はっはっはっはっは!! ソイツはあとでのお楽しみというヤツだ! どおれ、見れば難民たちを引き連れての大移動と来た!! お師よこれは助けに入らねばなるまい!!」

 

「あ──!! それは私が言おうとしたのに──!!」

 

 何だか、さっきまでの暗い雰囲気がなかったかのような明るさを作ってくれた三蔵ちゃんと藤太さんを仲間に加えて、私たちは山の民の村へと向かって進んでいった。

 

「ふふっ(立香とマシュに笑顔が戻りましたね。あれで心が折れないのは、見た目に寄らずいくつもの壁を乗り越えてきた証でしょう)」

 

「何一人で笑ってるんだよ、気持ち悪ぃぞ?」

 

「貴方はもっと言葉を選んで話せないのですか!?」

 

 

 

 

 

 

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「んじゃまっ! オレらはあっちの村に言ってるぜマスター!」

 

「うん、ソッチのみんなの事はよろしくねモーさん!」

 

 あれから運よく円卓の騎士の襲来もなく、一山二山と超えてやっとの思いで山の民の村へと辿り着いた私たち。

 最初、この村を守っているサーヴァント“呪腕のハサン”とひと悶着あったんだけど、最後は聖都で助けたあの親子、サリアさんとルシェド君の説得のおかげもあって、私たちは村へと招待してもらった。

 

 だけど、やっぱり二百人を超える人数の難民を一同で受け持つにはこの村だけでは不可能らしく、半分の百人は西の村へと移って貰うことにした。

 道中護衛として、聖杯があるおかげもあって単独での行動が可能なモードレッドちゃんにニトクリスさん、三蔵さんに藤太さんの4人が出向いてくれることとなり、今私たちは長旅の疲れを癒しながらこの村での生活を感じている真っ最中だ。

 

「アーラシュ、狩りに行こうぜ!!」

 

「おお良いぜ!! だが、お前さんらはあんまり無茶するなよ?」

 

 呪腕さんとは別のアーチャークラスの英霊“アーラシュ・カマンガー”さんは誰に対しても気さくなとても心の広い人で、この村の人たちに大層信頼されている。

 英雄らしくないっていうか、この村の人たちがアーラシュさんのこと英雄として見てないって言うのかな? そういう関係性が確立されていて、今も何人かの人たちを連れて狩りへと出かけて行った。

 

 他には布を継ぎ接ぎして服を作ったり、食事の準備やその食事を食べるための食器づくりまで……、一人ひとりが今日という一日を生きるために頑張っている。

 現代の日本では考えられないような生活だけど、“みんなで生きてる”って感じがする。

 

『どうだい博樹さん、身体の調子は? ガウェイン卿から受けた傷、それとあの時の後遺症なんかもあったら隠さずに言ってくれ』

 

「背中の傷は自分で見たわけではないんで定かではないですけど、今は火傷が残ってヒリヒリしてるって感じですかね。それで……あの時の後遺症、ですか……」

 

 みんなが寝静まった夜、村から少し離れた岩の上から景色を眺めながら、ロマニさんにそう問われた私は、手をグーパーグーパーと握って開いてと繰り返しながら聖都での戦闘を思い出す。

 サリアさん親子を手にかけようとしたガウェインへの怒りが頂点へと達し、ベリアルさんの力が漏れ出たあの感覚を……。

 

 破壊しろ、邪魔するものは消せ、あの時闇に囚われていながらも、ちゃんと敵味方の認識が出来ていたのは私自身に闇への耐性があったからなのか、もしくはベリアルさんが……

 

「今のところは、異常は見当たらないですね」

 

『そうか、気を付けてくれよ? 今は殆ど回復しているけど、ベリアルの力を振り回した後の君の体組織は見たことないくらいにボロボロだったんだ』

 

 けど、そんな中で一番驚いたのは、自分の中にこんなにも人を憎む気持ちが存在していたことだ。あの時ガウェインを許さない、アイツは殺さなければいけないと思ったのはベリアルさんが何かしたとか、そんなんじゃない。

 アレ全部、私自身の中に元々あった感情だ。それが闇の力で増大して爆発した。

 

 守るために戦っていたのに、いつの間にか私の中にはそれ以外の感情が吹き荒れていた。怒りや憎しみ···そして、歓喜の感情だ。

 

 あの時、戦うことが心地良くなっていくのを感じた。止まることのない傲慢な欲望が際限なく溢れ出て、私の事を飲み込もうとした。

 

 もしもサリアさんの声が届いてなかったらどうなっていた、考えるだけで嫌になる。

 

『そうだ。どんな人間でも大なり小なり負の感情を抱えている。お前はそれが自分でも気づけないほどに小さかった』

 

「ベリアルさん……」

 

『な、なんだって!? ベリアルが話しかけてきてるのかい彼はな────』

 

 ベリアルさんの力だろう。突然ロマニさんとの通信が途絶えた。表に出てこれなくてもこれくらいなら訳ないみたいだ。

 

『あのまま呑まれていれば、お前は俺と同じになっていた。全てを憎み、全てを破壊する存在にな』

 

「ベリアルさんと……同じ……」

 

 突然、全身の震えが止まらなくなった。自分の事を抱きしめるようにして何とか震えを止めようとするけれど、その震えが止まることはない。

 ────ああ、怖いんだ。

 

「博樹殿?」

 

「────っ!! ベディヴィエール、さん……!!」

 

「身体が震えているようですが、大丈夫ですか!? もしやあの時の戦いで何か……!!」

 

「違う、違うんです!! ただ、ただ怖くて……震えていただけなんです……」

 

「────声に出すと楽になるという事もあります。私でよければ、助言を出来るかどうかはわかりませんが。話を聞くことはできますよ?」

 

 そう言って、私の隣に腰を掛けるベディヴィエールさん。

 そんな彼を見て、何故だか彼になら話ができると思った私は、この気持ちを打ち明けることにした。

 

「私があの時見せた力。あれは、借り物なんです……。全てを破壊する圧倒的な力、他に何も言わせない絶対的な暴力。その力を私は怒りに任せて使った!! 

 本当は、こんな風にこの力を使いたくなんてなかった!! 怒りに任せるんじゃない、誰かを助けるために、救うためだけに、この力を使えるんだって示さなきゃいけなかったのに……」

 

 ずっと、ずっと闇の中を彷徨い歩き続けたベリアルさん。そんな彼が今、ようやく日の目を浴びる時が来たかもしれない。それなのに、同化している私が見せたのは過去のベリアルさんと同じ、力で他を圧倒することだけ……。一緒に歩くって、迷わないように私が隣にいるんだって言ったのに……!! 

 

「この力を正しく使いたい! 間違った使い方をしたくない! だけど!! 神の祝福を受けたあの円卓の騎士たちを倒すには、この力に縋るしかない……!!」

 

 獅子王から神の祝福を受けた円卓の騎士たちは、生半可な攻撃は受け付けない。他のサーヴァントたちを逸脱とした存在になってる。

 その神の力を断つには、同等の力を持っているベディヴィエールさんの銀の腕を使うか……。ベリアルさんの力、圧倒的な力で断ち切る事……。

 

「……やはり貴方は、とても優しい心の持ち主だ」

 

 自分の情けなさに涙を流していると、ベディヴィエールさんが隻腕の腕で、私の手をぎゅっと握ってくれる。

 

「確かに貴方があの時振るった力は、私や他の円卓たちも感じたことのない、とても恐ろしいものだったかも知れません。粛正騎士たちは手も足も出せず、日が照らすガウェイン卿を圧倒してみせた。でも、貴方のあの行動で救われた者がいます」

 

「サリアさんと、ルシェドくんの事ですか……?」

 

「それと、私もです」

 

「ベディヴィエールさんが……?」

 

「はい。あの時私は貴方に言いましたよね? 使命の為ならば他の命を切り捨てても構わないと。それが間違いだったと気づかせてくれたのは貴方だ、博樹殿。長く、長く旅をしてきたせいで私の心はどうかしていた。獅子王に会う、その為なら何を犠牲にしても構わないと、助けを求める声があっても、知らぬ命が削られようとも私は使命を果たそうと、その一点しか見ていなかった」

 

 この震えは……私の身体の震えじゃ、ない……。ベディヴィエールさんも、震えている……? でも、なんで……? 

 

「我が王が守ろうとしていたものを切り捨ててまで謁見したところで、()()()は絶対に王へは届かない。王が守ろうとしたものを守り抜いてこそ!! ようやく、この手を我が王へと伸ばせるのだと。そう思い出させてくれたのが貴方なんですよ? だから誇ってください博樹殿。貴方の内に潜む力がどんなに悪しきものであっても、貴方のその心が鈍らない限りその力は、誰かに救いを述べる手となり、足となれる」

 

「……ありがとうございますベディヴィエールさん。まだ自信は持てないですけど、震えは止まりました」

 

「ふっ、明日も早いです。もう休みましょう」

 

「あっはい!!」

 

 この時、励まして貰ったこともあって言わなかったけど、ベディヴィエールと握手をした事が原因だろうか、もしかしたらベリアルさんが何かしたのかも知れないけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 ベディヴィエールさん……貴方は…………っ!! 。

 

 

 

 

 

 

 

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「大変だ!! 西の村から狼煙が上がってる!!」

 

 東の村に来てあれこれ数日がたっていた。受け入れてもらった難民たちの生活も安定してきた頃、見張り役だった人が急いで報告してきた。

 西の村ってモーさんたちが向かった場所のはず!! 

 

「チっ、敵襲だぜありゃあ! 西の村が敵に見つかっちまったらしい!!」

 

「っっっっっ!! 旗の色は! 旗の色は見えませぬかアーラシュ殿!!」

 

「──赤い竜と、その首を断ち切る赤い稲妻──この紋章に見覚えはあるか呪腕殿」

 

「王の首を狙うと公言する旗はただ一つ────円卓の騎士、()()()()()()()()()()……ッ!!」

 

『は、はははは!! まさか、こんな偶然が……いや、彼女のことだ直感で分かっていたのかも知れないね。だから自分が西の村へ行くって言ったんだ』

 

「うん、多分モーさんならそうするよね……」

 

 モーさんの相手は、モードレッド(自分自身)……!! 

 

 

 

 

 

「それじゃあオレたちも東の村にいくか!!」

 

「行くってアーラシュさん、東の村へはサーヴァントの足でも全力で走っても半日以上かかるって……」

 

「だから()()()()()()()。コイツでな!!」

 

「「「はい!?」」」

 

 これは一生忘れない。もう、絶対にやりたくない!! 

 

 

 

 

 

 




【博樹さんとベディヴィエール】
本編では立香ちゃんとマシュの行動によって考えを改めるべディさんですが、この小説ではその役目は博樹さんが担うことに。
 果てはてこの2人はどうなることやら……

【星の三蔵ちゃん、天竺に行く。ベリアルライト版】
復刻ライト版ならぬ、ベリアルライト版。ベリアルさんが参戦することで通常在り得ない速度で微笑特異点が修復されるという物。

 火炎山を芭蕉扇を使わずギガバトルナイザーで炎を消したり、敵の事はばったばったとなぎ倒し、最後に出てくるのは5章修復後もベリアルコクーン内で戦い続けていたカルナとアルジュナが出てきたりとやりたい放題。


さあ、次回はモーさんvsモードレッド!!お楽しみに!!


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6

たまにある予約時間で投稿したのに即座に投稿されるの何なんですかね? 今回もそんなのが起きて適当な時間に投稿することになりました。本当は明日のはずだったのに······

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく



「ビンゴォ!! よっしゃああみな殺しだああ!!! …………あ?」

 

 アーサー王の未来予知にも等しいほどの直感は持ち合わせていないが、野生の勘とも言えるその直感を信じて東の村を見つけたモードレッドだったが、村の様子が可笑しいことに気づいた。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 辺りを見渡せばつい先ほどまで普通に生活をしていた様子が見て取れるため、廃村になった訳ではないことが見て取れる。

 

 だからこそその異常が顕著なのだ。これではまるで自分が襲撃に来るのが予め分かっていたかの様ではないかと

 

「(んなわけがあるか。こっちは勘だけで探り当てたんだぞ、動きを予測出来るはずがねえ)────ッ!!ソコかっ!!」

 

 異変を感じ取ったモードレッドが魔力を放出させて攻撃すると、上がった土煙の中から人影が姿を現した。

 

「貴方が言っていた事が本当になるとは……驚きですね」

 

「ああ、だがこれで村の者たちに及ぶはずだった危害がゼロに近しいものとなった」

 

暗殺者(アサシン)にテメーはオジマンディアスんとこの!! オレの襲撃をどうやって読みやがった!!」

 

「────勘だよ」

 

「あ? …………なんだ、お前は……!?」

 

 髑髏の面を被った女性“百貌のハサン”でも、今やオジマンディアスの勢力ではないニトクリスでもない気だるげな返答が聞こえてくる。

 その相手の姿を見て、モードレッドは驚くしかなかった。

 

 正確には()()()()()()()()()と、その手に持つ剣を見て、ありえないありえないと思いながらも、その相手が誰なのか理解したモードレッドは叫んだ。

 

 

「何だよ、何だよ何だよ何だよ!!  ()()()()()()()()()()!!」

 

「夢見がちな大馬鹿野郎の夢を覚まさせてやるためだ。よお()()()()()()()。気分はどうだ? オレは最っ高だ!!」

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「モーさん、大丈夫?」

 

「あ? 何がだよ」

 

 それは、三蔵ちゃんが仲間に加わってすぐの事。一時期聖都に滞在することを許されていた三蔵ちゃんは、名前はそこそこに、特徴だけははっきりと敵となる円卓の騎士たちのことを覚えていてくれた。

 

 その情報を頼りにモーさんとベディヴィエールさんが照らし合わせた結果、敵となる円卓の騎士はアグラヴェイン、ガウェイン、トリスタン、ランスロット、そしてモードレッドだと言う。

 

 自分自身が相手になるかも知れないこともあって、私はモーさんの様子に異変がないか声をかけて見た。

 だけど、モーさん本人は至っていつも通り。

 

「いや、相手の方にもモードレッドがいるって話だったでしょ? だから、自分と戦うのって大丈夫なのかな〜って」

 

「ははは、何だよ一丁前に心配してくれてんのか立香?」

 

「そ、そりゃあ私はモーさんのマスターだし! てわっ」

 

 そんな事言っているとモーさんが私の頭をガシガシと乱暴に撫でてくる。

 身長が私よりも大っきいから結構頻繁にこうやってくるけど、好きなのかな? 

 

「心配すんなよ。ベディヴィエールと再会したあん時から、こうなるんじゃねえかって予感はしてたんだ。迷ってたところでドーにもならねえからな。とっくの前から覚悟は決まってたんだ。相手がオレだろうがアーサー王だろうが関係ねえよ」

 

 私がボサボサになった髪を整えていると、突然にモーさんが私の前に膝を折ってかしずいた。

 

(……)が今仕えているのは貴方だ藤丸立香。この心折れぬ限り、運命への叛逆に付き従おう我が主君(マスター)

 

 だから、大丈夫。相手が神の祝福を受けていようと、自分の仲間たちだろうと、ましてや自分自身だろうとモーさんは、私の()()()()は絶対に負けない。

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

「ホルアクティ!!」

 

「ふんっ!! はあっ!! 暴れるしか能のない者たちに、この山の翁が遅れを取ることはない」

 

 モードレッドの従えていた粛正騎士たちを難なく倒していくニトクリスと百貌。

 どうやら粛正騎士たちはその従えている円卓の騎士たちによってその特性を変えるらしく、モードレッドの従えていた騎士たちはただ思う存分暴れるだけの騎士たちだった。

 

 ただ、その分内包する魔力の爆発力は凄まじいものだったが、軍勢で襲い掛かる百貌と、中距離からの戦闘を得意とするニトクリスにとっては戦いやすい相手。

 現に、まだ騎士たちが残っているというのにニトクリスと百貌は話をする余裕すらある。

 

「しかし、アイツは大丈夫なのか? 自分一人に任せろと言っていたが…………」

 

「……私もモードレッドとはさして長い時間いたわけではありませんが……。大丈夫でしょう」

 

 そう言ったニトクリスの頭には、今急ピッチでこちらの村へと急いでいる立香とマシュの顔が浮かんでいた。

 

「粗暴で空気を読まない方ですが……、決して仲間の事を悲しませるような方ではありませんから」

 

 

 

 

 

 

 

「おらっ!!!」

 

「はっ、どうしたどうした!! 獅子王の騎士様の力ってのはそんなもんか?」

 

「舐めんじゃねーよこの偶像がっ!!」

 

 赤雷と赤雷が衝突する。聖杯をその身に宿した叛逆の騎士と、神の祝福(ギフト)を授かった獅子王の騎士。大量の魔力を際限なく放出する2人の衝突はそれだけで軽く山を抉る爆発を起こす衝撃を生む。

 村で戦っていればいくら民たちが避難していてもその後の生活が不可能になってしまうほどの……

 

 だからモードレッドは戦う場所を変えた。山と山の間にあるただっ広い平地。円卓の誰かがいつ襲ってきてもいいようにと、彼女が予め用意していた決戦場のような場所でモードレッドは獅子王の騎士と相対していた。

 

「偶像か、言い得て妙だなあ。確かに、今のオレの姿は生前じゃ絶対に在り得ない、幻みてえな存在だからよ」

 

「だったらとっとと消えやがれ!!」

 

 獅子王の騎士が放出させた赤雷の魔力を放つが、それをモードレッドは難なく弾き飛ばす。そして一瞬で詰め寄ってきた獅子王の騎士の斬撃にも合わせていく。

 相手が力任せに剣を振るっているとすれば、モードレッドは落ち着きを以って剣を振るう。

 

「悪いがソイツには応えらんねえな。オレは、オレの主君(マスター)と運命に叛逆してる最中なんでなああ!!! おおらっ!!」

 

「っ!!!」

 

 魔力が籠った拳が獅子王の騎士の鎧に届く。相手の事を壁へ叩きつけたモードレッドは生死の確認など取る前にクラレントを叩きつけた壁に向かってぶん投げ、自分もそれを追うように地面を駆ける。

 

「“燦然と輝く王剣(クラレント)!! ”」

 

「────チッ!!」

 

 モードレッドが投げ入れた自身の剣を掴んだ時、違和感を感じた。見るとモードレッドの剣を腕で握り止めた獅子王の騎士が、逆の手に魔力を溜め込んだ燦然と輝く王剣(クラレント)をモードレッドに向かって放った。

 

「ちっくしょが……。祝福(ギフト)も授かってねえくせに、オレの前に立つんじゃねえよ!!」

 

 完全に相手の隙をついた最高の一撃。モードレッドに宝具を叩きこんだ獅子王の騎士は、自身の鎧に付いた誇りを払いながら相手の剣を地面へ放り投げる。

 

「はあ、たくっ。ばかすかボコすか燦然と輝く王剣(クラレント)ぶっ放しやがって。その感じじゃ、獅子王から与えられた、いいや()()()()()()()祝福(ギフト)は“暴走”ってとこか?」

 

「────ッ!! なんで生きてやがる!! 確かにオレの燦然と輝く王剣(クラレント)はテメエを捉えた筈だ!!」

 

「咄嗟だったからなあ。腕に魔力を集中させて防がせて貰ったぜ。まっ、間一髪だったけどな」

 

 完璧なタイミングだった筈だ。“暴走”の祝福(ギフト)の恩恵で宝具を放つまでの充填時間は必要ない、完全に相手の虚を突いていた筈の一撃を防いだだと!? 。

 

 獅子王の騎士は、油断も何もなく本気でぶつけた一撃を、腕にだけ鎧を展開することで受け止めて見せたモードレッドに驚きと共に苛立ちを感じていた。

 

「まあ、アーサー王に仕えているってのに? ()()()を着込んでやがるお前如きの燦然と輝く王剣(クラレント)じゃ、程度が知れてるってもんだけどよお?」

 

「────っ!!! 馬鹿にしやがって!! 鎧も着てねえくせに!!」

 

「お前相手に纏う必要はねえからな。今度はコッチの番だ……!!」

 

 戦い始めてから今まで、獅子王の騎士の宝具を受け止める一瞬に篭手だけを纏っただけで、モードレッドは一度たりとも鎧を着ずに戦っていた。

 それは余裕なのか侮りなのかは分からないが、投げ捨てられた自身の燦然と輝く王剣(クラレント)を握ると、今度はモードレッドの方が宝具を展開させる。

 

 赤い稲妻と共に、白銀の魔力を纏うその剣を……

 

「おい待て、何だその輝きは!! まるで、まるでそれは!!」

 

 ────選定の剣に認められた証。

 

 獅子王の騎士がそう言葉を発するよりも早く、モードレッドの宝具

が獅子王の騎士を襲う。来ることが分かっていた、瞬時に迎撃のために獅子王の騎士も燦然と輝く王剣(クラレント)を放つが、ただ赤い稲妻だけの自分とそこに白銀の光を灯した相手とでは、格の違いを見せられているようだった。

 

「があああああああああっ!!!!!」

 

 しかも、それを証明するかのようにモードレッドの放った宝具が獅子王の騎士の宝具の威力を上回り相手の宝具ごと獅子王の騎士のことを包み込む。

 

「モーさん!!!」

 

「ん~? おお立香じゃねえか、意外と速くこっちに着いたんだな。それにお前ら二人もいるってことは、ソッチの掃除も終わったってことか」

 

 モードレッドの戦闘が終わると、東の村から駆けつけてくれた立香たちと、粛正騎士たちを倒し終えたニトクリスたちも来てくれた。

 

「モードレッド。祝福(ギフト)を授かった円卓を、貴方の攻撃が届いたというのですか!?」

 

「んあ? ああ、確証はなかったから言ってなかったけどな。相手は()()()()()()()()()()()()()だからな、叛逆の騎士であるオレの剣が届かない筈がねえ。ま、試してみるまでは一種の賭けみたいなもんだったけどな」

 

「────ッ!! 貴方はっ!! 成功したからいいものを、もし失敗していたらどうするのですかモードレッド!!」

 

 神の祝福を受けた円卓の騎士。彼らは既に普通のサーヴァントからは逸脱しており、同格の、しかも“聖杯を断つ”能力がなければ対抗出来ないはずだった。

 しかし、聖杯をその身に宿しなおかつ叛逆の騎士であるモードレッドは別だったようだ。相手が円卓の騎士だったからこそ、モードレッドは祝福(ギフト)を相手にしても太刀打ち出来た。

 

 ぶっつけ本番で、誰にも相談なしに行ったためにベディヴィエールから説教を受けることになってしまったが……

 

「はあ、はあ……。チクショウ、何やってんだよオレは……!! 祝福(ギフト)まで受けて圧し負けてんじゃねえか……しかも意味の分からねえオレ自身に!!」

 

「とっ、長ったらしい説教は終わりだベディヴィエール。やっぱあれだけじゃ沈まねえみてえだ。さっすがオレだな」

 

「まさかテメエまでいるとは思わなかったけどなチキン野郎!! お前ら全員道連れにしてやるよ!! 「ホント、自分のやりそうな事ってのは手に取るようにわかっちまうな」ガっ!!」

 

 起き上がった獅子王の騎士は、暴走の祝福(ギフト)を全開放して自分もろとも自爆しようとしたのをモードレッドに殴られて止められてしまう。

 

「剣の勝負に負けたから自爆してチャラ。まあオレもソッチ側だったら絶対同じことしてただろうが……なっ!!」

 

「んがっ!!」

 

 相手の襟首を掴んだモードレッドは、そのまま相手に頭突きをかます。その一撃で意識を失いそうになるのをがっと顔がくっつきそうな距離まで近づけて無理やり意識を確りとさせるとモードレッドは叫ぶ。

 

「これで今のはチャラにしてやるよ。今は尻尾巻いてとっとと逃げとけ。次会う時が本気の殺し合いだ、夢見がちなテメエの意地も誇りも全部叩き折った上でオレがお前に引導を渡してやる。だからお前も、その鎧脱ぎ捨てて全力でかかってこい」

 

 言いたいことを言い終えたモードレッドは、そのまま聖都のある方角に向けて彼女のことを投げ飛ばした。アーラシュや藤太といったアーチャーたちに矢を打たせないよう釘をさして。

 

「見てろ!! 次は絶対に、絶対にオレがお前のことぶっ殺してやるからなああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【叛逆の騎士】
 円卓を崩壊させた、アーサー王に叛逆したモードレッドだから許された宿業。神の祝福を持っている円卓だろうとモードレッドが「アーサー王」に叛逆している状態なら攻撃が通る。

 運命への叛逆を成したモーさんはスキルがランクアップしている。顕著なのが"直感"スキル、動物的な超直感からアーサー王の未来予知レベルの直感へと進化していたため&相手が自分自身だったため動きを先に予測、対応することが出来た。

今回では終わらないため会話は少なめ。


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7

本当は今回の話はゼット最新話の後に投稿するはずだったんです。
セラフやるまでずっと嫌いだったアーチャー出てくるんでジードに癒されようかなって……
感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


【悪虫退治に工夫を凝らし、三上山を往来すれば】

【汲めども汲めども尽きぬ幸さち──―】

 

【お山を七巻き、まだ足りぬ】

 

【お山を鉢巻、なんのその】

 

【どうせ食うならお山を渦巻き】

 

【龍神さまの太っ腹、釜を開ければ大漁満席!】

 

【さあ、行くぞぅ!】

 

【対宴宝具──―美味いお米が、どーん、どーん!】

 

 モーさんが敵のモードレッドを撃退して東の村へと帰ろうとした時、こっちの村と違って西の村の人たちは飢えで苦しんでいる姿がないことに疑問を抱いていたら、藤太がこちらの村へ赴いてくれることになった。

 自分の宝具を見せるって言ってたから私とマシュもなんのこっちゃって感じだったんだけど……その宝具を目の当たりのして、その凄さ、()()()()()にただただ驚きと感動するしかなかった。

 

 今まで宝具と言えば、相手を倒すための攻撃的な物が殆どで他にあるとしても回復、治療といった戦闘ありきのものだったから、藤太の滝のように無限に米を溢れ出すこの()()()()()()は衝撃的だった。

 

「すごいです先輩……戦わずに、ああして人々の飢えを満たす。そんな宝具もあるのだと初めて知りました。見てください、皆さん笑顔を浮かべています」

 

「うん。この宝具はきっと()()()()()()なんだよ。はは、なんだかこっちも釣られて笑っちゃうね!」

 

「はい!!」

 

 村の人たち全員が笑顔になる宝具。誰も血を流さなくていいこの宝具を持つ藤太は本当に凄い英霊なんだって、そう思えた。

 分かってる。人理修復こそが私たちの目的で、歴史を乱す獅子王を止めなくちゃいけないことも全部分かってるけど。

 

 だけど……

 

「記憶に残らない、歴史に残らないとしても、私はこの光景を絶対に忘れたくない……!!」

 

「私もです先輩。この喜びを、この胸に広がる嬉しさを! 私はずっと、覚えていたいです……!! 

 

 今回の人理修復もうまくいく。活気つけられたこともあって気分も上々だったから気付けなかった。

 

 

 絶望は、すぐ側まで這い寄ってきていることに……

 

 

 

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「あ、ああっ!! 村が……燃えてる!!」

 

「誰かー生きてる人はいないのー!! いたら返事をして──ー!!」

 

 円卓の騎士に捕らえられていた呪腕のハサン、百貌のハサンに続く3人目の山の翁“静謐のハサン”を色々とハプニングがありながらも救出することに成功した私たちは、アーラシュさんと博樹さんの2人に村の警護を任せて、初代山の翁の力を借りるための話をつけに言っていた。

 

 協力を取り付けることが出来て、これでこちらの準備も万端になったと言ったところで、悲劇が起こった。

 私たちがいない間に円卓の騎士が粛正騎士たちを引き連れて村へと襲撃を仕掛けてきていた。

 

 着いた頃にはもう遅くて、村には火の手が上がり地面には村の人たちの死体が……っ!! 

 

「そうだ!! アーラシュさんと博樹さんは!! あの2人はどこに!!」

 

「その2人ならば、既にこの世に亡く。……ああ、私は悲しい」

 

 慌てながら事態を確認しようとしていた私たちの前に、無機質な声が音を奏でるように聞こえてきた。

 アーラシュさんと博樹さんが……この世にいない? その意味って……

 

「ガウェイン卿を伏したという相手、そしてあれほどの弓の名手と向き合う機会を与えられながら、騙し討ちで決着など……」

 

ガキィン!! 

 

 私たちが相手に反応するよりも早く、ベディヴィエールさんが相手へ剣を振り上げていた。

 赤髪の糸目弓使いってことは……あれがトリスタン卿? 

 

「トリスタン……!! 貴公ともあろう者が博樹殿とアーラシュ殿に騙し討ち……そして無抵抗の村人たちを手にかけ、あまつさえ火を放つなど……!! 円卓の誇りは地に落ちたのか!!」

 

「なんと……まるで夢のなかにいるようだ。ベディヴィエール卿、貴公までこの戦場に現れるとは。そして我らに敵対するとは……ああ、私は悲しい。あと一歩ですべてを焼き尽くせたというものを」

 

 銀の腕を開放させながら、その腕が焼けるのに耐えながらトリスタン卿へ剣を向けるベディヴィエールさん。

 温厚な彼が今まで見せたことのないほどの殺気を纏いながら、トリスタンへ剣を向ける。

 

「同じ円卓を囲み語らった騎士を……。共に数多の強敵と戦った騎士を……この手で、この()で屠らねばならぬとは……。この哀しみ、決して癒えることはないでしょう」

 

「貴方の振る舞いを獅子王が許すと言うならば! 私は貴公の屍を超えて、獅子王に問うまでの事!!」

 

「ベディヴィエールさん、私も加勢します!! 彼は、彼ら円卓の騎士は許せません!!」

 

「私も、村の人たちを……よくも!!」

 

 マシュ、ベディヴィエールさん、そして静謐ちゃんの3人でトリスタンを倒そうと動き出した。その時だった。

 

「────ッ!? なんですか……この魔力の量は……一体何処から……?」

 

「私も感じました!! まるで、()()()()()()()()()と教えているような大きな魔力です!!」

 

「これは……まさかっ!! モードレッド!!?」

 

『そのまさかだみんな。コチラでも今しがた観測することが出来た膨大な魔力。それはこちら側のモードレッドのもので間違いない、こちらから観測出来るほどの魔力量だ。きっと聖杯を使ったに違いない」

 

 こちらの村にいてでも感じられるほどの魔力。それを放っているのは西の村で警護しているはずのモーさんなのだという。けど、あっちに襲撃が来たっていう知らせは届いていないのに……どうして? 

 

「モードレッド……。そう、そういう事ですか。ああ、私は悲しい。獅子王の裁きの光を受け止めきれると思っているその傲慢さが! どちらにいてもモードレッド卿は変わらないようですね」

 

「裁きの光だと……? どういう事だトリスタン!!」

 

「時が来たという事です。これより数刻の内に西の村へ獅子王の裁き。聖槍ロンゴミニアドによる浄化の柱が落とされる。貴方たち側に立つモードレッド卿はその柱を1人で迎え撃つ気でいるのでしょう。ああ、私は悲しい。そんな事出来ようはずがないというのに……」

 

『トリスタンの言っていることは嘘じゃない!! 上空から西の村目掛けた高密度の魔力反応を確認!! なんだコレ……こんなのサーヴァントが止められるものじゃない!!』

 

「────ッ!!」

 

 モーさんのピンチだという事に彼女の助けになるように令呪を切ろうとしたけど、ドクターに止められてしまう。

 

『無理だ立香ちゃん。ここからじゃ君の令呪がモードレッドに届くことはない、残念だけど……』

 

「何か、何か方法は!! モーさんの事を助ける方法はないの!?」

 

 令呪も切れない、今すぐ助けに向かえるサーヴァントもいない。どうすることもできないその中で、何か、何かできることはないかと探しているうちに西の村へ落ちていく光の柱目掛けて登っていく赤雷と白銀が混ざった光が見える。

 

「モーさん、モーさん!! モードレッド!!! 負けるな、負けるなああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

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「コチラの避難は全員完了しました!! ……モードレッド? 何をしているのですか、貴方も早く逃げる準備を!!」

 

 “ナニかヤバイ物が来る”そのモードレッドの直感を信じ、ニトクリスと百貌のハサンは獅子王の裁きがコチラへ向かってくるよりも早い段階で、村の人々を少しでも遠くへと逃がしていた。

 残っているものがいないか確認を終えたニトクリスがモードレッドを呼び行くと、彼女は村の中心で鎧、兜どちらも完全防備状態でクラレントを地面へ突き立て精神統一しているようだった。

 

「悪いなニトクリス、ソイツ出来ねえ相談だ。オレは、オレだけはここに残らなきゃいけねえ」

 

「何を馬鹿なことを言っているのですか!! 分かっているのでしょう、貴方死ぬ気ですか!!」

 

「もぬけの殻になった場所に、わざわざロンの槍を振るうほどアーサー王は馬鹿じゃねえ。落とす場所を変えるなんて芸当、あの王なら軽々やってのけるだろうよ。だから、オレが残るんだ」

 

 モードレッドはそういうと、自分の中にある聖杯の力を使って内にある魔力を外へと放出させる。そして空に向かって高らかに叫ぶ

 

()()()()()()()よ!! オレはここだ!! アンタのブリテンを終わらせたモードレッドはここにいる!! 築き上げた聖都を()()ぶっ壊されたくないんだったらロンの槍をオレへ向けろ!!」

 

 ここだ、オレはここにいるんだ。そう獅子王に知らせるように、獅子王の狙いを自分へ向けるようにモードレッドは魔力と一緒に叫び続ける。

 霊基に溶け込んだ聖杯を爆発させ、獅子王に気づかせるために膨大な魔力を解き放つ。

 

「貴方がいなくなれば、彼女たちが悲しむことはわかっているはずです…………! それなのに何故……!!」

 

「────オレのマスターも、アイツの盾を持ってるマシュも助けられる民草を目の前にして放っておくなんて死んでも許さねえ馬鹿どもなんだよ。だから、今それが出来るオレが尻尾巻いて逃げれるかっての。しかも相手はアーサー王だぜ?」

 

 兜で顔が見えなくても、この地でなんだかんだと長く関わったからこそ、モードレッドが不敵な笑みを浮かべているのが分かったニトクリスは、腰に手を当ててため息を吐きながら彼女へ近づきその手を握る。

 

「貴方は粗暴で、乱暴、とても口の悪い方でしたが……主君への忠義、覚悟。しかと受け取りましたよ。もしも死んだら私がミイラにしてあげましょう」

 

「ははは、英霊がミイラになんかなるかっつーの。────ありがとなニトクリス」

 

 右手を握られたまま、モードレッドは左の手をニトクリスの頭へ置いてぽんぽんと優しく叩く。いつものニトクリスなら「不敬ですよっ!」と怒るところだが、今回ばかりは許しているのか兜の隙間から見えるモードレッドの瞳を確りと見つめる。

 

「立香とマシュ。アイツらは弱虫で、そんでもって泣き虫だ。誰かがケツ叩いてやらねーとすーぐ立ち止まっちまうからな、任せたぜニトクリス」

 

「…………それでは()()。私が立ち上がらせた彼女たちを見せて差し上げましょう」

 

「ソイツは楽しみだなあ!! ────ッシ、やるか燦然の輝く剣(クラレント)!! ジーっとしてても、ドーにもならねえぞ!!」

 

 ニトクリスが天空の化身の力を使って村を離れていったのを確認すると、地面へ差していた燦然の輝く剣(クラレント)を引き抜きその真名を開放させる。

 ────彼の者は、我が選定には当てはまらない。そう言わんばかりに燦然の輝く剣(クラレント)はその輝きを増していく。

 

「そうだよな。あの聖抜の時に一目見ただけで、お前のあの王は()()すぎる。そう思ったよなああ!!!」

 

 ガシャン! ガシャン! と燦然の輝く剣(クラレント)が展開し、そこから白銀の輝きが、それを包み込むように赤雷が鳴り始める。

 空を見上げると、獅子王の裁きはモードレッドただ一人を標的として光の柱が落ちてきている。

 

「さあ、見せてやろうぜ燦然の輝く剣(クラレント)!! ()()が守ろうとした無辜の民を、獅子王から! オレたちが守ってやるところをよおおっ!!!!」

 

 聖槍ロンゴミニアドから放たれた光の柱を迎え撃つために、モードレッドは両腕で握った燦然の輝く剣(クラレント)を振り上げるために下段に構える。

 目印として放っていた魔力を燦然の輝く剣(クラレント)へと集中させ、宝具を放つ準備を整える。

 

【これは、これこそは!! 我が父を滅ぼす叛逆の剣!!!】

 

 この剣は、もう邪剣ではない。自分と共に、仕えるべき主と共に運命を覆すための剣だ。

 

 迫りくる光がゴゴゴゴゴッ!!! と、大地も、空気も震わせながら迫ってくる。

 

我が麗しき父への(クラレント・ブラッド)…………】

 

 辺りの山は砕け、貧しいながらも生きるために、懸命に築いた村も跡形もなく消え去っていく。

 

【ア──サァアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!】

 

 振り上げられた赤雷を纏った白銀の光が燦然の輝く剣(クラレント)から放たれ、獅子王の裁きと衝突する。

 その押し寄せる重圧に地面がへこみ、大地はひび割れていくがモードレッドはそんな重圧にも負けずに立ち続け、剣を握るその手を弛めない。

 

「があっ!! あああああああああああああッッッ!!!! 

 

 手から、口から、目から血が噴き出してきてもモードレッドは諦めることはない。それは燦然の輝く剣(クラレント)も同じなのか刀身に罅が入ってきているというのに放出させる魔力を一向に弱めようとはしない。

 

 1分、2分。……何分耐えたのかは分からないが、拮抗していた赤雷を纏った白銀の光は穢れない光の柱に押し切られていってしまう。

 

(まだだっ!! まだ諦めるんじゃねえぞクラレント!! 一欠片でもいい、オレの、いや()()()()()()()()()()を獅子王に届かせる!!)

 

 

 

 

 

 

 

バギンッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獅子王の裁きに耐えきれなくなった燦然の輝く剣(クラレント)の刀身が折れた。いいや違う!! 

 モードレッドの意思に応えるように、自ら折れることを()()()()燦然の輝く剣(クラレント)は、その身を削りながらも裁きの光の中を駆け抜けていく。

 

「いきやがれええええええ!!!! クラレントォオオオオオオッッッ!!!!」

 

 光の中を、その身を削りながら突き進んでいく燦然の輝く剣(クラレント)は、一欠片だけは残し獅子王へと届いた。

 

『────ッ!!!!』

 

 獅子王も、まさか自分まで刃が届くとは思いもしなかったのか、自分に向かってくる欠片に防御も、避ける動作も出来ずその頭に身に着ける獅子の兜に直撃し、それを完全に破壊した。

 喉がつぶれていながらも叫ぶモードレッドは獅子王へと届いたその欠片を通して、漸くモードレッドは、兜が壊れ、額から血を流すその王の姿を、()()()を見た。

 

「欠片一つでもこの私に届かせるとはな。賞賛に値するぞ、カルデアのモードレッドよ」

 

 

(ああ、やっぱりか……)

 

 致命にもならなかった一撃だったかも知れないが、モードレッドはそれだけで十分だった。

 獅子王の裁きに包まれながら、その目を見ただけで獅子王の在り様を見通した。

 

(獅子王、アンタはやっぱり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、なんだな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おいベディヴィエール。その腕、あのクソ魔術師の力で誤魔化してんだろうがオレは誤魔化せねえぜ?』

 

『ッッ!! 分かるのですかモードレッドこの腕が……!!』

 

『オレが何よりも焦がれたもんだぞ、分からねえと思ってんのか! まあいい、今回はお前に譲ってやるよ』

 

『譲る……とは?』

 

『ああもう察し悪ぃなそれだからお前は決める時に決めらんねえんだよ!!』

 

『うっ、そ、それは……』

 

『王の最期を見届けるはお前の役目だ。絶対に成し遂げろ、分かったなベディヴィエール』

 

 

 

 

 

 

 

(立香、いいや博樹か? ま、どっちでもいいか……。優柔不断なアイツのこと、頼んだぜ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【モーさんvs獅子王】
 円卓、アーサー王に絶大な特攻を持っているモーさんだったが、自分を狙いにさせるために放出させた魔力。マスターが傍にいなかったなどの原因により敗北。

 一番の敗因は、クラレントが成長したモーさんに耐えられなくなっていたこと。
獅子王の裁きによって砕かれたが、それは早めただけであって普通に使っていてもいつかは壊れてしまうはずだった。


知ってるかい?まだ、獅子王の裁きは終わってないんやで……?


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8

朝倉リクのアクセスカード発売日なんで投稿しました。
 予想通りノアクティブサクシードにフュージョンライズ出来たと思ったら必殺技ボイスも入ってるとかなに!?プリミティブもソリッドバーニングもちゃんとあるし……。突然にゼットライザーが神玩具になった瞬間でした……。
 これレイトさんにコスモスとダイナリードさせたらもしかして…………?

しかもしかも、ウルティメイトファイナルのアーツも届くというまさにジード祭り。本当にジードって3年前のウルトラマンですかってくらいの優遇っぷりですよ!!
赤目ジードのアーツ発売も決まりましたしね!!(絶対買う。転売ヤーから買わなくてよかった〜)

そんなハイテンションと違って本編はシリアス。

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


『ベディヴィエール卿』

 

『ベディヴィエール卿』

 

『ベディヴィエール卿』

 

『ベディヴィエール卿』

 

『ベディヴィエール!』

 

 何年も、何百年も何千年も、その人は歩き続けた。地の果てを彷徨い、膝が砕けても心が擦り減っても探し続けた。

 多くのものを見て、多くのものを忘れていくその中で、彼の中で色あせることのない記憶。

 

 円卓を囲み、自分の名前を呼んでくれる王に選ばれた誉ある騎士たち。

 そして、そんな騎士たちを従え、彼の事を選び円卓の一員と招き入れてくれた王のその澄んだ声。

 

『ベディヴィエール卿。私の騎士よ』

 

 16歳の時に岩に刺さった選定の剣を抜き、ブリテンを統べる王となった。それ以降、肉体は歳を取らなくなり数多の戦を勝ち続けブリテンに勝利をもたらした王、それがアーサー王。

 精霊の加護というが、彼はそれを呪いだと感じていた。

 

 彼の王がいるならば、ブリテンに滅びはなく。また、苦しみが蔓延する事はないだろうと……。

 

『土を耕し、日々を重ね、子を育ててこそ後の繁栄の繋がる』

 

 人々を加護するばかりでは未来がない。王が治めるブリテン以外は荒廃が続いているその地の嘆きを、王はただ一人、彼にその想いを告げた。

 勝利と栄光に浮く円卓の騎士たちにではなく、何もなかった彼に、彼にだからこそ……。

 

『他の騎士たちよりも劣っているだと? 馬鹿言うなベディヴィエール卿よ』

 

 彼の事を叱りながらも、何処か優しく語るその姿が、彼が初めて見た王の微笑む姿だった。

 “王は人の心がわからない”違う、そうではないと彼は知っている。他人の幸福な姿を見て、穏やかに微笑む人だと知っている。

 

『この森を抜け、あの血塗られた丘を越えた先にある湖に……我が剣を投げ入れろ』

 

『アーサー王、それは……!!』

 

 彼は優しかった、優しすぎたんだ。

 だから、剣を本来の持ち主へ還すことがどんなこと何を意味するのか、分かっていたからこそ……。

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

 西の村での襲撃から数日が経ち、立香ちゃんたちは囚われていたもう一人のハサン「静謐のハサン」という少女を助け出すことに成功した。

 今は、円卓の騎士たちに対抗するために、初代山の翁の力をお借りするとか何とかで村を出ている。モードレッドちゃんたちは引き続いて西の村の警護をしていて、今東の村に残っているのは私とアーラシュさんだけだ。

 

 今は襲撃に備えて警備を交換したばかりで、私はつい先日ベディヴィエールと話をした時のこと、厳密には()()()()()()()()()()()()()()()()について考え込んでいた。

 

(ベリアルさん、あの時流れてきた記憶は作り物とかではないんですよね?)

 

(わざわざそんな無駄な物を作る必要が何処にある。あれ正真正銘あの男の記憶、たかだか忠義のために歩き続けた軌跡だ)

 

 ベリアルさんがそう言うなら間違いないのだろう。やっぱりベディヴィエールさんは……

 

「よう、ヒロキ!」

 

「アーラシュさん、どうしたんですか? 交代の時間にはまだ……」

 

「ははは、サーヴァントに睡眠は必要ないからな。お前さんと世間話でもしようと思ってな」

 

 警備をしていた私の元へ、アーラシュさんが食料を持ってやってきた。

 ベディヴィエールさんの事もあったから、私はアーラシュさんに対して思っていたことを聞いてみた。

 

「アーラシュさんは、英雄なんですよね……?」

 

「ははは、おいおい。なんだよソイツは、まあサーヴァントとしてこうして呼ばれてるんだ。英雄として認められてるだろうな」

 

「いや、この村で過ごすうちになんだかアーラシュさんは、英雄らしくないなあって思って」

 

 アーラシュ・カマンガー。今まで聞いたことがなかったけど、ロマニさんに聞いてみてその偉大さ、その成し遂げた偉業はとても素晴らしいものだった。

 しかもこの中東では誰もが知っているくらいの大英雄であるというのに、ここにいる人たちは普通に接している。

 

「ソイツはここにいる奴らのおかげ……みたいなものでな。ここの奴らはオレがアーラシュだって言っても誰も信じない、だからオレを大英雄(アーラシュ)としてではなく()()()()()として見てくれている。それは、オレにとって初めての経験なんだよ」

 

 アーラシュさんは生まれながらにして英雄であることを定められた人。だから彼は生前ずっと一人だった、肩を並べられる相手も、仲間もいなかった。

 誰も彼もがアーラシュさんを尊敬していた。

 だからこの村で、彼のことをただの腕のいい弓兵としか見ない人たちにアーラシュさんは新鮮な気持ちになったんだ。

 

「生前の在り方に疑問を思ったことは一度もない。それがオレがオレとして生まれた意味だったからな。だがまあ、こんな()()()も悪くはないな。アンタはどうなんだよ?」

 

「え? 私、ですか……?」

 

「アンタの中にあるその力。ソイツとどう向き合えばいいのか、それと……ベディヴィエールのことか?」

 

「な、なんで!!」

 

「生憎と目がちっとばかし特別製なもんでな。まあ、アンタの中を深く覗こうとしちまうと殺されちまいそうだから余り見ないようにしてたんだがな。やっぱり正面切って話をすると駄目だな、つい見ちまう」

 

 千里眼────アーラシュさんの能力の一つらしく、彼は既にベディヴィエールさんのこと、そして私と同化しているベリアルさんの存在に気づいていた。どうやら見ようとするベリアルさんが何かしでかしていたみたいだけど……。

 

「まっ、助言って程でもないが。()()()()()()()()()って事だ。アンタはあの2人と違って深く考えちまうきらいがあるみたいだからな」

 

 やりたいことをやれ……。そう言って、アーラシュさんは戻っていった。

 

「やりたいこと……。そういえば私が今やりたいことって……なんだ?」

 

 

 

 

 

 

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『……カルデアのモードレッドの消滅を確認。残念だが、彼女であっても獅子王の放つ裁きの光には勝てなかったみたいだ……』

 

「モーさん……そんな……!!」

 

 西の村へ降りた光の柱。それに対抗するするように地面から伸びた赤雷を纏った白銀の光、モーさんが宝具で迎え撃とうとしているんだってわかった私は、期待に胸を膨らませた。

 だってモーさんは一度、ロンドンの特異点でアーサー王の宝具を完全に打ち破っている。

 

 だから、今回も前と同じでモーさんが勝つんだって、そう信じていた。

 衝突する獅子王の宝具とモーさんの宝具は、最初は拮抗しその進行が止まっていた。だけど次第にモーさんの宝具が押されていく形になっていき、最終的には……

 

「私は悲しい。そちらに召喚されたとは言え、獅子王の裁きに包まれたのは同じ円卓の騎士であるモードレッドだという……。獅子王に逆らうなど不可能だというのに、それを1人で迎え撃つなど……余りにも愚かな行い。これが悲しくないはずがない」

 

「────っ!! モーさんを……私のセイバーを馬鹿にするなっ!!」

 

「トリスタンッ! 貴方は許しません!!」

 

 モーさんの最期を嗤ったコイツは許さない、令呪(ガンド)を使ってでも逃がさない!! 

 マシュが抑えている間にガンドの準備をしていると、トリスタンは反撃を行うのではなく逃げの一手を取り始めた。

 

「逃げる気!?」

 

「これより5分の後、王の裁きはこの山に落ちる。さらばです、ベディヴィエール卿。もう会う事もないでしょう」

 

「粛正騎士!! 足止め、それに逃げるための贄ってワケね────」

 

 この東の村にもさっきの獅子王の裁きが落ちてくる。そう言ってトリスタンは粛正騎士たちを盾にすると、自分はそそくさと村から離れていった。

 私たちに逃げる時間も与えないために数だけはウジャウジャと粛正騎士が邪魔してくる。

 

『上空に高密度の魔力反応を確認。みんな、一刻も早くそこから離れるんだ!! 魔力観測地3000000オーバー! ベリアルの光線があったら対抗できるはずだが、今ないものを願ってもしかたない!! みんな急いで撤退を……!! このままじゃ一人残らず消し炭だ!!』

 

「でも、洞窟にいる村の人たちは!! あの人たちも助けなきゃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────どちらも無理だ、逃げるのも、助けるのもな

 

 

 

 

 

 

「アーラシュ、さん……?」

 

「こりゃあどう見ても全滅だ。初めから、あちらさんが本気になればこうなるのは目に見えていただろう?」

 

 腹部に風穴が空いた、何で今立っていられるのかわからない程の血を垂れ流しながら、アーラシュさんが私たちの前に姿を現した。

 トリスタンの言ってた話では、アーラシュさんは博樹さんと一緒に始末したって……

 

「ヒロキの方も何とか無事だ。谷底近くの洞窟で休ませてるからな、あとで助けに行ってやってくれ……」

 

「馬鹿!! 人の心配をする前に自分の心配しなさい!! そんな身体でここまで戻ってきて……」

 

「悪い悪い……。失敗は見せたが────名誉挽回の機会には間に合ったんだ、そう怒んなさんな」

 

 どこか覚悟を決めた顔をするアーラシュさんは、一度だけ本気を出すと、そういって私たちは洞窟へと非難しろと……。

 アーラシュさんもモーさんのように犠牲になる必要はないって、他に方法があるはずだって言おうとする私たちのことをべディさんや呪腕さんが抱えて洞窟へと連れていかれてしまう。

 

「そんな! アーラシュさん!! アーラシュさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

「うむ。相手取るには不足なし。いよいよ大一番でござるな、アーラシュ殿」

 

「ってアンタまだ残ってたのか!? 座り込んで酒まで飲みだしやがって!?」

 

「アーラシュさん!!」

 

「────ッ!! まさか、アンタまでここにくるとはなあ……ヒロキ」

 

 

 

 

 

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縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!! 

 

 

痛哭の幻奏(フェイルノート)!! 

 

 東の村への突然の襲撃、隙をつかれた私はランスロットの宝具を直撃してしまい、アーラシュさんはそんな私のことを庇いトリスタンの宝具の直撃を受けてしまい2人で谷底へ落ちていってしまった。

『ヒロキ、アンタはここで休んでろ。後の始末はオレの役目だ』そう言って私の事を洞窟へ置いていったアーラシュさんが何をする気なのか、ベリアルさんが教えてくれた。

 自分の体を賭けて放つ宝具、その力でみんなを救うのだと……。

 

「お願いだベリアルさん!! ウルトラマンになって、あの宝具を打ち消してくれ!! 貴方の力なら訳ないはずだ!!」

 

『断る』

 

「なんで!! どうしてっ!!」

 

 這いつくばってでも村へと戻りながら、獅子王の裁きを打ち破る最善の方法。デスシウム光線で完全に撃ち滅ぼすためにベリアルさんに変わることを願うが、それを断られてしまう。

 

『お前なら分かっているはずだ。この俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ────ッッッッ!!!! 

【我々ウルトラマンは決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない思いもある】

 それは、それは知っていた、知っているはずの事だった。私はいつの間にか、ベリアルさんはどんな悪い結末を変えることが出来る存在だと思い込んでいた……? 

 

 私が今まで見てきたウルトラマンたちの中で一番、誰よりも人間らしいベリアルさんの事を……

 

『お前では、あの男は救えない。それでもいくか?』

 

「────行く。行きます……っ!! 何もできないかも知れないけど、何かしたいから……!!」

 

 そうして東の村へ着いた頃には、アーラシュさんが獅子王の裁きを迎え撃とうとしてるその直前だった。

 

「アーラシュさん!!」

 

「────ッ!! まさか、アンタまでここにくるとはなあ……ヒロキ」

 

「はあ……はあ……、これが、貴方のやりたいこと……なんですか?」

 

「ふっ……。ああそうだヒロキ。これがオレのやりたいことで、やるべき役割ってヤツだ」

 

「なに、お主がしくじった時は拙者が何とかする。後顧の憂いなく、どうか存分に射られよ。ほおら博樹殿、お主もここに座って拙者と一緒に飲め」

 

「ははは、いいな。見届け人2人もいるなんてなあ。 最後まで1人じゃなかったのはこんなに()()()もんなんだな」

 

 もう立つことすら儘ならなくなった私は藤太さんの隣に座り込み、こんな状況でお酒を持ち出して口にしている彼から酒椀を手渡される。

 

【陽のいと聖なる主よ】

 

【あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ】

 

【我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ】

 

【さあ、月と星を創りしものよ。我が行い、我が最期……】

 

【我が成しうる聖なる献身(スプンタ・アールマティ)を見よ!!】
 

 

【この渾身の一射を放ちし後に────】

 

【我が強靭の五体、即座に()()()()であろう!!】

 

 腕が引きちぎらんばかりに弓を引き、彼の地面はもう血の池とも言っていいほど大量の血が流れている。

 それでも、弓を引くその力を弛めることなく、向かってくる獅子王の裁きへその標準を合わせ続ける。

 

「目を逸らすな、顔を背けるな博樹殿。アレこそが(まこと)なる英雄、人を救う側の極致だ」

 

「(ああそうだ。その背中に、その姿に憧れたんだ。ボロボロになっても最後まで誰かを救うことを諦めずに戦い続ける。そんな背中が、みんなに勇気を与える……!!)

 

 藤太さんが言うように、私はアーラシュさんから顔を、目を逸らさずにその背中を見続ける。絶望を振り払う、勇者の背中を……!! 

 

流星一条(ステラ)アアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……感服の他ありませぬ。星を落とす者は数あれど、星を砕く神技は他に無し。まさに────見事なりアーラシュ・カマンガー。八幡大菩薩が宿るかのような、凄烈の一射であった」

 

「アーラシュさん、貴方の想い……受け取りました。私のやりたいこと、見つけてみせます……」

 

 




【博樹の記憶詠み】
ベディヴィエールの記憶を覗いてしまった時に気づいた博樹の恩恵。
立香がマシュとの契約で毒などに耐性があるように発動方法は不確かだがサーヴァントの記憶を覗くことができる。
 実の所この恩恵はベリアルだけの力ではなく、博樹が本契約しているもう一基のサーヴァントであるライムが影響していたりする。ベリアルとライムの力が合わさった結果、記憶を覗けるように。


博樹さんが傷つき過ぎな気がしますがそこは仕方ありません。 
割と飛ばしていますが、やはり6章の目玉の一つであるアーラシュさんは飛ばせません。博樹さんとの絡みもありますしね。


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9

大地をしっかり踏みしめて登場するあの仕草。
あのギルバリスを圧倒する強さに、スピーディでいて暴れているかの様なあの戦闘。
挿入歌にまさかまさかのGEEDの証のフュージョンライズ!!

 変身バンクも素晴らしいの一言。ライブ、ユナイト、アップとギンガたちの変身音声を言い、「集うぜ綺羅星」という口上。ギャラクシーライジングはプリミティブが3人のウルトラマンの力を鎧にして纏っているみたいな感じだから、綺羅星の中にはベリアルさんも含まれている……?

ゼットライザー使用もちゃんと理由があったりとまだまだ推しについて話したいことは沢山ありますが本編始まります!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく




「貴方様との()()()()()、彼女藤丸立香を同盟者(マスター)として貴方様の前へ立つことをお許しください、ファラオオジマンディアス」

 

 聖都攻略。その為にはオジマンディアス率いるエジプト領の協力が必要不可欠だ。

 再び彼のピラミッドへと戻ってきた私たちは、王である彼の前に頭を下げ、()()()()()は私とサーヴァント契約をしたことをオジマンディアスへ謝っていた。

 

 そう、オジマンディアスに召喚され、彼に仕えていた筈のニトちゃんは襲撃の後、私と契約してくれることになったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「顔を上げなさい、藤丸立香! マシュ・キリエライト!!」

 

 モーさんは覚悟を持って、西の村のみんなを救うために一人残り獅子王に立ち向かったことを聞いて落ち込んでいた私とマシュの事を、西の村の民たちを救い、合流したニトクリスが怒ってきた。

 

「モードレッドは貴方たちがそんま顔をするために命を賭けたのではありません。貴方たちなら獅子王の野望を打ち砕けることを信じているから命を賭したのです」

 

「それは……分かってるけど!!」

 

「ダヴィンチちゃんの時もそうでしたが……付き合いが長い方たちほど、別れとなると……」

 

「……そうですね。その別れが突然であればあるほど、心に空いてしまう。ですが、大丈夫です」

 

 そう言って、ニトクリスは私たちの頬に手を触れながら優しく微笑みかけてくれた。

 そして、あの言葉を口にしたんだ。私とモーさんの叛逆の合言葉を

 

「“ジーっとしてても、ドーにもならない”のでしょう? ならば、立ち止まっている訳にはいけませんよ? さあ、立ちなさいマシュ! そして同盟者(マスター)よ」

 

「同盟者……? ニトクリス、それって……!?」

 

「んんっ!! 今の私は貴方たちと行動を共にしていますがファラオオジマンディアス様の従者であることに変わりはありません。ですが、ここから先は違います。ファラオへの不敬に当たりますが“友”に頼まれてしまいましたからね。貴方たちが暗黒に囚われぬようにその背中を押し続ける。しからば貴方と同盟を結ぶ、それが一番でしょう?」

 

 ニトクリスのオジマンディアスへの忠誠はそれは高いものだった。そんなオジマンディアスとの契約を切っていいと、そして私たちの正式な仲間に加わってくれるとニトクリスは言ってくれた。

 何だか、性格も何もかも違うはずなのに、私とマシュの背中を押してくれるニトクリスからモーさんと近しいナニかを感じる。

 

 私は、隣で立ち上がったマシュと顔を見合わせると小さく頷いた。

 

「お願いニトクリス、ううん()()()()()。私たちの叛逆に力を貸してほしい」

 

「はい、貴女たちを同盟の相手と認めるのは特別な事なのですよ? ってニトちゃんとは何ですか!! 不敬ですよ!! 渾名をつけるのならモードレッドのように敬意を込めてさんをつけませい!!」

 

「ええそこっ!? いやでもモーさんはモーさんだし、ニトちゃんはなんかニトちゃんって感じ……? ねえマシュ!!」

 

「はい! 愛嬌があって可愛らしいと思います!!」

 

「貴方たちはあああああ!! 頭を垂れなさい!! 不敬ですよ!! マシュ! 貴方も()()()()()の一人ならもう少し威厳を持ちなさい!!」

 

「「え?」」

 

「あ、言って、しまったのですか……?」

 

 私もマシュも目が点になるくらい驚いてる。マシュが……円卓の騎士? 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファハハハハハハハハ!!! ファハハハハハハハハハハ!!! まさかそのような経緯があろうとは、ファハハハハハハハハハハ!!!」

 

 ニトちゃんとの話をしたら、オジマンディアスが腹を抱えて笑い始めた。三蔵ちゃんが見るにあれは王様としての作り笑いとかでなくて本気で笑っているらしい。

 

「オジマンディアス王!! 力を貸してほしい!! このエジプト領に住まう人々を救うために! ううん、世界を救うために!!」

 

「よい! 許す!!」

 

「早っ!!」

 

「え? ちょっとどうしたのよコレ、彼ってば悟空並みに我がままなんじゃなかったのかしら?」

 

 びっくりするくらいの速さで返答が返ってきた。ニトちゃんはオジマンディアスの協力を得るには、戦いは避けては通れないって言っていたからいつでも戦闘に入る準備をしてたのに拍子抜けだ。

 でもなんで? どうして力を貸してくれる気になったんだろう? 

 

「この余に浅ましき人の世を守れととはなあ。だがよい!! ニトクリスをただ連れ帰っていたならば露知らず、お前たちはあろうことか自らの内へと入れあまつさえ契約すらも上書きした!! 余の思惑を悉く覆したお前たちへの褒美だ!! この王の中の王(オジマンディアス)が力を貸してやろう!!」

 

 え? え? つまりは、ニトちゃんの存在自体がオジマンディアス協力の鍵だったってこと? だからニトちゃんを私たちの旅に同行させたってこと? 

 当の本人(ニトちゃん)は今知りましたって顔してるけど……。あ、最初から知ってましたともって顔作った!! 

 

「良い顔になったではないかニトクリス。お前に必要だったのはやはり“友”だったのであろうなあ」

 

「……はい。友……というよりは弟たちのように手の焼く方でしたが」

 

 

 

 

 

 

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「フッ!! サッ!! ダアッ!!」

 

「性が出るなあ、博樹殿!」

 

 アーラシュさんがあの光を打ち消してから1週間。立香ちゃんたちはエジプト領へ向かい、私の方は聖都決戦へ向けて準備を進める東の村に残っていた。

 

 ベリアルさんの力のお陰でランスロットから受けた宝具の傷は塞がり、今は体の調子を確かめるためにギガバトルナイザーを振るっていたところだった。

 

「三蔵さんと一緒に行かなくてよかったんですか、藤太さん?」

 

「はっはっはっは良いよい! お師には立香殿たちが着いているからな、心配はあるまいて……。どれ、博樹殿一杯付き合え!」

 

 藤太さんは私の正面に座ると、どこからともなく取り出した酒を私に差し出してくる。

 私が勢いよく飲み干すと、自分もと言わんばかりに飲み干して喉を鳴らして腰をつける。

 

「あの時も、この様に酒が回っていてなあ」

 

「あの時?」

 

「なあにほんの昔話だ。手前の手柄話を語る、というのは慣れてはおらんが……少しでもお主を元気づけることが出来ればと思ってな」

 

 大量のお酒を飲みながら、藤太さんは自分が英霊として認められた逸話を話だす。

 武士として名を馳せた彼が、下野国(しもつけのくに)へ向かう最中に起きた奇想天外な物語。

 

「二十丈の大蛇が端の上に転がっていてなあ。だが武士たるもの、蛇如きでは己の歩みを曲げぬ」

 

 酒が回っていた藤太さんは今で言うと60mはある大蛇に勢いで喧嘩をふっかけたのだという。

 けれど、大蛇、もとい龍神はそんな自分にすら恐れずに立ち向かってくる強者を待っていたのだという。

 

「三上山に棲みついた大百足が下に降りては、その土地一帯を荒らし回っているというではないか! 大百足とて所詮は虫。捻り潰すなど造作もない、そう言って吾はすぐに三上山へ向かった」

 

「すぐに……ですか?」

 

 聞くところによると大百足は山を七巻き半するほどの、ウルトラマンに出てくる怪獣サイズの妖怪相手に、入念な準備も何もせず手持ちの矢三本だけで大百足に挑んだ。

 

「そんな無茶苦茶な……」

 

「本当にのお。あの時の拙者は熱に浮かされどうかしていたのだろう」

 

 でも藤太さんはそんな無茶苦茶なことをやり遂げた。一本、二本と矢その硬い皮膚にはじかれてしまう。

 そこで藤太さんは最後の一矢に大百足が嫌うという人の唾液を鏃に吹きかけ、八幡大菩薩に祈りを込めて放たれた乾坤一擲(けんこんいってき)の鏑矢を見事大百足の脳天に突き刺し倒したのだという。

 

「怖くは、なかったんですか?」

 

「怖ろしかったに決まっておろう。なんせ相手は神をも捕食する大魔虫だからな!!」

 

 怖かった。恐ろしかったけれどそれよりも先にやり甲斐の方が滾ったと、藤太さんは爽快に笑いながら言う。

 

「どうだ博樹殿!! 聖都決戦の日、お主と拙者で酒を回して戦うというのは!!」

 

「そんな、無理ですよ」

 

 苦笑いしながら答えると、藤太さんは私の背中をばしばしと戦いながら豪快に笑い始めた。

 

「はっはっはっは、冗談だ冗談。これくらいの気兼ねで挑んだほうが良いというものよ。お主はどうも肩に力が入りすぎるきらいがあるからな」

 

「はは、それ。アーラシュさんにも同じような事言われました」

 

「そうかそうか。────成すべきこと、成さねばならぬこと。確かに大事かも知れんが……そこに手前自身の心が、意志がなければ絶対に届きはしない。

 どうだ博樹殿、偶には自分の心の赴くまま、成すがままに動くというのは」

 

「心の、赴くままに……ですか……? でも、それが間違いだったら……!!」

 

「その時は吾や他の皆が止めてやる。それに、お主には共に苦楽を共にする者がいるだろう?」

 

 指を胸に当てて問いかける藤太さん。そうだ、表にはでないとはいったけど私のここには、ベリアルさんがいる。

 

「さて、長話をしたら腹が減ったな! 腹が減っては戦はできぬだ! 行くぞ博樹殿!!」

 

「ふふっ。はい、藤太さん!!」

 

 

 

 

 

 

『(まったく、世話の焼ける男だ……。お前が心の赴くままに動いたから、今オレがここにいるというのにな)』

 

「ベリアルさん? 今、何か言いましたか?」

 

『気にするな。さっさと行け』

 

 

 

 

 

 

 

 

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「わたしはマシュ・キリエライト。与えられた英霊の真名()は“ギャラハッド”!! この霊基にかけて、今こそ円卓の不浄を断ちましょう──!!」

 

 “全てを知る必要がある”初代山の翁、そしてオジマンディアスにも同じ事を言われた私たちは、エジプト領に召喚されたアトラス院へと赴いた。

 ニトちゃんが道を覚えてくれていたし、オジマンディアスの協力も得たからスフィンクスたちが襲ってくる心配もなかったからすんなりと入れた私たちは、そこでマシュに力を貸してくれた英霊の真名を知ることになった。

 

 アトラス院を出て直ぐに襲い掛かってきたランスロットに憤慨して、その名前を言っている通りマシュの真名は円卓の騎士の内の一人である“ギャラハッド”なのだという。

 いや~そこで会った名探偵シャーロック・ホームズが教えてくれたんだけど……もう少し、こう、情緒というかロマンが欲しかったというか……。

 

「でも、なんでマシュってばランスロットにあんなに怒ってるの? 怒る理由は分かるけど……?」

 

「ランスロットとギャラハッドは血縁関係にあります、つまりあの2人は親子なのです」

 

「そして、あの2人は……親子なのですが、あまり仲が良くなかったのです……」

 

「聞こえているぞベディヴィエール卿!! 仲が悪かったんじゃない、エレインの子である彼にどう接すればいいのか分からなかったからで「ハアアアアアッッ!!!」くぅ……! この、肉体よりも骨格に響く重撃、更に容赦がなくなっている……」

 

「ベリアルさん仕込みの相手を鎮める重い一撃です。目が覚めましたかランスロット卿? これで分からないのなら、次はベリアルさんをぶつけます!!」

 

「まってマシュ、そんな事したらランスロットが跡形もなく消えちゃうって……」

 

「そこまでなのですか? 博樹殿の中にいるというベリアルの力と言うのは……」

 

 ああそうだ!! ベディヴィエールさんもニトクリスもベリアルさん本来の力を知らないから平気な顔していられるんだ。

 この特異点で出てこないって言ってたけど、もしベリアルさんがランスロットと対峙したらと思うと……折角味方が増えると思ったのに……

 

「立香!! 何を呆けているのですか!! マシュを止めるのを手伝いなさい!! このままではランスロットの首が飛びますよ!? すぽーんっと、すぽーんっと!!」

 

「ああああ、マシュ!! 落ち着いて!! ほら、あの人お父さんだから、ねっ? ねっ?」

 

「ノーです先輩。本来父親のいない私ですが、彼よりも博樹さんやベリアルさんの方が余程いいお父さんに思えます!!」

 

「トゥワッ!!!! 私の方は、ギャラハッドと……仲良く、したかったんだが…………バタッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【俵藤太】
ゲーム性能的にはあんまりかも知れないが実際はアーラシュさん並みにヤバいアーチャー。
簡単に言うと、タロウに出てくるムカデンダーを人の身で矢1発で討伐し、不死身怪獣リンドンや再生ギエロン星獣のような魔人、平将門をこれもまた一射で討ち取るなど実際成し遂げた偉業はヤバすぎるお方。

 それでも一番誇れることが無尽俵だったり、聖杯に願う願いもこの世界にすべてに食を望むなど考えも聖人じみてるお方。本当に好き、作者がアーチャーの中で一番好きなサーヴァント。

【ベリアルさんをぶつけます】
城≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪絶対に越えられない壁≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪≪ベリアルさん。


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10

「ベリアルを安らかに眠らせてやってくれ!」
ごめんなリク君、ベリアルさん人理のために今頑張ってるんや……。

 ジードがタイプチェンジ出来ない代わりにスカルゴモラ、エースキラー、ペダニウムゼットンと流れるようなタイプチェンジ見せてくれたセレブロえらい!ただ相手を間違えてた。

 ジードの時のゼロのようにレギュラーにならなかったのは残念ですけど仕方ない。だってギャラクシーライジング強すぎるもん。出続けたらガンマフューチャー喰っちゃうって……

 2019年ウルフェス第一部はやっぱり何度も見ても好きですね。
今なら公式チャンネルで見れるので皆さんおすすめですよ。

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前からギャライはアトロシアスに似てるって言ってたんですけど……後ろ姿超似てません?(アトロシアスはルギエル、ギャライはギンガ+ベリアルさん使ってるから似るのは必然だったのかも?)


 

 

 

 

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『あれ? 一度体験したことある気がするんだけど……確かにここ五行山よね? 山の一角がなくなってるんですけど……?』

 

『二度もこのオレを岩の塊なんぞに閉じ込められると思うな。どうやら、お前がこの場所を作り出した存在だな?』

 

『えええええええっ!!!? 嘘でしょ? 貴方がこれやったの!? すっごい!! すごいわ!! あなたこそ探し求めていた相手よ!! ()()!! 貴方こそが私の悟空よ!!』

 

 これは、西遊記とは名ばかりの世にも奇妙な物語。

 あの孫悟空の悪逆非道の行いなど霞むほどの存在を弟子として、三蔵法師が経典を集める冒険譚。

 

『いい!? あたしは三蔵!! さ・ん・ぞ・う!! 陳褘(チンキ)はもう捨てた名前なの!! 弟子ならお師匠様を敬いなさい!!』

 

『敬われるなら、それ相応の行動を見せてからにしろ。いいな、陳褘(チンキ)?』

 

『もうっ! いいわ、あたしがどれだけ偉大なお師匠様かこの旅で悟空(ベリアル)に教えてあげるわ!!』

 

 沙悟浄、猪八戒をお供に連れながらも、無理難題、断崖絶壁のピンチ全て悟空(ベリアル)が片付け。

 金角、銀角、牛魔王といった並いる強敵たちを片手間感覚でなぎ倒す。

 

『え〜さっきまで炎噴いてたよねこの山?』

 

『そうね、あたしの記憶でも炎は消したような気がするけど、こんな方法では消してないわ! てか、流石の悟空も無理だし!! 本当に貴方規格外よね! 頼もしくって嬉しい限りよ』

 

 僧だから、仏だからではない。玄奘三蔵という“人間”の心がベリアルを恐れずに受け入れたからこそ、それに応えるようにベリアルは彼女の道を作り出していく。

 

『この特異点の原因は、あたしの“人”としての我欲。もう大事な弟子たちと離れるのはイヤ、一人寂しく死ぬのはイヤだったのよ……』

 

『欲を見せることの何が悪い。それが人の弱さだと、弱点だと言うのならこのオレが否定してやる。その欲を否定する障害が存在するというのなら、オレがそれら全てを破壊してやる』

 

 栴檀功徳仏と玄奘三蔵の二つの自分の葛藤から生まれたこの特異点。

 古びた途切れ途切れの巻物を終わらせるために、三蔵が“人”としての迷いを持ちながらも、旅を続けられるようにベリアルは道を作り上げる。

 

『もう! 最後まで陳褘(チンキ)って呼ぶ!! …………でもいいわ、悟空(ベリアル)。貴方がいたから私はこの旅を最後まで楽しめました。貴方の旅の終わりも、こんな幸福に包まれていますようにと、遠く離れていても願っているわ』

 

『オレの師を名乗るのなら、最後まで涙を見せるな。このオレに敬われる行いをしたのなら、その時はそちらの名で呼ぶことを考えてやってもいい』

 

『本当!? 言ったわよ、嘘だって言ってももう遅いわよ!! 立香、貴方もちゃんと覚えていてね!! いつかカルデアに行った時にはあたしがどれだけすごいか教えてあげるんだから!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねえ、立香」

 

 聖都決戦を明日に控えた夜。私は、一人日課の日記を書いている三蔵ちゃんの隣に座ってあの時一緒に旅をした時の話をしていた。

 李先生が沙悟浄で、ダビデが猪八戒、白龍には呂布がなって。それから、孫悟空にはあのベリアルさんがなって三蔵ちゃんと一緒に旅をした思い出。

 

「人間はみんな平等じゃないけど、みんな仏様への道を持っている。可能性を持っているの。泥の中でも咲く華のように、誰に讃えられなくとも、美しい心を育てる人のように。それを摘み取る生き方を、あたしは認めない」

 

 それだったらドジばっかりしてる自分は仏様になれないって、私の事を笑わせてくれる三蔵ちゃん。

 

「でも……獅子王の目を覚まさせること、できるのかな?」

 

「ベリアルもきっと、摘み取る側だったはずでしょ? けどこんなあたしの弟子になってくれたり、立香たちのことも助けてくれてるんでしょ? 何かキッカケがあったんでしょうけどちゃ~んと変われてるじゃない!! だったらあたしの仏罰でも立香の説教でも獅子王には届くはずよ!」

 

「ははは、うん。そうだよね、三蔵ちゃんにそう言われてなんか張りつめてた気持ちが少し楽になったかも」

 

「それなら上々ね! うん! 明日にはあたしのすっご~い所たっくさん見せちゃうんだから! そうすればベリアルもあたしのこと……三蔵って、呼んでくれるわよね?」

 

「…………う~ん、どうだろ? あのベリアルさんの事だから『その程度で敬われると思ったか?』なんて言って呼ばなかったり?」

 

「えええええ!! もう立香、そこは冗談でも呼んでくれるって励ますところでしょ! あたしの一番弟子としての自覚が足りないわよ!! 

 

 

 

 

 

 

 

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『モニターは良好。そちらの時刻は七時ジャスト。空は雲一つない青空だ』

 

 聖都が目と鼻の先となる場所に陣取る私たち連合軍。あちら側も何も準備をしていないわけじゃなくて、コチラが動き出したら直ぐにでも迎え撃てる準備が出来ている。

 ドクターが状況を説明している中で、私とマシュはというと……

 

「ニトちゃん、本当に大丈夫なの?」

 

「今や私は貴女のサーヴァントですよ? それにオジマンディアス様のスフィンクスたちは自ら考え行動します、私が指揮する必要はありません」

 

「頼もしい限りです!! 一緒に頑張りましょうニトクリスさん!」

 

「まあ、セイバー、シールダー、それにキャスターが2基なんてバランスが悪いったらないけどねぇ、無い物を願っても仕方ないか」

 

 爆破したと思っていたダヴィンチちゃんも、モーさんが言ってた通り、ランスロットの女好きが幸いして助かってた。

 それを聞いた時は、ランスロットの目の前で私とベディヴィエールさんは笑いを堪えながらマシュの事を止めるのがどれだけ大変だったか……。

 

 それはさておき、私とマシュ、ベディヴィエールさんにニトちゃん、そしてダヴィンチちゃんは歩兵部隊の一員として立ちはだかる粛正騎士をなぎ倒していきながら正門を目指していく。

 騎兵部隊にはランスロットの軍勢と、三蔵ちゃんを後ろに乗せた藤太さん。そして……

 

「博樹さん、一人で大丈夫なのかな……?」

 

『彼にはオジマンディアスの神獣兵団がいる。それに、本当にもしもの事があったら流石にベリアルが出てきてくれるだろうしね』

 

 博樹さんは、こちらが全力で進行できるために聖都の西側をスフィンクスたちの神獣兵団を率いてもらうことになった。

 ギガバトルナイザーの力があるから獣を操る術はあるといって、博樹さんがその役を買ってくれた。

 

 最初の攻撃が終わったらこちらに合流するってことになっているから、ガウェインと衝突したときのような無理はしないはず……

 

「……では旗の準備を・────これより我らは聖都を落とす」

 

「行こうみんな! 私たちで、獅子王の過ちを糾弾するために!! ジーっとしてても、ドーにもならねえ!!」

 

 こうして私たちの、この地に生きる人たちにとって逃げることの出来ない戦いが始まった。

 開戦の狼煙と共に、初代山の翁の力によって聖都を包み込むように自然な砂嵐が起こり、日中3倍のガウェインに、相手の弓を恐れる必要がなくなったため全速力で聖都に向かって駆け抜けていく。

 

「うわあああああ!!!」

 

「急げ!! 急いで城壁を駆けのぼれ!!」

 

「落ち着いて一人ひとり始末しろ!! 獅子王陛下の号なくして正門は決して開かぬ! 俗人どもに聖都の姿さえ拝ませるな!!」

 

「やっぱり、城壁を登っていくのは難しいよね……!」

 

「戦況、依然こちらが不利です。城壁にかけた(やぐら)はすぐに壊されてしまっています!!」

 

 何人もの人たちが城壁を駆け上がろうと頑張っているけど、上で待ち構えている兵士たちにことごとく邪魔されてしまい届かない。

 正門……堅く閉ざされたあの門は、害意ある攻撃、悪しき力を無効化する力を持っていて、獅子王の許しがなければ絶対に開くことはない鉄壁の壁。

 

 あそこを開くことが出来たら……この戦況も引っくり返せるはずなのに……!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はああああっ!!!」

 

「すまない、助かった」

 

「はあ……はあ……。っ!! 藤太さん!!」

 

 ギガバトルナイザーの力を使って正確にスフィンクスを作戦通りに暴れさせた私は、みんなと合流するために敵の騎士たちを倒しながら進んでいた。

 砂嵐のせいでみんなの所在が掴めない中で、一角だけ穀物が波のように流れている場所があったから、まずはそこを目指して進んでいく。

 

「おお博樹殿!! 無事に合流出来たな!!」

 

「良かったわ、この砂嵐の中で迷子になってるんじゃって心配してたのよ」

 

「はっはっはっ、迷子になるならお前の方だろうお師よ」

 

「ぶううう何よそれ、あたしは貴方のお師匠よ! いっつもいっつも敬わないんだからトータはぁ! って来てるわよトータ!!」

 

 いつもの様に軽口を言いながら騎士たちと戦う藤太さんと三蔵さんに合流できた私は、2人の乗る馬の隣を一緒に走りながら戦っていく

 

「ええい、キリがない! こやつら既に目が死んでいる! 自分の命を勘定にいれていないぞ!」

 

「いてぇ……いてぇえええええ!!」

 

「助けて……死にたくない……見逃してくれ……!!」

 

 この理不尽な世界を終わらせるために戦ってくれる人たちの悲痛な声が響いてくる。

 獅子王の許しがなければ開かない正門からではなく、城壁をよじ登ろうとこちらの兵の人たちが頑張っているけれど、粛清騎士たちは相打ち覚悟で突貫してきたり、溶かした鉛を上から垂らしたりと無情な方法でこちらの侵攻を阻んでくる。

 

 けど、彼らは止まらない。いいや、止まれないんだ。

 逃げたとしても、この異常な土地で逃げる場所なんてもうどこにも無い。砂漠にいっても荒野に向かっても死んでしまうだけだ。

 

「……………………………………………………うん。やっぱり、そうするしかないわよね」

 

(そうだ。この運命を引っくり返せるのはお前だけだ)

 

「ベリアルさん……?」

 

 藤太さんの操る馬の後ろで戦っていた三蔵さんが、何か覚悟を決めた言葉を口にしたのを聞いてベリアルさんの言葉が聞こえてくる。運命を引っくり返せるのが三蔵さんだけって……? 

 

 そんな事を考えていると、三蔵さんは藤太さんに言って正門の前を通り過ぎて、逆側の城壁へと向かって行く。

 私もすぐにその後を追っていくと、藤太さんの後ろに乗る三蔵さんが座禅を組み始めると、羽衣のようなものが現れる。

 

「このままだと、みんな苦しい思いばっかりで死んでいっちゃうじゃない。それはよろしくないわ、仏門として。極楽往生、死んでも修行は続くんだから、恨みは極力残さないようにしないとね」

 

 三蔵さんがやろうとしている事。あの正門をこじ開けるために使おうとしているファイナル如来掌は、使えば死んでしまう、そんな大技なんだと言う。

 

 馬を操る藤太さんも、もう引き返せることは出来ず三蔵さんが技を撃つ絶好の位置へ移動していく。

 

(見ろ、宮原博樹。アイツが纏う()()()()を、お前は知っている筈だ)

 

羯諦羯諦(ギャテイギャテイ)波羅羯諦(ハラギャテイ) 波羅僧羯諦(ハラソウギャテイ) 菩提薩婆訶(ポジソワカ)────】

 

「あの、光は…………!!」

 

 知ってる。忘れるはずがない……!! 三蔵さんが呪文のようなものを唱え始めると同時に彼女の身体から光が放ち始める。その光を一目見ただけで、ベリアルさんが言っていた輝きが何なのか理解出来た。

 

 地球の全てが闇に覆われ、地球の守護神とされる超古代の戦士ですら敗れ、誰も彼もが絶望の淵に落とされた中で()()()()()()()()。その光と全く同じ輝きを、三蔵さんは纏っている。

 

「コレは立香やベリアルへの恩返しみたいなもの、とっても楽しい旅の思い出のね。ああ心残りがあるとすればそうね、最後までベリアルに三蔵って呼んで貰えなかったことかしら? あの子ず〜っと私の事陳褘(チンキ)って呼ぶんですもの」

 

「三蔵!! お前という奴は!!」

 

「よーし! 高速読経フル回転! 天竺帰りの()()のあたしの力、見せてあげる!」

 

【善なるものしか通さぬのなら、慈悲の(こころ)で推し通る────】

 

 子供たちの希望の光の結晶(グリッターティガ)と同じ、善の心だけをその身に背負った三蔵さんが如意棒を駆使して正門へ向かって飛んでいく。

 

破山一拝、釈迦如来掌! 木っ端微塵に反省なさ──ーい! 

 

 三蔵さんの慈悲の一撃。その一撃は確かに正門へと届き、開くことがないと言われたその門をこじ開けた。

 そしてその門を開けた三蔵さんが、藤太さんが遠くへと連れて行くのを見て、私は目を閉じてベリアルさんへその意識を移す。

 

(ベリアルさん、お願いがあります)

 

(言ったはずだ。オレは「分かってます!!」)

 

 私が何を考えているのかなんてベリアルさんにはお見通しだ。だから今願おうとしたことが断られることも分かってた。

 

(だけどベリアルさん、それはただの口約束。貴方が勝手に決めたことだ。だから私は……これを使う)

 

 分かっていたからこそ、私は自分の手の甲に刻まれた令呪を使用するために魔力を流していく。

 令呪で命ずれば、いくらベリアルさんだって……。

 

「────無駄なことに、ソイツを使うな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……頭、真っ白で……うまく、考えられないわ……。ねえ、トータ?」

 

「どうした、ここから先吾がお前の代わりとなって働くぞ?」

 

「えへへ……ほんとに貴方ってば働き者よね……」

 

 ガシッ! と、門を開くことに全ての力を使い果たし、立ち上がる力すら残っていない三蔵さんが伸ばした手を、()()()()()()()()()()()()()姿()になったベリアルさんが、強く握りしめた。

 

「誇れ。あの門を開くことは、この場にいる誰一人として、このオレですら不可能な行いだった」

 

「え、えへへへ……。()()()()()()()()()()……。なんても壊せちゃう力を持っているのに……壊さないように優しく包みこんでくれる手……。あたし、そんな貴方が大好き……」

 

 もう目も見えていない筈なのに、握られた手が誰のものなのか確りと覚えていた三蔵さんは、涙を流しながらベリアルさんの手を優しい手だと、嘘偽りない言葉で言う。

 そう言われたベリアルさんはフッと鼻で笑うと、握っている手とは反対の手で、彼女の涙を拭う。

 

「逝くなら笑って逝け。(ソレ)はお前には似合わない。何も悩まず、幼子のように最後は笑って逝け。その心が、あの門を開いたんだからなあ……()()

 

「うん…………うん。ちゃんと、約束守ってくれたわねベリアル。…………貴方の旅の終わりが……幸福でありますように……」

 

 名前で呼んでくれたことが余程嬉しかったのか、三蔵さんは満面の笑みを浮かべながら、もう片方の手をベリアルさんの手に重ねて、力一杯に握り返すと最後には光となって消えていった。

 その一部をベリアルさんのカラータイマーに残して……。

 

「…………吾をこちらに残るが、お主は聖都へ向かうのだろう博樹殿?」

 

「……はい。()()()()()を叶えるために……」

 

「ふっ、数日経っただけでイイ顔をするようになったな。よしっ行ってこい!!」

 

 三蔵さんとの別れを胸にしまいながら、私は藤太さんに背中を強く、つよく叩いてもらって聖都に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、吾も獅子王とやらに一矢報いるとするかあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【御仏モード=グリッター】
三蔵ちゃんのもう一つの宝具「記別・栴檀功德(きべつ・せんだんくどく)」を使用した三蔵ちゃんがなることが出来る姿。自身の中にある純粋な希望の光をその身に纏うその姿はまさにグリッターティガそのもの(劇場版ではなく、vsガタノゾーア戦の時の)
 ベリアルが三蔵ちゃんの事を最初から認めていたのは、その心を持ち続けられた存在であったことも要因の一つ。

【ベリアルの登場】
 今回の特異点では絶対に表に出ないといったベリアルが唯一その姿を出した瞬間。
博樹は戦う覚悟を決めているため戦ってほしくて願ったのではなく【三蔵との別れ】をさせるために令呪を使おうとした……。

 しかし、ベリアルは博樹に令呪を使わせることはなく……?


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11

バ○ダイ公式サイトでネタバレくらった『キングジョー ストレイジカスタム』あの無骨なデザインのキングジョーを人の力で改修したあの見た目。3モードに変形可能というギミック要素。それでいておもちゃの方はソフビと同じサイズって頭おかしくない?

 レジェンドメダルセットの方には01にはコスモスとメビウスが、02にはゾフィーと父がいるんで実質ジード拡張パックです。ゲームオリジナル形態で一番好きなダンディットトゥルースの音声が聞ける……!!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「立香ちゃん! 皆さん!!」

 

「博樹さん!!」

 

 三蔵ちゃんの力によって開かれた門からついに聖都。聖槍によって作られたキャメロットへと入ることが出来た私たち。

 戦闘が始まったからなのかも知れないけど、理想の都と言われていたはずの聖都には誰一人として人が住んでいなかった。

 

 獅子王の目的は、自分が聖抜によって選んだ人々を聖槍に閉じ込め、人理が焼却した後も人を残すこと……。

 それがもう実行に移られた……? 

 

 そんな風に話をしていると、別行動していた博樹さんと合流することが出来た。

 

『待ってくれみんな!! 今そこに、何か巨大なものが現れようとしている! これはもう時空断層レベルの反応だぞ!?』

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!! 

 

「何これ!? 光の……壁?」

 

「そうです。光の壁のようなものが王城を取り囲んでいます!」

 

 王城まであともうちょっとというところで現れた光の壁。ベディヴィエールさんやニトちゃんが攻撃を加えるけど、どうやらこの壁は獅子王の聖槍ロンゴミニアドの外装何だという。

 とっくに世界を閉ざす準備は出来てたんだ……。その証拠にこの時代の四方から重力崩壊が感知されている。

 

 何もない無の空間が、この聖都に向かって押し寄せてきている…………。

 

「ここで……終わりなの?」

 

「万事休す、だねえこれは……、流石に打つ手がない……」

 

「顔を上げなさい立香! 打つ手がない? そんなわけがあるものですか!」

 

「……ニトちゃん?」

 

 ベリアルさんなら正面から破壊出来るかも知れないけどそれはどんなに望んでも不可能。

 ダヴィンチちゃんですらこの光の壁を破壊する方法が思いつかず、本当に諦めそうになっていた所でニトちゃんには打つ手があるんだという。

 

「オジマンディアス様。貴方様の予言が現実となりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファハハハハハ!!!! それなりに追い詰められたか獅子王! ふっ、立香たちに加えあちらにはニトクリスもいる。それだけの働きはすると確信していたわ! 大神殿の目を開け!! デンデラ大電球、起動!」

 

 追い詰められた獅子王は絶対に守りの姿勢に入る。それを読んでいたオジマンディアスは、大神殿の防御に回していた魔力を全てを神殿の最奥部にある大電球へと回される。

 エジプト領からキャメロットの光の壁を破壊するために、大神殿に蓄えていた魔力全てを使用した超遠距離大神罰を始める。

 

「余を忘れたな獅子王? 最果ての塔を建てている今、裁きの光は放てまい!! その自慢の聖槍、余の神雷がへし折ってくれよう!!」

 

 ピラミッドの真上に雷撃が混じった小さな太陽が形作られる。王の中の王が放つ大灼熱の太陽光が、裁きの光が放てないキャメロットへ向かって放たれる。

 

「あらゆる裁きはファラオが下すもの! 女神に等しいモノとなろうが人の王である貴様ごときが! 神王を名乗る年季の違いをしれ!!」

 

 大神罰はキャメロットに向かって真っすぐに伸びると、聖都の外壁から魔力障壁が現れその行く手を阻む。

 しかし、ファラオはその程度では止まらない。オジマンディアスは自身の霊基の半分を魔力へと変換し、大神殿の働きを更に加速させ十撃にも及ぶ大神罰を連続で放つ。

 

 その連撃は魔力障壁を壊し、ついには立香たちの行く手を阻んでいる光の壁へと到達する。

 あと一撃、あと一撃大神罰が届けばあの壁を壊せるというところまで持っていくが、既にオジマンディアスの霊基は限界に近く、身体が消えかかっている。

 

「裁きの光……ッ!! 撃てぬ訳ではなかったか獅子王!!」

 

 だが、その一撃だけは撃たせはしないと言う意思なのか、王城から大神殿に向かって裁きの光が向かってくる。

 守りのための魔力も全て大神罰へ使っている今の状況では、裁きの光は止められない。

 

「(ニトクリスが入れば変わっていたかも知れんが……)いいや! その判断に間違いはない!! ────ッ!? あれは……!!」

 

 あのオジマンディアスですら諦めに近い心境になっていたその時だった。

 エジプト領と聖都の境にある巨岩の上に、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあて、腹も膨れたことだ。やるとするか!!!」

 

 握り飯を平らげた弓兵、俵藤太は口元を拭うと矢筒から()()()()()となった矢を取り、五人張りの強弓を構える。

 裁きの光が迫ってきているというその中でも男は冷静に、普段通りに弓矢を引く。

 

「ハサン殿やアーラシュ殿は分からんが……吾を比較的早く、この地に召喚されたらしくてなあ。三蔵と出会うまでは、各地を渡り歩きそこで飯をふるまっていた」

 

 弓を構えながら、藤太は落ち着いて語り始める。

 この地が獅子王の手に渡るよりも早く、オジマンディアスがエジプト領と共に召喚されるよりも早く、この地が特異点となったその時に人理から召喚されたサーヴァント。それが俵藤太だった。

 

 人理の乱れを修復する。その為に呼ばれた藤太だったが、彼はそんなことよりも、空腹で倒れている人々の腹を満たすことに尽力を尽くした。

 腹が減っている者がいれば東へ西へ、【この世界全てに、食を。人間動物植物、機械に至るまで、分け隔てなく】聖杯に願う欲すら自分の為に願わない彼だからこそ、戦うのではなく()()()()()()()()()

 

「だからなあ、吾を()()()を幾度となく見た。遠目からではあったがな。────だが!」

 

 誰よりも、それこそ三蔵以上にこの特異点を歩いてきた藤太は、獅子王が放つ裁きの光を誰よりも見ていた。

 運よく、もしくは龍神の加護のお陰だったのかはわからないが、直撃することは逃れたが、何度も、何度もその光の柱を目の当たりにしていた。

 

「最後の最後で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()その光の急所、この目でしかと捉えているぞ」

 

 東の村に墜ちてきた裁きの光。アーラシュの宝具によって相殺されたそれを、誰よりも側で見ていたのは藤太だった。

【相手の弱点を突き、一矢で終わらせる】その逸話によって英霊となった藤太は、相手の急所を捉える、その目に長けていた。

 

南無八幡大菩薩よ、そして旃檀功徳仏(せんだんくどくぶつ)よ! 

 

 大百足退治の際に加護をもたらしてくれた武運の神であり崇敬している弓矢八幡への祈り、そしてこの地で出会い弟子となり、師として自分の事を導いた仏へ祈りを捧げる。

 その祈りは確りとと届いたのか、【ここを狙え】と裁きの光の急所が点となって見え、最後に師が見せた時と同じ光が藤太の矢を包み込んだ。

 

感謝しよう!! この地で共に飯を食べた(語らった)全ての出会いに!!

 

 限界まで振り絞った光の矢が藤太の指から離れ、裁きの光へ向かっていくと、その矢は藤太を加護する龍神の形へと変わり(くう)を駆ける。

 空を駆ける龍神が、大神殿を狙う裁きの光と衝突する。

 

「悪いがここは吾の大一番!! 押し負けるなどという選択肢は最初から持ち合わせていない!!!!!」

 

 裁きの光と衝突した龍神が、急所の目印となった点に噛みつくと裁きの光に罅が入る。

 裁きの光は点を中心に真っ二つに裂け始め、その間を龍神が駆け続けると、大神殿に到達することには光は霧散に消滅する。

 

「……吾の活躍はここまでだ。後の事は任せたぞ、博樹殿!!!」

 

 霊基の消滅とまではいかなかったが、宝具を放った反動と裁きの光の衝撃によってもう立ち上がる力すら残っていない藤太は、大の字に倒れながら拳を高く上げ、友に絆の光を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははははははははははははッッッ!!!!!!!! まさかっ! よもやあれほどの勇者が残っていようとはなああ!!!!」

 

 思いもよらない勇者の登場に心躍り、消えそうだというのに心底嬉しそうに笑うオジマンディアスは、覚悟を決めたように高らかに宣言する

 

「いいだろう! その偉大なる雄姿を讃え! 余も最後の一撃を与えるとしよう!!」

 

 興奮冷めやらぬ状態のまま、オジマンディアスは自身に残った全ての魔力を使ってピラミッドを宙に浮かばせる。

 オジマンディアスの最後の一撃。それは圧倒的物量を持つ複合大神殿を、つまりは自分の墓を衝突させるという至極簡単な物。

 

【我が無限の光輝、太陽は此処に降臨せり! 落ちよ────光輝の複合大神殿(ラムセウム・テンティリス)!!】

 

 圧倒的物量が王城への道を阻む光の壁と衝突し、光の壁を破壊するのと同じくして複合大神殿も消滅していく。

 

(これより先は、お前に任せるとしようニトクリス。この余が拝むことが出来なかった最後、お前が見届けるがよい……)

 

(見事でした、王よ。最果ての塔をうち倒すその雄姿、この目にしかと収めました)

 

(……余はここで休む。間違えても冥府へは連れて行くなよニトクリス……、余はあの暗闇が好きではないからな……)

 

 契約していた名残だったのだろうか、オジマンディアスは念話を使って立香たちと共に行動するニトクリスに最後に言葉をかけながら消えていった……。

 

 

 

 

 

 

 

『────汝の天命はあの城へ移った。騎士たらんとするならば急ぐがよい。汝の最後にして唯一の澱み 告解の機会が、聖槍に呑まれる前に

 

「待て、待ちなさい……! 勝負はまだ……!」

 

 ガウェインを足止めし、砂嵐を呼び起こした張本人である山の翁の実力は獅子王に匹敵するものだった。

 だというのに彼はガウェインに止めを差すことなく、砂嵐を収めその姿を消した。

 

「……獅子王より任されたこの正門も……守り切れなかったか……」

 

 砂嵐が晴れてようやく辺りを見渡せたガウェインは、もう自分以外の騎士がいない正門前に立っていることしか出来ない。

 反逆者の殆どはこじ開けられた正門から聖都へと侵入し、聖都の騎士たちはそれを追ったか倒されてしまったか。

 

()()()()()()()()()()()()()。あの砂嵐の中で、これほどまで正確に矢を射抜けるサーヴァントがいたとは……」

 

 この正門前での戦いは自分の完全なる敗北。だが、戦いはまだ終わっていないと自身を奮起させて立ち上がる。

 

「王城ではまだ円卓の同胞が戦っている。獅子王がいる限り、私たちに敗北はない! 待っていなさい……ベディヴィエール卿、そして……ヒロキ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、おいおいおいどういう事だ!!! 君はあの時に完全に消滅したはずだ!! 何でココに!? いや()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「走って来た!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 ゲーム本編ではニトクリスが冥界の鏡を使い裁きの光を耐えるが、ニトクリスが立香のサーヴァントになった事によって変わった変更点。

【俵藤太の全力】
 ずっと裁きの光を見続けてきた、最後にアーラシュのお陰で間近で見た事で急所を捉えることに成功。正門前にいた騎士たちを矢が最後の1本になるまで倒し続け全滅寸前まで追い込んだ。
 そして、八幡大菩薩と旃檀功徳仏の加護の元放った宝具により、消滅せずに裁きの光を完全に撃ち破る。
しかしながらコレは1人では成し遂げることが絶対に不可能な事だったため藤太は驕ったりはしない。

【絆の光】
 俵藤太、アーラシュ、そして三蔵から博樹もしくはベリアルへ渡された光。まだカプセルを形作るには不十分のようだが……?

次回はvs獅子王の騎士モードレッド

「あれ?もしかしなくても最後のは私のセリフだったんじゃないかい?いや〜キャメロットと言えば私だからねえ、さて準備運動でもしておこうかな?」


 


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12

ガンマフューチャーカッコいいやったあああ!!!!
 幻影で召喚されたガイア(v2)がスプリームになるって卑怯過ぎません?そんなん好きに決まってるやん。
来週はストレイジカスタムになる素体のキングジョーが登場。

タイガ、ニュージェネクライマックスも見てきました。
ネタバレは避けるために言うと……トレギアの執着がきもい!!
 親関連になると尊くなる朝倉リク卑怯じゃないです?
ルーブ兄弟のあの2人にしか出せない雰囲気大好きです。

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おかえり


「教えてくれ獅子王! ()()()()()、誰につけられた!! 

 

 聖都決戦が始まる少し前、玉座にランスロットを除く円卓の騎士が集結した中で、発言を許されていないはずのモードレッドが叫んだ。

 獅子王の額に付けられた傷。獅子王ならばそんな傷を許さない、ついたとしても治っている筈だと……。

 

 それなのに獅子王の額に傷が付いている。いや、つけた奴がいるとモードレッドが気付いたからこそ叫んだのだ。

 

「私の兜を破壊し、この額に傷を付けた者は彼方側のモードレッドだ」

 

「ッッ!!! アイツが…………ッッ!!」

 

「彼の者はもういない。ロンドミニアドによって貫いた。モードレッド、お前が気にすることはない」

 

「────ッッ!? んだよソレ、勝ち逃げじゃねえか……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメらの首を獲りに来てやったよ。アイツはもういねえ見たいだけどなっ!!!」

 

「モードレッド卿!!」

 

「…………モーさんの事、知ってたんだ……」

 

「知ってるに決まってんだろ!! アイツはオレとの決着をつけねえで消えた所か、獅子王に傷を残しやがった!!!!! フッざけんなよっ!!」

 

 聖都に中へ侵入し、獅子王がいる城へと向かっている私たちの前に敵のモードレッドが奇襲してきた。

 モーさんが獅子王の裁きに包まれ消えていった事を知っていた彼女は、自分と決着を付ける前に消えた事、そして獅子王に傷を残したのだと! 

 

 良かった、モーさんはただ消えただけじゃなかったんだ。って喜びが相手のモードレッドにとっては怒りに変わっている見たいだ。

 

「オラ、かかってこいよ雑魚ども!! せめてもの情けだ!! このモードレッド様の手にかかって死にやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう急かすなよ。お前の相手は…………()()だろ?」

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 同じ、声だ。目の前にいるモードレッドと同じ声が、私たちの後ろから聞こえてくる。

 信じられない。だって、だってあの時消えたはずじゃ!! 流れてくる涙を抑えることが出来ないまま、振り返って後ろを見た。

 

「ったく、お前らは本当泣き虫だなあ立香、マシュ」

 

『おい、おいおいおいどういう事だ!!! 君はあの時に完全に消滅したはずだ!! 何でココに!? いや、()()()()()()()()()()()()

 

 涙を溢れさせる私と、同じように涙を溢れさせるマシュの頭の上に、その手を乗せてクシャクシャと撫でてくれながら、ドクターの質問に堂々と答えた。

 

「走って来た!!!!!」

 

 

「モーさんっ!!!!」

 

 髪もボサボサ、服も所々破れてるし、身体の至る所に切り傷だってあるのに、そんなこと関係なさそうに、満面の笑顔でモーさんはそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあモードレッド。目が覚めたようだねえ」

 

「…………折角いい夢見れてたってのに、何でテメエがいやがる……」

 

 獅子王の放った裁き光に包まれ、消滅したとばかり思っていたモードレッドは自分に意識が、そして身体から感じる痛みから自分が消滅していないことを感じ取り目を開いた。

 目を開けたモードレッドの前に立っていたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「おやおや、サーヴァントである君が夢を見ることがあるとはねえ。まあそのおかげで君の事をここへ引きずり込めたんだけどね」

 

「……どこだよココは? 特異点じゃねえ見てえだが」

 

 真っ二つに折れたクラレントを見ながら立ち上がると、何処とも分からない光に覆われた空間を見渡し、そこが先ほどまでいた特異点ではないことを理解し目の前の魔術師問いかける。

 

「ここは最果てと君たちが正そうとしている特異点との間。本来なら繋がることのない朧気な最果てへの道さ」

 

「……ああそうか。オレが最果ての槍(ロンゴミニアド)に包まれたから、理想郷(アヴァロン)との道が出来たってことか……」

 

「ご明察。まあ彼方の最果てとコチラでは少しばかり勝手が違うんだけどねえ。まあそこは私が頑張ったという事さ。いやあ成長して勘が冴えわたっているじゃないかいモードレッド」

 

「うるせえ。んで? なんでお前がオレに干渉してくるんだよ。オレの事なんてどうでもよかったはずだろお前は」

 

 最果ての地【星の魂の置き場所】である理想郷(アヴァロン)、そしてロンゴミニアドは【世界の裏側の最果てにて輝く塔】。本来ならば別のものである二つを自身の力で繋げるなんて面倒なこと、目の前の魔術師は自分からやろうなんて思わない存在だとモードレッドは知っていた。知っていたからこそ、魔術師が干渉したことに疑問を覚えた。

 

「はっはっはっは確かにねえ。ま、でも私は女の子の涙というものどうにも弱くてねえ、君がいなくなってしまうと涙してしまう少女たちがいるだろう? それをどうにか出来ないかと思ったのさ」

 

「ああ? 妙に目が腫れてると思ったらお前()()()でアイツらの事ずっと見てたのか。相変わらずいけ好かねえ趣味してやがる。まあ、今回はテメーの女好きに助けられたってわけだ。で、どうやったらあそこに戻れる?」

 

「走るしかないね」

 

「あ?」

 

 笑顔で、殴りたくなるほど爽やかな笑顔を振りまいて魔術師はモードレッドにたった一つの戻り方を提示してきた。

 

「君のことを送り届けてあげたいのは山々なんだけどねえ。コチラと彼方を繋げるのだけで十分に力を使っているからさ、エルサレムへ戻るなら来た道を走って戻るしかない。なーに心配いらないさ、君が全力で走れば1週間もかからないだろうからね♪」

 

「チッ!!」

 

「まあまあ待ちたまえモードレッド。鎧も砕け、燦然の輝く剣《クラレント》もその有り様だ、それでは獅子王に辿り着けずにまた彼女たちを泣かせてしまう。うん、それはいけない。私もせっかく助けた意味がなくなってしまう。だからね、()()を持っていくといい」

 

 魔術師がそう言って呼び出した花びらが散ると、そこから出てきたのは【岩に刺さった1本の剣】だった。

 

「もう片方は彼が持っているからね。燦然の輝く剣《クラレント》が認めた今の君なら、コレを引き抜けるはずだ。そしてコレを抜けば、君は彼の王と同等になれる」

 

「…………」

 

 モードレッドは利き手に持っていたクラレントを持ち替えながら、その剣の前に立つ。

 彼の王。自分が憧れ、そして認められたいと思い続けた王が、王の事を【選定した剣】。

 

 まるで光に吸い寄せられる虫のように、モードレッドはその剣の柄に手を……

 

「え?」

 

「フンッ!!!」

 

「イッタアアアアッッ!!! ななな、何をするんだいモードレッド!! 僕の顔に頭突きするなんて酷いじゃないかい!!」

 

 そう、モードレッドは剣を握らなかった。

 伸ばした手を魔術師の襟に持っていき、彼を引き寄せる勢いで思い切り頭突きしてやった。

 

「テメェが見守り、選定の剣を抜く。確かにそれはオレが何度も夢見た、憧れた儀式そのものだ。だけどいらねえ」

 

「………………」

 

「夢は夢で、憧れは憧れのまま散っていく。今のオレが選び、掴んだのはいっつも足が震えてるような怖がりで、なんかあれば直ぐに泣いちまうような泣き虫の剣であることだ。王になることじゃねえ、だから今のオレにはコイツは抜けねえし、そもそも抜く気がねえ。それに……」

 

 剣に選定される未来ではなく、自分で選んだ道を歩くんだと宣言したモードレッドは、半分に折れてしまい、その輝きを失いそうになっているクラレントに目を向ける。

 

「王としてじゃなく、オレを、()()()()を認め、共に歩くと誓ったんだ。そんなコイツを、オレは絶対に裏切らねえ」

 

「ふっ、まさか君からそんな言葉を聞けるとはねえ」

 

「うるせえ、時間がねえんだ。もういくぞ!」

 

 喜びを表すような輝きを見せたクラレントを見て、自分も笑顔を浮かべたモードレッドは魔術師にそう言って立香たちの元へ戻るために走り出した。

 彼女が走って行った事を確認して片付けようとした魔術師の耳に、自分の名前を呼ぶ声が聞こえ顔を上げると、モードレッドがこちらに顔を向けて何か言おうとしていた。

 

「言ってなかったからな、助けてくれてありがとうなクソ魔術師!!!」

 

「…………」

 

 まさかあのモードレッドから感謝の言葉が返ってくるとは思いもしなかった魔術師は、彼女の姿が見えなくなるまで放心してしまった。

 

「ぷっ、ははは、あーっはっはっはっはっはっは! あのモードレッドが、僕に感謝を告げるなんて……まさか本当にそんなことがあるとは思わなかったよ」

 

 涙が出るくらいの大笑いを始めた魔術師は、岩に刺さった剣を「ほっ」と簡単に引き抜くとその剣をくるくると回転させる。

 

「せっかく妖精の湖から持ってきて使えるように打ちなおしたというのに、用済みになってしまったね。よし、仕方ないから私が使おうか。それには誰にもバレないように加工しなくちゃいけないね、この装飾とか私の趣味とは合わないし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だああああああ!! いつまでくっついてんだよ離れろっての!!!」

 

「だあ゛あ゛あ゛あ゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛!!」

 

「もう、モードレッドさんとは会えないと……思っていたので……」

 

 モーさんのカッコ良すぎる登場に感動を抑えられなかった私とマシュは、敵のモードレッドがいるというのにモーさんに抱きついて喜んでた。別れたサーヴァントはまた召喚すればいいって言う人もいるかも知れないけど、私たちと仲良くなったモーさんはこのモーさんだけだから一際嬉しさが爆発してしまう。

 

「最果ての塔が完成するまで時間ねえんだろ? 早くベディヴィエールの事連れて獅子王んとこ急げ!!」

 

「え? でもまだ相手のモードレッドが」

 

「いらねえよ、てか邪魔だ。アイツの相手は他の誰でもねえ、オレだけだ。なあ、そうだろ獅子王の騎士様?」

 

 折れたクラレントを肩に担ぎながら相手のモードレッドにそう言うと、怒りを孕んだ目でモーさんの事を睨み、クラレントの切っ先をモーさんへと向けてくる。

 

「お前らの処分は他の円卓がやる。仮に獅子王に辿り着いた所で、お前ら雑魚どもじゃあ勝ち目はねえよ。だが……テメーだけは別だカルデアのオレ!! 獅子王に傷を付けたテメーだけは、オレがこの手で殺す」

 

「なっ?」

 

 自分の事は自分が一番分かってるんだって感じの顔してこちらを見るモーさん。

 確かに、このまま最果ての塔が完成してしまったら私たちの前は確定しちゃう。あっちのモードレッドも賛同してるし行ったほうが……。

 

 あっ!! 

 

「モーさんモーさん!! 忘れてる、忘れてるよ!!」

 

「ああ? 何だよ忘れてるって……」

 

 先へ進もうとしたその時に思い出した。結構元気だったから気づかなかったけど、今のモーさんと私の主従契約切れてるんだった! 

 それに気づいた私は直ぐにモーさんの手を握って再契約の準備をする。

 

 深呼吸してっと……

 

 

────告げる。汝の身は我が下に──我が命運は汝の剣に

 

「────っはっ! そういうことかよ!!」

 

──その身に宿し聖杯に従い────この意この理に従うならば

 

 モーさんも私が再契約しようとする事が分かると、私の手を強く握り返し満面の笑みを浮かべてくれる。

 

【【我と共に歩め!! ────ならばこの運命、共に叛逆へと導こう!! 】】

 

 一緒に笑顔で同じ事を言い、モーさんとの再契約を果たす。

 契約の台詞を言い終わると、2人して笑い出して最後に拳と拳を合わせる。

 

「約束だよモーさん。今度も絶対、私たちと一緒に運命に叛逆するって!!」

 

「────ああっ!! 任せろマスター!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【岩に刺さる選定の剣】
花の魔術師がモードレッドの為に用意した正真正銘【勝利すべき黄金の剣(カリバーン)】。
今のモードレッドなら引き抜けることも出来たかもしれないし、もし引き抜けたなら【王】となれたかもしれないが、モードレッドはそれを断った。

ほら、言った通り僕が登場しただろう?


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13

FGO5周年おめでとうございます!
 福袋は2019を選び、清少納言とクィリヌスの2枚抜きでどちらも宝具が2になりました。普通にうれしい!!

 ところで映画キャメロットの新pvにも藤太が出てこなかったんですけど……出ますよね?cvの鈴村さんはロマニじゃなくて藤太のことですよね?

感想、評価お待ちしてます

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「私が卿らを招集したのは、この計画には卿らが必要だからだ」

 

 冷たい目。人の道を外れ、より完璧な王へと至ったアーサー王。獅子王にそう言われて溢れてきたのは、歓喜の感情だった。

 彼の王が自分を必要だと言った。王に叛逆し、王が築いたブリテンを滅ぼした自分の事を必要だと……。

 

 恨まれていても、見限られていて当たり前だと思っていた。今ここに呼ばれなかった隻腕の騎士と盾の騎士と同じように王は自分の事を呼び出さないと……

 だからこそ、他の円卓の者たちが悩んでいる中で、モードレッドが答えを出すのに時間は必要なかった。

 

「モードレッド、お前には“暴走”を授ける」

 

「ああ……ああっ!! 望むところだ!!」

 

 敵対することを選択した円卓の騎士たちを斬り伏せ、残った円卓たちがそれぞれギフトを選択する中で、自分はその選択を許されなかった。

 与えられた祝福は“暴走”。獅子王より与えられたその祝福の意味はとうに理解していた。

 

 王は自分を憎んでいる。自分には最果ての塔に収容される資格はない、その身滅び尽きるまで我が手足となって暴れ続けろ。

 まるで使い捨ての道具の扱いだ。だが、それでいい、それが最善だ。

 

 ただ暴れるだけなら、面倒なことは考えなくていい。

 

 この身滅び尽きるまで暴れ続けられるなら夢を見ることが許される。

 

 それで獅子王の目指す争いのない理想都市を気づけるのなら、この命どうなろうと構わない。

 

 

 

 

 

『叛逆しながらも、王に仕えるという矛盾しかない儚い夢を……』

 

 

 

 

 だから、だから…………!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレの邪魔をするなああああああああ!!!!!!」

 

「邪魔するに決まってんだろ!! その為にあんなクソ遠いとこから来たんだからよ!!」

 

 剣と剣、魔力と魔力が衝突しあう。“暴走”の祝福によって辺りかまわず放出してくる魔力を、モードレッドは朽ちたクラレントで対処していく。

 欠けたクラレントにはもう、刀身に魔力を留めることが出来ず、その魔力を増大することも適わない。出来るのはモードレッドから伝わった魔力を放出することだけ。

 

 モードレッドもその事については理解しているからこそ、相手の放出した魔力を相殺できるだけの魔力をクラレントから放出して対処していく。

 

「はっ!! オレの癖に随分と芸達者なことしてるじゃねえか!!」

 

「王を打ち倒すにはこれくらい出来なきゃダメなんだよバーカっ!!」

 

「ちっ、なら……コイツならどうだ!!」

 

 傷つき、欠けた剣を使っているのに余裕の表情を見せてくるモードレッドに怒り、獅子王の騎士は高速で移動を始め四方から連続でモードレッドへ攻撃を仕掛ける。

 四方からの攻撃に、暴走によって一発一発の振り幅が違ってくる魔力。いくら聖杯による強化によって直感が未来予知に近いものになったとしても、その両方を連続で対応するのは難しくなっていく。

 

 暴走の魔力を上回る魔力量を放出させ続ければ対処することは容易だが、それをしてしまうとクラレントに限界が来てしまい武器を失ってしまうことになる。

 だからモードレッドは極力少ない魔力で獅子王の騎士と向き合っている。

 

 現に、直撃は魔逃れているが何発かはモードレッドの肉を抉っている。

 

「ぐっ……はあ、はあ……フッ!!」

 

「おらおらっどうしたオレっ!! 息が上がってんじゃねえか?」

 

「────タイミング見計らってたんだ……よっっっ!!!!」

 

 背後からモードレッドの首目掛けて獅子王の騎士が襲い掛かってくる。

 

 

 対して、モードレッドは落ち着いて対処していく。

 裁きの光に敗れ、身体の傷は癒えていない、クラレントにいたっては折れたままだ。

 

 それでもモードレッドは一歩も引かずに獅子王の騎士と戦い続ける。

 いつ魔力が暴発しても可笑しくないクラレント。そのギリギリの塩梅を経験と直感で無意識に行いながら、獅子王の騎士の攻撃が自分に届くその一瞬にだけ魔力を纏わせたクラレントを()()()()()()()()

 

「なっ!! 岩が!!? あがっ!!」

 

「つ・か・ま・え・たあああああっ!!!! ぶっとべ!!!」

 

「がああっ!!」

 

 魔力放出によってモードレッドを中心に大地が隆起し獅子王の騎士の一撃を防いだ。それだけではモードレッドは止まらず一瞬の隙が出来た相手の髪の毛を掴んで持ち上げると、魔力を纏わせた拳でその顔面を思い切り貫いた。

 

 顔面を貫かれた獅子王の騎士は鼻や口から血を流しながら地面を跳ねていくが、自らの剣を地面に差しその勢いを止め次に来る攻撃に備える。

 顔を上げるとモードレッドの拳が眼前に迫って来た。

 

「嬉しかったよなあ! 王に呼んでもらえて!! オレが、オレ自身が王を終わらせた筈なのによおっ!!」

 

 相手が剣を振るう暇も、魔力も爆発させる時間すらも作らせない近接戦闘。後ろに退かすことすら足を踏みつけて許さないモードレッドは、連続で拳を放ちながら話をする。

 

「恨まれて、憎まれていて当たり前のことやったってのに。選んでくれた、それだけで十分だった!!」

 

「────っ!! うるせえっ!!」

 

 このままモードレッドによる一方的な展開になるかに思えたが、モードレッドの拳を受け止め獅子王の騎士も拳で殴り始め、2人の殴り合いが始まった。

 

「あんなひよっちい奴のこと主人にしやがって! オレが仕えるべき主は、アーサー王しかいねえんだよ!!」

 

「だからって、叛逆しながら王に仕えるなんて夢見続けてんじゃねえよ!! アーサー王に心の底から仕える時なんてのは、()()()()には永遠に訪れねえんだよ!!」

 

 顔がボロボロになってもどちらも引かない。自分の意思を曲げないために拳を止めない。

 

「だけど……! 王は求めてくれた!! オレの力を! 王に最期を与えられなかった力不足なオレの力を頼ってくれた! だからオレは……王に仕え続けるんだああああ!!!」

 

 獅子王の騎士の渾身の一発。モードレッドはその拳を受け止めると、彼女のことを引き寄せ、その矛盾だらけの哀しみを受け止めるために抱き寄せた。

 

「王に仕える。確かにそれは、王に憧れ認められたかったオレにとって史上の喜びだ。けどな、夢は夢なんだよ」

 

 獅子王の騎士はどこまでいっても、たとえ敵対していようとも自分自身であることには変わりない。

 だからこそ自分も、同じように呼ばれたらきっと同じように夢を見る。それが分かっているからこそモードレッドは自分自身の事を抱きしめる。

 

「叛逆しながら王に仕える。そんな矛盾抱えたまんま戦い続けんの…………疲れたよな? もう、終わりにしようぜ……」

 

 自分が間違っていることは分かっている。だが、獅子王の騎士である彼女は止まらない、止まれない。

 最期の最期まで王の騎士であるために、抱きしめられたその手を払い、霊基が崩壊することも厭わずに授かった“暴走”の祝福を開放させる。

 

「うるせえっ!! わかったような事言ってんじゃねえよ! お前はオレじゃねえ! オレは、()()()()が、獅子王の騎士モードレッドだああああッッ!!!!」

 

 魔力を暴走させたモードレッドの宝具【我が麗しき父上への叛逆(クラレント・ブラッド・アーサー)】がモードレッドを包み込むように天に向かって魔力の柱が出来る。

 モードレッドはその一撃に対抗するために、折れたクラレントに話しかける。

 

「いくぞクラレント。王に憎まれたまま、王に仕えるなんて無邪気な夢を見る()()()()()()の目を覚まさせるためにな」

 

 今のモードレッドと欠けたクラレントでは宝具を打てない。正確には打った瞬間に暴発してモードレッド自身が消えてしまう。

 だからこそモードレッドとクラレントが()()()()のは欠けたクラレントを突き付けながら相手の宝具に向かって突貫することだった。

 

「があああああああああああっっっ!!!!」

 

 放たれた莫大な赤雷を纏った魔力の塊とモードレッドとクラレントが衝突する。

 暴走によって強化された宝具に押し切られそうになるが、モードレッドは声を張り上げながら耐え続ける。

 

 このままでは負けるかも知れない。そんな時に応えたのがクラレントだった。

 

「(クラレント……お前……)はあああああああ!!!」

 

 モードレッドの意思に関係なく、折れたクラレントがガシャンガシャンと音を鳴らしながら展開する。

 クラレントもあの夢見るモードレッドを止めたいという意思の表れだと受け取ったモードレッドは、自身の中に眠る聖杯の魔力を開放させクラレントに魔力を送る。

 

 相手の宝具全てを打ち消すんじゃない。たった一本の道を切り拓くために、欠けた刀身部分を賄うように、凝縮された魔力の剣で魔力の塊の中をかき分け突き進んでいく。

 

「消えろ! 消えろ!! 消えちまえええええええええ!!!!!」

 

「とっとと目え覚ましやがれえええ!! この大馬鹿野郎!!!!!!」

 

ドガアアアアアンッッッ!!!!!!!! 

 

 宝具を掻き分けた先。獅子王のモードレッドに向かってクラレントを握ったままのモードレッドの拳が届く。

 地面に叩きつけられるように殴られた獅子王のモードレッドはそれがトドメになったらしく立ち上がる気力もなく、倒れ伏した。

 

「ちくしょう……ちくしょう……! 侵入者一人止められないんじゃ訳ねえよ……。やっぱ、オレに獅子王の騎士は向いてなかったのかもなあ……」

 

「やあっと目が覚めたかよオレ。いい夢見れたか?」

 

「最っ悪だっ!! ────最悪過ぎて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 悔し涙を流しながら、獅子王のモードレッドが自分の持つクラレントをモードレッドへ差しだしてきた。

 

「いいのかよ、コイツを渡すってことは王への不義に値する。アグラヴェイン辺りが黙っちゃいねえぞ?」

 

「はっはっはっは、確かになあ。────でも、獅子王の騎士としてずっとお利巧さんにしてたんだ……。一度くらいドデカイ叛逆しても許されんだろ?」

 

「確かにな。んじゃまっ、お前の叛逆の意思は受け取った。安心して眠りな、獅子王は必ずオレが殺してやる。まあ終わらせるのはアイツの役目だけどな」

 

「────ん。任せたぜ……オレ……」

 

 こうして、獅子王のモードレッドは悔し涙とうれし涙の両方が混じった涙を流しながら消えていった。

 もう一人の自分にクラレントを託して……

 

 

 

 

 

「んしっ!! んじゃあ獅子王んとこ向かうとするか。────ッ!? ()()()()!?」

 

 

 

 

 

 




【モードレッドはもう一本のクラレントを手に入れた!】
 折れたクラレントともう一本のクラレント、何か起きないはずがなく……。

今回の殴り合いからの戦闘はあるシーンのオマージュ。
どちらも考え方によっては同一存在だったこともあるんで……ね?


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14

タイガと同じく延期になってたHeaven's Feel3章見てきました。
失われた第3魔法である魂の物質化、それを科学で解明して「命の固定化技術」を作り出したヒカリ博士ってやっぱり凄いんだなって映画見ながら思ってましたね(何考えてんだか)

キングジョーストレイジカスタムが11話で登場するならいつものような中間フォームはやっぱりガンマフューチャーなんでしょうか?たしかに平成3部マン+アグルも入ってるんだから他2つよりはスペック上なんでしょうね。

あ、水着キアラさん当たりました。今回1番の狙いだったんで大勝利ですね

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「博樹殿……どうしました?」

 

 決戦前夜、私はマシュちゃんと話を終えたベディヴィエールさんの元へと来ていた。

 

「ベディヴィエールさんの方こそ、身体の方は大丈夫なんですか?」

 

「はい。十分に休ませていただきましたので……私はまだ、戦えます」

 

 嘘だ。今にだって身体が砕け散りそうになるのを耐えているというのに、それを億尾にも出さずに笑っている。

 

「そういえばベディヴィエールさん。円卓の騎士って、どんな人たちだったんですか?」

 

「? それは、ロマニ殿から聞いたのでは……?」

 

「貴方の口から、……貴方の目で見てきた円卓の人たちのことを、ブリテンがどんな所だったのか聞きたいんです」

 

 ベディヴィエールさんの言う通り、円卓の騎士についての伝承はロマニさんやカルデアのデータベースからすでに情報として貰っているけど、彼本人から聞きたいと思った。

 円卓とはどんなものなのかを……

 

「そう、ですね……。私が語れることは少ないかも知れませんが……」

 

 そう言って、おずおずとながらベディヴィエールさんの口から円卓の騎士たちについて話を教えてくれる。

 伝記で伝わってきているものでは知ることの出来ない、本当に日常的な事。どんな人柄だったのか、どれだけすごかったのか、一人一人丁寧に教えてくれた。

 

 きっと、他の円卓の騎士じゃあこうはいかなかったと思う。

 心優しい、慎ましい彼だから、騎士たちの些細なことにも、民たちに起きるほんの小さなことでもつぶさに見ることが出来た彼だから……

 

(ベリアルさん。カルデアとの通信、切ってくれませんか?)

 

(……いいだろう)

 

「そんな貴方だから、アーサー王は()()()を託したんですね……」

 

「!!!! 博樹殿、貴方は知っていて……!?」

 

「ベリアルさんの……私が契約しているサーヴァントたちの力、みたいなものなんだと思います。あの時貴方と握手した瞬間、全部見てしまいました。すみません」

 

 私自身もあの力の事は知らなかったとはいえ、人の記憶を勝手にのぞき込んでしまった事実は変わりないため、素直に謝罪する。

 

 ベリアルさんに聞いたところ、相手の記憶を覗き見てしまうあの力は、ベリアルさんとアリスちゃんの力が混ざり合ってしまった結果起きたことなんだと言う。

 

「いいえ、謝ることはありません。むしろ見苦しいものを見せてしまったと思います。あの華々しかった時代だけならともかく……王を探し続けて歩いたあの時は、とても情けないものですから」

 

「そんなことない。あっていいはずがない」

 

 ベディヴィエールさんは自分の事を過小評価するけれど、それこそ有り得ない。

 たった一つ、自分が果たせなかった使命を今度こそ果たす。その為だけに永劫とも言える時間を歩き続けたことを情けないはずがないんだ。

 

「博樹殿……」

 

「教えてほしいベディヴィエールさん。後悔や自責の念に苛まれていても、コレは貴方の()()()()()()、なんですよね?」

 

「−−−−はい。どんなに無謀だと笑われても、絶対に不可能だと運命が決められたしても、コレは私のやりたいこと。幾千幾夜を彷徨ってでも辿り着いた私の旅の果て……」

 

 アーラシュさんには感謝しなければいけないのかも知れない。あの時、自分の命を賭けてでもやりたいことを貫き通す覚悟を見ていなかったら、私はきっとベディヴィエールさんの事を止めていた。

 

 けど、今は違う。 私はベディヴィエールのその右手を強く握りしめる。

 

「友達になりましょう、ベディヴィエールさん!」

 

「え? 友達……ですか?」

 

「騎士とか、マスターとサーヴァントのような主従関係じゃない。悲しいことがあったら一緒に悲しむ、怒りたいことがあったら一緒に怒る、楽しいことがあったら一緒に笑う。そんな友達に」

 

「友達……、良いのですが何故?」

 

「だって友達なら“助けるのに理由はいらない”じゃないですか」

 

 その私の言葉にベディヴィエールさんはぽかーんと呆気に取られた顔を一瞬すると、突然に笑い始めた。面白いことを言った覚えは、無いんだけどなあ? 

 

「ハハハハハっ。ありがとう博樹殿、いいや()()。沢山の出会いをしてきましたが、貴方のような友達が出来たのは初めてです」

 

「それは光栄だな、()()()()()()()()。友達だからね、貴方の旅路の終わりまで付き合わせてもらうよ」

 

「はい。もしも足が震えて決断が鈍ってしまった時は背中を押してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『お待たせしました。ここまでの激戦、積もる話もありましょうが────今は一刻を争う時。どうぞ先に進まれよ』

 

 モーさんを信じて王城へと向かう私たちの行く手を阻んできた次なる刺客は円卓の騎士トリスタン。

 駆けつけてくれた呪腕、百貌、静謐のハサンに彼の相手を任せた私たちは、遂に獅子王のいる王城へと辿り着いていた。

 

「城の中は随分と手薄だねえ」

 

「それほどまでに自信があるのでしょう獅子王は。自分の邪魔を出来るものなど存在しないと」

 

 ダヴィンチちゃんとニトちゃんが言うように王城の中と外とでは警備の差が大きかった。

 入る前は粛清騎士が何体も待ち構えていたというのに、入ってみると誰一人として私たちを止める者がいなかった。

 

 このままこの城の事を知り尽くしているベディヴィエールさんの案内の元、獅子王まで一直線だ!! 

 

「────ッ!」

 

「博樹? どうかしましたか?」

 

 この特異点に来てこれまでに無いほど順調といった所で博樹さんがその足を止め、私たちに背を向ける。

 

「ベディヴィエール。立香ちゃんたちを連れて先に行ってくれ。私は、止めなきゃいけない相手がいる」

 

『────博樹さんの言う通りだ! 高濃度の魔力反応がコチラに向かって急速に接近している。これは────ガウェイン卿だ!!』

 

 ────っ!! ガウェイン卿。この聖都の間違った在り方を私たちに刻み込んだ存在。

 そんな彼の接近を、博樹さんはカルデアの測定よりも早く察知してたってこと? 

 

「任せても良いですか? 博樹」

 

「貴方は貴方のなすべき事をするためにここまで来た。ガウェインを倒すことはそれに含まれてないはずだ。────任せろ、ベディヴィエール」

 

 いつもの温厚そうな笑顔を浮かべながらベ博樹さんがそう言うと、ベディヴィエールさんは深く頷き私たちと一緒に獅子王の待つ玉座へ向かう事選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『────もし次があるのなら。 まだ挽回する機会が、二度目の生があるのなら、今度こそ、自らの全てを王に捧げよう────』

 

 “太陽の騎士”、“忠義の騎士”と謳われる騎士サー・ガウェイン。王の右腕であり続けた彼の騎士の逸話に置いて最も大きな失態は、サー・ランスロットとの確執だった。

 兄弟を殺され、王すらも裏切ったランスロットを生涯許すことが出来なかった事が王が戦死する遠因となってしまった。

 

 だからこそ王に求められたガウェインに迷いはなかった。たとえ王が“獅子王”になってしまった理由を知っていようとも、彼は今度こそ自らの忠義を全うするために“不夜”のギフトと共にその剣を手にした。

 王が望むのならどんな醜行にも手を染めよう。我が主の命に、間違いは無いのだから……。

 

 その覚悟が、盲信とも言える王への忠義があるからこそ、かつて共に並んだ円卓の騎士たちが敵になろうともガウェインは迷わずに斬った。斬り伏せて見せた。

 そんな中でもまだ無抵抗な相手には手を掛けず、見逃すと言った『心』は残っていた。

 

 その最後の『心』が残っていたのはきっと自分と同じく獅子王の騎士である事を選んでくれた妹“ガレス”の存在が大きかった。

 

『ガウェイン様? ……ええと……えへへへ。わたしの髪をクシャクシャにするのはやめて下さい怒りますよ? でも兄様、お会いできて嬉しいです。──大好きです!』

 

 獅子王の騎士として虐殺の日々を送りながらも、ガウェインたち騎士の前では子犬のような愛らしい笑顔を浮かべる最愛の妹が残ってくれたからこそ、ガウェインは心を保てていた。

 だからこそ彼は、ガレスの心がとっくに壊れていることに気付けなかった。

 

『ごめんなさい。ごめんなさい。わたしは、こちらを選んだのに』

 

 他の者たちと同じように獅子王の騎士である事を自ら選択したガレス。

 彼女が望んだギフトは“不浄”。他の騎士たちと違い何一つとて罪を犯さなかったからではなく、『美しい手(ボーマン)』と言って貰い褒めてもらった数少ない、自分の自慢できるモノを戦いで汚したく無くて望んだ祝福。

 

 “いつの日かもっとも優れた騎士になる”。“ いずれ、兄弟全員に匹敵する真の騎士となる”

 他の円卓の騎士達から、あのモードレッドすらもそう評価するほどだったガレスの活躍は素晴らしいものだった。

 

『もう耐えられません。もう戦えません。どうか、どうか』

 

 けれど連日に続く戦いは心優しい少女には決して耐えられるものでは無かった。

 自分の事を気にかけてくれた、愛すべき同胞たちを手にかけた事、偽りのものとはいえ十字軍の騎士たちを、聖地の人々を手にかける日々。

 

 “不浄”のギフトの恩恵により、幾ら返り血を浴びようと、その槍で人々を手にかけようとその手は美しいまま。

 しかしガレスの目にはそうは映らなかった。幾ら洗おうとも落ちることのない血、頭から離れる事のない悲痛な叫び。

 

 貴婦人ライオネスから賜った、様々な色に変化する神秘の指輪を使い、いつも通りの笑顔を振りまく自分へ変身し続けることで、他の円卓たちを騙し続けたガレスの美しい白指は洗浄により炭化し、その瞳の下にはミイラのごとき痣ができていた。

 

『愚かなわたしに、罰を与えてくださいませ』

 

 もう心が砕けていたガレスは終わることを望んだ。

 胸を貫かれながらも、魔人の如き強さを誇るリチャード一世を連れて行くことで王への忠誠も裏切らずに……

 

『私は……私には……!!』

 

『ふざけんなガレスッ! その程度のヤツオレがぶっ殺してやる!! お前が犠牲になる必要はねえ!!!』

 

『…………!!』

 

 躊躇わず、激怒もせず、迷いもせずに敵の首魁に踏み込み、剣を振るったのはガウェインだった。

 

『…………ああ、ありがとう兄様……。それとごめんなさい王様……またわたしは……貴方の最後の戦いまで……供に出来ない……不出来な騎士で……』

 

 最愛の妹。最後に残された”心”を自ら砕いたガウェインは、何も悩まない、何も考えない、何も感じない、ただ王の命を遂行するだけの機械になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ヒロキ、と言いましたか。貴方だけの様ですね。退いていただきましょうか、貴方は勿論のこと彼を、ベディヴィエール卿を我が王の元へ向かわせるわけにはいきません」

 

「悪いんですけど私の方も貴方を通すワケにはいかない』

 

 獅子王の玉座へと続く回廊で、博樹とガウェインは対峙した。

 どちらも相手を通さないために。

 

「私のこの力は、獅子王のために!!」

 

「絶対に貴方は止める。友達の手を、あの優しい手を汚さないために!!」

 

 博樹はギガバトルナイザーを前に突き出しながら一度を目を瞑り、すぅーっと深呼吸をすると戦いの合図とも取れる言葉を発した。

 

 

 

「決めるぜ、覚悟!!」

 

 

 

 

 




【友達】
 博樹さんとベディヴィエールさんの関係をどうするかで悩んでいた結果の答え。
騎士のような関係でも、主従の関係でもない、ただ普通に悩みを打ち解けあえる友達として博樹さんは戦う事を選んだ。

【ガウェイン様? ……ええと……えへへへ。わたしの髪をクシャクシャにするのはやめて下さい怒りますよ? でも兄様、お会いできて嬉しいです。──大好きです!】
 本来ならガウェイン所持状態で聞けるガレスちゃんのマイルームボイス。
今回の話、ここまでガレスちゃんが辛すぎて書いてる作者も心が辛かったとです。
みんな、ガレスちゃんの事は最終再臨まで持っていってあげよう!!


