9つの道はいつか重なって (まーけたー)
しおりを挟む

~Journey though the Lovelive!~
第1話『Ride the μ'sic』


(目を開けると…深く暗い闇の中にいた)

 

(静かで寒くて切なくて寂しくて)

 

(辛くて哀しい気持ちになる)

 

(そんな闇に…いつしか包まれていた)

 

(もがいてもあがいても…どうにもならない闇)

 

(諦めて目を閉じようとすると…どこからか一筋の光が射してきた)

 

(その光は…優しくて暖かくて)

 

(楽しくて騒がしくて笑ってしまいそうで)

 

(でも、どこか危なっかしくて)

 

(こっちが見守ってあげたくなるような…)

 

(むしろ、こっちが包みたくなるような…)

 

(すると…光の中から歌が聞こえてきた)

 

(聞き覚えのある歌)

 

(いつも聞いてた歌声)

 

(いつも見守っていた光)

 

(やがて…光の中から声が聞こえてきた)

 

『また会おう、呼んでくれるかい?』

 

(呼ぶ…何度だって呼ぶよ)

 

(だから、時は巻き戻さない)

 

(『今が最高』だから)

 

(そう、このままで…)

 

(いつの間にか闇はなくなり、光だけに包まれていた)

 

(歌声を聞きながら、光の中でゆっくりと目を閉じた)

 

(目を閉じると…歌声とは別の声が聞こえてくる)

 

(…誰かが呼んでる?)

 

亜里沙「…ねえ、起きて!雪穂ってば!」ユサユサ

 

雪穂「…ん」パチリ

 

亜里沙「雪穂!」

 

雪穂「…あれ、亜里沙?」

 

亜里沙「良かった…!」ギュッ

 

雪穂「ちょっ、ちょっと!?」

 

雪穂「急に抱き締めてこないでよ、恥ずかしいから…///」

 

亜里沙「あ、うん…ごめん」パッ

 

雪穂「もう…ん?」キョロキョロ

 

雪穂「…これ、一体どうなってるの?」

 

雪穂(私達の周りにある建物は…全部、崩れ落ちていた)

 

雪穂(どんなに辺りを見回しても、壊れている建物ばかりで…私達以外に人がいる様子はなかった)

 

雪穂「というか…ここどこ?」

 

亜里沙「それが…私も気がついたら、ここで倒れてて」

 

雪穂「…そっか、じゃあとりあえず一緒に歩いてみようか?」

 

雪穂「もしかしたら、他に人がいるかもしれないし…」

 

亜里沙「…うん」

 

雪穂(それから私達は…手を繋いで歩いていた)

 

雪穂(やがて…私達はある場所に辿り着く)

 

亜里沙「あれって…!?」ダッ

 

雪穂(それを見た途端、亜里沙は私の手を放して走り出した)

 

雪穂「…!」ダッ

 

雪穂(私も嫌な予感がして…後から走り出した)

 

雪穂(どうか気のせいでありますように…そう願わずにはいられなかった)

 

雪穂(でも…その不安は当たっていた)

 

亜里沙「そんな…!」

 

雪穂「オトノキが…」

 

雪穂(私達が入学するはずだった音ノ木坂学院…通称『オトノキ』の校舎も、他の建物と同じように崩れ落ちていた)

 

雪穂「…お姉ちゃん」ボソッ

 

雪穂(お姉ちゃん達が守ってくれたオトノキが…まさかこんな風になってしまうなんて)

 

亜里沙「雪穂…これ、夢だよね?」

 

雪穂(それなら試してみようと…私は思いきって自分の頬をつねってみた)

 

雪穂「…ふん!」ギュウ

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂「痛っ!?」

 

亜里沙「大丈夫!?…急にどうしたの?」アセアセ

 

雪穂「いや…夢かどうか、確かめてみようかなと思って」

 

雪穂「でも…夢じゃなかったみたい」

 

亜里沙「雪穂…」

 

雪穂「…とりあえず私達の家にも行ってみようか?」

 

亜里沙「…うん」

 

雪穂(私達が壊れた学校の門から離れようとすると…校庭の方から大きな爆発音が聞こえてきた)

 

雪穂「!?」

 

亜里沙「今のは!?」

 

雪穂「…分からない」

 

亜里沙「私、行ってみる!」

 

雪穂「ま…待って!危ないよ?」

 

亜里沙「もしかしたら…誰かいるかもしれない!」ダッ

 

雪穂(亜里沙は私の手を離れ、校庭へと走って行く)

 

雪穂「亜里沙!」

 

雪穂(私は亜里沙を追った)

 

雪穂(すると…亜里沙は突然、立ち止まった)

 

亜里沙「…」ハァハァ

 

雪穂(立ち尽くす亜里沙に私は声をかける)

 

雪穂「ちょっと亜里沙、ここは危ないから…」

 

亜里沙「お姉ちゃん…!」

 

雪穂「…えっ?」

 

雪穂(私達は衝撃の光景を目の当たりにした)

 

雪穂「…!?」

 

雪穂(そこには倒れているお姉ちゃん達μ'sの九人がいた)

 

雪穂(私はお姉ちゃんのもとへ走り出し、起こそうとした)

 

雪穂「ちょっと…お姉ちゃん!」ユサユサ

 

穂乃果「…」

 

雪穂「返事してよ…お姉ちゃん!」

 

雪穂(私は…今のこの光景を、信じたくなかった)

 

雪穂(そんな私の中で、何かが一気に込み上がってきて…)

 

雪穂「お姉ちゃん…」

 

雪穂(私は…いつの間にか涙を流していた)

 

雪穂(起きないのは私のお姉ちゃんだけじゃなかった)

 

亜里沙「お姉ちゃん、目を覚ましてよ…」グスッ

 

雪穂(起きない絵里さんを見て涙を流す亜里沙に…私は声をかける事が出来なかった)

 

雪穂(そんな時…近くの方から光が射し込んだ)

 

亜里沙「んっ…」

 

雪穂「何…?」

 

雪穂(光の中から近づいてくる何かが見えた私は…その何かを確認しようと、目を細めながら光を見た)

 

雪穂「あれは…」

 

亜里沙「人?」

 

雪穂(やがて、その光の中から出てきた人影は…)

 

?「…」

 

亜里沙「…あなたは?」

 

雪穂(その人物を初めて見たはずの私は、なぜかとある名前を呟いていた…)

 

雪穂「ディケイド…!」

 

亜里沙「…ディケイド?」

 

ディケイド「…」

 

雪穂(私の意識は突然、そこで途切れてしまった…)

 

 

 

 

 

雪穂「うわっ!」ガバッ

 

雪穂「えっ…夢?」ハァハァ

 

イッテキマース!

 

雪穂(私が起きてからすぐ…お姉ちゃんの声が聞こえてきた)

 

雪穂「!」ガラッ

 

雪穂(私はすぐに部屋の窓を開けた…でも、お姉ちゃんの姿はもう見えなかった)

 

雪穂「…行っちゃった」

 

雪穂(私のお姉ちゃん…高坂穂乃果はオトノキのスクールアイドルグループ『μ's』の発起人だ)

 

雪穂(家ではだらしないけど…『μ's』の活動を始めてからはオトノキが廃校にならないよう、ずっと頑張っていた)

 

雪穂(スクールアイドルの全国大会である『ラブライブ!』に優勝した『μ's』は…3月31日と4月1日にライブをすることになった)

 

雪穂(そのライブに向けて…お姉ちゃんは早朝から夕方までずっとμ'sの九人で練習している)

 

雪穂(そして来月からは…私もオトノキの生徒になる)

 

雪穂(最初はオトノキが廃校になってしまうならと…スクールアイドル『A-RISE』がいるUTXに行くことを考えていた)

 

雪穂(でも…お姉ちゃん達の頑張りを見て)

 

雪穂(オトノキがなくならないことを知って…)

 

雪穂(『μ's』の輝きを目の当たりにして…)

 

雪穂(私はオトノキに行くことに決めた)

 

雪穂(そして…お姉ちゃん達に負けないくらい、楽しいスクールアイドルを目指す事を親友の亜里沙と一緒に誓った)

 

雪穂(私達も頑張らなきゃ…という時にこんな夢を見てしまって、私は少し目覚めが悪かった)

 

雪穂(あの夢は一体、何だったんだろう…?)

 

雪穂(街やお姉ちゃん達があんな風になっていたこと…)

 

雪穂(頬をつねった時、痛かったこと…)

 

雪穂(初めて見たはずの『ディケイド』の名前を私が知っていたこと…)

 

雪穂(考えれば考えるほど…意味が分からない)

 

雪穂「…」チラッ

 

雪穂(私がふと目覚まし時計を見ると…いつもなら家を出ようと準備している時間になっていた)

 

雪穂「えっ…もうこんな時間!?」

 

雪穂(私は急いで制服に着替えてから、朝ご飯を食べて…家を出た)

 

雪穂「行ってきまーす!」ダッ

 

雪穂(それから中学校までの通学路を走っていると…亜里沙の姿が見えた)

 

雪穂「亜里沙!」

 

亜里沙「…?」クルッ

 

雪穂(私は亜里沙の横に並び、いつものように接した)

 

雪穂(さっきの夢は忘れよう…私はそう思っていた)

 

亜里沙「雪穂…おはよう」

 

雪穂「おはよう…ってどうしたの?」

 

亜里沙「う、ううん…何でもないよ!」アセアセ

 

雪穂「だって浮かない顔してるから…分かった、もしかして宿題してないとか?」

 

亜里沙「それは大丈夫、ちゃんと全部やったから!」

 

雪穂「ホントかなぁ…だったら、あまり寝てないとか?」

 

亜里沙「昨日は十時に寝たよ」

 

雪穂「早っ!じゃあ、何だろう…?」

 

雪穂(私が歩きながら考えていると、亜里沙は突然立ち止まった)

 

亜里沙「…」

 

雪穂「…亜里沙?」

 

亜里沙「雪穂…『ディケイド』って何?」

 

雪穂「!」

 

雪穂(私は驚いていた)

 

雪穂(まさか私が夢で見た『ディケイド』のことを亜里沙が聞いてくるなんて…)

 

亜里沙「私、夢で見たの…」

 

雪穂「…夢?」

 

亜里沙「雪穂と一緒にいたら、お姉ちゃんやμ'sの皆が倒れてて…どんなに声をかけても起きてくれなくて」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「その後に誰かが来て…雪穂が『ディケイド』って」

 

雪穂「…!」

 

亜里沙「私、そこで目が覚めちゃって…」

 

雪穂「…亜里沙」

 

亜里沙「夢で良かったって思ったけど、夢のような気がしなくて…」グスッ

 

雪穂(亜里沙も全く同じ夢を見ていたなんて…でも、それよりも)

 

雪穂「…亜里沙」ギュッ

 

雪穂(私は…泣いている亜里沙を優しく抱き締めた)

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂「大丈夫、私も同じ夢を見たから」

 

亜里沙「えっ…雪穂も?」

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「じゃあ『ディケイド』って…」

 

雪穂「それが…私も何でそんなことを言ったのか分からなくて」

 

亜里沙「…そっか」

 

雪穂「でも、アレは夢だから…気にすることなんてないよ」

 

雪穂「お姉ちゃん達も…きっと大丈夫だと思うし」

 

亜里沙「うん…」ゴシゴシ

 

雪穂「じゃあ…行こっか」

 

亜里沙「…うん!」

 

雪穂(私が亜里沙と手を繋いで先を行こうとしたその時…奇抜な格好をした黒いサングラスの男性が目の前に現れた)

 

?「…」

 

雪穂「…?」

 

雪穂(男性は蜘蛛のような化け物へと姿を変えた)

 

雪穂「!?」

 

ズ・グムン・バ「…」

 

 

 

 

 

亜里沙「何…!?」

 

グムン「…ゴパシザ(終わりだ)」ダッ

 

雪穂(蜘蛛の化け物は私達に向かって走ってきた)

 

雪穂(このままだと襲われる…そう思った私は握っていた亜里沙の手を強く引いた)

 

雪穂「逃げよう!」ダッ

 

亜里沙「雪穂…うん!」ダッ

 

雪穂(私の家がある方へ…私達は走り出した)

 

雪穂(それでも…化け物は私達を追いかけてくる)

 

亜里沙「このままじゃ…追いつかれちゃう!」

 

雪穂「大丈夫、とにかく穂むらまで逃げれば…!」

 

グムン「ビゲソ(消えろ)…」

 

雪穂(化け物が何かを言いながら、私達に襲いかかろうとしてきたその時…)

 

?「ふんっ!」ガッ!

 

雪穂(クワガタ虫のような赤い何かが現れ…私達を守るように、怪人を攻撃した)

 

グムン「グッ!?」

 

雪穂「!?」

 

?「ちょっとアンタ…にこの大事な知り合いに何しようとしてんのよ!」ゼェゼェ

 

雪穂「えっ…」

 

亜里沙「にこ…さん?」

 

グムン「ク、クウガ!?」

 

?「そう…これ、クウガって言うのね?」

 

雪穂(それは明らかに聞き覚えのある声だった)

 

クウガ「ちょっとアンタ達、早く逃げなさい!」

 

雪穂「もしかして…にこさんなんですか?」

 

クウガ「にこは今、説明してる暇ないの!いいから逃げなさい!」

 

雪穂「は…はい、行こう亜里沙!」ダッ

 

亜里沙「う…うん!」ダッ

 

雪穂(私は亜里沙と一緒に…その場から離れた)

 

クウガ「全く世話のかかる子達なんだから…あと、そこのアンタ!」ビシッ

 

グムン「…?」

 

クウガ「この大銀河宇宙ナンバーワンアイドルが来たからには…これ以上、好き勝手な事はさせないんだから!」

 

グムン「クウガ…ガサダバ(新たな) ディケイド() ゾボザ(どこだ)?」

 

クウガ「はぁ?何言ってんのアンタ?」

 

グムン「…」

 

クウガ「って…何か言いなさいよ!?」

 

クウガ「全く、しょーがないわねー…」ハァ

 

クウガ「こうなったら…にこにーのとっておきを見せてあげるんだから、覚悟しなさいよね!」

 

クウガ「超変身!」

 

 

 

雪穂(その頃、逃げた私達の目の前には大きな蜘蛛の化け物が道を塞いでいた)

 

亜里沙「何、これ…?」

 

ツチグモ「キシャァァァ!」

 

雪穂「もうすぐ穂むらだったんだけど、こうなったら一旦引き返して…!」クルッ

 

雪穂(私が振り向くと、黒いバッタのような化け物がこっちに向かっていた)

 

ローカストアンデッド「…」

 

雪穂「そんな…」

 

亜里沙「雪穂…!」

 

雪穂(どうすればここから逃げられるのか…私が考えていたその時だった)

 

『Thunder』

 

?「はっ!」バチバチッ!

 

ローカストU「!?」

 

ツチグモ「!?」

 

雪穂(化け物達がいる場所に突然、雷が落ちた)

 

亜里沙「えっ、今の声って…?」

 

雪穂(すると私達の目の前に…青い何かと紫色の鬼のような何かが現れた)

 

雪穂「…?」

 

?「ふぅ、間に合った…」

 

?「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…ケガはない?」クルッ

 

雪穂(紫色の鬼の方が…私達に声をかけてきた)

 

雪穂(その声はさっきのにこさんと同じく…どこか聞き覚えのある声だった)

 

雪穂「希さん…?」

 

?「…うん」フフッ

 

雪穂「どうして希さんが…?」

 

?「うーん…今のウチは希っていうより『響鬼』かな?」

 

雪穂「…?」

 

響鬼「まあ、とにかく…ここはウチらに任せて早く行って?」ポン

 

雪穂(そう言って…希さんは私の肩を優しく叩いてくれた)

 

雪穂「わ、分かりました…ありがとうございます!」ダッ

 

亜里沙「ありがとう…希さん、海未さん!」ダッ

 

雪穂(私達はバッタの化け物が苦しんでいる間に…急いでその道を走った)

 

?「…」

 

響鬼「だって、海未ちゃん」

 

?「…なぜ、亜里沙は私だと分かったのでしょうか?」

 

響鬼「うーん…その凛々しい立ち姿やない?」

 

?「分かるものなのですか…?」

 

響鬼「大好きな人には分かるんやないんかな?」

 

?「だ…大好き!?」

 

響鬼「うん」

 

?「で、ですが…今の私は何より『剣(ブレイド)』としてこの魑魅魍魎と戦う運命が!」アセアセ

 

響鬼「はいはい、分かってるから」フフッ

 

響鬼「さて…穂乃果ちゃんのご両親も心配やし、早くあの大きな蜘蛛さんを何とかしないと」

 

ブレイド「では…あちらの怪物は私が」

 

響鬼「頼んだよ…じゃあ、行こっか!」ダッ

 

ブレイド「はい!」ダッ

 

『Slash』

 

 

 

雪穂(私達は公園にやってきた)

 

雪穂「良かった…ここには誰もいないみたいだね」

 

?「いるよ」

 

雪穂「…えっ?」

 

雪穂(声のする方を見ると、そこには確かに私がいた)

 

亜里沙「雪穂が…二人!?」

 

雪穂「…あなたは?」

 

?「私だよ、いや…今から私になるのかな?」

 

雪穂(そう言ってもう一人の私は赤と青…二色の蜘蛛のような姿をした化け物になり、私に近づいてくる)

 

雪穂「…!」

 

アラクネアワーム「あなたが消えれば、私は私になれる…」

 

亜里沙「逃げよう、雪穂…」クルッ

 

雪穂(亜里沙が振り向くと、そこには首に赤いマフラーを巻いた豹の化け物が両手で何かのサインをしながら私達に近づいていた)

 

ジャガーロード「…」

 

亜里沙「…!」

 

雪穂(今度こそ逃げられない…私達はそう思った)

 

亜里沙「助けて、お姉ちゃん…」

 

『Cast Off』

 

雪穂(その直後、何かの破片が辺り一面に散らばり…化け物達にぶつかった)

 

ジャガーL「!」

 

?「えいっ!」ガッ!

 

アラクネアW「!?」

 

雪穂(それからすぐに金色の何かが現れ…攻撃された蜘蛛の化け物は豹の化け物のもとまで吹き飛んだ)

 

『Change Beetle』

 

雪穂(そして…カブト虫のような姿の赤い何かが私達の前に現れた)

 

アラクネアW「まさか…カブト!?」

 

亜里沙「カブト…?」

 

カブト「遅くなってごめんなさい…亜里沙」

 

亜里沙「えっ、もしかしてその声…お姉ちゃん?」

 

カブト「ええ」フフッ

 

亜里沙「お姉ちゃん…!」

 

雪穂(私がそれを見ていると…いつの間にか金色の何かが、私の隣に立ってこう行った)

 

?「いや~…さすが絵里ちゃん!」

 

雪穂「!?」

 

?「『アギト』の穂乃果も頑張らないといけないね!」

 

雪穂「もしかして…お姉ちゃん?」

 

アギト「あれ、雪穂!?」

 

アギト「良かった~…無事だったんだね!」ガシッ

 

雪穂(お姉ちゃんは私を抱き締めるが…今のお姉ちゃんの力は強過ぎた)

 

雪穂「ちょっ…痛い!」

 

アギト「おっと…ごめん、つい嬉しくて!」エヘヘ

 

雪穂「もう…」ハァ

 

カブト「穂乃果、今のうちに早く!」

 

アギト「あっ、うん…ありがとう絵里ちゃん!」

 

アギト「それじゃ…二人とも、私と一緒に行こう!」

 

雪穂(そう言ってお姉ちゃんは私達を連れて、公園から離れようとする)

 

亜里沙「穂乃果さん…お姉ちゃんは?」

 

アギト「大丈夫、絵里ちゃんは強いから!」

 

カブト「心配しないで亜里沙…私は絶対に負けないから」

 

亜里沙「…お姉ちゃん」

 

カブト「穂乃果、お願い!」

 

アギト「うん、行こう!」ダッ

 

雪穂(お姉ちゃんは私達を連れて、公園を後にした…)

 

ジャガーL「…」ダッ

 

カブト「逃がさないわ!」

 

アラクネアW「!」ヒュン!

 

カブト「うっ…」ガキン!

 

アラクネアW「カブト…いえ、絵里さんにはここで消えてもらいます」

 

カブト「そう…じゃあ、この速さにはついてこられるかしら?」フフッ

 

アラクネアW「…まさか!」

 

カブト「クロックアップ…!」

 

『Clock Up』

 

 

 

雪穂(私達とお姉ちゃんは…神田明神にいた)

 

アギト「いや~…それにしても雪穂と亜里沙ちゃんが見つかって良かったよ!」アハハ

 

雪穂「それどころじゃないよ、お姉ちゃん!」

 

アギト「うっ…」

 

雪穂「あの化け物達は何!?」

 

アギト「そ、それは…」

 

雪穂「その姿は何!?」

 

アギト「ちょっ、落ち着いてよ雪穂…」アセアセ

 

雪穂「落ち着ける訳ないでしょ!?」

 

アギト「どうどう…」

 

雪穂「馬じゃないから!」

 

アギト「えっと…ごめん、時間があんまりないから急いで説明するね?」

 

雪穂「全く…」ハァ

 

アギト「実は今、私達の世界は…他の世界と一緒になりかけてるの」

 

雪穂「…はい?」

 

アギト「今は私達がこんな感じになって食い止めてるから大丈夫なんだけど…」

 

雪穂「いや…こんな感じって」

 

アギト「とにかく聞いて…このままだと、私達の世界はなくなってしまうかもしれないの」

 

雪穂「いや、そんな話信じられるわけないじゃん…」

 

アギト「でも…雪穂も化け物を見たでしょ?」

 

雪穂「それは…そう、だけど」

 

アギト「だから…雪穂達にお願いがあるの」

 

雪穂「ちょっと…まず先に人の話を聞いてよ!」

 

アギト「ごめん…今はとにかく、時間がないの」

 

亜里沙「…お願いって?」

 

アギト「うん…実は私達が戦っている間、雪穂達には『ツカサ』っていう子と一緒に他の世界を守りに行ってほしいの」

 

雪穂「そんなこと言われても…」

 

アギト「これは雪穂達にしか出来ないことなんだ…だから、頼むね」

 

雪穂「ちょっと…お姉ちゃん!」

 

アギト「さて、と…」クルッ

 

雪穂(お姉ちゃんが後ろを振り返ると…そこにはさっきの豹の化け物がいた)

 

ジャガーL「AGITΩ…」

 

雪穂「!」

 

雪穂(豹の怪人は何かのサインをしながら、ゆっくりこちらに近づいてくる)

 

亜里沙「もしかして、お姉ちゃんは…!」

 

アギト「絵里ちゃんなら大丈夫…だから、信じてあげて」

 

亜里沙「穂乃果さん…」

 

アギト「早く逃げて!」

 

亜里沙「…はい、行こう雪穂!」ダッ

 

雪穂(そう言って亜里沙は私の手を無理やり引いて…その場から離れていく)

 

雪穂「亜里沙!?」

 

亜里沙「私もお姉ちゃん達を信じる、だから雪穂もお姉ちゃん達を信じてあげて!」

 

雪穂「…亜里沙」

 

アギト「雪穂、亜里沙ちゃん…お願いね」

 

ジャガーL「…」ダッ

 

アギト「はぁっ…!」シャキン

 

 

 

雪穂(いつしか私達は…オトノキまで逃げてきた)

 

雪穂「も…もう限界」ゼェゼェ

 

亜里沙「わ、私も…」ハァハァ

 

雪穂「…学校、無事なんだね」

 

亜里沙「うん…良かった」

 

雪穂(すると…校庭の方から大きな爆発音が聞こえてきた)

 

雪穂「!?」

 

亜里沙「これって夢で見た時と同じ…!」

 

雪穂「…行ってみよう」

 

亜里沙「雪穂…」

 

雪穂「信じたくはないけど…もしかしたら、お姉ちゃんの言っていたこととかあの夢の意味が分かるかもしれない」

 

亜里沙「…それなら、私も一緒に行く!」

 

雪穂「…良いの?」

 

亜里沙「うん!」

 

雪穂「…ありがとう」

 

雪穂(私達は手を繋いで…爆発音のする方へと歩いて行った)

 

 

 

 

 

雪穂(私達が校庭に向かうと…そこには一人の黒髪の少年が、目を閉じたまま立っていた)

 

少年「…」

 

亜里沙「雪穂!あの人…」

 

雪穂「待って亜里沙…一旦隠れよう」ササッ

 

雪穂(私達は少年に気づかれないよう、物陰に隠れた)

 

雪穂(少年の身長が私達と同じくらいだということを考えると…もしかしたら少年は、私達と同じ年齢ぐらいなのかもしれない)

 

雪穂「…さっきの化け物の仲間じゃないと良いんだけど」

 

亜里沙「うん…」

 

雪穂「…ん?」

 

雪穂(首から濃いピンク色のカメラをぶら下げていた少年は…腰に見覚えのあるベルトを巻いていた)

 

亜里沙「雪穂、あれって…」

 

雪穂「うん、夢で見たものと同じだ…」

 

少年「…」パチリ

 

雪穂(目を開けた少年はズボンのポケットから一枚のカードを取り出した)

 

少年「!」

 

雪穂(その直後…少年の近くにオーロラのようなものが現れた)

 

ゲルニュート「…」

 

雪穂(そこから出てきたのは…背中に巨大な手裏剣のようなものを背負った赤黒い化け物達だった)

 

亜里沙「あの子、大丈夫かな…?」ボソッ

 

雪穂(取り囲もうとする化け物達を見て…少年はようやく、口を開いた)

 

少年「…ここが『μ'sの世界』か」

 

ゲルニュート「…」バッ

 

雪穂(化け物が少年に襲いかかるが…)

 

少年「…」サッ

 

ゲルニュート「!?」

 

雪穂(少年は攻撃を難なく避け、化け物達と少し距離をとると…ベルトのバックルを開いた)

 

少年「…変身!」

 

雪穂(そう言って少年は持っていた一枚のカードを裏に返し…バックルの中に入れた)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

雪穂(バックルを閉じたその瞬間…少年の姿を光が包み込んだ)

 

ゲルニュート「!?」

 

亜里沙「ま、眩しい…」

 

雪穂「うっ…」

 

雪穂(私達は目を細めながら光を見つめた)

 

雪穂(やがて、その光の中から出てきたのは…)

 

ディケイド「…」

 

亜里沙「あっ…もしかして!」

 

雪穂「…うん、間違いない」

 

雪穂「ディケイド…!」

 

ディケイド「さて…始めるか」

 

雪穂(そう言ってディケイドは左腰から何かを取り出し、そこから更に一枚のカードを手に取ってバックルに入れた)

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

雪穂(すると左腰にあった何かが剣の形をした武器に変形した)

 

ディケイド「やあっ!」ザシュッ!

 

ゲルニュート「!」

 

雪穂(ディケイドは化け物達の攻撃をかわしながら、次々と斬りつけていく)

 

ディケイド「ふん、余裕だな…うわっ!?」ゴン!

 

雪穂(調子に乗るディケイドに、一体の化け物が大きな手裏剣を投げてぶつけてきた)

 

ディケイド「痛っ…危ないな!」

 

雪穂(ディケイドはまた一枚、カードを取り出し…バックルに入れた)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

雪穂(次の瞬間、剣の形をしていた武器が…銃のような形をした武器に変形した)

 

亜里沙「また変わった…」

 

ディケイド「はっ!」ガガッ

 

雪穂(ディケイドはあちこちからやって来る化け物達を撃ち抜いていく)

 

雪穂(それでも…化け物達の数が減る様子はなかった)

 

ディケイド「キリがないな…ならこれだ!」

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

雪穂(また別のカードをバックルに入れたディケイドは…)

 

亜里沙「…三人に?」

 

雪穂「増えた!?」

 

ディケイド「やぁっ!」ガガガッ!

 

ゲルニュート「…!」バタバタッ

 

雪穂(分身したディケイドは銃のような武器で化け物達をそれぞれの方向から攻撃し、確実に倒していく)

 

雪穂(やがて…化け物のほとんどを倒し、一人に戻ったディケイドは)

 

ディケイド「これでトドメだ」

 

雪穂(特殊なマークが描かれた一枚のカードを取り出し…バックルに入れた)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

雪穂(直後にディケイドが跳び上がると…ディケイドと化け物達との間に十枚のカードのようなものが現れた)

 

雪穂(跳び上がったディケイドは化け物達に向かって、右足を出しながらカードを一枚ずつ潜り抜け…)

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

ゲルニュート「!!」

 

雪穂(十枚目のカードを抜けた先にいる化け物達にキックが命中した瞬間…化け物達は爆発した)

 

雪穂「…!」

 

亜里沙「スゴい…」

 

ディケイド「…終わったな」

 

雪穂(戦いが終わり…ディケイドは少年の姿に戻った)

 

少年「…」フゥ

 

亜里沙「あ、あの!」

 

雪穂(いつの間にか亜里沙は物陰から出て、少年に声をかけていた)

 

少年「?」クルッ

 

雪穂「ちょっと亜里沙!?…あっ」

 

雪穂(亜里沙を止めようと、思わず私も物陰から飛び出してしまった)

 

少年「…」

 

雪穂「…ちょっと何してるの、亜里沙?」

 

雪穂「もしかしたら敵かもしれないのに…」

 

亜里沙「でも…あの子は化け物を倒してくれた!」

 

雪穂「それは、確かにそうだけど…」

 

カシャッ

 

雪穂「!?」

 

少年「…」

 

雪穂(少年は突然…私達に向かってカメラのシャッターを押していた)

 

雪穂「えっ…もしかして今、撮られた?」

 

少年「…『高坂雪穂』」

 

雪穂「!?」

 

少年「『絢瀬亜里沙』…」

 

雪穂(少年は私達を指差して…私達の名前を呟いていた)

 

亜里沙「なんで、私たちの名前知ってるの…?」

 

少年「…ついてこい」クルッ

 

亜里沙「あっ…待って!」ダッ

 

雪穂「えっ、ちょっと…二人とも!」ダッ

 

雪穂(オトノキを出ようとする少年に、私達は着いて行った…)

 

 

 

雪穂(オトノキを出てから少し歩くと…少年は古びた写真館へと入っていった)

 

雪穂「…『光写真館』?」

 

雪穂「うーん…?」

 

亜里沙「どうしたの、雪穂?」

 

雪穂「いや、この辺に写真館なんてあったかなって…全く見覚えがないから」

 

亜里沙「そうなの…?とにかく入ってみようよ!」

 

雪穂「…うん」

 

雪穂(私達が写真館に入ると、そこには一枚の写真を見つめて立っている少年がいた)

 

雪穂(その写真は…さっき少年が撮った私達の写真だった)

 

雪穂「あっ、その写真…」

 

亜里沙「いつの間に出来てたの?」

 

雪穂(少年は私達の質問には答えず、近くの椅子に座るとこう言った)

 

少年「…お前達と一緒に『九つの世界を救ってほしい』と誰かから言われた」

 

雪穂「えっ…?」

 

亜里沙「私たちと?」

 

少年「ああ、何者かは分からないが…」

 

少年「ヤツは『ディケイドと高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在がμ'sとこの世界を救う鍵になる』…とも言っていた」

 

雪穂「いや、そんな…いきなり言われても」

 

少年「…何か問題でもあるのか?」

 

雪穂「あるに決まってるじゃん…だって私達、昨日まで普通の中学生だったんだよ!?」

 

少年「まあ、そうだろうな…」

 

雪穂「そうだろうなって…」

 

少年「現実を受け入れたくないのは分かるが…実際にこの世界と他の世界との融合は始まっている」

 

少年「お前達も見ただろ?今までいなかったはずの怪物が現れたり、『μ's』が『仮面ライダー』と呼ばれる存在になって戦ったり…」

 

雪穂「か、仮面ライダー…?」

 

少年「ああ、オレもさっき変身できるようになったばかりだから詳しくは分からないが…」

 

少年「あの怪物達に対抗する存在であるのは確かだ」

 

雪穂「ちょっと待って…さっき変身できるようになったって、どういうこと?」

 

少年「言葉の通りだ…それ以外、よく分からないしそもそもそれ以前の記憶もない」

 

雪穂「えっと、それってつまり…」

 

少年「いわゆる…オレは記憶喪失ってヤツらしい」

 

雪穂「き、記憶喪失!?」

 

少年「そうだ、だからお前達に何を聞かれても…大した事は答えられない」

 

少年「それに…自分の名前すら覚えていないから、何者かも名乗れない」

 

雪穂「…そ、そんな」フラッ

 

雪穂(マズい…もう限界だ)

 

雪穂(起きる前から意味の分からないことの連続だったから…私は疲れてへたれ込んでしまった)

 

雪穂(ようやく会えた『ディケイド』の少年は記憶喪失だし…結局、肝心なことは何も分からないままだ)

 

雪穂「どうすればいいの…?」

 

雪穂(すると…今まで黙っていた亜里沙がこう言った)

 

亜里沙「穂乃果さんと…同じこと言ってる」

 

雪穂「えっ…?」

 

亜里沙「…」スタスタ

 

雪穂(亜里沙は…少年のもとに近づいていった)

 

雪穂「いや、確かにお姉ちゃんは他の世界を守りに行ってほしいって言ってたけど…亜里沙?」

 

雪穂(亜里沙は目の前にいる少年に向かって…こう尋ねた)

 

亜里沙「ねえ…あなたはこの世界を助けてくれるんでしょ?」

 

少年「…まあ、それがオレの記憶を取り戻す鍵だとも言われたしな」

 

雪穂(少年がそう答えると、亜里沙は何かを確信したみたいだった)

 

亜里沙「じゃあ決まりだね…あなたの名前は『ツカサ』!」

 

亜里沙「そして…『仮面ライダーディケイド』!」

 

少年「『ツカサ』…『仮面ライダーディケイド』?」

 

亜里沙「うん!あなたと私たちの目的は『μ's』や私たちの世界を助けるために、九つの世界を救うこと…」

 

亜里沙「そして、あなたの記憶が戻るようにお手伝いすること!」

 

ツカサ「…!」

 

亜里沙「だから…安心して、ツカサ!」スッ

 

雪穂(そう言って亜里沙は…少年に手を差し伸べた)

 

少年「…」

 

雪穂「な…何言ってるの亜里沙!?」

 

亜里沙「雪穂…私は『μ's』やこの世界を助けたい!」

 

亜里沙「だから…!」

 

雪穂(亜里沙の表情は真剣だった)

 

雪穂「…!」

 

雪穂(確かに…亜里沙の言う通りだ)

 

雪穂(今、起きていることがもし全て現実だとしたら…早く何とかしないといけない)

 

雪穂(だとすれば…今の私達に出来ることは一つしかない)

 

雪穂(でも…その前に私は念のために確認しようと頬を思いきりつねってみた)

 

雪穂「…えいっ!」ギュウ

 

亜里沙「雪穂!?」

 

雪穂「痛っ!…やっぱり夢じゃなかった」

 

亜里沙「…大丈夫、雪穂?」

 

雪穂「うん、大丈夫…」

 

雪穂(私は頬をおさえながら…ようやく覚悟を決めた)

 

雪穂(世界の融合が始まっているなんて、すぐには信じられない話だけど…)

 

雪穂(もし本当に、私達とこの少年が世界と『μ's』を救える鍵だと言うのなら…こうする以外にないのかもしれない)

 

雪穂(それなら、私は…)

 

雪穂「…決めたよ、亜里沙」

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂「行こう…『ツカサ』」

 

雪穂「世界を救いに」スッ 

 

ツカサ「…!」

 

亜里沙「雪穂…!」

 

雪穂(私は『ツカサ』に手を差し伸べた)

 

ツカサ「お前達…」

 

雪穂「…うん」フフッ

 

亜里沙「うん!」ニコッ

 

雪穂(ツカサは椅子から立ち上がると…)

 

ツカサ「…ああ」

 

雪穂(私達の手は取らなかったけど…その表情は何となく微笑んでいるように見えた)

 

雪穂「…今、笑った?」

 

ツカサ「はぁ?…笑ってない」

 

雪穂「笑ったよね!?」

 

ツカサ「笑ってない」

 

雪穂「亜里沙も見たよね?」

 

亜里沙「うん!」

 

雪穂「ほら!」

 

ツカサ「笑ってない!」

 

雪穂「ムキになってるから絶対そうだよ!」

 

ツカサ「ムキになってない!」

 

雪穂「というか…さっき、何で勝手に私達の写真を撮ったの?」

 

ツカサ「それは…ただ撮りたかったから撮っただけだ」

 

雪穂「何それ…とにかくちょうだいよ、その写真!」

 

ツカサ「イヤだ」サッ

 

雪穂「ちょうだいってば!」グイッ

 

ツカサ「イヤだ…ってやめろ、オレに触るな!」

 

雪穂「イヤだ!」グググ…

 

雪穂(私が何とかツカサから写真を奪おうとしていると…部屋の中にあった白い背景が突然、違うものになった)

 

雪穂「えっ…!?亜里沙、何かした?」

 

亜里沙「いや、私は何もしてないよ…?」

 

ツカサ「…一つ目の世界、か」

 

 

 

?(その頃、光写真館の前では…)

 

?「始まったわね…」フフッ

 

?(私は銃の形をした武器を取り出し、そこに一枚のカードを装填した)

 

『カメンライド…ディ・エンド!』




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ここは『クウガの世界』…『グロンギ』という怪人がゲーム感覚で人を襲っている」

「スクールアイドル『ポレポレ』って!?」

「だってニコ、クウガだもん」

「私に任せて早く行きなさい?」

「未確認…10号?」

「これは『ディケイド』だ」

「アンタなんかに何が分かるのよ!?」

「困るんですよ…『ゲゲル』の邪魔をされてはね」

「またの名を…『ディエンド』」

EPISODE.2『暗涙』
【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~にこ×クウガの世界~
第2話『暗涙』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

亜里沙「私、夢で見たの…雪穂と一緒にいたら、お姉ちゃんやμ'sの皆が倒れてて…」

アギト「私達の世界は…他の世界と一緒になりかけてるの」

アギト「雪穂達には『ツカサ』っていう子と一緒に他の世界を守りに行ってほしいの」

少年「…ここが『μ'sの世界』か」

少年「変身!」

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたはこの世界を助けてくれるんでしょ?」

亜里沙「じゃあ決まりだね…あなたの名前は『ツカサ』!」

雪穂「行こう…『ツカサ』」

雪穂「世界を救いに」

ツカサ「…一つ目の世界、か」


(パパは青空が大好きな人だった)

 

(青空を見るといつもにこにこ笑顔でこの歌を口ずさむ)

 

(『にこにーにこにーにっこにっこにー♪』)

 

(そんなパパを見て私も笑顔で一緒に歌った)

 

(パパは一緒に歌う私を見てサムズアップをしてくれた)

 

(パパの話によると…サムズアップは『古代ローマで満足、納得できる行動をした者にだけ与えられる仕草』らしい)

 

(そんなパパに…私はいつものニコニーポーズで返した)

 

(私が一番、笑顔になれるこのポーズ)

 

(パパを一番、笑顔にできるこのポーズ)

 

(パパが冒険に出て、私の前からいなくなっちゃっても…私は変わらずこのニコニーポーズをしている)

 

(そして今では、このポーズでたくさんの人を笑顔にしている)

 

(ねぇ、パパ?)

 

(私は絶対にパパからもらったこの笑顔で)

 

(世界中に…この最高の笑顔を振りまいて)

 

(世界で一番幸せなアイドルになるって…そう決めたから)

 

(それがいつかパパに届くその時まで…)

 

(私は絶対に…諦めないから)

 

(だから、見てて?)

 

(ニコの…変身)

 

 

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

 

 

雪穂(私達がツカサと会話していると…突然、写真館の中にあるスタジオの背景が突然違うものになった)

 

雪穂(背景には…秋の山道の中をパトカーが走っている様子が描かれていた)

 

雪穂(驚く私や亜里沙とは対照的に冷静だったツカサはこう呟いた)

 

ツカサ「…一つ目の世界、か」

 

雪穂「…え?」

 

亜里沙「どういうこと、ツカサ?」

 

ツカサ「さあ…オレにもまだ分からん」

 

雪穂「分かんないの!?」

 

ツカサ「なんとなくだ」

 

ツカサ「この写真館の背景が変わると外の世界も全く別のものになる…そんな気がするだけだ」

 

雪穂「えぇ…」

 

ツカサ「…何だ、その『マジかアンタ』みたいな顔は」

 

雪穂「いや…だって私達、会って間もないんだよ?」

 

雪穂「一緒に旅に出るとは確かに言ったけど、そんなこと信じられるわけないじゃん…」ハァ

 

亜里沙「私…ちょっと窓開けて確認してみる!」ガラッ

 

亜里沙「…ハラショー」

 

雪穂「亜里沙?」

 

雪穂(私は何が起きたのかと思い、亜里沙が開けた窓から外を覗くと…)

 

雪穂「…え?」

 

雪穂(そこには…私達が今まで歩いていた街とは全く違う街並みが広がっていた)

 

雪穂(そのうえ、この写真館に入るまでは朝だったはずなのに…今はいつの間にか夜になっていた)

 

ツカサ「これでオレの直感を信用してくれたか…?」フフン

 

亜里沙「ツカサ、すごい!」

 

雪穂「いやいや…ありえないってこんなの」

 

ツカサ「じゃあ、オレは寝る」スタスタ

 

雪穂「えっ、もう!?」

 

ツカサ「別に今、何か起きている訳じゃないし…休んでから動いても問題ないだろ」

 

雪穂「うっ…それはそう、だけど」

 

ツカサ「幸いか…この写真館には台所も風呂もあるし、各々が休める寝室も三部屋ある」

 

ツカサ「冷蔵庫の中には食材が十分入っていれば…クローゼットの中には洋服が豊富にある」

 

ツカサ「おまけにオレが持っていた財布の中には…お金が生活に困らないぐらいある」

 

ツカサ「まさに…至れり尽くせりだ」フフン

 

亜里沙「すごい!」

 

雪穂「いや…都合良過ぎない!?」

 

ツカサ「世界を守るんだ…これぐらいの待遇は当然だろ?」

 

雪穂「当然って…でも何かもう、これ以上ツッコむの疲れてきたかも…」ハァ

 

雪穂「本当に別の世界に来ちゃってるみたいだし…一体、何なのこの写真館?」

 

ツカサ「それじゃオレは寝る…じゃあな」スタスタ

 

バタン

 

雪穂(ツカサはそのまま部屋を出てしまった)

 

雪穂「ちょっと!?…行っちゃった」

 

亜里沙「でもそう言われると…なんだか私も眠くなってきちゃった…」フワァ

 

雪穂「うーん、確かに…今日は色んなことがあり過ぎたもんね」

 

亜里沙「それじゃ…私と一緒に寝よう?」ギュッ

 

雪穂(亜里沙はそう言って私の手を握った)

 

雪穂「…そうしよっか」フフッ

 

雪穂(ひとまず…私達は寝ることにした)

 

雪穂(これから何があるのか?)

 

雪穂(そして何をするべきなのかは…まだ分からないけど)

 

雪穂(ツカサと一緒に旅をすれば…きっと私達の世界を救えるはずだ)

 

雪穂(そう、きっと…)

 

 

 

雪穂「…ん」パチリ

 

雪穂(私が起きた頃にはもう朝になっていた)

 

雪穂「…あれ、亜里沙がいない?」キョロキョロ

 

雪穂(寝室を出た私がスタジオのある部屋に入ると…そこには亜里沙がいた)

 

亜里沙「あっ、おはよう雪穂!」

 

雪穂「おはよ…」フワァ

 

雪穂「…ん?」クンクン

 

雪穂「なんだか、いいニオイが…」

 

ツカサ「よう、起きたか」ヒョコッ

 

雪穂(そう言って台所から姿を現したのは…濃いピンクのエプロンと頭巾を着けたツカサだった)

 

雪穂「あっ…おはよう」

 

ツカサ「ほら、朝ご飯ができたぞ」

 

亜里沙「ありがとう、ツカサ!」

 

ツカサ「まあ…オレの手にかかればこんなもん朝飯前だ」フフン

 

雪穂「…ツッコまないからね?」

 

亜里沙「朝飯前って…確か朝ご飯の前のことでしょ?」

 

亜里沙「じゃあ…今だね!」

 

雪穂「いや、亜里沙…そういう意味じゃないから」

 

亜里沙「へっ…違うの?」キョトン

 

ツカサ「ほら、食べるぞ」コトッ

 

雪穂(私達は料理が並べられたテーブルを囲むように置かれた三つの椅子にそれぞれ座った)

 

ツカサ「いただきます」

 

亜里沙「いただきます!」

 

雪穂「い…いただきます」

 

ツカサ「…先に言っとくが、毒は入ってないぞ?」

 

雪穂「いや…そんなこと言われたら、むしろ食べづらいんだけど」

 

ツカサ「いいから冷める前に早く食べろ…このカレーライスは、オリエンタルな味と香りが決め手だからな」

 

亜里沙「カレー…お姉ちゃんと一緒に食べたことある!」

 

雪穂「ニオイで分かってはいたけど、朝からカレーかぁ…」

 

ツカサ「文句言うな…オレの作るカレーは一味違うぞ?」

 

ツカサ「何せオレは『2000のレシピを持つ男』だからな」

 

雪穂「またまた…記憶喪失の人がよく言うよ」

 

亜里沙「ハラショー!」ガタッ

 

雪穂(すると…ツカサが作ったカレーを一口食べた亜里沙が突然、立ち上がった)

 

雪穂「うわぁ!?ビックリした…どうしたの亜里沙?」

 

亜里沙「美味しい…」ジーン

 

雪穂「えっ…な、泣くほど?」

 

雪穂「いやいや、そんなわけ…」パクッ

 

雪穂「…ウソ」

 

雪穂「お母さんが作ってくれるカレーより美味しい…」ホロリ

 

ツカサ「当然だ…オレを誰だと思ってるんだ?」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「…いや、確かにそうだが」

 

雪穂(それから私達は…ツカサが作ったカレーを完食した)

 

亜里沙「ごちそうさまでした!」

 

雪穂「ご…ごちそうさまでした」

 

ツカサ「おそまつさまでした」

 

亜里沙「私、洗い物やっておくね!」ガタッ

 

雪穂「…ねえ、ツカサ」

 

ツカサ「何だ」

 

雪穂「私達、別の世界に来たは良いけど…具体的にこれから何をすれば良いの?」

 

ツカサ「…これを見ればだいたいわかる」サッ

 

雪穂(そう言ってツカサは、新聞紙を私に渡してきた)

 

雪穂「何なに『未確認生命体4号現る!』…ってこれ!?」

 

雪穂(その新聞記事の写真には…見覚えのある姿が写っていた)

 

雪穂「赤いクワガタ虫の…これって、まさかにこさん?」

 

ツカサ「ああ…ここは『クウガの世界』だ」

 

雪穂「…『クウガ』?」

 

ツカサ「その『未確認生命体4号』とやらの本当の名前だ」

 

ツカサ「それと…その一面の下の広告、よく見てみろ」

 

雪穂「どれどれ…って!?」

 

『スクールアイドル全国大会優勝候補・ポレポレの新曲は本日発表!地区予選はいよいよ明日開催!』

 

雪穂「に、にこさん!?」

 

雪穂(広告の写真には二人の女性が写されていて…そのうちの一人はにこさんだった)

 

ツカサ「そして、このテレビのニュースだ…よっと」ポチッ

 

雪穂(ツカサがリモコンでテレビの電源を入れると…そこにはあるニュースが流れていた)

 

雪穂「『未確認生命体2号と8号が戦闘中』…どういうこと?」

 

ツカサ「この世界では…『グロンギ』という怪人がゲーム感覚で人を襲っている」

 

ツカサ「それを阻止するために『クウガ』は『グロンギ』と戦っているんだ…」

 

ツカサ「だが『グロンギ』や『クウガ』の存在が分からないこの世界の警察は…双方をまとめて『未確認生命体』と呼んだ」

 

ツカサ「分かりやすく説明すると…こんな感じか」

 

雪穂「…じゃあ、この新聞に出てるにこさんは?スクールアイドル『ポレポレ』って!?」

 

ツカサ「彼女は…お前達の知っている『矢澤にこ』とは少し違う存在だ」

 

ツカサ「スクールアイドル『μ's』のいない世界だからな…誰がどうなっていてもおかしくはないだろ」

 

ツカサ「例え別のスクールアイドルになっていたとしても、仮面ライダーとして戦っていたとしても…な」

 

雪穂「そっか…」チラッ

 

雪穂(私はテレビに映し出された未確認生命体2号の姿を見て…何かが違うと感じた)

 

雪穂「…ん?」

 

雪穂(2号は赤い色のいわゆる4号…『クウガ』と違って身体の色が白く頭の角も短い)

 

雪穂「ねえ、あの2号も『クウガ』なの?」

 

ツカサ「ああ、正確には同じ『クウガ』…のはずなんだが…」

 

ツカサ「白い『グローイングフォーム』の2号と赤い『マイティフォーム』の4号…」ボソッ

 

雪穂「何それ?」

 

ツカサ「こっちの話だ、後で確かめる必要はあるだろうが…今はオレにも分からん」

 

雪穂「…それで私達は結局、何をすればいいの?」

 

ツカサ「この『ポレポレ』について詳しく調べておいてくれ」

 

雪穂「…はい?」

 

ツカサ「オレには他にやるべき事があるからな、頼んだぞ」ガタッ

 

雪穂(そう言ってエプロンと頭巾を脱いだツカサは立ち上がり、写真館を出ようとする)

 

雪穂「ちょっ…ちょっと待ってよ!」

 

ツカサ「何だ」

 

雪穂「大事なことなんだから、一緒に調べればいいじゃん!?」

 

ツカサ「オレは忙しいからな…朝飯食ったんだからそれぐらいはやってくれても問題ないだろ」スタスタ

 

雪穂「そんなこと言ったって…」

 

ツカサ「じゃあな亜里沙、行ってくる」ガチャ

 

亜里沙「うん、行ってらっしゃいツカサ!」

 

バタン

 

雪穂「えぇ…本当に?」

 

 

 

?(白いクウガに変身した私は…黒い蝶の姿をした未確認生命体8号と戦っていた)

 

クウガ「ふんっ!」ドカッ!

 

8号「…!」ヨロッ

 

クウガ「まったく、アンタもしぶといわね…この『ラブニコアタック』をお見舞いしても倒れないなんて」

 

8号「…」キッ

 

クウガ(8号は…ただ私を睨み付けるだけだった)

 

クウガ「もしかして…『邪魔するな』って言いたいの?」

 

8号「…」

 

クウガ「なんとか言いなさいよね…まあ、言われても分かんないんだけど」ハァ

 

バン!

 

クウガ(すると…私の後ろから、銃声が聞こえた)

 

8号「!?」

 

クウガ(放たれた銃弾が8号に命中すると…)

 

8号「クウガ…ウッ!」バタッ

 

クウガ(8号は倒れて、黒いワンピースを着た人間の女性の姿に戻った)

 

クウガ(私は倒れた女性を見て…自分の拳を強く握りしめていた)

 

クウガ「…」グッ

 

クウガ(すると…ある人が私のもとへやって来た)

 

女性刑事「ニコ!ケガはない?」ダッ

 

クウガ「!」クルッ

 

クウガ(私はすぐに、変身を解いて…ママに抱きついた)

 

ニコ「ママ~!!」バフッ

 

ニコの母「おっと!全くしょーがないわね…」フフッ

 

ニコ(私のママは…警視庁の刑事なの)

 

ニコ(今は未確認ナントカに関わる事件の担当として…『クウガ』である私と一緒に戦っている)

 

ニコ(しばらくしてママは…ニコにこう言った)

 

ニコの母「ねぇ、ニコ?あなた…もうこれ以上は戦わなくていいって言ったじゃない」

 

ニコ「ママ…いいえ、それだけは出来ないわ」

 

ニコの母「あなた、まだそんな事を…」

 

ニコ「だってニコ、クウガだもん」

 

ニコの母「…ニコ」

 

ニコ「それに、関わっちゃったからには…中途半端なことはしたくないの」

 

ニコ「さっきだってニコがいなかったら、もっとたくさんの人が犠牲になってたかもしれないし…」

 

ニコの母「…だけど、未確認と戦ってるのは何もあなた一人だけじゃないわ」

 

ニコの母「あなたによく似た4号だっているし、それに…」

 

ニコ「4号なんてアテにならないわよ!」

 

ニコの母「ニコ…」

 

ニコ(ニコ達が話していると…どこからか声が聞こえてきた)

 

?「…百合の花が似合いそうな女だな」

 

ニコ「!?」

 

ニコ(声のする方を向くと、そこには倒れた女性の顔をしゃがんで覗き込むスーツ姿の少年がいた)

 

ニコ(少年はすぐに立ち上がるとニコ達に向けてカメラのシャッターを押しながらこう尋ねてきた)

 

カシャッ

 

ニコ「!?」

 

ツカサ「…アンタがニコか」

 

ニコ「はぁ?誰よアンタ?…あっ!」

 

ニコ(もしかして、ゴシップ誌のカメラマン!?マズいことになったわ…)

 

ニコ(ニコが色々考えていると、ママがニコをかばうように立ち…少年にこう言った)

 

ニコの母「ちょっとあなた…ここは今、関係者以外立ち入り禁止のはずよ?」

 

ツカサ「入れたもんは仕方がないだろ…それに、今のオレはアンタの関係者みたいだしな」ビシッ

 

ニコ「…はぁ?アンタがニコの関係者?」

 

ニコ(少年はニコを指を差してそう言うとスーツのポケットから名刺を一枚取り出してママに渡した)

 

ニコの母「えっと…『ポレポレ 顧問兼マネージャー 五代ツカサ』?」

 

ニコ「顧問兼マネージャー…!?」

 

ツカサ「ああ」

 

ニコ「ああって、なんでそんな偉そうなのよ…あっ!」

 

ニコの母「どうしたのニコ?」

 

ニコ「この後、私達の新曲の発表イベントがあるの!こうしちゃいられないわ…」

 

ツカサ「だから迎えに来たんだ…早く行くぞ?」

 

ニコ「だから何でアンタはそんなに偉そうにしてるのよ!?」

 

ニコの母「ふふっ、面白い子がマネージャーになったのね」クスクス

 

ニコ「笑いごとじゃないわよ、ママ…」

 

ニコの母「あら…ごめんなさいね」

 

ニコの母「じゃあ、ここはもう大丈夫だから…あとは私に任せて早く行きなさい?」

 

ニコ「ママ、良いの…?」

 

ニコの母「ええ…マナミちゃんと一緒にファンの人達を笑顔にするんでしょう?」

 

ニコ「…うん!」

 

ニコ「あっそうだ、明日のライブ…」

 

ニコの母「分かってるわ…私も見に行くから」

 

ニコ「約束ね…じゃあ、行ってくる!」ダッ

 

ツカサ「…」ダッ

 

ニコ(私は新しく入った生意気なマネージャーと一緒に、イベントの会場に向かった)

 

 

 

雪穂(『ポレポレ』について調べた私と亜里沙は…とある場所に来ていた)

 

雪穂(そこには大勢の『ポレポレ』のファンが集まっていた)

 

亜里沙「すごい人…」

 

雪穂「そうだね…はぐれないように手を繋いでおこっか」スッ

 

亜里沙「うん!」ギュッ

 

?「相変わらずお熱いな、お前達は…」

 

雪穂「?」クルッ

 

雪穂(私達が振り返ると、そこにはスーツを着たツカサがいた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

雪穂「茶化さないでよね…というか何なの、その格好?」

 

ツカサ「どうやら…この世界のオレはニコのマネージャーという役割らしい」

 

雪穂「えっ、じゃあ…ニコさんにはもう会ったの?」

 

ツカサ「ああ、ここに着いてからすぐにはぐれてしまったがな…全く世話の焼ける」ハァ

 

雪穂「いや…それは多分、ニコさんの台詞だと思うんだけど」

 

ツカサ「ところで…『ポレポレ』について何か分かったか?」

 

雪穂「まあ…大体だけど」

 

ツカサ「それでいい」

 

亜里沙「それなら私が!」

 

雪穂「大丈夫かなぁ…?」

 

亜里沙「任せて!」

 

亜里沙「『ポレポレ』はニコさんともう一人、ヤシロマナミさんの二人でデビューしたスクールアイドルなんだけどね…」

 

亜里沙「そのデビュー曲が数日でいきなり百万回再生を記録して…」

 

雪穂(それから亜里沙の長い説明が続き…)

 

亜里沙「…それで今日はその新曲の発表イベント、明日には大会の地区予選が開かれるの!」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

雪穂「…ツカサ、本当に分かってた?」ボソッ

 

雪穂(私は亜里沙には聞こえないぐらいの小さな声で、ツカサに話しかけた)

 

ツカサ「はぁ?」

 

雪穂「途中からあくびしたり上の空だったり、明らかに亜里沙の話を聞いてなかったような気がするんだけど…」

 

ツカサ「…さあ、どうだろうな」

 

雪穂「やっぱり聞いてないんじゃん…」ハァ

 

雪穂(私が呆れていると…背の高いスーツ姿の男性がツカサに話しかけてきた)

 

?「お待ちしてましたよ、ツカサくん」

 

ツカサ「…アンタは?」

 

?「これは失礼、私はマナミのマネージャーのゴウハラです」

 

ゴウハラ「スクールアイドルの顧問兼マネージャーは大変なお仕事ですが…とてもやりがいのある楽しいお仕事でもあります」

 

ゴウハラ「『ポレポレ』のファンの皆さんの笑顔のために…共に頑張りましょう」ニカッ

 

雪穂(そう言ってゴウハラさんは…笑顔でツカサに手を差し出した)

 

雪穂(今時、こんなに誠実そうな人はなかなかいない…私はそう思った)

 

雪穂(でも…ツカサはそんなゴウハラさんの握手には応じなかった)

 

ツカサ「…ところで、肝心の『ポレポレ』の姿が見えないが」

 

ゴウハラ「彼女達ならこれからステージに出てきますよ…ほら」

 

ニコ「こんにちはー!」

 

雪穂(ステージ袖から『ポレポレ』の二人が現れ…会場内から歓声があがった)

 

雪穂(ニコさんは…間違いない、私達の知ってるにこさんと全く同じ姿だ)

 

雪穂(一方のマナミさんは…ふわふわしたくせ毛と幼い顔立ちに小さく華奢なその姿は、まさに『美少女』だ)

 

雪穂(そんな二人のスクールアイドルとしての挨拶が始まった)

 

ニコ「それでは皆さんご一緒に…にっこにっこにー!」

 

観客「にっこにっこにー!」

 

ニコ「笑顔届ける矢澤ニコニコ~ニコニーって覚えてラブニコ♡」

 

観客「ニコニー!!」

 

雪穂「すごい人気…」

 

亜里沙「さすがはニコさん、だね!」

 

マナミ「みんなー!私が欲しいかぁ~!?」

 

観客「欲しい~!」

 

マナミ「ありがとー!マナミンことヤシロマナミです!」

 

マナミ「今日は私達の新曲をたくさん聴いて、明日の地区予選を一緒に楽しみましょー!」

 

観衆「マーナミーン!!」

 

雪穂「マナミさんもすごい人気…」

 

亜里沙「マーナミーン!」

 

雪穂「亜里沙までコールしてるし…ん?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「ツカサ…どうかした?やけに怖い顔してるけど」

 

ツカサ「…気にするな」

 

雪穂「そう?…ならいいけど」

 

ゴウハラ「それでは…私は彼女達の握手会の準備をするので、この辺で」

 

雪穂「あれ…ツカサを手伝わせなくていいんですか?」

 

ゴウハラ「なあに、ツカサくんには明日の地区予選でしっかりマネジメントしてもらいますから」

 

ゴウハラ「なので…今日はもう帰ってゆっくり休んでください」

 

ツカサ「そうか、それじゃ…その言葉に甘えるとしよう」

 

雪穂「何様のつもりなの、ホント…」

 

亜里沙「ツカサ、雪穂!私も握手会に参加したい!」

 

ゴウハラ「それならぜひ…彼女達も喜びます」

 

ツカサ「いや、悪いが…オレ達はここで帰らせてもらう」

 

ゴウハラ「そうですか…それは残念です」

 

亜里沙「えっ、帰るの…?」シュン

 

ツカサ「うっ…そんな顔するな!後でお前の好物作ってやるから!」

 

亜里沙「本当!?」パアッ

 

雪穂(どっちもチョロいなぁ)

 

ゴウハラ「そうだ…もし良かったら、これをあなた達に」

 

雪穂(そう言うとゴウハラさんは私と亜里沙にそれぞれチケットを一枚ずつ渡した)

 

雪穂(チケットには『スクールアイドル地区予選大会 関係者席』と書かれていた)

 

亜里沙「これって…もしかして!」

 

雪穂「良いんですか…?」

 

ゴウハラ「はい!関係者席のチケットが偶然、余りましたので…ぜひお越しください」

 

亜里沙「やった…やったよ雪穂!」

 

雪穂「う、うん…ありがとうございます!」

 

ゴウハラ「いえいえ、私はポレポレのファンの皆さんの笑顔のためなら出来る限りの事はやりたいですから」ニカッ

 

ツカサ「…」フン

 

雪穂(私達はゴウハラさんから明日の地区予選大会のチケットを貰って…写真館へ帰ることにした)

 

 

 

 

 

雪穂(写真館に帰ってきた私達は…晩ご飯を済ませた後、それぞれのことをして過ごしていた)

 

雪穂(ツカサは洗い物、亜里沙はイヤホンをしながらPCで『ポレポレ』の曲を聴いていた)

 

雪穂(私は朝にツカサからもらった新聞を読んで、この世界の情報収集をしていた)

 

雪穂「…ん?」

 

『古代遺跡に眠る碑文解読』

 

雪穂「これって…ツカサ!」

 

ツカサ「何だ、騒々しい…」スタスタ

 

雪穂(洗い物を終わらせたツカサが台所から出てきた)

 

雪穂「これ…」

 

ツカサ「…?」

 

『城南大学のサワタリ教授率いる古代遺跡発掘チームは多くの古代文字を解析することに成功した』

 

『また未確認生命体2号及び4号の腹部の装飾品に記された古代文字も解読された』

 

雪穂「腹部の装飾品って…?」

 

ツカサ「クウガのベルトの事だろうな」

 

雪穂「なるほど…それが、この文章みたい」

 

『心清く体健やかなる者にこれを身に付けよ さらば戦士クウガとならん ひとたび身に付ければ 永遠に汝と共にありてその力となるべし』

 

ツカサ「ふむ…」

 

雪穂「それと…こんな碑文もあったみたいなんだけど」

 

『邪悪なる者あらば 希望の霊石を身に付け 炎の如く邪悪を打ち倒す戦士あり』

 

ツカサ「これは…おそらく赤いクウガの事だろうな」

 

雪穂「この世界のニコさんが変身してる白いクウガについては、何も書かれていなかったけど…」

 

雪穂「そういえば、本来は白も赤も同じクウガって言ってたよね…?」

 

ツカサ「ああ、本来のクウガは赤が基本の形態で…あの白いクウガは不完全な形態だ」

 

ツカサ「ただ…何かが引っ掛かる」

 

雪穂「どういうこと…?」

 

雪穂(ツカサは新聞に載っている赤いクウガの写真を私に見せた)

 

ツカサ「写真だからなんとなくとしか言えないが…オレの見たニコの白いクウガとは違うクウガのような気がするんだ」

 

雪穂「なんとなくって…分かるもんなの?」

 

ツカサ「だいたい…だがな」

 

雪穂「またそれかぁ…」ハァ

 

雪穂(すると、曲を聴いていた亜里沙が急に立ち上がりこう叫んだ)

 

亜里沙「リントギベー!」ガタッ

 

ツカサ「!?」

 

雪穂「うわぁ!ビックリした…どうしたの亜里沙」

 

亜里沙「あっ、ごめん雪穂…実は今『ポレポレ』の曲を聴いていたらそれぞれのソロ曲もあって…」

 

雪穂「ソロ曲?」

 

亜里沙「うん!ニコさんの方は『まほうつかいはじめました!』っていう曲で…」

 

亜里沙「マナミさんの方は『ring to give』っていうんだけど、これがすっごく面白い曲で…」

 

雪穂「へぇ…そうなんだ、ちょっと聞かせて?」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「…」

 

雪穂(私は亜里沙からPCとイヤホンを借り、マナミさんの『ring to give』のサビを聴いた)

 

 

『ring to give』

GIVE GO BARONJI

いつもいつも SEE NAME YOU!(GIVE! GIVE!)

(get-get,luz yeah!)

ドキドキハートで Boy so gig GIVE! GIVE!

(GIVE GIVE,Ah~~~~~~ GIVE GIVE GIVE ME!!)

何度でもこうしたい 身体をビリビリと

いただきたいの 君をいま求めてるよ…

ring to give?

 

 

雪穂「へぇ…なかなか斬新な曲だけど、歌詞も曲調もアイドルらしくてかわいいね!」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「なぁ…その曲、オレにも聞かせてもらえるか?」

 

雪穂「えっ?う、うん…」

 

雪穂(私がPCとイヤホンを渡すと、ツカサはしばらく険しい顔をしながら『ring to give』を聴いていた)

 

亜里沙「どうかしたの、ツカサ…?」

 

ツカサ「…いや、何でもない」 

 

雪穂「えっ、でも…」

 

ツカサ「いいんだ」

 

雪穂(ツカサはそう言って亜里沙にPCとイヤホンを返すと…リモコンを持って、テレビの電源を入れた)

 

雪穂(そこにはニュース番組が流れていた)

 

雪穂(すると…さっきの『ポレポレ』の握手会に参加した人の中の数人が突然、命を落としたという内容のニュースが流れた)

 

亜里沙「ウソ…」

 

ツカサ「…なるほど、だいたいわかった」

 

雪穂「え?」

 

雪穂(私がツカサにどういう意味で言ったのか聞こうとした時…緊急のニュースが入ってきた)

 

雪穂(未確認生命体9号がこの近くに現れたようだ)

 

ツカサ「…いよいよ、オレの出番か」スタスタ

 

雪穂(ツカサは写真館を出ようと部屋のドアを開ける)

 

ガチャ

 

雪穂「…待って、ツカサ!」

 

ツカサ「?」クルッ

 

雪穂「気をつけてね…?」

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

ツカサ「…ああ」バタン

 

雪穂(私は結局…さっきのニュースのことについて、ツカサに何も聞かなかった)

 

雪穂(いや…聞けなかったのかもしれない)

 

雪穂(ツカサのあの険しい表情の意味を…この時の私は、まだよく分かっていなかった)

 

 

 

ニコ(ニコは急いで、未確認生命体9号が現れた場所に向かっていた)

 

ニコ(すると…お猿さんのような姿をした化け物が、何かを探すように辺りを見回していた)

 

ニコ「いた…ちょっと待ちなさいアンタ!」

 

ザルボ「バンザ(何だ) ゴラゲパ(お前は)

 

ニコ「ニコが来たからには…もう容赦しないんだから」

 

ザルボ「フン…リント(人間) ゴドビガ(ごときが) バビゾ(何を)

 

ニコ「行くわよ!」

 

ニコ(ニコは9号に右手でパンチをぶつけると、右手が変化した)

 

ニコ(続いて左足でキックすると、左足も変化し…)

 

ニコ(左手のパンチを当て最後に右足で9号に回し蹴りをすると…私は白いクウガに変身した)

 

ザルボ「クウガ…!?」

 

クウガ「そう、クウガよ…」

 

ザルボ「ゴラゲ(お前) バゾ(など) ジョンゼギ(呼んでい) バギ(ない)!」

 

クウガ「相変わらずアンタ達、何言ってるか分かんないわね…ふんっ!」

 

クウガ(焦った様子の9号に私はそう言ってパンチを振るう)

 

クウガ(…でも、9号は私のパンチを手のひらで受け止めていた)

 

クウガ「なっ…!?」

 

ザルボ「ゾン(その) デギゾバ(程度か)マンヂ(パンチ) デデンパ(っていうのは) ボグ(こう) スンザジョ(するんだよ)!」ドガッ

 

クウガ(9号がそう言った瞬間、私は反撃されて吹き飛ばれてしまった…)

 

クウガ「うっ…」

 

クウガ(倒れる私に…9号は近づく)

 

ザルボ「ゴパシザ(終わりだ)

 

バン!

 

ザルボ「グッ…」

 

ニコの母「ニコ!大丈夫!?」

 

クウガ(そこへママが9号をピストルで攻撃しながらやってきた)

 

クウガ「ママ…」

 

ザルボ「ボギャブバラベゾ(こしゃくなマネを)!」

 

クウガ(怒った9号はママに襲いかかろうとする)

 

ニコの母「…!」

 

クウガ「ママ、危ない!」

 

クウガ(その瞬間…見覚えのある一人の少年が私達と9号の間に入ってきて、9号に右手でパンチした)

 

ツカサ「ハッ!」ゴッ!

 

ザルボ「ガッ…!」

 

クウガ「!?」

 

ニコの母「あなた、さっきの…」

 

ツカサ「間に合ったようだな?」

 

クウガ「アンタ…なんで」

 

ツカサ「アイドルを守るのは…マネージャーの仕事だからな」

 

クウガ「…!」

 

ツカサ「ここはオレに任せろ」

 

クウガ(彼は見たことのないベルトをお腹に巻き、一枚のカードを9号に見せつけるように取り出した)

 

ツカサ「変身!」

 

クウガ(彼はそう言ってベルトにカードを入れ、開いていたバックルを閉じた)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

クウガ(すると、彼は光り輝き…姿を変えた)

 

ニコの母「未確認…10号?」

 

ディケイド「違うな…これは『ディケイド』だ」

 

ザルボ「ビガラ(貴様)…ディケイド!」

 

ディケイド「何だ、お前…オレを知っているのか?」

 

ザルボ「ザラセ(黙れ)!」

 

クウガ(9号はディケイドに殴りかかっていった、でも…)

 

ディケイド「答える気はないってか」ヒョイ

 

クウガ(ディケイドは9号の攻撃を簡単に避けると、左腰のホルダーから一枚のカードを取り出してベルトに入れた)

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

クウガ(ホルダーは剣のような形をした武器になり、ディケイドはその武器で9号を斬りつけた)

 

ディケイド「はっ!」ザシュッ!

 

ザルボ「ウグッ…」

 

クウガ(9号を怯ませたディケイドはまた一枚、カードを取り出してベルトに入れた)

 

ディケイド「これで終わりだ」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

クウガ(すると、ディケイドと9号の間に数枚の大きなカードのようなものが現れる)

 

ディケイド「やあーっ!」

 

クウガ(ディケイドがそれを全て潜り抜けると同時に…9号を思いきり斬りつけた)

 

ザルボ「!」

 

クウガ(ディケイドの攻撃をまともに受けた9号は耐えきれず…爆発した)

 

クウガ「そんな…あの子、9号をあっという間にやっつけちゃった」

 

ディケイド「…じゃあな」スタスタ

 

クウガ(戦いが終わって、ディケイドがどこかへ行こうとしたその時…)

 

ニコの母「待ちなさい」スチャ

 

クウガ(ママが…ディケイドにピストルを向けていた)

 

ディケイド「!」

 

ニコの母「動かないで」

 

クウガ「ママ!?」

 

ニコの母「未確認10号、まさかこのまま帰れるとでも思ってないでしょうね…?」

 

ディケイド「やれやれ…どうやら面倒な事になったみたいだな」

 

ニコの母「御託はいいわ、早く人間の姿に戻りなさい」

 

ディケイド「全く…仕方ない」ハァ

 

クウガ(ディケイドが変身を解くと…ママはピストルを構えたまま、少年にゆっくりと近づく)

 

ニコ(それを見ていた私はいつの間にか変身が解けていた)

 

ニコ「ママ…」

 

ニコの母「…」

 

ツカサ「…」

 

ニコ(少年とママはしばらくお互いをジッと見合っていた、そして…)

 

ニコの母「その右手…見せてみなさい」

 

ツカサ「…?」スッ

 

ニコ(少年はママに右手を見せた)

 

ニコの母「やっぱりね…」ハァ

 

ニコの母「きっと、さっき9号から私達を助けてくれた時にできたものね…少しアザになってるわ」

 

ツカサ「これか…この程度の怪我なら心配ない」

 

ニコの母「ダメよ」

 

ツカサ「なっ…!?」

 

ニコの母「全くしょーがないわね…無茶するところ、まるで誰かさんにそっくりだわ」

 

ニコの母「ニコは大丈夫?」

 

ニコ「あっ、ニコはベルトの力のおかげでなんともないけど…」

 

ニコの母「そう…それなら良かったわ」ホッ

 

ニコの母「じゃあ、このマネージャーさんをお家に連れて手当てしてあげてくれないかしら?」

 

ニコ「はぁ!?」

 

ツカサ「はぁ!?」

 

ニコ「ちょっ、ちょっと待ってママ!なんでニコが…」

 

ツカサ「オレも同じ意見だ…この程度、問題ない」

 

ニコの母「はいはい、二人とも文句言わないの!」

 

ニコの母「ママは他の刑事さんが来るまで、やらなきゃいけない事があるから…」

 

ニコ(ママがそう言うと…パトカーのサイレン音が聞こえてきた)

 

ニコの母「ニコ…クウガの正体、私やマネージャーさん以外にバレてもいいの?」

 

ニコ「うっ、それは…」

 

ニコの母「君…長い事情聴取や身体検査、受ける事になってもいいの?」

 

ツカサ「それは…もっと面倒だな」

 

ニコの母「分かればよろしい…ほら、早く行きなさい!」

 

ニコ「は、は~い…」

 

ツカサ「…」

 

ニコ(ニコ達はママに急かされ、現場を後にした)

 

ニコの母「それにしても…」

 

ニコの母「あのマネージャーの子、どこかで見たことある気がするわね…?」

 

 

 

ニコ「ここよ」

 

ツカサ(オレ達はニコの家に辿り着いた)

 

ツカサ(ニコの家はアイドルらしいイメージとはまるで正反対な…古いタイプの木造住宅だった)

 

ツカサ「そうか…ここがアンタの家か」

 

ニコ「そうよ…何よ、悪い?」

 

ツカサ「…いや、別に」

 

ニコ「いい?私はママに頼まれて仕方なく、アンタを家に連れてきただけなんだからね?」

 

ニコ「手当てしたらすぐ帰りなさいよ…分かった?」

 

ツカサ「…別にこっちは頼んでいないがな」

 

ニコ「アンタねぇ…!」ワナワナ

 

ガチャ

 

ツカサ(すると…玄関のドアが開き、双子の少女が揃って顔を出した)

 

?「ニコニーだ!おかえりなさい!」

 

?「まってたニコ!おかえりニコニー!」

 

ツカサ(双子の少女は同時にニコに抱きついた)

 

ニコ「あら二人とも…ただいま」

 

ツカサ(双子の少女を見た途端、ニコは優しく微笑んだ)

 

ニコ「ちゃんと晩ご飯は食べた?」

 

?「うん!のこさずたべたニコ!」

 

?「おいしかったニコ!」

 

ツカサ「…妹か?」

 

ニコ「ええ、ココロとココアよ」

 

ココロ「!」サッ

 

ココア「!」ササッ

 

ツカサ(双子は人見知りなのか…オレを見て、すぐにニコの後ろに隠れた)

 

ココロ「ニコニー、おともだち…?」

 

ニコ「違うわ、この子は…えーっと…」

 

ツカサ(怯えている双子にオレはしゃがんで挨拶をした)

 

ツカサ「初めまして…だな、オレはニコのお友達のツカサだ」

 

ニコ「なっ!?アンタ…」

 

ツカサ「いきなりだが…二人はお姉ちゃん、好きか?」

 

ツカサ(オレがそう聞くと、二人はすぐに頷いた)

 

ココロ「だいすきニコ!」

 

ココア「ココアも!」

 

ツカサ「そうか…お姉ちゃんは幸せ者だな」

 

ココア「ねえ…おにいちゃんはニコニーのこと、だいすきニコ?」

 

ツカサ「ん?」

 

ニコ「えっ…ちょっとココア!?」

 

ツカサ「うーん、どうだろうな?」

 

ツカサ「でも…嫌いじゃないぞ?」

 

ツカサ「今のを見て…とっても優しいお姉ちゃんだなと思った」

 

ニコ「…///」

 

ツカサ「…どうした、顔が赤くなってるぞ?」

 

ニコ「う、うるさいわね!なってないわよ!」アセアセ

 

ツカサ「はぁ…?」

 

ココロ「おにいちゃん、はじめてあったけどやさしいニコ!」

 

ココア「おにいちゃん、いっしょにあそぶニコ!おうちにはいるニコ!」

 

ココロ「ココアズルい!おにいちゃんといっしょにあそぶのはココロニコ!」

 

ココア「ぶぅー、ココアはズルくないもーん!」

 

ツカサ(双子はそう言い合いながらオレを家に招き入れようと引っ張っていく)

 

ツカサ「待て待て…そんなに引っ張ってもオレは一人しかいないぞ?遊ぶなら一緒にな」

 

ココロ「わぁーいニコ!」

 

ココア「わぁーいニコ!」

 

ツカサ(オレは双子に引っ張られるがまま、ニコの家に入っていく)

 

ニコ「あっ…ちょっと待ちなさい!」

 

ココア「ところでおにいちゃんはママのむかしのみょうじ、しってるニコ?」トテトテ

 

ツカサ「突然だな…いや、聞いたことないな」スタスタ

 

ココロ「ママのむかしのみょうじは『イチジョウ』っていうニコ!」トテトテ

 

ツカサ「なるほどな…だいたい分かった」

 

ニコ「聞きなさいよ!」

 

ニコ「妹達に付き合うなら、私がちゃんと手当てしてからにしなさいよ!?」ダッ

 

 

 

ツカサ(オレはニコからケガの手当てをしてもらった後、少しの間だけ双子と遊んだ)

 

ツカサ(双子は満足したのか、今は寝室でスヤスヤと眠っている)

 

ツカサ(双子の幸せそうな寝顔を見たニコは寝室の引き戸をゆっくりと閉めた)

 

ニコ「…」フゥ

 

ニコ「アンタ、どういうつもり…?」クルッ

 

ツカサ「別に…オレがあの子達と遊びたくなっただけだ」

 

ニコ「…ニコはアンタのこと、マネージャーだと認めたわけじゃないから」

 

ツカサ「…勝手にしろ」

 

ニコ「…というかアンタ、もうケガの手当てしたんだからさっさと帰りなさいよ?」

 

ツカサ「そうだな…だが、その前にいくつか聞きたいことがある」

 

ニコ「何よ…?」

 

ツカサ「白いクウガにしかなれないのは、どういう事だ?」

 

ニコ「はぁ?」

 

ツカサ「本来、クウガの姿は赤のはずだ…」

 

ツカサ「それがずっと引っかかっていた」

 

ニコ「…そんなの、ニコが知りたいわよ」

 

ニコ「大体、ニコはクウガになってからずっと白にしかなったことないし…」

 

ツカサ「…そうか、じゃあなぜクウガになったんだ?」

 

ニコ「…ニコがそんなこと、会って間もないアンタに話すと思う?」

 

ツカサ「思わないが…一応、聞いてみたくなってな」

 

ニコ「…全くしょーがないわねー」ハァ

 

ニコ「スクールアイドルの番組ロケで遺跡に行ったのよ」

 

ツカサ「ロケ?」

 

ニコ「ええ、その時にクウガのベルトをゴウハラさんが見つけて…」

 

ニコ「マナミが『ニコニーなら似合うと思う、着けてみて!』って言われて…」

 

ニコ「それで着けてみたら、ベルトがニコの身体の中にスッと入っていって…」

 

ニコ「その直後に未確認1号が私達を襲ってきて…」

 

ニコ「他の人達が犠牲になっていく中で、ママが助けには来てくれたんだけど…」

 

ニコ「1号がママやマナミ達を襲おうとして…」

 

ツカサ「それを助けようとして…クウガになったのか?」

 

ニコ「ええ、そんな感じよ」

 

ツカサ「マナミとはどういう関係なんだ?」

 

ニコ「あの子は…もともと、地元でちょっと有名な不良だったの」

 

ツカサ「不良…?」

 

ニコ「ええ、でも…スクールアイドルのことを知ってからすごく興味を持ったみたいで」

 

ニコ「『不良はやめる、だからアイドル研究部に入れてほしい』って…しつこくお願いされたから、一緒にやることになったの」

 

ニコ「始めたばかりの頃のあの子は全然ダメダメだったけど、やる気はニコに負けないくらいあったわね…」

 

ニコ「今ではたまにニコと一緒にアイドルのライブDVDを見たり、ライブで色々なアイディアを思いついたり…」

 

ニコ「素直でとっても良い子だと思うわ…まあ、かわいさはニコの方が断然あるけど!」フフン

 

ツカサ「…」

 

ニコ「何とか言いなさいよ!」

 

ツカサ「…『素直でとっても良い子』か、果たしてどうだろうな?」

 

ニコ「はぁ?どういう意味よ…それ」

 

ツカサ「すぐに分かる」

 

ニコ「…まあ、いいわ」ハァ

 

ツカサ「それにしても…スクールアイドルとクウガの両立は大変じゃないのか?」

 

ニコ「はぁ?」

 

ツカサ「アンタはスクールアイドルだ、そのうえクウガとして未確認と戦って…疲れているだろうと思ってな」

 

ツカサ「何ならマネージャーのオレが、代わりに他の未確認を倒してやってもいいぞ?」

 

ニコ「…!」

 

ツカサ「皆を笑顔にするため…ならな」フフン

 

ニコ「…アンタ、それ本気で言ってるの?」ガタッ

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(ニコはそう言うと、オレを追い出そうと玄関まで押し出す)

 

ツカサ「おい!一体何を…」

 

ニコ「アンタなんかに何が分かるのよ!?」

 

ツカサ「…!」

 

ニコ「皆を笑顔にする…?バカなこと言わないで」

 

ニコ「急にやってきたアンタが…いい加減な気持ちでそれを言わないでよ!」

 

ツカサ「アンタ…!」

 

ニコ「…いいからもう今日は帰りなさい、明日は地区予選なんだから」

 

ニコ「本当に皆を笑顔にさせるのは…スクールアイドルである私とマナミだけでいいの」

 

ツカサ「だが…」

 

ニコ「早く帰って!」ドン!

 

ツカサ「うわっ!」

 

バタン!

 

ツカサ(オレはニコに押され、家を追い出されてしまった)

 

ツカサ「おい!…困ったもんだ」ハァ

 

ツカサ(オレはそのまま写真館へと帰る事にした)

 

ツカサ「…」チラッ

 

ツカサ(オレはニコに巻いてもらった包帯を眺めていた)

 

ツカサ「…明日、か」

 

ツカサ(そう、全ては明日だ)

 

ツカサ(オレは…何としてでも、止めなければならない)

 

ツカサ(地区予選大会で、多くの人々が犠牲になる前に…)

 

ツカサ(ヤツらの正体を…早く明かさなければ)

 

 

 

 

 

雪穂(翌日、私達はスクールアイドル地区予選大会の会場に来ていた)

 

雪穂(『ポレポレ』の出番は…あともう少しだ)

 

亜里沙「もうすぐだね、雪穂!」

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「あれ…どうかしたの?」

 

雪穂「え?あっ…ううん、なんでもない!」

 

亜里沙「そう…」

 

雪穂(私は…昨日のツカサのあの険しい表情がどういう意味だったのか、ずっと気になっていた)

 

雪穂(もしかして…マナミさんに何かあるのかな?)

 

亜里沙「ねぇ、雪穂…」

 

雪穂「何?」

 

亜里沙「雪穂はライブ…楽しみじゃないの?」

 

雪穂「えっ…いやいや、そんなことないよ!もうすっごく楽しみ!」

 

亜里沙「本当に…?」

 

雪穂「ホントホント!」

 

亜里沙「…それなら良かった!」ニコッ

 

雪穂(いけない…ツカサだけじゃなく私まで考え込んでいたら、亜里沙を心配させてしまう)

 

雪穂(私は昨日のことを忘れて、思いきり楽しむことにした)

 

雪穂(そうだ、今はこれで…)

 

 

 

ツカサ「…」コンコン

 

ツカサ(オレは『ポレポレ』の控え室の扉をノックした)

 

ドウゾー

 

ツカサ「…」ガチャ

 

ツカサ(扉を開け、控え室に入ると…そこにはステージ衣装を着たマナミがいた)

 

マナミ「あれ、ニコニーのマネージャーさん?」

 

ツカサ「…ニコは?」

 

マナミ「ニコニーなら…『一人で集中したい』って言って、さっき出て行ったよ?」

 

ツカサ「そうか…それならちょうど良かった」

 

マナミ「ちょうど良かったって…どういうこと?」

 

ツカサ「ああ、お前と話がしたいと思ってな」

 

マナミ「へぇ…話って何?」

 

ツカサ「…ギジョギ(いよい) ジョバ(よか)?」

 

マナミ「!?」

 

ツカサ(オレがそう言うと、マナミは少し驚いた表情をした)

 

マナミ「フフッ、君…もしかしてふざけてるの?」

 

ツカサ「オレは大真面目だ」

 

マナミ「へぇ…面白いね、君」

 

ツカサ「オレは全然面白くないがな」

 

ツカサ「それにしても驚いたな…まさか、人間の言葉を流暢に話せるグロンギがいるなんてな」

 

マナミ「グロンギ…?」

 

ツカサ「ドドベスバ(とぼけるな)

 

ツカサ「お前は香水で誤魔化しているつもりだろうが…血の臭いは隠せないぞ?」

 

マナミ「…そう、スゴいね君」

 

マナミ「でも…マナミンだって、まさかリント(人間)が私達の言葉を話せるなんて思わなかったよ」

 

ツカサ「…」

 

マナミ「…どこで私がグロンギだって確信したの?」

 

ツカサ「最初からだ…と言いたい所だが、まだあの時は十分な証拠が無かったからな」

 

マナミ「…」

 

ツカサ「だが、お前のソロ曲を聴いた時…オレは確信した」

 

マナミ「へぇ…マナミンの曲、聴いてくれたんだ?」

 

ツカサ「ああ、所々がお前らの言葉で発音してたからな…気にならないわけがない」

 

ツカサ「そして…特に気になったのは『Ring to give』だ」

 

マナミ「…!」

 

ツカサ「お前…『Ring to give』をわざと『リントギベ』と発音してただろ?」

 

マナミ「…」

 

ツカサ「『リント』は人間、『ギベ』は…」

 

ツカサ(オレがグロンギ語の意味を説明していると…マナミは突然、笑い始めた)

 

マナミ「アハハハハ!」

 

ツカサ「…」

 

マナミ「あー、チョーウケる…それで?」

 

ツカサ「…握手会に参加した人々が犠牲になったのも、お前の仕業だな?」

 

マナミ「…」

 

ツカサ「答えろ」

 

マナミ「フフッ…うん、そうだよ?」

 

マナミ「何人か距離が近過ぎて、嫌だったから…私が消しちゃったの」

 

マナミ「私に課せられたゲゲル(ゲーム)の一つだったし、あんなの別に消えても…問題ないでしょ?」

 

ツカサ「お前…」

 

?「そういうことだったのね」

 

ツカサ「!」クルッ

 

ツカサ(オレが振り返ると、そこには腕を組んで立っているニコがいた)

 

ニコ「『リント』だの『ギベ』だの…なーんかどっかで聞いたことがあるから、おかしいと思ってたのよねぇ」ハァ

 

ニコ「スクールアイドルを一緒に始めてからキャラを変えたりして、やけに張り切ってると思ってたけど…」スタスタ

 

ツカサ(ニコはマナミに近づいていく)

 

ツカサ「ニコ…」

 

ニコ「アンタ…それ、本気で言ってるの?」

 

マナミ「…」

 

ニコ「…本気だったら許さないわよ」

 

マナミ「ニコニー…」

 

ガッ!

 

ツカサ(ニコはマナミの両肩を掴み、揺さぶった)

 

ニコ「答えて!」ユサユサ

 

ニコ「どうしてそんなことしたのよ!?」

 

マナミ「…」

 

ニコ「私達はアイドルなのよ…?」

 

ニコ「皆を笑顔にさせるのが私達の仕事なのよ!?」

 

ニコ「ファンの人達の命を奪って…何が楽しいのよ!?」

 

マナミ「ふふっ…ニコニーったらこわ~い」

 

ニコ「…アンタねぇ!」

 

パシッ

 

ニコ「!」

 

ツカサ(マナミはニコから離れ、背を向けてこう言った)

 

マナミ「あーあ…」

 

マナミ「本当なら今頃、会場にいる皆に…ライブの演出で私の毒が入った水をかけていたのにな」ハァ

 

ニコ「!」

 

ツカサ「…まさか、それがお前のもう一つの『ゲゲル(ゲーム)』か?」

 

マナミ「アハハッ、当たり~!」クルッ

 

マナミ「人間なんて生きてる価値ないんだから…皆いなくなっちゃえばいいんだよ」

 

ニコ「…!!」

 

マナミ「ニコニーもそう思わない?」

 

ニコ「…思うわけ、ないでしょ」グッ

 

ツカサ(ニコは小さな拳を握りしめていた)

 

マナミ「そっか…まぁ、そうだよね」

 

マナミ「ニコニーは人間だもんね?」

 

ニコ「…絶対に許さない」

 

ニコ「ニコが、アンタを…止めてみせる」

 

マナミ「へぇ…できると思うの?」

 

ニコ「…」

 

マナミ「そっか、じゃあ…ニコニーとはもうお別れだね」

 

マナミ「…さよなら」

 

ツカサ(そう言うとマナミはクラゲのグロンギ怪人…ゲラグに姿を変えた)

 

ゲラグ「ハッ!」シュルッ

 

ニコ「!?」

 

ツカサ(ゲラグは瞬時に触手を伸ばし、ニコの首に巻きつけ締め上げた)

 

ニコ「ううっ…」グググ

 

ツカサ「ニコ!」ダダッ

 

?「待ちなさい」ガシッ

 

ツカサ(オレがニコのもとへ駆けつけようとすると…何者かがオレの肩を掴んだ)

 

ツカサ「?」クルッ

 

ゴッ!

 

ツカサ「うわっ!」

 

ツカサ(振り返ったオレを殴ったのは、マナミのマネージャーのゴウハラだった)

 

ゴウハラ「困るんですよ…『ゲゲル(ゲーム)』の邪魔をされてはね」

 

ツカサ「…やはり、お前もグロンギか」

 

ゴウハラ「ええ…しかし、驚きました」

 

ゴウハラ「私の『ゲゲル(ゲーム)』の標的であるディケイドが…まさか自分の方から来てくれるなんてね」

 

ツカサ「お前…なぜオレが、ディケイドだと?」

 

ゴウハラ「昨日のザルボとの戦い…近くでしっかりと見させていただきましたからね」

 

ツカサ「なっ…!」

 

ゴウハラ「フフフ…」

 

ツカサ(次にゴウハラは首を絞められているニコに向けてこう言った)

 

ゴウハラ「しかし、リント(人間)も可哀想ですね…こんなか弱い女の子がクウガとして選ばれるなんて」

 

ゴウハラ「最も…私の作戦通り、ですがね」

 

ニコ「…!」グググ

 

ゴウハラ「…ゲラグ、そちらは頼みましたよ」

 

ゲラグ「うん!」

 

ゴウハラ「さて、それでは私も…」

 

ツカサ(ゴウハラはライオンのようなグロンギ怪人…ゴ・ライオ・ダに姿を変えた)

 

ライオ「始めましょうか…はっ!」ボウッ!

 

ツカサ「…くっ!」サッ

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(オレはギリギリのところで、ライオが繰り出した火球を避け…ディケイドに変身した)

 

ライオ「ほう…?なかなかやりますね」

 

ディケイド「くっ…」

 

ディケイド(早くしないと、ニコが危ない…)

 

ニコ「うっ…」グググ

 

ゲラグ「…あれ、もしかして抵抗してる?」

 

ニコ「うわぁぁぁぁっ!!」ブチッ!

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(ニコは叫びながら、白いクウガに変身し…巻きつけられた触手を千切った)

 

ゲラグ「へぇ…やるじゃん」

 

クウガ「…」

 

ディケイド「ニコ!」

 

ゴッ!ガッ!

 

ディケイド「ぐはっ…!」

 

ディケイド(ライオがオレに二発の火球をぶつけてくる)

 

ライオ「こんな時によそ見ですか、随分と余裕ですね…ハッ!」ボウッ!

 

ディケイド「ぐっ…うわぁっ!」

 

ディケイド(火球をまともに受けたオレは壁を突き破り、会場の外へと吹き飛んでしまった…)

 

ディケイド(ライオは外まで吹き飛んだオレを追撃しようと迫ってくる)

 

ディケイド「くっ、オレとしたことが…ん?」

 

ポツッ…

 

ディケイド(空にはいつの間にか暗雲が立ちこめ、雨粒が降り始めていた)

 

ディケイド「…雨か」

 

ディケイド(オレには、まるでこの空が誰かの代わりに泣いているような…)

 

ディケイド(そんな気がして…ならなかった)

 

 

 

 

 

 

ディケイド(小雨が降っている中で、オレは一枚のカードをベルトに装填した)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「はっ!」ガガッ

 

ディケイド(オレは左腰に着けたライドブッカーを銃の形に変え、ライオに向かってエネルギー弾を発射する…が)

 

ライオ「フン、この程度ですか…」

 

ディケイド「なっ…効いてないだと!?」

 

ライオ「まだまだ、こんなものではありませんよ…ハッ!」ボウッ

 

ディケイド「ぐっ!」

 

ディケイド(その直後、ライオが放った火球が直撃し…オレはまた吹っ飛んだ)

 

ディケイド「うっ…」

 

ライオ「結局、甘いんですよ…あなた達人間は」

 

ライオ「仕留めるなら一撃で再生不能にしなくては、ね!」ボウッ!!

 

ディケイド(ライオは今までで一番、大きな火球をオレにぶつけた)

 

ディケイド「うわぁっ!!」

 

ディケイド(ライオの火球をまともに受けたオレは変身が解けてしまった)

 

ツカサ「くっ…」

 

ライオ「…しかしリント(人間)は本当に変わりましたね」

 

ライオ「少なくとも…かつては我々同様、プライドを持った種族のはずでした」

 

ライオ「それが今は…スクールアイドルという偶像ごときで皆が笑顔になる、本当に馬鹿だ」

 

ツカサ「!」

 

ライオ「馬鹿は…いなくなるべきなんです」

 

ツカサ「なん…だと?」

 

ライオ「さて、そろそろトドメとしましょうか…それでは」

 

ライオ「さようなら」

 

ツカサ(ライオが生身のオレに火球を放とうとしたその時だった)

 

?「させないわ」

 

ガガッ!

 

ツカサ(どこからか放たれた数発の銃弾が…ライオに命中した)

 

ライオ「ぐっ!?」

 

ツカサ「…!」クルッ

 

ツカサ(オレが振り返ると…そこには白い制服を着た少女が立っていた)

 

?「…」

 

ツカサ(その少女は…特徴的な形をしたシアンカラーの銃を持っていた)

 

ライオ「何者ですか、あなたは?」

 

?「…私の名前は『綺羅ツバサ』」

 

ツバサ「またの名を…」サッ

 

ツカサ(少女は取り出した一枚のカードを銃に装填し、真上に向けて発射した)

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

ツカサ(やがて蒼い光が彼女を包み込み…姿を変えた)

 

ディエンド「『ディエンド』」

 

ツカサ「『ディエンド』…だと?」

 

ライオ「困りますね…私の『ゲゲル(ゲーム)』の邪魔をしてもらっては」

 

ディエンド「あら、邪魔をしているのは…あなたの方よ?」

 

ツカサ(ディエンドはそう言いながら…一枚のカードを取り出し、銃に装填した)

 

『カメンライド…クウガ!』

 

ディエンド「はっ!」

 

ツカサ(ディエンドはライオに銃を向けて引き金を引くと、彼女の目の前に赤いクウガが現れた)

 

4号「悪魔を倒すためなら…俺は悪魔にだってなってやる!」

 

ライオ「ほう、クウガがもう一人いたとは…」

 

ディエンド「…行ってらっしゃい」

 

4号「はぁっ!」ダッ

 

ツカサ(赤いクウガはライオに立ち向かって行った)

 

ツカサ(赤いクウガとライオが殴り合いを繰り広げている間に…ディエンドはオレのもとにやってきて手を伸ばしてきた)

 

ディエンド「立てるかしら?」サッ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(オレはその手を掴まず、自力で立ち上がった)

 

ツカサ「あの赤いクウガは…?」

 

ディエンド「ええ、私が召喚した別の世界のクウガよ…この世界では未確認生命体4号という扱いになっているわ」

 

ディエンド「本来なら…『彼女』がなるべきなんだけどね」

 

ツカサ「ニコの事か…ところでアンタ、何者だ?」

 

ディエンド「言ったでしょ、私は『ディエンド』」

 

ディエンド「あなたと同じ…通りすがりの仮面ライダーよ」

 

ツカサ「…何でオレを助けた?」

 

ディエンド「簡単な話よ…私は今、やりたい事をやっただけ」フフッ

 

ツカサ「…」

 

4号「やあっ!」ガッ

 

ツカサ(オレとディエンドが話をしていると…赤いクウガはライオに跳び蹴りを命中させて、消失した)

 

ライオ「グッ…」

 

ツカサ(ライオの全身に赤いクウガの封印エネルギーが流れ込みライオは苦しみ出すが…)

 

ライオ「ハアッ!」

 

ツカサ(たてがみにエネルギーが収束していくと突然、放射状に開かれ封印エネルギーの全てが放出されてしまった)

 

ツカサ「なっ…!」

 

ツカサ(それと同時に…ライオはゴウハラに姿を戻した)

 

ディエンド「…」

 

ゴウハラ「フハ…フハハハハ!」

 

ツカサ(不敵に笑うゴウハラ…しかしその瞬間、ディエンドが叫んだ)

 

ディエンド「伏せて!!」サッ

 

ツカサ「!?」サッ

 

バン!

 

ゴウハラ「!」

 

ツカサ(オレとディエンドが伏せると、どこからか銃弾が放たれる音がした)

 

ツカサ(少ししてオレとディエンドが立ち上がると…)

 

ツカサ(そこにはもう…ゴウハラの姿はなかった)

 

ツカサ「これは、一体…?」

 

?「3号!ツカサくん!」

 

ツカサ(ニコの母がライフルを持って駆けつけてきた)

 

ツカサ「…3号?」

 

ツカサ(ディエンドは変身を解き、ツバサの姿に戻った)

 

ツバサ「ふぅ…」

 

ニコの母「お疲れ様…大丈夫?」

 

ツバサ「はい、私は大丈夫です」

 

ニコの母「ツカサくんは…ひどいケガじゃない!?」

 

ツカサ「…大丈夫だ、これくらい問題ない」

 

ニコの母「ダメよ!後で手当てしないと…」

 

ツバサ「ところで矢澤さん…私が持ってきた『お宝』はどうですか?」

 

ニコの母「あっ…ええ、暴発の可能性があるから安定性を改良する必要はありそうだけど…効果は抜群といったところかしら」

 

ツカサ「…『お宝』?」

 

ニコの母「未確認を倒す効果がある『神経断裂弾』の強化型のことよ」

 

ニコの母「3号…いえ、彼女はそのデータを私に持ってきてくれたの」

 

ツバサ「私…この世界では未確認生命体3号ということになっているの」

 

ツカサ「はぁ?」

 

ツバサ「4号を召喚したり『神経断裂弾』のデータを渡したりして、警察に協力しているわ」

 

ツカサ「なるほど…そういう事か、だいたいわかった」

 

ツカサ(オレ達が話していると…少し離れた場所から何かが爆発する音が聞こえてきた)

 

ニコの母「今の音は…何!?」

 

ツカサ「…そうだ、ニコ!」

 

ニコの母「えっ、ニコも戦っているの!?」

 

ツカサ「ああ、グロンギだったマナミとな…」

 

ニコの母「…!」

 

ツカサ「こうしちゃいられない…急ぐぞ!」ダダッ

 

ニコの母「…ええ!」ダダッ

 

ツカサ(オレとニコの母は一緒に爆発音がした方へと走り出した)

 

ツバサ「…」

 

 

 

ツカサ(雨が強くなる中、オレとニコの母は爆発音がした場所へと急行していた)

 

ニコの母「ニコ…無事でいて」

 

ツカサ(やがて…遠くから白いクウガの姿が見えた)

 

ツカサ「いた!」

 

ニコの母「ニコ!」

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレ達が近づくと、そこにはバラバラになったゲラグと立ち尽くす白いクウガの姿があった)

 

クウガ「…!」グググ

 

ツカサ(雨に打たれる中…白いクウガは何も言わず、身体を震わせながら両方の拳を握りしめていた)

 

ニコの母「ニコ…」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(雨は止むことなく…強く降り続けている)

 

ツカサ(オレは今、ニコの苦しみを)

 

ツカサ(仮面の下にあるであろうニコの悲しみを)

 

ツカサ(ただ、見つめることしか出来なかった…)




~次回、仮面ライダー×ラブライブ!~

「俺はもう甦らないはずだった」

「この空だってきっと晴れて、青空になるニコ!」

「オレは笑い合っていてほしい!」

「そう信じてる!」

「大銀河宇宙ナンバーワンアイドル…矢澤ニコよ」

「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

「変身!」

EPISODE.3『愛笑(にこ)』
【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話『愛笑(にこ)』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは『クウガの世界』だ」

ニコ「にっこにっこにー!笑顔届ける矢澤ニコニコ~」

ニコ「ニコはアンタのこと、マネージャーだと認めたわけじゃないから」

ニコ「皆を笑顔にさせるのは…スクールアイドルである私とマナミンだけでいいの」

マナミ「人間なんて生きてる価値ないんだから…皆いなくなっちゃえばいいんだよ」

ライオ「スクールアイドルという偶像ごときで皆が笑顔になる、本当に馬鹿だ」

ツバサ「綺羅ツバサ…またの名を」

ディエンド「『ディエンド』」

ニコの母「ニコ!」

クウガ「…!」

ツカサ「…」


クウガ(外に出てから雨が段々強くなっていく中、私はマナミ…いや)

 

クウガ(未確認生命体11号と戦っていた)

 

クウガ「ハァハァ…ふんっ!」ガッ

 

ゲラグ「グッ、フフッ…えいっ!」ガッ

 

クウガ(私のパンチを受けても、平気そうに私を嘲笑う11号は…私にパンチを返してくる)

 

クウガ(まさかこんなことになるなんて…信じられない)

 

マナミ『頼む!』

 

ニコ『アンタもしつこいわね…』

 

マナミ『当たり前だよ…私は絶対にスクールアイドルをやりたいんだ』

 

ニコ『…全く、しょーがないわねー』ハァ

 

マナミ『…本当か!?』

 

ニコ『言っておくけど、私は…厳しいわよ?』

 

マナミ『もちろん分かってるよ…アイドルになるのが厳しいことくらいは』

 

ニコ『分かってない!』

 

マナミ『!?』ビクッ

 

ニコ『だから…まずはアンタに一番、大事なことを教えてあげるわ』

 

ニコ『いい?アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない!』

 

ニコ『笑顔にさせる仕事なの!』

 

マナミ『…!』

 

ニコ『それをよーく…覚えておきなさい?』

 

マナミ『…うん!』

 

クウガ(いえ…信じたくなかった)

 

クウガ(マナミ…一緒にレッスンした時に言ってたアンタの言葉は全部、嘘だったの?)

 

マナミ『私さ…ニコにスクールアイドルのことを教えてもらって、すごく感謝してるんだ』

 

クウガ(今までニコを騙してたの?)

 

マナミ『だから…これからも一緒に頑張ろう!』

 

クウガ(何とか言いなさいよ…!)

 

クウガ「うわぁぁぁっ!!」ガッ

 

クウガ(こんなの、悲し過ぎるじゃない…!)

 

ゲラグ「ウッ…ハハッ、アハハハハ!」

 

ゲラグ「そんなにムキになっちゃって…バカみたい」

 

クウガ「…!」

 

ゲラグ「それにしてもニコニーって、本当におバカさんだよね~」

 

クウガ「…」

 

ゲラグ「マナミンとゴウハラさんに騙されてクウガのベルト着けちゃうし…」

 

クウガ「…」

 

ゲラグ「確か、皆を笑顔にさせるのが…アイドルの仕事だって言ってたよね?」

 

ゲラグ「チョーウケる」フフッ

 

ゲラグ「そんなの無理に決まってんじゃん」

 

ゲラグ「だってマナミン、グロンギだよ?」

 

ゲラグ「皆の笑顔や命を奪うのが…マナミン達の楽しみなんだからさ!」

 

クウガ(そう言って11号は…触手を私の身体に巻きつけ、縛り始めた)

 

クウガ「ううっ…!」

 

ゲラグ「フフッ、本当に楽しいなぁ…『ヤシロマナミ』になった甲斐があったよ」

 

クウガ「それ、どういう…こと?」

 

ゲラグ「分かんないの…?」

 

ゲラグ「本物の『ヤシロマナミ』は…スクールアイドルとしてデビューする前に、マナミンが消して入れ替わったの」

 

クウガ「!?」

 

ゲラグ「だからマナミン、ニコニーからスクールアイドルのことを教えてもらうようになって…すごく感謝してるんだ」

 

ゲラグ「おかげで…マナミンはもっと面白い『ゲゲル』が出来るようになったんだから」

 

クウガ「…」

 

ゲラグ「でも、その『ゲゲル』も…もうすぐ終わり」

 

ゲラグ「ニコニーを本物の『ヤシロマナミ』のところに送ったら…マナミンが一人にライブをしに行くよ」

 

ゲラグ「皆の笑顔を奪いに…ね」

 

クウガ「…」

 

ゲラグ「あっ…そういえば」

 

ゲラグ「本物の『ヤシロマナミ』ったら…私に消される時、ひたすらニコニーの名前言いながらごめんって言ってたよ?」

 

クウガ「!!」

 

ゲラグ「血と涙で汚れちゃったあの子の顔を見た時はすごく楽しかったから…また、あんな風に皆の笑顔を壊せたらいいなぁ」

 

ゲラグ「ねぇ…ニコニー?」

 

クウガ「…ざ…ないで」

 

ゲラグ「うん…何?」

 

クウガ「ふざけないで…!」

 

ゲラグ「…へぇ?」

 

クウガ「ニコは、アンタを…!」

 

クウガ「絶対に…絶対にっ!!」ブチッ

 

ゲラグ「!?」

 

クウガ「うわぁぁぁぁぁ!!」ガッ

 

クウガ(私は触手を力ずくで引きちぎり…11号のお腹のベルトめがけてキックした)

 

ゲラグ「ウッ…!」

 

クウガ(蹴られた11号は…後ろに下がった)

 

クウガ「…」ハァハァ

 

ゲラグ「…!?」

 

クウガ(すると、11号のお腹に文字のようなものが出てきて…)

 

ゲラグ「そっか…マナミン、負けちゃったんだ」

 

クウガ「…」

 

クウガ(その直後、11号のベルトのバックルが真っ二つに割れ…)

 

ゲラグ「フフッ…アハハ…アハハハハハ!!」

 

クウガ(11号は…笑いながら爆発した)

 

クウガ「…!」グググ

 

クウガ(私は雨に打たれながら、両手を強く握りしめていた…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

雪穂(次の日…私達は光写真館にいた)

 

雪穂(昨日から雨は止むことなく降り続けている)

 

雪穂「雨…止まないね」

 

亜里沙「…」

 

雪穂(亜里沙は椅子に座って塞ぎ込んでいた)

 

雪穂「亜里沙…」

 

雪穂(あの後、地区予選大会が延期になったことやマナミさんが謎の事故で帰らぬ人になったというニュースが流れたけど…)

 

雪穂(私達は…ツカサから本当のことを聞いていた)

 

雪穂(私達がこの世界に来る前に…グロンギが既に本物のマナミさんを襲っていたこと)

 

雪穂(マナミさんに成り変わったグロンギが…ライブを自分のゲームの舞台にしようとしていたこと)

 

雪穂(そして…ニコさんを騙していたこと)

 

雪穂(その話を聞いた亜里沙はかなりのショックを受けていた…もちろん、私だってそうだ)

 

雪穂(次の日になっても…私達はそのショックを受け止めきれていなかった)

 

ガチャ

 

ツカサ「…」

 

雪穂「ツカサ…」

 

ツカサ「すまない」

 

雪穂「…えっ?」

 

ツカサ「せっかくお前達が楽しみにしていたのに…こんな事にしてしまったのは、オレの責任だ」

 

雪穂「そんな…ツカサが謝ることないよ!」

 

雪穂「ツカサが止めようとしてくれなかったら、私達もどうなってたか分かんなかったし…」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「ねえ、私達がこの世界に来たのって…もしかしてグロンギのゲームを止めるためだったのかな?」

 

雪穂「だとしたら…これで良かったのかな?」

 

ツカサ「…さあ、どうだろうな」

 

コンコン

 

雪穂(すると、誰かが部屋のドアをノックしている音が聞こえてきた)

 

雪穂「あれ…誰だろう?」

 

ガチャ

 

ツバサ「こんにちは」

 

雪穂「!?」

 

亜里沙「えっ!?」

 

ツカサ「なっ…アンタは!」

 

雪穂「A-RISEの…ツバサさん!?」

 

ツバサ「あなたは…確か、穂乃果さんの妹さんね?」

 

雪穂(ツバサさんが突然、やってきたことで…私も亜里沙も目を点にさせていた)

 

亜里沙「本当に…ツバサさんなの?」ガタッ

 

ツバサ「ええ、本当よ…あなたが絵里さんの妹さんね?」

 

雪穂「なんで、ツバサさんがここに…?」

 

ツバサ「私もそこにいる彼と同じ…『仮面ライダー』として世界を旅することになったの」

 

ツバサ「『ディエンド』っていう名前…でね」フフッ

 

雪穂「そうだったんですか…!」

 

亜里沙「ハラショー…!」

 

雪穂(普通なら信じられない話だけど…私達の感覚はすっかりマヒしていたのか、すぐにツバサさんの話を受け入れていた)

 

ツバサ「さて、それはそうと…実はあなたに見せたいものがあるの」

 

ツカサ「…オレにか?」

 

ツバサ「ええ、これを見てちょうだい」スッ

 

雪穂(ツバサさんが見せたのは今日の新聞だった)

 

灯溶山(ひときやま)から黒い煙発生、噴火ではなく古代遺跡にある何かが原因か』

 

ツカサ「灯溶山?」

 

ツバサ「ええ…この近くにある大きな山よ」

 

ツバサ「この山にある古代遺跡には『究極の闇』が眠っているという言い伝えがあるの」

 

ツカサ「究極の闇…?」

 

ツバサ「すぐに分かるわ…とにかくついてきて」スタスタ

 

雪穂(そう言って写真館を出るツバサさんを追いかけようと、ツカサは傘を持って走って行った)

 

ツカサ「あっ、おい待て!」ダダッ

 

雪穂「ちょっと!?…行っちゃった」

 

 

 

雪穂(ツカサとツバサさんが出てから…私は窓越しに外を見つめていた)

 

雪穂(雨はまだ…止みそうにない)

 

トントン

 

雪穂(すると…再び撮影室のドアをノックする音が聞こえた)

 

亜里沙「はい…?」ガチャ

 

ニコ「…」

 

雪穂(ドアを開けた亜里沙の目の前には、ずぶ濡れになったニコさんがいた)

 

亜里沙「えっ…ニコさん!?」

 

ニコ「…あの子は?」

 

雪穂「えっと、ツカサのことですか?」

 

雪穂「ツカサだったら、さっき出て行っちゃったんですけど…」

 

ニコ「…そう」スタスタ

 

雪穂(ニコさんはそう言って…足早に写真館を出て行った)

 

雪穂「あっ…ニコさん!?」

 

亜里沙「…行っちゃったね」

 

雪穂「うん…」

 

亜里沙「ニコさん、悲しそうな顔してたね…」

 

雪穂「…うん」

 

雪穂(…この世界で本当に私達ができることはあるのかな?)

 

雪穂(もし、あるとすれば…)

 

雪穂「そうだ…!」

 

亜里沙「…雪穂?」

 

雪穂(私は一昨日、ツカサからもらった新聞を手に取った)

 

 

 

ツバサ「着いたわ」

 

ツカサ(オレはツバサと共に傘をさしながら…灯溶山にある古代遺跡の近くまでやってきた)

 

ツカサ(しかし、古代遺跡の中は警察の包囲網が既に敷かれていて…とても入れそうになかった)

 

ツカサ「確かに黒い煙が出てるな…」

 

?「あなた達…」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレが振り向くと、そこにはニコの母がいた)

 

ニコの母「一体…ここで何をしているの?」

 

ツカサ「いや、それが…」

 

ツバサ「突然すみません、報道を知って私達も何かお手伝いできる事はないかと思いまして…」

 

ニコの母「全くしょーがないわね…ん?」

 

ツカサ「?」

 

ツカサ(オレ達が再び遺跡の入口を見ると、黒い煙がその濃さを増していく)

 

ツバサ「…遅かったわね」

 

ツカサ「どういう事だ?」

 

ツカサ(やがて…遺跡の中から人の叫び声が聞こえてきた)

 

ツカサ「!?」

 

ツカサ(次の瞬間、グロンギ怪人の集団が遺跡から出てきた)

 

ニコの母「未確認!?」

 

ツバサ「さて…行くわよ?」

 

ツカサ「分かってる!」

 

ツカサ(傘を投げ捨てたオレ達は…それぞれ一枚のカードを取り出して変身した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

ディエンド「矢澤さんはここにいてください」

 

ニコの母「…分かったわ、二人とも無理はしないでね」

 

ディケイド「…ああ」

 

ディエンド「行きましょう」

 

ディケイド(オレはライドブッカーソードモードで…ディエンドはディエンドライバーでグロンギを倒し、遺跡の中に入った)

 

 

 

ディケイド(遺跡の中には…黒い煙を吸ったのか、倒れている警察官達がいた)

 

ディケイド「おい!大丈夫か!」

 

ディエンド「…無駄よ、もう遅いわ」

 

ディケイド「なに?…なっ!?」

 

ディケイド(倒れた警官達はグロンギ怪人に変化したが…動かない)

 

ディエンド「この黒い煙は、人間をグロンギに変えてしまう力を持っているの」

 

ディエンド「ただ…まだ不完全なものみたいだから、姿が変わるだけで済んでいるのだけど」

 

ディケイド「…完全なものになったら、どうなるんだ?」

 

ディエンド「生き返るわ…人を襲う、グロンギとして」

 

ディケイド「!」

 

ディエンド「それがヤツの能力…『究極の闇』」

 

ディケイド「究極の…闇」

 

ディケイド(すると…遺跡の奥から声がした)

 

?「…なぜ俺は甦った」

 

ディエンド「来たわね…『ガミオ』」

 

ディケイド「…『ガミオ』?」

 

ディケイド(奥から現れたのは、狼のような赤いグロンギ怪人だった)

 

ガミオ「俺はもう甦らないはずだった」

 

ディエンド「そう…ならもう一度、眠ってもらうだけの話よ」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディエンド「はっ!」ガガッ!

 

ディケイド(ディエンドは一枚のカードを装填し、ガミオを攻撃したが…)

 

ガミオ「…」

 

ディエンド「…やっぱり、この程度じゃ効かないようね」

 

ガミオ「当然だ…『ン』である俺をナメるな!」

 

ディケイド(ガミオは空中を浮遊しながら手から雷を発生させ、オレ達を襲った)

 

バチバチッ!

 

ディケイド「うわっ!」

 

ディエンド「ああっ!」

 

ディケイド(攻撃を受けたオレ達は…遺跡から追い出された)

 

ディケイド「くっ…」

 

ニコの母「二人とも!」

 

ディケイド(吹き飛ばされたオレ達に、ニコの母が駆け寄る)

 

ガミオ「お前もグロンギに変えてやろう…」

 

ニコの母「!」

 

ディケイド(遺跡から出てきたガミオは…ニコの母に向かって黒い煙を放出させた)

 

ディエンド「矢澤さん、すぐに鼻と口を塞いで!」

 

ニコの母「えっ…ええ!」

 

ディケイド(瞬時に鼻と口を手で覆ったニコの母は…煙を吸うことなく、ガミオを真っ直ぐな目で見つめていた)

 

ガミオ「ならば滅びるまでだ…ハッ!」

 

ニコの母「!?」

 

ディケイド「危ない!」バッ

 

ディケイド(ガミオは手から雷撃をニコの母に向かって発したのを見て、オレはニコの母を庇った)

 

バチバチッ

 

ニコの母「きゃあっ!」

 

ディケイド「うぐっ!」

 

ディケイド(オレは雷撃のダメージに耐え切れず、変身を解いてしまった)

 

ツカサ「うう…っ!?」

 

ニコの母「…」

 

ツカサ「しっかりしろ…おい!」

 

ツカサ(意識を失ったニコの母をオレは何とか起こそうとするが、返事はない)

 

ガミオ「お前も闇に染まれ」

 

ディエンド「マズいわね…矢澤さんを連れて、一旦退きましょう」

 

ツカサ(オレとニコの母の前に出たディエンドは一枚のカードを取り出し、ディエンドライバーに装填した)

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディエンド「私に掴まって!」

 

ツカサ「…!」ガシッ

 

ツカサ(オレ達はディエンドのインビジブルの能力で姿を消し、その場を後にした)

 

ガミオ「…逃げたか、しかしどう足掻いても無駄だ」

 

ガミオ「リントは全てグロンギとなり…この世を究極の闇が覆い尽くす!」

 

 

 

ニコ(警察からママがケガをしたことを聞いた私は…急いでママが入院している病院に向かい、病室のドアを開けた)

 

ガラッ

 

ニコ「ママ!」ハァハァ

 

ニコの母「あら、ニコ…病院の中は走っちゃダメよ?」

 

ニコ(病室のベッドには…元気そうにしているママがいた)

 

ココロ「あ、ニコニー!」

 

ココア「ニコニーだ!」

 

ニコ「ココロ、ココア…!」

 

ツカサ「…」

 

ニコ「アンタまで…」

 

ニコの母「ツカサくんが未確認から私を庇ってくれたの」

 

ニコ「えっ…そうなの?」

 

ツカサ「…まあ、な」

 

ニコの母「あら、ニコったらびしょ濡れじゃない…そのままにしていたら風邪ひくわよ?」

 

ココロ「はい、タオルだよニコニー!」スッ

 

ココア「これでふきふきして、ニコニー!」

 

ニコ「…ありがと、ね」

 

ニコ(私はココロからタオルを受け取り、身体を拭いた)

 

ニコの母「ツカサくん、そういえば3号…いえ、彼女は?」

 

ツカサ「ああ…アイツなら『他に用事がある』と言ってどこかに行ったが…」

 

ニコの母「そう…彼女にも、後でちゃんとお礼を言わないとね」

 

ニコ「…」

 

ニコ(…私はまた、守れなかった)

 

ニコ「そうだ…走ったら喉が渇いちゃった、何か飲み物でも買ってくるわね!」ガラッ

 

ニコの母「あっ、ニコ…」

 

バタン

 

ツカサ「…」

 

 

 

ニコ(外で強い雨が降っている中…私は誰もいない自動販売機コーナーにいた)

 

ニコ「…」グスッ

 

ニコ(私は…勝手に溢れ出る涙を止められなかった)

 

ニコ(マナミ…私は本当にこれでいいの?)

 

ニコ「…!」ゴシゴシ

 

ニコ(誰かがやってくる足音に気づいた私は…急いで涙を拭った)

 

ツカサ「…ここにいたのか」

 

ニコ「…何よ?」

 

ツカサ「それはこっちの台詞だ…さっき、写真館に来たんだろう?」

 

ニコ「…そう、もう知ってるのね」

 

ツカサ「連絡があったからな…それで、何を話そうとしたんだ?」

 

ツカサ「まさか…クウガもスクールアイドルもやめるって言うんじゃないだろうな?」

 

ニコ「そんなこと、言うわけないじゃない!」

 

ニコ「特にアイドルは小さい頃からの夢だもの…簡単に諦めるはずないわ」

 

ニコ「でも…分からないの」

 

ツカサ「…」

 

ニコ「マナミがいなくなって、一人だと気づいた今…自信がないの」

 

ニコ「誰も守れないで、誰も笑顔にできないで何がアイドルなのかって…!」

 

ツカサ「…ニコ」

 

ニコ「私は…皆に、笑顔でいてほしいだけなのに」

 

ツカサ「…」スッ

 

ニコ(ツカサは…私がよく知っているあのポーズをしながら、笑顔でこう言った)

 

ツカサ「…にっこにっこにー!」

 

ニコ「!?」

 

ツカサ「…///」コホン

 

ニコ「アンタ、今の…」

 

ツカサ「オレもだ」

 

ニコ「…えっ?」

 

ツカサ「オレも最初は自信がなかった、この世界にやってきて…世界を救えるのか自信がなかった」

 

ニコ「…世界って、どういう意味よ?」

 

ツカサ「オレは別の世界からやってきた…全ての世界を救う為に」

 

ニコ「はぁ?…そんなの信じられるわけないでしょ」ハァ

 

ツカサ「だろうな、それでいい…」

 

ツカサ「だが…これだけは言える」

 

ツカサ「オレはアンタのスクールアイドルである姿、クウガとして戦っている姿…」

 

ツカサ「そして姉としての顔、娘としての顔を見て…アンタのいるこの世界を救いたいと思った」

 

ニコ「…アンタ」

 

ツカサ「オレは…アンタの顧問兼マネージャーだ」

 

ツカサ「アンタが皆を笑顔にさせられるように…オレが全力で支えてやる!」

 

ツカサ「オレが一緒に戦ってやる!」

 

ツカサ「だから、アンタは…一人じゃない!」

 

ニコ「…!」

 

ツカサ「なあ、知ってるか?これはアンタの母親から聞いた話だが…」

 

ニコの母『ニコって名前…本当はパパが漢字の愛と笑いで、愛笑(ニコ)ってつけたかったの』

 

ニコの母『自分や皆の笑顔を愛せますように…って』

 

ニコ「…パパが?」

 

ツカサ「ああ…だから、自信を持て」

 

ツカサ「自分の笑顔に…」

 

?「ツカサ!」ダダッ

 

ニコ(二人の女の子が走りながら、ツカサに声をかけてきた)

 

ツカサ「雪穂、亜里沙…」

 

雪穂「街で未確認生命体が集団で暴れてるって…」ハァハァ

 

亜里沙「ニュースでそう言ってた!」ハァハァ

 

ニコ「えっ…集団で?」

 

ツカサ「…そうか、じゃあオレは行くか」

 

ツカサ「世界を救いに」スタスタ

 

ニコ(そう言って…ツカサはその場を後にした)

 

亜里沙「…ニコさんは、行かないの?」

 

ニコ「えっ…?」

 

雪穂「ちょっと亜里沙…すみません、失礼なことを言ってしまって」

 

雪穂「私達、ツカサと一緒に旅をしている高坂雪穂と絢瀬亜里沙といいます」

 

ニコ「旅…そういえばあの子、別の世界がどうこう言ってたわね」

 

雪穂「ええ、その話は信じてもらえないと思うんですけど…」

 

雪穂「これを見てほしいんです」サッ

 

ニコ(彼女は私に…何かが書かれた紙を渡してきた)

 

雪穂「考古学で遺跡や碑文を研究している城南大学のサワタリさんって人からもらったんですけど…」

 

ニコ「…これは?」

 

雪穂「その紙は…クウガに関係する碑文のデータです」

 

ニコ「えっ…クウガに?」

 

亜里沙「はい!」

 

ニコ「…」

 

ニコ(紙には、碑文とその意味が書かれていた)

 

雪穂「ニコさんがクウガだってことはツカサから聞いてました…」

 

亜里沙「それで私達も…ニコさんの力になりたいと思って!」

 

ニコ「あなた達…」

 

雪穂「私達…見たいんです」

 

ニコ「…見たい?」

 

亜里沙「ニコさんの…笑顔を!」ニコッ

 

ニコ「!」

 

ニコ(碑文とその意味を全部読んだ私は…彼女達にお礼を言って、ある場所に向かった)

 

ニコ「…ありがとう、行ってくるわ!」ダッ

 

雪穂「はい!」

 

亜里沙「ニコさん、頑張って!」

 

 

 

ニコ(私は病室のドアを開けた)

 

ガラッ

 

ニコ「ママ!」

 

ニコの母「ニコ…どうしたの?」

 

ニコ「…行ってきます」ニコッ

 

ニコの母「…そう、行ってらっしゃい」ニコッ

 

ギュッ

 

ニコ「…?」

 

ニコ(引き留めるように…ココロとココアが私に抱きついてきた)

 

ココロ「ニコニー、どこいくニコ…?」

 

ココア「おそと、すごいあめニコ…」

 

ニコ「ココロ、ココア…」ナデナデ

 

ニコ(私は安心させるために二人の頭を撫でてこう言った)

 

ニコ「大丈夫!この空だってきっと晴れて、青空になるニコ!」

 

ココロ「ほんとニコ?」

 

ニコ「ええ!」

 

ニコ「今だって、この雨を降らせてる雲の向こうには…どこまでも青い空が広がってるニコ!」

 

ニコ「だから…大丈夫ニコ!」

 

ニコ(そう言うと二人は安心したのか、私から離れた)

 

ココア「ニコニー…わかったニコ!」

 

ココロ「いってらっしゃいニコ!」

 

ニコ「ありがとう…二人とも」

 

ニコ(それからすぐ…私は病室を出て、病院を後にした)

 

ニコ(そうよ、私は…一人じゃない)

 

ニコ(ツカサが一緒に戦ってくれる…)

 

ニコ(ママ、ココロ、ココアがニコの笑顔を支えてくれる…)

 

ニコ「…」ダダッ

 

ニコ(私が病院の外に出ると…いつの間にか雨は止んでいた)

 

 

 

ツカサ(オレはグロンギ怪人の軍勢がいる現場に到着した)

 

ツカサ(その軍勢を率いていたのはガミオだった)

 

ガミオ「ようやく力が戻った…これでリントを完全にグロンギにする事が出来る」

 

ガミオ「だが、その前に…グロンギである俺達がこの世界を闇に包む!」

 

ガミオ「そして、リントもグロンギも一つに…全ては闇に包まれる」

 

ツカサ「さあ…それはどうだろうな?」

 

ガミオ「お前か…お前はクウガでもこの世界のリントでもない」

 

ガミオ「消えよ、リントは全て滅ぼし合うグロンギとなる…それが宿命だったのだ」

 

ツカサ「確かにオレはこの世界のリントじゃない…だけどな」

 

ツカサ(オレはディケイドライバーを装着し、一枚のカードを取り出す)

 

ツカサ「守りたいものがある…」

 

ガミオ「そうか、それは一体何だ」

 

ツカサ「それは…笑顔だ」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(変身したオレはライドブッカーソードモードでグロンギ怪人を次々と斬りつける)

 

ガミオ「笑顔だと?そんなものが何になるというのだ」

 

ディケイド(オレは攻撃を続けながらこう答える)

 

ディケイド「人間が全てを滅ぼし合うなんて…そんなの悲しいだけに決まってる!」

 

ディケイド「誰かの涙を見るぐらいだったら、オレは笑い合っていてほしい!」

 

ガミオ「そんなものは…所詮、綺麗事だ」

 

ディケイド「だからだ!」

 

ガミオ「何…?」

 

ディケイド「綺麗事だからこそ…現実にしたいんだ!」

 

ディケイド「傷つけ合うことでしかやりとりできないのは…悲し過ぎる!」

 

ディケイド「オレはそう思った!だから…」

 

ドカッ!バキッ!

 

ディケイド「うわっ!」

 

ディケイド(全てを言い終える前に怪人達の攻撃を連続で受けたオレは…強制的に変身が解除されてしまった)

 

ツカサ「…くっ」

 

ガミオ「無駄だ…やれ」

 

ツカサ(怪人は一斉にオレを囲み襲おうとする)

 

ツカサ(オレの旅は、ここで終わるのか…?)

 

ツカサ「ぐっ…うわぁぁぁ!!」

 

ブゥゥゥン!

 

ツカサ(すると…こっちに向かってくるバイクの音が聞こえてきた)

 

ツカサ「?…あのバイク、まさか『ビートチェイサー2000』か?」

 

ツカサ(誰かを乗せたビートチェイサーはこちらに突進し、怪人達を吹き飛ばした)

 

ツカサ(怪人達から逃れたオレは、ビートチェイサーに乗っているのが誰なのか確認した)

 

ツカサ「アンタ…もしかして、ニコか!?」

 

ニコ「…待たせたわね」

 

ツカサ(ヘルメットを取ったニコはビートチェイサーから降り、オレの所に駆け寄った)

 

ツカサ「免許、持ってたのか…?」

 

ニコ「18だし、持ってると何かと便利なのよね…って言ってもこのバイクはママから借りたものなんだけど」

 

ガミオ「お前…何者だ」

 

ニコ「大銀河宇宙ナンバーワンアイドル…矢澤ニコよ」

 

ガミオ「お前に何ができる?」

 

ニコ「皆を笑顔にすることと…皆の笑顔を守るためにアンタ達と戦うことよ!」

 

ガミオ「フン…しかしもう遅い」

 

ガミオ「人間は強さを欲し、戦いを求める!グロンギになるのも定めだ」

 

ツカサ「違うな…」

 

ガミオ「何?」

 

ツカサ「彼女が戦うのは…これ以上、他の誰も戦わなくていいようにするためだ!」

 

ツカサ「いつも誰かの笑顔の為に頑張ろうとする…」

 

ツカサ「それは素晴らしい事だって、オレはそう信じてる!」

 

ツカサ「彼女が皆の笑顔を守るなら…オレは彼女の笑顔を守る!」

 

ツカサ「知ってるか?ニコの笑顔はな…皆を幸せにする『にっこりの魔法』なんだ」フフッ

 

ニコ「…ツカサ」

 

ガミオ「お前は一体、何者だ」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ニコ「…!」バッ

 

ツカサ(ニコが腹部に両手をかざすと変身ベルトである『アークル』が現れた)

 

ツカサ(同時にオレももう一度、カードをディケイドライバーに装填し…)

 

ツカサ「変身!」

 

ニコ「変身!」

 

ツカサ(オレはディケイド、そしてニコは『4号』…赤いクウガに変身した)

 

ガミオ「なっ…クウガだと!?」

 

クウガ「…そう、クウガよ!」

 

ガミオ「グッ…ワォォォン!」

 

ディケイド(クウガを見て狼狽えたガミオが吼えると…配下のグロンギ怪人達が背中合わせになったオレ達を取り囲んだ)

 

クウガ「それにしてもアンタ…なかなかマネージャーらしい顔つきになったじゃない」

 

ディケイド「…どんな顔だ?」

 

クウガ「察しなさいよ!」

 

ディケイド「まあいい…行くぞ!」

 

クウガ「ええ!」

 

ディケイド(オレとクウガはそれぞれ怪人に立ち向かっていく)

 

ディケイド(曇っていた空は…少しずつ、晴れ間が見えてきていた)

 

 

 

クウガ「はあっ!」

 

クウガ(未確認達の中の一体にキックをぶつけると、怪人は爆発した)

 

クウガ(でも…まだ倒したのはたった一体だけ)

 

クウガ「これじゃキリがないわね…そうだわ!」

 

クウガ(私はさっき、新聞記事で見た古代遺跡の碑文を思い出した)

 

クウガ「確か…」

 

『邪悪なる者あらば その技を無に帰し 流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり』

 

クウガ「…だったわね?」

 

クウガ「超変身!」

 

クウガ(すると…クウガは赤から青に変わった)

 

クウガ(青のクウガに変わった私は襲いかかってきた怪人を避けるためにジャンプした)

 

クウガ「えっ…何よこれ!?赤の時よりも高く跳んでるじゃない!」

 

クウガ(着地した私にディケイドがこう言った)

 

ディケイド「何でもいい、長いものを持て!」

 

クウガ「はぁ?長いもの?」

 

ディケイド「それがドラゴンフォームの特徴だ!」

 

クウガ「長いものって…これかしら?」

 

クウガ(私が近くに落ちていた鉄パイプを拾うと…青く長い棒に変化した)

 

クウガ「邪悪を薙ぎ払うって…これのことね、ふんっ!」ゴッ!

 

クウガ(私は青い棒で未確認を突いていくと…突かれた未確認達は次々と爆発していく)

 

クウガ「こんなの余裕…!?」

 

クウガ(私が油断していると、空から怪人が突っ込んできた)

 

クウガ「ちょっ…!」サッ

 

クウガ(私はそれを何とか避けた)

 

クウガ「危ないじゃない!この棒じゃ届かないし…」ハッ

 

『邪悪なる者あらば その姿を彼方より知りて 疾風の如く邪悪を射抜く戦士あり』

 

クウガ「そうよ、こんな時は…超変身!」

 

クウガ(私は緑のクウガに変わった)

 

クウガ「えっと、射抜くものは…」

 

ディケイド「これを使え!」

 

クウガ(私が『射抜くもの』を探していると、ディケイドが倒した怪人から奪った銃を投げてきた)

 

クウガ「あっ…分かったわ!」

 

クウガ(敵の武器だった銃は形を私専用のものへと変化させる)

 

クウガ(私は集中して…空の敵がどこにいるか突き止めた)

 

クウガ「そこっ!」バシュッ!

 

クウガ(撃たれた怪人は…落ちながら爆発していった)

 

クウガ「…やった」

 

ディケイド「そのペガサスフォームは50秒しかもたない!」

 

クウガ「はぁ!?」

 

ディケイド「早く他のフォームに変われ!」

 

クウガ「早く言いなさいよ、それ…超変身!」

 

クウガ(私は時間切れになる前に…紫のクウガに姿を変えた)

 

『邪悪なる者あらば 鋼の鎧を身に付け 地割れの如く邪悪を斬り裂く戦士あり』

 

クウガ「これがそうね…って!?」

 

ガキン!

 

クウガ「うっ…あれ、痛くない?」

 

クウガ(怪人が剣を振り下ろしてきたから、思わず身体で受け止めちゃったけど…私の身体に痛みはなかった)

 

ディケイド「タイタンフォームはその高い防御力が長所だ!」

 

クウガ「じゃあ、斬り裂くってのは…こういうことね!」

 

クウガ(私が怪人から剣を取りあげると…剣は私専用の武器に変わった)

 

クウガ「はっ!」グサッ!

 

クウガ(私はその剣で怪人を斬り裂き貫くと…怪人は倒れ、爆発した)

 

クウガ「って…この身体、思ったより重いんですけど!?」ズシッ

 

ディケイド「…赤に戻ればいいだろ?」

 

クウガ「全く、どれもこれもクセがすごいわね…」ハァ

 

ディケイド「文句言うな…」

 

クウガ(私が赤いクウガに戻ると、赤い怪人がまた私達の目の前に現れた)

 

ガミオ「…闇を拒絶するというのか、いいだろう」

 

クウガ(赤い怪人はオオカミのように吠えると…残りの怪人達を集めた)

 

ガミオ「全て俺の力となれ!」

 

クウガ(赤い怪人は他の怪人達を黒い煙に変えて…それを吸収した)

 

クウガ「ちょっと、何あれ…!」

 

ガミオ「ハッ!」バチバチッ!

 

クウガ(赤い怪人は手から電撃を出してきた)

 

クウガ「痛っ!」

 

ディケイド「ぐっ…!」

 

ガミオ「全て闇に染まれ…」

 

クウガ(強過ぎる…でも、負けるわけにはいかないわ)

 

クウガ(この空だって…せっかく晴れてきているんだもの)

 

クウガ(パパ、マナミ…私は)

 

クウガ「私は絶対に…諦めない!」

 

 

 

ディケイド(クウガがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにクウガの力が宿ったことを確認する)

 

ディケイド「ちょうどいい…使ってみるか」

 

クウガ「…えっ、何をよ?」

 

ディケイド(オレはカードの一枚をベルトに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…ク・ク・ク・クウガ!』

 

ディケイド(それからオレはすぐに、クウガの後ろに回り込み…)

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

クウガ「はぁ…?ちょっ、ちょっと!」

 

ディケイド(クウガの背中を押した)

 

ディケイド(やがてクウガは形を変え…クウガゴウラムに変形した)

 

クウガ「な…何よこれ!」

 

ディケイド「オレとニコの力だ」

 

クウガ「はぁ?」

 

ディケイド「…頼んだぞ」

 

クウガ「…全く、しょーがないわねー!」

 

クウガ「行くわよ!」

 

ディケイド(クウガゴウラムはガミオに高速で突進していく)

 

ガミオ「ウグッ…離せ!」

 

クウガ「離すわけないでしょ!」

 

ディケイド(クウガゴウラムが両顎でガミオを捕らえ、空中飛行しているうちにオレはカードを装填する)

 

『ファイナルアタックライド…ク・ク・ク・クウガ!』

 

ディケイド(それに呼応するかのように、クウガゴウラムはガミオを拘束したまま急降下していく)

 

クウガ「はあーっ!!」

 

ディケイド「やあーっ!!」

 

ディケイド(オレは上空へ跳び上がり、急降下したクウガゴウラムと挟むようにガミオにキックをぶつけた)

 

ディケイド(これは『DCDA(ディケイドアサルト)』…オレとクウガの技だ)

 

ガミオ「ガアッ!」

 

ディケイド(クウガゴウラムはガミオを落とすと…クウガに戻り、オレと同時に着地した)

 

ガミオ「グッ、ウグッ…」

 

ガミオ「リントの闇が、晴れるぞ…」

 

ディケイド(そう言うと…ガミオは叫びながら爆発した)

 

ディケイド(空には…雲一つない青空が、どこまでも広がっていた)

 

 

 

ツバサ(その頃、私はディケイドとクウガの戦いを少し離れた高層ビルの屋上から見守っていた)

 

ツバサ「…」

 

?「見~つけた!ツバサったらここにいたのね!」バサバサ

 

ツバサ(声のする方を向くと、そこには小型の白いコウモリがいた)

 

ツバサ「あら、キバーラじゃない」

 

キバーラ「どう?新しい『ディケイド』の様子は…」

 

ツバサ「ええ…彼ならきっと、全ての世界を救ってくれると思うわ」

 

キバーラ「そう…ところで、ツバサはこれからどうするつもり?」

 

ツバサ「もちろん決まってるわ」

 

ツバサ「私は、私のしたい事をする…それだけよ」

 

キバーラ「くすくす…相変わらずねぇ」

 

ツバサ「ふふっ…」

 

 

 

ニコ「ここ数日、ずっと忙しくて大変だったけど…やっと来られたわ」フゥ

 

八代(ヤシロ)愛笑(マナミ)

 

ニコ「…ここが、マナミのお墓ね」

 

ニコ「来るのが遅くなって、悪かったわね…マナミ」

 

ニコ「赤いバラ持って来たわよ…アンタ、好きだったでしょ?」

 

ニコ「…それにしても、今日は一段と晴れてるわね」

 

ニコ「キレイな青空…アンタもそう思わない?」

 

ニコ「マナミ…」

 

?「よう」

 

ニコ「!」クルッ

 

ツカサ「…」

 

ニコ「アンタ…何でここに?」

 

ツカサ「…本物の『ヤシロマナミ』に、会いたくなってな」

 

ニコ「…そう」

 

ツカサ「それで…これからどうするんだ?」

 

ニコ「もちろん…スクールアイドルをやり続けるわ」

 

ニコ「だってニコは…歌って踊ることで、皆を笑顔にさせられるアイドルが大好きだもの」

 

ニコ「その夢を…簡単に諦めるわけにはいかないわ」

 

ニコ「マナミやパパ…世界中の皆のためにも、ね」

 

ツカサ「…そうか」

 

ニコ「アンタにも、顧問兼マネージャーとして…ちゃんと頑張ってもらわないとね?」

 

ツカサ「ふふっ、そうだな…ん?」

 

ツカサ(ふと自分の身体を見ると…消えかけている事に気付いた)

 

ニコ「えっ、何で消えてるのアンタ…?」

 

ツカサ「…どうやら、この世界でオレがやらなきゃいけない事は終わったらしい」

 

ニコ「はぁ!?」

 

ニコ「何よそれ…アンタ、一緒に戦ってくれるって言ったじゃない!」

 

ニコ「私の笑顔を守るって言ってたじゃない!」

 

ニコ「仕事を途中でほったらかしにするマネージャーが…一体、どこにいるっていうのよ!?」

 

ツカサ「悪い…だが、一緒に戦ってやる事もアンタの笑顔を守る事も本当だ」

 

ツカサ「オレ達は例え…別々の世界にいても心は繋がっている」

 

ツカサ「どうしても困った時は…また駆けつける」

 

ニコ「何なのよ、それ…」

 

ツカサ「だから…安心してくれ」

 

ニコ「…全く、しょーがないわねー!」ハァ

 

ニコ「でも…一つだけ、約束しなさい!」

 

ツカサ「…何だ?」

 

ニコ「また、会いましょう?」

 

ツカサ「…ああ、必ずな」グッ

 

ツカサ(オレはサムズアップをすると、ニコはあのポーズをしてこう言った)

 

ニコ「にっこにっこにー!」

 

ツカサ「…」

 

ニコ「やんなさいよ!」

 

ツカサ「…じゃあな」フフッ

 

ニコ「…ええ」フフッ

 

ツカサ(オレの身体はそのまま消え…強制的に写真館へと戻されていった)

 

ニコ「…あの子、何だかニコにとってすっごく大切な存在だった気がする」

 

ニコ「気のせい、かしらね…?」

 

ニコ「…ありがとう、ツカサ」

 

 

 

ニコ(それから私は…一人でスクールアイドルを続けている)

 

ニコ(私はこれからも変わらず、皆を笑顔にしていきたい)

 

ニコ(そして、私は皆の笑顔を…)

 

ニコ「それでは皆さんご一緒に!」

 

ニコ「にっこにっこにー!」

 

 

 

雪穂(私達はツカサが作ったポトフを食べていた)

 

亜里沙「ハラショー…!ツカサ、これ美味しい!」

 

ツカサ「当然だ、オレが作ったんだからな…」フフン

 

雪穂「それにしても、未確認の事件って…これで終わったのかな?」

 

ツカサ「さあ…どうだろうな」

 

雪穂「いや、どうだろうなって…」

 

ツカサ「ニコの本当の戦いはこれから始まる」

 

ツカサ「皆を笑顔にする為に、皆の笑顔を守る為に…そして」

 

ツカサ「小さい頃からの夢を叶える為に…な」ピラッ

 

雪穂(そう言ってツカサは、私達に一枚の写真を見せてきた)

 

雪穂(写真にはアイドルの衣装を着たニコさんが家族と一緒に笑い合う姿と…クウガに変身しようとするニコさんが写っていた)

 

雪穂「これって…いつ撮ったの?」

 

ツカサ「…この世界に来たばかりの時に、一枚だけ撮ったのを現像したらそうなってた」

 

ツカサ「ただ、その時撮ろうとしていた光景はそれじゃなかったからな…困ったもんだ」ハァ

 

亜里沙「…ハラショー」

 

雪穂「亜里沙…?」

 

ツカサ「どうした?」

 

亜里沙「私はこの写真、好きだよ?」

 

ツカサ「…そうか?」

 

亜里沙「うん、ツカサが撮ったこの写真…私はすっごくハラショーだと思うよ!」

 

雪穂「亜里沙…確かに、そうかもね」フフッ

 

亜里沙「うん!」ニコッ

 

ツカサ「…///」

 

雪穂「あれ?もしかしてツカサ、照れてるの?」

 

ツカサ「う…うるさい!照れてない!」

 

雪穂(私達は照れ隠しするツカサを見て、一緒に微笑んでいた)

 

ツカサ「全く…それはそうと」チラッ

 

ツカサ「…何でアンタがここにいるんだ?」

 

ツバサ「熱っ…」ボソッ

 

雪穂(そこには私達と一緒にポトフを食べているツバサさんがいた)

 

ツバサ「何かしら?」

 

ツカサ「人の話を聞け!」

 

雪穂(今、熱いって言ったような気が…?)

 

ツバサ「単純な事よ…私はやりたい事をやるだけ」

 

ツバサ「そして私はあなた達と一緒に旅をしたい…そう思っただけよ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

ツバサ「まあ、ほとんどは別行動になるでしょうけど…私と一緒に旅をして損はないわ」

 

ツバサ「何かあったら助けられるし」フフッ

 

ツカサ「オレは助けなんて…」

 

雪穂「まあまあ、良いじゃん…ツバサさんがいれば心強いよ!」

 

亜里沙「亜里沙もそう思う…ちょうどお部屋も一つ空いてるし!」

 

ツバサ「それじゃ…決まりね?」

 

ツカサ「お前な…って!?」

 

雪穂(突然、秋の山道の中を走っていくパトカーの背景が別の背景に変わった)

 

ツバサ「そう言ってるうちに…ほら」

 

ツカサ「…次の世界か」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ここは…キバの世界か」

「お前がキバーラの言っていた…」

「私…スクールアイドルなんて無理だよ」

「変身!」

「ニコさんと同じ…クウガ?」

「貴様の命日にしてやる」

「王の判決を言い渡す…」

「その命、神に返しなさい」

第4話『リミックス♬君に捧げる独奏(ソロ)曲』

ウェイクアップ!運命の鎖を解き放て!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~花陽×キバの世界~
第4話『リミックス♬君に捧げる独奏(ソロ)曲』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは『クウガの世界』だ」

ガミオ「この世を究極の闇が覆い尽くす!」

ニコ「私は…皆に、笑顔でいてほしいだけなのに」

ツカサ「にっこにっこにー!」

ツカサ「オレは…アンタのいるこの世界を救いたいと思った」

ツカサ「アンタが皆を笑顔にさせられるように…オレが全力で支えてやる!」

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

ニコ「超変身!」

ディケイド「オレとニコの力だ」

ニコ「…ありがとう、ツカサ」


(私は小さい頃からアイドルに憧れていて…)

 

(あっ、でも…憧れているっていうよりはただ好きなだけなのかな?)

 

(ひらひら、ふわふわした衣装でくるくる回りながら踊る姿は…すごくキラキラしてて)

 

(テレビに映っているアイドルを見ているだけで…私はなんだか幸せな気持ちになる)

 

(見ているだけで本当に…嬉しくって楽しくって胸がワクワクして)

 

(どこか身体の奥の方がうずうずするの)

 

(でも私はどんくさくて、歌う声も小さくて、踊るのも下手っぴで…)

 

(ビビリで、臆病で、気が弱くて、ドジばっかりして)

 

(不器用で、要領も悪くて、引っ込み思案で)

 

(地味で、何も特技なんてなくて…)

 

(おまけに私は…これまで自分で決めなきゃいけない大事なことまでも、全部決めずに逃げてきた)

 

(自分が決めたら…きっと失敗するって思ってたから)

 

(そうやって自分自身を鎖で縛りつけてた)

 

(でも…私はずっとこのままでいいと思ってた)

 

(無理に自分を変える必要なんてないんだって)

 

(だけど…ある日、お母さんが大切にしていたバイオリンから声のような音が聞こえた)

 

(まるで誰かが私を呼んでいるような気がして)

 

(いつの間にか私は…その音に導かれるように、身体が勝手に動いてた)

 

(その時の私は…まるで今までと違う自分になったような気がして)

 

(…ねぇ、お母さん?)

 

(私は本当にこのままでいいの?)

 

(ハナヨは一体、どうすれば…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

雪穂(私達が写真館で話していると…スタジオの背景が別のものに変わった)

 

雪穂「これ、月とお城の中に…」

 

亜里沙「ドラゴン?」

 

ツカサ「キャッスルドランだな」

 

雪穂「えっ…何それ?」

 

ツカサ「キバをサポートするモンスターが幽閉されてる竜の城だ」

 

雪穂「キバって…?」

 

ツバサ「この世界のライダーよ」

 

ツカサ「ここは…『キバの世界』か」

 

亜里沙「私達はここで何をすればいいの?」

 

ツバサ「この世界には人間の『ライフエナジー』…簡単に言えば生命力の事なんだけど」

 

ツバサ「それを餌にする為に人間を襲う『ファンガイア』という怪人がいるの」

 

亜里沙「ってことは『ファンガイア』って…バンパイアみたいなもの?」

 

ツバサ「そうね…確かに近いわね」

 

雪穂「じゃあ、この世界では…その『ファンガイア』と戦っているキバっていうライダーを探せば良いんですか?」

 

ツバサ「ええ…でも、単純にキバを見つけるだけで終わりって事ではないでしょうね」

 

ツカサ「…『クウガの世界』がそうであったようにか?」

 

ツバサ「そうよ…他の世界もクウガになったニコさん同様、μ'sメンバーの誰かがキバになっている可能性が高いわ」

 

雪穂「えっ…そうなんですか!?」

 

ツバサ「あくまでも可能性の話だけど、別の世界にいるμ'sがライダーになっているのを考えると…あり得ない話じゃないわ」

 

亜里沙「ハラショー…!」

 

ツバサ「その為に、私達が今するべき事は…」

 

雪穂「今するべきことは…?」

 

ツバサ「…ごちそうさま」ガタッ

 

雪穂「えっ?」

 

ツカサ「は?」

 

ツバサ「休んで英気を養うことが何より大切よ」スタスタ

 

ツバサ「じゃあ、私は寝るから」ガチャ

 

雪穂(そう言ってツバサさんは部屋のドアを開けた)

 

ツカサ「おい待て!」ガタッ

 

ツバサ「何かしら?」

 

ツカサ「オレはここにいていいなんて一言も…!」

 

ツバサ「あら、じゃあ私にこのまま野宿しろとでも言いたいのかしら?」

 

ツカサ「うっ…いや、別にそこまでは言ってないが」

 

ツバサ「そう…それじゃまた明日、おやすみ」バタン

 

ツカサ「あっ、おい!」

 

雪穂(押しに弱いなぁ…)

 

雪穂「…じゃあ、私達もこれ食べて寝よっか」

 

亜里沙「うん!」

 

雪穂(私達は…明日の朝までゆっくり休むことにした)

 

 

 

?(夜の遅い時間…私は街の外れにある人気のない場所に来ていた)

 

男「チュ~リッヒヒヒ!」

 

女「…」

 

?(大きく半透明な二本の牙を首に突き刺された女の人の身体が透けていくと…やがて服を残して消えた)

 

?(この男の人はファンガイアと呼ばれる魔族)

 

?(普段は人間として生活してるんだけど…ガマンできなくなった時はこうして人を襲ってライフエナジーを吸収してる)

 

?(私は「人を襲う悪いファンガイアを倒して」という声に導かれるまま、ここにやってきた)

 

?「…あ、あのっ!」

 

男「…ん?」クルッ

 

?(振り向いた男の人は、顔の下半分にステンドグラスのような模様を浮かべると…蜘蛛のようなファンガイアになった)

 

スパイダーファンガイア「君も僕に喰われたいのかい?」

 

?(私はファンガイアになった彼に怯えながら、近くを飛び回っていた金色の小さなコウモリの名前を呼んだ)

 

?「ひっ…キ、キバット!」

 

キバット「よっしゃ!ハナヨ、キバっていくぜ!」パタパタ

 

ハナヨ(私はキバットを掴んで…そのまま腕に噛みつかせる)

 

キバット「ガブッ!」

 

ハナヨ「…へ、変身」

 

ハナヨ(私はお腹に巻かれたベルトにキバットを着けて、姿を変えた)

 

キバ「…」

 

スパイダーF「お前は…キバ!?」

 

キバ「…!」ダダッ

 

キバ(キバになった私を見て驚く相手に対して、私は走り出してパンチした)

 

キバ「ふっ!」ガッ

 

スパイダーF「ウグッ…」ドガッ

 

キバ(私はそのまま相手に対して、連続でパンチしていく)

 

キバ「はっ!やぁっ!」ゴッ!ガッ!

 

スパイダーF「グアッ…!」バタッ

 

キバ「…?」

 

キバ(相手は倒れた…と思ったら、すぐに起き上がった)

 

スパイダーF「…!」ムクッ

 

キバ「!?」

 

スパイダーF「ガーリッククク!」ダダッ

 

キバット「あっ!アイツ逃げる気だな…待て!」パタパタ

 

キバ(キバットはベルトから離れると…相手の周りを飛び回りながら攻撃した)

 

キバット「このっ!おりゃ!」ゴン!

 

スパイダーF「グッ…」ヨロッ

 

キバ(キバットのおかげで相手がひるんでいる間に…私はベルトから赤い笛を取り出した)

 

キバ「…」サッ

 

キバット「よし…いくぜ!」

 

キバ(キバットがベルトに戻ったのを確認した私は…キバットにその赤い笛を吹かせた)

 

キバット「ウェイクアップ!」

 

キバ(笛の音が鳴るとキバットはまたベルトから離れ…私は身体中に力を溜めるようにかがんだ)

 

キバ「はぁっ…!」

 

キバ(それから私が右足を上げると、キバットは右足にある鎖を切った)

 

キバ(すると…私の右足から赤いコウモリのような翼が出てきた)

 

キバ「はっ!」

 

キバ(月が満ちる夜の中で…私は地面をゆっくり蹴って、高くジャンプした)

 

スパイダーF「!?」

 

キバ(一回転した私は…相手に向かって右足を突き出した)

 

キバ「やあっ!」

 

キバ(私のキックが命中した相手は飛んでいって、そのままコンクリートの壁にぶつかった)

 

スパイダーF「グワアァァァァァ!!」

 

キバ(壁には一瞬、大きなコウモリのようなマークが浮かんで…相手の身体はガラスのように割れた)

 

キバ「…」フゥ

 

キバ(戦いが終わって…私は変身を解いた)

 

ハナヨ(ベルトから離れたキバットが私に話しかけてくる)

 

キバット「いや~…今日もやったな、ハナヨ!」パタパタ

 

ハナヨ「う、うん…」

 

キバット「…?」

 

ハナヨ「…」

 

キバット「おいおい…どうしたんだよ、ハナヨ?」

 

ハナヨ「いや、その…」モジモジ

 

キバット「何だよ、そんなにモジモジして」

 

ハナヨ「な、何でも…ない」

 

キバット「本当か?」

 

ハナヨ「うん…」

 

ハナヨ(あのね、キバット…)

 

ハナヨ(私は何のために戦っているんだろう?)

 

ハナヨ(どうして「悪いファンガイアを倒して」って声が聞こえてくるんだろう?)

 

ハナヨ(私なんか…何の取り柄もないのに)

 

ハナヨ(一体、なんで…)

 

キバット「それじゃ、帰ってひとっ風呂でも浴びるかな」パタパタ

 

ハナヨ「…うん」

 

ハナヨ(私はキバットと一緒に家へ帰ることにした)

 

 

 

雪穂(翌朝、私は起きてスタジオのある部屋に入った)

 

亜里沙「あっ…雪穂!」

 

ツバサ「おはよう」

 

雪穂(部屋には亜里沙とツバサさんがいた)

 

雪穂「おはよう…ございます」

 

亜里沙「ツカサ、今日はオムライスを作ってくれたんだ…一緒に食べよう!」

 

雪穂「うん…」

 

雪穂(イスに座った私はテーブルに置かれたオムライスを食べることにした)

 

雪穂「いただきます…」パクッ

 

雪穂「…うん、美味しい」

 

亜里沙「でしょでしょ!」

 

雪穂「あれ…そういえばツカサは?」

 

亜里沙「ツカサなら『ちょっと外の様子を見てくる』って言って、先に出て行ったよ?」

 

雪穂「そっか、それじゃ私達は…どうしよっか?」

 

亜里沙「うーん…」

 

ツバサ「ごちそうさま」フキフキ

 

雪穂(ツバサさんがそう言って口についたケチャップを拭き取ると、足元に置いていたカバンから二つの道具を取り出した)

 

ツバサ「それなら二人にちょうどいい『お宝』があるわ」

 

雪穂「えっ…何ですか、それ?」

 

ツバサ「ファンガイアに対抗できる…とまではいかないけど、護身用の道具よ」ゴトッ

 

雪穂(ツバサさんはその二つの道具をテーブルの上に置いた)

 

ツバサ「剣、鞭、ブーメランとして使えるファンガイアスレイヤーとフックと矢を発射できるファンガイアバスター…」

 

ツバサ「外に出るならこれらを持って出るといいわ…きっと何かの役に立つでしょうから」

 

亜里沙「ハラショー…!」

 

雪穂(亜里沙は手に取ったファンガイアバスターを見つめていた)

 

雪穂「えっと…あの、良いんですか?」

 

ツバサ「ええ、今の私には『ディエンドライバー』っていう青い銃があるから…問題ないわ」

 

雪穂「そうですか…ありがとうございます」

 

亜里沙「ツバサさん、ありがとう!」

 

ツバサ「どういたしまして」フフッ

 

ツバサ「じゃあ、私はちょっと用事があるから…先に出るわね」スタスタ

 

雪穂「あっ、はい…」

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

ガチャ…バタン

 

雪穂「…」

 

雪穂(私はテーブルに置かれたファンガイアスレイヤーを見つめていた)

 

雪穂「護身用の武器…か」ボソッ

 

 

 

ツカサ(オレが写真館から出ると、また服装が変わっていた)

 

ツカサ(どこかホストっぽい格好だが…手にはマゼンタカラーのバイオリンケースを持っていた)

 

ツカサ(ディケイドのマークが目印になっているバイオリンケースには小さな文字で『TSUKASA KURENAI』と刻印されていた)

 

ツカサ(紅ツカサ…?)

 

ツカサ(この世界のオレの役割は、まさかバイオリニストということか…?)

 

ツカサ(やがて近くにある緑が生い茂る公園までやってきたオレは…大きな樹の下で立ち止まった)

 

ツカサ(そして…ケースからバイオリンと弓を取り出した)

 

ツカサ「…試してみるか」

 

ツカサ(オレはバイオリンを弾いてみた)

 

~♪

 

ツカサ(オレは演奏できている自分を疑った)

 

ツカサ(バイオリンを弾くのは初めてのはずだった)

 

ツカサ(なのに…まるで慣れているかのように弓を持つ腕が、バイオリンの弦を押さえる指が軽やかに動いていた)

 

ツカサ(それに、オレが弾いているこの曲は…?)

 

ツカサ(自分でもどういう事なのか…全く分からなかった)

 

~♪

 

ツカサ(オレは最後にバイオリンの弦を指で弾いた)

 

パチパチパチ…

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(オレの目の前には拍手をしている一人の女性がいた)

 

?「…」パチパチパチ

 

ツカサ(一言でどんな女性か表すなら…柔らかい雰囲気で、おっとりとした感じだろうか)

 

ツカサ(彼女は…手話でオレに話しかけてきた)

 

?『お上手なんですね、バイオリン』

 

ツカサ「いや…初めて弾いた」

 

?『そうなんですか?』

 

ツカサ「ああ」

 

ツカサ(すると…女性はどこか物憂げな顔をしながら手話を続けた)

 

?『私もその曲を弾いていました』

 

ツカサ「…この曲か?」

 

?『ええ、もう弾く事はないし聴く事もないと思っていたのだけど…』

 

ツカサ(女性はそこで話をやめると…瞳を閉じた)

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(すると…遠くから亜里沙の声が聞こえてきた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「やっと見つけた…ここにいたんだね」

 

ツカサ「ああ」

 

雪穂「…ところで、そのホストみたいな格好は何?」

 

ツカサ「お前な…他にもっと言い様ってものがあるだろ」

 

亜里沙「あっ…そういえばさっき、バイオリンの音が聞こえてきたけど」

 

亜里沙「もしかして…ツカサがそのバイオリンを弾いてたの?」

 

ツカサ「一応な…どうやらこの世界でのオレの役割は、天才バイオリニストという事らしい」

 

亜里沙「ハラショー…さすがツカサ!」

 

雪穂「自分で天才って…」

 

ツカサ「いや、オレには才能がある」フフッ

 

ツカサ「アンタもそう思う…ん?」クルッ

 

ツカサ(オレは振り向いてさっきの女性に感想を聞こうとしたが、女性はどこにもいなかった)

 

ツカサ「…?」

 

亜里沙「ツカサ、どうかしたの?」

 

ツカサ「…いや、何でもない」

 

亜里沙「?」

 

雪穂「じゃあツカサと合流したし…早くキバになったμ'sの誰かを探さないとだね?」

 

ツカサ「ああ…そうだな」パタン

 

ツカサ(オレがそう言ってバイオリンと弓をケースに収めた…その直後だった)

 

ダレカタスケテー!

 

ツカサ「!?」

 

亜里沙「ツカサ、今の…!」

 

ツカサ「ああ…行ってみるか」ダッ

 

ツカサ(オレ達は声のした方へ向かう為に走り出した)

 

 

 

ツカサ(オレ達は洋館の前までやって来た)

 

雪穂「ここって…家?」

 

亜里沙「ねぇ…この門、開いてるよ?」

 

ツカサ「…とりあえず入ってみるか」

 

雪穂「えっ…ちょっと大丈夫?」

 

ツカサ「ここから助けてって聞こえたんだ…入っても問題ないだろ」

 

雪穂「そうかなぁ…?」

 

ギィ…

 

ツカサ(門を通ったオレ達は洋館のドアを開け、中に入った)

 

雪穂「お邪魔しまーす…」

 

ツカサ「…上から何か聞こえるな」

 

ツカサ(オレたちは階段を登り、二階へと上がる)

 

ツカサ(二階には三つのドアがあったが、そのうち一つのドアから声が聞こえた)

 

ツカサ「…ここか」

 

ツカサ(オレはそのドアを開けてみた)

 

ガチャ…

 

ツカサ(ドアを開けると、部屋の中には四人の女子がいて…そのうち二人はチラシを押しつけ合っていた)

 

ツカサ(…というより、眼鏡をかけた少女の方がもう一人の少女に一方的にチラシを押しつけられていた)

 

?「無理無理無理ぃ…私には無理だよぉシズカちゃん!」グググ

 

シズカ「そんなことない…ハナヨちゃんは可愛いから、絶対ボーカルに向いてる!」グググ

 

ハナヨ「向いてないよぉ!」

 

シズカ「お願い、一度だけで良いから!」

 

ハナヨ「無理だってばぁ!」

 

シズカ「メグミちゃんもミオちゃんも…ハナヨちゃんが可愛いって思うでしょ!?」

 

メグミ「そうね…私もシズカちゃんと同じ意見かな?」

 

ミオ「…うん」コクコク

 

シズカ「ほらね…諦めなさい、ハナヨちゃん」

 

ハナヨ「そ、そんなぁ…」

 

雪穂「もしかして…」

 

亜里沙「…花陽さん?」

 

ハナヨ「ふぇっ!?」

 

シズカ「あれ?ハナヨちゃん…この人達、知り合い?」

 

ハナヨ「えっ、ええっと…?」

 

ツカサ「取り込み中、すまないな…実はここを借りてハナヨや彼女達にバイオリンを教えている者でな」

 

ハナヨ「へっ?あの…」

 

ツカサ(オレはポケットから名刺を出し…シズカと呼ばれてる女の子に渡した)

 

シズカ「『バイオリニスト 紅ツカサ』…そうだったんですか!?」

 

ツカサ「ああ」

 

シズカ「何だ…ハナヨちゃんったらびっくりしたよ~、バイオリン習ってるなら最初からそう言ってくれれば良かったのに」

 

ハナヨ「えっ?いや、その…」

 

シズカ「じゃあ私達はこれで帰るけど…ボーカルの件、考えておいてね!」

 

メグミ「じゃあね、ハナヨちゃん」

 

ミオ「…またね」

 

ハナヨ「う、うん…」

 

シズカ「それじゃ!」バタン

 

ツカサ(そう言ってシズカ達は部屋から出て…階段を降りて行った)

 

ツカサ(これで洋館にいるのはオレ達とハナヨだけ…いや、もう『一匹』いるか)

 

ハナヨ「あ、あの…あなた達は?」

 

雪穂「あっ、私達は…」

 

ツカサ「アンタがハナヨだな?」

 

ハナヨ「は、はい」

 

ツカサ「単刀直入に言う、オレ達は別の世界から来た」

 

ハナヨ「…え?」

 

雪穂「ちょっとツカサ!?」

 

ツカサ「この世界を救うために…」

 

サッ

 

ツカサ「!?」モゴモゴ

 

ツカサ(オレは雪穂に口を塞がれ、それ以上喋れなくなった)

 

雪穂「ちょ、ちょっと待ってて…ください」アハハ

 

ハナヨ「は、はい…?」

 

雪穂「ちょっと…いきなり何言ってるのさ!?」ヒソヒソ

 

ツカサ「ここは『キバの世界』だ…どう考えても彼女がキバだろ?」ヒソヒソ

 

ハナヨ「…?」

 

雪穂「いや、それはそうかもしれないけど…話す順番があるでしょ!?」

 

ツカサ「全く…うるさいヤツだな」ハァ

 

ツカサ(すると…それまで黙っていた亜里沙がハナヨに話しかけた)

 

亜里沙「ハナヨさんって…キバなの?」

 

ハナヨ「…へっ!?」

 

雪穂「亜里沙!?」

 

亜里沙「それならもう大丈夫!」

 

亜里沙「ツカサが…『ディケイド』がこの世界を助けに来たから!」

 

ハナヨ「えっ…ええっ?」

 

雪穂「ああ…言わんこっちゃない」ハァ

 

?「何っ!ディケイドだと!?」パタパタ

 

ツカサ(『ディケイド』という言葉を聞いて…金色の小さなコウモリが部屋の奥から飛んでやってきた)

 

雪穂「うわっ!コウモリが喋った!?」

 

亜里沙「喋るコウモリ…ハラショー!」キラキラ

 

ハナヨ「あっ、キバット…ダメだよ隠れないと」

 

キバット「良いんだハナヨ、こいつらは多分大丈夫だ」

 

ハナヨ「多分って、そんな…」

 

キバット「ところでお嬢ちゃん…今の話は本当か?」

 

亜里沙「う…うん!」

 

ツカサ「アンタがキバットか」

 

キバット「そうか、お前がキバーラの言っていた…」

 

ツカサ「キバーラ?」

 

キバット「こっちの話だ…おっと、そういうことなら自己紹介しなきゃな」

 

キバット「俺様の名前はキバットバットⅢ世だ」 

 

キバット「ハナヨにキバの鎧…簡単に言うとキバに変身する力を与えている」

 

キバット「よろしくな、お嬢ちゃん達」

 

亜里沙「そっか…私は亜里沙でこっちは友達の雪穂!よろしくね!」

 

雪穂「よ、よろしく…」

 

キバット「おう!」

 

ツカサ「どうやら…アンタを入れた方が話が早そうだな?」

 

キバット「ああ、色々聞かせてくれ」

 

ツカサ(オレ達はハナヨとキバットに事情を説明した)

 

 

 

キバット「世界の崩壊か…にわかには信じられねえ話だがそれで最近、ファンガイアの奴らも活発になってきてたんだな」

 

ツカサ「そういう事だ」

 

キバット「よし、そういうことなら協力するしかねえな!」

 

キバット「お前もそう思うだろ、ハナヨ?」

 

ハナヨ「わ、私は…いいよ」

 

キバット「え…?」

 

ハナヨ「私なんかが一緒に行っても、足手まといになるだけだから…」

 

キバット「ハナヨ…お前なぁ」ハァ

 

雪穂「…ん?」チラッ

 

ツカサ(雪穂は机に置かれていた一枚のチラシを見つけた)

 

『バンド形式のスクールアイドルTETRA-RICE!○月△日にライブハウスマル・ダムールにてライブ開催!』

 

雪穂「そういえばハナヨさん、これってさっきの人達が…」

 

ハナヨ「あっ…うん、シズカちゃん達のだよ」

 

ハナヨ「彼女達、バンドって形でスクールアイドルをすることになってたんだけど…急にボーカルの子が抜けちゃったみたいで」

 

ハナヨ「それで、同じクラスの私が声をかけられて…」

 

ハナヨ「私には出来ないって断ってるんだけど、シズカちゃん達に『あなたは可愛いから大丈夫!』って言われて…」

 

雪穂「そうだったんですか…」

 

ハナヨ「私、地味だし何の取り柄もないから…スクールアイドルなんて無理だよ」エヘヘ

 

亜里沙「…」

 

~♪

 

ハナヨ「!」

 

ツカサ(オレは再びバイオリンを取り出して…あの曲を弾いていた)

 

ハナヨ「この曲…もしかしてお母さんの『音也』?」

 

雪穂「…えっ?」

 

ハナヨ「私のお母さん…バイオリニストで、作曲もしてたの」

 

~♪

 

ツカサ(最後に弦を指で弾いたオレは…ハナヨにこう言った)

 

ツカサ「人間はそれぞれ、音楽を奏でている」

 

ツカサ「知らないうちに…心の中で」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「どうもオレには…アンタが今、奏でている音が本当のアンタじゃないように聴こえてきてな」

 

ハナヨ「私が奏でている…音?」

 

ツカサ「ああ」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「なあ…本当にスクールアイドル、やりたくないのか?」

 

ハナヨ「…」フルフル

 

ツカサ(ハナヨは首を横に振った)

 

ハナヨ「本当は…ちょっぴり気になっているんです」

 

ハナヨ「シズカちゃん達が誘ってくれたのもあるけど…」

 

ハナヨ「私、小さい頃からアイドルに憧れていたんです」

 

ハナヨ「私のお母さんは昔、作曲家もしてて…アイドルが歌う曲とかもよく作ってて」

 

ハナヨ「お母さんが作った曲を歌うアイドルは皆、キラキラ輝いてて…私も憧れてました」

 

ハナヨ「いつか私もアイドルになって、お母さんが作った曲で歌うんだって」

 

ハナヨ「でも…お母さんは突然、私の前からいなくなってしまって」

 

ハナヨ「今の私は、一人ぼっちで…」

 

ツカサ(そう言ってハナヨは落ち込んでしまった)

 

キバット「ハナヨ…」

 

亜里沙「…諦めちゃうの?」

 

ハナヨ「えっ?」

 

亜里沙「ハナヨさん、本当はどうしたいのか答えてない…」

 

ハナヨ「あっ…私はまだ、何ていうか…」

 

亜里沙「私は…絶対やってみたほうがいいと思います!」

 

亜里沙「だって私たちの世界の花陽さんもアイドルになってすっごくキラキラ輝いてますから!」

 

ハナヨ「別の世界の、私も…?」

 

亜里沙「はい!」

 

雪穂「私も…やってみたい気持ちがあるなら、やってみた方がいいと思います」

 

ハナヨ「で、でも…」

 

雪穂「声を出すことは…ハナヨさんにとって不安かもしれません」

 

雪穂「でも、一度出してみれば…自信に繋がると思うんです」

 

亜里沙「そうだよ…アイドルになりたいと思っていたハナヨさんなら、きっと大丈夫!」

 

ハナヨ「亜里沙ちゃん、雪穂ちゃん…」

 

雪穂「頑張ってください…私達がついてますから!」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「…で、どうするんだ?」

 

ハナヨ「えっと…一度だけならやってみよう、かな?」ボソッ

 

亜里沙「ハラショー!」ガシッ

 

ハナヨ「ピャア!?」ビクッ

 

ツカサ(亜里沙はハナヨの手を握った)

 

雪穂「それなら私達、ハナヨさんのライブ…楽しみにしてますね!」

 

ハナヨ「あっ、ありがとう…」

 

キバット「いやぁ~、良かったなハナヨ!」

 

ハナヨ「う、うん…」

 

ツカサ(雪穂達がハナヨを励ましていると…近くに置かれていたバイオリンから音が聞こえてきた)

 

ハナヨ「…!」

 

ツカサ(その瞬間、ハナヨの顔は強張っていた)

 

ツカサ「このバイオリンの音は…?」

 

雪穂「えっ?」

 

亜里沙「何も聞こえないよ?」

 

キバット「俺様もだ…」

 

ツカサ「何…?」

 

ツカサ(オレとハナヨにしか聞こえてないのか?)

 

ツカサ(すると、ハナヨはオレの質問にようやく答えた)

 

ハナヨ「この音は、悪いファンガイアを倒してという『声』…」

 

ツカサ「『声』…つまり、アンタを呼んでいるのか?」

 

ハナヨ「はい、でも…私、怖くて」

 

ツカサ「…怖い?」

 

ハナヨ「はい…ファンガイアもだけど、ファンガイアと戦う自分も」

 

ハナヨ「戦う度に自分じゃなくなっているような気がして…」

 

ツカサ「…そうか、だいたいわかった」

 

ハナヨ「えっ?」

 

ツカサ「それなら…まずはオレが一人で戦ってやる」スタスタ

 

ハナヨ「ツカサくん…」

 

ツカサ「…」クルッ

 

ツカサ(ドアの前まで行き、振り向いたオレはハナヨにカメラを向け、シャッターを切った)

 

カシャッ

 

ハナヨ「?」

 

ツカサ「アンタが歌っている姿を…見る為にもな」フフッ

 

ハナヨ「…!」

 

ツカサ「行ってくる」ガチャ

 

雪穂「うん…行ってらっしゃい」

 

亜里沙「頑張って、ツカサ!」

 

ツカサ(オレは扉を開け、洋館を出た)

 

 

 

ハナヨ(それはツカサくんが洋館を出てからすぐのことでした…)

 

ハナヨ「うっ…!?」

 

亜里沙「ハナヨさん?」

 

雪穂「どうかしました…?」

 

ハナヨ「お腹が…」

 

雪穂「えっ?」

 

ハナヨ「お腹が減って…」

 

キバット「!?」

 

ハナヨ(その時、キバットが雪穂ちゃんの頭の上に何かがあることに気づいた)

 

キバット「雪穂、危ねぇ!」

 

雪穂「…えっ!?」

 

ハナヨ「ううっ…!?」

 

ハナヨ(それは…ファンガイアが人を襲おうとする時に現れる二本の牙だった)

 

雪穂「何、これ…?」

 

ハナヨ(そんな…私が、何で?)

 

ハナヨ(…早く逃げなきゃ)

 

ハナヨ(私が誰かを…襲っちゃう前に)

 

ハナヨ「うっ…」ダッ

 

亜里沙「ハナヨさん!?」

 

ガチャッ

 

ハナヨ(私は洋館を飛び出して、とにかく走った)

 

キバット「おい…どこ行くんだよ、ハナヨ!」

 

雪穂「ハナヨさん!」

 

亜里沙「待って!」

 

ハナヨ(ねぇ、お母さん)

 

ハナヨ(私…一体、どうしちゃったの?)

 

ハナヨ(どうしたらいいの…?)

 

ハナヨ(お願い…誰か)

 

ハナヨ「誰か助けて…」ハァハァ

 

 

 

ツカサ(オレはオフィス街の中心部へと駆けつけていた)

 

ツカサ(そこではファンガイアにライフエナジーを吸われて倒れている人々が大勢いた)

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(その先には…革ジャンを着た長髪の男が立っていた)

 

長髪の男「…ムッ?」

 

ツカサ(筋骨隆々とした肉体であった長髪の男は、オレを見てこう尋ねた)

 

長髪の男「貴様、ディケイドか?」

 

ツカサ「…だったら何だ?」

 

ルーク「俺は…チェックメイトフォーのルーク」

 

ツカサ(チェックメイトフォー…確かファンガイアの中で、圧倒的な実力を誇る者達の総称だと聞いた覚えがある)

 

ツカサ「人々を襲ったのはお前か…?」

 

ツカサ(ルークはオレの質問に答えず、下顎にステンドグラスの模様を浮かべた)

 

ルーク「タイムプレイの始まりだ」

 

ツカサ(そう言ってルークは…ライオンファンガイアに姿を変えた)

 

ライオンF「俺は、ディケイドをこの世界から消去する…」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(ディケイドに変身したオレは、ライドブッカーソードモードでライオンファンガイアを斬りつけようとする)

 

ディケイド「やあっ!」ガキン!

 

ライオンF「…」

 

ディケイド(だが…ライオンファンガイアには傷一つついていなかった)

 

ディケイド「なっ…!?」

 

ライオンF「その程度か?…フン!」ガッ

 

ディケイド「ぐっ!」

 

ディケイド(オレはライオンファンガイアの蹴りを受けた)

 

ディケイド「くっ…ならこれだ!」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「ふっ!」ドドッ

 

ディケイド(カードを装填したオレはライドブッカーをガンモードに変え、ライオンファンガイアに向かって撃ち続ける)

 

ディケイド(それでも…奴に対して効果はなかった)

 

ライオンF「今度はこちらの番だ…」ダダッ

 

ディケイド(ライオンファンガイアはオレに接近すると…強烈な一撃を繰り出してきた)

 

ライオンF「ハアッ!」ゴッ

 

ディケイド「うわっ!」ゴロゴロ

 

ディケイド(攻撃を受けオレは吹き飛ばされる)

 

雪穂「ツカサ!」ダッ

 

亜里沙「大丈夫!?」ダッ

 

ディケイド(雪穂達とキバットがオレのもとへやって来た)

 

ディケイド「お前達…どうして来た!」

 

キバット「それよりも聞いてくれ!ハナヨが…」

 

ディケイド「…?」

 

ライオンF「タイムプレイの邪魔をするな」

 

雪穂「あっ…!」

 

キバット「なっ…アイツは!?」

 

ディケイド(ライオンファンガイアはゆっくりとオレ達に近づく)

 

ディケイド「…とにかく話は後だ、今は安全な場所に隠れてろ」 

 

亜里沙「ツカサは?」

 

ディケイド「オレならまだ戦える…『笑顔』を知った、今のオレなら」

 

雪穂「…分かった」

 

亜里沙「キバット、行こう…」

 

キバット「あ、ああ…」パタパタ

 

ディケイド(雪穂達が離れたのを確認したオレは一枚のカードを取り出した)

 

ディケイド「…借りるぞ、ニコ」

 

ディケイド(オレはそのカードをディケイドライバーに装填し、バックルを閉じた)

 

『カメンライド…クウガ!』

 

ディケイド(その瞬間、オレは赤いクウガへと姿を変えた)

 

ディケイドクウガ「…」

 

亜里沙「アレって…」

 

雪穂「ニコさんと同じ…クウガ?」

 

ライオンF「なんだその姿は?」

 

DCDクウガ「クウガ…そう、クウガだ」

 

DCDクウガ(オレはもう一枚、カードを装填した)

 

DCDクウガ「お楽しみはこれからだ」

 

『フォームライド…クウガ、ライジングマイティ!』

 

DCDクウガ(次の瞬間、オレの身体の中に電撃が走った)

 

DCDクウガ「…」ビリッ

 

亜里沙「赤と金の、クウガ…」

 

キバット「ディケイドって、違うライダーにもなれるのか?」

 

雪穂「いや、それが私達も初めて見たから分からなくて…」

 

ライオンF「面白い…その力、存分に見せてみろ!」ダダッ

 

DCDクウガ「…!」ダダッ

 

ライオンF「ハアッ!」

 

DCDクウガ「やあっ!」

 

DCDクウガ(オレはライオンファンガイアの一撃を難なく避け、右肩にカウンターを決めた)

 

ライオンF「グアッ!」

 

DCDクウガ(ライオンファンガイアに傷を再生させる隙を与えないために、オレは二枚のカードを取り出した)

 

DCDクウガ「これでトドメだ」

 

『フォームライド…クウガ、アメイジングマイティ!』

 

DCDクウガ「はっ!」ビリビリッ

 

キバット「今度は黒くなったぞ!」

 

ライオンF「何ッ!?」

 

『ファイナルアタックライド…ク・ク・ク・クウガ!』

 

DCDクウガ(カードを装填したオレは駆け出し、飛び上がった)

 

DCDクウガ(そこから回転を加え、ライオンファンガイアに向かって両足を突き出した)

 

DCDクウガ「おりゃあぁぁぁ!!」

 

ライオンF「なっ…グワァァァッ!!」

 

DCDクウガ(キックが命中したライオンファンガイアは爆発せず、そのまま色とりどりのガラス片になって砕け散っていった)

 

ディケイド(ライオンファンガイアを倒したのを確認したオレは…ディケイドに姿を戻した)

 

ディケイド「…」フゥ

 

?「見つけたぞ、ディケイド」

 

ディケイド「…?」クルッ

 

ディケイド(振り返ると…そこには生気のない顔をした若い女と飄々とした痩せ形の男が立っていた)

 

痩せ形の男「私はビショップ、こちらに仰せられるのはクイーン」

 

ディケイド「…またチェックメイトフォーか、やけにオレを倒そうと躍起になってるんだな?」

 

クイーン「当然だ、お前は全てをぶち壊す存在だからな」

 

ディケイド「…オレが、全てを壊す存在?」

 

クイーン「そうだ、お前がこの世界を破壊しに来た…そうなれば我々は迎え撃つしかない」

 

ディケイド「…やるしかないのか」ハァ

 

クイーン「貴様の命日にしてやる」

 

ディケイド(クイーンとビショップは…それぞれソーンファンガイアとスワローテイルファンガイアに変化した)

 

ディケイド(その直後…オレとファンガイア達の間に不思議なオーロラが現れた)

 

ディケイド「これは…?」

 

ソーンF「チッ…邪魔が入ったか」

 

亜里沙「ツカサ、危ない!」

 

ディケイド「何?…うわっ!」

 

ディケイド(次の瞬間…オレはあっという間にオーロラの中に吸い込まれてしまった)

 

 

 

ディケイド「…ここは?」

 

ディケイド(オレが意識を取り戻すと、そこには先程までいた場所とは全く違う光景が広がっていた)

 

ディケイド「ビルの屋上…夜?」

 

?「やあ、ディケイド」

 

ディケイド「!」クルッ

 

ディケイド(オレが振り向くと、そこには小さなラジオを片手に持つ一人の中年男性の姿があった)

 

ディケイド「…?」

 

ディケイド(男の顔は周りが暗くてよく見えなかった)

 

中年男性「うーむ…『彼女達』の曲を聞いてみようと思ったのだが、このあたりはどうも電波が悪いようだな」ポイッ

 

ディケイド(中年男性はそう言って、ラジオを投げ捨てた)

 

ディケイド「お前…何者だ?」

 

中年男性「私の名前は、そうだな…」

 

中年男性「ナルタキ…とでも言っておこうか」

 

ディケイド「…オレをここに連れてきたのはお前か?」

 

ナルタキ「ご名答、その通りだ」

 

ディケイド「一体、何の為に…」

 

ナルタキ「その前に私から一つ聞いておきたいことがある」

 

ナルタキ「ディケイド、君は自分が存在している理由を知りたくないか…?」

 

ディケイド「オレが存在している理由…?」

 

ナルタキ「そうだとも」

 

ディケイド「…それは何だ?」

 

ナルタキ「よし、ならば教えてあげよう…答えはいたってシンプルだ」

 

ディケイド(ナルタキがそう言うと、再びオーロラが現れた)

 

ナルタキ「君は…全ての世界を破壊する為に存在している」

 

ディケイド「…!?」

 

ディケイド(オーロラからは二人の仮面ライダーが姿を表した)

 

イクサ「ディケイド…その命、神に返しなさい」

 

サガ「王の判決を言い渡す…死だ」

 

ディケイド「イクサとサガ…?」

 

ナルタキ「つまり君は邪魔な存在だ…どの世界においてもね」

 

ナルタキ「任せたよ、二人とも」

 

ディケイド(そう言ってナルタキはオーロラを通過し、姿を消していく)

 

ディケイド「待て!」

 

イクサ「待ちなさい」スッ

 

ディケイド「!」ピタッ

 

ディケイド(イクサはイクサカリバーを、サガはジャコーダーを向けてきたため…オレはナルタキを追う事が出来なかった)

 

ディケイド「くっ…面倒な事になったな!」

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

ディケイド「はっ!」ダッ

 

ディケイド(カードを装填し、四人に分身したオレはそれぞれ二人ずつに分かれてイクサとサガに向かっていった…)

 

 

 

雪穂(ツカサがいなくなってから…私達はファンガイアに狙われていた)

 

スワローテイルF「貴様達、人間か…ディケイドの仲間か?」

 

亜里沙「どうしよう、雪穂…?」

 

雪穂「…」

 

ソーンF「どちらにせよ、生かしてはおけないな…」

 

雪穂(そう言ってファンガイアは私達に近づいてくる)

 

雪穂(そうだ、ツバサさんにもらったファンガイアスレイヤーって武器…アレを使えば何とか逃げられるかもしれない)

 

雪穂「…」スッ

 

雪穂(そう思って、私はファンガイアスレイヤーをポケットから取り出した…けど)

 

雪穂「やっぱり、私には…」

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂(私はそれを振るうことができなかった)

 

雪穂(今、近づいてきているのは…私達を襲おうとしている化け物だ)

 

雪穂(でも…化け物はさっきまで人間の姿をしていた)

 

雪穂(それが、私の中で引っかかっていた)

 

雪穂(私は…ツカサみたいに戦うことはできない)

 

ゴトッ

 

雪穂(私は構えたファンガイアスレイヤーを落とした)

 

ソーンF「フン…」ガッ

 

雪穂「うっ!?」

 

雪穂(私は…ファンガイアに右手で首を絞められてしまった)

 

亜里沙「雪穂!」

 

キバット「やめろぉー!…うわっ!?」ボトッ

 

雪穂(キバットが果敢にファンガイアに立ち向かっていくが、すぐに左手で弾き飛ばされてしまう)

 

亜里沙「キバット!」

 

キバット「うーん…」

 

スワローテイルF「クイーン、その小娘の始末は私が」

 

ソーンF「こんな人間…お前の手を借りるまでもない」ググッ

 

雪穂「ううっ…」  

 

雪穂(私の意識が遠のいていきそうになったその時…銃声が聞こえてきた)

 

バン!

 

ソーンF「クッ!?」パッ

 

雪穂(誰かがファンガイアを撃ったのか、攻撃を受けたファンガイアが私を放した)

 

雪穂「うっ…?」クルッ

 

雪穂(私が振り向くと…そこには震えた手でファンガイアバスターを構える亜里沙がいた)

 

亜里沙「…」

 

雪穂「えっ…亜里沙!?」

 

亜里沙「私だって守りたい…」

 

雪穂「…?」

 

亜里沙「私だってツカサみたいにみんなを、世界を守りたい!」

 

亜里沙「だから…!」

 

雪穂「!」

 

スワローテイルF「貴様、クイーンに何を…!」ダッ

 

雪穂「…はっ!」ガキン!

 

雪穂(私はすぐさまファンガイアスレイヤーを拾い…鞭のように振るった)

 

スワローテイルF「グッ!?」

 

亜里沙「雪穂!」

 

雪穂「そうだね…私、忘れてた」

 

雪穂「ツカサは誰かや何かを傷つけるために戦ってるんじゃない…」

 

雪穂「皆や世界を守るために戦ってるんだって」

 

雪穂「だから…私達も守ろう」

 

雪穂「ツカサと一緒にこの世界を…私達らしいやり方で!」

 

亜里沙「…うん!」

 

スワローテイルF「人間ごときが…!」ダッ

 

雪穂「…!」

 

雪穂(怒ったファンガイアの一人が私達に襲いかかろうとしたその時だった)

 

?「ま、待って…!」

 

ソーンF「!…待て、ビショップ」

 

スワローテイルF「!?」

 

雪穂(私達が声のした方を向くと…そこにはハナヨさんがいた)

 

ハナヨ「…」ハァハァ

 

亜里沙「ハナヨさん!」

 

雪穂「一体、どこに行ってたんですか!?」

 

ハナヨ「…ごめんね」

 

ハナヨ「私、自分が何をしたのか分からなくて…」

 

ハナヨ「それで、その…うっ!」ヨロッ

 

雪穂「ハナヨさん!」

 

ソーンF「お前がキバの鎧を持つ者か…どうやら随分と苦しんでいるみたいだな」

 

ハナヨ「うぅ…」

 

ソーンF「無理もないな、何せ…人間のライフエナジーを吸収していないのだから」

 

ハナヨ「…えっ?」

 

亜里沙「…?」

 

雪穂「!?」

 

ソーンF「知らなかったのか?」

 

ソーンF「かつて私達ファンガイアの中には…裏切り者がいた」

 

ソーンF「そいつはファンガイアの掟に背き、人間と恋に落ち…やがて人間との子を身籠った」

 

ハナヨ「…!?」

 

ソーンF「そいつは愛した人間と共に私達からキバの鎧を奪って逃げ…辛うじて生き延びていた」

 

ソーンF「そして…人間との子を産んだ」

 

雪穂「それって、まさか…!」

 

ソーンF「そこの人間は察しがいいな…そう、その通りだ」

 

ソーンF「お前は…ファンガイアと人間の間に生まれた子だ」

 

ハナヨ「…!!」

 

 

 

『カメンライド…クウガ!』

 

DCDクウガ(集まった四人のオレはイリュージョンの効果を維持させたまま、一斉に赤いクウガへと姿を変えた)

 

DCDクウガ「まだだ…!」

 

DCDクウガ(四人のオレはそれぞれ別々のカードを取り出し、ベルトに装填する)

 

『フォームライド…クウガ、ライジングマイティ!』

 

『ライジングドラゴン!』

 

『ライジングペガサス!』

 

『ライジングタイタン!』

 

DCDクウガ(ライジングマイティ以外のオレはライドブッカーを取り出し、それぞれ専用の武器に変化させる)

 

DCDクウガ「はあっ!」ダダッ

 

ガキン!

 

DCDクウガ(ライジングドラゴンロッドとジャコーダー…ライジングタイタンソードとイクサカリバーがそれぞれぶつかり合う)

 

DCDクウガ(その隙をついてライジングマイティとライジングペガサスのオレはカードを装填する)

 

『ファイナルアタックライド…ク・ク・ク・クウガ!』

 

DCDクウガ「はぁっ!」バシュッ

 

イクサ「!」

 

DCDクウガ(ライジングペガサスボウガンがイクサを撃ち抜き、イクサは消失する)

 

DCDクウガ「あと一人…はっ!」ダッ

 

DCDクウガ(一人に戻ったオレは右足にエネルギーを溜め、走り出す)

 

サガ「…!」

 

DCDクウガ(そこから跳び上がり一回転を加えて、サガに向かって右足を突き出した)

 

DCDクウガ「おりゃあぁぁぁ!」

 

 

 

ハナヨ「私に…ファンガイアの血が?」

 

ハナヨ「…そんな」ポロポロ

 

雪穂(ハナヨさんは…涙を流していた)

 

亜里沙「…ハナヨさん」

 

ソーンF「それで、どうするつもりだ?」

 

ハナヨ「…えっ?」

 

ソーンF「こちら側につくか、人間側につくか…答えてもらおうか」

 

ハナヨ「な、なんでそんな…?」

 

ソーンF「お前は既に多くの同胞を葬っている、本来なら許される事ではない」

 

ソーンF「だが…」

 

ガシッ

 

雪穂「…!?」

 

亜里沙「えっ!?」

 

スワローテイルF「フン…」

 

雪穂(私達はいつの間にかファンガイアの一人に捕まってしまった)

 

雪穂「しまった!」

 

亜里沙「いや、放して!」

 

スワローテイルF「おとなしくしていろ」ギリギリ…

 

雪穂「…うっ」

 

亜里沙「ううっ…」

 

雪穂(ファンガイアが私達を掴む力がどんどん強くなって…私達は逃げられなくなってしまった)

 

ハナヨ「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…!」

 

ソーンF「こちら側について…そこにいる人間共のライフエナジーを吸うというのなら、話は別だ」

 

ハナヨ「!?」

 

ソーンF「今までの罪は帳消しにしてやろう」

 

ハナヨ「わ、私は…」

 

ソーンF「さあ、この場で人間のライフエナジーを吸収するか…私達に逆らって今日を命日とするか」

 

ソーンF「どちらか好きな方を選べ」

 

ハナヨ「わ、私は…」

 

ソーンF「どうした…?早くしろ」

 

雪穂「ううっ、ハナヨさん…!」

 

ハナヨ「…」

 

ガガッ!

 

ソーンF「グッ…何者だ!?」

 

雪穂(どこからか飛んできた銃弾のようなものにダメージを受けたファンガイア達は…辺りを見回した)

 

スワローテイルF「今の弾は真珠のように見えたが…まさか!」

 

雪穂(やがて…青い空からピンク色の身体をした一体のファンガイアが降り立った)

 

パールシェルファンガイア(ピンク)「…」

 

ソーンF「やはり…お前か!」

 

ハナヨ「…?」

 

パールシェルF「…!」バッ

 

雪穂(そのピンク色のファンガイアは跳び上がると…私達を捕まえていたファンガイアに向かってキックを放った)

 

ガッ!

 

スワローテイルF「グアッ!」

 

雪穂(おかげで私達は…敵のファンガイアの拘束から解放された)

 

雪穂「今の…」

 

亜里沙「誰…?」

 

パールシェルF「…!」ガガガッ!

 

雪穂(次にピンク色のファンガイアは…真珠のような形をした弾を敵のファンガイアに向けて大量に放出させた)

 

スワローテイルF「この私が…グワァァァッ!?」

 

雪穂(攻撃を受けた敵のファンガイアの身体は…ガラスが割れるように砕けた)

 

パールシェルF「…」

 

ソーンF「お前…まさか助けるつもりか?」

 

ソーンF「お前と人間の子である、こいつを…」

 

パールシェルF「…」

 

ハナヨ「…へっ?」

 

雪穂(突然、知らされた事実に…ハナヨさんは目を丸くしていた)

 

パールシェルF「…」

 

ハナヨ「もしかして、お母さん…?」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ファンガイアは人間を貪り尽くす!」

「だがハナヨは…信じるものの為に戦える!」

「オレ達はただ…スクールアイドルをやってほしいと思っただけだ」

第5話『ウィズミー♬陽が花を咲かすまで』

ウェイクアップ!運命の鎖を解き放て!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話『ウィズミー♬陽が花を咲かすまで』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…『キバの世界』か」

ハナヨ「…へ、変身」

ハナヨ「私…スクールアイドルなんて無理だよ」

ツカサ「人間はそれぞれ音楽を奏でている、知らないうちに…心の中で」

ナルタキ「君は邪魔な存在だ…どの世界においてもね」

ハナヨ「私が…人間とファンガイアのハーフ…」

ソーンファンガイア「娘を助けようとするつもりか?」

パールシェルファンガイア(ピンク)「…」

ハナヨ「お母さん…?」


DCDクウガ(オレはサガにライジングマイティキックを繰り出していた)

 

DCDクウガ「おりゃあぁぁぁ!」

 

サガ「ふっ!」

 

DCDクウガ「!?」

 

DCDクウガ(あと少しで命中すると思ったその時…サガのジャコーダービュートがオレの右足を絡め取った)

 

DCDクウガ「うわっ!」

 

DCDクウガ(サガはそのままオレを振り回し…投げ飛ばした)

 

DCDクウガ(すぐに受け身をとったオレは危うくビルから落ちずに済んだ…が、カメンライドの効果が切れてしまった)

 

ディケイド「くっ…!」

 

サガ「…」サッ

 

ディケイド(サガはオレを仕留めようと、ベルトのサガークにウェイクアップフエッスルを吹かせようとしていた)

 

バン!

 

サガ「!?」

 

ディケイド(しかし…それは誰かからの銃弾によって阻まれた)

 

ツバサ「お困りのようね?」

 

ディケイド「アンタ、どうやってここに…?」

 

ツバサ「それは…ひ・み・つ」フフッ

 

ディケイド(そう言ってツバサはディエンドライバーにカードを装填し…上空へ向かって引き金を引いた)

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

ディケイド(蒼い光に包まれて…ツバサはディエンドへと変身する)

 

ディエンド「さて…行くわよ」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディエンド「はっ!」ガガッ!

 

サガ「…!」

 

ディケイド(ディエンドライバーから連続して放たれる銃弾がサガの鎧を傷つけていく)

 

ディエンド「悪いけど私達は忙しいの…だから、元の世界へ帰ってちょうだい」

 

ディケイド(その直後…ディエンドは一枚のカードをディエンドライバーに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

ディケイド(すると…青緑色に光る無数のカード型のエネルギーが銃口から渦を巻くように、サガに向かって伸びていく)

 

サガ「…!?」

 

ディエンド「さようなら」

 

ディケイド(ディエンドが引き金を引くと、銃口から強力なエネルギー波が放たれた)

 

サガ「!!」

 

ディエンド「…」フゥ

 

ディケイド(ディエンドの攻撃を受けたサガは消失し…一息ついたディエンドはこちらに近づいて来た)

 

ディエンド「立てるかしら?」スッ

 

ディケイド「…」

 

ディケイド(オレはディエンドが差し出した手を取らず、自力で立ち上がる)

 

ディエンド「つれないのね」

 

ディケイド「…オレはまだアンタが信用できないからな」

 

ディエンド「あら、同じ旅する仲間じゃない?」

 

ディケイド「…そんな事より、どうやったらここから抜け出せる?」

 

ディエンド「それなら簡単よ…キバーラ」

 

キバーラ「はぁ~い」パタパタ

 

ディケイド(ディエンドに呼ばれて、白い小型の蝙蝠がオレ達のもとにやってきた)

 

ディエンド「…アンタか、キバットの言ってたキバーラっていう蝙蝠もどきは」

 

キバーラ「ウフフッ、よろしくね~ディ・ケ・イ・ド♡」

 

ディエンド「それじゃ…私達をキバの世界に戻してくれないかしら?」

 

キバーラ「オッケ~、それじゃ行くわよ…グルグル~!」

 

ディケイド(キバーラがオレ達の周りを旋回しながら飛行すると、オレの意識は次第に薄れていった…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

雪穂(ファンガイアの一体を倒した直後…)

 

ソーンF「ハッ!」ザシュッ

 

パールシェルF「…!」

 

雪穂(敵のファンガイアが振るう大きな剣が…ピンク色のファンガイアを襲っていた)

 

ソーンF「終わりだ!」ザシュッ

 

パールシェルF「…!!」バタッ

 

雪穂(傷つき倒れたピンク色のファンガイアは…人間の女性の姿に変わった)

 

ハナヨ「お母さん!」ダダッ

 

ハナヨの母「…」

 

ハナヨ「お母さん…どうして」

 

ハナヨの母「…」ニコッ

 

ハナヨ「…?」

 

ソーンF「そうか…お前、声を失ったのか」

 

ハナヨ「えっ…そうなの、お母さん?」

 

ハナヨの母「…」コクリ

 

ハナヨ「お母さん…」

 

?「それが俺達から逃げ続けた裏切り者の末路か…小泉」

 

ハナヨの母「!」

 

ハナヨ「…?」

 

雪穂(ハナヨさん達の前に…髭をたくわえた男の人が現れた)

 

男「…だから言ったのだ、小泉よ」

 

男「所詮、夢は夢に過ぎない…と」

 

ハナヨの母「…!」

 

ハナヨ「あなたは…?」

 

ソーンF「我々のキングだ」

 

ハナヨ「キング…?」

 

キング「俺もかつては夢見ていた…人間とファンガイアは共に幸せに暮らせると」

 

キング「だが…人間共は俺達ファンガイアを忌み嫌い、追放しようとした」

 

キング「だから俺は悟った…人間との共存など不要」

 

キング「今こそ…ファンガイアは人間を貪り尽くす!」

 

ハナヨの母「…」フルフル

 

キング「…何?」

 

雪穂(ハナヨさんのお母さんは目に涙を溜めながら、男の人の足をつかみ…首を横に振っていた)

 

ハナヨの母「…!」フルフル

 

キング「あくまで逆らうというのか…良いだろう」

 

雪穂(男の人は顔にステンドグラスのような模様を浮かべると…ファンガイアへと姿を変えた)

 

ビートルF「逆らう者は滅ぼすのみだ…フン!」

 

ハナヨの母「…!」ガクッ

 

雪穂(男の人が変化したファンガイアは…ハナヨさんのお母さんから何かを吸収した)

 

ハナヨ「お母さん!」

 

ビートルF「まずはファンガイアとしての力を吸収した…次はその命、貰うぞ」

 

ハナヨの母「…」

 

亜里沙「えいっ!」バシュッ!

 

ビートルF「!?」

 

雪穂(亜里沙のファンガイアバスターの矢がファンガイアの身体に命中し、ファンガイアはひるんだ)

 

亜里沙「ハナヨさん、今のうちに!」

 

ハナヨ「う…うん!」

 

雪穂(ハナヨさんはお母さんを起こして、一緒に逃げようとする)

 

ハナヨ「しっかりして…お母さん!」ユサユサ

 

ハナヨの母「…」

 

雪穂(そうだ…ファンガイアの雰囲気に圧倒されかけてたけど、私もこうしちゃいられない!)

 

雪穂「…やあっ!」ブンッ

 

雪穂(私はファンガイアスレイヤーを振るい、ファンガイアをハナヨさん達から退けた)

 

ソーンF「クッ…余計な真似を!」

 

雪穂(怒ったファンガイアの一人が剣を持ってこちらへ近づいてきた)

 

ソーンF「ハッ!」ブンッ!

 

雪穂「…うわっ!」サッ

 

亜里沙「きゃっ…!」サッ

 

雪穂(私達は間一髪、ファンガイアの剣を避けた…が、ファンガイアはまた私達に向けて剣を振り降ろそうとする)

 

ソーンF「終わりだ」ブンッ!

 

雪穂「…!」

 

ガキンッ!

 

雪穂「…あれ?」

 

ディケイド「悪いが…まだまだこれからだ」

 

雪穂(いつの間にか私達の前に剣のような武器を持ったディケイドが現れ…私達を守ってくれていた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

雪穂「一体どこに行ってたの!?」

 

ディケイド「戻ってきたんだから別に良いだろ…はっ!」ザシュッ

 

雪穂(そう言ってディケイドはファンガイアを斬りつけた)

 

ソーンF「ガハッ!」

 

ソーンF「グッ、このままでは…キング!」

 

ビートルF「分かっている…フンッ!」ドンッ

 

ハナヨ「ピャア!」

 

雪穂(もう一体のファンガイアが、近くにいたハナヨさんを突き飛ばした)

 

ディケイド「ハナヨ!」

 

雪穂(ファンガイアはハナヨさんのお母さんを捕まえ…逃げようとする)

 

ビートルF「俺のもとへ来い…小泉」

 

ハナヨの母「…」

 

ビートルF「俺はウルフェン族、マーマン族、フランケン族の生き残りを吸収し…キャッスルドランを我が物にした」

 

ビートルF「お前の力も吸収した今、残るは王の印…キバの鎧だけだ!」

 

ハナヨ「!」

 

ビートルF「キバの鎧を持つ者よ…母親の命は預かった」

 

ハナヨ「お母さん…!」

 

ディケイド「お母さん?そういえば、あの時の…」

 

ハナヨの母「…」

 

ビートルF「母親の命が惜しくば…三時間後、キャッスルドランへと来い」

 

ビートルF「その時、キバの鎧を渡してもらおう…それが条件だ」

 

ハナヨ「そんな…」

 

ビートルF「逆らえば女の命は…ない」

 

ディケイド「お前…!」

 

ソーンF「ハアッ!」ブワッ

 

雪穂(ファンガイアが剣を振るった途端…強い風が吹き始めた)

 

ディケイド「待て…うわっ!」

 

雪穂「ううっ…」

 

亜里沙「う、動けない…」

 

ハナヨ「お母さん…!」

 

雪穂(風が止んだ頃には…ハナヨさんのお母さんとファンガイア達はもういなかった)

 

ディケイド「…逃げられたか」

 

ハナヨ「ううっ…」ポロポロ

 

ディケイド「…」

 

雪穂(泣いているハナヨさんを見たディケイドは変身を解くと…ツカサの姿に戻った)

 

ツカサ「ハナヨ…」

 

ハナヨ「…」ポロポロ

 

ツカサ「雪穂、亜里沙…ハナヨとキバットを連れて写真館に戻るぞ」

 

雪穂「えっ?」

 

ツカサ「オレがいない間に何があったのか…一旦、話を聞いて状況を整理しておかないといけないからな」

 

雪穂「…うん、そうだね」

 

亜里沙「ハナヨさん、行こう…?」

 

ハナヨ「…」グスッ

 

雪穂「…」

 

ツカサ「雪穂」

 

雪穂「えっ…何?」

 

ツカサ「どうかしたか…?」

 

雪穂「あっ…ううん、何でもない!」

 

雪穂(さっき、ハナヨさんは何かの衝動に耐えられなくなって私を襲おうとしていた…)

 

雪穂(でも、なんでかな?)