次回、博樹vsガウェイン!
博樹さんは新フォーム?モード?で立ち向かう!!
 どんな姿か当てた人の所には今年の星5水着鯖があなたのカルデアにやってきます。きっと


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15

UGFの新作にアーリーベリアルさんがあああああああ!!!!
遂にベリアルさんが闇堕ちした詳細な部分が明かされるんでしょうか?

アーリーベリアルさんのアーツ出してくださいお願いします

今回の戦闘挿入歌はこの章のタイトルにもなってる『ShOut!』です。
この曲は収録されている『ウルトラマンフェスティバル ライブステージソングコレクション』は『フュージョンライズ』や他の神曲も入っているのでみんな買いましょう。


感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく



「ヌンッ!!」

 

「くっ! はあっ!!」

 

 王城の回廊にてぶつかる博樹とガウェインの剣戟が響く。

 日中3倍の力を発揮するガウェインの剣を、博樹は辛そうではありながらも直撃することなくギガバトルナイザーを振るって対処していく。

 

「正門で相対した時とは違いますよ! 一切の油断も、余裕も持ち合わせない! 獅子王の為に貴方を屠る!」

 

 正門での戦闘では、博樹の奇襲、そしてその特異性に対処が遅れ全力で戦うことが出来なかった。

 だが、今は違う。初代山の翁との戦闘はあったが、それは此処に来るまでに癒してきた。故に博樹を完全な敵と認識している今のガウェインに死角はない。

 

 あるとするならば……

 

「どうしました! あの時見せた力を使わないのですか!! あの激昂の力は!!」

 

 ガウェインが脇に構えたその剣を振るうと、剣の柄に納められた疑似太陽が起動し剣から灼熱が襲い掛かる。

 博樹はその灼熱を払うために、ナイザーを両手に持ち直し大きく横なぎに振るい衝撃破を放つ

 

「(強い……これがベディヴィエールが言っていた”太陽の騎士”の本当の力……! だからってあの力は使わない、この人を倒すのに必要なのは怒りじゃない!!)はあああっ!!」

 

「そう来ると思っていましたよ。フウンッ!!」

 

「ガハッ!!」

 

 灼熱を掃うことに成功したが、それを見越して接近してきたガウェインの攻撃を受け、博樹は城の支柱に叩きつけられた。

 背中に感じる衝撃に声が出てしまうが、追撃がくることが分かっている博樹は叩きつけられた柱を足場にして上空に向かってジャンプする。

 

「かつて私は! 王の右腕と称されながらも私怨を捨てることが叶わず、王の死を招いた!! そんな私に王はおっしゃられた。“太陽の騎士、もうひとりの聖剣の担い手よ。今度こそ、その望みを果たすがいい”と!! その言葉が、どれほど喜ばしいことだったか、貴方のような人には分かるまい!!」

 

 空中で博樹が連続で光弾を放つが、その一つひとつをガウェインは斬り落とし接近してくる。

 そのまま鍔迫り合う博樹とガウェインは、地面に落ちながらぶつかり合う。

 

「なぜこの聖都に残った円卓が我々だけだと思う?」

 

 博樹を地面へと叩きつけたガウェインは、倒れる彼に剣を突きつけながらこれまでの経緯を語る。

 

「第二席パーシヴァル。第三席ケイ。第六席ガヘリス。第九席パロミデス。顧問監督官ペリノア王。次期十一席ボールス。彼らはみな素晴らしい騎士たちだった。王の名誉の為に、王に戦いを挑んだのだから」

 

「戦いを……?」

 

「そうです。────そのすべてを、我らはこの手にかけたのだ」

 

 ガウェインの口から聞かされた真実は衝撃的なものだった。ベディヴィエールも他の円卓の騎士たちは十字軍との戦いで命を落としていたとばかり思っていたため、円卓同士で殺しあったとは思いもしなかった。同胞を殺した。仲間同士で誓いを果たしたと雄弁に語るガウェイン。

 

 だがそこで、博樹は一つだけ可笑しなことに気づいた……。

 

「ベディヴィエール卿は古き円卓、善き騎士道の最期の名残だ。……だからこそ、私がこの手で引導を渡す。終わりです、ヒロキ!!」

 

 聖剣が倒れる博樹に向かって振り下ろされたが、その剣が肉を断つ音は聞こえてこなかった。

 

「まだ……抵抗するというのですか……!!」

 

「……一人、いないだろ……」

 

「なに……?」

 

 寸での所で博樹は聖剣を両手で掴み、受け止めていた。

 決戦前夜にベディヴィエールから聞いた輝かしい円卓の話。その話を聞いていた博樹だからこそ気づいた疑問を、ガウェインへとぶつける。

 

「ランスロット、アグラヴェイン、トリスタン、モードレッド、ベディヴィエール、ギャラハッド、そしてガウェイン……。もう一人いた筈だろう、円卓の騎士は!!」

 

「!!!!!」

 

「第七席ガレス……だったかな? その騎士はどこにいった」

 

 その先は言いたくないのか、動揺しながらも剣を持つ手に力が入るガウェイン。

 しかし博樹の手が離れることはなく、ガウェインの事をにらみ続ける。

 

「────彼女は、私が斬り伏せた!! 獅子王の元に付きながらも、彼女は愚かにももう限界だと苦言を漏らした。だからこそ終わらせたのだ! これ以上獅子王に醜態をさらさぬために!!」

 

「ああそうか。今のでわかったよ……。だから貴方は、あんなにも簡単に命を奪えたのか……」

 

 他の円卓、斬り伏せた騎士たちの事を話していた時とはまるっきり違う声色に、博樹は合点がいった。

 ガレス。ガウェインにとって最愛の妹。そうベディヴィエールに聞いていたからこそ辿り着いた答え。

 

「それが……貴方の決意か……」

 

「────そうです、これこそが私の決意! 獅子王への忠義に他ならない!! 貴方如きでは分かるはずもない!!」

 

「分かりたくもないッッ!!!」

 

 博樹にトドメを刺すために聖剣の疑似太陽を起動させようとしたガウェインだったが、博樹に足で蹴り飛ばされその勢いのまま殴り飛ばされる。

 

「最愛の人を手にかけてまで守る忠義? そんなのくそくらえだ!! 絶対に貴方をベディヴィエールの元へはいかせない! あんなにも心優しい騎士の手を、同胞の血で汚させはしない!! 私の全部を使ってでも……貴方は私が倒す!!!」

 

 怒りでも、恨みでも、悪意でもない。友を想うその力と、ガウェインに対する哀れみから出るその力は博樹の瞳を()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじさ~~んっ!!」

 

「ルシェドくん、それにサリアさんも……」

 

 聖都での決戦が始まる前、東の村を後にしようとした私の前に聖都の正門で守ったルシェドくんとサリアさん親子が見送りに来てくれた。

 

「これから聖都に向かうんでしょ? その前に、お礼言いたくって!」

 

「お礼?」

 

「うん! 戦いは危ない。子供やお母さんみたいな人にはダメだってことくらい分かってる。だから、最後になっちゃうかもしれないからお礼言いたかったんだ!! あの時、ボクとお母さんの事を助けてくれてありがとう!!」

 

 ────その言葉が胸に染み込んでくるのに、少しだけ時間がかかった。

 あの時、聖都でガウェインと戦った時の私は確かに2人のことを守りたかった、助けたかった。だけど、それ以上にガウェインに対しての怒りが大きかった。

 

 あの時使った力は間違ったものだって、自分で勝手に決めつけていた。

 だけど、そんな凝り固まった考えが、ルシェド君の一言だけで打ち砕かれたんだ……。

 

「────ルシェドくん。小さい君でも、サリアさんでも……どんな人でもすぐに戦えるようになる魔法があるんだ。知りたい?」

 

「知りたい!! ボクでも戦えるの? その魔法ボクにも教えて!!」

 

「────()()()()()()。ただそれだけでいいんだ」

 

 私の言ったことにルシェドくんは理解できずに首をかしげてしまう。

 だけど、声の力が偉大だってことは私はよく知っている。だから、悩ませているルシェドくんの頭をなでながら説明する。

 

「大きくなくてもいい、小さくてもいい。心から叫ぶだけでいいんだ“がんばれ”“まけるな”って。それが声の力だ」

 

「でも、ぼく一人の声じゃ聖都には届かないよ……?」

 

「なら、みんなで叫べばいんだ。ルシェドくんは一人じゃないだろう? 目には見えないものかもしれないけど、一人一人の声が重なればその分声は集まって大きな力になるんだ。その声は絶対に、私やマシュちゃん、他のみんなにも届くから」

 

 私の言いたいことが伝わってくれたのか、ルシェドくんは目を輝かせてサリアさんにも「一緒にがんばれって言おう」って喋ってる。

 

「じゃあボク、みんなに言って一緒に声出すよ! たっくさんたくさん! そうすればおじさんたちみんな負けないんだよね!!」

 

「ああ絶対に負けない!」

 

 聖都と東の村との距離じゃ、声なんて絶対に届きっこない。

 けど、私には聞こえる。心で感じることが出来る、“がんばれ”って“まけるな”って叫ぶみんなの声の力が!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああああああッッ!!!!」

 

「くううッ!!!」

 

 形勢は完全に逆転していた。瞳を青く輝かせた博樹はガウェインの事を王城の壁に叩きつけると、彼の頭を壁に押し付けたままその壁を駆けあがっていった。

 ガウェインによって王城の外へと放り出されたはずだったが、博樹はガウェインを掴んだまま最初に対峙していた回廊まで戻ってきていた。

 

 

「はあああっ!!」

 

「させるかっ!!」

 

 回廊へと転がされたガウェインが受け身を取り、灼熱を放とうとするが距離を一緒んで詰めた博樹の飛び膝蹴りを直撃しさらに転がされる。

 

「ただ王を信じて信じて信じて信じ続けるのが忠義なのか! 間違って道を踏み外そうとしていたら、それは違うっていうのも大切なものだろう!!」

 

「我が王に間違いはない! 全てが絶対、全てが不変!! 間違いなどない完全無欠の存在だからこそ、私は忠義を果たすのだ!!」

 

「それで最愛の人を手にかけてちゃ、わけないだろ!!」

 

「ガハッ!!」

 

 放たれた突きを、ナイザーを回転させ当てることでその軌道をずらし脇を通過させると、空いている手でガウェインの鎧を遠慮なしに殴る。

 鋼鉄の鎧、英霊として召喚されているため鎧の硬度すらも3倍に跳ね上がってるはずのそれを、博樹の拳は凹みを作るほどの威力を持っていた。

 

「何を言われようと、何があろうと私が獅子王を裏切ることはない!! 今の私は()()()()()()、ガウェインである!! 王に叛逆するものを全てを滅する太陽だ!!」

 

「何が何でも……自分の信念は曲げないんですか……」

 

 既に回廊にあった屋根は崩れ去り、ガウェインには太陽の光が降り注いでいる。

 たとえ最愛の妹を手にかけたとしても、王に仕えるという信念は曲げない。その為に彼は、目の前に立つ障害を焼き払うために宝具を開帳する。

 

 魔力を開放させた聖剣を天に放り投げると、その剣から疑似的な太陽が生み出されガウェインに向かって1本の剣が降り注いだ。

 

【この剣は太陽の移し身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎。そして────獅子王へ従う我が忠義の証ならば!!】

 

【王命のもと────貴方という障害を焼き払う】

 

 太陽その物を剣として放つ宝具。まだ振り下ろされていないというのに、溶けてしまいそうな熱波と身体がチリチリと焼ける痛みからその威力の大きさが容易に想像できる。

 だが、博樹は逃げようともしない。しかもギガバトルナイザーを消して両腕を前に突き出した。

 

転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)!!!!】

 

「はああああああああああああっっっっ!!!!!!」

 

 獅子王が星の聖剣を所持していないからなのか、それとも彼の盲信にも似た忠義が形をなしたのか本来ならば真横に薙ぎ払うように太陽の灼熱が襲ってくる宝具が今回は違う。

 垂直に振り下ろされた太陽が博樹にだけ狙いを定めて落ちてくる。

 

 その一撃を博樹は避けることなく両手受け止め始めた。ベリアルと同化しているから耐えていられるが、全てを溶かす太陽の熱を博樹は叫びながら耐え続ける。

 

「ぐっ……!! がああああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「はっ! …………ここは、インナースペース?」

 

 気が付くと、博樹は自分とベリアルが同化したことで出来た精神世界【インナースペース】に立っていた。

 ここでの時間は現実の時間よりもとても遅く流れているため現実で何かが起きることはない。

 

 その場所で、博樹を呼び出したベリアルは彼の目の前で佇んでいた。

 

「どうする宮原博樹。このままではあの太陽に焼かれて終わりだぞ?」

 

「────太陽っていうのは、みんなを照らす輝きです。朝の目覚めを教えてくれて、人々を活気づける力がある。 だけど、あれは違う」

 

 博樹はベリアルに語る。自分が相対しているガウェインの事を、太陽を持って戦う騎士のことを。

 

「あの熱はただ傷つけるためにしか存在していない。そしてそれを振るう彼自身も太陽の光で影を、自分の中にある(弱さ)から目を背けている」

 

「ならどうする? 今のお前の力では、あの太陽を打ち払うことは出来ないぞ?」

 

「分かってます。あの太陽を打ち払うには力が必要なんだ、全てを打ち払うほどの絶対な力が」

 

 今のままでは負ける。ガウェインの忠義を、信念を許してしまうことになる。

 それだけはいけないと博樹は分かっているからこそ、佇むベリアルの腕を掴み顔を近づけさせた。

 

「だから、────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふっ……はっはっはっはっはっはっはっ!!!! 寄越せ、寄越せと言ったか?」

 

「ああ言ったさ。貴方と私の身体は同化している。貴方が私の身体を好き勝手使うように、私が貴方の力を好き勝手使ってもいいはずだ! 力を合わせるんじゃない、借りるんでもない! 私の意思で! 私自身の覚悟()でアイツを超える! だから寄越せ、貴方の力を!!!!!」

 

 その言葉を聞いてベリアルは空いている方の手で博樹の首を掴み、博樹がやったように今度は鼻と鼻がくっつくほどの距離まで顔を近づけさせた。

 

「いいぞ、()()()だ。お前に足りなかったのはその力に対する渇望だ!! あの円卓どもを見て理解すると思ったが……お前にそれを教えさせたのが、全員甘ちゃんだったがなあ。フハハハハハ、そのお陰で心を悪意に染めずにお前はココに辿り着いた。オレの予想を超えてなあ」

 

「ならっ!!」

 

「たかだが数千万程度の熱。超えて見せろ宮原博樹!!!」

 

「はいっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああああああああああああああ!!!!! 力を寄越せええええっっ!!! ベリアルゥゥゥッッッッッッ!!!!!!」

 

 その叫びと共に、太陽を受け止めていた博樹の腕、肘から下の部分が異形の腕、ベリアルのソレと同じものへと変わっていく。

 それと同時に、博樹の頭の中に闇の力、心の中に誰しも持っている悪意や憎悪といった負の力が増大して襲い掛かってくる。

 

『倒せ完膚なきまでに 滅ぼせその命消えるまで 破壊しろ跡形もなく 殺せ殺せ滅ぼせ殺せ殺せ殺せ亡くせ殺せ殺せ!! 全てを支配しろ!!』

 

「があああああああっっ!!!! (駄目だ、コレに呑まれるわけにはいかない。私は私の意思で、ガウェインに撃ち勝つんだ!!!)」

 

 瞳を赤と青に点滅させながら、身体を内側から喰い破ろうとする悪意や憎悪の痛みに耐え続けながら博樹はその力を抑えるために必死にもがき続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな時だった、ベリアルのものへと変わったその手に誰かの温もりが伝わってきた。

 

『気張れよ博樹殿。これがアンタのやりたいことなんだろ? なら、最後までアンタの意思で貫き通せ!』

 

『大丈夫よ博樹。その力は確かに怖いモノかも知れないけれど、扱うアナタやベリアルがイイ人なんだもの! 心配いらないわ!!』

 

『もし力が入らないのならそれはきっと腹が減っているからだな。決してこのような力に呑まれそうだからではない!!』

 

(アーラシュさん、三蔵さん、藤太さん…………)

 

 そこに現れたのは幻覚かも知れない。しかしこの特異点に来て、関わり絆を紡いだ者たちが博樹の手を、闇に呑まれそうな博樹の心を支えてくれる。

 そして最後に彼の手に触れたのは、とても小さくてか弱い、けれどとても暖かな温もりだった。

 

『おじちゃん』

 

 

『『『『『『がんばれええええええええええ!!!!!』』』』』』

 

「はあああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」

 

 気づけば、博樹のその手は太陽を受け止めるのではなく。扉をこじ開けるように両手を八の字に大きく開くと同時に太陽を打ち払い、ガウェインまでの道を切り拓いて見せた。

 

「馬鹿なっ、私のガラディーンを正面から受け止め……イヤ、打ち払ったというのですか!!」

 

「どこまで行っても独りぼっちの太陽と違って、私には()()()がついているんだ!! これで終わらせるぞ!!! ガウェインッッッッ!!!!」

 

 ギガバトルナイザーを取りだした博樹は、ベリアルの手から溢れる力をナイザーへと注入しながら大きく円を描くように振り回し始める。

 そうするとライザーの先端部に雷が溜まり始める。宝具を使い終え、魔力の充填が間に合わないガウェインではそれを止めることは出来ず、彼も博樹と同じように受け止めようと剣を構えた。

 

「はああああああああ!! ベリアルゥゥジェノサンダァァアアアアアアアアアッッッ!!! 

 

「ぐううっ!! がああッッ(なんだ、この威力は……ッ!! 私のガラディーンすらも優に超えるというのですか!!)」

 

「犯した罪は消えない!! 例え貴方が英霊で、単なる影法師なのだとしても!! 償うんじゃない!! その魂に刻み付けろ、背負い続けろ!! それが貴方の、贖罪だあああああああああッ!!!!!」

 

 最後の一押しと言わんばかりに勢いを増した雷撃がガウェインの事を包み込み、その霊基を、与えられたギフトもろとも完全に消滅させていく。

 

(背負い続けろ……ですか……。一度消えてしまえば、この悪夢も忘れられると思ったのですがね……。どこまでも酷な事を強いる方だ……、お許しください獅子王。貴方の最後まで仕えることが出来なかったことではなく、貴方のことを止めることが出来なかったこの不忠の騎士を……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……、終わっ、た……」

 

「おっと」

 

 ガウェインとの戦いに勝利した博樹だったが、体力を使い果たし満身創痍の状態で倒れてしまいそうになった。

 だが、そんな彼のことを受け止める存在がいた。

 

「たっく、こんな所でへばってんじゃねえよおっさん」

 

「ああ……すまないねモードレッドちゃん。少しの間だけ、肩を貸してくれるかい?」

 

「任せろ、この城はオレの庭みてえなもんだからな。行こうぜえ、獅子王を終わらせに、アイツの最期を見届けによお!」

 




【インナースペース】
ニュージェネ全般に見られる変身者がいるあの謎空間。Zの場合はヒーローズゲートを潜った先にある。
勿論博樹とベリアルさんにもそれは適応されているため今回の戦いでもそれを使って二人は会話していた。

これのお陰で変身中は邪魔されないはずが巨大化最中に邪魔してきたルギエルって実はすごいのでは?

【博樹新形態】
青目ver&ベリアルアーム。
同じで通常よりも戦闘能力が向上するのは赤目と同じだが、暴走形態に近かった赤目と違い完全にベリアルの力を使いこなしている。部分的にベリアルの身体を使うのも赤目では怒りに因われているため出来ないが青目ならできる。赤目がベリアルモードというなら青目はジードモード?

【ベリアルジェノサンダー】
 ガウェインにトドメを刺したギガバトルナイザーから放たれた強力な雷撃。一点集中させらガラディーンよりも威力が上なため並の宝具では相殺することすら不可能。

 実のところコレとデスシウム光線か迷った末、光線はやっぱり完全なウルトラマン姿じゃないと駄目だろという考えからジェノサンダーが採用。

類似の技で赤目ジードが使う『ジードジェノサンダー』という技もある(ルーブのEXPOを見ろ)

【ガウェインの最期】
 博樹の言葉により、自分が犯した罪を霊基に刻み込み忘れることがないためカルデアに召喚された日には強化クエストなしで『不夜のカリスマ』だし最初からスキルマでやってくる。

 お前の出番はcccコラボまで待て


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16

Z最終フォームデルタライズクローが発表されましたね。
 アルファエッジから引き続いたゼロのスラッガーに、ゼロビヨンドの様な肩アーマー。
腹部の複雑な模様はアトロシアス?そして全身に走る朱色はウルティメイトファイナルを思わせるような正統派なイケメン。あの立ち姿だってゼロビヨンド初登場のアングル意識してますよね!
 カッコいい、カッコいいぞデルタライズクロー!!


ベリアロク?既に見慣れてきたし4つの仮面がグルグル回転する剣や顔の取り外し可能な最強剣よりまともでしょ、刀身はカッコいいし。

 あ、遅くなりましたが我らが龍臣プロ誕生日おめでとうございます!!遂にルーブ映画の時のリクくん先輩と同い年になったんですね……。

今回の挿入歌は【英雄の詩】ですかね、獅子王頭ルギエルだし

あとお気に入りが800件いきました、皆さまありがとうございます!!


感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


[私が世界を閉ざすのは、人間(おまえたち)を残す為だ]

 

[私は人間(おまえたち)に永遠を与えると決めた。後世に残すに相応しい魂たち────悪を成さず、悪に触れても悪を知らず、善に飽きることなく、また善の自覚なきものたち]

 

 人ならざる者へと変わった獅子王アルトリア────いいや、聖槍の化身ロンゴミニアドが私たちに世界を閉じるその理由を話してきた。

 この先、どれだけの時間が経ったとしても永遠に価値の変わらないモノとして、聖槍に収めると。人間を愛しているから、大切だからと……

 

 人間を資料としか見ていない彼女を否定するために私たちは戦いを挑むけれど、カルデアにまで届いてしまうほどの強大な力の前に私たちは為す術なく倒れてしまう。

 

[限りある命に永遠を]

 

[燃え尽きる命を凍りつかせ保管する。その価値が変動(おちぬ)ように停止させる]

 

[それが命を護るという事。人間を護る、究極の結論だ]

 

「「違うっ!!」

 

 好き勝手言うロンゴミニアドの言葉、私とマシュの声が重なった。

 マシュと顔を見合わせながら、震える身体を叱咤しながら立ち上がり2人でロンゴミニアドの前に立つ。

 

「女神ロンゴミニアド、あなたの言う通り私に定められた命はわずかかも知れません。けれど、それがあなたを肯定する理由にはならない! はっきりと言います、あなたは間違ってる!!」

 

「私たちはこの時代で、多くの命を見てきた! 今日生きられるのか分からない中で笑顔を浮かべる人たちがいた! ご飯を食べて、嬉しくて涙を流す人たちを見た!!」

 

「聖都に希望を求めて集まった人たちも、山の民の村で懸命に生きる人々も! 誰一人として、今日が苦しくても明日を諦める人はいませんでした!!」

 

「太陽が昇って朝が来るように、地球が回り続けているように! 命のサイクルは停止しない、一つの命が次の命に続いていく。ロンゴミニアド、あなたが止められるものじゃない!」

 

「終わりは無意味ではないのです。命は先に続くもの、いつもいつまでも、沢山のものが失われても、広く広く繋がっていくものなのです!」

 

 聖槍に閉じ込めることが永遠じゃない。親から子へ、子から孫へ、人から人へ! 未来に受け継がれていくそれこそが、永遠の命なんだ!! 

 ロンゴミニアドの嵐を受け止めるために盾を構えるマシュ。その肩に手を添えて、私は令呪を切る。

 

「いきます……! マスター・立香、わたしに力を……! そして────見ていてください所長! 今こそ、人理の礎を証明します……!!!!」

 

「令呪を持って命ずる────マシュ! 永遠を示せ!!」

 

【それは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷────顕現せよ、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)!』】

 

 マシュの叫びと共に、白亜の王城(キャメロット)が一瞬の内に築かれる。そして王城が築かれるのと同じくして聖槍から放たれた全てを無に還そうとする嵐が迫ってくきた。

 

[面白い────たかだが脆弱な人間(おまえたち)で、白亜の城をどこまで支えられる! ]

 

「くっ……つ、うぅうう……! マスター、大丈夫……ですか……?」

 

「全然……平気っ! こんな嵐……私とマシュなら耐えられる!!」

 

 ────とは強がってみたけど、少しでも気を抜けば今にも身体が嵐に巻き込まれて引きちぎれてしまいそう……。

 だけど、マシュに触れているからなのかこの宝具【いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)】はマシュの心が乱れないかぎり崩れることのない精神、概念の盾だって事が分かる。

 

 守り続けること、耐え続けることは可能。後は一手……ロンゴミニアドを倒すための後一手を……!! 

 

『────────!』

 

「ッ!!! マシュ!!」

 

「はいっ!! この盾は崩れない! 今の私の心に、迷いはありません!!」

 

「────そうです、貴女は敵を倒す騎士ではない。その盾の振るい方、どうやら彼女が教えてくれたようですね? ならば、私が最後の道を作ります」

 

()()からの念話が届き、マシュはその盾の振るい方を私は最後の一手のピースを託されたその中で、嵐を抑える私たちの元へベディヴィエールさんがゆっくり歩いてきた。

 違う。分からないけど、私にはもう走る事すら出来ないほどベディヴィエールさんが弱っているように見えた。

 

[……何者だ。見たところ、貴様も騎士のようだが────]

 

「っ、知らない筈がありません! この方はベディヴィエール卿! 円卓の騎士です!」

 

[何を、言っている……? そのような名前の騎士を、私は知らな────]

 

 驚くことに、ロンゴミニアドはベディヴィエールさんの事をまるで初めて見るかのように話す。忘れてる? ううん、あの反応はそういうものじゃない……。

 そして、当のベディヴィエール本人は、最初から彼女が自分の事を知らないのを解っていたかのように、銀の腕(アガートラム)を強く握り、聖槍の嵐を掃った。

 

 けどそれ以上に、銀の腕から放たれた輝きを見てロンゴミニアドが頭を押さえながら明らかに動揺し始めた。

 

[────今の、輝きは────知っている……それを、私は知っている────貴様は、何者だ。私は何故────ぐっ……! ]

 

 動かなくなったロンゴミニアドを横目に、ベディヴィエールさんが真実を話してくれる。アーサー王が変質した理由を知っていた、その原因そのものは自分にあるのだと……身体がボロボロと崩れ始めながら……

 

『……嘘だろ。どうなってるんだ、どうして今までこんな誤作動をしていたんだ……!? 観測結果が異常すぎる! 霊基の反応がまったくない! ────これは、ただの人間だ!』

 

「うそ……ベディヴィエールさんが、私と同じ……ただの人間?」

 

「マーリンの魔術で皆さんを騙していたのです。このアガートラムも同じ。これは……」

 

 エクスカリバー……。王を失いたくないというその思いが犯した愚かな罪の証が聖剣エクスカリバー。アーサー王の剣なのだという。

 聖剣を湖に返してしまえば、王は本当に死んでしまう。それが怖くなった彼は()()()ですら聖剣を湖に投げれなかった。

 

 聖剣が妖精に返還されなかった。その結果がもたらしたものこそが獅子王。死ぬことが出来ず、たださまようだけとなった亡霊の王。

 ベディヴィエールさんは、その罪を償うために今の今まで探し続けた、歩き続けた。1500年もの間、ずっと……一人で……

 

「それほど辛いものではありませんでしたよ? 歩き続ける中で沢山の出会いがありましたから。それに……最後に()()が出来ましたからね」

 

[……思い出せない。ベディヴィエールという名前は分かる。だが、貴卿との記憶が、何一つ……。いいだろう、ならば私の元へ戻れ。その剣を捨てよ。それは、私には不要なものだ]

 

「たくっ……。最後の最後まで、その身が砕けようが忠義を果たそうとする騎士(バカ)の気持ちくらい汲み取ってやれよな。そんなんだからトリ野郎に人の心がわかんねーなんて言われんだよ、アンタは」

 

[貴様は……モード、レッド……!? ]

 

 ベディヴィエールさんの事を招き入れようとするロンゴミニアドを遮るように、自分自身を打ち倒したモーさんがズカズカと横暴な態度で現れた。

 私は、一度完全に倒したはずのモーさんが現れることで絶対に生まれると確信していたその隙を逃さなかった。マシュを支えながらずっとその腕に充填し続けた魔力を、()()()()()()()()ロンゴミニアドに向けて放つ。

 

 

『うむ、神霊が相手だった場合……か。案ずるでないこのスカサハが師事しているのだぞ? 自身を信じ、覚悟を決めろ。さすれば神如き、穿つのは容易だ』

 

「【神さえ穿て!! ガンドォオオオオ!!】」

 

[ぐううっ!! ……これは、ただの人間が……私を縛るというか!! ]

 

 クー・フーリンに撃った時のガンドとは違う。カルデアで更に練度を上げて、最大まで溜め込み練りこんだガンドがロンゴミニアドに直撃し、彼女の事を縛り付ける。

 まあ、相手が相手だからすぐに拘束を解いて反撃してくるんだろうけど……数秒稼げれば十分なんだよね? 

 

「モーさんっ!!」

 

「最っ高だ! マスターっ!!!」

 

 そう言ってモーさんは、今まで使っていた片手で持てる儀礼剣とは違う。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を強く握りしめ、ロンゴミニアドを睨みつける。

 そんな彼女が内に眠る聖杯を起動させると、全身から赤雷の魔力が溢れ出る。その魔力が両手剣となったクラレントへと注がれ、それに呼応する形でクラレントは更に一回り大きく展開する。

 

[まて……何だそれはっ!? 選定の剣(クラレント)は確かにあの時砕いたはず……!! その剣は何だ……!! ]

 

「クラレントだよっ!! ただしコイツはもう王を選定する剣じゃねえ!! 宿()()()()()()()()()だ!!」

 

[いいだろう、この聖槍に貫かれる痛み、思い出させてやろう!! 聖槍よ、果てを語れ!! 【最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)!!】]

 

 モーさんがクラレントを振り下ろすと、極大の魔力が獅子王に向かって放たれる。

 それと同時にロンゴミニアドを縛り付けていた私のガンドが解かれ、迎え撃つために相手も一瞬で魔力を溜め聖槍から嵐が放たれ、モーさんの雷と衝突する。

 

『嘘だろ……!? 魔力観測値が上昇していく!! 1万、10万、100万……!? まさかあの聖槍を正面から打ち破る気なのかいモードレッド!?』

 

「当たり前だ!! そうでもしなきゃあの槍に縛り付けられたアーサー王を殺すなんて出来ねえからなっ!!! もっと、もっとだクラレント!!」

 

 両手剣へと進化したことによってクラレントの持つ『増幅』の力も強化されたらしく、女神となったロンゴミニアドに拮抗する程の力を見せる。

 

「グっ!! がああああああああッッ!!!!!」

 

[やはりお前の行く末が変わることはない! その剣の真価も扱えぬまま一人でこの嵐の中に沈め! モードレッド!! ]

 

 けどそれは武器だけを見た時の話し、聖杯から魔力を際限なく供給することが出来るがモーさん自身の身体は別だ。ここに戻ってくる時にはもうボロボロだったのに、休む間もなくもう一人の自分との戦い。そしてこの最後の戦いに間に合うようにもっと身体に負担をかけたに違いない……。

 

 その証拠に、先に放った筈のクラレントの方がロンゴミニアドに押され始める。

 

「一人じゃない!!」

 

 だから、考えるよりも先に身体が動いた。魔力の衝突の余波で私自身どうなるのかも考えずに飛び込み、剣を握るモーさんの手を上から握りしめる。

 

「ロンゴミニアド、貴方の知るモードレッドは此処にはいない!! モーさんには私が、私たちがいる!!」

 

 そんな私の声を皮切りにモーさんの手にまた一つ、また一つと別の手が重なる。

 

「まったく、考えなしに行動するからそうなるのです。もう少し後先というものを考えたらどうなのですかモードレッド?」

 

「ニトクリス……お前……っ!!」

 

「微力ながら、同じ円卓の騎士として私もご一緒させていただきます!」

 

 ニトちゃんとマシュが手を握ると、彼女たちの魔力をクラレントが取り込み、増福させたのかクラレントの放つ赤雷の魔力に二つの色が混ざり始めた。

 

『何だコレは……!? やめさせるんだダヴィンチちゃん! 別の魔力同士の結合なんて危険すぎる、いつ暴発しても可笑しくない!!』

 

「はっはっはっはこんな時に何を言ってるんだいロマニ。私ほどの天っ才が! こんな面白いことに首突っ込まないでどうするのさっ!!」

 

 ドクターが私たちのやろうとしてることは危険だからと止めるようにダヴィンチちゃんに言うけど、当の本人は止めようともせずに両手を広げて私たちの元へやってくると左腕に着けたその大きな籠手で全員の手が離れてしまわないように強く、そして優しく包み込んでくれる。

 

「まったく、最善策でも最優の手段でもない。合理性にも欠ける最悪の一手と言っても過言じゃない。だけどまっ、数式では表せない規格外を体験するのも一興だ! さあ見せようじゃないかい、人間賛歌というヤツを!!」

 

 ダヴィンチちゃんの魔力も混ざり、更に大きく膨らんだ赤雷はついにロンゴミニアドと並び立った。ロンゴミニアドも流石に驚愕を隠せず、このまま押し切るために更に力を振り絞ってくる。

 だったらこっちだって、これが最後の一手だ!! 

 

「これこそがアンタが切り捨てた夢!! 完璧であるが為に拒絶したまとまりも、統一性もない不完全な力!!」

 

「最後の令呪を持って命ずる!! みんなと一緒に!! 宿命を覆せ!! モードレッドぉおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

[ぐうっ!! なんだ、何だこの力は!? この輝きは!? ]

 

 最後の一画を使ったダメ押しとも言える魔力のブースト。カルデアの供給だから私の魔力って言っていいのか微妙な所だけど、その一押しによってロンゴミニアドの嵐を完全に上回り押し返した上で包み込んでいく。

 

「これがオレたちの!! 絆の力だあああああああああっっ!!!!!」

 

[がっ、ああああああああああああああッッ!!!! 私の……槍が……!! ]

 

 光に包み込まれて詳細は分からないけどロンゴミニアドの声から察するに彼女の手から聖槍が手放されたことだけは分かる。

 だけど、持ちうるすべての魔力も体力も使い切った私たちにもう立っていられる力もなくって、全員で床に倒れこんでしまう。

 

「さあ、嵐の王は殺してやった。これが最後の機会だ、しくんじゃねーぞベディヴィエール」

 

 

 

 

 

 

 

 

[カハッ……! まだ、まだだ……まだ私は終わっていない。聖槍がなくとも、私は……!! ]

 

「いいえ、ここで終わりです。アーサー王」

 

[貴卿は……やめろ……! 私に、その手を向けるな……!! ]

 

 モードレッド達の尽力により聖槍ロンゴミニアドは再生不可能なまでに砕かれ消滅した。

 しかし、アーサー王は死んでいない。いな、湖に聖剣が返されなかったアーサー王は死ぬことが出来ない。

 

「……円卓の騎士を代表して、貴方にお礼を。あの暗い時代を、貴方ひとりに背負わせた。あの華やかな円卓を、貴方ひとり知らなかった」

 

 砕けゆく身体、土塊となって歩くのすらままならないその騎士は、この地で出来た最後の友の肩を借りてようやく、ようやく王の元へとたどり着いた。

 

「我が王、我が主よ。今こそ────いえ。今度こそ、この剣をお返しします」

 

 

 

 

 

「────そうか。ようやく思い出した。我が最後にして最高の、忠節の騎士よ」

 

 

 

 

 

 




運命に叛逆する絆の光(クラレント・ジードプルーフ)
モードレッドを中心に放つ言うならば合体宝具。2本のクラレントが融合しモーさんに完全適合した両手剣によって放つ一撃。一緒に剣を振るう仲間の数だけその威力が上がり、プロトアーサーの聖剣と同等かそれ以上の威力を誇る。
発動条件
①モードレッドの絆レベルが10以上。
②モードレッド含む編成メンバーの合計絆レベルが25以上
③NPの合計が200以上かつ令呪を一画消費しなければならない。


次回6章エピローグ、明日にはアップすると思います。


あ〜この小説龍臣くんに認知されてないかな〜〜(何言ってんだコイツ)
龍臣くんに届かせるためにTwitter始めるのも手か?(思考がヤバい人)


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エピローグ&7章予告

 べリアロク。あれがベリアルさん本人じゃないと信じ切ってるんで、多分ゼットランスアローみたいな古代やら神秘やらの剣がデビルスプリンター吸収しまくった結果あの意志ある剣になっちゃった的なヤツだと予想してます。

 批判的な意見も多いですけど、作者的には話題性もあって結構好きな部類。
あときっとexpoとかで赤目ロイメガがキングソードとの二刀流とか披露してくれることを期待してます(信じてまっせ龍臣プロ!!)


感想、評価お待ちしてます

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「……ここまでで、大丈夫です。博樹」

 

 モードレッドと同じタイミングでこの最後の場所へと辿り着いていた博樹は、ボロボロと剥がれ落ちていくように崩壊していくベディヴィエールに肩を貸し、彼の事をアーサー王の元へと導いていた。

 聖槍がモードレッドたちによって破壊され、完全敗北しながらもまだ生き続けるアーサー王が目前に迫るそこで、ベディヴィエールは最後の力を振り絞り、一人で立ちアーサー王の元へと歩くと博樹に告げる。

 

「こちらの手は、王へと返さなければならないので……左手で失礼します……」

 

「……ありがとうベディヴィエール。この地で貴方のような人と友達になれてよかった。それじゃなきゃ、私は覚悟を決めて戦えていなかった」

 

「感謝を告げるはコチラの方ですよ博樹。あの聖抜の夜、貴方が動いてくれたから今私は此処にいる。ここまで辿り着くことが出来た……」

 

 もう殆ど動かなくなった左手を、博樹は両手で包み込むように強く握り彼に感謝を告げる。

 それはベディヴィエールも同じだったのか同じように感謝の言葉を博樹へとかける。

 

「私に与えられた最後の機会。この最後の地で、貴方という友達が出来て、本当に良かった……ありがとう、そしてさようなら」

 

「さよならじゃない。()()()()()ベディヴィエール」

 

「────はい。また、どこかで」

 

 涙を流しながら微笑み、握っていた左手が消滅したことでベディヴィエールはアーサー王へ聖剣を返還しに歩いて行った。

 そして、彼の手を握っていた博樹の両手の中には彼の光が灯ったことで完成した黒色を主体とした怪獣のカプセルとも、灰色を主体としたウルトラマンのカプセルとも違う()()()()()()()()()()()()()が握られていた。

 

()()()()()()……!! ああ、ベディヴィエールに……みんなにぴったりの絆の光だ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

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 かくして、聖都エルサレムで起きた未曽有の特異点。変質したアーサー王、獅子王との戦いはベディヴィエールが聖剣を返還したことによって無事終息した。

 既にオジマンディアスから聖杯を貰っていた立香たちはアーサー王が正気に戻るとともに時代の修正が始まりカルデアへと還されることになった。

 

「ん……帰ってこれたみたいですね……」

 

「よし博樹さんも無事目を覚ましたね。これで全員無事に帰還だ!」

 

「ああ、本当にお疲れ様。今回は特にハードだった」

 

 カルデアへと無事に戻ってきた立香たちは、第6グランドオーダーの完了を喜ぶとともに、正気に戻ったアーサー王から貰った情報を元に割り出された第七の特異点の場所を告げられる。

 

「第七特異点、ソロモン自ら聖杯を送ったとされる最後の特異点となるその場所は紀元前2600年。古代メソポタミアにあると観測された」

 

 観測されたからには直ぐに向かおうと、帰ってきたばかりなのにやる気満々な立香を横目に、ドクターは次の特異点で観測された異常について話す。

 

「西暦よりも過去へのレイシフトはあまりにも成功率が低いのに加えて、次の特異点となる古代メソポタミアにはなんと聖杯が複数あることが分かったんだ」

 

「複数!? これまで一個ずつしかなかったのに……!」

 

「ソロモンも、ここから先は絶対に通さないという現れだろうね。紀元前へのレイシフト証明は膨大な時間がかかるのに加えて、その聖杯についても向かう前に調べられることは調べておきたいからね。しばらくは第二次臨戦態勢で待機していてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 特異点攻略を終え、夢を見る力もないほど深い眠りについた博樹を横目に、宙に複数のカプセルが浮かんでいるインナースペースの中で、ベリアルがキャメロットで産み出されたその形すら特異的なカプセルでる『シェパードン』のカプセルをその手に掴んでいた。

 

「魂すらも強靭な英霊たちの光だけで作られたものではない。ただの人間たちの心すらも集めた、ただの人間が生み出した力の結晶……か」

 

 本来ならばカプセルの生成にはリトルスターに感染した人がウルトラマンに祈ることによって生み出される物。怪獣カプセルはウルトラカプセルを元に、レイオニクスの力と怪獣の細胞を応用して産み出された模造品。

 この地球に来てベリアルが英霊たちの力の一部を吸収して産み出していた怪獣カプセルも自身のレイオニクスの力の応用によって産み出していた。

 だからこそ、博樹がキャメロットで産み出したこのカプセルだけは、ベリアルの思惑を完全に逸脱して産み出されたものだった。

 

「はっはっはっはっはっは!! リトルスター! キングの力の一部なんてものは必要なかった!! どんなちっぽけな存在でもその心を高める強き意思があれば、それがリトルスターとなり力を与える」

 

 リトルスターの本当の在り方を理解したベリアルは、笑いながら何処か遠くを見通すようにその赤い瞳を輝かせた。

 

5()()()()()()()()()か!! 面白い!! オレが使う()()()()の、実験体になってもらう」

 

 そう言ってベリアルはカプセルを宙に消すと、闇の中へとその姿を消していく。

 

「もう、お前はこのオレがいなくなったとして戦えるだけの覚悟を得た。このオレがこの地球にいられる時間も、残り僅かだぞ……宮原博樹……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【7章予告】

 

 

「辿り着くか、カルデア。神の世と人の世が交わる、この大地へ!!」

 

 第七グランドオーダー、魔術王へと至るための最後の聖杯探索の旅。紀元前2600年、古代メソポタミア。西暦以前のその地で最後の戦いが始まる。

 

「聖杯が5個っ!!!」

 

 今までの特異点とは明らかに違う。聖杯が5つも存在し、魔獣蔓延るその地で立香たちは自分たちの為すべきことを探していく。

 

「何が新たな人類の形だ。ただの人形風情がこのオレを笑わせるな!!」

 

「ボクは人形じゃない!! ボクを……舐めるなああああああ!!!!」

 

 空っぽの器に注がれたことで生まれた傀儡の人形。模造品である彼を前に、ベリアルは何を思うのか……

 

「アナタにはアナタの理由があっていい! それでも! 私たちと一緒に戦ってほしいんだ!!」

 

「クカカカカッ!! 誰が、人間なぞの言う通りにするか!! 吾は鬼の首魁なるぞ!!!」

 

 前例のない紀元前へのレイシフトの実行によりマシュ以外のサーヴァントを連れていけない状況の中で、立香は鬼の首魁を名乗るその少女に手を伸ばす。

 

「やあやあみんな! マーリンお兄……ちょっと待ってくれベリアル。見るなりボクの目を潰そうとするのはやめてくれないかなっ!! 治るけどあれ相当痛いんだからね!!」

 

「いつも調子のいいことばかり言っている罰が当たったんです。ざまあありませんねマーリン」

 

「おお! 皆々様がた!! この牛若にお任せください!!」

 

 この地に呼ばれたサーヴァントたちと絆を紡ぎながら、ウルクの地で立香は、マシュは、博樹は、そしてベリアルは何を思うのか……。

 

「弱いからこそ群れ、その知恵を使い意地汚く生き続ける。そうやってお前たち人間は続いてきたのか!」

 

「そうです。これが人の営み、私たちの生きる時代まで続いていった人の力です」

 

 最大の悪が目覚めるその地で、キボウノカケラは輝き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 次回、Fate/Grand Order〜Bの因子~

 絶対魔獣戦線バビロニア~キボウノカケラ~

 

 

 

 

 

 

「嘘……ベリアルさんが……負けた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【地底聖獣シェパードンカプセル(クリスタルver)】
 バーニングブレイブやグリッターティガカプセルのようなレアカプセル的なあれ。
アーラシュ、三蔵、藤太、東の村の人々、そしてベディヴィエールが博樹に残した絆の光によって産み出された唯一無二のカプセル。
 このカプセルをライザーでリードすると、名のある剣を持たない騎士の手に絆の聖剣が……

 モーさんの合体宝具に続くもう一つの合体宝具?


さあ次は完全に巨大戦闘ありき、てかそれが楽しみな第7章。
ベリアルさん粛清対象もいるし、立香ちゃんの方にも新しいサーヴァントが!!
そしてベリアルさんのいう『新たな力』とは……?
ゼットが終わるまでには終わらせたいですね!!


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絶対魔獣戦線バビロニア〜キボウノカケラ〜
1


第七章、バビロニアのスタートです!!
6章の時よりかは更新頻度は遅いかと思いますがどうかお楽しみください!!

そう言えばゼットヒート2弾にゼット、ゲームオリジナル形態の「シグマブレスター」が登場するという事はジードもジャック、コスモス、ネクサスのメダルを使った「テトライトクロス」が出るんですかね?最高に楽しみです!!


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『キミはもうじき死ぬ。キミの意思とは関係なく、“ただそう作られた”というだけで』

 

 いつもの部屋に検診の為に来てくれたドクター・ロマンはわたしにそう言った。

 悔しくないのかと、悲しくないのかと、空しいとは思わないのかと……。

 

 彼は、わたしの事を作り出したカルデアの研究がではなく、人間すべて、生命すべての在り方が醜いという。

 

『生命は始めから死を定められている。定められていながら成長なんて機能を持っている』

 

『死ぬのなら成長なんてしなければいい。肉体も精神も、始めから最後まで同じカタチであればいいんだ。あのウルトラマンのように』

 

 ウルトラマン……ベリアルさんの事を言っているのだろう。確かに、ウルトラマンは永遠に近しいほどの寿命を持ち、その姿も大人になれば殆ど変わらないのだという。

 

『そうであれば哀しみも苦しみもない。すべてが平等であり、すべてに始めから意味がある』

 

 この惑星は生命環境の設定を間違えたと、死ぬために成長しているのだという。

 時間を重ねれば重ねるほどに未練が増す……十数年しか生きていない私ですら、死ぬことに未練があるのだからそうなのだろう。

 

 人間が神様の真似事をして作り出した、人間よりも更に不出来な生命。そんな私だからこそ、人間たちを憎む権利が、否定する義務があると彼はとても優しい声で語りかけてくる。

 苦しいのなら止めていい、と。耳元で囁かれる、深い闇(ブラックホール)のような甘い声で……

 

『ドクター・ロマンは悲観的で、非人間的で、自分の言葉に傷ついたり、すぐに挫ける方ですが……人間の行う、あらゆる努力を否定するかたではありません。貴方はただ似ているだけの、正反対の何者かです。それに……』

 

 永遠に近しい生命を持っていても、ベリアルさんの心は人間に近しいように感じると、そう話そうしたその時だった。

 ドクターの姿をとる何者かの首を、突如として現れたベリアルさんが掴んでいた。

 

『ガハッ!? ばかな……、貴様が何故ココにいる! あの男がいなければ他者の夢へは入り込めないはずだろ!!』

 

『ハッ、笑わせるな。お前如きに出来て、このオレに出来ないわけがないだろ』

 

 先輩も同じような事があり、その時にもベリアルさんが先輩の夢の中へ入り助けたが、今回もそうしてわたしの夢の中へ介入してきてくれたのだろう。

 偽物は何らかの手段を用いて逃げ出そうとしているのだろうが、ベリアルさんがそれを強引に拒絶し続けている。

 

『誰が逃がすと思う。もう再生なんぞ出来ないよう、完全消滅させてやろう』

 

『グッ! グギャガガガガガガガガガ!!!!!』

 

 ベリアルさんの手から放たれた雷によって塵の一つも残さずに偽物は消滅した。

 完全に消滅したことを確認すると、手を掃いながらわたしと向き合う。

 

『その……ベリアルさんから見て人間に……いえ、生命に意味はあるのでしょうか?』

 

『ない』

 

 偽物が言った言葉に疑問を覚えてしまい、ベリアルさんのような方はどういう考えを持っているのか知りたくなり聞いてみると、ベリアルさんは考えるそぶりも見せずに即答した。

 

『何万年の生命だろうが、数十年しか生きられない生命だろうがすべて同じ生命だ。滅びる瞬間は滅びる、そこに最初から意味を見出す時点で間違っている』

 

『等しく同じ生命……それは、わたしも……』

 

『こうあるべきだ。そのために生まれてきた。定められたレールの上を歩くだけのヤツなどただの道具でしかない。だが、お前は違うはずだマシュ・キリエライト』

 

 残された時間はわずか、それでもわたしという生命は他の人たちと同じだと言ってくれたようでその事を考えているとベリアルさんはわたしの前に立つとその指先をわたしの胸へと向ける。

 

『迷い、怒り、苦しみ、喜ぶ。その感情の荒波こそが人間に許された”強さ”だ。────その瞳の輝きを鈍らせるな。その瞳が最後まで映す先こそが……お前が行きつく答えだ』

 

『それ……は────』

 

 そう言いながらベリアルさんが手を握ると、わたしの意識が現実へと引き戻される。目を覚ます浮遊感を感じた。

 

 

 

 

 

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「朝イチの急な呼び出しで申し訳ないんだけど、顔色が悪そうだけど大丈夫かい博樹さん?」

 

 

「ああ、大丈夫です。倒される怪獣になる夢を見たせいか、少し調子が悪いだけなんで」

 

 管制室からのコール音に気を引き締めてやって来ると、先に到着していた博樹さんの顔色が悪いからとドクターが軽く検診をしていた。

 

 もしかして、ベリアルさんが博樹さんから離れていたから……? 

 

「さて改めて−−−−立香ちゃん、マシュ、そして博樹さん。我がカルデアは本日を以って第七特異点へのレイシフト準備を完了した」

 

 予想通り、今回召集されたのは最後の特異点……魔術王自らが過去へ送ったとされている聖杯の回収、その準備が完了したことの知らせだった。

 

「ただ、今回の特異点は今までとは何もかもが異常すぎる。レイシフト先が神代の時代であるのに加えて、観測された聖杯の個数が5つもある」

 

 以前から危険視されていた通り、最後の特異点には5つもの聖杯の反応があったと言う。これまでの特異点と同じで時代を乱している聖杯は1つ。他に観測されている聖杯は強力魔力炉心としての役割を為している、敵対する相手がそれを使用している可能性が高いと予測されている。

 

「まったく、”そこに行く”だけで今まで全ての特異点以上の難易度だと言うのに聖杯が5つときたもんだ!! ははは、こちらの頭も可笑しくなってしまいそうだとも!!」

 

「はっ! それがどうしたってのよ。どんな相手だろうがこの私の炎で燃やし尽くしてやるわ!!」

 

 頭を抱えるダヴィンチちゃんの言葉に反応したのはジャンヌオルタさんだ。彼女は羽織っているマントをたなびかせながら自分の活躍を宣言する。

 

 どうやら今回の特異点攻略には彼女が着いていくことになったようですが、それを聞いたドクターの顔が青ざめています。

 

「あの〜ジャンヌオルタ。レイシフトを実行する前に聞いてほしいことがあるんだけどいいかな? 君にとってとても重要な話になるんだ」

 

「あら、何かしら? ああアレね、先にマスターちゃんが向こうに行かないと私を呼べないとかそう言うのでしょ? それくらい我慢するわよ」

 

「いや、今回の攻略にマシュ以外のサーヴァントは連れていけないんだ。あちらで何をしようともね」

 

「は?」

 

 その一言にやる気十分だったジャンヌオルタさんの顔が怒りに染まっていきます。彼女はドクター目掛けて炎を出す予感がしたわたしと先輩はすぐさま動き彼女の行動を止めに入る。

 

「ジャンヌステイ! ステイ!」

 

「そうです! いつも通りの説明不足ですから最後まで話を聞いてあげてください!」

 

「んんっ、正確には神代へのレイシフトの危険性から、一人のマスターに対して一基しかサーヴァントを連れていけないって事なんだ。マシュは聖杯確保のためにも必ず必要だから立香ちゃんが連れて行くのは必然的にマシュって事になるからさ」

 

 真っ当な理由を話されたジャンヌオルタさんは、落ち込みから怒りの炎が消え

 灰になってしまったかのように崩れ落ちてしまう。

 

ようやく私の出番が来たと思ったらコレよ。アステリオスはアメリカで活躍して? モードレッドに至っては何よ、主人公かってくらい活躍したって話じゃない。私結構最初の方にマスターと契約した筈よね? それなのに出番少ないって何なのよ……何なのよ!! 

 

 嘆く彼女の事を見ると申し訳ない気持ちでいっぱいになりますが、ココは我慢をしてわたしと先輩はレイシフトの準備をする為に一度管制室を後にした。

 

「何だってのよおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 [アンサモンプログラム スタート]

 

「さて、と。今回もよろしく頼むねありすちゃん」

 

『ええおじさま。素敵な結末を迎えられるようにがんばるわ!』

 

 レイシフトを行うため、準備を終えた私たちはコフィンの中で待機しながら、ベリアルさん以外だと唯一の私自身が契約したありすちゃんと話をしていた。

 

 彼女は本の形に姿を変えられるから、こういう時コフィンの使用個数を少なくできるのも利点といえば利点って事になるかな? 

 

 そんなこんなで後数秒もすればレイシフトが始まるといったその時だった。

 私の手が勝手に動き出し、コフィンに触れた

 

「ベリアルさん? 何しようとしてるんですか?」

 

『このまま跳んだ所で敗北は目に見えている。少し、次元を歪ませてやる

 ……はっ!!』

 

 こちらが考える隙も与えてくれずにベリアルさんはコフィンへ何かしらの力を流し込むと、アナウンスが一瞬だけノイズが走ったように聞こえてきた。ブリーフィングの時妙に静かだと思っていたけど……こういう事かあ〜〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ギルガメッシュ王!! このままでは北壁が持ちません!!」

 

 古代メソポタミア時代最大の都ウルク。その王城とも言える建造物であるジグラッドに佇むこの時代の王“ギルガメッシュ”は窮地に陥っていた。

 

 半年もの間襲いかかってくる魔獣たちをその采配で退け続けていたが、それも限界に近づいていた。本来ならば、立香たちカルデアたちが来ても耐え続けるだけの戦力が残される筈だった。

 

「っち。既にあちらに1つ聖杯があるというだけでここ迄違うか……。マーリンッ!!」

 

「何かなギルガメッシュ王。私にはあの魔獣たちをどうにかしろって言われてもそれは無理な相談だよ?」

 

「たわけ! 今のお前に戦力としての期待はしていないわっ!! カルデアの者たち、あれはあとどれだけの時で来る」

 

 既に、魔獣の女神は聖杯を1つ手にしていた。その聖杯を炉心とすることで魔獣の生成速度を加速させることで襲いかかってきたために、戦線を維持出来なくなっていた。

 まだ全てを出し切った訳では無いため、彼が自身の宝物庫を開けば数日ならば持ちこたえることが出来る。

 

「う〜ん、後一週間。彼らが来る頃にはもうウルクは滅んでるかもしれないねハッハッハッハ!!」

 

「笑い事ではないわ!! この戦線を一週間……巴御前が抜けた穴は大きいか

 ……」

 

 その時だった。王の居座る玉座の中心、その場所に赤い雷が降り始める。

 魔力の障壁により、このウルク自体に誰かが、ましてやジグラッドに侵入する者など不可能にも近しい行為だ。 出来るとすればここウルクの女神か、それを破るほど強力な力を持つモノだけだ。

 

「マーリン。貴様カルデアが来るのには一週間かかるのではなかったのか?」

 

「ハッハッハッハ!! ギルガメッシュ王、例え私がグランドキャスターだとしても、見通せない、予測出来ない事も存在するんだよ。最もたる例が、彼だろうね」

 

「−−−−貴様がこの時代の王。人の王か」

 

 魔獣巣食うウルクの地、絶望の淵に立たされていたギルガメッシュたちの元に今、キボウノカケラが降り立った。

 

 




「アイツら次の特異点で終わりだからお前ちょっかい出してこいよ」

「それもそうだな。まあアイツが来るのわかったら速攻で逃げるし行けるやろww」

結果→72柱の魔神柱が71柱になりました。多分キマリスとかアムドゥシアス辺りが逝きました。


 そしてベリアルさんは立香ちゃんたちよりも1週間早く現地入り。この人絶対やってること頭おかしいって

 余談なんですけど、この小説の立香ちゃんのメインパーティーはマシュ、モーさん、アステリオスの3人でジャンヌオルタはサブメンバー辺りでしかないよねってイメージです。ごめんな邪ンヌ


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 怪獣もその星に住む一つの命。コスモススペースのように怪獣を受け入れる施設や姿勢が整ってない、対怪獣対策の組織しかないゼットの地球を上手く使った感じでしたね。 親を怪獣に殺されたハルキがその怪獣と同じ親殺しをしてしまうという辛すぎる自体に……前半ラストだからって重すぎるだろ!!
 
 ウルトラメダルレジェンドセットEX。01〜03まではジード本人があり、04にはフュージョンライズに必要なヒカリ博士にルナミラクルゼロが……やばないです? あとは6兄弟メダル+メビウスでインフィニティー音声があるのか、ジャスティス&コスモスでレジェンドになれるのか……楽しみでしかたないですね!!

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「────お前がこの時代の王。人の王か」

 

 カルデアのシステムを狂わせ、本来到着する時間よりも一週間早く第七特異点へとレイシフトを完了させたベリアルが降り立ったのは、ここメソポタミアを統べる王ギルガメッシュの玉座だった。

 

「この(おれ)に断りもなく玉座へと足を踏み入れるとは……どうやらあの駄女神よりもマナーがなっていないようだな」

 

「そんな事はどうでもいい。人の王、彼処に蔓延る魔獣ども……蹴散らしたなら後どれだけ持ちこたえることができる?」

 

 到着したばかりだと言うのに、ベリアルは全ての事情を知っているかのように北部戦線を指差しながらギルガメッシュに問いかける。

 

 蹴散らす……ここでベリアルが言ったのは北部戦線を攻めている10万を超える魔獣全てを片付けたらの話をしていることを理解していたため、ギルガメッシュも即座に答えを出す。

 

「あ奴らが一度に全てを消滅するならば戦線を立て直し、更に強固な物にすることが可能だ。そうだな……後一月は丸々守り抜いてやるわ!!」

 

「それだけあれば十分だ。────行くぞ、宮原博樹」

 

「あ、はい!! すいませんお騒がせしました!!」

 

 話だけを聞くと、ベリアルは身体の主導権を博樹へと変え玉座を後にする。

 その手にべリアライザーを持ちながら走るその後ろ姿を見つめながら、ギルガメッシュはマーリンへとあの存在は何なのかと問いかける。

 

「あれかい? いや〜私の口から説明するのは難しい、まあその実簡単ではあるんだけどね?」

 

 マーリンは勿体ぶった言い方をしながら彼らが出ていった出入り口の方へと歩いていくと、ギルガメッシュの方に身体を向けてその両手を大きく広げながら叫んだ。

 

「彼……いや、彼らと言ったほうが正しいのかも知れないね彼らはウルトラマン!! なんてこと無い、別の星からの来訪者さっ!!」

 

 ブォン!! と、マーリンの後ろから強烈な風が入ってくると、ジグラッドを影で覆うほど巨体が姿を現し、北部戦線へと向かって飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

「超えるぜ! 覇道!!」

 

 まさかレイシフトした直後に変身するとは思っていなかったけれど、ベリアルさんが人の王と呼んだ人がいた場所から飛び出しながら、ありすちゃんに出してもらったべリアライザーを使って変身すると、ベリアルさんは大地を揺らしながらゆっくりと立ち上がるり、横に横にと伸びた壁の先へと飛んでいく。

 

(これだけの魔獣が……!? ウルトラマンにならないほうが簡単だったんじゃ……?)

 

 そこにいたのは辺り一面敷き詰めるように暴れまわる魔獣の群れ。

 降り立った時点で何十匹かは踏み潰した見たいだけど、ウルトラマンからすればアリサイズの魔獣を相手にするなら変身せずに倒したほうが良かったんじゃ……? 

 

「巻き込まれたくなかったら下がってろ」

「うわっ!! なんだこれ!?」

「魔術か!? けど、なにも感じないぞ?」

 

 

 と、考えている間にベリアルさんが右手を掲げると魔獣の相手をしていた人々が超能力で浮かび上がり、戦線の後ろへと吹き飛ばし。そうした後、左手を掲げると10万はいるらしい魔獣たち全てを浮かび上がらせ一箇所に集中させた。

 

 その間に魔獣たちが炎を出してきたりと攻撃してくるけど、この身体に当たってもダメージの一つにもなっていない。

 

「これで終わりだ。へアッ!!」

 

 固められた魔獣たちへと容赦なく放たれるデスシウム光線。まあ、魔獣たちに防げる方法があるはずもなく、跡形もなく消滅した。

 

 このまま敵の本拠地へ殴り込みに行けば直ぐに終わると思うんだけど……

 

「そんなつまらない事をして何になる。お前には伝えたはずだ、オレがこの地で果たすべきことを」

 

 別に正体を隠す必要のないベリアルさんは、戦線で戦っていた人たちの前で普通に変身を解きながら私にそう言う。

 そうだ、ベリアルさんが立香ちゃんたちよりも早くにこの特異点にやってきたのはあの段階でレイシフトすると手遅れだという理由とは別にもう一つ、ベリアルさんから聞けるとは思わなかった目的があったからだ。

 

「あ、貴方は……味方なのか……」

 

 兵の一人が怯えを見せながら近づいてきた。自分たちが苦戦していた魔獣を一瞬でやっつけた巨人が普通の人に戻ったらそりゃあ驚くか

 

 変身が解けて身体の主導権が移ったため、出来るだけ相手を萎縮させないように笑顔を向けて自己紹介をする。

 

「私は()()()()。この星の希望を……摘みにきました」

 

 彼の目的を果たすために、その名前を口にして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

Fate/Grand Order〜Bの因子~

 絶対魔獣戦線バビロニア~キボウノカケラ~

 

 

 

 

 

 

「動かれると邪魔だ。大人しくしていろ」

 

(だ・か・らっ!! もうちょっと言葉遣いを考えて喋りましょうって言ってるじゃないですかベリアルさん!!)

 

 魔獣戦線を一時的に休戦へと追いやった後、ギルガメッシュ王に「好きにやらせてもらう」と一言伝えてウルクへは留まらず周辺の村々へと足を運んでいた。

 

 今は、その道中で魔獣に襲われている親子連れの商人が魔獣に襲われていたのを助けている最中だ。

 

「そうよおじさま。もっと騎士さまのようにカッコよく助けなきゃダメよ?」

 

「ピンチの時に颯爽と駆けつけるとかいうあれか? はっ、そんな面倒な事をするならさっさと助けたほうが効率がいい」

 

「もう! おじさまにはロマンが足りないわ!!」

 

 そう言いながら、アリスちゃんとベリアルさんは襲ってきた魔獣に加えて周囲で様子を窺っていた魔獣も一掃した。

 

「あああありがとうございます! このお礼はっ」

 

「そんなものは必要ない。お前たち、この先の村に用があるんだろう?」

 

 目的の村まで護衛として着いていくって伝えている筈なんだけど、ベリアルさんの口が悪いのかそれとも威圧感のせいなのか、脅されていると思ったのか商人の方は顔面蒼白にしながら高速で頷いている。

 

「おじさんっ!!」

 

「あっ、こら!!」

 

 話をしていると荷物を一生懸命背負っていたこの人たちの子どもが私たちに駆け寄ってきた。父親の商人はその子の動きを止めようと手を伸ばすけど、子ども特有の素早さすすす〜っと私たちの目の前に立って頭を下げてきた。

 

「たすけてくれてありがと──!!」

 

「ウフフ、どういたしまして♪」

 

(ほらっ、ベリアルさんも!!)

 

「────たまたま通りがかっただけだ。気にするな」

 

 この魔獣蔓延るなかで偶然会うってこと事態有り得ないと思うんだけど……。そう言いながらベリアルさんは子どもの頭を壊してしまわないように力を殆ど入れずにガシガシと撫でた。

 

 

 こんな風に、この特異点に来てからのベリアルさんは特異点の攻略には一切手を出さず、周辺の村付近に現れた魔獣の退治や、壊れてしまった家の修復なんかを請け負いながら村の人たちと交流を深めていった。

 

 最初はみんなベリアルさんに怯えてしまっていたけれど、娘……に勘違いされているアリスちゃんの存在なんかも相まって少しづつだけど心を開いてくれている。

 

 

「で、こんな森の中まで来てどうすればいいんですか?」

 

(ここに()()()()が存在しているからな、それを拾いにきた)

 

 後3日程で立香ちゃんたちがこの特異点に到着するといった所で、私たちはベリアルさんの案内の元で森の中を進んでいた。

 

 鍵を拾いに来たって言うけれど、ベリアルさんが表に出ていると逃げてしまうという点から考えても普通の鍵ではないだろうし……なんだろうか? 

 

 

「ハアッ! フッ!」

 

 そこには、ローブを被った少女が鎖の付いた鎌振るって魔獣を倒していた。

 苦戦する様子はないことから彼女がサーヴァントなんだろうけど、マスターがいないからはぐれサーヴァントってヤツなのかな? 

 

(ヤツだ。あのサーヴァントが鍵だ)

 

(彼女が?)

 

「っ!? 誰ですか!」

 

「ああ、ごめん。怪しいものじゃないんだ」

 

 魔獣を倒し、その魔獣から何かを吸い取った彼女は私たちの存在に気がつくと、警戒心全開で私たちと向かい合う。

 

「あなたたちは……サーヴァント、ですか……?」

 

「ええっと、なんて説明すればいいのかな〜?」

 

 アリスちゃんの事を説明するのは簡単なんだけど、私とベリアルさんの関係を説明するとなると難しいから、まず最初に敵意がないことを説明した私は近く切り倒された木に腰掛けて説明することにした。

 

「それでは、あなたたちは特異点となったこの地を正すために来たと……」

 

「そう。う〜ん私たちの方はこんな感じかな? 君の事情も教えてくれないかな?」

 

「それは……」

 

 私たちの事情を知った彼女は、話したくないという訳はなく話した後の私たちの反応に怯えているようで、どうすればいいか考えているとアリスちゃんが彼女の手をとって笑いかけた。

 

「だいじょうぶよ。わたしも人ではないし、こわいおじさまも人ではないわ。それなのに受け入れてくれてるんだもの。あなたがどんな存在でも、人であるやさしいおじさまは怖れたり、拒絶したりは絶対にしないわ」

 

「…………」

 

「本当ですか?」とその澄んだ紫の目で訴えかけてくるのに無言で頷いて応えると、彼女はフードを外してゆっくりと自分自身の事を話してくれた。

 

 今ウルクを攻めている魔獣の女神との関係。切っても切れないこの地に呼ばれたその宿命を……。

 

「だからわたしは! この身を擲ってでも魔獣の女神を討たなければいけないのです!!」

 

「くだらねえな」

 

(ちょ、ベリアルさん!!)

 

「!? あなたが、博樹の言っていたベリアルですね……彼とは纏っているものが違いすぎます」

 

 それが彼女の()()()()()()なら協力する。そう手を伸ばそうとしたのに表に出てきたベリアルさんは、彼女の覚悟をくだらないと一蹴してしまう。

 

「何故己のがことも忘れている獣ごときに、お前が命を投げ出す必要がある?」

 

「だから! それは彼女がわたむぐっ!?」

 

「それがくだらない、つまらんと言っているんだ」

 

 ベリアルさんは彼女の口を抑えながら、強引に私の令呪を使用して彼女と契約を結んでしまう。

 

「オレが勝たせてやる。同士討ちなどつまらん結末ではなく、宿命など乗り越えた先にある、完全な勝利をな」

 

 は、ははははは。もう心の中で笑うしかない。そうだ、彼女に待っているのはベディヴィエールの様に”その身を投げ出さばければ届かない結末”じゃない。どうとでも変えることが出来る未来だ。最初から命を賭けるなんて結末を認めていいものじゃない。

 

「────分かりました。彼女を倒すまでの一時的な契約です、もし契約が違えた時は貴方の首を切り落とします」

 

「やれるものならやって見ろ。フン、まずはその無駄な神性を隠すのも踏まえて貴様には()が必要だな」

 

 首を切り落とすって私の首ですからねベリアルさん? 

 まあいいか……。アリスちゃんに目配せすると、アリスちゃんは何をすればいいのかな分かっていたのか彼女を中心に本のページが飛び交い始める。

 

「う〜んそうね。彼女に似合うのはどんな役かしら? マッチ売り? 奴隷の女の子? 魔獣に親を食べられてしまった悲しい娘? ダメよダメダメ! そんな悲しい役じゃ魔獣の女神には勝てないわ! そうね、やっぱりこれしかないわ!」

 

 彼女の周りをくるくると飛び回りながら頭を悩ませていたアリスちゃんは、これは違うこれも違うと考え続け、コレだ! と決めた一枚のページを掴んで彼女へ向かって投げる。するとその紙はなんの抵抗もなく彼女の身体の中へ溶け込んでいき、それと同時にベリアルさんが案じていた神性も抑えられたようだった。

 

 

 

 

 

 

「あなたは()()!! ()()()()()()よ!! ああ、なんてピッタリな配役なのかしら!!」

 

 

 花うりのアナ……? それってもしかして……『花うりのおんなの子』の!? でも、どうして……

 

 

 

 

 

 




レイシフト早々巨大化&アナちゃん加入!!な今回。
果たしてベリアルさんがこのウルクの地で成そうとしている目的とは?

【花うりのアナ】
 本来ならばマーリンが仮契約し、彼女に付けるはずだった仮名。
ここでは万能本サーヴァントのライムの力を使う事で神性を抑えた。
『花うりのおんなの子』という絵本が元になっているようだが、そんな本は世に出回っていない。サーヴァントが契約者と繋がっていることが原因のようだが……?


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3

グルジオライデン、改造された生物兵器であのグルジオという事から、もしかしたら戦士の頂に選ばれた誰かが負けて改造されたのかもと考えると……辛い……。ジャグさんが不敵な笑みを浮かべていたのも怪しいし……。

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「私は何をやっているのでしょうか……」

 

「何ってお手伝いじゃない。突然どうかしたのかしらアナ?」

 

「そうではなく! む──」

 

 最近では姉妹として見られているアナちゃんとアリスちゃんの2人が何か話をしながら花屋さんの花を並べているのを横目に、私は畑を耕すのを手伝っていた。 

 ここに来てからの生活には慣れたもので、今では村の人たちから頼られる存在になったと思う。

 

(────来たか)

 

(来たって……ああ〜! そう言えば今日でここに来て一週間になるんですよね!! どうします、すぐに迎えに……)

 

 慣れてきたせいで忘れていたけど、私たちが先行レイシフトしてからもう一週間が立っていた。ベリアルさんが行った通りなら立香ちゃんたちがレイシフトしてきたことは確実で彼女たちのことを迎えに行こうとしたんだけど……。

 

(まだ耕すのが終っていないだろ。やってからいくぞ)

 

 最後までやってから……立香ちゃんたちのこと、そんなに心配ではないのかな? 

 まあ、私も中途半端で終わらせるのは嫌だからいいですけど……ね! 

 

 

 

 

 

『う〜ん、今までの特異点のようにどこにいるのか判らないって訳じゃなさそうだ。このまま彼に着いてウルクへ案内してもらおう』

 

 指定していた座標へのレイシフトが拒まれ空中からの突入となった今回の得意点攻略。都市であるウルク周辺へ着くはずだったのだが、廃墟に降り立った私たちは見たこともない敵性生物を相手取ることとなった。

 途中、黒髪ツインテールのサーヴァントに助けられながら状況を打破した私たちは、サーヴァントと別れた後に出会った謎の青年"エルキドゥ"の案内の元、ウルクへと向かっていた。

 

「どうやらお仲間ともはぐれてしまったようですね。先にそちらの方たちと合流しましょうか?」

 

「大丈夫です。あっちは私たちよりの何倍も強いですから!」

 

『いや〜それにしても今回は運がいい! なんたってあのエルキドゥが味方してくれるんだからね!』

 

 世界太古、私たちが今いるこの時代の英雄譚であるギルガメッシュ叙事詩に登場するのがここにいるエルキドゥらしい。

 神々によって”泥”をこね上げて作られた世界最強の”意思を持つ宝具”。人と同じ魂を持ち、自在に肉体を変形させ、時に宝具そのものとなって敵を穿つ力を持っている”神造人間”、それがエルキドゥ。

 

「えっと。そこまで持ち上げられると、いささか照れますね」

 

「……エルキドゥさんは兵器のようには見えません。ちゃんと人としての心があるようです」

 

 そんなエルキドゥに案内をして貰いながら、私たちはこの特異点で起きている異常に付いても彼から話をして貰うことができた。

 

「あれこそが人類の希望、四方世界を守る最大にして最後の砦。絶対魔獣戦線バビロニア、と」

 

 魔獣の侵攻を止め続けているその砦の異常さにも驚かされたけど、それ以上に興味深い話がエルキドゥの口から聞こえてきた。

 

「黒い巨人?」

 

「はい。本来ならばあの砦が今日この日を迎えるのは不可能でした。それを止めたのが一週間前に突如として現れた黒い巨人だったのです」

 

 黒い巨人と聞くとどうしてもベリアルさんのことが頭をよぎるけど、ベリアルさんもこの特異点に来たのはついさっきのはず。もしかして別のウルトラマンがこの地には存在するのかも!? 

 

『こちらが指定したのは今日この日のレイシフトだ。それを書き換えて一週間前へレイシフトするなんて存在証明が確立出来るはずがない、いやでも彼のことだしな〜〜もしかしたらもしかするのか?』

 

 ドクターが頭を悩ませているのを横に杉の森を進んでいく私たちだけど、このままエルキドゥの案内通り進んでいったら逆にウルクへと遠ざかっている事に気づく。

 その事について指摘する前に私は、この特異点の異常の一つとして挙げられた聖杯について質問して見ることにした。

 

「聖杯……ですか? 確かに、このウルクの地に魔術王が送り込んだ聖杯は5つあると、そう言われています。そして魔獣の女神はその内の一つを既にその手に収めている」

 

「「っ!!!」」

 

 どうやら魔獣の女神はその聖杯を炉心として大量の魔獣を産み出しているのだという。敵が聖杯を利用してるって予想は正解みたいだ。

 でも、彼の話では他の聖杯はその場所すらわかっていなくて三女神同盟はウルクへの進行と同時進行で、他の聖杯を探していると……。

 

(どうしましょう先輩……? ウルクから離れている事を指摘するべきでしょうか?)

 

「ああ、方角がきになるのですね。この先の川に波止場があるんですよ。そこまで行けば、後は川を下るだけです」

 

「なんと! それはいい事を聞いてしまった! この先に波止場があるとは知らなかった!」

 

 怪しさ満点なエルキドゥに指摘しようとしたら、私たちの後ろから大きな声を上げながらフードで顔を隠したこれまた怪しさ満点な男性が駆け寄ってきた。

 誰だろうこの人……? はっ! 不審な人たちに囲まれてる!? 

 

「やあこんにちは、驚かせてすまないね。怪しい者ではないから、まずは話を聞くと言い。私はある目的のためにこの森を探索していた物なんだがね、その探し物を三日も飲まず食わずで探していたからもうくたくたで……。このまま魔獣に遭遇してしまったらエサになるしかないと悲観していたが、やはり私はついているね!」

 

 パーソナルスペース狂ってるのかなってくらい初対面の私たちに接近してくるその人に怪訝な目をしながら、彼は私たちに名前を聞いてきた。

 ……困ってるのは本当みたいだし、不安だけど名前を教えることにした。

 

「私は立香、藤丸立香。そしてこっちがマシュで、この人がエルキドゥ……どうしたんです?」

 

 自己紹介を終えると、胡散臭いお兄さんはこれまたわかりやすく腕を組んで困り始めた。

 どうやら彼がエルキドゥ本人であることが可笑しいらしく、その事を指摘してくる。

 

「だってねえ? いまウルクで戦線を指示しているギルガメッシュ王は、不老不死の霊草探索から戻ってきた後の王様だ。つまり────」

 

『────この時代がギルガメッシュ王の不老不死探索の後だとしたら、辻褄が合わない!』

 

 友であるエルキドゥを失った事で、ギルガメッシュ王は不老不死の探索を始める。それが終わった後の時代なのだとしたら、エルキドゥはとっくの昔に死亡している。

 てことは、今私たちの目の前にいるのはやっぱり……。

 

「ふ────ふふ、ふふふふふ「ガンドッ!!」ッ!!?」

 

「マシュっ!!」

 

「はいっ! はああああっ!!!」

 

 もしかしたら、その可能性があったから私とマシュは何時でも動けるように準備していた。通常時だったら効かなかったかも知れないけど、完全な虚を突いた普通のガンドは偽エルキドゥの事を一瞬縛ることに成功し、容赦なくマシュの盾で偽エルキドゥの事を殴り飛ばした。

 

「よっし! 逃げるよマシュ、それに胡散臭いお兄さんも!!」

 

「はい!」

 

「いやいやいや、君たち容赦ないね! 敵だと分かっていても今の一瞬で判断するかい!?」

 

「あのエルキドゥの強さがどれだけかはここに来るまでで十分に分かってる! 今の私たちじゃ絶対に勝てないってわかってるなら逃げるのが一番! でしょ?」

 

 私たちが選んだのは逃走。当たり前だ、ここに来る前に何度か魔獣と遭遇して偽エルキドゥがどれだけ強いのかは嫌というほど分からされた。今を思えばその実力差を見せつけて絶望させようって魂胆だったんだろうけど、()()()()()()()を見せつけられてたじろぐ私たちじゃない。

 

 どんな状況化でもガンドだけでも打てるように特訓……うん、特訓をしていたから常時魔力が指先に集まっているのに偽エルキドゥも可笑しいとは思わなかった。そのお陰で難なくガンドは当たり、マシュの一撃のお陰で距離をとることが出来た。

 

『気を付けるんだ立香ちゃん! 彼、偽エルキドゥは本来の力を隠していた。何故だがは分からないが彼が開放した魔力は魔神柱のものに近い、今の君たちでは勝ち目はない!』

 

「だと思った!」

 

「ふむふむ、ここは万事休すってヤツだね。どおれ私の力を「逃がすと思っているのかい、カルデアの無能なマスターさん?」

 

「「!!」」

 

 胡散臭いお兄さんが持っている杖で何かしようとしているけど、それよりも早く偽エルキドゥが私たちに追いついてきた。

 やっぱり普通のガンドじゃ直ぐに動けるようになるよね……。令呪を使用したガンドなら彼から逃げ切る事が出来るかも知れないけど、この特異点に到着して日が浅いのに三画しかない令呪を消費するのは得策じゃない。

 

 じゃあどうするか? そうこう考えているうちに偽エルキドゥの手が私たちに向けられる。その瞬間だった……。

 

「死ねばいい。旧型のお前たちは罵倒と共に死ねばいい。完璧な兵器である僕を羨みながらね!」

 

「ほお、ならその力。このオレに見せてみろ」

 

「────ッ!? 誰だ!!」

 

「「ベリアルさんっ!! …………???」」

 

 どうにもならない、そんな時に空から来てくれたベリアルさんだったけど、私もマシュも今のベリアルさんの姿を見て頭に疑問符が浮かび上がった。

 だって、顔に泥をつけながらライムちゃんとあともう一人小さな女の子を小脇に抱えて登場したんだもの、びっくりする以上に困惑しちゃうよ……。

 

「ベリアル!! まったく、何てタイミングで来るんだいキミは! ここは私がお得意の魔術で偽のエルキドゥを騙して彼女たちの道を作るという、信頼を得るための絶好のシチュエーションだったじゃないか! それをどうしてくれ「黙れ、夢魔(クズ)」あがっ!! また……また私の目に目潰しを……、キミ僕の目に何か恨みでもあるのかい?」

 

 ベリアルさんとお兄さんって知り合いなの? 慣れ親しんだ友達のようにベリアルさんへ歩み寄ったお兄さんは喋ってる最中にベリアルさんから容赦のない目潰しをくらって倒れてしまったけど、そんなの関係ないという感じで偽エルキドゥと向かい合ったまま、ライムちゃんたちに指示を出す。

 

「アナ、アリス。そこの夢魔(クズ)も一緒にソイツらのことをウルクへと連れていけ」

 

「面倒ですが、仕方がありません」

 

「それじゃあふたりとも、一緒に行きましょうか♪」

 

「え、あ、はい……」

 

 ライムちゃんがお兄さんの事を魔術で浮かせ、マシュの手を握るとアナと呼ばれた少女はライムちゃんと私の事を交互に見ながらおどおどと落ち着かない様子だ。

 

「ほらアナ? 手を引いてあげないと彼女迷子になってしまうわ、おかしの家に連れて行かないようにつかまくちゃだめよ」

 

「う、うう。────手を……」

 

「…………うん! よろしくね、アナちゃん!」

 

 そうして、怯えながらも私の手を離さないように強く握ってくれるアナちゃんに手を引かれながら、私たちはウルクへと向かうことにした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、キミが母上の魔獣を一掃した巨人か……」

 

「御託はいいからかかってこい。自分の意思も持たない、土塊の人形が」

 

 

 

 

 

 




【マーリンの動向】
本来ならアナを見つけて味方に加え、立香ちゃんたちに同行するはずが千里眼も易々と使えないことからベリアル側にいることを知らず、ガチで3日間森の中を彷徨っていた。

普段から千里眼で立香たちの戦いを見続けていた彼だが、いつもイイ所でベリアルに目潰しされていた。それでも懲りなかったためその回数は20は超えている。

【偽エルキドゥへの対処】
 ベリアルと一緒に旅をしてきたため相手がどんなに脅威だとしても動じないだけの心を手に入れている立香、マシュは驚きはするが冷静に対処できるだけ成長している。


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4

BOXイベント!!!!!!
QPは底をつき、種火は0な作者にとって待ちに待ったイベント。素材も要求量の多い骨や羽根といった良素材ばかりで嬉しいのなんの……。

目標としては500箱行ければいいかな?くらいを目指してます!

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「土塊の人形だと……! 僕を侮るなよ、旧人類!!」

 

 ベリアルの介入によって立香たちを処分する事が出来なかった偽エルキドゥは、その邪魔をしてきたべリアルを倒そうと向かってくる。

 ベリアルの四方により出現した金の鎖は彼の手足を縛りあげる。

 

「お前は母さんにとって最大の障害だ。だからこそ、今ここで排除する!」

 

 それは驕り。自身が神々よって作られた最強の兵器であるならどんな相手にも負けるはずがないという心の余裕。

 現に相手は鎖で縛られて何も出来ない状態だ。

 

「鎖……鎖か。笑えるな」

 

「何……?」

 

「鎖に縛られてるのは貴様自身だろ、これが笑えなくてどうする?」

 

 ベリアルはそう言って両腕を縛る鎖をいとも簡単に壊すと、迫って来ていた偽エルキドゥの頭を掴み地面へ叩きつけた。

 そうして足を縛っていた鎖も砕くと、倒れた偽エルキドゥの頭を踏みつける。

 

「どうした? 神が造りだした最高傑作ってのはこの程度の実力しかないのか?」

 

「グッ!! 舐めるなっ!!」

 

 踏みつけられていようと、身動きが取れなかろうと関係ない。偽エルキドゥは何もない所から鎖を出しベリアルへ攻撃を繰り出すが、何処から出現するのか予測できないその攻撃を全て片手一本で対処し偽エルキドゥへと話を続ける。

 

「……()()になると思ったが、他人に注がれた意志を自分の物だと驕っている時点で使えないな」

 

「何を……言ってガハッ!!」

 

 興味を失ったのか、ベリアルは偽エルキドゥの事を蹴り飛ばし大木へと叩きつけると、トドメを刺すために蹲る偽エルキドゥへと歩み寄る。

 

(このままじゃ僕はコイツに……。そんなはずがない! 僕は母さんの息子、最強の兵器であるエルキドゥの身体を持つ母さんの息子だ! そんな僕が……なんだ……手が……)

 

 自分が負けるなんて有り得ない。そう何度も心の中で叫びながらも近寄ってくる死の恐怖(ベリアル)に、気づかぬ内に手が、全身が震えていることに気づいた。

 それと同時に彼の頭の中に、本物のエルキドゥが生きていた時の記憶が流れ込んでくる……。神に逆らった罰として熱病に侵され、ゆっくりと、ゆっくりと衰弱し死を待つだけになってしまった時のことを……。

 

『ギル。時代にと共にとって代わる……ただの道具にすぎない僕のことは忘れてほしい……』

 

「あ、ああ、あああああっ……」

 

 ギルに会いたい、話したい。自分の事を忘れてほしいと願いながらも、その土塊の身体に友と共に歩く未来を夢見ながら生きを引き取ったエルキドゥ。

 意識が朦朧としているせいで記憶が流れてくるのかは定かではないが、偽エルキドゥは震える身体を守るように抱きしめながらつぶやいた。

 

「死に……たくないっ! ……ぼくは……いき、たい……っ!」

 

「……ほお」

 

 無意識だったのか分からないが、偽エルキドゥの口からでたその言葉を聞いてトドメを刺そうと手を振り上げていたベリアルの手が止まった。

 ベリアルはその手を下ろすと、偽エルキドゥの髪を持ち上げて強制的に自分と目線を合わせる。立香たちのことを追うように偽エルキドゥに背中を向ける。

 

「それを感じるカケラが残っているならまだお前に利用価値はある。他人に命令された意志ではない、自分だけの意思を持て。そうでなければ、貴様の宿命(さだめ)はただただ虚空(そら)へ消えるだけだ」

 

 言葉を言い残し偽エルキドゥの事を放り投げると、ベリアルは一度も振り向かずに、空を飛んで森を抜けていった。

 ベリアルの一撃のダメージが大きすぎたせいで立ち上がることすら困難な偽エルキドゥは今まで感じたことのない動機を抑えるために胸を掴みながら、飛び去って行くベリアルを憎ましげな眼で睨みつけていた。

 

「……縛られているのは僕自身? 他人に命令された意志だと……? 違う、僕こそが新しいヒトの形だ……!」

 

 

 

 

 

 ・

 ・

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「どうしても(おれ)の役に立ちたいと言うのであれば、下働きから始めるがいい」

 

 

 ベリアルさんの介入のお陰で無事に城塞都市ウルクへと辿り着いた私たちは、胡散臭いお兄さん“花の魔術師マーリン”の顔パスで王の間へ招き入れてもらうことができた。そこでウルクを統べる王であるギルガメッシュと会ったけれど、彼は私たちに一緒に戦うのではなくここウルクを見ろと言ってきた。魔獣に攻められている状況でも絶望せず、戦う意思、生きようとする活力で満ち溢れているこの都市を知れと……。

 

 そうして私たちは、祭祀場を取りまとめている王の補佐官“シドゥリさん”の案内の元、拠点となる宿舎へと案内してもらいこの特異点での行動を開始することになった。

 

「私たちは私たちの許される範囲でアナタの力になりましょう! よろしくお願いしますね立香!」

 

「僭越ながらこの弁慶もアナタ様方の力になれればと……」

 

 驚いたことに、この地にはアナちゃんやマーリン以外にもサーヴァントが存在していた。“牛若丸”“武蔵坊弁慶”“レオニダス”どうやらギルガメッシュ王が持つ【ウルクの大杯】を使って召喚されたらしく、マーリンもその内の一人なんだという。本当は他にも召喚したサーヴァントがいたらしいんだけど、この戦いの中で散っていったしまったらしい。

 

『いや~しかし、この特異点に来て直ぐに拠点を持てるとはね。最初はどうなることかと思ったけど、これなら安心だ』

 

「はい、ですが……ベリアルさんの姿が見当たりませんね?」

 

「おじさまならウルクへは来ないわ」

 

 私たちの事を逃がしてから随分立ったし、あのベリアルさんが偽エルキドゥ相手に今の今まで苦戦しているなんて有り得ないと思っていたらミルクを飲みながら私たちに色々と教えてくれた。

 ベリアルさんは私たちがレイシフトするよりも一週間早くこの地に降り立ち、いつも通りやらかしていたということ……。

 

『ははははは! 数万を超える魔獣を一掃って、本当規格外だなあベリアルは!!』

 

「なんたって私の千里眼に介入してくるような存在だからね! もう笑うしかないさ! はっはっはっはっは!!」

 

「けど、ウルトラマンに変身したのはその一度きりで後は周辺の村々を転々としてるってこと?」

 

「そうよ、ここは大丈夫だからって他の村の人たちを助けていたの」

 

「その活躍はコチラにも聞き及んでおります。ベリアルに助けてもらったという話は民の方々は大変喜んでいました」

 

 偽エルキドゥの真実を知った時は全然動じなかったけど、それにはベリアルさんの事を知る全員がびっくりした。

 ライムちゃんから詳しい話を聞かせてもらうと、どうやらこの地で博樹さんも自分の事をベリアルと名乗って過ごしている。何か目的があってんの事なんだろうけど……? 

 

「ふふふ、今では子供たちからはちょっとした憧れの目で見られているですよ。こう……だったでしょうか?」

 

「ああ、ベリアルさんのは手の平を相手に向けて放つみたいですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 ・

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 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

 

「行くぞ、藤丸立香」

 

「え? きゃあああああああああああ!!!」

 

「せんぱ~~~~いっぅ!!!」

 

「連れていかれましたね……」

 

「こわいおじさまだもの。それよりもわたしたちはこっちのお仕事をがんばりましょうアナ?」

 

 お店の手伝いや羊の毛刈りや麦の収穫、魔獣討伐に地下世界の攻略など、拠点を持ってからここウルクの地で困っていることを解決しながら、英霊のみんなやこの地に生きる人たちと交流を深めていたら突然現れたベリアルさんによってどこかへと連れ去られている。

 苦しくないんだけど、猫を掴むように首を掴んで空飛ぶの結構怖いんだけどどこに連れていかれるんだろ? 

 

「あれって確か……女神イシュタルがいるっていう“エビフ山”だっけ? イシュタルに用事があるんですか~~?」

 

「あんな駄女神にようはない。用があるのはこっちだ」

 

「ふぎゃっ……!」

 

 話している内に目的に着いていたみたいで突然手を離されて受け身を取れずに地面に落とされてしまった。

 ぶった鼻をさすりながら立ち上がると、どうやらエビフ山の麓へと連れてこられたけどイシュタルにようがないならここに用ってなんだろう? 

 

「ここに()()()()()がある。それを輝かせるのは藤丸立香、お前だ」

 

「鍵……? それって「「「GRrrrrrrrrrr!!!」」」うわあっ!!」

 

「邪魔だ。お前らに用はない」

 

 鍵の事について詳しく聞こうとしたら、魔獣の女神によって産み出された魔獣たちとは違う、この地に元からいた獣たちが私たちに襲い掛かってきた。

 マシュのいない今の私じゃ戦う術はないからベリアルさんの後ろに隠れさせてもらう。

 

「逃げってった……。ベリアルさんが怖かったから?」

 

「どうでもいい、早くいくぞ」

 

 ベリアルさんの威圧で文字通り尻尾を巻いて逃げていった獣たちの後を追いながら一緒に歩いていく。

 

『やっと通信が回復した! 立香ちゃん、大丈夫だと思うけど今どこにいるんだい?』

 

 エビフ山の山頂へと向かう道とは別、注意しないと分からないよう、意図的に隠された道を進んでいる最中にドクターから連絡が届いた。

 ドクターにこの先に何があるのか調べてもらうと、どうやら小さな集落のようなものが出来ているらしい。

 

「……なんだ余所者か?」

 

「ここは頭の術で道が見えないはずだろ? どうやって来たってんだ!」

 

「ここの人たち、獣たちと共存してる……?」

 

 岩や藁などで作ったであろう家、と呼ぶには拙い出来の雨風だけを防げればいいと言ったような場所で生活する人たちは、私たちの存在を確認すると後ろの方へと下がり彼らを守るようにさっき襲ってきた獣たちも合わせて威嚇してくる。

 

「魔獣どもとの戦いから逃げ出した人間ども。親、子、住む場所を魔獣によって荒らされ居場所がなくなった獣ども。そいつ等が集まって意地汚く生き続けているのがココだ」

 

「え、でも……?」

 

『キミが立香ちゃんを連れてきたのはそういう事か。いくら居場所のない人たちが集まってこの集落を作ったのだとしても、そこで獣たちと共存していることも、生きていくことすら普通なら在り得ない。ということはだ』

 

「サーヴァントが関わってる?」

 

「獣どもがうるさいと思って起きてきてみれば……誰だ、(なれ)らは……」

 

 獣たちの合間をかき分けて現れたのは私たちの予想通りサーヴァントだった。金髪、朱瞳をした着物を着崩して着る少女と言える姿をしたその子の一番の特徴は額から生えている2本の角、人ではないという事が分かるそのサーヴァントのことを私は見覚えがあった。

 

「茨木……童子……?」

 

「……なんだ貴様、何故吾の名を知っている……」

 

 大江山の鬼の首魁“茨木童子”。カルデアには呼び出せていないけど、羅生門や鬼ヶ島といった微小特異点で敵として私たちに向かってきた彼女。

 人間の敵である鬼の彼女が、人と獣たちを守っていた。

 

 

 

 

 




【ベリアルが求める“カギ”】
この地で生きる人々を助けるのとは別にベリアルが求めているもの。
アナ、偽エルキドゥ、そして茨木童子がそれに当て嵌まるらしいが……?

【茨木童子】
 ギルガメッシュが召喚したサーヴァントの内の1人。7章クリア後のエビフ山や金時の幕間などでその姿を確認することができる。アニメバビロニアの第二EDでもちゃっかり映ってるため知っている人は多いかも……?
カルデアから増援として他サーヴァントを呼べない立香にとって救いの一手となるのか? 


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5

お待たせしました。BOX周回&開封だったりレイドだったりと忙しかった最近。
しばらく書いてないとモチベが下がってしまう作者は大変でした……。

デルタライズクローにベリアロク参戦、ギャラクシーファイトにはまさかのトレおじアーリースタイル!と話題に事かけない円谷には感謝しかないですね。

 正直ベリアロクの扱いは不安も振り払われる勢いで好みの物だったので最高に嬉しいです!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


 “茨木童子”平安時代、京に現れて悪逆を尽くした鬼の一体で大江山の頭目の一人。

そんな彼女と初めて邂逅したのは平安時代に生まれた特異点でのこと。『酒呑童子と一緒に大暴れしたい』という願いが聖杯の力によって歪められ、暴走し暴れていた。

 

……だったんだけど

 

ぐぎゃああああああ!!! は、放せ! 放さんかこの愚か者!! な、何故吾の力が発揮しない!? どうなっている?』

 

『仕切り直しなんぞさせる訳がないだろう? かかってこい、テメェが飽きるまで倒し続けてやる』

 

 相手の逃走をベリアルさんが許すはずもなく、聖杯の力で馬鹿みたいに高かった体力を全て小一時間で削りきって特異点を修復したんだよね……。

 最初はベリアルさんと協力せず、金時と一緒に私たちだけで戦ったからあの時の茨木童子がどれだけ強敵だったか理解できたんだけど……茨木童子への恐ろしさよりもベリアルさんの規格外の強さに驚かされた印象が強かったんだよね……。

 

 

 後出会ったのは……そうだ! 鬼ヶ島の特異点だ! 

その時は別に特異点を作り出してしまった原因とかでは一切なくて、鬼としての面目が立たないってことで敵対関係だったけど特異点の原因を止めるのに一役買ってくれたんだっけ? 

 

『ひいっ! き、貴様はあの時の!! な、なんだ……また吾と一戦交える気か!?』

 

『今の貴様如き相手にした所でたかが知れている。邪魔だけはするなよ?』

 

 大江山の首魁だって言ってた割に以前のベリアルさんとの戦闘がトラウマになっちゃったのか、ベリアルさんと話をするときは酒呑ちゃんの後ろに隠れながら話してたり、憎めない所がある可愛い子なのかなって印象だったんだよね。

 

 だから、カルデアに来てくれたら仲良くしたいなって思って。あの子に話を聞いたこともあったっけ……

 

『茨木ぃ? 旦那はん、あの子のことうちに聞いてどうするきぃ?』

 

『茨木童子の事、いつかこのカルデアに呼べるときが来るかもでしょ? だからその時までに彼女の事知っておけたらな〜って』

 

『そないな事調べればすぐに分かる……。けど、旦那はんが聞きたいんはそういう事やないんよねえ?』

 

『うん。経歴とか逸話とか調べれば分かる話じゃなくて。なにが好きだった〜とかこういう性格だった〜みたいな隣にいた酒呑ちゃんだから知ってる事ってあるでしょ? そういう人柄、鬼だから鬼柄かな? が知りたくて!』

 

『ふふふ、ほんま旦那はんはおもろいわぁ。ええよぉ、うちもあの子の話するんは楽しいさかいなぁ』

 

 鬼ヶ島の特異点を修復した後に召喚に応じてくれた彼女、酒呑ちゃんに茨木童子がどんな子だったのか、本当だったのかは酒呑ちゃんの性格的に怪しいけど聞くことができた。

だから、決して知らないわけじゃない! 今度会ったら絶対に仲良くなってやるぞ~~~!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 て、意気込んでた筈だったんだけどなあ……。

 

 

「茨木童子、だよね? ギルガメッシュ王に召喚されたサーヴァントの……」

 

「何だ────あのいけすかない王の知己か、(なれ)ら!」

 

(べリアルさん。彼女のこと、立香ちゃんに任せて大丈夫なんですか?)

 

(案ずるな。オレやお前ではない、アイツだからこそ掴めるものがある。だからこそここに連れてきた)

 

 折角会えた茨木童子は、ベリアルさんの事も私たちの事も知らない、出会っていない彼女だった。

今目の前にいる茨木童子はギルガメッシュ王が召喚したサーヴァントの内の1騎。天草四郎、風魔小太郎、巴御前はこの戦いの中で散っていったという話だったけれど茨木童子は別。

鬼である彼女は、鬼という存在を恨む牛若丸に脅された結果、ウルクから逃げ出したって聞いていたけど……こんな所にいたなんて。

 

「ああ違うの! 違くはないけど話を聞いて!」

 

「聞かん! 許しもなく立ち入ればどうなるか、その身に刻み込んでやろう!!」

 

 酒呑ちゃんが言っていたように、茨木童子は私の話を聞こうともせずその手に持つ骨刀を振り回してくる。

けど、そこには確かに敵意は感じるけど、殺意は感じられない。やっぱり、酒呑ちゃんが言っていた通りだ。

 

『あの子は他の鬼とは違うさかい、むやみやたらに人を殺そうなんて真似はしいひんよ。するとしても最初のうちは相手のこと驚かせてくるくらいとちゃう?』

 

「ほっ、はっ、だから、話を……!!」

 

「吾は大江山が鬼の首魁! この茨木童子から逃れられると思うな!! 此処に、原初の盗賊団を率いらんとするモノであるぞ!!」

 

「んっくっ!!」

 

 流石にいつまでもサーヴァントの攻撃を避け続けることは無理だった。

倒れた私を見下ろすように、骨刀の切っ先を私の首元へと突き付けてきた。

 

「はっ、戦う力も持たずしてこの吾の前に現れるとはなあ。このまま惨めに殺されるのが嫌ならば、あそこにいる気味の悪い奴も連れて即刻ここから去れっ!!」

 

「嫌だ!」

 

「っ!! 何……?」

 

 私の力で骨刀を押し返せるはずがないことは分かっているけど、せめてもの抵抗のつもりで骨刀を握りしめながら私の思ったことを茨木童子にぶつける。

 

「ねえ茨木童子。どうして貴女は()()を守っているの?」

 

「────ッ!!」

 

「鬼である貴女にとって人間は食糧の筈だよね? そんな貴女がどうして「黙れ!!」

 

「喰っていない、この地に無断で呼び出されてから、吾は一度足りとて生きた人間を喰ろうたことなどありはせん! ここにいる人間どもは、ウルクでは生きていられぬと戦い続けることなど出来ぬと逃げ込んだ者たちだ! 獣たちも同じだ! 異形の魔獣どもに住処を荒らされ、居場所を失っていたのを拾ってやっただけに過ぎない!」

 

 やっぱり、そうだったんだ。

 私に威嚇攻撃をするときも、彼女は絶対に私とベリアルさんが視界に入る位置で陣取り、集落の方へ足が行かないように攻撃をしてきていた。

 

「拾ってあげた……。違うよね? 貴女は守ってたんだ、魔獣が巣食うようになってしまったこの地で、居場所がなくなってしまった人や獣たちの拠り所となって……」

 

『あの子は他の鬼たちとは根本の部分から違うんよ。自分のことしか見ぃひん鬼たちには死んでも出来んくらいに、あの子は周りば~っか見よるんよ。…………京の町で当てもなく歩いてた鬼の手ぇ掴でまうくらいになぁ』

 

 酒呑ちゃんから話を聞いた時にはピンとこなかったけど、実際に茨木童子と出会って実感した。

この子は鬼としての矜持、威厳を持ちながらも“個”を何よりも重視する他の鬼とは違う“全”を重視する子なんだって……。

 

 だから、それが分かってしまったから、その手を掴みたいと思ってしまった。

ベリアルさんに連れてこられたから、彼の思惑通りに動くんじゃない。私が、私自身が茨木童子の手を掴みたいと思ったから動くんだ! 

 

「茨木童子。私はね、ウルクを守るために戦ってるんじゃない。私の居場所を、生きてく場所を守るために戦ってるの」

 

 私は握りしめていた骨刀から手を離し、茨木童子の手に触れる。

真っ赤な鬼の手は、その見た目に反してとっても冷たくて今にも崩れてしまいそうなほど、弱々しい印象を受けた。

 

「貴女の言う通り、私には戦う力はない。魔獣の群れに飛び込んだしたら一瞬で殺されちゃうだろうね。だけどあそこにいるベリアルさんや、他の仲間たちが一生懸命に戦ってくれているから今も私はこうして生きてる」

 

「そうか、貴様マスターとかいう存在か。あのいけすかない王は力を持っていたが、何も持たず力ある者の後ろに隠れて生き続けるとは惨めよのぉ」

 

「うん。守って守って守ってもらったから今もこうして私は生き続けてる。生き汚いって点においちゃあ鬼にも負けてない自身があるね」

 

「なあに? 生き汚い、その一点において鬼と競おうと言うのか貴様は? はっはっはっはっは! 笑わせるな! それは鬼の極致にて、この吾がもっとも得意とする所ぞ! その吾に啖呵を切るとは、覚悟は出来ておろうなぁ?」

 

 そう言って茨木童子は握っていた私の手を払って後ろへと飛び退く。

骨刀を肩に担ぎ、私の方へ向けられた左手から炎が燃え上がり始める。

 

「っ!! たしか、叢原火……!」

 

「ほう、知っているか? 生き汚さを誇るというのなら我が焔、耐え抜いて見せろ!!」

 

「……なら、これを耐え抜いたら私と一緒に、生き汚くこの時代を生き抜いてもらうよ! 茨木童子!!」

 

 まだその手から離れていないというのに感じる炎の熱を肌に感じながら、その恐怖に向かい合いながら私は叫んだ。

 一切動こうとしないベリアルさんの周りを囲むように陣取る獣たちを横目に、茨木童子の炎をどうやって耐えればいいのか頭を巡らせていく。

 

「ぎゃっははははは!! まだそれだけの口が開けるか! 見せてみろ、貴様の生き汚さとやらを! 走れ、叢原火!!!」

 

 どうすれば耐えきれるのか答えが出ないまま、巨大な手の形をした焔の火が迫ってくる。

 邪魔する者を屠ろうとするその炎、誰かを暖めるのではなく傷つけるためだけの熱。

 この炎が茨木童子の気持ちそのものだとしたら…………。

 

「あああああああ!! 独りで燃え続けるこの炎を掃え!! 私のサーヴァントぉおおおおおおお!!!!」

 

「はああああああああああっ!!!!!」

 

「何っ!?」

 

 私の声に呼応するように駆けつけてくれた()が叢原火を受け止め払い飛ばした。

来てくれる確証なんて、この炎を打ち消せるかどうかなんてわからなかった。けど、貴女なら来てくれるって信じてた、だから叫んだんだ。

 

()()()()()…………と、マーリン?」

 

「ご無事ですか先輩!?」

 

 心配して駆け寄ってくるマシュの背中にマーリンが背負われていることに疑問を抱いていると、そんな私の考えを読んだのかマシュの背中から降りたマーリンが両手を広げて話し出す。

 

「どうやってこの短時間でこんな場所まで来たのかってだろう? そんなの簡単さ! このマーリンお兄さんの魔術と、カルデアのナビゲートによる最短距離のルートの導き、後は彼女のがんば、あ、ちょっと待ってくれ流石に揺らされ続けて気持ちが…………オロロロロロロロロォ」

 

「うわぁ……」

 

『まあ今嘔吐してる彼の言う通りだよ立香ちゃん』

 

 端まで行って胃に入っているもの全部吐き出してるマーリンを横目に、息を切らしてまで私の所へ来てくれたマシュに感謝を告げ、私は攻撃の手を下ろした茨木童子の元へと歩いていく。

 

「先輩!!」

 

「大丈夫だよマシュ。大丈夫……」

 

「ふんっ、吾と話をし時間を稼いだわけでもない、アレが来ることを確信していたわけではない。これがお前の生き方か?」

 

「うん。でも、結果的に私はまた生き残れた。賭けは私の勝ちってことで良いよね茨木童子?」

 

 ふんっと鼻を鳴らして茨木童子は不貞腐れたように骨刀を降ろし、荒ぶっていた炎も静め地べたに座り込んだ。

一応納得してくれた……ってことかな? 

 

「吾の炎を耐え抜いたお前、お前の名を名乗れ」

 

「えっ? あ、マシュです。マシュ・キリエライトです!」

 

「魔酒か……。気に入った、名に魔と酒が入っておる。……で?」

 

「「で?」」

 

「貴様だ貴様!! 少しは察せこの馬鹿者が!!」

 

「あっ! 私か!! なんだ~それならそうとはっきり言ってよ茨木童子。長いから茨木ちゃんかな?」

 

「途端に慣れ慣れしいなき貴様。いいか! 話を聞く気になったというだけだ、吾の力を貸すとは言っていない」

 

 目くじらを立てる茨木ちゃんを他所に、そそそ~っと目の前まで走って行って私は自分の手を彼女へと伸ばした。

 話を聞いてくれるってだけでもありがたいんだ。ここから、力を貸してもらえるよう、合わせられるようする。

 

「私の名前は藤丸立香。立香って呼んでよ、茨木ちゃん!」

 

 

 

 

 

 




立香ちゃんは星4運よりも星5運の方が強い子。
殺意はないし、ただの人間だからと手加減して攻撃していた茨木童子だが実際あそこまで避けられるとは思っていなかった。2〜3発当てて痛い目にみればいいと思って振るっていた。
しかしながらスカサハブートキャンプ受講者だったためギリギリ避けることが出来た。


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6

 魂之工房から発表されたベリアルさんがウルトラカッコよすぎる……。
サイズもウルトラデカいですし、まあその分値段も……。

 ギャラクシーライジングのフィギュアーツも発表になりましたね!個人的にはソリバとアクスマも出してジードマルチレイヤ―再現したいんですが……。あ、オーブさんがまず全形態出てない?Z版ジャグさん出るから許して?

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「ふっふっふ〜ん♪」

 

 空を自由に飛びながら上機嫌に鼻歌を歌っている彼女の真名は“イシュタル”。金星の女神であり、人に繫栄をもたらす豊穣の女神であり、戦いと破壊を司る女神でもある彼女は、本来ならばサーヴァントとしれ喚ばれることはないが、彼女の神格をどこかの時代にいる相性のいい身体に降ろすことで召喚を可能にしたマシュ・キリエライトとは違う形の疑似サーヴァント。

 

 この女、メソポタミア中を自由に飛び回ってはあちこちにある牧場を無差別爆撃するわ、襲った張本人は「助けてあげたんだから私財は貰っていくわ」とやりたい放題している。

 

「あそこの牧場、前からいい物持ってると思ってたのよね~~。ん?」

 

 そんな彼女は今、押収した貴金をエビフ山に勝手に建てた神殿に保管しようとしていたが、何かが可笑しいことに気づいた。

神殿がある山頂方面から煙が立ち上がっているのだ。

 

「はあ、ま~た私のお宝を盗もうとした不届きものたちかしら。本当に懲りないわよねえ人間って……」

 

 神殿への襲撃はこれが初めてではないのか、イシュタルは落ち着きながら神殿へと向かっていく。

じつはこの神殿、イシュタルの権能が付与されているためにいかな攻撃でもイシュタルの許可なく扉を開くことも、破壊されることもない。

 

「な、な、な、な、な、な……」

 

 はずだった…………。

 

「何よこれえええええええ!!!!」

 

 イシュタルが目にしたのは、完全に崩壊し中にあった宝物が全て無くなっている元神殿だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっし、これで仮契約完了!よろしくね、茨木ちゃん!!」

 

「慣れ慣れしいわバカ者。いいか、先に話した通り吾と貴様に上下の関係も、主従もない。わかっていような」

 

「分かってるよ」

 

 鬼は自由なもの。気が変わって裏切る、生きるために逃げ出すかも知れない。私たちの事を手にかけるかも知れない。それでもいいなら対等な立場で私たちと一緒に戦ってくれると言ってくれた茨木童子。

ドクターやカルデアの職員のみんなからは危険だからと止められたけど、私は『鬼』とか『人』とか関係なしに茨木童子を信じたいからその手を握り、未だに繋がっていたギルガメッシュ王との魔力経路を上書きし、仮契約を行った。

 

「して、これからどう動く?魔獣の主を討伐にでも行くか?」

 

「う~ん茨木童子が戦力にもど、おっと加わったは嬉しいかぎりではあるんだけどね。今のままじゃ彼女の元に辿り着けるかどうかも怪し、彼が全面的に協力してくれるっていうなら話は別だけど」

 

 茨木ちゃんとの仮契約を無事に終えた私たちは、集落の中で集まってこれからどう動くのかを話し合っていた。

茨木ちゃんもそうだけど、山賊をしていたみんなはそもそも戦いを続けることに疲れてウルクから逃げ出した人たち。

 

 マーリンが遠くで腰掛けているベリアルさんに視線を向けるけど、ベリアルさんはベリアルさんでこの特異点でやるべき事?があるのか、直前の問題である魔獣の女神を対処しようとは動かない。

そんなことを考えていると、ベリアルさんがコチラに向かって走ってくる。……あ、あの表情は博樹さんだ。

 

「どうしたんです博樹さん?」

 

「いやベリアルさんがね、これからここにいる全員である作戦をするからそれを伝えろって言われてね」

 

「全員……ですか?」

 

「それって、アタシたちも?」

 

「そうです。()()()()である貴方たちがいるからこそ出来る作戦だって言ってました」

 

 珍しく一人じゃなくて、ここにいる全員を巻き込んで何かをすると提案してきたベリアルさん。

山賊の人たちの手も借りてようやく達成できる作戦ってどんなだろう?って考えているとマーリンが何をするのか博樹さんに聞く。

 

()()()()()()()()()んだそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、確かに?茨木ちゃんが集落を作ったのはエビフ山の麓だったし、その山頂にはイシュタルが建てたっている神殿もあるから効率を考えるならこのまま一気に攻め込んだ方がいいのは分かってる。

分かってるけど……

 

(流石容赦ないよね、ベリアルさん)

 

「え?え?え?侵入者迎撃用招き猫型ゴーレムは?てかどうしてこんなに私の神殿が粉々に砕かれてんのよおおおおお!!折角ためこんだ宝石も跡形もなく消えてるとか……どこの誰よまったくぅうううううう!!!」

 

 自分の神殿を破壊されたイシュタルの事を岩陰から見ていると何だか少し罪悪感を覚えてしまう。

中に貯めこんであった財宝を持ち出したのは私たち全員で頑張ったけど、神殿を今のみるも無残な姿に変えたのは全部ベリアルさんだ。

 

 迎撃用のシステムも、神代の神が造りだした強固な神殿も、ベリアルさんの前では全くの無意味だったみたいで、折角作った砂をお城を帰る時間だからと一瞬で崩してしまう子供のように簡単に崩していった。マーリンやドクターが言うには外に一切の音が漏れないように何らかのフィールドも張っていたみたいだから、外にいたイシュタルはこの異変に気付くことが出来なかった。

 

 よし、ここからが私たちの出番だ!!

 

カーハッハッハッハッハ!!哀れだな、惨めであろうなあ女神イシュタルよ!!」

 

「……鬼風情が何の用よ。私は今機嫌がすこぶる悪いのよ!!!」

 

「させませんっ!!はあああああっ!!!」

 

 ガキンッ!とイシュタルの事を挑発するように姿を見せた茨木ちゃんに向かって放たれた光の矢を、マシュが渾身の力で弾き飛ばす。

マシュとは面識があったからこそイシュタルは目を開いて驚いている。確かに、茨木ちゃんが犯人だと結論づけたから攻撃したけど、まさかマシュがこんなことやるとは思わなかったんだろうね。

 

「アンタ確か……マシュって言ったわね、カルデアのマスターと一緒にいた。何?ギルガメッシュからこうするように命じられでもしたのかしら?」

 

「それは違います!」

 

「それじゃあなんだって……」

 

(頼んだよ、()()()()

 

 その声を合図にして私も岩陰から姿を現してイシュタルに向かって宣言する。

 

「女神イシュタル!!私たちは貴方と交渉に来たの!!この財宝を賭けて!!!」

 

「あ、あ、ああああああああああっっ!!それ、それよそれ!!私の大切なた~いせつな財宝たち!!返しなさいよ!!それは私のよ!!」 マーリンの幻術で隠していたイシュタルの財宝の隣に立ちながら叫ぶ私の声に耳を傾けずに、財宝にしか目がいっていないイシュタル。

 

「カッカッカ!人間どもから強奪したものを自分の物というか!鬼ならばそれが当たり前であるが、神も同じだとはなあ!!」

 

「ああっ!? いい!これはこの女神イシュタルが、魔獣に怯えるウルクの民たちを仕方な~く助けてあげたその謝礼として頂いたものよ!私のものじゃなかったらなんだってのよ!!」

 

 そのウルクの民の人たちからは私財を盗まれたって言われてるんだけど……。プライドの高いイシュタルはこちらの話を聞こうともせずに財宝に向かって飛び込んでくる。

……けど

 

「止まってろ」

 

「えっ!?ちょ何よコレきゃああああ!!!」

 

 そんな簡単には近づけさせないよ!----ベリアルさんが!!

財宝のことしか頭になかったイシュタルはベリアルさんの動きに反応できず、ギガバトルナイザーから放たれた光の輪によって身体を縛られ、それに伴って飛行能力も失われたのかそのまま地面にダイブした。

うわーー受け身も取れずに瓦礫だらけになったこの場所に落ちるって……想像するだけで痛そう。

 

「何なのよコレ!!女神である私の力で壊れないなんてどうなってんよ!!」

 

「さあ取引の時間だ。嫌だとは絶対に言わせないがな」

 

「アンタね……。痛い目見たくなかったらこれ外しなさいよ!!」

 

 ベリアルさんに吠えながらも、魔力を開放させて拘束を解こうとしているけど、神代の女神の力を以てしても光の輪はびくともしない。

それでも高圧的な態度を崩さないのは聞いていた通りのイシュタルって感じだけど……。

 

 それで態度を変えたりするベリアルさんではないのは分かり切っている事だったから、ベリアルさんも態度を崩すことなくギガバトルナイザーをイシュタルの目の前に叩きつけたことで「ひっ」とイシュタルの声が止まったのを見て交渉を始める。

 

「女神イシュタル!ここにある財宝を返して欲しいなら、私たちに力を貸して!!」

 

「私の神殿壊して、財宝奪って、終いには縛り上げてな~にが『力を貸して!!』よ!何が交渉よ!これじゃあただの脅迫じゃないのよ!!」

 

「え?だって交渉って『自分が完全に有利な場を作り上げて相手に頷くことしか許さない』ものだって、ベリアルさんが……」

 

「どういう教え方してんのよアンタ……!そ・れ・と!星読みのここじゃない所で指示出してる人間たちもよ!!指示出すならもっとまともな指示だしてあげなさいよ!」

 

『すまない女神イシュタル。確かに脅迫まがいなことをしている自覚はあるにはあるけれど……、発案者が発案者だからね、僕を筆頭に誰一人として首を横に振るなんてこと出来ないのさ』

 

「馬鹿なんじゃないのアンタら?」

 

 真顔でドクターに突っ込みを入れるイシュタルを他所に、ベリアルさんが「御託はいい。了承しないというならコイツらがどうなってもいいのか?」と言ってマーリンの魔術で身なりを整えた盗賊団……もといイシュタルと同じ光の輪によって縛られたウルクの民たち(仮)を人質に連れ出してきた。

 

「イシュタル様助けてください!!」

 

「偉大で尊大なイシュタル神様!どうか無力な私たちのことをどうか!!」

 

「…………ああはいはい、人質ね人質。人間って本当そういう姑息な真似好きよね~(ふん、どうせ殺せもしない甘ちゃんの集まりなくせして人質なんて笑わせるんじゃないわよ。適当に話を引き延ばして、どうにかコレを壊す算段を……)」

 

ドゴンッ!!

 

「は?」

 

「「「「え?」」」」

 

「どうした?人質が使えないのなら、処分したほうがましだろう?」

 

 多分だけど、イシュタルは私たちの事を前からちょくちょく観察してたんじゃないかな?このウルクの地に来てから妙に視線を感じることがあったし。だから敵だとして峰打ちで済ませようとする私やマシュの甘い部分を知ってるイシュタルは楽観視してたんだ。人質といってもただ脅しの為に使うだけで傷つけたりしないって……。

 だから何のためらいもなくウルクの民(仮)を1人葬ったベリアルさんにみんな慌てふためき始めた。 

 

「べべべべ、ベリアルさん!作戦と違います!!彼らはただの人質役で害を与えることはないと!」

 

『べ、ベリアルの言葉を鵜呑みにするんじゃなかった!りり、立香ちゃん、どうにかしてベリアルの事を止めるんだ!!」

 

「どうにかってどうすれば!!」

 

「ちょっと立香とか言ったわね!アンタ早くこの頭イカれた奴どうにかしなさいよ!そうしなきゃ私の王国の民たち全員無意味に殺されるじゃないのよ!!」

 

「ベリアルさんストップ!!どうすれば?どうすればその人たちを殺さないで済むの?」

 

 イシュタルの交渉どころではなくなった現場を抑えるために、もう一人に手を下そうとするベリアルさんに話しかけ、なんとかその手を止める手立てを聞く。

作戦ではウルクの地母神であるイシュタルが人質のために力を貸すことを了承するって流れだったのに……!!

 

「簡単な話だ。藤丸立香、お前がその女神と仮契約して縛り付けろ。そうしたらこのゴミたちを処分する意味もない」

 

「いいいイシュタルお願い!!私と仮契約して、そうすればこれ以上被害が出なくてすむから!!」

 

「嫌だっていってるでしょ!!なんで神である私が人間なんかに縛られなきゃ「や、やめてくれ!!殺さないでくれ!!」

 

ドゴンッ!!

 

「恨むんならそこの傲慢な女神を恨むんだな」

 

「イシュタル!!お願い、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私たちと一緒に戦ってほしい!!」

 

「ああああもうわかったわよ!!空の果てだろうが地の果てだろうが一緒に付いてって戦えばいいんでしょ!!早くしなさいよ()()()()()()

 

 一人ひとりはめんどくさくなってしまったのか、一気に5~6人を纏めて殺したベリアルさんの所業に流石のイシュタルも覚悟を決めてくれて私との仮契約を完了させてくれた。

そしてベリアルさんは自分で言ったとおりにウルクの民(仮)に手を出すのを止めてくれたと同時に、仮契約したことでイシュタルの事を縛り付けていた光の輪も解いた。

 

「アンタ!!よくも罪もない私の民たちを殺してくれたわね!!一発殴らせ「いや~死ぬかと思った~~!!」へっ!?」

 

「死なないってわかっててもあんな顔で迫られたら誰だって死ぬ実感湧くって」

「え、ちょっと……?」

 

「本当、頭を掴まれたときは生きた心地がしなかったぜ」

「貴方たち、さっき殺されたはずじゃ……?」

 

 仮契約を終えたけど人を殺したベリアルさんへの怒りが収まらなかったイシュタルが攻撃を加えようと身体を振り向かせると、さっき殺されたはずの人たちがぴんぴんしている。

それを見たイシュタルは何がなんだかわからないと言った様子でうわ言のように喋ってる。

 

「先輩!素晴らしい演技、マシュ・キリエライト感動しました!」

 

「マシュこそ、鬼気迫す表情とか完璧だったよ!イェーイ!」

 

「い、いぇ~い」

 

「ほら茨木ちゃんも!イェーイ!」

 

「何故吾も……勝手に手を掴むな!そして二人して勝手に叩くな!!」

 

「は?は?何?なにが起きてるってのよ……?」

 

「いや~我ながら自分の才能ってヤツが恐ろしいねえ。あの金星の女神様さえも騙せてしまうんだからね♪」

 

ポク、ポク、ポク、チーン!

 マーリンが出てきたことで今までの一連の流れが全部イシュタルの事を騙す演技だったことに気づいた本人は、わなわなと身体を震わせて赤い瞳が金色のソレへと色を変え怒りを爆発させようとする。

 

「この私をコケにするとはいい度胸じゃない「まさか神を名乗る貴様が、人や魔の者たちと同じ真似をする気か?」んなんですって?」

 

「『この特異点の修復が完了するまで共に戦う』そういう契約だろう?まさか嘘だったと騙す気か、オレたちと同じようにするのか?…女・神・様…?」

 

「ぐ、うぐぐぐぐぐぐ!!!このクソ野郎ぉおおおおおおおおおお!!!!」

 

 こうして、ベリアルさんの作戦通りにこちらは何かを失うことなく、女神イシュタルを味方に引き入れることに成功した。

……マーリンの魔術があったってのは勿論だけど、この演技力将来どこかで出番あったりしないかな?

 




 7章まで来て人間と協力をすることが出来るまでに成長?したベリアルさんが行う協力方法。仕方ないさ、だってあの方はウルトラ史上最恐最悪のヒールだったお方だぜ?
 普通じゃない交渉もベリアルさんなら可能!!

 何だかんだ言いつつウルクの民の事を庇護する存在として見てるイシュタル相手にだから出来るんですけどね。そしてタイミングよく元ウルク民がいたのも幸い。

【ベリアルバインド】
 ウル銀でメビウスを拘束した【ベリアルウィップ】を鞭介さず相手を縛る光の輪を出す技。直接縛っていないため振り回したり出来ないし、一度出したら出力を上げたり出来ないのが難点だがその分複数体拘束出来る利点もある。
 あのメビウスが解けなかったものをイシュタルじゃ解くことはできないって

 次回は多分ウルの町へGO!!メタの塊みたいなあのトラとベリアルさんの相性や如何に……。


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7

D4……ストレイジとは別の地球防衛軍が開発、秘密裏の実験ぽくて孤島で開発とか……悪い予感しかしない。
R1号、ネオマキシマ砲、ビクトリウム・キャノン……人間がウルトラマンに近づこうとするとどうしてこう……。

M1号の話が良かった次の週があれって、Zも遂に最終章に向かっていく感じですかね?

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッッ!!!」

 

 ウルクへと戻ってきた私たちは、イシュタルの事を連れてギルガメッシュ王のいるジグラッドでエビフ山であった事を伝えていた。

元々は彼に召喚されたのを逃げ出した茨木ちゃんは見せる顔がないのかわからないけどここまでついてこなかったけど、事の顛末を聞いたギルガメッシュ王は腹を抱えて笑い転げている。

 

「はーはーはー。ま、まさかそのような手でイシュタルめを味方に引き入れようとは……。フッ、やるではないか藤丸。ブフッ」

 

「アンタ笑いすぎなのよ! いい? 私が契約したのはあくまで藤丸立香だけであって今からアンタの事を攻撃したって構わないんだからね!!」

 

「やれるものならやってみろこの駄女神風情が! ハハッ、駄目だな思い出すだけで笑いがこみあげてくるわ……」

 

 そうとう残念な感じでイシュタルが味方になった事がツボだったんだろうなあ。喋ってるのに途中途中で吹き出しそうになってるし……。

そんな二人の面白いやり取りをしばらく見ていると、ふと思い出したかのようにギルガメッシュ王が私たちにもっと派手に活躍しろと指示を出してきた。

 

「この我をこれだけ楽しませたのだ、愉快な報告を期待しているぞ? ……あああと、外のヤツらを諫めるのはお前がやれ」

 

 仕事の詳細はマーリンが知っているらしいので後で聞くとして、ようやく王様が私たちのことを少しは認めてくれたんだ! 

エビフ山の事は除いて、他はずっと雑用雑務ばっかりだったからこのままでいいのかなって心配になってたけど良かった~~。

 

 けど、最後にボソっと言ってた外の奴らって……? 

 

 

 

 

 

 

 

「流石、逃げることだけには定評があるらしいな鬼風情が! その首即刻斬り落としてくれる」

 

「はっ! これだから血の気だけで生きている源氏の者どもは駄目なのだ! 巴ではなく貴様が先に逝っていれば良かったものを……」

 

「先輩、ギルガメッシュ王が言っていたのは……」

 

「あ~~この事だったのか~~」

 

 ジグラッドを出て直ぐ目に入ったその光景に王様が人任せにした理由が即座に分かってしまった。

茨木ちゃんの方はマーリンとアナちゃんが、そして牛若丸の方は弁慶さんが必死に抑えているけど、両方とも顔に同じような怪我があるところを見ると殴り合ったんだろうなあ……。

武器を使わなかったところは褒めるべきなのかどうか考えながら、ジグラッドの階段を駆け足で駆け下りていく、

 

「立香殿!! 何故一度逃げ出した臆病者の鬼畜生などを連れ戻したのですか!! このような畜生の手など借りなくてもこの戦、我らが負けるはずがないというのに!!」

 

「はっ! 弱い奴ほど吠えるとは貴様の事だな牛若! 負けぬというのなら何故吾と同じく召喚された影法師が貴様らしか残っていない? それこそが追い詰められている証拠であろう?」

 

「ほらアナ! 頑張って抑えなさい、紳士な私は女性の身体を触るなんてできないからね」

 

「くっ、マーリンは後で殴りますが、今は止まってください茨木童子!」

 

 売り言葉に買い言葉。源氏の関係者をとことん嫌う茨木ちゃんと、怪異は絶対に許さない源さんな牛若丸との相性は最悪。犬猿の仲ってこういうことを言うんだろうな~って考えながらマシュに茨木ちゃんの事を任せて、私は牛若丸の方へと向かう。

 

「立香殿! 聞けばあの鬼との契約はもうギルガメッシュ王にはなく貴女にあると聞いた!! ならばすぐに契約の破棄「しないよ」を……?」

 

「牛若丸が鬼という存在を恨んでることは勿論分かってるけど、私は茨木ちゃんとの契約は絶対に破棄しないよ。カルデアから追加でサーヴァントを召喚することが出来ないから戦力が大いに越したことはないのと、信じたいと思ったから茨木童子のことを……」

 

「……信じる? 鬼の事をですか……?」

 

「鬼じゃないよ、私は()()()()を信じるんだ。だから首を切るのは待ってくれないかな? お願い!」

 

 「妙な前をしたら迷わずに斬ります」そう言って牛若丸はなんとか矛を収めてくれた。茨木ちゃんの方も何とか怒りを収めてくれたみたいでようやく王様から頼まれた外の任務に行動を移すことが出来る。

 

 

 

 

 

「“鬼”という種ではなく、茨木童子という“個”を信じる……、博樹と言い立香の方も不思議な方ですね……」

 

 

 

 

 

 

 

「で、吾の配下たちは大丈夫なのであろうな?」

 

「案ずるな、魔獣ども如きに後れを取るような巫座戯た真似はしない」

 

 王様から調査を依頼された地、南に位置するウルへ目指し密林へと足を踏み入れた立香たち一行。

ウルクから外へ出ると一緒に着いてきたベリアルと茨木童子は何食わぬ顔で密林を歩いているが、他のメンバーは違う。

 

「暑い……暑すぎる……。この暑さは引きこもりの私には堪える……そりゃもうすっごい堪える……」

 

「マーリン静かにして。暑いって聞くと余計に暑く感じるから……」

 

 地面から舞い上がる熱気、濃厚な土の匂い。それに加えてこの密林は三女神の内の一柱が支配している領域という事もあり、エジプト領の時と同じように完全に神話体系が違ってきている。

そんな暑さで意識が朦朧としていく中で、立香たちの事を遠くから覗きこんでいる者がいた。

 

 

「ほうほうほう……。あの子とあの子は育てるといい感じに育ちそうだにゃ~。あれは駄目だ、ねっからな引きこもりだしジャガー的にタイプの顔してない。……ん? んんん?」

 

 立香たちからは遠く離れ、魔力察知などでは到底引っかからないような木の上に立ち、親指と人差し指で丸を作ったその穴を覗き込みながらそれぞれの感想を独り言ちっていると、その視界の先にベリアルが移ると、可笑しなものを見たような声を上げる。

 

「う~む、まずいにゃあ。あれ、私より強くにゃーい?」

 

 如何にして勝つかとか、妙案が浮かんできて倒せるとかそういう次元ではないと悟った。知覚されたら殺される、目が合っただけでも殺される、そう本能的に悟った彼女は即座に逃げの態勢に入ろうとした。

 

「いや~ククルんにここ任されてるけどあんなの相手にするのは無理無理。帰らせていただきま~「どこに行くつもりだ?」にゃあ~?」

 

ゴシゴシ

 

「にゃあ~?」

 

ゴシゴシ。立香たちの方を見て目をこすってもう一度振り向く。

 

「は?」

 

 脳の処理が追いついたことでようやく現実を理解できた彼女は、素で驚きの声を上げるしかなかった。

いや、普通気づかない場所から見ていた相手が、いつの間にか背後にいたら脳が追いつかなくて当たり前だ。

 

「このオレから逃れられると思うなよ?」

 

「ふっ、ぐっばい。ジャガー」

 

 

 

 

 

「はい。私こそがこの密林の化身なんてものを名乗らせていただいています“ジャガーマン”っていいますです。ううう、登場シーンはもっとカッコいいものを予定してたのに……」

 

 ベリアルさんに首根っこを掴まれ、泣きながら自己紹介してきた虎? ジャガーっていってたから豹か。豹の着ぐるみを来たふざけた名前のサーヴァントと出会った。

一瞬博樹さんに戻って「ちょっと待ってて」って言われて1~2分でこのサーヴァントの事を連れてきたんだけど……。イシュタル笑ってるけど人の事言えないからね? 