 

雪穂(ハナヨさんからは…不思議と怖いものは感じられなかった)

 

雪穂(あの時も…もちろん、今も)

 

亜里沙「キバット、起きて?」ツンツン

 

キバット「う~ん…ハッ!?」

 

亜里沙「大丈夫?」

 

キバット「あれ…一体、俺様はどうしていたんだ?」

 

 

 

ツカサ(ハナヨとキバットを連れて…オレ達は写真館に戻った)

 

ツカサ(それから…オレは雪穂と亜里沙から話を聞いていた)

 

ツカサ(ハナヨが雪穂を襲いかけた事)

 

ツカサ(ハナヨが人間とファンガイアのハーフだった事)

 

ツカサ(オレがこの世界に来て初めてバイオリンを弾いた時に出会った女性が…ハナヨの母だった事)

 

ツカサ(ハナヨの母がピンク色のパールシェルファンガイアに変化していた事)

 

ツカサ(そして、チェックメイトフォーのキングの事…色々な話を聞いた)

 

ツカサ「なるほど…だいたいわかった」

 

雪穂「本当に分かって言ってるの…?」

 

ツカサ「だいたい、だがな…」

 

雪穂「やっぱり…」ハァ

 

ハナヨ「…あの」

 

ツカサ「何だ?」

 

ハナヨ「…ご、ごめんなさい」

 

ハナヨ「私、何も出来なかったから…」

 

亜里沙「ハナヨさん…」

 

ハナヨ「お母さんを助けられなくて、キバにもなれなくて…」

 

ツカサ「…」

 

ハナヨ「雪穂ちゃんを、襲おうとして…」

 

ツカサ(そう言うハナヨの手は震えていた)

 

雪穂「…ハナヨさん」

 

?「人間を襲う…それがファンガイアの本性よ」

 

ツカサ「!」クルッ

 

ツバサ「…」

 

雪穂「ツバサさん…」

 

ツバサ「人間のライフエナジーを吸収し、命を奪う…」スタスタ

 

ツバサ「それが…もう一人のあなたよ」

 

ハナヨ「もう一人の、私…」

 

ツバサ「もしまた、あなたの中のファンガイアが目覚めたら…あなたは完全な化け物になってしまうでしょうね」

 

ハナヨ「私が、化け物に…!」

 

キバット「おい、お前!ハナヨに何てこと言うんだよ!」パタパタ

 

ツバサ「あら、私は本当の事を言っただけよ?」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ(しばらくその場に沈黙が流れた)

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(ある事を思いついたオレはケースからバイオリンと弓を取り出し…バイオリンを弾いた)

 

~♪

 

ハナヨ「この曲は…『渡』?」

 

雪穂「えっ?」

 

亜里沙「ツカサ…?」

 

ツバサ「…」

 

ツカサ(ひと通り弾き終えたオレはこう言った)

 

ツカサ「…かもしれないな」

 

ハナヨ「…」

 

雪穂「ちょっと、ツカサまで…!」

 

ツカサ「だが…ハナヨは違う」

 

ハナヨ「…へっ?」

 

ツカサ「ハナヨはファンガイアであると同時に、人間としての優しさを持ってる」

 

ツカサ「だから…途中で襲うのをやめる事が出来た」

 

ツカサ「知ってるか?人一倍の優しさを持つ者は…人一倍、心が強い」

 

ツカサ「オレはそう信じている」

 

ハナヨ「…ツカサくん」

 

グウウウウウゥ…

 

ハナヨ「あっ、お腹が…///」

 

亜里沙「今の大きな音…ハナヨさん?」

 

ハナヨ「ご、ごめんなさい…///」

 

ツカサ「…そういえばお腹が減ってたんだったな?」

 

ハナヨ「う、うん…」

 

ツカサ「それならちょうどいい」

 

ハナヨ「ふぇっ…?」

 

ツカサ「こんな事もあろうかとご飯を炊いていたんだ…ちょっと待ってろ」スタスタ

 

ツカサ(オレは具に昆布を入れて、周りに海苔を巻いたおにぎりを三個ほど作って…それをハナヨの目の前に置いた)

 

ツカサ「ほら」コトッ

 

ハナヨ「これは…?」

 

ツカサ「おにぎりだ」

 

ハナヨ「これがおにぎり…初めて見ました」

 

雪穂「えっ…知らないんですか?」

 

亜里沙「私も知ってるよ?」

 

ハナヨ「今までは『食べたら太っちゃうから』ってお母さんに言われてたから…お米は食べたことがなかったの」

 

ツカサ「なるほどな…とりあえず食べてみろ」

 

ハナヨ「は、はいっ…」

 

ハナヨ「い…いただきます」パクッ

 

ツカサ(ハナヨはおにぎりを一口食べると…)

 

ハナヨ「!?」

 

ツカサ(様子が一変した)

 

雪穂「どうしたんですか、ハナヨさん!?」

 

キバット「おい、お前…何か毒でも入れたんじゃねえだろうな!?」ゴン!

 

ツカサ(怒ったキバットがオレの頭にぶつかってくる)

 

ツカサ「そんな事する訳ないだろ…あと痛いからぶつかってくるのやめろ!」

 

ハナヨ「…お」

 

雪穂「…え?」

 

ハナヨ「美味しい…!」パクッ

 

ハナヨ「この見た目の白いツヤ、海苔の香り…」

 

ハナヨ「そして甘くないほんの少し濃いめの昆布…」

 

ハナヨ「最高です!!」

 

雪穂「えぇ…?」

 

ツバサ「…」フフッ

 

ツカサ「気に入ったようで何よりだ」

 

ツカサ(そう言うとハナヨは幸せそうな表情を浮かべながらおにぎりをあっという間に平らげた)

 

ハナヨ「あ、あのっ…おかわりありませんか?」

 

雪穂「早っ!」

 

ツカサ「それなら…ご飯に色々乗せて食べてみるか?」

 

ハナヨ「はいっ!!」

 

ツカサ(それからしばらくハナヨは昆布、海苔、梅干、鮭、納豆、生卵、明太子…)

 

ツカサ(色々なものをおかずにしてご飯を食べ続けた)

 

ハナヨ「ごちそうさまでした…!」

 

雪穂「あれから数分しか経ってないのに、もう炊飯器の中身が空っぽになってる…」

 

亜里沙「ハラショー…」

 

ツカサ「満足したか?」

 

ハナヨ「あ…はいっ、ありがとうございます!」

 

ツカサ「…それでいい」

 

ハナヨ「えっ?」

 

ツカサ「これで…人間のライフエナジーを吸いたくなる衝動がなくなっただろ?」

 

ハナヨ「あっ、そういえば…」

 

ツカサ「…」フフッ

 

亜里沙「さすがツカサ!」

 

雪穂「それでなくなるものなの…?」

 

ツバサ「…ファンガイアの中には人を襲わず、嗜好として人間と同じ様に食べ物を食べる物好きもいるから問題ないでしょう」

 

雪穂「物好き…」

 

ツカサ「それに…ハナヨは人間とファンガイアのハーフだからな」

 

ツカサ「ファンガイアになる可能性があるなら…人間として生きられる可能性だってあるはずだ」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「ハナヨ」

 

ハナヨ「…えっ?」

 

ツカサ「もしお母さんを助ける事が出来たら…ハナヨはどんな料理をお母さんに作ってもらいたいんだ?」

 

ハナヨ「お母さんを、助けたら…?」

 

ツカサ「ああ…何でもいい」

 

ハナヨ「だ、だし巻き卵…かな?」

 

ハナヨ「はちみつ入りで大根おろしがついてて…すごく美味しいの」

 

ツカサ「そうか…きっと、良いご飯のおかずになるだろうな」

 

ハナヨ「…うん」

 

ハナヨ「あっ、それとね…」

 

ツカサ「?」

 

ハナヨ「私、お母さんの夢って言ってた人間とファンガイアが一緒に暮らしている世界に興味があって…」

 

ハナヨ「私、見てみたいんです…お互いが怖がらずに手を取り合える世界を」

 

ハナヨ「きっとそれは…とっても素敵な世界なんだろうなって」

 

ツカサ「…そうか、そうなれば良いな」フフッ

 

ハナヨ「うん!」

 

雪穂「…ハナヨさん」

 

ハナヨ「あっ、雪穂ちゃん…さっきはごめんなさい」ペコリ

 

ハナヨ「私、もう大丈夫だから…!」

 

雪穂「…えっと」

 

ガシッ

 

亜里沙「ハナヨさんなら大丈夫!」ダッ

 

雪穂「えっ、亜里沙!?」

 

ハナヨさん「わわっ…!?」

 

ギュッ

 

ツカサ(亜里沙は雪穂の手を掴んで…ハナヨの手と繋がせた)

 

亜里沙「だって…こうして今、一緒に手を取り合えてるんだもん!」

 

亜里沙「だから…ハナヨさんの見たい世界、きっと見れるよ!」

 

亜里沙「それに…私も見てみたい!」

 

ハナヨ「亜里沙ちゃん…」

 

雪穂「…そうだね、亜里沙」フフッ

 

ハナヨ「雪穂ちゃん…?」

 

雪穂「…私も、そう思います」

 

雪穂「だから…さっきのことは気にしないでください」

 

雪穂「私達は…ハナヨさんのこと、信じてますから!」

 

ハナヨ「…!」

 

亜里沙「うん!」ニコッ

 

ハナヨ「えへへ…ありがとう」ニコッ

 

ツカサ「…」フフッ

 

ガチャ

 

ツカサ(ハナヨ達が笑い合う様子を見て安心したオレは…部屋のドアを開けた)

 

ツカサ「よし…そろそろ行くか、ハナヨ」

 

ハナヨ「…」コクリ

 

ツカサ(静かに頷いたハナヨは雪穂達から離れると、キバットの名前を呼んだ)

 

ハナヨ「行こう…キバット」スタスタ

 

キバット「よっしゃ~!待ってたぜハナヨー!」パタパタ

 

ツバサ「さて…私も行こうかしら」スタスタ

 

亜里沙「みんな、行ってらっしゃい!」

 

雪穂「…行ってらっしゃい」

 

ツカサ(オレ達はハナヨの母を助ける為に…写真館を出て、ファンガイアがいる城に向かった)

 

 

 

ツカサ(オレ達はキャッスルドランへとやってきた)

 

キャッスルドラン「…」Zzz…

 

ツカサ「眠っているみたいだな…今のうちに中に入るぞ」

 

ハナヨ「う、うん…」

 

ツカサ(オレ達は城の中に入り通路を歩いていたが…今のところ、人がいる様子はない)

 

ハナヨ「誰もいないのかな…?」

 

ツバサ「いえ、いるわ…確実にね」

 

ツカサ(すると…向こうから誰かがやってくるのが見えた)

 

ツカサ「!」

 

?「…」ダダッ

 

ツカサ(その人物は…見覚えのある大きな剣を振り回しながら走ってきた)

 

ツカサ「まさかあの剣は…奴か!?」

 

ツバサ「逃げて!」

 

ブンッ

 

ハナヨ「ピャア!」サッ

 

ツカサ(オレ達はソーンファンガイアの剣を避けた)

 

ツカサ「お前…いきなり危ないだろ!」

 

ソーンF「…この先は通さない」

 

ツカサ「くっ、こいつは骨が折れるな…!」

 

ツバサ「それなら…」ガガッ!

 

ソーンF「…!」

 

ツカサ(ツバサはソーンファンガイアに向かってディエンドライバーで攻撃した)

 

ツバサ「先に行きなさい」

 

ハナヨ「えっ、でも…」

 

ツバサ「心配はいらないわ…だから早く行って」

 

ツカサ「…分かった、行くぞハナヨ!」ダダッ

 

ハナヨ「…うん!」ダダッ

 

ツカサ(オレとハナヨは先を急いだ)

 

 

 

ツバサ「…行ったみたいね」

 

ソーンF「余計な事をしてくれたな」

 

ツバサ「ええ…余計な事をするのが、私の役目なの」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

ツバサ(私は一枚のカードをディエンドライバーに装填し…ディエンドに変身した)

 

ソーンF「…貴様!」ブンッ

 

ディエンド「ふふっ…」サッ

 

ディエンド(私はソーンファンガイアの剣を難なく避けた)

 

ディエンド「何をそんなに熱くなる必要があるのかしら?」

 

ソーンF「うるさい、貴様には関係の無い事だ!」

 

ディエンド「キングが…元クイーンである『彼女』に惚れていたから?」

 

ソーンF「!?」ピタッ

 

ディエンド「…やっぱり、そういう事」

 

ソーンF「…黙れ」

 

ディエンド「悔しかったあなたは…自分の手でキバを始末しようとしている」

 

ディエンド「もう一度、キングに振り向いてもらう為に…」

 

ソーンF「黙れぇぇぇぇぇ!!」ダッ

 

ディエンド(ソーンファンガイアに攻撃される前に…私は一枚のカードをディエンドライバーに装填し姿を消した)

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ソーンF「何…消えただと!?」

 

ディエンド「ここよ」

 

ソーンF「!」クルッ

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

ディエンド(ソーンファンガイアの背後に回った私は接近してディエンドライバーから強力なエネルギー波を発射した)

 

ソーンF「グワァァァッ!!」

 

ディエンド(吹き飛ばされて壁に激突したソーンファンガイアは…クイーンの姿に戻った)

 

クイーン「ウグッ…」

 

ディエンド「…あなたはよほど、キングを愛していたのね?」

 

クイーン「…ああ、確かに私はキングを愛していた」

 

クイーン「だがキングは私を…」

 

クイーン「選んでは、くれなかった…」ガクッ

 

ディエンド(クイーンはそう言って力尽きると…粉々のガラス片になって砕け散った)

 

ディエンド「ふぅ…!」

 

ディエンド(私は散々になったガラス片の中からプロトタイプのイクサベルトを拾い上げた)

 

ディエンド「…儚いものね、愛って」

 

 

 

ツカサ(オレ達は王の玉座がある広間へとやってきた)

 

ツカサ(そこには玉座に座るビートルファンガイアとその横で拘束されているハナヨの母がいた)

 

ハナヨ「お母さん!」

 

ハナヨの母「…!」

 

ビートルF「来たか…キバの鎧、貰い受ける」

 

ツカサ「残念だが、それは出来ないな」

 

ビートルF「ほう…俺の言葉が聞けぬか」

 

ツカサ「お前、確か彼女と同じように人間とファンガイアの共存を目指していたんだってな?」

 

ビートルF「ああ…だが、人間は私達を忌み嫌った」

 

ビートルF「そこで俺は悟った」

 

ビートルF「ファンガイアは人の命を奪い、人はファンガイアを恐れる…そこには命の奪い合いしかないと!」

 

ハナヨ「…そんなこと」ボソッ

 

ビートルF「?」

 

ハナヨ「そんなことない!」

 

ハナヨの母「!」

 

ビートルF「…何?」

 

ハナヨ「ファンガイアが人を襲わなければ…人間もきっと分かってくれるって信じてる!」

 

ハナヨ「だって私は…ファンガイアのお母さんと人間のお父さんとの間に生まれた子だから!」

 

ハナヨの母「…!」

 

ハナヨ「あのね、お母さん…」

 

ハナヨ「私…お母さんが作ってくれるだし巻き卵、大好きなんだ」

 

ハナヨ「今度は…白いご飯と一緒に食べたくなっちゃって」

 

ハナヨ「だから、この戦いが終わったら…また作ってくれるよね?」

 

ハナヨの母「…」コクン

 

ツカサ(ハナヨの母は涙を流しながら、頷いた)

 

ビートルF「愚かな…!」

 

ツカサ「愚かなんかじゃない!」

 

ビートルF「!?」

 

ツカサ「ハナヨは信じている、親と子の…家族の絆を」

 

ツカサ「自分が人間とファンガイアの間に生まれたからこそ…人間とファンガイアは共に手を取り合って生きていけると!」

 

ビートルF「そんなものはただの夢だ!」

 

ツカサ「それでも信じている…だが、お前は諦めた」

 

ツカサ「自分の弱さに負けて、絆を紡いでいく事を否定した!」

 

ツカサ「だがハナヨは…信じるものの為に戦える!」

 

ツカサ「それが…本当のキバだ!」

 

ツカサ「キバの鎧を持つ資格だ!」

 

ビートルF「何を…お前はファンガイアと人間の共存を信じているのか!?」

 

ツカサ「オレにとってファンガイアも人間も変わらない!」

 

ツカサ「だが…倒すべきものは倒す、それだけだ」

 

ビートルF「お前…何者だ!」

 

ツカサ(そう問われたオレは一枚のカードを取り出した)

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ハナヨ「…キバット!」

 

キバット「おっしゃぁ!」パタパタ

 

ハナヨの母「…!」

 

ディケイド(オレ達がビートルファンガイアと話しているうちに、キバットはハナヨの母を拘束していた縄を噛みちぎっていた)

 

ビートルF「何だと!?」

 

ハナヨ「…」パシッ

 

ディケイド(ひと通りの役目を終えたキバットをハナヨが掴むと、そのまま手に噛みつかせ…ベルトにキバットを装着した)

 

ハナヨ「…変身!」

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(オレもディケイドライバーにカードを装填し…オレとハナヨはそれぞれ、ディケイドとキバに変身した)

 

ディケイド「行くぞ!」ダッ

 

キバ「はいっ!」ダッ

 

ビートルF「…!」

 

ディケイド(オレ達はビートルファンガイアに立ち向かう為、走り出した…)

 

 

 

ビートルF「フンッ!」ガッ

 

キバ(相手のパンチで、私達はお城の外へと吹き飛ばされて…)

 

ディケイド「うわっ!」ゴロゴロ

 

キバ「うっ…」ゴロゴロ

 

ビートルF「どうだ…これが王の力だ」

 

ディケイド「くっ…何か弱点はないのか」

 

キバ「そういえばあの人、他の種族で生き残った人達を吸収してるって…」

 

ディケイド「という事は、アイツの胸と両肩の模様…まさか!」

 

キバ「…えっ、どうかしたの?」

 

ディケイド「良い事を思いついた…ハナヨ、今からオレが順番に言う三色の笛をキバットに吹かせろ!」

 

キバ「へっ?で、でも…」

 

ディケイド「時間ならオレが稼ぐ…はっ!」ダッ

 

キバ(そう言ってディケイドはファンガイアに向かっていった)

 

ビートルF「フッ…そんな攻撃が何になるというのだ」

 

ディケイド「悪いが今のオレは…囮だ」

 

ビートルF「何…?」

 

ディケイド「ハナヨ、まずは青だ!」

 

キバ「えっと…これかな?」

 

キバ(私はベルトの横から青い笛を取り出して…キバットに吹かせた)

 

『ガルルセイバー!』

 

キバ(すると…突然、ファンガイアが苦しみ始めた)

 

ビートルF「な、何だ…俺に逆らうというのか!?ウグッ!」

 

キバ(ファンガイアの胸から、青い像が出てきた)

 

キバ「!?」

 

キバ(青い像は剣のような武器に変わって…私がいるところに向かってきた)

 

キバ「え…ええっ!?」

 

ディケイド「その剣を取れ!」

 

キバ「う、うんっ!」パシッ

 

キバ(私が青い剣を左手でキャッチすると…左手を中心に身体の色が青く変わった)

 

キバ(それと同時に…私に狼のような衝動がわき上がってきた)

 

キバ「はっ…」ダダッ

 

キバ(走り出してみると…私は今までより速く走れるようになっていた)

 

キバ(私は高くジャンプして…ファンガイアを剣で斬りつけた)

 

キバ「やぁっ!」ザシュッ!

 

ビートルF「グアッ…」

 

ディケイド「次は緑だ!」

 

キバ(私は緑の笛を取り出して…キバットに吹かせた)

 

『バッシャーマグナム!』

 

ビートルF「ガアッ!」

 

キバ(再び苦しむファンガイアの肩から緑の像が現れた)

 

キバ「!」パシッ

 

キバ(緑の像が銃のような武器に変わると同時に…私は右手でそれをキャッチした)

 

キバ(その瞬間…私の右手を中心に身体の色が緑に変わった)

 

キバ「ふふん♪」

 

キバ(私は近くにある池の上をスイスイと移動しながら…銃でファンガイアを攻撃した)

 

ガガッ!

 

ビートルF「ガハッ!?」

 

ディケイド「最後は紫だ!」

 

キバ(陸に上がった私は紫の笛をキバットに吹かせて…)

 

『ドッガハンマー!』

 

ビートルF「おのれ…グウッ!」

 

キバ(ファンガイアの肩から出てきた紫の大きな像は…ハンマーのような武器に変わった)

 

キバ「!」パシッ

 

キバ(私が両腕でそれを受け取ると、両腕を中心に身体が紫色に変わった)

 

キバ「…」ズズズッ

 

キバ(私はハンマーを引きずりながら…ファンガイアに向かっていく)

 

ビートルF「…こしゃくな!」ダダッ

 

ガキンッ

 

キバ「…」

 

キバ(ファンガイアのパンチが当たったけど…私の身体には傷一つつかなかった)

 

ビートルF「…何!?」

 

キバ「ふっ!」ドガッ!

 

キバ(私はハンマーを振り回して、ファンガイアに思いきりぶつけた)

 

ビートルF「グワァァァァァ!!」

 

キバ(ファンガイアはドラゴンのお城まで飛ばされていく)

 

ビートルF「グッ、こうなれば…!」 

 

キバ(ファンガイアは城のドラゴンの頭の上に乗って…)

 

ビートルF「俺が王だぁぁぁぁぁ!!」

 

ディケイド「やれやれ…うるさい奴だ」

 

キバ(私は赤いキバに戻って…ディケイドのところまで走った)

 

キバ「何をするつもりなんだろう…?」

 

ディケイド「おそらく…あのキャッスルドランで街にいる人間を襲いに行くつもりだろうな」

 

キバ「えっ、そんな…!」

 

キバ(このままじゃ…雪穂ちゃんや亜里沙ちゃん、シズカちゃん達が危ない)

 

キバ(それだけじゃない…そんなことされたら、お母さんの夢が叶わなくなっちゃう)

 

キバ(私はファンガイアと人間がお互いに手を取り合える世界を作りたい…だから!)

 

キバ「私は絶対に…諦めない!」

 

 

 

ディケイド(キバがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにキバの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「それなら良い方法がある」

 

キバ「へっ…?」

 

『ファイナルフォームライド…キ・キ・キ・キバ!』

 

ディケイド(一枚のカードをベルトを装填したオレはキバの背後に回り…)

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

キバ「あ、あの…ピャア!?」

 

ディケイド(オレがキバの背中を押すと、キバは形を変え…キバアローに変形した)

 

キバ「こ、これは…?」

 

ディケイド「オレとハナヨの力だ」

 

『ファイナルアタックライド…キ・キ・キ・キバ!』

 

ディケイド(オレは更に一枚のカードを装填し、キバアローの弓を引いた)

 

『キバっていくぜー!』

 

ビートルF「何だ、あの姿は!?」

 

ディケイド「はあっ!」

 

ディケイド(オレが狙いを定めて弓を放すと…キバの右足を模した矢先が展開し、敵に向けて赤く光る矢を発射した)

 

ビートルF「グハッ!」

 

ディケイド(矢を受けたビートルファンガイアは、空中へ吹き飛んだ)

 

ディケイド「まだだ!」

 

ディケイド(オレは更なる一撃を与えようと、キバアローの矢を上空に放つ)

 

ディケイド(すると…空の一部がステンドグラスが割れるように裂け、そこから赤い月が出現する)

 

ディケイド「頼む、飛んでくれ!」

 

キバ「はい!」

 

ディケイド(オレはキバアローで空を飛び、ビートルファンガイアに再びキバアローを向け…)

 

ディケイド「やあーっ!」

 

ディケイド(キバアローの矢を放ち、命中したビートルファンガイアがいる周りには大きなキバの紋章が現れた)

 

ディケイド(これは『DCDF(ディケイドファング)』…オレとキバの技だ)

 

ビートルF「グワァァァァァ!!」

 

ディケイド(大きなキバの紋章が消えた後、キバアローはキバに戻り…オレ達は同時に地面に着地した)

 

ビートルF「グッ…カハッ」ヨロッ

 

ディケイド「…!」

 

ディケイド「お前、まさか…?」

 

キバ「…?」

 

ディケイド(ボロボロになったビートルファンガイアはキングに姿を戻し…)

 

キング「最期に一つ…キバの鎧を纏うお前に言っておきたい事がある」

 

キバ「えっ、私?」

 

キング「ああ…俺は夢を諦め、過ちを犯してしまった」

 

キング「だが…俺も、お前と小泉が築き上げる人間とファンガイアが共存する世界を見てみたい」

 

キバ「…」

 

キング「だからこそ…お前は人間としてでなく、ファンガイアとしてでもない…お前らしい生き方で生きろ」

 

キバ「私らしい、生き方…」

 

キング「…」フフッ

 

ディケイド(キングは優しく微笑むと…そのままステンドグラスが割れるように身体が粉々に砕け散っていった)

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(戦いが終わり、変身を解除したオレ達は…しばらくその場で立ち尽くしていた)

 

 

 

ツカサ(数日後の夜…オレと雪穂と亜里沙はライブハウスに来ていた)

 

雪穂「すごい人だね…どこにいるんだろう?」

 

亜里沙「あっ、いたよ!」

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレ達は最後列の席にいたハナヨの母とキバットを見つけた)

 

雪穂「こんばんは!」

 

ハナヨの母「…」ペコリ

 

キバット「おう、お嬢ちゃん達じゃねえか!」

 

亜里沙「久しぶり、キバット!」

 

ツカサ「…よう」

 

ハナヨの母『こんばんは…皆さんのおかげで、アームズモンスターやキャッスルドラン達を無事に助け出す事が出来ました』

 

ハナヨの母『それと…ハナヨちゃんを支えてくれて本当にありがとう』

 

ツカサ「別に…オレ達は礼を言われる程の事はしていない」

 

ハナヨの母「…?」

 

ツカサ「オレ達はただ…一度だけでも良いから、ハナヨにスクールアイドルをやってほしいと思っただけだ」ピラッ

 

ツカサ(そう言いながらオレは一枚の写真を取り出した)

 

ツカサ(写真にはハナヨが笑顔でご飯を頬張っている姿と、ハナヨがバイオリンに触れている姿が写っていた)

 

ハナヨの母「…!」

 

亜里沙「ふふっ…」

 

ツカサ「どうした、亜里沙?」

 

雪穂「ツカサったら素直じゃないんだから…でしょ?」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「う、うるさいな…///」

 

雪穂「…」フフッ

 

ツカサ「そうだ…ちょっと用事を思い出した」スタスタ

 

亜里沙「えっ…ツカサ?」

 

雪穂「どこに行くの?」

 

ツカサ「大丈夫だ…すぐに戻る」

 

ツカサ(オレはホールを出て…ある場所に向かっていた)

 

 

 

ツカサ「ハナヨ?」コンコン

 

ツカサ「いないのか…?」ガチャ

 

ツカサ(オレが控え室の中に入ると…そこには眼鏡を取ったハナヨが椅子に座っていた)

 

ハナヨ「ダレカタスケテ、ダレカタスケテ、ダレカタスケテ…」

 

ツカサ「…おい、ハナヨ」ポン

 

ハナヨ「ピャア!?」ビクッ

 

ツカサ「!?」ビクッ

 

ハナヨ「あっ…ツカサくん」

 

ツカサ「驚く度に変な声を出すな…こっちまで驚いたぞ」ハァ

 

ハナヨ「ご、ごめんなさい…!」

 

ツカサ「…眼鏡、外したのか?」

 

ハナヨ「あっ、うん…コンタクトにしようと思って」

 

ハナヨ「変…かな?」

 

ツカサ「いや…似合ってるぞ」フフッ

 

ハナヨ「えへへ…ありがとう」

 

ツカサ「他のメンバーは?」

 

ハナヨ「シズカちゃん達なら、もうステージの方に…」

 

ツカサ「そうか…」

 

ハナヨ「…ねぇ、ツカサくん」

 

ツカサ「どうした?」

 

ハナヨ「私…本当にちゃんと歌えるかな?」

 

ハナヨ「もし間違えちゃったりしたら…」

 

ツカサ「…どんなに深い夜でも、やがて太陽は昇る」

 

ハナヨ「?」

 

ツカサ「どんなに硬いつぼみでも、やがて花となって咲き誇る…」

 

ツカサ「それがハナヨだとオレは思う」

 

ハナヨ「ツカサくん…」

 

ツカサ「どんなに間違えたっていい…転んだり泣いたりしたって構わない」

 

ツカサ「それでもアンタは必ず立ち上がってくれると…オレは信じてるからな」

 

ハナヨ「…」

 

ツカサ「それと…ちょっと立ってみろ」

 

ハナヨ「えっ…うん」

 

ツカサ「…」トンッ

 

ツカサ(オレはハナヨの背中をそっと押した)

 

ハナヨ「今のは…?」

 

ツカサ「…優しい陽が花を咲かせるようになるおまじないだ」

 

ハナヨ「…!」

 

ツカサ「アンタは一人じゃない」

 

ツカサ「ハナヨのお母さんがいる、オレがいる」

 

ツカサ「雪穂や亜里沙もいるし、キバットだっている…」

 

ツカサ「オレ達はいつでも…アンタが前に進むのを待ってる」

 

ツカサ「だから…安心しろ」

 

ハナヨ「…うん、ありがとう」ニコッ

 

ツカサ「良い顔になったな…じゃあ、キバって行ってこい!」

 

ハナヨ「うん…行ってくる!」ダッ

 

ツカサ(ハナヨは控え室から出て行った)

 

ツカサ「…またな、ハナヨ」

 

ツカサ(オレの身体は透けるように消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

 

 

ハナヨ「そ…それでは聴いてください!」

 

ハナヨ「『Destiny's Play』」

 

ハナヨ(私、これからは…自分の足で立ちたい)

 

ハナヨ(いつも逃げてばかりじゃなくて…立ち向かわなきゃ)

 

ハナヨ(自分の足で立って、前を向いて進むことが…)

 

ハナヨ(こんなに嬉しくて楽しくて幸せなことだなんて、今まで知らなかったから)

 

ハナヨ(だから…)

 

ハナヨ(逃げてばかりで泣き虫のハナヨは…これで終わりにします)

 

ワァー!ヒューヒュー!パチパチパチ…

 

ハナヨ「あ、ありがとうございます…」

 

ハナヨ「実は私、歌うことに自信がなかったんです…」

 

ハナヨ「でも…ある人達が勇気づけてくれました」

 

ハナヨ「ある人が、私の背中を優しく押してくれました」

 

ハナヨ「だから…私も歌うことで、皆に伝えたい」

 

ハナヨ「諦めなければ、夢は叶うんだって」

 

ハナヨ「…次はこの曲を歌います、聴いてください」

 

ハナヨ「『なわとび』」

 

ハナヨ(ツカサくん)

 

ハナヨ(雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん)

 

ハナヨ(ありがとう)

 

ハナヨ(私が生まれて初めて手にした何か…)

 

ハナヨ(ツカサくん達がくれたこの何かを、私、大事にしたい)

 

ハナヨ(形はちょっぴり違うけど…アイドルに憧れていた私は今、こうしてお客さんの前に立って歌ってる)

 

ハナヨ(だから…諦めなければ夢はどんな形になっても叶うんだってことを、私は皆に伝えていきたい)

 

ハナヨ(そして…私はこれからお母さんと一緒に、人間とファンガイアが手を取り合える世界にしていきたい)

 

ハナヨ(いつか優しい太陽が)

 

ハナヨ(長い月日をかけて花を咲かせるように…)

 

 

 

ツカサ(光写真館に戻ってきたオレは甘いものが食べたいというツバサに渋々、チョコフォンデュを作っていた)

 

ツカサ「全く、仕方ないな…ほら」

 

ツバサ「ありがとう…優しいのね」フフッ

 

ツカサ「オレは助けてもらった貸しを作りたくないんでな…」

 

ツバサ「あら、意外と律儀なのね…?」

 

ツカサ「…いいから冷めないうちに早く食べろ」

 

ツバサ「それじゃ…いただきます」

 

ツカサ(ツバサがイチゴにチョコをつけると、すぐに口の中に頬張った)

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「?」

 

ツバサ「…熱っ」ボソッ

 

ツカサ「…熱い?」

 

ツバサ「!…いいえ、言ってないわ」

 

ツカサ「いや、でも今…」

 

ツバサ「言ってないわ」

 

ツカサ「だが確かに…」

 

?「ただいまー!」ガチャ

 

ツカサ「!」クルッ

 

ツカサ(ライブを見てきた雪穂と亜里沙が帰ってきた)

 

ツカサ「帰ったか」

 

亜里沙「あれ…ツカサ、先に帰ってたの?」

 

ツカサ「ああ」

 

雪穂「もう…それなら先に帰るって言ってよね」

 

亜里沙「私たち…ツカサがいないって心配してたんだよ?」

 

ツカサ「それは悪かったな…」

 

亜里沙「あれ…チョコフォンデュだ!」

 

ツカサ「ああ…今、ちょうど作った所だ」

 

亜里沙「私たちも食べていい…?」

 

ツカサ「当たり前だ…人数分、用意してるからな」フフッ

 

亜里沙「ありがとう、ツカサ!」

 

ツカサ(亜里沙は席について、チョコフォンデュを食べた)

 

亜里沙「いただきます!」

 

雪穂「…ねぇ、ツカサ」

 

ツカサ「何だ?」

 

雪穂「あのテレビの上に白いコウモリなんていたっけ…?」

 

ツカサ「ん?…あっ!」

 

キバーラ「はぁ~い♡」

 

ツカサ「あの時の蝙蝠もどき…何でお前が?」

 

キバーラ「ツバサが入れてくれたのよ~…一緒にアタシ達と旅をするなら、ここにいるのが一番良いって!」

 

ツカサ「おい…誰があの蝙蝠もどきを入れて良いって言った?」

 

ツバサ「あら、旅は道連れって言うじゃない?」

 

ツカサ「お前な…」ハァ

 

ツカサ(オレが溜め息をついていると…月とキャッスルドランの背景がまた別の背景に変わった)

 

ツバサ「ほら…また変わった」

 

キバーラ「うふふ…♡」パタパタ

 

ツカサ「この背景は、まさか…」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「雪穂が捕まった!?」

「ライダー裁判制度…?」

「オレ達はチーム…だろ?」

「オレは雪穂の弁護士で、仮面ライダーだからな!」

「スクールアイドルの衣装って、こんなに可愛いんだ…」

「コウモリにはコウモリ…ってね」

第6話『鏡の中の審理』

戦わなければ生き残れない!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~凛×龍騎の世界~
第6話『鏡の中の審理』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…『キバの世界』か」

ハナヨ「私が…人間とファンガイアのハーフ…」

キング「ファンガイアは人間を貪り尽くす!」

ハナヨ「人を襲わなければ…人間もきっと分かってくれるって信じてる!」

ツカサ「ハナヨは信じている」

ツカサ「信じるものの為に戦える!」

ディケイド「オレとハナヨの力だ」

キバ「私らしい、生き方…」

ツカサ「オレ達はいつでも、アンタが前に進むのを待ってる」

ハナヨ(逃げてばかりで泣き虫のハナヨは…これで終わりにします)


(実は誰にも言ってないコンプレックスがあるんだ)

 

(それは女の子らしい格好がいまいち似合ってないっていうこと)

 

(髪の毛はショートカットからずっと伸ばしたことなんてなかったし)

 

(この世で好きなことはスポーツ、動物…あとは虫とか星とか)

 

(宝物はギア付き自転車とキックボードで)

 

(好きな食べ物はとんこつ醤油のメンマ入りラーメン!!)

 

(ね、女の子っぽくないでしょ?)

 

(だから…それくらいは分かってるんだ)

 

(小さい頃からいつもショートパンツ姿だったから、男の子に間違われることも多かったし)

 

(…でも、いつからだろう?)

 

(最近はすごく気になってる)

 

(ミニスカートだって履いてみたいし)

 

(女の子らしい格好をしてみたくなる)

 

(だって…女の子なんだもん)

 

(やっぱり…可愛くなりたい)

 

(いつか、変われる時が来るのかな?)

 

(もし変われるのなら…時々、思うんだ)

 

(変身してみたいなって)

 

(鏡に映る自分を見ていたリンは…そう感じてた)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレが溜め息をついた直後…写真館の背景が違うものへと変化した)

 

ツカサ「…この背景は、まさか」

 

亜里沙「これも…ドラゴン?」

 

雪穂「赤いドラゴンなんて聞いたことないんだけど…」

 

雪穂「というかドラゴン自体、本当は存在しない生き物のはずなのに…」

 

ツバサ「そんな生き物が存在するのが…キバの世界や今いるこの世界よ」

 

ツカサ「空を飛び回るドラグレッダー…か」

 

雪穂「ドラグレッダー?」

 

ツカサ「ああ、龍騎と契約しているミラーモンスターだ」

 

雪穂「えっ、龍騎?」

 

亜里沙「契約…ミラー?」

 

ツカサ「つまり…ここは『龍騎の世界』って事だ」

 

雪穂「色々と説明省き過ぎじゃない…?」

 

亜里沙「ここはどんな世界なの?」

 

ツバサ「この世界の大きな特徴は『ミラーワールド』…鏡の中にもう一つの世界があるという事よ」

 

雪穂「鏡の中にもう一つの…世界?」

 

ツバサ「ええ、そこでライダー達は命懸けの戦いをしているわ…ライダー同士でね」

 

雪穂「えっ…ライダー同士で、ですか!?」

 

ツカサ「そういう事だ」

 

雪穂「いや、だからどういうこと?何のためにそんな…」

 

ツバサ「詳しい事はこれを見たら分かるわ」パサッ

 

ツカサ(ツバサは一枚の紙を雪穂に渡した)

 

雪穂「『花鶏高校新聞部制作・週刊WASHIジャーナル』…?」

 

ツバサ「その学校の新聞部はスクールアイドルから金色のザリガニまで色々な記事を取り扱っているわ」

 

亜里沙「スクールアイドル…この世界にもいるんだ!」

 

ツカサ「金色のザリガニか…なかなか興味深い記事だな」ボソッ

 

雪穂「いや、金色のザリガニの方はどうでもいいでしょ…」

 

ツバサ「その中でも最も生徒から注目を集めている記事が…『ライダーバトル』」

 

亜里沙「ライダー…バトル」

 

ツバサ「そして一番下に掲載された新聞部員のリストに…」

 

雪穂「『星空リン』…えっ、凛さん!?」

 

亜里沙「私にも見せて!…本当だ」

 

ツバサ「まずはその新聞部のある学校に行って、色々と話を聞くのが良いかもしれないわね」ズズッ…

 

ツカサ(そう言ってツバサはコーヒーを飲み干した)

 

ツバサ「…ねえ、コーヒーのおかわり貰えるかしら?」

 

ツカサ「全く…仕方ないな」ハァ

 

ツカサ(オレはキッチンへ向かい、戸棚からコーヒー豆を出そうとするが…)

 

ツカサ「…ん?」

 

亜里沙「ツカサ、どうかしたの?」

 

ツカサ「いや…どうやらさっき淹れたので豆が切れたみたいだ」

 

ツバサ「…そう」

 

ツカサ「紅茶ならあるが…ストレートで良いか?」

 

ツバサ「…いただくわ」

 

ツカサ(オレはすぐに紅茶を淹れ、ツバサに差し出した)

 

ツカサ「ほら」コトッ

 

ツバサ「…」

 

ツカサ(淹れたての紅茶は熱々だった)

 

ツバサ「…」フーフー

 

ツカサ「何してんだアンタ?」

 

ツバサ「!…いえ、何も」キリッ

 

ツカサ「いや、でも今…」

 

ツバサ「何も、してないわ」キリッ

 

ツカサ「…紅茶を」

 

ツバサ「決して…!」キリリッ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(オレはそれ以上、何も聞かなかった)

 

ツカサ(聞かなくても…だいたいわかったからだ)

 

ツカサ(その時…新聞をひと通り読み終えた雪穂がこう言った)

 

雪穂「とりあえず…私は花鶏高校に行ってリンさんに話を聞きに行ってきます」

 

亜里沙「それじゃ私も!」

 

ツカサ「じゃあオレも行くか…」

 

雪穂「ツカサは別に行かなくてもいいよ?」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

ツカサ「どうしてオレは行かなくてもいいんだ?」

 

雪穂「いや、それは…察してよ」

 

ツカサ「何を?」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「私、知ってるよ!」

 

亜里沙「雪穂はいつも私たちを助けてくれるツカサの役に立ちたいんだよね!」

 

雪穂「ちょっ…ちょっと亜里沙!?」

 

ツカサ(近くを飛び回るキバーラが顔を赤くした雪穂にちょっかいをかける)

 

キバーラ「あら♡雪穂ちゃんったら…照れてるのね~ウフフ♡」

 

雪穂「う、うるさいなぁ!照れてないから!!」

 

雪穂「あとなんで私の名前知ってるの!?」

 

雪穂「というか誰!?」

 

キバーラ「くすくす♡アタシの名前はキバーラよ~、これからよろしくね♡」

 

亜里沙「私は絢瀬亜里沙、よろしくね!」

 

キバーラ「よろしく~♡」

 

ツカサ「そうか…そういう事ならオレは今からゆっくり休ませてもらうぞ」スタスタ

 

雪穂「いや、だから違…」

 

ツカサ「…ありがとうな、雪穂」

 

雪穂「えっ?あ…う、うん///」

 

ツカサ「じゃあオレは寝る」ガチャ

 

亜里沙「おやすみツカサ!」

 

ツカサ「ああ、また明日な」バタン

 

ツカサ(スタジオのある部屋を出たオレは…そのまま自分の部屋に行って寝る事にした)

 

ツカサ(翌日、あんな事になるとも知らずに…)

 

 

 

亜里沙(次の日の朝…起きた私はスタジオのある部屋に入った)

 

亜里沙「おはよう…」フワァ

 

ツカサ「よう、起きたな」

 

亜里沙「ツカサ、ツバサさん…」

 

ツバサ「おはよう」

 

亜里沙「…あれ?」キョロキョロ

 

亜里沙(私は周りを見回したけど、雪穂はどこにもいなかった)

 

亜里沙「雪穂は…?」

 

ツカサ「雪穂なら先に朝ご飯食べて出て行ったぞ」

 

亜里沙「えっ?そんな、私もついて行くって言ったのに…」

 

ツカサ「『何度起こしても起きなかった』って言ってたぞ」

 

亜里沙「そうなの?…でも、私も行きたい!」

 

亜里沙「私もツカサや雪穂のために頑張りたい…だって私たち、チームだもん!」

 

ツカサ「…それなら、朝ご飯を食べてから行け」

 

亜里沙「でも…」

 

ツカサ「腹が減っては何とやら…って言うだろ?」

 

亜里沙「…分かった」

 

亜里沙(私がイスに座ると、テーブルの上に置かれたホットプレートの上には、見たことのない食べ物があった)

 

ジュー…

 

亜里沙「ツカサ、これは…ホットケーキ?」

 

ツカサ「お好み焼きだ」

 

亜里沙「お好み…焼き?」

 

ツカサ「百聞は一見に如かずだ…とりあえず食べてみろ」

 

亜里沙(ツカサはお好み焼きを一口サイズに切って、私のお皿に乗せてくれた)

 

亜里沙「いただきます…」パクッ

 

亜里沙「…美味しい!」ニコッ

 

ツカサ「そうか」フフッ

 

ジュー…

 

ツバサ「…ねえ」

 

ツカサ「何だ?」

 

ツバサ「これは、わざとなのかしら?」

 

ツカサ「さてな…何の事だかさっぱりだ」

 

亜里沙「…?」モグモグ

 

亜里沙(それから私はお好み焼きを食べ終えて…写真館を出ることにした)

 

亜里沙「ごちそうさまでした!」

 

亜里沙「じゃあ…行ってくるね!」ガチャ

 

ツカサ「ああ」

 

ツバサ「…」フーフー

 

ツカサ「…青のりは?」

 

ツバサ「いただくわ」キリッ

 

ツカサ「鰹節は?」

 

ツバサ「ええ、いただくわ」キリリッ

 

ツカサ「…」

 

 

 

亜里沙「えっと、確か…ここだよね?」

 

亜里沙(私は雪穂を追って、花鶏高校にやってきた)

 

亜里沙(でも、学校の門の前にはパトカーや救急車が停まっていて…たくさんの人もいた)

 

亜里沙「これじゃ学校の中に入れないよ…あれ?」

 

亜里沙(私が困っていると校舎から救急隊の人達が出てきて、倒れた一人の女性を救急車に乗せていた)

 

亜里沙(その人を追って、私がよく知っているオレンジ色の短い髪の女の子が校舎から出てきた)

 

?「ママ、マm…じゃなかった!」

 

?「先生…しっかりするニャー!!」

 

亜里沙「えっ…?リンさん!?」

 

亜里沙(その後から、警察の人達と雪穂が校舎から出てきた)

 

雪穂「だから誤解ですってば…離してください!」

 

亜里沙(雪穂は警察の人達に捕まって、パトカーに乗せられようとしていた)

 

亜里沙「雪穂!?」

 

雪穂「あっ亜里沙!助け…」

 

バタン!

 

亜里沙(雪穂が何か言おうとした途中でパトカーのドアは閉まり…そのまま行ってしまった)

 

亜里沙「た、大変だ…雪穂が」

 

亜里沙「雪穂が捕まった!?」

 

 

 

雪穂(警察に捕まった私は手錠をかけられ、法廷に立たされていた)

 

雪穂「ちょっと誰か…話を聞いてください、誤解なんです!」

 

雪穂(私がそう言うと、誰もいないはずの裁判官席の方から声が聞こえてきた)

 

?「君の話などどうでもいい」

 

雪穂「えっ…ちょっと、どういう意味ですかそれ!?」

 

?「なぜなら君の罪はライダー裁判制度によって裁かれるからだ」

 

雪穂「ライダー裁判制度…?まさか!」

 

雪穂(私は昨日の話と読んだ新聞の記事を思い出していた)

 

雪穂「ライダー…バトル?」

 

?「その通りだ、ライダーに選ばれた者達はミラーワールドという鏡の世界で最後の一人になるまで戦い合う」

 

?「ライダーには検事と弁護士、そして事件の関係者が選ばれ…そして最後に残った一人が君に判決を下すのだ」

 

雪穂「ライダー同士が戦って、私に判決を下すって…ちょっと待ってください!」

 

雪穂「そんなことで…正しい裁判が出来るんですか?」

 

雪穂「人が戦い合うなんて…というか、そもそもまだ誰も私の話を聞いてないのに!」

 

?「君の話など関係ない、意見がぶつかり合い勝ち残った者の意見が判決となる!」

 

?「ライダー裁判制度は最も合理的かつ公正で公平だ」

 

雪穂「どこがですか!?全然、公平じゃないじゃないですか!」

 

?「静粛に!」

 

雪穂「えぇ…?」

 

雪穂(ダメだ、私が何を言っても話を聞いてくれない…そうだ!)

 

雪穂「そういえば、ライダーに選ばれる人の中に弁護士もいるって言ってましたよね?」

 

?「そうだ」

 

雪穂「それなら…弁護士を呼んでください!私、その人と話がしたいです!」

 

?「ふむ…許可しよう」

 

雪穂「よ、良かったぁ…」ハァ

 

 

 

雪穂(ひとまず私は接見室へと連れて行かれ、弁護士や事件の関係者の人と会うことになった)

 

コンコン

 

雪穂「はい」

 

雪穂(弁護士の人かな?どんな人なんだろう…?)

 

ガチャ

 

亜里沙「雪穂!」ダッ

 

ガバッ

 

雪穂(私は亜里沙に抱きつかれた)

 

亜里沙「私、すごく不安だった!だって雪穂が捕まって…」グスン

 

ツカサ「…」

 

雪穂「ちょっ、亜里沙!?それにツカサまで…!」

 

ツカサ「それにしても…本当にお前達はどこに行ってもイチャつくな」ハァ

 

雪穂「イチャついてないよ!というかこの状況は何!?」

 

ツカサ「どうどう」

 

雪穂「だから馬じゃないから!!」

 

ツカサ「とりあえず落ち着け…あと亜里沙もそのくらいで離してやれ」

 

亜里沙「あっ…うん!」バッ

 

ツカサ「…まず、ライダー裁判の話は聞いたな?」

 

雪穂「う、うん…」

 

雪穂「ライダーが戦い合って、勝ち残った最後の一人が有罪か無罪か決めるって…」

 

ツカサ「その判決を下す候補の一人が…どうやらオレらしい」ピラッ

 

雪穂「?」

 

雪穂(ツカサは机の上に一枚の名刺を置いた)

 

雪穂「『弁護士 城戸ツカサ』…弁護士!?」

 

雪穂(よく見ると…ツカサのスーツには弁護士バッジが着けられていた)

 

ツカサ「どうやら、それがこの世界でのオレの役割らしい…」ハァ

 

雪穂「なんでイヤそうなの…?」

 

ツカサ「まあ…いつかはやると思ってたからな」

 

ツカサ「凶悪で乱暴なアンタが、いつ人を襲うか…な?」

 

雪穂「…あのね!」ガタッ

 

雪穂(怒った私がイスから立ち上がると同時に、亜里沙がツカサにこう言った)

 

亜里沙「ツカサ、雪穂のことをそんな風に思ってたの…?」ウルウル

 

ツカサ「…!?」

 

亜里沙「そんな、ひどい…」ポロポロ

 

ツカサ「お、おい…ちょっと待て、泣くんじゃない!」

 

雪穂「あーあ、泣かしちゃった…」

 

ツカサ「うっ…い、今のは冗談だ!」

 

ツカサ「オレが悪かったからもう泣くな!」

 

亜里沙「ううっ…」ポロポロ

 

ツカサ「わ…分かった、雪穂はオレが助けてやる!」

 

亜里沙「ぐすっ…本当に?」

 

ツカサ「あ、ああ…本当だ」

 

ツカサ「約束する、オレ達はチーム…だろ?」

 

亜里沙「…うん」コクリ

 

雪穂(…やっぱり、どこかチョロいなぁ)

 

ツカサ「さて…」コホン

 

ツカサ「とりあえず話の続きを…」

 

コンコン…ガチャ

 

雪穂(ノックしてからドアを開けたのは見覚えのあるオレンジ色のショートカットヘアをした人だった)

 

リン「失礼しまーす…」

 

雪穂「え、リンさん!?」

 

リン「えっ…何でリンのこと知ってるの?」

 

雪穂「あっ、それは…学校の新聞でリンさんの名前お見かけして!」

 

カシャ

 

雪穂(私が何とかその場をごまかそうとすると、リンさんに向けてカメラのシャッターを押したツカサがこう言った)

 

ツカサ「…オレ達は別の世界からやってきた」

 

雪穂「ちょっと!?」

 

亜里沙「リンさんと会うためにやって来ました!」

 

雪穂「亜里沙まで!?」

 

リン「え…えっと」

 

リン「ま、またまた~…冗談はやめるニャ~」アハハ

 

雪穂(リンさんが苦笑いしてる…)

 

リン「と、とりあえず…雪穂ちゃんで合ってるよね?」

 

雪穂「は、はい」

 

リン「事件のことを聞かせてくれるかニャ?」

 

ツカサ「…どうやらこっちの世界のアンタも、その『~ニャ』って語尾は抜け切らないようだな」

 

リン「え?あっ…」

 

亜里沙「ツカサ、これはリンさんのチャームポイントだから…」

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

リン「えっ、分かるの?」

 

雪穂「気にしないでください、こっちの話なんで…」

 

リン「う、うん…?」

 

リン「それじゃ聞かせてほしいニャ」

 

リン「ママ…じゃなかった、先生が意識不明の重体になったことについて」

 

ツカサ「…!」

 

亜里沙「リンさんのお母さんが…?」

 

リン「うん、事件が起こった時…一緒に新聞部の部室の中にいたのが雪穂ちゃんなんだよね?」

 

雪穂「はい」

 

リン「それで、雪穂ちゃんは持っていたフォークで先生を…」

 

雪穂「それは違います!」

 

雪穂「私は先生から出されたケーキを食べようとしていただけです!」

 

リン「えっ…ケーキ?」

 

ツカサ「ケーキだと?」

 

雪穂「うん、イチゴが乗ったショートケーキ…私はそれを食べようとしたんです」

 

雪穂「『余分に買ってきちゃったから、良かったらあなたも食べてくれない?』って…」

 

雪穂「そうしたら、先生が急に首を押さえながら倒れて…」

 

雪穂「そのすぐ後に人が来て『あなたがやったの?』って言われて、警察を呼ばれてしまって」

 

リン「…先生には何を話そうとしたの?」

 

雪穂「それは…」

 

亜里沙「リンさんに会いたかったんだよね!」

 

リン「へっ…リンに?」

 

雪穂「…はい」

 

リン「えっと、もしかしてさっきの話…?」

 

ツカサ「ああ…冗談じゃない」

 

リン「う、うーん…」

 

雪穂(リンさんはしばらく考えた後、こう言った)

 

リン「リン…難しいことはよく分かんないけど、とりあえず信じてみるよ!」

 

リン「悪い人じゃなさそうだし…ね!」

 

雪穂(えっ…私のことを信じてくれた?)

 

リン「それにね…リン、もともと雪穂ちゃんは犯人じゃないと思ってたんだ」

 

雪穂「えっ…?」

 

リン「だって先生の首の傷は…どう見てもフォークで出来るような傷じゃなかったもん」

 

ツカサ「傷?」

 

リン「うん、先生は首を何かで傷つけられたの…」

 

ツカサ「…そうか」

 

リン「だからリンね、どうしても確かめたいんだ」

 

リン「もしかしたら先生を襲った人は、他にいるかもしれないって」

 

雪穂「リンさん…!」

 

リン「それに、ライダー裁判で有罪か無罪か決めるなんて…絶対に間違ってるよ!」

 

リン「こう見えてリンは平和主義だから…それをミラーワールドにいるライダーの皆に言って、やめさせたいと思ってるの!」

 

リン「先生もこんなこと望んでない…だって、ライダー裁判は良くないって言ってたもん!」

 

ツカサ「ミラーワールドに行って戦いをやめさせたいって事は…アンタもライダーに選ばれたのか?」

 

リン「うん…これ!」

 

雪穂(リンさんはズボンのポケットから何かのケースを取り出して私達に見せた)

 

雪穂「これは…?」

 

ツカサ「カードデッキだ…この中に戦いに使うカードが入っていて、ミラーワールドへの行き来ができる」

 

雪穂「カードデッキ…ん?」

 

キィン…キィン…

 

亜里沙「この音…どこから?」

 

ツカサ「この部屋の中にある全ての鏡からだ」

 

雪穂「鏡から…?」

 

ツカサ「さっそくやってるみたいだな…それじゃ、オレも行くか」スタスタ

 

リン「えっ、あなたもライダー…なの?」

 

ツカサ「ああ…アンタのとはちょっと違うがな」

 

リン「そっか…じゃあもしかして、あなたも他のライダーを倒すために戦うの?」

 

ツカサ「…いや、止めに行く」

 

ツカサ「雪穂を助ける約束は亜里沙としたが…戦う事だけが助ける方法じゃないからな」

 

亜里沙「ツカサ…」

 

ツカサ「それに…オレもアンタの意見に賛成だ」

 

ツカサ「こんなふざけた戦い、すぐに中止させてまともな裁判をやるべきだと思うからな」

 

リン「…!」

 

雪穂「…ちょっと待って!ツカサはそれでミラーワールドに行けるの?」

 

ツカサ「当たり前だ、オレを誰だと思ってる?」

 

ツカサ「オレは雪穂の弁護士で、ライダーだからな!」

 

雪穂(ツカサは鏡の前に行ってバックルを着け、一枚のカードを取り出した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!」

 

雪穂(ディケイドは鏡に吸い込まれるように中へと入っていった)

 

雪穂「ウソ…」

 

亜里沙「本当に行っちゃった…!」

 

リン「待って、リンも行くニャ!」ダダッ

 

雪穂(そう言ってリンさんが鏡の前に行き、左手でカードデッキをかざすと…ベルトがお腹に巻き付けられた)

 

雪穂(直後にリンさんは右手を左斜め上へと伸ばし…)

 

リン「変身!」

 

雪穂(ベルトにカードデッキを差し込み、変身した)

 

龍騎「ニャッ!」

 

亜里沙「リンさんも鏡の中に…!」

 

雪穂「今のが…龍騎」

 

 

 

ゾルダ「この事件は俺が立件したの、素人なんかに判決下せるわけないでしょ?有罪だよ有罪」

 

ナイト「…私は判決には興味がない」

 

ゾルダ「じゃあ何の為に戦ってるわけ?」

 

ナイト「…」

 

ゾルダ「…ん?」

 

ディケイド(オレはマシンディケイダーに乗って、龍騎はライドシューターに乗ってミラーワールドへとやって来た)

 

ディケイド「ここがミラーワールドか…文字や色んなものが反転してて、なんだか居心地の悪い場所だな」

 

ゾルダ「…アンタ達、誰?」

 

ディケイド「オレはディケイド…弁護士だ」

 

龍騎「リンは龍騎ニャ!」

 

ナイト「…!?」

 

ディケイド「実はアンタ達と話したい事があるんだが…」

 

『シュートベント』

 

ドン!

 

ディケイド「おわっ!」

 

龍騎「ニャッ!?」

 

ナイト「!」

 

ゾルダ「悪いけどそんな暇ないんだよね…ほら、俺って忙しいからさ」

 

ディケイド(ゾルダがギガランチャーでオレ達を砲撃する)

 

ディケイド「おい…何だアイツは!」

 

ナイト「…事件を立件した検事よ」

 

ディケイド「はぁ?…全く、そういう事ならなおさらこんなふざけた裁判を何とかしないとな」

 

龍騎「そうニャ!だから戦わずにみんな、話を聞いてほしい…」

 

『ファイナルベント』

 

龍騎「ニャ!?」

 

ディケイド(ゾルダはマグナギガを召還し、マグナギガの背中にマグナバイザーを装填する)

 

ディケイド「マズい…逃げるぞ!」ダダッ

 

ナイト「…!」ダダッ

 

龍騎「ええっ!?」ダダッ

 

ディケイド(ゾルダがマグナバイザーのトリガーを引くと、マグナギガの装甲が開かれ…ミサイルやレーザーが発射された)

 

ディケイド「うわぁっ!」

 

龍騎「ニャアー!?」

 

ナイト「くっ!」

 

ディケイド(攻撃を受けたオレ達はそのまま吹き飛ばされ、ミラーワールドから追い出されてしまった)

 

ゾルダ「…こういうゴチャゴチャした戦いは好きじゃない」

 

ゾルダ「さて、ゴローちゃんに飯でも作ってもらうか…」 スタスタ

 

 

 

雪穂(鏡の中からツカサとリンさんが追い出されるように出てきた)

 

ツカサ「うわっ!」

 

リン「ニ"ャッ!!」 

 

雪穂「えっ…二人とも大丈夫!?」

 

ツカサ「何とかな、しかしアイツ…よくもまあ派手にあんな技を…」

 

リン「痛いニャ~!」

 

雪穂(ここで二人をジッと見つめていた亜里沙が何かを思いつく)

 

亜里沙「そうだ…ツカサ、分かったよ!」

 

ツカサ「…何がだ?」

 

亜里沙「もしかしたら本当の犯人が、ライダーの中にいるかもしれない!」

 

雪穂「あっ、そっか!もし真犯人がこのライダー裁判に参加しているとしたら…」

 

亜里沙「雪穂を有罪にしようと戦っているかもしれない!」

 

リン「それじゃ…その人を見つけて、戦いを止めさせないと!」

 

ツカサ「…そうだな、善は急げだ」

 

亜里沙「私も行く!」

 

雪穂(ツカサ達は他の関係者から話を聞くために、花鶏高校へ向かった)

 

 

 

ツカサ(オレ達は花鶏高校の校舎の中に入り…廊下を歩いていた)

 

亜里沙「ツカサ、ここでは何をするの?」

 

ツカサ「真犯人がいるとすれば、校内の人間である可能性が高いと思ってな…まずは聞き込みだ」

 

リン「…」

 

ツカサ(リンは掲示板に貼られていたポスターをジッと眺めていた)

 

ツカサ(そのポスターはファッションショーの広告だった)

 

リン「スクールアイドルの衣装って、こんなに可愛いんだ…」ボソッ

 

亜里沙「リンさん…?」

 

リン「…えっ、何かニャ?」

 

亜里沙「何を見てたんですか?」

 

リン「…い、いやー?リンは何も見てないよ!」

 

亜里沙「そうですか…」

 

ツカサ「…」

 

 

 

リン「失礼します!」ガラッ

 

ツカサ(花鶏高校の職員室に入ると、リンはとある男性のもとへ駆け寄った)

 

リン「教頭先生!」

 

?「星空くん…話は出来たのか?」

 

リン「はいニャ!」

 

リン「紹介するね、教頭のカマタ先生!」

 

カマタ「初めまして…教頭のカマタです」

 

ツカサ「弁護士の城戸ツカサだ」

 

亜里沙「えっと…助手の絢瀬亜里沙です!」

 

ツカサ「今朝の事件について詳しく聞きたいんだが…」

 

カマタ「…許せません、話を聞くフリをして星空先生を」

 

カマタ「犯人である彼女は即刻、有罪にすべきだと私は思います」

 

亜里沙「そんな…!」

 

リン「でも、雪穂ちゃんはそんなことをするような子には見えなかった…」

 

リン「部員のみんなも事件の瞬間を見てないって言ってたし…」

 

カマタ「いや、事件現場である部室には星空先生と彼女しかいなかったと聞いている」

 

カマタ「これは間違いなく彼女が犯人だよ」

 

ツカサ「…その時、アンタはどこに?」

 

カマタ「それは…現場になった部室でお話しましょう」

 

 

 

ツカサ(カマタに案内され、オレ達は事件現場の部室に入った)

 

カマタ「…ここが新聞部の部室です」

 

ツカサ(カマタは部室の窓から見える外の自動販売機を指差した)

 

カマタ「休憩する時…あそこの自動販売機で紅茶を買って、すぐに飲むのが私のスタイルなんです」

 

カマタ「ですが…まさか、私がそうしている時にこんな事が起こっていたとは」

 

亜里沙「そういえば雪穂は、リンさんのお母さんが倒れた後に誰かが来て警察を呼んだって言ってたけど…」

 

ツカサ「それはアンタか?」

 

カマタ「いえ、事件の第一発見者は新聞部員のアキヤマくんです」

 

リン「え…ユイちゃん?」

 

亜里沙「ユイちゃん…?」

 

リン「リンと同じ学年の子だよ、一緒にライダー裁判のことで記事を書いたりもして…」

 

リン「リンはユイちゃんって呼んでるニャ!」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

カマタ「そうだ、彼女もそのライダー裁判に参加しているとか…」

 

リン「ええっ!?ユイちゃんが…?」

 

ツカサ(すると、どこからか不快な音が聞こえてきた)

 

キィン…キィン…

 

ツカサ(まるでオレ達に『戦え』と言わんばかりの…声のような音が)

 

カマタ「さて…君が被告人の弁護士という事は、ライダーなんですよね?」

 

カマタ「この裁判は私が判決を下しますよ」

 

ツカサ(カマタはポケットから水色のカードデッキを取り出した)

 

リン「えっ…ちょっと教頭!待つニャ!」

 

カマタ「どうした星空くん」

 

リン「ライダー同士が戦って裁判するなんて…おかしいニャ!」

 

リン「こんなこと、絶対間違ってるニャ!」

 

カマタ「星空くん…君は何か勘違いをしているようだね」ハァ

 

リン「え?」

 

カマタ「…いいかい星空くん、この裁判は一番力を持つ者の言う事が絶対だ」

 

カマタ「どんな事でも、一番力を持っている者の言う事が結局は正しいんだ」

 

カマタ「ライダーでも人間でも同じだ」

 

カマタ「つまり…人間はみんな、ライダーなんだよ」

 

リン「人間は皆、ライダー…?」

 

カマタ「そうだ」

 

リン「…分かんない、分かんないよ!」

 

カマタ「君には分からないだろうね…どうやっても」

 

ツカサ「…確かに、アンタの言う事は一理あるな」

 

リン「えっ…?」

 

亜里沙「ツカサ…?」

 

カマタ「ほう、気が合いますね」

 

ツカサ「だが…気に入らないな」

 

ツカサ「力で何でもかんでもねじ伏せようとしてる奴の大半は…小物だからな」

 

ツカサ「そんなんじゃ…いつまで経っても校長にはなれないぞ?」

 

カマタ「…ほう、ならばどちらの意見が正しいか確かめてみますか?」

 

ツカサ「ああ、オレが変えてみせる…アンタのその考えを」

 

ツカサ(オレは鏡に向かって一枚のカードを取り出し、カマタはカードデッキを鏡に向けベルトを装着した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

カマタ「変身!」

 

ツカサ(オレはディケイド、カマタはアビスへと変身を完了させた)

 

ディケイド「亜里沙」

 

亜里沙「…何?」

 

ディケイド「ユイから話を聞きに行ってくれ」

 

亜里沙「分かった…ねえ、ツカサ?」

 

ディケイド「何だ?」

 

亜里沙「やっぱり…戦うの?」

 

ディケイド「ああ、オレは戦う」

 

ディケイド「この戦いを…止める為に」

 

リン「…!」

 

ディケイド「行ってくる」

 

亜里沙「うん!」

 

アビス「言っておきますが、私に勝てるライダーはいませんよ…ハッ!」

 

ディケイド「自信家なんだな…っしゃ!」

 

ディケイド(オレとアビスはミラーワールドへ向かった)

 

 

 

アビス「戦いを止める為に戦う…君は随分と矛盾した事を言うんですね」

 

『ソードベント』

 

ディケイド(アビスはアビスセイバーでオレを斬りつけようとする)

 

アビス「ハッ!」ブンッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド(オレはライドブッカーソードモードでアビスセイバーを受け止めた)

 

アビス「何です?今のカードは…」

 

ディケイド「…アンタ達のとはちょっと違う仕様でな」

 

ディケイド「それに、そもそもオレは存在自体が矛盾しているらしいからな…」

 

アビス「ほう…?」

 

ディケイド(アビスがオレから離れると、ベルトのカードデッキから一枚のカードを取り出し、左腕のアビスバイザーに装填する)

 

『ストライクベント』

 

アビス「フンッ!」

 

ディケイド(アビスはアビスクローを装着すると、オレに向かって激しく強い水流を放ってきた)

 

ディケイド「うわっ!」

 

アビス「まだまだ…こんなものではありませんよ」

 

『アドベント』

 

ディケイド(アビスが更にカードを装填するとアビスラッシャーとアビスハンマーがオレに襲いかかってくる)

 

ディケイド「くっ、厄介な事になってきたな!…ん?」

 

ディケイド(するとライドブッカーから一枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド「これは…龍騎か?」

 

ディケイド「だが、色が違うような…とりあえず使ってみるか」

 

ディケイド(オレは一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『カメンライド…リュウキ!ブランク!』

 

DCD龍騎(オレが変身したのは灰色の龍騎だった)

 

DCD龍騎「…これ、本当に龍騎か?」

 

アビス「姿が変わったところで…行きなさい」

 

DCD龍騎(アビスラッシャーとアビスハンマーがオレに向かってくる)

 

DCD龍騎「仕方ない…こうなったら!」

 

『アタックライド…ソードベント!』

 

DCD龍騎(オレはライドセイバーを持って、アビスラッシャーを斬ろうとするが…)

 

DCD龍騎「はっ!」ベキッ!

 

アビスラッシャー「…?」

 

アビスハンマー「…?」

 

DCD龍騎「…折れた」 

 

DCD龍騎(直後、2体のミラーモンスターが連携してオレを攻撃する)

 

ドガッ!

 

DCD龍騎「うわっ!」

 

ディケイド(吹き飛ばされたオレは強制的にカメンライドが解除されてしまった)

 

ディケイド「何だ今の…役に立たなさ過ぎるだろ!?」

 

『ストライクベント』

 

ディケイド「うわっ!?」ガンッ!

 

ディケイド(オレが嘆いていると背後から別のライダーの攻撃を受けた)

 

シザース「背中ががら空きですよ」

 

ディケイド「お前…卑怯な奴だな」

 

シザース「私は卑怯もらっきょうも大好物でしてね…確かあなたは高坂雪穂の弁護士ですね?」

 

ディケイド「だったら何だ?」

 

シザース「私は刑事です、彼女を逮捕した手柄を確実にする為に私が勝ち残り…彼女を有罪にする!」

 

『アドベント』

 

ディケイド(そう言ってシザースはボルキャンサーを召還し、挟み撃ちにしてオレを攻撃しようとする)

 

ディケイド「チッ、そういう事か…ならこれだ!」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「ふっ!」ガガッ

 

シザース「ぐっ!」

 

ディケイド(オレはライドブッカーガンモードでシザースに向かって発砲し、ボルキャンサーの攻撃を避けた)

 

アビス「バトルに参加しているライダーは私達だけではない」

 

アビス「君の手の内…見せてもらいますよ」

 

 

 

亜里沙(私はリンさんと一緒にユイさんの家に向かい、話を聞こうとしていた)

 

ユイ「…それで、あなたが弁護士の助手?」

 

亜里沙「はい」

 

ユイ「ならその弁護士に伝えなさい、私は事件現場の第一発見者になっただけ」

 

ユイ「それ以上もそれ以下もない…だから帰って」

 

亜里沙(ユイさんはそう言って玄関のドアを閉めようとする)

 

リン「ちょっと待つニャ、ユイちゃん!」

 

ユイ「リン…あなたもいたの」

 

リン「うん…そういえばユイちゃんは先生と何か話をしようとしてたんだよね?」

 

ユイ「…」ハァ

 

ユイ「今ではもう関係のない事よ」

 

リン「そんな…!」

 

ユイ「だから帰っ…」

 

亜里沙(ユイさんがもう一回玄関のドアを閉めようとすると、またどこからか音が聞こえてきた)

 

ユイ「…」

 

リン「ユ、ユイちゃん?」

 

ユイ「…行かなきゃ」ダッ

 

亜里沙(突然、ユイさんは家の外に出て走っていった)

 

リン「えっ…ちょっと待つニャ、ユイちゃん!」ダダッ

 

亜里沙「あっ…待って!」ダダッ

 

亜里沙(走るユイさんを私たちは追いかけていく)

 

亜里沙(ユイさんは少し先の道路のカーブミラーの前で止まるとポケットから紺色のカードデッキを出した)

 

リン「ユイちゃん!それってまさか…」

 

ユイ「…」

 

リン「聞いてユイちゃん?リンはこんな戦い間違ってると思うニャ、だから…」

 

ユイ「だから…何?」

 

リン「…えっ?」

 

ユイ「今の私には関係ない」

 

ユイ「私は、ただ…」

 

リン「ユイちゃん…」

 

亜里沙(ユイさんはそう言うと、どこか悲しそうな顔をしながら鏡にカードデッキを向けてベルトを装着した)

 

ユイ「…変身!」

 

亜里沙(ベルトにカードデッキを入れたユイさんはコウモリのようなライダーに姿を変えた)

 

ナイト「…」

 

リン「あっ…さっきの!」

 

ナイト「リン、あなたもライダーになったって言ってたわね?龍騎に…」

 

リン「う、うん」

 

ナイト「どうしても止めたいなら…戦いなさい、私と」

 

リン「えっ?そんな…リン、ユイちゃんと戦うなんて」

 

ナイト「…出来ないとでも?」

 

リン「だって…」

 

ナイト「そんな甘い考えじゃ…あなたのお母さんは救えない」

 

リン「ユイちゃん…」

 

ナイト「…はっ!」

 

亜里沙(ライダーに変身したユイさんは鏡の中に吸い込まれていった…)

 

亜里沙(それにしても、さっきのユイさんの悲しそうな顔…)

 

亜里沙(もしかして、ユイさんが戦おうとしている理由と何か関係があるのかな…?)

 

 

 

雪穂(私は留置場にいた)

 

雪穂「ツカサと亜里沙、大丈夫かな…ん?」

 

雪穂(すると、さっき接見室で聞いた時と同じ音が聞こえてきた)

 

雪穂「これは…?」

 

?「高坂雪穂くん、だね?」

 

雪穂「…誰!?」

 

雪穂(どこからか声がハッキリ聞こえる…でも、周りには誰もいない)

 

?「ここだよ」

 

雪穂「…もしかして、鏡?」

 

雪穂(私はそっと、手洗い場にある鏡に近づいた)

 

ガシッ

 

雪穂「!?」

 

雪穂(私は鏡の向こう側から突然現れた手に右腕を掴まれてしまった)

 

雪穂「えっ…きゃっ!」

 

雪穂(そのまま引っ張られた私の身体は、吸い込まれるように鏡の中へと入ってしまった…)

 

 

 

ディケイド(オレはシザースとの戦いを繰り広げていた)

 

ディケイド「はっ!」ガガッ

 

『ガードベント』

 

シザース「フッ!」ガキンッ!

 

ディケイド「…厄介な殻だな」

 

シザース「フフフ…」

 

ディケイド(すると、シザースとは違う方向からアドベントカードを読み込むバイザーの声がした)

 

『ナスティベント』

 

ディケイド(直後にダークウイングが現れ、オレ達に超音波を放つ)

 

シザース「グアッ…」

 

ディケイド「ぐっ、これは…まさか!」

 

『ファイナルベント』

 

ディケイド(耳を塞ぎながら苦しむオレとシザースを狙って、ウイングランサーを持ったナイトが走ってくる)

 

ナイト「…ふっ!」

 

ディケイド(ナイトはダークウォールに変化したダークウイングを背中に装備し飛び上がった)

 

ディケイド(それからナイトはドリルのように回転しながら急降下してきた)

 

ナイト「はあっ!」

 

ディケイド「…!」サッ

 

シザース「グワァァァッ!」

 

ディケイド(オレは何とか回避するが、シザースは貫かれ爆発した)

 

ナイト「…」

 

ディケイド(ナイトはシザースが所持していたカードを掴み取り、それを眺めた)

 

ナイト「これも…違う」ボソッ

 

ディケイド「シザースを倒した…?」

 

ナイト「問題ないわ、彼はただ…ミラーワールドから追い出されただけ」

 

ディケイド「だからって、こんな事…」

 

ナイト「…まさか、あなたも戦いを止めようとしているの?」

 

ディケイド「ん、あなたも…?」

 

ナイト「…私はそういう人を一人知っている」

 

ナイト「そういう人は、一人だけで十分よ」

 

ディケイド(ナイトはウイングランサーをこちらに向けてきた)

 

ナイト「私と戦いなさい」

 

ディケイド「…もしかしてアンタ、リンの同級生のユイか?」

 

ナイト「だったら何?」

 

ディケイド「アンタもライダーになってたのか…一体、何が目的だ?」

 

ナイト「…あなたには関係ない」

 

ディケイド「…全く、仕方ないな」ハァ

 

ディケイド「それじゃ…弁護士として、話をゆっくり聞かせてもらおうか」

 

ディケイド「アンタを止めてな!」

 

ディケイド(オレは一枚のカードをライドブッカーから取り出した)

 

ディケイド「ハナヨ…借りるぞ」

 

『カメンライド…キバ!』

 

DCDキバ(オレはカードをベルトに装填し、キバにカメンライドした)

 

ナイト「姿が…変わった!?」

 

DCDキバ「コウモリにはコウモリ…ってね」

 

DCDキバ(オレは更にもう一枚、カードをディケイドライバーに装填する)

 

DCDキバ「出血大サービスだ」

 

『フォームライド…キバ!ドガバキ!』

 

DCDキバ(オレは左腕にガルルの力、右腕にバッシャーの力、胴にドッガの力を宿したドガバキフォームに身体を変化させた)

 

DCDキバ「行くぞ…はっ!」ダダッ

 

ナイト「…!」ダダッ

 

 

 

雪穂「ん…」パチリ

 

雪穂(目を覚ました私は…誰もいない街の中にいた)

 

雪穂「ここは…!」

 

雪穂(私の目の前には、文字が反転している看板があった)

 

雪穂「もしかして…ミラーワールド!?」

 

?「目が覚めたかい?」

 

雪穂「!」クルッ

 

?「やあ、会うのは初めてだね」

 

雪穂(私が振り返ると…そこには一人の男性がいた)

 

雪穂(男性の顔は…建物の影のせいで私のいるところからはよく見えなかった)

 

雪穂「あなたは…?」

 

ナルタキ「私の名前はナルタキ、預言者だ」

 

雪穂「預言者…?」

 

ナルタキ「ああ、君を救う預言者だよ」

 

ナルタキ「あー…君に一つ、提案がある」

 

雪穂「私に…?」

 

ナルタキ「そうだ…君は自分の無実を証明したくはないかね?」

 

雪穂「それは、もちろんそうですけど…」

 

ナルタキ「ならば今すぐにでも証明してあげよう」

 

雪穂「えっ…本当ですか?」

 

ナルタキ「そうとも、ただその代わり…一つ条件がある」

 

雪穂「条件…ですか?」

 

ナルタキ「そう…それはディケイド、彼を消す為に私に協力する事だ」

 

雪穂「ディケイドって…ツカサを!?」

 

ナルタキ「ああ、彼は君と亜里沙くんを騙している」

 

雪穂「私達を、騙して…?」

 

ナルタキ「そうだとも、彼は言葉巧みに君達を利用して一緒に旅をしているが…彼は悪魔だ」

 

ナルタキ「彼はこのライダーバトルでその本性を晒け出し…やがて君達の世界を破壊する」

 

雪穂「私達の世界を…」

 

ナルタキ「そう…ディケイドは世界の破壊者、危険な存在なんだよ」

 

雪穂「…」

 

ナルタキ「どうかね?悪い話じゃないだろう、君が望めば今すぐにでも…」

 

雪穂「…ごめんなさい」

 

ナルタキ「…何?」

 

雪穂「お断り、させてもらいます」

 

ナルタキ「…うーむ、どうやら話がよく理解できていなかったようだね?」

 

雪穂「理解なら、してるつもりです」

 

雪穂「ツカサは…私達の世界だけじゃない、私達やμ'sや他の世界を救おうと旅をしています」

 

雪穂「誰に感謝されるわけでもないのに…傷だらけになりながらも戦って」

 

雪穂「不器用なくせに、まるでオレは一人前だみたいな顔をして…」

 

雪穂「私達はそんなツカサと一緒に旅をして…まだそんなに時間は経ってないけど、分かってきたんです」

 

雪穂「ツカサは…悪い人じゃないって」

 

ナルタキ「いいのか!?もし私が君を出さなければ君は一生檻の中なんだぞ?」

 

雪穂「それでも私は…ツカサを信じてます!」

 

雪穂「ツカサは…あなたが思ってるような人じゃありません!」

 

ナルタキ「…」フゥ

 

雪穂「あなたは…一体、何者なんですか?」

 

ナルタキ「…作戦は失敗か」

 

雪穂(男性がそう言うと、オーロラが現れ…そこから三人の仮面ライダーと数体の白い怪物が現れた)

 

王蛇「…ここか?祭りの場所は」

 

タイガ「君を倒せば、僕はもっと強くなれるかもしれない…」

 

ベルデ「お前は美味しい獲物って事だ…逃げる事は出来ない!」

 

シアゴースト「…」

 

雪穂「…!」

 

ナルタキ「…それならば、君に選んでもらおうか」

 

ナルタキ「ライダーに始末されるか、モンスターの餌となるか…どちらが良いのか」

 

雪穂「そんな…!」

 

雪穂(私はキバの世界でツバサさんからもらったファンガイアスレイヤーを取り出そうとしたけど…)

 

雪穂「そうだ、アレは警察に取り上げられて…!」

 

ナルタキ「やれ」

 

雪穂(私を襲おうと、ライダーや怪物達が近付いてくる)

 

雪穂「…!」

 

 

 

『トリックベント』

 

DCDキバ(ナイトは五人に分身した)

 

ナイト「あなた、本当に弁護士?ライダーなの?」

 

ナイト「あなたのようなライダーやカード…取材でも聞いた事がない!」

 

DCDキバ「そうか、だがオレはアンタ達の事を知ってる…どうしてかは分からないがな」

 

ナイト「…ふざけないで!」ダッ

 

DCDキバ「はっ!」ザシュッ!ガガッ!

 

DCDキバ(五人のナイトが一斉に襲いがかるが、オレはガルルセイバーとバッシャーマグナムでまず二人のナイトを消滅させる)

 

ナイト「うっ!」

 

DCDキバ「まだまだ!」ドゴッ

 

DCDキバ(次にドッガハンマーで一人のナイトを攻撃し…消滅させた)

 

ナイト「なっ…!?」

 

DCDキバ「残りは二人か」

 

DCDキバ(オレは一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…キ・キ・キ・キバ!』

 

DCDキバ「はっ…!」

 

DCDキバ(オレは鎖が解放され赤くなった右足を高く蹴り上げ、ゆっくりと飛んだ)

 

ナイト「…!」

 

DCDキバ(そこから一人のナイト目掛けて急降下し右足を突き出した)

 

DCDキバ「やあーっ!」

 

ナイト「!」

 

 

 

ガガガッ!

 

雪穂(私が諦めかけた時…どこからか銃声が聞こえ、数体の白い怪物が倒された)

 

雪穂「えっ…?」

 

ナルタキ「!?」

 

?「ここで一体…何をしようとしているのかしら?」

 

雪穂(私が声のする方を向くと…そこには青い銃を持ったツバサさんがいた)

 

ツバサ「…」

 

雪穂「ツバサさん!」

 

ナルタキ「…また君か」ハァ

 

ツバサ「それはこっちの台詞よ」

 

ナルタキ「何をしに来た?」

 

ツバサ「私はやりたい事をやる…それだけよ」

 

雪穂(ツバサさんは一枚のカードを青い銃に入れた)

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

雪穂(ツバサさんが銃を真上に向けて撃つと青い光が彼女を包んで姿を変えた)

 

雪穂「あれが…ディエンド」

 

ディエンド「ここは私に任せて…あなたは安全な場所に隠れてて」

 

雪穂「あっ…はい!」ダッ

 

雪穂(私が近くの物陰に隠れると、ディエンドは取り出した三枚のカードを銃に入れた)

 

ディエンド「それじゃ…行きましょうか」

 

『カメンライド…ガイ!インペラー!ファム!』

 

ガイ「これで本当の…ゲームオーバーだ」

 

インペラー「悪いな…負ける訳にはいかないんだよ!」

 

ファム「どんな卑怯な手を使ったって…勝たなくちゃいけないんだ!」

 

雪穂(ディエンドが召喚した三人のライダーはそのまま、男性が呼んだ三人のライダーと戦い始めた…)

 

 

 

DCDキバ(ダークネスムーンブレイクを受けた分身のナイトは消滅し…残りは本物のナイト一人だけになった)

 

ナイト「…」

 

DCDキバ「これで分身は全て倒したな…」スタスタ

 

ディケイド(オレはディケイドへと姿を戻し、ナイトに近付いた…その時、どこからか声が聞こえた)

 

?「すいませんね」

 

『ストライクベント』

 

ディケイド「!?…まさか!」

 

ディケイド(アビスクローを装着して現れたアビスがナイトを狙って激しい水流を放つ)

 

ディケイド「危ない!」

 

ナイト「…!」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「アキヤマくんが真犯人…」

「いつも何かのために…ボロボロになっても戦って」

「凛さんも…スクールアイドルのかわいい衣装を着ていっぱい輝いてましたから!」

「私がこの場で…死刑を申し渡す!」

「変身!」

第7話『瞬く星空』

戦わなければ生き残れない!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話『瞬く星空』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは『龍騎の世界』って事だ」

亜里沙「雪穂が捕まった!?」

雪穂「ライダー裁判制度…?」

リン「ライダー裁判で有罪か無罪か決めるなんて…絶対に間違ってるよ!」

リン「変身!」

カマタ「犯人である彼女は即刻、有罪にすべきだと」

ナイト「戦いなさい、私と」

DCDキバ「出血大サービスだ」

ナルタキ「私の名前はナルタキ、預言者だ」

ツバサ「私はやりたい事をやる…それだけよ」


ディケイド(オレがナイトに近付くと…どこからか声が聞こえた)

 

?「すいませんね」

 

『ストライクベント』

 

ディケイド「!?…まさか!」

 

ディケイド(アビスクローを装着して現れたアビスがナイトを狙って激しい水流を放つ)

 

ディケイド「危ない!」

 

ナイト「…!」

 

『ガードベント』

 

龍騎「ユイちゃん!」

 

ディケイド(するとナイトの前にドラグシールドを持った龍騎が現れた)

 

龍騎「…ニャッ!」

 

ディケイド「リン!」

 

ディケイド(龍騎は吹き飛ばされながらも、何とか高圧水流を防いだ)

 

龍騎「うっ…ユイちゃん、大丈夫?ケガはない?」

 

ナイト「リン、あなた…!」

 

ディケイド(アビスは一枚のカードを取り出しながら、ゆっくりとこちらに近づく)

 

アビス「短い時間で結審するのが、今の裁判ですからね…終わりにさせてもらいます」

 

『ファイナルベント』

 

ディケイド(アビスがアビスバイザーにカードを装填すると、アビソドンが現れた)

 

ディケイド「またか…逃げるぞ!」ダッ

 

ナイト「…くっ!」ダッ

 

龍騎「ええっ、また!?」

 

ディケイド(アビソドンは目を横に伸ばすとエネルギー弾を発射してきた)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

『ファイナルベント』

 

ディエンド(ガイ、インペラー、ファム、ベルデ、タイガ、王蛇が一斉に自分のバイザーにカードを読み込ませる)

 

ディエンド(六人のライダーが互いの技をぶつけ合うと…全員が消滅した)

 

ナルタキ「フン…覚えていろ、ディエンド」

 

ナルタキ「私は必ず…」

 

ディエンド(そう言ってナルタキはオーロラの中に入っていった)

 

ディエンド「…」フゥ

 

ディエンド(私は物陰に隠れている雪穂さんに近づき、戦いが終わった事を知らせた)

 

ディエンド「終わったわ」

 

雪穂「あ、ありがとうございます…助かりました」

 

ディエンド「気にしないで…あなたが無事で安心したわ」

 

雪穂「…あれ?」

 

ディエンド「どうかしたの?」

 

雪穂「いや…ちょっと腰が抜けちゃったみたいで」アハハ

 

ディエンド「…そう」フフッ

 

ディエンド(私は雪穂さんに手を差し出した)

 

ディエンド「はい」スッ

 

雪穂「あっ…すみません」ガシッ

 

ディエンド「よっと…あら?」グイッ

 

雪穂「あれ、立ち上がれない…?」

 

ディエンド「まさかとは思うけど、あなたって意外と…」

 

雪穂「…えっ?」

 

ディエンド「…いえ、やっぱり言わないでおくわ」

 

ディエンド「あなたの女性としての名誉の為にも…ね」

 

雪穂「女性としての名誉…!?」ハッ

 

雪穂「ウソ、もしかしてまた私…!」

 

雪穂「た、た、た…!」

 

 

 

ツカサ(オレ達はアビスの攻撃を受けて、再びミラーワールドから追い出されてしまった)

 

ツカサ「うわっ!」

 

ユイ「うっ!」

 

リン「へぶっ!」

 

亜里沙「みんな!大丈夫?」ダッ

 

リン「な、何とか…でもやっぱり痛いニャ~」

 

ツカサ「アイツ、強過ぎるだろ…本当にただの教頭か!?」

 

ユイ「…教頭?」

 

リン「あのライダーは教頭のカマタ先生ニャ」

 

ツカサ(リンがそう言うと、ユイの表情が険しくなった)

 

ユイ「…!」

 

ツカサ「なんだアンタ…知らなかったのか?」

 

ユイ「ええ、でも今の私には…関係ないわ」スタスタ

 

ツカサ(ユイはその場から立ち去ろうとする)

 

リン「待ってユイちゃん!」

 

リン「ユイちゃん…一体、どうしたの?」

 

リン「戦って何をしようとしているの?」

 

ユイ「言ったでしょう?あなたには関係な…」

 

リン「関係あるニャ!!」

 

ユイ「…!」

 

リン「だって…だって、リンとユイちゃんはずっと一緒に記事を書いてきたチームだよ?」

 

ユイ「リン…」

 

リン「なのに、何も言わないのはズルいニャ…」

 

リン「ねえ、ユイちゃん…リン達に教えて?」

 

リン「ユイちゃんは戦って何がしたいの?」

 

ユイ「…!」

 

ツカサ(悲しそうな表情をするリンを見て、ユイはほんの一瞬だけ唇を噛みしめるが)

 

ユイ「チーム、ね…」

 

ユイ「…そう思っているのはリン、あなただけよ」

 

リン「…!」

 

ユイ「…」スタスタ

 

ツカサ(ユイはその場から去っていった)

 

リン「…そんな」

 

亜里沙「リンさん、ユイさん…」

 

ツカサ「…」

 

 

 

雪穂「体重増えたっ!?」ガバッ

 

雪穂(気がついて起き上がると、私は留置場のベッドの上にいた)

 

雪穂「あ…あれ、もしかして今の夢だったの?」

 

雪穂「おっかしいな…」

 

雪穂(私がしばらく考え込んでいると、鉄格子の向こう側から声が聞こえてきた)

 

?「高坂雪穂!」

 

雪穂「は、はい!?」

 

雪穂(その声は看守のものだった)

 

看守「面会だ」

 

雪穂「あっ…はい!」

 

雪穂(私は牢から出してもらい、看守に着いて行った)

 

雪穂(その時、私は洗面台の鏡にツバサさんが映っていることに気づいていなかった…)

 

ツバサ「…ライアのカードデッキを持ってたおかげで、何とか彼女を元の世界に戻せたわね」

 

ツバサ「結局、ライアを召喚させる事はなかったけど…またどこかで使いましょう」

 

ツバサ「楽しみは…後に取っておくのも良いって言うし」フフッ

 

 

 

ユイ「…ごめんなさい、リン」スタスタ

 

ユイ「!?…まさか、この音は!」ダダッ

 

オーディン「私と、戦え…」

 

ユイ「オーディン…!」

 

ユイ「やるしか、ないみたいね…」

 

ユイ「変身!」

 

 

 

ツカサ(オレ達は雪穂とカマタを呼び出し接見室にいた)

 

カマタ「わざわざ呼び出して何かと思えば、アキヤマくんが真犯人…」

 

カマタ「なるほど、第一発見者である彼女ならありえそうな話だ」

 

ツカサ「だから警察や検察と相談して、ライダー裁判の中止を申請する」

 

ツカサ「そこで改めて、彼女についての裁判を開く」

 

雪穂「ってことは…私はここから出られるってこと?」

 

ツカサ「ああ…そうだ」

 

ツカサ(オレはカマタの方を向いた)

 

ツカサ「アンタもそれで良いな?」

 

カマタ「ええ…分かりました」

 

リン「…」

 

ツカサ(すると、リンの顔を見た亜里沙が口を開いた)

 

亜里沙「…本当に、それでいいの?」

 

雪穂「亜里沙…?」

 

亜里沙「私は…ユイさんが本当の犯人だって思えない」

 

リン「亜里沙ちゃん…」

 

亜里沙「私ね、ユイさんを見てて…ツカサに似てるなって思ったの」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

亜里沙「ツカサは不器用だったり、一人でムチャしたりするけど…」

 

亜里沙「いつも何かのために…誰かのために頑張って、ボロボロになっても戦って」

 

亜里沙「ユイさんにも同じところがあるなって、私…ユイさんの顔を見てなんとなく思ったの」

 

亜里沙「だから私は…ユイさんを信じてみたい」

 

ツカサ(亜里沙がそう言うと、リンが立ち上がった)

 

リン「で、でも…!」ガタッ

 

リン「…雪穂ちゃんは、このままでいいの?」

 

亜里沙「あっ…」

 

雪穂「…私なら、大丈夫です」

 

リン「えっ?」

 

雪穂「私は、亜里沙のことを信じてます」

 

雪穂「だって私達は…チームですから」

 

亜里沙「雪穂…」

 

雪穂「だから私も…亜里沙が信じた人を、信じてみたい」

 

雪穂「根拠は、ないですけどね…えへへ」

 

リン「…雪穂ちゃん」

 

ツカサ(リン達が話していると、カマタの溜め息が聞こえてきた)

 

カマタ「馬鹿馬鹿しい…私は帰らせてもらいますよ」ガタッ

 

リン「教頭…」

 

カマタ「犯人がアキヤマくんでもないとしたら…一体、誰だというんだ?」

 

ツカサ「…」

 

カマタ「失礼する」ガチャ

 

ツカサ(カマタはそう言って接見室から出ていった)

 

ツカサ「…アンタはどうしたいんだ?」

 

リン「えっ…リン?」

 

ツカサ「ああ」

 

リン「それが…リンにはこのままでいいのか、何が何だかよく分からなくて」

 

ツカサ「…別に、分からなくていい」

 

リン「…え?」

 

ツカサ「答えなんて、簡単に出るもんじゃない」

 

ツカサ「それでもアンタは…ずっと考えてきてる」

 

ツカサ「それだけで、今のリンには十分だとオレは思う」

 

ツカサ「リン自身が信じているものさえ、あればな」

 

リン「…リンが信じてる、もの?」

 

ツカサ「…ああ」

 

リン「…ねえ、ツカサくんならどうするの?」

 

ツカサ「オレか?」

 

リン「うん」

 

ツカサ「オレなら…いや、違うな」

 

リン「え?」

 

ツカサ「これは…リンが決める事だ」

 

ツカサ「だから、リンが決めろ」

 

リン「リンが…?」

 

ツカサ「…ああ」

 

リン「…」

 

ツカサ「亜里沙」ガタッ

 

亜里沙「何?」

 

ツカサ「雪穂のそばにいてやれ」スタスタ

 

亜里沙「うん…分かった!」

 

雪穂「ツカサは?」

 

ツカサ「…少し、気になる事があってな」ガチャ

 

ツカサ(オレはある事を確かめようと…接見室を出た)

 

 

 

リン(リンはママが入院している病院にやってきた)

 

リン「失礼しまーす…」ガラガラ

 

リン(病室にいるママはまだ意識が戻らない)

 

リン「ママ…」

 

リンの母「…」

 

リン「…あれ?」

 

リン(リンが机を見ると、そこには一輪の白いお花とリンゴがいっぱい入ったカゴと『リンへ』と書かれた手紙が置かれてた)

 

リン「このキレイな字…もしかして!」

 

リン(リンは手紙の字でユイちゃんがお見舞いに来たと分かった)

 

リン(リンはユイちゃんが書いた手紙をすぐに読んだ)

 

リン(その手紙を読んで、リンはびっくりした)

 

リン「えっ…!」

 

 

 

リン(手紙を読んだリンは病院から出て、ユイちゃんを探していた)

 

リン「ユイちゃん…いた!」ダダッ

 

リン(ユイちゃんはボロボロになって倒れていた)

 

リン「ユイちゃん、しっかりするニャ!」

 

ユイ「…リ、リン」ハァハァ

 

リン「手紙読んだよ…ごめんね、ユイちゃん」

 

リン「リン、そんなことも知らずに…」

 

ユイ「…謝るのは私の方よ」

 

リン「ユイちゃん…」

 

ユイ「さっきはあんなひどい事を言ってしまって…ごめんなさい」

 

リン「…大丈夫だよ!」

 

リン「リン、全然怒ってないから!」

 

リン「だから…また一緒に記事書こう?」

 

ユイ「…そうね」コクリ

 

リン「あっ、そうだ!ユイちゃん…あのカードは?」

 

ユイ「それなら…ここに」スッ

 

リン(ユイちゃんは『タイムベント』のカードをポケットから取り出した)

 

リン「これが…リン達がライダーバトルの記事を書いてた時にユイちゃんが聞いたっていうカード?」

 

ユイ「…そう、このカードがあれば星空先生を襲った犯人がきっと分かる」

 

ユイ「私も、あの雪穂って子がやったんじゃないって…気付いていたから」

 

ユイ「だから…このカードを使って、真犯人を見つけたかった」

 

リン「でも、カードをバトル以外で使用するのってダメなんじゃ…?」

 

ユイ「問題ないわ…事件を未然に防げば、ね?」フフッ

 

リン「ユイちゃん…さすがニャ!」

 

リン(でも、そんなユイちゃんを狙って誰かが鏡の中から襲おうとしていた)

 

?「フフフ…」

 

リン「!?…ユイちゃん、危ない!」

 

ユイ「…!」

 

アビス「ハッ!」

 

リン(ユイちゃんを襲おうと剣を持って鏡から出てきたのはアビスになったカマタ教頭だった)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

リン(そんな時、リン達を助けたのは…)

 

ディケイド「待ってたぜ!」ガガッ!

 

アビス「何!?…グアッ!」

 

リン「ツカサくん!」

 

ディケイド「何とか…間に合ったようだな」

 

アビス「グッ…」ダッ

 

ディケイド「待て!」ダッ

 

リン(ディケイドはアビスを追ってミラーワールドの中に入っていった)

 

ユイ「教頭は、私を狙って…」

 

リン「ユイちゃん…そのカード、リンが使ってもいい?」

 

ユイ「…リン?」

 

リン「リンね、ずっと考えてた」

 

リン「それでも分かんなくて…でも、さっきユイちゃんの手紙を読んでやっと分かったニャ」

 

リン「…リン、やっぱりこのライダー裁判をなかったことにしたい」

 

リン「みんなが戦わないようにしたい」

 

ユイ「…」

 

リン「たぶん、それで色んな人が辛い思いとかしちゃったりすると思う」

 

リン「でも、それが正しいとかじゃなくて…」

 

リン「リンが…ライダーの一人としての思いが、それなんだよ!」

 

リン「だから…!」

 

リン(ユイちゃんはカードをリンにくれた)

 

ユイ「分かったわ…でも、一つだけ条件」

 

リン「…何?」

 

ユイ「…生きなさい」

 

ユイ「生きて、私とまた…チームを組みましょう?」

 

リン「…うん、分かった!」

 

リン(リンはカードデッキを鏡に向けて、ベルトを着けた)

 

リン「じゃあ…行ってくる!」

 

ユイ「…ええ」

 

リン「変身!」

 

リン(リンはカードデッキをベルトに入れて、龍騎に変身した)

 

龍騎「ニャッ!」

 

龍騎(リンはそのまま、ミラーワールドの中に入った…)

 

 

 

ディケイド(オレはミラーワールドの中でアビスと対峙していた)

 

アビス「なぜここに…?」

 

ディケイド「悪いが、オレはアンタの事を最初から信じていないんでね」

 

ディケイド「だからわざと…見当違いな推理をしてアンタの様子を見ていた」

 

ディケイド「結果的にオレは、お前を疑って正解だったみたいだが」

 

アビス「…君は、私が真犯人だとでも?」

 

ディケイド「ああ…オレにはすぐ分かった」

 

ディケイド(すると、龍騎に変身したリンがオレの隣にやってきた)

 

龍騎「ツカサくん!」ダダッ

 

ディケイド「リン」

 

龍騎「…教頭先生だったんだね、ママを襲ったのは」

 

アビス「…違う、私じゃない」

 

アビス「真犯人はアキヤマくんだ…私はそれを告白させようとしただけだ」

 

龍騎「何でウソつくニャ!!」

 

アビス「嘘じゃない…そもそも君達は大事な事を忘れている」

 

アビス「私はあの時、学校から離れた場所にいた」

 

アビス「ライダーにもなっていない私が、どうやって星空先生を手にかけたというんだ?」

 

龍騎「…リン、知ってるよ」

 

龍騎「あなたは…人間になりすましてるんだよね?」

 

ディケイド「何…?」

 

アビス「…まさか!」

 

龍騎「ユイちゃんが手紙で教えてくれたニャ」

 

龍騎「ママがユイちゃんと一緒に追っていた噂…」

 

龍騎「だから、教頭先生のことも分かってた」

 

龍騎「教頭先生…あなた、怪物なんでしょ?」

 

龍騎「だから…ママを!」

 

アビス「…」

 

龍騎「ツカサくん、一緒にリンと過去に行ってくれるかニャ?」

 

ディケイド「…ああ」

 

アビス「星空くん…君はまさかタイムベントを?」

 

龍騎「…そうだよ」

 

龍騎「リンは…これを使って、確かめる!」

 

龍騎「そして…ママを助けて、この戦いを終わらせる!」

 

ディケイド(龍騎はそう言って、一枚のカードを左手のドラグバイザーに装填した)

 

『タイムベント』

 

ディケイド(その瞬間、オレの意識は次第に遠くなっていった…)

 

 

 

ツカサ(リンのタイムベントで、オレはまた鏡から追い出された)

 

ツカサ「うわっ!」ゴロゴロ

 

雪穂「わっ!ビックリした…ってツカサ!?」

 

ツカサ「雪穂!…ここは」

 

ツカサ(オレは雪穂とリンの母がいる花鶏高校の新聞部の部室にいた)

 

リン「ニャアァァァァ…ニ"ャ!?」ゴン!

 

リンの母「…!?」バタッ

 

ツカサ(続いてリンが鏡から出てくると、リンはリンの母とぶつかった)

 

雪穂「えっ!?」

 

リン「いてて…ってママ!じゃなくて先生!?」

 

リンの母「…」

 

リン「しっかりするニャー!」ユサユサ

 

ツカサ(リンの母を揺らして起こそうとするリンをオレは止めに入った)

 

ツカサ「待てリン!…気を失っているだけだ、息もちゃんとしているから安心しろ」

 

リン「えっ?な、なーんだ…ホッとしたニャ~」ホッ

 

雪穂「えっと…これ、一体何がどうなってるの?」

 

リン「あ、雪穂ちゃん!」

 

雪穂「へっ!?なんで私の名前を…?」

 

リン「あっ、えっと…ツカサくんから話を聞いて」エヘヘ

 

雪穂「えっ、そうなのツカサ?」

 

ツカサ「まあ…そんなとこだ」

 

ツカサ(オレは窓から、外にある自動販売機で紅茶を飲んでいるカマタの姿を確認する)

 

ツカサ「あいつ…!」ダッ

 

リン「あ、ちょっと待つニャ!」

 

 

 

リン(リンが部室を出たツカサくんを追いかけようとすると、部室にユイちゃんが入ってきた)

 

ユイ「一体、この騒ぎは…って星空先生!?」

 

リン「あっ、ユイちゃん!」

 

ユイ「リン…これはどういう事?」

 

リン「えーっと…話すと長くなっちゃうんだけど、とにかく先生は大丈夫ニャ」

 

ユイ「…そう、あなたがそう言うなら」

 

リン「あっ、そういえばユイちゃん…先生と話をしようとしたんでしょ?」

 

ユイ「ええ…それならもうとっくに話をして、先生から許可をもらったわ」

 

ユイ「スクールアイドル衣装のファッションショーのモデルとしてリンを出すっていう話を、ね」

 

リン「へぇ~そっか!…って、え?」

 

リン「ええええええっ!?」

 

 

 

ツカサ(オレは校舎の外に出た)

 

ツカサ(その直後、紅茶を飲んでいたカマタが…新聞部の部室に向かって、腕から何かを出そうとしていた)

 

ツカサ「それが犯行に使った凶器か」

 

カマタ「…!」ブンッ

 

ツカサ(カマタは標的をオレに変え、腕から真空刃を飛ばしてきた)

 

ツカサ「おわっ!」サッ

 

ツカサ(オレは、すんでのところで回避した)

 

カマタ「何だ、君は?なぜ私の計画を…」

 

ツカサ「何だはこっちの台詞だ…今の、どう見ても人間技じゃないだろ?」

 

ツカサ「お前…何者なんだ?」

 

ツカサ(すると、オレの耳にまたあの不快な音が聞こえてきた)

 

キィン…キィン…

 

ツカサ「これは…?」

 

?「見たな」

 

ツカサ(オレが声のする方を向くと、そこにはアビスが鏡の中にいた)

 

ツカサ「!」

 

アビス「フフフ…」

 

 

 

リン「ど…どうして!?この学校にもスクールアイドルがいるのに!」

 

ユイ「それが…全員、風邪をひいてしまったみたいでショーに出られなくなったの」

 

リン「ええ…そんなことあるの?」

 

ユイ「先生がデザイナーのカンザキさんに『一人でも良いから、学校を代表する可愛い子に出てほしい』って言われて…」

 

ユイ「それで私があなたを推薦したというわけ」

 

リン「い、いやいやいや…無理だよ無理!」

 

ユイ「無理なんかじゃない…私は先生から聞いた」

 

ユイ「あなたが実は女の子らしい格好に憧れているっていう事…」

 

ユイ「新聞部員の皆も既に知ってるし…あなたが適任だって言ってくれている」

 

リン「みんなも!?でも、リンは…」

 

ユイ「いきなり言われて戸惑う気持ちは分かる…けど皆、リンならきっと似合うって思ってる」

 

ユイ「新聞部の中で、リンが一番女の子らしいって…皆思っていたから」

 

ユイ「だから少しだけでいい…私を、新聞部の皆を信じてほしい」ガッ

 

リン(ユイちゃんはリンの肩を掴んでこう言った)

 

ユイ「私達は、チームなんだから」

 

リン「チーム…」

 

リン「でも、リンは!女の子らしい格好ができるようなタイプじゃないし…」

 

ユイ「こら」ペシッ

 

リン(ユイちゃんはリンの頭に軽くチョップをしてきた)

 

リン「ニャッ!?」

 

ユイ「自分のことをそんな風に言っちゃダメ」

 

リン「ユイちゃん…」

 

?「私もそう思う!」

 

リン(リンが声のする方を見ると、そこには亜里沙ちゃんがいた)

 

雪穂「亜里沙!」

 

リン「亜里沙ちゃん…」

 

亜里沙「へっ?なんで私のこと…」

 

リン「あ…ツカサくんから話を聞いて、ね!」エヘヘ

 

亜里沙「そうなんですか…あっ、でもそれは置いといて!」

 

亜里沙「私、さっきのお話…聞いてました」

 

亜里沙「私も…リンさんがかわいい衣装を着ているのを見てみたいです」

 

亜里沙「だって、私たちの世界の凛さんも…スクールアイドルのかわいい衣装を着ていっぱい輝いてましたから!」

 

リン「亜里沙ちゃんの世界のリンも…?」

 

亜里沙「はい!」

 

雪穂「ちょっと亜里沙…!大丈夫なの、その話して?」ボソッ

 

亜里沙「ツカサが話したなら大丈夫だよ?」ボソッ

 

雪穂「またそんなことを…」ハァ

 

ユイ「…どうやらあの子達も、新聞部の皆と同じ事を思ってるみたいね」

 

リン「で、でも!リンは別だよ…?」

 

リン「ほら、全然女の子っぽくないし…」

 

リン「ユイちゃんや雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんの方が…可愛いしキレイだし、女の子っぽいし」

 

リン「みんなが出た方が良いんじゃ…」

 

亜里沙「大丈夫です!」

 

リン「へっ?」

 

亜里沙「だってリンさん、すっごく可愛いもん!」ギュッ

 

リン(亜里沙ちゃんは突然、リンを抱きしめた)

 

リン「あ、亜里沙ちゃん!?」

 

亜里沙「こんなにギュ~ッ…ってしたくなるくらい!」

 

雪穂「…亜里沙の気持ちも分かります」

 

リン「えっ…?」

 

雪穂「よっぽどの自信家じゃない限り、自分より他人が可愛いって思うものだと…私は思うんです」

 

リン「でもリンは…」

 

雪穂「違わないです」ギュッ

 

リン(雪穂ちゃんも、亜里沙ちゃんと一緒にリンを抱きしめた)

 

リン「…!」

 

雪穂「リンさんは可愛いです」

 

雪穂「だから…自信を持ってください」

 

リン「雪穂ちゃん…うん、分かった」

 

リン(リンはそっと二人を離した)

 

リン「リン…やってみるよ」

 

亜里沙「…ハラショー!」パアッ 

 

雪穂「…はい!」

 

ユイ「…」フフッ

 

リン(リン達は笑い合った)

 

亜里沙「あれ?そういえばさっきツカサを見たような」

 

雪穂「あー…ツカサなら何か急いでたみたいだけど」

 

リン「ニャッ!?」

 

リン(そうだツカサくん…リン、こうしちゃいられない!)

 

リン「ユイちゃん、先生…お願いしていいかニャ?」

 

ユイ「えっ?…わ、分かったわ」

 

リン「じゃあリン…ちょっと行ってくるね!」ダダッ

 

リン(早く…急がないと!)

 

 

 

カマタ「君は…一体?」

 

アビス「君は…私だよ」

 

ツカサ(オレは現実世界にいるカマタとミラーワールドにいるアビス…二人のカマタと対峙していた)

 

ツカサ「…お前もタイムベントの瞬間、一緒に飛んできたのか」

 

アビス「ああ、その通りだ」

 

アビス「私は人間のフリをして、この世界に入り込んだ…」

 

アビス「だが星空先生とアキヤマくんに気づかれ、まずは星空先生を始末した…始末したはずだった」

 

アビス「君と星空くんさえいなければ、私の計画は完璧だった!」

 

ツカサ「そんな事…オレが知るか!」

 

アビス「フン…しかしこのアビスの力があれば、私の計画は再び完璧なものとなる」

 

ツカサ「?…まさかお前!?」

 

アビス「そう、私はミラーワールドから契約モンスターを利用して星空先生とアキヤマくんを狙い…消す」

 

アビス「当然、君と星空くんも…私がこの手で!」

 

ツカサ(アビスは現実世界のカマタにこう言った)

 

アビス「という訳だ…君は元の世界に戻りなさい」

 

カマタ「…後は任せた」

 

ツカサ(するとカマタはオーロラの中に入り、姿を消した)

 

ツカサ「待て!」

 

『アドベント』

 

ツカサ(オレはカマタを追いかけるが、アビスラッシャーとアビスハンマーがオレの行く手を阻む)

 

ツカサ「くっ…邪魔だ、そこをどけ!」

 

アビス「フフフ…」

 

?「ニャアァァァァ!!」ドン!

 

アビスラッシャー「!?」

 

アビスハンマー「!?」

 

ツカサ(リンが助走をつけて二体のモンスターに体当たりし、モンスター達はミラーワールドへと戻された)

 

アビス「何だと!?」

 

ツカサ「リン!…早かったな」

 

リン「リン、足には自信あるから…元陸上部だし!」

 

ツカサ「そうか…」

 

ツカサ(オレは『じゃあ何で新聞部に入ったんだ…?』と思ったが、あえて聞かない事にした)

 

アビス「揃いましたね、だが今…君達が入ろうとしているのはライダー裁判が発動していないミラーワールドだ」

 

アビス「滞在できる時間も制限されている上に…ここで君達が負ければ身体は消えてしまい、命を落とす」

 

アビス「そんな戦いで…私に勝てるとでも?」

 

ツカサ「勝てるさ…間違いなくな」

 

アビス「…ほう?」

 

リン「そうだよ、リンは一人で戦ってるんじゃない!」

 

リン「だって…今はツカサくんとリンが、チームなんだから!」

 

アビス「フッ、何を馬鹿な…人間は皆、自分の為に戦うのだよ」

 

ツカサ「確かにオレ達は時に…一人で色んなものを背負って戦う事もある」

 

ツカサ「自分の為に、この手でな」

 

ツカサ「だが、この手は時に…誰かに差し伸べる事もできる!」

 

ツカサ「その時、オレ達は例え…弱くても、愚かでも、一人じゃない」

 

アビス「君は一体…何者だ?」

 

ツカサ(そう問われたオレは一枚のカードを取り出した)

 

ツカサ(同時にリンも、カードデッキを鏡にかざしベルトを着けた)

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ「変身!」

 

リン「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(オレはディケイド、リンは龍騎に変身を完了させる)

 

龍騎「ニャッ!」

 

ディケイド「っしゃ!」

 

ディケイド(オレ達はアビスに立ち向かう為、ミラーワールドの中へと突入していった…)

 

 

 

龍騎(ミラーワールドに来たリンはアビスが呼んだモンスターと…ディケイドはアビスと戦ってた)

 

『ソードベント』

 

龍騎(リンは空から降ってきた剣を持って、すぐにモンスターを斬った)

 

龍騎「ニャッ!」ズバッ!

 

アビスラッシャー「!」

 

龍騎「ニャニャッ!」ザシュッ!

 

アビスハンマー「!」

 

アビス「おのれ…」

 

『ストライクベント』

 

龍騎(すると、二体のモンスターが合体して大きな鮫になった)

 

アビス「…フフ」

 

ディケイド「!?」

 

龍騎(アビスは手に何かを着けて、ディケイドを狙ってる)

 

龍騎「ツカサくん、危ない!」ダダッ

 

龍騎(ディケイドの前に立ったリンはデッキからカードを一枚出して、左手の機械に入れた)

 

『ストライクベント』

 

龍騎(それからすぐ、空からドラゴンの頭のようなものが飛んできて…リンはそれを腕に着けた)

 

アビス「ハッ!」

 

龍騎「ニャアッ!」

 

龍騎(リンの出した炎とアビスの出した水しぶきがぶつかり合う)

 

アビス「グッ!?」ヨロッ

 

龍騎「ニャニャ!?」フラッ…

 

ディケイド「リン!」ガシッ

 

龍騎(倒れそうになったリンをディケイドが支えてくれた)

 

龍騎「あ…ありがとニャ!」

 

龍騎(アビスがリン達にこう言った)

 

アビス「今度こそ、終わりだ…」

 

アビス「私がこの場で…死刑を申し渡す!」

 

龍騎「死刑なんてごめんニャ!」

 

ディケイド「同意見だ」

 

アビス「そんな事を言っているのも、今のうちだ…!」

 

『ファイナルベント』

 

龍騎(アビスがカードを腕にある機械に入れるとまた大きな鮫が出てきた)

 

龍騎(負けずにリンも腕の機械にカードを入れた)

 

『アドベント』

 

龍騎(リンのもとには真っ赤なドラゴンがリンを守るようにやって来た)

 

龍騎(リンだって…負けたくない)

 

龍騎(生きて、またユイちゃんと一緒に記事を書くって約束したんだ…だから!)

 

龍騎「リンは…諦めない!」

 

 

 

ディケイド(龍騎がそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードに龍騎の力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「それなら…やってみるか」

 

龍騎「えっ、何を…?」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…リ・リ・リ・リュウキ!』

 

ディケイド(直後…龍騎にドラグセイバー、ドラグシールド、ドラグクローと全ての装備が装着される)

 

龍騎「えっ?リン、カード入れてないのに…」

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

龍騎「ニャ?」

 

ディケイド(オレは龍騎の後ろに回り込み、背中を押した)

 

ディケイド(すると龍騎は形を変え…リュウキドラグレッダーに変形した)

 

龍騎「ニャァァァァ!?リンまでドラゴンに…!」

 

ディケイド「オレとリンの力だ」

 

龍騎「か…カッコいいニャ~!」

 

ディケイド「…」ズルッ

 

ディケイド(リンの意外な答えにオレは転びそうになった)

 

龍騎「よーし…行っくニャー!」

 

ディケイド(リュウキドラグレッダーが、アビソドンに立ち向かう)

 

ディケイド(アビソドンは頭のノコギリで龍騎が召還したドラグレッダーを攻撃する)

 

龍騎「えいっ!」ザシュッ!

 

ディケイド(リュウキドラグレッダーは尻尾でアビソドンを両断した)

 

アビス「何!?」

 

ディケイド「今だ!」

 

ディケイド(オレは更に一枚のカードをベルトに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…リ・リ・リ・リュウキ!』

 

ディケイド「はっ!」

 

ディケイド(オレは上空を舞うリュウキドラグレッダーのもとへ高く飛び上がり…)

 

龍騎「ニャーッ!」

 

ディケイド「やあーっ!」

 

ディケイド(リュウキドラグレッダーが吐き出した火炎のエネルギーを受けたオレはアビスに蹴りを放った)

 

ディケイド(これは『DCDD(ディケイドドラグーン)』…オレと龍騎の技だ)

 

アビス「なっ…グワァァァァ!?」

 

ディケイド(キックはアビスに命中し、遠くへ吹き飛ばした)

 

ディケイド(同時にアビスのカードデッキは粉々に砕け散った)

 

龍騎「ニャァァァァ…ニ"ャッ!!」ドン!

 

ディケイド(空を飛んでいたリュウキドラグレッダーは龍騎に戻ると…そのまま落下して尻餅をついた)

 

龍騎「い、痛いニャ~…」

 

ディケイド「全く、仕方ないな…ほら」スッ

 

ディケイド(オレは痛がる龍騎に手を伸ばした)

 

龍騎「あっ…えへへ」ガシッ

 

ディケイド(龍騎は照れ笑いしながらオレの手を掴み、立ち上がる)

 

ディケイド「ふぅ…ん?」

 

龍騎「ニャ?…えっ!?」

 

カマタ「…」

 

ディケイド(オレ達が何かの気配に気づくと、そこには緑色の血を流すカマタが立っていた)

 

ディケイド「そうか…お前、アンデッドだったのか」

 

カマタ「そうだ、私はハートのカテゴリーキング…パラドキサアンデッド」

 

ディケイド「カテゴリー…キング」

 

カマタ「この世界の私は消える…だが、元の世界に戻った私がまだいる事を忘れるなディケイド!」

 

カマタ「そこが君の墓場となるのだ、フフフ…フハハハハ!」

 

ディケイド(カマタは笑いながら、ミラーワールドの中で消滅した)

 

龍騎「…あっ!?」

 

ディケイド(龍騎が自分自身の手を見つめると、オレ達の身体が消えかけている事に気づいた)

 

ディケイド「時間切れか…」

 

龍騎「このままじゃリン達も消えちゃう!」

 

龍騎「どうしよどうしよ、早くしないと~!」オロオロ

 

ディケイド「そんなにはしゃがなくてもいい…9分55秒以内にここから出ればいいだけの話だ」

 

龍騎「あっ…そっか!」

 

龍騎「さすがツカサくん、頭良いニャ~!」

 

ディケイド「…行くぞ」ダッ

 

龍騎「うん!」ダッ

 

ディケイド(オレ達は急いでミラーワールドを後にし、現実世界へ戻った…)

 

 

 

雪穂(数日後、私達はリンさんが出るというスクールアイドル衣装のファッションショーの会場に来ていた)

 

亜里沙「ユイさん!」

 

ユイ「あなた達は…」

 

雪穂「お久しぶりです、あの時は色々とお騒がせしてしまって…すみませんでした」

 

ユイ「気にしないで…あなた達が説得してくれたおかげで、あの子は出るって言ってくれたのだから」フフッ

 

ユイ「それに、今は一緒にミラーワールドの記事を書いてるし」

 

雪穂「確か…多くの人達の反対で数日前にライダー裁判制度がなくなったんですよね?」

 

ユイ「そう、そして今では…野良のミラーモンスターが出没してあちこちで人を襲って捕食している事件が多発している」

 

ユイ「その名も鏡隠し事件…」

 

ユイ「政府はこの事件を解決させるため、裁判制度に使っていたカードデッキを今ではモンスター討伐に使っているそうよ」

 

ユイ「最近はリンと一緒にチームを組んで、鏡隠し事件を取材しているわ」

 

亜里沙「あれ…そういえばリンさんは?」

 

ユイ「リンなら控え室にいるわ」

 

 

 

コンコン

 

ツカサ(オレは控え室の扉を叩くと、すぐに扉が開いた)

 

ガチャ…

 

リン「はい…あっ、ツカサくん」

 

ツカサ「よう…ん、どうした?やけに顔が固いな、ちょっと緊張してるのか?」

 

リン「ちょっとじゃないニャ…」

 

ツカサ「?…というかアンタ、まだ着替えてなかったのか」

 

リン「う、うん…」

 

リン「何かリンが着る衣装…他の人が着る衣装と間違えられてるみたいで」

 

ツカサ「はぁ?…まあいい、入るぞ」スタスタ

 

リン「うん…」

 

ツカサ(オレは控え室の中に入った)

 

ツカサ「そういえば…あれからも龍騎として戦っているのか?」

 

リン「うん…」

 

リン「ユイちゃん達には内緒にしてるんだけど…リン、偉い人からみんなを襲うモンスターをやっつけてほしいって言われて」

 

リン「だからリンは…人を襲う悪いモンスターと戦うために変身するよ」

 

リン「誰かを守るためだけに…変身したいから」

 

ツカサ「そうか…それで、間違ってる衣装って何だ?」

 

リン「…うん、それがね?これなんだけど」シャッ

 

ツカサ(リンはカーテンを開けて、オレに衣装を見せた)

 

ツカサ(その衣装はウェディングドレス風の衣装だった)

 

ツカサ「なるほど、アンタがこれを着る…別にどこも間違ってないじゃないか」

 

リン「間違ってるよ!」

 

リン「リンは違う衣装でやるって聞いてたし…リハーサルもそれでやったし」

 

リン「そもそもリン、髪短いからこういうの似合わないよ…」

 

ツカサ「…ショートカットの花嫁なんて、いくらでもいるだろ」

 

ツカサ「それに…着てみたらかなり似合うと思うぞ?」

 

リン「そ、そんな…冗談はやめてよ!」

 

ツカサ「そんな冗談を言うと思うか?」

 

リン「そ、それは…」

 

ツカサ「ここまで来たら…やるしかないだろ?」

 

ツカサ「今のアンタが出来る、最高のパフォーマンスをする為に」

 

リン「で、でも…」

 

ツカサ「仕方ないな…ほら」スッ

 

リン「えっ、ツカサくん?」

 

ツカサ(オレは姿見の近くに立つリンに衣装を持たせた)

 

ツカサ「…見てみろ、この衣装」

 

リン「えっ…」

 

ツカサ「リンに着てほしいって言ってる」

 

リン「…え?」

 

ツカサ(リンは姿見に映るリン自身と衣装を見た)

 

リン「…リンに?」

 

ツカサ「ああ、だから…胸を張って行ってこい」

 

リン「…」

 

ツカサ(オレはリンの背中をそっと押した)

 

ポンッ

 

リン「…!」

 

ツカサ「…小さな星が夜空に輝く、おまじないだ」

 

リン「ツカサくん…分かった」

 

リン「リン、この衣装着てみるよ!」

 

ツカサ「…それでいい」フフッ

 

ツカサ「じゃあ、オレはそろそろ行くぞ」スタスタ

 

リン「うん…あ、ツカサくん!」

 

ツカサ「?」クルッ

 

リン「…ありがと、ね?」

 

ツカサ「…ああ」ガチャ

 

バタン

 

ツカサ(リンの控え室から出たオレは、徐々に身体が透けていく)

 

ツカサ「どうやら、この世界でやるべき事は終わったようだな」フゥ

 

ツカサ「…またな、リン」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

 

 

リン「それでは…一番可愛い私達を見ていってください!」

 

リン(リンがそう言うと、ファッションショーが始まった)

 

リン(衣装を着たリンを見て、たくさんの人が可愛いって笑顔で言ってくれてる)

 

リン(そんなみんなの笑顔を見て、リンはなんだかとっても嬉しくなってきて)

 

リン(みんながリンのことを女の子みたいに見てくれていて…)

 

リン(そうだよ、こういう格好をしたらリンだってちゃんとした女の子に見えるもん!)

 

リン(カッコいい…じゃなくて、みんなから可愛いねって言ってもらえる女の子に)

 

リン(ツカサくん…)

 

リン(雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…)

 

リン(ありがとう)

 

リン(リン、こんな世界があったなんて知らなかったよ)

 

リン(ヒラヒラ、ふわふわしてて…)

 

リン(女の子って、最高に楽しい!)

 

リン(まるで夢の中にいるみたいに身体が軽くなって、リン…もっと高く飛べそう!)

 

リン(この楽しい気持ちをもっともっと、上まで…)

 

リン(できればあの会場のてっぺんでいっぱい光ってる星空まで…高く飛びたい)

 

リン(そして、みんなに伝えてみたい)

 

リン(女の子ならきっと、誰でも可愛くなれるって…そう)

 

リン(こんな私でさえも…)

 

リン「変身!」

 

 

 

ツカサ「ほら、晩飯出来たぞ」ゴトッ

 

ツカサ(オレはローストチキンが入っている鍋を机の上に置いた)

 

亜里沙「ハラショー!」

 

雪穂「ずいぶん豪華だね…」

 

ツカサ「たまには、これくらいしないとな?」

 

雪穂「それにしても…ファッションショーのリンさん、すごく可愛かったね!」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「おかげで…良い写真になったみたいだしな」ピラッ

 

ツバサ「へえ?」パシッ

 

ツカサ(オレがエプロンのポケットから一枚の写真を出すと、ツバサに取り上げられた)

 

ツカサ「あっ…おい!」

 

キバーラ「これは…あら~!良い写真が撮れてるわね♡クスクス♡」

 

ツカサ(写真には取材をしているリンとウェディングドレス風の衣装を着ているリンが写っていた)

 

ツバサ「へえ…」スッ

 

ツカサ(オレはツバサから写真を返してもらう)

 

ツカサ「全く、油断も隙もあったもんじゃないな…いいから早く食べろ」

 

ツバサ「はいはい」フフッ

 

雪穂「いただきます」

 

亜里沙「いただきます!」

 

ツバサ「いただきます」

 

ツカサ「…」フフッ

 

キバーラ「あら、どうしたのツカサ?」

 

ツカサ(三人には聞こえないよう、オレはキバーラに話した)

 

ツカサ「いや…オレはもしかしたら、良いチームを持ったのかもしれない」

 

ツカサ「まだ旅を始めてから間もないが…そんな気がするんだ」

 

キバーラ「へぇ~…」

 

キバーラ「ねぇ、皆聞いて聞いて!今、ツカサがね…」

 

ツカサ「何ですぐに言おうとしてんだアンタは!」ガシッ

 

ツカサ(オレはキバーラを掴み、喋れないようにした)

 

キバーラ「~!」モゴモゴ

 

亜里沙「どうしたのツカサ?」モグモグ

 

雪穂「またキバーラに私の愚痴でも言ったの?」

 

ツカサ「違う!そもそもいつ言ったそんなの!?」

 

ツバサ「…」フーフー

 

ツバサ「あ、そうだ」

 

ツバサ「雪穂さん…食べ過ぎには気をつけてね」

 

雪穂「えっ…何ですか、いきなり?」モグモグ

 

ツバサ「ふふっ、なんとなく…ね」

 

キバーラ「~!」ジタバタ

 

ツカサ「いいから大人しくして…ろ!?」

 

ツカサ(次の瞬間、写真館の背景が空を翔るドラグレッダーからまた別の背景に変わった)

 

ツバサ「…次の世界ね」

 

雪穂「これは…?」

 

亜里沙「…」モグモグ

 

ツカサ「…なるほど、な」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「数日前、一部のアンデッドが何者かによって再び解放されてしまった」

「彼女は…少し前まで、スクールアイドルをやっていました」

「…やるしか、ないのですね」

第8話『一人きりのエース』

今、その力が全開する。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~海未×剣の世界~
第8話『一人きりのエース』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは『龍騎の世界』って事だ」

龍騎「リンは…この戦いを終わらせる!」

リン「リンは一人で戦ってるんじゃない!」

ツカサ「オレ達は例え…弱くても、愚かでも、一人じゃない」

アビス「私がこの場で…死刑を申し渡す!」

龍騎「リンは…諦めない!」

ディケイド「オレとリンの力だ」

ツカサ「この衣装…リンに着てほしいって言ってる」

リン「ツカサくん!…ありがと、ね?」

リン(みんなに伝えてみたい…女の子ならきっと、誰でも可愛くなれるって)


(それは…昨日の事でした)

 

(私の母は…私にとあるものが入った桐の箱を渡してきました)

 

母「…」スッ

 

?「…」パカッ

 

(私が箱を開けると、中には大きなバックルのようなものが入っていました)

 

?「これは…まさか、再び?」

 

母「…」コクリ

 

?「…分かりました」

 

(私は小さい頃から…道場の跡取りとして育てられてきました)

 

(私自身も…もちろんそうなるつもりで、毎日の稽古に励んでいました)

 

(ですが…時々、迷う事がありました)

 

(本当に私はこのままで良いのか)

 

(親に用意されたこの道を進む事が…正しいのか、と)

 

(親に不満がある訳でも、生まれた環境に逆らいたい訳でもありません)

 

(それどころか私は…幸せに育ってきたこれまでが、とても大切で)

 

(そう思わせてくれたこの世界を、ずっと守っていきたいと…考えていました)

 

(そんな時…私はとある『お役目』を背負い戦う事になりました)

 

(『お役目』を背負った私はこの世界を守るために…懸命に戦っていました)

 

(そして…あの日、私の『お役目』は終わった)

 

(私はそう思っていました…ですが、戦いはまだ終わっていなかったようなのです)

 

?「それでも、私は…」

 

(あの日を迎えるまで共に戦ってくれたある人に…私は誓っていました)

 

(運命と戦い、そして…勝ってみせると)

 

ウミ「園田ウミ…いざ、参ります」

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレがキバーラを掴んで取り押さえていると…写真館の背景が違うものへと変化した)

 

ツカサ(背景は無数のカードが散らばっている中、一枚だけ表を向いたカードがある…というものだった)

 

ツカサ(表を向いたカードには赤いスペードの記号が背中に記された青いカブト虫のイラストが描かれていた)

 

ツカサ「…なるほど、な」パッ

 

キバーラ「プハッ!…もぉ~、いきなり何するのよ~!?」プンプン

 

雪穂「まあまあキバーラ…それで、この背景の何がなるほどなの?」

 

ツカサ「ここは…ブレイドの世界だ」スタスタ

 

ツカサ(オレはキッチンの冷蔵庫に向かい、一本の牛乳瓶を取り出し…それを一気に飲み干した)

 

ツカサ「ぷはっ…」

 

雪穂「ブレイドの…世界」

 

ツバサ「この背景に描かれたカードには…アンデッドが封印されているわ」

 

亜里沙「アンデッド…?」

 

ツバサ「アンデッド、それは決して倒すことのできない不死身の怪人」

 

ツバサ「また…生物の始祖とも言われているわ」

 

ツバサ「簡単に言えば遥か昔のご先祖ってとこね」

 

亜里沙「ご先祖様…」

 

雪穂「で…でも、ちょっと待ってください」

 

雪穂「仮にも…怪人、なんですよね?」

 

ツバサ「ええ」

 

雪穂「さっき、倒せないって言ってましたけど…」

 

ツバサ「そうよ…だから、カードに封印するの」

 

亜里沙「カードに…?」

 

雪穂「封印?」

 

ツバサ「アンデッドは一定のダメージを与えると…一時的に行動を停止するの」

 

ツバサ「その状態になれば、ラウズカードと呼ばれるカードにアンデッドを封印する事ができるわ」

 

ツバサ「それに…アンデッドを封印したカードをこの世界のライダーが使う事で、秘められた能力を発揮する事もできるの」

 

ツバサ「例えばあの背景のカードには…ヘラクレスオオカブトの祖と言われるビートルアンデッドの力が宿っているわ」

 

亜里沙「ヘラクレスオオカブトのご先祖様…」

 

雪穂「そうなんですね…それで、私達はこの世界で何を?」

 

ツバサ「そうね、まずは…このお宝を使って」

 

ツカサ(ツバサは何も封印されていない数枚のラウズカードをオレに、一台のタブレット端末を雪穂に渡した)

 

ツバサ「ブランクカードよ…そのラウズカードで、アンデッドを封印して」

 

ツカサ「…」

 

ツバサ「そしてそっちが…アンデッドサーチャーよ」

 

雪穂「サーチャー…ってことは、これでアンデッドを探せるってことですか?」

 

ツバサ「ええ、アンデッドが暴れたらすぐにそのタブレット端末の画面に表示されるわ」

 

亜里沙「でも、今は何も映ってないね…」

 

雪穂「ってことは…?」

 

ツカサ「アンデッドは今いないから、さっさとその端末を置いてローストチキンを早く食べることだな」フゥ

 

雪穂「…えっ?」

 

亜里沙「そうだね!腹が減っては…えっと、何だったっけ?」

 

ツカサ「戦はできぬ」

 

亜里沙「そう、それだよ!」

 

ツカサ「それに休眠も大事だ…もう遅い時間だからな、早く休んで明日に備えた方が良い」

 

雪穂「でも…それでいいの?」

 

ツバサ「…そうね、私も彼の意見には賛成だわ」

 

ツカサ(すると…ツバサはローストチキンを手に取り食べ始めた)

 

亜里沙「私も!」

 

ツカサ「…ほら、早くしないと全部なくなるぞ?」

 

雪穂「うぅ…もう、分かったよ!」

 

ツカサ(そう言って雪穂は亜里沙に続いてローストチキンを手に取り、食事を再開した)

 

ツカサ「…」フゥ

 

 

 

ウミ「やぁーっ!!」バチーン!

 

ウミ(私の朝は気合の入った剣道の稽古から始まります)

 

ウミ(まだ白々とした陽光も儚い早朝のこの時間…袴の紐を締めて、稽古をするのはとても気持ちの良いものです)

 

ウミ(ですが…私の朝はこれだけに留まりません)

 

『~♪』

 

ウミ(剣道で汗を流した後…私は日舞の稽古に励んでいました)

 

ウミ(流れてくる唄を聴きながら、無心に舞っていると…窓から入る陽射しが強くなってくるのを感じました)

 

ウミ(しかし…私の朝はまだ、これで終わりではありません)

 

ウミ「…」

 

ウミ(袴の紐を締めた私は、黒い胸当てをかけてから弓矢を持って射場に立ち…集中力を高めます)

 

ウミ(息をゆっくりと吐いた瞬間…周りの空気が静まり返り、無音になりました)

 

ウミ(私は弓を振り上げ、目の前にある白と黒の的に向かって矢を放ちました)

 

ウミ(結果は…四射皆中)

 

ウミ「…」フゥ

 

ウミ(こうして私は毎日…園田道場で剣道、日舞、弓道の稽古を欠かさず続けております)

 

ウミ(もちろん、道場の跡取りとしてでもありますが…不死の怪物であるアンデッドと戦う為に日々、こうして鍛練しています)

 

ウミ(気持ちの緩みは…身体の緩みに繋がりますから)

 

ウミ「…!」

 

ウミ(そんな時、私の携帯電話からアラームが鳴り響きました)

 

ウミ「アンデッド…本当にまた、解放されてしまったのですね」

 

ウミ(私は急いで、アンデッドが現れた現場へと向かいました)

 

 

 

ツカサ(アンデッドサーチャーの反応を確認したオレ達が駆けつけると…そこには一体のアンデッドが人々を襲っていた)

 

カプリコーンアンデッド「フォォォゥ!!」

 

亜里沙「いた!」

 

雪穂「あれがアンデッド…?」

 

ツカサ「ああ、あいつはカプリコーンアンデッドだ…」

 

亜里沙「カプリコーンってことは、ヤギのご先祖様なの?」

 

ツカサ「そういう事だ」

 

カプリコーンU「フォォォゥ!!」

 

亜里沙「…もしかしてヤギってみんな、あんななのかな?」

 

ツカサ「いや、おそらくアレは…奴が元々うるさいだけだろう」

 

亜里沙「そっか…」

 

雪穂「そういえばツカサ、その格好…何?」

 

ツカサ(オレはコックの姿になっていた)

 

ツカサ「…どうやら新しい世界に来て、外に出ると勝手にこうなってしまうらしい」

 

雪穂「どんな仕組みなの、それ…?」

 

ツカサ「さあな…とにかく、今回はどこかの料理人として役割を果たせって事だろうな」

 

カプリコーンU「フォォォォォゥ!!」

 

ツカサ「騒々しいな…とりあえずお前達は安全な場所に隠れてろ」

 

雪穂「分かった…行こう、亜里沙」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

ツカサ「…」フゥ

 

カプリコーンU「フンッ!」ビュン!

 

ツカサ(アンデッドはオレに向けてブーメランを投げた)

 

ツカサ「おっと」ヒョイ

 

カプリコーンU「!?」

 

ツカサ(オレは難なく身を翻し…そのブーメランをかわした)

 

カプリコーンU「俺の攻撃を避けるとは…何者だ、お前は?」

 

ツカサ「ただのしがないコックさ…今のところはな」

 

ツカサ(オレはバックルを装着し、一枚のカードを取り出した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「…」

 

カプリコーンU「ディケイド…だと!?」

 

ディケイド「知ってるなら話は早いな…さっそく新しい調理法、試させてもらうぜ」

 

ディケイド(オレは一枚のカードをライドブッカーから取り出した)

 

ディケイド「リン…借りるぞ」

 

『カメンライド…リュウキ!』

 

DCD龍騎(オレは龍騎にカメンライドした)

 

DCD龍騎「…っしゃ!」

 

カプリコーンU「姿が変わっただと!?」

 

『アタックライド…ソードベント!』

 

『アタックライド…ガードベント!』

 

DCD龍騎(更に二枚のカードをディケイドライバーに装填したオレは、空から降ってきたドラグセイバーとドラグシールドを装着した)

 

DCD龍騎「焼き加減は…レア?はっ!」ザシュッ!

 

DCD龍騎(オレはアンデッドを斬りつけていく)

 

カプリコーンU「グッ!」

 

DCD龍騎「ミディアム?はっ!」ズバッ!

 

カプリコーンU「グハッ…」

 

DCD龍騎「それとも…ウェルダン?」 

 

カプリコーンU「ふざけるな!」

 

DCD龍騎(アンデッドは角から炎を放出するがオレはそれをドラグシールドで防いだ)

 

DCD龍騎(その間にオレはライドブッカーから取り出した一枚のカードをディケイドライバーに装填する)

 

『ファイナルアタックライド…リ・リ・リ・リュウキ!』

 

DCD龍騎(すると…近くのビルの窓からドラグレッダーが現れ、アンデッドを突き飛ばす)

 

ドガッ!

 

カプリコーンU「ガアッ!?」

 

DCD龍騎「はぁっ…はっ!」

 

DCD龍騎(オレはドラグレッダーと共に空中へ飛び上がり…)

 

DCD龍騎「やあーっ!」

 

DCD龍騎(ドラグレッダーの炎に包まれながらキックを放った)

 

カプリコーンU「グワァァァァッ!」

 

DCD龍騎(ドラゴンライダーキックを受けたカプリコーンアンデッドは…吹き飛び、倒れた)

 

DCD龍騎(その瞬間…アンデッドのベルトのバックルが開いた)

 

ディケイド「…よし」

 

ディケイド(姿をディケイドに戻したオレは…ブランクカードをアンデッドに投げつけた)

 

ディケイド(アンデッドの身体に刺さったカードは…アンデッドそのものを吸収した後、オレのもとへと戻ってきた)

 

ディケイド「…スペードのQか、上級アンデッドだな」

 

ディケイド(すると…背後から少女の声が聞こえた)

 

?「待ちなさい」スッ

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(竹刀を持った少女は…いつの間にかオレの背後に回り込み、竹刀をオレに突きつけてきた)

 

?「…あなた、一体何者ですか?」

 

ディケイド「…」

 

?「答えなさい!」

 

ディケイド「…オレは」

 

亜里沙「海未さん!」ダダッ

 

ディケイド(こちらに向かって走ってきた亜里沙は…オレの背後にいる少女に抱きついていった)

 

ギュッ

 

?「!?」

 

亜里沙「会いたかったです、海未さん!」

 

ウミ「な…何ですか、あなたは?」

 

亜里沙「私、絢瀬亜里沙です!」

 

ウミ「どなたですか!?」

 

ディケイド「全く…仕方ないな」ハァ

 

ツカサ(オレは呆れながら変身を解き、少女と亜里沙の方を向いた)

 

亜里沙「ここにいるのは海未さん…ってことはあの時、私たちを助けてくれたあの青いライダーがブレイド!」

 

?「えっと、あの…」

 

亜里沙「私、海未さんに会えて嬉しいです!」

 

?「いや、ですからその…」

 

亜里沙「…そうだ!海未さん、どこかケガとかしてませんか?」

 

亜里沙「μ'sがケガしたら大変!」

 

?「ミ、μ's…?」

 

ツカサ「…亜里沙、落ち着け」

 

亜里沙「でも…海未さんが!」

 

ツカサ「今、目の前にいるウミは…お前達が知ってる海未とは少し違う」

 

亜里沙「…あっ」

 

雪穂「そうだよ…ウミさんだって困ってるんだから、もう離してあげなよ」

 

亜里沙「そっか…ごめんなさい、ウミさん」パッ

 

ウミ「えっ?あっ、いえ…」

 

雪穂「もう…」ハァ

 

ツカサ「…焼きもちか?」

 

雪穂「は、はぁ!?違うから!」

 

ツカサ「まあ…そう照れるな」

 

雪穂「照れてないから!!///」

 

ウミ「あ…あのっ!」

 

ツカサ「?」

 

ウミ「一体、あなた方は…?」

 

雪穂「あっ、えっと…」

 

 

 

ツカサ(オレ達はウミに案内され…近くにあるハカランダという喫茶店に入った)

 

店員「いらっしゃいませ~…あれ?ウミちゃんじゃない!?」

 

ウミ「シオリ…久しぶりですね」

 

シオリ「本当だね~…アマネがいなくなってからこっちに来なくなっちゃったから、どうしたのかなって思ってたんだよ?」

 

ウミ「そうでしたか…すみません、心配させてしまって」

 

亜里沙「…?」

 

ウミ「紹介します…彼女はカラスマシオリ、私の同級生です」

 

シオリ「よろしくね!」

 

雪穂「あっ…はい、よろしくお願いします」

 

ツカサ「…」

 

シオリ「あれ…もしかしてこの子、ウミちゃんの彼氏さん?」ニヤニヤ

 

ツカサ「…はぁ?」

 

ウミ「なっ!?ち、違います!」

 

シオリ「照れなくても良いのに~…」

 

ウミ「だから違いますってば!!」

 

シオリ「ふふっ、冗談だよ~…謝らないけど」

 

ウミ「何故ですか!?」

 

シオリ「ウミちゃん、反応が面白いからね~…」エヘヘ

 

ウミ「もう…ひとまず、今日は人数分のお茶をお願いできますか?」

 

シオリ「はいは~い…今、淹れてくるね!」

 

ツカサ(オレ達はシオリがいるカウンターから一番離れているテーブル席に座った)

 

ウミ「…それでは、教えていただけますか?あなた達の事について」

 

雪穂「は、はい…分かりました」

 

ツカサ(オレ達がこちらの事情を説明した後、ウミは信じられない様子だったみたいだが…)

 

ツカサ(オレがディケイドに変身した事で、ひとまず納得してくれたようだった)

 

ウミ「…あなた達の事情は分かりました」

 

雪穂「よ、良かったぁ…」ホッ

 

ウミ「先ほどは勘違いしてしまって、申し訳ありませんでした…人々からアンデッドを救ってくれていたというのに」

 

ツカサ「…別に、もう気にしてない」

 

亜里沙「あの、ウミさん…ちょっと聞いていいですか?」

 

ウミ「はい、なんでしょう?」

 

亜里沙「あの写真、ウミさんやシオリさんと一緒に写っている人って…?」

 

ツカサ(亜里沙は近くに飾られていた写真立てを指差した)

 

ウミ「!」

 

シオリ「お待たせしました~…って、どうしたのウミちゃん?」コトッ

 

ウミ「シオリ…まだ、飾ってたのですか?」

 

シオリ「…うん」

 

シオリ「だって、もしアマネが帰ってきたら…悲しそうな顔で『どこにしまったの?』って言っちゃうでしょ?」エヘヘ

 

ウミ「…」

 

ガチャ…スミマセーン!

 

シオリ「あっ、お客さんだ…いらっしゃいませ~!」ダッ

 

亜里沙「あの…アマネさんって?」

 

ウミ「…アイカワアマネ」

 

ウミ「彼女は…少し前まで、シオリと一緒にスクールアイドルをやっていました」

 

亜里沙「スクールアイドル…」

 

ウミ「そして彼女は…私と共にアンデッドと戦った、仲間です」

 

ツカサ「…!」

 

雪穂「えっ…?」

 

亜里沙「共に戦った…仲間?」

 

ウミ「はい…私は以前、五十三体のアンデッドを全て封印するお役目についていました」

 

ウミ「スペードのライダー『ブレイド』として…そんな時、ちょうどアマネが私やシオリのいる学校に転校してきたのです」

 

ツカサ「そして彼女も…ライダーだったと?」

 

ウミ「そうです…アマネはハートのライダー『カリス』としてアンデッドを封印していました」

 

ツカサ「カリス…か」

 

ウミ「人命救助を優先していた私は当初、アンデッドを封印しようと躍起になるアマネと対立していました」

 

ウミ「しかし…それと同時にアマネはシオリに半ば強引に勧誘され、一緒にスクールアイドルを始めるようになりました」

 

ウミ「始めは嫌々ながらも、次第にスクールアイドルの楽しさや魅力に取りつかれ…アマネは考え方を改めたそうです」

 

ウミ「私自身もシオリを介して彼女と接していくうちに…お互いを認め合い、共にアンデッドから人々を守るようになりました」

 

雪穂「そうだったんですか…」

 

亜里沙「…そのアマネさんは今、どこに?」

 

ウミ「それが…」

 

ツカサ「…いないんだな?」

 

雪穂「えっ…?」

 

ツカサ「この世界の…どこにも」

 

ウミ「…」コクリ

 

亜里沙「それって…どういうこと?」

 

ウミ「…実は彼女は、封印しなければならない五十三体のアンデッドのうちの一体だったのです」

 

亜里沙「!?」

 

雪穂「そんな…!」

 

ウミ「彼女…アマネの正体はジョーカーアンデッドでした」

 

亜里沙「ジョーカー…」

 

ウミ「普段の彼女はハートのカテゴリー2、ヒューマンアンデッドの能力を使って…一人の人間として生活していました」

 

ウミ「シオリとの出会いやスクールアイドルの活動で…やがて人間らしい感情が芽生え、彼女は楽しい毎日を送っていました」

 

ウミ「ですが、そんな彼女の幸せは…徐々に苦しみへと変わっていってしまったのです」

 

亜里沙「…苦しみ?」

 

ウミ「封印されていないアンデッドが少なくなるにつれて…彼女は自分自身の闘争本能に抗えなくなってしまったのです」

 

ウミ「やがて、ジョーカーを除いた全てのアンデッドが封印され…私は彼女と戦う事になったのです」

 

亜里沙「ウミさん…」

 

ツカサ「…」

 

ウミ「彼女と戦ったあの日は…ずっと、雨が降っていました」

 

 

 

ウミ「五十二体のアンデッドは封印されました!」

 

アマネ「…」

 

ウミ「これで残るアンデッドは…あなただけです!」

 

ウミ「アマネ…いえ、ジョーカー!」

 

アマネ「ウミ、やはり私とあなたは…戦い合う事でしか分かり合えない!」

 

ウミ(アマネがジョーカーアンデッドに姿を変えた事を確認した私はバックルを腹部にかざすとベルトに変化し、装着されました)

 

ウミ「変身!」

 

『Turn Up』

 

ウミ(私がバックルのハンドルを引くと、回転したバックルの一部分から青い光のゲートが私の目の前に現れ…)

 

ジョーカーアンデッド「!」

 

ウミ(ゲートがジョーカーアンデッドを弾き飛ばした直後、私はゲートに向かって走っていきました)

 

ウミ「はっ!」

 

ウミ(私がゲートを突き抜けると、蒼き甲虫の戦士…ブレイドへの変身を完了させました)

 

ブレイド(私は左腰から剣型の武器であるブレイラウザーを取り出し、ラウズカードが収納されたトレイを展開させました)

 

ブレイド(そのトレイから一枚のカードを取り出し、ブレイラウザーにカードを読み込ませました)

 

『Slash』

 

ブレイド(両手でブレイラウザーを構えた私は次の瞬間、ジョーカーアンデッドの胸部を斬りつけました)

 

ブレイド「はっ!」ザシュッ!

 

ジョーカーU「うぐっ…はっ!」

 

ブレイド(ジョーカーアンデッドが腕の鎌を振り下ろそうとすると同時に…私はまた別のカードをブレイラウザーに読み込ませました)

 

『Metal』

 

ブレイド「…」ガキンッ!

 

ブレイド(私の身体は一時的に鋼のようになり、攻撃を防ぎました)

 

ジョーカーU「何っ!?」

 

ブレイド「はあっ!」ザシュッ!

 

ジョーカーU「ううっ…」

 

ブレイド(私は面を狙うように…ジョーカーアンデッドを斬りつけました)

 

ブレイド「…やるしか、ないのですね」

 

ブレイド(私は躊躇いながらもトドメを刺そうと…二枚のカードを取り出しブレイラウザーに読み込ませました)

 

『Kick』

 

『Thunder』

 

『Lighting Blast』

 

ブレイド「はっ!」

 

ブレイド(私はエネルギーを貯め…)

 

ジョーカーU「はあぁぁぁっ!!」

 

ブレイド「やあぁぁぁっ!!」

 

ブレイド(走ってくるジョーカーアンデッドに向かって、電撃を纏った右足で跳び蹴りを放ちました)

 

ジョーカーU「うっ!」

 

ブレイド(攻撃を受けたジョーカーアンデッドは倒れ…バックルが開きました)

 

ブレイド「…」

 

ブレイド(私はカードをジョーカーアンデッドにゆっくりと投げつけました)

 

ジョーカーU「シオ…リ…!」

 

ブレイド(カードは苦しむジョーカーアンデッドを吸収し、私のもとに戻ってきました)

 

ブレイド「…」

 

ポチャ…

 

ブレイド(私がそのカードを受け取らなかった事で、カードは水溜まりの中に落ちてしまいました)

 

ブレイド(変身を解いた私は…雨に濡れながら、水溜まりの中に沈んだジョーカーのカードを見ていました)

 

ウミ「…アマネ」

 

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

ウミ「だ、大体…?」

 

亜里沙「気にしないでください…ツカサの口ぐせみたいなものなんで!」

 

ツカサ「おい」

 

ウミ「は、はあ…?」

 

ガチャ

 

ツカサ(オレ達が話していると…店内にサングラスをかけた一人の男が入ってきた)

 

シオリ「いらっしゃいませ~!」

 

?「いや、私は客じゃない…あそこの席にいる彼女に用があってね」

 

シオリ「あの子ですか…?おーい、ウミちゃ~ん!」

 

ウミ「はい?」クルッ

 

?「…やあ、園田くん」

 

ウミ「あなたは…所長!」

 

?「久しぶりだね」

 

雪穂「あの、こちらの方は…?」

 

ウミ「この世界には『BOARD』と呼ばれるアンデッドやラウズカードを専門にする研究所がありまして…」

 

?「その研究所の所長のシジョウだ、園田くんのご両親にはスポンサーとしてお世話になっていてね…よろしく」

 

雪穂「よ、よろしくお願いします…」

 

シジョウ「園田くん、事態は一刻を争う事になってしまった…一緒について来てくれるかい?」

 

ウミ「分かりました」

 

シジョウ「もちろん君達にも…特にそこの君」

 

ツカサ「…オレか?」

 

シジョウ「ああ…私の研究所までついて来てくれ」

 

ツカサ(オレ達はシジョウやウミと共にBOARDの研究所へ向かうことになった)

 

 

 

ツカサ(オレ達はBOARDの研究所の中に入り…通路を歩いていた)

 

ウミ「あの、ところで亜里沙…でしたね?」

 

亜里沙「はい!」

 

ツカサ(亜里沙はウミの右腕に身体がぴったりとくっつくように自分の腕を組んでいた)

 

ウミ「離していただけますか?その、少々近いのですが…」

 

亜里沙「そんなことないですよ?これ、ロシアでは常識なんです」

 

亜里沙「好きな人と身体を寄せ合うように腕を組むのが!」

 

ツカサ(…そんな常識、聞いた事がないんだが?)

 

ウミ「す、好き!?という事はつまり、その…///」

 

ツカサ(これは…オレがツッコまないといけないのか?)

 

雪穂「…」ムスッ

 

ツカサ(こっちはまた妬いてるし…どう収拾つければいいんだ?)

 

シジョウ「まずは…君達に見てもらいたい物がある」

 

ツカサ(厳重なロックがかかった扉の前に止まったシジョウは…入力したパスワードでロックを解除し、扉を開けた)

 

ガチャ

 

ツカサ(部屋に入ると、中には黒と赤…二つの捻れ曲がった大きな石板があった)

 

ウミ「これは…?」

 

シジョウ「モノリスだ」

 

亜里沙「モノリス?」

 

ツカサ「簡単に言えば…未知の物体って事だ」

 

シジョウ「…このモノリスは数ヶ月前にチベットにある遺跡で発掘された」

 

シジョウ「全てのアンデッドが封印されたのと同じ日に…」

 

ウミ「…!」

 

シジョウ「この二つのモノリスが一体、どんなものなのかは…残念ながらまだ解析している途中だ」

 

ウミ「そうでしたか…」

 

シジョウ「それともう一つ…数日前、一部のアンデッドが何者かによって再び解放されてしまった」

 

亜里沙「えっ!?」

 

シジョウ「解放されてしまったのは、スペードのカテゴリーAも含めた数体…」

 

ウミ「…やはり、私のもとにカテゴリーAのカードがなかったのはそういう事だったのですね」

 

雪穂「えっ…そのカテゴリーAのカードがないと、どうなるんですか?」

 

ツカサ「スペードのカテゴリーAのカードは…ウミがブレイドに変身する為に必要なラウズカードだ」

 

亜里沙「そんな…それじゃ、今のウミさんはブレイドになれないってこと!?」

 

ウミ「…」

 

ツカサ「…ああ、そういう事だ」

 

シジョウ「そこで先ほど、アンデッドを封印した君にも協力を要請したい…名前は?」

 

ツカサ「剣崎ツカサだ」

 

雪穂「えっ、剣崎?」

 

ツカサ「ズボンのポケットの中に身分証が入ってた」

 

雪穂「なんでそんなに苗字がコロコロ変わるの…?」ボソッ

 

シジョウ「そうか…それでは剣崎ツカサくん、改めて君に頼みたい事がある」

 

ツカサ「戦えないウミの代わりにアンデッドを封印しろ…って事だろ?」

 

シジョウ「…察しが良いね、その通りだ」

 

シジョウ「部外者の君にこんな事を頼んでしまって非常に申し訳ないが…ぜひお願いしたい」

 

ツカサ「…そこまで言われたら、やるしかないな」

 

雪穂「なんでそんなに偉そうなの…?」

 

亜里沙「…あれ、ウミさんがいない?」キョロキョロ

 

雪穂「えっ?」

 

 

 

ウミ(私はBOARDの研究所から少し離れた崖にいました)

 

ウミ(崖からは…遠くへと広がる海が一望できました)

 

ウミ「…」フゥ

 

亜里沙「ウミさん!」ダッ

 

ウミ「亜里沙、雪穂…?」

 

雪穂「ウミさん…こんなところに来て、どうかしたんですか?」

 

ウミ「いえ、何でもありません…」

 

亜里沙「…無理してる」

 

ウミ「えっ?」

 

亜里沙「ウミさん…本当は何かを我慢してる」

 

ウミ「…!」

 

亜里沙「なんとなく…そんな気がしたから」

 

ウミ「…敵いませんね、亜里沙には」フフッ

 

ウミ(私は少し考えて…亜里沙達に自分の胸の内を明かしました)

 

ウミ「私は…悔しいんです」

 

亜里沙「…悔しい?」

 

ウミ「私は今まで多くのアンデッドを封印してきました」

 

ウミ「変身できない、戦えない全ての人の為に…私が変身して戦おうと」

 

ウミ「人々をアンデッドの脅威から守る為に…ですが、今の私は戦えない」

 

ウミ「そのせいで別の世界からやってきたあなた達にも、迷惑をかけてしまって…」

 

雪穂「ウミさん…」

 

ウミ(私が落ち込んでいると、亜里沙が真面目な顔をしてこう言ってきました)

 

亜里沙「そんなことないです!」

 

ウミ「…亜里沙?」

 

亜里沙「確かにウミさんがブレイドに変身して戦えたらスゴいですけど…もっと他にアンデッドに立ち向かう方法はあるはずです!」

 

亜里沙「だってウミさんは強いって…私、信じてますから!」

 

ウミ「私が…強い」

 

亜里沙「はい!」

 

雪穂「…そうだね、亜里沙」

 

亜里沙「雪穂…」

 

雪穂「私も信じてます!」

 

ウミ「亜里沙、雪穂…」

 

亜里沙「私たち、いつでもウミさんの味方ですから!」

 

ウミ「…」

 

?「…探しましたよ」

 

ウミ(私達が声のする方を向くと、そこには一人の男性がいました)

 

ウミ「あなたは…?」

 

?「あなた達の命…頂戴しますよ」

 

ウミ(すると突然…雪穂が持っていたタブレット端末からアラームが鳴り響きました)

 

雪穂「これは…アンデッド!?」

 

?「フフフフ…フン!」

 

ウミ(次の瞬間…男性は腕から真空刃を出してきました)

 

ウミ「なっ…避けてください!」サッ

 

雪穂「うわあっ?!」サッ

 

亜里沙「きゃっ!」サッ

 

?「すいませんね、うっかり手が滑りました」

 

ウミ「…!」

 

ツカサ「おい、大丈夫か!?」ダダッ

 

ウミ(ツカサが私達のもとへやってきました)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「お前は…カマタか?」

 

カマタ「フフフフ…」

 

ウミ(男性が不敵に笑うと、カマキリのようなアンデッドに姿を変えました)

 

パラドキサアンデッド「…」

 

ツカサ「こっちからわざわざ探す手間が省けたな…変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ウミ(ツカサはカードを腹部のバックルに入れ、ディケイドに変身しました)

 

~結~

 

パラドキサU「フン!」

 

ディケイド(アンデッドは両腕の鎌から真空刃を出し、オレを苦しめる)

 

ディケイド「うわっ!」サッ

 

パラドキサU「借りがありますからね…まずは君に消えてもらいましょう」

 

ディケイド「くっ…このまま消されてたまるか!」

 

ディケイド(アンデッドが更に真空刃を出そうとしたその時だった)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

?「はっ!」ガガッ!

 

パラドキサU「グッ…」

 

ディケイド(オレが振り向くと…そこにはディエンドがいた)

 

ディエンド「お困りのようね」

 

ディケイド「アンタは…!」

 

パラドキサU「フン…邪魔をしないでもらいましょうか!」

 

ディエンド「あら、邪魔をしているのは…どっちの方かしらね?」

 

『カメンライド…ギャレン!』

 

ディケイド(一枚のカードを銃に装填したディエンドがアンデッドに向けて銃の引き金を引いた直後…一人のライダーが召喚された)

 

ギャレン「最後に残ったものだけは、失いたくない!」

 

『Bullet』

 

ギャレン「信じられる…仲間だけは!」ガガッ!

 

ディケイド(ギャレンは一枚のカードをギャレンラウザーに通し、アンデッドに向けてギャレンラウザーで攻撃していく)

 

パラドキサU「ウグッ…!」

 

ディエンド「今よ!」

 

ディケイド「…礼は言わないからな」

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

『ファイナルカメンライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディケイド(オレはディケイドライバーに二枚のカードを装填すると、ギャレンも三枚のカードをギャレンラウザーに読み込ませた)

 

『Drop』

 

『Fire』

 

『Gemini』

 

『Burning Divide』

 

ディケイド(分身したオレとギャレンは同時に飛び上がり、必殺技を同時に繰り出した)

 

ディケイド「はぁぁぁっ!」

 

ギャレン「うおぉぉぉっ!」

 

ディケイド(アンデッドは避けようとするが、その前にオレ達の必殺技が命中する)

 

パラドキサU「グワァァァ!!」

 

ディケイド(アンデッドは倒れ…バックルが開いた)

 

ディケイド「…」

 

ディケイド(オレがカードを投げると、アンデッドはカードに吸収され…オレの手に戻った)

 

ディケイド(それと同時に…ディエンドに召喚されたギャレンは消滅した)

 

ディケイド「…ハートのカテゴリーKか」

 

ディケイド(案外、呆気なかった気がするが…これでカマタを封印できた)

 

ディケイド(これで、この世界でやる事は終わってしまったのだろうか…?)

 

ディケイド(オレがそう考えていると…ディエンドの声が聞こえた)

 

ディエンド「受け取って!」ブンッ

 

ディケイド「!?」パシッ

 

ディケイド(オレが振り返ると、ディエンドが数枚のカードをオレに投げてきた)

 

ディケイド「…これは?」

 

ディケイド(カードはハートのA、JOKER、ダイヤの8、スペードの4、クラブのJだった)

 

ディエンド「うっ…!」

 

ディケイド(その後…ディエンドは何者かの攻撃を受け、崖から海に落ちてしまった)

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(ディエンドを攻撃した人物をオレが確認すると…そこには白いジョーカーアンデッドがいた)

 

?「…」

 

ディケイド「お前は…アルビノジョーカー!?」

 

アルビノジョーカー「…」

 

ディケイド「…お前、なぜアイツを攻撃した?」

 

アルビノJ「…」スタスタ

 

ディケイド(アルビノジョーカーは何も答えずに、オレの元から去ろうとする)

 

ディケイド「待て!」ダッ

 

ディケイド(オレが追いかけようとしたその時…亜里沙の悲鳴が聞こえた)

 

ディケイド「!?」クルッ

 

ディケイド(オレが振り返ると、そこにはアルビローチの軍勢がウミ達を取り囲んでいた)

 

ディケイド(ウミ達の足元には壊れたファンガイアスレイヤーやファンガイアバスターが転がっていた)

 

ディケイド「くっ…今は追ってる場合じゃないな」ダッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ザシュッ!

 

アルビローチ「…!」バタッ

 

ディケイド(オレはアルビローチを次々と倒し、ウミ達のもとへ辿り着く)

 

ディケイド「お前達、大丈夫か!?」

 

雪穂「ツカサ!」

 

ウミ「私が変身して戦えてさえいれば、こんな事には…申し訳ありません」

 

ディケイド「気にしなくていい…それよりこの白いのはオレに任せろ、アンタは雪穂達を連れてBOARDに戻れ」

 

ウミ「ですが…」

 

ディケイド「いいから早く行け!変身して戦う事以外にも人を守る手段はあるだろ!?」

 

ウミ「!…分かりました、行きましょう」ダッ

 

雪穂「はい!」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

ディケイド(オレはライドブッカーソードモードでアルビローチの軍勢を斬りつけていた)

 

ディケイド「はっ!」ザシュッ

 

 

 

ナルタキ「ディケイド…ここが君の墓場だよ」

 

ナルタキ(そんな中、そびえ立つ捻れ曲がった黒い石板と赤い石板…二つのモノリスの間に立つ私はその戦いをじっくりと眺めていた)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「さあ、キビキビ働け!」

「私に一人で歌えと!?」

「私が世界の支配者となるのだ!」

「本当に強いのは…人の想いだ!!」

「…ごきげんよう」

第9話『心に海、耀く勇気』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話『心に海、耀く勇気』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…ブレイドの世界だ」

ツバサ「アンデッド、それは決して倒すことのできない不死身の怪人」

ツバサ「だから、カードに封印するの」

ウミ「…あなた、一体何者ですか?」

ツカサ「ただのしがないコックさ」

シジョウ「君に頼みたい事がある」

ツカサ「戦えないウミの代わりにアンデッドを封印しろ…って事だろ?」

ウミ「今の私は戦えない…」

ディエンド「受け取って!」

アルビノジョーカー「…」


ナルタキ(私は捻れ曲がった赤と黒、二つの石板と共に…ディケイドの戦いを見つめていた)

 

ナルタキ「いいぞ…それでいい」フッ

 

ナルタキ(現れたオーロラが私と石板をすり抜け…私達はその場を後にした)

 

 

 

ディケイド(オレはアルビノジョーカーを追おうとするが、アルビローチの集団が行く手を阻む)

 

ディケイド「くっ、どけ!」ザシュッ!

 

アルビローチ「…!」バタッ

 

ディケイド(オレは何とか全てのアルビローチを倒したが、アルビノジョーカーには逃げられてしまった)

 

ディケイド「…逃げられたか」ハァ

 

ディケイド(変身を解除したオレは…海に落ちたツバサを探し始めた)

 

ツカサ(しかし、どれだけ探してもツバサは見つからなかった…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(それから日が暮れて…オレ達はBOARDの所長室にいた)

 

シジョウ「アルビノジョーカー?」

 

ツカサ「ああ…白いジョーカーアンデッドの事をそう呼ぶらしい」

 

雪穂「らしいって…?」

 

ツカサ「…何かで見た事があるって記憶だけで、実際に見たのは初めてだ」

 

シジョウ「そうか…とにかく、そのアルビノジョーカーの存在についても詳しく調べてみよう」

 

ツカサ「頼む」

 

雪穂「物事を頼む人の態度じゃないよね、それ…?」

 

ウミ「…すみません」

 

雪穂「えっ…どうしてウミさんが謝るんですか?」

 

ウミ「私が変身できていれば…このような事にはなりませんでした」

 

亜里沙「そんな…ウミさんがいなければ私達は無事にここに戻れませんでした!」

 

ウミ「ですが!今の私は…」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「ウミさん…」

 

ウミ「…失礼します」ガチャ

 

ツカサ(ウミはそのまま、所長室から出て行った)

 

 

 

ツカサ(『アンデッドが現れるまではゆっくり休んでいい』とシジョウに言われたオレ達は…写真館に戻っていた)

 

亜里沙「はぁ…ウミさん」シュン

 

ツカサ「放っておけ、今のウミには…何を言っても無駄だ」

 

亜里沙「そんな…でも!」

 

ツカサ「だからこそ、ウミ自身が気づく事が大切なんだ…オレ達なりの方法でな」

 

亜里沙「ツカサ…!」

 

雪穂「でも、どうやって気づいてもらうの?」

 

ツカサ「それは…オレに任せておけば、問題ない」

 

雪穂「イヤな予感しかしないんだけど…」

 

亜里沙「そういえばツカサ…ツバサさんは大丈夫なの?」

 

ツカサ「ああ…たぶん大丈夫だろ」

 

雪穂「探しても見つからなかったのに…どうして分かるの?」

 

ツカサ「何となくだ…アレでやられるようなヤツじゃないだろうしな」

 

雪穂「いや、なんで根拠もないのにそんな自信たっぷりなの…?」

 

ツカサ(オレはツバサから託された五枚のラウズカードを眺めていた)

 

ツカサ(ハートのA、JOKER、ダイヤの8、スペードの4、クラブのJ…)

 

ツカサ(オレはなぜツバサがこれらのラウズカードを託してきたのか…しばらく考えていたが、答えは出なかった)

 

 

 

ウミ「はぁ…」

 

ウミ(翌日…外を歩いていた私は、思わず溜め息をついてしまいました)

 

ウミ(こんな絶望感は…もしかしたら生まれて初めてなのかもしれません)

 

ウミ(今の私は…変身して戦えない)

 

ウミ(私は今…どうしようもなく重たい現実をつきつけられていました)

 

ウミ(私は…こんなにも落ちこぼれてしまっていていいんでしょうか?)

 

ウミ(いえ…ありえません、絶対に良くないです)

 

ウミ(このままでは園田家の名に恥じます)

 

ウミ(でも…正直に言って、どうしたらいいのか今の私には分からないのです)

 

ウミ(こんな時、アマネがいれば…何と答えてくれたのでしょうか?)

 

ウミ(そんな事さえ…考えてしまいます)

 

 

 

ウミ(しばらく私は、フラフラと歩いていました)

 

ウミ「…どうしたら良いのでしょうか?」

 

ウミ(本当にどうすれば良いか…どこに向かって歩いているのかもよく分からなくて)

 

ウミ「…!」

 

ウミ(ふと目の前を見上げると、私はハカランダに辿り着いていました)

 

ウミ「…お茶でも飲んで行きましょうか」ガチャ

 

ウミ(私がドアを開けてお店に入ると…そこには驚くほどの混沌が広がっていました)

 

亜里沙「お帰りなさいませ、お嬢様!」ニコッ

 

雪穂「お、お帰りなさいませ…お嬢様」ゴニョゴニョ

 

ウミ(私の目の前には…メイドに扮した雪穂と亜里沙がいました)

 

ウミ「!?」

 

亜里沙「雪穂、ダメだよ!ちゃんと大きな声で挨拶しないと」

 

雪穂「い、いやでも…私、こういうの似合ってないっていうか」

 

亜里沙「似合ってるよ…すっごく可愛いもん!」

 

雪穂「うぅ~、こんなことになるんだったらあの時にお姉ちゃんを茶化しに行かなかったら良かったなぁ…」

 

ウミ(すると…カウンターからツカサが顔を出してきました)

 

ツカサ「おい、そこで何をボーッとしている…ってウミじゃないか」

 

亜里沙「シェフ、お嬢様のお帰りです!」

 

ウミ「な…な…」

 

ツカサ「…?」

 

亜里沙「どうかしました、お嬢様?」

 

ウミ「何ですかこれはぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

ツカサ(オレはウミに、ウチのメニューであるエースランチを食べてもらいながら事の顛末を説明していた)

 

ツカサ(エースランチはご飯、日替わりのおかず、サラダ、スープ、ドリンクといったセットだ)

 

ウミ「…ごちそうさまでした」フゥ

 

ウミ「つまり…あなた達がここに来た時は、既にシオリはいなかった」

 

ウミ「そんな時に…予約していたお客がやってきたと?」

 

ツカサ「ああ…そんなところだ」

 

ウミ「とはいえ、いくらなんでもこれはやり過ぎなのでは…?」

 

亜里沙「でも…ツカサが料理を作って私達がこの服を着てから、いっぱいお客さんが来るようになったんですよ!」

 

ウミ「そんな…」

 

ツカサ「だが…いまいち、足りないものがある」

 

雪穂「勝手にお店をここまで変えておいて…まだ何かやるつもりなの?」

 

ツカサ「当たり前だろ?オレがやるからには…手を抜く訳にはいかないからな」

 

雪穂「はぁ…どうせ止めてもムダなんだろうけど」

 

ウミ「それで…足りないものとは一体?」

 

ツカサ「絶対的なエースだ…つまり、ある人物がそのメイド服を来て接客する事だ」

 

ツカサ「そうすれば…このお店はより良くなる」

 

亜里沙「ある人物って誰だろう…あっ!」

 

ウミ「…え?」

 

雪穂「もしかして、ウミさん…?」

 

ウミ「ま、待ってください!?どうして私がそんな事を…!」

 

ツカサ「シオリに喜んでもらう為だ…協力してもらうぞ?」

 

ウミ「そう言われても…とにかく私は帰ります!」ガサゴソ

 

ツカサ(ランチの代金を払って店を出ようとするウミだったが…財布の中には27円しか入っていないようだった)

 

ウミ「そんな…私とした事が!」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

ツカサ(オレは何の変哲もない普通のトランプをポケットから取り出した)

 

ツカサ「それなら…ババ抜きで勝負だ」

 

ウミ「バ…ババ抜き、ですか?」

 

ツカサ「ああ…オレ、雪穂、亜里沙、ウミの四人でババ抜きをする」

 

ツカサ「ビリにならずに上がれば、特別にランチ代はタダにしてやる」

 

ツカサ「しかし、もしビリになれば…その時はこの店の従業員として働いてもらう」

 

ウミ「ですが、私は…」

 

ツカサ「ほう、逃げるのか?」

 

ウミ「!…分かりました」

 

ウミ「その勝負、受けて立ちましょう」

 

ツカサ「よし…決まりだ」フフッ

 

ツカサ(こうして、オレ達はウミとババ抜きで勝負をする事になった)

 

雪穂「あれ?そういえばウミさんって確か…」ボソッ

 

 

 

ツカサ(オレ達がババ抜きを始めてから…約一時間が経過した)

 

亜里沙「えっと…」

 

ウミ「…」ジーッ

 

亜里沙「こっちかな?」

 

ウミ「あっ…!」ドキッ

 

亜里沙「それとも…こっち?」

 

ウミ「あっ…!」ホッ

 

亜里沙「…ごめんなさい、やっぱりこっち!」パッ

 

ウミ「んなぁぁぁぁぁ!?」

 

雪穂「ウミさん…」

 

ウミ「嘘ですこんな事!何かの間違い…いや、まだです」

 

ウミ「もう一度です!」

 

ツカサ「ダメだ」

 

ウミ「なぜですか!?」

 

雪穂「ウミさん、これでもう十二回目ですよ…?」

 

ウミ「それでも…私は諦めません!」

 

雪穂「ねえ、やっぱりウミさんって…」ボソッ

 

ツカサ「気づいてないみたいだな…自分の表情がどれだけ相手に読まれやすいか」ボソッ

 

雪穂「前にお姉ちゃんから聞いてはいたけど、さすがに可哀想になってきたよ…」ハァ

 

ウミ「お願いします!次こそは必ず…」

 

ツカサ「…分かった、これが最後だぞ?」

 

ウミ「はい…いざ、尋常に!」

 

ツカサ(それから少し経って…決着がついた)

 

ウミ「んなぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

ツカサ「…と、いう訳で」

 

ツカサ(勝負に敗れたウミにメイド服を着せ、接客させる事になった)

 

ウミ「お、お…」モゴモゴ

 

ツカサ「お帰りなさいませ、ご主人様」

 

ウミ「おっ…オカエリナサイマセェ、ゴシュウジンサマ!」

 

ツカサ「声が裏返ってるし、ご囚人様じゃない…もう一度だ」

 

ウミ「ま、待ってください!」

 

ツカサ「何だ?」

 

ウミ「やっぱり上手くいくなんて思えません…」

 

ウミ「いくらなんでもこれは!強引過ぎます…」

 

ツカサ「ほう…十三回も負けておいてか?」

 

ウミ「あなた、言わせておけば…」キッ

 

ガシッ

 

ツカサ(突っかかろうとするウミを雪穂と亜里沙が抑える)

 

亜里沙「待ってください、ウミさん!」

 

雪穂「落ち着いて!」

 

ウミ「亜里沙、雪穂…放してください!」ジタバタ

 

亜里沙「これは全部、ウミさんのためなんです!」

 

ウミ「…私の?」

 

亜里沙「はい…そうだよね、ツカサ?」

 

ツカサ「…一応、な」ハァ

 

ツカサ(オレはウミの目を真っ直ぐに見つめながら、こう言った)

 

ツカサ「似合ってるぞ…ウミ」

 

ウミ「なっ…いきなり何を言っているんですか、あなたは!?///」

 

ツカサ(ウミは身体中を真っ赤にさせていた)

 

ジュウ!

 

雪穂「熱っ!」パッ

 

亜里沙「うわっ!?」パッ

 

ツカサ「…さて」フゥ

 

ツカサ「仕事再開といくか…さあ、キビキビ働け!」

 

ツカサ(こうして、ウミを加えたオレ達の仕事は始まった)

 

 

 

亜里沙「お待たせしました、エースランチでございます!」

 

雪穂「エースランチ、二つ!」

 

ツカサ「分かった」

 

ツカサ(雪穂と亜里沙が接客をしている中、ウミは皿洗いをしていた)

 

ウミ「…」ジャブジャブ

 

雪穂「あっ、ウミさん!」

 

雪穂「さっきからずっと洗い物ばかりやってるじゃないですか…少しは接客してくださいよ!」

 

ウミ「仕事はしています…そもそも、本来のメイドというのはこういう仕事がメインのはずです!」

 

亜里沙「ウミさん、これお願いします!」

 

ウミ「あっ…はい」

 

ツカサ「ウミ!…笑顔を忘れるな」

 

ウミ「しかし、ここは…」

 

ツカサ「客の前じゃなくても…どんな時でも、そういう心構えが大切なんだ」

 

ウミ「…分かりました」

 

ツカサ「それと雪穂の言う通りだ…ちょっとは接客してこい」

 

ウミ「そ、そんな…無理です!」

 

ツカサ「無理じゃない…」

 

ウミ「ですが、私には…」

 

ツカサ「それなら…客を野菜と思えばいい」

 

ウミ「野菜…?」

 

ウミ『みんなー?いっくよー!』

 

ウミ「私に一人で歌えと!?」

 

ツカサ「いや、別に誰もアンタに歌えなんて言ってないだろ…」

 

ツカサ「全く…仕方ないな」ハァ

 

ツカサ「どうしてもメイド服で接客するのが嫌なら、あそこにあるアレに着替えろ」

 

ツカサ(オレは店の奥にあるパワードスーツを指差した)

 

ウミ「…何ですか、アレは?」

 

ツカサ「『鯛焼き名人アルティメットフォーム』だ、スペシャルターボ機能も搭載されていて…」

 

ウミ「分かりました…メイド服でやりましょう!」スタスタ

 

ツカサ「…悪くないと思うんだがな」

 

 

 

亜里沙「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 

ウミ「お…お帰りなさいませ、ご主人様」

 

ウミ「こちらがメニューです」

 

ウミ「かしこまりました」

 

ウミ「ごゆっくりどうぞ」ニコッ

 

ツカサ「…段々、慣れてきたみたいだな」

 

亜里沙「ウミさん!」スチャ

 

ウミ(亜里沙が後ろからとあるものを私の頭に着けてきました)

 

ウミ「あ…亜里沙、どうしたんですか?」

 

亜里沙「これ…見てみてください!」

 

ウミ「…?」

 

ウミ(亜里沙が私に鏡を渡してきました)

 

ウミ「!!」

 

ウミ(その瞬間、あまりの衝撃で心臓が口から飛び出そうになりました)

 

ウミ(そこには…真っ白でふわふわな猫耳のカチューシャを着けた私が映っていました)

 

ウミ(あまりの驚きで何も言えず、身体も固まり…すぐにそれを外す事も出来ず)

 

客A「最強のメイドね…すごく可愛い!」パシャパシャ

 

客B「それ、撮ってもいいかな?」パシャパシャ

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ウミ(多くの人々から写真を撮られている事にも気付かず…私はその場に立ち尽くしていました)

 

ウミ(こんなにも胸がどきどきするのは…変でしょうか?)

 

ウミ(こんなもの、似合うわけない…すぐにでもそう言いたいはずなのに)

 

ウミ(なぜか…自分が可愛らしく見えているような気がして)

 

ウミ(いつものお堅い武道家のウミとは違う…まるで本物の女の子のような、私)

 

ウミ(不意に、何だか少しだけ身体が軽くなったような気がして…どこか心の奥の方がザワザワと騒ぐのを感じていました)

 

ウミ(そんな時…私は可愛らしい衣装を着て、踊りながら唄っているアマネとシオリの姿を思い出しました)

 

ウミ(もしかして…あの時のアマネも、今の私と同じような気持ちを抱いていたのでしょうか?)

 

ウミ「あの…」

 

亜里沙「?」

 

ウミ「私も…こういうものを身に着けても良いのでしょうか?」

 

亜里沙「…はい!」

 

亜里沙「今のウミさん、いつも以上にかわいいですから!」ニコッ

 

ウミ「…可愛い」

 

ウミ(すると…近くで食器を片付けようとしていた雪穂がバランスを崩しました)

 

雪穂「おわぁっ!?」

 

ウミ「危ない!」サッ

 

ウミ(私はすぐに雪穂の身体を支えました)

 

ウミ「大丈夫ですか?」

 

雪穂「あっ…はい、ありがとうございます!」

 

ウミ「一緒に働く仲間ですから…助け合っていきましょう?」

 

雪穂「はい!」

 

ウミ「…」ハッ

 

ウミ(私は昔の事を思い出していました)

 

 

 

ウミ(アマネと一緒にアンデッドを封印した後、私はアマネの怪我の手当をしていました)

 

ウミ(私は緑色の血を流したアマネの腕に…包帯を巻いて止血していました)

 

ウミ「全くアマネは…また無理に突っ込んでいくんですから」ハァ

 

アマネ「…平気、大丈夫だよ」

 

ウミ「強がりを言って…無理をしたら、シオリが悲しみますよ?」

 

アマネ「それはそうだけど…シオリだけじゃないよ」

 

ウミ「えっ…?」

 

アマネ「ウミだって、一緒に助け合って生きていく仲間だし…よっと」

 

ウミ(アマネはそう言うと立ち上がり、こう言いました)

 

アマネ「私ね…例えカードが一枚もなくたって、私はジョーカーとしての自分の運命と戦いたいなと思ってるんだ」

 

アマネ「本当に強いのは力とかじゃなくて、人の想いなんだって…シオリやウミと出会って分かったから」

 

ウミ「…アマネ」

 

アマネ「だから私は…この想いで、色んなものと戦うよ」

 

アマネ「でも、もし私が辛くなったら…その時はお願いね?」

 

ウミ「アマネ…」

 

アマネ「あっ…もちろん、シオリには内緒だよ?」フフッ

 

ウミ「…分かりました」フフッ

 

 

 

ウミ(…私は何を焦っていたんでしょう?)

 

ウミ(ブレイドに変身できなくても、私には人を守りたいという想いがある)

 

ウミ(それさえあれば…私はどんな運命にも、どんな相手でも戦える)

 

ウミ(そして勝てる…なぜ、こんなにも大切な事を忘れてしまっていたのでしょう?)

 

客C「すみませーん」

 

ウミ「あっ…はい、ただいま!」ニコッ

 

ツカサ「…」フフッ

 

 

 

ツカサ(夕方になり…オレ達は店じまいをしていた)

 

雪穂「疲れた~…」

 

亜里沙「お疲れ様、雪穂!」

 

雪穂「亜里沙もね…」

 

ツカサ「売上は目標の十倍、収支は黒字…どうやらオレはプロデューサーとしてもいけるようだな」ニヤリ

 

雪穂「はいはい…分かったから、そんな怖い顔しながらお金数えないでよ」

 

ウミ「あの…ツカサ」

 

ツカサ「…何だ?」

 

ウミ「ありがとうございます…私が大切な事に気付けるように、あえてこういう事をしたんですよね?」

 

ツカサ「別に…アンタの為だけじゃない」

 

ウミ「えっ…?」

 

ツカサ「この世界の為だ」

 

ウミ「…ふふっ」

 

ツカサ「な、何だ…おかしい事言ったか?」

 

ウミ「あなた…変わってますね」フフッ

 

ツカサ「はぁ!?何でそうなる!」ガタッ

 

雪穂「あ、分かります?変わってるんですよツカサって…」

 

ツカサ「おい…同意するな!」

 

亜里沙「ん~…?」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレが亜里沙の方を見ると、亜里沙はオレが机の上に並べた五枚のラウズカードを眺めていた)

 

ツカサ「どうした、亜里沙?」

 

亜里沙「ツカサ…これってツバサさんがツカサに渡したんだよね?」

 

ツカサ「ああ…何で渡してきたのか、よく分からないんだがな」

 

亜里沙「もしかして…これって何かの暗号じゃない?」

 

ツカサ「暗号?」

 

亜里沙「うん、例えば…数字とか」

 

ツカサ「数字…?」

 

ツカサ(オレはもう一度…ハートのA、JOKER、ダイヤの8、スペードの4、クラブのJの五枚のラウズカードを見つめていた)

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(そして、ある一つの答えに行き着いた)

 

ツカサ「ウミ…あの所長の下の名前、分かるか?」

 

ウミ「シジョウ所長ですか?確か…ジュンイチという名前だったと思います」

 

ツカサ「なるほど…だいたいわかった」

 

亜里沙「分かったの?」

 

ツカサ「ああ、お手柄だ…」

 

ウミ「…?」

 

ツカサ(すると…雪穂のタブレット端末からアラーム音が鳴った)

 

雪穂「あっ…アンデッドだ!」

 

ウミ「場所は…?BOARDの研究所!?」

 

ツカサ「…そういう事か、行くぞウミ!」ダッ

 

ウミ「え?ですが、着替えなくては…」

 

ツカサ「そんな暇はない、行くぞ!」

 

ウミ「は…はい!」ダッ

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

ツカサ(オレとウミは店を出て…研究所へと向かった)

 

 

 

ツカサ(BOARDの研究所に着いたオレ達は一体のアンデッドを発見する)

 

アルビノJ「…」

 

ウミ「アルビノジョーカー…!」

 

ツカサ「一体、こんな所で何をしているんだ?」

 

ツカサ「…シジョウ」

 

ウミ「!?」

 

アルビノJ「…」

 

ウミ「な、何を言っているんですか…ツカサ?」

 

ツカサ「…」

 

ウミ「なぜシジョウ所長がアンデッドなどと…」

 

ツカサ「…知り合いから渡された五枚のラウズカードで分かったんだ」

 

ウミ「五枚のラウズカード…?」

 

ツカサ「ああ…ハートのA、JOKER、ダイヤの8、スペードの4、クラブのJ」

 

ツカサ「これは暗号だったんだ…アルビノジョーカーの正体についてのな」

 

ウミ「暗号…?」

 

ツカサ「ああ…カテゴリーはA、JOKER、8、4、J」

 

ツカサ「Aは『アルビノ』、8は『は』、4は『シジョウ』、Jは『ジュンイチ』と考えると…」

 

ツカサ「『アルビノジョーカーはシジョウジュンイチ』…こういう暗号だったんだ」

 

ウミ「えっ…?」

 

ツカサ「おそらく知り合い…いや、ツバサはお前の正体を知って、オレ達に情報を流そうとしたところを襲われたんだろう」

 

ツカサ「この事件の黒幕であるお前に…」

 

ウミ「…そうなのですか?」

 

アルビノJ「…」

 

ウミ「本当に、私達を裏切ったのですか?」

 

アルビノJ「…」

 

ウミ「答えてください!」

 

ツカサ(しばしの沈黙が流れた後…アルビノジョーカーはシジョウに姿を変えた)

 

シジョウ「…」

 

ウミ「シジョウ所長…!」

 

シジョウ「バレてしまっては…仕方がないね」

 

ウミ「一体、なぜ…」

 

シジョウ「実験だよ…切札を起動させるためのね」

 

ウミ「切札…?」

 

シジョウ「そうだ…あのモノリスは世界を変える切札を起動させる為の鍵だったんだよ」

 

ツカサ「鍵…だと?」

 

シジョウ「そうだ、私は人工的に作り上げたアルビノジョーカーの力と二つのモノリスの力で…この世界を支配しようと考えた」

 

シジョウ「しかし、切札を起動させる為に私はアルビノジョーカーと完全に融合しなければいけなかった…」

 

シジョウ「だから私は…アルビノジョーカーとして活動していたんだ」

 

ツカサ「…世界を支配してどうするつもりだ?」

 

シジョウ「私は…この手で世界の秩序を保ちたいだけだ」

 

シジョウ「君達のような下々の者に研究者の苦しみは分かるまい」

 

ウミ「研究者の…苦しみ?」

 

シジョウ「アンデッドの脅威がもしなくなれば、我が研究所の予算もなくなる…」

 

シジョウ「スポンサーからの資金を得るためには、更なるアンデッドの脅威が必要なのだよ!」

 

ツカサ「つまり戦いを終わらせない為に、お前はアンデッドを再び解放した…そういう事か?」

 

シジョウ「そうだ、だからこそ…恐怖と安全のバランスはこれからこの私が決める」

 

シジョウ「二つの石板を融合させ…私が世界の支配者となるのだ!」

 

ウミ「…あなたがそんな人だとは思いませんでした」

 

シジョウ「何…?」

 

ウミ「最低です、あなたは…あなたは最低です!」

 

シジョウ「フハハハハハハ!」

 

ツカサ(シジョウは笑いながら、アルビノジョーカーに変身した)

 

アルビノJ「正体を知られたからには生かしてはおけない…」

 

ツカサ(アルビノジョーカーはこちらに近づきながら、アルビローチの軍勢を呼び寄せた)

 

ツカサ「ウミ、アンタは下がってろ」

 

ウミ「…分かりました」

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「悪いが…先手必勝だ!」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド(オレはライドブッカーガンモードでアルビノジョーカーやアルビローチを攻撃していく)

 

ディケイド「はっ!」ガガガッ

 

 

 

ウミ「ツカサ…」

 

ウミ(戦いの様子を見ていると、携帯電話からアラーム音が鳴りました)

 

ウミ(私は携帯電話を取り出し、画面を確認しました)

 

ウミ「これは…アンデッドがもう一体!?」

 

ウミ(私はすぐにディケイドに声をかけました)

 

ウミ「気をつけてくださいツカサ、アンデッドがもう一体います!」

 

ディケイド「何!?」

 

ガキン!

 

ディケイド「うわっ!」

 

ウミ(ディケイドは何者かの剣を受け吹き飛びました)

 

ビートルアンデッド「…」

 

ウミ「アレは…カテゴリーA!?」

 

ディケイド「くっ…上等だ!」ガガッ

 

ウミ(しかし、ディケイドの銃弾は…全てビートルアンデッドの盾によって防がれてしまいました)

 

ディケイド「なっ…!?」

 

アルビノJ「どこを見ている!」ザシュッ

 

ディケイド「うわあっ!」

 

ウミ(アルビノジョーカーの鎌で斬られたディケイドは変身が解除され…ツカサに戻ってしまいました)

 

ツカサ「くっ…」 

 

アルビノJ「終わりだ…」

 

ビートルU「…」

 

ウミ(ビートルアンデッドの剣がツカサに向かって振り下ろされようとした…その時でした)

 

ウミ「…!」ダダッ

 

ガキンッ!

 

ウミ(私は自分でも信じられないくらいの速さで近くにあった鉄パイプを手に取り、ビートルアンデッドの剣を受け止めていました)

 

ギリギリ…

 

ビートルU「…?」

 

アルビノJ「何のつもりだ、園田くん…変身できない今の君に何が出来る?」

 

ウミ「…確かに今の私は変身できません」

 

ウミ「ですが、人を守りたいという…強い想いがあります!」

 

アルビノJ「何?」

 

ウミ「例え、私にカードが一枚もなくても…私はあなた達を封印してみせる!」

 

ウミ「私に…ライダーとしての資格があるのなら!」

 

ウミ「私はその運命と戦い…そして勝ってみせます!」

 

アルビノJ「何を愚かな…」

 

?「愚かなのは…あなたの方よ」

 

ガガガッ!

 

アルビノJ「グッ!」

 

ビートルU「!」

 

ウミ「今のは…?」クルッ

 

ウミ(私が振り向くと、そこには一人の女性が立っていました)

 

ツバサ「…」

 

ツカサ「来たか…遅かったな」

 

ツバサ「ふふっ、どうやら…答えが分かったみたいね?」

 

ツカサ「…あんなの朝飯前だ」

 

ツバサ「そう…」フフッ

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

ディエンド「…行ってらっしゃい」

 

『カメンライド…レンゲル!』

 

ウミ(女性は水色のライダーに変身し、更に蜘蛛のようなライダーを召喚しました)

 

レンゲル「誰でも…運命と戦う事は出来るはずです!」

 

『Lush』

 

『Blizzard』

 

『Poison』

 

『Blizzard Venom』

 

レンゲル「はぁっ!」

 

ウミ(蜘蛛のようなライダーは自身の技でアルビローチ達を攻撃し、吹き飛ばしました)

 

ディエンド「これで邪魔は出来ないわよ」

 

アルビノJ「…それはどうかな?」

 

ウミ(すると…残ったアルビローチ達が一人の女性を連れてきました)

 

シオリ「…」

 

ウミ「シオリ!」

 

ツカサ「まさか…こうなる事を見越して、人質をとっていたのか!」

 

アルビノJ「物事というものは、常に先の先を見据えないといけないからね…やれ」

 

ビートルU「…」ダッ

 

ウミ「!」

 

ウミ(私は鉄パイプを取り上げられ、ビートルアンデッドに襲われそうになっていました)

 

ウミ「ぐっ…」

 

ビートルU「…」

 

ツカサ「ウミ!」

 

ディエンド「くっ…間に合わない!」

 

ウミ(水色のライダーが助けに来ようとしますが、残ったアルビローチが行く手を阻みます)

 

ツカサ「…そうだ!おい、リモートのカードは持っているか!?」

 

ディエンド「それなら…レンゲルが持っているわ!」

 

ツカサ「よし…おい、このカードをリモートしろ!」

 

ウミ(ツカサは一枚のラウズカードをレンゲルに投げつけました)

 

レンゲル「…!」コクリ

 

『Remote』

 

ウミ(レンゲルはラウズカードの力を使うと同時に消滅しました)

 

ツカサ「受け取れ、お前の力だ!」

 

ウミ(更にツカサは…一枚のラウズカードを解放したアンデッドに投げました)

 

?「…」パシッ

 

『Change』

 

?「…どいて!」ドカッ!

 

アルビローチ「!」バタッ

 

シオリ「…」

 

アルビノJ「!?」

 

ウミ(アンデッドは別のアンデッドの姿に変わり…アルビローチ達からシオリを取り戻すと、すぐにこちらに向かってきました)

 

?「はぁっ!」ザシュッ!

 

ビートルU「!」フラッ…

 

ウミ「…!」

 

ウミ(まさか…アレは)

 

?「もしかして…そんな格好で寝るつもりなの?」

 

ウミ「カリス…?」

 

カリス「久しぶりだね…ウミ」

 

ウミ(間違いありません、あのカリスは…」

 

ウミ「…アマネ!」

 

カリス「やぁーっ!」ズバッ!

 

ウミ(カリスはビートルアンデッドに対して、カリスアローで斬りつけます)

 

ビートルU「!」

 

カリス「何をしてるの、ウミ…人間を守るのがあなたの『お役目』なんでしょ!?」

 

ウミ「はっ…すみません、アマネ!」

 

ウミ(私は…気を失っているシオリを、少し離れている安全な場所に連れて行きました)

 

ディエンド「カリス…これを!」

 

カリス「!」パシッ

 

ウミ(ビートルアンデッドを怯ませたカリスは…水色のライダーから四枚のラウズカードを受け取りました)

 

『Float』

 

『Drill』

 

『Tornado』

 

『Spinning Dance』

 

ウミ(そのうちの三枚をカリスラウザーを取り付けたカリスアローに読み込ませたカリスは、激しい竜巻を起こして浮遊すると…)

 

カリス「やあぁぁぁっ!」

 

ウミ(きりもみ回転を加えた蹴りをビートルアンデッドに放ちました)

 

ビートルU「…!」

 

カリス「ウミ、今だよ!」

 

ウミ「はい!」ダッ

 

ウミ(戻ってきた私は…素早く鉄パイプを手に取り、ビートルアンデッドの頭めがけて振り下ろしました)

 

ウミ「やぁーっ!」ガンッ!

 

ビートルU「…!」バタッ

 

ウミ(攻撃を受けたビートルアンデッドが倒れた途端…ベルトのバックルが開きました)

 

ウミ(私はすぐにポケットからブランクカードを取り出し…ビートルアンデッドを封印しました)

 

カリス「やったね…ウミ」

 

ウミ「…はい!」

 

 

 

ツカサ(ウミがビートルアンデッドを封印した光景を見て…アルビノジョーカーは狼狽えていた様子だった)

 

アルビノJ「そんな馬鹿な…ありえない!」

 

ツカサ「計算が狂ったみたいだな、シジョウ」

 

アルビノJ「力こそ…力こそが全てのはずだ」

 

アルビノJ「それなのに…なぜお前達は!」

 

カリス「力でねじ伏せようとする事は…本当の強さなんかじゃない」

 

アルビノJ「何だと…!?」

 

カリス「本当に強いのは…強いのは!人の想いだ!!」

 

ウミ「!…そうですね」

 

ウミ「今の私には…アマネやツカサ達という共に戦う仲間がいます」

 

ウミ「だから私達はその決められた運命と戦い…そして、必ず勝ってみせます!」

 

ウミ「人々を守る為に…この想いを込めて!」

 

アルビノJ「フン、馬鹿な事を…」

 

アルビノJ「君もジョーカーも所詮…私の手駒として戦っていたに過ぎん!」

 

ツカサ「言っただろ…彼女が戦っているのはお前の為なんかじゃない!」

 

アルビノ「何?」

 

ツカサ「仲間や人々を守る為だ!」

 

ツカサ「どんな事があっても共に戦う仲間を励まし助け合い、一緒に『進化』していく…その為に戦っているんだ!」

 

シジョウ「お前は…何者だ!?」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ(オレとウミはバックルを装着した)

 

カリス「ウミ、あなたは彼と一緒にあの白い紛い物のジョーカーを…それ以外は私が何とかする」

 

ウミ「…お願いします」

 

カリス「頼んだよ」フフッ 

 

ツカサ「行くぞ!」

 

ウミ「はい!」

 

ツカサ「変身!」

 

ウミ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『Turn Up』

 

ツカサ(オレとウミはアルビノジョーカーに向かって走り出し、ディケイドとブレイドに変身する)

 

ディケイド「やあっ!」

 

ブレイド「はっ!」

 

 

 

ブレイド(私とディケイドはそれぞれの剣でアルビノジョーカーに立ち向かいました)

 

ブレイド「はあっ!」ザシュッ

 

ディケイド「やあっ!」ズバッ

 

アルビノJ「グッ、おのれ…」

 

ディケイド「ウミ…これを!」

 

ブレイド(私はディケイドが投げた一枚のカードを受け取りました)

 

ブレイド「これは…」

 

『Tackle』

 

ブレイド「はっ!」

 

ブレイド(ラウズカードを読み込ませた私は…アルビノジョーカーに突進していきました)

 

ガンッ!

 

アルビノJ「ウグッ!?」

 

ディエンド「ブレイド…これも使って!」

 

ブレイド(私は水色のライダーから更に四枚のカードを受け取り、そこから一枚をブレイラウザーに通しました)

 

ブレイド「ありがとうございます!」

 

『Beat』

 

ブレイド「はぁっ!」バチン!

 

ブレイド(私はアルビノジョーカーの顔に平手打ちをしました)

 

アルビノJ「グハッ!」

 

ブレイド「まだです!」

 

ブレイド(私は…ブレイラウザーに三枚のカードをラウズしました)

 

『Kick』

 

『Thunder』

 

『Mach』

 

『Lighting Sonic』

 

ブレイド「はっ…!」

 

ブレイド(先ほどの平手打ちで後ろに退いたアルビノジョーカーに向かって、私は超高速で走り…)

 

ブレイド「はぁーっ!」

 

ブレイド(稲妻を纏った跳び蹴りを浴びせました)

 

アルビノJ「ウガァァァァ!?」

 

ブレイド(攻撃を受けたアルビノジョーカーは…研究所の内部まで吹き飛んでいきました)

 

アルビノJ「ウウッ…許さん、許さんぞ!」

 

ブレイド(アルビノジョーカーがそう言うと、二つの捻れ曲がった石板がアルビノジョーカーを挟むように現れました)

 

アルビノJ「アルビノジョーカーの力と二つのモノリスで…私は必ず、この世界の支配者となるのだ!」

 

ブレイド(二つの石板がアルビノジョーカーを吸収して、一つに溶け合うと…やがて巨大な双頭のアンデッドに姿を変えました)

 

ディケイド「本当にしぶといな…」

 

ブレイド(黒と赤の斑模様な色彩の双頭のアンデッドが両翼を広げると凄まじい臭気が放たれました)

 

ブレイド「うっ…」

 

カリス「ううっ…」

 

ディケイド「酷い臭いだな…」

 

ディエンド「さすがに大変なことになってきたわね…」

 

ブレイド「ですが私達は…こんな所で怯む訳には、倒れる訳には、負ける訳にはいきません!」

 

ブレイド(運命と戦い、勝ってみせる為に…)

 

ブレイド(共に戦ってくれる、仲間の為に…)

 

ブレイド(全ての人々の為に…!)

 

ブレイド「私は…諦めません!」

 

 

 

ディケイド(ブレイドがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにブレイドの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「それなら…ちょうどいい調理法がある」

 

ブレイド「調理法?それは一体…」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

 

ディケイド(オレはブレイドの後ろに回り込んだ)

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

ブレイド「な…何をするつもりですか!?」

 

ディケイド「いいから」

 

ディケイド(オレはブレイドの背中を押した)

 

ディケイド(するとブレイドは…ブレイドブレードに変形し、オレはそれを持ち上げた)

 

ブレイド「こ、この姿は…?」

 

ディケイド「オレとウミの力だ…はっ!」

 

ディケイド(双頭のアンデッドが竜の形をした炎を吐いてきたが…オレはそれを一刀両断する)

 

ディケイド「まだだ…やあっ!」

 

ディケイド(オレがブレイドブレードで双頭のアンデッドを斬りつけると…双頭のアンデッドは苦悶の声を上げた)

 

ディケイド(それからオレは…更に一枚のカードをベルトに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

 

ディケイド「はっ…やあーっ!」

 

ディケイド(オレはアンデッドの双頭を斬り落とすように電撃が走るブレイドブレードを振るった)

 

ディケイド(これは『DCDE(ディケイドエッジ)』…オレとブレイドの技だ)

 

ディケイド(首を切断された双頭のアンデッドは…赤黒い体液を炎と共に撒き散らしながら、倒れていく)

 

アルビノJ「愚かな、何という事を…!」

 

アルビノJ「私が創造しようとする運命を、世界を滅ぼそうというのか…?」

 

ディケイド「違うな…世界は人々が助け合いながら作っていくものだ」

 

ディケイド「お前みたいな神の紛い物が…一人で自分の都合良く作り出すものじゃない」

 

ディケイド(双頭のアンデッドが崩れ落ちると…突然、巨大な純白の石板が現れた)

 

ディケイド(白い石板は双頭のアンデッドを吸収し…鎖を何重にも巻きつけた直後、溶けるように消滅していった)

 

ディケイド「…はっ!」ブンッ

 

ディケイド(オレがブレイドブレードを投げて…ブレイドブレードから姿を戻したブレイドは綺麗に着地した)

 

ブレイド「…終わったのですね?」

 

ディケイド「ああ」

 

ディエンド「さて…帰りましょうか」スタスタ

 

カリス「…」

 

『Spirit』

 

ディケイド(オレ達が変身を解くと同時に…カリスはハートの2を腹部のカリスラウザーにラウズし…アマネに姿を変えた)

 

アマネ「…」

 

ウミ「…」

 

ツカサ(オレはウミとアマネ、シオリを置いて…その場を後にした)

 

ツカサ「…」スタスタ

 

 

 

ウミ「…これで、大丈夫でしょうか?」

 

シオリ「…」

 

ウミ(私とアマネは気を失ったシオリを連れて…ハカランダに戻りました)

 

アマネ「ケガもないみたいだし…じきに目を覚ますよ」

 

ウミ「それなら良いのですが…」

 

アマネ「ふふっ…それにしても、その格好は何?」

 

ウミ「も、もう…そんな事は放っておいてください!」

 

アマネ「はいはい…久しぶりだね、ウミ」

 

ウミ「…はい」

 

アマネ「私が封印されて大丈夫かと思ったけど…もうその心配はないみたいだね」

 

ウミ「…ええ」

 

シオリ「ん~、アマネ…」ムニャムニャ

 

アマネ「…急にいなくなったしてごめんね、シオリ」

 

アマネ「でも私は…いつだってあなた達の心の中にいるから、安心して?」

 

シオリ「…」

 

アマネ「ウミ…この世界の人々を、シオリを頼んだよ?」

 

ウミ「…分かりました」

 

ウミ(それからすぐに…アマネの身体が徐々に透けているのが分かりました)

 

アマネ「…そろそろカードに戻る頃かな」

 

ウミ「アマネ」

 

アマネ「ん?」

 

ギュッ

 

ウミ(私はアマネを抱き締めました)

 

アマネ「!」

 

ウミ「…私は、あなたに言ってない事が山ほどあります」

 

アマネ「うん…」

 

ウミ「ですが、全部を言える時間はありません…」

 

ウミ「だから…これだけは言わせてください」

 

アマネ「…何?」

 

ウミ「あなたやシオリのおかげで…私はかけがえのないものを手に入れました」

 

ウミ「だから…ありがとう」

 

アマネ「!」

 

ウミ(抱き締めていたので表情は見えませんでしたが…アマネは涙を流しているようでした)

 

ウミ(ずっと言えなかった事、いつか言いたかった事…ようやく伝えられました)

 

ウミ(少しして私から離れ…涙を拭ったアマネはこう返しました)

 

アマネ「…私の方こそ、ウミやシオリに会えて楽しかったよ」

 

アマネ「本当はウミとも一緒に、スクールアイドルが出来たら良かったんだけどね…良い詞書いてくれそうな気がするし」

 

ウミ「そっ、それは…!」アセアセ

 

アマネ「…なんてね、冗談だよ」

 

ウミ「冗談って…もう、からかうのはやめてください!」

 

アマネ「あはは…でも、ウミがいたらもっと人気出てたかもね?」

 

アマネ「ウミのする練習、すごくキツそうだからシオリがついて行けないと思うだろうけど…」

 

ウミ「なっ…どういう意味ですか、それ!」

 

アマネ「休みなしの合宿メニュー組んだり、山に登ったら急に『山頂アタックです!』とか言ってただろうし…」

 

ウミ「言いませんよ!?」

 

アマネ「あれ、言わないの…?」

 

ウミ「あなた…一体、私にどんなイメージを抱いているのですか!?」

 

アマネ「う~ん…ついこないだまで一緒に過ごしてたから、なんとなくそんな気がしただけかな」フフッ

 

ウミ「!…ふふっ」

 

ウミ(私達はお互いの顔を見つめ、笑い合いました)

 

アマネ「じゃあね、ウミ…ありがとう」

 

ウミ(そう言ってアマネは…JOKERのカードに戻り、数枚のラウズカードと共に地面に落ちました)

 

ウミ(私は微笑んだまま、そのJOKERのカードを拾って…テーブルの上に置きました)

 

ウミ「…ごきげんよう」

 

シオリ「んっ…あれ?」パチリ

 

ウミ「シオリ…目が覚めたんですか?」

 

シオリ「今、アマネちゃんがいたような気がするんだけど…気のせいだったかな?」

 

ウミ「!…ええ、確かにさっきまでいました」

 

ウミ「『すぐに帰る』と言って…この店を出て行ってしまいましたが」

 

シオリ「そっか…もう少しいてくれても良かったのになぁ」

 

ウミ「…」

 

?「ウミさん!」ギュッ

 

ウミ(私の背後から…亜里沙が抱きついてきました)

 

ウミ「あ…亜里沙?」

 

亜里沙「無事で良かった…」グスッ

 

ウミ「…?」

 

雪穂「ウミさん…おかえりなさい」

 

ウミ「あっ…はい、ただいま戻りました」

 

シオリ「あれ…そういえばウミちゃん、その格好は?」

 

ウミ「はっ!?いえ、その…これには深い訳がありまして!」

 

シオリ「可愛い…」

 

ウミ「…へっ?」

 

シオリ「ウミちゃん…それ着て、このお店手伝ってくれない!?」

 

ウミ「いや、ですが…」

 

シオリ「絶対に人気出ると思うから…お願い!」

 

ウミ「む、無理ですよ…」

 

シオリ「じゃあ…ここにトランプあるから、ババ抜きで決めよう?」

 

ウミ「またですか!?」

 

シオリ「えっ…また?」

 

ウミ「あっ、いや…とにかく私はこのお店を手伝うつもりはありません!」

 

シオリ「へぇ~…逃げるんだ?」

 

ウミ「なっ…私は逃げてなどいません!」

 

ウミ「運命と戦い…そして、勝ってみせます!」

 

シオリ「ふふっ…そう来なくっちゃ!」

 

ウミ「さあ…始めますよ、雪穂や亜里沙も一緒にやりましょう!」

 

亜里沙「はい!」

 

雪穂「えぇ…またですか?」

 

ウミ「当たり前です…私はあなた達にも負けるつもりはありません!」ガシッ

 

ウミ(私は雪穂の腕を掴んで、テーブル席に連れて行きました)

 

雪穂「そ、そんなぁ~…!」ズルズル

 

ウミ「さあ…行きますよ!」

 

シオリ「…」チラッ

 

JOKERのラウズカード「…」

 

シオリ「…ありがとね、アマネ」ボソッ

 

 

 

ツカサ(その夜、オレはBOARDの研究所から少し離れた浜辺にいた)

 

ツカサ(静かな波の音、水面に落ちる月…)

 

ツカサ(オレはじっとその海を見つめていた)

 

ツカサ「…」

 

?「お待たせしました」

 

ツカサ「ウミ…シオリは大丈夫だったか?」

 

ウミ「はい…先ほど、意識を取り戻しました」

 

ツカサ「そうか…亜里沙達は?」

 

ウミ「先に写真館に戻ると言っていました…亜里沙の方は、私から離れるのを名残惜しそうにしていましたが」

 

ツカサ「そうだろうな…ってかアンタ、まだそのメイド服のままだったのか?」

 

ウミ「ええ、なぜだかは分かりませんが…もうすっかりクセになってしまいました」

 

ウミ「人前に出て、人を喜ばせる事が…」

 

ツカサ「…そうか」フフッ

 

ツカサ「それで…これからどうするんだ?」

 

ウミ「もちろん…解放されたまま、どこかで身を潜んでいる残りのアンデッドを封印していくつもりです」

 

ウミ「シオリのお店を手伝いながら…にはなりますが」フフッ

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

ツカサ「おっと、そうだ…受け取ってくれ」

 

ツカサ(オレは持っていたラウズカードを全てウミに渡した)

 

ウミ「…ありがとうございます」

 

ツカサ(ラウズカードを受け取ったウミは…しばらくオレの横に立ったまま、静かに海を見つめていた)

 

ツカサ(それからウミは口を開いた)

 

ウミ「…しかし私もまだまだ修行が足りませんね、ああやって騙されてしまうとは」ハァ

 

ツカサ「…どうだろうな」

 

ツカサ「オレは百回も人を裏切る奴より…百回も人に裏切られるくらい、真っ直ぐな人間の方が良いと思うぞ?」

 

ウミ「…」

 

ツカサ(ウミはオレの言葉を聞いた直後、少し躊躇いながらもオレにこう話してくれた)

 

ウミ「…海のように心の広い」

 

ツカサ「…?」

 

ウミ「また、どこまでも終わる事なく伸びていく大きな女性に育つようにと、両親が願ってつけたのが私の名前なのですが…」

 

ウミ「私はその名前に相応しい人間になれているのでしょうか…と、海を見る度に思うんです」

 

ツカサ「…少なくとも、心は広くないな」

 

ウミ「ツカサ?」ゴゴゴ

 

ツカサ「冗談だ…だがどこまでも終わりなく伸びていくのであれば、それは間違いないな」

 

ツカサ「スクールアイドルをやっていた別の世界のアンタも…そうだった」

 

ウミ「別の世界の私が…?」

 

ツカサ「ああ…別の世界のアンタは幼なじみと一緒にスクールアイドルになった事で変わっていった」

 

ウミ「そうですか…別の世界の私には幼なじみがいるのですね?」

 

ツカサ「ああ、もしかしたらそういうのも…『進化』だと呼べるのかもしれないな」

 

ウミ「…ふふっ」

 

ツカサ「?」

 

ウミ「やはりあなたは…どこか変わっていますね」クスクス

 

ツカサ「何だそれ…あっ!」

 

ツカサ「まさかアンタ、まるでオレがバカみたいに言ってるな?」

 

ウミ「…ええ、バカなんです」

 

ウミ「不器用で…お人好しの、バカなんです」フフッ

 

ツカサ「何だそれ…まあいい」ハァ

 

ウミ「ふふっ」クスクス

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレがふと自分の手を見ると、徐々に身体が透けている事に気が付いた)

 

ウミ「それは…?」

 

ツカサ「…どうやら、この世界でオレがやるべき事は終わったらしい」

 

ウミ「そうですか…もう行ってしまうのですね?」

 

ツカサ「ああ…次の世界が待ってる」

 

ツカサ「オレはいずれ世界を破壊してしまう邪魔な存在…らしいがな」

 

ウミ「…そうでしょうか?」

 

ツカサ「?」

 

ウミ「きっと、それは違います…あなたはこの世界を救ってくれました」

 

ウミ「だから、あなたは決して邪魔な存在などではないと…私はそう思います」

 

ツカサ「…どうだかな、確かにあいつらと世界を守る約束はしたけどな」ハァ

 

ウミ「あの、ツカサ?」

 

ツカサ「何だ」

 

ウミ「…また、会えますよね?」

 

ツカサ「そうだな…いつか、旅を続けていればな」

 

ウミ「…はい!」

 

ツカサ「それじゃ、またな…ウミ」

 

ツカサ(そう言って、オレはまた新たな一歩を踏み出した)

 

ツカサ(その先に絶望ではなく、希望が待っていると信じて)

 

ツカサ「…」クルッ

 

ウミ「…」フフッ

 

ツカサ(オレが振り向くと…ウミは優しく穏やかな笑顔を浮かべていた)

 

ツカサ「…」フフッ

 

ツカサ(微笑み返したオレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

ウミ「ツカサ…ありがとうございます」

 

ウミ「いつか、また必ず…巡り合いましょう」

 

 

 

ツカサ(光写真館に戻ったオレは…瓶に入った牛乳を飲みながら、撮影した一枚の写真を眺めていた)

 

ツカサ「…」

 

ツバサ「どう?今回の写真は…」

 

ツカサ「まあまあってとこだな」

 

ツバサ「…へえ、なかなか面白い写真ね?」

 

ツカサ(写真にはメイド姿のウミと…JOKERのラウズカードを持って微笑むウミが写っていた)

 

ツカサ「そう褒められても全然嬉しくないけどな…」

 

ツバサ「あら…謙遜しちゃって」フフッ

 

ツカサ「…一体、どこをどう聞いたらそういう解釈をするんだ?」

 

ツバサ「…」スタスタ

 

ツカサ「おい、無視するな…おい!」

 

亜里沙「…あ~あ」ハァ

 

亜里沙「それにしても…もっとウミさんと一緒にいたかったな」モグモグ

 

雪穂「仕方ないよ亜里沙、私達は次の世界に行かなきゃいけないわけだし…」モグモグ

 

ツカサ(雪穂と亜里沙はオレが作ったたこ焼きを食べた後、ツバサが買ってきたたい焼きを頬張っていた)

 

雪穂「それにしても疲れたなぁ…もうババ抜きはこりごりだよ」ハァ

 

亜里沙「あれ、雪穂…そのたい焼きは何?」

 

雪穂「こしあんだよ」

 

亜里沙「美味しそう…私のカスタードと交換して!」

 

雪穂「じゃあ…半分こにして分けよっか」

 

亜里沙「うん!」

 

キバーラ「あら~二人共、本当に仲が良いのね…そのまま食べさせっことかしちゃうの?くすくす♡」

 

雪穂「は…はぁ!?しないよそんなの!」

 

亜里沙「えっ…イヤなの?」シュン…

 

雪穂「い…イヤとは言ってないけど」

 

亜里沙「じゃあ、はい…あーん!」

 

雪穂「あ、あーん…」パクッ

 

キバーラ「うふふ…お熱いわねぇ♡」

 

ツカサ「ひゅーひゅー」

 

雪穂「もう…うるさいから茶化さないで!」

 

亜里沙「じゃあ私も!」

 

雪穂「あ、あーん…」

 

パクッ

 

亜里沙「うん…こっちも美味しい!」

 

雪穂「そ、それなら良いけど…」

 

ツカサ「ひゅーひゅー」

 

ツバサ「本当…妬けちゃうくらいお熱いわね」フフッ

 

雪穂「だから茶化さ…!?」

 

ツカサ(次の瞬間、写真館の背景が散らばったラウズカードからまた別の背景に変わった)

 

亜里沙「今度は…ロボット?」

 

キバーラ「フフフ…ツカサさんご一行、ごあんな~い♡」ボソッ

 

ツカサ「…」




Open your eyes for the next μ's!

「アンタは?」

「マコっていいます」

「男子スクールアイドル!?」

「ファイズなんて…ただの噂よ」

「…変身」

「まさか…!」

第10話『挑戦する本能』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~真姫×555の世界~
第10話『挑戦する本能』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…ブレイドの世界だ」

シジョウ「私は人工的に作り上げたアルビノジョーカーの力と二つのモノリスの力で…この世界を支配しようと考えた」

ウミ「例え、私にカードが一枚もなくても…私はあなた達を封印してみせる!」

カリス「本当に強いのは…人の想いよ!!」

ウミ「私達はその決められた運命と戦い…そして、必ず勝ってみせます!」

ウミ「人々を守る為に…この想いを込めて!」

ツカサ「どんな事があっても共に戦う仲間を励まし助け合い、一緒に『進化』していく…その為に戦っているんだ!」

ディケイド「オレとウミの力だ」

ウミ「ツカサ…ありがとうございます」

ウミ「いつか、また必ず…巡り合いましょう」


(小さい頃の私がこの世界で一番好きだったのは、ピアノを弾くことだった)

 

(ママに連れられて行ったレッスン室で…初めて触れたグランドピアノの綺麗な音)

 

(その音は…まだ幼稚園に入ったばかりの私の身体と心の中で響き渡って、弾けて跳んでいたような気がした)

 

(初めて出会った、今まで見たこともないような大きくて不思議で美しい楽器に…幼かった私は圧倒されていた)

 

(家の古いアップライトピアノや幼稚園の電子ピアノと同じ楽器とは思えないくらい、私にはそれが特別なもののように見えた)

 

(そのグランドピアノの音は…私の耳にはどんな音でも、天上から響いてくる音楽に聞こえた)

 

(レッスン室の待合室の扉を開けると、思わずうっとりしてしまうほどに…美しくて優しい音)

 

(だから私は…音楽がすごく好きなんだって自分の中で気づくまで、そう時間はかからなかった)

 

(同時に…その音楽が、自分の一生の夢には絶対になってはくれないんだということも)

 

(地元にある大きな病院の跡継ぎ娘である私は…両親から医者になることを期待されていた)

 

(そのせいか学校では友達もあまりできなかった…別に誰かと仲が悪い訳でも、クラスの中で仲間外れにされている訳でもなくて)

 

(『しっかり者、頭脳明晰、美人、オシャレ、超がつくほどのお嬢様』)

 

(私にそんなイメージがついていたからか、同級生からはどこか距離をおかれてた)

 

(まあ、どれも事実だし…今の私には『ピアノがあればそれで良い』と思ってたから別に気にしてなかったんだけど)

 

(だから…その時の私は特に寂しいと思うこともなかった)

 

(ピアノを習い始めてから三年経った夏のある日までは…)

 

(この日、ピアノの発表会に出た私は…小学生の部で二位になった)

 

(嬉しくて誇らしい気持ちで…家に帰るなり、すぐにパパとママに知らせた)

 

(でも…それを聞いたパパは『何だ、一位じゃなかったのか』と私に言った)

 

(そしてママには『残念だったけど、お勉強は学校で一番だから…ピアノができるよりもずっとすごいわ』と言われた)

 

(二人のその言葉は…いつしか大きく太い楔に変わって、私の心を深く突き刺していた)

 

(夢を壊された私は…その時、分かってしまったの)

 

(マキは…夢なんて持っちゃいけないんだって)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレが雪穂を茶化していると…写真館の背景が違うものへと変化した)

 

亜里沙「今度は…ロボット?」

 

ツカサ(背景には青い蝶とその前に立つロボットが描かれていた)

 

ツカサ「…ファイズの世界か」

 

雪穂「ファイズ?」

 

ツカサ「あのロボットはオートバジン、バイクにも変形するファイズのサポートメカだ」

 

雪穂「いや、答えになってないんだけど…」

 

亜里沙「ファイズの世界にはどんな怪人がいるの?」

 

ツカサ(オレが口を開くよりも先に…ツバサが亜里沙の質問に答えた)

 

ツバサ「オルフェノクよ」

 

雪穂「オルフェノク?」

 

ツバサ「一度、命を落とした人間が覚醒して蘇ることで誕生する人類の進化形態…つまり元人間ってことよ」

 

亜里沙「元人間…」

 

ツバサ「オルフェノクになって蘇るには…二つのケースがあるわ」

 

雪穂「二つ?」

 

ツバサ「一つは事件や事故で、普通に命を落とした人間が自然に覚醒する『オリジナル』…これはごく稀なケースよ」

 

亜里沙「じゃあ、もう一つは…?」

 

ツバサ「もう一つの方は…『使徒再生』という方法で覚醒させるの」

 

雪穂「使徒再生?」

 

ツバサ「オルフェノクが触手や武器を使って人間の心臓を貫く方法よ」

 

亜里沙「ひっ…」

 

雪穂「し、心臓って…!」

 

ツバサ「オルフェノクは主にこの方法で仲間を増やしているわ…大抵の人間はただの灰になってしまうけれど、ね」

 

雪穂「そんな…それじゃ、ただ人を襲ってるのと何も変わらないじゃないですか!」

 

ツカサ「だからこそ倒すんだ…」

 

ツバサ「そう、そのオルフェノクを倒すのが…スマートブレインが製造したベルトよ」

 

雪穂「スマートブレイン?」

 

ツバサ「家電から食品、色んな事業に手を出してる大企業よ」

 

亜里沙「そんな会社があるんだ…」

 

ツバサ「スマートブレインは…秘密裏にオルフェノクに対抗できるライダーズギアを次々と開発していたの」

 

ツカサ「まあ、けっこう胡散臭い企業らしいがな…」

 

亜里沙「それで…私たちはこの世界で何をすればいいの?」

 

ツバサ「そうね、とりあえず…これを」

 

ツカサ(ツバサは近くにあった段ボールを取り出し、中に入っていた学校の制服と鞄と学生手帳を雪穂と亜里沙に渡した)

 

雪穂「…何ですか、これ?」

 

ツバサ「スマートブレインは…学校も経営しているの」

 

雪穂「えっ…学校もあるんですか?」

 

ツバサ「そうよ、だからあなた達にはそこへ潜入して…学校にいるμ'sメンバーに接触してほしいの」

 

亜里沙「ハラショー…」キラキラ

 

雪穂「…どうしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「これを着て学校に行くんだ…楽しみだなぁ」

 

雪穂「う…うん、そうだね」

 

ツバサ「既に編入手続きは済ませてあるわ…制服もサイズもぴったりだと思うし」

 

雪穂「えっ?ツバサさん、いつの間に私達のサイズを…」

 

ツバサ「…さて、私はこれからちょっと用事があるから後はよろしく頼むわね?」クルッ

 

雪穂「ちょっ…ツバサさん!?」

 

スタスタ…バタン

 

ツカサ(そう言ってツバサは…写真館を後にした)

 

雪穂「に、逃げた…」

 

ツカサ「…おい」

 

雪穂「何?」

 

ツカサ「オレの制服がないんだが…」

 

雪穂「えっ…いや、そんなこと言われても」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァ

 

雪穂「明日の朝、写真館の外に出たらいつの間にか着てるってこともあるんじゃない?」

 

雪穂「前みたいにさ…半分冗談だけど」

 

ツカサ「…なるほど、だいたいわかった」

 

雪穂「えっ?いや、半分冗談だって…」

 

ツカサ「そんな冗談みたいな事があるかもしれないだろ…それなら、とりあえずオレは明日に備えて寝る」スタスタ

 

亜里沙「おやすみツカサ!」

 

ツカサ「ああ、おやすみ」ガチャ

 

ツカサ(オレは自分の部屋に戻り、休む事にした)

 

バタン

 

雪穂「えぇ…それで良いのかなぁ?」

 

亜里沙「雪穂、学校楽しみだね!」ワクワク

 

雪穂「あ、うん…そうだね」

 

亜里沙「高校かぁ…」キラキラ

 

雪穂「…それにしてもツバサさん、どうやって私達が高校に入れるようにしたんだろう?」

 

 

 

ツバサ(私はスマートブレインハイスクールの校舎の屋上にいた)

 

ツバサ(夜も深まってきたこの時間…私は、ある人物が来るのを待っていた)

 

ツバサ「そろそろ来る頃かしらね…あら、噂をすれば」

 

ツバサ(校庭に一人の外国人の少女と警備員が話しているのが屋上から見えた)

 

少女「ワタシ、チャコ…」

 

チャコ「ワタシ、コノガッコウハイレナカッタ…ダッテワタシ」

 

クロコダイルオルフェノク「オルフェノクダカラ」

 

ツバサ(外国人の少女がクロコダイルオルフェノクに姿を変え…逃げようとする警備員を襲おうとしたその時だった)

 

『Complete』

 

ツバサ(身体のフォトンブラッドを赤く光らせたファイズが…クロコダイルオルフェノクの後ろにいた)

 

クロコダイルO「ファイズ…!アナタ、マタワタシノジャマヲ!」

 

ファイズ「…」

 

クロコダイルO「ユルサナイ…ウワァァァァァ!!」

 

ツバサ(剣を持って向かっていくクロコダイルオルフェノクに対し、ファイズはファイズフォンを取り出し『106』を入力した)

 

ツバサ(その直後、ファイズはファイズフォンを銃の形に変えて…アンテナをクロコダイルオルフェノクに向けて発砲した)

 

ガガガッ!

 

クロコダイルO「ウグッ…」

 

ガガガッ!

 

クロコダイルO「ウアッ…」

 

ツバサ(次にファイズは…左腰からカメラ型の武器『ファイズショット』を取り出した)

 

『Ready』

 

ツバサ(ファイズはファイズショットにファイズフォンのミッションメモリーをセットし、起動させる)

 

『Exceed Charge』

 

ツバサ(それからファイズフォンをドライバーに戻したファイズは…ENTERキーを押した)

 

クロコダイルO「グッ…オノレェェェ!!」ダッ

 

ツバサ(エネルギーをベルトから右手に集中させたファイズは剣を避けると…すぐさまクロコダイルオルフェノクの腹部を殴りつけた)

 

クロコダイルO「グウッ…アッ」サアァ…

 

ツバサ(クロコダイルオルフェノクの身体に青い炎と『Φ』の記号が浮き出ると…そのまま身体は灰化し、崩れ去っていった)

 

ファイズ「…」

 

ツバサ「これは…一筋縄じゃいかなそうね」

 

ツバサ(ファイズの戦いの様子を見て、私は学校を後にした…)

 

 

 

ツカサ「…行くぞ」

 

ツカサ(オレ達はスマートブレインハイスクールの制服を着て、学校への通学路を歩いていた)

 

雪穂「本当に着てるし…」

 

亜里沙「良かったねツカサ!」

 

ツカサ「ああ、しかし…オレというヤツは何を着ても似合ってしまうな」

 

雪穂「はいはい…」ハァ

 

ツカサ(オレは制服から『スマートパッド』という電子型の学生手帳を取り出し、自分の名前を確認する)

 

ツカサ「『乾 ツカサ』…か」

 

亜里沙「ツカサの学生手帳、私たちのと違う…良いなぁ」

 

ツカサ「『特待生専用手帳』と書かれているな…どうやら、この学校でのオレは特待生扱いらしい」

 

雪穂「そういえば、いつも名字変わるよね…何でなの?」

 

ツカサ「さあな…そこまではオレにもさっぱりだ」

 

亜里沙「もうすぐ学校…楽しみだなぁ~」ワクワク

 

雪穂「亜里沙、遊びに行くわけじゃないんだよ…?」

 

ブロロロ…キキッ

 

ツカサ(オレ達がそんなやりとりをしていると…一台の車が近くで止まった)

 

ツカサ「…ん?」

 

ツカサ(すると止まった車の後部座席から…赤い髪の少女が降りてきた)

 

雪穂「あれ、あの人って…」

 

亜里沙「真姫さん?」

 

マキ「それじゃパパ…行ってきます」チュッ

 

ツカサ(マキは運転席にいる父親と思われる男性の頬にキスをして、車のドアを閉めた)

 

バタン!ブロロロ…

 

マキ「ふぅ…ん?」クルッ

 

ツカサ(髪の毛をくるくる回して弄りながら車を見送ったマキは…オレ達に気付いたのか、振り返ってきた)

 

ツカサ「これはまた…大胆だな」

 

雪穂「キ、キキキ…///」

 

亜里沙「ハラショー…///」

 

マキ「…!?」カアァ

 

ツカサ(状況を理解したマキは…赤面しながら、こちらに向かってきた)

 

マキ「ちょ…ちょっとあなた達!?」スタスタ

 

ツカサ「何だ?」

 

マキ「そ、その…見たの?///」

 

雪穂「あっ!?いや、私達は何も…」アタフタ

 

ツカサ「熱烈なキスだったな」

 

雪穂「ちょっとツカサ!?」

 

亜里沙「私、さすがに今のをおばあさまやお姉ちゃんにするのは恥ずかしいかな…」

 

雪穂「亜里沙まで何言ってるの!?」

 

マキ「あっ…あなた達ねぇ!///」ワナワナ

 

ツカサ「しかし、高校生にもなってまだ車で送ってもらって登校してきているのか…随分と良い身分なんだな?」

 

マキ「な、何ですって!?あなたには関係ないでしょ!」

 

ツカサ「確かに関係はないな」

 

マキ「それなら何で…!」

 

ツカサ「理由は簡単だ…オレはそういうタイプの金持ちが気に入らない」

 

マキ「何よその理由!?イミわかんない!」

 

ツカサ「分からなくて結構だ、とにかくオレはアンタが気に入らない」

 

ツカサ「文句を言われたくなかったら…一度は自転車でも良いから、自分の力で登校してみたらどうだ?」

 

マキ「えぇっ!?何で私が…」

 

ツカサ「どうした、まさか…自転車に乗れないのか?」

 

マキ「うっ…の、乗れるに決まってるでしょ!?この私に出来ないことなんてないんだから!」

 

ツカサ「なら…是非とも見せてほしいもんだな、アンタが自転車に乗って登校する姿を」

 

マキ「ぐっ…良いわ、そんなに見たいなら次に登校する時に見せてあげるわ!」

 

マキ「その代わり、今のは他の誰にも言っちゃダメなんだからね!?」

 

ツカサ「良いだろう、だがもし乗れなかったらその時は…分かってるな?」

 

マキ「の…望むところよ!」

 

ツカサ「よし、じゃあ約束だ」

 

マキ「ううっ…覚えてなさいよ!」ダダッ

 

ツカサ(マキは背を向けると、学校まで一気に走っていった)

 

雪穂「…」

 

ツカサ「よし」

 

雪穂「いや、どこが!?」

 

ツカサ「どこがって…全部に決まってるだろ」

 

雪穂「むしろ逆だよ!?思いきりマキさん怒らせてるじゃん!ファイズについても聞けなかったし…」

 

ツカサ「今はこれで良いんだ…こういう学園モノは最悪の出会いから友情が始まるって漫画やドラマでも言うしな」

 

雪穂「マンガやドラマの受け売りなの!?そんなので仲良くなれるわけないじゃん!」

 

亜里沙「雪穂、どうどう…」

 

雪穂「馬じゃないから!」

 

キーンコーンカーンコーン

 

ツカサ「さて、急がないと遅刻だ…行くぞ」ダダッ

 

亜里沙「あっ、待ってツカサ!」ダッ

 

雪穂「ちょっと、まだ話終わってないんだけど!?」ダッ

 

ツカサ(急いでオレ達は…スマートブレインハイスクールに登校した)

 

 

 

ツカサ(昼休憩になり…オレ達は校庭を歩いていた)

 

亜里沙「授業、難しかったね…」

 

雪穂「そりゃそうだよ…まだ私達、中学生なんだし」

 

亜里沙「ツカサはどうだった?」

 

ツカサ「ああ…だいたいわかった」

 

雪穂「それ、絶対に分かってないよね…?」

 

亜里沙「お昼休みになったけど…ツカサはこれからどうするの?」

 

ツカサ「もちろんもう一度、マキと話すつもりだ」

 

雪穂「えぇ…あんなに怒らせといて?」

 

ツカサ「良くも悪くも、最初に会った時のイメージを強く印象付けるのは大事だからな…」

 

亜里沙「そういえば授業中は全然会えなかったね…マキさん、違うクラスだったのかな?」

 

ツカサ「おそらくそうだろうな…とりあえず、学校中を探せばどこかにはいるだろ」

 

雪穂「でも、この学校広いから休憩中に見つかるかなぁ…ん?」

 

ツカサ(どこかから少女の歌声が聞こえ…オレ達は立ち止まった)

 

?「~♪」

 

ツカサ「この曲、どこかで聞いた覚えが…」

 

亜里沙「μ'sの『愛してるばんざーい!』だ!」ダダッ

 

雪穂「あっ…待ってよ、亜里沙!」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」

 

ツカサ(オレと雪穂は先に走って行った亜里沙を追いかけた)

 

ツカサ(しかし…その途中で亜里沙が急に立ち止まった)

 

亜里沙「…!」ピタッ

 

雪穂「危なっ!?」

 

ツカサ「!?」

 

ゴンッ!

 

ツカサ(止まりきれなかったオレは雪穂とぶつかってしまった)

 

ツカサ「痛っ…!」

 

雪穂「あいたた…どうしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「…」

 

ツカサ「…ん?」

 

ツカサ(歌っていたのはマキではなく…人の良さそうな丸顔に明るい色のミディアムヘアで活発そうな雰囲気の少女だった)

 

ツカサ(その少女はすぐそばに置いていたCDラジカセで、音楽をかけて歌っていた)

 

ツカサ(音楽が終わると…少女はオレ達に気付いて振り返った)

 

?「…?」クルッ

 

亜里沙「ハラショー!」パチパチパチ

 

?「へっ?あ、あの…」

 

雪穂「あっ、すみません!良い歌だったからつい…」

 

?「えっ…ほ、本当に?」

 

亜里沙「はい、すっごく素敵でした!」

 

?「そっか…ありがとう、嬉しいなぁ」

 

ツカサ(少女はどこかのほほんとした感じの喋り方をしていた)

 

亜里沙「私、絢瀬亜里沙!こっちは友達の雪穂とツカサで…あなたの名前は?」

 

マコ「あっ…私、マコっていいます」

 

ツカサ「マコ?」

 

マコ「はい…キクチマコです」

 

生徒A「あっ、ラッキークローバー!」

 

生徒B「ラッキークローバーだ!」

 

マコ「あっ…!」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレ達の後ろから…男三人と女一人の生徒が現れ、マコの前に立った)

 

雪穂「ラッキー…クローバー?」

 

生徒C「知らないの?冷静沈着なリーダーのモモセ様、無邪気で可愛らしいキタザキ様、インテリ系で知性溢れるタクマ様…」

 

生徒C「三人で活動しているスマートブレインハイスクールの男子スクールアイドルよ」

 

亜里沙「えっ…男子スクールアイドル!?」

 

雪穂「もう一人のあの女性は…?」

 

生徒D「マネージャーのカゲヤマ様…一人で三人のマネジメントをこなす敏腕マネージャーよ」

 

ツカサ「さしづめ、学園の人気アイドルってとこか…」

 

雪穂「いや、そりゃスクールアイドルだからね…」

 

ツカサ(オレ達がそんなやりとりをしていると…中性っぽい見た目に手袋をした男子生徒がマコに話しかけた)

 

手袋をした男子「ヤダなぁ~、君…ここは僕達の練習場所なんだけど?」

 

マコ「キタザキさん…」

 

ツカサ(続いて…眼鏡をかけた男子生徒もマコを責め始めた)

 

眼鏡の男子「この場所はラッキークローバーのものです、誰の許可を得てこの場所を使用しているのですか?」

 

マコ「タクマさん…でも私、ここがラッキークローバーの練習場所だなんて知らなくて」

 

カゲヤマ「下手な嘘」

 

マコ「カゲヤマさん…?」

 

カゲヤマ「あなた、スクールアイドルになりたいんだったわね?」

 

ツカサ「!」

 

カゲヤマ「彼らに憧れて、同じ練習場所を使いたかったのならそう言えば良いのに…」

 

マコ「…いや、私は憧れてるとかそういうのじゃなくて!」

 

カゲヤマ「…」キッ

 

ツカサ(カゲヤマはマコの言葉が気に入らなかったのか、強く睨みつけた)

 

マコ「あっ、その…」

 

キタザキ「へぇ~、僕達に楯突くんだ…」

 

ツカサ(キタザキはCDラジカセを片手で軽く持ち上げた)

 

マコ「あっ、待ってください!それは大事なCDが…」

 

キタザキ「イヤだね」ブンッ

 

ツカサ「…よっと!」パシッ

 

ツカサ(キタザキがCDラジカセを投げようとする方向を見て、予め落ちる場所を予測していたオレは…CDラジカセをキャッチした)

 

キタザキ「…へぇ?」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「せっかく良い曲が入ってるんだ…あんまり乱暴な事をするな」

 

タクマ「何ですか、あなた?」

 

ツカサ「残念だがお前達に名乗るほど…オレは暇じゃない」

 

キタザキ「ふぅ~ん…君、まさか僕達に逆らう気?」

 

ツカサ「逆らう?馬鹿言うな…オレは最初から、お前達に従うつもりはない」

 

カゲヤマ「あなた…!」

 

?「ちょっと、そこをどいて!」

 

ツカサ(群衆をかき分けてマコとラッキークローバーの間に入ってきたのは…マキともう一人の少女だった)

 

マキ「マコちゃん!」

 

マコ「あっ…マキちゃん、サヤちゃん」

 

マキ「大丈夫?」

 

マコ「うん、私は大丈夫…」

 

マキ「…」キッ

 

ツカサ(マキはラッキークローバーの全員を強く睨んだ)

 

マキ「…あの!これ以上、この子にちょっかいかけるのはやめてもらえませんか?」

 

カゲヤマ「違うわ…この子が私達に逆らってきたのよ?」

 

マキ「またそんなことを…!」

 

カゲヤマ「でも、良いわ…西木野総合病院の跡取り娘であるあなたに免じて、今回は許してあげる」

 

カゲヤマ「西木野総合病院には…私達もお世話になってるし、ね?」

 

マキ「…」

 

ツカサ(ここで…それまで黙っていたラッキークローバーのリーダーらしき男子生徒が一言だけ喋った)

 

?「…行こう」

 

カゲヤマ「ええ…モモセくん」

 

キタザキ「何だ、つまんないなぁ~」

 

タクマ「…」

 

ツカサ(ラッキークローバーの面々は…校舎の中へと入っていった)

 

マコ「あ、ありがとう…いつもごめんね?」

 

マキ「良いのよ、これくらい…気にしないで」

 

マコ「それと…ツカサくんも!」

 

マキ「えっ…?」クルッ

 

ツカサ(マキは…CDラジカセを抱えたオレと目が合った)

 

マキ「えぇっ!?」

 

ツカサ「…」

 

 

 

ツカサ(オレ達は食堂で学食を食べながら、マキ達と話す事になった)

 

マコ「紹介するね…私の友達のマキちゃんとサヤちゃん!」

 

マキ「…」ムスッ

 

サヤ「…」ペコッ

 

ツカサ(明らかに不機嫌なマキの隣には…両目を長い前髪で隠した引っ込み思案な感じの少女がオレ達に軽く頭を下げた)

 

亜里沙「よろしく!」

 

雪穂「よ、よろしくお願いします…」

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ツカサ(オレはカメラのレンズをマキに向けて…シャッターを切った)

 

マキ「撮らないで!」

 

ツカサ「そうか、別にオレは気にしていないんだが…」

 

マキ「私が気にするんだけど!?」

 

マキ「はぁ…私、やっぱり教室で食べるわ」ガタッ

 

マコ「あっ、待ってよマキちゃん!」

 

ツカサ「何だ、そんなにオレが嫌いか?」

 

マキ「当たり前でしょ…あなた、自分が何をしたのか分かってるの?」

 

マキ「私もあなたが気に入らない、それであなたを嫌いになる理由は十分よ…何か文句ある?」

 

ツカサ「なるほど…お互い気が合うみたいだな」

 

雪穂「…ツカサ、いい加減にしないと私も怒るよ?」ゴゴゴ

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(身の危険を感じたオレは、ひとまずマキに突っかかるのをやめる事にした)

 

雪穂「ごめんなさいマキさん、ツカサが変なことばかり言ってしまって…」

 

マコ「雪穂ちゃんが謝ることないよ!?私がみんなで食べようって言ったんだし…ごめんね、マキちゃん」

 

マキ「…べ、別にあなた達が謝ることじゃないわよ」クルクル

 

ツカサ(マキは髪の毛をくるくる弄りながら座り直すと…食堂の名物と言われている鍋焼きうどんを食べようとしていた)

 

マキ「…」フーフー

 

マコ「あの…さっきは助けてくれてありがとうね」

 

ツカサ「礼には及ばないさ…それに、スクールアイドルになりたいんだろ?」

 

マコ「えっ?…あっ、うん!」

 

ツカサ「オレはその夢を応援したくなったから助けただけだ、良い歌声も聴かせてもらったしな…」

 

マコ「えへへ、そんな…私なんかまだまだだよ?」

 

マコ「まだ始めたばかりだし、曲もマキちゃんに何曲か作ってもらっただけで…」ポリポリ

 

亜里沙「えっ、マキさんに…?」

 

マコ「うん!」

 

マキ「…何よ、悪い?」

 

亜里沙「ううん!やっぱりマキさんはスゴいなぁ…」

 

マキ「…///」フーフー

 

ツカサ「それと…さっきのラッキークローバーとかいう奴らが気にいらなかったからな」

 

マコ「あはは…でも、オルフェノクよりは良いかな?」

 

雪穂「オルフェノクのこと…知ってるんですか?」

 

マコ「うん、オルフェノクは人間のフリをしている怪物だって…学校でも話題になってるから」

 

亜里沙「そっか…」

 

サヤ「…」

 

マコ「もし近くでどこかの誰かがオルフェノクなのかもしれないって思うと…私は怖い、かな」

 

マキ「…」フーフー

 

ツカサ「…ん?」

 

ツカサ(マキはさっきからずっと鍋焼きうどんを冷まそうとしている様子だった)

 

ツカサ「アンタ、まさか…猫舌か?」

 

マキ「そうだけど…何よ?」

 

ツカサ「…いや、別に」

 

マキ「…」フーフー

 

マコ「…でも、そのオルフェノクもファイズが倒してくれるから良いんだけどね!」

 

雪穂「ファイズが…?」

 

マコ「うん、ファイズは闇を切り裂き…光をもたらしてくれるの!」

 

ツカサ「闇を切り裂き…光をもたらす?」

 

マコ「そう、ファイズはみんなの救世主なの!」

 

マキ「…」フーフー

 

マコ「私が中学生の時、火事に遭った校舎に取り残された私を助けてくれたのだって…姿は覚えてないけどきっと!」

 

マキ「はぁ…何言ってるのよ、マコちゃん?」

 

マコ「え?」

 

マキ「ファイズなんて…ただの噂よ」

 

マコ「でも、警備員さんが昨日の夜にオルフェノクに襲われそうになった時はファイズが助けてくれたって話してたし…」

 

マキ「そんなの嘘よ、都市伝説」

 

亜里沙「…マキさんがファイズじゃないの?」

 

雪穂「亜里沙!?」

 

マキ「イミわかんない…そんな訳ないじゃない、私は勉強で忙しいのよ?」

 

亜里沙「えっ?でも…」

 

雪穂「ちょっと亜里沙…すみません、友達が変なこと聞いちゃって」

 

マキ「別に、気にしてないわ…」フーフー

 

ツカサ(オレはマキの話し方や挙動を見ていたが…彼女が嘘をついているようには見えなかった)

 

ツカサ(じゃあ、誰がファイズに変身しているんだ…?)

 

キーンコーンカーンコーン

 

マコ「あっ、もうすぐ昼休憩終わっちゃう…マキちゃん早く食べて!」

 

マキ「分かってる、分かってるから…あちちっ!」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(オレは放課後まで、ファイズの正体が誰かしばらく考えていたが…答えは出なかった)

 

 

 

ツカサ(放課後…オレは下校する雪穂や亜里沙と別れて校庭に向かっていた)

 

ツカサ(ラッキークローバーの奴らが…オレに勝負を挑んできたのだ)

 

ツカサ(オレが勝負に勝てば、マコに練習場所を明け渡すという約束だ)

 

ツカサ「…よう」

 

タクマ「まさか逃げずに来るとは…身の程知らずですね」

 

カゲヤマ「あなた、ダンスの経験は?」

 

ツカサ「どれぐらいやったか覚えてはないが…このオレに苦手なものはない」

 

ツカサ「写真を撮る事以外はな…」ボソッ

 

タクマ「…では、私が行きましょう」

 

ツカサ(オレはタクマとダンス勝負をする事になった)

 

ツカサ(オレは側転、バク宙、超高速ヘッドスピンなど様々な技を見せた)

 

キタザキ「へぇ~…あのダンス、只者じゃないね」

 

モモセ「…」

 

タクマ「この動き…ついて行けない!」ハァハァ

 

ツカサ「どうした、もう終わりか?」

 

ツカサ「だとしたら一人じゃ物足りないな…そっちが良ければ二人がかり、いや三人がかりでも構わないぞ?」

 

ツカサ(すると…キタザキがこんな事を言い出した)

 

キタザキ「ねぇ、君…もしかしてファイズなんじゃない?」

 

ツカサ「はぁ?何でそうなる…」

 

キタザキ「ヤダなぁ…そんなこと言っても、良いのかな?」

 

ツカサ(手袋を外したキタザキが近くのベンチに触れると…ベンチはすぐに灰化し、跡形もなく崩れ去ってしまった)

 

ツカサ「…!」

 

キタザキ「早く、正体を見せてよ…」

 

ツカサ(キタザキはドラゴンオルフェノク龍人態に変化した)

 

ツカサ「お前…オルフェノクだったのか!」

 

モモセ「…」

 

ツカサ(そして、キタザキがオルフェノクになっても驚かない他の三人を見て…オレはある事に気が付いた)

 

ツカサ「まさか、お前達も…?」

 

タクマ「…バレてしまっては、仕方がないですね」

 

カゲヤマ「ウフフッ…」

 

ツカサ(間違いない…ラッキークローバーは全員、オルフェノクだ)

 

ドラゴンO「ほら、早く答えないと…君も灰になっちゃうよ?」

 

ツカサ「灰か…悪いが、それは御免だな」

 

ツカサ(オレはディケイドライバーを腹部に装着し、一枚のカードを取り出した)

 

タクマ「あれは…ファイズのベルトではない?」

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(オレはディケイドに変身した)

 

カゲヤマ「ディケイドですって!?」

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「知ってるなら、話は早い…な!」ブンッ

 

ディケイド(オレはライドブッカーソードモードでドラゴンオルフェノクを斬ろうとするが…避けられてしまう)

 

ディケイド「何…?」

 

ドカッ!

 

ディケイド「うわっ!?」

 

ディケイド(高速で動き回るドラゴンオルフェノクは…連続で雷撃を纏った攻撃をオレに仕掛けてくる)

 

ドラゴンO「遅いよ、君」ガスッ!

 

ディケイド「うぐっ…だったらこれだ!」

 

ディケイド(オレは攻撃を受けながらも…何とか一枚のカードを取り出し、ベルトに装填した)

 

ディケイド「ウミ…借りるぞ」

 

『カメンライド…ブレイド!』

 

DCDブレイド(ブレイドにカメンライドしたオレは…更に一枚のカードを取り出した)

 

ドラゴンO「へぇ…君、違う姿になれるんだ」

 

DCDブレイド「まだまだ、こんなもんじゃないぜ?」

 

『フォームライド…ブレイド!ジャック!』

 

DCDブレイド(カードをベルトに入れるとマスクとアーマーが金色に輝き…胸部にイーグルアンデッドの紋章、背中には翼が出現した)

 

DCDブレイド「はっ!」バサッ

 

DCDブレイド(ジャックフォームになったオレは…ドラゴンオルフェノクの攻撃が届かない空中に飛び上がった)

 

ドラゴンO「ふぅ~ん…飛べるんだ」

 

DCDブレイド(オレは三枚のカードを取り出し、そのうち一枚をディケイドライバーに装填する)

 

『アタックライド…タイム!』

 

DCDブレイド(その瞬間、時の流れが一時的に止まった)

 

DCDブレイド(ドラゴンオルフェノクも、他のラッキークローバーのメンバーの動きも止まっている)

 

DCDブレイド(時間が止まっている間にオレは…もう一枚、カードを装填する)

 

『アタックライド…マグネット!』

 

DCDブレイド(その直後…ドラゴンオルフェノクの身体が空中に浮かび上がり、オレの方に向かって飛んできた)

 

DCDブレイド「これで…仕留める!」

 

『ファイナルアタックライド…ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

 

DCDブレイド(オレは最後の一枚をベルトに入れ…電撃を纏ったライドブッカーソードモードでドラゴンオルフェノクを切り裂いた)

 

DCDブレイド「やあーっ!」

 

ドラゴンO「ウワァァァァ!」サアァ…

 

DCDブレイド(オレがドラゴンオルフェノクを倒した瞬間…タイムとマグネットの効果が切れた)

 

カゲヤマ「!?」

 

タクマ「キタザキさんがやられた…!」

 

DCDブレイド「これで一人倒したな…ん?」

 

DCDブレイド(オレはモモセがいなくなっている事に気が付いた)

 

DCDブレイド「アイツ、どこに行った?」

 

?「俺はここだ」

 

DCDブレイド(オレが声のする方を向くと…別のオルフェノクが灰化したはずのドラゴンオルフェノクを再生させていた)

 

タイガーオルフェノク「…」

 

DCDブレイド「オルフェノクに命を吹き込んだ…だと?」

 

ドラゴンオルフェノク「…ふざけるなよ」

 

DCDブレイド「!?…うわぁっ!」ガンッ

 

DCDブレイド(魔人態として再生したドラゴンオルフェノクは空中に飛び上がり、オレに強烈な一撃を与えてきた)

 

ディケイド(ドラゴンオルフェノクの攻撃を喰らったオレは、カメンライドの効果が切れ…地面に落下してしまった)

 

ディケイド「うっ…」ドサッ

 

ドラゴンO「終わりだよ」

 

タイガーO「…待て」

 

ドラゴンO「モモセくん…何のつもりなの?」

 

タイガーO「…我々の敵はファイズだ」

 

ドラゴンO「ハァ…はいはい」

 

タイガーO「ディケイド…どこから来たのかは知らないが、今のうちに消えてよ」

 

ディケイド「お前ら…この学園に潜り込んで何をするつもりだ?」

 

タイガーO「…オルフェノクは、やがて人類を支配する」

 

ディケイド(タイガーオルフェノクはそう言うと、オレに向けて手から光弾を放った)

 

ディケイド(光弾をまともに受けたオレは…ついに変身が解除されてしまった)

 

ツカサ「うぐっ…!」ゴロゴロ

 

ツカサ(タイガーオルフェノクの追撃に備えて、すぐにオレは起き上がったが…ラッキークローバーの四人の姿はもうなかった)

 

ツカサ「…いない?」

 

ツカサ(オレはしばらく、校庭で立ち尽くしていた…)

 

 

 

モモセ「キタザキ、あまり調子に乗らない方が良い…次はもうない」

 

キタザキ「…はいはい」

 

カゲヤマ「キタザキくん?」

 

キタザキ「は~い…」

 

タクマ「しかし、私達の仲間を消すファイズが彼じゃないとすれば一体…」

 

?「あの!」

 

モモセ「?」クルッ

 

?「私、ファイズの正体…知ってます」

 

タクマ「あなたは確か…」

 

?「実は昨日の夜、学校で落とし物を拾って…」

 

モモセ「昨日の夜…つまりそれはファイズの落とし物だと?」

 

?「はい、それが…このCDです」

 

モモセ「CD?まさか…」

 

?「そうです、ファイズの正体は…キクチマコです」

 

 

 

ガシャン!

 

マキ「いっ、たたたた…」

 

マキ(その夜、私は創才公園で自転車に乗る練習をしていた)

 

マキ(物置の奥から埃だらけになった空色で車輪の大きい昔風の自転車を出して、綺麗にするだけでも…私にはすごく大変だった)

 

マキ(もしかしたら数年前までお手伝いさんが使っていたかもしれないけど…今はもう、誰の物かも分からない古い自転車)

 

マキ(小学生の頃に私が何回かチャレンジした時は、結局諦めてやめちゃったけど…)

 

マキ(彼…ツカサっていう男の子にあんな風に言われてしまった今の私は、何が何でも練習しない訳にはいかなかった)

 

マキ「よし、もう一回…」

 

マキ(乗り方は分かってるの…身体を真っ直ぐにして、前を見ながら焦らないように落ち着いて構える)

 

マキ(ネットで調べて参考にした『大人になってからでも乗れる!自転車の操縦法』…これで、私も乗られるようになるはずよ)

 

マキ(思いきり足を蹴って重心は真っ直ぐ、足は曲げ過ぎないでフラついても慌てずに体勢を保てば自転車は慣性の法則で必ず…)

 

マキ「真っ直ぐに走る、はずぅ…って!?」グラッ

 

マキ「きゃあぁぁぁぁぁ!?ちょっと待って、止まって!」フラフラッ…

 

ガッシャーン!

 

マキ(派手な音を立てて倒れた自転車…私はすんでのところで飛び降りたけど、膝を擦りむいてしまった)

 

マキ「もう、これで何度目よ…っ!」ズキッ

 

マキ(こんなことになるならばんそうこうを持ってくれば良かった…と、私が思っていたその時だった)

 

?「マキちゃん、これ!」

 

マキ「え、あっ…誰!?ってきゃあっ!!」

 

マキ(突然のことに驚いた私は…思わず仰け反ってしまった)

 

?「あっ…ビックリさせちゃってごめんね」

 

マキ「マ、マコちゃん?」

 

マコ「あはは…実はここでもダンスの練習しててね、たまにケガしたりもするからばんそうこうはいつも持ってきてるんだ」ニコッ

 

マキ(優しく微笑むマコちゃんを見て…私は喉の奥が詰まってしまった)

 

マキ「あっ、えっと…」

 

 

 

マキ(私とマコちゃんは公園のベンチに座って、ホットの缶コーヒーを飲んでいた)

 

マキ「…」フーフー

 

マキ「今の…見た、わよね?」

 

マコ「うん、ばっちり…ごめんね?」エヘヘ

 

マキ(マコちゃんにバレてしまって…私は落ち込んでいた)

 

マキ「驚いたでしょ…私が自転車に乗れないなんて」

 

マコ「へっ?」

 

マキ「今まで乗るきっかけがなかったから、特に練習とかしないできちゃって…それにほら、見て」

 

マコ「…」

 

マキ「ヒドいでしょ、この自転車…十年も前のママチャリなの」

 

マコ「…そうなんだ」

 

マキ「あっ…でもこれ、私のじゃないのよ?」

 

マキ「これはたまたま家の物置にあった古い自転車で…」

 

マコ「マキちゃんってやっぱり…すごいなぁ」

 

マキ「えっ?」

 

マコ「あともう少しで乗れそうだね」

 

マキ「…イミわかんない」

 

マコ「…」フフッ

 

マキ「もう少しで乗れそうってそんな訳…」

 

マキ(そう言いかけた所で、私は何だか胸が詰まって…続きが言えなくなってしまった)

 

マキ(ねぇ…マコちゃん、あなたはどうしてそんな風に優しく微笑んでくれるの?)

 

マコ「あっ…そういえばマキちゃん、さっきのケガは大丈夫?」

 

マキ「…ええ、もう平気よ」

 

マコ「そっか…良かったぁ」ホッ

 

マキ(マコちゃんは…その優しい笑顔で、いつも私に自信をくれる)

 

マキ(それは…私には到底、出来ないことだ)

 

マキ「ねぇ…マコちゃんはいつ頃、自転車に乗れるようになったの?」

 

マコ「私?うーん、実はね…私もすっごく遅かったの」

 

マキ「えっ…そうなの?」

 

マコ「うん!幼稚園の時から何年も練習してたんだけど…なかなか乗れなくて、やっと乗れたのが小学四年生の時だったかな」

 

マコ「それまでは…補助輪ついてるのに、転んでたりしてたんだよ?」

 

マキ「えっ、補助輪ついてるのに…?」

 

マコ「うん…逆にスゴいでしょ?」エヘヘ

 

マキ「…確かに、そうかも」フフッ

 

マコ「じゃあ…せっかくだし私が教えようかな、マキちゃんが自転車に乗れるように!」

 

マキ「マコちゃん…良いの?」

 

マコ「うん!」

 

マキ「本当に?」

 

マコ「気にしないで…私だって、いつもマキちゃんには助けてもらってばかりなんだから!」

 

マキ「…!」

 

 

 

ツカサ(その頃、オレは写真館で雪穂達と話していた)

 

雪穂「それにしても、マキさんがファイズじゃなかったなんて…」

 

亜里沙「じゃあ、誰がファイズなんだろう…?」

 

ツカサ「それは…今、調べている途中だ」

 

雪穂「ラッキークローバーがみんな、オルフェノクだったことにも驚いたし…」

 

亜里沙「帰ってから調べてみたんだけど…あの人たち、一回もライブしたことないみたい」

 

ツカサ「はぁ!?」

 

雪穂「そうだったの!?」

 

亜里沙「…うん」

 

ツカサ「スクールアイドルっていうの肩書きと格好だけか…奴ら、ふざけてるな」

 

亜里沙「マジメにスクールアイドルになろうとするマコさんをイジめてるし…私、あの人たちのこと苦手かも」

 

ツカサ「そう思うのも当然だ…何であんなスクールアイドルをナメきった下の下の奴らに人気があるのか、理解できないな」

 

雪穂「本当、そうだよね…ところで『下の下』って何?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「えっ…スルー?」

 

~♪

 

亜里沙「…この音は?」

 

ツカサ「オレの携帯だ…誰からだ?」

 

ツカサ(オレはその電話に出た)

 

ツカサ「もしもし…?」

 

?「今から創才公園にあなただけで来て…見せたいものがあるの」

 

ブツッ

 

ツカサ「…切れた」

 

雪穂「今の声って…ツバサさんじゃなかった?」

 

亜里沙「ツカサに見せたいものがあるって言ってたね…」

 

ツカサ「何なんだ、いきなり…とりあえず行ってくるか」ハァ

 

亜里沙「行ってらっしゃい、ツカサ!」

 

雪穂「…気をつけてね」

 

ツカサ「ああ」

 

ツカサ(オレは写真館を出て、創才公園に向かった)

 

 

 

マキ(その後、私はマコちゃんから『一度バランスがとれれば後は簡単』という最終奥義を教えてくれた)

 

マキ(けっこう苦戦していたけど、次第にブレなくなって…揺れなくもなって)

 

マキ(まだまだ不安定だけど…何とか、真っ直ぐに公園のグラウンドを走れるようにはなった)

 

マコ「スゴい…スゴいよ、マキちゃん!」

 

マキ「やった…マコちゃん、ありがとう」フフッ

 

マコ「どういたしまして」エヘヘ

 

マキ(二人で笑い合っていると…ある人達がマコちゃんに声をかけてきた)

 

キタザキ「見~つけたっ」

 

マコ「ラッキー、クローバー…?」

 

カゲヤマ「これ、あなたのものでしょ?」

 

マキ(ラッキークローバーのマネージャーは…私がマコちゃんに渡したはずのCDを見せてきた)

 

マコ「それは…いつの間にか無くなってた新曲のCD!?」

 

タクマ「あなたなんでしょう?ファイズの正体は…」

 

マコ「えっ、何のこと…?」

 

カゲヤマ「とぼけないで」

 

マキ(次の瞬間…三人は全員、オルフェノクに変化した)

 

ロブスターオルフェノク「こうなったら、力ずくで吐かせるしかないわね」

 

センチピードオルフェノク「覚悟してください」

 

ドラゴンO「フフフ…」

 

マコ「オ、オルフェノク!?」

 

マキ「!…マコちゃん、ここは私に任せてあなただけでも逃げて」

 

マコ「ダメだよ、マキちゃんを置いて逃げるなんて…そんなこと出来ないよ!」

 

マキ「…そうよね」

 

マキ(私達が三体のオルフェノクに囲まれていた…その時だった)

 

?「そこまでよ」

 

センチピードO「あなたは…」

 

サヤ「…」

 

マコ「サヤちゃん?」

 

マキ「サヤ!?」

 

マキ(お腹に大きなベルトを巻いたサヤは…左手で持っていた携帯電話に『5』のキーを三回押した後に『ENTER』キーを押した)

 

『Standing By』

 

サヤ「…変身」

 

『Complete』

 

マキ(携帯電話をベルトに差し込んだサヤは…赤い光に包まれながら、仮面の戦士に変身した)

 

ファイズ「…」

 

マコ「サヤちゃんが…」

 

センチピードO「ファイズ!?」

 

ロブスターO「そう、あなただったのね…」

 

ファイズ「…!」ダッ

 

マキ(ファイズは…三体のオルフェノクに向かっていった)

 

 

 

ツカサ(創才公園にやってきたオレは…ファイズとオルフェノクの戦いを目の当たりにした)

 

ツカサ「これは一体…マキ、マコ!」ダッ

 

ツカサ(オレは近くにいたマキとマコのもとに駆け寄った)

 

マキ「あなたは…」

 

ツカサ「あのファイズは…?」

 

マコ「…サヤちゃん、だったの」

 

ツカサ「サヤが…?」

 

ツカサ(驚いた、まさか彼女がファイズになってオルフェノクを倒していたとは…)

 

ツカサ(だが…三人のラッキークローバーとの戦いは、明らかに一人で戦うファイズの方が不利だった)

 

ツカサ(センチピードオルフェノクが鞭、ロブスターオルフェノクがサーベルを使って…徐々にファイズに追い詰めていく)

 

ファイズ「グッ…!」

 

ロブスターO「あらあら、どうしたの?」

 

センチピードO「その程度ですか…ファイズ」

 

ツカサ「させるか!」ダッ

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

マコ「ツカサくんも変身した!?」

 

マキ「…!」

 

ディケイド(変身したオレはファイズのもとへ駆け寄ろうとするが…)

 

ドラゴンO「…君の相手は僕だよ」

 

ディケイド「なっ…邪魔をするな!」

 

ディケイド(ドラゴンオルフェノクがオレの行く手を阻む)

 

ファイズ「!…ウワッ!?」

 

ディケイド(二体のオルフェノクの連携で、ファイズドライバーとファイズの身体が分離し…ファイズはサヤに戻ってしまった)

 

サヤ「ウッ…」ドサッ

 

マコ「サヤちゃん!」

 

ロブスターO「哀れね…これで終わりよ」

 

ディケイド(ロブスターオルフェノクのサーベルがサヤの身体を貫こうとした時…タイガーオルフェノクが間に割って入ってきた)

 

タイガーO「…待て」

 

ロブスターO「あら、モモセくん」

 

タイガーO「サワダサヤ…君の本当の狙いは我々ではなく、キクチマコだろう?」

 

マコ「…えっ?」

 

サヤ「…」

 

タイガーO「君は我々に負けた…早く彼女を連れて、消えてよ」

 

サヤ「…ッ!」ダッ

 

ディケイド(タイガーオルフェノクに睨まれ、圧倒されたサヤはマコのもとへ走って行く)

 

ディケイド「くっ…そこをどけ!」

 

ドラゴンO「どかない」

 

サヤ「…」

 

マコ「サヤちゃんが…ファイズだったなんて」

 

マキ「…マコちゃん、サヤから離れて」

 

マコ「へっ?」

 

サヤ「マコちゃん…あなたは私のことを助けてくれた」

 

サヤ「だから今度は…私があなたを助ける番だよ」

 

ディケイド(サヤは不気味に笑うと…今度はスパイダーオルフェノクに変化した)

 

マキ「!」

 

マコ「ウソ…サヤちゃんが、オルフェノク?」

 

スパイダーO「マコちゃん、おいで…私と一緒に二人だけの世界を作ろう?」

 

マキ「待って!」

 

スパイダーO「…どいて」

 

ディケイド(スパイダーオルフェノクは糸をマキに吐いて巻き付け、マキの動きを止めた)

 

マキ「うっ…!」ドサッ

 

マコ「マキちゃん!?」

 

ディケイド「マキ!」

 

ドラゴンO「イヤだなぁ…よそ見しないでよ」ドガッ!

 

ディケイド(ドラゴンオルフェノクの一撃がオレに重くのしかかる)

 

ディケイド「うわっ!」

 

スパイダーO「ねぇ、一緒に生きよう…?」

 

マコ「…いや」

 

スパイダーO「私達だけの…二人だけの世界で」

 

マコ「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

マキ「マコちゃん!」

 

ディケイド(突然、マキの身体が光り出すと…マキはスパイダーオルフェノクの糸を引きちぎった)

 

マキ「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

ディケイド「まさか…!」

 

ディケイド(なんとマキは…ウルフオルフェノクに変化した)

 

ウルフO「…」

 

マコ「マキちゃん…!?」

 

スパイダーO「…あなたもオルフェノクだったのね」

 

ウルフO「今はそんなこと…どうだっていいわ」

 

ウルフO「マコちゃんから、離れて!」ダッ

 

ディケイド(ウルフオルフェノクはマコを守る為に…スパイダーオルフェノクと激しい戦闘を繰り広げようとしていた)

 

ウルフO「はっ!」ガッ!

 

スパイダーO「…ヤァッ!」ゴッ!

 

ディケイド(その隙にセンチピードオルフェノクが転がっていたファイズドライバーを回収しようとしていた)

 

センチピードO「ファイズドライバーは…今から私のものです」

 

?「あら、それはどうかしらね?」

 

センチピードO「!?」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ガガガッ!

 

ディケイド(センチピードオルフェノクを攻撃していたのは…ディエンドだった)

 

センチピードO「ウグッ!」

 

ディケイド(ディエンドはファイズドライバーを拾うと、こう言った)

 

ディエンド「これは大切なものなの…あなた達みたいな野蛮なオルフェノクに渡すつもりはないわ」

 

ロブスターO「あなた…!」

 

ディエンド「はっ!」ガガッ!

 

ディケイド(ディエンドはロブスターオルフェノクやドラゴンオルフェノクにも発砲し、オレに近づく)

 

ディエンド「さて…今のうちに逃げましょう?」

 

ディケイド「はぁ!?」

 

ディエンド「ファイズギアがこっちの手にあれば…いつでも反撃できるわ」

 

ディケイド「それどころじゃないだろ!?」

 

ディエンド「それどころだから言ってるのよ…他は私だけでも何とかなるけど、あのタイガーオルフェノクは強敵よ?」

 

ディケイド「しかし、マキが…」

 

キャー!

 

ディケイド「!?」クルッ

 

ディケイド(オレが振り向くと、ウルフオルフェノクは倒れ…マキに戻っていた)

 

マキ「ぐっ…」

 

ディケイド「マキ!」

 

マコ「助けて…助けて!」

 

スパイダーO「マコちゃん、もう離さないからね…ハッ!」

 

ディケイド(スパイダーオルフェノクはマコを捕まえて、どこかに行ってしまった)

 

イヤァァァ…

 

ディケイド「マコ!」

 

ディケイド(オレはマコを追おうとするが、四体のオルフェノクが行く手を阻んでいる為に追う事は出来なかった…)




Open your eyes for the next μ's!

「もうファイズはいない…オルフェノクの力を思い知らせる」

「マキはただ…自分にとって大切なものを守ろうとしただけだ!」

「スクールアイドル、頑張るんだって決めたから」

第11話『真の守り姫』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話『真の守り姫』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「…ファイズの世界か」

ツバサ「あなた達には…学校にいるμ'sメンバーに接触してほしいの」

雪穂「ラッキー…クローバー?」

タイガーオルフェノク「オルフェノクは、やがて人類を支配する」

亜里沙「マキさんがファイズじゃないの?」

マキ「イミ分かんない…」

サヤ「…変身」

スパイダーオルフェノク「一緒に生きよう?」

マコ「いやぁぁぁぁぁ!!」

ウルフオルフェノク「マコちゃんから、離れて!」


マキ(マコちゃんと初めて話したのは…中学三年のある夏の日のこと)

 

マコ「マキちゃんってスマートブレインハイスクールに行くって本当?」

 

マキ「うん、パ…」

 

マコ「…パ?」

 

マキ「その…父親に言われて仕方なく、なんだけど」

 

マコ「そうなんだ、じゃあ…私と一緒だね!」

 

マキ(マコちゃんはクラスで唯一、私のことを最初から名前で呼んでくれた)

 

マキ(話したのはそれが初めてのはずなのに、当たり前のように話しかけてきた彼女はどこか天然な感じで)

 

マキ(いつもクラスで少し遠巻きにされている私の立ち位置なんて、全く気がついていない様子だった)

 

マキ(そのせいか…今まで他人には興味がなかったはずの私は、思わず彼女にこう聞き返していた)

 

マキ「えっ、そうなの…?」

 

マコ「うん!私の家って小さいクリーニング屋さんだからあまりお金ないんだけど…お試しで試験受けたら合格しちゃって」エヘヘ

 

マキ「そう…」

 

マコ「高校でもよろしくね!」ニコッ

 

マキ「…ええ」フフッ

 

マキ(マコちゃんは無邪気で能天気で…いつもあまり考えてないように見えた)

 

マキ(成績もそんなに良い方じゃなかったみたいだし、クラスの中で目立つ方でもないみたいで…)

 

マキ(常に笑顔で、どこか不器用な所があって…損得とかに疎くて)

 

マキ(いつもクラスで人を遠ざけてた私に近づいてくるなんて、どう考えても変だった)

 

マキ(だから、一度だけ…私は彼女に言ったことがあるの)

 

マキ「キクチさん…私と一緒にいると、変な風に見られるんじゃない?」

 

マキ(でも…それに対する彼女の返事は、私にとって意外なものだった)

 

マコ「マコでいいよ?」

 

マキ「…えっ?」

 

マコ「キクチさんじゃなくて、マコって呼んでよ!」

 

マキ「えぇっ!?」

 

マコ「私…マキちゃんと友達になりたい!」

 

マキ「と、友達…?」

 

マコ「うん!」

 

マキ(私は…心のどこかで、こんな出会いを待っていたのかもしれない)

 

マキ(私みたいな性格の女の子にはずっと叶わないことだと思っていた…心からの友達と出会える、こんな日を)

 

マキ(少しずつ心を開いた私は…マコちゃんと次第に仲良くなっていった)

 

マキ(そして冬のある日…マコちゃんは私にこんなことを話してくれた)

 

マコ「私ね…高校に入ったらスクールアイドルになろうと思ってるの」

 

マキ「スクールアイドル?」

 

マコ「うん!」

 

マキ「最近、人気になってるっていう…?」

 

マコ「そうだよ!学校のために歌ったり踊ったりして、キラキラしてて…」

 

マコ「私もあんなことしてみたいなって、思ったの!」

 

マキ「へぇ…」

 

マコ「でも、私だけじゃ難しいかな…」

 

マキ「どうして?」

 

マコ「ほら…私、地味だから」エヘヘ

 

マキ「…!」

 

マキ(私は…マコちゃんの背中を押すために、こう言った)

 

マキ「…やってみたい気持ちがあるなら、一人でもやってみた方がいいわ」

 

マコ「えっ…マキちゃん?」

 

マキ「スクールアイドル、やりたいんでしょ?」

 

マコ「でも…」

 

マキ「やりたいならやればいいじゃない、そしたら…作曲くらいはしてあげるから」

 

マコ「へっ?マキちゃん…作曲できるの!?」

 

マキ「ええ、小さい頃にピアノ教室通ってた時に課題でやったことあるから…」

 

マコ「そうだったんだ…」

 

マキ「だから…一緒にスクールアイドルするとかは無理だけど、作曲くらいなら出来るかなって」

 

マコ「…」

 

マキ「だってマコちゃんは私の…友達、なんだから」

 

ギュッ!

 

マキ「!」

 

マコ「嬉しいよ…ありがとう、マキちゃん!」ニコッ

 

マキ(マコちゃんは両手で私の右手を握り、満面の笑顔でそう言った)

 

マキ(その時、私はこう決めたの)

 

マキ(私が…彼女の夢を守るんだって)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9つの世界を巡り、その瞳は何を見る?~

 

 

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「はっ!」ガガッ

 

ディケイド(オレとディエンドはそれぞれの銃でラッキークローバーを牽制しながら、マキの所へ駆け寄った)

 

ディケイド「マキ!大丈夫か?」

 

マキ「私は何とか…でも、マコちゃんが」

 

ディエンド「とりあえず…ここは一旦退きましょう」

 

ディケイド(ディエンドは一枚のカードをディエンドライバーに装填し、発砲した)

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディケイド(オレ達はディエンドのインビジブルの効果で、ラッキークローバーのもとから姿を消した)

 

ドラゴンO「あ~あ、消えちゃった…」

 

センチピードO「探しますか?」

 

タイガーO「いや…その必要はない」

 

ロブスターO「そうね…邪魔者のファイズもいなくなったし、後は私達の目的を果たすだけね」

 

タイガーO「…ああ」

 

 

 

ツカサ(写真館に戻ったオレは…撮影スタジオのある部屋でマキの傷の手当てをしていた)

 

ツカサ「やけに擦りむいた場所が多いな…もしかして、ラッキークローバーにやられたのか?」

 

マキ「…あなたのせいよ」

 

ツカサ「はぁ?」

 

マキ「とにかくもうどいて、私はマコちゃんを…っ!」ズキッ

 

ツカサ「その怪我で行くのか?」

 

マキ「当たり前でしょ!?だって、マコちゃんは私の…」

 

ツカサ「友達、なんだろ?」

 

マキ「!」

 

ツカサ「だったら…ほんの少しで良い、ここで休んでから行け」

 

マキ「でも、早くしないと…」

 

ツカサ「おそらくサヤは…下手な事でもして興奮しない限り、マコの命は奪わない」

 

マキ「あなたねぇ…どうしてそんな悠長なことが言えるの!?」

 

ツカサ「…分かるんだ」

 

マキ「何がよ?」

 

ツカサ「かなり歪んではいるが…アイツもアンタも同じ、マコの事を大切な友達だと思っている」

 

マキ「…!」

 

ツカサ「とにかく…まずは傷の手当てが最優先事項だ」

 

マキ「…」

 

ツカサ「もうこんな遅い時間だしな…この手当てが終わったら少し休め、良いな?」

 

マキ「…」コクリ

 

 

 

亜里沙「ふわぁ…おはよ~」ガチャ

 

マキ「…」スヤスヤ…

 

亜里沙「あれ、なんでマキさんがここに?」

 

雪穂「どうしたの亜里沙…えっ、マキさん?」

 

ツカサ「よう」

 

雪穂「ツカサ…ってどうしたの、そのクマ!?」

 

亜里沙「もしかして…寝てないの?」

 

ツカサ「オレが寝てしまったら…マキが勝手に写真館から出ていくと思ったからな」

 

雪穂「どうしてまたそんな…?」

 

ツカサ「そうだな、お前達には…ちゃんと話をしないといけないな」

 

ツカサ(オレは…雪穂と亜里沙に創才公園で見た出来事を詳しく説明していた)

 

雪穂「そんな、マキさんが…」

 

亜里沙「オルフェノクだったなんて…!」

 

ツカサ「ああ…ファイズに変身したサヤもオルフェノクだった」

 

雪穂「サヤさん…マコさんを連れ出して、どこかに行っちゃったんでしょ?」

 

ツカサ「そうだ」

 

亜里沙「マコさん、大丈夫なのかな…?」

 

ガタッ

 

雪穂「えっ?…あっ」

 

ツカサ(それまで椅子に座って寝ていたはずのマキが突然、立ち上がり…写真館を出て行こうとする)

 

亜里沙「マキさん…!」

 

マキ「…」スタスタ

 

雪穂「ま、待ってください!」

 

マキ「何よ…あなた、私が怖くないの?」

 

雪穂「…!」

 

マキ「私はオルフェノクなのよ?」

 

ツカサ(マキのその一言でしばらく沈黙が流れたが…雪穂はこう返した)

 

雪穂「…それでも私は、マキさんを信じたい」

 

マキ「…あなた」

 

雪穂「マキさんはオルフェノクの姿になってまで、マコさんを助けようとしたんですよね?」

 

雪穂「だったら、マキさんは…私達が知ってる真姫さんと同じです」

 

雪穂「だから、怖くありません」

 

マキ「なっ…あなた、私の何を知ってるというの?」

 

雪穂「もちろん、全部を知ってるわけじゃありません…」

 

雪穂「でも…私達の知ってる真姫さんは、不器用で素直じゃないけど優しい人だってことだけは知ってます」

 

マキ「あなた達の知ってる私…?」

 

亜里沙「…」ギュッ

 

マキ「!?」

 

ツカサ(亜里沙は…両手でマキの右手を握っていた)

 

マキ「あなたまで…何のつもり?」

 

亜里沙「私もマキさんのこと、怖くないです!」

 

マキ「…!」

 

亜里沙「だってマキさんは…マキさんだから!」

 

マキ「私は、私だから…?」

 

ツカサ「マキ…一つ、聞いていいか?」

 

マキ「何?」

 

ツカサ「アンタがオルフェノクとして覚醒したのも、誰かを守る為…だったんだろ?」

 

雪穂「えっ…?」

 

マキ「…中学を卒業する少し前のことよ」

 

マキ「その日は校舎が火事になって…マコちゃんだけ逃げ遅れたの」

 

ツカサ「…まさか」

 

マキ「そう…私はマコちゃんを助けようと、自分から燃え盛る校舎の中に入っていったの」

 

マキ「その結果…私はマコちゃんを助けることが出来た」

 

ツカサ「しかし…代わりにアンタは、命を落としてしまった」

 

雪穂「じゃあ、マキさんがオルフェノクになったのは…その時に?」

 

マキ「…私はどうしても、初めて友達になってくれた彼女の夢を守りたかったの」

 

マキ「だって、今の私には…夢なんてないんだもの」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

ツカサ「知ってるか?」

 

マキ「え?」

 

ツカサ「夢を持つとな…時々すっごい切なくなるが、時々すっごい熱くなる…らしいぜ」

 

マキ「?…何よそれ、イミわかんない」

 

ツカサ「だろうな…だが、今はそれでいい」

 

ガチャ

 

ツカサ(その瞬間、部屋に入ってきたのは…)

 

亜里沙「ツバサさん!」

 

ツバサ「スパイダーオルフェノクの居場所が分かったわ…流星の森よ」

 

マキ「!」

 

ツカサ「…行くぞ」

 

マキ「言われなくても、当然よ」

 

ツバサ「ちょっと待って…これをあなたにあげる」

 

ツカサ(ツバサはファイズギアが入ったケースをマキに渡した)

 

マキ「これ、サヤの…」

 

ツバサ「彼女以外でもオルフェノクなら誰でも変身できるけど…これは今、あなたが持つべきものよ」

 

マキ「私が?」

 

ツバサ「ええ、あなたが夢を守る為に必要な…とても大切なお宝よ」

 

マキ「夢を、守る…分かったわ」

 

ツカサ(マキはツバサからファイズギアが入ったケースを受け取った)

 

ツカサ「…よし、行ってくる」

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

雪穂「…行ってらっしゃい」

 

ツカサ(オレはマキと一緒に、写真館を後にした…)

 

 

 

ツカサ(オレは確かに写真館を出た…はずだった)

 

ツカサ「何でサッカースタジアムなんかに…?」

 

?「ここは…世界の狭間だよ」

 

ツカサ(オレは声のする方向を見た)

 

ツカサ(顔は日射しで隠れてよく見えなかったが…そこには見覚えのある人物がいた)

 

ツカサ「お前は…ナルタキか?」

 

ナルタキ「やあ…久しぶりだね、ディケイド」

 

ツカサ「わざわざオレをこんな所に呼び出して…一体、何の用だ?」

 

ナルタキ「もちろん、決まっている…君を消す為だよ」

 

ツカサ(ナルタキはそう言って、オーロラから一人のライダーを召喚した)

 

カイザ「邪魔なんだよ…俺の思い通りにならない奴は全て!」

 

ツカサ「!…またこうなるのか」ハァ

 

ガガッ!

 

ツカサ(オレはバックルを装着しようとするが…カイザがカイザブレイガンを発砲し、バックルを弾き飛ばしてしまった)

 

ツカサ「なっ…何すんだ!?」

 

カイザ「良くないなぁ…こういうのは」

 

ツカサ(カイザはカイザブレイガンをソードモードに変形させ、オレを斬りつけようと接近してくる)

 

カイザ「はぁっ!」ブンッ

 

 

 

マコ「んっ…」パチ

 

マコ「ここは…森?」

 

?「マコちゃん、目が覚めた?」

 

マコ「サ、サヤちゃん…!」

 

マコ「?…何、これ!?」

 

サヤ「逃げようとしても無駄だよ…マコちゃんは私が作った愛の巣で、ずっと私と一緒に暮らすの」

 

マコ「どうして、こんなことを…?」

 

サヤ「…私はスマートブレインハイスクールに入学してすぐ、事故で命を落とした」

 

サヤ「それから私はすぐに…オルフェノクとして覚醒した」

 

サヤ「その時、私は誓ったの…人間とオルフェノクが一緒に暮らせる世界を作ろうって」

 

マコ「だったら、何もこんなことしなくたって…」

 

サヤ「でもね…それは絶対に叶うはずのない夢だったの」

 

マコ「えっ…?」

 

サヤ「ねえ、知ってる?夢っていうのは呪いと同じなの…呪いを解くには夢を叶えるしかない」

 

サヤ「でもね?途中で夢を挫折した者は、一生呪われたまま…なんだって」

 

マコ「…サヤちゃん」

 

サヤ「家族も仲の良かった同級生も、私を気味悪がって…仲間外れにしようとした」

 

サヤ「私は…そんな人間共を皆、灰にしてあげたわ」

 

マコ「そんな…!」

 

サヤ「でも、マコちゃんだけは一人ぼっちだった私に手を差しのべてくれた…」

 

サヤ「だから私は、そんな優しいマコちゃんのことが好きになっちゃったの…」

 

マコ「…」

 

サヤ「そんな時、私は偶然…ファイズのベルトを拾った」

 

サヤ「いつしか私は、マコちゃんを襲うかもしれないオルフェノクを次々と倒してた…」

 

サヤ「だけど…あのラッキークローバーに負けて、分かったの」

 

サヤ「私は…マコちゃんといられたら、それで良いんだって」

 

サヤ「だから、ずっと私と一緒にいよう…マコちゃん?」

 

マコ「…」ツー…

 

サヤ「マコちゃん、泣いてる…嬉しいの?」

 

サヤ「私も嬉しい…マコちゃん、ずっと一緒にいよう?」

 

?「待ちなさい」ザッ

 

サヤ「…?」

 

マコ「…マキ、ちゃん?」

 

マキ(私を警戒し、サヤはスパイダーオルフェノクに変化した)

 

スパイダーO「あなた…また私とマコちゃんの邪魔をするつもり?」

 

マキ「ねえ…知ってる?」

 

スパイダーO「…?」

 

マキ「夢を持つとね…時々すっごく切なくなるけど、時々すっごく熱くなる…らしいわ」

 

スパイダーO「あなた、一体何を…」

 

マキ「私には夢がない…でも」

 

マキ(私は右手に持っていたファイズフォンの『5』キーを三回押し、最後に『ENTER』キーを入力した)

 

マキ「夢を守ることくらいならできる!」

 

『Standing By』

 

マキ「変身!」

 

『Complete』

 

マキ(ファイズフォンをお腹に巻いていたドライバーに挿した瞬間、全身を赤い光が包み込み…私はファイズに変身した)

 

ファイズ「…」

 

マコ「マキちゃん!」

 

スパイダーO「ファイズ…!」

 

ファイズ「…はっ!」ダッ

 

ファイズ(手首を軽くスナップさせて…私はスパイダーオルフェノクを攻撃しようと走り出した)

 

ファイズ(マコちゃんの夢を、守るために…)

 

ファイズ(そして…サヤの目を、覚ますために)

 

 

 

ツカサ「うわっ!」サッ

 

ツカサ(変身できないオレはカイザの攻撃を避け続けるしかなかった)

 

カイザ「君の力はこの程度…という事で良いのかな?」

 

ツカサ「…くっ」

 

カイザ「終わりだっ!」ブンッ

 

ツカサ(早い…避けきれない!)

 

『カメンライド…デルタ!』

 

ガガガッ!

 

カイザ「!?」

 

ツカサ(次の瞬間、ディエンドが召喚したデルタが現れ…カイザを攻撃した)

 

ディエンド「お困りのようね?」

 

ツカサ「…!」

 

ナルタキ「やれやれ、また私の邪魔をするのか…」ハァ

 

ディエンド「あら…邪魔をしているのは、あなたの方でしょう?」

 

デルタ「俺に何が出来るか、分からないけれど…チェック!」

 

『Exceed Charge』

 

ナルタキ「!?…カイザ!」

 

カイザ「くっ…!」

 

『Exceed Charge』

 

デルタ「やあぁぁぁっ!」

 

カイザ「でぇいやぁぁぁ!」

 

ツカサ(カイザとデルタはお互いの必殺技をぶつけ合い、消滅した)

 

ディエンド「さあ…今のうちに早く彼女の所へ向かいましょう?」

 

ツカサ(ディエンドはそう言ってバックルをオレに渡した)

 

ツカサ「…ああ」

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ツカサ(オレ達はディエンドのインビジブルの効果で姿を消した)

 

ナルタキ「あの小娘め…!」

 

 

 

ツカサ(オレとディエンドは写真館の前にいた)

 

ディエンド「ふぅ…何とか抜け出したわね」

 

ツカサ「…礼は言わないぞ?」

 

ディエンド「別にそんなのは求めてないわ…さて、このお宝も早く彼女に届けないとね」

 

ツカサ(ディエンドは近くにあったバイクを指差した)

 

ツカサ「アレは…オートバジン!」

 

ディエンド「途中までこれに乗って行きましょう?」

 

ツカサ「アンタ…免許持ってるのか?」  

 

ディエンド「もちろん、嗜みってヤツよ」

 

ツカサ「そんな嗜み、聞いた事ないが…」

 

ディエンド「とにかく急ぎましょう…乗って」

 

ツカサ(オレが後ろに乗った事を確認して、ディエンドはオートバジンで流星の森に向かった…)

 

 

 

ファイズ(私はスパイダーオルフェノクと激しく戦っていた)

 

スパイダーO「フッ!」ガッ!

 

ファイズ「うっ…目を覚ましてサヤ!」ゴッ!

 

スパイダーO「目を覚ますも何も…私は正気よ!」ガッ!

 

ファイズ「違うわ!」

 

ファイズ「あなたは…嫌なことから都合良く逃げてるだけよ!」ゴッ!

 

スパイダーO「うるさい!」ガッ!

 

ファイズ「ううっ…」フラッ

 

スパイダーO「終わりよ!」

 

ガガッ!

 

スパイダーO「!?」

 

ファイズ(どこかからロボットが飛んでくると…私を援護するかのようにスパイダーオルフェノクを攻撃した)

 

オートバジン「…」

 

ファイズ「えぇっ!?あなた…私の味方なの?」

 

オートバジン「…」

 

ファイズ「何か言いなさいよ!」

 

オートバジン「…」

 

ファイズ「まあ良いわ…!」

 

ファイズ(私はロボットの姿を見て、あることを思いついた)

 

ファイズ「それ、貸して!」ポチッ

 

オートバジン「?」

 

ファイズ(私がロボットの胸にある大きなボタンを押すと…ロボットはバイクに変形した)  

 

ファイズ「えっと…こうね?」

 

ファイズ(私はバイクの左ハンドルグリップにファイズフォンのミッションメモリーを挿入して、引き抜いた)

 

『Ready』

 

ファイズ(引き抜いたグリップは…剣のような武器になった)

 

スパイダーO「どうして、私の邪魔をするの…?」

 

スパイダーO「どうして…ウワァァァァ!」ダッ

 

ファイズ(襲いかかろうとするスパイダーオルフェノクに対して…私はファイズフォンの『ENTER』キーを押した)

 

『Exceed Charge』

 

ファイズ「はぁっ!」

 

ファイズ(私は剣を振って、エネルギー波でスパイダーオルフェノクを拘束した)

 

スパイダーO「!?…身体が!」

 

ファイズ「はぁぁぁぁっ!」ダッ

 

ファイズ(私はスパイダーオルフェノクを斬りつけようと走った)

 

スパイダーO「…!」

 

ファイズ「…」ピタッ

 

スパイダーO「?…!?」

 

ファイズ(だけど…私はギリギリの所で剣を止めた)

 

ファイズ「…もう、勝負はついたわ」

 

スパイダーO「…」ドサッ

 

ファイズ(私と膝をついたスパイダーオルフェノクはお互い人間の姿に戻った)

 

サヤ「何で…私にトドメを刺さなかったの?」

 

マキ「…言ったでしょ、私は夢を守ることくらいなら出来るって」

 

マキ「もちろん、あなたの夢も…私は守るつもりよ」スタスタ

 

サヤ「!!」

 

マキ(私は蜘蛛の巣を取り除き、マコちゃんを助けた)

 

マキ「…はい、もう大丈夫よ」

 

マコ「マキちゃん…ありがとね」

 

マキ「怖くないの?私のことが…」

 

マコ「怖くないよ…だって私、あの時の火事に誰が助けてくれたのか思い出したから」

 

マキ「!」

 

マコ「あの時も…マキちゃんは私を助けてくれたでしょ?」

 

マコ「だからマキちゃんは…マキちゃんだよ」ニコッ

 

マキ「…マコちゃん」

 

マキ(すると、ツカサがやってきた)

 

ツカサ「マキ、マコ!」ダダッ

 

マキ「…ツカサ」

 

ツカサ「遅れてすまなかった…しかしオートバジンのヤツ、急に変形しやがって」

 

マキ「オートバジン…あのロボットになるバイクのこと?」

 

オートバジン「…」

 

ツカサ「あいつは『用事を思い出した』とかって言って急にいなくなるし…全く、どこに行ったんだ?」ブツブツ…

 

マキ「まあ…別に気にしてないけど、ねえ?」

 

マコ「うん!」

 

ツカサ「それなら良いんだが…今日は学校休んで、家に帰るか?」

 

マキ「そうね…そうしましょうか」

 

マコ「じゃあ、サヤちゃんも一緒に…あれ?」

 

マキ「いない…?」

 

マコ「サヤちゃん、先に帰っちゃったのかな…」

 

~♪

 

ツカサ「!」

 

マキ(その時、ツカサの携帯が鳴った)

 

ツカサ「…雪穂?」

 

 

 

雪穂(私と亜里沙は…この世界の情報収集をするために、今日もスマートブレインハイスクールに登校していた)

 

生徒A「ねえ、西木野さんやサワダさんがオルフェノクだったって本当…?」

 

生徒B「本当らしいよ…私の友達が部活から帰ってた時に見たんだって」

 

生徒C「えぇ…オルフェノクとか気味悪くない?」

 

雪穂(どうやら昨日の戦いを目撃した人がいたらしく、学校中がその話題で持ちきりだった)

 

亜里沙「…みんな、ひどい」

 

亜里沙「マキさんは、マキさんなのに…」

 

雪穂「亜里沙…」

 

ギュッ

 

雪穂(私は亜里沙の手を握った)

 

雪穂「今はこんなことになっちゃってるけど、せめて私達だけでも…マキさんを信じよう?」

 

亜里沙「…うん」

 

?「見~つけたっ」

 

雪穂(私達が振り向くと、そこにはキタザキさんとカゲヤマさんがいた)

 

雪穂「…!」

 

カゲヤマ「あなた達、確かディケイドのお友達だったわよね?」

 

雪穂「だったら、何ですか?」

 

カゲヤマ「…あなた達には、消えてもらおうと思ってるの」ニヤッ

 

亜里沙「!」ビクッ

 

雪穂「大丈夫だよ、亜里沙」

 

亜里沙「雪穂…」

 

雪穂(私は怯まずにこう返した)

 

雪穂「…そんなこと、言っていいんですか?」

 

カゲヤマ「あら、どうして?」

 

雪穂「ここでオルフェノクになったら、ラッキークローバーとして活動できなくなっちゃうんじゃないですか?」

 

カゲヤマ「フフッ、その必要はないわ」

 

雪穂「?」

 

カゲヤマ「だって…」

 

ドサッ

 

雪穂「えっ…!?」

 

センチピードO「フフフ…」

 

亜里沙「ウソ…!」

 

サアァ…

 

雪穂(私達が後ろを振り返ると…一体のオルフェノクが先ほどまで噂話をしていた三人の生徒を灰にしていた)

 

カゲヤマ「もうラッキークローバーは…スクールアイドルなんてふざけたお遊びはやらないもの」

 

雪穂「…逃げるよ、亜里沙!」ダダッ

 

亜里沙「雪穂…うん!」ダッ

 

雪穂(私は握っていた亜里沙の手をそのまま引っ張り、逃げ出した)

 

雪穂「そうだ、ツカサを呼ばなきゃ…!」ハァハァ

 

雪穂(亜里沙と手を繋いで逃げていた私は…もう片方の手で携帯を取り出して、ツカサに電話した)

 

雪穂「…もしもしツカサ!?オルフェノクが!」

 

 

 

センチピードO「フフフ…」

 

ロブスターO「フフッ…」

 

生徒D「きゃあぁぁぁ!」

 

モモセ「もうファイズはいない…今まで我々を排除し、追放してきた人間達にオルフェノクの力を思い知らせる」

 

生徒E「助けてぇぇぇ!」

 

ドラゴンO「アハハッ…」

 

モモセ「運が良ければ、我々と同じオルフェノクになれる…」

 

?「ふざけないで!」

 

モモセ「!?」

 

ガガガッ!

 

センチピードO「グッ…」

 

ロブスターO「アレは…!?」

 

オートバジン「…」

 

マキ「オートバジン…ありがと、後は私達でやるわ」

 

ツカサ(マキはオートバジンをバイクに変形させた)

 

モモセ「また君達か…」

 

ツカサ(モモセはタイガーオルフェノクに変化した)

 

タイガーO「西木野さん…君は俺が怖くないのか?」

 

マキ「…怖いに決まってるじゃない」

 

タイガーO「だったら…」

 

マキ「でも、私はもう迷わない」

 

タイガーO「…何?」

 

マキ「こんな所で、止まってられない!」

 

マキ「迷ってるうちに誰かの夢が消えてなくなるのなら…例え戦うことが罪だとしても、私はその罪を背負う!」

 

マキ「だから、私は人の夢を奪うオルフェノクと戦う…人間として!ファイズとして!!」

 

タイガーO「…バカなことを」

 

ツカサ「バカなことを言っているのはお前の方だ」

 

タイガーO「フン…裏切り者のオルフェノクを庇うつもり?」

 

ツカサ「オルフェノクだ人間だなんてものは関係ない」

 

ツカサ「マキはただ…自分にとって大切なものを守ろうとしただけだ!」

 

ロブスターO「そんなちっぽけな…」

 

ツカサ「ちっぽけだから、守らなくちゃいけないんだろ!」

 

タイガーO「君…一体、何者?」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ(オレとマキはそれぞれのベルトを装着した)

 

ツカサ(オレは一枚のカードをバックルに装填し、マキはファイズフォンの『5』キーを三回押した後に『ENTER』キーを入力する)

 

『カメンライド…』

 

『Standing By』

 

ツカサ「変身!」

 

マキ「変身!」

 

『ディケイド!』

 

『Complete』

 

ツカサ(オレ達はディケイドとファイズに変身した)

 

 

 

ディケイド「…行くぞ!」ダッ

 

ファイズ「ええ!」ダッ

 

タイガーO「裏切り者のオルフェノクと得体の知れない人間がたった二人で我々を相手にするというのか…」

 

ドラゴンO「じゃあ、僕が行くよ…ハッ!」

 

ファイズ(ドラゴンオルフェノクは…私達に雷を落としてきた)

 

ディケイド「うおぉぉぉっ!」

 

ファイズ「はぁぁぁぁっ!」

 

ファイズ(私達は攻撃を受けても…ドラゴンオルフェノクに向かって走っていく)

 

ドラゴンO「何!?」

 

『Ready』

 

ファイズ(私は右腰からファイズポインターを取り出して、ミッションメモリーをセットする)

 

ファイズ(ディケイドは一枚のカードをバックルに入れ、ベルトのファイズフォンを開いた私は『ENTER』キーを押した)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

『Exceed Charge』

 

ファイズ(ディケイドと私は飛び上がり…ファイズポインターから放たれた円錐形の赤い光がドラゴンオルフェノクを拘束した)

 

ドラゴンオルフェノク「グッ!?」

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

ファイズ「はぁっ!」

 

ファイズ(私達はドラゴンオルフェノクに…それぞれの技を浴びせた)

 

ドラゴンオルフェノク「ウワァァァァ!!」サアァ…

 

ファイズ(私達の技を受けたドラゴンオルフェノクは…身体に青白い炎と『Φ』の字を浮かべながら灰と化し、崩れ去っていった)

 

センチピードO「キタザキさん!」

 

ロブスターO「モモセくん…こうなったら」

 

タイガーO「ああ、分かってる」

 

ファイズ(すると、残りの三人は合体し…青い大きな火の玉となって浮遊しながら私達を攻撃してきた)

 

ボウッ!

 

ディケイド「熱っ!」

 

ファイズ「うっ…!」

 

タイガーO「これで…終わりだぁぁぁぁ!」

 

ファイズ(さすがに耐え切れない…と思った、その時だった)

 

?「マキちゃん!」

 

ファイズ「マコちゃん…どうして!?」

 

ファイズ(そこには雪穂ちゃん達と一緒にいるマコちゃんの姿があった)

 

マコ「ごめん、心配になってつい…」

 

タイガーO「こうなったら、先に人間共から始末してやる…ハッ!」

 

亜里沙「あの火の玉…こっちに来てる!」

 

雪穂「あっ…!」

 

ファイズ(青い火の玉はマコちゃん達のもとへ向かっていった)

 

ファイズ「マコちゃん!?」

 

ディケイド「雪穂、亜里沙!!」

 

ファイズ(ダメ…火の玉に追いつけない!)

 

雪穂「うわぁっ!…えっ?」

 

亜里沙「あれ…?」

 

マコ「…サヤ、ちゃん?」

 

ファイズ(そこにはスパイダーオルフェノクに変化したサヤが火の玉を全身で受け止めて掴んでいた)

 

スパイダーO「ウッ…!」

 

タイガーO「そんなバカな…いくらオルフェノクでも、この火の玉に触れると消えてなくなってしまうはずなのに!」

 

マコ「…助けてくれるの?」

 

スパイダーO「…」コクリ

 

ファイズ(静かに頷いたスパイダーオルフェノクを見て、マコちゃんは泣いていた)

 

ファイズ(私はそんなマコちゃんにあることを聞いた)

 

ファイズ「マコちゃん!あなた…ファイズは闇や光をどうこうとか言ってたわよね?」

 

マコ「…闇を切り…、光を…らす」ボソッ

 

ファイズ「聞こえない!」

 

マコ「…闇を切り裂き!光をもたらすの!!」

 

ファイズ「…全くキツいわね、あなたのその期待に応えるのは!」

 

ファイズ(でも私は…こんな所で倒れる訳にはいかない)

 

ファイズ(友達の夢を、皆の夢を…私は守りたい)

 

ファイズ(だから、私は…)

 

ファイズ「絶対に…諦めない!」

 

 

 

ディケイド(ファイズがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにファイズの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「そうだ…サヤ、その火の玉をこっちに投げろ!」

 

ファイズ「なっ…あなた、何するつもりなのよ!?」

 

ディケイド「良い方法がある」

 

スパイダーO「!…ハァァァァッ!!」ブンッ

 

ディケイド(指示通り、スパイダーオルフェノクはこちらへ向かって火の玉を投げた)

 

タイガーO「何ッ!?」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填し…ファイズの後ろに回り込んだ)

 

『ファイナルフォームライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

ファイズ「ま、待って!」

 

ディケイド(オレはファイズの背中を押した)

 

ディケイド(するとファイズは…ファイズブラスターに変形し、オレはそれを持ち上げた)

 

ディケイド「よっと…」

 

ファイズ「えぇっ!?何よこれ?」

 

ディケイド「オレとマキの力だ」

 

ファイズ「何それ…イミわかんない!」

 

ディケイド「分からなくて良い…一気に行くぞ!」バシュッ!

 

ディケイド(まずオレはファイズブラスターから赤いレーザーを照射し…火の玉の動きを止めた)

 

タイガーO「グアッ!」

 

ディケイド(次に…オレはもう一枚のカードをベルトに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』

 

ディケイド「…やあぁぁぁっ!」

 

ディケイド(そして最後に…ファイズブラスターから強力なフォトンブラッドのビームを火の玉に撃ち込んだ)

 

ディケイド(これは『DCDP(ディケイドフォトン)』…オレとファイズの技だ)

 

タイガーO「グワァァァ!!」サアァ…

 

ディケイド(火の玉ごと破壊されたタイガーオルフェノク達は…『Φ』の記号を浮かべながら灰になり、散っていった)

 

 

 

サヤ「…」

 

マコ「サヤちゃん…しっかりして、サヤちゃん!」

 

マキ「サヤ!」ダッ

 

ザッ

 

マキ(マコちゃんと倒れたサヤのもとへ走ろうとした私の行く手を阻んだのは…学校の生徒達だった)

 

マキ「…!」

 

生徒D「…西木野さん、あなたオルフェノクなんでしょ?」

 

生徒E「今まで私達を騙してたなんて…最低」

 

マキ「…」

 

生徒F「この学校から出てってよ!」

 

生徒D「そうよ、あなたみたいなのがいると迷惑なのよ!」

 

マコ「ち、違うよ!マキちゃんは私を助けようと…」

 

生徒E「キクチさんは黙ってて!」

 

マキ「…」

 

マキ(私は皆に…何も言い返せなかった)

 

マキ(このまま学校から出ていこう…私がそう思った次の瞬間、ツカサが私の横に立っていた)

 

ツカサ「…」

 

マキ「…ツカサ?」

 

ツカサ「…どけ」ボソッ

 

生徒D「は?」

 

ツカサ「どけ!!」

 

マキ(皆はツカサのあまりの剣幕に驚き、唖然としていた)

 

ツカサ「…マキの歩く道だ」

 

ツカサ「例えお前達でも…マキの邪魔をする事はオレが許さない!」

 

マキ「ツカサ…」

 

ツカサ「それに…マキはマキだ」

 

ツカサ「だから、そこを通せ…」

 

ツカサ「通さないヤツは…オレが全員、相手になってやる!」

 

生徒達「…」

 

マキ(ツカサがそう言うと…生徒の皆が少しずつ、道を開けてくれた)

 

ツカサ「ほら、行け」

 

マキ「…」コクリ

 

マキ「サヤ!」ダッ

 

マキ(私はマコちゃんとサヤのもとへ駆け寄った)

 

サヤ「マコちゃん、ヒドいことして…ごめんね?」

 

マコ「ううん…私の方こそ、怖がったりしてごめんね!」

 

サヤ「私、これからもマコちゃんがスクールアイドルやるの…応援する」

 

サヤ「だから…何があっても、学校を卒業するまでやめないでね?」

 

マコ「うん…約束するよ、サヤちゃん!」

 

サヤ「…西木野さん、あなたにもお願いがあるの」

 

マキ「何…?」

 

サヤ「私が出来なかったこと…あなたがやって?」

 

マキ「…分かったわ」

 

マキ「あなたの理想、私が継いでみせるわ」

 

サヤ「うん…ありがとう」ニコッ

 

マキ(サヤは微笑んだ後、そのまま目を閉じた)

 

マコ「サヤちゃん…?」

 

マキ「…マコちゃん、離れて」

 

マコ「…!」

 

マキ(マコちゃんが離れると、サヤは安らかに眠りながら青白い炎を身体中に放出した)

 

マコ「うっ…ううっ」グスッ

 

マキ(マコちゃんはしばらく、涙を流し続けていた)

 

マキ「…」

 

マキ(私は、燃えるサヤの身体をただずっと見つめていた…)

 

亜里沙「マキさん、マコさん…」

 

雪穂「サヤさん…笑ってたね」

 

ツカサ「…そうだな」

 

 

 

マキ(私は自宅に戻った)

 

ガチャ…

 

マキ「…ただいま」

 

?「マキちゃん!」ガバッ

 

マキ(私に抱き着いてきたのはママだった)

 

マキの母「公園に行ったきり、どれだけ待っても帰ってこなかったから…私もパパも心配してたのよ!?」

 

マキ「…ごめんなさい」

 

マキの母「こんな怪我までして…一体、何があったの?」

 

マキ「…」

 

マキ(私は一瞬…ためらいながらも、ママにあることを告げようと思った)

 

マキ「…ママ、実はお願いがあるの」

 

マキの母「お願い?」

 

マキ「あの…私ね!」

 

 

 

マキの母「それにしてもびっくりしたわね…まさか明日からは自転車で通学したいだなんて」

 

マキの母「…あら、パパったら寂しいの?」

 

マキの母「でも良いじゃない…マキちゃんもそれだけ、成長してきたっていうことよ」

 

マキの母「ええ、分かってるわ…」

 

マキの母「例え人間じゃなくなったとしても…あの子はあの子」

 

マキの母「もし、あの子が本当にやりたいことが見つかったら…私達は全力でそれを後押ししないとね」

 

マキの母「だってあの子は…マキちゃんは、私達の大事な一人娘なんだから」フフッ

 

 

 

ツカサ(翌日、オレはスマートブレインハイスクールの近くにいた)

 

ツカサ(朝のホームルームまではまだ十分、時間があるからか…今は誰も歩いていない様子だった)

 

ツカサ「…」スタスタ

 

チリンチリーン!

 

?「あ、危ない!」

 

ツカサ「!?…おわっ!」ドカッ!

 

ツカサ(オレは自転車に勢いよくぶつけられてしまった)

 

ツカサ「痛っ…おい!危ないだろ!?」

 

ツカサ(オレが自転車の方を振り返ると、そこにはマキがいた)

 

マキ「いたた…ごめんなさい、まだちゃんと止まれなくて」

 

ツカサ「…マキ?」

 

マキ「えぇっ!ツカサ!?」

 

ツカサ「アンタ…まさか、本当に自転車で通学してきたのか?」

 

マキ「あ、当たり前でしょ!私を誰だと思ってるのよ!?」

 

ツカサ「そうだな…真の夢の守り姫ってとこか?」

 

マキ「…気持ち悪い」

 

ツカサ「…オレも今、自分で言ってて全く同じ事を思った」

 

マキ「ふふっ…変なの」

 

ツカサ「…ひとまず、元気そうに登校しているみたいで安心した」

 

マキ「まあね…もちろんこれからも、この学校に通い続けるつもりよ?」

 

マキ「昨日は皆に色々言われちゃったけど…これからはマコちゃんだけじゃなくて、学校にいる皆の夢を守りたいって思ったの」

 

マキ「それが…サヤの理想を継ぐってことでもあるから」

 

ツカサ「…そうか」

 

マキ「あっ…それと私、夢が出来たの」

 

ツカサ「何だ?」

 

マキ「…誰にも言わないでよ?」

 

ツカサ「もちろんだ」

 

マキ「私…思ったことを素直に言える自分になりたいなって考えてて」

 

マキ「私って、いつも癖みたいに斜に構えちゃうから…でも気が付いたの」

 

マキ「素直になって、好きだって認めさえすれば…何よりも夢中になれるものが見つかるんじゃないかって」

 

ツカサ「…」

 

マキ「私は…それを見つけたい」

 

マキ「それが、今の私の夢よ」

 

ツカサ「そうか…良い夢だな」フフッ

 

マキ「ふふっ…あっ!」

 

ツカサ「どうした?」

 

マキ「良いメロディを思いついたの…こうしちゃいられないわ、早く音楽室に行かないと!」

 

ツカサ「またマコに新しい曲を作るのか?」

 

マキ「…いいえ」

 

ツカサ「じゃあ…一体、誰に?」

 

マキ「今日は…自分のためよ」

 

マキ「ピアノ、また本格的にやりたくなったの」フフッ

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」フフッ

 

マキ「それじゃ…」

 

ツカサ(マキはそう言って、自転車を漕ぎ始める…が、少し進んだ後に一度立ち止まり振り返った)

 

マキ「ねぇ、ツカサ」

 

ツカサ「?」

 

マキ「…ありがとう」ニコッ

 

ツカサ「…ああ!」

 

マキ「じゃあね!」

 

ツカサ(自転車を漕ぐマキの背中を見送った後、オレは徐々に自分の身体が透けていくのを感じた)

 

ツカサ「…とりあえず、この世界でやるべき事は終わったらしい」

 

ツカサ「じゃあな…マキ」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

 

 

~♪

 

マキ「…出来た」

 

パチパチパチ…

 

マキ「!…マコちゃん?」

 

マコ「おはよう、マキちゃん…スゴく良い曲だね」

 

マキ「あ、ありがとう…休まなくて大丈夫だったの?」

 

マコ「本当はまだ大丈夫じゃないけど…サヤちゃんのためにもスクールアイドル、頑張るんだって決めたから」

 

マキ「…そう」

 

?「ちーっす…」ガラッ

 

マキ「?」

 

?「えーっと、キクチマコっていうのは…アンタか?」

 

マコ「そうだけど…あなたは?」

 

?「アタシの名前はカイドウユカ、転校生だ」

 

マコ「転校生…?」

 

ユカ「前の学校ではスクールアイドルをやっていてな…この学校のスクールアイドルだっていうアンタと勝負をしに来た」

 

マコ「えっ…スクールアイドル?」

 

ユカ「ああ、最初はラッキークローバーってのに勝負を挑もうと思ったんだが…もういなくなったって別の生徒から聞いてな」

 

マコ「やったよマキちゃん…この子、私と一緒にスクールアイドルやってくれるんだって!」

 

マキ「えっ?」

 

ユカ「いや…どうしてそうなる!?」

 

マコ「よろしくね、ユカちゃん!」

 

ユカ「ちょっ…だから、そうじゃなくて!」

 

マキ「…良かったわね、マコちゃん」フフッ

 

マコ「うん!」

 

ユカ「ちゅーか…アンタ達、人の話聞けよ!?」

 

 

 

ツカサ(写真館へ戻った時は既に日が暮れていた為…オレは、雪穂達への晩飯を作っていた)

 

ツカサ「ほら、出来たぞ」

 

亜里沙「うわぁ~…!」

 

キバーラ「あら~、すっごく美味しそうじゃない♡」

 

ツカサ(今日の晩飯は炊き込みご飯、味噌汁、漬物、茶碗蒸し、焼き魚、筑前煮という献立だ)

 

雪穂「こんなにたくさん…良いの?」

 

ツカサ「ああ、遠慮しないで食べてくれ」

 

雪穂「じゃあ…いただきます」

 

亜里沙「いただきます!」

 

ツバサ「いただきます」

 

ツカサ「お前は少し遠慮しろ…というか、あれからどこに行ってたんだ?」

 

ツバサ「…」フーフー

 

ツカサ(ツバサは熱々の味噌汁を味わおうとしていた)

 

ツカサ「意地でも言わないつもりか…まあいい」ハァ

 

亜里沙「そういえばツカサ…今回撮った写真は?」

 

ツカサ「ああ…これだ」ピラッ

 

ツカサ(オレは写真を亜里沙と雪穂に見せた)

 

ツカサ(写真にはファイズギアのケースを持って背を向けているマキの後ろ姿とピアノを笑顔で弾いているマキが写っていた)

 

亜里沙「良い写真だね!」

 

ツカサ「まあ…今回も上の上ってとこだな」

 

雪穂「だから『上の上』って何なの…?」

 

亜里沙「じゃあ…これでもう、この世界は大丈夫そうだね!」

 

ツカサ「そうだな…ん?」

 

ツバサ「…」フーフー

 

ツカサ(ツバサはまだ味噌汁を冷まそうとしていた)

 

ツカサ「どうした、フーフーしてやろうか…?」

 

ツバサ「…結構よ」キッ

 

ツカサ「そう言うなって…ほら、オレがやってやる」

 

ツバサ「その必要はないわ!」ズズッ

 

ツカサ(強がるツバサは味噌汁を飲み始める…が、やはり彼女にはまだ熱いようだった)

 

ツバサ「!?…熱い」ボソッ

 

ツカサ「ほらな、だから言わんこっちゃない」

 

雪穂「ツバサさん…」

 

亜里沙「?」モグモグ

 

ツカサ(次の瞬間、オートバジンと青い蝶のイラストが描かれていた写真館の背景がまた別の背景に変わった)

 

亜里沙「これが次の世界…?」

 

ツカサ「…そうか、そういう事か」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ワームがいる世界ね」

「知ってるの?スクールアイドル…」

「オレになりすますのは十年早い」

「正義とは私自身、私が正義よ!」

第12話『もう一人の自分』

天の道を往き、総てを司る!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~絵里×カブトの世界~
第12話『もう一人の自分』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「…ファイズの世界か」

マキ「私はオルフェノクなのよ?」

雪穂「…それでも私は、マキさんを信じたい」

亜里沙「だってマキさんは…マキさんだから!」

モモセ「もうファイズはいない…今まで我々を排除し、追放してきた人間達にオルフェノクの力を思い知らせる」

マキ「私には夢がない…でも、夢を守ることくらいならできる!」

マキ「だから、私は人の夢を奪うオルフェノクと戦う…人間として!ファイズとして!!」

ツカサ「ちっぽけだから、守らなくちゃいけないんだろ!」

ディケイド「オレとマキの力だ」

マキ「ツカサ…ありがとう」


(小学生の頃、私はバレエ大会に参加する為…応援しに日本にやってきた妹と一緒に、シブヤにある会場に向かっていた)

 

(でも、その途中で私達は…目の前が真っ暗になってしまうほどの衝撃を受けた)

 

(後に近くで隕石が落ちてきた事が分かったけれど…当時の私には何が起こったのか、考える余裕も無かった)

 

(一時的に意識を失っていた私が激しく咳き込みながら、目を覚ますと…自分が瓦礫の下敷きになっていると分かった)

 

(幸い、大きな怪我はしていなかったけれど…瓦礫の重みで私はその場から出る事が出来なかった)

 

(このままだと私は助からないかもしれない…そう諦めかけた時、妹の『助けて』という声が聞こえた)

 

(僅かに空いていた瓦礫の隙間から私は…同じように瓦礫の下敷きになった妹を見つけた)

 

(私は妹に声をかけ、瓦礫の間からお互いに手を伸ばしたけれど…妹の手にはなかなか届かなかった)

 

(妹だけでも絶対に助けたい…そう思った私は、近くで埋もれていた金属製のベルトを見つけた)

 

(次の瞬間…私はそのベルトを手に取って、自分の腰に装着した)

 

(すると、私の中で何かが沸き上がり…瓦礫の中から脱出した)

 

(すぐに妹の手を取った私は…意識を失いかけていた妹を安心させる為にこう言った)

 

?「大丈夫よ…私がそばがいる」

 

(それから七年の月日が経って…私は買い出しの帰りに神社へと立ち寄った)

 

(暮れ始めた春の明るい夕日の中…そこには肩で息をしながら、神社に向かう階段を走って上り下りをしている二人の少女がいた)

 

(少女のうちの一人は…もうすぐ高校生になる私の妹だった)

 

(その後、妹ともう一人の少女は何が何だかよく分からない歌を…ほとんどやけっぱちに怒鳴るみたいに空に向かって放ってる)

 

(顎を上げて…懸命に、この空の向こうのどこまでも届きそうなくらいの情熱で)

 

(その後、妹はもう一人の少女から教えてもらいながら…境内でダンスの練習を始めていた)

 

(途中で転んだり、危なっかしく見えたけれど…教える少女も教えてもらっていた妹も本気である事は私にもよく伝わっていた)

 

(…やっぱり、これで良かったんだと思う)

 

(私には…あんな風に無心に走る事も踊る事も、やけっぱちに叫んで歌う事も出来ない)

 

(だから、私は私なりに…天の道を往こうって決めたの)

 

(いつまでも続くようにっていう未来は…私には到底、見えそうには無いけれど)

 

(素敵で羨ましいような未来を…そんな道の先を脇目もふらずに真っ直ぐ見据えて走っていく少女達を)

 

(この先…一体、誰が守ってあげられるといのの?)

 

(そう、おばあさまは言っていた…)

 

(かしこいかわいいエリーチカ…それが出来るのは、あなただけしかいないって)

 

オネエチャーン!

 

エリ「…ふふっ」フリフリ

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

 

ツカサ(オレの作った料理を雪穂達が食べていると…写真館の背景が違うものへと変化した)

 

亜里沙「これが次の世界…?」

 

ツカサ「…そうか、そういう事か」

 

ツカサ(背景には…東京タワーと太陽を差す指が描かれていた)

 

雪穂「いや、どういうことなの…?」

 

ツカサ「ここはカブトの世界だ」

 

雪穂「だから、そうじゃなくて…私の話聞いてる?」

 

ツカサ(オレが雪穂の話をスルーして背景を見つめていると、ツバサが口を開いた)

 

ツバサ「この世界では…隕石に取り付いて宇宙から地球にやって来たワームという生命体がいるの」

 

雪穂「ワームっていうことは…虫みたいな姿をしてたりするんですか?」

 

ツバサ「ええ、基本的にワームは…サナギ体と地球の昆虫や節足動物によく似た外見や能力を持つ成虫体の二種類がいるの」

 

ツバサ「そしてワームには大きな二つの特徴があるわ…まず一つは人間に擬態する能力」

 

雪穂「擬態かぁ…そういえばファンガイアやオルフェノクにも人間の姿がありますけど、ワームの擬態は何が違うんですか?」

 

ツバサ「襲おうとする人間と瓜二つになると同時に…記憶や人格、嗜好までもをコピーするの」

 

雪穂「襲おうとする人間とそっくりに?…あっ!」

 

アラクネアワーム『あなたが消えれば、私は私になれる…』

 

雪穂「まさかあの時、私に化けてたのって…?」

 

ツバサ「心当たりがあるなら話が早いわね…そう、ワームはコピー元の人間を襲って入れ替わる事で人間社会に紛れ込むの」

 

ツカサ「まるで何事も無かったかのように…な」

 

雪穂「そんな…」

 

ツバサ「そしてもう一つ…成虫体のワームはクロックアップという能力が使えるの」

 

雪穂「クロックアップ?」

 

ツバサ「簡単に言うと、音や光のように高速で動く事が出来るの…まるで周りが止まっているかのように見えるくらいにね」

 

雪穂「それが…クロックアップ」

 

ツバサ「そんなワームに対抗する為に作られたのが…ZECTという組織が製作したマスクドライダーシステムよ」

 

ツバサ「カブトを始めとしたマスクドライダーシステムも…成虫体のワームと同じように、クロックアップが使えるの」

 

雪穂「…それで、私達は明日からこの世界で何を?」

 

ツカサ「明日から?」

 

雪穂「いや、だって…どうせ今動いても何にもならないんでしょ?」

 

ツカサ「へぇ…よく分かってるじゃないか」

 

雪穂「今でもあんまり納得してないけどね…」

 

ツバサ「そうね…今回はあなた達三人で自由に行動してみると良いわ」

 

ツバサ「ひょっとしたら良い出会いがあるかも…ね?」ガタッ

 

亜里沙「…?」

 

ツカサ(亜里沙を見ながらそう言ったツバサは立ち上がると…)

 

ツバサ「ごちそうさま」スタスタ

 

ツカサ(足早に自分の部屋へと戻っていった)

 

ガチャ…バタン

 

雪穂「自由に行動する…か」

 

亜里沙「…あっ、思い出した!」ガタッ

 

ツカサ(何かを思い出した亜里沙は…突然、立ち上がった)

 

ツカサ「どうした?」

 

亜里沙「私たちの世界でカブトになったのは…私のお姉ちゃんだ!」

 

雪穂「あっ…そういえば、確かに私のお姉ちゃんが絵里さんのことをカブトって呼んでた!」

 

亜里沙「だから、こっちの世界のカブトも…きっと私のお姉ちゃんだよ!」

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

亜里沙「こうしちゃいられない…早くお姉ちゃんを探さなきゃ!」ガタッ

 

ツカサ「待て…そう焦るな、もう夜中だぞ?」

 

亜里沙「でも…」

 

ツカサ「今日はゆっくり休め」

 

ツカサ「明日になったら…オレが一緒に探してやるから、な?」

 

亜里沙「…分かった」シュン

 

ツカサ「よし…じゃあ、まずは腹ごしらえだ」

 

亜里沙「うん…」

 

ツカサ(椅子に座った亜里沙は…食事を再開した)

 

雪穂「ねえ…前から思ってたんだけどさ、何か亜里沙にだけ優しくない?」

 

ツカサ「はぁ?…気のせいだろ」

 

雪穂「そうかなぁ…?」モグモグ

 

 

 

ツカサ(ゆっくり休んだ次の日の朝…オレ達は写真館を出た)

 

ツカサ「…何だこれ」

 

ツカサ(オレの服装は作務衣に変わっていた)

 

ツカサ(作務衣の裏地をよく見ると…そこには『天道ツカサ』という刺繍が入っていた)

 

ツカサ「天道…それがこの世界でのオレの名字か」

 

ツバサ「二人とも…はい、これ」サッ

 

ツカサ(ツバサは雪穂と亜里沙にある道具を渡した)

 

雪穂「これは?」

 

ツバサ「それはゼクトマイザー…スイッチを押すと小さなカブト虫型の爆弾が敵に向けて発射されるようになっているの」

 

ツバサ「もし彼が近くにいない時に、ワームに会ったら…この道具を使って逃げなさい」

 

雪穂「これでワームを…分かりました」

 

亜里沙「ありがとう、ツバサさん!」

 

ツバサ「どういたしまして…それじゃ、私は用事があるから」スタスタ

 

ツカサ「あっ…おい待て!」

 

ツカサ(しかし、ツバサは…振り向く事も無くその場から去ってしまった)

 

亜里沙「行っちゃったね…」

 

ツカサ「エリがどこにいるか聞こうと思ったんだが…全く、仕方ないな」ハァ

 

雪穂「きっと自分で探せってことじゃない?」

 

亜里沙「じゃあ…とりあえず行ってみよっか!」ダダッ

 

ツカサ「…亜里沙、やけに元気だな」

 

雪穂「たぶん…エリさんに会えるからだと思う」

 

ツカサ「会えるって…別の世界の人間なのにか?」

 

雪穂「確かにそうだけど…それでも、亜里沙にとって大切なお姉さんであることには変わりないんじゃないかな?」

 

ツカサ「…そういうもんなのか?」

 

雪穂「そういうものなんじゃないかな…私にもお姉ちゃんがいるから、そう思っちゃうだけなのかもしれないけど」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「早く来ないと置いてっちゃうよー!」

 

雪穂「はーい!」ダッ

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツカサ(ひとまずオレ達は…写真館の近くにある小さな坂を登って行く事にした)

 

 

 

?(私はおばあさまのお店から近い場所にある聖堂にやってきた)

 

?「こんにちは」

 

シスター「あら…エリちゃんじゃない、こんにちは」

 

エリ(近づいて見上げる大きな鐘楼の緑青色のドーム型の屋根の天辺には独特な形の十字架が光っていた)

 

エリ(小さい頃から私は…この聖堂によく通っていた)

 

エリ「…」

 

エリ(聖堂に入ってすぐに私は…祈りを捧げていた)

 

エリ(神様、あなたのアナスタシヤであるエリーチカの心からのお願いです)

 

エリ(これからもこの世界でずっとずっと…平和な時間が続いていきますように)

 

エリ(この世界のあちこちで輝いてる思い出の全てが)

 

エリ(たくさんの美しい記憶が…どうかこれからも、皆の中で積もり続けますように)

 

エリ(いつかこの世界の全ての幸せを、今度は私が守る番になれるよう…)

 

エリ(皆の為に役立てる本当の愛と勇気の力を…どうか私に与えてください)

 

~♪

 

エリ(お祈りを終えて聖堂の外に出ると…私の携帯に電話がかかってきた)

 

ピッ

 

エリ「…はい」

 

エリ「ええ、元気にやっていますわ…おばあさま」

 

エリ「もちろん、おばあさまの愛した街ですもの…私が必ず守ってみせます」

 

エリ「ありがとう、それじゃ…また」ピッ

 

エリ(私が電話を切ると、一人の少女が私のもとにやってきた)

 

?「お姉ちゃん!」

 

エリ「アリサじゃない…どうしたの?」

 

アリサ「それが…おばあさまのお店が!」

 

エリ「…!」

 

エリ(私は妹のアリサと一緒に、急いでおばあさまのお店へと向かった)

 

 

 

ツカサ(オレ達が坂を登っていると、途中で亜里沙がこんな事を言った)

 

亜里沙「そういえばこの坂、どこかで見たことあるような…」

 

雪穂「どこかって…私達の世界で?」

 

亜里沙「うん、おばあさまのお店に行く時に登る坂から見える景色がよく似てて…!」ピタッ

 

ツカサ(次の瞬間、亜里沙が一軒の店を見て立ち止まった)

 

雪穂「…どうしたの亜里沙?」

 

亜里沙「もしかしたら、このお店かも…」

 

ツカサ(木製のドアとその横の小さな窓、そして屋根の上には『ビストロ・サル』と書かれた大きな看板が掲げられていた)

 

ツカサ「店の名前は同じなのか?」

 

亜里沙「ううん、おばあさまのお店は違う名前だよ…『赤いサラファン』っていうロシア料理のお店なの」

 

ツカサ「ロシア料理店か…とりあえず、入ってみるか?」

 

亜里沙「うん!」

 

カランカラン…

 

ツカサ(オレがドアを開けると、軽くドアベルの音が鳴った)

 

雪穂「こんにちは~…って、あれ?」

 

ツカサ(店内は荒れており…椅子やテーブルがあちこちでひっくり返っており、割れた皿の破片も床に散らばっている状態だった)

 

ツカサ「これは…酷い有り様だな」

 

ツカサ(オレがそう言うと、カウンター奥の厨房から店員と思われる一人の少女が顔を出した)

 

少女「…あっ、さっきの食い逃げ!」

 

ツカサ(その少女は…オレの顔を指差して、確かにそう言っていた)

 

ツカサ「はぁ?」

 

亜里沙「食い逃げって…?」

 

雪穂「お金を払わずにお店の物を食べて逃げることだよ…って、何してるのツカサ!?」

 

ツカサ「いや、オレは何も…」

 

?「へぇ…わざわざ戻ってくるなんて、よほど良い度胸をしているのね?」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレ達が振り返ると、そこにはポニーテールにした二人の金髪の少女がいた)

 

エリ「…」

 

亜里沙「お姉ちゃん!」

 

雪穂「と…亜里沙!?」

 

アリサ「…へっ?」

 

ツカサ(亜里沙達はもう一人の亜里沙と亜里沙の姉である絵里によく似た人物に出会い、驚いていた様子だった)

 

ツカサ(だが…オレにとって、今の問題はそこじゃない)

 

ツカサ「いや、だから何の事かオレは…」

 

エリ「あなたのような悪人の話に耳を傾ける気は無いわ…アリサ!」

 

アリサ「あっ…うん!」サッ

 

ツカサ(アリサが紐を取り出すと、それをエリに渡した)

 

ツカサ(エリは素早くオレの背後に回り込むと…両手首を掴んだ)

 

エリ「…」ググッ

 

ツカサ「痛っ!?…おい、何すんだ!」

 

エリ「決まってるでしょ?」ギュッ

 

ツカサ(エリは紐でオレの両手首を縛ると、人差し指で天を指しながらこう言った)

 

エリ「おばあさまは言っていた…不味い飯屋と悪の栄えた試しは無い」ポンッ

 

ツカサ「うわっ!?…っ!」バタッ!

 

ツカサ(エリに背中を押されたオレはバランスを崩すと…そのまま床に倒れてしまった)

 

亜里沙「ハラショー…!」

 

エリ「ヒヨリ、後は煮るなり焼くなり…好きにしなさい」

 

ヒヨリ「助かったよ…ありがとね、エリ!」

 

ツカサ「ぐっ、何なんだこれは…!」

 

雪穂「派手にやられたね…大丈夫、ツカサ?」

 

ツカサ「こんな事されて大丈夫な訳が無いだろ…おいアンタ、ヒヨリとか言ったな?」

 

ヒヨリ「何?」

 

ツカサ「オレは食い逃げなんかしていない…さっさとこの紐を解いてくれ!」

 

ヒヨリ「…さて、早くお店の掃除しないと」スタスタ

 

ツカサ「おい…無視するな!」

 

ツカサ(一方、二人の亜里沙はお互いを見つめ合っていた)

 

アリサ「髪型の違うアリサがもう一人…!」ジー

 

亜里沙「髪型は違うけど、私と同じだ…!」ジー

 

エリ「…それで、あなた達は?」

 

雪穂「あっ、私達ですか?私達は…」

 

亜里沙「別の世界から来たの!」

 

エリ「…え?」

 

雪穂「あぁ~もう亜里沙ってば…ごめんなさい、ちゃんと一から説明しますね!」

 

ツカサ(雪穂はエリ達に事情を説明していた)

 

ツカサ「おい…オレを放置するな!」

 

 

 

エリ「別の世界があったなんて…にわかには信じられない話ね」

 

雪穂「やっぱり、そうですよね…」

 

エリ「…でも、実際にもう一人のアリサがいるわけだし」

 

エリ「あの子達が仲良くなってるなら…きっと、信じても大丈夫なんでしょうね」

 

雪穂「えっ?」

 

ツカサ(亜里沙はアリサのノートを見ていた)

 

亜里沙「この妖精さん、あなたが描いたんだ…すごく上手だね!」

 

アリサ「えへへ…ありがとう!」

 

亜里沙「それとこっちは…スクールアイドルの、衣装?」

 

アリサ「えっ、知ってるの?スクールアイドル…」

 

亜里沙「うん…私も雪穂とスクールアイドル目指してるんだ!」

 

アリサ「本当!?アリサたち、一緒だね!」

 

亜里沙「ホントだね!」

 

アリサ「実はアリサ、本当なら今ごろはロシアに帰ってたかもしれないの…地元の高校が廃校になりそうだったから」

 

亜里沙「えっ…?」

 

アリサ「でもね、ヒヨリさんがスクールアイドルになって学校を宣伝してくれて…廃校しないことになったんだ!」

 

亜里沙「本当に?…ヒヨリさん、すごいね!」

 

ヒヨリ「いや、そんな…まあ時代が僕に追いついたっていうか?」

 

エリ「ちょっと…ヒヨリ?」

 

ヒヨリ「はいはい…といってもバレエの経験があるエリから、ダンスにするのに基礎的なものを教えてもらってたからね」

 

ヒヨリ「それが形になるまで…エリには散々、鍛えさせられたけどね」アハハ

 

亜里沙「そっか、こっちのお姉ちゃんもダンスを教えてたんだ…すごいなぁ」キラキラ

 

エリ「…こっちの私、も?」

 

亜里沙「うん、私の世界にいるお姉ちゃんも仲間のみんなにダンスやトレーニングを教えたりしててね…」

 

アリサ「ホントに!?それでそれで?」

 

亜里沙「その仲間のみんなと一緒にスクールアイドルになったの…『ラブライブ!』にも優勝して!」

 

エリ「『ラブライブ!』…それは何?」

 

雪穂「あっ…『ラブライブ!』っていうのは、スクールアイドルの全国大会のことです」

 

エリ「そう…あなたの世界にいる私はスクールアイドルになったのね」フフッ

 

亜里沙「うん!」

 

アリサ「アリサも見たいなぁ、お姉ちゃんがスクールアイドルになる姿…」キラキラ

 

ヒヨリ「僕も僕も!スッゴく人気あるんだろうな…あの時だって、エリが一緒にやってくれたらきっと」

 

エリ「ヒヨリ…余計な事を言うのはやめて」

 

ヒヨリ「あはは、悪い悪い…」

 

ツカサ(エリに咎められ、ヒヨリは厨房に戻っていった)

 

雪穂「…あの、エリさん」

 

エリ「何?」

 

雪穂「エリさんは…『カブト』について何かご存知ですか?」

 

エリ「…残念だけど、聞いた事も無いわね」

 

亜里沙「えっ…そうなの?」

 

エリ「ごめんなさいね…」

 

亜里沙「そっか…でも私、この世界のお姉ちゃんやアリサに会えて良かった!」

 

エリ「私も嬉しいわ…まさか、別の世界から来た妹に会えるなんてね」フフッ

 

アリサ「アリサも…亜里沙と友達になれて嬉しいよ!」

 

亜里沙「えへへ…」

 

エリ「…!」ガタッ

 

ツカサ(亜里沙が照れていると突然、エリが何かを思い出したように立ち上がった)

 

アリサ「どうしたの、お姉ちゃん…?」

 

エリ「ごめんなさい…ちょっと大切な用事を思い出しちゃってね」

 

亜里沙「用事?」

 

エリ「ええ、でも…すぐに帰るから安心して?」

 

アリサ「…うん、分かった!」

 

エリ「それじゃ、ヒヨリ…店番を頼むわね?」スタスタ

 

ヒヨリ「ああ」

 

亜里沙「行ってらっしゃい、お姉ちゃん!」

 

エリ「それじゃ…ゆっくりしてってね?」ガチャ

 

雪穂「あっ…はい!」

 

バタン

 

ツカサ「…おい、雪穂」

 

雪穂「何?」

 

ツカサ「いつまでオレをほったらかしにするつもりだ!?」

 

ツカサ(オレは未だに両手首を縛られたままだったうえに…いつの間にか両足首まで縛られていた状態だった)

 

雪穂「いや…でも、したんでしょ?食い逃げ」

 

ツカサ「する訳が無いだろ…もともと、オレは最初からお前達と一緒にいただろ!?」

 

雪穂「え~…でも、食い逃げしそうな顔してるし」

 

ツカサ「どんな顔だ!?いいから早く外せ!」

 

雪穂「はいはい…よっと」

 

ツカサ(しゃがんだ雪穂は紐を解こうとしたが…)

 

雪穂「あれ?なかなか外れない…」

 

ツカサ(紐は複雑な結び方をしているようで、雪穂があちこち引っ張っているうちに…より頑丈な結びになっていく)

 

ツカサ「…おい、ハサミを貸してもらえ」

 

雪穂「貸してもらえって…食い逃げ犯だと思われてるんだから、そんなの無理に決まってるでしょ」

 

ツカサ(縛られてからだいぶ時間が経過しているせいか…オレの手首は徐々に青く変色しつつあった)

 

ツカサ「全く…本当にがさつだな、お前は」

 

雪穂「!…あっそう、じゃあ自分でどうにかしたら!?」スタスタ

 

ツカサ(機嫌が悪くなった雪穂はオレから離れると…席に座って、メニュー表を開いた)

 

ツカサ「あっ…待て!」ジタバタ

 

ツカサ(それを見たオレが暴れていると…ヒヨリがやってきた)

 

ヒヨリ「なぁ…あんた、本当に反省してるのか?」

 

ツカサ「だから言ってるだろ…反省してるも何もオレはやってない!」

 

ヒヨリ「じゃあ、警察に通報するしかないな…」

 

ツカサ「はぁ…?何でそうなる!」

 

ヒヨリ「決まってるだろ…あんたが食い逃げしたからだよ」

 

ツカサ「ぐっ…分かった、それならオレがこの店を手伝う!」

 

ヒヨリ「え?」

 

ツカサ「掃除でも皿洗いでも料理でも接客でも何でもする…だから、これを解いてくれ!」

 

ヒヨリ「…本当だな?」

 

ツカサ「ああ、本当だ!」

 

チョキン!

 

ツカサ(するとヒヨリは…持っていたハサミで紐を切った)

 

ヒヨリ「じゃあ、しっかりやってもらうからな…?」

 

ツカサ「はぁ…何でオレだけこんな目に遭わなきゃいけないんだ」

 

ツカサ(オレは縛られた痕が残った手首をさすりながら、エリを恨んだ)

 

ツカサ「エリのヤツ…覚えとけよ」

 

 

 

ツカサ(しばらく店の手伝いをした後、オレはテーブル席のフロアの隅にある休憩室で休んでいた)

 

ツカサ「つ、疲れた…」グッタリ

 

ツカサ「それにしてもこの店、やけにそばとかラーメンの注文が多かったが…ロシア料理店じゃなかったのか?」

 

ツカサ「そのうえメニューの『兄貴塩ラ・メーン』や『弟味噌ラ・メーン』というネーミング…一体、誰が考えたんだ?」

 

コンコン…ガチャ

 

ツカサ(休憩室に入ってきたのは亜里沙、ではなく…アリサの方だった)

 

アリサ「あのっ…これ、アリサが作ったまかないなんで良かったら食べてください」

 

ツカサ「…まかない?」

 

ツカサ(アリサはオレのいる机に食器を置いた)

 

ツカサ「これは…おでんか」

 

アリサ「うん…おでんは嫌い?」

 

ツカサ「いや、そんな事はない…ありがとな」フフッ

 

アリサ「…うん!」ニコッ

 

ツカサ「いただきます…」パクッ

 

ツカサ(オレは三つの具を一口ずつ食べた)

 

ツカサ「…うん、美味い」

 

アリサ「ホントに?」

 

ツカサ「本当だ、人生観が変わるかと思うくらいに美味い」

 

アリサ「えっ…そんなに?」

 

ツカサ「ああ…このおでんに比べたら、今まで食べてきたものがまるで豚の餌みたいに感じるくらいだな」

 

アリサ「ふふっ、変なの…でも良かった」

 

アリサ「このおでんはね…アリサとお姉ちゃんとおばあさまが大好きなものだけを入れたの」

 

ツカサ「大根と玉子とがんもか…なるほど、具を最小限にすることで素材から生み出される最大限の味を出しているんだな」

 

アリサ「…ねえ、本当にやってないの?」

 

ツカサ「食い逃げの事か?」

 

アリサ「うん」

 

ツカサ「そうだ、何度でも言うが…オレは食い逃げなんてやっていない」

 

アリサ「そう…でもさっきアリサとヒヨリさんが見たのは、あなただったよ?」

 

ツカサ「オレが…一人だけで?」

 

アリサ「うん、でも一人で来た時のあなたは今のあなたと違って…すごく乱暴な人だったよ」

 

ツカサ「今のオレと違って…!」ハッ

 

ツカサ(アリサの話を聞いたオレは…ある事に気が付いた)

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

アリサ「?」

 

コンコン…ガチャ

 

ツカサ(扉を開けて顔を出してきたのは…ヒヨリだった)

 

ヒヨリ「なあ、ちょっと買い出しを手伝ってくれないか?足りない食材があるんだが…」

 

ツカサ「…よし、良いだろう」

 

ヒヨリ「あんた…食い逃げしたくせに何でそんなに偉そうなんだ?」

 

ツカサ「気にするな」

 

ヒヨリ「いや…それは本来、こっちが言うべき台詞のはずなんだが」

 

ツカサ「ごちそうさま…アリサ、ありがとうな」

 

アリサ「うん!」

 

ヒヨリ「あんた、人の話聞けよ…」

 

ツカサ(オレはヒヨリと共に食材の買い出しに出かけた)

 

 

 

ツカサ「…それで、何でお前達まで着いてくるんだ?」

 

雪穂「いいじゃん別に…ねえ、亜里沙?」

 

亜里沙「うん…私もお姉ちゃんたちの力になりたいし!」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァ

 

ツカサ(オレが溜め息をついた後、雪穂はヒヨリにこんな事を聞いた)

 

雪穂「そういえばヒヨリさんってエリさんとは同級生だったって言ってましたけど…お店でも一緒なんですか?」

 

ヒヨリ「ああ…住み込みで働かせてもらっているんだ」

 

雪穂「えっ、住み込みで?」

 

ヒヨリ「何でもエリのおばあちゃんがフランスに豆腐買いに行ったきり、帰ってこないから人手が足りていないみたいでな…」

 

ヒヨリ「それで僕が働かせてもらっているんだ…高校にいた時、同級生だったエリには色々教えてもらった恩もあるしな」

 

ツカサ「待て、その前に一つ気になる事があるんだが…フランスに豆腐を買いに行ったって何だ?」

 

ヒヨリ「いや、それが僕にもよく分からないんだ…そもそもフランスに豆腐なんて売ってるのかどうかも分からないし」

 

ツカサ「話を聞けば聞くほど謎が深まるな…ん?」

 

ツカサ(オレ達は…近くにある公園で何かに群がっている人々を見かけた)

 

亜里沙「…あれは?」

 

ヒヨリ「ああ…あれはZECTがワームの感知器を無料で配布しているんだ」

 

雪穂「ワームの感知器って…そんな便利なものがあるんですか?」

 

ヒヨリ「そうなんだよ…あの感知器はネックレス型で、人間に擬態したワームが近くにいると緑色から赤色に光るらしい」

 

雪穂「へぇ~…それにしても、ずいぶん人が集まってますね」

 

ヒヨリ「あると便利だからな…」

 

亜里沙「良いなぁ…私も着けたい!」

 

ツカサ「ダメだ」

 

亜里沙「えっ…何で?」

 

ツカサ「タダより高いものはないからな…」

 

亜里沙「ケチ…」

 

ツカサ「まあ、そう言うな…亜里沙にはもっと似合うものをオレがプレゼントしてやる」

 

亜里沙「…えっ、ホント?」

 

ツカサ「本当だ」

 

亜里沙「やった…楽しみにしてるね!」

 

雪穂「ねえ…やっぱり、亜里沙に甘くない?」

 

ツカサ「気のせいだろ」

 

雪穂「そうかなぁ…」

 

ヒヨリ「…ふふっ」

 

ツカサ「どうした?」

 

ヒヨリ「…いや、僕もアリサもエリに同じ事を言われたなと思ってさ」

 

ヒヨリ「『タダより高いものはない…悪い事は言わないから、やめておきなさい』ってね」

 

ツカサ「…そうか」

 

雪穂「そういえばツカサ、ZECTの人がいるけど話しかけなくてもいいの?」

 

ツカサ「今は買い出しの方が先だ…食い逃げだと思われたまま、仕事を途中で投げ出す訳にはいかないからな」

 

ツカサ(オレがそう言った直後…何かが壊された音が聞こえてきた)

 

ガシャーン!

 

ツカサ「!」クルッ

 

亜里沙「何、今の!?」

 

ツカサ(オレ達がもう一度、公園の方を見るとネックレスを積んでいた車が横転していた)

 

隊員A「どうした!?」

 

隊員B「それが…突然、攻撃を受けまして」

 

隊員A「ネックレスは!?」

 

隊員C「ダメです、全て壊されてます!」

 

隊員A「チッ…またアイツか!」

 

ヒヨリ「…またやられたのか」

 

ツカサ「また…?」

 

雪穂「どういうことですか?」

 

ヒヨリ「最近、ああやって誰かにネックレスを壊される事件があちこちで起きているらしい」

 

ツカサ「あの感じだと、ZECTは犯人が誰だか特定してるようだが…どうやら対策の方までは出来ていないみたいだな」

 

亜里沙「そんな…ヒドい」

 

雪穂「もしかして、ワームの仕業とかかな…?」

 

ツカサ「どうだろうな…行くぞ」

 

雪穂「えっ…行っちゃうの?」

 

ツカサ「ああ…これ以上いる必要も無いだろ」スタスタ

 

ツカサ(オレ達は…公園を後にした)

 

 

 

ヒヨリ「もうすぐスーパーだ…こっちに近道がある」

 

ツカサ(オレ達は人があまり通らなさそうな路地に入った)

 

ツカサ(少し先まで歩くと…そこには一体のゼクトルーパーがいた)

 

ゼクトルーパー「…」

 

亜里沙「?」

 

雪穂「あれは…?」

 

ツカサ「お前、誰だ?」

 

ツカサ(ヘルメットを外したゼクトルーパーの素顔は…オレの顔と瓜二つのものだった)

 

擬態ツカサ「…」

 

雪穂「えっ!?」

 

亜里沙「ツカサが…もう一人!?」

 

ツカサ「という事は、お前…ワームだな?」

 

擬態ツカサ「…」ニヤッ

 

ツカサ「雪穂、亜里沙とヒヨリを連れて逃げろ」

 

雪穂「…分かった、行こう!」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

ヒヨリ「…」

 

ツカサ「どうした…早く逃げろ!」

 

ヒヨリ「…!」ダッ

 

ツカサ「…それにしてもお前、オレに擬態するとはなかなか良い趣味をしているようだな?」

 

擬態ツカサ「そうだろ?こうやって擬態すれば…お前はオレを殴れないだろうからな」

 

ツカサ「!」

 

擬態ツカサ「どうだ?悔しいだろ、アッハッハッハ…」

 

ドガッ!

 

ツカサ(オレは偽者の顔を思いきり殴った)

 

擬態ツカサ「ヘブッ!」ドサッ

 

ツカサ「お前、よくもオレの顔で食い逃げしてくれたな?今日のオレは無性に気分が悪いんだ…お前のせいでな!」ゴゴゴ

 

擬態ツカサ「ま、待て…」

 

ツカサ「断る…絶対に許さん」

 

ツカサ「オレになりすますのは十年早い事を…ここで今、証明してやる!」

 

ツカサ(オレはディケイドライバーを装着し、一枚のカードを取り出した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(カードをバックルに装填し、オレはディケイドへの変身を完了させる)

 

擬態ツカサ「グッ…」

 

ディケイド(顔をしかめたオレの偽者はワームとしての正体を現した)

 

ディケイド(その姿は長い触角を持った黒と白のストライプ状の成体だった)

 

ストライプワーム「これからはオレが…お前に代わって旅をしてやる」

 

ディケイド「それは御免だな…他の世界でも食い逃げなんてされたら、堪ったもんじゃないからな」

 

ディケイド(オレがそう言ってすぐ…それはほんの一瞬の出来事だった)

 

ガッ!

 

ディケイド「うわっ!」

 

ディケイド(ワームはオレに防御させる隙がない程の速さで攻撃を仕掛けてきた)

 

ストライプW「クロックアップできないお前など…オレの敵じゃない」

 

ゴッ!

 

ディケイド「うっ…!」

 

ディケイド(このまま…やられてしまう訳にはいかない)

 

ディケイド(そう思ったオレは、三枚のカードを取り出した)

 

ディケイド「どうかな…そうとも限らないぞ?」

 

ストライプW「何?」

 

ディケイド「マキ…借りるぞ」

 

『カメンライド…ファイズ!』

 

ディケイド(オレはファイズにカメンライドした)

 

ストライプW「ふん…その姿になったところで!」

 

ドカッ!

 

DCDファイズ「ぐっ…」

 

DCDファイズ(ワームの攻撃を受けながらも、オレは二枚目のカードをベルトに装填する)

 

『アタックライド…オートバジン!』

 

ガガガッ!

 

ストライプW「ウワッ!」

 

DCDファイズ(現れたオートバジンが援護射撃し、ワームの動きを一時的に止めた)

 

オートバジン「…」スッ

 

DCDファイズ「これは…!」

 

DCDファイズ(オートバジンはファイズのミッションメモリーをオレに渡した)

 

DCDファイズ「助かった…ありがとな」ポチッ

 

DCDファイズ(オレはオートバジンをバイクに変形させ、ファイズエッジを取り出した)

 

『Ready』

 

DCDファイズ「お前がそこまで言うなら、付き合ってやる…十秒間だけな」

 

ストライプW「何だと…まさか!?」

 

DCDファイズ「ああ、そのまさかだ…」

 

DCDファイズ(オレは三枚目のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『フォームライド…ファイズ!アクセル!』

 

DCDファイズ(アクセルフォームになったオレはファイズアクセルのスイッチを押した)

 

『Start Up』

 

DCDファイズ(スイッチを押したオレはワームの動きに追いつける程に速く活動できるようになった)

 

DCDファイズ「はっ!」ガッ!

 

DCDファイズ(オレはファイズエッジでワームを斬りつけ、怯ませる)

 

ストライプW「グッ…!」

 

DCDファイズ(その間にオレはライドブッカーから一枚のカードを取り出し、バックルに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』

 

DCDファイズ「はぁっ!」

 

DCDファイズ(オレがファイズエッジを下から振り上げると、ワームはファイズエッジの光波で拘束され宙に浮かんだ)

 

ストライプW「グワッ…!?」

 

DCDファイズ(オレはワームに近づき、横一閃に斬りつけた)

 

DCDファイズ「はっ…やぁーっ!」

 

ストライプW「グハァァァ…!」

 

DCDファイズ(最後に下から斬りつけると…ワームは爆発し、緑色の炎がメラメラと燃えた)

 

『3、2、1…Time Out』

 

『Reformation』

 

DCDファイズ(アクセルフォームの効果が切れると…オレは自動的に通常のファイズへと姿を戻した)

 

DCDファイズ「悪いな…オレの勝ちだ」

 

DCDファイズ(自分に擬態した食い逃げ犯を倒してスッキリしたオレだったが…同時に、気が緩んでしまっていた)

 

?「キャストオフ」

 

『Cast Off』

 

DCDファイズ「!?…うわっ!」

 

DCDファイズ(野太い声に気づいたオレが振り向くと、弾け飛ぶ装甲の破片がオレのもとにまでぶつかってきた)

 

『Change Wasp』

 

ザビー「…ディケイド、大人しく我々ZECTに同行してもらいますよ?」

 

DCDファイズ「何だ、お前は…?」

 

ザビー「いやぁ~、残念ですが…今のあなたに質問する権利はありません」

 

DCDファイズ「次から次へと…有名人は辛いな」ハァ

 

ザビー「大人しくしないのであれば、実力を行使するまでです…クロックアップ」

 

『Clock Up』

 

ガッ!ゴッ!

 

DCDファイズ(ベルトのスイッチを押してクロックアップしたザビーは…オレに連続で攻撃を仕掛けてくる)

 

DCDファイズ「しまった…ぐっ!」

 

ザビー「ライダースティング」

 

『Rider Sting』

 

ザビー「ハッ!」ドスッ!

 

DCDファイズ(ザビーは左手のザビーセクターの針で…オレを殴りつけた)

 

DCDファイズ「うわぁっ!」

 

ディケイド(ザビーの技をまともに受けたオレは…カメンライドどころか、変身まで強制解除され吹き飛んでしまった)

 

ツカサ「うっ…」ゴロゴロ

 

ザビー「…シャドウ部隊の皆さん、後はよろしくお願いします」

 

シャドウ隊員「はっ…貴様、早く立て!」

 

ツカサ「ううっ…」

 

ツカサ(シャドウゼクトルーパーに目隠しをされたオレは、無理やりどこかへ連れて行かれる事になった…)

 

 

 

雪穂「…ここまで来たら追ってこないかな」ハァハァ

 

亜里沙「そうだね…ヒヨリさんは大丈夫?」ハァハァ

 

ヒヨリ「な、何とか…」

 

?「あなた達…どうしたの?」

 

雪穂(そこにいたのはエリさんだった)

 

ヒヨリ「エリ…」

 

?「何かあったの?」

 

雪穂「それが…」

 

雪穂(私とヒヨリさんが近づこうとすると、亜里沙は大きな声で止めた)

 

亜里沙「ダメ!」

 

雪穂「えっ?」

 

?「何?急に大きな声を上げて…」

 

亜里沙「私、なんとなく分かっちゃった…この人はたぶん本物のお姉ちゃんじゃない」

 

?「…あなた、どうしてそんな事を言うの?」

 

ヒヨリ「そうだよ…亜里沙ちゃん、謝りなよ」

 

亜里沙「あなた、ワームなんでしょ…お姉ちゃんのフリをするのはやめて!」

 

雪穂「!…私は亜里沙を信じます」

 

ヒヨリ「雪穂ちゃんまで…」

 

雪穂「私にもお姉ちゃんがいます…だから私は、亜里沙の妹としての勘を信じます」

 

亜里沙「答えて…あなたは誰?」

 

?「…フフッ、アハハハハ!」

 

擬態エリ「まさか別の世界の妹に気付かれるなんてねぇ…」

 

雪穂(エリさんの偽者はそう言って、ワームに姿を変えた)

 

フィロキセラワーム「…」

 

亜里沙「雪穂!」

 

雪穂「うん…分かってる!」

 

雪穂(私達がゼクトマイザーのスイッチを押すと…小さなカブト虫型の爆弾が飛び出し、ワームに向かってぶつかって行った)

 

フィロキセラW「!?」

 

雪穂「今のうちに逃げよう!」

 

亜里沙「ヒヨリさんも一緒に!」ダッ

 

ヒヨリ「あ…ああ!」ダッ

 

雪穂(私達は…エリさんに化けていたワームから逃げ出した)

 

 

 

ツカサ「ん…」パチリ

 

ツカサ(目が覚めたオレは…椅子以外、何もない部屋にいた)

 

ツカサ(鮮やかに白色のタイル張りの床や壁が網膜を刺激する部屋の中で…オレは椅子の背に両腕を回された状態で縛られていた)

 

ツカサ「またこれか…ったく、何て日だ」ハァ

 

ツカサ「…ん?」キョロキョロ

 

ツカサ(辺りを見回すと…どうやら部屋にはオレ一人しかいないようだった)

 

ツカサ「何だ、ここには見張りもいないのか…?」

 

ツカサ「いくら縛っているからって…不用心な奴らだな」

 

ツカサ(オレがそうぼやいていると…大きな爆発音と共にサイレンが鳴り響いた)

 

ドカァァァン…ジリリリリ!

 

『侵入者発見、侵入者発見』

 

ツカサ「…本当に不用心だな」

 

ガチャ

 

ツカサ(部屋の扉が開くと、そこには一体のブライトルーパーが入ってきた)

 

ブライトルーパー「…」

 

ツカサ「研修中のZECT隊員が何の用だ?侵入者ならオレは見てないが…というか、そもそも何でオレを捕まえた?」

 

ブライトルーパー「…」カポッ

 

ツカサ(ヘルメットを外したブライトルーパーの正体は…驚きの人物だった)

 

エリ「ふぅ…あなた、こんな所で何をやっているの?」

 

ツカサ「アンタは…!?」

 

エリ「まさかあなた…縛られるのが趣味なの?」

 

ツカサ「そんな訳あるか!アンタこそ、何でここに…」

 

エリ「食い逃げをしたあなたに…それを言う必要がある?」

 

ツカサ「ぐっ…もういい、それよりこれを外してくれないか?」

 

エリ「イヤよ」

 

ツカサ「アンタなぁ…いい加減にしろ!」ジタバタ

 

エリ「…」ハァ

 

ガシャン!

 

ツカサ(エリは装備していたマシンガンブレードを使って…オレの拘束を解いた)

 

ツカサ「やっと動ける…」フゥ

 

エリ「…」スタスタ

 

ツカサ「あっ…ちょっと待て!」ダッ

 

ツカサ(オレは部屋から出ていったエリの後を追った)

 

 

 

雪穂(エリさんの偽者から逃げた私達は…さっき通った公園まで戻ってきた)

 

雪穂「はぁはぁ…」ゼェゼェ

 

亜里沙「もう走れない…」ハァハァ

 

雪穂「ヒヨリさんは大丈夫?」

 

ヒヨリ「ああ、何とか…」フゥ

 

女性「…逃がさない」ボソッ

 

雪穂(疲れ切った私達の前に…一人の女性が現れた)

 

雪穂「えっ…!?」

 

雪穂(女性は全身が緑色のワームに変化した)

 

サナギワーム「…」

 

ヒヨリ「…!」

 

雪穂(それに続くように周囲から同じ姿のワームの集団が現れ…私達はついに取り囲まれてしまった)

 

雪穂「これ、さすがにマズいかも…」

 

亜里沙「雪穂…」

 

ヒヨリ「…うっ!?」

 

雪穂(すると、突然…ヒヨリさんが苦しみ始めた)

 

雪穂「ヒヨリさん?」

 

亜里沙「大丈夫?」

 

ヒヨリ「うう…うわぁぁぁぁぁ!!」

 

雪穂(ヒヨリさんが叫んだ瞬間、周りにいたワームは全て爆発した)

 

雪穂「うわっ!」

 

亜里沙「きゃっ…!?」

 

シシーラワーム「…」

 

雪穂(私達が目を開けると…そこにはワームに変化したヒヨリさんがいた)

 

亜里沙「ヒヨリさんが…ワーム?」

 

シシーラW「…えっ?」

 

雪穂(何が起こったのか分からない様子だったヒヨリさんは、ワームになった自分の手を見つめ…)

 

シシーラW「い…いやぁぁぁ!!」ダッ

 

雪穂「ヒヨリさん!?」

 

亜里沙「待って…!」

 

雪穂(私達はどこかへ走ろうとするヒヨリさんを追いかけた…でも、ヒヨリさんの姿は一瞬で見えなくなってしまった)

 

亜里沙「…いない?」

 

雪穂「もしかして、今のがクロックアップ…?」

 

 

 

ツカサ(ZECTのアジトを出たオレとエリは…近くの廃墟まで走っていた)

 

ツカサ「ここまでくれば大丈夫か…?」ハァハァ

 

エリ「そうね…あなたの後ろにいる彼さえ倒せば、の話みたいだけど」

 

ツカサ「…!」クルッ

 

ツカサ(オレが振り返ると…そこには不気味に笑みを浮かべる中年の男がいた)

 

男「いやぁ~、困りますね…逃げるだなんて」

 

ツカサ(オレはその野太い声に聞き覚えがあった)

 

ツカサ「!…もしかしてさっき、ザビーに変身していたのはお前か?」

 

男「いやぁ~、参ったな…まさかもうバレてしまうだなんて」ポリポリ

 

ツカサ(男が照れくさそうに頭を掻いていると、エリは男にある質問をぶつけた)

 

エリ「…あなたが、あのネックレスを製造した張本人ね?」

 

男「これはこれは絢瀬エリさん…ご挨拶が遅れました、私はZECTの開発担当、ネギシと申します」

 

ネギシ「いやぁ~、しかし残念だなぁ…あなたこそがワーム殲滅の先頭に立ってくれるライダーだと思っていたんですけど」

 

ネギシ「まさか我々の基地に潜入して、ネックレスの製造マシンを破壊してくるだなんて思いもしませんでしたよ」

 

ネギシ「ねぇ…カブト」

 

ツカサ(ネギシは魔を帯びた目つきでエリを見つめる)

 

エリ「…」キッ

 

ツカサ(エリはネギシに対して厳しく睨み付けながらこう言った)

 

エリ「私の目は誤魔化せないわ…あのネックレスは、ワーム感知器なんかじゃない」

 

ツカサ「胡散臭いとは思っていたが、やはりそうか…本当はどういう物なんだ?」

 

エリ「アレは人間を…ワームに変えてしまう危険な物よ」

 

ツカサ「!」

 

ネギシ「いやぁ~、困りますね…よくもまあそんな嘘を」

 

ネギシ「大体、あのネックレスはワームの感知器…ただそれだけの物ですよ?」

 

エリ「それはネックレスを世界中にばらまくための方便に過ぎないわ…」

 

エリ「地球上に存在しないあのネックレスの石は…何かしらの条件で、人間を強制的にワームに変化させる物質だった」

 

ツカサ「!…なるほど、やはりタダより高いものなんて無かったという事だな」

 

エリ「とにかく、これ以上は…ネックレスの製造を許す訳にはいかないわ」

 

ネギシ「いやぁ~…何もかもお見通し、という訳ですか」

 

ネギシ「仕方ありませんね…こうなったら私が直々に、あなた達を葬りましょう」

 

ツカサ(ネギシはザビーには変身せず、蝉によく似たワームに変化した)

 

セミワーム「…」

 

ツカサ「くっ、こうなったらオレが…なっ!?」

 

ツカサ(オレがカードとバックルを取り出すと、オーロラが突然現れた)

 

ツカサ「まさか、また…うわっ!?」

 

ツカサ(オーロラはオレだけを通し、オレは別の世界へ飛ばされてしまった)

 

エリ「!」

 

セミW「一人いなくなりましたか…ですが、良いでしょう」

 

セミW「我々の正義の為に…あなたには消えてもらうとしましょう」

 

エリ「…馬鹿馬鹿しいわね」

 

セミW「?」

 

エリ「おばあさまは言っていた…正義とは私自身、私が正義よ!」

 

エリ「変身!」

 

『Henshin』

 

カブト「…キャストオフ!」

 

『Cast Off』

 

セミW「ウッ…」

 

『Change Beetle』

 

カブト「…はっ!」ダッ

 

 

 

ツカサ(オレは小さな神社の境内にいた)

 

ツカサ「ここも世界の狭間という事は…ナルタキ、またオレの邪魔をするつもりか?」

 

ツカサ(オレは背を向けているナルタキを見つけ、声をかけた)

 

ナルタキ「おや、私の仕業だと気付くとは…さすがの君も馬鹿ではないようだね?」

 

ツカサ「早くここから出せ」

 

ナルタキ「残念だが…それは無理だ」

 

ツカサ「それなら…力ずくで出してもらうまでだ!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(オレはディケイドに変身し、ナルタキに向かっていく)

 

ディケイド「はぁっ!」ダッ

 

ゴッ!ガッ!

 

ディケイド「うっ!?」

 

ディケイド(だが…途中で何者かの攻撃を受けてしまう)

 

ナルタキ「君の旅は…ここで終わる」

 

『Clock Over』

 

ディケイド(ナルタキの前には…二人のライダーか立っていた)

 

パンチホッパー「兄貴…ここにもいたよ、ライダーが」

 

キックホッパー「ああ…行くぜ、兄弟」

 

ディケイド「地獄兄弟か…色んな意味で面倒なのが出てきたな」ハァ

 

『Rider Jump』

 

ディケイド(地獄兄弟はそれぞれのホッパーゼクターを操作し、跳び上がる)

 

ディケイド「こうなったら一か八か…!」

 

ディケイド(オレは一枚のカードをディケイドライバーに入れた)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

キックホッパー「ライダーキック…!」

 

『Rider Kick』

 

パンチホッパー「ライダーパンチ…!」

 

『Rider Punch』

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

ディケイド(オレは地獄兄弟と、お互いの技を激しくぶつけ合った…)

 

 

 

カブト(私はカブトクナイガンをクナイモードに変形させて、ワームと戦っていた)

 

カブト「…!」ザシュッ!

 

セミW「ウッ…」

 

カブト「これ以上…あなた達の好きにはさせない」

 

セミW「フフフ…それはどうですかね?」

 

カブト「何ですって?」

 

セミW「今に分かりますよ…」

 

カブト「…クロックアップ!」

 

カブト(私はクロックアップする為に、ベルトの側面にあるスイッチを押した)

 

カブト「!?」

 

カブト(でも…クロックアップは発動しなかった)

 

カブト「これは…どういう事!?」

 

セミW「いやぁ~、どうやら我々のもう一つの計画は知らなかったみたいですね?」

 

カブト「もう一つの計画?」

 

セミW「そうです、それはマスクドライダーシステムのクロックアップ能力を無効化する…クロックダウン計画」

 

カブト「クロックダウン…そんな!」

 

セミW「もうクロックアップが出来ないあなたなど…我々の敵ではありません」

 

ガッ!

 

カブト(ワームは私の胸元に飛び込むと、攻撃を仕掛けてきた)

 

カブト「…!」

 

カブト(私は何とかそれを防御し、ワームとの距離を取った…でも)

 

セミW「無駄ですよ」

 

バキッ!ゴッ!

 

カブト「…っ!」

 

カブト(ワームは超高速で私に接近し、連続で攻撃していく)

 

カブト「うっ…」ヨロッ

 

セミW「私は…残念に思っているんです」

 

カブト「…?」

 

セミW「我々、ワームと共存しようとしない愚かな人間を…哀れにすら思っているんですよ?」

 

カブト「なっ…勝手にこの星にやってきて、命を奪ってまで人になりすますあなた達が何を言っているの!?」

 

セミW「だから、我々は人類を全てワームにしようとしたんですよ…それこそが真の平和をもたらす一番の方法ですからねぇ」

 

カブト「あなた…!」ダッ

 

カブト(私はワームをカブトクナイガンで斬りつけようとした…でもそれは叶わなかった)

 

ガガガッ!

 

カブト「あっ…!」

 

カブト(ワームを援護しにやって来たシャドウ隊員達がマシンガンブレードで射撃し、私にダメージを与える)

 

セミW「終わりです…」

 

カブト「!?」

 

シャドウ隊員「撃て!」

 

カブト(その直後、シャドウ隊員の放ったバズーカが私に直撃した)

 

カブト「うっ…!」

 

カブト(吹き飛び、倒れた私の上に…コンクリートの塊が雪崩のように落ちてきた)

 

カブト(私の意識は…そこで途切れてしまった)

 

ネギシ「いやぁ~…シャドウ部隊の皆さん、お疲れ様でした」

 

シャドウ隊員「はっ!」

 

ネギシ「こうなってしまえば…さすがのカブトも生きてはいないでしょう」

 

ネギシ「さて、邪魔なカブトがいなくなった今…我々の計画は完成します」スタスタ

 

ネギシ「あとは彼女さえいれば…ね」ニヤリ




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「そばに居ない時は、もっとそばに居てくれる」

「おいで…ヒヨリ」

「おばあちゃんが言っていた…世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ」

「きっとスクールアイドルをやっているお姉ちゃんも…楽しんでるんだろうなって」

第13話『絵に描く道』

天の道を往き、総てを司る!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話『絵に描く道』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここはカブトの世界だ」

ツカサ「天道…それがこの世界でのオレの名字か」

エリ「おばあさまは言っていた…」

アリサ「アリサがもう一人…」

亜里沙「私と同じだ…」

ヒヨリ「ZECTが無料で配布してるワームの感知器らしい」

DCDファイズ「付き合ってやる…十秒間だけな」

エリ「アレは人間を…ワームに変えてしまう危険な物よ」

セミW「どうやら我々のもう一つの計画は知らなかったみたいですね…それは、クロックダウン計画」

シシーラW「い…いやぁぁぁ!!」


エリ「ぐすっ…ひっく」

 

エリ(小さい頃、私はバレエのオーディションで思うような結果が出せず…泣きじゃくっていた事があった)

 

エリの祖母「またダメだったの?」

 

エリ「ごめんなさい…!」

 

エリの祖母「大丈夫、オーディションなんて気にしなくていいわ…あなたはかしこいかわいいエリーチカなのだから」ナデナデ

 

エリ「おばあさま…」

 

エリの祖母「よく聞きなさいエリーチカ…あなたが望みさえすれば、運命は絶えずあなたに味方する」

 

エリ「…?」

 

エリ(まだ幼かった私は…その時に言われたおばあさまの言葉の意味がよく分かっていなかった)

 

エリ「絢瀬エリです、よろしく」ガタッ

 

エリ(高校生になった私は…誰とも馴れ合おうとはしなかった)

 

エリ(友達?そんなもの…私にはいらない)

 

エリ(私はそう思っていた)

 

エリ(そんな時、校舎の階段で一人の生徒が声をかけてきた)

 

?「ねぇ、君…絢瀬さんで合ってるよね?」

 

エリ「…あなたは?」

 

?「僕は…カガミヒヨリ!」

 

エリ(それから彼女は…しつこく私に話しかけてきた)

 

エリ(始めは迷惑がっていた私だったけれど…彼女と会話をするのが段々、楽しくなってきていた)

 

エリ(次第に私は彼女の事をアリサとはまた別の…妹のように思っていた)

 

エリ(彼女のおかげで、いつしか私は…他の生徒とも接する事が出来るようになっていた)

 

エリ(それから二年後、私は担任の先生に説得されて…学校の生徒会長を任される事になった)

 

エリ(私の補佐をする副会長は…ヒヨリだった)

 

ヒヨリ「よろしくね、絢瀬さん!」

 

エリ「…ええ」

 

エリ(その時、学校が廃校になる事は既に決まりかけていた)

 

エリ(だからこそ…やると決めたからには絶対にこの生徒会で総てを終わらせようと、私は決心していた)

 

エリ(廃校に向けて、学校と街を愛してくれた人を後悔させないような…そんな美しい終わり方でこの学校に締めくくりたい)

 

エリ(その為に私は…生徒会長として学校行事や部活を盛り上げたり、タイムカプセルや植樹などの定番イベントを計画していた)

 

エリ(それを本格的に始動させるはず、だったんだけど…)

 

エリ「スクールアイドル…?」

 

ヒヨリ「あれ…知らない?今、人気の部活として注目されてるんだよ!」

 

エリ「そんな事は私も知ってるわ…それで、何が言いたいの?」

 

ヒヨリ「もし僕がこの学校のスクールアイドルになれば…入学希望者も増えて、学校も存続できるんじゃないかと思ってさ!」

 

エリ「却下」

 

ヒヨリ「決めるの早っ!?」

 

エリ「私は認めない…そんな甘い考えで学校の名前を背負ってやってほしくないの、話はそれだけ」スタスタ

 

ヒヨリ「待って!」

 

エリ「…」ピタッ

 

ヒヨリ「じゃあ…もしそれが上手く行って人を惹きつけられるようになったら、僕を認めてくれる?」

 

エリ「無理よ」

 

ヒヨリ「どうして…?」

 

エリ「小さい頃にバレエをやってきた私にとっては…スクールアイドル全部が素人にしか見えないの」

 

エリ「一番上手いと言われているスクールアイドルだって…素人にしか見えない」

 

ヒヨリ「…そんな」

 

絵里「話は終わり」

 

ヒヨリ「待ってよ!僕達にも友情ってものがあると思うんだよ、だからさ…」

 

エリ「おばあさまは言っていた…友情とは友の心が青くさいと書く」

 

ヒヨリ「えっ…それ、どういう意味?」ポカン

 

エリ「…」スタスタ

 

ヒヨリ「僕、諦めないから…絶対に廃校を阻止してみせるから!」

 

エリ(それ以降、私は何度も彼女の考えを却下したけれど…ヒヨリは諦めなかった)

 

エリ(彼女は独断で理事長から許可を取ると、一人でスクールアイドルとしての活動を始めていた)

 

エリ(しかし、講堂で初ライブの時…観客は私だけしかいなかった)

 

エリ「どうするつもり?」

 

ヒヨリ「…続けるつもりだよ」

 

エリ「何故?これ以上続けても、意味があるとは思えないけど」

 

ヒヨリ「やりたいからだよ!」

 

ヒヨリ「だって…今日は絢瀬さんが来てくれたから!」

 

エリ「…!」

 

ヒヨリ「だから、僕はやりたいんだ…絶対に!」

 

エリ(それからヒヨリは…私にトレーニングのやり方を教えてほしいと頼み込んできた)

 

エリ「全然ダメじゃない…よくこれでここまで来られたわね!」

 

ヒヨリ「ごめん…昨日はバッチリだったんだけど」

 

エリ「基礎が出来てないからムラが出るのよ…足開いて」

 

ヒヨリ「こう?」

 

エリ「ふっ!」グッ

 

ヒヨリ「痛い痛い!」ギギギ…

 

エリ「これで?少なくとも足を開いた状態でお腹が床につくようにならないと」

 

ヒヨリ「えぇ!?」

 

エリ「柔軟性を上げる事は全てに繋がるわ…まずはこれを出来るようにして」

 

ヒヨリ「は、はい…」

 

エリ「それじゃ、今日はここまで」

 

ヒヨリ「えっ…もう!?」

 

エリ「私は冷静に判断しただけよ、自分の実力が少しは分かったでしょ?」

 

エリ「今度のオープンキャンパスには、学校の存続がかかっているの…」

 

ヒヨリ「あっ…そういう事か」

 

エリ「もし出来ないっていうなら早めに言って、時間が勿体無いから」スタスタ

 

ヒヨリ「待って!」

 

エリ「…?」クルッ

 

ヒヨリ「ありがとう」

 

エリ「…え?」

 

ヒヨリ「明日もよろしくね!」ニコッ

 

エリ(次の日も彼女は…トレーニングに来ていた)

 

ヒヨリ「まずは柔軟だよね?」

 

エリ「…辛くないの?」

 

ヒヨリ「え?」

 

エリ「昨日あんなにやって…今日また同じ事をするのよ?第一、上手くなるのかどうかもわからないのに」

 

ヒヨリ「それは…絢瀬さんが教えてくれてるからだよ」

 

エリ「…!」

 

ヒヨリ「確かに練習はスゴくキツイし、身体中痛いよ?」

 

ヒヨリ「でも、僕は…廃校を阻止したいと決めたから」

 

ヒヨリ「だから今日も…よろしくね?」

 

エリ「…厳しく行くわよ?」

 

ヒヨリ「うん」フフッ

 

エリ(それから少し経って…彼女はこんな事を言ってきた)

 

ヒヨリ「僕ね…絢瀬さんと一緒にやってきてずっと思ってた事があるんだ」

 

エリ「…?」

 

ヒヨリ「絢瀬さんって本当は何がしたいんだろうって」

 

エリ「!」

 

ヒヨリ「一緒に居るとさ、分かってくるんだ…絢瀬さんが頑張るのはいつも誰かのためばっかりで」

 

ヒヨリ「いつも何かを我慢してるようで…自分のことは全然、考えてなくて」

 

エリ「…」

 

ヒヨリ「ねぇ、学校を綺麗に終わらせようっていうのも…生徒会長としての義務感なんでしょ?」

 

ヒヨリ「だからさ、教えてほしいんだ…絢瀬さんが本当にやりたい事は何なのか」

 

エリ「…分からないわよ」ボソッ

 

ヒヨリ「えっ?」

 

エリ「そんなもの、分かる訳ないんだからしょうがないじゃない!!」

 

エリ「私だって…好きな事だけやって、それだけでなんとかなるんだったらそうしたいわよ!」

 

ヒヨリ「…絢瀬さん」

 

エリ「自分が不器用なのは分かってる、でも…私は!」

 

エリ「…!」ダッ

 

ヒヨリ「絢瀬さん!」

 

エリ(私は…誰もいないクラス教室の中で一人、自分の席に座って考え込んでいた)

 

エリ「私の、やりたいこと…」

 

エリ「そんなもの…」

 

スッ

 

エリ「…?」

 

エリ(私に手を差し伸べたのはヒヨリだった)

 

ヒヨリ「…」

 

エリ「あなた…」

 

ヒヨリ「絢瀬さん…いや、エリ」

 

ヒヨリ「お願いがあるんだ」

 

エリ「練習?なら、昨日言った課題をまず全部こなして…」

 

ヒヨリ「スクールアイドル、一緒にやらない?」

 

エリ「!…何言ってるの、私がそんな事するわけないでしょ?」

 

エリ「それに別にやりたいなんて…大体、私がアイドルなんておかしいでしょ!」

 

ヒヨリ「僕は思わないよ…だって、エリは可愛いから!」

 

エリ「そんなこと…」

 

ヒヨリ「…だから、大丈夫」

 

ヒヨリ「僕がそばにいる」ニコッ

 

エリ「!」

 

エリ(…私は、とても嬉しかった)

 

エリ(だけど、それでも私は…彼女のその気持ちに応える事は出来なかった)

 

エリ(私は心のどこかで未だに引っ掛かっていた…本当にそうする事が彼女にとっても私にとっても、正しいのかと)

 

エリ「ごめんなさい…やっぱり今の私には、あなたの気持ちに応えられない」

 

ヒヨリ「…そっか、分かった」

 

エリ「でも…一度しか言わないから、よく聞いて」

 

ヒヨリ「…何?」

 

エリ「同じ道を往くのはただの仲間に過ぎない、別々の道を共に立って往けるのは…」

 

ヒヨリ「『友達』だ?」

 

エリ「ええ」

 

ヒヨリ「それも…おばあさまの言葉?」

 

エリ「いえ、私の言葉よ…ヒヨリ」フフッ

 

ヒヨリ「ふふっ…素敵な言葉だね」

 

エリ(私はヒヨリと一緒に笑い合っていた)

 

エリ「じゃあ…今日も厳しく行くわよ!」

 

ヒヨリ「うん!」

 

エリ(それから、私は生徒会長として…スクールアイドルであるヒヨリのサポートに全力で取り組んだ)

 

エリ(そしてオープンキャンパスでの彼女のライブは成功、結果的に入学希望者は増加し…廃校は免れる事となった)

 

エリ(生徒会室で…私達は抱き合った)

 

ヒヨリ「やった…エリ!」ダッ

 

エリ「ヒヨリ!」ギュッ

 

ヒヨリ「ありがとう…」

 

エリ「いいえ、私の方こそ…学校を守ってくれて、ありがとう」

 

ヒヨリ「…うん」グスッ

 

エリ(それから私は、彼女が守ろうとしたものを守ろうと思った…)

 

エリ(学校を卒業してから間もなく…おばあさまの店で住み込みで働く事になったヒヨリは買い出しに行っていた)

 

ヒヨリ「~♪」スタスタ

 

ネイティブワーム「…」

 

エリ「待ちなさい」

 

ネイティブW「!?」

 

エリ(私は太陽を背に立っていた)

 

エリ(私は七年ぶりにライダーベルトを腰に巻き、飛んできたカブトゼクターを掴んだ)

 

エリ(私はワームを倒すカブトの資格者になる為に、小さい頃からずっとトレーニングをしてきた)

 

エリ「私はこの時を待っていた…いや、この一瞬の為に生きてきた」

 

エリ「変身!」

 

『Henshin』

 

エリ(カブトゼクターをベルトにセットした私は…カブトマスクドフォームに変身した)

 

エリ(こうして私は、カブトとしてワームと戦う事になった…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ディケイド「うわっ!」ゴロゴロ

 

ディケイド(地獄兄弟の技を受け、オレの変身は強制的に解除されてしまった)

 

キックホッパー「お前、オレの弟を…!」

 

ツカサ(どうやらオレの技はパンチホッパーだけに命中したらしく…パンチホッパーは既に消失していた)

 

ツカサ「くっ…しかしここまで強いと、逆に笑えてくるな」

 

キックホッパー「お前…今、俺達を笑ったな?」

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(しまった、このワードは禁句だった…)

 

キックホッパー「もう一度だ…!」

 

ツカサ(キックホッパーがホッパーゼクターを操作しようとしたその時だった)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

キックホッパー「!」

 

ツカサ(次の瞬間、見覚えのある光線がキックホッパーに命中していくと…キックホッパーは消失した)

 

ディエンド「お待たせ」スタスタ

 

ツカサ(オレの横に立っていたのはディエンドだった)

 

ツカサ「いや…別に待っていないんだが」

 

ディエンド「あら、照れてるの?」

 

ツカサ「…馬鹿な事を言うな」ハァ

 

ナルタキ「やれやれ…また君か」

 

ディエンド「あら、言ったはずよ?」

 

ディエンド「私は…何度でもあなたの邪魔をするって」

 

ナルタキ「…フン」

 

ツカサ「お前…」

 

ディエンド「さて、早く元の世界に戻りましょう…キバーラ!」

 

キバーラ「はいは~い!じゃあ行っちゃうわね~♡」グルグル

 

ツカサ(ディエンドに呼ばれて飛んできたキバーラは…オレとディエンドの周りを飛び回った)

 

ツカサ(するとオレの意識は…次第に遠のいていった)

 

ナルタキ「小癪な真似を…だが、まあいい」

 

ナルタキ「彼がダメなら彼女達がいる…そろそろ私の力も完全に回復する頃だしな」ニヤリ

 

 

 

ヒヨリ「まさか、僕が…ワームだったなんて」ハァハァ

 

?「ヒヨリ」

 

ヒヨリ「…エリ?」

 

?「私と一緒に来なさい」

 

ヒヨリ「えっ?」

 

フィロキセラW「…」

 

ヒヨリ「…!」

 

擬態エリ「大丈夫…私はあなたの味方よ」

 

ヒヨリ「…どういう事?」

 

擬態エリ「私達は…ZECTの手によって、人工的に作られたワームなの」

 

擬態エリ「最も、あなたはマスクドライダーシステムの実験のショックで覚えていないでしょうけど…」

 

ヒヨリ「…そんなの、嘘だ」

 

擬態エリ「嘘なんかじゃないわ…だから、一緒に行きましょう?」

 

擬態エリ「おいで…ヒヨリ」

 

ヒヨリ「イヤだ…イヤだっ!」

 

擬態エリ「そう、それなら…」

 

フィロキセラW「力ずくで連れていくしかないわね」

 

ヒヨリ「…!」

 

 

 

雪穂(日が暮れ始め…ヒヨリさんを見つけられなかった私と亜里沙はアリサのいるビストロ・サルに戻っていた)

 

亜里沙「ヒヨリさん、見つからなかったね…」

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「お姉ちゃんも戻ってこないし…あれ?」

 

雪穂(近くのテーブル席でアリサは…絵を描いていた)

 

アリサ「~♪」

 

亜里沙「ねぇ…寂しくないの?」

 

アリサ「へっ?」

 

亜里沙「お姉ちゃんもヒヨリさんもいないのに…アリサは寂しくないのかなって」

 

アリサ「…おばあさまは言っていた」

 

亜里沙「?」

 

アリサ「そばに居ない時は、もっとそばに居てくれる」

 

亜里沙「…!」

 

アリサ「だから…アリサは平気だよ!」

 

アリサ「だって、お姉ちゃんもヒヨリさんも…アリサと心で繋がっているから!」

 

亜里沙「そばにいない時は、もっとそばに…そっか」フフッ

 

雪穂「…」

 

カランカラン…

 

ツカサ「絆とは決して断ち切る事の出来ない深いつながり…例え離れていても心と心が繋がっている」

 

亜里沙「ツカサ…!」

 

雪穂「大丈夫だったの!?」

 

ツカサ「一応な…ところで雪穂、ちょっとこっちに来い」

 

雪穂「?」

 

雪穂(私はツカサと外で、お互いに今の状況を説明した)

 

雪穂「カブトに変身したエリさんがZECTに倒されたって…本当にツバサさんがそう言ってたの?」

 

ツカサ「ああ、それにヒヨリが…エリの偽者に連れ去られたらしい」

 

雪穂「エリさんの偽者…そのワーム、私達も会った!」

 

ツカサ「お前達も会ったのか…」

 

雪穂「うん、それと…ヒヨリさんもワームになっちゃって」

 

ツカサ「ヒヨリが…ワームに?」

 

雪穂「うん…」

 

ツカサ「そうか、ワームだったヒヨリと人をワームにするネックレス…」

 

ツカサ「何か関係がありそうだな…」

 

雪穂「…ねぇ、ツカサ」

 

ツカサ「ん?」

 

雪穂「もしかして…二人を助けに行くの?」

 

ツカサ「…当たり前だ、俺は世界の中心のようなものだからな」

 

ツカサ「ならば、この世界は俺が救うべきだ…絶対にな」

 

雪穂「何それ…まあ、いっか」

 

雪穂「どうせ止めても聞かないんだろうし…」

 

ツカサ「へぇ…分かってるじゃないか?」

 

雪穂「あんまり分かりたくないけど…ね」フフッ

 

ツカサ「…」フフッ

 

雪穂(すると、亜里沙が店から出てきた)

 

亜里沙「ツカサ、雪穂!」

 

ツカサ「亜里沙…」

 

雪穂「何かあったの?」

 

亜里沙「今、ZECTが宇宙に通信衛星を打ち上げたって!」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「通信衛星?」

 

亜里沙「うん…テレビでそう言ってた」

 

ツカサ「なるほどな、だいたいわかってきたぜ…奴らのしようとしてる事が」

 

雪穂「…行くの?」

 

ツカサ「ああ…すぐにエリとヒヨリを連れて帰る」ダダッ

 

亜里沙「行ってらっしゃい!」

 

雪穂「…ところで、亜里沙はいつからさっきの話を聞いてたの?」

 

亜里沙「…実は、最初から」

 

雪穂「ふ~ん…そっか」

 

亜里沙「ごめんなさい…」

 

雪穂「いいよ…でも、亜里沙なら『私もお姉ちゃんを助けに行く!』って言い出すと思ってたから」

 

亜里沙「…私ね、アリサのおかげで気づいたんだ」

 

亜里沙「私もお姉ちゃんやツカサと心で繋がっているから…私も、信じて待ってる!」

 

雪穂「亜里沙…」

 

亜里沙「もちろん…私と雪穂の心も繋がってるよ!」

 

雪穂「…うん」フフッ

 

雪穂(私はそのまま亜里沙と一緒に…ビストロ・サルの中に入っていった)

 

 

 

シャドウ隊員「報告します、通信衛星の打ち上げに成功…電波の送信開始まで残り十分です」

 

擬態エリ「ありがとう」

 

ヒヨリ「…ん」パチリ

 

?「目が覚めましたか?」

 

ヒヨリ「お前は…」

 

ネギシ「ZECTの開発担当、ネギシと申します」

 

ネギシ「いやぁ~、しかしいよいよですね…電波の送信開始まであと十分ですよ?」

 

擬態エリ「愚かな人類の歴史は終わり、私達ワームが新たな歴史を刻む時が来る…これ以上の悦びは無いわ」

 

ヒヨリ「一体、僕を捕まえて何をするつもりなの…?」

 

ネギシ「私達はこれから特殊な電波を送信して…世界中にいる多くの人間をワームに変えようとしているんですよ」

 

ヒヨリ「何だって…!?」

 

ネギシ「その為にはどうしても…さっき打ち上げたZECTの通信衛星とあなたのワームとしての力が必要なんです」

 

ヒヨリ「僕の、ワームとしての力…?」

 

擬態エリ「…実験をしている時、あなたには特殊な力が秘められている事が分かったの」

 

擬態エリ「一つの力をより強力に増幅させる能力…それさえあれば、私達の仲間を増やすことなんて容易い事よ」

 

ネギシ「そして、その強力な電波は通信衛星を経由して…ネックレスを持った世界中の人々をワームに変えてしまうのです」

 

擬態エリ「今やネックレスは世界の半分以上の人間に配布された…後は作戦が成功すれば、この世界はワームのものになる」

 

ヒヨリ「そんな…そういえば、本物のエリはどこ?」

 

ネギシ「彼女なら、私が始末させていただきました…」

 

ヒヨリ「!?」

 

ネギシ「いやぁ~、心地良かったですよ…彼女が倒された時の呻き声を聞くのは」

 

ヒヨリ「そんな…!」

 

擬態エリ「…あなたはそこで見ていなさい」

 

擬態エリ「私達が…世界を変えるその時を」ニヤリ

 

 

 

?『助けて…助けて、エリ!』

 

エリ「…」パチリ

 

エリ(夢の中で誰かに呼ばれたような気がした私は…意識を取り戻した)

 

エリ(幸い、私に…大きな怪我は無かった)

 

エリ(でも…私の身体は落下してきた瓦礫によって、ほとんど覆われていた)

 

エリ(辛うじて空いていた隙間から…右手しか伸ばせないような状況だった)

 

エリ「…また、こうなってしまったのね」

 

エリ(さっきの戦いで体力を消耗していた私にはもう…瓦礫を持ち上げられる程の力は残っていなかった)

 

エリ「私もここまで、みたいね…」

 

エリ(さっきまで辺りを照らしていたお天道様の光は、段々と暗くなっていく…今度こそ私はもうダメかもしれない)

 

エリ(そうやって諦めかけていたその時…誰かが私のいる瓦礫のもとまで近付いてきた)

 

ザッザッ…

 

エリ「…?」

 

ツカサ「諦めるな、エリ…その手を伸ばせ」

 

エリ(私に声をかけ、手を伸ばしてきたのは…ツカサと呼ばれていたあの少年だった)

 

エリ「あなたは…」

 

ツカサ「ヒヨリがZECTに捕まった」

 

エリ「!…ヒヨリが?」

 

ツカサ「ああ、だから一緒に…助けに行くぞ」

 

エリ「…でも、ZECTの計画のせいでクロックアップシステムはもう使えないわ」

 

エリ「そんな状態の私が今更、助けに行ったって…」

 

ツカサ「…大丈夫だ」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「オレがそばにいる」

 

エリ「…!」

 

ガタガタガタ…

 

エリ(再び瓦礫が私のもとへ落ちてこようとしている)

 

ツカサ「早くこの手を掴め!」

 

エリ(私はすぐにツカサの手を掴んだ)

 

ツカサ「はっ!」ガガガッ!

 

エリ(ツカサは銃のような武器で、私の周りにあった瓦礫を壊すと…私を引っ張り出した)

 

ツカサ「急ぐぞ!」

 

エリ「…ええ!」ダッ

 

エリ(私達は落ちてくる瓦礫を避けながら、ZECTのアジトに向かって走って行った…)

 

 

 

シャドウ隊員「送信開始まであと一分です!」

 

擬態エリ「ついに…ついに私達の勝利よ!」

 

ヒヨリ「…」

 

ネギシ「いやぁ~、嬉しいですね…いよいよ我々ワームが世界を支配する」

 

ジリリリリ!

 

『侵入者発見、侵入者発見』

 

ネギシ「!?」

 

?「おばあちゃんが言っていた…」

 

擬態エリ「誰ッ!?」

 

?「世の中で覚えておかなければならない名前はただ一つ」

 

ヒヨリ「…?」

 

ガシャン!

 

ツカサ「天の道を往き、総てを司る男…天道ツカサ」

 

ツカサ(オレはドアを蹴破り…人差し指で天を指しながら、ヒヨリ達のいる司令室に入った)

 

ネギシ「いやぁ~…あなたでしたか」

 

ツカサ(オレはネギシをスルーし、エリの偽者に話しかけた)

 

ツカサ「お前がエリの偽者か?」

 

擬態エリ「そうよ…あなたがディケイドね?」

 

擬態エリ「一人で来るなんて、無茶な事をするのね…」フフッ

 

ツカサ「はぁ…おいおい、誰が一人で来たなんて言った?」

 

擬態エリ「?…まさか!?」クルッ

 

ツカサ(別ルートから司令室に入ったエリは…ヒヨリを拘束していた紐を解いた)

 

ヒヨリ「エリ?何で…」

 

エリ「…」

 

ヒヨリ「僕、ワームだったんだよ!?」

 

ヒヨリ「なのに、何で助けに…!」

 

エリ「暴れないの」ギュッ

 

ツカサ(エリはヒヨリを後ろからそっと優しく抱き締めた)

 

ヒヨリ「…!」

 

エリ「ヒヨリ、あなたは私にとってもう一人の妹みたいな存在…そして?」

 

ヒヨリ「…友達」

 

エリ「そう、大切な真実は…いつだってそれだけよ」フフッ

 

エリ「だから、私は…あなたを守る」

 

ヒヨリ「…ありがとう、エリ」

 

エリ「ほら…早く逃げなさい」

 

ヒヨリ「ああ!」ダッ

 

ネギシ「あの子は私が追います」

 

擬態エリ「…頼んだわ」

 

ツカサ(ネギシはヒヨリを追った)

 

ツカサ「待て…!」

 

ガガッ!

 

ツカサ(シャドウ部隊がマシンガンブレードを発砲し…オレとエリの動きを止めた)

 

エリ「そう…あなたが私の偽者ね?」

 

擬態エリ「フフフッ、ようやく会えたわね…それにしても良いの?」

 

エリ「…」

 

擬態エリ「あの子はワームなのよ?彼女を受け入れるような場所なんて、この世界のどこにもないというのに…」

 

ツカサ「違うな」

 

擬態エリ「…何ですって?」

 

ツカサ「この世に一ヵ所だけ、例え世界の全てを敵に回しても妹のような友を受け入れる場所がある」

 

ツカサ「そして…この世に一人だけ、例え世界の全てを敵に回しても大切な人達を守るために戦う少女がいる!」

 

エリ「!…あなた」

 

擬態エリ「…くだらないわね、身を寄せ合うのは弱い者同士がする事よ!」

 

ツカサ「身を寄せ合える場所があったからこそ…彼女は強くなろうとしたんだ!」

 

ツカサ「その為に彼女は一人でずっと…大事な人達や愛する世界を守ってきた」

 

ツカサ「だからこそ…今の彼女は誰よりも強い!」

 

エリ「ツカサ…」

 

ツカサ「同じ顔をしているが、人を欺くだけのお前は彼女の足元には遠く及ばない…虫けら以下だ」

 

擬態エリ「あなた…言わせておけば!」

 

エリ「確かにあなたは私に擬態したつもりでしょうけど…いくら顔をそっくりにしたからって、あなたは私にはなれない」

 

擬態エリ「!?」

 

エリ「何故なら私は…常に進化し続けているのだから」

 

擬態エリ「…あなた、何を言っているの?」

 

ツカサ(エリは人差し指を天に向けて言い放つ)

 

エリ「おばあさまは言っていた…」

 

ツカサ「…」フフッ

 

エリ「私の進化は光より速い、全宇宙の何者も…私の進化にはついてこられない」

 

擬態エリ「さっきから、意味の分からない事をゴチャゴチャと…あなたにはもうクロックアップは出来ないのよ!」

 

擬態エリ「この世界は…もう、私のものなのよ!?」

 

ツカサ「どうかな、オレはお前の野望を破壊する」

 

擬態エリ「あなた…さっきから一体、何者なの!?」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ(オレがそう言ってバックルを着けた瞬間、カブトゼクターが部屋の壁を突き破って飛んできた)

 

ツカサ(カブトゼクターはシャドウ部隊を牽制し、オレの隣に立っていたエリの手に収まった)

 

ツカサ「変身!」

 

エリ「…変身!」

 

ツカサ(オレは一枚のカードをベルトに入れ、エリはカブトゼクターをベルトに嵌めた)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『Henshin』

 

ツカサ(オレとエリはディケイドとカブトマスクドフォームへの変身を完了させる)

 

カブト「キャストオフ!」

 

『Cast Off』

 

ディケイド(更にカブトがゼクターの角を引くと…マスクドアーマーが飛び散った)

 

『Change Beetle』

 

ディケイド(飛び散った装甲の破片でシャドウ部隊を薙ぎ払うと…カブトはライダーフォームになった)

 

擬態エリ「…ウワァァァ!!」

 

ディケイド(憤慨したエリの偽者は…ついにフィロキセラワームに変化した)

 

ディケイド「行けるか?」

 

カブト「当然よ」

 

ディケイド「よし!」ダッ

 

カブト「…!」ダッ

 

 

 

ヒヨリ「はぁはぁ…ここって、何かの装置?」

 

ネギシ「逃がしませんよ」

 

ヒヨリ「!」

 

セミW「フフフ…」

 

『カメンライド…サソード!』

 

セミW「!?」

 

サソード「…」

 

ディエンド「大丈夫?」

 

ヒヨリ「…あなた達、もしかして僕を守ってくれるの?」

 

ディエンド「そういう事」フフッ

 

サソード「じいやは言っていた…友情に勝る財産は無い、一生の宝にしろ」

 

ヒヨリ「う、うん…」

 

セミW「いやぁ~、困りましたね…招かれざる客という訳ですか」

 

ディエンド(セミのワームは私が召喚したサソードと戦闘を始めた)

 

ヒヨリ「…あなたは戦わないの?」

 

ディエンド「ええ…実はこの世界のちょっとしたお宝をあなたに譲ろうと思って」

 

ヒヨリ「お宝?」

 

ディエンド「…これよ」スッ

 

ディエンド(私は少女にライダーベルトを渡した)

 

ヒヨリ「これは…」

 

ディエンド「それはあなたがあなたでいる為に…あなたの道を往くために、必要なものよ」

 

ヒヨリ「僕が…僕の道を往くために?」

 

ディエンド「ええ、これを着けて…あなたが心から守りたいと思うものを守りなさい」

 

ヒヨリ「…うん、分かった!」

 

ディエンド(少女はライダーベルトを腰に巻いた)

 

ヒヨリ「来い!」

 

ディエンド(少女が手をかざすと、青いクワガタ虫型のメカ…ガタックゼクターが天井の壁を突き破って飛来してきた)

 

ディエンド(少女はガタックゼクターをかざした手で掴むと…)

 

ヒヨリ「…変身!」

 

『Henshin』

 

ディエンド(ベルトにガタックゼクターを嵌め、少女はガタックマスクドフォームに変身した)

 

ガタック「…はぁっ!」ガガッ!

 

ディエンド(彼女はガタックバルカンを使って、謎の装置を破壊する)

 

セミW「何…クロックダウン装置が!」

 

ディエンド「そのベルトのクワガタ虫の大顎を展開させて!」

 

ガタック「お、大顎って!?」

 

ディエンド「角のような部分よ!」

 

ガタック「角…あっ、これか!」

 

『Cast Off』

 

ディエンド(ガタックがゼクターの大顎部分を開放させると、マスクドアーマーが周囲に弾け飛んだ)

 

セミW「グッ…」

 

ディエンド(飛び散ったマスクドアーマーの破片がセミのワームに当たる中、ガタックはライダーフォームへの変身を完了させた)

 

『Change Stag Beetle』

 

セミW「おのれ…」

 

ディエンド(セミのワームはクロックアップしようとする)

 

サソード「クロックアップ!」

 

『Clock Up』

 

ディエンド「ベルトの横のスイッチを押して!」

 

ガタック「えっ…これか!」

 

『Clock Up』

 

セミW「ウオォォォ!!」ダダッ

 

サソード「一緒に行くぞ、カ・ガーミン」

 

ガタック「えっ、カ・ガーミンって…僕!?」

 

サソード「他に誰がいる…ライダースラッシュ!」

 

『Rider Slash』

 

ガタック「じゃあ僕はこの武器を使って…」

 

『Rider Cutting』

 

ガタック「ライダーカッティング!」

 

サソード「やぁっ!」ズバッ

 

セミW「グッ!?」

 

ガタック「おりゃぁっ!!」

 

セミW「グワァァァァァ!?」

 

『Clock Over』

 

ディエンド(クロックアップできない私が次に目にした光景は…ガタック達がセミのワームを倒した瞬間だった)

 

ディエンド(敵を倒した事を確認したサソードは姿を消した…)

 

ガタック「…やった」

 

ディエンド「このドレイクグリップも結局、使う事は無かったけれど…また別の機会に使えば良いわね」ボソッ

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディエンド「じゃあ…さよなら」

 

ディエンド(私はその場から姿を消した)

 

ガタック「えっ、ちょっと待って!?…行っちゃった」

 

 

 

カブト(フィロキセラワームは超高速で活動し、両腕の刃で私達を攻撃してくる)

 

ザシュッ!

 

カブト「…!」

 

ズバッ!

 

ディケイド「くっ…!」

 

フィロキセラW「フフ…クロックアップを封じられたあなた達が私に勝てるの?」

 

ディケイド「残念だったな…」

 

フィロキセラW「何ですって?」

 

カブト(ディケイドは一枚のカードをベルトに入れた)

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

カブト(次の瞬間…ディケイドは三人に分かれた)

 

ディケイド「行くぞ!」

 

カブト「そういう事ね…分かったわ!」

 

カブト(それぞれの武器を持った三人のディケイドと私は、フィロキセラワームが高速化させないように連携攻撃を仕掛けていく)

 

ザシュッ!ガガッ!ズバッ!

 

フィロキセラW「アッ…!」フラッ

 

ディケイド「残念だったな…どんなに速く動いても、お前の攻撃パターンは既に見切った!」

 

フィロキセラW「グッ…」

 

カブト(私達がフィロキセラワームを怯ませると、誰かがこっちに向かって走ってきた)

 

?「ライダーキック!」

 

『Rider Kick』

 

カブト(勢いよく走る青いクワガタ虫の戦士は…フィロキセラワームに向かって蹴りを放った)

 

?「おりゃぁっ!!」バキッ!

 

フィロキセラW「ウッ…!」ゴロゴロ

 

カブト(技をまともに受けたフィロキセラワームは吹き飛び、地面に転がっていく)

 

?「大丈夫、エリ?」

 

カブト(クワガタのような青い戦士の声は…私にとって、聞き覚えがあった)

 

カブト「あなた…まさかヒヨリなの?」

 

ガタック「えへへ…うん」

 

フィロキセラW「あなた…私と同じワームなのに、何を!」

 

ガタック「確かに僕はワームだ…でも、それを受け入れて生きていくしかないんだ」

 

フィロキセラW「何…!?」

 

ガタック「僕だって…大切なものを、守りたいから!」

 

カブト「ヒヨリ…」

 

ガタック「それが僕なんだ…ガタックになった今の僕にしか出来ない事なんだ!」

 

フィロキセラW「…ふざけるな」ボソッ

 

ガタック「えっ?」

 

フィロキセラW「ふざけるなぁぁぁ!!」

 

カブト(私に擬態する事を捨て、本性を現したフィロキセラワームは羽を広げて飛行する)

 

ガタック「飛んだ!?」

 

フィロキセラW「まずは裏切り者の貴様からだ!」

 

カブト(フィロキセラワームはガタックに向かって突進しようとする)

 

カブト「…ヒヨリ!」

 

ゴッ!

 

カブト(私はガタックを庇い、フィロキセラワームの突進攻撃を受け止めた)

 

カブト「うっ…」

 

フィロキセラW「!?」

 

ディケイド「はっ!」ガッ

 

フィロキセラW「グハッ!」

 

カブト(私が受け止めた事でフィロキセラワームに隙が生まれ、ディケイドが蹴りを浴びせる)

 

フィロキセラW「…こうなったら、俺は生き延びる!」

 

カブト(フィロキセラワームはアジトの天井を突き破っていく)

 

ディケイド「逃げる気か!」

 

ガタック「そんな…!」

 

フィロキセラW「いつかワーム軍団を再構築し、人間を全滅させる…フハハハハ!」

 

カブト(冗談じゃないわ…そんな事、絶対にさせない)

 

カブト(おばあさまは言っていた…私が望みさえすれば、運命は絶えず私に味方する)

 

カブト(今ならその言葉の意味が分かる…そうよ、私は)

 

カブト「絶対に…諦めたりしない!」

 

 

 

ディケイド(カブトがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにカブトの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「ちょうどいい…使ってみるか」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…カ・カ・カ・カブト!』

 

ディケイド(オレはカブトの後ろに回り込んだ)

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

カブト「えっ…何かしら?」

 

ディケイド(オレはカブトの背中を押した)

 

ディケイド(するとカブトは…ゼクターカブトに変形し、オレはそれを持ち上げた)

 

カブト「ええっ!?…これは?」

 

ディケイド「オレとエリの力だ」

 

カブト「…ハラショー」

 

ディケイド「一緒に追うぞ!」

 

カブト「ええ!」

 

ディケイド(飛んでいくゼクターカブトに続けてオレも高くジャンプし、アジトの屋上へと出た)

 

フィロキセラW「何だと!?」

 

ディケイド(ゼクターカブトはフィロキセラワームを攻撃し、ついでに屋上にあった電波送信アンテナも破壊していく)

 

フィロキセラW「カハッ…!」

 

ディケイド「エリの偽者である事すら捨てたお前はもう何者でもない…ただのワームだ」

 

ディケイド(次にオレはもう一枚のカードをベルトに装填した)

 

ディケイド「これで決める!」

 

『ファイナルアタックライド…カ・カ・カ・カブト!』

 

カブト「…!」ガッ!

 

ディケイド(ゼクターカブトが体当たりし、フィロキセラワームを地面に叩きつける)

 

フィロキセラW「ウッ…」

 

ディケイド(そして、オレとゼクターカブトは超高速で動けるようになった)

 

ディケイド(ゼクターカブトはカブトに戻って、ゆっくりふらつくフィロキセラワームの後ろに背を向けて立ち…)

 

『One,Two,Three』

 

ディケイド(ベルトのスイッチを押し、ゼクターの角を操作した)

 

カブト「ライダー…キック」

 

『Rider Kick』

 

ディケイド「はっ!」

 

ディケイド(その間にオレは飛び上がり、フィロキセラワームに向かってカブトと挟むようにキックを放った)

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

カブト「…!」

 

ディケイド(オレの飛び蹴りとカブトの回し蹴り…二人のライダーキックがフィロキセラワームに炸裂した)

 

ディケイド(これは『DCDM(ディケイドメテオ)』…オレとカブトの技だ)

 

フィロキセラW「グワァァァァァ!!」

 

ディケイド(キックをまともに受けたフィロキセラワームは…そのまま爆発した)

 

ディケイド(その直後に超高速の効果が切れ、電波送信アンテナも崩落した)

 

ディケイド「終わったな…」

 

カブト「…ええ」

 

ディケイド(オレ達は変身を解除した)

 

ヒヨリ「おーい!」ダダッ

 

エリ「ヒヨリ…」

 

ギュッ

 

ツカサ(ヒヨリはエリを抱き締めた)

 

エリ「ヒヨリ?」

 

ヒヨリ「怖かった…エリがいなくなるなんて、絶対にイヤだったから」

 

ヒヨリ「だから僕も、戦わなくちゃって…」グスッ

 

ツカサ(エリは泣いているヒヨリの頭をそっと撫でた)

 

エリ「…ありがと、一緒に戦ってくれて」ナデナデ

 

ツカサ「…」フフッ

 

 

 

カランカラン…

 

ツカサ(夜になって…オレ達はビストロ・サルに戻った)

 

アリサ「お姉ちゃん、ヒヨリさん!」ギュッ

 

ツカサ(アリサは帰ってきたエリとヒヨリをいきなり抱き締めた)

 

ヒヨリ「おっと…ただいま、アリサちゃん」

 

エリ「ただいまアリサ…心配かけたわね?」ナデナデ

 

アリサ「ううん、二人が戻ってきたから大丈夫だよ!」

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ツカサ(オレが微笑むエリに向けてカメラのシャッターを押していると、亜里沙達が声をかけてきた)

 

亜里沙「おかえり、ツカサ!」

 

雪穂「…おかえり」

 

ツカサ「…ああ」

 

亜里沙「あのね…私、アリサと一緒におでん作ったんだよ!」

 

雪穂「具が三つしかないんだけどね…いっぱい作ったみたいだから、皆で食べよう?」

 

ツカサ「…そうだな、それが良い」フフッ

 

ツカサ(オレは皆で一緒におでんを食べた後…雪穂達と共に写真館へと帰った)

 

 

 

エリ(寝ようとする前に…私はアリサの部屋をノックした)

 

コンコン…

 

エリ「アリサ?入るわよ…」ガチャ

 

アリサ「~♪」

 

エリ(部屋にいたアリサは…絵を描いている様子だった)

 

エリ「アリサ」

 

アリサ「あっ…お姉ちゃん」

 

エリ「見せて」

 

アリサ「…うん!」

 

エリ(アリサが描いていたのは、私がスクールアイドルの衣装を着て踊っている絵だった)

 

エリ「!…これって」

 

アリサ「実はね…亜里沙から別の世界のお姉ちゃんはスクールアイドルをやってるって話を聞いて、描いてみたんだ」

 

アリサ「きっとスクールアイドルをやっているお姉ちゃんも一生懸命で…目一杯、楽しんでるんだろうなって」

 

エリ「…そうだといいわね」フフッ

 

アリサ「うん…そうだと思う!」ニコッ

 

エリ(これが、もう一つの私の道…)

 

エリ(私はアリサの描いた絵をじっくりと見ていた)

 

 

 

ツカサ(オレは写真館から少し離れた商店街にある豆腐屋で豆腐を買い、金属製のボウルに入れて持ち帰っていた)

 

ブロロロ…キキッ!

 

ツカサ(すると…オレの近くでカブト虫のような赤いバイクが停まった)

 

ツカサ「あのバイクは…カブトエクステンダー?」

 

ツカサ(カブトエクステンダーから降りて、ヘルメットを脱いでオレに声をかけたのは…)

 

エリ「ぷはっ…ツカサ!」

 

ツカサ「エリか…どうした?」

 

エリ「これ、お店の賄いの為に仕入れたんだけど…おまけにもう一匹貰っちゃってね」パカッ

 

ツカサ(エリは荷台に載せていたクーラーボックスを開け、オレに中身を見せてきた)

 

ツカサ「これは…鯖か!」

 

エリ「活きが良いでしょう?ぜひ亜里沙や雪穂ちゃんにも食べさせてあげてほしいなと思って…だから、あなたにあげるわ」

 

ツカサ「そうか…悪いな」

 

ツカサ(オレはエリからクーラーボックスを受け取った)

 

エリ「私の方こそ…食い逃げをしたのはあなたの偽者だったとヒヨリから聞いたわ」

 

エリ「それなのに、本物のあなたにあんな酷い事をしてしまって…ごめんなさい」

 

ツカサ「いや…分かってくれれば、問題ない」

 

エリ「あと、その…ね」モジモジ

 

ツカサ「?」

 

エリ「一緒にヒヨリを助けてくれて、ありがとう…ね?///」

 

ツカサ「…ハラショー」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「驚いたんだ…エリにもそういう素直な所があるんだな、と」

 

エリ「もっ…もう、からかわないでよ!///」

 

ツカサ「…」フフッ

 

エリ「あっ…そういえばこの間、あなたは私の事を強いって言ってくれたじゃない?」

 

ツカサ「ああ、確かに言ったな」

 

エリ「…私ね、すごくしっかりしてていつも冷静に見えるって言われるけど」

 

エリ「本当は全然そんな事ないの…」

 

ツカサ「…」

 

エリ「いつも迷って、困って、泣き出しそうで…」

 

エリ「ヒヨリに実際…恥ずかしい所を見られた事もあるのよ」

 

エリ「…でも、隠してる」

 

エリ「自分の弱い所を…」

 

ツカサ「…それで良いんじゃないのか?」

 

エリ「えっ?」

 

ツカサ「恥ずかしがる事なんかない…それは、本当の弱さじゃないからな」

 

エリ「!…そうね」フフッ

 

エリ「あの時の私は戦う事を諦めかけてた…でも、あなたはそんな私に『そばにいる』と言ってくれた」

 

エリ「だからもう一度言うわ…ツカサ、本当にありがとう」

 

ツカサ「ああ…!」

 

ツカサ(オレが自分の手を見ると、徐々に身体が透けている事に気付いた)

 

エリ「それは…どうしたの?」

 

ツカサ「どうやら…この世界でオレがやるべき事は終わったらしい」

 

エリ「そう、別の世界に行くのね?」

 

ツカサ「そうみたいだな」

 

エリ「…もしあなたが旅の途中で挫けそうになったら、今度は私があなたを助けに行くわ」

 

エリ「例え、どんなに離れていても…ね」

 

ツカサ「そうだな…もしその時が来れば、な」

 

エリ「ふふっ…最後にもう一つ、良いかしら?」

 

ツカサ「何だ?」

 

エリ「亜里沙の事…よろしく頼むわね?」

 

ツカサ「…任せろ」フフッ

 

ツカサ「じゃあな、エリ…」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

エリ「ダスビダーニャ、ツカサ」

 

エリ「…大丈夫、私もそばにいる」フフッ

 

 

 

ツカサ(オレは光写真館へ戻り、エリから貰った鯖でサバ味噌を作っていた)

 

ツカサ「出来たぞ」コトッ

 

ツカサ(亜里沙は食卓に置かれたサバ味噌をジッと見つめていた)

 

亜里沙「これが、サバミソ?」

 

ツカサ「そうだ…冷めるといけないから早く食べろ」

 

亜里沙「…うん、いただきます!」

 

雪穂「いただきます」

 

ツバサ「いただきます」

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(どうしてオレは無意識にツバサの分まで作ってしまっているのだろうか…?)