 

 完全に借りてきた猫「ジャガーだっていってるでしょーがぁあ!!」……借りてきたジャガー状態のジャガーマンに道案内をさせ、私たちは迷うことなくウルへと進むこと出来た。

 

「ウルは安全です。森の女神の法を守っているかぎり、私たちは魔獣に食い殺される事はないです」

 

 突如現れた密林に覆われてしまったウル市は予想に反して安心安全といった場所だった。

けどこのウルに住む人たちは、彼女たちの言う森の女神によって外に出られず閉じ込められているのだという。

助けに来た者も、助けに行こうとした者も等しくあの森に殺されてしまうのだと……。

 

 あの森には魔獣は出てこなかったかからそれを行う人物って多分……

 

「ぴゅ、ぴゅーぴゅぴゅっぴゅぴゅー」

 

「ジャガーマンさん口笛とも言えないものを鳴らしています……」

 

「……クカカッ! やはり人間どもは醜のお。自分たちが生き永らえるためなら他者を食いものにするのだからな」

 

「な、なにをっ!?」

 

「茨木ちゃん、それって……?」

 

「見渡すだけでわかるは阿呆が。女子供どもの数に対して男が少なすぎる、生贄を捧げ恐怖の中で生き永らえている人間どもを肴に酒を嗜む鬼もいたからなあ」

 

「貴方もそれをやっていたんですか? ドン引きです」

 

「やっとらんわ!! そのような卑怯で人間どもに足が突かれやすい業、とっとと辞めさせる側じゃったわ馬鹿者が!」

 

 本当だ。茨木ちゃんの言う通り周りにいる人たちの殆どが女性や子供、お年寄りなんかが殆どだ。数人だけ残ってる男の人たちはこれから生贄になるのを理解しているのか顔を青ざめているし……。

 

「私たちは悪くありません! 生きるために必要なことだったのです! ここにいるみな納得の上、合意の上で選んだのです!!」

 

「な……! そんな方法で自分たちの命を守ってきたというのですか!? 戦うこともせず、ウルクに向かう事もせずに!?」

 

「マシュ。言いすぎよ」

 

「イシュタルさん、すみません……」

 

 一日に一人、エリドゥに生贄を差し出すことで生き永らえることが出来る契約。女神に抗う術を持たないウルの人たちにとってそれが最善だったのかも知れないけど、やっぱり犠牲を当たり前に強いることは間違ってる、イシュタルは諫めたけどマシュの怒りは最もだ。

 

「魔酒、死ぬ死なないで怒るのならば案ずるな。この地にもこの先にある場所にも血の匂いはしない、吾の同胞たちのように人間を食い物にはしていないようだ、なあ? そうであろう?」

 

「にゃ~にゃにゃっにゃにゃ~♪ あ、そろそろ説明していいころっすかね? ……旦那、そろそろ離して欲しいんですが~~?」

 

「このまま話せ」

 

「うぃす! 分かりやした! そこの鬼の子の言う通り生贄になった人間たちは死んでないにゃあ。な・ぜ・な・ら! 生贄を殺すとか時代遅れと怒られたから!! あ、けどけど~ククルんのテストに落ちちゃった戦士たちはみんなエリドゥで強制労働押し付けられてるってマジで? 最低だなあの女神」

 

 本来なら緊迫した状況で、当事者であるジャガーマンの話に気を引き締めるはずなんだけど襟首掴まれながら喋るもんだからつい毒気が抜かれてしまう。

 

「いやいやホントはさ? ここにいる人間たち連れて行こうとしたら全力でお前たちを止めるのがジャガーの仕事だったわけさ。だけの今こんな状態だからどうすることも出来にゃし? ククルんには悪いけど諦めてもらあら~~?」

 

 ぽ~いと、掴んでいたジャガーマンの事を広場の中央へと放り投げてしまうベリアルさん。ジャガーマンも何が何だか分かっていない様子だけど綺麗に着地すると頭を掻きながらベリアルさんの事を見る。

 

「コイツらに勝って見せろ。そうしたら見逃してやる」

 

「へ? マジ? マジでガチで超絶でスパーキンッ? よぉおおおしっ!! そういう事なら、ジャガー張り切っちゃうぞ♪」

 

「べべべベリアルさんっ?」

 

「アナ。()()()を相手取るのならあの程度の相手に後れを取るな、藤丸立香たちと協力して倒して見せろ」

 

「…………了解しました。立香、やりますよ」

 

 ベリアルさんの突飛な行動に頭を悩ませながらも、マシュも私も戦闘準備を整えてる所見ると慣れちゃったんだろうな~~。

マーリンにはもしもの時の為に後ろに控えて貰って、マシュ、茨木ちゃん、アナちゃん、イシュタルの4騎でジャガーマンと戦うために向かい合う。

 

「ンンっ!! ────そう。ここは私たちの世界、螺旋描く蛇の大地。神の定義を弁えぬ人間よ、今は立ち去るがいい。森の護りあるかぎり我ら太陽は無敵なり────よっしゃああやっとカッコいい台詞きまった……! 最後まで諦めず、不可能を可能にする。それが『ジャガーマンっ!!』」

 

「だからその雰囲気のせいで台無しなんだってばっ!!!」

 

 

 

 

 

 




ジャガーマンを倒すことも、そのままククルんを倒すことも出来るけどそれをしてしまうと立香ちゃんの成長の阻害になってしまうので時間短縮だけ、ベリアルさん有能すぎん?

イシュタル、茨木ちゃん、アナちゃん。3騎とも神性持ちだから攻撃通るけど問題が……?
ジャガーは何やっても許される感じが本当楽。


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8

ギャラファイが始まり、マックスや海外マンといった久しぶりなウルトラマンたちに感動を覚えながら……80先生知ってます?その怪獣一応ルーブのラスボスなんですけど……?流石本編無敗の80先生。

あとソラさんがリブットが幼馴染ってなんて美味しい設定なんです?

Zは遂に最終局面へ向かいもう絶対にテラノイドからのゼルガノイドフラグでしかないの人間の業の深さが……。

感想、評価お待ちしてます

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“ジャガーマン”

 中南米に伝わる古き神霊の一柱。ジャガーとは『戦い』と『死』を象徴していて、各時代の中南米文明で永く崇められている存在なのだという。

 

正直、ベリアルさんに吊し上げにされてるし腰が低い態度をとっていたから、戦闘もそれほどじゃないんだろうなあって楽観視してた部分はあった。

 

だけど、それが訂正しなくちゃいけない。

 

「クッ! ちょこまかちょこまかと鬱陶しいわ猫風情がっ!!」

 

「猫は猫でもジャガーはジャガー。────、ほっ?」

 

「んぎゃっ! 貴様!! また吾を狙いおったな!!」

 

「はあ? 違うわよ、アンタこそちゃんと避けなさいよね!!」

 

 茨木ちゃんと接近戦で互角に渡り合いながら、死角から撃たれたイシュタルの魔術の矢を見ないで避け、それを茨木ちゃんへ被弾させる。

そしてその隙をついて鎖鎌の鎖を伸ばし、ジャガーマンの動きを封じようとしたアナちゃんだったけど、それも読んでいたのか逆に鎖を両手で掴みそれをアナちゃんごと振り回してイシュタルへと放り投げる。

 

「っ、あっぶないじゃないの! 気をつけなさいよね!?」

 

「すいませ「気をつけるのは両方共にゃ」ッッ!!」

 

「ジャガーっハンマーッッ!!」

 

「「ゥゥゥっ!!」」

 

 瞬間移動ともいえる速度でイシュタルたちの背後を取り、組んだ両手を振り下ろし地面へと叩きつけるジャガーマン。

その回転のまま宙に放り投げていた棍棒を足場にしてマシュへと突撃してくる。

 

「マシュ、守る事を第一に! 攻撃は他のみんなに任せて!!」

 

「はいっ先輩!!」

 

「ほお、堅実な考え実に結構。戦闘職が3人もいるんにゃからマシュちゃんは防御に専念するのが一番、理にはかにゃってるが……ジャガーに理屈は通じないのにゃ?」

 

『ジャガーパンチ!!』と言いながらマシュの防御すら意に介さず殴り飛ばしその反動で地面から足が離れたのを見逃さずに足払いし、マシュの両足を掴んでまるで武器のように振り回して茨木ちゃんへと振り下ろす。

 

『ジャガーシールドっ!!』

 

「ンギギギっ!! 武器にされるでないわ馬鹿者!!」

 

「すいません茨木さん!」

 

 ジャガーマンが予想外に強いっていうのもあるけど、同じ神霊であるイシュタルがいながらここまで手も足も出せない状況なのは圧倒的な連携不足だ。

アナちゃんはもともと博樹さんと契約してるサーヴァントだから親交は深めることは出来たけど戦闘なんかは一緒に行ったことはなかった。けど、本人は前に出すぎず周りの動きを見て動いてくれているからそこまでの心配はない。

 

 問題はイシュタルと茨木ちゃんだ。あの2人、仲が悪いのか元からそりが合わないのかしょっちゅう喧嘩していて連携どころの話じゃない。

ジャガーマンもそこが穴だとわかっていて攻撃しているっぽいし……。

 

「たく、パンチだのキックだの。神ならもっと神秘性ってのを大事にしなさいよね!!」

 

「神? 神秘性? にゃはははそんな時代遅れなものこのジャガーには必要なっしっ! 教えてやるにゃ!!」

 

 ジャガーマンがその身を魔力で発光させて一瞬だけイシュタルの視界を奪うと、容赦のない蹴りが腹部に刺さる。しかもその蹴りで飛ばされた先に瞬時に移動して次の攻撃を加え、イシュタルに反撃を与えない連続攻撃を加え始めた。

 

「誰ににゃんと言われようがジャガーは叫ぶ! だってその方が覚えてもらえるんだもん。大事なのは大人の思い出ではなく、子供の笑顔!! そしてこれがジャガー必殺の~~~~!!!!」

 

「いや~すごいね彼女。言っていることは意味不明だけどその行動に隙が無い。多分だけど彼女、考えられるイシュタルの行動パターンを野生の勘だけで嗅ぎ分けて最善の攻撃を加えてるんだね。はっはっはっはっアルトリアとは別の意味で化け物じみた直感だよあれ」

 

 

          メガ        

                        

       「うにゃ────!!!」       

                            

                        

 

 

「きゃああああああああっ!!!」

 

根本的な問題(クラス相性)から、やり直してくるにゃ」

 

 なんか一瞬エフェクトみたいな感じで必殺技の名前が流れたように見えたそのキックを受けたイシュタルが爆発に包まれた。ふざけているように見えたその攻撃だけど実際の所相当なダメージだったみたいで、イシュタルは気を失い地面へと落ちていく。

 

「茨木ちゃん!! イシュタルの事を助けて!!」

 

「気が乗らんが仕方がない…………ふっ」

 

 イシュタルの事をは一番近くにいた茨木ちゃんに助けてもらいながら状況を整理してみても、これは完全に相手の力を見誤ったのと味方との連携の乱れが生んだ敗北。

「次はだれが相手になるにゃあ?」といいながらシャドーボクシングするジャガーマンを横目に、ここからどうすればいいのか悩んでいる私の前にベリアルさんが立つ。

 

「貴様の負けだ、藤丸立香」

 

「────ッ!! …………はい」

 

 負けてない! そう言いたかったけど、これ以上頑張ったとしても今の戦力でジャガーマンに決定打を与えるものがないのは確かで、負けを認めるしかない。

悔しさに拳を握りしめ、唇を噛み締めているとさっきまでのカッコいい姿はどこへやら、ベリアルさんに向かって手をさすりながらこびへつらうジャガーマン。

 

「や、約束通り見逃してくれるのかにゃあ……?」

 

「ああ、ここにいる人間たちの事についても今のところは何も関与しない」

 

「ベリアルさんっ!?」

 

 このまま生贄を捧げることで生き永らえる。そんな苦しみを続けさせるってこと? そんなの駄目だって声を上げようとしたけど、ベリアルさんが私の事を睨んできたため声が上げられなかった。

私たちが負けたから。ウルの人たちを助ける事が出来なかった……そんな自己嫌悪に陥っているとベリアルさんが私の顔を無理やり上げ瞳を合わせてきた。

 

「いいか藤丸立香。お前は敗者だ、アイツに手も足も出せなかったお前は何か意見できる立場ではない」

 

「彼らを救うことは諦めたほうがいいようだね立香ちゃん。ジャガーマンのことやウルの状況を知っただけで価値はある。後このままベリアルの事を待たせると何故だか知らないけど私が何か攻撃を受けそうだからさっ!!」

 

「ジャガーも早くいってほしい! 行かないとまた襲っちゃいそうだし、そしたら逆に倒されちゃいそうで怖いのよ!」

 

  ……悔しい。神性を纏うサーヴァントには同じ神性を持つサーヴァントでしか攻撃が通らない。だけどこっちにはイシュタルがいたから太刀打ちできる筈だった。今を思えば野生の勘でそういうの感じ取ったからジャガーマンはイシュタルの事を集中して狙ったのかな? 

 

 でも、私の指示が足りなかったのは本当のこと。今回はベリアルさんのお陰もあって命の奪い合いまで発展しなかったからよかったけど、本当だったら今ごろ……。

イシュタルと茨木ちゃんのスキルや戦闘時の動きの確認。あと2人の性格の熟知に相性……、茨木ちゃんもイシュタルも気難しいからなあ……。

 

「────よっしっ!!」

 

「おっ、立ち直りが早いねえ。流石6つの特異点を旅してきただけのことはある、ベリアルにおんぶにだっこじゃなかったんだね?」

 

 私たちの力が足りなかったからウルの人たちを救うことは適わず、しぶしぶ密林を後にするしかなかった。ベリアルさんならあの状況も、ウルの先に潜む三女神の内の一柱も倒せただろうけどそれはしない。流石にもう長い付き合いになるからベリアルさんの思惑もわかってきた。

 密林を歩きながらさっきの戦いを反省しながら気持ちを切り替えると、マーリンが嫌味に聞こえなくもないことを言ってくるけど無視しながらウルクと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はマシュのスキル“奮い断つ決意の盾”を発動! 次の私のターンまで相手はマシュしか攻撃できない!! 加えて“時に煙る白亜の壁”を使用してマシュを無敵状態に!!」

 

「この我の前でそのような小細工は無駄だ! 天草四郎の宝具【双腕・零次収束(ツインアーム・ビッククランチ)】。貴様のサーヴァントたちに付与されていた強化を全て剥がしダメージを与える!」

 

「うそ!? 天草ってそんな効果なの? ズルじゃん!!」

 

 ウルでの戦いから帰って来てから数日。私たちは傷を癒しながら茨木ちゃんやイシュタルとの仲を深めるために頑張っていると、そこに突然ギルガメッシュ王が現れて何でも海に調査があるから護衛しろという事で馬車に揺られながら海へと向かっていた。

 

 そんな私が王様と対戦してたのは【英霊召喚ボードゲーム 聖杯戦線】というゲームに興じていた。

実はコレ、戦闘経験とマスターとしての指示能力が低いということからスカサハ師匠が容易してくれたものなんだけど……ゲームというには本格的な遊戯なんだよね……。

 

 限られたコストから召喚するサーヴァントを選び、相手のマスターを打ち取った方が勝ち。1騎につき3つのスキルと宝具を有していてそれを活用して相手サーヴァントを倒すもよし、無視してマスターを直接倒してもよしなコレを今、私はギルガメッシュ王を相手に遊んでいた。

 

「あ~~~また負けた~~次こそはいけると思ったのに~~」

 

「ふん、この我に勝とうなど2万年は早いわ。実戦とはかけ離れたものだが、必要なものは確かに学べるように作り出されている、貴様には過ぎたほど良い師がいるようだな」

 

 常勝していて気分がいいのか、遠からずスカサハ師匠の事を褒めながら次の対戦の準備を始めるギルガメッシュ。

私はマシュ、茨木ちゃん、イシュタルの3騎制限(アナちゃんもいればもう少し上手く動けるかもだけど私が契約したんじゃないから無理)しながら代る代るギルガメッシュのサーヴァントたちを相手に臨機応変な対応を求められる。第6特異点の時には渡されてたんだけど、こんなにゆっくり出来たことなかったからできなかったんだよね。

 

「いよっしっ!! 次は勝ちますからねえ王様!!」

 

「ふっ、何度やろうとこの我が勝つことは変わらんという事を教えてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………負けました……」

 

 ウルクから少し離れた場所にある町。今現在、博樹とベリアルそして茨木童子の元にいた元盗賊団の面々はこの場所を拠点として活動している。

その中で、立香たちと別れてからのアナは何か考え事をしているのか足を組みながら蹲っていた。

 

「こんな場所で足踏みしている暇はないと言うのに……、あんなふざけたサーヴァントに私は負けてしまった……」

 

「そんなに気負わなくても大丈夫だよ、アナちゃん」

 

 そんな彼女の隣に、契約者である博樹が座り優しく声をかける。

 

「茨木童子やイシュタルが問答無用って感じでジャガーマンに攻撃しているとき、アナちゃんはマシュちゃんと一緒にあそこにいる人たちの安全を確保しながら戦っていたよね? あの時、周りの事なんて度外視で茨木童子とイシュタルを全力でサポートしていればジャガーマンに負けることなんてなかった。けど、アナちゃんはそれでよかったと思う?」

 

「…………」

 

 少し目を離したら見えないほど小さくではあるが、首を横に振る。博樹の言うように、アナがマシュと共にジャガーマンの道を遮り茨木とイシュタルが気持ちよく戦えるように支援していればあの戦いは勝つことができたかも知れないが、アナはそれ以上にウルに住む人々へ被る被害を心配していた。

 

 戦場に居合わせて死んだのなら仕方がない。他の英霊たちのようにそう割り切ればいい話なのだろうがアナはそれをしなかった。

 

「なら、負けてよかったんだよ。あの敗北には意味があったんだ」

 

「意味……? 負けることにですか?」

 

「うん。ウルの人たちを助けるためには勝利しなければいけない戦いだったかも知れないけど、負けたらそこで終わり。死んでしまうような戦いじゃなかった、()()()()。だから負けてもよかったんだよ」

 

 これは“今”を生きる博樹と“昔”生きていたアナとの価値観の違い。アナは敗北は即、死につながる時代を生きていたからこそ敗北することに恐怖を覚えるが博樹は違う。

負けても、失敗しても次がある。その失敗を繰り返さないための反省や改善点を考え改める。そうやって大人になっていった博樹だからこそ()()()()ことに迷いがない。

 

 アナのフードを外し、その頭の上に手を置き撫でながら博樹はアナに優しく語る。

 

「人間が嫌いでも、人間が怖くても。アナちゃんの心に“守りたい”って気持ちがちゃんと芽生えているならそれでいいんだ。それがあるだけで人間は、いいや。鬼だって神様だって()()()()()()、ましてやウルトラマンだってどこまでも強くなれるんだ」

 

「……ですが! 彼女を倒すためなら後れをとるな、倒して見せろと言いました!!」

 

「ベリアルさんの言う通り、彼女と()()()()()()()()で戦ってたら確かに勝っていたし、彼女に後れをとることはなくなるだろうね。けど、それ以上を望んでるんだよベリアルさんは」

 

 最初から、立香たちとジャガーマンの戦闘は立香たちの敗北に終わることをベリアルは分かっていた。分かっていたからこそ戦わせたのだ。

常勝し続けた立香とマシュに、そしてアナに敗北を知ってもらうために。墜ちた穴から見えるものがあることを知ってもらうために……。

 

「今芽生えた“守りたい”って気持ちを、ほんの少しだけ“誰かと手を握る”そんな勇気に返ることが出来たら、きっとアナちゃんはもっともっと強くなることが出来る。って戦いも何もかもベリアルさんありきな私がいっても信じられないかな?」

 

「……誰かと手を握る勇気。持てるでしょうか、こんな私に……」

 

「────大丈夫だよアナちゃん。だって君は花うりのアナ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と同じ名前を持っているんだから」

 

 

 

 

 




クラス相性も悪けりゃ茨木ちゃんとイシュタルの相性も悪い結果の敗北。
あと多分ジャガーの方に挿入歌流れてたせい。

多分海域調査と天命の粘土板のくだりはやらないと思います。イシュタルと茨木ちゃんがついていくだけで原作と殆ど変わりませんからね。


【人間が大好きで、人間と友達になりたい一心で花を渡しつづけた怪獣の女の子】
アナとの話の中で出した博樹しか知らないワード。一体だれが書いた物語なのか、博樹はその物語をずっと忘れていないくらいには心の奥に大切にしまっていた。


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完全にゼルガノイドと同じ道を辿ってしまうことが確定してしまったウルトロイドゼロ。カッコいいかと言われればダークロプスゼロってイケメンだったんだなって思うくらい。

ギャラファイにはコスジャスが、コスモスのほうまさかスペースコロナとフューチャー引っ提げてくるとは思わないじゃないですか。
 あと海外マン3人が活躍多くてカッコよすぎる。

唐突に発表されたジードテトライトクロスのビジュアル。プリミティブがアークベリアルの力を「守る力」として引き出しその鎧を纏ったような出立ちに正直震えましたね。
ジャック、コスモス、ネクサスの面影がない?ギャラライだってなかったんだから気にすんな!むしろどれだけベリアルさんに近づけるかって感じがして好き!本当に好き!!!!!!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


────この男を。許してはならないと、私たちの誰もが思った

 

 “天命の粘土板”未来を見る千里眼を持つ王様が、クタ市で瞑想に入った際に粘土板に天命を記したもの。

観測所で偽のエルキドゥに襲われるというハプニングはあったけど、無事にウルクへと帰ってきた私たちに王様はその天命の粘土板を探してこいといった。

 

 無事に、何でか調子が可笑しかったイシュタルや、寒くて暗い地の底のような場所に迷い込んだりはしたけど無事に天命の粘土板を入手した私が見たのが、さっきの一文に続く日記のようなものだった。

この世すべての悲劇、悲しみを知りながらも何もしない王、ただ笑うだけだった王への怒り、憎しみといった憤りのない負の感情が乗ったそれを、王様は魔術王を名乗る男、ソロモンを探るための数少ない手がかりだと言った。

 

「大、丈夫ですか? その……荷物が重いのでしたら、わ、私が変わりに持ちます」

 

「刃をこうして……こう! ────! うまくできました!!」

 

「あの……変わりと言ってはなんですが……、この花を、受け取ってくれませんか……?」

 

 粘土板のことは頭の片隅で考えておくとして、それよりも驚いたのがコレだ。あのアナちゃんが、極力ウルクの人たちと交流することを避けていたアナちゃんが、私たちがいない間に交流を持つようになっていた。まだ苦手意識的なのが拭えていないのかおっかなびっくりな感じだけど、そんな態度で気分を悪くするようなウルク民じゃないから笑顔でアナちゃんと交流を深めている。

 

 何かあった。あったんだろうなあ~、ベリアルさんかな? それとも博樹さんかな? 少なくとも、今はここにいない彼らのうちのどっちかがアナちゃんの背中を押したんだってことは分かる。

まだフードを被ったままだけど、そこから見える表情が笑顔になってるのは遠くから見てもわかったから、私にもその笑顔を向けてほしくて駆け寄っていく。

 

「お~~いアナちゃ~~ん!!」

 

「立香。どうしたのですか?」

 

「え、私の顔見た瞬間真顔になるのやめて。傷つくから」

 

 

 

 

 

 

 

「立香たちが言っていた通り、人ひとりとしていませんね」

 

「そうね、だけどみんな死んでしまったわけではなさそう。眠り姫のように眠っているんだわきっと」

 

 ギルガメッシュ王より北壁を超えた先にあるニップルの街で未だに耐え続けている人々を救出する任務へ向かった立香たちを他所に、ベリアルはアナとライムを連れて立香が天命の粘土板を持ち帰ってきたクタ市へと足を踏み入れていた。

 

 『三女神同盟』が出現した後、何の前触れもなく人ひとりいない静寂の街へと姿を変えたのがここクタ市だ。市民たちはみな、眠るように息を引き取ったと言っているがライムは死んだわけではないのだと証言を述べながら広場でくるくると踊っている。

 

「いるんだろう、隠れていないで出てきなよ」

 

「────何故、キミたちがここにいる。シュメルの人間たちを救いに向かったんじゃなかったのか?」

 

「偽のエルキドゥ!? 何故、貴方がここに!!」

 

 博樹が誰に対してでもなく宙に向かって声をかけると、建物の陰から偽のエルキドゥが姿を現した。

 

「魔術王が炉心として送り込んだ4つの聖杯。その1つを回収すること、それが君の目的だろ?」

 

「ッ! お前はどこまで!!」

 

 何のためにクタに来たのか、その思惑を見透かされた偽エルキドゥは怒りのままに鎖を出現させ博樹を襲おうとするが、その鎖はアナによって弾かれライムの魔術を受けて後方に下がる。

 

「……そうさ、僕の目的は君の言う通り聖杯の回収さ! この時代へ送り込むことで手一杯で散り散りになった4つの聖杯。2つは既にコチラの手に渡っているが後2つが見つからなった、そんな時だ。この場所で聖杯の反応を見つけたのさ! まあ、無能なカルデアのヤツらじゃ気づけなかったみたいだけど?」

 

 そう言ってその手に持った聖杯を掲げながら悦に浸る偽のエルキドゥ。

だが彼は根本的な所から勘違いをしている。確かに彼が聖杯を見つけたのはクタだったかも知れないが、立香たちがクタ市にいた時には()()()()()()()()()()()()()()()。 

 

「アイツが扉を開けなければ気づきもしなかった人形風情が。図に乗るな」

 

「ッ!? があっ!!」

 

 博樹から主導権を譲り受けたベリアルが相手が認識すら出来ない速度で接近し、その首を掴んで持ち上げる。

偽エルキドゥの持つ聖杯を奪取することは簡単だが、ベリアルはすぐにはそうせずエルキドゥを睨みながら語る。

 

「あの王と会えばすこしは変わると思ったが、まだその程度か……。あまりこのオレを失望させるな」

 

「────ッ!? (あの時コイツが戦闘に介入してこなかったのはわざとだっていうのか? 僕がアイツ(ギルガメッシュ)と邂逅することを読んでいて……!?)」

 

 立香たちを襲った観測所での突然の襲撃。その際偽エルキドゥは、立香たちの戦いに介入してきたギルガメッシュと一戦交えるとその場から離脱していた。

突然の胸の故障、魔神柱と同等の力を持っているはずの偽エルキドゥと賢王であるギルガメッシュならば誰がどうみても軍配は偽エルキドゥに上がる。それなのに彼は“戦えば死ぬ”と感じ撤退したのだという。

 

「次は、殺す! 母さんにとっての障害であるアイツは必ず殺す!! ……ただ殺す、殺せばいい、それだけでいいんだ……」

 

(ベリアルさん。彼のこと、私に任せてくれませんか?)

 

(……ふん、いいだろう。そこの人形に教えてやれ、人間どもの持つ()()を)

 

 母さんの為に、まるで自分に暗示をかけるように言い聞かせる偽エルキドゥを見て、ベリアルは腕の力を抜き彼の事を地面に下ろす。

困惑する偽エルキドゥを他所に、ベリアル、いいや博樹が彼の両肩に手を置いて笑顔を向けて彼に話をする。

 

「親が子供を縛っていい理由なんてない。子供は親の道具じゃない、いいなりの人形じゃない。ちゃんと自分の意思を持ってる、一つの命なんだ」

 

「ふざけるな! 僕は縛られていない! 道具なんかじゃない! 僕は僕の意思で、()()()()()()()行動しているんだ!!」

 

「それなら母さんのためになんて言うんじゃない!!」

 

 それは、普段温厚な博樹からはめったに出ないであろう怒りを孕んだ声だった。彼は偽エルキドゥの頭を掴むと強引に引き寄せその顔を自分の左胸に押し当てる。

 

「聞こえるだろ、この胸の鼓動。これと同じ音が君の胸からも鳴ってるんだ。たとえ土塊の肉体だって、血が流れていなくたってそこにあるのは確かな“心”だ」

 

「ここ……ろ……?」

 

 完璧な兵器なら、心を持たない武器だったのなら今の隙だらけの博樹の心臓を貫くのはありを潰すよりも簡単なはずなのに偽エルキドゥはそれができない。

身体からは殺すように信号が送られてくるがドクンっ、ドクンっと聞こえてくるその音が邪魔をしているのか何も出来ないでいる。

 

「誰かに縛られて、自分の意思を、心を正直に出せないんだったら、それが辛くて胸が痛むんだったらそんな鎖引きちぎればいいんだ。キミなら出来るよ、私もベリアルさんもそう信じてるから」

 

「…………はっ! ぼ、僕は何を……は、離れろっ!!」

 

 まるで母の手の中で眠る赤子のような穏やかな表情から一変して、博樹のことを突き飛ばし空へと浮き上がった偽エルキドゥ。

 

「経緯はどうあれ、キミたちを足止め出来た時点で意味あるものだった。今頃キミたちの仲間は彼女──“魔獣の女神”によって全滅しているころだろうさ! もしくは誰かが殿でも務めてカルデアの無能たちは逃げ出してるかも知れないけどね」

 

「魔獣の、女神……」

 

「そうさ! キミもこっちに来てくれて助かったよ! 彼女にとってキミの存在は弱点になりかけないからね」

 

 今までの調子を取り戻したというよりは先ほどの行いを忘れたくて早口で喋っているようにしか見えない偽エルキドゥは、こう言えばアナが悔しそうな顔をすると思い言葉を投げかけたがアナ本人はいたって冷静に「はい」と答えるだけだった。

 

「むしろ好都合です。今の私ではこの刃を彼女に突き立てることは不可能ですから。もっと、“小さな勇気”を育んでから私は彼女を止めると()()()()()()()()()()

 

「クッ(なんだ、アイツらといるとどこか故障するのか? それなら僕のさっきの行動にも示しがつく)」

 

「あ~~。……すまないんだが、そろそろ名前を教えてくれないかな?」

 

「は、はあっ!?」

 

 立香たちが全滅した、逃げ出したことに対して何か言おうとしたんだろうが、何時までも偽エルキドゥというのも忍びないということが第一に来てしまった博樹は、もう緊迫した状況とか関係なく彼に名前を聞こうと切り出した。

 

「────()()()()。キミたち旧人類を滅ぼし、キミたちにかわって世界を統べるヒトのプロトタイプ。それが僕の真名だ」

 

「そっか、じゃあキングゥ。あんまり、立香ちゃんたちのことを舐めない方がいいよ」

 

「何だって?」

 

「何度絶望に落とそうが、その度に立ち上がり更にその強さを増していく。覚えておけ()()()()、覚悟を決めた存在というのは、全ての宇宙において何よりも厄介な存在だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故、何故です!! 何故お逃げにならなかった!! 犠牲になるのは私一人でよかった、このままでは皆犬死です!!」

 

「ここで牛若丸が消えてしまうのが宿命なんだとしたら、私はそれを引っくり返す」

 

 至る所に血が流れ、戦場と化してしまったニップルの地で立香は腕を組み、仁王立ちしながら目の前に蠢く化け物に対して啖呵を切る。

 

「どんなに巨大で、どんなに強大でも!! 私たちはもっと怖くて強いウルトラマンをずっと傍で見てきたんだ!! アンタなんかちっとも怖くない!!」

 

 

 

 

 

 

 




【アイツが扉を開けなければ気づきもしなかった】
 3つ目の聖杯はある女神によって冥界側からは決して開けないようにする錠前の役割を果たしていた。が、天命の粘土板を手に入れる際に立香が冥界の扉を開き、そこから出てしまったために錠前だった聖杯が役割を終えクタ市に現れた。

 立香たちがクタ市を後にして現れたため気づかなかったのも仕方がないし、錠前として魔力を使い続けていたため魔力の反応も薄かった。


漸くキングゥの名前が出せた。毎回毎回偽エルキドゥって書くの面倒だったんですよね。しかし、博樹さんはこう人外に好かれるスキルかなんかでもあるのかも知れない。

さて次回ですが……ちょっくらGEEDしてやりましょうか


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10

本日はキャメロット公開日!宮野真守を元に作られたウルトロイドゼロに恐怖した後に主演宮野真守の映画を観てまた心を痛める。そんな1日……。

 やっぱり人造ウルトラマンなんて作っちゃ駄目なんだって、悲劇しか生まれない。

 曼荼羅配信開始したこのタイミングで活躍するのが主要キャラクターっぽそうな茨木ちゃんと牛若ちゃんというね……。タイミング良くない?
 アーツのジャグさん(ニュージェネエディション)、いつもの再販かと思ったらガッツリリファインされてるという愛され具合が違うな〜と思いつつポチしましたね、はい。

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「はあ、はあ、はあ、はあっ!!」

 

 魔獣戦線の向こうに取り残された市、ニップル。ウルクと同格の城塞都市だったからこそ、魔獣に取り囲まれながらも崩落することなく長らえてきた唯一の都市。

魔獣たちの攻勢に一定の周期が存在することを理解していた王様は、その隙をついて少しづつニップルに住む人々を避難させていたらしいんだけど、ここにきてついにニップルの備蓄が尽きたという。

 

 王様に集められた私たちは、ニップルの人たちが全員無事に避難するために救援に来たんだけど、着いた時にはすべて終わっていた。

 

 住民の人たちはみんな魔獣の餌にされていて、ティアマトの子供たちの中でも最大級の大きさを誇る怪物“ウガル”が立ち塞がる。

 

 茨木ちゃんとイシュタルもいたからいくら大きな魔獣だからと言って苦戦することはなかったけど問題はその後。

魔獣の女神が私たちの前に姿を現した。

 

『人類の怨敵。三女神同盟が首魁。貴様らが魔獣の女神と恐れた怪物────百獣母神、ティアマトが姿を見せてやった』

 

 腰から下は蛇そのもの、髪の毛は無数の大蛇ように変貌し、その手は巨大な鉤爪のように鋭く背中には2対の天使のような羽が生えた体長10メートル、蛇の身体の方も合わせると100メートルは超えている怪物。自らのティアマトを名乗るその女神の持つ圧倒的な力の前に為す術なくやられてしまうかも知れなかったその時だ。牛若丸が助けに来てくれた。

 

『ギルガメッシュ王が臣下。ライダー・牛若丸、押してまいる!!』

 

 足止めのため、私たちが逃げ切る時間を作るために駆けつけてくれた牛若丸。そんな彼女のことを信じてニップルを抜け、北壁に向かって走っているその時、ふと私の頭の中に過ったのはこの作戦が始まる前の日に言っていた牛若丸の一言だった。

 

『”貴様らにはニップル市への入場を禁じる。何があろうと、だ。王命である、破るなよ”』

 

 王様は弁慶と牛若丸にニップルへ向かうことを禁じた。────何か意図があるはず、王様とは少しだけだけど向かい合って対局したからわかる。あの王様は無駄なことなんてしない、まるで未来を見通したように行動する人だ。

 

「────ああそっか。そう言うことだったんだ」

 

「先輩っ? 立ち止まってどうしたんですか!?」

 

 弁慶と牛若丸はニップルで消える。それが視えていたから王様は運命に抗おうとしたんだ。だからあの2人をニップルヘは立ち寄らせなかった。

 

「ジーッとしてても、ドーにのならない……!」

 

「「「ッッ!?」」」

 

 私はシュメルヘ引き返し走り出した。みんな驚き固まるけど、すぐに私の後を着いてきてきてくれる。

 

『なななななにやってるんだい立香ちゃん! すぐに北壁に向かって走るんだ!! 今戻ったら牛若丸の犠牲が無駄になる!!』

 

「無駄にするんです!!」

 

 ドクターも通信越しに私の身勝手な行動を止めるよう注意してくるけれど、私はその言葉を強く否定する。

 

「今を生き残ることこそが最善なのは分かってます! だけど、このまま牛若丸が消滅することが決められた運命なのだとしたら、私はそれを認められない! 何が何でも覆してやる!!」

 

「ばっっっかじゃないの? 勝つ算段も何も無いくせに挑むとか頭おかしいんじゃないの? 付き合ってらんないわよ」

 

「じゃあイシュタルは空の上で見てればいい。茨木ちゃん!」

 

 1分だって時間が惜しいんだ。最初から戦う気のないイシュタルのことはこの際ほうっておくことにして私は茨木ちゃんに提案する。

 

「牛若丸に……いや、源氏に恩を売るって面白そうじゃない?」

 

「クッ……カッカッカッカッ!! そのような甘言に吾が乗ると思うての発言か? だがまあ、その狂気なまでに輝く瞳に免じて、今回は力を貸してやろう」

 

「う~ん。正直、彼女に何の策もなく挑むのはごめんしたいところなんだでけど……。ここで物語が終わってしまうのはさびしいからね、立香ちゃん私はどうすればいいかな?」

 

「マーリンは()()()()()()()()()

 

 この数日の間に戦闘での動きや諸々なことがちゃんと頭に入ってるのはイシュタルと茨木ちゃんだけ。正直マーリンが何が出来てどんな魔術を扱えるのかはよくわかってない。

だから勝手に動いてとお願いした。マーリンは一瞬驚いた顔を見せた後、すぐに笑みを浮かべて大きな声を上げる。

 

「そうかいそうかい。いや~()()()()()()()()()()()立香ちゃん。勝手にやれ、か……それは私の最もたる得意分野さ!!」

 

 あれ? 予期せぬ感じで最適解な答え出してた? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ああくそ……最後が蛇の尾の一撃とは。私の武運も、ほとほと格好がつきませんね────)さよならです、みなさ」

 

()()()()()だああっ!!! 茨木ちゃん!!!」

 

「────ッッッ!!?」

 

「まったく鬼使いの荒い奴だ。生きておるなあ牛若丸、このような化生如きに後れをとるとは……卑怯な手を使わなければ我が同胞を切れなかっただけはあるなあ」

 

「茨木……ッ!? 立香……殿?」

 

 宝具を放ち、相手の顔に刀傷をつけたけれどそれで終わってしまった牛若丸。空の上では身動きが取れず、ティアマトの蛇の尾にそのままがぶりと呑み込まれてしまうといったその瞬間に茨木ちゃんが救い出した。

【仕切り直し】頼光四天王の鬼退治から唯一逃げ延びた逸話に、渡辺綱に腕を切り落とされてもなお逃げ延びた逸話が昇華された“そういう機を捉え、あるいは作り出す”茨木ちゃんの持つ能力(スキル)

その能力(スキル)を使用することで絶体絶命だった牛若丸のことを助け、私たちの立つ隣に降り立つ。

 

 ここに私たちがいるのが理解できていない牛若丸だったけど、ティアマトの地を這うような太い声に目を覚ましたようだ。

 

「ハハハハハッ! 愚か、人間とはこうも愚かだとはなあ! 貴様の奮闘虚しく、人間どもの歴史はここで終わりだ」

 

「何故、何故です!! 何故お逃げにならなかった!! 犠牲になるのは私一人でよかった、このままでは皆犬死です!!」

 

「ジーっとしてても、ドーにもならなかったからさ」

 

「は……?」

 

「牛若丸が消滅してしまう運命を、尻尾を巻いて逃げながら見てるだけなんてまっぴらごめんでさ!」

 

 ティアマトの尾が這いずり回り、その尾を牛若丸が切ったことで出た血で染まった大地に堂々と両手を組んで立ち。牛若丸に言い聞かせるように、目の前のティアマトにも届くように大声で叫ぶ。ここに来た理由を!! 

 

「ここで牛若丸が消えてしまうのが宿命なんだとしたら、私は、私たちはそれを引っくり返す!」

 

「フハハ、随分な気迫だなあ。人類最後の希望、カルデアのマスター。だが、貴様らはここで終わりだ。この我の前に屈し、恐怖し、苦しんだまま死ぬがいい」

 

 最初に彼女を見た時から思ってたんだ。あれ、大きいだけで思ったより怖くないぞ? って。緊張とあせり、戦闘後だったから感じなかったのかもって思ってたけど違う。

 

「やれるものならやってみろ!! どんなに巨大で、どんなに強大でも!! 私たちはもっと怖くて強いウルトラマンをずっと傍で見てきたんだ!! アンタなんかちっとも怖くない!!」

 

「ハアッ!!」

 

 私の言葉が気に食わなかったのか、怒りのままに何束も存在する髪の束で私たちを攻撃してくる。

一呑みで終わらせようとしたのか、大きく口を開けた蛇が私たち喰らい口を閉じるのと同時にそこにいた全員が消滅した。

 

「────幻術の類か」

 

 気づいてももう遅い。茨木ちゃんが牛若丸を助けた時からあそこに立ってティアマトと喋ってたのはマーリンの作り出した幻術だった。幻術から言葉を通すことは可能だったから喋ることで時間を稼ぎ、今私は戦場が一望できる場所で牛若丸を応急手当しながら、みんなに指示を出していた。

 

「クカカッ! 魔獣どもの女神などとほざくわりにはあれしきの小細工にも引っかかるとは、程度が知れるなぁ!!」

 

 牛若丸がやっていたように蛇たちの上を走りながらティアマトへと接近していく茨木ちゃん。牛若丸のような絶妙なバランス感覚があるわけじゃないから蛇の身に爪を突き立て切り付けながら進んでいく。

他の蛇たちが攻撃してきたらそれを切り倒すか、別の蛇に飛び移るなどしてティアマトのことを翻弄していく。

 

「ッ!! この目障りな蠅がッ!!」

 

「吾をそこいらにいる羽虫と一緒にするな、吾は鬼にししてその首魁なるぞ!」

 

「そう、そうやって彼女一人に注視してくれるととても助かる。彼女とは……いや、彼女に力を貸した彼とは顔なじみだからね、私の力の通りが随分と良いらしい」

 

 ちょこまかと動き回る茨木ちゃんを鬱陶しく思ったティアマトが何か射出するために魔術の陣がその瞳の前に現れ茨木ちゃんに狙いを定める。

狙いを定めるっていってもあの巨体から放たれる攻撃の射程は広く、蛇が上手いこと茨木ちゃん移動する範囲を固定していれば必ず当たってしまう。

 だけど、そんなことはさせまいとマーリンが同じ円卓の力を宿したマシュに魔術で強化したのを見て、私もすかさず魔術礼装に積まれた魔術でマシュを支援する。

 

「消えろ」

 

「その巨体では誰と相対しても見下すことしか出来なかろう。ふっ、偶には空を見上げた方がよいぞティアマト。ハアッ!!!」

 

「マシュ!! “瞬間強化!!! ”」

 

「ハアアアアアッッ!!!」

 

 茨木ちゃんがティアマトの顔の周りを覆うように炎を浴びせ、その炎を掃い、視界を奪われたティアマトの頭を魔術による多重の強化を受けたマシュの盾が捉えた。

 

ドゴォオオオオン!!!!! 

 

「ガアッ!!」

 

 その巨体が地面に叩きつけられる。酷いくらいに揺れるけど視線をそらさずにティアマトを見つめ、私は茨木ちゃんに指示を出す。

 

「まったく鬼使いの荒い奴だ! いいか! 終わったら貴様らの分のけえきも吾が喰らうからな!! 花の夢魔よ!! 吾にもさっきの寄越せ!!」

 

「やれやれ人使いの荒い鬼だ。まあ私も人ではないんだけどね! そおら決めておやり!!」

 

 ティアマトが地面に叩きつけられた拍子にシーソーのように上空に飛び上がった茨木ちゃんが骨刀をしまい、左手で握りながらその右腕に魔力を込める。

握っていて右手を大きく開くと、茨木ちゃんの後ろに5()()()()が現れる、その槍1本1本に炎が燃え上がると1つに収束し、巨大な手へと変化した。

 

「行くぞぉ!! 抑えられぬ、抑えきれぬッ!!! 吾が負った屈辱、恨み、怒りッッ!! 受け止められるものなら受け止めて見せよ!! 【物忌破り・一条戻橋ィ!!!!!】」

 

 渡辺綱に負けて腕を切り離された時の怒りや恨みを一新に込めた茨木ちゃん宝具が、顔を上げようとしていたティアマトをもう一度地面へ叩きつけた。

しかも今度はさっきよりも地面に近いのと、一度目で大地が割れていたからティアマトの顔が胴体を連れて更に地面にめり込んでいった。

 

「鬼が……これほどの連携を……?」

 

「すごいでしょ、私も他の鬼と会って交戦したり会話したりしたことあるけど……あそこまでコッチに合わせてくれるの、多分茨木ちゃんくらいだよ」

 

 鬼というだけで嫌悪感を抱いていた牛若丸も今のを見て納得してくれたと思う。酒呑ちゃんのような自由奔放な鬼でもない、誰かれ構わず襲う鬼たちとも違う。人一倍周りを気にして、コチラの動きに合わせてくれる。それでいてちゃんと攻撃できるチャンスを逃したりしない。まだ付き合って短いけど、茨木ちゃんはすごく()()()()鬼なんだ。

 

 多分それを気づけなかったのって、鬼だからって最初から茨木ちゃんの事を否定的に見ちゃってたからなんじゃないかなって思うし。

 

 だからと言ってまだ戦いは終わってないから牛若丸の応急処置を終えてみんなと合流しようとしたその時だった。茨木ちゃんの一撃の重さで地面の揺れが大きいのかと思ってたけど、その音がどんどんコッチに近づいてきてる。

 

【見つけたぞ】

 

「────ッ、“ガンドッ!”牛若丸、私のこと抱えてマシュたちの所に走って向かうことできる?」

 

「招致!! 行きますよ立香殿っ!!」

 

 地面を伝ってティアマトの蛇の触手が私たちの前に現れた。幸いにも蛇一つならガンドで止めることが出来たから、私は牛若丸に頼んで直ぐにマシュたちの元へ向かうようにする。

けど、私たちの場所を捉えたティアマトは合流することを許さないために私たちを囲むように蛇が襲い掛かってくる。

 

「クッ(立香殿を抱えていては八艘飛びは負担が大きい。ならば!)立香殿、舌を噛みます故口をお閉じください!」

 

「分かった!!」

 

 四方から迫る蛇たちを回転と共に一薙ぎで切り伏せると、その回転によって地面に着いた後が何やら陣のようなものに変わる。

蛇が再生する時間も与えないよう手早く刀を地面に突き刺し、目を閉じて集中力を高めてる。

 

「遮那王流離譚が一景、【自在天眼・六韜看破!】はあっ!!」

 

「んなあっ!? 突然現れるな貴様ら!!」

 

「はは、すまない。急ぎだったのもで精度も不十分だったゆえ、座標に出来そうなのがお前しかいなかった。確り私たちを受け止て見せろ()()

 

「なんとぉお!?」

 

 地面が揺れた時のような体感的なものじゃなくて、脳が揺さぶられたような精神的な方の眩暈にもにた揺れを感じたと思ったら茨木ちゃんに真上に転移していた。

牛若丸の宝具の一つなのかな? そのお陰で窮地を脱し、みんなと合流することに成功した。私たち2人を受け止めた茨木ちゃんが大変そうだったけど……。

 

「まさか、貴様ら如きがこれほどまで我に歯向かってこれるとは思いもしなかったぞ。6つの特異点を超えるだけの膂力はある……。────だが貴様らは殺されねばならぬ。我らの手で、子の一人にいたるまで殺されねばならぬ!!」

 

「あちゃー、流石に2度も地面と濃厚なキスをさせられたせいでお相手は怒り心頭みたいだ。ま、今のこの状況化で彼女が放つであろう宝具に対処できるのはその盾しかないんだけどね」

 

「すう──。マシュ、準備はいい?」

 

「はい、マスター。絶対に、彼女の宝具を受け止めきって見せます!!」

 

「ほう、盾で我が魔眼を防ごうというか。最後の悪あがきとしては面白い冗談だ、娘よ」

 

 まだ、まだチャンスは残ってる。最初の段階から私たちの事を下に下に見ていたティアマトだからこそ流れるような連携で息つく暇さえ与えなかった。

今になって私たちを認めたように見えるけど、内心ではまだ下に見ているはず。その証拠にマシュの盾を、宝具の在り方を知らないはずなのに勝った気でいる。

 

「ギャラハットさん、ここにいる皆さんを守りきる力……私に! はあああああっ!!!」

 

 マシュが盾を構え宝具【いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)】が発現し、その城という盾が私たちを魔眼から放たれた熱線から守ってくれる。

余波によって周りが灰色に染まっていくけど、石のように変わっていくあれは……石化? 

 

「ドクターッ!! ティアマトに石化の魔眼って!!!?」

 

『キミの言いたいことは分かってるよ立香ちゃん。こちらでも解析の結果が出た。明察通り、彼女は魔獣の母ティアマトではない。彼女も真名は“ゴルゴーン”だ! 女神アテナによってその身を怪物に変えられ、人々に迫害され、多くの英雄たちを殺した存在。形のない島の三姉妹のなれの果て────いいや、おそらく聖杯の力によってティアマトの権能を持ちえた存在、複合神性、ゴルゴーンだ!』

 

「その忌まわしい名を、口にするなあああああ!!!!」

 

「ッ!! はあああああああああッッ!!!!」

 

 ────ッ! 真名を看破されたゴルゴーンは怒りと共に魔眼から放たれる熱線の量を更に増大させる。それに伴って熱線を防ぎ続けているマシュが少しづつだけの後退している。

 

「どうしてくれるんだいロマン。キミが彼女の真名を明かしてしまったからこうなったんだぞ? 万事休すじゃないか」

 

『ぼぼぼ、僕のせいだっていうのかい!?』

 

「マシュ!! 茨木ちゃん、牛若丸、手伝って!!」

 

「はい!」

 

「仕方がない」

 

 効果があるかは分からないけど、少しでもマシュの支えになれるように3人でマシュの背中を押し支える。

 

「マスターッ! 茨木さん……!! 牛若丸、さんっ……!! (駄目、このままじゃ)」

 

「案ずることはない、マシュ殿。貴女は心身ともにその盾を振るう資格を十分に備えている。もっと自信を持って! そして腰に力を入れましょうぞ!!」

 

「レオニダスさんッ!! もしかして、北壁からここまで!!」

 

 北壁の守りの要を担っているレオニダスさんが、私たちを助けるためにここまで来てくれた。

けど、ゴルゴーン放つ石化の熱線を潜り抜けてここまで来てくれたためか、見ればレオニダスさんがずっと被っていた兜は砕け、持っていた盾と槍もその手にはなくなっている。

それでもレオニダスさんは後ろから私たち全員を包み込むようにガシッ! とマシュのことを支えてくれると、ニカッと笑って見せた。

 

「心を強く持つのですマシュ殿。このような状況、笑って迎えるくらいが丁度いい! 我らの勝利が不変なれば! 彼の怪物に負ける通りはないッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 




イシュタルは加入方法があれだったために絆レベルが1かそれ以上にも満たない状態なため今回は戦いに参加せず。

立香ちゃんは魔術礼装・カルデアに加えてガンドも使える状態に成長しているので割と幅の広い戦闘が可能。
【仕切り直し】【物忌破り・一条戻橋】
茨木ちゃんのスキル&宝具。スキルの方は最近強化が入って名前変わっちゃいましたけどここでは健在。生存、生き残ることに関してだったら最高レベルの才能を持っている。宝具に関して水着のあれの本名称、普段は手の形をした憎炎の塊だが、そこに骨組みのように5本の槍が加わることで普段よりも威力&精密性が向上してたりしてなかったり?
バーサーカーであるため魔力消費が激しいはずだが契約している立香が疲れた様子はないため何か秘密があるのかも?


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ギャラファイでレジェンドが出た喜び?いいや違う、次回からようやくアーリーベリアルさんが出るんやああああああ!!

 ソラさんもギャラクシーレスキューフォースに加入したって事は度々出番があるかもしれないッテことですよね?

感想、評価お待ちしてます

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「なんだ、なんなんだアイツらは……」

 

 ニップルの遥か上空。聖杯を手に入れ、博樹たちから逃げるようにニップルへとやってきたキングゥは、そこで行われている戦闘を見て困惑を隠せずにいた。

 

「彼女の力はアイツらがどんなに集まろうと打ち勝てるものじゃない。それなのに何で、何でアイツらは諦めない……!!」

 

 サイズも、保有している魔力の量も桁違いの相手を前にしたら、他人を犠牲にして生き延びる。人間は必ずそう言う行動に出ると読んでいたキングゥの予想がまるっきりひっくり返っていた。

誰も犠牲にしないように、細い、いつ千切れてもおかしくないほど細い糸にしがみつきながら戦い続ける立香たちを見て、またキングゥの心臓部が不調を起こす。

 

「また……っ! 何だっていうんだよ……!!」

 

 悪態を吐きながらも目を背けることはなく、視線は立香たちに向けられていた。

その中で、顔をしかめながらしかして、自分でも気づかないうちに羨望の眼差しを向ける存在がいた。

 

 何の力もなく運命に争い続ける人類最後のマスター? 違う。

 その身に盾の英霊を宿し、残り少ない命を燃やし続ける少女? 違う。

 天賦の才を有しながら、その行動原理は慕う者の為に有り続けるライダーのサーヴァント? 違う。

 ろくでなしの花の魔術師なわけが無い。

 

「鬼……人と敵対するべくして生まれた存在であるお前は、何故そんな顔をしている……!!」

 

 敵対者であるはずの、人から恐れられ、嫌悪される存在であるはずの鬼の、しかもその中でも鬼の首魁を名乗る者が、人と手を取り合い戦っているその姿がキングゥには醜いまでに美しく見えていた。

茨木童子。ギルガメッシュによって召喚された当初からキングゥは彼女の存在を知っていた。人外であるために恐れられ、迫害の後にこの地を彷徨うことになっていた。自ら手を下さなくても勝手に死にゆくだろうと考え手を下さなかったことに今更になって後悔していた。

 

『たとえ土塊の肉体だって、血が流れていなくたってそこにあるのは確かな“心”だ』

 

(違う、これは身体(エルキドゥ)は反応しているだけだ! 人ではない彼が人と歩んだ記憶が身体に残っている。ただそれだけだ!)

 

「────ッ!」

 

「あら? こんな所で高みの見物なんていいご身分じゃないの? ねえ、偽のエルキドゥ」

 

 胸の痛みに理由をつける言い訳を何度も思考していると、突然キングゥに向かって魔力の矢が向かってきた。 牽制の意味を込めた一撃だったこともあって簡単に対処したキングゥが視線を向けると、そこには立香たちの戦いには参加していなかったイシュタルが睨んでいた。

 

「────ああ、姿が見えないと思ったらこんな所で暇を潰してたのか。なんだい? あそこにいないって事は邪魔者扱いでもされたのか」

 

「ああっ!? 偽物だろうが何だろうがアンタはアンタみたいね。いいわ、ここで潰してあげる!!」

 

「はあ、こっちは折角彼女たちを助けてあげようって言うのに。邪魔をしないでもらえるかな。それとも金星の女神は彼女たちがこのまま死んでしまうのがお望みなのかな?」

 

「はっ、そんな言葉鵜呑みにすると思って……ってちょっと待ちなさいよ!!」

 

 イシュタルの一撃によって目が覚めたのか、胸の痛みを感じなくなったキングゥはイシュタルの言葉など無視してゴルゴーンの石化の熱線を防ぎ切り、今にも崩れてしまいそうな立香たちの元へと降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは……。まだ手、震えてるや……」

 

 あの後、私たちにトドメを刺そうとしてきたゴルゴーンを止めたのは意外にも偽のエルキドゥ──キングゥだった。

 まだその時じゃない。真の目的は他の二神だとゴルゴーンを説得し、10日後に攻めてくることを伝えて鮮血神殿へと戻っていった。

 

 そのおかげで私たちは誰一人として欠けることなく生き残ることが出来た。

レオニダスさんは大丈夫だったけど、王命を破ったとして臣下をクビになった牛若丸はこれから私たちカルデア組と一緒に戦ってくれることになった。

 

『はははは! なんだ茨木、私の酒が飲めないのか?』

 

『ええい五月蝿いわ! けえきを寄越せと言っておろう! 後急に距離が近いわ貴様は!!』

 

 生き残ったお祝いの席で、私やマシュにもそうだけど、助けられた恩なのか茨木ちゃんにもワンコみたいにぐいぐい仲良くしようとする牛若丸と逆に怖がる茨木ちゃん。

 

『やはり私は弁慶殿にはなれない臆病者です。主君の危機であるというのに足が震え、私は貴方様の元へ向かえなかった! この臆病者の頸、今すぐ切り落としください!!』

 

『顔を上げろ常陸坊。お前は王命に従い生き残った。私が運が良かっただけに過ぎない、今後も王に従い一人でも多くの民を守れ。これは源義経である私からの命だ』

 

 こんな一幕もあったりときっと牛若丸が消えていたらこんな光景見れなかったんだろうなぁ〜って思いながら十分に楽しんだあと。みんなが寝静まり月が真上に立つような時間に目が冷めた私は、屋上で風に当たりながら今日一日を振り返っていた。

 

「隣、いいかしら?」

 

「イシュタル。戻ってたんだ」

 

「ずっと空から見守っていたみたいよ。声をかけるタイミングを逃してしまったみたいだけれど」

 

 まるで他人事のように自分のことを話すイシュタル。夜、私が一人になると話をしに現れる儚げな彼女は、今日もふっと現れ私の隣に腰をかけた。

くしゃみをすると金髪に、ていうか服装とかもまるっと変わるんだけど今日は最初から夜の姿で来てる。いつもは私がこれまで歩いてきた6つの特異点や微小特異点なんかの話を聞いてもらっていたけど、どうやら今日は彼女の方から話したいことがある見たい。

 

「ねえ立香、聞いてもいいかしら? 何故貴女はゴルゴーンに立ち向かえたの? 勝てる見込みも、何か驚くような策があったわけでは無いでしょう? あっ、それともベリアルが来るかもしれなかったからかしら?」

 

 これまでの旅の中で、私がどれだけベリアルさんに助けられてきたのか話していたからそう思いついたんだろう、両手を叩いて閃いた顔をするイシュタルに私は顔を横に振って否定する。

 

「確かにベリアルさんならあの状況を打破できる。むしろゴルゴーンを倒すのだって訳ないかも知れない。けど、それを信じて戦っていたらきっと今頃私たちの誰一人もここにはいなかった」

 

「??? な、なかなか難しいことを言うのね。だって貴方は彼をとても信頼しているのでしょう? ならその力に頼るのが当たり前じゃない」

 

「その当たり前を、当たり前だって甘えちゃダメなんだ」

 

 空を見上げながら、あれがそうなのかもって感覚だけで決めた星を掴むように手を伸ばしながら、私はイシュタルに思いを伝える。

 

「ベリアルさんってさ私のこと“藤丸立香”ってフルネームでしか呼んでくれたことないんだ。これまで出会ったサーヴァントの何人かは認められて名前で呼ばれるなんてことはあるのにだよ? だから私はベリアルさんに“立香”って呼んでもらえる私になるために足を止めない。どんな困難や理不尽が襲い掛かってきても足掻き続けるだ」

 

「…………貴女にそんな顔をさせるベリアルが羨ましいのだわ。んんっ、強いのね貴女は、それにとても眩しくも映る」

 

「ははは、強くなんてないよ」

 

 私のことを強いと褒めてくれたのは嬉しいけど、それは違うって否定するために私は両手を胸の前で組みながら話すイシュタルのその両手を包み込むように掴む。

 

「ひゃっ!? な、何をするのだわ?」

 

「私の手、すっごい震えてるでしょ? あの時感じた死がどんどん近づいてくる恐怖も、たった1分1秒生き抜くことも苦しかった胸の痛みも、まだ全ッ然収まってくれなくてさ」

 

 へへへってイシュタルに笑顔を向けながら私の弱味を曝け出したんだけど、普段のイシュタルだったら笑いなが励ましそうなところを彼女はポロポロと涙を流し始めてしまった。

 

「え? え? い、イシュタル?」

 

「違う、違うのよ。こんなか細い手をしているのに、すぐに折れてしまうような弱い身体しか持てなかったのに……それでも貴女は理不尽に挑み続けた。そして生き続け、今私の目の前にいる! それが嬉しくて、私が守りたいと思った、守護するに相応しい可能性を! 今ここにいるんだと思ったら涙が出てきてしまった……!」

 

 

 悲しくないのに涙が止まらないことに驚くイシュタルを見て、驚きと一緒に嬉しさが込上がってきた。神と人は違うって言ってたのに、とても人間らしい反応を見せるイシュタルのその姿が嬉しいんだ。

 

「イシュタル。涙は、嬉しいときにも出るんだよ? その涙は悲しくて出てるんじゃない。嬉しいって気持ちが抑えきれなくて涙になって出てきちゃったんだよ」

 

「そんな、そんなことって〜〜!!」と言って更に涙を流し続ける彼女の事をあやしつづけるだけで夜が明けた。

うん。()()と出会えたら、絶対にその手を握ろう! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁああ〜〜。ン?」

 

「今日もありがとうねえアナちゃん」

 

「いいえ、私がやりたくてやっている事ですからおばあさんが気にする必要はありません」

 

「あ奴は……、やはりそういう事か……」

 

 ゴルゴーンとの戦いの翌日。他のみんなが働きに出るなか魔力を使いすぎたや疲労が抜けないだの言い訳をして任された仕事をサボりウルクの町をぶらぶら歩いていた茨木は、腰の曲がった老婆が一人で切り盛りしているであろうと花屋の手伝いをするアナに興味を持った視線を向ける。

 

 すんすんと鼻で何かを感じとった茨木は、確信めいた笑みを浮かべ手伝いをするアナへと近づいていく。

 

「…………。貴女は……」

 

「なれと同じ()()()()だ。のう、()()()()

 

「ッッッ!! それを、どこで!!」

 

 茨木がアナの耳もとでその名前を呟くと、驚愕と共に後ろに飛び退き市民がいるというのに鎌を取り出し茨木に敵意を剥き出す。

 

「カカカッ! 我は鼻が良い。今は以前よりも調子がいい事もあってなあ。あれと貴様が同じ匂いをしているのがなあ」

 

「……ということは、この事実は貴女しか知らないと言うことですね。ワタシノ秘密を知ってどうしたいんですか?」

 

「どうもせんわ」

 

「え?」

 

 どうもしないという茨木の言葉にアナは動揺を隠せなかった。昨日の今日ということもあり、自分の重要性をアナは誰よりも知っているからこそ、彼女が何かしてくると思い込んでいた。

 

「だがまあ、鬼の首魁であるこの我が、あんな蛇ごときに遅れをとってしまったからな。その憂さ晴らしだ、少し遊べ」

 

「…………わかりました。勝ったほうには何かあるのでしょうか?」

 

「う〜む、そうさな。しどぅりの作るけえき、あれを賭けるぞ」

 

「!! ……負けられません」

 

 

 

 

 

 

 

 




博樹さん&ベリアルさん側はアナ。
立香ちゃんサイドは茨木ちゃん。
そしてその他がキングゥと3基のサーヴァントが今章のメインサーヴァントですからね、茨木ちゃんの出番が多いのは仕方がない。

アナは常時博樹と共にいるのではなく自由にメソポタミアに住まう人々と交流を持つように動いています。


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12

まさかセレブロの最終憑依先があの人だったなんて……。
最後まで卵を守ろうとするレッドキングの尊さに、人類を守る為の兵器を滅亡の為に、しかもそれはゲームだと言いのけるセレブロの屑さ加減が輝いた23話。

正直デストルドスのあの見た目は好き。怪獣の命を冒涜し、人類の努力を無にしたあの不気味で凶悪な姿はラスボスに相応しいかと。

EXPO THE LIVE ウルトラマンゼット。ゼットとジードの出会いの物語を描くって……配信は!配信は無いんですか!!情勢的に神奈川と大阪は厳しくないですか!!

あ、明日のギャラファイのサムネだけで無事死ねました……

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「クカカカッ! 力を抑えているにしては幾分動けるではないか!」

 

「貴女だって、本気を出していないじゃないですか」

 

 ウルク郊外で茨木がこっそり持ち出したケーキを食べながら地べたに座りながら休んでいる茨木とアナ。

茨木が遊びだと言ったのは本当だったらしく、アナに多少の怪我を負わせることはあっても本気で攻撃したりはしなかった。

 

「……正直、意外でした」

 

「む?」

 

「鬼、しかもその首魁と聞けば誰しもが怯え、恐怖し、震えあがる。周りのことなど気にせず自分の気の向くままに暴れ回る。それが私の鬼という存在に対して抱いていた印象でした」

 

「随分とまあずけずけと言ってくるではないか」

 

「ですが、貴女は違いました。私が本気で戦えないのを考慮するばかりか、近くにある作物に影響が出ないように立ち回り、炎を使うこともしなかった」

 

 アナの言うことは本当だ。郊外を選んだのも最初から本気で戦う気などなかったし、時間的に丁度人がいない場所を選んだのだこの鬼は。

英霊として鬼の知識も与えられていたアナにとって、知識とはまるで違う行動をする茨木にただただ驚くしかなかった。

 

 自分の気遣いを指摘されたのが小恥ずかしいのか、手に残っていたケーキを口の中に放り投げそっぽを向きながらもぐもぐと食べ、アナの言葉に返答する。

 

「鬼というのは殆どが馬鹿ばかりだ。略奪、暴虐、性欲、数えだしたら切りがないがまあ、自らの欲望の事にしか頭が回せんような奴しかおらん。その首魁たる吾までそうでは駄目に決まっておろう。酒呑のように己の持つ気質によって鬼たち纏め上げることが出来たとしても、率いるためにはそ奴らの事を知らなければどうにもならん。なればこそ、一番手っ取り早い方法が拳を合わせることだ」

 

 酒呑童子の“圧倒的なまでの鬼としての気質”に茨木も、他の鬼たちも惚れこみ崇敬していたため彼女に着いていくが、一騎当千の鬼たちを最後まで率いていたのは茨木本人だ。

その日だけの“楽”を選ぶ鬼たちの中で明くる日の“生”を繋げることを考えていたのはきっとこの律儀で真面目な鬼だけだろう。

 

 アナは、じゃあ自分と手合わせしたのは知ろうとしてくれたから? と疑問に思いそっぽを向く彼女の顔を覗き込もうとするとその尖った耳がほんのり赤くなっていることに気づく。

 

「貴様に何等かの際があることは分かっていたわ。何故直ぐにでも吾奴を討ちに行かぬのかと思うたが……穴、いや孔か……うむ、貴様に合う良い名だな」

 

「???」

 

「その胸に空いた孔。それを埋めるために人間どもと無理にでも関わっておるのだろう?」

 

 本当に少し手合わせしただけで理解したのか、アナが博樹たちと離れてまでこのメソポタミアに住まう人たちと関わる真意を言い当てた。

ただ、少しだけ語弊があるとすれば“無理にでも”というところだろう。

 

「人と接するのは今でも怖いです。今なお続く惨劇を引き起こしている罪悪感もありますし……けど、無理はしていません」

 

「んむ」

 

「私の“マスター”が、臆病風に吹かれていた私の背中を押してくれました。ほんの少しだけでいいから勇気を振り絞る、やってみれば意外と簡単なことでした」

 

 博樹の事を正式にマスターだと信頼したその言葉に、仮ではあるが立香と契約している茨木は一瞬顔をしかめるがアナの口から続く言葉に興味を示す。

 

「握ってみて、その人の事を少しずつ、少しでも知っていくと恐怖が薄まるんです。初めて関わる時は恐怖と緊張で頭が混乱しますけど、勇気を出したあとは楽になれる。充実しているとは、きっとこういう事をいうんですね?」

 

「随分とまあ回りくどいことをする。だがまあ、あれなる者を討つには突飛な搦め手も必要か……。どれ、興が乗ったわ! この大江山の首魁である吾も手伝ってやろう!!」

 

 アナの事が気に入ったからなのか、立香たちが引っ張っていっても戦闘以外では頑ななまで働こうとも動こうともしなかった茨木の重い腰があがった。

と、思った矢先だった。茨木が何かを感じ取ったのか、アナの背中に隠れると皮も骨格も今着ている服すらも変化させここウルクに住む成人女性と瓜二つの姿へと変わる。

 

「あ、アナ殿!! 丁度よいところにおりました!!」

 

「あ、牛若丸。ど、どうかしたんですか?」

 

「茨木の事を見ませんでしたか? 家で寝転がっていると思えば姿が見えず、聞けばここいらで剣を振るっているというではないですか! しからば、私も参加しようかと思いまして!!」

 

「……え、あ……」

 

加減も知らぬうつけ者と誰が戦うものか。牛若丸殿の気配を感じ取ったのでしょうか? 魔獣退治に行くと仰り城壁の外へ駆けていきましたよ?」

 

 重力を感じさせない身軽さで詰め寄られてしまったことと、突然姿を変えた茨木のせいで余計に頭が混乱してしまったアナが言葉を詰まらせいると、成人女性に化けた茨木が普段の彼女では絶対にありえないような口調で牛若丸に嘘を伝える。

 

「なんと! ならばどちらが多くの魔獣どもの首を主どの差し出せるか競争といこう! ありがとうございましたお二人とも! では!! ぽんぽこ、りん!!」

 

「────城壁へ向かうだけで宝具を使うなあの馬鹿狸わ」

 

 もうギルガメッシュ王の臣下ではないからなのか、立香に「そんなにかしこまらなくていいよ、もっと友達っぽくしよ!」と言われたせいなのか戦闘時以外はまるで童心に帰ったかのような態度の牛若丸をなんとか退けた茨木は、また何時牛若丸が襲来するかもわからないため変化を解かずにアナの手を握り都市部へと歩き出す。

 

「ほら早く行くぞ孔! 牛若に見つかるのもイヤだが立香らにも見つかると面倒だからな!!」

 

「ふふ……はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王様!! 緊急の要件って!!」

 

「遅いわ戯け!!! もう少し遅いと今度はこの我が過労死する所だったわ!!」

 

 ゴルゴーン襲来まで時間がない中、状況を一変できるような画期的な打開策があるわけじゃない私たちは、北壁の魔獣を倒したり、マシュは今度は一人でゴルゴーンの光線を受け止めきるんだってレオニダスさんと張り切って特訓してたっけ……。

 

 一応の穏やかさを取り戻した私たちの元に、王様からの緊急の招集がかかった。急いできたのに怒られたけど、それほど重大な案件ってことだよね……? 

よく見れば、味方に引き入れてから一度もジグラットへは足を踏み入れなかった茨木ちゃんもアナちゃんと一緒にいるし。

 

「ゴルゴーンめが襲撃してきてから早2日、魔獣たちの侵攻はある程度は収まったがその反面、新たな問題が浮上した! シドゥリ!!」

 

「はい。王が言う通り、ここ2日の内にウルク市内の衰弱死が多く報告されています。その異常すぎる事態からこれは三女神同盟の行いだとコチラでは判断しました」

 

 衰弱死……、ゴルゴーンにそんな間接的な行いが出来るとは思わないし、南米の女神も弱らせて殺すなんて回りくどいことはしないような気がする。

だとするとあと一柱……。

 

 私がイシュタルに目をやると、王様が鼻で笑ってそれを否定してくる。

 

「イシュタルめは三女神同盟ではない。ゴルゴーン、南米の女神、そして残る最後の女神の名は“エレシュキガル”!! そこの阿保女神と同じここメソポタミアの土地神にして冥界の女主人、死と亡霊の支配者だ!」

 

 ああ、そういう事か! と隣に並んでいたマーリンだけが知ったような顔するから牛若丸に目配せをして脇腹を小突いてもらう。

ふむふむ、イシュタルの依り代になった人が愉快な性格をしてたから善悪綺麗に分かれて、それがイシュタルとエレシュキガルになったと……。

 

 あれまって、ていう事はやっぱり()()()()()()()って……

 

『そうか……豊穣の女神であるイシュタルは人間の生を表すグレートアースマザーと言える。対して、人間の死を表すエレシュキガルはテリブルアースマザーだ。この二柱は表裏一体、同一の神性から生まれたものなのかもだ』

 

「うっわぁ……じゃあなに、アイツ今までこっそり私の器使ってたかもしれないの?」

 

 何かドクターが小難しい感じで説明しているけどようするにあれでしょ? ウルトラマンギンガとダークルギエルみたいな関係ってことでしょ! 

この特異点に来る前にベリアルさんのことを知ろうの会で直近で見たばかりだからわかりやすいや! 

 

「御託を並べるのはどうでも良いわ! して、その女神を討ち取れば、衰弱死した者たちは生き返る。そいう理屈でよいのだろう金ぴか」

 

「うむ。エレシュキガルのガラル霊どもが体力のないものの魂を抜き取っていったのであれば可能性はある。冥界の檻に閉ざされた魂を開放すれば眠ってしまった民たちも目を覚ますだろうよ!」

 

 このままでは一番疲れている我が冥界へ連れていかれてしまうわ! と冗談に聞こえない王様ジョークを聞きながら、私たちは冥界に向かうための準備をすることになった。

とと、そうだ。

 

「茨木ちゃ……」

 

「茨木、おばあさんを……他の方々を助けるのを、頼んでもいいですか?」

 

「顔も知らぬ奴らならばどうでもよいが、あの婆たちには菓子や食い物を貰ったからのぉ。その借りは返すとする」

 

「……あの2人、いつの間に仲良くなったんだろう……?」

 

「お前はその間死霊の相手でもしておれ。お前のその鎌なれば霊だろうが斬れるのだろう?」

 

「はい、任せてください茨木」

 

「いや!! 絶対にイヤよ!! なんでまた冥界になんていかなきゃいけないのよ!! 離しなさいよ!!」

 

「暴れないでくださいイシュタルさん!! 冥界へ向かう方法は貴女しか知りません!!」

 

 冥界に連れていかれた誰かを助けるために、来ることすら拒んでいたジグラットまで登ってきた茨木ちゃんと、そんな彼女といつの間にか仲良くなっていたアナちゃんのやり取りにほっこりしてたのに……。はあ……

 

「それじゃあ王様! 女神エレシュキガル攻略に逝ってきます! ……ガンドッ!!」

 

「あぎゃ!?」

 

「いまだよみんな! ガンドの効力切れる前にイシュタル縛り上げて連れていくよ!!」

 

「了解しました主殿!」

 

「手荒になりますが、すいませんイシュタルさん!」

 

「ちょ……なんで、アンタのガンドこんなに効くのよ…………」

 

「そりゃあ立香ちゃんの師匠が神殺しの影の女王様だからねえ。令呪を使用しなくても立香ちゃんと魔力経路が繋がってるキミなら結構簡単に縛れるじゃないかい?」

 

 

 

 

 

 

「…………あのイシュタルをあそこ迄飼い慣らせるのは一種の才能やもしれんな。どう思うシドゥリよ?」

 

「────ノーコメントでお願いします」

 

 

 

 

 

 

 




女神攻略の順を逆に、理由は次回語るかな?

【ベリアルを知ろうの会】
カルデアで定期的に開かれている、ベリアルの事を少しでも知ろうと言う事で博樹の持つウルトラマンの映像作品をみんなで見るという会。博樹の提案で悪トラマン系が出るヤツから見始めたため無事全員ネクサスで一回心が病んだとか病んでないとか……。

【牛若丸】
もうギルガメッシュの臣下ではなく、立香と共に戦う仲間になったため戦闘時以外は童心に帰ったような態度を取る。水着牛若ちゃんに近い生活&茨木と仲良くしたいが当の本人からは逃げられてしまう。
茨木ちゃんの変化超便利。


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13

 アーリーベリアルさんが……!アーリーベリアルさんがカッコ良すぎる!!!
まず映像作品で戦闘してくれただけでもありがたいのにウルティメイトウォーズ時代の話を簡易的にまとめてくれただけではなく、ちゃんと他の光の国の奴らはベリアルさんを笑っていたというのが分かったのが良い。全員が全員真っ白な訳ないんだって……。

 ケンとの正義に対する向き合い方の違いとか完全に解釈一致すぎて辛い。けどタルタロス、テメーはダメだ。
お前はジードの事を「お前の遺伝子から作られたウルトラマン(ただの模造品)」って言ったかも知れないが、アーリーベリアルさんは「息子」ってちゃんと認識したって事はもうお前に勝ち目はない。せいぜいトレギアのこと引き入れて笑ってろ。そいつ実技試験落ちてるから本編始まる前のZより明らかに弱いからな。

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「報告、報告────!! 王よ、失礼致します。ウルク南門より火急の報あり! 南門、消滅! 至急応援寄越されたし、との事!」

 

「敵襲か! ええい物見は何をしていた! 魔獣の群であれば襲撃の予兆があろう!」

 

 それが、敵影はただ一人だと、不敬を構わずジグラットまで駆けてきた兵士が叫んだ。

立香たちが冥界に最も近いとされるクタ市へ向かって数刻が経ち、直ぐには戻ってこれる距離にはいないであろうこのタイミングでの襲撃だ。

 

「“ケツァル・コアトル”……南米で引きこもっておった女神が今更なんのようだ! シドゥリ、民たちでは荷が重い! 戦えるサーヴァントたちはいないのか!」

 

「弁慶殿、そしてレオニダス王は今なお北壁で守りを固め、他のサーヴァントの方々は皆立香へ着いていってしまいました!」

 

 ゴルゴーン、エレシュキガル、『三女神同盟』の最後の一柱、南米の女神“ケツァル・コアトル”は素手で南門を粉砕し、ここジグラットに一直線で向かってきている。

ギルガメッシュ王の持つ聖杯を手にした女神が勝者である同盟。太刀打ちできるサーヴァントが不在の中で、対処を悩ませる王の元に一つの便りが届く。

 

「王よ! アナが……あの娘が単騎で南米の女神に向かって行ったと!!」

 

「むう……。まずは住民の避難が最優先だ! 足止めは任せ、お前たちは一人でも多くの民を救うために動け!!」

 

「「「「「はっ!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「ハアアアアアッッ!!!!」

 

「フフッ! 良いわ、とても良いわ! もっとお姉さんを楽しませテ!!」

 

 ウルク南門付近。エレシュキガルが差し向けてくるガルラ霊たちを駆除していてウルク全域を回っていたからこそ直ぐに駆けつけることが出来たアナは、アステカの衣装を身にまとった金髪長身の女神“ケツァル・コアトル”と交戦していた。

 相手はこちらを探るように攻撃をしてくるが、アナは最初から全力でウルクの民たちを守るために鎌を振るう。

 

「貴女の目的はっ、やはりギルガメッシュ王の持つ……聖杯ですか?」

 

「違いマース! 確かに聖杯は三女神同盟の最終目的ですけど、今日はここにる戦士たちを滅ぼしに来ただけデースッ!!」

 

「クッ!! させま……せんっ!!」

 

 振るった鎌を簡単に弾け飛ばしアナの手から離れるが、鎌はアナ本人と鎖によって繋がれているため、その鎖を引き寄せそのまま戻ってきた鎌を相手に叩きつける。

 

「Oh。アナタから悪性の香りを感じましたが、どうやら気のせいだったみたいデース。きっと善き心を研ぎ澄ましている最中なのでしょうネ。……ここで倒さなきゃいけないのが、残念なくらいデースッ!!」

 

「ッッ!!」

 

 アナの攻撃を受けても無傷だった彼女は、アナとの距離を詰めると足を払い、浮かんだその両足をがっちりと掴んで大きくスイングさせ始める。

その回転の勢いを止めぬままに宙へと放り投げると、ケツァル・コアトルは辺りの建物や木々を使って高く飛ばしたアナよりも更に高くへ跳躍。

 

 そうして両手両足を大きく広げて、自身の身体全体を使ってアナの事をプレスし、地面へと叩きつけた。

 

「ガハッ!!」

 

「ふうっ。さて、あと試合は47戦残ってるので、手早く済ませるとしましょうカ!!」

 

「…………まだ……、です……」

 

 渾身のフライングボディプレスでアナを倒したと確信したケツァル・コアトルが次の相手へと向かおうとしたがそれが出来なかった。

足にアナの鎖が絡みついていたせいで進行を邪魔されたのだ。アナは鎌を杖代わりにしながらも叩きつけられた衝撃で生まれたクレーターから出てきて、ケツァル・コアトルと向き合る。

 

「う~ん。手加減はしていませんし、立ち上がってくるとは思いもしませんでしたネ! ────いいの? 次は完全に貴女の霊核を砕くわよ?」

 

「はぁ……はあ……はあ……。そこの人は、私にお菓子を分けてくれました……」

 

「ん~?」

 

「彼は一緒に戦闘訓練をしているとき、小さな私の身体を心配してくれました。…………麦の上手な刈り方を教えてくれました」

 

 羊が嫌がらない毛刈りの方法。石材の上手な組み方。アナは、このウルクの地で自分が関わった人たちの事を忘れないように心がけていたから、周りで怯えている人、怯えながらも民を守ろうとする戦士たちの中に見覚えのある顔を見つけてケツァル・コアトルに伝える。

 

「だから……ここにいる人たちに……手出しはさせません……!!」

 

「────!!! そう。貴女が()()を隠しているのはそういう事だったんですネ。その輝く瞳、お姉さんとっても好みデースッ!」

 

 アナのことが大層気に入ったのか自分の身体を抱きしめ喜んだケツァル・コアトルは、だからこそ本気で迎え撃つ覚悟を決めたのか右腕に太陽の炎を纏わせる。

 

「に、逃げろアナちゃん!」

 

「はあ……はあ……はあ……ッ!!!」

 

 周りの人たちが逃げろと、立ち向かわなくていいと叫ぶがアナはその声を無視する。ここでこの相手を無視したらその魔の手が他の人たちの手に渡ってしまう。それだけは絶対に避けるためにアナは鎌を強く握りしめる。

 

「こ れ で !!! 試合終了デースッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間臭ぇ良い悪い目をするようになったじゃねえか、アナ。……ふんっ!!」

 

「カッッハッ……!??????」

 

「…………ベリ……アル……」

 

「遅くなってごめん。よく一人で頑張ったね、アナちゃん」

 

「……マスター!!」

 

 アナにラリアットを喰らわせようとしたケツァル・コアトルですら認識することが出来ない速度で現れ、逆にケツァル・コアトルは全力でラリアットを喰らわされジグラットに叩きつけられた。

攻撃を与えたのはベリアルだが、アナへ振り替えるとその意識は博樹へと移り、一人で頑張った彼女を労うために強く抱きしめ、目一杯に頭を撫でる。

 

「フフフ♪ すごいわ、すごいわ! 流石善性の頂点ね! 怖いおじさまの攻撃でも倒れないなんてとてもすばらしいわ!」

 

「……貴方がベリアルですネ。キツーイ一撃、貰っちゃいましタ」

 

 ジグラットに叩きこまれたのならそのまま王のいる玉座へ向かえばいいものの、ケツァル・コアトルはそんなものに興味はない。今興味があるのは目の前の存在だけだと言わんばかりに目をギランギランに輝かせる。

 一方で博樹はアナのことをライムに預け立ち上がると、その意識はベリアルのものへと変える。

 

「ムーチョ♪ ムーチョ♪ 貴方、とっても面白いですネ。慈愛に満ちた善性を持っていたと思ったら、突然テスカにも負けないくらいの悪性を放つんですもの。お姉さんびっくりしちゃった!」

 

 そう言いながらも果敢に突撃してくるケツァル・コアトル。普通だったら致命の一撃になるかも知れない攻撃を喰らわせてきた相手に少なからず恐怖を覚えるものだが、この女神はそんなもの一切なし楽しさを爆発させたような笑顔で突っ込んでくる。

 

「でも、人の対戦相手を横取りするのはマナー違反ね。まだ決着はついてなかったでしょう? そういうの、私の主義に反するのよネ」

 

「テメーの勝手をコッチに押し付けるな。押し付けるんなら……このオレ様に勝ってからにしろ」

 

 ケツァル・コアトルの連撃を簡単にいなし、彼女の頭をアイアンクローで鷲掴みにした状態で地面に叩きつける。

が、その状態からベリアルの手を両手で掴み自分が跳ね起きる勢いのまま回転を加えて、今度はケツァル・コアトルがベリアルの事を叩きつけた。

 

「舐めるな小娘!」

 

「ワーオッ! ガハッ!!」

 

 背中から地面に落とせると思ったがベリアルはそれを覆す。叩きつけられる衝撃を足だけで受け止め、驚く相手に頭突きをかまして吹き飛ばす。

超能力も、ギガバトルナイザーも、ましてや光線技も使わずにベリアルは吹き飛ばしたケツァル・コアトルの方まで走り追いかける。

 

このままでは絶対に負けることを確信したケツァル・コアトルは空中で態勢を立て直し、辺りの被害を考えずに両手に灯した炎から灼熱を放つ。

 

「み、みんな逃げろ!! 炎が迫って……こない?」

 

「────ッ! そんな繊細そうな技も使えるのね? パンチはルール違反ですが、仕方ありませーんっ! はあああああっっ!!」

 

「フッ……ハアアアアアっ!!!」

 

 周りに被害が出ないように灼熱の風すら通さない薄い膜で出来た高強度のバリアを発生させるベリアルを見て感心しながらも、目をぎらつかせ魔力を開放させる。

イシュタルと同じ金星の女神にしてトステカの太陽神であるケツァル・コアトルが右手に収束させた太陽の熱を込めた一撃。

主神クラスの彼女のその一撃はもはや太陽そのものをぶつけられるのと変わらない熱量と衝撃が込められている。

 

 ベリアルはその一撃を避けるでもなく、拳には拳で迎え撃つ! のでもなく。

人間大のウルトラマンの姿へと変身して胸で受け止めた。

 

「ベリアル……ベリアルだ!!」

 

「本当だ! 頑張れ、頑張れベリアル!!」

 

 ベリアルのその特徴的な見た目をウルクの民は忘れるはずもなく、一度北壁の魔獣たちを一掃してくれた英雄の登場に歓喜の声を上げ、声援を送る。

その声援にベリアルは鬱陶しそうな顔をしながらもフッ、と鼻で笑い、ケツァル・コアトルの拳の勢いが止まるまで受け止めきった。

 

「太陽の熱……。オレがかつて"求めた熱"は、この程度だったか。で、どうするアステカの太陽神、まだやるか?」 

 

「これは……ちょっとヤバイかも知れませんね。()()()()()を使わないと敗北は確定しちゃいマース……」

 

 宝具の真名開放もしていないがやったところで同じ、仮に自分の神殿に祭ってある()()()()()の力を使ってようやく傷をつけることが出来るかどうか。

流石の彼女でもこれ以上戦っても無意味だと察し、両手を上げて降参のポーズをとる。

 

「それに、ワタシは反則技を使ったのに貴方は最後までルチャ・リブレに反した戦いをしなかった。お姉さんの負けデース、焼くなり煮るなり好きにしてくださーい」

 

「誰が殺すか、お前には利用価値がある。アイツらの成長の糧になってもらうためにも、お前にはまだ敵対して貰わなきゃいけねえからな」

 

 敗北を確信し、自分の事を見下ろすベリアルを見て、彼がこれ以上戦う気がないことを理解したケツァル・コアトルは、その理由を問いかける。

何故トドメを刺さないのか、ここで自分を終わらせることが一番楽なのではないか? 

 

 その問いにベリアルは、彼女にはカルデアの、立香とマシュが成長するためのピースの一つとして存在して貰わなければ困ると、だからここで終わらせないのだと

 

「ん~~。貴方ほどの悪性を受け止めているアナタにも興味がありますケド。貴方がそれほどまで期待するカルデアのマスターさんに会わないで終わるのは確かに寂しいネ!」

 

 かくして、南米の女神ケツァル・コアトルの襲撃は、アナの迅速な対応とべリアルの助けによって人的被害は最小限に抑えることが出来た。

 

「おい、忘れ物だ」

 

「んにゃ? あ~気づいてらっしゃっいました? こりゃあ人間たちの回収は無理だし、あそこ迄飛んでったククルんの所まで送って行ってくれないかにゃ? ほら、貴方空飛べるんでしょ? びゅびゅーんびゅびゅーんてにゃ。え、ちょっと、そんな振りかぶらないで、あ、ちょ、らめ、そこはらめにゃ~~~~~~~~!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────一方、冥界へと向かった立香たちはというと…………

 

「エレシュキガル!」

 

「エレシュキガル!」

 

「茨木ちゃん!」

 

「エレシュキガル!!」

 

「エ、もう長い! エレちゃんで!!」

 

 冥界の七つの門を超える試練、通称【どっちの女神でショウ?】を行なっていた。

 

「ま、まあ? 本音と建前って言葉もあるって言うし? アイツに合わせるのがセオリーでしょうけど……ちょっと泣けてくるわね」

 

 

 

 

 




冥界へ下りだと思った?残念、ベリアルさん&アナ回です。
あんなの見せられて冥界に下りてなれるかっての!!

6章では博樹さんがメインだったため言及出来なかったですが、基本ベリアルさんは太陽関連のサーヴァントの事好きになれません。人工太陽(プラズマスパークタワー)の事があるからね!


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14

今年もよろしくお願いします!!
 Zが終わってしまったロスが割と大きかった作者。
最初あんなにネタにされていたベリアロクさんがあんなにカッコいいなんて……。

 正直アーリートレギアって宇宙警備隊の実技落ちてるから本編前のZより雑魚じゃんって思ってた時が、作者にはありました……。

 アブソリューティアンの力って何ぞ?それベリアルさんにも与えるのはヤバない?あの人その時代からエンペラの攻撃耐えれるくらいには防御力高いのに……。

感想、評価お待ちしてます

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 所で、ベリアロクが砕かれみんなの声援でゼットが立ち上がるシーン。
砕かれたベリアロクがみんなの言の葉をのせた光の粒子(リトルスターのようなもの)になってゼットとハルキと同化したと思い続けてるんですけど……ほら「ウルトラマンゼット」への祈りで光が輝き出したし。


「はああああああ!!!」

 

「フッ、ハッ!!」

 

「ッ! 茨木!!」

 

「吾に命令するでない!! はあああっっ!!」

 

 密林に閉ざされた都市、ウルのその先にあるエリドゥに建てられた南米の女神“ケツァル・コアトル”の太陽神殿の前で、私たちは戦闘を繰り広げていた。

()()を開放したアナちゃんの攻撃をいなし、畳みかけるように襲い掛かる茨木ちゃんの剣も、自身の鋸みたいな剣で受けて止めていく相手。

 

だけど!! 

 

「マシュ!!」

 

「はい! はああああッ!! 牛若丸さん!!」

 

「感謝します! マシュ殿!! いざ参らん!!」

 

 茨木ちゃんへ振り下ろされる剣の間に入り込み、上に高くはじくとその体制のままマシュは盾を足場にして、その上を跳ねた牛若丸がケツァル・コアトルに一閃を浴びせる。()()()()()

 

「隠していた神性を解き放ったことは認めますが一つ訂正を要求します」

 

「???」

 

「私はアナ。花を売る怪物の少女、アナです!!」

 

 

 冥界へ行って帰ってきたばかりの私たちが、なんでもう三女神同盟の内のもう一柱であるケツァル・コアトルと戦っているのか。

それは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「『えええええええ!!!!』」」」

 

「ほう、自ら公言するとはなあ。面白い」

 

 冥界下りを終え、三女神同盟の一柱()()()エレシュキガルを謎のお爺さんの助力もありながら味方に加えることが出来たその報告をしにジグラットへ足を運んだ私たち。

まさか味方に引き入れるとは王様の目を持ってしても分かんないだろうからきっと驚く! って思ってた私たちの方が驚く報告が待ち構えていた。

 

「あ、アナちゃん。もう一回言ってもらって良いかな? ちょっと冥界いってたから霊魂安定してないのかも知れなくて……」

 

「仕方ありません。────私の真名は“メドゥーサ”魔獣と成り果てたゴルゴーンのありし日の姿。それが、私なんです

 

「…………」

 

『まさか、そんな事って……。いやまてよ……』

 

 ずっと被っていた頭巾を外しその愛らしい素顔を見せてくれたアナちゃんからの衝撃の一言。

ドクターは何か解析に向かったのか席を外し、マシュも私と一緒で硬直。茨木ちゃん元から知っていたのかアナちゃんに近づいて話をしてる。

 

「ええと……。その事って他の人たちは?」

 

「ギルガメッシュ王の協力の得て、ここウルクに住まう人、北壁で戦う人たち全員に伝えて貰いました」

 

「大丈夫……だったんですか? その! 私たちはアナさんがとても信頼できる味方だと知っています! ですが……!!」

 

 マシュの言いたい事は最もだ。別々で召喚されていたとしてもアナちゃんが今までこのメソポタミアで殺戮を引き起こしていた張本人と同一存在だって分かったら、不満や否定的な人たちが出るはず。

後数日でゴルゴーンとの決戦が始まるなら、最後まで隠し通しても良かったんじゃ? 

 

「もう隠ししたくなかったんです。どんな否定も、どんなに拒絶されても私は、ゴルゴーンを討ちます」

 

「……そっか、それなら私からはもう何も言わない。これからもよろしく! アナちゃん!」

 

 決意に満ちた目。ちゃんと全部受け入れた上でここに立ってるんだってその瞳を見ただけで伝わってきたから、それ以上は何も言わずに私はアナちゃんと手を握った。

 

「貴様らが心配するようにその娘を批判する声が上がったのは事実だ。だがまあ、それを上書きしてしまうほどに、ソイツはこのウルクを歩いていたという事よ」

 

「だが、本当に良かったのかい? 君という存在は魔獣の女神にとって予想だにしない急所になるだろう。わざわざベリアルの力によって隠していた神性まで開放しなくてもよかったんじゃないのかい?」

 

「私に優しくしてくれたウルクの人たちへの恩返しも含めて、です。守れる力があるのに、隠していて守れなかった、そんな後悔をしたくないんです。それと……」

 

 感知とかそういうのてんで分かんないからなんか雰囲気変わった? くらいだったけど、そういう事なの? 

アナちゃんはマーリンからの問いに開放した魔力を使い接近し、鎌をマーリンの首に当てながら答えた。

 

()()()()()()()その意味合いも兼ねています」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな感じで、私たちは冥界から帰ってそうそうに女神攻略パート2を開始することになった結果が今の戦闘だ。

ここまで来るのに博樹さんもついてきてたんだけど、ケツァル・コアトルの太陽へ向かう途中で襲ってきた大量の竜種の相手を1人でするっていうから、私、マシュ、茨木ちゃんと牛若丸、それにマーリンとイシュタル、後はベリアルさんを見たら秒で裏切ったジャガーマンに、アナちゃんと結構な人数で戦ってるんだけど……

 

 

「まったく……。裏切り者は、眠ってなサーイ!!」

 

「んに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 強い。アナちゃんの話だと炎を操れるって話だったけど、その能力を使わない純粋な格闘能力だけでこちらと対等に渡り合ってくる。

頭を地面に突き刺されたジャガーマンを助けることは後回しにして、私はみんなが戦闘をしている中でケツァル・コアトルと話をする。

 

 どうして三女神同盟を組んで人類を滅亡させようとしてるのか、そしてエレちゃんのように味方になってくれる可能性もあるから彼女の人となりも。

この戦いが始まる前、彼女は人間()たちを愛してる。人間()たちと共存したい。人間こそが私たちの生き甲斐なんだって……。

 

「人間を愛してるって! 生き甲斐だって言ってた貴方がどうして人類を滅ぼそうとするの!」

 

「私は人間をいじらないと生存できない神性なの。宿主となった人間の内部構造だけじゃない」

 

 人間という種を長く存続させる。その為に一部を伸ばし、一部を削ることで環境に適応させる。それが彼女が考える命のサイクル、彼女自身の生命活動の意義。

私たちとは存在そのものが違う神だから見えるその結論。マシュたちの攻撃をなんなくさばきながら、本心でそう答えてくる。

 

「でも笑って! 自由だけは保障するから! 自由に、私という脅威から逃げ回ってくだサーイ! 戦いは楽しくなきゃいけませんからね、さあカルデアのマスターさんにそのサーヴァントも、一緒に楽しみまショ──!」

 

「「お断りだあああっ!!!」」

 

 偶然にも、私と茨木ちゃんの声が重なった。戦いを楽しむという行為は鬼である茨木ちゃんなら共感するものだと思ってたけど……。

 

「────。ま、まあカルデアのマスターさんが否定するのは分かります。否定してほしくなかったですケド。けど貴方は? 人を害し、人を喰らう、鬼である貴女からそんな言葉が出るとは思いませんでした」

 

あれら(人間)がいなければ吾らが鬼と呼ばれることもなくなる。ただそれだけのことよ」

 

 その小柄な体系には見合わない鬼の怪力でケツァル・コアトルと手と手を組み合いながら答えていく。

 

「人を喰らうは『生きるため』、人を害すは吾らを『忘れさせぬ』ため。認めたくはないが、吾らは人間たちが生存しているからこそ鬼として生存している。そのための争いに楽しみなど求めておらんわ!!」

 

 ケツァル・コアトルは神という人間よりも上位の状態から見た共存を求めたけど、茨木ちゃんは違う。

人と寄り添いあって生きてきた存在だからこそ見える視点で彼女を否定して見せた。

 

「やろう茨木ちゃん! 『生』を実感するために、乗り越えた先にある『楽』を掴み取るために!!」

 

 私の言葉にニヤリとは笑うと、掴みあっていた手を離し目の前に鬼火を放ち距離をとる。

 

「魔酒! 牛若ぁ! 少し時間を稼げ!! あの大うつけに目にもの見せてやる!!」

 

「わ、分かりました!!」

 

 マシュと牛若丸に任せ、アナちゃんの首根っこを掴んで私の隣にまで下がってくる。それと一緒に茨木ちゃんがやろうとしていることが念話で伝わってくる。

 

「わかったな立香!」

 

「違う。それだけじゃまだ足りない! あと一押し……マーリン!!」

 

 後ろの方でマシュたちを援護しているマーリンに考えを伝え支援をお願いする。それともう一つは……

 

「イシュタル!! ケツァル・コアトルにでっかいの!!」

 

「はあ? (今撃ったって当たるわけないじゃ……)ああもう仕方ないわね!」

 

 避けられることはわかってる! 狙いは地面、ケツァル・コアトルの視界を一瞬でもいいから奪うことなんだから!! 

 

「よしやるよ茨木ちゃん! アナちゃん!」

 

「はい!」

 

「しくるなよ、立香!!」

 

 

 

 

 

(目くらましね。なら次にくるのは……)

 

 イシュタルから落とされた一撃を避けながら、それが最初から目くらましの為のものだと理解したコアトルは、舞い上がった土煙の中からの奇襲に備える。()()()()()()()()()()からは意識を背けながら……。

 

「甘いネ♪」

 

「ッ!!」

 

 煙の中から襲いかかってくるマシュ、牛若丸、アナの盾、刀、鎌というそれぞれ別種の武器に合わせ素手で弾き、投げ飛ばすなどしていく中で違和感に気づき始める。

 

(イシュタルやあの魔術師は入ってこないでしょうケド…………。あの鬼の子は? 何で入って……!!)

 

「そういうことネー!! はあああああああ!!」

 

「きゃああああああ!!」

 

 何かに気づいたコアトルが、丁度盾を振るってきたマシュの事を掴み全力でスイングする事で無理やり煙を払う。

 そのままマシュを飛びかかろうとしていた牛若丸へ投げ飛ばすと、その違和感の正体に気づいた。

 

「鬼の子が化けてるのかしラ? ()()()()2()()と戦うのは初めてだから楽しみネー♪」

 

「「仕方ありません、ここからは隠すのはなしです。覚悟してください!!」」

 

 鏡合わせのように、同じ姿勢で、同じ挙動で鎌を構える2()()()()()が立っていた。

 イママデいたはずの茨木がいない事から彼女が顔も衣装も、武器すらも完全にコピーした事が分かるが、コアトルの神の目を持ってしても何方が偽物か本物か分からないほど精巧に真似をしている。

 

「「行きます!!」」

 

 それぞれのアナが左右に駆け出し、コアトルを挟み込むように鎖を放つ。

一直線に向かってくるその鎖を避けることは容易く、少し身体を反らすことで避けた。

 

「「はあああああっっ!!」」

 

 お互いがお互いの腕に避けられた鎖を巻き付けると、お互いを引き寄せ合いコアトルとの距離を一気に詰め鎌を振るう。

 

 一糸乱れぬその攻撃、コアトルは驚きと喜びを同時に味わっていた。

一体どれだけ相手の事を観察して、理解して、学んだのだろうと、そうでもしないと変化している相手の動きに合わせるなんて絶対に無理だ。なのに目の前にいる2人のサーヴァントはそれを成し得ている。

 

「すごいすごい! アナタたち、とても素晴らしいネ!! だ・け・ど」

 

右手で鎌を掴み、左足でもう一方を蹴り飛ばしたコアトルは、どちらが本物でどちらが偽物か当たりを付けたのか片方だけに集中して突貫する。

 

 まさかこんなにも早く見破られると思っていなかったのか、対応が遅れてしまい技をかけられ地面へ叩きつけられた。

 

「ガッ、ハッ!!」

 

「茨木ちゃん!!」

 

「うーん、正解でしたネー!!」

 

 0.何秒のズレ。2人のアナの攻撃に起きるその動きを捉えた上で、善性の頂点に立つケツァル・コアトルだから分かったこと。身に纏う悪性を見抜き攻撃を見まわせた。

 

 その攻撃で変化が解かれてしまい、アナの姿をしていた茨木が血を吐いて地面に伏す。善性の頂点だからこそ悪性を持つ茨木に気付けたのか、あるいは直感なのかは定かではないが、狙い通り茨木を倒したコアトルはそのままアナを倒そうと走る。

 

「────!! ()()()()()()

 

「? ────まさか!?」

 

 気づいた時には遅い。不敵な笑みを浮かべるアナはその左手をコアトルヘ向け、その背後には巨大な鬼の手が出現する。

 そしてコアトルが後ろを振りむこうとすると、地に伏したはずの茨木が彼女へ向けて瞳を輝かせていた。

 

「もう遅いです。【女神の抱擁(カレス・オブ・ザ・メドゥーサ)】!!」

 

(これは……石化の魔眼!!)

 

 アナが『未来(メドゥーサ)』に取得するモノを宝具として発動した一撃。

視界に捉えた相手を瞬時に石化させる魔眼によってコアトルの身体が石化していく。

 

「はあああああああ!!」

 

「その一瞬の隙を、待っていた! 走れ、叢原火!!」

 

 炎熱を纏った鬼の巨腕が、自身の魔力を外に放出させることで石化を防いだコアトルを握りつぶす。

石化を解くのに集中したためにろくな防御も出来ずにその異形の手に包まれ圧迫されてしまう。

 

「があっ! まだ……! まだ、ネええええええええ!!」

 

「立香ぁあっ!!」

 

「その土手っ腹に思いっきりぶちかませ茨木ちゃん! 【瞬間強化!!!】」

 

 握り潰された鬼の手から抜け出そうと全身に炎を纏わせ、こじ開けようとするコアトルに出来たその隙を逃さないように、立香はカルデアの支援魔術を使用して、炎をその身に身に纏うことで被っていたアナの皮を溶かした茨木へ魔力を強化を行う。

 

 そうして茨木は、その一撃のために残していた右手から5本の槍を出現させ鬼の巨腕を作りあげると、その腕に更に魔力を流し込む。コアトルを捕らえている鬼の巨腕よりも一回り大きい鬼の巨腕を携え、コアトルとの距離を詰める。

 

「如何な陽の光だろうと、吾の焔を! 憎しみを!! 受け止められるものならやってみろおおおおおお!!!!」

 

「ガアッ!! (ああ、ちょっとこれはヤバイかも……知れませんね)」

 

 ノーガードで握りしめられた巨拳から放たれるアッパーカットを喰らったコアトルが遥か上空へと打ち上げられていく。

さしもの彼女でもその一撃は堪えたのか、放り出された空中で態勢を立て直せないでいる。

 

「こ・れ・で!!! 終わりだああああああああああ!!!!!!」

 

(────ッ!! 聖杯! ……いいえ、このまま素直に負けを認めるのも……いいかも知れませんね)

 

 茨木の追撃の声に身体を捻り下へ視線を向けたコアトルが見たのは、何かを投げ込もうと鬼の巨腕で何かを握りしめて振りかぶる茨木。

神殿に祭った聖杯を使えば形勢逆転することも可能だが、人と鬼の可能性に満足したのか、茨木の攻撃を何もせず受け止めようとする。

 

「行ってこおおおおおい!!!! ()()()()()()()()()()!!!! 

 

「────はい?」

 

「受け止めてええええええ!!!! ケツァル・コアトルゥウウウウウウッッ!!!!!」

 

 茨木の腕から放たれたそれは、マシュの支援で防御の魔術が張られ弾丸と化した立香本人だった。

 

 

 

 

 

 

 




紐無しバンジーならぬ逆バンジー。
 立香ちゃんパーティで唯一悪性だった茨木ちゃんがいないと攻略できないコアトル戦。アニメじゃそこん所省いてましたけどね♪

 茨木ちゃん、そして真名を明かしたアナちゃんがいないと紐なしバンジー以外で勝利方法がないという……。ベリアルさんは戦う気ないんで……

次回、雑魚退治しているといった博樹さん。まさかそんなわけないじゃないですかーーーーーー!!


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15

ちょっかいかけようとしたらレジェンド出現。ちょっかいかけたらU-40最強の名が伊達じゃなさすぎて互角。今んとこいいとこなさすぎるぞタルタロス!

けどグリージョ登場と一緒に「Blue Spinning」が流れたのは最高。あの曲はあさひとつるちゃんの曲なんや……。一瞬でもいいからつるちゃん出てこないかな?

宇宙恐魔人ゼットの誕生もウルフェスの時と一緒で嬉しかったですねはい。

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「これで3()()()。最後の一つの所在は未だ分からずじまいだが、これだけあれば十分だろう」

 

 メソポタミアの遥か上空。高速で移動しながらその手に3()()()()()()を持つキングゥだったが、その顔に喜びの表情はなくむしろ曇っていた。

 

「ケツァル・コアトルが三女神同盟を裏切るかも知れない可能性は元から考慮していたから問題はない。だけど、問題はアイツだ」

 

 元より善性の頂点に立つケツァル・コアトルが人間たちを滅亡させる気がないことを理解していた。

だからこそキングゥは漁夫の利を狙うことにした。立香たちとの戦闘で疲労し、隙を見せたその一瞬で聖杯を奪い取ったのだ。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

『監視していて正解だったよケツァル・コアトル』

 

 茨木の攻撃を受けボロボロな状態で、全力で投げつけられた立香を受け止め立香の事を無傷で受け身を取ったコアトル。

『人間が大好き』なコアトルなら絶対に助けてくれる事に賭け、それに勝った立香に負けを認めたコアトルはそのまま女神同盟を辞め、立香と契約することを約束した。

 

 その時だった。コアトルと立香を含め、そこにいたサーヴァント全員が鎖によって身動きできなくなった。

 

『キングゥ……!!』

 

『これは元々魔術王が僕らに与えたものだ。僕らを裏切ったキミが所持していいものじゃない。おっと、危ないじゃないか()()()()()

 

『クッ!』

 

 縛られていながらも魔眼から放つことが出来る光線でキングゥへ向かい攻撃を繰り出すがあっけなく避けられてしまう。

当てられなかったことを鼻で笑おうとしたが、外したというのに諦めていないその瞳を見て、考えを改める。

 

『フッ!!』

 

『危ないじゃないか。……まさか僕の鎖をこうも簡単に抜け出すとはね』

 

『隙を付けると思うたが、なかなかどうして……吾のことを見ておるではないか』  

 

 「仕切り直し」のスキルを使ってキングゥの鎖から抜け出し背後から刀を振るう茨木だが、それもギリギリで反応したキングゥに弾かれてしまう。

初めて出会う自分のことなど眼中にないと思っていた茨木だったが、キングゥからすればここにいる誰よりも注意していたからこそ反応できた。

 

『…………君たちをここで終わらせるのは簡単だ。だけど、それじゃあつまらないからね。最後まで足掻き続けるといいさ』

 

『待ちなさいキングゥ!!』

 

 立香たちにトドメを刺さずに飛び去ろうとしたキングゥに一言あるのか、アナが声を荒げて叫ぶ。

 

『…………』

 

『ゴルゴーンに伝えなさい。貴方を止めるのは私だと、その命を刈り取って見せると』

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

(あの鬼だけじゃない。…………彼女を見ていた時も同じように胸の動悸が激しくなっていた……)

 

 ゴルゴーンの待つ鮮血神殿へ向かう最中、キングゥはなぜあの時立香たちにトドメを刺さなかったのか。

生かす必要性などない、彼女たちを殺せば人類の滅亡が確定される。それならばあの時トドメを刺すのが最適解だったはず。

 

 そう何度も何度も思考を巡らせていくうちに、キングゥはいつしか茨木とアナの2人の事を考えるようになっていた。

人と手を合わせるだけではなく、鬼と女神が背中を合わせて戦っていた。それもお互いがお互いを信頼しあった関係を作って

 

(だからこそ()()()()()()()()()()()。アイツらが彼女と向き合うその瞬間を。結果がどうあれその行く末を見届けてみたいと……)

 

「…………見せてみろよカルデア。いや、茨木童子、そして幼きメドゥーサ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったなカルデア一行! ではゴルゴーン迎撃作戦会議を開く!」

 

 

「現在、ウルク北壁にはゴルゴーン本隊の大侵攻に備え、残された兵力を集結させております。魔獣たちも杉の森に集結し、その数は目算で10万頭。こちらの十倍以上の数です」

 

 杉の森、最初に私たちのことを騙してキングゥに連れていかれそうになった所。あの森を抜けた先にゴルゴーンのいる鮮血神殿がある。

こちらの守りには弁慶さんにレオニダスさんが中心になってくれるから侵攻が始まったとしてもゴルゴーン本人が攻めてこない限りは1日は持ち続けると言ってくれた。

 

 その1日を使って私たちは最大戦力で鮮血神殿へ向かい、ゴルゴーンを叩く。

神殿の機能を停止させられれば、それに連なってゴルゴーンの機能を低下する。

 

「鮮血神殿を破壊するったってどうするのよ? 何度か飛んで様子を見ていたけれど、あれ神殿というよりは“要塞化した山”よ? あああれ? 巨大化したベリアルのビームでなら山一つ消し去るのなんて容易いんじゃない?」

 

「ベリアルの力を借りることはせん。そもそも風読みよりも予めん奴に期待するだけ作戦の成功率も下がるに決まっているだろう? 少しは頭を使えイシュタル」

 

 本当だよ、そもそもここにベリアルさんと博樹さんがいないんだからそこから察してほしいよイシュタルには。

鮮血神殿を破壊するのに使うのはケツァ姉さんの太陽神殿の後ろに突き刺さってた巨大な斧『マルドゥークの斧』だ。

 

 ウルトラマンサイズだったら片手で持って振り回せそうだけど、そんなの出来る訳ないから、今ケツァ姉さんの使役する翼竜三百匹の編隊が3組のローテーションを組んでウルクに向かってきている。

急いでも2~3日かかるっていってたから今必死になって頑張ってるんだろうな……指揮してるジャガーマンも

 

「よし! ならば作戦の最終確認をする! ゴルゴーンの大侵攻を待たず、我らは明朝、夜明けと共に行動を開始する。 カルデアの勇者たちによる、敵陣への単騎突入である!」

 

「全軍アナにつけろ。そうしなけれなこの戦いお前たちの負けだ」

 

「ベリアルさんっ!?」

 

「この我の軍すべてをアナにつけるだと? どういう事だベリアル」

 

 鮮血神殿の麓まで最短距離で向かい、マーリンの合図があり次第、ケツァ姉さんがマルドゥークの斧を投擲……。その斧で鮮血神殿の閉じられた扉を破壊し、深部まで突入して女神ゴルゴーンを討つ。

その作戦で行こう! ってなっていた私たちの前にベリアルさんがジグラッドに足を踏み入れた。 

 

 全軍って全軍、だよね……? 。北壁を守る軍も纏め上げたら誰もウルクを北壁を守る人がいなくなってしまうのにどうして……? 

 

「魔獣の女神。アイツの目にもうお前たちは映っていない。アイツは今、目に映らない恐怖に怯え、それを取り除くことだけを考えている。だからだ」

 

『────そうか! ゴルゴーンにとってアナちゃんは天敵。どうしても排除したい相手のはずだ。でも、だからといって10万の魔獣を全てぶつけてくるものかい?』

 

「それほどまでにゴルゴ―ンにとってアナは遠ざけたい存在なのだろう。今までこのジグラッドに足を踏み入れなかった貴様がそれを伝えにきたのだ。それだけで十分な証明になろう」

 

 そうだ、確かベリアルさんってこの特異点に来た最初の時にしかジグラッドに来てないんだ。だからここに足を踏み入れること自体がそれだけ重大なことを伝えにきたって証拠になった。

だから王様はベリアルさんの言葉を直ぐに信じて考えを頭に巡らせ始めた。

 王様が結論を出すまでの間に、カルデア側、ドクターの方からこの戦いで懸念しなければいけない部分の指摘をする。

 

『冥界の聖杯、太陽の聖杯、そしてゴルゴーンの持つ魔獣の聖杯。この特異点を作り出している聖杯も彼方の手にあることを考えると合計4つの聖杯を有していることになる。願いを叶える大杯ではないことは確認済みだけど、一つ一つが強大な魔力炉心だ。戦いが長引けば長引くほどコチラが不利になる』

 

「カルデアの事前の情報ではギルガメッシュ王の持つウルクの大杯を除いてこちらの特異点に送られた聖杯は5つ。残された最後の一つをこちらが確保できればまた違ってくるかも知れませんが……」

 

「────ないものに縋っては仕方がなかろう。聞けば聖杯を所持しているのはあの偽物(キングゥ)なのであろう? 吾奴がゴルゴーンの元に来る前に決着をつけてこい! この我の軍を、民の命全てを背負うのだ失敗は許されないと思え! 良いなアナ!!」

 

「愚問です。このウルクに住まう人たちを救うために、私は私の因縁に決着を付けます。……一人ではなく、ここにいるみんなと一緒に」

 

「カカっ! あの大蛇には借りがあるからのお。この鬼の力、貴様に貸してやる」

 

「ゴルゴーンに借りがあるのは私も同じです。この刃、今度こそゴルゴーンへ届かせて見せよう!」

 

 心配は無用……だったかな? 聖杯の有無に関わらずにアナちゃんたちはやる気満々みたいだし……。

結局、王様はベリアルさんの言葉を信じて全軍でアナちゃんの事を守りながら杉の森へと向かい、その間に予定通りマルドゥークの斧で神殿を攻撃。最後は私たちが神殿へ突入してゴルゴ―ンを討つという作戦に決まった。

 作戦開始は明日の朝、私もそれまでに準備できることはしておかなくちゃ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何なんだこの寒気は? 全身が震える……複合神性が保てない……! 理性()が、理性()(くる)いそうだ!」

 

(戻ってからずっとこの様子。しかも魔獣の生成すらもままならないなんてね……)

 

 鮮血神殿の深部。ゴルゴーンは寝床で見えない何かに怯え、暴れ回っていた。

それは今まで隠していた神性をアナが開放してから起きた現象。ゴルゴーンは本来いるはずのないその神性を感じ取り、恐怖を感じているのだ。

本来ならばこのように精神が安定しない場合は、キングゥが彼女の前に出てなだめているのだが、肝心のキングゥは遠目から見るだけでゴルゴーンに対して何もしない。

 

「ああっ!! 我が子らよ! この正体不明な原因を崩せ! 私に、女神ティアマトに安らぎを寄越せ!!」

 

(さあ、これで魔獣たちの狙いはウルクや北壁ではなくなった。どうでる、カルデア?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おばあさんっ!」

 

「む、おばばよ。貴様目が見えんのだからこのような場所を出歩くでない」

 

 明日に備え、手合わせをしようと歩いていた茨木とアナの前に、2人がずっと手伝っていた花屋を勤しんでいたおばあさんが壁伝いに歩いていた。

年のせいでもう殆ど目が見えていない彼女が外出することはなく、花屋でも動いていたの茨木とアナだったため、そんなおばあさんが外に歩いていることに驚き、身体を支えるために駆け寄る。

 

「ああ、よかった……。ジグラッドの方に歩けば、アンタたちに会えると思ってねえ」

 

「私たちに……?」

 

「むう、用があるのなら呼べばよかったであろう。吾の耳ならおばばの小さき声でも聞き届けることが出来たぞ?」

 

「ははは、そうだったねえ。けど、どうしてもアンタたちに会いたくてねえ」

 

 おばあさんは2人がそこにいる事を確かに確認するために、それぞれ握った手をぎゅっぎゅっと何度も掴みなおしながら感謝を告げる。

目が見えなくなって、店先にも出られない。呼び込みもできない。家族の反対を聞かずに続けた格好ばかりの花屋は、置いてある花をただ枯らすだけの場所でしかなかった。

 

 そんな毎日を、アナと茨木が変えてくれた。

 

「目が見えなくなって、心まで真っ暗になってた私の心を救ってくれたのは他の誰でもない。アンタたちだったんだよ」

 

「そんな、私たちはただ手伝いをしただけで」

 

 アナのその謙虚な態度を否定するかのように、握っていたその手を2人の顔へと移しその頬を優しく触れる。

 

「見えなくなった目にも、真っ暗になった心にも、光を感じることが出来るんだよ。アンタたちはこんな私の光になってくれた、だから最後に言いたかったのさ」

 

 今までありがとう。その何気ない一言は、人でなしの2人が生前決して言われることのなかった言葉だった。

 

「無口なところと、口が達者なところはまるで逆だけど。不器用で、怖がりなところは一緒なアンタたちに出会えて、長生きした甲斐があったよ……」

 

「はい。私もこのウルクで、おばあさんに出会えたこの奇跡を、絶対に忘れません」

 

「怖がりという点は否定したいがな。おばば、お主は生を全うした上で安らかに死ね。魔獣どもに喰い殺されるなど吾が許さん」

 

「ソイツは心配してないよ。だって、アンタたちが守ってくれるんだろう?」

 

 もう色を、絵を移さなくなってしまった目。それでもこの2人の事を信じているその思いを受け取ったアナと茨木は、自然と彼女に向かって満面の笑みで返した。

 

 

 

 

「「はい(ああ)」」

 

 

 

 

 

 

 

 




・ゲーム本編ではもう少しゴルゴーンに対して優しさ?見せるキングゥですけど、今現在ゴルゴーンへ向ける優しさ以上に自分の中で起こっている不具合と向き合うことに思考を割いているのでゴルゴーンのフォローできず。

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16

ようやく、ようやくゴルゴーンとアナちゃんの因縁に決着がつきます。
16話、6章の時ならもう獅子王との決着だったのに……バビロニア長い!そして茨木ちゃんとキングゥとアナちゃんとメインに添えたい子が多い!!


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誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


『頭ぁ! 魔獣たちのことは俺たちに任せてください。頭たちの邪魔はさせませんから!!』

 

『ふっ! 死ぬのも、戦うのにも怯えてたお前らが……。吾の邪魔をするなよ?』

 

『攻めながらも守り続ける。その大役我らにお任せください藤丸殿! 貴方たちを守り通し、鮮血神殿までの道を作りましょうぞ!!』

 

 ベリアルさんの予想通り、10万の魔獣は北壁へは目もくれずアナちゃんだけを狙って突進してきた。

茨木ちゃんと一緒に山賊をやっていた人たちがベリアルさんの特訓の結果、獣たちを駆って戦いに参加してくれたり、結界を破壊するだけでよかったマルドゥークの斧がマーリンのせいで神殿に直撃してケツァ姉さんの神性が半分まで落ちちゃったりとサプライズやハプニングが続いたけど、何とか鮮血神殿に辿り着いた私たち。

 

「これは……壁一面に繭のようなものがありますが……。中に何かの影が……」

 

「連れ去られた人間どもだ。愚かなものだ、人間に復讐するための道具の贄が人間そのものなんだからな」

 

「「「!!!!」」」

 

「やはりそうだったか。この地で殺された人間たちは皆遺体が残らなかったからね、想像は出来ていたよ……」

 

「だからってこれはやり過ぎよ。人間への復讐のために、人間以上の生産性を求めたなんて、本末転倒だわ」

 

 マーリンやイシュタル、サーヴァントのみんなは落ち着いているけど私とマシュは動揺が隠せない。

この繭一つ一つがゴルゴーンの魔獣で、この地で生きていた人たち……。魔獣に変容されている最中なのか、繭の中をよく目を凝らして見ると人間の身体に魔獣の頭が付いているような状態や、胴体だけが魔獣になり、頭は人間のままの人たちもいる……。

 

「先輩。……この人たちは生きています。変わってしまっていても、まだみなさん生きています。心臓を鳴らしています!」

 

「でも、助けられない……。せめて、せめてゴルゴーンを倒してこれを止めようマシュ?」

 

 悔しそうな顔をするマシュの手を握り、一緒に進もう! ってゴルゴーンを倒そうって伝えると、そんな私たち2人の頭をベリアルさんが掴んで繭から目を逸らせないように、頭を強引に繭の方へと向けさせられた。

 

「目を背けるな。あの蛇を否定するならコイツらの命も胸に刻んでいけ」

 

「「…………はい……」」

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく会えましたね。ゴルゴーン」

 

「醜い。……醜い醜い醜い!! なんだ! 何なんだ貴様は!?」

 

 鮮血神殿の最奥。まるで生き物の腹の中のようなそのただっぴろい空間の中心で、ゴルゴーンが右手で頭を抑えながら佇んでいた。

彼女は話をする気もないのか、アナちゃんを見るとすぐに髪の毛の蛇が襲い掛かってくる。

 

「やはり、アナタには私が見えていないのですね、ゴルゴーン」

 

「耳障りだ! その声を発するな! その瞳で私を見るな!!」

 

 アナちゃんの言葉を邪魔しないために、牛若丸と茨木ちゃん、そしてマシュがアナちゃん目掛けて迫ってくる髪の蛇を片っ端から倒していく。

見えていない。今のゴルゴーンにアナちゃんはどんな風に映ってるだろう? モザイクがかかって、その輪郭しか捉えられないとか? 

 

「何故だ! 何故届かない!! 消えろ、消えろ、消えろ!!」

 

「私が見えなくても、他のみんなは見えているはずです。アナタを倒すために、この地に住まう人たちを守るために私が()()()()()仲間()です!」

 

 アナちゃんの方はゴルゴーンとは違う。その瞳に確りと相手を映して、倒す覚悟。私たち全員で戦うんだって意志を示してくれた。

そんなアナちゃんの後ろにベリアルさんが立つと、両肩にその手をのせた。

 

アナ(アナちゃん)

 

「……はい」

 

「|変えてこい。お前の覚悟を見せつけろ《大丈夫、キミならみんなと一緒に運命を変えられる》」

 

「────はい! 見ていてくださいマスター、ベリアル!」

 

 私にはベリアルさんの声しか聞こえなかったけど、アナちゃんには博樹さんの声も聞こえたのかな? 

2人の手に背中を押されたアナちゃんは両手で鎌を強く握りしめて、ゴルゴーンへ向かって駆け出した。

 

「うがああああああ!!! その浅ましい姿を、私に前に現すなぁ!!!」

 

「行くぞアナ!!」

 

「行きましょうアナ殿!!」

 

「被せてくるな牛若ぁ!」

 

「なあに、これも仲が深まっている証拠だな茨木! はあっ!」

 

 アナちゃんの持つ不死殺しの鎌【ハルペー】。あれをゴルゴーンの心臓に届かせることが出来れば、彼女の不死性を無にすることが出来る。

その為の道を作るために、行く手を阻む髪の蛇たちを倒していくんだけど、茨木ちゃんと牛若丸は余裕そうに対処していく。

 

 そうだよね、これでゴルゴーンと戦うのは二回目だもんね。

私の方も慌てずに周りを見て、アナちゃんの死角から迫ってくる髪の蛇に向かってガンドを撃って止めたりしながら戦いを続ける。

 

「ベリアルが戦ってくれれば楽なんだがね。ああわかってるわかっているさ、これは彼女の戦いだ。キミという存在が手を出していいわけがない」

 

「本当面倒くさいわねアンタ。女神であるこの私が力貸してやってあげてるんだから、手の一つくらい貸しなさいよ……ねッ!」

 

「ぐっ! 目障りだ!! 死ねしねしね!!!」

 

 後ろの方に座ってだんまりを決め込んでるベリアルさんにマーリンとイシュタルが一言愚痴を言いながらも攻撃に加わってくれる。

イシュタルの正確な矢が彼女の鋭い爪を砕き、マーリンの魔術によってアナちゃんの地面を駆ける速度が上昇する。

 

 ゴルゴーンも負けじと髪の蛇、そして自身の瞳から光線を放ち始める。

その一つ一つに石化の効力が乗せられているため、みんな当たらないように、マシュは盾で防御したりとそれぞれがそれぞれの対処をする。

 

「させません!! はああっ!!」

 

 そんな中、ゴルゴーンの瞳から直接放たれる石化の魔眼は、アナちゃんも魔眼から光線を放ち相殺する。

だけど、このままじゃ近づくことが出来ない……。そうだ! 茨木ちゃんの手なら!! 

 

「茨木ちゃん!!」

 

「ちぃっ!! 魔酒、行くぞ!!」

 

「へっ!? 茨木さっきゃあ!!」

 

 茨木ちゃんに魔力を回し、その流れでどう動いてほしいのか伝え、茨木ちゃんは直ぐに行動に移してくれる。

茨木ちゃんは鬼の手を出現させ、その手でマシュのことを掴んで持ち上げる。

 

「機動は吾に任せろ魔酒! 貴様はその盾を振るうことだけに集中しろ!!」

 

「はっ、はい! 茨木さん」

 

「茨木! お願いしします!!」

 

「これも持っていきけ!!アナ!!」

 

 鬼の手にマシュを乗せた茨木ちゃん。そんな茨木ちゃんに向かって投げられた鎖を掴み、アナちゃんの事を宙へと投げ飛ばす。

そんなアナちゃんに向けて茨木ちゃんが自分の持つ骨刀を投げ渡した。

 

「借ります茨木!はああああ!!!」

 

 宙に飛んで逃げ場のなくなったアナちゃんは、鎌と骨刀の二刀流で迫ってくる髪の蛇たちを斬り倒していく。

アナちゃんの事を呑みこんでしまおうと巨大な口を開けた相手に対しても、鎌と骨刀を器用に使ってこじ開けるように切り裂いてく。

 

「「「「「「「「茨木! 私を足場に!!」」」」」」」」

 

「はっ! 吾の事を落とすなよ牛若ぁっ!!」

 

 牛若丸が宝具【壇ノ浦・八艘飛び】を使用し、8人に分身したその彼女の背を駆けながら茨木ちゃんがアナちゃんの隣まで近づく。

ゴルゴーンが接近してきたアナちゃんに向かって光線を放ってくるが、もう茨木ちゃんが追いついてる! 

 

「魔酒ぅ!!!」

 

「マシュ! その魔眼を! ゴルゴーンの復讐を否定しろ!!」

 

「はい! 【それは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷────顕現せよ、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)!』】

 

 ゴルゴーンの身勝手な復讐を否定するために、マシュがその盾を顕現させる。

ゴルゴーンという存在は人間たち生み出したもので、その復讐に正当な権利があるからって……。

 

「「私たちは、アナタを認めない!!」」

 

「ほざくなぁああ!! 人間ごときがあああああ!!」

 

 石化の光線と白亜の城がぶつかり、大きな爆発が生まれマシュたちの事を爆発が包む。

けど大丈夫。私はマシュの盾を、心を信じてる! 

 

「いっけええええええ茨木ちゃああああん!!!!!!」

 

「誰にものを言っている立香ぁ!!!」

 

 マシュを持っているのとは逆の手を巨大化させ、爆炎を掃いながらゴルゴーンへと迫る茨木ちゃん。

ゴルゴーンも対処しようと髪の蛇たちを向けようとするけど、それらはもう全て牛若丸が斬り落としてる。

 

「はあああああああああ!!!」

 

「クッ! ────-なにっ、貴様は!!!?」

 

 そのまま殴られると思ったんだろうけど違う。茨木ちゃんはその握った拳をゴルゴーン眼前で止め、その握られてた拳からアナちゃんが姿を現す。

そう、あの爆発に包まれているその中で、茨木ちゃんは鬼の手でアナちゃんの事を包み込んでいたんだ。

 

「来るな! くるなくるなくるな!! 私は原初の女神、ティアマト神なるぞ!!」

 

「────つないだ手と手のお陰で、私はここまで来ることが出来ました。これがすべてを否定して、自分の名前も、()()()()()()()()()の事も忘れてしまったアナタへの手向けです。はああああああっっ!!!」

 

「ねえ……さま……? がっ、があああああああああっっ!!!!」

 

 ハルペーがゴルゴーンの胸に突き刺さり、彼女の巨大な身体に罅が入りその霊基が消滅していく。

ゴルゴーンの身体に溜め込まれた魔力が全て開放され、この寝床全体が崩壊を始めるほどの衝撃が生まれたのと、もともとこの鮮血神殿はゴルゴーンの存在ありきのものだったからゴルゴーンが自身の後ろに出来た穴へと吸い込まれるように落ちていく。

 

 

「貴様も私なのなら共に死ね! 私の存在が認められないのならそれも貴様も同じだろう!!」

 

「お断りします」

 

 消滅するその直前まで諦めない。握りつぶす程の力は残っていなくても見動きを取れなくする事は可能だったゴルゴーンがその手でアナちゃんを掴んで離さない。

 

「この地に召喚されたばかりの私ならその終わりを望んでいたでしょうが、今は違います。だって私はメドゥーサではなく()()()()()()()()ですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスターの子どもが小さい頃に書いた物語?』

 

『そう、だから花売りの少女の作者は娘の(まな)で、その物語を知ってるのは私だけなんだ』

 

 それはいつかの夜。アナは自分の名前の元になった物語【花売りの少女アナ】の話を博樹から聞いてみたところ、その物語は著名な作家が書いた有名な話でも、一部のマニアの人たちだけが知っているようなマイナーな本でもなかった。博樹だけが知る物語だった。

 

『愛は小さいころ、ウルトラマンが怪獣を倒すと泣いちゃう子だったんだ。それがどんなに悪い宇宙人や怪獣でも。でも、見るのやめるって聞いても見続けてさ。そんなある日だったんだ、愛が画用紙に一枚の絵を描いてたんだ』

 

『絵、ですか?』

 

『そう。真ん中に愛が考えた女の子が怪獣がいて、その子が花を持ってる。そんな絵だったんだ。愛にこれはって聞くとさ』

 

────このこは()()! おんなのこのかいじゅうで、みんなとおともだちになるためにおはなをあつめてるの! 

 

『まから始まるのはママだけだからって理由だったかな? 愛は小さいこと自分の名前をアナって勘違いしててね。だからその怪獣の女の子の名前も自分と同じアナだったんだ。あとは、ちょうどその時幼稚園で泣いた赤鬼を読み聞かせて貰ったのも影響してたんだろうね』

 

────アナはかいじゅうだけどみんなとなかよしさんになるの! こまってるこも、ないてるこもたすけておともだちになってくださいっておはなをあげるの! 

 

『それは、花を売るとは違うのでは……?』

 

『はっはっは。そう友達の証が花だから売ってはないんだよね。子供の描くことだからさ、話が飛び飛びになったり、突然へんなことが起きたりして物語っていうのは確かにあれなのかもしれないんだけだ。あの話は私に心に一生消えることのない大切な物語なんだ』

 

 現に契約したナーサリー・ライムが共有した彼の記憶から取り出したのは、彼の心の本棚に保管されている本の中で最も輝いていたのが【花売りの少女アナ】だったのだから推し量るべきだろう。

 

「愛のお陰で、どんなに悪い相手にでも真摯に向き合えば理解しあえるんじゃないかって。ただ日々の平和を守る事が、悪人と決めつけた人たちを捕まえることだけが警察の仕事じゃないだって心を入れ替えるキッカケになった。愛は大きくなって忘れてしまっているけどね」

 

『そんな博樹の娘さんと同じ名前を、それほどまで大切な名前を私が名乗っていいのですか?』

 

『いいんだよ。まさかアリスちゃんがその名前持ってくるとは思っていなかったけど。アナの名前は今のキミにピッタリだからね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

(だから私はまだ、こんな所で死ねない!! 私は!!)

 

「生きていたい! みんなと仲良くしたい! だから、私はこの運命に背いてみせる!」

 

 アナちゃんの叫びが響く。茨木ちゃんから借りた骨刀を使ってゴルゴーンをこじ開け、引き抜いた鎌でその腕を斬り落とした。

 

「マシュ! 茨木ちゃん! アナちゃん!!!」

 

「ぐぅうう、魔酒! 貴様は、先に行け!!」

 

「きゃああ、茨木さん! アナさん!!」

 

「茨木、私の手を掴んでください! 早く!!」

 

 崩壊の揺れのせいでマーリンたちも助けに向かえない中でマシュ一人が飛んできた。

このままじゃ2人が崩壊の道ずれになる、そう思っていると穴の中からアナちゃんの鎖が真っ直ぐ伸びてきた。

 

 そしてそれを掴んだのは、一切今回の戦いに関与してこなかった、この崩落の中でもびくともしてないベリアルさんだった。

 

及第点だ。よくやったなアナ(お帰り、よく頑張ったねアナちゃん)

 

 

 

 

「────ただいま! マスター! ベリアル!!」

 

 

 

 




【花売りの少女アナ】
 娘が小さいころに描いていた落書きともいえる絵から生まれたお話。
博樹にとってはこの上なく大切な話だったためいつまでの心の中に残っていた。
実はファイリングして厳重に保管しているが嫁さんだけはその存在をお見通しだったりする。

・アナは宝具で未来の自分の可能性を先取り出来るため、ゴルゴーンの持つ怪力A+まで力を引き上げたことでハルペーと骨刀の二刀流が可能に。
イシュタルの出番は薄いけどその分牛若丸も茨木ちゃんも活躍させることが出来たと思うゴルゴーン戦。茨木ちゃんも牛若ちゃんも有能が過ぎる……。

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17

声が変わってしまったけど掛け声は変わらず、むしろ地球にきた頃よりも大きく成長したことを感じさせるメビウスがカッコいいのなんのって……。

そしてU-40の2人が並ぶとこんなにもカッコいいんだなと、タイタスのマッチョさにも引けを取らないCGとアニメと特撮が合わさったようなジョーニアスさんかっこよすぎない?