 

亜里沙「ハラショー…美味しい!」

 

ツカサ「当たり前だ、今回は特別な包丁で鯖を捌いたからな…」

 

雪穂「えっ、ダジャレ?」

 

ツカサ「…そんなつもりはない」

 

亜里沙「あっ…そういえば、今回撮った写真はどんな感じだったの?」

 

ツカサ「これか?」ピラッ

 

ツカサ(オレは亜里沙達に一枚の写真を見せた)

 

ツカサ(写真には天に向かって人差し指を差すエリとアリサが描いたスクールアイドルの衣装を着たエリのイラストが写っていた)

 

亜里沙「…良かった、こっちの世界のお姉ちゃんも楽しそうで」フフッ

 

雪穂「ねぇ、亜里沙…大丈夫?」

 

亜里沙「何が?」

 

雪穂「寂しくないの…?」

 

亜里沙「…うん、私は平気だよ!」

 

雪穂「ふふっ…そっか」

 

ツカサ(雪穂と亜里沙が話していると、開いていた部屋の窓から二匹のキバーラが喧嘩をしながら入ってきた)

 

キバーラA「あんたがニセモノでしょ!」バサバサ

 

キバーラB「あんたこそ!」バサバサ

 

雪穂「えっ…もしかしてこれ、どっちかがワーム!?」

 

亜里沙「どっちが本物のキバーラなんだろう…?」

 

ツカサ「どっちでもいいんじゃないか?というより…別にどうでもいい」

 

キバーラA「ちょっと!?何よそれ!」ゴン!

 

キバーラB「ヒドいじゃない!」ガン!

 

ツカサ(怒った二匹のキバーラはオレに体当たりしてくる)

 

ツカサ「ちょっ…痛いからやめろ!」

 

ツバサ「…」ガタッ

 

雪穂「ツバサさん?」

 

ツカサ(急に立ち上がったツバサは、台所からフライパンを持ってくると…)

 

ツバサ「…伏せて」

 

ツカサ「えっ?」

 

ツバサ「はっ!」ブンッ!

 

ツカサ「おわっ!?」サッ

 

バコーン!

 

ツカサ(フライパンをテニスラケットのように扱い、片方のキバーラを吹き飛ばした)

 

キバーラA「フギャッ!」ヒュウゥゥゥ…パン!

 

ツカサ(叩かれた方のキバーラは、窓の外まで飛んでいくと…小さく爆発した)

 

ツカサ「お前…いきなり危ないだろ!?」

 

ツバサ「本物を知る者は…偽者には騙されないわ」フフッ

 

キバーラ「ツ…ツバサ~!」

 

ツカサ(本物のキバーラはツバサのもとへ飛んでいく)

 

ツバサ「ふふっ…よしよし」ナデナデ

 

亜里沙「さすがツバサさん!」

 

雪穂「でも…何でフライパンなの?」

 

ツカサ「そんな事、オレが知るか…というか人の話を聞け!」

 

ツカサ(すると…また突然、背景が違うものに変化した)

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「…来たわね」

 

キバーラ「くすくす♡」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「宛て先は…アシカワマナ」

「ユ…ユキちゃん?」

「スクールアイドルって…何?」

「やめて…私を、呼ばないで!」

第14話『求めるもの』

目覚めろ、その魂!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~穂乃果×アギトの世界~
第14話『求めるもの』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここはカブトの世界だ」

擬態エリ「愚かな人類の歴史は終わり、私達ワームが新たな歴史を刻む時が来る…」

エリ「私もここまで、みたいね…」

ツカサ「大丈夫だ…オレがそばにいる」

ツカサ「この世に一人だけ、例え世界の全てを敵に回しても大切な人達を守るために戦う少女がいる!」

ツカサ「同じ顔をしているが、人を欺くだけのお前は…虫けら以下だ」

エリ「私の進化は光より速い、全宇宙の何者も…私の進化にはついてこられない」

フィロキセラワーム「ふざけるなぁぁぁ!!」

ディケイド「オレとエリの力だ」

エリ「ツカサ…大丈夫、私もそばにいる」


(私は…ずっと地元しか知らないで生きてきた)

 

(小さい頃は大体、家の近くで遊んだり…)

 

(習い事もあまり長続きしなかったけど、全部ご近所さんだったし…)

 

(電車に乗る機会だって、学校が休みの日にお母さんにおねだりして映画を見せてもらいに行く時くらい)

 

(そんな、半径五百メートルくらいの小さな生活)

 

(だからかな?)

 

(ここで子どもの数が減り続けていて…人口減に悩んでるだなんて)

 

(そんな大変なことを私は全然、知らなかった)

 

(だから、私は地元の学校がいつまでもあるものだって…思い込んでた)

 

(地元の学校は建物も生徒も制服も、本当に普通だけど…私はその高校に入ることに対して強く憧れてた)

 

(地元の高校の制服を着た近所のお姉さん達が…楽しそうに笑い合いながら、学校に通っている)

 

(そんな光景を小さい頃からずっと見てたから、ただ単純に憧れてたんだと思う)

 

(特別な学校っていう訳じゃない、ただ普通の学校だから…私も普通に入れるはずの学校なんだけど)

 

(それはいつも自分の目の前にあって…でも、その時が来るまでは絶対に手の届かない)

 

(ドキドキするような未来)

 

(ずっと…憧れの学校だったんだ)

 

(テレビに出てくるようなちょっぴり派手な感じの『女子高生』とは少し違う…優しくて、楽しそうで)

 

(周りの人達からもどこか特別扱いされてるような、そんな『お姉さん』の一人に私もなりたかった)

 

(それくらい、私にとって…紺色の制服を着たお姉さん達が地元の一番の主役に見えた)

 

(今の私じゃお姉さんっていう感じは、あんまりしないかもだけど…それでも地元の学校に入れたのは嬉しかった)

 

(だから…今でも信じられない)

 

(それは高校二年生に進級した始業式の日のことだった)

 

(高校二年生って言ったら、新入学の一年も過ぎて受験もなくて…一番遊べる学年でしょ?)

 

(だから私は、少し浮かれた気分で学校に行ったの)

 

(そこで掲示板にひっそりと張り出されていたのは…『廃校』のお知らせ)

 

(今思い出しても、目を疑っちゃう…夢じゃないかと思うくらい)

 

(でも…本当のことだった)

 

(『廃校』…それは私の大好きな地元の学校が消えてなくなっちゃうってこと)

 

(ずっと当たり前に、私の生活の一部としてあった制服姿の『お姉さん』達の姿もなくなっちゃうってこと)

 

(廃校になるのは三年後だから、生徒の希望によってはこの学校で卒業できるけど…でも、本当にそれでいいのかな?)

 

(今、学校にいる私達だけが無事に卒業できればそれでいいって訳じゃないと思う)

 

(…だから、思うんだ)

 

(廃校を阻止するために…何か出来ることがまだあるはずだって)

 

(どんなことがあったって…諦めずに、挫けずにずっと努力していけば絶対に夢は叶うって)

 

(だから…どんなに高い、雲に届くほどの山でも)

 

(私は目の前のことを考えて一歩ずつ、少しずつでも目標に向かって登っていきたい)

 

(今、止まったらダメなんだ)

 

(進んでいるうちは負けじゃないって)

 

(そのために…何かをしようとホノカは思ってます)

 

(みんなの居場所を、守るために…)

 

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

 

ツカサ(オレが雪穂とどうでもいい会話をしていると、写真館の背景が違うものに変化した)

 

雪穂「何だろう、この絵画みたいなの…?」

 

亜里沙「もしかして…イコンかな?」

 

雪穂「イコン?」

 

ツカサ「宗教で信仰する場に用いられる絵画や図版の事だ…よっと」ガラッ

 

ツカサ(オレはイコンの説明をしながら…冷蔵庫からある食材を取り出していた)

 

雪穂「へぇ…亜里沙も知ってたんだ?」

 

亜里沙「うん、たまにお姉ちゃんやおばあさまと聖堂に行ったりするから…」

 

雪穂「そうなんだ…ところで、ここは何の世界なの?」

 

ツバサ「アギトの世界よ」

 

雪穂「アギトの世界…あれ、アギトってどっかで聞いたことあるような?」

 

亜里沙「ああっ!?…雪穂、これ見て!」

 

雪穂「何?…あっ!?」

 

ツカサ(二人はイコンに描かれた黄金の戦士を見て、何かに気づいたようだった)

 

雪穂「お姉ちゃんが変身していたライダーと同じだ…」

 

ツカサ「そうか…お前達の世界の高坂穂乃果はこのライダーに変身していたんだな?」

 

雪穂「うん…じゃあ、この世界には私のお姉ちゃんが?」

 

ツバサ「ええ、その通りよ…この世界にはホノカさんがいる」

 

雪穂「…!」

 

ツカサ「おい…別にはしゃぐのは構わないが、今から探しに行くとか言うなよ?」コトッ

 

ツカサ(そう言いながらオレは、薬味を盛り付けた食材を食卓に置いた)

 

雪穂「別にはしゃいでないよ…けど」

 

ツカサ「けど、何だ?」

 

雪穂「…」

 

ツカサ「まさか…すぐにお姉ちゃんに会いに行けないのが寂しいとか言うんじゃないだろうな?」

 

雪穂「は、はぁ!?」

 

ツカサ「何だ、図星か?」

 

雪穂「そんな訳ないでしょ…全くもう!///」

 

雪穂「ただ…お姉ちゃんがいるって分かった瞬間、急に心配になっちゃってさ」

 

雪穂「いくら別の世界のお姉ちゃんでも、本当にみんなを守ってるのかと思うと…不安なんだよ」

 

ツカサ「そういうもんなのか?」

 

雪穂「そういうものだよ…だって、家族だし」

 

ツカサ「家族、ねぇ…ん?」

 

亜里沙「…」ジーッ

 

ツカサ(オレは食卓に置かれたものをジッと見つめる亜里沙に声をかけた)

 

ツカサ「どうした、亜里沙?」

 

亜里沙「ツカサ、この白くて四角いのは…ヨーグルト?」

 

ツカサ「ああ…それか?それは豆腐だ」

 

亜里沙「トゥーフー…?」

 

ツカサ「大豆の絞り汁を固めたものだ…」

 

亜里沙「あの大豆がこんなに四角くなっちゃうなんて…スゴい!」

 

ツカサ「ちなみにそれは冷奴といってな…薬味や調味料と一緒に味わうものだ」

 

ツカサ「まあ百聞は一見に如かずってヤツだな…とりあえず食べてみろ」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ(亜里沙は箸で豆腐を掴もうとする…が、すぐに崩れてしまう)

 

亜里沙「あっ…」ポロッ

 

ツカサ(すぐにまた箸で掴もうとするが、豆腐は崩れてしまう)

 

亜里沙「なかなか、食べにくい…」ポロッ

 

雪穂「亜里沙…大丈夫?」

 

亜里沙「あと、もうちょっと…えいっ!」パクッ

 

ツカサ(亜里沙は何とか掴んだひとかけらを口に入れた)

 

亜里沙「美味しい…これがトゥーフーなんだね!」

 

雪穂「豆腐、ね…?」

 

ツバサ「…こんなのは、スプーンで掬えば良い話だわ」スッ

 

ツカサ(ツバサはどこからか取り出したスプーンで豆腐を掬って食べていた)

 

亜里沙「あっ…ズルい!」

 

ツカサ「お前、いつの間にスプーンを…?」

 

ツカサ(ツバサはオレ達の話を無視して、アギトの世界について説明し始めた)

 

ツバサ「…アギトの世界には、アンノウンという怪人がいるわ」

 

雪穂「アンノウン…?」

 

ツバサ「正式にはロードと呼ばれているそうだけどね…彼らの目的は、超能力を持つ人間を殲滅させる事よ」

 

雪穂「超能力って…スプーンを曲げたりとかカードを透視したりとかするアレですか?」

 

ツバサ「そうよ」

 

亜里沙「どうして、超能力者を…?」

 

ツバサ「アンノウンにとって超能力を持つ人間は…神に背く可能性があるから、と考えているみたいよ」

 

ツバサ「だからこそ…奴らは超能力者を全て消そうとするの」

 

ツバサ「例え…お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんでも、ね」

 

亜里沙「そんな、ひどい…!」

 

ツバサ「そのアンノウンを倒しているのがこの世界のライダー、アギト…あなたのお姉さんよ」

 

雪穂「…それで、一体どこに行ったらお姉ちゃんに会えるんですか?」

 

ツバサ「それは…また明日になれば分かるわ」ガタッ

 

ツカサ(そう言って、ツバサは立ち上がり…部屋を出ようとする)

 

雪穂「えっ、ちょっと…!?」

 

ツバサ「ごちそうさま」スタスタ

 

ガチャ…バタン

 

雪穂「…行っちゃった」

 

亜里沙「でも、いよいよホノカさんに会えるんだ…良かったね雪穂!」

 

雪穂「う、うん…あっ」

 

亜里沙「…どうかしたの?」

 

雪穂「いや、お姉ちゃんのことももちろんあるんだけどさ…カブトの世界でもう一人の亜里沙がいた時に思ったんだ」

 

雪穂「もしかしたら、この世界にはもう一人の私がいるんじゃないかなって…」

 

亜里沙「あっ…そっか」

 

雪穂「…だから、色々と大丈夫かなーって思って」

 

ツカサ「まあ…明日になってここを出てみない事には始まらないんじゃないか?」

 

雪穂「ツカサ…」

 

亜里沙「そうだよ…何かあったら、私たちがついてるから!」

 

雪穂「亜里沙…」

 

亜里沙「だから、きっと大丈夫!」

 

雪穂「…そうだね、ありがとう」フフッ

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「…」フフッ

 

 

 

アントロード(フォルミカ・ペテス)「…」

 

女子生徒「いや、やめて…」

 

?(黒蟻の怪人は左手で右手の甲に何かのサインをしながら、紺色の制服を着た女の子に近づいていた)

 

?「…」

 

アントL「…!」

 

?(闇の中から光を放って現れた私に気付いた怪人は呻くような低い声でこう言った)

 

アントL「AGITΩ…!」ダッ

 

アギト(怪人は私に襲いかかってきた)

 

アギト「…」パシッ…ブンッ

 

アギト(私は怪人のパンチを手のひらで受け止め、そのまま怪人を投げ飛ばした)

 

アントL「!」ドサッ

 

アギト(怪人が地面に倒れるのと同時に、私はベルトの左側のボタンを押す)

 

アギト(その直後…私の左腕と胴体は青くなった)

 

アントL「…!?」

 

アギト(私はベルトから薙刀のような武器を出すと…そのままその武器を回転させた)

 

アントL「…!」ダダッ

 

アギト(私は風を纏った薙刀のような武器で、こっちに向かって走ってくる怪人を斬りつけた)

 

アギト「やぁっ!」ザシュッ!

 

アントL「…ッ!」バタッ

 

アギト(倒れた怪人はすぐに起き上がったけど…傷をおさえて苦しんでいた)

 

アギト(やがて、怪人は頭の上に天使の輪っかのようなものを出すと…爆発した)

 

アギト「…」チラッ

 

女子生徒「…?」

 

アギト「…」スタスタ

 

アギト(怪人を倒して女の子の無事を確認した私は、ゆっくりとその場を後にした…)

 

 

 

ツカサ「ピクルスサンド…いや、あれは確か美味しくなかったと聞いた事があるな」キュッ

 

ツカサ「となると、後は…ナルト占いが出来るラーメンってとこか?」フキフキ

 

ツカサ(洗い物を終え…タオルで手を拭いていたオレに、テレビを見ていた亜里沙達が声をかけてきた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「どうした?」

 

雪穂「いや、それがさ…とにかくテレビ見てみてよ!」

 

ツカサ「はぁ?…なっ!?」

 

ツカサ(すると、テレビには…身体の赤い蟻型のアンノウン怪人に向かって銃撃する銀色の戦士が映っていた)

 

アナウンサー『今日の午後三時頃…新型の未確認生命体が出現し、テスト段階のV-1システムが出動する事態になりました』

 

V1『はっ!』ガガッ!

 

アントロード(フォルミカ・エクエス)『…!』

 

ツカサ「V-1システムだと…?」

 

雪穂「V-1システム?」

 

ツカサ「アンノウンに対抗しようとする警察の為に、とある大学の教授や精神科医達が開発した特殊強化用スーツだ」

 

亜里沙「じゃあ、ライダーなの…?」

 

ツカサ「いや…アレはライダーとはちょっと違う」

 

雪穂「そうなんだ…というか、新型の未確認生命体ってグロンギのことじゃないの?」

 

ツカサ「実はアギトの世界では…過去にグロンギが現れた事例があってな」

 

亜里沙「そうなの?」

 

ツカサ「ああ…だから、メディアは新型の未確認生命体だと呼んでいるんだろうな」

 

アナウンサー『この後、V-1システムは新型の未確認生命体の排撃に成功…装着者のホウジョウ警部補は』

 

ホウジョウ『ざっとこんなもんです…私に撃ち損じはありませんよ』フッ

 

亜里沙「何かこの男の人、ナルシストっぽい…」

 

雪穂「本当だ…ツカサといい勝負してるかもね」

 

ツカサ「オレはナルシストじゃない…あんなのと一緒にするな」

 

雪穂「自覚ないんだ…それにしても、誰かに似てるような気がするのは気のせいかな?」

 

亜里沙「そういえば、どこかで見たことあるような…?」

 

ツカサ「…気のせいだろ」

 

ホウジョウ『まだテスト段階の為に追撃は控えましたが…期待してください、ついでにアギトも捕獲してきますから』

 

雪穂「!?」

 

ホウジョウ『その時こそ思い知るでしょう…私という人間の素晴らしさを』

 

アナウンサー『…と、我々のインタビューに応じました』

 

雪穂「ど、どういうことなの…アギトを捕まえるって言ってたよ!?」

 

ツカサ「警察には石頭な連中が多いからな…おそらく、アギトも人間の脅威になると考えているんだろう」

 

亜里沙「じゃあ、ホノカさん…捕まっちゃうかもしれないの?」

 

ツカサ「それは…いや、多分無いだろうな」

 

雪穂「えっ…何でそう言えるの?」

 

ツカサ「…眠くなってきたからもう寝る、また明日な」スタスタ

 

雪穂「あっ、ちょっと!?」

 

ガチャ…バタン

 

雪穂「多分ないって…何であんな無責任なこと言えるかなぁ?」ハァ

 

亜里沙「ふわぁ~…何だか、私も眠くなってきちゃった」

 

雪穂「…じゃあ、私達も寝よっか?」

 

亜里沙「うん!」

 

 

 

ツカサ(翌朝になり…オレと雪穂と亜里沙の三人は写真館を出た)

 

ツカサ(写真館のすぐ目の前には畑があり…色々な種類の野菜が収穫の時期を迎えているようだった)

 

雪穂「何でこんな所に野菜畑が…?」

 

ツカサ「採って食べてくれって事だろうな」

 

雪穂「そんな訳ないでしょ!?そもそも、ウチの畑じゃないのに…」

 

亜里沙「でも、あの看板に書いてあるのって…?」

 

雪穂「えっ?」

 

『光写真館野菜畑 美杉家寄贈』

 

雪穂「…ホントだ」

 

ツカサ「そういう事だ」

 

雪穂「あれ…そういえば、ツバサさんは?」

 

ツカサ「さぁな…この世界のお宝探しでもしてるんじゃないのか?」

 

雪穂「また分からないからってテキトーなことばっかり言って…」ハァ

 

亜里沙「そういえば、今回のツカサの服は…郵便屋さん?」

 

ツカサ(オレの服装は郵便配達員の制服になっていた)

 

ツカサ「らしいな…ん?」パカッ

 

ツカサ(バッグを開くと…中には封筒と手紙が入っていた)

 

ツカサ「封筒の差出人は津上ツカサ…オレの事か」

 

ツカサ「そして宛て先が…高坂ホノカ」

 

雪穂「えっ…ツカサからお姉ちゃん宛に?」

 

亜里沙「ツカサ、もうホノカさんと会ったの?」

 

ツカサ「いや…覚えがない」

 

ツカサ「この封筒の筆跡もオレのものじゃないからな…おそらくオレに届けさせようと、別の誰かが書いたんだろう」

 

亜里沙「手紙も同じ宛て先なの?」

 

ツカサ「いや、手紙の方の差出人は分からないが宛て先は…アシカワマナとなっているな」

 

雪穂「アシカワマナ…聞いたことない名前だね」

 

亜里沙「もしかしたら、この世界のホノカさんの知り合いってこともあるかも…?」

 

ツカサ「その可能性はあるな…とりあえず、まずはホノカに会ってみるか」スタスタ

 

亜里沙「うん…行こう、雪穂?」

 

雪穂「…うん」

 

ツカサ(オレ達は…畑の先に見える街に向かって歩き出した)

 

 

 

ツカサ(街の中を少し歩くと、オレ達はある場所に到着した)

 

ツカサ「穂むら…どうやら、ここで間違いないみたいだな?」

 

亜里沙「…穂むらだ」

 

雪穂「私達の世界にある穂むらと、全く一緒だ…」

 

ツカサ「とりあえず…入ってみるか」

 

雪穂「ま、待って!」

 

ツカサ「何だ?」

 

雪穂「…もう入るの?」

 

ツカサ「当たり前だろ…この世界の姉に会いに来たんじゃないのか?」

 

雪穂「それはそうだけど…でも」

 

ツカサ「でも?」

 

雪穂「心の準備ってものがあるでしょ?」

 

ツカサ「はあ…」

 

雪穂「別の世界から来た妹だって言っても、すぐに信じてもらえないと思うし…」

 

ツカサ「はあはあ…」

 

雪穂「実際、何て話せば良いのか分からなくなっちゃって」

 

ツカサ「はあはあはあ…」

 

雪穂「だから一旦、別の場所に行ってからまた出直そうかな…なんて」

 

ツカサ「あっはっはっはっ!…ちょっと何言ってるのか分からないな」

 

雪穂「何で分かんないの!?」

 

ツカサ(オレ達がそんなやりとりをしていると…店の扉が開いた)

 

ガラガラガラ…

 

?「あの~…どうかしました?」

 

ツカサ(扉を開けたのは店の割烹着を着たホノカだった)

 

雪穂「あっ…」

 

ホノカ「あれ…ユキちゃん?」

 

雪穂「えっ、ユ…ユキちゃん?」

 

ホノカ「朝になって急にマナちゃんと一緒に飛び出して行ったから、どうしたんだろうって心配してたんだよ?」

 

雪穂「え、えぇ…?」

 

ホノカ「帰ったならユキちゃんもお店手伝ってよぉ~…私だけ手伝わされて大変だったんだからね?」グイグイ

 

雪穂「えっ…あ、あの」

 

ツカサ「ちょっと待った」

 

ツカサ(オレは雪穂を店に入れようと引っ張るホノカを止めた)

 

ホノカ「?」

 

ツカサ「今、目の前にいる妹は…別の世界から来た妹だ」

 

亜里沙「私たち、別の世界からやってきたんです!」

 

雪穂「あっ…ちょっと二人とも、また!?」

 

ホノカ「へっ…?」

 

ツカサ(ホノカはしばらくフリーズし…)

 

ホノカ「何だ~、別の世界から来たユキちゃんなのかぁ~!」

 

ホノカ「あはははは…って、うえぇぇぇぇっ!?」

 

雪穂「やっぱり…」

 

ホノカ「いや、でもユキちゃんと同じだよ!?ほら!」フニフニ

 

ツカサ(ホノカは雪穂の頬を触っている)

 

雪穂「や、やめてよ!?恥ずかしいから!」

 

ホノカ「だってだってぇ~!」

 

?「騒がしいわね…どうしたのホノカ?」

 

ツカサ(すると、店からホノカの母が出てきた)

 

雪穂「あ…」

 

ホノカ「お母さん!それが…」

 

ホノカの母「ユキホ…に似てるけど、ちょっと違うみたいね」

 

雪穂「えっ…?」

 

ホノカ「分かるの!?」

 

ホノカの母「当たり前じゃない…私は親よ?」

 

ホノカ「ウソ…」

 

ツカサ「さすがは親だな…」

 

ホノカの母「あなたは…ただの郵便屋さんってわけじゃなさそうね?」

 

ツカサ「…分かるのか?」

 

ホノカの母「なんとなく、だけどね…とりあえず立ち話もなんだからウチに上がって」

 

ツカサ「そうか…それは助かる」

 

亜里沙「おじゃまします!」

 

ツカサ(オレ達はホノカの母に案内され、店内に入った)

 

ホノカ「えっと…何がどうなってるの?」キョトン

 

雪穂「わ、私に言われても…」

 

 

 

ツカサ(居間に通されたオレ達はホノカとホノカの母に事情を説明していた)

 

ホノカの母「不思議な話ね…まさかホノカに会う為に、わざわざ別の世界からやってくるなんて」

 

ツカサ「信じてもらおうとは思っていないが…嘘を言っても余計に話がおかしくなるだけだからな」

 

ホノカの母「あら、私は信じるわよ?」

 

ホノカ「えっ…信じちゃうの?」

 

ホノカの母「ええ、こうして実際に別の世界の娘がいるわけだし」

 

雪穂「…!」

 

ホノカ「そっか…じゃあホノカも信じるよ!」

 

ツカサ「良いのか?」

 

ホノカ「うん!」

 

亜里沙「良かったね、雪穂!」

 

雪穂「う、うん…」

 

ツカサ「そういえば…『アシカワマナ』について何か知らないか?」

 

ホノカ「えっと…マナちゃんのことかな?」

 

ツカサ「知り合いか?」

 

ホノカの母「ええ、彼女ならウチに住んでいるわ」

 

雪穂「えっ…ここに?」

 

ホノカ「うん、ユキちゃんと同じ中学校に通ってるんだよ!」

 

ツカサ「どういう訳でそんな事になったんだ?」

 

ホノカの母「…実は先月、彼女が住んでいた村で彼女の村にいるほとんどの人が何者かによって命を落とす事件があったの」

 

亜里沙「そんなことが…」

 

ホノカの母「唯一、行方が分かっていない彼女のお母さんと連絡が取れるまでの間…ウチで預かる事になったの」

 

ホノカ「まだ来たばかりだから、色々と遠慮してるみたいなんだけどね…ウチにあるお菓子だって食べて良いのに」モグモグ

 

ツカサ(そう言いながら、ホノカはテーブルの上に置かれた芋羊羮を食べていた)

 

ホノカの母「あなたは少し遠慮しなさい」

 

ホノカ「ええっ!?」

 

ホノカの母「最近、ちょっと食べ過ぎよ…そんな事じゃまた太るわよ?」

 

ホノカ「ま…またって言わないでよ~!」

 

ツカサ「そうか…だいたいわかった」

 

ホノカ「えっ、私の体重が!?」

 

ツカサ「そんな訳ないだろ!…アシカワマナについての事だ」

 

ホノカ「あっ、そっちか…良かったぁ~」ホッ

 

ツカサ「…」ハァ

 

ホノカ「でもマナちゃん…急に家を飛び出して、どうしちゃったんだろう?」

 

ツカサ(オレ達がそう話していると、厨房から強面の男性がやってきた)

 

?「…」チラッ

 

ホノカの母「あら、お父さん…」

 

雪穂「あっ…!」

 

ホノカの父「…」ジーッ

 

ツカサ「?」

 

ツカサ(ホノカの父は雪穂ではなく、なぜかオレを見つめていた)

 

ホノカ「お父さん?」

 

ホノカの父「…」ジーッ

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(しばらくして、ホノカの父はオレの肩を優しく叩いた)

 

ホノカの父「…」ポン

 

ツカサ「…!」

 

ホノカの父「…」フッ

 

ツカサ(どうやらホノカの父はオレに何かを感じ取り、気に入ってくれたようだった)

 

ツカサ「お、おやっさん…!」

 

ツカサ(オレもホノカの父に何か熱いものを感じ取り、つい『おやっさん』と呼んでしまった)

 

ホノカ「えっ…?」

 

雪穂「…何これ?」

 

ホノカの母「ふふっ…どうやらお父さん、その子が気に入ったみたいね」

 

亜里沙「良かったね、ツカサ!」

 

ツカサ「ああ…!」

 

雪穂「いや…だから、何が?」

 

ホノカの母「それはそうとお父さん、何かあったの?」

 

ホノカの父「!」ハッ

 

ツカサ(我に帰ったホノカの父は居間の壁にかけられた時計を指差した)

 

ホノカの母「あら、もうそんな時間?」

 

ツカサ「何かあるのか?」

 

ホノカの母「実は予約の注文が入ってて…今からお店を閉めて、お父さんと大量の和菓子を作らないといけないの」

 

ツカサ「なるほどな…」

 

ホノカ「じゃあ…話の続きは私が聞くよ!それで良いよね?」

 

ホノカの母「そうね…せっかく来てもらったんだし、ゆっくりしてもらいましょうか」

 

ホノカ「だよねだよねっ!じゃあすぐにお茶を用意しないと…」

 

ホノカ「ユキちゃ~ん、お茶!」

 

雪穂「…」

 

ホノカの母「ホノカ…お客様に出してもらわないで、ちゃんと自分で用意しなさい?」

 

ホノカ「は、はい…ごめんなさい」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「?…どうしたの雪穂?」

 

雪穂「あっ…ううん、何でもないよ?」

 

亜里沙「そう…」

 

ツカサ「…」

 

 

 

ツカサ(オレ達はホノカの部屋にいた)

 

ホノカ「どうぞ!」コトッ

 

ツカサ(普段着に着替え、部屋に入ってきたホノカは…急須や湯呑みを乗せたお盆を机に置いた)

 

ホノカ「えっと、それであなたが別の世界の雪穂の友達の亜里沙ちゃんで…」

 

亜里沙「はい!」

 

ホノカ「そしてあなたが…金剛寺くん、だっけ?」

 

ツカサ「違う、誰だそれは…オレの名前はツカサだ」

 

ホノカ「あっ…ごめんごめん!」アハハ

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(事情を説明していた時に自己紹介したはずなんだが…というか本当に誰なんだ、金剛寺って)

 

ホノカ「とりあえず粗茶ですが…あとこれ、穂むら名物のほむまん!」

 

ホノカ「美味しいから食べてみて!」

 

ツカサ「じゃあ遠慮なく…いただきます」パクッ

 

ツカサ(オレはほむまんを食べた)

 

ツカサ「うん…旨いな」

 

ホノカ「でしょでしょっ?」

 

亜里沙「私も…いただきます!」パクッ

 

亜里沙「ハラショー…美味しい!」

 

ホノカ「だよねだよねっ!」

 

雪穂「…」

 

ホノカ「あれ…食べないの?」

 

雪穂「あっ、私はその…」

 

ホノカ「…?」

 

雪穂「…いただきます」

 

ホノカ「うん!」

 

雪穂「…」パクッ

 

雪穂「!…同じ味だ」

 

ホノカ「えっ、向こうの世界でも同じ味なの?」

 

雪穂「うん…」

 

ホノカ「そっか…不思議なこともあるもんだね~」

 

亜里沙「…?」

 

ツカサ(亜里沙は床に落ちていたプリントを見つけた)

 

ホノカ「あっ、それは…」

 

亜里沙「『国立あかつき坂学院廃校のお知らせ』…?」

 

雪穂「えっ、廃校…?」

 

ホノカ「…うん、実はね?」

 

ホノカ「私は今、地元のあかつきって高校に通ってるんだけど…廃校になることが決まってて」

 

ホノカ「だから、何か学校のために出来ることはないかなって…探している最中なんだ」

 

雪穂「…オトノキと同じだ」

 

ホノカ「え、オトノキ?」

 

亜里沙「私たちの世界にも地元の高校があったんです」

 

亜里沙「でも、廃校しそうになっちゃって…」

 

亜里沙「それを…穂乃果さんたちが阻止してくれて」

 

ホノカ「ええっ、向こうの世界の私が…!?」

 

亜里沙「はい!」

 

ホノカ「一体、どんなことしたの…?教えて教えて!」ズイッ

 

雪穂「ちょっ、近い…」

 

亜里沙「穂乃果さんたち、スクールアイドルになったんです!」

 

ホノカ「…スクール、アイドル?」

 

雪穂「…うん」

 

ホノカ「…」

 

ツカサ(ホノカはしばらく黙ると…)

 

ホノカ「えっと、スクールアイドルって…何?」

 

ツカサ「…」ズコッ

 

ツカサ(オレだけじゃなく、雪穂や亜里沙も同じようにズッコケていた)

 

ツカサ(そして…同時に、この世界にはスクールアイドルが存在していないことをオレ達は知ったのだった)

 

 

 

ツカサ(オレ達はスクールアイドルについてホノカに説明していた)

 

ホノカ「へぇ~、それがスクールアイドルなんだね…向こうの世界の私はスゴいなぁ」

 

亜里沙「はい!だから…ホノカさんもやってみたらどうですか?」

 

ホノカ「えっ、私が…?」

 

亜里沙「きっと楽しいと思います!」

 

ホノカ「う~ん…」

 

雪穂「…」

 

ホノカ「…やらなくても、いいんじゃない?」

 

亜里沙「えっ…やらないんですか!?」

 

ホノカ「私には…向こうの世界の私みたいに、そんなスゴいことをやれそうな自信ないから」

 

雪穂「…!」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「でも…」

 

ホノカ「だって私…この通り見た目も普通だし、歌やダンスだって上手い訳じゃないし」

 

ホノカ「私には無理だよ~」エヘヘ

 

雪穂「…」

 

ツカサ(ホノカの話を聞いて、雪穂は立ち上がった)

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂「…帰る」スタスタ

 

ホノカ「えっ…?」

 

ガチャッ

 

ツカサ(雪穂はそのまま部屋を出て行った)

 

亜里沙「あっ、待って雪穂!」ダダッ

 

ツカサ「…」

 

ホノカ「私、もしかして何かいけないこと言っちゃったかな…?」

 

ツカサ「…きっと、別の世界の妹として期待していたんだろうな」

 

ホノカ「えっ…?」

 

ツカサ「アンタがスクールアイドルをやることを…」

 

ホノカ「!…でも、私には出来ないよ」

 

ホノカ「一緒にやってくれる人だっていないし…きっと誰も見てくれないよ」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

ホノカ「え?」

 

ツカサ「~♪」

 

ツカサ(オレはある曲を口ずさんだ)

 

ツカサ(オレはその曲を聴いた覚えがない)

 

ツカサ(だが…まるでどこかで聴いたことがあるように、オレはその曲のワンフレーズを歌っていた)

 

ツカサ(可能性を感じて…進める気がする、そんな予感の歌を)

 

ツカサ(後悔しないように…目の前の道を進む、そんな歌を)

 

ツカサ(オレは歌った)

 

ツカサ「…」コホン

 

ホノカ「…」ポカン

 

ツカサ「…確かに、誰も見向きもしてくれないかもしれない」

 

ツカサ「応援だってしてもらえないかもしれない…」

 

ツカサ「向こうの世界のアンタも最初はそうだった…それでも、諦めなかった」

 

ホノカ「…!」

 

ツカサ「一生懸命頑張って…最終的にはスクールアイドルの素晴らしさを、多くの人々に広めるようになった」

 

ホノカ「スクールアイドルの…素晴らしさ?」

 

ツカサ「ああ…こんな話だけじゃ、ピンと来ないだろうがな」

 

ホノカ「…」

 

ツカサ「そろそろオレも行くか…おっと、忘れてた」スッ

 

ツカサ(オレはホノカに封筒を渡した)

 

ホノカ「これは…?」

 

ツカサ「饅頭のお礼…という事にしておいてくれ」

 

ホノカ「う、うん…?」

 

ツカサ「それと…『アギト』について何か知らないか?」

 

ホノカ「『アギト』?…ごめん、全然分かんないや」

 

ツカサ「そうか…やはりな」

 

ホノカ「…?」

 

ツカサ「じゃあ、またな」スタスタ

 

ホノカ「うん…」

 

バタン

 

ツカサ(『アギト』についても分からない、か…)

 

ツカサ(そうなると、エリみたいに何か目的があって隠しているのか…)

 

ツカサ(出会ってすぐのマキのようにまだライダーになっていないのか…)

 

ツカサ(或いは既にライダーである事に、気づいていないのか…)

 

ツカサ(オレは色々な可能性を考えながら、穂むらを後にした)

 

 

 

雪穂(穂むらを出た私は、早足で近くの街を歩いていた)

 

亜里沙「雪穂!」ダダッ

 

雪穂「…」

 

亜里沙「どうかしたの?」

 

雪穂「…ちょっとだけ、がっかりしたんだ」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「向こうの世界のお姉ちゃんは、ほとんど私の知ってるお姉ちゃんと変わりなかった…けど」

 

亜里沙「けど…?」

 

雪穂「…少なくとも私の知ってるお姉ちゃんは、やる前から無理だって言うような人じゃなかった」

 

雪穂「だから…」

 

亜里沙「雪穂…」

 

?「仕方ないだろ」

 

雪穂(私達が振り向くと、そこにはツカサがいた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「もともとこの世界にスクールアイドルはなかったからな…」

 

ツカサ「それに幼馴染の海未やことりだっていないんだ、性格がほんの少し違っていてもおかしくはない」

 

雪穂「それは分かってるけど…」

 

ツカサ「…心配しなくていい」

 

雪穂「…?」

 

ツカサ「アイツも高坂ホノカだ」

 

ツカサ「だから…きっとスクールアイドルを始めようとするさ」

 

ツカサ「向こうの世界とは…少し違う形でな」

 

雪穂「…根拠は?」

 

ツカサ「…無い」

 

雪穂「やっぱり…そうだと思った」ハァ

 

亜里沙「そう言えばツカサ…ホノカさんにあの封筒、渡したの?」

 

ツカサ「ああ…今頃、中を開けて見ているんじゃないか?」

 

亜里沙「じゃあ次はマナっていう人にお手紙を渡さないとね!」

 

ツカサ「そうだな…だが、簡単に見つかるかどうか」

 

?「どいて!」ダダッ

 

ドンッ!

 

雪穂(突然、フードを被った少女がツカサを突き飛ばして走っていった)

 

ツカサ「うわっ!?」

 

亜里沙「ツカサ…大丈夫!?」

 

ツカサ「ああ、しかし…失礼なヤツもいたもんだな」ハァ

 

雪穂「…人のこと言える立場じゃないと思うんだけど」

 

マナー!

 

雪穂「?…!」

 

雪穂(そこにさっきの少女を追う女の子が走ってきた)

 

雪穂(その子の顔は…私と瓜二つのものだった)

 

雪穂(唯一、違うとすれば…赤い縁の眼鏡を掛けていることくらいだった)

 

亜里沙「あっ!」

 

ツカサ「この世界のユキホか…」

 

雪穂「…待って!」

 

ユキホ「えっ?」クルッ

 

雪穂「…」

 

ユキホ「えっ…わ、私!?」

 

雪穂(この世界の私は…目の前にいる私を見て、混乱していた)

 

ユキホ「一体、どういうこと…?」

 

ツカサ「とりあえず…説明は後だ」

 

亜里沙「へっ、後なの?」

 

ツカサ「ああ…まずは一緒にあの少女を追う」

 

ツカサ「今の少女、確か…マナと呼んでいたな?」

 

ユキホ「そ、そうですけど…あなた達は?」

 

ツカサ「…行くぞ」ダダッ

 

亜里沙「あっ、待ってツカサ!」ダッ

 

ユキホ「えっ!?あ、あの…?」

 

雪穂「えっと…」

 

雪穂(どうしよう、いざ別の世界の私自身を目の前にすると…何て話せば良いのか分からない)

 

亜里沙「雪穂ー、ユキホー…早くー!」

 

雪穂「あっ…うん!」

 

ユキホ「何で私の名前を…?」

 

雪穂「えっと…それはマナって子を追いながら話するから!」ガシッ

 

雪穂(私はユキホの手を掴んだ)

 

ユキホ「えっ…ちょっと!?」

 

雪穂「行くよ!」ダダッ

 

ユキホ「ええっ!?」

 

雪穂(私はそのままユキホを引っ張り、ツカサ達と一緒にマナという子を追っていった…)

 

 

 

ホノカ(私はツカサくんから貰った封筒を開けていた)

 

ホノカ「…これって、DVD?」

 

ホノカ(中には青とピンク、二枚のディスクが入っていた)

 

ホノカ(私は何が映っているのか見てみようと、パソコンの中に青いディスクを入れてみた)

 

ホノカ「これは…『A-RISE』?」

 

ホノカ(そこには三人の女の子がカッコ良く歌いながら踊っている姿が映っていた)

 

ホノカ「…!」

 

A-RISE『私達はスクールアイドル、A-RISEです!』

 

ツバサ『みんな~!盛り上がる準備は出来てるー!?』

 

ホノカ(その映像を見ていた私は…いつの間にか胸が苦しくなって、心臓がドキドキしていた)

 

ホノカ(まるで…初恋をしたみたいに、何だか目が引き寄せられて離せなくなっちゃって)

 

ホノカ(おまけにスゴく興奮してきて…身体が勝手に動きそうなくらい、踊り出したくなっちゃって)

 

ホノカ「…」フフッ

 

ホノカ(そっか…ツカサくんや亜里沙ちゃんがさっき言ってる意味が分かった)

 

ホノカ(きっと向こうの世界の私は…スクールアイドルそのものに恋しちゃったんだ)

 

ホノカ(その抑えきれなくなった想いを告白するように…スクールアイドルになることで、学校のために頑張ろうって)

 

ホノカ(話だけ聞いていてもピンと来なかったけど…今、これを見た私なら向こうの世界の私の気持ちが分かる)

 

ホノカ(だって…私もこれを見て同じ気持ちになったから)

 

ホノカ(でも…私にもこんなことが出来るのかな?)

 

ホノカ(この『A-RISE』って人達みたいにやることで…私も変われるのかな?)

 

ホノカ(私は…まだ迷っていた)

 

ホノカ「…!」フラッ…

 

バタッ

 

ホノカ(私は何かの気配を感じると同時に倒れた)

 

ホノカ「あれ…?」

 

ホノカ(私、急にどうしちゃったんだろう?)

 

ホノカ(身体がさっきより熱くて…思うように動かない)

 

ホノカ「んっ…」

 

ホノカ(起き上がれない私はそのまま…目を閉じた)

 

 

 

ツカサ(オレ達はマナの後を追って、今は使われていない工場までやってきた)

 

マナ「はぁはぁ…」

 

ユキホ「マナ!」

 

マナ「ユキホ…」

 

ツカサ(マナは被っていた上着のフードを取った)

 

ツカサ「アンタが…アシカワマナか」

 

雪穂「…」

 

マナ「あれほど追いかけてこないでって言ったのに…というか、その人達は誰?」

 

ツカサ(マナは警戒していた)

 

ツカサ「オレ達は…別の世界からやってきた」

 

マナ「…何を言ってるのかさっぱり分からないんだけど」

 

ツカサ「だろうな…」

 

マナ「ユキホのそっくりさんまでいるし…」

 

雪穂「…」

 

ユキホ「ねえ、マナ…急に家を飛び出してどうしたの?」

 

マナ「…ユキホには関係ない」

 

マナ「私はもう…あの家に帰るつもりはない」

 

ユキホ「そんな…!」

 

ツカサ「せっかく帰る所があるのに、それはあんまりなんじゃないか?」

 

亜里沙「そうだよ…ホノカさん達も心配してるよ!」

 

マナ「そんな事…初対面の人達に図々しく言われたくない」

 

亜里沙「…!」

 

マナ「…とにかく、もう私に近付かないで」スタスタ

 

ツカサ(その場から去ろうとするマナをオレは呼び止めた)

 

ツカサ「待て」

 

マナ「…今度は何?」

 

ツカサ(オレはマナに近付き、手紙を渡そうとした)

 

マナ「…怪しい人から変な物を貰っても、困るだけから」プイッ

 

ツカサ「アンタな…」ハァ

 

マナ「いいから…もう私に構わないで!」スッ

 

ツカサ(マナがそう言って右手をかざすと…近くにあった布がオレのもとへ飛んできた)

 

ユキホ「マナ!」

 

雪穂「えっ…?」

 

ツカサ「うわっ!?」

 

ツカサ(避けきれなかったオレは布によって簀巻きにされてしまった)

 

ツカサ「ぐっ…!」ドサッ

 

ツカサ(オレは身動きが出来なくなり、持っていた手紙を落として倒れた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ユキホ「やめなよ、マナ!」

 

ツカサ(亜里沙がオレの身体に巻きついた布を剥がそうとする)

 

亜里沙「と、取れない…」ギギギ…

 

雪穂「もしかして今の…超能力?」

 

マナ「…そう」

 

マナ「村の人が皆、あいつらに襲われてから私は…この超能力で色んなものを動かせるようになった」

 

雪穂「あいつら…?」

 

マナ「でも、それと同時に私は…うっ!」

 

ツカサ(マナは突然、何かを感じたのか苦しみ始めた)

 

雪穂「…?」

 

ユキホ「マナ!?」ダダッ

 

マナ「やめて…私を呼ばないで!」ドンッ!

 

ツカサ(マナはユキホを突き飛ばす)

 

ユキホ「うわっ!」ドサッ

 

雪穂「大丈夫!?」

 

ユキホ「う、うん…私は大丈夫」

 

亜里沙「取れた!」バサッ

 

ツカサ(マナが苦しみ始めた直後、亜里沙がオレの身体に巻きついていた布を剥がした)

 

ツカサ「ありがとな、亜里沙…」

 

亜里沙「うん!」

 

マナ「うっ…うわぁぁぁぁっ!!」

 

ツカサ(目を赤く光らせながら苦しむマナの手は鉤爪状に変形していた)

 

ユキホ「マナ…!」

 

雪穂「…!」

 

ツカサ(マナの顔や身体は深い緑色に変色し…やがてその姿を変えた)

 

ツカサ「まさかアレは…ギルスか?」

 

ギルス「はぁはぁ…」

 

ツカサ(マナはギルスに変身していた)

 

亜里沙「ギルスって…?」

 

ツカサ「アギトとは別のライダーだ…まさかマナがそうだったとはな」

 

ユキホ「マナ…」

 

ギルス「…来る!」

 

ツカサ「何?」

 

ツカサ(すると、ギルスを狙うように…十字架型のプラズマ弾が落ちてきた)

 

バチバチッ

 

ギルス「…!」サッ

 

ツカサ(ギルスはプラズマ弾をギリギリの所で回避した)

 

?「人間よ…そんな力に惑わされてはいけない」

 

ツカサ「誰だ!?」

 

バッファローロード(タウルス・バリスタ)「…」スタスタ

 

ツカサ(アントロードの軍勢を率いたバッファローロードが…オレ達の前に姿を現した)

 

ツカサ「やはり…アンノウンか」

 

雪穂「あれが、アンノウン…?」

 

バッファローL「人はただ…人であれば良いのだ」

 

ギルス「うるさい!よくも…よくも村の皆を!!」

 

ツカサ「村の皆…なるほど、マナの村の人達の命を奪ったのはお前らだったんだな?」

 

バッファローL「そうだ」

 

ツカサ「どうしてそんな事をした?」

 

バッファローL「人ならざる者を、裁く為だ…」

 

ツカサ「つまり…襲われたマナの村の人達は全員、超能力者だったという訳か」

 

雪穂「そんな…!」

 

バッファローL「彼女も人ならざる者だ…だからこそ、我々が裁く」

 

ギルス「…!」

 

ユキホ「じゃあ、あの怪物達は…マナを狙って?」

 

ツカサ「そのようだな…そして、そのアンノウンの気配を感じ取ってマナは逃げ出した」

 

ギルス「…」

 

ツカサ「そういう事なら、邪魔をさせてもらうしかないな」スッ

 

ツカサ(オレは取り出した一枚のカードを腹部に装着したバックルに入れた)

 

ユキホ「えっ…?」

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(オレはディケイドの変身を完了させる)

 

ディケイド「…」

 

ユキホ「えっ!?」

 

バッファローL「愚かな…やれ」

 

ディケイド(バッファローロードのその一言で、アントロードの軍勢が一斉にオレとギルスに対して襲いかかってきた)

 

ディケイド「隠れてろ!」

 

亜里沙「分かった…雪穂!」

 

雪穂「うん、早くこっちに!」

 

ユキホ「う、うん…」

 

ディケイド(雪穂は地面に落ちた手紙を拾ってから…ユキホを連れて亜里沙と一緒に近くの物陰に隠れた)

 

~結~

 

ディケイド(ギルスは左腕からギルスフィーラーという触手を出現させ…)

 

ギルス「やぁっ!」ザシュッ!

 

アントL「…!」バタッ

 

ディケイド(アントロードを拘束しては、右腕からギルスクロウという鋭利な爪で切り裂き…一体ずつ確実に倒していく)

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「はっ!」ズバッ!

 

ディケイド(オレもライドブッカーソードモードで応戦するが…アントロードの数はなかなか減らない)

 

ディケイド「くっ、こうなったら…虫には虫だ!」

 

ディケイド(そう言って、オレは四枚のカードを取り出した)

 

ディケイド「エリ…借りるぞ」

 

ディケイド(オレはまず、一枚目のカードをバックルに装填した)

 

『カメンライド…カブト!』

 

ディケイド(オレはカブトにカメンライドした)

 

DCDカブト「手始めに…」

 

『アタックライド…クロックアップ!』

 

DCDカブト(二枚目のカードを装填し、オレは超高速で動けるようになった)

 

DCDカブト(オレはその効果が切れるまで、クナイモードにしたカブトクナイガンでアントロードの約半数を斬りつけ倒していく)

 

バッファローL「何!?」

 

DCDカブト「まだまだ…カブトは、クロックアップだけがウリじゃないぜ」

 

DCDカブト(クロックアップの効果が切れた後、オレは三枚目のカードを装填する)

 

『フォームライド…カブト!マスクド!』

 

DCDカブト(オレはカブトマスクドフォームにフォームライドした)

 

アントL「…!」ガキンッ!

 

DCDカブト(アントロードの一体がオレの身体を殴りつけるが…オレにダメージは無かった)

 

DCDカブト「残念だったな…今のオレにそんなヤワな攻撃は効かない」バシュッ!

 

アントL「!」バタッ

 

DCDカブト(オレはガンモードに変形したカブトクナイガンでアントロードに反撃すると…)

 

『ファイナルアタックライド…カ・カ・カ・カブト!』

 

DCDカブト(最後のカードを入れ、アックスモードにカブトクナイガンを変形させる)

 

DCDカブト「トドメだ…はっ!」

 

DCDカブト(そして…それを振り回して、周囲にいたアントロードの全員を斬りつけ倒した)

 

ギルス「…」ハァハァ

 

DCDカブト(ギルスもアントロードを全て倒したようだった)

 

DCDカブト「さて…これで、後はお前だけだな」

 

バッファローL「…ふん」

 

DCDカブト「…?」

 

ガッ!

 

ギルス「うっ!?」

 

DCDカブト(突如、クイーンアントロードが現れ…武器の槍でギルスを攻撃した)

 

DCDカブト(攻撃を受け、吹き飛んだギルスはマナに戻ってしまった)

 

クイーンアントロード(フォルミカ・レギア)「…」

 

マナ「ぐっ…」

 

DCDカブト「マナ!」

 

ガシッ

 

DCDカブト「何!?」

 

DCDカブト(いつの間にか赤いアントロードまで現れ、オレの身体を羽交い締めにする)

 

バッファローL「フン!」

 

バチバチッ!

 

アントL「…」サッ

 

DCDカブト「なっ…うわっ!」

 

DCDカブト(バッファローロードのプラズマ弾をまともに受け、オレは吹き飛ばされてしまった)

 

DCDカブト(マスクドフォームのカブトの防御力をもってしても…奴の攻撃は変身を強制解除させる程に強力だった)

 

ツカサ「…ぐっ!」

 

雪穂「そんな…」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

マナ「…ううっ」

 

ユキホ「マナ!」

 

バッファローL「…今こそ裁きの時だ」

 

ツカサ(マズいな…このままじゃマナがやられてしまう)

 

ツカサ(オレがそう思ったその時だった)

 

?「…」スタスタ

 

バッファローL「…!」

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(何者かが光を放ちながら…こちらに向かって歩いてくる)

 

マナ「あれは…」

 

バッファローL「AGITΩ…!」

 

ユキホ「…アギト?」

 

雪穂「…!」

 

ツカサ(オレ達の前に現れたのは…紛れもなくアギトだった)

 

アギト「…」

 

アントL「…」ダッ

 

ツカサ(赤いアントロードがアギトに襲いかかった)

 

アギト「!」スッ

 

ツカサ(アギトは赤いアントロードの攻撃を避けると、ベルトの右側のスイッチを押した)

 

ツカサ(その瞬間…アギトは右腕と胴体が赤いフレイムフォームに変化した)

 

アギト「…ふっ!」

 

ツカサ(アギトはベルトからフレイムセイバーを出現させると…鍔の部分にある角のようなものを展開させた)

 

アギト「はっ…」

 

ツカサ(フレイムセイバーをゆっくりと構えたアギトに向かって…赤いアントロードは飛びかかっていく)

 

アントL「…」バッ

 

アギト「やぁっ!」ズバッ!

 

ツカサ(次の瞬間…アギトは赤いアントロードを一刀両断していた)

 

アントL「…!」バタッ

 

ツカサ(斬られた赤いアントロードはそのまま倒れて爆発し…アギトは黄金のグランドフォームに姿を戻した)

 

クイーンアントL「…!」ダダッ

 

アギト「!」

 

ツカサ(続けてクイーンアントロードがアギトに襲いかかり、アギトは応戦する)

 

マナ「うぅ…」

 

ツカサ「大丈夫か?」

 

マナ「…!」キッ

 

ツカサ「うわっ!?」ゴロゴロ

 

ツカサ(マナに睨まれた直後、オレの身体は壁際まで吹き飛ばされてしまった)

 

ツカサ「くっ…また超能力か!」

 

雪穂「ツカサ!」ダッ

 

亜里沙「大丈夫!?」ダッ

 

ツカサ(ユキホを連れた雪穂達がオレのもとへ駆け寄る)

 

ツカサ「何とかな…」

 

ガッ!

 

アギト「うっ…」ゴロゴロ

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(クイーンアントロードに攻撃されたアギトがこちらに転がってきた)

 

バッファローL「今こそ、粛清の時…」

 

バチバチッ!

 

アギト「うわぁっ…!」バタッ

 

ツカサ(バッファローロードのプラズマ弾を受けたアギトは倒れ…ホノカの姿に戻った)

 

ホノカ「…」

 

ツカサ「なっ…!?」

 

雪穂「…!」

 

ユキホ「お姉ちゃん!」ダッ

 

ツカサ(ユキホがホノカを起こそうとする)

 

ユキホ「しっかりして、お姉ちゃん!」ユサユサ

 

ホノカ「んっ…ユキちゃん?」

 

ツカサ(その間に…バッファローロードとクイーンアントロードがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる)

 

バッファローL「…」

 

マナ「くっ…」

 

ツカサ「…!」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「マナちゃんはもう、私達の家族なんだから」

「私も…大切な人を守りたいんです」

「あなたという人間として…戦って?」

「オレはただ、スクールアイドルの素晴らしさを伝えに来ただけだ」

第15話『ほのかな目覚め』

目覚めろ、その魂!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話『ほのかな目覚め』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツバサ「アギトの世界よ…この世界にはホノカさんがいる」

ホノカの母「不思議な話ね…まさかホノカに会う為に、わざわざ別の世界からやってくるなんて」

ホノカ「スクールアイドルって…何?」

ツカサ「向こうの世界のアンタも最初はそうだった…それでも、諦めなかった」

ツカサ「きっとスクールアイドルを始めようとするさ、向こうの世界とは…少し違う形でな」

ユキホ「あなた達は?」

マナ「やめて…私を呼ばないで!」

バッファローロード「今こそ、粛清の時…」

アギト「うわぁっ…!」

ユキホ「しっかりして、お姉ちゃん!」


ホノカ(何かの気配を感じ取って倒れた後…私は一週間前に見た夢を思い出していた)

 

ホノカ「失礼します」ガラガラ

 

先生「どうぞ、ここに座って」

 

ホノカ「はい…」

 

ホノカ(この日は先生との個人面談があった)

 

ホノカ(先生から聞かれることは…最後まで学校に残るか残らないか)

 

ホノカ(残らない場合は他校への推薦・無試験編入等の希望を出す手続きをして…)

 

ホノカ(残る場合はその後の進路志望を一応聞いておく…みたいな感じ)

 

先生「高坂さんは…あかつき残留希望なの?」

 

ホノカ「はい、絶対に最後まで私はここにいます!」

 

ホノカ「っていうか、廃校になんてならないように私…頑張りますから!」

 

先生「そ…そう」アハハ

 

先生「確かあなたのお家は…おばあちゃんの代からウチの学校に通ってたものね?」

 

ホノカ「はい!」

 

先生「お店の方も高坂さんで三代目?あっ…でも、妹さんもいるのよね」

 

ホノカ「?」

 

先生「高坂さんはお婿さんをとって、家業を継いだりするの?」

 

ホノカ「お、お婿さん!?」

 

先生「ええ、なら和菓子作りはお婿さんに任せて経営に専念するのかしら?だったら専門学校より短大とかの方が良いかしら…」

 

ホノカ「あの、先生…?」

 

先生「その辺、ご両親はどう仰ってるの?」

 

ホノカ「えっと…その」

 

先生「それとも進路希望は全然、別にあるとか?」

 

ホノカ「い、いや…」

 

ホノカ(いきなりそんなことを言われて…私は困っていた)

 

先生「あっ…ごめんなさいね、本当の進路指導は秋にやる予定だったものね」

 

先生「今、その辺のことはひとまず置いておきましょうか…じゃあ高坂さんは残留希望って事で」

 

ホノカ「は、はい!」

 

先生「でも…秋が来るのはあっという間よ?」

 

先生「もう高校二年生なんだから、もし大学進学希望じゃないなら…そろそろ先を考えておいた方が良いわよ?」

 

ホノカ「…!」

 

ホノカ(そんな…私、もうじゃなくてまだ高校二年生だよ?)

 

ホノカ「…いくらなんでも、あんまりだよ」トボトボ

 

ホノカ(そう思いながら、個人面談を終えた私は家に帰っていた)

 

ホノカ「ただいま~…」ガララッ

 

ホノカ(いけない、店の戸を引いたら大きな音が出ちゃった…またお母さんに叱られちゃう)

 

ホノカ「あっ、ごめんなさい!今ちょっと勢いが…あれ?」

 

ホノカ(お店の中には誰もいなかった)

 

ホノカ「もう…店番がいないなんて無用心だなぁ~」ガサゴソ

 

ホノカ(居間に上がった私はコンビニで買ってきた正方形のサンドイッチをカバンから取り出した)

 

ホノカ(いつもなら晩ご飯の後のデザートって感じで食べてるんだけど…)

 

ホノカ(ちょっとお腹空いちゃったし…今、食べちゃっても別に良いよね?)

 

ホノカ「こんな時はやっぱりいちご味だよね~」パクッ

 

ホノカ「ん~、今日もパンが美味い!…あれ?」

 

ホノカ(居間のテーブルの上にユキちゃん宛の封筒が置かれていたのを私は見つけた)

 

ホノカ(その封筒はあかつきじゃない別の高校の入学案内だった)

 

ホノカ「えっ…?」

 

ホノカ(私は家の中を駆け回っていた)

 

ホノカ「お母さ~ん!?」ドタドタ

 

ホノカ「ユキちゃんが…ユキちゃんがー!」バタバタ

 

ゴッ!

 

ホノカ(いつしか私はちゃぶ台に足をぶつけてしまっていた)

 

ホノカ「痛っ!?」ドサッ

 

ホノカ(私は痛みに耐えきれず、転んでしまった)

 

ホノカ「…なんで」グスッ

 

ホノカ(少しだけ泣きたくなっちゃった、その時だった)

 

?「…あの」

 

ホノカ「…あれ、マナちゃん?」

 

マナ「大丈夫…ですか?」

 

ホノカ「う、うん!」

 

マナ「…ホノカさん」

 

ホノカ「えっ?」

 

マナ「涙が…」

 

ホノカ「…あっ!」ゴシゴシ

 

ホノカ(頬を伝う一粒の涙を、私は必死に指でこすっていた)

 

ホノカ「あ、あはは…何かごめんね?」

 

マナ「いえ…」

 

ホノカ「…あの、ところで」

 

?「あー、もう…どうしてこういつもお姉ちゃんは帰ってくるなりこんなにうるさいかな?」ゴシゴシ

 

ホノカ(私がマナちゃんに封筒のことを聞こうとした時、ユキちゃんがバスタオルで頭を拭きながらやってきた)

 

ホノカ「ユ、ユキちゃん…お風呂に入ってたんだ?」

 

ユキホ「そうだよ…お姉ちゃんがうるさかったから、ゆっくり入れなかったけどね」

 

ホノカ「あはは…」

 

ユキホ「全く…あっ」

 

ホノカ(ユキちゃんは封筒を見て、私が何で騒いだのか気付いた様子だった)

 

ホノカ「…」

 

ユキホ「…」

 

二人「…あ、あの!」

 

ホノカ(気まずくなった時、私とユキちゃんは小さな頃からいつもこんな感じで…二人にしか分からない突発的なゲームをしている)

 

ホノカ(先に本音を言おうとした方が勝ちっていうゲーム…今回は私の方がわずかに早かった)

 

ホノカ「やった、ホノカの勝ち!」

 

ユキホ「もう…本当、ズルいんだから」

 

ホノカ(悔しそうだけど、ユキちゃんの目は笑っていた)

 

ホノカ「あの、これ…」

 

ユキホ「はぁ…言っておくけど、別にわざわざ私が希望したんじゃないからね?」

 

ホノカ「え?」

 

ユキホ「今日の朝、学校行事でその高校の体験入学があったの」

 

ホノカ「…でも、その行事って去年までずっとあかつきに来てたよね?」

 

ユキホ「うん」

 

ホノカ「なんで…」

 

ユキホ「…当たり前じゃん、あかつきはもう新入生の募集を停止するかもしれないんだよ?」

 

ホノカ「もうそんな話が!?」

 

ユキホ「みんな言ってるよ…そんな学校、受けてもしょうがないって」

 

ホノカ「しょうがないって…」

 

ユキホ「だって、そうでしょ!お姉ちゃんの学年なんて二クラスしかないんだよ…?」

 

ホノカ「でも、三年生は三クラスあるし!」

 

ユキホ「じゃあ一年生は?」

 

ホノカ「…一クラス」

 

ユキホ「ほら…それじゃ、もう来年はないってことじゃない?」

 

ホノカ「でも、まだ決まったわけじゃないし…」

 

ホノカ「それにさ、私が絶対に頑張って…廃校を回避してみせるから!」

 

ユキホ「全くガンコなんだから…で、どうやって廃校を回避しようと考えてるの?」

 

ホノカ「それは…その」

 

ユキホ「ほら…やっぱりないんじゃん」ハァ

 

ユキホ「どう考えたって、お姉ちゃんがどうにか出来る問題じゃないんだから」

 

ホノカ「…」

 

ユキホ「…お姉ちゃんはズルいよ」

 

ホノカ「えっ?」

 

ホノカ(そう言うユキちゃんの目には、溢れるくらいの涙が溜まっていた)

 

ユキホ「…」グスッ

 

ホノカ「!」

 

ユキホ「私だって…本当はお姉ちゃんみたいにあかつきに行きたかった」

 

ユキホ「あかつきの制服着て…学校に行きたかった!」

 

ユキホ「悔しいけど…でももう、どうしようもないじゃんか!!」

 

ホノカ「…ユキちゃん」

 

ユキホ「うっ…」グスッ

 

ホノカ「…」ギュッ

 

ホノカ(今の私には…泣き出すユキちゃんを抱き締めることしか出来なかった)

 

ユキホ「ううっ…!」ダダッ

 

ホノカ「!?…待って、ユキちゃん!」

 

ホノカ(私から離れたユキちゃんは…自分の部屋に戻ろうと階段を上がっていった)

 

マナ「…ユキホ」

 

ホノカ「…」

 

ホノカ(ごめんね、ユキちゃん)

 

ホノカ(でも…一つだけ分かってほしい)

 

ホノカ(私、小さい頃からずっとユキちゃんと一緒にあかつきに行きたいっていう夢があったんだよ?)

 

ホノカ(マナちゃんはもちろん…ユキちゃんと同じようにあかつきに行きたいと思っている、みんなのために)

 

ホノカ(やっぱり私は守らなきゃいけないんだ…あのあかつきという、憧れの居場所を)

 

ホノカ(私がそう…強く誓った、その時だった)

 

マナ「!」クルッ

 

?「…」

 

ホノカ(いつの間にか…白い服の男の人がこっちを見つめていた)

 

ホノカ「あっ、お客さんですか?変なの見せちゃってごめんなさい…今行きますね」

 

白い服の男「…」スッ

 

ホノカ(右の手のひらを見せた白い服の男の人は…赤い化け物に姿を変えた)

 

火のエル「…」

 

ホノカ「!?」

 

マナ「…ホノカさん、危ない!」

 

ホノカ「うわっ!?」

 

ホノカ(突然、目の前が真っ白になった)

 

ホノカ(それから先、何が起こったのか…私は全然覚えていなかった)

 

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

 

ユキホ「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

ホノカ「…私、何でここに?」

 

ツカサ「まさか…アギトとして戦った事を覚えていないのか?」

 

雪穂「えっ…ウソでしょ?」

 

亜里沙「そんなことあるの?」

 

ツカサ「アギトになったばかりなら、あり得るかもな…」

 

ツカサ「それにしてもこの状況…どうしたもんか」

 

バッファローL「…」

 

ツカサ(バッファローロードとクイーンアントロードがホノカとマナを狙って近づいていた…その時だった)

 

ツカサ(バッファローロードとクイーンアントロードがホノカとマナを狙って近づいていた…その時だった)

 

『カメンライド…G3マイルド!』

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(オレ達の目の前に一人のライダーが現れた)

 

G3マイルド「G3マイルド、出動します!」

 

バッファローL「何…?」

 

G3マイルド「よーしっ…はっ!」ダッ

 

クイーンアントL「!」ガッ

 

ツカサ(G3マイルドは二体のアンノウンを相手に戦い始めた)

 

?「…その戦い方じゃ、100点満点中24.7点ってとこね?」スタスタ

 

亜里沙「ツバサさん!」

 

ツカサ「お前…」

 

ディエンド「まあいいわ、私が来るまでには何とかなったみたいだし」

 

ディエンド「とりあえず…一緒に行きましょうか、ホノカさん」ポン

 

ホノカ「…あなたは?」

 

ディエンド「…『綺羅ツバサ』って名前に覚えはあるかしら?」

 

ホノカ「へ?ふぁ…うわぁぁぁぁ!?」

 

ホノカ「もしかしてあなた、アラ…」

 

ディエンド「来て」ガシッ

 

ホノカ「えっ?」

 

ツカサ(ディエンドは一枚のカードを取り出し、ディエンドライバーに装填した)

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ホノカ「うわぁ!ああっ!?ちょっと待ってー!!」

 

ツカサ(ディエンドはホノカを連れて消えようとする)

 

ユキホ「あっ…待って!」ガシッ

 

雪穂「ちょっ、ちょっと!?」ガシッ

 

ツカサ(二人の雪穂は消える寸前のディエンドに掴まり…ホノカと一緒に姿を消してしまった)

 

亜里沙「雪穂、ユキホ!」

 

ツカサ「くっ…仕方ない、オレ達はマナを連れて逃げるぞ!」

 

亜里沙「う…うん!」

 

G3マイルド「うわぁーっ!?」ドサッ

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(G3マイルドは…二体のアンノウンの攻撃を受け、あっさり消滅してしまった)

 

バッファローL「フン…」

 

ツカサ「…やはり、そう簡単にはいかないか」

 

ガガッ!

 

バッファローL「!」

 

V1「…」

 

ツカサ(すると…今度はV1が現れ、V-1ショットでアンノウン達を攻撃した)

 

ツカサ「…ここはV1に任せて、今のうちに行くぞ」

 

亜里沙「えっ、でも…大丈夫なの?」

 

ツカサ「いいんだ…あれでも一応、人の命を守る警察官だからな」

 

ツカサ(オレはマナを背負い、その場から急いで離れようとする)

 

マナ「うぅ…」

 

ツカサ「…」ダッ

 

ツカサ(V1がアンノウンと戦闘している間に…オレ達はその場から撤退した)

 

V1「はっ!」ガガッ!

 

バッファローL「…」

 

V1「…何っ、効かない!?」

 

クイーンアントL「…!」ダッ

 

V1「!」

 

 

 

雪穂(気がつくと…私達は公園にいた)

 

雪穂「ん?…あれ、ここは!?」ガバッ

 

?「目が覚めたようね?」

 

雪穂「!…ツバサさん」

 

ツバサ「さっきはごめんなさい…どうしても彼女と話がしたいと思って」

 

ホノカ「…」

 

雪穂「話、ですか…?」

 

ツバサ「ええ」

 

ホノカ「んぁ…?」パチリ

 

ツバサ「こっちも目が覚めたみたいね…初めまして、高坂ホノカさん」

 

ホノカ「えっ…あっ、初めまして!」

 

ツバサ「うふふっ…」

 

ホノカ「でも、どうして…?」

 

ツバサ「それは…別の世界で、あなたと私は共にお互いを高め合うライバルだったからよ」

 

ツバサ「だから私は…こっちの世界のあなたに、会いに来たの」

 

ホノカ「え…ええっ!?」

 

雪穂(お姉ちゃんの驚く声で、もう一人の私が起き上がった)

 

ユキホ「うるさいなぁ…何?」ムクリ

 

ホノカ「あっ、ユキちゃん…ごめん」

 

ツバサ「こんにちは」

 

ユキホ「あっ、こんにちは…どちら様ですか?」

 

ホノカ「えっ、ユキちゃん知らないの!?」

 

ユキホ「は…はぁ?」

 

ホノカ「A-RISEだよ、A-RISE!」

 

ユキホ「アライズ…?」

 

ホノカ「スクールアイドルだよ!」

 

ユキホ「えっ、何それ…?」

 

ホノカ「学校で結成されたアイドルのことだよ~、知らないの?」

 

雪穂「いや、お姉ちゃんだってさっきまで知らなかったじゃん…!」

 

雪穂「というか、この世界にスクールアイドルはなかったんでしょ?」

 

ホノカ「あっ…そっか~、ごめんごめん!」

 

雪穂「もう…」ハァ

 

ホノカ「さっき、ツカサくんからもらったA-RISEのライブDVDを見たばっかりで興奮しちゃって…」エヘヘ

 

雪穂「えっ…A-RISEの?」

 

ホノカ「うん!」

 

ツバサ「ふふっ…やっぱり、あなたは別の世界でも相変わらず魅力的で面白い人ね」

 

ホノカ「いやいや、そんなこと…」

 

ツバサ「あるわ」

 

ホノカ「えっ?」

 

ツバサ「人を惹きつける魅力…カリスマ性とも言うべきかしら」

 

ツバサ「向こうの世界のあなたは…仲間と共にスクールアイドルをやっていく事で、その能力を最大限に活かしていたわ」

 

ホノカ「は、はぁ…?」

 

ツバサ「だから私は…あなたの事をずっと注目していたの」

 

ツバサ「きっと一番のライバルになるんじゃないかと…」

 

ホノカ「ええっ!?そうなんですか?」

 

ツバサ「ええ…もちろん同じスクールアイドルとして応援もしていたし、そして何より…」

 

ツバサ「負けたくないと思った」

 

ホノカ「そうだったんですか…それで、向こうの世界の私はどうなったんですか?」

 

ツバサ「…A-RISEとあなた達のグループは『ラブライブ!』というスクールアイドルの大会の最終予選で一緒になった」

 

ツバサ「決勝に進んで優勝したのは…あなた達のグループよ」

 

ホノカ「!…そう、なんですか」

 

ツバサ「どうして…あなた達のグループが優勝できたと思う?」

 

ホノカ「…やっぱり、努力してたからですか?」

 

ツバサ「それは他のスクールアイドルだって同じよ…あなた達のグループは、あなた達にしかない素晴らしいものがあったの」

 

ホノカ「素晴らしいもの…?」

 

ツバサ「…何だと思う?」

 

ホノカ「えっ…」

 

雪穂(ツバサさんはそう言って、お姉ちゃんの目を真っ直ぐに見た)

 

ツバサ「…それは、あなたもスクールアイドルをやってみたらきっと分かるわ」

 

ホノカ「私が…?」

 

ツバサ「そうよ」フフッ

 

ホノカ「でも、私…」

 

雪穂「そういえば前に、私達の世界のお姉ちゃんがこんなことを聞いてきました」

 

ホノカ「へっ?」

 

雪穂「私から見て、お姉ちゃん達のグループがどう見えるかって…」

 

ホノカ「!…それで、何て答えたの?」

 

雪穂「…心配」

 

ホノカ「は、はぁ!?」

 

雪穂「後は…危なっかしい、頼りない、ハラハラする」

 

ツバサ「ふふっ…」

 

ホノカ「た、大会に優勝してるんだよね…?」

 

雪穂「でも何か心配になっちゃうんだよねー、ただ…」

 

ホノカ「ただ?」

 

雪穂「応援しなきゃって気持ちに不思議となるんだよね…お姉ちゃんとか地元とか関係なく、どんなグループよりも」

 

ホノカ「応援しなきゃ、か…」

 

雪穂「…だからさ、とりあえずやってみたら?」

 

雪穂「向こうの世界のお姉ちゃんもA-RISEのライブ映像を見たのがきっかけでスクールアイドルを始めてたし…」

 

ホノカ「そうなの!?」ズイッ

 

雪穂「うっ…だから近いってば!」

 

ユキホ「…あの」

 

雪穂「え?」

 

ユキホ「何がどうなってるのか、未だによく分かってないんだけど…」

 

雪穂「あっ…」

 

雪穂(私は…お姉ちゃんともう一人の私に、これまでのことを説明した)

 

 

 

ツカサ(オレと亜里沙はマナを連れていた)

 

亜里沙「ふぅ…ここまで来れば、もう大丈夫かな?」

 

ツカサ「どうだろうな…これで、少しは休めると良いけどな」

 

マナ「…離して」

 

ツカサ「何?」

 

マナ「いいから離して!」バッ

 

亜里沙「あっ…」

 

マナ「もう…私に構わないでよ!」

 

ツカサ「悪いがそれは出来ない」

 

マナ「…どういう事?」

 

ツカサ「オレはアンタを守る…そして、穂むらに連れて帰る」

 

マナ「…あなた、何を言っているの?」

 

ツカサ「アンタがいなくなれば、ユキホやホノカ達が悲しむからな…」

 

ツカサ「だからオレは…意地でもアンタをアンノウンから守ってみせる」

 

亜里沙「ツカサ…」

 

マナ「…ふざけないで!」

 

ツカサ(マナはギルスに変身し、亜里沙の身体にギルスフィーラーを巻きつけた)

 

亜里沙「うっ…!?」

 

ツカサ「亜里沙!」

 

ギルス「近付かないで!近付いたらこの子の命は…」

 

ツカサ「…ぐっ!」

 

亜里沙「ツカサ…私は、大丈夫だから」

 

ツカサ「だが…」

 

亜里沙「だから、私に…任せて?」

 

ツカサ「!…分かった」

 

ツカサ(亜里沙はギルスに話しかける)

 

亜里沙「ねぇ…こんなこと、もうやめよう?」

 

ギルス「…」

 

亜里沙「こんなことをしたって、あなたが辛くなるだけだよ?」

 

ギルス「あなた…私が怖くないの?」

 

亜里沙「えっ?」

 

ギルス「こんな、化け物みたいな姿…気味が悪いと思わないの?」

 

亜里沙「…私は、そんなこと思わないよ?」

 

ギルス「!…嘘、どうせ離してほしいから言ってるだけでしょ!?」

 

亜里沙「…ねぇ、あなたはこの世界のユキホと友達なんでしょ?」

 

ギルス「それは…」

 

亜里沙「違うの?」

 

ギルス「…そう、だけど」

 

亜里沙「だったら…きっとユキホ、悲しむと思うな」

 

ギルス「…!」

 

亜里沙「だから…」

 

ギルス「うるさい…もう黙っててよ!」

 

ギルス「私は…うっ!?」ドサッ

 

ツカサ(苦しむギルスは亜里沙を離し、マナの姿に戻りながら倒れた)

 

亜里沙「マナさん!」

 

ツカサ「まだギルスとしての力のコントロールが出来ていないようだな…」

 

亜里沙「大丈夫?」

 

マナ「何で…私を?」

 

亜里沙「当たり前だよ…だって、私もあなたと友達になりたいから!」

 

マナ「…友達」

 

亜里沙「ねぇ…どうしてあなたは、ギルスになったの?」

 

マナ「…別に私は、あの姿になりたくてなったわけじゃない」

 

亜里沙「じゃあ、何で…?」

 

マナ「…一週間前、私はホノカさんと一緒に穂むらの一階にいた」

 

マナ「その時、白い服の男が眩しい光を放って…私達はそれに包まれたの」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「光…?」

 

マナ「…ええ、それまでの私はちょっとした物を動かせる超能力しか持っていなかった」

 

マナ「でもその光を浴びてからは、なぜかあの姿に変われるようになって…」

 

ツカサ「それは…アギトの光、だな」

 

亜里沙「アギトの光…?」

 

ツカサ「ああ…アンタやホノカが変身できるようになったのはきっとそれだ」

 

ツカサ「やがてギルスとして覚醒したアンタは…自分がアンノウンに狙われる事を予知した」

 

ツカサ「そしてホノカやユキホ達を巻き込まない為に…家を飛び出した」

 

マナ「…」

 

ツカサ「でもな…結局、どこへ行ったって同じだ」

 

ツカサ「『今』から逃げようとしても…それは嘘に出来ないし、無かった事になんてならない」

 

マナ「じゃあ…どうすればいいのよ!」

 

ツカサ「周りに迷惑をかけたくないお前の気持ちは分かる」

 

ツカサ「それにオレは…アンタに少し、似ている気がする」

 

マナ「…どういう事?」

 

ツカサ「オレは記憶喪失だ…自分がどこから来た何者なのか、時々分からなくて自分自身が怖くなる事がある」

 

マナ「…」

 

ツカサ「でも、オレは自分を憐れんだりはしたくない」

 

ツカサ「だからこそ…オレはオレである意味を、今の居場所にいる意味を必ず見つけたいんだ」

 

マナ「…今の居場所にいる意味?」

 

ツカサ「そうだ、だから…」

 

亜里沙「あっ…ツカサ、あれ!」

 

ツカサ(亜里沙が指差す方向から、黒いアントロードの大群がやってきた)

 

ツカサ「追手か…亜里沙、マナを連れて逃げろ」

 

亜里沙「うん!…行こう、マナちゃん?」ギュッ

 

マナ「…!」ダッ

 

ツカサ(亜里沙がマナの手を引いて逃げていくのを確認したオレは…バックルを装着し、カードを装填した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!」

 

 

 

ユキホ「そんなの、とても信じられないんだけど…」

 

雪穂「…そう、だよね」

 

ホノカ「でも、もう一人のユキちゃんがいるんだから…信じてあげようよ!」

 

ユキホ「何でいつもお姉ちゃんはそうお気楽なのかなぁ…一体、誰に似ちゃったの?」ハァ

 

ホノカ「えへへ…」

 

雪穂「…そういえば、本当に覚えてないの?」

 

ホノカ「えっ、何が?」

 

雪穂「アギトになって戦ってたこと…」

 

ホノカ「う、うん…」

 

ユキホ「…」

 

ツバサ「あなたは何か知ってるみたいね?」

 

ユキホ「え…私ですか?」

 

ツバサ「ええ」

 

ユキホ「…実は一週間前、お姉ちゃんやマナが家の中で倒れているのを見つけたんです」

 

ユキホ「お姉ちゃん達を起こそうと二人の身体に触った時…ハッキリとした夢を見るようになったんです」

 

雪穂「夢…?」

 

ユキホ「うん、お姉ちゃんがアギトになって化け物と戦っている夢…」

 

ホノカ「ええっ!?何でそんなこと言ってくれなかったの?ひどいよぉ~!」

 

ユキホ「いや、あくまで夢だから…」

 

ホノカ「でもぉ~!」

 

ツバサ「まあまあ、ホノカさん…落ち着いて?」

 

ホノカ「あっ、はい…」

 

ツバサ「じゃあ、その夢を見てから…あなたはホノカさんの事が心配になったのね?」

 

ユキホ「はい…それで昨日の夜、急に家を出て行ったお姉ちゃんについて行ったんです」

 

ホノカ「あれ…私、外に出たっけ?」

 

雪穂「それも覚えてないんだ…」

 

ツバサ「そして…ホノカさんがアギトになって怪物を倒していた」

 

ユキホ「はい…お姉ちゃんは家に帰ってすぐに寝てしまったので、何も聞けなかったんですけど」

 

ユキホ「だから今日聞いてみようと思ったら、今度はマナが突然苦しみながら家を飛び出して行っちゃって…」

 

ホノカ「そっか~…だから急に身体が重たくなったなと思って、気がついたら寝てたんだ!」

 

雪穂「えっ、身体が重たく…?」

 

ホノカ「うん…例えばあかつきが廃校にならないようにどうするか、みんなの居場所を守りたいなって思った時なんだけど」

 

ホノカ「誰かの助けてって声が聞こえると同時に、なぜか身体が重たくなっちゃって…何でかなって思ってたんだけど」

 

ツバサ「…きっと、ホノカさんはまだアギトの力をコントロールできていないのね」

 

ホノカ「コントロール…?」

 

ツバサ「ええ」

 

ホノカ「う~ん、コントロールか…」

 

雪穂(お姉ちゃんはしばらく考え込んでいた)

 

ホノカ「どうすればいいのかな…?」

 

雪穂「…それならさ、思い切って自分のことを一番に考えてみたら?」

 

ホノカ「えっ…私のこと?」

 

雪穂「だってお姉ちゃん、みんなのために学校を守りたいって言ってるけど…自分のためには何も考えてないよね?」

 

ホノカ「自分のため…」

 

雪穂「私もアギトについて詳しいわけじゃないけど…きっと、それが人の居場所を守ることにも繋がるんじゃない?」

 

雪穂「私は…そう思うよ」

 

ホノカ「自分のため、か…そっか」

 

ホノカ「ありがとう、ユキちゃん…じゃなくて雪穂!」

 

雪穂「うん…あっ!」ガサゴソ

 

雪穂(私はポケットの中に入れていた手紙の存在を思い出し、それを取り出した)

 

ホノカ「それは?」

 

雪穂「マナさん宛の手紙なんだけど…」

 

ユキホ「えっ…マナの?」

 

雪穂「うん、差出人が誰か分からなかったから…受け取ってくれなかったんだけどね」

 

ホノカ「じゃあ、読んでみたら誰か分かるかも…」

 

雪穂「えっ?」

 

ホノカ「ちょっと貸して!」バッ

 

雪穂(お姉ちゃんは私から手紙を取り上げ、勝手に開けて読み始めた)

 

雪穂「あっ!ちょっとお姉ちゃん!?」

 

ユキホ「ダメだよお姉ちゃん!人の手紙を勝手に読んじゃ…」

 

ホノカ「…マナちゃんのお母さんからだ」

 

ユキホ「えっ…!?」

 

雪穂(私達はマナさんのお母さんからの手紙を読んだ)

 

ホノカ「これ、早く…早くマナちゃんに見せてあげなきゃ!」

 

ユキホ「でも、マナが帰ってくるかどうか…」

 

ホノカ「!…大丈夫、私がきっと連れて帰るよ」

 

ユキホ「えっ…お姉ちゃんが?」

 

ホノカ「うん、だって…私がそうしたいんだもん」

 

ホノカ「出来なかった後悔なんて…したくないから」

 

ホノカ「それにマナちゃんはもう、私達の家族なんだから!」

 

ユキホ「…お姉ちゃん」

 

ツバサ「…」フフッ

 

ホノカ「じゃあ私、マナちゃんを探してくる!」ダッ

 

雪穂(そう言って、お姉ちゃんは走り出した)

 

雪穂「お姉ちゃん…」

 

雪穂(もし私もツカサやツバサさんみたいに変身して戦えていたら…)

 

雪穂(今頃はお姉ちゃんと一緒にマナさんを探しに行っていたかもしれない)

 

雪穂(でも、私は…)

 

ユキホ「あの!」

 

雪穂(その時、もう一人の私がツバサさんに話しかけた)

 

ツバサ「何かしら?」

 

ユキホ「私、お姉ちゃんやマナを見ていて…思ったんです」

 

ユキホ「私にも何か出来ることがないかなって…」

 

雪穂「えっ…それってまさか、あなたも戦いたいっていうこと?」

 

ユキホ「…」コクリ

 

ユキホ「出来れば私も…大切な人を守りたいんです」

 

ユキホ「自分のためにも、誰かのためにも…だから!」

 

雪穂「…!」

 

雪穂(違う世界の私も同じことを考えていたなんて…私は正直、驚いていた)

 

ツバサ「…ついてきて」スタスタ

 

ユキホ「あっ…はい!」

 

雪穂「…」

 

雪穂(私達はツバサさんについて行った)

 

 

 

ユキホ「ここは…?」

 

雪穂「どこ?」

 

雪穂(私達はツバサさんに連れられて…ある扉の前までやってきた)

 

ツバサ「ほら、こっちよ」ギィ…

 

雪穂(ツバサさんが開けた扉の先には地下に続く長い階段があった)

 

ツバサ「入って」

 

雪穂「は、はぁ…」

 

雪穂(階段を降りて…私達は広い地下駐車場に出てきた)

 

ユキホ「一体、ここに何があるんですか…?」

 

ツバサ「すぐに分かるわ…ほら」

 

雪穂(そこには一台の青いトレーラーが停められていた)

 

雪穂「これは…?」

 

ツバサ「Gトレーラー…この世界のお宝が眠っているわ」

 

ユキホ「お宝…?」

 

ツバサ「とりあえず中に入ってもらいましょうか…話はそれからよ」

 

雪穂(私達がGトレーラーの中に入ると…そこにはお母さんがいた)

 

ホノカの母「待ってたわ、ユキホ」

 

ユキホ「お、お母さん!?何で…」

 

ホノカの母「そこにいる彼女から全部聞いたわ」

 

ツバサ「そう…それでお母様から出来る事は無いか聞いてきたから、ユキホさんのサポートをお願いしたの」

 

ユキホ「えっ…え?」

 

雪穂「どういうことですか、ツバサさん?」

 

ツバサ「このGトレーラーにはG3システムと呼ばれるものがあるの」

 

ユキホ「G3システム…?」

 

ツバサ「この世界の怪物…アンノウンと戦闘できる強化服のことよ」

 

雪穂「それって、警察のV-1システムと同じなんじゃないですか?」

 

ツバサ「そうよ、本来はこの世界の警察が使用するはずだった代物なんだけど…色々あって企画が凍結しちゃったみたいで」

 

ツバサ「それを私が独自のルートから譲り受けたの」

 

雪穂「え、独自のルートって…?」

 

ツバサ「…まあ、そのあたりは気にしないで?」

 

雪穂「いや…すごく気になるんですけど」

 

雪穂(ツバサさんはそのまま話を続けた)

 

ツバサ「もし…本当に戦いたいというのなら、私はこのG3システムをあなたに譲っても良いと思っているわ」

 

ユキホ「えっ、私に…ですか?」

 

ツバサ「ええ…こんな事もあろうかと、あなたでも十分に戦えるように調整も済ませているの」

 

ユキホ「…」

 

ツバサ「もちろん無理にとは言わない…決めるのは、あなた自身よ」

 

ユキホ「…分かりました、ぜひお願いします」

 

雪穂「…!」

 

ユキホ「私も…お姉ちゃんやマナを守りたい!」

 

ツバサ「…決まりね」フフッ

 

ホノカの母「よく言ったわね、ユキホ…それでこそ私とお父さんの子よ」ナデナデ

 

ユキホ「お母さん…」

 

ホノカの母「でもね…一つ、約束して」

 

ユキホ「…何?」

 

ホノカの母「必ず、ホノカやマナと一緒に生きて帰ってくるのよ?」

 

ユキホ「…うん、分かった」

 

ホノカの母「ふふっ…さあ!そうと決まったら、二人を助けに行くわよ?」

 

雪穂(Gトレーラーは走り出し、地上へ出た)

 

雪穂「…」

 

雪穂(この世界の私は…守りたいものを守ろうと、今こうして敵に立ち向かおうしている)

 

雪穂(それに比べて、私はどうだろう?)

 

雪穂(一体、私は何をしていたんだろう…そんなことを思っていた)

 

ツバサ「先に言われちゃったな…って思ってる?」

 

雪穂「…ツバサさん」

 

ツバサ「心配しないで…この世界のあなたにしか出来ない事は、ちゃんとあるから」

 

雪穂「私にしか…出来ないこと?」

 

ツバサ「そうよ、例えば…」チラッ

 

雪穂「…?」チラッ

 

ユキホ「…」

 

雪穂「…!」

 

雪穂(この世界の私は…表情には出さないものの、とても緊張しているように見えた)

 

雪穂「…あ、あの!」

 

ユキホ「…何?」

 

雪穂「いや、その…緊張してるんだろうなって思って」

 

ユキホ「えっ…!?」

 

雪穂「だって…同じ私だもん、そのくらい分かるよ」

 

ユキホ「!…そっか」

 

雪穂「…ねえ、私からも一つお願いしていい?」

 

ユキホ「?」

 

雪穂「G3としてじゃなく、あなたという人間として…高坂ユキホとして戦って?」

 

ユキホ「私として…戦う?」

 

雪穂「うん…そうすれば、どんなことがあってもきっと立ち向かえると思うから」

 

雪穂「壁だって…壊せるくらいにね」

 

ユキホ「…ぷっ」

 

雪穂「いや、笑うところじゃないよ!?」

 

ユキホ「だって、急にそんなこと言い出すから…」

 

雪穂「…ふふっ」

 

ユキホ「あはは…」

 

雪穂(私達はお互いに笑い合った)

 

ユキホ「…分かった、じゃあやってみる」

 

雪穂「うん」

 

ユキホ「あっ…そうだ」

 

雪穂「?」

 

ユキホ「この眼鏡…預かっててくれないかな?」

 

ユキホ「眼鏡かけたままじゃ多分、装着出来ないだろうから…」

 

雪穂「…うん、分かった」

 

雪穂(私はもう一人の私の赤い縁の眼鏡を預かった)

 

ユキホ「…ありがとね」

 

雪穂「…うん!」

 

 

 

亜里沙「はぁはぁ…もう大丈夫かな?」

 

マナ「…いや、どうやらここまでみたい」

 

亜里沙「えっ?」

 

V1「うっ、あっ…!」ドサッ

 

亜里沙「!?」

 

クイーンアントL「…」

 

V1「ひっ…ひぃっ!」ガチャガチャ

 

マナ「…どうやら、スーツを脱いで逃げるつもりみたいね」

 

ホウジョウ「あっ、あぁっ…!!」ダダッ

 

亜里沙「そんな…!」

 

バッファローL「ギルス、いくら逃げようとしても無駄だ…お前はここで裁かれる」

 

マナ「…下がってて」

 

亜里沙「でも…」

 

マナ「いいから!」

 

亜里沙「…マナさん」

 

マナ「変身!」

 

バッファローL「…フン」

 

ギルス「うわぁぁぁぁぁ!」

 

クイーンアントL「…!」ガッ

 

ギルス「ぐっ!」

 

亜里沙「マナさん!」

 

バッファローL「…終わりだ」

 

?「ちょっと待ったー!!」ダダッ

 

バッファローL「!?」

 

ギルス「…ホノカさん?」

 

ホノカ「へっ…その声、もしかしてマナちゃん?」

 

ギルス「えっ?」

 

ホノカ「そっか~!見つかって良かったよぉ…」

 

ギルス「あ、あの…」

 

ホノカ「一緒に家に帰ろう…ユキホもお母さんもお父さんも心配してるよ?」

 

ギルス「でも…」

 

ホノカ「大丈夫だよ!だって私達、もう家族でしょ?」

 

ギルス「家族…?」

 

ホノカ「うん!だから…一緒に帰ろう?」

 

ギルス「…!」コクリ

 

ホノカ「よし、じゃあ決まりだね!」

 

ホノカ「そのためにも…」クルッ

 

バッファローL「…」

 

ホノカ「あなた達と…戦わなきゃね」

 

バッファローL「アギトか、丁度良い…まとめて葬り去ってやる」

 

ホノカ「…私は絶対に負けない」

 

ホノカ「この力を正しく使って生きるよ…私のために、アギトのために、みんなのために!」

 

バッファローL「黙れ、人は力を得れば間違った道を選ぶ…なぜなら!」

 

?「なぜなら、人は愚かだから…か?」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ(黒いアントロードを全て倒したオレは…ホノカの横に立った)

 

ホノカ「ツカサくん…」

 

バッファローL「そうだ、人は我々が守る…力など必要ない!」

 

ツカサ「…確かにお前の言う通り、人は愚かだよ」

 

ツカサ「自分には無理だと思い込んで、何もやらずに最初から諦めたり…」

 

ホノカ「えっ…?」

 

ツカサ「人を巻き込まない為に、自分一人で逃げ続けようとしたり…」

 

ギルス「…!」

 

ツカサ「後は…」

 

?「ぶっきらぼうだけど、みんなのために行動したり…とか?」

 

ツカサ(オレが声のする方向を見ると、そこにはケースを右手に提げた雪穂とGM-01、GS-03を装備したG3がいた)

 

亜里沙「雪穂!」

 

ツカサ「よく分かってるじゃないか…雪穂」

 

雪穂「…」フフッ

 

G3「お姉ちゃん、マナ!」ダダッ

 

ホノカ「えっ、その声…ええっ!?」

 

ギルス「ユキホ…なの?」

 

G3「うん…!」

 

ホノカ「な、何でユキちゃんが…?」

 

G3「話は後…一緒に戦うよ!」

 

バッファローL「愚かな…」

 

ツカサ「ああ、そうだ…愚かだ」

 

ツカサ「でもな…愚かだからこそ、自分で転んで怪我をして気付かないと分からないもんだ」

 

ツカサ「時には道に迷い、間違えたとしても…次に向かってまた歩き出す」

 

ツカサ「人生という旅は…そういうもんだ」

 

バッファローL「…何が言いたい?」

 

ツカサ「まだ分からないのか…?」

 

ツカサ「お前に道案内してもらう必要はない!」

 

バッファローL「馬鹿な…人の運命や未来は我々の手の中にあればいい、なのに逆らうというのか?」

 

ホノカ「逆らうよ!」

 

バッファローL「…?」

 

ホノカ「誰だって、人の未来を奪うことなんて出来ないもん!」

 

ホノカ「もしそれでも人の運命があなた達の手の中にあるのだとしたら、私が…ううん、私達が奪い返してみせる!」

 

バッファローL「なっ…?」

 

ツカサ「そういう事だ…どうやらもう大丈夫そうだな、ホノカ?」

 

ホノカ「うん…今の私ならバッチリだと思う!」

 

ツカサ「…そうか」フフッ

 

ホノカ「あれ?そういえばツカサくん…なんでこんなところにいるの?」

 

ツカサ「オレもアギトと同じようなもんだ…だから、一緒に戦ってやる」

 

ホノカ「そっか…ありがとう!」ニコッ

 

ツカサ「ああ」

 

バッファローL「お前は…一体、何者だ!」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ツカサ(オレはバックルを装着し、ホノカは腹部からオルタリングを出現させ構える)

 

ツカサ「変身!」

 

ホノカ「変身っ!」

 

ツカサ(オレは一枚のカードをバックルに装填し、ディケイドに変身する)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(全神経に意識を集中させたホノカもオルタリングの左右のスイッチを同時を押し、アギトへと変身する)

 

アギト「はあっ!」

 

ディケイド「…よし」

 

G3「行こう、マナ!」

 

ギルス「…ええ!」

 

クイーンアントL「…!」ダダッ

 

アギト「こっちは任せて!」ダッ

 

ディケイド「ああ、頼む!」

 

ディケイド(接近してくるクイーンアントロードはアギト達に任せ、オレはバッファローロードと戦う事にした)

 

 

 

G3「はっ!」ガガッ

 

クイーンアントL「…!」

 

アギト(G3が銃で敵を攻撃してくれている間に私とギルスが近づく)

 

アギト「やぁっ!」

 

ギルス「はぁっ!」

 

クイーンアントL「…」ブンッ

 

アギト(敵は槍を振り回して、私とギルスを攻撃しようとする)

 

アギト「うわあっ!?」サッ

 

ギルス「…!」バッ

 

アギト(何とか避けた私とギルスは…敵から離れた)

 

G3「お姉ちゃん、マナ!」

 

アギト「私達は大丈夫!それにしてもあの槍、もし刺さっちゃったら絶対痛そうだよね…」

 

G3「いや、痛いどころじゃすまないから!」

 

アギト「だよね~…」アハハ

 

ギルス「まずはあの槍を何とかするしかなさそうですね…」

 

アギト「そうだね…ん?」チラッ

 

アギト(私はG3が装備しているチェーンソーみたいな武器を見つめた)

 

アギト「それだ!」

 

G3「え?」

 

アギト「その武器で槍を使えなくすればいいんだよ!」

 

G3「ちょっ…もしかして私にやれって言うつもり!?」

 

アギト「だってそれしか思いつかないんだも~ん!」

 

ギルス「ホノカさん、後ろ!」

 

アギト「へっ?」クルッ

 

クイーンアントL「…!」ブンッ

 

アギト(後ろから槍で突こうとしてくる敵の攻撃を、私は何とかかわした)

 

アギト「うわ危なっ!?」サッ

 

G3「お姉ちゃん!…こうなったら、仕方ないか」

 

G3「はぁぁぁぁっ!」ガガッ

 

クイーンアントL「!?」

 

アギト(G3は銃を撃ちながら敵に近づき…)

 

G3「はっ!」ブンッ

 

バキッ!

 

クイーンアントL「!」

 

アギト(チェーンソーのような武器で敵が持っていた槍を壊した)

 

アギト「やった、さすがユキちゃん!」

 

クイーンアントL「…」キッ

 

アギト(槍を壊されて怒った敵は、G3を攻撃しようとする)

 

アギト「危ない!」

 

ギルス「私が行きます!」ダッ

 

アギト(そう言ってギルスはかかとから鋭い猫の爪のようなものを生やした後…)

 

ギルス「はっ!」グサッ!

 

クイーンアントL「!」

 

アギト(ジャンプして敵の肩にかかと落としをして、かかとの爪を敵に刺した)

 

ギルス「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

クイーンアントL「…ッ!」

 

ホノカの母『ユキホ、聞こえる?』

 

G3「お母さん?」

 

ホノカの母『もう一人のあなたにGM-01を強化させる部品が入ったケースを持たせているわ、それを受け取って』

 

G3「分かった…お願い、ケースを!」

 

雪穂「うん!」ブンッ

 

アギト(雪穂がケースをG3の近くに投げ、チェーンソーみたいな武器を腕から外したG3はそのケースを開けた)

 

ホノカの母『ケースの中に入っているアタッチメントをGM-01に合体させて』

 

G3「えっと…」ガチャッ

 

アギト(G3はケースに入っていた何かを持っていた銃に取りつけた)

 

ホノカの母『GG-02…G3の最大武器よ』

 

G3「…マナ、離れて!」

 

ギルス「!」バッ

 

G3「えいっ!」バシュッ!

 

クイーンアントL「…ッ!?」フラッ

 

アギト(G3が撃った一発が敵に当たって、敵はふらついた)

 

G3「お姉ちゃん!」

 

ギルス「今です!」

 

アギト「うん…!」シャキン

 

アギト(アギトの角を開いた私は集中し…足元にアギトの紋章が現れる)

 

アギト(私はその紋章をエネルギーに変え…それを右足に吸収させた)

 

アギト「はぁっ!」

 

アギト(私はジャンプし、敵に向かって右足でキックした)

 

クイーンアントL「!!」ゴロゴロ

 

アギト(私のキックを受けて転がった敵は一度、立ち上がったけど…)

 

クイーンアントL「…!」フラッ

 

アギト(頭の上に天使の輪っかのようなものが浮かんだ後に…爆発した)

 

G3「もしかして…倒せた?」

 

アギト「…やった、やったよ~!」

 

亜里沙「みんな、危ない!」

 

雪穂「避けて!」

 

ギルス「えっ…!?」

 

バチバチッ!

 

アギト(敵を倒したと思って喜んでいたら…今度は別の敵が私達を攻撃してきた)

 

アギト「うわっ!」

 

ギルス「ぐっ…」

 

G3「わあっ!」

 

アギト(攻撃を受けた私達はそれぞれの方向に吹き飛んだ)

 

ディケイド「うっ…」ゴロゴロ

 

アギト(すると、私と同じところにディケイドが転がりながらやってきた)

 

アギト「ツカサくん…!大丈夫?」

 

ディケイド「ああ、何とかな…」

 

バッファローL「許されぬ…」

 

アギト「!」

 

バッファローL「人が神に近づくなど…」

 

アギト「私は神なんかじゃない…高坂ホノカ、高校二年!」

 

アギト「ただの…人間だよっ!」

 

バッファローL「愚かな…愚かなぁぁぁぁぁ!!」

 

アギト(そうだよ、私はただ…みんなの居場所を守りたい)

 

アギト(みんなの居場所を守るために戦うことが、私が今やるべきことなんだ)

 

アギト(例え、これから何があっても…)

 

アギト「私は…絶対に、諦めない!」

 

 

 

ディケイド(アギトがそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードにアギトの力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「よし、アンタのその強い想い…奴にぶつけるぞ!」

 

アギト「うん!…えっ、どうやって?」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…ア・ア・ア・アギト!』

 

ディケイド(オレはアギトの後ろに回り込んだ)

 

アギト「へっ…なになに?」

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

ディケイド(オレはアギトの背中を押した)

 

ディケイド(するとアギトは…アギトトルネイダーに変形した)

 

アギト「う…うわぁぁぁぁぁ!?」

 

ディケイド「うるさい」

 

アギト「何これ!?」

 

ディケイド「オレとホノカの力だ」

 

アギト「何それ!?」

 

ディケイド「細かい事は気にしなくていい」

 

アギト「いや、気にするよ!元に戻るのこれ!?」

 

ディケイド「後でちゃんと戻る」

 

アギト「そうなの?…ならいっか!」

 

バッファローL「何を呆けている!」バッ

 

ディケイド(バッファローロードはプラズマを再び放とうとしている)

 

アギト「乗って!」

 

ディケイド「…良いのか?」

 

アギト「うん!」

 

ディケイド(オレはアギトトルネイダーに乗り、敵の攻撃を素早く回避する)

 

バッファローL「何!?」

 

ガシッ

 

バッファローL「!」

 

ギルス「…油断したわね」

 

ディケイド(その間にG3のGA-04とギルスのギルスフィーラーがバッファローロードを拘束する)

 

アギト「ユキちゃん、マナちゃん!」

 

G3「今のうちに早く!」

 

ディケイド「…ああ!」

 

ディケイド(次にオレはもう一枚のカードをベルトに装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ア・ア・ア・アギト!』

 

アギト「いっけぇぇぇ!」

 

ディケイド(オレを乗せたアギトトルネイダーは加速し、バッファローロードに向かって突撃していく)

 

バッファローL「グッ…!」

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

ディケイド(そしてオレはライドブッカーソードモードで、すれ違いざまにバッファローロードを斬りつけた)

 

バッファローL「グアッ…!」ゴロゴロ

 

ディケイド(斬りつけると同時にアギトの紋章が浮かび、消えた後にオレとアギトトルネイダーから戻ったアギトは着地した)

 

ディケイド(これは『DCDT(ディケイドトルネード)』…オレとアギトの技だ)

 

アギト「おっとっと…ほっ!」スタッ

 

バッファローL「人が神を、超越するなど…グワァァァァァ!!」

 

ディケイド(バッファローロードは苦しみながら立ち上がるが…頭上に光の輪を出した直後に爆発した)

 

アギト「…これで、終わったの?」

 

ディケイド「ああ…もう大丈夫だ」

 

ディケイド(オレ達は変身を解除した)

 

ホノカ「よ、良かった~…」ヘナヘナ

 

亜里沙「お~い!」

 

雪穂「お姉ちゃーん!」

 

ツカサ(手を振る雪穂達の後ろにはGトレーラーが停まっていた)

 

ホノカ「…何だろう、あの車?」

 

ツカサ「どうやら、迎えが来たみたいだな」

 

ホノカ「えっ?」

 

 

 

ツカサ(オレ達はGトレーラーの中に入った)

 

ホノカの母「…」

 

ホノカ「お母さん…?」

 

ユキホ「…」

 

マナ「…」

 

ホノカの母「皆、ちゃんと無事に帰ってこれたわね…おかえりなさい」

 

ホノカ「うっ…うわぁぁぁぁぁん!」ガバッ

 

ホノカの母「ちょっ、ホノカ!?」

 

ホノカ「危なかったよ!怖かったよ!これで負けておしまいだなんて絶対に嫌だったんだよ!」

 

ホノカ「負けて何も守れないなんて悲しいよ!だから…!!」

 

ホノカの母「…はいはい、よく頑張ったわね」フフッ

 

雪穂「お疲れ様…はい、これ」

 

ツカサ(雪穂は赤い縁の眼鏡をユキホに渡した)

 

ユキホ「…ありがとう」スチャ

 

雪穂「ううん…」

 

雪穂「私の方こそ、ありがとう」ボソッ

 

ユキホ「え?」

 

雪穂「…いや、何でもないよ」

 

ユキホ「そうなの?」

 

雪穂「うん」フフッ

 

亜里沙「…雪穂とユキホ、いつの間に仲良くなったんだろ?」

 

ツカサ「さぁな…でも、仲良くなったなら別に良いんじゃないか?」

 

亜里沙「…それもそうだね!」

 

マナ「あの…」

 

亜里沙「?」

 

マナ「ありがとう、友達になりたいって言ってくれて…本当は嬉しかった」

 

亜里沙「!…じゃあ、私と友達になってくれるの?」

 

マナ「…」コクリ

 

亜里沙「やった…やった~!」ギュッ

 

マナ「ちょっと、いきなり抱きつかないでよ…苦しいってば」

 

亜里沙「ふふっ…!」

 

ツカサ「…」フフッ

 

雪穂「…ねえ、ツカサ」

 

ツカサ「ん?」

 

ユキホ「あの二人…いつの間に仲良くなったんですか?」

 

ツカサ「…お前達が仲良くなってた間だ」

 

ホノカ「あっ、そうだ!」ゴシゴシ

 

ツカサ(ホノカはポケットから手紙を取り出した)

 

ホノカ「マナちゃん、これ…マナちゃんのお母さんから!」

 

マナ「えっ…?」

 

ホノカ「ごめん、勝手に開けて先に読んじゃったけど…はい!」

 

ツカサ(マナは手紙を受け取り、読み始めた)

 

『マナ、元気ですか?』

 

『怪物に村を襲われ、マナと離ればなれになってしまった私はあの日…しばらく記憶を失っていました』

 

『そんな私を、サワキさんという方が助けてくれて…私はしばらくそのお家でご厄介になっています』

 

『今はまだ訳あって、マナに会う事は出来ませんが…いつか必ずマナを迎えに行きます』

 

『だからそれまでは、彼女達と…家族として生きてください』

 

『何故なら…生きる事は、とても素晴らしい事なのだから』

 

マナ「お母さん…」ツー…

 

ホノカ「マナちゃん…」ギュッ

 

ユキホ「…マナ」ギュッ

 

ツカサ(ホノカとユキホは泣き出すマナを抱き締めた)

 

マナ「生きてた、良かった…ううっ」ポロポロ

 

ユキホ「もういい…もういいんだよ、ガマンなんてしなくても」

 

ホノカ「だから…これからは、私達にいくらでも甘えてね?」

 

マナ「はい…」グスッ

 

ツカサ「…」

 

?「良かったわね、元に戻ったみたいで」

 

ツカサ(オレの隣にはいつの間にかツバサがいた)

 

ツカサ「…またお前か」ハァ

 

ツバサ「あなたの戦い方もなかなか良かったわよ?そうね…53点ってとこかしら」

 

ツカサ「あのな…ん?」キョロキョロ

 

ツカサ「そういえばこの車、誰が運転していたんだ…まさかお前か?」

 

ツバサ「そんな訳ないじゃない…ほら」クルッ

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレとツバサの後ろには、ホノカの父が腕を組んで立っていた)

 

ホノカの父「…」ツー…

 

ツカサ(ホノカの父は娘達の姿を見て、涙を流していた)

 

ツカサ「…まさか、おやっさんが?」

 

ツバサ「そうよ…お父様にはGトレーラーの運転手の役割をお願いしていたの」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

グゥ~…

 

ツカサ(すると、誰かのお腹の音が大きく鳴った)

 

ホノカ「あっ…///」

 

ユキホ「ちょっと…お姉ちゃん?」

 

ホノカ「いや~、安心したらお腹空いちゃって…」

 

ホノカの母「それじゃ、帰ってご飯にしましょうか…今日は豪勢にいくわよ~?」

 

ホノカ「やったー!やっぱりそうでなくっちゃねっ?」

 

ユキホ「もう、お母さんまで…」

 

マナ「…」フフッ

 

雪穂「えっと…それじゃ、私達はこれで」

 

ホノカの母「あら、帰っちゃうの?」

 

ホノカ「そうだよ…一緒にご飯食べようよ!」

 

雪穂「…ううん、遠慮しとくよ」

 

雪穂「私も…早く『今いるべき居場所』に、帰りたいから」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「雪穂…」

 

ホノカ「そっか…分かった、今日は何から何まで本当にありがとね!」

 

雪穂「…うん」

 

マナ「私も…助けてくれてありがとう」

 

亜里沙「うん!」

 

マナ「それと…さっきはごめんなさい」

 

亜里沙「私は大丈夫だよ!」

 

ツカサ「オレも同じだ…だから、もう気にするな」

 

ツカサ(オレ達が降りた後…Gトレーラーは走り去っていった)

 

ツバサ「あっ、そうそう…」

 

ツカサ「何だ?」

 

ツバサ「今日の晩ご飯、生春巻が良いわ」

 

ツカサ「!…断る」

 

ツカサ(オレは布で簀巻きにされていたことを思い出していた)

 

亜里沙「じゃあ私、手巻き寿司が良い!」

 

ツカサ「ダメだ」

 

亜里沙「ケチ…」

 

雪穂「焼肉が良いかな…」ボソッ

 

ツカサ「それだ」

 

雪穂「えっ、ホントに?」

 

ツカサ「ああ…そうと決まれば買い出しだ」

 

亜里沙「やったね、雪穂!」

 

雪穂「…うん」フフッ

 

ツカサ(オレ達は歩いて食材の買い出しに向かった)

 

 

 

ホノカ「ふぅ…疲れた~」ボフッ

 

ホノカ(家に帰ってご飯やお風呂を済ませた私はベッドに寝転んで今日のことを思い返していた)

 

ホノカ「今日は色々あったな…」

 

ホノカ(スクールアイドル、か)

 

ホノカ(でも…本当にこの世界の私に、そんなスゴいことが出来るのかな?)

 

ホノカ(どんなにやったって、さっき見たA-RISEのライブには敵わない気がする)

 

ホノカ(私はそう思っていた)

 

ホノカ「…あっ、そういえば!」ガサゴソ

 

ホノカ(私はツカサくんから貰った封筒を取り出した)

 

ホノカ「確か…あった、これだ!」

 

ホノカ(私はピンク色のディスクを取り出し、パソコンに入れた)

 

穂乃果『皆さん、こんにちは!』

 

ホノカ(画面には私と八人の少女が映っていた)

 

ホノカ「えっ、私!?」

 

穂乃果『私達、音ノ木坂学院のスクールアイドル…μ'sです!』

 

ホノカ「μ's…?」

 

ホノカ(そこには別の世界の私が、仲間と一緒に歌って踊っている姿があった)

 

ホノカ(みんな、笑顔で…楽しそうで)

 

ホノカ(私は…A-RISEのライブを見た時よりも強い衝撃を受けていた)

 

ホノカ「…!」

 

ホノカ(この瞬間、私の中で最高のアイディアが閃いた!)

 

ホノカ「これだ…これだぁぁぁぁぁ!!」

 

チョットオネエチャ-ン、ウルサイ!

 

ホノカ「あっ…ごめーん!」

 

ホノカ(そうだ…きっとこれなんだ)

 

ホノカ(今の私がやらなくちゃいけないことは…!)

 

 

 

ツカサ(それから数日後、日用品の買い出しを済ませたオレは近くの神社でお参りをしていた)

 

ツカサ「よし、後は家に帰るだけだな…ん?」

 

?「はっ!」

 

ツカサ(すると、近くでジャージを着た一人の少女が何かの練習をしていた)

 

ツカサ「あれは…ホノカか?」

 

ドサッ!

 

ホノカ「うわっ!痛た…」

 

ホノカ「うーん…本当に難しいや、別の世界の私ったらこんなのよく出来るな~」

 

ホノカ「…よし、もう一回!せーの!」クルッ

 

ドサッ!

 

ホノカ「うわっ!痛た…く~っ」

 

カシャッ

 

ホノカ「え?」

 

ツカサ(オレはホノカにカメラを向け、シャッターを切っていた)

 

ホノカ「あっ…ツカサくん!?」

 

ツカサ「よう」

 

ホノカ「もう!勝手に撮るなんてひどいよぉ~!?」

 

ツカサ「悪い悪い…大丈夫か?」スッ

 

ツカサ(オレはホノカに手を差しのべた)

 

ホノカ「あっ…うん、大丈夫だよ!」

 

ツカサ(ホノカはオレの手を取らず、自力で立ち上がる)

 

ツカサ「…もしかして、スクールアイドルの練習か?」

 

ホノカ「うん!ツカサくんから貰った封筒に入ってたDVDを見て…私もやろうと思ったんだ」

 

ツカサ「DVD…?」

 

ホノカ「そうだよ!あのDVDを見てから…やってみたいなって、本気で思ったの」

 

ホノカ「だから今は…この気持ちを信じたい」

 

ホノカ「このまま誰も見向きもしてくれないかもしれないし、応援なんて全然もらえないかもしれない…」

 

ホノカ「それでも一生懸命頑張って…届けたいの」

 

ホノカ「私が今ここにいる、この想いを!」

 

ツカサ「…」フフッ

 

ホノカ「と言っても、向こうの世界と違って…メンバーはまだ私一人しかいないけどね」エヘヘ

 

ツカサ(封筒に入ってたDVD、向こうの世界の私…という事はあの封筒にはμ'sのDVDが入っていたのか)

 

ツカサ「まあ…そのうち一緒にやってくれる仲間が見つかるさ」

 

ホノカ「うん!それにしてもあのDVDを見てから本当に、自信とか勇気が湧いてきたんだよね…私もあんな風になれるかな?」

 

ツカサ「なれるさ、アンタは高坂ホノカだ」

 

ツカサ「歌う事が好きであるなら…勝利の女神は、必ず微笑んでくれるさ」

 

ホノカ「ツカサくん…うん、ありがとう!」

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレが自分の手を見ると、徐々に身体が透けている事に気付いた)

 

ホノカ「えっ、ツカサくんが…透けてる!?」

 

ツカサ「…どうやら、この世界でオレがやるべき事は終わったらしい」

 

ホノカ「ど…どういうこと?」

 

ツカサ「別の世界に行くって事だ」

 

ホノカ「そうなの!?」

 

ツカサ「ああ」

 

ホノカ「そんな…もし初めてライブすることになったら、真っ先にツカサくん達を誘おうと思ってたのに」

 

ツカサ「そんな事しなくても、見に来てくれる人達はいる…安心しろ」

 

ホノカ「でも、私はツカサくん達と出会って色々なことを教えてもらった…だから!」

 

ツカサ「オレはただ…スクールアイドルの素晴らしさを伝えに来ただけだ」

 

ツカサ「別の世界のアンタが広めてくれたようにな」フフッ

 

ホノカ「…ツカサくん」

 

ツカサ「心配するな…またいつか、どこかで会える」

 

ホノカ「本当…?」

 

ツカサ「ああ、嘘じゃない」

 

ホノカ「約束だよ?」

 

ツカサ「もちろんだ」

 

ホノカ「…分かった、じゃあそれまでお互い頑張ろう!」

 

ツカサ「お互いにファイト…だな?」

 

ホノカ「うん、ファイトだよっ!」

 

ツカサ「じゃあ…身体に気をつけてな」

 

ホノカ「…うん」

 

ツカサ「雨降ってる中ランニングして、風邪ひいたりするなよ?」

 

ホノカ「あはは…ずいぶん具体的だね?」

 

ホノカ「あっ、そうだ!」

 

ツカサ「…どうした?」

 

ホノカ「雪穂のこと…よろしくね?」

 

ツカサ「!…ああ」

 

ツカサ「じゃあな、ホノカ」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

ホノカ「ありがとう…ツカサくん」

 

ホノカ「そういえば、いつかどこかでツカサくんに似た子を見たような気がするんだけど…気のせいかな?」

 

ホノカ「…まあ、いっか!」

 

ホノカ「よ~し、じゃあ練習練習…」

 

?「あ、あの…!」

 

ホノカ「へっ?」クルッ

 

?「高坂ホノカさん…ですよね?」

 

ホノカ「そ、そうですけど…」

 

?「わ…私、同じクラスのミナミっていいます」

 

ホノカ「ミナミさん…そういえば、お話するの初めてだね?」

 

ミナミ「はい、それで私の隣にいるのも同じクラスの…あれ?」

 

?「…」ジーッ

 

ミナミ「あっ…ソノダさ~ん!隠れてないで出ておいでよぉ~!」

 

ソノダ「あっ…!」サッ

 

ホノカ「…?」

 

ミナミ「あの…私達、高坂さんが学校のために何かやろうと考えてるって話を他の子から聞いて」

 

ミナミ「だから…もし何か出来ることがあったら、私達もお手伝いしたいなって」

 

ホノカ「…えっ?」

 

ミナミ「あっ、イヤならいいんです!」

 

ミナミ「ただ…私達もあの学校がなくなっちゃうのは、寂しいから」

 

ホノカ「それ…本当?」

 

ミナミ「はい!」

 

ホノカ「あなたも…?」

 

ソノダ「…」コクリ

 

ホノカ「…やった」ボソッ

 

ミナミ「え?」

 

ホノカ「やったぁ~!!」

 

ソノダ「!?」ビクッ

 

ミナミ「えっ…ええっ?」

 

ホノカ「ミナミさん、ソノダさん!」ガシッ!

 

ミナミ「は、はいっ!?」

 

ソノダ「…?」

 

ホノカ「それなら…私と一緒にスクールアイドル、始めませんか!?」

 

ホノカ(確かに…最初は、誰も見向きもしてくれないかもしれない)

 

ホノカ(応援なんて全然もらえないかもしれない)

 

ホノカ(でも頑張れば…私達がとにかく頑張って一生懸命なこの気持ちが伝われば、きっと!)

 

ホノカ(そして、私達は動き出す…三年後に自分たちの大切な学校が無くなってしまうのを阻止するために)

 

ホノカ(まずはちっちゃなライブからでいい…今はただ、みんなにこの想いを伝えたいから)

 

ホノカ(私達がここにいること…そして一生懸命、大事なもののためにがんばっていること)

 

ホノカ(どうかそんな私達を応援して下さい…ちょっとでいいから、あなたの気持ちを私達に分けてください)

 

ホノカ(あなたが見てくれたら、きっと…私達の世界は変わる)

 

ホノカ(だから…!)

 

ホノカ「叶え!私たちの…!!」

 

 

 

ツカサ(写真館に帰ってきたオレは、食事を作っていた)

 

ツカサ「ほら、出来たぞ」コトッ

 

亜里沙「野菜がいっぱいだね…?」

 

ツカサ「今日は畑から採った野菜でバーニャカウダだ…こないだは肉ばかり食べてしまったからな」

 

亜里沙「あっ、そっか!」

 

ツカサ「だから、ちゃんと好き嫌いせずに野菜も食べないとな」

 

亜里沙「なるほど…さすがツカサ!」

 

ツカサ「分かったら早く食べろ…野菜も肉や魚と同じ、新鮮なものほど美味しいからな」

 

亜里沙「うん、いただきます!」

 

雪穂「…いただきます」

 

ツバサ「いただきます」

 

ツカサ(亜里沙達はバーニャカウダを食べ始めた)

 

亜里沙「うん…美味しい!」

 

雪穂「あっ、そういえば…V-1システムがアギトを捕まえるって話はどうなったの?」

 

亜里沙「う~ん…逃げちゃったから分かんない」モグモグ

 

雪穂「えっ、逃げたって…どういうこと?」

 

ツバサ「人命救助よりも戦線離脱を優先してしまった事がメディアにバレたみたいで…今はそれどころじゃないみたいよ?」

 

雪穂「えぇ…そうなんですか?」

 

ツカサ「そうだ、一つ…聞いていいか?」

 

ツバサ「何かしら?」

 

ツカサ「ホノカ宛ての封筒の本当の差出人は…お前だろ?」

 

雪穂「えっ?」

 

ツバサ「あら、どうしてそう思うの?」

 

ツカサ「そんな事をやりそうなのはお前ぐらいしかいないだろうからな…」

 

ツバサ「さて…どうかしらね、ご想像にお任せするわ」フフッ

 

ツカサ「…そうか」

 

ツカサ(オレはポケットから一枚の写真を取り出し、それを見つめた)

 

亜里沙「あっ、写真…私にも見せて!」

 

キバーラ「アタシにも見せて~!」バサバサ

 

ツカサ「何だ…いたのか、お前?」

 

キバーラ「ヒドい!?」ガーン

 

ツカサ「ほら」ピラッ

 

ツカサ(オレは亜里沙達に写真を見せた)

 

ツカサ(写真にはスクールアイドルの衣装を着て、笑顔で踊るホノカと高校の制服を着たユキホが写っていた)

 

雪穂「これって…」

 

ツカサ「こっちの世界のホノカも…スクールアイドルをやる事になったみたいだな」

 

雪穂「じゃあ…もしかして?」

 

ツカサ「どうだろうな…未来はどんな事が起こっているか、分からないからな」

 

亜里沙「何か…深いね!」

 

雪穂「えっ、深いの?」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「そうか…オレも大人になったかな、うん」

 

キバーラ「いや、それはないんじゃない…?」

 

ツカサ「なっ…!?」

 

雪穂「私もそう思う」

 

ツカサ「はぁ!?」

 

ツバサ「同じく」

 

ツカサ「いや、おかしいだろ!亜里沙だって…」

 

亜里沙「えっ…私はそんなこと言ってないよ?」

 

ツカサ「!…もういい」ハァ

 

ツカサ(オレが少し落ち込んでいると…またスタジオの背景が違うものに変化した)

 

ツカサ「!」

 

 

 

ナルタキ(私は…とある世界の森の中にいた)

 

ナルタキ「残る世界はあと二つ…だがディケイド、君の選択肢も同じく二つしかない」

 

ナルタキ「私に消されるか、君が世界を破壊するかだ…」フフッ

 

ナルタキ(私は目の前に現れたオーロラの中に入り、姿を消した…)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「私はサキ…この近くの生徒よ」

「鬼合戦の始まりか…」

「ウチは…鬼になるつもりはないんよ」

「なりたいんやろ?スクールアイドルに…」

十六之巻『響かぬ鬼』
【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~希×響鬼の世界~
第16話『響かぬ鬼』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツバサ「アギトの世界よ」

ツカサ「オレは、今の居場所にいる意味を必ず見つけたいんだ」

マナ「…今の居場所にいる意味?」

ユキホ「私も…大切な人を守りたいんです」

雪穂「G3としてじゃなく…高坂ユキホとして戦って?」

バッファローL「人は力を得れば間違った道を選ぶ…」

ツカサ「お前に道案内してもらう必要はない!」

ホノカ「人の運命があなた達の手の中にあるのだとしたら…私達が奪い返してみせる!」

ディケイド「オレとホノカの力だ」

ホノカ「ありがとう…ツカサくん」


(春の陽が射す森の中を歩いていると…向こうの方から小さな風が吹いてきた)

 

(落ちていた花びらが渦を巻くように舞った瞬間、ほんの一瞬だけ見えたような気がした…小さな龍)

 

?「!」

 

(風の向こうに見えたその姿は、あまりにもかすかで儚かった)

 

(目を凝らした時にはもう…その姿は見えなくなっていた)

 

?「…春、やんなぁ」フフッ

 

(幼稚園に入る前ぐらいの頃から…ウチには他の皆には見えないものが見えた)

 

(夜の空を飛ぶ長い鼻のお天狗さん、神社のおっきな木に住んでる小さな白いユラユラさん)

 

(遠いお山の鳥居の向こうで鳴いてる真神さん、お社の陰にいる白い狼さん、家の裏の塀の上にいる小さいコボシさん…)

 

(こんなにいっぱいいるのに、姿が見えたり声が聞こえたりするのはウチだけやった)

 

(最初は家族や先生に言ったりしたけど、皆は子供の戯言やと思ったみたいで…笑い飛ばされてしまった)

 

(それからウチは…他の皆には見えない不思議なもののことはあまり言わないようになった)

 

(皆が見えないものは、無い事にして黙っておいた方が良い)

 

(小さい頃から転校ばっかりで、ちゃんとした友達が出来なかったウチは…いつしかそんな処世術を身につけていた)

 

(そんな風に思いながら成長していくと…段々とその不思議な生き物を見る事が少なくなっていって)

 

(今では風が吹いたり花が舞ったり、嵐の兆しが見えたりした時なんかにちらりとその存在のかすかな気配を感じ取るくらい)

 

(一度無い事にしてしまったら…きっと本当に無い事になってしまうんかな?)

 

(でもな…ウチ、思うんよ)

 

(今はもうかすかにしか見えなくても、感じる事は確かにあって…)

 

(これを何かに活かしたいなって思ってるん)

 

パサッ

 

?「ん?」

 

(ウチのポケットから一枚のタロットカードが落ちてきた)

 

?「…正位置の『戦車』」

 

(示されているのは前進、新しい世界、克服と成功、別の世界への出発…)

 

(何だかウチのこれからの未来を暗示しているようなしていないような…)

 

(でも、どんな事があったとしても…きっと大丈夫やってウチは思う)

 

(だってウチは…身も心も、鍛えてますから)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレがほんの少し凹んでいると、写真館の背景が違うものに変化した)

 

雪穂「これは…森の中に太鼓?」

 

亜里沙「タイコって何…?」

 

雪穂「バチっていう棒で叩いて、音を鳴らす楽器のことだよ」

 

亜里沙「叩く…ドラムと似てる!」

 

雪穂「うーん、ちょっと違うけど…同じ打楽器だから似てると言えば似てるのかもね」

 

ツカサ「そうか…ここは響鬼の世界だな」

 

雪穂「響鬼?…その名前も確か、私達の世界で聞いたことがあるような気がするんだけど」

 

亜里沙「う~ん…あっ、希さんだ!」

 

雪穂「そうだ!あの時、海未さんのブレイドと一緒に希さんが響鬼になって私達を助けてくれたんだ…」

 

ツカサ「じゃあ、この世界には響鬼として魔化魍と戦っている希がいるってことか…」

 

亜里沙「マカモウ?」

 

雪穂「この世界の敵のこと?」

 

ツカサ「ああ…簡単に言えば妖怪の類だな」

 

ツカサ「奴らは普段、山や森に住み着いていてな…自分達の餌にする為に出会った人を襲うんだ」

 

亜里沙「エサにするって…人を食べちゃうの?」

 

ツカサ「ああ…場合によっては人里にまで下りてきて、街中に堂々と現れる事もあるらしい」

 

亜里沙「そうなんだ…」

 

ツカサ「だからこそ…そこで起こる被害を未然に防いだり、最小限に食い止めたりするのが響鬼を始めとした鬼の役目って訳だ」

 

雪穂「鬼が化け物を倒すって…何だか想像つかないね」

 

ツカサ「『倒す』…ちょっと違うな」

 

雪穂「え?」

 

ツカサ「実際には『清める』んだ」

 

雪穂「…清める?」

 

ツカサ「そうだ…基本的に魔化魍はアンデッドと同じように不死身でな、通常の物理攻撃は効かない」

 

亜里沙「じゃあ、どうやって…?」

 

ツカサ「鬼はそれぞれが得意とする楽器を模した専用の武器を使っていてな」

 

雪穂「楽器のような武器…ってことは、そこから音を出して魔化魍を清めるの?」

 

ツカサ「その通りだ、清めれば魔化魍の邪悪な魂は消え…魔化魍の身体はただの土塊に戻る」

 

雪穂「へぇ…ん?」

 

ツカサ「どうした?」

 

雪穂「いや、魔化魍って清めないといけないんだよね…それなら、ツカサの場合はどうなるの?」

 

亜里沙「あっ…」

 

ツカサ「…オレか?」

 

雪穂「そうだよ、だって…そんな武器持ってないんでしょ?」

 

ツカサ「…まあ、何とかなるだろ」ガタッ

 

ツカサ(オレは椅子から立ち上がった)

 

雪穂「いや…何とかなるって、相手は不死身なんでしょ?」

 

雪穂「ブレイドの世界の時みたいにカードで封印できるわけでもないし…そうだ!」

 

雪穂「ツバサさんなら、何か知ってるんじゃ…」

 

ツバサ「…ごちそうさま」ガタッ

 

雪穂「えっ!?」

 

スタスタ…バタン

 

ツカサ(何か思い詰めた表情をしていたツバサは突然、席から立ち上がり…足早にスタジオのある部屋から出て行った)

 

雪穂「えぇ…?」

 

ツカサ「放っといてやれ、どうせ…いつもの気紛れだ」

 

雪穂「いや、でも…」

 

ツカサ「それに心配する必要は無い、何故なら…オレは破壊者らしいからな」

 

雪穂「…それ、理由になってないんだけど」

 

亜里沙「それにしてもツバサさん…何かあったのかな?」

 

ツカサ「さあな、ところで…それはもう食べないのか?」

 

亜里沙「…あっ!」

 

ツカサ(亜里沙達は再びバーニャカウダを食べ始めた)

 

ツカサ「…」

 

 

 

ツバサ(スタジオを出た私に…キバーラが声をかけてきた)

 

キバーラ「ツ~バサッ!」パタパタ

 

ツバサ「キバーラ…」

 

キバーラ「どうしたのよ、そんな顔しちゃって…?」

 

ツバサ「…気配を感じるの」

 

キバーラ「気配?」

 

ツバサ「ええ…とても近くに、ね」

 

キバーラ「!…まさか」

 

ツバサ「そう、そのまさかよ…」

 

 

 

ナルタキ(私は光写真館を少し離れた場所から見つめていた)

 

ナルタキ「厄介者の彼女には…少し痛い目に遭ってもらわないとね」

 

ナルタキ「何度も私の計画を邪魔した罰だ…」フフッ

 

ナルタキ(私は現れたオーロラを通過し、その場から姿を消した…)

 

 

 

鋭鬼「やっぱり盗まれとったみたいじゃな…お主、探したぞ!」

 

?「…」

 

裁鬼「あなた、何者なの…?」

 

?「…」ダッ!

 

鋭鬼「!?…サカエ、危ない!」バッ

 

?「!」ズバッ!

 

鋭鬼「かはっ…うわぁぁぁっ!」

 

裁鬼「エイラちゃん!?そんな、エイラちゃんが滝壺の中に…!」

 

?「…」スッ

 

裁鬼「!」

 

?「…!」ザシュッ!

 

裁鬼「うっ!…かはっ」

 

?「…」スタスタ

 

裁鬼「待っ、て…」ドサッ

 

 

 

ツカサ(翌朝、オレと雪穂と亜里沙の三人は写真館を出た)

 

雪穂「あれ?ツバサさんがいない…」

 

ツカサ「アイツもお宝探しとやらで色々と忙しいんだろう…放っとけ」

 

亜里沙「ん~…ここ、気持ち良いね!」

 

雪穂「そうだね…小さな川が目の前にあったり周りに木々があるってことは、ここは山の中かな?」

 

ツカサ「おそらくそうだろうな」

 

雪穂「そっか…それで、こんなに空気が美味しいんだ」

 

亜里沙「えっ…雪穂、空気は食べられないよ?」

 

雪穂「いやいや、違うから!ものの例えだから!」

 

ツカサ「お前、さっき朝食を食べたばかりだろう…どんだけ食い意地張ってるんだ?」

 

雪穂「だから違うってば、もう!」

 

ツカサ「どうどう」

 

雪穂「馬じゃな…もういい、早くノゾミさんを探しに行くよ!」スタスタ

 

亜里沙「あっ、待ってよ雪穂ー!」ダッ

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツカサ(オレ達はノゾミを探すため、森の中に入っていった)

 

 

 

ツカサ(霧がかかる森の中にオレ達が入ってからしばらく歩いていると…雪穂がオレに話し掛けてきた)

 

雪穂「そういえばツカサの服、また変わってるよね?」

 

ツカサ(オレは襟に小さく『日高ツカサ』と書かれた薄紅色の装束を着ていた)

 

ツカサ「全く自分でも嫌になる…どんな服でも完璧に着こなしてしまうんだからな」

 

雪穂「また言ってるよ…」

 

ツカサ「何か言ったか?」

 

雪穂「何でもないでーす」

 

亜里沙「ねぇ、ツカサ…」

 

ツカサ「どうした亜里沙?」

 

雪穂「もしかして、歩き疲れちゃった?」

 

亜里沙「ううん…そうじゃないんだけど、さっきから何か出てきそうな感じがして」

 

雪穂「怖くなっちゃったの?」

 

亜里沙「うん、ちょっとだけ…」

 

ツカサ「なるほどな…確かにもう、既にそこに出てきているからな」

 

雪穂「…え?」

 

ツカサ(オレ達の目の前には一組の男女がいた)

 

男「…人間」

 

女「人間…」

 

ツカサ(男は女の声で、女は男の声でそれぞれ喋っている)

 

雪穂「な、何なの?」

 

ツカサ「こいつらは童子と姫だ」

 

亜里沙「ドウジとヒメ?」

 

ツカサ「魔化魍とは少し違うが…魔化魍が出現するような場所には大抵、こいつらがいるんだ」

 

ツカサ「簡単に言えば魔化魍の味方だな」

 

ツカサ(すると…童子と姫は、それぞれ姿を変えた)

 

怪童子「…餌」

 

妖姫「餌…」

 

亜里沙「もしかして…私達、狙われてる?」

 

雪穂「みたい、だね…」

 

ツカサ「…とりあえずお前らは離れてろ」

 

雪穂「う、うん!」

 

亜里沙「分かった!」

 

ツカサ(雪穂達が離れたのを確認し、オレはバックルを装着した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(オレは取り出した一枚のカードをディケイドライバーに入れ、ディケイドに変身した)

 

ディケイド「…よし」

 

怪童子「…ディケイド?」

 

妖姫「ディケイド…!」

 

ディケイド「まとめてかかってこい…相手してやる」

 

怪童子「!」ダッ

 

妖姫「…!」ダッ

 

ディケイド(オレの挑発に乗り、怪童子と妖姫は走ってこちらに向かってきた)

 

ディケイド(その間にオレは…二枚のカードをライドブッカーから取り出した)

 

ディケイド「ホノカ…借りるぞ」

 

『カメンライド…アギト!』

 

ディケイド(一枚目のカードをバックルに入れたオレはアギトグランドフォームにカメンライドした)

 

DCDアギト「はっ!やあっ!」ガッ!ゴッ!

 

DCDアギト(オレは二体を次々に殴りつけ、ダメージを与える)

 

怪童子「!?」

 

妖姫「!」

 

DCDアギト「本当の戦いってヤツを見せてやるよ」

 

『フォームライド…アギト!トリニティ!』

 

DCDアギト(二枚目のカードをベルトに装填し、オレはスピードとパワーを併せ持つトリニティフォームにフォームライドした)

 

DCDアギト「やっ!はっ!」ザシュッ

 

DCDアギト(オレは目の前に現れたストームハルバートとフレイムセイバーを手にして、怪童子と妖姫を斬りつけていく)

 

怪童子「…!」

 

DCDアギト「これで終わりだ…はっ!」ブンッ

 

DCDアギト(オレは二つの武器を空中へ放り投げた)

 

妖姫「!?」

 

DCDアギト(その行動に怪童子と妖姫が気を取られている隙に、オレは一枚のカードを取り出しベルトに入れた)

 

『ファイナルアタックライド…ア・ア・ア・アギト!』

 

DCDアギト「はあっ…!」シャキン

 

DCDアギト(頭のクロスホーンが開き、集中力を高めるオレの足元にアギトの紋章が浮かび上がる)

 

DCDアギト「はっ!」バッ

 

DCDアギト(その紋章をエネルギーに変えて両足に集めたオレは跳び上がり、妖姫に向かってライダーシュートを放った)

 

DCDアギト「やぁーっ!」

 

妖姫「!!」

 

怪童子「…ッ」

 

DCDアギト(技を受けてすぐに爆発した妖姫を見て、怪童子は逃げようとする)

 

DCDアギト「逃がすか!」パシッ

 

DCDアギト(直後にオレは落ちてきた二つの武器をもう一度手にし、ファイヤーストームアタックで怪童子を切り裂いた)

 

DCDアギト「はあーっ!」ザシュッ!

 

怪童子「!!」

 

DCDアギト(攻撃を受けた怪童子も爆発し、オレはカメンライドを解いた)

 

ディケイド「…」フゥ

 

亜里沙「ツカサ、後ろ!」

 

ディケイド「?」クルッ

 

ディケイド(オレが振り返ると、後ろには魔化魍であるカッパがいた)

 

カッパ「…」

 

ディケイド「!?」

 

ディケイド(オレはひとまず距離を置こうとしたが…それよりも早く、カッパはオレの足元に白い粘液を吐き出した)

 

ディケイド「うわっ!」ベチャッ

 

雪穂「ツカサ!」

 

ディケイド「ぐっ…硬質化する粘液か」

 

ディケイド(固まった粘液からはガスも出てきている)

 

亜里沙「大丈夫!?」

 

ディケイド「ああ、動けないが何とか大丈夫だ」

 

雪穂「…ぷっ」

 

ディケイド「おい…何笑ってんだ?」

 

雪穂「だってツカサ、声が高くなって…」フフッ

 

ディケイド(ガスの影響か、オレの声は一時的に高くなっていた)

 

亜里沙「雪穂、笑っちゃダメだよ?」

 

雪穂「ごめんごめん…」

 

ディケイド「それにしても参ったな…これじゃ身動きが出来ない」 

 

カッパ「…」ダッ

 

ディケイド(それを狙ってか、カッパがオレを攻撃しようとしてきた)

 

ディケイド「!」

 

亜里沙「危ない!」

 

チリーン…

 

ディケイド(その時…どこかから、鈴の音が聞こえてきた)

 

カッパ「!?」

 

雪穂「な、何…?」

 

ディケイド「…?」

 

ディケイド(その直後、蛇のように伸びてきた五色の布がカッパの身体を包み込んだ)

 

カッパ「!」

 

?「はっ!」

 

チリチリチリチリ…

 

カッパ「…!!」

 

ディケイド(辺り一面に美しい鈴の音色が響き渡り…その音でカッパの身体は四散した)

 

ディケイド「今のは…清めの音か」

 

ディケイド(カッパが土塊になり、オレの足を固めていた物は溶けてなくなった)

 

?「あなた…見たところ、鬼じゃなさそうね?」

 

ディケイド「!」クルッ

 

ディケイド(オレが振り向くと、可憐で凜とした気品を漂わせる一人の鬼がいた)

 

ディケイド(身体は鉄のように光り、顔は目も鼻も口もない代わりに少し薄い桜色の隈取りのような紋様が浮かび上がっていた)

 

ディケイド「…アンタは?」

 

ディケイド(いつもの声の高さに戻ったオレは…鬼に向かってそう聞いた)

 

?「人の名前を聞こうと思うなら、まずはあなたから名乗るべきじゃないの?」

 

ディケイド「…」ハァ

 

?「答えて、あなた…鬼じゃないわね?」サッ

 

ディケイド(鬼はオレに鈴を向ける)

 

ディケイド「…」

 

亜里沙「ま、待ってください!」ダッ

 

ディケイド(雪穂と亜里沙がオレと鬼の間に割って入る)

 

?「あなた達…危険よ、離れて」

 

雪穂「私達、彼の仲間なんです!」

 

?「仲間?」

 

雪穂「はい…私達は彼と一緒に旅をしています」

 

?「!…そう、何か訳があるみたいね」

 

ディケイド(鬼は顔だけ変身を解き、素顔を見せた)

 

?「私はアダチサキ…この近くにあるたちばな高等学校の生徒よ」

 

サキ「音撃鈴を使う『佐鬼』として…魔化魍と戦っているわ」

 

ディケイド(サキの顔を見て、オレは変身を解いた)

 

ツカサ「『佐鬼』…か」

 

 

 

ツカサ(雪穂達が自己紹介し、サキに説明をした後…)

 

サキ「お待たせ」

 

ツカサ(生い茂る草木から変身を全て解いた制服姿のサキが出てきた)

 

雪穂「あの…どうしてわざわざ隠れて変身を解いたんですか?」

 

サキ「ああ、それはね…」

 

ツカサ(サキが話そうとする前に…オレは雪穂達に説明した)

 

ツカサ「一度鬼に変身すると、それまで着ていた服は全て消えてなくなるんだ…燃えたり裂かれたりしてな」

 

亜里沙「えっ!?」

 

雪穂「そうなの!?」

 

ツカサ「ああ、だから服を着る為に草木の中に入ってたんだ」

 

サキ「…あなた、よく知ってるわね?」

 

ツカサ「何で知ってるのかは分からないがな…」

 

サキ「どういう事?」

 

雪穂「ツカサは…記憶喪失なんです」

 

サキ「そう…それにしてもあなた達、さっき別の世界から来たとか言ってたわね?」

 

ツカサ「ああ」

 

サキ「会ったばかりだし、あなた達の話はあまり信じられないけど…」

 

雪穂「ですよね…」

 

サキ「でも、鬼じゃないあなたが童子と姫を倒したのは事実だし…あら?」

 

ツカサ(サキはオレが着ている薄紅色の装束を見つめた)

 

ツカサ「何だ?」

 

サキ「あなたの着ているそれ…伝説の音撃道の大師匠が着ていたのと同じものじゃない?」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

サキ「そうよ…きっとそうに違いないわ!」

 

雪穂「あ、あの…」

 

サキ「ちょっとついて来て!」ダダッ

 

ツカサ(サキは全速力で走っていく)

 

雪穂「え…ええっ!?」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…とりあえず行くぞ」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

雪穂「い、いや…ちょっと待ってよ!」ダッ

 

ツカサ(オレは雪穂達と共にサキの後を追いながら、一つ引っ掛かっている事があった)

 

ツカサ(さっきは佐鬼の登場に気を取られて気付かなかったが…確か、夏の魔化魍であるカッパは太鼓の音撃にしか効果が無いはずだ)

 

ツカサ(佐鬼の音撃鈴では倒せない…にも関わらず、どうしてカッパを倒せたんだ?)

 

ツカサ「まさか?…いや、今は別にいいか」

 

 

 

ツカサ(サキに何とか追いついたオレ達の目の前には学校があった)

 

亜里沙「つ、着いた…」ハァハァ

 

雪穂「も、もうダメ…」ゼェゼェ

 

ツカサ「…ここがアンタが通ってる学校か?」

 

サキ「そう…ここがたちばな高等学校よ」

 

?「サキ!」

 

ツカサ(オレがサキと話していると、丸坊主で熊のような図体をした…まるで破戒僧のような男が校舎から飛び出してきた)

 

サキ「あっ…」

 

丸坊主の男「全く、勝手に学校を飛び出して何処に行っていたのだ!?」

 

サキ「何処って…決まってるじゃない、この近くの森に魔化魍が出たって聞いたから倒しに行ってたのよ」

 

丸坊主の男「また勝手な事を…魔化魍はワシらが退治するからよせと言っただろう!」

 

サキ「またそうやって腫れ物扱いするの!?」

 

丸坊主の男「そうではない!ワシは父親として未熟なお前を…」

 

サキ「!…私はね、もう娘として扱ってほしいんじゃないの」

 

サキ「一人の鬼として、扱ってほしいの!」

 

丸坊主の男「…『佐鬼』という名前が付いているとはいえ、お前はまだこの学校の生徒としてまだ修行中の身だ」

 

丸坊主の男「そんなお前を…ワシは一人前の鬼として認める訳にはいかん!」

 

サキ「…そう、もういい」ダッ

 

ツカサ(そう言ってサキはさっきまで来た道を引き返すように走って行った)

 

丸坊主の男「こら待て、サキ!」

 

ツカサ(男はサキを追おうとするが、早々にサキの姿は見えなくなってしまった)

 

亜里沙「行っちゃった…」

 

ツカサ「ここまで連れてきたかと思えば、今度はオレ達を置いて行って…全く忙しいヤツだな」ハァ

 

丸坊主の男「はぁ…む、誰だお前達は?」

 

ツカサ(男はようやくオレ達の存在に気が付いた)

 

雪穂「あ、私達は…」

 

丸坊主の男「誰だか知らんがここは部外者の立ち入りは禁じている…去るが良い」

 

ツカサ(オレは男の話をスルーして質問した)

 

ツカサ「…アンタ、この学校の先生か?」

 

丸坊主の男「いかにもそうだが…む?」

 

ツカサ(男はオレが着ていた薄紅色の装束を見つめた)

 

丸坊主の男「ま、まさか…伝説の音撃道の大師匠か!?」

 

ツカサ「またそれか…一体何の事だ?」

 

丸坊主の男「とにかくついて来い!」ガシッ

 

ツカサ(男はオレの右腕を掴み、無理やり校舎まで引っ張っていく)

 

ツカサ「お、おいやめろ!」ズルズル…

 

雪穂「あーあ、引っ張られてる…どうしようか?」

 

亜里沙「うーん…とにかく着いて行ってみようよ!」

 

雪穂「…だよね」

 

 

 

ツカサ(オレ達は男に連れられ、校長室に入って座らされていた)

 

ツカサ(校長室にはオレ達と先ほどの破戒僧のような風貌の男、そして長髪で中性的な顔立ちをした男がいた)

 

丸坊主の男「先ほどはすまぬ…ワシの名前はキドウ、このたちばな高等学校で猛士科の教師をしておる」

 

雪穂「えっ…猛士科?」

 

亜里沙「聞いたことないね…ツカサ、猛士って何?」

 

ツカサ「猛士というのは…音撃で魔化魍と戦う鬼やそれを補佐する人達の事だ」

 

雪穂「なるほど…あっ、私は高坂雪穂っていいます」ペコッ

 

亜里沙「絢瀬亜里沙です!」ペコッ

 

ツカサ「それにしてもあんな馬鹿力でオレの腕を引っ張るとはな…おかげでまだ少し痛いんだが」

 

雪穂「ちょっと、ツカサ!」

 

ツカサ(オレを叱る雪穂を長髪の男がなだめる)

 

長髪の男「気にしなくて良い…彼の言う通り、キドウが悪い」

 

キドウ「む…」ポリポリ

 

ツカサ(長髪の男に言われて、キドウはバツが悪そうに頬を掻いた)

 

長髪の男「私はこのたちばな高等学校の校長をしているキリュウと申す」

 

ツカサ(キリュウはオレ達の目の前にある机に緑茶が入った湯呑みを置いた)

 

キリュウ「口に合うかは分からないが…」

 

雪穂「あっ…ありがとうございます!」

 

亜里沙「いただきます!」ズズッ

 

ツカサ「…それで、何でオレをここに連れて来たんだ?」

 

キリュウ「うむ…実は我が校は廃校の危機に直面していてな」

 

雪穂「…廃校、ですか?」

 

キリュウ「ああ、我が校には『猛士科』と『忍者科』という他の学校には無いカリキュラムがあるのだが…」

 

亜里沙「忍者科って…?」ボソッ

 

雪穂「たぶん、この学校は鬼以外にも忍者を育てているってことなんだと思う」ボソッ

 

亜里沙「忍者?すごい!」

 

キドウ「…」ゴホン

 

亜里沙「あっ…ごめんなさい」

 

キリュウ「…という訳なのだが、最近は入学する生徒数が年々減少していてな」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

雪穂「え?」

 

ツカサ「という事は、伝説の音撃道の大師匠であるこのオレに講師を頼みたい…そういう訳だな?」

 

雪穂「いや、それはいくらなんでも…」

 

キリュウ「その通りだ」

 

雪穂「そうなんですか!?」

 

キリュウ「うむ…実は私は怪我をしていてな、鬼になれる身体ではないのだ」

 

キリュウ「だからこそ、大師匠である君の存在が必要なのだ…音撃を極めた事で音撃を使わずとも魔化魍を倒せるという君にな」

 

雪穂「…あの」

 

キリュウ「どうした?」

 

雪穂「実は私達…」

 

ツカサ(雪穂はキリュウとキドウにある程度の事実を伏せながら、オレ達の事情を説明した)

 

キリュウ「そうか、君達は旅をしているのか…」

 

雪穂「はい…」

 

キリュウ「そういう事ならもちろん無理にとは言わない、しかしこの学校に一体何が足りないのか…」

 

キリュウ「せめてそれを音撃道の大師匠である君から教えてほしい」

 

ツカサ「そういう事なら…良いだろう」

 

ツカサ「この学校に今、何が求められているのか…オレが絶対に見つけてやる」

 

キリュウ「よろしく頼む」フフッ

 

亜里沙「…」

 

雪穂「…どうしたの亜里沙?」

 

ツカサ(亜里沙は天井の隅を見つめていた)

 

亜里沙「何か、あそこだけ他のと色が少し違うような…?」

 

キリュウ「ほう…よくぞ見破ったな」

 

雪穂「えっ?」

 

キリュウ「もう降りて良いぞ、ハンゾウ」

 

ツカサ(キリュウに言われ、天井から忍者の装束を着た男が降ってきた)

 

雪穂「ええっ!?」

 

?「驚かせてすまなかった…私の名はハンゾウ、忍者科の先生をしている」

 

亜里沙「本物の忍者だ…ハラショー!」キラキラ

 

ハンゾウ「しかし伝説の音撃道の大師匠が…まさかここでお目にかかれるとは」

 

ツカサ「…」

 

キドウ「ハンゾウ…まさかお前、彼女達を驚かすために隠れていたのではあるまいな?」

 

ハンゾウ「まさか…そんな訳ないだろ?」ポン

 

ツカサ(ハンゾウはキドウの肩を叩いた)

 

ハンゾウ「私はキドウに用があって校長室に来たのだ」

 

キドウ「何、ワシにか?」

 

ハンゾウ「うむ…先程、山の麓でアキラ殿とヒトミ殿が喧嘩していたのを見てな」

 

キドウ「何!?…全く、またか」ハァ

 

ツカサ「どうした?」

 

キドウ「ワシの科にいる二人の生徒が入学した当初からずっと揉めているのだが…これがなかなか厄介でな」

 

ツカサ「ふむ…とりあえずその現場に行ってみるか、何か分かる事もあるかもしれないしな」ガタッ

 

キリュウ「すまない…では、よろしく頼む」

 

ツカサ「…ああ」

 

ツカサ(オレ達はキドウと一緒に学校を出て、山の麓に向かった)

 

 

 

ツカサ(山の麓に着いたオレ達の前には、二人の鬼が戦っていた)

 

キドウ「またやっとる…」ハァ

 

ツカサ(胸飾りの無い黒い身体で覆われた一人の鬼は一本の角に顔が青く縁取りされ…)

 

ツカサ(緑に近い色の身体で挑むもう一人の鬼は一本の角で顔や腕が銀で縁取られていた)

 

亜里沙「ねぇツカサ、アレってどっちも鬼なの…?」

 

ツカサ「ああ…専用の武器を持っていないようだから、まだ鬼というよりかは修行中の変身体って所だけどな」

 

ツカサ「例えば、あっちにいる青い方があきら変身体で…」

 

あきら変身体「ふっ!」サッ

 

ツカサ「もう一人の銀色の方が戸田山変身体ってとこだ」

 

戸田山変身体「はっ!」ブンッ

 

ツカサ(あきら変身体と戸田山変身体はお互いを攻撃し合っていた…掛け声からして、どちらも変身しているのは女性のようだ)

 

ツカサ「鬼合戦の始まりか…」

 

雪穂「でも、どうして鬼同士で戦って…?」

 

ツカサ「さぁな…聞いてみないと分からないだろうな」

 

キドウ「こら、止めぬかお前達!」

 

あきら変身体「止めないでください、キドウ先生!」ガガッ

 

戸田山変身体「そうッス…これは私とアキラさんの問題ッス!」ブンッ!

 

キドウ「何!?」

 

あきら変身体「ヒトミさん、あなた…確かにバケネコを倒したって言ったわね?」

 

戸田山変身体「そうッス、間違いないッス!」

 

あきら変身体「残念だけど、それは間違いよ…何故ならバケネコを倒したのは私なのだから!」

 

戸田山変身体「そんなの…プライドの高いエリート風情の言いがかりッス!」

 

あきら変身体「言ったわね…成り上がりの素人のくせに!」ブンッ!

 

ツカサ(あきら変身体と戸田山変身体は再び戦い始めた)

 

ツカサ「…どうやら、どっちが魔化魍を倒したかで揉めているみたいだな」

 

キドウ「あの馬鹿者どもが…しかも魔化魍を勝手に倒すなど」ハァ

 

ツカサ(キドウはこめかみを押さえながら呆れていた)

 

ツカサ「…とりあえず、オレが止めに行ってみるか」

 

キドウ「…何?」

 

ツカサ「オレは音撃道の大師匠だからな…ひとまず、これで止めてみせるさ」スッ

 

ツカサ(オレはバックルを取り出し、腹部に装着しようとする)

 

ツカサ「まあ…とにかく見てろ」

 

ツカサ(だが、その瞬間…誰かがオレの横を通って行くと同時に耳元でこう囁かれた)

 

?「ウチに任しとき」

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレの横を通り過ぎた人物は…よく見覚えのある人物だった)

 

雪穂「えっ…今のって」

 

亜里沙「まさか!」

 

ワシッ

 

あきら変身体「ひゃあ!?」

 

ツカサ(その人物は突然、あきら変身体の胸を鷲掴みにし…驚いたあきら変身体は戸田山変身体の隣まで逃げた)

 

戸田山変身体「ノ、ノゾミ先輩…!?」

 

ツカサ(ノゾミの姿を見たあきら変身体と戸田山変身体は…何故か身震いしていた)

 

ノゾミ「アキラちゃん、ヒトミちゃん…こんな所で何やってるん?」

 

あきら変身体「あのですね、ノゾミ先輩…これには深い事情がありまして!」

 

ノゾミ「深い事情って何なん?」

 

あきら変身体「そ、それは…」

 

ノゾミ「ウソつくとワシワシするよ~?」

 

あきら変身体「ひ…ひいっ!」

 

ノゾミ「もしかして…また二人で喧嘩してキドウ先生を困らせてたん?」

 

戸田山変身体「それはその…そうだ、実はアキラさんが魔化魍の噂を聞いて学校を飛び出したから私はそれを止めに!」

 

あきら変身体「なっ…ヒトミさん、何を言っているの!?あなたの方が先に飛び出したんじゃない!」

 

戸田山変身体「でもアキラさん、私との差を見せつけてやるとか言って張り切ってたじゃないッスか!?」

 

あきら変身体「ヒトミさんだって、私には負けないって言ってたじゃない!」

 

ノゾミ「…ふ~ん?」

 

戸田山変身体「…あっ」

 

あきら変身体「あっ…」

 

ノゾミ「まあどっちでもいいやん、どうせ二人一緒にお仕置きやから…!」

 

戸田山変身体「し、しまったッス…」

 

ツカサ(そう言ってノゾミは、二人に向かって両手を構えた)

 

ノゾミ「わしわしMAXの型!」ダッ

 

雪穂「ツカサ、キドウ先生…少しの間で良いんで耳を塞いで後ろ向いててくれませんか?」

 

ツカサ「…分かった」クルッ

 

ツカサ(オレは素直に雪穂の言葉を聞き入れ、後ろを向いて耳を塞いだ)

 

キドウ「何故だ?」

 

雪穂「いいから先生…後ろ、向いててくれませんか?」ゴゴゴ

 

キドウ「っ!?…わ、分かった」クルッ

 

ツカサ(雪穂に凄まれたキドウも後ろを向き、耳を塞いだ)

 

ツカサ(それからオレは何も見ていないし…何も聞こえていない)

 

ツカサ(後に亜里沙が『二人ともお尻丸出しで倒れててかわいそうだった』と呟いていたが…オレには何の事か知る由も無かった)

 

 

 

亜里沙「ツカサ、先生…もう大丈夫だよ!」

 

キドウ「う…うむ」クルッ

 

ツカサ「…」クルッ

 

アキラ「うぅ…」グッタリ

 

ヒトミ「あぁ…」ピクピク

 

ノゾミ「ふぅ、これでもう大丈夫やね?」

 

ツカサ(鬼の変身が解かれ、倒れたアキラとヒトミは…ノゾミによって既に服を着させられていた)

 

ノゾミ「ご無沙汰してます、キドウ先生」

 

キドウ「…東條」

 

ノゾミ「ぶいっ!」シュッ

 

ツカサ(ノゾミは人差し指と中指を使って、敬礼のような挨拶をした)

 

雪穂「えっ、知り合いなんですか?」

 

キドウ「東條は猛士科の生徒だ…訳あって今は休学中の身だがな」

 

ツカサ「そういう事か…」

 

キドウ「…お前、一体こんな所で何を?」

 

ノゾミ「ウチ、この辺で食べられそうな雑草を探してて…そうしたら先生の姿が見えたから何してるんかなって」

 

キドウ「…そうか」

 

ノゾミ「それじゃ、ウチはこの辺で…」スタスタ

 

ツカサ(ノゾミはその場を立ち去ろうとする)

 

キドウ「待て」

 

ノゾミ「!」ピタッ

 

キドウ「学校に戻るつもりはまだないのか?」

 

ノゾミ「…はい」

 

ノゾミ「ウチはまだしばらく、鬼になるつもりはないので」

 

キドウ「…分かった、キリュウにもそう伝えておくとしよう」

 

ノゾミ「じゃあ…」

 

ツカサ「待て」

 

ノゾミ「…?」クルッ

 

ツカサ(オレの声を聞いて、ノゾミは振り向いた)

 

ノゾミ「ウチに何か用なん?…少年くん」

 

ツカサ「少年?」

 

キドウ「東條、彼はこう見えて伝説の音撃道の大師匠だ」

 

ノゾミ「そうなんですか…?少年くん、若いのにスゴいなぁ」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(何なんだ、このくすぐったさは…?)

 

雪穂「…あの、実は私達」

 

亜里沙「ノゾミさんを探しにここにやってきて…」

 

ノゾミ「えっ…ウチに?」

 

キドウ「む、そうだったのか?」

 

ツカサ「ああ…」

 

キドウ「そういう事ならば、彼女とゆっくり話せば良い…ひとまずワシはこの二人を学校に連れて帰る」ヒョイ

 

ツカサ(キドウはアキラとヒトミを両腕で軽く持ち上げた)

 

ツカサ「頼む」

 

ノゾミ「少年くん達…ウチに用があるってことは何か深い訳があるみたいやね?」

 

ツカサ「そんなとこだ」

 

ノゾミ「そっか、じゃあ…とりあえずウチが住んでるお家まで行こっか?」

 

雪穂「良いんですか…?」

 

ノゾミ「うん!じゃあ、ウチについてきて」スタスタ

 

ツカサ(オレ達はノゾミについて行く事にした)

 

 

 

ツカサ(ノゾミについて行くオレ達はやがて、森の中にポツンと立つ小屋に辿り着いた)

 

亜里沙「ここが…」

 

雪穂「ノゾミさんの住んでるお家…?」

 

ツカサ「…そういえばノゾミは?」キョロキョロ

 

ツカサ(ノゾミはいつの間にか…オレ達の前からいなくなっていた)

 

亜里沙「え…あれっ?」

 

雪穂「一体、どこに行っちゃったんだろう…」

 

キャァァァァァ!!

 

ツカサ「!?」バッ

 

ツカサ(近くで誰かの悲鳴が聞こえたオレ達は…思わず振り向いた)

 

?「うぅ…///」

 

ノゾミ「久しぶりやね、あだっち?」ワシワシ

 

雪穂「サキさん!?」

 

ツカサ(そこにはノゾミに『わしわし』されているサキがいた)

 

サキ「だから…いつもそうやって会う度にそれするのやめなさいよ!」ササッ

 

ノゾミ「大丈夫、大きくなる可能性はある!」

 

サキ「何の話よ!?」

 

亜里沙「…アレをしてもらったら、私の胸もお姉ちゃんみたいに大きくなるかな?」

 

雪穂「いや…別に大きくはならないと思うよ?」

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(頭が痛くなったような気がしたオレはこめかみをグッと押さえていた)

 

ノゾミ「とりあえず皆、入ろっか…もちろんあだっちも」ガチャ

 

ツカサ(ノゾミは小屋の扉の前まで行き、鍵を開けた)

 

サキ「…その変な呼び方もやめて」

 

ノゾミ「またまた…良いやん、別に」

 

サキ「良くないわよ…」

 

ノゾミ「さあ、入って入って!」

 

亜里沙「お邪魔します!」

 

雪穂「失礼します…」

 

ツカサ「…」チラッ

 

サキ「…」

 

 

 

ツカサ(オレ達はノゾミに事情を全て説明していた)

 

ツカサ(雪穂はキリュウやキドウと話した時と同じように説明したかったみたいだが…オレがそうさせなかった)

 

ノゾミ「ふんふん…それでどうしたん?」

 

亜里沙「それで私達は…」

 

雪穂「ちょっと、何でいつも全部話そうとしちゃうのさ…?」ボソッ

 

ツカサ「ノゾミはこの世界の『μ's』メンバーだ…変に隠しても意味無いだろ?」

 

ツカサ「それに、彼女には…全てを見破られているような気がするからな」

 

雪穂「…どうして?」

 

ツカサ「さぁな、何となくだ」

 

雪穂「何となくって…あてにならないんだけど」

 

ツカサ(亜里沙から話を聞いたノゾミは納得したようだった)

 

ノゾミ「そっか…それは大変やったね?」

 

亜里沙「はい…」

 

ノゾミ「…でも、ごめんな」

 

ノゾミ「さっきも言ったけど、ウチはしばらく…鬼になるつもりはないんよ」

 

サキ「…」

 

雪穂「そういえばさっき、キドウ先生から休学されてるって聞きましたけど…何かあったんですか?」

 

ノゾミ「それが…ちょっとケガしちゃってな?」

 

雪穂「ケガ…?」

 

ノゾミ「うん、だからケガが完治するまで…しばらく鬼にはならないつもりなんよ」

 

雪穂「そうだったんですか…」

 

ノゾミ「その代わり、ウチに何か出来る事は無いかなって思って…今は猛士をサポートするような式神様を一人で作ってるん」

 

亜里沙「式神様?」

 

ノゾミ「うん、自然の力を注入する事で動物の形になって…猛士の皆を助けてくれるものなんよ」

 

ノゾミ「簡単に言うと…一種のスピリチュアルやね」

 

亜里沙「スピリチュアル…スゴい!」キラキラ

 

サキ「いい加減にしてよ」ガタッ

 

ツカサ(それまで黙っていたサキが突然、そう言って立ち上がった)

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「…?」

 

ノゾミ「…あだっち」

 

サキ「ノゾミ…本当はもう怪我なんて治ってるんでしょ?」

 

亜里沙「えっ、そうなんですか?」

 

ノゾミ「…バレちゃったら仕方ないかなぁ」

 

雪穂「えっ…?」

 

ノゾミ「まあ…これでも鍛えてますから、身体は丈夫なんよ?」

 

サキ「…」

 

ノゾミ「ぶいっ」シュッ

 

ツカサ(平気そうに笑うノゾミを見て、サキは苛立っているようだった)

 

サキ「…あなた、いつの間にそんなつまらない嘘をつくような人間になったの?」

 

ノゾミ「…」

 

雪穂「ちょっ、ちょっとサキさん…」

 

サキ「あなたは黙ってて」

 

雪穂「…っ」

 

サキ「ノゾミ…あなた、本当に鬼になるよりも式神なんか作ってる方が大事だと思っているの?」

 

サキ「そんな事の為に、まだ休学するって言うの?…ふざけないでよ」

 

サキ「私はね…あなたと勝負してちゃんと勝ちたかったの」

 

サキ「それなのにあなたは、私を裏切って…!」

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ(ノゾミはずっとサキの目を優しく見つめていた)

 

ツカサ「…?」

 

サキ「何よ、その目は…」

 

ノゾミ「…」

 

サキ「っ!…私はあなたを許さない、絶対にね」ダッ

 

亜里沙「あ…サキさん!」

 

サキ「…ノゾミの嘘つき」ボソッ

 

ノゾミ「!」

 

ガチャ…バタン

 

ツカサ「…サキを追うぞ」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「ノゾミさんにあんな失礼なこと言ったのに、何でまた…」

 

ツカサ「嘘をついているからだ」

 

雪穂「嘘って誰が…?」

 

ツカサ「…」チラッ

 

ツカサ(オレはノゾミを見た)

 

雪穂「え?」

 

亜里沙「ノゾミさんが…?」

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ「アンタ、他に何か鬼にならない理由があるんじゃないのか?」

 

ノゾミ「さあ…どうやろうね?」フフッ

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「ん?」

 

ツカサ(するとノゾミは…オレが首から提げているカメラを見つめていた)

 

ノゾミ「それって…」ジーッ

 

ツカサ「何だ?」

 

ノゾミ「あっ…ううん、何でもないよ?」

 

ツカサ「?…行くぞ」スタスタ

 

亜里沙「あっ、待ってツカサ!」ダッ

 

雪穂「お邪魔しました!」ガタッ

 

ノゾミ「…うん」

 

ツカサ(オレ達はサキの後を追う為…小屋を出た)

 

ガチャ…バタン

 

ノゾミ「あのカメラって確か…ううん、それは後にしよっか」

 

ノゾミ「…さて、そろそろあの子達に行ってもらおうかな?」スッ

 

キィィィン…

 

ノゾミ「ノゾミパワー、注入!」

 

ノゾミ「はーい、プシュッ!」

 

 

 

サキ「…」

 

ツカサ「よう」

 

サキ「!」クルッ

 

ツカサ(オレ達はサキに追いついた)

 

雪穂「つ、疲れた…」ゼェゼェ

 

亜里沙「もう無理…」ハァハァ

 

サキ「…けっこう遠くまで走ってきたのに、あなたは平気なのね?」

 

ツカサ「こう見えて、オレも鍛えてるからな…」

 

サキ「…そう」

 

ツカサ「…ノゾミが休学する前、アンタとの間に何があったんだ?」

 

サキ「え?」

 

ツカサ「『嘘つき』って言葉が、どうにも気になってな…良かったら教えてくれないか?」

 

サキ「…」

 

ツカサ(サキは少し考え込み…)

 

サキ「分かったわ」

 

ツカサ(ノゾミと何があったのか話してくれる事になった)

 

サキ「…あれは二週間ほど前の事よ」

 

 

 

ノゾミ(ウチは小屋の中で二週間ほど前の出来事を思い返していた)

 

ノゾミ(あだっちは学校の近くにある秘密の練習場で毎日、音撃鈴を手にして修行していた)

 

サキ「やあっ!」

 

ノゾミ(ウチはある話をするために…あだっちのいる練習場にやってきた)

 

ノゾミ「あだっち」

 

サキ「…だからノゾミ、その呼び方やめなさいってば」

 

ノゾミ「いつもここで修行してるん?」

 

サキ「…そうだけど、何?」

 

ノゾミ「いや…ええ場所やなぁって思ってな?」

 

ノゾミ「ウチもここで修行できたらなって…」

 

サキ「はぁ?ダメに決まってるじゃない…やりたいならよそでやって」

 

ノゾミ「…そっか」

 

サキ「…で、私に何か用?」

 

ノゾミ「うん…ウチ、ちょっとあだっちと話がしたいと思ってな」

 

サキ「話?」

 

ノゾミ「うん…スクールアイドルの話なんやけど」

 

サキ「!」

 

ノゾミ「なりたいんやろ?スクールアイドルに…」

 

サキ「あなた、どこでそれを…」

 

ノゾミ「さぁ…どこでやろうね?」

 

ノゾミ(ウチはあだっちが街でこっそりスクールアイドルのCDや雑誌を毎月買って…)

 

ノゾミ(練習場でそれらを聴いたり読んだりしては…音撃鈴を鳴らしながらダンスの練習をしている事も知っていた)

 

ノゾミ(あだっちは、スクールアイドルに対して憧れを持っている…ウチはそう確信していた)

 

ノゾミ(そしてウチは…あだっちの心の中にあるもう一つの『想い』を感じ取っていた)

 

サキ「しらを切るのね…で、どういうつもり?」

 

ノゾミ「別に?あだっちも面倒なタイプだなーって」

 

サキ「…何が言いたいのよ?」

 

ノゾミ「お父さんがいる学校を…たちばなを、あだっちなりに助けたいんやろ?」

 

ノゾミ「鬼としても、娘としても…だから清めの音を活かせるようなスクールアイドルをやってみたいと思った」

 

サキ「…はっ、何言ってるの?」

 

サキ「私は別にあの堅物なんかの為にやりたい訳じゃ…」

 

ノゾミ「本当はお父さんと仲良くしたいのに…なかなか素直になれない」

 

サキ「違う!私は鬼として認めてほしいだけで…」

 

ノゾミ「そうそう…そうやって素直になれないんよね」

 

サキ「だから違うわよ!?大体、私がスクールアイドルやりたいなんて言っても…きっと頭ごなしに反対するに決まってるわ!」

 

ノゾミ「そんなの…分からないよ?」

 

ノゾミ「言ってみればいいやん、特に理由なんて必要無い…やりたいからやってみる」

 

ノゾミ「本当にやりたいことって、そんな感じで始まるんやない?」

 

サキ「…どうして」ボソッ

 

ノゾミ「えっ?」

 

サキ「どうしていちいち私に絡むの!?」

 

サキ「放っておいてよ…あなたには関係ない!」

 

ノゾミ「うーん…確かに関係ないかもしれないけど、放っとけないんよ」

 

ノゾミ「よく知ってるから、あなたと似たタイプ…」

 

サキ「何よ、それ…?」

 

ノゾミ「…とにかく、大丈夫!」

 

ノゾミ「ウチもついてるから、キドウ先生と話してみよう?」

 

サキ「…イヤだと言ったら?」

 

ノゾミ「…」サッ

 

ノゾミ(ウチは『わしわし』をしようと構える)

 

サキ「ひっ…ちょっと、その手やめなさいよ!?」

 

ノゾミ「だから行こうって言ってるんやけど…」

 

サキ「もう…分かったわよ!」

 

サキ「もし私との勝負に勝ったら、あなたの望み通り行ってあげるわ!」

 

ノゾミ「…本当に?」

 

サキ「本当よ」

 

サキ「内容は…そうね、鬼ごっこなんかが良いんじゃないかしら」

 

ノゾミ「鬼ごっこ?」

 

サキ「ええ…五分間、鬼役の私から逃げ切ったらあなたの勝ちよ」

 

ノゾミ「へぇ…良いやん!」

 

サキ「決まりね…もし私が勝ったら、二度と私にその話をしないでちょうだい」

 

ノゾミ「…うん、じゃあ約束しよう?」

 

サキ「ええ…約束」

 

ノゾミ(ウチはあだっちと指切りをした)

 

サキ「じゃあ…行くわよ!」チリーン…

 

ノゾミ(あだっちは持っていた鈴を鳴らして額の前にかざした)

 

ノゾミ(すると…淡い桃色の炎があだっちの身体を包み、あだっちは佐鬼に変身した)

 

佐鬼「はっ!」

 

ノゾミ「相変わらず、あだっちが鬼になる瞬間は綺麗やねぇ」

 

佐鬼「そんな事を言っていられるのも…今のうちよ!」ダダッ

 

ノゾミ(佐鬼はウチに向かって走ってきた)

 

佐鬼「はっ!」バッ

 

ノゾミ「おっと!」ヒョイ

 

佐鬼「やっ!」ヒュッ

 

ノゾミ「っ!?」ヒョイ

 

ノゾミ(次々に繰り出される佐鬼のパンチやキックをウチは避けていく)

 

ノゾミ「ちょっ…これって鬼ごっこやなくて組み手やない?」

 

佐鬼「問答無用!」バッ

 

ノゾミ「!」サッ  

 

佐鬼「どうしたの?あなたも変身しなさいよ!」

 

ノゾミ「…」

 

ノゾミ(この状況でも…ウチは鬼に変身しようとは思わなかった)

 

ノゾミ(あだっちは…娘として、お父さんであるキドウ先生と向き合おうとしていない)

 

ノゾミ(それどころか、どうやったら避けられるか…そればかり考えてるみたいやった)

 

ノゾミ(そんなん…絶対に良くないよ、あだっち)

 

ノゾミ(だからこそ今のウチは鬼としてじゃなく…東條ノゾミとして、あだっちと向き合いたかった)

 

ノゾミ(でも…このままだとウチは捕まって負ける)

 

ノゾミ(どうすれば良いのか…ウチが考えているその時やった)

 

佐鬼「これで私の勝ちよ!」ブンッ!

 

ノゾミ(佐鬼が音撃鈴を思いきり振り回したその時…怒りが伝わった音撃鈴から激しい波動が放たれた)

 

ノゾミ(波動は周りにある木々を薙ぎ倒したり地面を削ったり…色んな物を巻き込んでいた)

 

ノゾミ(すると…あだっちがいる所に土砂が崩れてきた)

 

佐鬼「!?」

 

ノゾミ「あだっち、危ない!」ドンッ!

 

佐鬼「きゃっ…」

 

ズサァ…!

 

ノゾミ(身を呈してあだっちを庇ったウチは…土砂に巻き込まれてしまった)

 

佐鬼「ノゾミ?…ノゾミ!」ダダッ

 

佐鬼「早くこの土をかき出さないと…ノゾミ、返事して!」

 

ノゾミ(ここは後で校長先生から聞いた話なんやけど…あだっちは時間をかけて、気を失っていたウチを助け出してくれた)

 

佐鬼「…やっと見つけた、ノゾミ!」

 

ノゾミ「…」

 

佐鬼「しっかりしなさいよ…ノゾミ!!」ユサユサ

 

ノゾミ「…」

 

 

 

サキ「…ノゾミは?」

 

キドウ「…大した怪我じゃない、医者の話では一週間程度で治るそうだ」

 

サキ「…そう」

 

キドウ「しかし…」

 

サキ「?」

 

キリュウ「彼女は自主的に休学を申し入れた」

 

サキ「…は?」

 

サキ「何でよ…悪いのは私なのよ!?」

 

キリュウ「確かに君から大まかな一連の流れは聞いた…だが」

 

ノゾミ『ウチが悪いんです』

 

ノゾミ『ウチがアダチさんをからかったから…こんな事になったんです』

 

ノゾミ『この音撃棒は…一旦預けます』スッ

 

ノゾミ『だから…アダチさんを許してあげてください』

 

ノゾミ『お願いします』ペコリ

 

サキ「何よ…それ?あの子は私の為に!」

 

キドウ「お前の為だと…?それはどういう事だ?」

 

サキ「…っ」

 

キドウ「話さんか、サキ!」

 

キリュウ「よせキドウ…アダチくんが話したくないのなら、無理に話をさせる必要はない」

 

キドウ「うっ…分かった」

 

キリュウ「本来であれば、アダチくんに何らかの処分を下すつもりだったが…東條くんの強い希望で今回は無かった事にする」

 

キリュウ「これからは…怒りに身を任せぬよう、気をつけなさい」

 

サキ「…」

 

 

 

ツカサ「…なるほどな」

 

サキ「…」

 

ツカサ「…だが、オレはそれだけじゃないような気がするな」

 

雪穂「えっ…どういうこと?」

 

ツカサ「さぁな」

 

雪穂「分からないの!?」

 

ツカサ「ただ…ああいうタイプは弱みを見せないために、あまり自分の本音を明かそうとしないからな」

 

ツカサ「ノゾミはまだ何かを隠している…オレはそんな気がするんだ」

 

ザッ…ザッ…

 

亜里沙「…?」

 

ツカサ(すると、近くから何かがこちらに近付いてくる足音が聞こえてきた)

 

?「…」

 

ツカサ(近づいてきたのは鷹のような仮面に、羽根で覆われた身体をした異形の鎧だった)

 

ツカサ「…何だ、あれは?」

 

サキ「アレは…まさか『鬼の鎧』?」

 

亜里沙「鬼の…鎧?」

 

サキ「山奥にある祠で封印されている禁断の力よ…でも、どうしてそれが?」

 

鬼の鎧「…」ブンッ!

 

ツカサ(鬼の鎧はオレ達に向かって剣を振り下ろしてきた)

 

ツカサ「うわっ!」サッ

 

雪穂「わぁっ!」サッ

 

鬼の鎧「…」

 

ツカサ(鬼の鎧はオレ達を襲おうとしている様子だった)

 

亜里沙「ツカサ、雪穂!」

 

サキ「大丈夫!?」

 

雪穂「あ、危なかった…」

 

ツカサ「全く物騒なもんを掘り起こしてくれたもんだな…」

 

サキ「それなら、私があの鎧と戦うわ!」チリーン…

 

ツカサ(サキはそう言って鈴を鳴らし…額にかざした)

 

ツカサ(直後、桃色の炎がサキの身体を包み込み…彼女は佐鬼に変身した)

 

佐鬼「はっ!」

 

雪穂「でも…勝手に鬼になって戦っちゃいけないんじゃ?」

 

佐鬼「行くわよ!」ダッ

 

雪穂「あっ…」

 

ツカサ「どうやら…今のアイツには、人の話を聞くような耳は持ち合わせちゃいないらしい」

 

亜里沙「サキさん…」

 

ツカサ「とにかく…お前達は学校に行って、この事を伝えてくれ」

 

雪穂「…うん、分かった!」ダダッ

 

亜里沙「気をつけてね!」ダダッ

 

ツカサ(雪穂達は学校に向かって走って行った)

 

ツカサ「…頼んだぞ」

 

ツカサ(オレは一枚のカードを取り出し、ディケイドライバーに装填する)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「…はっ!」ダッ

 

ツカサ(ディケイドに変身したオレは、鬼の鎧に挑んでいった…)

 

 

 

雪穂(私達は学校に向かって走っていた)

 

雪穂「このことを急いで先生達に伝えないと…!」

 

?「どうしたのかね?そんなに急いで…」

 

亜里沙「えっ…?」ピタッ

 

雪穂「!」

 

雪穂(誰かに声をかけられ…私達は思わず立ち止まってしまった)

 

?「やあ、久しぶりだね…高坂雪穂くん」

 

雪穂「…えっ?」

 

雪穂(そこには…欧米人のような顔立ちの男性がいた)

 

亜里沙「…雪穂、あのおじさんと知り合い?」

 

雪穂「いや、私には全く…」

 

?「ああ…そうだ、確か君は覚えていないんだったね?」

 

雪穂「…覚えていないって、どういうことですか?」

 

?「気にする必要はない…私はナルタキ、救世主さ」

 

亜里沙「救世主…?」

 

ナルタキ「そうだ…雪穂くんと絢瀬亜里沙くん、君達の世界のね」

 

亜里沙「私達の…?」

 

ナルタキ「そうだ、私は君達の世界を救う事が出来るんだ…今のディケイドさえ倒せば」

 

亜里沙「ディケイドって…ツカサのこと!?」

 

ナルタキ「その通り…突然だが、君達に一つ質問をしよう」

 

ナルタキ「君達は何故、彼と共に旅をする必要がある?」

 

亜里沙「それは…穂乃果さんに言われたから」

 

ナルタキ「…ふむ、なるほどな?」

 

ナルタキ「だが、それは残念ながら…彼女の勘違いだ」

 

亜里沙「えっ?」

 

ナルタキ「…君達に世界の結末を見せてあげよう」スッ

 

雪穂(そう言って男性が私達に手をかざすと…いつの間にか、私達は違う場所にいた)

 

亜里沙「!」

 

雪穂(そこには私達があの夢で見た時と同じ…壊されたオトノキの校庭で、お姉ちゃん達『μ's』が倒れている光景が広がっていた)  

 

亜里沙「ここって、私達が夢で見た…!」

 

ナルタキ「ここは君達の世界…だが今こうやって私が君達に見せているのは、あくまで分岐した先の一つだ」

 

亜里沙「分岐した先の一つ…?」

 

ナルタキ「そう、ここはディケイドを倒せなかった君達の世界…」

 

ナルタキ「君達が彼の旅を終わらせない限りは…いずれこうなる」

 

亜里沙「そんな…お姉ちゃん!」

 

ナルタキ「おっと、悪いが時間だ」スッ

 

雪穂(亜里沙が絵里さんのもとへ走ろうとした瞬間、男性は再び手をかざし…私達を森の中に連れ戻した)

 

亜里沙「…あれ?」

 

ナルタキ「どうかね、これで君達もよく分かってくれただろう?」

 

ナルタキ「彼は存在しているだけで災厄をもたらす…世界の破壊者に過ぎない」

 

亜里沙「ツカサが世界の…破壊者?」

 

ナルタキ「そうだ…彼は世界を破滅させる、最悪の存在だ」

 

亜里沙「最悪の存在…でも、ツカサはそんなのじゃ!」

 

ナルタキ「騙されているんだよ、君達が知らないだけで…彼はそういう人間だ」

 

亜里沙「そんな…」

 

ナルタキ「だからこそ、私は彼の旅を止めさせなければならない…そこで君達にも協力を要請したい」

 

亜里沙「…協力?」

 

ナルタキ「そう…君達には彼を倒してほしいんだ」

 

亜里沙「…!」

 

ナルタキ「彼さえ倒せば世界は救える…君達にとっても、悪い話じゃないはずだろう?」

 

亜里沙「でも、私たちにはそんなことできないよ…だってツカサは!」

 

雪穂(男性は亜里沙がそれ以上言おうとする前に…再び話し始めた)

 

ナルタキ「彼が君達に見せているのは…本当の彼の顔じゃない」

 

亜里沙「…」

 

ナルタキ「本当の彼は悪魔だ、救っているように見えて…世界の全てを破壊している」

 

ナルタキ「それがディケイドの企みだ」

 

雪穂「…」

 

ナルタキ「さぁ…私に協力するんだ」

 

亜里沙「…」

 

ナルタキ「共に世界を…『μ's』を救おうじゃないか?」

 

雪穂「…一つ、言わせてもらっても良いですか?」

 

ナルタキ「何かね?」

 

雪穂「私達はこれまで…ツカサと一緒に旅をしてきました」

 

雪穂「その途中でふと、気づいたことがあるんです」

 

ナルタキ「気づいた事…ふむ、彼が悪魔だということか?」

 

雪穂「確かに、私が抱いているツカサに対しての印象は…悪いイメージばっかりです」

 

亜里沙「!?」

 

雪穂「愛想は悪いし口も悪いし…おまけに性格も意地悪で!どうしようもなくヒドい!!」

 

ナルタキ「ならば話は早いな、私と一緒に彼を…」

 

雪穂「でもツカサは今までずっと…誰かのために、自分なりに戦おうとし続けてくれていた!」

 

ナルタキ「…?」

 

亜里沙「!…雪穂」

 

雪穂「私達の世界を守るだけじゃなくて…今まで出会った別の世界の『μ's』のメンバーの心も救おうとしていた!」

 

雪穂「私達はそれを…目の前で見てきた!だから、今は分かるんです!」

 

雪穂「私はそんなツカサが…ディケイドが、世界を破壊する悪魔だとは思えない!!」

 

亜里沙「雪穂…!」

 

ナルタキ「…ほう?」

 

雪穂「一体、あなたは何者なんですか…?」

 

亜里沙「そうだよ!あなたはツカサの…何を知っているの?」

 

ナルタキ「…」フゥ

 

雪穂「答えてください!」

 

ナルタキ「…やれやれ、人間は理解に苦しむ」ハァ

 

ナルタキ「倒れた彼女達を目の当たりにすれば見捨てるはずがないと思っていたのだが…全く、ハートが無い奴らだ」

 

雪穂(すると…男性の横に出現したオーロラから、赤い身体をした一人の鬼が現れた)

 

朱鬼「待っていたぞ、この時を…!」

 

ナルタキ「やれ」

 

朱鬼「!」ダッ

 

雪穂「…!」

 

雪穂(男性が命令して、鬼がハープ型の武器を持って私達に襲いかかろうとしたその時…)

 

ガガッ!

 

朱鬼「!?」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂(私達の後ろから青いカバンを持ったツバサさんが銃で鬼を攻撃しながら現れた)

 

ツバサ「あなた達、大丈夫!?」

 

雪穂「ツバサさん!」

 

ツバサ「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

雪穂(ツバサさんは一枚のカードを銃に入れ、ディエンドに変身した)

 

ディエンド「…」

 

ナルタキ「また私の邪魔をするのか…!」

 

ディエンド「もちろんよ…私は、何度でもあなたの邪魔をする!」

 

『カメンライド…斬鬼!天鬼!』

 

雪穂(ディエンドがもう二枚のカードを銃に入れて引き金を引くと…二人の鬼が私達を守るように現れた)

 

斬鬼「…」

 

ナルタキ「何だと!?」

 

朱鬼「!…手を出すな、お前達」

 

斬鬼「…天鬼、よく見ておけよ?」

 

天鬼「はい!」

 

斬鬼「音撃弦・烈斬!」ブンッ

 

雪穂(銅色の身体をした鬼の方が…エレキギター型の武器を勢い良く振り回した)

 

斬鬼「音撃斬・雷電斬震!」ギュイィィィン!

 

雪穂(鬼は清めの音を奏でると…それを地面に突き刺した)

 

斬鬼「はぁっ!」グサッ

 

バチバチッ!

 

朱鬼「!?」

 

雪穂(男性と鬼に向かって地面に電撃が走り…男性達の動きが止まった)

 

ナルタキ「グッ…!」

 

斬鬼「今だ、行け!」

 

天鬼「逃げてください!」

 

雪穂「は、はい!」

 

亜里沙「うん!」

 

ディエンド「…頼んだわよ」ダッ

 

雪穂(私達は…急いでその場を去った)

 

朱鬼「逃がすか!」

 

斬鬼「先生…やめろー!」ダッ

 

天鬼「やめてください…内輪揉めをしていては、鬼に未来はありません!」ダッ

 

朱鬼「止めるな、彼女達は私が倒す!」

 

ナルタキ「人間共め…相変わらず猿から進化していないようだな?」ハァ

 

ナルタキ「ならば、やはり…少しお仕置きが必要か」

 

 

 

ディケイド(その頃…オレと佐鬼は逃走する鬼の鎧を追っていた)

 

鬼の鎧「…」ダッ

 

佐鬼「待ちなさい!」

 

ディケイド「…?」

 

ディケイド(鬼の鎧を追跡しながら…オレはある違和感を覚えていた)

 

ディケイド「?…おかしい」

 

佐鬼「何がよ?」

 

ディケイド「まるで『こっちに来い』とでも言っているかのような…」

 

佐鬼「…もしかして、罠だって言いたいの?」

 

ディケイド「おそらく…だがな」

 

佐鬼「じゃあ、ここで諦めて…あの鎧を逃がせっていうの?」

 

ディケイド「別にそこまでは言っていないが…」

 

佐鬼「だったら…止まってくれるまで追うしかないでしょ?」

 

ディケイド「…」

 

佐鬼「ほら、早くしないと置いて行くわよ!」ダダッ

 

ディケイド(佐鬼は更に走るスピードを上げていく)

 

ディケイド「あっ…おい!」

 

 

 

ディケイド(オレ達が追い続けていると…鬼の鎧は洞窟へと入っていった)

 

ディケイド「…どうする?」

 

佐鬼「当然、入るに決まってるでしょ?」

 

ディケイド(続けてオレ達も洞窟に入った)

 

ディケイド(洞窟の中にはいくつか横穴があったが…オレ達は奥に繋がる大きな穴から、気配がするのを感じ取った)

 

ディケイド「…間違いない」

 

佐鬼「ここね?」

 

ディケイド(だが、オレ達が歩いたその先は…行き止まりだった)

 

佐鬼「えっ…行き止まり?」

 

ディケイド(佐鬼が戸惑っていると…上から鬼の鎧が襲いかかってきた)

 

ディケイド「…危ない、避けろ!」

 

佐鬼「!?」サッ

 

ディケイド(佐鬼は何とか攻撃を回避した)

 

ディケイド「お前…誰だ?」

 

鬼の鎧「…」

 

佐鬼「答えなさい!」

 

鬼の鎧「…忍法、羽根手裏剣!」

 

ディケイド「!?」

 

ディケイド(鬼の鎧は佐鬼の足下に向かって無数の羽根を手裏剣の如く飛ばした)

 

佐鬼「ふん、どこを狙って…」

 

ディケイド「どけ!」ドン!

 

佐鬼「きゃっ!?」

 

ディケイド(状況を察知したオレは、佐鬼を押し出した)

 

ディケイド「うわぁぁぁっ!?」

 

ディケイド(地面が崩れ落ち…オレはサキを庇う代わりに、穴の中へと落下していった)

 

佐鬼「えっ…」

 

鬼の鎧「…!」

 

ディケイド(鬼の鎧は更に追い討ちをかけるように羽根の手裏剣を天井に向かって飛ばし、岩石を穴の中へと落としていく)

 

ディケイド「うっ…!」

 

佐鬼「ディケイド!」

 

ディケイド(落石のダメージを受け、オレの意識はそこで途切れてしまった…)

 

佐鬼「くっ…こうなったら私が!」ダッ

 

鬼の鎧「…忍法、影映し!」

 

佐鬼「なっ、分身!?」

 

鬼の鎧「…!」ブンッ

 

ザシュッ!ズバッ!

 

佐鬼「うっ…かはっ」

 

チリーン…バタッ

 

サキ「…」

 

鬼の鎧「…」

 

 

 

ノゾミ(ウチは式神さん達を使って、情報収集をしていた)

 

ノゾミ「セージくん、アサノちゃん…ありがとな」ヨシヨシ

 

ノゾミ(セイジガエルのセージくんとアサギワシのアサノちゃん…これがウチが開発したディスクアニマルっていう式神さん)

 

ノゾミ(他にもまだいるんやけど…それはまた別の時に紹介するとして)

 

ノゾミ(セージくんとアサノちゃんに洞窟の入り口まで連れてきてもらったウチは二匹を元のディスクに戻した)

 

ノゾミ「お疲れさん、またよろしくな?」パシッ

 

ザッ…ザッ…

 

ノゾミ「!」ササッ

 

ノゾミ(ウチは気付かれないように身を潜めた)

 

鬼の鎧「…」

 

サキ「…」

 

ノゾミ(洞窟からは…鬼の鎧と白い布で身体を包まれたあだっちが出てきた)

 

ノゾミ「…」

 

ノゾミ(あだっち…気を失っているみたいやけど、今は何も出来なくてごめんな?)

 

ノゾミ(絶対に、助け出してみせるから…!)

 

鬼の鎧「…」スタスタ

 

ノゾミ(鬼の鎧は意識の無いあだっちを抱えたまま、どこかへ去って行った)

 

ノゾミ「…うん、もう大丈夫かな?」

 

ノゾミ(周りに誰もいない事を確認したウチはポケットから音叉と四枚のディスクを取り出した)

 

ノゾミ「それじゃ…そろそろこの子らの出番かな?」

 

キィィィン…

 

ノゾミ(音叉を鳴らしたウチは…それを四枚のディスクに近づけた)

 

ノゾミ(するとディスクはそれぞれ動物に姿を変え、一匹は鬼の鎧を追って…もう三匹は洞窟の中へと入っていった)

 

ノゾミ「さてと、ウチも頑張っちゃおうかな?」

 

ノゾミ「…待っててな、少年くん」ダッ

 

ノゾミ(ウチは三匹のディスクアニマルを追って、そのまま洞窟の中へと進んだ…)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ようやく正体を現したわね」

「ワシはもう…鬼の力を制御できない!」

「ウチは…皆の望みを守る為に、鬼になります!」

「練習に行くわよ…よろしくね?」

十七之巻『明日なる希望(のぞみ)』
【挿絵表示】


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話『明日なる希望(のぞみ)』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは響鬼の世界だな」

ツカサ「この世界には響鬼として魔化魍と戦っている希がいる…」

サキ「私は…たちばな高等学校の生徒よ」

ツカサ「『佐鬼』…か」

ノゾミ「ウチに任しとき」

サキ「嘘つき」

ツカサ「ノゾミはまだ何かを隠している…オレはそんな気がするんだ」

鬼の鎧「…」

ナルタキ「やれ」

ノゾミ「待っててな、少年くん」


ノゾミ(洞窟の中に入ったウチは、少し前の出来事を思い返していた)

 

ノゾミ『うーん、確かこの辺りに…』ガサゴソ

 

ノゾミ(ウチは小屋を出る前…ある物を探していた)

 

ノゾミ『あった!』

 

ノゾミ(それはツカサくんが持っていた物と全く同じカメラだった)

 

ノゾミ(ウチがカメラ好きのパパから譲ってもらった…傷だらけの古いカメラ)

 

ノゾミ(あちこちに引っ越ししても、思い出に残せるように…って思ったパパがよくこのカメラで小さい頃のウチを撮ってたっけ)

 

ノゾミ『…』フフッ

 

ノゾミ(カメラに興味を持った小学生のウチに…パパはこのカメラをくれた)

 

ノゾミ(ウチは転校して新しい場所に行く度に…色んな写真を撮ろうとしていた)

 

ノゾミ(最初はピンぼけした空ばっかりやったけど…次第に風景や建物のようなまともな写真も撮れるようになった)

 

ノゾミ(でも、いつしかウチは撮るのをやめた…どうしてかはウチにもよく分からない)

 

ノゾミ(ただ…小学校を卒業する直前の転校した事が、理由の一つかも?)

 

ノゾミ(だって、仲の良い友達どころか話せる相手もいない卒業式なんて…想像しただけでつまんないやろ?)

 

ノゾミ(両親はしきりに謝っていたけど、それまでの学校にたいして愛着もなかったから…別に転校する事自体は良かった)

 

ノゾミ(だから大丈夫と思ってたんやけど…いざ卒業式の日になると、やっぱり寂しかった)

 

ノゾミ(もちろん誰かのせいとかじゃなくて、ちょっとタイミングが悪かっただけなんやけど…)

 

ノゾミ(でも、その日から何となく…写真を撮る気が無くなったような気がする)

 

ノゾミ『…?』

 

ノゾミ(ウチはアルバムも見つけて…その中身を見た)

 

ノゾミ『…そっか、中学に入った時にはもう撮ってなかったんやな』

 

ノゾミ(ウチはカメラとアルバムに対して、少し申し訳ない気持ちになった)

 

ノゾミ『さて…見つかったし、そろそろ行こっかな』

 

ノゾミ(ウチはカメラを持って、小屋を出て行った…)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

雪穂(その頃、私達はディエンドに変身したツバサさんと一緒に男性から逃げていた…)

 

ディエンド「…ここまで来れば、大丈夫かしら」

 

亜里沙「よ、良かった…」ハァハァ

 

雪穂「あの…ツバサさん、あの人は一体?」

 

ディエンド「あの男は…とある世界からやってきた地球外生命体よ」

 

雪穂「とある世界の…地球外生命体?」

 

亜里沙「それってもしかして…エイリアン?」

 

ディエンド「簡単に言えばそうね…詳しい事は歩きながら話しましょうか」

 

雪穂「はい…!」

 

?「フゥ…やっと見つけたぞ?」

 

ディエンド「!」バッ

 

雪穂(私達が振り返ると…そこにはさっきの男性がいた)

 

亜里沙「ウソ…!」

 

ディエンド「あら、意外と早かったのね?」

 

ナルタキ「当然だ…私を見くびるな」

 

ディエンド「…」

 

ナルタキ「君は確か…何度でも私の邪魔をすると、そう言ったか?」

 

ディエンド「…ええ」

 

ナルタキ「そうか…悪い子だ」

 

雪穂(男性がそう言うと…黒い甲冑のような姿をした化け物に姿を変えた)

 

???「…」

 

雪穂「姿が…変わった」

 

亜里沙「アレは…?」

 

ディエンド「…これ、持っていてくれる?」スッ

 

(そう言ってディエンドは…私に青いカバンを渡してきた)

 

雪穂「あっ…はい!」

 

ディエンド「…ようやく正体を現したわね?」

 

???「…フン」

 

 

 

ツカサ「…ん」パチリ

 

ツカサ(目を覚ましたオレは…洞窟の入り口近くにいた)

 

?「あっ…目、覚めた?」

 

ツカサ(オレが起き上がると…そこにはノゾミがいた)

 

ツカサ「ノゾミか…何でここに?」

 

ノゾミ「少年くんを助けた方が良いって…カードがウチにそう告げるんや」フフッ

 

ツカサ(ノゾミは一枚のタロットカードを裏にした状態で取り出しながらそう言った)

 

ツカサ「…」ハァ

 

ノゾミ「あれ…もしかして信じてないん?」

 

ツカサ「別にそういう訳じゃない…ただ、オレにはまだ本当のアンタが見えていないだけだ」

 

ノゾミ「ウチはいつもこんな感じよ?」

 

ツカサ「どうだか…ん?」

 

ツカサ(オレはノゾミと一緒にいる三匹の小さな動物のようなものに気づいた)

 

ノゾミ「気づいた?この子達と一緒にツカサくんを見つけたんよ」

 

ツカサ「ディスクアニマルか…」

 

ノゾミ「知ってるん?」

 

ツカサ「ああ、どこかで見た覚えがあってな」

 

ノゾミ「そっか…この子達はウチが造った式神さんなんよ」

 

ノゾミ「ルリちゃんとリョクオくんとキィちゃんって名前なんやけど…」

 

ツカサ「なるほど…ルリオオカミ、リョクオオザル、キハダガニか」

 

ノゾミ「へぇ…本当によく知ってるなぁ?」

 

ツカサ「言っただろ、見た覚えがあるって」

 

ノゾミ「記憶喪失なのに?」

 

ツカサ「それは…オレにもよく分からない」

 

ツカサ(オレは立ち上がろうとすると、自分の右腕に巻かれた包帯に気がついた)

 

ツカサ「…!」

 

ノゾミ「今度はどうしたん?」

 

ツカサ「これ、アンタがやったのか?」

 

ノゾミ「あっ…うん、ちょっとだけ痣があったみたいやったから薬草とか使って手当てしたんやけど」

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「…ダメ、やったかな?」

 

ツカサ「いや…助かった、ありがとな」

 

ノゾミ「…うん」フフッ

 

ツカサ「そういえば…サキは?」

 

ノゾミ「あっ…あだっちの事なら、別の式神さんに任せてるから」

 

ツカサ(すると…ノゾミのもとにニビイロヘビがやってきた)

 

ノゾミ「来た!…ニビちゃん、あだっちの場所は分かった?」

 

ツカサ(ニビイロヘビはアニマルモードからディスクモードに変形し…ノゾミの手に収まった)

 

ノゾミ「よっと…」スッ

 

ツカサ(ノゾミは折りたたんだ音叉の間にディスクを入れると…そのディスクを回転させた)

 

ノゾミ「あー、なるほどなぁ…」

 

ツカサ(ノゾミはそのディスクから何かを解析したようだった)

 

ノゾミ「…少年くん、良かったら一緒についてきてくれる?」

 

ノゾミ「ウチには…少年くんの力が必要なんよ」

 

ツカサ「…条件がある」

 

ノゾミ「何?」

 

ツカサ「どうして休学したのか…教えてくれないか?」

 

ノゾミ「…!」

 

ツカサ「他に理由があるんだろ?」

 

ツカサ「例えば…鬼の鎧を盗んだ人物が誰か、とかな」

 

ノゾミ「…さすが少年くんやなぁ」フフッ

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「分かった…ええよ、とりあえずあだっちのいる所に向かいながら説明するね?」

 

ツカサ「…ああ」

 

ツカサ(オレとノゾミは洞窟を出て、サキがいる場所に向かった)

 

 

 

雪穂(黒い甲冑の化け物は…圧倒的な力でディエンドを追い詰めていた)

 

???「その程度か…ハッ!」

 

ドガッ!

 

ディエンド「うっ!」

 

亜里沙「ツバサさん!」

 

???「…どうした、私の邪魔をするんじゃなかったのか?」

 

ディエンド「…」ハァハァ

 

???「やってみろ、小娘!」

 

ディエンド「…!」

 

雪穂(ディエンドは青い銃に一枚のカードを入れると…)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

ディエンド「はあっ!」

 

雪穂(化け物に狙いを定めて…銃からビームを放った)

 

雪穂(ツバサさんが必ず勝ってくれる…私達はそう信じて疑わなかった)

 

???「…」スッ

 

雪穂(それに対して化け物は、手をかざしディエンドのビームを吸収すると…)

 

ディエンド「…!」

 

亜里沙「ウソ!?」

 

???「残念だったね…さよならだ」バシュッ!

 

雪穂(ディエンドに向けてそのビームを返してしまった)

 

ディエンド「きゃあっ!?」

 

雪穂「ツバサさん!」

 

雪穂(化け物に技を返されたディエンドは吹き飛ばされ…青い銃を私達の近くに放り投げながら、深い谷底まで落ちてしまった)

 

???「フフフ…」

 

雪穂「…!」

 

雪穂(私は化け物に取られないように、近くに落ちたディエンドの青い銃を拾った)

 

亜里沙「そんな、ツバサさんが…!」

 

???「さて…次は君達の番だ」クルッ

 

雪穂(化け物が振り返り、ゆっくりとこちらに近づいてきた…)

 

雪穂「このままじゃ…!」ハッ

 

雪穂(私はあることを思い出した)

 

雪穂「亜里沙…私が合図を出したら、一緒にアレを使おう」ボソッ

 

亜里沙「?…あっ!」

 

???「さあ、これで君達の旅は…もうおしまいだ」

 

雪穂「…どうですかね、それは分からないですよ?」

 

???「何?」

 

雪穂「…今だ!」

 

亜里沙「えいっ!」

 

雪穂(私達は前にツバサさんからもらったゼクトマイザーを取り出して…小型のカブト虫爆弾を化け物に向けて放った)

 

???「グッ!」

 

?「ああぁぁぁっ!!」ダッ

 

雪穂(すると…銀色の身体に顔と手が紫に縁取られた四本角の鬼が現れ、化け物に対して後ろから間接技をかけた)

 

???「ッ!?」

 

京介変身体「甘いな…鍛え方が違うんだよ、お前とは!」ググッ

 

亜里沙「あの人は…!?」

 

雪穂「…」

 

雪穂(あの鬼は…きっとツバサさんのディエンドが、私達を助けに来る前に呼び出したのだろう)

 

雪穂(そうだとしたらツバサさんは、こうなることまで予想して…?)

 

京介変身体「いいから逃げろ…早く!」

 

雪穂「は、はい…亜里沙!」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

雪穂(弾切れになったゼクトマイザーを捨てた私達は…急いでたちばなへと向かった)

 

 

 

サキ「ん…」パチリ

 

サキ「ここは…森?」

 

?「目が覚めたか…」

 

サキ「!?」

 

鬼の鎧「…」

 

サキ「あなた…私を連れて、一体どうしようというの?」

 

鬼の鎧「…君なら私の気持ちが分かると思ったからだ」

 

サキ「えっ…?」

 

鬼の鎧「共に行こう…アダチくん、そして新しい鬼の道を作ろう」

 

鬼の鎧「君とならば、きっと…」

 

ブォォォォ!

 

鬼の鎧「!」サッ

 

鬼の鎧「この力強い法螺貝の音撃と一本角の姿…『鬼堂』か」

 

鬼堂「…」

 

サキ「!…お父さん」

 

鬼堂「サキを返してもらうぞ…キリュウ」

 

サキ「…えっ!?」

 

鬼の鎧「そうか…既にバレていたか」フッ

 

 

 

ツカサ(オレとノゾミは洞窟を出て…サキと鬼の鎧がいるであろう場所に向かっていた)

 

ツカサ「キリュウが鬼の鎧の正体…か」

 

ノゾミ「うん、実は入院してた時に病院で散歩してたら…」

 

キリュウ『…』キョロキョロ

 

ノゾミ『あれ…校長先生?』

 

キリュウ『…』スタスタ

 

ノゾミ『屋上に行った…何かあったんかな?』

 

ノゾミ『…こっそりついて行ってみようかな』スタスタ

 

キリュウ『…もしもし』

 

ノゾミ『電話…かな?』

 

キリュウ『そうか、鬼の鎧が手に入ったか…』

 

ノゾミ『!?』

 

キリュウ『分かった、それならば私が着よう…では』ピッ

 

キリュウ『いよいよ…私達が新たな世界を作る時だ』

 

キリュウ『忌まわしきものを全て壊した…新しい世界をな』

 

ノゾミ『…』

 

ツカサ「なるほどな、だいたいわかった」

 

ツカサ「でも…それが本当なら何故、キリュウに音撃棒を渡したんだ?」

 

ノゾミ「…あだっちを守る為、かな?」

 

ノゾミ「多分、ウチが何も言わなかったら…あだっちは退学する事になってたかもしれないから」

 

ノゾミ「だから…仕方がなかったんよ」

 

ツカサ「…そういう事か」

 

ツカサ「だが、その代わりにアンタは…鬼の鎧に立ち向かう手段として式神のディスクアニマルを作った」

 

ノゾミ「…ウチの独学やけど、前から巻物とかなんかで式神様を作る事は得意やったからね」

 

ツカサ「そうか…つまりそこまでする程、この世界のアンタにとってあの学校は特別な場所だという事なんだな?」

 

ノゾミ「…うん」

 

ノゾミ「ウチ、初めて出会ったんよ」

 

ノゾミ「自分を大事に思うあまり、素直になれなくて…」

 

ノゾミ「そのせいで皆と距離を置いちゃう…まるで、ウチと同じような人に」

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「想いが強くて不器用な分だけ、人とぶつかって…」

 

ノゾミ『!…あの子は』ピタッ

 

サキ『…』スタスタ

 

キドウ『待たぬか、サキ!』

 

サキ『いい加減にしてよ…もう、放っておいて!』ダダッ

 

キドウ『むぅ…』ハァ

 

ノゾミ『…あの、キドウ先生』

 

キドウ『むっ?…東條か』

 

ノゾミ『娘さんの事、私に任せてもらえますか…?』

 

キドウ『…なぬ?』

 

ノゾミ『私、娘さんと仲良くなりたいんです…ちょっと行ってきます!』ダッ

 

キドウ『!…仲良くなりたい、か』

 

ノゾミ『あの子は…いた!』

 

サキ『何よ…お父さんの分からず屋』ボソッ

 

ノゾミ『あっ、あの…!』

 

サキ『?』クルッ

 

ノゾミ『…///』モジモジ

 

サキ『あなた、誰…?』

 

ノゾミ『!』

 

ノゾミ『っ…ウチ、東條ノゾミ!』

 

ノゾミ『よろしくな、ぶいっ!』シュッ

 

サキ『…はぁ?』

 

ノゾミ「それがウチとあだっちの出会いやった」

 

ノゾミ「その後も、同じ想いを持つ人がいるのにどうしても手を取り合えなくて…」

 

ツカサ「後輩のアキラとヒトミの事か?」

 

ノゾミ「…」コクリ

 

ノゾミ「鬼としての熱い想いはあるけど、どうやって繋がって良いか分からない…」

 

ノゾミ「そんな子がここにも、ここにも…」

 

ノゾミ「だから…ウチはウチなりに、支えてあげたいなって思ったん」

 

ノゾミ「彼女達の望みが…叶うように」

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「だから少年くんの言う通り…ウチはウチなりのやり方で、あだっち達がいるあの学校を守りたいんよ」

 

ツカサ「…そうか、それなら急がないといけないな」

 

ノゾミ「今頃はきっと…式神のコガネちゃんがキドウ先生を連れて、あだっちを助けてくれてると思うんやけど」

 

ツカサ「コガネオオカミの事か…なるほどな」

 

ツカサ「絶対に…サキを助けるぞ」

 

ノゾミ「…うん」フフッ

 

 

 

鬼の鎧「よくここが分かったな…鬼堂」

 

鬼堂「今はこうして円盤の形になっているが…ワシの所に式神が来てな、ここまで案内してもらったのだ」スッ

 

鬼の鎧「なるほど…誰が嗅ぎ付けたかは知らないが、そういう事か」

 

鬼堂「キリュウ、なぜこんな事を…!」

 

鬼堂「ガキの頃から知り合いだったワシらは、鬼として互いに切磋琢磨してきたはず…」

 

鬼堂「そんなお前は学校の校長として…音撃道の未来を見据えていたのではないのか!?」

 

鬼の鎧「だからこそだ、鬼堂」

 

鬼堂「何…?」

 

鬼の鎧「足に怪我を負い、鬼としての力を失った私は…鬼の力を持つ者からの憐れみや嘲りに耐え忍んで日々を生きてきた」

 

鬼の鎧「そして私は気付いた…この身に鎧を纏い、今あるこの世界を一度壊して新たな世界を作ろうと」

 

サキ「…そんな」

 

鬼堂「キリュウ…ワシらはお前を一度たりとも嘲けた事など」

 

鬼の鎧「黙れ!私の屈辱が…お前に分かるものか!」

 

鬼の鎧「私はまだ戦える…私は、新たな世界の覇者となる!」

 

鬼堂「目を覚ませ…キリュウ!」ダッ

 

鬼の鎧「忍法、影映し!」カッ

 

鬼堂「ぬっ!?」

 

サキ「眩しい…!」

 

鬼の鎧「ハッ!」ズバッ!

 

鬼堂「ぐわっ…!」バタッ

 

サキ「お父さん!」

 

鬼の鎧「…右肩を斬られれば、自慢の法螺貝は担げまい」

 

鬼堂「ぐっ…」

 

鬼の鎧「安心しろ、鬼堂…私が新たな世界の覇者になるのは私利私欲の為ではない」

 

鬼堂「…何、だと?」

 

鬼の鎧「鬼の行く末を案じての事だ…このままでは、いずれ滅ぶからな」

 

鬼の鎧「我が学校を広く世に知らせる為には…こうするしかないのだ」

 

鬼堂「キリュウ…」

 

鬼の鎧「物事を変えるという事は…時に大きな傷や痛みを伴う、これはそういう事なのだ」

 

鬼の鎧「さあ…共に行こう、アダチくん」

 

サキ「…」

 

鬼の鎧「たちばなの生徒の中で最も伸び代のある君とならば、きっと…」

 

サキ「イヤよ」

 

鬼の鎧「…何?」

 

サキ「鬼の道を絶望しているようなあなたなんかに…私は絶対に従わない」

 

サキ「何故なら鬼は…皆の希望になるものだと、信じているから!」

 

鬼の鎧「…!」

 

鬼堂「サキ…!」

 

?「…どうやら交渉決裂のようだな、校長」

 

鬼の鎧「!」クルッ

 

ズバッ!

 

鬼の鎧「グッ…」バタッ

 

サキ「なっ…校長!」

 

ハンゾウ「…フン」

 

鬼堂「ハンゾウ…お前、一体何を!」

 

ハンゾウ「この世を…再び戦乱の世に戻す為だ」

 

鬼堂「何故そんな事を…?」

 

ハンゾウ「もちろん…報われぬ我々、忍者の為だ」

 

サキ「忍者の…為?」

 

ハンゾウ「戦国の世が終わりを告げてから数百年以上…我々は衰退の一途を辿っている」

 

ハンゾウ「だから私は気付いた…平和な世の中など不要、戦いにしか我々の存在意義は無いと!」

 

鬼堂「そんな馬鹿な事が…」

 

ハンゾウ「許されるのだよ…私には」ニヤリ

 

鬼堂「!…ぐわぁぁぁっ!?」

 

サキ「お父さん!?」

 

鬼の鎧「…?」

 

鬼堂「ハンゾウ…お前、一体何を!?」

 

ハンゾウ「気が付かなかったのか?…校長室でお前の肩を叩いた時に、私がとある呪術を掛けていた事を」

 

鬼堂「な、何だと…ぐわぁぁぁっ!」

 

サキ「お父さん!」ダッ

 

鬼堂「来るなサキ!」

 

サキ「!?」

 

鬼堂「ワシはもう…鬼の力を制御できない!」

 

ハンゾウ「そう、怒りや憎しみを増幅する事で鬼の力を暴走させ魔化魍に変える禁断の術…その名は『化身』」

 

サキ「魔化魍、ですって…?」

 

鬼の鎧「まさか…!」

 

ハンゾウ「そうだ…伝説の魔化魍『牛鬼』の誕生だ!」

 

牛鬼「グワァァァ!!」ダッ

 

サキ「いや…いやぁぁぁ!!」

 

鬼の鎧「よせ、鬼堂!」

 

鬼の鎧「クッ…音撃『草璃縄(くさりなわ)』!」

 

ヒョォォォォォ…

 

牛鬼「!?」

 

ハンゾウ「ほう…草笛を使って、牛鬼の動きを止めたか」

 

ハンゾウ「だが…俺のこの刀ならどうだ!」ズバッ

 

鬼の鎧「グワッ…カハッ」バタッ

 

サキ「キリュウ校長!」

 

ハンゾウ「おっと…勢い余って、鬼の鎧を真っ二つにしてしまったな」

 

キリュウ「ぐっ…」

 

ハンゾウ「俺が求めているのは本物の鬼だ、心の底から鬼になれぬお前など…必要無い」

 

ハンゾウ「さて…そろそろ学校に戻るか」トスッ

 

サキ「うっ…!」バタッ

 

ハンゾウ「この娘は貰っていくぞ…忍者の子孫繁栄の為にもな」ニヤリ

 

ハンゾウ「行くぞ、牛鬼」

 

牛鬼「グワァァァ!」

 

キリュウ「ま、待て…」

 

キリュウ「アダチくん、キドウ…!」

 

 

 

ツカサ(オレ達は…誰かが森の中で倒れているのを見つけた)

 

ツカサ「あれは…キリュウか!?」

 

ノゾミ「…!」

 

ツカサ(オレはキリュウを起こそうと、身体を揺さぶりながら呼び掛けた)

 

ツカサ「おい、しっかりしろ!」ユサユサ

 

キリュウ「…」

 

ノゾミ「校長先生!」

 

キリュウ「うっ…」パチリ

 

ツカサ「起きたか…一体、何があった?」

 

キリュウ「共に暗躍していたハンゾウが…私を裏切った」ハァハァ

 

ツカサ「ハンゾウ…あの忍術科の講師か」

 

キリュウ「奴はキドウを魔化魍に変え…アダチくんを連れ去って、学校へ行ってしまった」

 

ノゾミ「キドウ先生を、魔化魍に…?」

 

キリュウ「そうだ…ハンゾウの呪術によって今のキドウは『牛鬼』という魔化魍になっている」

 

ノゾミ「!…そんな」

 

ツカサ「キドウを元に戻す方法はないのか?」

 

キリュウ「…一つだけある」

 

ツカサ「それは何だ?」

 

キリュウ「…東條くん、君にこれを」スッ

 

ツカサ(キリュウはノゾミに二本の音撃棒を渡した)

 

ノゾミ「これは…ウチの音撃棒?」

 

キリュウ「半端な音撃では、キドウは魔化魍として倒されてしまう…魂を込めた音撃をぶつける事が必要だ」

 

ノゾミ「魂を込めた音撃…」

 

キリュウ「…そうだ、私はそれを君に託したい」

 

ノゾミ「どうして、ウチに…?」

 

キリュウ「もちろん勝手だという事は分かっている…許してほしいとも思っていない」

 

キリュウ「だが、私は今更ながら気付いたのだ…こんな事をしても鬼の道に未来はないと」

 

キリュウ「だからこそ…私は友達想いである優しい君にお願いしたい」

 

キリュウ「どうか…キドウの命とアダチくんの心を救ってほしい」

 

ノゾミ「校長先生…」

 

キリュウ「本当ならば、私はアダチくんではなく君を連れて行くつもりだったのだが…君は暫く鬼にならないと聞いていたからね」

 

キリュウ「だから、君のその優しい想いがあれば…きっとキドウを元に戻せるはずだ」

 

キリュウ「君がいれば…鬼を希望の道に導いてくれると、私は信じている」

 

ノゾミ「…!」

 

キリュウ「これは鬼や校長としての命令ではなく…微かに人間の心を残した私からの最後の頼みだ」

 

キリュウ「お願いだ…やってくれるか、東條くん?」

 

ノゾミ「…分かりました、やってみます」

 

ノゾミ「ウチは…皆の望みを守る為に、鬼になります!」

 

キリュウ「東條くん…ありがとう」フフッ

 

ツカサ(キリュウはノゾミの決意を聞いて微笑むと…そのまま目を閉じて動かなくなってしまった)

 

ノゾミ「…校長先生?」

 

ツカサ「おい…しっかりしろ、キリュウ!」ユサユサ

 

ツカサ(ノゾミは二本の音撃棒をしばらく見つめると…やがて立ち上がり、こう言った)

 

ノゾミ「…行こう、少年くん」

 

ツカサ「ノゾミ…大丈夫なのか?」

 

ノゾミ「…うん、大丈夫」

 

ノゾミ「ウチは…皆や学校を守りたい!」

 

ツカサ「…よし!」ダッ

 

ノゾミ「校長先生…後で、皆と一緒に迎えに来ます」

 

キリュウ「…」

 

ノゾミ「…」ダッ

 

ツカサ(オレとノゾミは…急いでたちばな高等学校に向かった)

 

 

 

雪穂(たちばな高等学校の近くまで来た私達は…驚きの光景を目の当たりにしていた)

 

亜里沙「そんな…」

 

雪穂(目の前には…天狗のような姿をした化け物がいた)

 

テング「…」

 

雪穂「もしかして学校にまで、魔化魍が…?」

 

テング「…」ダッ

 

雪穂(化け物は私達に襲いかかってきた)

 

雪穂「!」

 

?「おりゃあ!」ガッ!

 

テング「!?」

 

雪穂(その時…顔が青く縁取られた一本角の鬼が現れた)

 

弾鬼「ったく、魔化魍の奴…こんな所にまで現れやがって」フゥ

 

?「ハズミさん!」ダッ

 

雪穂(その鬼を追うように…アキラさんとヒトミさんがやってきた)

 

ヒトミ「あれ、君達はさっきの…大丈夫ッスか!?」

 

雪穂「あっ…はい!」

 

アキラ「そう…それなら良かったわ」ホッ

 

アキラ「それにしても、まさか学校の近くに魔化魍が現れるなんて…」

 

ヒトミ「あれ…もしかしてアキラさん、ビビってるッスか?」

 

アキラ「バカ言わないでちょうだい…本当は一人で戦うのが不安なクセに」

 

ヒトミ「そんなことないッスよ!」

 

アキラ「ふん、どうだか…!」

 

弾鬼「お前らなぁ…争ってる場合か!?ちゃんと前見ろ、前!」

 

テング「…!」ダッ

 

雪穂(二人がケンカしている隙に、魔化魍が再び襲いかかろうと向かってきた)

 

亜里沙「二人とも!来るよ!?」

 

アキラ「!…大丈夫よ」ヒュィィィ…

 

ヒトミ「もう…さっきのまでの私達とは違うッス!」ギュィィン…

 

雪穂(ホイッスルを鳴らしたアキラさんに風が巻き起こり、リストバントの中の弦を指で弾いたヒトミさんに雷が落ちると…)

 

威吹鬼「…はっ!」

 

ツカサ(アキラさんは顔が青く縁取られた三本角の鬼に変身し…)

 

轟鬼「せいっ!」

 

ツカサ(ヒトミさんは顔が銀色に縁取られた一本角の鬼に変身した)

 

亜里沙「さっきと…違う?」

 

威吹鬼「音撃管、烈風!」ガガッ!

 

轟鬼「音撃弦、烈雷!」グサッ!

 

雪穂(鬼に変身したアキラさんがトランペット型の銃で、ヒトミさんかエレキギター型の大きな剣で化け物を攻撃すると…)

 

テング「!?」

 

威吹鬼「音撃射・疾風一閃!」フゥィィィ!

 

轟鬼「音撃斬・雷電激震!」ギュィィン!

 

テング「!!」

 

雪穂(二人の清めの音を受け、魔化魍は…土の塊になって崩れ落ちた)

 

弾鬼「全く、喧嘩するほど何とやらだな」ハァ

 

?「本当じゃのう…ほっほっほ」スタスタ

 

雪穂「!?」クルッ

 

雪穂(いつの間にか私達の後ろには…顔が青緑に縁取られた小柄な体格の鬼がいた)

 

亜里沙「誰…?」

 

轟鬼「あっ、エイラ先輩じゃないですか!?」

 

鋭鬼「やあやあ…お主ら、元気じゃったか?」

 

威吹鬼「それはこっちの台詞ですよ!?」

 

弾鬼「一緒に調査に行ったサカエ先輩から、滝壺に落ちたって聞いたぞ!?」

 

鋭鬼「確かにそうじゃが、サカエとは身体の出来が違うからの…そんな事で簡単にやられはせんわい!」

 

鋭鬼「それに…ワシは一晩寝て英気をたっぷり養ったから大丈夫じゃ、あっはっはっは!」

 

威吹鬼「えぇ…」

 

轟鬼「さ、寒過ぎるッス…」

 

亜里沙「…どういう意味?」

 

雪穂「さぁ…?」

 

弾鬼「…サカエ先輩が怪我して帰ってきたから心配していたんだが、どうやら無駄だったようだな」ハァ

 

鋭鬼「ところで、別の場所にも魔化魍が現れたと聞いたが…そっちはどうなっとるんじゃ?」

 

威吹鬼「あっ…それなら、私は西門の方をバンドウさんとトウマさんにお願いしています」

 

蛮鬼『はぁっ!』ズバッ!

 

闘鬼『ふっ!』ガガッ!

 

轟鬼「私も東門の方でショウコちゃんとゴウリさんにお願いしてるッス!」

 

勝鬼『やぁっ!』ガガッ!

 

剛鬼『えぇいっ!』ドンッ!

 

鋭鬼「蛮鬼に闘鬼、勝鬼に剛鬼か…確かにあやつらなら大丈夫じゃろうな」

 

弾鬼「実は…先生達が学校のどこにもいないもんだから、今までこいつら二人で人員をどう割くか仲良く話し合ってたんですよ?」

 

鋭鬼「はっはっは!なるほどのぅ…」

 

威吹鬼「ち、ちょっとやめてください!…誰がこんな人なんかと」

 

轟鬼「私だって願い下げッス!誰がこんな人なんかと…」

 

威吹鬼「…何ですって?」ゴゴゴ

 

轟鬼「何すか…?」ゴゴゴ

 

亜里沙「ダメ!」

 

(その時、にらみ合うアキラさんとヒトミさんを止めようと…亜里沙が間に割って入っていった)

 

威吹鬼「え?」

 

轟鬼「君は…?」

 

雪穂「…亜里沙?」

 

亜里沙「こんな時までケンカなんてしたらダメだよ…二人とも、ちゃんと仲良くしなきゃ!」

 

亜里沙「じゃないと…いつか『もっと仲良くすればよかった』って後悔することになるよ!?」

 

威吹鬼「!」

 

轟鬼「!」

 

威吹鬼「そ、そうよね…こんな時までいがみ合ってる場合じゃないわよね」チラッ

 

轟鬼「同じ学校に通うクラスメイト同士ッスもんね…」チラッ

 

雪穂(アキラさんとヒトミさんはお互いにチラチラと見合っていた)

 

威吹鬼「…今までごめんなさい、あなたには言い過ぎたわ」ペコッ

 

轟鬼「わ、私こそ…今まで言い過ぎてしまってごめんなさいッス!」ペコッ

 

亜里沙「うん…そうだよ、そうでなくっちゃ!」ニコッ

 

鋭鬼「ほう、あの二人を止めるとは…なかなかやるのぅ?」

 

弾鬼「今まで私達が止めに入っても、全然止めなかったのに…」

 

雪穂「亜里沙…」フフッ

 

弾鬼「…あれ、そういえばテングって夏の魔化魍だったよな?」

 

鋭鬼「!…確かに、あやつは太鼓の音撃でしか倒せないはずじゃ」

 

弾鬼「って事は…まさか『オロチ現象』が?」

 

?「グォォォォ!!」

 

雪穂「!?」クルッ

 

雪穂(私達が振り向くと…そこには二本の角を生やした牛のような姿の化け物がいた)

 

亜里沙「あれは…?」

 

鋭鬼「伝説の魔化魍、じゃと!?」

 

轟鬼「もしかして…『牛鬼』ッスか!?」

 

弾鬼「どうしてこんな所にいるんだよ?…!」

 

雪穂(アキラさんとヒトミさんが不思議がっていると…気を失ったサキさんを抱えたハンゾウさんが化け物の隣に並び立った)

 

威吹鬼「…ハンゾウ先生?」

 

ハンゾウ「俺がやったんだよ」

 

雪穂「えっ…?」

 

ハンゾウ「俺が…キドウを牛鬼に変えたんだよ」

 

鋭鬼「なぬ!?」

 

轟鬼「キドウ先生が…?」

 

亜里沙「うそ…」

 

ハンゾウ「本当だ」

 

雪穂「…どうして、そんなことを?」

 

ハンゾウ「この世界を…俺が望む世界にする為さ」

 

弾鬼「テメー…何を訳の分からねぇ事言ってんだ!」

 

威吹鬼「キドウ先生、目を覚ましてください!」ダッ

 

轟鬼「早く元に戻るッス…キドウ先生!」ダッ

 

雪穂(牛鬼になったキドウさんを助けようと、四人の鬼が走って行ったけど…)

 

牛鬼「グワァァァ!」ガッ!ゴッ!

 

威吹鬼「かはっ!」

 

轟鬼「ぐあっ!」

 

鋭鬼「うぐっ…!」

 

弾鬼「うわっ!?」

 

雪穂(牛鬼の強力な攻撃を受けた四人は…気を失って倒れてしまっていた)

 

亜里沙「みんな、しっかりして!」

 

サキ「…む」パチリ

 

サキ「なっ…皆が!?」

 

ハンゾウ「ほう、目が覚めたか…」

 

サキ「くっ、離しなさいよ!」ジタバタ

 

ハンゾウ「それは出来ないな…優秀な鬼の力を持つお前には、忍者の繁栄の為に協力してもらう」

 

サキ「そんなの…イヤに決まってるでしょ!」

 

ハンゾウ「そうか、ならば…」ドサッ

 

サキ「うっ!」ゴロゴロ

 

雪穂(サキさんは放り投げられ…私達の近くに転がってきた)

 

ハンゾウ「お前も牛鬼に消されるがいい!」

 

亜里沙「サキさん!」

 

サキ「…」

 

雪穂「大丈夫ですか!?」

 

サキ「え、ええ…それより誰か他の生徒を呼んでくれる?」

 

雪穂「は…はい!」

 

ハンゾウ「無駄だな…何故なら今頃、東門と西門には大量のバケガニが現れている」

 

亜里沙「えっ…?」

 

ハンゾウ「全て俺の呪術で操った魔化魍だと言っているんだよ…カッパやバケネコ、もちろんさっきのテングもな」

 

ハンゾウ「学校からは大量の生徒が応援に向かっているだろうが…さぞ、手こずっている事だろうな」ククク

 

サキ「あなた…どこまで卑怯なの!?」

 

ハンゾウ「これも世界を変える為さ…」スチャ

 

雪穂(そう言って二本の刀を取り出したハンゾウさんは十字に構えると…)

 

カキィィィン…!

 

雪穂(ボコボコと身体から不気味な音を立てながら、黒い炎が全身を包んだ)

 

ハンゾウ「カアッ!」

 

雪穂(声をあげると同時に黒い炎が振り払われると…全身、カラスのような羽で真っ黒に覆われた二本角の化け物になった)

 

サキ「嘘でしょ…あなた、忍者のはずなのに!」

 

?「そう、俺は忍者だ」

 

?「だが…『化身』の術と鬼の陰陽術を組み合わせれば、変身など容易い事だ」

 

サキ「そんな…!」

 

?「我が名は世を蝕む鬼…『蝕鬼』!」

 

サキ「ぐっ…」チリーン…

 

雪穂(サキさんは鬼に変身しようと鈴を取り出したけど…サキさんの姿は変わらなかった)

 

サキ「…嘘!?」

 

蝕鬼「無理もない…目の前に魔化魍になった父親がいれば心も乱れるだろう」

 

サキ「…!」

 

蝕鬼「牛鬼…やれ」

 

牛鬼「グォォォォ!」ダッ

 

雪穂(牛鬼は私達に向かって走ってきた)

 

亜里沙「危ない!」

 

雪穂「…!」

 

 

 

ヒュン!

 

牛鬼「!?」

 

蝕鬼「何だと…!?」

 

パシッ

 

ノゾミ「お疲れさん…アカネちゃん」フフッ

 

?(ノゾミはアカネタカを飛ばして、一時的に牛鬼の動きを止める事に成功した)

 

サキ「ノゾミ…?」

 

?(その間にオレとノゾミは…雪穂達やサキの目の前に立っていた)

 

ノゾミ「ぶいっ」シュッ

 

ツカサ「…何とか間に合ったようだな」フゥ

 

亜里沙「ツカサ!」

 

雪穂「大丈夫だったの?」

 

ツカサ「一応はな…」

 

蝕鬼「フン、誰かと思えばお前達か…何しに来た?」

 

ツカサ「分かりきった事を聞くんだな…なぁ、ノゾミ?」

 

ノゾミ「うん…」フフッ

 

ノゾミ「ウチらは…世界を蝕ませようとするあなたを止めて、キドウ先生を助ける!」

 

蝕鬼「止める、助けるだと…?」

 

蝕鬼「最強の鬼の力を持つ俺と伝説の魔化魍である牛鬼を相手にして…よくそんな事が言えるな!」

 

ツカサ「ああ、言えるね」

 

蝕鬼「何だと…?」

 

ツカサ「力を求めるだけのお前には分からないだろうな…本当に強い鬼は一体、何を持っているのか」

 

ノゾミ「…少年くん?」

 

ツカサ「それは…優しさだ」

 

蝕鬼「優しさだと…?」

 

ツカサ「ああ…本当に強い鬼は心まで鬼にならない」

 

ツカサ「ノゾミのように、誰かの為に慈しむ優しさを持っている鬼こそが…本当に強い鬼なんだ!」

 

ツカサ「まあ…ちょっと優し過ぎる所もあるけどな」フフッ

 

ノゾミ「少年くん…」

 

ツカサ「だからこそ…優しさを捨てて、力に溺れただけのお前は鬼でも何でもない!」

 

ツカサ「ただの…蝕まれた化け物だ」

 

蝕鬼「お前…一体、何者だ!」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

ノゾミ「…行くよ、少年くん!」

 

キィィィン…

 

ツカサ(懐から二股に分かれた音叉を出したノゾミは、それを近くの大木に軽く打ちつけ…額にあてた)

 

ツカサ「ああ…変身!」

 

ツカサ(ノゾミの身体が紫色の炎に包まれている間に…オレはディケイドライバーに一枚のカードを装填した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ノゾミ「はあっ!」

 

ツカサ(オレがディケイドに変身を完了させると同時に…ノゾミも響鬼へと姿を変えた)

 

ディケイド「よし…牛鬼は任せるぞ!」ダッ

 

響鬼「…うん!」ダッ

 

ディケイド(オレ達はそれぞれ分かれて、蝕鬼と牛鬼に挑んでいった…)

 

 

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「はっ!」ガガッ

 

ディケイド(ライドブッカーをガンモードにしたオレは蝕鬼を攻撃するが…)

 

蝕鬼「音撃殺法…かまいたち!」シュィィィン…

 

ディケイド(蝕鬼はオレの攻撃をあえて受けながら…交互に激しく回転させた二本の刀から衝撃波を繰り出してきた)

 

ザシュッ!

 

ディケイド「ぐあっ!」

 

ディケイド(あまりの速さにオレは避けられず…ダメージを負ってしまった)

 

蝕鬼「忍法黒羽(くろは)の舞…!」

 

ディケイド(更に蝕鬼は身体を広げ…全身から無数の黒い羽根を矢のように飛ばしてきた)

 

グサグサッ!

 

ディケイド「うっ…!」ガクッ

 

ディケイド(身体中に黒い羽根が突き刺さったオレは…膝をついてしまった)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

蝕鬼「ククク…勝負あったな」

 

ディケイド「…そいつはどうかな?」

 

蝕鬼「何?」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディケイド(一枚のカードをベルトに装填したオレが立ち上がると、オレと蝕鬼の間に数枚の大きなカードのようなものが現れた)

 

ディケイド「はあーっ!」バシュッ!

 

ディケイド(オレがライドブッカーの引き金を引くと、銃口から強力な光線が放たれ…カードの向こう側にいる蝕鬼に命中した)

 

蝕鬼「ウガァァァ!?」

 

ディケイド(これは『DCDB(ディケイドブラスト)』…オレ一人の技だ)

 

雪穂「やった…!」

 

ディケイド(しかし…蝕鬼はすぐに立ち上がった)

 

蝕鬼「…グッ、貴様ァァァ!」

 

ディケイド「しぶといな…まだ動けたのか」

 

蝕鬼「当然だ、俺はまだ終わりではない…!」

 

蝕鬼「俺にはまだ…牛鬼がいる!」

 

蝕鬼「何しろ牛鬼の身体はキドウの身体だからな…東條ごときには倒せまい」

 

ディケイド「…お前みたいな奴には一生、分からないだろうな」ハァ

 

蝕鬼「分からない?何がだ?」

 

ディケイド「彼女が…東條ノゾミが、どれだけ優しいかという事を!」

 

蝕鬼「!?」

 

 

 

響鬼「ほっ!」ダッ

 

響鬼(ウチは二本の音撃棒『烈火』を手にして、牛鬼に向かっていた)

 

牛鬼「…」ダッ

 

響鬼(走ってきた牛鬼に対してウチは…一本の音撃棒から火の玉を出して、もう一本の音撃棒の先を剣に変えて斬りつけた)

 

響鬼「やっ!はっ!」ボウッ

 

ズバッ!

 

牛鬼「グォォォォ!」

 

響鬼(斬られた牛鬼は苦しんでいるのを見て…ウチは躊躇ってしまった)

 

響鬼「…!」

 

牛鬼「!」ダッ

 

ゴッ!

 

響鬼(その隙に牛鬼は突進して…ウチを吹き飛ばした)

 

響鬼「うわっ…!?」ゴロゴロ

 

サキ「ノゾミ!」

 

響鬼「!…あだっち」

 

サキ「お父さんは…右肩を怪我しているわ!」

 

響鬼「えっ…?」

 

響鬼(ウチが牛鬼の右肩をよく見ると…そこには斬られたような傷跡があった)

 

サキ「そこから…清めの音を叩き込んで!」

 

響鬼「…うん、分かった!」

 

牛鬼「グワァァァ!」ダッ

 

響鬼「!」サッ

 

牛鬼「!?」

 

響鬼「ほいっ!」スッ

 

響鬼(牛鬼の体当たりを避けたウチは…自分のお腹に着けられた音撃鼓『火炎鼓』を取り出して、それを牛鬼の右肩に取りつけた)

 

牛鬼「…!」

 

響鬼「キドウ先生…今、元に戻しますから」

 

響鬼「だから…あだっちの話、聞いてあげてください」

 

響鬼「…」スゥ

 

響鬼(意識を集中させたウチは…二本の音撃棒で巨大化した音撃鼓を同時に叩いた)

 

響鬼「一気火勢の型!」ドン!ドン!

 

響鬼(次に…右から両方、両方から左、左から右とループするようにウチは音撃鼓を叩いていく)

 

響鬼「豪火連舞の型!」ドン!ドン!

 

響鬼(それから…交互に右、左、右、左と一定のリズムを刻んでいった)

 

響鬼「猛火怒涛の型!」ドン!ドン!

 

牛鬼「…!」ヨロッ

 

響鬼(そしてウチは最後に…)

 

響鬼「はぁっ…爆裂強打の型!」ドンッ!

 

響鬼(力と優しさを込めて…今まで一番強い清めの音を叩き込んだ)

 

牛鬼「…グハァァァ!!」バタッ

 

響鬼(ウチの清めの音を受けた牛鬼は倒れると…鬼堂の姿に戻った)

 

キドウ「…」

 

サキ「お父さん!」ダッ

 

響鬼(顔だけ変身を解いたキドウ先生に…あだっちが駆け寄った)

 

サキ「お父さん、しっかりして!」ユサユサ

 

キドウ「む…サキか?」

 

サキ「お父さん…大丈夫?」

 

キドウ「あ、ああ…ワシは大丈夫だ」

 

キドウ「…しかし、ワシは一体何を?」

 

サキ「魔化魍になっていたんだけど…ノゾミが助けてくれたの」

 

キドウ「何!?そうだったのか…」

 

響鬼「キドウ先生…元に戻って良かったです」

 

キドウ「東條…」

 

響鬼「ね?あだっち…」

 

サキ「ええ…ありがとう、お父さんを助けてくれて」

 

キドウ「ワシからも礼を言わせてくれ…ありがとう、東條」

 

響鬼「いやいや、そんな…ウチはキドウ先生やあだっちの望みを叶えようとしただけですから」

 

サキ「えっ?」

 

キドウ「…?」

 

響鬼「ふふ…ぶいっ」シュッ

 

 

 

蝕鬼「馬鹿な…ありえん!」

 

ディケイド「スピリチュアルだろ?」

 

蝕鬼「おのれ…ウガァァァァ!」

 

ディケイド「!」

 

響鬼「少年くん!」ダッ

 

響鬼(ウチは少年くんの隣まで行って…蝕鬼が苦しみながら姿を変える様子を見た)

 

響鬼「イヤな気やね…」

 

ディケイド「…ああ、禍々しささえ感じる」

 

響鬼(蝕鬼は身体をウチらの十倍くらいまで膨れ上がらせると…獣のような雄叫びをあげた)

 

響鬼「これって…まさか、魔化魍!?」

 

響鬼(魔化魍になった蝕鬼は頭に角、口から牙を生やしては全身を毛むくじゃらにして…)

 

魔化魍蝕鬼「…」

 

響鬼(ドクロみたいに窪んだその目は…真っ赤に血走ってた)

 

魔化魍蝕鬼「我が、名は…蝕鬼」

 

ディケイド「危ない!」サッ

 

響鬼「きゃっ!?」サッ

 

ビシャッ

 

響鬼(蝕鬼の口から黒い液体のような何かが出てきて…ウチらはそれを避けた)

 

響鬼(すると…液体がある地面から煙が出てきて、燃え上がった)

 

ディケイド「うっ…異様な臭いがするな」

 

魔化魍蝕鬼「我が、名は…蝕鬼」グラッ…

 

響鬼(蝕鬼はゆっくりと学校のある方に進んで行く)

 

キドウ「いかん!」

 

サキ「私達の学校が…!」

 

響鬼「そんな…」

 

ディケイド「させるか!」バッ

 

響鬼(少年くんは飛び上がり…蝕鬼の注意を払おうとする)

 

ガッ!

 

ディケイド「うわっ!」ドサッ

 

響鬼(それでも蝕鬼は…学校の方へ進みながら、少年くんを振り落とした)

 

響鬼「少年くん!」

 

ディケイド「痛て…何とか大丈夫だ」

 

響鬼「…良かった」

 

響鬼(でも…どうすれば良いんかな?)

 

響鬼(ウチ一人の音撃だけじゃ…多分、敵わないかもしれない)

 

響鬼(…ううん、弱気になったらダメ)

 

響鬼(ウチはまだ…ウチ自身の望みを叶えてない)

 

響鬼(学校を守って、皆と一緒に過ごしたいという…望みを)

 

響鬼(だから…!)

 

響鬼「ウチはまだ…諦めない!」

 

 

 

ディケイド(響鬼がそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードに響鬼の力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「それなら…一緒にやるぞ!」

 

響鬼「えっ…少年くんも?」

 

ディケイド「ああ、カードがオレに…そう告げるんだ」フフッ

 

響鬼「!…それなら、これを使って?」スッ

 

ディケイド(響鬼は…オレに二本の音撃棒『烈火』を渡してきた)

 

ディケイド「…良いのか?」

 

響鬼「うん!」

 

ディケイド「助かる…行くぞ!」

 

ディケイド(音撃棒を受け取ったオレは…一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…ヒ・ヒ・ヒ・ヒビキ!』

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

響鬼「オッケー、分かった!」

 

ディケイド(オレは響鬼の後ろに回り込み…響鬼の背中を押した)

 

ディケイド(すると響鬼は…ヒビキアカネタカに変形した)

 

響鬼「スゴいなぁ…これは?」

 

ディケイド「オレとノゾミの力だ」

 

響鬼「へぇ…スピリチュアルやね!」

 

ディケイド「だろ?」

 

ディケイド(ヒビキアカネタカは旋回しながら炎を纏うと、蝕鬼魔化魍態に体当たりし…奴の身体をひっくり返した)

 

魔化魍蝕鬼「ガッ…」ズドーン!

 

ディケイド(ヒビキアカネタカはヒビキオンゲキコに姿を変えると…倒れた蝕鬼の胸部にくっついた)

 

響鬼「少年くん!」

 

ディケイド「ああ!」バッ

 

ディケイド(オレは響鬼から借りた二本の音撃棒を持って…蝕鬼魔化魍態に飛び乗った)

 

ディケイド「はあっ!」ドン!ドン!

 

ディケイド(オレは太鼓を早く打つように猛烈な連打でヒビキオンゲキコを叩いていく)

 

サキ「お父さん、私達も…!」チリーン…

 

キドウ「うむ!」ブォォォ!

 

?「皆、起きて!」ユサユサ

 

鋭鬼「ぬぅ…なっ、サカエか!?」ガバッ

 

裁鬼「保健室で休んでたら外から騒ぎが聞こえて、私だけこっちに来てみたんだけど…いつの間にかこんな事になってて」

 

弾鬼「これは…!どうやら寝てる場合じゃないみたいだな?」

 

威吹鬼「そうね…加勢しましょう!」フゥィィィ!

 

轟鬼「はいッス!」ギュイーン!

 

ディケイド(いつしかサキとキドウの音撃だけでなく…弾鬼と鋭鬼の打、威吹鬼の管、轟鬼と裁鬼の弦の音撃も加わった)

 

ディケイド(そして響鬼と七人の戦鬼、八つの清めの音が重なり合い…蝕鬼魔化魍態は苦しみ始めた)

 

魔化魍蝕鬼「ヌォォォッ!?」

 

ディケイド(蝕鬼は再生能力を使って、清めの音に抗うが…それでも苦しんでいる)

 

『ファイナルアタックライド…ヒ・ヒ・ヒ・ヒビキ!』

 

ディケイド「はぁっ…やぁーっ!」ドドン!

 

ディケイド(オレは一枚のカードをベルトに入れ、トドメの一撃を振り下ろした)

 

ディケイド(これは『DCDW(ディケイドウェイブ)』…オレと響鬼の技だ)

 

魔化魍蝕鬼「ヌオワァァァッ!!」

 

ディケイド(激しくうめいた蝕鬼魔化魍態はその身体を爆発させると…やがてハンゾウの姿に戻った)

 

ディケイド「はっ!」スタッ

 

響鬼「よっと…」スタッ

 

ディケイド(オレとヒビキオンゲキコから姿を元に戻した響鬼は…同時に着地した)

 

ハンゾウ「お、おのれ…」

 

響鬼「!」

 

ハンゾウ「だが、俺を倒した所で何も終わらんぞ…」

 

ディケイド「…どういう意味だ?」

 

ハンゾウ「歴史は繰り返す…この蝕鬼の如く力に魅入られ、望みを蝕もうとする者は必ずやまた現れる」

 

ハンゾウ「俺の意志を継ぐ誰かがな…」

 

響鬼「…その時がもし来たら、ウチがまた皆の望みを守ります」

 

ハンゾウ「何だと…?」

 

響鬼「ウチが…何度でも、止めてみせます」

 

ハンゾウ「…」フフッ

 

ディケイド(ハンゾウは響鬼に優しく微笑むと…その身体は土の塊となって崩れていった)

 

ディケイド(ディケイドの変身を解いたオレに…顔だけ変身を解いたノゾミが話しかけてきた)

 

ノゾミ「…お疲れさん」

 

ツカサ「ようやく終わったな…」

 

ノゾミ「うーん…ちょっと違うかな」

 

ツカサ「?」

 

ノゾミ「終わったんじゃなくて…これから、始まるんよ?」フフッ

 

ツカサ「!…そうだな」フフッ

 

ノゾミ「ぶいっ!」シュッ

 

ツカサ「それと…これ、ありがとな」スッ

 

ツカサ(オレはノゾミに二本の音撃棒を返した)

 

ノゾミ「うん!」

 

ツカサ(すると…オレとノゾミのもとにサキ達がやってきた)

 

サキ「ノゾミー!」

 

亜里沙「ツカサー!」

 

ノゾミ「あっ…皆!」

 

ツカサ(オレが空を見上げると…いつの間にか日は暮れ始め、月が昇っていた)

 

ツカサ「…」チラッ

 

ツカサ(オレはサキと話すノゾミを見つめていた)

 

雪穂「…どうかしたの、ツカサ?」

 

ツカサ「いや…別に、何でもない」

 

ツカサ(その月は…まるで誰かさんのように、オレ達を優しく見守っているような気がした)

 

 

 

ノゾミ(数日後…ウチは校長先生が眠っている場所に来ていた)

 

『鬼龍 ここに眠る』

 

ノゾミ(ウチがたちばなに入学したのは…屋久島の中学校にいた時、たまたま島を訪れていた校長先生に出会ったからやった)

 

ノゾミ(魔化魍に襲われそうになっていたウチを、校長先生が助けてくれたのがきっかけで…ウチと校長先生は知り合いになった)

 

ノゾミ(それからウチはたちばなに入学し…鬼としての修行をこなし、あだっちや色んな子に出逢ってきた)

 

ノゾミ(その一方で…ウチが入学してからの二年間、校長先生は色々な事に苦しんでいた)

 

ノゾミ(ウチがちゃんと校長先生の苦しみを分かってあげられたら…こんな事にはならなかったのかもしれない)

 

ノゾミ(そう思ったウチは…校長先生に申し訳ない気持ちでいっぱいやった)

 

ノゾミ「…ごめんなさい、校長先生」ボソッ

 

?「ノ~ゾ~ミ~!?」ワシッ

 

ノゾミ(ウチは後ろから誰かに胸をわしわしされていた)

 

ノゾミ「ひゃあっ!?///」バッ

 

ノゾミ(わしわしの魔の手から離れたウチが後ろを振り返ると…そこにはあだっちがいた)

 

ノゾミ「あ、あだっち…」

 

サキ「あなた…副会長の仕事をほったらかしにして、何でここにいるわけ?」

 

ノゾミ「ご、ごめん…」エヘヘ

 

サキ「本当、しょうがないわね…こっちは一人で会議の資料まとめて大変だったんだから」ハァ

 

ノゾミ(戦いが終わってからのウチは…また学校に通うようになった)

 

ノゾミ(校長代理になったキドウ先生は…『これからは生徒が鬼の未来を築き上げるべきだ』と考え、生徒会の制度を導入した)

 

ノゾミ(今はあだっちが会長でウチは副会長…えっ、何でウチが会長じゃないのかって?)

 

ノゾミ(ウチは…誰かを引っ張るよりも誰かを支える方が性に合ってるって分かってるんよ)

 

ノゾミ(だからウチは…あだっちを生徒会長に推薦した)

 

サキ「分かった?…ちょっと、聞いてるのノゾミ!?」

 

ノゾミ「う…うん、聞いてるよ?」

 

サキ「本当に…?」

 

ノゾミ「うん…ホントに!」

 

サキ「それなら、もう良いわ…さてと!」

 

サキ「そろそろ練習に行くわよ…よろしくね、マネージャーさん?」

 

ノゾミ「…分かった」フフッ

 

ノゾミ(あだっちは今、アキラちゃんやヒトミちゃん達と一緒にスクールアイドルをしていて…ウチはそのマネージャーになった)

 

ノゾミ(あだっちに相談されて、最初は反対してたキドウ先生も…今ではあだっち達の動画を毎日チェックしている)

 

ノゾミ「えっと…今いるメンバーって、あだっちを含めて十一人くらいやったっけ?」

 

サキ「そうよ」

 

ノゾミ「うーん、まとめるの大変そうやね…」

 

サキ「それがあなたの仕事でしょ?」

 

ノゾミ「それはそうやけど…」

 

サキ「応援するって言ったんだから、最後まで私に付き合ってもらうわよ?」フフッ

 

ノゾミ「…ふふっ、かなわんなぁ」

 

サキ「よーし!じゃあ、練習場所まで競争よ!」ダッ

 

ノゾミ「あっ…」

 

サキ「負けた方がジュースおごりだからねー?」

 

ノゾミ「あだっち…」フフッ

 

ノゾミ「…さようなら、校長先生」

 

ノゾミ「鬼の皆がこれから歩いていく道は…ウチらが作っていきます」

 

ノゾミ「…」クルッ

 

?「鍛えたな、ノゾミ…ありがとう」

 

ノゾミ「!」バッ

 

ノゾミ(ウチは思わずお墓の方を振り返ったけど…そこには誰もいなかった)

 

ノゾミ「…」フフッ

 

ノゾミ(笑いかけたウチは…全力であだっちのいる所まで走って行った)

 

ノゾミ「負けへんよ~!」ダダッ

 

サキ「えっ…もう追いついてきてる!?」

 

ノゾミ「鍛えてますから!」

 

サキ「ふふっ…更に強くなったみたいね、ノゾミ?」

 

ノゾミ「うふふっ…ぶいっ!」シュッ

 

 

 

ツカサ(その夜…食事を済ませた後、キアカジシというディスクアニマルが写真館を訪れた)

 

ツカサ「お前、もしかして…ついて来いって言ってるのか?」

 

キアカジシ「…」ダッ

 

ツカサ「あっ…おい!」ダッ

 

ツカサ(オレがしばらくキアカジシを追っていると…キアカジシはたちばな高等学校の中に入っていった)

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(オレはそのまま校舎の中に入り…やがて、屋上へとやって来た)

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(そこにキアカジシの姿はもうなかった)

 

ツカサ(しかし…オレは既に気づいていた)

 

ツカサ「…こんな事をするのは一人ぐらいしかいないな」ハァ

 

ツカサ「いるんだろ?…ノゾミ」

 

?「さすが少年くんやね」

 

ツカサ「!」クルッ

 

カシャッ

 

ツカサ(オレが振り返ると…そこにはオレと全く同じ型のカメラを持ったノゾミがいた)

 

ツカサ「そのカメラ…」

 

ノゾミ「ふふっ、ビックリした?」

 

ノゾミ「これな…ウチのパパがずっと使ってたカメラなんよ」

 

ツカサ「…そうだったのか」

 

ノゾミ「うん…それからウチにくれたんやけど、あまり使ってなかったんよ」

 

ノゾミ「でも、少年くんのカメラを見て思い出したんよ…もしかしたらって」

 

ツカサ「…それで、そのカメラでオレを撮りたくなったという訳か?」

 

ツカサ(オレはノゾミを茶化そうと…ちょっとした冗談を言った)

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…そんなにオレの事が気に入ったのか?」フフン

 

ノゾミ「…うん」

 

ツカサ「!」

 

ノゾミ「少年くんには色々、助けてもらったから…忘れんように残しておきたいなって思ったんよ」

 

ノゾミ「ウチにとって少年くんは…大事なものを思い出させてくれた、大切な人やから」フフッ

 

ツカサ「…///」

 

ノゾミ「あれ、もしかして少年くん…照れとる?」

 

ツカサ「は…はぁ!?」

 

ノゾミ「顔、赤くなってるよ?」

 

ツカサ「そ…そんな訳ないだろ!?」

 

ノゾミ「え~…ホンマにぃ?」

 

ツカサ「本当だ…あまりオレをからかうな」

 

ノゾミ「ウチは思った事を素直に言っただけや…誰かさんと違うて」フフッ

 

ツカサ「…」ハァ

 

ノゾミ「ふぅ…よっと」ゴロン

 

ツカサ(ノゾミは仰向けに寝転ぶと…じっと夜空を見つめていた)

 

ノゾミ「キレイな月やなぁ…少年くんも見てみたら?」

 

ツカサ「…」ゴロン

 

ツカサ(オレも寝転んで空を見上げると…そこには綺麗な三日月があった)

 

ツカサ「確かに、綺麗だな…」

 

ノゾミ「…うん」

 

ツカサ「そういえば…サキ達、スクールアイドルになったんだってな?」

 

ノゾミ「うん…」

 

ツカサ「アンタはやらないのか?」

 

ノゾミ「…うーん」

 

ノゾミ「今のウチには…マネージャーやって、皆を支える方が楽しいから」

 

ツカサ「…そうか」

 

ツカサ(しばらく何も言わずに夜空を見つめていると…ノゾミが話しかけてきた)

 

ノゾミ「…ねぇ、少年くん」

 

ツカサ「何だ?」

 

ノゾミ「少年くんは…ウチらの世界に来てから、何か思い出せた?」

 

ノゾミ「本当の名前とか、どこから来たのかとか…」

 

ツカサ「いや…全然、思い出せない」

 

ノゾミ「…そっか」

 

ツカサ「結局、オレはまだ…何もかも失ったままだ」

 

ノゾミ「…」

 

ツカサ「旅をしていると、たまに不安になる事があるんだ…オレがこの旅をしている意味が本当にあるのかと」

 

ツカサ「世界を救うのが本当に、オレなんかで良いのかと…」

 

ノゾミ「…ウチは、少年くんがこの世界に来てくれて本当に良かったなって思ってるよ?」

 

ツカサ「…そうなのか?」

 

ノゾミ「うん」

 

ノゾミ「あと、確かに少年くんは記憶を失くした…でもな?」

 

ノゾミ「生きていくって事は…失くす事ばっかりじゃないって、ウチは思うんよ」

 

ツカサ「…」

 

ノゾミ「少年くんは…今まで色んな世界を旅してきたんやろ?」

 

ツカサ「…ああ」

 

ノゾミ「だったら、たくさんの人に出逢ってきたんやない?」

 

ツカサ「まあ…そうだな」

 

ノゾミ「心からスゴいと思える人や尊敬できる人…また会いたいなって思える人」

 

ノゾミ「そんな人達と出逢ったから…今の少年くんがいるんやない?」

 

ツカサ「…!」

 

ノゾミ「ウチは、そう思うな…」

 

ノゾミ「だから…自分なんかって言わんといて?」

 

ノゾミ「自分を信じる事が、自分で自分らしくいる為に必要な始まりの…第一歩なんやから」

 

ツカサ「…ノゾミ」

 

ノゾミ「ふふっ…よっと!」

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツカサ(オレとノゾミは立ち上がった)

 

ツカサ(それと同時に…オレの身体は徐々に透けていた)

 

ツカサ「!」

 

ノゾミ「…お別れ、みたいやね?」

 

ツカサ「ああ…どうやら、この世界でオレがやるべき事は終わったらしい」

 

ノゾミ「…そっか」

 

ツカサ「ありがとな」

 

ノゾミ「…ううん、ウチの方こそ」

 

ツカサ「…一枚だけ、撮っていいか?」

 

ノゾミ「えっ…ウチを?」

 

ツカサ「ああ」

 

ノゾミ「でも…ウチを撮っても、何も面白くないと思うよ?」

 

ツカサ「面白いかどうかじゃなくて…オレがアンタを撮りたいと思ったから撮るんだ」

 

ノゾミ「!」

 

ツカサ「良いか?」

 

ノゾミ「…うん!」ニコッ

 

ツカサ(オレはノゾミにカメラを向け…シャッターを切った)

 

カシャッ

 

ノゾミ「…撮れた?」

 

ツカサ「ああ…きっと良い一枚になる、何せアンタはあの月と同じくらいに綺麗なんだからな」

 

ノゾミ「へっ…///」

 

ツカサ「あっ…照れたな?」

 

ノゾミ「て、照れてないよ!?」

 

ツカサ「いやいや…顔赤いぞ?」

 

ノゾミ「赤くなってないよ!?」

 

ツカサ「標準語で喋っているのも怪しいな…」

 

ノゾミ「怪しくないよ!?」

 

ノゾミ「もう…ウチをからかわんといてよ!」プンプン

 

ツカサ「ははっ…悪い悪い」

 

ツカサ「でも、これでおあいこ…だな?」

 

ノゾミ「あっ!…うふふっ」

 

ノゾミ「もう、かなわんなぁ…」

 

ツカサ「…じゃあな、ノゾミ」シュッ

 

ノゾミ「…うん」

 

ツカサ(オレの身体は消え、そのまま光写真館へと戻っていった)

 

ノゾミ「さてと、そろそろウチも帰ろっかな?…あっ」

 

パサッ

 

ノゾミ「あちゃ~、またウチのタロットカードが一枚落ちちゃった」ヒョイ

 

ノゾミ「!」

 

ノゾミ「このカードって…ふふっ、星が動き出したみたいや」

 

ノゾミ「…ありがとう、ツカサくん」

 

 

 

ツカサ(オレは写真館に戻ると…きびだんごを作り、雪穂達に食べてもらおうとしていた)

 

ツカサ「ほら…出来たぞ」コトッ

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「いただきます…」モグモグ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(触鬼との戦いが終わってからすぐ…オレと雪穂達は行方不明になったツバサを探した)

 

ツカサ(しかし…何日探しても、ツバサは見つからなかった)

 

亜里沙「…ツバサさん、大丈夫かなぁ?」

 

ツカサ「どうだろうな…ナルタキを追って、先に次の世界に行っている可能性もあるかもしれないな」

 

亜里沙「そっか…」

 

ツカサ「あまり心配するな…アイツはこんな所でやられるようなヤツじゃない」

 

ツカサ「だから信じろ…アイツにまた会える事を」

 

亜里沙「…うん、そうだね」

 

雪穂「ねえ…そういえば、ツカサもナルタキって人に狙われたことがあるんだよね?」

 

ツカサ「ああ…何が目的なのかは分からないが、奴はオレに明らかな敵意を持っていた」

 

雪穂「ツバサさん…何かを知っていたみたいだったけど、一体どんな人なんだろう?」

 

ツカサ「さぁな…だが、お前達が襲われた時の話を聞いていると少なくとも人でない事は確かだ」

 

ツカサ「そして、オレ達を狙っている…敵だという事もな」

 

雪穂「…うん」

 

亜里沙「あれ?キバーラがいない…」

 

雪穂「そういえば…ツバサさんがいなくなってから見てないね」

 

ツカサ「…アイツはいてもいなくても一緒だと思うが」ボソッ

 

雪穂「えっ?」

 

ツカサ「いや…何でもない」ピラッ

 

ツカサ(オレは一枚の写真を取り出し…その出来を確認していた)

 

雪穂「それって…ノゾミさんの写真?」

 

ツカサ「そうだ…見てみるか?」

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ(オレは亜里沙達に写真を見せた)

 

ツカサ(写真には音撃棒の手入れをするノゾミと優しく微笑みながら夜空を見上げるノゾミが写っていた)

 

亜里沙「良い写真だね!」

 

雪穂「…そうだね」フフッ

 

ツカサ「アイツに任せておけば…この世界はもう大丈夫だろう」

 

雪穂「あれ、ところで…たちばなの校長先生に頼まれたことは結局どうなったの?」

 

ツカサ「それなら大丈夫だ…オレがわざわざ教えてやらなくても、生徒であるノゾミ達がとっくに気付いているさ」

 

雪穂「…?」

 

亜里沙「ねぇ、そういえば今までの旅で私たちがまだ会ってない『μ's』メンバーって…もうことりさんだけじゃないのかな?」

 

雪穂「となると…次の世界が、守らないといけない最後の世界になるね」

 

ツカサ「そうなるな…!」

 

ツカサ(すると…スタジオの背景が違うものに変化した)

 

亜里沙「変わった!」

 

雪穂「…ツカサ、ここは何の世界なの?」

 

ツカサ「ここは…電王の世界だ」

 

亜里沙「デンオウ…?」

 

?「ちょっと!大変よー!」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレ達が振り返ると…そこにはキバーラがいた)

 

亜里沙「キバーラ!」

 

雪穂「今までどこに行ってたの?」

 

キバーラ「ご、ごめんなさい…」ハァハァ

 

ツカサ「…何かあったのか?」

 

キバーラ「ええ、実は一足先に電王の世界に行ってツバサを探していたら…見たの」

 

雪穂「見たって…?」

 

亜里沙「何を?」

 

キバーラ「にこ…矢澤にこよ!」

 

雪穂「えっ…!?」

 

亜里沙「…えっ?」

 

ツカサ「はぁ!?」

 

 

 

ナルタキ(私は…時の狭間で砂漠の中を走るデンライナーを見つめていた)

 

ナルタキ「いよいよ最後の世界だね…ディケイド」

 

ナルタキ「だが…最初に言っておくがこの世界はかーなーり、変わっているからね」

 

ナルタキ「果たして君に守れるかな?」

 

ナルタキ「既に『μ'sの世界』と融合しかけている、この世界が…」ニヤリ

 

ナルタキ(私は現れたオーロラの中に入り、その場から姿を消した…)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「ことりさん…?ことりさんですよね!?」

「チガイマース!」

「もしかしてアンタまで特異点なの!?」

「私…パナって言います」

「最初に言っておくわ…私はかーなーり、強い!」

第18話『デンオウ・クライマックス・トレイン』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~ことり×電王の世界~
第18話『デンオウ・クライマックス・トレイン』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは響鬼の世界だな」

???「残念だったね…さよならだ」

ディエンド「きゃあっ!?」

鬼堂「ワシはもう…鬼の力を制御できない!」

ハンゾウ「伝説の魔化魍『牛鬼』の誕生だ!」

牛鬼「グワァァァ!!」

ノゾミ「ウチは…皆の望みを守る為に、鬼になります!」

ツカサ「誰かの為に慈しむ優しさを持っている鬼こそが…本当に強い鬼なんだ!」

ディケイド「オレとノゾミの力だ」

ノゾミ「…ありがとう、ツカサくん」


チュンチュンチュン…

 

?「んっ…」パチリ

 

(窓辺から聞こえてくる小鳥の声で…私は目が覚めた)

 

?「ごはん、あげなくちゃ…」ガラッ

 

(私が部屋の窓を開けると…そこには小さくて可愛い茶色の鳥さん達が九羽もいました)

 

?「ふふっ…みんな、おはよう!」

 

(私は小学生の頃から…毎朝、鳥さんにごはんをあげ続けてるの)

 

(あげ始めた頃はクッキーの残りや果物だったりしたけど…)

 

(最近は駅の裏のペットショップで売ってる小鳥のエサをあげてるの)

 

チュンチュン…

 

(私が窓から手を伸ばしても…小鳥さんは逃げずにつぶらな瞳でこっちを見てくれる)

 

?「うふふっ、かわいいな~…」

 

?「あっ…そろそろ行かなきゃ!」

 

(身支度を整えた私はお家を出ると…近所にいるきれいな三毛猫とカッコいい黒猫に挨拶をしました)

 

?「ミッケちゃん、クロンちゃん…おはよう!」

 

ニャー

 

?「ふふっ…行ってくるね~♪」チリンチリン

 

(二匹に見送ってもらった私は自転車を漕ぎ始めました)

 

(家の近くにある橋を通ったら、そこにはハトさん達がいて…その下を流れる川にはカメさん達がいました)

 

?「おはよ~、ハトさんもカメさんもみんな元気かな?」

 

クルックー

 

(返事をするように鳴いてくれたハトさん達と首を突き出しながら見つめてくるカメさん達を見て、私は笑顔になった)

 

?「ふふっ…今日も元気そうで良かったぁ♡」

 

(それから私は…地面にいるアリさんの群れを見つけた)

 

?「あっ、アリさん達もいる…おはよ~♪」

 

(アリさん達はエサを巣に運ぼうとしてるみたい)

 

?「働き者だねぇ…じゃあ、私もそろそろ行くね!」

 

(それから少し離れた所で…私はミックスのワンちゃんを連れて散歩してるおじいちゃんに挨拶しました)

 

?「おはようございます、アオトさん!」

 

アオト「おや、君は確か南さんの娘さん…」

 

?「はい…南コトリです」

 

アオト「そうだ…コトリくんだったな、おはよう」

 

コトリ「ヒスイくんもおはよ~♪」ナデナデ

 

(私は右が赤くて左が緑色の目をしたワンちゃんのヒスイくんを撫でた)

 

ワン!

 

(ヒスイくんは嬉しそうに尻尾を振りながら…返事をしてくれた)

 

コトリ「うふふ~…♡」

 

アオト「そういえば…君のお母さんは元気かい?」

 

コトリ「はい…今日は昨日よりもっと美味しいコーヒーを作らなくちゃって、張り切ってました」

 

アオト「それは良かった…お母さんを大事にしてあげるんだよ」

 

コトリ「はい!…あっ」

 

アオト「…?」

 

コトリ「アオトさんも…ヒスイくんといつまでも仲良くしてくださいね?」

 

アオト「…ああ、そうだな」フフッ

 

アオト「実は最近、私以外の遊び相手も必要かと思って…もう一匹飼おうと考えているんだ」

 

コトリ「えっ…そうなんですか?」

 

アオト「犬種も名前ももう決めていてな…ポメラニアンの『ジェイド』だ」

 

コトリ「ステキ~…良かったね、ヒスイくん!」

 

ワン!

 

コトリ「そうだ!これ、ヒスイくんに…」ガサゴソ

 

(私はカバンからある物が入った袋を出して、アオトさんに渡した)

 

アオト「これは?」

 

コトリ「ヒスイくんのおやつにどうかなと思って…ワンちゃん用のパストラミを作ってみたんです」

 

アオト「そうか…それなら、ありがたくいただくよ」

 

コトリ「良かったぁ~…それじゃ、失礼します!」

 

アオト「うむ…また近いうちにお店のコーヒーを飲みに行くとお母さんに伝えてくれ」

 

コトリ「はい!」

 

コトリ「ヒスイくん、またね!」チリンチリン

 

ワンワン!

 

(私はまた自転車を漕ぎ始めた)

 

コトリ「…あれ?」

 

(もうすぐ目的の場所だって思ったその時…私は遠くのマンションが消えた瞬間を見た)

 

コトリ「もしかして…!」

 

(すると…私の心の中から、声が聞こえてきた)

 

?『コトリ、近くにイマジンがいるわ!』

 

コトリ「…うん!」キッ!

 

(私が来た道を引き返していると…新幹線みたいに大きな電車が自転車を漕いでいる私の隣に並ぶようにやってきた)

 

コトリ「『デンライナー』…!」

 

(この電車はちょっと特別で…時間を行き来することができるの)

 

(私達はこの電車を時の列車『デンライナー』って呼んでるんだけど…)

 

コトリ「…」

 

?『どうしたのよ、コトリ?』

 

コトリ「あっ…ううん、大丈夫!」

 

?『でも今、アンタ…』

 

コトリ「何でもないのよ何でも!」

 

?『そう…それなら別にいいけど』

 

コトリ「…」ホッ

 

(私達がこの電車に乗って、次に行くのは過去…?)

 

(それとも、いつかの未来…なのかな?)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

亜里沙「ねぇ、そういえば今までの旅で私たちがまだ会ってない『μ's』メンバーって…もうことりさんだけじゃないのかな?」

 

雪穂「となると…次の世界が、守らないといけない最後の世界になるね」

 

ツカサ「そうなるな…!」

 

ツカサ(オレ達がそう話していると…スタジオの背景が違うものに変化した)

 

ツカサ(背景には砂漠の中を走る列車が描かれている)

 

亜里沙「変わった!」

 

雪穂「…ツカサ、ここは何の世界なの?」

 

ツカサ「ここは…電王の世界だ」

 

亜里沙「デンオウ…?」

 

?「ちょっと!大変よー!」

 

ツカサ「?」クルッ

 

ツカサ(オレ達が振り返ると…そこにはキバーラがいた)

 

亜里沙「キバーラ!」

 

雪穂「今までどこに行ってたの?」

 

キバーラ「ご、ごめんなさい…」ハァハァ

 

ツカサ「…何かあったのか?」

 

キバーラ「ええ、実は一足先に電王の世界に行ってツバサを探していたら…見たの」

 

雪穂「見たって…?」

 

亜里沙「何を?」

 

キバーラ「にこ…矢澤にこよ!」

 

雪穂「えっ…!?」

 

亜里沙「…えっ?」

 

ツカサ「はぁ!?」

 

ツカサ(驚いたオレ達は…矢継ぎ早にキバーラに質問していた)

 

雪穂「それ、どういうこと!?」

 

亜里沙「ことりさんがいたんじゃないの!?」

 

ツカサ「何でにこがこの世界にいるんだ!?」

 

キバーラ「ちょっ…ちょっと待って、そんなに聞かれても」

 

雪穂「いいから!」ズイッ

 

亜里沙「早く!」ズイッ

 

ツカサ「答えろ!」ズズイッ

 

キバーラ「わ、分かったわよ…っていうか顔が近いからぁ~!」

 

 

 

ツカサ(オレ達はキバーラから話を聞いていた)

 

ツカサ「にこによく似た…イマジン?」

 

キバーラ「ええ…アタシがそれを見たのは、ツバサがこの世界に来ていないか探していた時の事だったんだけど」

 

キバーラ『ツバサ~!どこにいるの~?』パタパタ

 

キバーラ『はぁ…どうやら、この世界にもいないみたいね』シュン

 

キバーラ『あら?あそこにいるのって…』

 

コトリ『いないね…どこに行っちゃったのかな?』ハァハァ

 

?『おかしいわね…確かにさっきまで、この辺にいたはずなんだけど』キョロキョロ

 

キバーラ『えっ、アレって…矢澤にこ!?』

 

コトリ『あともうちょっとだったのに、逃げられちゃったね…』

 

?『本当ね…あの子達が余計なことするから』ハァ

 

コトリ『あ、あはは…これからどうしよっか?』

 

?『そうね…もうイマジンのニオイもしないし、デンライナーに戻りましょうか?』

 

コトリ『そうだね…じゃあ、戻ろっか』チリンチリン

 

?『あっ…ちょっと!?置いて行くんじゃないわよ~!』

 

キバーラ『なんであの子がこの世界に…しかも砂のような身体で』

 

キバーラ『…まさか!』

 

キバーラ『た、大変な事になったわ…早くあの子達に知らせなくちゃ!』パタパタ

 

キバーラ「っていう訳なの…」

 

ツカサ「…つまり、お前が見た矢澤にこは身体が砂のようになっていた」

 

ツカサ「そして…上半身が地面に埋まって下半身が虚空から生えていた状態だった、という事か?」

 

キバーラ「ええ…」

 

ツカサ「そういう事か…なるほど、だいたいわかった」

 

雪穂「えっ…ちょっと待ってよ!」

 

ツカサ「何だ?」

 

雪穂「私は何も分かってないんだけど…」

 

ツカサ「…ひとまず、この世界にコトリはいるっていう事だ」

 

亜里沙「じゃあ…なんでにこさんが、ヒマジンっていうのに?」

 

ツカサ「…暇人じゃなくて、イマジンな?」

 

亜里沙「えっ…違うの?」キョトン

 

雪穂「イマジンって…?」

 

ツカサ「イマジンはこの世界の未来から現代にやってきた怪人の事だ」

 

ツカサ「奴らは人間と契約を結んで…その契約した人間が記憶している一番大切な時間へ飛ぶ」

 

雪穂「契約…?」

 

ツカサ「人間の願いを一つだけ叶えてやるんだ…力ずくでな」

 

雪穂「力ずくって…どういうこと?」

 

ツカサ「そうだな…例えば、とあるスクールアイドルの一人が『大会に優勝したい』とイマジンに願ったとする」

 

ツカサ「そうするとイマジンは…同じ大会に出場する他のスクールアイドル全員を痛めつけに行くんだ」

 

雪穂「えっ…なんでそうなるの!?」

 

ツカサ「ライバル達はそれで怪我をして大会に出られなくなるだろ?」

 

ツカサ「つまり、不戦勝という形で大会に優勝できる…という事になる」

 

雪穂「そんな勝手な…」

 

ツカサ「イマジンっていうのはそういう自分勝手な解釈をする奴らがほとんどなんだ…だが、もう一つ厄介な点がある」

 

雪穂「厄介な点…?」

 

ツカサ「奴らは契約した相手の一番大切な時間に飛んで…好きなだけ暴れ回る事で時間を改ざんするんだ」

 

雪穂「時間を改ざんって…具体的には何をするの?」

 

ツカサ「例えば過去の時間で奴らが建物を壊すと…その建物はもう存在しない事に変わってしまうんだ」

 

雪穂「じゃあ、もし人がイマジンに襲われて命を落としたら…その人はいなくなっちゃうってこと?」

 

ツカサ「ああ…奴らは現在や未来の時間も大きく変えてしまう、だから厄介なんだ」

 

雪穂「じゃあ…にこさんに似てるっていうイマジンも?」

 

ツカサ「…そこまではオレにも分からないが、コトリと一緒に行動していた事を考えると敵だとは断定できない」

 

ツカサ「今までの事を考えればおそらく…コトリは電王だと予想できるからな」

 

雪穂「その電王っていうのが…この世界の仮面ライダーなの?」

 

ツカサ「ああ、時間や世界を守る為に…『デンライナー』という電車で過去に飛んだイマジンを追って戦うんだ」

 

雪穂「デンライナー…?」

 

ツカサ「あの背景の絵の新幹線みたいなヤツの事だ」

 

雪穂「へぇ…これがデンライナーなんだ」

 

ツカサ「…キバーラ、確かコトリ達はデンライナーに戻るって言ったんだよな?」

 

キバーラ「え、ええ…」

 

ツカサ「じゃあ…今、コトリ達を探してもどうにもならないな」

 

雪穂「えっ…なんで?」

 

ツカサ「デンライナーは普段、時の狭間の中にある砂漠を走っているんだ」

 

ツカサ「だから…デンライナーに乗るのに必要なチケットを持っていない限り、コトリに会う事は出来ない」

 

雪穂「そうなんだ…」

 

ツカサ「それに…今日はもう遅いからな」チラッ

 

雪穂「えっ?…あっ」

 

亜里沙「…」スヤスヤ

 

ツカサ「ここ数日は響鬼の世界でずっと、ツバサを探していたからな…疲れたんだろ」

 

ツカサ「だから、今日はもう部屋に戻って…ゆっくり休め」

 

雪穂「…うん、分かった」

 

亜里沙「…」スヤスヤ

 

ツカサ(オレ達はそれぞれの部屋に戻り…明日の朝までゆっくり休む事にした)

 

 

 

ツカサ(次の日の朝、オレ達は写真館を出た)

 

ツカサ(その瞬間…オレは薄茶色のフェルト帽、外套(がいとう)、鞄、懐中時計を身につけていた)

 

ツカサ(懐中時計には小さく…『野上ツカサ』という名前が彫られていた)

 

雪穂「この世界でもツカサの服装は変わるんだね…」

 

ツカサ「みたいだな」

 

亜里沙「今回は何だろう…探偵かな?」

 

ツカサ「どのみち似合ってるんだから、別に何でも良いんじゃないのか?」

 

亜里沙「そっか、それもそうだね!」

 

雪穂「…それで、そのカバンの中には何が入ってるの?」

 

ツカサ「そうだな…開けてみるか」

 

ツカサ(オレが鞄を開けると…中には黒いパスケースと三枚のカードが入っていた)

 

ツカサ「これは…!」

 

亜里沙「それ…何?」

 

ツカサ「ライダーパスとチケットだ…これがあれば、デンライナーに乗る事が出来る」

 

雪穂「えっ、そうなの!?」

 

ツカサ「ああ…あとは特定の時間に扉を開ければ大丈夫だ」

 

亜里沙「扉って…どこの扉を開けたらいいの?」

 

ツカサ「『開ける』ものであればどこでも大丈夫だ…」

 

ツカサ「例えば…マンホールなんかからでもデンライナーに行く事が出来る」

 

亜里沙「そうなんだ…スゴい!」

 

雪穂「でも…特定の時間に開けなきゃいけないんだよね?」

 

ツカサ「その通りだ…『十時十分十秒』みたいに、時刻が揃っている時じゃないと行く事が出来ない」

 

雪穂「そっか…そういえば今、何時だっけ?」

 

ツカサ「今は…十時二十五分だな、次に来るのは十一時十一分十一秒だ」

 

亜里沙「でも…それまで待てばコトリさんに会えるって事だよね!」

 

ツカサ「多分な…ん?」

 

女性「はぁ…」

 

亜里沙「あの人がどうかしたの、ツカサ?」

 

ツカサ「いや…何となくだが、おかしい気がしてな」

 

雪穂「おかしいって…?」

 

ツカサ「…見れば分かる」

 

女性「…」サァァ…

 

ツカサ(オレ達が様子を見ていると…女性の服から大量の砂が落ちてきた)

 

亜里沙「えっ…!?」

 

雪穂「な、何あれ!?」

 

ツカサ「契約したイマジンが憑いているという証拠だ…おい!」

 

女性「…?」クルッ

 

ツカサ「早くその女性から出て正体を現せ」

 

女性「…」バタッ

 

ツカサ(すると…倒れた女性の影から羽根付き帽子と長靴を身に付けた猫の姿をしたイマジンが実体化した)

 

キャットイマジン「バレちゃしょうがないッスね…てめえ、何者ッスか?」

 

ツカサ「オレか?オレは通りすがりの…」

 

?「ちょっと待ちなさーい!!」

 

ツカサ「…?」クルッ

 

ツカサ(そこにやってきたのは…上半身が地面に埋まって下半身が虚空から生えている、砂の身体をした矢澤にこだった)

 

雪穂「ええっ!?」

 

亜里沙「にこさんの身体、反対だ…!」

 

キャットI「チッ…また懲りずに追ってきたッスね」

 

?「当たり前でしょ…私の鼻をナメるんじゃないわよ!」

 

キャットI「くっ…」

 

?「ほら!行くわよコト…リ?」

 

ツカサ「…?」

 

キャットI「?」

 

?「な…何でコトリがいないのよ!?」

 

キャットI「フッ、よく分からないッスけど…どうやらあの人間の女がいないと電王になれないみたいッスね?」

 

?「う、うるさいわね!…!?」

 

ツカサ(にこによく似たイマジンはオレ達が持っていたライダーパスを見て驚いていた様子だった)

 

?「あ、アンタ達…それ!」

 

ツカサ「もしかして…このパスの事か?」

 

?「…こうなったら、やるしかないみたいね」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

?「ちょっと借りるわよ!」

 

ツカサ「!?」

 

 

 

ツカサ「うっ…」フラッ

 

雪穂(にこさんによく似たイマジンは…ツカサの身体の中に入り込んでしまった)

 

雪穂「ツカサ!」

 

亜里沙「大丈夫!?」

 

キャットI「…ど、どうなったッスか?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「!?」

 

雪穂(突然、逆立ったツカサの髪には赤いメッシュが入り…瞳は赤くなっていた)

 

ツカサ「…変身」

 

雪穂(いつものベルトとは全く違うベルトを巻いて、赤いボタンを押したツカサは…そのベルトにライダーパスを読み込ませた)

 

『ソードフォーム』

 

雪穂(ツカサはディケイドとは違う別のライダーに変身した)

 

?「…」

 

キャットI「て…てめえも電王だったッスか!?」

 

亜里沙「えっ、電王…?」

 

雪穂「嘘…」

 

電王「…私、参上!」

 

雪穂(電王は腰からいくつかのパーツを取り出すと…剣になるように組み合わせていく)

 

電王「行くわよ…はぁっ!」ダッ

 

雪穂(剣を持った電王は猫の姿をしたイマジンに突っ込んでいった)

 

キャットI「にゃに()を!」サッ

 

電王「なっ…!?」

 

キャットI「パンチパンチパンチ!」ポカポカポカ!

 

電王「痛い痛い痛い!」

 

雪穂(電王の攻撃を避けたイマジンは…電王の目に猫パンチのようなものを連続で繰り出した)

 

亜里沙「雪穂…アレ、痛いのかな?」

 

雪穂「さぁ…?」

 

キャットI「更に両足でキーック…ッス!」ドカッ!

 

電王「痛っ…何すんのよアンタ!」

 

キャットI「フフフ…」

 

電王「くっ…なら、これで行くわよ!」

 

『フルチャージ』

 

雪穂(再びベルトにパスを読み込ませた電王は…イマジンに向かって剣の先を飛ばした)

 

電王「私の必殺技…パートⅡ!」

 

キャットI「その技は昨日、自慢のパンチで弾き落としたはずッスよ!」

 

電王「はぁっ!」ブンッ

 

雪穂(すると、剣先は弧を描き…)

 

キャットI「にゃ…にゃ()んスか!?」

 

雪穂(呆気に取られたイマジンは十字の形で斬りつけられると…すぐに爆発した)

 

電王「はぁ~…スッキリした!」

 

?「ま、待ってよ~…!」ダッ

 

雪穂「…んっ?」

 

亜里沙「あれ…?」

 

雪穂(やってきたのは…奇抜な白い衣装を着たコトリさんだった)

 

コトリ「モ、モモちゃん…もしかして他の人に憑いちゃったの?」ハァハァ

 

電王「ええ…でも安心しなさいコトリ、イマジンならもう倒したから」

 

コトリ「…えっ?」

 

電王「まあ、私の力があればこのくらいは余裕ね!」フフン

 

コトリ「…ダメ」

 

電王「えっ?」

 

コトリ「ダメだよ、モモちゃん!」

 

コトリ「座って!」

 

電王「で…でも、コトリが来るのが遅かったんだから仕方ないじゃない?」

 

電王「イマジンを倒すにはこうするしか…」

 

コトリ「座って!!」

 

電王「は…はい」

 

雪穂(コトリさんに怒られて…電王は正座していた)

 

コトリ「いいですか、モモちゃん…勝手に他の人の身体に憑いてはいけません!」

 

コトリ「それは他の人がケガしないように、私とモモちゃん達のみんなでした約束です!」

 

電王「…」

 

コトリ「分かったら…ごめんなさいして?」

 

電王「…ご、ごめんなさい」

 

コトリ「うん…じゃあ、その人から離れて?」

 

電王「!…分かったわよ」

 

雪穂(電王は変身を解くと…ツカサの姿に戻った)

 

ツカサ「…っ!」ハァハァ

 

コトリ「大丈夫ですか…?」

 

ツカサ「あ、ああ…何とか」ハァハァ

 

コトリ「ごめんなさい、モモちゃんがあなたに迷惑をかけちゃって…」

 

ツカサ「…モモちゃん?」

 

コトリ「あっ、モモちゃんっていうのは私のお友達のことで…」

 

ツカサ「…そうか、にこに似てるイマジンっていうのはこの世界でいうモモタロスの事だったのか」ボソッ

 

コトリ「えっ?」

 

ツカサ「いや…何でもない、こっちの話だ」

 

亜里沙「ツカサ!」ダッ

 

雪穂(私と亜里沙は立ち上がるツカサとコトリさんのもとに駆け寄った)

 

雪穂「大丈夫?」

 

ツカサ「ああ…少し驚いたが問題ない」

 

亜里沙「良かったぁ…ありがとうございます、コトリさん!」

 

コトリ「えっ…!?」ピタッ

 

ツカサ「…?」

 

亜里沙「えっ…コトリさん、ですよね?」

 

コトリ「コ、コトリ…ホワット!?」

 

コトリ「ドーゥナァトァデェィスカァ?」

 

亜里沙「ええっ…もしかしてこの世界のコトリさん、外国人だったの!?」

 

ツカサ「いや、どう考えても違うだろ…」

 

雪穂「でもさっき、コトリって呼ばれてませんでした…?」

 

コトリ「チガイマース!」

 

コトリ「ソリデハ、ゴキゲンヨウ…」ススッ

 

雪穂(コトリさんはそう言いながら…徐々に後ずさりしていく)

 

コトリ「ヨキニハカラエ、ミナノシュウ…」

 

コトリ「さらば!」ダッ

 

雪穂「あっ!?」

 

亜里沙「逃げた!?」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…お前達は先にコトリを追え」

 

亜里沙「ツカサはどうするの?」

 

ツカサ「オレは先回りして、別ルートからコトリを追う…だから早く行ってくれ」

 

雪穂「そっか…分かった!」ダッ

 

亜里沙「気をつけてね!」ダッ

 

雪穂(私達はツカサと二手に分かれて、コトリさんを追うことにした)

 

 

 

コトリ「はぁはぁ…!」ダッ

 

雪穂「コトリさん!」

 

亜里沙「待って、コトリさん!」

 

?『どうしよう、ウラちゃん…このままじゃコトリちゃんが!』

 

ウラ『そうね…一応、助ける方法が無い訳じゃないけど』

 

?『えっ…コトリちゃんを助けられる方法があるの?』

 

ウラ『ええ…任せて、キン』フフッ

 

雪穂「あれ、コトリさん…?」

 

亜里沙「いないね…どこに行っちゃったんだろう?」キョロキョロ

 

雪穂「さっきまでは確かに、姿が見えたはずなんだけど…」

 

キン『お邪魔しまーす!』

 

雪穂「え?…っ!?」

 

亜里沙「…雪穂?」

 

雪穂「…」バタッ

 

亜里沙「雪穂!?」

 

亜里沙「しっかりして、雪穂!」ユサユサ

 

ウラ『ごめんなさいね』

 

亜里沙「えっ…」クルッ

 

ウラ『少しの間だけ…あなたの身体、借りるわね?』

 

亜里沙「も…もしかして、おね…っ!?」

 

亜里沙「…」バタッ

 

 

 

コトリ「脱出ルートを決めておいて良かったぁ…」ハァ

 

?「見つけたぞ」

 

コトリ「ひいっ!?」クルッ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(オレはコトリが行きそうな場所を予想して、先回りしていた)

 

コトリ「あ、あなたは…」

 

ツカサ「…観念しろ、アンタが南コトリだって事はもう分かってるんだ」

 

コトリ「み、見逃してくれないんですよね…?」

 

ツカサ「いや、見逃すも何も…」

 

コトリ「お願い…見逃して!」

 

ツカサ「だから、オレ達は話を聞こうと…」

 

コトリ「おねがぁい!!」

 

ツカサ「!?」ズキッ

 

ツカサ(コトリのその脳を刺激させる甘い声に…オレは危うく、心臓が止まりそうになっていた)

 

ツカサ「あ、危なかった…!」ハァハァ

 

コトリ「…あっ!?」

 

ツカサ「あのな、オレ達はただアンタと…ん?」

 

ツカサ(オレがコトリを見ていると…コトリの髪のトサカのような部分に赤いメッシュが入っていた)

 

コトリ?「…」

 

ツカサ「ま、まさかアンタ…!」

 

コトリ?「…」

 

ツカサ「モモが憑依して…!?」

 

ツカサ(次の瞬間、モモに憑依されたコトリの瞳の色は赤くなった)

 

Mコトリ「アンタね…さっきから人がお願いしてんのに、何うだうだ言ってるのよ!?」

 

ツカサ「は…はぁ!?」

 

Mコトリ「っていうかアンタ…一体、誰なのよ!?」

 

Mコトリ「人に名前を聞く時は、まずそっちから名乗り出るのが筋でしょ!?」

 

ツカサ「オ、オレか?…オレの名前はツカサだ」

 

ツカサ「ある世界を守る為に…九つの世界を旅している」

 

Mコトリ「はぁ…?何かうさんくさいわね、アンタ」

 

ツカサ「なっ…胡散臭い!?」

 

Mコトリ「それに…『ツカサ』って顔には見えないわね、何だか名前負けしてるわ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

Mコトリ「そうね…『タロウ』って顔してるから、そっちの方がお似合いなんじゃないの?」

 

ツカサ「…!」

 

Mコトリ「ふん…」

 

ツカサ「ア…アンタな、全国のタロウさん達を馬鹿にするなよ!?」

 

Mコトリ「!?」ズコッ

 

Mコトリ「いや、アンタ…ツッコむ所そっちじゃないでしょ!?」

 

ツカサ「いいや…まずはタロウさん達に謝れ」

 

ツカサ「そうじゃないと…オレの気が治まらない」

 

Mコトリ「わ、分かったわよ…謝ればいいんでしょ?」

 

Mコトリ「全国のタロウさん達…ごめんなさいっ!」

 

Mコトリ「…って、何言わせてんのよ!?」

 

?『お~い!』

 

ツカサ「…?」クルッ

 

ツカサ(オレが振り返ると…そこには砂の身体をした星空凛がいた)

 

ツカサ「!?」

 

?『モモちゃ~ん!』

 

Mコトリ「あら、リュウじゃない…何?」

 

ツカサ(なるほど、凛によく似たイマジンはリュウタロスみたいな存在なのか…)

 

リュウ『コトリちゃんの身体、入るね!』

 

Mコトリ「はぁ!?」

 

Mコトリ「ちょっと待ちなさい!私はまだ話が…って!?」

 

ツカサ(リュウがコトリの身体の中に入ると…コトリの身体からモモが追い出されるように出てきた)

 

モモ『ちょっと、アンタねぇ…!』

 

ツカサ(トサカや瞳が紫色に変わったコトリは…ステップを踏んで、軽快に踊っている)

 

Rコトリ「~♪」

 

モモ『何がしたいのよ!?』

 

モモ『しょーがないわねー…コトリに怒られちゃったばかりだけど、この手しかないわね』ハァ

 

モモ『そこのアンタ…もう一回、身体借りるわよ!』

 

ツカサ「はぁ!?だから何で…っ!」

 

ツカサ(モモはオレの身体の中に入り込もうとする)

 

モモ『えっ…なんで抵抗できるのアンタ!?』

 

ツカサ「知るか…早く出ろ!」

 

モモ『イヤよ…私がアンタの身体借りて、コトリからリュウを追い出すんだから!』

 

ツカサ「いいから…オレの身体から、出ていけ!」

 

モモ『なっ!?』

 

ツカサ(オレは何とかモモを自分の身体から追い出した)

 

ツカサ「うっ…」ハァハァ

 

Rコトリ「えっ…モモちゃんを追い出した!?」

 

モモ『そういえば…電王に変身できた時点で気付くべきだったわね』

 

モモ『まさか、アンタまで特異点だったなんて…!』

 

ツカサ「特異点って…あらゆる時間の干渉を受けない特殊な存在の事か?」

 

モモ『そうよ…それにしてもこんな所でコトリ以外の特異点に会えるなんて、思いもしなかったわ』

 

Rコトリ「君、面白いニャ~!」

 

Rコトリ「それなら…君の身体、借りてもいいよね?」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

リュウ『えいっ!』

 

ツカサ(コトリの身体から出てきたリュウは…モモよりも強い力でオレの身体の中に入り込んだ)

 

ツカサ「っ!?」

 

コトリ「えっ…リュウちゃん!?」

 

モモ『だから…何してんのよ!?』

 

Rツカサ「だって…急に踊りたくなったんだもん!」パチン

 

ツカサ(オレの身体を乗っ取ったリュウは指を鳴らすと…周りから人が集まってきた)

 

Rツカサ「ふふっ…それそれ~!」

 

ツカサ(リュウは人の精神を自在に操られる能力があるのか…集まった人々を踊らせていた)

 

コトリ「ダメだよ、リュウちゃん!」

 

モモ『コトリ…リュウがそれで聞くような子じゃないのはアンタも分かってるでしょ?』

 

コトリ「だってぇ…」

 

モモ『それに…多分、放っておいてもすぐに出てくるわ』

 

コトリ「えっ…?」

 

リュウ『うわぁっ!?』

 

コトリ「!?」

 

ツカサ(オレは何とかリュウを自分の身体から追い出した)

 

ツカサ「全く、油断も隙もないな…!」ハァハァ

 

リュウ『ウソ…もう追い出されちゃった!?』

 

ツカサ(オレの身体からリュウが抜けた後…周りで踊っていた人達は倒れていた)

 

ツカサ「アンタな…自分が踊りたいからって周りの人を勝手にバックダンサーにするんじゃない!」

 

ツカサ「そういうのはな…コトリが危なくなった時だけに使え!」

 

リュウ『ひっ…ご、ごめんなさ~い!』

 

コトリ「あ、あの…」

 

ツカサ「…何だ?」

 

コトリ「私からも…ごめんなさい、モモちゃんやリュウちゃんが迷惑かけちゃって」

 

ツカサ「…別にアンタまで謝る必要は無い、それよりもオレの話を聞いてくれないか?」

 

コトリ「えっ…話?」

 

ツカサ「ああ、オレ達は…アンタの味方だ」

 

コトリ「…?」

 

?「た、大変ですーっ!」ダッ

 

ツカサ(すると今度は…花陽によく似た少女がやってきた)

 

リュウ『あっ、パナちん!』

 

ツカサ「…パナちん?」

 

?「…」ハァハァ

 

コトリ「えっと…この子、パナちゃんっていうの」

 

ツカサ「パナ…?」

 

パナ「あっ…私、パナっていいます」ペコリ

 

ツカサ「あ、ああ…」

 

モモ『どうしたの、パナ?』

 

パナ「あっ、えっと…とにかく一緒に来てください!」ダッ

 

コトリ「う…うん!」ダッ

 

ツカサ「…何だか、嫌な予感しかしないな」ハァ

 

ツカサ(オレはコトリ達に着いて行く事にした)

 

 

 

ツカサ(オレ達は三つ葉公園と呼ばれる場所にやってきた)

 

パナ「いました…あそこです!」

 

キャー!アリササマー!

 

ツカサ「…!?」

 

ツカサ(そこには…女性達に囲まれた亜里沙がいた)

 

ツカサ(黒いセルフレームの眼鏡、青い瞳…そして髪に青いメッシュを入れた亜里沙は群がる女性達を口説いていた)

 

U亜里沙「そうね、あなたは例えるならハナミノカサゴかしら…?」

 

U亜里沙「その美貌という名の毒で…多くの人を魅了させちゃうでしょうね」フフッ

 

女性A「あ、亜里沙様…!」

 

キャー!!

 

ツカサ「何だ、これは…?」

 

コトリ「ウラちゃん…」

 

モモ『あのカメ、またやってるわね…』ハァ

 

女性B「私にも何か言って!」

 

女性C「ちょっと、次は私よ!」

 

U亜里沙「あらあら…私の為に争っちゃダメよ?」

 

U亜里沙「私は…あなた達が傷ついて涙を流す姿を見たくないのよ」

 

女性B 「は、はい…!」

 

女性C「分かりました…!」

 

U亜里沙「そうだわ!良かったらあなた達…私と一緒にハラショーな夜を過ごさない?」

 

キャァァァ!!

 

ツカサ(間違いなく絵里によく似たウラタロスが亜里沙の中に入っていると…オレは確信してしまった)

 

ツカサ「…何か、頭が痛くなってきたな」

 

コトリ「ウラちゃん!」

 

モモ『アンタ、こんな所で何してんのよ!?』

 

U亜里沙「あら、コトリ…パナちゃんやセンパイまで」

 

コトリ「どうしてその子の中に入ったの?」

 

U亜里沙「さっき、コトリを追いかけていたのを見たから…キンと一緒にこの子達の身体に入ったの」

 

コトリ「えっ…この子達って?」

 

ツカサ「まさか…!」

 

ツカサ(オレ達が別の方向を見ると…そこには金色のメッシュが入り、黄色い瞳をした雪穂が子供達と相撲をとっていた)

 

K雪穂「みんな、まだまだファイトが足りないね~…どすこーい!」

 

少女A「うわっ!また負けちゃったぁ~…」

 

少女B「お姉ちゃん、スゴく強いね!」

 

K雪穂「でしょでしょ?私の強さは泣けちゃうんだから!」

 

ツカサ(こっちはファイトとか言いながら相撲とってるから、完全に穂乃果によく似たキンタロスだな…)

 

ツカサ(しかし…イマジン達がまさかμ'sメンバーの姿に変わってるとは思いもしなかった)

 

ツカサ(この世界に一体、何が起きているんだ…?)

 

コトリ「キンちゃ~ん!」

 

K雪穂「あっ…コトリちゃん達だ、おーい!」

 

コトリ「何してるのぉ~!?」

 

K雪穂「私達、イマジンがこの近くにいるって話を聞いたのー!」

 

パナ「えっ…イマジン!?」

 

U亜里沙「そう…だから情報収集を、ね?」

 

モモ『アンタはただナンパしたいだけでしょうが!?』

 

U亜里沙「あら…そんな事、ないわよ?」フフッ

 

リュウ『あれは絶対、ナンパしたいだけの顔ニャ…』

 

モモ『でも…不思議ね、近くでイマジンのニオイがするわ』

 

ツカサ「…ニオイ?」

 

モモ『ええ…私の鼻、けっこう利くのよ?』

 

ツカサ「鼻が利く…まるで犬みたいだな」

 

モモ『何ですってぇ!?』

 

イヤァァァ!!

 

コトリ「!?」

 

ツカサ「この悲鳴は…急ぐぞ!」

 

コトリ「うん!」

 

パナ「はい!」

 

U亜里沙「じゃあ…私達も行こうかしらね?」

 

K雪穂「また遊ぼうね、みんな~!」ブンブン

 

ツカサ(オレ達は悲鳴がした場所へと走っていった)

 

 

 

ツカサ(オレ達が駆けつけると…そこには一組の親子がいた)

 

母親「…」

 

ツカサ(親子のすぐ近くにはスーパーのレジ袋を始め…肉や野菜、果物などが無造作に散らばっていた)

 

娘「おかあさん、しっかりして!」ユサユサ

 

コトリ「どうしたの?」

 

娘「わかんない…きゅうにようかいがでてきて、わたしにおつかいしろって!」

 

パナ「妖怪って…イマジンの事かな?」

 

ツカサ「おそらくそうだろうな…」

 

コトリ「あの…大丈夫ですか?」ユサユサ

 

母親「ん…」パチリ

 

ツカサ「…とりあえず、意識はあるみたいだな」

 

パナ「よ、良かったぁ…」ホッ

 

ツカサ(コトリは一枚のチケットを取り出し…母親の頭にかざした)

 

『二〇一〇年六月三十日』

 

コトリ「すみません…この日付に何か大事な事が起きませんでしたか?」

 

母親「…この日は、娘が生まれた日です」

 

パナ「か、怪物に何か願いを言いませんでしたか…?」

 

母親「怪物…そういえば、いつか娘が一人でおつかいに行けるようにお願いしました」

 

母親「ですがそれを聞いた怪物は…私が今日、買いに行こうとしていたものを書いたメモとお金を奪って…」

 

ツカサ「それで…外で遊んでいた娘に無理やりおつかいをさせてた訳か」

 

母親「はい…」

 

コトリ「分かりました…ありがとうございます!」

 

パナ「このままじゃ、過去の時間が大変な事に…デンライナーに急ぎましょう!」

 

ツカサ「お…おい、ちょっと待て!」

 

パナ「へっ…?」

 

ツカサ「親子を放っておいて大丈夫なのか…?」

 

パナ「あっ、それなら…ユウコちゃんとデネヴちゃんを呼んでいるから」

 

ツカサ「ユウコと…デネブ?」

 

パナ「うん…あっ、ちなみにデネヴちゃんの『ヴ』はウに点々の方だよ?」

 

ツカサ「デネヴ…いや、まさかな」ボソッ

 

ツカサ(十一時十一分十一秒…オレ達は近くの扉へ行き、デンライナーに乗った)

 

 

 

雪穂「…はっ!」ガバッ

 

亜里沙「おはよう、雪穂!」

 

雪穂「あっ、おはよう…」

 

亜里沙「窓の外、見てみて!」

 

雪穂「えっ…って、砂漠!?」

 

雪穂「そういえば、ここ…ん?」ヒラッ

 

雪穂「何、この白い羽根?…!」

 

ツカサ「ようこそ…デンライナーの食堂車へ」

 

雪穂「ツ、ツカサ…?」

 

亜里沙「うん…私もさっき、ツカサから聞いてビックリしちゃった!」

 

雪穂「いや、というかあれ…本当にツカサなの?」

 

雪穂「やけに白くて派手なの身につけてるけど…」

 

ツカサ『だから…何でいちいちオレに入ってくるんだよ!?』

 

ツカサ(オレは憑依してきたあるイマジンを身体の外へ追い出した)

 

?「おっと…」スタッ

 

雪穂「ツカサ!?」

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァハァ

 

亜里沙「あの人は…う、海未さん!?」

 

ツカサ「違うな、アレは海未じゃなくて…このデンライナーのオーナー・ズィークだ」

 

ズィーク「降臨…満を持して」

 

ツカサ(海未によく似たズィークは…肩に白いフェザー、胸に白鳥のバッジを着けていた)

 

亜里沙「か、カッコいい…」キラキラ

 

ズィーク「旅の者…苦しくありません、面を上げてください」

 

雪穂「いや、もともと下げてないんですけど…」

 

亜里沙「カッコいいなぁ…」

 

?「っていうか…なんでアンタ達まで乗ってきてんのよ?」

 

雪穂「?」クルッ

 

ツカサ(雪穂が振り向くと…そこにはモモ達がいた)

 

モモ「…」ムスッ

 

ツカサ(モモ達はさっきの砂の身体とは違い…それぞれ特徴的な服装をしていた)

 

ウラ「ハァ~イ…人生楽しんでる?」

 

ツカサ(絵里によく似たウラはスーツ姿で、眼鏡と胸に青い亀のバッジを身につけていた)

 

亜里沙「お姉ちゃん!?」

 

キン「お茶~…」Zzz…

 

ツカサ(穂乃果によく似たキンは黄色い着流しを着て、胸に黄色い熊のバッジを身につけている)

 

雪穂「な、何でにこさんだけじゃなくて私達のお姉ちゃんまで!?」

 

リュウ「そんなことよりリュウと一緒に遊んでほしいニャー!」

 

ツカサ(凛によく似たリュウは帽子やヘッドフォン…そして胸には紫色の龍のバッジを着用していた)

 

亜里沙「凛さんまで…どうして?」

 

モモ「それより私の質問に答えなさいよ…何でついて来たわけ?」

 

ツカサ(そしてにこによく似たモモは…ワイルドな服装をしており、胸に赤鬼のバッジを身につけていた)

 

ツカサ「ライダーパスとチケットを持ってるんだ…ついて来るのは当然の事だろ?」

 

ツカサ「そうだろ、オーナーさん?」

 

ズィーク「ええ…よっと」スッ

 

ツカサ(ズィークは小さな旗が立てられたチャーハンを慎重にスプーンで掬っていた)

 

リュウ「またチャーハン食べてるニャー…」

 

亜里沙「またって…いつも食べてるの?」

 

ウラ「ええ…いつもあの旗を倒すまで食べているの」

 

雪穂「何のために…?」

 

モモ「知らないわよ、そんなこと…」

 

ズィーク「ライダーパスやチケットさえ持っていれば…ルール違反をしない限り、乗車拒否する事は出来ませんからね」モグモグ

 

ツカサ「ほらな?」

 

モモ「…ふんっ!」ムスッ

 

ツカサ(すると…他の車両からパナと普段着に着替えたコトリがやってきた)

 

雪穂「えっ、花陽さんまで…!」

 

パナ「えっ…私?」

 

コトリ「あ、あの…」

 

ツカサ「…どうした?」

 

コトリ「さっきはごめんなさい…過去の時間に着くまで、あなた達とちゃんとお話しようと思って」

 

ツカサ「…そうだな」コホン

 

ツカサ(オレはコトリ達に事情を説明した)

 

 

 

ツカサ「それで…分かってもらえたか?」

 

パナ「あっ…はい、何とか!」

 

コトリ「そうだったんだ…そんな事も知らずに、逃げちゃって本当にごめんね?」

 

ツカサ「いや…話を聞いてもらえれば、それで良い」

 

雪穂「ツカサ…ちょっと」ボソッ

 

ツカサ(雪穂に呼ばれたオレは…亜里沙と三人で席を移動した)

 

雪穂「すみません…少し待ってもらってもいいですか?」

 

コトリ「あっ…うん、大丈夫!」

 

ツカサ「…どうした?」

 

雪穂「さっきから思ってたんだけど…何で他の世界と違って、私達のお姉ちゃん達もいるの?」

 

ツカサ「…考えられる事が一つある」

 

亜里沙「何?」

 

ツカサ「おそらくこの世界は…他の世界よりも『μ'sの世界』との融合が進んでいるんだ」

 

雪穂「えっ…?」

 

ツカサ「本来、イマジンは人のイメージで姿を手に入れて…鬼や亀、熊や龍みたいな顔や姿に怪人化する」

 

亜里沙「じゃあ、何でお姉ちゃん達と顔が似てるの…?」

 

ツカサ「それを確認する為には…コトリに聞かなきゃいけない事がある」

 

雪穂「聞かなきゃいけないこと…?」

 

ツカサ「ああ…コトリ、アンタがモモ達をイメージしたのか?」

 

コトリ「えっ…?う、うん」

 

ツカサ「その時…どんな風にイメージした?」

 

コトリ「えっとね…とにかく可愛くなる感じでイメージしたかな?」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

亜里沙「どういうこと?」

 

ツカサ「『μ'sの世界』と融合しかけている影響が、コトリのイメージとして出ているんだ」

 

亜里沙「じゃあ、花陽さんに似てるパナさんはどうなるの?」

 

雪穂「そうだよ…確かパナさんって、イマジンじゃないんだよね?」

 

ツカサ「お前達が起きる直前…パナは別の消えた時間軸から来たと話していた」

 

ツカサ「別の時間軸なら、確かに違う『μ's』メンバーによく似た人物がいても問題はないはずなんだが…」

 

雪穂「どうしたの?」

 

ツカサ「コトリとパナが出会うのは…偶然にしては出来過ぎている気がするんだ」

 

亜里沙「コトリさんにパナさんとの出会いを聞いたら、何か分かるんじゃない?」

 

ツカサ「そうだな…コトリ、どういう風にパナと出会って電王になったんだ?」

 

コトリ「えっと、私がパナちゃんと出会って電王になったのは…モモちゃんに初めて憑かれちゃった時のことなんだけど」

 

コトリ『も…もうやめてぇ~!』

 

モモ『えっ…私を追い出した!?』

 

パナ『も…もしかしてあなた、特異点ですよね!?』

 

コトリ『ふぇっ!?』

 

パナ『私と…一緒に時間を守るアルバイトをしてください!』

 

コトリ『そ、そんな…!』

 

コトリ『いきなりそんなこと言われても…それに私、アルバイトなんて』

 

パナ『乗務員用の制服もありますから!』

 

モモ『いや…さすがにそんなので乗らないでしょ?』

 

コトリ『へっ…制服、着せてもらえるんですか?』

 

パナ『えっ…?』

 

モモ『…はぁ?』

 

ズィーク『ようこそ…デンライナーへ』

 

コトリ『わぁ~…この制服、可愛いー!!』

 

ズィーク『ふふっ…とても良くお似合いですよ?』

 

ズィーク『今日からあなたはこのデンライナーの乗務員…ミナリンスキーです』

 

コトリ『素敵ぃ~…!』キラキラ

 

モモ『完全に乗せられてるじゃないのよ…』

 

コトリ「それから、自分を変えたいなって思って…」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「私にはモモちゃん達と違って何もないけど、今の私がやらなきゃいけないことだけは…分かった気がして」

 

コトリ「だから…私、このアルバイトをやろうと思ったの」

 

ツカサ「…そうか、答えてくれてありがとな」フフッ

 

雪穂「どう…何か分かった?」

 

ツカサ「…やはり、コトリがパナと出会ったのは『μ'sの世界』との融合が関係しているんじゃないかとオレは思う」

 

亜里沙「ってことは…真姫さんや希さんも、この世界のどこかにいるの?」

 

ツカサ「多分な…心当たる節もある」

 

雪穂「心当たりって…?」

 

ツカサ「おそらく…後で分かる」

 

亜里沙「…?」

 

パナ「あっ…目的の時間に着いたみたいです」

 

ツカサ「よし…雪穂と亜里沙はパナと一緒にここで待ってろ」

 

雪穂「う…うん!」

 

亜里沙「分かった!」

 

ツカサ「さて…過去が荒らされる前に、早めにイマジンを片付けるか」スタスタ

 

コトリ「ふぇっ…ツカサくん?」

 

モモ「待ちなさいよ!」

 

ツカサ「…?」クルッ

 

モモ「おかしいでしょ…何でアンタがイマジンを倒そうとしてるのよ!?」

 

ツカサ「何でかと言われても…オレは通りすがりの仮面ライダーだからな」

 

モモ「…はぁ?何よそれ?」

 

ツカサ「別に覚えなくていい…」スタスタ

 

コトリ「あっ…ツカサくん、待ってぇ!」ダダッ

 

キン「ふぁっ…う~ん、よく寝たぁ~!」

 

雪穂「えっ、ずっと今まで寝てたの…?」

 

 

 

ツカサ(オレとコトリはデンライナーから降りた)

 

コトリ「いた…!」

 

ツカサ「アレがさっきの母親と契約したイマジンか…」

 

ツカサ(過去の街は、アリゲーターイマジンが手の先から放つ波動によって滅茶苦茶にされていた)

 

アリゲーターイマジン「今日で完全に世界を消してやろう…フン!」

 

コトリ「もうやめて!」

 

アリゲーターI「…?」

 

ツカサ「派手にやったもんだな」

 

アリゲーターI「お前達…まさか邪魔をしに来たのか?」

 

ツカサ「だったらどうする?」

 

アリゲーターI「…消す」

 

ツカサ「だろうな…準備は良いか、コトリ?」

 

コトリ「うん…行くよ、モモちゃん!」

 

モモ『ええ!』

 

ツカサ(オレとコトリはディケイドライバーとデンオウベルトをそれぞれ装着した)

 

ツカサ「変身!」

 

コトリ「変身…!」

 

ツカサ(オレは一枚のカードをバックルに入れ、コトリは赤いボタンを押してライダーパスをベルトの中央に通した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『ソードフォーム』

 

ツカサ(オレとモモが憑依したコトリは…ディケイドと電王ソードフォームに変身を完了させた)

 

ディケイド「…」

 

電王「私、参上!」

 

 

 

アリゲーターI「電王とディケイドとは厄介だな…出てこい、同胞共!」

 

ディケイド(アリゲーターイマジンは手下のモールイマジンを三体、呼び出した)

 

モールイマジン・アックス「いたよ」

 

モールイマジン・クロー「いるよ」

 

モールイマジン・ドリル「ここにいるよ」

 

アリゲーターI「…やれ」

 

ディケイド(アリゲーターイマジンの一声で、モールイマジン達は一斉にオレ達に襲いかかってきた)

 

電王「ちょっ…どきなさい、アンタ達!」

 

アリゲーターI「…」ダッ

 

ディケイド(オレと電王はそれぞれの武器で応戦している隙に、アリゲーターイマジンは逃走を図る)

 

ディケイド「逃げるつもりか…おい、モモ!」

 

電王「何よ!?」クルッ

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「…」スッ

 

ディケイド(オレは電王の顔面に向けてライドブッカーガンモードを構えていた)

 

電王「にこぉぉぉぉぉ!?」サッ

 

ディケイド「はっ!」ガガッ!

 

ディケイド(オレは電王が伏せた瞬間に…電王の後ろにいたモールイマジン達を攻撃した)

 

モールIアックス「!?」

 

モールIクロー「グッ…!」

 

モールIドリル「おわっ!」

 

電王「あ…アンタねぇ!?危ないじゃないのよ!」

 

ディケイド「悪い悪い…ひとまずこれで許せ」

 

『カメンライド…イリュージョン!』

 

ディケイド(一枚のカードをベルトに入れたオレは四人に分身した)

 

電王「えっ…アンタ、もしかして四人兄弟だったの!?」

 

ディケイド「そんな訳ないだろ…ウラ、キン、リュウ」

 

ウラ『何かしら?』

 

キン『呼んだ呼んだ~?』

 

リュウ『リュウ達に何か用かニャ?』

 

ディケイド「お前達はオレの分身に憑依して、あのモグラ達を倒しておいてくれ」

 

電王「!…アンタ」

 

ディケイド「その間にオレとモモが逃げたイマジンを追う…良いな?」

 

ウラ『へぇ…その船、乗ったわ!』

 

キン『それならお安い御用だよ!』

 

リュウ『リュウ達に任せるニャー!』

 

ディケイド(そう言ってウラ達は三体いるオレの分身に憑依し…ベルトをデンオウベルトに付け替えた)

 

ウラ『変身♡』

 

キン『変身っ!』

 

リュウ『へ~んしん!』

 

『ロッドフォーム』

 

『アックスフォーム』

 

『ガンフォーム』

 

ディケイド(青、黄、紫と違うボタンを押した三人は…それぞれの形態の電王に変身した)

 

電王ロッド「あなた…私に釣られてみる?」

 

モールIアックス「…!」

 

電王アックス「私の強さにあなたが泣いた…涙はこの紙吹雪で拭いちゃえ!」

 

モールIクロー「!」

 

電王ガン「君、倒してもいいかニャ…?答えは聞いてない!」

 

モールIドリル「!?」

 

電王ソード「ふぅん…いいんじゃない?」

 

ディケイド「良いだろ?」

 

電王ソード「ええ…すっごくクライマックスね!」

 

電王ロッド「何だか妙な感じだけど、悪くはないわね…」

 

電王ガン「面白いニャ~!」

 

電王アックス「よーし…行くよっ!」

 

ディケイド「…後は頼んだ」ダッ

 

電王ロッド「ええ!」

 

電王アックス「任せといて!」

 

電王ガン「行っくニャー!」

 

 

 

ディケイド(オレと電王ソードフォームは…アリゲーターイマジンに追いついていた)

 

アリゲーターI「貴様ら…どこまでも邪魔する気か!」

 

電王ソード「はぁ?当たり前じゃない…」

 

アリゲーターI「ならば…フン!」ヒュン!

 

ディケイド(アリゲーターイマジンは波動を連続で繰り出し、オレ達の動きを止める)

 

ディケイド「おわっ…!」

 

電王ソード「危なっ…これじゃ、先に進めないじゃない!」

 

アリゲーターI「フフフ…出てこい、ガオウ!」

 

ディケイド「!…ガオウだと?」

 

ディケイド(その時、突如現れたオーロラから…ワニがモチーフの銅色のライダーが現れた)

 

ガオウ「あーあ、バカの揃い踏みだな…」

 

電王ソード「ちょっと…誰なのよ、あいつ!?」

 

ディケイド「…簡単に言えば、奴もオレ達の敵って事だ」

 

ガオウ「良いぜ…二人共、俺が喰ってやる」スッ

 

『フルチャージ』

 

ディケイド「!?…マズい!」

 

ガオウ「ハッ!」ブンッ

 

ディケイド(ガオウはベルトにマスターパスをタッチさせると…ガオウガッシャーソードモードを思い切り振り回した)

 

電王ソード「きゃあっ!?」ゴロゴロ

 

ディケイド「うぐっ…!」ドサッ

 

ディケイド(ガオウは『タイラントスラッシュ』という技で…オレ達を薙ぎ払った)

 

ガオウ「つまらん…お前達も、時と共に消えてしまえ」

 

ディケイド「っ…おい、まだ立てるか?」

 

電王ソード「当たり前じゃない…ちょっと昼寝してただけよ」

 

ガオウ「お前ら…そういうの往生際が悪いっていうんだが、知ってるか?」

 

電王「ええ…最後までクライマックス、って意味でしょ?」フフッ

 

アリゲーターI「クッ、諦めの悪い奴ら共だ…ん?」

 

ディケイド(アリゲーターイマジンの背後に…蒸気機関車並みに大きな牛型の列車が現れた)

 

アリゲーターI「!?」

 

ディケイド「アレはまさか…『ゼロライナー』?」

 

電王ソード「あの子達…やっと来たわね」

 

ディケイド「何…?」

 

ディケイド(ゼロライナーから降りてきたのは…真姫と希によく似た二人だった)

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(真姫によく似た少女は…エプロンと緑色のキャンディのバッジを着用した希によく似た人物に話しかけた)

 

?「もう…デネヴ、元はと言えばあなたのせいでこんなに時間かかったんだからね?」

 

デネヴ「でも、仕方ないやん?」

 

デネヴ「さっきのお母さんと女の子が助けてくれたお礼にって、しいたけの天ぷらとみかんゼリーのレシピを教えてくれたし…」

 

?「あなた…まさか、作るつもり!?」

 

デネヴ「ユウコちゃん…好き嫌いはダメよ?」

 

ユウコ「あなたねぇ…」ハァ

 

ディケイド「やはり彼女達が、ユウコとデネヴだったか…」

 

アリゲーターI「何だ、貴様ら…ふざけているのか!?」

 

ユウコ「ふざけてなんかいないわよ…デネヴ、カードを」

 

デネヴ「ユウコちゃん…あと二枚しかないのに、大丈夫なん?」

 

ユウコ「いいから」

 

デネヴ「…分かった」

 

ディケイド(デネヴから一枚のカードを受け取ったユウコは自動改札機を象ったゼロノスベルトを装着した)

 

ユウコ「変身!」

 

『アルタイルフォーム』

 

ディケイド(カードをベルトに入れたユウコは…ゼロノスに変身した)

 

ゼロノス「…」

 

アリゲーターI「何ッ…ゼロノスだと!?」

 

ゼロノス「最初に言っておくわ…私はかーなーり、強い!」

 

 

 

雪穂(私達は…デンライナーの車窓から、外の戦いの様子を見ていた)

 

電王ロッド「うふふっ…それっ!」ガッ!

 

雪穂(青い電王は棒のような武器で敵のイマジンを攻撃する)

 

モールIアックス「グワッ…こうなったら!」ダッ

 

電王ロッド「うふふっ…はっ!」ヒュン!

 

モールIアックス「ウッ!?」グイッ

 

雪穂(青い電王は武器を釣竿みたいに扱うと…逃げるイマジンを近くに引き寄せた)

 

電王ロッド「狙った魚は逃がさない主義なの」

 

『フルチャージ』

 

雪穂(青い電王はベルトにパスを通すと…イマジンに武器を投げつけた)

 

電王ロッド「アタリも弱ってきたし、そろそろ釣り上げ時ね…ふっ!」ブンッ

 

モールIアックス「何ッ!?」

 

雪穂(武器がイマジンの動きを止めた後…青い電王は、イマジンに向かってスライディングしながらキックした)

 

電王ロッド「はぁっ!」

 

モールIアックス「グワァァァ!?」

 

亜里沙「あっという間に倒しちゃった…スゴい!」

 

電王ロッド「千の偽り、万の嘘…女の子達ともたくさん知り合えたから今日の釣果は上々ね」フフッ

 

 

 

電王アックス「えいっ!」ズバッ

 

雪穂(金色の電王は斧みたいな武器でイマジンと戦っていた)

 

モールIクロー「ウウッ…このっ!」ガキンッ!

 

雪穂(イマジンは爪で金色の電王を引っ掻いたみたいだけど…金色の電王は平気そうにしていた)

 

電王アックス「ん?…今、何かやった?」

 

モールIクロー「な、何だと!?」

 

電王アックス「私のファイトは…まだまだこれからだよっ!」

 

『フルチャージ』

 

電王アックス「はっ!」ブンッ

 

雪穂(金色の電王はベルトにパスを通すと…武器を空中へ投げた)

 

モールIクロー「!?」

 

電王アックス「ほっ…!」パシッ

 

雪穂(イマジンが気を取られているうちに、金色の電王は跳んで武器をキャッチし…イマジンに向かって振り下ろした)

 

電王アックス「とりゃーっ!」ザシュッ!

 

モールIクロー「グハァァァ!?」

 

電王アックス「…ダイナミックチョップ!」

 

雪穂「えっ…倒してから言うの?」

 

電王ロッド「外さないわねぇ、キン?」

 

電王アックス「えへへ…ふんっ!」ゴキッ

 

 

 

電王ガン「えいっ!」ガガッ!

 

雪穂(紫の電王は踊りながら、銃のような武器でイマジンを攻撃していた)

 

モールIドリル「グッ…!」

 

電王ガン「あははっ…それそれ~!」ガガッ!

 

雪穂(紫の電王は攻撃し続けると…イマジンを吹き飛ばした)

 

モールIドリル「グハァッ!?」

 

電王ガン「ははっ…それじゃ、行っくニャー!」

 

『フルチャージ』

 

雪穂(紫の電王はベルトにパスを通して…武器と両肩の玉のようなものからエネルギーを溜めていた)

 

モールIドリル「…!」

 

電王ガン「はっ!」バシュッ!

 

雪穂(紫の電王は…イマジンに向かって大きな弾を放った)

 

モールIドリル「ガハァァァ!?」

 

パナ「やったね、リュウちゃん!」

 

電王ガン「えへへ…パナち~ん!」ブンブン

 

 

 

電王ソード「ちょっと!遅いじゃないのよ!?」

 

ゼロノス「…それ、こっちの台詞なんだけど」

 

電王ソード「はぁ…?どういう意味よ?」

 

ゼロノス「イマジン一体もちゃんと倒せないようじゃ…この先が思いやられるわ」ハァ

 

電王ソード「アンタ、言わせておけば…」プルプル

 

ゼロノス「何も出来ないようなら、私が行くわ…はっ!」ガガッ!

 

ディケイド(ゼロノスはスピードを活かしながら、ゼロガッシャーボウガンモードで敵を翻弄していた)

 

アリゲーターI「グッ!」

 

ゼロノス「行くわよ!」

 

『フルチャージ』

 

ディケイド(ゼロノスはベルトからカードを取り出し、ゼロガッシャーに差し込むと…)

 

ゼロノス「はぁっ!」バシュッ!

 

アリゲーターI「グワァァァッ!!」

 

ディケイド(ゼロガッシャーから矢を放ち…命中したアリゲーターイマジンは緑色の『A』という文字を浮かべなから爆発した)

 

ゼロノス「…ふぅ」

 

デネヴ「ユウコちゃん、後ろ!」

 

ゼロノス「え?」クルッ

 

ガオウ「フンッ!」ザシュッ!

 

ディケイド(ガオウはいつの間にかゼロノスの背後に回り込み…ガオウガッシャーで斬りつけていた)

 

ゼロノス「きゃっ…!」ゴロゴロ

 

ガオウ「そんなんじゃ、喰い足りないな…もっと楽しませられないのか?」

 

デネヴ「ユウコちゃん!」ダッ

 

ディケイド「おい、大丈夫か!?」ダッ

 

ゼロノス「ええ…って、ディケイド!?」

 

ディケイド(…どうやらゼロノスは、今までオレがいた事に気付いていなかったようだった)

 

ディケイド「何だ…オレの事を知っているのか?」

 

ゼロノス「別に知ってるって訳じゃないけど、ある人があなたに会ったら渡してほしい物があるって…デネヴ!」

 

デネヴ「オッケー、分かった…はいっ!」スッ

 

ディケイド(デネヴは一枚のカードをオレに渡してきた)

 

ディケイド(カードには電王の力が宿っていた)

 

ディケイド「これはファイナルフォームライドのカード…?」

 

ディケイド「…このカード、誰がお前達に?」

 

ゼロノス「そうね…確か、ツバサと言っていたわ」

 

ディケイド「!…ツバサが?」

 

ゼロノス「ええ…すぐに別の世界に行かないといけないって言ってたから、それ以上は話せなかったけど」

 

ディケイド(それがもし本当なら…ツバサは今、別の世界にいるという事か)

 

ディケイド「そうか…それなら、早速使ってみるか!」

 

『ファイナルフォームライド…デ・デ・デ・デンオウ!』

 

ディケイド(カードをベルトに入れたオレは電王の後ろに回り込んだ)

 

ディケイド「おい…ちょっとくすぐったいぞ」

 

電王ソード「な、何よ?アンタ何をするつも…りっ!?」

 

ディケイド(オレが電王の背中を押すと…電王は赤鬼のイマジン『モモタロス』の姿になった)

 

電王ソード「えっ、ちょっと…何よこれ!?」

 

ディケイド「いや、まあ…不思議な事が起こったとしか」

 

電王ソード「これじゃ私の可愛い顔が台無しじゃない…さっさと戻しなさいよ!」

 

ディケイド「まあ、そう怒るな…それはそれでなかなか似合ってるぞ?」

 

電王ソード「アンタねぇ…!」

 

ガオウ「うんざりなんだよ、お前らもこんな時間も全部…」スタスタ

 

ディケイド「…!」

 

ガオウ「これでホントに、最後の最後だ…ハッ!」ダッ

 

ディケイド(痺れを切らしたガオウは…オレ達を攻撃しようと走り出してきた)

 

電王ソード「こ、こっちに来るわよ!どうするつもり!?」

 

ディケイド「そうだな…こうなったら、オレも鬼になるしかないな」スッ

 

ディケイド(オレは一気に六枚のカードを取り出した)

 

電王ソード「はぁ?…何よそれ?」

 

ディケイド「ノゾミ…借りるぞ」

 

デネヴ「?」

 

ゼロノス「一体、何をするつもりなの…?」

 

『カメンライド…ヒビキ!』

 

ディケイド(まず一枚目のカードを入れたオレは…身体に纏った紫色の炎を振り払い、響鬼にカメンライドした)

 

DCD響鬼「はぁっ!」

 

電王ソード「えっ、それってもしかして…鬼!?」

 

DCD響鬼「いや、アンタも鬼だろ…行くぞ!」ダッ

 

『アタックライド…オニビ!』

 

『アタックライド…オニヅメ!』

 

DCD響鬼(オレはガオウに接近しながら、一枚ずつカードをベルトに入れていく)

 

DCD響鬼「はっ!」ボォッ!

 

ガオウ「ッ!?」

 

デネヴ「あれって…火?」

 

電王ソード「いや、何で鬼が火を吹いてんのよ!?」

 

DCD響鬼「まだだ!」ザシュッ!

 

DCD響鬼(オレは自分が吹いた火の中を潜り抜け、ガオウを引っ掻いた)

 

ガオウ「グウッ!」

 

DCD響鬼「ここからは…もっと熱いぞ?」

 

『フォームライド…ヒビキ!クレナイ!』

 

『アタックライド…オンゲキボウ・レッカ!』

 

DCD響鬼「やぁっ!!」

 

DCD響鬼(先程より激しく燃え上がる炎を振り払って…オレは響鬼紅へと変わり、二本の音撃棒『烈火』を持って構える)

 

ガオウ「クソッ…消えろ!」

 

DCD響鬼「今だ、モモ!」

 

ガオウ「!?」クルッ

 

電王ソード「私の必殺技…!」ダッ

 

DCD響鬼(モモタロスになった電王は…ガオウの後ろでモモタロスォードという赤い剣を持って構えていた)

 

電王ソード「スペシャルバージョン!」ズバッ

 

ガオウ「ガハッ…!」フラッ

 

DCD響鬼「トドメだ!」

 

『ファイナルアタックライド…ヒ・ヒ・ヒ・ヒビキ!』

 

DCD響鬼(最後のカードをベルトに入れたオレは…音撃棒で強烈な一撃を敵の身体に叩き込んだ)

 

DCD響鬼「音撃打…灼熱真紅の型!!」ドドンッ!

 

ガオウ「ッ!!…時間に喰われるのは、俺の方か」

 

DCD響鬼(二体の赤い鬼の連続攻撃に耐えきれなかったガオウが消滅すると…モモタロスだった電王は元の姿に戻った)

 

電王ソード「ふっ…やったわね!」

 

DCD響鬼「…お疲れさん」

 

DCD響鬼(カメンライドの効果が切れたオレも…ディケイドの姿に戻った)

 

電王ソード「それにしてもアンタ…本当に色々なことが出来るのね?」

 

ディケイド「まあな…このくらい、簡単な事だ」フフン

 

ゼロノス「…終わったみたいね」

 

デネヴ「う~ん…?」

 

ゼロノス「?…何よ、そんなに難しい顔して」

 

デネヴ「いや、何となくやけど…まだ終わってない気がするんよ」

 

ゼロノス「どういう事?…話が全く見えないんだけど」

 

デネヴ「それが…ウチにもよく分からなくて」

 

ゼロノス「…イミわかんない」ハァ

 

デネヴ「気のせいだと良いんやけど…」

 

 

 

ツカサ(オレ達はデンライナーに戻り…元の時間に帰っていた)

 

ツカサ「準備は良いか…?」

 

ツカサ(オレはいつものカメラでコトリ達の写真を撮ろうとしていた)

 

パナ「く、苦しいよぉ…」ギュウ

 

リュウ「ちょっと狭くないかニャー?」ギュウ

 

モモ「っていうか…何でアンタがセンターにいるのよ!?」

 

ズィーク「教養の差です」

 

モモ「…どういう意味よ?」

 

ウラ「頭が良いからセンターにいて当然って事よ」

 

モモ「何ですってぇ!?」

 

リュウ「それじゃまるでリュウ達がバカみたいじゃん!」

 

ズィーク「馬鹿なんです」

 

ユウコ「ちょっと…うるさいわよ、あなた達!」

 

キン「ぐぅ…」Zzz…

 

デネヴ「ほら、キンちゃん…ウチの特製デネヴキャンディーあげるから起きて?」ユサユサ

 

キン「えっ…ホント!?」ガバッ

 

ツカサ「全く…いつもこんな感じなのか、コトリ?」ハァ

 

コトリ「あ、あはは…」

 

ツカサ「そういえば…お前達は入らなくて良いのか?」クルッ

 

雪穂「いや、私達は…ねぇ?」

 

亜里沙「うん…大丈夫!」

 

ツカサ「そうか…よし、撮るぞー!」

 

コトリ「…」

 

カシャッ

 

 

 

ツカサ(オレと雪穂と亜里沙は写真館に戻り…夕食を雪穂達に食べさせていた)

 

雪穂「…ねぇ、ツカサ」

 

ツカサ「何だ?」

 

雪穂「どうしてチャーハンに小さい旗を立てたの…?」

 

ツカサ「それは…オレの気分だ」

 

雪穂「…まあ、別にいいけど」モグモグ

 

亜里沙「あともうちょっと…あっ!」パタッ

 

ツカサ(亜里沙は半分残った所で旗を倒してしまった)

 

ツカサ「亜里沙…旗が倒れても、ちゃんと残さず食べるんだぞ?」

 

亜里沙「うん…」モグモグ

 

ツカサ「…そういえば、写真の現像が終わったぞ」ピラッ

 

亜里沙「ホント!?」

 

ツカサ「ああ」

 

亜里沙「見せて見せて!」

 

ツカサ(オレは亜里沙達に一枚の写真を見せた)

 

ツカサ(写真には…あの時、デンライナーの車内で撮ったコトリ達がそのまま写っていた)

 

亜里沙「…」

 

雪穂「へぇ…今回はいつもと違って、普通に撮れてるね?」

 

ツカサ「普通には余計だろ…まあ、これで後は『μ'sの世界』に帰るだけだな」

 

亜里沙「…違う」ボソッ

 

ツカサ「!」

 

雪穂「どうしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「この写真、何だかツカサらしくない…」

 

ツカサ「…オレらしくない?」

 

亜里沙「うん…だって、写真のコトリさんが笑ってない」

 

雪穂「…言われてみれば、確かに笑っていないような気がするね」

 

亜里沙「私、なんとなくだけど…まだこの世界でやらないといけないことがあるような気がする」

 

ツカサ「…やらないといけない事?」

 

亜里沙「うん…」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(そう言われてみると、確かに…亜里沙の言う通りだ)

 

ツカサ(オレがこれまでの世界で撮影した写真に写っていたメンバーは…皆、笑顔だった)

 

ツカサ(だが、このコトリは…何か考え込んでいるような表情をしている)

 

ツカサ(だとしたら、オレがこの世界で他にやるべき事は…?)

 

 

 

コトリ(お家に帰った私は…一通の手紙を読んでいた)

 

コトリ「…」

 

?「…どうするの?」

 

コトリ(悩んでいた私に…お母さんが声をかけてきた)

 

コトリの母「こんなチャンス、滅多に無いわよ?」

 

コトリ「うん…お母さん!」

 

コトリの母「ん?」

 

コトリ「お母さんは、行った方が良いと思う…?」

 

コトリの母「…それは自分で決める事よ」

 

コトリ「…」

 

コトリの母「お友達には相談したの?」

 

コトリ「…明日、話してみる」

 

コトリの母「ちゃんと話しなさいよ…大切な友達でしょう?」

 

コトリ「…うん」

 

コトリ(私、分からないよ…)

 

コトリ(電王と留学、どっちかを選ばないといけないなんて…!)

 

コトリ「どうしよう、みんな…」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「あれはね…スクールアイドルをやっていた時の写真なの」

「カードはお守りじゃないでしょ!?」

「ウチの胸の大きさは…飾りやないよ!」

「例え弱くたって…何もしない言い訳にはならないから」

「お前らなんて一捻りだもんね!」

「コトリは…誰よりも頑固だ」

「最後まで…私と一緒に、戦ってくれる?」

「私達はこれからもずーっと、クライマックスよ!!」

第19話『小鳥が旅立つ時』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話『小鳥が旅立つ時』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…電王の世界だ」

電王「私、参上!」

コトリ「勝手に他の人の身体に憑いてはいけません!」

雪穂「何で他の世界と違って、私達のお姉ちゃん達もいるの?」

ツカサ「おそらくこの世界は…他の世界よりも『μ'sの世界』との融合が進んでいるんだ」

アリゲーターイマジン「今日で完全に世界を消してやろう…」

ゼロノス「最初に言っておくわ…私はかーなーり、強い!」

電王「私の必殺技…スペシャルバージョン!」

亜里沙「なんとなくだけど…まだこの世界でやらないといけないことがあるような気がする」

コトリ「どうしよう、みんな…」


(ある日…私は学校の教室で大きな溜め息をついていた)

 

?「はぁ…」

 

(そんな私を心配して、同じ学校の生徒のサクライさんが声を掛けてきた)

 

サクライ「どうしたのよ南さん、そんなに浮かない顔して…」

 

?「あっ、サクライさん…」

 

サクライ「寝不足?」

 

?「ううん、実は昨日ね…」

 

(私はサクライさんに昔から学校の近くにある喫茶店が今年いっぱいで閉店する事を話した)

 

サクライ「あのお店が…!?」

 

?「うん…お店のおじいさんとおばあさんから話を聞いたんだけど、ずいぶん前から考えてたみたい」

 

サクライ「そんな…」

 

?「私達の学校、生徒数減ってきてるでしょ?」

 

?「それに合わせてお店に来るお客さんも段々と少なくなってるみたいで…」

 

?「駅の近くに大きなチェーン店もできちゃったし…おじいさんもおばあさんもこれ以上、お店を続けるのは大変だからって」

 

サクライ「…」

 

?「お店をやめたらこの街に住む理由もなくなるから、土地は売って…どこかのんびりした所に移ろうかとも思ってるみたいで」

 

サクライ「…」

 

?「あのお店のコーヒー、すっごく美味しいのにな…こんな風に、他のお店もどんどん廃れていっちゃうのかな」ハァ

 

サクライ「…それで、諦めるの?」

 

?「えっ?」

 

サクライ「私はあのお店のおかげで…コーヒーが飲めるようになったの」

 

サクライ「私は…あのお店に恩返しがしたい」

 

サクライ「あなたにとっても…あのお店は大切な場所なんでしょう?」

 

?「それは、そうだけど…」

 

サクライ「要はお店に来るお客さんを増やせばいい話でしょ?」

 

サクライ「簡単な事よ」

 

?「でも、どうやって…?」

 

サクライ「…このチラシを見て」ピラッ

 

?「『スクールアイドル全国大会、いよいよ開催』…?」

 

サクライ「そう、スクールアイドル」

 

?「!…もしかして?」

 

サクライ「そう、私とあなたがスクールアイドルになって…この学校とあのお店の宣伝をするの」

 

?「えぇっ!?」

 

サクライ「そうね…作曲と振付は私がやるから、南さんは作詞と衣装をお願いできるかしら?」

 

?「ま…待ってよ、サクライさん!」

 

サクライ「何?」

 

?「スクールアイドルなんて…私には無理だよ」

 

サクライ「…!」

 

?「だって、私には何もないから…」

 

サクライ「…そうやって、やる前から諦めるの?」

 

?「えっ…?」

 

サクライ「それは…何もしない事の言い訳にはならないわ」

 

?「…サクライさん」

 

サクライ「少なくともあなたは私が知っている二年生の中では一番まともだし…間違いなく可愛いわ」

 

?「…!」

 

サクライ「…はっ!ちょっと待って!?」

 

サクライ「別にそういう意味で言ってる訳じゃなくて、何て言うかその…///」アセアセ

 

?「…ふふっ」

 

サクライ「!」

 

?「大丈夫だよ…ちゃんと分かってるから」ニコッ

 

サクライ「…も、もう!恥ずかしいじゃない!?」

 

?「えへへ…」

 

サクライ「…それなら、今すぐ返事を聞かせてもらうわ」

 

サクライ「南さん、私と一緒にスクールアイドル…やってみない?」

 

?「…うん!」

 

サクライ「…決まりね」ホッ

 

サクライ「じゃあ、まずは私達のユニット名から決めましょう?」

 

?「そうだね…あっ、あのお店と同じ名前が良いんじゃない?」

 

サクライ「なるほど…確かにお店の宣伝になるし、その方が良いかもしれないわね」

 

?「うん!」

 

サクライ「私達のユニット名は…!」

 

 

 

ヴーヴー…

 

コトリ「…!」ハッ

 

コトリ(自分の部屋で荷造りをしていた途中でボーッとしていた私は…携帯電話のバイブの音で気がついた)

 

コトリ「オーナーさんから…電話?」ピッ

 

コトリ(私はデンライナーのオーナーさんからの電話に出た)

 

コトリ「はい…」

 

ズィーク『ごきげんよう』

 

コトリ「…こんばんは」

 

ズィーク『先日、私だけにお話した件なのですが…本当に皆さんに相談しなくて良いんですか?』

 

コトリ「…はい」

 

コトリ「そんな話したら、みんなに迷惑かけちゃうだろうから…」

 

ズィーク『…』

 

コトリ「それに…」

 

ズィーク『?』

 

コトリ「モモちゃん達に相談したら、何て言われちゃうのかなって…」

 

コトリ「それを思うと…上手く言えなくて」

 

ズィーク『…もうすぐ、どちらにするか決めなければならないのですよね?』

 

コトリ「…はい」

 

ズィーク『私は…』

 

コトリ「えっ?」

 

ズィーク『…いえ、何でもありません』

 

コトリ「…」

 

コンコン

 

コトリー?

 

コトリ(お母さんが私の部屋のドアをノックしながら声をかけてきた)

 

コトリ「あっ、ごめんなさい…お母さんが来たのでもう切ります」

 

ズィーク『…分かりました』

 

コトリ「それじゃ…」ピッ

 

コトリ「はい!」

 

ガチャ

 

コトリの母「あら、お友達と電話してたの?」

 

コトリ「うん…でも、もう大丈夫だから」

 

コトリの母「そう…話したのね?」

 

コトリ「…うん」

 

コトリの母「どうするか決まったの?」

 

コトリ「…」

 

コトリの母「…今日はもう遅いから寝なさい」

 

コトリ「うん…」

 

コトリの母「それじゃ…おやすみ」

 

コトリ「おやすみなさい…」

 

バタン

 

コトリ「私、どうしたら…」

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(前回の戦いから数日…オレは写真館で亜里沙達にプリンを作っていた)

 

ツカサ「出来たぞ」コトッ

 

亜里沙「うわぁ~…美味しそう!」

 

ツカサ「見た目から拘ったからな…もちろん味もちゃんと拘ってるぞ?」

 

亜里沙「それじゃ…いただきます!」パクッ

 

雪穂「…いただきます」パクッ

 

亜里沙「う~ん…美味しい!」

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(オレはスタジオの背景をジッと見つめていた)

 

雪穂「…やっぱり、変わらないままだね」

 

ツカサ「ああ…だが、あれから世界に異変が起きてる訳でもなければイマジンが現れた様子もないからな」

 

ツカサ「今のオレに出来る事は…何も無い」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…もしかして、焦ってるの?」

 

ツカサ「焦ってる…オレがか?」

 

亜里沙「うん…」

 

ツカサ「…確かに、そうかもしれないな」

 

ツカサ「ユウコから聞いた話ではツバサは『次の世界に行く』と言っていたしな…」

 

亜里沙「じゃあツバサさんは…私たちの世界に戻ったのかな?」

 

ツカサ「おそらくな…だからこそ、オレ達も早く後を追わないといけないんだが」ハァ

 

雪穂「…でも、このまま通り過ぎる訳にもいかない」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「だって、そうでしょ?」

 

雪穂「九つの世界をちゃんと救わないと…私達の世界は元に戻らないんだし」

 

雪穂「だから…待つしかないよ、今は」

 

亜里沙「雪穂…うん、そうだね!」

 

ツカサ「…お前達」

 

雪穂「プリン、ごちそうさま」

 

亜里沙「ごちそうさま!」

 

ツカサ「…ああ」フフッ

 

 

 

ツカサ(それから数時間が経った後…誰かが部屋の扉をノックする音が聞こえてきた)

 

コンコン

 

亜里沙「誰だろう…はーい!」

 

ガチャ

 

ユウコ「…」

 

亜里沙「真姫さ…じゃなかった、ユウコさん!」

 

ユウコ「…コトリ、ここに来なかった?」

 

亜里沙「えっ…コトリさん?」

 

ユウコ「ええ」

 

雪穂「ここには来てないですけど…」

 

ユウコ「そう…分かったわ」スタスタ

 

ツカサ(ユウコはそう言って写真館を後にした)

 

雪穂「あっ…ちょっと、ユウコさん!?」

 

ツカサ「…オレ達も行くぞ」ダッ

 

雪穂「えっ、今から!?」

 

亜里沙「そう来なくっちゃ!」ダッ

 

雪穂「亜里沙まで!?」

 

雪穂「もう…待ってよ、みんな!」ダッ

 

 

 

ツカサ(外へ出てから少しして…オレ達はユウコを見失ってしまっていた)

 

亜里沙「あれ…いない?」

 

雪穂「本当だ、どこに行っちゃったんだろう…?」

 

ツカサ「…!」スタスタ

 

雪穂「えっ…ツカサ?」

 

ツカサ(オレはとある喫茶店の前で立ち止まった)

 

ツカサ「『ミルクディッパー』…か」

 

亜里沙「どうかしたの?」

 

ツカサ「おそらく…ユウコはここにいる」

 

雪穂「何で分かるの?」

 

ツカサ「…何となくだ」

 

雪穂「やっぱり…」

 

亜里沙「とりあえず…入ってみようか?」

 

ツカサ「ああ、そうだな…」ガチャ

 

ツカサ(オレ達はお店の中に入った…そこにはコトリによく似た女性とテーブル席に座っているユウコがいた)

 

ユウコ「あなた達…!」

 

?「あら、いらっしゃい」

 

亜里沙「あれ…コトリさん?」

 

雪穂「いや、確かに似てるけど…コトリさんのお母さんだよ」

 

亜里沙「そっか…こっちの世界はオトノキの理事長さんじゃないんだね?」

 

雪穂「みたいだね…」

 

コトリの母「あなた達…もしかしてコトリとユウコちゃんのお友達?」

 

亜里沙「はい!」

 

コトリの母「そう…コトリなら今、買い出しに行ってもらってるの」

 

コトリの母「もうすぐ帰ってくると思うんだけど…そうだ、もし良かったらその間にユウコちゃんと一緒にコーヒーでもどう?」

 

雪穂「あっ…じゃあ、いただきます」

 

ツカサ(オレ達はユウコと同じテーブル席に座った)

 

ユウコ「あなた達…どうしてついてきたのよ?」

 

ツカサ「オレ達が質問する前にアンタが写真館を出ていくからだろ?」

 

ユウコ「…」ハァ

 

亜里沙「…あれ?」

 

雪穂「どうしたの亜里沙?」

 

亜里沙「あそこに飾ってある写真…」

 

ツカサ「?」

 

ツカサ(オレ達は壁に掛けられていた写真を見た)

 

ツカサ(写真にはアイドルの衣装を着た二人の女性がいた)

 

ツカサ(一人は逆光で顔がよく分からなかったが…もう一人の顔はコトリによく似ていた)

 

雪穂「あれって…?」

 

ツカサ(オレ達が写真を見つめていると、コトリの母がコーヒーを持ってオレ達が座るテーブル席にやって来た)

 

コトリの母「はい、どうぞ」コトッ

 

雪穂「あっ…ありがとうございます!」

 

亜里沙「いただきます!」

 

ツカサ(オレ達がコーヒーを飲み始めると…コトリの母が写真の事について話し始めた)

 

コトリの母「あれはね…私が学生時代、スクールアイドルをやっていた時の写真なの」

 

雪穂「えっ…?」

 

亜里沙「スクールアイドル?」

 

コトリの母「そう…スクールアイドル」フフッ

 

ツカサ「…どうしてスクールアイドルをやっていたんだ?」

 

コトリの母「実はこのお店ね…私が学生時代の頃、なくなりそうになってたの」

 

亜里沙「お店が?」

 

コトリの母「ええ…学校の近くだったからよく通っていたんだけど、なくなるってお店の人から聞いた時はすごく寂しくて」

 

コトリの母「こんな風に周りのお店もどんどんなくなっていくのかなぁ…なんて思ってた時に、私の友達から誘われたの」

 

コトリの母「スクールアイドルになって、このお店と学校の宣伝をする為に大会に出ましょうって…」

 

ユウコ「…」

 

コトリの母「最初は歌詞を書く事すらもすごく大変だったんだけどね…」

 

コトリの母「『ハチワレの猫、可愛い』とか『五本指ソックス、気持ち良い』とか…変なのしか思いつかなくて」

 

ツカサ「それは、ヒドいセンスだな…」

 

雪穂「ちょっとツカサ…!」

 

コトリの母「ふふっ…でしょう?もちろん友達にもダメって言われたわ」

 

コトリの母「その時、友達からある事を言われたの」

 

コトリの母「『あなたがお店や学校、色んなものを見て…感じた事や思った事をそのまま歌に乗せればいい』って」

 

ユウコ「…」

 

コトリの母「それからは…良い歌詞が書けるようになったわ」フフッ

 

コトリの母「そのおかげで、学校の生徒数もお店のお客さんも増えて…このお店は続く事になったの」

 

コトリの母「それから高校を卒業した後は私がお手伝いを始めて…今はこのお店を継いで、何とか切り盛りしてるんだけどね」

 

雪穂「そうだったんですね…」

 

亜里沙「…それで、そのお友達は今はどこに?」

 

コトリの母「それが…突然、いなくなっちゃったの」

 

ツカサ「いなくなった…?」

 

コトリの母「ええ、何も言わずに…ね」

 

ツカサ「…」チラッ

 

ツカサ(オレが隣をふと見ると…ユウコはコーヒーに角砂糖を何個も入れようとしていた)

 

ツカサ「!?」

 

コトリの母「ユウコちゃん?」

 

ユウコ「!」ハッ

 

コトリの母「もう…そんなに角砂糖入れちゃダメって言ったでしょう?」

 

ユウコ「だって…あなたが淹れるコーヒー、苦いんだもの」

 

ユウコ「おじいさんやおばあさんのと比べて、全然…」ボソッ

 

ツカサ「…?」

 

コトリの母「…確かに、あなたが昔に飲んだおじいさん達のコーヒーに比べたら私はまだまだかもしれないわ」

 

コトリの母「でも…そんなに入れちゃったら、身体に良くないでしょ?」

 

コトリの母「そんなに苦いなら、無理して飲まなくても大丈夫だから…ね?」

 

ユウコ「…分かったわよ、でもちゃんと飲むから」ムスッ

 

コトリの母「…それにしてもユウコちゃんって、本当に私の友達に似てるわね」

 

ツカサ「似てる?」

 

コトリの母「ええ、私の友達の名字は『サクライ』だって事は覚えているんだけど…名前がなぜか思い出せなくって」

 

ツカサ「名前が…思い出せない?」

 

コトリの母「そうなのよ…どうしてかしらね?」

 

ユウコ「…」

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」ボソッ

 

亜里沙「どうしたの、ツカサ?」

 

ツカサ「いや…何でもない」

 

亜里沙「…?」

 

雪穂「あの、ユウコさん…」

 

ユウコ「何?」

 

雪穂「コトリさんを探してたみたいですけど…何かあったんですか?」

 

ユウコ「…別に、最近ちょっと様子がおかしかったから気になってただけよ」

 

亜里沙「様子が…おかしい?」

 

ユウコ「ええ、何となく元気がないというか…」

 

ツカサ「元気がない…どういう事だ?」

 

ユウコ「そんなの私が知りたいわよ…」ハァ

 

コトリの母「えっ?あなた達…もしかして、コトリから何も聞いてないの?」

 

雪穂「…えっ?」

 

亜里沙「聞いてないって…?」

 

コトリの母「そう、やっぱり…実はあの子ね?」

 

ガチャ

 

ツカサ(コトリの母が話そうとしたその時…誰かがお店の扉を開けて入ってきた)

 

?「ユウコちゃん!」

 

ユウコ「なっ…デネヴ!?」

 

コトリの母「あら、いらっしゃい…あの子もユウコちゃんのお友達?」

 

ユウコ「ま、まあ…」

 

ユウコ「ちょっとデネヴ…お店には入ってこないでって言ったでしょ?」ボソッ

 

デネヴ「ご、ごめんごめん…」ボソッ

 

ツカサ「どうしたんだ?そんなに慌てて…」

 

デネヴ「あっ、実は…イマジンがこの近くで暴れてるみたいで」ボソッ

 

亜里沙「えっ…イマジンが!?」

 

コトリの母「イマジン…?」

 

雪穂「あっ…何でもないです、何でも!」アセアセ

 

コトリの母「でも…」

 

雪穂「ヒマジン…そう、暇人です!」

 

コトリの母「暇人?」

 

雪穂「私達、暇そうな人を見つけては人間観察してるんですよ」

 

コトリの母「へ、へぇ…変わった趣味を持っているのね?」

 

雪穂「そうなんですよ~…」アハハ

 

雪穂「…ちょっと亜里沙、声が大きいよ?」

 

雪穂「前にデンライナーでコトリさんに…」

 

コトリ『もし私のお母さんに会っても…電王のことは秘密にしてね?』

 

雪穂「って、言われてたでしょ?」

 

亜里沙「あっ、そうだった…ごめん」

 

ツカサ「とりあえず…行ってみるか」

 

ユウコ「そうね、急ぎましょう」

 

亜里沙「私たちも行こう!」

 

雪穂「うん…コーヒー、ごちそうさまでした!」

 

ツカサ(オレ達はイマジンが暴れている現場に急いで向かう為に…店を後にした)

 

ガチャ…バタン

 

コトリの母「…」

 

 

 

ウラ「ちょっとセンパイ…どうしてイマジンのニオイが分からなかったの?」

 

モモ「私だって知らないわよ…」

 

キン「分かった!もしかして風邪ひいちゃったとか?」

 

モモ「違うわよ!こないだ雨の中走りに行ったアンタじゃあるまいし!」

 

キン「えぇ~!?ヒドいよモモちゃん!」

 

ウラ「ほら、よしよし…」ナデナデ

 

キン「えへへ…♪」

 

モモ「私の鼻が利かないなんて…こんなの今までで初めてだわ」ハァ

 

ズィーク「それだけで済めば良いのですがね…」

 

モモ「はぁ?…どういうことよ?」

 

ズィーク「…」

 

モモ「答えなさいよ!?」

 

リュウ「う~ん…」

 

パナ「リュウちゃん、どうかした?」

 

リュウ「何か沈んじゃってる気がするニャ~…」ピコッ

 

パナ「沈んでる…?」

 

リュウ「うん…」ピコッ

 

モモ「というかアンタ…さっきからそのピコピコハンマーで私を叩くのやめなさいよ!?」

 

コトリ『みんな!』

 

キン「あっ、コトリちゃんだ!」

 

 

 

コトリ「イマジンさんは…あっ、いた!」

 

コトリ(七面鳥のような姿をしたイマジンさんは近くで気を失って倒れていた女の子達の顔を見つめていた)

 

ターキーイマジン「やっぱりコイツらでもない…ええい、早く見つけてやるもんね!」

 

コトリ「待って!」

 

ターキーI「ん?何だお前…相手をしてる暇はないもんね!」

 

コトリ(私は…デンオウベルトを巻いて、黄色のボタンを押した)

 

コトリ「キンちゃん…行くよ!」

 

キン『うん!』

 

『アックスフォーム』

 

コトリ(ベルトにパスを通して、プラットフォームの電王に姿を変えた私はアックスフォームに変身するはずだったんだけど…)

 

電王「私の強さにあなたが泣い…っ!?」

 

ターキーI「…何だ?」

 

電王(私の姿は…プラットフォームのまま、変わらなかった)

 

電王「へっ…?」

 

 

 

キン「うわぁ~!?」ドサッ

 

モモ「なっ…ちょっと何やってんのよアンタ!?」

 

キン「いや、それがコトリちゃんの中に入ろうとしたら追い出されちゃって…」

 

ウラ「ちょっと…コトリ一人にしたら危ないでしょ!?」

 

 

 

ウラ『コトリ、私が行くわ!』

 

電王「ウラちゃん…うん!」

 

電王(私はベルトの青いボタンを押して、ロッドフォームに変身しようとしたけど…)

 

『ロッドフォーム』

 

電王「あなた、私に釣られてみ…っ!?」

 

電王(私の身体から突然、ウラちゃんは出て行っちゃって…)

 

電王「ウソ…何で?」

 

 

 

ウラ「きゃっ!?」ドサッ

 

モモ「アンタまで何やってんのよ!?…全く、しょーがないわねー!」

 

キン「う~ん…コトリちゃんは嫌がってないのに何で追い出されちゃうんだろう?」

 

パナ「リュウちゃん!大丈夫!?」

 

キン「?」クルッ

 

ウラ「一体どうしたの?…!?」

 

リュウ「だから…沈んでるんだよ~」サァァ…

 

キン「えっ、リュウちゃんが…消えかけてる?」

 

ウラ「…どうやら、リュウだけじゃないみたいよ」

 

キン「えっ?…!」サァァ…

 

ウラ「…」サァァ…

 

パナ「そんな、ウラちゃんとキンちゃんまで…?」

 

 

 

モモ『私に任せなさい、コトリ!』

 

電王「…うん!」

 

ターキーI「何だか知らないけど…やっつけちゃうもんね!」ダッ

 

電王(私はベルトの赤いボタンを押して、パスを通した)

 

『ソードフォーム』

 

電王(私はソードフォームに姿を変えて…デンガッシャーソードモードでイマジンを攻撃した)

 

電王「はぁっ!」ザシュッ

 

ターキーI「ウッ!?」

 

電王「何よ、普通に動けるじゃない…」

 

ターキーI「ビックリした…お前、電王か」

 

電王「私、参じょ…うっ!?」

 

電王(すぐにモモちゃんが私の身体から出て行って…私はプラットフォームに戻ってしまった)

 

電王「ええっ…どうして!?」

 

ターキーI「電王…何だか様子がおかしいみたいだけど、お前の相手をしてる暇はないもんね!」ガッ!

 

電王「きゃあっ!?」

 

電王(七面鳥のイマジンさんに攻撃されて吹き飛ばされちゃった私は…変身が解けてしまった)

 

コトリ「うっ…」ゴロゴロ

 

ターキーI「早く逃げちゃうもんね!」ダダッ

 

コトリ「待っ…て…」

 

コトリ(私は…そのまま意識を失ってしまった)

 

ツカサ「まさかあれは…!」

 

ユウコ「コトリ!?」

 

雪穂「大丈夫ですか、コトリさん!」

 

亜里沙「しっかりして…コトリさん!」ユサユサ

 

コトリ「…」

 

 

 

?「リ…コトリちゃん!」

 

コトリ「ん…」パチリ

 

キン「あっ、起きた!」

 

リュウ「良かったニャ~!」

 

ウラ「ふふっ…」

 

モモ「…起きたわね、コトリ」

 

コトリ「みんな…」

 

モモ「…突然だけど、アンタとはお別れよ」

 

コトリ「へっ…?」

 

ウラ「特異点のコトリと一緒にいれば消えないかと思ったけど…仕方ないわね」

 

キン「そうだね…じたばたしてもしょうがないもんね!」

 

コトリ「それ、どういうこと…?」

 

モモ「コトリ…私達がいなくなっても、元気でやんなさいよ?」

 

コトリ「待って!みんながいなくなったら、私…」

 

リュウ「何で?」

 

コトリ「何でって…」

 

リュウ「コトリちゃんはスッゴく楽になるんだよ?それなのに…」

 

コトリ「だって、急にそんなこと言われても…」

 

ウラ「ちゃんとした嘘のつき方を教えてあげられなくて…ごめんなさいね、コトリ」

 

コトリ「えっ…ウラちゃん?」

 

キン「本当だったらもっと前に消えてたはずだもんね…コトリちゃん、一緒にいられて楽しかったよ!」

 

コトリ「キンちゃん…!?」

 

リュウ「コトリちゃん、リュウね…」

 

コトリ「ダメ、みんなが消えちゃったら…!」

 

モモ「…じゃあね、コトリ」

 

コトリ「そんな…ダメ!」

 

 

 

コトリ「待って!!」ガバッ

 

パナ「ピャアッ!?」ビクッ

 

コトリ「…あれ、パナちゃん?」

 

亜里沙「あっ、コトリさん!」

 

雪穂「良かった、目が覚めたんですね…」

 

コトリ「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「ツカサくん…私、いつの間にデンライナーに?」

 

パナ「倒れていたコトリちゃんをツカサくん達がユウコちゃんと一緒に連れてきてくれたんです」

 

コトリ「そうだったんだ…みんな、ありがとね?」

 

雪穂「いえ、ケガがないみたいで安心しました!」

 

亜里沙「えへへ…」

 

コトリ「…あれ?」キョロキョロ

 

コトリ(私は食堂車の中を見回したけど…モモちゃん達の姿はどこにもなかった)

 

コトリ「あの…モモちゃん達は?」

 

亜里沙「あっ…」

 

コトリ「?」

 

パナ「それが、モモちゃん達は…」

 

コトリ「…!?」

 

コトリ(私が車内の床を見ると…そこには大きな砂の山が四つほどあった)

 

コトリ「もしかして…!」

 

ツカサ「…そうだ」

 

ツカサ「コトリとの繋がりが、消えかけてしまっている為に…あいつらは消滅してしまったんだ」

 

コトリ「でも…私、モモちゃん達のことは忘れてないよ?」

 

コトリ「ちゃんと覚えているのに、どうして…!?」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「いや…いやっ!」ダッ

 

亜里沙「コトリさん!」

 

ツカサ「…待て、亜里沙」

 

亜里沙「でも…!」

 

ツカサ「大丈夫だ…オレが行く」スタスタ

 

雪穂「…ツカサ」

 

 

 

ツカサ(食堂車から出たコトリは…デンライナーの扉の近くでうずくまって泣いていた)

 

コトリ「そんな、イヤだよ…」グスッ

 

ツカサ「…すまない」ピコッ

 

ツカサ(オレはコトリの隣に座って…食堂車の中で拾ったピコピコハンマーで自分自身の頭を叩いた)

 

コトリ「…えっ?」

 

ツカサ「オレのせいだ…」

 

コトリ「…それって、どういうこと?」

 

ツカサ「ズィークから…モモ達が消えた原因を聞いたんだ」

 

 

 

ズィーク「実は彼女には…留学の話が来ているんです」

 

ユウコ「…!」

 

パナ「ウソ…?」

 

ズィーク「本当です」

 

ズィーク「彼女が留学すれば…同時に電王をやめるという事になります」

 

ツカサ「つまり…コトリに憑いたモモ達との繋がりが切れるという事か?」

 

ズィーク「そういう事です」

 

ズィーク「彼女は…以前から服飾の勉強をしたいと思っていたようです」

 

ズィーク「そこでつい最近、お母様の知り合いの学校の方から留学の話が来たそうです」

 

ズィーク「一緒に戦っている彼女達に相談するかどうか迷っていたみたいですが…」

 

ツカサ「気を遣って相談できなかった…という訳か」

 

ズィーク「はい」

 

雪穂「だからコトリさん、写真であんな顔してたんだ…」

 

亜里沙「もし留学しちゃったら…それっきり戻ってこれないんですか?」

 

ズィーク「おそらく…高校を卒業するまでは」

 

デネヴ「そんな…!」

 

ズィーク「ずっと…行くかどうか迷っていたみたいです」

 

ズィーク「むしろ…行きたがってなかったようにも見えました」

 

ズィーク「ずっと彼女達を気にしてて、彼女達に相談したら何て言うかってそればかり…」

 

ズィーク「ただ…黙っているつもりはなかったんです」

 

ズィーク「それだけは…分かってあげてください」

 

ユウコ「…行くわよ、デネヴ」

 

デネヴ「えっ…ユウコちゃん?」

 

ユウコ「今は…私達が逃げたイマジンを探しましょう」スタスタ

 

デネヴ「…分かった」スタスタ

 

ツカサ(そう言ってユウコとデネヴはデンライナーから出ていった)

 

ズィーク「…もう一つ、考えられる理由があります」

 

ツカサ「もう一つ…?」

 

ズィーク「先日、彼女達が…あなたに憑依して戦った事です」

 

ツカサ「…!」

 

ズィーク「あなたを責めたい訳ではありません…ですが、さすがに無理がありました」

 

ズィーク「イマジンとの繋がりは…意外とデリケートなものですから」

 

亜里沙「そんな…」

 

雪穂「…!」

 

ズィーク「では、私はこれで…」スタスタ

 

ガラッ

 

ツカサ「おい、待て…ズィーク!」ダッ

 

ツカサ(ズィークの後を追おうと、オレは食堂車を出るが…デッキにはズィークの姿が無い代わりに大きな砂の山があった)

 

ツカサ「…!」

 

 

 

コトリ「そんな、オーナーさんまで…!」

 

ツカサ「コトリとの繋がりが切れかけていた時に…別の世界から来たオレがモモ達と憑依して戦ってしまった」

 

ツカサ「そのせいで…モモ達がいなくなる時間が早まったらしい」

 

コトリ「…ツカサくん」

 

ツカサ「すまなかった…オレのせいで、こんな事になってしまって」

 

コトリ「そんな…ツカサくんのせいじゃないよ!」

 

コトリ「もともとは私が…私が、モモちゃん達にちゃんと相談できなかったから!」

 

ツカサ「コトリ…」

 

コトリ「何度も言おうとしたけど、怖くて言えなかった…そのせいで話すこともできなくなっちゃって」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「モモちゃん達はずっと私と一緒に戦ってくれた友達だった…だから、本当は一番に言わなきゃいけなかったのに!」

 

コトリ「相談したかったのに…聞いてほしかったのに!」

 

コトリ「そんなの当たり前のことのはずだったのに…なのに!」

 

ツカサ「…それに気づけただけでも、十分じゃないのか?」

 

コトリ「えっ…?」

 

ツカサ「ほら」ピラッ

 

ツカサ(オレは先日、デンライナーの車内で撮った写真をコトリに渡した)

 

コトリ「この写真って…」

 

ツカサ「オレのせいじゃないと、言ってくれたお礼だ…オレはこの写真をアンタに譲る事にする」

 

ツカサ「…だから、変わる事を恐れるな」

 

ツカサ「明日を見失わずに…自分自身を誇れるように、大胆に高く飛び上がればいい」

 

コトリ「ツカサくん…」

 

ツカサ「さっき…モモ達の事をちゃんと覚えているって言ってたよな?」

 

コトリ「…うん」

 

ツカサ「それなら…コトリの中でもう一度、モモ達をイメージすればいい」

 

コトリ「私の中で、モモちゃん達を…?」

 

ツカサ「そうだ…それが消えたモモ達を助ける唯一の方法だ」

 

コトリ「私が、助ける…」

 

ツカサ(コトリはしばらく写真を見つめると、立ち上がってこう言った)

 

コトリ「私ね…もしモモちゃん達と出会ってなかったらどうなってたのかなって、思ったことがあるんだ」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「ウラちゃんが憑くと次の日には会った覚えのない女の子達が私を追いかけてくるし…」

 

コトリ「キンちゃんが憑いた後は…身体中が痛くなっちゃうし」

 

コトリ「リュウちゃんは、たまに私が苦手なにんにく入りのとんこつラーメンを食べようとしちゃうことあるし…」

 

ツカサ「それは…災難だな」

 

コトリ「うん、最初の頃にモモちゃんに憑かれて戦うだけでも大変だったのに…いつの間にかいっぱい憑かれちゃって」

 

コトリ「でも…私、そんなみんながいるデンライナーが大好きになってて」

 

ツカサ「…」

 

コトリ「だから…私、モモちゃん達を助けたい!」

 

コトリ「またみんなと会って…ちゃんと相談したい!」

 

ツカサ「…そうか」フフッ

 

コトリ「うん!」ニコッ

 

ツカサ(止まっていた彼女の時間が…ようやく動き出した)

 

ツカサ(決意し、微笑むコトリを見て…オレはそんな気がしていた)

 

ツカサ(その直後…食堂車の扉から出てきたパナがこちらに声をかけてきた)

 

パナ「た…大変ですっ!」

 

ツカサ「どうした?」

 

パナ「ユウコちゃんがイマジンを見つけたってデネヴちゃんから連絡が!」

 

コトリ「…!」

 

ツカサ「よし…オレ達も向かうぞ!」

 

コトリ「…うん!」

 

ツカサ(オレとコトリはデンライナーを出て、ユウコがいる場所に向かった)

 

 

 

ユウコ「見つけた…待ちなさい!」

 

ターキーI「うるさいなぁ…待ってる暇なんかないもんね!」

 

デネヴ「もう逃がさないよ?」

 

ターキーI「こっちは早くあの女を見つけないと…ってあれ?」

 

ユウコ「?…何よ」

 

ターキーI「…ようやく見つけたもんね!」ダッ

 

ユウコ「!?」

 

ターキーI「オリャ!」ブンッ

 

ユウコ「!」サッ

 

デネヴ「ユウコちゃん!?」

 

ターキーI「逃げられる訳にはいかないもんね!」

 

ユウコ「ちょっと!何でさっきまでイマジンを追いかけてた私が逆に追われてるのよ!?」

 

ターキーI「お前に言う必要なんかないもんね!」

 

ユウコ「何それ…イミわかんない!」

 

ターキーI「大人しく捕まればいいだけだもんね!」

 

ユウコ「…こうなったら、やるしかないわね!」サッ

 

デネヴ「えっ…ちょっと待って、ユウコちゃん!」

 

ユウコ「今度は何よ!?」

 

デネヴ「そのカードはもう一枚しかないんよ!?ツカサくんが来るまで待った方が…」

 

ユウコ「何言ってるのよ!カードはお守りじゃないのよ!?」

 

デネヴ「!」

 

ユウコ「ここで使わなかったら…一体、どこで使えっていうのよ!?」

 

デネヴ「ユウコちゃん…」

 

ターキーI「早く観念するもんね!」

 

ユウコ「それはこっちの台詞よ…変身!」

 

『アルタイルフォーム』

 

ターキーI「!?」

 

ゼロノス「最初に言っておくわ…私はかーなーり、強い!」

 

 

 

ツカサ(デンライナーから降りたオレとコトリは…急いでユウコ達がいる場所に向かっていた)

 

コトリ「ユウコちゃん、大丈夫かな…?」

 

ツカサ「そうだと良いんだがな…!」

 

ツカサ(すると…オレ達の目の前にオーロラが現れ、欧米風の中年男性が出てきた)

 

?「…」

 

ツカサ「…コトリ、アンタは先に行ってくれ」

 

コトリ「えっ、でも…」

 

ツカサ「オレもすぐに後から追いかける…ユウコをよろしく頼む」

 

コトリ「…うん!」ダッ

 

ツカサ(コトリはユウコがいる場所に向かっていった)

 

?「久しぶりだね、ディケイド」

 

ツカサ「…やはりお前か、ナルタキ」

 

ナルタキ「その通りだ…よく分かったね」

 

ツカサ「お前の顔をちゃんと見るのは初めてだが…何度も邪魔されてるからな、声を聞けば嫌でも分かる」

 

ナルタキ「顔を見るのは初めて、か…本当にそうかね?」

 

ツカサ「…どういう事だ?」

 

ナルタキ「君は私が何者か…知っているはずだ」

 

ツカサ「オレが…アンタを?」

 

ナルタキ「そうだとも、君は覚えているはずだ…私のこの姿を」

 

ツカサ(そう言ってナルタキは…黒い甲冑のような姿をした怪人に変化した)

 

ツカサ「…!!」

 

 

 

コトリ「いた…ユウコちゃん達だ!」

 

コトリ(ゼロノスに変身したユウコちゃんは…七面鳥のイマジンさんと戦っていた)

 

ターキーI「チッ…まさかお前がゼロノスだったなんて、聞いてないもんね!」

 

ゼロノス「あなたなんかに言うつもりもないけどね…行くわよ、デネヴ!」

 

デネヴ「ほい来た!」

 

コトリ(ゼロノスは…カードを裏側に返した状態でベルトに入れて、デネヴちゃんを憑依させた)

 

『ベガフォーム』

 

ゼロノス「…最初に言っておくな?」

 

ターキーI「こ、今度は何だ…?」

 

ゼロノス「ウチの胸の大きさは…飾りやないよっ!」ダッ

 

コトリ(ベガフォームになったゼロノスは…大きな剣を持って、イマジンさんに向かっていく)

 

ゼロノス「ほっ!」ズバッ

 

ターキーI「ウグッ…!」

 

ゼロノス「まだまだ!」

 

『フルチャージ』

 

ゼロノス「やぁっ!」ザシュッ!

 

コトリ(ベルトから出したカードを大きな剣に入れたゼロノスは…イマジンさんを斬った後、黄色い『V』の文字が浮かんだ)

 

ターキーI「グワァァァ!!」

 

コトリ(斬られたイマジンさんは…遠くの方に吹き飛んでいった)

 

ゼロノス「ふぅ…もうええかな?」

 

コトリ(ゼロノスは変身を解いて…ユウコちゃんの姿に戻って、憑依していたデネヴちゃんも元通りの姿になった)

 

コトリ「ユウコちゃん、デネヴちゃん!」ダッ

 

ユウコ「…!」

 

デネヴ「あれ…コトリちゃん、もう動いても大丈夫なん?」

 

コトリ「うん…もう、大丈夫!」

 

ユウコ「…どうしてよ」ボソッ

 

コトリ「えっ、ユウコちゃん?」

 

ユウコ「どうして…モモ達や私に相談してくれなかったのよ?」

 

コトリ「!」

 

デネヴ「ちょっと、ユウコちゃん…」

 

ユウコ「デネヴは黙ってて!」

 

コトリ「…ごめんね」

 

コトリ「私、怖かったの…こんな話をしたらみんなは何て言うんだろうって」

 

コトリ「だから…ずっと話せなかったの」

 

ユウコ「だからって…そんな事は!」

 

コトリ「何もしないことの…言い訳にはならない」

 

ユウコ「…!」

 

コトリ「お母さんのお友達のサクライさんって人が…よく言ってた」

 

ユウコ「何よ、他人の受け売りじゃない…」

 

コトリ「えへへ…でもね?」

 

コトリ「サクライさんのこの言葉とツカサくんに励ましてもらって…やっと分かった気がするの」

 

ユウコ「…何が分かったの?」

 

コトリ「それはね…」

 

?「まだ…ぼくはやられてないもんね!」ガシッ

 

コトリ「!」

 

コトリ(後ろからユウコちゃんを捕まえたのは…いなくなったと思っていた七面鳥のイマジンさんだった)

 

ユウコ「えっ…何!?」

 

デネヴ「ユウコちゃん!」

 

ターキーI「おっと…ちょっとでも動いたらコイツの命はないけど、それでもいいの?」

 

コトリ「そんな…!」

 

ユウコ「二人とも、私に構わないで!早くこのイマジンを…」

 

ターキーI「よいしょ…っと」ヒョイ

 

コトリ(イマジンさんはユウコちゃんの身体を軽々と持ち上げると…右肩に担いだ)

 

ユウコ「きゃっ!?ちょっ…降ろしなさいよ!」

 

コトリ「ユウコちゃん!」

 

ターキーI「さて…とっとと契約を完了させちゃうもんね!」ダッ

 

デネヴ「契約を完了させるって事は…もしかして!」

 

コトリ「契約した人の所に行くつもりなんだ…待って!」ダッ

 

コトリ(私とデネヴちゃんは…ユウコちゃんを返してもらおうと、イマジンさんを追いかけた)

 

 

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

???「ようやく私の事を思い出してくれたみたいだね…嬉しいよ、ディケイド」

 

ツカサ「出来れば…自分の事を先に思い出したかったんだがな」ハァ

 

???「その前に…私が君を消す」スッ

 

ツカサ「?…うわっ!」

 

ツカサ(奴が手をかざした直後…オレは吹き飛ばされてしまった)

 

ツカサ「くっ…全く、仕方ないな」

 

?「ツカサ~!」

 

ツカサ(オレがディケイドライバーを装着しようとすると、キバーラがやってきた)

 

ツカサ「キバーラ…どうした?」

 

キバーラ「助けに来たわ…早く逃げるわよ!」

 

ツカサ「助けに来た…?」

 

???「今度は貴様が邪魔をするつもりか…逃がさん!」ダッ

 

キバーラ「ぐるぐるぐるぐる~!」

 

ツカサ「おい!ちょっと待っ…」

 

ツカサ(キバーラがオレの周りを飛び回った瞬間…オレの意識は遠のいていった)

 

???「クソッ!…だが、回り道はもうおしまいだ」

 

???「私から逃げ続けると面倒になるという事を…次に会った時にしっかり教えてやらないといけないな」

 

???「そうだろう?スクールアイドル『μ's』の諸君…」

 

 

 

ツカサ「ここは…?」

 

ツカサ(意識を取り戻したオレは…ミルクディッパーの店内にいた)

 

?「あれ…ツカサくん?」

 

ツカサ(オレが振り返ると、そこにはユウコとデネヴと…倒れているコトリの母がいた)

 

コトリの母「…」

 

ツカサ「これは…一体、何があったんだ?」

 

デネヴ「実はさっき、ユウコちゃんがイマジンに捕まったからコトリちゃんと一緒に追いかけてたんやけど…」

 

ユウコ「…」

 

デネヴ「そうしたら、コトリちゃんのお母さんの記憶の中に入っちゃって…」

 

ツカサ「なるほどな…つまり、コトリの母がイマジンの契約者だったという事か」

 

ツカサ「それで…コトリの母は大丈夫なのか?」

 

ユウコ「…大丈夫よ、イマジンに突き飛ばされたショックで一時的に意識を失ってるだけだから」

 

ツカサ「そうか…そういえば、コトリは?」

 

デネヴ「それが…」

 

 

 

コトリ(デンライナーに乗った私は…マシンデンバードに一枚のチケットを挟んだパスを入れた)

 

コトリ(チケットに書かれていた日付は…私のお母さんがサクライさんと一緒にスクールアイドルをやることを決めた大切な日だった)

 

コトリ(お母さんと契約したイマジンは…その日に飛んで、きっと何かするつもりなんだ)

 

コトリ(だから…止めなきゃ)

 

コトリ(お母さんが忘れられない…絶対に忘れたくない日を)

 

コトリ「守らなきゃ…『私達』が」

 

コトリ(食堂車に入った私は…四つの砂の山を見た)

 

コトリ「みんな…」

 

コトリ(私はその中の一つの砂の山に触れた)

 

コトリ「…」

 

?「…ツカサが言ってました」

 

コトリ「!」クルッ

 

亜里沙「…」

 

雪穂「…」

 

コトリ「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…」

 

亜里沙「その砂の山は…コトリさんに残っていたモモさんたちのかけらみたいなものだって」

 

コトリ「モモちゃん達の…かけら?」

 

雪穂「…はい」

 

雪穂「そこから何かイメージすれば、もしかしたら別の形として残るかもしれない…そう言ってました」

 

コトリ「…!」

 

ツカサ『コトリの中でもう一度、モモ達をイメージすればいい…それが消えたモモ達を助ける唯一の方法だ』

 

コトリ「私の中で、もう一度…そっか」

 

コトリ(私はモモちゃん達と過ごした今までの思い出を振り返っていた)

 

コトリ(一緒に戦ったこと、悪いイマジンを追いかけていたこと…)

 

コトリ(チョコレートパフェや生地がパリパリのクレープをみんなで一緒に食べたこと…)

 

コトリ「みんなとまた繋がりたいって思ってるけど…本当にこんなことで、良いのかな?」

 

コトリ「なかなかちゃんとしたこと、思い出せないよ…」

 

亜里沙「…それで、良いと思います!」

 

コトリ「えっ?」

 

雪穂「私達も…ツカサと色んな世界を回ってきましたけど、私が思い出せるのはツカサとケンカしたことばっかりです」

 

コトリ「雪穂ちゃん…」

 

雪穂「でも…いや、だからですかね?」

 

雪穂「私はそれだけで…終わりたくない」

 

コトリ「…」

 

コトリ(確かに私達も…ツカサくん達と同じように、ケンカばかりしてきた)

 

コトリ(でも…そのおかげでお互い良いところも悪いところも言い合って、ちょっとずつ成長できてるんだと思う)

 

コトリ(だから…これで良いんだ)

 

コトリ(今はまだ悲しい記憶も痛い心の傷も、私がありのままに生きていれば…いつかきっと楽しい思い出に変わる日が来るんだって)

 

コトリ「ふふっ…そうだね」

 

コトリ「ありがとう、二人とも!」

 

雪穂「…」フフッ

 

亜里沙「えへへ…」

 

コトリ「…あれ?」

 

コトリ(その時…私は砂の山の中から何かを見つけた)

 

亜里沙「それって…」

 

雪穂「携帯…電話?」

 

コトリ(私達が不思議がっていると、パナちゃんが食堂車に入ってきた)

 

パナ「コトリちゃん!」

 

コトリ「パナちゃん…」

 

パナ「つ…着きました!」

 

コトリ「…分かった、ありがとね」

 

コトリ「じゃあ…行ってくるね?」

 

雪穂「…はい!」

 

亜里沙「頑張ってください!」

 

コトリ「うん!」ダッ

 

コトリ(私は変わった形をした携帯電話をポケットの中にしまって…食堂車を出た)

 

コトリ「行くよ…みんな」

 

 

 

ツカサ(コトリの母をユウコに任せ…オレとデネヴはゼロライナーで目的の日付に向かっていた)

 

ツカサ「デネヴ…一つ、聞いていいか?」

 

デネヴ「何?」

 

ツカサ「…『サクライ ユウコ』の事だ」

 

デネヴ「!…そっか、気付いてたんやね」

 

ツカサ「ああ…何となく、だがな」

 

デネヴ「…今からウチが話す事、他の皆には内緒な?」

 

ツカサ「…分かった」

 

ツカサ(オレは…デネヴから話を聞いた)

 

ツカサ「つまり…サクライはイマジンの侵攻から未来を守ろうと、過去にいる自分自身にゼロノスカードを託したという事か」

 

ツカサ「例え…コトリの母や他の人が、今の自分の存在を忘れてしまう事になっても」

 

デネヴ「…うん」

 

ツカサ「なるほどな、だいたいわかった…それならオレが出来る事は一つだな」

 

デネヴ「えっ…?」

 

ツカサ「時間を自分達のものにしようとするイマジンをこれ以上、好き勝手させない…それだけだ」フフッ

 

デネヴ「!…ツカサくん」

 

ツカサ(ゼロライナーが止まり…オレは目的の時間に着いた事を確認した)

 

ツカサ「さて…行ってくるか」スタスタ

 

 

 

コトリ(デンライナーを降りた私はすぐに…高校の制服を着たお母さんとサクライさんを追いかける七面鳥のイマジンさんを見つけた)

 

ターキーI「待て~!」

 

サクライ「はぁはぁ…大丈夫、絶対に私が助けるから!」

 

サクライ「けっこう、マズいかもしれないけど…」

 

コトリの母「はぁはぁ…ううん、大丈夫!」

 

コトリの母「サクライさんと一緒なら、怖くないから!」

 

コトリ「!…お母さん、サクライさん」

 

ターキーI「フフン…絶対に見つけて始末してやるもんね!」

 

コトリ「待って!」

 

ターキーI「!」クルッ

 

サクライ「?」クルッ

 

コトリ「…!」

 

コトリ(サクライさんの姿を初めて見た私は…ユウコちゃんにそっくりだったことにびっくりしていた)

 

サクライ「…あなたは?」

 

コトリ「に、逃げてください…早く!」

 

サクライ「え、ええ…こっちよ南さん!」グイッ

 

コトリの母「う…うん!」ダッ

 

ターキーI「また電王か…お前、ろくに戦う事も出来ないくせに性懲りもなく来たの?」

 

コトリ「!」

 

ターキーI「弱いくせに…どうしてそこまでやろうとしてくるの?」

 

コトリ「…私は、確かに弱いかもしれない」

 

ターキーI「じゃあ、さっさと…」

 

コトリ「でも!!」

 

ターキーI「!?」

 

コトリ「例え弱くたって…何もしない言い訳にはならないから」

 

コトリ「だから…私は戦うよ、みんなと一緒に!」

 

ターキーI「フン…お前なんて一捻りにしてやるもんね!」

 

コトリ「…変身」

 

 

 

電王(私はイマジンさんの攻撃を受けて、吹き飛ばされてしまった)

 

電王「きゃっ…!」ゴロゴロ

 

ターキーI「踏んづけてやるよ…フン!」ゲシッ

 

電王「うっ…」

 

ターキーI「オリャッ!」ゲシッ

 

電王「…」ガシッ

 

ターキーI「!?」

 

電王「絶対に…止めないと」

 

ターキーI「ビックリした…ぼくの脚を掴んでこないでよ!」ゲシッ

 

電王「あっ…!」

 

電王(イマジンさんに蹴られて私は…変身が解けてしまった)

 

ターキーI「こうなったら…お前からやっつけてやるもんね!」

 

コトリ(ごめんね…みんな)

 

コトリ(やっぱり、私だけじゃ…)

 

?「ふんっ!」ブンッ

 

ピコッ!

 

ターキーI「痛ッ!?」

 

コトリ「えっ…?」

 

コトリ(そこには…イマジンさんをピコピコハンマーで何度も叩くツカサくんがいた)

 

ツカサ「はっ!」ピコピコピコピコ!

 

ターキーI「痛い痛い痛い痛い!」

 

ツカサ「どけ!」バコッ!

 

コトリ(それからツカサくんは…ピコピコハンマーが壊れちゃうほどの強さでイマジンさんを叩いて吹き飛ばした)

 

ターキーI「ウワァァァァ!?」ドサッ

 

コトリ「ツカサくん…」

 

ツカサ「…立てるか?」スッ

 

コトリ「う、うん…」

 

コトリ(私はツカサくんの手を取って、立ち上がった)

 

ターキーI「イテテ…」

 

ツカサ「よう…やっと会えたな、七面鳥」

 

ターキーI「お前、いきなりだな~…挨拶もなし?」

 

ツカサ「お前に挨拶する時間はない」

 

ターキーI「ぼくだってお前らの相手なんかしてる暇はないもんね!」

 

ツカサ「コトリ…ここはオレに任せろ」

 

ターキーI「無視するな!」

 

コトリ「…ううん、私はまだ戦えるよ」

 

ツカサ「だが…」

 

コトリ「大丈夫…『私達』なら!」

 

ツカサ「!…そうか」フフッ

 

ターキーI「しぶといなぁ…弱いヤツが何度向かってきても無駄だっていうのに」

 

ツカサ「飛べない七面鳥のお前には…分からないだろうな」

 

ターキーI「は?」

 

ツカサ「コトリは…誰よりも頑固だ」

 

ツカサ「一度こうと決めたら絶対に曲げない…芯の強さがある」

 

ツカサ「だからこそ…例え力が弱くても、絶対にどんな事も乗り越えようとする!」

 

コトリ「ツカサくん…」

 

ツカサ「その意志があるから…コトリは今、殻を突き破って巣から飛び立とうとしている」

 

ツカサ「羽ばたこうとしている!」

 

ツカサ「それが彼女の…コトリの『強さ』だ!」

 

ターキーI「クッ…うるさいうるさい!」

 

ターキーI「お前の説教なんか聞いてる暇はないもんね!」

 

ターキーI「ってか…さっきからお前、誰!?」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」

 

コトリ(私とツカサくんはそれぞれベルトを巻いて…)

 

ツカサ「変身!」

 

コトリ「…変身!」

 

コトリ(電王プラットフォームとディケイドに変身した)

 

ターキーI「ディケイド!?…まあいいや、お前らなんて倒してやるもんね!」

 

ディケイド「…やってみろ」

 

ターキーI「グッ…生意気な!」ダダッ

 

~♪

 

電王(すると…突然、どこからか音が聞こえてきた)

 

電王「この音…何?」

 

ディケイド「…コトリの方から聞こえてくるぞ」

 

電王「えっ?…あっ!」ガサゴソ

 

電王(私は…さっき拾った、不思議な携帯電話を取り出した)

 

電王「この携帯からだ…」

 

ディケイド「!…それは、まさか」

 

ターキーI「ぼくを無視するな!」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「いいからちょっと黙ってろ!」ガガッ!

 

ターキーI「アイタッ!?」

 

ディケイド「やっぱり…ケータロスだな」

 

電王「ケータロスって…?」

 

ディケイド「その電話に出てみれば…すぐに分かる」

 

電王「電話に出る…これかな?」ポチッ

 

電王(携帯を開いた私は、通話ボタンを押して電話に出た)

 

電王「も…もしもし?」

 

?『…もしもし、コトリ?』

 

電王「もしかしてその声…モモちゃん?」

 

モモ『全く…アンタも諦め悪いわねぇ』ハァ

 

電王「!…他のみんなは!?」

 

ウラ『本当…センパイったら素直じゃないわね?』

 

キン『だよねだよね!さっきなんて私よりも泣いてたのに…』

 

リュウ『リュウ知ってるよ!モモちゃんは意外と涙もろいんだよね~』

 

モモ『うっさいわよアンタ達!!』

 

電王「みんな…!」

 

電王(良かった…私、まだみんなとちゃんと繋がってたんだ)

 

モモ『だいたいアンタ達はね…!』

 

電王「…あの」

 

モモ『何よ!?』

 

電王「今さらになっちゃうけど…私のお願い、聞いてくれる?」

 

モモ『…言っておくけど、無理なお願いは聞かないわよ?』

 

電王「最後まで…私と一緒に、戦ってくれる?」

 

モモ『!』

 

電王「…お願い」

 

モモ『しょーがないわねー…アンタの願い、聞いたわ!』

 

ウラ『大船に乗ったつもりで任せなさい!』

 

キン『コトリちゃんの強さに…私達が笑った!』

 

リュウ『途中でイヤだなんて言わせないよ…答えは聞かないけど!』

 

電王「…うん!」

 

ディケイド「コトリ…ケータロスの下四つのボタンと通話ボタンを順番に押してみろ」

 

電王「えっと…こうかな?」ポチポチ

 

『モモ ウラ キン リュウ』

 

ディケイド「それを…ベルトに着けてみろ」

 

電王「分かった…えいっ!」

 

『クライマックスフォーム』

 

電王(次の瞬間…私の顔と両肩と胸にそれぞれ見覚えのある四つの仮面が取りついた)

 

ターキーI「な…何だ!?」

 

ディケイド「クライマックスフォーム…電王の中でも最もクライマックスな形態だ」

 

ターキーI「いや、どういう事か分からないんだけど…」

 

モモ『…分からないなら、教えてあげるわ』

 

ターキーI「!?」

 

電王(私達はケータロスの一番大きなボタンを押した後…ベルトにパスを二回通した)

 

『チャージアンドアップ』

 

モモ『見せてやるわ、私達の必殺技…!』

 

電王(デンガッシャーソードモードを持った私達は…剣の先を飛ばした後に左右に大きく振って、イマジンさんを攻撃する)

 

ターキーI「イタッ…グワッ!」

 

モモ『クライマックスバージョン!』

 

電王(最後に私達はデンガッシャーを上から下に大きく振って…イマジンさんを斬りつけた)

 

ターキーI「ウワァァァァァ!!」

 

電王(私達の攻撃が当たって…イマジンさんは爆発した)

 

電王「や、やった…えっ!?」グイッ

 

リュウ『勝ったニャー!』

 

電王(私の身体は…胸を引っ張られたように前に出ていく)

 

モモ『ちょっと、勝手に動くんじゃないわよ!』

 

ウラ『やっぱり私達がいなきゃね…ねぇ、コトリ?』

 

電王「ウラちゃん…わぁっ!?」グイッ

 

電王(それから私の身体は左右に引っ張られるように…勝手に動いていた)

 

キン『またお話できるね、コトリちゃん!』

 

電王「ちょっと、みんな…」

 

モモ『だから…動くなって言ってるでしょ、アンタ達!?』

 

電王「私の身体で、遊ばないでぇ~…!」グイグイッ

 

ディケイド「…」フフッ

 

電王「みんな、ふざけないの…!?」

 

電王(その時…爆発の中から大きな鳥の化け物が空へ飛んでいった)

 

ディケイド「ギガンテスヘヴン…イマジンのイメージが暴走した姿か」

 

電王「あんな大きなのが暴れたら…!」

 

ディケイド「間違いなく…今や未来の時間にも大きく影響するだろうな」

 

電王(そんなこと…絶対にさせない)

 

電王(また、モモちゃん達に会えたのに…)

 

電王(だから今は…私が守らなきゃ!)

 

電王(みんなが過ごしてきた…大切な時間を、消させない!)

 

電王「諦めちゃダメ!」

 

電王「せっかく…せっかくここまで来たんだから!」

 

電王「だから私は…絶対に、諦めない!」

 

 

 

ディケイド(電王がそう言うと、ライドブッカーから三枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド(それらを掴んだオレはカードに電王の力が宿ったことを確認した)

 

ディケイド「やっとか…」

 

電王「えっ…どうしたの?」

 

ディケイド「オレに良い考えがある」

 

電王「考え…?」

 

ディケイド(オレはその中から一枚のカードをディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…デ・デ・デ・デンオウ!』

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」

 

電王「えっ、何?」

 

ディケイド(オレは電王の後ろに回り込み…電王の背中を押した)

 

ディケイド(クライマックスフォームはプラットフォームに戻ったが…その代わりにオレに四つの電仮面が取り付けられた)

 

ディケイド(そして…プラットフォームはイメージ体に変化し、オレの身体の中に入り込んだ)

 

電王『えっ…えぇ~っ!?』

 

ディケイド「驚かせたな」

 

電王『びっくりしたよぉ~…私達、どうなっちゃったの?』

 

ディケイド「オレとコトリの力だ」

 

電王『えっと…つまり私が、ツカサくんと力を合わせて戦うってこと?』

 

ディケイド「そういう事だ」

 

電王『…分かった、行こう!』

 

ディケイド「ああ!」

 

『ファイナルアタックライド…デ・デ・デ・デンオウ!』

 

ディケイド(もう一枚、カードを入れたオレ達は…四つの電仮面からそれぞれの色のレールが現れた)

 

ディケイド「はっ!」

 

ディケイド(そこから五人に分身したオレの中から四人がそれぞれ赤、青、黄、紫のレールの上を走っていく)

 

ディケイド「やぁっ!」ザシュッ!

 

ディケイド「ふっ!」ガガッ!

 

ディケイド(青と黄のディケイドがライドブッカーソードモードで、紫のディケイドがガンモードでギガンテスを攻撃すると…)

 

ディケイド「今だ、行け!」ズバッ!

 

ディケイド(上空から赤のディケイドがライドブッカーソードモードで両断した事を確認し…オレは空に伸びるレールの上に乗った)

 

ディケイド「行くぞ!」

 

電王『うん!』

 

ディケイド「電車斬り!」

 

電王『え…えっ!?』

 

ディケイド「やぁーっ!!」

 

電王『え、え~いっ!!』

 

ディケイド(突撃するオレ達は…ライドブッカーソードモードでギガンテスヘヴンを両断し、トドメを刺した)

 

ディケイド(これは『DCDL(ディケイドライナー)』…オレと電王の技だ)

 

ディケイド「よっと…」

 

電王「きゃっ…!」ヨロッ

 

ディケイド(オレと分離した電王は同時に着地し…オレはよろけそうになった電王の手を掴んだ)

 

ディケイド「おっと」ガシッ

 

電王「あっ…ありがとう」

 

ディケイド「大丈夫か?」

 

電王「うん!」

 

ディケイド「そうか…それなら良かった」フフッ

 

ディケイド(ギガンテスを倒し…オレと電王は変身を解除した)

 

コトリ「…ねえ、ツカサくん」

 

ツカサ「どうした?」

 

コトリ「『電車斬り』って…何?」

 

ツカサ「アレか?勢い良く決めるにはカッコ良い名前が必要だと思ってな…」

 

コトリ「あ、あはは…そっか」

 

コトリ「ちょっと変な気がするけど…まあ、いっか」ボソッ

 

ツカサ「何か言ったか?」

 

コトリ「あっ…ううん、何でもないのよ何でも!」ブンブン

 

ツカサ「…?」

 

 

 

コトリ(デンライナーに戻った私は…食堂車に入った)

 

コトリ「あっ…」

 

モモ「…」

 

ウラ「コトリ…またお世話になるわね」

 

キン「また会えて嬉しいよ、コトリちゃん!」

 

リュウ「まさかまたここにいられるなんて思わなかったニャ~」

 

コトリ「みんな…」

 

モモ「…パナ、いい加減に泣くのやめなさい」

 

パナ「だって…みんな、帰ってきてくれたから」グスッ

 

ズィーク「…どうやら、あなたの熱い想いが繋ぎ留めてくれたみたいです」

 

コトリ「私の…熱い想い?」

 

ズィーク「ええ…不思議な事も、あるものですね」

 

コトリ「…」

 

モモ「コトリ!」

 

コトリ「は、はいっ!?」

 

モモ「大事な話は後にするとして…今日はパーッと飲むわよ!」

 

コトリ「えっ…?でも、飲むって言ったって」

 

モモ「もちろん…ジュースでよ!」

 

コトリ「いや、でも…」

 

ウラ「ほら、細かい事言わないの」

 

キン「そうそう、みんなで楽しまないとね~…早くコップ持って!」

 

リュウ「一緒に楽しんでも良いかニャ?…答えは聞いてない!」

 

コトリ「みんな…うん!」

 

モモ「じゃあ行くわよ…私達のクライマックスに!」

 

全員「カンパーイ!」

 

 

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ツカサ(オレは食堂車の扉の外から…そっとカメラのシャッターを切った)

 

亜里沙「どう?」

 

ツカサ「…手応えありって顔、してるだろ?」フフッ

 

亜里沙「ツカサ…うん、確かにそういう顔してる!」ニコッ

 

雪穂「…これで、もうこの世界は大丈夫なのかな?」

 

ツカサ「ああ…何故なら人が覚えていれば、その時間は存在するからな」

 

ツカサ「今日のこの日を覚えている人間が、明日や明後日やその先にいれば…時は消えない」

 

ツカサ「人の記憶こそが…時間なんだ」

 

雪穂「…時間、か」

 

ツカサ「そして、それこそが…人を支える」

 

ツカサ「コトリがモモ達と共に過ごした時間と記憶が…モモ達を、ずっと存在させるんだ」

 

亜里沙「何か…深いね?」

 

ツカサ「…そんな事はない、単純な話だ」

 

ツカサ「きっと今のコトリ達なら…どこにだって、飛んで行けるはずだ」

 

亜里沙「そっか…そうだね!」

 

雪穂「…」フフッ

 

 

 

コトリ(それから数日後…私は駅にいた)

 

コトリの母「…皆にさよなら、言わなくていいの?」

 

コトリ「うん!会うと、私…きっとまた泣いちゃうから」

 

コトリの母「そう…」

 

コトリ「お母さんも、ここで大丈夫だよ…着いたらすぐ連絡するね!」

 

コトリの母「コトリ!」

 

コトリ「?」

 

コトリの母「…身体に気を付けてね」

 

コトリ「…!」

 

コトリ(私は何も言わずにそのまま…改札を通った)

 

コトリの母「…守れたのね?私達の未来」

 

サクライ「…」コクリ

 

コトリの母「分かってる…例え、私があなたを忘れ去ってしまったとしても」

 

コトリの母「スクールアイドル『ミルクディッパー』はいつか…またきっと」クルッ

 

コトリの母「…あら?」

 

コトリの母「私…今、誰に話しかけてたのかしら?」

 

コトリの母「誰もいないのに…変ねぇ」

 

 

 

モモ「…」

 

モモ『行きなさいよ』

 

コトリ『でも…』

 

モモ『私達が…アンタの夢を応援しないわけがないでしょ?』

 

コトリ『!』

 

モモ『だから…アンタはアンタらしく、頑張りなさい』

 

コトリ『モモちゃん…!』

 

キン「ぐぅ…」Zzz…

 

パナ「…コトリちゃん」

 

ウラ「行っちゃったわね…」

 

リュウ「モモちゃんったら素直じゃないニャ~」

 

モモ「うっさいわね!別に良いでしょ!?」

 

ズィーク「…そういえば、彼女からパスを返してもらっていませんね」

 

パナ「あっ、そういえば…」

 

ズィーク「泣く暇も無かったですからね…早く返していただかないと」

 

キン「泣く…?」

 

パナ「えっ?」

 

キン「!」ガタッ

 

パナ「ピャア!?」ビクッ

 

キン「それだぁぁぁぁぁ!!」

 

モモ「はぁ?起きたと思ったら、いきなり大声出して…何よアンタ」

 

キン「パスを返してもらってないなら…返してもらわなければいいんだよ!」

 

キン「私達にしかできない…とっておきの方法で!」

 

モモ「とっておきの方法…?」

 

ズィーク「…どうやら、次の行き先は決まったようですね」フフッ

 

モモ「えっ…ちょっと、まさかアンタ!?」

 

ズィーク「行きましょう…コトリが待ってます!」

 

 

 

コトリ(空港に着いた私は…ある事を思い出した)

 

コトリ「あ、あれ…ない!?」

 

コトリ(私は…大切なものを忘れていた)

 

コトリ「そんな…アレがないと」

 

コトリ「アレがないと~!」

 

?「コトリ!」

 

コトリ「へっ?」クルッ

 

コトリ(私が振り向くと…そこにはツカサくんがいた)

 

ツカサ「これ、忘れてたんだろ?」

 

コトリ「あっ…それ、私の枕!」

 

ツカサ「ほら」スッ

 

コトリ「ありがとう…でも、どうしてツカサくんが?」

 

ツカサ「ミルクディッパーに寄ったら…アンタの母親に頼まれてな」

 

ツカサ「『きっとまだ間に合うだろうから…あなたが渡しに行ってあげて』ってな」

 

コトリ「そうだったんだ…ごめんね、迷惑かけちゃって」

 

ツカサ「別に迷惑だなんて思ってないさ…それに、その枕は大事なものなんだろう?」

 

コトリ「そうなの…これがないと、どうしても眠れなくて」

 

ツカサ「慣れない場所だからな…大事なものはなるべく持って行った方が良い」

 

コトリ「うん…ありがとう」

 

コトリ(その時…私が乗る飛行機の便がもうすぐ出発するというアナウンスが流れた)

 

コトリ「あっ、もうこんな時間…そろそろ行かなくちゃ!」ダッ

 

ツカサ「…コトリ!」

 

コトリ「?」

 

ツカサ「またな」

 

コトリ「…うん、ツカサくんも元気でね!」

 

ツカサ「…ああ!」

 

コトリ(私は…そのまま飛行機の搭乗口に向かった)

 

 

 

ツカサ(オレがロビーを出ると…そこには大きな箱を持って、飛行機を見つめるユウコがいた)

 

ツカサ「…アンタのおかげで間に合った、ありがとな」

 

ユウコ「そう…やっぱりゼロライナーで行って良かったわね」

 

ツカサ「そういえば、その箱には何が入ってるんだ?」

 

ユウコ「これ?これは…天体望遠鏡よ」

 

ツカサ「…コトリの母へのプレゼントか?」

 

ユウコ「まあね…スクールアイドルの練習が終わった後は、よく一緒に星を見に行ってたから」

 

ツカサ「なるほどな…それにしても、本当にコトリに会わなくて良かったのか?」

 

ユウコ「ええ、私に会ったら…あの子はきっと心配しちゃうと思うから」

 

ツカサ「そうか…だが、もうゼロノスカードは使い切ったんだろ?」

 

ツカサ「これからどうやって…」

 

ユウコ「心配いらないわ、私には…これがあるから」スッ

 

ツカサ(ユウコは…ポケットから数枚の赤いゼロノスカードを出した)

 

ツカサ「そのゼロノスカード…良いのか?」

 

ツカサ「アンタ自身が他の人から忘れ去られる事になっても…」

 

ユウコ「良いのよ、今の私には…デネヴがいるから」

 

ユウコ「それに私は…錆びても強いのよ?」フフッ

 

ツカサ「…そうか」

 

ユウコ「ええ…あの子も向こうで頑張るでしょうし、きっと大丈夫よ」

 

ツカサ(すると…デネヴがこちらにやってきた)

 

デネヴ「ユウコちゃん、近くにイマジンが!」

 

ユウコ「分かったわ…行きましょう!」ダダッ

 

ツカサ(オレは空港を後にするユウコとデネヴを見送った後…コトリを乗せて飛んでいく飛行機を見つめた)

 

ツカサ「じゃあな…コトリ」フフッ

 

ツカサ(いつの間にか透けていたオレの身体は消え…そのまま光写真館へと戻っていった)

 

 

 

コトリ(私を乗せた飛行機は…目的地に向かって飛び立った)

 

コトリ(それから数時間経って…私はアイマスクを着けて、枕を抱いて眠っていた)

 

ザワザワ…

 

コトリ(何だか騒がしいけど…どうかしたのかな?)

 

乗客A「あ…あれは何!?」

 

乗客B「電車が飛んで…走ってる!?」

 

CA「お客様、落ち着いてください!」

 

コトリ「…?」

 

コトリ(アイマスクを外した私は…窓の外を見た)

 

コトリ「えっ…ええっ!?」

 

コトリ(そこには飛行機と並ぶように走るデンライナーの姿があった)

 

コトリ「な…なんで~!?」

 

リュウ「お~い!」ブンブン

 

コトリ「あっ…」

 

ウラ「コトリ!」

 

キン「ごめんね…私達、やっぱり電王やりたいの!」

 

キン「コトリちゃんと一緒にやりたいの!」

 

コトリ「…!」

 

キン「いつか別の夢に向かう時が来るとしても…だから!」

 

コトリ「キンちゃん…」

 

モモ「コトリ!アンタ…あの時、言ったわよね!?」

 

コトリ「へっ…?」

 

モモ「『最後まで…私と一緒に、戦ってくれる?』って!」

 

モモ「だから私達は…アンタについて行く事にしたわ!」

 

モモ「アンタが迷惑だって言ってもね!」

 

コトリ「!」

 

モモ「だから…私達はこれからもずーっと、クライマックスよ!!」

 

コトリ「モモちゃん…うん!!」グスッ

 

パナ「ううっ…良かったぁ」グスッ

 

ズィーク「それでは私は…キングライナーの駅長との勝負に向けて、特訓に励むとしましょうか」フフッ

 

コトリ「みんな…!」

 

コトリ(私…ツカサくん達と会って、気付いたことがあるの)

 

コトリ(運命ってきっと…一つじゃないんだって)

 

コトリ(現実はいつもたくさんの色の色んな『可能性の糸』が混ざり合ってできてて…)

 

コトリ(そこから本当の運命を決める、布地の表に出る色が決まるのは…ほんの一瞬の偶然な気がして)

 

コトリ(だから…始まりはいつも突然だけど)

 

コトリ(今、私はこうしてデンライナーのみんなと一緒にいられて…とっても幸せで楽しいなって思うの)

 

コトリ(みんな…私の気持ち、分かってくれてありがとう)

 

コトリ「ツカサくん…ありがとう」

 

コトリ「いつか…また、未来で!」

 

 

 

ツカサ(写真館に戻ったオレは…スタジオにある部屋に入った)

 

ツカサ「…ただいま」

 

亜里沙「おかえり!」

 

雪穂「コトリさん…どうだった?」

 

ツカサ「今日が出発の日だったそうだ」

 

亜里沙「そっか…私たちも行けば良かったね」

 

雪穂「そうだね…あっ、そういえばこないだ撮った写真は?」

 

ツカサ「ああ…これか?」ピラッ

 

ツカサ(オレは雪穂達に写真を見せた)

 

ツカサ(写真には衣装を懸命に作っているコトリとデンライナーの車窓から外を微笑みながら眺めるコトリが写っていた)

 

雪穂「うん…良い写真だね」

 

亜里沙「やっぱりツカサの写真はこうでなくちゃ!」

 

ツカサ「…そうだな」

 

雪穂「でも私達…結局、真姫さんに似た人には会えなかったね?」

 

亜里沙「うん、そうだね…どうして他のみんなはいたのに真姫さんだけいなかったんだろう?」

 

ツカサ「!!」

 

雪穂「…ツカサ?」

 

亜里沙「どうしたの?」

 

ツカサ「…いや、何でもない」

 

亜里沙「?」

 

ツカサ「そういえば…キバーラのヤツ、まだ戻ってきていないのか?」

 

雪穂「あっ…うん」

 

ツカサ「あいつには聞きたい事が山程あるんだが…いないなら仕方ないな」ハァ

 

亜里沙「何かあったのかな…?」

 

ツカサ「あの蝙蝠もどきの事だ、どこかでフラフラしてるだけだと思うが…」

 

亜里沙「そうだといいんだけど…あっ!」

 

ツカサ(すると…スタジオの背景がまた違うものに変化した)

 

亜里沙「いよいよ…やってきたんだね」

 

雪穂「うん、やっと戻ってこれたんだ…!」

 

ツカサ「…『μ'sの世界』」

 

 

 

ショッカー戦闘員A「待て…貴様ら、何者だ!」

 

1号(First)「…」

 

戦闘員B「貴様らは…仮面ライダー!?」

 

2号(First)「…」

 

戦闘員C「こちら、仮面ライダーを発見…直ちに始末する!」

 

1号「…ふっ!」ダッ

 

2号「はっ!」ダッ

 

 

 

1号「はぁっ!」バキッ!