タグで博樹さんのことをおじさんマスターって表記してるんですけど、あれ博樹さんおじさんってよりお父さん、父親マスターなんじゃ?と思い変えました

前々から見る専ように使っていたTwitterのアカウントで更新情報なんかを投稿出来たらと思ってますのでよろしかったら
【https://twitter.com/cyocuo0841】


『なんでだ? いくら調べても聖杯の反応がない。魔術王の聖杯はゴルゴーンが持っていた筈なのに……』

 

 魔術王の聖杯を所持しているゴルゴーンを倒して一件落着。ってなるはずだったんだけどそうはならなかった。

倒したはずのゴルゴーンから魔力炉心だった聖杯のほうはゴルゴーンと一緒に消滅し、特異点の修復が始まる気配すらない……。

 

彼女()は“かつての神性”を聖杯の恩恵によって取り戻しただけ。魔術王の聖杯自体は所持していなかったんです」

 

 ベリアルさんに抱えられて戻ってきたアナちゃんが私たちにそう告げる。

てことはゴルゴーンに恩恵を与えた誰かがいるってことだよね。その誰かって……

 

 その答えに辿り着くという所で、誰かがぱちぱちぱちと拍手をしながら歩いてきた。

腰まで届く淡い萌黄色の髪、幼さを残したような人間離れした美しい容姿……

 

「キングゥ……!!」

 

「やっと……やっと理解することが出来た。人ではないお前たちが、人と手を取り合い本来勝てるはずもない神さえも穿った。それを見て、僕の()()が! どうしようもないくらい痛かった!! その痛みの理由が、ようやく判明したよ」

 

 そう言って、予備動作もなしに飛び出してきたキングゥは私やマシュには目もくれず。人ではないお前たちと言ったアナちゃんと茨木ちゃんに攻撃を仕掛ける。

2人ともさっきまでの戦闘の疲れが回復していないから、防御するのが一歩遅れてしまい身体の一部に傷を負ってしまう。

 

「随分なご挨拶ではないか、土塊が」

 

「クッ!!」

 

「茨木さん! アナさんっ!」

 

「今助けっ……ベリアルさんっ!?」

 

《「邪魔をするな。黙って見ていろ」《/b》

 

 襲われた2人の事を助けに入ろうとしたら、ベリアルさんが光の輪で私たち全員のことを動けなくしてきた。

どうして? って疑問は出るけど、この輪を自力で解除するなんて女神のイシュタルだって無理なことは分かっているから、無駄に叫ぶことはしないでベリアルさんの言う通りにする。

 

「ゴルゴーンを、彼女を見殺しにしてでも知りたいという欲が勝った。それで見つけた答えがこんなに醜いものだったなんて思いもしなかったよ」

 

 感情的になったキングゥの攻撃は単調なのか、それともまだ殺す気はないのか茨木ちゃんもアナちゃんもギリギリの所で攻撃を防いでいっている。

醜いって、あの2人を見てどうしてそんなことが言えるの? 

 

「僕は()()()()()。分かるかい? 完璧な兵器であるはずの僕が! 母さんによって作られ、人類を滅ぼす側であるはずの僕が!! よりにもよって君たちなんかに憧れていたんだ!」

 

「憧れる? 酔狂なものだなあ!」

 

「ああ、狂ってる。狂っているとも!! 君たちの泥臭い顔が! 絶望に立たされても諦めることのない顔が! それが人間と一緒にいるから得られていることが!! ココから離れないんだ! いくら頭で処理しようと消えない。考えないようにしても湯水のように湧いてくる! 邪魔だ、邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔なんだよ!!」

 

 可笑しくない。可笑しくなんてないよキングゥ! その感情を、心から思ったことを否定しちゃだめだ! 

茨木ちゃんとアナちゃん。この地で私たちとずっと一緒に戦ってきた彼女たちを見て心を揺さぶられたから、その原因である彼女たちを消すなんて間違ってる! 

 

「だから()()が目を覚ます前にキミたちを殺すことにしたのさ。殺せば君たちがチラつくことはなくなるだろうかねえ!」

 

「そこまでだ」

 

「グッ!? ベリアル!! またお前は僕の邪魔を!!」

 

 鎖で縛り上げた2人を最大の一撃で倒そうとしたキングゥの事をベリアルさんが私たちと同じように押さえる。

身動きが出来なくなったキングゥの髪を掴んで持ち上げる! ……てあれ? 

 

掴まないで……頭を撫でてる。もしかして博樹さんに変わった? 

 

「やっと、心に正直になれたんだね。えらいよ、キングゥ」

 

「気安く触れるな……」

 

「アナちゃんと茨木ちゃんが、キミの心の鎖を解いてくれた。けど、まだ鎖は消えてない。後は壊すだけだ、そうすれば大丈夫」

 

 私からだと博樹さんの言ってることが理解できないけど、キングゥはその言葉の意味を理解したのか先ほどまでの怒りの感情はなりを潜め、怪訝な表情を浮かべる。

 

「まだ僕は、母さんの縛りから抜け出せていないと。そう言いたいのかい? なら、これ以上どうすればいいっていうのさ!」

 

「どこに行けばいいのかは教えてやる。後は自分の心に従え────迷うなよ、取りこぼさないためにもな」

 

「え? え~~~~~~????」

 

「キングゥ。光の輪に拘束されたままどこかへ飛ばされていってしまいました……」

 

 あっちか、って言って方角を確かめた後壁とか関係なしにその方向にキングゥの事を投げ飛ばしてしまったベリアルさん。

その後すぐにメソポタミア世界すべてを揺らす時空震が起きるわ、マーリンは突然吐血して消滅しちゃうし訳が分からないことが津波のように押し寄せてきた。

 

「『七つの人類悪』のひとつ、原罪の獣(ビースト)ってなんなのさああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「グッ……。ここは……? エリドゥか? 何故ここに……?」

 

 ベリアルに投げ飛ばされ、空を飛んでいる途中で光の輪の拘束が解け態勢を立て直したキングゥは、今自分がいるのがエリドゥの真上だという事に気づく。

 拘束が解かれたタイミングも、ベリアルが当てずっぽうで投げるはずがないとキングゥもわかっているからこそ、直ぐに飛び立とうとせず空の上からエリドゥを観察してみることにした。

 

[6ma7! 6ma7! g@ffffffffffff! ]

 

「あれが母さんから産まれた新しいヒトのカタチか……。どうして人間たちを捕らえて集めてるんだ?」

 

 それは、生物というには余りにもおぞましい姿をした化物だった。

 腕の代わりなのか甲殻類の脚のような形をした鉤爪を肩を思われる部分から2本ずつ付けたような身体。

縦方向に開いた白い歯がむき出しの口以外なにもついていない奇妙な形をした頭部。

 

 見るだけで生理的な嫌悪感を催されるその新人類。黒紫色の肉体というのも嫌悪感を更に増長させている。

一億を超え、今なお増殖中だという新人類は、ペルシア湾海中から突如出現しメソポタミアの地を踏み荒らしていった。

 

 幼子のような無邪気さで人間を虐殺して回るその様は今現在立香たちが味わっている最中だろう。

そしてここエリドゥでは、虐殺は行われずメソポタミア中から人間が集められていた。

 

「あれは確か、ギルガメッシュの所の……? 大方、他人を助けて自分が犠牲にでもなったんだろう」

 

「何を、させようというのですか!」

 

 攫われた人間たちの中に、キングゥはシドゥリが混じっていることを目ざとく発見した。

シドゥリは攫われた人間たちの先頭に立つと、怯える人たちを守るように立つ。

 

 戦う力もないくせに何を馬鹿な事を、そう馬鹿にするキングゥだったが何故だか彼女から目が離せないでいる。アナや茨木を見ている時と同じように……。

 

[b¥d35]

 

[[[b¥d35! b¥d35! b¥d35! ]]]

 

 理解不能な言語を歯を鳴らし、ケタケタと笑いながら何かを強要してくる。

1人が逃げ出そうとすると問答無用で殺し、その男を喰らうと男が持っていた剣を拾いシドゥリたちの目の前に投げる。

 

「まさか……殺しあえと、そう……言いたいのですか?」

 

[[[b¥d35! b¥d35! b¥d35! ]]]

 

 シドゥリの答えが正しいと言わんばかりに先ほどよりも熱を上げて新人類は叫びだす。

そこいらにあった武器を集め、攫ってきた人たちの前に投げて殺し合いをしろと強要しているのだ。

 

「────」

 

 絶対に助けがくる。だから相手に乗せられてはいけない。恐怖と狂気に呑まれそうな中で、シドゥリだけは確りとした強い意志を持って反論し、他の人たちも元気づける。

ただ、それは新人類が見たいものでは決してない。シドゥリがいるとこれ以上進まないと理解したやつ等は、殺し合い云々よりも最初にシドゥリの事を殺そうとその爪伸ばす。

 

「やめろ。こんな意味の無い事をする必要はない! ウルクを襲うのはいい、敵を殺すのもいい。だがこれは違う」

 

「エル……キドゥ……?」

 

 その伸ばされた鉤爪がシドゥリの心臓を貫くよりも早く、キングゥが出した鎖がその爪の進行を防いで見せた。

目の前にいるのが偽物だと分かっていても、そう簡単に本物の事を忘れることが出来ないシドゥリはついエルキドゥの名前を呟くが、キングゥはそれに怒る様子も見せず、新人類と会話をしようと試みる。

 

「殺す意味の無い者まで殺す必要はない。いずれティアマト神の手で淘汰されるだけのものを殺し合わせようだなんて、オマエたちの行動は余りにも愚かしい!」

 

[[[────────::: ::: ke kekeke ケケケケケ!!! ]]]

 

「(一瞬で言語を習得した?)何だ、何が可笑しい」

 

 何も応えず、ゆらゆらと揺れていた新人類が突然に言語を習得し笑い声をあげる。

 

[邪魔 ウゴクナ]

 

「!? (何だ……身体、突然動かなく…………!!)」

 

[[[シャハハハハハハハハハ!!!!! ]]]

 

 キングゥが動かなくなったのをいいことに、新人類たちは気味の悪い笑い声を上げながら捕えていた人間たちを殺し始めた。

その醜い行為を止めようとキングゥが鎖を出そうとするが、身体が突然動かなくなったのと同じように鎖すらも出せなくなってしまい、何も出来ない。

 

「ああ、やめて! やめてください!! どうして、こんな酷いことを!!」

 

[ソンナノ、決マッテイル 楽シイカラダ]

 

[楽シイ。楽シイ。楽シイ。楽シイ。楽シイ]

 

[ニンゲンヲ 殺スノハ トテモ 楽シイ! ]

 

 まるで最後まで狂気に呑まれなかったシドゥリの事を絶望させるために、彼女には一切手を下さずに周りに人たちから順々に、より苦しんで死ぬように学習しながら殺すことを楽しみ始めた。

 

[母ハ 我々ニ 命ジタ。新シイ ヒト トシテ学習シロ、ト]

 

[ヒト トシテノ 在リ方 ヒト トシテノ 定義]

 

[ヨリ 人間ラシイ モノ ソレガ コノ 結論 ダ]

 

[ニンゲンヲ 殺スノハ トテモ 楽シイ! ]

 

[────ダカラ ツマラナイ オマエハ 邪魔]

 

(ああそうか。これが母さんの、ティアマトの出した結論か……)

 

 ティアマトの従うだけの人形だったキングゥだったならばアイツらの言葉に反論していただろうが、今のキングゥは違う。

 ベリアルや博樹、茨木童子やアナのせいで赤子同然だった心が成長した今のキングゥは、アイツらが言っていることが本当の事だと、自分はティアマトにとって眠っている間に良いように行動してくれればそれでいい操り人形でしかなかったのだ。

 

(つまり、今この身体が動かないのは……僕に埋め込まれた聖杯。魔術王の聖杯の本来の所有者がティアマトだから。彼女の真の仔であるアイツらの言葉の強制力によるもの……)

 

『鎖に縛られてるのは貴様自身だろ、これが笑えなくてどうする?』

 

(ああ、本当だ。笑えるよ、自分の愚かさが……真実を知るのが遅すぎた……)

 

 キングゥが絶望しているうちに、新人類による虐殺が終わり、残ったのはただ一人シドゥリだけとなってしまった。

目の前で民が無残に殺されていく様を見せられたシドゥリは、もう立つ力も残っていないのか地面に座り込んでしまっている。

 

[最後ハ────オマエダ]

 

[[[[[オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ オマエダ]]]]]

 

(ああ、彼女も終わってしまうのか……)

 

「──────エルキドゥ」

 

「!!」

 

 目が合った。風に消えてしまいそうな小さな声だったが、確かに自分だけど自分じゃないその名前を呼ばれたキングゥは下を向いていた顔を上にあげると、新人類に首を掴まれ持ち上げられているシドゥリと目が合った。そのシドゥリが口をパクパクとさせて何かを伝えようとしていることに気づいたキングゥは彼女の口元に注目する。

 

(どうせ助けてと救いを求めるんだろう? こんな道化でしかなかった人形に何を求めるっていうんだ……もう、僕に出来ることはなにも」

 

ありがとう

 

「────!!!」

 

『誰かに縛られて、自分の意思を、心を正直に出せないんだったら、それが辛くて胸が痛むんだったらそんな鎖引きちぎればいいんだ。キミなら出来るよ、私もベリアルさんもそう信じてるから』

 

 

「ああああああああああああああッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

グサッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ名前が出ていないから新人類という表現しかできない〇〇ムたち。
アイツらのセリフは常時揺れ動くことでケタケタ笑ってる感じや、くねくね動いてる感じになってたら嬉しいですね。読みづらかったらすいません。

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18

Twitter【https://twitter.com/cyocuo0841】を使うようになったけど更新以外で何を呟けば良いんだろうか?

この章序盤から出てきていたキングゥようやくジードの時。
長かった、本当に長かった……。

あ、一瞬でしたがランキング入りしてました。評価してくださりありがとうございます!!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


[ナンデ? ナンデ? ]

 

[[[ナンデ? ナンデ? ナンデ? ナンデ? ナンデ? ナンデ? ナンデ? ナンデ? ]]]

 

[ナンデ 動イテル???? ]

 

 最後の一人になったシドゥリの心臓を貫こうとした新人類の不気味な爪は、寸前の所で止まった。いいや、止められた。

何もない空間から波紋が広がり、そこから伸びた鎖が新人類の事を縛り上げ、その動きを封じ込めたからだ。 この場所で、そんなことが出来るのは一人しかいない。

 

 だが、そんなこと出来るはずがない。魔術王の聖杯を所持している限り、ティアマトの言葉と同義である自分たちの命には逆らえないはずだ。

だからそんな有り得ないことが起きたために、新人類たちは動揺し同じ言葉を繰り返しながらその存在を視た。

 

「はあ……はあ……ガハッ! ジーッとしたまま死を待つなんて嫌だからね。縛られたままじゃドーににもならないから自分の手で……僕を縛る鎖を引きちぎったんだ……」

 

[狂ッテル 狂ッテル 狂ッテル! キングゥ ()()()()()()()()!! ]

 

 胸の中心に大きな空洞を作り、口から血を吐き出しながらも鎖を操るために手を前へと翳すキングゥ。その傍らには彼のことを縛っていた魔術王の聖杯が投げ捨てられていた。

 

「当たり前さ……狂っていなくちゃグッ! こんな事してない!! 」

 

「きゃっ!? エルキドゥ……私を守って……」

 

「勘違いするな! 僕はお前に! 聞かなくちゃいけないことがあるんだ。死んでもらったら困るんだよ!!」

 

 鎖でシドゥリの事を引き寄せると、魔術王の聖杯を鎖で掴んで空の方へと投げ飛ばす。

新人類たちにとってその聖杯こそが何より大事なものであるため、一体残らずその聖杯に顔を向けたその隙を使い、周りを囲む新人類たちを一掃したキングゥはシドゥリの事を抱き上げてエリドゥから飛び立つ。

 

[馬鹿ダ 馬鹿ダ! コレデ母ガ目覚メル! ]

 

[[[[[[[シャハハハハハハハハハ!!!]]]]]]

 

 聖杯を手にした新人類たちが歓喜と狂気の笑い声をあげるが、キングゥは振り向くこともせずにウルクのある方角へ向かって真っすぐに飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

『アレはメソポタミア世界の基本とも言える素材────神代の砂と土……神の泥で構成された、これまでの生命の系統樹には存在しない個体だ』

 

 “人類悪”文字通り人類の汚点、人類を滅ぼしてしまう様々な災害の事を指したもの。

これは人類が発展すればするほど強くなって、その社会を内側から食い破る癌のようなものだって王様は言っていた。

 

 それは霊基として存在していて、人間の獣性によって七つの災害に分けて顕現する。

クラス・ビースト。ティアマトはそのビーストに該当するのだという。

 

『────以上の事から、ボクはあの個体を“ラフム”と名付けた。ティアマト神最初の子どもにして、泥の意味を持つもの』

 

 ラフム……ジグラッドに戻ってくる最中も何度か戦闘になったけど、その一体一体が強大な力を有していたというのにあろうことかドクターはアイツらはまだ“幼体”でさらに変化するという。

あれ以上強くなるなんて……うそでしょ? 

 

「これより、海より現れた生命体をラフムと称する! シドゥ……いや、そこな兵士長よ。ラフムの名を各部門に伝えよ。今後の伝達が楽になるからな」

 

「……王様、シドゥリさんは?」

 

 緊急事態だったから気が付かなかったけど、ずっと王様を支えていたシドゥリさんの姿がない。

王様はシドゥリさんの事は忘れてラフムの対策をしろっていうけどそんなこと出来るわけないじゃないか! 

 

 このままティアマトを止めなくちゃ人理修復は不可能だとかなんとか言うけどそんな事よりもシドゥリさんはって言及すると、王様は諦めたような表情で黙々とシドゥリさんの行方を教えてくれた。

 

「シドゥリであれば市民を庇い、ラフムどもに連れ去られた。以上だ」

 

「「「!!」」」

 

 じゃあシドゥリさんはケツァ姉さんがいないことをいい事に、ラフムたちが巣を作ったエリドゥにいるってこと……? 

それなら一刻も早く助けに行かなくちゃ!! 

          

 立場上個人の為に動けない王様にそう言うと、言ってくれるのを待っていましたとばかりに速攻で許可をくれたから私たちはケツァ姉さんの翼竜に乗ってエリドゥに向かうことになった。

どうか無事でいて……シドゥリさん!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がっ!! グッ!! クウウウウウウウッッッ!!!」

 

 エリドゥを飛び出して30分は経っただろうか? 自ら心臓を抉ったせいで、もう飛ぶことすらままならなくなったキングゥは、受け身すらとれないことを察するとシドゥリも含めて全身を鎖で巻いて地面へ不時着する。 

落ちたのは密林へ入る一歩手前にあった廃墟。直ぐに気が付いたシドゥリはすぐにキングゥの事を介抱する。

 

「はあ……はあ……、なんで……」

 

「喋らないでください、ああ血が、血が……!」

 

「なんで……()()()()()なんだ。……助けてじゃ、ないのか……」

 

 自分の死を悟った時。ラフムに持ち上げられ心臓を貫かれる瞬間、キングゥに向かって発した最後の言葉が『ありがとう』だった。

普通なら助けてや死にたくないといった台詞を吐くであろう状況で、シドゥリは笑顔を向けながらそう言った。

 

「……以前は、伝えられませんでしたから……」

 

「以前……? ああ……エルキドゥが、生きていたころ……か……」

 

「はい。私たちウルクの民は決して、アナタへの感謝を忘れはしません」

 

 シドゥリはもう長くないキングゥに向けて話を始める。孤高の王だったギルガメッシュ。神でもない、人でもない『天の楔』として生み出された彼の王は生まれながら孤独だったと。

神ですら理解できない広く遠い視野も、ありあまる力を持っていることを知っていても誰も彼もギルガメッシュを止めることは出来なかった。

 

「貴方は、孤高の王に人生を与えてくれました。 偉大な王への道を示してくれました」

 

 そこに現れたのが神によって造り出された『天の鎖』エルキドゥだった。

彼と出会い、戦い、認め合い親友となったことでギルガメッシュは人の生を実感できるようになり、民の尊祟を集める偉大な王へと変わっていった。

 

 だからこそウルクの民はそんな王を変えてくれたエルキドゥの事が大切だった。

 

「貴方がゆっくりと弱っていくその姿を見て、悲しまなかった者はいませんでした。 貴方の死を嘆かなかった者はいませんでした」

 

 もうない筈の心臓が鼓動しているのを感じた。ドキドキと締め付けるような感覚に覚えがあったキングゥは直ぐにソレが何なのかわかった。

“憧れだ”。キングゥはシドゥリに、ウルクの民たちにそこまで思われていたエルキドゥに憧れた。

 

「────だから、ありがとう。()()()()

 

「え? なんで……僕に、その言葉をかける? それは、その言葉を受け取るべきなのはエルキドゥのはずだろ?」

 

 だから、思考が停止するレベルで慌て始めた。シドゥリが『ありがとう』の言葉をエルキドゥではなくキングゥに投げかけてくるとは思わなかったから

 

「その心が違くても、私たちの友ではなくなってしまても。貴方は自分の命を引き換えにしてでも、私のことを助けてくれました。だから、ありがとう」

 

「────」

 

 足りなかった何かが、満たされていく。胸に空いた大穴が塞がってしまうようなほど大きな何かがキングゥの心を包み込んでいく。

口から垂れた血を拭きながら、頬に手を添えながら言ってくれたシドゥリのその熱を感じながら、キングゥの瞳から自然と涙が零れ落ちる。

 

(ああ……こんなもので良かったのか……。たった一言言ってもらえるだけど“生きている実感”を得られた……)

 

「────守りたい」

 

「え?」

 

「君を……、ウルクの民たちを守りたい……。魔獣たちをけしかけておいて都合のいい話かも知れないけれど……やりたいと思った……! ()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 母親(ティアマト)の縛りから解放されて、ようやく自由になったキングゥの心に溢れてきたもの。

恨まれるのは当たり前で、都合が良いことは分かっている。それでも“守りたい”と、キングゥの心とエルキドゥの身体が初めて合致した瞬間だった。

 

 

 

 

「なら、こんな所で横になってる場合じゃねえだろ」

 

「「!!」」

 

 その声と一緒に、キングゥの胸に空いた大穴の中に何かが投げ入れられた。

反応できず、ただただそれを受け入れたキングゥは、魔術王の聖杯よりも自分の身体に馴染むソレに驚きを隠せなかった。

 

「これは、王が所持していた()()()()()()? どうして貴方がコレを」

 

「お前に渡すと言ったら放り投げてきたぞ、贔屓してなにが悪いとか言ってな。どうだ? あんな蛆が造ったモノよりも、馴染むだろう?」

 

「あ、ああ……。だけど、どうしてコレを僕なんかに!」

 

 ウルクの大杯。ギルガメッシュが所持し、三女神同盟が競い合っていた聖杯と同じだけの魔力が込められているソレが、魔術王の聖杯を代替えの心臓にしていたキングゥの新しい心臓に成り代わったのだ。

エルキドゥの身体だからなのか、ウルクの大杯は魔術王のソレ以上にキングゥの身体に馴染み、一瞬で胸に空いた大穴を塞ぎ身体を全快まで回復させた。

 

 だが腑に落ちない。どうしてそんな大切なものを敵であった自分に与えるのか? 理解できずに彼に声をかけると、彼はいつの間にか目の前に立っていてキングゥの頭に手を置く。

 

「君が心を、ちゃんと理解できたから。“守るべきもの”を見つけたからだよ、キングゥ」

 

「…………」

 

「どうすればいいかはアナちゃんに伝えてある。あとは任せたよ、キングゥ」

 

「あ……!」

 

 それだけ言って、ベリアルと博樹はウルクとは真逆の方向。ティアマトのいるペルシャ湾へと飛んでいく。

一方的に伝えられて、立ち尽くしてしまったキングゥの肩に手を当て微笑むシドゥリ。

 

「ありがとう。伝えられませんでしたね、キングゥ?」

 

「べっ! 別にあんなヤツにそれを言う必要はないだろ! 何だよその顔は! ほら、早いところギルガメッシュの所に戻ったほうがいいんだろう!?」

 

「ふふふ、そうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さあ覚悟は出来てるな宮原博樹!)

 

「この特異点に来た時から覚悟は出来てます! 行くよアリスちゃん!!」

 

「ええおじさま!」

 

 ペルシャ湾が近づき、地面に降り立ったベリアルは意識を博樹へ移し、変身するための準備をする。

ナーサリー・ライムの力で宙に出現させたベリアライザーを掴み取り、2本のカプセルを起動させていく。

 

ウルトラマンベリアル!!レイブラッド星人!!

 

 もう慣れた手つきで、起動させた2本のカプセルを装填ナックルに装填させてライザーに読み込ませる。

ライザーから読み込ませ、力が込められてた2本のカプセルの名前をナーサーリーの声をした電子音が響く。

 

ウルトラマンベリアル!!レイブラッド星人!! 

 

(うおっ、いつの間にかアリスちゃんの声にアップデートされてる!)

 

デモニック・フュージョン!!

 

「んんっ! 超えるぜ! 覇道!!!

 

 完全に混ざり合った2つの力を身体に注入し、博樹のことを赤雷を纏った闇が包み込む。

 

ベリアルウウウウウウウッ!!!!

 

 まるでその目覚めを阻むように博樹の事を岩が包み込もうとするが、博樹がその名前を叫びと共に、ベリアルの双眼が瞬きその立方体を破壊しながら巨大化していく。

 辺り一面雷が鳴り響く紫煙の中をその鋭い爪で引き裂き、赤と黒の雷の中を進みベリアルは更にその身体を大きくさせた。

 

 そうして、黒に包まれた海面にウルトラマンへと変身したベリアルが降り立った。

 

「さあ、このオレに貴様の力を見せてみろ。回帰の獣、ティアマト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ジーッとしたまま死を待つなんて嫌だからね】
 キングゥは無意識に言っているが、これはエルキドゥの最期が死の呪いを受け、衰弱死した事から自然と出た一言。ジードと掛け合わせて言うことが出来たので作者的にもお気に入り。

【ベリアライザーverアリス】
 ベリアルの霊基と同期して出現させるライザー。ライム管理なため彼女が勝手にいじり、ボイスを自分のものに変えた。玩具的には起動ボタン長押しでモードが変わるあれ

【ベリアル変身】
 ベリアルの乱でキングに瓦礫で閉じ込められた状態を壊し、巨大化していく演出。ぐんぐんしてもベリアルさんはなんか手を掲げない気がする。

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19

ウルティメイトシャイニングウルトラマンゼロ!
 シャイニングになるときにウルティメイトブレスは完全に身体と一体化していたような気がしていたけど一体化する前にイージスにしておけば関係ないよね?ってことなんでしょうかね。 サーガかグランセイザードゼロになってくれると思ってたから衝撃がすごい……。

 それ以上に主題歌と共に勇敢に戦うメビウスの姿に泣きそうになりましたけど……。

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「その顔で堂々とこの我の前に姿を見せるとは思わなかったぞ? キングゥ」

 

「五月蠅いな。そう言われるから今()()()()()()()()()()んじゃないか」

 

 ウルクの大杯を手に入れたことで全快したキングゥはあの後、シドゥリを連れてギルガメッシュのいるジグラットへとやってきていた。

しかも彼は来て早々シドゥリにその緑の長い髪を短く切り揃えてもらっていた。

 

「『この身体はキミに会いたい、話がしたい』と願っていたけど、今はもうその記憶が僕の心を縛ることはない。ははっ、心が縛られていないというのは気分がいいね」

 

「────貴様のこれまでの行いを許さないものがいるかも知れんが我は許す! エルキドゥ(親友)の後継機にしてシドゥリのことを救い出した功績を讃えてだ、感謝するがよい。して────」

 

 カルデアの者たちはどこにいる。とキングゥに問いかけるギルガメッシュ。

自らがシドゥリの救出を命じた立香たちカルデア組が帰って来ていないことに疑問を持った彼は事情を知っているであろうキングゥに問う。

 

「彼女たちならペルシャ湾の方へ向かったよ。ベリアルが母さん────ティアマトと戦うのを援護するとか何とか言ってね」

 

「うむ、そういう事か……(ベリアル、この我が見た未来……貴様は変えられるか?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しいヒトのカタチ、ラフムを産み出す黒い生命の海。キングゥから魔術王の聖杯を手に入れたラフムがその中心にその聖杯を落としたことで、虚数に封印されていた原初の女神がこのメソポタミア世界に顕現した。 山羊の角に似た幾何学な模様が入った大地を象徴する大角、星の内海を映す悲しげな瞳、今にも砕けそうなほど儚げな印象を与える彼女こそが創世の女神ティアマトだ。

 

 自分からは何かをする気がないのか、もしくは何らかの理由があって自身を縛っているのか定かではないが手足を鎖で巻きつけ身動きが取れない。

そんなティアマトの前に、55mの巨体でこの海を歩いてきたベリアルが立つ。

 

[A────]

 

「これだけの事をやりながら、まだ人類を庇護したいと欲を見るか」

 

笑わせるな。ベリアルはそう言って160あるかないかと言った小さな身体を巨大な手で容赦なく握り潰した。

いくら女神でも巨人の手で、ベリアルの力で握り潰されればひとたまりもなく、ベリアルが手を開くと元のカタチが跡形もなくなったティアマトが海の中へと沈んでいった。

 

「とっとと目を覚まし、創世ではなく回帰の獣としての力をこのオレに見せてみろ。ティアマト」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!! 

あれでティアマトを倒したことにはならないことをベリアルは分かっていた。だからこそ海面を、この大地を揺るがす振動にも微動だにせず、()()が海中から上がってくるのを待っている。

 

[Aaaa────────-]

 

 ()()がその姿を現した。

自らを縛っていた鎖から解放されたティアマトは、先の優し気で儚げだった名残は捨て頭から生えた大角や身体の全身には赤く黒いラインが走る。

そして何より目を見張るのはその大きさだ。封印から解放されたティアマトはベリアルと並ぶとも劣らない巨体へと姿を変え、背中から生える巨大な翼にも成り代わりそうな2対の角も合わせれば70mはくだらないサイズを誇っている。

 

(これが、回帰の獣。ティアマトの姿なんですね……)

 

「呆けてないでいくぞ」

 

 相手が何であろうとのやる事は変わらない。ただ目の前に存在する敵と戦うだけ。

小手調べで手から光球を放つ、どれだけ弱くても並の怪獣なら一撃で沈むその攻撃をティアマトは自身の目の前に魔術の障壁のような薄い膜を作って防ぐ。

 

[Aaaa────────-!! ]

 

 今度はコチラの番だ言っているのか獣のように鋭い牙が生えた口を大きく開け、周囲に無数の歪みを生み出しそこから光線を放ちベリアルに襲い掛かる。

一発一発が最高ランクの宝具と造作ない威力のソレが四方からベリアルを襲い爆発が彼を包み込む。

 

「そんなもんか? ティアマトッ!」

 

 だが、そんな攻撃でもベリアルに傷をつけることは出来ない。爆発の中から腕を伸ばし、常時張られている透明な防御壁にその手が届く。

ティアマトは自身を守るその壁を壊されないように更なる魔力を流し込んで強化を施していくのと同じくガンッ! ガンッ! ガンッ!! と壁を殴り続ける。

 

 ティアマトの修復&補強よりもベリアルの拳の方が強い。拳一つで防御壁を破壊したベリアルは、ティアマトに攻撃を畳み込もうとするがそうはさせなかった。

元より聖杯7つを超える超々々級魔力炉心を有している彼女は更に、魔術王の聖杯、冥界の聖杯、南米の聖杯、そしてゴルゴーンが消滅する際に同化していたことで頂いた聖杯の4つが追加で埋め込まれている。

海面の黒い泥に触れていれば無限に魔力が供給され続ける彼女にこれ以上の魔力炉心はいらないのではないかと思うが、そうではない。

 

 ティアマトは背中から翼のように生える大角に特大の魔力を流し込み、それぞれの角から別の性質を持った極大の光線を放ってくる。

最初に撃ってきた光線とは密度も質量も増されたソレをもしベリアルが避けてしまえば、彼の背後に存在するメソポタミアの大地が消滅してしまうほど。

 

「グッゥ! ガアアアアッ!!」

 

 防御する隙もなく、避ければすべてが終わる、ならやる事は一つしかない。ベリアルは2本の極太光線をその身一つで受ける。

最初は耐えていたが、流石のベリアルでも耐え続けることは不可能だったのか吹き飛ばされ海面に叩きつけられた。

 

[Aaaa────……、Aaaa────────!!! ]

 

「フフ……フハハハハハ!! 面白い、こうでなければなあっ!!」

 

 自信を失う、戦意が喪失する。そんなこと起きるはずもない。むしろベリアルはこの地球に来て初めて自分が相対するのに相応しい相手が現れたことに喜びの声を上げながら立ち上がろうとする。

その時だった……。

 

[[[[[[[シャハハハハハハハハハ!!! ]]]]]]

 

 戦いの場である黒い生命の海。そこから一瞬で生み出された10数万を超える数のラフムがベリアルの身体に纏わりついてくる。

 

(これが彼らなりの歓迎なのかしら? これじゃあガリヴァーも裸足でにげだしてしまうわ)

 

(こんなガリヴァー旅行記誰も喜ばないよ。そうですよねベリアルさん?)

 

「ふっ」

 

 死骸に群がる蟻の大群のように群れてくるラフムたちをガリヴァー旅行記にでてくるリリパット国の小人たちのように称する2人に呆れながらも嬉しそうに声を出し、身体に力を入れる。

群がるラフムたちなど気にもせず立ち上がったベリアルがティアマトに向かって咆哮を上げると、その衝撃だけで纏わりついていたラフムたちは海へと還っていく。

 

 ティアマトも有効打であったことは確かだが倒しきれるとは思っていない。極大光線を出すための溜め時間を作る為にラフムに足止めを命じ、自身も背中から生えるもう一対の細身の角を自在に伸ばしてベリアルへ迫る。

 

「そんな小細工が効くと思うなよ?」

 

[AAAA────────-!! ]

 

  迫る二双の角の一本は掴み、もう片方は爪で切り落としながら前進していくベリアル。ラフムの突貫はダメージにすらならないのか対処もせずベリアルの身体に当たっては消滅していく。

しかし、ティアマトにはまだ手が残っていた。

 

(尻尾で首を……!)

 

「ほう……」

 

[Aaaa────……、Aaaa────────!!! ]

 

 海面に忍ばせていた尻尾を使いベリアルの首を背後から締め上げることで彼の動きを止めたティアマト。

それと同時に魔力の充填が溜まり、狙いをベリアルへとロックオンする。

 

 だが一度目とは違い対処するだけの時間がある。ベリアルは右手にエネルギーを溜め込み、ティアマトの極太光線を光線で打ち返す準備を始める。

光線を発射するだけのエネルギーを溜め終えると、ベリアルは先ほどと同じように咆哮でラフムの突貫やティアマトの角を退け構えを作る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────その時だった。

 

 

 

「「ベリアルさんっ!!」」

 

「!?」

 

(立香ちゃんにマシュちゃん、どうして!?)

 

「私たちに何かできる事ありますか!!」

 

 ケツァル・コアトルの使役する翼竜に乗ってベリアルの傍まで飛んできた立香とマシュ。

この戦いで何か出来ることはないかと、ベリアルのことを援護できないかとやってきた2人に視線を奪われたその隙を、ティアマトが逃すはずがなかった。

 

 自在に伸びる角2本を使ってベリアルの左腕を縛り上げ何も出来ないように封じ込める。

 

[AAAAAAA────────!!! ]

 

「チッ! 小賢しい真似しやがって!!」

 

 そうしてティアマトは2本ある極太の光線の内の一本を収束させ、立香とマシュを狙った超高密度の極細の光線を放ち、もう一本の方は普通にベリアルに向けて放たれた。

咄嗟のだったためベリアルは自身に当たる光線は無視して、エネルギーの溜まった右手を立香たちの前に出すことで彼女たちを守る。

 

「グウウッ!!!! ガアアアアアアッッ!!!! 

 

「べ、ベリアルさんっ!!」

 

「ああもう何やってんのよ立香、マシュ! アンタらが母さんに太刀打ちできるわけないでしょ! とっとと下がりなさい!!」

 

 ベリアルが自分たちを守ってくれたことに驚き動けない2人のことを個人の飛行手段を持つイシュタルが戦線を離脱させる。

だが、彼女たちが完全に当たらない場所へ移動するまで守り続けなければいけないベリアルは、腹部と右手に光線の直撃を一身に受ける。

 

[AAAAAAA──-!!! Aaaa!!!! ]

 

 ダメ押しで2本の光線に更なる魔力を流し込むティアマト。流石のベリアルでも苦悶の表情を浮かべながら耐え続けていたが、ベリアルの右手は光線を放つために膨大なエネルギーが集約されていたこともあり、ティアマトの攻撃を一身に受けた結果ベリアルの手の中で暴発し、その煙がベリアルを包んだ……。

 

「…………アイツを全面に信頼しているアンタらじゃ理解が追いつかないかも知れないけど、これが現実。あれが母さんの力よ」

 

「うそ、ですよね……先輩……」

 

「ベリ……アル……さん……」

 

 きっとベリアルなら大丈夫、煙の中から無傷で現れてティアマトの事を倒してくれるはず。そんな幻想が、破られてしまった。

右手に集約していたエネルギーの爆発によってベリアルの右手は肘から下は跡形も無くなり、腹部には大きな風穴がぽっかりと空いてしまっている。

 

 それを確認してベリアルの首を縛っていた尻尾と左手を封じていた角を戻すと、あのベリアルが膝をつき水飛沫が上がる。

 

「ハア……ハア……ハア……グッ!?」

 

[[[[[[[シャハハ! イマダ イマダ イマダ イマダ イマダ!! ]]]]]]

 

 ベリアルの防御を破れなかったラフムたちが一斉に海の中から飛び出し、腹に空いた風穴を、腕の露出した肉面を抉り喰らい始めた。

いくら外が硬くても中身は弱い。それはベリアルも同じだったらしく露出した肉面が抉られる痛みから口から大量の血を吐き出す。

 

 肉を内側喰われ、このまま海へと沈んでいくこれで自分の勝利は揺るがないものになった。それを示すかのように歌声のような叫びを空へ向かって響かせようとするティアマト。

 

 

 

 

 

 

 

「どこを見てる、ティアマト?」

 

 ゾクッ! と、理性を失ったはずのティアマトが恐怖を、死という概念そのものが存在していない筈のティアマトの脳裏に死のビジョンが頭をかすめる。

そんなはずはないと空へ向けていた顔をベリアルへ戻そうとすると自身の頭を鷲掴みにされる。

 

「このままやられっぱなしは性に合わねえからな。ハァアアアアアアッ!!!!!」

 

 渾身の力で、ベリアルは左手だけでティアマトの巨体を持ち上げて投げ飛ばして見せた。

もう死に体の身体の筈だ。ラフムたちに肉を喰われる苦痛が全身を襲う中で何故それだけの力が出せる。

 

 そんな疑問よりも今は一刻も早くベリアルを消滅させなければいけない。投げ飛ばされながらも態勢を立て直し、更に口から魔力の塊を吐き出しベリアルへと放つ。

 

「お前の恐怖はこの地に、アイツらに刻みこんだ。しばらく眠ってろ」

 

[Aaa……aaa……]

 

 ティアマトの攻撃が直撃し倒れながらも左手を伸ばし、その手を握りしめるとティアマトを包み込むようにドーム状の膜が出来上がり彼女のことを閉じ込めた。

そして海面に倒れたベリアルはラフムたちに引きずり込まれるように海中へと沈んでいった。

 

 

「嘘……ベリアルさんが……負けた……。私のせい……?」

 

 

 

 

 

 

 




ベリアルさんが負けた……。私が余計なことをしてしまったから?
絶望に打ちひしがれる私たちの元届くアナちゃんの言葉
「絶望を砕き続けろ」ってどういう事?
次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜
「絶望を超えて行け」

ジーっとしてても、ドーにもならないよねベリアルさん!!




【短髪キングゥ】
 自分だけの心を獲得したためいつまでもエルキドゥと同じではいられないと考えた結果シドゥリに髪を切ってもらうことにしたキングゥ。
 実際自分で姿を変えられるから切ってもらう必要はなかったけどそれはそれ、気持ちの問題。

【ティアマト】
 とある理由から絶対にベリアルと敵対する海から現れ出でる怪獣、世界を自分の闇で覆うとするその力。海から無限増殖するラフム、そして女神態とまだ形態を残しているところからガタノゾーアとゾグが合わさったかのような化け物。

 本編では大角を魔力で大翼に変えて空を飛んだがベリアルが相手だったため強力な魔力砲として使用するなど理性がないながらも応用のきいた戦い方が出来る。


【ベリアルコクーン】
 海に沈む寸前にベリアルがティアマトに張った膜。巨大化した状態で張ったものなため5章で作ったものよりも強度は高いがどれだけ中にいるティアマトを抑え込めていられるのかは不明。


 正直ベリアルさんが強すぎるせいでどう負けさせればいいのか悩んだ作者……いっつもゼロやジードに負けてる姿見てるのに……。


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20

ギャラファイ続編決定!
やっぱりタルタロスは「奴はアブソリューティアンの中でも最弱」みたいな扱いだったんですかね?
 そして、グリージョのグリージョチアチャージ強すぎません?エネルギー全チャージで自分の方はタイマーもならないってどうなってるんですかねえ?

 トライストリウムが虹色に輝くとヒロユキも虹色に輝く集団幻覚好きww


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誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


「現在、ウルク市に残った市名は千二百二十四名。内軍属が六百三十六名、残りは一般市民となります。市民たちは避難を拒否したものの、王のお言葉もあり、さきほど北壁への避難を同意いたしました」

 

「ご苦労だシドゥリ。うむ、予想よりも多くの民たちが生き残ってくれたか……。次にラフムだが、奴らの行動は二つに分かれた。日没と共にその場で球体となって停止するもの、そして母なるティアマトを包むあの繭を破壊しようと周囲に群がるものとにだ」

 

────王様がこれからの事について話しているのに、全然私の頭に入ってこない。

シドゥリさんとキングゥを見つけて、ベリアルさんがティアマトを倒しに向かったことを聞いた私たちは、何か出来ることがあるんじゃないかって理由でペルシャ湾へ急いだ。

 

 着いた時には既にベリアルさんとティアマトの戦闘が始まっていて、ウルトラマンになったベリアルさんのその強さを知っている私は勝てるって大きな自信を持っていた。

それがいけなかったんだ。ベリアルさんなら勝てる、負けるはずがないって信じ切っていたから、ティアマトの攻撃に一度倒れてしまったベリアルさんを見て動揺と焦りが生まれた。

 

『ボクだって攻略法の一つぐらい書きたかった。けど、これが現実だ。ティアマトはあのベリアルを倒してしまうくらいに圧倒的なスペックを誇っている。ボクらでは太刀打ちしようがない!』

 

「ならば次はあの繭だ。ベリアルについては我らよりも貴様たちのほうが熟知しているはずだ。あれはいつまで持ちこたえることが出来る?」

 

『ベリアルは去り際に残していったあの繭“ベリアルコクーン”とでも呼ぼうか。結論から言ってあのコクーンが物理的に破壊されることは絶対にないと言っていいだろう。ベリアルはアレを形成するのに残っていたエネルギーを全て注ぎ込んだみたいだからね、時間経過によってしか消滅しないとみている。見立てだと半日は持つと見ていい』

 

 もしかしたら、そんな焦りから私とマシュは足手まといになるのも分かっていても何か出来ることがあるんじゃないかと思って彼の傍に寄った。

それがいけなかったのに……。ティアマトはベリアルさんじゃなくて的確に私たちに狙いを定めて攻撃をしてきた。一瞬彼女と目が合って、その瞬間に光がこっちに向かって走ってきたから間違いない。

 

 分かっていても対処できる速さでも威力でもなかった私たちの事を庇って、ベリアルさんが重症を負ってしまった。

そして、最後にティアマトの攻撃を喰らいベリアルさんはあの黒い海の中へと沈んで行ってしまった。

 

「あの繭から解放されたならばティアマトはここウルクへと真っ直ぐ侵攻してくることは間違いない。半日の間に何か策を練らなければ人類史の未来はないと思え!」

 

『“この地球上全ての生命が存在し続ける限り滅びない”。この地球の存在ではないベリアルならばそれを覆してくれる可能性があったんだけど……、今はボクたちに何が出来るのかの方が重要だね』

 

「って言ったって、人類史を守るために来た2人がこんなんじゃねえ?」

 

 私のせいだ。私が無駄なことをしなかったらベリアルさんは負けなかった。あそこから逆転してティアマトの事を倒せてた。

それなのに私が! 私が……!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 頭が罪悪感でいっぱいで、周りの声なんか殆ど聞けていなかった私の耳に、その言葉だけはすーっと入ってきた。

顔を上げてその声の主を探すと、ジグラットの入り口で茨木ちゃんと一緒に立っているアナちゃんの姿が目に入った。

 

 

 あれ、でもまって? アナちゃんは博樹さんと契約していて、その博樹さんはベリアルさんと一緒に海へと沈んで行ってしまった。

それなのにどうしてアナちゃんはまだ限界していられてるの? 

 

「ベリアルが私に残していった言葉です。これがこのメソポタミアを救う唯一の方法だと」

 

『まままままってくれアナ! その言葉の真意よりもまず一つ。キミはベリアルが残していったと言ったね、もしかしてベリアルはティアマトに負けること前提で彼女に挑んだってことかい?』

 

 絶望を、砕き続けろ……。その欠片は希望になる……。

どういう意味だろう? 砕き続けるってことは複数のことを指してるからティアマトのことを言っているんじゃないと思う。それに砕いた絶望が希望になる? 

 

 


 

 

魔獣母胎は人間を糧にして魔獣を量産している 

人間への復讐のために、人間以上の生産性を求めたなんて、本末転倒だわ

 

まだみなさん生きています。心臓を鳴らしています! 

そもそも、母さんは魔獣を生むのに他の生き物を必要としない

 

ゴルゴーンとティアマトは聖杯の力によってその霊基を同調させていた 

ラフムは人間を連れ去って何をしているのでしょう? 

 

 

 

目を背けるな

 

 


 

 

「「────ッ!!」」

 

「エレシュ、エレちゃん、エレシュキガル!!」

 

「ドクター、ドクターロマン!」

 

 マシュも私と同じ結論に至ったのか顔を見合わせて一緒に頷き、私はエレちゃんの名前を叫ぶ。

 

『はい! はい! はい! え、え、え? ななな何なのだわ立香?』

 

『どどどどうしたんだいマシュ、そんなに声を荒げて?』

 

 この時代は地上と冥界が地続きだから叫べば伝わると思って大声を上げてみたけど正解だったみたい。

王様が岩のような鏡をどこからともなく取り出すとそこにちゃんとエレちゃんが映っている。

 

「ラフムの中にゴルゴーンが産み出した魔獣と同じか、似たような反応を示している存在がいませんか!」

 

『魔獣たちと……? ちょっと待ってくれ、直ぐに調べ上げる!!』

 

 マシュのほうはドクターを通してラフムの事を調べ上げているから私はエレちゃんからその手掛かりになりそうなことを聞いてみる。

 

「エレちゃん! ティアマトが、ううん。ラフムが出現してから亡くなった人たちの魂って冥界に辿り着いてる?」

 

『え、それは確かに来ているしだから今忙しいのだけれど……()()()()()()

 

 やっぱりだ。エレちゃんの話を聞いてみると、確かに亡くなった人たちの魂が冥界に届いているけど地上で亡くなった人たちに比べて送られてくる魂が少ないのだと。

 

『解析の結果が出た! マシュの予想通りラフムの一部には魔獣たちと似た反応があることが分かった、つまりこれは……』

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()。あってるよね、キングゥ?」

 

「……さっきまで魂が抜けた人形のようだったのにとんだ変わりようだね。そう、キミたちが導いた答えの通り。ラフムたちはゴルゴーンと同じでティアマトの権能をを有してる、自らの手で殺した自分たちと同じ存在に造り変えているのさ」

 

 長かった髪を切った、ラフムの事に関してならこの中で一番詳しいであろうキングゥに聞いてみると正直に答えてくれる。

予想通り、ラフムの中には魔獣と同じ人間を素材にして造られた存在がいるんだ。

 

「ラフムを倒して解放された魂が冥界にいかないで、あの黒い海に戻されるんならそれが希望になるかも知れない!」

 

「────それはどういう事だ藤丸立香。あの海に戻るのならまた新たなラフムとして再利用されるだけ、この我の民たちをむざむざ道具にするか?」

 

「それは違いますギルガメッシュ王! あの海には、ベリアルさんが沈んでいます!」

 

 それから私たちは王様やここにいるみんなに導き出した答えを共有する。

試したわけじゃないから確証はないけど、私たちがラフムを倒せば魔獣と同じ反応をしたラフムは復活しない。

 

 どっちがどっちかなんて判別はつかないし、今なお増殖を続けるラフムを倒し続けるのは苦痛でしかないかもしれない。

 

「けど、それが希望になるかもしれないなら賭けてみる価値はあると思うんです!」

 

『────ベリアルの反応はキャッチ出来なくなっただけど完全に消滅したかどうかは確認は取れていない。けどティアマトの侵攻はどうする気だい? あと約12時間後にあのコクーンから解放されたティアマトはここウルクへ一直線で向かってくるはずだ。そっちは「私たちに任せなさい」』

 

 ベリアルさんが残してくれたコクーン。あれがなくなったティアマトは予想だと2日でペルシャ湾からウルクへ到達するってジャガーマンが野生の勘で言っていたから私に残されている時間は少ない。 ラフムだけじゃなくてティアマトの侵攻の事も考えてくれていたドクターの見解に口を挟んだのはイシュタルだった。その傍にケツァ姉さんもいるからもしかして……? 

 

「私たち女神の権能全部ぶつけてでも母さんの事を止めといてあげるわ。ただ、私とケツァル・コアトルが本気を出したとしてももって何時間かしか母さんの侵攻を止めることは出来ない、その間にアンタたちはラフムどもをぶっ殺してやりなさい」

 

「ふふ、お姉さん本気だしちゃいマース!」

 

(ず、ずるい! ずるいのだわ! 立香が諦めない覚悟を決めたこの状況で、最高のタイミングで助け舟を出すなんてカッコよすぎるわ! わ、私も力を貸したいけどそうしたら女神の誓約を破ることに……でもでも立香の……いいえ、ウルクの為だったら……いいえ駄目よエレシュキガル、貴女は冥界の女主人。この冥界を管理、守る事こそが私の役目じゃない! ────うう、でも……)

 

「よし! 作戦は決まった! ならば今は休め!!」

 

「「ええ!」」

 

「戯け。身体も、そして何より精神のほうもとっくに限界に達しているであろう。このあたりで骨休み、というヤツよ。────夜明けまでの短い時間ではあるが、これがウルクでの最後の休暇となろう。各々、十分に英気を養っておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「明日、生き延びるために、この夜を過ごせ、かあ……」

 

 作戦会議を終えた私は、もう戻ってこれないと思っていたカルデア大使館の屋上で寝そべりながら星を眺め、王様が最後に言ってくれた言葉を呟いていた。

星を見ながらふと思い出したのは、ここが紀元前の世界だとしてもあの星のどこかにはもうとっくの昔に生まれてるんだな~っていうどうでもない事。

 

 私がいた時代とは全然違う、手を伸ばせば届きそうなほど輝いている星。実際届くわけないのに手を伸ばしてみて、自分の手が震えていることに気づいた。

 

「やっぱり、まだ受け止めきれてないのかな。ベリアルさんが負けてたってことが……」

 

 あの時、ベリアルさんの言葉が聞こえてきた気がしたお陰で何とかなったけど一人になると何度もあの時の光景がよみがえってくる。

私たちを庇って致命傷を受けるベリアルさん。もしかしたら負けることすらも作戦の内なのかも知れないけど、それでも私たちが邪魔をしてしまったことには変わりはない。

 

「カカカカ! こんな所で無防備に寝ておるとは、狙われてもしらんぞ? のお立香」

 

「茨木ちゃん……一人? アナちゃんは」

 

「吾奴ならば用があるからともう此処を出た、暇だったんでなあ。貴様をからかってやろうと思うたまでよ」

 

 アナちゃん、もうウルクにいないんだ。片手に持った果物をかじりながら茨木ちゃんが私の横に腰掛けるが分かったから、私も茨木ちゃんと話をするために身体を起こす。

 

「星が綺麗だったからさ、これが最後の夜になるかも知れないからしっかり目に焼き付けておこうと思ってさ」

 

「確かに綺麗ではあるが、吾の山で見える星の方がこれよりも輝いておるわ」

 

「大江山のことだよね? へ~~、それじゃあ行ってみよっかな」

 

「む?」

 

 私は電波もないこの時代だと何の意味もなさないスマートフォンを起動して、その中のメモ帳のアプリを起動してさっき思ったことを書いて保存しておく。

 

「なにをしておる? 大江山に行くとな?」

 

「うん、この旅が全部終わってさ、無事に家に帰ることが出来たらやってみたい! って思ったことメモ取るようにしてるんだ。契約してる英霊たちゆかりの地を巡って世界中を旅するとか楽しそうじゃない? 大江山に行くものその内の一つにしようと思って」

 

「……言ったところで、あの山にはもう鬼は存在していないぞ?」

 

「わかんないじゃん」

 

 確かに現代で鬼が出現したなんてニュース見たこと一度もないけど、魔術が隠され続けてきたんだからもしかしたら鬼は生きてるかも知れない! 

それに、それにだ! 

 

「もしかしたら()()()()()()()()に会えるかも知れないでしょ?」

 

「んあっ? 何を訳の分からないことを」

 

「だって逸話とか伝説とかを調べてみると、茨木ちゃんって死んでないよね? だから、もしかしたら現代でも生きてるのかな~って」

 

 これはスカサハさんもそうだったから有り得るんじゃないかって思った話。スカサハさんは現代でも生き続けてるから本来ならサーヴァントとして召喚することは不可能。

だけどこの人理焼却によって人理の一部である影の国が消滅したことで疑似的に英霊になったって言ってた。

 

「だから、茨木ちゃんも本当は現代まで生き永らえてたんだけど人理焼却で死亡したことで英霊として召喚されることになった! どう、有り得ない話じゃないでしょ?」

 

「はあああああああああ。まさかこうまで阿呆だとは思いもしなかったわ」

 

 私の名推理が大きなため息を吐きながら否定されてしまう。

そんな! 結構いい線いってると思ったんだけどなああ

 

「そもそも、吾に現代を生きていた知識がない時点でその話は破綻しておるわ」

 

「でも!」

 

 それは伝承とかそういうのでしか記録が残ってないから英霊として召喚されるとそこまでの記憶しかないんじゃ! そう言おうとするのを止められ、茨木ちゃんが鼻で笑って私を見る。

 

「そこまで言うのなら会いに来てみろ。その為にも、てぃあまとなる女神を討たなければいかんがなあ」

 

「……うん。大丈夫、絶対に負けないよ」

 

「────吾から一つだけ助言をくれてやる。()()()()()()()()()()()()

 

「え___」

 

 その言葉に、驚いてしまった。だって最後まで諦めるなって普通に考えて主人公の上官とか正義の味方がいう台詞じゃん! 

だから、茨木ちゃんからまさかそんな言葉が出るとは……

 

「大江山の鬼が、あの酒吞が斬られてしまった時も吾だけは生き続けた。羅生門で負け、戻橋で憎き綱に腕を斬られてもなお生き続けた。どんな屈辱を受けても、どんなに惨めな敗北を味わってもそれでも吾は生き続け、最後にはこの腕を綱から取り戻すことが成った。だから生き続けろというのだ立香」

 

「────」

 

「生き続けていれば絶対に機会が巡ってくる。その機会を逃さぬためにも生き続けろ、分かったな?」

 

「うん、ありがとう茨木ちゃん。私の事、慰めに来てくれて……」

 

「────」

 

「なななななな、慰めになど来ておらんわ! ただ? このままでは面白くないと思うたから少しからかいに来ただけだという事を忘れるでないぞ!!」

 

 顔を真っ赤にしながら遠くに逃げて行ったらもうそれ隠せてないよ茨木ちゃん……。

けど────よしっ! 

 

「これがこのメソポタミアでの最後の戦いだ。頑張って生き続けるぞ────!!」

 

 




 遂にウルクの存続をかけたティアマトとの最終決戦が始まった。
イシュタルとケツァ姉さんの決死の特攻でも止まらないティアマトを前に、アナちゃん、エルキドゥ、茨木ちゃんの3人が立ち向かう!
次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜
「最終決戦!最後に残された鍵!」

ジーっとしてても、ドーにもならない!やるよ、茨木ちゃん!!


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21

 アルティメットルミナスのベリアルさんが届きました。
スーツの皺の再現度やルミナスユニットによる瞳とタイマーの輝きの恰好良さ。ギガバトルナイザーの内部には青のクリアパーツを使うことで小さいところでも再現度を上げるという素晴らしい出来。 好きしか詰まってないですね……。

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誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく



初代様「我の出番は何処だ……?」

「────────」



「────シドゥリか」

 

「お体が冷えますよ」

 

 ギルガメッシュがはじめての友人(エルキドゥ)を得た場所。ウルク市を一望できる天の丘と呼ばれるその場所で目を閉じて瞑想していたギルガメッシュの元に、そろそろ夜明けが近いことを報告に来たシドゥリが声をかける。

 

「────よもや、民たちがここまで生き残るとはこの我の目ですら見通せなかった。お前も、我の隣にはいなかったからな」

 

「王一人残し、ウルクは完全に滅びを迎える。────ですが、彼女たちの奮闘によってそれは免れました」

 

「最後のこの地点にこれだけの人間が残るとはな。ベリアルに、そしてカルデアの者たちには感謝しなければいけないな」

 

 ギルガメッシュが千里眼で見た未来。それはティアマトによってウルクが完全に滅びるという終焉の未来だった。

最後の夜になるこの日には残っているのはギルガメッシュただ一人となり、その彼もウルクともどもティアマトに吞み込まれてこの時代が消滅する。

 

 自分だけが知る未来を彼は民たち全員に伝えた“ウルクは半年の内に滅びる。これは変えられぬ結末だ”と……。

だが、蓋を開けてみればどうだ。立香たちカルデアの尽力とベリアルの決死の足止めによってウルクの滅びが確定するこの日

 

「────まだ終わっていない。まだ、ウルクは立て直せる」

 

「どこまでお付き合いします。我らが王、ギルガメッシュ」

 

────決められた結末は、運命はもう、狂い始めている

 

 

 

 

「実は、王の小耳に挟んでおきたいことが」

 

「む、なんだ。言ってみろ」

 

「生存している民たち全員、()()()()()()と……」

 

「声だと?」

 

 

 


 

 

 

 

 

「これで、終わりです!!」

 

[アアアアアア…………]

 

 マシュの攻撃によってラフムが砂のように崩れて消滅したのを確認して、直ぐにドクターに通信を繋ぐ。

夜が明けてから直ぐにラフムたちが巣くっているエリドゥへと赴きラフムを片っ端から倒し来た私たち。さっきの一体がこの場所に巣食っていた最後の一匹だったみたいでドクターから次のする行動の連絡が届く。

 

『────うん。今のでエリドゥにいたラフムは全滅した。よし! 立香ちゃんたちは全員で直ぐにペルシャ湾に向かってくれ! あと数分もしないうちにコクーンが消滅する』

 

 ウルクは弁慶さんとレオニダスさんを中心に残った兵の人たちが守ってくれているからそっちは気にせず、私たちは休む間もなくケツァ姉さんから借りた翼竜に乗ってティアマトが封じられているペルシャ湾へと向かう。 まあキングゥは自分で飛んでるし、茨木ちゃんはアナちゃんが呼び出したペガサスに乗って移動してるから翼竜に乗ってるのは私とマシュ、それに牛若丸の3人だけなんだけどね。

 

『いいかい? ティアマトの足止めはイシュタルとケツァル・コアトル、後ジャガーマンに任せて君たちは1体でも多くのラフムを倒すことに専念するんだ。みんな、体力のほうは大丈夫かい?』

 

「はっ誰にものを言っておる!」

 

「私も、まだまだ戦えます」

 

「先よりも大量の首を斬り落として見せましょう!」

 

「不肖マシュ・キリエライト! まだ盾を振るえます!」

 

「…………」

 

 このノリにキングゥは乗ってくれなかったけどエリドゥでの戦いで一切苦戦した様子もなかったから大丈夫だって勝手に思っておく。

翼竜の上ではあるけど一息つくことが出来た私たちは、ペルシャ湾海岸の観測所があった崖から待ち構えるためにそこに降りる。

 

「ここからでもコクーンが見えるね」

 

「ティアマトはそれだけの巨体を誇っているということでしょう」

 

「っ! コクーン上部から罅が入っています!!」

 

『────何だ、これ?』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ちょっと、何よコレ……」

 

「これは、聞いてませんネ~」

 

「んにゃあああああああ!! こんなのどうやって止めろってんだ馬鹿ヤロー!!」

 

 

[Gaaaaaa──────Laaaaaaaaaa────────!!!! ]

 

 コクーンに罅が入るや否や、極大の光線を放つことでコクーンを消滅させてティアマトがその姿を現した。

しかし、コクーンに囚われる前の巨神状態ではない。囚われている間にティアマトはその姿を変性させていたのだ。

 

 顕現した時の面影を残しながら、口は首下まで不気味なほど大きく裂け、2本の角は頬下まで同化し十字に発光する亀裂の出来た瞳には怒りしか映っていない。

人間的だった細腕は今では見る影もなく、肉食獣のような獰猛な爪を持つ獣の手へと変わり、その肩には肩当状に巨大で禍々しい翼が生えた。

 

 膝を落とし、四足歩行へと移行したというのに巨体さが失われていない所を見ると、更にその大きさを増してることが伺える。

そんな恐ろしくも女神としての美しさを残した怪獣は、メソポタミア全体を震え上がらせるほどの叫びをあげた

 

 

「恐竜時代まで自分の霊基を回帰させたってとこ?」

 

「これはもう神性ではなく、紛れもない神の体デース。どうしますイシュタル、マスターたちと合流して策を練り直しますか?」

 

「────そんな悠長なこと言ってる時間すらないでしょ! やるわよコアトル!! なにが神の体よ、金星の女神の本気見せてやるわ!!」

 

 

 

 


 

 

 

()()……聖杯だ!! 。コクーンに囚われている間に取り込んだ3つ、いや魔術王の聖杯を合わせて4つか! 4つの聖杯を自分の身体と完全に同調させることでジュラ紀まで神代回帰したんだ!』

 

「じゃ、じゃああれが……ビーストⅡの本当の姿!!」

 

 出現と共に大地を揺るがす叫びに耳を抑えていると、黒く染まった海がケイオスタイド-呑み込んだすべてを自分のものへ浸食する黒泥-が津波のように襲い掛かってくる。

呑み込まれるわけにはいかないから翼竜に乗りなおす。

 

「っ!? この速度だとすぐにでもウルクに到達してしまいます!」

 

「今はそっちの事を考える余裕なんてないだろ! ウルクのことはギルや他の奴らに任せておけ!」

 

 キングゥの言う通りだ。私たちがどうにかしようとして、この泥をどうにか出来るわけじゃない。

ここは王様たちのことを信じて、私たちは私たちのやるべきことをやる!! 

 

「ティアマト神、体内からラフムを排出! こちらに向かって飛んできます!」

 

『ままま、まずは落ち着くんだみんな! イシュタルとケツァル・コアトルの攻撃が止まるまでラフムを倒し続けるんだ!』

 

 落ち着けって言ってる本人が一番落ち着いてないドクターのお陰で逆に落ち着くことが出来た。

あの竜体となったティアマトの登場は確かに脅威だしとてつもなく危険だけど、私たちはコチラに向かってくるラフム掃討を開始する。

 

「【絶望を砕き続けろ、その欠片は希望になる】だもんね、アナちゃん?」

 

「はい! ウルクへは指一本でも触れさせません!!」

 

[[[[[[[シャハハハハハハハハハ!!! ]]]]]]

 

 空を覆い尽くさんばかりのラフムの大群を、鎖を幾重にも重ねて網状にしたものを作って進行を阻み、アナちゃんの放つ石化の魔眼で石となったラフムたちを茨木ちゃんが鬼の手で砕いていく。

 

 牛若丸に至っては小舟と小舟を飛び移って渡り歩いた逸話は嘘じゃないとばかりに、ラフムからラフムに移りながらその首を一切の不備なく斬り落としていく。

 

「焦ってる……? いや、怯えてる……?」

 

「? 先輩、何か気になること、でもっっ!」

 

 マシュがラフムを対処しながら私に話しかけてくる。指示を出さなくても十分なほど動いてくれているから、私は思考を巡らせながら周りを観察していると、まだ遠くに見えるティアマトの表情から怒り以外に焦りや怯えのような感情が汲み取れたような気がした。

 

 もしかしてティアマトはベリアルさんに怯えてる? この黒い海を作り出した本人であるティアマトだからこそ、この海に沈んだベリアルさんが何かしていることを感じ取り、だからこそベリアルさんが目覚める前に全てを終わらせようと焦ってるんじゃ……? 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいのだわ! あ、ああああんなのに勝てるはずがないわ!」

 

 冥界で立香たちの戦闘を見ているエレシュキガルは、竜体へと変貌を遂げたティアマトを見て顔を青ざめて諦めた表情を見せる。

 

(ッ! ティアマトの直轄の眷属ってところかな? だけど、キミたちのようなものには僕が負けるはずがない!)

 

(僕じゃない、僕たち! だよキングゥ! マシュはみんなの防御を中心に! 強化ラフムは一体一体ずつ確実に倒していくよ!)

 

(雑魚どもは私にお任せください! ネズミ一匹だろうと通しはしません!! 【壇ノ浦・八艘飛び!!】)

 

 ティアマトの真の姿を見ても、大群の中に紛れているティアマト直轄の眷属である強化されたラフムが現れようと一歩も退かずに戦い続ける立香たち。

そんな彼女たちの熱気にやられたのか、両頬をはたいて自分を叱咤させ冥界からでも出来ることはないか考え始める。

 

「眷属たちの力を使った攻撃を冥界から地上へ浴びせる? 出来なくなはないけれどガルラ霊たちはウルクを守るために総動員しているし……。私一人が地上に赴いたところで何の足しにもならないだろうし……。イシュタルやケツァル・コアトルの攻撃でもあのティアマトの事を止めることが出来るのは持って数時間だけでしょうし……ん?」

 

 どうにかしようにも冥界を任されている関係上、誓約による縛りから中々策が思いつかないエレシュキガルが頭を抱えながら歩いていると、ふと声が聞こえてくる。

 

『……れ……う……』

 

『わ……ち……ウ…………る……』

 

「この一帯って、特異点が作られてから死んでしまった人間たちの魂を保管していた場所よね。どうしてここから声が?」

 

 声のする方へと歩いてみると、そこには地上で死んだ魂を保管するための籠が並ぶ場所。そこに並ぶ槍檻からいつも聞こえてくる呻き声とは違う。はっきりとした言葉が聞こえてきた。

この冷たい冥界の中で囚われた魂は皆、蘇ることや解放されることを諦めその魂を弱弱しく燃やすだけだった筈だが、エレシュキガルの目に映るのは今まで一度としてみたことのない光景だった。

 

「魂がこんなにも光輝くなんて……いったい何が起こっているのだわ?」

 

『オレたちも……戦う……』

 

『私たちも……ウルクのために……』

 

『守る……ウルクを……この地を……守る……』

 

「守るって言ったって、貴方たちが戻れる体はもうないし。 残っていたとしても貴方たちの力じゃ足手まといになってしまうだけよ!」

 

 もうただの人間がどうにか出来る状況ではない。地上に疎いエレシュキガルでもそれが分かっているため戦う意思を示す魂たちを鎮めようと声を上げるが、彼ら彼女らは冥界を仕切るエレシュキガルの言葉に耳も傾けずその魂の輝きを大地の色へ、()()()()()()()()を灯し続ける。

 

『戻るんじゃ……ない……!』

 

『一緒に……戦うん……です……!!』

 

『ちからがないぼくたちでも……たたかえるって……きこえたんだ!!』

 

『『『『『『だから(私 ボク)をここから出して!』』』』』』

 

「ええええええ!! どういう事なのだわああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「これで、終いじゃああああ!!!」

 

 ドゴォオオンッ! と言う爆音と共に私たちは、合計で11体もいた強化ラフムのうちの最後の一匹を倒し終えた。

その間にラフムたちの進行を許すことはなく、合計で1億を超える数のラフムを倒したってドクターが言ってたっけ? 

 

 けど、全部が全部順調に進んでるってわけじゃなかった。

 

『みんな! そろそろ2人が稼いでくれた時間が切れてしまう! どうだい立香ちゃん、ベリアルが目覚めるような予兆はあるかい?』

 

「ない、まだ何も……。まだラフムの数が足りないのかな?」

 

[Gaaaaaa──────Aaaaaaaaaa!!!! ]

 

 イシュタルとケツァ姉さん2人による女神の権能を完全開放させた宝具の攻撃でも、出来たのは数時間ティアマトの動きを封じることが出来ただけ。

だけって言ってもそれが出来ただけでもすごいんだけど、2人はそれで完全に魔力を消費してしまい消滅してしまったのか、生き残っていたとしても戦線復帰は不可能に近い

 

 ケツァ姉さんが使役していた翼竜も消えてしまい、今は泥に呑まれていない高台の方へと移動しそこで戦闘を繰り広げていた。

 

『ベリアルを待っている時間もない。頼みの綱だった女神二人の攻撃でも出来たのは数時間の足止めだけ……万策「まだです」』

 

 もう元人間ラフムはいないんじゃないかってくらい倒したはずなのに、海に沈んだベリアルさんがガタノゾーアに倒されたティガが復活したように上がってくる様子はない。

このままじゃ何にも出来ずにティアマトの侵攻を許し、ウルクや王様がティアマトに呑み込まれてしまう。

 

 そんな時に声を出し、高台の端の方へ歩いて行ったのは戦闘でマントも無くなってしまったアナちゃんだった。

 

「昨日の内に鮮血神殿に行っておいてよかった。 あそこに残された()()()()()も頂いてなければここで終わりだったでしょうしね」

 

「あ、アナちゃん!」

 

「あ、あ、アナさんが崖下に落ちて行ってしまっ!!」

 

『マシュ、キミが驚くのも無理はない。 こちらでも観測できた……そういう事かアナ。まさか君がその姿をとるなんて……!』

 

「ベリアルと博樹(マスター)に出会えてなければ、貴方たちを前に怪物になる私の姿(ゴルゴーン)を見せるのに躊躇いがあったでしょう。けど、今は違います」

 

 私たちが敵対していた時のゴルゴーンと同じ巨体だけど、全然違う。白い僧衣に金色に輝く翼はまるで天使を思わせるほど神々しい姿を……って、ゴルゴーンは女神か! 

 

「アナタとして活動させられた恨みを……と言いたい所ですが。ウルクのみんなを、この地で出来た友たちを守るためにこの力を使いましょう!」

 

[Aaaaaa────!!!! ]

 

 アナちゃんの魔眼が海面を石化させることでティアマトの動きを制限し、無数の髪の毛から伸びる蛇たちがティアマトに絡まり、その動きを強引に止めにかかる。

それだけでは駄目なことは分かっているから、アナちゃんは口から光線を放ちながらティアマトに接近してその肩を掴み、押し返そうとした。

 

 けど、竜体になったティアマトの力は凄まじアナちゃんの巨体に物ともせずに逆に押し返そうとしながら口を大きく開き、ベリアルさんを倒した時のような極大の光線を放とうとしている。

 

「アナちゃん!!」

 

「クッ!!」

 

「僕のことを忘れてもらうのは困るなあ、ティアマト!」

 

[GU────!!!! ]

 

 光線が放たれるという瞬間、何十本もの鎖がティアマトを縛り口を塞ぐことで口の中で光線が暴発。ティアマトが怯んだその隙を逃さずに髪の蛇に加えて、更に鎖が加わって完全に動きを封じることに成功する。

 

「自分でも馬鹿だとは思っているけど、僕も守ると決意したからね! ここから先は通さない!!」

 

[Uuuuuu────Zyaaaaaaaaa!!!! ]

 

すごい! すごいすごい!! アナちゃんとキングゥの合わせ技でティアマトの動きを完全に止めることに成功した。

これならベリアルさんが目覚めるまでの間持ちこたえることが出来るかも知れない!! 

 

[────────]

 

「    へ?」

 

「ッ! 立香ぁ!!!」

 

 油断や、慢心はしてなかった。たとえティアマトの動きを止めることに成功したとしてもそれは一時的なものでイシュタルたちと同じようになるかも知れない可能性も視野に入れてた。

だからティアマトがどんなことをしてきても対処するように心掛けていたのに────反応できなかった。

 

「茨木ッ!! はあああああああ!!」

 

「…………クっ、しくじったな」

 

「茨木ちゃん! 右腕が……右腕が!!」

 

 ティアマトの超極細の光線。ほんの一瞬だけティアマトと目があったと思ったその瞬間には私目掛けて放たれたそれを茨木ちゃんが【仕切り直し】のスキルで助けてくれたんだと思う。

戦闘から離脱すること、絶望的な状況をリセットできる可能性を持ったスキルのはずだけど、ティアマトの余りの技の速さに茨木ちゃんがその右腕を犠牲にしてしまった。

 

 直ぐに応急手当を何度もかけて回復するけど無くなってしまった右腕は生えてくるはずもなく、私はどうすることも出来ない。

 

(何か、何か出来ることはないか! 右腕の代わり……私の右腕! が代用できるわけないだろうし……少しでも茨木ちゃんの事を回復させる方法があれば……ッ!)

 

「茨木ちゃん!」

 

「ん?」

 

()()()()()()()()()

 

「────ッ! お前は……何を……」

 

 茨木ちゃんは鬼。鬼にとっての主食は人の肉で、怪我とか傷を治すには人肉を食べるのが一番効率が良いって酒吞ちゃんが言ってたことを思い出した私は支給された制服の左肩から下を破り捨てて右腕を痛みで蹲る茨木ちゃんの前に差し出した。

 

「私の腕なんかじゃ足しになるかどうかも分かんないけど、茨木ちゃんのこと助けられるな「フンッ!」アダっ!!」

 

「まったく……吾も舐められたものよ……」

 

 茨木ちゃんは私の腕に噛みつこうともせず、左腕で私の襟首を掴むと角の生えたその額で思いっきり私に頭突きをしてきた。

突然襲ってきた衝撃と痛みに後ろに飛ばされてしまい、何するのって言おうと立ち上がろうとしたら私の目の前に来た茨木ちゃんがその指で私の額を拭ってきた。

 

 茨木ちゃんの赤い指でわかりにくいけどその指にはしっかりと赤い血が付いていて、それを見て私の額から血が流れてることに気づいた。

 

「ああ、不味い。 今まで何度も人の肉を喰ろうてきたが、ここまで不味い血の味がしたのはお前が初めてだ」

 

「茨木ちゃん……?」

 

「差し出された所でこんな不味い肉喰えたものではないわ馬鹿者が。貴様はそこで精々吾に魔力を送るだけでいいわ」

 

 私の血を舐めた茨木ちゃんはわざとらしくそう言うと、私たちに背を向け右腕がないままティアマトへと向かおうとしている。

 

「魔酒! 牛若ぁッ! また同じ技こんとも限らん。終ぞそこの馬鹿な()()()()の事を守っていろ」

 

「茨木ちゃん!!」

 

 『いいか、先に話した通り吾と貴様に上下の関係も、主従もない。わかっていような』

そういう条件で仮契約を結んだはずなのに、現に今の今まで茨木ちゃんは私の事を一貫して立香としか呼んでくれなかった。そんな彼女が今私のことをマスターって

 

「さあ! その手に刻まれている令呪で吾に命じろ()()()()! あの巨体を退けて見せろとな!!」

 

「────ッ!!! 令呪を持って命ずる……茨木童子ぃぃいいいい!!! 

 

 私の事を認めてくれた。こんな不甲斐ない私の事をマスターって呼んでくれた彼女に願うのはティアマトを退ける事なんかじゃない! 

この地に呼ばれてから今の今までずっと“ヒト”を守るためにその力を使い続けていた。だから私は()()()()()()()()()()()()をこの地で見てない! 

 

だから!! 

 

「私に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────。フッ、フハハハハハハハ!!! そうだ、それでこそ吾が主と認めるに相応しい大馬鹿者だああああああ!!!」

 

 私の願いが魔力となって茨木ちゃんに届き、それに応えるように大きな声を上げて茨木ちゃんが魔力を解放させる。

けど、それはカルデアから送られた令呪一個分じゃ出せないほど大量の魔力が茨木ちゃんから噴き出してる。

 

『そうか……()()()()()()()()。キミか、キミだったのか茨木童子! キミが()()()()()()()()()()()()()()()だったのか!!』

 

「茨木さんは最初から、ずっと聖杯を隠し持っていたということですか!」

 

『ああそうだ。いくら宝具を使っても魔力切れを起こさないから不思議には思っていたんだ。だけどまさか聖杯を隠し持っているなんて! 反応が一切なかったから気付きもしなかった!』

 

 一つ一つが膨大な魔力炉心としてこの地に送られた4つの聖杯。3つは既にティアマトの手に渡り最後の1つはキングゥもこのメソポタミア中探し回っても見つけられなかったって言ってた。

その最後の1つをずっと持っていたのが茨木ちゃんだったんだ! 

 

 内に隠していた聖杯を解放させ、その膨大な魔力を自身ものにした茨木ちゃんはなくした右腕を炎の腕を作ることで代替えし、ウルトラマンの手と遜色ないほど巨大な手を左右どちらも作り出し、背中から燃え上がる炎は緋色に燃え上がるソレではなく、更に温度を増したことを表す白い炎となって姿を現した。

 

 そうだ、これだ。いいや違う! あの時以上の炎を纏った茨木ちゃんが私に鬼とは何なのかを魅せてくれる。だから私も最大の応援を、私の事をマスターって呼んでくれた茨木ちゃんを従者(サーヴァント)としての名前で腕を彼女の方へ向けながら喉が張り裂けそうなほどの大声で叫んぶ。

 

 

 

「やっちゃえ!! バーサーカーぁああああああああ!!!!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 




茨木ちゃん、アナちゃん、キングゥ。
人でなしの3人が人を守るために戦ってくれたこの数十分は決して無駄なんかじゃない!
 メソポタミア中の魂が一つに集まるその時、人類悪をも超える禍々しいまでの絶対悪が目を覚ます!!
次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜
「魂の軌跡!《/xbig》集く(すだく)ぜ! 祝福!」

ジーっとしててもって、ベリアルさん何その姿!?







【4つの聖杯】
 魔術王がベリアル対策としてメソポタミアに送った魔力炉心として使用する4つの聖杯。神代であるため“女神の近くに落ちる”ことしか出来なかった。ゴルゴーン、ケツァル・コアトルは普通に手に入れ、エレシュキガルは冥界を閉じる鍵のような役割となった。

 最後の1つは女神であるイシュタルの元へと落ちたのだが、グガランナを落とした焦りやらいろいろが混ざった結果見つける前にエビフ山にいた茨木童子が聖杯を手にするに至った。

【竜体ティアマト】
ジュラ紀まで霊基を回帰させたティアマトの真なる姿。
ゲーム本編のように冥界まで落とされて弱体に弱体を重ねられた上で出した苦し紛れの最終決戦態ではなく、魔術王の送ってきた3つの聖杯も完全に取り込んだことでその姿に至った。
 
 本来ならば更に霊基を回帰させることが可能だが、ベリアルという不確定要素があるためもっとも戦闘が得意とするこの姿をとっている。

 実際これ以上戻ると魚類から微生物、最終的には塩水に回帰するため攻撃手段を失ってしまう。


感想評価お待ちしてます

「首を出せい」

「いや、ちょ初代様まって!確かにベリアルさんいるから一切出番作らなかったのは悪いと思ってますけど首は、首だけはぁああああああ!!!」







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22

やっと!やっとベリアルさんをこの姿に変えることが出来たあああああ!!!
実は2章のころくらいから7章のティアマト戦ではこうしたいという想像が出来てたのでやっと形に出来て嬉しいです!

 感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく

「ほう、ならばその時にはもう我の出番はなかったという訳か……」

「い、いや違います!その時はまだ活躍する予定だったんです!予想以上にベリアルさんが強すぎて!」




「やっちゃえ!! バーサーカーぁああああああああ!!!!!」 

 

(ああ……美味かったな、血を一つ舐めただけでこうまで酔ってしまいそうだとはなあ。酒呑、お主がいっていたのはこういう事だったのか?)

 

 立香の声援を一身に受けながらティアマトへ向かっていく茨木は、かつて酒吞童子に言われたことを思い出していた。

『茨木、アンタはうちらにとって一番甘ーいもんが何か、まだわからへんのやね』という日常の中で交わした何気ない一言を、

 

(酒吞から振舞われた名酒、豪酒よりも喉が焼けるほど熱く、今まで喰ろうてきた菓子よりもとろけるほど甘い……。立香の血は、それほどまでに美味かった)

 

 人の肉の味こそが鬼にとって最も甘く蕩ける酒の肴。きっと酒呑童子はそう言いたかったのかも知れないが、茨木が出した答えは違うものだった。

茨木は今まで人の肉を喰ってこなかったわけではない、生きるために幾人もの肉を喰ってきた。だからこそ、人肉がどんな味をしているのかは理解していた、はずだった。

 

(恐れも何も抱かず、ただ吾のことを思って差し出された……それだけで、こうまで味が変わるか……)

 

 今まで喰らってきた人の肉と立香とでは決定的に違う部分が一つだけあった。 

恐れを抱いていたか、抱いていなかったか。ただそれだけ……。

 

 誰であろうとこれから自分が死ぬと分かっていたら、目の前の鬼の餌になると分かれば恐怖を抱く。時には生贄として何も知らない幼子が与えられる時もあったが茨木はそういう子は食べようとも思わなかったからこそ、彼女にとって肉の味は『人の恐怖の味』でしかなかったから他の鬼のように好きにはなれなかった。

 

 だが、立香は違った。彼女は茨木に一切の恐れを抱かず、むしろ生きてほしいという願いを込めてその腕を差し出した。

差し出された腕がどれだけ魅力的に見えたか、歯を立てて噛みつこうと思ったかわからない。

 

(うむ、やはり指一本でも貰っておくべきだったか? 惜しいことをしたな)

 

 

[Aaaaaaa----!!!! ]

 

[[[ヨコセ! ヨコセ! セイハイ! ヨコセ!!]]]

 

 そんなことを考えていると、鎖を引きちぎって口が開放されたティアマトが叫び、その叫びに反応して無数のラフムが産み出される。

狙いは分かり切っている、キングゥと茨木の持つ二つの聖杯だ。ベリアルさんの復活を恐れている彼女にとって更に力を増すことが出来る聖杯は無理してでも手に入れたい。

その証拠にティアマトが一気に産み出したラフムは茨木とキングゥへ向かって突撃してくる。

 

「はっ!! 雑魚が……邪魔をするなああああ!!!」

 

「ティアマト、貴女は生むべき子を間違えた。現に、彼ら僕らを止めることはできない!

 

『凄い……一瞬でラフムが灰になった。 ティアマトと同じ、いいやそれ以上だ! 聖杯との同調で言えば茨木童子が完全に上をいっている!』

 

 炎の腕となった右手を払うだけで白炎がラフムを包み込み灰へと還す。聖杯をずっとその身に宿し、隠し続けてきたことで聖杯と自身の霊基の同調ならば3つの聖杯を取り込んだティアマトよりも上をいく茨木と、生きてきた時代、エルキドゥが最も愛したこの地、ウルクの大杯を取り込んでいるキングゥにとってラフムがどれだけ強かろうが敵ではない。

 

「茨木! 僕の鎖に乗れ!」

 

「ふっ、扱いを間違えるでないぞ!!」

 

 崖から飛び降りるとキングゥが作り出した鎖の道へ降りた茨木がティアマトに向かって走っていく。アナ(ゴルゴーン)の巨体を迂回しながらの移動のため、彼女の隙間から鬼炎を放ちティアマトに浴びせていく。

 

[GAaaa----!!!! ]

 

「やはりこの程度では効きもせんか……」

 

 ティアマトが無数の光線を放つと、ティアマトとキングゥの2人がかりで相殺し、効かなくても相手の気が散るように大量の鬼炎をぶつけ続ける茨木。

 

[GAaaa----!!!! ]

 

「んなっにぃっ!?」

 

「ぐあっ!! 翼の形を、変えられるのか……」

 

「茨木っ!キングゥ!!」

 

 このまま続けていればベリアルが目覚めるまでの時間を稼げると思ったが、ティアマトはそれを許さなかった。

肩当状に生えた翼を展開させ飛び立つのではなく、その翼の形を腕に変えそれぞれの腕で茨木とキングゥの事を掴んできた。

 

 突然の変化に2人とも対応が遅れてしまい捕まってしまったが、潰されないように必死にこらえている。

 

《b》[--------!!!! ]

 

「----ッ!? やらせません!!」

 

 2人が囚われたことに動揺した隙を攻撃し、アナを少し後退させたティアマトは大きく裂けた口を限界まで開きそこに極大の魔力が溜まる。

真体になった今光線を放つのに充電の必要がなくなったティアマトは、ベリアルにはなったものを1本に収束させた光線を放とうとする。

 

『ウルクへ還ることを放棄したっていうのか!? 不味いぞ、あれをまともにくらったらウルクはおろかこのメソポタミアの大地全てが焦土と化してしまう!!』

 

「複合神性、融合臨界……! 私に人を守る気持ちを……化物である私を人間臭くしてくれたこの地を、もう貴女の好きにはさせません!!すべてを溶かせ! 【強制封印・万魔神殿(パンデモニウム・ケトゥス)!!】

 

 ティアマトの光線を迎え討つために、アナも宝具を解放させる。

深い紫の触手がゴルゴーンとなった彼女の巨体を包みこみ、女神としての最後の名残を放棄し、最後に行き着くなれの果てである『ゴルゴンの怪物』を一時的に実体化させる。

 

 怪物となった彼女から放たれた光線がティアマトのそれとぶつかり、その行く手を阻む。

後ろに控えている立香たちですらマシュの宝具で守っていなければ直ぐに消滅してしまうほどの威力のそれを、アナは必死で押しとめようとする。

 

『----これで、私が持っている全ての令呪はアナちゃんに託した。私たちがいない間、みんなのことを守ってあげてほしい』

 

『オレの力も注いでおいた。 無様は晒すなよ、アナ』

 

「まだ、まだあああああああああっ!!!()()()()!!!!」

 

 アナの光線にベリアルのものであろう黒い雷が交わりその威力を増す。ティアマトの最大出力をほんの少しだけ押し返すがそれだけではまだ足りない。

けれど、今のアナは愛すべき2人の姉まで喰らい一人孤独に英雄に殺される運命となった化物とは違う。

 

「舐めるなあああああッッ!!!!」

 

「茨木ちゃん! キングゥ!!」

 

 茨木とキングゥの両者が、聖杯の魔力を限界まで開放させることでその腕から脱出する。

茨木はそのまま下へと落ち、キングゥは魔力を更に解放させながら空へと向かって飛んでいく。

 

「ウルクの大杯よ。砕けゆく僕の体、あと少しだけ力を貸しておくれ――――

 

 ティアマト神の息子、キングゥがここに天の鎖の筐を示す!」

 

 ティアマトを中心に地面の彼女の巨体を上回る陣が形成され、そこから無数の鎖が出現して空へと向かうキングゥへと追従する。

キングゥを中心にその鎖が束なり、巨大な一本の鎖へとその姿を変え、アナの宝具と並ぶようにしてティアマトの光線に迎え撃つ。

 

「母の怒りは過去のもの。いま呼び覚ますは星の息吹----【人よ、神を繋ぎとめよう(エヌマ・エリシュ)----!!!】

 

[--------!!!!GAAAAAAAAAAA!!!!!! ]

 

「分かっているさティアマト神。諦めろと言いたいんだろう?僕たち2人の宝具を使っても、これを消すことは不可能だからと……」

 

「あとは任せましたよ! 茨木ぃいいいいいいい!!!!!」

 

「はああああああッッッ!!!!」

 

 周囲の黒泥全て炎で焼き尽くし、自分が立つその場だけ水を蒸発させて足場を作った茨木は、ティアマト神の懐で彼女自身も燃やし尽くしてしまいそうな量と熱度をもった炎を魔力の解放と共に解き放つ。

 

「貴様に浴びせるには十では物足りん!! 我が身燃え尽きるまで、この炎熱の拳受け続けろ!!!【大江山大・大・大・大・大炎起ぃいいいいいいい!!!!!!】」

 

[GAAッッッ!!!! -----!!!!!]

 

 舐めていた。いくら聖杯を持っていようとベリアル以外は歯牙にもかけない矮小な存在。現に女神が全権能を以てしても自分には傷一つつけることが出来なかった。

だからこそ、最後に自分の目の前に立ちはだかったこの3体の人間擬きの存在たちも直ぐに片が付くと、全ての生命の母である驕りが仇となった。

 

 霊核を燃やしながらも茨木はその拳を止めず、何発も何発も殴り続けていると60mを優に超えるティアマトの巨体が浮き始めた。

それでも止まらずに殴り続け、次第にティアマトのその巨体が傾き始める。

 

「がああああああああッッッ!!!ウルクにぃぃ!!」

 

「この地に、当たらなければっ!!」

 

「私たちの負けじゃない!!」

 

 このメソポタミア全体を焦土と化してしまうティアマトの最大出力の光線も、目標に当たらなければ意味がない。

なら簡単なことだ、ティアマトの標準を逸らせばいい。アナとキングゥが時間を稼いでいる間に、茨木の渾身の技でティアマトの光線が空へと向ける位置まで持っていく。

 

 作戦というには余りにも粗末なもので、茨木の攻撃でティアマトの身体が持ち上がるのかも確証はなかったが、3人はその賭けに勝って見せた。

身体を持ち上げられ強引に光線の標準を空へと変えられたティアマトはエネルギーを全て吐き出し、メソポタミアを焼くことが出来なかった。

 

『は、はははは。 あのティアマトの巨体を傾けるなんて……。 けど……2度目は無理だ……、3人の霊基はもうまもなく消滅してしまう……』

 

「…………母さんへの復讐は適わなかった。けど、最後の最後でウルクを守れたのは……よかった……」

 

「----二人とも、一人にはさせませんよ。 一緒に沈みましょう……ふふ、身体が大きくて嬉しいと思ったのは初めてです。」

 

「----マスター―――!!!! 受け取れぇえええええええ!!!!」

 

 全てを出し切った茨木が立香へ向けて聖杯を、キングゥの方もマシュに向かって自身の心臓の代わりにしていたウルクの大杯を投げ渡す。

キングゥも、アナも、茨木も霊基が擦り減るまで魔力を出し尽くしもう身体を動かすこともままならない。そんな状態で、アナが2人の事を抱きしめるようにして海へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[Aaaaaaaaa------!!!]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやった。これで、()()()()()()

 

 これで邪魔するものはいない。残っているカルデアのマスターもそのサーヴァントたちも自分に抗うだけの力は残されていない。

その喜びを表すように叫びを上げたティアマトの声を、()()()()()

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「「ベリアルさんっ!!」」

 

 茨木ちゃんとキングゥの残してくれた聖杯を回収し、もう時間を稼ぐ術がないと思っていた私たちの前に、ベリアルさんがティアマトの背後からその姿を現した。

けどその姿はずっと見てきたウルトラマンの姿とは少し違っていて、【両手の爪が赤く、以前よりも鋭く長いものになっていて、右目には何かの攻撃で負傷した傷が痛々しく浮き上がっている。そして一番特徴的なのは()()()()()()()()()()()()を羽織っていることだろう】

 

 

「テメエら時間だ! 今こそオレの元に来やがれ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ギルガメッシュ王。必ずや、このウルクを守って見せます」

 

「ふん、我はここで見ているからな。 皆の者! この我に恥じぬ戦いを見せてみろ!!」

 

 

 この地に生き残った民たちが集められたその場で、一人、また一人と倒れその身体から飛び出た緑の光がベリアルのいるペルシャ湾の方へと飛んでいく。

 

 

「冥界の女主人エレシュキガルが権限を持って解錠するわ!さあ、立香たちに勝利の風を吹かせて御上げなさい!!」

 

 冥界でも同じような事が起きていた。 エレシュキガルの槍檻に囚われていた魂たちが檻から解放されると一目散にエレシュキガルが開いた地上への門の方へと飛んでいった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「綺麗……」

 

「なんと面妖な……、ですが、温かい」

 

「緑の光が、ベリアルさんに向かって集まっていきます」

 

 空から、地面の底から、そして海面から飛んできた緑色の光がベリアルさんにの中に入っていく。

どれだけの数の光が集まっているのかは分からないけど、ベリアルさんの全身が緑色の光を放ち始めるのを黙って見ているほどティアマトも馬鹿じゃない。

 

[Gaaaaaaaa------!!!]

 

『ティアマトの攻撃が来る! 避けるんだベリアル!!』

 

「今のオレの邪魔を出来ると思うな! ティアマトォおおお!!」

 

 ティアマトが放った光線を自分の全身が隠れるようにマントを翻るだけて弾き飛ばしてしまうベリアルさん。

そしてそのマントが消えたかと思ったら、ベリアルさんの姿が更なる変貌を遂げていた。

 

「ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!! まさか、またこの姿になる時が来るとはなあ」

 

 その姿はもうウルトラマンとしての原型が残っていない。 集結させた緑の光が結晶化したものなのか背中には緑色の結晶が何本も突出しており、人間に近い姿は捨て2足歩行のドラゴンに似た巨体へと変わったベリアルさん。前にもこの姿になったことがあるのか、その姿になったことを喜びながらティアマトへと歩いていく。

 

[------aaaaaa!!!]

 

「どうしたティアマト。このオレの姿に絶望しているのか? だが!! ()()()()()()()()()

 

 終わりじゃない?そう思っていると、怪獣になったベリアルさん(アークベリアル)のことを海面から伸びてきた()()()が縛り上げ身動きが取れないようにする。

 

「あれってキングゥとアナちゃんの!?」

 

『ケイオスタイドに呑み込まれてティアマトの眷属に?……って、この状況でそんなわけないか』

 

「さあ、行くぞお前たち!! 本当の絶望ってヤツを、教えてやる!!!」

 

 蛇と鎖がベリアルさんを縛り、そのベリアルさんを茨木ちゃんの白炎が包み込む。ドクターの言う通りはたから見るとあの3人がティアマトの為にベリアルさんのことを止めているように見えるけど、そうじゃない。 

 

 その鋭い爪で炎を切り裂くようにして現れたベリアルさんはさっきの怪獣の姿から更に進化したような見た目へと変わっていた。

【トゲ状へと変わった結晶が何本もついた翼のような4つの突起物。両肩と両膝に怪獣の禍々しい顔が付いた赫い(あかい)鎧を纏う怪獣となった】ベリアルさんがそこに立っていた。

 

 

「これが貴様の最後の戦いだ。心してかかれ、ティアマト」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「----!?…………父さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




禍々しい怪獣の姿へと変貌を遂げたベリアルさんとティアマトの最終決戦が始まった。
このメソポタミア中の魂、そしてあの3人の力が加わったベリアルさんに負けはない!!

 え?最後に決めるの私!!?うそでしょ!
次回、Fate/Grand Order〜Bの因子〜
「キボウノカケラ」

ジーっとしてても、ドーにもならない!!







【禍々アークベリアル】
使用カプセル:アークベリアル、マガオロチ
キメラべロス以外で唯一ベリアルが表に出ているベリアル融合獣。
フュージョンファイト限定融合獣。
フュージョンライズ中は謎の光で守られてるのでは?カイザー→アーク→禍々に進化していく欲張りハッピーセットがやりたかったため今回はこんな演出を……

 当初、ティアマト戦はキメラべロスか禍々アークベリアルどちらかにしようと決めていたため2章でどちらにも必要なカプセルの進化前を生成していたのはその名残。

 魔獣に変えられた人間たちの魂が集まった結果キメラ要素の強いファイブキングカプセルが~とか、英霊たちの力をゾグに注ぎ込んでゾグ第二形態カプセル生成しようとか色々案を考えていたんですが結果禍々になりました。

 どうして茨木、キングゥ、アナの3人から生まれるのがマガオロチなのかについては次回話せれば。


【〇〇〇】
余りにも強大な力を手に入れたため次元も時間も飛び越えて、ほんの少しだけ感じ取ってしまった。それでも微弱だったため因子問題かな~くらいで済ませてる


感想評価お待ちしてます


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23

ジード特集のウルトラ特撮vol.15発売にアーツのギャラライが予約開始なジード満載な今週。

 ギャラライ発表のブログでアトロシアスの意匠をという文があったんですけど、公式でギャラライがアトロシアスに似てることへの発言ってこれが初ですよね!ゼット超全集出る前にこんなサプライズがあるなんて……。

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


『ほんとうに! ぼくもベリアルになってたたかえるの?』

 

『そうだよ、才能や戦うための力なんて必要ない。 必要なのは、どんな絶望にも屈しない強い心だけだ』

 

『なら、俺も戦う!』

 

『私も! ウルクを守れるならなんでもするわ!!』

 

『『『ぼくも!!』』』『『『わたしも!!』』』『『『俺も!!!』』』『『『私も!!!』』』

 

『『『『『ベリアルと一緒に戦う!!』』』』』

 

 

 ティアマトに敗北して、彼女が作り出した黒い泥の海に沈んで直ぐ、メビウスが地球に向かう戦士として選ばれた光が波打っているような世界に似た、あれよりも暗いけれどそんな空間を作り出したベリアルさん。 この場所は夢と現実の境界が曖昧らしく、ベリアルさんと分離して動くことが出来た私がしたことは説得だった。

 

 アリスちゃんの力でラフムにされてしまった人間たちが倒されたら、その魂はティアマトへ還らずこの空間にくる。

その魂に語り掛け、これから何をしようとしているのかを説明して、一緒に戦ってくれるようにお願いして回った。

 

 一度は怪物となってウルクを攻めた、人間を殺してしまって絶望してしまっていた人もいたけど、それでも諦めずに説得を続けようやく全員の説得が終わって準備が完了した。

 

『さあ行くぞお前ら! このオレと共になッッ!!!』

 

 ベリアルさんと再び同化した私は、彼の身体の中で一本のカプセルを起動させる。

第ニ特異点で生まれたカプセルの内の1つ。アナザースペースを支配しようとした皇帝としてのベリアルさんの姿。

 

[カイザーベリアル!!]

 

 起動させるとベリアルさんの姿もその姿へと変わり、海面へと上がっていく。

その最中に、3つの光が海の上から落ちてきて、私たちの身体の中へと入ってきた。

 

『よく頑張ったね、アナちゃん、茨木ちゃん。 それにキングゥも』

 

 全ての力を使い果たし、もう霊基の核だけとなったその3つの光の塊を確りと握り占めると、それが新しいカプセルへと姿を変える。

背中に翼のような形状の巨大な突起物と腹部に目玉のような紋様が特徴的な、()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()。星を食い尽くすとかいう伝説の大魔王獣か……。はっ! やはりアイツらを選んで正解だったようだ!!』

 

 星を食い尽くす? 大魔王獣? な、なんか気になるワードが飛び交うけど、今はそんな事考えてる暇じゃない。

 

 

「アークベリアル!!」

 

 ウルクの人たち全ての魂が集い、カイザーベリアルのカプセルを進化させたそのカプセルとマガオロチのカプセルを起動させ、ナックルに装填する。

……思えば、レイシフトする前にベリアルさんの口からティアマトには勝てないって言われたときはびっくりしたなあ。今のベリアルさんは身体も失ってるし全盛期に比べればそうとう弱体化しているからそんなこともあり得るのかも知れないけど、最初は信じられなかった。

 

 けど、そんなティアマトに勝つ方法をベリアルから聞いた時は、一度は負けることが前提の戦いを挑むというのに心の底からワクワクした。

だってそうだろ? 『この地にいる人間どもにも働いてもらう』なんて言ってたけどベリアルさんが人の力を信じたんだ! 嬉しくならないわけがない! 

 

【アークベリアル】

 

【マガオロチ】

 

【フュージョンライズ!!】

 

 これを祝わなくてどうするっていうんだ! 見せてやるティアマト!! 人の光を纏ったウルトラマンがどれだけ強いのか! お前に教えてやる!! 

 

集く(すだく)ぜ! 祝福!!」

 

 

 

 

【ウルトラマンベリアル! ()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「これが貴様の最後の戦いだ。心してかかれ、ティアマト」

 

[aaa……。──────aaaaaa!!! ]

 

[奪ッタ 奪ッタ 奪ッタ 奪ッタ 奪ッタ! 返セ!! ]

 

 禍々アークベリアルへとフュージョンライズを遂げたべリアルを前にして、ティアマトはこのままウルクへ逃げることは不可能であることを悟った。

ベリアルを倒さなければ自分は母に返り咲くことは出来ない。だからこそティアマトはその巨体を動かしラフムを産み出しながらベリアルへと向かっていく。

 

「奪った? そう思うなら奪い返してみろ、オレを倒してな」

 

 先に産み出されたラフムたちがべリアルに向かって突貫してこようとするが、ベリアルの背面に生えている緑の結晶が一斉に輝きだすと、その一つひとつから高出力のビームが飛び出しラフムを容赦なく消滅させていく。 そうしている内にティアマトとベリアル両者の距離は接近し、ティアマトは茨木とキングゥを捕まえた時のように腕のように変化させた翼を強く握りしめて殴りかかってきた。

 

[Aaaaaaa!!! ]

 

「どうした? 一度はこのオレを倒して見せた貴様の力はこんなもんじゃねえだろ? もっと! もっとだあ!!」

 

 ティアマトの攻撃をその手を使って受け止めると、ベリアルは60m以上あるティアマトの巨体を軽々と持ち上げもっと! という声に合わせてティアマトの事を海面へ何度も叩きつける。

そうして終いには叩きつけられて疲弊したティアマトに尻尾での一撃を加え吹き飛ばした。

 

「もっとこのオレを楽しませろおおっ! ティアマトぉおおおおお!!!」

 

 新たな力を得た喜びか、それともティアマトでは相手として物足りないのか、空を見上げながらベリアルは雄叫びを上げる。

圧倒的な力の差を見せられたティアマトだったが、それでも母として還り咲くために諦めることはしない。

 

[GGGGGAAAAAAAAA────!!! ]

 

『や、やばいぞベリアル! その魔力の塊一つでこの星の四分の一が崩壊されてしまうほどの魔力が込められてる!』

 

「黙って見てろ……」

 

 ティアマトが翼と口から放出した魔力を一つに纏めた巨大な球体状の魔力の塊を放ってきた。カルデアの解析ではそれ一つで地球の四分の一が消滅してしまう威力がある。

避ける、逃げるという選択が出来ないため、どうにかベリアルにその攻撃を跳ね返してほしいと願うが、ベリアルはエネルギー溜めるなど攻撃に移る動作はせず、両手を広げてティアマト最大の攻撃をその身で一身に受ける。

 

「「ベリアルさん!」」

 

『う、うそだろ……? あれだけの攻撃受けて、ダメージ一つもないってどんな化物だ……』

 

 実際誰がどう見ても今のベリアルは大怪獣と言って差し支えない姿をしているためロマニが化物だと言っても不思議ではないのだが……。

ティアマトの攻撃に包み込まれ、倒せないにしても相当なダメージは負うはずだと思っていた全員が、ティアマトですら驚愕を隠せない。

 

 魔力の塊の内部を切り裂くように出てきたベリアルの身体には傷一つすらついていなかった。それもそのはず、今のベリアルはウルトラマンノアの力に一つの宇宙すべての生命の力が込められた一撃でなければ倒すことが出来なかった強靭な肉体と、ウルトラマンオーブがベリアルの力を有さなければまともなダメージすら与えることが出来なかったマガオロチを鎧として纏っているのだ。たとえ本来とは違うカプセルを使用した仮初なものだったとしても、ティアマトにその守りを崩すことは不可能。

 

 それでもティアマトはベリアルが接近してこないように、身体の至るところから魔力を放出させた光線をベリアルに向かって撃ち続ける。

 

「その程度で、このオレを止められると思うな。……ヘアッ!!」

 

 ベリアルの声に合わせて彼の瞳と、両肩と両ひざに付いているマガオロチの顔の瞳が怪しく光輝くと、ティアマトの光線がベリアルを避けるように曲がり、逆にティアマトの事を襲い始める。

 

[Baaaaaaaa!!! ]

 

「フハハハハハッ!!! まだ、終わりじゃねえぞっ!!」

 

 ガバッとマガオロチの口が大きく開くとそこから緑色の息を大量に吐き出し始める。

それが地面へと落ちると、海を、そしてメソポタミアの大地を覆いつくしてしまう量が出され、広がっていく。

 

『まさか毒息かい!? 立香ちゃんたちもいるのに何考えてるんだベリアル!! 立香ちゃんたちは少しでも早くそこから!!』

 

「大丈夫ですドクター。ベリアルさんの吐き出したあの息に、毒性は確認できません」

 

「私やマシュはギャラハッドにお陰かもだけど、牛若丸も何にもなってないから」

 

『そ、そうなのかい? じゃああれは……。って、何だコレッッ!!!』

 

 ものの数分で世界を覆ったベリアルが吐き出した緑の息だったが、毒息かに思えたが立香たちの身体に何か異常が起きたわけではなかった。

が、カルデアの測定器は確かにその異常を捉えていた。

 

『海が……ティアマトによって変えられた海が……()()()()()()()()()

 

「どうだティアマト。お前にとっちゃあコレが一番の毒だろ」

 

 ベリアルが吐いた息は確かに毒だった。ただしそれはティアマトとその眷属だけに効果がある限定的な毒。

ウルクの地に残っていたラフムたちは息に触れただけで消滅し、黒い泥に埋もれていた海は本来の色を取り戻した。唯一残っていると言えばティアマトのいるその場所だけ。

 

 移動するだけなら自身の足場だけを黒に変えればいいだろうが、相手がベリアルと言う圧倒的な存在を前にしてちまちまそんなことをやっていたら一瞬で負けが決まってしまう。

だからこそ、追い込まれたティアマトが取れる手段はこれしかない。

 

 

[aaaa Aaaaaaaaaa────!!!! ]

 

「……来たか」

 

『ティアマトを中心に結界のようなものが形成始めてる! これは……』

 

「【ネガ・ジェネシス】あれは旧来の生物を否定し、新たな生命を産み出そうとする概念結界。サーヴァントが入ってしまえばしまえば強制的に消滅してしまうだろうね」

 

「そんな、じゃあどううれば……ってマーリン!? 消えた筈じゃ!!」

 

「ああ、何か僕いなくても大丈夫そうだったんだけどロマニ以外に解説が必要だと思ってね。小走りできた!」

 

 ティアマトの作り出した概念結界と消えた筈のマーリンの登場に驚いていると、ベリアルの胸のカラータイマーから一つ光が飛んでくることに立香たちが気付いた。

何かしらの攻撃ではなく、意志のようなものを持ってこちらへ移動してくるその光から現れたのはナーサリー・ライムだった。

 

「あの空間に入れるのは今を生きている人間、立香とマシュだけ。あとは言わなくてもわかるわよね、おねえさん?」

 

「……あの中に入れる私がティアマトに止めを刺すってこと? でもどうやって……」

 

「あら、わたしがあげたものを忘れたのかしら? あの怪物にもう理性はのこっていないのよ」

 

「“ヴォーパルの剣!! ” そうか、これなら!!」

 

 理性ない怪物に有効な剣。ビースト顕現したティアマトにこれ以上にない程弱点となる剣を立香はずっと腰に下げていた。

そんな立香が覚悟を決めて顔を上げると、ベリアルが立香たちの目の前までやって来ており、その巨大な手を仰向けに立香とマシュの前に叩きつける。

 

「乗れ。挽回の機会を、お前たちに与えてやる」

 

「────!! 行こう、マシュ!!」

 

「はい、先輩!」

 

 「いやここは私の宝具が輝く所……」とかなんとかマーリンが言っているがそんなことどうでもいいらしく、喜んでベリアルの手に乗る2人。

挽回の機会。立香とマシュにとってそれはベリアルがティアマトと最初に戦った時に自分たちが邪魔をしてしまったことへの後悔、それを挽回することが出来るならと、この戦いを終わらせることが出来るならと意気揚々と乗り込む。

 

 2人が手のひらの上に乗ったことを確認すると、その腕を自分の肩の方へと移動させ2人の事を自身の肩に乗せてティアマトへとその巨体を揺らしながら走っていく。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

[────多くの命を育みました。────多くの命に愛されました。でも、子供たちは私を梯子にして、遠くへ行ってしまうのです]

 

 あの後、ベリアルさんがティアマトのネガ・ジェネシスの侵攻をその巨体で強引に抑えている内に、宝具を展開したマシュと一緒にティアマトへと突っ込んだ私は、ティアマトの額にヴォーパルの剣を確かに刺したはず……なんだけど。

 

 気づけばなにもない真っ白な空間の中で、竜の姿にも、巨大化もする前のティアマト。ううん違う、彼女は、彼女が()()()()()()()()なんだ。

もうこれで終わりってことを悟っているのか、うつむき気味に、自信なさげに私に思いを伝えてくる。

 

[────ずっと愛していたいのです。────ずっとそばにいたいのです。私の……『愛』は間違っているのでしょうか]

 

 伝わってくるのはさっきまで戦ってた『巨大な敵』でも『怪物を生み出す母』でもなかった。

子どものことを思う、無償の愛を向ける『生命の母』としてのティアマト。

 

「……私はお母さんじゃないから、貴女の気持ち全部が分かるわけじゃない。もしかしたら貴女と話すのは子どもを持つ博樹さんの方が適任だったのかも知れない」

 

「…………」

 

「こんな事があって突然親元をこんなに長い期間離れることになるなんて思ってなかった。そのおかげで、そのせいでかな? どれだけ自分が甘やかされて、愛されて育たれたのか初めて分かった。けど、だから伝えられることがあるんだ」

 

 うつむいていて私と目を合わせてくれないから、彼女の目の前にしゃがんで確りと×印のあるティアマトの綺麗な瞳を見つめる。

 

「遠くへ行ってしまう。自分の目の届かないところで成長していく。けど、親への愛は変わらないよ、だって私がそうだもん」

 

 私の場合は自分で決めて親元を離れたわけではないけど、母の愛情を一身に受けた子供はいつしかその母の手から離れなきゃいけない時があるんだと思う。

きっと、ティアマトとの決別を選んだ子どもたちも同じ気持ちを持ってたんじゃないかなって、勝手な憶測だし私の思い込みかも知れないけど

 

「だからさ、子はみんな貴女を愛しているよ」

 

【────私を置いていかないで────もう二度と私を愛さないで]

 

 私の言葉を気に入ってくれたのか気に入らなかったのか分からないけど、一筋の涙を流して悲し気に呟く。

だから私は、手に持っていたヴォーパルの剣をその場に捨て置いて、ティアマトを背にして歩いていくことにした

 

「さようなら。────貴女のことは、忘れない」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ベリアルさぁあああああん!! お願いッ、ティアマトを! 眠らせてあげてえええええ!!!」

 

 気が付くとあの白い空間から抜け出していた立香は、マシュと共に海へ落下している最中だというのに、そんなこと関係なしに大声でベリアルに向かって叫んだ。

 

「ふっ、漸く子離れする気になったかティアマト」

 

 その声が届いたベリアルは、ネガ・ジェネシスを強引に破壊しウルトラ念力を超えた念動力によってティアマトの巨体を持ち上げ、空に向かって飛ばしていく。

これから撃つ一撃を普通に撃っただけでも地球が崩壊する恐れがあるからこそ、何の障害のない空へ向かって放つ準備をする。

 

 ベリアルが唸りを上げるように身体を逸らすのと同時に、背中側に無数に生えた高純度のエネルギー物資である緑の結晶が光り輝き、ベリアルの体内に大量のエネルギーを生み出していく。

そして、エネルギーが溜まった合図なのか額から伸びる真紅の角が輝くと、ベリアルがその口から強力な熱線を吐き出した。

 

「ハアアアアアッッ。 ガアアアアアアアアアッッ!!!!!」

 

 その口から吐き出された熱線は、デスシウム光線と酷似した漆黒の雷を纏った赫い熱線。

余波だけで辺りの海面は蒸発し、海に落ちそうだった立香を抱えたマシュは地面に着地して直ぐにその衝撃を耐えるために盾を構えている。

 

 今放った熱線でティアマトは消滅するだろう。だが、それはベリアルが許さない。

ベリアルは吐き出している熱線に更に力を加えると、漆黒の雷に加えて緑色の雷(ウルクの魂)を加えその威力を更に倍増させティアマトへと届かせる。

 

[────────]

 

 もうティアマトに抗う力も、怒りに身を任せた表情も見受けられない。 ただ自分が消滅するその運命を受け入れ、ベリアルの熱線に包み込まれて消滅していく。

痛みに声を上げるでもなく、裂けてしまったその口では作るのは難しかったかも知れないが、下手くそな笑顔を浮かべながら、ティアマトは消えていった。

 

「否定されても、拒絶されようが、泥にまみれた道を進んでいたとしても……」

 

 戦いが終わり、ベリアルの中からマガオロチの力が抜け、アークベリアルの力も無くなり元の黒いウルトラマンの姿へと戻ったベリアルは、空へと消えていったティアマトへ語り掛けているのか、はたまた空を超えた宇宙を超えたその先にいる()()に向けて言っているのかは分からないが、手を上に伸ばしながらつぶやいた。

 

「光に向かって無様に歩いてるだったら……たとえ障害になってでも背中を押してやる」

 

 それはきっとベリアルだけの答えで、親を持つ子全てがそれに当てはまるわけではない。

けど、それでも、不器用な自分が出来た唯一の()()()()()()()()を伝える。

 

「それが、親ってもんだ? そうだろう、なあ?」

 

 

 

 その時、ベリアルが誰かの名前をそっと呟いたが、同化している博樹以外で、誰の名前を呼んだのかは分からない。

けれど、月明かりが差し込んだベリアルの瞳は、涙がにじんだような晴天の時の空と同じ色をしているように見えた……。

 

 

 

 




【禍々アークベリアル】
 ラスボス怪獣&中ボス怪獣とキメラべロスと素材は同じだがこちらの方がカプセルとの相性が抜群に良いため完全上位互換。
 実際アークベリアルの全長300メートルという超巨大サイズだが、そのサイズで暴れては地球の方が持たないため60m超サイズにベリアルが調整している、

 『マガマガアークデスシウム』
 ベリアルがティアマトに止めを刺した必殺熱線。 ウルクの人々の思いも乗せたその一撃は地球に放てば地球丸ごと消滅してしまうほど。

 『マガキネシス』
 超全集でのみ記載があっただけで詳細の分からない技。
 この小説ではウルトラ念力にマガオロチの力が加わることによって使用することが出来る超念動力。頭で考えるだけで使用することが可能であのティアマトの巨体すらも易々と持ち上げてしまうほどの威力を見せた。

 『マガポイズン』
 こちらも超全集から、本来ならば瞬くまにその星の生命が滅びる毒息を吐き出す技だが。ウルクの魂と3騎の人でなしのやさしさによってティアマトに対する完全なカウンター技として機能した。 本来の使い方が出来ても昔のベリアルさんの目的は支配であって破滅ではないため多分使うことはなかったんじゃないかな?

 ティアマトと禍々さんの大怪獣決戦だああああ!!
…………禍々が苦戦するとかありえなくない? てか熱戦することすら許さなそう。一方的に相手の技を封じて完封する。これこそじゃん?

次回は7章エピローグと裏話的なのを何個かと少し最終章についての話も出来れば……

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エピローグ

 この小説はFate/Grand Order〜Bの因子〜です。よく見慣れた、この小説では見慣れない名前が最初に出てきますが間違いありません。

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「ううっ……ううん……」

 

「……クっ! ……よ、リ……」

 

────これは夢だ。一目見ただけで確信できるほど酷い夢、悪夢って言ってもいいかも知れないくらいに見ていて苦しい夢。

だって、()()()が誰かと手を取り合って世界を救うために頑張るなんて、絶対に在り得ないから……。

 

 石刈アリエの時のように憑依して勝手するんじゃなくて、ゼロとレイトさんのように一体となって敵と戦うそんな姿を見せる人じゃない……。

だって彼は!! アイツは!! ()()()()はっ!! 

 

「起きてよ! ()()()!!」

 

「!!? はあ……はあ……ペガ? そうか、夢をみてたんだ僕……」

 

「ペガが何度も起こしても起きないし、苦しそうだったから心配したよリク?」

 

 体中汗だらけで気持ち悪いけど、深呼吸して何とか気持ちを落ち着かせる。

そうだ、今僕はゼロからの協力要請を貰って、彼らウルティメイトフォースゼロが拠点を構えている宇宙【アナザースペース】に来てたんだ。

 

 この宇宙はかつてベリアルに支配されていたけど、ゼロとウルティメイトフォースゼロたちみんなの活躍によって平和を取り戻した宇宙。

けど、だからこそここはベリアルの爪痕がとても濃い場所だ。

 

「レム。今の時間と凶暴化している怪獣の位置を……

 

『バイタルが安定していません。リク、ゼロたちに言って今日は休んだほうがいいのでは「大丈夫だ!」』

 

「ちょっと風に当たれば大丈夫だから……心配することじゃない……」

 

「『リク……』」

 

 八つ当たりのよう強く言ってしまったけど、弁解するタイミングもなく。僕は一度星雲荘から外に出ることにした。

 

「あんな夢を見たのも……この場所のせいなのかな……」

 

 外に出た僕の眼前に広がるのは緑というか、エメラルド色に包まれた星。惑星エスメラルダの都市が一望できる高台のような場所。

最初はゼロの勧めで都市部に、ていうか王宮に泊まってくださいって言われたんだけど、それだと緊急時に出られないからって理由を付けてこの場所に星雲荘を置かせてもらってる。

 

「ベリアルが、人間と協力して世界を救うなんて……。なんであんな夢を見たんだ、僕は……」

 

 そんなこと有り得ない。だって、どれだけの宇宙を傷つけてきたと思ってるんだ! この星の人たちだって、最初ジードの姿を見た時は恐怖を抱いてた。

この宇宙がベリアルの支配から抜け出して何年も経ったっていうのに、ベリアルが与えた恐怖を拭いきれないでいる。

 

 そんなベリアルが今更世界を救おうなんてやっていいはずがない! 絶対にあっちゃダメなことだ!! 

 

『ベリアルさん!』 

 

『ベリアルさん、訓練を手伝ってもらってもいいでしょうか?』

 

「ああああああッッッ!!!」

 

 違う! 僕が怒ってるのはベリアルが今更正義の味方のように活動していたことでだ! 夢で出てきた女の子たちに怒ることなんて一つもないんだ! 

 

『ゼロ! いつも言っているだろ、むやみたらに飛び込むなと』

 

『ああうるせえぞ親父! 怪我ひとつしてねえんだから心配すんなっての!』

 

『いいかタイガ。今の戦い、こうすればもっと手早く怪獣を倒すことが出来た』

 

『そうか……! 分かりました、父さん!』

 

「……ベリアル、ウルトラマンベリアル。 僕の父さん……、あの夢は僕は心の奥で夢見ていたこと……なのかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「「「は、はははは……ははははははははははは!!!!」」」

 

「ようやくだ! ようやく見つけたぞベリアル!! 貴様の()()()()()

 

「これで我らにもう負けはない。 星見の奴らがいかに足掻こうとも、我らの勝利は確実となった」

 

「さあ、来るがいいカルデア! そしてベリアル!!」

 

「我らの宿願、今こそ果たそう!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

緊急事態発生(エマージェンシー)緊急事態発生(エマージェンシー)

 

 ベリアルさんがティアマトを倒したことで特異点の修復が始まり、一緒に戦ってくれたみんなにお礼を言いながらカルデアに帰ってきた私たちだったけど……。

どうやら、休んではいられないみたいだ。

 

カルデア外周部 第七から第三までの攻性理論、消滅。不正証明に失敗しました

 

 コフィンのある巨大な地球儀のようなあの中心にある小さな地球が真っ赤っかに燃え始める。

館内を形成する疑似霊子の強度に揺らぎが発生とかなんとか言ってるからそのせいなんだろうけど、何言ってるのか私にはちんぷんかんぷん。

 

「外部からクラッキング……! ドクター!」

 

「ああ、帰ってきたばかりなのにすまない。 いよいよこの時が来た、これはソロモンからの干渉……いや、引き寄せだろう」

 

 帰って来てから直ぐに始まった第七特異点の聖杯の解析。その結果は直ぐに出て、人類史には存在しない特異点を見つけた。

 

「あの蛆が潜んでる特異点。ようやく見つけたか……」

 

「ああ、だけどそれはソロモンの方も同じだ。 今まであっちも見つけられなかったカルデアの座標を見つけた彼は、ここと魔術王の特異点を融合させようとしている」

 

「じゃあ、いまカルデアは魔術王の特異点に向かっていってるてことだよね?」

 

「そう、その融合が完了する前にソロモンを打倒する。いいかいみんな、これが正真正銘最後の戦いになる、各自十分な休息の後最後の特異点へレイシフトを実行する!」

 

「「はい!!」」

 

 これが、私の旅の最後の戦い。マシュやベリアルさんと出会ってから続いたこの長い旅の終わりが近づいてる。

────覚悟を決めよう。これまで出会ってきた英霊たちみんなに恥じないように、最後の最後まで生き延びるために!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

【7章裏話】

 

[4人の女神とゼツボウノカケラ]

 以前も話したようにコチラは禍々アークベリアルではなくキメラべロスとなってティアマトを撃破するルート。

3女神同盟にイシュタルを加えた4人の女神の霊基を第二特異点で手に入れたゾグ第一形態のカプセルに注入させることで第二形態へ進化。

 

 ウルクの人の魂を救済せず、魔獣になった魂もラフムになった魂もストルム器官(復活予定だった)を使って強引に吸収してファイブキングのカプセルを作り出すことでキメラベロスへのフュージョンライズを可能に。

 陛下としてのベリアルさんならこちらもありかな? とは思ったのですが、3人であれだけ時間かけてて終いには冥界下りカットしてる時点御察しの通り話数が絶望的に多くなる心配と、アナちゃん&ゴルゴーンはさておき、他の女神があんまりベリアルさんと相性よくなさそうというか……エレちゃんは完全に立香ちゃんロックオンしてるし……と書く上で色々問題があったため没。

 

 実際キメラべロスより禍々アークベリアルの方が好きだし、エビフ山に茨木ちゃんがいたのは分かっていたので彼女に聖杯を持たせれば万事解決だったんですよね。

 

 

[マガオロチのカプセル誕生秘話]

 禍々アークベリアルに決めたはいいがどうやってマガオロチのカプセル生み出そう? ウルク民の魂を集結させた1本? それともメインに添えたサーヴァントたちの集合カプセル?? 

アナちゃん&ゴルゴーンは同じ蛇だから相性は完璧。けどあとはどうしようか……? 巴御前を助けて彼女から? それとも牛若丸や弁慶から? などなど悩みまくった結果。

アナちゃん、キングゥ、そして茨木ちゃんの3人には母から見放されたという共通点が存在している、その逆張りから母であるマガオロチが生まれるのは最高なのでは? 

 しかもマガオロチはモンスター銀河出身の割に日本太平風土記に記されてるくらいだから日本の【魔】で茨木ちゃんと共通点が。そしてマガオロチは「自身の卵を惑星内部の奥深くに産み落とす」=地球破壊の楔を刺すというのがエルキドゥではなく、キングゥ本人との共通点があるからこそマガオロチが生まれました。

 

 

 

 

 

 




ええ、正直に言いましょう! 作者は最初からリクくんのこと出すき満々でしたよ!!
なーにが登場するかは未定ですだ!出すに決まってるだろ大好きなんだから!!
まあ、本格的に物語に関わるとしたら2部からになるでしょうけどね?

あ、勘違いしないでくださいね。作者はリクくんのことを曇らせたいんじゃないんです。
子として接してもらったこと無いのに夢で他の子に親のように接するの見たらそりゃああんな態度になりますよ


【終章について】
ようやくここまで来たこともあり、最終章は毎日投稿して一気に終わらせたいと思ってるので投稿開始まで少し時間がかかると思います。流石に5章の時のように1年空けることは無いですが……。
 まあ、アニメfgoが終局やる前には絶対に投稿します!


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冠位時間神殿ソロモン〜この星の……。〜
プロローグ


お待たせしました!
最終章「冠位時間神殿ソロモン〜この星の……。〜」始まります。
本当は次回予告を出してのスタートにしようと思ってたんですけど、いかんせん予告つくるとネタバレばっかりで……。

なので、6/25(金)から7/3まで毎日18:00に投稿。ノンストップで終局を終わらせます!!
ウルトラマンベリアルの、そしてカルデアの人たちの一つの旅の終わり、見届けてください。

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「────カルデアにきてから、大雑把にみて10年間。長かったような、あっという間だったような……。 まあ、キミからすれば10年なんて一瞬の出来事なのかも知れないけれどね」

 

 魔術王ソロモンへと続く最後の特異点の座標が観測されてから厳戒態勢が続いているカルデア。

 立香やマシュたちが寝静まった真夜中の時間に少しではあるがようやく一息つく時間が出来たロマニは、自身の部屋で物思いに耽っていた。

 

 そんなロマニは、感傷的になっていたからなのか、最後の戦いが近づいているという事に神経が研ぎ澄まされていたのか、普段なら気づかないはずのベリアルの接近に気が付き声をかける。

 

「そうだな、たかが10年。オレたちのような存在からすれば捨て置いてもなんら問題ない時間だ」

 

 そいつは羨ましいと、15万の時を生きてきたベリアル相手に軽く苦笑するロマニは、ベリアル以外には聞かれたくない話をするのか彼に博樹は?と問いかける。

 

「ティアマトとの戦闘での疲労がまだ癒えてねぇからな。まだアイツの意識は奥深くで眠ってる」

 

「そうか、ならまだソロモンの特異点へ挑むのは早いね」

 

 実のところ、バビロニアから帰って来てから博樹はずっと眠り続けていた。

 2度に渡るウルトラマンへの変身、しかも片方は通常のベリアルから更に進化を遂げたベリアル融合獣となって行った全力の戦闘だ。疲弊しないわけがない。

 

 こうなるであろうことは事前にベリアル本人から聞かされていたため博樹も納得の上で行ったということもあり、眠りもそこまで長いわけではないこと伝えられていたため、最後の特異点攻略は博樹が目を覚ましてからという手筈となっている。

 

「……“ただなんとなく人類を守ってみよう”ってやってきた。勉強と研究、それと調査しかやってこなかった10年だった。人類の終わりっていう悪い夢が真実だと疑えずにさ」

 

 博樹に聞かれる心配がないことを知ったロマニは、ポツリ、ポツリと今まで自分が歩いてきた道を話し始める。

 怖くて、怖くて仕方がなかった、けれどロマニ・アーキマンという男はそこで立ち止まることはしなかった。走って、走って……。怪獣に怯えて逃げ出すように走り続けた10年の月日であったと。

 

「……だから、最初君の名前を聞いたときは恐怖で頭がどうにかなりそうだったよ。けど、()()はもう必要ない」

 

「ふ……そうか」

 

 ロマニは自分のパソコンに残っているデータも、手に持っている資料も綺麗さっぱり捨て去った。それこそ誰がどんな手を使ってでも復元できないように、電子の海の中から掘り返されないように天才たちの力を借りてでも消滅させた。

 

 そのデータはロマニが“ベリアルレポート”と命名してずっとベリアルについて記し続けていたもの。

 

「キミが()()()()と名乗ったその日から記し続けていたものだったけど、これはもういらない。ソロモンの正体に当たりが付いたからね、もう君を疑う必要がない。ていうかキミ知っていて面白がっていただろ!」

 

「言ったところで、この地球では架空でしか語られていないオレたちの存在を貴様らが信じるわけがねえだろ」

 

 それはそうなんだけと一人愚痴りながらコーヒーを啜る。

 余談ではあるが、一体となっている博樹がそうだからなのかベリアルはコーヒーをブラックで飲めない。砂糖とミルクを入れた甘いコーヒーしか飲めないベリアルを見て、ロマニは密かに勝ったと思っていたりする。

 

「キミは最初からあのソロモンにある()()()()()()を知っていた。だからボクに()()()()()()()()と、そう言ってくれたんだろう?────ありがとう、今だから素直にそう言える」

 

「そう言うわりには、まだ決めかねてるみてえだけどなあ?」

 

「ははは。本当に、何でもお見通しだね君には。────あのソロモンでは決して届かない空白。それを前にした時、自分が何を考えているのか分からなくてさ、だからその時がこないことには覚悟を決めるにも決められない」

 

 その勝機を上手く利用できるかではなく、その瞬間に直面した時の自分の思考が怖い。そんなことを言う臆病すぎる心優しい彼を見て、ベリアルは自然と笑ってしまっていた。

 

「なっ!笑う事はないだろ! そ、そういう君だってどうなんだい? 人理焼却が解決すればその為に喚び出されたサーヴァントたちは強制退去することになる。それはウルトラマンである君だって例外じゃない筈だ。 同一化している博樹さんは勿論だけど、君の事を慕っている立香ちゃんやマシュだっている、どんなに君が悪者だったとしても、情は生まれているはずだろう?」

 

「…………どうだろうな」

 

 サーヴァントの強制退去。人理修復が完了したら起こりうるその事象を突かれたベリアルは答えを返さずにロマニの部屋を出ていこうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが」

 

「?」

 

()()()()()()()()と歩んだ時間は、捨て置くには惜しいものにはなったな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴方が見せるこの風景は、わたしには恐ろしいものにしか見えません』

 

 定められた命から解放され、死の恐怖から解放され、あらゆる不安から解放された。魔術王ソロモンが望む“可能なかぎり、人間にとって幸福なカタチを実現した世界”を夢の世界に干渉され見せられてたマシュは、その夢を、その理想を真っ向から否定した。

 

『貴方は命の終わりを嘆き、永遠の素晴らしさを説きます。でもごめんなさい』

 

 マシュ本人でさえ、なぜソロモンが自分の前に現れたのか分からない。

 ただ、自分のことを案じていることだけは理解できたマシュは、ソロモンに一言謝りの言葉を入れた。

 

 命が失われるのは当たり前のことだから、終わりがないから悲しみがない、()()()()()()()()

 ここまで旅をしてきたからこそ、その時代、その時間に生きる人たちを見て、感じて歩いてきたからこそマシュは目の前の光景を見せられても心を曲げることはない。

 

『何故だ。この町の人間はみな幸福だ。永遠はもっとも渇望される幸福のはずだが?』

 

『────偽物の仮面を被せられてるヤツらの、何処が幸福だ』

 

『ベリアル……さん……』

 

 夢の世界への干渉。以前は立香の時にソロモンが行ったものだが、それを出来るのは彼だけではない。

 ソロモンの作り出した理想の世界を外からガラスを砕くように侵入してきたベリアルは、マシュの隣に立ってそう言い放った。

 

『あの時も干渉してきたならあるいはと考えていたが……やはり邪魔をするかベリアル!』

 

『コイツに助けは必要なかった見てえだが、こんなクソ見てえな夢。外から見ても気色悪かったんでなあ』

 

 ベリアルにとってもソロモンの思い描くこの理想世界は許せないものらしく、その手に持ったギガバトルナイザーで大地を叩くことで世界が崩壊を始める。

 

『ほらどうだ? このまま存在が消滅するってのに、この人形どもは恐怖することも、泣きわめくこともしやがらねえ。そんな世界の何処が理想だ、笑う気にもならねえ』

 

『────人間に生み出された短命の者であるキミがどのように生きるのか。キミを特別視していたが、それも気が済んだ。払うべき関心も尽きた、貴様らに生き残る(みち)はない。 この幸福を理解できないベリアル、貴様もだ!』

 

 崩壊する世界から姿を消しながら、ソロモンは声高らかに宣言いた。

 人類史は終わりを迎えると、生き残る人間はいないと。

 

 

 

 

 ────ベリアルに勝利して見せると

 

 

『今回で確信した!我が神殿に来るがいい、ベリアルお前は私たちには絶対に勝てない! ハハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッ『とっとと消えてろ』』

 

『あ……。 べ、ベリアルさん、助けに来てくれて、ありがとうございます』

 

 ソロモンが完全に消滅したのを見て、そろそろ夢が覚めると確信を持ったマシュはすぐさまベリアルに感謝を述べた。

 目覚めてから言おうにも覚えているか分からないし、それにベリアルの事だすぐにどこかへ行ってしまう。

 

 流石にマシュもベリアルの事が分かってきたため直ぐに行動に移した。

 

『最初にも言ったが、お前を助けに来る必要はなかった』

 

『え?』

 

『お前はもう生きていることってはなんなのか。死ぬってことがなんなのか理解できてるからな』

 

『────はい。例えこの命が残りわずかな時間しかなくても、わたしは今を懸命に走り抜ける。それがわたしの生きた証だから』

 

 マシュにもう迷いはない。言葉一つでそれを確かに感じ取ったベリアルは、この夢の世界から抜け出すために、珍しいことに自分からマシュの手を握って光が差す方に向かって歩いていった。

 

『そろそろコイツも目を覚ます。あの蛆に証明しに行くぞ、“生きてる”ってのがどういうものなのかをな』

 

『はい!行きましょう、一緒に!』

 

 父親に手を引かれる娘。きっと誰かがこの光景を見ていたらそう言うであろうほどに、2人の表情もその背中も似通っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 





次回、6/25からスタートです。お待ちくださいな!!
終局の映画が始まる前には〜とかとか何とか言ってたんですけど……。トリガーが7/10に放送開始。トリガー始まる前には終わらせなきゃ!!


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1

本日から連続投稿スタートです!
DARKNES SHEELS-Lili-も更新されてるのでお忘れなく! 舞台版もそうだけど人間体ベリアルさん凄い好きなんですよね。
DARKNES SHEELSはベリアルさんやジャグラーさんはもちろんのこと、他3人の解釈も最高に素晴らしいので舞台ということで遠ざけてる人は見てほしいですね。
特にイーヴィルティガのキャラクター性がびっくりするほどタイプだったんですよね。

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく





 

 

 …………ここは? 

 気が付くと、私は辺り一面真っ暗なその空間で身体を動かすことが出来ずに宙に浮かんでいた。

 そうか、ティアマトとの戦いが終わってまだ私は眠ったままなんだ……。

 

『あはは! 今日も()()()は平和だねお母さん!』

 

『そうね。でも忘れちゃだめよ? 宇宙警備隊のみんなが毎日頑張ってくれているからこの平和は続いているの」

 

 今置かれている状況を理解してきた私の耳に、そんな会話が届いてきた。気になって意識をそちらの方へ向けると、宙に浮いている感覚から一変して、全身が何か硬いもので締め付けられているような感覚が襲ってきた。

 

 一瞬のことで驚いてしまったけど、私はこの感覚に覚えがあった。身体が動かせない状況で、光の国に生きる人たちの日常を延々と見せ続けられる。

 “宇宙監獄”キングが作り出したベリアルさんただ一人を閉じ込めるための監獄だ。

 

 けど、どうして今になってその時の夢を見るんだろう? 

 しかも宇宙警備隊やその訓練生を見ているんじゃなくて、それ以外のこの国で普通にに生きている人たちに視線が向けられている。

 

『ああ…………。くだらねえ…………』

 

「ベリアルさん?」

 

 もうこの頃の夢を見る事なんてないと思っていたから、何で見ているんだろうって疑問に思っているとベリアルさんの、監獄に囚われている方のベリアルさんが口を開いた。

 

『何が平和だ、ふざけるんじゃねえ。 宇宙のそこかしこで怪獣や宇宙人どもが暴れ続けてるってのに平和だと? お前らは“生きてすらいねぇ”』

 

()()()()()()()()()()

 

 誰かの聞かれるでもないその中で呟いた一言だったんだろうけど、私はその言葉が気になってベリアルさんが見ていた光の国の住人の方へと意識を集中させる。

 そこに生きる人たちは、争いもなければ喧嘩だってしない。戦士たちが脅威から守ってくれているから安全な生活が保障されている。

 

 だから、そこに生きる人たちの表情は自分たちには不満や悩みなんて一つもないんだ、毎日が幸せで嬉しいって気持ちが痛いほどに伝わってくる。

 それを“生きていない”なんて言うのはベリアルさんの方が可笑しいんじゃないのか? 

 

 

 

 

 

 

 

「て、前ならきっと、あなたの言葉を否定してた。その言葉の意味を深くも考えもせず、聞いたまま受け入れて否定していた」

 

 いつの間にか私の身体が監獄から抜け出せていたから、声が届くはずのないのに隣で恨みを溜め込むベリアルさんに向かって話しかけた。

 恨みや怒りを募らせ続けてきた。けど、誰よりも、何よりも見てきた貴方だからこその言葉なんだって今なら思える。

 

「そういうこと、ですよね? ベリアルさん」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ────これは、敗北から始まった戦いだった。

 人類の誰もが、気づかぬまま魔術王ソロモンに殺された。

 ソロモン王が没した紀元前931年から綿密に積み上げられてた、人類史最長の殺人計画。

 

 この馬鹿げた企みを破り捨てるために、机上の空論でしかないと証明するために七つの特異点を渡る長いながい旅をし続けてきた。

 一人の少女は、盾を構える少女と共に出会いと別れを繰り返しながら成長しあっていった。

 

 一人の男は本当ならばこの場所に立っていなかった。ソロモンに殺された全人類のうちの一人になるはずだった。

 そんな彼は、その身に最恐最悪の力と魂を宿し、その魂と向かい合うことで己も成長することが出来た。

 

 

 きっと敗北から始まったからこそ、この物語は紡がれた。

 誰よりも大きな野望を、底知れない野心を持ち続け、誰よりも敗北するということがどれだけ屈辱なのか知っていたから。

 

 

 ────そんな彼ら彼女たちの物語が、今終わりを迎えようとしている。

 

「君たちならソロモンになんか負けやしない。さあ、最後のオーダーを始めよう」

 

 [レイシフトプログラム、スタート]

 

「敵は魔術王ソロモン。作戦の成功条件はこれの撃破と、君たちの生還とする!」

 

 [アンサモンプログラムスタート。 電子変換を開始します]

 

 いつも通り、これまでと何も変わらない準備と、ほんの少しだけ強い気持ちを持って立香とマシュはコフィンの中で待機している。

 一人一人別のコフィンに入るため、相手に声は届かないことが分かっていても、二人は声を掛け合う。

 

「いこうマシュ。これが本当に最後の戦いだ」

 

「絶対にソロモンの企みを打ち砕きましょう、マスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────そういうことか。随分と手間のかかることをしたみてえじゃねえか」

 

(立香ちゃんたちがいない? ベリアルさんこれって……)

 

 レイシフトが完了したそこは辺り一帯、今私たちが降り立った地面すらも魔神柱たちの肉で出来たそんな気色の悪い空間。

 いつものように隣に立香ちゃんたちがいないけど、彼の反応からそれは違うものだということが分かる。

 

 ドクターたちとも連絡が付かないけど、すぐにアリスちゃんが立香ちゃんたちのいる場所を特定してくれたから、彼女たちの元へ向かおうとしたその時だった。

 まるで、というか実際そうなんだろうけど私たちの行く手を阻むように、無数のそれこそ数えるの億劫になるほど大量の魔神柱がそこかしこからはえてきた。

 

「邪魔だ。消えろ」

 

『────無駄だ。いくら貴様の力が強大であろうと、この空間、この領域で我らを完全に消滅させることは不可能だ』

 

 ベリアルさんがナイザーから放った稲妻が目の前に群がる魔神柱を消滅させたけれど、消滅した魔神柱は十秒もかからないうちに再生し、無数の眼球が私たちのことを嘲笑ってくる。

 

『我ら七十二柱の魔人ある限りこの空間(固有結界)は滅びず、またこの世界が存在する限り我々が滅びることもない! ────ベリアル、我らの同胞の名を騙る貴様は強い。その圧倒的な実力は確かに認めよう! だが、奴らはどうだ?』

 

 コイツら最初から私たちを、ベリアルさんを倒す気なんてなかったんだ! 私たちと分担させた立香ちゃんたちの方を先に排除しようと、それなら簡単だからって! 

 

『確かに奴らは七つの特異点を乗り越え、力を養い成長していっただろう。その努力は認めようとも! 

 

 

 しかし────』

 

 それは貴様(ベリアル)ありきの話だ。

 そう言いながら文字通り四方八方から嵐のような魔力の弾幕が襲い掛かってくる。

 今立っている大地、そして空すらも奴らで形成されたものだから抜け出そうにも抜け出せないし、変身しようにもその隙がない。

 

 これもアイツらの計画の内なんだろうな。いくら無尽の軍勢が襲い掛かってこようがベリアルさんが巨人になってしまえば無意味に近い。

 けど巨人に変身するには私が表に出てライザーを操作するわずかな時間が必要になってくる。その時間を作らせないための攻撃。

 

 

「上手くオレたちの弱みをついてきたみてーだが、甘いんだよ」

 

『『『グォオオオオオ』』』

 

 嵐の中に立とうとも、膝をつかずむしろナイザーを振り回して一度の大量の魔人柱を屠りながらベリアルさんは、疑うこともなく強く宣言する。

 

「アイツらは、お前らが思っているほど雑魚じゃねえぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔神柱撃破! ですがっ!」

 

「倒しても倒しても終わりが見えませんね。べりあるが言っていたように本当に蛆虫かなにかなのでしょうか?」

 

 マシュと連れてきたサーヴァントの一人である清姫のコンビで魔人柱を一体ずつ倒していっているけど、倒しても倒してもその傍から再生されてちゃキリがない。

 

 

 

 最後の特異点へ辿りついた私たちを出迎えたレフは、私たちが今まで頑張ってきた行動は無駄だって嘲笑ってくる。

 これまでと違い、相手の策略によってベリアルさんと離れ離れにされてしまった私たちだけでは世界は救えないって。

 

『ベリアルの居場所が特定できた! 彼らはソロモンの王座のある中心地点から更に奥の奥! 離れ小島のような場所に隔離されてる!』

 

『それを知ったとしても貴様らに出来ることはなにもない! くくくっ、はーっはっはっはっはっはっはっ! 実に、実に滑稽だ! 捧腹絶倒とはこのことだ! 貴様らが心の拠りどころとしていた異端の者の助けなく終わりを迎えるのだ!』

 

「──ッ!」

 

「マスター!」

 

「っと、心配すんなマシュ! コイツはオレが守る、お前はその竜娘と一緒に戦ってろ!」

 

 大地が、無数の枝分かれした柱が張り巡らされた床がミミズのように蠢いたことで私は姿勢を崩し膝をついてしまう。

 そんな私の身体を貫こうとする柱の先端が迫ってきたけど、両手剣ばりに大きくなったクラレントを片手で軽々と振るうモーさんがそれを防いでくれた。

 

 けど柱の猛攻はそれだけでは終わらない。私たちを狙って無数の柱が殺到してくる。マシュと清姫と合流したいけどそれを拒んでくる。

 

『ははは! 諦めろ、我らを殺したければ七十二の同胞すべてを殺し尽くすことだ! それができるであろうあの異端者はこちらが封じた! もはや貴様らに勝ちはない!』

 

「ッグ! なっ、めんじゃねええええええ!!!!!」

 

 モーさんが魔力を解放させて迫ってきた柱たちを一気に消滅させる。そんなモーさんは柱が再生するまでの一瞬の隙を逃さず、私のことを脇に抱えてマシュたちとの元へ走り抜ける。

 私たちが来たことを認知したマシュは大盾を使って小結界を展開する。その結界が展開される前に柱が攻撃してくるけど、それをさせまいと清姫の炎が、モーさんの剣戟が柱を葬っていく。

 

『哀れ、実に哀れだな! このまま耐え続けられるとでも言うのか? ベリアルが開放されるその時まで! 無駄だ、ムダムダムダムダ抗うだけ無意味だと知れ!』

 

 ベリアルさんの後押しのおかげで強化された清姫と聖杯の力で強くなったモーさんの力があったとしても魔人柱との差を埋めることは出来ない。

 防戦一方のこの状況が攻勢に転じるチャンスすら見つけられないけど、こんな所で諦めるわけにはいかない! 

 

『まだ敵を睨むだけの強がりが出来るとはな! だがもういい、諦めが悪いのは十分に理解した! ゆえに潔く死ぬことを選ぶがいい! 我々を愉しませた礼だ、痛みを感じることなく虫ケラのように殺してやろう!』

 

 レフが、魔人柱フラウロスが私たちのこれまでの旅路を否定し、侮辱してくる。もう興味がないのか無機質な眼球を所在無げに動かしながら、私たちの事をこの場から完全に消滅させるための行動に移る。

 

『お前たちの戦いは全てが無意味だった。カルデアもろとも、諸君らの旅は此処で終わる。ハハ、ハハハハ、ハーッハッハッハッハッ!』

 

「その汚い口、閉じてもらいましょうか?」

 

 どこからともなく聞こえてきたその声と共に、魔人柱が邪炎に灼かれて消滅した。

 振り向かなくても、探そうとしなくても誰が私たちのことを助けてくれたのか、それは魔術王の企みによって産み出され一度は私たちと敵対していたこの長い旅で出会った最初の敵。

 そんな彼女が放った全てを焼き尽くす邪悪な炎が、今の私には不思議と温かく感じた。

 

「まったく、だから最初からこの私のことを連れていけばよかったのよ。無能なマスターちゃん?」

 

「オルタ! けど、どうやって?」

 

 ジャンヌ・オルタが嫌味を言いながらも、その顔に確かな喜びの表情を浮かべながら私たちの前に立つ。

 ────でもどうやって? 頼もしすぎる味方の登場ではあるけれど、この特異点にレイシフトする時に連れて行けるサーヴァントの総数は3基だけだったはず。それなのにどうしてオルタがこの場所に? 

 そう疑問に思っているとオルタがその手に持つ旗を空に向かって掲げる。

 

「さあ、宇宙(ソラ)を見上げなさい! あの星一つひとつが我欲に囚われた生命、己が信念を曲げることなんてできやしない愚か者たちの末路!」

 

 ────流星が、空一面を彩る。

 オルタに言われるままに空を見上げた私たちの瞳に映ったのは、一つひとつが異なる輝きを放つ流星の雨。

 

「聞き届けなさい! この領域に集いし一騎当千、万夫不当の英雄たち! 例え人理が燃やし尽くされるのが定められた運命なのだとしても! その運命を否定するのなら、覆したいのなら! 敵だろうが味方だろうが時代が違う? そんな些細なこと関係ないわ! 今まで、これまで、これからも! 運命に叛逆し続けたコイツに力を貸しなさい! さあ────覚悟を決めなさい!」

 

 

 

 

 

 




魔術王のベリアル対策その1、隔離作戦。
 作中でも説明があったようにウルトラマンベリアルに変身するためには、身体の支配権が博樹である状態でライザーを使用しなければいけない制限が存在する。
これはベリアルが精神体であるため、巨人になるにはライザーでリードしたカプセルを解放させるのに内部で集中する必要がある。巨人化初登場が4章だったのもそのため。


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2

今回は最終決戦前のお祭り回のようなもの。
作者がやりたいこと詰め込んだ回です。

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく




 

 

 

 

 それは、奇跡としか言いようのない輝きだった。

 太陽のように世界全体を照らす大きな光では決してない。

 けれど、宇宙(そら)を覆う一つひとつが違う輝きを放つ流星は、暗闇に立たされていた立香とマシュの進むべき道を確かに照らしていた。

 

 

 

 

 

「フハハハハ! どうした、狼狽えてるな? 何か予想外の事でも起こったのか?」

 

 無尽に再生し続ける名のない魔神柱と、それを従える魔神柱()()()()

 博樹たちのことを足止めしていた柱たちも、主の動揺が伝わっているのかその奇跡を前にして明らかに動きが揺らいでいる。

 それでもなお攻撃の手が止まることがないのは、彼らにとって最もな脅威がベリアルであることに変わりないからだ。

 

『それがどうしたという! 如何な英傑英雄が集おうと無意味だ! 貴様がこの場から出ることは不可能であり、私が残り続ける限り同胞たちが消滅することはない!』

 

 この地に喚ばれた英霊たちが襲いくる魔神柱を相手取ることで、再生するヒマを与えずに倒す。

 今この特異点を駆けながらそれを行う立香たちの努力は無駄だと、自分が存在する限り他の柱たちも消滅しないと声高々に叫ぶ。

 

「ひとりになるとお得意の予測もできねえのか?」

 

『なに?』

 

「今起きてるこの現象を、奇跡だとか偶然だとか言ってる時点でテメーらの程度は知れてんだよ」

 

『ならばあの流星は何だという! 我らが領域に入り込み、同胞を相手取るあの無数の星を奇跡と言わずして何という!』

 

「……怪獣が出ようが出まいが、人間ってのは変わらねえ。ソッチ側にいるお前らじゃ絶対にわからねえよ。────それとなあ」

 

 答えにもなっていない答えに憤慨し、今まで以上に攻勢を強めてくる魔神柱ベリアル。

 その攻撃ですらベリアルのことを傷つけることは敵わないが、立香の元に流星が降り注いだように、迫り来る嵐を切り裂くようにたった5()()()()()の流星が落ちてきた。

 

「旅をしてきたのはアイツらだけじゃねえ。()()()()()()

 

『────何故だ? ここへは何人も通ることは叶わぬ筈だ! だというのに何故! 貴様らはソコに立っている!!』

 

「なあに簡単なことよ。吾の知人には千里先にすら矢を届かせるほどの腕を持つ弓兵がいてなあ」

 

「私たちが通れるだけの穴を作ってもらったってわけ。どう? すごいでしょ!!」

 

「お師よ、吾が話をしているというのに横から挟んでくるでないまったく……」

 

「三蔵さん! 藤太さん!」

 

 弓矢と錫杖をそれぞれ構えながら仲良く話をしているのは、エルサレムの地で博樹と絆を結んだ俵藤太、そしてベリアルにその名前を呼んでもらえた。ただそれだけの理由で助けに来てくれた三蔵法師。そして、そんな2人の前を金色の鎖が通り目の前に迫ってきていた柱を一掃する。

 

「母への復讐は為した、けど父への復讐は為していないと思ってね? 僕のこの人格は君たちによって作られた仮初のもの、なら魔術王は僕の父ということになる。本来なら呼ばれることなんてない筈なんだけどね? 現に彼方の方には本物(エルキドゥ)がいる。それでもまあ、君たちに復讐しないと僕に気が収まらないからさ、細い糸を辿って此処にやってきたってわけ」

 

「素直に博樹(マスター)のことを助けに来たと、そう言えばいいものを。捻くれていますねアナタは」

 

「──っ! 君だけは言われたくないからなっ! ていうか、そういうんじゃないからな絶対に!」

 

「アナちゃん、それにキングゥも……。来てくれたんだね?」

 

 メソポタミアの地で博樹と契約しその運命を見事覆して見せたアナと、博樹やベリアルたちと関わることで道具ではない、個としての心を持ちえたキングゥの2人も博樹の元に集い、その獲物で無尽の柱たちを狩りとっていく。

 博樹が繋いだ縁、あの爆発を受けて目を覚ますのに時間がかかったため関わってきた英霊たちが立香に比べれば雲泥の差があることは確か。けれど、たった数人かも知れないが集まったことには変わりはない。

 

 

 

「この剣は王の為ではなく、此度は友の為に振るえと、我が王に背を押してもらいました。力をお貸しします、博樹」

 

 ────ただ果たせなかった王との約束を果たすため、幾数年の時間を旅してきた。

 苦しいことも、楽しいことも、悲しいことも、涙を流すこともあった長い長い旅路。

 

 その旅路の終わりに、彼には友が出来た。自分と同じように、本来は戦う力すらない弱弱しい一人の男。それの手で彼の震える手を握り、歩く力も残されていない彼に肩を貸し一緒に歩いた、

 最後の最後に出会えた友達。そんな友達のために、彼はその隻腕を振るうために彼はここに来た。

 

「べディ、ヴィエール……!」

 

『グォオオオオオ! たかだが5人ばかり増えた所で何が出来る! 貴様らだけでこの状況をどうにかできるわけが「あら、わたしのことをお忘れかしら?」ッ!!』

 

 5人、魔人柱のいうように増えたのはたった5人の英霊たちかも知れない。けれどもそれは、今まで防戦一方だった博樹とベリアル、そして彼らの腰に下げられていた一冊の本が動き出すその小さな隙が生まれた。

 

「さあ、はじめましょうか?」

 

 本来ならばその記憶も、その姿も深い海の底へ落としてこなければいけなかった。

「忘れなくていい」と手を取ってくれた、だからこそ彼女は『誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)』はアリス(ありす)としてあり続けることが出来た。

 

【ここはたのしいへいわなせかい。ウルトラマンも怪獣も、こわ~い宇宙人だってなかよくなれちゃうふしぎなせかい。さあ! みんななかよく、みんなやさしく、みんなてをとって!!】

 

 魔力がアリスから解放されていることから詠唱であることは確からしく、現に一般男性のひざ下くらいのサイズしかない生物たちが形を作りながら、体操の行進のように歩いている。

 

【みんなのことをまもりましょう!】

 

 最後のその言葉が鍵となり、生物たちは確りとした形を成す。それはこどもでも書けるようにかわいくディフォルメされた沢山のウルトラマンや、セミと言うよりはもはやカニに近いフォルムにディフォルメされたバルタン星人といった多種多様のかわいらしい怪獣や宇宙人たち。

 

 M78ウルトラマンと呼ばれる、SDウルトラマンシリーズのキャラクターたちがアリスの宝具によって呼び出された。

 

「これって、M78ワールドのキャラクターたち……!」

 

「フフフフ、おじさまの記憶使わせてもらったわ♪ さあみんな、やりましょうか!」

 

『なんだ、なんだこの小賢しいものたちは!』

 

 アリスが召喚したM78ウルトラマンたちの存在を知らず、柱によじ登ってきながら攻撃してくるその行動に戸惑いを隠せない魔人柱。

 それもそのはず、ベリアルのことを調べるに当たってM78ワールドのディフォルメされた彼らのことは一番最初に調べることすら無駄だと切り捨てたモノたち、自分たちの脅威には決してなり得ないと決めつた存在。

 

 その結果がコレだ。小さな身体で一生懸命に、力を合わせて無尽の魔人柱に立ち向かっていく。倒すことはできないかもしれない、けれど無限に湧いてきていたその雨を止めることには成功した。

 

『フハハハハハ!! テメーらがどれだけ甘くみてたか分かるなあ!! さあ、()()を使え。コレでアイツらを終わらせてやれ』

 

「これは……! ────ありがとうございます、ベリアルさん!!」

 

 ベディヴィエールたちの加勢にアリスが召喚したM78ウルトラマンたちのおかげで博樹はライザーを使用するだけの時間を作ることが出来た。

 このままベリアルに巨大化すれば魔人柱を根絶やしにすることは簡単だが、ベリアル本人がそれを許さない。

 

 彼は博樹の掌に一本のカプセルを出現させると、そのカプセルを使うように言う。

 博樹もそのカプセルを見ただけでベリアルの思惑を察したのか、()()()()()()()()()そのカプセルを起動させライザーに読み込ませる。

 

()()()()()()()

 

「シェパードン。私、に僕たちに力を貸してくれ!!」

 

 このカプセルがウルトラマンビクトリーの持っているクリスタルスパークドールズとは違うことは博樹本人もわかり切ってる。

 だが、このカプセルが生まれた場所、時間全部覚えているからこそ博樹は叫ぶ。

 

 ライザーから放たれる光を受け取るに相応しい友達に向かって。

 

「受け取ってくれベディヴィエール! これは、アナタが持つに相応しい剣だ!!」

 

「!! ……これは、この剣は……」

 

【シェパードンセイバー!】

 

 ビクトリーの相棒とも呼ばれる聖獣シェパードンの上半身を模した形状に、その背部からは槍にも似た形状をした結晶の刃が伸びている。

 隻腕でその剣を手にしたベディヴィエールは、絆の聖剣とも例えられるその剣に込められた力を感じながら、博樹に感謝するように目を合わせて小さく会釈すると、シェパードンセイバーを構える。

 

「情けない私の背を押してくれた友のために、私はこの剣を振るおう! 【剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)】」

 

 エルサレムの時と違って聖剣(エクスカリバー)そのものではなく、極めて特殊な【疑似聖剣】となった隻腕の魔力を解放しセイバーへと自身の魔力を流し込む。

 するとどうだろう、べディヴィエールの魔力に呼応して結晶の刃が虹色の輝きを放ち始める。

 

『ッ! こ、これは……!!』

 

 

「ここからが面白いっていうのにどこへ行こうというんだい? 逃がすわけがないだろう」

 

「ええ、残念なことに私たち個人の力では貴方たち柱を完全に狩り取ることは不可能なようですからね。()()に託すことにしましょう」

 

 シェパードンセイバーから放たれ始めるその魔力に恐怖を覚えたのか、剣の射程から逃げ出そうとした魔人柱ベリアルのことを他の柱ともどもキングゥの鎖で縛り付け、反抗すらさせないためにアナが自身の魔力を全開放させて放ち続けている石化の魔眼により柱たちが文字通り石柱へと変えられ身動きすることすら許さない。

 

「────力を、借りてもよろしいですか?」

 

「ようやくそれが言えるくらいには肩の荷が下りたようだなベディヴィエール殿。だが、少し違うぞ? なあお師よ」

 

「ふふ、そうね。いい? こういう時は借りるって言うんじゃなくて()()()()()()っていうのよ?」

 

「────ッ。そうですね、ならばこの窮地を脱すため力合わせましょうお二人とも!!」

 

 藤太と三蔵、2人の魔力が混ざり合うことで虹色の刀身は輝きを更に増していく。

 誰かと力を合わせる。一人切りで贖罪の旅をし続け、枯れかけたベディヴィエールの心では言うのが難しかった言葉。誰かに自分の負担を背負わせることは出来ないと、これは自分が償うべき罪だといって……。だが、此度は違う。ただ友達を助けるためにその剣を振るうベディヴィエールに迷いはない。

 

【此処が友の旅の果て。幾千幾壮の迷いを裂き、遙か最果てすら超える絆の聖剣!!】

 

 その剣の輝きを、博樹は何度も見たはずだった。息絶えて消滅しても友であるビクトリーの力となり、数々の強敵を斬り伏せてきた虹色に光るその剣の絆の輝きを何度も、なんども、それこそ見飽きてしまうほど見た筈だった。

 

 だが、今回ばかりは違う。誰かが繋いだ絆じゃない、自分で築き上げた深く、深く心に染み込み、強く、強固に重なったその虹の輝きは今まで見てきたどんな光にも負けない。博樹が紡いだ絆の輝きだった。

その輝きが彼方まで届くように、最果てすらも超え、世界を優しく包み込んでくれるように、心の底から友の名前を叫ぶ。

 

「決めろぉおおおおお! ベディヴィエールゥゥゥッッッ!!!!!」

 

未来へ繋ぐ絆の剣(シェパードン・ヴィクトリア)!!!!!】

 

 勝利を象徴するVの形のした斬撃が魔人柱ベリアルへ向かう。

 その強力な斬撃は衝撃破だけで地面に、空に巣食っている無尽の柱たちも焼き尽くしていき、石化され身動きがとれない柱では耐えきれるはずもない一撃だった。

 

『がああッ!! グゥオオオオオオオオオっ……』

 

 根本から焼き尽くされたのか、復活できるほどの魔力すら残さず消し去ったのか魔人柱ベリアルと無尽の柱たちは灰となって消え去っていった。

 

「剣が……。役目を果たしたということでしょうか……、博樹ありがとうございました」

 

「それはこちらの台詞だ。アナちゃんやキングゥも、みんな助けに来てくれてありがとう」

 

 柱を焼き尽くしたシェパードンセイバーは役目を終えたのか、カプセルから生み出した模造品のようなものだったため一度しか持たなかったのかはわからないが、ベディヴィエールの手から消えていった。

 

「消滅したからといって大元が倒れていないんだ。コイツらがいつ復活するかもわからない、ここは僕たちに任せて速く彼女たちを助けに行ったらどうだい?」

 

「あらあら? キングゥってばやさしいのね♪」

 

「ははっ、お言葉に甘えてそうさせ────ッ、そういうことか

 

『────やっと繋がった! 博樹さん、それにベリアルも! 大変なことになった!!』

 

 ようやく拘束から解放された博樹たちは立香たちと合流するために動きだそうとしたその時だった。

 ベリアルが何かを感づいたのと少しだけ遅れて相当慌てた様子の連絡がロマニから入ってきた。

 

『魔人柱に……いや、魔術王に()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




宝具【誰かの為の物語(ナーサリー・ライム)
博樹の記憶からM78ワールドのSDウルトラマン(怪獣も含む)を召喚するという荒技。これは彼女が博樹の正規サーヴァントとして契約していることと、ベリアルから力を貰っているからこそ出来る。
元々の性格から戦いを好まない住人たちだが、相手がわるものと分かればみんなと協力して立ち向かう。魔神柱クラスを倒すことは不可能かも知れないが足止めは可能。

合体宝具【未来へ繋ぐ絆の剣(シェパードン・ヴィクトリア)
シェパードンセイバーの形ロンゴミニアドに似てない?という所から来た合体宝具。コレを出すためにベディさんたちから生まれたカプセルはシェパードンだったし、6章がああいう流れになったと言っても過言ではない。博樹さんが住む宇宙での最新がビクトリーであることも少しは関係しているのかも……?【運命に叛逆する絆の光(クラレント・ジードプルーフ)】のように条件が揃えば何度でも使えるのとは違って、コレは今回限りの特別演出。


魔術王のベリアル対策その2、人質作戦。
実際やるんじゃないかと思ってた読者は多いいんじゃないでしょうか?
いつでもどんな時でも立香を拐えるようにしてたりしてなかったり……。けど、ただ人質をとるだけじゃ意味なくない?


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3

ベリアルを倒すために本格的に動き出した魔術王。
立香ちゃんを人質に取るだけではなくて……?

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく。




────多くの悲しみを見た。

 

────多くの悲しみを見た。

 

 飢餓に苦しみ倒れる人々、食糧や新たな領地を求め争い沢山の血を大地が呑み込んでいく。

大切な人を失って嘆く人、苦しむ人、…………許さないと、憎しみを復讐の炎を燃やす人。

 

────ソロモンは何も感じなかったとしても。私、いや、()()は、この仕打ちに耐えられなかった。

 

 内から声が響いてくる。この地獄を見て何も感じないのか、この悲劇を正そうと思わないのかって……。

出来ることなら! ……そう思うけど、私ではない誰かは、そうは思わなかった。

 

────『特に何も。神は人を戒めるもので、王は人を整理するだけのものだからね、他人が悲しもうが(わたし)に実害はない。人間とは皆、そのように判断する生き物だ』

 

 動揺もせず、慟哭することなくただ黙々と言葉を返した。

言葉からも感じ取れる、その感情に善や悪といったものはない。何も望んでいない、無だ。

 

────そんな道理(はなし)があってたまるものか。そんな条理(きまり)が許されてたまるものか。

 

 世界が、視界の全てが怒りによって赤に染まっていく。人を思っているからこその、人間の行く末を案じているからこその怒り。

 

────私たち(われわれ)は協議した。俺たち(われわれ)は決意した。

 

 自分に害がないなら関係ない。そういう考えが誰にでもあるのは理解できる。自分の中にもその気持ちがあるのは知ってるから。

けど、瞳に映ってしまった絶望を見て見ぬふりはできない。自分にできることが何かあるんじゃないかって探すし、仲間がいるなら協力を仰ぐ。

 

────あらゆるものに訣別を。この知性体は、神の定義すら間違えた。

 

 進んでる道が間違いだったら、それは違うって言ってくれる人が傍にいる。

だけど、怒り()が歪んでいるって正してくれる人は、誰もいなかった。

 

 

 

 

「東部観測所、兵装舎、生命院、沈黙。西部情報室、管制塔、覗覚星、沈黙。……ベリアル、沈黙」

 

「…………ん」

 

 ベリアル。その名前を聞いて、朦朧としていた意識がはっきりと目覚めてく。

ええと、どうしてたんだっけ? 助けに来てくれた英霊たちと一緒に魔人柱を倒して回ってて…………それで、それで……。

 

「目が、覚めたようだな。カルデアのマスター」

 

「ッ!! 魔術王!! んっ、んっ、うご、けない……」

 

 そうだ、全部の魔人柱を倒すことに成功して、魔術王の玉座への道が開けたことに喜んでいた時だった。

突如として現れた2本の触手に両足を掴まれて地面に引きずりこまれたんだった。それで、意識を失ってたんだ……。

 

「英霊どもも思いの外やるじゃあないか。我々が消えることはないにせよ、あの忌まわしき存在ではない貴様らにここまで敗戦を重ねるとは、予想外だ」

 

「私を囚えて、どうするつもり?」

 

「なに、遠方からの客人をもてなすのは王の歓びだろう? 少々手荒な歓迎になってしまったがね」

 

 魔術王の言葉に耳を貸しながら、私の四肢を縛っている魔神柱のようなコレをどうにか外せないか身体を動かし続けるけど、私の力じゃどうすることも出来ない。

けどどうして? 魔術王が私を捕まえて生かしておく必要なんてないはず、すぐに殺してしまえばいいのに……なんで? 

 

「確かに、カルデアのマスターたる貴様を殺せば、この地に喚ばれた英霊たちはことごとく消滅するだろう。だが、それでは意味がないのだよ」

 

「意味が、ない?」

 

「元より、いくら抵抗したところで我々の大偉業の前では無意味でしかない」

 

 そうだった。魔術王はロンドンで初めて姿を現した時から私たちのことを脅威として捉えてなんてなかった。

いつでも私たちのことを排除することは出来るって、全ての特異点を周ることが出来ても自分たちを止めることは絶対に不可能だっていう大きな自信を持ってた。

 

 そんな魔術王にとって一番の誤算。立ちはだかる大きな壁として、絶対の脅威として排除しようと幾度も特異点で刺客を送り付けてきては全部徹底的なまでに破壊してきた絶対強者。

 

「────ベリアル、さん」

 

「そうだ! ベリアル、ウルトラマンベリアル! 我らが同胞の名を騙る憎き存在! 存在しうるはずのないヤツの存在が全てを狂わせた!! 我らの宿願のために、ヤツは、ヤツだけは必ず排除しなければならない!」

 

「でも、それと私を囚えるのと関係なんてないでしょ?」

 

 魔術王がベリアルさんを最大の脅威として見てるのは分かる。だからこそベリアルさんを倒すことが最善で、その為の準備を怠らなかったんだと思う。

けどそこで一番疑問に思うのが私という存在だ。別に私はベリアルさんのマスターってわけじゃないのに、魔術王は私を殺さずに囚えてる。

 

「フ、まさか貴様自身も知り得ていないとはな。まあいい、今に役者が揃う。答えを示す合わすのはその時だ」

 

 結局魔術王は私に答えを教えてくれることはなく、マシュ、そしてベリアルさんが来ることを心待ちにしているような笑みを浮かべながら玉座に腰を深くおろした。

 

 

 

「先輩っ!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

⦅クハハハハハッ! 所詮使い魔程度しかない貴様らの力などその程度しかないことが理解できたか⦆

 

「くっ……」

 

「ます、た──」

 

「………………(これは……!)」

 

 魔術王の玉座。立香ちゃんが攫われたという凶報を受けた私たちはベディヴィエールたちにその場を任せ、急ぎ足でこの玉座へと駆けつけた。

玉座へと辿り着いた私たちが見たのは、先に向かったマシュちゃんたちが化物へと姿を変えた魔術王に倒されてしまったその姿だった。

 

「は、はあ。ドクターの見解通り、ソロモン王の遺体を巣とし、その内部で受肉を果たした“七十二の魔神の集合体”。彼らは、自らの名を“魔神王ゲーティア”と名乗り、ました……」

 

「へっ、お前が言ってた蛆虫ってのもあながち、間違いじゃ、なかったみてーだな……」

 

 ボロボロになりながらも、私たちが来るまでに得た情報を伝えてくれるマシュちゃん。

ベリアルさんが前から蛆虫だって言ってたから、そういう身体の中に巣食う寄生虫とかそういう存在なのかとあたりを付けてたけど、本当にそうだったみたいだ。

 

 ソロモンの姿を捨てた相手、ゲーティアの姿はシルエット自体は人のソレかも知れないけど怪物と呼ぶに相応しい姿へと変貌を遂げている。

レッドキングのような筋骨隆々とした肉体は白と黄金色をしていて、大きく口を開いたように陥没した胸部には真っ赤に染まる大きな目玉を覗かせている。

 

⦅歓迎しよう、我らが同胞の名を騙る不届き者、ウルトラマンベリアル⦆

 

「…………」

 

《おっと、私を攻撃しては駄目なことぐらい、貴様はとっくに理解できているはずだ》

 

 ゲーティアに囚われている立香ちゃんを助けるため、ベリアルさんはその手に力を溜めて攻撃を喰らわせようとしたけれど、幾重にも声が重なって聞こえるゲーティアの言葉を聞いてその手を下ろしてしまう。

 

⦅くくく、ハーッハッハッハッハッ! そうだろうベリアル? 私を攻撃してしまえば、この女は命を落としてしまうからな⦆

 

「「「『!!!!!』」」」

 

「それって、どういうこと……!?」

 

 みんなの驚きようから、先程までゲーティアと戦っていたマシュちゃんたちもその言葉の意味が理解できていないようだ。 ただ一人、ベリアルさんだけは理解しているみたいだけど。

 

 想定していたとおりの反応をしてくれたことへなのか、ベリアルさんが手を下ろしたことへの喜びなのか、ゲーティアの全身が裂けそこから覗かせる無数の目玉たちと一緒に喜びの声を上げる。

 

⦅クハハハハハハッ! 愉快、実に愉快だ! いいだろう、低脳な貴様らでも理解できるよう、実際に見せてやろう⦆

 

 そう言ってゲーティアは自らの手から作り出した魔力の塊を自分の顔に向かって放つ。その突飛な行動に困惑するけれど、右腕が動いた感覚と共に何が起きたのかすぐにわかった。

 

「────え?」

 

⦅ク、クハハハハハ!! 寸での所で抑えて見せたようだが、衝撃まではどうにもできなかったようだなベリアル!! ⦆

 

 見えない何かに殴られたような強い衝撃。それを受けて鼻血がツーと流れるが、立香ちゃん本人から何が起こったのか理解できていない声が上がる。数秒して痛みが脳に伝わってきたのか、痛みに顔を歪ませるがそれを遮るようにゲーティアの声が響く。

 魔力弾から上がった爆発が晴れると、ゲーティアの手と顔の微妙な間に、ベリアルさんが作ったであろうウルトラ文字で書かれた障壁のようなものが出来ている。

 

 ベリアルさんがゲーティアの事を守ったなんて、ここにいる誰も思ってない。

 

「テメー、マスターに何しやがった?」

 

⦅ふっ、礼儀がなっていないが今の私は最高に気分がいいのでね。教えてやろう、()()()()()だよ⦆

 

 死痛の隷属。サーヴァントのみんなやカルデアのみんなもそれが何なのか知っているみたいで驚き表情を隠せない。

私のほうもベリアルさんから知識が流れてきて、それが一方的な痛覚共有の呪いであることが理解できた。

 

 つまりはゲーティアが自身に向けて放ったあの魔力弾、あのダメージを立香ちゃんも味わったてことになる。

 

『だ、だが! 痛覚共有といっても痛みが伝わる閾値が存在する、まして死すら伝わるなんてただの世迷言でしかない!』

 

⦅それは一般的な魔術師が使ったとしたらの話だ。しかし我らは違う、魔術の祖とされるソロモンより生み出された我らにとって呪いを強化するなど容易いことだ⦆

 

 ゲーティアの言っていることはハッタリなんかじゃない、それはベリアルさん自身が起こした行動が示している。

ゲーティアに向けた攻撃を止めたのも、障壁を作り出したのもどちらも立香ちゃんにダメージが向かわないための行動だ。

 

 もし伝わる痛みに閾値があって、死を共有しないのならばベリアルさんは迷いなく攻撃していた。けど今それをしないそれこそが立香ちゃんの命がゲーティアと繋がっている証明に他ならない。

 

⦅貴様がこの地球に降りたったばかりの時ではこの方法は使えなかっただろうな。フハハハハ、ベリアル。貴様はこの地球(ほし)にきて()()()()()

 

「ああ?」

 

瞬間、ゲーティアは魔術か何かで私たちの目の前に急接近し、その剛腕をもって連続で殴りかかってきた。

普段ならその動きを予測して反撃をするベリアルさんだけど、避けたりして立香ちゃんに被害が向かないようにその攻撃を甘んじて受ける。

 

「ベ、ベリアルさっ、身体が……」

 

「────っ、ベリアルお前!!」

 

⦅邪魔が入らないように動きを封じたか、懸命な判断だ。この快楽を邪魔されては我らは彼女に何をするか分からなかった⦆

 

 楽しんでる。ベリアルさんがマシュちゃんたちの動きを封じ、誰の邪魔も入らずに私たちに攻撃出来ている今のこの一瞬をゲーティアは楽しんでいる。

並の英霊だったら数発受けたら倒れてしまうんじゃないかという重い一撃。ベリアルさんだから耐え続けていられるけど、それよりも前に私の身体のほうに限界が来てしまうんじゃないかって不安が脳裏に過る。

 

「ひ、きょう……もの」

 

⦅────何か言ったかな? カルデアのマスター、いや……私のサーヴァントと言ったほうがいいかな? ⦆

 

「卑怯者って、言ったんだ!!」

 

⦅────口を慎め、お前の命は私の手の内にあることを忘れるほどの馬鹿だったか? ⦆

 

「ぐうッ、ガッ! ……ぞ、ぞんな ごど言ったって……あなだは 私を、殺せない……ガハッ!」

 

 卑怯者と立香ちゃんに言われたのに腹が立ったのか、自分の首を片手で握ることで伝わるその痛みで強制的に立香ちゃんのことを黙らせようとしたゲーティアだったけど、吐血しながらも立香ちゃんは言葉を止めない。

 

「もう、もう話さないでください先輩!」

 

「わだしが、死んだら……あなだば 唯一の盾をうじなう……。人間を 人類史を ひでいじてる ハア、ハアくぜにッ!! や゛っでる゛ ごどば!! に゛ん゛げん゛と  がわらない!! ぞんなおばえを……ひぎょうぼの(卑怯者)って いっで だにがばるい(何が悪い)!!」

 

⦅────そうだ。そうだともッッ!!!! ⦆

 

 マシュちゃんの制止の声も聞かずに叫んだ立香ちゃんの言葉を聞いたゲーティアは、先ほどまで喜喜一色だった表情を一変させ怒りを爆発させた。

 

⦅ベリアル!! 我らが大偉業を阻む最大最悪の障壁!! 如何な力を以てしても阻めず、如何に知恵を絞った所で止められない! そんなベリアルを打ち倒す方法とは何か!? 我らは模索し続けた! 探求し続けたんだ! その結論がコレだ! 人間に窶す。それこそはベリアルを倒す唯一無二の手段であると結論づけた!! 我らが切り捨てた人間に、否定すべき愚かで卑しい行為でなければ彼の者を止められないと!! ⦆

 

 人間にしかベリアルさんは倒せない。ゲーティアが用いた手段は卑劣な物ではあるけれど、あながち間違いじゃない気がする。

 

 ウルティメイトゼロの時もジードとの最終決戦の時も、人の心の繋がりが強固ものとなったことでベリアルさんの命を終わらせていた。だから、人間の力がなければ倒せないっていうのは間違いじゃないと思う、ただその方法が最低だってこと以外は

 

⦅この結論に至らせてくれたことには感謝しよう、ベリアル⦆

 

「なんだと?」

 

⦅我ら72柱は完璧で完全だ! 欠点など有りはしない、本来ならば人間に窶すなどという愚かな方法など考えもしなかった。だが!! 我らが同胞66柱であるキマリスを貴様が完全に消滅させたことで、我らに穴が生まれた! その答えに至るだけの穴がな!! ⦆

 

 外からの影響を受けない究極の真円。その円はベリアルさんによって破壊され一つの穴が生まれた。

その穴があったからこそゲーティアは、立香ちゃんのことを人質にとるなんて人間臭い卑怯な真似に手を染めるに至ったと、過程はどうあれそれに至れたのはベリアルさんがその魔人柱を完全に消滅させたことに他ならない、この最悪の事態を作り出したのはお前自身だと嘲笑ってくる。

 

⦅そんな貴様にチャンスを与えてやろうベリアル。魔神王として、いや人間なんぞに身を窶した愚か者としてな⦆

 

「チャンスだと……?」

 

⦅ああそうだとも! このまま同じ事を続けていてはただ無意味に時間だけが過ぎていくだけだ。貴様も我らのサーヴァントを助けたいだろう? ⦆

 

 

 チャンス。完全に自分の勝利は揺るがないからとゲーティアはこちらのことを見下しながらそう提案してきた。

絶対に何か罠が仕掛けられているはずだけど……、今の私たちが立香ちゃんのことを救い出すにはその提案を聞きいれるしかない。

 

⦅なあに、簡単なことだ。実に、じつに簡単だ。くくく、クハハハハハッ!! ⦆

 

「もったいぶらずにさっさと話せ、面倒なんだよ」

 

⦅そうつれないことをいう物ではない。これが最後の別れとなるのだからな!! さあベリアル、彼女を! 藤丸立香のことを救いたいと言うのならば!⦆

 

 

 

 

 

────いつか来るかも知れない、だから覚悟はしてた。けど、それは今じゃない。ゲーティアが示した来たのは最低最悪の選択。命をただの交渉材料としか見てない。

 

 

 

 

 

その男とのサーヴァント契約を解除しろ

 

 

 

 

 

私の命と立香ちゃんの命、二つの命が天秤にかけられた。

 

 

 

 

 

 

 




ゲーティアのベリアル対策その3、死痛の隷属
プリヤでイリヤとクロとの間で施された魔術のゲーティア超強化版。それを立香と自分を死痛の隷属で繋げる。
やってることは余りにも小物だが、本人が言ってるようにベリアルさんに勝つにはこの方法しかない。

実際ゼロがベリアルさんを完全に倒せたのはあの宇宙にいる人間たちの光を束ねたノアの力を使った時だけ。逆にジードが彼を終わらせることが出来たのは仲間との絆を背負った上での最終決戦だったから。
ゲーティアの選択は卑怯極まりないものかも知れないけれど、人間の力を借りるなんて出来やしない存在なのでこういう方法でしか倒せないんです。許してやってください。

ゲーティアが人に窶す原因は自分で作ってしまったし、立香ちゃんを人質に取られてなんで動けないのかベリアルさん本人もわかってないのもこのピンチに陥った理由だしで、何だかんだ詰めが甘いのがベリアルさん。

ゲーティア
七十二柱揃って全能だったが、ベリアルの手によって一柱欠けたことによって穴ができた。そのため人間に窶すという行動が取れた。

簡単に言えば10枚のコアメダルだったのが9枚になってグリードになったようなもの。
感想でゲーさんが『人間』くさいって言われてうれしかったりした作者です。


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4

その盾は、いつも震えていた。
自分が未熟なことは、誰よりもよく知っている。
全部を守れるなんて言わない。

けど、どうか……。


大切な人たちだけでも守れる力を、勇気を、わたしにください……。




 

 

 

 

 

 

博樹さんとの契約を解除しろ。

 ゲーティアが私のことを解放する条件として提示してきたそれは、博樹さんとベリアルさん。2人に対しての死刑宣告だった。

 

 

 

身体が消滅し、英霊召喚でも魂を喚びだすことしか出来なかったベリアルさんは、博樹さんとの同化を解除し更にマスター契約まで解除するとなるとその先に待っているのは消滅の二文字しかない。

 

 博樹さんに至ってもだ。あの爆発を受けて瀕死の重体で、ベリアルさんと同化していないと生命活動が数分で止まってしまうほど危険な状態。

だから、ゲーティアの出した選択は私の死か、博樹さんとベリアルさんの両方の死という最低最悪のもの。

 

 どうすれば最善か。そんなの分かり切っているから、私は鉄の匂いが充満した口を開いて叫んだ。

 

「べリアル、さん! わたしのこと なんて どうでも、いいっ! だからッ!」

 

⦅貴様は黙っていろ。決めるのは誰でもない、彼とそのマスターだけだ⦆

 

「────! ────!!」

 

 自分のことは見捨てていいから、ゲーティアを倒してと伝えようとしたのに魔術で口を閉ざされてしまって声を出せなくされてしまう。

けど! ベリアルさんならあれだけで伝わったはず! そう思い、ベリアルさんたちに視線を向けるけど……

 

「…………」

 

(ベリアルさん?)

 

 博樹さんと話をしているのか、放心したように突っ立っているベリアルさん。

彼がどう動くのかに掛かっているから、みんなが緊張した面持ちで見守っていると、ベリアルさんはブルブルと震わせながら左腕を正面に向けるように持ってきた。

 

「……ッハッ!! はあ、はあ……れい、じゅを、()()()()()()()()()()()

 

 そんな私たちに届いた声は、ベリアルさんのものではなかった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

(なんだ? なんだこれは!? 身体がいうことを利かねえ! 何が起こってる!!)

 

 今まで生きてきた中で起こり得なかった不可解な現象、その現象が何なのか理解できず困惑するベリアルさんの声が聞こえてくる。

私との契約を解除するか、立香ちゃんのことを見捨てるか……。どっちが正解なのかは分からない、だけどベリアルさんの中で最善の答えは既に出てる。

 

────立香ちゃんを切り捨てる事だ。

 

(ベリアルさん、本当に立香ちゃんを見捨てることが貴方の答えなんですか?)

 

(当たり前だ。アイツが死ねばオレは気兼ねなく暴れることが出来る。人類の未来だとかに興味はねえが、あの蛆をぶち殺すのには最善の選択だ)

 

(そう、ですか……)

 

 ならどうして最初から攻撃しなかったんですか? 呪いでゲーティアと立香ちゃんの痛覚が共有されていたとしても、今の言葉通りならそんなの気にせず攻撃してゲーティアの事を倒せたはずだ。そうベリアルさんに伝えたいけど今の彼にきっとこの言葉は届かない。届かないほど、困惑してるんだ。

 

…………ごめんなみんな。僕は、世界を救うよりも、自分の命よりも、ずっと一緒にいたこの人の背中を押したいんだ。

 

(ッ!? 身体の主導権が移っただと? なぜだ?)

 

(それだけ今のベリアルさんの心には迷いが生じてるってことですよ。僕みたいな男に負けるくらいですから)

 

 はは、震えてる。そうだよなあ、今から自分の命を投げ出すんだ、覚悟を決めたからって怖くないはずがない。

私は、令呪が刻まれた震えている左腕を正面に向けると、逃げたりしないようにその左腕を右手でガッチリ握りしめる。

 

「……ッハッ!! はあ、はあ……れい、じゅを、()()()()()()()()()()()

 

『まさか……! 博樹さん、君は何をしようとッ!!』

 

己が思いを貫け!! ベリアル!! 

 

(────何をしている宮原博樹。そんなもの、オレに効かないことは分かってるはずだ? 早く変われ)

 

「断る! 僕はマスターでアナタは僕のサーヴァントだ! だから私の言うことを、願いを聞け!! 第二の令呪を持って命ずる────」

 

 身体全身に強い痛みが走り、ベリアルさんが身体の主導権を取り返そうとしてくるけど、それを気力だけで抑えながら私は二画目になる令呪を使用する。

カルデアから供給されている令呪とは違い、今使用しているのはベリアルさんと契約した時に刻まれた、正真正銘僕とベリアルさんを繋いでいるもの。

 

 実際の聖杯戦争で使用される令呪のように【絶対的命令権】を行使できるけど、そんなもので言うことが聞いたら光の国は何度も消滅の危機に陥ってない。

無意味かも知れない。だけど、それでも使う。

 

己が心に正直であれ!! ベリアル!! 

 

(正直に……だと? お前はなにを言っている)

 

「本当は!! 貴方自身に気づいてほしかった!! 探して、探して、どんなに探しても見つけることが出来なかったから、手にしていても気づくことが出来なかったそれを!!」

 

 そうだ、僕が立香ちゃんに嫉妬したのもそれが理由だったんだ。

ベリアルさんと同化している僕には絶対に不可能だったから……羨ましかったんだ。

 

⦅フハハ、フハハハハハ! 良いぞ面白い余興だ! 何が起こるか見届けさせてもらおうか⦆

 

「お前は黙ってろ!!」

 

 命令じゃない。令呪に乗せるのはただそうして欲しいっていう願いだけだ。

ベリアルさんが立香ちゃんの命か自分と僕の命のどっちかで迷っているというのなら、その背中を押す。

そう、ただ押すだけでいいんだ。だって、ベリアルさんの心にはもう答えがあるんだから

 

「はあ……はあ……最後の、最後の令呪を持って命じる!!」

 

 主導権を取り返そうとしてくるベリアルさんの圧に耐えながら、僕は左手に力を込めて、自分の中にあるもの全部吐き出すように最後の願いを叫ぶ。

 

()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()()()()

 

 願いを言い終えたのと同時に、自分の中から何か抜け落ち、身体から力が抜けていく脱力感が襲ってくる。

ああ……よかった……ほんとうに……よかっ……。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

『守るべきもの……貴様の強さはそれかぁ……ゼロォッ!!』

 

 どうして、今頃になってこんなことが脳裏に過りやがる。

身体が消滅したオレは、ゼロのシャイニングの力によって蘇ることに成功した。

 

 ()()()()()()。いくらゼロと戦っても勝てねぇのがそこにあると知ったオレは、それを知るために、手に入れて今度こそ最強になるために何処彼構わず飛び回った。

 

『……光の国のヤツらじゃねえなら、少し力をわけてやってもいいか』

 

 何百、何千年とどれだけ探し回っても守るべきものってのが見つからなかったオレは、気まぐれに回った宇宙で、光の戦士ども似た同じようにウルトラマンと呼ばれてやがる存在に向けて、闇の力をカードやクリスタルへと変えて分け与えたこともあった。

 

 正義の心を持ったアイツらが、オレの闇の力を使った時どうなるのか観察しようとしてなあ。

 

『結局は、オレの力はオレにしか使いこなせねえってことか……』

 

 オーブだったか? アイツはこのオレを手にする前に心が砕けて、弱腰になったもんだから興味を失った。

兄弟がウルトラマンで、妹が怪獣に変身する奴らはオレの力の結晶を手にすることは出来たが、使う事すらままならないあまちゃんどもだった。

 

 それで踏ん切りがついて……いや、最初から死ぬ気だったんだろうな。そうじゃなかったら次元破壊爆弾に自分から突っ込んだりはしてねえ。

 

 もしかしたらと期待したジードも、そうなることは叶わなかった……。

 

『あの、貴方は何て言う英霊……なんですか?』

 

 そんなオレの守るべきものが、藤丸立香だと? 

お前はそれをずっと前から知っていた。だというのに、オレが自分で気づくまで黙っていた…………。

 

 ふっ、もうしばらくしたら消滅するんだ。考えたところで関係ねえか。

分離する時にオレの力を少しだけ残しはしたが……苦しむ時間を長引かせただけか……。

 

 

「マシュ────ッッッ!!!」

 

「【それは全ての疵、全ての怨恨を癒す我らが故郷────顕現せよ、『いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)ぉおおおおおお!!!!』】はあああああああああっ!!!! 

 

 ただ消えるのを待つだけ。そんなオレたちを包み込むように、白亜の城が築かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「マシュ────ッッッ!!!」

 

 博樹と分離したことによって宙に漂う球体となったベリアル。

そんな彼、そして宿主である博樹のことを完全に消滅させるためだと言いゲーティアは、紀元前1000年から西暦2016年までの人類史の全てを魔力に変換させた光帯を対人宝具として打ち出した。それが宝具【誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデル・サロモニス)】。

 

 人類史すべてを熱量へ変換させたその宝具の熱量を上回るものはこの地球上に存在しない。誇るようにゲーティアは隣で縛られている立香に声高らかに宣言するが。そんなの関係ないと立香はマシュの名前を叫んだ。

 

 上回るものがない、何があろうと抗えない。そんな理由でベリアルと博樹のことを見捨てるほど立香たちの聞き分けは良くない。良かったらこの旅の始まりで既に躓いていたはずだ。名前を呼ばれずとも同じ気持ちだったマシュは、立香が叫ぶのと同時に2人の前に立ち、白亜の城を顕現させる。

 

「あ、あああ、あああッッ────!!」

 

『やめろマシュ・キリエライト。その熱はお前が受け止めきれるものではない! 何処かへ行ってろ!』

 

「そ、うだ……。わた し たちの こ と はみす、てて……にげるん……だ」

 

 ベリアルも、そしてどうにか意識を繋ぎとめている博樹も、星を貫く熱量を防ぐマシュの意志は固くその盾を強く握りしめる。

ゲーティアが言っていたように、物理的にあの熱量を防ぐことはこの星にいる生命には不可能。だが、精神(こころ)までは違う。白亜の城は精神の守り。マシュの心に一切の穢れも、迷いもないのならば溶けることも、砕けることもない無敵の城壁になる。

 

「……良かった。これなら何とかなりそうです、ベリアルさん、博樹さん」

 

 サーヴァントとして繋がってるからなのか、周りの音全てを掻き消す熱量が放たれている中でもマシュの声が確りと立香の耳に届いてくる。まるで別れの挨拶かのように、後ろにいる2人へと感謝の言葉をかけるその声が……。

 

「先輩がくれたものを、せめて少しでも返したかった。けど、怖くて逃げ出したかった。そんな私の背中を押してくれたのはベリアルさんでした」

 

 その通りだと立香は頷く。一番最初、冬木の泥に呑まれた騎士王との戦闘で、ベリアルが(ひかり)を前に逃げ出したいと心の中で叫ぶマシュの声を聴いたから。あれがなかったら、きっと立香は勘違いをしたままだった。マシュは選ばれた力を手に入れた強い戦士だと、だから戦える、だから立ち向かえる。そんな強い子なんだと……。

 

「恐怖に染まる心も、逃げ出したいと思う気持ちも、それは悪いことじゃないと。背負って戦っていいんだって、そのおかげで歩いてこれた!!」

 

 だから守るんだと、心をくれたのが立香なのだとしたら、盾をくれたのはベリアルだから。

知り得ずに終わるはずの気持ちだった。ベリアルがシュミレーターでの特訓を付き合ってくれた時、博樹と一緒にウルトラマンを見た時、そして二人とも褒める時に頭を撫でてくれた時、その温かさがマシュにはとても心地良いモノになっていた。

 

 この旅がなければ絶対に得られなかったから、人類史の熱を受け止めながら2人に感謝の言葉を伝えていく。

 

「私は、知らないから……。父親がいたら、こんな人なのかなって」

 

「ま、しゅ……ちゃ、ん……」

 

『…………』

 

「大好きです。さようなら、……お父さん」

 

 最後の最後まで、マシュの心は揺らがなかった。ゲーティアの宝具の勢いが無くなるまで、一滴たりともベリアルと博樹には届かせなかった。

その結果がコレだ。盾だけを残して、彼女の肉体は光帯の熱量に耐えきれずに蒸発した。

 

⦅見るがいい。この結末は、お前が作り出したものだ。ただの、ごく普通の女の子を送り出した結果がコレだ⦆

 

 ゲーティアは悲しみを帯びた表情を立香へ向ける。マシュは唯一、自分たちと同じ道を歩める可能性を持っていた存在だったから。

そんな彼女が、傷一つない雪花の盾だけを残して消滅したのは、守る価値もない死にぞこない二人(ベリアルと博樹)を助けようと立香が叫んだからだと……。

 

「……はあ、はあ……やっぱりお前は、何もわかってない」

 

⦅……分かっていない? 彼女を戦場に駆り出した貴様がそれをいうか! ただの、ごく普通の少女を死地へと向かわせた貴様が!! ⦆

 

「そのただの女の子に負けたくせに、よくもまあ勝ち誇った顔していられるよね」

 

 どんなに悲しそうな顔をしても、どんなに死を嘆く表情を作ったとしても、立香にはそれが何処までも仮初の仮面にしか見えない。

だからこそ、立香はゲーティアには屈しない。心から気持ちを吐き出せない、ハリボテでしかない相手には負けられない。

 

「はははは、立香ちゃんにすら見透かされるなんて。ざまあないなゲーティア」

 

⦅貴様は……? ⦆

 

 

 

 

 

 

 

 




身体は理解してる。勝手に動く。だけどまだ、まだ気づけない。頭がそれを受け入れることを拒否している。
だから彼は、大切なものを何もできずに、目の前で失ってしまった。

ベリアルさんはオーブがテレビ本編に入る前に見限り、ルーブのことはまだツルちゃんの兄弟がご健全な時に見限ってしまったからその先を知らない。
知ってますか?その更に未来では貴方の力と貴方の顔した剣を振るう光の戦士が現れるんですよ。


ベリアルさんに立香ちゃんを見捨てるという選択は取れないことを確信していたからこそできた作戦。
分離した2人にトドメを刺してあとは勝ちだと思ってたゲーさんを邪魔したのがマシュ。
さあ、ここから先はお前のシナリオ通りにはいかないぞゲーティア!!


感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


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5

 やっとつかんでいることにきづけた。

 それは、きづいたころにははなれていてめのとどかないばしょまでとんでいった

 だけどまだ、おわってない。

 まもるべきものは、のこってる





 

 

 いつの間にか自分を形成する精神(こころ)の1つになっていた()()が消滅した。……こんな痛みは知らねえ。プラズマスパークの刃に屈した時の悔しさよりも強い後悔と、光を集束させたノアの矢で貫かれた時よりも深い痛み。

 

 数十万の時を生きてきて初めて味わう感覚。プラズマスパークに拒絶された時でもここまでの喪失感を味わうことはなかった……。

 

マシュ・キリエライト、()()()。失ってから気づく……。まさか、本当にそうだとはなあ。

 あの蛆が放った人類史そのもの灼き尽くす熱量、光の戦士たちの放つ必殺光線よりも威力のあるそれを、マシュは受け止めた。だが、その代償にマシュはその命を散らした。

 

 その時、こんな瞬間にならねえと気づくことができなかった。マシュはオレの『守るべきもの』だったことを……。

そして同時にアイツが言ったことも理解できた。藤丸立香もオレの『守るべき』だってことがな。

 

 だが気づいた所でもう遅い。宮原博樹との繋がりが絶たれたオレはあと数分もしないうちにこの地から消える。

 結局はこんな情けねえ結末か、人間の味方をするなんてらしくもないことはするもんじゃねえな。

 

「ははは、あんなヤツ相手に諦めるなんてキミらしくもない。言ってくれたじゃないか、()()()()()()()()()()()()()()()()って」

 

 お前は……、ふはははは、そうか! ようやく、()()()()()()()

 

 

 

 

 


 

 

 

⦅いや、いいや、何もかもが違う、何もかもが! 貴様があの男の筈がない! ⦆

 

 自身の一部であるフラウロスのことを罵倒してしまうくらいに動揺しているゲーティア。それはマシュが消え、今度こそベリアルさんたちを消滅させようと宝具を展開しようとしたその矢先に起きた。

ただの人間、レイシフト適性を持っていないはずのドクターが博樹さんを守るようにゲーティアの前に立ち塞がったから。ドクターは、最初から人間じゃなかった。ううん、聖杯戦争を勝ち抜いたことで()()()()()()英霊だったんだ。その証拠に、片時も外さなかった手袋の下から出てきたのは最高の聖遺物。魔術王ソロモンが亡くなる際、遥かな未来へ向けて送った10個ある指輪のうちの、最後の1つ。その指輪がはめられていた。

 

⦅外道! 冷酷! 残忍! 無情! 貴様のような存在に人並みの願いなど! 感情などありはしない!!⦆

 

「……ボクのこと嫌いすぎるだろ、おまえ。だけどそうだね、だからボクは()()()になれるのかもしれない」

 

 激昂するゲーティアとは対照的に、ドクターは自分のこれまでを話し始めた。聖杯戦争の勝者として人間になれたソロモンは、そのすべての能力を失う瞬間に人類の終焉を見た、見えてしまった。慌てようにもすでにただの人間になったソロモンにできる術はなかった。けど、その事件に自分が関わっていることだけは理解できたソロモンは、一人で人類の終焉に立ち向かう旅を始めた。

 

「我が名は魔術王ソロモン。ゲーティア。お前に引導を……いや、違うな。私はお前の最後を見届ける者だ」

 

⦅ふ、フハハハハハハ!! この状況下で! 敗北を覆すことの出来ない中で何故? と思ったが! 傍観ときたか!! やはり、生前ですら見ているだけだった貴様が出来るのはその程度ということだ! なんの策もなく死地へと飛び込んでくるとはな!! やはり貴様は何も出来ぬ無能な王だ!! ⦆

 

「何の策もない、か。策ならちゃんと用意していたさ。ゲーティア、お前がその存在を知ってはいたものの真名を知り得なかった宝具────【訣別の時きたれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)】を使うっていう策をね」

 

訣別の時きたれり、其は世界を手放すもの(アルス・ノヴァ)? ⦆

 

「神から与えられた恩恵を天に帰した逸話が元となったこの宝具。この宝具の発動はすなわちボクの持つ全て、存在そのもの全ての消滅を意味している。お前ならこの宝具の怖さが分かるだろう? ゲーティア」

 

 存在そのもの全ての消滅? アーラシュさんの宝具のようではないってことはゲーティアの狼狽ぶりから理解できるけど……。

 

《────まさか、【無】に至るというのか! 英霊の座からも消滅し、人類史からも痕跡を消す覚悟だったというのか……! 貴様のような臆病者が!!》

 

「ああそうだ。そうすればお前たち七十二の魔神は自壊を始め、固有結界であるこの場所破壊されるだろう。どうだい? すごいものだろう、ボクの隠し球は? ま、使わないんだけどね」

 

 こんな状況で、しかも姿もソロモン王のそれに変わっているのにその相手をおちょくってるように見える笑みは、たしかにドクターのもので、彼は隠し球として持っていた宝具を使わないことを宣言すると両手を大きく広げた。

 

「だってそうだろう? 宝具を使用したらボクはお前よりも先に消滅して、お前が完全に消滅したのか見届けずに消えることになる。そんなのあんまりじゃないか、この世界から完全に消えるというのなら、ボクはお前の最後を見届けた上で消えたいんだ」

 

《笑わせるな! 神より授かりし全能も持たない、七十二の魔神(我ら)のいない貴様に何が出来るという!》

 

「はあ? そうやって怒りっぽいから周りが見えなくなるんだぞ? なあゲーティア、確かに今のボクには全能の力を振るうことも、お前たちを従えることすらできないさ。でもね────()()()()()()()()()()()()()()という事実だけは、今もこうして残っている」

 

⦅────まさかッ!! しまっ!!⦆

 

 ゲーティアが気づいた時にはもう遅い。いつ消えてしまってもおかしくないんじゃないかってくらい光が弱くなっていた球体となっていたベリアルさんが、ドクターの中へと入り浸透していった。

さっきから驚きの連続で頭がどうにかなっちゃいそうだけど、ゲーティアが慌てている今がチャンスだと見た私は、念話だと悟られてしまうだろうからアイコンタクトだけで3人に合図を送っておく。

 

 そうこうしている内に、ベリアルさんと同化したドクターは赤黒い光に包まれる。ゲーティアがそれをどうにか阻止しようと一斉に展開させた魔術による攻撃、目にも止まらぬ速度の打撃を加えていくけどそんなものは無意味だというように光の球体には罅一つ入らない。

 コンクリートで出来た建物に向かって思い切り拳を叩きつけたような痛みが何度も襲ってきて、私の拳から血が流れ始めたのを見ると、むしろ攻撃しているゲーティアの拳のほうにダメージが入っているみたい。

 

⦅クソオオオオオッ!! 壊れろ、壊れろ、壊れろぉおおおおおお!!!!⦆

 

「『その気色悪い手を止めろ。()()()の手が、傷つくだろ』」

 

 渾身の力を振り絞って放ったゲーティアの拳を、片手でいとも容易く止めながらドクターとベリアルさんの声が重なった言葉が響く。

羽織っていたマントは血のように赤く染まり、ソロモンの時は白髪だった髪は赤いメッシュの入った黒髪へと変わり額が全部見えるように逆立ってる。

 一番特徴的なのは顔に出来た模様。本来の姿であるウルトラマンの時でも特徴的だった鋭い瞳を模したような模様が目の周りに入ってる。

 

 そんなベリアルさんとソロモンが混じり合ったような見た目をした彼は、アイツの手が傷つく、隠すことなく私の事を心配する言葉を言うと掴んでいたその手を下ろす。その言葉を嬉しく思っていると、私の傍まで戻ってきたゲーティアは動揺を隠そうともせず声を荒げる。

 

⦅ハア……ハア……だから、だからどうしたと言う!! この女がいる限り、ベリアル! 貴様は我らを攻撃することすら出来ない!! 何をしようと無意味だ!! は、ハハハハハハハッ! 所詮は無能な王と、蛍火しか残っていなかった者が合わさっただけの存在、我らを止めるなど到底不可能なのだ!!⦆

 

「『そうだ、()()()()()』」

 

⦅────ッ!⦆

 

 自分を貶す言葉、ベリアルさんの性格上そういう事を言われたら即座に反応して、物理的に否定してくるのが普通だったけど、逆に肯定の一言で返す。

不安を煽らせようとしたのか、それとも挑発してわざと攻撃させようとしたのかも知れないけど、それもあえなく失敗に終わった。

 

「『何万年も独りだったからな。こんな簡単なことに気づくのにも、ここまで時間がかかった。テメーの言う通りだ! 消えかけのオレと、戦う術すら持たないコイツが合わさった所で引き出せる力の限界なんざたかが知れてる。────だからな』」

 

 ベリアルさんらしからぬ弱気な言葉。ソロモンと同化した今の状態ではゲーティアには勝てないと、正直に宣言した。

けど、諦めてない。勝てないって言ってるのにベリアルさんは負けることなんて想像すらしていない不敵な笑みをゲーティアに向けると、()()()()()()()()

 

「『宮原博樹!! …………最後のその一瞬まで、オレにはお前が必要だ』」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

『クウッ!! がああああ……!! まい、ったなあ……。博樹さんは、いつも、こんな痛みを耐えていたっていうのかい?』

 

『その痛みを乗り越えて、アイツはこのオレの隣に立つと言った。ここまで歩き続けた』

 

 魔人柱ベリアルを内包していたからこそ、ベリアルとの同化を果たしたロマニだったが、同化したことで流れ込んできた今までベリアルが感じてきた痛み、数万年かけて積み上げてきた恨み辛み。それを浴びた彼は、意識を保つだけでも精一杯という様子で、隣に座ってどこか遠くを見つめているベリアルの視線の先を追った。

 

 そこに映っていたのは、惑星全体が炎に包まれた場所。始まりの特異点である冬木のような場所だった。

 そこで戦闘を繰り広げる3体のウルトラマンと、強力な重火器を体全体に搭載している機械の龍。

 

『知的生命体は平和を望みながら、争いをやめることも、星を汚すこともやめられません。矛盾と欠陥を抱えた弱い存在……』

 

 だからすべてをリセットするのだと、まるでゲーティアと同じような考えに至った機械龍の言葉がロマニの耳に響く。

 

 それもその筈だ。彼の機械龍ーギルバリスは永遠の平和を築く為に作られた叡智の結晶。その結果宇宙に知的生命体は不要であると判断し、自らの惑星を葬り去った存在。ゲーティアが辿ることになる未来の姿とも言える存在がギルバリスなのだ。

 

『確かに僕たちには欠点もある……。欠点だらけさ!』

 

 そんなギルバリスの出した結論に反論したのは、ベリアルに似た瞳を持ちながら優しい空色の輝きを放つウルトラマンだった。

彼が言う欠点。自分の身の回りにいる人たちの悪いところ、悪いと言っても全部が全部聞いてしまえばしょうもない日常の中の一コマ。

世界から、宇宙から見れば誰も気にしないようなちっぽけでどうでもいいような事が欠点だと、()()()()()だと証明するかのように彼は立ち上がる。

 

『僕も欠点だらけだ! でも、みんなは僕を信じてくれた……信じて頑張ってくれた!』

 

『ふ、フハハハハ。そうだ、その通りだジード! まさかたかだか20年そこらしか生きてねえお前がその答えに至るとはなあ!』

 

 心の底から嬉しそうな声を上げたベリアルは、ギルバリスとジードの決着を見届けることなく立ち上がり、倒れているロマニのことを担ぎながら後ろの方へと歩いていく。

 

『さ、最後まで、見ていかなくていいの、かい?』

 

『結末は見えている。それよりも早いとこ掴まなきゃいけねえもんがあるからなぁ』

 

『それ、って……』

 

『このオレの欠点を補うとかほざいたくせに、カッコつけて先に逝こうとしてやがる大馬鹿野郎の手だ』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 必要。そんな言葉を、かけてくれるなんて思いもしなかった。

だって、ドクター、ベリアルさんと同じ名前を持つ存在をその身に宿していた人が彼と同化したんだ。これに勝るものなんて他にない、あるはずがない。

 

 べリアルさんと分離するとき、彼が自分の力の残滓を私の身体に少しだけ残してくれたからどうにか生き永らえているけど、それだけだ。

元から死に体だった私の身体は、支えとなるベリアルさんが消えたことで既に立ち上がる力すら残されてないくらいにボロボロで、この先の結末を見届けて眠ってしまおうって。そう思ってたのに……。

 

「『お前がこのオレに言ったんだぞ? 思いを貫け、心に正直でいろとな。だからそうすることにしたんだ』」

 

⦅やらせるものか!⦆

 

「それはこっちの台詞なんだよ!」

 

「ふっ、あっちにばかり目が行ってて私たちに気づかないなんて随分舐められたものねえ? マスターちゃんは返してもらったわよ!」

 

⦅だからどうしたという! 我らに攻撃を加えてみろ! 傷つくのはかの「んなの知ってんだよ!!」────ッ!⦆

 

「私のますたあがそれ程度の覚悟もなく立っているとお思いで? あまり下に見るも限度があるというもの」

 

「────ッ! すうぅ、はあぁ……行くよモーさん、オルタ、清姫! ベリアルさんたちの時間を稼ぐ!!」

 

「『────。このオレの、ウルトラマンベリアルの隣に立つと確言した男は誰だ? 並び歩くと主張したのは何処のどいつだ? お前だろう、宮原博樹』」

 

 そうだ。言った、言ってやったさ! あの森の中で確かに言った! 彼が抱えていた闇を知って、リクくんのように受け止めるんじゃなくて、ベリアルさんの隣に立って、一緒に歩いて! 知らなかった、今まで感じたことのない旅をしようって!! 

 

 出来ることなら最後まで戦いたい! だけど身体が!! 顔を上げる力もない、伸ばしている手がどこにあるのかも分からない!! 

そんな私に何が出来るって言うんだよ!!

 

 

「『────やはり、オレではお前がガキの頃から憧れ続けた存在にはなれないか?』」

 

グッ!嗚呼ぁああああああああッ!! 

 

────()()()()()()()()

卑怯だ、あなたはいつもいつもいつも卑怯だ!! そんなこと言われたら!! 何がなんでも!! 立つしかないだろっ!!! 

動け、動け!! うごけうごけうごけうごけうごけっ! ここで動かないで、何がベリアルさんの隣にいるだよ!! ふざけたこといってんな!!! 

 

「『マスターとサーヴァント。そんな曖昧な繋がり、断って正解だ』」

 

あああああああああああああッッ!!! 

 

 そうだ、最初っから不満だったんだ! 魔術で繋がれた主従の契約なんて!! そんなあってないような鎖がないとベリアルさんとのつながりを感じれないことが! 無くなったらそれきりだって不安がいつも胸の奥の奥の方にあったから!! 

 

「『他の誰でもねえ。適正だとか相性なんかじゃねえ! お前じゃなきゃダメなんだよ。……だからこのオレを手を取れ!』」

 

 こんな最高のチャンス! 二度とあるわけないんだ!! あの人が! ベリアルさんがぼくのことを求めているなら、それに応えるのが!! ぼくが憧れた! ぼくが目指した! 今この一瞬でしか掴めない! 

 

ぼくがなりたい! ウルトラマンなんだああああああああああ!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────ガシッ! 

 

 

 

 

 

「……()()()()()()()()()。行くぞっ! 博樹ッ!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ソロモンinベリアル
 ソロモン七十二柱を内包していた。その中にベリアルという名前の魔神がいたからこそ出来た同化。
しかしながら、ベリアルが消滅寸前だったこともあり博樹と同化している時ほど力を引き出せないためゲーティアが本気で潰そうとすれば勝てるくらいの戦闘力しかもたない。
見た目は完全にダクヒ版の人間態ベリアルさんをイメージ。


なりふり構わず倒そうとしたが立香ちゃんと彼女のサーヴァントに邪魔されたために一番起こしてはいけない事態へとつながった。

ロマニが宝具を使ってゲーティアが崩壊していく(攻略可能になる)のが本筋ですけど、んな弱体化したゲーティア相手にして何が面白い?
最強の状態のゲーティアをぶっ倒してこそだろ!!

明日!ようやく、ベリアルはあの姿へ……。


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6

それは、おわりのすがた。

むすこのさいだいのしょうがいとしてあらわれた、さいあくのすがた

そのそんざいがいま、じんるいをすくおうとするものへ

きばをむく


────小さな宇宙が、そこで生まれた。

 

「やった! 博樹さん! ベリアルさん!!」

 

「へっ! ようやくか、よッ!!」

 

「随分と待たされたじゃない、一時間くらいかかったんじゃないの?」

 

 ベリアルの手を博樹が掴んだ瞬間に起きた、超新星の爆発にも似た輝き。自分たちが稼ぎ続けた時間は無駄じゃなかったことが証明された立香たち。

 

 ずっとベリアルへ注意を払っていたゲーティアはその光で一瞬だけ視界を奪われ、彼を一分一秒でも長く押しとどめようと全力を出していた立香たちはその光を背中から受け、勇気を奮い断たせる。

 

「────! こ、い? そこに、飛び込めばいいの! ベリアルさん!!」

 

「っておい立香!! っちたく、しょうがねえな! 最後まで付き合ってやるよ!!」

 

 そんな時、立香はその光から自分を呼んでいる声が聞こえたのか。迷うことなく、ゲーティアに背を向けてその光に向かって走りだした。

それを見たモードレッドは直ぐさまその後を追い、ジャンヌオルタはゲーティアの道を阻むため槍の雨を降らせて足を封じる。清姫はというと……。

 

『お乗りくださいますたあ!』

 

「清姫! ────うんっ!!」

 

 迷わずに自らを竜の姿をへと転身させ、立香のことを背に乗せたまま光へと一直線に向かう。

どんなにゲーティアが自らに攻撃を加えて立香のことを止めようとしても、もう遅い。

 

 別れに耐え、絶望を振り切った彼女を止められるものは誰もいない。どんな痛みが襲ってこようがお構いなしに、立香はその光の中へと飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「────はあっ!!」

 

 さっきまで感じていた苦痛がなくなっている。やるべきことは分かってる。

私が掌を上に向けた状態で右手を前に出すと、そこに粒子状の光が集まってくる。

 

『そうか、コレはマシュの……。なら、ボクの力も使ってくれ。ないよりはマシなはずさ』

 

 右手に集まる粒子がマシュちゃんの中に宿っていたリトルスターだといち早く気づいたドクターは、もうベリアルさんと同化している意味がないからか、自らの力を全て移してくれた。

 

 そうして完成したカプセルがどんなカプセルなのかも確認もせずに、私は装填ナックルの中に一本目のそのカプセルを挿入する。

視なくても分かるさ。このカプセルは、過去に飛んででも未来を救おうとした、人から人へ繋がる明日こそが未来だと自分自身に証明して見せた()()()()()のカプセル。

 

「もう一本は………………これだ」

 

 私が取り出したカプセルは、ベリアルさんがこの地球にやってきて()()()()()()()()()()()()()

あの時、立香ちゃんがベリアルさんに歩み寄ってくれた、その時にはもう生まれていたもの。

 

 期待のルーキーとして送り出されたけれど、地球に降り立った時は未熟の一言。だけど、その星に生きる人々と、大切な仲間たちと時間を共にしていくことで、最後には光の国の宿敵である暗黒の皇帝を打ち倒すほどに成長した。諦めず仲間たちと何度でも立ち上がる不死鳥の戦士。

 

 そのカプセルを起動させるために起動部に手をかけながら前に突き出すと、それを遮るようにベリアルさんの声がこの空間に響く。

 

『フハハッ! こんなものじゃねえだろ()()!!お前が歩んできた旅は! 紡いできた絆ってヤツはッッ!!!』

 

 

 

 

 

「当たりまえだあああああああ!!!!」

 

 ベリアルさんの声に応えて、立香ちゃんが外からこの場所へと飛び込んできた。

その勢いのままカプセルを持つ私の手を強く握ると、はあ、はあと息を整えながら、立香ちゃんは掌に刻まれた令呪を輝かせる。

 

「第一、第二、第三!! 全ての令呪を持って命ずる!! 私のこれまでの旅の証明を!! 夜闇を照らす綺羅星よ!! 今ここに集ええええええええええ」

 

 死痛の隷属の中でも、私とベリアルさんのためにゲーティアと戦っていたから、女の子なのに手はボロボロで、身体の至る所から血が流れているのに、一言も弱音なんて吐かずに、思いっきり叫んだ。

 

 カルデアの令呪に絶対的命令権はない。けど、令呪3個分にも及ぶ魔力と立香ちゃんの強い思いが込められたその願いは、この空間を超えて、ソロモンの宙域全体に響き渡る。その証拠に、一つとして同じものがない流星が、立香ちゃんのウルトラカプセルの中に集束していく。

 

 特別な力も持たない少女の元に、100を超える偉業を為した英霊たちが力を貸してくれる。光の戦士が、絆を紡いだ人間たちと一緒に皇帝を打ち倒したのとは正反対。だけど、彼女を中心に無限の輪が生まれたのは同じだ。

 

 溢れる熱が抑えられないのか、カプセル自体が赤く、燃え上がるように赤く変化したそれを装填し、目の前で私が掴むのを待ってるアリスちゃんからライザーを受け取る。

 

「アリスちゃんも、一緒に行こう!!」

 

「ええおじさま。わたしにみせて!かなしいけつまつ(バットエンド)はかえられるってことを!!」

 

 

【ウルトラマン  ギンガッ!!】

 

 

ウルトラマンメビウス  フェニックスブレイブ!!

 

 リードさせたライザーから聞こえる声は、心なしか今までよりも気合の入ったものになり、装填した戦士たちの名前を強く、つよく叫ぶ。

 その二つの力が混じり合い、ライザーのスイッチを押す前から力が溢れ出している。そんなライザーを天に向かって掲げスイッチを押すと、私たちが今いるこの場所が変化する。

 

「綺麗……」

 

 一瞬暗闇の世界に飛び込んだのかと思ったけど、ぽつ、ぽつ、と数えきれないほどの星々が輝きだしたことで、星が瞬く銀河がこの小さな空間の中に生まれたことが分かった。その美しすぎる光景に目を奪われてしまうけど、気持ちを切り替えて叫ぶ。

 

「いくぞ立香ちゃん!ドクター!マシュちゃん!ベリアルさん!!! そして百を超える英霊たちよ!!」

 

 

 

「「『『『『(ほだ)すぜ! 未来!!』』』』」」

 

 

 

 

 

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「────ッ!?」

 

「おお? どうしたゼロちゃん! んな張りつめた顔してよお?」

 

「あ? いや、気のせいだったみたいだ……」

 

 あるものは、その戦士がそんな力を持つなど有り得ないと信じきっているために勘違いをし

 

「────ベリアル。……お前、なのか……?」

 

「ケン? どうかしましたか?」

 

「む、ああ。なんでもない、なんでもないんだ(闇は消えていない、だが至れたのだなベリアル)」

 

「その割にはうれしそうですが……?」

 

 またあるものは、光を持っていた時を誰よりも知っているからこそ気づき、厳格な雰囲気を壊すくらいに満面の笑みを浮かべ心の底から喜んだ。

 

 

「父さん!?」

 

 そして彼の血を唯一受け継いだ息子は、誰よりも早く、誰よりも正確にその力を感じ取っていた。

 

「光と闇が調和してる。まるでプリミティブの僕、いいや違う。光と闇だけじゃない、沢山の力が一緒に混じりあって極限まで力を引き出していってる。これは……ウルティメイトファイナルと同じ……究極の力?」

 

 今まで幻だと思っていた、自分の中に潜む願望が見せる夢だと……。けど、これは違う。今まで見ていた夢が全部本物だったと証明する力。

 

 同じ道を歩むことは出来ないと決別した父が、()()()()()()()()()()と歩み、手に入れた。誰かを守るための力。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふうぅ────はあああああああッッ!!!!

 

 光が収まらないうちに、この宙域全体を震わせる咆哮が響く。

同時に、ベリアルの背中からエメラルドグリーンの輝きが放出し、何かを取り込んでいる。

 

「善も! 悪も! 秩序も! 中立も! 混沌だろうが何だろうが関係ねえ!! 勝手にテメーらの未来を守ってやるんだ、テメーらも、力を寄越しやがれええええええ!!!!」

 

 ベリアルが求めたのは、今を生きる全ての人間たちの持つ心の欠片(リトルスター)のようなもの。人理焼却によって突然に明日を奪われた人々に残った小さな意識の欠片を、完全復活したストルム器官を使うことで吸収し、自らの力へ変換させる。

 

⦅なんだ……なんなんだ貴様のその姿は!! 自らが宇宙を内包する存在だと!? 何なんだ貴様は!!⦆

 

「聞きてええか? 聞きてえよな!! オレの名は()()()()()()()()()()()()()()()()()!! 本来望んだ究極とは遠く離れたが、これも、一つの究極の形だ!!」

 

 骸のような灰色の装甲は以前と変わらないが、黒を基調としていた肉体は黒に近い紫へと変化しゲーティアが言っていたように宇宙を内包しているのか数えきれないほどの星が煌めいている。その輝きが灰色の装甲を照らしているのか、銀に輝いているように見え【銀色の巨人】そのものになっている。

 

 そして、怒っているようにも笑っているようにも見えた黄色い目も、光の国を追放され闇に堕ちてから変わることのなかったカラータイマーもその色を変えている。

 

全てを受け止める、空の色。息子であるジードと同じ、水晶のように綺麗で、涙を固めたようにも見えるその優しい色に、瞳もカラータイマーも色づいていた。

そうして巨人サイズに変身をしたベリアルは、ゲーティアと同じサイズなで縮まりながらいつものように首を鳴らす。

 

「時間がねえからな。さっさと決めさせてもらうぞ!」

 

⦅────ッ! ガッ!!⦆

 

 魔人の目でも捉えられない。地面を蹴る音が聞こえたと思ったら自分が殴り飛ばされていたことに驚きを隠せなかった。

例えどんなにベリアルが強くても、ビーストとしての真の姿を見せた自分ならばどうにか対処できるのではないか? そんな甘い期待をただの拳一発で砕かれた。

 

「はあ……どうした? オレも()()()()()()()()()()()んだ。立ち上がれない痛みじゃねえだろ?」

 

⦅クッ……貴様、そうか! 死痛の隷属を自らに移したか!!⦆

 

 ゲーティアの言う通り。彼によって立香つけられた死痛の隷属は今、ベリアルが請け負っている。

立香も同化して一緒に変身した際に自分にだけダメージが来るように、そしてベリアル自身の力で閾値を超えないように調整して。

 

「ほらどうした? ご自慢の魔術とやらを繰り出してみろよ?」

 

⦅クッ! クソがあああああああ!!!!⦆

 

 舐めらている。つい先程まで負けることすら想像出来ない盤面が一気にひっくり返された。

怒りの声を上げるゲーティアは、しかして冷静に、ティアマトの光線には届かないが、1発1発が並のサーヴァントの宝具と同じ威力を誇る魔術を数百と展開する。した。したはずだった。

 

 パリーンッ! 

 

「悪いな、チンタラやってるもんだから全部壊しちまった」

 

《な、な、な……!!》

 

 言葉が出ない。今何をされたと七十二の意識たち誰も答えの出せないことが目の前で起こった。お気楽なソロモンの時では不可能だった魔術の詠唱速度を神代のそれに限りなく近づけたゲーティアの魔術。

それに加え、威力はもちろんだがその強度も相当のもののはずだ。それをベリアルはゲーティアが知覚することすら出来ない速度で破壊してみせた。

 

 魔術、そもそもベリアルに魔術の素養はないためゲーティアを超える魔術を使用した痕跡はない。加えてベリアルが主に手から放つエネルギーを凝縮させた球体や光線の類いを使用した跡も見当たらない。

ならばどうやって? 答えの見つからないゲーティアの思考は、どんどん目の前の存在への恐怖に埋められていく。

 

「次は邪魔もしなけりゃ避けもしねえから放ってこい。当たればこのオレに傷をつけれるんだろ?」

 

⦅────ッ!!! 後悔するがいい!! ベリアルぅうううう!!!!!⦆

 

 下に見られていることが堪忍ならないゲーティアは、先程よりも速く、そして精巧に魔術を練り、それに加えて両手を合わせたその中心に凝縮させた魔力の塊をベリアルに向けて放出させた。

傷をつける。決してそのような生易しいものではすまさないと放った魔術はベリアルのことを包み込む。

 

 放たれた魔術は相手を逃がさないため、確実に葬るためベリアルを中心にドーム状に広がり魔術が絶えず襲い掛かる結界を作り出した。

一撃でベリアルを倒せないのなら。1秒に数百、数千を超える魔術ならばどうだ。ティアマトの攻撃に一度は破れた貴様ならばこの攻撃は耐えられまいと……。

 

 

 

バンッ!!! 

 

 

⦅────これでも、駄目だというのか!!⦆

 

 絶えず魔術が飛び交い続けた結果、結界の内部はベリアルを中心に全てを溶かすマグマの海へと変わるが、それさえもベリアルは簡単に破壊し、その熱の中を歩いてくる。

 

 一切堪えた様子もなく歩き、熱を浴びながらも曇る事なく輝き続ける胸に輝く空色の一等星と、ゲーティアのことを捉えたその瞳は美しささえ感じさせるほどだ。

 

「これでテメーが出せる手品は終わりか? なら、こんどはコッチの番だ!」

 

⦅ガアッ!⦆

 

 来る! と思った時には既に遅い。ベリアルの拳はゲーティアの事を捉え、上空へと殴り飛ばす。

一撃の重さに悶えながら態勢を立て直したゲーティアは、自分の方に向かってくるベリアルを今度は目視できたため《死痛の隷属によるダメージでベリアルも同時に弱っている》から遅くなったと信じ、向かってくるベリアルに向けて魔術を何重にも掛け合わせた右腕を振りぬく。

 そうして振るわれた拳だったが、ベリアルは自分に向けられた拳を片手で受け止めると、そのままゲーティアの拳を握りつぶした。

 

⦅──────!!!⦆

 

「こんなんで終わりな訳ねーだろ」

 

 原型がなくなるほど強く握りつぶされた拳。声が出ない痛みが襲ってくるのはベリアルも同じであるはずだというのに、何食わぬ顔で、痛みを感じている右手で殴りかかる。

何発も、何発も、何発も……右の拳を掴まれて逃げられないゲーティアは何とか抜け出そうと空いている左手を行使しようとするが、右手から出した光輪によって斬り落とされ、終いにはその斬った腕を鈍器に地面に向かって叩きつけられた。

 

⦅グウッ……はあ……はあ……⦆

 

「どうした? もう終わりか?」

 

 地面に叩きつけられたゲーティアは、潰された拳と、斬り落とされた左腕を再生させながら立ち上がると、ちょうどベリアルが空から降りてきて彼の事を見下す。

 

⦅……ぜだ。……なぜだ。……何故貴様は我らの邪魔をする!!⦆

 

「ああ?」

 

⦅貴様は本来人間など救う価値もないと嘲笑う存在のはずだ! その貴様が何故人間如きに肩入れする!!⦆

 

「…………ハハハハハハハ!! 何だ、まだそんな簡単なこともわからねえのか」

 

⦅何? ならば答えろ! 貴様は何故戦う! どうして悪の存在である貴様が正義を為そうとしている!⦆

 

 無意味かも知れないが何重にも重ねた魔術障壁を張りながら魔術で攻撃をしてベリアルの足止めをするゲーティア。

変身した最初に時間がないと言っていたのなら何とか耐えることが出来れば自分にも勝機はあると、そう踏んで行動する。

 

「逆に聞いてやるよ? お前が行った人理焼却。あれは悪なのか?」

 

⦅────否、否だ! 我らが大偉業が悪だと? ふざけるな、我らの偉業が悪と呼ぶなら! 憎悪と絶望の物語しか刻めない人間どもの一生の方が悪に等しい!! どうあがいても消える、最後には死に対する恐怖しか残らない不完全な生物! 死を前提とした、生まれてから死に至るまで! 全てが悪意で染められた人間ども生こそが悪だ! 故に! 我らが望む永遠は未来永劫輝き続ける! 極点へ至るのは我らの行いだけが全であり、善なのだ!!⦆

 

()()()()()()()()

 

⦅ガッ!!⦆

 

 その言葉が聞きたかった。だからこそ直ぐにでも割れる障壁も、効きもしない魔術も丁寧に弾いていた。

ゲーティアの言葉を聞き終えると、ベリアルは相手の顔を掴んで地面へ叩きつけ、起き上がれないようにゲーティアの胸部を片足で踏みつける。

 

「お前は人間を価値なきもの()として切り捨てた。なら、守ってやるのも一興だろ! オレは光の国の罪の証、()()()()()()()()なんだからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




ウルトラマンベリアルアトロシアス(究極体)
使用カプセル・ウルトラマンギンガ:ウルトラマンメビウスフェニックスブレイブ
 ベリアル本人すら考え至らなかった究極のアトロシアスの姿。ウルティメイトファイナルが『究極の一』だとしたら、このアトロシアスは『究極の全』。
本来は宇宙に広がるキングの力を全て吸収し、ジードをも吸収した姿こそが完全なものだったがまったく別の要因で進化した。
カルデアの紡いできた絆は勿論。復活した位相反転器官【ストルム器官】を使って今を生きているはずの人間たちの心の欠片(リトルスター)を吸収することで強大な力を得ている。

 立香とゲーティアを繋いでいた『死痛の隷属』を解除するのではなく、自らに移したことでゲーティアに与えるダメージ分全てベリアルに跳ね返ってくる。同化しているはずの博樹や立香ちゃんにダメージがいかないのはベリアルがそういう風にあの一瞬のうちに改造したため。

世界中の子どもたちの【光】を、光の巨人の石像から【光】を貰ったグリッターティガとは別で、アトロシアスの場合同意拒否関係なく全人類を強制的に吸収しているため完全に別物。
ストルム器官により、吸収した【光】は【闇】に変換され、【闇】は【光】へと変換されている。

全ての英霊を吸収しているため設定状英霊たちの宝具をウルトラマンレベルで発動することが可能だが、使わなくても強すぎるので使うことがない。(特撮あるある)

【絆すぜ!未来!!】
未来をつなぎとめる。そしてこの旅で自由だったベリアルの心が旅をしてきた仲間たちによって絆され、未来へ向かうことへの証明。立香ちゃんが、マシュが、そして博樹さんが彼の心を前へと進ませたことで起こった奇跡を現している。


デモニック・フュージョン アンリーシュにしようかアルティメットエボリューションにしようか。「〇〇ぜ、○○!」は何にしようかとこの小説を書き始めた当初からこのタイミングで登場させようと考えていたくせにギリギリまで決まらなかったり……。最初はギンガとメビウスのカプセルを反転させたルギエルとエンペラを使用とか、メビウスならインフィニティ?それともフェニックスブレイブ?逆にギンガをストリウムとかギンガビクトリーにしちゃうとか。ゼロビヨンドみたいにメビとエンペラ、ギンガとルギエルでエボリューションカプセルを産み出して〜とか色々悩みに悩んだんですよね……。本当、ここまでたどり着くのに長いこと長いこと。




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7

わるものは、せいぎのみかたにたおされる

それがあたりまえ。かわったりしない。

けど、いちどでいいからみてみたい。

わるものがみらいをつかみとる、そんなけつまつを




 

 

 

 

 

 

「お前は人間を価値なきもの()として切り捨てた。なら、守ってやるのも一興だろ! オレは光の国の罪の証、()()()()()()()()なんだからな!!」

 

⦅そんな……そんな馬鹿げた理由で我らの邪魔をしてきたというのか! 貴様はっ!! ⦆

 

「善の前に悪が立ちはだかる、数えきれないほど宇宙が存在していようがその事実だけはどんなに行ったって変わることはない! 真の平和? 未来永劫続く永遠の命? そんなもの外から脅威が襲ってくれば一瞬で崩れる。いちいちそんなことの為に時間を使ってる方が無駄でしかねえんだよ。まあ、無能だと罵っておいて大層な能書きを並べねえと叛旗の1つも翻せなかったテメーみたいな愚図が出す答えにしては、考えたほうだったんじゃねえか?」

 

 数多の世界を、星を、宇宙を渡り歩いてきたベリアルだからこそ、不変のものだと、善と悪がぶつかるのは自然のモノだという。

いくら地球と言う一つの星に恒常的な平和が、永遠の命が訪れたところでいつかは崩壊することを知っているからこそ、ゲーティアの行いは無駄でしかないと。

 

⦅ならば! 貴様が悪などしたら大人しく善に滅されるべきだ! 悪は善によって滅される! これも変わらない不変の事実のはずであろう!!⦆

 

 ベリアルに蹴り飛ばされたゲーティアは空中で態勢を立て直し、もうベリアルを倒すにはこれしかないとマシュのことを消し去ったあの宝具を発動させる準備をし始めた。その姿はまるでどんなに傷ついても、どれだけピンチに陥っても諦めないで立ち向かい続け、最後には必殺技で勝利を飾る正義の味方のようで……。

 

「悪いな。そんな理屈、オレには通用しねえ。()()()()()()()()。オレはそれを、身をもって経験してるからな」

 

 宝具の準備によって大気が震えるなかで、ベリアルもそれを迎え撃つために力を解放させる。それはこのソロモンの地を崩壊へと追いやるには十分すぎるほどの力場を発生させ、大地が、そして空までもが崩れていく。 

 負けるはずがない。このまま勝利するのは自分だと信じ切っているその姿は、まさか起こるはずがない偶然、奇跡によって敗北を喫する悪役のようで……。

 

⦅何を! 何を訳の分からないことを…………!! 貴様も、そして貴様と同化しているあの無能な王も!! ここで消える、我らが消す!⦆

 

「あってもいいだろ。奇跡が起きて復活なんてクソな展開をぶち壊す、相手を完全に葬りさって勝利を飾る悪役がいてもよおぉっ!!」

 

⦅貴様らを滅ぼすことこそが、人類史の終焉。我らが大業成就の瞬間だ!! この一撃を持って、この星は転生する!! あらゆる生命は過去となる、ウルトラマンベリアル!! 貴様もだ!! 讃えたまま消えるがいい! 我らが偉業! 我らが理想! 我らが真意! 貴様ごときに、受け止められるものかああああっ!!!⦆

 

 ゲーティアが背負っているのは、この世界の生末を案じる愛故の行い。人類全てをより良いものにしようという人類愛によるものから来たもの。

今よりもよくなりたい。そんな子供ですら持つ当たり前の願望、進化しようとする意志がゲーティアを動かした。進化させるために古いモノ(今の人類史)を切り捨てるという結論を持って。

 

「人類を守るなんざ『ついで』でしかねえんだよ。オレはオレの守るべきものだけ守れればそれでいい。テメーみたいに、世界なんざ背負ってられるか!!」

 

 背負うのは守ると決めた、ようやく気付けた守るべきものとその未来だけ。たったそれだけでいい、それだけで満たされるものだったのだ。

ベリアルは地面に向けた両腕を交差させると、内包している星々がその輝きを強くする。

 

はああああああああああッッッ!!!!  

 

 組んだ腕を上空に向かって突き上げると、星々はその輝きをさらに強め、ベリアルのことをその眩い輝きで包み込む。

 世界を震わせる雄叫びをあげ、手を左右に広げると、全身から赤黒い稲妻と黄金のエネルギーが放出し、瞳からも光が溢れ出る。

 

 

 人類史の熱。3000年という歴史の中で人類が発生させた全ての熱量を集束させた極大の光が、目の前に残された唯一にして最大の脅威に向かって放たれる。

 

ア ト ロ ス ノバッ!! 

 

 相手の方が早いから、極大の光が迫ってきているからとベリアルが態度を変えるわけがない。開放させたエネルギー全てを凝縮させた腕を十字に組んで光線を放つ。星の光を含ませた黒紫の光線が、空色の稲妻を走らせながらベリアルの腕から放たれ、人類史そのものと激突する。

 

文字通り、身を粉にして立ち向かうベリアル。この地に留まっていることすら限界に近く、アトロシアスの姿自体消耗が激しいため身体は分解を始め、ベリアルの身体から粒子が漏れ出ている。それでも、ベリアルは光線を弱めるどころか更に勢いを強めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「創世へと至らんとする光と創世を破滅へ齎す光の衝突か。全員、衝撃に備えろ!!」

 

 映像からゲーティアの宝具とベリアルの光線の衝突を確認したダヴィンチは、カルデアに衝撃が襲ってくるのを予期して職員たちに指示をだす。

ダヴィンチの言う通り、創世への時間逆行を可能とするゲーティアの宝具と、新星(ノバ)を冠するベリアルの光線のぶつかり合いはその中心点にブラックホールが生まれる。

 

 生まれた黒点によってソロモンの地が崩壊を始める。その衝撃の余波はカルデアに届くことは容易に想像できたからダヴィンチは指示を出したのが、いくら待ってもその衝撃は襲ってこない。

 

「ははは、まったく。キミには驚かされてばかりだね、ベリアル」

 

 コレが最後の戦い。カルデアで見守っている全員もそれを感じ取っており、見守りながら唯一英霊の中でベリアルの力に入らなかったダヴィンチがその光景と、今カルデアに異常事態にため息をこぼさずにはいられなかった。

 

「ダヴィンチちゃん、やはりこの緑の結界のようなものって」

 

「十中八九ベリアルだろうね。『ついで』か……。差し詰めココは立香ちゃんと博樹さん、それにマシュの帰ってくる場所だから守ってくれているのかな?」

 

 当初、ゲーティアがその真の正体を現した時、魔神柱がここカルデアに侵入してきて破壊しようと暴れるのをどうにか抑え込んでいた。

それが今ではその心配をする必要がない。ベリアルがアトロシアスへ変身を果たした瞬間に、緑色の結界がカルデア全体を守るように張られ、侵入していた魔神柱も一瞬で消滅していた。

 その結界が黒点から生まれる余波すらも防ぎ、ダヴィンチやカルデアの職員たちを全員守っている。

 

「やってやれロマニ。これが迷い続けた、悩み続けたキミの答えなんだろ? 見届けてやるさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラッどうした!! オレを、オレたちを消して見せるんだろ!!」 

 

⦅何故だ! 何故まだ立っている!! この火を! この熱を前にして! 何故まだ貴様はそこにいる!!⦆

 

 盾だけを残してマシュを消滅させたように、宝具【誕生の時きたれり、其は全てを修めるもの(アルス・アルマデス・サロモニス)】の熱量を上回るものはこの地球上には存在しない。

 ベリアルの身体から粒子が飛び出ているのを見て、ゲーティアは後一歩だと、このまま押し切れると思ったが、いくら経っても相手の光線を撃ち消すことが出来ずにいた。

 

「それが分からねえから、テメーは負けるんだよおおおおおおっ!!!!」

 

⦅グッゥゥ! 負けぬ! 負けられぬ!! この星を! 世界を! 人類を救うため!! 私はああああああッッ!!!!⦆

 

 ベリアルが腰を落とし、光線がその勢い更に強める。それによって拮抗していた光線同士の衝突は崩れ去りアトロスノバが相手の光線を押し返し、黒点すらも消滅させゲーティアに迫る。

 

()()()()()()()()()()ヤツが! 生命(いのち)を語るな!!!」 

 

⦅あ、ああ! あああああ!! 来るなっ、来るなっ!!⦆

 

 迫ってくる光線を押し返そうとさらに魔力を込めるが、どんなに込めても押し返すことが出来ず錯乱し始めるゲーティアは、エネルギーの隙間からベリアルを見る。

 

「はははははははは!!! 泣け! 喚け!! それが死ぬってことだ!! お前らが嘲笑った死を、覚えて逝きやがれッッッ!!!」

 

⦅ああああああああああああああッ!!!!⦆

 

 願望、野望、自信、全てを正面から叩き潰し包み込んだ光線は、ゲーティアが作り出したこの特異点の天まで届き、光で包み込んだ。

 

『カルデアのこと…………、みんなのこと……お願いね。反英霊だろう貴方にこんなこと言っても無駄かしら? そうね、みんなじゃなくてもいいから────────』

 

「……地球人との約束一つまともに守れねえんだ。宇宙を手に入れるなんて、最初っからオレには不可能だったんだ。なあ? オルガマリー・アニムスフィア」

 

 

 

 

 

()()()()()()のこと、守ってね? ベリアル

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは……』

 

 ベリアルさんがゲーティアを倒した光線の光に包み込まれた私は、辺り一面真っ白で何もない空間に突っ立っていた。

何が起こったのか分からなくてキョロキョロ辺りを見渡していると、私の目の前にベリアルさんのカラータイマーと同じ色をした球体が現れる。

 その球体は光を放つと、この旅で何度も私たちのことを助けてくれたウルトラマンの姿をとる。

 

『ベリアルさん!』

 

『よく、ここまで歩き続けたな。立香』

 

 穏やかな表情を浮かべながら、ベリアルさんは私に向けて激励の言葉をかけてくれた。

今まで、真っ直ぐに褒めてくれることなんて一回もなかったベリアルさんからそんなことを言われてしまったせいで、色々と察してしまって視界が歪んでいく。

 

『みんなが、い゛だがら゛……。 私ヒクッ一人じゃ、ごごまで、辿り、づげながっだ!!』

 

『それが理解できてっから、お前はここまで歩いてこれたんだ』

 

 優しい声色で、その鋭い爪には似合わない優しい手つきで頭を撫でてくれるベリアルさんに我慢できなくて、涙も拭かずに抱き着く。

ベリアルさんはそれを拒絶せずに、折れないようにぎゅっと抱きしめ返してくれた。

 

『生きろ立香。お前は生きて歩み続けろ』

 

『────ぐすっ」

 

『どんなに足掻こうと、どれだけ支配しようと、何度踏みつぶしても、オレは勝利を掴みとることが出来なかった。そんなオレが初めて手にした勝利がコレだ。お前たちが、オレをここまで導いたんだ』

 

『そんな、そんなごどっ!』

 

 導いてもらったのは私たちのほうだ! どうすればいいんだろうって迷ったとき、躓いたとき、いっつも背中を押してくれたのはベリアルさんだった。

だから! だから!! 

 

『お前は証明だ。オレが守りぬいた勝利の証、それがお前なんだ立香』

 

『勝利の……あかし』

 

『だから生きろ。お前が覚えている限り、生きている限り、オレが掴んだこの勝利は揺るがない。 行く手を阻む嵐が吹雪いても、満点の星が襲い掛かろうとも、王だろうが神だろうが誰であろうが関係ねえ! 生きて歩き続けろ』

 

『できるかなあ、私に』

 

 知ってる。ベリアルさんは私のことを信じてくれてるから大丈夫だってそう言ってくれるって知ってる。

だけど最後だから、もう会えなくなっちゃうから、めんどくさい女だって思われていいから聞き返す。

 

『お前は恐れず、逃げもせずにこのオレに歩み寄ってきた大馬鹿だぞ? そんなお前に出来ないはずがねえだろ、挫けようが躓こうが何度だって立ち上がって喰らい付け』

 

『うん! うん! うんッッ!!』

 

『お前に出会えてよかった。じゃあな、立香コイツは餞別だ』

 

 そう言って、ベリアルは私の手にウルトラマンメビウスのカプセルを握らせる。

 

『きっと役に立つ。それに元々これはお前のモノ()だからな』

 

『……私も! ベリアルさんに出会えてよかった! 助けてくれてありがとう! 守ってくれてありがとう! 沢山教えてくれてありがとう!』

 

 ベリアルさんの温もりが遠ざかっていくのを感じながら、沢山の気持ちを込めてありがとうを言い続ける。

ずっと一緒だった。ベリアルさんからすれば短いかもだけど私にとってすごく長い旅を最初から歩いてきてくれて……。

 

「ありがと──────!! ウルトラマンベリアル────!!!!」

 

 

 

 また、また会えるって信じてるから!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『行くんですね、ベリアルさん』

 

『ああ。流石に無理をしすぎたからな……』

 

 私もベリアルさんも無茶をしすぎてもう立ち上がる力も残ってないもんだから、2人して力なく座りこんで背中を合わせながら話をする。

ここまでの話を思い出しながら……。

 

『家族と離れて、見知らぬ土地にやってきて爆弾で死にかけたと思ったら、子供のころからの夢が叶っちゃうんだもんな~。本当、数奇な運命だよ』

 

『息子に引導を渡されて、気持ちよく眠ってたと思ったら叩き起こされて、気がつきゃこんなトコまで来てた。ふっ、運命ってのは本当わけわかんねえな』

 

『はは』

 

『フッ』

 

『『ははははははははははははっ』』

 

 2人して笑った。そりゃあもう楽しそうに、ベリアルさんの表情は見えないけどどんな表情をしているのかは考えなくても分かる。

ずっと、ずっと一緒にいたんだ。いや、いなくたってこれくらい誰だって分かる。

 

『楽しかった。貴方と一緒に旅をしたのは……目が覚めたのは遅かったけど、貴方が旅してきた記憶も、経験も全部覚えてる。だから……だからっ!』

 

『────』

 

『この手を、離したくないッ!!』

 

 この場所に来てからずっと、ずっと握っていたベリアルさんの手を更に強く、つよく握りしめる。

別れが刻一刻と迫っているってわかっているけど! それを受け入れられるほど、僕は大人にはなれない。

 

『別れたくない! 離れたくない! もっと一緒に旅をしたい! 歩いていきたい!! もっと! ……もっと!』

 

『お前とじゃなきゃ、オレは守るべきものを手に入れられずに消えるだけだった。お前だったから、オレはオレの運命を引っくり返せた。お前は違うのか? 光の戦士でも良かったってのか?』

 

『嫌だ! イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!! 他の誰かなんて知らない! 僕が隣を歩きたいと思ったのは貴方だけ! ウルトラマンでも、ケンでもゼロでもジードでもない!! ウルトラマンベリアル!! 貴方だけ、貴方しかいないんだ!!」

 

 子供のような駄々ってわかってる。けど、もう他の誰かなんて考えられないんだ。ウルトラマンを好きだって気持ちは変わらない、だけど一緒に歩いていきたいって思うのはベリアルさんしかいない。彼以外のウルトラマンなんてどうでもいい!! 

 

『────だからお前に託せるんだ。後始末もな』

 

『ッ……。コレは……!?』

 

『強大すぎる力は、その大元が消滅しても多大な影響を及ぼす。その後始末、任せるぜ』

 

『だからって、なんで()()を!』

 

 ベリアルさんの手が離れるのと同時に託された鋼を握りながらベリアルさんに向けて叫ぶ。

だってこれはベリアルさんの……。

 

『戻った所で眠るだけのオレには、宝の持ち腐れもいいところだ。だったら()()()()()()()()()に預けておくのが一番だろ? なあ、博樹』

 

────、本当言うこと為すこと全部卑怯なんだんよなあこの人は……。

 

『本当、無理難題もいいところだ。普通友達だからってこんなこと押し付けたりしませんからね?』

 

『出来ねえ奴には最初から頼みやしねえよ。────じゃあな、博樹』

 

『託していくんだ。取りに戻ってこないと許しませんからね? ────だから、()()()()()()()()ベリアルさん』

 

 僕のその言葉を聞いて、ベリアルさんは大きな笑い声を上げながら遠ざかっていく。

僕もそれに倣って、頬から流れる雫を誤魔化すように笑い声を上げながらその場所から遠ざかる。

 

 

『ハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!』

 

『は、ははは。はっはっはっ。……すぅ ははははははははは!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アトロスノバ
 アトロシアス(究極体)が放つ究極の光線技。アトロスバーストの進化系。
ゲーティアの宝具を消滅させ、ゲーティア本人すらも消滅させた究極の一撃。死痛の隷属でゲーティアとベリアルも繋がっていたため、ベリアル本人もその痛みを味わいながら消滅した。
ソロモン(ロマニ)は痛みこそないが、ゲーティアとともに完全にこの宇宙から存在が抹消されて散っていった。ウルティメイトファイナルの光線技がレッキングノバなため、同じアルティメットエボリューションをしたならこちらだろうと……。
普通にアトロスバーストにしようか、それともデスシウム光線にしようかとこちらも結構悩みに悩んだ気が……。


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8

 
 べりあるは、ちからをかしただけ

 あくにちからをかしただけ

 だから、さいごはじぶんのてできりひらかなくちゃ

 べりあるがいなくても、だいじょうぶだって




 

 

 

 

 

 

 

────星の光が、我らを包み込んだ。

……ああ、失われていく。細胞の1つ1つが光すらも超えた速さで完全に消滅していく。矮小化する、減少していくなど生易しいものだ。この世から完全に消えてしまうのだ。

 

怖い。怖い。怖い

おぞましい。おぞましい。おぞましい。

 

 一柱が欠け、初めて全能の一部を失った時に感じたものとは訳が違う。かつてない感情の波が我らの全てを奪っていく。

知らない、知らない、知らない、知らない。我らは、この恐れを知らない。奪わないでくれ、と懇願したくなる嗚咽を知らない。

 

()()()()()()()()()()ヤツが! 生命(いのち)を語るな!!!』

 

 ああそうか、これが死を迎えるものが感じる気持ちか……。

我らは見ていただけに過ぎなかった。ベリアルがいうように、我らがこれを語るのは早すぎたのだ。

 

 それと同時に、我らはおぞましいまでの恐ろしさを感じた。

これを、アイツ(ソロモン)は一度味わってからまた、同じ行いをしているということに……。

 

────ああ、我らは負けるのか……。あの男に、あの王に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがまだ……。まだ、終わらせは、しない………………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「────────ん」

 

「──て────ちゃん!」

 

起きて! 立香ちゃん!! 

 

「ん……。博樹、さん。……ベリアルさんは?」

 

「いったよ。もう、ココにはいない」

 

 自分の胸に手を置きながらそういう博樹さんを見ながら。それと、自分の手に握られてるカプセルの存在から、ああやっぱりさっき見たアレは夢幻なんかじゃなかったんだって実感する。

 

『────ようやく繋がった!! 悪いけど感傷に浸るのは後にしたまえ! ゲーティアの完全消滅、そしてベリアルが最後に放った光線によってその領域は崩壊を始めている。束なっていたあの光帯が解けて爆発する前にカルデアに帰還するんだ!』

 

 崩れているけど、遠目から玉座が見えるから今私たちがいるのはこの領域の中心部、そこから最初にレイシフトしてきた聖門に辿り着けばカルデアに戻れる。一見簡単そうに聞こえるけど、そうしている内に崩れていく神殿は少しずつ進むべき足場が崩れていくし、光帯がいつ爆発するのか分からないから一分だって急がなくちゃいけない。

 

「はい、立香ちゃん。コレ」

 

「え? わっとっと……。コレって、マシュの盾」

 

「持って行って。キミにはこれが必要だ」

 

「必要って……それはそうだけど、博樹さんは!!」

 

 急がなくちゃいけないというのに、博樹さんは落ち着いた様子でマシュの盾を渡してきて、自分は聖門があるほうじゃなくて玉座のある方角に向かって歩いていく。動揺していて気づかなかったけど、その手にはベリアルさんの宝具『黒き鋼(ギガバトルナイザー)』が握られてる。

 

「やり残したことがあってさ。それをやってからいくよ、だから先に行ってて」

 

「行くならわ、きゃあ!」

 

 私も! そう言おうとしたらまるで狙っているかのように大地が割れ、私と博樹さんのことを分担させられた。

こっちが慌ててるのに、博樹さんのほうはひどく落ち着いた様子で、先にさきにと進んで行ってしまう。

 

『ああまったく! ベリアルがいなくなったというのに勝手やって! 崩壊が近い、君は早くこちらに戻ってくるんだ!!』

 

「フォウフォーウッ!」

 

「~~~~!! わかりました!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 玉座の先の、更に奥。玉座を中心に輪のような形状をしていた神殿の更に奥に設置された離れ小島のような場所。

ベリアルと博樹の2人を、立香たちから分担させるためにわざわざ作り出したその場所に出来た一際高い岩の塊のその天辺に、ソイツはいた。

 

まさか本人自ら赴いてくれるとは思わなかったよ。最後のピース、キミとそのギガバトルナイザーが

 

 天向かって両手を広げ、何かを吸収していた人型のソレは、丁度その吸収を終えたのか恍惚とした表情を浮かべながら博樹のほうにその顔を向ける。

その顔を見た博樹は、怒りを混ぜ込んだおぞましい者を見るような目で見ながら顔をしかめる。

 

「最後の光線を受ける前に逃げた。いや、受けて再生したのか」

 

ご名答! 流石はベリアルの元! マスターと言ったところか

 

 その姿を一言で表すとするならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのが正しいだろう。

腕や脚、ベリアルの身体の全身から魔人柱の目玉が飛びだし、カラータイマーがあった胸の中心には巨大な目玉が存在している。

そして何より注目すべきはその眼だろう。息子であるジード以外に似た特徴を持つものがいない特徴的な鋭い瞳。その瞳の中に魔人柱の目玉が数十もの数入り込んでおり、ギョロギョロと動き回ってその不気味さを加速させている。

 

アトロスノバ、あの光線によって魔神王ゲーティアは完全に消滅し、復活は有り得ないものとなった。……だが! オレは違う!! ウルトラマンベリアルと同じ名を冠するこのオレは! 彼のエネルギーを吸収することで生き永らえることに成功した!! ただ一人!! このオレだけが!!!! 

 

「やっぱり。お前はここを守護していた魔神柱。魔神柱ベリアルなんだな?」

 

 ロマニがベリアルのことを受け入れたことによって生まれた縁。元より同じ名前を冠しているいたこともあって朧気だった糸を確かなモノとした魔人柱ベリアルは、その糸を手繰りよせ、消滅する寸前の所で散りゆくベリアルの力を吸収することで復活を遂げた姿が、博樹の前に現れた化物の正体だった。

 

 

 

もうオレは七十二柱の内の一柱ではない。オレは、オレがベリアルに成り代わる!! 

 

「ッ!!」

 

 ナイザーで防御していなかったら直撃していた。それほどに速く、重い拳が叩きこまれた。

二人の距離は十分にあったはずだが、そんな距離は関係ないと。これがベリアルの力の証明だと、相手は見せつけるように攻撃を繰り出してくる。

 博樹もどうにかナイザーで防御し続けているが、攻撃に手を回せない。

 

ギガバトルナイザー。そしてお前の中に残っているBの(ベリアル)因子を回収し、オレはこの力をより完全なものとする!! 

 

 “魔神ベリアル”これが、彼こそがベリアルが残してしまったもの。

後始末を託された。それ以上に、ベリアルの姿を醜く変貌させたことを怒りを持って、博樹は相手に突っ込んでいった。

 

3分……この領域が完全に崩壊するまでの時間。実に、じつにウルトラマン(オレたち)らしいじゃないかあああ!! 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「限りある命を得て、ようやく理解できた」

 

 人間の精神性を。そう言いながら攻撃を繰り出してくる最後に私の前に立ちはだかった敵『人王ゲーティア』。

その攻撃を、とても重たい盾で防ぎながら私は彼を一発殴るために進んでいく。

 

「違うよゲーティア。貴方もっと前から知ってたんだ」

 

「私が?」

 

「ベリアルさんと対峙したとき、ベリアルさんを止めるために策を講じたとき、勝つために卑怯な手を選んだあの時も! 貴方は“人間”だった!! 恐怖で心が締め付けられそうになったのにも打ち勝って! 負けたくないって足掻きに足掻いた!! それが人間じゃないっていうならなんだっていうの!!」

 

 相手の攻撃を受け止めることが前提の戦い方、守って、守って、守り抜いた先にある一瞬を掴み取る。

怖い、一つでもミスをしたら負けてしまう。この重さを、マシュはずっと背負って戦ってきたんだ。

 

「……そうか、私は既に人間だったのか……知らなかったな」

 

「だからマシュにも、ベリアルさんにも」

 

「……実に、じつに面白いな。人生というのは……なら、最後の勝ちくらいは譲ってもらおうか」

 

 人王の身体は刻一刻と崩れていく。数多くいた魔神も、人理を焼き尽くした火も全て燃え尽きた。

だけど、彼の目だけはまだ燃え尽きてない。『負けたくない』って足掻いて藻掻いて必死に、この一分一秒、一瞬の時間を生きてる。

 だからこそ、私も負けられない!! 

 

「私のこの命は、みんなが繋いでくれた! ()()()が守り通してくれたものだ! 勝ちの証明は! 誰にだって譲らない!!」

 

 カプセルを握った手に、目一杯の力を込めて私は目の前に立ちはだかる馬鹿な人間に向かって歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

ハハハハハハハ!! 弱い! 弱い弱い弱いよわい!! やはりベリアルがいない貴様なんぞ、この程度かあああああ!!! 

 

「ガハッ!!」

 

 魔神ベリアルの拳が博樹の顔面を捉え、宙で戦っていたこともあって地面に向かって叩きつけられる。

直ぐに立ち上がって反撃しようとするが、相手はそれよりも素早く動き博樹の両手を踏みつけて動けないようにする。

 

「ウガアアアアアッ!!」

 

快感だ! 全身の細胞が喜びに満ち溢れている!! これがベリアルの力!! 力だけで全てを支配することが出来る圧倒的な暴力!! 全能だったときは、味わうことが出来なかったことだあああああッッ!!!! 

 

 魔神ベリアルの容赦のない拳は、両手が動かせない博樹の顔面を何度も殴る。

歓喜に満ちた表情、ベリアルの力に酔った魔神はその仰々しい目玉を喜びに震わせる。

 

だがまだだ。まだ足りない!! 本能が叫んでいる!! 力を求めろと、戦いを求めろと! 叩き潰せ! 捻り潰せ! 押し潰せ! 潤わないんだよぉお……この渇きがああああああ!!! 

 

 力を寄越せ。もっと、もっとだ。もっと力を寄越せ。全てを覆すほどの圧倒的な力を。

魔神ベリアルの思考はただそれ一点に染められている。だからこそ博樹を倒し、ギガバトルナイザーを手に入れようと躍起になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────やっぱり、その程度か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なに……? 

 

 博樹の言葉に、魔神の拳が止まった。

 

「程度が知れてるんだよ。渇く? よく言うよ、溺れてるくせにさ」

 

何を……ッ!! 

 

 両腕の動きを封じてることは変わらない、何を言おうがもうお前の負けは変わらない。そう腕を振り上げようとした瞬間、魔神ベリアルは後方に飛び退いた。

考えがあってのことじゃない、身体が勝手に動いた……。

 

『(馬鹿な……この恐怖は、ベリアルの!! アイツから感じ取ったとでもいうのか? 死の恐怖を!! )』

 

「私相手にビビってるんだ。お前があの人に成り代わるなんて、宇宙が崩壊してもありえない!!」

 

 立ち上がり、ナイザーを相手に突き付けながら博樹は宣言する。

お前じゃ無理だ、ベリアルに成り代わるどころか自分にすら勝てないと。

 

「────行くぞギガバトルナイザー。アイツは、僕たちが全身全霊を持ってぶち殺す!!」

 

何を舐めたことを言っているぅうううううう!! 

 

 博樹の瞳が、ベリアルの瞳と同じように赤へと変え、爪を鋭く尖らせて迫ってくる魔神に向かって大地を蹴る。

魔神の爪とナイザーがぶつかり合い、先ほどまでなら博樹が押し負けてしまっていたが、今回は違う。

 

「はああああああああっ!!」

 

グウッ!? (なんだ、先ほどよりも力が増している? 内にあるBの因子を解放させたのか? だが!!)

 

 魔神ベリアルに押し勝ち、そのままナイザーから無数の光球を生み出して相手に放つ。

ナイザーから直接射出するのではなく、宙に光球を漂わせそれを博樹が相手に向かって弾いていく。

射出している時の隙もなくし、身体を守るように振るうことで防御にもなるその攻撃。魔神は押し負けはしたがすぐに態勢を立て直し、自らの手から光球を作り出すことで相殺していく。

 

 次は! そう考えるころにはもう遅い。相殺したエネルギーで見えなくなった景色を切り裂くように鎌状の光線が迫ってくる。

ギリギリの所で避けることに成功するが、魔神を通り過ぎてもその鎌が空間を切り裂く音は消えない。全身に這う目玉たちで背後を確認すると、光線は勢いを衰えさせぬまま旋回し、魔神のことを追撃する。

 

小細工を!! 

 

 正面からも何かが迫ってくる気配を感じ取り、これは逃げるよりも迎え撃つほうが得策と導き出し、両手に赤黒の光輪を生み出し先に鎌の光線を受け止める。

光輪と鎌は相殺したことで起きた衝撃に腕にダメージを喰らうがこの程度なんだと、正面から迫ってくる気配をもう片方の光輪で受け止める。

 

ギガバトルナイザーだと!? 

 

「さっきの仕返しだ。はああああッ!!!」

 

 魔神が受け止めたのは回転して威力をましたナイザーだけ、博樹は絶対にナイザーを手放さないと決めつけていたためそれに驚き、頭上に現れた博樹の拳をモロに喰らい、今度は魔神の方が地面に叩きつけられた。

 

グウッ!? (何故だ、何故アイツはここまでの力を引き出せる。アイツの中に残っているBの因子はほんのわずかのはず!!)

 

 魔神柱だった名残で、魔術を使って衝撃を抑えた魔神だったが、自分と同じかそれ以上に力を引き出してくる博樹に疑問が隠せず動揺する。

魔神が吸収したBの因子がを100とするならば、博樹が生きるためにとベリアルが残していった因子は1あるかどうかだ。それなのに博樹と魔神にそう力の差があるとは思えない。

 

 自らの意思で博樹の手へと戻るナイザーを見ながら、瞳を光らせコチラに歩いてくる。魔神は次はどうすればいい、どんな手で攻めてくるのか、そういう事ばかり考えているから博樹が内に秘めるその熱に気づけない。

 

「これで終わりだ。あの人の姿を、力を侮辱したお前だけは……絶対に許さない!!」

 

終わるものか!! オレはここを出て世界を滅ぼす!! 人類史は滅ぼせない、だが貴様ら守り抜いが今を生きる人類だけは完全に滅ぼす!! 

 

「それが許せないって言ってるんだよ!!」

 

 ガウェインの時は、増大した負の力が博樹のことを呑み込もうとしたが今回は違う。ベリアルの姿を騙り、その力を我が物顔で使う魔神のことが許せなかった。他の何かが入ってくる隙間すらない怒りを静かに爆発させていたからこそ、博樹は呑み込まれない。

 

 きっとベリアルに言ったら否定されてしまうかも知れないが、人類を守り抜いたのは確かにベリアルだ。だからこそ、彼が守り抜いた人類を滅ぼそうとする目の前の魔神を博樹は絶対に許さない。

そんな博樹の怒りに呼応するように、ギガバトルナイザーもエネルギー強く放出させる。

 

「行こうギガバトルナイザー!! お前も認められないもんな!! あんな偽物にも劣る塵!! 一緒に消し去るぞおおおおおおッッ!!!」

 

消えるのは貴様だああああああ!!! 

 

 魔神は両手を十字になるように組み、右手の掌にエネルギーを溜めて必殺光線を放つ準備を始める。

対して博樹は、力強く放出させたナイザーのエネルギーを先端部に集束させるために、大きく円を描くようにナイザーを振り回す。

 

ベ リ ア ル!! ジェノサンダアアアアアアアアアッッッ!!! 

 

デスシウム光線!! 

 

 ナイザーから放たれる稲妻の必殺光線と、魔神の手から放たれる稲妻を纏う光線。

同じような光線のぶつかり合い。競り合い、意志の強いモノが勝つ状況になる。

 

 

────訳がない!! 

 

 

 

はあああああああッ! 消えて、無くなれええええええええ!!!!!! 

 

う、嘘だ! こんなちゃちな結末……オレは! オレッ────

 

 意志も、威力も元から博樹とギガバトルナイザーの方が上回っていた。魔神の放ったデスシウム光線を消滅させながら、その稲妻は魔神本体すらも消し去る。

 

「はあ、はあ、はあ……、これは……?」

 

 魔神が完全に消滅したことに安堵し、ナイザーを支えにしないと倒れてしまいそうな博樹の前に、魔神が吸収していたベリアルの因子が持ち主を求めているかのように彼の前に留まる。

 

 エネルギーの塊は博樹が手を差し出すと、カプセルの形状に変わって手の上に落ちてくる。

 

「怪獣カプセル。この組み合わせって、融合獣の?」

 

 まだ終わってない。戦うための力を渡された博樹はベリアルにそう言われているように思い、今からでは聖門を抜けることすら出来ないことが確定している中で、もしもの可能性に賭けて聖門に向けて重たい足を走らせた。

 

「ごめんさないベリアルさん。やっぱり、ここで終わりみたいだ」

 

 ダ・ヴィンチが言っていたように、光帯の収束が解け超新星爆発にも似た爆発がこの領域を包み込んだ。

 人王の顔に一発叩き込んだ立香はぎりぎりでカルデアへの帰還を成功させたが、博樹は間に合わずにその爆発に包み込まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────たく。最後の最後まで手のかかる奴だなお前は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




魔神ベリアル。
 博樹の前に立ちはだかった最後の敵。この空域に散らばったベリアル因子を吸収することで一命を取り留めることに成功したが、本人が知らないうちにその力に溺れた哀れな存在。
取り込んだ際に流れてきた一部だけの記憶がベリアルの全てだと勘違いし、自らがベリアルに成り代わろうとするも、1しかなくてもそれを100引き出せる博樹と、博樹を担い手と認めベリアルを侮辱したとブチギレしたギガバトルナイザーを前に敗北した。

 人王ゲーティアを2人で倒すのは展開的にも有り得ないと考えていたのでこういう流れに。
最後に博樹の手に渡った怪獣カプセルは1.5部の為の伏線……になればいいなあ……。

宮原博樹
 所持品:ギガバトルナイザー、怪獣カプセル×?個
 ベリアルとの別れ際、彼からギガバトルナイザーを託された。
全ての歴史に繋がっていたソロモンの領域で、アトロシアスとなったベリアルが消滅したことによりあちこちにBの因子(デビルスプリンター)が散らばったしまったためその後始末を任された。

 魔神ベリアル撃破後、複数の怪獣カプセルを手に入れたはいいが、アリスがいないので手元にライザーがないので融合獣にはなれない。

ギガバトルナイザー
 元はギルバリス対策に作り出された武器。バトルナイザーはこれを解析したレイブラッド星人がレイオニクスに合わせて作ったもの。
 真の所有者としてベリアルが認めているため、彼が認めている博樹のことも認めているので武器としての性能発揮は十分で、やろうと思えばモンスロードも出来たりする(100体は無理)。


藤丸立香
 所持品:メビウスのウルトラマンカプセル。マシュの盾、ヴォーパルの剣はライムが座に還ったのと同時に消滅。
ベリアルと最後まで旅を続けたカルデアのマスター。博樹はベリアルのマスターとして認識されているためカルデア代表だと立香のほうが上げられる。
 アトロシアスと同化していた影響なのか、髪の毛先と琥珀色の瞳に紫が入っている。

 メビウスのカプセル自体彼女のリトルスターの結晶なので、ビルドのフルボトルのように起動させた状態で握っていると身体能力が高くなったり……。もしかしたら光の剣出せたりするかも?