 

戦闘員A「イーッ!」ドサッ

 

2号「ふぅ…これで、ここにいる戦闘員はみんな倒したのよね?」

 

1号「そうだ」

 

2号「じゃあ、行きましょうか?」

 

1号「…ああ」スタスタ




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「こんな事、ちょっとの勇気と情熱くらいで軽く乗り越えられるわ」

「帰ってきたんだ…私達の世界に」

「アレは…『Version3』」

第20話『First Wars』

---継ぐのは、魂。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~A-RISE×仮面ライダーの世界~
第20話『First Wars』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

雪穂「ディケイド…!」

亜里沙「あなたの名前は『ツカサ』!」

ツカサ「ここは…電王の世界だ」

電王ソード「私、参じょ…うっ!?」

ツカサ「オレがモモ達と憑依して戦ってしまった、そのせいで…モモ達がいなくなる時間が早まったらしい」

コトリ「ツカサくんのせいじゃないよ、モモちゃん達はずっと私と一緒に戦ってくれた友達だった…なのに!」

ツカサ「コトリの中でもう一度、モモ達をイメージすればいい…それが消えたモモ達を助ける唯一の方法だ」

コトリ「何もしないことの…言い訳にはならない」

コトリ「だから…私は戦うよ、みんなと一緒に!」

ツカサ「例え力が弱くても、絶対にどんな事も乗り越えようとする…羽ばたこうとしている!」

ツカサ「それが…コトリの『強さ』だ!」

ディケイド「オレとコトリの力だ」

コトリ「ツカサくん…ありがとう」


(白い制服を身に纏った私は…秋葉原駅からすぐ近くにあるビルの大型スクリーンを見つめていた)

 

?「ここが…UTX高校ね」

 

(秋葉原駅前再開発計画の目玉の一つとして建てられたビルの中に入っているのが…私が編入する秋葉原UTX高校)

 

(ビルの前に立って見上げるだけで…その大きさと威圧感は私にも十分、伝わっていた)

 

(だけど…それ以上に私はワクワクしていた)

 

?「ふふっ…」スタスタ

 

(ビルのエントランスに入った私は…ICチップが埋め込まれた学生証を改札機に通して、学校の中へと入っていった)

 

(二階に上がると…そこにはUTX劇場の関係者用入口があった)

 

(関係者用入口から劇場の通路を歩いていた私は…レッスンスタジオに通じる扉の前に立った)

 

?「ここね…!」

 

(私がスタジオに入ろうとした時…中からそれぞれジャンルの違う二つの音楽が聞こえてきた)

 

?「…やっぱり」フフッ

 

ガチャ

 

(私が扉を開けると…そこにはそれぞれ違うジャンルのダンスの練習をしている二人の少女がいた)

 

~♪

 

(黒いロングヘアーの少女はパントマイムやロボットの動きを取り入れた、指の先まで繊細なアニメーションダンス…)

 

~♪

 

(ゆるいパーマがかかったセミロングヘアーの少女は、彼女自身のスタイルの魅力を活かしたベリーダンスの練習をしていた)

 

?「久しぶりね…英玲奈、あんじゅ」

 

英玲奈「む…?」クルッ

 

あんじゅ「…えっ?」クルッ

 

?「…」

 

英玲奈「ツバサ?…ツバサなのか!?」ダッ

 

あんじゅ「ツバサちゃん…いつの間にこっちに帰ってきたの!?」ダッ

 

(長い黒髪の統堂英玲奈とセミロングの優木あんじゅ…二人は同時に私のもとへ駆け寄ってきた)

 

?「二人がこの学校にいるって話を聞いてね…だから、帰ってきたの」パチッ

 

(私は…二人にウィンクをしながら、そう返した)

 

(そう…私の名前は綺羅ツバサ)

 

(私は今まで、世界中の国を転々とし…多くのジャンルの歌やダンスを学んできた)

 

(やがて高校に入ってすぐ…私は開校したばかりのUTX高校芸能科に二人の『天才』が入学したという噂を耳にした)

 

(それを聞いて、ある事を思いついた私は日本に帰国し…彼女達がいるこの学校の芸能科に編入してきたのだった)

 

英玲奈「そうか…しかし、それならそうと連絡の一つくらいしてくれても良かったんじゃないのか?」

 

あんじゅ「本当よねぇ…あんじゅ達を驚かせちゃおうなんて、ツバサちゃんも人が悪いわよぉ?」

 

ツバサ「ごめんなさいね…こっちに来るまで引っ越しや編入の手続きで忙しかったものだから」

 

あんじゅ「それならしょうがないわねぇ…じゃあ、パフェ奢ってくれたら許してあ・げ・る♡」

 

英玲奈「こら、あんじゅ」フニッ

 

あんじゅ「きゃあっ!?ちょっと、英玲奈ちゃん…急にあんじゅのお腹をつまんで何のつもり?」

 

英玲奈「最近のあんじゅは糖分を摂り過ぎだ…今朝も菓子パンを三個も食べていただろう?」

 

あんじゅ「そ、そうかもしれないけど…疲れた時は甘い物が良いってよく言うでしょ?」

 

英玲奈「それは迷信だ、医学でも証明されている」

 

あんじゅ「うっ…そ、そうは言ってもあんじゅだってまだ成長期だしお腹は空くのよ!?」

 

ツバサ「へぇ…これが成長期のお腹ねぇ?」フニッ

 

あんじゅ「ツバサちゃんまで…もう、くすぐったいから触らないでよぉ~」

 

ツバサ「はいはい…それじゃ、あんじゅのウエストが今よりもう少し引き締まったらパフェでも何でも奢ってあげる」フフッ

 

あんじゅ「うふふっ…わりとすぐになるかもしれないわよ?」

 

英玲奈「リバウンドするのもすぐだろうがな」

 

あんじゅ「もう、茶化さないでよ英玲奈ちゃん…」

 

英玲奈「悪い悪い…そういえば、私達がこうして三人揃うのはツバサが転校した時以来か?」

 

ツバサ「ええ、そうよ」

 

あんじゅ「懐かしいわねぇ…今でもあのダンス大会を思い出すわぁ」

 

英玲奈「そうだな…あの時、ツバサが私達を誘ってくれなかったら今頃どうなっていた事か」

 

あんじゅ「本当にねぇ…あの時があったからこそ、こうしてあんじゅ達の今があるのよね?」

 

ツバサ「…そうだったわね」フフッ

 

(小学校低学年の頃…同級生から虐められていた私達は、ある出来事をきっかけに街が主催するダンス大会に出ようと考えた)

 

(エントリーした私達は…色々なジャンルの歌やダンスを覚えようとした)

 

(ネットや動画を見て調べた事だけじゃなく、ダンス教室やボイストレーニングにも通い…基礎から応用まで多くの事を学んだ)

 

(時間さえあれば、私達はいつも三人で集まって…歌って踊っていた)

 

(子供であっても私達は…自分自身を厳しく律し、妥協する事を決して許そうとはしなかった)

 

(それほど私達は…本気で努力し、熱中していた)

 

(そして大会に出た私達は…他の参加者を寄せつけないほどの圧倒的な歌唱力とパフォーマンスを見せつけて優勝した)

 

(地元のメディアには『天才現る』とまで評価され、話題になった私達は憧れの的として注目され…虐められる事は無くなった)

 

(そんな時、大会で私達のダンスを見た審査員が私に海外に行く事を勧めた)

 

(私はその話を二人に相談すると…二人は『行ってみた方が良い』と背中を押してくれた)

 

(私達は『またこの三人で集まったら、今よりもっと大きな事をしよう』と約束し…私は海外の小学校に転校した)

 

(その後、あんじゅはダンス部で名高い関西の中学校に進学し…英玲奈は関東で最も有名なダンススクールに通うようになった)

 

(そして海外であらゆるダンスの技術を学んだ私は…UTX高校で英玲奈、あんじゅと再会した)

 

英玲奈「それで、わざわざ私達がいるこの学校に編入してきたという事は…」

 

あんじゅ「ツバサちゃん、あんじゅ達と一緒にまた何かやるつもりなんでしょう?」

 

ツバサ「その通りよ…あの時の約束を果たしに来たの」フフッ

 

あんじゅ「じゃあ…また三人で歌ったり踊ったりできるのね?」

 

英玲奈「そうか、それは楽しみだな…」

 

ツバサ「ええ…でも、またダンスグループを組むだけじゃ面白くないわ」

 

あんじゅ「えっ?」

 

英玲奈「どういう事だ?」

 

ツバサ「やるからにはこの学校の顔…つまり、私達はアイドルになるの」

 

英玲奈「アイドル…?」

 

あんじゅ「あんじゅ達が?」

 

ツバサ「そう、学校のアイドル…『スクールアイドル』として」

 

あんじゅ「『スクールアイドル』…そういえば、芸能科の先生もそんな話をしていたわね?」

 

英玲奈「ああ、確か…ここの生徒数を増やそうとPRしたり将来的にプロのアイドルを育成する為のプログラムだと言っていたな」

 

ツバサ「実は…この学校に編入する手続きをした時、ここの理事長から話を聞いたの」

 

ツバサ「このUTXから『スクールアイドル』を広めていけば…いずれは野球のような全国大会も開かれるだろうって」

 

ツバサ「そうなればUTX高校もその波に乗らない訳にはいかない…ぜひ君もその『スクールアイドル』の候補の一人にならないかって」

 

英玲奈「…待て、ツバサ」

 

ツバサ「何かしら?」

 

あんじゅ「候補の一人って…どういう事なの?」

 

ツバサ「UTX高校の『スクールアイドル』は…芸能科の選ばれた数人の生徒だけで構成される」

 

ツバサ「つまり過酷なレッスンを全て優秀にこなした者だけが…UTX高校の『スクールアイドル』になれるという事よ」フフッ

 

あんじゅ「なるほどね…ツバサちゃんの言いたい事、何となく分かっちゃったわぁ」

 

英玲奈「そうだな…全く、ツバサの無茶ぶりには相変わらず苦労するな」ハァ

 

ツバサ「あら、無茶な事なんてないでしょう?」

 

ツバサ「今の私達が三人揃えば…こんな事、ちょっとの勇気と情熱くらいで軽く乗り越えられるわ」パチッ

 

(私はまた…余裕を見せながら二人にウィンクをした)

 

英玲奈「ふっ、そうだな」

 

あんじゅ「うふふっ…そうね?」

 

ツバサ「…」フフッ

 

(それから私達三人は…歌やダンスなどのあらゆるレッスンをこなし、優秀な成績を修めた)

 

(高校二年生になったある日…UTX高校のスクールアイドルとして選ばれた生徒の発表を聞いた私達は、UTXの屋上にいた)

 

ツバサ「…選ばれたのは、私達三人だけだったわね」

 

英玲奈「ああ…」

 

あんじゅ「まさか、こうなっちゃうなんてねぇ…」

 

英玲奈「む…そういえば、これからスクールアイドルを始めるならグループの名前が必要になるんじゃないのか?」

 

あんじゅ「そうね…どうするの、ツバサちゃん?」

 

ツバサ「…グループの名前ならもうとっくに決めてあるわ」

 

英玲奈「本当か?」

 

あんじゅ「どんな名前なの?」

 

ツバサ「…アレよ」

 

(私は…空へ飛び立つ三羽の白い鳥を指差して、こう言った)

 

ツバサ「『A-RISE』」

 

英玲奈「『A-RISE』…?」

 

ツバサ「そう、それが私達のグループの名前よ」

 

ツバサ「アルファベットの始まりの『A』と鳥が飛び立つ『RISE』…良いと思わない?」

 

あんじゅ「『A-RISE』ねぇ…そう聞くと、なんだか素敵な名前でワクワクしちゃうわぁ」

 

ツバサ「ふふっ…」

 

英玲奈「…じゃあ、これからは私達三人で『A-RISE』だな」

 

あんじゅ「うふふっ…頑張りましょうね?」

 

ツバサ「ええ!」

 

(この時、私は…二人にもう一つの『RISE』の意味を伝えなかった)

 

(そしてこれからも…私はあの時に見た、太陽のように眩しく笑った少女の話をする事はきっとない)

 

(私の心と人生に光をもたらしてくれたあの少女を…)

 

(『A-RISE』を結成して一年半が経ち…私達はUTX高校の生徒としてもスクールアイドルとしてもカリスマ的な存在となっていた)

 

(そして理事長の予想通り…スクールアイドルの全国大会『ラブライブ!』の第一回大会が開かれる事になった)

 

(もちろん『A-RISE』である私達も、UTX高校のスクールアイドルとして参加した)

 

(どこまでも真っ直ぐな『正義』と駆け引きをする為の『狡さ』を手にしたこの時の私達には…他の誰にも負ける気はしなかった)

 

(そして決勝で他のスクールアイドルに圧倒的な差をつけた私達は大会に優勝し…名実共に全国のスクールアイドルの頂点となった)

 

(それから数日後…私達はUTX劇場で『ラブライブ!』に優勝した記念のライブをする為に、控え室にいた)

 

ツバサ「あら、今日も矢澤さんからお花が来てるの?」

 

英玲奈「む…?ああ、そうだな」

 

ツバサ「彼女ってライブやイベントの度にいつもお花を贈ってくれるのよね…いつか、直接会う機会があったらお礼言わないと」フフッ

 

あんじゅ「はぁ~…」

 

英玲奈「どうした、あんじゅ…溜め息は良くないぞ?」

 

あんじゅ「だってぇ~…」ハァ

 

英玲奈「…」ハァ

 

あんじゅ「英玲奈ちゃんだって、溜め息出てるしぃ…」

 

ツバサ「…」

 

(『ラブライブ!』が終わって…私達はなぜか心が空っぽになったような感覚に陥っていた)

 

(大会に優勝してから…私達の心をくすぐってくれる刺激的な何かが、いまいち物足りていないような気がしていたのだ)

 

(つまり、今の私達には…お互いに切磋琢磨できるようなライバルがいなかった)

 

(他のスクールアイドルが弱いなんて言いたい訳じゃない…私達はただ、三人だけでお互いを高め合う事しか知らなかったのだ)

 

(そのうえ、小さい頃に約束した『もっと大きな事をやる』という夢も叶ってしまって…続ける意味がもう無いような気もしていた)

 

(私達はこれからメンバーを増やすか、解散してそれぞれの道を進むか…迷っていた)

 

ツバサ「…あら?」カチカチ

 

(そんな時…私は『ラブライブ!』の公式サイトで、あるスクールアイドルの動画を見た)

 

ツバサ「!!」

 

あんじゅ「ツバサちゃん…?」

 

英玲奈「どうかしたのか?」

 

ツバサ「…この子達のパフォーマンス、どう思う?」

 

英玲奈「どれどれ…『μ's』?」

 

あんじゅ「あら、この子達が着ている制服って…音ノ木坂学院の制服じゃない?」

 

英玲奈「そういえば、少し前に音ノ木坂学院にスクールアイドルがいるという話を耳にしたが…この前の大会には出ていなかったな」

 

ツバサ「!…そうなの?」

 

英玲奈「ああ…しかし、何だろう?」

 

あんじゅ「彼女達の歌とダンス…何となく惹かれちゃうわよねぇ?」

 

英玲奈「ああ、どちらも非常に優れているという訳ではないのだが…」

 

あんじゅ「すごく楽しそうに見えちゃうのよねぇ…」

 

ツバサ「…」

 

(私はセンターに立ってパフォーマンスをするサイドテールの少女の笑顔に確かな見覚えがあった)

 

(あの時に私が見た、少女の太陽のように輝く眩しい笑顔は…今でも私の胸の中に刻まれている)

 

(だから…彼女がスクールアイドルになった事を知って、私はとても嬉しかった)

 

ツバサ「面白い子達が…出てきてくれたわね」フフッ

 

(彼女のおかげで…私の中でまた一つ、夢が生まれた)

 

 

 

ツバサ「…帰ってきたわね、私達の世界」フゥ

 

(電王の世界でゼロノスの変身者に一枚のFFRカードを預けた私は…ある手段を使って、一足先にこの世界へと戻ってきていた)

 

(まさか、この世界がまだ危機的な状況に陥っているなんて…今でも私は信じられなかった)

 

(いえ、むしろ…信じたくなかった)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ツカサ(オレ達が会話していると…スタジオの背景が違うものに変化した)

 

亜里沙「いよいよ…やってきたんだね」

 

雪穂「うん、やっと戻ってこれたんだ…!」

 

ツカサ「…『μ'sの世界』」

 

雪穂「でも…この背景の場所って、確かUTXじゃない?」

 

亜里沙「あっ、本当だ…なんでかな?」

 

ツカサ「不思議がる必要もないだろ…ちくわには必ず穴が空いているのと同じくらい、当然の事だ」

 

雪穂「…えっ、何それ?」

 

亜里沙「どういう意味なの?」

 

ツカサ「…外の様子を見てくる」スタスタ

 

雪穂「なんでスルーするの!?」

 

ガチャ

 

ツカサ(オレはスタジオのある部屋を出て…写真館の外へと出た)

 

ツカサ「もうこんな時間か…それにしても、鷲をこんな所で見るなんて珍しいな」

 

ツカサ(赤くなった夕焼けの空を舞う九羽の鷲をオレが見つめていると…雪穂と亜里沙が写真館から出てきた)

 

亜里沙「わぁ~…本当に戻ってきたんだね!」

 

雪穂「帰ってきたんだ…私達の世界に」

 

亜里沙「なんだか…懐かしい気がするね?」

 

雪穂「…そうだね、私もそんな気がするよ」

 

ツカサ(すると…近くを歩いていたおばあさんや子供達が雪穂と亜里沙に挨拶をしてきた)

 

おばあさん「こんにちは…」ペコリ

 

雪穂「あっ…はい、こんにちは!」ペコッ

 

子供達「こんにちは~!」

 

亜里沙「こんにちは~!」ブンブン

 

ツカサ(亜里沙は手を振りながら、子供達に負けないくらいの大きな声で元気に挨拶を返していた)

 

ツカサ「皆、何も無かったかのように歩いているな…」

 

雪穂「きっと…怪人のいない平和な世界に戻ったってことなんだろうね」

 

亜里沙「うん、絶対そうだよ!」

 

ツカサ「…良かったな」

 

亜里沙「うん!」

 

雪穂「…ツカサのおかげだよ」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「ツカサが他の世界にいるお姉ちゃん達を助けてくれたから…この世界も元に戻ったんだよ?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「だからさ、今度は私達が…」

 

ツカサ「…お前、もしかして熱でもあるのか?」

 

雪穂「…は!?」

 

ツカサ「いや、いつもはそんな素直な事言わないだろ?」

 

雪穂「失礼しちゃうなぁ…ずっと今まで一緒に旅してきたっていうのに、私のことを何だと思ってるの!?」

 

ツカサ「じゃじゃ馬」

 

雪穂「なっ…!」

 

亜里沙「ちょっとツカサ、言い過ぎだよ…」

 

ツカサ「そうか?…別にそんな事ないだろ」

 

雪穂「あのねぇ…!」プルプル

 

亜里沙「雪穂、どうどう…」

 

雪穂「だから馬じゃないってば!」

 

ツカサ「とにかく…早くここを出て、自分達の家に帰ってくれ」

 

亜里沙「へっ?」

 

ツカサ「この世界も平和になったんだ…お前達がこの写真館に居続ける理由ももう無いだろう?」

 

亜里沙「でも私たち、まだ…」

 

ツカサ「やっとお前達がここから出て行くんだ…清々する」

 

雪穂「!!」

 

亜里沙「そんな…せっかく今まで一緒に旅してきたのに」シュン

 

雪穂「…そう、私も清々するよ」

 

亜里沙「え…雪穂?」

 

雪穂「結局、ツカサは…私達のことなんてその程度にしか思ってくれてなかったんだね?」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「そんな…どうして雪穂までそんなこと言うの?」

 

雪穂「それは…っ!」

 

ツカサ(雪穂はオレを見て何かを言いかけようとした)

 

ツカサ(そんな彼女の瞳は…オレには少し潤んでいたように見えた)

 

雪穂「…早く帰ろう、お姉ちゃん達も心配してるだろうし」ガチャ

 

亜里沙「あっ…待ってよ、雪穂ー!」ダッ

 

ツカサ「…」

 

ツカサ(その時のオレ達はまだ…気付いていなかった)

 

ツカサ(この世界に、とてつもなく大きな異変が起こっている事を…)

 

 

 

ツバサ「…あら?」

 

ツバサ(とある公園の中に入って歩いていた私は…掲示板に張られていたポスターを見つけた)

 

ツバサ「『WANTED』…ね」

 

ツバサ(そのポスターには…私を含めた三人の人物が顔写真付きで指名手配されていた)

 

ツバサ「それにしても、懐かしいわね…この場所も」

 

ツバサ(私は…ある出来事を思い出していた)

 

 

 

ツバサ(当時、小学校低学年だった私は…同じクラスだった英玲奈とあんじゅにある事を相談しようと公園で待ち合わせていた)

 

あんじゅ『くしゅん!うぅ…またバケツでおみずかけられちゃったわ』

 

ツバサ(あんじゅは…可愛くておっとりした性格で男子から人気があった為、妬んだ女子達からよくイジメられていた)

 

英玲奈『ひどくやられたな…これ、タオルだ』スッ

 

あんじゅ『ありがとう…えれなちゃんはさっきとられたすいとう、かえしてもらえたぁ?』フキフキ

 

英玲奈『いや、おまえはロボットなんだからあぶらでものんでいろといわれて…かえしてもらえなかった』

 

ツバサ(英玲奈は…整った顔立ちと真面目で優し過ぎる性格だった為に、気に入らなかった男子達からよくイジメられていた)

 

あんじゅ『そっか…じゃあ、あんじゅのすいとうでよかったらのんで?』サッ

 

英玲奈『ありがとう、あんじゅ…』ゴクゴク

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…またせちゃってごめん』

 

あんじゅ『あっ、ツバサちゃん…!?』

 

英玲奈『ツバサ、そのおでこのらくがき…どうしたんだ?』

 

ツバサ『さっき、クラスのみんなにかかれちゃって…みんながわらってるからわたしもわらうしかなかったんだけどね』エヘヘ

 

英玲奈『…チビってかかれているぞ』

 

ツバサ『そっか…なんてかかれたのかおしえてもらえなかったけど、やっぱりそんなふうにかかれちゃってたのね』

 

ツバサ(そして、私は…皆と比べて身長が低かった事やおでこが広い事を周りからよくバカにされていた)

 

あんじゅ『ヒドい…これ、えれなちゃんのタオルだけどよかったらふいて?』スッ

 

英玲奈『わたしからも…つかってくれ、ツバサ』

 

ツバサ『…うん、ありがとう』ゴシゴシ

 

ツバサ(いつからこうなってしまったのかは覚えていなかったけど…私達はこの毎日を過ごす事に慣れてしまっていた)

 

ツバサ(私達はそういう運命のもとに生まれてきたのだと…どこかで諦めていた部分もあったのだと思う)

 

ツバサ(だから…特に辛いとは思わなかった)

 

英玲奈『そういえばツバサ…わたしたちにだいじなはなしがあるんじゃなかったのか?』

 

ツバサ『うん…じつはわたし、ふたりとやってみたいことがあるの』ガサゴソ

 

ツバサ(私はランドセルから一枚のチラシを出した)

 

『オトノキちびっ子ダンス大会 開催!』

 

あんじゅ『ダンスたいかい…?』

 

ツバサ『じつはわたし…ダンス、はじめてみたいなっておもったの』

 

あんじゅ『ってことは…ツバサちゃんがそのたいかいにでるってことぉ?』

 

ツバサ『そう…いっしょうけんめいおどって、みんなからほめてもらうの!』

 

英玲奈『しかし、ダンスをやったこともないのに…ほんとうにだいじょうぶなのか?』

 

ツバサ『そ、それは…』

 

あんじゅ『そうよねぇ…もしツバサちゃんひとりだけでやるんだったら、あんじゅもたいへんだとおもうわ』

 

ツバサ『…そう、だよね』シュン

 

ツバサ(英玲奈とあんじゅにそう言われて…私は落ち込みかけていた)

 

ツバサ『じゃあ、やっぱりやめたほうがいいのかな…!』

 

ツバサ(その時、ふと私は…自分と同じくらいの身長の女の子が公園にある大きな水溜まりに向かって走っている姿を見かけた)

 

?『はっはっ…』ダダッ

 

ツバサ『…』

 

英玲奈『?…どうしたんだ、ツバサ』

 

あんじゅ『あのこがどうかしたのぉ?』

 

ツバサ『…』

 

ツバサ(不思議と私は…真っ直ぐに走っていく女の子に見惚れていた)

 

少女1『ほのかちゃん!』

 

少女2『…!』

 

ツバサ(『ほのか』と呼ばれる女の子は同い年くらいの二人の友達に見守られながら…水溜まりを飛び越えようとジャンプする)

 

ほのか『たぁーっ!』

 

少女1『あっ!』

 

少女2『うわっ…』

 

ほのか『ああっ!?』バッシャーン!

 

ツバサ(女の子は…そのまま水溜まりの中へと浸かってしまった)

 

ほのか『つめたーい!』

 

少女1『ほのかちゃーん!』

 

ほのか『んー、なんで…なんでなんでなんでぇ~!』

 

少女1『やっぱりムリだよ…かえろう?』

 

ほのか『だいじょうぶ、つぎこそできる!』

 

ツバサ(女の子は立ち上がると…さっきと同じ位置からもう一度、水溜まりを飛び越える為に挑戦しようとする)

 

ほのか『…いくよ!』ダッ

 

ツバサ(すると、再び走り出した女の子がジャンプする直前…私の耳にあるメロディが聴こえてきた)

 

ララランラン、ララランラン、ラーラーラランランランララン…♪

 

ツバサ『このメロディ、なに…?』

 

あんじゅ『えっ、ツバサちゃんにもきこえるの?』

 

ツバサ『!…あんじゅも?』

 

英玲奈『わたしにも、はっきりきこえる…』

 

ツバサ『えれなも?…!』

 

スタッ

 

ツバサ(私達が次に見た時には…女の子は既に水溜まりを飛び越えていた)

 

ほのか『…』ニコッ

 

ツバサ(女の子は二人の友達に向かってピースサインをしながら、笑っていた)

 

少女1『スゴい…スゴいよほのかちゃーん!』

 

少女2『わぁ…!』パチパチパチ

 

ツバサ『!…わかった』フフッ

 

英玲奈『ツバサ…?』

 

あんじゅ『なにがわかったのぉ?』

 

ツバサ(私はあの『ほのか』と呼ばれている女の子のおかげで…ようやく気付いた)

 

ツバサ(私は今まで辛いと感じなかったのではなく…辛いという気持ちそのものを我慢していた事に)

 

ツバサ(そして、それはきっと私だけでなく…英玲奈やあんじゅも同じなのだと)

 

ツバサ(私は女の子の諦めずに立ち向かう勇気と太陽のような眩しい笑顔を見て…初めて今のこの状況から抜け出したいと思った)

 

ツバサ『ねぇ、だったら…さんにんでいっしょにやってみない?』

 

あんじゅ『えっ…あんじゅたちも?』

 

ツバサ『そう、わたしたちはすごいんだってことを…みんなにしょうめいするの!』

 

英玲奈『ほんきでいっているのか?できるかどうかわからないのに…』

 

ツバサ『できるかどうかじゃなくて…やってみたいかどうかよ』フフッ

 

英玲奈『!』

 

あんじゅ『!』

 

ツバサ『…どう?』

 

あんじゅ『あんじゅは…やってみたい』

 

英玲奈『…じつをいうと、わたしもだ』

 

ツバサ『だったら…やってみましょう!』

 

ツバサ『だって、わたしたち…いままでずっといじめられてもがまんしてきたんだもの!』

 

ツバサ『だから、きっとやりたいとおもえば…どんなこともできる』

 

ツバサ『どんなゆめだって…かなえられるはずよ!』

 

英玲奈『ツバサ…そうだな』フフッ

 

あんじゅ『わたしたちさんにんで…がんばりましょうねぇ?』フフッ

 

ツバサ『ええ!』

 

ツバサ(それから大会に参加して優勝した私達は…学校でイジメられる事も無くなり、楽しい毎日を過ごすようになった)

 

ツバサ(やがて次の学年に進級を控えた春休みに入った時、私は海外の有名なダンススクールの講師をしていた大会の審査員からスカウトされた)

 

ツバサ(『ぜひウチのダンススクールに来てほしい』と言われ、悩んでいた私は…すぐに英玲奈とあんじゅの二人にこの事を相談した)

 

あんじゅ『…そう、それでどうしようかかんがえていたのねぇ?』

 

ツバサ『ええ…リーダーをやってきたきみならもっといろんなことができるはずだって』

 

英玲奈『…いってみればいいんじゃないか?』

 

ツバサ『え…?』

 

あんじゅ『そうね…そのほうがいいのかもしれないわねぇ?』

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…どうして?』

 

英玲奈『わたしもあんじゅも…ツバサがさそってくれたおかげで、うたっておどることのたのしさをしったんだ』

 

あんじゅ『ツバサちゃんもきっと…おんなじきもちのはずよ』

 

ツバサ『!…ふたりとも』

 

英玲奈『あんじゅもてんこうすることだし…な?』

 

ツバサ『えっ…そうだったの?』

 

あんじゅ『うん、じつはわたしにも…べつのしんさいんさんからウチにこないかっておはなしがきてたの』

 

ツバサ『じゃあ、えれなも…?』

 

英玲奈『ああ、わたしも…べつのしんさいんのせんせいがいるゆうめいなダンススクールにスカウトされていたんだ』

 

ツバサ『…じゃあ、おたがいはなればなれになるのね』ハァ

 

あんじゅ『そうよ…いまだけは、ねっ?』

 

ツバサ『へっ…?』

 

英玲奈『わからないのか?いつかまた、さんにんであつまって…もっとすごいことをしてやるんだ』

 

あんじゅ『あのたいかいのときよりも…みんながビックリするようなことをね!』

 

ツバサ『…!』

 

英玲奈『だから…やくそくだ、ツバサ』

 

あんじゅ『いつか、また…さんにんであいましょう!』

 

ツバサ『えれな、あんじゅ…ええ!』

 

ツバサ『ぜったいに、わたしたちさんにんで…また』フフッ

 

 

 

ツバサ「…」フフッ

 

ガサガサッ

 

ツバサ「!」

 

ツバサ(近くの茂みから物音が聞こえた私はすぐに…敵が私を狙って隠れていると判断した)

 

ツバサ(敵の数は…おそらく、十人くらい)

 

ツバサ「はぁ…あなた達、見て分からなかったかしら?」クルッ

 

ツバサ(私がそう言って振り返ると…『戦斗員』と呼ばれるガスマスクを着けた屈強な男達が物陰から次々と出てきた)

 

ツバサ「せっかく思い出に浸っているひとときを過ごしていたというのに…邪魔をしないでくれる?」

 

戦斗員「…」

 

ツバサ「…悪いけど今、私は機嫌が悪いの」

 

ツバサ(私は腹部からベルトを出現させ…風力エネルギーをベルトの中にある二つの風車へと吸収させた)

 

ツバサ「相手になるからには…それなりに楽しませてくれるのよね?」

 

 

 

ツカサ(帰る支度を整えた亜里沙は…中学の制服に着替え、スタジオのある部屋にやってきた)

 

亜里沙「ツカサ…」

 

ツカサ「!…雪穂は?」

 

亜里沙「先に出て、私を待ってくれてるよ…『ツカサとはもう顔も合わせたくない』って言ってた」

 

ツカサ「…そうか」

 

亜里沙「良いの…?」

 

ツカサ「あいつが決めた事だからな…もしかしたらオレも近々、別の世界に旅立つかもしれないしな」

 

亜里沙「…ねぇ、ツカサ?」

 

ツカサ「ん?」

 

亜里沙「私たちと最初に会った時…私が写真館でツカサに言ったこと、覚えてる?」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙『あなたと私たちの目的は『μ's』や私たちの世界を助けるために、九つの世界を救うこと…』

 

亜里沙『そして、あなたの記憶が戻るようにお手伝いすること!』

 

亜里沙「私ね…世界が平和になった今でも、ツカサの記憶が戻るように何かできることはないかなって思ってるんだ」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「さっきはあんなこと言っちゃってたけど…きっと、雪穂も同じことを思ってる」

 

ツカサ「…だから?」

 

亜里沙「えっ?」

 

ツカサ「結局、何が言いたいんだ…?」

 

亜里沙「…私たちは、まだツカサと一緒にいたい」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「だって…ツカサは私たちの世界を救ってくれたのに、私たちはツカサに何もしてあげられてないんだよ!?」

 

亜里沙「なのに、もうこれでお別れだなんて…さみしいよ!」

 

亜里沙「今まで一緒に旅をしてきた仲間なのに、どうしてツカサは私たちを…」

 

ツカサ「…言いたい事はそれだけか?」

 

亜里沙「えっ…?」

 

ツカサ「お前達が勝手にしてきた約束なんて…オレにとっては、別にどうだっていい」

 

亜里沙「ツカサ…でも!」

 

ツカサ「いいから早く自分の家に帰れ!」

 

亜里沙「!」ビクッ

 

ツカサ「オレの事はもう…放っておいてくれ」

 

亜里沙「…っ!」ダッ

 

ガチャ…バタン!

 

ツカサ(亜里沙は瞳に涙を浮かべながら…スタジオのある部屋から出て行った)

 

ツカサ「…」ハァ

 

ツカサ(おそらくオレはこれから…また違う、別の世界を旅する事になるだろう)

 

ツカサ(もし、そうなれば…平和になった『μ'sの世界』にまた訪れる可能性は限りなく低い)

 

ツカサ(だからこそ…オレはあえて、二人を突き放した)

 

ツカサ(そうまでしなければ彼女達はきっと…オレとの約束を果たそうと、この写真館に残るかどうか考えていただろう)

 

ツカサ(オレは…これ以上、彼女達を巻き込みたくなかった)

 

ツカサ(支えてくれる彼女達の存在があったからこそ…オレは今まで、世界を救う為に戦えた)

 

ツカサ(だが、彼女達には…『μ'sを超えるスクールアイドルになる』という夢がある)

 

ツカサ(オレはその夢の邪魔を…絶対にしたくないと思った)

 

ツカサ「…部屋の掃除でもするか」ハァ

 

 

 

ツバサ「期待外れもいいとこね…」フゥ

 

ツバサ(全ての戦斗員を倒した私は…既に変身を解除していた)

 

ツバサ(戦斗員達の身体は、白い泡状になるまで溶けていき…やがて跡形もなく消滅した)

 

ツバサ「一刻も早く…二人と合流しないといけないわね」

 

?「ツバサ~!」バサバサ

 

ツバサ(私のもとに飛んできたのは…見覚えのある白い小さな蝙蝠だった)

 

ツバサ「あら…キバーラじゃない」

 

キバーラ「もぉ~!探したわよぉ?」プンプン

 

ツバサ「ふふっ、心配させてごめんなさい…もう大丈夫よ」

 

キバーラ「…ホントに?」

 

ツバサ「ええ、問題ないわ」

 

キバーラ「そう…良かったわぁ~」ホッ

 

ツバサ「キバーラがここにいるって事は…もしかして、あの子達ももうこの世界に来ているの?」

 

キバーラ「…ええ」

 

ツバサ「そう…という事は『彼』も今はこの世界にいるって訳ね」

 

キバーラ「…その通りよ」

 

ツバサ「それなら、そろそろ決着をつけないといけないわね」

 

キバーラ「!…本気なの、ツバサ?」

 

ツバサ「もちろん本気よ…当然、あの二人もね」

 

ツバサ「この世界の問題は…私達自身の手で、終わらせたいの」

 

ツバサ「例え…それと同時に、この命が尽きてしまったとしても」

 

キバーラ「!」

 

ツバサ「…なんてね、冗談よ」フフッ

 

キバーラ「ツバサ…」

 

ツバサ「さて、今までずっと私のワガママを聞いてくれたキバーラだけど…またお願いしたい事があるの」

 

キバーラ「…分かったわ、いくらでも聞いてあげる」

 

ツバサ「けっこう大変な仕事になるわよ?」

 

キバーラ「ウフフッ…任せなさい!」

 

ツバサ「本当に良いの?」

 

キバーラ「あなたとアタシの仲じゃない…気にする事はないわ」

 

ツバサ「…そうね、ありがとう」スッ

 

ツバサ(私はある人に宛てた一通の手紙を…キバーラに託した)

 

キバーラ「!…この宛名って」

 

ツバサ「お願いね?」

 

キバーラ「…ええ!」バサバサ

 

ツバサ(キバーラが飛び去ったのを確認した私は…公園を後にした)

 

ツバサ「…」スタスタ

 

 

 

雪穂(写真館を出た私と亜里沙は…それぞれの家に帰ろうと、ゆっくり歩いていた)

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

雪穂「はぁ…ツカサってば、本当に素直じゃないよね!」

 

亜里沙「…えっ?」

 

雪穂「私達のことを心配するなら、もっと他に言い方があるはずなのに…もう!」プンプン

 

亜里沙「ふふっ…やっぱり、雪穂もそう感じてたんだね?」

 

雪穂「そりゃそうだよ…今まで、ずっと一緒に色んな世界を旅をしてきたんだよ?」

 

雪穂「そんなの…イヤでも分かるに決まってるじゃん」

 

亜里沙「…雪穂」

 

雪穂「でも、もし仮にツカサの旅に着いて行ったら…私達はこの世界に帰れなくなるかもしれない」

 

雪穂「だからツカサは…あえて私達を、冷たく突き放したんだと思う」

 

亜里沙「…うん、それは私も分かってる」

 

亜里沙「でもね…私、ツカサとした約束をどうしても破りたくない」

 

亜里沙「だって、ツカサは…私たちの仲間だから」

 

雪穂「それは私もそうだけど…あっ!?」ピタッ

 

亜里沙「どうしたの?」

 

雪穂「これ…一緒に持ってきちゃった」

 

雪穂(私は亜里沙に青いカバンを見せた)

 

亜里沙「そのカバンって…ツバサさんの?」

 

雪穂「うん、どうしようか?」

 

亜里沙「そのカバンの中って…『ディエンドガン』が入ってるんだったよね?」

 

雪穂「いや、そんな名前じゃなくて…『ディエンドライバー』って名前だったと思う」

 

亜里沙「そっか…ツバサさんに会ったら、早く返さないといけないね」

 

雪穂「そうだね…帰る前に一度、UTX高校に寄ってみた方が良いかな?」

 

亜里沙「う~ん…」

 

ユキホー!

 

雪穂(すると…誰かが遠くから大きな声で私達の名前を呼びながら、こちらに向かって走ってきた)

 

雪穂「お…お姉ちゃん!?」

 

穂乃果「ハァハァ…えいっ!」ガシッ

 

雪穂(走るお姉ちゃんはそのまま勢いよく、私に抱きついてきたが…お姉ちゃんの力はあまりにも強過ぎた)

 

雪穂「ちょっ…だから痛いって!」

 

穂乃果「あっ…ごめん、つい嬉しくて!」エヘヘ

 

雪穂「もう…」ハァ

 

亜里沙「穂乃果さん、お久しぶりです!」

 

穂乃果「へっ…えっと、亜里沙ちゃんだっけ?」

 

亜里沙「?…はい!」

 

穂乃果「久しぶりだね~…最後に会ったのっていつだったっけ?」

 

亜里沙「えっ…?」

 

雪穂「…は?」

 

穂乃果「ごめんね~…最近、何だか忘れっぽくって!」アハハ

 

亜里沙「でも、この前…穂乃果さんたちが私たちを怪人から助けて」

 

穂乃果「怪人…何のこと?」

 

雪穂「!」

 

亜里沙「…覚えて、ないの?」

 

穂乃果「覚えてないも何も…私、そんなの知らないよ?」

 

亜里沙「でも、穂乃果さんは『仮面ライダー』に…」

 

雪穂「待って、亜里沙!」

 

亜里沙「…雪穂?」

 

穂乃果「『仮面ライダー』って…何?」

 

雪穂「う…ううん、何でもないから!」

 

雪穂「きっと…寝てる時に見た夢と混ざっちゃったんだよ!」

 

穂乃果「ゆ、夢…?」

 

雪穂「そう、夢!」

 

雪穂「だから…この話は忘れて!」

 

穂乃果「そっか~…夢の話だったんだね!」

 

亜里沙「ゆ、雪穂…?」

 

雪穂(私はお姉ちゃんに聞こえないよう…亜里沙にこう説明した)

 

雪穂「たぶん…この世界が平和になったから、お姉ちゃんが仮面ライダーになった記憶がないんだと思う」ボソッ

 

亜里沙「!…そうなの?」

 

雪穂「怪人が出たことすらも覚えてないみたいだし…きっと絵里さん達もお姉ちゃんと同じだと思う」

 

亜里沙「そっか…」

 

穂乃果「…ねぇ、私にナイショで何の話してるの?」

 

雪穂「い…いや、別に!」

 

亜里沙「何でもないですよ!」

 

穂乃果「ふ~ん…ところで雪穂、その手に持ってる青いカバンは何?」

 

雪穂「えっ、これのこと…?」

 

穂乃果「そうそう…そのカバンって新しく買ったの?」

 

雪穂(私は色々聞かれると面倒なことになると思い…ツバサさんのカバンだとは答えなかった)

 

雪穂「まあ…そう、かな」

 

穂乃果「良いなぁ~…それ、私がこの前買ったカバンと交換してくれる?」

 

雪穂「はぁ…?ダメに決まってるじゃん」

 

穂乃果「えぇっ!なんでなんで~!?」

 

雪穂「なんでも」

 

穂乃果「うぅ~…ケチ!」ベー

 

アリサー!

 

亜里沙「あっ、お姉ちゃんだ!」

 

雪穂(私がお姉ちゃんと話していると…絵里さんが私達のもとにやってきた)

 

絵里「あら、穂乃果…あなたもまだ帰ってなかったの?」

 

穂乃果「うん、雪穂と一緒に帰ろうかなと思って!」

 

絵里「そう…実は私も今日は亜里沙と一緒に帰ろうと思っていたの」

 

亜里沙「お姉ちゃん…会いたかった!」ギュッ

 

絵里「あらあら…亜里沙ったら」フフッ

 

雪穂(久々に絵里さんに会って喜ぶ亜里沙は…絵里さんに抱きついた)

 

亜里沙「あれ…?」

 

絵里「…どうかしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「えっ?あっ…ううん、何でもないよ!」

 

雪穂「…?」

 

絵里「ふふっ、じゃあ…帰りましょうか?」

 

亜里沙「うん!」

 

穂乃果「絵里ちゃん、亜里沙ちゃん…じゃあね!」

 

絵里「ええ…また明日ね」

 

亜里沙「さようなら!」

 

雪穂「…じゃあ、また」

 

亜里沙「うん、またね!」

 

雪穂(亜里沙と絵里さんは…お互いの手を繋いで、私達と別れた)

 

雪穂「…」

 

穂乃果「じゃあ、私達も…手を繋いで帰ろっか!」

 

雪穂「あっ…えっ、は!?」

 

穂乃果「まあまあ…そんな遠慮しないで!」ガシッ

 

雪穂(お姉ちゃんは無理やり私の手を引っ張って、家に帰ろうとする)

 

雪穂「いや、恥ずかしいからやめてよ!?」

 

穂乃果「いいからいいから~♪」

 

雪穂「よくないよ!?」

 

穂乃果「よーし…家まで飛ばすよ~!」ダダッ

 

雪穂「わわっ…だから、そんなに勢い良く走ったら転んじゃうってば!」

 

雪穂(そういえば亜里沙…絵里さんに抱きついた時、何か変わった所でもあったのかな?)

 

雪穂(私の気のせいだと、良いんだけど…)

 

 

 

ツカサ(他の場所を掃除し終わったオレは…最後に自分の寝室を掃除していた)

 

ツカサ「よし、これで一通り終わったな…ん?」

 

ツカサ(オレはベッドの枕の横に…『ツカサへ』と書かれた置き手紙とピンク色の大きな冊子があるのを見つけた)

 

ツカサ「いつもオレの部屋には入るなと言っているはずなんだが…こんな事をするのは亜里沙か?」ハァ

 

ツカサ「全く、仕方ないな…とりあえず手紙を読んでみるか」パサッ

 

ツカサ(手紙を読んでみると…そこにはたった一文しか書かれていなかった)

 

『せっかく写真撮ってるんだから、このアルバムに撮った写真をちゃんと入れておいてください』

 

ツカサ「この字は雪穂か…あいつ、手紙でもいちいちうるさいな」

 

ツカサ(手紙を読んだオレは一緒に置かれていた冊子を手に取ると…表紙にはある題名がつけられていた)

 

ツカサ「…!」

 

『旅のアルバム』

 

ツカサ「こっちは亜里沙の字か…なるほど、だいたいわかった」

 

ツカサ(きっと二人は…オレがこれまで色んな世界で撮影した写真を残せるようにと考え、どこかで買ってきてくれたのだろう)

 

ツカサ「確か、今までの写真はここに…あった」

 

ツカサ(オレはベッドの横にある小さい棚の引き出しから、これまで撮影した十枚の写真を取り出した)

 

ツカサ「…これで全部だな」

 

ツカサ(オレは早速、アルバムを開いて…まず一枚の写真をアルバムのポケットの中に入れた)

 

ツカサ「思えば…これが一番最初に撮った写真だったな」

 

ツカサ(その写真は…オレが雪穂や亜里沙に初めて会った時に撮影した写真だった)

 

ツカサ「…他の写真も入れてみるか」

 

ツカサ(残りの九枚の写真もアルバムのポケットの中に入れたオレは…ゆっくりとアルバムを閉じた)

 

ツカサ「よし、これで良いな…」パタン

 

ツカサ「ひとまず今日は早く晩飯や風呂を済ませて寝るか…でも一人だからな、これからは節約してシャワーで済ますか」

 

ツカサ「晩飯は食べさせる同居人がいないからな…どうしたもんか」スタスタ

 

ツカサ(オレは掃除機を持って、自分の部屋を出た)

 

 

 

穂乃果「いっただきまぁ~す!」

 

雪穂「い…いただきます」

 

雪穂(家に帰った私達は…お姉ちゃんが作った晩ご飯を食べようとしていた)

 

穂乃果「うん…今回の肉じゃがは前のより美味しくできた気がするかなぁ~?」モグモグ

 

雪穂「…」

 

穂乃果「あれ…雪穂、食べないの?」

 

雪穂「えっ?」

 

穂乃果「もしかして…どこか具合でも悪いの?」

 

雪穂「あっ、いや…そんなことないよ?」

 

穂乃果「じゃあ…私の作った肉じゃが、食べたくないとか?」

 

雪穂「食べたくないってわけじゃないけど…何か変だなぁと思って」

 

穂乃果「…変?」

 

雪穂「そりゃ変でしょ…いつもはぐうたらしてばかりのお姉ちゃんが、珍しく晩ご飯作ってるんだから」

 

穂乃果「えぇっ!?ひどいよぉ~!」

 

雪穂「それに、お父さんやお母さんも家にいないし…」

 

穂乃果「あっ…二人なら、旅行に行ってくるって言って出かけたよ?」

 

雪穂「旅行!?」

 

穂乃果「うん」

 

雪穂「急だなぁ…私、全然知らなかったんだけど?」

 

穂乃果「そうだったっけ?前にお母さんが言ってたと思うんだけど…」

 

雪穂「いや…そんなの聞いた覚えないよ?」

 

穂乃果「じゃあ、ちゃんと聞いてないとか…」

 

雪穂「そんなのありえないでしょ…お姉ちゃんじゃないんだし」

 

穂乃果「うっ、当たってるだけに言い返せない…」

 

雪穂「…で、そのケガは何?」

 

雪穂(私はお姉ちゃんの右手の人差し指にばんそうこうが貼られていたことを指摘した)

 

穂乃果「これ?実は…じゃがいも切る時に一緒に切っちゃって」エヘヘ

 

雪穂「そんなことだろうと思った…本当、お姉ちゃんったらそそっかしいよね?」

 

穂乃果「アハハ…気をつけます」

 

雪穂(私はお姉ちゃんが作った肉じゃがを食べ始めた)

 

雪穂「…」モグモグ

 

穂乃果「…どう?」

 

雪穂「いまいち…かな」

 

穂乃果「そっかぁ~…厳しいなぁ」ハァ

 

雪穂「そうかな…もとからこんな感じだよ?」

 

穂乃果「う~ん、今回は自信あったんだけどなぁ…」

 

雪穂「…前にツカサが作ってくれた肉じゃがが美味しかったせいかな?」ボソッ

 

穂乃果「えっ、何か言った…?」

 

雪穂「あっ…ううん、何でもない!」

 

雪穂(私はこれ以上、お姉ちゃんに何かを聞かれないように…急いで晩ご飯を食べた)

 

穂乃果「…」

 

 

 

雪穂「うぐぐっ、入らない…!」グギギ…

 

雪穂(晩ご飯を食べて、お風呂を済ませた私は…部屋にあったズボンを履こうとしていた)

 

雪穂「あと、もう少し…っ!」グギギ…

 

雪穂(でも…お腹の周りがどうしてもキツくて、私は履こうとするのを止めた)

 

雪穂「だ、ダメだ…やっぱり無理!」ハァハァ

 

雪穂「それにしても、おかしいなぁ…このサイズなら前まではすんなり入ってたはずなんだけど」

 

雪穂「何で入らなくなったんだろう…!」ハッ

 

雪穂(私は…旅をしていた間、ずっとツカサが作る美味しい料理を毎日よく食べていたことを思い出していた)

 

雪穂「もしかして私…また、体重増えた!?」

 

雪穂(そういえば…龍騎の世界でご飯を食べていた時に、ツバサさんにこんなことを言われたような気がする)

 

ツバサ『食べ過ぎには気をつけてね』

 

雪穂「まさか、あの言葉って…そういう意味だったの?」

 

雪穂(そういえば、旅をしていた間の私は…ちゃんとした運動をあまりしていなかったような気がする)

 

雪穂(たまに走ることはあったけど、怪人から逃げ回ったりとか誰かを追いかけたりとか…それぐらいしかしていなかったと思う)

 

雪穂「ヘコむなぁ…またダイエットしなきゃ」ハァ

 

~♪

 

雪穂(ショックを受けて落ち込んでいると…私の携帯に着信音が鳴った)

 

雪穂「あれ…亜里沙から?」

 

雪穂(私は亜里沙からの電話に出た)

 

雪穂「…もしもし、亜里沙?」

 

亜里沙『あっ…雪穂?』

 

雪穂「こうやって電話するのも久しぶりだね…それで、何かあったの?」

 

亜里沙『う、うん…実はね?』

 

亜里沙『お姉ちゃんの様子が…いつもと違う気がするの』

 

雪穂「…絵里さんが?」

 

亜里沙『うん…』

 

雪穂「私からは、特に何も変わってないように見えたけど…」

 

亜里沙『私も最初はそう思ってたんだけど…さっき、お姉ちゃんに抱きついた時に変だなって感じたの』

 

雪穂「抱きついた時って…何が変だったの?」

 

亜里沙『…お姉ちゃんのニオイがいつもと違うの』

 

雪穂「えっ…ニオイ?」

 

亜里沙『うん、いつもお姉ちゃんは優しくて良いニオイがするはずなんだけど…今日は違ったの』

 

雪穂「ニオイがいつもと違うって…シャンプーや石けん変えたとか、コロンつけたとかじゃないの?」

 

亜里沙『ううん、全然そういうのじゃなくて…』

 

雪穂「そういうのじゃないって…じゃあ、何のニオイがしたの?」

 

亜里沙『それが…何のニオイもしなかったの』

 

雪穂「…えっ?」

 

?「…」ポンッ

 

雪穂(その時…後ろから誰かが私の肩を叩いた)

 

雪穂「!?」クルッ

 

穂乃果「雪穂ぉ~…はい、お茶!」コトッ

 

雪穂(私に声をかけたのは…お風呂からあがったばかりのお姉ちゃんだった)

 

雪穂「ビックリしたぁ…ノックもしないで入ってこないでよ、もう!」

 

穂乃果「ア、アハハ…ごめんごめん」

 

雪穂「しかも人が電話してる時に話しかけてきて…本当、お姉ちゃんってデリカシーないよね!?」

 

穂乃果「エヘヘ…」ポリポリ

 

亜里沙『雪穂…雪穂!どうしたの!?』

 

雪穂「あっ…ごめん、勝手にお姉ちゃんが私の部屋に入ってきちゃって」

 

亜里沙『そうだったんだ…良かったぁ』ホッ

 

穂乃果「…あっ、そうだ!」

 

雪穂「何…まだ何かあるの?」

 

穂乃果「実は明日…UTXの屋上でライブの練習をすることになったの!」

 

雪穂「UTXで?どうしてまた…」

 

穂乃果「UTXのエラい人がね…『ぜひライブの練習場所として使ってほしい』って言ってくれたんだ!」

 

雪穂「UTXの偉い人…?」

 

穂乃果「うん…その人、雪穂や亜里沙ちゃんにも会いたいって言ってたよ!」

 

雪穂「えっ…私と亜里沙に?」

 

穂乃果「うん!」

 

雪穂「私達、まだスクールアイドルじゃないんだけど…?」

 

穂乃果「実は…私がその人に二人のことを話したら、ぜひ会ってみたいって!」

 

雪穂「えぇ…?」

 

穂乃果「お願いお願いお願~い!この通りだからぁ~!!」ジタバタ

 

雪穂(お姉ちゃんは突然、私の部屋の床に寝転がり始め…駄々をこねた)

 

雪穂「うるさいなぁ…もう分かった、分かったから子どもみたいなことしないでよ!」

 

穂乃果「えっ…本当に!?」ガバッ

 

雪穂「…亜里沙、今のお姉ちゃんの話なんだけど聞こえてた?」

 

亜里沙『うん、私は大丈夫だよ!』

 

亜里沙『もしかしたら…ツバサさんに会えるかもしれないし!』

 

雪穂「あっ、そっか…」

 

穂乃果「決まりだねっ!」

 

穂乃果「じゃあ…今日はもう早く寝よう!」

 

雪穂「もう寝るって…まだ夜九時になったばっかりだよ?」

 

穂乃果「でも明日も早いからねぇ~…亜里沙ちゃんも早く寝て、絵里ちゃんと一緒に来てね!」

 

亜里沙『あっ…はい!』

 

穂乃果「それじゃ、おやすみ!」

 

亜里沙『お、おやすみなさい!』

 

雪穂「いや…まだ私達、話してる途中なんですけd」

 

穂乃果「ほいっ」サッ…ピッ

 

雪穂(お姉ちゃんは私の携帯電話を取り上げると…勝手に亜里沙との電話を切ってしまった)

 

雪穂「…って、ああっ!?」

 

穂乃果「雪穂も早く寝ないとね~…はい!」スッ

 

雪穂「ありえない…!何で勝手に人の電話切っちゃうの!?」

 

穂乃果「気にしない気にしない…」

 

雪穂「気にするよ!!」

 

雪穂「ったく、もう…あれ?」

 

雪穂(お姉ちゃんから携帯を取り返した私は、また亜里沙に電話しようとしたけど…)

 

雪穂「ウソ…?圏外になってる!?」

 

穂乃果「変だねぇ…電波障害でもあったのかな?」

 

雪穂「どうしてこんな時に…もう、こうなったのもお姉ちゃんのせいだからね!?」

 

穂乃果「まぁまぁ…どっちにしても亜里沙ちゃんとはまた明日会えるんだから、その時に話したら良いんじゃない?」

 

雪穂「それは、そうかもしれないけど…」

 

穂乃果「だよねっ!じゃ、おやすみ~…」フワァ

 

雪穂「待ってよ!?まだ話は…」

 

バタン

 

雪穂(お姉ちゃんはそのまま…自分の部屋に戻っていった)

 

雪穂「ちょっと!?いつも自分勝手なんだから…ん?」

 

雪穂(私がふと部屋の床を見ると…ばんそうこうが落ちていた)

 

雪穂「このばんそうこうって…お姉ちゃんの?」ヒョイ

 

雪穂(そうだとしたら…もしかしてばんそうこうを貼っていたままお風呂に入ったせいで、はがれちゃったのかな?)

 

雪穂「そそっかしいなぁ…ん?」

 

雪穂(ばんそうこうをごみ箱に捨てようとした私がふと、ばんそうこうの内側を見ると…)

 

雪穂「…何、これ?」

 

雪穂(そこには…緑色の液体がにじんでいる跡があった)

 

雪穂「お姉ちゃんのばんそうこうじゃなかったのかな…?」ウーン

 

雪穂(私はしばらく考えていたけど…答えは出てこなかった)

 

雪穂「…まあ、いっか」ポイッ

 

雪穂(考えるのをやめた私は…ばんそうこうをごみ箱に捨てた)

 

雪穂(とにかく…明日、亜里沙に会った時に話の続きを聞いてみよう)

 

雪穂(そう思い、私は…寝る準備を始めることにした)

 

雪穂(お姉ちゃんがまだ襖のすぐ向こう側にいるのに気がつくこともなく…)

 

穂乃果「…」

 

 

 

1号「はっ!」ドカッ!

 

戦斗員「…!」バタッ

 

2号「…ふぅ、これでみんな倒したわね?」

 

1号「ああ、そのようだな」

 

2号「そういえばついでに壊しちゃったけど…これ、何の装置かしら?」

 

1号「それは…おそらく携帯の電波を遮断する装置だろうな」

 

2号「分かるの?テキトーに聞いたつもりだったんだけどぉ…」

 

1号「機械には少し詳しいんだ」

 

2号「ふぅ~ん…一体、今度は何をしようとするつもりなのかしら?」

 

1号「ここの警備が手薄だった事も不自然だな…『彼女達』がいないのもおかしい」

 

2号「確かに…それはそれで何だか腑に落ちないわね?」

 

1号「うむ、私達も見くびられたものだ」

 

2号「そう思うと、何だか急に疲れてきちゃったわねぇ…」ハァ

 

1号「無理もない…午前の二時過ぎだからな」

 

2号「もうそんな時間なのね…このままここに居てもお肌に悪いし、早く帰って休みましょう?」

 

1号「そうだな、そうしよう」

 

?「待て!」

 

1号「!」バッ

 

ヘラクス「裏切り者というのはお前達か?」

 

2号「裏切りも何も…私達はあなた達の味方になったつもりは無いわよ?」

 

ケタロス「フン、蛆虫共が…我々に刃向かう反抗勢力はこの俺達が始末する」

 

ヘラクス「俺達は世界を勝ち取る為なら、例え相手が女だろうと容赦はしない!」

 

1号「…どうやら、まだ帰れそうにはないみたいだ」

 

2号「んもぅ~…こうなったら本気出して、早めに片付けちゃいましょう?」

 

1号「ああ、了解だ」

 

『Rider Beat』

 

ヘラクス「お前の相手は…この俺だっ!!」ダッ

 

1号「…」フッ

 

『Rider Beat』

 

ケタロス「我々の魂は…『ショッカー』と共にありぃぃぃぃ!!」ダッ

 

2号「うふふっ…」

 

 

 

ツカサ(夜が明け…オレは写真館を出た)

 

ツカサ「…ん?」

 

ツカサ(服装は写真館を出る前とほぼ同じだったが…いつの間にか、中のTシャツだけが別のものに変わっていた)

 

ツカサ「ピンク…いや、マゼンタカラーのTシャツか」

 

ツカサ(そのTシャツには…『25』という数字が大きくプリントされていた)

 

ツカサ「で、名前の方は…これか?」ガサゴソ

 

ツカサ(オレはこの世界での肩書きを確認する為に…上着のポケットの中から紙を取り出した)

 

ツカサ(紙には『門矢ツカサ』とだけ書かれていたので…おそらくこれが、この世界でオレが名乗るべき名前なのだろう)

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

ツカサ(この世界での自分の名前を確認したオレは…それを元の場所に仕舞った)

 

ツカサ「ふぅ…それにしても、何かが引っ掛かるな」

 

ツカサ(スタジオの背景や外の景色が変わらないという事は…オレはまだ『μ'sの世界』にいる)

 

ツカサ(だからこそ…オレは、不思議に感じていたのだ)

 

ツカサ(これまでの旅は…各世界に起きた異変を食い止める事で、次の世界へと移動してきたはずだ)

 

ツカサ(だが今回は…異変を食い止めたにも関わらず、次の世界に移動できていない)

 

ツカサ「世界の異変はもうなくなったはずなんだが、おかしいな…!」ハッ

 

ツカサ(オレは旅を始める直前…誰かに言われていたある言葉を思い出した)

 

『ディケイドである君と高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在が…μ'sとこの世界を救う鍵になるの』

 

ツカサ「…まさか、昨日の出来事が原因なのか?」

 

ツカサ(もし昨日のやりとりが原因で次の世界に行けないのなら…この世界も『μ's』も、まだオレは救えていないという事になってしまう)

 

ツカサ(それが本当だと仮定すれば…オレはまた、雪穂と亜里沙に会わなければいけない)

 

ツカサ「全く、仕方ないな…」ハァ

 

ツカサ(ひとまずオレは雪穂に会う為に…穂むらへと向かった)

 

ツカサ(さっき、ポケットから紙を取り出した時に一緒に入っていたもう一つの何かを落としていた事にも気付かずに…)

 

 

 

雪穂(その頃、私達は…UTXの屋上にいた)

 

雪穂「本当にここで練習するんだ…」

 

亜里沙「そういえば…お姉ちゃんたち、ここでA-RISEと第二回予備予選のライブをやったんだよね!」

 

雪穂「そうだったね…まさかあの時はお姉ちゃん達がツバサさん達と会って話してたなんて思いもしなかったよ」

 

亜里沙「私も!」

 

雪穂「…ところで、お姉ちゃん達は?」キョロキョロ

 

亜里沙「練習着に着替えてから来るって言ってたよ!」

 

雪穂「そっか…」

 

亜里沙「あれ…雪穂、そういえばあの青い銃は?」

 

雪穂「うん、実はツバサさんに返そうと思って青いカバンに入れて持って来たんだけど…まだツバサさんに会ってなくて」

 

亜里沙「そうなんだ…」

 

雪穂「あっ…そういえば昨日は話が終わってなかったのに、途中でお姉ちゃんが割って入ってきちゃってごめんね?」

 

亜里沙「そんな…別に私は気にしてないよ?」

 

雪穂「あの後にお姉ちゃんが勝手に電話切っちゃったから、かけ直そうとしたんだけど…携帯の電波が圏外になっちゃってて」

 

亜里沙「大丈夫だよ…私もかけ直そうとしたら、圏外になってたから」

 

雪穂「えっ、亜里沙も?」

 

亜里沙「うん…朝にテレビのニュースを見て知ったんだけど、午前二時過ぎまで電波障害があったらしいよ!」

 

雪穂「そうだったんだ…ところで、絵里さんの話なんだけど」

 

亜里沙「…うん」

 

雪穂「ニオイがしなかったっていうのは…」

 

?「お待たせしました」

 

雪穂「?」クルッ

 

穂乃果「…」

 

雪穂(私達が振り返ると…そこにはお姉ちゃんとことりさんがいた)

 

雪穂「もう…本当に間が悪いよね、お姉ちゃんってば」

 

穂乃果「…ごきげんよう」

 

雪穂「いや、むしろ機嫌悪い方なんだけど…」

 

亜里沙「穂乃果さん、いつもと違う…何だか海未さんみたい」

 

雪穂「全然似てないし、変でしかないでしょ…あれ?」

 

ことり「…」

 

雪穂「そういえばことりさん…髪型がいつもと違いますよね?」

 

亜里沙「私のお姉ちゃんと同じポニーテールだね…」

 

ことり「ええ…ハラショーでしょ?」

 

雪穂「は、はい…?」

 

穂乃果「素晴らしいですね…あなたもそう思いませんか?」クルッ

 

雪穂(お姉ちゃんが後ろを振り向くと、そこには…なんと凛さんのような格好をした海未さんがいた)

 

海未「ニャー!!」

 

雪穂「えっ、海未さんまで!?」

 

海未「さぁ…今日も練習!いっくニャー!!」

 

亜里沙「かわいい…こんな海未さんも良いかも!」

 

雪穂「いやいや…そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

雪穂(すると今度は…凛さんが髪の毛をイジりながらやってきた)

 

凛「ナニソレ…イミワカンナイ!」クルクル

 

雪穂「意味分かんないのはこっちの方なんですけど!?」

 

凛「メンドーなヒト…」

 

穂乃果「そんな話し方はいけませんよ?」

 

凛「オコトワリシマス!」

 

亜里沙「凛さんは真姫さんみたいになってるね…?」

 

海未「ニャー」

 

雪穂「一体、何がどうなってるの?」

 

穂乃果「ライブの練習です」

 

雪穂「は…?それが!?」

 

ことり「ええ、みんなで決めたことよ」

 

雪穂「は、はは…頭痛くなってきたんで帰ります」スタスタ

 

海未「あー!?途中で帰ろうとするのはズルいニャー!」ピタッ

 

雪穂「ちょっと海未さん!?放してくださいよ!」

 

亜里沙「良いなぁ…」

 

雪穂「別に良くないから!」

 

…ポン

 

海未「ニャ?」クルッ

 

雪穂(私にしがみつく海未さんの肩を優しく叩いてくれたのは…真姫さんだった)

 

真姫「…」

 

雪穂「あっ、真姫さん…!」

 

真姫「とは言っても、別にずっとこれで練習やるって言った覚えは…無いやん?」

 

亜里沙「その話し方…もしかして、希さんかな?」

 

雪穂「そんな、真姫さんまでおかしく…」

 

?「にっこにっこにー!」

 

亜里沙「あっ…花陽さんだ!」

 

花陽「あなたのハートににこにこにー!青空もー…にこっ!」

 

亜里沙「スゴい…にこさんになりきってる!」

 

雪穂「でも青空って…今、けっこう曇ってますよ?」

 

花陽「…にこっ!」

 

雪穂「あの…無理に押し通そうとしなくて良いですから」

 

ことり「ハラショー」

 

雪穂「えっと…ことりさん、もしかしてロシア語のレパートリーそれだけしかないんじゃないですか?」

 

ことり「そんなことないわよ?ボルシチ、ピロシキ、ビーフストロガノフ…」

 

雪穂「全部食べ物でしかないですよ!?」

 

亜里沙「でも、みんなから見たお姉ちゃんのイメージってだいたいこんな感じだと思うし…」

 

雪穂「…亜里沙、それ以上は言わないであげて?」

 

にこ「亜里沙ちゃ~ん…」クネッ

 

亜里沙「えっ…にこさん?」

 

にこ「絵里ちゃんはぁ、そんな感じじゃないと思うよぉ~?」クネッ

 

雪穂「あの…さっきからクネクネしてますけど、それは誰のモノマネなんですか?」

 

にこ「そんなヒドいこと言うと、おやつにしちゃうぞぉ~…チュンチュン♡」クネッ

 

亜里沙「もしかして、ことりさんかな…?」

 

雪穂「えぇ…?ことりさんってあんな感じじゃないと思うけど」

 

希「やぁー!今日もパンが美味いっ!!」パクッ

 

亜里沙「希さんは…穂乃果さんだね!」

 

雪穂「うん、間違いなくそうだね」

 

穂乃果「えっ…どこもツッコまないんですか?」

 

雪穂「は?ツッコむわけないじゃん、いつもあんな感じだし…」

 

ことり「こら、また遅刻よ」

 

希「ごめぇーん…」

 

穂乃果「…」

 

絵里「大変ですっ!」

 

亜里沙「あっ、お姉ちゃん!」

 

雪穂「えっと…あと残ったのは花陽さんだけか」

 

亜里沙「花陽さんはもういるよ?」

 

雪穂「いや、そっちの花陽さんはにこさんで…やっぱりいいや」

 

亜里沙「?」

 

穂乃果「どうしたのです?」

 

絵里「スー、ハー…スー、ハー…」

 

絵里「み、皆がっ!」

 

亜里沙「…?」

 

絵里「皆がぁ~!」

 

雪穂「…?」

 

絵里「やっぱり変よ」

 

穂乃果「…えっ、やっぱり?」

 

雪穂「やっぱりも何も…最初からずっとそう言ってたよ!?」

 

ことり「そうね…本当にね」

 

凛「キモチワルイ」

 

真姫「だから…凛、それやめなさいよ!?」

 

凛「オコトワリシマス」

 

真姫「…っ!」ワナワナ

 

絵里「まあまあ、真姫…」

 

真姫「…フンッ!」プイッ

 

絵里「凛も…もうやめなさい」

 

凛「やめるなんて…ミトメラレナイワァ」

 

絵里「…凛?」ゴゴゴ

 

凛「ヒッ…!」ビクッ

 

穂乃果「そもそも、海未ちゃんが『長時間のライブだから途中で空気を変えてみた方が良い』って言い出すから…」

 

海未「なっ…私のせいにするんですか!?」

 

海未「それを聞いて『じゃあ、また入れ替わってみよっか?』って希が言ったからこうなったのですよ!?」

 

希「あれ、そうやったっけ?」

 

海未「覚えていないのですか!?」

 

ことり「お、落ち着いて海未ちゃん…」

 

海未「一度ならず二度もこんな辱しめを受けておいて…落ち着ける訳がないじゃないですか!」

 

にこ「ちょっと花陽…アンタ、前にやった時にも言ったわよね?」

 

花陽「に、にこちゃん…?」

 

にこ「『にこっ!』じゃなくて『にこっ♡』よ!可愛くやんなきゃダメじゃない!?」

 

花陽「ピャアッ!?」

 

にこ「こうなったら特訓するしかないわね…!」

 

花陽「えっ…何を?」

 

にこ「もちろん、にこになりきる特訓よ!」

 

花陽「と…特訓!?」

 

にこ「生半可な気持ちで私のマネをするなんて甘いのよ…とにかく、みっちり指導してあげるわ」

 

花陽「だ、だ…誰か助けてぇ~!!」

 

ギャーギャー

 

雪穂「ライブまであとちょっとしかないのに…こんなんで本当に大丈夫なのかなぁ?」

 

亜里沙「私は面白かったから、もうちょっと見たかったけどなぁ…あれ?」

 

海未「大体、希はそういう所が…!」シュゥゥゥ…

 

亜里沙「海未さん…?」

 

雪穂「…どうかしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「いや、何だか海未さんの様子が変な気がして…」

 

雪穂「変って…今よりさっきの方がよっぽど変だったと思うけど」

 

亜里沙「そうじゃなくて…ううん、やっぱり何でもない」

 

雪穂「…?」

 

穂乃果「…」

 

 

 

ツカサ(穂むらに着いたオレだったが…店の出入口には一枚の張り紙が貼られていた)

 

『都合により二〇〇九年一月二十五日を以て閉店します 長らくのご愛顧ありがとうございました 穂むら』

 

ツカサ「二〇〇九年の一月に…閉店?」

 

ツカサ「いや、そんなはずはない…きっと何かの間違いだ」

 

ツカサ「…」ガタガタ

 

ツカサ(オレは店の引き戸を開けようとしたが…出入口の鍵は閉まっていた)

 

ツカサ「皆、どこかへ出かけているのか…ん?」ピラッ

 

ツカサ(オレがふと張り紙を捲ると…そこにはまた別の張り紙が貼られていた)

 

ツカサ「『指名手配』…!」

 

ツカサ(それは…ツバサを含めた三人の女性が指名手配されているという内容のポスターだった)

 

ツカサ「なぜアイツが?…!」

 

ツカサ(その時…耳の中が痛くなり始めた)

 

ツカサ「何だ、この感覚は…っ!?」

 

ツカサ(オレが空を見上げると…三種類ほどの怪物が次々と現れ、目の前に落ちてきた)

 

陸のアンデッド「…」

 

空のアンデッド「…」

 

海のアンデッド「…」

 

ツカサ「!…特徴が無さ過ぎて断定しづらいが、何となくアンデッドだという事は分かるな」

 

ツカサ(そして、他の怪物よりも二回りほど大きな体格をした怪物が空から着地してきた途端…凄まじい波動が生まれた)

 

マザーアンデッド「…」

 

ツカサ「うわっ…!」ゴロゴロ

 

ツカサ(波動の影響を受けたオレは仰け反り、薙ぎ倒されてしまう)

 

ツカサ「ここじゃ変身して戦えないな…もし仮に勢い余ってこの穂むらまで破壊してしまったら、雪穂に何て怒られるか」ハァ

 

マザーU「…」スッ

 

ツカサ(大きな怪物は無言で他の怪物達に指示すると…怪物達はオレに向かって襲いかかってきた)

 

ツカサ「やはり、やるしかないのか…ん?」

 

ブゥゥゥン…

 

ツカサ(すると…白と黒、それぞれ違う色のフルフェイスヘルメットを被った二人の人物がバイクに乗ってこちらに向かってきた)

 

ツカサ「あの二台のバイクの形と白と赤のカラーリングは…『サイクロン』か?」

 

ツカサ(『サイクロン』…それは、とある悪の組織に肉体を改造された二人のライダーが乗っていたマシンだ)

 

ドカッ!

 

マザーU「!?」ゴロゴロ

 

ツカサ(二台は大きな怪物に体当たりし、吹き飛ばしてから止まると…黒いヘルメットを被った方の女性がオレにこう尋ねてきた)

 

黒ヘル「…君がディケイドか?」

 

ツカサ「?…確かにそうだが」

 

黒ヘル「乗れ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

黒ヘル「早く」

 

『アドベント』

 

ツカサ(その直後…どこかから声が聞こえるとコオロギ型のミラーモンスターが硝子の向こう側から飛び出し、怪物達を攻撃した)

 

ツカサ「なっ…サイコローグ!?」

 

ツカサ(身軽に動き回るサイコローグは…まるでオレ達を守ろうとするかのように、怪物達の注意を逸らしていた)

 

ツカサ「どうしてアイツが…?」

 

黒ヘル「急いでくれ、話は後だ」

 

白ヘル「今、逃げないと…ここの被害がどんどん広がっちゃうわよぉ?」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

白ヘル「うふふっ…そう来なくっちゃね」

 

ツカサ「ヘルメット、あるか?」

 

黒ヘル「当然だ」

 

ツカサ(オレは赤いヘルメットを借りて…黒いヘルメットを被った方の女性の後ろに乗った)

 

白ヘル「あら…そっちに乗っちゃうのぉ?」

 

ツカサ「別にどっちでもいいだろ?」

 

白ヘル「私の身体の方が柔らかいのにぃ…」

 

ツカサ「…行ってくれ」

 

黒ヘル「ああ」

 

ツカサ(二台のサイクロンは走り出し…オレ達はその場を後にした)

 

オルタナティブ「…」スタスタ

 

マザーU「…!」

 

オルタナティブ「…はぁっ!」ダダッ

 

 

 

雪穂(あのやりとりの後…お姉ちゃん以外のみんなは自分の練習着に着替えるために、更衣室に戻っていた)

 

穂乃果「う~ん、またダメかぁ…」

 

雪穂「そりゃそうでしょ…変でしかないよ?」

 

穂乃果「みんな楽しんでくれるかなって思ってたんだけどなぁ…あれ、ところで亜里沙ちゃんは?」

 

雪穂「ああ…亜里沙なら、ちょっと手を洗いに行ってくるって言ってたけど」

 

穂乃果「…そっか」

 

雪穂「そういえばツバサさん達は?」

 

穂乃果「あっ、えっと…ツバサさん達はプロのアイドルに転向するからちょっと忙しいみたいで」

 

雪穂「はっ…プロ!?」

 

穂乃果「う、うん…言ってなかったっけ?」

 

雪穂「初めて聞いたんだけど、それ!」

 

穂乃果「そっか…ツバサさん達に何か用事でもあったの?」

 

雪穂「まあ、そんな感じだけど…」

 

穂乃果「へぇ…そうなんだ」

 

雪穂「というかお姉ちゃんさ…それ、海未さんの練習着なんでしょ?」

 

穂乃果「へ?…あっ!」

 

雪穂「早く更衣室に戻らないといけないんじゃないの?」

 

穂乃果「で…でも、もう少しこのままでも良いかなぁ?」

 

雪穂「良いわけないでしょ…海未さん、きっと困ってるよ?」

 

穂乃果「だ、だよね…ちょっと行ってくる!」ダダッ

 

雪穂「もう…」ハァ

 

 

 

ツカサ(オレを後ろに乗せて、サイクロンを走らせる二人の女性は…地下へと通じるトンネルの中に入った)

 

ツカサ「おい…一体、どこまで行くつもりなんだ?」

 

黒ヘル「…」

 

ツカサ(オレの質問に答える事なく、二人の女性はしばらく薄暗い地下通路を走り続けていた)

 

ツカサ(やがて通路を抜けると…二人はマシンを止めた)

 

黒ヘル「着いたぞ」

 

ツカサ(マシンから降りたオレ達は、それぞれヘルメットを取った)

 

ツカサ「…」

 

白ヘル「はぁ…いつも思うけど、あんなジメジメした所を通るのはやっぱり慣れないわねぇ」

 

黒ヘル「サイクロンで来るにはここしか道が無いからな…我慢するんだ」

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(オレは二人の女性の顔に見覚えがあった…さっきのポスターでツバサと一緒に指名手配されていた二人だ)

 

ツカサ「アンタ達は…!」

 

白ヘル「あら、私達の事…知ってたのぉ?」

 

黒ヘル「当然だろう、何せ私達は反逆者として指名手配されているからな」

 

白ヘル「やっぱりそうよねぇ…私のファンかと思っちゃった」ハァ

 

黒ヘル「自己紹介が遅れたな、私の名前は統堂エレナ」

 

白ヘル「私は優木アンジュよ…よろしくねぇ、坊や?」

 

ツカサ「坊やじゃない、門矢ツカサだ…とりあえずアンタ達には聞きたい事が山程ある」

 

アンジュ「何でも聞いてちょうだい、お姉さん達が手取り足取り教えて…あ・げ・る♡」

 

エレナ「おい、アンジュ…あまりからかうな」

 

アンジュ「だって、坊やが可愛い顔してたからぁ…」

 

ツカサ(オレはアンジュのちょっかいを流しながら、ある質問をぶつけた)

 

ツカサ「なぁ、ここは…『μ'sの世界』じゃないのか?」

 

アンジュ「!」

 

エレナ「…」

 

ツカサ「それとも…!?」クルッ

 

ツカサ(後ろから気配を感じたオレが振り向くと…そこには工業用のツナギを着た一人の男がいた)

 

?「…」

 

ツカサ(その男の顔は…穂乃果の父の顔と瓜二つのものだった)

 

ツカサ「…おやっさん?」

 

エレナ「立花さん…今、戻りました」

 

ツカサ「立花…?」

 

エレナ「彼は立花トウベエ…私達のサポートをしてくれている人だ」

 

アンジュ「ただいまぁ~♪」フリフリ

 

トウベエ「…」スタスタ

 

ツカサ(おやっさんは手を振るアンジュをそのままスルーし…二台のサイクロンを整備し始めた)

 

アンジュ「もう、つれないんだからぁ…」

 

ツカサ「…」

 

エレナ「もしかして君は…彼女から何も聞いていないのか?」

 

ツカサ「彼女って…綺羅ツバサの事か?」

 

アンジュ「その様子…やっぱりツバサちゃん、坊やには何も話してなかったみたいねぇ?」

 

エレナ「元は私達だけで済ませる問題だったからな…仕方がない、私達が話そう」

 

ツカサ「問題って…どういう事だ?」

 

エレナ「…一緒に来てくれ」スタスタ

 

ツカサ(オレを連れて歩くエレナとアンジュは…梯子を上り始めた)

 

ツカサ「今度はどこに連れて行くつもりなんだ?」

 

エレナ「地上だ、ある場所に繋がっている」

 

ツカサ「…ある場所?」

 

アンジュ「すぐに分かるわぁ」フフッ

 

ツカサ(梯子を上りきると…突然、オレの顔に藁が降ってきた)

 

ツカサ「!?く、口に藁が…!」ゴホゴホッ

 

アンジュ「大丈夫ぅ?」

 

ツカサ「何とかな…ん?」

 

ツカサ(周りを見回すと…一面には藁が広がっていた)

 

ツカサ「どこだ、ここは…まさかアルパカ小屋とでも言うんじゃないだろうな?」

 

エレナ「その通りだ」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

アンジュ「あら、ここが前までアルパカ小屋だったなんてよく分かったわねぇ?」

 

ツカサ「ただ勘で言っただけなんだが…!?」

 

ツカサ(小屋から出たオレが見たものは…半壊した校舎だった)

 

ツカサ「音ノ木坂学院が…壊されている?」

 

アンジュ「う~ん、ちょっと違うわねぇ…」

 

ツカサ「…違う?」

 

エレナ「ここは…『城南大学附属高等学校』だ」

 

ツカサ「どこからどう見ても音ノ木坂学院にしか見えないんだが…」

 

エレナ「…そうだろうな」

 

ツカサ「はぁ?だから何が…!!」ハッ

 

アンジュ「…ようやく、分かってもらえたみたいねぇ?」

 

ツカサ「まさか、この世界は…!?」

 

 

 

海未「…」スタスタ

 

亜里沙「…」

 

亜里沙(さっきの海未さんの様子が気になっていた私は…こっそり海未さんの後をついていた)

 

亜里沙(更衣室に行ったお姉ちゃんたちと別れちゃったけど…どこに向かってるんだろう?)

 

海未「時間切れ…仕方ないですね」

 

亜里沙「?」

 

亜里沙(すると海未さんは…目の前にあったガラスの中に吸い込まれていった)

 

亜里沙「えっ!?」

 

亜里沙(ビックリした私がガラスの前まで行ってみると…海未さんはガラスの向こう側に映っていた)

 

亜里沙「!?」

 

海未「…着いてきているのは分かっていましたよ、亜里沙」フフッ

 

亜里沙「海未さん…?」

 

海未「これ、何だと思いますか?」

 

亜里沙(海未さんはポケットから何かを取り出した)

 

亜里沙「それは…?」

 

海未「これはミラーワールドからのライダー…リュウガに変身する為のカードデッキです」

 

亜里沙「リュウガ…じゃあ、もう海未さんはブレイドじゃないってこと?」

 

海未「…」

 

亜里沙「あれ、でも世界は平和になったはずなのに…何でそれを持ってるの?」

 

海未「フフッ…鈍いのですね」

 

海未「この世界の私は、ブレイドなどというライダーではありません…」

 

亜里沙(冷たく笑った海未さんのお腹には…黒いベルトが巻かれていた)

 

海未「受け入れるのです、私達を…変身」

 

亜里沙(そのベルトにカードデッキを入れた海未さんは…ブレイドとは違う黒いドラゴンのライダーに変身した)

 

リュウガ「…」

 

亜里沙「受け入れるって…どういうことなの?」

 

?「亜里沙」

 

亜里沙(私は声のする方を向くと…そこにはお姉ちゃんがいた)

 

絵里「…」

 

亜里沙「…お姉ちゃん?」

 

絵里「あなた達の旅は…『この世界』で終わらせる」

 

亜里沙「えっ…『この世界』って?」

 

絵里「まだ気付かないの?この世界は…あなた達の世界ではないという事よ」

 

亜里沙「!?」

 

絵里「フフッ…悪かったわね、今まで騙してて」

 

亜里沙「そんな…ウソじゃないの?」

 

絵里「ええ、嘘なんかじゃないわ…ここはあなた達の世界とよく似た別の世界よ」

 

亜里沙「別の、世界…!」

 

絵里「ところで亜里沙…どうして私からいつもするはずの匂いがしなかったのか、分かる?」

 

亜里沙「え?」

 

絵里「私は…あなたがよく知っている『絢瀬絵里』じゃないからよ」

 

亜里沙「お姉ちゃんじゃ…ない?」

 

?「…やあ、絢瀬亜里沙くん」

 

亜里沙「?…!?」

 

亜里沙(声に気づいた私がガラスの向こう側を見ると、海未さんが変身した黒いライダーの隣に…あの男の人が立っていた)

 

亜里沙「あなたは…あの時の!」

 

ナルタキ「…」

 

 

 

雪穂(私がしばらく屋上で待っていると…誰かが声をかけてきた)

 

?「会いたかったよ、高坂雪穂くん」

 

雪穂「はい?…!?」

 

ナルタキ「…」

 

雪穂「…どうして、あなたがここに!?」

 

ナルタキ「簡単な事だ…私が君のお姉さんに頼んだんだよ、君達と私を会わせるようにとね」

 

穂乃果『その人、雪穂や亜里沙ちゃんにも会いたいって言ってたよ!』

 

雪穂「ってことは…あなたが?」

 

ナルタキ「そうだ…いや、少し訂正しよう」

 

ナルタキ「私がお願いしたのは…君の本当のお姉さんじゃない」

 

雪穂「本当のお姉ちゃんじゃないって…どういうことですか!?」

 

ナルタキ「…」

 

?「雪穂ちゃん…そのままおとなしくしててね?」ヒョコッ

 

雪穂(その時、彼の後ろから一輪の青い薔薇を持ったことりさんが出てきた)

 

雪穂「ことりさん…?」

 

ことり「今、私の薔薇に彩りを加えてあげるから…あの子達の赤い血とあなたや亜里沙ちゃんの涙で」パシッ

 

雪穂(ことりさんはどこからか飛んできたカブト虫を掴むと…それを右腕のブレスレットに装着させた)

 

ことり「…変身」

 

『Henshin…Change Beetle』

 

雪穂「!…金色の、カブト?」

 

コーカサス「…」スタスタ

 

雪穂「そんな…戦いは終わったんじゃ!?」

 

?「終わってなんかないよ」

 

雪穂「!…お姉ちゃん?」

 

穂乃果「それに…ここは『μ'sの世界』じゃない」

 

雪穂「『μ'sの世界』じゃない…?」

 

穂乃果「そして…私達はスクールアイドル『μ's』じゃない」

 

雪穂「…それ、どういう意味?」

 

穂乃果「まだ分からないの…?」

 

穂乃果「私は…あなたのお姉ちゃんじゃない」

 

雪穂「!?」

 

穂乃果「ことりちゃん…ううん、コーカサス」

 

コーカサス「…」ガシッ

 

雪穂(金色のカブトは…私を捕まえて、逃げられないようにした)

 

雪穂「な、何するんですか!?」

 

コーカサス「…」

 

雪穂「放してください!」

 

穂乃果「雪穂…捕まった亜里沙ちゃんがどうなってもいいの?」

 

雪穂「!…亜里沙が?」

 

穂乃果「おいで、ネオトルーパー」

 

雪穂(お姉ちゃんがそう言うと…銀色の戦闘服を着た人がやってきた)

 

雪穂(それは…カブトの世界で見たZECTの戦闘服によく似ていた)

 

ネオトルーパー「…」

 

穂乃果「頼んだよ」

 

ネオトルーパー「了解しました」

 

雪穂(私は戦闘服を着た人に連れられて…屋上を出た)

 

雪穂「お姉ちゃん…」

 

穂乃果「…」

 

雪穂(一体、私はどこに連れて行かれちゃうんだろう…?)

 

ナルタキ「…よくやった、彼女達を油断させる為にやった君達のさっきの茶番劇はアカデミー女優もビックリの演技だったぞ?」

 

穂乃果「ありがとうございます」

 

ナルタキ「これで後は…ディケイドだけだな?」

 

穂乃果「はい、もう他のみんなが向かっていると思います」

 

ナルタキ「そうか…邪魔な『HOPPER』共の始末も、計画通り頼むぞ?」

 

穂乃果「お任せを…行こう、コーカサス」スタスタ

 

コーカサス「…」スタスタ

 

ナルタキ「…フッ」

 

 

 

ツカサ(ここが『μ'sの世界』じゃないと知ったオレは…移動しながら、エレナとアンジュからある話を聞いていた)

 

ツカサ「…今、何て言った?」

 

エレナ「この世界に『μ's』はいない…九人のメンバーも元々、この世界には存在していないはずだった」

 

アンジュ「だけど今、実際に彼女達はこの世界に存在している…これがどういう事か分かるぅ?」

 

ツカサ「…誰かが作り出した偽者という事か?」

 

アンジュ「うふふっ…正解♡」

 

エレナ「この世界の彼女達は…ある組織が別の世界から持ってきた技術を使って、生み出されたんだ」

 

ツカサ「…その組織の名前は?」

 

エレナ「同種の血統による全体の、神聖なる支配権…『Sacred Hegemony Of Cycle Kindred Evolutional Realm』」

 

アンジュ「それを略したのが…『SHOCKER(ショッカー)』」

 

ツカサ「ショッカー…どこかでよく聞いた事のある名前だな」

 

エレナ「ショッカーはライダーに変身する『μ's』の九人を使って、この世界を支配しようと企んでいる」

 

アンジュ「どっちかって言うと正しくは…ライダーが『μ's』に変身しているって感じだけど」

 

ツカサ「ライダーが『μ's』に化けてるって事か…なるほど、だいたいわかった」

 

エレナ「そして、それを率いているのが…!」

 

アンジュ「!…あら、やっぱり来てたのねぇ?」

 

ツカサ(オレ達が校内のグラウンドに辿り着くと…そこには絵里、凛、真姫、希、花陽、にこの六人がいた)

 

にこ「…ディケイド、こっちに来なさい」

 

ツカサ「!」

 

絵里「無理よ…おそらくディケイドは既に『HOPPER』の二人から私達の正体を聞いているはず」

 

にこ「し、知ってるわよそんな事!悪の軍団の代表として言ってみただけよ…」

 

花陽「あ、あの…ディケイドを私達に渡してくれませんか?」

 

真姫「言う事を聞いてくれたら…命だけは助けてあげるわ」

 

アンジュ「あらぁ…私達がそうやって素直に坊やを渡すとでも思っているの?」

 

エレナ「残念だが無理な相談だな…諦めろ」

 

希「へぇ…じゃあ、あの二人がどうなってもええって事やんな?」

 

ツカサ「あの二人?…まさか!?」

 

凛「そのまさかだよ…雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんは今ごろ、地下に閉じ込められてるに違いないニャ」

 

ツカサ「お前ら…本当の正体を現せ!」

 

ツカサ(オレはバックルを取り出そうとするが…エレナが止めに入ってきた)

 

エレナ「待て」

 

ツカサ「だが…!」

 

アンジュ「ここは私達に…任せてもらえるかしら?」

 

エレナ「君は渡さない…捕まった君の仲間も助け出す、絶対にな」

 

ツカサ(その瞬間…エレナは白いベルト、アンジュには赤いベルトがそれぞれの腹部から出現した)

 

ツカサ「そのベルトは…!?」

 

ツカサ(ベルトに風力エネルギーを吸収させた二人は…ベルトの風車を回転させながら、戦闘スーツを身に纏う)

 

ツカサ(最後に特殊なマスクを頭部に装着し…二人は『HOPPER』としての変身を完了させた)

 

1号「…」

 

2号「…」

 

ツカサ「『The First』の1号と2号…まさか、二人が改造人間だったとはな」

 

1号「『二人』…そうか」

 

ツカサ「…違うのか?」

 

2号「それは…ナ・イ・ショ♪」

 

にこ「まったく、しょーがないわねー…アンタ達!」

 

ツカサ(にこに呼ばれ…グローブとブーツが黄色い六人の『HOPPER』が目の前に立ちはだかった)

 

ツカサ「アレは…『The NEXT』のショッカーライダーか」

 

絵里「その通りよ、私達の組織は…そこにいる彼女達のコピー体を造り出せる程に優秀なの」フフッ

 

ショッカーライダー1「…」

 

絵里「ショッカーライダーの能力は…あなた達が今まで相手にしていた『戦斗員』を遥かに超えるわ」

 

にこ「やっちゃいなさい!」

 

ショッカーライダー「…」ダダッ

 

1号「行くぞ、アンジュ」

 

2号「ええ…エレナちゃん」

 

 

 

雪穂(捕まった私は…無理やり、地下の牢屋の中に入れられてしまった)

 

ドンッ!

 

雪穂「うわっ!」ヨロッ

 

ネオトルーパー「このカバン…一旦、預からせてもらうね」

 

ガチャン!

 

雪穂(戦闘服を着た人は私からカバンを奪うと…牢屋のカギを閉めて、どこかへ行ってしまった)

 

雪穂「ツバサさんのカバン…取られちゃった」

 

雪穂「そういえば、何か前にもこんなことがあったような…デジャヴかな?」

 

雪穂(私がそんなことを一人で呟いていると…近くで倒れていた誰かが目を覚ました)

 

?「んぅ…雪穂?」

 

雪穂「亜里沙!?」

 

雪穂(私は亜里沙の近くに駆け寄った)

 

雪穂「大丈夫?ケガは!?」

 

亜里沙「私は気を失ってただけだから大丈夫…ごめんね、捕まっちゃって」

 

雪穂「ううん、私もここが私達の世界じゃないことに気付けなかったし…ごめん」

 

亜里沙「そんな…雪穂は悪くないよ」

 

雪穂「…そうだ、ツカサがきっと助けに来てくれるよ!」

 

亜里沙「でも、あんな別れ方しちゃったからもう別の世界に行っちゃってるかも…」

 

雪穂「あっ…そう、だよね」

 

亜里沙「私たち、ずっとこのままなのかな…?」

 

雪穂「それは…ん?」ペタペタ

 

亜里沙「…どうしたの?」

 

雪穂「これって…石板?」

 

亜里沙「本当だ…何だろう、これ?」ペタペタ

 

雪穂「う~ん、私にも何が何だか…」

 

?「この子達よ!」

 

雪穂「?」クルッ

 

雪穂(私達が振り向くと…三人に増えたさっきの戦闘服を着た人が、牢屋の外まで戻って来ていた)

 

ネオトルーパー1「…」

 

雪穂「あの…私達に何か?」

 

ガチャ

 

雪穂(三人は…牢屋のカギを開けて、中に入ってきた)

 

ネオトルーパー2「お邪魔しま~す…」

 

雪穂「えっ!?」

 

亜里沙「何…?」

 

ネオトルーパー3「はい、さっきのカバン!大切な物が入ってたんでしょ?」スッ

 

雪穂「あっ、どうも…じゃなくて!」

 

ネオトルーパー1「いや~…さっきは乱暴な事しちゃってごめんね?」

 

雪穂「…はい?」

 

ネオトルーパー2「ここに潜入するにはどうしても、ここの人になりきらないといけなかったから…」

 

亜里沙「なりきるって…あなたたちは?」

 

ネオトルーパー3「私達、二人を助けに来たの!」

 

雪穂(三人はヘルメットを脱ぐと…それぞれの名前を言った)

 

ネオトルーパー1「ぷはっ…えっと、私はヒデコ」

 

ネオトルーパー2「それで…私がフミコ」

 

ネオトルーパー3「ミカだよ、よろしくね!」

 

亜里沙「あっ…!」

 

雪穂(私達は三人の顔に見覚えがあった)

 

雪穂(私達の世界では『μ's』の活動を色々とサポートしてくれていた三人だ…前にお姉ちゃんから話を聞いた覚えがある)

 

雪穂(直接、話したことはないけど…『あの曲』をアキバで一緒に踊ったことを私達は覚えていた)

 

ヒデコ「じゃあ、行こうか?」

 

雪穂「行くって…どこにですか?」

 

ミカ「やだなぁ、決まってるじゃん!」

 

フミコ「ここから逃げよう!」

 

雪穂「!」

 

亜里沙「…はい!」

 

雪穂(私と亜里沙はヒデコさん達と一緒に牢屋を出て、走り始めた)

 

 

 

ツカサ(六人のショッカーライダーは…ダーツ型の爆弾を『HOPPER』の二人に投げつけた)

 

ツカサ「爆風で見えないな…あの二人、大丈夫なのか?」

 

ツカサ(しかし二人は…無傷で爆風の中から飛び出し、ショッカーライダー達を攻撃していく)

 

1号「はっ!」ガッ!

 

ショッカーライダー5「…!」

 

2号「えいっ!」ゴッ!

 

ショッカーライダー6「…!」

 

ツカサ(数だけで言えばショッカーライダー達の方が有利だが…二人の『HOPPER』はそれをものともしなかった)

 

ツカサ(エレナが変身した1号は圧倒的な『力』、アンジュが変身した2号は多彩な『技』を魅せて…敵を翻弄しているのだ)

 

ツカサ(1号がアッパー、2号が回し蹴りで六人のショッカーライダーのうちの二人を撃破すると高く飛び上がり…)

 

1号「はぁっ!」バキッ!

 

ショッカーライダー3「!」

 

2号「やっ!」ドカッ!

 

ショッカーライダー4「!」

 

ツカサ(それぞれの『ライダーキック』でまた二人、ショッカーライダーを倒していく)

 

にこ「ちょっと…アンタ達、しっかりやんなさいよ!?」

 

絵里「予想外だったわね…こうなったら、私が行くべきかしら?」

 

キィン…キィン…

 

絵里「!…どうやら、まだその必要はないみたいね」フフッ

 

ツカサ「この音は…まさか!」

 

『アドベント』

 

1号「!?」

 

ツカサ(どこかから低い音声が聞こえた瞬間…近くのガラス片から飛び出してきたドラグブラッカーが1号の身体を咥えた)

 

ガッ!ゴッ!

 

1号「ぐっ…!」

 

ツカサ(ドラグブラッカーは咥えた1号をあらゆる障害物にぶつけると…地面に放り投げた)

 

1号「…うっ」ゴロゴロ

 

『ストライクベント』

 

リュウガ「…」

 

ツカサ「アイツは…リュウガ!」

 

ツカサ(右手にドラグクローを装着したリュウガは…立ち上がろうとした1号に『昇竜突破』をぶつけた)

 

1号「ぐはっ!?」

 

ツカサ(たった一撃の破壊力で…1号のスーツは色が変色するほどにボロボロになり、マスクも外れてしまった)

 

エレナ「…」ドサッ

 

2号「エレナちゃん!!」

 

『Hyper Clock Up』

 

ドカッ!バキッ!

 

2号「きゃっ!?」

 

にこ「やっと来たのね…ずいぶん遅かったじゃない?」

 

ツカサ(倒れたエレナに気を取られた2号は…超高速で動く誰かから執拗に攻撃されていた)

 

ツカサ「あれは…ハイパークロックアップか?」

 

『Hyper Clock Over』

 

コーカサス「…」

 

ツカサ「!…コーカサス!?」

 

コーカサス「…!」スッ

 

『Maximum Rider Power』

 

ツカサ(コーカサスは左腰に装着されたハイパーゼクターの角を押し倒すと…そのまま2号に向かってミドルキックを放った)

 

コーカサス「…」ドガッ!

 

2号「ああっ!!」

 

ツカサ(コーカサスの『ライダーキック』の衝撃でヒビが入った2号のマスクは外れ…アンジュは倒れてしまった)

 

アンジュ「ううっ…」ドサッ

 

ツカサ「…エレナ、アンジュ!」

 

絵里「やはりスクールアイドルとしても、ライダーとしても…私には素人にしか見えなかったわね」

 

にこ「いよいよ…『HOPPER』も終わりね!」

 

ツカサ「させるか!」

 

ツカサ(エレナとアンジュを助ける為、オレは一枚のカードをディケイドライバーに入れ…ディケイドに変身した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!…!?」

 

ディケイド(しかし、二人のショッカーライダーと真姫が目の前に現れ…オレの行く手を阻んだ)

 

真姫「…それはこっちの台詞よ」

 

ショッカーライダー1「…」

 

ショッカーライダー2「…」

 

ディケイド「!…全く、仕方ないな」ハァ

 

真姫「あなたは…もう私達のものよ」

 

ディケイド(真姫は角が黒い音叉を取り出すと…それを足で行儀悪く鳴らした)

 

キィィィン…

 

真姫「…歌舞鬼」

 

ディケイド(桜吹雪が彼女の身体を覆った後…彼女は歌舞伎のような見栄を切るように桜吹雪を払いのけ、鬼の姿に変わった)

 

歌舞鬼「…」

 

ディケイド「その緑と赤と金の派手な色合いは歌舞鬼か…だったら!」

 

『カメンライド…デンオウ!』

 

ディケイド(オレはライドブッカーから一枚のカードを取り出すと…ベルトに装填し、ソードフォームの電王へと姿を変えた)

 

DCD電王「…さあ、鬼退治だ」

 

歌舞鬼「!」

 

凛「アレって…電王!?」

 

花陽「でも…あの電王はちょっと違うみたいだよ?」

 

凛「えっ?…あっ、ホントだ!」

 

にこ「アンタね…よく見なくても分かるでしょ!?」

 

DCD電王「…手始めに、これだ」スッ

 

DCD電王(オレは更にライドブッカーから四枚のカードを取り出し…その中から一枚のカードを選び、バックルに入れた)

 

『アタックライド…オレ、サンジョウ!』

 

DCD電王(その直後、オレは電王ソードフォーム特有のあの名乗りとポーズをした)

 

DCD電王「オレ、参上!」

 

歌舞鬼「…?」

 

DCD電王(だが、それ以外にカードの効果は何も起こらなかった…)

 

DCD電王「…///」ゲホゲホッ

 

にこ「はぁ?何よそれ…」

 

DCD電王「オ…オレに聞くな!」

 

にこ「アンタがやってきたんでしょ!?」

 

希「あっ…もしかして『オレ、三条!』って自己紹介したかったんやない?」

 

DCD電王「そんな訳ないだろ!…ったく、他にまともなカードはないのか?」

 

DCD電王(オレは残りの三枚のアタックライドカードも見たが…)

 

『ボクニツラレテミル?』

 

『コタエハキイテナイ!』

 

『ナケルデ!』

 

DCD電王(おそらく他の三フォームの名乗りをするだけで…どれも役に立たなそうなカードだった)

 

DCD電王「あ、あいつら…!」

 

歌舞鬼「…!」ズバッ!ザシュッ!

 

DCD電王(歌舞鬼は持っていた音叉を音叉剣に変えると…オレに連続で斬りかかってきた)

 

DCD電王「うわっ!?」

 

絵里「…ショッカーライダー、彼を捕らえなさい」

 

ガシッ!

 

DCD電王(絵里の命令を聞いたショッカーライダー達が…オレを拘束する)

 

ショッカーライダー1「…」

 

ショッカーライダー2「…」

 

DCD電王「なっ…おい、離せ!」

 

歌舞鬼「!」ダッ

 

DCD電王(それを見た歌舞鬼は…緑の霊石の『音撃棒 烈翠』と音撃鼓を取り出した)

 

DCD電王「なっ…!」

 

歌舞鬼「…」ドンッ!

 

DCD電王(歌舞鬼はその場で音撃鼓を巨大化させると、オレに向かって『音撃打 業火絢爛』と呼ばれるエネルギー波を放った)

 

DCD電王「うわぁっ!?」

 

ショッカーライダー1「!」

 

ショッカーライダー2「…!」

 

DCD電王(その威力はショッカーライダー達を巻き込んで倒してしまう程に絶大で…変身も強制解除されてしまった)

 

ツカサ「ぐっ…!」ゴロゴロ

 

絵里「…ディケイド、私達と来なさい」

 

ツカサ「断る、と言いたい所だが…エレナとアンジュを見逃したら考えてやる」

 

絵里「…リュウガ」

 

リュウガ「…」スッ

 

ドラグブラッカー「!」

 

ツカサ(リュウガに命じられたドラグブラッカーは…倒れているエレナとアンジュのもとへ向かっていった)

 

ツカサ「おい、何のつもりだ!?」

 

絵里「決まってるじゃない…裏切り者は排除する、それがショッカーの掟よ」

 

ツカサ「お前ら…!」

 

にこ「ドラグブラッカー、早く『HOPPER』の二人を食べちゃいなさい!」

 

エレナ「…」

 

アンジュ「…」

 

ツカサ「待て…やめろ!!」

 

ツカサ(オレがそう叫ぶと…聞き覚えのある声がした)

 

?「じゃあ…こういうのは、どう?」

 

ドカッ!

 

ドラグブラッカー「…!」

 

ツカサ(その声が聞こえた直後、何かが高速でドラグブラッカーにぶつかってきた)

 

リュウガ「!?」

 

コーカサス「!?」

 

ズシーン…!

 

ツカサ(高速でぶつかってきた勢いで吹き飛ばされたドラグブラッカーは…リュウガとコーカサスを巻き添えにして倒れた)

 

にこ「はぁ!?」

 

ツカサ「一体、何が…!」

 

ツカサ(目を凝らしてよく見てみると、ドラグブラッカーに激突したのは…)

 

凛「今のって…ニャニャ!?」

 

歌舞鬼「…」

 

ツカサ(どうやら歌舞鬼は…誰かに倒された後、投げ飛ばされたようだ)

 

花陽「そんな…いつの間にやられちゃったのぉ!?」

 

?「答えは簡単…彼女が『本物』じゃないからよ」ザッ

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(すると、オレの横には…白いマフラーをなびかせる赤い仮面の戦士がいた)

 

V3(NEXT)「…」

 

絵里「アレは…Version3!」

 

ツカサ「その声は、まさか…!」

 

V3「…久しぶりね」

 

希「ふぅ~ん、どうやら…『HOPPER』が全員揃ったみたいやね?」

 

エレナ「うっ、ツバ…サ?」

 

アンジュ「ツバサ…ちゃん」

 

V3「待たせたわね…エレナ、アンジュ」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「もう私達はスクールアイドルの『A-RISE』じゃない…」

「信じているだろうな…きっとまたスクールアイドルとして歌えると」

「あなた達がもたらしたのは、地獄よ」

「じゃあね…」

第21話『Next Party』

すべてを---超える。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話『Next Party』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

ツカサ「…『μ'sの世界』」

雪穂「帰ってきたんだ…私達の世界に」

亜里沙「もうこれでお別れだなんて…さみしいよ!」

ツカサ「オレの事はもう…放っておいてくれ」

雪穂「ツカサは…あえて私達を、冷たく突き放したんだと思う」

穂乃果「UTXのエラい人がね…雪穂や亜里沙ちゃんにも会いたいって!」

ナルタキ「…やあ、会いたかったよ」

穂乃果「ここは『μ'sの世界』じゃない、私は…あなたのお姉ちゃんじゃない」

エレナ「ショッカーはライダーに変身する『μ's』の九人を使って、この世界を支配しようと企んでいる」

ツカサ「『The First』の1号と2号…」

1号「行くぞ、アンジュ」

2号「ええ…エレナちゃん」

V3「…」


(ある日、雑誌の取材が終わった後…私達はUTX高校の廊下を歩いていた)

 

あんじゅ「もうこんな時間…けっこう長くなっちゃったわねぇ?」

 

英玲奈「次の『ラブライブ!』が行われる事が発表されたからな…前回、優勝した私達が注目されるのも無理はない」

 

ツバサ「!!…ごめんなさい、ちょっと出かけてくるわ」ダッ

 

英玲奈「…?」

 

あんじゅ「ツバサちゃん?」

 

(とある少女の姿が目に入った私は、つい…外に飛び出してしまった)

 

(彼女は…八人の仲間と一緒に、UTXのスクリーンを見つめていた)

 

(私は他の誰にも気付かれないように身を潜めながら、彼女の目の前まで接近して…声をかけた)

 

ツバサ「来て!」ガシッ

 

ツバサ(私は驚く彼女の手を引っ張って、UTX高校の中まで走り出した)

 

ツバサ「…初めまして」

 

(ここで私はようやく…彼女と初めての会話を交わした)

 

(仲間の八人の少女も連れて、私達は…彼女達を校内のカフェスペースに招いた)

 

(彼女達に興味があったのは、前から彼女を知っていた私だけじゃない…英玲奈やあんじゅもずっと彼女達に注目していた)

 

(初めて彼女達の存在を知ってから、私達が彼女達に関連するものを調べると…九人にはそれぞれ、他には無い個性と魅力を持っている事が分かった)

 

ツバサ「これだけのメンバーが揃っているチームはそうはいない…だから注目もしていたし、応援もしていた」

 

ツバサ「そして何より…負けたくないと思ってる」

 

(間違いなく彼女達は、私達にとって強力なライバルになる…そう確信していた)

 

(前回の大会で私達は優勝しているけど…それはもう過去の事)

 

(今はただ純粋に…一番、お客さんを喜ばせる存在でありたい)

 

(彼女達のパフォーマンスを見た今の私達には…ただ、それだけだった)

 

(彼女達と話をした直後、私は…ある話を持ち掛けた)

 

ツバサ「もし歌う場所が決まっていないのなら…ウチの学校でライブやらない?」

 

(私は…彼女達にもUTX高校の屋上に作られる予定のライブステージで、新曲を披露してもらう事を提案した)

 

(彼女達が帰った後…私は英玲奈とあんじゅにこんな事を言われた)

 

英玲奈「ツバサ…生徒会の申請も無しに彼女達をステージに上げて、本当に大丈夫なのか?」

 

あんじゅ「ホント、急にあんな事言い出しちゃってビックリしちゃった…きっと生徒会長が黙ってないわよぉ?」

 

ツバサ「良いのよ…理事長にさえ許可をもらえれば、問題ないわ」

 

英玲奈「なるほどな…しかし、ツバサがまさかあんな事を思いつくとはな」

 

ツバサ「そうね…もしかしたら、彼女のおかげかも」

 

あんじゅ「ふ~ん…ツバサちゃんったら、よっぽどあの子の事が好きになっちゃったのねぇ?」

 

英玲奈「おい、あんじゅ…」

 

ツバサ「そうね、どちらかというと…最初から好きだったのかもしれないわね」

 

英玲奈「!?」

 

あんじゅ「!?」

 

ツバサ「…じゃあ、私は理事長室に向かうから」スタスタ

 

あんじゅ「…だ、大胆な告白だったわねぇ?」

 

英玲奈「…」

 

あんじゅ「あら…英玲奈ちゃん?」

 

英玲奈「ツ、ツツツツバサガガガオンナノコヲススススキニナナナナルトハ…」プシュー…

 

あんじゅ「!…うふふっ、何だか面白い事になっちゃったわね♡」クスクス

 

(理事長に許可を取った私は晴れて…彼女達と同じ場所で予選を迎える事になった)

 

(二組共に新曲を歌い切り…見事、年末に行われる最終予選への通過を決めた)

 

(しかし、決勝への切符を手にするのは…どちらか一組)

 

(最終予選の開始直前…私は彼女の仲間達にこう言った)

 

ツバサ「今日のライブで、この先の運命は決まる…」

 

ツバサ「互いにベストを尽くしましょう…でも、私達は負けない」

 

(そう、私達は絶対に負けない…はずだった)

 

(最終予選を突破して決勝へと進んだのは…私達ではなく、彼女達だった)

 

(年が明けて…神田明神へ初詣に行った私達は、彼女達に会った)

 

(英玲奈とあんじゅが彼女の仲間達と会話を少し交わし…私は別れ際に彼女達にエールを贈った)

 

ツバサ「…優勝しなさいよ、ラブライブ!」

 

(そこで私達のスクールアイドルとしての活動は…一旦、幕を閉じた)

 

(だけど、歌う事が好きだった私達は…その後も練習を続けていた)

 

(そんな中、どうしても気になっていた事があった私は…彼女を湖の見える公園まで連れ出した)

 

ツバサ「私達は最終予選で全てをぶつけて歌った…そして、潔く負けた」

 

ツバサ「その事に、何のわだかまりもない…と思っていたんだけどね」

 

ツバサ「ちょっとだけ引っかかってるの、なんで負けたんだろうって…理由が分からないのよ」

 

ツバサ「確かにあの時、私達よりもファンの心を掴んでいたし…パフォーマンスも素晴らしいライブだった」

 

ツバサ「結果が出る前に私達は確信したわ…でも、なぜそれが出来たの?」

 

ツバサ「確かに努力はしたんだろうし、練習も積んできたのは分かる…チームワークだって良い」

 

ツバサ「でもそれは、私達も一緒…むしろ私達はあなた達よりも強くあろうとしてきた」

 

ツバサ「それが誇り、スタイル…だから負けるはずがない」

 

ツバサ「そう思ってた…でも、負けた」

 

ツバサ「その理由を知りたいの…あなた達を支えているもの、原動力となる想い」

 

ツバサ「それは何なの…?」

 

(私はそう尋ねた…でも、私が彼女にこんな事を直接聞いたのは単に自分が知りたいからという理由だけじゃなかった)

 

(彼女にも知ってほしかったのだ…自分達の強さが一体、どこから来ているのかを)

 

(その数日後…UTXの大型スクリーンに映し出された彼女達のキャッチコピーを見て、私は気づいた)

 

『みんなで叶える物語』

 

ツバサ「…」フフッ

 

(彼女が得たその答えこそが彼女達を支え、原動力となって突き動かす想いなのだと…私は理解した)

 

(私達は純粋なファンとして、決勝で彼女達を応援した)

 

(そして彼女達は…素晴らしいパフォーマンスで多くの観客を魅了し、見事に優勝した)

 

(それから程なくして彼女達は海外で新しい曲を披露し…世界中からの人気も集めていった)

 

(しかし、彼女達はスクールアイドル…三年生のメンバーは既に卒業している身だ)

 

(『彼女達は今後もアイドルを続けるのか?』とファンもメディアも注目し、期待していた)

 

(そしてそれは…私達も同じだった)

 

(私は…海外から帰ってきたばかりの彼女をUTXまで呼び出した)

 

ツバサ「車を待たせてあるの…ドライブしましょう」

 

(運転手のいるリムジンに乗って…私達は彼女と話をした)

 

(私が彼女に次のライブはどこでやるのか聞くと…彼女は浮かない顔をしていた)

 

(彼女達は三年生が卒業したら、活動をやめるつもりだったらしいが…皆の期待を裏切る訳にもいかないと迷っていたそうだ)

 

(そこで私達は…プロのアイドルになる事を彼女に打ち明けた)

 

ツバサ「私達は続ける事にしたの…学校を卒業してスクールアイドルじゃ無くなっても」

 

ツバサ「三人で歌っていきたい…そう思ったから」

 

(『ラブライブ!』の為にスクールアイドルを続け、成し遂げた時に終わりを迎えるのは…とても美しい事だと思う)

 

ツバサ「貴方の気持ちは分かっているつもりよ、私も迷った」

 

ツバサ「でもね…やっぱりなくなるのは寂しいの」

 

ツバサ「この時間を、この一瞬を…ずっと続けていたい」

 

ツバサ「そして…お客さんを楽しませ、もっともっと大きな世界へ羽ばたいていきたい」

 

ツバサ「そう思ったから、私達は…」

 

ツバサ「あなたがどういう結論を出すかは自由よ?」

 

ツバサ「でも、私達は続ける…あなた達にも続けてほしい」

 

(共に『ラブライブ!』を戦ってきた仲間としても、私が強くなるきっかけを与えてくれた人としても…これからも)

 

(だけど彼女は、ある日を以て…自分達の活動を終える事を決断した)

 

(その代わり…彼女は私にこんな話をしてくれた)

 

ツバサ「…一緒にライブを?」

 

(彼女は…スクールアイドルの素晴らしさを伝える為に、皆で集まってライブをしたいと私に提案してきたのだった)

 

(そうすれば…例え私達がいなくなっても、次のアキバドームで行われる大会に繋がっていく)

 

(皆が心から楽しめて、ハッピーになれる…彼女らしくて面白いアイディアだった)

 

(私達も、今はまだスクールアイドル…もちろん協力しない訳が無かった)

 

(彼女の話を聞いて、感化された私は…彼女にこんなお願いをした)

 

ツバサ「皆で一つの歌を歌いたい…誰の歌でもない『スクールアイドルみんなの歌』」

 

ツバサ「せっかく皆でライブをするなら、それに相応しい曲というのがあるはず…」

 

ツバサ「そんな曲を、大会優勝者であるあなた達に作ってほしい!」

 

ツバサ「どうかしら…それが私達が参加する、唯一の条件」フフッ

 

(彼女は快く承諾し…私達も彼女達と協力して作詞や作曲、衣装の製作や振付をした)

 

(また、彼女達の呼び掛けで…多くのスクールアイドルが全国から集まった)

 

(そして…皆で『あの曲』を踊った)

 

(小さい頃に聴こえてきたメロディが、こんな形で曲になるなんて…きっとあの時の私は想像もしていなかったと思う)

 

ツバサ「せーの!」

 

全員「ラブライブ!」

 

(こうして『A-RISE』は…彼女を始めとした皆のおかげで、スクールアイドルとして有終の美を飾った)

 

(でも、これは…スクールアイドルへの『愛』と彼女達との『絆』を手にした『別の世界の私』のお話)

 

(『この世界の私』は…もう既に、スクールアイドルではなかった)

 

(そう、何故ならあの日を境に私は…『HOPPER』となってしまったのだから)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

戦闘員A「報告します…基地内に侵入者が!」

 

ナルタキ「侵入者だと?」

 

戦闘員A「はい…侵入者はどうやら基地の外でネオトルーパーから戦闘服を強奪し、基地内に侵入したとの事です」

 

ナルタキ「!」

 

戦闘員B「監視カメラが侵入者を発見、高坂雪穂と絢瀬亜里沙も一緒です!」

 

ナルタキ「これはこれは、厄介な蟻共だ…彼女達を丁重にもてなせ」

 

戦闘員A「イーッ!」

 

ナルタキ「念の為だ…『グレイブ』にも報告しておけ」

 

ナルタキ「状況によっては…彼女達のどちらか一人を『バニティカード』に封印しても構わん」

 

戦闘員B「イーッ!」

 

 

 

ツカサ(ダークライダーによってピンチを迎えていたオレ達を助けたのは、『The NEXT』のV3に変身したツバサだった)

 

エレナ「うっ、ツバ…サ?」

 

アンジュ「ツバサ…ちゃん」

 

V3「待たせたわね…エレナ、アンジュ」

 

絵里「Version3、あなた…何をしに来たの?」

 

V3「…倒しに来たの、あなた達を」

 

にこ「フン、言ってくれるじゃない…!」

 

希「任せといて…スクールアイドルは、ウチらだけでええんよ」

 

ツカサ(そう言って希は、腹部にベルトを出現させた)

 

希「ウチが、この手で…変身」

 

ツカサ(希は…バッタのような姿をした禍々しいアギトに変身した)

 

アナザーアギト「…」

 

ツカサ「アナザーアギト…!」

 

V3「…二人をお願い」

 

ツカサ「!…分かった」ダッ

 

ツカサ(オレは倒れているエレナとアンジュのもとへ向かった)

 

ツカサ「おい…エレナ、アンジュ!」

 

エレナ「…」

 

アンジュ「…」

 

ツカサ(オレはエレナとアンジュの二人に声をかけたが…リュウガやコーカサスの技を受けた為か、どちらも意識を失っていた)

 

V3「…」スタスタ

 

アナザーアギト「!」ダッ

 

ツカサ(アナザーアギトはゆっくり歩くV3に向かって走ると…連続でV3を殴りつけた)

 

アナザーアギト「…」ガッ!ゴッ!

 

V3「…」

 

ツカサ(しかし、V3は…アナザーアギトの攻撃を受けても微動だにしていなかった)

 

アナザーアギト「…?」

 

V3「…そう、あなたもその程度なのね?」

 

アナザーアギト「!?」

 

花陽「…もしかして」

 

凛「効いてなかったのかニャ…?」

 

にこ「う、嘘でしょ!?」

 

V3「それなら、こちらから行くわ…はっ!」ドゴッ!

 

アナザーアギト「!」

 

ツカサ(V3はアナザーアギトをたった一撃のパンチで吹き飛ばした)

 

V3「色んな世界を旅してきた今の私には分かるの…本物の彼女達の強さはこんなものじゃなかったって事が」

 

にこ「グッ…調子に乗るんじゃないわよ!」

 

絵里「アナザーアギト!」

 

アナザーアギト「…!」

 

ツカサ(アナザーアギトは立ち上がり、クラッシャーを展開させると…足元にアギトの紋章を象ったエネルギーが現れた)

 

ツカサ(エネルギーを右足に収束させたアナザーアギトは飛び上がり…V3に向かって『アサルトキック』を放とうとした)

 

V3「…ふっ!」

 

ツカサ(それを見たV3は飛び上がると、右足を突き出した『V3キック』で対抗していった)

 

ツカサ(空中で二人の技のエネルギーがぶつかり合った瞬間…爆発が起こった)

 

ツカサ「うわっ…!」

 

凛「ま、前が見えないニャ…」

 

にこ「これじゃどっちが勝ったのか分からないじゃない…!?」

 

アナザーアギト「…」ドサッ

 

ツカサ(にこ達の目の前には…V3の技を受け、倒されたアナザーアギトがいた)

 

絵里「アナザーアギトまで…!」

 

ツカサ(爆風が収まり、視界が開けると…そこにはV3が悠然と立っていた)

 

V3「それと…『偽者』のあなたに『素人』だなんて言われる筋合いは無いわ」

 

絵里「…!」

 

ツカサ(V3のその一言で、絵里の眉がピクリと動いた)

 

V3「…さあ、今度は誰が私と相手をしてくれるのかしら?」

 

絵里「…」

 

ツカサ(絵里が一歩前に出ようとした…その時だった)

 

花陽「…待って、絵里ちゃん」スッ

 

絵里「!」

 

花陽「私が終わらせてくるから…ちょっと待ってて?」

 

絵里「…分かったわ」

 

花陽「フフッ…変身」

 

ツカサ(腹部にクウガと同じベルトを出現させた花陽は…不気味な笑みを浮かべながら、白いクウガに変身した)

 

ツカサ「白のクウガ…!?」

 

ツカサ(白いクウガはその直後、瞳の色を激しく明滅させた後に黒く変わると…角が短いままのアルティメットフォームに変身した)

 

ツカサ「初めて見るクウガだが、どこかで覚えがあるような…?」ボソッ

 

にこ「何…あんた、知ってたの?」

 

凛「クウガ・プロトタイプ…色は白と黒にしかなれないけど、黒い方は力だけなら凛達の中でもけっこう上だニャ!」

 

クウガ・プロトタイプ「…」ダッ

 

V3「!」

 

クウガPT「…」ガッ!

 

V3「ぐっ…」ヨロッ…

 

ツカサ(クウガはとてつもない速さでV3に接近すると…強力なパンチでV3を怯ませた)

 

V3「…ふっ!」ドカッ!

 

クウガPT「…!」ゴッ!

 

ツカサ(V3も負けじと反撃すると…しばらくパンチの応酬が続いた)

 

ツカサ(だが…徐々にクウガの方が優勢になり、最後の一撃でV3を吹き飛ばした)

 

V3「うっ…!」ゴロゴロ

 

凛「アレレ~…もうそれで終わりかニャ?」

 

V3「…くっ」ハァハァ

 

ツカサ(V3は息を切らしながらも…何とか立ち上がった)

 

絵里「その程度で倒れるようじゃ…このクウガは満足しないわよ?」

 

にこ「そうよ、いくら『Version3』のアンタでも…倒せるはずが無いわ」

 

V3「それなら…はっ!」ダッ

 

ツカサ(V3はクウガに再び攻撃を仕掛けようと…走り出していく)

 

クウガPT「!」

 

V3「やぁっ!」バキッ!

 

クウガPT「…!」ドカッ!

 

ツカサ(V3の攻撃はクウガの腹部に命中したが…同時に、相手の強力な一撃を受けてしまった)

 

V3「うっ…!」ドサッ

 

ツカサ(大ダメージを受けたV3はついに倒れてしまい…その場から身動きが出来なくなってしまった)

 

ツカサ「なっ…!」

 

絵里「これで『HOPPER』達は…もう動けない」

 

にこ「そして…私達、悪の軍団『ネガμ's(仮)』がこの世界を支配するのよ!」

 

ツカサ「『ネガμ's』…だと?」

 

にこ「違う!『(仮)』が抜けてるわよ…『かっこかりかっことじる』!!」

 

凛「やっぱり…ちょっと寒くないかニャ?」ボソッ

 

にこ「今、何か言った…?」ギロッ

 

凛「ひっ…な、何でもないニャ!」

 

絵里「クウガ…今のうちにトドメを」

 

クウガPT「…」ガッ!

 

ツカサ(絵里に命じられたクウガは右手でV3の首を掴むと…徐々に締め上げる力を強くしていった)

 

クウガPT「…」グググ…

 

V3「かはっ…」

 

ツカサ「おい、待て!…!?」

 

リュウガ「…」

 

コーカサス「…」

 

ツカサ(オレはV3を助けようとしたが…リュウガとコーカサスがその行く手を阻んだ)

 

ツカサ「お前ら…まだ倒されていなかったのか!?」

 

にこ「そうでないと困るわ…アレで倒されるようじゃ、悪の軍団の恥だもの」

 

絵里「リュウガ、コーカサス…『HOPPER』を始末しなさい」

 

ツカサ「くっ…やめろ!」バッ

 

ツカサ(両手を横に広げたオレは、二人のダークライダーの前に立ち…エレナとアンジュを守ろうとした)

 

にこ「アンタも懲りないわね…いい加減、私達と一緒に来なさい!」

 

凛「そうそう、裏切り者の『HOPPER』なんて…放っておいちゃえば良いんだよ!」

 

ツカサ「そんな事をするくらいなら…自分が消える方がよっぽどマシだ!」

 

にこ「しょーがないわねー…だったら、捕まったあの二人がどうなってもいいのね?」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙『ツカサ!』

 

雪穂『…ツカサ』

 

ツカサ(オレの脳裏に雪穂と亜里沙の顔がよぎった事で…オレは少しだけ、奴らに隙を見せてしまった)

 

凛「今ニャ!」

 

リュウガ「…」ドンッ!

 

ツカサ「うわっ!」ドサッ

 

ツカサ(リュウガはオレを突き飛ばすと…コーカサスと共にエレナとアンジュを仕留めようと近付いていく)

 

ツカサ「しまった…!」

 

絵里「これで…決着よぉ!!」

 

ツカサ(このままでは…三人の命が危ない)

 

ツカサ「もう、ダメなのか…?」

 

ツカサ(諦めそうになったその時…誰かの声が聞こえた)

 

?「大丈夫だよ…君なら、きっと」

 

ツカサ「…!」

 

ガッ!ゴッ!

 

ツカサ(その直後…リュウガとコーカサスが突然、絵里達の所まで吹き飛ばされていった)

 

リュウガ「!」ゴロゴロ

 

コーカサス「…!」ゴロゴロ

 

凛「ニャ!?」

 

にこ「どうしたのよアンタ達…!?」

 

?「…」

 

ツカサ(エレナとアンジュを二人のダークライダーから助けたのは…一体のアンデッドだった)

 

ツカサ「…アンデッド?」

 

 

 

雪穂(ヒデコさん達の協力で…私と亜里沙はUTXから抜け出そうとしていた)

 

雪穂(校内を走りながら、私はネオトルーパーのスーツを着たヒデコさん達にお礼を言った)

 

雪穂「…あの、ありがとうございます」

 

ミカ「いいのいいの、気にしないで!」

 

亜里沙「でも、どうして私たちを助けに来てくれたんですか?」

 

フミコ「実はね…頼まれたの」

 

雪穂「…えっ?」

 

亜里沙「それって、誰に…?」

 

ヒデコ「それは…!」

 

ジリリリリ!

 

雪穂(私達が話していると…突然、大きなサイレンの音が聞こえてきた)

 

フミコ「…どうやら、気付かれちゃったみたい」

 

ミカ「もう!あとちょっとで外に出られるのに…」

 

?「イーッ、止まれ!」

 

雪穂(そう言って目の前に現れたのは…目と鼻と口以外を隠したマスクとタイツで全身を黒一色にした男の人達だった)

 

亜里沙「あの黒い変な人たちは…?」

 

ヒデコ「人工的に細胞を培養して量産されたショッカーの戦闘員…簡単に言えば、人の形をした兵器だよ」

 

フミコ「見た目は人なんだけど…本当の人間よりもちょっと強いの」

 

ミカ「イーイーばっかり言ってるけどね~…」

 

雪穂(クの字の形をした刀を持った三十人ほどのショッカー戦闘員は…私達をどこにも逃げられないように集団で取り囲んだ)

 

雪穂「あっ…!」

 

戦闘員A「大人しく牢屋の中に戻れ!」

 

ヒデコ「そんなの…イヤに決まってるでしょ!」

 

ミカ「イーッだ!」ベー

 

戦闘員B「貴様ら…命が惜しくないのか!」

 

フミコ「ううん、むしろ逆だよ…私達は生きたいの!」

 

戦闘員C「何を意味の分からない事を…かかれ!」ダッ

 

フミコ「雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん…私達の後ろに!」

 

雪穂「は…はい!」

 

雪穂(私と亜里沙が後ろに下がると…ヒデコさん達はヘルメットを被った)

 

ネオトルーパー1「フミコ、ミカ…行くよ!」

 

ネオトルーパー2「うん!」

 

ネオトルーパー3「オッケー!」ガキンッ!

 

雪穂(まず左腕に盾を装備したミカさんのネオトルーパーが前に出ると…戦闘員達の攻撃から身を守った)

 

戦闘員A「何ッ!?」

 

雪穂(それからすぐに…三人のネオトルーパーはそれぞれ違う武器を取り付けた)

 

ネオトルーパー1「はっ!」ザクッ!

 

戦闘員A「イーッ!?」バタッ

 

雪穂(右腕に爪のような武器を装備したヒデコさんのネオトルーパーは…次々と戦闘員を攻撃していく)

 

ネオトルーパー2「…」ガッ

 

戦闘員B「イッ!?」

 

雪穂(空を飛べる装備を背中に取り付けたフミコさんのネオトルーパーは、一人のショッカー戦闘員を捕まえて飛び上がると…)

 

ネオトルーパー2「えいっ!」パッ

 

ゴッ!

 

戦闘員B「イーッ!?」ドサッ

 

雪穂(真下に別の戦闘員が何人かいる所で手を放し…戦闘員達は次々と倒されていく)

 

ネオトルーパー3「一気に行くよ~!」ガガガッ!

 

戦闘員C「イーッ!?」バタッ

 

雪穂(ミカさんのネオトルーパーは左腕の盾に銃のような武器を合体させると…それを連射して、戦闘員をまとめて攻撃していく)

 

亜里沙「ス、スゴい…!」

 

雪穂(やがてショッカー戦闘員を全て倒した三人は…ヘルメットを脱いだ)

 

ヒデコ「ふぅ、これで良し…っと」

 

ミカ「じゃあ、別の戦闘員が来る前に早く外に出なきゃ!」

 

フミコ「そうだね…雪穂ちゃん達も付いてきて!」ダッ

 

雪穂「あっ…はい!」ダッ

 

雪穂(私と亜里沙はヒデコさん達の案内で…UTXの外へと抜け出した)

 

 

 

ツカサ(再びピンチになったオレ達を救ったのは…一体のアンデッド怪人だった)

 

?「…」

 

ツカサ(怪人の姿はヘラクレスオオカブトを始祖とするビートルアンデッドに酷似しているが…それよりも遥かに禍々しかった)

 

絵里「『ブレイド・ジョーカー』…また私達の邪魔をしに来たのね?」

 

ツカサ「『ブレイド・ジョーカー』?…やはり、どこかで聞いた覚えがあるような気がするな」

 

ブレイド・ジョーカー「…」ダッ

 

ツカサ(ブレイド・ジョーカーは何も答えずに走り出すと…V3の首を絞めていたクウガの腹部に強い一撃を放った)

 

ドゴッ!

 

クウガPT「…!?」フラッ…

 

凛「あっ、クウガが!」

 

にこ「もう…いつも『HOPPER』達を追い詰めたって時に限って、出てくるんだから!」

 

V3「うっ…」

 

Bジョーカー「…」トスッ

 

ツカサ(V3の身体がクウガの手から離れると…ブレイド・ジョーカーはそれを優しく受け止めた)

 

ツカサ(そして、ブレイド・ジョーカーは…オレの目の前までV3を運んできた)

 

Bジョーカー「…」

 

V3「…」

 

ツカサ「まさか…助けてくれたのか?」

 

Bジョーカー「…」コクリ

 

ツカサ(ブレイド・ジョーカーは…オレの質問に対して、静かに頷いた)

 

絵里「今度こそ邪魔はさせないわ…リュウガ!」

 

リュウガ「…」スッ

 

ツカサ(起き上がったリュウガは…ドラグブラッカーに火球を吐かせた)

 

ツカサ(ドラグブラッカーの青い火球は…こちらに向かって飛んできた)

 

ツカサ「危ない!」

 

Bジョーカー「…!」

 

ツカサ(その火球に対し、ブレイド・ジョーカーは手刀で…絵里達の方へと弾き返した)

 

にこ「ちょっ…!」

 

凛「こっちに飛んできちゃったよ!?」

 

絵里「…クウガ!」

 

クウガPT「!」サッ

 

ツカサ(クウガが全身で火球を受け止めた瞬間…火球は爆発した)

 

ツカサ「…とんでもないな、アンタ」

 

ブロロ…キキッ!

 

Bジョーカー「…!」バッ

 

ツカサ「?…!」

 

ツカサ(車の音に気付いたオレとブレイド・ジョーカーが振り向くと…そこにはジムニーに乗ったおやっさんがいた)

 

トウベエ「…」クイッ

 

ツカサ(おやっさんは一時的に撤退する為…ジムニーに乗るよう、オレ達に促してきた)

 

ツカサ「分かった…アンタはどうする?」

 

Bジョーカー「…」フルフル

 

ツカサ「…そうか」

 

ツカサ(オレとおやっさんは意識を失ったツバサ達をジムニーに乗せ…その場を後にした)

 

クウガPT「…」ヨロッ

 

にこ「逃げるつもりね…追うわよ!」

 

?「待って」

 

絵里「?」クルッ

 

穂乃果「…」

 

にこ「アンタ…遅い!一体、どこに行ってたのよ!?」

 

穂乃果「…今の私達がライダーの姿に戻った時よりも走るのが遅いのは普通のことだよ?」

 

にこ「遅れてやって来たくせに何でそんな偉そうに言えるのよ!?」

 

凛「でも…どうして追いかけちゃダメなの?」

 

穂乃果「ショッカー基地の本部から…『高坂雪穂と絢瀬亜里沙が侵入者に連れられて脱走した』っていう連絡があったの」

 

にこ「はぁ!?」

 

凛「どうしよう、あの子達に逃げられちゃったら…せっかくの作戦が台無しになっちゃうよ!」

 

にこ「しょーがないわねー…こうなったら、全員で手分けして探すわよ!」ダッ

 

凛「うん!」ダッ

 

コーカサス「…」スタスタ

 

リュウガ「…」スタスタ

 

クウガPT「…」ヨロヨロ…

 

絵里「…?」

 

穂乃果「…」

 

歌舞鬼「…」

 

アナザーアギト「…」

 

絵里「放っておきなさい…そんな役立たず」

 

穂乃果「!」

 

絵里「それよりも…私達ショッカーの計画を、一刻も早く実現させるわよ」スタスタ

 

穂乃果「…」ググッ…

 

歌舞鬼「…」

 

アナザーアギト「…」

 

穂乃果「…ごめん」ボソッ

 

 

 

ツバサ「んっ…!?」ガバッ

 

ツバサ(目が覚めた私は…すぐに身体を起こした)

 

ツバサ「ここは…ベッド?」

 

エレナ「…」

 

アンジュ「…」

 

ツバサ(私の両隣のベッドには…エレナとアンジュが眠っていた)

 

ツバサ「そう、私…また負けてしまったのね」ボソッ

 

ガチャ…

 

?「あっ、目が覚めた?」

 

ツバサ(扉を開けて部屋に入ってきたのは…上に縁のない眼鏡をかけた女性だった)

 

ツバサ「あなたは、もしかしてあの時の…アキバさん?」

 

アキバ「えっ…私の事、覚えててくれてたの!?」

 

ツバサ「もちろん…でも、相変わらずお元気そうで安心しました」

 

アキバ「あはは…でもあの時、あなたが助けてくれなかったら今の私はいなかったと思うよ?」

 

ツバサ「いえ、私は…当たり前の事をしただけですから」

 

キィ…

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「…よう、目が覚めたみたいだな?」

 

ツバサ「あなた…」

 

アキバ「彼と立花さんが…倒れたあなた達をここまで運んでくれたの」

 

トウベエ「…」

 

ツバサ「そう…ありがとう、二人とも」

 

ツカサ「…この世界に来て、だいたいわかった事がある」

 

ツバサ「…何?」

 

ツカサ「アンタは…『μ'sの世界』の綺羅ツバサじゃない、そうだな?」

 

ツバサ「!…ええ、その通りよ」

 

ツカサ「それなら…詳しく話してくれ」

 

ツカサ「アンタ達の世界に何が起きているのか…そして、なぜアンタはオレ達の旅について来たのか」

 

ツバサ「…あなたには、関係の無い事よ」

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「あなたは早く…高坂雪穂と絢瀬亜里沙の二人を助けて写真館に戻りなさい」

 

ツバサ「私の事は放っておいて、早く『μ'sの世界』に…」

 

ツカサ「それは無理だな」

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「この世界に留まっているという事は…オレ達にはここでやるべき目的があるという事だ」

 

ツバサ「…あなた達?」

 

ツカサ「ああ、きっと雪穂や亜里沙も…同じ事を言うはずだ」

 

ツカサ「自分達がよく知っている綺羅ツバサじゃないとしても、今まで一緒に旅してきたアンタの力になりたい…ってな」

 

ツバサ「…前から思ってたけど、あなたって良い人ね」

 

ツカサ「バカ言うな…オレはあの二人に怒られると面倒な事になるから、こうして言ってやってるだけだ」ハァ

 

ツバサ「ふふっ…良いわ、話してあげる」

 

ツカサ「…!」

 

ツバサ「なぜ私達が…『HOPPER』になってしまったのか」

 

 

 

雪穂(UTXから脱出した私達は…秋葉原の電気街にやってきた)

 

ヒデコ「さて…ここまで来れば、ひとまず安心かな?」

 

雪穂「そ、そうですか…」ハァハァ

 

亜里沙「…あれ?」

 

ミカ「どうかした?」

 

亜里沙「ここ、いつもならお昼のこの時間にはたくさんの人がいるはずなのに…何で?」

 

雪穂(亜里沙の言う通り…街には誰もいない様子だった)

 

ヒデコ「実は、みんな…ショッカーのせいでいなくなっちゃったんだ」

 

雪穂「えっ…!?」

 

フミコ「この辺りの人はみんな…ショッカーに捕まって命を奪われたり、操られちゃたりしているの」

 

亜里沙「でも私たち、昨日の夕方に子どもたちやおばあちゃんが通っているのを見かけて…」

 

フミコ「きっとそれは…あなた達を騙そうとして、戦闘員が変装していたんだと思う」

 

亜里沙「そんな…!」

 

ミカ「それだけじゃないよ…世界中でも、ショッカーは同じような事をしてるの」

 

雪穂「…じゃあ、この世界で生きている人はもうほとんどいないってことですか?」

 

フミコ「うん…」

 

?「おーい!」

 

雪穂(私達が声のする方を向くと…上下に青いジャージを着た女性がいた)

 

ヒデコ「あっ、先生だ!」

 

ミカ「お~い!」ブンブン

 

?「お前達、大丈夫だったか?」

 

フミコ「はい…無事に彼女達を救出しました」

 

?「そうか、君達が別の世界から来た人間か…私の名前はヤマダ」

 

ミカ「私達の担任の先生だよ!」

 

雪穂(そうだ、確かこの人…私達の世界の音ノ木坂学院にもいたような気がする)

 

雪穂(オープンキャンパスの時か何かで顔を見た程度だけど…私には覚えがあった)

 

雪穂(亜里沙が私の分も含めて、先生に自己紹介を終えた所で…彼女はヒデコさん達にこう言った)

 

ヤマダ「彼女から地下シェルターにツバサ達が戻ったという連絡があった…ディケイドと呼ばれる少年も一緒だ」

 

亜里沙「えっ、ツカサとツバサさんが!?」

 

雪穂「本当ですか!?」

 

ヤマダ「ああ、間違いない…」

 

フミコ「じゃあ…私達も地下シェルターに行かなくちゃ!」

 

ヒデコ「そうだね…よし、行こう!」

 

キィン…キィン…

 

ヤマダ「!?…危ない、避けろ!」

 

雪穂(その直後…近くの建物の窓ガラスから黒い龍が飛び出してきた)

 

雪穂「わっ!」サッ

 

亜里沙「きゃっ!?」サッ

 

雪穂(先生が声をかけてくれたおかげで…私達は黒い龍の体当たりを何とか避けた)

 

ミカ「まさか、もう追手が!?」

 

ヤマダ「そのようだな…しかも、一人だけじゃないみたいだ」

 

ヒデコ「えっ?…!」

 

リュウガ「…」

 

コーカサス「…」

 

雪穂(私達に近付いてきたのは…二人のライダーだった)

 

フミコ「リュウガとコーカサス…ダークライダーが二人も!?」

 

ミカ「これじゃ勝ち目が無いよぉ~!」

 

ヤマダ「落ち着け…ここは私一人とお前達三人に分かれてダークライダーを倒すんだ!」

 

ヒデコ「先生一人って…大丈夫なんですか!?」

 

ヤマダ「何とかする…お前達は得意の連携で、金色のカブト虫の方の相手をしてくれ!」

 

フミコ「…分かりました!」

 

ミカ「私達に任せちゃってください!」

 

ヤマダ「頼んだぞ…そこのお前は私が相手だ!」

 

リュウガ「…」

 

雪穂(先生はジャージのポケットから、何かを取り出した)

 

亜里沙「それは…カードデッキ?」

 

ヤマダ「ああ、これは他とは違う仕様でね…ある科学者から貰ったんだ」

 

雪穂「ある科学者から…?」

 

ヤマダ「そう、私が変身するのは『オルタナティブ』…っ!」スッ

 

雪穂(先生がカードデッキを窓ガラスにかざすと…先生のお腹にベルトが取り付けられた)

 

ヤマダ「変身!」

 

雪穂(先生はカードデッキをベルトに入れ、その姿を変えた)

 

オルタナティブ「…行くぞ!」ダッ

 

『ソードベント』

 

リュウガ「…」

 

雪穂(オルタナティブは…カードで呼び寄せた剣を手にして、リュウガのもとまで走り出した)

 

『アクセルベント』

 

雪穂(オルタナティブはもう一枚のカードを右腕の機械に読み込ませると…高速でリュウガを斬りつける)

 

オルタナティブ「はっ!」ズバッ!

 

リュウガ「…!」フラッ

 

ネオトルーパー1「私達も続くよ!」

 

ネオトルーパー2「うん!」ダッ

 

ネオトルーパー3「行っくよー!」ダッ

 

雪穂(ヘルメットをまた被ったヒデコさん達は武器を持って、コーカサスに向かって行ったけど…)

 

コーカサス「…」スッ

 

『Hyper Clock Up』

 

ガッ!ゴッ!ドカッ!

 

ネオトルーパー1「!…わっ!?」

 

ネオトルーパー2「きゃっ!」

 

ネオトルーパー3「うわぁっ!?」

 

雪穂(超高速で動くコーカサスから攻撃を受けてしまい…三人のヘルメットが壊されてしまった)

 

『Hyper Clock Over』

 

ヒデコ「痛っ…!」

 

ミカ「ううっ、あんなの反則だよぉ…」

 

フミコ「やっぱり、ライダーの力を持ってない私達じゃ…うっ!」

 

ドサッ

 

雪穂(コーカサスの超高速移動の効果は切れたが…大きなダメージを受けたヒデコさん達は倒れてしまった)

 

亜里沙「ヒデコさん!」

 

雪穂「フミコさん…ミカさん!」

 

オルタナティブ「お前ら!?…くっ!」スッ

 

『ホイールベント』

 

雪穂(ヒデコさん達を助けるために、オルタナティブはバイク型のモンスターに乗って…コーカサスに突進していく)

 

リュウガ「…」

 

『ファイナルベント』

 

雪穂(しかし、その直後…リュウガが呼んだ黒い龍がバイクに乗ったオルタナティブに向かって黒い炎を吐き出した)

 

オルタナティブ「何!?…っ!」バッ

 

雪穂(オルタナティブはバイクから降りて何とか避けたが…黒い炎はバイク型のモンスターに命中する)

 

サイコローグ「!?」

 

オルタナティブ「しまった、モンスターが…!」

 

雪穂(バイク型のモンスターは石のように固まると…その場から逃げられなくなってしまった)

 

リュウガ「…」フワッ

 

雪穂(黒い龍の前に立ったリュウガはほんの少し空中に浮くと…黒い龍の炎と一緒に、石になったモンスターに向かってキックした)

 

サイコローグ「…!!」

 

オルタナティブ「うわっ!?」

 

雪穂(サイコローグの爆発に巻き込まれたオルタナティブは…変身が解け、先生に戻ってしまった)

 

ヤマダ「うぐっ…!」ゴロゴロ

 

雪穂「だ、大丈夫ですか!?」

 

ヤマダ「何とかな…!?」

 

亜里沙「…どうしたんですか?」

 

ヤマダ「オルタナティブのカードデッキが無い…一体、どこに」

 

バキッ!

 

ヤマダ「!?」

 

コーカサス「…」スタスタ

 

雪穂(オルタナティブのカードデッキを踏みつけたコーカサスは…リュウガと共に、私達に近付いてきた)

 

ヤマダ「契約モンスターだけじゃなく、カードデッキまで…やられた!」

 

亜里沙「そんな…このままだと私たち、捕まっちゃう!」

 

雪穂(そうだ、私達がまたショッカーに捕まったら…きっと今度はタダじゃ済まない)

 

雪穂(私達はもちろん…ヒデコさん達やヤマダ先生も危険な目に遭うだろう)

 

雪穂(そうなるくらいなら、私は…!)

 

雪穂「…ツバサさん、ごめんなさい!」ガサゴソ

 

亜里沙「雪穂…?」

 

雪穂(私は持っていたカバンから…青い銃を取り出した)

 

亜里沙「それって…ツバサさんの?」

 

雪穂「うん、後はこの銃に対応したカードさえあれば…」

 

ヤマダ「それなら、私のジャージのポケットに…あった!」スッ

 

雪穂(先生は二枚のカードを私に譲ってくれたが…カードには何も描かれていなかった)

 

亜里沙「でも、何も描いてない…」

 

ヤマダ「すまない…どうやら両方、効果の無いブランクカードのようだ」

 

雪穂「そんな…ん?」ガサゴソ

 

亜里沙「どうかしたの?」

 

雪穂「別のポケットを初めて開けてみたんだけど、これってもしかして…?」サッ

 

雪穂(私がカバンから取り出したのは…朱色のカードデッキと水色のグリップのようなものだった)

 

亜里沙「どっちもツバサさんのものなのかな…あれ、何か光ってない?」

 

雪穂「えっ?…うわっ!?」

 

雪穂(突然、朱色のカードデッキと水色のグリップは光り出すと…持っていた二枚のカードにそれぞれ吸い込まれていった)

 

亜里沙「二つのアイテムが、カードに…」

 

雪穂(何も描かれていなかったはずの二枚のカードには…いつの間にかそれぞれのライダーの顔と名前が刻まれていた)

 

雪穂「これなら…いける!」

 

雪穂(二枚のカードを青い銃に入れた私は…引き金を引いた)

 

『カメンライド…ライア!ドレイク!』

 

ライア「俺は、ライダーの運命を変えてみせる…!」

 

ドレイク「風はどんな奴にも吹く…例えそれが、どんな嫌な奴でも」

 

リュウガ「!」

 

コーカサス「…!」

 

雪穂「お願い、私達を助けて!」

 

 

 

ツバサ「元々、この世界の私達三人は…『城南大学附属高等学校』に通うごく普通の生徒だったの」

 

ツカサ「…そういえば、この世界に『UTX高校』はあるのか?」

 

ツバサ「この世界のUTXビルには…『UTX高校』の代わりに『TOKYO UTX』というテレビ局があったわ」

 

ツカサ「『TOKYO UTX』…?」

 

アキバ「私、実はそのテレビ局でキャスターをやってたの…ちょっと前までは至って普通のテレビ局だったんだよ?」

 

アキバ「でも、ショッカーに乗っ取られてからは…世界中に影響を与えるフェイクニュースばかり報道するようになっちゃって」

 

ツカサ「なるほどな…それで?」

 

ツバサ「…二年生に進級してから初めて学校に登校したある日、私達は学校が廃校になりかけている事を知った」

 

ツバサ「生徒である私達に、何か出来ないか考えていた時…私達三人は同じ夢を見たの」

 

ツカサ「同じ夢…?」

 

ツバサ「そう、それは同じ制服を着た別の世界の私達が…違う学校で『A-RISE』というスクールアイドルとして活動している夢」

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「その夢を見たこの世界の私達三人もやがて…学校の廃校を阻止する為に、スクールアイドルを始めるようになった」

 

ツバサ「未経験だった作詞に作曲、衣装作りやダンスも…『A-RISE』としての記憶を持つ私達三人には難しい事じゃなかった」

 

ツバサ「そして…私達はスクールアイドルの全国大会に優勝した」

 

ツバサ「それを受けて入学希望者が増加した『城南大学附属高等学校』は廃校を撤回し、存続を決定しようとした矢先…」

 

ツカサ「ショッカーが…この世界にやって来たんだな?」

 

ツバサ「…」コクリ

 

 

 

ライア「よせ…何もかもが空っぽのお前では、この勝負に勝ち目は無い」

 

リュウガ「…」ダッ

 

ライア「話も聞かずに戦いか…気が短いな」スッ

 

雪穂(朱色のライダー『ライア』は…ベルトのカードデッキから取り出した一枚のカードを左手の機械の中に入れた)

 

『スイングベント』

 

ライア「はぁっ!」ビシッ!

 

リュウガ「…!」

 

雪穂(ムチのような武器を呼び出したライアは…素早い動きでリュウガを攻撃していく)

 

『ソードベント』

 

リュウガ「…!」

 

雪穂(剣を持ったリュウガは、ライアを斬りつけようとしたが…)

 

ライア「言ったはずだ…俺の占いは当たる」

 

『コピーベント』

 

ライア「ふっ!」ガキンッ!

 

雪穂(ライアはリュウガが持っているものと全く同じ剣で…リュウガの攻撃を防いだ)

 

リュウガ「!?」

 

ライア「虚しいと思わないか?こんな戦いは…」

 

『アドベント』

 

ドカッ!

 

リュウガ「…!」フラッ…

 

雪穂(突然、近くのビルの窓からエイのようなモンスターが現れ…リュウガに体当たりしていく)

 

『ファイナルベント』

 

ライア「はぁーっ!」

 

雪穂(ライアはそのままモンスターの背中に乗ると…リュウガに突進していった)

 

ゴッ!

 

リュウガ「…!!」バタッ

 

ヤマダ「リュウガを倒した…あっちの方は!?」

 

ヒュゥゥゥ…

 

ドレイク「今は空っぽでも、大事なものを思い出せば…きっとあなたは美しい花を咲かせられる」

 

コーカサス「…」スッ

 

ドレイク「はっ!」ガガッ!

 

雪穂(水色のライダー『ドレイク』はまず、トンボの形をした銃で…コーカサスが触ろうとしていた左腰のカブト虫のようなものを壊した)

 

コーカサス「!?…!」バッ

 

『Rider Beat』

 

雪穂(怒ったコーカサスは右手首のブレスレットに着いていたカブト虫のようなものを半回転させると…ドレイクに向かって飛び上がっていく)

 

ドレイク「仕方ない…プットオン!」ガチャ

 

『Put On』

 

雪穂(しかし、銃のしっぽのようなものを引っ張ったドレイクは鎧を身に着けると…)

 

ガキンッ!

 

コーカサス「…!?」

 

雪穂(全身で受け止め、コーカサスのパンチを完全にガードしていた)

 

ドレイク「無駄ですよ、花から花へ渡る風にその技は通用しない…キャストオフ!」ガチャ

 

『Cast Off』

 

コーカサス「…!」

 

『Change…Dragonfly』

 

雪穂(銃のしっぽの部分を引いてバラバラに飛ばした鎧をコーカサスにぶつけると、ドレイクは元の姿に戻り…)

 

ドレイク「ライダー…シューティング」

 

『Rider Shooting』

 

雪穂(銃の羽根の部分をたたんで、コーカサスに狙いを定めると…大きな光の弾を撃ち込んだ)

 

ドレイク「…クロックアップ!」

 

『Clock Up』

 

雪穂(その直後にクロックアップをしたドレイクは…)

 

コーカサス「!?」

 

『Clock Over』

 

雪穂(いつの間にか、コーカサスのすぐ後ろまで移動していた)

 

コーカサス「!!」クルッ

 

ドレイク「ライダーシューティング!」

 

『Rider Shooting』

 

雪穂(前と後ろ、二つの方向からドレイクの技を受けたコーカサスは…その場で倒れた)

 

コーカサス「…」ドサッ

 

ヤマダ「コーカサスまで…スゴいな、あんた達!」

 

ライア「…あそこで倒れている彼女達を頼む」

 

ヤマダ「そうだ、教え子達が…すまん!」ダッ

 

雪穂(先生が倒れているヒデコさん達のもとへ走っていくと…ライアとドレイクは私と亜里沙の目の前にやってきた)

 

雪穂「あっ、あの…」

 

亜里沙「助けてくれて、ありがとうございます!」

 

雪穂「あ…ありがとうございます!」

 

ドレイク「礼には及びませんよ…全ての女性を守るのが、私の仕事ですから」

 

ライア「お前達が…『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』だな?」

 

雪穂「えっ?…はい、そうですけど」

 

ライア「…気を付けろ、お前達は近いうちに大切なものを失うかもしれない」

 

雪穂「はい!?」

 

亜里沙「私たちの大切なものって…?」

 

ライア「詳しくは俺にも答えられない…だが、運命は変わらない訳じゃない」

 

雪穂「じゃあ…大切なものを失わない可能性もあるってことですか?」

 

ドレイク「ええ、あなた達自身が向き合おうとすれば…その結果は変わるはずでしょう」

 

亜里沙「私たちが…向き合う?」

 

ライア「そうだ、もちろん『彼女達』の力も借りて…」

 

雪穂「『彼女達』の力…?」

 

ドレイク「えーっと、その…確かギリシャ神話に出てくる九人の女神と同じ名前の…」

 

亜里沙「もしかして…『μ's』?」

 

ドレイク「そうそう、それそれ!」

 

雪穂「お姉ちゃん達の力が…そっか」

 

亜里沙「でも、この世界のお姉ちゃんたちは…」

 

ライア「いや…この世界にいる『彼女達』の事じゃない」

 

亜里沙「だとしたら…『μ'sの世界』にいるお姉ちゃんたちが?」

 

雪穂「でも、急にそんな事言われても…あっ」

 

雪穂(身体が透け始めているライアとドレイクを見て…私はカードの効果が切れていることを理解した)

 

ライア「…時間切れだ」

 

亜里沙「もう行っちゃうの?」

 

ドレイク「風は気まぐれ…好きな場所に吹き抜けるだけです」

 

雪穂「あの、最後に一つだけ…どうして私達にそんな事を教えてくれたんですか?」

 

ライア「占いだ」

 

雪穂「…占い?」

 

ライア「俺の占いは当たる…だが、決まった運命ほど変えたくなる」

 

ドレイク「後はあなた達自身の手で…彼の占いを外してあげてください」

 

ライア「…頼んだぞ」

 

ドレイク「いつかあなた達にも…私のメイクで、より美しい花を咲かせてあげましょう」

 

雪穂(そう言ってライアとドレイクは…私達の前から消えてしまった)

 

亜里沙「あの二人…行っちゃったね」

 

雪穂「うん…それにしても、失うかもしれない私達の大切なものって何なんだろう?」

 

亜里沙「お姉ちゃんたちのことじゃないのかな?」

 

雪穂「でも『μ's』の力を借りるって言ってたから…きっと、違うんだと思う」

 

亜里沙「あっ、そっか…」

 

雪穂「う~ん、何だろう…やっぱり私達の世界とかかな?」

 

?「あなた達の自由…じゃないかしら?」

 

雪穂「!?」クルッ

 

絵里「…」フフッ

 

雪穂(私達が振り向くと…そこには青いカバンを持った絵里さんがいた)

 

亜里沙「あっ…カバンが!」

 

絵里「ショッカーから逃げ切ろうだなんて…無理な事よ」スッ

 

雪穂(絵里さんは…ポケットから四枚のカードを取り出した)

 

亜里沙「それって、ラウズカード…?」

 

絵里「そう…これは全てカテゴリーKのカード、ショッカーの技術で人工的に造り出したものよ」

 

絵里「これが『剣の世界』のライダーが持っている武器が無ければ使えないのは…あなた達でも知っているわよね?」

 

雪穂「…一体、それをどうするつもりなんですか?」

 

絵里「こうするのよ…フッ!」バッ

 

雪穂(絵里さんは私に向かって、四枚のラウズカードを投げつけた)

 

亜里沙「雪穂、危ない!」サッ

 

雪穂(亜里沙が私をかばうように前へ出ると…四枚のラウズカードから鍵穴のようなものが現れた)

 

亜里沙「きゃっ!?」

 

雪穂「亜里沙!」

 

亜里沙「何、これ…うっ!」

 

雪穂(亜里沙の身体が鍵穴と吸い込まれると…一枚のラウズカードに変化し、絵里さんのもとに飛んでいった)

 

雪穂「亜里沙が、カードの中に…!?」

 

絵里「あなたの方を狙っていたのだけど…仕方ないわね」

 

雪穂「亜里沙を…私の大切な友達を返してください!」

 

絵里「そうね…あなたも一緒に来てくれれば、考えない事も無いわよ?」

 

雪穂「…っ!」

 

絵里「私達にとって、あなた達は別の世界の大事な家族…でもこれとそれとは話が別」

 

絵里「あなたが私と一緒に来ない限り…亜里沙はずっとこの『バニティカード』に封印されたままよ?」

 

ヤマダ「しまった…待て!」ダッ

 

クウガPT「…」ドンッ

 

ヤマダ「うわっ!?」

 

雪穂(異変に気付いた先生は、急いで私の所まで戻ろうとしたけど…クウガに似た黒くて短い二本角のライダーに突き飛ばされた)

 

雪穂「先生!」

 

絵里「クウガ・プロトタイプ…そこにいる邪魔者の始末は任せるわ」

 

クウガPT「…」スッ

 

ヤマダ「うっ…」

 

雪穂(クウガ・プロトタイプと呼ばれるライダーは…生身の先生やヒデコさん達を攻撃しようとしていた)

 

雪穂「いや…もうやめて!」

 

ドガッ!

 

雪穂(その時…カブト虫のような姿をした怪人が現れ、先生達を守るようにクウガを攻撃した)

 

クウガPT「!」ゴロゴロ

 

Bジョーカー「…」

 

絵里「ブレイド・ジョーカー…あなた、また邪魔を!」

 

雪穂「…ブレイド・ジョーカー?」

 

絵里「こうなったら私が直々に…我がショッカーに仇なすあなたを消してあげるわ」

 

Bジョーカー「…」

 

絵里「…レイキバット」

 

雪穂(絵里さんが呼んだのは…キバットやキバーラによく似た小さいコウモリ型のモンスターだった)

 

レイキバット「行こうか、華麗に激しく…!」

 

絵里「変身…」

 

雪穂(レイキバットが絵里さんのお腹のベルトに取り付くと…絵里さんは青い目と両腕に巻かれた鎖が特徴の白いライダーに変身した)

 

ヤマダ「仮面ライダーレイ…!」

 

レイ「…」ダッ

 

Bジョーカー「!」

 

雪穂(カバンを投げて走り出したレイは…ブレイド・ジョーカーに向けて、左の手のひらから冷気を出しながら右手でパンチした)

 

ガッ!

 

Bジョーカー「…!」

 

雪穂(レイは左手でも攻撃し始め…ブレイド・ジョーカーはダメージを受け続けていた)

 

Bジョーカー「…」ブンッ!

 

レイ「…」サッ

 

雪穂(レイはブレイド・ジョーカーのパンチを避け…次の攻撃に出ようとした)

 

Bジョーカー「!」ダッ

 

レイ「!?」クルッ

 

雪穂(しかし、何を思ったのかブレイド・ジョーカーは…レイが投げ捨てたカバンのもとへ走っていった)

 

Bジョーカー「…」チラッ

 

雪穂(カバンを手にしたブレイド・ジョーカーは…私に投げて渡そうとしていた)

 

雪穂「えっ、私に…?」

 

ガシッ

 

雪穂(すると、後ろから誰かに身体を掴まれた感覚がした)

 

雪穂「!」クルッ

 

凛「つっかまえ~たっ!」

 

雪穂「あっ…!?」

 

にこ「こ…今度ばかりはもう逃がさないわよ?」ゼェゼェ

 

Bジョーカー「!?…っ!」ブンッ

 

雪穂(私が捕まったのを見たブレイド・ジョーカーは…カバンを先生達の方に投げた)

 

ヤマダ「おっと!…ふぅ」パシッ

 

Bジョーカー「…」ダッ

 

レイ「…!」ドカッ!

 

クウガPT「…」ドゴッ!

 

Bジョーカー「!」

 

雪穂(ブレイド・ジョーカーは私を助けようとしたけど…二人のライダーからの攻撃を受けて、どこかへ吹き飛ばされてしまった)

 

にこ「よくやったわ…後はあそこにいる邪魔者を始末するだけね!」

 

ヤマダ「ぐっ…ん?」

 

雪穂(その直後、大きなアリ型のメカが私を捕まえた凛さんとにこさんに向かってやってきた)

 

凛「ニャニャ!?」

 

にこ「何なのよアレ!?」

 

レイ「!」ダッ

 

雪穂(レイが凛さんとにこさんの前に出ると…アリ型のメカと戦い始めた)

 

クウガPT「…!」フラッ

 

雪穂(クウガもレイと同じように動こうとしたけど…膝をついてしまい、立ち上がれずにいた)

 

にこ「ちょっとアンタ、何やってんのよ!?」

 

凛「早く助けるニャ!」

 

クウガPT「…」

 

 

 

ヤマダ「『アントロイド』…って事は!」バッ

 

ミカ「えへへ…」

 

フミコ「作戦成功、だね…」

 

ヤマダ「お前ら!」

 

ヒデコ「今のうちに早く…雪穂ちゃんだけでも、助けなきゃ」

 

?「ダメだよ」

 

ヒデコ「あっ…」

 

ヤマダ「お前は…!」

 

?「あなた達は地下シェルターに戻って…この事を彼女達に伝えて」

 

フミコ「でも、大丈夫なの…?」

 

?「…」コクリ

 

ミカ「分かった…頼んだよ!」

 

 

 

レイ「…!」ゴシャッ!

 

雪穂(アリ型のメカを凍らせたレイは…パンチで粉々に破壊した)

 

にこ「終わったわね、これであの邪魔者を…っていない!?」

 

凛「もしかして…逃げられちゃったのかニャ?」

 

にこ「そうみたいね…でも良いわ、彼女達はこうして捕まえた訳だし」

 

凛「一人はカードになっちゃったけどね~…あっ、それはショッカーのものだから返してもらうね?」ヒョイ

 

雪穂(私は…ディエンドライバーを取り上げられてしまった)

 

雪穂「!」

 

にこ「早く基地に戻るわよ…一応、連絡もしておきましょうか」

 

凛「よ~し、行っくニャー!」ダッ

 

にこ「もしもし?私よ…彼女達を捕まえたわ」

 

穂乃果『了解…すぐに基地本部に戻るよ』

 

雪穂「…っ」ググッ

 

雪穂(今の私にはただ…行き場のない怒りを抑えることしか出来なかった)

 

雪穂(もしかして…失うかもしれない『大切なもの』ってこのことだったの?)

 

にこ「ほら、アンタもボーッと突っ立ってないで早く歩きなさい」ドンッ

 

雪穂「…!」

 

雪穂(亜里沙を人質に取られ、私は…UTXに連れ戻されることになった)

 

?「…」

 

リュウガ「…」

 

コーカサス「…」

 

?「海未ちゃん、ことりちゃん…ごめん」

 

 

 

ツバサ(あの時の私達は…UTX劇場で大会に優勝した記念のライブをする為に、控え室にいた)

 

アンジュ「はぁ~…うっ!?」ゴホゴホッ!

 

ツバサ「アンジュ!?」

 

エレナ「大丈夫か!?」

 

アンジュ「え、ええ…」ゴホゴホッ

 

ツバサ「風邪でもひいたのかしら…?」

 

エレナ「全く、体調管理には気をつけろとあれ程言ったというのに…」

 

アンジュ「それがそうじゃなくて…低周波マッサージ機を使ってから、何だか身体中が苦しいの」

 

ツバサ「えっ…身体中が苦しい?」

 

エレナ「低周波マッサージ機で…?」

 

コンコン…

 

ツバサ(私とエレナがアンジュを介抱していると…突然、誰かが控え室に入ってきた)

 

?「失礼しま~す!」ガチャ

 

ツバサ「ごめんなさい、今はちょっと…!?」

 

穂乃果「…」

 

エレナ「君は?」

 

穂乃果「初めまして、高坂穂乃果です!」

 

ツバサ「どうして、あなたが…?」

 

エレナ「…ツバサ?」

 

穂乃果「ビックリするのも無理ないよね…だって、本当ならこの世界に私はいないはずだもん」

 

エレナ「どういう事だ…?」

 

穂乃果「そっか、まだそっちの二人には私達についての記憶がないんだ…」

 

穂乃果「でも…説明するの面倒だから大事なことだけ言っちゃうね?」

 

穂乃果「私は…『ショッカー』に造られたの」

 

ツバサ「ショッカー…?」

 

穂乃果「そうだよ、そしてあなた達三人は…そのメンバーとして選ばれた」

 

穂乃果「彼によって…ねっ?」クルッ

 

ギィ…

 

ツバサ(彼女が振り向くと…金髪で壮年の外国人男性が赤い薔薇の花束を三つほど抱えながら、私達の控え室に入ってきた)

 

ナルタキ「やあ、おめでとう…私は君達のような人材を求めていた」

 

ツバサ「あなたは…?」

 

穂乃果「今からこの世界を支配する…秘密結社ショッカーの幹部だよ」

 

エレナ「世界を支配…だと?」

 

ナルタキ「そうだ、そして君達はそれを手伝う改造人間となった…君達の体内に入り込んだ『ナノロボット』の手によって」

 

ツバサ「!?」

 

エレナ「私達が…改造人間?」

 

穂乃果「そうだよ…試しにそこの机に置いてあるガラスのコップを持ってみたらどうかな?」

 

ツバサ「…?」ヒョイ

 

パリン!

 

ツバサ(私がガラスのコップを軽く持った途端…コップは割れて、バラバラになってしまった)

 

エレナ「!?」

 

ツバサ「…嘘」

 

穂乃果「ウソなんかじゃないよ…ほら、あなたもやってみてよ」

 

エレナ「…」ヒョイ

 

パリン!

 

ツバサ(エレナも試してみると…私と同様、軽く持っただけでコップを粉々にしてしまった)

 

エレナ「!」

 

ナルタキ「…実験は成功だな」

 

アンジュ「…!」ゴホゴホッ

 

エレナ「まさか、アンジュの具合が悪くなったのも…」

 

ナルタキ「なるほど、君の身体は他の二人に比べて合わなかったようだね…?」

 

ナルタキ「ちょっとした『失敗作』という事になるが…まあ良い」

 

ツバサ「!!」

 

エレナ「…今、何と言った?」

 

ナルタキ「聞こえなかったかな?…君達と比べて彼女は『失敗作』だと言っているんだ」

 

エレナ「勝手な事をしておいて…ふざけた事を言うな!」ダッ

 

ツバサ(憤ったエレナは…男性に向かって走っていった)

 

ナルタキ「フ~ム、どうやら少し眠ってもらう必要があるようだね…『グレイブ』」

 

穂乃果「はい…お任せを」スッ

 

ツバサ(バックルと一枚のカードを取り出した彼女はカードをバックルに挿入すると…それを腹部に装着させた)

 

穂乃果「もらうよ、あなた達の『自由』を…変身」

 

『Open Up』

 

ツバサ(彼女がバックルを展開させると…ベルトから黄色くて薄い壁のようなものが飛び出してきた)

 

ツバサ「あれは…エレナ、止まって!」

 

エレナ「何?…うわっ!?」バチッ!

 

ツバサ(壁のようなものにぶつかったエレナは吹き飛ばされると…後ろにいた私とぶつかってしまった)

 

ツバサ「きゃっ!?」ドカッ!

 

ツバサ(壁のようなものは彼女の方まで下がると…最終的に彼女の身体を潜り抜け、消滅していった)

 

グレイブ「…」スタスタ

 

ツバサ(赤い目に、黄色い身体をした戦士の姿に変わった彼女は…私達を捕まえようと接近してくる)

 

エレナ「…」

 

ツバサ「うっ…」ドサッ

 

ツバサ(私とエレナはぶつかった時の衝撃で…動く事が出来ずにそのまま気を失ってしまった)

 

アンジュ「ツバサちゃん…エレナちゃん!」

 

ナルタキ「気を失っているだけだ…最も、次に目覚める時には私の忠実な配下として働く事になるだろうがね」

 

アンジュ「そんな…っ!」ゴホゴホッ

 

ナルタキ「君にも…少し眠ってもらうとしよう」サッ

 

アンジュ「あっ…」バタッ

 

ナルタキ「…この花束は、君達へのお祝いだ」バサッ

 

ナルタキ「グレイブ、彼女達を戦闘員のいる手術室に連れて行け」

 

グレイブ「…」コクリ

 

 

 

ツバサ「っ…?」パチリ

 

ツバサ(目を覚ました時、私は…知らない場所にいた)

 

ツバサ「これって、手術台?…!」ハッ

 

ツバサ「そうだ…私は!」ガバッ

 

ツバサ(私が手術台から起き上がると…両隣の手術台にはエレナとアンジュが眠っていた)

 

ツバサ「エレナ、アンジュ…」

 

?「目、覚めました?」

 

ツバサ「?」クルッ

 

ツバサ(私が声のする方を向くと…そこには防護服を着た人物がいた)

 

ツバサ「…!」キッ

 

?「そんなに怖い顔しなくても大丈夫ですよ…こう見えても、私はあなたの味方ですから」

 

ツバサ「味方…あなたが?」

 

?「…下を見てみてください」

 

ツバサ「下?…!」

 

ツバサ(私が下を見てみると、そこには…白い覆面を被った白衣の人達が倒れていた)

 

ツバサ「これって…」

 

?「あなたはこれから脳改造の手術をする所だったんです…ここにいる人達は皆、私が倒したんで今はもう大丈夫ですけど」

 

ツバサ「…あなた、誰?」

 

?「別に…名乗るほどの者でもないですよ?」

 

ツバサ(そう言って防護服のマスクを取ったのは…一人の少女だった)

 

ツバサ(年齢は顔立ちからして、私達と同じくらいのように見えた)

 

少女「ぷはっ…」フゥ

 

ツバサ「どうして、こんな事を…?」

 

少女「目的があるんです…あなた達を助けようとしたのも、その為です」

 

ツバサ「…目的?」

 

少女「はい、私には…あなた達が持っている『輝き』が必要なんです」

 

ツバサ「私達の…『輝き』?」

 

少女「スクールアイドルとして持っている成分みたいなものです…それを貰う為に、こうしてあなた達を助けに来ました」

 

ツバサ「…嫌だと言ったら、どうするつもり?」

 

少女「その時はすぐに諦めてここを出て行くつもりです…あなたの両隣にいるお二人が、どうなっても良いというのであれば」

 

ツバサ「それは…どういう意味?」

 

少女「私がここに来た時、エレナさんは…頭の中に小型のローチを仕込まれていたんです」

 

ツバサ「ローチ?」

 

少女「…簡単に言うと、ショッカーに逆らう者を無理やり洗脳させるものです」

 

ツバサ「!?」

 

少女「このまま目を覚ませば、エレナさんは間違いなく…あなたの敵になります」

 

ツバサ「そんな…!」

 

少女「それと、アンジュさんの方は…改造の影響で『リジェクション(拒絶反応)』に似た症状が出ています」

 

ツバサ「『リジェクション』…?」

 

少女「本来、何か刺激でも与えない限りは…ナノロボットで改造された人間にこんな事は起こらないはずなんですが」

 

ツバサ「…!」ハッ

 

アンジュ『低周波マッサージ機を使ってから、何だか身体中が苦しいの』

 

ツバサ「もしかして、低周波マッサージ機で…?」

 

少女「なるほど…それでナノロボットの性質が微妙に変化したんですね」

 

少女「どちらにしてもこのままでは…アンジュさんは化け物のような醜い姿に変わり果ててしまううえに、命を落としかねません」

 

ツバサ「じゃあ、どうしたら…!?」

 

少女「…方法はあります」

 

ツバサ「!…本当に?」

 

少女「はい、別のナノロボットを体内に入れれば…小型ローチによる洗脳もリジェクションの症状も取り除けます」

 

ツバサ「そんな事が?」

 

少女「出来ます…もちろん、あなた達の『輝き』を譲っていただければの話ですけど」

 

ツバサ「!」

 

少女「『輝き』を失ったあなた達はスクールアイドルでなくなる…でも、最悪の事態を回避する事は可能です」

 

少女「そして、あなた達は…ショッカーに対抗できる力を手に入れられる」

 

ツバサ「!…力?」

 

少女「その説明は『輝き』をいただいた後に…早く手を打たないと、お二人は手遅れになります」

 

ツバサ「…!」

 

ツバサ(この時の私には…迷ってる時間なんて無かった)

 

ツバサ(エレナとアンジュを助けたい…私の出す答えは、ただそれだけだった)

 

 

 

ナルタキ「さぁて…そろそろ『HOPPER』の脳改造が終わった頃かな?」

 

ジリリリリ!

 

ナルタキ「…どうした、何があった?」

 

戦闘員「分かりません…基地内部にある監視カメラが何者かによって次々と破壊されている模様です!」

 

ナルタキ「何…?」

 

戦闘員「あっ…このカメラに不審な人物が!」

 

V3『…』

 

ナルタキ「!?…『Version3』だと?」

 

戦闘員「別の二台のカメラにも…誰か映っています!」

 

1号『…』

 

2号『…』

 

ナルタキ「『HOPPER』…一体、これはどういう事だ!?」

 

戦闘員「分かりません、現在調査中です!」

 

ナルタキ「私に考えさせるつもりか…だったら貴様が直接確かめろ!!」

 

戦闘員「イ…イーッ!」ダッ

 

ナルタキ「グレイブ、お前もすぐに向かえ!」

 

グレイブ「…」スタスタ

 

 

 

少女『ショッカー…それは数多の世界を裏から操ろうとする秘密結社』

 

少女『そして、あなた達はスクールアイドルとしての《輝き》と引き換えに…《仮面ライダー》としての力を手に入れました』

 

少女『《仮面ライダー》とは…仮面をつける事によって自らの感情を捨て去りながら、常人を超える能力を駆使して戦う者です』

 

少女『人間の自由と…世界の平和を、守る為に』

 

戦闘員「貴様…止まれ!」ダッ

 

V3「やぁっ!」バキッ!

 

戦闘員「イーッ…!」バタッ

 

V3(少女から説明を聞いた『私達』は…手分けして、基地内部にある監視カメラを破壊していた)

 

V3「これが、私の力…?」

 

ダレカー!

 

V3「!」ダッ

 

V3(私が声のする方へ向かうと…牢屋の中には数人の女性が閉じ込められていた)

 

V3「大丈夫ですか?」

 

アキバ「ひぃっ…だ、誰!?」ビクッ

 

V3(牢屋にいた女性達の中の一人は…『Version3』になった私を見て、明らかに怯えていた様子だった)

 

V3「私はあなた達を助けに来ました…だから、安心して」

 

アキバ「私達を、助けに…?」

 

ヤマダ「その声は…もしかしてお前、綺羅か?」

 

V3「!」

 

V3(牢屋の中には私達がいるクラスの担任のヤマダ先生と…私達の活動をサポートしてくれている三人の後輩もいた)

 

ヒデコ「そう言われてみれば、確かに綺羅先輩の声だ…」

 

ミカ「その格好…一体、どうしちゃったんですか?」

 

V3「あなた達こそ、どうしてここに…?」

 

フミコ「私達、今日の先輩達のライブをより良くしようと思って…劇場にある機材の最終調整を先生と一緒にしていたんです」

 

ミカ「そしたら…全身真っ黒にした変な人達が急に私達を!」

 

V3「そういう事だったのね…ごめんなさい、あなた達を巻き込んでしまって」

 

ヒデコ「そんな、綺羅先輩が謝る事じゃ…」

 

V3「今すぐに助けるわ…あなた達、少し後ろに下がってもらえる?」

 

ヒデコ「えっ…あっ、はい!」ササッ

 

V3「…はっ!」ガシャン!

 

V3(皆が後ろに下がったのを確認した私は…目の前の鉄格子を取り外した)

 

ミカ「やったぁ!」

 

V3「…早く脱出しましょう」

 

ヤマダ「ありがとう、綺羅…行くぞ!」

 

ヒデコ「はい!」

 

フミコ「あなたも一緒に!」

 

アキバ「あ、ありがとう…」

 

V3(私は皆を連れて、基地の中を走っていると…)

 

ヒデコ「あれ?あそこにいるのって…」

 

ミカ「全身真っ黒の変な人!」

 

?「…」

 

V3(しかし、私には…目の前にいる戦闘員の男性から敵意を感じられなかった)

 

V3「…?」

 

V3(戦闘員の男性は黒いマスクを脱いで素顔を見せると…私達にジェスチャーをした)

 

トウベエ「…」クイッ

 

ヤマダ「何だ?」

 

V3「もしかして…ついて来いって言っているの?」

 

トウベエ「…」コクリ

 

フミコ「でも、もしかしたら罠かも…」

 

V3「…分かったわ、信じてみましょう」

 

ミカ「えぇ!?」

 

トウベエ「…!」フッ

 

V3(後に彼は立花トウベエと名乗り…少女の知り合いである事が分かった)

 

V3(少しの間、立花さんについて行くと…基地から脱出する『非常口』の表示が見えた)

 

アキバ「あれって…」

 

ミカ「出口だ!」

 

フミコ「立花って人、本当に味方だったんだ…あれ?」キョロキョロ

 

ヤマダ「いつの間にかいなくなったな…まあ良いか、行くぞ」

 

V3「はい…!」ピタッ

 

V3(私は…非常口の手前にある扉の前で立ち止まった)

 

ヤマダ「綺羅、どうかしたのか…?」

 

V3「…先生、皆をお願いします」

 

フミコ「えっ、でも…」

 

V3「いいから早く!」

 

ヤマダ「!…分かった、行くぞお前達」ダッ

 

ヒデコ「あっ…ちょっと先生!?」

 

ミカ「待ってよぉ~!」ダダッ

 

V3「…ふっ!」ガッ!

 

V3(皆が先に行くのを見届けた私は、目の前の扉の鍵を壊して部屋に入ると…台の上に大きさの違う二つの箱が置かれていた)

 

V3「もしかして…」パカッ

 

V3(大きい方の箱を開封すると…中にはシアンカラーの銃と二十枚以上のカードが入っていた)

 

V3「これが…『ディエンドライバー』」

 

ガタッ

 

V3「!」

 

V3(隣に置かれていた小さい箱が勝手に動き出したのを見て、私は…それを開けてみた)

 

パカッ

 

?「プハッ…や、やっと出れたわぁ~!」バサバサッ

 

V3(すると、箱の中から…手のひらサイズの白い蝙蝠が飛び出してきた)

 

V3「あなたが『キバーラ』ね…?」

 

キバーラ「そうよぉ~…どこの誰だか知らないけど、アタシを助けてくれたこの恩は一生忘れないわぁ♡」

 

V3「それなら…まずはこの銃の使い方を教えてくれないかしら?」

 

キバーラ「え?」

 

V3(私はマスクを取り外して…キバーラに素顔を見せた)

 

ツバサ「協力をお願いしたいの…小さく可愛らしい、小悪魔のような魅力を持ったあなたに」フフッ

 

 

 

ミカ「やっと地上に出られたぁ…ってウソ!?」

 

戦斗員「…」

 

フミコ「今度はガスマスクの人達がいっぱい…!」

 

ブロロロ…キキッ!

 

アキバ「私達の目の前に車が…」

 

ヤマダ「何だ、この白いミニバンは…!」

 

トウベエ「…」クイッ

 

ヒデコ「えっ…乗せてくれるんですか!?」

 

トウベエ「…」ビシッ!

 

ヤマダ「助かる…今のうちに早く乗れ!」ダッ

 

バタン!

 

ヤマダ「全員乗ったか!?」

 

フミコ「でも、まだ綺羅先輩が…」

 

ヤマダ「綺羅ならきっと大丈夫だ、そう信じるしかない…出してくれ!」

 

トウベエ「!…!?」

 

ヒデコ「そんな…周りにガスマスクの人達が集まってきているせいで車が動けない!」

 

ミカ「このままじゃまた捕まっちゃうよ~!」

 

1号「はっ!」ゴッ!

 

2号「ふっ!」ガッ!

 

戦斗員「…!?」バタッ

 

アキバ「あの人達は…?」

 

1号「今だ、早く車を!」

 

2号「ここはぁ…私達に任せて?」

 

ヒデコ「その声、統堂先輩と優木先輩!?」

 

ヤマダ「お前達まで…くっ、頼む!」

 

トウベエ「…!」コクリ

 

ブロロロ…

 

1号「…行くぞ」

 

2号「ええ…」

 

 

 

ツバサ(キバーラを連れた私が、UTXの外に出ると…ガスマスクの男達があちこちで倒れていた)

 

キバーラ「何、これ?」

 

ツバサ「きっと、二人がやってくれたのね…!」

 

ツバサ(その先では…1号と2号が、剣を持ったグレイブと戦っていた)

 

『MIGHTY』

 

グレイブ「…!」ズバッ!

 

1号「ぐっ!」

 

2号「うっ…!」

 

ツバサ(グレイブは剣の先に一枚のカードを通すと…1号と2号を斬りつけた)

 

ツバサ「エレナ、アンジュ!」ダッ

 

1号「ツ、ツバサか…」ゼェゼェ

 

ツバサ「大丈夫?」

 

2号「このくらい、平気よぉ…っ!」ハァハァ

 

ツバサ(二人は気丈に振る舞おうとしているが…明らかに疲弊している様子だった)

 

ツバサ「あなた達、さっきまで治療してたばかりなんだから…もう無理はやめて?」

 

1号「だが…!」

 

ツバサ「ここは…私に任せて」

 

2号「ツバサちゃん…?」

 

ツバサ「…キバーラ、二人をお願い」スタスタ

 

キバーラ「ええ…分かったわ」

 

ツバサ(二人をキバーラを任せ、私は…一枚のカードを取り出した)

 

ツバサ「私は…この力で、あなたを倒す!」

 

『カメンライド…』

 

グレイブ「!」

 

ツバサ(ディエンドライバーにカードを装填した私は…陽が沈みかけた空に向かって引き金を引いた)

 

ツバサ「変身!」

 

『ディ・エンド!』

 

ツバサ(蒼い光に包み込まれた私は…その姿を変えた)

 

2号「あれは…?」

 

1号「さっき、私達と一緒にいた時とは違う姿をしているな…」

 

キバーラ「そう、あのライダーは…『ディエンド』よ」

 

ディエンド「…ふっ!」ダッ

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディエンド(左腰のホルダーから取り出したカードをドライバーに入れた私は…まず姿を消した)

 

グレイブ「!?」

 

ディエンド「ここよ」

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディエンド(次に私は高速移動でグレイブを翻弄させながら…分裂させたエネルギー弾でダメージを与えていく)

 

ディエンド「はぁっ!」ガガッ!

 

グレイブ「…!」フラッ

 

キバーラ「あの子、ディエンド特有の高速移動をもう使いこなしてる…初めて変身したはずなのに何で?」

 

1号「そういえば…ツバサは小さい頃から、誰よりも物事の飲み込みが早かったな?」

 

2号「そうねぇ~…練習した事の無かった逆上がりや一輪車もすぐに出来ちゃったし」

 

ディエンド「はっ…!」ピタッ

 

ディエンド(私は更に攻撃しようとグレイブの顔に銃口を向けたが…突然、夢で見た別の世界の『彼女』の顔が浮かんでしまった)

 

穂乃果『ツバサさん!』ニコッ

 

ディエンド「やっぱり、私には…」

 

ディエンド(攻撃を躊躇した私に対して…グレイブは持っていた剣で反撃してきた)

 

グレイブ「…!」ズバッ!ザシュッ!

 

ディエンド「ううっ…!」

 

2号「ツバサちゃん!?」

 

1号「どうしたツバサ…しっかりしろ!」

 

ディエンド(…そうよ、目を覚ましなさい『綺羅ツバサ』)

 

ディエンド(目の前にいるのは…『高坂穂乃果』とは遠くかけ離れた、ただの傀儡)

 

ディエンド(そして、仮面ライダーは…自らの感情を捨て去りながら人間の自由と世界の平和を守る者でならなければならないはず)

 

ディエンド(だったら、私は…!)

 

『ファイナルカメンライド…』

 

ディエンド「…じゃあね、穂乃果さん」

 

グレイブ「!」

 

ディエンド(カードを装填し、私は…ディエンドドライバーを上空に向けて発砲した)

 

『ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

ディエンド(その直後に『X』の形をしたレーザーがグレイブの頭上に展開されると…私はグレイブに向けて銃を連射した)

 

ディエンド「うわぁぁぁぁぁ!!」ガガガッ!

 

グレイブ「…」ヨロッ…

 

ディエンド(私の攻撃で後退したグレイブは…上空からレーザー光線を浴びた)

 

1号「やった…のか?」

 

グレイブ「…」ドサッ

 

ディエンド(私の『ディエンドブラスト』で…グレイブはついに倒れた)

 

2号「…どうやら、本当にやってくれちゃったみたいねぇ?」フフッ

 

キバーラ「やったわね、ツバサ~!」

 

ディエンド「…」

 

ディエンド(その時の私は何故か…何とも言い表せない、複雑な気持ちになっていた)

 

 

 

少女「『グレイブ』を倒したんですね…お疲れ様でした」

 

ツバサ「…」

 

少女「…あの、大丈夫ですか?」

 

ツバサ「!…ええ、別に何でもないわ」

 

少女「そうですか…」

 

エレナ「先程は助かった、ありがとう」

 

アンジュ「あなたが治療してくれなかったら…私達、きっと助からなかったわぁ?」

 

少女「気にしないでください…あなた達の協力のおかげで、私も目的の物が手に入ったんで」シャカシャカ

 

ツバサ(少女はそう言いながら…シアンカラーの小さなボトルを振らしていた)

 

少女「あっ、でも…まだこれで終わりじゃないですよ?」

 

ツバサ「えっ?」

 

少女「あなた達が会ったさっきの男の人は、他の世界まで支配しようと…『μ'sの世界』と呼ばれる世界にいる一人の少年の身柄を拘束しようとしているんです」

 

アンジュ「じゃあ、もしその子が捕まって…他の世界が支配されちゃった場合はどうなっちゃうのぉ?」

 

少女「おそらく…この世界を含めた全てがショッカーのものになるかと考えられます」

 

エレナ「回避する方法はあるのか?」

 

少女「はい、それは『ディエンド』になったあなたが…その少年を守る事です」

 

ツバサ「!…私が?」

 

少女「そうです…『ディエンド』の変身能力を得たあなたになら、出来るはずです」

 

少女「幸い、豊富な知識と別の世界に行ける特殊能力を持ったキバーラもいますし…」

 

キバーラ「へっ、アタシ?」

 

少女「ええ…それに別世界の『μ's』メンバーに会う事も出来るので、悪い話ではないかと」

 

ツバサ「!…二人とも、突然だけどしばらく留守にしても大丈夫かしら?」

 

エレナ「…分かった」

 

エレナ「だが、その代わり…必ず帰ってくるんだぞ?」

 

アンジュ「そうよ…あんなオジサンにやられちゃったら、許さないんだからね?」

 

ツバサ「ええ、必ず…約束するわ」

 

エレナ「…」フッ

 

アンジュ「うふふっ…」

 

ツバサ「…お願い、キバーラ!」

 

キバーラ「ウフフッ、任せて…グルグルグルグル~!」グルグル

 

少女「あの男の人をやっつけようと思うなら早い方が良いですよ…今の彼は力が弱まっているはずですので」

 

ツバサ「分かったわ…行ってきます」

 

 

 

ナルタキ「…ディケイド、君はそちら側の人間ではない」

 

ツバサ「待ちなさい」スチャ

 

ツバサ(『μ'sの世界』に来た私は…ディエンドライバーの銃口を男に向けた)

 

ナルタキ「!…おやおや、どうやってここまで追ってきたのかね?」

 

ツバサ「キバーラのおかげよ」

 

キバーラ「ベ~ッだ!」

 

ナルタキ「やれやれ…ディエンドライバーまで盗み出すとは、どうやら君にはコソ泥の才能があるようだね?」

 

ツバサ「私達の世界を乗っ取ろうとするあなたに…そんな事を言う権利は無いわ」

 

ナルタキ「フッ、確かにな…ならば今日のところは君のその執念に免じて退散するとしよう」

 

ツバサ(男はオーロラを出現させると、その中に消えていった)

 

ツバサ「!?…待ちなさい!」

 

キバーラ「逃げられちゃったわね…」

 

ツバサ「…」ハァ

 

 

 

ツバサ「それから私は、キバーラと一緒に『クウガの世界』を訪れた直後に…白いクウガに初めて変身したニコさんを見た」

 

ツバサ「グロンギ怪人に追い詰められていたニコさんを見て、放っておけなかった私は…『ディエンド』に変身した」

 

ツカサ「その時に赤いクウガを召喚したという訳か…警察に提供した神経断裂弾の方はどうやって手に入れたんだ?」

 

ツバサ「キバーラが…もう一つの『クウガの世界』から持ってきてくれたの」

 

ツカサ「もう一つの『クウガの世界』…そんな世界があるのか?」

 

ツバサ「ええ、世界は何も今まで旅してきた『μ'sの世界』と九つの世界と私達の世界だけじゃない…無数に存在しているの」

 

ツカサ「なるほどな…ところで、アンタ達を助けた少女というのは今どこにいるんだ?」

 

ツバサ「それは…立花さん、何か知らない?」

 

トウベエ「…」

 

ツカサ「そうか…だいたいわかった」

 

アキバ「えっ、何も言ってないのに分かるの?」

 

ツカサ「ああ…どうやら、おやっさんも知らないみたいだ」

 

アキバ「あ~…」

 

ツバサ「それにしても、私がいなかった間にまさか偽者の『μ's』が八人も現れていたなんて…」

 

アキバ「実は…彼女達、つい最近になって現れたの」

 

ツカサ「最近?」

 

アキバ「ええ、それまでは1号と2号の二人がショッカーの侵攻を食い止めてくれていたんだけど…」

 

ツバサ「そうだったの…でも、私が帰ってくるまで皆が無事で良かったわ」

 

アキバ「それは…二人のライダーが彼女達に追い詰められた時、いつもある人が助けに来てくれたからなの」

 

ツカサ「…ブレイド・ジョーカーの事だな?」

 

ツバサ「ブレイド・ジョーカー…?」

 

ツカサ「アンタが倒れた後、オレ達を助けてくれたアンデッドだ…」

 

ツバサ「アンデッドって…その怪人、本当に私達の味方なの?」

 

アキバ「それが、あの人は…」

 

ガチャ…

 

ミカ「ごめんなさい!雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんが…って、綺羅先輩!?」

 

ヤマダ「綺羅、お前…帰ってきていたのか?」

 

ツバサ「!…先生、皆」

 

フミコ「無事で良かった…私達、二人の先輩から綺羅先輩が別の世界に行ったって聞いてずっと心配していたんですよ?」

 

ツバサ「心配かけてごめんなさいね、もう大丈夫だから」

 

ヒデコ「お帰りなさい…また『A-RISE』の三人が揃って、良かったです」

 

ツバサ「!…ええ、ただいま」

 

ツカサ「…それで、雪穂と亜里沙に何かあったのか?」

 

ミカ「あっ…もしかして、あなたがディケイド?」

 

ツカサ「ああ」

 

ヒデコ「実は亜里沙ちゃんが…『バニティカード』っていうカードに吸い込まれてしまったの」

 

ツカサ「何…亜里沙が!?」

 

アキバ「『バニティカード』って?」

 

ツカサ「ある巨大邪神を呼び出す為に生贄になる人間を封印するラウズカードだ…アイツら、そんなカードまで持っていたのか」

 

フミコ「そのうえ雪穂ちゃんまでダークライダー達に捕まっちゃって…本当にごめんなさい!」

 

ヤマダ「二人をここまで連れて行こうとしていた途中だったんだが、私が不甲斐なかったばかりに…すまない」

 

ツカサ「いや、アンタ達のせいじゃない…悪いのは始めからこの世界の異変に気付けなかったオレの方だ」

 

ツカサ(すると、オレの携帯が部屋の中で鳴った)

 

~♪

 

ツカサ「電話?一体、誰から…!」

 

ツカサ(その電話は…雪穂の携帯からかけてきたものだった)

 

ピッ

 

ツカサ「…もしもし、雪穂か?」

 

?『テレビ…つけてみてよ』

 

ブツッ…ツー、ツー

 

ツカサ「…テレビ?」

 

アキバ「あっ、それならこの部屋にもあるよ…よっと」ポチッ

 

ツカサ(アキバがテレビの電源を入れると…画面には穂乃果と凛とにこ、そして雪穂とアキバによく似た女性が映っていた)

 

?『やっほー!はっちゃけてるー!?』

 

アキバ「えっ…わ、私!?」

 

?『ワームリポーターのアキバでーっす!』

 

ツカサ「ワームという事はどうやら…アンタに擬態した偽者のようだな」

 

アキバ「そんな…私、あんなハイテンションな感じでテレビに出た事ないよ!?」

 

トウベエ「…」シーッ

 

アキバ「あっ…すみません」

 

リポーター『なんとなんと、我々ショッカーが!?ディケイドと反逆者達に宣戦布告しちゃうんだアハハハハハ!』

 

穂乃果『…』

 

ツバサ「あれは『グレイブ』…前に私が倒したはずなのに、どうして!?」

 

雪穂『ツカサ…ツカサ!』

 

ツカサ「雪穂!」

 

リポーター『宣戦布告にかけての意気込みをどうぞ!』

 

穂乃果『ディケイド、雪穂と亜里沙ちゃんを助けたいのなら…午後三時にUTXビルの前に来て』

 

ツカサ「…!」

 

リポーター『よーし!そこの君にも聞いちゃうぞ!』

 

凛『裏切り者を倒せるように…頑張るニャン☆』

 

リポーター『あっ!か~わ~い~い~!!』

 

にこ『私も!にっこにっこ…うわっ!?』

 

リポーター『さあ、という訳で!こちらからは以上でしたー!!』

 

ブツッ…

 

アキバ「お、終わっちゃった…」

 

フミコ「午後三時って…もうあと三十分しかないよ?」

 

ツカサ「…行ってくる」ガタッ

 

ツバサ「待って」

 

ツカサ「!」ピタッ

 

ツバサ「戦えるの?大切な仲間達の為に…」

 

ツカサ「…当たり前だ、オレはもう迷わない」

 

ミカ「でも…罠かもしれないんだよ!?」

 

ヤマダ「そうだ、お前もショッカーに捕まってしまうかもしれないんだぞ…それでも行くと言うのか?」

 

ツカサ「確かに奴らが二人を解放する保証は無いし全力で襲いかかってくるかもしれない…でもな、オレはもう決めたんだ」

 

ヒデコ「決めたって…何を?」

 

ツカサ「目の前で起きている出来事と向き合い…通り過ぎずに戦う、それこそが今のオレの信念だ」

 

ツバサ「そう…それなら、私も行くわ」

 

ツカサ(ツバサはベッドから降り、立ち上がった)

 

アキバ「でも、まだその傷じゃ…ってもう治ってる!?」

 

ツバサ「ふふっ、これでも私…改造人間なのよ?」

 

ヒデコ「あの…綺羅先輩、これを」スッ

 

ツカサ(ヒデコから青い鞄を受け取ったツバサは…鞄の中身を確認した)

 

ツバサ「!…ありがとう」

 

トウベエ「…」ガタッ

 

ツカサ「おやっさん…?」

 

トウベエ「…」クイッ

 

ツバサ「立花さん…分かったわ、彼に着いて行きましょう」

 

ツカサ(おやっさんはオレとツバサをガレージに連れて行くと…整備された一台のバイクを見せてくれた)

 

ツカサ「そのマシンは…『ハリケーン』か?」

 

トウベエ「…」コクリ

 

ツバサ「もしかして、私にこれを…?」

 

トウベエ「…」ビシッ

 

ツバサ「ありがとう、立花さん…これでUTXまで行きましょう」

 

ツカサ(そう言って、ツバサは…赤いヘルメットを被ってバイクに跨がった)

 

ツカサ「ああ」

 

ツカサ(オレも青いヘルメットを被り、後ろに乗ると…ツバサはバイクのエンジン音を轟かせた)

 

 

 

にこ「リポーターのアンタが…私よりも目立ってるんじゃないわよ!!」ズバッ!

 

白サナギワーム「…!」バタッ

 

雪穂(怒ったにこさんは黒い剣を取り出すと…白いワームを斬りつけて倒してしまった)

 

凛「ハハッ、スッゴく怒ってるニャ~」

 

穂乃果「ねえ…その銃、私に預けてくれる?」

 

凛「えっ?う、うん…はい!」サッ

 

穂乃果「レイ…『バニティカード』を」

 

レイ「…」スッ

 

穂乃果「…ありがとう」

 

雪穂(凛さんからディエンドライバーを受け取ったお姉ちゃんは…私の目の前までやって来た)

 

雪穂「何…?」

 

穂乃果「…このケータイ、返しておくね」スッ

 

雪穂「え?あっ…うん」

 

穂乃果「それと…あなたと亜里沙ちゃんの荷物も」

 

雪穂「!?」

 

穂乃果「…」スタスタ

 

雪穂「…どうして、家に置いてきたはずの私と亜里沙の荷物を?」

 

 

 

穂乃果「…失礼します」

 

ナルタキ「ニコニコな生放送は終わったかね?」

 

穂乃果「はい…じきにディケイドと『Version3』が来ると思われます」

 

ナルタキ「では…『バニティカード』を」

 

穂乃果「…」スッ

 

ナルタキ「ご苦労…ところで、君に聞きたい事がある」

 

穂乃果「何でしょう…?」

 

ナルタキ「さっき、君は何故…あの蟻共を見逃した?」

 

穂乃果『あなた達は地下シェルターに戻って…この事を彼女達に伝えて』

 

穂乃果「!…やっぱり、お見通しだったんですね」

 

ナルタキ「もちろん、鏡として映る物さえあれば…私は何だって見る事が出来るからね?」フッ

 

穂乃果「…あえて逃がして詳細な情報を伝達させた方が、ディケイドや『Version3』も動くと思ったからです」

 

穂乃果「それにディケイドや三人の『HOPPER』さえ倒せば…彼女達を始末する事など、いつでも出来ますから」

 

ナルタキ「…フ~ム、確かにな」

 

穂乃果「それと…このディエンドライバーの処分についてですが、私が一時的に預かっても構いませんでしょうか?」

 

ナルタキ「ほう…何か策があるのか?」

 

穂乃果「はい…相手が油断している隙に、これで奇襲をかける作戦です」

 

ナルタキ「…なるほど、良いだろう」

 

穂乃果「ありがとうございます…では、今から私は外で彼らを迎えに行ってきます」スタスタ

 

ナルタキ「ああ、期待しているよ」

 

ナルタキ「…捨て駒として、ね」

 

ナルタキ(かつてこの基地が『HOPPER』に襲撃されていたあの時…私は基地の研究室である少女と出会った)

 

少女『最終調整完了、っと…』フゥ

 

ナルタキ『こんな時に何をしている?』

 

少女『!』クルッ

 

ナルタキ『答えろ』

 

少女『…私は、残り八人の《μ's》のコピー体と《ダークライダー》の力を組み合わせていたんです』

 

ナルタキ『何…君がか?』

 

少女『はい…あれ、もしかして戦闘員から何も聞かされずに《グレイブ》に変身する高坂穂乃果のコピー体を連れ回していたんですか?』

 

ナルタキ『…その言い草はつまり、彼女を造ったのも君だという事か?』

 

女性『そうですよ…一応、この技術をショッカーに持ち込んできたのも私ですから』

 

ナルタキ『なるほど、しかし…私は君のような優秀な科学者を見るのは初めてだ』

 

少女『最近入ったばかりなもので…ところであなたは、このままこの世界だけを支配して満足されるおつもりですか?』

 

ナルタキ『ほう…それはどういう意味かね?』

 

少女『あなたが消滅させた世界によく似た…別の世界の存在を見つけました』

 

ナルタキ『!…何だと?』

 

少女『信じられないのなら…直接、ご自分の目で確かめに行ってみてください』

 

少女『きっと《ディケイド》である《彼》も…その世界にいるはずです』

 

ナルタキ『!!』

 

ナルタキ(それから私はすぐに『μ'sの世界』に向かった…そして『ディケイド』に変身した『彼』の姿を見た)

 

ナルタキ(ある戦いの傷が癒えていなかった私は…暫くの間、真の姿になれず怪人やライダーを呼び寄せる事しか出来なかった)

 

ナルタキ(これまで『ディエンド』となった『Version3』の妨害を幾度となく受けていたが…今の私は真の姿になれる程に傷が癒えている)

 

ナルタキ(そう、私は今度こそ…『彼』を逃す訳にはいかない)

 

ナルタキ「しかし…この私とした事が、迂闊だったな」

 

ナルタキ(後に分かった事だが、あの少女は…ショッカーの者ではなかったらしい)

 

ナルタキ(現在、少女は行方知れずとなっているが…私に有益な情報と優秀な捨て駒を提供してくれた今となってはもうどうでもいい)

 

ナルタキ「もうすぐ…全ての世界が私の物となる」ニヤリ

 

ナルタキ「その為にも、まずはこの『バニティカード』を…然るべき場所に託すとしよう」

 

ナルタキ「何故、あの少女があそこに石板を置いたのかは知らないが…使えるものは使っておかなければ勿体無いだろうからな?」

 

ナルタキ(私はオーロラの中へと消え…ある場所に移動した)

 

 

 

ツカサ(ハリケーンに乗って、UTXに向かう道中で…ツバサはこんな事をオレに言ってきた)

 

ツバサ「…私、今になって『μ'sの世界』の私達が羨ましいなって思う事があるの」

 

ツカサ「羨ましい…?」

 

ツバサ「そう…だって改造人間になった今の私達にはもう、スクールアイドルとしての『輝き』は無いもの」

 

ツカサ「…」

 

ツバサ「もう私達はスクールアイドルの『A-RISE』じゃない…普通の人間から見たら、『HOPPER』という名の怪人」

 

ツバサ「だから思うの…もし私達が人間のままだったら、スクールアイドルのままでいられたら今頃どうなっていたんだろうって」

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツバサ「ショッカーに改造され『輝き』を失った私達は…もう二度と、スクールアイドルに戻る事は出来ない」

 

ツバサ「だって私達三人は…もう普通の人間じゃないのだから」

 

ツカサ「…そう思い込んでいるのは、アンタだけなんじゃないのか?」

 

ツバサ「えっ?」

 

ツカサ「今のアンタは改造人間だという事を言い訳にしてごまかしているせいで…自分自身を信じる事が出来ていない」

 

ツバサ「そんな事…」

 

ツカサ「オレには分かる…じゃなかったら、そんな弱気な事は言わないだろ?」

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「だが…アンタのその言葉を聞いたら、エレナとアンジュは間違いなく悲しむだろうな」

 

ツバサ「…」

 

ツカサ「そもそも…その事をエレナとアンジュは知っているのか?」

 

ツバサ「…いいえ、知らないわ」

 

ツカサ「それならあの二人はまだ信じているだろうな…この世界が平和になれば、きっとまたスクールアイドルとして歌えると」

 

ツバサ「でも、私達は…」

 

ツカサ「アンタの先生や後輩達も同じ思いだろうな…じゃなければ、アンタが帰ってきた時にあんな事を言うはずがないしな」

 

ヒデコ『また《A-RISE》の三人が揃って、良かったです』

 

ツバサ「…!」

 

ツカサ「確かに失ったものはあるのかもしれないが…それと同じように、得られたものや守れたものだってあるはずだ」

 

ツバサ「得られたものや…守れたもの?」

 

ツカサ「そうだ、今までオレ達と旅をしてきたアンタなら気付けるはずだ…また『A-RISE』になる為には何が大事なのかな」

 

ツカサ「アンタは一人で戦っている訳じゃない…だから、挫けずに前を向け」

 

ツバサ「…」

 

ツカサ「ところで…アンタに聞きたい事がある」

 

ツバサ「…何?」

 

ツカサ「アンタは…オレの過去について、キバーラから何か聞いているんじゃないのか?」

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「…やっぱり、そうなんだな」

 

ツバサ「…」コクリ

 

ツカサ「だったら教えてくれ…オレは一体、何者なんだ?」

 

ツバサ「…分かったわ、教えてあげる」

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「あなたの、本当の名前は…」

 

ドサッ

 

ツカサ(その直後、オレの後ろに乗せていた青い鞄がハリケーンから落ちた)

 

ツバサ「いけない、鞄が…!」

 

ツカサ「…止めてくれ、オレが拾ってくる」

 

キキッ!

 

ツカサ(停止したハリケーンから降りたオレは…急いで鞄を回収しに戻った)

 

ツバサ「やっぱりあなたって…良い人ね」

 

ツカサ「だから、よせって言っただろ…よっと」ヒョイ

 

ツバサ「…ごめんなさい」 

 

ツカサ「鞄、今度はちゃんと括っておく必要があるな…ん?」クルッ

 

ツカサ(鞄を拾ったオレが振り返ると…ハリケーンに乗ったツバサの姿は無かった)

 

ツカサ「あいつ!…全く、仕方ないな」ハァ

 

ブゥゥゥン…

 

ツカサ(オレが溜め息をついていると…後ろから二台のバイクがこちらに向かってやってきた)

 

ツカサ「あれは…!」

 

 

 

穂乃果「!…来た」

 

ブゥゥゥン…キキッ!