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エピローグ

 このぼうけんはだれもしらない

 きらわれものがせかいをすくったものがたり

 でも、おぼえているひとはいる

 いっしょにあるいてきたみんなだけは






 

 

『人間同士の競争と成長、妬みや悔しさを糧とし、“相手より強くなる”特徴を持つ獣だ。災厄の獣キャスパリーグ。違う世界では霊長の殺人者(プライミッツ・マーダー)

 

 ベリアルたちの事を守り抜き、マシュの身体は完全に消滅した。

だが、それでも、マシュの意志は虚無の世界に消えずに漂っていた。

 

 そこに現れたのが、件の獣(フォウ)だった。マシュの事を生き返らせるとともにお別れをいいに来たと。

人の営みを喰らうことで成長する獣。それは逆を言えば人がいなければ脅威にもならない無害な動物でしかないということ。

 

『自由に、本当に美しいものに触れてきなさい』

 

 獣は住んでいた幽閉塔から追い出された。その結果がマシュや立香たちとの出会い、カルデアでの生活だった。

 その恩返しだと、善意の押し売りだといって魔法ですら到達しえない奇蹟を起こす。

【死者の完全な蘇生】をマシュに施し、あと3日もなかった彼女の寿命を人並のものに塗りつぶす奇蹟を起こすと。

 

 そんな二人の前に、光の球体が、彼が現れて形を作っていく。

 

『……キミをたべてしまうと、ボクは瞬く間に怪獣になってしまうからね。だからキミの前には姿を現さなかった』

 

『──ベリ、アル────さん』

 

『────────」

 

 何も言わずに、ベリアルは手を伸ばしマシュの頬に手を添える。

マシュもそのことに何も言わずに、その手に身を任せた。

 

『マシュ。お前はオレの守るべきものだった。そんなお前にオレは守られた、悪かったな守れなくて』

 

『────そんなこと────ずっと、守ってもらってました。────この、大きな手で』

 

 ベリアルが添えた手とは逆の手を取り、頬を包むように彼の手を持っていく。

この手が自分のことを包んでくれていた、この旅の中で守ってくれていた手なんだと伝えるように。

 

『……オレをこうしたのはお前たちだ。博樹、立香、そしてマシュ。貧弱な力しか持ってないお前たちがこのオレを動かした。オレの()に入り込んできやがったから、未来を、運命を変えられた』

 

 彼自身、自分がこれほどまで変わるとは思いもしていなかった。生前手に入れることを完全に放棄した()()というものについて語る博樹に少しだけ興味を持って始めた旅。その旅でここまで大切だと思うものが出来るとは、最も欲したものを手に入れることになるとは思ってもいなかった。

 

『死にかけの身体でしがみついてきた。抗う力も持たずにその手を伸ばしてきた。────恐怖に震えながらも覚悟を示した。そんなお前たちじゃなきゃダメだったんだろうな』

 

 現に、ベリアルの周りに集まってくるのは良し悪しはあったにせよ実力を持つものばかりだった。そんな奴らを守ろうとも思えない、勝手についてきて勝手に死ぬならそれまでという考えしか出来なかった。

だからこそ、マシュたちと出会えたのはベリアルにとっては奇蹟だった。

 

『────わたしたちが────弱かったから、たより、なかったから────』

 

 ────コツン。

申し訳なさそうに俯こうとしたマシュの額に自分の額に優しく当てて、ベリアルはマシュの瞳を真っ直ぐ捉える。

 

『そうだ。その弱さ(強さ)を誇れ、これからも恐怖(覚悟)を背負って歩いて行け。……立香と一緒にな』

 

 誰かの為にその力を発揮させる。マシュの力の源を知っているからこそ、彼女を最初に認めたその瞳を見つめながら伝える。

それでもまだ少しだけ不安そうにするマシュに、最後の後押しとして立香に渡したようにカプセルを渡す。

 

『忘れるなよ? それがお前の選んだ未来。永遠に続く生命の形だ』

 

『────あ。────ベリ、アル────さん────』

 

 カプセルを渡し終えるのと同時に、フォウの準備も完了したようで解放した膨大な魔力の光がマシュの事を包み込む。

対象をマシュだけとしたその波にさらわれ、意識が薄れていく中でベリアルの名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『────()()()()()()()()()()、胸を張って歩いていけ』

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「────ハッ!? ダ・ヴィンチちゃん! 博樹さんは!!」

 

 人の心を知ったゲーティアが消えていくのを見届けて、ギリギリの所でマシュが手を伸ばしてくれたおかげでカルデアに戻ってくることが出来た。

魔力も身体のほうもボロボロで身体全体が悲鳴を上げてるけど、それよりもまず博樹さんだ。

 

「────おはよう、立香ちゃん。うん、筋肉疲労や魔術回路の消耗、死痛の隷属で受けた傷もそう深いものじゃなくてよかった。身体、精神ともに異常はないね」

 

「そんなことより博樹さんは!!」

 

 私が聖門に辿り着いたのも崩壊ギリギリで、博樹さんの姿は終始見えなかった。

博樹さんの安否を確認しようとしても、ダ・ヴィンチちゃんも他の職員のみんなも顔を俯かせたまま動かさない。

 

「……崩壊寸前の所まで、博樹さんの反応はキャッチ出来てた。彼が何者と衝突し、その末に勝利を勝ち取ったことまでね……。だけど……」

 

「くそっ! 戻ってこれなきゃ、意味だろ!!」

 

 職員の一人が、モニターを強く叩きながら涙を流してる。それのせいで、実感したくない真実を受け入れなければならなくなってしまう。

博樹さんは……。

 

「違います」

 

「────マシュ?」

 

 悲しみに打ちひしがれそうだったのを、マシュの声が聞こえてきた。マシュの方を見ると、両手で何かを包み込むようにしながらその瞳は、博樹さんの死を認めていないという強い意志を感じる。

 

「────マシュ。そう思いたい気持ちは私たちも分かってる。だけど、あの特異点は完全に消滅してしまった」

 

「それでも! 違うと、思うんです。 ベリアルさんはいないかも知れませんけど、彼と一緒にいた博樹さんが正攻法で、正面から帰ってくるなんてこと有り得ないと思うんです!! そう、例えば────」

 

 

 

ドンっ!! 

 

 

「いっ、った……! もうすこし……やさしく……! うおぉおおお……」

 

 背後から。マシュが振り向いたのと同時に博樹さんが背中から地面に落ちてきた。

全身ボロボロで受け身を取る余裕すらなかったから、地面に叩きつけられた博樹さんは余りの痛みに呻き声を上げてる。

 私はマシュと顔を見合わせて笑顔になると、手を繋いで一緒に博樹さんの所へ走る。

 

「「博樹さん!!」」

 

「つつつ……ああ、立香ちゃん、マシュちゃん……」

 

「「おかえりなさい!!」」

 

「……ただいま。2人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 空白の1年間。人理焼却に立ち向かっていたカルデアの人々はその時間を経験しているが、外の人間は違う。

目が覚めたら1年経過していた。という謎でしかない現象を世界中の人たち全員が陥っていたのだ。パニック状態になるのは当たり前だ。

 

 事実を唯一しっているカルデアには魔術協会から使節団が送られてくるそうだが、そこが一番ダ・ヴィンチを悩ませるところだった。

 

「いやなに、生き残った二名のマスターが召喚した英霊たちと力を合わせて人理焼却を解決した。とだけ伝えて終わりなら別によかったんだがね? お相手様は地球上のすべての知性活動が停止していたその事実と経緯をお求めときた。 だ~れがウルトラマンが助けてくれましたと報告して信じると思う? 一般人ですら信じやしないってのに相手はお堅い魔術協会の連中と来た! 考えるだけで頭が痛くなってくるよ……」

 

 グランドオーダー開始前からいたダ・ヴィンチを除いて、ベリアルがアトロシアスになる際に吸収したすべての英霊たちは、ベリアルの消滅とともに強制退去されたため誰一人として残っていない。

 世界を救ったからはい終わりとはいかない。その後も世界は周っていく。

 

「フォウ、フォ────ウ!」

 

「吹雪が止んでる……!」

 

 立香とマシュがダ・ヴィンチに頼まれた装置を設置するのにカルデアの外に出ると、そこには一年中吹雪に覆われているカルデアには珍しい日。

吹雪が止み、上空を覆っていた雲も晴れた一面の青空が映し出されていた。

 

「これが────本当の、空。 ベリアルさんが、ベリアルさんと一緒に守った地球!!」

 

「ああ、そっか。マシュは、青空を見たことなかったんだっけ?」

 

「はい。いつか、いつかドクターが言ってました。カルデアの外はいつも吹雪に覆われていますが、ごく稀に空は晴れ、美しい星が見える、と。それを────いつか、わたしが見る日がやってくると、何の確証もないのに、笑いながら」

 

「じゃあ、この青空を、美しい星(地球)を見せてくれたのはドクターとベリアルさん。2人からのプレゼントだ!」

 

「そ、そんな! それでは欲張りすぎです! ドクターからもベリアルさんからも、沢山のものを貰ったのにこの空までなんて……!」

 

「だって、私たちの旅はこれからも続いていく! これからも、いつまでもどこまでも!! ベリアルさんやみんなと取り戻し新しい年に向かって歩いてく!! たっくさん貰ったけど、これも貰ったってばち当たんないよ! でしょぉおおおおドクター!! ベリアルさああああん!!!」

 

「ふふ、あははははは! わたしも、この空を貰ってもいいですかああああ!!!」

 

 

 大声で、一面広がる空に届くように二人で叫びながらベリアルとロマニの2人に感謝を告げる。

一方博樹の方はと言うと、2人以上に身体に受けたダメージが大きすぎるため外に出ることを禁じられたため、窓際から空に向かって叫ぶ2人のことを見ながら、ダ・ヴィンチからこの一回切りだと念押しされて渡された通信機器を操作していた。

 

「……2人とも元気そうでよかった。っと、もしもし? 千愛」

 

『ヒロくん!? よかった、何回電話かけても出ないから心配してt『お母さんソレお父さん!! 変わって! 今すぐ!!』えっ、ちょっと愛!』

 

『お父さん!? お父さんでしょ! そうでしょ! そうなんでしょ! あのねあのね!!』

 

お姉ちゃんぼくも! ぼくもお父さんとはなしたい!! 

 

 世界中がパニックになっていて通話機器もサーバーがパンクしている中でも不調を起こさないダ・ヴィンチ特製の通信機器を使って、博樹は家族の安否を確かめるために妻千愛の電話へと繋げたと思ったら、その携帯を娘の愛が奪い取ったらしく捲し立てるように話しかけてくる。

 小さく聞こえてくる息子の声も聞こえて全員無事だったことを確認できた安堵から涙を流しながら通話を続ける。

 

「ズズッ……。そんなに慌てなくてもちゃんと聞くから、いったん母さんに『慌てたくもなるよ!! だってだって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』…………え?」

 

『家にいるみんなそうだし、お隣さんとか近くにいる人みんな見たって言ってたから嘘じゃないもん! ちょっと目つき悪くてニセウルトラマンぽかったけど私の好みドンピシャ! って感じの銀色の巨人!! もう超々々々々々々々かっこよかったんだから!! でね! そのウルトラマンが目玉の、ガンQとは似ても似つかない気色悪い目玉の怪人と戦って────』

 

(見て、たんだ……。みんな、ベリアルさんの戦いを……)

 

 確証はない。けど、娘の言う特徴からしてアトロシアスに変身したあの時、ベリアルがストルム器官を使って地球に生きる全ての人間たちの小さな意識の欠片を吸収した。声や正確なところまでは覚えていないようだが、消えてしまいそうな小さな意識の中でみんなあの戦いを見ていた。

 

(ああ……ベリアルさん。()()()()()()、貴方は……)

 

 誰の記憶にも残る筈がなかった。他のウルトラマンのように、大々的に怪獣と戦って地球を守っていたわけじゃない。歴史にも残らない世界の片隅で起きた大事件。みんながみんな同じ夢を見たからと言って、夢に出てきたウルトラマンが世界を救ってくれたなんて思いもしない。

 けど、ごくわずかかも知れないけれど、確かに()()()()()()()と実感してる人がいた。

 

『お父さんも見たよね! あのウルトラマンなんて名前なのかな~~!! 円谷の裏設定とか、資料集とかでしか語られなかったウルトラマンとかかな! お父さんなにか知ってる!! …………? お父さん、泣いてる?』

 

「すう~~、はあ~~。お父さんは……ズズッ! そのウルトラマンの名前を知ってるよ」

 

『ええ嘘っ!! お父さんやっぱり知ってるって! ほらお母さんやっぱりお父さんなんだって!! で、何々? なんていう名前なの!!』

 

 きっと伝えたとしても、世間に日の目を浴びることはない。ネットやSNSを使って広めようとしても一般人が考えたオリジナルのウルトラマンの名前として取り扱われて海の中へ沈んでいく。

それでも、せめて家族には名前を憶えてほしいと思った。ずっと一緒に歩いてきた、最強で最高の彼のことを……。

 

「ベリアル。ウルトラマンベリアル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この星の────ウルトラマンだ」

 

 

 

 

 

 

 

 




マシュ
 所持品:ギンガのウルトラカプセル
フォウの力で人並みの寿命を得て生き返った「普通の少女」。
彼女の中ではベリアルと博樹がお父さんのような存在、ロマニは兄、ダ・ヴィンチは姉のように思っている。

 ギャラハッドが謎の沈黙を遂げたためサーヴァントとしての力を行使出来なくなったが、ベリアルから譲り受けたギンガのウルトラカプセルは彼女のリトルスターの結晶であるため、立香同様身体能力の強化は使える。
ギンガセイバーにギンガファイヤーボール、ギンガサンダーボルトにギンガスラッシュやギンガクロスシュートといった数々の技が慣れれば使用できるかも? マシュの性格的にギンガコンフォートが一番相性が良さそう。

フォウ
 ビーストの一体キャスパリーグ。“相手より強くなる”特徴を持つこととベリアルの闇に触れると瞬く間にビースト化するため彼との接触を避けていた。
ウルトラ的に言えば「感情を有した完全生命体イフ」。イフも人類の悪意や攻撃によって凶悪な獣になったが、最後には少女の純粋な心によって無害な存在へと進化した。
霊長の殺人者(プライミッツ・マーダー)ってどれくらいやばいの?が分からないならマックス神回「第三番惑星の奇跡」を見よう。あれがフォウくんだ。

Fate/Grand Order〜Bの因子〜これにて完結です!
約3年、1年くらい更新止まった時もありましたが無事完結することが出来ました!!

ジード本編で消滅、精神だけの存在になったであろうベリアルさんなら、fateの英霊として喚ばれる可能性あるんじゃないのか?という気持ちから始めた今作。
宮原博樹というオリキャラも交えながら、誰に知られるでもなくベリアルさんが【ウルトラマン】になる道のりを書き切れてよかったです!!

FGOは1.5部だったり2部だったりとまだまだ続いていくので、この小説も続きを書くかも知れませんが今の所は未定……と言ったところで。
今のところの構想、妄想の域でしかないですけど
1部がベリアル編だとするのなら
1.5部が融合獣編
2部はジード編になるのかな~~なんて思ってたりします。


それではみなさん、拙ない部分も多かったと思いますが最後までお付き合いいただきありがとうございました!!



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???

 ベリアルの力は、立香たちのいる地球よりも遙か遠くの宇宙にも届くほどの強大なものだった。

 すでにその力は感じなくなったが、もしもがあるかもしれない。
だから、彼は動き出す。


「きたか、()()()

 

 威厳のある声が、ベリアルの息子にして心優しき光の戦士【ウルトラマンジード】のことを呼ぶ。

かつて光の戦士時代の父ベリアルがウルトラの父や母と会話を交わした、光の国が一望できる高台。そこに降り立ったジードのことを迎え入れたのは、宇宙警備隊大隊長にして最高司令官も務める光の国の誰もが憧れ、”ウルトラの父”と呼ばれている()()()()()()()()だった。

 

「ウルトラの父。緊急の用っていうのは……」

 

「ケンと呼んでくれてくれて構わない。彼の息子であるキミにはそちらの名前で呼んでほしい。用と言うのは君も察しがついているだろう。ベリアルのことだ」

 

 “デビルスプリンター”。怪獣を凶暴化させ、宇宙各地に混乱を巻き起こしている因子。その正体はベリアルが宇宙中で暴れ回った際に散らばった細胞の破片。

彼の息子であるジードは自分の手で決着を付けなければいけないという使命を持って宇宙中を回っていた中で彼、ウルトラの父から緊急の要請があった。

 

「…………ここで話すもなんだ。私についてきてくれ」

 

「あっ、はい! (やっぱり、ウルトラの父も父さんのあの力を感じ取ってたて、ことだよね……)」

 

 親友によく似た瞳の形をしたジードに優しく微笑み、光の国を見守るある星を見上げながら、ケンはジードに自分の後ろについてくるように歩き出した。

 

(きっと、キングも感づいてはいるのだろう。だが、あの方にベリアルのことは任せられない……)

 

 

 

 

 

 

 

「────で、ジード。キミはどう思っている?」

 

「どう?」

 

 ケンがジードを連れてきたのは、光の国でも最高峰のセキュリティを誇る自身の家だった。幸いにも妻であるウルトラの母は別の宇宙へ向かっていたため、今はケン以外だれもいないため、彼はジードと話をするために招待したのだ。

 

 光の戦士は基本的に食事をしなくていいのに、豪勢に盛り付けられた食べ物の山があるところを見ると最初からジードのことを連れてくる気満々だったようだが……。

 

「キミも感じ取ったはずだ。闇を捨てずに光を受け入れ、究極へと至ったキミの父の力を」

 

「…………やっぱり、ウルトラのち、ケンさんも気づいていたんですね。父さん、ベリアルのあの力を……」

 

 あの力。光の国があるこの宇宙から遠く、遠く離れた先にある平行宇宙に存在する地球で産声を上げたベリアルの鼓動。自分も感じ取れた力の波をジードもまた感じ取ったと確信していたからこそ、ケンはジードのことを呼んだのだ。

 

「ベリアルとずっと戦い続けてきたゼロにも聞いてはみたが、彼は違和感のようなものを覚えただけだと言っていたが、キミは違うだろう?」

 

「……はい」

 

 この人に隠し事は無理だと悟ったジードは、すべて話すことにした。ウルティメイトファイナルにもよく似たベリアルの究極の力を感じたこと、そして最近になってよく見るようになった夢のことを……。

 

「その夢で、ベリアルは人類の味方をしていたんです。名前や容姿はよく覚えていないんですけど、2人の女の子と自分と同化した男の人と一緒に世界を守るためにいろいろな世界を守る旅をしていたんです……」

 

 世迷言だとわかっている。ベリアルが誰かと、しかも力のない人間の女の子と一緒に世界を守る旅をするなんて有り得ない。絶対にあるはずがない、ベリアルはあの次元の狭間で眠っているんだ。と思っていても、その夢があまりにも現実味を帯びていたから確実に夢なんだという確証が得れなかった。

 

 そんな時に感じたのがあの力だ。闇の力しか振るわない、振るえなくなったはずのベリアルがどういう訳か光の力も使って誰かを守るために力を使っているのを感じ取ってしまったのだ。夢が現実だったんだと思うには余りにもタイミングが良すぎた。

 

「そうか。キミはそこまで感じ取れていたのか……」

 

 自分では感じ取れなかったベリアルのことを話すジードにほんの少しの羨ましさを感じながらも、何か納得したように頷いたケンは、テーブルに()()()()()()()を置いた。

 

「え? これって……ゼロ? それにこれは……?」

 

()()()()()()()()()() ()()()()()()、そして()()()()()()()()()のカプセルだ。どちらも伝説のウルトラマンであるノアの力を持っているカプセルだ。ヒカリに作ってもらったこれを、どうかキミに受け取ってほしい」

 

 元々ウルトラカプセルは、ヒカリがベリアルの猛威に対抗するために光の戦士が使用できるように作り出したものであるため、ケンが持っていることに不思議はないが、今は二つの力をリードさせて強化させるジードライザーの上位互換ともいえる、3つのメダルを使用して使用者を強化変身させるゼットライザーが開発されたため、カプセルの開発は中止になっていたはずだ。 それをケンはわざわざヒカリに頼んででもこの2つのカプセルを作らせたのだという。

 

「キミがいうその地球、宇宙に行く途中に大きな壁のようなものが存在する。キミの乗る宇宙船ではその壁を突破することは不可能だ」

 

 ジードがやってくる前に、ケンは既に調べていた。光の戦士が向かおうにも遠く離れたその宇宙はどこにあるのか。結論だけ言えばその宇宙は見つからなかったが、光の国で観測出来ている平行宇宙より先には壁のようなものが存在しているという調べがついていた。 

 

「この2つの力を使ったキミでならその壁を突破することが出来るはずだ」

 

「え? て、いうことは……」

 

「ああ、向かってほしい。行って、確かめてきてほしいんだ。本当にベリアルが光を知ったのか、受け入れることができたのかを……」

 

 復活していたら倒せじゃない。ただ見てきてほしいとケンはジードに託した。

ベリアルのことを誰よりも知っている彼なら、彼の力を感じ取って必ずやその宇宙に辿り着くことが出来ると信じて。

 

 ジードは少し迷いながらも、ケンから渡されたそのカプセルを握りしめると、彼の事をじっと見つめる。

 

「分かりました。行って、確かめてきます! ……父さんの真意を!!」

 

「ああ、任せた。若きウルトラマンにして、ベリアルの息子であるキミに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしっ!!」

 

「帰ってくるなりどうしたのリク。いっつも本なんて読まないのに……」

 

「いいだろ別に、これから向かうところは昔の偉人や英雄が活躍してるはずなんだ。少しでも頭に入れておいたほうがいいと思ってさ」

 

「ふ~ん……。あっ、ペガこの人知ってるよ! ()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()か……。確かに! 剣を使うところとかライハに似てるね! 性格もライハみたいに怖かったりしたのかなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅん!! すすっ、う~んこれは誰かが私の噂話をしてるのかしら? まっそれよりも今は目の前のうどんよね~♪ いったっだっきま~すっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




朝倉リク
 みんな大好きウルトラマンジード。時系列的にはZが終わった後くらい(ギャラクシーファイトで出番があるならそれが終わった後)。
ベリアルのカルデアでの旅を夢で追体験するように見るようになり、アトロシアス完全体の力を誰よりも感じ取った。その調査のため立香たちのいる宇宙、地球へと向かう。

 カルデアでの旅を見ていたが、いつも目が覚めると立香たちの名前や容姿は忘れてしまい。女の子が2人いたとかそれくらいしか覚えていない。

ウルトラマンケン
 自分の息子や孫よりも親友の息子に甘い宇宙警備隊大隊長。
ベリアルの力を感じ取れた一人であり、その調査をジードに任せるために2本のカプセルをヒカリに作らせた張本人。

 キングのことは心から尊敬しているが、ベリアルに対しての行いだけは余り受け入れられていなかったりする。(監獄に会いに行こうにも拒否されたりといろいろ)



おい!昨日完結したって言ってたろバカ!!なに続編一文字だって出来てないくせにこんなの書いてんだ!!

すいません許してください。でもこれだけは、期待させてしまうかも知れませんがこれだけはどうか……。


一体最後に出てきた女の人は誰なんだろう?





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Unleash of Remnant
プロローグ


どうすれば!!どうすればモルガン陛下を救えるんだよおおおおお!!
バー、妖精トリスタンも救いたい。出来ることならウッドワスだって救ってやりたい!!どうすれば、どうすればいいんだよおおおおおおおおお!!!


たくさん、たくさんまちがいつづけたやみの巨人は、てをつないでくれた小人と、いっしょに歩いてくれたおんなのこたちのおかげでそらをほしでいっぱいにできました。

 

「どうしてじゃまをするの? ぼくはみんなのためにやってるのに!」

 

そういってたくさんの小人をほのおでもやしつくしたせかいをよくしようとするけものに、やみの巨人はいいました

 

「おれはわるい巨人だから、おまえが悪いっていった小人をまもるんだ!」

 

巨人はみんなでつくったほしの空をひとのみでたべて、その力でけものにたちむかいました。

 

ほしの空は小人のひかり。まっくらだったやみの巨人は、小人たちのおかげでほしの巨人へと生まれ変わったのです。

 

「どうして? 小人たちをしあわせにするためにやってるのに! どうしてきみたち小人が巨人のひかりになるの?」

 

 けものは小人たちのことをあいしているけど、小人たちのこころはしりません。いきたい、いきたいのことばをきけなかったからけものは巨人と小人たちにたおされるのです。

 

こうして、せかいじゅうのひとをたすけたやみの巨人は、みんなからきらわれていた巨人は、このほしの巨人になることができました。めでたしめでたし…………。

 

 

ほんとうなら、こんなハッピーエンドでおわるよていだったのよ? 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 魔神王ゲーティアの人類史全てを使った計画「逆行運河/創生光年」は、カルデアの尽力に失敗に終わった。ということになっている。

 

 空想上の存在、別宇宙からの来訪者であるウルトラマン。しかもその中でも”悪”と呼ぶに相応しい存在だったベリアルが、瀕死の重体を負った予備のマスター候補だった宮原博樹と同化して世界を救った。等と報告をしたところで魔術教会の誰一人として信じないことは明白だからだ。

 

 ベリアルと旅をしてきたもう一人のマスター候補だった藤丸立香も、そんな彼女と特異点を歩いてきたマシュ・キリエライトも、カルデアの職員誰もが猛反対したが

 

「知っている人だけ、覚えている人がいるだけでいいんだ。結果的に世界を救っただけで、ベリアルさんは世界を救おうなんて思ってなかったんだしさ」

 

 と、いうベリアルのマスターだった博樹の鶴の一声で大人しくなってくれたため、魔術教会には「生き残った2人のマスターとその協力者たちの尽力により、人理を取り戻した」ということになっている。

 

成し遂げた試練、勝ち取った日常。人理は揺るぎなく、未来はこの先も続くだろう。

 

 だが、彼らには致命的な見落としがあった────いや、もしかすると、ベリアルは知っていながらわざと見落としたのかも知れない。

 

 大いなる戦いの前のその予兆、4篇の断章も彼は予期していた上で消滅した。彼が”守るべきもの”とした彼ら彼女らに強くなってもらうために……。

 

 

例えば……それは”虚構”からの企て

完全犯罪計画、起動——幻霊よ、背徳の街で踊り狂え。

 

 

 

歪んだ歴史を修正しようとする時、膨大な取りこぼしが発生する。

排斥された狂気が作り上げた脚本。

忘れ去られた世紀末の神話。

かつてない規模の殺人事件が、亜種特異点となって完成する。

 

 

それだけならまだ可愛いものだ。だが、問題はそれだけではない。

本来ならば存在しないはずだった者。その存在の消滅は、全ての時間、空間に影響を及ぼす強大な物となって姿を現す。

 

 

それが何か? ……君たちはそれをよく知っているはずだ。

遥かな宇宙からの来訪者。文明を滅ぼす最悪の獣たち……。

 

 人類愛から産まれた人類悪。災厄の獣たちとは根本から違う。

彼らは災害、突如として人間たちの前に姿を現し、意味もなくその日常を破壊していく空想の存在。

 

 ”怪獣”────そう呼ばれるものたちが、彼が残した因子に引かれてこの地球に飛来する。

 

 しかし、安心してほしい。怪獣に対抗する力は、彼から既に渡されている。

目には目を歯には歯を、とはよく言ったものだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、大きすぎる力にはそれ相応の対価を支払わなければならないことも、忘れてはいけないがね…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fate/Grand Order〜Bの因子〜

 

【Unleash of Remnant】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

し、死にたくない……。死にたくない……。

 

 

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

死にたくない……。

 

 

い、生き続けて、いたい……。生き続けていたい……。

 

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

生き続けていたい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見つけた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落下する少女を救う。それはまさに少年の役割であり、即ち大抵はここから始まる恋と希望の物語(ボーイ・ミーツ・ガール)!」

 

 地上に向かって身一つで落下していくGを感じながら聞こえてくる、いかにも胡散臭そうな声。

 

人理焼却を目論んだ魔神王ゲーティアの計画を阻止してから数か月。魔術協会からの使者たちが着いていない状況でまた、カルデアスは特異点の発生をキャッチした。

微小特異点はこれまでも何度か発生してたからまたそれかな~なんて考えていたけど今回はそうじゃない。オルレアン、ローマ、オケアノス、ロンドン、アメリカ、キャメロット、そしてバビロニア。

 

 ゲーティアが人理焼却の為に作り出した7つの特異点と同レベルのものが観測されたのだという。

本来ありえないことだけど、実際に起こってしまったからには修復しないと折角ベリアルさんやサーヴァントのみんなが救ってくれた人理を崩壊させることに繋がってしまう。

 

 だがら、もう一人のマスターである博樹さんと一緒に問題の特異点【1999年東京・新宿】にレイシフトしてきたんだけど……。

あの戦いのあとからサーヴァントとしての力を引き出すことが出来なくなったマシュはカルデアに残って私のバックアップを、そして人理修復後も居残ってくれたサーヴァントを連れてきたはずが、何かの干渉を受けて弾き飛ばされちゃったみたい。

 

「あの~だね? なにか反応してくれないとおじさんの方も困ちゃうんだけどな~~、なんて」

 

「博樹さんが近くにいないのはいつものことだからいいとして、いやよくはないけど……。問題は着いてくるはずだったサーヴァントのみんながいないことだよね……。博樹さんはそのままでも戦えるけど私は出来て時間を稼いで逃げることぐらいだし……ブツブツブツブツ

 

「も、もしも~し?」

 

『せ、先輩。先輩っ!!』

 

「あっ、マシュ。どうしたの?」

 

『あ、あの、先輩のことを助けてくださったサーヴァントの方に、そろそろ挨拶をしたほうがいいのでは……』

 

「え?」

 

 色々考え事してたせいで周りを見てなかったけど、そういえば落ちてたはずなのにいつの間にから誰かに抱き上げられてるような……。

 

「おじさんだれ!?」

 

「流石に傷つくヨ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 これが、藤丸立香とこの特異点のカギを握るサーヴァント【新宿のアーチャー】との邂逅。

特級の悪人だけが蟲毒のように生み出され続ける、悪徒しか生き残ることを許されない悪都。

魔術を凶器にしか見立てない魔術使い、生きた人間しか餌とみない魔獣、徘徊する殺人人形、力で支配する軍隊もどき。

外界は巨大な壁によって隔絶され、希望を持つ善人は暴力と疑心と不信の前に死に絶える。

 

【隔絶魔境新宿】

 

そんな世紀末も甚だしい場所で、立香とは別の場所にレイシフトした宮原博樹はというと……

 

 

 

「Grrrrr……」

 

「…………はははは、初めまして。その、仲良くできたりは……」

 

「GAAAAAAAAAAッッ!!!」

 

 

 悪が集うこの町の中でも、一際凶悪で強大な相手と対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 




と、いうことで1.5部始めます。
まだ心がアヴァロン・ルフェから帰ってこれていないのですぐには投稿開始はできませんけどね!!これもそれも妖精どもが悪い!!

以前も話した通り1.5部は「ベリアル融合獣編」ということで多分ですけど全章に怪獣が出てくると思います(下総はどうなるかわかりませんけど)

どの怪獣が出るのか楽しみにお待ち下さいな。


どうでもいい話ではあるんですが、ベリルがマシュを狙っていたのはデミ鯖という特殊な存在だからうんぬんかんぬんだと思っていて、だったらアイツ陛下の血を完全に受け継いで、正義に目覚めたジードとか絶対狙ってくるんじゃね?みたいな妄想してたんですよ。そうだったら絶対楽しいだろうなって思って……。

それが蓋開けてみたらあれですよ、あのクソ雑魚マスターめ。



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悪性隔絶魔境新宿~遺産~
1


今回のサブタイトルで作者が何したいかピンときた読者は多分変態。どうもちょっつーです

今章からある理由によって地の文のほうが少し変に感じるように書いています。決して間違いではないのでそこに関してはご理解いただければと……。

感想、評価お待ちしてます。
見直すは見直すのですが間違いに気づけないだめ作者なので誤字脱字があったら報告いただけると…………あなたのカルデアにモルガン陛下が!! 






まあまあまあ、なんてことでしょう。

 

さいしょにであってしまったのね。

 

さいしょだからであってしまったのかしら? 

 

そうね、おじさまはきっとそういうほしのめぐりあわせをしているんだわ。

 

でもね? きをつけてないといけないわ。

 

たすけようとしてはいけないわ。

 

すくおうとしてはいけないわ。

 

そのこのてをにぎるのは、だれであろうとふかのうよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいかい博樹くん。よく聞いてくれ』

 

 時間神殿での戦闘は人類史側、カルデアの勝利となり、カルデア内部も落ち着きを取り戻した状況で聞かされた今現在の私の容体。

ウルトラマンベリアルと同化していなければ生命維持すらままならない状態であったこの身体は、ベリアルが去り際にこの身体に残していった【Bの因子】の力によって保つ、否、強化された。

 

『この人理修復に旅の中で君とベリアルがずっと同化していた。それに加えて巨人化、果てには怪獣化までして見せた。そんなキミの身体が可笑しくならないわけがない』

 

 私の血、骨、肉、果てはDNAの一片まで溶け込んだ因子は、この身体を常人からかけ離れたものへと強化させた。

因子はギガバトルナイザーがキーとして起動し、ただの人間を一瞬でサーヴァント相手でも善戦出来てしまうレベルまで引き上げてしまう。

 

『健康になったからと言って油断してはいけない。元々、ベリアルの使っていた力は負の方面にベクトルを向いていたんだ、使いすぎてどこか異常をきたしてしまう不安は多いにある』

 

 ダ・ヴィンチや他の者たちの意見は最もで、時間神殿の崩壊の影響かこれまで何度か微小特異点が確認されたが、そのどれもに私の参加は認められなかった。

ベリアル以外で本契約していたナーサリー・ライムが座に還ってしまったことは勿論だが、私の性格上絶対にベリアルの力を使用するという信頼からレイシフトを認められることはなかった。

他の者たちの心配は理解出来たため不満はなかったが、今回は話が違ってくる。

 

『ベリアル!? ベリアルの反応です! 特異点からベリアルの反応をキャッチしました!!』

 

『ベリアルさんの!?』

 

 新たに出現した新宿の特異点。その場所でベリアルの反応が検出された。確認された反応からベリアル本人ではないことは確かだが、私はそれを聞いてあの時ベリアルが言っていた言葉を思い出していた。

 

(ベリアルさんが言ってた“後始末”ってこのことだったのか?)

 

 『強大すぎる力は、その大元が消滅しても多大な影響を及ぼす。その後始末、任せるぜ』そう言って、私にギガバトルナイザーを託し消滅したベリアル。

あの時はウルトラマンベリアルに成り代わろうとした愚者、魔神柱ベリアルのことだと思っていた。

 

 けれど、あの者を倒した後も手元に残り続けるギガバトルナイザーの存在のこともあり、それは間違いだったと気付かされた。ベリアルはこの事態すら予測していたのだ。未来を見通す目を持っている訳ではないのにここまで見通していたことに恐怖を超えて畏敬の念すら覚える。

 

『行きます、行かせてください! ベリアルさんの力が悪用されているならそれを止める。この力を託されたのはそのためだと思うんです!』

 

『……仕方がない。ベリアルのこと、そしてウルトラマン関係について誰よりも知識を持っているのはキミだ。今回の特異点攻略への参加を認めよう。

ただしだ、君は立香ちゃんと違い契約したサーヴァントが1騎もいない状況。個人の戦闘を極力避けるためにも立香ちゃんと行動を共にするように』

 

 藤丸立香は100を超える英霊たちと契約を交わして、時間神殿での戦いの後もカルデアに残ったサーヴァントたちがいるため彼らの力を借りることが出来る。それに反して私はナーサリー・ライムがいないため自分の身を守るにはベリアルの力を使わなければいけない。必ず使わなければいけない場面は訪れるが、それ以外では極力使わないために出されたのが藤丸立香との同行だった。

 

『やっっっっと分かった!! 毎度毎度レイシフト先が不安定だったのはベリアルの所為だと思い込んでいたが博樹くん君本人の問題だな!!』

 

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!! どうすればいいんですか、この相手!!」

 

 その誓約はレイシフトしてすぐに破られる事になった。私のレイシフト適正は藤丸の100%と比べると低いため、レイシフト時に問題が生じてしまう。

今まではベリアルの存在によって不安定だと思われていたのが間違いであったことがここで判明した。

 そんな私がレイシフトした先に遭遇したのは、3mは優に超えているであろう巨大な狼と、その狼の背に跨る首無しの騎士。

新たに出現した特異点を修復するためにレイシフトを行い辿り着いたのは、その巨大な狼が()()をしている目の前だった。

 

「GAAAAAAAAA!!」

 

 狼は私の事を認識すると、牙を突きつけ噛み殺した男性を投げ捨て、声を上げながらなりふり構わず襲いかかってきた。

絶対に逃がさないという殺気と、狩りの邪魔をされて機嫌が悪いのか強い“憎しみ”を向けて襲いかかってくる相手に対抗するために、こちらもギガバトルナイザーを呼び出しベリアルの力を目覚めさせる。

 

「ス──はあっ!!」

 

魔術師が魔術回路の路を開くのに似た感覚で解放されたベリアルの因子は、私の爪先から髪の毛の一本に至るまで満たすと、先ほどまで捉えられなかった狼の動き今度は捉えることが出来る。

力を目覚めさせたと言うのに相手を完全には捉えることが出来ていないということは、相手の速度が相当なものであることを意味している。

 

(だけど、反応出来ないほどじゃない!! 来たッ!!)

 

「GAAAAAAA!!!!」

 

 建ち並ぶ建造物を足場に、爪を立てながらコチラに飛び掛かってくる狼に合わせてギガバトルナイザーを振るい、向かってきた前足と衝突する。

 

「ッ……重い……!!」

 

『うおっ! 何だコレ、霊基の反応が変だ! アイツ、1体のサーヴァントのくせに2体分の霊基反応が確認できる! なんだこれ? システムのバグかなんかか!?』

 

 狼の前足を受け止めることは出来た。だが、巨体通りいやそれ以上の怪力に圧し潰されそうで身動きが取れなくなってしまう。

通信機から相手の情報が聞こえてくるが、今はそちらに意識を裂く暇は……2()()()()? 

 

『…………』

 

「────!! だぁあああ!!!」

 

「GUッ!!?」

 

 狼の上に跨っていた首無しの騎士。気づいたころにはヤツがコチラに向けて騎乗時でも扱えるように長く作られた先端が鉤爪状に湾曲している剣を振り落として来ていた。

回避を優先した結果。私は肩が傷つくのを覚悟の上で、狼の前足を受け止めているギガバトルナイザーを一瞬で消し、相手の懐へと飛び込んだ。

 

 その時右肩に爪の一本が深く差し込んできたが、痛みに思考を回すくらいならばと右手による全力の拳を狼の腹に直撃させることに成功させた。

だがしかし、このまま続けていては敗北するのは明らか。それを理解した私は再度ギガバトルナイザーをその手に持つと先ほどの一撃で身体を宙に浮かせた狼に向かって容赦なく光弾を叩きこむ。

 

「はああああッ!! 吹き、飛べええええ!!!!」

 

────身動きの取れない空中。腹部に攻撃を喰らい思考に一瞬の揺らぎが出来たその一瞬に叩きこまれた一撃は普通ならば成功する。そう、普通ならば……

 

「Grrrrrrr……!!」

 

「なんだあれ、マントから剣みたいなのが伸びてる……」

 

 直撃する寸前、首無しの騎士の外套が伸縮した鋭利な刃物のようなものに変わり、それを建造物に突き刺すことで自身と狼の起動を強引に変え、こちらの攻撃を避けて見せた。

先ほどのように建造物を足場にした狼は、私のことを”嚙み殺す弱者”から”脅威ある獲物”へと変えたのか、一踏みで足場にした建造物を破壊するほどの力を込めてコチラを狙ってきた。

 

『────ずい!! ──ろ、ひ────ん!!』

 

 まず、伸縮自在の外套が私の事を捉えようと向かってくる。それを何とか捌きながら地面に光弾を放ち相手の視界を遮らせていくが、あちらの方が上手だった。

槍のように鋭く尖った外套は狼の牙が深く刺さり脳からの信号が届くのが遅くなってしまっている右腕に狙いを定め、私の腕を貫いてきた。

 

「ぐぅあああああッ!!」

 

『…………』

 

 右腕を封じられた後は速い。2本、3本、4本と枝分かれのように増えた騎士の外套は私の四肢を貫いて身動きが取れない状況を作り出す。

すると、捕えたぞと言わんばかりにその口に騎士が持っていた剣を加えた狼が自身が最大加速に到達できる最短の地点で唸り声を上げていた、『狩りはこれで終わりだ』と言うように……

 

 四肢は封じられ、カルデアとの連絡を取る通信機は壊れ増援を頼ることは出来ない。このまま狼の最大スピードで振るわれた剣によって首を斬られて死んでしまう。

死ぬ……? 嫌だ、嫌だイヤだイヤだイヤだ!! 何か方法はないのか、この状況を打開できる何かが! きっとある筈だ、生きるためにそれを探さなくては!! 

 

「Ahooooooo!!!!!!」

 

「クッ…………! (()()を使えば、この状況を切り拓けるかも知れない。けど、コレを使った後の危険性とそれを制御する役割を持つベリアライザーもないのに迂闊には使えない……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャンキャンキャンと、うっさいのよこの犬っころ」

 

『GUッ!?』

 

 強運、命運、ウルトラマンベリアルをその身に宿し、人理焼却事件を解決に導いた者の持つ運命力というものが引き寄せたのか? 

コチラに駆けだそうとしていた狼の眼前に突如として()()が舞い上がりその行く手を阻んだ。その炎の主の声が聞こえた方に顔を向けると、私と狼との距離の間にある建造物の上そのサーヴァントはいた。

 

「たく……。こんな訳も分からない所に飛ばされて、漸く会えた顔見知りがマスターちゃんじゃなくてアンタとか……。ホント、ツイてないわね私は……」

 

「ジャンヌ、ちゃん……」

 

 そこに立っていたのは救国の聖女ジャンヌ・ダルクの贋作者。キャスタージル・ド・レェが聖女をないがしろにした国と人類への復讐を刻み込まれ聖杯によって作り上げられた『贋作』のサーヴァント。

ベリアルによって特異点となる聖杯を自らの物とし、藤丸立香と契約したことで復讐者(アヴェンシャー)クラスとして最後まで人理修復の手助けした彼女が、カルデアに残らず、いくら立香が呼ぼうとも反応がなかった彼女が、どういう訳かこの新宿の地に降り立っていた。

 

「これも縁ってヤツなんでしょうね。ベリアルがいなくなって雑魚になったアンタのこと、助けてあげなくもないわ」

 

 ジャンヌ・オルタはそう言うと自らが立っていた建造物がコチラの立つ道路に向かって倒れてきた。

私の方もそうだが、狼たちもこれは想定していなかったのか反応することが出来ず、建造物は私と狼を分断させるように落ちてくれた。

 そのお陰で首無しの騎士の外套も抜けて自由になったが、さすがに四肢を貫かれてまともに立っていられるわけはなく、倒れてしま……

 

「とっ、派手にやられたわねえ。アイツがアンタん中にいた時じゃ絶対に見られないものだったから何だか気分がイイわ!」

 

「……ごめん、ジャンヌちゃん……」

 

「フンッ、無駄に意識があると持っていくこっちも疲れますからアンタはさっさと寝てなさい」

 

────こうして、予期していなかったがこの特異点での最初の戦闘は敗北に終わった。

ジャンヌ・オルタが助けに入ってくれなければ完全に死んでいた戦い。()()()()()()()()()を邪魔された狼は怒りからか遠吠えを上げ続けているが、そんなことに構っていられないとジャンヌ・オルタは私の事を担いでこの場所を後にした。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




来るとは言ってない。


【Bの因子】
ゼットで言及されているデビルスプリンターそのもの。このfate宇宙にはウルトラマンが存在したことがなかった、そもそもデビルスプリンターが届くほどの距離になかったため今までその影響を受けてこなかったが、時間神殿での決戦でベリアルが消滅した際にこの地球に拡散されてしまった。

 時間神殿が全ての時間軸と繋がっていたため亜種特異点でもその因子が確認されている。

【メインサーヴァント】
立香ちゃんの場合は
マシュ(出撃不可)
モードレッド(?)
アステリオス(?)
ジャンヌ・オルタ(新宿)
??????(???)
と言った感じで何故だかカルデアに残らずにジャンヌに関しては新宿に飛ばされていた。このことについては話が進むにつれて。

博樹のメインサーヴァントであるナーサリー・ライムも現在不在中。



Twitterとかよりも何故だかハーメルンの活動報告の方で呟いてたりするんでそちらも見ていただいたらと……


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2

 お久しぶりです。青眼ベリアルという大爆弾がダクヒ漫画(つまり円谷公式)で出されたので更新します。
 
 ひゃっほい!ベリアルさんに光成分が入ると瞳がジードと同じになる。つまり時間神殿でのアトロシアス(青眼)は間違いじゃなかった!!

 感想、評価お待ちしてます。


 

 

 

 

 

 そこは、ギルバリスによって滅ぼされ、生命の気配一つすら感じることが出来なくなった哀しき惑星、クシアとよく似ていた。

 

 高層ビルや家は廃墟となり、一向に勢いが収まることを知らない、決して消えることのない炎が街を、都市を、いいや星全体を燃やし続けている。

 

『フ、フハハハハハハッ!! なんだコレは!? こんなことがこの星で起きてやがるのか!?』

 

 この光景を見て最初に発した声は、笑い声だった。何も出来ずに滅んでしまった人類を嘲笑うものではなく、この崩壊を前にして救いにきた痕跡すら見えない存在たちを笑っている。

 

『いくら同じ星でも、存在すら知らないなら救いの手すら伸ばせない……いや、伸ばさない』

 

 宇宙は無数に存在していて、その一つ一つの宇宙にはそれぞれの地球がある。湊家のみんなのいる地球、ヒロユキさんのいる地球、ハルキさんやストレイジのみなさんがいる地球、そして僕が生まれ育った地球。

 

 僕が見てきた地球にはたまたまウルトラマンがいて、地球を守っていたけどこの地球は違う。抗うことすら出来ず滅びてしまった。

 

『これをひっくり返す。あんな所で眠ってるよりかは楽しめそうだな』

 

 何かを感じ取ったのか、その身体を馴染ませるためなのか大地を蹴り上げ高く飛び上がる。

 

(あれは……?)

 

 この目には最初からこれが映ってたんだ。街全体を見下ろせるほど高く飛びあったことで僕の視界にも燃え上がる炎以外のものを見つけることが出来た。

 

────光だ。

 

 太陽のようなみんなを照らす明るさもなければ、暗闇の中でも煌々と輝く月や星のような優しさを帯びた光でもない。前が見えなくなるほどの強い嵐の中でも輝く道標となる輝きも持ち合わせていない、今にも消えそうで弱々しい()()()()()()()()()()

 

『この星に残された最後の希望があれ、か……。おもしえれぇじゃねえか』

 

 きっと、その弱々しさが良かったんだ。身体を傷つける光でもない、自分の前に立つ壁のような光でもない。何色にでもなれる、その可能性(危険性)を孕んだ光だったから、興味を持った。

 

 

(ジード)にならなかったら……、(ゼロ)を知らなかったら……僕も最初からその手を掴めたのかな……? 

無知だったからこそ、恐れなく貴方の手を……握ることが出来たのかな……。

 

『あの、貴方は何て言う英霊……なんですか? 』

 

『…………べリアル。 オレの名はべリアルだ。 貴様らに力を貸すかどうかは…………そうだな、このオレの興味を引かせることができたその時にでも、考えてやる 』

 

 

 ねえ、父さん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうして止めるの! 早くしないと博樹さんが!!」

 

 行ってはいけない。上空1000Mの地点にレイシフトしてしまった私のことを助けてくれた正体不明のサーヴァント、自分のことを【新宿のアーチャー】と名乗り、私たちの味方をしてくれることになった彼だけど。

同じくレイシフトの不具合によって敵サーヴァントと交戦しなければならない状況になってしまった博樹さんのことを助けに向かおうと伝えると、アーチャーはそう言ってきた。

 

「いいかい? この街には絶対の不文律がある。【獣の声が聞こえたら何をおいても逃げろ】 通信と照らし合わせてみても、もう一人のマスターが今戦闘を行っているのはその獣なんだヨ」

 

「────博樹さんのことを、見捨てろ……っていうこと?」

 

「それがこの街で生き抜くということサ。 確かに見捨てるという非常に酷なことを強いているのは分かっている。それにね────」

 

「た、たすけてくれーーーー!!! 

 

「コチラもコチラで、対処しなければいけないことがあるからネ」

 

────どうか、どうか無事ていてください。博樹さん!! 

 

 

 

 

 

 

 

「両者ともレイシフトの座標をクラッキングし、片一方は落下するように調整、連れてきたサーヴァントを弾いても1000M以上の上空から落ちても死なない。もう片方にはライダーと交戦するように仕向けたというのに殺すことが叶わなかった。流石は人理を修復したものたちと言うべきか」

 

「個人的にはもうさっさと潰しちゃえばいいんじゃないのーって気はするけど! するの? やるの? だったら俺ァやりますよ!」

 

 新宿の特異点のその中心に聳え立つ巨大な塔のような建造物。その内部で、この特異点でカルデアの敵となるものたちが立香と博樹の二人をどうするのか今後についての話をしていた。

 

「ま、バーサーカーは女の方を、もう一人のアーチャーは男のほうを狙いにいっちまったから俺の出番はお預けになっちまったけどね。けどライダーにアーチャー、少しばかり戦えるだけの男に2騎も差し向けるものか?」

 

「あれは、いやあれが()()()()()()そのものがイレギュラーだからね。3000年の末に見出したこの計画。あれ一人に覆されてはたまらないさ」

 

「そこまでなのか。へへっ、なら俺が殺したかったな〜その男」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここは……』

 

 気がつくと、私は辺り一面真っ暗な空間に立っていた。

身体に傷がないこと、そして覚えのある感覚からここが精神の世界だと分かった私は、目的地があるわけでも道標があるわけでもない暗闇の中を歩いていくことにした。

 

 

『…………やっぱり、食べないか?』

 

『ああ、何日もずっとあのままだ。このままじゃ本当に餓死しちまう』

 

 しばらくすると、黒塗りの男性だとおぼしき人たちが何やら話し合っている場所へとついた。

 

『けどアイツ。今にも死にそうだっていうのにそんな姿見せようともしないんだ』

 

『俺たちと分かり合う気はないってことなんだろうな……』

 

 こちらから話しかけても気づく様子もない。どうすればいいのかと頭を悩ませているとパッ! と、少し離れた場所がまるでスポットライトに当てられたようにその部分だけ明るくなった。 

誘導されてる? まるで光に引き寄せられる虫みたいだな〜なんて考えながらその光のほうへと歩いていくと、一匹の狼がそこにはいた。

 

『…………』

 

『捕まってしまったのか? 可哀想に……』

 

その哀れみが、彼の獣をそうさせた

 

『!?』

 

 檻の中に捕えられている狼に手を差し伸べようとしたその瞬間。地を這うように重く、暗い声が頭の中で響き渡った。

後ろを振り返っても何処を見ても声の主を確認することは出来ない。けど確かに声は聞こえてきた……。

 

怒り、憎しみ、復讐の心を持って捕えたというのに、人間は彼の獣を自らの道具として扱おうとした

 

 ────ッ! また、聞こえてきた。道具……? さっき話していた人たちはこの狼のことを使()()()()に生かそうとしていたってことか? 

 でも、この声の言っていることが本当なのだとしたら、この狼は人間に怨まれるそれだけのことをしたってことなんだろうか……? 

 

ただ生きるため。群れの長としての責務を果たすため。狩猟本能を抑えるための狩りはしたが、人間そのものに危害を加えてはいない

 

 声は響き続ける。なぜだか分からないけれどこの声は目の前の狼のことを伝えてくるのが分かった私は、響いてくる声に頭を抑えながら狼へと近寄っていく。

 

『…………』

 

『……カッコいいなあ』

 

 話を聞く限り、この狼は餓死寸前だというのに弱い所なんて見せず、凛とした佇まいを続けるその姿を見て、素直に思ったその言葉を口にする。

だけど、弱さを見せないその強い瞳の奥に燃える炎に、私は見覚えがあった。それは相手が憎くて憎くて仕方がない、殺したくて仕方がない復讐の炎だ。

 

手を差し伸べるのか? 彼の巨人の手を掴めたから、自分には同じことがもう一度出来るものだと驕って

 

 あの人のことを思い出していると、声がそう語りかけてきた。あの時のように一緒に歩こうと、そう手を差し伸べるのかって……。

確かに、あの人と同じ目をしているのならやってみる価値はあるのかも知れない。もしかして、その可能性に賭けて……。

 

『あれは、みんながいたから出来たことなんだ。立香ちゃんが、マシュちゃんが、ダ・ヴィンチさんやドクター。それにカルデアのみんなやサーヴァントのみんな。沢山の人たちの手を重ね合わせたから、あの大きな手を掴めたんだ。だから、同じ事をもう一度……なんて、私には出来ない』

 

なら

『けど、だからこそ……なのかな? やることは、私に出来ることがなんなのかは決まってる』

 

 声を遮るように私は自分の意志を伝える。あの狼をどうしたいのか

それは、それは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、どんな気持ちよ! 私よりも先にマスターと契約できてマウント取れると思ったら? 私がマスターちゃんの古参も古参なサーヴァントだって知った気・持・ち!! どんな気持ちなのか教えなさいよ、ねえねえねえ!!」

 

「…………」

 

 ジャンヌオルタの煽りに、無言のまま聖剣を手に持ち始めるセイバー・アルトリア・ペンドラゴンの別側面(オルタナティブ)。彼女がバーサーカーからの襲撃から守ってくれたから今ここに辿り着くことが出来たんだけど……。

敵側のアーチャーの襲撃で疲労してるジャンヌオルタが聖剣で攻撃されたら退去しちゃう可能性があるから止めにはいる。

 

「まあまあまあここは落ち着こうよアルトリア。そう! ジャンヌオルタってあれなんだよ!! 助けに来てもらって嬉しいんだけどそれを素直に出せないからどうしてもあんな感じになっちゃうだけなの!! 内心でめちゃめちゃ喜んでるの!!」

 

「…………そう、なのか? ふっ、そうだな。お前はマスターのサーヴァントの中でも古参なんだったな。ならばマスター言っていることは真実なのだろう、ここは私が治めるとしよう」

 

「ああっむぐっ!!」

 

(まあまあここは落ち着いテ、無駄な争いは避けるべきだと思うヨ。それに、怪我人をいつまでもこんな所に置いておくのはどうかと思うしネ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
 青眼ベリアルさんは夢じゃない……?こういう2次創作でしか見れないような設定を本家大元がぶつけてくるのは卑怯なんよ……。

 ベリアルさんの心情描写もいいし、光と闇に対する解もベリアルさんらしさ全開でもう……もう!


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3

ダクヒリがあまりにも良かったのでね。


感想、評価お待ちしてます。


『……ふぅ。ここに来るのも、久しぶりだな……』

 

 あの狼と戦う覚悟を決めた私は、意識的に今まで見ていた夢を変えて見せた。

怪獣墓場、戦闘経験の少ない私を鍛えるために無限に怪獣が蘇る訓練場としてベリアルが作り出した精神世界。

 

 ベリアルが消えたことでこの場所も消滅したものだと思っていたが、戦いが続くことを予知してベリアルが残してくれていたのか、消滅せずに残っていた。

 

 

『スゥ──…………』

 

 この場所に出現する怪獣たちはベリアルが意図して決めていた節がある。だがベリアル無き今、この空間の主導権は私にあるはずだ。

そう信じて瞳を閉じて想像する。あの狼と同じように四足歩行で襲ってくる怪獣を。

 

 すると如何だろうか、地面が盛り上がり、そこから怪獣の群勢が姿を現した。

スカイドン、ギラドラス、ガブラ、リッガーからメビウスに登場した土塊怪獣のアングロスまで、私の記憶に存在するウルトラマンたちがこれまで戦ってきた四足歩行の怪獣たちだ。

 

『『『ギャオオオオオオオオオオ!!!』』』

 

『よしっ! こい!!』

 

 どれだけの時間戦えるのか、どれだけの経験を詰めるのかは分からない。だが、私の求める答えに辿り着くにはこの方法しかないため、ギガバトルナイザーを手に怪獣たちへと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、冠位時間神殿での決戦の後に座に還っているものだとばかり思っていたジャンヌ・オルタと再会した私たちは、怪我を負って目の覚まさない博樹さんのことをアジトへと寝かせ、この新宿の特異点を攻略するために動きだした。

 

「ああ? 英霊の座に戻らなかったのか、ですって? 戻ろうとしましたよ、てか強制的に戻されそうになったんだけど……。 なのに弾かれたっていうの? こう、見えない壁みたいなのが私のことを邪魔したのよ。で、座にも戻れず、カルデアにも戻れなくてウロウロしてたらいつの間にかこんな所に辿り着いてたってワケ。わかったかしら?」

 

「ふっ、座にすら戻れないとは、余程人理に嫌われているらしいなお前は」

 

『聖杯を有していたから、いやそれともベリアルの影響か……? マシュ、カルデアに再召喚された英霊の中で聖杯をその身に宿している、もしくはベリアルの力の影響を強く受けたサーヴァントたちが戻っているか調べてくれ』

 

「あ、それなら。 清姫にアステリオス、それにモードレッドも戻って来てなかったはずだよ」

 

『あ、はい先輩の言う通りです。以下の3名はそれぞれベリアルさんの力、もしくは聖杯によって霊基を強化されている方たちです』

 

 博樹さんに致命傷を与えた狼のサーヴァント【狼王ロボ】は倒すことは出来なかったけどこっちも致命の一撃を与えることに成功したからもう動けない。

その隙に私たちは、この魔境と化した新宿にそびえる奇妙な塔、()()()()()()()銃身(バレル)と推理したの場所へ挑むためにリーダー以外の幻影魔人同盟の連中と戦ってきた。

 

「ヤレヤレ、ここまでやって来てまだ私のことを疑うのかいホームズ。どこまで行っても私はマスターの味方だというのにこの男は……」

 

「ハハハ、冗談を言わないでくれ。いくら聖杯で分離された善性だからといって君を疑わないというのは私という英霊にとってあり得ないさ」

 

 この特異点に来て私のことを最初に助けてくれた新宿のアーチャーの真名は犯罪界のナポレオンとも呼ばれている【ジェームズ・モリアーティ】。そんな彼と仲良く? 言い合ってるのはキャメロットのアトラス院で一度出会っていたあの名探偵【シャーロック・ホームズ】だ。宿敵同士の2人が普通に談笑しているだけで可笑しいんだけど、どうやら私たちに味方してくれているモリアーティ教授は聖杯の力によって善と悪に別たれた【善】のモリアーティで、この新宿を創り出し幻影魔人同盟の首魁に立っているのが【悪】のモリアーティ……らしい。

 

「さて、では新宿のアサシン攻略のための準備をするとしようか、マスター」

 

「え? 何その笑顔、ホームズと教授の2人にそんな笑顔向けられるとすっ、ごい! 心配になるんだけど!! じゃ、ジャンヌ! アルトリア! た、助けっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあ……はあ……、次!!』

 

────────怪獣討伐数100体到達。

宮原博樹が今戦闘で得た経験値を元に狼のサーヴァントとの仮想戦闘をシュミレーション。

第一目標を【対象に────させること】に設定。第二達成目標を【生存】に設定。計算を開始する。

一回目…………敗北 二回目…………敗北 三回目…………第二目標を達成、しかし第一目標未達成……失敗 四回目……敗北 五回目……敗北。

────────計100通りの結果、今現在の宮原博樹の戦闘経験では両目的を達成した上での勝利は不可能と推測。

 

『けど、これじゃ駄目だ。 何体の怪獣を倒した所で結局は全員()()()()()()()()()()()相手だ』

 

 同意。仮想敵対象として出現した怪獣たちの全ては宮原博樹の記憶から抽出し、再現させた存在である。であるならば彼の記憶に怪獣の対処方法が記録されているのは至極当たり前の結論である。

ならばどうするか。宮原博樹が知ることのない相手を用意し、その敵との経験を積ませることがなにより簡単な解決方法である。

 

『私の記憶に存在する怪獣じゃない。戦ったことのない相手……」

 

────────ベリアルの因子に接続を開始

────────因子に残留しているベリアルの記憶へ介入、探索

────────探索内容、宮原博樹の記憶に存在しない四足を主として戦闘する怪獣

────────熔鉄怪獣デマーガ及び強化形態ツルギデマーガ 石化魔獣ガーゴルゴン 虚空怪獣グリーザ 魔王獣並び超魔王獣マガタノオロチ 奇械機械獣デアボリック 火炎骨獣グルジオボーン並び同系列である爆撃骨獣グルジオキング、超鎧装獣グルジオレギーナ ()()()()()()()()()   発見。

 

 豪烈暴獣ホロボロス、333年周期で目覚め暴れるとされている怪獣。戦闘時は二足歩行を主として戦う怪獣だが四足での戦闘も行える模様。彼の怪獣ならば敵サーヴァントを想定とした戦闘経験を十分に得られるものと推測します。

 

『……!? この、怪獣は? ッッッ!!! 速い!!!」

 

 宮原博樹とホロボロス、戦闘開始。

 

 

 

────────藤丸立香たちカルデアの者たちが再度目標と衝突するまで約7時間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 父さん、意識を失った人の身体を使って活動することが出来るようになったベリアルは、その手を握った少女と不釣り合いなほど大きく重そうな盾を持つ少女と一緒に『人理焼却』というものを覆すために行動を共にすることになった。

 

『いくぞ、受け止めてみせろ』

 

『へっ……。────っ!!』

 

 レッキングバーストの撃ち方すら知らなかった僕のように、大盾の少女は戦士になったばかりだから嘉盾の振るい方すら覚悟が決まってないようで、言葉使いは乱暴なままだけどそんな彼女に手ほどきするようにベリアルは攻撃を始める。容赦のない攻撃のように見えるけど、ベリアルと戦った僕だからわかる。あれ、相当手加減してる。

 

『いいか盾の女。 その武器を持った瞬間から貴様は戦士。 ついてくるついてこないは勝手だ。だがな、その盾を持つというなら先のような失態をこのオレは赦さない。 闘えないならその盾は今ここで置いていけ』

 

 今までそんなこととは無縁だと思っていた自分へと突如として襲いかかってきた戦うことへの覚悟。どうすればいいのか分からないのに現実は無常で、何をどうしたって戦うことを強いられていた。

()()()()だって、最初はそう自分に言い聞かせないと逃げ出してしまいそうだったから、だからどんな時でもジードになる時はプリミティブからだった。

 

 どうしようもないくらいに、彼女の気持ちがわかってしまうから。だからこそ僕は、彼女にも嫉妬してしまう。

 

『貴様は闘うのか? それとも尻尾を巻いて逃げるか? 闘うというのならば盾をとれ』

 

『わ……、わたしは、べリアルさんやキャスターさんのような凄い力を持たない半端なサーヴァントです。 でも、わたしはそれでも、先輩と契約したサーヴァントです。 サーヴァントとして先輩(マスター)を守るために、わたしはこの盾を持っていたい。 それが今のわたしに出来る精一杯だと、そう思うんです……』

 

 別に、背中を押してもらいたかったとかそういうのじゃない。ただ、唯一出来た親子っぽいことが宇宙の存亡をかけた親子喧嘩だけだったから。

けど、そんなベリアルの一押しがあったからこそ彼女は盾を持ち、またそれを見ていたもう1人の少女も一緒に戦うという覚悟を決めることが出来た。

 

『まだマシュは、()()()()って言ってない!! だから私も、マシュなら絶対に打ち勝つって信じる!!』

 

『はははははっ!!! やはりお前らは()()()()かっ!! 良いぞ、見せてみろ!! 元よりその盾に力を入れる必要などない。 必要なのは心、精神とかいう不安定で形のないものだ』

 

 だから、ウルトラマンの放つ光線のような強大な一撃をも、2人の覚悟で止めることが出来た。

そして、憑依している身体の持ち主に引っ張られたのかベリアルは頑張った2人の頭を撫でて労った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 この2話が説明&特訓回なんでまあ早めに消化したいよねって気持ちもありました。

 リクくんがベリアルさんの記憶を疑似体験するだけで曇らせ案件につながる不思議。

リクくん、ダクヒリのリリィのこと見たらどんな反応するんだろう?


次回、VS新宿のわんわん(弱体化なし最強状態!!)



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4





 

 

 

「アンタ……ふっざけんじゃないわよおおおおおおおおっっ!!!」

 

 心の中で謝るけどごめんねジャンヌちゃん。みんなの為に自分が残り戦うことを選んだジャンヌオルタちゃんには悪いけど()()()()()()()()()()()()()()()

みんなが力を合わせて新宿のアサシンを倒す際に崩れた巨大なビル。そんな大きな音が響いたら彼が近付いてくるのは当たり前だ。

 

 致命の一撃をもらった彼は戦う力、いいや復讐する力を取り戻すために元々2つの幻霊が混じった霊基にさらにもう一つ幻霊を取り込んだ。

その影響でより禍々しく、よりおぞましい姿へとその身を変えていた。

 

 最初に戦った時よりも更に強力になった彼を前に出された結論は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『グルルルルルッ』

 

 カルデアの豊富な知識、名探偵ホームズにその宿敵であるモリアーティ教授がいる。この場を凌ぐことが出来ればきっとすぐにでも対抗策を思いつくはずだ。逸話を持っている英霊だからこその弱点。致命に追いやった道具。それを使ってロボのことを追いやり、そして倒すだろう。

 

「それが悪いとは言わないさ。けど、それじゃ駄目だ。いいや……僕が嫌なんだ!!」

 

 策を講じて格上の相手を倒す。それは立派な戦術でカルデアは今までも、そしてこれからもそうやっていく。

だからこれは、僕の我儘だ。そう自分に言い聞かせながら僕は、威嚇を続けるロボに向けてギガバトルナイザーを向ける。

 

「さあやろう狼王ロボ! 正面突破で、お前に認めさせてやる!!」

 

『グオオオオオオオオオオッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃないわよぉおおおおおおっっ!」

 

「…………マスター、少し運転を変われ」

 

「え? わっ、えええええ!!!」

 

 新宿のライダーもといアヴェンジャークラスへと変化を遂げたヘシアン・ロボの突然の襲撃。新宿のアサシンとの戦闘も終わったばかりで余力少ない今の私たちでは彼を討ち倒すことは不可能。

 

 誰か1人が犠牲になるしかない。そんなこと本当は嫌だけど、ジャンヌオルタが覚悟を決めた顔で残ると、そう言ってきたから彼女を信じて私たちは逃げの一手に出た。────はずだったんだけど……。

 

「ふっ、大見得を切った割にすぐに戻ってくるとはな。貴様恥ずかしくないのか?」

 

「アタシのせいじゃないわよ! アイツよアイツ!! たく、もうアイツの中にベリアルはいないんでしょう? なのになによあれ!」

 

 アルトリアオルタにキャッチして貰ったのか、ギャーギャーと叫ぶジャンヌオルタ。正直運転したことないバイクのハンドルを突然握らされたことで頭がいっぱいいっぱいなんだけど、ベリアルさんがいない。その単語だけで誰がヘシアン・ロボの前に現れたのかわかった。

 

『神出鬼没なのはベリアルいなくても、だったみたいだね』

 

「ダ・ヴィンチちゃん! じゃあやっぱり博樹さんが?」

 

『ああ、ジャンヌオルタのことを吹き飛ばしてロボと戦闘を始めたよ。負けた腹いせやリベンジを誓うようなタイプじゃないはずなんだけどねぇ彼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────狼王ロボ。

 シートン動物記に記されたことでその名が広く知れ渡った【悪魔の化身】と称されるほど聡明な知恵を持つ古狼。

人を欺くほど賢かったロボにも弱点があった。それが、妻ブランカの存在だった。

 

「はっ! だあっ!!」

 

『グガアッ!!』

 

 ロボの繰り出す鋭利な爪の攻撃、ただの乗り手でしかないヘシアンによる高速攻撃を対処しながら彼────ロボのことを考えていた。

何よりも、どんなことよりも愛していた妻ブランカを殺され、彼女の匂いや足跡を罠に使われた。

 そして、最後に人間は最低な屈辱をロボに与えたんだ。

 

「ぐっ!! そりゃあ憎いよな。自分を歪めてでも、人類を、人間を殺してやりたいって思うよな」

 

『グゥウウ!! ガアアアッ!!!』

 

 捕まった時点で、ロボはもうこの世にブランカがいないことを理解していたはずだ。捕まえた人間たちがブランカのことを殺したことも。

そこまでのことをしたのに、人間は彼のことを生かそうとした。

 

 復讐の憎悪に燃える今の彼に、何を言ったっところで通じはしないことはわかってる。

だからこそ! この気持ちを、この思いを伝えるために、この戦いに負けるわけにはいかない!! 

 

 ナイザーから複数の光弾をヘシアンの方へ放ちながら接近し、ロボの正面に立つ。

爪を大きくこちらに向けて振りかざしてくるその右前足に合わせてナイザーを思い切り衝突させ、ロボの膂力に負けないように全身を使ってナイザーを振りかぶってロボの巨体を吹き飛ばす。

 

「ほら、もっとだ! もっとぶつけてこい! お前の怒りを! 憎しみを! 積りに積もった全部を!!」

 

『ガアアアアアアッ!!!!』

 

 「なにもわからないくせに」っていってるみたいだ。ああそうさ、どんなに考えようがお前が人間に対して燃やし続けている憎悪はお前だけのもので、他の誰かが理解できるものじゃない。

 

相互理解は不可能。そんなことわかってる、わかってるさ! だけど、たとえ分かり合うことが出来ないのだとしても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その一点に全てを賭けて今戦っているんだ。

 

 全身の血液を沸騰させろ、ベリアルさんの力を全身に張り巡らせ血と混ぜ合わせろ。神経を集中させ、相手の一挙動すらも見落とすな。

 

 思い出せ、捻り出せ、記憶を、経験を、そしてこの1分1秒で獲られる1つの情報でも武器になる。

 相手を利用しろ、誰も追いつけないあのスピードを、あの牙を、あの爪を、ロボの用いる全ての武器を自分のものにしろ

 

「グッ! ガアアアアアッ!!」

 

「!!」

 

『グルァッ!!』

 

 入った! ヘシアンの剣戟を、マントによる槍のように鋭く迫ってくる攻撃を掻い潜り、振るわれたロボの左爪を地面に叩きつけ右前足は足で抑え込み、牙に噛みつかれるよりも速くロボの首元にナイザーを叩き込んむ。

 

 引き離そうと2対のマントの槍が背中と脇腹を突き刺してくるが、その痛みを感じないために、目一杯に力を引き出すために獣のような声を張り上げ、ナイザーを押し込み、押し込み! 最後には叫びにも似た大声でロボのことを吹き飛ばした。

 

「あああああああああああッッッッ!!!!」

 

「『!!!!?』」

 

 会心の一撃ともいえるその攻撃は、ロボの巨体がビル3つを貫通させるほど大きく吹き飛ばした。

けれど、この一撃だけでロボを倒すことが出来たとは思わない。彼なら自分はまだ戦えるって立ち上がるはずだ。

 

 そう考え気を抜くことなくロボが作っていったビルの穴を通って彼のことを追いかけた。

 

「なっ!? これは……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタの御要望通り、人員は手配した」

 

「うむ、御苦労アーチャーくん。これで彼はより深みへと堕ちることが出来る」

 

「……解せないな」

 

「何がかね?」

 

「真名や生い立ちはどうあれ、アレはこの新宿で最も強力な幻霊だ。奴らのサーヴァントですら勝ち目のない程のな。それをまるで捨駒のように扱うアンタの行動が理解出来ない」

 

「まあ、どうあれ彼らは皆捨て駒の役割しかないからね」

 

「何?」

 

「彼らは奴らが私の前に立つ。その過程で必要だっただけに過ぎない。その役割を終えた今、私の計画を乱しかねないヤツを排除してくれるのなら使わない手はないと思わないかい?」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!! ()()()()()()()()ここで待ち伏せてて良かったぜ!」

 

「ありがとうよぉ! この犬っころを弱らせてくれて! ()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 最悪の光景が、そこには広がっていた。

ロボを倒すために来た博樹の前には、この新宿特異点よって生まれた()()()()()()()が距離を取りながらロボの周りを囲み、銃や魔術を使って彼のことを攻め立てていた。

 

 一歩動けば地面に仕込まれた地雷が起爆し、鳴り止まない銃撃と魔術の嵐。

仕組まれたように集まったその集団そのものも謎だが、一番の謎は全員が全員()()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

 

「ありがとう」「アンタのお陰だ」「アンタを信じて良かった」など、心にもない言葉を浴びせてくる。当然、そんな覚えのない。大体この特異点に来て殆ど寝込んでいた博樹に人脈を築く時間などありはしないため何かの勘違い、あるいは間違いだろうと博樹本人は受け入れるが、

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『Grrrrrr……』

 

「まっ、違う。違うんだロボ!!」

 

 「やはりおまえもおなじか」攻撃の嵐の中から聞こえてきたロボの呻き声が、博樹にはそう聞こえた。

確かにロボは人間のことを恨んでいる。自分たちを、そして愛する妻を殺した人間への憎悪、ただその一点がロボという存在を突き動かしている。

 

 人間を憎んで憎んで、憎み続ける。どれだけ殺してもそこに爽快感はなく、更に憎悪が積もり続けるだけだが、相手を認めるか認めないかは別の話だ。

 

 相手が弱者だったのなら覚えることはないが、それが強者であったのなら、サーヴァントではなく、ただの人間が今の自分と対等に渡り合えるほどの力を見せてきたのなら、人間という【群れ】ではなく【個】として見てもいいと。

 

 だからこそロボは、博樹のことを()()()()()()()()()()()()()()

一度目は逃げれはしたが確かにコチラが勝利した。だが先程までの戦いは? どんな手を使ったのかは分からないが、自分と対等に渡り合ってみせた。

 

 なのに、なのにだ。

 

『GAOOOOOOOOOO!!!!!!』

 

 コイツも結局は憎むべき人間たちと同じ、()()()()()()()()()()()()。それを許していいのか? 否、否、否、否否否否否否だ! と怒りが、怨みが燃え上がる

 

 ライダークラスからアヴェンジャーのクラスへ変異したばかりで出来た穴が憎悪の炎によって閉じていく。憎しみが燃え上がる、人間の作り出した火が全てを燃やしていく。故郷を、仲間たちを、愛する妻を、そしてロボ自身を。

 

「お願いだロボ! 話を聞いてくれ!」

 

 博樹の声はもう届かない。ロボの瞳は憎悪に燃え、上に跨がるヘシアンもその姿を変異させる。腕そのものを影のようなものに侵蝕され、伸縮自在の刃へと変わり、全身からも同じようなものが何本も飛び出している。

 

 ここにヘシアン・ロボのクラスは【復讐者(アヴェンジャー)】に確立された。彼に理性が残っている、ライダーとアヴェンジャーの境界にいたこのタイミングなら自分言葉が届くのではないか? そう考えていた博樹にとって、ロボがそうなってしまった時点で一つの敗北が決まってしまった。

 

『Uuu……WOOOOOOOOOッッ!!』

 

 ヘシアンが無数の刃で銃器や魔術で攻撃してきた悪性人間たちを淡々と処理していく中で、ロボは唯一人。目の前にいる本当の人間(宮原博樹)にだけ標的を定め宝具を展開する。

 

 ヘシアンの無数の刃が博樹の四肢に突き刺さり身動き出来ない状況を作り出し、そんな彼に向かってヘシアンが持っていた剣を噛み締めたロボが駆けていく。

 

 因果を逆転させるほどの大きな力はないが、「相手の首を刈り取る」ただそれだけに重点をおいたその攻撃はほんの少しだけ世界を歪ませる。

「刈り取りやすい状況」。宝具によってそれを生み出したロボは速度を最大限にまで上げ、博樹の首目掛けて剣を振り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 





単独で40万の1ゲージ削ったら100万の体力で出てきたみたいなもの。

物語として撃ち出しているから悪モリアーティにとってもうロボは用済み、不確定要素である博樹さんの事を倒してくれたらそれでいい。倒せなくても時間稼ぎしてくれればそれでいいくらいの考えしか持ってません。

次回、この章のサブタイトルである『遺産』の登場です。仕方ない、弱点を突いて弱体化したロボじゃない最強状態のロボを倒すにはこれしかなかったんだ。


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5


今年はジード5周年。映画だったりギャラファイだったり客演だったり、ベリアルさんの方はダークネスヒールズで活躍したりアーリーが出たり、しかも今年はジードスピンオフのアナザージーンも連載予定……。本当に5年経ってます??

感想、評価お待ちしてます。


 

 

「〜〜〜ッッ! ガハッ!!カハッ、はー、はー」

 

 気道を確保する為に腹部を強引に殴って息を吐き出し、呼吸を落ち着かせる。

あの時、ヘシアンの攻撃で動きを封じられ剣を咥えたロボに首を切り落とされてしまいそうだったあの瞬間。

 

「助けてくれてありがとう、ギガバトルナイザー」

 

 私の手から離れたギガバトルナイザーがひとりでに動き出し、私とロボの間に入り込んでくれたおかげで大きく吹き飛ばされるだけにすんだ。

 

 けど、ヘシアンの刃が深く刺さった四肢は指や足が動く気配は感じるけど、立ち上がる力は入らない。

 

「ク、ッソ……。届かなかった……」

 

 あのまま戦い続ければ届くと思っていた。だけど、それは何者かの策略のせいで泡となって消えてしまった。

 

 それが悔しくて、ロボにあの目をさせた自分自身が情けなくて涙が出てくる。涙を拭こうにも腕が動かなくてそれが情けなさを大きくさせる。

 

「ズッ、ズズッ。はー、そういえばここは……本屋、かな?」

 

 殺せていないことは相手も知っているはず。ならすぐにでもロボは私のことを追ってくるとばかり思っていたけど一しきり涙を流し終えても現れないことに疑問に思いながら、落ち着いて辺りを確認するとどうやらここは潰れた本屋らしく、仕舞われている本には埃が被り、私が飛び込んできたせいで本が崩れたのか床にも何冊もの本が落ちて埃が舞っている。

 

「(この埃が私の匂いを消しているのか? そんなこと、あるかな?)ん?……これは……!?」

 

 【オオカミ王ロボ】のことが記された絵本。難しく書かれたものではなく、子どもが読んでも分かりやすいようにひらがなを多く使い簡単な漢字にもふりがなが振られている、(うち)()()()()()()()()()()

 

「ああ、そうか。ここはきみの固有結界、だね? アリスちゃん」

 

『フフフ、ヒントを与えすぎちゃったかしら。ねえ、おじさま』

 

 オオカミ王ロボの本が勝手に動き出し、私の目の前まで動くと本が光だし、その姿を変える。終局特異点で決戦で別れてから戻ってきていなかった、ベリアルさん以外で私が唯一本契約をしていた英霊【誰かのための物語(ナーサリー・ライム)】アリスちゃんが、人の姿となって私の前に立つ。

 

「ずっと……見ていたの?」

 

「ええ。おじさまがこの特異点にきてからず〜っと、あなたのことをみていたわ」

 

「私があの子に、ロボにどうするのか確かめたかった?」

 

「わたしは人ではないから、あの子が憎む対象にはならないの。そんなわたしがおじさまに「こうしてあげてほしいの?」っていうのはまちがっていると思ったの」

 

 ああ、そうだ。その通りだ。憎悪の対象である(人間)だから、私が出した答えじゃなきゃ駄目だったんだ。

 

「認めて、もらいたかったんだ……」

 

 だから私は、ロボにどうしたかったのか。その思いをアリスちゃんに伝えることにした。

 

「こんな大馬鹿野郎もいるんだって。ロボの知ってる人間以外にも、正面からキミに挑もうとする大馬鹿な人間もいるんだって知ってほしかった。認めてほしかったんだ……」

 

 自分たちを滅ぼした人間たちだから、滅ぼされて然るべき。その憎悪だけを糧に活動しているのが今のロボだ。そんなロボに知ってほしかったんだ、キミの記憶に焼き付いている卑怯な人間だけじゃないんだって……。

 

「けど、そのチャンスもつゆと消えてしまった。思いっきりぶつかったんだけど、届かなかった……」

 

「あら? いちどのしっぱいであきらめてしまうようなかただったの、おじさまは?」

 

 落ち込んでいる私の胸に、アリスちゃんに声が突き刺さる。下を向いていた顔をあげると、至近距離まで距離を近づきその手を私に伸ばしている。

 

「まだのこっているわ。思いをとどかせる、みとめさせることのできる可能性が」

 

『ヴェア』

 

「……小さい、ベリアルさん?」

 

 そう言ったアリスちゃんの腕の中に抱えられながら小さな手を上げたのは、ベリアルさんをマスコットにしたような存在。M78ウルトラマン版のベリアルさんというか……、小さくなっても目つき悪いんだな〜ベリアルさんって。

 

「さあ()()()()()()()!悪いおじさまの遺したものを♪」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

『この反応は……!? ウソだろ?』

 

「ダ・ヴィンチちゃん、どうかした?」

 

 敵の本拠地である【バレル】に突入し、最上階目指して階段を上がりながら襲ってくる敵を対処していると、ダ・ヴィンチちゃんの困惑した声が聞こえてきた。

 

 博樹さんとロボとの戦いでこの街全体が混乱している隙に、敵の本拠地を一気に叩くために来たんだけど、何かあったのかな?

 

『ヘシアン・ロボの宝具の直撃を受けた博樹さんの反応が突然消えたのは言っただろう? ずっと反応を探し続けていたらコレだ』

 

 そう言ってダ・ヴィンチちゃんは今自分が見てるモニターの画面を私の通信画面の方へと移してくる。崩れたビル群、遠くから聞こえるロボの遠吠え、そして画面の中央に映っているのは

 

「ベリアルさん!?」

 

『に、よく似たパワードスーツのようなモノを纏った博樹さんだがね。反応がベリアルとほぼ一緒なんだよ』

 

 ベリアルさんに酷似したスーツ……。鋭い爪に黒と赤の鎧、ベリアルさんの特徴的な大きな瞳はなくなってるけどその目つきの鋭さは失ってない。

 

 そして一番目につくのは胸の中心のカラータイマーだ。

ベリアルさんと同じ紫のソレだけど、エネルギーが溢れ出ているのか画面からでもその力が感じ取れるほど光り輝いている。

 

『博樹さんの持っている【ULTRAMAN】という漫画に出てくるスーツと設定が同じだとしたら、あれはリミッターが解除された状態。なのではないでしょうか?』

 

『さしずめ【ULTRAMANSUIT ver.BELIAL】とでも言ったところかな?』

 

 ver.BELIAL……。そのスーツを纏った博樹さんはその手に持つギガバトルナイザーを振るうと、辺りのビル群を一撃で崩れ落ちその音で「自分はここにいるぞ」とロボに伝えているようだった。

 

『ロボオオオオオオオオッッッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー久しぶりだ。

 ロボに向かって脚を向けながら私はついこの間のことをまるで何年も前のことのように懐かしみ、そしてそれ以上に気分が高揚していた。

 

 包みんでいるようで、一緒に身体を動かしているような一体感。

 底の見えない力が溢れてあふれて止まらない解放感。

 自分よりも下がいないと思えるような優越感。

そして、全てを掴める。全ての不可能を覆すことが出来ると感じる全能感。

 

 

『いいおじさま。あなたの中にある因子とわたしが持っていた因子を共鳴させることでその力をおおきくさせているの』

 

 

 ベリアルさんと同化していた時に感じていた気持ちが、スーツの力を引き出しているとフツフツと湧き上がってくる。

 鋭くなりすぎる感覚を抑えるためにベリアルさんとは違い細い目となっているけど、それ以外に違いは殆どない。

 

『けど、じかんはないわ。シンデレラの魔法が12時の鐘とともにとけてしまうのといっしょ。魔法がとけてしまうまえにすべてをおわらせなくちゃ』

 

 そうだ、喜んでる場合じゃない。このスーツを纏っていられる時間は限られてる。 

ーーーーそんなこと言ったって、喜ばないわけないじゃないか。アリスちゃんだって、分かってて言ったんだ。

 制限時間は…………。

 

3分間(ウルトラマンの活動限界)……!」

 

 ピコーン、ピコーンって、胸のカラータイマーが鳴り始めるあの瞬間が小さい頃から大好きだ。もう少しで3分経っちゃう、怪獣を倒せるのかな?倒せないのかなってドキドキハラハラさせてくれる特別な時間。

 

 気をつけないとまたたく間に過ぎてしまう180秒。気をつけると10分にも、30分にも、1時間にだって長く感じてしまう不思議な時間。

 

「そんな特別な時間。全部お前にくれてやるよっ!ロボオオオオオオオオッッッ!!

 

 地面が砕けることなんてお構いなしに大地を強く踏みしめ、ロボに向かって跳躍するように駆け出す。

 アリスちゃんの固有結界に消えた私のことを見つけたロボもその瞳を憎悪に燃やしながら真っ直ぐに向かってくる。

 

『……!』

『GAOOOOOOOOOッ!!』

 

()()()()!ベリアルさん!!」

 

 ヘシアンの無数の刃が襲ってくる。さっきまでなら掻い潜らなきゃいけなかったけど、今は違う! 

ギガバトルナイザーをロボに向かって回転をかけて投げ、私はヘシアンに向かって飛び掛かる。空中という隠れる場所がない刃が一斉に向かってくる。

 

 右側から来たものは爪を振り下ろすことで切り落とし、左側から迫るものに対しては脚で蹴り上げ一纏めにしたものを左手で掴み取る。

 

『……!?』

 

「それごとぶち破る!!」

 

 刃は外套が変化したものだから、掴んだそれを引き寄せるとヘシアンも一緒に寄ってくる。ヘシアンは驚きながらも刃へと変わった両手を円盾の形に変化させるが、そんなもの関係ない!

 

 空いている右手を盾の中心に向けて全力で振りかぶり、ヘシアンのことをロボに向かって吹き飛ばす。

 

「はああああああっ!」

 

『!!!』

 

 衝突しロボと重なったヘシアンに向け、畳み掛けるように踵落としを喰らわせるが、下にいたロボはヘシアンを守ろうともせず、全力で回避行動を取り直撃を避けた。

 

 やっぱり仲間っていう訳ではないんだな。人間を殺す便利な道具、くらいの認識なのか。それならと、さっき投げたナイザーを手元に呼びメビウスのことを光の国から宇宙空間まで吹き飛ばすまでのことは出来ないけど、この特異点の端へ投げ飛ばせるだろうと、ギガバトルナイザーを使ってそれを実行する。

 

「さあ、後はお前だけだぞ……ロボ!」

 

『Grrr……GUGAッ!!』

 

 残っている時間は?何分、何秒残ってる?

そんなこと気にしてられるか!今は目の前にいるロボを、ロボだけを見ろ!ロボにだけ集中しろ!!

 

 振り下ろされた右前足を両腕で受け止め、仕返しとばかりに殴り返す。

憎悪をおさめろ、怒りに呑まれるな、憎しみ続けても前には進めない、人間をわかってくれ、お前にはそれだけの知恵がある、憎悪、怒り、憎しみ、理解、知恵、憎悪、怒り、憎しみ、理解、知恵、憎悪、怒り、憎しみ、理解、知恵 憎悪、怒り、憎しみ、理解、知恵、憎悪、怒り、憎しみ、理解、知恵。

 

「ああああああああ!!もう! どうでもいい!!」

 

「ぼ く を み ろ!」

 

(ふふふ。そう、それよ)

 

『GA!?』

 

ロボと取っ組み合う状態から思いっきり振りかぶった頭突きを喰らわせる。

あんまり勢いが強すぎたものだからメット部分が壊れてしまったけどそんなこと知ったことか!

 

「他の人間たちのことなんて知るか! お前の記憶に、その瞳に刻まれてる人間たちが醜い存在しかいないなら新しく刻ませてやる!! 他の誰かじゃない、宮原博樹っていう人間を!!」

 

(やさしすぎるからみんなも、って思ってしまう。おじさまは、それくらいわがままになっていいのよ)

 

 さあ、最後まで僕の全力についてきて貰うぞ!ロボ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この人間は、なんなんだ

 

 

人と獣は分かり合えず、相対すれば殺し合う運命だ。

 

その運命を理解していながら、それでもなお。

 

それを良しとしない。拳には悪意も殺意もこもっていない。

 

何度倒しても目の前に立ち上がってきた。

 

ただ殺す、生きるために殺す、そんな生物の本能も感じない。

 

だがひとつ、ひとつだけわかったことがある。

 

()()()は、一度も視線を外さない。

 

それで心が通じ会えるとでも思っているのだろうか

 

なら笑いものだ、大馬鹿ものだ。

 

けれど、何故だろう。

 

絶対に不可能なのに、叶うことなどありえないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーあの場所に、辿り着ける気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ULTRAMNSUIT ver.BELIAL】
 博樹の中にある本[ULTRAMN]に出てくる[ULTRAMNSUIT]をナーサリー・ライムの宝具によって再現し、彼女の霊基に混ざっていたベリアル因子を混ぜ合わせることで改造を施したベリアルを模したスーツ。

 元々博樹の中にあるベリアル因子がスーツの因子と結合する事で、生身で因子を解放させた状態の時よりも格段にパワーアップしており、また効率的に力を引き出すことに成功している。

 しかし、効率的に引き出しているのにもかかわらず燃費の悪さは凄まじく、1度装着するのに令呪1画消費する必要があり、稼働時間が3分しかない。また博樹自身の肉体的な負荷もあり連続での使用は不可能。最低でも24時間のインターバルが必要。

 性能としては光線技や光輪技など、多種に渡る攻撃が可能だが相手がロボだったため博樹は使用することがなかった。


これを投稿し始めたころから1.5部はベリアルさんがいないことは最初から決めていたのでベリアルさんバージョンのスーツ使えばサーヴァント戦もいける!と思い続けていたらベリアルスーツ実装。これは絶対に使うしかないと思いましたね。

因みにこの章のサブタイトル【遺産】は[ULTRAMN]の漫画1話が遺産だった所からだったりします。


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6

アルトリアオルタが好きな方は先に謝っておきます。大変申し訳ございません。わかってる、わかっているんです。このタイミングこそアルトリアオルタが一番に活躍した場所だって!BGMも最高だって知ってるんです!
けど、ここしかなかったんです。

感想、評価お待ちしてます。



 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)!!】

 

 闇に染まりながら、失われることのない星の聖剣の輝きが砕けた小惑星を包み込む。

 藤丸立香がジェームズ・モリアーティがこの新宿幻霊事件の犯人だと言い当てたことで、七発目の魔弾としての性質を失った小惑星ベンヌ。

 

『ベンヌ、アルトリアオルタさんの宝具によって消失……し、していません!!』

 

「なに? ……これは!?」

 

「────ッ! 田舎娘! すぐにマスターを抱えてバレルから離れろ!!」

 

『ベンヌの中に潜んでいた? いいや、休眠していたのか!! それが2人の宝具の力によって目を覚ました……? ────っ、立香ちゃん! アルトリアオルタが言っていたように少しでも速くそこから離れるんだ!!』

 

 エクスカリバーの一撃で、ベンヌは跡形もなく消滅する。はずだった。

それは、ベンヌが本当にただの小惑星だったらの話だ。

 

 破壊されたベンヌの中から現れたのは()()()()

休眠活動中だったソレは、エミヤオルタの宝具によって目を覚まし、アルトリアオルタの宝具によって覚醒した。

 

「────あれは、なんだ?」

 

「アーチャー!!」

 

「アイツのこと気にしてる場合じゃないでしょバカ! しっかり掴まってなさいよね!!」

 

 できることはなにもない。あの小惑星を呼び込んだモリアーティすらあの青い球体が何であるか理解できずただ棒立ちになっているなかで、アルトリアオルタの声が届いたジャンヌオルタだけは、なりふり構わず立香のことを抱きしめ、バレルから飛び降りた。

 

「まったく、とんだハズレくじを引いたものだ……」

 

「存外、ここでの日々は楽しいものだったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1999年7か月

空から恐怖の大王がくるだろう

 

 

 

 

 

 

 人類滅亡が記されたノストラダムスの大予言。

本来の歴史では、恐怖の大王はやってこないし、人類は滅亡もしていない。

 

 しかしながらソレは、空から突然やってきた。

【宇宙の平和を乱す、悪魔のような怪獣】とさえ呼ばれるはじまりの怪獣。

 

 その怪獣がいなければ何もはじまらなかったかもしれない。

親友を殺された光の戦士が地球にやってきて、その怪獣を倒したことがすべてのはじまり。

 

 だがこの宇宙には、この地球には…………

ウルトラマンはいない。

 

 

 

 

グャガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! 

 

 

 

「だあっ……はあ、はあ、はあ。死ぬかと思った……。無事よね、マスター?」

 

「うん、ジャンヌオルタのおかげで。けどあれって……」

 

『【宇宙怪獣ベムラー】ウルトラマンが地球に来てはじめて戦った、そして光の戦士と地球の戦いがはじまった全てのはじまりとされている怪獣です。ですが……』

 

「うん、姿がちょっと違うよね?」

 

 博樹さんがコレクションとして持ってきてくれていたし、ベリアルさんのこともあってカルデアの人たちの殆どはウルトラシリーズを見ているから、ベムラーのその姿に気がついた。

 

 元々のベムラーは背中が毒の棘で覆われた寸胴体型で、ティラノサウルスのような細い腕が特徴の怪獣なんだけど、目の前にいるベムラーは、棘が生えた背びれが青く変化していて、一際特徴的なのは頭に2本の角が生えていること。後もう一つ、正気が失われているかのように()()()()()()()()()()

 

『エミヤオルタの宝具にエクスカリバーによって活動を開始した所を見ると聖杯か? 魔力をエネルギーに……いや、それ以外にも何か……』

 

 突如出現した怪獣にダ・ヴィンチちゃんが頭を悩ませている中、ベムラーのその大きな2本の角がエネルギーを溜めるかのように輝き出した。

 

「何か大きいのがくる!!」

 

「ああったく忙しないわね! マスター、逃げるわよ!!」

 

 

グャガア゛ア゛、ガア゛ア゛ア゛ア゛ア!! 

 

 角の輝きが収まるのと同時にその口から熱線が吐き出してくる。

姿を現した地点から私たちが着地した場所とでは離れてるから、直接の被害はないけど辺りを焼き尽くした熱風がこっちにまで襲いかかってくる。

 

『マズイ。このままベムラーが光線を吐き続けたらそこは人間が住める場所ではなくなってしまう! どうにか手立てを考えなくては……』

 

『手立てといっても、もうベリアルさんはこの星には……』

 

「手はあるよ」

 

「「!?」」

 

 怪獣を倒すための組織もないこの地球でベムラーを倒せるのはもうウルトラマンしかいない。けど、ベリアルさんはもうこの星にはいない。

 どうすることもできずに、このまま破壊を見ているだけだと思っていた私たちの前に声が届いた。

 

「博樹さん!!」

 

「ごめんね立香ちゃん。さっきまで気を失っていてさ、今目が覚めたんだ」

 

『…………』

 

「襲ってきたり、しないわよね。コイツ……」

 

「大丈夫じゃないかな、多分」

 

 博樹さんだ。さっきまでヘシアン・ロボと死闘を繰り広げていた博樹さんが、そのロボと一緒に来てくれた。

 

『……色々と言いたいことがあるが時間がない。単刀直入に聞こう、君ならあの怪獣を止められるんだね?』

 

「────はい。私と、()()()()()()

 

『デェア』

 

 

────────小さい、ベリアルさん??? 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『────だからお前に託せるんだ。後始末もな』

 

 

「こう言うことだったんですね。後始末って」

 

 博樹はそう呟きながら、暴れ続けるベムラーに向かって歩いていく。

ただ一人ではない。隣にはアリス、ナーサリー・ライムが造り出した小さなベリアルがいる。

 

『本当に、大丈夫なんだろうね?』

 

「心配いりません。アイツは、ベムラーは絶対に倒します。こ……」

 

『どうかしましたか?』

 

 手に何かを握るような仕草をしたかと思うと、考えるように立ち止まったためマシュが心配するように声をかける。

 

「いや、小さいベリアルさんのことを呼ぼうとしたんだけど。来い! 小さいベリアルさん! って言うの長くないかな〜、何かいい略称ないかな〜と思って」

 

『そ、そんなこといいから早くしないか! もう残された時間は多くはないんだぞ?』

 

『…………赤子のようなベリアルさん。【ベビアル】はどうでしょうか?』

 

『マシュ、きみねえ』

 

「それいいねマシュちゃん。よし、いくぞベビアル!!」

 

「……ディア!」

 

 少し呆れたように小さいベリアルもとい、ベビアルがその姿を変化させると博樹の手にべリアライザーの形として収まった。

 

 べリアライザーが現れたのと同時に腰元に現れた装填ナックルを手に取ると、博樹は2本の()()()()()()を起動させる。

 

 ゴモラとレッドキング? エレキングとエースキラー? それともゼットンとキングジョー? はたまたギャラクトロンとキングジョー? そのどれとも違う。

 

「怪獣には怪獣。なら、ベムラーにはベムラーだろ!!」

 

 博樹が選択したカプセルは【ベムラー】と【アーストロン】。初代ウルトラマンと帰ってきたウルトラマンが初めて戦った怪獣同士の組み合わせをナックルへと装填し、ライザーで読み込んでいく。

 

 

 

【ベムラー】

 

【アーストロン】

 

【フュージョンライズ!!】

 

 フクイデケイがそうだったように、融合獣の姿へと変身するために博樹の身体が一時的にウルトラマンベリアルの姿へと変わる。

 

 だが、ベリアル本人がいない状態での変身は負荷が大きいのか、ここまでくるのに体力を使いすぎたのか、2体の怪獣がベリアルの因子と融合していくその負荷に声を出すことすらままならない。

 

「があっ、ああああああああああっ!!」

 

 痛みに耐え、どうにかライザーを目の前に突き出すように起動スイッチを押したことで、光が博樹のことを完全に包み込み、見る見る巨大化していきベムラーと同サイズまで大きくなる。

 

 

 

【ウルトラマンベリアル! ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「ほんとに怪獣になっちゃった……」

 

 「私がベリアル融合獣になってベムラーを止める」そう言って小さいベリアルさんとべムラーに向かっていった博樹さんは、光に包まれて融合獣へと変身した。

 

『【宇宙怪獣ベムラー】と【凶悪怪獣アーストロン】とのフュージョンライズ形態【バーニング・ベムストラ】だそうです』

 

『わざわざバーニングって付ける意味あるかな? ベムストラだけで良くなかったかい?』

 

「似たりよったりな見た目してるわね」

 

 バーニング・ベムストラ。ベムラーのカプセルを使ってるからジャンヌオルタの言う通り体型とか似ててぱっと見だとどっちがどっちか判断しづらい。

 

 けど、よく見ると細部が違ってるのがわかってくる。

まず第一に二本の角と一本の角が違うし、ベムストラの胸にはベリアルのカラータイマーによく似たものを中心に炎が燃え広がったような意匠が出来てる。

 

 爪や牙も赤く染まってるし、ベムラーの細々とした腕と違ってベムストラの腕はアーストロンから引き継いだのか逞しい腕へと変わっている。 

 

 

ザアアアアアアアアアッ!!

 

 自分はここだと、意味のない破壊を続けるベムラーに向かって咆哮を上げるベムストラ。接近してくる相手に気づいたベムラーも相手を敵だと認識したらしくその赤く染まった瞳を爛々と輝かせて迫ってくる。

 

 

グャグャガガガッ!!

 

『べ、ベムラー、ベムストラの放った光線を吸収しました。本来では備わっていない能力のはずなのであの2本の角の影響だと思います!』

 

「そんなの見なくたってわかるわよ! たく、あんななりして卑怯くさい技持ってんじゃないわよ」

 

 先手必勝と言わんばかりにベムストラは青い渦を巻いた光線をベムラーに向かって吐き出したけど、ベムラーはその光線を2本の角で吸収して自身のエネルギーへと変換させる。

 

 そうして変換させたエネルギーを、今度は仕返しのようにベムラーが熱線を放ってきた。

 

「「!!」」

 

「心配しなくて大丈夫ですよ」

 

「ライムちゃん、それって」

 

「バーニング・ベムストラだもの。おじさまはあんな攻撃で負けたりしないわ」

 

 熱線が直撃してしまって驚愕する私たちとは裏腹に、ヘシアン・ロボに乗っているライムちゃんが自身満々にベムストラが大丈夫だと言い切る。

 

 その言葉を信じて爆炎に包まれたベムストラを見ていると、その炎の中からダメージを受けた様子もなくベムストラがベムラーへ向かっていく。

 

 

ザアアアアアアアッッ!!

 

 

グャグャグャ!? グャガガガがッ!

 

 まさか自分の熱線が効かないとは思っていなかったのか、焦ったようにベムストラに向かって駆け出し、その勢いのまま角が腹部に当たるように頭突きをするベムラー。

 

 だけど、流石はウルトラシリーズを網羅している博樹さん。相手の動きを予測してその剛腕でベムラーの角を掴んで止めてみせた。

 

 

ザアア……! ガアアアアアッ!!

 

「ベムラーを持ち上げた……!」

 

「どんな馬鹿力よ……」

 

 気合いを入れた咆哮と共にベムラーのことを持ち上げたベムストラは、角を掴んだままベムラーのことを地面へと叩きつける。こっちにまで揺れが響いてくるソレを何度も何度も繰り返していると、苦しくなったのかベムラーが口から何かを吐き出したように見えた。

 

「ああ? あのクソ爺、何でまだ生きてんのよ……」

 

『彼が聖杯を所有していたからか? 何にせよチャンスだ! ジャンヌオルタ、今すぐ聖杯を取り込んでいるモリアーティを回収するんだ!』

 

「はあ!? アタシにあんなボコスカバカスカやってる所に突っ込めっての!? 今度こそ死ぬわよ!!」

 

 バレルを破壊するときに聖杯と一緒に呑み込まれていたっぽかったアーチャー。彼から聖杯を渡してもらえないとこの特異点の修復は終わらないから、取りに行かなくちゃいけないんだけど、ベムラーとベムストラが戦ってる真下近くに接近しながらアーチャーを探すなんて……。あれ? 

 

「それじゃあ、わたしたちもいきましょうか」

 

 ジャンヌオルタがダ・ヴィンチちゃんと言い争ってる間に、ライムちゃんがヘシアン・ロボに声をかけて走っていってしまった。

もしかして、最初からそのつもりでライムちゃんは残ってたの? 

それなら安心かな〜と2体の戦闘に視線を戻すと、どうやら終わりが近いみたい。

 

 ベムストラはその剛腕でベムラーの角を砕き折ると、尻尾を器用に動かしてベムラーに絡ませ勢いのままに上空へと投げ飛ばした。

 

 

ザアア……!ザジャアアアアアアアッ!!

 

 

グャグャアア……!グャガアアアアアアアッ!

 

 角を折ったことで光線を吸収する力を失ったであろうベムラーに向かってベムストラが最初に撃った時よりも極太の光線を吐き出す。

 

 吸収能力がなくなったことを本能で理解しているのか、ベムラーもベムラーでその光線に対抗して熱線を吐き出して対抗してくる。

 

『ベムラー、ベムストラに対抗して熱線を放ってきましたが、あれはもう……』

 

「うん、勝負ありだね」

 

 空に飛ばされたことでエネルギーを溜め込む時間がなかった。2本の角は光線を吸収するのとは別にエネルギーを溜めるのに重要な器官だった。あげだしたらキリがないけど、ベムストラの吐き出した光線に比べて細い熱線しか出せなかった時点でベムラーの敗北は決定した。

 

 ベムストラの必殺光線は、熱線と衝突したからといってその勢いを衰えさせることなく逆に熱線を呑み込んでベムラーへと直撃した。

 

 

ザャアアアアアアアアアッッッ!!

 

 断末魔と共に爆発したベムラー。その爆発した破片すら残すことは許さないのか、一本の光線に渦巻きが巻いているベムストラの光線は、破片すらも吸い込んでベムラーのことを完全消滅させた。

 

 

 

 

 




【ベビアル】
ライムの宝具とベリアル因子によって生み出された存在。
ベリアルスーツになるのに加えて、べリアライザーにも姿を変える能力がある。見た目はまんまM78ワールドのベリアルさん。可愛い見た目のわりに戦闘能力はわりと高かったりする。

【ベムラー(強化)】
オーブの「あばよ」回に出てきたベムラーの強化個体。
当初は新宿ということもあってビースト・ザ・ワンを出そうとしていたが、そうするとデビスプ案件以上にザギ案件になるのでボツ。ウルトラゾーンで恐怖の大王の正体と言われたベムラーに白羽の矢が立った。

普通のベムラーでもよかったが、それだと融合獣相手では役不足ということで魔力とデビスプによるバフによって強化状態に。

バアルが作戦を始めたと同時に因子に惹き寄せられる形でfateの宇宙へ→ある事情で体力を使いすぎたため休眠状態(球体モード)へ移行→今までいた宇宙と違うためなかなか体力が回復しないまま3000年→いつしか隕石やデブリがくっついて小惑星ベンゾに→新宿到達覚醒。

【バーニング・ベムストラ】
怪獣には怪獣、ベムラーにはベムラーという理由で博樹がフュージョンライズしたベリアル融合獣。

 組み合わせはジードがレッキングバーストを撃てた時のようにどのカプセルを使えばベストマッチなのか頭の中に流れてくるので、ベムラーを使うと決めた瞬間に流れ込んできた。

普通最初の融合獣だったらスカルゴモラだろ!と思うかもしれないがバビロニアで禍々アークベリアルを出したこともあってどうせならフュージョンファイト限定融合獣を出してあげたいという作者の欲から登場。これであと登場していない融合獣は2体。

 融合獣の中では一番シンプルで無難な見た目をしている、作者的には結構好みな見た目をしてたりする。


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エピローグ

新宿エピローグです。
早いような気もしますが仕方ない。多分チュートリアル的な立ち位置なので

感想、評価お待ちしてます。


「5回、いいや新宿での変身を含めるとあと4回だ。わかったね?」

 

「…………はい」

 

 新宿特異点攻略から数日が経った今日。ベリアル融合獣バーニング・ベムストラに変身して突如として現れた怪獣ベムラーを倒した博樹さんだったんだけど、変身が解けた瞬間に身体中から血を吹き出して倒れてしまうという事件が起きた。

 

 どうやら、博樹さんの持っている怪獣カプセルには彼の中にあるベリアルさんの因子を増幅させる力があるみたいで、融合獣に変身して巨大化までできたのはそのおかげだったらしい。

 

 だけど、その負荷は凄まじいもので、ベリアルさんとずっと同化していた博樹さんでもああして倒れてしまうほどだ。

 

 今ダ・ヴィンチちゃんが注意しているのも博樹さんのことを思ってのこと、提示した回数以上の変身をしてしまうと身体がどうなるのかわからない、最悪の場合また眠り続けることになるって、次は一生。

 

「ま、お説教はここまでだ。教えてくれるかい? 2017年まで一度として観測されたことのなかった怪獣が、あの新宿に姿を現したそのワケを」

 

「あ〜、その〜、ベリアルさんのせいというか〜なんというか〜」

 

「ベリアルさんの……ですか?」

 

「勿論、ベリアルさん本人は関係ないんだけどね? 問題なのは彼の細胞の破片、私の身体の中やベビアルを構成しているものと同じベリアル因子が関係してるんだ」

 

 怪獣が出現したのはあの時間神殿での戦いが原因だと、博樹さんは言う。

アトロシアスとなってゲーティアを倒したベリアルさんだけど、現界しているのもぎりぎりだったあの状態は文字通り身を削りながらの戦いだった。

 

 消滅し、時間神殿に散らばった因子を吸収した魔神柱ベリアルは博樹さんが倒したんだけど、そこからが問題だった。

 

「アイツは時間神殿にある全てのベリアル因子を吸収したと言ってたけど、正確には間違いなんだ。崩れ行く時間神殿の隙間からあの空間を飛び出した因子は、時間神殿の消滅の余波で様々な時代の宇宙に飛び散ってしまった。あのベムラーはそんな因子に惹かれてやってきた一体」

 

 一つの破片でも怪獣を凶暴化させてしまう、それに加えてその破片は誘蛾灯に集まる虫のように、怪獣を引き寄せてしまう性質があるのだという。

 

 ただ安心なのは、博樹さんやベビアルのベリアル因子と違って外気と結合して結晶になった不純物の状態だからベリアルさんの模造品を作って暴れさせるなんていう最低なことは出来ないみたい。

 

「勝手に兄弟増やされても、彼が困るだろうしね」

 

「何かいいましたか博樹さん?」

 

「いいや、話の続きをしようか。 ベリアルさんから聞いた話だと、私たちの住むこの宇宙にはこの地球以外には生命がいない。すごく特別な宇宙みたいなんだ」

 

「その話が本当なら怪獣が出現したことと矛盾していると思うんだが?」

 

「そうなんです。だからベムラーは()()()()()()()()()()()怪獣なんです」

 

「「別の宇宙……?」」

 

「そう。サーヴァント・ユニヴァースだっけ?謎のヒロインちゃんが来たっていう……あれとおんなじ感じだよ!」

 

「シュタッ! 謎のヒロインではなく謎のヒロインXですので!お間違いなく!で、私になにかごようですか?」

 

 あああああ、生き残った魔神柱の問題もあるのにもう何がなんだかわかんないよぉおーーーーーーベリアルさんのバカーーーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶(メモリー)媒体(データ)に異常あり

 

 

計画を実行段階に移行する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 怖い夢、悪夢を見ていた時のように全身汗でびしょびしょだけどそんなこと関係ない。

起き上がると、僕はすぐにペガとレムのいる中央ルームへと足を踏み入れる。

 

「『!?』」

 

「2人とも聞いてほしい! あの!…………ああまただ!!」

 

 以前よりもはっきりと視えるようになったから今度こそは思ったのに!

ベリアル、父さんに手を差し伸べた女の子の顔が、盾を持った女の子の名前が、まるで霧の中に隠されてしまったみたいにぼやけて出てこなくなる。

 

「さっきまで、本当にさっきまで覚えてたのに……!」

 

「リク……。また、ベリアルの夢を見たの?」

 

「ああ、けど今回は今まで見たいな断片的な、少しだけ見えたとかじゃないんだ。はっきりと、まるで父、ベリアルと同じ目線になっているみたいな」

 

『以前まで見ていた夢が遠くから様子をみる観察型に夢だったのに対して、今回は自分がその中の1人になったかのような体験型の夢を見ていた、と?』

 

「そうそれ!多分そうなんだ、きっと近づいているからなんだと思うんだけど……ああもう思い出せない!」

 

 いくら思い出そうとしてもどれだけ頑張っても思い出せないことに苛立ちを感じていると、心配そうな目でペガが僕のことを見ていることに気づいた。

 

「な、なんだよペガ」

 

「ねえリク。やっぱりベリアルがいたっていう地球に行くのやめにしない?」

 

「なっ、何言ってるんだよ!」

 

「ベリアルの夢を見るようになってからリク、すごく辛そう」

 

「ーーーー!」

 

 辛そう、僕が? そんな風に思われてるなんて、思いもしなかった。

レムもそのことについてはペガと同じなのか反論しようとしないし……。

 

「キミは自分の運命を乗り越えた。 けどその後も戦いは続いてる」

 

「…………」

 

「怪獣を倒すことはウルトラマンとして仕方ないかもしれない。けどデビルスプリンターや並行同位体のベリアルは?他の人たちに任せてもよかったじゃないか! だから今回だって」

 

「期待、してるんだ」

 

 ペガが僕のためを思って言ってくれてることはわかってる。けど、だからこそ僕はぼくの本心をペガに教えることにした。

 

「誰かが助けていれば、闇に堕ちなければとか、もしかしてって何度も思った。一度だけでもいいから、ゼロとセブンのように肩を並べて一緒にって……。だけど、闇に堕ちなくてもベリアルは力に溺れてしまう、その可能性を見てしまった」

 

『並行同位体のベリアルですね』

 

「感じ取ったベリアルの力も、何度も見る夢も、僕のことを騙そうとしているのかもしれない」

 

 そう言いながら思い出すのは、あの二人の女の子。

顔や名前は思い出せないけど、それでもベリアルが……父さんのように接していたあの子たち。彼女たちの笑顔が嘘じゃないって、信じたいんだ。

 

「夢に出てくる人たちがベリアルに向ける信頼の眼差しは、偽りなんかじゃないと思うんだ。だから……会いたい、会ってゆっくり話がしてみたいんだ」

 

 辛くて苦しいのは、僕には向けることのなかったソレを与えている、貰っている人がいることをしって心がぐちゃぐちゃになってしまった結果だ。

 

 それとは別に、そんなベリアルとなら話が出来るんじゃないかって期待してるんだ。幼稚園や学校であったことを食事の時にうれしそうに話して、それを笑顔で聞いてくれる親子のように、……湊家のようにはいかないかも知れないけど……。

 

「ウルトラマンキングも気づいていない。あの宇宙に行くにはゼロでも厳しい。そんなチャンス、2度とないかも……いいや絶対にないから行きたいんだ」

 

「…………ジーッとしてても、ドーにもならないから」

 

「決めるぜ!覚悟!ってね」

 

 二人で顔を見合わせて笑い合う。うん、大丈夫。一人になったってこの絆は、絶対に忘れない。僕の心のなかでずっと光り輝くたいせつなたからものだ。

 

「僕には帰る場所がある。絶対に戻ってくるさ」

 

「うん、戻ってこなかったらリクの持ってるドンシャインのグッズ、全部ペガのものしちゃうから」

 

「なっ!おいペガ!それはないだろ!!」

 

「へへーん知らないよーだ。ペガって名前書いておくから!」

 

「そんなことしたら価値が下がっちゃうじゃないか!おい、待てペガ!影に隠れるなよ!!」

 

『やれやれですね』

 

 

 




本当のところを言うともっと邪ンヌを活躍させたかったし、アルトリアオルタやデミヤとも絡ませたかった。しかしながらロボをどうにかすると考えると他に何かしている余裕はないな。それに始まりということもあってベリアルスーツに融合獣と出さなきゃいけないものも多かったのでファントムや新シンはなくなくカット。

次の章あたりかたベリアルさんと旅をしていたから、ゲーム本編とは少しだけ心の在りかたが違う藤丸立香を描いていきたいと思ってたりします。

それではみなさま、更新はまたいつになるかわかりませんがジード5周年の年なので早めに投稿したいと考えてます。

 次回は海の底で会いましょう!(ちょうどアーケードに実装されましたね!!)


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深海電脳楽土SE.RA.PH〜君とつながるために〜
プロローグ



すみません。今気がついたらCCCのプロローグをあげてないことに気が付きました。

CCC1話から読んでも違和感はなかったと思うので大丈夫だと思いますけど一応。一応……。


 

なんだあのミニスカ! 

 

 

早く制御を戻せ! 

制御戻りません! 

こ、言葉が画面に映し出されてます! 

 

 

 

▶ ▶❘  ライブ

初配信♥おまたせしました♥BBちゃんです♥CCCコラボ♥

カルデアの全員が視聴中♥・2030年からライブ配信開始です♥

BB.Channel
下僕登録♥

登録者数 ひ・み・つ♥

 

 

『B〜B〜チャンネル〜〜♥』

 

 頭が痛くなりそうな甘ったるい声がカルデア中に響きわたる。

カルデアを運営する上で欠かせない重要な資金源である【海洋油田基地セラフィックス】からの通信が途絶え調べてみると、セラフィックスの存在そのものがなくなったかのように確認できなくなったという。

 

 カルデアはこれを緊急事態と捉え、調査を進みているとカルデアのシステムがハッキングされたのと同時に、先程の声が聞こえてきた。

 

『何千年経っても進歩しない人類の皆さ〜ん♥BBちゃんから特異点の発生をお知らせしま〜す!』

 

 突如として現れた月の支配者を名乗る少女・BBは、セラフィックスはこの時代に存在せずA.D.2030年の地球最深の海溝、マリアナ海溝で特異点と化していることを伝え、その修復を頼みたいと申し出てきた。

 

『というこ・と・で、センパイ早いところレイシフトしちゃいましょ〜!』

 

「なら早く向かおう!」

 

「それは不可能だよ」

 

 未来へのレイシフト。カルデアの技術では未来を観測することはできても、その存在は証明。未来の存在証明が無いままレイシフトを行えば誰であろうと存在が消失してしまうため許可できないとダ・ヴィンチが言う。

 

『今回は特別に2030年の未来に連れて行っちゃいます!』

 

 BBが通信を送ってきている場所こそが2030年の未来だからこそ、その年の特異点を存在証明する事が可能で、2030年の技術なら未来へのレイシフトができると。

 

『て、ことなので〜セラフィックスは後数時間で海底に達して水圧バラバラになっちゃうので〜急いでくださ〜い!』

 

 カルデアスに向けて立香が走り出すと、それを追うようにBBが映る映像画面が付いてきて話しかけてくる。

 

『元気だけはありますねセンパイ────いえ藤丸立香さん?』

 

「どうして私の名前を」

 

『マスター候補最後の47番、一般公募の補欠要員。こんなのが()()()()()()()ですかぁ?』

 

「…………(最後? なんか、おかしな言い方……)」

 

 

 

 

 


 

 

 

『センパイ、到着しましたか。ではレイシフトの設定をしますね〜って誰ですかその冴えない男性は? あ、整備員の方はまわれ右してもらっていいですかぁ〜?』

 

「へ? 何言ってるの、博樹さんは一緒にレイシフトするんだけど……」

 

『面白くない冗談ありがとうございま〜す! …………え? 皆さん本気で言ってるんですか?』

 

 未来へのレイシフトを行うために、待機していたサーヴァント3騎を連れてカルデアスに来た私は、すでに準備を終えていた博樹さんの後を追うように準備を完了させると、突然BBちゃんが博樹さんは帰れ〜って変なことを言い始めた。

 

『君はカルデアのシステムをハッキングしたんだろう? ならば彼、宮原博樹のことも知っているはずだが?』

 

『あ〜あ〜。あ〜そういう事ですね、はいはい完全に理解しましたとも。偶然、たまたま、奇跡的にもうひとり生き残りがいたってことですね、まあ一人増えたところでコチラに不備はありませんから? ちゃっちゃとレイシフトしちゃってくださ〜い!』

 

(そういえば博樹さん、ライムちゃんとベビアルは? 連れて行かなくていいんです?)

 

(何でかこの先の特異点から拒絶されてるみたいなんだよねアリスちゃん。ベビアルの方は今はべリアライザーになって貰ってるから大丈夫)

 

 BBちゃん、博樹さんのこと調べるの忘れちゃてたみたいで急いでもう一人分レイシフトできるように調整を始めた。

 

 それを横目に身一つな博樹さんに質問するとそう帰ってきた。

ライムちゃんは仕方ないけど、ライムちゃんの宝具の力で作られたベビアルは離れていいの? と思ったけど、ベリアル因子で補強されているのもあって博樹さんとライムちゃんの魔力経路(パス)が繋がってるなら大丈夫なそう。

 

『はいは〜い! そこの方の分も準備できましたのでレイシフトお願いしま〜す!』

 

 

アンサモンプログラム スタート

 

量子変換を開始します

 

レイシフト開始まで

 

3

 

2

 

1

 

全工程 完了(クリア)

 

 

アナライズ・ロスト・オーダー

 

人理補正作業(ベルトリキャスト) 検証を 開始します

 

 

 

 

 

 

now hackig.

 

 

OK! 

 

 

「────ぷっ。アハハハハハ、ちょっろ〜〜〜い! お二人ともちょろすぎです!!」

 

 レイシフトの最中、意識はあるけどその時代に移動するまでの間はサーヴァントですら無防備になってしまう、その隙を狙ってBBちゃんは笑いながら「BBジャミング」とか何とか言って一緒についてきて貰うはずだったサーヴァントたちを何処かへ転送してしまった。

 

勝ち目のない。ただ殺されるだけの戦場にようこそ

 

ここにあるのは不協と断絶

 

堕ちゆく先は至高の快楽

 

 

甘くとろける生存競争

 

さぁ最古にして最新の愉しい聖杯戦争を始めましょう

 

人類に残された、たった2人のマスターさん? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとちょっとちょっとどういう事ですかどうなってるんですかどうやってるんですか!! ()()()と共有した記憶(メモリー)と違いすぎるんですけど!? ()()()()()2()()()()なんて話聞いてないんですけど! しかもしかも、あの宮原博樹とかいう男の人、調べようとしてもデータに施錠(ロック)がかかってるとかどういう事なんですか? このBBちゃんでも解除出来ないプログラムなんて()()()()()()()()()()()()()。ええと、何です? 経歴、年齢、家族構成、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()1()()()()、それでそれで〜〜趣味はウルトラマン……? こんなどうでもいい情報はぽ〜いです」

 

 

 




この話があるとBBちゃんのガバが更に広がるだけ……なんでライム連れてきてないの博樹さんがわかるかな?

SE.RA.PH(セラフ)環境ならライム適任じゃ……。
適任すぎるからBBちゃんの手で省られました。


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1

お待たせしました。
 何故か最近謎にお気に入りしてくれる人が増えてるな〜と思ってたんですけどシンマン効果なんですかね?

それ以上にギャラファイのジード&ベリアルさん関連がどうなるのか楽しみで仕方ない今日この頃。
あれ復活したってことはジードあれになってくれるんですかね??

 感想、評価お待ちしてます。


「博樹さん! 昨日ありがとうございました!」

 

「今の自分があるのは博樹さんのおかげですから!」

 

「今度飲みにいきましょうよ、俺奢りますよ!」

 

 

 

…………ぁ

トプンッ

 

「カハッ! (ここは……!)」

 

 ()()()()()()()()そんな謎の感覚と()()()()()()()()気がしたけれど今はそれどころじゃない。

突然叩きつけられたような衝撃と呼吸が出来ない苦しさを感じながら、水の中へと強制的に落ちていく。

 

「ガボボッ! (立香ちゃん!)」

 

 見れば一緒にレイシフトした立香ちゃんも同じようで、BBの介入でサーヴァントがいないことはわかっているから逸れないようギガバトルナイザーを使って立香ちゃんのことを引き寄せて抱きしめる。

 

[皆さんは世界の崩壊を食い止めるために集められた。128人の魔術士(マスター)勇者(サーヴァント)です

 

 声が頭の中に響く。これから向かうセラフィックス、いいや既に()()()()この世界のことをまるでゲームのチュートリアルのように説明を始めた。

 

 自らの生を優先するために殺し合う出口無き戦場────電脳空間を模した新生快楽浄土。

【霊子虚構世界・SERIAL PHANTASM】

女性の身体が一つの世界になっている、通称SE.RA.PH(セラフ)という場所だと。

 

「わっ、わっ、吸い込まれる!!」

 

「離しちゃ駄目だよ立香ちゃん!」

 

 女性の身体に近づいていくと、頭の方へと引き寄せられる。

どうなるか分からないから、立香ちゃんのことを守るように抱きしめながら、頭へと飛び込んでいく。

 

「────! とっ、ほっ! ほっ!」

 

 頭をすり抜けると、見たこともないエネミー。牛のような黒い異型エネミーと紙から切り取ったような薄っぺらい、影が立体になったような異型エネミーが敵対してる? いいや、同じ個体だからって仲間意識はないのか、影同士、牛同士ぶつかり合ってる。

 

 そんな場所に落ちてしまうため、立香ちゃんのことを守りやすいように少しでも端の方へ移動できるように、ギガバトルナイザーを先に地面へ接地させて、それを弾くようにして端の方へと飛んだ。

 

「見たこともない、生き物?」

 

「ここがどこで、いつ襲ってくるかもわからない。後ろに下がっていて立香ちゃん」

 

「ムッ────。それより逃げたほうがいいんじゃ、博樹さんだってあんまり戦わないほうがいいんだし」

 

「わかってはいるけど……そうは言ってられないみたいだっ!」

 

 立香ちゃんの言う通り逃げ道がないか探しはするけど、エネミーが暴れまわっているせいで道がどう続いているのか確認できない。 それに、コチラのことを認識したのか牛のエネミーが口を大きく開き草食動物とは思えない尖った牙で噛みついてこようとしてる。

 

 影のエネミーもヘシアンのように自身の一部を鋭利にさせて私たちを突き刺そうとしてくるけど、幸いなことにどっちのエネミーもそこまで強いわけじゃないから私でも充分対処可能だった。

 

「はあっ! どうだい立香ちゃん?」

 

「ん────。! 博樹さん上っ! 何か飛んできてる!!」

 

 私がエネミーを倒している間に立香ちゃんには此処から先に続く通路か何かがあれば見つけて欲かったけど、彼女の指差した方に視線を向けるとまるでコマのように回転する……刀かな? が飛んでくるのがわかった。

 

 その刀はまるで意思を持っているかのように辺りにいるエネミーを切り裂き、倒していく。もしかして味方……ッッッ! いいや違う!! 

 

「立香ちゃんは頭を下げていて! ……ふぅ。はあっ!!」

 

 敵味方とか関係なく、そこにいる存在全てを斬り捨てるよう設定されているのかな? 私たち以外のエネミーを全て倒した刀は最後はお前だと言わんばかりに私たちに向かって回転を緩めず接近してくる。

 

 高さ的にも立香ちゃんなら頭を下げれば避けられるし、刀が回転しているのとは逆向きにギガバトルナイザーをぶつけるのにも邪魔になってしまうから好都合。タイミングを見計らい、手に力を込めて横薙ぎにナイザーを振るうことで刀を吹き飛ばすことに成功した。

 

パシッ! 

「へー、大通連を弾き飛ばすとかただの人間にしてはやるジャン!」

 

「だ、誰あれ……?」

 

 弾き飛ばした刀を掴み取り、親しげに話しかけてきたその少女。

スカートは袴風な感じだけど黒襟の白ブラウスに肩からかけている鞄のあの感じは……。

 

「立香ちゃん! サーヴァントもコスプレってするのかな?」

 

「えっ! ……魔女とか勇者とか水着とか……あとサンタが許されてるから女子高生のコスプレもありなんじゃないですか?」

 

「そっか……そうだようわっ!?」

 

「コスプレじゃないし……。へ、何? おっさんそんなに脱落したいん?」

 

 流石に女子高生の英霊がいるはずないだろうと立香ちゃんに確認していると、件のサーヴァントが脳天目掛けて刀を振り下ろしてきた。

 

 軽口を叩いてはいるけど緊張を弛めることはしていなかったから受け止めることができた。それに、彼女が敵を倒してくれたおかげで進みべき道も見つけた私は立香ちゃんにそちらへ行くように目で伝える。

 

「────逃がすワケッ!」

 

「こっちの台詞だ!」

 

 因子を活性化させ立香ちゃんの方へ飛んでいく刀を、受け止めている刀を弾きその勢いでナイザーをそちら向けて光弾を放ち吹き飛ばす。

 けど、それだけで終わらなかった。策があるのか彼女は私に向けてニヤッと犬歯を見せた笑顔を見せると空いている手を動かし始める。

 

「それだけで、アタシのこと止められるワケないっしょ!!」

 

「刀が炎に!? 立香ちゃん!!」

 

 弾き飛ばした刀の刀身部分が燃え上がり、焔へと変化したそれが立香ちゃん目掛けて向かっていく。流石にそこまでは予測できなかった。

立香ちゃんにもっと遠くへ逃げるように名前を呼ぶけど、当の本人は向かってくる焔を待ち構えながらカルデアの魔術礼装の上着を脱ぎ始めた。

 

…………もしかして! 

 

「すうぅぅ。はああああああっっ!!」

 

 衝撃吸収やある程度の攻撃の威力を軽減してくれるカルデアの魔術礼装を頭から被るようにして焔に向かって走り出す立香ちゃん。威力を軽減するっていっても0になるわけじゃないし、サーヴァントの攻撃なら尚更。 それでも逃げることじゃなくて敵に突っ込むことを選んだってことは……。

 

「ハハハ! 火廻に突っ込んでくるとかオモシロいじゃん!!」

 

「こっちのこと、忘れてもらっちゃ困るんだけど!!」

 

「ッ! 面倒、しつこい男は嫌われるって知らないん、おっさん!」

 

「妻には嫌われていないから平気さっ!」

 

 もうおっさんって呼ばれる歳だからそっちは訂正しない。今は少しでも立香ちゃんへの注目を減らす。そのためにナイザーによる連撃で相手の動きを抑え続ける。

 

「まっ! 相手のほう向いてなくたって、どこにいるかなんて丸わかりだしっ!」

 

「!!」

 

「そう来てくれると、思ってた!!」

 

 こちらを向いたまま焔を切り抜けて走ってきた立香ちゃんに刀が突き刺さる。

けど、サーヴァントならそれぐらいのことはしてみせると読んでいた立香ちゃんは、カルデアの魔術礼装を前に突き出しそれを貫通させることでほんの少しの時間を作る。

 

 魔術礼装を壁にすることで刀の軌道を見てから躱せるようにし、敵の懐へと飛び込んだ立香ちゃんは()()()()()()()()()()

 

「【ガンドッ!】」

 

「ッ!? う……っそでしょ!」

 

「よぉっしっ!博樹さん!」

 

「オッケー立香ちゃん!」

 

 倒せないことはわかってる。わかっているからこそ立香ちゃんのガンドで身動きが取れなくなった相手の土手っ腹に思いっきりナイザーを叩きつけてこのエリアよりも先へと吹き飛ばすことにした。

 

「キ────!! こ、今回は油断しただけだし! 次は絶対ぜ〜ったいこの第四天魔王の娘! 爛漫吹雪く華のJKセイバー、【鈴鹿御前】が、アンタたち二人のハートぶち抜いてあげちゃうシ!」

 

 私たち二人を睨みつけながら遠くへ飛んでいったJK? セイバーを名乗る鈴鹿御前。これまでの経験からああいうタイプは本当に報復しようとしてくるから気をつけないといけないけど……。

 

「「イェイ!」」

 

 パチンッとハイタッチしてマスター2人だけで何とか相手サーヴァントを退けることに成功したことを喜ぶことにした。この特異点SE.RA.PHの情報がなにもない状況だから腰を下ろして休むことは出来なそうだけど。

 

「あちゃ〜綺麗に穴開いちゃってる。魔力通せば直るかな?」

 

「まさか炎に向かって突っ込んでいくとは思わなかったよ。すっごい度胸だね立香ちゃん」

 

「ははは〜、鈴鹿御前の隙をつくならこれしかないな〜って思って。どうです、スカサハ師匠に更なる修練をつんでもらい! メイヴちゃんにほ〜んの少しだけ魅了を教えてもらったことでパワーアップしたガンド! 他はどうあれこれだけなら一流の魔術師にも引けをとらないって言って貰えたんですから!」

 

「おお〜すごい。私はベリアルさんの力に頼りっぱなしで魔術の方はからっきしだからな〜」

 

「いやいやいや、サーヴァントと渡り合えてる時点で博樹さんおかしいんですって」

 

「何よ、この状況」

 

 二人でお互いのことを褒めあっていると、まるでドラマで夫の浮気現場にばったり遭遇してしまった妻のような、もう後ろに効果音で【ガ~ン!】って音が聞こえて来そうなほどの落ち込みと驚きが交じった声が聞こえてきた。

 

 振り向くとそこにいたのはとても綺麗な女の子。顔が、スタイルが、とかじゃなくて()()()()()()()()()()()彼女自身の造形美が、とても綺麗に見えた。

 

 そんな彼女はまるで棘のように先端が尖っている鉄脚をカツカツと鳴らしながらコチラへと接近してくるけれど、なぜだか攻撃に備えなくていい。彼女から鈴鹿御前のような()()()()()を感じなかったからそう思えた。

 

「あ、アナタが頼れるのは私だけじゃなかったの! どういうことか説明して()()()()()()

 

「へっ!? な、なんで私の名前……ていうか誰?」

 

 

 

 




新宿の時のように、変わる部分だけ変えて〜ってやろうとしたら変化するところばかりなcccコラボ。
まだ全部書き終えてはいないんですけど既に新宿より話数あるんですよね……?
知ってます?これ、イベントシナリオなんだぜ……

今回の章サブタイトルも新宿と同じように今章のヒントのようなもの……。
まあ、電脳とウルトラマンっていったらねえ?


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2


ゾーフィのアーツ、シンマンと殆ど色変わらないからぽんって出せるのわかってるけど……
いつになったらアーリーベリアルさんのアーツ出してくれるん?付属アイテムないからだめなの?(ナイザーはベリアルさんとアトロシアスで2つ、ベリアルはデルタライズクロー)

後布マント版ロイメガ出しませんか?EXPOで赤目になってたりするからそれも付属で

CCCコラボは漫画版も結構進んでくれてるのでゲーム本編と漫画版両方参考にしながら書いてます。
感想、評価お待ちしてます。


 

またはじまった……

 

 

趣味の悪いこと

はー、最近はこういうのもあるんだね

 

 

 

 

▶ ▶❘  ライブ

cccコラボ鈴鹿さん撃退って本当ですかぁ?part2

マスターお二人とメルトが視聴中・BBスタジオからライブ配信中です

BB.Channel
下僕登録♥

登録者数 ひ・み・つ♥

 

 

『B〜B〜チャンネル〜

 

 「気まぐれでアナタの剣になってあげる」そう言った、私の名前を知っていた彼女【快楽のアルターエゴ・メルトリリス】と契約をしてすぐのこと。

 

 カルデアをハッキングしてきた時みたいな配信画面を空中ディスプレイに表示させたBBちゃんにこの特異点のことを教えてもらうことになった。

 

「は〜、これが立香ちゃんの言ってた」

 

「うん、博樹さんの部屋には映らなかったんですもんね」

 

『ちょっと〜無駄話なんてしてると説明してあげませんよ〜』

 

 BBちゃんの機嫌を損ねないように話を聞くと、このSE.RA.PH(セラフ)と呼ばれた特異点は間違いなく油田基地セラフィックスではあるんだけど、レイシフトと同じ要領なのかはわからないけど疑似霊子で電子(サイバー)化した結果があの裸体らしい。

 

 そしてさっきの鈴鹿御前の他にも合計128騎ものサーヴァントが召喚され、サバイバルを続ける聖杯戦争(生存戦争)が行われ()()()()()のだと。

 

『サーヴァントのみなさんは世界を滅亡から救う〜みたいな正義の心丸出しの大義名分で戦って貰っちゃってますけどね〜〜』

 

「そんな話嘘に決まってるでしょ」

 

「メルトリリスはなんの理由でこの聖杯戦争が行われているのか知っているの?」

 

「……それを調べるのがマスターであるアナタの、とアンタの仕事でしょ?」

 

 何かを知ってはいるようだけど、BBちゃんと顔がそっくりなのも含めて事情があるってことだよね。まあこの状況で助けにきてくれたんだから悪いことは考えてないでしょ。

 

『まあそういうことなので〜。あとの事はメルトに聞いちゃってください♥』

 

「え、まだ聞きたいことあるんだけど!」

 

『う〜ん。これ以上喋っちゃうと広告がついちゃうのでダ・メで〜す♥あ、ついでに皆さんにはプレゼントも用意しちゃってるので楽しんでくださいね〜』

 

 プツンと意味のわからない理由でBBチャンネルが切られてしまった。メルトリリスの方を見ても「ああいうヤツよ」とでも言いたげな顔してるし。

 

「よし、じゃあメルトリリス。KP?とかこのSE.RA.PH(セラフ)のこととか、あとアナタのクラスのアルターエゴについても詳しく……」

 

「そんなことよりも、早く逃げたほうがいいわよ」

 

「「え?」」

 

「BBがプレゼントとか言ってたから何かと思えば……。この先を進めば油田チューブエリアに入れる、あそこは複雑に入り組んでいるから早いとこ急ぐわよ。ほら走って!」

 

 まだ修復してない上着を着て、メルトリリスに言われるがままに走り出す。すると後ろの方からまるでガイアが変身して地面に降り立ったときのような音が響いてきた。

 

ゔあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!

 

「デカっ、えでっかい!!」

 

「いいから走るよ立香ちゃん!」

 

 身の丈を超える巨大な両手にも驚いたけど、何cmあるのかわからないくらいどデカいおっぱいに目を奪われてたら博樹さんに手を引っ張られて目を拘束された女の子から逃げることになった。

 

「メルトリリス!あの子は!?」

 

「【愛憎のアルターエゴ・パッションリップ】。私と同じBBを元にして作られたいわば姉妹のような子よ」

 

「姉妹!ていうかメルトリリスってBBちゃんから作られてたの?」

 

「あら?そこの説明もまだだったからしら?」

 

 異型の手だけで移動をこなし、這うようにコチラに迫ってくるパッションリップから逃げながらメルトリリスから話を聞き出す。

このSE.RA.PH(セラフ)を守るためにBBちゃんが作り出したのが衛士(センチネル)で、衛士(センチネル)には自らを強化するKP(カルマファージ)というものが付与されている。

 

 そして、衛士(センチネル)だったメルトリリスはBBちゃんのことが嫌いだから抜け出したけど、同じく断ったパッションリップは拘束具を使って操られていると。

 

「何とか助け出す方法はないのかい?」

 

「今はどう頑張っても無理よ、諦めなさい」

 

「でも、パッションリップ苦しそう……」

 

「……そう思ってくれるだけで今は良いわ。ほらあそこよ速く走って!」

 

 一瞬柔らかな表情をし、すぐに真剣な表情へ切り替えたメルトリリスの後を追い続ける。彼女が言っていた通りこのエリアはとても入り組んでいて元の道に戻れと言われたら無理。今はパッションリップを撒くために走り続けるしかない。

 

「…………」

 

「博樹さん。もしかして自分が時間を稼げば〜とか思ってませんよね?」

 

「へっ!? そ、そんなこと思ってるわけないじゃないか立香ちゃん!」

 

「やっぱり……」

 

 なーにか考えてると思ったらやっぱりこれだ!いくら逃げても障害物を壊しながら進む反則ショートカットをしてくるパッションリップとの差が縮まらないから博樹さんは自分が囮になって時間を稼ごうとしたんだ。

 

「新宿のときもそういう無茶しすぎて身体ボロボロになったの忘れたんですか?」

 

「いや、でもそれが一番、その、あれかな〜っと思ってさ」

 

「私が娘さんと同い年だからって子ども扱いしないでくださいって前から言ってるじゃないですか!私と博樹さんは同じカルデアのマスター!OK?」

 

「う、うん。わかって入るんだけどね?こればっかりは性分だからか……(後、君はベリアルさんが残した忘れ形見のようなものでもあるし)」

 

「行かせませんから、絶対」

 

 どうにかこうにか私のことを言い包めてパッションリップの方へ向かおうとしているのが分かった私は、博樹さんが勝手に向かわないように彼の手を強く握って一緒に走る。

 

「……アナタたち、仲がいいのね。親子って言われても信じてしまうほどに」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「うむ、いいぞいいぞ!もっと逃げるがよい!」

 

「うーむ、ハッ!あそこにいるのはご主人ではないか!」

 

「こーれ、勝手に出歩こうとするでないわ」

 

 チューブエリアから遠く離れた場所から立香たちがパッションリップから逃げ続けているその様子を愉しそうに見ている存在がいた。

 

 立香が連れてきたであろうサーヴァントの一騎を()()()()()()()()()()で拘束しながらも、その瞳は逃げ続ける彼女たちから逸らさない。

 

「ようやくだ、ようやく来てくれたのだからのぉ。さてはて、()()を楽しませてくれるのは誰であろうか? あの人と何かが混ざった男かえ? ただの人間の女かえ? それとも……」

 

 自らをわえと呼称するそのサーヴァントは、ニヤニヤと笑いながら立香のことを値踏みするように見る。誰が自分のことを愉しませてくれる、歓ばせてくれる相手なのか。

 

「く、ひ、ひ!いいのぉいいのぉ! ()()()()()()()のにあの気丈な振る舞い、昂ってくるではないか……!」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「そういえばさ」

 

 ここまで逃げ続ける間、争い合ってるサーヴァントや何か叫んでるサーヴァントがいた(全員パッションリップに倒されちゃったけど)けど一人としてマスター見ていないことに疑問を投げかけたらメルトリリスは「マスターはいた」と答えた。

 

「サーヴァントが召喚された時点でマスターは()()()()()()()()

 

「死んだって、それじゃあサーヴァントたちが戦う理由なんてないんじゃないか」

 

「そうね、だからみんな我を忘れて醜く争ってる。と、言いたいところだけれど」

 

 「声を聞いた」。ここに来る間に戦ったのだというサーヴァントたちがそう言っていたと、マスターたちの生き残りたい、助かりたいという声が聞こえたからサーヴァントたちはその願いを叶えるために戦い続けてるんだって。

 

「ま、こんな話をしても意味がないでしょう? アナタたちの身体はこの空間に長時間いたら分解されてしまうの。早く安全な場所まで行かないと」

 

「て、言われてもパッションリップまだ追ってきてるし」

 

「やっぱり私が「それは駄目」うぅ」

 

「それなら、ここは私に任せてください」

 

「へ?」

 

「!?」

 

「貴方は……!」

 

 安全な場所に行くためにもパッションリップをどうにかしなくちゃいけない。けど博樹さんを戦わせることはしたくない。どうすればいいのか悩んでいると、その声が聞こえてきた。

 

 確かに私が契約しているサーヴァントのうちの1騎だけど、今回連れてきたのは貴方じゃなかったよね?

 

「立香、()()()()()。あなた方の驚異を押し留めるため、このガウェイン騎士として助けとなりましょう」

 

「……その呼び方、やめてくれって何度も言ってるんだけどなぁ」

 

 

 




立香ちゃん(マスター)よりもガウェインとに絆レベルが高い博樹さん。

もう一体出てきたサーヴァントが誰かって?まあ、漫画版で出てきたイシュタルではないことは確かです。


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3



どうも、シン・のおかげでULTRAMANが再評価されてきてうれしい作者です。
ネクサスやノアよりも生態的なネクストが一番好きですし、本当は新宿に出てくる怪獣はザ・ワンにしたかった……。

ノアさん真木さんとはお喋りするし、あんまり見せないけど真木さんのこと大好きだろお前!ってなるところとかシン・に似てるよね。




感想、評価いただけるとうれしいです。


「ムンッ!!」

 

 円卓の騎士・ガウェイン。「太陽の騎士」として謳われ、主に忠義を尽くすことを第一と考えるもう一つの異名である「忠義の騎士」としての在り方は契約した私本人も惚れ惚れしてしまうほど。

 

 その実力も流石としかいいようがないし、今も周りの建設物を伐り倒して落とすことでパッションリップを動きを封じてみせた。

 

 まあ、そんなガウェインに一つ問題があるとするならそれは……。

 

「…………彼、か」

 

「あら? さっきまであんなに戦おうと息巻いていたのにあのむさ苦しい騎士が来てからは静かじゃない?」

 

「ははは、博樹さんガウェインのこと苦手、なんだよね」

 

 そう、そうなんだよね。第6の特異点、キャメロットでガウェインは「獅子王の騎士」として立ちはだかり、博樹さんと激闘を繰り広げた。その戦いで何があったのかは詳しくは知らないけど、その後カルデアに召喚されたガウェインは物凄く博樹さんにかまうようになってた。

 

『サー・博樹! お時間はよろしいでしょうか? ならば私と訓練をしましょう!』

 

『食事はそれだけでよろしいのですか? これも食べたほうがいい!』

 

 私が見たのはこれと……

 

『はっ! べ、ベリアルさん! 変わってください!! お願いします彼が、ガウェインが!!』

 

『はっ! 博樹殿!!』

 

 博樹さんを見つけた瞬間に後ろに太陽が見えるくらいの笑顔で駆けてくる姿をカルデアで見かけたことがある。

 

 カルデアのガウェインはカルデアのガウェインで、「獅子王の騎士」だったガウェインとは違う。違うんだけどあの時のガウェインのことを忘れろっていうのは流石に無理な話だし、それなのに大型犬のごとく構ってくるから博樹さんは最近だとガウェインを見つけると逃げ始めるようになってたんだよね。

 

「ていうか立香、博樹のことももそうだけれど()()()()()()()サーヴァントがいたなんて聞いてないわよ! もう、どういうことよ……」

 

「え? 聞いてない? ま、まあ本当は同行したサーヴァントが3騎いたんだけどBBちゃんに邪魔されてはぐれちゃったんだよね。本人も何処かに飛ばすとかなんとか言ってた気がするし」

 

「けど、コフィンに入るときに彼はいなかったはずだよね」

 

「それは〜「よかった。ここにいましたか」

 

 色々と話をしているうちにパッションリップの動きを封じるっていう仕事を終わらせたガウェインが戻ってきた。う〜ん、確かに連れて行くメンバーの中にガウェインはいなかったはずなんだけどな〜。いたら博樹さんの反応でわかるはずだし。

 

 本人に聞いても冗談だって笑ってくるし、どうなってるんだろう? 

魔力がガウェインに渡っているのを感じるから契約したサーヴァントなのは間違いないはずだけど……んんん??? 

 

(イレギュラーが多すぎだわ。けど、選り好みしている暇はない、チャンスだってこれ一度切りなんですもの)

 

「メルト?」

 

「ッ! な、なによ。それに突然名前を省略してくるなんてどういうつもり?」

 

「いや、未だに何がなんだか分からない状況だけど、私たちのことを助けに来てくれたことに間違いはないんだし。急ぎすぎて挨拶もあれだったな〜って、あとメルトって略したほうが可愛い気がして!」

 

「はは、立香ちゃんらしいね」

 

「…………」にぎにぎ

 

 難しく考えるのは後! そう思って私は握手をするためにメルトに向かって手を伸ばした。博樹さんとガウェインには笑われたけどいいのこれで! ベリアルさんとも最初にこれをやって仲良く? なっていったんだから。握手は私の最強の武器の一つなんです! 

 

 そんなことを思いながらメルトが手を握ってくれるのを待ってると、メルトは両手を擦り合わせてにぎにぎし始めた。何だろうあれ、まめ結びになったビニール袋を解こうとしてるあの感じに似てる。いいや、こっちから掴んじゃえ! 

 

「────「へへへよろしくね! メルト!」!!!!?」

 

「うわ、顔真っ赤っか」

 

「まるで太陽のようですね」

 

チラッ(自分のことをかけて話したんだろうけど無視しよう無視)

 

『はいは〜い何かラブコメみたいな波動感じちゃったので邪魔しに現れたBBちゃんで〜すていうことでここで配信スタート

 

 

 

ルール違反ってなんのこと? 

 

 

真っ赤になんてなってないわ! 

これはまた、奇っ怪な……

 

2回目だと馴れてくるね

 

 

 

 

▶ ▶❘  ライブ

cccコラボルール違反はゆるしませんpart3

マスターお二人とサーヴァント2騎が視聴中・BBスタジオからライブ配信中です

BB.Channel
下僕登録♥

登録者数 ひ・み・つ♥

 

 

 

 【マスター1人にサーヴァントは1騎まで】という聞かされていないルールを違反したからと開始された今回のBBチャンネル。そんなこと聞いてないとか、ラスボスを自称するBBちゃんが最序盤から出てくる方がルール違反なんじゃないかって抗議してみたけど。

 

『このSE.RA.PH(セラフ)ではすべての事象がわたしの思うがまま。BBちゃんがルールなのです!』

 

 だからルール違反をする私には罰が必要ですとかなんとか言ってサーヴァントを2騎、エリちゃんとロビン・フッドを喚び出したんだけど……。

 

 あっち2騎も2騎でBBちゃんのイタズラで霊基の格、ここは電子世界だからゲームみたいにレベルで表すっぽいけど、80とか70レベルあったのが30レベルまで下げられちゃったっぽい。御三家が最終進化まで至れないレベルまで下げるなんて……。

 

「どうやら相手は私は一人で大丈夫なようですね。さあ、時間もないので始めましょう」

 

「あの2騎も可哀想ね。BBのイタズラでレベルダウンなんてつまらないことされて」

 

「確かにつまらん。障害となるのなら最も険しい壁でなくてはならないからのぉ」

 

「「「「「「『!?』」」」」」」

 

 聞いたことのない声が突然後ろから響いてきた。響いてくるっていうか、いつの間にか顔が私と博樹さんの真横に出てきたから響いたように聞こえたんだ。

 誰も、BBちゃんすらその接近に気づいていなかったのか驚きの表情を見せてるし、誰なのこのサーヴァント……! 

 

「シッ!!」

 

「お〜お〜ペッ。そう慌てるでない、そんなことをしても()()()()()()()()()()

 

「!? (コイツ、どこまで!!)」

 

「わえは愉しみは最後までとって置く(たち)だからのぉ。それに貴様を狙っている者は他にもおるゆえ、わえの狙いは()()()だ」

 

「!!?」

 

「博樹さんっ!!」

 

 突如として現れたサーヴァントにメルトが膝蹴りを容赦なく顔面に食らわせたけど、相手はそれを歯で噛みついて止めてみせ、腰下から伸びるあれは……エリちゃんの尻尾に似てるから竜種のサーヴァント? 

 

 そのサーヴァントの狙いは博樹さんだったみたいで、その竜の尻尾を器用に使って博樹さんのことを捕らえるとそのまま連れ去られてしまう。

 

「BB、最初からこれが狙いでしたか?」

 

『へ? あ、あ〜。気づいちゃいました〜? マスター二人で行動するとかそんな協力プレイ機能は実装していませんので〜別れてもらっちゃいました〜あ、メルトをていうか私たちを狙ってる相手がいるっていうのも本当なんで、対応お願いしま〜す

 

ポロン♪ ポロロンポロン♪ 

 

「この音は……?」

 

「────。ガウェインはそっちの二人を片付けて! メルト、構えて! 速攻で終わらせて、博樹さんを迎えにいくよ!!」

 

「……ふっ、その切り替え悪くないわね立香(マスター)

 

 博樹さんが連れ去られてしまったことで動揺しちゃったけど、BBちゃんが消えたのと同時でいつか聞いた音色が耳に届いてきたおかげで気持ちを切り替えることが出来た。

 制服のボタンを閉め直して、ガウェインとメルトに指示を出していく。私たちがいくまで無事でいてよ博樹さん! 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「うわっ!」

 

 怪獣の尻尾のようなものに捕らえられた私はだだっ広いエリアに移動され、そこに投げ飛ばされた。転がりながらもギガバトルナイザーを展開して体制を立て直すと、相手は腕を組んでニヤニヤと笑っている。

 

 角や尻尾の生えた金髪褐色の女性……女性? なんだろう、確かに見た目は女性なんだけど伝わってくるそれは女性らしくないというか、けどそれも間違いじゃないっていうか……? 顔や手足の所々に蛇の鱗のような紋様が走っているから、やっぱり竜とかそっち系のサーヴァントなんだろうか? ロボや竜の姿に変わる清姫ちゃんとかもいるんだしそういうサーヴァントがいても可笑しくないだろう。

 

「わえは()()()()、天元の魔。内に魔を秘めた人間よ、貴様の名を答えろ」

 

「……博樹、宮原博樹」

 

「ヒロキ、ヒロキ……うむ、覚えた。ではヒロキよ! わえを、愉しませてみせろ!」

 

「ッ!」

 

 手に一本、そして背中に浮いている4本の両槍って言えばいいのかな? ギガバトルナイザーのように両端とも鈍器として使えるように、相手の槍も両端が相手を貫けるように鋭く尖っている。

 

 その槍を魔力で操っているのか、手を振り下ろしただけでコチラに向かってくる。最初の一本をナイザーで弾き、当たらないように走りながらこちらも光弾を相手に向けて放っていく。

 

「く、ひ、ひ! いいぞ、ならコチラはどうだ!!」

 

 今度は槍5本で輪を作り回転させ、光輪のようにして襲いかかってくる。

身体を縮めて避ける、飛び越えて避ける。いいやだめだ、魔力を使って操れる以上この攻撃を避けようとしても追従してくる。

 

「だあああああっ!!」

 

「よいな、だがわえを忘れるな」

 

「ぐあっ!!」

 

 回転するのと逆方向に鎌状にしたナイザーをぶつけることで弾き飛ばすことに成功したけど、接近に気づけず尻尾の殴打を喰らい吹き飛ばされてた。

 

「く、は、は、は、は! いいぞ、簡単には砕けないその身体! ならば次はコチラだ!!」

 

(なんだコレ……けど、この中にいるのは危険だ!)

 

 ヴリトラの手に青黒い炎が揺らめき、その手をこちらに向けると私の右足を囲むように半透明な立体物が現れる。何が何だかわからないけど嫌な予感だけはびんびんしたから直ぐに逃げ出す。

 

 そうしてヴリトラが手を握りしめると手の中にあった炎が弾けたと同時に立方体の内部が弾け飛んだ。あの中にいたままだと足が潰れていたってことだよな……。

 

「ほれほれ! どんどんいくぞ!!」

 

「ッ────!」

 

 一度に一つしか出せない。そんな訳はなく、ヴリトラが手を大きく広げると複数の立方体が地面付近に接地される。入ったら起動する地雷ってことだよなこれ……。

 動かなければ、そうも思ったけどそうはさせないとヴリトラはこちらに槍を飛ばしてくる。

 

「ハハハ! 宙へと逃げたか! さあ、次はどうする! わえのことをもっともっと滾らせろ!!」

 

「────ヴリトラ」

 

「ん? 何かえ?」

 

 地雷を踏まずに逃げるには空中に逃げるしかなかったから、ナイザーを使って空高く飛び、落ちていく中でヴリトラへと話しかける。

 

「君は私の中に魔が秘められているといった」

 

「ああ、今も貴様が振るっているソレはわえと同じ魔であろう?」

 

「いいや違う。これは闇だ、誰の心にでもある暗黒だ。誰かの障害となる魔じゃない」

 

「ほう? ならばその闇の力、わえに見せてみろ!! わえという障害()を超えなければ、貴様に先はないぞ!!」

 

「ああ見せてやる! 私の、()()()()()を! 行くぞベビアル!!」

 

 ヴリトラに向かって落ちながら、私は腰にかけてあるベリアライザー(ベビアル)を手に取り胸の前に掲げながら起動させ、アーマーを纏う。

 

「行くぞ! ヴリトラぁあああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベリアライザーとベビアル
 ベリアライザーは博樹が契約しているアリス(ライム)の霊基にあるBの因子を抽出して生まれた存在であるため、離れていてもベリアライザーとしての使用は可能だがベビアルとして機能するにはアリスがいないと出来ない。

ヴリトラ
 BBの衛士のうちの一体。何故BBに与しているのかは不明、行動理由も不明だがどうやら博樹以外にも興味がある人物がいるらしい……。



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4


ネクストvsザ・ワンの空中戦大好きなんで、グルーブvsトレおじやタイガ1話なんかのCG見たときは心踊った思い出。

初登場のずっとCGだったグルーブが一番好きだからギャラファイとかで出てくるときスーツで出てくるとなんか違和感感じるんですよね。

感想、評価お待ちしてます。


 

 

「いやいやいや、なんですかこれ?」

 

────BBスタジオ。BBが立香たちに向けて映像を流す際に使用しているその場所から博樹とヴリトラの戦いを見ていたBBは驚愕の声を上げていた。

 

「鈴鹿さんとの戦闘で彼がサーヴァントともある程度戦える魔術士だっていうことはわかっていましたけど、これは流石に規格外すぎません?」

 

『いいぞ! いいぞ! ヒロキ!! 滾ってくるではないかぁっ!!』

 

『ハッアアアアアアアッッ!!!』

 

「彼が何なのかってですか? 正直BBちゃんもお手上げなんですよ、カルデアのデータベースに乗ってる情報とはまるで違う。衛士(センチネル)として強化されてるヴリトラさんに血を吐かせるとかどんなチートキャラですかって話ですよ」

 

 まるで他に誰かいるかのように話をするBBは、画面の先で戦い続ける2人を見続ける。普通の人間だと思っていた博樹のその異常性を……。

 

アーマーを纏った事で強化された博樹は、ヴリトラの槍の連撃、匣による捕爆を抜けギガバトルナイザーによる一撃を叩きつけた。受け身も取らずに叩きつけられたヴリトラは、口から血を吐きながらも嗤い、愉しそうに戦いを再開する。

 

 最初は遊び半分、様子見で戦っていた顔ではない。本気で相手を喰らおうとする竜の本性を剥き出しにした笑みを浮かべながら戦うヴリトラ。

 

『ずっと、ずっと()()()()()! ここまでわえのことを昂らせてくれる存在を! ()()()()()()()()()()()()!! わえの欲を満たすものを!!クヒヒヒヒヒッ!!』

 

(ずっと、ずっと待っていた? どういう事だ、セラフィックスが特異点化したのはつい最近のはずだ。けど、ヴリトラのその言い方はまるで……)

 

『あちゃ〜ず〜っと溜まってた鬱憤が爆発しちゃった感じですか〜。まあそれもそうですよね〜、つまらないつまらない言いながら聖杯戦争を()()()()()()()んですもんね〜」

 

『いいぞ! これも弾くか! 絶対に、貴様を堰き止めてやろう!!』

 

『止められるものなら、止めてみろ!!』

 

「ええ〜? まさか、こんな早くに衛士(センチネル)1体削られるちゃうんですか〜?」

 

 二人の戦い。このSE.RA.PH(セラフ)を守る役割を持つ衛士(センチネル)であるヴリトラが倒されてしまうのではないかという不安を感じながら、戦いの行末を見守ることを続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「この()()()()()、一時ではありますが従者として仕えましょう」

 

 【完全流体】本来の姿はカタチを持たない変幻自在の流体であるメルトリリス。彼女のその性質と襲いかかってきたサーヴァント【円卓の騎士・嘆きのトリスタン】の相性は最高で、ダメージ一つ受けることなくトリスタンを倒すことが出来た。

 

 そうして、トリスタンは英雄を侮辱しているBBが、この歪な聖杯戦争が許せないっていう気持ちを聞いたから味方として迎えることになった。

 

『わたしはトリスタンを処分してほしいと頼んだn「BBちゃん今はそれどころじゃないからあとで!」へっ?』

 

「ガウェイン、博樹さんが連れて行かれた方向は!」

 

「あちらですマスター!」

 

 BBちゃんが何か伝えようとして来たけど無視無視! 早いところ博樹さんのところに行かなくちゃ! 

 

「BBの話を遮ってまで急ぐことかしら? まあアナタたちマスターがこのSE.RA.PH(セラフ)内で活動できる時間はせいぜい2時間半程度だけれど……」

 

「そうじゃない! そうじゃないんだよメルト!」

 

「?」

 

「博樹さんはこういう時逃げないで戦っちゃうの、だから早く助けに行かなくちゃ!!」

 

 私の場合サーヴァントがいないと戦う力がないから逃げて違う道を、それがどんなに遠回りになったとして勝機に繋がる道を見つけようとするけど、博樹さんは違う。

 

 ずっとベリアルさんと同化していて、今もサーヴァントと戦うだけの力が残っているから戦う、戦っちゃう。自分の身体に多大な負荷がかかるっていうのに、そんなの無視して……。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

(戦いの高揚、敵意……だけど、ヴリトラからは私のことを殺そうっていう殺意を感じない)

 

 ヴリトラと本気で戦いながら、博樹は些細なその違和感を感じ取っていた。このSE.RA.PH(セラフ)に来て最初に戦った鈴鹿御前と同じ、他のサーヴァントとは違うナニカを持っているのに、殺意を振りまいて襲いかかってきた彼女とはまるで違う。

 

 心の底から待ち侘びていたと、心に空いたその空洞を埋めるために戦っているような、自分を満たせる相手なのか確かめるように戦闘を続けるヴリトラ。

 

「なんじゃ、もう終わりかえ? つまらんつまらんつまら〜ん!」

 

「はあ、はあ、はあ、くそっ! (もう少し時間があると思ったのに!)」

 

 ベリアルという存在と共にあったから、相手が如何なる悪であろうとも話はできるかも知れない。その可能性を捨てることが出来ない博樹はその為にギガバトルナイザーを振るっていた。

 

 だが、誤算があった。活動時間が3分しかないベリアルアーマーは、使用したあとの負荷が大きすぎるという理由で新宿で使用以来一度として使わないようにしていた。

 あの時は博樹自身も極限状態での使用だったため3分という時間がとても長く感じたことで起きた弊害。3分という時間の短さを甘く見ていた。

 

 ベリアルと同化していた時の巨人化、ウルトラマンになっていた時はベリアルの力が強すぎたために3分経たずに敵を倒してしまっていたために博樹はヴリトラに【ベリアルジェノサンダー】を叩き込む前に活動限界がきてしまった。

 

「その力、使うにも時間が限られておるのか。もっとわえの事を愉しませてくれると思うたのじゃがなぁ〜」

 

「ははは、私ももうちょっと持つと思ったんだけどなあ」

 

「ふ〜む。どうしようかのぉ〜、う〜むセンチネルとしての役目を全うするのもの〜」

 

「そうだヴリトラ君はBB側……パッションリップや鈴鹿御前と同じなのかい?」

 

「む? そうじゃのぉわえは視覚を担当しておるが……まあ()()()()()()()()()()()自ら望んだのだがな」

 

 長く、戦っている時と同じでヴリトラの言葉に何処か違和感を感じた博樹は、少し息を入れたおかげで立ち上がれるくらいには回復したので、立ち上がって話を聞こうとした、その時だった。

 

「ふっ、お前の勝手だが死にたくないならそのまま立ち上がるな」

 

パアンッ! 

 

「! お〜お〜」

 

「君は……」

 

 1発目が放たれてから連続で続く銃撃音。声が聞こえた後方へと博樹が顔を向けるとそこで二丁の拳銃を構えるサーヴァントが立っていた。

 

「エミヤ……オルタ」

 

「タイミングが良かったか────いや、あのサーヴァントと何か話をしたがっていたアンタにとっちゃ悪かったか。だが……」

 

 博樹のことを認識していることから立香のサーヴァントではあることは確かだが、博樹がヴリトラと話をしようとしていると理解しながらもエミヤオルタは攻撃の手を止めない。

 

「う〜む、貴様もなかなかに面白そうじゃが。興が醒めてしまった、わえはここで帰らせてもらうとしよう」

 

「まっ、て! 待ってくれヴリトラ!!」

 

 エミヤオルタの銃弾をすべて弾いたのか、博樹から受けたダメージ以外負っていないヴリトラは博樹がもう全力を出せないこととエミヤオルタの介入で飽きたらしく、姿をくらませようとするが博樹の一言でほんの少しだけ留まった。

 

「────、どう、だった私たちの闇は?」

 

「…………」

 

 ずっと待っていたとは? 堰き止められた世界とはどういうことなのか? 聞きたいことは山ほどあった中で、博樹がヴリトラに投げかけたのはその一つだけだった。

 ヴリトラ本人もまさかそんな質問がくるとは思っていなかったのか面を食らった顔をするが、直ぐににやぁっと嬉しそうな笑みを博樹に向ける。

 

「く、ひ、ひ! 確かに魔ではなかったな、だがわえを満たすにはもう後一歩足りんかったのお。次に会うときはわえを満たせよ、ヒロキ」

 

 それだけ。たったそれだけ言ってヴリトラは彼方へと消えていった。

 

「たは〜〜、よかった〜〜」

 

正義の味方(ウルトラマン)の力を使っても倒せず、自分の方が倒れるとはな。関心するよ」

 

「うん、3分がどれだけ短い時間なのか実感したよ。もう少し続くと思ったんだけどな」

 

 自分の中にあるベリアルの力が単なる魔ではないことを証明できたの喜びで脱力している博樹。そしてそんな博樹に嫌味を言うが軽く流されてしまい真顔になってしまうエミヤオルタ。

 

「……まあいい、何か起きたときはアンタを捨てていく。それでいいなら肩くらいは貸してやろう」

 

「ん、ありがとう。君も気がついたらこの特異点に?」

 

「ああそうだ。まあオレは昨日のことさえ朧気な壊れかけの存在だ、自分でも言っていることが正しいのかはわからないがな」

 

「ふふ、そのメモ帳はそのためのものなんだろう? そう自分を卑下するもんじゃない」

 

「…………」

 

 エミヤオルタ。英霊エミヤの別側面として召喚された反英霊の彼は、オルタとして墜ちた影響なのか、記憶や味覚果てには痛覚といった戦闘に用いらない感覚のほとんどを切り捨てている。

 しかしそれでは英霊としてマスターと契約している身として余りにも不都合が多いと結論付けたのか、もしくは崩れかけの自分を保つ唯一の方法として残しているのか、その日あったことを逐一メモや日記に記している。

 

 いつ知られたのかはわからないが辛辣な態度をとっても嫌味を言っても普通に返してくる博樹に、言葉を返すのは非効率と考えたのかエミヤオルタは口を閉じて歩きだす。

 今回博樹のことを助けたのも、マスターが二人いること、デメリットはあれどサーヴァント相手にも戦えること、といった結果を加味した上で助けたほうが効率が良いと思った上での行動だ。

 

「あっ! 見つけた!! お〜い博樹さ〜〜ん!!」

 

「? あのアーチャー、まさか……」

 

「立香ちゃーん! あれ、ガウェインが抱えているあの人ってもしかして……ここの職員かな?」

 

 そうこうして歩いていると、博樹を探していた立香たちと合流することが出来た。サーヴァントが1人増えていることは気にしなかったが、博樹はガウェインが抱えているカルデアのものによく似た制服を着る女性に、何かが噛み合っていないような、何かを隠しているような、そんなほんの少しだけの違和感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ゲーム本編にはいなかったヴリトラ。ええそうです、今章のピックアップ鯖といっても過言ではないでしょう!

このセラフだからこそ召喚条件が奇跡的に達成されたおかげで応じてくれたヴリトラ。果たしてヴリトラの言葉の意味とは?BBの言っていた勝ち続けてきたとは?


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5


ギャラファイ3、アブソリュートティターンが一気に好きになれそうな予感がしてます……!
本当日の目を見なかったリブットがここまで活躍してるの本当うれしい!



感想、評価お待ちしてます


(はあ、まったく……どうなってるっていうのよ)

 

 ヴリトラとの戦闘を終え、博樹と合流した立香たちはメルトリリスの案内の元、データ化した肉体が分解されることのない安全地帯(セーフティエリア)、ポートピア・サイにある礼拝堂に辿り着きそこで休息をとっていた。

 

 

(ウルトラマンに、ベリアル……そしてそれを召喚したのが宮原博樹……)

 

 

 そこで立香たちはメルトリリスからこのSE.RA.PH(セラフ)の現状、ルールを聞き、その逆にメルトリリスはカルデアのことを、人理修復の旅路を立香から聞いた。

聞いたからこそ、メルトリリスは悩み、迷っていた。

 

(そんな話、()()()から聞いていない)

 

 本当に、戦い続けていいのだろうか? 守る価値があるのだろうか? その一つの悩みがメルトリリスの心を、濁りのない何処までも透き通った水のような心を、大雨が河の水を汚してしまうように濁らせてしまっていた。

 

(無駄、だったのかしら……。あの子の犠牲も、こんな所まで舞い戻ってきたのも全部……)

 

 深く、深く沈んでいく。底のない汚水の中に、沈んでいってしまう。

 

「────ッ!」

 

 気を晴すために教会内を歩いていると、礼拝堂の一番前の長椅子に座りながらその手に持つカプセルをビー玉を光に反射させるように掲げながら、考えごとをしている立香を見つけた。

 

「立香……」

 

「メルト……眠れないの? 私と同じだ」

 

 にへら〜っと何も考えていないような笑顔を()()()()()メルトリリスに声をかける立香に苛立ちを覚えながら、彼女は立香の隣に腰をかけることにした。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

────誰も気付かないうちに、この油田基地は乗っ取られていた。

気がついた時には何もかもが手遅れだった。

 

 

いや。本当はみんな、とっくに気がついていた。

それでも全員こう思ったんだ。

 

”そんなこと、恐ろしくて認めたくない”と。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 まるで、本当に鈍器で頭を殴られた感覚だった。

博樹さんを探している途中、倒れているセラフィックスの職員さんに触れた途端に流れ込んできた、データ化した人間の記憶(メモリー)

 

 ただなんの才能もなかった普通の人が、この事件に巻き込まれて、ここでの100分が現実での1分という地獄の時間の中、狂っていく人たちを傍観しながらも、何とか普通でいようと頑張り続けた人の記憶……。

 

 生きることに諦めてしまい、最後に煙草を吸おうとしても風紀を正そうとする理不尽な人たちの手で吸いきれずに、殺されてしまった。

 

「────何をしているのかしら? サーヴァントと違って貴女は()()()()()なのだから休まないと身体が持たないわよ」

 

「普通の人間。普通……か」

 

 博樹さんと合流して、メルトに連れられて来た教会の中でようやく休憩をとることが出来たけど、落ち着く時間が出来て逆に考えすぎていたところでメルトが声をかけてくれた。

 

「ねえメルト。メモリーの人もそうだったけどさ、普通ってなんだろうね?」

 

「……それを、人間でもないエゴの塊がわかると思って?」

 

「ははは。────これがやりたい、こうしたいなんて大きな目標なんてもってなかったから、カルデアに連れてこられた時もああそうなんだ〜くらいの気持ちで受け入れてた。人理を修復するのもさ、私しかいなかったから仕方なくって感じだった」

 

 メルトやトリスタンに説明したのとは別。私の主観、私が心のうちで思った事をメルトに向かって吐き出す。『10年海の上にいればいいだけ、それが終われば普通の生活に戻れる』そう考えてたメモリーの人に同情、共感……したからなのかな? みんなには伝えないようにしてる本音をメルトに。

 

「今のアナタじゃ考えもつかないわね」

 

 メルトの言うとおり、カルデアに来る前と今だと結構変わったな〜って自分でも思ってる。変わらないと、置いていかれてしまう。だから変わらなくちゃって必死だったから。

 

「────人理を修復するために駆け抜けてきた。得るものも沢山あったけど、無くすものも沢山あった。令呪(これ)や魔術だって、何も知らない高校生のときには考えもつかなかったもの」

 

 その時代に生きる人たちが目の前で殺された時、最初は胃の中のものを全部吐き出したし、目も背けていた。犠牲よりも、生存を優先しなくちゃいけないときは何度心が折れてしまいそうになったかわからない。

 

「経験なんて何もない。けど失敗は許されない、後退すること許されない。最善の答えを導き出せたなんて自信はこれっぽっちもない。他の誰かだったら……魔術の素養を持つ人だったら……それこそ博樹さんに全部任せちゃうことだって出来た。「なら(けど)」」

 

 ならそうすれば良かったって、私を案じて言ってくれたメルトと言葉を被せながら、手に持っていたメビウスのカプセルを強く握りしめてメルトを見つめる。

 

「それで突然普通に戻れって言われてもさ、戻りかたわかんないんだよね」

 

 笑って言ってみたけど、メルトにはどう見えてるかな? 下手な笑い方だなって思われたかな? 

────戦いのない、争いの起きないカルデアに来る前の平穏な日常。突然そこに戻れって言われてもそこにあるのは()()()()()()の居場所で、()()()()()()が安らげる場所なのかって言われたら、そうじゃない。多分落ち着けないと思う。

 

「人理焼却を解決した時に、ああこれで終わりだ。戻れるのかな? って思ったは思ったんだ。だけど、こうして戦いは続いてる」

 

 最終回で終わりじゃない。ウルトラマンのように地球を守っただけでその後も怪獣や宇宙人との戦いを終わらないのと同じように、ああ私の戦いもそんな風に終わりのないものなのかも知れないって魔神柱の生き残りがいる事を聞いた時そう思った。それが終わったらまた他の脅威が襲ってきて、それが終わっても次が、次がって……。

 

「生命が終わるその時まで、私は戦い続ける。そんな運命に囚われたのかも知れない」

 

「…………(なら、ここで終わっても良いんじゃない。()()()()()()()()()()())」

 

「だからさ! そこが命の終わりだって思ったその瞬間、綺麗に終わりたいなって思ったんだ!」

 

「綺麗に……?」

 

 メモリーの人の最後は、唯一安らげる時間すら貰えず、自分の人生を悔やみながら苦笑いを浮かべて終わってしまった。

 

 あの最期を見て、悲しみや苦しかったろうなって思うのと一緒にこんな終わり方はしたくないんだって思ったんだ。

 

 私は飛ぶように立ち上がって背伸びをすると、外の光に何かが反射したのか壁のほうに何かを光るものを見つけた。

 

「────。何か、争った後かしらね」

 

「……うん、こんな終わり方がいいな」

 

「は?」

 

 ガラスかな? 何か陶器が砕けたものが粒子の山のようなものを見て、これだ! と思った私はその山の側に駆け寄り、しゃがみ込んで指を指しながらメルトを見る。

 

「こんな感じ! こんな終わり方がいいなって!」

 

「な、何を言ってるのよアナタは。ただ砕けた陶器の欠片じゃないのソレ」

 

「最高だったって! 私の人生良かっただろう! って思わせる最期がいいじゃん! 役目を終えても綺麗に輝くコレみたいに!!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()。私にはこの山がそう見えたから言ったんだけど……伝わらなかったのかな? メルトは立ち上がって外に向かって歩いていってしまう。

 

「め、メルト……?」

 

「…………そんなこと言ってる暇があるなら少しでも長く休むことをオススメするわ。それじゃあお休みなさい、()()()()

 

「お、おやすみ〜」

 

 む〜、伝わらなかったか〜。結構理想の終わり方、なんだけどな〜。

 

「く、ひ、ひ。わえは好きじゃぞ。貴様の歩んできた道も、それだけの力しか持っていないに障害を超え続けたその心も。舌が肥えたわえですら、味わってみたいものだ」

 

「だよね! そー思うよね!! …………へ?」

 

「ん? きひっ!」

 

「ええええええええええええ!?」

 

 な、なんでヴリトラがここにいるのぉおおおおおおおおおおおお!!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああもう、本当に自分が嫌になるわよこんなの……。たったあれだけで十分だなんてね……」

 

 

 

 

 

 

 




藤丸立香
 ベリアル、博樹がいたことで少し子どもとしての幼さを残しているが、監獄島での出来事から覚悟に変化が生じているためチグハグな成長性をしている。

メルトリリス
 ちょろイン。色々隠しているがゲーム本編でCCCコラボやってる人たちからすればバレバレだけど何か違うような……?


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6




今回もBBちゃんのガバが目立つような……?
SE.RA.PH(セラフ)化してセラフィックスが地獄になってくのを見ると最初に記憶を見たタバコの人、精神強かったんだな〜と感心する。(死ぬことと受け止めてる時点であれかもだけど狂気に呑まれてはいないのよね)

感想、評価お待ちしてます


「はあっ! はあっ! はあっ! なんで……なんで……!」

 

 ずっと、何年も何年も、この日がくるのを待ちわびてた。

今日になれば、今日という希望を持ち続けることが出来たからあの地獄の中でも耐え抜くことが出来た。

 

「なのになんで……こんなところで……!」

 

 それぞれの持ち場を守っているBBの衛士(センチネル)の中で一番の異端。持ち場を持たず、神出鬼没に現れては災害のように暴れまわるサーヴァント。

 

 出会ったら終わり。出会わないように、出会ったとしてもすぐに逃げられるように細心の注意を払っていたのに……そんなもの無駄だった。

 

「あと少し、あと少しなの! 邪魔しないでよ!!」

 

 運がなかった。そう言われればそれだけの事かもしれないけど……。いやだ、そんなの嫌っ! 

 

「く、ひ、ひ、ひ! よい、よいなぁ! やはり人間の泣き叫ぶ声はわえを昂らせる寛美な音じゃ!」

 

 ごめんなさい副所長。私、最後の指令を果たせませんでした。

目を逸らして、見捨ててしまった人たちも……、こんな最後になっちゃうなら助けて殺されてしまえばよかった。

 

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレにはこのSE.RA.PH(セラフ)で起きた。いや、油田基地のものたちが辿った記憶が詰め込まれておる。()()()()()

 

 突如として立香の前に現れたヴリトラは、自分を中心に立方体の“閉ざされた世界”を顕現させ、そこに立香のことを閉じ込め助けが来れない状況作り出した。

 

 だが、BBの衛士(センチネル)であるのヴリトラは立香を簡単に殺せるこの状況でそんな素振りを一つも見せず、立香に立方体の中に光の球体のようなものが詰め込まれているものを見せてきた。

 

「ほれ」

 

 というには語弊がある。ヴリトラはそのデータの塊をなんの迷いもなく、立香に向かって投げ飛ばし、ヴリトラから殺気を感じなかった立香は完全に油断していたためそれを掴むことも出来なかった。 

 

「へ?  ────!? ──────!!」

 

 身体にぶつかって落ちるのかと思ったそれは水の中に物が落ちていくように、波紋を立てながら立香の身体の中へ溶け込んでいった。

 立方体が入り込んだ瞬間、立香は胸を抑えて苦しみだしそのまま地面に倒れ込む。

 

「カッ! ガハッ!」

 

「うむ、やはりこうなったか」

 

 白目を向いて苦しそうに地面をのたうち回る立香を椅子に座りながら、当たり前だというようにヴリトラは見下ろしていた。

 

「さあリッカ。貴様は耐えられるかえ? この地で起きた地獄を経験してもなお、立ち上がる力を残しているか。わえに見せてみろ」

 

 マスターに異常が起きているのに誰も駆けつけてこない。まるで立香とヴリトラ以外の世界が止まっているかのような状況で、ヴリトラは立香のことを試すように見続ける。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

施設が電脳化? ふざけたことをいうな! 

船もヘリも壊れたって……ここに閉じ込められたってこと!? 

なんなんだあの化物は! あんなもの太刀打ちできるわけがない! 

備蓄は十分にある、助けがくるまで耐えられるさ

あ、あああ!! 身体が、人の身体が消えていってる!! 

 

        

 記憶(メモリー)が濁流のように、津波のように荒波となって押し寄せてくる。

全員分の記憶が込められている。ヴリトラがそう言ったとき言葉は理解していても頭では理解していなかった。こういう、ことだったんだ。

 

大丈夫だ! きっとなんとかなる! 

つらい……セラピストに見てもらわなきゃ……

協力し合えば、助けがくるまで耐えられる! 

………………ヒヒッ! 

 

 一人称視点のゲームなんかをやっている時、主人公になったような目線で楽しめるあの感覚。それを、2()0()0()()()。油田基地がSE.RA.PH(セラフ)へと変化し、どのような経路を辿っていったのかを200通りの目線を、その人一人ひとりの感情を、一度に体験させられていく。

 

これは人間への天罰だ! 我々が傲慢にも利用してきたインターネットの怒りだぁ! 

もういや! 帰りたい、帰りたいよぉ……! 

ハハハハハ! いい、イイナぁ! この世界はオレ向きだぁ! 

いいか、どんな事があっても天体室を開くことは所長である私がゆるさない

殺せっ! この怒りが理解できない低俗なものなどここにはいらない! 

 

 

 狂い始めたのは、閉じ込められて一月が経ってからだった。何とか耐え続けるスタッフもいたけどその良識を踏みにじるように、道徳を蹴り飛ばすように()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 どんなにその行いが誰が見ても間違いだとわかっていても、()()()()()()()()()()()()()()()その【正しさ】は伝染する。未知の感染病のように、じわじわ、じわじわと隠れ潜むように広がり続ける

 

や、やめてくれ! こ、こんなことするの間違ってる! 

間違ってるのはお前らだろ? 俺たちは風紀を正してるだけなんだからよぉ! 

風紀を乱す者には粛正を! 

何故彼女にこんなことをする! 貴様らにも尽くしているというのに!! 

 

 最初は、備蓄食料の問題なんかで見捨てられた人たちの目線が消えた。

次は、【正しさ】を間違いなんだって勇気を出した人たちの目線が、炎によって最後を迎えたり、突然の衝撃で真っ暗になったりして……消えた。

 

ハハハハハハハハハハッ!! 

殺してやる! 殺してやる殺してやる!! 

元々ここはそういう施設だ! それをこの私が有効に使ってやる! 

(これは希望だ。アニムスフィアと私が生み出した、人類の未来を保証する希望)

 

地獄を求めたのはオマエらだ! 本当の地獄を見せてやる!! 

何、これ……? 武装した人間が争いを始めた……? 

これはキミのためだ……! キミを傷つけた奴らをを殺すために! キミを救うために!  

 

 

 |誰かのためなんて、どんなに雄弁に叫んでいてもそんなの虚言だ《治安と風紀を守る。これはみんなが生き抜くためだ》。

 

 みんな自分が大事、(私はみんなのため、 )自分が助かることが一番(みんなが助かることが一番)みんな一番簡単なほうを選ぶ、(自分だけが苦しむならそれでいい、 )だってそれが生きるのに楽な道なんだ(みんなが助かるなら損な道を選ぶ)

 

助けて……誰か助けて……()()()()()()()()()()()……

因果応報とは正にこの事……うふふ……

もう耐えきれない……こんなに生きることがつらいなら……

死んだほうが、楽になれる……

 

 ああ、だからこうなることを選んだんだ……。そうだよね、最初からそうすればヨカッたんだ……。

一番楽で、一番簡単に()()()()()()()()……、はは、ハハハハハハハハ!! 

 

 

 

ああ、視界が全部()に落ちていく……

ずるいなあみんな、ずっとそこにいたの? 

わかってたら、最初からそこに行ってたよ。なんで? 

 

 

 

だって私は、闇が大好きなんだから

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

あはははははははははははっ! がっ、はは! 

 

「うむ……。やはりだめか。見当違いじゃったかの」

 

 ヴリトラが失望した瞳を向ける先。そこには何処を見ているのかわからない虚ろな瞳で自分の首を締めながら笑い続ける立香がいた。

 

「気が狂い、己が快楽がために溺れたものたちの末路。全員分のそれを見てもなお、立ち上がるというのなら……と思ったのじゃがなあ」

 

 博樹と戦い彼のことを見定めたように、立香にも期待していたからこそこの障害を与えた。彼女なら超えられるのでは? と……。まあ超えられないのなら死ねばいいと思っていることも事実だが、その顔は残念がっている。

 

「う〜〜つまらんつまらんつまら〜ん! ヒロキだけではもの足りん! ()()()()おるが彼奴はリッカ、貴様がいてこそであろう」

 

ははは…………ぐぅっ! ────ハッ!」

 

「────む?」

 

「────リ……ル、さん……」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

違う!  

違う違う違う違う違う!! 

 

 私のことを引きずり込ませようと千手観音のような無数の腕がこちらに伸びて手招きしてくる、あと少し手を伸ばしたら掴まれてしまいそうだったその無数の手を払いのける。

 

『闇じゃない! 私が憧れた闇は! ベリアルさんの力は、そんなものじゃない!!』

 

何が違う、お前にも見えているだろうこの底しれぬ闇が

落ちるだけでいいんだ。それだけでここまでキモチよくなれるんだぞ! こんな簡単なことはない、こんな楽に快感が得られるなんて最高じゃないか! 

 

『うるさい! それは闇じゃない、こんなの他人任せでひとりよがりな快楽の泥だ!』

 

 こちらに思考を溶かそうとしてくる甘い誘惑を振り払いながら大声で叫ぶ。こんなもの闇じゃないと否定するために。

 

『解けないほどに絡みついたそれが闇だなんで絶対に認めない。闇は、闇に溺れないその力はもっと自由なものだ!』

 

 ずっとその背中を見てきたから、たとえ光の国を滅ぼしかけた悪の大罪人だったとしても私にとってあの大きな背中は、どこまでも憧れるものだから。

 

この悦びが何故わからない! ただ身を任せるだけで至上の悦びが訪れるというのに何故拒むというのだ! 

 

 解けないほどに絡み付いた人々が悦びの声を上げながら私に向かって手を伸ばしてくるけど、もうその誘惑には負けない。

 

 

現実なんてものは屑だ。どんなに努力しても、いくどの苦痛に耐えようと得られる幸福なんてものはその1割にも満たない! そんなものに戻ってなにになる! ここで無限の快楽に浸かっていたほうが誰もが幸せになれる! 

 

 確かに、沢山の努力を重ねて、何度もの困難を乗り越えて、その度に傷が増えていって……特異点を攻略しても次が続いていたから得られる喜びは少なくて……人理焼却を食い止めてやっと一段落つけると思ったらこれだもんね、彼らの言ってることは決して間違いじゃない。

 

『それでもだよ。それでも私は諦めないよ、だって……』

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「────【前に進め】って、そう言われたから……!」

 

「ほう……! ほうほうほう!!」

 

 セラフィックス職員たちの狂気から抜け出した立香は、地面に両手を付きながら呟いた。もう立香は快楽に呑み込まれて立ち上がれないと思っていたヴリトラは、瞳に生気が再び灯しながら立ち上がる立香を見て口角が上がるのを抑えられない。

 

「はあ、はあ、はあ……。どーだヴリトラ! 乗り越えたよ!」

 

「き、ひ、ひ、ひ、ひっ! くははははは!!」

 

 ヴリトラは口を大きく開け大声を上げて笑った。

息は絶え絶え、顔からは大量の汗が流れ、全身震えていて立っているのが不思議なくらいなその状況で立香はVサインを作って笑顔を見せてこられたら笑うしかないだろうと。

 

「あれほどの狂気をあびて、絶望を前にしても笑うとわなっ!」

 

「────だっ、て……()()()()()()()()でしょ?」

 

「────!? なに……?」

 

 驚きで目を大きく見開いた。腹を抱えそうだった笑い声も止め、ヴリトラは真剣に立香のことを見始める。立香は大きく深呼吸をして、心を落ち着かせて話を始めた。

 

「ヴリトラは、全員分の記憶媒体(メモリーデータ)って言ってたけど……違うよね? 全員じゃなかった」

 

「ふっ、まあ確かに全員というのは言い過ぎだったかもしれんのぉ。洩れてしまったものもいるかもしれんな」

 

()()()()()()()()()()()。カルデアから派遣されて、私たちにSOSを送ってくれたあの人の記憶(メモリー)には一度も触れなかった」

 

 あの時間に触れたから、常人でも善人でも悪人でももれなく思考がとろけて快楽に溺れる狂人に堕ちてしまう数十年の時のを味わった今だからこそ、カルデアに届いた通信がどれだけすごいことだったのか理解できる。

 

 だからこそ気がつけた。ヴリトラが見せた記憶(メモリー)の中にその通信士のものだけがなかったことを。

 

「快楽に溺れて堕ちそうになったから、そんな一握りの可能性に縋るしかなかったって言えばそうなのかも知れないけど。信じてみたいんだ、そんな希望があったんだって」

 

「────もうよい、リッカ」

 

「え? わっ……」

 

 そう言ってヴリトラは、頭で考えずただ思ったことを口にする立香のことを子どもをあやすように抱き寄せた。

 

 立香も突然のことに反応することが出来ずされるがままにヴリトラの胸に顔を落とす。

 

「合格だ、リッカ。お前はわえを充分に楽しませた、褒美も渡そう。なれば今は眠れ」

 

「あ────。ヴリトラ、私の名前……リッカじゃなくて……りつか……」

 

 立香の限界がわかっていたのだろう。喋りながら立香の眉が少しずつ下がっていく。

 

「そうかえ。なら都合がよい」

 

「つ、ごう……?」

 

「最低で、最悪で、最高で、最善のその時に、わえがリッカと叫ぼう。それに応えたのなら、この天元の魔であるわえの本気をお前に魅せてやろう」

 

 その言葉を聞きながら、立香は夢のなかへと沈んいった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「……ー! ……スター! 〜〜〜〜! 藤丸立香っ!!」

 

「ひゃあっ!? へっ? へっ!? あ、あれ? ヴリトラは?」

 

「何寝ぼけたことを言ってるのかしら? こんな所にヴリトラなんていたら気づかないものなんていないわ」

 

 メルトが私のことを呼ぶ大きな声で目を覚ますと、辺りを見渡してもヴリトラの姿もヴリトラがいた痕跡も残っていなかった。

 

「大丈夫かい立香ちゃん? 無理そうなら探索は私たちで行くけど」

 

「ああ大丈夫だいじょうぶ! うん! 目覚めた!!」

 

 そう言って立ち上がろうとすると、何か握っていることに気づいた。

みんなが私のこと大丈夫って分かって外に向かっていくのを横目に手を開いて見ると、そこには3()()()()が握られていた。

 

 何だろうこれ? って思うけど、これがヴリトラからの報酬ってことなのかな? 

 

 

 

 

「く、ひ、ひ。のう()()()()()、貴様が抱き続けた希望は、どうやら無事に実りそうじゃぞ?」

 

 

 

 






トラパイン女史
 セラフィックスの通信士。カルデアから派遣され外部に情報を漏らさないため裏だと彼女しか通信士しかいなかった。唯一カルデアに救援を呼べる人物だったため、SE.RA.PH(セラフ)化した後も正気を失わないように耐えて耐えて耐え続けた精神力がオバケ(だから漫画版ではどっかのタイガーに似た容姿をしてる虎繋がり?)
カルデアに救援要請を届けた後息を引き取ったらしいが、何やらヴリトラと接点があったような???

3つの鍵
 本来ならショップで交換するイベントキーアイテム。BBちゃんが作って立香や博樹に試練っぽいことやらせてあげよ〜っと思ってたらいつの間にか無くなってた(ここガバ)
 堰き止めているものを開ける鍵、そういうものに敏感なヴリトラが用途を理解した上で勝手に奪って立香の手に渡った。
ヤッタネリツカちゃん!無駄な周回しなくてすんだよ!!


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7



7とか前の新宿終わってる話数なのにまだ教会についたばかりとか終わるのこれ?

感想、評価いただけるとうれしいです。


「ヌハハハハハ! まさかキャット救出編全部カットされるとは思いもしなかったぞご主人!」

 

「何をわけのわからないこと言ってるのさキャット。エミヤオルタに撃たれて見えないものでも見えるようになった?」

 

ーーーーヴリトラとの邂逅は、私がいつの間にか手に握っていた3つの鍵をメルトに見せたことで一応は信じて貰えた。まあこの鍵が何の役割を持っているのかメルトは教えてくれなかったけど。

そうして信じてもらえた私は、ヴリトラに見せてもらった記憶を私なりに纏めて伝えた。

 

SE.RA.PH(セラフ)化し閉鎖状態になった集団のカルト化 暴行、そして粛清。エミヤオルタは予想通りだって失笑していたけどその原因が魔神柱にあることには驚きを見せていた。

 

 新宿に現れたバアルのように、時間神殿から逃げたした魔神柱の1体が逃げ場所としたのがここ、セラフィックス。ここの職員たちは魔神柱の影響で精神が汚染されて天体室で何かを起動させた。

 

『天体室はセラフィックスを電脳化させている動力源よ。今はSE.RA.PH(セラフ)の中心にあるの』

 

 メルトの持っている情報を照らし合わせると、この電脳化を止めるには天体室に向かうことが最善の道だっていうことがわかった。

と、目的が定まった私たちは中央管制室に行くために、裏道である人の形をしたSE.RA.PH(セラフ)の背中側のエリアに行くために身体で言えば左脇腹部分にやってきたんだけど。そこで邪魔が入った。

 

「ヌ?どうしたご主人、キャットに熱い視線を送っても愛しか返せないぞ?」

 

 それがカルデア側だったのに衛士(センチネル)にされてしまったタマモキャットだった。まあ、エミヤオルタがタマモキャットの霊基に細工された衛士(センチネル)(KP)を砕いてくれたおかげで私たちはキャットを救うことができた。

 

あとは……

 

「メルト、大丈夫かな……」

 

 宙に浮いてる立方体に目を向けながらメルトの安否を案じる……。あれは、キャットと一緒に襲いかかってきたヴリトラが作り出したもの。

次の標的をメルトに定めていたヴリトラは、邂逅一番メルトに襲いかかり一瞬でメルトを連れてあの立方体の中へと消えていってしまった。

 

「撃ってみるか? まあ、破壊して中にいる奴らがどうなるかの保障は持てないがな」

 

魔術回路(パス)は繋がってるから大丈夫だと思うから、絶対ダメだからね()()()

 

「…………」

 

 さっきキャットにそう呼ばれて青筋立ててたの知ってたからそう呼んでみたら、形容しがたい顔をしながら銃を下げてくれた。

 どうしよう、メルトはここの地面をくすぐれば裏側に行けるって言ってたけど、置いてはいけないし……。

 

「…………来る」

 

「博樹さん?」

 

 どうすればいいのか頭を悩ませていると、戦わないように後ろで控えていた博樹さんが何かを感じ取ったみたいだった。

 

それと同時に、立方体にピシッ!と大きな亀裂が入ると、立方体が内側から破壊されそこから見た感じだと大きな傷はなさそうなメルトが落ちてくるのが見えた。

 

「メルト!無事でよかっ「そんな話は後よあと!立香はやく裏返して、()()()が来るわ!!」

 

「へっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな所に閉じ込めてどういうつもりかしら?戦う気もないようだし」

 

 ヴリトラの閉鎖空間に閉じ込められてしまったメルトリリス。

戦うことを覚悟していたが、どういう訳かヴリトラは戦う気がないのか尻尾を支えにして脚を組んでメルトメルトの事を見つめている。

 

 メルトリリスもメルトリリスでどうにか出られないか壁に向かって蹴りを放ったが傷一つ付かなかったため諦めて腕を組んだ状態でヴリトラと向かい合う。

 

「く、ひ、ひ!戦ってやってもよいが……よいのか?少しでも()()()()()()()のは避けたいのではないのか?」

 

「!?(……やっぱりお見通しなワケ?流石はヴリトラってところかしら)」

 

 【ヴリトラ】その名は「障害」を意味し、水を堰き止め、干魃などを引き起こす力を持つとされるインド神話にて語られる邪竜、あるいは蛇の魔神として語られる存在。

本来の姿は巨大な蛇竜のはずなのだが、伝承においてヴリトラは千差万別な姿で語られるなど根本的には性別を超越した存在であるため、今は女性の姿を模しているのだ思われる。

 

「……まあ、閉じ込めてくれたのは都合がいいわ。どうしてあの鍵を立香に渡したのかしら?」

 

「んん? なんじゃ聞いておらんのかえ、あれは褒美じゃ。わえのことを愉しませてくれた褒美、ただそれだけだ」

 

「ただそれだけって……!」

 

 ヴリトラが立香に渡した3本の鍵。あの鍵の重要性をメルトは知っている、そんな簡単な理由だけで手に入るものではない。

だからこそ問いただしているというのに、当の本人は笑いながら立香が言っていたように楽しませてくれたお礼だと答えてくるのだ。

 

「(ヴリトラは()()()()はいなかった。コイツが何を理由に行動しているのかわからない……)このSE.RA.PH(セラフ)を掻き乱して何がしたいのかしら?」

 

「ふっ、飽きてしまったからの〜。そろそろわえも動いくことにしただけだ」

 

「飽きた? はっ、まるでSE.RA.PH(セラフ)に、この聖杯戦争を何度も経験しているような言い方ね」

 

「そうだが」

 

「は……?」

 

「戦う相手は変わるがやること終始変わらん。何度同じことを繰り返したかは覚えておらんが……、他の愉しみを求めても仕方がないであろう?」

 

 何処かの世界で行われた"月の聖杯戦争"。それを模してつくられたこのSE.RA.PH(セラフ)の聖杯戦争が幾度も繰り返されていることをアルターエゴであるメルトは知っていた。

知っているからヴリトラのその言葉が信じられなかった。

 

「最初はここに閉じ込められた人間どもがどう動くのか興味を持ったが、筋書き通りにしか動けなかった彼奴らは心底つまらんかった。まあ例外はいたがな……。

 だからこそ彼奴ら2人が空から落ちてきて!お前が()()()()()()()()()()時には心が躍った!ああ、此奴らがわえにこの渇きを満たすものだと、いつまでも待っていた甲斐があったと!!」

 

タッ、と尻尾の跳躍を使ったのかメルトリリスとの距離を一瞬で詰めたヴリトラは、顔と顔がくっついてしまいそうなそのその距離でギラギラとした瞳をメルトへ向ける。

 

「一度絶望したはずだ、心が砕けたはずだ。だが貴様は立ち上がった、逃げるのではなく道を拓くためにっ!」

 

「どこまで、どこまで知っているのよアナタはっ!!」

 

「これが滾らなくてどうする!く、ひ、ひっ!! だからこそ貴様には手はださん、この先どのように壁を越えるのかわえに見せてくれ。()()()()()()()()()()()()

 

 何故知っているのか、どこまで知っているのかわからないがその発せられた言葉からヴリトラはこのSE.RA.PH(セラフ)のことも、メルトリリスが立香たちに話せていないことも理解している。そのことについて詰め寄ろうとたぐっと身体を前に向けようとするよりも前に、ヴリトラに両肩を押され倒れそうになると閉鎖空間が砕け始めた。

 

「ーーーーッ!ヴリトラ!!」

 

「そうかっかするでない。ほら、早く彼奴らと所へ向かわねば、手遅れになるぞ?」

 

「ーーーーーーーーリップ!? どうしてここに!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

『待ちなさい。なんのつもりですリップ、そんな命令は出していないでしょう』

 

 その反応からBBすらその登場は予想外だったみたい。

ーーーーパッションリップ。衛士(センチネル)の一騎で、BBに反抗した結果拘束具で操り人形になってしまっているメルトと同じアルターエゴ。

 

 助けてあげたい。そう思うけどこの襲撃は予期していないし、まだ彼女を助ける方法を私は知らない。エミヤオルタにキャットのときのようにKP(カルマファージ)を撃ち抜いてもらう?

 

 ダメだ、キャットは成功したからいいけどパッションリップに撃ってそれが必ず成功するとは限らない。メルトが方法を知っているならそれは今じゃないじゃ……。

 

「ガウェイン!何してるんだ!」

 

「皆さんお早く! ここは私が!」

 

 博樹さんの叫びに顔を上げると、ガウェインがガラディーンから炎を燃え上がらせパッションリップの進行を防ぎ、その後の足止めも任せろと彼女に向かって駆けていく。

 

「ぐぅぅ!」

 

「それはノーだイケメン。衛士(センチネル)は一人で止められる相手ではない! 戻れあるいは逃げるのだ!太陽とて沈むときはあるのだぞ騎士ガウェイン!」

 

 このままではガウェイン含め全員倒されてしまう。それはわかってる、だからメルトはSE.RA.PH(セラフ)をひっくり返すことを急ぎ、それを後押しするようにエミヤオルタが地面に向かって宝具を放つ。

 

やぁん♥あーいけません! そんなに激しくされたら裏返っちゃーーう☆

 

 レイシフトで別の時代に飛ばされる時の感覚に似た揺らぎ。意識ははっきりしてるし普通に立ってるからレイシフトの時は状況が全然違うけど、私の周りだけ世界が反転していく。

 

「ーーーーごめん立香ちゃん」

 

「へっ? 博樹さん!まさか!!」

 

「あんなに苦しんでる女の子を前にして、このまま逃げるなんてできないや」

 

 反転する対象にガウェインとパッションリップは入ってなくて、このままガウェインのことを置いていってしまうことに罪悪感を漢字ていた矢先だった。

 

 博樹さんが反転していく世界から飛び出してパッションリップへと向かって行ってしまった。

狙ってたんだろう。手を伸ばそうにももう手遅れで世界が反転してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ。ーーーー残るのは、私一人だけでよかったのですよ?博樹殿」

 

「迷子の子どもがいたら放っておけないのが、おまわりさんなんだよガウェイン。君と肩を並べて一緒に戦うことになるなんて思っても見なかったけどね」

 

「そうですね! ならば今度こそお見せしましょう!憂いなき、迷いなき太陽の輝きを!!」

 

「ああ、いこうガウェイン!!

 

 

 

 

 




博樹さんとガウェインが共闘するとなったらこのタイミングしかないでしょう!!
絶対この2人の共闘はやりたかったんです……!


とまあ、最近毎日更新してましたがこの7話で一旦更新止まります。
ここまでで前編かな?次回更新は6月後半、今回と同じようなタイミングで更新出来ればな〜っと思ってます。


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8

FGO7周年おめでとうございます!
ジード5周年やマンの日に更新したかったですけど……今日には間に合わせました。

感想、評価お待ちしてます。


 

「イデスがくる! ガウェイン!!」

 

「ええ! はああっ!!」

 

 博樹の指示を聞いてガウェインが腕を横に出すと、ギガバトルナイザーから伸びたエネルギー状の鞭でその腕を掴みパッションリップのイデス発動の範囲から一気に抜け出す。

 

 

 

…………ああ

 

 

 

 

ゔゔゔゔっ! 

 

「うん、わかってる。苦しいよね、辛いよね……けどもう少しだけ我慢してくれ!!」

 

「マスターたちが貴女を救う術を必ず見つけてくれる! その時まで!!」

 

 

 

 

なんと甘美な

 

 

 

「こんな所で折れやしないさ、そうだろガウェイン。今君が背負っている太陽は(弱さ)を隠す光じゃない」

 

「ええ! この霊基()に刻まれた不夜はあの過ちを二度と繰り返さないためのもの! 目の前で泣き叫ぶ民を照らすためのもの!!」

 

 

 

激しく雄々しいその姿

 

愛おしい

 

 

「はあああああああっ!!!!」

 

「だぁああああああっ!!!!」

 

 

たべてしまいたい

 

 

 

 

 

 

 

 

────一方その頃

博樹とガウェインを置いてSE.RA.PH(セラフ)に裏側へと無事に辿りついた立香たちは、一度基地を裏返して中央管制室に辿り着くために、裏側で争っているサーヴァントたちや待ち構えていた鈴鹿御前も無視して胸部エリアの背後に位置するエリアへと急いでいた。

 

「はあ、はあ、はあ……。カルデアのマークが印されたコンテナ?」

 

「ここは特別な職員たち専用のゲート兼裏の搬入口。あの印を見ればわかるでしょうけど、裏の施設やカルデアに関係する魔術師専用の玄関ってわけね」

 

「アニムスフィア直属の人間たち、それに関係する資材を搬入していた場所……か。随分ときな臭い場所じゃないか」

 

(ヴリトラから見せられた記憶データは油田基地がSE.RA.PH(セラフ)に変わってからのものだったからここがどんな使われ方をしていたのかはわからない。けど、エミヤオルタが言うように確かにきな臭い……)

 

 頸部、つまりは胸部エリアのすぐ側のエリアまでやってきた立香たちは、いくつも連なって重なるコンテナを見ながら考えを募らせる。

急がなければいけないのは分かっているが、油田基地の裏で行われていた“ナニカ”を知るための大きな手がかりになると肌で感じたのか、エミヤオルタだけではなく立香も深く考え込んでいると、その頭をメルトリリスに軽く叩かれる。

 

「長考するのは勝手だけれど、そんな悠長に待ってくれるほどリップは甘くないわよ?」

 

「ああっそうだった! このままじゃ博樹さんま〜たボロボロになっちゃうんだった、て言うかもうなってるかも? メルト、ここから表に行くに「その必要はないぜ」わ?」

 

 「パッションリップを解放するためにBBの軍門にくだれ」と、BBからエリアを反転させる権限を貰ったロビンフッドが提案を持ちかけてきた。

ロビンがいうには、管制室にはパッションリップが待ち構えてるからエリアを裏返す代わりにパッションリップを解放しろと……。

 

「解放しろって言ったってどうやるの? ていうかパッションリップのこと操ってたのってBBなんじゃ」

 

「さあ制御が利かなくなったってとこか、詳しいことはオレも知らされてないけど……、“鍵”はアンタが持ってるってBBは言ってたぜ?」

 

「カギ? 鍵……? ああっ! これのこと!!」

 

 そう言われて立香は、先のヴリトラとの問答の褒美としてもらった3本の鍵をポケットから取り出す。

すると隣に立っていたメルトリリスがその中の1本、赤と紫の花弁が交互に咲いている鍵を叩いた。

 

「これがリップの心の枷を外すために必要なコードキャスト(電脳術式)。あの子が管制室(持ち場)に戻っているなら都合がいいわ」

 

「助けるって言うのかあの()()を? それだけのリターンがない、だったらここを調べたほうが幾分マシだと思うがね」

 

「(確かにその通りかも)……ヴリトラがこの鍵をくれたのには意味があると思う。だから、()()()の拘束具を外して話をするよ!」

 

 「できるのかしら?」と立香のことを煽るように言ってくるメルトリリスだったが、自分では気づいていないのかその表情はエミヤオルタが怪物と呼んだのに対してあの娘と、パッションリップ(アルターエゴ)のことを人として見てくれた喜びと、話をすると、倒すのではなく助けることを前提に断言してくれたことが嬉しくてたまらないといった顔をしている。

 

「なんとかなるでしょきっと。だからお願いロビン、パッションリップの所に連れて行って」

 

「あいあい、んじゃまボス退治と行きますか! ま、ボス退治っつーよりお姫様退治ですけど?」

 

『あっ、ちょっと緑茶さんまっ!』

 

「「「「へ?」」」」

 

 

 

 

 

パチンッってロビンが指パッチンしたの合図にエリアが反転を始めたんだけど、その前に一瞬だけ聞こえてきたBBちゃんのあの声、なんだったの? なんか嫌な予感がするんだけど……

 

「マスター!」

 

「ガウェイン!! あれ、博樹さんは?」

 

 反転したそこは胸部エリアの目の前で、見た感じだと攻性プログラムとパッションリップが争っているっぽい。

そんな中でまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいにガウェインが駆け寄って来た。

 やばい、なんかものすっごく嫌な予感が強くなって来た……

 

「?? 彼女の射出された腕を受け止めてコチラ側まで飛ばされてしまったはずなのですが、後ろの方にはいませんか?」

 

「ウム、キャットのつぶらで大きなこの瞳を持ってしても見当たらないゾ、マスター!」

 

「……BB! BB! BB!! 見てるんでしょ! 早く出てきて説明しなさい!」

 

『…………ちょ、ちょっとBBちゃんのことそんなメーデー! メーデー! みたいな雑な感じで呼ばないで「いいから早く。博樹さんは、ドコにいったの? 」……え、え〜っと……ですねぇ〜』

 

 毎回のように軽い調子でチャンネルを出して明るい感じで話そうとしたBBの対応すら無視した無表情な立香のその態度に流石のBBも根負けしてしまったのか、胸の前で人差し指同士をぶつけながら今しがた起きてしまったことを説明し始めた。

 

『今ガウェインさんが言ったように、あの人リップのロケットパンチ避けるどころ受け止めちゃったんですよね。それで、そのまま吹き飛ばされちゃったんですけど……』

 

ですけど? 

 

『うう……。博樹さんが吹き飛ばされちゃった先と、みなさんが反転してくる座標とタイミングがですね? 奇跡的に被っちゃたんですよ♡ だから今、彼裏側にいます♡』

 

 ああああああああもぉうっっ! BBちゃんも博樹さんも何やってるのさああああああああっ!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『ああ〜緊張する〜』

 

『このテストでいい数値が出るかどうかだもんな』

 

 これから何かあるのか、私や立香ちゃんも着ているカルデアから支給された白を基調とした魔術礼装を着た人たちが整列して何かを待っている。

何が何だかわからないが、大体100人はいるであろうその集団を見ると少しだけ違和感を感じた。

 

『ここでいい結果を出せればレイシフトを行う一員に、もしかしたらエリートクラスにまでなれるかもしれないんだぜ!』

 

『いくら可能性があるってったって一番上、Aクラスになるのは無理だろ。ああいうのは家系で決まるもんだって」

 

(全員、若いな……。みんな立香ちゃんとあまり変わらないんじゃないか?)

 

 話している内容からみんなレイシフト適正を持つマスター候補生ということは分かったけど、いくら何でも偏り過ぎてる。

40を超えているのは流石に私くらいだったけど、マスター候補の人たちの中には20〜30の人たちも選ばれていた。

なのに、なんでここだけ……? 私が選ばれる前? それとも…………

 

『それではこれよりレイシフト適正テストを始めます。一人一人用意されているコフィンに入り待機していてください』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「────ッ!! いっ、った……。ここは……?」

 

 気がつくと、四角い箱のようなものの中で倒れていた。

そうだ、ギガバトルナイザーで何とか受け止めたけどパッションリップのロケットパンチが直撃して吹き飛ばされたんだ。吹き飛ばされてる時、視界が歪むっていうか空間が揺れるような感覚が襲ってきてそれで気を失ってしまったのか? 

 

「身体中にガラスの破片が刺さってる、どうりで動かしづらいはずだ……」

 

 目が慣れてきてようやく身体全体に走る痛みの正体を知った。ここはコンテナか何かの中みたいで、そこに突っ込んだ私は中に入っていた機材を壊し、その破片が身体中に刺さってしまったらしい。

なんとか立ち上がれないものか頑張るけど、パッションリップとの戦闘でのダメージもあって立ち上がれない。

 

「これって、レイシフトの時に使う」

 

「まさか貴様もコチラ側にいるとは驚いたぞ、ヒロキ」

 

「────! ヴリトラ!!」

 

「く、ひ、ひ、ひ。そう身構えるな、今のお前を襲うなどつまらんことはせん」

 

 突然私の前に現れたヴリトラ。だけど、ヴリトラに戦う意思はないらしく笑いながら私に近づくと刺さっているガラス片を……

 

「ほい♪」

 

「いっ!! なに、し、てぇっ!!」

 

「ほれ、ほれほれほれほれ♪」

 

 まるで雑草を抜くように私の身体に刺さったガラス片をこっちの苦痛なんて気にせずにひょいひょい抜いてくるヴリトラ。

抵抗しようにも身体は動かせないし、また気を失わないように我慢するのが精一杯……。

 

「これで最後かえ♪」

 

「はあ……はあ……あれ? 血が、出てない……?」

 

 結構深くまで刺さっていたから抜けば抜くほど出血すると思っていたけど、一滴も出ていない。

どんなにベリアルさんの因子で身体が強化されてるからって流石にそれはないだろうって疑問に思っていると、ヴリトラがあの特徴的な声で笑い出した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この程度、指先一つで出来るわ」

 

「…………ありがとう。でもどうして?」

 

「この先で面白いものが見れるからのぉ♪ それを見てお前がどのようにするか興味が湧いた、だから助けたまでのことよ」

 

 そう言ってヴリトラは私がまだ動けないことをいいことに、私のことを尻尾で巻きつけてその面白いものがあるという場所まで無理やり連れていかれてることになった。

 

 

 

 

 

 

 




ガウェ&博樹さんvsリップはもうちょっと書きたかったんですけどね。そうするよ流石に長くなっちゃうんで……。


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9


 デッカー、予想以上に王道で面白いので大好きですね。「でっかく」て「カッコいい」デッカーとか、HANE2でハネジローとか最高すぎる。そして合体ロボはロマン!!あの合体シークエンスすっごく良いのでもっと活躍して?

 そんな明るい気持ちの話じゃないんですけどね、今回の話
感想、評価お待ちしてます。


 

 

 

 

『カルデアを裏切って私の指示(プラン)に従いなさい』。見返りにこの基地の真実を知ることができるという条件の元、エミヤオルタはBBの傘下に降った。

SE.RA.PH(セラフ)に残った人間を皆殺して、立香と博樹の両名を拘束する”その指示通りに動くため、この先にあるという原形を留めている施設へ向かっていると、機嫌のよさそうなヴリトラとそんなヴリトラの尻尾に拘束されている博樹と遭遇してしまう。

 

「ねえヴリトラ。もう少しこの運び方なんとかならないかなぁ?」

 

「動けなくなってしまったのはお前のせいであろう?自業自得だ。む?」

 

「チッ……。まさかBBのセンチネルに捕まってるとはね」

 

「エミヤオルタ」

 

「ほう貴様か……。ふぅむ、BBも上手いこと使うのぉ」

 

 見つかってしまっては隠れている意味はないと感じヴリトラと向き合うエミヤオルタ。

だが、彼だけが何故裏側に残されたのかヴリトラにはお見通しなのか、面白い玩具を見つけたとばかりに口角を上げる。

 

「ほれっ」

 

「うわっ!」

 

「ーーーー、何の真似だ?」

 

「そこで捨ておけん時点で貴様の根は視えている。ついてくるがよい、お前が目指す場所もわえと一緒だ」

 

 博樹のことを投げ飛ばしたヴリトラはそう言って2人に背中を向けて歩き出す。

博樹のことを受け止めたエミヤオルタは敵であるヴリトラを背後から撃とうと銃を構えるが、少し考えると銃を下ろして博樹に肩をかす。

 

「ははっ、ありがとうまた迷惑かけるね」

 

「本当に。少しは歳を考えて落ち着きってものを考えたらどうなんだ?」

 

「はははごめんね。けど、君にこうしてもらうと何だか安心するね。何だろう、いつか息子もこんな風になったりするのかもって思うからかな?」

 

じいさん!

「ーーーーーーーーッ」

 

 遥か昔に堕とした記憶。ボロボロの身体で歩こうとする()()を、男の胸にも届かない小さな身体で支えようとする小さな子ども。

顔も、声も、はっきりとした姿すら見えない朧げな風景に、痛みを感じないはずの頭を抑えるように手を当てていた。

 

「大丈夫かい?」

 

「…………馬鹿話に付き合いきれないだけだ。さっさといくぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気が気じゃないのは理解するけれど、今はあの娘を救うことに専念しなさいマスター!」

 

「う、うん!」

 

 メルトの叱咤に答えるように両頬を叩いて気合を入れ直す。

博樹さんのことで気が動転したけどそんな集中力を欠いた状態で勝てる相手じゃ、ましてや救える相手じゃない。

 

「キャットは右!ロビンは左からパッションリップに攻撃を!気を逸らすだけでいいから! ガウェイン!!」

 

「ええ!刻まれし不夜よ、我が同胞に加護を!!」

 

「おおっ!これは何ともワンダフル♪ならばキャットもキャットの怪力を開放しよう!にゃー!」

 

「味方じゃないオレにまでサポートするなんてねえ。まっ貰ったもんは代えさせてもらいますか!」

 

 深い海の中に一時的に沈まぬ太陽の陽射しがみんなを照らす。

博樹さんが一時的にガウェインと魔力経路(パス)を繋いでいてくれたおかげで魔力の消費が少なく済んでいてよかった。

 

 メルトには私の側でいつでも動けるように待機して貰って、二人がパッションリップの気を引いてくれてる内に準備する。

 

「いくよガウェイン!瞬間強化(ブーステッド)!」

 

【この剣は太陽の移し身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎】

 

 魔力を開放させた聖剣を天に放り投げると、その剣から疑似的な太陽が生み出される。目を瞑りたくなるような熱がコチラにも届いてくるけど、この後のことも考えるとそんなことしてられない。

 

 そう思って薄目でその陽を見ていると、日輪の中に一つだけ黒い斑点のようなものがあるのが見えた。

 

【落ちることなき太陽は、この黒点はーーーー消せることなき罪の証!】

 

  一本の剣となった日輪を強く握りしめながらガウェインは叫ぶ。

今回はリップだけに当たればいいから横薙ぎの一閃ではなく、太陽をそのまま落とすように縦に振り下ろす。

 

 

転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)!!!!】

 

ゔゔゔゔゔっ!

 

 キャットとロビンの牽制のおかげで避けることも、イデアを使うことも出来ず巨大な両手でガードするしか出来ないパッションリップ。

 よっし、ここだ!!

 

「行くよメルト!パッションリップのところに!!」

 

「あら、流体の私に太陽に突っ込めっていうのかしら?」

 

「メルトなら、私を連れてあの太陽の波に乗っていくのなんて簡単でしょ?」

 

 煽るようにメルトにそう言うと一瞬ポカンとした表情になるけど、すぐに嬉しそうに笑って私のことを抱き上げて走り出す。

 地面を滑るように走るメルトは、スケート選手のように回転を加えたジャンプで熱線の上に跳び乗って、そのままパッションリップの元へと進んでいく。

 

「ーーーー待たせたわねリップ。さあ立香!このまま一緒に踊りましょうか!!」

 

「経験ないからリードよろしくメルト!!」

 

 パッションリップの元へとたどり着いたのと同時にガウェインの宝具が消え、耐えきった安堵から相手が両腕を降ろして隙を見せる。

 これを狙っていたから、宝具が消える瞬間翔んだメルトと一緒に鍵を突き出してパッションリップの胸へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「霊脈を利用したのか。それも若年層の良質な魔力を持つ人間ばかりを選んで」

 

ーーーー衝撃的な事実が博樹とエミヤオルタに突きつけられた。と、いってもエミヤオルタの方はこんな状況に慣れてしまっているのか冷静に対応している。

 

ーーーーーーーーーーーー
男性(16)女性(15)女性(18)
魔力回路/質:A

質:E 構成:異常あり 

レイシフト適正:適正あり  

魔力回路/質:B

質:C 構成:正常 

レイシフト適正:若干の兆しあり  

魔力回路/質:C

質:B 構成:正常 

レイシフト適正:兆しあり   

 

 ヴリトラに連れられてやってきた施設内部で生存していた3名の研究者。彼らはセラフィックスの真実、最終目標である【超大型礼装の開発】に着手していた人物だった。

彼らの口から天体室こそがその超大型礼装であり、それを早急に完成させるために、批判を受けるような手段を使う隠れ蓑として作られたのが油田基地であると。

 

「研究を進めるためには地球と人の霊脈で互いに心を理解し合い、友好関係を築く所から始める必要があった」

 

「その為に……これだけ多くの人間を……?」

 

「良かったじゃないか、アンタはその歳のお陰で対象にはならなかったんだ」

 

 苛立ちを見せながら、エミヤオルタは実験として使われた人物のことが記された資料を震えながら読んでいる博樹にそう告げた。()()()()()()()()()()()()()()()と、それは動揺していた博樹でも簡単に答えが出せる問題。

 

「ここに書いてある()()()()はみんな、カルデアのマスター候補だった子たち……?」

 

「ええ、アニムスフィアとしてはいずれ来るマスター選定の準備で苦渋の選択でしたが、()()()としてこちらに回してもらいました」

 

 人を、自分の娘や立香たちと歳の近い子供のことを人として見ていない。実験を成功させる為の道具の一つでしかない、何体補填、何体破棄と記されているその資料は子供たちの命を()()()()()()()()()()()()()()()ことを指し示していた。

そうして何十、何百の子供たちの命を無下にした結果、超大型礼装の準備は整ったのだと狂ったように研究者たちは両手を上げて喜びを見せる。

 

「これが……真実。人理のための……研究」

 

「数多の人間を贄とした超大型礼装を【大聖杯】として利用し、何度も繰り返し続ける聖杯戦争を引き起こしたということじゃ」

 

「じゃあ、ヴリトラを召喚したマスターは……」

 

「部品として使われた人間の誰か、じゃな」

 

「…………(まだヴリトラは彼らのことを人として見てくれている。けどあいつらは最初から……)」

 

 エミヤオルタが研究者たちから生存者たちがセラピストの取り合いの末に天体室が聖杯戦争として起動されたことを聞いている横で、博樹はこの聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントであるヴリトラの言葉を聞きながら拳を強く握りしめる。そんな博樹の一挙一動を逃すまいと、ヴリトラは目を光らせる。

 

()()を出る時点で研究員は排除の対象。それがセラフィックス創設時からの決まりじゃ」

 

「殺意はずっと感じ取れていましたし、この環境では逃げ切れない事も理解しています」

 

  SE.RA.PH(セラフ)に残った人間を皆殺しする。BBとの取引を済ませるために、真実を知って打ちひしがれている博樹を他所に研究員たちを始末しようとしていた。

彼らもその事を重々理解しているため、無駄に動揺することなく自分がこれから死ぬということを受け入れている。

 

「我々研究員は人を誰よりも愛している。だからこそあの研究を受け入れ尽力した。その役目を果たした今、思い残すことは何もない」

 

「、そうかい」

  

 

 

 

 

ガシッ!

「…………なんの真似だ?」

 

 何の躊躇いもなく研究員たちを撃ち殺そうとしたエミヤオルタの手は、余計な介入によって止められてしまう。

博樹だ。彼らに向けられた銃口を博樹が下に下げ当たらないようにしていた。そんな博樹の行動に呆れと苛立ちを乗せてこんなことをしたのかと問う。

 

「……この人たちは、私や立香ちゃんと同じ、今を生きている人間だ」

 

「だから生かせっていうのか?ハッ、とんだ茶番だな」

 

 この施設で行われてきた実験の真実。それを知って尚彼らのことを生かそうとする。誰でも罪を償うことが出来るなんていう戯言を信じている正義の味方に、エミヤオルタは心底嫌気が刺していた。

 

「違う」

 

「くひっ!」

 

「今を生きている人間が犯した罪は、今を生きている人間に……背負わせてほしい」

 

「ーーーー」

 

 絶句した。言葉が出なかった。汚れ仕事だろうがなんだろうが顔色一つ変えずに行えるエミヤオルタが、博樹の放ったその一言にひどく動揺し、憤慨した。

背負わせろ、それはエミヤオルタが今しがた行おうとした事を博樹がやると、そう言っているのだ。

 

「何を言ってるのか理解(わかっ)てるのか?アンタは!」

 

「理解ってるよ。理解っていて、言ってるんだ」

 

 声は震えている。だが、その覚悟に迷いはない。英雄の影法師(サーヴァント)でも過去の人間でもない。同じ時代、同じ時間を、現在(いま)を生きている人間がその命を終わらせる

 警察官として罪を犯した者を取り締まったことはあっても、腰に下げた拳銃の安全装置(セーフティーロック)を外したこともない、動物すら殺したことのない男の言葉

 

「アンタのそれはただの自己満足、自己犠牲でしかない。勝手に背負い、その重荷に耐え切れなくなって心が砕けて自滅する。()()()()()()()そうだったみたいにな」

 

「キミのようにかい?」

 

「はっ、ヤツから見たらオレはよほど醜く見えているだろうな。ただ効率良く、何処までも効率良く引き金を引く。その意味も知らずに、そのことに何の痛痒も感じない。数分前のことすら朧げな残骸ですらない存在……それがオレだ」

 

 そこに理想はなく思い描く思想もない、弾丸(記憶)は撃ち出してしまえば消失(ロスト)する。今までも、これからも、呼吸をするのと同じように弾丸(記憶)を棄てるだけの作業。

心を痛めるなんて無駄はない、感情によって今後に支障をきたすこともない機械な自分だからこの役目なんだと、何処までも心に従う博樹は邪魔だと伝える。

 

「それでも、それでもだ。逃げたくない、背中を向けてなかったことにはしたくない」

 

 一歩も引かない。自分自身の気持ちもそうだが、逃げだしたりしたら自分のことを()()()()()()と言ってくれた友達に顔向け出来ないから。

その真っ直ぐな瞳が、今から人を殺すというのに眩し過ぎるその瞳のせいで、ただの機械が異常をきたしてしまう。

 

「〜〜〜〜ッ!!アンタみたいなのは何を言っても無駄だ」

 

「それは悪手じゃのうぉ」

 

 ジャキッと、既に装填してある弾丸を入れ替えエミヤオルタが博樹に向かって拳銃を向けたその時だった。

普段ならば敵であるヴリトラへの警戒を怠らない。頭に血が上っていたせいで反応が遅れてしまった。

気がついた時にはエミヤオルタは博樹たちの目の前から姿が見えなくなった。

 

「ヴリトラ!」

 

「表側に返しただけじゃ、気にするな。いつ迄もグダグダとやっておるから我慢できなくなってのぉ」

 

 センチネルとしての権限。ヴリトラはそれを使用してエミヤオルタのことを返してしまったのだと言う。

博樹は最後までエミヤオルタに認めてもらえなかったことに若干のしこりを覚えながら、小さく深呼吸をするとギガバトルナイザーを強く握りしめて、研究員たちの歩みを進める。

 

(最後まで彼は、私の事を()()()()()()()()()()()()()()()()。ごめんねエミヤオルタ、君の優しさを私は無下にする)

 

「ようやく終わったか」

 

「…………ああ、そして今終わらせる」

 

 エミヤオルタに言っていたように、この研究員たちは死ぬことを受け入れている。子どもたちを犠牲にしたことを一つも後悔していないその顔に怒りを感じながら一歩、一歩を踏みしめながら歩く。

 

「……先も言ったが、私たちは自らの行いを誇りに思っている。人を愛していると胸を張って言えよう」

 

「それだって理解してるさ。貴方たちを殺したところで、犠牲になった子どもたちが喜んでくれるわけじゃない。私の気持ちの問題なんだ」

 

 背負うなんて言葉は口実でしかない。許せないから、彼らの行いを認めることが出来ないから、この怒りが、心の燻りが抑えきれないから……。

 

 エミヤオルタのような、使命を持って行動するなんて格好のいいものじゃない。ただ心のままに、博樹は彼らの目の前でギガバトルナイザーを大きく振り上げる。

 

「ーーーーーーーーごめん」

 

 

 

 

 

 

グシャッ!

 

 

 

 

 

 




 博樹さんとガウェインを組ませたかったのと同じくらいに、博樹さんが「子を持つ親」だからこそデミヤとは何かしら絡ませたいとなった結果がこれです。

 カルデア内でも最年長で、大人で、警察官という職務をしていたからこそ逃げては行けない。受け止めなければいけなくて、しかし傷つくのは自分だけでいいという結論しか持ってない執行者はそれを否定する。

 立香ちゃんが背負えないものは博樹さん……。


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10

どうも、30連でアーキタイプ:アースの宝具が2になったのに徐福ちゃんが来ない作者です。馬琴もこなかったしもしかしてかの絵師さんとのご縁がない……?

福袋は狂2回してアルジュナでしたね、これで宝具2

感想、評価お待ちしてます


 

「…………はあ〜〜」

 

「随分とまあ気に病むのぉ」

 

「そう簡単には、気持ちの整理はつかないさ」

 

 研究室での一件を終えた博樹だったが、そこでの行いが尾に引いているらしくセンチネルの権限で表側にいつでも戻れるのに瓦礫に腰掛けて蹲っている。

 

「なあヴリトラ」

 

「ん?」

 

「君は犠牲になった、いいや今も酷使されてしまっている子どもたちの誰かに召喚された英霊……でいいんだよね?」

 

「ああ、『生きたい』『勝ちたい』という声に呼ばれて召喚されたはいいものの。ここはこの有り様じゃ」

 

「今も、その声は聞こえているのかい?」

 

「他のサーヴァントは知らんが、わえの頭にはもう響かん。勝ち続けてきたからのお、いつの間にか聞こえんくなっていたわ」

 

「そうか……」

 

 気持ちを落ち着かせるために、この聖杯戦争に呼ばれずっと勝ち続けているというヴリトラに話を聞いていると、ヴリトラが「そうじゃな〜」と腕をくんで博樹のまえをふらふらと歩いてる。

 

「ま、褒美としてはちともの足りんが……いいじゃろう。博樹」

 

「ん?」

 

「この聖杯戦争を行い続けるための動力として使われ続けている人間たち。奴らは全員『生きたい』という生存本能、『勝ちたい』という闘争本能以外、全て棄てられている」

 

「え────?」

 

 一瞬理解出来なかったが、博樹はすぐにそうだとヴリトラの言葉の意味を悟る。確かに彼らは動力源としての役割を担っているかも知れないが、それでも人間だ。生存本能と闘争本能だけで生きているわけがない、その人それぞれに夢や願いがあるはず。

 

「(あの時一瞬だけ見た夢は、彼らの……!)夢や願いを棄てることなんてなかったはずだ、なのにどうして!」

 

そんなもの残していても意味がありませんもの

「!! がっ…………」

 

────気づいた時には遅かった。ヴリトラではない第三者の声に驚き、反応しようとした博樹の腹を鋭利な槍のようなものが貫いていた。

 

「(これは、魔神柱の……?)ぐっ」

 

うふふふふ

 槍のようなものを引き抜かれた反動で地面に倒れ伏してしまった博樹は、痛みを堪えながら声のした方へと顔を向ける。

 

「────何をやったのか、わかっているのだろうな」

 

あらあらうふふ♪ いいではありませんか、食指が動いてしまったのですもの

 

「……やっぱり……お前だったのか……」

 

 あら、気づいていらしたのですか? あの中にいた誰も気づかなかった私に

 

 ヴリトラから怒りを向けられながらも余裕そうに返す黒幕の顔を、博樹は知っていた。正確に言えば相手の本来の顔は知らないが、擬態して博樹たちに近づいてきたその顔を知っていた。

 

まあ、それももう意味はなくなりましたけ────ッ! 

 

 

「やはりな、ヒロキの血は貴様には合わんじゃろう」

 

 黒幕は博樹を貫き付いた血を手で掬い取り、舐めたその時だった。

博樹の血に混ざっているベリアルの因子が拒絶反応を引き起こしたのか、黒幕の身体から血が吹き出し、擬態すら保てなり被っていた人間の皮がドロドロと溶け落ちる。

 

くっ……ぐぅうう……BB!! 

 

「はいは〜い♪ 急な呼び出しにも即座に対応するって、何だか大変なことになっちゃってますね〜」

 

いいから、早くその男を処分なさい! 

 

 

 黒幕は気づいていた。博樹の身体から流れ出た血がまるで意思を持っているかのように自身に伸びていることを、自分を殺そうと動いていることを。

だから早急に片付けたかった、BBを呼んですぐに行動するように命令したのはそのためだ。

 

「う〜ん、まっ、こんな何しでかす分からない人、退場してもらったほうが話がスムーズに進みそうですもんね〜。ぽぽいのぽ〜いっとっ」

 

「…………」

 

 BBが指を鳴らすと博樹を中心に地面に渦が生まれ、血を流しすぎて既に意識を失った博樹はその渦の中へと吸い込まれていく。

 

「ふ〜、彼の可笑しな性能と行動には度々驚かされちゃいましたけど、これで一安心って感じ♪ 残すは立香さんだけですね♪」

 

 

 

 

 

 

 

「────フッ。ここで終わるのならそこまでだ。だが、違うであろう博樹?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『え〜残念なお知らせで〜す♡』

 

 【博樹さんが脱落した】。パッションリップを助け出し、管制塔に潜んでいた知性のない魔神柱を倒し生存者にしてセラフィックスの暴動を起こした張本人である”アーノルド・ベックマン”を保護。

その時に管制塔での記憶(メモリー)が流れ込んで来たけど、既にヴリトラに見せられたものだったから頭痛がひどくなったり、眩暈を起こして倒れたりはしなかった。

 そんな彼を連れて協会へと戻ってきた矢先、BBちゃんから報じられたのが博樹さんがこの聖杯戦争から脱落したという信じられない報告だった。

 

「嘘だ! 嘘だうそだうそだうそだ!! 博樹さんがし、脱落するはずない!!」

 

『そんなこと言われても〜これが現実ですよ〜〜?』

 

 

 

 

 

 

 

▶ ▶❘                       2:83/3:15

cccコラボグロ注意? 嫌いな人は目をつむってください♥特別編

再生数1回

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下僕登録♥

登録者数 ひ・み・つ♥

 

 映っていたのは、貫通したお腹から止めどなく血が流れ倒れている博樹さんが黒い渦のようなものに呑み込まれていくという内容のものだった。

 

「BB!! 博樹さんをどこにやった!!」

 

『あ〜あ〜そんな顔したって無駄ですよ〜っだ。まあ? 廃棄場にいけば死体くらいは回収できるかもしれませんね〜』

 

 BBの適当なその態度にもっと頭に血が昇って来たのを、ガウェインが私を落ち着かせようと肩に手を置いてくれて、落ち着くように深呼吸する。

 

『そ・れ・よ・り♡早くしないと時間がありませんよ〜〜?』

 

「メルト、廃棄場っていうのは?」

『え、ちょっと無視ですか?』

廃棄場(リジェクション・カーフ)、私がセンチネルだったときに任されていたエリアよ。文字通りこのSE.RA.PH(セラフ)の不要品を捨てるゴミ箱よ」

 

「じゃあ、急いでそこに向かわなくちゃ!」

 

「はぁあああ? 何を言ってるんだ君は!! そんなことよりも早いことBBを倒して一刻も早くこのセラフィックスを元に戻すことが先決に決まっているだろ!!」

 

 博樹さんを助けに向かう方法をメルトから聞いている私にベックマンが横やりを入れてきた。

そんなこと、人の生死がかかっているのに自分の保身をいの一番に考えて話すその姿に、記憶(メモリー)でみた通りの人物だって確信が持てた。

 捲し立てるように大声を上げるベックマンのことは無視して、私はメルトの考えを待つ。

 

「その男と同じ意見になるのは不満だけれど、あそこに向かうにしても必ず立ち塞がってくるヤツがいるわ」

 

「…………鈴鹿御前?」

 

「そう。ヴリトラがどう出るかはこの際気にしないほうがいいけれど、リジェクション・カーフへ向かう道の途中には鈴鹿が管轄してるエリアがある。アイツとの衝突は避けられないわ」

 

 博樹さんの事で血が上ってしまったけど、みんなのお陰で落ち着きここからどうすればいいのかの指針が出来てきた。

 本当は今すぐにでも向かいたいけど、私自身の身体の限界も近いから3時間ほど休憩してから鈴鹿御前打倒と博樹さん救出へ向かう手筈とはなった。

 

「あれ? そう言えばマーブルさんは?」

 

「彼女ならタマモキャットがパッションリップを担いできたのを見るや教会を飛び出して行ってしまいましたよ?」

 

「ーーーー引き止めなかったっていうことは、そう言うこと……なんだね?」

 

 一般人のマーブルさんが一人でにいなくなったのに慌てる様子もないトリスタンを見て、疑惑は確信に変わった。

やっぱり、そう言うことだったんだねマーブルさん。

 

 

 

 

 

(あの映像……改竄された様子はない……。なら、()()()()()…………ッ、どうやら相当面倒なことに巻き込まれていたようだな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

……羨ましい。素直に、その感情が浮かんできた。

私を知らないアナタ、私の知らないアナタが見せたその表情が、どうしようもなく羨ましかった。

 

楽しすぎて泣いていた。辛くて笑っていた。そんなアナタが大切な人を目の前で亡くしそうになった時、相手が誰だろうと本気で怒っていた。

……その顔を、アナタは私へ向けてくれるかしら? 

 

……まだその時じゃないのに、その先を考えてしまったからか、手足からの痛みに苦悶の声を上げそうになった。

思えば前のSE.RA.PH(セラフ)から今まで、何十時間、休みなく稼働してきただろう。

 

『アナタだけでも逃げてください。その為になら、私は戦えます』

 

『嘘だ! 嘘だうそだうそだうそだ!! 博樹さんがし、脱落するはずない!!』

 

……ああ、そんな悲しい顔をしないで。アナタが悲しむと、アナタが怒ると私の爪先が鈍ってしまうから。

笑って、どうか最後まで笑っていて……その為なら私は何処までも踊り続けられる。

 

『アルターエゴは作り物から生まれた作り物。中には何もない、空っぽなのよ』

 

『フッ、空っぽなんかじゃない? それはアナタが私に新しい存在意義を入力してくれたから。それが偶然か打算によるものだとしても、ね』

 

……アルブレヒト、アルブレヒト。私の知ってる素敵なアナタ、私の知らない素敵なアナタ。

この悦びを、私の中から消さないで……。

 この最悪の中で輝き続ける最高の灯りを……。

 

『たとえ、この両手(つばさ)が砕け散っても。アナタの元に飛んでみせるわ』

 

────そうね。もう、両手はおろか両足も壊れてしまったけれど、まだ砕け散ってはいないもの。

どうか最後まで、アナタのプリマでいさせてちょうだい? 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メルト!!」

 

「立、香!? アナタ、飛び込んできたの!?」

 

 鈴鹿御前を攻略し、私たちに協力してくれることになったのもつかの間。

突如として襲いかかってきた魔神柱の攻撃から、私のこと庇ってしまって崖の下へとメルトが落ちていってしまった。

 

 けど迷いはなかった。動き出したのは一瞬だった。博樹さんが渦の中へ呑み込まれていくあの光景がフラッシュバックしたんだと思う。

迷わずに崖に向けて飛び込んで気絶したメルトへと追いついた。

 

「気づいたら身体動いちゃったてたや。えへへ」

 

「えへへ、じゃないわよ! 私一人なら()()()()()()()()けど、アナタは!」

 

「どうなってもいいなんて言わないで」

 

「────」

 

「あんな顔してたメルトを、一人にはさせないよ」

 

 私のことを庇ってくれたあの時、メルトの表情は満足したような諦めの顔をしてた。「さようなら」「ごめんなさい」って言っているような、そんな顔をしてほしくない。

 

「リードしてくれるメルトがいなくなっちゃったら私、このSE.RA.PH(セラフ)でまともに踊れないからさ」

 

「────ッ、アナタはまったく……。離れないようにしっかり掴まりなさい立香、着地くらいは任せな」

 

「そこらへんはあーしに任せるしっ!!」

 

 メルトの目に生気が戻り、どうにか着地しようと私のことを抱き寄せたその時、上からもの凄い爆音と一緒に鈴鹿が降りてきた。

あれって、リップの腕だよね。鈴鹿がリップの腕に乗って私たちのことを助けに来てくれたんだ。

 

「ほっ、ほっ、ほいっと! 完璧ぃ♪」

 

「ありがとう、鈴鹿」

 

「いやホント、マスターのアンタがなりふり構わず飛び込むからびっくりしたじゃん! 戦い疲れてるってのにソッコー動いてめっちゃ疲れたし」

 

「ごめんごめん。他のみんなは?」

 

「黒いアーチャーはわかんないけど、キャットとリップは一緒に落ちてきてるんじゃん? もう片っぽの爪壁に引っ掛けて」

 

 鈴鹿から私が落ちてからの行動を聞いてみんな大丈夫っぽいことを確認した私は、リップの爪の上にメルトのことを寝かせて直ぐに博樹さんのことを探し始めた。

 

「博樹さーん! 聞こえてるなら返事して────!」

 

「ああ~~そういやもう一人のマスター、ココに落とされちゃったんだっけ? う~ん、立香以外に生きてる人間の気配感じないけど……ホントにここに落とされた感じ? 血の匂いもしないし間違ってるんじゃん?」

 

────────ッ。

 鈴鹿は嘘を言ってない。嘘を吐く必要がないもの……。じゃあ博樹さんがここにいないっていうことは本当なんだ。

じゃあ、博樹さんは何処に……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベリアル因子
 デビルスプリンター、怪獣すら容易に暴れさせ、一欠片でも宇宙に混乱をもたらすレベルのやっべーヤツ。
いくら人類悪になったとしてももとは人間からの昇華である時点での適合しなければ因子が殺しにくる。

ようやく黒幕も動き出し、ラストに近づいている……多分。

 実は立香ちゃんにも隠せてなかったマーブルさん……。


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11

 ウルトラサブスクで読める「ANOTHER GENE」。最高すぎるんですよね、ていうかジード5周年なのに毎年毎年何かやってくるせいで5周年な気がしないのなんなんですかあれ?優遇されすぎじゃないです(いいぞもっとやれ)

 感想、評価お待ちしてます。


 

 

 

 

えー、テステス。音、ちゃんと拾ってます? 拾ってますよね? 

 

たいへん長らくお待たせしました。SE.RA.PH(セラフ)で活動するすべての生命体にお知らせします

 

これまで長らくの殺し合い、憎み合い、励まし合い、まことにありがとうございました

 

鈴鹿の言うとおりどんなに探しても博樹さんが見つかることはなかった私たちは、メルトのセンチネルとしての核を破壊して教会に戻ってきたその時にBBからのアナウンスが流れ始めた。

 

────聖杯戦争の終了。

もうじきSE.RA.PH(セラフ)はマリアナ海溝底部に到達するから聖杯戦争は意味をなくした。だからサーヴァントが残っているこの状況で終了の告知を出した。

 

このままでは相手側の目論見通りSE.RA.PH(セラフ)は羽化し、私たち全員は吸収される。だけど、このままでは無理ゲーだからってBBが特別措置として自分と戦う権利をくれた。

 

ご意見ご質問、抗議、苦情、リクエスト等がある方は、主催者のいるコアまでどうぞ♡

 

「よし行こうみんな。BBのことボッコボコにして博樹さんの居場所吐き出させてやる!」

 

「血気盛んにもほどがあるでしょ……まったく」

 

「仕方がありません。私も、博樹殿の生死は気になりますからね」

 

「ひゃー、こっちもバッチバチに燃えてるじゃんこわっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ここは……

 

 そうだ、あの時マーブルさん……いいや、彼女の皮を被った相手の奇襲を受けて腹部を貫かれて……それで……。

────────死ぬのか? 

 ぼんやりとする頭で考えていると闇の中から声が聞こえてきた。この声は、新宿の時にも聞こえた……。

────────否、否、否否否否否否否

 声は、まるで故障した機械のように否定の言葉を紡ぎ始める。

よく見ると、以前はただ闇の中から聞こえてくる声だけの存在は小さな光の粒が集まって人の輪郭を作り出した、そんな存在になっている。

君は、死にたくないのか? 

────────肯定。私はまだ生きていたい。生きていたい生きていたい生きていたい生きていたい生きていたい

 生への渇望。機械的なのに感情が込められているように感じるその声の主の願いは、ただ生きていたいというただそれだけの欲望をぶつけてくる。

私はまだ、これしか知らない

 両手を広げて現れたのは見知った制服を着た()()()()人たち。

カルデアに来る前、警察官だった時に毎日着ていた制服を着た人たちしか知らないって……どういうことだろう? 

もっと、もっと知りたい。生きていくために、()()()()()()()

 だけど、戻ってどうするんだい? 

マーブルさんの皮を被っていた黒幕。あれを倒すにはどうすればいい? 

 

────束ねろ。この海に棄てられた、いらないものだと打ち棄てられた()()()()()()()使え

 

 そう言いながら手を向けられた私の胸元へと視線を向けると、2つの怪獣カプセルがそこに浮かび上がっていた。これは……

 

    ()()()()()()と、()()()()のカプセル……。

 

 

────生きろ。生きろ。私が生きるために、()()()()()()()識るために……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「まさかここまで強くなってるとかBBちゃんもビックリです! ナイスファイトですね先輩!!」

 

「巫山戯るのはいい加減にして」

 

 BBから生み出された存在(アルターエゴ)のメルトやリップじゃ彼女に攻撃を加えることは出来ない。だけどこっちにはガウェインやキャットたちがいた。

 

 みんなの力を使ってBBのことを倒したけど、当のBBは変わらずおちゃらけた調子だったから胸ぐらを掴んで一喝した。

 

「マスター、危険です!」

 

「きゃあこわい。────そんなことしても、探し人は帰ってきませんよ? 

 

「────ッ! BBっ!!」

 

 瞳を赤く光らせ低い声を出すBB。それが博樹さんやベリアルさんのことを連想させるから余計に怒りが込み上げてきて拳を振り上げようとしたけど、ガウェインに止められてしまう。

 

「落ち着きなさい立香。怒りに身を任せてしまってはBBの思う壺です」

 

「そうだぞご主人。相手から話を聞き出すときこそキャットのような広い心が、

大切だ」

 

「あははっざ〜んねん♪ 戦いをサーヴァントに任せっきりの先輩が暴力を直接振るう姿、見たかったんですけどね〜〜♪」

 

 そう笑いながら、BBの消滅が始まる。最初っからこれが目的だったんだ、私のことを唆して、怒らせることで時間を稼いで大切なことは話さない。

 

「もうちょっとイケると思ったんですけどね〜、それじゃあみなさんさようなら〜♪ あ、これで勝ったと思わないでくださいね〜♪」

 

「…………本当に、消えた?」

 

 セラフィックスをSE.RA.PH(セラフ)へと変貌させた張本人にしては呆気ない幕引き。これで一安心とは思えない、そんな空気が漂うと戦闘していたBBチャンネルスタジオ内の空間が歪み始める。

 

「これは……壁に並んでいるものは棺ですか? 中にいるのは……」

 

「「「────」」」

 

 SE.RA.PH(セラフ)で召喚されたトリスタンがそれを棺に見えてしまうのは仕方ない。けど、私やカルデアのサーヴァントのキャットやガウェインは違う。

()()が何なのか、そしてこの場所が何処かに似ていることにすぐに気がついた。

 

「カルデアの、管制室に似てる……よね」

 

「うむ、だがカルデアのコフィンは空っぽだが、ここのコフィンは違うようだぞ」

 

「────そう。そういうコトだったワケ、SE.RA.PH(セラフ)の動力って」

 

 これが天体室、ううん。天体シュミレーター室:システム・アニムスフィアの真実。

 

 128の英霊を召喚するために、生きているのか死んでいるのかもわからない状態で128のマスターを酷使し続ける最悪のシステム。しかもコフィンの中にいる人たちの殆どが私と歳が近い人たちばかり。

 

「ドクターが前に言ってた。コフィンの中はレイシフトを実行するから電源を入れればそこ不確定な世界になるって」

 

「存外勤勉じゃないか。そう、コフィンに電源を入れれば生体回路(マスター)として使用できる。それこそ何度でもな」

 

「エミヤ・オルタ……」

 

『二度とは、同じケースは起こさせない』。異質な雰囲気を纏って私たちの前に現れたのは、私たちの前から姿を消していたエミヤ・オルタだった。

 

 同じ過ちを起こさせないために、このSE.RA.PH(セラフ)で起きた悲劇を知るもの全てを消す。それが、虚ろな目をしたもう自分の名前すらも思い出せなくなってしまったエミヤ・オルタが、私に銃を向けながら出した答え。

 

「あらゆる悪の痕跡を消す。後に続く悲劇の可能性を潰す。それはお前も例外じゃない」

 

「────みんな、お願い。彼を、終わらせて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落ちる、落ちる、落ちていく……。

変わらぬ速度で、渦の中をぐるぐると回るように落ちていく……。

 底に向けて落ちていくというよりは、引き寄せられているような、そんな感覚だ。

 

 朧気な意識の中で受け取った2つのカプセルを落とさないよう強く握りながら、流れに身を任せるように落ちていく。

 

 目を開いて見るとその映る景色に驚いた。

まるで私のことを呑み込もうと大量のデータが濁流となって襲いかかってきていたんだ。

 

(これは……カプセルの力が私のことを守ってくれているのか?)

 

 データの波と私の間には緑色をした光波バリアーがクリスタル状で張られている。ゼットンのバリアーによく似たそれに守られながら、私は自分のことを引き寄せるの存在の元へと流れに任せることにした。

 

 

────だけど。

 

(呑み込もうっていうよりは、まるで何か大切なことを伝えたくて必死になってるような……)

 

 そうこうして濁流の中を抜けるとそこのは白だけで色付けられた謎の場所にたどり着いた。もう危険はないと判断したのかバリアーが消えると、私の前に中心に罅が入り砕け始めたキューブが一つ浮かび上がっていることに気がついた。 

 

 どうするにもあれが何かの起点なのかと考えた私は、そのキューブに向かって歩いていく。

 

「愛して……愛して……愛して……愛して……。わたしは、ただ愛して……ほしい……だけなのに……。あなたは、わたしを、愛してくれますか……?」

 

「女の子の…………巨人?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────」

 

 息絶えたエミヤ・オルタが何かを掴み取るように手を伸ばし倒れた。

────倒した。倒すしかなかったんだ。迷っていたら私が殺されてた。慈悲の心なんて崩れ落ちた執行者に、こちらの言葉は通じない。だからこそ迷わずに決断するしかないんだ。

 

あらあら、かわいそうなこと。仲はそれほど良くなかったようですけれど、カルデアのサーヴァントだったのでしょう? 

 

「────貴女が、マーブルさんの身体を被ってた黒幕?」

 

あらまあ、気づいていらしたのですね。何も持ち合わせていない方だと思っていましたがなかなかどうして……

 吐き気と、脳が蕩けてしまいそうな気持ち悪い声を発してきたのは、このSE.RA.PH(セラフ)でセラピストをしていた女、殺生院(せっしょういん)キアラだった。

 

 マーブルさんが黒幕かも知れない。それはヴリトラが私にSE.RA.PHの記憶を覗かせてくれた時にはもう気がついてた。だってマーブルさんが殺されてしまうのを直接見てしまったんだもの。目の前にいる人がマーブルさん本人じゃないなんてどう見たって分かる。

 

 けど、だからといってSE.RA.PHを作り出すほどの相手に無策には飛び込めなかったから、ガウェインたちには話をして警戒だけはしておいてもらってた。

 

紆余曲折、ゼパル様とも話し合った末に和解いたしまして今では共に人を救う道を目指すもの。7つの人類悪のひとつ。3つ目の『快楽』の獣、ビーストⅢでございます

 

 ビースト……! ティアマトやゲーティアに並ぶ……3体目の、人類悪……

 

 




 巨大で?属性的には怪物で?cvがペガと同じなあの子を?作者が出さないわけがありません。漫画版はカズラ出てるし、本編で活躍させたいよねっていうただの欲望ですはい。

 ここの立香ちゃんはご存知の通りウルトラマンベリアルの背を見て1部駆け抜けてきたので、敵対している相手にも優しく!を最初はやっていても一線を超えたら確実に相手を倒すに切り替えられる女です。

 でも今回の場合キアラが博樹さんに致命傷、廃棄場にやったと思ったらヴリトラがあの子のところへ送っちゃった。なんで煽ったのは流石にBBちゃんは悪いけどその他は完全にとばっちりなんですよね。


 キアラ戦は今週の土日にUPしたいと思っておりますのでお待ち下さい。
キアラのことは嫌いじゃないです。大奥のときとか心強すぎて負ける気がしない状態になったりするのでね。


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12



今年のウルフェスのSTAGE2、あらすじからやばそうなのずるいですよね。
配信があってよかった……。

感想、評価お待ちしてます。


 

 

────ビーストⅢ 殺生院キアラ

 魔神柱ゼパルの力でキアラは数多ある世界、並行世界に存在する自分の可能性を、その中のある一つを知ったことで、聖人の心を持っていた彼女は変成した。

 

 月そのものを聖杯としたという別世界の殺生院キアラ。ゼパルはあろうことかそのキアラと、最後まで希望を持ち続けようと心が壊れかけていたこちら側のキアラを繋げてしまった。

 

 その結果が、この油田基地をSE.RA.PH(セラフ)へと電脳化させ、自身の贄とするために決して終わることのない聖杯戦争が行われた続けていた真実。

 

 電脳化したSE.RA.PH(セラフ)、自分自身を海底を超え、地殻も超えてこの地球の中心へと到達し、星と一つになる────性感帯になるだのなんだの言われたけど理解できなかったからそこはパス! 

 

 

─┐
┌─

 

今度こそ私は人を救いましょう

 

─┘
└─

 

 嘘偽りのない言葉。キアラの人を救うっていう言葉には何の淀みもない。

けどそれは、キアラ自身が()()()()()()()だと確信しているから言えるんだ。人類(キアラ)を救済するために70億の命は獣とか虫に過ぎない。

 

 自己愛の塊。それがゲーティア(憐憫の獣)ティアマト(回帰の獣)とはまた違う考えをもった人類悪。

 

 

─┐
┌─

 

 

堕ち逝く先は殺生院

顎の如き天上楽土

一寸の虫にも五分の魂と言いますゆえ

う、ふふふふ

最早何人も、私からは逃れられません

それでは皆々様、最期の日取りでございます

天上解脱、為さいませ

 

 

─┘
└─

 

「まさか、これほどまで……とは」

 

「手も足も出せないとか……。ごめんね、私のます────」

 

「トリスタン! 鈴鹿!!」

 

 強い、強すぎるよ。キアラにコチラの攻撃をどれだけ加えようと一切通用しなくて、嘲笑うかのように光に包まれたと思ったらそのキアラが巨大化。

 ベリアルさんの倍はあるであろう巨体になったけどコチラを舐めているのか、まだ巨大になれそうな余力を残しているように感じた。

 

 現に、キアラは何か魔術のような特別な力を使ったわけじゃない。近くを飛ぶ虫を払うように手を払ったその攻撃だけで、トリスタンと鈴鹿御前が消滅させられてしまったのだから。

 

 

────キアラは言う。ゲーティアはただ”強い”だけ、壊すだけの獣に過ぎなかったと……。そして自分の力は弱くて、ビーストとしては蛹のような半端な状態だって。────だけど

 

 

 

─┐
┌─

 

 

 

智慧あるものはどのような知性体であれ『欲』があり

 

この指はその魂を摘みあげる

 

 

欲望(ちせい)あるものは私には敵いません

 

 

 

 

─┘
└─

 

「だから諦めて私に食べられてくださいって? そんなの願い下げだ!」

 

 確かにサーヴァントは減ってしまって、攻略の糸口も見いだせない。

だからって諦めるなんて出来ない! ギリギリのギリギリまで踏ん張って、それでも駄目だったとしても、コイツにだけはその顔は見せたりしない!! 

 

「最後の最後の最後になったって、絶対に諦めるもんか!」

 

─┐
┌─

 

 

ああ、ああっ! まだそのように気丈に振る舞える欲望をお持ちだなんて……

 

私昂ぶってしまいますわ

 

─┘
└─

 

「その余裕なしたり顔が、これから見られなくなるのは少し惜しい気もするのぉ! 

そうじゃろっ! ()()!! 

 

「────!」

 

『最低で、最悪で、最高で、最善のその時に、わえがリッカと叫ぼう。それに応えたのなら、この天元の魔であるわえの本気をお前に魅せてやろう』

────ただただ、令呪のある右手を声の聞こえた方へと向ける。

魔力回路(パス)が繋がっているわけじゃない。令呪に願えば応えてくれるわけじゃない。────だけど! 

 

「私に、天元の魔を魅せろ! ()()()()!!」

 

 

─┐
┌─

アナタは────ッ!! 

─┘
└─

 

【集えアスラよ、わえの肉なる魔の軍勢よ。分かち隔つがその理、隠れ果てよ万象! 『魔よ、悉く天地を塞げ(アスラシュレーシュタ)!』】

 

 女性の姿をとっていたヴリトラが本来の巨大な蛇竜へと変わり、そんな彼女を追うように現れた魔の軍勢。

その様は青い雷を纏った不吉な雲が天を覆っていくようで、その勢いのままキアラの巨体すらも覆っていく。

 

─┐
┌─

裏切ると言うのですか……ヴリトラ! 

この後に及んで、人理などというものに味方するというのですか! 

─┘
└─

 

『裏切るもなにも、最初から主の駒になったわけではないからのぉ。いささか理不尽がすぎるというものよ、のぉキアラ?』

 

 こちらのサーヴァントがどんなに頑張って攻撃してもびくともしなかったキアラの動きを蛇竜たちが全身を這い一時的なものかもしれないけれど完全に止めて、ううん。()()()()()()()()

 

『貴様に攻撃が届かんのは、わえの中に残る()()と、それ通じてわえの特性を引き抜いているからじゃろう?』

 

 コレっていうのはセンチネルの証である『KP(カルマファージ)』のこと、たしかに他のセンチネルのKPの核は破壊してきたけどヴリトラのだけは破壊出来ていなかった。

 それとヴリトラの特性ていうのは「木、岩、武器、乾いたもの、湿ったもの、ヴァジュラのいずれかによっても傷つかない。そして昼も夜もヴリトラを殺すことは出来ない」っていう逸話から再現された特性かな? けど、他のみんなはサーヴァントとしてヴリトラが召喚されているならその特性が引き出されることはないって言ってたけど……? 

 

『そんなものつまらんつまらん! 自らの快楽を満たす最後の障害がこんなにも簡単ではつまらんではないか!』

 

─┐
┌─

 

 

障害? 私の前に残っているのは

叩けば潰れてしまう虫だけですが? 

 

 

─┘
└─

 

『くひひひひっ! その余裕が絶対の自信のまま崩れぬか、驕りとなって消えるのか、わえに見せてみよ』

 

 ヴリトラがその巨大な竜の瞳を輝かせると、額あたりからパリーンっと何かが、多分ヴリトラの中にあったKPを破壊した音が聞こえた。

 それと一緒に眷属はキアラの行動を堰き止めたまま、ヴリトラ本体は女性の姿に戻り私の前に降り立った。

 

「わえが手を貸してやるのはここまでだ。あの障害を超えられるかどうかはお前次第じゃ」

 

「……やっぱりヴリトラは、私たちの味方ってわけじゃないんだね」

 

「あれも人が障害を越え極致へ至ったもの。どちらが勝とうと、わえは喜べるからの〜」

 

 呆気からんというヴリトラについつい笑い声が吹き出す。そっか、竜であるヴリトラからすればキアラも私たちも同列。だからどっちにも障害を超えるチャンスがなくちゃいけないって一度だけ助けにきてくれたんだ。

 

「超えてみせるよ。それがどんな困難でも、高い壁だって絶対に諦めない」

 

「くひひ♪ やはり貴様はいいの〜♪」

 

 

─┐
┌─

 

 

お別れの言葉は終わりましたでしょうか? 

それでは皆様方、今度こそ最期といたしましょうか

 

 

─┘
└─

 

 

「ああ、言い忘れておったわキアラ。────キサマの障害はこれだけではないぞ?」

 

────え? っとキアラと私の声が重なった。

眷属の拘束が解かれ、私たちに襲いかかろうしてきたキアラに向けて立ち去りながら言い去ったヴリトラの一言。

 キアラの障害は私たちだけじゃないって……もしかして!! 

 

 

バリバリバリバリ!! 

 

 

─┐
┌─

 

!? きゃああああああ!! 

 

─┘
└─

 

「!! マスター、あちらです!!」

 

「…………遠いっ!!」

 

 赤い稲妻。突如として放たれたであろうソレが、油断しきっていたキアラに直撃した。キアラが叫んだってことはさっきまでの無敵状態が本当に無くなってることを意味しているけど今はそんなことよりも! 

 

 ガウェインが指差した方向に顔を向け、その稲妻を放った何者かを確認しようとしたけど……遠い。サーヴァントの目なら確認できるかも知れないけど、私の目では人型の何かが2()()いるってことしか…………2人? 

 

 

─┐
┌─

 

いったい……なんだと……

 

え? 

 

─┘
└─

 

「せーのっ!」

 

【ピロロロロ────zット──ン】

 

「メガト〜ン、ナ〜ックル!」

 

 

─┐
┌─

 

な、なぜアナタが……。ぎゃあっ!? 

 

─┘
└─

 

 一瞬。その2人がテレポートしてきたのか考える間もなくキアラの前に出現して、その両頬を2人思い切りぶん殴った。

 

 その赤い意匠から博樹さんが変身したベリアル融合獣なんだろうけど……この電子世界に適応した姿なのか全体的にメカメカしいし、ベリアルさんの意匠部分も機械的な赤い光を放ってる。

 

 もう一人は……メルトやリップ、BBと同じ顔をした……怪獣みたいな女の子。右脚と右目を隠すようにぐるぐる巻きにされた包帯、全身には緑色の……苔か何かが生い茂っていて頭からは自分は怪獣だぞーと言わんばかりのでっかい角に花の蕾かなあれ。見上げてるから首痛いや

 

「は────っ! ちょっとちょっとどうなってるですか!! な〜んで()()()()が出てきちゃうんですか! 教えはどうなってるんですか教えは! 貴女は禁じられた存在で隠しボス枠なのになに出てきてるですか! 分かってるんですか?」

 

「無事みたいね、立香」

 

「メルト! あの子もメルトやリップと同じ……」

「え? また無視ですか? BBちゃん生きてたんですけど〜?」

「”渇愛のアルターエゴ:キングプロテア”。どうせあの男が目覚めさせちゃったんでしょう? しょうがないわ、私たちもいくわよ立香!」

 

 何だかまだ頭が困惑してるけど、キアラを倒さなくちゃいけないことに変わりはないもんね。私がガウェインたちと目を合わせ、キアラに向かっていく。

 

 

 

「……()()()()()()()()? ううん違いますね、カルデアのマスターと契約した結果上限が設定された……もしくは()()()が働いてる……とか? ああ〜もうBBちゃんでもわっかりませ〜ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「愛して……愛して……愛して……愛して……。わたしは、ただ愛して……ほしい……だけなのに……。あなたは、わたしを、愛してくれますか……?」

 

────小さい声。体育座りをしているからなのかは分からないけど、立ち上がったらベリアルさんと同じかそれより大きいであろうその巨人の女の子の声は、その巨体に見合わない小さな声。

 

 それに、虚ろな目だ。愛してほしいって口にしてるのに、その意味を知らないから感情がのってない、心がこもっていない。

 

「────まるで迷子みたいだ」

 

 時間がないのかもしれない。この子は敵で私のことを倒そうとしてくるかもしれない。だけど見捨てたくない。

────力しかなくて、迷子になっていたあの人と同じ目をしているから。

 

「まず、自己紹介をしよう。私の名前は宮原博樹、君の名前は?」

 

「わた、し……? わたしの、なまえ、は……キングプロテア」

 

「そっか! じゃあプロテアちゃん。どうして愛して……愛がほしいのかな? 教えてくれないかい?」

 

 何だろう、大きいけど小さい。幼いって言ったほうがいいのかな? 

そう思った私は、子どもに話しかけるようにプロテアちゃんにどうして愛がほしいって言ったのか聞いてみる。愛してほしいのか? よりも愛そのものを知っているのか疑問だったから

 

「ええと、ええとね。くらいくらい何もない海をずっと漂っていたの。それでねくうくうお腹が減っちゃったの」

 

「じゃあ、沢山の食べ物を食べてお腹いっぱいになったらいいのかな?」

 

「ううん違うの。それでね、どんどん心も削れていったの。だからわたしは、なんどもなんどもなんども、無くならないようにそれだけを思い続けたの」

 

「それが、愛だったんだ」

 

「うん。ねえ、愛ってたのしいかな? おいしいかな? あたたかいかな?」

 

 ああそうか、縋るしかなかったんだ。何も知らないけどその言葉の持つ”強さ”に、自分じゃない誰かが感じた”熱”に……。そうしないと全部なくしてしまいそうだったから。

わかるよ。何万年もの間、牢獄に囚われ憎しみを募らせることで心を保っていた経験を、味わったことがあるから。

 

「それを知るためにも、まずは外に出なくちゃね」

 

「外? ……どうして?」

 

「何も知らないで、これが愛だそれが愛だって教えてもらっても、きっとこれっくらいしか心も、お腹だって満たされない」

 

「やだ、やだやだやだやだやだやだ!!」

 

「うん、いやだよね。だから外に出て沢山の事を知ろう、いっぱい覚えよう、色々な事を学ぼう」

 

 赤ちゃんだって、はいはいを覚えて、立ち方を覚えて、歩き方を覚える。他の誰かの言葉を聞いて、知って、間違えながら言葉を覚えていくんだ。

一気に、一度に沢山に覚える必要なんてない。ゆっくりでもいいから一歩ずつ成長していけばいいんだ。

 

「そうやって、自分の心をあたたかく育てていけばいいんだ。そうすれば、君なら愛を知ることができる。その愛を、大切に扱うことができるようになるさ」

 

「ほんとうに? わたし、まちがえちゃったりしない?」

 

「その時は、間違いだよってちゃんと教えるさ」

 

「〜〜〜〜!!」

 

 プロテアちゃんは喜んでくれたのか顔を綻ばせながらその大きな身体を震わせる。

良かった、ちゃんと伝わってくれたみたいだ。

 

「じゃあじゃあ、はやくこんな何もないところから出ちゃいましょう! いっぱいいっぱい! 知りたいです!! そうだ! わたしの肩に乗ってください! こんな所すぐに出てっちゃいますから!!」

 

「ははは、ありがとうプロテアちゃん。じゃあまずは、あの暗いところに連れて行ってくれるかな?」

 

「ん〜〜わかりました〜〜!」

 

 何だろう、プロテアちゃんとの契約が成立してるのかな? いつの間にか彼女との繋がりを強く感じることができる。うん、まっすぐに伝わってくるプロテアちゃんに感情、悪くないや。

私は彼女の肩に乗って、彼女の頭を優しく撫でる。

 

「暗いところに飛び込むのは怖いかもしれないけど、お願いプロテアちゃん」

 

「もう大丈夫! ひとりぽっちじゃないもん!!」

 

 よし行こう! もう立香ちゃんが黒幕と戦っているかも知れない。だけどこれは、()()()()()()は連れて行きたい! 

要らないと捨てられた思い、全部連れてアイツに叩き込む!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キングプロテア
 渇愛のアルターエゴ。SE.RA.PH(セラフ)化する際に偶然再現されてしまったもの。生みの親のBBちゃんもキアラですら手に負えないヤバイ奴。
 このまま知られず消えるだけだったが博樹がレイシフトした時に目が合ったために縁が出来た。ヴリトラが瀕死の博樹を導けたのもその縁あってのこと。

 本来ならばSE.RA.PH(セラフ)を作り出したキアラの影響により14歳程度の少女の知能を保持しているはずだったが、血を流したまま堕天の檻に博樹が落ちたことで、キアラが拒絶反応を起こしたベリアル因子によって月の裏側のプロテアと同じになった。

 博樹が妻子持ちだからなのか恋愛感情を抱くことはないが、色々なことを教えてくれる大好きな人をという認識。博樹のことを小さいと思わないのは父親と思ってくれているからなのか、それとも彼の中にある因子を感じ取ってなのかは分からない。

魔性菩薩
 ゲームだと|KP《キアラパニッシャー」を使うことでやっと戦えるレベルになる(そのまま戦うと超高難易度)が、この小説ではそのままぶっ倒すことに。最初ダメージ通らなかったのに次通るの可笑しくない?だったため魔性菩薩の無敵状態は初期からSE.RA.PH(セラフ)に召喚されていたヴリトラの特性を取り込んでいたということに

 設定的に半由旬(約5kmくらいであってます?)というよくわからんサイズだけど、手のひらに3人暗いしかサーヴァント乗らないならゲームで出てきたあの巨体は100〜200mくらいじゃない?そうじゃないと怪獣戦出来ないだろ!!ということでお許しください。

 ヴリトラがKP(カルマファージ)とセンチネルであることを捨てたことで敗北ルートまっしぐら。プロテアとベリアル融合獣止められるもんなら止めてみろやい!


 次回決着なんですけど、明日に更新は無理かもしれません。
早くて11日か来週の土日かもです……。



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13


ウルサマのボイスドラマの破壊力高すぎませんか?ジードの夢かも知れないけどベリアルさんがウルトラマンを神かなにかと勘違いしてないか?とかどんな生命体も大なり小なり悪意を持つとかすごい人間臭いこと言ってるのやばいんですよ……。

感想、評価お待ちしてます。


「力を、貸してほしい」

 

 プロテアちゃんと飛び込んだ暗闇の中、その中に飛び込んで私はすぐにそう口にした。

────ここはきっと、()()()()()()()が捨てられたゴミ箱のなか。だからここある無数の記憶(データ)は全部、動力にされたマスターたちの心だ。

 

 英霊を召喚し続けるために、「生きたい」「勝ち残りたい」という意思だけを残され、他の思いは全部この場所に棄てられてしまった。だからここには、147人分の後悔や屈辱、それに夢なんかも棄てられているんだ。

 

「受けた屈辱を何倍にもして返してやろう。お前がいらないって言ったものがどれだけ強いのか見せつけてやろう!」

 

 やることはバビロニアのときと一緒だ。みんなの思いを、心を一つにすることでカプセルの力を極限まで引き出す。

 

 どうやら力を貸してくれる気になってくれたらしい。その思いを力に変えるために私は2本のカプセルを起動して前に突き出した。

 

 【ゼットン】と【キングジョー】のカプセル。【ペダニウムゼットン】へと変身することが可能なこのカプセルは、伏井出ケイが最も愛用していたもの。ストルムの光を浴びて自らを強化させた時も使っていたものだ。

 

「────ッ! これは……!?」

 

 驚くべきことが起こった。起動したカプセルは目論見通り、残留思念となったマスターたちの心を使い強化させることに成功した。けどそれは普通の強化とはかけ離れたものだったんだ。

 

サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットンサイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン

 

 

 

 

サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットンサイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン サイバーゼットン

 

 

 

サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー

 

 

サイバーキングジョー

 

 

サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー サイバーキングジョー

 

 

────()()()

 電子の海となったSE.RA.PH(セラフ)。その海に棄てられた心もデータ化されていても不思議じゃない。電子(データ)となった人々の心を吸収したカプセルはこの海に最も適した形へとその姿を変えることで強化を果たしたんだ。

 これを使ったらどうなってしまうんだろう? そんな一概の不安も感じたけど、迷っている時間もないから私はその2本のカプセルをナックルへ装填、ライザーにリードする。

 

サイバーゼットン サイバーキングジョー 

フュージョンライズします

 

 リードして流れてきたのは何時もの違う音声が流れてきた。電子(サイバー)化したことでライザーにも変化が生まれたのかな? 

 

「────行くぞみんな! 晴らすぜ! 屈辱!!」

 

 動揺しながら私はライザーのボタンを起動して、変身するために胸の中心へライザーを置くと、私の目の前に透明な画面が浮かび上がった。

 

サイバーペダニウムゼットンにユナイトしますか? 