 

ツバサ「…」スポッ

 

雪穂「ツバサさん…!」

 

ツバサ「約束通り、来てあげたわ…今すぐ彼女の身柄を解放して」

 

にこ「アンタねぇ…バッカじゃないの?」

 

凛「ショッカーがそう簡単に約束を守るはずないニャ~」

 

ツバサ「あなた達…!」キッ

 

穂乃果「…行って」トンッ

 

雪穂「わわっ…えっ?」

 

ツバサ「!」

 

にこ「はぁ!?」

 

凛「ニャニャッ!?」

 

穂乃果「早く」

 

雪穂「う、うん…ツバサさん!」ダッ

 

ツバサ「…久しぶりね、怪我はない?」

 

雪穂「はい!」

 

にこ「アンタねぇ…なんであの人質を解放したのよ!?」

 

穂乃果「作戦だよ」

 

凛「作戦?」

 

穂乃果「そう…雪穂が向こうにいれば『Version3』は雪穂を守ろうとする」

 

にこ「なるほど、その隙をついて『Version3』を仕留めるって作戦ね…アンタもたまには役に立つじゃない?」

 

穂乃果「じゃあ、まずはみんなで『Version3』を引き付けてて…ちょうどいい頃合いで私が出るから」

 

凛「分かったニャ!」

 

ツバサ「あなた達…何をコソコソと話しているの?」

 

穂乃果「…」ダッ

 

ツバサ「なっ…待ちなさい!」

 

凛「それはこっちの台詞ニャ…Let the game begin!」

 

雪穂「えっ…どうして、急に英語に?」

 

ツバサ「それより、あのベルト…まさか『帝王のベルト』!?」

 

凛「3、1、5っと…Henshin!」

 

『Complete』

 

サイガ「…」

 

ツバサ「ショッカー…どこから持ち出したのか知らないけれど、まさか天のベルトまで持っていたなんて」

 

クウガPT「…」

 

レイ「…」

 

にこ「これだけいれば…さすがのアンタもおしまいよ!」

 

ツバサ「…安心して、あなたの大切な親友も私が絶対に助けてみせるから」

 

雪穂「ツバサさん…!」

 

ブゥゥゥン…キキッ

 

ツバサ「!」バッ

 

ツカサ「雪穂!」カポッ

 

ツカサ(二台のサイクロンはツバサと雪穂のすぐ後ろで停まり…そのうち一台の後方に乗っていたオレはヘルメットを外して降りた)

 

雪穂「ツカサ!」

 

エレナ「…」カポッ

 

アンジュ「…」スポッ

 

ツカサ(エレナやアンジュもヘルメットを外し…オレ達はサイクロンから降りた)

 

ツバサ「…!」

 

雪穂「『A-RISE』の英玲奈さんとあんじゅさん…?えっ、どういう事!?」

 

ツカサ「かくかくしかじかだ」

 

雪穂「何、その説明!?マンガじゃないんだからそれで分かるわけないでしょ!」

 

ツカサ「分かったよ…後で詳しく話してやる」

 

アンジュ「うっふふ♡ツバサちゃん…手伝いに来たわよぉ?」

 

ツバサ「アンジュ…」

 

エレナ「…」スタスタ

 

ツバサ「…エレナ?」

 

エレナ「…これ、お土産だ」ピンッ

 

ツカサ(ツバサの目の前に立ったエレナは突然…ツバサの額にデコピンをした)

 

ツバサ「あいたっ!?」

 

アンジュ「えいっ!」フニッ

 

ツカサ(その直後にアンジュはツバサのお腹を鷲掴みにした)

 

ツバサ「ちょっと、くすぐった…ひゃっ!?///」

 

エレナ「私達からのお土産は…仕返しだ、私達だけでなく先生や後輩達の皆の想いが込もっている」

 

ツバサ「し、仕返しって…」

 

アンジュ「そこの坊やから聞いたわよぉ…ツバサちゃん、私達はもう二度と『A-RISE』には戻れないとか言ってたんだってぇ?」

 

ツバサ「うっ…あなた、もしかして二人に話したの?」

 

ツカサ「ああ、オレを置いて行った罰として…アンタがさっきした話は全て喋らせてもらった」

 

ツバサ「あなたって人は…!」

 

エレナ「それはこっちの台詞だ、ツバサ」

 

アンジュ「本当、強引な仲間を持つのは大変ね…何でも一人だけで思い詰めちゃうのはツバサちゃんの悪い癖よぉ?」

 

ツバサ「二人とも…」

 

エレナ「確かに今の私達は『輝き』を失くした…だが、それならば私達なりの方法でまた取り戻せば良い話だ」

 

ツバサ「!…『輝き』を、取り戻す?」

 

アンジュ「そうよぉ?私達三人で生きて、この世界を再び平和に戻せば…私達は再び『A-RISE』になれる」

 

エレナ「改造人間になってしまっても…人の心を持っている限り、私達を応援してくれる人々はいる」

 

アンジュ「先生や後輩の子達だってぇ…皆、私達が再びスクールアイドルに戻る時に待ってくれてるんだから」

 

ツバサ「先生や…あの子達も?」

 

エレナ「当然だ、それにあの日やるはずだった優勝記念のライブを…あんな形で終わりにする訳にはいかないからな」

 

アンジュ「ちゃんとやらなくちゃねぇ…また、私達三人でね」

 

ツバサ「!…そうね、二人の言う通りね」フフッ

 

ツカサ「…」カシャッ

 

ツカサ(オレは白い制服を着た『A-RISE』の三人が並んでいる姿をカメラに収めた)

 

にこ「うぅ~…遅いっ!!」

 

ツカサ「何だ…いたのか?」

 

にこ「いたわよ、最初っから!!」

 

にこ「っていうか…アンタ達ねぇ、いつまで待たせるのよ!?」

 

にこ「そもそも…何で諦めようとしないのよ!」

 

にこ「せっかく、私達ショッカーが愚かな人間達に平和を与えてあげたっていうのに!」

 

ツバサ「それは違うわ…あなた達がもたらしたのは、地獄よ」

 

にこ「…はぁ?」

 

ツカサ「その通りだ、お前達ショッカーは…人間の自由と平和を奪い去った」

 

ツカサ「無理やり人の目を閉じ、耳を塞いで心を消し…そして命を奪おうとした」

 

ツカサ「人は自分自身の意思で生きなければならない…どんな世界でも、その意思は変えない!」

 

ツカサ「確かなその手で…未来を掴み取る為に!!」

 

にこ「何をくだらない事を…アンタ達、何者なの!?」

 

ツカサ「オレか?オレ達は…」

 

ツバサ「ずっと前から、通りすがりの…」

 

ツカサ「仮面ライダーだ!」

 

ツバサ「覚えておきなさい!」

 

ツカサ(オレがバックルを装着すると同時に…ツバサ達三人の腹部からベルトが出現した)

 

ツカサ(それぞれ風力エネルギーを集めてベルトの内部にある風車を回すツバサ達は…強化スーツを纏い、マスクを装着した)

 

ツカサ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ツカサ(一枚のカードをバックルに入れたオレは…ディケイドの変身を完了させると、雪穂にカメラを預けた)

 

ディケイド「雪穂…お前はこのカメラと後ろのバイクに置いてある鞄を持って隠れてろ」

 

雪穂「えっ、カメラも…?」

 

ディケイド「…ああ」

 

雪穂「…分かった!」ダッ

 

にこ「しょーがないわねー…アンタ達!」

 

レイ「…」

 

サイガ「…」

 

クウガPT「…」

 

2号(NEXT)「うふふっ…行くわよ?」

 

1号(NEXT)「ツバサ、準備は良いか?」

 

V3(NEXT)「…ええ」

 

ディケイド「よし…なっ!?」

 

ディケイド(オレ達が立ち向かおうとするよりも先に…フライングアタッカーで飛行したサイガが襲いかかってきた)

 

サイガ「…!」

 

ディケイド(サイガはオレとV3を捕まえようとしたが…)

 

2号「ツバサちゃん、坊や!」

 

1号「危ない!」

 

ドンッ

 

ディケイド(1号と2号の二人はオレとV3を庇うと…サイガに捕まり、空高くまで連れて行かれてしまった)

 

V3「きゃっ…エレナ、アンジュ!?」

 

ディケイド「ぐっ…しまった!」

 

クウガPT「…!」ダッ

 

ディケイド(その直後…こちらに向かってきたクウガ・プロトタイプがオレとV3に攻撃しようとしてきた)

 

ディケイド「マズい!」バッ

 

ディケイド(とっさにガードしたオレ達だったが…クウガの攻撃がこちらに来る様子は無かった)

 

V3「?…なっ!?」

 

Bジョーカー「…」

 

クウガPT「!?」

 

ディケイド(その訳は…オレ達の前に現れたブレイド・ジョーカーがクウガの一撃を受け止めてくれていたからだった)

 

V3「もしかして…あなたがブレイド・ジョーカー?」

 

Bジョーカー「…」コクリ

 

にこ「また邪魔を…こうなったら、ついでにアンタも倒してあげるわ!」

 

Bジョーカー「…」クイッ

 

V3「…まさか、先に行けと言っているの?」

 

ディケイド「どうやらそうみたいだな…ここは任せてオレ達はレイを」

 

V3「…そうね、ここはあなたに任せるわ!」ダッ

 

Bジョーカー「…」

 

ディケイド(オレとV3はにことレイに向かって走っていった)

 

にこ「それにしてもいつになったらグレイブは出てくるのよ…レイ、アンタはどう思う?」

 

レイ「…」コクリ

 

にこ「やっぱり、そうなるわよねぇ…それじゃ好きな方を選びなさい」ハァ

 

レイ「…!」バッ

 

ディケイド(すると…レイはV3に飛び掛かってきた)

 

V3「ううっ…はっ!」ガッ!

 

レイ「…!」ゴッ!

 

ディケイド(V3とレイは…そのまま戦闘を始めた)

 

ディケイド「ツバサ!」

 

にこ「アンタの相手は私がしてあげる…悪の軍団『ネガμ's(仮)』の力を味わうと良いわ」

 

ディケイド(そう言って、にこは…見覚えのあるベルトを装着した)

 

ディケイド「デンオウベルトだと…?」

 

にこ「その通りよ…アンタがさっき変身した電王と違って、強さは別格だけどね」

 

ディケイド「別格…まさか!」

 

にこ「…変身」

 

『ネガフォーム』

 

ディケイド(ベルトにライダーパスを通したにこは…ネガ電王に変身した)

 

ネガ電王「…」

 

ディケイド「なるほどな…だが、甘く見てもらっちゃ困るな」サッ

 

ネガ電王「…?」

 

『カメンライド…デンオウ!』

 

ディケイド(オレはライドブッカーから取り出した一枚のカードをベルトに入れて、電王ソードフォームにカメンライドした)

 

DCD電王「ここからのオレは…最初から最後までクライマックスだぜ?」

 

ネガ電王「…!」

 

 

 

1号(V3とディケイドの代わりにサイガに捕まった私と2号は…空高くへと連れられていた)

 

1号「くっ…放せ!」

 

サイガ「…」バッ

 

2号(サイガは私達を放すどころか…急降下して、フリーフォールの要領でUTXビルの屋上へと向かっていく)

 

2号「いけない、このままじゃ…!」

 

サイガ「…」

 

1号(勢いをつけ、サイガは…そのまま私達の身体をUTXビルの屋上に叩きつけた)

 

ズドーン!

 

サイガ「…」ストッ

 

1号「…」

 

2号「…」

 

サイガ「…」スタスタ

 

1号「待…て」

 

サイガ「!」クルッ

 

2号(それでも、私達は…立ち上がっていた)

 

2号「それで、私達を…倒したつもりなのぉ?」ハァハァ

 

1号「全く…舐められたものだな、私達も」ハァハァ

 

サイガ「…!」ダッ

 

『Exceed Charge』

 

1号(サイガはベルトに嵌めていた携帯のボタンを押すと…剣のような武器をトンファーのように持って、私達に向かってくる)

 

2号「エレナ…一つ、聞いていい?」

 

1号「?…何だ、こんな時に」

 

2号「あなた、まだ戦える?三人でまた一緒に歌う為に…」

 

1号「…ふっ、当然だ」

 

2号「うふふっ…だったら、私も付き合ってあげなくっちゃね!」

 

1号「ああ…決めるぞ!」

 

2号(ポーズを取り、エネルギーを脚に集中させた私達は…飛び上がってサイガの技を回避した)

 

サイガ「!?」

 

1号(それから私達は…『ダブルライダーキック』をサイガに命中させた)

 

ゴッ!

 

サイガ「!」フラッ…

 

2号(そして着地した私達は同時に…技を受けてふらつくサイガにアッパーを浴びせて吹き飛ばした)

 

1号&2号「やぁぁぁっ!!」バキッ!

 

サイガ「!!」ドサッ

 

2号「…急ぎましょう、ツバサちゃんと坊やが待ってるわ」

 

1号「うむ…そうだな」

 

 

 

V3(ウェイクアップフエッスルを取り出したレイは…ベルトのレイキバットに吹かせた)

 

レイキバット「ウェイクアップ…フンッ!」ビュゥゥゥ!

 

V3(それからすぐにレイキバットはブリザードミストを放出させ…私は足元を凍らされてしまった)

 

V3「うっ!?」

 

レイ「…!」ダッ

 

V3(身動きが取れなくなった私を狙ってレイは…両腕に巻き付けられた鎖を解放させ、大きな鉤爪で私の身体を切り裂いてきた)

 

ザシュッ!

 

V3「かはっ…!」フラッ…

 

レイ「…」

 

V3「…なんてね」

 

V3(私は…倒れずに踏ん張った)

 

レイ「!?」

 

V3「はぁっ!」ガッ!

 

レイ「…!」ヨロッ

 

V3「確かに私達は戦士としては素人かもしれない…でも、あなたは私達の事をスクールアイドルとしても素人だと言った」

 

レイ「…?」

 

V3「スクールアイドルはね…守りたいものや叶えたい夢があれば、誰だってなる事が出来るの」

 

V3「『μ'sの世界』や九つの世界にいる彼女達を見てきて分かったの…そこには、素人も玄人も関係無いわ!」

 

V3 (ポーズを取った私は飛び上がると…レイにキックを放った)

 

ガッ!

 

レイ「!」

 

V3「はっ!!」バキッ!

 

V3(キックに反動をつけ、空中で身体を反転させた私はもう一度…キックを放った)

 

レイ「…!!」バタッ

 

V3(私の『V3反転キック』を受けたレイは地に倒れ伏せると…そのまま動かなくなった)

 

V3「…」フゥ

 

 

 

ネガ電王「…!」ダッ

 

DCD電王(ネガ電王はソードモードにしたネガデンガッシャーを持って、こちらに向かってきた)

 

『アタックライド…デンガッシャー!』

 

DCD電王(カードとドライバーでデンガッシャーを召喚したオレも…同じようにソードモードに組み立てた)

 

ガキンッ!

 

ネガ電王「…」ギリギリ

 

DCD電王「ぐっ…」ギリギリ

 

DCD電王(しばらく鍔競り合いをしていると…ネガ電王はオレから距離をとった)

 

ネガ電王「…!」サッ

 

『フルチャージ』

 

DCD電王(ネガ電王はライダーパスをベルトに通すと…ネガデンガッシャーの剣先にエネルギーを集中させる)

 

ネガ電王「!」ブンッ

 

DCD電王(ネガデンガッシャーの剣先が切り離されると…ネガ電王はオレに向かって剣先を飛ばしてきた)

 

DCD電王「やはりそう来たか…だが、倒されるのはお前の方だ」スッ

 

DCD電王(三枚のカードを取り出したオレはまず…一枚目のカードをベルトに装填した)

 

DCD電王「コトリ…借りるぞ」

 

『カメンライド…デンオウ!プラット!』

 

DCD電王「…ふっ!」バッ

 

DCD電王(電王の形態の中で一番能力の低いプラットフォームに姿を変えたオレはデンガッシャーを空へと放り投げると…)

 

ズバッ!ザシュッ!

 

DCD電王「うっ…かはっ!」

 

DCD電王(ネガ電王のネガストリームスラッシュを受け続けた)

 

ネガ電王「…!」ブンッ!

 

DCD電王(そしてネガ電王が上から下へとネガデンガッシャーを振り下ろすと…辺りには爆風が広がった)

 

ネガ電王「…」スタスタ

 

DCD電王「…言っただろ、オレは最初からクライマックスだと」

 

ネガ電王「!?」クルッ

 

DCD電王(わざとネガ電王の攻撃を受ける事で剣の軌道を見極めたオレは…白刃取りでネガデンガッシャーの剣先を掴み取っていた)

 

DCD電王(このプラットフォームは…スペックこそ低いが…変身者の精神力次第で、予想以上の打たれ強さを誇る形態だ)

 

DCD電王(カメンライドも強制解除されない程に…だからあえて、防御力が高いアックスフォームではなくこのフォームを選んだのだ)

 

ネガ電王「…!」ダッ

 

DCD電王「最後までクライマックスなオレの強さは泣けるぞ…騙されたと思って、釣られてみるか?答えは聞かないけどな!」スッ

 

『フォームライド…デンオウ!ウイング!』

 

DCD電王(オレは二枚目のカードをベルトを入れると…電王ウイングフォームに姿を変えた)

 

DCD電王「降臨、満を持して…」

 

DCD電王(落ちてきたデンガッシャーを優雅にキャッチし、ブーメランモードとハンドアックスモードに変形させたオレは…)

 

『ファイナルアタックライド…デ・デ・デ・デンオウ!』

 

DCD電王「頭が高い…はっ!」ヒュンッ!

 

DCD電王(最後のカードをベルトに入れ…ブーメランを投げつけた)

 

ネガ電王「…!」サッ

 

ヒュンヒュンヒュン…ザクッ!

 

DCD電王(ネガ電王は一度、回避するが…戻ってきたブーメランがネガ電王の背中に命中した)

 

ネガ電王「!」

 

DCD電王「はぁっ…!」ズバッ!

 

DCD電王(オレはブーメランと挟み撃ちになるように…ネガ電王をハンドアックスで斬りつけた)

 

ネガ電王「…!!」バタッ

 

DCD電王(ロイヤルスマッシュという技を受けたネガ電王が倒れたのを確認したオレは…ディケイドの姿に戻った)

 

ディケイド「…」フゥ

 

雪穂「ツカサ!」ダッ

 

ディケイド「雪穂…」

 

V3「…お疲れ様」

 

1号「どうやら…ダークライダーの一人に勝ったようだな」

 

2号「頑張ったわねぇ、坊や?」

 

ディケイド「アンタ達も勝ったのか…という事は、後はプロトタイプクウガと戦っているブレイド・ジョーカーだけだな」

 

V3「それにしても、あの怪人…本当に私達の味方なの?」

 

2号「味方よ…何故ならブレイド・ジョーカーは、あの時に助けてくれた女の子が造ってくれたのよぉ?」

 

V3「!…あの子が?」

 

1号「ああ、とある人物のコピー体の中に…十三体いるスペードスートのアンデッドの細胞を入れた事によって生まれたんだ」

 

V3「ある人物…それって、もしかして」

 

ディケイド(その瞬間、UTXの近くにあった建物が一瞬にして崩落した)

 

雪穂「今のは!?」

 

V3「…行ってみましょう」ダッ

 

 

 

V3(私が崩落した建物の方まで行くと…瓦礫の中でクウガ・プロトタイプはブレイド・ジョーカーに馬乗りになっていた)

 

クウガPT「…!」ゴッ!ドカッ!

 

Bジョーカー「…っ」

 

V3(何度も拳を降り下ろすクウガに対し…ブレイド・ジョーカーはただ受け止めているだけだった)

 

雪穂「あのアンデッド、どうして反撃しないの…?」

 

ディケイド「…しないんじゃない、出来ないんだ」

 

雪穂「え?」

 

V3(それからクウガは距離を取ると…近くにあった太い鉄骨を禍々しい何かに変質させた)

 

ディケイド「あいつ…『怒りの塔』を作るつもりか」

 

雪穂「『怒りの塔』…?」

 

ディケイド「周りに『鋼の蕾』というビーム砲を作り出して、狙った敵を街ごと仕留めるものだ…何かの文献で読んだ覚えがある」

 

雪穂「そんな…それじゃ私達も危ないじゃん!」

 

ディケイド「大丈夫だ…おそらくな」

 

雪穂「またそれ…?いい加減にしてよ!」

 

ディケイド「良いから信じてやれ…オレじゃなくて、あいつをな」

 

雪穂「えっ…どういう意味?」

 

ディケイド「…見れば分かる」

 

Bジョーカー「…!」ダッ

 

V3(暗黒に染まる『鋼の蕾』の花が開いた瞬間…ブレイド・ジョーカーは走り出した)

 

クウガPT「!」スッ

 

ギュッ

 

V3(花からエネルギーが照射されようとした寸前…ブレイド・ジョーカーはクウガを抱き締めた)

 

Bジョーカー「…ダメだよ、花陽ちゃん」

 

クウガPT「!?」

 

Bジョーカー「もう無理しないで…だってこれ以上戦ったら、あなたのベルトは壊れちゃうんだよ?」

 

クウガPT「!」

 

Bジョーカー「あなたがやる事はこれじゃない…大丈夫、思い出せるよ」

 

クウガPT「…」

 

Bジョーカー「あなたはもう一人じゃないよ…私達がそばにいる」

 

Bジョーカー「だから…もう、誰かを傷つけないで?」

 

クウガPT「…!」フラッ

 

V3(すると、クウガの動きは完全に止まり…そのままブレイド・ジョーカーに身を預けた)

 

雪穂「今の声は…!」

 

V3(プロトタイプクウガの身体を地面に横たわらせたブレイド・ジョーカーは…とある少女の姿に変わった)

 

穂乃果「…」

 

雪穂「お姉ちゃん!?」

 

V3「!…やっぱり、あなただったのね」

 

穂乃果「…これ、あなたに返すよ」スッ

 

V3(彼女は雪穂さんにディエンドライバーを渡した)

 

雪穂「えっ?」

 

穂乃果「私はさっき、雪穂がライダーを召喚していた所を見た…これは雪穂が持つべきものだよ」

 

雪穂「いや、でもそれはもともとツバサさんのだから…」

 

V3「…いいえ、それはもうあなたのものよ」

 

雪穂「はい!?」

 

ディケイド「…良いのか?」

 

V3「ええ、今の私には…ディエンドライバーよりももっと大切なお宝があるから」フフッ

 

1号「…」フッ

 

2号「うふふっ…」

 

ディケイド「…雪穂」

 

雪穂「…」コクリ

 

V3(雪穂さんは彼女からディエンドライバーを受け取った)

 

穂乃果「ふふっ…!」

 

ゴゴゴゴゴ…

 

雪穂「わわっ…地震?」

 

穂乃果「ううん、違う…『14』が目覚めたんだよ」

 

ディケイド「『14』…だと!?」

 

V3(彼女達が会話をしていると突然…空から四本腕で大蛇のような下半身をした巨大な怪物が舞い降りてきた)

 

V3「あの怪物は、アンデッド同士のバトルファイトの勝利者が得られる万能で絶対的な最強の力の象徴…!」

 

ディケイド「巨大邪神…14!」

 

V3(14は私達に対して…巨大な剣を振るってきた)

 

1号「危ない!」

 

2号「あの速さ…避けきれない!」

 

『ガードベント』

 

ガキンッ!

 

V3(その時、私達の目の前にはコーカサスとドラグシールドを持ったリュウガとがいた)

 

ディケイド「お前らは…!」

 

リュウガ「穂乃果、私達も思い出しました…もう空っぽの存在などではありませんよ!」

 

コーカサス「薔薇が見つめてくれるのは…一番強くて、一番キレイなもの」

 

コーカサス「私はその為に戦うよ…穂乃果ちゃん」

 

穂乃果「!…海未ちゃん、ことりちゃん」

 

V3(次に14は…聖杯を振るってきた)

 

ガッ…

 

V3(しかし、鬼傘を持った歌舞鬼がそれを防いだ)

 

歌舞鬼「手出しはさせない…穂乃果、早く彼女達をあの場所に!」

 

穂乃果「うん…みんな、ついてきて!」

 

V3「…行きましょう」

 

雪穂「はい!」ダッ

 

V3(私と雪穂さんは彼女の後を追って…UTXの中に入っていった)

 

ディケイド「よし、オレ達も…」

 

ゴッ!

 

ディケイド「うわっ!?」

 

1号「くっ!」

 

2号「ううっ…」

 

ディケイド「棍棒まで振り回してくるとは…やはり、そう簡単には通してはくれないか」

 

2号「あら?あれは…!」

 

サイガ「イッツ・ショータイムニャ~!」ガガッ

 

クウガPT「世界の破滅なんて…成立させない!」バキッ!

 

ディケイド(その時、大地を走るプロトタイプクウガと…フライングアタッカーで空を飛ぶサイガが14に向かって行った)

 

1号「あの二人まで…どうして次々とダークライダーが私達の味方に?」

 

ネガ電王「所詮、私達はただの前座だった…という事よ」

 

『フルチャージ』

 

ネガ電王「…はっ!」バシュッ!

 

ディケイド「今のは、ネガワイルドショットか…!」

 

ブゥゥゥン…キキッ!

 

ディケイド「このマシンはダークホッパー…そうか、お前達も目を覚ましたんだな?」

 

アナザーアギト「…うん」

 

レイ「おかげさまでね、目が覚めたわ」

 

2号「二人でバイクに乗って…何をするつもりなのぉ?」

 

レイ「ちょっとね…でも、任せて」

 

1号「!…まさか、君達は特攻をかけるつもりか?」

 

レイ「あら…気付かれちゃったわね」フフッ

 

アナザーアギト「…ウチらは、心が空っぽのダークライダーとして生まれた」

 

アナザーアギト「でも、あなた達と戦ったおかげで…ウチらは大切な事を思い出した」

 

アナザーアギト「ウチらは自分の弱さと戦う…だから、あなた達も負けないでね?」

 

レイ「彼女に伝えて…あなた達はスクールアイドルとしてもライダーとしても、素晴らしいエキスパートだって」

 

1号「…!」

 

2号「あなた…」

 

レイ「さっきは悪かったわ…そして、ありがとう」

 

アナザーアギト「…行こう、えりち」

 

レイ「ええ!」

 

ブゥゥゥン…

 

ディケイド「…オレ達も行くぞ」

 

1号「…ああ!」

 

2号「ええ!」

 

 

 

V3(UTXの中に入った私達は…地下を歩いていた)

 

V3「この世界のあなたはもともとショッカーの手先のはず…なのに、どうして私達の味方をするの?」

 

穂乃果「…私達は、一度倒されるとダークライダーとしての闇の力が弱まるように設定されているの」

 

V3「!」

 

雪穂「じゃあ、この世界の絵里さん達も…?」

 

穂乃果「うん…でも彼女は、私だけ特別にブレイド・ジョーカーとしての力も与えていたの」

 

穂乃果「最も、私がその力を使えるようになったのは…あなたに倒されて『高坂穂乃果』としての自我が芽生えてからだけどね」

 

V3「…」

 

穂乃果「自我が芽生えた私は…絵里ちゃん達や戦闘員のみんなに気付かれないように、裏でエレナさん達のサポートをしていたの」

 

V3「…もしかしてヒデコさん達やヤマダ先生も、あなたの正体を知っているの?」

 

穂乃果「うん、雪穂や亜里沙ちゃんを基地から脱走させるようにみんなにお願いしたのも…実は私だから」

 

雪穂「!…そうだったんだ」

 

穂乃果「…着いた、ここだよ」

 

V3(私達が辿り着いたのは…牢屋だった)

 

雪穂「ここってさっき、私と亜里沙が入れられてた…?」

 

穂乃果「そう、この奥に見える石板の中には…亜里沙ちゃんが封印されたバニティカードがある」

 

雪穂「石板って…まさか!」ダッ

 

V3(雪穂さんが牢屋の奥まで行くと…大きくそびえ立つ石板の中で光り輝いている一枚のラウズカードを見つけた)

 

雪穂「この中に、亜里沙が…?」

 

穂乃果「やっぱりこうなってたんだね…14はこの石板の中にあるバニティカードによって、力を発揮させているの」

 

雪穂「じゃあ、どうすればその力は弱まるの?」

 

V3「それは…」

 

穂乃果「…入れ替われば良いんだよ、雪穂が」

 

V3「!?」

 

雪穂「私がって…出来るの、そんな事?」

 

穂乃果「…うん、亜里沙ちゃんと同じように石板に触った雪穂になら出来るはずだよ」

 

V3「ちょっとあなた…何を言っているの!?」

 

穂乃果「私は亜里沙ちゃんが助かる方法を教えてあげただけだよ…あのカードは人間の命を求めるカードだからね」

 

V3「そんな事したら…今度は雪穂さんが犠牲になるじゃない!」

 

V3「そもそもバニティカードを破壊しない限り…14の力は弱まらないのよ!?」

 

雪穂「!」

 

穂乃果「…」

 

V3「破壊すれば、カードに封印された命は犠牲になるのよ…それじゃ雪穂さんも亜里沙さんも助からないわ」

 

穂乃果「それなら…あなたが入れ替われば良いんじゃない?」

 

雪穂「!?」

 

V3「…出来るの、そんな事?」

 

穂乃果「雪穂が石板の前に立てば、カードは雪穂を求めて石板の中に入れるようになるからね…」

 

V3「じゃあ、その間に私が石板の中に入って身を投げ出せば…!」

 

穂乃果「…」

 

雪穂「ま、待ってよ!そんな事したらツバサさんの命が…」

 

V3「…分かったわ」

 

雪穂「ツバサさん!」

 

グラグラグラ…

 

V3(私達が会話していると…天井から瓦礫が落ち、あちこちで火の手が上り始めていた)

 

V3「時間が無いわ…早く石板の前に立って!」

 

雪穂「でも…!」

 

V3「…頼んだわね、後の事は」

 

雪穂「っ…!」

 

V3(雪穂さんが石板の前に立つと…石板の中に入る為のゲートが開いた)

 

V3「…」

 

穂乃果「…怖いの?」

 

V3「…いいえ」

 

V3「だって最後の最後で、本当に大切なお宝を手に入れる事が出来たんだから…」フフッ

 

穂乃果「…そっか」

 

V3「それじゃ…」

 

ガッ!

 

V3(私が石板に向かおうとしたその時…彼女は私に無理やり何かを渡してきた)

 

V3「!?」クルッ

 

穂乃果「…」ドンッ!

 

V3(その直後に彼女は…私を突き飛ばし、石板の中へと入っていった)

 

V3「なっ…!」

 

雪穂「そんな!?…え?」

 

V3(すると…石板から亜里沙さんが出てきた)

 

亜里沙「…」ドサッ

 

雪穂「亜里沙!?」

 

V3「亜里沙さん!」

 

亜里沙「けほけほっ!…雪穂?」

 

雪穂「亜里沙…!」

 

V3「…あなた、どういうつもりなの!?」

 

穂乃果『身代わりの命は私で良い…今のうちに、全力でこの石板を壊して』

 

V3「…!」

 

穂乃果『ためらわないでよ、だって私は…《高坂穂乃果》の姿をした怪物に過ぎないんだから』

 

V3「…でも」

 

穂乃果『同じ事をすれば良いんだよ…前に私を倒した時みたいに』

 

V3「あなたは…」

 

穂乃果『早くしてよ…世界が平和になったら、また三人で《A-RISE》をやるのがあなたの夢なんでしょ!?』

 

V3「!」

 

雪穂「ブレイド・ジョーカー…」

 

穂乃果『雪穂…私はあなたに会えて、本当に嬉しかった』

 

雪穂「!」

 

穂乃果『あなたの世界がいつか…元通りになるよう、私は応援してる』

 

穂乃果『だから、ファイト…だよ?』

 

雪穂「っ!…お姉ちゃん」グスッ

 

V3(雪穂さんは…彼女の言葉に涙を流していた)

 

穂乃果『さあ…今のうちに早く!』

 

V3「…」コクリ

 

穂乃果『じゃあね、ツバサさん…大好き』ニコッ

 

V3「!!」

 

V3(石板の中で笑っていた彼女の顔は…別の世界の私が見たあの時の少女の笑顔と全く同じ表情だった)

 

ほのか『…』ニコッ

 

V3「…ごめんなさい、穂乃果さん」

 

V3(私は燃え盛る炎をベルトのダブルタイフーンに吸収して力を溜めると…石板に向かって強烈な一撃を放った)

 

V3「っ…うわぁぁぁっ!!」

 

 

 

ディケイド(圧倒的な強さを誇る14の力によって…既にほとんどのダークライダーが行方知れずになっていた)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディケイド「やぁーっ!」

 

1号「はっ!」

 

2号「えいっ!」

 

ディケイド(そんな中でオレ達はキック技を14にぶつけようとしたが…)

 

ディケイド(14が操る雷、嵐、炎、吹雪によって阻まれ…オレ達の身体は地面に叩きつけられてしまった)

 

エレナ「くっ…!」

 

アンジュ「うっ!」

 

ディケイド(まだ完全に傷が癒えていない状態だったせいか…いつの間にかダブルライダーの変身は強制的に解除されていた)

 

ディケイド「エレナ、アンジュ!…!?」

 

ディケイド(オレが上空を見ると、ネガデンライナーが現れた)

 

ネガ電王「ハァ…しょーがないわねー!」バッ

 

ディケイド「おい、何するつもりだ!?」

 

ディケイド(オレの言う事をスルーしたネガ電王はネガデンライナーに乗り込み…そのまま14に突撃していった)

 

ネガ電王「にこ達は、永遠よ…ハァーッ!」

 

ディケイド(ネガデンライナーは爆発し、木っ端微塵になってしまったが…代わりに14が苦しんでいる様子が窺えた)

 

ディケイド「あいつ…!」

 

アンジュ「…あれって」

 

エレナ「効いているのか?」

 

ツカサー!

 

ディケイド(その直後、オレ達のもとに…亜里沙を連れたツバサと雪穂がUTXビルから戻ってきた)

 

ディケイド「亜里沙…無事だったのか!」

 

亜里沙「うん…心配かけて、ごめんなさい」

 

ディケイド「いや、謝るのはオレの方だ…何せお前達を冷たく突き放してしまったんだからな」

 

雪穂「ツカサ…」

 

ディケイド「…すまなかった、二人とも」

 

亜里沙「ううん、別に私はもう気にしてないから…雪穂もそうだよね?」

 

雪穂「…そうだね、こうやってまた助けに来てくれたし」

 

ディケイド「お前ら…ところで、ブレイド・ジョーカーは?」

 

雪穂「それが…」

 

ツバサ「…」

 

ディケイド「…そうか」

 

?「私も少し見ていたよ…実に良い話だった」パチパチパチ

 

ディケイド「!?」クルッ

 

ディケイド(どこからか拍手の音が聞こえ、オレ達が振り返ると…そこにはナルタキがいた)

 

ツバサ「あなたは…!」

 

ナルタキ「感動的だったよ…だが無意味だ」

 

ディケイド「無意味…だと?」

 

ナルタキ「そうだとも…まあ、どのみち奴らは捨て駒だ」

 

ツバサ「!」

 

ナルタキ「所詮、役立たずで身の程知らずで愚か者共が裏切った程度…この世界を救う事など出来はしない」

 

ツバサ「…まさか、あなたが彼女達の事を何も知らなかったなんてね」

 

ナルタキ「何だと?」

 

エレナ「もともと彼女達は…一度でも倒されると、別の世界にいる彼女達の自我が目覚めるよう設定されていたんた」

 

アンジュ「つまり彼女達は…最初からあなたの味方なんかじゃ無かったという事よぉ?」

 

ナルタキ「!…なるほど、つまりはあの女科学者の仕業という訳かね?」

 

ツバサ「そういう事よ…それに、彼女達は『μ's』の自我を持っていた」

 

ツバサ「だからこそ、あなたのような化け物なんかに…彼女達の自由は奪えるはずがない」

 

ツバサ「だって彼女達は…自由になる為に、自分達自身の意思で飛び立っていったのだから!」

 

ディケイド「ツバサ…」

 

ナルタキ「フン、くだらない事を…私は君の説教など聞いている暇は無い」

 

ツバサ「!…何ですって?」

 

ナルタキ「どうでもいいのだよ…何故なら、私の計画はもう既に最終段階に入っているのだからね」

 

ディケイド「計画だと?…お前、今度は何を企んでいるつもりだ!?」

 

ナルタキ「もちろん…今まで九つの世界を旅してきた君達を『大ショッカー』にオファーする為だ」

 

ナルタキ「君と…雪穂くんと亜里沙くんをね」

 

雪穂「!?」

 

亜里沙「…私たちが?」

 

ディケイド「大ショッカーだと…?」

 

ナルタキ「色々な世界から優れた人材を集めて結成された崇高な組織の名前だ…今の私は、そこの大幹部として所属している」

 

ナルタキ「もし君達が大ショッカーに入れば…君達三人はずっと一緒にいる事が出来るんだぞ?」

 

ディケイド「…お前ら、どう思う?」

 

亜里沙「もちろん…イヤです!」

 

雪穂「私達は…大ショッカーなんかに、入るつもりはありません!」

 

ディケイド「という訳だ…もちろん、オレも同意見だ」

 

ナルタキ「フゥ…やれやれ、仕方の無いガキ共だ」ハァ

 

ナルタキ「ならば…無理やり連れていくまでだ」

 

ディケイド(するとナルタキは…オレ達を拐う為にオーロラを出現させた)

 

ディケイド「!?…危ない!」ドンッ

 

雪穂「わっ!」

 

亜里沙「きゃっ!」

 

ディケイド(雪穂と亜里沙を庇ったオレは…一人だけオーロラの中に入った)

 

ディケイド(すると…オレとナルタキは周りに何も無い真っ白な空間の中に移動していた)

 

ディケイド「!…結局、こうなる定めか」ハァ

 

ナルタキ「これまで…君の理想主義と仲間への友情とやらのせいで、私の計画はことごとく潰されてしまった」

 

ナルタキ「だが、不思議な事に…私は君を見ていると笑顔になれるんだ」

 

ナルタキ「今では君の事を…自分の息子のようにさえ思えてくる」

 

ディケイド「…」

 

ナルタキ「だから、もっと私を…笑顔にさせてくれ」

 

ディケイド(そう言ってナルタキは…怪人の姿に変化した)

 

???「フハハハ…」

 

ディケイド「来るなら来い!お前の全てを破壊してやる…『ゼイビアックス』!!」

 

ゼイビアックス「…フッ!」ダッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「はぁっ!」ブンッ!

 

ディケイド(オレは…走ってくるゼイビアックスに向かって、剣を振るった)

 

 

 

亜里沙「ツカサ…」

 

雪穂「私達を、かばって…!」

 

ツバサー!

 

ツバサ「その声は…キバーラ!」

 

キバーラ「あなたのお手紙…渡してきたわ!」

 

ツバサ「そう…ありがとう、キバーラ」

 

キバーラ「ツカサは?」

 

ツバサ「…世界の狭間に連れて行かれてしまったわ」

 

キバーラ「えっ…でも、アタシが知ってる世界の狭間にツカサの気配は感じられないわよ!?」

 

ツバサ「!…そう、じゃあ彼はキバーラでも知らない世界の狭間に連れて行かれたという事になるわね」

 

雪穂「じゃあ…やっぱり、どうにもならないんですか?」

 

ツバサ「…ええ」

 

亜里沙「そんな…!」

 

キバーラ「…ごめんなさい」

 

ツバサ「キバーラが謝る事じゃないわ、それより今は…雪穂さんと亜里沙さんを連れて写真館に戻っててくれるかしら?」

 

雪穂「えっ、どういうことですか…?」

 

ツバサ「これ以上はあなた達を危険な目に遭わせるにはいかないの…だから、すぐにキバーラの力を借りて避難しなさい」

 

亜里沙「ツバサさん達はどうするんですか?」

 

エレナ「私達は…目の前にいる14を放っておく訳にはいかない」

 

アンジュ「今は動きが止まっちゃってるからぁ…その間に倒した方が良いんじゃないかって思うの」

 

ツバサ「それに、ここはもともと私達の世界だから…自分達で何とかしてみせるわ」

 

雪穂「でも…三人とも、また変身して戦える力はもう残ってないんじゃないんですか?」

 

ツバサ「確かに私も…石板に攻撃したV3の力はしばらく使えないわ」

 

亜里沙「それなら、私たちと一緒に写真館に戻った方が…」

 

ツバサ「大丈夫よ…今の私には、これがあるから」スッ

 

ツバサ(そう言って私は…ポケットからあるバックルを取り出した)

 

雪穂「それは…!」

 

ツバサ「雪穂さん、その鞄の中に二つほどこれと色違いの物があるんだけど…それをこっちに渡してくれるかしら?」

 

雪穂「あっ、はい…これですか?」サッ

 

ツバサ(私は雪穂さんから二つのバックルを受け取ると…)

 

ツバサ「ありがとう…キバーラ、後は任せるわね?」

 

キバーラ「…ええ、気を付けて」

 

雪穂「えっ!?」

 

亜里沙「ツバサさん…」

 

ツバサ「…さよなら」

 

キバーラ「行くわよ…ぐるぐるぐるぐる~!」グルグル

 

雪穂「ちょっと、ツバサさ…!」

 

亜里沙「ツバサさん、待っ…!」

 

ツバサ(キバーラが雪穂さんと亜里沙さんを連れていなくなったのを確認した私は…エレナとアンジュに二つのバックルを渡した)

 

ツバサ「…はい、これはエレナとアンジュのものよ」スッ

 

アンジュ「ツバサちゃん…もしかして、これで?」

 

エレナ「変身して戦えと言うのか?」

 

ツバサ「そうよ…もちろん、私達三人でね」

 

エレナ「…!」

 

アンジュ「ツバサちゃん…うふふっ♡」

 

ツバサ「さあ、始める準備はどう?」スッ

 

ツバサ(六枚のラウズカードを取り出した私は…エレナとアンジュに二枚ずつ渡した)

 

アンジュ「!…全く、本当にツバサちゃんのの無茶ぶりにはいつも手を焼かされるわねぇ?」フフッ

 

エレナ「そうだな、だが…そんなものはもうとっくに出来ている!」

 

ツバサ「…ふふっ、それなら行きましょう!」

 

ツバサ「また…世界が回り出す、その時を信じて!」

 

ツバサ(ケルベロスが封印されたラウズカードを挿入したバックルを腹部に装着した私達は…それを展開させ、走り出した)

 

A-RISE「変身!」ダッ

 

『Open Up』

 

ツバサ(バックルから出現したオリハルコンエレメントを通り抜け…私はグレイブ、エレナはランス、アンジュはラルクに変身した)

 

ランス「この世界に溢れる、美しい命を守る為に…」

 

ラルク「この世界が、愛と絆で満たされるように…」

 

グレイブ「私達が…この世界を守り抜く!」

 

グレイブ(私達は持っていたそれぞれの武器に…もう一枚持っていたラウズカードを読み込ませた)

 

『Mighty』

 

ランス「はっ!」ザシュッ!

 

グレイブ(真っ先に飛び上がったランスは…高熱を帯びた槍型のランスラウザーを振るい、14の身体を傷つけていく)

 

ラルク「ふっ!」ガガガッ!

 

グレイブ(次にボウガン型のラルクラウザーで狙いを定めたラルクは…強力なエネルギー弾を連射して14にダメージを与える)

 

グレイブ「…っ!」

 

グレイブ(そして剣型のグレイブラウザーを持った私は、刃先に重力場を生成すると…14に向かって光刃を放った)

 

グレイブ「はぁっ!!」ブンッ!

 

グレイブ(きっと私はこれからまた夢を叶える為に…エレナやアンジュ、先生や後輩達と一緒に戦っていくのだろう)

 

グレイブ(雪穂さん、亜里沙さん…元気でね)

 

グレイブ(ツカサくん…ありがとう)

 

グレイブ(私はこの世界で生きていくわ…スクールアイドルに『夢』と『希望』を持つ、別の世界の私達や彼女達のように)

 

グレイブ(そして、今なら…もう迷わないと誓える)

 

グレイブ「穂乃果さん…私も、大好きよ」ボソッ

 

グレイブ(技を受けて、爆発する14に…私達三人は巻き込まれていった)

 

 

 

雪穂(私達が写真館の前に戻ると…どこかから大きな爆発音が聞こえてきた)

 

雪穂「!…ツバサさん」

 

亜里沙「大丈夫かな…?」

 

雪穂「心配だね…それに、ツカサも」

 

雪穂(私は…ツカサから預かっていたカメラをジッと見つめていた)

 

亜里沙「…うん」

 

キバーラ「…実は、二人に会わせたい子達がいるの」

 

亜里沙「会わせたい子…?」

 

キバーラ「ええ…とにかく中に入りましょう」

 

ガチャ…

 

雪穂(写真館の中に入った私達がスタジオのある部屋に続くドアを開けると…そこには二人の小さな女の子がいた)

 

少女A「あっ…やっともどってきた!」

 

雪穂(私達を見て…茶髪で左側にサイドテールをしたつり目の女の子の方が声をかけてきた)

 

亜里沙「えっ?」

 

少女A「いつまでももどってこないから…まちくたびれてたんだよ?」

 

少女B「こら!としうえのひとにそんなはなしかたはしつれいですよ?」

 

雪穂(黒髪で右側にサイドテールをした垂れ目の女の子の方は…茶髪の女の子を注意した)

 

少女A「ちぇっ、べつにいいじゃん…」

 

少女B「よくありません!…あの、あなたたちがこうさかゆきほさんとあやせありささんですか?」

 

雪穂「そうだけど…あなた達は?」

 

亜里沙「あっ…この子たち、空港で見たことある!」

 

雪穂「へっ、空港?」

 

亜里沙「あの時だよ!お姉ちゃんたちが海外に行った時に…」

 

雪穂「え?…ああっ!?」

 

雪穂(そういえば私も確かにあの時…にこさんと一緒にいたこの二人の少女を空港で見た覚えがある)

 

雪穂「ってことは…もしかしてあなた達、にこさんの妹さん?」

 

少女B「ごぞんじだったのですね…わたし、やざわこころといいます!」

 

少女A「わたしはここあ!」

 

雪穂「ど、どうも…でも何でにこさんの妹さん達がここに?」

 

キバーラ「アタシが連れてきたの」

 

亜里沙「へっ、キバーラが?」

 

キバーラ「そうよ…あなた達なら、この二人のお悩みを何とかしてくれると思ったの」

 

雪穂「悩み…?」

 

亜里沙「どんな悩みなの?」

 

こころ「それが…おとうとのこたろうがいなくなってしまったんです」

 

亜里沙「…こたろう?」

 

こころ「はい…じつはけさになってきゅうにグレたとおもったら、おうちからとびだしてしまったんです」

 

雪穂「えっ…要するに、家出しちゃったってこと?」

 

ここあ「うん…おねがい、ここあたちといっしょにこたろうをさがして!」

 

雪穂「ちょっ、ちょっと待って!」

 

ここあ「えっ…イヤなの!?」

 

亜里沙「イヤなの!?」

 

雪穂「そうじゃなくって!それは別に構わないけど…こころちゃんとここあちゃんは、私達と同じ世界から来たんだよね?」

 

こころ「…はい」

 

雪穂「だったら…この世界に来ても探しようがないんじゃないの?」

 

亜里沙「あっ、そっか…この世界って私たちの世界じゃないんだ」

 

ここあ「じゃあ…どうすればいいの!?」

 

雪穂「それは…!」

 

雪穂(すると…突然、スタジオの背景が違うイラストになった)

 

亜里沙「そんな!まだツカサが戻ってきてないのに…あれ?」

 

雪穂(背景には…背を向けた九人の少女と、音ノ木坂学院が描かれていた)

 

雪穂「もしかして、ここって…!」

 

キバーラ「…そう、ここは『μ'sの世界』よ」

 

亜里沙「じゃあ、本当に…私たちの世界に帰ってきたってこと?」

 

キバーラ「ええ…」

 

雪穂「そっか、本当に帰ってきたんだ…ん?」

 

雪穂(私はテーブルの上に置かれている何かを見つけた)

 

こころ「あっ、それはさっき…わたしたちがしゃしんかんのまえでひろったんです」

 

雪穂「…『国立音ノ木坂学院 学生証』?」

 

亜里沙「えっ…オトノキの?」

 

雪穂「うん、そうみたい…!!」

 

雪穂(学生証に貼り付けられていた写真は…明らかにツカサだった)

 

雪穂「この顔は…ツカサ!?」

 

亜里沙「でも、名前は…『矢澤コタロウ』って書いてあるよ?」

 

こころ「えっ…こたろう!?」

 

ここあ「みせて!」

 

雪穂(こころちゃんとここあちゃんも…学生証の写真を確認した)

 

こころ「コタロウ…おなじなまえですが、こころたちのおとうとはこんなにおおきくありません」

 

雪穂「そう…だよね」

 

ここあ「でも、こたろうにそっくりだね~…なんでだろう?」

 

亜里沙「この学生証って…この世界のものなのかな?」

 

キバーラ「…その学生証は、ツカサがもともと住んでいた世界の物よ」

 

雪穂「ツカサが住んでいた世界…じゃあ、やっぱりこれはツカサの?」

 

キバーラ「そうよ…彼は、もう一つの『μ'sの世界』からやって来たの」

 

雪穂「えっ!?…『μ'sの世界』って、もう一つあったの?」

 

キバーラ「ええ…でもその世界は今、ショッカーのせいで消えてなくなっちゃったの」

 

亜里沙「!…そんな」

 

キバーラ「学生証にも書いてある通り、彼の本当の名前は…『矢澤コタロウ』」

 

雪穂「『矢澤コタロウ』って事は…じゃあ、ツカサは!?」

 

キバーラ「そう、ツカサの本当の名前は『矢澤コタロウ』…あなた達の世界にいる彼とは別の世界の『矢澤虎太郎』よ」

 

 

 

?(奴との戦いが終わり、とある世界にやって来た俺は…大ショッカーの基地の中にいた)

 

戦闘員「お待ちしておりました、大首領様…」

 

?「…計画は進んでいるか?」

 

戦闘員「はい、間もなく全ての世界が一つになろうとしている所です」

 

?「そうか…下がれ」

 

戦闘員「イーッ!」ダッ

 

?「大ショッカーが全ての世界を支配し…全ての仮面ライダーを、そしてスクールアイドルさえも滅ぼす」

 

?(専用の椅子に座って足を組んでいた俺は…不敵な笑みを浮かべた)

 

?「そう…大首領である、この俺によってな」ニヤリ




~次回、仮面ライダー×ラブライブ!~

「ダメだ…行くな!」

「もう一度…!」

「もう一度…」

「もう一度!」

「お願い、世界を救って…?」

「ふふっ…」

「μ'sはみ~んなのも・のっ♡」

「気持ち悪い」

「ちょっとぉ!?」

「ニャー!」

「ハラショー!?」

「…そうか、それが本当のあるべき世界だったのか」

「きれ~い…!」

「大変ですっ!」

「今までの俺は、本当の俺じゃない」

「そうだ!」

「誰か止めて…」

「私がディケイドを倒す!」

「ついにその時が来たのよ、あなた達二人の本当の力を見せる時が…ね♡」

「リンクベントです!」

「…ああ!」

「みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして…それでも進んでるんだよ!」

「どんな旅にも無駄はないよ、どんな人生にも無駄がないのと同じようにね…」

「一番大切なのは…彼女達の気持ちよ?」

「よーしっ、行っくよ~!」

「あなたは…本当にツカサなの!?」

「世界は、俺が貰う…!」


第22話『ツカサ』

全てを破壊し、全てを繋げ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

~μ's×ディケイドの世界~
第22話『ツカサ』


~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

V3「待たせたわね…エレナ、アンジュ」

にこ「私達、悪の軍団『ネガμ's(仮)』がこの世界を支配するのよ!」

ツバサ「ショッカーに改造され『輝き』を失った私達は…もう二度と、スクールアイドルに戻る事は出来ない」

エレナ「確かに今の私達は『輝き』を失くした…だが、それならば私達なりの方法でまた取り戻せば良い話だ」

アンジュ「ちゃんとやらなくちゃねぇ…また、私達三人でね」

ツカサ「人は自分自身の意思で生きなければならない…どんな世界でも、その意思は変えない!」

穂乃果『じゃあね、ツバサさん…大好き』

グレイブ「穂乃果さん…私も、大好きよ」

ゼイビアックス「フハハハ…」

ディケイド「来るなら来い!全てを破壊してやる…!!」

こころ「あなたたちがこうさかゆきほさんとあやせありささんですか?」

ここあ「おねがい、ここあたちといっしょに…こたろうをさがして!」

キバーラ「彼はもう一人の『矢澤コタロウ』…あなた達の世界にいる虎太郎くんとは別の世界の『矢澤虎太郎』よ」


(それは…初めて彼女達と出逢った日の事だった)

 

花陽「あぁーっ!!」

 

凛「どうしたの!?」

 

花陽「あれ…!」スッ

 

?「…」スタスタ

 

穂乃果「にこちゃん!?」

 

海未「でも…それにしてはいつもより少し背が高くないですか!?」

 

真姫「そうね、髪も短いし…」

 

凛「気のせいだよ!にこちゃんは三年生の割に小さ…大きいニャー!?」

 

ことり「といっても、にこちゃんより少し大きいくらいだけどね…」アハハ

 

?「…ん?」クルッ

 

八人「!」

 

?「…」ジーッ

 

凛「あぁ、いや…」

 

?「アンタ達…もしかして『μ's』か?」

 

絵里「えっ、知ってるの?」

 

?「知ってるも何も…オレは、矢澤にこの弟だ」

 

八人「…ええーっ!?」

 

花陽「男の子だったのぉ!?」

 

海未「確かに初めて声を聞いた時、にこの声より若干低いような気はしていましたが…」

 

希「にこっちに弟がいたなんて…」

 

真姫「しかも…ちょっと生意気」

 

凛「まるで、にこちゃんが男の子になったみたいニャ…!」

 

?「アンタ達の話は姉ちゃんからよく聞いている…姉ちゃんのバックダンサー、ってな」

 

八人「…」

 

絵里「バック…」

 

希「ダンサー?」

 

真姫「誰がよ…?」

 

?「姉ちゃんからは…アンタ達が『スーパーアイドル・矢澤にこ』のバックダンサー『μ's』だといつも聞かされている」

 

八人「はぁ!?」

 

?「やはりな…アンタ達のその反応を見ると、かなり事実と異なるみたいだな?」

 

八人「…」

 

?「そうじゃないかと思ってはいたが…全く、仕方ないな」ハァ

 

穂乃果「え、えーっと…?」

 

絵里「あの…その話、詳しく聞かせてくれない?」

 

?「そうだな…ついてこい」スタスタ

 

穂乃果「ちょっ…ちょっと~!?」ダッ

 

 

 

穂乃果「…ここが、にこちゃんの家?」

 

?「賃貸だけどな」

 

真姫「それ、別に言う必要無いじゃないのよ…?」

 

?「そうか…アンタみたいなお嬢様でも賃貸という言葉は知ってるんだな」

 

真姫「どういう意味よ、それ!?」

 

希「まあまあ…真姫ちゃん、落ち着いて」

 

穂乃果「あはははは…」

 

花陽「それにしても、どうして最初はにこちゃんの話を信じちゃってたの?」

 

海未「『μ's』の写真や動画を見れば…私達がバックダンサーで無い事くらい、すぐに分かるはずなのに」

 

ことり「ねぇ…お姉ちゃんが歌ってるとことか、見たことある?」

 

?「もちろん…これまでのアンタ達の活動は、全て見てきた」

 

?「例えば、高坂穂乃果…」

 

穂乃果「へっ…私?」

 

?「アンタは人を惹きつける魅力…カリスマ性とも言えるものを持っている」

 

穂乃果「い、いやぁそんな…」エヘヘ

 

?「次に…絢瀬絵里」

 

絵里「?」

 

?「アンタは常にロシアのバレエコンクールの上位だった経験を活かして…『μ's』のパフォーマンスを飛躍的に向上させた功労者だ」

 

絵里「ハラショー…君、よく知ってるのね?」

 

真姫「…功労者である事は否定しないのね」

 

?「それに、西木野真姫の類い稀な作曲の才能は素晴らしく…」

 

真姫「うぇえ!?///」

 

?「それは…園田海未の素直でセンスのある詞ととてもマッチしている」

 

海未「センスがある…そんな事、初めて言われました」

 

?「星空凛のバネと運動神経は…スクールアイドルとしては全国の中で比較しても、相当高いレベルを誇っている」

 

凛「えっ、そうだったの?」

 

?「小泉花陽の優しい歌声は…個性の強いメンバーの歌に見事な調和を与え、絶妙なバランスを保っている」

 

花陽「ええっ!?ぜ、全然そんなことないよ…?」

 

?「『μ's』を牽引する穂乃果の対の存在となるよう…メンバーを優しく包み込む包容力を持ちながらも、時には無邪気な一面を見せる東條希」

 

希「…」フフッ

 

?「そして、甘い声と仕草でアキバ中の人々を魅了させた伝説のカリスマメイド…ミナリンスキー」

 

ことり「!」

 

?「いや、元と言ったほうが良いか?…南ことり」

 

ことり「うぅ…」

 

?「もちろん、こうやってアンタ達それぞれについてもちゃんと調べているさ…ネットカフェでだけどな」

 

穂乃果「えっ…何でネットカフェなの?」

 

?「それは…姉ちゃんが話をするだけして、動画や写真を頑なに見せようとしなかったからだ」

 

絵里「にこったら…そこまでして、君に本当の事を知られたくなかったのね?」

 

?「ああ、だから最初の頃は素直に話を聞いていたんだが…段々と話の辻褄が合わなくなってきたからオレも流石におかしいと思ってな」

 

穂乃果「何か、涙ぐましいというか…」

 

真姫「情けないというか…」

 

海未「詰めが甘いというか…」

 

?「ここだ…合鍵持ってないから、インターホン鳴らすぞ」ピンポーン

 

ハーイ!

 

ガチャ…

 

にこ「あら、コタr…!?」

 

絵里「こんにちは…私、あなたのバックダンサーを務めさせていただいている絢瀬絵里と申します」

 

にこ「ぬぁっ…アンタ達!」

 

穂乃果「にこちゃん!」

 

にこ「何でアンタ達が来るのよ?」

 

?「ただいま、姉ちゃん…バックダンサーの皆が姉ちゃんと話をしたいそうだぞ?」

 

にこ「!…そ、そう」アハハ

 

海未「申し訳ありません…すぐに済みますので、よろしいでしょうか?」ニコッ

 

海未「…」スンッ

 

にこ「え、えっとぉ…?」

 

真姫「にこちゃん、バックダンサーってどういう事よ!?」

 

凛「説明するニャー!!」

 

にこ「な…何のことかわからないにこー♪」

 

にこ「じゃ!」ギィッ…

 

海未「あっ、ドアを閉めて鍵をかけるつもりですよ!?」

 

?「ふんっ!」ゴッ!!

 

にこ「なっ…!?」

 

絵里「それを…彼が右足の爪先で止めたわ!!」

 

ことり「な、何で海未ちゃんも絵里ちゃんも実況してるの…?」

 

希「スゴいなぁ、今の…ウチもいつかやってみようかな?」

 

?「…おい、姉ちゃん」

 

にこ「は、はいっ!?」

 

?「どうしたんだよ、そんなに誤魔化して…?」

 

にこ「違うわよ!?ただ…ち、ちょっとね」

 

?「ほう…だが弟のオレまで締め出そうとするとは、どうやら余程聞かれたくない事があるようだな?」ゴゴゴ

 

凛「ま、まるで悪役みたいだニャ…」

 

?「さあ…本当の事を教えてもらおうか、コ・ア・ク・マ・さん?」ニヤリ

 

にこ「あ、あはははは…」ピクピク

 

 

 

にこ「たいへん申し訳ありませんっ!」ガバッ

 

にこ「…えっ、夢?」キョロキョロ

 

にこ「何なのよ、もう…」ハァ

 

ガラッ!

 

にこ「ひぃっ!?」

 

?「…おはよう、姉ちゃん」

 

にこ「おはよう…何、いきなりどうしたのよ?」

 

?「出来たぞ…」

 

にこ「はぁ?…何が出来たのよ」

 

?「…こっちだ」スタスタ

 

にこ「えっ…!?ちょっとどこに行くのよ、アンタ!」ダッ

 

?「…」ガラッ

 

にこ「って、寒っ!?何でいきなりベランダの窓開けるのよ…?」

 

?「…『μ's』」

 

にこ「!…もしかしてこの雪だるま、私達?」

 

?「ああ…今日のライブ、見に行くから」

 

にこ「アンタ…」

 

?「途中でヘマしないように…オレが近くで応援してやる」

 

にこ「!…ふふっ、見てなさい?」

 

にこ「私がセンターで、思いっきり歌うから!」

 

?「…はぁ?」

 

にこ「何でそんなビミョーな顔してるのよ!?」

 

?「いや、また嘘ついてんのかと…」

 

にこ「私がいつ嘘ついたって言うのよ!?」

 

?「…バックダンサー」

 

にこ「あっ!…あ、あれは言葉のアヤみたいなものよ」ゴホン

 

?「あの時はとてもそんな風には聞こえなかったけどな…」

 

にこ「私がそうと言ったらそうなの!」

 

にこ「とにかく今日はにこもセンターよ、だって『μ's』は…全員がセンターだから!」

 

?「!…そうか、なら大丈夫だな」フフッ

 

にこ「そういえば…今日はオトノキの合格発表でしょ、まだ家にいて大丈夫なの?」

 

?「ああ、大丈夫だ」

 

にこ「そう…朝ご飯は?」

 

?「もちろん、もう作ってある…姉ちゃんの分もな」

 

にこ「いつも悪いわね…じゃあ、一緒に食べましょう?」

 

?「ああ…ん?」チラッ

 

?「晴れてきたか…この天気なら、雪だるまもすぐに溶けるかもな」

 

?「…いや、それでいいか」

 

?「むしろ…良いのかもな、それで」

 

にこ「コタロウ、もう窓閉めなさい!早く食べないと冷めちゃうわよ!?」

 

コタロウ「ああ、分かってる…すぐ行く」パタン

 

(…スクールアイドル)

 

(それは学校の在校生達だけで結成され生み出された高校生のアイドル)

 

(スクールアイドルの人気は留まるところを知らず、世界中へと広まっていた)

 

(その時、出逢ったのは矢澤にこの弟『コタロウ』と九人の少女『μ's』)

 

(今、秘められていた本当の物語が…幕を開ける)

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

コタロウ「…いただきます」

 

にこ「いただきます」

 

(オレ達はご飯や味噌汁、焼鮭に沢庵…納豆という献立の朝食を食べ始めた)

 

コタロウ「…」モグモグ

 

にこ「う~ん…」ズズッ

 

コタロウ「…どうしたんだ?」

 

にこ「悔しいけど、アンタが作ったこのお味噌汁…にこやママが作ったお味噌汁に負けないくらい美味しいわ」

 

コタロウ「!…そうか、そりゃどうも」

 

にこ「さすが私の弟ね…それにしても、ついこないだまでずっと私がご飯作ってたのにいつの間にこんなに料理上手になったのよ?」

 

コタロウ「それは…何でもない」

 

にこ「はぁ?何よ、それ…気になるじゃない」

 

コタロウ「別にどうでもいいだろ、そんな事…」

 

にこ「どうでもよくないから聞いてるんじゃないのよ…それにアンタ、前から思ってたけど姉の私に向かって生意気じゃない?」

 

コタロウ「そうか?…だとしたら、きっと姉ちゃんに似てしまったんだろうな」モグモグ

 

にこ「何ですってぇ!?」ガタッ

 

コタロウ「朝から騒々しいな…」

 

にこ「アンタのせいじゃない!…っていうか、今のどういう意味よ!?」

 

コタロウ「それより、そこ…ついてるぞ」

 

(オレは姉ちゃんの右の頬にご飯粒がついている事を指摘した)

 

にこ「えっ?…あっ」

 

コタロウ「…」モグモグ

 

 

 

(今ではこうして姉ちゃんと普通に話しているが…それは穂乃果達『μ's』の協力があったからだった)

 

(初めて穂乃果達八人に出逢ってから数日が経ったある日…オレは少し俯きながら、中学校から下校していた)

 

コタロウ『…』スタスタ

 

(姉ちゃんが事実を話してくれなかった事に憤りを感じていたオレは…あの日から、ずっと姉ちゃんと話せずにいたのだった)

 

コタロウ『どうして…本当の事を話してくれなかったんだよ』ハァ

 

?『コタロウくん!』

 

コタロウ『?』

 

(声に気付いたオレが顔を上げると…そこには穂乃果と絵里がいた)

 

穂乃果『こんにちは!』

 

コタロウ『アンタ達…オレに何の用だ?』

 

穂乃果『お母さんのこと、にこちゃんから聞いたよ…未確認に襲われてからずっと病院で眠ったままなんだって』

 

コタロウ『!』

 

(数ヶ月前…刑事だった母さんは、城南大学の考古学研究室が発掘中だった長野県の九郎ヶ岳遺跡で起きた事件を調査していた)

 

(そんな中、母さん達警察は事件と同時期に現れ始めた未確認生命体の犯行によるものと推測し…奴らの拠点を捜索していた)

 

(その拠点を一人で見つけ出し、応援を待っていた所を奴らに気付かれてしまい…襲われた母さんは意識不明の状態で病院に運ばれた)

 

(今も…母さんは病院のベッドで、眠ったままだ)

 

コタロウ『…確かにそうだが、それがどうした?』

 

絵里『皆で君とにこの事をずっと心配してたの…あれから、にことはちゃんとお話してる?』

 

コタロウ『同情のつもりか?…そんな事、アンタ達には関係ないだろ!?』

 

穂乃果『関係あるよ、だって私達にも…妹がいたから』

 

コタロウ『…えっ?』

 

穂乃果『コタロウくん、あかつき号って…知ってる?』

 

コタロウ『…数年前に生存者一名を除いた乗客全員が行方不明の事故に遭ったという、あの旅客船の事か?』

 

穂乃果『うん…実はあの事故で生き残ったのって、私のことなの』

 

コタロウ『!』

 

穂乃果『お父さんもお母さんも妹も乗ってたんだけど…みんな、どこに行っちゃったのか分からなくなっちゃって』

 

穂乃果『船に乗っていた時のことも覚えてなくって…何で私だけ助かったのって、ずっと思ってて落ち込んでいた時期があったの』

 

コタロウ『…』

 

絵里『…私も同じ時期にね、シブヤ隕石の事故で妹と離ればなれになってしまったの』

 

コタロウ『それって…飛来してきた謎の隕石がシブヤ一帯を壊滅させ多くの行方不明者を出したと言われている、あの事故か?』

 

絵里『ええ、私は何とか自力で助かったんだけど…妹は行方知れずのままで捜索は打ち切られてしまった』

 

絵里『そしてシブヤの一部の区域は、未だにエリアXとして封鎖されてる…』

 

絵里『私も穂乃果と同じように…どうして私だけ助かったのかって、ずっと心を閉ざしてしまっていたわ』

 

コタロウ『…アンタ達』

 

絵里『でもね、そんな時…私達はオトノキが廃校になる事を知ったの』

 

穂乃果『だから、このままじゃいけない…いつか妹達が帰ってくるまで私達が絶対にオトノキを守らなきゃって思ったの』

 

穂乃果『それから私は、スクールアイドルに興味を持って…スクールアイドル《μ's》を始めた』

 

穂乃果『そして…私達はにこちゃんに出逢った』

 

コタロウ『…姉ちゃんに?』

 

絵里『ええ、例え一人だけになってもアイドル研究部の活動を続けるその姿を見て…私達に何か出来る事は無いか考えていたの』

 

穂乃果『それでね…私、思ったんだ』

 

穂乃果『にこちゃんと一緒に、この九人でスクールアイドルを…《μ's》をやりたいって』

 

穂乃果『妹の雪穂が入りたかった、オトノキを守るために…って!』

 

コタロウ『…アンタ達の気持ちは分かったが、結局はオレに何が言いたいんだ?』

 

穂乃果『にこちゃんはね…元気のなかった弟のコタロウくんに喜んでほしい、笑顔になってほしいと思って嘘をついてたんだよ』

 

穂乃果『本当はお母さんが眠ったままで、にこちゃんだって寂しいはずなのに…』

 

コタロウ『!』

 

絵里『私達にも妹がいたから…にこがお姉さんとして、あなたを不安にさせたくない気持ちが分かるの』

 

穂乃果『だから、私達も…コタロウくんには笑顔でいてほしいんだ』

 

穂乃果『もちろん…にこちゃんにもねっ!』

 

コタロウ『…悪いが、もうオレの事は放っておいてくれないか?』

 

絵里『コタロウくん…』

 

コタロウ『姉ちゃんやアンタ達の気持ちは理解した…だが、それでもオレは姉ちゃんに何て話し掛ければ良いのか分からないんだ』

 

コタロウ『姉ちゃんに怒ってしまったオレは…今更、何を言えば良い?』

 

穂乃果『…何て言えばいいのか分からないなら、コタロウくんから無理に話しかけなくても良いんじゃないかな?』

 

絵里『えっ…穂乃果?』

 

コタロウ『はぁ?』

 

穂乃果『だって、私達もいるんだよ!』

 

穂乃果『誰かが立ち止まれば、誰かが引っ張る!誰かが疲れたら、誰かが背中を押す!』

 

穂乃果『みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして…それでも進んでるんだよ!』

 

穂乃果『だからきっと、また…みんなで笑えるよ!』

 

コタロウ『…!』

 

穂乃果『良い方法があるんだ…絵里ちゃん、あれお願い!』

 

絵里『なるほど、そういう事ね…分かったわ!』

 

コタロウ『?…一体、何をしようt』

 

絵里『ちょっとくすぐったいわよ…亜里沙直伝、笑いのツボ!』ドスッ!

 

(突然、絵里に首の辺りを突かれたオレは…何故か笑いが止まらなくなってしまった)

 

コタロウ『!?…あはは、あっはっはっは!』

 

穂乃果『よーし、行っくよ~!』グイッ

 

絵里『ふふっ…』

 

コタロウ『ちょっ、やめ…あっはっはっは!』

 

(穂乃果に無理やり手を引っ張られ、絵里に背中を押されたオレは…とある場所へと連れて行かれた)

 

 

 

穂乃果『にこちゃん!』

 

にこ『あっ…練習なら出られないっt』

 

コタロウ『…』ハァ

 

にこ『ちょっ…何で連れてきてんのよ!?』

 

穂乃果『だって、コタロウくんに見てもらいたいんだよ…にこちゃんのステージ!』

 

にこ『ス、ステージ…?』

 

(それからオレ達はオトノキの校内に入り…オレはステージが建てられた屋上で待たされていた)

 

コタロウ『おい、ステージってどういう事なんだ…?』

 

穂乃果『いいからいいから…ほらっ!』

 

コタロウ『はぁ?…!』

 

(ステージには…衣装を着た姉ちゃんが立っていた)

 

コタロウ『ア、アイドル…?』ボソッ

 

にこ『…コタロウ、歌う前に話があるの」

 

コタロウ『え?』

 

にこ『今まで嘘をついてしまってごめんなさい…スーパーアイドルにこは、今日でおしまいにするわ!』

 

コタロウ『!?』

 

にこ『…』

 

コタロウ『じゃあ…夢だったアイドルをやめるつもりなのか?』

 

にこ『ううん!やめないよ…』

 

にこ『これからは…ここにいる《μ's》のメンバーとアイドルをやっていくの!』

 

コタロウ『…今までバックダンサーだって思っていたんじゃなかったのか?』

 

にこ『…うん、そう思ってた』

 

にこ『けど…違ったの!これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい』

 

にこ『この九人でいられる時が、一番輝けるの!』

 

にこ『一人でいる時よりも…ずっと、ずっと』

 

コタロウ『…』

 

にこ『今の私の夢は宇宙ナンバーワンアイドルにこちゃんとして、宇宙ナンバーワンユニット《μ's》と一緒に…より輝いていく事!』

 

にこ『それが、一番大切な夢…私のやりたい事なの!』

 

コタロウ『!…姉ちゃん』

 

にこ『だから聞いて?これは私が一人で歌う、最後の曲…』

 

(その時、ステージにあった風船が宙を舞い…姉ちゃんはいつもの笑顔を見せながら唄った)

 

にこ『にっこにっこにー!!』

 

(それはまさに…姉ちゃんが夢見ていた、理想のアイドルと言える姿だった)

 

(こうして、姉ちゃんの本当の気持ちと決意を知ったオレは…再び姉ちゃんと接する事が出来るようになったのだった)

 

 

 

(朝食を食べ終えたオレは…中学の制服に着替え、家を出ようとする)

 

コタロウ「…じゃあ、行ってくる」

 

にこ「本当に一人で大丈夫なの?」

 

コタロウ「大丈夫だ、心配ない」

 

にこ「そう…分かったわ、行ってらっしゃい」

 

コタロウ「ああ」

 

にこ「あっ…それと、未確認には気を付けるのよ?」

 

コタロウ「…分かった」ビシッ

 

(オレは姉ちゃんにサムズアップをして…自宅のマンションを出た)

 

 

 

(神田明神の境内に入ると…誰かが後ろからオレの名前を呼ぶ声が聞こえた)

 

コタロー!

 

コタロウ「?」

 

?「はぁはぁ…おはよう!」

 

コタロウ「樹里か…おはよう、今日も元気そうだな」

 

樹里「うん!コタロウもこれからお参りするの?」

 

コタロウ「ああ、そんな所だ」

 

樹里「それなら…僕と一緒にお参りしよう!」

 

(彼の名前は『絢瀬 樹里(じゅり)』…オレと同じ中学に通っている級友だ)

 

チャリン…カランカランカラン!

 

コタロウ「…」ペコッ

 

樹里「…」ペコッ

 

パンパン!

 

コタロウ「…」ペコッ

 

樹里「ふぅ…じゃあ、行こうか!」

 

コタロウ「…そうだな」

 

(お参りを終えたオレ達は神田明神を後にして…オトノキへと向かった)

 

樹里「緊張するね~…僕達、ちゃんと受かってるかなぁ?」

 

コタロウ「さあ…どうだろうな」

 

樹里「あっ!…そういえば、絵里姉さん達のライブってお昼からだったよね?」

 

コタロウ「ああ」

 

樹里「僕は兄さんと一緒に見に行こうと思うんだけど…コタロウはどうするの?」

 

コタロウ「一応、色々な所を一人で回ってから行こうかと思う」

 

樹里「そっか…早くライブの時間にならないかなぁ」ワクワク

 

コタロウ「…そういえばテレビで見たぞ、この前のフィギュアスケートのロシア大会」

 

樹里「えっ…見てくれてたの!?」

 

コタロウ「ああ、初優勝だったそうだな?」

 

樹里「あっ、うん…ショートもフリーもスゴく調子が良かったんだ!」

 

コタロウ「そうか…おめでとう」

 

樹里「ありがとう!コタロウが僕の優勝を祝ってくれるなんて、嬉しいなぁ…」フフッ

 

コタロウ「何でだよ…オレだってそれくらいは言うぞ?」

 

樹里「じゃあ…もし次のフランス大会も優勝したら、この前行ったあのお店のハンバーガー奢ってくれる?」

 

コタロウ「別に構わないが、あそこはチェーン店じゃないか…どうしてまたそこのハンバーガーが食べたいんだ?」

 

樹里「日本に住んで初めて食べたあのハンバーガーの味が忘れられないんだ…だから、また食べに行きたいなって」

 

コタロウ「なるほどな…それだったら大会関係なく、近いうちに一緒に行くか?」

 

樹里「本当!?」

 

コタロウ「わざわざそんな嘘を言う訳が無いだろ」

 

樹里「楽しみだなぁ…絶対にいつか行こうね?」

 

コタロウ「ああ、いつかな」

 

 

 

(それからオレ達は…秋葉原と御茶ノ水と神保町の間に位置している国立音ノ木坂学院にやってきた)

 

コタロウ「…いよいよ、だな」

 

樹里「うん…!」

 

(国立音ノ木坂学院…通称『オトノキ』はかつて生徒数の減少の一途を辿り、廃校の危機に陥っていた)

 

(もともと女子校だったオトノキは、七年前に共学化した事で一時的に生徒数は増加したが…三年前から再び入学希望者が減少した)

 

(それから今年度に入学した一年生のクラスは一クラスとなってしまい…ついにはオトノキの生徒に廃校が知らされる事態となった)

 

(その廃校の危機を救ったのが…スクールアイドル『μ's』だ)

 

(オトノキの女子生徒九人がスクールアイドルとして様々な活動をしてきた功績によって…入学希望者は増加し、廃校は撤回された)

 

(姉ちゃんが通っていたこのオトノキを受けられるようになったのは…他でもない、姉ちゃんや穂乃果達『μ's』のおかげだ)

 

樹里「コタロウ、あれ!」

 

コタロウ「!…来たか」

 

(すると…合格者の受験番号が掲示板で発表された)

 

コタロウ「112、113…」

 

樹里「僕の番号、あった…やった!ハラショー!!」

 

コタロウ「…!」

 

樹里「良かったぁ~…コタロウはどうだった?」

 

コタロウ「それが、受験番号が『118』なんだが…」

 

樹里「え…その顔、まさか!?」

 

コタロウ「ああ…あった」

 

樹里「あったの!?…もう、ビックリするから紛らわしい顔しないでよ!」

 

コタロウ「悪い悪い…」

 

樹里「でも、やったよ…これで音ノ木坂だよ!」

 

樹里「僕達、音ノ木坂の生徒だよ!!」

 

コタロウ「ああ…『μ's』にも、感謝しなくちゃな」

 

樹里「うん、そうだね!」

 

(その直後に教職員から説明を受け、学生証を貰ったオレ達は…オトノキを出ようとしていた)

 

コタロウ「…ん?」

 

(すると正門には…受験生達にチラシを配っている金髪の少年が立っていた)

 

?「『μ's』のエリーチカこと絢瀬絵里の実家の味で有名なロシア料理店『赤いサラファン』だ…ぜひ来てくれ!」

 

樹里「あっ…斗里兄さん!?」

 

?「おお!樹里とコタロウじゃないか…今から帰るという事は二人共、オトノキに合格したんだな?」

 

(彼は『絢瀬 斗里(とうり)』…樹里の兄で、料理研究部に所属しているオトノキの二年生だ)

 

(休みの日にオレが樹里の家であるロシア料理店に行くと…大抵は斗里が店員をやっている為、既にオレの顔は覚えられているのだ)

 

樹里「うん!」

 

斗里「ハラショー…それは良かった」

 

コタロウ「それはそうと、アンタはこんな所で何をしていたんだ?」

 

斗里「実は今日、おばあさまにここでお店を宣伝するように頼まれてな…」

 

コタロウ「店の宣伝って…ちゃんと学校の許可はとったのか?」

 

斗里「問題ない…既に南理事長からの許可は貰っている、彼女もお店の常連だしな」

 

樹里「なるほど、さすが兄さん!」

 

斗里「それほどでもない…しかし本当なら今頃、妹の亜里沙も樹里と一緒にこのオトノキを受けていただろうにな」

 

樹里「あっ…うん」

 

斗里「もし亜里沙がここにいれば、コタロウに紹介して…ボーイフレンドになってもらおうと思っていたんたが」

 

コタロウ「…はぁ?」

 

樹里「そうだね…コタロウだったら、きっと亜里沙に相応しいボーイフレンドになってたと思うよ」

 

コタロウ「いや、だから何を勝手に…」

 

(斗里はオレをスルーしたまま、話を続けようとする)

 

斗里「あの日、俺が止めていれば…二人でシブヤに行く事も無かっただろうに」

 

斗里「俺が止めなかったせいで、亜里沙は…」

 

樹里「…亜里沙」シュン

 

コタロウ「!…おい、斗里」

 

斗里「…!」ハッ

 

斗里「ごほんっ…まあ、今の自分達に出来るのは愛する我が妹の帰りをただひたすら信じて待つ事ぐらいだけどな」

 

樹里「兄さん…うん、そうだね!」

 

斗里「さて、そろそろ配ったチラシでお客さんも入ってきている事だろうし…お店に戻らないとな」

 

樹里「あっ…じゃあ、僕も手伝うよ!」

 

斗里「本当か?…ありがとう、樹里」

 

樹里「それじゃ、僕は兄さんと一緒におばあさまのお店に行くね?」

 

コタロウ「分かった…じゃあ、また後でな」

 

樹里「うん、またここで会おうね!」

 

斗里「ダスビダーニャ、コタロウ!」

 

(オトノキの正門を出て樹里や斗里と別れたオレは…真っ先にとある場所へと向かった)

 

 

 

(『西木野総合病院』の病棟に入ったオレは…母さんが入院している病室を訪れた)

 

コンコン…ガラッ

 

(ノックをしてから、ゆっくりドアを開けたオレは…ベッドで眠っている母さんに話しかけた)

 

コタロウ「…どうだ、具合は?」

 

にこの母「…」

 

コタロウ「オレ…オトノキに合格したんだ」

 

コタロウ「これでオレも姉ちゃんと同じ学校に行けるな…まあ、姉ちゃんはもうすぐ卒業だから一緒に通う事は無いんだがな」

 

にこの母「…」

 

コタロウ「それはそうと『μ's』のライブ、今日の昼からだぞ…本当に行かなくて大丈夫なのか?」

 

コタロウ「姉ちゃんがアイドルやるの楽しみにしてたんだろ…なのに、ここで寝たままで良いのか?」

 

コタロウ「…何とか言ってくれよ、母さん」

 

にこの母「…」

 

(オレがどれだけ話し掛けても…母さんが目を開けて返事をする事は無かった)

 

(もし母さんと話が出来る状態であれば…きっと、母さんはオレの高校合格をオレ以上に喜んでくれていた事だろう)

 

(そして…姉ちゃんがスクールアイドル『μ's』のメンバーとして、仲間達と共にライブをする事を何より楽しみにしていただろう)

 

コタロウ「あとな…今朝、オレの作った味噌汁が美味しいって姉ちゃんが褒めてくれたんだ」

 

コタロウ「スクールアイドルで頑張ってる姉ちゃんの力になりたいって思ってから…色々、勉強してたんだ」

 

コタロウ「まあ、姉ちゃんの部屋から母さんの料理のレシピが書いてあるノートを勝手に借りて見てただけってのもあるんだがな…」

 

にこの母「…」

 

コタロウ「いつか…母さんにも、オレが作った料理を食べてほしい」

 

コタロウ「だから…早く目を覚ましてくれよ、母さん」

 

にこの母「…」

 

コタロウ「…っ」ググッ

 

(母さんの笑顔を見られない事が、何よりも悔しかったオレは…自分の拳を強く握りしめていた)

 

 

 

(病院を出たオレは…芳林公園へとやってきた)

 

コタロウ「いたな…おーい!」

 

(オレは遊具で遊んでいる女の子と男の子に向かって声をかけた)

 

女の子「あっ、コタロウせんせい!」ダッ

 

男の子「…!」ダッ

 

コタロウ「よう…ひめり、蒼矢」

 

(この子達は『南 ひめり』と『園田 蒼矢(そうや)』…最近、幼稚園の先生として職場体験をした時に知り合った子供達だ)

 

コタロウ「元気か?」ナデナデ

 

蒼矢「!」コクコク

 

コタロウ「そうか…それなら何よりだ」

 

ひめり「それにしてもコタロウ先生、きょうもカッコいいねぇ~…」

 

コタロウ「そうか?…まあ、それほどでもあるかな」フフン

 

ひめり「じゃあ…ひめりとつきあってください!」

 

コタロウ「イヤだ」キッパリ

 

ひめり「そんなぁ!?…おねがぁい!」

 

コタロウ「そんな脳が蕩けるような声でお願いされてもイヤなもんはイヤだ」

 

ひめり「どうしてぇ…?」

 

コタロウ「今のオレが十五歳で、ひめりが五歳…十歳も離れてるんだぞ?」

 

ひめり「それは…あいのちからでなんとかっ!」

 

コタロウ「無理だろ…そういう言葉はせめて、自分の姉ちゃん達と同じぐらいの歳になってから言え」

 

ひめり「でも、ひめりのほうからはやくてをうたないと…ことりおねえちゃんや『μ's』のみんなにとられるかも!」

 

コタロウ「『μ's』が?…いや、ないない」

 

ひめり「わからないよぉ~…とくに、にこちゃんとか!」

 

コタロウ「オレの姉ちゃんは一番ないから安心しろ…というか、ひめりには蒼矢がいるだろ?」

 

蒼矢「…」ボーッ

 

ひめり「そうやくん?…そんな、あるわけないよぉ~!」

 

コタロウ「何で?」

 

ひめり「だってぇ…いつもむくちだし、たよりないんだもん」

 

蒼矢「…?」

 

コタロウ「だが、そう思っているのは…ひめりだけかもしれないぞ?」

 

ひめり「へっ?」

 

コタロウ「蒼矢はいざという時に頼りになる男だ…何故なら蒼矢はあの園田海未の弟なんだからな、オレには分かる」

 

ひめり「そうだけどぉ…うみさんみたいにたのもしくないし」

 

コタロウ「普段はそう見えるだけだ…でもな、蒼矢の名前は海未がつけたんだ」

 

ひめり「…うみさんが?」

 

コタロウ「ああ…海未が『真っ直ぐで折れない芯を持った強い男の子になりますように』という理由でつけたんだ」

 

コタロウ「蒼矢自身もそれを知っている…弓道をしている海未の姿も見てきている訳だしな」

 

ひめり「…」チラッ

 

蒼矢「…」ボーッ

 

ひめり「ほんとかなぁ…?」

 

コタロウ「そういえば…二人も『μ's』のライブ、見に行くのか?」

 

ひめり「うん、かおりおねえちゃんといっしょにいくよ!」

 

コタロウ「そうか…かおり先生はどこにいるんだ?」

 

ひめり「あそこだよ!」

 

コタロウ「?」クルッ

 

(ひめりが指を差す方向には…ベンチに座る女性が手を振りながらオレの名前を呼んでいた)

 

?「コタロウく~ん!」フリフリ

 

(彼女は『南 かおり』…オレの通う中学で一時期、教育実習生として彼女が赴任してきた時に生徒のオレと知り合いになった)

 

(最近までカフェでバイトをしながら勉強に励んでいた彼女は…めでたく教員免許を取得し、来年度からオトノキの養護教諭として配属される事になった)

 

コタロウ「よう…かおり先生」

 

かおり「久しぶりだね!…どうだった、結果は?」

 

コタロウ「ああ、オレも樹里も合格した」

 

かおり「二人ともさすがだね…おめでとう!」

 

コタロウ「どうも」

 

かおり「じゃあ、私が保健室の先生としてコタロウくんと樹里くんのケガの手当てとかしちゃうんだ…緊張するなぁ」ドキドキ

 

コタロウ「どうしてオレと樹里限定なんだよ…他の生徒の手当てもちゃんとしてやれよ」

 

かおり「あっ…そっかぁ、それもそうだね!」

 

コタロウ「…アンタ、本当に大丈夫なのか?」

 

かおり「大丈夫だよ~…こう見えて、ことちゃんが小さい頃にお裁縫でケガしちゃった時は私がいつも手当てしてたんだよぉ?」エッヘン

 

コタロウ「別に威張る程の事ではないだろ…まあ、自信があるなら良いけどな」

 

かおり「うふふ…だから、コタロウくんももし学校でケガしたりとか不安な事があったらいつでも保健室に来てね?」

 

かおり「私がちゃんと治療したり…話を聞いたりするから!」

 

コタロウ「そうだな…もしそうなったら、な」

 

かおり「ふふっ、それにしても『μ's』のライブ…楽しみだなぁ~」

 

コタロウ「そうか…かおり先生は『μ's』のライブを生で見るのは初めてだったな?」

 

かおり「うん、教員免許取るまで色々と忙しかったから…ことちゃん達のライブになかなか行けなかったの」

 

かおり「ことちゃん達が『μ's』をやってくれたおかげで、私も保健室の先生としてまたオトノキに戻る事が出来た訳だし…」

 

かおり「だから、今回こそは私も近くでひめちゃん達と一緒に…『μ's』の応援をしたいの!」

 

コタロウ「そうか…アンタが来るって知ったら、きっとことりもオレの姉ちゃんも穂乃果達も喜んでくれるだろうな」フフッ

 

かおり「そうかな…それなら、良いんだけど」

 

コタロウ「間違いない、オレが保証する」

 

かおり「えへへ~…あれ、もしかして私がコタロウくんに励まされちゃってる?」

 

コタロウ「どうだかな…じゃあ、オレは他に寄る所があるから、そろそろ行くぞ?」

 

かおり「うん…また後でね!」フリフリ

 

ひめり「コタロウせんせい、またね~!」ブンブン

 

蒼矢「…!」ブンブン

 

コタロウ「おう、また後でな」フフッ

 

(公園を後にしたオレは…ある場所へと向かって再び歩き出した)

 

 

 

(UTXビルの前にやってきたオレは…ビルから出てきたボーイッシュな格好をした女性に話しかけた)

 

コタロウ「よう、慧」

 

女性「おっ…コタロウじゃないか!?」

 

(彼女は『星空 (けい)』…小さい頃に姉ちゃんと一緒にダンスの体験教室に行った時、オレと慧は出会った)

 

(慧の身軽でアクロバティックなダンスをカッコ良いと思った当時のオレは…慧からよくダンスを教わっていた)

 

(姉ちゃんは『にこみたいな可愛いアイドルにはあんな激しいダンスは似合わないニコ~』とか言って、すぐに通うのを止めてしまったが…)

 

慧「それで…受験、どうだった?」

 

コタロウ「ああ、合格した」

 

慧「!…そうか、おめでとう」

 

コタロウ「どうも…今からオトノキに行くのか?」

 

慧「うん、実はさっきまで…このUTX高校でプロアイドルに転向するスクールアイドルの三人に振付を教えていた所だったんだ」

 

慧「これから彼女達も連れて…『μ's』のライブを見に行くつもりだよ!」

 

コタロウ「なるほどな、それを知った凛が緊張しないと良いが…」

 

慧「凛ならきっと大丈夫だよ…私の自慢の妹だからね!」

 

コタロウ「じゃあ、そのくらいじゃ緊張しないって事か?」

 

慧「もちろん!」

 

コタロウ「そうか…じゃあ、オレはここで」

 

慧「うん、またオトノキで会おうね!」

 

コタロウ「ああ」スタスタ

 

 

 

メイド服の女性「スクールアイドル専門雑誌『CROCUS』の特別号でーす!」ピラッ

 

(秋葉原の電気街にやってきたオレは…メイド服を着た女性達が配布していた一枚の小さな冊子を受け取った)

 

コタロウ「『CROCUS』か…ん?」

 

(その冊子の内容は…この後行われるμ'sのライブの宣伝だった)

 

?「『μ's』のライブもありまーす、よろしくにゃ~!」ピラッ

 

コタロウ「!…もしかして」

 

(オレはその中でネコ耳のカチューシャを着けながら冊子を配るロングヘアーの女性に話しかけた)

 

コタロウ「萌…相変わらずだな、その語尾」

 

?「にゃっ?…あっ、コタロウくん!」

 

(彼女は『星空 (めい)』…最近、創刊されたスクールアイドル雑誌の編集部員として色々なスクールアイドルの取材をしている)

 

(地元のダンス大会で優勝した小学生のオレを…当時、同じ小学校で新聞部員をしていた萌が取材してきた事が出会いのきっかけだ)

 

コタロウ「よう…さっき、UTXで慧に会ったぞ」

 

萌「そうだったの!?最近、お仕事で忙しかったからなかなかお姉ちゃんや凛ちゃんとも会えてないんだよね~…」

 

コタロウ「じゃあ…この後の『μ's』のライブにも行かないのか?」

 

萌「いやいや…ライブには取材に行くよ?凛ちゃん達の可愛い姿は萌がちゃんとレポートしたいからね!」

 

萌「どうやらライバル誌の『HSI』もライブの取材に来るみたいだし…負けてられないにゃ!」

 

コタロウ「なるほどな、ところで…そのメイド服は『μ's』のライブと何の関係があるんだ?」

 

萌「う~ん…それはやっぱり、ここで『μ's』がメイド服を着てライブをしたかr」

 

コタロウ「嘘だな…アンタが単にメイド服を着たかっただけだろ?」

 

萌「何で分かったの!?」

 

コタロウ「…そんな事だろうと思ったよ」ハァ

 

萌「でも、可愛くないかにゃ?…ネコちゃん風メイド!」

 

コタロウ「別に…一度も思った事無いが」

 

萌「だよねぇ…憧れるにゃ~」

 

コタロウ「…聞いてないだろ、人の話」

 

萌「萌、知ってるよ!コタロウくんはネコ耳よりウサ耳の方が好きなんだよね~?」

 

コタロウ「勝手に人の好みをでっち上げるな、オレにそんな嗜好は無い」

 

萌「あはは…冗談だよ、冗談!」

 

コタロウ「じゃあ、オレは他に寄る場所があるからまた後で…萌が書いた記事、楽しみにしてるぞ?」スタスタ

 

萌「うん、ありがとねー!バイバ~イ!!」フリフリ

 

(萌と別れたオレは…秋葉原の電気街を抜けて歩いていった)

 

 

 

(昌平橋の方へ歩いて行くと…一人の青年が目を閉じた状態でヴァイオリンを奏で、聴いていた人々を魅了させていた)

 

コタロウ「この綺麗な音色は…やっぱりか」

 

~♪

 

(演奏が終わり青年がゆっくりと目を開けると…人々は皆、拍手していた)

 

パチパチパチ

 

青年「!?…あ、ありがとうございます」ペコリ

 

(青年は聴衆がいた事に気付いていなかったのか、軽くお辞儀をするとヴァイオリンをケースに仕舞い…そそくさとその場を後にした)

 

青年「早く帰らなきゃ…」スタスタ

 

コタロウ「待て」グイッ

 

(オレは青年が着ていた上着の裾を引っ張った)

 

青年「わあっ!?」

 

コタロウ「せっかくの才能を持っているんだ…もっと自信持っても良いんじゃないのか、葉太兄」

 

青年「!…コタロウくん?」

 

(彼は『小泉 葉太(ようた)』…ごく一部の層に人気の若手バンド『ハンライス』のサポートメンバーをしながら、この近くで小さなヴァイオリン工房を営む職人兼奏者だ)

 

(一年前、家の郵便受けに入っていたヴァイオリン体験教室のチラシに興味を持ち…彼の工房を訪ねたのが葉太兄と出会ったきっかけだ)

 

葉太「久しぶりだね…元気にしてた?」

 

コタロウ「毎日三食しっかり食べているからな、それよりアンタ…また痩せたんじゃないのか?」

 

葉太「うん、ちょっと新しいヴァイオリンの製作で忙しくてね…あまり食べられていないんだ」

 

コタロウ「ちゃんと食べないとダメだぞ…そうだ、今度来る時にオレが料理を作ってやる」

 

葉太「えっ…良いの?」

 

コタロウ「ああ、何が良い?」

 

葉太「じ、じゃあ…オムライスとおにぎりで!」

 

コタロウ「炭水化物と炭水化物か…まあ、葉太兄がそう言うなら別に構わないが」

 

葉太「気を遣わせてごめん…そういえば、受験の方はどうだったの?」

 

コタロウ「ああ、合格した」

 

葉太「そっか…おめでとう」

 

コタロウ「どうも…ひとまず、アンタみたいに人見知りせずに高校生活を上手く乗り切ってみせるさ」

 

葉太「あはは…そういえば、この前に僕があげたヴァイオリンは弾いてくれてる?」

 

コタロウ「ああ、葉太兄が指定していた課題曲の『渡』や『音也』はもちろん…最近は色んな曲を耳コピで弾けるようになってきたな」

 

葉太「ふふっ…そっか、コタロウくんがここまでヴァイオリンを好きになってくれて嬉しいよ」

 

コタロウ「…それもこれも、アンタがレッスン代をかなり割引してくれたり手話まで教えてくれるって言うから教室に通えたってのはあるけどな」

 

葉太「僕の初めての教え子だったからつい嬉しくてね…それに、コタロウくんは最初から『誰かに何かを伝える』才能があったから」

 

コタロウ「…才能?」

 

葉太「うん!」

 

コタロウ「それなら、そういう事にしておくか…ところで『μ's』のライブは見に行くのか?」

 

葉太「もちろんだよ…花陽ちゃんがずっと憧れていたアイドルになって踊る姿を、僕も兄としてこの目で見たかったからね」

 

葉太「それに…『μ's』である彼女達の音楽は、音楽家の僕にとっても素晴らしいインスピレーションを吹き込んでくれるからね」

 

葉太「オトノキの卒業生として…こんなに嬉しい事はないよ」

 

コタロウ「…そうか」

 

葉太「それじゃ…僕は一旦、工房に戻ってからオトノキに向かうね?」

 

コタロウ「ああ…また後でな」

 

葉太「うん!」

 

(葉太兄と別れたオレは…とある行きつけのお店に向かって行った)

 

 

 

(地元の人々から親しまれている老舗の和菓子屋『穂むら』に着いたオレは…引き戸を開け、お店の中に入った)

 

女性店員「あっ、コタロウくんじゃない…いらっしゃい!」

 

コタロウ「よう…光姉」

 

(この女性は『高坂 光穂(みつほ)』…この『穂むら』の従業員だ)

 

(オレが少し前にこの店の揚げ饅頭にハマって以来、毎日のようにこの店の和菓子を買いに訪れている為…いつの間にか覚えられていた)

 

光穂「今日は何が良い?」

 

コタロウ「そうだな…じゃあ、揚げ饅頭で」

 

光穂「揚げ饅頭ね…今、厨房で揚げてもらってる途中だからもう少し待っててくれる?」

 

コタロウ「大丈夫だ…まだライブまで時間があるからな」

 

光穂「あっ!?そういえば今日は穂乃果達のライブがあるのよね…早めに店じまいしないと」

 

コタロウ「…まさか、忘れてたのか?」

 

光穂「そ、そんな…姪の大事なライブを忘れる訳ないじゃない」アセアセ

 

コタロウ「…目が泳いでるぞ」

 

光穂「ら、来週だと思ってたのよぉ~!」

 

ガララッ

 

(その時、瑠璃色の着物を纏う一人の若い女性がお店に入ってきた)

 

女性客「ご機嫌よう、光穂先輩」

 

光穂「いらっしゃい…久しぶりだね!」

 

女性客「コタロウもいらしていたのですね…ご機嫌よう」

 

コタロウ「…弓未姉、押忍」ペコッ

 

弓未「やめてください、コタロウ…今の私はもう園田道場の師範代などではなく一人の主婦なのですよ?」

 

(旧名『園田 弓未(ゆみ)』…彼女は剣道の師範だった父親が園田道場に婿入りした際に連れられてきた子であり、本当の母親とは永別している)

 

(オレが小学生の頃に行った園田道場の武道体験教室で、師範代だった彼女から色々教わったのが出会いのきっかけだ)

 

(その四年後にとある研究所の所員と結婚し…現在は道場から離れ、専業主婦として暮らしている)

 

コタロウ「いや、分かってはいるんだが…弓未姉にだけはどうしてもこうなってしまうんだ」

 

光穂「小さい頃からのクセってなかなか直らないものだよね~…それで、弓未ちゃんは何を買いに来たの?」

 

弓未「はい、今回は…妹の海未への差し入れにこちらのほむまんを一箱持って行こうと思いまして」

 

一穂「ほむまん一箱ね…毎度あり!」

 

コタロウ「そういえば、さっき…芳林公園で蒼矢に会ったぞ」

 

弓未「そうでしたか…蒼矢は元気そうにしていましたか?」

 

コタロウ「相変わらずだ」

 

弓未「ふふっ、それなら安心しました…蒼矢はああ見えて繊細な所がありますから」

 

光穂「弓未ちゃん…はい、お待たせ!」スッ

 

弓未「!…ありがとうございます、それではまた」ペコッ

 

ガララッ

 

(光姉から紙袋を渡された弓未姉は…深くお辞儀をしてから、お店を出た)

 

光穂「お嫁さんって良いよねぇ~…一度で良いから私もあんな風になってみたかったなぁ」ハァ

 

コタロウ「…まるで自分はもう結婚できないみたいに言うな?」

 

光穂「だって私、もう三十代なんだよ?」

 

光穂「それなのに未だにドジでおっちょこちょいで…こんな私と結婚してくれる優しい人なんている訳ないよ」

 

光穂「はぁ…そうだ、コタロウくん!」

 

コタロウ「無理だ」

 

光穂「えぇっ、まだ何も言ってないじゃん!?」

 

コタロウ「どうせ『婿になってくれ』とか冗談で言うつもりだったんだろ?…もういいだろ、そのやりとり」

 

光穂「あ…分かっちゃった?」

 

コタロウ「何回このくだりをやったと思ってるんだ…もうこれで八十三回目だぞ?」

 

コタロウ「それに、そういう事を言うのは…本当にこの人だって思った人だけにしろ」

 

光穂「う~ん…だったらさ、穂乃果ちゃんはどう?」

 

コタロウ「はぁ?何でそうなる…」

 

光穂「ん~…なんとなく、かな?」

 

コタロウ「…」ハァ

 

光穂「あっ、でも…もしかしたらコタロウくんには穂乃果ちゃんより雪穂ちゃんの方がよく似合っt」

 

(光姉がそんな事を言っていると、厨房からおばあさんが顔を覗かせてきた)

 

おばあさん「大事な常連客に何を言ってるのかねぇ…ほら、揚げ饅頭出来たよ」

 

光穂「あっ…はーい!」

 

コタロウ「今日も元気みたいだな、ほむ婆」

 

(このおばあさんは代々続く穂むらの店主だ…本名は知らないが、オレはいつも『ほむ婆』と呼んでいる)

 

ほむ婆「当たり前さね…まだまだ若いモンに負ける気はしないよ」

 

光穂「でも本当だったら、お姉ちゃんとそのお婿さんにお店を任せてたはずなんだけど…あの事故があったらさすがにね」

 

光穂「せめて、雪穂ちゃんがいてくれたらなぁ…」

 

コタロウ「!…光姉」

 

光穂「…今頃、コタロウくんに紹介できたのに」ハァ

 

コタロウ「おい」

 

ほむ婆「コラ、光穂っ!口動かすより手ぇ動かしな!!」

 

光穂「わわっ、いけない…ごめんなさい!」

 

ほむ婆「やれやれ…本当におしゃべりなんだから、この子は」ハァ

 

光穂「そんなに怒らないでよ~…どうどう」

 

ほむ婆「私は馬じゃないよ!いいから早くお客さんに商品を渡しな!!」

 

光穂「ごめんってば…はい、どうもありがとね!」スッ

 

コタロウ「…どうも、じゃあまた後ほど会場で」

 

ほむ婆「おっと…ちょいとお待ち」

 

コタロウ「?」

 

ほむ婆「あんた、珈琲は好きかい?」

 

コタロウ「お茶じゃなくてか?…別に嫌いではないが」

 

ほむ婆「だったら家にあがって私の淹れた珈琲、飲んでいきな…私は珈琲にも自信があるんだよ」

 

(オレは高坂家の居間に通され、ほむ婆の淹れる珈琲を飲む事になった)

 

 

 

ほむ婆「ほら、飲みな」

 

コタロウ「…いただきます」ズズッ

 

ほむ婆「どうだい?」

 

コタロウ「!…美味い」

 

ほむ婆「そいつは良かった…そうだ、これも見ていきなさい」ドサッ

 

(ほむ婆は一冊の分厚いアルバムを台に乗せると…オトノキの制服を着た若い頃のほむ婆や風景など色々な写真をオレに見せてきた)

 

ほむ婆「これは全部、カメラ好きの主人が撮ったものだよ…若い頃はこうして主人とよく世界中の色々な場所を旅して回ったもんさ」

 

コタロウ「世界中か…それはスゴいな」

 

ほむ婆「ああ、いくつか苦労した事もあったけど…主人と旅をしている時は本当に楽しくてね」

 

ほむ婆「それは娘や孫達が生まれた後も変わらなかった…カメラを何度か買い換えながら、色んな写真を撮ってきたよ」

 

コタロウ「そうか…ん?」ペラッ

 

(オレがアルバムの最後のページを捲ると…そのページの写真は全てピンボケしていた)

 

コタロウ「なあ、どうしてここのページの写真だけがこんな写り方になっているんだ?」

 

ほむ婆「それは主人が十台目に買い換えた時の事かね…そのカメラにしてから、どうも撮る写真が全部おかしくなっちまったんだ」

 

コタロウ「写真がおかしいって…カメラの故障とかじゃないのか?」

 

ほむ婆「私もそう思って主人と一緒に写真屋に直してもらいに行ったよ…でも、カメラはどこも壊れてなかったそうだ」

 

コタロウ「じゃあ、何で…?」

 

ほむ婆「主人曰く…そのカメラは『別の世界を旅したいのかもしれない』と言っていたよ」

 

コタロウ「…はぁ?」

 

ほむ婆「『このカメラは自分を受け入れてくれる世界を探している…だがこの世界は、こいつに撮られたがってない』」

 

ほむ婆「『だから勝手に歪んじまう、街も光も人も…この世界の全部がこいつから逃げていく』」

 

ほむ婆「『だから、こいつは…自分を受け入れてくれる世界を探しているんだ』」

 

ほむ婆「『それなら…私はこいつを別の世界に旅立たせてあげたい』と、主人は言っていたよ」

 

コタロウ「…さっぱり意味が分からないな」

 

ほむ婆「私も同じ意見だよ…でも、主人の言っている事はあながち間違っていないような気もしたんだ」

 

ほむ婆「まあ、その直後に主人は病で倒れちまったけどね…」

 

コタロウ「そうだったのか…ちなみに、それはどんなカメラだったんだ?」

 

ほむ婆「どうだったかね…ピンクっぽい、二眼のトイカメラだったと思うねぇ」

 

コタロウ「そのトイカメラは今も家にあるのか?」

 

ほむ婆「それが…光穂が間違えて、要らなくなった物と一緒に骨董屋に売りに出しちまったんだよ」

 

コタロウ「光姉らしいな…そういえば、どうしてそんな話をオレに?」

 

ほむ婆「あんたのその顔つきが、主人や娘婿にもよく似てたもんだからねぇ…つい昔話をしたくなったんだよ」

 

コタロウ「…何だ、そういう事か」ハァ

 

ほむ婆「それに…あんたが近いうちにそのカメラを手に入れて、旅をする事になるんじゃないかと思ってね」

 

コタロウ「はぁ?…オレがか?」

 

ほむ婆「ああ…一体、他に誰がいるって言うんだい?」

 

コタロウ「でも旅って…第一、オレはまだ中学生なんだぞ?」

 

ほむ婆「確かにあんたはまだ若い、だが近いうちに…あんたは自分にとって大事なものを探す旅に出る時が来るような気がするんだ」

 

コタロウ「大事なもの?」

 

ほむ婆「そうさ、それでもしなかなか答えが出てこなかったとしても…決して焦る事はないよ」

 

ほむ婆「何故なら…どんな旅にも無駄はないからね」

 

コタロウ「…旅に、無駄はない?」

 

ほむ婆「ああ、どんな人生にも無駄がないのと同じさ」

 

コタロウ「…なかなか難しいな、ほむ婆の言ってる事」

 

ほむ婆「いずれ分かるさ…あんたが私の言葉を、覚えている限りはね」

 

コタロウ「…」

 

 

 

コタロウ「オレにとって大事なもの…か」スタスタ

 

(穂むらを出たオレがオトノキへと向かおうとしていると…どこかから力強くて綺麗な歌声が聞こえてきた)

 

コタロウ「…?」

 

(オレが導かれるように歌声の聞こえる方へ行ってみると…そこには人のいない通りで、自前のスタンドマイクを立てて唄う女性がいた)

 

~♪

 

(『as time goes by』というミュージカルや洋画で有名なその曲を唄っているその女性は…どこか、誰かに似ているような気がした)

 

(そしてその女性の首元には…マゼンタのカラーリングをした二眼のトイカメラが掛けられていた)

 

~♪

 

(オレは歌が終わるまで…女性の歌をずっと聞いていた)

 

女性シンガー「…」フゥ

 

コタロウ「…」パチパチパチ…

 

女性シンガー「!」

 

コタロウ「良かったよ、今のアンタの歌」

 

女性シンガー「…そっか、ありがとう」

 

グゥゥゥゥ…

 

(その時、どこかからお腹を空かせている音が聞こえてきた)

 

女性シンガー「!?」

 

コタロウ「…今の、アンタか?」

 

女性シンガー「ち、違うよ…?」

 

コタロウ「いや…明らかにアンタの方から聞こえてきたんだが」

 

女性シンガー「だ、だから私じゃないってば~…」

 

コタロウ「…そうだ、そういえばここに出来たての揚げ饅頭が」ガサゴソ

 

女性シンガー「ええっ!?」

 

コタロウ「もし正直に言ってくれれば、半分ほど分けてやるんだが…腹が減ってないって言うのならオレ一人で食べるしかないな」

 

女性シンガー「あ、揚げ饅頭…っ!」ゴクリ

 

コタロウ「欲しいなら正直に言え…これ、食べたいんだろう?」

 

女性シンガー「~っ!…く、ください///」

 

コタロウ「全く、仕方ないな…ほら」スッ

 

(オレは女性シンガーに割った揚げ饅頭の半分を渡した)

 

女性シンガー「あっ、ありがとう…いただきます!」パクッ

 

女性シンガー「美味しい…やっぱり、穂むらの揚げ饅頭はこうだよねっ!」

 

コタロウ「あれ…オレ、さっき穂むらで買ったなんてアンタに言ったっけか?」

 

女性シンガー「あ、いや…私も何度か食べた事あるから知ってるんだよ!」

 

コタロウ「?…そうなのか」モグモグ

 

女性シンガー「ごちそうさまでした…それにしても君、優しいんだね」

 

コタロウ「優しい…オレが?」

 

女性シンガー「だって…見ず知らずの私に食べ物くれたでしょ?」

 

コタロウ「アンタの歌が素晴らしかったからな…それは投げ銭の代わりだ」

 

女性シンガー「あははっ、ありがとう…ところで一つ聞いていい?」

 

コタロウ「何だ?」

 

女性シンガー「君…バックルとカードはまだ持っていないの?」

 

コタロウ「はぁ…?」

 

女性シンガー「だから、バックルとカードだってば…持ってないの?」

 

コタロウ「カードって…まだオレは中三だぞ?クレジットカードなんて持てる訳無いだろ」

 

女性シンガー「ふふっ…あはは!」

 

コタロウ「何だよ、突然?」

 

女性シンガー「君、面白いね!」

 

コタロウ「別に笑わせようと思ったつもりは無いぞ…?」

 

女性シンガー「まあ、本当に持ってなければ何も知らないみたいだし…大体分かったよ」

 

コタロウ「オレには何が何だかさっぱりなんだが…何者なんだよ、アンタ?」

 

女性シンガー「通りすがりの女性シンガーだよ、別に覚えなくても良いけどね…はっ!?」

 

コタロウ「どうしたんだ?」

 

女性シンガー「カメラ、忘れた…!」

 

コタロウ「…じゃあ、その首に掛かってるのは何だ?」

 

女性シンガー「へ?あっ…てへっ!」ペロッ

 

コタロウ「アンタ、相当おっちょこちょいだな…?」

 

女性シンガー「ふふっ、ごめんごめん…あったんだから良いじゃない」

 

コタロウ「そういう問題じゃないと思うが…」

 

女性シンガー「あっ…そうだ、良かったらこのカメラを君にあげるよ」スッ

 

(そう言って女性シンガーは…オレにカメラを渡してきた)

 

コタロウ「はぁ?…でもそれ、アンタの大事なカメラなんだろ?」

 

女性シンガー「うん…そうなんだけど、このカメラは君が持ってた方が良いと思ったの」

 

コタロウ「…オレが?」

 

女性シンガー「そうだよ、だって君は…」

 

コタロウ「オレは…何だよ?」

 

女性シンガー「…ううん、やっぱり何でもない」

 

コタロウ「?…何だよ、それ」

 

女性シンガー「とにかく…これは君が持っててよ、ね?」

 

コタロウ「全く、仕方ないな…分かったよ」ハァ

 

女性シンガー「じゃあ、決まりだねっ!」

 

(女性シンガーはオレにカメラを渡すと…今度はマイクを片付け始めた)

 

女性シンガー「さてと、そのトイカメラも託せた事だし…そろそろ行こうかな?」

 

コタロウ「もう行くのか?」

 

女性シンガー「うん…せっかくの一人旅だから、もっと色々な場所を見て回りたいんだ」

 

コタロウ「…ずっと一人なのか?」

 

女性シンガー「今はこうやって私だけで色々な所を旅してるけど…これでも、昔は仲間と一緒に皆で歌ってたのよ?」

 

コタロウ「仲間と一緒に?」

 

女性シンガー「うん…でも、色々あってね」

 

女性シンガー「結局、グループも終わりになって…当時はどうしたら良いか、よく分からなかったし」

 

女性シンガー「次のステップに進める良い機会かなとかって考えたりもした…でも、答えはとっても簡単な事だったの」

 

コタロウ「…答え?」

 

女性シンガー「うん…今まで自分達がなぜ歌ってきたのか、どう在りたくて何が好きだったのか」

 

女性シンガー「それを考えたら、答えはとても簡単だったよ」

 

コタロウ「…何となく、分かるような分からないようなだな」

 

女性シンガー「今はそれで良いんだよ…きっと君もいつか、新しい自分自身を見つける旅に出る時が来るから」

 

コタロウ「新しい…自分?」

 

女性シンガー「そう…すぐに分かるよ」

 

コタロウ「…」

 

女性シンガー「あっ、あんな所に白くて小さなコウモリが!?」ビシッ

 

コタロウ「はぁ?」クルッ

 

(女性シンガーが指を差した方向を見たが…白い蝙蝠の姿はどこにもなかった)

 

コタロウ「蝙蝠なんてどこにもいな…って、ん?」

 

(オレは女性シンガーがいた所へと向き直ったが…女性シンガーの姿は既にどこにも無かった)

 

コタロウ「あれ、どこに行ったんだ?…まあいいか」

 

コタロウ「!…そういえばこれ、ほむ婆が言っていたカメラの特徴と似てるような」ジーッ

 

コタロウ「…いや、気のせいか」スタスタ

 

(オレは女性シンガーから貰ったトイカメラを首に掛け…そのままオトノキに向かおうと歩いていった)

 

 

 

コタロウ「このカメラで、撮ってみるか…『μ's』を」

 

コタロウ「おっと…ライブの時間まであと少しだな、近道でもするか」ダッ

 

(路地に入ったオレの目の前に突然…オーロラのようなものが出現した)

 

コタロウ「!?…何だ?」

 

(すると…オーロラから突然、短い黒髪の男性が出てきた)

 

コタロウ「なっ!?」

 

?「やあ…初めてお目にかかるね、矢澤コタロウくん」

 

コタロウ「どうしてオレの名前を…!」

 

コタロウ「…アンタ、まさか『ドラゴンナイトの世界』のマスター・ユーブロンか?」

 

?「確かにそうだが…君、よく私の事を知っているな?」

 

コタロウ「自分でもどうして知っているのかよく分からないけどな…で、オレに何の用なんだ?」

 

ユーブロン「私は…君をスカウトしに来たんだ」

 

コタロウ「スカウト…?」

 

ユーブロン「そう、私達はベンタラと地球の他にも新たに確認されたこの世界を守る為…優秀な戦士を求めている」

 

ユーブロン「そして…おめでとう、君は私達の仲間として選ばれた」

 

コタロウ「…仲間?」

 

ユーブロン「そうだ…私が独自に調査をした結果、君にはとてつもない素質が秘められている事が分かった」

 

ユーブロン「未だ覚醒こそはしていないが…君には未知の可能性が秘められている」

 

コタロウ「…それで、オレに声を掛けてきたという訳か?」

 

ユーブロン「ああ…それに、私は君の願いを叶える事だって出来る」

 

コタロウ「オレの願い…?」

 

ユーブロン「…そういえば君のお母さんは長い間、病院で意識不明のままだったね?」

 

コタロウ「!…そうだが」

 

ユーブロン「君が私と共に来てくれるのであれば…君のお母さんを目覚めさせるのも、私にとっては容易な事だ」

 

コタロウ「なっ…それ、本当なのか!?」

 

ユーブロン「本当だ…嘘だと思うなら、私の力を少し試してみるといい」

 

コタロウ「力を?…うわっ!?」

 

(次の瞬間、オーロラが迫り…オレはオーロラの中へと入った)

 

コタロウ「!…ここは」

 

(オレ達がオーロラで移動してきた先は何と…母さんが眠っている病室だった)

 

ユーブロン「君のお母さんを…少しだけ起こしてあげようじゃないか」スッ

 

(ユーブロンは…そっと母さんの額に手をかざした)

 

コタロウ「…それで本当に母さんが起きるのか?」

 

ユーブロン「シーッ…静かに」

 

にこの母「…んっ」パチリ

 

ユーブロン「…よし、お目覚めだ」

 

コタロウ「!」

 

(すると…母さんが意識を取り戻したのか、目を開いた)

 

コタロウ「母さん?…オレだ、母さん!」

 

にこの母「…っ」

 

ユーブロン「少し待つと良い…長い間、意識が無かったからな」

 

コタロウ「そうか…母さん、ゆっくりで大丈夫だ」

 

にこの母「…コタ、ロウ?」

 

コタロウ「母さん…オレが、分かるのか?」

 

にこの母「え、ええ…」

 

コタロウ「良かった…母さん!」ギュッ

 

(オレは母さんを抱き締めた、が…母さんはユーブロンの顔を見て何かに気付いたようだった)

 

にこの母「!…コタロウ、この人は?」

 

コタロウ「ああ、母さんの意識を取り戻させてくれたんだ…」

 

にこの母「あなた…私の子供に近付いて、今度は何を企んでいるの!?」

 

(母さんは突然、ユーブロンに向かって声を荒げた)

 

コタロウ「えっ?」

 

にこの母「その顔でごまかしたつもりでしょうけど…あなたの素性は、全て調査済みよ!」

 

ユーブロン「…おやおや、どうやら余計な記憶の方まで取り戻してしまったみたいだな?」

 

(そう言って、ユーブロンの顔は…全く違う茶髪の欧米人風男性の顔に変わった)

 

ナルタキ「フゥ…」

 

コタロウ「アイツは!?…どういう事だよ、母さん!」

 

にこの母「私が未確認生命体の拠点の一つを突き止め、潜入しに行ったあの日…この男は未確認と手を組む協定を結んでいたの」

 

にこの母「この男は…『秘密結社ショッカー』の幹部よ」

 

コタロウ「ショッカー…!?」

 

(初めてその組織の名前を聞いたはずなのに…不思議とオレは、その組織の事をよく知っていた)

 

にこの母「応援を待っていた途中、彼らに見つかってしまった事で…私は彼に催眠をかけられていたの」

 

にこの母『ぐうっ…』

 

ナルタキ『君にはしばらく眠っていてもらおう…この世界を、我々の手中に収める為にね』スッ

 

にこの母『!』バタッ

 

コタロウ「!…じゃあ、母さんが眠らされていたのはあいつのせいだったのか?」

 

にこの母「そうよ…彼に騙されてはいけないわ」

 

ナルタキ「誤解だよ…私は彼の願いを叶えてやりたいと純粋に思っただけだ、騙そうとまでは思ってない」

 

にこの母「ふざけないで!私はともかく、私の子供達には指一本触れさせな…っ」ドサッ

 

(突然、母さんは糸の切れた人形のように…再び意識を失ってしまった)

 

コタロウ「母さん?…おい、母さん!」

 

にこの母「…」

 

ナルタキ「悪いね、時間だ」

 

(男性がオーロラを操り…オレ達は再びさっきの路地へと戻ってきた)

 

コタロウ「お前…母さんを元に戻せ!」

 

ナルタキ「戻してやるさ、君がショッカーに入れば…今すぐにでも」

 

コタロウ「!…何だと?」

 

ナルタキ「いいか、よく考えろ…君の母さんを元に戻せるのはこの私だけなんだぞ?」

 

ナルタキ「君が望めば母さんは意識を取り戻す、でもそうするかしないかは…君次第だ」

 

コタロウ「オレ次第…?」

 

ナルタキ「そうだ…君が選ぶんだ」

 

コタロウ「…」

 

ナルタキ「それに、ショッカーに入れば世界や人生の全てが君の思いのままになる…悪い話じゃないと思うがね」

 

コタロウ「…」

 

ナルタキ「さあ、早く選べ…我々と共に来て母親を取り戻すか!我々を拒み母親を見捨てるか!?」

 

コタロウ「…」

 

ナルタキ「どうした?…選べ!!」

 

コタロウ「…いや、選ぶ必要はない」

 

ナルタキ「何?」

 

コタロウ「何故なら…オレの答えはその選択肢のどちらでもないからだ」

 

ナルタキ「どちらでもない…だと?」

 

コタロウ「そうだ…オレはお前達を拒み、母さんを救う!」

 

ナルタキ「!?」

 

コタロウ「オレは…ショッカーに入るつもりはない!」

 

ナルタキ「そうか、では…私に刃向かうという事かね?」

 

コタロウ「当然、そうなるな…」

 

ナルタキ「そうか…ならば、力尽くで君を連れて行くまでだ」

 

(男性は…オーロラから赤いイモリの化け物達を呼び寄せた)

 

コタロウ「こいつらはゲルニュート…いや、レッド・ミニオンか!」

 

ナルタキ「その通り、私の忠実な下僕だ…そして」スッ

 

ナルタキ「私には…こういう便利な道具もある」

 

(男性はポケットから黒い何かを取り出し…オレに見せつけた)

 

コタロウ「それは…ベンタラに行く為のカードデッキ!」

 

ナルタキ「よく知っているね…君の世界には、他の世界の情報を仕入れるスパイでもいるのか?」

 

コタロウ「いや…オレ自身でも、何故それを知っているのか分からない」

 

ナルタキ「そうか、じゃあ…これは分かるかね?」バッ

 

(男性がカードデッキを掲げると…腹部にベルトが出現した)

 

コタロウ「…!」

 

ナルタキ「KAMEN RIDER!」

 

(ベルトにカードデッキを挿した途端、カードデッキが裏表に激しく回転すると…男性を球状のオーラが包み出した)

 

コタロウ「!」

 

(やがて…男性は黒い戦士へと変身した)

 

?「…フン」

 

コタロウ「アドベントマスター…いや、微妙に少し違うな」

 

?「ほう、私が偽のアドベントマスターに変身出来る事まで知っているとはな…ますます君に興味が湧いた」

 

コタロウ「…オレは今すぐにでもお前を忘れたいけどな」

 

偽アドベントマスター「フフフ…やれ」スッ

 

レッド・ミニオン「…!」ダッ

 

コタロウ「!」

 

(レッド・ミニオン達がオレに襲いかかろうとした…その時だった)

 

?「ふんっ!」ガッ!

 

(クワガタ虫のような赤い何かが現れ…オレを守るように、レッド・ミニオンの一体を攻撃した)

 

レッド・ミニオン「!?」バタッ

 

コタロウ「あれは…クウガ?」

 

(オレは…そのクワガタ虫のような赤い何かを見て、すぐにクウガと認識した)

 

クウガ「ちょっとアンタ…にこの弟に何しようとしてんのよ!」ゼェゼェ

 

(クウガが発したその声は…姉ちゃんの声とよく似ていた)

 

コタロウ「なっ…もしかして、姉ちゃんなのか!?」

 

クウガ「!…コタロウ」

 

コタロウ「何で、姉ちゃんがクウガに…?」

 

クウガ「クウガ?…アンタ、何でこれの名前を知ってるのよ?」

 

コタロウ「それは…オレにもよく分からない」

 

クウガ「はぁ?何よそれ…まあ、私も何でこんな姿になれたのかよく分からないけどね」

 

コタロウ「そうなのか?」

 

クウガ「ええ、リハーサルの時に穂乃果が急に『コタロウくんが危ない!』って言い出したもんだから…皆でアンタを探してたの」

 

クウガ「そうしたら、その途中で…急にこんな姿に変わっちゃったのよ」

 

コタロウ「…他の『μ's』の皆は?」

 

クウガ「まだ手分けしてアンタを探してると思うわ…とにかく、アンタが無事で安心したわ」

 

偽Aマスター「やはり彼女も仮面ライダーだったか…何をしている、やれ!」

 

レッド・ミニオン「…!」ダッ

 

クウガ「懲りずにまた来たわね…コタロウ、早く逃げなさい!」

 

コタロウ「姉ちゃんは?」

 

クウガ「私はここで食い止めるわ…その間にアンタは、どこか遠い所に逃げなさい!」ガッ!

 

コタロウ「だが…」

 

クウガ「いいから早く行きなさい!!」

 

コタロウ「…!」

 

クウガ「さあ、行きなさい…早く!」ゴッ!

 

コタロウ「っ…!」ダッ

 

(オレは…次々とレッド・ミニオンを倒していく姉ちゃんを置いて、その場から離れた)

 

クウガ「これで赤い化け物は皆やっつけたわね…ちょっと、そこのアンタ!」ビシッ

 

偽Aマスター「…何だね?」

 

クウガ「この大銀河宇宙ナンバーワンアイドルが来たからには…これ以上、私の弟に手出しはさせないんだから!」

 

偽Aマスター「なるほど?弟想いの良いお姉さんだね…実に美しい姉弟愛だ」

 

クウガ「そんな事、アンタに褒められても全然嬉しくないわよ!」

 

偽Aマスター「まあ落ち着け…君のお母さんも、弟を庇う君を見てさぞ喜んでいた事だろう」

 

クウガ「はぁ?…何が言いたいのよ、アンタ」

 

偽Aマスター「…もし君のお母さんが私によってずっと眠らされていると知ったら、君はどう思うかね?」

 

クウガ「!?」

 

偽Aマスター「君の弟をショッカーの一員として迎え入れる為に眠らされた…と知ったら、君はどう思うだろうと思ってね」

 

クウガ「アンタ…そんな事だけの為に、私達のママを!?」

 

偽Aマスター「ああ…しかし、もう彼女の命を駒にする必要もない」

 

偽Aマスター「君の弟が我々を拒んだ事で…彼女が目覚める事はもう二度と無いのだからな」

 

クウガ「!!」

 

偽Aマスター「悔しいか?悔しいだろうな…君の大事なお母さんはもう、元通りにはならないのだからな」

 

クウガ「っ…許さない」

 

偽Aマスター「ほう…今、何と言った?」

 

クウガ「私はアンタを…許さない!」

 

偽Aマスター「そうか…ならば遠慮なく来ると良い」

 

クウガ「はぁぁぁぁぁっ!!」ダッ

 

偽Aマスター「この石を手に入れた私に敵えば…の話だがな」スッ

 

クウガ「っ!?…きゃぁっ!」バチバチッ!

 

偽Aマスター「どうした、もう動けないのか?」

 

クウガ「アンタ、私に何を…うっ!?」

 

偽Aマスター「君の自由を奪ってみた…究極の闇をもたらすというこの『地の石』でな」

 

クウガ「何…ですって」

 

偽Aマスター「あー、不安がる事はない…君の仲間も既に何人か同じ目に遭ってもらっているからな」

 

クウガ「!?」

 

偽Aマスター「気付かなかったのか?私の目的は、この世界と彼だけじゃない…君達『μ's』もだ」

 

クウガ「そん…な」

 

偽Aマスター「さあ、仲間達と共にこの世界を支配し…愛する弟を捕まえに行こうとしようじゃないか?」

 

クウガ「ぐっ…逃げ、て…コタ…ロ」

 

偽Aマスター「フフフ…ハハハハハハ!!」

 

 

 

(オレは…何も考えず、ただひたすら走り続けていた)

 

コタロウ「一体どうなってるんだ、これは…?」ハァハァ

 

(人々は泣き叫びながら、逃げ惑い…周りにある建物は全て崩落していた)

 

コタロウ「くっ…!?」

 

(しばらく走り続けていたオレは…いつしか、オトノキの正門までやって来ていた)

 

コタロウ「良かった、オトノキは無事だな…っ!?」

 

(その時、校庭の方から大きな爆発音と人々の叫び声が聞こえてきた)

 

コタロウ「今のは…?」

 

(その先が危険かもしれないのは自分でもよく理解している…でも、このままでは『μ's』が守ってきたオトノキが壊されてしまう)

 

コタロウ「…!」ダッ

 

(そんな状況をこのまま黙って通り過ぎていく訳にはいかない…そう思ったオレは、校庭の方へと急いで向かった)

 

 

 

(校庭に辿り着いたオレの目には…異様な光景が映っていた)

 

コタロウ「…!」

 

(校庭には崩れ落ちた仮設のライブステージの機材が周辺に散らばり…そこにいた人々は剣を振るう戦士達から逃げ回っていた)

 

キバ「やぁーっ!」

 

ブレイド「ははっ…あははっ!」

 

コタロウ「龍騎にキバ、それにキングフォームのブレイド…!」

 

(戦士達は…『μ's』のライブを楽しみに来ていた観客達に襲いかかろうとしていたのだ)

 

コタロウ「どうして、こんな事に…!」

 

?「私が教えてあげよう」

 

コタロウ「!?」クルッ

 

偽Aマスター「…」フッ

 

コタロウ「!…まさか、あれもお前の仕業だと言うのか?」

 

偽Aマスター「察しが良いな…君を捕まえる為に、私が力を与えてやったのだよ」

 

コタロウ「力…だと?」

 

偽Aマスター「そうだ…例えばブレイドにはスペードスートのアンデッド十三体と融合するキングフォームの力を与えた」

 

偽Aマスター「完全にアンデッドと融合しているせいか、心までアンデッドに乗っ取られているようだがね…」

 

コタロウ「なっ…!?」

 

偽Aマスター「それとあの赤い龍の戦士は君は龍騎と呼んでいたね?…残念ながら、その呼び方は違う」

 

コタロウ「何…じゃあ、ドラゴンナイトか?」

 

偽Aマスター「惜しいな…今、正解を見せてやろう」

 

(赤い龍の戦士は突然、黒いオーラに全身を包み込むと…黒い龍の戦士に変貌した)

 

コタロウ「あれは…オニキス!」

 

偽Aマスター「私がカードデッキを少し弄ってやったんだ…どうかね、なかなか面白い手品だろう?」

 

コタロウ「ふざけるな…こんな事で罪のない人々を襲って何が面白いんだ!?」

 

偽Aマスター「お気に召さないようだね…ならば、今度はこれだ」パチン

 

(偽のアドベントマスターが指を鳴らすとキバは飛翔態に変化し…空に飛び上がって極太の光線を吐き出した)

 

コタロウ「!?」

 

偽Aマスター「ザンバットバットのないザンバットソードをキバに持たせたんだよ…実に愉快だろう?」

 

コタロウ「お前…いい加減にしろ!」

 

偽Aマスター「おっと、まだこれだけじゃない…アレを見てみろ」

 

コタロウ「えっ?…!」

 

(近くには…カブトがカブトクナイガンのクナイモードで人々に襲いかかろうとしていた)

 

カブト「あぁーっ!」

 

コタロウ「そんな、カブトまで…!」

 

偽Aマスター「君は…赤い靴の物語を知っているかね?」

 

コタロウ「赤い靴…まさか、あの暴走スイッチか!?」

 

偽Aマスター「そう…私が少し弄ってみたんだ、ワームを倒すという目的や装着者の意思に関係無く暴走するようにね」ニヤリ

 

コタロウ「お前…!?」クルッ

 

?「ふっ…はぁっ!」ブンッ

 

コタロウ「おわっ!?」サッ

 

グシャッ!

 

(オレは背後にいたアギト・バーニングフォームの攻撃を何とか避けたが…近くの壊れた機材が粉砕される程に、その威力は強力だった)

 

コタロウ「アギト…!?」ゾクッ

 

(妙な悪寒を感じたオレが後ろを振り向くと…そこには一人の見覚えのある少女がいた)

 

コタロウ「!…もしかして、ことりか?」

 

(しかし、こちらに近付いてくることりの髪の色はいつものグレーがかったベージュではなく…真っ白なものだった)

 

ことり「変身…」

 

『スカルフォーム』

 

(ことりは腹部に巻いていたベルトにパスをタッチさせると、額の髑髏と銀色のマフラーが特徴的な…黒い傷だらけの戦士に変身した)

 

コタロウ「あの姿は…幽汽!?」

 

幽汽「よく知ってるな、だったら話は早い…消えろ!」ブンッ

 

(幽汽は火を纏った自分の剣を地面に叩きつけると…『ターミネイトフラッシュ』という地を割りながら進んでくる衝撃波を放った)

 

コタロウ「ぐっ…うわっ!」ゴロゴロ

 

(ギリギリの所で身を翻したオレは何とか直撃を免れたが…あまりの威力に思わず吹き飛ばされてしまった)

 

幽汽「生きてたか…意外としぶといねぇ、お前?」

 

コタロウ「まさか、ことりの身体を乗っ取るなんて…卑怯だぞ!」

 

幽汽「ハッ、弱いクセにピーピーと…うるさいガキだ」

 

コタロウ「聞こえるか!?…目を覚ませ、ことり!」

 

幽汽「チッチッ…呼んでも無駄、邪魔しないようにこいつは眠らせてるから」

 

コタロウ「何だと…!」

 

幽汽「当分、目は覚めないよ!」

 

(オレに近付いてきた幽汽が大きな剣を振り下ろそうとしたが…偽のアドベントマスターが幽汽に声をかけた)

 

偽Aマスター「やめろ、幽汽…私は彼を生け捕りにしろと言ったはずだぞ?」

 

幽汽「ガキが生きてようがどうなろうが関係ない…俺は戦えればどうでもいい」

 

偽Aマスター「おつむの軽さのせいで私の命令が聞こえていなかったようだな…貴様、自分の世界が消されても良いのか!?」

 

幽汽「!…ハァ、分かったよ」

 

コタロウ「…今だ!」ドンッ

 

(オレは幽汽を突き飛ばし…また逃げようと試みた)

 

幽汽「グッ…あのガキ!」

 

偽Aマスター「案ずるな…手駒はまだいる」

 

コタロウ「…!」ピタッ

 

にこ「…」

 

コタロウ「姉ちゃん…無事だったのか?」

 

にこ「…」

 

コタロウ「どうした、姉ちゃん?…まさか!?」

 

偽Aマスター「姉と弟、感動の再会だな…泣かせてくれるじゃないか」

 

コタロウ「お前、姉ちゃんにまで…一体何をした!?」

 

偽Aマスター「君があまりに駄々をこねるものだからな…この『地の石』で君の姉さんの自由を奪ってあげたのだよ」スッ

 

(偽のアドベントマスターはそう言って…持っていた『地の石』を堂々とオレに見せつけてきた)

 

コタロウ「なっ!?…お前、何て事を!」

 

偽Aマスター「私に逆らった罰だよ…何せ君はショッカーの誘いを拒んだのだからな」

 

コタロウ「ふざけるな…早く姉ちゃんを元に戻せ!」

 

偽Aマスター「それは出来ない相談だな…何故なら、彼女達七人はもう純粋な私の操り人形なのだからな」

 

コタロウ「七人?…まさか!?」

 

幽汽「やっと気付いたようだな…今、暴走してお前や人々を襲っているのは紛れもなく『μ's』だとかいう女共だ」

 

偽Aマスター「残る二人には逃げられたが、七人も操っていれば問題はない…君とこの世界を手に入れば全てが済む話なのだからな」

 

コタロウ「いい加減にしろ!『μ's』はスクールアイドルだ…姉ちゃん達に人々の笑顔は奪わせない!」

 

幽汽「フン、随分と減らず口の多いガキだ…テメーはそろそろ大人しく俺達に捕まっていろ」

 

コタロウ「オレは絶対に捕まらないし、お前達の仲間にもならない…そして『μ's』の皆も元に戻す!」

 

幽汽「あんな事言ってるぞ…どうするつもりなんだ?」

 

偽Aマスター「フゥ…やれ、クウガ」

 

にこ「…変身」ニィッ

 

(いつもとは違うぎこちない笑みを浮かべながら…姉ちゃんは黒い瞳のクウガ・ライジングアルティメットに変身した)

 

クウガ「…」

 

コタロウ「姉ちゃん…目を覚ましてくれ、姉ちゃん!」

 

クウガ「…!」ダッ

 

(何度も呼び掛けるオレに対し…クウガは走り出し、襲いかかってきた)

 

クウガ「!」ガッ!

 

コタロウ「うぐっ…放せ!」

 

(オレはクウガに捕まり…身動きが取れなくなってしまった)

 

偽Aマスター「優しく扱いたまえよ、何せ君の弟は…有望なショッカーの首領候補なのだからな」

 

クウガ「…」コクリ

 

コタロウ「お願いだ…やめてくれ、姉ちゃん!」

 

幽汽「お前はそこで黙って…この世界が俺達の物になるのを黙って見ていろ」

 

コタロウ「嫌だ…そんな事、させてたまるか!」

 

幽汽「諦めの悪いガキだ…そんなに嫌なのか?」

 

コタロウ「当たり前だ…オレは目の前で誰かの命や笑顔が奪われそうになる光景を黙って見過ごせるほど腐っちゃいない!」

 

コタロウ「通り過ぎずに戦う事…それが、オレの決めた事だ!!」

 

偽Aマスター「何を言っても無駄だ…君に彼女達を止められるほどの力は無い」

 

幽汽「おい、クウガ…そのガキの口を塞げ」

 

クウガ「…」スッ

 

コタロウ「~!」モゴモゴ

 

(クウガに口を塞がれたオレがもがいていたその時…どこかで聞き覚えのある二人の少女の声が聞こえた)

 

謎の声A「待ちなさいよ!」

 

謎の声B「これ以上…あなた達の好き勝手にはさせへんよ!」

 

ガガガッ!

 

クウガ「!?」

 

(次の瞬間、見覚えのあるロボットが右腕に持ったタイヤ型の盾からマシンガン砲を繰り出し…オレはクウガの拘束から解かれた)

 

コタロウ「危なっ!?…って、オートバジン?」

 

オートバジン「…」スッ

 

(オートバジンは…まるで庇うかのようにオレの目の前に立った)

 

幽汽「誰だ!…!?」

 

(すると…ディスクアニマルのイワベニジシとシロネリオオザルが偽のアドベントマスターと幽汽を牽制した)

 

偽Aマスター「グッ!」

 

コタロウ「ディスクアニマルまで…オレを助けてくれたのか?」

 

謎の声B「うふふっ…そうよ、この式神さん達にはウチのパワーをたーっぷり注入してるからね?」パシッ

 

謎の声A「こっちは私のだけどね…ありがとう、オートバジン」ポチッ

 

『Vehicle Mode』

 

(オレの横には…オートバジンをビークルモードに戻す真姫とディスクモードになったディスクアニマルをしまう希がいた)

 

コタロウ「!…真姫、希」

 

希「コタロウくん…大丈夫、怪我してない?」

 

コタロウ「あ、ああ…」

 

真姫「本当に世話が焼けるんだから…何で、私達がこんな事しなくちゃいけないのよ?」

 

希「あれ…そんな事言って、真姫ちゃんもコタロウくんの心配してなかったっけ?」

 

真姫「うぇえ!?だ、誰が…私はただコタロウが情けないから放っておけないだけっ!///」クルクル

 

コタロウ「はぁ?…だったら、どうしてそんなに顔を赤くして自分の髪の毛を弄くるんだよ?」

 

真姫「放っといて!」

 

コタロウ「何だよ、それ…意味が分からないな」ハァ

 

偽Aマスター「君達、せっかく逃げられたというのに…わざわざ操られに戻ってきたのかね?」

 

希「別に逃げた訳じゃないよ?ウチらはただ…皆を取り戻しに来ただけ」

 

偽Aマスター「ほう…?」

 

コタロウ「二人とも、本当に操られてない…のか?」

 

希「うん、ウチらは大丈夫よ…オトノキの制服を着た女の子が助けてくれたからね!」

 

真姫「でも私、学校で見た事無いんだけど…あの子って本当にオトノキの生徒だったの?」

 

希「確かにウチも見た事無いけど、あの子が自分でオトノキの生徒だって言うてたし…嘘をついてる感じでもなかったから別に気にしなくてもええんやない?」

 

真姫「それはそうだけど…」

 

希「あっ…そういえば、その子からコタロウくんにこれを渡すように頼まれたんよ」

 

コタロウ「…オレに?」

 

希「うん…はい!」スッ

 

(希はオレに…白いバックルと一枚のカードを渡してきた)

 

コタロウ「!?…これって」

 

希「実はオトノキの制服を着た女の子から、コタロウくんに渡すようにお願いされたんよ…それは君が使うべき物やって」

 

コタロウ「オレが使うべき物…って事は」

 

女性シンガー『バックルとカードはまだ持っていないの?』

 

コタロウ「…そうか、だいたいわかった」

 

偽Aマスター「アレは…ディケイドライバーだと!?」

 

幽汽「おい、何だそれは?」

 

偽Aマスター「『シックスエレメント』という特別

な輝石が埋め込まれたベルトだ」

 

偽Aマスター「本来は我々、ショッカーが密かに開発していた物なのだが…何者かによって設計図と共に盗まれていたという話だ」

 

幽汽「それは間抜けな話だねぇ…だが、あのガキがアレを持った所でおもちゃにしかならないだろ?」

 

偽Aマスター「馬鹿が、ディケイドライバーを侮るな!」

 

幽汽「何…どういう事だ?」

 

偽Aマスター「ディケイドライバーは彼のようにショッカーの首領としての素質を持った者が装着する事で、恐るべき力を発揮する…!」

 

幽汽「恐るべき力…だと?」

 

(腹部にディケイドライバーを装着したオレは…真姫と希の前に出て、一枚のカードをかざした)

 

コタロウ「オレは通り過ぎずに戦う…そして、姉ちゃんや穂乃果達を取り戻す!」

 

偽Aマスター「愚かな…今すぐ奴からディケイドライバーを取り上げて捕まえろ!」

 

(オーロラからレッド・ミニオンの集団とそれを率いるヤゴ型怪人のホワイト・ミニオンが現れ…オレ達を取り囲んだ)

 

コタロウ「…変身!」

 

(オレは展開したバックルにカードを挿入し…バックルを閉じた)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

(その瞬間…オレの姿を眩い光が包み込んだ)

 

クウガ「!?」

 

アギト「…?」

 

(やがて光から出てきたオレの姿は…縞々のバーコード状の顔と『十』のモチーフが入ったマゼンタの身体に変化していた)

 

ディケイド「…」

 

希「ふふっ…やっぱり、あの子の言ってた通りみたいやね?」

 

真姫「どうやら間違いないみたいね、あの姿が…」

 

偽Aマスター「ディケイド…!」

 

ディケイド「…行くぞ」

 

(オレは左腰のライドブッカーというカードホルダーを開くと、三枚のカードを取り出し…そのうちの一枚をバックルに入れた)

 

『カメンライド…ファイズ!』

 

(オレはファイズというライダーに姿を変え、右手を軽くスナップした)

 

希「真姫ちゃん、あれ…!」

 

真姫「ええ…私と同じ、ファイズよ」

 

幽汽「おい、姿が変わったぞ…何だアレは?」

 

偽Aマスター「あらゆる素質を持った者が変身したディケイドは…カードによって他のライダーの姿や能力を得る事が出来るのだ」

 

偽Aマスター「それが『カメンライド』…そして」

 

『フォームライド…ファイズ!アクセル!』

 

(オレは二枚目のカードを入れ…アクセルフォームのファイズに形態を変えた)

 

『Start Up』

 

(ファイズアクセルを起動させたオレは超高速で十体のレッド・ミニオンを上空へ吹き飛ばし…最後の一枚のカードをベルトに入れた)

 

『ファイナルアタックライド…ファ・ファ・ファ・ファイズ!』

 

DCDファイズ「はぁーっ!」

 

(オレは空中にいるレッド・ミニオン達に向けて…アクセルクリムゾンスマッシュを放った) 

 

レッド・ミニオン「!」

 

『Reformation』

 

(アクセルフォームの効果が切れると…オレはディケイドの姿に戻った)

 

ディケイド「…?」

 

(何故だ、初めて変身したにも関わらず…どうしてオレはこの力が使えている?)

 

(武道の経験があるとはいえ、オレは…このディケイドの戦い方を知っている?)

 

ディケイド「一体、どうして…」

 

希「危ない!」

 

ディケイド「え…おわっ!?」サッ!

 

(希の声に気付いたオレは、レッド・ミニオンが投げた大きな手裏剣を避けた)

 

ディケイド「くっ…危ないだろ!」スッ

 

(オレはまたライドブッカーから五枚のカードを取り出し…そのうちの二枚をバックルに入れた)

 

『カメンライド…ヒビキ!』

 

DCD響鬼「…シュッ!」

 

『アタックライド…オンゲキボウ・レッカ!』

 

(オレは響鬼に姿を変えると…あちこちからやって来るレッド・ミニオン達を召喚した二本の音撃棒・烈火で次々と打ちのめした)

 

DCD響鬼「はっ!」ドドンッ!

 

真姫「あの姿、希と同じ…!」

 

希「うん…響鬼やね」

 

『フォームライド…ヒビキ!クレナイ!』

 

『アタックライド…オンゲキコ・バクレツカエンツヅミ!』

 

DCD響鬼「はっ!」

 

(身体が真紅に染まった響鬼紅に姿を変えたオレは、音撃鼓・爆裂火炎鼓をホワイト・ミニオンの身体に取り付けると…)

 

ホワイト・ミニオン「!?」

 

『ファイナルアタックライド…ヒ・ヒ・ヒ・ヒビキ!』

 

DCD響鬼「音撃打・爆裂真紅の型!!」

 

(最後のカードをバックルに装填し…ホワイト・ミニオンに音撃棒の連打を音撃鼓越しに浴びせた) 

 

DCD響鬼「はぁーっ!」ドドドドッ!

 

ホワイト・ミニオン「…!」

 

(ホワイト・ミニオンを倒し、響鬼紅の効果が切れたオレは…再びディケイドの姿に戻った)

 

ディケイド「これで全部か…」フゥ

 

クウガ「…」スッ

 

(安心していたのも束の間…両手をかざしたクウガがオレに向けて『暗黒掌波動』というエネルギー波を放ってきた)

 

ディケイド「!?…うわぁっ!」ゴロゴロ

 

クウガ「…」スタスタ

 

(倒れていたオレに向かって、クウガは更なる攻撃を仕掛けようと…ゆっくりと近付きながら再び両手をかざそうとしていた)

 

ディケイド「姉、ちゃん…ぐっ!」

 

(先ほどのダメージによって、オレはすぐに態勢を立て直す事が出来ず…変身も強制的に解除されてしまった)

 

コタロウ「!」

 

偽Aマスター「油断したようだな…隙だらけだ」

 

希「コタロウくん!」ダッ

 

幽汽「…おい、待てよ」

 

(希と真姫がオレの元に向かおうとしたが…間に幽汽が割って入ってきた)

 

真姫「何よ、あなた…邪魔しないでくれる?」

 

幽汽「邪魔なのはお前らの方だ…消えろよ、早く」

 

真姫「っ…あなたこそ、ことりの身体から出て行きなさいよ!」

 

幽汽「嫌だね、どうしても取り返してほしかったら…お前らも変身して俺と戦ってみろよ」

 

真姫「…いいわ、やってやろうじゃない!」

 

希「待って、真姫ちゃん」

 

真姫「希…!」

 

希「もしウチらが戦ったら…ことりちゃんを危ない目に遭わせる事になるかもしれんのよ?」

 

真姫「でも、このままじゃ私達やコタロウまで…!」

 

希「ええから…もう少しだけ、皆が来るのを待ってあげて?」

 

真姫「!…もう、分かったわよ」ハァ

 

幽汽「おい、どうした…戦わないのか?」

 

真姫「…」

 

希「…」

 

幽汽「変身しないのなら…消えろっ!」ダッ

 

コタロウ「希、真姫…!」

 

?「やめて、ことちゃんっ!!」バッ

 

(真姫と希を斬りつけようとする幽汽の前に立ちはだかったのは…かおり先生とひめりだった)

 

幽汽「!?…何だお前ら、どけ!」

 

ひめり「いや!」

 

かおり「ことちゃんを元に戻すまでは…この先は絶対に通しません!」

 

ひめり「だから、ことりおねえちゃん…はやくもどらないとひめりたちのおやつにしちゃうよ?」

 

かおり「そうだよ、ことちゃん…かおり達があなたをおやつにしちゃいますよ?」

 

幽汽「何だ…お前ら、何を訳の分からん事を言っている!?」

 

ひめり「ひめりね、またことりおねえちゃんがつくったフリフリのふくで…みんながおどっているところをみたいの!!」

 

かおり「私もあなたがデザインから手掛けたステージ衣装を見るのを楽しみにしているの…だから目を覚まして、ことちゃん!!」

 

幽汽「いいから、消え…っ!?」ピタッ

 

(かおりとひめりを見た幽汽の動きは…突然、止まった)

 

真姫「…やっと気が付いたみたいね?」

 

希「良かった…やっぱり、あの子の言う通りにして正解やったみたいやね!」

 

真姫「正直、私は半信半疑だったけどね…」ハァ

 

幽汽「なっ…何で!?」

 

?『…かおちゃん、ひめちゃん』

 

かおり「この声は…ことちゃん!」

 

ひめり「ことりおねえちゃん!」

 

幽汽「お前…ま、まさか!?」

 

ことり『もう、これ以上はあなたの好きにはさせない…絶対に!』

 

幽汽「グッ…!」

 

偽Aマスター「貴様ら…一体、何をした!?」

 

希「別にウチらは何もしてないよ?」

 

真姫「私達はただ…それぞれのメンバーの大切な家族に来てもらって、呼び掛けてもらっているだけよ」

 

偽Aマスター「それぞれのメンバーだと?…まさか!」クルッ

 

(偽のアドベントマスターが振り返ると…そこにはキングラウザーを白刃取りしている蒼矢とブレイドに話しかける弓未姉がいた)

 

ブレイド「!?」ギリギリ…

 

蒼矢「…」ググッ

 

弓未「どうしたのですか、海未…貴女はそんなに心の弱い人間だったのですか?」

 

ブレイド「…っ!」ギリギリ…

 

弓未「本当に私達を斬れるものなら斬ってみなさい、海未…ですが見てみなさい」

 

蒼矢「…!」キッ

 

ブレイド「!?」

 

弓未「こんなに真っ直ぐな目をしながら剣を受け止める蒼矢を…貴女は斬る事が出来るのですか?」

 

ブレイド「…?」

 

弓未「その程度で悪しき者に心を支配されるようでは…貴女にスクールアイドルと道場の跡取り娘の二足の草鞋は履けません!」

 

弓未「だから早く正気に戻って…あなたのラブアローシュートで私達の心を射抜きなさい、海未っ!」

 

ブレイド「う"っ…あぁぁぁっ!!」

 

(その近くでは、慧と萌が…オニキスに呼び掛けていた)

 

慧「おい…目を覚ませ、凛!」

 

萌「ねぇ、凛ちゃん…あの時のファッションショーでしたライブは覚えてるかにゃ?」

 

オニキス「…?」

 

萌「覚えてるよね?だって、凛ちゃんがセンターだったんだもんね…萌も取材に行ってたからよく覚えてるよ」

 

萌「だから萌、知ってるよ…スクールアイドルを始めてから凛ちゃんの心は星空みたいにキラキラ輝いてるんだって!」

 

オニキス「…」

 

慧「確かにあのライブが終わってから凛、スゴく可愛い服を着るようになったもんな…前は私のお下がりばかり着てたのに」

 

慧「でも、今の凛は…可愛くない!」

 

オニキス「…!」

 

慧「早く戻って、いつもみたいに…元気に駆け回ってくれよ!」

 

萌「もしそれが無理なら…ここで萌達を倒してみてよ!」

 

慧「だが私達はどうやっても絶対に倒せないし倒れない…一つでも命を奪ったら、お前はもう後戻りできなくなるからな!」

 

萌「凛ちゃんはそれを望んでいる訳じゃないんでしょ…だったら、にゃんにゃんにゃーんって言ってよ!!」

 

慧「そうだ、凛…それにお前にそんな真っ黒の衣装は似合わない」

 

慧「お前といえば…イエローだろう!!」

 

オニキス「…っ!?」

 

(一方でキバの飛翔態に声をかけていたのは…葉太兄だった)

 

葉太「花陽ちゃん…僕だよ、分かるかい?」

 

キバ「…」

 

葉太「妹である君に襲われるなら…兄として、この命を奪われても惜しくはないよ」

 

葉太「でもね、今の君は…花陽ちゃんじゃない」

 

キバ「…?」

 

葉太「君の心のミューズが泣いているのが分かるんだ、哀しみの音楽が…誰か助けてという君の声が聴こえるんだ!」

 

キバ「!」

 

葉太「君が翳りそうな時や歪みそうになった時は、僕が君に陽を当てて調える!だから…ちょっと待っててっ!!」

 

キバ「…うっ、ううっ!」

 

偽Aマスター「どうした、何が起きている!?」

 

希「元に戻してるんよ…皆を」

 

偽Aマスター「元に戻しているだと?」

 

真姫「ある子から教えてもらったのよ…『この世界にしかいない大切な家族が声をかける事で、メンバーの暴走は止まる』って」

 

(希と真姫が偽のアドベントマスターと話している間に…斗里と樹里がカブトを止めていた)

 

斗里「よせ、姉さん!」ガシッ

 

カブト「うわぁぁぁっ!!」

 

樹里「やめてよ…しっかりしてよ、姉さん!」

 

カブト「はぁはぁ…いやぁぁぁっ!」

 

斗里「よし…一緒に姉さんを止めるぞ、樹里!」

 

樹里「うん、兄さんとなら例え…喉がカラカラになっても!」

 

斗里「じゃあ、行くぞ…かしこいかわいい!?」

 

樹里「エリーチカ!」

 

斗里「かしこいかわいい!?」

 

樹里「エリーチカ!!」

 

カブト「…!?」

 

樹里「こんな時だからこそ正直に言うけど…今の姉さん、全然賢くも可愛くもないよ!」

 

斗里「その通りだ…生徒会長をやっていた時の姉さんは賢かったし、スクールアイドルをやっている時の姉さんはものスゴく可愛い」

 

斗里「でも、今の姉さんは…姉さんらしくない!」

 

樹里「だから…賢くて可愛かった、あの頃の優しい姉さんに戻ってよ!」

 

斗里「元に戻らないのなら、戻るまで何度でも言ってやる…かしこいかわいい!?」

 

樹里「エリーチカ!!」

 

カブト「うぐっ…ああっ!?」

 

(そして、アギトには…光姉とほむ婆が懸命に呼び掛けていた)

 

光穂「穂乃果ちゃん、もうやめてよ…穂乃果ちゃん!」

 

アギト「はぁぁぁっ!」ブンッ

 

光穂「わあっ!?」サッ

 

ほむ婆「穂乃果っ!!」

 

アギト「…!」ピタッ

 

光穂「やっと止まってくれた…もう、危ないでしょ!?」

 

ほむ婆「不安だったんだろう、穂乃果?…訳の分からない力に振り回されて」

 

アギト「!」

 

光穂「それくらい私達にも分かるよ…だって、私達も家族なんだよ?」

 

ほむ婆「あんたは自分に押し潰されそうになってる…でもね、そういう時はもっと自分自身を信じな」

 

アギト「…?」

 

光穂「だって、あなたは…このオトノキの廃校を阻止したスクールアイドル『μ's』の『高坂穂乃果』なんだよ?」

 

ほむ婆「あんた自身の持っている力が皆を巻き込んできたから…今まで誰も出来なかった事をやってのけたんじゃないのかい!?」

 

光穂「だから弱い自分に負けないでよ…これからも多くの人を巻き込んで、皆の夢を叶えてみせてよ!」

 

光穂「その為にも、穂乃果ちゃん…ファイトだよっ!」

 

ほむ婆「ファイトだよっ!…穂乃果!!」

 

アギト「あ…あっ、ああっ!?」フラッ

 

(暴走したメンバー達が自我を取り戻し始めているのを見て…オレもある事を試みた)

 

コタロウ「そうか…おい、姉ちゃん!」

 

クウガ「…?」

 

コタロウ「にっこにっこにー!」

 

クウガ「!」

 

コタロウ「にっこにっこにー!!」

 

(オレは姉ちゃんの心に届くように…途中で立ち上がりながら、全力でポーズをして叫んだ)

 

クウガ「…」

 

偽Aマスター「彼女にはどれだけ呼び掛けようと無駄だ、何故なら彼女は…私が持っているこの『地の石』で操っているのだからな」

 

希「ふふっ…それはどうやろうね?」

 

偽Aマスター「何?」

 

真姫「にこちゃんはね…そんな石なんかで乗っ取られる程、ヤワじゃないのよ!」

 

コタロウ「にっこにっこにー!!!」

 

クウガ「…うっ!?」

 

ピシッ!

 

(その時…偽のアドベントマスターが持っていた『地の石』に亀裂が入った)

 

偽Aマスター「これは…何故だ!?」

 

コタロウ「オレはディケイドである以前に…大銀河宇宙ナンバーワンアイドル『矢澤にこ』の弟の『矢澤コタロウ』だ!」

 

コタロウ「たった一人しかいない弟なんだ…だから、姉ちゃんの暴走が止まるのは当たり前だ!」

 

偽Aマスター「グッ…おのれ!」

 

クウガ「ううっ…」

 

コタロウ「おい、聞こえるか姉ちゃん…今から言う事は滅多に言わないからよく覚えておけ!」

 

クウガ「コ、タ…ロ?」

 

コタロウ「姉ちゃんが皆を笑顔にさせられるのなら…弟であるオレが全力で支えてやる!」

 

コタロウ「弟であるオレが一緒に戦ってやる!」

 

コタロウ「それに、姉ちゃんは…もう一人なんかじゃないはずだろ!?」

 

クウガ「!」

 

偽Aマスター「何をしている、クウガ!早くディケイドを捕まえろ…私の命令を聞け!!」

 

クウガ「ううっ…ああぁぁぁっ!?」

 

コタロウ「『μ's』の仲間達と一緒にステージに立って…また皆を、笑顔にしてくれよ!」

 

コタロウ「だから、元に戻って笑ってくれよ…姉ちゃん!!」

 

偽Aマスター「私に従え、クウガ!!」

 

クウガ「…うるさいわよ」

 

ピシッ!

 

偽Aマスター「!?…『地の石』が、更にひび割れているだと?」

 

クウガ「さっきからうるさいって言ってんのよ…私の弟が何て言ってるか、よく聞こえないじゃない!」

 

コタロウ「姉ちゃん…!」

 

偽Aマスター「馬鹿な、クウガの意識は…この『地の石』で完全に操っていたはずだ!」

 

クウガ「あのね…『にこにーはみ~んなのも・の♡』なの」

 

偽Aマスター「!」

 

クウガ「大銀河宇宙ナンバーワンアイドルの私が…そんな石で、アンタの物なんかになる訳…ないでしょうが!!」

 

パキンッ!

 

偽Aマスター「グアッ!?」

 

にこ「うっ…」フラッ

 

コタロウ「姉ちゃん!」トスッ

 

(『地の石』が砕け散った瞬間、クウガは姉ちゃんの姿に戻り…オレは倒れようとする姉ちゃんの身体を優しく受け止めた)

 

にこ「コ…コタロウ」ハァハァ

 

コタロウ「大丈夫か?」

 

にこ「え、ええ…何とかね」

 

希「にこっち!」ダッ

 

真姫「にこちゃん!」ダッ

 

にこ「希、真姫ちゃん…」

 

真姫「もう、心配させないでよ!」

 

希「ウチら…二人だけになって、これでもけっこう心細かったんよ?」

 

にこ「そう…悪かったわね、迷惑かけて」

 

真姫「謝らないで!」

 

にこ「えっ?」

 

真姫「私達からしたら…にこちゃん達がいなくなっちゃう方が、よっぽど迷惑なんだから!」

 

希「そうよ、にこっち…それよりももっと他に言う事があるんと違う?」

 

にこ「アンタ達…ありがとね、助けてくれて」フフッ

 

希「うふふっ…どういたしまして」

 

偽Aマスター「お前達…よくも私の計画の邪魔を!」

 

?「グワァァァ!?」ゴロゴロ

 

(いつしかことりに憑依していたイマジンは追い出され…偽のアドベントマスターの前に転がってきた)

 

偽Aマスター「!?…どうした、ゴーストイマジン!」

 

ゴーストイマジン「奴らが全員、正気を取り戻した…これ以上は無理だ!」

 

偽Aマスター「無理だと?この役立たずが…もう一度、南ことりに憑依しろ!」

 

?「そんなこと…二度とさせないよ」

 

偽Aマスター「!」クルッ

 

(偽のアドベントマスターが振り向いた方には…穂乃果に光姉、ほむ婆がいた)

 

穂乃果「…」

 

コタロウ「穂乃果…」

 

真姫「穂乃果!?」

 

希「元に戻ったんやね?」

 

穂乃果「うん、おばさんとおばあちゃんのおかげでね!」

 

光穂「良かったぁ~…私にパンチしてきた時はどうなるかと思ったよ」ホッ

 

ほむ婆「全く、世話焼かせるねぇ…本当に手のかかる孫娘だよ」フッ

 

穂乃果「あはは、ごめんごめん…」

 

?「穂乃果だけじゃないわ」

 

(穂乃果と並び立ったのは…同じく正気を取り戻した絵里達だった)

 

真姫「エリー!」

 

希「えりち…それに、皆も!」

 

絵里「希、真姫、ありがとう…あなた達が家族の皆を連れてきてくれたおかげよ」

 

絵里「その代わり…けっこう恥ずかしい思い、しちゃったけどね」

 

斗里「仕方ないだろ?姉さんを元に戻す為だ」

 

樹里「賢くて可愛い姉さんを取り戻せるんだったら…僕達、何だってやるよ!」

 

絵里「ふふっ…斗里も樹里も、私の為にありがとう」

 

ことり「かおちゃんもひめちゃんもごめんね、時間かかっちゃって…」

 

かおり「大丈夫よ…気にしないで、ことちゃん」

 

ひめり「やさしいことりおねえちゃんにもどって…ひめりたち、うれしいの!」

 

ことり「二人とも…えへへっ!」フフッ

 

海未「姉上…申し訳ありません、私が不甲斐ないばかりに」ペコッ

 

弓未「顔を上げてください、海未…私達は貴女が戻ってきてくれただけで嬉しいのです」

 

蒼矢「…」ナデナデ

 

海未「蒼矢…あなたの逞しさには助けられました、本当にありがとうございます」フフッ

 

凛「あの、凛…」

 

慧「気にしちゃダメだよ…凛、いつも通りに接してくれればそれで良いんだから」ポンポン

 

凛「ニャッ…慧お姉ちゃん?」

 

萌「そうだよ…萌達はまた可愛い凛ちゃんが見られたら、それで十分だにゃ!」

 

凛「萌お姉ちゃん…えへへ、ありがとニャ!」

 

花陽「お、お兄ちゃん…ごめんなさい」

 

葉太「僕は兄として当たり前の事をしたまでだよ…それにいつもの美しい花陽ちゃんに戻ってくれただけで、僕は満足なんだ」

 

花陽「あ、ありがとう…お兄ちゃん///」

 

偽Aマスター「…クソッ、せっかくの私の計画が全て台無しだ!」

 

絵里「残念だったわね…でもこれ以上、あなた達なんかにこの世界を好き勝手させないわ!」

 

ことり「そしてみんなも、コタロウくんも…あなた達には渡しません!」

 

海未「だからこそ、私達は…もうあなたのような者の言葉には惑わされません!」

 

花陽「それに、ライブステージをこんなにして…絶対に許せません!」

 

凛「もうごめんなさいって泣いて謝っても…許してなんかあげないよ!?」

 

希「うふふっ…皆、もうとっくに心の準備は出来てるみたいやね!」

 

真姫「ほら、にこちゃんも一緒に行くわよ…立てる?」

 

にこ「私を誰だと思っているのよ…当たり前でしょ!?」

 

穂乃果「コタロウくんも…覚悟は出来た?」

 

コタロウ「ああ、もちろんだ…光姉達は安全な場所に避難を!」

 

光穂「よ~し…皆、こっちだよっ!」ダッ

 

弓未「はい、光穂先輩!」

 

蒼矢「!…ん」グイッ

 

ひめり「へっ…そ、そうやくん!?///」

 

かおり「あっ!?…ひめちゃん、良いなぁ」ボソッ

 

萌「ほら、早く行っくにゃ~!」ダダッ

 

慧「あっ!…ったく萌のヤツ、姉妹の中で一番速いからって飛ばし過ぎだぞ?」ダッ

 

葉太「わあっ!?み、皆さん…置いて行かないでくださいよ!」

 

斗里「さーてと…俺達も行くぞ、樹里!」

 

樹里「うん…コタロウも姉さん達も、気をつけてね?」

 

絵里「ええ!」

 

コタロウ「樹里…お前もな」

 

樹里「ふふっ…うん、カニェーシナ(もちろん)!」

 

ほむ婆「いいかい、あんた達?どんな事になっても…ガッツだよっ!」

 

コタロウ「ほむ婆…ああ!」

 

穂乃果「おばあちゃん…うん、ファイトだよっ!」

 

(ほむ婆達が去って行ったのを確認し、オレと『μ's』の九人は…それぞれの変身プロセスをとった)

 

偽Aマスター「無駄な足掻きを…やれ!」

 

(偽のアドベントマスターはオーロラから…大量のホワイト・ミニオンを呼び寄せた)

 

コタロウ「変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

(オレは奴らに立ち向かう為に…再びディケイドに変身した)

 

μ's「変身!」

 

(それと同時に『μ's』の九人も…それぞれのライダーに変身した)

 

ディケイド「皆…あの黒いライダーとことりに憑いていた怪人はオレ一人に任せてくれないか?」

 

電王『へっ?』

 

ブレイド「コタロウが…一人でですか!?」

 

ディケイド「ああ、そうだ」

 

キバ「そ、そんな…平気なの?」

 

ディケイド「当たり前だ」

 

カブト「何か考えがあるの?」

 

ディケイド「そういう訳じゃないが、オレは…このディケイドの力でどこまで出来るか試してみたいんだ」

 

ファイズ「何よ、それ…イミわかんない」

 

龍騎「スゴい自信ニャ~…」

 

響鬼「別にええんやない?ウチもコタロウくんなら出来ると思うし!」

 

アギト「私もそう思う!」

 

ディケイド「希、穂乃果…」

 

カブト「…にこはどう思う?」

 

クウガ「にこは別にどっちでも良いわ…ただし!」ズイッ

 

ディケイド「!」

 

クウガ「負けたらタダじゃおかないわよ…良いわね?」

 

ディケイド「…任せろ」フフッ

 

アギト「よ~しっ…行こう、みんな!」ダダッ

 

(オレはホワイト・ミニオンを『μ's』に任せ…ゴーストイマジンと対峙した)

 

ゴーストI「こうなりゃ奥の手だ…今度はお前に憑依してやる!」ダッ

 

ディケイド「させるか!」スッ

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド「はっ!」バシュッ!

 

(オレは一枚のカードをベルトに入れて、ガンモードにしたライドブッカーから光のエネルギーを発射し…ゴーストイマジンを拘束した)

 

ゴーストI「ウグッ…!」

 

ディケイド「幽霊モチーフのイマジンだけあって憑依能力には長けているようだが…所詮、お前は三下に過ぎない」

 

(動けないゴーストイマジンを一時的に光の粒子に変え、こちらの目の前に呼び寄せたオレは…ライドブッカーの銃口を向けた)

 

ディケイド「はぁーっ!」ガガガッ!

 

(ゴーストイマジンに無数の光弾を連射したオレは…奴を元いた場所に戻し、拘束を解いた)

 

(これは『DCDJ(ディケイドジェイル)』…オレ一人の技だ)

 

ゴーストI「グワァァァァァ!!」

 

ディケイド「まあ、こんなもんか…!」バッ

 

偽Aマスター「フンッ!」ブンッ

 

(ゴーストイマジンを倒した直後、偽のアドベントマスターが殴りかかり…オレはその攻撃を避けた)

 

ディケイド「くっ…!」サッ

 

偽Aマスター「喜べ…お前はこの私が直々に相手をしよう」

 

ディケイド「今度はペテン師が相手か…もう二度と母さんも姉ちゃん達も、お前の思い通りにはさせない!」スッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

(オレは一枚のカードをベルトに装填し、ライドブッカーをソードモードに変えた)

 

偽Aマスター「何をするつもりかね?」

 

ディケイド「そんなもの、最初から決まってる…こうするんだよ!」

 

(オレは…胸部の十字から相手を拘束する光線を放出して、偽のアドベントマスターの動きを止めた)

 

偽Aマスター「何ッ!?」

 

ディケイド「はあっ!」ザシュッ!

 

(オレはバーコードのようなものに包まれながら浮上する奴を下から斬り上げると…すぐに飛び上がり、再び奴を斬りつけた)

 

ディケイド「やあーっ!」ズバッ!

 

偽Aマスター「ウガァァァ!?」ズドン!

 

(オレに斬られた偽のアドベントマスターは…地面にめり込むように倒れた)

 

(これは『DCDV(ディケイドヴァニッシュ)』…オレ一人の技だ)

 

ディケイド「…」フゥ

 

アギト「コタロウく~ん!」

 

(オレの所に変身したままの『μ's』の九人がやってきた)

 

ディケイド「!…皆」

 

カブト「白い化け物達は皆、倒してきたわ!」

 

ディケイド「そうか…こっちも今、片付けたところだ」

 

クウガ「やるじゃない…さすが、にこの弟ね?」

 

ディケイド「…まあな」フフッ

 

アギト「!?」クルッ

 

クウガ「どうしたのよ、穂乃果?」

 

アギト「…まだ、終わってないみたいだよ」

 

カブト「えっ…?」

 

ガッ!ドカッ!ゴッ!バキッ!

 

ディケイド「うわっ!?」

 

(オレ達は突然、何者かの攻撃を受けてしまった)

 

クウガ「っ…何よ、今の!」

 

???「油断していたよ…まさか私がお前達のような人間に真の姿を見せる事になるとはね」ポイッ

 

(姿を現した黒い甲冑のような姿をした怪人は…砕け散ったカードデッキを地面に投げ捨てた)

 

ディケイド「アイツは…ゼイビアックス!」

 

アギト「ゼイビアックス…?」

 

???「そう、私は宇宙から来た誇り高き戦闘種族・カーシュの生き残り…ゼイビアックス」

 

ディケイド「お前…ドラゴンナイト達に倒されたはずじゃなかったのか?」

 

ゼイビアックス「そうだ、確かに私は『ドラゴンナイトの世界』で…ベンタラと地球の戦士達によって敗れた」

 

ゼイビアックス「しかし魂だけの存在となって様々な世界を彷徨ううちに…私はこの世界に辿り着き、君達『μ's』の歌を聴いた」

 

アギト「私達の…歌を?」

 

ゼイビアックス「そうだ、実に美しく素晴らしいものだったよ…君達のいるこの世界ごと私の物にしたいくらいにね」

 

クウガ「!…アンタ」

 

ゼイビアックス「そんな時、私は『秘密結社ショッカー』の特殊な科学技術によって…この身体を復活させた」

 

ゼイビアックス「故に今の私は…ドラゴンナイト共に倒される前と全く同じ力を持っている」フフッ

 

ディケイド「くっ…厄介な事になったな」

 

アギト「あの、コタロウくん…ドラゴンナイトって誰なの?」

 

ディケイド「ドラゴンナイトというのは…別の世界の龍騎の事だ」

 

龍騎「えっ、凛のこと!?」

 

ディケイド「少し違うな…姿は龍騎と同じだが、この世界とは全く別の世界にいるベンタラの戦士の事だ」

 

アギト「ベンタラ…弁鱈?もしかして、お魚弁当ってこと?」

 

ブレイド「そんな訳無いでしょう!?」

 

クウガ「アンタ…どんだけお腹減ってんのよ!」

 

電王『あはは…』

 

ディケイド「もう一つの地球の事をそう呼ぶらしい…オレも何故、こんな事を知っているのか分からないけどな」

 

カブト「そう…どちらにしても、彼と戦う事は避けられないのね?」

 

キバ「でも、さっきのあの人の攻撃…とっても強かったよ?」

 

電王『本当に私達だけで出来るのかな…?』

 

ゼイビアックス「フフフ…」

 

(ゼイビアックスは笑いながら…悠々とこちらに近付いてくる)

 

クウガ「出来るかじゃなくてやらなきゃいけないのよ!そうじゃないと世界が大変な事になってしまうわ…」

 

ブレイド「にこの言う通りです…コタロウ、何か打つ手はないのですか?」

 

ディケイド「一応、あるにはあるんだが…」

 

アギト「何なに?」

 

ディケイド「『リンクベント』というアドベントカードを使って、同時に技を繰り出せば…ゼイビアックスは倒せるはずだ」

 

カブト「『リンクベント』…凛、持ってる?」

 

龍騎「ううん…凛のカードデッキには、全然入ってないみたい」

 

ディケイド「『リンクベント』は『ドラゴンナイトの世界』にいるマスター・ユーブロンという人物が造り出したアドベントカードだ…今の凛が持っていないのも当然だ」

 

クウガ「そんな…それじゃ、どうしようもないじゃないのよ!?」

 

ファイズ「待って!希、カードって確か…?」

 

響鬼「あっ!?そっか…これの事やね!」スッ

 

(響鬼は一枚のアドベントカードを取り出し…それをオレに見せた)

 

ディケイド「それは…『リンクベント』!」

 

クウガ「何で希が持ってるのよ!?」

 

響鬼「ふふっ、カードのお告げ…ってとこかな?」

 

ファイズ「よく言うわよ…実はこのカードも、コタロウにベルトを渡してってお願いしてきたその子から貰ったの」

 

響鬼「『もし使う時が来たら、使って』…ってね!」

 

ディケイド「なるほどな、だいたいわかった…凛!」

 

ブレイド「リンクベントです!」

 

龍騎「うん!」

 

(響鬼からカードを受け取った龍騎は…それを左腕のドラグバイザーに入れた)

 

『LINK VENT』

 

ゼイビアックス「何…リンクベントだと!?」

 

(ゼイビアックスが驚いて間もなく…遥か上空から強力なエネルギーが、龍騎の右手に向かって降り注がれた)

 

龍騎「ニャッ!?」グラッ

 

ディケイド「皆、凛を支えるぞ!」

 

アギト「う…うんっ!」ガシッ!

 

ディケイド「凛、そのエネルギーを奴にぶつけろ!」

 

龍騎「分かったニャ!」

 

(オレ達が支える中、龍騎は右手をかざし…エネルギーの全てをゼイビアックスにぶつけた)

 

龍騎「ニャーッ!!」

 

ゼイビアックス「グッ…グハァァァァァ!?」

 

(エネルギーを浴びたゼイビアックスは…先ほどの欧米人風男性の姿に変わった)

 

ナルタキ「…!」ハァハァ

 

ディケイド「…勝負はついた、諦めてオレ達の世界から出て行ってくれ」

 

クウガ「私達のママも…早く元に戻しなさい!」

 

ナルタキ「…グォアァァァァ!!」

 

全員「!?」

 

ナルタキ「ガキ共が…許さん、許さんぞ!」

 

(そう言って男性は…オーロラから一人のライダーを召喚した)

 

?「…フッ」

 

ディケイド「なっ…アイツは!?」

 

キバ「私と同じ、キバ…?」

 

ディケイド「キバはキバでも『闇のキバ』と呼ばれるダークキバだ…まさか怪人の他にライダーを呼び寄せる事も出来るとはな」

 

ナルタキ「今の私はショッカーの幹部だからな…ところで、君達は『リンクベント』について何か勘違いをしているようだね?」

 

ディケイド「勘違いだと?…!」ハッ

 

ブレイド「どうしたのですか、コタロウ!?」

 

ディケイド「『リンクベント』は…『ドラゴンナイトの世界』にいる十三人の戦士全員が使う事で真の効果を発揮するカードなんだ」

 

龍騎「どういうこと…?」

 

カブト「つまり、一人だけで使っても効果は薄い…そういう事ね?」

 

ディケイド「ああ、実際に『ドラゴンナイトの世界』での奴は…十三人がそのカードを使った事で倒されている」

 

電王『そんな…!』

 

ディケイド「オレ達が凛を支えていたおかげで、奴を人間体に戻す事までは出来たが…迂闊だった」

 

ナルタキ「今頃になって気が付いてももう手遅れだ…ダークキバ、やれ!」

 

キバットバットⅡ世「ありがたく思え…絶滅タイムだ!」

 

ダークキバ「喜べ…キング自ら、貴様達を地獄に送ってやる!」スッ

 

(ダークキバはフエッスルを取り出すと…ベルトのキバットバットⅡ世にそれを吹かせた)

 

キバットバットⅡ世「ウェイクアップ・スリー!」~♪

 

ディケイド「ウェイクアップ・スリー…まさか、その技は!?」

 

ナルタキ「そうだ…『キングスワールドエンド』だ」

 

響鬼「『キングスワールドエンド』…コタロウくん、それってどんな技なん?」

 

ディケイド「所謂、ダークキバの自爆技だ…使えば一瞬でこの辺りの全てが灰になる」

 

クウガ「何ですって!?」

 

ファイズ「もし、そんな事になったら…オトノキがタダで済むはずないじゃない!」

 

ナルタキ「この学校だけではない…君達が暮らす街はおろか、世界が消滅する可能性もあるだろうな」

 

ブレイド「どうして…あなたはこの世界を狙ってやって来たはずでしょう!?」

 

ナルタキ「私に刃向かった罰だ…貴様らはこのまま、この世界が消えるのを指を咥えて眺めていろ!」

 

(そう言って男性は…吸い込まれるようにオーロラの中へと消えていった)

 

ディケイド「おい…逃げるな!」

 

カブト「待って、コタロウ…あれを!」

 

ダークキバ「ハァァァァッ…!!」

 

ディケイド「マズい、ダークキバが光り出した…爆発するぞ!」

 

クウガ「…ねぇ、穂乃果」

 

アギト「何…?」

 

クウガ「アンタなら…こういう時、どうする?」

 

アギト「!…もちろん、決まってるよ」フフッ

 

クウガ「そう…って事は、きっと私と同じ考えなんでしょう?」

 

アギト「うん、多分ね…みんな!」

 

カブト「?」

 

ディケイド「何だ?」

 

アギト「あの人を…止めるよ!」

 

ディケイド「はぁ!?何を言って…」

 

電王『それ、良いと思う!』

 

ディケイド「ことりまで…無茶だ!」

 

クウガ「…賛成の人」スッ

 

(そこで手を挙げていたのは…オレ以外の九人、つまり『μ's』のメンバー全員だった)

 

ディケイド「姉ちゃん…皆、どうして!?」

 

響鬼「決まりやね」

 

アギト「よし!そうと決まったら行こう?」

 

ディケイド「考え直してくれ、ダークキバの技は世界を滅ぼすかもしれない程に強力なんだぞ…あまりにも無謀過ぎる!」

 

クウガ「うるさいわよ!!」

 

ディケイド「!…姉ちゃん?」

 

クウガ「無謀な賭けだろうが何だろうが…私達はこの世界を守る為に、勝ちに行かなきゃいけないのよ!」

 

ディケイド「!」

 

アギト「…そうだよ、コタロウくん」

 

ディケイド「穂乃果…?」

 

アギト「こんな姿になっても、やっぱり私たちは…音ノ木坂学院のスクールアイドル『μ's』なんだよ」

 

ディケイド「スクールアイドル…『μ's』」

 

クウガ「そうよ、だから私達は…この世界にいる皆を笑顔にしたいの」

 

カブト「もちろん…コタロウにもね」フフッ

 

ディケイド「絵里…でも!」

 

クウガ「だったら、アンタはそこで見てなさい!」

 

カブト「ここは私達に任せて…絶対に、彼を止めてみせるから」

 

ディケイド「ダメだ…行くな!」

 

アギト「…みんな、行くよっ!」

 

ブレイド「ええ、もう一度…!」

 

電王『もう一度…』

 

響鬼「もう一度!」

 

カブト「ライブをする為に…!」

 

キバ「またみんなと…会うために!」

 

ファイズ「私達は、絶対に…止めてみせる!」

 

龍騎「行っくニャ~!」ダッ

 

ディケイド「待てよ、皆…待ってくれ!」

 

(オレの制止も聞かずに、姉ちゃん以外の八人は走り出した)

 

クウガ「コタロウ、もし仮に私達が止められなかったら…どうするか分かってるわね?」

 

ディケイド「…え?」

 

クウガ「その時は…お願い、あなたがこの世界を救って?」

 

ディケイド「…無理だ、だってオレはアンタに笑ってもらいたくて…ディケイドに変身しようと思ったんだ」

 

ディケイド「アンタがいなかったら戦えない!」

 

クウガ「…アンタならきっと出来るわよ」

 

クウガ「私の笑顔の為に戦おうとするだけでも強いんだもの…きっとアンタは世界中の人の笑顔の為だったら、もっと強くなれるわ」

 

ディケイド「…!」フルフル

 

クウガ「大丈夫よ、コタロウ…私達は必ず生きるから」

 

クウガ「だからこんな時くらい…私の言う事、聞きなさいよ」

 

ディケイド「何だよそれ…まさか命令かよ、姉ちゃん?」

 

クウガ「…ええ、命令よ」フフッ

 

ディケイド「!」

 

クウガ「コタロウ…じゃあね」ダッ

 

ディケイド「姉ちゃん…姉ちゃん!!」

 

アギト「…にこちゃん」

 

クウガ「ずーっと、コタロウが心配だった…たった一人しかいない弟だったから」

 

クウガ「でも、それなのに私は…コタロウに嘘をついてしまった」

 

アギト「…」

 

クウガ「きっと、これは…私への罰ね」

 

アギト「…多分、そうじゃないと思う」

 

クウガ「え?」

 

アギト「もし、そうだとしたら…コタロウくんはあんなににこちゃんのことを心配してないと思うもん」

 

クウガ「!」

 

アギト「もし雪穂もここにいたら…おせっかいな雪穂のことだから、きっとコタロウくんと同じことを言ってただろうなって思うし」

 

クウガ「穂乃果…」

 

カブト「そうね、もし亜里沙もここにいたら…私達の事を心配してくれていたと思うわ」フフッ

 

クウガ「…絵里」

 

アギト「だから、気にしないで…にこちゃん」

 

カブト「どんな時もずっと…私達がそばにいる」

 

アギト「もうひとりじゃないよ!」

 

クウガ「!!…ふふっ、そうだったわね!」

 

ダークキバ「グワァァァァァ!!」

 

アギト「…そう、私達がこの世界を守ろうとするのは」

 

カブト「学校が大好きで…」

 

ファイズ「音楽が大好きで…」

 

クウガ「アイドルが大好きで…」

 

龍騎「踊るのが大好きで…」

 

キバ「メンバーが大好きで…」

 

響鬼「この毎日が大好きで…」

 

ブレイド「頑張るのが大好きで…」

 

電王『歌うことが大好きで…』

 

アギト「『μ's』が…大好きだったから!」

 

μ's「やぁーっ!!」ガシッ

 

(μ'sが同時にダークキバを抑えた瞬間…ダークキバは爆発し、オレはその爆風に巻き込まれてしまった)

 

ディケイド「うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

キバーラ「た、大変…急いで別の世界に逃げないと!」

 

?「イーッ!」バサッ

 

キバーラ「!?」モゴモゴ

 

?「こちら、戦闘員1010号…例の白い蝙蝠を虫取り網で捕獲しました」

 

?「回収したディエンドライバーと一緒に持ち帰ります…報告は以上です」ピッ

 

?「はぁ、やっぱりこの覆面はキツいですね…ぷはっ!」スポッ

 

少女「ふぅ…それにしても、ショッカーが捜していたこの子をこんな所で捕まえられるなんて」

 

キバーラ「~!」モゴモゴ

 

少女「目的の『μ's』の輝きも…まさか二本分回収できるとは思いませんでしたし」

 

少女「まあ、一本の方は成分が少ないので…クローンを造る素材に使った方が良いかもしれませんね」

 

少女「さて…ディエンドライバーの最終調整も完了しましたし、早くこの世界を抜け出しましょうか」スタスタ

 

少女「…!」

 

少年「…」

 

少女「ここまで飛ばされてくるなんて…せっかくだし、もう一度だけチャンスをあげましょう」

 

少女「そうと決まれば、彼も…消滅しかけているこの世界から連れ出さないと」フフッ

 

 

 

少年「…」パチリ

 

少年「!?」ガバッ

 

(気が付いて起き上がったオレは…辺り一面が全て真っ白で何も無い場所にいた)

 

少年「ここはどこだ…オレは、誰なんだ?」

 

(オレは思わず首から提げていたマゼンタカラーのトイカメラに触れたが…自分がどこから来た誰なのか、どうしても分からなかった)

 

少年「分からない、何も…思い出せない」

 

?「目が覚めました?」

 

少年「!」バッ

 

?「何度起こしても、目を覚ましてくれなかったので…少し心配したんですよ?」

 

(オレが振り向いた先には…何となく見覚えのある学校の制服を着た一人の少女がいた)

 

少女「それにしてもあなた、見事に使いこなしてましたね…私が造ったディケイドライバーを」フフッ

 

少年「アンタは…?」

 

少女「私?私は…そうですね」

 

少女「『悪魔の科学者』ってところです」

 

少年「『悪魔の科学者』ね…ところで、オレは何者なんだ?」

 

少女「えっ…もしかして、何も覚えていないんですか?」

 

少年「それが…自分がディケイドという仮面ライダーに変身して戦っていた事しか思い出せないんだ」

 

少年「後は、ぼんやりとだが…自分のいた世界に『μ's』というスクールアイドルがいた事ぐらいだ」

 

少女「そうですか…それだけ覚えているのなら、私としては充分ですけど」ボソッ

 

少年「何か言ったか?」

 

少女「いえ…実は、私もあなたがディケイドであるという事以外は何も知らなくて」

 

少年「…そうか」

 

少女「突然ですが、ディケイド…あなたは『μ'sの世界』を救うつもりはありますか?」

 

少年「『μ'sの世界』…?」

 

少女「スクールアイドル『μ's』のいる世界です…彼女達の世界を救うには、ディケイドであるあなたの力が必要不可欠なんです」

 

少年「オレの…力が?」

 

少女「そう…それこそが、失ったあなたの記憶を取り戻す為の手掛かりになるかと」

 

少年「オレの記憶が…そんな事で取り戻せるのか?」

 

少女「はい…まだ『μ'sの世界』が完全に消滅するまで少し時間があるので、あなたが頑張れば『μ'sの世界』を救えるはずですよ」

 

少年「オレが世界を救うって…一体、どうすればそんな事が出来るんだ?」

 

少女「…例えば、これを見てください」

 

(その時、一面が真っ白だったこの場所が…まるで宇宙空間のような場所に変化した)

 

(そこでは…地球のような星がいくつも回っていた)

 

少年「!?」

 

少女「凄い光景ですね…これ、何だか分かりますか?」

 

少年「…どの星も地球のようにしか見えないな」

 

少女「そう…全部、地球です」

 

少年「はぁ!?本当にここにある全部の星がか…?」

 

少女「はい、ですが…」スッ

 

(少女が指差す方には…重なりそうになっている十個ほどの地球があった)

 

少年「何だ、あれは…?」

 

少女「あの中の一つが『μ's』のいる世界です…そして、それと重なりそうになっている後の九つの世界がそれぞれのライダーの世界です」

 

少年「ライダーの…世界」

 

少女「九つのライダーの世界にはそれぞれ一人ずつ…ライダーに変身する『μ's』のメンバーと全く同じ名前、同じ顔の子がいます」

 

少女「それは本来、独立した別々の物語のはずだったのですが…何かの弾みで世界が一つに融合しかけてしまったみたいで」

 

少年「何かの弾みって…原因でもあるのか?」

 

少女「思い当たる節はあります…確実な事ではないので、まだ何とも言えないですが」

 

少年「?…そうなのか」

 

少女「とにかく、このままだと彼女達がいる世界だけでなく…全ての世界が消滅する事になってしまいます」

 

少女「その為にディケイド…あなたは九つの世界を旅しなければいけません」

 

少女「それこそが『μ'sの世界』を救い、あなたの記憶を取り戻す…たった一つの方法です」

 

少年「…どうしてオレなんだ?」

 

少女「あなたが全ての仮面ライダーを破壊する者だからです…何故なら《創造》は《破壊》からしか生み出せませんから」

 

少女「残念な事だけど、何も残してはいけないんです…何も」

 

少年「はぁ?それ、どういう意味だ…!?」

 

(次の瞬間、オレの意識は途切れ…いつの間にか知らない場所へとやって来ていた)

 

少年「…どこだ、ここ?」

 

少女「ここは…『光写真館』です」

 

少年「『光写真館』って、あの『光写真館』か…!?」キョロキョロ

 

少女「どの『光写真館』の事を言っているのかは分かりませんが…今日からあなたの旅の拠点になる事は確かです」

 

少年「旅の拠点って、ここがか?」

 

少女「ええ…九つの世界の間を移動する時はそれまで外が昼だったとしても絶対に夜に変わりますので、それを合図にして動く事をオススメします」

 

少年「…」

 

少女「あっ、食糧の事なら心配しないでください…予めここの冷蔵庫には食べ物も飲み物も入ってますし棚にお米も備蓄してあります」

 

少女「あなたのお財布にもある程度、お金を入れておきましたし…しばらくは生活に困らないかと」

 

少年「随分と至れり尽くせりだが…少し都合が良過ぎやしないか?」

 

少女「これは『μ'sの世界』を救おうとしてくれるあなたへの贈り物です…それに、私もあの世界が無くなったら色々と困るんです」

 

少女「あっ、でも…私がこの写真館や食糧などを提供した事については誰にも言わないでくださいね?」

 

少年「誰にもか?」

 

少女「はい…何を聞かれても『いつの間にかそうなっていた』みたいな感じで、それとなく誤魔化しておいてください」

 

少女「それが…この写真館を拠点として提供する代わりのお約束です」

 

少年「そうか…なるほどな、だいたいわかった」スタスタ

 

少女「どこへ?」

 

少年「散歩だ」

 

少女「そうですか、じゃあ…私もこれで」

 

少年「何か用事でもあるのか?」

 

少女「ええ、ちょっとした用事がありまして…これから九つの世界とは別の世界に向かう予定なんです」

 

少年「…また会えるのか?」

 

少女「それは…分かりません」

 

少年「そうか、じゃあ…またいつかな」ガチャ

 

少女「…はい、またいつか」

 

バタン

 

(少女に別れを告げたオレは…スタジオのある部屋を後にした)

 

少女「さて、残り八人の『ネガμ's(仮)』の最終調整もしたいですし…そろそろ『A-RISEの世界』に戻りましょうか」フゥ

 

少女「早く『A-RISE』の輝きも手に入れないと…彼がこの世界にいる事を言えば、きっとゼイビアックスも動くでしょうし」

 

少女「そうすれば、いつか私の『実験』もきっと…!」

 

 

 

(写真館を出たオレは…導かれるようにとある学校の門の前までやって来ていた)

 

少年「『音ノ木坂学院』…もしかして、ここは『μ's』のいる学校じゃ?」

 

少年「…少しだけ、入ってみるか」スタスタ

 

(そのまま、オレは学校の中に入り…校庭へと向かった)

 

少年「…」

 

(校庭に着いたオレが何となく腹部にバックルを装着し、ゆっくりと瞼を閉じたその時…誰かの声が聞こえてきた)

 

?『お願い…雪穂や亜里沙ちゃんと一緒に、九つの世界を救ってほしいの!』

 

(何だ、この聞き覚えのある騒々しい声は…?)

 

?『ディケイドである君と高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在が…μ'sとこの世界を救う鍵になるの!』

 

(この声も、どこかで聞いた事あるような…)

 

?『お願い、世界を救って…?』

 

(今の声も…確か、よく聞き覚えが)

 

少年「…」パチリ

 

(目を開けたオレは…近くで自分と同い年くらいの二人の少女が隠れている事に気が付いた)

 

(敵、或いは味方か…もしかして彼女達が『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』なのか?)

 

(そんな事を思いながら…オレはズボンから取り出した一枚のカードを見つめた)

 

少年「!」

 

(その直後、オレの周りにオーロラのようなものが出現した)

 

レッド・ミニオン「…」

 

亜里沙「あの子、大丈夫かな…?」ボソッ

 

(そうか、この世界が…なるほどな)

 

少年「…ここが『μ'sの世界』か」

 

レッド・ミニオン「…」バッ

 

少年「…」サッ

 

(オレは…レッド・ミニオンの攻撃を難なく避けた)

 

レッド・ミニオン「!?」

 

(オレはレッド・ミニオンと少し距離を置いた後…ベルトのバックルを開いた)

 

少年「…変身!」

 

(オレは持っていた一枚のカードを裏に返し…バックルに装填した)

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

レッド・ミニオン「!?」

 

亜里沙「ま、眩しい…」

 

雪穂「うっ…」

 

(バックルを閉じたオレは光に包まれ…その姿を変えた)

 

ディケイド「…」

 

亜里沙「あっ…もしかして!」

 

雪穂「…うん、間違いない」

 

雪穂「ディケイド…!」

 

(そう、オレはディケイド…通りすがりの仮面ライダーだ)

 

ディケイド「さて…始めるか」

 

(こうしてディケイドとして戦うようになったオレは、あの声に導かれるまま…二人の少女と共に旅をする事になったのだった)

 

(そう…『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』から『ツカサ』という大切な名前を貰って)

 

 

 

???「…」パチリ

 

???(大ショッカーの基地内でしばらく眠っていた俺は…目を覚まし、玉座から立ち上がった)

 

???「…夢か」ムクリ

 

戦闘員「お目覚めですか、大首領様…?」

 

???「ああ…実に良い気分だ」

 

戦闘員「…そうですか、それは安心しました」

 

???「ベルトの分析の結果はどうだ?」

 

戦闘員「はい…『クウガの世界』を始めとした九つの世界にある物質以外にも、幾つもの世界から採取されたあらゆる物質が使われていた事が判明しました」

 

???「そうか、なるほどな…大体分かった」スタスタ

 

戦闘員「大首領、どちらに…?」

 

???「決まっている…『μ's』を俺の物にする」

 

戦闘員「!」

 

???「『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』の行方は?」

 

戦闘員「写真館にはいませんでした…現在、捜索中です」

 

???「それならあの一族の兄弟を呼べ…奴らがいれば、すぐに見つかるはずだ」

 

戦闘員「イ、イーッ!」ダッ

 

???「待ってろ…『μ's』」

 

???「世界は、俺が貰う…!」ニヤリ

 

 

 

雪穂「まさかツカサの正体が別の世界からやって来たにこさんの弟さんだったなんて…」

 

亜里沙「うん…私もビックリしたよ」

 

雪穂「キバーラ…どうして今までそんな大事なこと、私達に黙ってたの?」

 

キバーラ「それは…ツバサに口止めされていたからなの」

 

亜里沙「えっ…ツバサさんも知ってたの?」

 

キバーラ「ええ…『μ'sの世界』でアタシが見た事全部を話したの、そうしたら」

 

ツバサ『あの子達には何も話さない方が良いでしょうね…』

 

キバーラ『どうして?』

 

ツバサ『彼が自分自身の力で記憶を取り戻そうとしているからよ…それに、私やあなたが話した所で今の彼は信じないわ』

 

キバーラ『確かに、そうかもしれないけど…あの二人には言ってもいいんじゃないの?』

 

ツバサ『雪穂さんと亜里沙さんは…自分達の世界とあの子の記憶を元通りにする為に、あの子の旅に同行しているのよ?』

 

ツバサ『だから、彼女達にそれを告げるのは無粋というものよ…例えそれが真実であってもね』フフッ

 

キバーラ「という事だったの…今まで黙ってきてごめんなさい」

 

亜里沙「…気にしないで、キバーラ!」

 

キバーラ「!…亜里沙ちゃん」

 

雪穂「ツバサさんが私達のことを想って、そう言ってくれたんでしょ?…だったら仕方ないよ」

 

キバーラ「雪穂ちゃん…」

 

雪穂「だったら、なおさらツカサに会わないとね…私達がこのことを教えてあげなきゃ」

 

雪穂「それに…このカメラも、早く返さないとね」

 

雪穂(私はツカサから預かったカメラを…ジッと見つめていた)

 

亜里沙「…ツカサ、大丈夫かな?」

 

雪穂「きっと、いつもの無愛想な顔をして帰ってくるはずだよ…ツカサのことだから」

 

亜里沙「そうだよね…ツカサなら、絶対に帰ってきてくれるよね!」

 

雪穂「うん…ところで、さ」チラッ

 

こころ「ここあ、そっちはどうですか?」キョロキョロ

 

ここあ「うん…こっちはだいじょうぶだよ!」

 

こころ「こっちもいじょうありません…どうやら、まだだいじょうぶみたいですね」フゥ

 

雪穂(私達はなぜか…写真館を出て、とあるマンションの駐車場にいた)

 

雪穂「私達…何でこんな所にいるの?」

 

亜里沙「もしかして、こころちゃんとここあちゃん…誰かに狙われてるの?」

 

ここあ「ええっ、ふたりとも…なにいっちゃってるの!?」

 

こころ「大ショッカーからにげるためにきまってるじゃないですか!」

 

亜里沙「え?」

 

雪穂「大ショッカーから…逃げる?」

 

こころ「そうですよ!とくにゆきほさんとありささんは、かおがバレているのできけんなんです!」

 

ここあ「しゃしんかんにいたままだとつかまっちゃうからね…きをつけないと!」

 

こころ「あいてはあくのぐんだんなんですよ?どこであなたたちがねらわれているかわかりませんから!」

 

雪穂「えっと…」

 

亜里沙「どういうこと?」

 

ここあ「えっ!それもしらないでいっしょにきてたの!?」

 

こころ「あなたたちは…せかいをかえるかもしれない、すごいちからをもっているんですよ!?」

 

亜里沙「へっ、スゴい力…?」

 

雪穂「世界を変えるかもしれないって…本当にそんな力が私達にあるの?」

 

こころ「はい、ほのかさんからききました!」

 

雪穂「えっ…お姉ちゃんから!?」

 

ここあ「うん、ほのかおねえちゃんがここあたちにそうおしえてくれたの!」

 

こころ「みらいのスクールアイドルをめざしているふたりなら…きっとせかいをかえてくれると!」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「どうしたの、雪穂?」

 

雪穂「なるほど、状況が読めてきたよ…あのお姉ちゃんの言うことだもんね」ガックリ

 

ここあ「そんなビミョーなかおしないでよ!」

 

こころ「『μ's』のおねえさまをみならって…いつも『にっこにっこにー♪』ですよ!」

 

雪穂「いや、多分…お姉ちゃんはテキトーに言っただk」

 

こころ「はい、みなさんごいっしょに!にっこにっこにー♪」

 

ここあ「にっこにっこにー!」

 

亜里沙「にっこにっこにー!!」

 

雪穂「亜里沙まで聞いてないし…もう、お姉ちゃんったら何で変なこと吹き込むかなぁ?」ハァ

 

?「おい、テメーら…見つけたぜぃ!」

 

雪穂「!?」クルッ

 

雪穂(私達の目の前には…重たそうな金棒を持っている二本角で鬼のような姿をした銀色の怪人がショッカー戦闘員達を連れて立っていた)

 

亜里沙「誰…?」

 

こころ「あ、あれは…」

 

ここあ「シルバラ!?」

 

雪穂「シ、シルバラ…?」

 

亜里沙「知り合いなの?」

 

ここあ「ちがうよ!あいつは『超・電王』ってえいがにでてきた『オニ一族』っていうてきのひとりなんだよ!?」

 

雪穂「え…映画?」

 

こころ「じつは、おとうとのこたろうが『仮面ライダー』ずきで…よくてれびのりあるたいむやでぃーぶいでぃーでみていたんです」

 

ここあ「そうしたら、いつのまにかここあたちまでハマっちゃって…」

 

雪穂「えぇ…?」

 

こころ「それにしても、まさかふっかつしてわたしたちのせかいにやってきていたなんて…!」

 

シルバラ「大ショッカーに甦らせてもらったんだよ…もう一度、俺達の切り札を動かす為になぁ!」

 

ここあ「やっかいなことになっちゃったなぁ…こうなったら、みんなでにげよう!」

 

こころ「そうするしかないですね…みなさん、わたしがあいずしたらいっせいにダッシュです!」

 

亜里沙「うん、分かった!」

 

雪穂「ええっ!?いきなりそんな…」

 

こころ「やるしかありません!いきますよ…」

 

?「動くな!」

 

ここあ「!?…こころ、あれ!」

 

こころ「えっ…!?」

 

雪穂(いつの間にか、シルバラの隣には…三本角の金色の怪人が立っていた)

 

雪穂(そして、その怪人は…気を失っている一人の男の子を人質にしていた)

 

こころ「こたろう!!」

 

虎太郎「…」

 

シルバラ「兄ちゃん!」

 

?「よく見つけた、ミミヒコ…これでこの世界は大ショッカーの物だ」

 

ここあ「おそかった…まさか、ゴルドラのヤツにつかまっていたなんて!」

 

亜里沙「あの人も『オニ一族』の仲間なの…?」

 

こころ「はい、なまえはゴルドラ…シルバラのおにいさんです!」

 

ゴルドラ「『高坂雪穂』に『絢瀬亜里沙』…これ以上逃げれば、この子供の命は無い」

 

シルバラ「兄ちゃんがそう言ってんだ、早くしろ…ついでにそこの白い蝙蝠も大人しくこっちに来やがれ!」

 

キバーラ「マズいわね、この状況…人質がいるんじゃ逃げる事も出来ないわ」

 

亜里沙「そんな…どうしよう、雪穂!?」

 

雪穂「…っ!」

 

ここあ「ダメ!」

 

こころ「みなさん、いってはいけません!」

 

雪穂「!…こころちゃん、ここあちゃん」

 

ここあ「これはきっと大ショッカーのわなだ…みんながいっても、あいつらはこたろうをはなすつもりなんてないんだ!」

 

こころ「そもそも大ショッカーはこたろうをかえしてくれるとはひとこともいっていません…だから、いっちゃダメなんです!」

 

亜里沙「でも、このままじゃ虎太郎くんが…!」

 

こころ「それが大ショッカーのやりかたなんです…もくてきのためだったら、どんなにひきょうなことだってやってしまうんです!」

 

ここあ「だからここは、おねえちゃんたち『μ's』がたすけにくるのをまって…」

 

???「残念だったな…もう『μ's』の助けは来ない」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂(誰かの声がしたその瞬間…大ショッカーの人達は慌てていた)

 

ゴルドラ「この声は…大首領様!」

 

シルバラ「おいテメーら、道を開けろ…大首領様のお通りだ!」

 

戦闘員「イーッ!」ササッ

 

雪穂(ショッカー戦闘員達が道を開けると…その間からゆっくりと一人の少年が姿を現した)

 

亜里沙「!…そんな」

 

キバーラ「ウ、ウソでしょ!?大ショッカーの大首領って…」

 

雪穂「ツカサ…?」

 

ツカサ「…」




次回、仮面ライダー×ラブライブ!