 

YES  NO

 

────迷いはない。YESのボタンを叩くように勢いよく押すと、足先が0と1の数字に分解されていく。

 

 

 

 

サイバーペダニウムゼットン アクティブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ピロロロロ────zット──ン】

 

 博樹がフュージョンライズしたベリアル融合獣【サイバーペダニウムゼットン】は確実にビーストへと変性したキアラにダメージを与えていく。

いくら変身したのが博樹だったとしても立ちはだかるその姿は紛れもなく怪獣で、人類悪であるキアラが救うべき(滅ぼすべき)人類の天敵だ。そして運が悪いことにキアラにとって人間とは自分ただ1人であるため、本来ならばその星に根付く複数の生命体に対して向けられる筈の殺意や畏怖といった全てがキアラただ1人に向けられているのだ。

 

 分かりやすくいうと……キアラに対して特攻が100%クリティカル判定でぶっ刺さってる状態だということだ。

 

─┐
┌─

 

(目の前の怪物1体だけなら付け入る隙が見つかるというのに……) 

 

─┘
└─

 

「どんどん! バゴーンッ!!」

 

 サイバーペダニウムゼットンを相手にするだけでも大変だと言うのに、キアラの前にはもう1体何を考えているのか分からない歩く災害(キングプロテア)が邪魔をしてくる。

博樹と本契約を結んだ影響なのか、ベリアル融合獣に彼女のルーツ、あらゆる神話に共通する大地母神のエッセンスその中のティアマトが大きく反応したのか霊基再臨したより怪獣らしい姿になったプロテアの純粋無垢な暴力が津波のように、地震のように、大嵐のように襲いかかってくる。いくらビーストになったからと言ってたまったもんじゃないだろう。

 

 圧倒的不利。それでもキアラは不敵な笑みを見せる。

 

─┐
┌─

 

(怪獣であろうと災害であろうとも、逃げ切ってしまえばコチラ勝ちですもの。()()()()耐えきれば……) 

 

─┘
└─

 

 いくら理不尽な攻撃を受けたとしても、焼け焦げた肌も、千切れた腕も全部全部。彼女が内包する無名の魔神柱が修復し続ける、いつかは限界がくるかも知れないがキアラはそのいつかよりも自身が地球の中枢に辿り着く方が先だと確信しているから、目の前の理不尽を前にしてもまだ余裕な顔をしていられる。

────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

転輪する勝利の剣(エクスカリバー・ガラディーン)!!!!】

 

─┐
┌─

 

コレは……? 

 

─┘
└─

 

 キアラと怪獣たちの間を遮るように、太陽の灼熱が炎の壁となって襲いかかる。対処に遅れ腕が焼かれてしまったがこの程度……と思い少しでも時間が稼げたとほくそ笑んだキアラ。

その逆では、タマモキャットに抱えられた立香がサイバーペダニウムゼットンの肩にたどり着いていた。

 

「うむ! 中々経験することのないハードなロッククライミング、いや怪獣クライミングだったぞご主人!!」

 

「博樹さん!! このまま戦い続けていてもキアラの核には届かない! メルトたちに考えがあるみたいなの!! あの子、私たちも協力するからプロテアちゃん無しでキアラのこと抑え込める!!!!!?」

 

【──ー─zット──ン】

 

  このままいったら負けてしまう。それはBBがバックアップに加わったことで立香たちも分かっていたこと。その打開策、キアラの核を破壊する唯一の方法があるため、立香は博樹に声を届かせるために肩まで登ってきた。実際サイバーペダニウムゼットンが何を言ってるのかさっぱりな立香だが頭を下げたので理解してくれたと判断しすぐにBBへと連絡を入れ、同じようにプロテアに登っていたメルトとぱリップに指示を出す。

 

「物足りないけど……わかりました〜」

 

【ピロロロロ、ピロロロロロ────zット──ン】

 

─┐
┌─

 

このような火で私のことを止められるとでも思っていたのですきゃああああっ!!! 

 

─┘
└─

 

 メルトたちの準備ができるまでの時間稼ぎ。そう言ったはずなのにガウェインの炎が無くなった瞬間に両腕で作った火球【サイバーペダニウムメテオ】をサイバーペダニウムゼットンはキアラに叩き込んだ。反動がきていない所を見ると威力は抑えたようだがキアラに対して一切油断は見せないというよりかは倒せないならサンドバックにしてやるくらい【ピロロロロ、ピロロロロロ────zット──ン】だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだよ、まだいけるわ……」

 

「が、がんばって! メルト!」

 

「ファイト〜ファイト〜!」

 

「ふふ、力を吸われてるっていうのに何よその余裕は……まったく……」

 

 キアラとの戦いを博樹たちに任せて後ろに下がったプロテアは、救うように広げた手のひらの上にメルトリリスとパッションリップを乗せて応援していた。

 『メルトウイルス』それがメルトにだけ許されたid-es(イデス)。エナジードレインの最上級であるその力を使い、プロテアの(レベル)を吸い取っているのだ。

 

「まだ、まだよ……。アイツを貫くのにはこんなんじゃまだ足りないわ……」

 

 無限に、それこそ無限に吸い続ける。キングプロテアは自らの成長限界を超え続けられる『ヒュージスケール』と、常時経験値を取得し続ける『グロウアップグロウ』の2つのid-es(イデス)を有しているおかげでメルトは気兼ねなく、迷いなくプロテアから力を吸い取れるということだ。

 

「う〜ん。やっぱりメルトリリスどこか()空いてますよね〜」

 

「あ、あのプロテア。そ、それはね……」

 

「いいわよリップ誤魔化そうとしなくて、今の私とプロテアは繋がっているようなものだもの。気づかれたってしょうがないわ」

 

「ううう、だけど……メルト……」

 

 BBから生まれたアルターエゴたちは、お互いの能力を熟知している。メルトの吸収する速度が遅いというよりは、吸収している量よりもレベルの上がりが悪い、まるで溢れてしまっているようだとプロテアは気がついた。

 

「色々と込み入った事情があるのよプロテア。だからどうか、今は深い所は聞かずに力を貸して頂戴。この狂った演目の終演を、どうか私に踊らせて」

 

「いいですよ〜」

 

「か、軽い!! びっくりしちゃうくらい軽いよプロテア!」

 

「ふふふ、貴方も良いように変えられたみたいね」

 

 本来ならどうやってもいがみ合う関係で、仲がいいわけではなかった3人が、出会えたマスターのおかげなのか、与えた環境の影響なのか仲のいい姉妹のように話をしながら、幕を下ろすための準備を勧めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─┐
┌─

 

ふふ────、うふふ────

 

─┘
└─

 

 わからない。本来ならアイツの考えていることなんて一つだって理解したくないのに、今ははっきりとわかる。

 あの博樹がなった怪獣に手も足も出なかった貴女は、自分からSE.RA.PH(セラフ)を切り離して、一人で地球の核へ向かうって……。

 

「そうすれば貴女を守る最大の衣装(ベール)も剥がれる。最大の好機(チャンス)がくるって」

 

「メルトリリス、笑ってる?」

 

「ええ、まさかこの土壇場で貴女が味方してくれるなんて思いもしなかったもの。そのお陰で、これ以上ないほど最高のコンディションで幕を閉じることが出来るわ」

 

────輝かしかった。本当に本当に輝かしい日々をおくれたわ。

この海の始まりは、私が一度経験した演目とは役者が違っていたけど……悪くなかった。

 

死がふたりを別離つとも(ブリュンヒルデ・ロマンシア)、カタパルト展開】

 

─┐
┌─

 

この数の魔神柱! いくら貴方でも!! 

 

─┘
└─

 

 

【ピロロピロロロ────zット──ン!!】

 

SE.RA.PH(セラフ)中に出現した魔神柱、雷によって消滅しました!」

 

「うーむ、実にワンダフル。取りこぼしもないとはカルデアの掃除に使えぬものか?」

 

 本当、どこまで巫山戯ているのよ……。いくら羽化していないといってもBBが準備していたものも何も使わないキアラが可哀想になるくらいの戦いをするなんて……。そのお陰で、この槍が今度は届く!! 

 プロテアの手の上から、リップがアイツの心臓へと標準を合わせる。

 

【アテナの槍よ、閉ざされた壁を破壊して……! バージンレイザ────】

 

「……ごめんなさいリップ。あのとき、貴女を置き去りにしてしまって。それだけは謝っておきたかったの」

 

 

「っ────うん! 行って、メルト! パラディオン、撃ちます!」

 

「いっけ──────!!」

 

────私は、貴女と走り抜けた戦いを思い返す。

もう一度再開した、もう私を知らない、あの人の顔を思い返す。

 

 ふふ、本当何だったのかしら? なんで戻ってきたら私が知った貴女じゃなかったのかしら? 知らない誰かがいたのかしら? 

それを知る方法なんて無いのだけど……可笑しくて笑ってしまう。

 

─┐
┌─

 

それでは皆さま、ごきげん────な

 

─┘
└─

 

「その若作りな厚化粧ごと、貴女の衣装(ベール)貫いてあげるわ!! 

殺生院──────────!!」

 

 

 私と一緒、『快楽』の海から生まれた近しい怪物。

────最高のエンディングを、貴女へプレゼントしてあげるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【サイバーペダニウムゼットン】
堕天の檻に棄てられたマスターたちのデータを使用することで、カプセルがSE.RA.PH(セラフ)に対して最適化した結果生まれたサイバーベリアル融合獣。

 全長はペダゼエボルドと同じかそれ以上(推定300m以上)。元はゼットンにキングジョーのパーツが食い込んだ見た目だったが、サイバー化は余剰パーツなし(ベリアル要素パーツ+)で完全合体したゼットンといえる外見。

 出番が少ないように見えてキアラに対して終始優勢で、SE.RA.PH(セラフ)中に出現した魔神柱を1体残らず一撃で消滅させるなど戦闘能力は最強クラス。テレポートなども使えるため移動なども苦にならず、相手の隙を狙える。

 活動限界は3分間のはずだが、それは現実世界での3分なのでSE.RA.PH(セラフ)での活動限界は300時間←バケモノかな?


あとは最後にエピローグをば……お待ち下さい〜〜


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エピローグ

CCCプロローグ上げてないことに気がついたのでプロローグが追加されてます。最新話でこちらに来た方はプロローグまで時間逆行してください。
メルトのようにね!!(狙ってないです普通にミスりましたすみません)



感想、評価お待ちしてます。


「はあああああああああああああああ!!!!」

 

 会心の一撃(クリティカル)

メルトリリスの一撃が、キアラを守るSE.RA.PH(セラフ)ごと貫いた。その鮮やかな一撃にキアラが何か出来る余裕もなく、胸の中心に空洞が出来たことにすら気づくのが遅れた。

 

 

─┐
┌─

 

あああ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! 

 

─┘
└─

 

「ふっ、ざまあみなさい……。()()()()()()()のが貴女の敗因よ」

 

「きゃあ────っち!!」

 

「お母さま、今です!!」

 

『はいは〜い! プロテアまで転送するとなる大変ですね〜っと!!』

 

 SE.RA.PH(セラフ)ごと破壊しこのまま電子の海の中で消えるとメルト本人も覚悟していた。それなのにこの海の中を泳いできたプロテアによって救出され、アルターエゴ3姉妹はそのままBBによって転送されていった。

 

「────よかった〜! メルトたちは大丈夫みたいだよ博樹さん!! ……博樹さん?」

 

 そんなメルトの最後の一撃をサイバーペダニウムゼットンの上で見届けていた立香たちは勝利を喜びあっている中で、融合獣に変身しているはずなのに博樹が何かを考えているように立香には見えた。

 

【ピロロロロ────】

 

「へ?」

 

「む?」

 

「なぬ?」

 

 サイバーペダニウムゼットンのバリアーに包まれたと思ったらそのまま何処かへと、目の前でBBがアルターエゴたちを転送させた場所を一瞬で計算したのか、立香たちのことを転送させた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、君の出番はなかったみたいだね」

 

「────はっ。どうやらそうみたいだな」

 

「全部ぜんぶ、わざわざ君が背負う必要はないんだよ」

 

 堕天の檻から浮上するとき、()()()()()()()()()()()()()()()()その魂を、博樹は拾い上げていた。

 

「それをアンタがオレに言うのか。これだけの捨て駒を拾い集めてきたアンタが」

 

「はははは、言えてるや」

 

「────悪党が叫ぶ、最後の断末魔。それを特等席で見届けさせてもらおうか」

 

「ああ────。終わらせてくる」

 

「一つ忠告だ。────アンタは、()()()()()()()()()()()

 

「……頑張ってみる」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

─┐
┌─

 

 

 

まだ、まだです! まだやりようはあるはず! ────へ? 

 

 

 

─┘
└─

 

 

【zット──ン】

 

 「次はない」そう言うように声を上げるサイバーペダニウムゼットンは、両腕を大きく広げると頭部の角、両肩の突起を含めた放出部からエネルギーを球状に溜め始める。

 それは、キアラに打ち出した「サイバーペダニウムメテオ」とは訳が違う。

力の大元であるゼットンの【一兆度の火球】に近い、最大級の火球を作り出していく。

 

 「逃げ場なんてない」それを見ただけでキアラは確信した。崩れ行くSE.RA.PH(セラフ)の一欠片にでも潜みどうにかできないかなんて甘い考えは無駄だと、あれは何をしても逃げられない絶対だと。

 

 

─┐
┌─

 

 

 

 

ああ────あああああ────あああああああ──────!! 

 

 

 

 

─┘
└─

 

 

【ピロ ピロロロ ピロロ────zット──ン!!!】

 

 一兆度の火球は、火球を発射した瞬間に地球は蒸発し、数百光年内に存在する天体もまた莫大な放射線を浴びて滅亡してしまうと言われている。いくら人類悪と呼ばれるものでも、それと同じものを喰らって耐えられるはずがない。

 

 ましてや時間が経てば消滅してしまうSE.RA.PH(セラフ)キアラからすれば絶望以外の何物でもない。

 

 

 

─┐
┌─

 

 

し、死にたくない! 死にたくないのです! まだ、私は満足していないのです! 

 

 

─┘
└─

 

『そう思ってた彼ら彼女らを喰いものにしてきたんだ。その────報いだ!!』

【zzzzzzzzッ!!! ト────ーン!!!!】】

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ほら!! 早く早くBB!!」

 

「ちょっ! わかったから押さないでくださいよ! 計算狂っちゃうじゃないですか!!」

 

「今までのこと許すって言ってるんだからいいでしょ! いいからはやく!!」

 

 博樹さんのテレポートで気が付けばBBが別で作ってた避難場所の【BB病院】に送られた私たち。

私はすぐに博樹さんのことをサルベージするようにBBに言って、今それをやってる最中なんだけど……。

 

「あああもう何なんですかこの熱量は!! 1兆度なんて空想だけの話こっちに持ってこないでもらえませんかね〜〜!!」

 

 SE.RA.PH(セラフ)とキアラ両方を燃やす、溶かすのほうがいいかな? 融合獣が放った火球を受けたその余波でこの電子の海自体崩壊が早まってるらしくて、それにも対応してるから中々大変なのはわかるけど頑張れBB! 

 

「まったく、猫の手も借りたいとはズバリ今だなご主人よ!! う〜〜む、ここだBBよ!!」

 

「はあ? 何言っちゃって……って本当じゃないですか!! ほぉおおおおおお強制転移!!!」

 

 そんな頑張るBBにキャットが横槍を入れたと思ったら、何が起きたのか博樹さんの座標を言い当てたみたいで気を失った博樹さんがここに転移されてきた。

 

「マスターさんに言いたいことはないんですか? メルト」

 

「────いい。いいわ。本来は私たちは出会うはずがなかったのですもの、私はただのアルターエゴ。ただそれだけでいいのです」

 

「わたしのことたべててもダメなの?」

 

「ダメよプロテア。どんなに吸収したとしても、お腹に穴が空いてて満腹にはならないんだもの。いくら頑張ったとしてもくうくうお腹なっちゃうのよ、今の私は」

 

 カルデアのサーヴァントとして登録することが出来る。BBお得意の裏技を使い、自身も含めてこの特異点だけの存在にはさせないために、イレギュラー扱いでサーヴァント化させてカルデアに潜り込む気満々だったBBは、メルトにそう投げかけたのだ。「思い残すことはありませんか?」と。

 

 1度目の聖杯戦争において、キアラの攻撃で致命的なダメージを負いながらも時間逆行を行い、【ベリアルを知る立香】に会ったメルトはその時間にいたもう1人の自分(メルトリリス)を吸収することで今の今まで耐えていた。プロテアを吸収したお陰で一瞬レベルが999にまで上昇したが開いた穴が閉じることはなく、水が漏れ続けている状態のメルトはどうしたとしても助からない。

 

 それでいいのだと。立香とこれからも仲良くしたくて舞い戻ってきたんじゃない。育んだ思いを無駄にしたくないから舞い戻ってきたからここで散っていいんだと。

 

「そんな結末。わえが認めんがな」

 

「は?」「はい?」「え?」「わあ?」

 

 瞬間、メルトリリスの身体が一瞬だけ光り輝いた。

 

「お主にだけ褒美を与えていなかったであろう? 漏れ出る水を()()()()()のは、わえの得意とするところじゃからの」

 

「あ、あ、あ、あ、アンタ…………!!」

 

「あ、そっか! メルトは完全流体だから!!」

 

「ヴリトラさんの権能直で受けちゃうんですね〜。メルトにとって最悪レベルの天敵に助けてもらっちゃったってことですかね〜これ」

 

「アンタ話の流れ聞いてた!? このまま私綺麗に言えてマスターに別れも言わずにさようならする所だったんですけど!! どうしてくれるのよ!!」

 

「クハハハハ! そうは言うが、言の葉は嬉しそうじゃがなあ?」

 

「〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

「へ? ちょっとヴリトラさん? どこに行くんですか? BBちゃんのパワーでこのままみなさんカルデアのサーヴァントとして登録できるんですけど?」

 

「それも面白そうじゃが……此度はやめておこう。縁は結ばれたのだ、いつか出会うこともあるであろう。ではな」

 

 本当に障害を乗り越えたメルトリリスにその報酬を与えるためだけにやってきたようで、ヴリトラはそれだけ言って、BB病院から姿を消し何処かへと飛んでいった。

 

「は〜、本当に最後の最後までなんだかわからない人、邪竜さんでしたね〜」

 

「け、けどヴリトラさんのおかげでメルトも助かったんだし、よかった……よね?」

 

「────そうね。こっちのことを引っ掻き回しれくれたりと色々大変だったけれど、────感謝はしてあげるわヴリトラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「……全部終わったぞ、()()()()()

 

 セラフィックスー通信室ー。SE.RA.PH(セラフ)化してからセラフィックスの施設のほとんどが使い物にならない状態であったはずなのに、そこだけはまるで()()()()()()()()のかと見間違うほど身綺麗だった。

 通信室の中へと入っていったヴリトラは、通信を可能とする機材が置いてある机の上に腰をかけると、目の前にあるキャスター付きの椅子を見ながらその名前を呼んだ。

 

 

 

 

 

『2つに1つじゃ』

 

『へ?』

 

『絶望の中にいながら、未だ希望に縋り続け戦い続けた貴様にわえが一つだけ褒美をやろう。ゆえに選べ』

 

『え、選ぶって……』

 

『一つは、このSE.RA.PH(セラフ)が終わるその時までわえが貴様の絶対の安全を、安寧を約束してやる。死に怯える必要はない! 闊歩するサーヴァントなどわえが全て倒してやろう!』

 

『…………も、もう一つは……?」

 

『通信室に用があるのだろう? わえが連れて行ってやる、アルターエゴどもが邪魔しようが跳ね飛ばしてな。かるであ、じゃったか? そこへ助けを呼ぶのも認めよう。────だが、それだけだ』

 

『それだけ、っていうことは……』

 

『察しがよいのお〜。通信が終えれば、わえはセンチネルとして貴様の命を貰う。く、ひ、ひ、ひ! 良いであろう? さあ、選ぶといい』

 

『…………つ、通信室まで、連れて行って!!』

 

『ほおう、良いのか? せっかく今の今まで生きてきたというのに、命を捨てると言うか』

 

『死ぬのはやっぱり怖いわ。けど、託されたから! この地獄を終わらせてくれる希望を呼べるのは私だけだって、託されたから!! それに、もう逃げたくないから!!』

 

『クハハハハハハ!!! 良いなあ良いぞ!! 恐怖は捨てきれていないその覚悟、実に人間臭いのぉお!!!』

 

 

 

 

「く、ひ、ひ。どうじゃったトラパイン。彼奴ら、お前が求めた通りの希望だったか? そんな筈がないか! かっかっかっかっか!!」

 

 ヴリトラの身体は、消滅が始まっていた。実の所、メルトリリスに権能を施した時点でヴリトラは殆どの力を使い切っていた。この通信室をキアラにも干渉させないように常に権能を使って守り続けていたのに加え、キアラをいっとき堰き止めた宝具の使用に、極め付けはサイバーペダニウムゼットンの火球だ。SE.RA.PH(セラフ)を焼き尽くすあの火球から通信室を守り抜くのに殆どの力を持っていかれてしまったため、ヴリトラはあと数分もしたら退去してしまうほど、弱っていた。

 

「ん〜〜〜! かっ────! 流石に疲れたのぉ〜。なあトラパイン、それに()()()()()()()()()()()。充分、楽しませてもらった……久方ぶりに、満たされたわ」

 

 

 

 

 

 





 このCCCコラボを書くにあたってやっぱり1番にあったのは『メルトの救い方』。既に砕け始めてるメルトを助けるにはどうすればいいんだろうと考えた結果がヴリトラだったということです。人外鯖=博樹さんの契約鯖と見せかけて本当はプロテアが博樹さんの契約鯖だよっていうのもやりたかったですしね。
 インド神話体系で、完全流体のメルトに普通に攻撃を加えることが出来て、しかも神性特攻まで持ってるという完全にメルトの天敵だと思うんですよね。

 次にどの融合獣でキアラと戦うか?ロボット怪獣×ロボット怪獣、しかもサイバー惑星のクシアから送り込まれているという点からキングギャラクトロンも候補に上がっていたんですけど……。サブタイトルの【キミとつながるために】はウルトラマンXからとってきてたり、【アクティブ】がやりたかったりしたのでサイバー化している怪獣の中で一番合体して違和感のない&キアラにも対抗できる融合獣ということでペダゼが選ばれました。


 次回からはアガルタ編。1.5部のメイン鯖の中だと不夜キャスが一番好きなんですよね、3ゲージ3体モルガンあのままいってたら倒せたのに中断されたことは今でも根に持ってます。


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伝承地底世界アガルタ〜夢を継ぐもの〜
プロローグ




更新止まってるうちにデッカーは終わって、ブレーザーも終わり、アークも発表されてました。
時間の流れ、早すぎない?


感想、評価お待ちしてます


 

 

 

 

『後数分で別次元の壁に到達します』

 

「なんなんだよ……これ……!?」

 

()()()()()()()()()()

 

 ベリアルの真意を確かめるため、遥か遠く離れた次元にある地球(立香たちのいる地球)にネオブリタニア号に乗って向かっている朝倉リクたちは、目の前に映る光景にただただ驚くしかなかった。

 

 無数に枝分かれした並行世界の中でも隔絶されているかのように、大きな壁のようなもので遮られているその宇宙への扉とも言える穴。誘蛾灯に誘われるよう、その穴に向かって大量の怪獣たちが押し寄せていたのだ。

 

『推定でも三百を超える怪獣が観測されます、どうしますかリク?』

 

「どうするって……行くしかないのそうなんだけ……」

 

「ホントに通れるのリク!? ほら見て、あの怪獣たち壁に触れただけで爆発しちゃってる!!」

 

 ペガの言うとおり。別宇宙への向かおうとする怪獣たちだが、壁に搭載された防衛システムなのか、その壁に触れるだけで怪獣たちが爆散してしまっている。

 

『いくらウルトラマンジードの身体でも、ただではすまないでしょう』

 

「ほら! レムもそう言ってるよ!!」

 

「うう……。わかった、わかったから! 少し、様子を見よう。実際、怪獣が多すぎて向かおうにも向かえないしね」

 

 二人から言われたのと、怪獣たちが無惨に散っていく姿をみて怖気づいてしまったのか、リクはすぐに突撃はせずに少し離れた場所で様子を見ることにした。

 

 

 

 

 ────その時、見落としてしまっていた……。3()()()()が壁を越えていってしまったことを……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ぼくぜったい! ウルトラマンみたいになるんだ!!」

 

 

「本当、博樹はウルトラマンが好きだなぁ〜」

 

「大きくなったら、ウルトラマンみたいに人を助ける人になるんですもねえ?」

 

「警察官かぁ、小さいころの夢が叶ったなぁ博樹!」

 

「立派になったわねえ博樹。孫も抱かせてもらっちゃって、ありがとうねえ」

 

「お前と一緒に酒が飲める日が来るなんてなあ、子どもの頃から何も変わってないと思ってたんだがなぁ」

 

 

 

「変わらないよ。僕が父さん母さんの息子だってことは何にも変わらない」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「……さん! 博樹さん!」

 

「!! ご、ごめん、何の話だったかな?」

 

「はあ〜勘弁してくれよお、レムレムするのは立香くんだけでいいんだからね?」

 

「んな! ちょっと酷くないですかダヴィンチちゃん!」

 

 ええと、確か新たな特異点が観測って連絡を受けてブリーティングルームに集められて……それで……ああだめだ。

()()()()()()()()()()()()()()()気がするなぁ、これも年なのかな……。

 

「コホン。それじゃあ確認も踏まえてもう一度説明しようか、今回新たに見つかった特異点は2000年代の中央アジア、そこに生じた謎の巨大地下空間。我々をそこを地底世界(アガルタ)と呼称した」

 

 地下空間。ウルトラマンとかだと結構そういう空間に怪獣が潜んでて〜ってのはよくあるからああそうなんだとは思ったけど、実際は物理的な問題上ありえないらしい。 うん、この年になって初めて知ったよ。

 そうか、酸素の問題とか地熱の問題とかがあるのか、勉強になるな。

 

「観測結果として空間自体に危険はないと私は判断した。それと────」

 

 特異点の発生に伴って4騎のサーヴァントが姿を消したと。

【エレナ・ブラヴァツキー】

【フェルグス・マック・ロイ】

【ヘラクレス】

【フランシス・ドレイク】

 時代や地域に共通点はないが故に不可解で、敵が何らかの理由、手段によって引き寄せたものだと予想が立てられた。

 こちらの本拠地にも手が届くような厄介な相手、そんな中で立香ちゃんをサポートするサーヴァントとして選ばれたのが……。

 

「シャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォさ! マシュの可愛さ担当はボクに任せてよ!」

 

「シュヴァリエ・デオン、よろしい頼む。…………マシュの真面目担当、らしい。はあ」

 

「ええと、ダ・ヴィンチちゃん。一応この二人の選別理由を聞いておきたいんだけど……?」

 

「そういう顔をするのは分かるけれど、これでも戦略を考えての人選だよ?」

 

 アストルフォくんは数々の冒険譚、しかも月にも行ったことがあるという点から未知への舞台に慣れている。デオンさんは隠密から護衛まで、その対応力は英霊の中でも随一という点から抜擢されたらしい。

 

 ……ムニエルくん、趣味は人それぞれだとは思うけどあまり表に出しすぎるのもどうかと思うよ? 

 

「この状況で誰が最適かは分からない。リソースを考えてもそう選択肢は多くなかったのは確かだよ。わかってくれたかい?」

 

「はい! よろしく二人とも!」

 

「よし! じゃあ次は君だ」

 

 立香ちゃんの方が一段落して、次は私の方に話が移った。

 新宿の特異点で無茶したものだからその後に発生した微小特異点では待機命令を受けてたけど、この感じだとどうやら私もレイシフトのメンバーみたいだね。

 

「魔神柱()()の問題なら緊急時まで待機してもらう予定だったんだけど、話が変わってしまった」

 

 そう言いながらダ・ヴィンチさんがモニターを操作すると、特異点の反応を示すマークの中に、()()()()()()表示された。

 

「新宿特異点で突如として出現した宇宙怪獣ベムラー。その反応に近しいものが()()感知されたんだ」

 

「「「!!!」」」

 

「アガルタに、怪獣が、しかも2体いるかもしれないってことですか……?」

 

「ベムラーの反応だけを元に調べた結果だから定かではないけどね。君が融合獣に変身することはこちらとしては避けたいのが本音だが、相手が怪獣なら頼るほかない」

 

 英霊が怪獣を倒せるのか? その答えはYESだ。防衛軍がウルトラマンの力を借りずに怪獣を倒しているのだから、英霊たちが倒せないはずがない。

 だけど、その怪獣の弱点や相性を完璧に理解した上で最適な人選をしなければ成功しない。だからどんな怪獣とでも対等に戦うことが出来る融合獣の力が必要になってくる。

 

「いいね? 融合獣になるのは一度だけだ。サーヴァントたちだけで対処できるのならそちらを最優先とし、変身するとしてもこれが最後だと確信を持ったときだ」

 

 暴れている怪獣を倒したら特異点が修復される確証はない。本当にこれが最後だと確信しない限り融合獣へは変身してはいけないと、念を……全員から無茶するなとそれはもう力強く念を押されてしまった。

 

 

 

 

「まあ、新宿であれだけ無茶無謀なことしたんだから心配されて仕方ないんだけどね……」

 

「みんなそれだけおじさまのことが好きなのよ」

 

 ミーティングを終え、自室へと戻った私はレイシフトの準備をしながらアリスちゃんの話をしていた。今回はアリスちゃんを連れて行けるということで同行してもらうことにしたけど、ふと目を離したりすると彼女は物憂げに何か考えているような仕草をしていた。

 

「珍しいね、何か考えごとかいアリスちゃん?」

 

「……そうねおじさま。何だか呼ばれているような気がするの。舞台に……かしら? それとも……」

 

「お待たせしましたーーーーー!!!!!」

 

 それとも、その先を話そうとしたらノックも無しに扉が開いた。大きな声と共に入ってきたのは、あの電子の海での戦いの後カルデアのシステムに介入して自分は元から登録されてるサーヴァントっていうことでここにやってきたBBだった。

 そういえば、解析したいって言ってたから怪獣カプセルを1本預けていたけどそれ関係かな? 

 

「ギリギリ、本当にギリッギリでしたよ!! で・す・け・ど♡どんな時でも間に合わせちゃうのがBBちゃんなのです♪」

 

「で、何のようだいBB」

 

「…………オホン。コチラが完成したのでお持ちしたんですよ!」

 

 コチラに向けて腕を伸ばすBB。その手にはカプセルが私たちに見えるように握られていて、そこに描かれていたのは……。

 

「プロテアちゃん?」

 

「そうなのです! 名付けて【プロテアカプセル】! 元々莫大なエネルギーを有する怪獣1体分の力が凝縮されているこのカプセル。ほんらいはどんなウルトラマンの力もカプセルに込めることが可能を目的としていたみたいで、容量の上限が凄まじいんですよね。そこで天才&天災系なBBちゃんは思いついてしまったのです! 『あれ? これにプロテアの力封じ込めちゃうんじゃね?』と!!」

 

「はあ……」

 

「後は簡単です! ちょ〜っと月の方から持ってきた素材とかここに保管されてた激レア素材を使ってこのカプセルに限りなく近いものを作成! カプセルにプロテアの霊基情報をリンクさせて、彼女の持つ二つのイデスをカプセル内に移動させたのです!! これによって以前までは暴走していたプロテアの能力を任意で解放させることに成功させちゃったのです!! いや〜BBちゃんってば天才すぎ!?」

 

「で、肝心のプロテアちゃんは?」

 

「え!? え〜〜とですね〜〜」

 

 ? 何かあからさまに目が泳ぎ始めたな。カルデアに来てくれたのはいいけど、やっぱりあの大きさだから移動とかも制限されてしまうプロテアちゃんを見るのが苦しかったから『そういうことならBBちゃんにお任せあれ♪ その為に怪獣さんのカプセル貸してくださ〜い♡』っていうから信用して貸したのに……。

 

()()()()()()

 

「プロテアちゃん、あれどこだい?」

 

「は〜〜博樹さ〜ん。()()()()()

 

「え?」

 

「まあ! かわいらしい妖精さんだわ!!」

 

 BBの膝下よりも小さいから30cmとかそこらへんかな? プロテアちゃん特有の片目や四肢に包帯を巻いた可愛らしいドレスを着た、アリスちゃんの言うように妖精のような女の子が顔を出した。

 

 いつも顔を上げる所にいなくて、下って言われた所にいたのがこの子だからそういうこと何だろうな、と思うけど……。

 

「いや〜吸い取りすぎたっていうか〜、ほら、ヒュージスケールとグロウアップグロウってプロテアの大部分じゃないですか〜? それ故みたいな〜? …………てへ♪」

 

「…………はあ〜〜」

 

「あっ! ちょっとため息つかないでくださいよ! まるでBBちゃんが使えない子みたいじゃないですか〜〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今宵はどのような物語をご所望でしょうか? 

 

そうですね、それでは今尚続いている物語はいかがでしょう

 

闇の巨人と共に、世界を救った人たちの後日談

 

例えば────それは「空想」からの侵略

 

ならば、その地に有り得もしない

 

()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()

 

(そら)から落ちてきたとしても

 

可笑しくはありませんでしょう? 

 

()()()()()() ()()()()() ()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 





ネットだとあまり評判のよくないアガルタ。最後のあの台詞とか色々と言われてますが皆さんはどうですか?
これを書くにあたっては漫画版をメインで参照にしてたりするんですが、彼女の在り方的に仕方がないと思うしそんなに?と思ったり……。むしろ最近のモーション改修のやらなさとか幕間追加しなかったりいつになったらオルガマリークエスト追加されるんだよ!なところの方が怒っていい


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1





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『いいですか、プロテアカプセルは一度開放させたらこのちっちゃい状態には戻せません! ここぞって時に使ってくださいね♡』

 

 ……制約が私が融合獣と変身するのと一緒なんだよなあ。

 まあ、プロテアちゃんの巨体じゃ探索も出来ないから小さくなって良かったって思ったほうがいいのかな? 

 本人も喜んでるみたいだし、気にし過ぎもよくないか。

 

 そんな一幕もありながら準備を終えた私たちは、いつも通りにコフィンの乗り込んでアガルタへと向かった。

 

 

アンサモンプログラム スタート

 

 量子変換を開始します

 

 レイシフト開始まで

 

 3

 

 2

 

 1

 

 全工程 完了(クリア)

 

 

アナライズ・ロスト・オーダー

 

 人理補正作業(ベルトリキャスト) 検証を 開始します

 

 

 

 

 

 

 

「……臭うな。まだ馴染んでいない外の臭いだ」

 

 その一言から、戦いが始まった。

 誰一人はぐれることなくレイシフトに成功した私たちは、地上と遜色のないこの地底世界(アガルタ)の地で、カルデアから消失したサーヴァントの1騎と出会えた……。

 

 この世界の影響なのか、そのサーヴァント【フェルグス・マック・ロイ】は召喚された全盛期の姿とはかけ離れた幼い姿、それに加えて今の年齢以降の記憶も持ち合わせていないという。

 

 そんなフェルグスの案内の元で、近くにあるという街でアガルタの情報を少しでも手に入れようとしたんだけど、タイミングが悪かったって言えばいいのかな。

 

 男性はみな檻か鎖に繋がれていて、2000年代には不釣り合いな所謂アマゾネスの格好をした女性たちに奴隷のように扱われ、連れて行かれそうになっていたんだ。

 

 助けたい。その気持ちが強くても男の人たちを全員助けられるわけない。湧き上がる怒りと自分の不甲斐なさを感じながら一度街から離れようとしたその時、カルデアがサーヴァント反応をキャッチしたのと同時で、その声が届いた。

 

「貴様ら……ただの賊ではないな? 一体どこの手の者だ」

 

【退廃の水都】、【眩き塵の都】と次に繋がりそうな言葉を、恐ろしいほどの威圧感を放ちながら呟く相手、その格好から見るにアマゾネスたちの長っぽい。

 そんな相手と敵地のど真ん中で戦闘をするのは避けたい、撤退するための時間を稼ぐのにアストルフォとデオンの二人を残して外壁へと向かうことにした私たち……。

 

「おとうさま、左からもきてます!」

 

「よっし! はあっっ!」

 

「ふふふ、これならどうかしら!!」

 

「っち! 邪魔するんじゃないよ! ()()()()()()()()()()()

 

「男の方もやるよ! 気をつけな!!」

 

 ライムちゃんとフェルグス、そして頭にしがみついてるプロテアちゃんと一緒に戦う博樹さんで邪魔してくるアマゾネスたちに応戦しているんだけど、何だか彼女たちは時間を気にしているようだった。

 

「マシュ、こっちの時間って今何時くらい?」

 

『え? はい、地上での時間になりますけど大体午後5時を過ぎたくらいかと……』

 

(午後5時過ぎ……6時になにかある? それとも……()()()()()?)

 

 

 

ググググ…………

 

「────ッ!? 今日は()()()()が先かい! 逃げるよアンタら!!」

 

「……怪獣の、声?」

 

 そんな風に考えていると、岩が擦り合うような音と大きな歯ぎしりのような音が響いてきた。その音が聞こえるとアマゾネスたちは私たちのことなんて気にもしないで一目散に逃走を始めた。

 

『こちらでも巨大な生体反応をキャッチしました! ────! 対象、コチラに向かってきています!!』

 

「……ど、どうすれば!」

 

「立香ちゃん! 一旦外に出て様子を伺おう。相手が本当に怪獣ならそれがどんな怪獣が確かめないと!」

 

 博樹さんのその言葉を聞いて、倒れている何人かの男性たちを助けながら外に出た私たちは近くの木々の中に身を隠して、様子を伺うことにした。

 

「マスター! 良かった、無事だったみたいだね」

 

「アストルフォにデオンも、無事で何よりだよ」

 

「ああ、あの呻き声のようなものが聞こえると彼女も正気に戻ったように逃走を選んでくれたからね」

 

 ドシン! ドシン! と、大地を揺らす音が次第に近づいてくる。

 二人の無事を確認して、息を潜めているとその怪獣がようやく姿を現した。

 

グガガガ、グガガガガガ!! 

 

『あれは……』

 

()()()()()だ……!!」

 

 四足歩行で、全身が岩で出来た怪獣。攻撃に用いるためか後脚よりも巨大な前脚持ってるその怪獣の名前を、カルデアが調べ上げるよりも先に博樹さんが名前を言い当てた。

 

『出ました! 【宇宙礫岩怪獣グロマイト】、ウルトラマンメビウスに登場した怪獣です!』

 

 グロマイトは岩石や瓦礫を餌としている怪獣だからか、街へ到達するとグロマイトは容赦なく街を破壊し始めた。あそこにはまだ助けられていない人たちがいるのに……。

 

「…………」

 

「おじさま? 何か気になることでもあるのかしら?」

 

「う〜ん。立香ちゃん、あのアマゾネスの人たちさっき岩のほうが先って言ってたよね?」

 

「え? 言ってた! 今日は岩のほうが先だって!」

 

 アマゾネスたちが退散するとき確かにそう言ってた。ていうことはカルデアで観測された通り、怪獣は2体いるのは確実ってことだよね……。

 

「ううう……」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ……あんたらのお陰でな」

 

「すまない。苦しいのは理解しているがこちらの質問に答えてほしい。あの怪獣……岩の化け物のことを君たちは知っているのかい? 知っているなら分かる範囲でいい、話をしてくれないかい?」

 

「あ、ああ……。()()()()は夜になるとああやって暴れ始めるんだよ。見境もなく、街を破壊してな……」

 

 助けた男の人はポツポツと話をしてくれた。ある日この地底世界に落ちてきた彼は、どうにか住む場所を見つけたらしい。だけど、そこで安心して生活していたある日、怪獣に襲われたのだと……。

 

「どこを襲ってくるのかとかはアイツらの気分しだいなんだ。だからここに落とされた男は朝も夜も安心出来たためしがねえ」

 

 あの街以外にも何箇所街はあるみたいだけど、彼はそのどこも怪獣に破壊されて転々としてきた結果がこの街での奴隷のような生活だったみたいだ。

 確かに、日中はアマゾネスにあんな風に扱われて、夜は怪獣たちに襲われないように警戒していないといけないからまともに眠れやしない。気が滅入るのも仕方ないよね。

 

「アイツらっていうことは怪獣はもう一体いるってことだよね? そのもう一体の特徴を教えてくれないかい」

 

「い、いいぜ。アイツ、顔はおとぼけてやがるんだが」

 

ピャアアアアガァアアア!! 

 

「ひっ! よ、()()()()()()!!」

 

「蘇る? ていうことはもう一体も!!」

 

 甲高い鳴き声と一緒に、地響きが広がる。助けた男性が蘇るって言ったのを聞いて博樹さんが反応しているのの目を向けていると、マシュから巨大な反応が上空から飛来してくるという情報が入る。

 

「上空ってことは相手は飛べるの?」

 

『いいえ、この感じからすると……跳躍です! 皆さん振動に備えてください!!』

 

 ここにいる全員が反動で飛び上がってしまうほどに大きな振動と共に、ソイツは現れた。

 背中の少し盛り上がったコブが特徴的な、何も考えていないようなおとぼけた顔をした二足歩行の怪獣。

 

『リンドン!! もう一体の怪獣は不死身怪獣リンドンです!!』

 

ピャアアアアガァアアア!! 

 

グググ、グガアアアアアッッッ!! 

 

『!? 2体の怪獣が交戦を始めました! これは……?』

 

 マシュの言う通り、グロマイトとリンドンは目と目が合うと両者とも勢いよく相手にタックルをくり出した。

 2体の怪獣は何らかの理由で協力態勢をとっていると思ったけど……違うのかな? 

 

「ああやって、場所なんて構わずにどっちかが死ぬまで暴れ続けるんだよアイツらは」

 

「一体何の目的で……」

 

「知らねえよ! 両方一辺に死んでくれたら一晩安全だから運がいい。けどどっちかが生き残っちまうと腹一杯になるまで喰い続けるんだよ……瓦礫の中に巻き込まれた人間がいようがお構いなしにな」

 

 恐怖で全身を震わせながら、男性は私たちにそのことを教えてくれた。マシュの話を聞くにグロマイトは元々そういう食性だし、リンドンも警備隊の戦闘機を食べようとしたことがあるから食性が似ているかも知れないらしい。

 

『夜になると暴れ出す、お互い再生器官を破壊しない限り何度でも蘇ることの出来る怪獣、か……。迷惑極まりないねえこれは……』

 

「おとうさま、わたしがたおしましょうか?」

 

「…………いいや、今はまだ、様子見でいこう。マシュちゃん、リンドンの心臓とグロマイトの中枢器官、ベリアルさんの因子の反応がないかい?」

 

『えっ!? ……す、少し待ってください……。────出ました! あ、あります!! 二体の怪獣からベリアルさんの因子反応をキャッチしました!!』

 

「やっぱりか〜〜〜〜」

 

 博樹さんが頭をおさえて落ち込んでる。やっぱりベリアルさんの因子が身体にある博樹さんは他の誰かが因子を持っていたら感じ取れるのかな? カルデアでもそれだけを集中して見ようとしないと見つからないようなものなのに……。

 

「ねえねえ、ベリアルの因子があるからってなんなのさ、アイツら別にすっごーいパワーアップしてるわけじゃないんでしょ?」

 

「調べてみないことにはわからないけど、新宿でのベムラーのようにベリアル因子の影響で目に見えた変化をするのとは違う。多分あの二体はいっちばん厄介な部分が強化されてる」

 

『ああそうか。お互いに殺し合っているならいつかのタイミングでどちらかの弱点を突いてるはず。それなのにグロマイトとリンドンは未だに生き続けている……そう言うことだね博樹さん?』

 

「はい。あの2体が持つ性質、何度も蘇る再生能力。正確にはその能力の中枢を担う器官が強化されています」

 

「「────それ、どうやって倒すの?」」

 

 私とアストルフォの声が重なってしまうほどの最悪ぶり。元から強力でウルトラマンを苦しめた再生能力、その弱点がベリアルさんの因子で補強された怪獣が2体って……理不尽にも程があるでしょ! 

 あれ2体の対処に、この特異点の修正。やばい、今までで一番やばい特異点かもしれないよここ!! 

 

 

 

 

 

 

 



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2





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「あの女王にかち合い、怪獣どもの喧嘩にも巻き込まれるたぁ運がねぇなお前さんたちは」

 

 アマゾネスたちも退散していて、どうしようか迷っていた時に私たちの前に現れたのが彼ら”レジスタンス”。

 彼らが言うには珍しい、同士討ちという形で決着がついた不死身怪獣リンドンと宇宙礫岩怪獣グロマイトの対決。2体の身体がバラバラに飛び散ったのを横目に、味方だという彼らの後についていくことにした。

 

 3つの国に別れ、女性が支配しているのがこの地底世界だということ。

 男性は男という理由だけで奴隷として扱われていること。

 そんな理不尽をどうにかするために結成されたのが彼らレジスタンスだということ。

 

 私たちはそんなレジスタンスを率いているサーヴァント。自身の真名すらも思い出せないけど、男の人たちのために戦う”レジスタンスのライダー”からこの世界のことを教えてもらった。

 

「俺はこんな理不尽な世界が許せねえ!」

 

 三国を治めているサーヴァントたちが国を率いて小競り合いを繰り返しているイカれた世界。その世界をどうにかするために力を貸してほしいと、()()()()()言葉で語りかけてきた。

 

 これからどうすればいいか分からなかった時にきた渡りの船だ、乗らないわけがない。

そうして私たちはレジスタンスと協力態勢を取ることにした。

 

「ごめん立香ちゃん。あの怪獣たちのこと調べたいんだけどいいかな?」

 

「え?…………調べる、だけですか?本当に?」

 

「今回ばかりは本当さ。流石に相手が相手だからね、しっかり調べておきたいんだ」

 

 レジスタンスのアジトへ向かおうという中で、博樹さんは不死怪獣たちのことを調べるから残ると言い出した。

 単独行動は駄目だと言ったけど、カルデアにいる人たちの中で誰よりも怪獣に詳しいのは博樹さんだし、ベリアルさんの因子も誰よりも感じ取れる。

 いつもと違って今回は通信も途切れたりしてないからダ・ヴィンチちゃんたちからもOKが貰えたから、本当に珍しく私たちは意識的に分担して行動することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あった……」

 

「はぁ〜おおきいですねぇ」

 

 カルデアのみんなが観測してくれていたおかげで予測通りの場所にグロマイトの中枢器官は落ちていた。

 

「リンドンの攻撃で倒れた時は中枢器官が剥き出しになっていたはずなのに、今じゃもう岩石で守られてる」

 

「周りの岩を取り込んだみたいね。だけど、復活しようとはしていないみたいだわ」

 

 アリスちゃんが言ったように、グロマイトは剥き出しになった中枢器官を守るため本能からか、周りの岩石を取り込むことで強化し簡単には破壊されない丸い岩石となっている。

 

 防衛本能から外敵が近づくと攻撃してくると思ったけれど……何も反応はない。

 

「襲っては、こないみたいだ……」

 

『余程の自信か、それとも夜が近づかないと動かないのかもしれないね』

 

 近づいても襲ってこないことに通信越しでダ・ヴィンチさんも疑問視している。

 う〜ん。そうだ!

 

「…………駄目か」

 

『そうか、確かギガバトルナイザーには怪獣を操る力もあるんだったね』

 

「レイオニクス。怪獣使いの素質も必要だから、私では元から無理なんですけどね。少しでも怪獣の気持ちがわかればな〜って」

 

「えいえい!」

 

「あたたかいわね」

 

 ギガバトルナイザーを向けてみたけれどやっぱり駄目だった。

まあベリアルさんの因子と結びついているけど、私本人にレイオニクスの力は宿っていない。

 怪獣使いの才能がないことは残念だけどベリアルさんの、ウルトラマン側の力を強く受け取っているって考えれば嬉しくもなる。

 

『ベリアルだったら変わっていたのかい? それは元々彼の武器なわけなんだし』

 

「あ〜、どうなんでしょうね。ベリアルさん、操る怪獣たちのことは道具としてしか見てなかったし」

 

 岩石をポカポカ叩いているプロテアちゃんと、生命としての熱を感じているアリスちゃんを引き離しながら通信を続ける。

 

 怪獣を操れるって言っても元は光の戦士だったベリアルさん。倒すべき相手と心を通わせる……なんてやる人じゃない。助けてくれたザラブ星人のことを速攻で倒すような人だしな。 

 

『ははは彼ならそうか。ンンッ話を変えようか。この地底世界はそれそのものが魔力を帯びているから、グロマイトが鎧に変える岩石には勿論魔力が含まれている。外部の干渉なしに再生するリンドンよりも、魔力によって性質が変化するかもしれないグロマイトのほうが脅威度は高いと推測できる』

 

「けどそれなら毎晩の戦いはグロマイトが圧勝しているはず。聞きかじった感じだと実力は同じっぽいし……」

 

『む、それもそうか。ベリアル因子の含有量?それとも別の要因が存在している?うーん、やはりグロマイトだけ見てもわからないか……』

 

 グロマイトから少し離れた場所で小休止を挟みながら、ダ・ヴィンチさんと意見を交わしていく。こちらの持つ知識と魔術師側の知識を出し合うことで見えてくるものもあるかもしれないから。

 

「う〜んやっぱりリンドンのほうも見てみないと結論は出せないですね。……立香ちゃんたちのほうは?桃源郷、だっけ?無事にそこに着きました?」

 

『そちらに関しては何事もなく、といったところだね。今は腰を落ち着かせてライダーから3つの国について詳しく聞いているところだよ』

 

「よしっ、それじゃあ私たちはリンドンの方に向かおうか」

 

『ああそうだ、君に聞いておきたいんことがあったんだ』

 

「なんですか?」

 

『ーーーーーのこと、君はどう思っているのかな?』

 

「ん?ああ、それなら……」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そういやぁよぉ〜お前さんに聞いておきてえことがあったんだ」

 

「なに?」

 

 アジトである桃源郷での話し合いを終えた私たちは、最初の目的地として東部にある地底湖のほとりの水上都市【イース】を選択した。

相手がその湖から別れた川を移動手段として利用し奇襲と略奪を繰り返していることと、イースを攻略して川の支配権を手に入れることが出来れば他の二国攻略への足掛かりになるからというライダーの提案を呑んでのことだ。

 

 博樹さんと合流するまで待つっていう選択もあったけど、もう一度怪獣たちが戦っているところを観察してから合流するということで私たちだけでイースへ向かうことにした。

 そうしてイースへ向かっている途中の休憩で、ライダーが私に話しかけてきた。

 

「お前さんの連れのあの男……普通の人間か?アマゾネスどもと渡り合えてたところを見るとそうとは思えなかったが……」

 

「あ〜博樹さんはなんていうか……特別?いや違うな。……特異、って言えばいいのかな?」

 

「んんん?んじゃああの男はこの地下世界みてーなもんだっていーてえのか?」

 

 博樹さんのことを説明するのはとても難しい。そもそもウルトラマンっていう存在自体空想の存在だっていうのにそれを信じてくださいとか、正義の使者のウルトラマンの中で唯一悪の道に落ちたベリアルさんが〜とか説明することが多すぎて大変なんだよね。

 だから一言に特異って言葉ですませたけど、それもなんだかな〜。

 

「それだけ特別可笑しな人って思ってもらって構わないよ。やろうと思えばサーヴァントだって、あの怪獣たちだって倒せちゃう人だから……」

 

「ほぉ~。だがソイツをみやみやたらに使わねー所を見ると弱点もあるってぇことか」

 

「弱点っていうより無茶してほしくないっていうのが私たちの総意。身体に相当な負担がかかるのに何かあると迷いなく力を使おうとするから……」

 

「切り札になりはするが、お前さんらにとって宝みてーに大切ってわけか」

 

「ま、そんなところ……かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、なんで()()()()()()()()っ……」

 

「ん?」

 

 その声は、リンドンが倒れた場所へ向かう道中で聞こえてきた。何か手がかりがないかと2体の怪獣が破壊した町を通りがかりに調べようと来て見たら、同じくらいの年齢かな? 地面に膝をついて泣き崩れている男性を見つけた。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

「ヒイッ!な、なんだ……男か……」

 

「驚かせてしまってすみません。よければ、少し話を聞いてもいいですか?」

 

 怯えの表情、私が男性だとわかって落ち着く態度、荒れ放題のその姿を見たところ、この地底世界に落とされて長い時間を過ごしたのが想像できる。

レジスタンスに仲間というわけではなさそうだし、彼から違う話が聞けるかもしれない。そう考え話をしてみることにした。

 

()()()()()()()()

 

「ああ、あの化け物どもーーーー怪獣っていうんだったか?あいつらが暴れ回って壊した場所は次の日になると何事もなかったみたいに直っちまうんだ。だけど……」

 

「今回は直らなかった……」

 

 話を聞くと不可解な点が何個か見つかった。まず一つは、怪獣たちは連続して同じ場所では暴れないということ。この破壊された町以外にも町は点々と存在していて、どこで争うのかはその日にならないとわからないけど、同じ場所で連続して戦うということはこれまでなかったということ。

 

「だから、次の日になると修復される町はその日に内は安全だった」

 

「ああ、イースやエルドラドの連中が襲ってこない限りは……だけどな。怪獣の恐怖からは確定で逃げられたんだ、同じようにしてた連中も沢山いたさ」

 

 理屈はわからない。この地の特性なのか破壊された町々は翌朝になるとまるで魔法のように修復されていたらしい。その特性と怪獣たちの特徴を生かすことでどうにか1日を凌ぎつづけた。彼以外にも同じように暮らしていた人は何人もいたみたいだ。

 

(町の発見にエルドラドとの戦闘、タイミングを見計らったみたいに現れた2体の怪獣……。そして今まで通りではなくなったというこの土地の環境。偶然にしては上手くいきすぎだよな……)

 

「物語がうごきはじめたみたいね」

 

 考えを巡らせているとアリスちゃんがぽつりと呟いた。

 

「あらすじだけを見ても、どんなお話になるのかはわからないわ。本をひらかないとはじまらないの」

 

「…………。やっぱりそうだよね。相手の作り出した盤面、筋書き通りの物語が、始まったんだ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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【不死身怪獣リンドン】

 ウルトラマンタロウに出てきた怪獣で、タロウに首を切断されても一夜にして再生してしまう。不死身の名前に相応しい怪獣だ。 

 

 その驚異的な再生能力の源は背中のコブに詰まっている再生細胞と、その細胞を身体中に張り巡らせるほど強靭な心臓だ。

 タロウもお手上げで最終的にはウルトラの父がやってきて倒した怪獣だったんだけど……。

 

「爆散してもコブと心臓部に傷一つもない……それに」

 

 コブも心臓も、ベリアルさんの因子がびっしりと張り巡らされていて脈動している。これだけ因子の影響を強く受けているっていうのなら、この地の魔力で強化されているグロマイト相手に互角の勝負ができるんだろうけど……。

 

「復活するのは日が暮れてから……。それは確定してる」

 

『そうだね。昨日も一昨日も同じ時間、同じタイミングで2体の怪獣は復活し暴れ始めた』

 

 男性から話をしていると日が暮れはじめたため、もう一度2体の怪獣が戦うのを見ることになった。リンドンの吐き出す火炎は魔力を帯び強化されたグロマイトの岩石すら溶かしてしまうほどの高火力だったし、岩石を使って煙幕を張りあの見た目とは裏腹なレベルで俊敏に動き攻撃するグロマイトも脅威に感じた。

 

「どんなに強力でも弱点は解っているから融合獣になれば倒せないことはないと思う。だけど、この2体は魔神柱との関連はない」

 

『問題はそこだね。グロマイトとリンドン、2体の怪獣を倒したからといってこの特異点は修復されない。最悪なのは怪獣を倒した後、新宿のように最後の最後で新たに怪獣が出現することだ』

 

 リンドンはタロウに倒され一夜で復活したから、グロマイトは1度目の戦闘の後に地底へ逃げたことからこの地底世界との繋がりはあるんだろうけど……魔神柱との関係性は無い。というよりもゲーティア本体なまだしも、魔神柱1体であれだけベリアル因子の影響を受けている怪獣を思い通りに操れるはずがないからだ。

 

『怪獣たちの恐怖によって安心した夜は訪れず、3つの国のどれがに助けを求めようにもその先も地獄か……。この地に落とされた人たちの苦労が見て取れるね』

 

「イースは水没したんですよね? その後は?」

 

 昨日私がが男性と話をしている裏で、立香ちゃんたちは水の国イースを攻略していた。

 地底湖に作られた水都。立香ちゃんたちと同じように侵入していた少女【不夜城のアサシン】が水の侵入を抑えていた水門の鍵を開けたことによって水の底に沈んだらしい。

 

『元より用意された終幕のようにも思えたけどね……。今はイースを攻略したその足で不夜城へ向かっているよ、君も今から向かえば間に合うと思うよ?』

 

 立香ちゃんたちレジスタンス組は、イースを後にしたその足で不夜城へと向かっている。桃源郷の位置から不夜城だと距離が遠いという理由と、何でも不夜城のアサシンとなら話が出来るんじゃないかっていう立香ちゃんの考えを汲んでのことからだという。

 

「う〜ん。桃源郷に怪しいところはなかったんですよね? なら合流しても……っとどうしたんだいプロテアちゃん?」

 

「おとうさま、ここから離れたほうがいいよ」

 

 プロテアちゃんが服を引っ張って教えてくれた。そう言うってことは理由があるってことだから詳しくは聞かずに2人を脇に抱え、出来る限り離れることにした。

 

『────うん。そこを離れたのは正解だったね。すぐ近くをアマゾネスたちが進軍している。留まっていたら最初の町のように交戦は避けられなかっただろう』

 

「そうか、教えてくれてねありがとうプロテアちゃん」

 

 森の中に身を隠しながら通信を聞き、プロテアちゃんを褒めてあげる。あにバーサーカーの索敵範囲の広さは相当っぽいし、逃げるのが少しでも遅かったら気づかれていた。

 

『しかし、コイツは参ったね。アマゾネスの進軍しているルート、不夜城に続いているようだ』

 

「「「!!?」」」

 

 立香ちゃんたちが危ない!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ! はあ!」

 

 火の手が上がっている。もうアマゾネスたちの進軍が始まってるんだ、急がないと!! 

 

「おじさま、あれ!」

 

「────っ!」

 

「え? うわあっ!!」

 

 不夜城へと突入して目に入ったのはアマゾネスたちと不夜城の兵士? 面布で顔を隠した女性が戦っている姿と、この不夜城にいる男性たちはアマゾネスたちのお眼鏡にかなわなかったのか何も出来ずに殺されている。

 

 そんな中でアリスちゃんが指さした場所に見えたには、まだ年端もいかない少年が震えながらナイフを手に持ち、アマゾネスと相対している姿だった。

 このままじゃ殺されてしまう。そう思った私は彼を守るために前に立つ。

 

「なんだ貴様!!」

 

「10はいるか……アリスちゃん、プロテアちゃん。その子を連れて下がっていて」

 

「ええ、さあいきましょう?」

 

「え、待って! ぼくだって戦うん」

 

 自分よりも小さい女の子2人に連れて行かれるのびっくりしてるだろうな。ま、こっちはこっちで集中するか!! 

 

「っち! さっきの男なら許してくれると思ったのに……。まあ、アンタでいいか!!」

 

「悪いけど、身体も心も妻に捧げているんでね。君たちに渡せるものは一つもないんだ」

 

「そうかよ……ならそいつを奪うだけだ!!!」

 

 普通の人間にはない膂力を持ってアマゾネスたちが迫ってくる。その動きを目を追いナイザーを使って応戦していく。数も数だし、何人かは私を無視して脇や屋根を伝って通り抜けようとしてくるけどそうはさせない。迫ってくるアマゾネスたちを素手で捌きながら、斜め後ろの建物2つに向けて光弾を放ち、私より後ろへ向かう道を閉ざす。

 

 瓦礫となった場所を飛び越えればいけるだろうがそんな隙を逃す相手ではないと見抜いているのか、心底面倒くさそうに舌打ちをして私に襲いかかってくる。視覚は目の前に映る全ての敵を、物を捉えここが1番だと思った場所に攻撃を叩き込む。死角からの攻撃は聴覚、そしてベリアルさんとの特訓で何度も死にかけたことで覚えた死の恐怖、攻撃がそこまできていることを肌が感じ取ってくれる。

 

 一瞬だって集中を切らすな宮原博樹!! 一瞬の隙が、少しでも大丈夫だと思ったその安堵が負けに、死に繋がってるんだ。何度も何度も何度も、心に叩き込まれただろ! 刻み込まれただろ! それを身体に叩き込んだ! 失敗しないように! 間違えないように!! ベリアルさんが教えてくれた私なら! 大丈夫だ!! 

 

「────ほう、価値のない場所だと思ったが……少しは歯応えのある者がいるようだな」

 

「女お「退け」ッッ!!!!!!」

 

 ────!!!! 瞬間。全身に死の気配が広がってきた。何がくる? どんな攻撃が……そんなこと考えている暇なんてない!! 守ることに全霊をかけろ!! 

 

「フンッッ!!!!!」

 

「がっ!!!! おっ、もっ!!」

 

 両脚に力を込めて、全力で受け止める。そんなこと出来る攻撃じゃないと視て理解した。正面から受けたら大怪我は免れない一撃を、直撃するその一瞬に足を浮かせることで鉄球の勢いと共に瓦礫の中へと突っ込んだ。

 

 

「────ッ!!」

 

「おじさま!」

 

「アリスちゃん! 逃げるよ! 今彼女を相手にするのは得策じゃない!!」

 

 幸いアリスちゃんたちが避難していた近くまで飛ばされた。すぐに起き上がって逃げる選択肢を選ぶ。SUITSを纏うなら戦えるかも知れない、だけど相手の真名も明確な戦力差もわかっていない状況で3分しか活動できない力を使うのは危険すぎる。

 

「逃がすわけがないだろう?」

 

「っ、(纏うか? 不意をついて一瞬でケリを付けるなら……)」

 

 直感なのか、もう一つの鉄球を叩きつけながら一緒に迫ってきたバーサーカーに追い詰められる。卑怯かも知れないけどSUITSを使った一撃必殺で切り抜けようとも考えたけれど、何でかそれは悪手だと心が叫んでる。

 

 ────そんな時だった。

 

「な、なにあれ!?」

 

「流れ星かしら?」

 

 

「なんだ……? 何かが城に……」

 

「────────!!」

 

 流れ星のように真っ直ぐに、立香ちゃんたちが不夜城のアサシンと戦っている城めがけて落ちていった。まるで吸い込まれるように、その場所に現れることで物語の幕開けを告げる怪獣のように……。

 

「  アアアアッキレウスゥ゙ゥ゙ゥ゙ッッッ!!  」

 

「アキ、レウス……?」

 

 耳をつんざくほどの怒号が響く。目の前の彼女、エルドラドのバーサーカーが城へ突撃した何者かに向かって叫んでいた。先程まで理性のあった瞳は血走り、その一点しか眼中にないといった様子だ。

 けど、アキレウスって……? 

 

「ゔゔゔゔゔ…………があっ!!」

 

「あら、いってしまったわ?」

 

『そうかアキレウス!! 博樹さん、エルドラドのバーサーカーの真名がわかった!! ソイツの真名はペンテシレイアだ!!』

 

「え? ペン、テ……レイピア?」

 

『ペ ン テ シ レ イ ア だ!! トロイア戦争でアキレウスと一騎打ちして敗北したアマゾネスの女王様だ! アキレウスっていう英霊相手に彼処まで憎悪を抱いてる女王なんてペンテシレイア以外あり得ない!!』

 

 長い横文字って覚えるの難しいんだよな。ダ・ヴィンチさんは今立香ちゃんたちのオペレーターをしているらしく、彼女の真名を教えてくれたのは職員のうちの一人であるムニエルさんだった。

 

 ペンテシレイア、ペンテシレイア……。よし!! 

 そんな彼女は私たちのことを追い詰めたというのに目もくれず、城に向かって駆け出していった。

 

「それじゃあ、さっきの流れ星はアキレウスっていう英霊だったんですか?」

 

『んちょっと待ってくれ…………。は? おいおい嘘だろ……アキレウスじゃない!! 立香たちの前に現れたのはヘラクレスだ!!』

 

 

 

 



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4




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「…………よし。もう、追ってこないかな?」

 

 ペンテシレイアが王城へ向かって駆け出した後、彼女を追うように他のアマゾネスも王城へと進軍していった。数人残ったけれど片手で数えるくらいの人数しかいなかったため対処することができた。立香ちゃんたちも城から抜け出した連絡を受けた私は、少年を連れて一足先に不夜城から脱出していた。

 

「怪我は、ないね?」

 

「う、うん。おじさんが助けてくれたから…………」

 

 身体は震えていて、涙が溢れるのを我慢している。「どうして危ないことをしたんだ!」「死ぬかも知れなかったんだぞ!」そう彼に叱るのは簡単だ。けど、そうじゃない、それじゃあダメなんだ。

 

「アマゾネスに襲われそうになって、怖かったろう?」

 

「…………うん。こわ、かった」

 

「それで何とかできるって、そう思ってたかい?」

 

「ぼ、ぼくにも何か出来ることあるんじゃないかって! だから一緒に戦おうとしたんだ!! だけど、ダメだった…………。大人たちとアマゾネスが戦って、血がドバッて出るのを見たら……怖くてなんにもできなかった…………」

 

 …………そう。それが普通なんだ。いくら追い詰められていたからって子どもを戦場に駆り出していい理由にはならない。過去にそういう時代があったのだとしても、この子の生まれた“今”はそうじゃない、そうあるべきじゃないことが当たり前の世の中なんだ。

 それでも、自分のことを守れるものがそれだけだからと、怖くても両手でぎゅっと小さなナイフを握り続ける彼の手を包み込むように握りしめる。

 

「立ち向かうことが正義じゃない。戦うことが1番正しいことじゃない。格好悪くても、逃げ出してでも、家族に『ただいま』って言えるように『おかえりなさい』って言ってもらうように生き延びることが……1番大切なんだ……!」

 

 ずっと、我慢していたんだろう。堪えていた涙が滝のように流れはじめて武器を捨てて、私に胸に抱きついて泣きはじめた。

 ────あれだけアマゾネスたちを倒してたヤツが何言ってるんだって話だけど、大人のやっている最低な行いを、子どもに引き継がせるのは絶対にやっちゃいけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 刻み込まれた恐怖は、簡単には払拭できない。起きていても、眠っていても襲いかかる恐怖を超えるには生半可な覚悟じゃいけない、とてつもない勇気を奮い立たせなくちゃいけない。────なら逃げた方が簡単じゃない? 

 

「もう手伝わなくていいなんて……どういうことだよ相棒」

 

「────そのままの意味だよライダー。あとは私たちだけでやる」

 

 ライダーが慌てた顔をしてこちらに聞いてくるけど、私は迷わずに彼の目を見て迷っていないことを伝えながら口にした。不夜城は陥落して、魔神柱と繋がっていそうな黒幕候補はエルドラドのバーサーカー【ペンテシレイア】だけになった。残す所あと1騎となったから、ここにいる男性たちも合わせて全員で挑めばなんとかなるとライダーは言うけど、そうじゃない。

 

「────アイツらを殺しちまったって、それで怖気づいたか?」

 

「そうじゃない。そうじゃないよ……イース、不夜城、そしてここにいる人たちを見てきた。だからこそ信用できない、信頼できない。────あの人たちに私は自分の命を少しだって預けたくない」

 

 協力することになっても、この桃源郷に招かれた時も、誰一人も私のことを心からは歓迎していなかった。むしろ親の仇を見るような目で見られてもいた。

 不夜城からここに戻ってくる間だってそうだ。

 

『…………あんたの……せ……い……』

 

『あんたたちが一緒にいてどうして!』

 

 力尽きる人たちも、帰りを待っていた人たちも、憎しみの矛先を女性(わたし)に向けてきた。あの時はライダーが責任は自分にあるって周りを宥めてくれたけど、それでどうにかなるはずがない。ここに落とされた人たちはみんな、女性に虐げられてきた人たちだ。

 

「明日には発つよ。協力してくれてありがとう、ライダー」

 

「まっ────。ちっ……」

 

 ライダーが何か言おうとしているけど、その言葉を聞く前に小屋の外へと出る。熱くなったなっていう自覚もあるし、少し落ち着きたかったから。

 

『時代が近い、というのもあるのかも知れないね』

 

「時代……?』

 

『今までのレイシフト先は時代も環境も遠く離れた地ばかりだっただろう? そこで触れた死も言ってしまえば未知の世界で起きた出来事だ』

 

 ああ、そうか。明確なボーダーのようなものがあったんだ。この人たちは過去の人たちだって、私とは何もかも違う生き方をしてきた人たちなんだって、だけど彼らは違う、2000年代って時代で生きる人たちの価値観や考え方は私や博樹さんに近しいもので、戦いとは無縁の人たちだった。

 

『戦いが当たり前だからこそ感情の隠し方なんかが上手かった。人の死や理不尽な扱いに不慣れで、感情の扱いに慣れていないのは当たり前だ。まあ、だからって君が我慢しなくてもいい』

 

「ありがとう、ダ・ヴィンチちゃん」

 

 だから逃げたくなったんだ。同じようになってしまうんじゃないかって、呑まれてしまうんじゃないかって思って……。────これで、良かったよね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「物語を継ぎ接ぎしたような世界、か……」

 

「死にたくない」その一心でこちらに寝返った語り部のキャスター【シェヘラザード】。この世界が伝承や物語を下地として作られた特異点である可能性から、物語と最も関係の深いシェヘラザードが黒幕なのでないかと問いかけると、継ぎ接ぎの世界だからこそ間接的に自分は召喚されたと彼女はそう答えた。

 

「ウルトラマンも、この世界では空想上の物語だ」

 

 本来ならこの地球にウルトラマンも怪獣も存在しない物語の中の存在だ。私とベリアルさんが繋がったことで、遠く離れたウルトラマンや怪獣が存在する宇宙が近づいた。それが原因で怪獣たちもこの世界に来ているんじゃ……。

 そしてここアガルタに2体の怪獣が現れたのは、物語の世界に引き寄せられたから? 

 

「じゃあなんで2体とも不死身怪獣なんだ? ああ〜考えてもわからないな〜!」

 

「すみません。すこし、話をしてもいいですか?」

 

「っと、フェルグスくんか。ああいいよ、どうにも行き詰まっちゃってたからね」

 

 怪獣の関係性に頭を悩ませていると、話があるとフェルグスくんがやってきた。怪獣たちの動向も気になっていたから桃源郷の外にテントを張っていたから側の丸太に座ってもらう。

 

 

「それで、どうしたんだい?」

 

「話を、してみたかったんです。大人である、貴方と。今の世界を生きている貴方と」

 

 自分はどのような王になればいいのか、その答えを見つける道半ばの記憶をもって召喚され、イースと不夜城どちらも別々の志向を持った王が敷いた国を見てきた。

 

「堕落に溺れてはいましたが、見方を変えると明日を夢見ないことによる永続を。猜疑心を強め、正直者だけを残し陰ることのない不夜の永続を求めていました」

 

「どちらも、その国が永遠に続くようにと動いていた」

 

「自分も王になるのなら勿論、国の在り方が永遠であればとそう思います。ですがあの2つの国の在り方は、確かに間違いだと思いました……」

 

 ────理想の国とはどういうものであるか。王位継承権を持って生まれたからこそ、王とはどうあるべきなのか、民をどのように導かなければいけないのか……か

 

「私が背負っていた少年がいただろう? ……私にとって、あれくらいの……年齢の子供はとても身近な存在なんだ」

 

「博樹さんはたしか子どもがいるんでしたっけ?」

 

「ああ、娘と息子がね……。それだけではないんだ」

 

 私の働く駐在署は小学校のすぐ近くにあった。だから、毎日子どもたちの「おはよう」と「さようなら」で彩られた世界だ。それが当たり前で、そんな当たり前の毎日がずっと続くと思っていた。

 

「だから、私にとってそんな『おはよう』と『さようなら』の声が響く世界こそ、永遠に続く理想なんじゃないかなって思う」

 

「おはようと、さようならの声が響く世界……」

 

 答えになったかどうかはわからないけど、これが私が生きてきた世界だ。伝えるだけは伝えた、あとはフェルグスくん自身が答えを出すしかない。

 

「──────っ!!!」

 

「博樹さん? なにか?」

 

「フェルグスくん! 桃源郷のみんなを起こすんだ! ここにリンドンたちがくる!」

 

 隣で眠るプロテアちゃんを抱き上げ、すぐさま桃源郷へ向かって走る。隣を走るフェルグスくんも事態を理解すると飛ぶように走っていった。よし、アリスちゃんはシェヘラザードのところだったな。

 

「カルデアのみんな! 今すぐ2体の怪獣の位置を調べてくれ!!」

 

『既にやっているよ。すごいな博樹くんビンゴだ!!』

 

 2体の怪獣はこの土地の中心部のどこかで戦う。それがここのルール、()()()()()()()。破壊された町が修復されなかったんだ、ルールが変わっていてもおかしくないんだ!! 

 全力で走りながら、ナイザーから光弾を出して木々にぶつけ大きな爆発音を上げさせる。これで眠っているみんなを無理やり起こす。

 

「お、おい! あんた怪獣がくるって本当か!?」

 

「逃げる準備をしろ! 急がないと間に合わなくなる!!」

 

 怪獣がくる。まるでオオカミ少年のように叫ぶ。まだ来てはいないから起こされた人達は半信半疑だけどそれでも言わないよりマシだ。

 そうやって声を上げながら、私は立香ちゃんたちが寝泊まりしている小屋へと走る。

 

『!! おいおい嘘だろ!?』

 

グガアアアアアッッッ?! 

 

 高い岩壁によって隠されていた桃源郷。その岩を破壊しながら、グロマイトが飛んできた。リンドンとの戦闘でたまたま偶然この場所に吹き飛ばされた……訳ないよな。

 まるでここに来いと、そう設定された機械のように正確にこの桃源郷に来るように動かされたように思える。

 

『立香ちゃんたちも避難をはじめた! 君はどうするんだい!!』

「1人でもいいから助けます! 荷物はいい!! 早く逃げるんだ!!」

 

 リンドンも桃源郷へと辿り着き、今日の戦場はここだといわんばかりに両者とも暴れ始める。リンドンの吐き出す炎はここの人たちの食糧源であった果実のなる木々を燃やし、当たり一面すぐに火の海へと変えてしまう。その炎に怒ったグロマイトの吐き出した巨大な岩石は地面に落ちれば大きな揺れを起こし地形を変えていく。

 

「うわあああああああ!!!!」

「た、たすけっ!!!」

「────っ!!」

 

 そんな中、1人でもいいからと救出活動にあたるけれど……。不規則に降ってくる岩石に潰されてしまう人、灼熱の炎に呑み込まれ一瞬で消し炭になってしまう人。あと一歩だった、もう少し早ければ助けられたのに……。

 

『もう限界だ! これ以上は君自身にも危険が及ぶ!! 君もすぐに避難するんだ!!』

 

「っ…………。わかり、ました…………」

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ……これ」

 

 夜が明け、怪獣たちの死闘が終わりを遂げ、踏み入った桃源郷はもう理想郷と呼ぶにはほと遠い。見るも無惨な荒地へと、変わり果てていた。

 

 

 

 





ゲーム本編も漫画も男主人公前提で話が進むので避けては通れない差別問題。
女尊男卑の世界であるアガルタで、奴隷のように扱われ女性に恐怖心を抱く彼らが立香ちゃんに何の感情も抱かないはずもなく……。


今日の更新はここまでです


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5






感想、評価のほどお待ちしてます。


 

 

 

 

 

「すまねえな相棒。お前さんはああ言ってたってのに……」

 

「ううん、仕方ないよ。あんな事があったんだし……。それに、このまま放って置いてしまうのも嫌だしね」

 

「はは、やっぱりお前さんは思った以上のお人好しだな」

 

 今まで絶対に安全だと思われていた桃源郷に突如現れ、大暴れしたリンドンとグロマイト。食糧となっていた桃も桃の木も燃え尽き、焼け野原へと一変した。

 2体の生きた死体も桃源郷内に放置されてしまい、男の人たちは避難を強いられてしまった。もうこの地に安心できる場所はない、一緒にいられないとはいったけど流石に見捨てることはできない。

 

「十全な準備はできてねえが、()()()がある。このままエルドラドまで突っ込んでいいんだよなぁ」

 

「うん、それしか……ないよね」

 

 もう逃げることはできない。シェヘラザードが魔術で船を用意してくれたことで水路を活用することができるからエルドラドへと進軍することになった。

 イースの壊された船をシェヘラザードが魔術で修繕? し、船に関わる英霊だというライダーが操舵士として船を進ませている。風がなくても帆を張れば船が進むのは『水があるなら船は進むもの』っていう物語性が付与されてるってシェヘラザードは言っていた。

 

「さあこっからはアイツらの縄張りだ!! 気ぃ張れよオメエら!!」

 

『言うが否やだね、こちらの動向を読んでいたんだろう、あちらは既に戦闘態勢だ』

 

 怪獣たちが普段とは別の行動をとったことに相手も気が付かないわけがない。斥候を寄越してこちらの動きを把握したんだろう。けど、ペンテシレイアも前線に来てくれたのは幸運だ。女王不在のうちに黄金郷(エルドラド)へと乗り込み捕らえられてる奴隷を解放することでこれ以上の戦力増強を防ぐことができる。

 

「ライダー! ここはどうにか振り切ろう!! 振り切れば本拠地は手薄なはず!」

 

「おお! 聞いたかお前ら!!」

 

 私の言葉をライダーがみんなに伝える。……私の()言葉では信用に値しないならここで誰よりも信頼されてるライダーの言葉の方が届く。現にみんな予定していたように投擲対策の木盾を構え始めた。

 

「アリスちゃんは彼をお願い。あと、ベビアルの召喚をお願いしてもいいかな?」

 

「ええ、わかったわおじさま。だけど無理をしてはいけないわ」

 

 博樹さんも、男の子をライムちゃんに守らせ小さいベリアルさんーベビアルーを肩に乗せて戦闘態勢に入る。

────! そうこうしているとペンテシレイアがこちらに向けて鉄球を放ってきた。でも、ペンテシレイアがいるならこの攻撃がくることは想定内! 

 

「フェルグスくん! お願い!!」

 

「はい! はあアッ!!」

 

 よっし! 博樹さんが正面から受け止めて吹き飛ばされたペンテシレイアの一撃は、仮契約を済ませ魔力を回したフェルグスくんならその剣で弾き返せる。これで1番の脅威となる攻撃には対処できる。このまま行けば……

 

「マスター、どうやら一筋縄ではいかないようだ」

 

「ひー! アマゾネスの奴ら突然叫びだしたよぉ!」

 

 ウォークライ。アマゾネスは雄叫びにより自身の身体の限界以上の力を引き出しこちらに岩石を投擲してきた。岸から船まで距離があるおかげで木盾で防げているけど……。

 

「────ーくッ! 流石に、二度目は驚かないよ!」

 

「そのようだな、フッ!」

 

 鉄球と一緒にペンテシレイアが船まで飛び移ってきたけど、博樹さんは不夜城で一戦交えていたからか、彼女の動きに反応して受け止めてみせた。

 相手も受け止められたことに驚きもせず、鉄球を足で押し飛ばし後方に着地した。

 

「ほお……。ここの男たちはいい目をしているな。どれも折れていない良き種になる男たちだ」

 

「────。ペンテシレイア、君と話がしたかったんだ」

 

 彼女は、男の人たちを自分の軍を増やすための種としか見ていない。不夜城にいた人たちで奴隷として連れて行かれた人たちが一人もいなかったところを見るとある一定の基準があるみたいだけど……。

 そんな中、博樹さんがペンテシレイアの前へと話をするためにと前に出ていった。

 

「なんだ。私にはお前たちと話をする理由はない」

 

「どうして君は、あのギリシャの戦士を付け狙うんだ」

 

「「「────!!!」」」

 

 直球! ヘラクレスのことをアキレウスと認識を歪めてしまうほどの怒り、復讐心に囚われている彼女に直球でぶつけにいった。ああ、あっちも今にも爆発しますよって感じで青筋立ててるし! 

 

「も、もっと言い方ってものがあったんじゃないかなぁ? 流石のボクでもそこまでやんないよ?」

 

「え? いやあ、遠回しにいうよりかはいいかなって……」

 

「…………何故、だと? そんなことは決まっている」

 

 辱められたから。戦士として生き、戦士として闘った。相手が如何に最強の戦士と呼ばれようともそれを理由に逃げることはない、むしろ戦士として己の力を試したいと思うのは本望だった。

────【美しい】その一言が、ペンテシレイアの心を何処までも崩壊させた。

 

「精鋭となる大勢の部下!! 限界したこの身体(美しくなる前の身体)!! そしてこの地には()()がいる!! これ以上の条件があるか!! 邪魔をするものは全て殺す、イースも不夜城も消えた。あとは貴様らだけだ」

 

「……そうか、それだけ大切な願いなんだね。なら、余計止めなくちゃね」

 

「話を聞いていなかったのか、貴様は?」

 

 ペンテシレイアが呆れてる。仕方ないか、彼女にとってあのヘラクレスがアキレウスっていう認識なんだから。けど博樹さんはそんな間違った認識で本懐を遂げて欲しくないから止めようとしてる。噛み合わないのは仕方ないか……。

 

〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

「「「「!!!!!」」」」

 

 この声は!? 声のした方に顔を向けると、そこにはあのヘラクレスが現れ……っ!! 岸にいるアマゾネスを殺し始めた!! いくら普通の人間よりも強いと言っても暴力の嵐のようなヘラクレス相手にはいくら束なったとしても相手にならない。一方的な蹂躙が始まった。

 

「……何を、している……」

 

「────! 駄目だ!!」

 

「私とは戦おうともしないくせに、我が同胞に手を出すのか!! 許さぬ……許さぬぞ!! お前は私がこの手で殺す!!」

 

 アキレウスと叫び、彼の元へ飛び出して行こうとしたその時。博樹さんがナイザーから出した光の鞭でペンテシレイアのことを縛り上げた。彼女とヘラクレスが遭遇したのなら両者を潰し合わ漁夫の利を狙うのが1番良いはず……だけど。

 

「邪魔をするな!!」

 

「いいや邪魔させてもらう!! 君の願いを、こんな不本意な形が叶えさせてなるものか!!」

 

「グウウウッ!! 意味のわからないことを!! いうなああああああ!!!!」

 

「うわああっ!!」

 

「博樹さん!!」

 

 縛られても関係なしとばかりにペンテシレイアがそのまま飛び上がって行ってしまった。博樹さんのことを連れて! 

水の上を勢いよく跳ねていくのに合わせて博樹さんはナイザーを離さないために両手を使っているから水の中にダイブしてしまう。それでも両手は離していないみたいだ。

 

「どうする相棒」

 

「彼はペンテシレイアとヘラクレス、両者の激突を避けたいようですが……」

 

「博樹さんのことを放っては置けないし、今は様子見……かな?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いたたたた……」

 

『無事ですか博樹さん!!』

 

「ああ、水を被ったのと少し木にぶつかっただけだしね……」

 

 まあ、それだって普通だったら大怪我じゃ済まないんだけど……。今はそんなことよりも彼女だ! 因縁の相手とのの決着を、認識の歪んだこの世界で叶えさせたくない。そのためにも……! 

放り投げらた反動で手放してしまったナイザーを拾い、彼女とヘラクレスの元へ急ごうする私の前に、アマゾネスたちが立ちはだかってきた。

 

「女王の邪魔はさせないぞ!」

 

「ッ! 前みたいにいくと思うなよ!!」

 

 女王の部隊……やっぱり邪魔してくるよな……。アマゾネスにとって女王の願いを叶えさせることこそが本望。どう見てもそれを邪魔しようとしてる私のことを排除しようとするのは当たり前か。

けど、前は男の子を守利ながら戦わなければいけなかったから本気を出せなかったけど、今は違う。最初から本気だ! 

 

「間違いやかん違い、歯車がかみ合わなくてかなしい結末をむかえるのはとてもかなしいことよね?」

 

「アリスちゃん、来てくれたんだね!」

 

「あなたたちのこと、きらいじゃないのよ? まるで合わせ鏡の砂糖菓子……ねえ? あなたたちは彼女のことすきかしら?」

 

「何を言っている……! 我らは女王の道具!! 女王の願いを叶えるための道具でしかない!!」

 

「……そうね、そうなのね。ならかなしいけれどお別れね」

 

 どうやらアマゾネスの返答はハズレだったみたいだね。風の刃や炎を出してアマゾネスと交戦を始めた。私のほうもアマゾネスたちを倒しながらペンテシレイアとヘラクレスの元へと急ぐ。

 

『うん、やっぱりあれは"規格外"だね。半神の力を持っている彼女でも単騎では敵わないか』

 

「アイツ! 船に向かってる!!」

 

『彼はこれまで何故だかペンテシレイアとの交戦は避けていた。同士討ちは上手くいかないかな?』

 

 規格外。全てのステータスが尋常じゃないほど強化されているあのヘラクレスは彼女の攻撃で身体の一部を消し飛ばされようとも瞬時に回復し、目にも止まらぬ速度で迫り蹴り飛ばした。けどそれは、相手の様子を見るための一撃じゃない。目の前を彷徨く虫を手で弾くような、そんな眼をしている。そして一度弾いて興味を失ったのか、ヘラクレスは次の標的を船の上にいるみんなへと移し動いている。

 

「クソッ……。一体どこまで虚仮にすれば気が済む……」

 

「はあぁっ! くっ! それでっ、いいのかっ!」

 

「アキ……レウスゥゥ……!」

 

 自分など眼中にないと。態度がそういっていたヘラクレスに更に怒りを募らせ、バーサーカーらしいといえばそうだけど私の言葉も届いていない。

邪魔をしてくるアマゾネスたちを相手しながら、自分の世界に入り込んだ彼女に声を届けるように叫ぶ。

 

「心のそこから戦いたい相手だったんだろ! ハアッ!! ふう、ふう……そのために準備した軍じゃないのか!! 我を忘れて、どうにかなる相手なのか!!」

 

「グウウ……ウウウ……」

 

「あれは、新しい船?」

 

 そうこうしていると、乗っていた船とは別の船が突然に出現しそこから伸びた大量の鎖がヘラクレスのことを縛り上げている。この土壇場でこんなことが出来るのは……ライダーか! 

 

()()()()()()()()()()()()()。ライダーの宝具の力だ。君には不本意かもしれないがこのまま彼女にヘラクレスをぶつけるぞ!』

 

(これが最善。このまま衝突させることが出来れば両者をこの舞台から退場させることが出来る。……けど)

 

 ゴンッ! と鈍い音が響いた。ペンテシレイアが、頭から血が流れる勢いで己の頭に拳を叩きつけていた。何をしているのかと驚いて見ていると、顔をあげた彼女の()()()()()()()()その瞳を見て確証した。

 

「……違う。これは、私の果たすべき戦いでは……ない!!」

 

(何を? あのままだと鉄球二つとも船の手前に……!?)

 

「誰でもいい! 立香ちゃんたちに衝撃に備えるように言うんだ!!」

 

『『『『!!!?』』』』

 

 船の手前。水の中へ落ちるギリギリの所で鉄球どうしを衝突させ、特大の、船を全壊させるほどの衝撃波と特大の波を生み出しみんなのことを包み込んでしまった。

 

「立香ちゃん! みんな!!」

 

「フッ!!」

 

「がっ!? ……しまっ……」

 

 鉄球が目の前に襲いかかってくる。動揺してしまい、咄嗟のことに反応出来ない。ナイザーを構えることもかなわず、鉄球の一撃が襲いかかる。

 

「ぐっ! が……はっ!!」

 

「おじさま!」

 

 ズガガガガッ! 背中に何本もの木々がぶつかる衝撃が襲いかかってくる。……あ、駄目だ、意識が……。

 

  

 

 

 

 

 




イドえおクリアして、あれロボのこと博樹さんの鯖にしちゃだめだったんじゃ……とかとかなんとか思うけどそんなの関係ねえ!ナウイなところでもプロテア出て来ちゃってるんだからもう関係ないんだ!!!


18時にもう1話更新します


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6






感想、評価のほどよろしくお願いします。


 

『光の国の奴らへの復讐の時だ!!』

 

 ベリアル銀河帝国。別の宇宙(アナザースペース)へ飛ばされ、その地でベリアルさんが築き上げた、構成員の殆どがダークロプスゼロやレギオノイドといった()()()()()()()の帝国と呼ぶには歪な組織。

光の国への復讐だけを目標として、アナザースペースに住まう人々を蹂躙し、支配することで恐怖のどん底へと突き落とした、一大帝国。

 

『ベリアル!受けてみろ!!これが、俺たちの!!光だッ!!』

 

 一度はゼロを正面から下したベリアルさんは、その姿をアークベリアルへと変貌させ更なる絶望へと落とそうとしたけれど……。ノアの奇跡、アナザースペースに生きる人たちの光によってその野望は潰えた。

 

 無尽の軍勢に復讐すべき相手、彼女を見ていると何故だかベリアルさんのことを思い出してしまう。復讐という闇に呑まれていたころのベリアルさんを……。

 

 

 


 

 

「ん……ここは……?」

 

「良かった、目が覚めたのねおじさま」

 

「アリ、スちゃん……ペンテシレイアたちは……?」

 

黄金卿(エルドラド)へ戻ったよ』

 

 目を覚ますと、木々が薙ぎ倒されたジャングルの中にいた。そうか、ペンテシレイアの一撃を受けて気を失って……それで……。連れて行かれたりはしなかったのか。

 

「そうだ!立香ちゃんたちは!?」

 

『行方知らずさ。まあ、バイタルに異常は見られないから無事であることは確認済みさ』

 

「そうか。それなら、よかった……」

 

 アリスちゃんが手当してくれたおかげで立ち上がれる。立香ちゃんの安否……いや。

 

「黄金卿は、あっちか……」

 

「どうするの、おじさま?」

 

「ペンテシレイアと……戦うよ。全力で」

 

『博樹さん!?駄目です、せめて先輩たちと合流してからでも遅くはないはずです!!』

 

「…………似てるんだ、彼女……」

 

『似ている?それは……ベリ、アルさんと……ですか?』

 

 頷く。確かにアマゾネスの軍の戦うのなら立香ちゃんたちと合流してからのほうがいいことは明らかだ。ーーーーだけど、嫌な予感っていうのかな?あのヘラクレスも一緒に流されていったのがどうにもきかかいだ。

 

「見返したい相手がいて、貪欲なまでに力を求め、憤りのない怒りを募らせ続けている。やり方はどうあれ、その願いは何処までも純粋だ。ーーーーだから止めたい、止めてあげたい」

 

『純粋……。相手に復讐したいと、見返したいという彼女の願いがですか?』

 

 黄金卿へ向かいながらマシュちゃんと話をする。彼女の疑問、復讐という感情を純粋と呼ぶのは間違いなのではないのかという至極当たり前の疑問。

 

「ライダーの宝具がヘラクレスを縛り上げたあの時、復讐を果たす絶好の機会だったんだ。バーサーカーの狂気に呑まれていたならその狂気に身を任せれば願いは叶っていた」

 

『確かにそうです!ですがペンテシレイアはその直前、自分の頭を殴打したことで正気に戻り、戦いを中断させました』

 

「自分の力で、軍を率いて成すべき願い。他の誰かに邪魔された形で叶えていい願いじゃなかったんだ。それだけ曲げたくない、真っ直ぐな願いなんだ。善も悪関係ない、叶えたいって気持ちはさ、ただただ純粋であるものだと思うんだ」

 

『どんな形であろうと、願いは純粋……』

 

 

ーーーーそんな純粋な願い。こんな間違いだらけの世界の間違った認識で叶えていいものじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様1人で何のようだ」

 

「決闘の申込みだ。ペンテシレイア」

 

 黄金卿にある玉座の間。本来いるべき部下たちが1人もいないことに少しの疑問を感じながら、玉座に座っているペンテシレイアに決闘を申し込む。

 

(立香ちゃんたちとも連絡がついた。いいかい、彼女たちが玉座へ辿り着くまでが君のタイムリミットだ。それで決められないのなら諦めることだ)

 

「君の間違ったその認識、正面から殴り飛ばす」

 

「ーーーー待つのは性に合わなかった所だ。いいだろう、その決闘受けてやろう」

 

「行くぞ!!ベビアル!!」

 

「ヴェアッ!!」

 

 アリスちゃんの宝具によって生み出されたベビアルが光へと変わり、その光が私を包み込みその形を強固な(スーツ)へと変わる。スーツから流れ込んでくるベリアル因子が私の中にあるベリアル因子と結合し、その力を膨れ上がらせる。その姿を見たペンテシレイアは驚愕した顔から笑みを浮かべると「こちらも、本気でいかせてもらう!!」といい高らかに吠えると、玉座の外から地鳴りのような咆哮が響いてくる。

 

『ペンテシレイアの霊基数値が上昇して……これはーーーーメガロス(ヘラクレス)に匹敵する勢いです!』

 

「王とは強き者されど孤独に非ず。たとえ正気でなくとも、必ずその咆哮(こえ)に答えよう」

 

ーーーー刹那。この姿になっていなければ、そしてあの時ロボと戦った経験が生きている。一瞬で詰め寄ってきたペンテシレイアの攻撃に合わせるようにナイザーを振るい相手のククリナイフとぶつかる。

 

「ーーーーッ!疾いね」

 

「ほう……。いいだろう、何処までついてこれる!!」

 

「はっ!君がぶっ倒れるまで、何処までだってついていってやるよ!!」

 

 立香ちゃんたちはもうすぐそこまできてる。まあ、元々この力の活動限界は3分間だ、その間に……決着をつける!!

 

「「はあああああああッッ!!!!」」

 

 超接近戦を仕掛けてくる相手にナイザーは武が悪い。ナイザーをしまい、カイザーベリアルがそうしたように両手の爪を鋭く伸ばし格闘戦へと持っていく。

一挙一動、相手の動きを捉え捌き、その先を読んで攻撃を繰り出す。高速で戦闘を繰り広げながら同じかそれ以上の速度で頭を回転させる。

 

「オ・オ・オ・オ・オ・オ・オッ!!!!!!」

 

「グウウっ!!ハアアアアアアアッッ!!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「博樹さん!!」

 

 ようやく着いた!沈んだと思ったら竜宮城にいたり、そこで生きていたダユーと交戦。玉手箱っていう切り札とメガロスと名付けた規格外のヘラクレスを味方につけることに成功し、地上に戻ってきたらこれだもん。

 

 博樹さんが一人でペンテシレイアと戦っている。その言葉を聞いて私たちは急いで駆け出した。エルドラドにつくと咆哮を上げ続けるアマゾネスの軍がいあたからそこはアストルフォとデオンに任せ私たちは玉座へと辿り着いた。

 

「ほお、こいつは相当な疲弊してるじゃねえか」

 

「彼女相手にここまで……!」

 

 外から見た眩しいほどの金の建物造の面影が見えないほど、玉座の間は2人の激しい戦闘によって見るも無惨に破壊されていた。

その中心、息も絶えたえ博樹さんの纏うスーツは所々その形を維持出来ず肌が露出しそこから血が流れ、ペンテシレイアも同じように身体中から血を流していた。

ーーーーッ!!ペンテシレイアがこっちを!!メガロス(アキレウス)を捉えた!!

 

「アアアアァキレウスゥウウウウウウウ!!!!」

 

「お前の相手は私だろッッ!!!!」

 

 その認識の間違いによって狂気に染まりこちらに向かって襲い掛かろうとしてきたその顔を博樹さんが思い切り殴り飛ばした。そのまま博樹さんは倒れたペンテシレイアが態勢を立て直す前に彼女に接近しその胸ぐらを掴みあげた。

 

()()()()()()()()()()()()()()姿()なんだろ!()()()()()()()()()()()()に報いるための願いなんだろ!!それなのに相手をちゃんと見ないなんてそんなの君が憎むアキレウスと一緒だろ!!!!」

 

「ーーーーッ!!愚弄するなぁああああ!!!」

 

「そう思うなら!!!!今目の前で君と戦ってる、私を見ろ!!!!」

 

 ゴンッ!!と鈍い音が響く。博樹さんが身体を思い切り反らしてペンテシレイアに頭突きをかました音が。

アキレウスというその名前を聞くだけで憎悪を募らせる彼女の性質を利用することで彼女の意識を自分に持って行かせることで正気を取り戻そうとしたんだ。

 

「くっ……」

 

「なんだかわかんねえが今がチャンスだ!やっちまえメガロス!!!」

 

「ーーーー!ライダーまっ!」

 

(今だ!!)

 

 メガロスの制御。強力な魔力資源である玉手箱を使い、シェヘラザードがコロンブスとメガロスを魔術的に繋げることで楔として役割を担っている。いくらメガロスの霊基パターンが私の契約したヘラクレスと同じものだとしても今彼に明確な命令を送れるのはコロンブスだ。

頭突きをくらいよろけ、博樹さんとの距離が出来た彼女にトドメを刺そうと即座に命令を下すコロンブス。止めようとしたけど止められなかった……ん?博樹さん、何を……?

 

「すぅぅぅぅ。ハアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!」

 

「ああ?おい何でこっち向いて」

 

デスシウム光線!!

 

「博樹さん!?!?」

 

 トドメを刺そうと飛び上がったメガロス。あろうことか博樹さんはそんなメガロスに向けて光線技を直撃させた。意識の外からの攻撃、そして魔術で縛られているからこその思考の低下によってメガロスがその光線を避けることできるはずもなく。壁にめり込むように叩き込まれた。

 

「はあ……はあ……どうだい……?あんな好きだらけの技、むざむざ直撃するような相手だったかい?」

 

「ーーーーーーーーふっ。()()()()()、姉上の仇か……」

 

『認識が戻った?』

 

 今までずっとヘラクレスのことをアキレウスだと認識していたペンテシレイアの認識が正常になってる。博樹さんはずっとこれを狙っていたの……?光線を撃って全ての力を使い尽くしたのか纏っていたスーツは消え、立っているのもやっとらしく膝立ちの状態でペンテシレイアと向かい合う。……そうか、彼女ももう限界なんだ……。

 

「願いの成就のためにこの地に立ったというのに、肝心のこの目が曇っているとはな……。笑えるな」

 

「もし勝てて、その後に間違ってたって気がついたら……すごい嫌な気分になるだろう?」

 

「ハハハ、そんなことのために……これだけの馬鹿をやったのか貴様は……」

 

「どうにも君が友達に似ていたものでね……」

 

 力を貸してくれる大勢の部下、アキレウスが美しいとそう言った時よりも前の姿。戦士として全力で戦うには全てが整ったいたのに、肝心のアキレウスが何でいないんだと嘆き……。そして自分の暴走を止めて見せた博樹さんへ感謝を述べてペンテシレイアは退去していった。

 

『ペンテシレイアの霊基反応、消滅しました』

 

「博樹さん!!」

 

「ーーーー立香ちゃん。まだ、倒す相手が残ってるよ」

 

「へ?」

 

 倒れそうになる博樹さんに駆け寄り、その言葉が届いたのと同じタイミング。ドンっ!と何かが打ち出された音とその音を弾くようにキンっ!と金属を叩く音が聞こえ振り向いた。

すると、フェルグスくんが私のことを守るように立っていてその先には銃をこちらへ向けた、コロンブスが顔が歪むほどの笑顔を浮かべていた。

 

「そこはちゃんと死んどいてくれよ。なあ?相棒♪」

 

 

 

 

 

 

 





レジライ戦は……飛ばします!!
 今年のバレンタイイベのレジライ(カロン)の活躍とか見たりと実際もうヘラクレスデスシウム光線でダウンしてるのとか踏まえると……ね?もう勝ちみたいな盤面なんですよね。ごめんねレジライ……声もやってることも大好きだよ……もうしかしなくても奏章Ⅲで出て来たりしない?なんかカロン関係でフラグ立ってませんか?


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7




感想、評価お待ちしてます


「アガルタ────いいえ違います。これなるは私の物語。狂王に全てを捧げた"娼婦"の物語。故にこそ、────()()()が相応しい」

 

 【空中都市ラピュタ】

 裏切りものだったコロンブス。アガルタを支配し、男性奴隷によって無限に増えることができる女性たちを変えのきく労働力とし、地上を支配しようとした。ダ・ヴィンチちゃんやデオンが彼のことを疑い続けていたし、博樹さんも彼の目を見てからずっと疑っていた。

そんな彼だったけど、シェヘラザードの妨害そして何よりデスシウム光線によって()()()殺されたヘラクレスを生き返らせるのに急激に魔力を吸い取られたことによって呆気なく倒れた。

 

 最後の最後まで諦めなかったし、散々好き放題して行って悪ぶれる様子もなく消えていくその姿に毒気を抜かれてしまったけど、それで終わりじゃなかった。

シェヘラザードがこの特異点を作り出した黒幕、魔神柱の依代だったんだ。

 

「謝罪も弁解もいたしません。ただ……こうする他に道はないのです。私は、私の全てをかけてこの世界の理を破壊します」

 

 【狂王が民を支配する世界】この地底世界はそんなシェヘラザードの生涯を再現した世界だと、通信越し現れたホームズが教えてくれた。数値上なんの異常も感知されなかった彼女だけど、何らかの方法で隠匿しことを運んだ。でもそれなら折角これだけ多くの駒があったのに私たちに倒させたのは何故? と思った矢先に起きたのがこの地底世界の浮上だ。

 

『召喚された英霊たちはこの地を浮上させるための魔力リソースだったってわけだね。だから倒させる必要があった』

 

「そう、その通りでございます。そして私は、このラピュタを地上の都市へ落とすことで"神秘の秘匿"を破ります」

 

 「2度と死にたくない」それが、シェヘラザードの願い。英霊として座に刻まれた彼女はいつかのどこかで召喚され、必ず死ぬ定めを負わされる。それが何よりも嫌だから、召喚されたくないから彼女は神秘の秘匿を破ることで英霊召喚

システムそのものを亡きものにしようと動いた。神秘の極めて薄いこの時代ならば空中都市という神秘の起こす大規模テロを起こすだけで秘匿は破られてしまう。

 

『"神秘の終わり"という特大の歪みを引き起こすことで本来の歴史に起こる最初の英霊召喚の失敗……そうすれば聖杯戦争そのものもなくなるだろうね』

 

「その先へ辿り着いてこそ、私は真に死の恐怖から解放されるのです」

 

 シェヘラザードのその願いは、間違いじゃないと思う。博樹さんがペンテシレイアの願いを間違いではないって言ったように、『千夜一夜物語』狂王の機嫌を取るために物語を語り続ける、死の恐怖と隣り合わせの千と一の夜の話。マシュが言ってたっけ、『王がシェヘラザードの献身によって改心した』この結末だけは明確に後付けされたものだって。だから彼女は……。

 

「実際のあなたは何も報われないまま────」

 

「やめてください!!」

 

 私と同じことフェルグスくんも思ってたんだ。だけどそれ言ったら地雷踏むってわかってるのに!! シェヘラザードも怒って沢山エネミー出してきちゃったじゃん! 

 

「みんな! 目標は"シェヘラザードの無力化"! あ。博樹さんは休んでて下さいね!」

 

『無力化? 討伐でなく?』

 

「彼女の救う方法一緒に考えてよホームズ、時間ギリギリまでさ。私より頭いいんだからさ」

 

『ふっ、これは難問だ。創作活動は専門外なのだがね』

 

「……救う? どうやって救うというのですか」

 

 どうにか出来ないか。そう動き出そうとした私たちの歩みを止めるように、彼女は心地の良い声色で語り始めた。

 

「私1人が座から消滅する方法など無い。数多の知恵を持つ魔神柱ですらそう答えたのに。この人類史に刻まれた数ある英霊たちの中で、英霊の座から去る事がかなったのはただ1人をおいて他にいない」

 

 それを私が1番知っているでしょうと、あの日の別れを思い起こさせるようにシェヘラザードが言の葉を述べた。

────ドクター。ベリアルさんの光線によってゲーティアと共にソロモンは英霊の座から完全に消え去ってしまった。

 

「ああ……()()()()()()()。私もそんな事が出来ればこんな苦労をせずにすんだというのに」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「羨ましい……か。うん、そうだね。羨ましいよね」

 

「博樹さん……?」

 

『何を……』

 

 ドクターの最後の勇姿。あれが無ければ私たちは確実に敗北していて、誰1人今ここに立っていない。ベリアルさんの器となり、ゲーティアに引導を渡し消滅した。

程度のさはどうあれ立香ちゃんやマシュちゃん、カルデアの人たちもみんなまだそのことに関しては消化しきれていない話題だ。だからそこ言葉は何よりも効く。

だから、こういう時は大人の出番だ。

 

「貴女が魔神柱にどう聞かされたのか分からないけど。あの終わりは、別れはとても美しいもので、勇気ある決断だった。そして何より、"あの人"と一緒に行けるのなら私も一緒に行きたかった……」

 

「…………ウルトラマン、ベリアル……。狂王の極みのようなお方だとお聞きしました。そんな方と共にとは私はとてもとても」

 

「狂王か……。けど、私はそんな王に()()()()()。命を貰った、明日を貰った! だから、明日をもらうよ君たちを超えて」

 

 この世界はシェヘラザードの物語が反映した世界、この世界を構成する直前に魔神柱から彼らの話を聞いていたのかな? ペンテシレイアに少しだけベリアルさんの面影を感じたのは、それが理由かもしれない。

 

『私も、ベリアルさんから、ドクターから今を歩く道をいただきました』

「歩いていけって言われたしね」

 

『ここにいる全員が救われたんだからね。よしっ、立香ちゃん! 戦う準備はいいかい! ここからが最終決戦だ!』

 

「はいっ!!」

 

 よし。気落ちすることなく戦いに集中できてる。まあ彼女の羨ましいと私の羨ましいでは同じ場面のことでも感じ方が違うから話題のすり替えって言われればその通りだけど、このまま彼女の言葉に踊らされるのは嫌だからね。

 

「やはりこうする他ないのですね。ですが、貴方たちは一つ忘れていることがあるはずです」

 

【揺れる大地 眠れる獣は目を覚まし 役目を終えたその怪は 本能のままに その力を振い始めるのです】

 

ピャアアアアガァアアア!! 

 

グググ、グガアアアアアッッッ!! 

 

「リンドンにグロマイト!? やっぱり君が手引きしてたのか!!」

「私はただ役割を与えただけです。(そら)から飛来した彼らの心臓に術式を組み込んだだけのこと」

 

 言の葉と共に、2体の怪獣が目を覚ました。彼女がいうにはアガルタの地を構成してすぐに2体の怪獣が飛来してきた。辿り着いたころには一度死んでいたからそこにシェヘラザードは2体の心臓に【夜に目を覚まし人の集まる地で暴れる】という簡単な術式を組み込むことで暴れさせていた。ここが最終決戦なら融合獣に! ……いや、魔神柱が姿を現していないのになっていいのか……? 

 

「おとうさま!」

 

「プロテアちゃん?」

 

「わたし、たたかうよ!」

 

 融合獣になろうか悩んでいる私の袖を引くプロテアちゃん。確かにプロテアちゃんの力を解放させれば怪獣たちに対応できるかも知れない。だけど相手は2体、そして的確に弱点を突かなければ倒せない不死身の特性を持っている。できるのかどうか、そんな迷いの中で一つの可能性に気がついた。

 

「空中都市……浮遊島……プロテアちゃんの、カプセル……」

 

 確かプロテアちゃんはハイ・サーヴァントっていうあらゆる神話に共通する大地母神のエッセンスを元に創られたアルターエゴのサーヴァント。地球で生まれた怪獣も同じように大地から生まれたというのならプロテアちゃんは怪獣たちの母でもある。ならっ!! 

 

「アリスちゃん、プロテアちゃん、いくよ!!」

 

「ええ!」「うん!」

 

 アリスちゃんからベリアライザーを渡してもらい、装填ナックルに起動させたプロテアちゃんのカプセルを装填する。そして()()()()怪獣カプセルを追加で装填する。

 

【キングプロテア】

 

()()()()()()

 

【フュージョンライズ!!】

 

「んんん〜〜〜〜がお〜〜〜!! 

 

 そうして出現したのはプロテアちゃんの霊基にレッドキングの力を混ぜ合わせた姿。長い尻尾に強靭な腕、レッドキングが噛み付いているような帽子? を頭に被っている。両サイドに別れてドリルのように巻かれている髪はオシャレ……なのかな? そして目が惹かれるのが顔や露出している肌に現れた黒い稲妻のような紋様。ベリアライザーを通した変化だったからなのか、プロテアちゃんもベリアル因子に適合している。

 

「わ〜プロテアちゃんかわいい〜」

 

「あはははは!! 何あれ着ぐるみ!? おもしろ〜い!!」

 

「……これが貴方の奥の手ですか? あの2体の怪獣に勝てるとは思いませんが……」

 

「ここが物語の世界で、物語の力が強く反映されるならこれ以上ないくらいだよ」

 

 可愛らしい姿にシェヘラザードも侮っているようだけどそんなことない。”浮遊島”に”複数の怪獣”に”レッドキング”が揃ったんだ、今のプロテアちゃんは────

 

 

災の神とさえ呼ばれた怪獣

 

どご〜〜〜ん!! 

 

 【装甲怪獣レッドキング】突如出現した謎の浮遊島に封印されていた文明を滅ぼした"災いの神"と恐れられた怪獣。一度はマックスを追い詰めたけどマックスの最速の前に敗れてしまったけど、複数体の怪獣を前にしたレッドキングに、負けはない。

立香ちゃんたちの方もついに姿を現した魔神柱【魔神フェネクス】と戦っていて手が離せないし、こっちはこっちでやらなくちゃ! 

 

え〜い!! 

 

ピャガアッ!! 

 

グググ……ガアッ!! 

 

 グロマイトの放つ岩石を軽々キャッチしてリンドンに投げ飛ばして吹き飛ばす。岩石が通用しないとみるや突進を繰り出してきたグロマイトのことは両手で軽々と受け止めると、その巨体を持ち上げ地面に叩きつける。

 

ピャガアアアアッ!! 

 

む〜熱いけど効かないぞ〜!! 

 

 リンドンの放つ熱線にも怯まない。両手をクロスすることでガードしながら接近し熱線を吐き終えた瞬間に手の指を交互に組み、レッドキング怪力を持ってリンドンの顔面に組んだ拳をハンマーのように殴りつけた。戦闘能力は圧倒的にこっちが上。だけどあの2体を止めるには再生能力の源を断つしかない! 

 

「────ッ、プロテアちゃん後ろだ!」

 

えっ? きゃあああ!! 

 

 このまま奴らの再生器官を潰せば倒せる。そう思っていると、背後から熱線が襲ってきてプロテアちゃんに直撃する。

 

「うっわっ! 怒って見境なく攻撃したんじゃなかったの!?」

 

『クハハハハ! 我委細承知、我ら擊ちその器 侮りがたきその存在』

 

 だから一才油断はしないっていうことか……。まあそれはそうか、ベリアルさんによって滅びかけたんだから何より警戒するのはその力を今なお引き継いだ私だよな。だけど! それで立香ちゃんたちから目を離すのは間違ってるぞ。

 

「ッ────!! クゥウウウウ!!!!」

 

「!! フェネクス!!」

 

 立香ちゃんが自分の指先に魔力を溜め込み始める。あの感じ……令呪1画分の魔力だけじゃない? 危険を察知したのシェヘラザードがフェネクスに指示を出し立香ちゃん目掛けて攻撃をしかける。

 

「私にはみんながいること忘れたのフェネクス!!」

 

「守るべきはずマスターが切札になる。この世界において、そうとうな意外性だろう? アストルフォ!!」

 

「ほい来た!!」

 

『理解不能! 貴様がマスターの護衛を放棄するだと!?』

 

 フェネクスの放つ熱線は、デオンくんが立香ちゃんのこと抱き上げて回避した。そして主を守る立場にあるデオンくんが立香ちゃんを高く放り投げると、そんな彼女をヒプグリフに乗ったアストルフォが受け止める。

 

「な〜んだ普通に話せるんなら最初からそうしてよね〜。ど〜だ面白いだろ〜これが意外性ってやつだよ〜〜!!」

 

『オオオオオッ!! しかし!! 貴様の能力の可能回数は僅かだろう!!」

 

「そんな分かりきってること言ったってつまんないだけだよ〜っと!!」

 

 【次元跳躍】、一時的に異なる次元に跳ぶことであらゆる攻撃を無効化できるヒポグリフの真の能力。無茶苦茶燃費が悪いってのは前々から聞いていたから知ってることを声高らかにフェネクスが叫んだところでそれは()()()()()か。

 

『(ならば直前。あのマスターが魔術を放つ際に実体化するその一瞬をつく!)』

 

「とかとかなんとか思ってるんでしょ〜。ばあ!」

 

『オオオオオッ!!』

 

「残念、それも残像だよ」

 

「フェネクス! 後ろです!!」

 

 いつの間にか、本当にいつの間にかヒポグリフの背中に乗っていた立香ちゃんがいなくなっている。立香ちゃんは地面に落下しながらその指先をフェネクスへと向いている。

 

「それだけ目があるんだから、もうちょっと視野を広くもった方がいいよフェネクス。【穿て! ガンド!!】」

 

『があっ!? グオオオオオオッ……』

 

「か〜ら〜の〜! 【令呪を持って命ずる!! 魔神柱をぶっ倒せ!! アストルフォ!!】」

 

「オッケーマスター!!!! ハアアアアアアアアアアアァ!!!!」

 

「2人とも〜着地おねが────い!!」

 

『や……めろ、来るなッ!! 来るなあっ!!』

 

「それってあれでしょ? 押すなって言われて押すやつ!! いいじゃん、君も少しは面白いこといえるんじゃないか!!」

 

 立香ちゃんの魔術による拘束。身動き一つ取れなくなったフェネクスは令呪から送られた魔力を全て解放させたアストルフォの一撃を避けることも反撃することも敵わず直撃し、消滅した。

流石立香ちゃん。ならこっちも!! 

 

「終わらせるよプロテアちゃん!!」

 

おお〜!! 

 

ガアッ、ガガガ! 

 

「丁度いいハンマーだ! グロマイトの尻尾掴んじゃえ!!」

 

 グロマイトを飛び越え、その尻尾を持ち上げて持ち上げる。グロマイトが生成した岩石はベリアル因子が含まれた強固な岩。だったらそれを最高の武器に変えてしまえばいいんだ! レッドキングだって岩石を武器に戦うんだからね! 

 

は〜! どっごおおっっん!!! ばっごおおっっん!! 

 

ピャガッ! ピャガガガッ!! 

 

 両手で握った尻尾を持ち手にしてリンドンに鈍器としてぶつけていく。リンドンに攻撃の隙を与えないように振り回していく。けど、同じような攻撃を続けるのは()()()()()んだろ? 

 

「プロテアちゃん! グロマイトを叩きつけて肩と背中のでっかい岩石を砕いて武器にするんだ!!」

 

うん! むむむ!!! どりゃあああ!! 

 

「それをリンドンの心臓! そして背中のコブに突き立てるんだ!!」

 

 グロマイトの大きく突き出た岩石。岩石の再生速度を考えると1番大きいあの部分に因子が多く含まれてる。その部分を切り取り、リンドンの再生器官である心臓と背中のコブに突き立てる。

だけど突き刺しただけじゃだめだ! 因子で強靭に強化された再生器官を完全に停止させるには、もっと深くだ!! 

 

むん!! ええええいい!!! 

 

ピャ……ガガガ! ガアアアア!!! 

 

 心臓に突き立てた岩石に思い切り拳を叩き込み、浮かび上がったリンドンの背中のコブを両手で地面に向けて思いっきり叩きつけた。これでリンドンは完全に倒した……と思ったけど最後の抵抗なのか熱線を吐き続ける。

 

「まだいけるねプロテアちゃん! リンドンの熱線、首の付け根にぶつけるんだ!!」

 

うん!! うりゃああああ!!! 

 

ガガガガガガッッ!!! 

 

 レッドキングの力なら正面からグロマイトの岩石の鎧を突破できるけど長ったらしくなっちゃう戦いはしてられない。リンドンの熱線をグロマイトの中枢器官に届く首の付け根に押し当てる。

 

「さあ! これで終わりだ!!」

 

うううう!! ばっご────ん!!! 

 

 助走を付けたドロップキックを受け、完全に弱り果てたグロマイトは爆散し側にいたリンドンの死体も巻き添えをくらうように爆散した。

 

 

 

 

 




キングプロテア(ver.レッドキング)
 プロテアのカプセルとレッドキングの怪獣カプセルをリードしフュージョンライズした姿。見た目は怪獣娘のレッドキングのプロテア版である。
べリアライザーを通しての変身でもあるためベリアル因子を含めた強化であるため怪獣相手にも引けを取らない。

 今回に限っては、マックス版のレッドキングの逸話も合わせて引き出されているおかげでリンドン、グロマイトを相手にしても勝つことが出来た。

 やろうと思えば他の怪獣とのリードも可能であるが、プロテア自身因子との相性がいいという訳ではないが、ティアマトの生命の母との結びつきによる補強で保っているためもしも次があるならばその時も地球産の怪獣を使うことになるだろう。

グロマイト、リンドン採用理由。
 不死身系怪獣は沢山いるがグロマイトは地底に逃げたことに登場回が「不死鳥の砦」だったりメビウスといえばフェニックスというフェネクスとの繋がりから。リンドンにいたってはメビウスがタロウの弟子部分からの採用。

なんであと一体もメビウス関連だったり?


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8

感想、評価お待ちしてます


 

「うあああプロテアちゃん退去しかかってる! カルデアに戻ろう!! BBちゃんお願い!!」

 

『え!? ちょっとプロテアのその質量一気にこっちに来るのはきゃあああああああ!!!』

 

 ゴモラとの合成はやっぱり相当な負担だったか。ゴモラとの合融合も解け、今にも消えかかるプロテアちゃんのことをカルデアに、BBちゃんに任せて帰還してもらった。

 

((まさか怪獣たちもやられてしまうとはな……))

 

「やっぱり生きてるよね……。不死鳥なんだから、あの2体みたいに弱点的なの突かなきゃっては思ってた」

 

 立香ちゃんたちが倒したと思われた魔神フェネクスが、シェヘラザードの影から再度姿を現した。今度は魔神柱の姿ではなく、ゲーティアに似た人形の姿で。立香ちゃんの言うとおり生と死を司っていて、あの最終決戦からも生き延びたんだから何か決定打がないと完全に倒しきるのは不可能か……。

 

((我の願いは死からの解放。シェヘラザードの願いと同一の物だ。それ以外何も望まぬ))

 

「他の魔神のようにはいかない……ってこと?」

 

 フェネクスが本当に死ぬには人類史から不死鳥フェニックスの概念をも無くさないと存在自体が消滅出来ない。だからフェネクスとシェヘラザードは同胞になれた。

 

 だから諦めてほしいと頭を下げて懇願してくる。何度倒しても無限に生き返ることが出来るフェネクスは諦めないから、そして2人を倒すことが出来ても倒した英霊たちのエネルギーを動力として動きているラピュタの止まらないと。

 

「どうか諦めてください。あなた方どう足掻こうとも、もう物語の結末は変わりません」

 

「いいやまだだ! 私が融合獣になればこの島を破壊できる!」

 

((それは我が封じよう))

 

 ゴゴゴ! とフェネクスの言葉と共に地面が揺れ出すと、黄金卿のあった地面から何かが飛び足してきた。()()入ってる? あれは……水晶の棺桶?

 

()()()()()!? いいや違う、グローザ星系人か!!」

 

「ま、マシュ解説!!」

 

『は、はい! グローザ星系人はウルトラマンメビウスに登場した敵グローザム。その出身がグローザ星であるため他個体のことはグローザ星系人と呼ぶそうです。その特徴は……っ!!」

 

()()()。リンドンやグロマイトのとは違う、条件なく再生することが出来る本当の不死身だ」

 

((そうだ! 始まりはコイツだったのだ!! この地に飛来し、力の全てを使い果たしたコイツの精神を侵食し! 我の容れ物にすることを可能にした!! 存外、相性も良かったようだしな))

 

 生と死を司る魔神。生命の炎のほうじゃなくて死を司る氷と不死身が惹かれあったから、フェネクスはあの宇宙人を容れ物することが出来たってこと? フェネクスがそう言ってグローザ星系人の中に入ると、銀色の体に赤いラインが入り、身体中に魔神柱の目玉が出現する。

そうして水晶ではなく氷の棺桶が壊れ、地面に降り立ったフェネクスは声高らかに名乗りをあげる。

 

((我は永怨(えいえん)のフェネクス!! 真なる死の訪れを求めんもの!!))

 

『……博樹くん。頼めるかい?』

 

「はい。()()()も怒っているみたいなんで……」

 

 カプセルを選ぼうとした時、まるで自分を使えと意思を持つように私の手に収まったそのカプセル。アイツが氷結のグロッケン本人なわけでもないし、このカプセルがベリアルさんの配下だった彼ではない。

 

(それでも見過ごせない。そうだろ()()()()()!!)

 

 【暴君怪獣タイラント】7体もの怪獣のパーツを繋ぎ合わせて完成したかのウルトラ6兄弟をも圧倒してみせた最強の怪獣。そして、ベリアルさんの配下であrダークネスファイブが1人、極悪のヴィラニアスの連れていた相棒。つぎはぎだらけの世界に、かつての仲間によく似た相手。運命なのかもしれないな。

 

「昔からバッドエンドは嫌いでね。ここからは、ハッピーエンドまで一直線だ!!」

 

 タイラントともう1本。本当ならレッドキングを使いたいところだけど生憎タイラントを構成する1体に入ってるんだよな……。ここはお前だ、いくぞ!!

 

【タイラント】

 

【ゴモラ】

 

【フュージョンライズ!!】

 

「があっ! はあああああああ!! はっ!!」

 

 以前のように全身に激痛が走る。その痛みに耐えてライザーの起動スイッチを力強く押し込み解放させたその力を取り込み、ベリアル融合獣へとその姿を変える。

 

【ウルトラマンベリアル! ()()()()()()()()()()()()()

 

グガアアアアアアアッッッ!!! 

 

────最後の戦いが、始まる。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、ああたのしいわ! とてもわくわくドキドキするんだもの!」

 

「あなたは……」

 

 2体の怪獣の最終決戦。大きな翼の生えたゴモラ? って言えばいいのかな? それ以外の怪獣の要素あるにはあるんだろうけど、そんな博樹さんが変身したベリアル融合獣【ストロング・ゴモラント】とフェネクスとの戦闘が始まった。

見届けるしかない、結末の決まった物語にどうして抗うのか? そう苦言を呈したシェヘラザードの前にライムちゃんが、()()()()()()()()()()()()、うれしそうに駆け寄っていく。

 

「結末の決まった物語ほどつまらない物語はないわ。最後の最後までどうなるのかわからないから物語はおもしろいのだもの!! でも残念なことがひとつだけ。読み聞かせてくれる語り部さんがちっとも楽しそうじゃないの、それじゃあ折角のたのしいお話もつまらなくなってしまうわ」

 

「私はただ言の葉を綴る語り部です。私はただ死にたくなかったから……結末を後回しにし続けた……そこにたのしいなどという感情は、ありません」

 

「そうかしら? そうなのかしら? でも、あなたの語った物語はそうでないと言っているわ」

 

 そっか……。ライムちゃんはおとぎ話のサーヴァント、長く語り継がれた千夜一夜物語もおとぎ話として語られることもあるからライムちゃんの中にシェヘラザードの語った物語も……内包してる? ライムちゃんが手をかざすと、シェヘラザードが戦闘で使用してきた巻物、彼女の物語が綴られたが出現し、その中の登場人物たちが一斉に姿を見せた。

 

「……彼らは、私が空想中から生み出した……登場人物でしかありません」

 

「ええそうね。だけど、本当にこの子たちはあなたの紡いだ物語?」

 

「……え?」

 

「『たすけてあげて』『すくってあげて』この子たちはず〜っとわたしにそう語りかけてくれていたわ」

 

「そんな……ことは……」

 

 シェヘラザードを囲む、まるで抱きしめるように守るように現れたアラビアンナイトの登場人物たちのうれしそうな表情を見て、私はライムちゃんの言いたいことが何となくだけどわかった気がする。

 

「千夜一夜の物語は編纂された物語。悲しい結末がいやで、幸せな結末に至るように書き足されていった物語」

 

「そう、正解よ立香。かなしい終わりのあなた? この子たちはたくさん見てきたの、やさしい、しあわせな結末のあなたを」

 

『変化し続けた物語』こうすればおもしろい、あんな終わりは嫌だからこういう結末にしようって……沢山の人が語ってその度に色を変える。悲しい終わりを迎えたシェヘラザードだけど、物語であるみんなは違う。語り継がれた沢山の人の『こうあって欲しい』が詰め込まれたみんななんだ。

 

「だから何だと言うのですか!! それを知ったからといって、死の恐怖からは……逃れられない……」

 

「ならそれをこえてしまう物語をつくってしまえばいいのよ。だってあなたは千夜一夜物語(このこたち)語り部(マスター)なんだもの、誰より変えていいのよ。それこそ最高のハッピーエンドがいいわ!」

 

「…………」

 

((そんな言葉に惑わされるなあああああああ!!!))

 

 シェヘラザードの心に迷いが生じはじめていることに気づいたのか、フェネクスが私たちに向けて冷気を吐き出してきた。けどそれは同じように吐き出された火炎によって封じられる。

 

《邪魔するなよフェネクス!! お前だって本当は楽しかったんだろ! 彼女の語る物語が! 一緒に考えた計画が上手くいって、何も思わなかったなんて言わせないぞ!!》

 

 ゴモラントの方は何を言っているかわからないけど、両腕の剣を伸ばしてこちらに突撃してきたフェネクスを、斧と棘の付いた鉄球が合体したような尻尾で殴り飛ばした。

 

「確かにそうじゃのお。一度は手放した国、次こそはと思うのは間違いではなかろう」

 

「君はっ!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

((ハハハハハ!! 無駄だ無駄だ!! 怪獣に詳しい貴様は誰よりも理解しているはずだ!! この私を殺すことは不可能だ!!))

 

 炎で溶かしても、尻尾や頭突きで砕いても再生する。GUYSの【マクスウェル・トルネード】で消滅させられてもいつの間にか復活していた。このままじゃジリ貧だ、先にラピュタを破壊しようにもフェネクスが邪魔をしてくる。

 

((!! なんだ!? 何が起こった!!))

 

《あれは……フェルグスくん?》

 

 突然ピカッと光輝やいた。光が収まるとそこにいたのはフェルグスくんのようで……何かが違う。圧っていうのかな、今まで一緒にいた時には感じることのなかった力が、離れていてもバシバシ伝わってくる。

すると、宇宙船のような謎の円盤に乗ってきた立香ちゃんが私の隣で大声を上げる。

 

「博樹さ────ん!! フェルグスが! ラピュタを破壊する────ー!!!」

 

((させるものかあああああっ!!!!))

 

《そうか!!》

 

 奴を完全に消し去る方法、思いついたぞ!!! ラピュタを壊させまいとフェルグスくんへと向かっていったフェネクスのことをストロング・ゴモラントの能力である重力によって地面へと叩きつける。

 

((ゴガァッ!! これは、毒!? まさか武則天を仕損じていたのか!! シェヘラザード!!!))

 

《ああそうか。死なないてことは一生毒の苦痛を浴び続けるってことになるのか。じゃあ、もっともっと苦痛に溺れろ!!》

 

 叩きつけた先が偶然だったのか、あっちが狙ってくれたのかわからないけど毒の苦痛を叫ぶ。逃げようとするフェネクスに更なる重力を掛け、逃げられないように()()()()()してしまうほど強く地面にめり込ませる。

 

「真の虹霓をご覧にいれよう。【極・虹霓剣(カレドヴールフ・カラドボルグ)】」

 

 フェルグスくんを中心に螺旋の魔力が広がり、収縮していく。ドリルのような螺旋の回転によってラピュタは崩壊を始め、大地と繋がっていたフェネクスの身体も崩壊を始める。螺旋に身体を引き裂かれ、終わることのない毒の痛みに悶えながらもまだ、フェネクスは諦めようとしない。

 

((まだ!! まだだ!! この宇宙人の底なしの再生能力なら私は何度でも甦る!! ラピュタが崩れようと私が都市部を襲撃するだけで!!))

 

《させないよ》

 

「……()()。あとは任せた」

 

 強く頷く。一度解放させた宝具が止まることはないため、フェルグスくんとシェヘラザードのことを掴み肩に乗せると私はラピュタ全体が見渡せる位置まで翼をはためかせ飛んでいく。

 

グゥゥゥ、グガアアアアアアアッッッ!!! 

 

((ま、まさか!! ガッ、や、やめ!? た、たすっ!?))

 

 四方八方。ストロング・ゴモラントの力を完全解放させネズミ1匹だって逃げ場所を与えないように重力を押し当て、粉々になったラピュタとフェネクスのことを一つに纏め、圧縮し続ける。

 

《超極小のブラックホールだ。消えてなくなれフェネクス》

 

 そうして生まれたブラックホールに吸い込まれ、フェネクスは残骸すら残らず消えてなくなった。このまま肥大してしまう心配もあったけどそこは怪獣の謎パワーなのか、消えろと念じてみたら簡単にブラックホールは消滅し辺り影響を与えることはなかった。

 

「は、ははははは!! どうだシェヘラザード!! こんな理解不能なことも起きる世界だ!! 一度の結末など塗り替えてもバチはあたらんだろ!!」

 

「……フフフ、それは……そうなのかも知れませんね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベリアル融合獣 ストロング・ゴモラント
 ゴモラとタイラントの怪獣カプセルを使用することで変身するベリアル融合獣。個人的にはデザインが1番かっこいいと思ってます。

 ゲーム限定融合獣たちを出したいという思惑があり、ラピュタの完全消滅もかねての採用。最後のブラックホール生成は特撮系あるあるのなぞパワー作用なので地上や地球へのダメージは一つもありません。

 必殺技は口から火炎を吐き出す『ハイパーデスファイヤー』とバラバの武器が合体した尻尾による『バラバラバテール』そして重力を自在に操る『グラビトロプレッシャー』

グローザ星系人 永怨のフェネクス
 不死である自分を恨んでいるフェネクス命名。元のグローザ星系人はベリアル因子の影響を受けても暴走せずに制御できていたという強者だったのだが、アガルタにつくまでで力を使い果たしたためにフェネクスに乗っ取られてしまった。乗っ取られる前だったらストロング・ゴモラント相手でも善戦、もしくは勝利していたかもしれない。



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エピローグ

感想、評価お待ちしてます。
エピローグというより次章予告的な……


 

今宵の物語は満足いただけたでしょうか? 

 

空想からの侵略は闇の中へと消え

 

哀れな女の野望は砕かれた

 

ーーーー今宵はここまで

 

 そうですね、これで終わってしまってはつまらない

 

この物語は、今尚続いてる物語ですものね

 

では、次の頁のお話を少ししましょうか

 

それは夢想からの復讐

 

迷いこむは異聞の地、こことは異なる歴史を歩みし剣の世界 

 

復讐の怨念は虹と共に嵐を呼び全てを奪い去る災厄を齎す荒神を呼ぶ

 

頼る大人はなく、少女は幾許か早い邂逅をする

 

はたして、あの少年は誰なのでしょうか?

 

ーーーー今宵はここまで。続きはまた何処かで

 

 

 

 


 

 

「はああああ!!レッキングバーストオオオオオオッ!!!」

 

 通ろうとしただけで並の怪獣では爆散してしまう別宇宙への扉。父さんの気配は感じるし、なんならこの壁だって絶対父さんが作ったものだ。

 

 どうすればいいのかわからないでいると暴走する怪獣たちがこちらに向かってきたから迎え撃ったんだけど……。

 

「レム、何かわかった?」

 

『解析結果として、やはりあの穴を通るには衝撃をも超える力が必要です』

 

「う〜ん。マグニフィセントやロイヤルメガマスターならどうにかならないかな?」

 

『可能でしょうが、穴を通るのに全エネルギーを消費しウルトラマンジード変身は解除されることが想定されます。穴の先はまだ宇宙空間でしょうし、何より先の脅威が計れていません』

 

「そうだよね……」

 

「どうするのさリク。わざわざウルトラの父に僕が行きます!って言ったのに」

 

「わかってるよ!!」

 

 この穴の先へ行かなければならないことは分かってるんだけど……。ジードになる前だと宇宙空間で息できないんだよな……僕。ていううか人間の身体だと宇宙に耐えられないってレムに言われたしな……。

 

「は〜〜」

 

『そういえば。リクが読んでいるその本ですが』

 

「ああ"巌流島の戦い"?それがどうかしたのレム?」

 

『宮本武蔵、リクの地球ではその人物は女性として後世まで語り継がれていますが、別の地球では男性であることが殆どのようです』

 

「「ええっ!そうなの!!」」

 

 この先に行く地球では英雄が関係するって思ったから読み始めた本だったけど……武蔵が別の地球だと男性なのか……そうなのか……。え、じゃあ性別が別の人たちってもしかして他にもいたりするの!?アーサー王が本当は女性だったりとか、織田信長が女性ですみたいな、そんな場所があるかも知れないのか……。

 

『並行宇宙。並行世界、可能性は無限ですのでもしかしたら女性の朝倉リクも何処かにはいるかも知れないということです』

 

「へっ!?いやだよそんなの!!じゃあベリアルが母さんなのかも知れないんだろ!!な、なんかいやだよそれ!!」

 

「ぷぷぷ、母さん!って言って戦うんだねリク」

 

「ぺーーーガーーーーーー!!!」

 

 

 

 




アガルタありがとうございました。
怪獣戦とか採用怪獣たちとか色々早期に終わっていたのにそこに辿り着くまでが長かった……。
次回は英霊剣豪!流石にレムレムした下総に博樹さんはいけないので……

いつになるかはわからないので気長にお待ちください!!


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