「俺は全ての破壊者だ…俺はそれを受け入れた」

「うわぁっ!?…っ!」

「わぁ~!」

「全ての『μ's』メンバーを集める…」

「ス・テ・キ~!」

「うぅっ…」グスッ

「どうしてみんなをカードなんかに!?」

「もしかして…?」

「いいんだよ、止めなくて」

「戦うとは、こういう事だ…」

「これは、一体…?」

「私に言われても…」

「あの子はもう、あなた達の知ってるツカサじゃない…」

「凛ちゃんもそうだったんだね!」

「この世界も既に、大ショッカーの魔の手が…!」

「ダレカタスケテー!」

「任せて!」

「滅びの現象が起きているのね…」

「どうしよぉ~!?」

「私が面白くしてあげる」

「何をしたんですか!?」

「それこそが大ショッカーによる、全ての世界の征服だ」

「曲は出来る?」

「…!」

「イーッ!」

「難しいなぁ…」

「お姉ちゃん達を取り戻せるなら、私はツカサを倒してみせる!」

「Yes,We are school idol!」

「出発ニャ~!」

「行ってらっしゃい…」

「世界はもう、おしまいなの…?」

「命ある限り戦う…それが、仮面ライダーなんでしょ?」

「さあ、行こう!」

「私達がツカサを止める!」

「μ's…ミュージック・スタート!!」



第23話『僕らは君のなかで』

「もう一度です!」

叶え、私たちの夢――


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話『僕らは君のなかで』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

こころ「あなたたちがこうさかゆきほさんとあやせありささんですか?」

ここあ「おねがい、ここあたちといっしょに…こたろうをさがして!」

キバーラ「彼はもう一人の『矢澤コタロウ』…あなた達の世界にいる虎太郎くんとは別の世界の『矢澤虎太郎』よ」

女性シンガー「通りすがりの女性シンガーだよ、別に覚えなくても良いけどね…」

コタロウ「通り過ぎずに戦う事…それが、オレの決めた事だ!!」

偽アドベントマスター「ディケイド…!」

クウガ「コタロウ…じゃあね」

ディケイド「うわぁぁぁぁぁっ!!」

少女「ディケイド…あなたは九つの世界を旅しなければいけません」

少女「それこそが『μ'sの世界』を救い、あなたの記憶を取り戻す…たった一つの方法です」

ツカサ「残念だったな…もう『μ's』の助けは来ない」

亜里沙「!…そんな」

雪穂「ツカサ…?」


男「おい!馬鹿かね…そんな答えがあるかね?」

 

ドラゴンナイト「…」

 

男「かつてのようにベントされるのがオチだぞ!?」

 

オニキス「…」

 

男「お前達が勝っても、私は戻ってくる…私を葬る事など無理だ!」

 

アドベントマスター「それはどうかな?」

 

男「!?」

 

アドベントマスター「ライダー諸君…リンクベントだ!」

 

13RIDERS「…!」スッ

 

『RINK VENT』

 

男「!」

 

13RIDERS「はぁーっ!!」

 

(私はバリアを張って抵抗し続けたが…『リンクベント』による十三人分の強大なエネルギーに耐え切る事は出来なかった)

 

男「私は必ず、甦る…グワァァァァァ!!」

 

(こうして奴らに倒された私は、魂だけの存在となり…幾つもの並行世界を彷徨うようになった)

 

(いつか必ず甦る…そう思いながら、とある世界にやって来た私は九人の少女達の歌を聴いた)

 

(ここは何処だ?いや、聞かずとも分かっている…ここは彼女達の世界だ)

 

(彼女達の歌には…世界を変えられる程のとてつもないパワーが込められているのを、私は感じた)

 

(身体さえあれば、すぐにでも彼女達が持つ力とこの世界を手に入れたい)

 

(そう思った瞬間…私の意識は途切れ、次に目を覚ましたのはとある施設の中だった)

 

男「…身体が、甦っているだと?」

 

~♪

 

男「!」

 

(私がベッドから起き上がると…水色のリボンを着けた学生服姿の少女が、近くでピアノを演奏していた)

 

?「…」フフッ

 

男「君かね、私の身体を甦らせたのは…?」

 

?「ええ…どうかしら、甦った気分は?」

 

男「最高だ…実に素晴らしい、まるで生まれ変わったかのようにさえ思えてくる」

 

?「ふふっ、良かった…」

 

男「…ところで、君は何者だ?」

 

?「私は…大ショッカーの大幹部の一人」

 

?「名前は…そうね、今はサヨとでも名乗っておきましょうか」

 

男「大ショッカー?」

 

サヨ「そう、自分達の野望を叶える為に幾つもの並行世界を征服しようとする組織…それが大ショッカーよ」

 

サヨ「良かったら、あなたも入ってみない?」

 

男「ふむ…つまり君は甦らせた私を部下として勧誘したい、そういう事かね?」

 

サヨ「う~ん…ちょっと違うかな?第一、あなたが私の言う事なんて聞くはずないと思うし」

 

男「ハハッ、確かに…そうかもな」

 

サヨ「でも…もし大ショッカーに入ってくれたら、あなたはあらゆる世界を自由に行き来する事が出来るわ」

 

男「!…何だと?」

 

サヨ「それだけじゃない…色々な世界の科学技術を利用する事も、一部のライダー達を傀儡として操る事だって可能よ」

 

サヨ「もちろん…自分の欲しい世界を手に入れる事だって、ね」

 

男「…それは、本当かね?」

 

サヨ「ええ…ただ、最初は下部組織である『秘密結社ショッカー』の幹部として入ってもらう形になるけどね」

 

サヨ「どこか一つの世界でも支配出来れば、すぐに大ショッカーの大幹部として昇格できるわ…どうする?」

 

男「…面白い、戦闘種族である私の力を存分に見せつけてやるとしよう」

 

サヨ「ウフフッ…あなたの活躍、楽しみにしてるわ」

 

(こうして大ショッカーの幹部となった私は…すぐに九人の少女達がいる世界へと向かった)

 

男「Hello!」

 

μ's「!」

 

男「Are you girls japanese?」

 

穂乃果「イ、イエース…ウィーアー ジャパニーズ スチューデント…」

 

男「I heard a little while ago of the song…It was a great song!」

 

海未「ま、また声を掛けられてしまいましたね…何と言っているんですか?」

 

穂乃果「この人も、どうやら怒ってはないみたい…」アハハ

 

海未「だから、それは私でも分かります…」

 

男「You guys is idle?」

 

希「Yes,We are school idols!」

 

穂乃果「!」

 

希「We are called μ's!」

 

男「School idols…『μ's』?」

 

希「Yeah!」

 

男「School idols…it interesting!」

 

男「『μ's』…Also looking forward to it to meet you guys! Bye!」スタスタ

 

希「See you!」

 

希「『さっきの歌、素晴らしかったね…また君達に会う事を楽しみにしてるよ』だって」

 

絵里「だって」フフッ

 

にこ「だって…じゃないわよ、アンタも英語は得意なんでしょ?」

 

絵里「…え、ええ///」コホン

 

真姫「何か引っ掛かるわね…今の人、また会うのを楽しみにしてるって言ってたんでしょ?」

 

ことり「一体、どういう意味だったなのかなぁ…?」

 

花陽「そういえば今の人、この前に話しかけてきた女の人達と違って…」

 

凛「普通の人って感じがしなかったニャ…」

 

にこ「…はっ、まさか!?」

 

穂乃果「えっ…どうしたの、にこちゃん?」

 

にこ「もしかしたらこの国で有名な大物プロデューサーかも…間違いないわ、きっと私達をスカウトしに来たのよ!」

 

八人「スカウト!?」

 

にこ「そうに違いないわ、例えば…」

 

男『《μ's》よ…是非、私のプロデュースでこの国だけの自由の女神になってはくれないかね?』

 

にこ「にこの為に、この国で一番大きなライブ会場に詰めかける何万人もの観衆…ス・テ・キ~!」

 

八人「…」

 

にこ「あっ、でも…ダメダメダメ~!」

 

にこ「この国だけじゃ、にこ達の溢れる魅力は収まりきらないわ!」

 

にこ「やっぱり『μ's』は…この世界のみ~んなのも・のっ♡」

 

真姫「気持ち悪い」

 

にこ「ちょっとぉ!?」

 

にこ「何よー!じゃあ、もし仮にそうだとしたらどうするつもりなのよ!?」

 

真姫「何それ、イミわかんない…そんなのある訳無いでしょ!?」

 

にこ「むむむむむ…」

 

真姫「…ふんっ」プイッ

 

希「あの二人、また始まっちゃったなぁ…」

 

ことり「あはは…どうしよっか?」

 

海未「そうですね、いつもの事ですし…ひとまず放っておきましょう」

 

絵里「海未の言う通りね…それに、そろそろ帰りの飛行機に乗らないといけない時間よ」

 

花陽「あっ、そっか…それなら早く空港に戻らないといけないね」

 

凛「じゃあ…空港に出発ニャ~!」ダッ

 

にこ「なっ…ちょっと!?」

 

真姫「待ちなさいよ、凛!」ダッ

 

穂乃果「…」

 

海未「…穂乃果?」

 

ことり「どうかしたの、穂乃果ちゃん?」

 

穂乃果「ううん、何でもない…私達も早く行こう!」ダッ

 

ナルタキ「スクールアイドル…『μ's』か」ニヤリ

 

(それから大ショッカーの基地に戻った私は…調査の結果、将来的に大首領としてこの組織を纏める素質がある『矢澤コタロウ』という少年がいる事を知った)

 

(彼と『μ's』の力を利用すれば、私は多くの並行世界を思うがままにする事が出来る…そう確信した私はすぐに行動に移った)

 

(まず私は…大ショッカーではなくショッカーの一員として、世界の融合の影響でライダーとしての変身能力を得ていた『μ's』の中の七人の心を操った)

 

(そのうえ、予め眠らせていた彼の母親を人質として利用し…彼をショッカーに引き入れようとした)

 

(だが…彼は私の誘いを断り、あろう事か『ディケイド』に変身して刃向かってきた)

 

(一度逃がした残りのメンバーにも妨害され、追い詰められた私は…ダークキバを召喚して『μ'sの世界』を滅ぼしてしまった)

 

(それから私は…『μ'sの世界』に極めて性質が近い『A-RISEの世界』を乗っ取ろうとしていた)

 

(そんな時、私はと一人の少女から『矢澤コタロウ』が別の『μ's』が存在する世界で生存しているという事実を知らされた)

 

(私はすぐにその世界へと赴き…『ツカサ』と名乗っている彼が生きていた事を確認した)

 

(やがて少年とそれに同行する二人の少女が九つの世界を旅する事を知った私は…何度も彼らの身柄を狙った)

 

(そして、ついに…その時が来た)

 

ゼイビアックス「悪かったね、私の勝ちだ…」

 

(目の前には変身が解除され、ボロボロになって倒れている彼がいた)

 

ツカサ「…」ハァハァ

 

ゼイビアックス「さあ、私の物となれ…『ディケイド』」

 

ツカサ「こと、わ…る」

 

ゼイビアックス「ふーむ…どうやら君は、今の自分の置かれている立場というものが理解出来ていないようだな?」

 

ゼイビアックス「ならば、こうするまでだ…フン!」スッ

 

ツカサ「!…うっ、ああぁぁぁぁっ!?」

 

 

 

(大ショッカーの大首領となった俺は…高坂雪穂、絢瀬亜里沙に再会した)

 

ゴルドラ「偉大なる、大首領様に…敬礼!」

 

戦闘員「イーッ!」ビシッ

 

雪穂「ツカサが…大ショッカーの、大首領?」

 

亜里沙「違う、そんなの…何かの間違いだよ!」

 

シルバラ「おい…テメーら、頭が高ぇぞ!」

 

ツカサ「やめろ、シルバラ…俺は別に構わん」

 

シルバラ「大首領様…でもよぉ!」

 

ツカサ「聞こえなかったのか…?」ギロッ

 

シルバラ「!…わ、分かったよ」

 

亜里沙「ねぇ、あなたは…本当にツカサなの!?」

 

ツカサ「…俺は貴様らがよく知ってる、あのツカサだ」

 

亜里沙「!」

 

ツカサ「貴様らは実に良い仕事をした…大首領であるこの俺が、直々に褒めてやる」

 

雪穂「…それ、どういう意味?」

 

ツカサ「貴様らが九つの世界を巡る旅に同行してくれたおかげで…俺は記憶を取り戻した」

 

ツカサ「そして俺は…大ショッカーに、この世界を征服させようと思った」

 

雪穂「せ、征服!?」

 

ツカサ「ああ、消滅するよりはマシだろ?」

 

亜里沙「でもどうして…何で、そう思っちゃったの!?」

 

ツカサ「…ゼイビアックスとの戦いで、気付いたんだ」

 

亜里沙「何に…気付いたの?」

 

ツカサ「『μ'sの世界』の消滅を防ぐには、大ショッカーの大首領となって世界を征服するしかないと」

 

ツカサ「結局、全てを破壊し支配する事からでしか…世界を守る事も未来を創造する事も出来ないのだと」

 

ツカサ「それこそが…オレが気付いた、物事の道理というものだ」

 

亜里沙「そんな…でも、だからって大ショッカーなんかと一緒に世界を支配していい理由にはならないよ!」

 

雪穂「そうだよ!それに…全てを破壊するってどういうことなのさ?」

 

ツカサ「おいおい、まだ分からないのか?『μ's』の助けは来ないという…さっきの言葉の意味が」

 

亜里沙「へっ?」

 

(俺は…大ショッカー製のジャケットのポケットからとある九枚のカードを取り出し、雪穂や亜里沙達に見せつけた)

 

雪穂「『HONOKA』…って、お姉ちゃん?」

 

亜里沙「私のお姉ちゃんもいる…ほら、『ELI』って!」

 

ツカサ「そうだ、他にも『KOTORI』…『UMI』…『RIN』…『MAKI』…『NOZOMI』…『HANAYO』」

 

ツカサ「そして『NICO』…一体、この九枚のカードが何を意味すると思う?」

 

雪穂「急にそんなこと聞かれても…!」

 

ここあ「あ…ああっ!?」

 

こころ「そ、そんな…!?」

 

亜里沙「こころちゃん、ここあちゃん…?」

 

こころ「どうして…どうして、おねえさまたちがカードに!」

 

雪穂「えっ!?」

 

ここあ「うそだ、おねえちゃんたち『μ's』が…大ショッカーなんかにまけるはずないっ!」

 

亜里沙「『μ's』が負けてカードになるって…一体、どういうこと!?」

 

キバーラ「…アタシが説明するわ」

 

雪穂「キバーラ…!」

 

キバーラ「ツカサはディケイドの力を使って…この世界の『μ's』を無理矢理、あのカードの中に閉じ込めたの」

 

雪穂「!?…じゃあ、それって!」

 

亜里沙「お姉ちゃんたちを…倒しちゃったってこと?」

 

ツカサ「…ああ、その通りだ」

 

ツカサ「この世界の『μ's』は全員倒された…そう、大首領となった俺の手によってな」フッ

 

亜里沙「何で…どうしてみんなをカードなんかにしちゃったの!?」

 

ツカサ「カードにした全ての『μ's』メンバーを集める…それこそが奴らを消滅させない為の一番の方法だと思ったからだ」

 

ツカサ「それに奴らをこの中に閉じ込めておけば…『μ's』は永遠にスクールアイドルとして、存在し続ける事も出来る」

 

亜里沙「違うよ、ツカサ…お姉ちゃんたちはそんなこと望んでなんかないよ!」

 

亜里沙「だって、穂乃果さん…言ってたもん」

 

穂乃果『私達《μ's》はこのライブをもって、活動を終了することにしました…』

 

穂乃果『私達はスクールアイドルが好き…学校のために歌い、みんなのために歌い、お互いが競い合い、そして手を取り合っていく』

 

穂乃果『そんな…限られた時間の中で、精いっぱい輝こうとするスクールアイドルが大好き!』

 

穂乃果『《μ's》はその気持ちを大切にしたい…みんなと話して、そう決めました』

 

亜里沙「スクールアイドルの時間は永遠じゃない…だからこそ、強く輝けるんだって!」

 

ツカサ「…本当に貴様らはそれで良いのか?」

 

亜里沙「えっ…?」

 

ツカサ「心の奥底では寂しいと思っているんじゃないのか?…憧れであり、貴様らの目標だった『μ's』が活動を終えてしまって」

 

亜里沙「違う、そんなことないよ…私たちは!」

 

ツカサ「『μ's』にはなれない」

 

亜里沙「…!」

 

ツカサ「そうだろう?だからこそ、本当は貴様の姉を含めた三年生の三人が卒業しても…『μ's』にはずっと活動を続けてほしかったと思っているはずだ」

 

ツカサ「何故なら、貴様らの大好きな『μ's』に…貴様らが入る事なんて出来ないのだからな」フッ

 

亜里沙「…」

 

ツカサ「だから俺は奴らを破壊したんだよ…『μ's』の新しい可能性を創造する為に」

 

ツカサ「何故なら創造する事は…破壊する事からでしか、生まれないのだからな」

 

ゴルドラ「そして、ここからが本番だ…大首領様の新たな旅が始まる」

 

シルバラ「それこそが大ショッカーによる、全ての世界の征服だ!」

 

ゴルドラ「大首領様が立てた完璧な作戦に…敬礼!」

 

戦闘員「イーッ!」ビシッ

 

亜里沙「…っ」ペタン

 

ここあ「そんな…!」

 

こころ「ほんとうに、おねえさまたちが…?」

 

雪穂「…」

 

キバーラ「ツカサ…あなた、まさか本当に世界の破壊者になったつもりなの?」

 

ツカサ「…俺はかつてお仕着せで、するべき事を決めていた」

 

ツカサ「だが今は、自分のするべき事は自分で決めている!」

 

雪穂「…それが、お姉ちゃん達をカードに閉じ込めることだって言うの?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「そんなの…本当の悪魔や破壊者がすることだよ」

 

ツカサ「そうだ、俺は全ての破壊者だ…俺はそれを受け入れた」

 

雪穂「!!」

 

ツカサ「それだけの事だ…そして、それが俺の選んだ道だ」

 

キバーラ「そう…あなたはもう、アタシ達の知ってるツカサじゃなくなったのね?」

 

ツカサ「何を馬鹿な事をほざいている…そもそも今までの俺は、本当の俺じゃない」

 

ツカサ「本当の俺は…今からこの宇宙にある数多の並行世界を支配する大ショッカーの大首領だ!」

 

ツカサ「そう、この『μ's』の力を使って…全ての世界をな」ニヤリ

 

雪穂「ツカサ…それ、本気で言ってるの?」

 

亜里沙「!…雪穂?」

 

雪穂「本気で言ってるんだったら…私、許さないから」

 

ツカサ「フッ…当然だ」

 

雪穂「…そう、だったら」スッ

 

(そう言って、雪穂は…青い鞄からディエンドライバーを取り出した)

 

亜里沙「!?」

 

キバーラ「雪穂、まさかあなた…!」

 

雪穂「そうだよ…私が、私がディケイドを倒す!」

 

雪穂「お姉ちゃん達を取り戻せるなら…私はツカサを倒してみせる!!」スチャッ

 

(雪穂は持っていたディエンドライバーを…俺に向けて構えていた)

 

亜里沙「!?」

 

ツカサ「そうか…なら、相手になってやるよ」スッ

 

(それを見た俺も…ディケイドライバーを腹部に装着した)

 

亜里沙「待ってよ、雪穂…こんなことしても!」

 

雪穂「…亜里沙、これお願い」スッ

 

亜里沙「!…このカメラ、ツカサの」

 

雪穂「…」スタスタ

 

亜里沙「あっ…雪穂!」

 

ゴルドラ「大首領様…私達が相手をしなくても良いのですか?」

 

シルバラ「あんなガキ、俺一人でも簡単に捻り潰せるぜ?」

 

ツカサ「貴様らはそいつを連れて戻れ…こいつらの始末は俺がやる」

 

虎太郎「…」

 

シルバラ「でもよ…」

 

ツカサ「貴様らは俺の支配下にある、故に大首領である俺の命令は絶対だ…良いな?」ギロッ

 

ゴルドラ「!…分かりました、行くぞ」スタスタ

 

シルバラ「ま…待ってくれよ、兄ちゃん!」ダッ

 

(俺の命令によってゴルドラとシルバラは虎太郎を連れて…その場を後にした)

 

ここあ「こたろう!」

 

こころ「まってください!」

 

雪穂「…動かないで」バッ

 

ここあ「ゆきほおねえちゃん…とめないでよ!」

 

こころ「このままではこたろうが…!」

 

雪穂「いいから動かないで!!」

 

ここあ「…!」

 

雪穂「大丈夫…全部、私一人で終わらせるから」スッ 

 

こころ「ゆきほさん…!」

 

ツカサ「…」スッ

 

(一枚のカードを取り出した雪穂を見て…俺もカードを取り出した)

 

亜里沙「雪穂、ツカサ…待って!」

 

ツカサ「…変身」

 

雪穂「変身っ!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は何を見る?~

 

 

 

ハナヨ「ピャアッ!?」ゴロゴロ

 

(別のファンガイア達のライフエナジーによって生き返ったバットファンガイアの攻撃を受け…私の変身は解けてしまった)

 

バットファンガイア・リボーン「…」スタスタ

 

ハナヨ「うぅ…」

 

(ダメ…このままじゃ、私は負けちゃう)

 

(やっぱり、人間とファンガイアが一緒に手を取り合える世界を作るなんて…私には無理だったのかな?)

 

ハナヨチャーン!

 

ハナヨ「…?」

 

(私が声のする方向を見ると…そこにはシズカちゃんと私のお母さんがいた)

 

シズカ「負けないでー!」

 

ハナヨ「シズカちゃん…!」

 

(シズカちゃんの横にいたお母さんは…私に手話でこう励ましてくれた)

 

ハナヨの母『ハナヨちゃん、諦めないで…!』

 

ハナヨ「…お母さん」

 

ハナヨの母『あなたのそばには…私達がいる』

 

ハナヨ「!…そうだ」

 

(私は…ツカサくんのある言葉を思い出した)

 

ツカサ『アンタは一人じゃない、オレ達はいつでも…アンタが前に進むのを待ってる』

 

(そうだよ、今の私には…お母さんやキバットやシズカちゃん達がいる)

 

(それにあの時…ツカサくんや雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんが励ましてくれたから私は変われたんだ)

 

ハナヨ「だったら、私は…!」

 

再生バットF「…」スッ

 

シズカ「危ない!」

 

(バットファンガイアが私に攻撃しようとしたその時…キバットとタツロットが飛んできた)

 

タツロット「びゅんびゅーん!」ズバッ!

 

キバットバットⅢ世「させるかー!」ゴッ!ガッ!

 

再生バットF「!?」フラッ

 

ハナヨ「キバット、タツロット…!」

 

キバット「おい、ハナヨ…まだ戦えるか!?」バサバサ

 

ハナヨ「…うん!」

 

タツロット「そうこなくっちゃ…ドラマティックにいきましょう!」

 

(私はキバットを掴むと、そのまま手に噛みつかせ…)

 

キバット「ガブッ!」

 

ハナヨ「…変身!」

 

タツロット「テンションフォルテッシモ!」

 

(キバットをお腹のベルトに、タツロットを左腕に着けた私は…キバ・エンペラーフォームに変身した)

 

キバ「…はぁっ!」ドカッ!

 

再生バットF「!?」

 

(封印の鎖を解き放って本当のキバになった私のキックを受けて…バットファンガイアは吹き飛ばされた)

 

再生バットF「グゥゥ…ウガァァァァァ!!」ダッ

 

キバ「ふっ…!」サッ

 

(すぐに起き上がって走ってきたバットファンガイアを…私はキバの紋章の形をしたエネルギー波で捕まえて動けないようにした)

 

再生バットF「!」

 

キバ「はぁっ…!」パシッ

 

(ザンバットソードを手にした私は、ザンバットバットのウェイクアップフエッスルをキバットに吹かせると…)

 

~♪

 

(ザンバットソードにくっついたザンバットバットをスライドさせ、剣を研いだ)

 

再生バットF「…!?」

 

キバ「ふっ!」ダッ

 

(赤く光るザンバットソードで私は…バットファンガイアに向かって『ファイナルザンバット斬』で攻撃していった)

 

キバ「やぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

コトリ「…」

 

(私は…敵のイマジンさんに大きな鎌を向けられていた)

 

デスイマジン「終わりだ…今度こそ、消えろ」

 

コトリ「…ってない」

 

デスI「?」

 

コトリ「まだ、終わってないよ…!」

 

デスI「…何?」

 

コトリ「そうだよ…だって」スッ

 

(私はツカサくんからもらった写真をポケットから取り出した)

 

ツカサ『オレはこの写真をアンタに譲る事にする…だから、変わる事を恐れるな』

 

(ツカサくんや雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんが…勇気付けてくれたおかげで…今の私はここにいる)

 

(例え、モモちゃん達やツカサくん達とは離れた時間や世界にいても…私が覚えている限り、いつでもそばで繋がっている)

 

コトリ「私はもう…変わることも恐れないし、変わらないものも大事にしたいから」

 

デスI「貴様、何を言っている…?」

 

コトリ「だから…悪いけど、この時間は消させないよ!」

 

デスI「意味の分からん事を…消えろ!」ブンッ!

 

コトリ「…!」

 

ガキンッ!

 

(大きな鎌が振り下ろされたと思ったその時…誰かの剣が私を守るように受け止められた)

 

コトリ「?…えっ!?」

 

モモ「アンタ、コトリに何しようとしてんのよ…」

 

デスI「!?」

 

モモ「はぁっ!」ザシュッ!

 

デスI「グッ…!」

 

(モモちゃんの攻撃で…敵のイマジンさんは後ろに下がった)

 

コトリ「モモちゃん!」

 

モモ「よく頑張ったわね…コトリ」

 

(私の周りにはウラちゃんやキンちゃん、リュウちゃん…そしてオーナーが他のイマジンさん達と戦っていた)

 

オーナー「コトリ…お待たせしました!」

 

コトリ「みんな…それぞれ別の時間に残って戦ってたはずなのに、どうして?」

 

ウラ「えっと…それが、パナが私達を迎えに来てくれてね?」

 

コトリ「ふぇっ?」クルッ

 

(私が後ろを向くと…そこには開いたデンライナーのドアから大きく手を振るパナちゃんがいた)

 

パナ「みんな、頑張ってぇ~!」ブンブン

 

コトリ「パナちゃん…」

 

キン「さすがパナちゃん、だよねっ!」

 

リュウ「うんうん…パナちん、さすがだニャ~!」

 

デスI「貴様ら…自分達が消えても構わないというのか!?」

 

モモ「うっさいわね…もうアンタ達のそういう話にはうんざりしてるのよ!」

 

キン「これ以上、あなた達が悪さしようって言うのなら…私達が相手になるよっ!」

 

デスI「おのれ…裏切り者共が!」

 

オーナー「この時間は私が守ります…家臣一同、心おきなく働きなさい!」

 

モモ「誰が家臣よ!?アンタに言われなくたってみんなで守るのよ!…そうでしょ、コトリ?」

 

コトリ「モモちゃん…うん!」スッ

 

モモ「…」フフッ

 

コトリ「変身…!」

 

『ライナーフォーム』

 

(ケータッチが付いたデンオウベルトをお腹に巻いた私は…電王・ライナーフォームに変身した)

 

デスI「…貴様ら、全て潰す!」ダッ

 

(私は変身してからすぐにデンカメンソードを呼び出して…ライダーパスをセットした)

 

電王「わぁっ!?」ヨロッ

 

パナ「コトリちゃん、大丈夫!?」

 

電王「やっぱり、これ…重いよぉ~」

 

モモ「何言ってんのよ、コトリ…これが正真正銘のクライマックスよ!」

 

ウラ「大物、釣り上げちゃいましょう!」

 

キン「コトリちゃんの強さに、みんなが笑って泣いた!」

 

リュウ「やってくれるかニャ?もちろん答えは聞いてないっ!」

 

オーナー「満を持して…頼みましたよ?」

 

電王「みんな…うんっ!」

 

『モモソード』

 

『ウラロッド』

 

『キンアックス』

 

『リュウガン』

 

『モモソード』

 

(デンカメンソードの仮面を回した私は…目の前に伸びていくオーラの線路『デンレール』に乗った)

 

電王「よっ…はぁ~っ!」

 

デスI「なっ、何!?」

 

(『デンレール』に乗った私は…四台のデンライナーのオーラと一緒に敵のイマジンさんに向かっていく)

 

モモ「今よ…アンタの技の名前、言ってみなさい!」

 

電王「え?技の名前…えっと、電車斬りっ!」

 

全員「ええっ?何でそれ~!?」

 

(私はそのまま、デンカメンソードで…敵のイマジンさんに突撃していった)

 

電王「やぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

エリ「…」

 

(私は…囚われたアリサと苦戦しているガタックを助ける為、ZECTの最高幹部に擬態していたグリラスワームと対峙していた)

 

ガタック「エ、エリ…!」ハァハァ

 

アリサ「…」

 

エリ「ヒヨリ、早くアリサを連れて…ここから離れて」

 

ガタック「う…うん、分かった!」ダッ

 

グリラスワーム「カブト…貴様、生きていたのか?」

 

エリ「私は世界そのもの…世界がある限り、私はある」

 

エリ「もうすぐ散ってしまう野望と一緒に…あなたも天に昇るが良いわ」

 

グリラスW「フッ…己自身さえ変えられない、愚かな人間が!」

 

エリ「それがあなたの限界よ…」

 

グリラスW「何?」

 

エリ「変わろうと思いさえすれば、人間は変われる…もちろんそれはネイティブも同じよ」

 

グリラスW「馬鹿馬鹿しい…貴様らのような人間とネイティブを一緒にするな!」

 

エリ「人間もネイティブもないわ…この世界に生けとし生けるもの、総ての命は皆等しいの」

 

エリ「他者の為に自分を変えられる事こそが総てに繋がる道よ…自分の為に世界を変えるんじゃない」

 

エリ「自分が変われば、世界は変わる…それが天の道!」

 

グリラスW「愚かな…貴様一人で何が出来る?」

 

エリ「…あなた、何も分かっていないみたいね」

 

グリラスW「どういう事だ…?」

 

エリ「…」スッ

 

(私は天を指差しながら…ツカサのあの言葉を思い出していた)

 

ツカサ『…大丈夫だ、オレがそばにいる』

 

(そう、別の世界で旅をしているツカサや亜里沙…雪穂ちゃんが私のそばにいる)

 

エリ「私には支えてくれる仲間がいるの…だから、一人じゃない」

 

グリラスW「フン…ならばハッキリ言おう、私に従わない貴様らのような人間は必要無い!」

 

グリラスW「この世界は…私の物になるのだからな!」

 

エリ「…所詮、あなたはその程度よ」パシッ

 

(カブトゼクターとハイパーゼクターが空から飛来してきたのを確認した私は…カブトゼクターをその手で掴んだ)

 

エリ「変身!」

 

『Henshin…Cast Off…Change Beetle』

 

(私がカブトゼクターをベルトに嵌めてキャストオフすると同時に、ハイパーゼクターがベルトの左腰に装着され…)

 

エリ「ハイパーキャストオフ!」

 

『Hyper Cast Off』

 

(カブトゼクターの角を引きながらハイパーゼクターの角を押し下げた私は…そのままカブト・ハイパーフォームへの変身を完了させた)

 

『Change Hyper Beetle』

 

グリラスW「ッ…カブトォォォォォ!!」ダッ

 

カブト「…」スッ

 

『Maximum Rider Power』

 

(グリラスワームが接近してくる間に、私はまずハイパーゼクターの角を押し倒し…)

 

『One,Two,Three…』

 

カブト「ハイパー…キック!」

 

(カブトゼクターのボタンを順番に押し…角を一度戻してから、再び展開させた)

 

『Rider Kick』

 

カブト「ふっ!」バッ

 

グリラスW「!?」

 

(それからすぐに飛び上がった私は…グリラスワームに向かって、強烈なキックを放った)

 

カブト「はぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

ノゾミ「…ここやね」

 

(ウチは…とある場所にある鬼石の前にやってきた)

 

ノゾミ「悪い気がいっぱいやね…」

 

(最近、普通の魔化魍だけじゃなく…夏にだけ出る魔化魍や改造されて生まれた魔化魍までが無秩序に現れるオロチ現象が起きていた)

 

(この現象を鎮めるには…妨害してくる魔化魍を倒しながらここにある鬼石を太鼓の音撃で叩き、土地ごと清めの音で浄化する必要があった)

 

(本当ならその役目はあだっちがするはずだったんやけど…ウチはあだっち達を置いて、一人でここに来た)

 

ノゾミ「ごめんな…あだっち」キィン…

 

(音叉を装甲声刃《アームドセイバー》の剣の先に当てて鳴らしたウチは…音叉を額にあてた)

 

ノゾミ「響鬼、装甲…!」

 

(ウチは真っ赤な炎とやってきた赤銅色のアームドディスクアニマル達を全身に纏わせ…装甲響鬼になった)

 

響鬼「はぁっ!…うん、これならええ感じやね」スッ

 

(ウチは音撃棒『烈火』を二本のうち一本だけ取り出して、鬼石を叩き始めた)

 

響鬼「…よっ、ほっ!」ドンッ!

 

(その直後、大量の魔化魍が出てきて…ウチに襲いかかってきた)

 

響鬼「もう…ジャマ、せんといてっ!」ズバッ!

 

(ウチは左手に持った『烈火』で鬼石を叩きながら…右手の装甲声刃で魔化魍を斬りつけていた)

 

ドカッ!

 

響鬼「きゃっ!…あっ!?」

 

(後ろにいた魔化魍に攻撃されたウチは、装甲声刃を放してしまい…装甲声刃はウチから少し離れた場所へと飛んでいってしまった)

 

響鬼「装甲声刃が…えいっ!」ドンッ!

 

(ウチはもう一本の『烈火』を取り出して反撃するけど…魔化魍の数はどんどん増えていく一方やった)

 

響鬼「このままじゃ…!」

 

(ウチがふと地面を見ると…一枚の写真を落としていた事に気が付いた)

 

響鬼「この写真は…」ピラッ

 

(ウチは…ツカサくんが写った写真を拾いながら、ある言葉を思い出していた)

 

ツカサ『誰かの為に慈しむ優しさを持っている鬼こそが…本当に強い鬼なんだ!』

 

(そうだ…ウチはツカサくんに鬼として、大切な事を思い出させてくれた)

 

(ツカサくんや雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんに出逢えたから…ウチはまたこうして鬼になって戦っている)

 

(だから、ウチは…!)

 

ノゾミー!

 

響鬼「!…この声」クルッ

 

(ウチが声のする方を向くと…そこにはあだっちがいた)

 

サキ「あなたね…何でもかんでも、一人で全部背負い込もうとするんじゃないわよ!」

 

響鬼「…あだっち」

 

サキ「もっと私やお父さんや後輩達を頼りなさいよ…あなたは、私達の大切な仲間なのよ!?」

 

響鬼「!」

 

サキ「だから…これを、受け取りなさい!」ブンッ!

 

(あだっちは…拾った装甲声刃をウチに向かって投げた)

 

響鬼「あだっち…うん!」パシッ

 

(装甲声刃をキャッチしたウチは魔化魍を次々と倒しながら、また浄めの力を注入しようと『烈火』で鬼石を叩いていった…)

 

響鬼「やっ、はっ…はぁぁぁっ!!」ドンッ!ドンッ!ドンッ!

 

 

 

ウミ「…大丈夫ですか?」ハァハァ

 

女性「え、ええ…」

 

(私は…BOARDの元研究員だったサヨコさんと一緒に、山の中を逃げていました)

 

(人々の未来に役立てる為に、アンデッドについて研究していたサヨコさんは…実験で人工的なアンデッドを造り出す事に成功しました)

 

(しかし、その内の一体である人工ジョーカーアンデッドが覚醒し…すぐにサヨコさんを襲おうとしたのです)

 

人工ジョーカーアンデッド「…」

 

ウミ「!…サヨコさん、ここはあなただけでも逃げてください」

 

サヨコ「でも…」

 

ウミ「私の事は気にしないでください…さあ、早く!」

 

サヨコ「園田さん…っ!」ダッ

 

(サヨコさんを逃がし、私は…人工ジョーカーアンデッドと対峙していました)

 

ウミ「あなたは、ジョーカーアンデッドなんかじゃない…ただの紛い物です!」

 

人工ジョーカーU「…」スッ

 

『Spirit』

 

(ジョーカーラウザーにハートの2のラウズカードを通した人工のジョーカーアンデッドは…アマネと瓜二つの姿に変わった)

 

偽アマネ「…」

 

ウミ「なっ…!?」

 

偽アマネ「この姿なら手を出せないよね…だって、私はあなたの仲間だから」

 

ウミ「…っ!」

 

偽アマネ「ハハッ…アハハハハッ!」

 

バチン!

 

(私が偽者のアマネに張り手をお見舞いすると…吹き飛ばされた偽者のアマネはしばらく坂を転がっていきました)

 

偽アマネ「グハッ…!?」ゴロゴロ

 

ウミ「絶対に許せません…アマネの姿で、そんな事を言うなんて」

 

ウミ「あなたは最低…いえ、それ以下です!」

 

偽アマネ「貴様…!」

 

(偽者のアマネは憤慨しながら…人工ジョーカーアンデッドに姿を戻しました)

 

人工ジョーカーU「貴様ァァァァァ!!」ダッ

 

ウミ「こうなれば、十三体のアンデッドと融合した状態のブレイドで挑むしか…!」

 

(私は迷っていました…何故なら、その形態のブレイドではアンデッドになってしまう大きなリスクが伴っていたからです)

 

(もし私がアンデッドになれば…世界は滅んでしまう)

 

(ですが、このアンデッドを倒さなければ…サヨコさんやシオリやこの世界の人々が危険な目に遭ってしまう)

 

ウミ「一体、どうすれば…!」ハッ

 

(私は…あの時のツカサの言葉を思い出していました)

 

ツカサ『彼女が戦っているのは…仲間や人々を守る為だ!』

 

(そうです…あの時、私のそばにはツカサや亜里沙や雪穂がいてくれました)

 

(きっとツカサなら、アンデッド化して暴走した私を封印する為に再びこの世界に来てくれるはず…ならば)

 

ウミ「私はもう…迷いません!」

 

(スペードのAのラウズカードを挿入したブレイバックルを腹部に装着した私は…バックルのハンドルを引きました)

 

ウミ「変身!」

 

『Turn Up』

 

(回転したバックルの一部分から金色のオリハルコンエレメントが目の前に現れ…私はそれを通過しました)

 

人工ジョーカーU「!?」

 

(私は…ラウズアブソーバーにスペードのQとKのカードを通す事なく、ブレイド・キングフォームに変身していました)

 

ブレイド「…」スッ

 

(キングラウザーを手にした私は…自動的に五枚のギルドラウズカードをキングラウザーに読み込ませました)

 

『Spade Two』

 

『Spade Three』

 

『Spade Four』

 

『Spade Five』

 

『Spade Six』

 

『Straight Flush』

 

ブレイド「はっ…!」

 

人工ジョーカーU「グッ…!!」ダッ

 

(ブレイラウザーを召喚した私は、エネルギーを込めた二つの剣で人工ジョーカーアンデッドに斬りかかっていきました…)

 

ブレイド「やぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

マキ「…うっ!」ゴロゴロ

 

(オルフェノクの王と呼ばれるアークオルフェノクの攻撃を受けた私は…ウルフオルフェノクの姿から戻ってしまった)

 

マキ「うぅ…!?」サァァ…

 

(灰化しかけている自分の右手に気付いた私は…オルフェノクとしての寿命がもうすぐ終わりを迎えている事を悟った)

 

アークオルフェノク「…」スタスタ

 

(アークオルフェノクは…ゆっくりとこっちに近付いてくる)

 

マキ「やっぱり、オルフェノクの私にはもう…!」ハッ

 

(その瞬間、私はツカサのある言葉を思い出した)

 

ツカサ『マキはマキだ』

 

(そうだ…あの時、ツカサや雪穂や亜里沙が『私は私』だと教えてくれたから今の私がいる)

 

(ツカサ達がそばにいてくれたから…私はあの時、皆の夢を守る為に戦おうと思えた)

 

マキ「だったら尚更…負ける訳には、いかないじゃない!」

 

アークO「…!」スッ

 

(アークオルフェノクが右手の人差し指から鞭を伸ばそうとした時…誰かがアークオルフェノクを斬りつけた)

 

?「はぁっ!」ズバッ!

 

アークO「!?」

 

(それは…ホースオルフェノクに姿を変えたユカだった)

 

マキ「ユカ…どうして?」

 

ホースオルフェノク「一体、どうすれば正しかったのか…まだアタシには分かんねぇ」

 

ホースO「だから、その答えをアンタが…アタシに教えてくれ」

 

マキ「…!」

 

マキチャーン!

 

(その直後、ファイズドライバーとファイズブラスターの入った鞄が私の目の前に投げ込まれ…私は何とかそれをキャッチする)

 

マキ「うぇえ!?…マコちゃん!」

 

マコ「やっぱりファイズは…マキちゃんでなくちゃ!」

 

マキ「!…ええ、そうね」フフッ

 

(ベルトを巻いて立ち上がった私は…右手に持っていたファイズブラスターの『5』キーを三回押し、最後に『ENTER』キーを入力した)

 

『Standing By』

 

マキ「ユカ…それなら、一緒に見つけましょう?」

 

ホースO「!…マキ」

 

マキ「私達の答えを、私達の力で…変身!」

 

『Awakening』

 

(ファイズフォンをファイズブラスターに挿した瞬間、全身を赤い光が包み込み…私はファイズ・ブラスターフォームに変身した)

 

アークO「…!」ダッ

 

ホースO「やぁっ!」ズバッ!

 

(アークオルフェノクが攻撃しようとする前にホースオルフェノクが剣で斬りつけていく)

 

アークO「!?」

 

ホースO「今だ!」

 

ファイズ「…!」コクリ

 

(アークオルフェノクが怯んでいる隙に私は…ファイズブラスターに『5214』と入力した)

 

『Faiz Blaster Take Off!』

 

(飛び上がった私は『143』と『ENTER』キーを連続で入力すると…)

 

『Blade Mode』

 

『Exceed Charge』

 

ファイズ「…はっ!」

 

(私はそのまま『フォトンブレイカー』という技で…アークオルフェノクに向かって突撃していった)

 

アークO「!!」

 

ホースO「…マキ!」

 

マコ「マキちゃーん!!」

 

(例えこの身が滅んでも、私は今ある全ての力でアークオルフェノクを倒そうとしていた…)

 

ファイズ「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

リン「…」

 

(ミラーワールドから出てきたリンは…はぐれていた小さい女の子が、お母さんと会って抱き合っているのを見かけた)

 

女の子「ママ!」ギュッ!

 

母親「良かった、無事で…!」グスッ

 

リン「…ふふっ」

 

(リンはツカサくんに言われたことを思い出していた)

 

ツカサ『答えなんて、簡単に出るもんじゃない…だから、リンが決めろ』

 

(そうだよ…ツカサくんや雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんが応援してくれたおかげでリンは変われたんだ)

 

(だから、リンは…ずっと悩みながらもみんなを守るためにモンスターと戦うことができた)

 

リン「やっと…ちょっとだけ、答えらしいものが…見つかったかもしれない…ニャ」

 

リン「でも…何かリン、もうダメ…かも」ドサッ

 

(リンは車にもたれかかるように倒れた)

 

ユイ「!?…リン!」ダッ

 

ユイ「ちょっと、リン…リン!」ユサユサ

 

リン「…ユイ、ちゃん?」

 

ユイ「リン…どうかしたの?」

 

リン「べ、別に…ちょっと、張り切りすぎた…だけニャ」

 

ユイ「でも…!」

 

リン「大丈夫、大丈夫…平気ニャ」

 

(ユイちゃんを心配させないようにリンが立ち上がると…車のミラーの向こうからまたあの音が聞こえてきた)

 

リン「!」クルッ

 

キィン…キィン…

 

(車のミラーの向こうには…大量のモンスターがいた)

 

レイドラグーン『…』

 

リン「…行かなきゃ」

 

ユイ「待って…もうこれ以上、無理をしないで!」

 

リン「…ユイちゃん」

 

ユイ「あなたには、これからも生きていてほしいの…!」

 

リン「ふふっ…嬉しいニャ」

 

ユイ「…えっ?」

 

リン「まさかユイちゃんが、リンにそんな風に思っててくれてたなんて…ありがとね?」ニコッ

 

ユイ「!…リン、待って」

 

リン「…」スッ

 

(リンが車のガラスにカードデッキを向けると…お腹にベルトが着けられた)

 

リン「変身!」

 

(カードデッキをベルトにはめたリンは…龍騎・サバイブに変身した)

 

龍騎「…ニャッ!」ダッ

 

ユイ「リン…行かないで、リン!!」

 

(リンは敵のモンスター達と戦うために…ミラーワールドの中へと入っていった)

 

龍騎「さあ、行っく…ニャ」スッ

 

『シュートベント』

 

(リンは契約モンスターのドラグランザーが吐く炎と一緒に、ドラグバイザーツバイから出すビームでモンスター達を一気にやっつけようとした…)

 

龍騎「っ…ニャアァァァァッ!!」

 

 

 

(私とユキホは…一日の店じまいをした穂むらで片付けをしていた)

 

ホノカ「本当に良かったよね…マナちゃんがまた、お母さんと一緒に暮らせるようになって!」

 

ユキホ「うん…そうだね」

 

ホノカ「一緒にいられないのは寂しいけど…高校もユキホと同じあかつきに入ってくれるみたいだし、本当に良かったよ~!」

 

ユキホ「…私もだよ」

 

ホノカ「そうだよね…やっぱりマナちゃんと高校に行けるの、嬉しいよねっ!」

 

ユキホ「いや、それもだけど!…お姉ちゃんとあかつきに行けるっていうのが嬉しいの」

 

ホノカ「…へっ?」

 

ユキホ「ほら…あかつきが廃校にならなくなったのも、お姉ちゃん達がスクールアイドルを始めて頑張ってくれたからだしさ」

 

ユキホ「だから、私もそれに応えたいなって…」

 

ホノカ「ユキホ…ありがと~!!」ギュッ

 

(私はユキホを抱きしめた)

 

ユキホ「ちょっ、お姉ちゃん…恥ずかしいからやめてよ!?」

 

ホノカ「あっ…ごめんごめん」

 

ユキホ「全く、もう…!」

 

(ユキホから離れた私は…あの時、ツカサくんが言ったある言葉を思い出していた)

 

ツカサ『歌う事が好きであるなら…勝利の女神は、必ず微笑んでくれるさ』

 

(私がスクールアイドルになって廃校を阻止することができたのは…ツカサくんや雪穂、亜里沙ちゃんが励ましてくれたから)

 

(そして…別の世界の私達が、スクールアイドルの素晴らしさを広めてくれたから)

 

(だから私達もこれからもっともっとスクールアイドルとして頑張らなきゃ…そうだよね、ツカサくん?)

 

(ツカサくんや別の世界の私達が、この世界の未来を変えてくれたように…きっと私にもこの世界の未来を変えることができるよね?)

 

(だって私は…高坂ホノカ、なんだから)

 

ホノカ「いつか、私にも広められるかなぁ…スクールアイドルの素晴らしさを」ボソッ

 

ユキホ「えっ…何か言った?」

 

ホノカ「あっ、ううん…何でもないよ!」

 

ユキホ「ホントに?…だと良いんだけど」

 

ホノカ「あはは…!?」

 

(私は…久しぶりにアンノウンがみんなを襲おうとしている気配を感じ取った)

 

ユキホ「…もしかして、アンノウンが?」

 

ホノカ「うん…私、ちょっと行ってくるね!」ダッ

 

ユキホ「えっ…ちょっと、お姉ちゃん!?」

 

ホノカ「後片付けよろしくね~!」ガラッ!

 

(穂むらを出た私は…急いでアンノウンがいる場所まで走って行った)

 

地のエル「…」

 

ホノカ「ちょっと待ったぁぁぁっ!」

 

地のエル「!…AGITΩ」

 

ホノカ「叶え、もう一つの…夢」グッ

 

(私は空でまぶしく輝いている太陽に手を伸ばすと…それを掴むようにグーを作った)

 

地のエル「…何?」

 

ホノカ「…」サッ

 

(そしてお腹のベルトを出現させて、集中しながらポーズを構えた私は…)

 

ホノカ「変身!」

 

(ベルトの左右のスイッチを同時を押して…アギト・シャイニングフォームに変身した)

 

アギト「…」

 

地のエル「フン…」

 

アギト「…ふっ!」ダッ

 

(これからもみんなの居場所を守るため、シャイニングカリバー・ツインモードを持った私は『シャイニングクラッシュ』という技でアンノウンに立ち向かっていった…)

 

アギト「はぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

ブゥゥゥン…キキッ!

 

ニコ「…ふぅ」カポッ

 

(ビートチェイサー2000に乗ったニコは…新型マシンのビートチェイサー3000に乗ったママと一緒に、猛吹雪の山の中まで来ていた)

 

ニコの母「ふぅ…」カポッ

 

(バイクを降りてヘルメットを脱いだニコは…同じようにヘルメットを脱いだママにこう言った)

 

ニコ「ママのお友達のツバキ先生に診てもらったんだけど…ベルトの傷、やっぱりまだ治ってなかったみたい」

 

ニコの母「!」

 

ニコ「だから、狙う時は…ここをお願いね?」ツンツン

 

(ニコはベルトが埋め込まれた自分のお腹をつついた)

 

ニコの母「ニコ…」

 

ニコ「もちろん…もしニコが究極の闇をもらたす存在になっちゃったら、だけどね?」

 

ニコの母「…あなたにこんな寄り道は、させたくなかった」

 

ニコ「えっ?」

 

ニコの母「あなたには…スクールアイドルだけ、していてほしかった」

 

ニコ「…!」

 

ニコの母「娘であるあなたにここまで付き合わせてしまって…私は母親としても、警察官としても失格だわ」

 

ニコ「…そんなことないわ、ママ」

 

ニコの母「!」

 

ニコ「ニコ、クウガになって…良かったなって思ってるの」

 

ニコ「だってママと一緒の時間をたくさん過ごせたんだもん…だから、本当にありがとね?」

 

ニコの母「ニコ…!」

 

ニコ「…にっこにっこにー!」ニコッ

 

(それだけじゃない…ツカサのあの言葉があったから、私は変わる事が出来た)

 

ツカサ『アンタが皆を笑顔にさせられるように…オレが全力で支えてやる!』

 

ツカサ『オレが一緒に戦ってやる!』

 

ツカサ『だから、アンタは…一人じゃない!』

 

(不思議な話よね…まさか『別の世界からやって来た弟』に顧問兼マネージャーとして励まされるなんて)

 

(でもあの時、ツカサがそばにいてくれたから…今まで私はスクールアイドルとしてもクウガとしても頑張れた)

 

(だから、私は…!)

 

ニコの母「ふふっ…にっこにっこにー!」

 

ニコ「じゃあ、見ててね?…ニコの変身」

 

ニコの母「…ええ、分かったわ」

 

ニコ「…」クルッ

 

(ママに背を向けた私が、自分のお腹に両手をかざすと…ベルトが現れた)

 

ニコ「…」サッ

 

(無言で変身の構えを取った私は、少しずつ身体が黒く変化し…四本角で赤い目のクウガ・アルティメットフォームに変身した)

 

クウガ「…」

 

ニコの母「…!」

 

クウガ「…」ダッ

 

(雪の中を走って行った私は…全身、真っ白な服を着た男の子を見つけた)

 

(その男の子の顔は…ツカサによく似ていた)

 

?「なれたんだね…究極の力を、持つ者に」

 

クウガ「…」

 

(男の子は微笑みながら…未確認生命体第0号に姿を変えた)

 

ン・ダグバ・ゼバ「…」スッ

 

(0号は『超自然発火能力』と呼ばれる力で、私の身体を燃やそうとしたけど…今の私には効果が無かった)

 

クウガ「…」スッ

 

(私も同じように『超自然発火能力』で0号の身体に火を着けたけど…効果は無いように見えた)

 

ダグバ「フフッ…ハァッ!」ダッ

 

(お互いに『超自然発火能力』を止めると…第0号は笑いながらこっちに向かって走ってきた)

 

クウガ「!」

 

(これからも私は皆の笑顔を奪おうとする未確認を止めるために戦う…例え、今は涙を流してしまっても)

 

(いつの日かまた、必ず笑顔でステージに立って…皆を笑顔にさせてみせる)

 

(だって私はクウガで、皆の笑顔を守る『スクールアイドル』なんだから…)

 

クウガ「…はぁぁぁぁっ!!」ダッ

 

 

 

にこ「はっ!?」ガバッ

 

にこ「今の夢って…!」ツー…

 

にこ「あれ…私、何で泣いてるの?」ゴシゴシ

 

にこ「それに、身体まで重たいような…!?」

 

穂乃果「ぐぅ…」Zzz…

 

絵里「ふふっ、おばあさま…」スースー

 

にこ「…ちょっと穂乃果ぁぁぁ!?」ジタバタ

 

穂乃果「んぇ…何でにこちゃんが家にいるの?」ムクリ

 

にこ「アンタの家じゃないからよ!?どんだけヒドい寝相なのよ全く!」

 

絵里「んっ…何?」ムクリ

 

にこ「変な夢を見させられるわ、いつの間にかアンタや絵里と一緒に寝てるわ…一体どういうつもり~!?」グイグイ

 

穂乃果「私に言われても…」ムニャムニャ

 

にこ「絵里も夢の中でおばあさまに甘えてないで、穂乃果に何か言ってやってよ!」

 

絵里「…」ポカーン

 

にこ「?…どうしたのよ、そんなに大きな口開けて」

 

絵里「ここは…どこ?」

 

にこ「はぁ?…!」

 

穂乃果「言われてみれば…周りが全部白いね」

 

にこ「…何これ、どこなのよここ!?」

 

ホノカチャーン!エリチャーン!ニコチャーン!

 

絵里「!」クルッ

 

花陽「はぁはぁはぁ…!」ダダッ

 

凛「お~い!」ダダッ

 

にこ「花陽、凛…!」

 

花陽「た、大変ですっ!私と凛ちゃんが起きたらいつの間にかここに…」ハァハァ

 

凛「落ち着いて、かよちん!良かった…みんなもここにいたんだね?」

 

ミンナ-!

 

穂乃果「あっ…希ちゃん、真姫ちゃん!」

 

希「良かった、皆もここにいたんやね…」ホッ

 

絵里「ええ…私達も今、花陽と凛に会った所よ」

 

真姫「それにしても私達、知らない間にこんな何も無い所に連れて来られて…参ったわね」ハァ

 

穂乃果「あれ?みんながいるってことはもしかしてことりちゃんや海未ちゃんも…あっ、いた!」

 

ことり「海未ちゃん…しっかりして?」

 

海未「うぅっ…」グスッ

 

真姫「…こっちも参った事になってるわね」

 

穂乃果「あはは…」

 

ことり「あっ、穂乃果ちゃん…みんなも!」

 

花陽「ことりちゃん…海未ちゃんに何があったの?」

 

ことり「あはは、それが…」

 

海未「どこですか…どこなんですか、ここはっ!?」

 

穂乃果「いや、それが…私達にも分からなくて」

 

海未「穂乃果…まさか、あなたの仕業ですか!?」

 

穂乃果「え、ええっ!?」

 

海未「そうに違いありません…今度こそ、今日という今日は許しません!」

 

穂乃果「いや、さすがに私のせいじゃ…」

 

海未「あなたのその雑で大雑把な性格がどれだけの迷惑と混乱を引き起こしていると思っているのですか!?」ズイッ

 

穂乃果「そ…そんな、ヒドいよぉ~!?」

 

真姫「別に良いじゃない、一人でここにいる訳じゃないんだし…」

 

海未「それは結果的にそうなっただけでしょう!?」ズズイッ

 

真姫「っ!?」

 

海未「もし一人だったら…今頃、命は無かったのですよ!」オーイオイオイ

 

真姫「…」ハァ

 

凛「また始まったニャ~…」

 

穂乃果「…ねぇ、もしかしてこれって夢なんじゃないかな?」

 

ことり「でも、夢にしては意識がハッキリしてるし…」

 

絵里「確かにそうね…夢と言えばさっき、変わった夢を見たわ」

 

凛「それって、もしかして…化け物と戦ってた夢?」

 

絵里「えっ…凛も見たの?」

 

凛「そうだよ!」

 

ことり「実は私も…絵里ちゃんや凛ちゃんもそうだったんだね?」

 

凛「うん!」

 

穂乃果「あっ、それなら私も見たよ!」

 

海未「…実は、私も見ました」

 

花陽「わ、私も!」

 

真姫「私も見たわ」

 

希「ウチも!」

 

にこ「私もよ…変ね、私達全員が同じ夢を見るなんて」

 

希「そうやね…!?皆、あれ!」

 

海未「!?」

 

絵里「ハラショー!?」

 

花陽「さっきまで周りが全部、真っ白だったのに…!」

 

希「まるで、宇宙に来たみたいやね…」

 

ことり「きれ~い…!」

 

凛「ニャー!スゴいニャ~!!」

 

真姫「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

にこ「…何これ、どこなのよここ!?」

 

穂乃果「ねぇ、もしかしてあそこにあるのって全部…地球かな?」

 

絵里「地球は宇宙に一つしか無いはずよ…幾つもあるなんて、あり得ないわ」

 

花陽「じゃあ…」

 

凛「これは、一体…?」

 

にこ「それが分かれば、にこ達だって苦労しないわよ…」ハァ

 

?「そうか、ここが…の世界か」

 

μ's「!?」バッ

 

青年「…」カシャッ

 

穂乃果「…?」

 

希「あれ、あのカメラ…どこかで見たような」

 

青年「…お前達が『μ's』か?」

 

穂乃果「は…はい!」

 

青年「…そうか、大体分かった」

 

海未「まさか…あなたが私達をこんな所に連れて来たのですか!?」

 

青年「ああ、そうだ」

 

海未「私達をこんな所に連れてきて…一体、どういうつもりなんですか!?」

 

海未「戻してください…早く私達を元の場所に帰してください!!」オーイオイオイ

 

青年「ったく、うるさいヤツだな…喚くな!俺の話を聞いたらすぐに元の世界に帰してやる」

 

絵里「話…?」

 

青年「ああ…『μ's』のリーダーっていうのは、お前か?」

 

穂乃果「えっ?あっ、はい!」

 

青年「残念だったな…このままだと、お前達が廃校を阻止してきた音ノ木坂学院とやらは無くなるらしい」

 

μ's「!?」

 

穂乃果「えっ…ウソ!?」

 

絵里「無くなるって、どういう意味!?」

 

青年「消えるという事だ、要するに…あそこに見えるお前達の世界そのものが滅亡する」

 

花陽「あれが、私達の…世界?」

 

青年「そうだ」

 

ことり「滅亡って…」

 

海未「つまり…学校だけではなく、世界が無くなるという事ですね?」

 

青年「その通りだ」

 

青年「それにお前達の世界の周りにある九つの並行世界と融合すれば…お前達は時と共に消滅を迎え、忘れ去られる事になる」

 

凛「へ…並行世界って?」

 

真姫「パラレルワールド…私達の世界とは別の世界線って事よ」

 

凛「別の、世界線…?」

 

青年「お前達が『μ's』にならなかった世界線の事だ…もしこれらと融合すれば、全ての世界が消滅する」

 

八人「えぇっ!?」

 

穂乃果「あ、あぁ…」フラッ

 

海未「穂乃果!」ガシッ

 

ことり「穂乃果ちゃん!?」ガシッ

 

穂乃果「ご、ごめん…」

 

ことり「大丈夫?」

 

穂乃果「うん、でも…話が難し過ぎて」アハハ

 

海未「…そんな事だろうと思いました」ハァ

 

絵里「ねえ、ちょっといい…?」

 

青年「何だ?」

 

絵里「私達がさっき見ていた夢は…もしかして、あなたが見せてきたの?」

 

青年「いや…それは、並行世界にいるお前達の未来だ」

 

絵里「…未来?」

 

青年「九つの並行世界にはそれぞれ一人ずつ…『仮面ライダー』に変身するお前達と全く同じ名前、同じ顔をした人物がいる」

 

にこ「はぁ?『仮面ライダー』って…日曜の朝にテレビでよくやってる、あの『仮面ライダー』?」

 

花陽「にこちゃん、知ってるの?」

 

にこ「妹達がいつも見てるから、名前だけだけどね…」

 

凛「凛も名前だけなら知ってるよ!」

 

青年「知ってるなら話は早いな…その並行世界が融合しかけているせいで、お前達の存在は別世界の自分達と共有を始めた」

 

青年「そして、その影響で…この世界のお前達も『仮面ライダー』としての変身能力を得てしまったんだ」

 

μ's「!?」

 

希「ウチらが…『仮面ライダー』に?」

 

真姫「…何それ、イミわかんない」

 

海未「そもそも私達、スクールアイドルですよ?」

 

海未「先程の夢のように私達が『仮面ライダー』とやらになって、怪物と戦うなど…あり得ません」

 

青年「そりゃそうだろうな…本来はそれぞれが独立した、全く別々の物語だったんだからな」

 

青年「だが今…物語が融合し、全てが一つになろうとしている」

 

青年「あり得ない事が…実際に現実として起きてしまったんだ」

 

ことり「あり得ない事が、現実に…」

 

青年「放っておけば世界もお前達も消滅する…それを避けたいなら、並行世界を行き来する能力を持つディケイドの協力が必要だ」

 

穂乃果「えっ、ディケイド…?」

 

青年「そうだ、お前達が夢の中で出逢った…『仮面ライダー』の事だ」

 

海未「ディケイド…」

 

ことり「どこかで聞いた事あるような…」

 

にこ「そういえば…そんな名前の『仮面ライダー』を虎太郎がよく見てたような気がするわね」

 

真姫「虎太郎くん?…そうよ、虎太郎くんよ!」

 

花陽「えっ?…ああっ!?」

 

凛「そういえば、夢で大きくなった虎太郎くんっぽい男の子に会ったような気がするニャ!」

 

希「って事は…もしかして!」ガサゴソ

 

絵里「希?」

 

希「あった!…やっぱり、思った通りやね」

 

穂乃果「それ、何の写真…?」

 

希「実はウチ、夢の中でその男の子の写真を撮った覚えがあってな…ほらっ!」ピラッ

 

八人「あーっ!?」

 

絵里「この男の子…夢で見た事ある!」

 

穂乃果「確かこの子の名前って…そうだ、ツカサくんだよ!」

 

にこ「本当に虎太郎によく似てるわ…むしろ、そのまま大きくなった感じね」

 

花陽「でも…どうして、希ちゃんが夢の中で撮ったツカサくんの写真がここに?」

 

青年「それも別世界と融合している影響だろうな…ちなみにその『ツカサ』という人物の正体は、お前達の世界とは全く別の世界から来た『矢澤コタロウ』だ」

 

にこ「コタロウって…はぁ!?」

 

ことり「もしかして、違う世界の虎太郎くんが…」

 

μ's「ディケイドー!?」

 

青年「そうだ…そいつも世界が融合しかけている影響で、お前達の世界の『矢澤虎太郎』と記憶を共有してしまっている」

 

青年「そのせいでこの世界の崩壊も早まっている…このままだと、真っ先に消えるのはお前達の世界の『矢澤虎太郎』だ」

 

にこ「!!…そんな」

 

穂乃果「じゃあ、急いで何とかしなきゃ…!」ダッ

 

青年「待て、まだ話は終わってない」

 

穂乃果「でも!このままじゃ虎太郎くんが…」

 

絵里「穂乃果、落ち着いて…まだどうやって別世界の彼と協力してこの世界を救えば良いのか聞いていないわ」

 

穂乃果「あっ、そっか…ごめんなさい」

 

にこ「…それで、どうすれば良いのよ?」

 

青年「お前らがやるべき事は一つ…ディケイドにある二人の少女を逢わせ、ディケイドに物語を紡がせる事だ」

 

にこ「はぁ?…何よ、それ」

 

青年「ディケイドは…本来、物語の無いライダーだ」

 

青年「ヤツが通り過ぎた後の世界には何も残らない…故に世界の破壊者、悪魔とも呼ばれている」

 

真姫「なっ…それじゃダメじゃない!?」

 

青年「そうだ…だからこそ、ディケイドとお前達の世界に存在している特殊な力を持った二人の少女を逢わせる」

 

青年「そうすれば…二人の少女はお前達『μ's』とディケイドを繋ぐ架け橋になり、全ての世界は救われる」

 

海未「…本当にそれだけで、全ての世界が元通りになるんですか?」

 

青年「ああ、それだけでディケイドは…『これから』の物語を紡いでいく存在に変わる」

 

穂乃果「!…『これから』」

 

絵里「…ところで、その二人の女の子って誰なの?」

 

青年「それは…お前達の方がよく知ってるんじゃないのか?」

 

青年「特に…お前と、お前がな」

 

絵里「…えっ?」

 

穂乃果「私と、絵里ちゃんが…?」

 

青年「さて…これで説明は終わりだ、後の事はお前達に任せる」スタスタ

 

穂乃果「あっ…あ、あのっ!」

 

青年「ん?」クルッ

 

絵里「あなた…一体、何者なの?」

 

にこ「何か、どこかで見た顔ねぇ…!」ハッ

 

にこ「ま…まさか、アンタも違う世界から来た虎太郎とか言い出すんじゃないでしょうね!?」

 

青年「俺か?違うな、俺は…通りすがりの仮面ライダーだ」フッ

 

μ's「!」

 

穂乃果「通りすがりの、仮面ライダー…?」

 

青年「ああ…別に覚えなくて良い、じゃあな」スタスタ

 

カッ!

 

絵里「ちょっと…って、きゃあっ!?」

 

にこ「ま、まぶしい…!」

 

穂乃果「そ…そ、そそ…そんなぁ~!」

 

 

 

穂乃果「うわぁっ!?…っ!」ガバッ!

 

チュンチュン…

 

穂乃果「あれ…今のも、夢?」

 

穂乃果(それから目が覚めた私はすぐに家を出て…急いでオトノキへとやって来ていた)

 

穂乃果(本当だったら、ライブの練習をするはずだったんだけど…どうしてもさっき見た夢のことが気になっちゃって)

 

穂乃果(ガマンできなかった私は…『μ's』のみんなに、このことを相談した)

 

穂乃果「…っていう夢を見たんだよ!」

 

七人「…」

 

穂乃果「あれ…みんな、そこは『夢なんかーい!!』って言う所じゃなかったの?」

 

ことり「穂乃果ちゃん…それがね?」

 

海未「ここにいる私達も全員…穂乃果が見た夢と全く同じ夢を見たのです」

 

穂乃果「えぇっ、そうなの!?」

 

絵里「そう…『通りすがりの仮面ライダー』と名乗っていた、あの男の人と会う所まで全てが一緒だったの」

 

絵里「勿論、その夢の前に見た別の世界から来た虎太郎くんと会うという夢も…」

 

穂乃果「!…ツカサくん」

 

七人「…」

 

穂乃果「あれ…そういえば、にこちゃんは?」

 

凛「それが、にこちゃんも凛達と同じ夢を見たみたいで…」

 

穂乃果「へっ…にこちゃんも?」

 

花陽「うん…それで虎太郎くんの様子が気になるから、今日は練習を休みたいって連絡があったの」

 

穂乃果「そうだったんだ…」

 

~♪

 

穂乃果(その時、希ちゃんの携帯に電話がかかってきた)

 

希「おっ…にこっちからや!」ピッ

 

真姫「噂をすればね…」

 

希「もしもし、にこっち?」

 

 

 

にこ(練習を休み、家にいた私は…希に電話をかけていた)

 

にこ「もしもし?…悪いわね、ライブの日が近いのに急に練習休みたいなんて言っちゃって」

 

希『別にウチらは大丈夫よ、それで…虎太郎くんの様子はどう?』

 

にこ「…いつもと変わりないわね、今は借りてきた『仮面ライダー』のDVDを妹達と一緒に見ているわ」チラッ

 

青年『通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!』

 

虎太郎「…」キラキラ

 

にこ「!…今映ってた人、どこかで見覚えが?」

 

希『にこっち?』

 

にこ「あっ、ううん…何でもないわ!」

 

にこ「そうよね…気のせい、よね?」ボソッ

 

青年『変身!』

 

虎太郎「…でぃけいどー」キラキラ

 

こころ「こたろうはほんとうにディケイドがすきなんですね?」

 

虎太郎「!」コクコク

 

ここあ「でもさぁ、ところどころわからないところがあるよね…ディケイドって」

 

こころ「たしかに…そういえば、さいしゅうかいやそのあとのえいがをみてもわからないところがたくさんありました」

 

ここあ「それなのに、こたろうはしょうせつまでよんじゃうくらいきにいってるんだもんなぁ…そんなにディケイドがすきなの?」

 

虎太郎「!」コクコク

 

こころ「どういうところがすきなんですか?」

 

虎太郎「あれー…」スッ

 

『カメンライド…クウガ!』

 

DCDクウガ『はっ!』

 

ここあ「あっ…そっか、カメンライドか!」

 

こころ「たしかにクウガからキバまでの『仮面ライダー』にすべてへんしんできるなんて…すごいことですもんね!」

 

ここあ「ちょっとずるいきもするけどね~…だから、ここあがいちばんすきなのはやっぱりクウガになっちゃうかなぁ?」

 

ここあ「もちろんおねえちゃんのえがおがいちばんだけど…ユウスケのえがおも、なかなかいいよね!」

 

こころ「わかりますよ、ここあ!わたしもしゅうばんまでみたときはずっとないてばかりでしたから…」

 

こころ「とくにさいしゅうかいのごじつだんになるしょうせつばんでの、ごだいさんといちじょうさんのやりとりがさいこうで…」

 

ここあ「はぁ?…なにいってんの、クウガっていったら『小野寺ユウスケ』でしょ!?」

 

こころ「なっ…はぁ!?なにをいっているんですか?クウガといえば『五代雄介』さんにきまってます!」

 

虎太郎「…どらごんないとー」ピッ

 

主人公の青年『KAMEN RIDER!』

 

ここあ「ライジングアルティメットはね…アルティメットよりつよいんだよ!?」

 

こころ「それはのうりょくだけのはなしでしょう!?」

 

ここあ「ちゃんとかつやくしたじゃん!」

 

こころ「あれはほかのライダーとのきょうりょくがあったからです!」

 

虎太郎「でんおー…」ピッ

 

電王『俺、参上!』

 

ここあ「なにをぉ~…!」グギギ

 

こころ「なんですかぁ~…?」グギギ

 

にこ「…ごめん、少し待っててもらえる?」

 

にこ「ちょっとちょっと…さっきから何揉めてんのよ、アンタ達!?」

 

こころ「ごだいさんはやさしいこころであかいめのアルティメットフォームになれたんですよ!?」

 

ここあ「ユウスケはくろいめのアルティメットフォームでもぼうそうせずにたたかったんだよ!?」

 

にこ「さっきから何言ってるのかよく分からないけど…もうやめなさい、そんな喧嘩は!」

 

こころ「でも、ここあが…」

 

ここあ「だって、こころが…」

 

にこ「にこはあんまりよく分からないけど…どっちのクウガにも良い所があるんだったら、両方好きで良いんじゃないの?」

 

にこ「だって、どっちも皆の笑顔を守ってくれる…クウガには変わりないんでしょ?」

 

こころ「!」

 

ここあ「!」

 

にこ「にこはそう思うわ…だから、もうそんな事で喧嘩なんてしちゃダメよ?」

 

にこ「私達はいつだって、にこにースマイル…どんな時も笑顔でいなきゃ!」

 

にこ「にっこにっこにー♡」

 

二人「うわぁ~…!」

 

ここあ「…こころ、ごめんなさい」

 

こころ「ここあ…すみません、わたしもいいすぎました」

 

にこ「…」フフッ

 

ここあ「そうだ…こころ、もしおねえちゃんがクウガになったらどうおもう?」

 

にこ「…えっ、私?」

 

こころ「なるほど…!」

 

こころ「たしかに『大銀河宇宙ナンバーワンアイドル』であるおねえさまがクウガになったら…きっと、おにあいだとおもいます!」

 

にこ「…何の話なの?」

 

こころ「あっ、わすれてました…わたしたちもおねえさまにえがおをおかえしましょう!」

 

ここあ「うん!」

 

こころ「にっこにっこにー♪」

 

ここあ「にっこにっこにー!」

 

こころ「にっこにっこにー♪」

 

ここあ「にっこにっこにー!」

 

にこ「まあ、いっか…にっこにっこにー!!」

 

虎太郎「…」スタスタ

 

にこ「…えっ?」

 

にこ(突然、立ち上がった虎太郎は…玄関まで歩き出そうとしていた)

 

にこ「虎太郎…?ちょっと、どこに行くつもり!?」ガシッ

 

虎太郎「…!」バッ!

 

にこ(急いで私は虎太郎の腕を掴んだけど…虎太郎は小さな子どもとは思えないくらいの強い力で、簡単に私の手を振りほどいてしまった)

 

にこ「きゃっ…!?」ドサッ

 

にこ(それに驚いた私は…思わず尻餅をついてしまった)

 

こころ「おねえさま!?だいじょうぶですか?」

 

にこ「え、ええ…」

 

ここあ「ちょっと…おねえちゃんにあやまりなよ、こたろう!」

 

虎太郎「…」ギィ…バタン!

 

にこ「!?」

 

にこ(そのまま虎太郎は…マンションの部屋を出て行ってしまった)

 

ここあ「こ、こたろうがグレちゃった…?」

 

こころ「ボーッとしてるばあいじゃありませんよ、ここあ…はやくこたろうをおいかけましょう!」タタッ

 

ここあ「あっ、そうだね…まってよこたろぉー!」タタッ

 

にこ「…」ポカン

 

希『どうしたん、にこっち!?…にこっち!!』

 

にこ「!」ハッ

 

にこ(私は急いで携帯を手に取り…希に今起こった出来事を説明した)

 

にこ「もしもし、希!?実は今…って?」

 

にこ「ちょっと何よ、この床に落ちてる砂は!?」

 

 

 

絵里「虎太郎くんが…」

 

穂乃果「グレちゃった!?」

 

希「うん…それで突然、家を飛び出したみたいなんよ」

 

海未「それで、虎太郎はどこへ行ったのですか…?」

 

希「それがにこっち達がすぐに探しに行ったんやけど…まだ見つかってないみたい」

 

ことり「そっか…じゃあ、私達も探しに行ってみよっか?」

 

花陽「そうだね…私もあの夢を見てから、虎太郎くんのことがすごく気になるし」

 

凛「かよちんも?実は凛も気になってて…今日はとてもじゃないけど、練習って気分にはなれそうにないニャ」

 

穂乃果「だよね…じゃあ、私達も行こっか!」

 

真姫「でも探しに行くって言ったって…一体、どうやって探すのよ?」

 

穂乃果「そ…そうだよ、ね?」

 

絵里「だけど…皆で手分けして探した方が、早く見つかると思うわ」

 

穂乃果「う、うん…そうだね?」

 

絵里「穂乃果はどうするの?」

 

穂乃果「へっ?う~ん、難しいなぁ…」

 

真姫「穂乃果!」

 

穂乃果「えぇっ?その、えっと…どうしよぉ~!?」

 

~♪

 

穂乃果「?…電話だ、ちょっとごめんね!」ピッ

 

穂乃果「はい、もしもし!…えっ!?」

 

 

 

にこ(穂乃果から連絡をもらった私は、UTXの大型スクリーンの前へと向かった)

 

にこ(そこには…穂乃果と絵里が虎太郎と一緒にいた)

 

穂乃果「おーい、にこちゃ~ん!」ブンブン

 

にこ「いた…虎太郎!」ダッ

 

虎太郎「!」

 

にこ「はぁはぁ…もう!いきなり家を飛び出して何があったのよ、虎太郎!?」

 

虎太郎「…あれー」スッ

 

にこ「はぁ?あそこに一体、何があるって…!?」

 

にこ(次の瞬間…虎太郎が指を差した方向にある建物が次々と消えていった)

 

にこ「なっ…どうなってんのよ!?」

 

絵里「滅びの現象が起きているのよ…この世界にもね」

 

にこ「ほ、滅びの現象?」

 

絵里「ええ…虎太郎くんをここで保護してくれたある人達から聞いたの」

 

にこ「ある人達?…誰なのよ、それ」

 

穂乃果「にこちゃんもよく知ってるあの人達だよっ!」

 

にこ「あ~!あの人達ね…って、それで分かる訳ないでしょ!?」

 

絵里「その人達の話によるとね…」

 

にこ「話続けるの!?先にその人達が誰か教えなさいよ!」

 

絵里「どうやら…本当に、九つの並行世界と私達がいる世界の融合が始まってしまったみたいなの」

 

にこ「は…はぁ?そんな、嘘でしょ!?」

 

穂乃果「でも、今の…にこちゃんだって見たでしょ?」

 

にこ「それは、確かにそうだけど…」

 

穂乃果「それと…虎太郎くんを見てみて」

 

にこ「今度は何よ…!!」

 

虎太郎「…」スゥゥ…

 

にこ(私は…虎太郎の身体がほんの少しだけ透けていることに気付いた)

 

にこ「虎太郎、何でアンタ…!」ハッ

 

青年『このままだと、真っ先に消えるのはお前達の世界の《矢澤虎太郎》だ』

 

にこ「まさか…アレも本当だったって訳?」

 

穂乃果「…うん」

 

にこ「そんな、このままじゃ虎太郎が…一体どうすれば良いのよ!?」

 

絵里「…にこ、安心して」

 

にこ「?」

 

絵里「ここは私に…任せて!」

 

にこ「…はぁ?アンタに?」

 

絵里「ええ!」

 

にこ「いや、アンタ…海外に行った時も同じこと言ってたけど最終的には穂乃果に投げっぱなしだったじゃないのよ!?」

 

絵里「今度こそ大丈夫よ…そうよね、穂乃果?」

 

穂乃果「うんっ!」

 

にこ「結局、また穂乃果に投げっぱなしにしてるじゃないのよ!?」

 

にこ「こういう時のアンタは大抵…一番、頼りになんないって決まってんのよ!」

 

絵里「ちょっと、にこ…あなたは今まで穂乃果の何を見てきたの?」

 

絵里「穂乃果はここぞという所で…いつだって、私達を引っ張ってきてくれたじゃない!」キリッ

 

にこ「だから穂乃果じゃなくてアンタの方が頼りないって言ってんのよ!?」

 

絵里「…え?」ポカン

 

にこ「『え?』…じゃないわよ!?ってか、二人共が揃ってアテになんないのよ!」

 

穂乃果「まあまあ、にこちゃん…落ち着いて」

 

にこ「何よ!アンタまでボケ倒す気ぃ!?」

 

穂乃果「そ、そうじゃなくて…ちょっと見ててくれる?」

 

にこ「はぁ?」

 

穂乃果「…」ジーッ

 

虎太郎「?」

 

にこ(穂乃果は虎太郎の目を見つめながら…虎太郎にこう言った)

 

穂乃果「お願い…雪穂や亜里沙ちゃんと一緒に、九つの世界を救ってほしいの!」

 

虎太郎「…?」

 

にこ「いや…アンタ、何やってんの?」

 

穂乃果「お願いだよ!」

 

にこ「どうして虎太郎にそんなことお願いしてんのよ!虎太郎は神様じゃないのよ!?」

 

穂乃果「そ、そんなの分かってるよぉ…」

 

にこ「ってか、何でさりげなく自分達の妹を巻き込んでんのよ!?」

 

穂乃果「あはは…でも、夢の中であの人が言ってたでしょ?」

 

青年『世界が融合しかけている影響で、お前達の世界の《矢澤虎太郎》と記憶を共有してしまっている』

 

にこ「!…アンタ、まさか」

 

穂乃果「うんっ!だから…届くようにお願いしてみたの」

 

穂乃果「コタロウくん…ううん、ツカサくんに!」

 

にこ「…穂乃果」

 

穂乃果「それに…こんなことも言ってたでしょ?」

 

青年『ディケイドとお前達の世界に存在している特殊な力を持った二人の少女を逢わせる』

 

青年『そうすれば…二人の少女はお前達《μ's》とディケイドを繋ぐ架け橋になり、全ての世界は救われる』

 

青年『それだけでディケイドは…《これから》の物語を紡いでいく存在に変わる』

 

絵里「私がその二人の少女が誰なのかって尋ねた時…あの人が返した言葉で、私と穂乃果は気付いたの」

 

青年『お前達の方がよく知ってるんじゃないのか?特に…お前と、お前がな』

 

にこ「それでアンタ達…あの二人だって思ったの?」

 

穂乃果「そうだよっ!雪穂達があの子に会わない限り、世界はなくなっちゃう…」

 

穂乃果「ってことは一緒に旅をさせれば、なくならないってことでしょ?」

 

にこ「旅って…さすがにそこまでは言ってなかった気がするんだけど」

 

穂乃果「でも…にこちゃんも夢の中で、ツカサくんと旅をしている雪穂と亜里沙ちゃんに会ったんでしょ?」

 

にこ「…!」

 

雪穂『私達…見たいんです』

 

亜里沙『ニコさんの…笑顔を!』

 

穂乃果「私も最初はなぜか忘れてたんだけどね…あの人が教えてくれたおかげで、ちゃんと思い出せたの」

 

雪穂『思い切って自分のことを一番に考えてみたら?』

 

絵里「夢を見た今なら私も確信が持てるわ…あの二人がツカサくんと一緒に旅をすれば、絶対に何とか出来るって」

 

亜里沙『私、この世界のお姉ちゃんに会えて良かった!』

 

にこ「でも、根拠がないじゃないのよ…?」

 

絵里「根拠が無いのなら、作り出せば良いのよ…今からね!」フフッ

 

にこ「!…絵里」

 

絵里「…だから、聞いてくれる?」

 

虎太郎「?」

 

にこ(虎太郎の目を優しく見つめる絵里は…虎太郎にこう言った)

 

絵里「ディケイドである君と高坂雪穂と絢瀬亜里沙の存在が…μ'sとこの世界を救う鍵になるの!」

 

虎太郎「…?」

 

にこ「…ったく、私の弟に何吹き込んでんだか」ハァ

 

絵里「えっ、ダメかしら?ツカサくんに分かりやすく伝わるように二人の名前をフルネームで言ってみたんだけど…」

 

にこ「そうじゃなくて端からだと子供に声を掛けている不審者にしか見えないのよ…大体、こんなので伝わるかどうかも怪しいのに」

 

穂乃果「あはは…やっぱり、変かなぁ?」

 

にこ「当たり前じゃない…ってかアンタ達、良いの?」

 

にこ「もし仮にこれが別の世界のコタロウ…ツカサに通じたとしても、二人と会えるかどうか分からないのよ?」

 

穂乃果「大丈夫だよぉ~…その時は私がちゃんとツカサくんに会いに行くように雪穂達に話してみるから!」

 

にこ「それで会って旅に出られたとしても…ちゃんとこの世界に帰って来られる保証なんてないのよ?」

 

絵里「それも心配無いわ…希達も、夢の中で二人に会ったって言ってるもの」

 

絵里「必ず九つの世界を全て回って…私達がいるこの世界に戻ってきてくれるはずよ」

 

にこ「アンタ、どんだけあの夢のことを信頼してんのよ…?」

 

絵里「…いいえ、夢なんかじゃないわ」

 

絵里「あれは別の世界で、実際に起きようとしている事なんだって…私は思うの」

 

にこ「!…絵里」

 

穂乃果「それに、私は信じたい…雪穂と亜里沙ちゃんが無事に帰ってくるのを」

 

穂乃果「もちろん…ツカサくんのこともねっ!」

 

にこ「穂乃果…」

 

穂乃果「ほらほら、にこちゃんも…何かお願いしてみてよ!」ズイッ

 

にこ「ち、ちょっと!?…っ!」

 

虎太郎「?」ジーッ

 

にこ「ううっ…///」

 

絵里「…どうしたの、にこ?」

 

にこ「い、いや…よく見ると整った顔立ちしてるわねーって思って」アハハ

 

穂乃果「もしかして…照れてるの?」

 

にこ「てっ!?べ、別に照れてないわよ!」

 

穂乃果「ホントかなぁ…?」

 

にこ「別にどうだっていいじゃない…とにかくさっさとやれば良いんでしょ!?全く、しょーがないわねー!」

 

にこ(気を取り直した私は…虎太郎の目を見つめて、こう言った)

 

にこ「…お願い、世界を救って?」

 

虎太郎「…」

 

にこ「…やっぱり、こんなので伝わるなんて思えないんだけど」ハァ

 

穂乃果「大丈夫だよ…絶対に伝わるよ、ツカサくんに!」

 

穂乃果「それに今の私達には…『仮面ライダー』の力もあるんでしょ?」

 

穂乃果「つまり…雪穂達が帰ってくるまで私達が『仮面ライダー』になって、その間に世界を守ればいいんだよ!」

 

にこ「はぁ?アンタねぇ…『仮面ライダー』になって世界を守るって言っても、テレビみたいに悪の軍団がいる訳じゃないのよ?」

 

穂乃果「それが本当にいるんだよ!」

 

にこ「何よ、それ…どういうことよ?」

 

にこ(私達がそう話していると…突然、虎太郎が何かを呟いた)

 

虎太郎「!…おにー」スッ

 

にこ「え?…っ!?」

 

にこ(私達が空を見上げると…大きな船が飛んでいた)

 

穂乃果「絵里ちゃん、あれってもしかして…!」

 

絵里「どうやら…あれが『鬼の戦艦』のようね」

 

にこ「『鬼の戦艦』…?」

 

絵里「時を走るという伝説の船よ…今は『大ショッカー』の本部基地になっているみたい」

 

絵里「それにしても、まさかこの世界にも既に…『大ショッカー』の魔の手が迫ってるなんて」

 

にこ「いや、そうやって当たり前のように説明されても…そもそも『大ショッカー』って何よ?」

 

穂乃果「簡単に言うと、私達の世界を狙っている悪い化け物がたくさんいる組織なんだって!」

 

にこ「!…私達の世界を?」

 

絵里「ええ、要するに私達の敵…という事よ」

 

虎太郎「!」ハッ

 

にこ「?…虎太郎、どうしたの?」

 

虎太郎「…!」ダッ

 

にこ(虎太郎はまた突然…どこかへ向かって走り出した)

 

にこ「ちょっ…虎太郎!?」

 

穂乃果「虎太郎くん!」

 

絵里「待って!」

 

にこ(私達が虎太郎を追いかけようとすると…船から全身に黒タイツを着た集団が目の前に落ちてきた)

 

?「イーッ!」スタッ

 

にこ「っ!?」

 

穂乃果「!…そっか、あなた達が大ショッカーの戦闘員だね?」

 

戦闘員A「その通りだ…貴様らが『μ's』の高坂穂乃果と絢瀬絵里と矢澤にこだな?」

 

絵里「…そうだと言ったら?」

 

戦闘員B「大人しく我々に投降しろ!」

 

絵里「それは無理な話ね…分かったら、早くこの先を通しなさい」

 

戦闘員C「誰が通すか!」

 

戦闘員A「こうなれば、力ずくでも貴様らを捕まえてやる!」

 

にこ「ちょっと…何が起こってるのよ、これ!?」

 

にこ「っていうか、どうしてアンタ達があいつらのこと知ってるのよ?」

 

穂乃果「聞いたんだよ…ある人達からね」

 

にこ「だから誰なのよ、それは!?」

 

穂乃果「実はね…」ヒソヒソ

 

にこ(穂乃果に耳打ちされた私は…詳しい事情を聞いた)

 

にこ「!」

 

穂乃果「分かった?」

 

にこ「…そういうことね、よく分かったわ」

 

にこ「それで…ここからどうするつもり?」

 

絵里「そうね、虎太郎くんを追いかけたいけど…今のままだと難しそうね」

 

にこ「じゃあ…全員、大人しく捕まれっていうの?」

 

絵里「もちろんそのつもりは無いわ…そうよね、穂乃果?」

 

穂乃果「…うん!」

 

にこ「えっ…何するつもりよ?」

 

穂乃果「はあぁぁぁっ!」ダダッ

 

絵里「…ふっ!」ダダッ

 

にこ「!?」

 

にこ(走り出した穂乃果と絵里は…勢いをつけたまま、戦闘員達に体当たりしていった)

 

穂乃果「えいっ!」ドンッ!

 

絵里「はぁっ!」ドンッ!

 

戦闘員A「イーッ!?」ドサッ

 

にこ「ち、ちょっとアンタ達…何してんのよ!?」

 

穂乃果「行って、にこちゃん!」

 

にこ「はぁ!?」

 

絵里「あなただけでも虎太郎くんを追って…早く!」

 

穂乃果「この人達は…私と絵里ちゃんが止めるから!」

 

にこ「そんな…いくらアンタ達でも無茶よ!?」

 

穂乃果「ムチャなんかじゃないよ…だって今の私は、スクールアイドル『μ's』の高坂穂乃果としてだけじゃない!」

 

穂乃果「『仮面ライダー』として…みんなのいる世界や夢を守りたい!」

 

にこ「でも…!」

 

穂乃果「人間その気になれば、何だって出来るよ!」

 

穂乃果「だから…私、やっぱりやる!やるったらやる!!」

 

にこ(穂乃果がそう言った瞬間…穂乃果のお腹から、強く光るベルトが現れた)

 

にこ「うっ!?な、何…?」

 

絵里「…穂乃果!」

 

穂乃果「!…これって」

 

にこ(穂乃果の足元に浮かぶマークのようなものが段々と両足に集まっていくと…穂乃果は金色の戦士に姿を変えた)

 

アギト「…」

 

戦闘員B「何ッ!?」

 

戦闘員C「アギトに変身しただと!?」

 

アギト「アギト?…そっか、本当に変身しちゃったんだ!」

 

アギト「やったぁー!嬉しい~っ!!」ピョンピョン

 

絵里「ハラショー…」

 

にこ「嘘…でしょ?」

 

戦闘員B「くっ…怯むな、かかれ!」

 

戦闘員C「イーッ!」ダッ

 

アギト「わわっ…!」サッ

 

にこ(アギトになった穂乃果は戦闘員達のパンチを避けると…)

 

アギト「やぁっ!」ガッ!

 

戦闘員C「イーッ!?」ドサッ

 

にこ(キックで反撃し、戦闘員の一人を軽く吹き飛ばしてしまった)

 

アギト「あっ!?ごめんなさい!ちょっと力が強過ぎちゃった…」

 

絵里「気にする必要は無いわ、穂乃果…元々この戦闘員達は人じゃないわ!」

 

アギト「えっ?あ、そっか…そうだった!」

 

戦闘員B「今だ!」バッ

 

アギト「!」

 

ガッ!

 

戦闘員B「うわっ!?」

 

にこ(襲いかかった戦闘員から穂乃果を助けたのは…どこからか飛んできた赤いカブト虫だった)

 

にこ「カ、カブト虫…?」

 

アギト「ありがとう…あなたが助けてくれたんだね?」

 

赤いカブト虫「…!」ビュン!

 

パシッ

 

アギト「あっ…え、絵里ちゃん!?」

 

絵里「助けたのは…私よ」

 

にこ(絵里は赤いカブト虫を捕まえると…突然、目つきが鋭くなった)

 

アギト「絵里ちゃんが…カブト虫を掴んでる!」

 

にこ「何かお腹に変なベルト巻かれてるんだけど…一体、いつの間に着けたのよ?」

 

絵里「夢から覚めた後…私の枕元に、このベルトがあったの」

 

絵里「それからはずっと持ち歩いていたの、この子がやって来てくれるまで…ずっと」

 

絵里「妹達と世界を守りたいと思った…この時の為に、ね」フフッ

 

アギト「!…もしかして、絵里ちゃんも」 

 

絵里「さあ…行くわよ?」

 

戦闘員B「!」

 

絵里「…変、身」パッ

 

『Henshin』

 

にこ(絵里は赤いカブト虫を放して落とすと…そのままお腹のベルトに取り付き、姿を変えた)

 

カブト「…」

 

にこ(その姿は…全身に鎧をまとった戦士だった)

 

アギト「スゴい…絵里ちゃんも変身した!」

 

カブト「…はっ!」ガガッ!

 

戦闘員B「今度はカブトが…イーッ!?」バタッ

 

にこ(鎧の戦士になった絵里は銃のような形をした武器からビームを発射して…戦闘員の一人を倒した)

 

にこ「もう、何でもありって感じね…」ハァ

 

カブト「行って、にこ!」

 

アギト「そうだよ、にこちゃん…早く虎太郎くんを!」

 

にこ「…全く、しょーがないわねー!」ダッ

 

にこ(私が走り出したその時…別の戦闘員が剣を振るってきた)

 

戦闘員D「させるか!」ブンッ

 

にこ「!」

 

にこ(突然の出来事に、私は思わず目を閉じてしまった)

 

カブト「しまった…にこ!」

 

アギト「にこちゃん!」

 

にこ「…?」パチリ

 

にこ(少し経っても何も起こらないことを不思議に感じ、目を開けると…私の右腕は白く変わっていた)

 

にこ「!…か、変わった?」

 

にこ(にこはとっさに白く変わった右腕で…戦闘員の剣をガードしていた)

 

戦闘員D「なっ…何?」

 

にこ「ちょっと、危ないじゃないのよアンタ…さっさとどきなさいよ!」ドンッ!

 

戦闘員D「イーッ!?」ドサッ

 

にこ(にこが左腕を戦闘員を突き飛ばすと…左腕や両足、そして全身が白く変わった)

 

クウガ「…!」

 

アギト「スゴい…にこちゃんも変身した!」

 

クウガ「…これが、変身?」

 

カブト「ハラショー…さすがにこね!」

 

クウガ「でも、何か色が違うような気が…」

 

アギト「えっ…どういうこと?」

 

クウガ「こっちの話よ…それより、ここはアンタ達に任せるわよ!」ダッ

 

アギト「う、うんっ!」

 

カブト「ええ!」

 

クウガ(この場を穂乃果と絵里に任せた私は…急いで虎太郎の後を追って行った)

 

 

 

クウガ「はぁはぁ…虎太郎ー!」

 

クウガ「もう、どこに行っちゃったのよ…!?」

 

クウガ(虎太郎を探していた私は…クモのような姿をした人型の化け物から逃げている雪穂と亜里沙を見つけた)

 

クウガ「あれって…まさか、大ショッカー!?」ダッ

 

クウガ(逃げる雪穂達と追いかけるクモの化け物の距離は…どんどん近付いている)

 

クウガ「ダメ、このままじゃ…間に合わない!」

 

クウガ(あの様子だとツカサにもまだ会ってないみたいだし…一体、どうすれば良いの?)

 

穂乃果『《仮面ライダー》として…みんなのいる世界や夢を守りたい!』

 

穂乃果『人間その気になれば、何だって出来るよ!』

 

クウガ「!…そうよ」

 

クウガ「だったら、私も…何だってやってやるわ」

 

クウガ「この世界や夢のためだけじゃなくて…笑顔を守るために!」

 

クウガ「だって、私は…大銀河宇宙ナンバーワンアイドルなのよ?」

 

クウガ「あんな奴らのせいで、これ以上誰かに涙を流してほしくないし…流させる訳にもいかないの!」

 

クウガ「だってみんなには…私達『μ's』の歌で、笑顔でいてほしいから!!」

 

クウガ(その時、私のベルトの色がオレンジから赤に変わったような気がした)

 

クウガ「これって…どうやら、やるしかないみたいね!」

 

クウガ(決意した私は…そのまま走りながら、あの言葉を叫んだ)

 

クウガ「超変身!」

 

クウガ(それから私の姿は白から赤に変わり…その勢いのまま、クモの化け物にパンチしていった)

 

クウガ「ふんっ!」ガッ!

 

ズ・グムン・バ「グッ!?」

 

雪穂「!?」

 

クウガ「ちょっとアンタ…にこの大事な知り合いに何しようとしてんのよ!」ゼェゼェ

 

雪穂「えっ…」

 

亜里沙「にこ…さん?」

 

グムン「ク、クウガ!?」

 

クウガ「そう…これ、クウガって言うのね?」

 

クウガ(それから私は…驚いていた雪穂達に声をかけた)

 

クウガ「ちょっとアンタ達、早く逃げなさい!」

 

雪穂「もしかして…にこさんなんですか?」

 

クウガ「にこは今、説明してる暇ないの!いいから逃げなさい!」

 

雪穂「は…はい、行こう亜里沙!」ダッ

 

亜里沙「う…うん!」ダッ

 

クウガ(そのまま雪穂達は…その場から逃げて行った)

 

クウガ「全く世話のかかる子達なんだから…あと、そこのアンタ!」ビシッ

 

グムン「…?」

 

クウガ「この大銀河宇宙ナンバーワンアイドルが来たからには…これ以上、好き勝手な事はさせないんだから!」

 

グムン「クウガ…ガサダバ ディケイドバ ゾボザ(新たな ディケイドは どこだ)?」

 

クウガ「はぁ?何言ってんのアンタ?」

 

グムン「…」

 

クウガ「って…何か言いなさいよ!?」

 

クウガ「全く、しょーがないわねー…」ハァ

 

クウガ「こうなったら…にこにーのとっておきを見せてあげるんだから、覚悟しなさいよね!」

 

クウガ「超変身!」

 

 

 

希「!…いた」

 

海未「もう、一体何が…!」

 

ツチグモ「キシャァァァ!」

 

海未「な…何ですか、あれは!?」

 

希「ウチも詳しい事はまだ思い出せないんやけど…この世界の皆を襲おうとする怪物って事だけは確かよ」

 

ローカストアンデッド「…」

 

海未「そんな…あのままでは、雪穂と亜里沙が!」

 

希「…大丈夫、ウチがこれで何とかする」スッ

 

海未「!…その音叉、まさか」

 

希「だから、海未ちゃんは二人を…」

 

海未「…いえ、私も一緒に戦います」スッ

 

希「え?」

 

海未「私だって、あのような者達に雪穂や亜里沙…街の皆が襲われるのを黙って見ている訳にはいきません!」

 

希「!…海未ちゃん」

 

海未「それに敵は二体もいます…一対二では、さすがの希でも不利です」

 

海未「だから、共に立ち向かいましょう…私達の力で!」

 

希「…うん!」

 

キィィィン…

 

響鬼「はぁっ…はっ!」

 

海未「変身!」ダッ

 

『Turn Up』

 

ブレイド「ふっ!」スッ

 

『Thunder』

 

 

 

こころ「はぁはぁ…ここあ、そっちはどうでしたか?」

 

ここあ「ううん、いろいろさがしてみたんだけど…」ゼェゼェ

 

こころ「こたろう、いったいどこにいったんでしょうか…?」

 

ここあ「ぶじだといいんだけど…!」

 

キィン…キィン…

 

こころ「あら?このおとって…」

 

ここあ「どこかできいたような…」キョロキョロ

 

こころ「…!」

 

ここあ「どうしたの、こころ?」

 

こころ「か、かがみをみてください!」

 

ここあ「へ?…!?」

 

こころ「かがみにうつるわたしのくびに、しろいなにかがまきついてます…!」

 

ここあ「いや、でも…こっちのこころのくびにはなにもついてないよ!?」

 

こころ「…じゃあ、ためしにかがみをさわりにいってみましょう」トテトテ

 

ここあ「あっ…ちょっと、こころ!」

 

こころ「…!?」ネチャ…

 

ここあ「うわっ、なにこのネチャネチャ…きもちわる~い!」

 

こころ「これは…もしかして、くものいとでしょうか?」

 

ここあ「くものいと?あれ、なんかどっかでみたようなきが…!」

 

キィン…キィン…

 

ここあ「またあのおとが…って、ん?」チラッ

 

?『…』

 

こころ「!?…ま、まさかあれはミラーモンスターの…」

 

ここあ「ディスパイダー!?」

 

ディスパイダー『…!』ガシッ

 

こころ「きゃっ…!」ズルズル

 

ここあ「!?…こころ!」ガシッ

 

こころ「ここあ…あなただけでもにげてください!」

 

ここあ「ダメだよ…このままじゃこころが、こころがたべられちゃうよ!」

 

こころ「ですが、このままではふたりともたべられてしまいます…だからここあだけでも」

 

ここあ「イヤだっ!」

 

こころ「!?」

 

ここあ「だって、わたしたち…こんどの『μ's』のライブにいくんだよ?」

 

ここあ「おかあさんやこたろうもそうだけど…こころといっしょにいけないとわたし、えがおになんてなれないよ!」

 

こころ「ここあ…ふふっ、そうでしたね?」

 

こころ「かぞくみんながそろわないと…わたしたちもおねえさまも、えがおになれないですもんね!」

 

ここあ「そうだよ、だから…ふぎぎ~!」グググッ

 

こころ「いっしょににげましょう…ふぬぬ~!」グググッ

 

ディスパイダー『…』グイッ

 

こころ「っ!?」フラッ

 

ここあ「かがみのなかに、ひきずりこまれ…」

 

ダダダッ…ガシッ!

 

?「ニャァァァッ!!」グイッ!

 

ここあ「わぁっ!?」ドサッ

 

こころ「いたた…って、りんさん!?」

 

凛「き、危機一髪ニャ~…」ホッ

 

リーン!

 

凛「あっ…真姫ちゃん!」

 

真姫「どうやら間に合ったみたいね…安心したわ」ホッ

 

凛「二人とも、ケガはないかニャ?」

 

こころ「は、はい…だいじょうぶです!」

 

ここあ「ありがとう、りんおねえちゃん!」

 

凛「えへへ…良かった!」

 

真姫「それにしても困ったわね…今から安全な場所まで逃げるにしても、もう大ショッカーの侵攻は始まってる」

 

こころ「へっ…大ショッカー?」

 

ここあ「大ショッカーって、あの大ショッカー?」

 

真姫「何、あなた達も知ってるの?」

 

こころ「えっと、はい…」

 

ここあ「しってるというか、みてるというか…」

 

真姫「だったら話は早いわね…じゃあ、早くここから離れましょう」スタスタ

 

凛「…ねぇ、真姫ちゃん」

 

真姫「何?」クルッ

 

ディスパイダー『…』ガッ!ガッ!

 

真姫「うぇえ!?」

 

こころ「あ、あれは…ディスパイダーが!」

 

ここあ「せまいかがみのなかから、むりやりでてこようとしてる!?」

 

凛「たぶん、あのクモはこころちゃんとここあちゃんを狙ってるんだと思う…」

 

こころ「えっ…!」

 

ここあ「そうなの?」

 

凛「うん、だからね…」

 

凛「凛があのクモをやっつけるから、この二人を安全な場所まで連れて行ってくれないかニャ…?」

 

真姫「…!」

 

こころ「りんさん、なにをいってるんですか!?」

 

ここあ「そうだよ!ミラーワールドにいくカードデッキもあるわけじゃないのに…」

 

凛「えっ、カードデッキって…これのこと?」スッ

 

ここあ「!…それって」

 

こころ「カードデッキ…どうしてりんさんが?」

 

凛「実はね…制服のポケットの中に入ってたんだ!」

 

凛「きっとこれで…あのクモをやっつけられるはずだよ!」

 

真姫「…無茶よ」

 

凛「えっ…真姫ちゃん?」

 

真姫「あんな大きな怪物に凛一人で立ち向かうだなんて…そんな事、させられない!」

 

凛「…安心して、真姫ちゃん」

 

真姫「え?」

 

凛「凛…絶対に、生きるから」

 

真姫「!…凛」

 

凛「あのクモが鏡から出てくる前に…早く行くニャ、真姫ちゃん!」

 

真姫「…本当に、任せて良いのね?」

 

凛「うん…大丈夫だよ!」

 

真姫「そう、その言葉…信じるわ」フフッ

 

凛「…!」バッ

 

凛「変身!」

 

龍騎「…」

 

こころ「『龍騎』に…!」

 

ここあ「変身した!」

 

ディスパイダー「…!」

 

龍騎「…ニャッ!行っくニャー!!」ダッ

 

真姫「行ってらっしゃい…凛」ボソッ

 

真姫「さあ、二人ともこっちよ!」ダッ

 

こころ「あっ…はい!」タタッ

 

ここあ「ま、まってよ~!」タタッ

 

 

 

こころ「そういえばまきさん…そのだいじそうにもってるケースはなんなんですか?」

 

真姫「これ?これは…」

 

ここあ「あっ…!?」ピタッ

 

真姫「…!」

 

?「フフフ…」

 

ここあ「あいつは…ホースファンガイア!」

 

こころ「そ、そんな…どうしてミラーモンスターだけでなくファンガイアまで!?」

 

ホースファンガイア「君のような美しい人間が見つかって嬉しい…君のライフエナジーに、乾杯」

 

真姫「…それ、まさか私へのナンパのつもり?」パカッ

 

こころ「えっ、まきさん…?」

 

ここあ「!?…みてこころ、まきおねえちゃんがもってるあのケースのロゴ!」

 

こころ「あ…あれは『スマートブレイン』の!?」

 

真姫「だったら悪いけど…あなた、私の好みじゃないの」ピッピッピッ…

 

ホースF「何…?」

 

ピピッ

 

『Standing By』

 

真姫「変身!」

 

『Error』

 

真姫「え?…きゃあっ!」バチバチッ!

 

こころ「まきさん!」

 

ここあ「ファイズドライバーがふきとんだ…って、だいじょうぶ!?」

 

真姫「もう!イミわかんない…何で変身出来ないのよ!?」

 

ホースF「何をするつもりだったかは知らないが…どうやら役に立たなかったようだな?」スタスタ

 

ここあ「あいつ…けんをもってこっちにやってきてるよ!」

 

こころ「まきさん、たてますか?ひとまずここはにげないと…っ!?」

 

?「逃がさん…」

 

こころ「ば、バットイマジン…!」

 

ここあ「まさかイマジンまでいるなんて…どうしよう、はさまれちゃったよ!?」

 

バットイマジン「ハアッ!」バッ!

 

真姫「はっ、危ない!…うっ!?」ゴロゴロ

 

ここあ「まきおねえちゃん!」

 

真姫「ち、ちょっと擦りむいただけだから…っ!」ズキッ

 

こころ「わたしたちをかばって…しっかりしてください、まきさん!」

 

真姫「う、ううっ…」

 

ホースF「…さあ、終わりだ」スタスタ

 

バットI「潰れろ!」ダッ

 

?「危ねぇ!」ガッ!ゴッ!

 

ホースF「グッ!?」

 

バットI「ガッ!?」

 

こころ「えっ…?」

 

?「ふぅ~、ヒヤヒヤしたぜ…」バサバサ

 

真姫「うぇえ!?」

 

ここあ「あれは…キバット!」

 

こころ「ほんとうに…キバットバットⅢ世さんなんですか!?」

 

キバット「おう!それにしてもお嬢ちゃん達…良く知ってるな?」

 

キバット「あっ、もしかして…俺様のファンか!?」

 

ここあ「うん!」

 

こころ「はい!」

 

キバット「本当か!?な、何か嬉しくて泣きそうになってきたぜ…」ジーン…

 

真姫「な、何…?」

 

キバット-!

 

真姫「!」クルッ

 

こころ「あっ、はなよさんと…!」

 

ここあ「ことりおねえちゃんだ!」

 

花陽「こころちゃん、ここあちゃん!…って真姫ちゃん!?」

 

ことり「足、擦りむいちゃってる…大丈夫?」

 

真姫「ええ、このくらい平気よ…っ!」ズキッ

 

花陽「あっ…ダメだよ真姫ちゃん、無理しちゃ!」

 

ことり「今、すぐに手当てしてあげるから…少しそのままにしててくれる?」

 

真姫「でも…」

 

ことり「ちょっとだけだから…ねっ?」

 

真姫「!…分かったわ、お願い」

 

ことり「~♪」グルグル

 

こころ「じつはまきさん、わたしたちをてきのこうげきからかばってくれて…」

 

花陽「そうだったんだ…」

 

ここあ「そのせいでケガしちゃったの…まきおねえちゃん、ごめんなさいっ!」

 

真姫「別に気にしなくて良いわ…私はあなた達を守りたいから守った、それだけよ」

 

真姫「別にあなた達がにこちゃんの妹だからとかなんて関係無い…ただ、あなた達を守りたかった」

 

真姫「そう…ただ、それだけよ」

 

こころ「…まきさん」

 

ここあ「まきおねえちゃん…」

 

ことり「これでよし…っと!」ポンポン

 

真姫「…ありがとう、ことり」

 

ことり「うふふ…どういたしまして!」

 

真姫「それにしても…花陽もことりも、もう大丈夫なの?」

 

花陽「うん…みんなにはもう、安全な所に避難してもらってるから」

 

ことり「だから私達も…真姫ちゃん達を手伝いたいなと思って、ここまでやって来たの」

 

真姫「そう…」

 

ホースF「貴様ら…!」

 

バットI「許さんぞ!」

 

ことり「!…真姫ちゃん、ここは私達に任せてくれる?」

 

真姫「…!」

 

ここあ「でも、おねえちゃんたちはどうするの…?」

 

花陽「私達なら大丈夫だよ…キバット!」

 

キバット「よっしゃ、キバって行くぜ!」

 

花陽「…!」パシッ

 

こころ「えっ…もしかして!?」

 

花陽「…」スッ

 

キバット「ガブッ!」

 

花陽「…変身」

 

キバ「…」

 

ホースF「なっ…お前は!?」

 

ここあ「『キバ』だ!」

 

キバ「…ふっ!」ダダッ

 

こころ「はなよさん…!」

 

ことり「…」スタスタ

 

ここあ「まさか…ことりおねえちゃんも?」

 

ことり「…うんっ!」スッ

 

バットI「!?…貴様、それは!」

 

こころ「デンオウベルトと…ライダーパス!?」

 

ことり「私に出来ることを…変身」

 

『ソードフォーム』

 

電王「…」

 

バットI「その姿は…!」

 

こころ「『電王』!」

 

電王「…私、参上!」

 

ここあ「あれ?いまのこえ…」

 

電王「真姫!」

 

真姫「…え?」

 

電王「早くその子達を連れて行きなさい!」

 

真姫「っ!?…ちょっとことり、何でいきなりそんな命令口調なのよ!」

 

電王「戦いの邪魔だって言ってるのよ…ここはいいから、早く行きなさいよ!」

 

真姫「こ、ことり…あなたねぇ!?」

 

ここあ「まきおねえちゃん、まって!」

 

真姫「何よ!?」

 

こころ「たぶん、いまのことりさんはことりさんのようで…ことりさんじゃありません!」

 

真姫「?…何それ、イミわかんない」

 

ここあ「とにかく…ここはことりおねえちゃんたちにまかせて、いっしょにいこうよ!」

 

真姫「!…もう、後で覚えてなさいよことり!」

 

こころ「それにしても…あの電王、こえがちがうようなきがしませんか?」ヒソヒソ

 

ここあ「うん、なんだか…モモタロスじゃなくておねえちゃんににてるきがする」ヒソヒソ

 

こころ「やはりここあもそうおもってましたか…」

 

真姫「行くわよ、二人とも!」ダッ

 

こころ「あっ…はい!」タタッ

 

ここあ「えっ、ちょっと…ファイズギアはもっていかなくていいのー!?」タタッ

 

電王「…ようやく行ったわね」ハァ

 

バットI「おのれ…こうなったら、まずは貴様を潰す!」

 

電王「はっ…残念だけど、潰されるのはアンタの方よ!」

 

電王「なぜなら私は最初から最後までクライマックスなんだから…覚悟しなさい!」ダッ

 

 

 

真姫「こっちよ!」

 

ここあ「はぁはぁ…うん!」

 

こころ「あっ、あれは!?」

 

真姫「!」

 

?「フン…」

 

ここあ「たしか、あいつは…スティングフィッシュオルフェノク!」

 

こころ「そんな、オルフェノクまで…!」

 

スティングフィッシュオルフェノク「…ハッ!」バッ

 

こころ「なっ…さかなのすがたで、そらをとびながらこっちにむかってきます!」

 

ここあ「まさか…わたしたちにぶつかってくるつもり!?」

 

真姫「…どうやら、あの姿になるしかないみたいね」

 

ここあ「へっ…?」

 

真姫「二人とも、伏せてっ!」

 

こころ&ここあ「!?」サッ

 

ガシッ!

 

こころ&ここあ「…?」パチリ

 

?「…」グググッ…

 

ここあ「!?…あのオルフェノクは!」

 

こころ「ウルフオルフェノク…?」

 

ウルフオルフェノク「ううっ…」

 

スティングフィッシュO「何…攻撃を受け止めただと!?」

 

ウルフO「ぐっ…はぁっ!」ブンッ

 

スティングフィッシュO「グアッ!」ドサッ

 

ウルフO「うっ…!」フラッ

 

こころ「まきさん!?」

 

ここあ「まきおねえちゃん…しっかりして!」ユサユサ

 

真姫「…」ハァハァ

 

スティングフィッシュO「グッ…次こそ、消えろ!」ダッ

 

ここあ「マズい、こんどはやりでわたしたちをつきさすきだ!」

 

真姫「…っ!」

 

ガガガッ!

 

スティングフィッシュO「ウグッ!?」

 

真姫「え…?」

 

こころ「あっ…あれは!?」

 

ここあ「オートバジンだ!」

 

オートバジン「…」ポイッ

 

ドサッ

 

こころ「このケースは…ファイズギア!」パカッ

 

ここあ「なかみもぜんぶはいってる…きっとオートバジンがこのなかになおしてくれたんだ!」

 

こころ「そうだ…まきさん、もういちどこれをつかってみてください!」

 

真姫「えっ?」

 

ここあ「たぶん…いまのまきさんなら、つかえるとおもうよ!」

 

真姫「あなた達…どうして?」

 

真姫「私、怪物になったっていうのに…」

 

ここあ「オルフェノクかどうかなんてかんけいないよ!」

 

真姫「!」

 

こころ「だって、まきさんは…みをていしてわたしたちをまもってくれたじゃないですか!」

 

ここあ「だから…まきおねえちゃんはどんなすがたでも、まきおねえちゃんだよ!」

 

真姫「…私は、私」

 

オートバジン「…」サッ

 

真姫「!…あなた」

 

オートバジン「…」ピピピ…

 

真姫「ふふっ…ありがとう、励ましてくれて」ガシッ

 

オートバジン「…」グイッ

 

真姫「よっと…」フゥ

 

スティングフィッシュO「グッ、お前ら…!」

 

真姫「それにしても、随分とこの子達に怖い思いをさせてくれたわね…今度はこっちの番よ!」ピッピッピッ…ピピッ

 

『Standing By』

 

真姫「変身!」

 

『Complete』

 

ファイズ「…」

 

こころ「あれが『ファイズ』…!」

 

ここあ「まきおねえちゃんも…へんしんした!」

 

ファイズ「…オートバジン、二人をUTXまでお願い」

 

オートバジン「…」ガシッ

 

こころ「え?」

 

ここあ「へ?」

 

オートバジン「…!」フワッ…ビュン!

 

こころ&ここあ「あれ?そらをとんで…って、えぇ~っ!?」

 

ファイズ「穂乃果、絵里…頼んだわよ」

 

スティングフィッシュO「…!」ダッ

 

ファイズ「…はっ!」ダッ

 

 

 

オートバジン「…」スタッ…スッ

 

こころ「よっ、と…」

 

ここあ「ほっ!」

 

オートバジン「…」ピピッ

 

『Vehicle Mode』

 

ここあ「あっ、オートバジンが…」

 

こころ「きっと…やくめをおえて、もとにもどったのかもしれませんね」

 

ここあ「そっか…ありがとう、オートバジン!」ナデナデ

 

こころ「ありがとうございます!」ナデナデ

 

ここあ「それにしても…どうしてわたしたち、こんなところに?」

 

こころ「わかりません…あっ!」

 

ここあ「どうしたの?…ああっ!?」

 

アギト「はぁーっ!!」ザシュッ!

 

戦闘員「イーッ!?」バタッ

 

こころ「あ…あれは『アギト』とショッカーのせんとういんじゃないですか!」

 

ここあ「でも、あのアギト…なんかぜんしんがあかいよ!?」

 

こころ「しかも、シングルモードにしたシャイニングカリバーまでもっています…!」

 

ここあ「ってことは…まさか、バーニングフォーム!?」

 

こころ「ひっさつわざのバーニングボンバーまでしていましたから…まちがいありません!」

 

アギト「…」スタスタ

 

こころ「こ…こっちにきますよ!?」

 

ここあ「あのアギト…もしかして、ぼうそうしてるんじゃないの!?」

 

こころ「そんな、もしぼうそうしてたら…かくじつにおそわれます!」

 

ここあ「ど、どうしよう…またオートバジンにまもってもらう!?」

 

こころ「でも、オートバジンがロボになりませんよ!?」

 

ここあ「にげるばしょもないし…!」バッ

 

アギト「…」

 

こころ&ここあ「い、いやぁぁぁ!」

 

アギト「あ、あの~…」

 

こころ&ここあ「…え?」

 

アギト「えっと…あなた達が、こころちゃんとここあちゃん?」

 

こころ「は、はい…」

 

ここあ「たしかにそうだけど…あれ?」

 

こころ「そのこえ…もしかして、ほのかさん!?」

 

アギト「うん、そうだよ!」

 

ここあ「なんだ~…ほのかおねえちゃんだったんだね!」ホッ

 

こころ「なにもいわずにこっちにくるのでビックリしましたよ…」

 

アギト「あはは…急に驚かせちゃってごめんね?」

 

ここあ「でも、なんでほのかおねえちゃんがここに…?」

 

アギト「うん、実はね…あなた達に大事なお願いがあるの!」

 

こころ「だいじなおねがい…ってことは、ほのかさんがわたしたちをここにつれてくるようにまきさんにたのんだんですか?」

 

アギト「えっ?あっ、う~ん…そうかな?」

 

ここあ「そうだったんだ…それで、おねがいってなに?」

 

アギト「二人にはね…雪穂や亜里沙ちゃんと一緒に、大ショッカーから逃げてほしいの!」

 

こころ&ここあ「…?」

 

こころ「えっと…ゆきほとありさって、どなたですか?」

 

ここあ「うーん…あっ、たしかかいがいにいくおねえちゃんたちをくうこうでみおくるときに!」

 

こころ「!…もしかして、ほのかさんとえりさんのいもうとさんたちのことですか?」

 

アギト「そうそう、その子達だよ!」

 

ここあ「でも、どうしてわたしたちなの…?」

 

アギト「それが…私達『μ's』は、大ショッカーからこの世界のみんなを守るために仮面ライダーに変身してるの」

 

アギト「でも、そのせいで忙しくなっちゃって…雪穂達を迎えに行くことが出来なくなっちゃったの」

 

こころ「なるほど…だから、わたしたちに?」

 

アギト「うん!」

 

ここあ「でも、じつはわたしたち…おとうとのこたろうをさがしてて」

 

アギト「それなら大丈夫だよ!」

 

ここあ「えっ?」

 

アギト「二人に頼めば…きっとその子を一緒に探して見つけてくれるはずだよ!」

 

アギト「なぜなら、未来のスクールアイドルを目指す二人には…世界を変えるかもしれないくらいのスゴい力があるんだから!」

 

こころ「おふたりに…」

 

ここあ「すごいちからが?」

 

アギト「そう…だから、大ショッカーは雪穂達を狙っているの」

 

アギト「お願い…もう頼めるのは『仮面ライダー』に詳しいあなた達しかいないの!」

 

こころ「…どうします?」

 

ここあ「…きまってるよ」

 

ここあ「ほのかおねえちゃんがこんなにおねがいしてるんだから、ことわるわけにはいかないよ!」

 

こころ「そうですよね…ほのかさんには、おねえさまのライブをみせてくれたごおんがありますし!」

 

アギト「二人とも…ありがとう!」

 

アギト「じゃあ、さっそく行ってもらおうかな…おーい!」

 

キバーラ「はいは~い♡」バサバサ

 

こころ「キ、キバーラ!?」

 

ここあ「どうしてキバーラが…?」

 

キバーラ「その話は後にして、とりあえず行くわよ…グルグルグルグル~!」

 

ここあ「わ、わぁ~っ!?」

 

こころ「またこうなるんですかぁ~!?」

 

アギト「…」フゥ

 

?「…ごめんなさいね」

 

アギト「!」クルッ

 

?「こんな事の為に…あなたを私達の世界に呼び出してしまって」スタスタ

 

アギト「…気にしないでください」

 

アギト「私も…消えちゃう前にまた、みんなの力になれないかなって思ってたので」スゥゥ…

 

?「…」

 

アギト「それにツカサくんに雪穂達、この世界の私達『μ's』やみんなが…きっと何とかしてくれるって信じてますから!」フフッ

 

アギト「…もちろん、あなたのことも」

 

?「!…ええ、その通りよ」

 

?「必ず私達が…あなた達九人を、元通りにしてみせるわ」

 

アギト「えへへ…じゃあ、後はお願いします!」

 

ホノカ「じゃあね?…さん」スゥゥ…

 

?「…ありがとう、ホノカさん」

 

~♪

 

?「…!」ピッ

 

?「私よ、そっちの様子はどう?」

 

?「そう…分かった、私もすぐに向かうわ」ピッ

 

?「さあ、ここからが…本当の戦いよ」スタスタ

 

 

 

ブレイド「…」フゥ

 

響鬼「よっと…お疲れさん、海未ちゃん!」

 

ブレイド「希…終わったのですね?」

 

響鬼「うん…今、終わったとこよ」

 

ブレイド「…」 

 

響鬼「…あれ、どうしたん?」

 

ブレイド「雪穂と亜里沙は…ちゃんとツカサに会えているのでしょうか?」

 

ブレイド「九つの世界を回って、無事に帰ってきてくれると良いのですが…」

 

響鬼「でも…海未ちゃんも夢で見たんやろ?」

 

ブレイド「それは、そうですが…」

 

響鬼「大丈夫や…雪穂ちゃんも亜里沙ちゃんもきっと、無事に帰ってきてくれる」

 

響鬼「だから…ツカサくん達を信じよう?」

 

ブレイド「…はい」

 

響鬼「!…ねえ、あっちから歩いて来てるのって」

 

ファイズ「…」スタスタ

 

ブレイド「あれは…まさか私達と同じ『仮面ライダー』でしょうか?」

 

ファイズ「えっ?…うぇえ!?」

 

響鬼「あれ、その驚き方はもしかして…」

 

ブレイド「真姫?…真姫なのですか!?」

 

ファイズ「その声は…海未、希!?」

 

響鬼「やっぱり真姫ちゃんや!」

 

ブレイド「驚きました…真姫も変身していたのですね?」

 

ファイズ「それはこっちの台詞よ…二人とも、何がきっかけで変身したの?」

 

響鬼「ウチらは化け物に襲われそうになってる雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんを見かけて、助けないとって思ってたら…」

 

ブレイド「変身する為の道具である、このベルトの使い方を思い出して…変身できるようになっていました」

 

響鬼「ウチの変身アイテムは音叉やったけどね!」

 

ファイズ「そう…私もにこちゃんの妹達を助けなきゃって思ってたら、変身できたわ」

 

響鬼「って事は…こころちゃんとここあちゃんに会ったんやね?」

 

ファイズ「ええ」

 

ブレイド「それで…二人はどうしたんですか?」

 

ファイズ「オートバジンにUTXまで送ってもらうようにお願いしたわ…きっとそこなら今頃、にこちゃんや虎太郎くんもいるでしょうし」

 

響鬼「そっか…穂乃果ちゃんやえりちもいるし、大丈夫やね!」

 

ブレイド「…本当に、そうでしょうか?」

 

響鬼「!…海未ちゃん」

 

ファイズ「どういう意味よ?」

 

ブレイド「…胸騒ぎがするんです」

 

ブレイド「これから、とんでもない事が起こる…そんな気がしてならないんです」

 

?「そうか…例えば、こんな風にか?」

 

響鬼「!」クルッ

 

ディケイド「…」スッ

 

ファイズ「そのカード…!」

 

ブレイド「まさか、あなたは!?」

 

『ファイナルフォームライド…ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

 

ブレイド「あっ…ああっ!?」

 

ディケイド「…」パシッ

 

響鬼「海未ちゃんが…おっきな剣に!?」

 

ファイズ「あなた、何のつもり!?」

 

ディケイド「ハッ、決まってるだろ?…貴様ら二人には逃げられた事があるからな」

 

ディケイド「だからこそ、まずは…貴様らから始末してやる」スッ

 

ファイズ「!…そんな」

 

響鬼「嘘、やろ…?」

 

ディケイド「じゃあな…西木野真姫、東條希」ニヤリ

 

『ファイナルアタックライド…ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

 

 

 

ブレイド「ううっ…!」ゴロゴロ

 

ディケイド「…」スタスタ

 

ブレイド「あなた、真姫と希に何を…何をしたんですか!?」

 

ディケイド「…見て分からないのか?」スッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「フッ!」ザシュッ!

 

ブレイド「かはっ…!?」ドサッ

 

ディケイド「安心しろ、すぐに俺が…二人と会わせてやるよ」

 

ブレイド「まさか私達を裏切ったのですか…?本当に、裏切るつもりなのですか!?」

 

ディケイド「裏切っただと?…違うな」

 

ディケイド「俺は…自分の本当の使命に、気が付いただけだ」スッ

 

ブレイド「…っ!」

 

ディケイド「じゃあな…園田海未」ニヤリ

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

 

 

龍騎「あれ?あっちに『仮面ライダー』っぽいのがいる…お~い!」ブンブン

 

キバ「えっ、もしかしてその声…凛ちゃん?」

 

龍騎「あっ…その声はかよちん!」

 

キバ「良かった…凛ちゃんも無事だったんだね?」

 

龍騎「うん!…って、あれ?」ジーッ

 

電王「…何よ?」

 

龍騎「こっちのライダーに変身してるのは…にこちゃんかニャ?」

 

キバ「ううん、ことりちゃんだよ?」

 

龍騎「え?ええ~っ!?」

 

電王「何よ…文句あんの?」

 

龍騎「大ありだよ!?だって…ことりちゃんはそんな感じじゃないもん!」

 

電王「はぁ?知らないわよ、そんなの…別にどうだっていいでしょ」

 

龍騎「全然良くないニャー!」

 

キバ「まあまあ…落ち着いて、凛ちゃん?」

 

龍騎「納得できないよ!だって、ことりちゃんの声は…」

 

電王『…胸騒ぎがする』

 

龍騎「そうそう、こんな感じで…へっ?」

 

キバ「胸騒ぎ…?」

 

電王『うん、何だか…イヤな予感がするの』

 

龍騎「イヤな…予感?」

 

?「その予感…当ててやろうか?」スッ

 

電王『!』バッ

 

龍騎「えっ?…あっ!?」

 

『ファイナルフォームライド…キ・キ・キ・キバ!』

 

キバ「えっ?あっ…誰か助けてぇ~!」

 

龍騎「かよちん!?」

 

ディケイド「…」パシッ

 

龍騎「ウソ…かよちんが弓みたいになっちゃった!」

 

電王『そんな、どうしてツカサくんが…?』

 

ディケイド「見て分からないのか?…お別れを言いに来たんだよ、貴様らに」

 

龍騎「お別れ…?」

 

電王『…!』ハッ

 

ディケイド「今更、気が付いても…もう遅い」スッ

 

ディケイド「じゃあな…南ことり、星空凛」ニヤリ

 

『ファイナルアタックライド…キ・キ・キ・キバ!』

 

 

 

キバ「うっ…!?」ドサッ

 

キバ「はっ!…凛ちゃんとことりちゃんは?」

 

ディケイド「奴らには…しばらく籠の中へと入ってもらったよ」スッ

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

キバ「!」クルッ

 

ディケイド「ハッ!」ガガッ!

 

キバ「ああっ!?…あっ」ドサッ

 

キバ「な、何で…こんなことを」

 

ディケイド「この世界を手に入れる為だ…だから、貴様にも入ってもらう」

 

ディケイド「自分の意思では出られない籠の中に…ずっとな」

 

キバ「…!」

 

ディケイド「じゃあな…小泉花陽」ニヤリ

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

 

 

クウガ「夢の中でも戦ってたけど…どうしても慣れないわね、こういうの」ハァ

 

クウガ「やっぱり、にこは…アイドルでなくっちゃ!」

 

ニコチャーン!

 

クウガ「!」

 

アギト「お~い!」

 

クウガ「あれは穂乃果と…絵里、かしら?」

 

アギト「あれ…にこちゃん、いつの間にか色が赤くなってない!?」

 

アギト「それに、何だか角も大きくなってるような…?」

 

クウガ「あー…まあ、色々とね」

 

アギト「色々ってどういうこと?何があったの!?教えてよぉ~!」

 

クウガ「うるさいわね!その姿で駄々こねるんじゃないわよ…みっともない」

 

アギト「だってだってぇ~!」ジタバタ

 

クウガ「…そういえば、絵里もだいぶ変わってない?」

 

カブト「えっ?ああ…これ?」

 

アギト「そうなんだよ…実は絵里ちゃん、カロリーオフしたの!」

 

クウガ「…はぁ?カロリーオフ?」

 

カブト「穂乃果…それを言うなら、キャストオフ」

 

アギト「あっ…そうそう、それそれ!」

 

アギト「そのキャストオフっていうので、姿が変わったんだよ!」

 

クウガ「いや、そもそもキャストオフって何よ…?」

 

アギト「キャストオフっていうのはね…えっと、何だっけ?」

 

クウガ「…もういいわ」ハァ

 

アギト「私もこの金色以外に変われないかなぁ~…あっ、そういえば虎太郎くんは?」

 

クウガ「さっきから探してるんだけど、全然見つからないのよ…行く先々で大ショッカーの戦闘員が邪魔してくるし」

 

カブト「そう…どこかで大ショッカーに捕まったりしてないと良いんだけど」

 

?「…なるほどな、大体分かった」

 

アギト「ん?…って、ええっ!?」

 

ディケイド「…」スッ

 

クウガ「アンタ、何で…!」

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

カブト「えっ、消えた?」

 

ドカッ!

 

クウガ「うっ…!?」ゴロゴロ

 

カブト「にこ!」

 

アギト「にこちゃん!」

 

『アタックライド…クロックアップ!』

 

ガッ!ゴッ!

 

アギト「わぁっ…!?」フラッ

 

カブト「穂乃果!?…っ!」

 

『Clock Up』

 

ディケイド「…」

 

カブト「あなた…どうして、私達を襲うの!?」

 

ディケイド「…貴様らを全員、カードにする為だ」スッ

 

カブト「!?」

 

ディケイド「じゃあな…高坂穂乃果、絢瀬絵里」ニヤリ

 

アギト「…!」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

 

 

『Clock Over』

 

クウガ「はぁはぁ…!」

 

ディケイド「…」ググッ

 

クウガ「アンタ…その手に持ってるカード、まさか」

 

ディケイド「…そうだ」

 

ディケイド「世界の破壊者としての運命を受け入れた俺は…『μ's』メンバーの八人を、このカードの中に閉じ込めさせてもらった」

 

クウガ「!!」

 

ディケイド「そして…最終的には貴様も、カードの中に入ってもらう」

 

クウガ「…そう、それがアンタの出した旅の答えなのね?」

 

ディケイド「…ああ」

 

クウガ「だったら…私は全力で、アンタを止めてみせるわ」

 

クウガ「穂乃果達だけじゃない…アンタの笑顔も、取り戻す為に!」

 

ディケイド「フン…だったら止めてみろよ、止められるものならな」

 

クウガ「…見てなさい、私の変身」

 

クウガ「超変身!」

 

ディケイド「…!」

 

クウガ「…」

 

ディケイド「…そうか、まさかアルティメットフォームに変身するとはな」

 

ディケイド「それも…究極の闇に呑み込まれず、瞳の色を赤く保ったままで」

 

ディケイド「しかし、アルティメットだろうが何だろうが…俺は既に究極を超えている」

 

クウガ「…?」

 

ディケイド「もうこの俺に刃向かう敵などいない、何故なら…」

 

?「動くな!」

 

クウガ「!」バッ

 

ゴルドラ「動けば…こいつの命は無い」

 

虎太郎「…」

 

クウガ「!?」

 

ディケイド「貴様の弟は…既に大ショッカーの手の中にあるのだからな」

 

ディケイド「貴様も…そして、この俺もな」スッ

 

クウガ「!…ツカサ、やっぱりアンタは」

 

ディケイド「じゃあな…矢澤にこ」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

クウガ「…!」

 

ディケイド「これで…貴様ら『μ's』は、コンプリートだ」ニヤリ

 

 

 

亜里沙(ツカサと雪穂は…ディケイドとディエンドに変身した)

 

ディエンド「…」スタスタ

 

亜里沙「待って…待ってよ、雪穂!」

 

こころ「まさかゆきほさんがディエンドになるなんて…!?」

 

ディケイド「…」

 

ここあ「あのディケイド、おでこのいろがきいろじゃなくてむらさきだ…まさか!?」

 

こころ「めのかたちからみてもまちがいありません…あのディケイドは!」

 

キバーラ「…激情態」

 

ディエンド「ツカサ…私が、あなたの旅を終わらせる」

 

ディケイド「ハッ、面白いな…やってみろよ」

 

亜里沙「!?…ダメ、二人が戦ったら!」

 

ディケイド「フッ!」ダッ

 

ディエンド「はぁっ!」ダッ

 

亜里沙(二人は…私の話を聞いてくれることなく、戦い始めた)

 

亜里沙「…!」

 

ここあ「いっちゃった…」

 

亜里沙「…世界はもう、おしまいなの?」ボソッ

 

こころ「えっ、ありさ…さん?」

 

亜里沙「私、どうすればいいの…?」ポロポロ

 

ここあ「!…ありさおねえちゃん」

 

亜里沙「誰か止めて…私にはもう、何もできないよ」

 

亜里沙「二人の戦いを止めることもできないし、力にも…なってあげられない」

 

亜里沙「私にはもう、できることなんて何も…!」グスッ

 

こころ「…そんなことありませんよ、ありささん」

 

亜里沙「えっ…?」

 

ここあ「さっきもいったでしょ、ゆきほおねえちゃんとありさおねえちゃんにはすこいちからがあるんだって!」

 

亜里沙「そんな…でも、私には」

 

こころ「まだあるじゃないですか…ほら、さっきもやったでしょう?」

 

亜里沙「…さっき?」

 

ここあ「ほら、あれだよ…あれ!」

 

亜里沙「あれ…?」

 

こころ「きまってるじゃないですか!」

 

ここあ「これだよ!」

 

こころ&ここあ「にっこにっこにー!」

 

亜里沙「えっ?…!」ハッ

 

こころ「ふふっ、どうやら…きづいてくれたみたいですね?」

 

ここあ「スクールアイドルをめざすおねえちゃんたちがもつすごいちからが…なんなのか!」

 

亜里沙「スクールアイドルを目指す私たちの…そっか、そうだよね!」

 

こころ「まあ、これはあくまでもわたしたちのかってなよそうなんですけどね…」

 

亜里沙「でも、きっとそうに違いないよ…こうしちゃいられない!」

 

亜里沙「早く…二人を止めに行かなきゃ!」ダッ

 

キバーラ「待って、亜里沙ちゃん!」

 

亜里沙「?」クルッ

 

キバーラ「あなた一人じゃ危険よ…アタシも一緒に行くわ!」

 

亜里沙「キバーラ…!」

 

キバーラ「それと、あなたに…アタシの力をあ・げ・る♡」

 

亜里沙「…へっ?」

 

こころ「それって!」

 

ここあ「もしかして…!」

 

キバーラ「…そう、ついにその時が来たのよ」

 

キバーラ「高坂雪穂と絢瀬亜里沙、あなた達二人の本当の力を見せる時が…ね♡」

 

?「その通りよ」

 

亜里沙「!」バッ

 

ここあ「?…ああーっ!?」

 

こころ「あなたは…!」

 

?「…」フフッ

 

 

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディエンド「やぁっ!」ガガッ!

 

ディケイド「フンッ!」ガガッ!

 

ディエンド(同じ効果のカードを入れた私とディケイドは…お互いに攻撃し合った)

 

ディエンド「ううっ…!」

 

ディケイド「グッ…なかなかやるな、雪穂?」

 

ディエンド「…っ!」

 

ディケイド「おいおい、そう怒るなよ…仲間だろ?」

 

ディエンド「…仲間?」

 

ディケイド「そうだよ…俺達は一緒に色々な世界を旅してきた仲間じゃないか」

 

ディエンド「…今さら、何言ってるの?」

 

ディエンド「お姉ちゃん達をカードにして、そのうえ亜里沙にまでヒドいことを言ったあなたが…何を言うの!?」

 

ディケイド「…」

 

ディエンド「ふざけないで!もうあなたは…私達の仲間なんかじゃない!!」

 

ディケイド「…そうか、それは残念だ」

 

ディエンド「私だってこんなことしたくない…でも、やらなくちゃいけないんだ」

 

ディエンド「私一人でやるしかないんだ…だから、これで決める!」スッ

 

ディエンド(私は左腰のホルダーから二枚のカードを取り出した)

 

ディケイド「能書きはいい…早くかかってこい」

 

ディエンド「…!」 

 

『カメンライド…G4!アーク!』

 

ディエンド(私は…ディケイドに向かって、二人のライダーを召喚した)

 

G4「分かっているはずだ…どちらが正しいか、今この場で答えを出すか!」

 

アーク「倒す、この手で…貴様を」

 

アークキバット「じゃあ行きますか~…ドロンドロン~」

 

ディケイド「…来いよ、逃げるつもりはないからな」

 

G4「…!」ガガガッ!

 

ディエンド(G4はG3が使っていたGM-01と同じ形をした銃を使って…ディケイドを攻撃し始めた)

 

ディケイド「…」サッ

 

ディエンド(それでもディケイドは…G4の攻撃を次々と避け続ける)

 

ディエンド「っ…G4!」

 

G4「…!」バシュッ!

 

ディエンド(G4は大きなランチャーを肩に背負うと…四本のミサイルをディケイドに向かって発射させた)

 

ディケイド「…フン、甘ちゃんの攻撃だな」スッ

 

『アタックライド…インビジブル!』

 

ディエンド(三枚のカードを取り出し、一枚目のカードをベルトに入れたディケイドは姿を消し…G4のミサイルは避けられてしまった)

 

ディエンド「まさか…逃げた!?」

 

ディケイド「どこを見ている?…逃げるつもりはないと言ったはずだ」

 

『アタックライド…ギガント!』

 

『アタックライド…サイドバッシャー』

 

ディエンド「!」バッ

 

ディケイド「もういいだろ…これで終わりだ」

 

ディエンド(巨大なメカに乗って姿を現したディケイドは…G4と全く同じ武器を肩に背負っていた)

 

ディエンド「!…そんな」

 

ディケイド「フンッ!」バシュッ!

 

ディエンド(ディケイドは肩に背負った武器と巨大なメカから…全てのミサイルを私達に向けて放った)

 

G4「!」ドンッ!

 

ディエンド「うわぁっ!?」ゴロゴロ

 

G4「…!!」

 

ディエンド(私をかばうために、わざと私を遠くへと突き飛ばしたG4は…そのまま攻撃を受けて消滅してしまった)

 

ディエンド「あっ…!」

 

ディケイド「…あとは、もう一体か」

 

アーク「…!」ブンッ

 

ガシャン!

 

ディケイド「!?…ッ!」ドサッ

 

ディエンド(アークは大きな槍を振り回して巨大なメカを壊し…ディケイドを地面に落とした)

 

アーク「…」スッ

 

アークキバット「ウェイクアップ!」

 

ディエンド(ディケイドを倒そうと笛を取り出し、ベルトのコウモリのようなものに吹かせたアークは…空を飛び上がった)

 

アーク「我が一族に…最後の力を!!」

 

ディエンド(空を夜に変えるアークは…月から浮かび上がった目のようなものを自分の胸の中へと吸収した)

 

ディエンド「あれは…一体?」

 

ディケイド「堕ちる月か…酔狂なモンだな」

 

メカキバット「ゴートゥーヘル!!」ポロッ

 

ディケイド「『Go to hell』?…悪いが、地獄に行くのはお前の方だ」スッ

 

アーク「…!」バッ

 

ディエンド(ディケイドが三枚のカードを取り出すと同時に…アークは胸の一つ目から大きな光の玉をディケイドに向けて放った)

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

『アタックライド…クロックアップ!』

 

ディケイド「…フッ!」ササッ

 

ディエンド(三人に分身し、速く動けるようになったディケイドは…アークの技を避けた)

 

ディエンド「なっ…!?」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディエンド(その間に最後の一枚をベルトに入れた三人のディケイドは…アークに向かって、いくつものカードを出現させた)

 

ディケイド「ハァーッ!!」

 

ディエンド(三人のディケイドは逃げようとするアークを追い続け、無数のカードを突き抜けながら…キックを放った)

 

アーク「…!!」

 

ディエンド(空中で倒されたアークの大きな身体は…私の頭上へと落ちてこようとしていた)

 

ディエンド「っ…う、うわぁぁぁぁぁ!?」

 

ズシーン!

 

ディエンド(避けようとする前に、私は…アークの下敷きになってしまった)

 

ディエンド「ううっ…!」ハッ

 

雪穂(アークが消えると同時に…私の変身は解けてしまっていた)

 

雪穂「へ、変身が…」

 

ディケイド「…悪いな、俺の勝ちだ」スッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

雪穂(ディケイドはカードの効果で変形させた剣を…倒れていた私に向かって突きつけた)

 

雪穂「…!」

 

ディケイド「雪穂…最後にもう一度だけ、聞く」

 

ディケイド「亜里沙と大ショッカーに入って…俺と一緒に来るつもりは無いか?」

 

雪穂「…悪の手先になんて、なるわけないでしょ」

 

雪穂「私達の行く先は、私達で決める!」

 

ディケイド「…そうか、大体分かった」

 

ディケイド「貴様には失望したよ…消えろ」ブンッ

 

雪穂「…っ!」

 

雪穂(亜里沙、お姉ちゃん、みんな…ごめん)

 

雪穂(やっぱり私だけじゃ、何も…!)

 

?「ダメーーーッ!!」ドンッ!

 

ディケイド「グアッ!?」ゴロゴロ

 

雪穂「…え?」

 

雪穂(私が諦めかけた時、ディケイドを突き飛ばしたのは…)

 

亜里沙「雪穂、大丈夫!?」

 

雪穂「!…あ、亜里沙?」

 

キバーラ「ホッ…どうやら間に合ったみたいね?」バサバサ

 

雪穂「キバーラまで…!」

 

雪穂(亜里沙は私のもとへ駆け寄ると…すぐに私を支えて立ち上がらせた)

 

亜里沙「よっと…ケガしてない?」

 

雪穂「う、うん…」

 

ディケイド「グッ…亜里沙、貴様!」

 

?「…あなた、相変わらずつまらない事をやっているみたいね?」

 

ディケイド「!?」バッ

 

雪穂(ディケイドが声をする方を向くと、そこには…UTXの白い制服を着たあの人がいた)

 

ツバサ「まあ、良いわ…私が面白くしてあげる」

 

雪穂「ツ、ツバサさん!」

 

ツバサ「ふふっ…久しぶりね、雪穂さん」

 

ディケイド「何故だ…どうして貴様が、ここにいる!?」

 

ツバサ「当然でしょ、だって私は…この世界の人間なのだから」

 

雪穂「この世界の…ってことは!」

 

ツバサ「そう、私はUTX高校スクールアイドル『A-RISE』の…綺羅ツバサよ」フフッ

 

ディケイド「…!」

 

ツバサ「そこにいるキバーラから話を聞いて『μ's』を取り戻すお手伝いをしに来たの…勿論、ディケイドである彼の意識もね」

 

ツバサ「そうでしょう?…ゼイビアックス」

 

ツバサ「それとも…ナルタキ、と呼んだ方が良いのかしら?」

 

雪穂「!?」

 

ディケイド「…そうか、気付いていたのか」

 

雪穂「ど、どういうことなの…?」

 

亜里沙「今のツカサはね…あのナルタキって人に身体を乗っ取られているの!」

 

雪穂「!…じゃあ、お姉ちゃん達をカードに閉じ込めたのは?」

 

ツバサ「そう、全ては…彼の仕業よ」

 

雪穂「…!」

 

ディケイド「再三、大ショッカーからの誘いを断ったからな…俺は彼の身体を乗っ取る事にした」

 

ディケイド「そのおかげで…こうして『μ's』のメンバーをカードに変えて集める事が出来た」

 

ディケイド「最早、彼の身体と『μ's』の力を手に入れた俺は…これから数多の世界を支配する最強の存在となる!」

 

ディケイド「ハハハ…フハハハハ!!」

 

ツバサ「…呆れた」ハァ

 

ディケイド「!…何だと?」

 

ツバサ「あなた、やっぱり何も分かっていないみたいね?」

 

ツバサ「凄い力を持っているのは…何も『ディケイド』や『μ's』だけじゃないという事を、ね」フフッ

 

雪穂「…どうしよう、亜里沙」

 

亜里沙「えっ?」

 

雪穂「私…ツカサに、ヒドいこと言っちゃった」

 

亜里沙「!…雪穂」

 

雪穂「ツカサが苦しんでいることも知らずに、私は自分のことばかり考えて…ツカサを仲間じゃないって言って倒そうとして」

 

雪穂「私、最低だよ…」グスッ

 

亜里沙「…泣かないで、雪穂」ギュッ

 

雪穂(亜里沙は…泣いている私の手を、優しく握りしめてくれた)

 

雪穂「亜里沙…?」

 

亜里沙「オトノキに入学するのはあともうちょっとだけ先だけど…私たちは、あの時からもうスクールアイドルなんだよ?」

 

雪穂「あの時、から…!」ハッ

 

穂乃果『伝えよう…スクールアイドルの、素晴らしさを!!』

 

亜里沙「だから、どんな時もずっと…楽しく笑顔でいなきゃ!」ニコッ

 

雪穂「…亜里沙」

 

亜里沙「それに…二人で一緒に叶えようって約束したでしょ?」

 

亜里沙「私たちは『μ's』に負けないくらい、楽しくてハラショーなスクールアイドルを目指そうって…」

 

雪穂「!」

 

亜里沙「それにね…私、叶えたい夢がもう一つできたの!」

 

雪穂「…もう一つの、夢?」

 

亜里沙「うん…ツカサにはいつか、スクールアイドルになった私たちのライブを見て笑顔になってほしいの!」

 

雪穂「!!」

 

亜里沙「それが、今の私の…もう一つの夢だよ」

 

雪穂「…そっか」フフッ

 

ディケイド「ほう…それはまた随分と大層な夢だな」

 

雪穂「!」

 

ディケイド「だが、残念ながら貴様のその夢は…永遠に叶う事は無い」

 

ディケイド「何故なら俺が…今ここで、貴様らの命を消し去るのだからな!」ダッ

 

ツバサ「…させないわ」スッ

 

雪穂(また私達に襲いかかろうと走り出すディケイドを見たツバサさんは…一枚のカードと黄色いバックルを取り出した)

 

ディケイド「なっ…それは、まさか!?」

 

ツバサ「変身!」

 

『Open Up』

 

雪穂(カードを入れたバックルを装着したツバサさんがそれを展開させると…バックルから黄色い壁のようなものを出現させた)

 

ディケイド「ガッ…!」

 

雪穂(ディケイドを弾き飛ばした黄色い壁が後ろに下がり、ツバサさんの身体をすり抜けていくと…)

 

グレイブ「…」

 

雪穂「ツバサさんが…変身、した?」

 

グレイブ「ええ、実は私や他の二人も『μ's』と同じように…もう一人の自分の記憶や変身能力を共有していたの」

 

雪穂「えっ…他の二人?」

 

亜里沙「それじゃあ…まさか!」

 

?「そう、そのまさかだ」

 

雪穂「!」クルッ

 

英玲奈「…」フフッ

 

あんじゅ「ハロ~♡」フリフリ

 

亜里沙「英玲奈さん、あんじゅさん!」

 

あんじゅ「うふふっ…手伝いに来たわよ」

 

英玲奈「…これ、お土産だ」スッ

 

雪穂(英玲奈さんは…私に四枚のカードを渡してきた)

 

雪穂(そのうちの三枚はブランクカードで、後の一枚は…)

 

雪穂「!…これって、もしかしてディエンド?」

 

亜里沙「でも、後ろの色が何だか黄色いね…私にも見せて!」スッ

 

雪穂「ちょっと待って…!?」

 

雪穂(亜里沙がカードに触れた瞬間…絵柄が別のものに変わった)

 

亜里沙「!…カードが変わった?」

 

雪穂「…?」

 

あんじゅ「それはディエンドのパワーアップカードよ…ツバサちゃんに頼まれて、英玲奈ちゃんと二人で探していたの」

 

英玲奈「まさかUTXの劇場のステージにあるとは思わなかったけどな…『μ's』や彼を取り戻す為に、是非使ってくれ」

 

雪穂「!…あ、ありがとうございます」

 

あんじゅ「さ~て…そろそろ私達も行きましょうか、英玲奈ちゃん?」スッ

 

英玲奈「ああ、勿論…そのつもりだ」スッ

 

雪穂(二人はツバサさんが持っていたのと色違いのバックルを取り出すと…それぞれのバックルに一枚ずつ、カードを入れた)

 

英玲奈&あんじゅ「変身!」

 

『Open Up』

 

雪穂(バックルをお腹に着け、展開させた二人は…ツバサさんが変身したのとよく似た姿をした色違いの戦士になった)

 

ランス「…やるぞ、ツバサ」

 

ラルク「私達『A-RISE』のチームワークで…寝ている坊やを起こしてあげましょう?」

 

グレイブ「ふふっ…ええ!」ダッ

 

ディケイド「貴様ら、よくも…ハッ!」ダッ

 

雪穂(変身した『A-RISE』は…ディケイドに立ち向かっていった)

 

雪穂「亜里沙…私にも、叶えたい夢がもう一つできたよ」

 

亜里沙「え?」

 

雪穂「私は亜里沙と一緒に…『ラブライブ!』に出たい」

 

雪穂「でも、それだけじゃなくて…『μ's』とは違う形でスクールアイドルの素晴らしさを広めていきたいなって思うんだ」

 

亜里沙「!…違う形?」

 

雪穂「うん!」

 

雪穂「たぶん…そこまでしないと、私達のライブを見に来たツカサが満足してくれないような気がするんだよね」

 

雪穂「ツカサはもちろん、お姉ちゃん達やみんなには…いつも笑顔で楽しく過ごしていてほしいから!」

 

亜里沙「!!」

 

雪穂「やっぱり…こんなの、きれいごとかな?」

 

亜里沙「…ううん、そんなことない」

 

亜里沙「雪穂のもう一つの夢…私はとっても素敵な夢だなって思うよ!」

 

雪穂「…亜里沙のもう一つの夢も、素敵だよ」

 

亜里沙「ふふっ…ありがとう、雪穂」

 

雪穂「…ううん、お礼を言うのは私の方だよ」

 

亜里沙「…じゃあ、そろそろ行こっか?」ギュッ

 

雪穂(亜里沙は右手で私の左手を繋ぎながら…『A-RISE』の三人と戦っているディケイドの方を向いた)

 

雪穂「うん…そうだね、私達が」

 

ゆきあり「私達がツカサと『μ's』を取り戻す!!」

 

雪穂「…」スッ

 

雪穂(再び、一枚のカードを取り出した私は…それをディエンドライバーに入れた)

 

亜里沙「…キバーラ」

 

キバーラ「ええ…ウフフ♡」バサバサ

 

亜里沙「…」パシッ

 

亜里沙(亜里沙は…キバーラを右手に持って構えた)

 

雪穂「…変身!」

 

亜里沙「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

『変身…チュッ♡』

 

雪穂(私はディエンドに変身し…亜里沙は、赤い瞳にサーベルを持った白と紫のライダーに変身した)

 

ディエンド「…亜里沙、その姿は?」

 

???「えへへ、これはね…」

 

?「わたしがせつめいしましょう!」

 

ディエンド「えっ…こころちゃん?」

 

こころ「ありささんがへんしんしたのは『仮面ライダーキバーラ』…キバーラのしんのすがたです!」

 

仮面ライダーキバーラ「そっか…これがキバーラの真の姿なんだ」

 

?「ゆきほおねえちゃん!」

 

ディエンド「!…ここあちゃん」

 

ここあ「はい、これ!」スッ

 

ディエンド(ここあちゃんは青いカバンからあるものを取り出すと…私に渡してきた)

 

ディエンド「…これ、何?」

 

ここあ「イクサナックルだよ!」

 

キバーラ「イクサナックル…?」

 

ここあ「それと…こころ!」

 

こころ「はい!」パカッ

 

ディエンド(こころちゃんは持っていたバイオリンケースを開けると…私に中のバイオリンを渡してきた)

 

こころ「これが…あのブラッディ・ローズです!」スッ

 

ディエンド「…ブラッディ・ローズ?」

 

こころ「はい、これもゆきほさんがもっていたカバンのなかにはいっていました!」

 

ここあ「そのふたつを…なにもかいてないカードにちかづけてみて!」

 

ディエンド「この二つを?…!?」

 

ディエンド(私がイクサナックルとブラッディ・ローズを一枚のカードに近付けると…二つを吸収したカードに絵柄が入った)

 

こころ「やった…せいこうです!」

 

ここあ「はやくつかってみてよ!」

 

ディエンド「?…う、うん」

 

ディエンド(ディエンドライバーにカードを入れた私が引き金を引いてみると…)

 

『カメンライド…プロトイクサ!』

 

ディエンド(私達の前に…バイオリンを弾く一人の若い男の人が現れた)

 

?「…」~♪

 

ディエンド「えっ!?」

 

キバーラ「誰…?」

 

こころ「まちがいありません、あのひとは…!」

 

ここあ「おとやだ!」

 

キバーラ「おとや?あれ…そういえばこの曲、聴いたことある!」

 

ディエンド「言われてみたら…確かに、ツカサがハナヨさんを励まそうとした時に弾いてた曲と同じ気がする」

 

ディエンド(曲を弾き終えた男の人は…私達の方を見た)

 

?「何だ?デートのお誘いならお断りだぜ…俺は今、音楽の神ミューズとデートをして…って、天使!?」

 

キバーラ「…へっ、私?」

 

?「そうだ、俺の天使…やっと見つけた」スッ

 

ディエンド「なっ…ちょっと、何するつもりですか!?」バッ

 

ディエンド(私はキバーラに変身した亜里沙を触ろうとする彼を止めた)

 

?「どうした…まさかお前、千年に一度の天才ヴァイオリニストと言われるこの『紅音也』に惚れたのか?」

 

ディエンド「…は?」

 

音也「良いだろう、二人纏めて…俺が愛してやる!」

 

ディエンド「いや、あの…話聞いてもらえます!?」

 

キバーラ「私たち、ツカサを元に戻したいんです!」

 

音也「あ?ツカサ…あそこにいるピンクのバーコード野郎の事か?」

 

ディエンド「バ、バーコード野郎…?」

 

キバーラ「はい!」

 

音也「悪いが俺は男を助ける事に興味は無い…それよりも、俺とデートに行かないか?」

 

ディエンド「行くわけないでしょ!?」

 

ディエンド「何なんですか、あなた…何しにここに来たんですか!?」

 

音也「お前が呼んだんだろう?それに俺は誰にも縛られない…近いうちに教科書に載る、偉~い人なのだからな!」

 

ディエンド「…な、何か頭痛くなってきた」ハァ

 

キバーラ「どうしたら協力してもらえるのかな…?」

 

こころ「…おふたりとも、ここはわたしたちにまかせてください」

 

ディエンド「こころちゃん、ここあちゃん…?」

 

ここあ「ねぇねぇ、おとや…おねがいがあるの!」

 

音也「ん?何だ、お前ら」

 

こころ「わたしたち、どうしても…スクールアイドル『μ's』をたすけたいんです!」

 

音也「!…ミューズだと?」

 

ここあ「うん…『μ's』のきゅうにんはいま、ツカサってひとがもってるカードにとじこめられているの!」

 

音也「だが、ミューズならさっきまで俺とデートを…」

 

ここあ「そっちのミューズじゃなくて『μ's』!」

 

こころ「おねがいします…なんとか、かれからきゅうまいのカードをうばうようにきょうりょくしてもらえませんか?」

 

ここあ「おねがい…このとおり!」

 

音也「…分かった、良いだろう」クルッ

 

音也「スクールアイドルが何かは知らんが…愛しの女神達を助ける為に立ち上がるのは、男として当然の事だ」

 

こころ「おとやさん…ありがとうございます!」

 

ここあ「さっすが、たよりになる!」

 

音也「本当に手伝うだけで良いのか?」

 

ディエンド「…はい!」

 

キバーラ「ツカサや『μ's』は…私たちの手で助けたいから!」

 

音也「そうか…じゃあ、俺が合図をしたらあのバーコード野郎からカードを奪い取るんだ」

 

ディエンド「…えっ、合図ですか?」

 

音也「ああ…まずは俺だけで先に行く」スッ

 

ディエンド(私達の前に立った彼は…取り出したイクサナックルを手のひらに当て、ポーズを取った)

 

『レ・ヂ・イ』

 

音也「変身!」

 

『フィ・ス・ト・オ・ン』

 

ディエンド(やがて彼は…金色の十字架を仮面に着けた白い戦士に変身した)

 

プロトイクサ「まあ、見てな…はっ!」ダッ

 

こころ「…それでは、おとやさんがたたかってくれているあいだに!」

 

ここあ「ツバサさんにおしえてもらったさくせんをふたりにせつめいするね!」

 

ディエンド「…作戦?」

 

こころ「まずはわたしが…ありささんに、そのキバーラサーベルのつかいかたをおしえますね!」

 

キバーラ「これが、キバーラサーベル…?」

 

こころ「はい!まずはそのもちてのぶぶんであるツボを…」

 

ここあ「じゃあ、ゆきほおねえちゃんは…そのカードをディエンドライバーにいれてみて!」

 

ディエンド「う、うん…やってみるね?」

 

ディエンド(私は…さっき、亜里沙が触ったことで絵柄が変わったあのカードをディエンドライバーに入れてみた)

 

『アタックライド…イリュージョン!』

 

 

 

グレイブ「ぐっ…!」ゴロゴロ

 

ディケイド「どうした、その程度か?」

 

英玲奈「!…変身が解除されてしまったな」

 

あんじゅ「でも、時間稼ぎは出来たみたいね?」

 

ツバサ「ええ…信じましょう、彼女達を」

 

ディケイド「何をほざいている…終わりだ!」ブンッ

 

ガキンッ!

 

Pイクサ「おーっと、俺の世界三大美女に手を出すのはそこまでだ…バーコード野郎」

 

ディケイド「何!?」

 

Pイクサ「ふっ!」ガッ!

 

ディケイド「グアッ…」フラッ

 

Pイクサ「お前達、大丈夫か?」

 

ツバサ「ええ、ありがとう」

 

英玲奈「…感謝します」

 

あんじゅ「ふふっ…サンキュ~♡」

 

ディケイド「馬鹿な、この俺が何故…プロトタイプのイクサごときに押されている!?」

 

Pイクサ「確かに…本気で殴り合えば多分、お前の方が強い」

 

Pイクサ「だが、お前は俺には勝てない…なーんでだ?」

 

ディケイド「…?」

 

Pイクサ「お前には遊び心がない、心の余裕がない…張りつめた糸はすぐ切れる」

 

ディケイド「黙れ…黙れぇぇぇぇぇ!!」ダッ

 

Pイクサ「…そう、そういう所だ」スッ

 

『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

 

Pイクサ「はあっ!」ゴッ!

 

ディケイド「フンッ!」ザシュッ!

 

Pイクサ「…」

 

ディケイド「…フン、口ほどにもないな」

 

Pイクサ「がはっ!?」バチバチッ!

 

ディケイド「さて…次は貴様らにトドメを刺してやろう」

 

ツバサ「…さあ、それはどうかしらね?」

 

ディケイド「何?」

 

音也「…っ」ハァハァ

 

ディケイド「なっ…あれだけの攻撃を受けて、まだ立っているのか!?」

 

音也「残念だったな、バーコード野郎…俺は囮だ」スッ

 

ディケイド「!…まさか貴様、最初から九枚の『μ's』のカードを狙うつもりで!?」

 

音也「さあ…受け取れ!」ブンッ

 

キバーラ「はいっ!」パシッ

 

ツバサ「雪穂さん、亜里沙さんにさっきのブランクカードを!」

 

ディエンド「はい…亜里沙!」スッ

 

キバーラ「うん!」

 

ディケイド「貴様ら…一体、何をしようとしている!?」

 

ツバサ「見て分からない?…あなたを彼から引き剥がす為の最後の仕上げよ」

 

ディケイド「引き剥がすだと…?させるか!」ダッ

 

ディエンド「はっ!」ガガッ!

 

ディケイド「ッ…邪魔だ!」ザシュッ!

 

ディエンド「っ!?」

 

こころ「ゆきほさん!」

 

ここあ「ゆきほおねえちゃん!」

 

ディエンド「…!」ドサッ

 

ディケイド「フン、これで後は…貴様だけだ」

 

キバーラ「…」

 

ディケイド「どうした…親友の命が目の前で奪われるのを見て、言葉を失ったか?」

 

キバーラ「…ううん、違うよ」

 

こころ「どうやら…わたしたちのえんぎにだまされたみたいですね?」

 

ここあ「あっかんべー!」ベッ

 

ディケイド「何?…!」

 

ディケイド「倒れたはずのディエンドが…いない!?」

 

キバーラ「今だ…やぁっ!」ドスッ

 

ディケイド「!…フハ、フハハハハハハハハハ!?」

 

こころ「わらった…『笑いのツボ』がせいこうしました!」

 

ここあ「うちゅうじんにも『笑いのツボ』はきくんだね!」

 

キバーラ「雪穂…受け取って!」ブンッ

 

ディエンド「うん!」パシッ

 

ディエンド(『イリュージョン』で分身を作り出してから、本物の私は…『インビジブル』のカードを使って一時的に姿を消していた)

 

ディエンド(姿を現した私がキバーラから受け取ったのは…ブランクカードから変化した音ノ木坂学院の校章が描かれたカードだった)

 

キバーラ「それっ!」ガシッ!

 

ディエンド(それからすぐにキバーラは…笑っているディケイドの後ろに回り込み、羽交い締めにした)

 

ディケイド「フハッ…!?き、貴様!」

 

キバーラ「行くよ、雪穂!」

 

ディエンド「亜里沙…うん!」

 

『ファイナルアタックライド…ミ・ミ・ミ・ミューズ!』

 

キバーラ「お姉ちゃん…『μ's』のみんな!」

 

ディエンド「…借りるよ!」

 

ディエンド(私はカードを入れたディエンドライバーを…そのままディケイドのディケイドライバーに突きつけた)

 

ディケイド「まさか!?…待て、止めろ!」

 

ディエンド「…痛みは一瞬だよ、ツカサ」

 

ディケイド「グッ、止めろぉぉぉっ!!」

 

キバーラ「お願い…ツカサに、届いてぇぇぇっ!!」

 

ディエンド「はぁぁぁぁっ!!」

 

ディエンド(そして…私は、ディエンドライバーの引き金を引いた)

 

 

 

コタロウ「っ…!」ガバッ

 

コタロウ(目を覚ましたオレの目の前にあったのは…瓦礫の山と化した音ノ木坂学院の校舎だった)

 

コタロウ「これは…そうか、オレは何も守れなかったんだ」

 

コタロウ「姉ちゃんや穂乃果、絵里達『μ's』や皆を失ったうえに…もう一つの『μ'sの世界』にいた『μ's』まで倒してしまって」

 

コタロウ「オレはあいつらに…何て謝れば良いんだ?」

 

コタロウ「一体、どうすれば…ん?」

 

コタロウ「あいつらって…誰の事だ?」

 

コタロウ「オレは何か、大切な記憶を失っている気がするような…!」

 

コタロウ(思い出そうとしていたオレの耳に…どこかから力強くて綺麗な歌声が聞こえてきた)

 

コタロウ「この歌声、どこかで聞き覚えが…?」スタスタ

 

コタロウ(オレは導かれるように、歌声の聞こえる方へと歩き出した)

 

コタロウ「…ここは、講堂か?」

 

コタロウ(中に入ってみると、ステージには…自前のスタンドマイクで『as time goes by』を唄うあの女性シンガーがいた)

 

~♪

 

コタロウ「!」

 

女性シンガー「…ふふっ、また会えたわね?」

 

コタロウ「アンタ…無事だったのか?」

 

女性シンガー「うん!」

 

コタロウ「でも、何で…何でアンタがここにいるんだ!?」ズイッ

 

女性シンガー「わぁっ!?」

 

コタロウ「あの時も急にいなくなって…というか、白い蝙蝠なんて何処にも見えなかったぞ!」

 

女性シンガー「ご、ごめ~ん…」

 

コタロウ「はぁ…まあいい」

 

女性シンガー「…ありがとう」

 

コタロウ「はぁ?」

 

女性シンガー「だって、ちょっと前に初めて会ったばかりの私を心配してくれてたんでしょ?」

 

女性シンガー「やっぱり君は…私が知ってる通りの、優しい人なんだね」

 

コタロウ「…オレは、優しくなんかない」

 

女性シンガー「えっ?」

 

コタロウ「オレは世界を変えようと…今まで旅をしてきた」

 

コタロウ「でも、結局…オレは何も変える事が出来なかった」

 

コタロウ「むしろ、大事な何かを失ってしまっているような気がして…」

 

女性シンガー「…」

 

コタロウ「気が付けばオレは…誰かの大事なものを奪う本当の破壊者になっていた」

 

コタロウ「罪を重ね、世界や『μ's』を破壊しようとする悪魔になっていた」

 

コタロウ「そんなオレに…誰かを思いやる優しさなんて、あるはずがない」

 

コタロウ「オレには…もう、何も残ってなんかいないんだ」

 

コタロウ「自分の世界を守れずに、記憶までも失った…あの時よりも」

 

女性シンガー「…本当に、君はそう思う?」

 

コタロウ「えっ…?」

 

女性シンガー「だって君は、今まで色んな世界を旅して…たくさんの人に出逢ってきたんでしょ?」

 

女性シンガー「だったら…見つかったはずだよ」

 

コタロウ「…見つかった?」

 

女性シンガー「そう、君の中にある…新しい君が」

 

コタロウ「新しい、オレ…」

 

???「探したぞ」

 

女性シンガー「!」クルッ

 

コタロウ(オレ達が声のする方を向くと…そこにはゼイビアックスがいた)

 

コタロウ「お前は…ゼイビアックス!?」

 

ゼイビアックス「こんな所にいたとはな…しかし、かくれんぼはもうおしまいだ」

 

ゼイビアックス「大人しく、私に全て支配されろ…ム?」

 

女性シンガー「…」フフッ

 

ゼイビアックス「どういう事だ?…何故、他に誰もいないはずの矢澤コタロウの心の世界に人がいる!?」

 

コタロウ「…心の世界?」

 

女性シンガー「そう、ここは君の心の中の世界…本当なら君だけしかいない世界だよ」

 

コタロウ「!…じゃあ、何でゼイビアックスとアンタがここに?」

 

女性シンガー「私は…君の意識を完全に乗っ取る為に、この世界の君をやっつけようとするゼイビアックスを追い出しに来たの」

 

コタロウ「…つまり、オレを助けに来たという事か?」

 

女性シンガー「うん、そういう事っ!」

 

ゼイビアックス「小癪な真似を…だが、もう手遅れだ」

 

ゼイビアックス「所詮、お前一人が邪魔をした所で…私を追い出す事など不可能だ!」

 

女性シンガー「…一人じゃないよ、私は」フフッ

 

コタロウ(そう女性シンガーが微笑むと…突然、オーロラが出現した)

 

ゼイビアックス「なっ…!?」

 

コタロウ(すると…オーロラから右腕に特殊な義手を着けたサングラスの男性とてんとう虫のマスクを被ったスカート姿の女性が現れた)

 

コタロウ「あの二人は…!」

 

女性シンガー「そう、ライダーマンとして戦う結城丈二と…岬ユリコが変身した電波人間タックルだよ」

 

ライダーマン「…」

 

タックル「電波人間…タックル!」

 

ゼイビアックス「ライダーを召喚する能力を持っていたとはな…だが貴様らなど、この手で捻り潰してくれる!」ダッ

 

コタロウ(ゼイビアックスがオレ達に襲いかかろうとすると…まず、タックルがゼイビアックスの前に立ちはだかった)

 

タックル「電波投げ…はっ!」バッ

 

ゼイビアックス「何ッ!?」クルッ

 

コタロウ(タックルが繰り出した衝撃波によって、身体を一回転させられたゼイビアックスに僅かな隙が生まれた)

 

タックル「今だよ!」

 

ライダーマン「…ああぁぁぁぁっ!!」バシュッ!

 

ゼイビアックス「ヌワァァァッ!?」

 

コタロウ(その隙を突くようにライダーマンがブラスターアームから強力なビームを放ち…ゼイビアックスを壁際まで吹き飛ばした)

 

ライダーマン「っ…」ハァハァ

 

コタロウ「…!」

 

女性シンガー「いやぁ~…相変わらずスゴいね、二人とも!」

 

タックル「へへ~んだ、こういう時はやっぱりユリコ達じゃないとね?」

 

ライダーマン「…新たな破壊者というのは、お前だな?」

 

コタロウ「!」

 

ライダーマン「お前に大切な事を教えてやる…自責の念に駆られて塞ぎ込んでいても、何も変わりはしない」

 

ライダーマン「罪は消せない…自分自身と向き合って、背負って生きていくしかないんだ」

 

コタロウ「!…自分自身と向き合い、生きる?」

 

ライダーマン「そうだ…戦うとは、そういう事だ」

 

コタロウ「…」

 

タックル「…それに、君にも見つかったんじゃない?」

 

コタロウ「え?」

 

タックル「君の事をちゃんと見てくれる大切な人と…君にとっての、新しい居場所が」

 

コタロウ「大切な人と…新しい居場所?」

 

タックル「うん…今まで旅をしてきた君なら、もうとっくに気付いてるはずだよ」

 

コタロウ「…!」

 

タックル「じゃあ、私達はそろそろ帰るね…バイバイ!」

 

ライダーマン「…いつか、また会おう」フッ

 

コタロウ(そのままライダーマンとタックルは…オーロラの中へと消えて行った)

 

コタロウ「…」

 

女性シンガー「…実は私ね、もともと学校の為に歌を始めたの」

 

コタロウ「…学校の為に?」

 

女性シンガー「うん、それから仲間の皆と出逢って…一緒に目指すものに向かって全力で走り続けたんだ」

 

女性シンガー「そうしたら…絶対に届かないと思っていたものに、手が届いたの」

 

女性シンガー「きっとそれは、偶然そうなったんじゃなくて…思いきり夢中になれたから」

 

女性シンガー「そして…最高に楽しかったからなんだって、今でも思うの」

 

女性シンガー「だから私は…ううん、私達は限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドルが大好きなの!」

 

コタロウ「!!」

 

女性シンガー「私達は今でも…胸を張って、そう言えるの」

 

コタロウ「…アンタ、まさか」

 

女性シンガー「…」フフッ

 

ゼイビアックス「おのれ…!」

 

コタロウ「!」

 

ゼイビアックス「こうなったら、まずは貴様をこの世界から消してやる!」

 

女性シンガー「…悪いけど、あなたには私を消す事なんて出来ないよ」スッ

 

コタロウ(女性シンガーは黒いバックルを腹部に装着すると…一枚のカードを取り出した)

 

コタロウ「!」

 

ゼイビアックス「それは!?…貴様、何者だ!」

 

女性シンガー「通りすがりの女性シンガーだよ…覚えておいてよ!」

 

コタロウ(女性シンガーは一枚のカードを黒いバックルに装填すると…)

 

女性シンガー「変身っ!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

コタロウ(金色の胸の十字と青い瞳が特徴的な…黒いディケイドに変身した)

 

コタロウ「ダーク、ディケイド…!」

 

ダークディケイド「…」

 

ゼイビアックス「黒いディケイドだと!?」

 

Dディケイド「そう…他にも、こんな姿にもなれるよ?」スッ

 

コタロウ(ダークディケイドはまた別のカードをバックルに入れると…とあるライダーにカメンライドした)

 

『カメンライド…G!』

 

コタロウ「あの姿は…G!?」

 

G「今、私のヴィンテージが芳醇の時を迎える!…なんてね?」

 

ゼイビアックス「ここまで私を愚弄するとは…良いだろう、全力で相手をしてやる!」ダッ

 

G「よーし、行っくよ~!」ダッ

 

 

 

コタロウ(Gにカメンライドしたダークディケイドとゼイビアックスが戦っている最中…誰かの声が聞こえてきた)

 

ツカ…カサ…ツカサ!

 

コタロウ「ツカサ?…!!」ハッ

 

コタロウ(その声は…これまでオレと一緒に九つの世界を旅してきた、二人の少女の声だった)

 

亜里沙『にっこにっこにー!…ほら、雪穂もやって?』

 

雪穂『亜里沙…に、にっこにっこにー///』

 

亜里沙『照れちゃダメ!恥ずかしがらないで、もっと大きな声で…にっこにっこにー!!』

 

雪穂『に、にっこにっこにー!!』

 

亜里沙『お願い…起きてよ、ツカサ!』

 

雪穂『ツカサ、早く起きないと承知しないよ!?』

 

亜里沙『ツカサにはいつか私たちのハラショーなライブを見に来て…笑顔になってほしいの!』

 

雪穂『その為ならどんなにキツい練習でも乗り切ってみせるから…何があっても、諦めずに二人で最後までやりきるから!」

 

雪穂『だから、ツカサも…ファイトだよ!!』

 

亜里沙『ツカサ、目を覚まして…にっこにっこにー!!』

 

雪穂『起きてよ、ツカサ…お願いだから笑ってよ!にっこにっこにー!!』

 

コタロウ「雪穂、亜里沙…!」ハッ

 

コタロウ「そうか…なるほどな、だいたいわかった」

 

コタロウ(自分と向き合う事で、大切な仲間や心の居場所を思い出したオレは…ようやく新しい自分自身が何なのか理解した)

 

コタロウ(いや…雪穂と亜里沙が、仲間達が教えてくれたんだ)

 

コタロウ(そう、オレは…!)

 

 

 

『ファイナルアタックライド…ジ・ジ・ジ・ジー!』

 

G「スワリング…ライダーキーック!」ガッ!

 

ゼイビアックス「グアァァァッ!?」ゴロゴロ

 

Dディケイド「ふぅ…」

 

コタロウ「おい!」ダッ

 

Dディケイド「ん?」クルッ

 

コタロウ「…ようやく見つけたよ、新しい自分を」

 

Dディケイド「!…そっか、良かった」

 

Dディケイド「じゃあ…変身して、アイツを追い出しちゃおっか!」

 

コタロウ「…変身する?」

 

Dディケイド「うん!命ある限り戦う…それが、仮面ライダーなんでしょ?」

 

コタロウ「いや、確かにそうなんだが…」

 

Dディケイド「どうしたの?」

 

コタロウ「…変身する道具が無い」

 

Dディケイド「へ?あっ、そっか…ここは君の夢の中だったね」

 

Dディケイド「でも、大丈夫…これで戦えるから!」スッ

 

コタロウ「戦える?…って、そのカードは!?」

 

コタロウ(ダークディケイドは…一枚のカードを黒いディケイドライバーに装填した)

 

『ファイナルフォームライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

Dディケイド「さてと…ちょっとくすぐったいよ?」

 

コタロウ「ま、待て!嫌な予感が…」

 

Dディケイド「良いから良いから…目を閉じて」

 

コタロウ「目、目を閉じる…?」

 

Dディケイド「うん…そうすれば、大丈夫だから」

 

コタロウ「…こ、こうか?」

 

Dディケイド「…」ポンッ

 

コタロウ(ダークディケイドがオレの背中の優しく押すと…歌が聞こえてきた)

 

コタロウ「!!…この歌は」

 

『ほのかな予感』

 

『始まる希望』

 

『駈けていく星空』

 

『咲かせる花』

 

『にっこりの笑顔』

 

『小鳥の翼』

 

『広がる海』

 

『描いた絵』

 

『巻き戻さずに進む時』

 

コタロウ(いつも聞いていた歌声)

 

コタロウ(いつも見守っていた光)

 

コタロウ「そうか…だいたいわかった」

 

『また会おう、呼んでくれるかい?』

 

コタロウ「…ああ、何度だって呼んでやるさ」

 

コタロウ「そして『今が最高』だったその記憶を胸に刻んでいく…オレはずっと、アンタ達を忘れない!」

 

コタロウ(その時、瞼を開いたオレの両手には…いつの間にか白いバックルと一枚のカードが握られていた)

 

コタロウ「!…これは」

 

コタロウ(右手の白いバックルには九つのライダークレストの代わりに、九つの『μ's』のメンバーアイコンが刻まれ…)

 

コタロウ(左手のカードには…『μ's』のメンバー全員の顔が描かれていた)

 

女性シンガー「…飛べるよ」

 

コタロウ「!」

 

コタロウ(ダークディケイドはいつの間にか変身を解除し…女性シンガーの姿に戻っていた)

 

女性シンガー「君も飛べるよ…いつだって、彼女達のように!」

 

コタロウ「アンタ…」

 

女性シンガー「きっとどこまでだって行ける…どんな夢だって叶えられる!!」

 

コタロウ「!…ああ、そうだな」フフッ

 

女性シンガー「…」フフッ

 

コタロウ(オレはバックルを腹部に装着し…一枚のカードをかざした)

 

ゼイビアックス「グゥッ…惨めなものだ、まだ私に抗うつもりか?」

 

ゼイビアックス「それが本当にお前の望みなのか!?お前の旅など…無意味で愚かなものだったというのに!」

 

コタロウ「それは違うな」

 

ゼイビアックス「何…?」

 

コタロウ「オレはこれからも『ツカサ』として旅を続ける…世界の壁を壊し、可能性を感じられる未来を創る!」

 

コタロウ「そして、その旅はやがて…夢の扉を開いた新たな『スクールアイドル』に奇跡で満ち溢れた光を灯す」

 

ゼイビアックス「貴様…一体、何者だ!?」

 

コタロウ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!!」

 

『ファイナルカメンライド…ミューズ!』

 

 

 

コタロウ(ディケイドライバーにカードを入れると…オレの周りを九色の光が覆った)

 

コタロウ「!」

 

コタロウ(やがて九色の光は…九人の少女の幻に変化した)

 

花陽『ツカサくんは一人じゃないよ…私達は、ツカサくんが前に進むのを待ってる』

 

ことり『ツカサくんは私達にたくさんのものを思い出させてくれた…だから、ツカサくんも変わる事を恐れないで?』

 

絵里『ツカサ…大丈夫、私達がいつでもそばにいる』

 

希『誰かを思いやる優しさを持っているツカサくんは…本当に強い人なんやって、ウチらは思ってるよ!』

 

海未『ツカサが戦っているのは…世界や人々の夢を守る為だと、私達は信じています』

 

真姫『何をしたってツカサはツカサよ…だって、それは私達の中で変えられない事実なんだから』

 

凛『ツカサくんの中の答えはもう決まってるんでしょ…?それなら、後は凛達と一緒にやるだけだよ!』

 

穂乃果『スクールアイドルが好きな君なら…私達は、いつだって歌うよ!』

 

コタロウ「!…みんな」

 

にこ『ちょっとコタロウ…何、ボーッとしてんのよ?』

 

コタロウ「姉ちゃん…」

 

にこ『アンタが皆を笑顔にさせられるように…私達が全力で支えてあげる!』

 

にこ『私達が一緒に戦ってあげる!』

 

にこ『だからツカサ、アンタは…一人なんかじゃない!』

 

コタロウ「!」

 

穂乃果『あれ…にこちゃん?』

 

にこ『何よ?』

 

穂乃果『今の最後の言葉って…花陽ちゃんが最初に言ったのと同じじゃない?』

 

にこ『うっ…うっさいわね!?大事なことだから二回言ったのよ!』

 

穂乃果『へっ…そうなの?』

 

にこ『そうよ!』

 

コタロウ「…」フフッ

 

絵里『何だか締まらないわね…ごめんなさいね、こんな感じになっちゃって』

 

コタロウ「いや、むしろ謝るのはアンタ達をカードに閉じ込めてしまったオレの方だ…本当にすまなかった」

 

にこ『はぁ?何で謝る必要があんのよ?』

 

コタロウ「…はぁ?」

 

穂乃果『だって、ツカサくんは…私達のお願いを聞いてくれたんでしょ?』

 

コタロウ「!…じゃあ、あの時に聞こえた声は」

 

絵里『届いていたのね…そう、私達があなたの旅に亜里沙と雪穂ちゃんを同行するようにお願いしたの』

 

コタロウ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

にこ『それで、どうするのよ?』

 

コタロウ「…ああ、もちろん救ってみせるさ」

 

コタロウ「全ての世界を、アンタ達『μ's』の存在を…雪穂と亜里沙の夢を!!」

 

にこ『!…さすが、私の弟ね?』

 

絵里『本当にね』フフッ

 

穂乃果『ふふっ…じゃあ、いつものやろっか!』

 

穂乃果『1!』

 

ことり『2!』

 

海未『3!』

 

真姫『4!』

 

凛『5!』

 

花陽『6!』

 

にこ『7!』

 

希『8!』

 

絵里『9!』

 

穂乃果『μ's…!』

 

μ's『ミュージック・スタート!』

 

コタロウ(九人の『μ's』メンバーは九枚のカードに変化すると…オレの胸にその顔を並べた)

 

『ファイナルカメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「…」

 

ディケイド(九つの道が重なった時…オレはファイナルカメンライドディケイドへと変身していた)

 

ディケイド「これが…オレと『μ's』の力」

 

ゼイビアックス「かつてやられた分際の貴様が…この私に敵うはずが無い!」ダッ

 

ディケイド「…はぁぁぁぁっ!!」ガッ!

 

ディケイド(オレは襲い掛かってきたゼイビアックスの攻撃を避けると…右の拳でありったけの一撃をぶつけた)

 

ゼイビアックス「グッ…カハッ!?」

 

ディケイド(その攻撃で…ゼイビアックスは苦しみ始めていた)

 

ゼイビアックス「馬鹿な?この私が…たった一人の攻撃程度で、倒されるはずが無い!」

 

ディケイド「…残念だったな」

 

ゼイビアックス「!?」

 

ディケイド「オレは今…九人の力を借りて、この姿になっている」

 

ディケイド「つまり、この姿は…『リンクベント』と似た効果があるという事だ」

 

ゼイビアックス「なっ…『リンクベント』だと!?」

 

ディケイド「そう、だから…これはオレ一人の技じゃない」

 

ディケイド「これはDCDI(ディケイドインパクト)…オレと『μ's』の、技だぁぁぁぁっ!!」

 

ゼイビアックス「グアァァァッ!?」

 

ディケイド「終わりだ、ゼイビアックス…お前はもう二度と復活する事は出来ない」

 

ゼイビアックス「ウグッ!お、おのれ…おのれディケイドォォォォッ!!」

 

ディケイド(ゼイビアックスが光に変わっていくように消滅すると…次第にオレの意識も段々と遠くなっていった)

 

女性シンガー「…じゃあね、ツカサ」

 

 

 

ツカサ「…」パチリ

 

ツカサ(倒れていたオレが目を覚ますと、そこにはことり達六人の『μ's』メンバー…そして)

 

穂乃果「あっ、起きた!」

 

絵里「良かった…」ホッ

 

亜里沙「…ツカサ、私たちが分かる?」

 

雪穂「しっかりして、ツカサ!」

 

ツカサ「まさか、お前達に助けられるなんてな…一生の不覚だ」

 

にこ「…」フフッ

 

ツカサ「ん…?」チラッ

 

ツカサ(オレの右手を雪穂と穂乃果、左手を亜里沙と絵里が握りしめ…にこが膝枕でオレの頭を支えていた)

 

ツカサ「!!?」ガバッ

 

全員「わぁっ!?」

 

亜里沙「ビ、ビックリしたぁ~…」

 

雪穂「目を覚ましたと思ったら急に起き上がって…一体、どうしたの?」

 

ツカサ「はぁ!?どうしたもこうしたもあるか!」

 

穂乃果「へっ?」

 

ツカサ「手を握るとか膝枕するとか…あ、ああああり得ないだろ!?///」

 

雪穂「手を握る、って…は!?///」

 

にこ「別に膝枕くらい良いでしょ?…だってアンタ、違う世界の私の弟なんだし」

 

ツカサ「良くない!!」

 

穂乃果「良くないの?」

 

ツカサ「当たり前だろ…お前らな、もうちょっとスクールアイドルだって事を自覚したらどうなんだ!?」

 

にこ「はぁ!?アンタにそこまで言われる筋合いなんてないわよ!」

 

にこ「大体、私の方がスクールアイドルに詳しいんだからね!?」

 

ツカサ「オレは色々な世界のスクールアイドルを見てきたんだ…オレの方が詳しいに決まってる!」

 

にこ「何ですってぇ!?」

 

亜里沙「でも、イベントで握手会をやるスクールアイドルもいるし…男の子とも手を握るなんて普通だよ?」

 

ツカサ「そ…それはそれ、これはこれだ!」

 

絵里「あら?そういえば、確か別の世界の私が…ツカサに助けてもらう時に手を握っていたような気がするのだけど」

 

ツカサ「あ、あれは…あれだ」

 

にこ「どれよ!?」

 

ツカサ「とにかく…スクールアイドルが男の手を握ったり膝枕するなんて、言語道断だ!」

 

雪穂「う、うるさいなぁ!」

 

にこ「状況が状況だったんだから仕方ないでしょ!?」

 

ツカサ「仕方なくないだろ!そんなにオレの事が心配だったのか!?」

 

雪穂「べ…別に心配なんか!」

 

にこ「してないわよ!」

 

ツカサ「じゃあ、何で手を握ったり膝枕したりしたんだよ?」

 

雪穂「そ、それは…///」

 

にこ「その…///」

 

ツカサ「どうした…言えないのか?」

 

雪穂「っ!…もういい、放っておいて」プイッ

 

にこ「アンタなんか知らないわよ、もう…」

 

ツカサ「はぁ?」

 

雪穂「いいから!」

 

にこ「もう黙ってなさいよ!?」

 

ツカサ「そう言われて素直に『はい、分かりました』とオレが言うとでも思ったのか?…そもそもお前らはな!」

 

ほのあり「二人とも…どうどう!」

 

ツカサ&にこゆき「だから馬じゃない!!」

 

絵里「ぷっ…あはははは!」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「…お姉ちゃん?」

 

絵里「ご、ごめんなさい…何だか皆のやりとりを見てたら面白くなっちゃって」

 

ツカサ「!…絵里」

 

ことり「私も見てて…何だかホッとしちゃったなぁ~」

 

海未「まさに喧嘩するほど何とやら…ですね?」

 

真姫「本当、変わってるわよね…あなた達って」

 

凛「それは凛達も同じだと思うよ?」

 

希「凛ちゃんの言う通りやね…ツカサくん達三人の関係はウチら『μ's』の関係と一緒」

 

花陽「にぎやかで、楽しくて、あったかくて…」

 

穂乃果「…笑顔に、なれるよね」

 

ツカサ&ゆきあり「!」

 

穂乃果「ツカサくんや雪穂や亜里沙ちゃんも…そう思わない?」

 

亜里沙「はいっ!」

 

雪穂「…そう、なのかな?」

 

ツカサ「どうだろうな…『そうなってしまった』と言った方が正しいのかもな」

 

にこ「何よ、その返事…素直じゃないわねぇ?」

 

ツカサ「アンタにだけは言われたくないな」

 

にこ「どういう意味よ、それ!?」

 

雪穂「あれ…そういえばこころちゃんとここあちゃんは?」キョロキョロ

 

亜里沙「キバーラや『A-RISE』のみんなもいないね…どこに行っちゃったんだろう?」

 

オーイ!

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(にこに向かって一直線に走ってきたのは…にこの二人の妹だった)

 

こころ「おねえさま!」ギュッ

 

ここあ「おねえちゃーん!」ギュッ

 

にこ「こころ、ここあ!…心配かけてごめんなさい」ナデナデ

 

こころ「きにしないでください!」

 

ここあ「わたしたち、おねえちゃんたちがもどってくるってしんじてたから!」

 

雪穂「それにしても…二人とも、どこに行ってたの?」

 

ここあ「じつはね…」

 

こころ「『A-RISE』のみなさんについていこうとするおとやさんをつれもどしてきたんです!」

 

ツカサ「…おとや?」

 

音也「おいおい、何なんだいきなり…あともう少しで俺はさっきの世界三大美女とデートする所だったんだぞ?」

 

ツカサ「!?…アンタは、紅音也!」

 

音也「ん?お前は…さっきのバーコード野郎か、俺様ほどでは無いがなかなか良い面構えをしているな?」

 

ツカサ「…え?」

 

ここあ「そっか、アンタがべつのせかいのコタロウなんだね…カッコいいなぁ~!」

 

こころ「ととのったかおだちやふんいきなんかもそっくりですね!」

 

ツカサ「そうか?…まあ、それほどでもあるかな」フフン

 

雪穂「はぁ…また始まったよ」

 

亜里沙「でも、ツカサらしいね!」フフッ

 

ツカサ「そうだ…礼を言うよ、紅音也」

 

音也「俺は自由にやらせてもらっただけだ、礼には及ばん…!」

 

ツカサ(少し話していると…音也の身体は透け始めていた)

 

ツカサ「!…それは」

 

音也「どうやら、元の世界に帰る時が来たようだな…ここでお別れだ」

 

ツカサ「音也…」

 

音也「俺がお前に会うのは、これが最初で最後だろう…だから『ヤツ』の伝言を伝えておく」

 

ツカサ「…『ヤツ』の伝言?」

 

音也「ああ、本来…『μ's』の物語は時と共に消滅する運命だった」

 

音也「だが、お前と『μ's』を繋ぐ架け橋となる二人の少女が旅をする事で人々の記憶に留まり…再び『μ's』の物語は紡がれた」

 

穂乃果「!…それって、もしかして?」

 

青年『俺は…通りすがりの、仮面ライダーだ』

 

音也「そうだ…『ヤツ』の言う通り、ディケイドは『これから』の物語を紡ぐ存在になったんだ」

 

亜里沙「そっか、そのために私たちはツカサと一緒に旅をしないといけなかったんだ…」

 

音也「あ?…まさか、知らなかったのか?」

 

雪穂「それが私達…理由とかよく分からないまま、ツカサと旅をするようにお姉ちゃんに言われてたんで」

 

絵里「えっ、そうだったの?」

 

亜里沙「うん…」

 

にこ「…ほ~の~か~!?」ゴゴゴゴ

 

穂乃果「ごっ、ごめんごめん…急いでたもんだからつい」

 

にこ「つい…で済むような問題じゃないでしょ!?」

 

ツカサ「…本当にオレが、彼女達の物語を?」

 

音也「本当だ…お前は彼女達に流れる音楽の素晴らしさと愛を伝える為に、世界を繋いだんだ」

 

ツカサ「!!」

 

音也「さて、これで『ヤツ』の伝言は終わりだ…これからもしっかり生きろよ?」

 

ツカサ「…ああ!」

 

音也「ふっ…じゃあな」

 

ツカサ(そのまま音也は消え…元の世界へと帰っていった)

 

雪穂「…行っちゃったね」

 

亜里沙「うん…あ、そうだ!」

 

雪穂「えっ?…あっ」

 

ツカサ「?」

 

亜里沙「ツカサ、これ!」スッ

 

ツカサ(亜里沙はオレに…預けていたトイカメラを渡してきた)

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「受け取って、ツカサ!」

 

亜里沙「私ね…ツカサの写真、いつも素敵だなって思うから!」

 

ツカサ「…亜里沙」

 

雪穂「ツカサ!さっきは倒すとか仲間じゃないだとか…ヒドいこと言って、ごめん」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「だからさ…これからも、そのカメラで撮り続けてよ」

 

ツカサ「雪穂…オレの方こそ、お前や亜里沙に辛い思いをさせてしまったな」

 

ツカサ「悪かった…本当にすまない」

 

雪穂「!…ツカサ」

 

亜里沙「じゃあ、仲直りだね…えへへっ!」

 

雪穂「ふふっ…おかえり、ツカサ」

 

ツカサ「…ああ、ただいま」フフッ

 

ツカサ(亜里沙からトイカメラを受け取ったオレは…自分の首元に掛けた)

 

にこ「…」フフッ

 

穂乃果「これで、一件落着だねっ!」

 

絵里「そうね…オトノキや世界が無くなるって聞いて、最初はどうなるかと思ってたけど」

 

にこ「そんなことあるわけないでしょ?なぜなら『μ's』はこの世界のみ~んなのも・のっ♡…なんだから!」

 

ツカサ「気持ち悪い」

 

にこ「ちょっとぉ!?」

 

真姫「ツカサ…それは私の台詞よ、取らないで!」

 

凛「オコトワリシマス!」

 

真姫「凛には言ってないでしょ!?」

 

穂乃果「イミワカンナイ、イミワカンナイ、イミワカンナイ~」クルクル

 

真姫「…何してるの?」

 

ツカサ(そのやりとりで、オレや雪穂や亜里沙…『μ's』の皆が笑い合っていた)

 

こころ「みなさん…ちょっとまってください!」

 

穂乃果「…え?」

 

ここあ「まだ、たたかいはおわってないよ!?」

 

亜里沙「終わってない?…ああっ!!」

 

雪穂「そうだ…虎太郎くんがまだ大ショッカーに捕まってるんだ!」

 

ツカサ「!」

 

μ's「えーっ!?」

 

にこ「そんな…早く助けないとマズいじゃない!」

 

ツカサ「今頃、もう一人のオレはゴルドラやシルバラに連れられて『鬼の戦艦』の中にいるはず…っ!」ハッ

 

ツカサ(その時、オレの頭の中に…もう一人のオレの見ているものが流れて込んできた)

 

 

 

サヨ「ハァ…やっぱり、彼にはちょっと荷が重かったみたいね」

 

シルバラ「…テメー、何でまだここにいんだよ?」

 

サヨ「?…あら、ゴルドラとシルバラじゃない」

 

ゴルドラ「答えろ…何故、大神官ビシュムがこの鬼の戦艦の操舵室にいる?」

 

サヨ「見届けに来たの、この世界がこれからどうなるのか…ね」

 

サヨ「それと…私をそんな名前で呼ばないでくれる?」

 

サヨ「今の私には『サヨ』っていう…立派な名前があるの」

 

シルバラ「ハッ、テメーの呼び名なんざ知ったこっちゃねえや…とっととその邪魔なピアノと一緒に消えやがれ!」

 

ゴルドラ「もうすぐ我々の大首領様はこの世界を手に入れる…今頃、かつての仲間達を葬っているはずだろう」

 

サヨ「じゃあ…このモニターに映っているのは何?」

 

ゴルドラ「!?…これは、どういう事だ!」

 

サヨ「どうやら、大首領様は…元の良い子に戻っちゃったみたいよ?」

 

シルバラ「チッ…こうなったらこの鬼の戦艦でこの世界を支配しようぜ、兄ちゃん!」

 

ゴルドラ「…仕方ない、鬼の戦艦は俺が操縦しよう」

 

戦闘員「ゴルドラ様、シルバラ様…報告します!」ダダッ

 

シルバラ「あぁ?何だよ、一体!?」

 

戦闘員「拘束していた矢澤虎太郎が逃走しました!」

 

シルバラ「おいおい、ガキ一人相手に何やってんだよテメーら…早く捕まえろ!」

 

戦闘員「そ、それが捕まえようとしているのですが…!?」

 

ドカッ!

 

戦闘員「イーッ!?」ドサッ

 

サヨ「!」

 

ゴルドラ「何だ、今のは?…!」

 

虎太郎「…」

 

シルバラ「おい…何でガキが戦闘員を倒してんだよ!?」

 

サヨ「…」~♪

 

シルバラ「テメー!何でこんな時にピアノなんか弾いてんだよ!?」

 

サヨ「この曲は…『Double-Action Piano form』っていうの」

 

サヨ「時の悪戯によって…消滅した哀しいピアニストの男が、大切な人の為にずっと弾き続けていた曲」

 

ゴルドラ「どういう事だ?」

 

サヨ「…分からない?彼の様子、あなた達が捕まえた時と明らかに違うわ」

 

サヨ「いえ、もしかしたら…捕まえる前からそうだった可能性もあるわね」

 

シルバラ「あぁ!?だから何がだよ?」

 

?『よう、どうやらまた生き返ったみてぇだな?…オメーら』

 

シルバラ「!」バッ

 

虎太郎「…」

 

ゴルドラ「今の声…まさか!」

 

シルバラ「でもよ、どうしてあのガキから聞こえんだよ!?」

 

サヨ「…よく見なさい、彼を」

 

ゴルドラ「?…っ!?」

 

虎太郎「…」

 

シルバラ「あのガキの跳ねた髪と眼が…」

 

ゴルドラ「赤く、なっているだと…!?」

 

虎太郎「…」フッ

 

 

 

ツカサ「…?」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

ツカサ「!」

 

雪穂「どうしたの、ツカサ?」

 

ツカサ「今、オレの中にもう一人のオレの記憶が流れてきた…アイツは鬼の戦艦の操舵室にゴルドラやシルバラ達と一緒にいる」

 

ここあ「ホント!?」

 

こころ「ぶじなんですか!?」

 

ツカサ「ああ、一つ気になっている事はあるが…すぐに助けに行った方が良いのは間違いないだろうな」

 

穂乃果「だったら急いで助けに行かないと…あっ、そうだ!」ポンッ

 

穂乃果「ねえねえ、ツカサくん!」

 

ツカサ「何だ?」

 

穂乃果「鬼の戦艦の場所って、どこにあるか覚えてる?」

 

ツカサ「あ、ああ…だいたいな」

 

雪穂「お姉ちゃん、何か思いついたの?」

 

穂乃果「うんっ!あのね…」チョイチョイ

 

雪穂「…?」

 

ツカサ(オレ達は穂乃果から…ある考えを聞いた)

 

全員「ええーっ!?」

 

雪穂「何考えてるの、お姉ちゃん!」

 

海未「本気ですか!?」

 

絵里「そんな事、本当に出来るの?」

 

真姫「そうよ…一人だけならまだしも、全員がまた成功する保証なんてどこにも無いのよ!?」

 

穂乃果「えぇ…ダメ?」

 

ツカサ「いや、オレともう一人のオレの記憶がまだ共有されている今なら…穂乃果の案を試してみる価値は十分にある」

 

亜里沙「『μ's』のみんながケガするかもしれないって思ったら心配だけど…今はそれよりも、虎太郎くんを助けなきゃ!」

 

希「そうやね、ウチも賛成!」

 

凛「凛もやってみたいニャ~!」

 

花陽「成功したら、きっと虎太郎くんを無事に助け出すことも出来るはずです!」

 

にこ「ふふっ…矢澤家長女・にこにーにとって不足なし!」

 

こころ「さすがです、おねえさま!」

 

ここあ「いつもはかわいいけど…きょうのおねえちゃん、なんだかカッコいいね!」

 

ことり「やってみよう、虎太郎くんを取り戻すために…!」

 

海未「…ええ、やりましょう!」

 

穂乃果「みんな…!」フフッ

 

ツカサ「…じゃあ、行くぞ」

 

亜里沙「あっ、でも…!」

 

雪穂「!…そっか、キバーラがいないと亜里沙は変身できないんだ」

 

ミンナ-!

 

ツカサ「あれは…」

 

亜里沙「キバーラ!」

 

雪穂「どこに行ってたの!?」

 

キバーラ「ごめんなさい…この世界のツバサ達と一緒に、とある用事を済ませに行ってたの」

 

ツカサ「用事?」

 

キバーラ「ええ…それは後でのお・た・の・し・み♡」

 

ツカサ「相変わらずだな…まあ良い、これで準備は良いか?」

 

亜里沙「うん!」

 

海未「では、気を取り直して…もう一度です!」

 

ツカサ「皆…行くぞ!!」

 

μ's&ゆきあり「おー!!」

 

ツカサ(大ショッカーのジャケットを脱ぎ捨てていつもの服装になったオレは…雪穂と亜里沙、そして『μ's』を入れた十二人で変身アイテムを使い、それぞれの構えをとった)

 

『Standing By』

 

キィィィン…

 

キバット「ガブッ!」

 

ツカサ(それからオレ達は…全員で変身する事を試みた)

 

μ's「変身!」

 

ツカサ「…変身!」

 

ゆきあり「変身っ!」

 

『Complete』

 

『Turn Up』

 

『Henshin…Cast Off…Change Beetle』

 

『ソードフォーム』

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

『チュッ…変身♡』

 

ツカサ(オレ達の変身は全員が成功し…十二人の『仮面ライダー』が並んだ)

 

こころ「スゴい…クウガからディケイドまでのライダーがせいぞろいですよ、ここあ!」

 

ここあ「しかもディエンドとキバーラまで…スゴいね、こころ!」

 

アギト「…やった、成功したね!」

 

カブト「ええ…正直な事を言うとツカサくんに力を託したあの時、もう変身能力は無くなったものだと思ってたんだけど」

 

クウガ「ちゃんと残ってたみたいね…まあ、別の世界の私達の記憶もまだあるから当然といえば当然だけど」

 

ディケイド「…!」

 

ディケイド(すると、突如として現れたオーロラから…大ショッカーの戦闘員達が現れた)

 

キバーラ「あれは…!」

 

ディケイド「おそらくオレが元に戻った事に気付いた大ショッカーが呼び寄せたんだろうな…」

 

ディエンド「でも、私達なら…きっと!」

 

キバーラ「そうだね…きっと!」

 

ディケイド「もう一人のオレを…虎太郎を、助けてみせる!!」ダッ

 

ディケイド(オレ達は…大ショッカーの戦闘員達に立ち向かって行った)




次回、仮面ライダー×ラブライブ!…最終回!



#24『それは僕たちの世界』

 

叶え、みんなの夢――


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話『それは僕たちの世界』

~これまでの仮面ライダー×ラブライブ!は~

青年「世界もお前達も消滅する…それを避けたいなら、ディケイドとお前達の世界に存在している特殊な力を持った二人の少女を逢わせる」

青年「そうすれば…二人の少女はお前達《μ's》とディケイドを繋ぐ架け橋になり、全ての世界は救われる」

穂乃果「つまり…雪穂達が帰ってくるまで私達が『仮面ライダー』になって、その間に世界を守ればいいんだよ!」

ツバサ「凄い力を持っているのは…何も『ディケイド』や『μ's』だけじゃない」

亜里沙「ツカサにはいつか、スクールアイドルになった私たちのライブを見て笑顔になってほしいの!」

雪穂「私は亜里沙と一緒に…『μ's』とは違う形でスクールアイドルの素晴らしさを広めていきたいなって思うんだ」

女性シンガー「飛べるよ、きっとどこまでだって行ける…どんな夢だって叶えられる!!」

ツカサ「オレはこれからも『ツカサ』として旅を続ける…世界の壁を壊し、可能性を感じられる未来を創る!」

ツカサ「そして、その旅はやがて…夢の扉を開いた新たな『スクールアイドル』に奇跡で満ち溢れた光を灯す」

ゼイビアックス「貴様…一体、何者だ!?」

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!!」

ツカサ&ゆきあり&μ's「変身!」

虎太郎「…」フッ


虎太郎「…」

 

シルバラ「あのガキの跳ねた髪と眼が…」

 

ゴルドラ「赤く、なっているだと…!?」

 

M虎太郎「…」フッ

 

サヨ「あなた…『モモタロス』ね?」

 

M虎太郎「…へへっ、よく知ってるな?」

 

ゴルドラ「貴様、何故ここに…!」

 

M虎太郎「戦いに来たんだよ…こちとら暴れたくてウズウズしてたんだ!」

 

 

 

虎太郎「…!」ムクリ

 

虎太郎「…」キョロキョロ

 

虎太郎「うちゅー…?」

 

青年「気が付いたみたいだな」

 

虎太郎「!」クルッ

 

青年「…」

 

虎太郎「!!…でぃけいどー」キラキラ

 

青年「よく知ってるな…まあ、知ってるのも当然か」

 

虎太郎「?」キョトン

 

青年「いや、こっちの話だ…何でもない」

 

青年「ところで…さっき、変な夢を見た覚えがあるんじゃないか?」

 

虎太郎「!」コクコク

 

青年「それは…別の世界のお前に起こった出来事だ」

 

青年「何故なら『ディケイド』…もう一人のお前は九つの世界を旅しなければならないからな」

 

青年「それがこの世界の『μ's』を救う、たった一つの方法だ」

 

虎太郎「…?」

 

青年「大体分かれば十分だ…とにかく、お前には世界を救う為にこれからやってもらわないといけない事がある」

 

青年「協力してもらえるな?」

 

虎太郎「…!」コクリ

 

青年「よし、お前にはこの世界の『A-RISE』に『仮面ライダー』の記憶を思い出させると共に…『大ショッカー』の基地になっている『鬼の戦艦』に入ってもらう」

 

青年「そして…そこからある物を回収し、別の世界のお前に渡してくれ」

 

虎太郎「おー…!」パチパチ

 

青年「本当は俺がやらなければいけない所なんだが、最近は魔王とやらがいる世界を破壊する準備で忙しいからな…」ハァ

 

虎太郎「?…ひとりー」

 

青年「ああ…安心しろ、何もお前一人だけでやらせる訳じゃない」

 

青年「後でピッタリの家来がお前の家に来るはずだ…だから、それまで大人しく待ってろ」

 

虎太郎「…!」コクリ

 

青年「じゃあ…今からお前が回収する物を教えてやる、良いか?」

 

虎太郎「!」ビシッ

 

青年「…」フフッ

 

 

 

虎太郎「でんおー…」ピッ

 

電王『俺、参上!』

 

ここあ「なにをぉ~…!」グギギ

 

こころ「なんですかぁ~…?」グギギ

 

にこ「…ごめん、少し待っててもらえる?」

 

にこ「ちょっとちょっと…さっきから何揉めてんのよ、アンタ達!?」

 

電王『行くぜ行くぜ行くぜ…!』ピタッ

 

虎太郎「?…とまったー」

 

電王『…!』スポンッ

 

虎太郎「!…ぬけたー」

 

モモタロス『っと…よう、オメーが《矢澤虎太郎》だな?』

 

虎太郎「!!」

 

モモタロス『《ディケイド》のヤローから話は聞いてるな?』

 

虎太郎「…」コクリ

 

モモタロス『へへっ…じゃあ、行くぜ!』

 

虎太郎「…!」

 

M虎太郎「…」スタスタ

 

にこ「…えっ?」

 

にこ「虎太郎…?ちょっと、どこに行くつもり!?」ガシッ

 

M虎太郎「…!」バッ!

 

にこ「きゃっ…!?」ドサッ

 

こころ「おねえさま!?だいじょうぶですか?」

 

にこ「え、ええ…」

 

ここあ「ちょっと…おねえちゃんにあやまりなよ、こたろう!」

 

M虎太郎「…」ギィ…バタン!

 

虎太郎「…」ダダッ

 

モモタロス『悪ぃな…強引に振り払っちまってよ』

 

虎太郎「!…だいじょうぶー」

 

モモタロス『次は、えっと…ゆーでぃーえっくすって所に行くんだっけか?』

 

虎太郎「…ゆーてぃーえっくすー」

 

 

 

ツバサ「あら…英玲奈、あんじゅ」

 

英玲奈「む、ツバサか…おはよう」

 

ツバサ「今日は学校で私達をプロアイドルとしてマネジメントしてくれる事務所の人と打ち合わせをするはずでしょう…こんな所で立ち止まって、どうかしたの?」

 

あんじゅ「それがぁ…この子、迷子みたいなの」

 

虎太郎「…」

 

ツバサ「この子が?…!」

 

英玲奈「どうした?」

 

あんじゅ「知ってるの、ツバサちゃん?」

 

ツバサ「いえ…でも、何故かしら?」

 

ツバサ「誰かに、似てるような…」

 

虎太郎「…かめんらいだー」スッ

 

A-RISE「!!」

 

ツバサ「今のは、何…?」

 

あんじゅ「えっ、ツバサちゃんにも見えたのぉ?」

 

ツバサ「!…あんじゅも?」

 

英玲奈「私にも、はっきり見えた…」

 

ツバサ「英玲奈も?…!」ハッ

 

虎太郎「…」

 

ツバサ「あなた…なるほど、そういう事だったのね?」

 

虎太郎「…だいしょっかー」

 

ツバサ「やっぱり…ありがとね、大切な事を思い出させてくれて」ナデナデ

 

虎太郎「…」

 

英玲奈「どういう事だ?」

 

ツバサ「私と彼だけにしか分からない事よ…ねっ?」パチン

 

虎太郎「…」コクリ

 

あんじゅ「あらあら…もしかしてツバサちゃんとあなたって、そういう関係だったのぉ?」

 

英玲奈「!?…ツ、ツツツツバサガガガママママサカソソソソンナシュミダッタトハ…」プシュー…

 

虎太郎「?」キョトン

 

ツバサ「詳しい説明は後にするわ…さて、と」ピッピッピッ

 

ツバサ「…もしもし、穂乃果さん?」

 

ツバサ「今からUTXに来てもらえるかしら…一緒にいる『μ's』のメンバーも連れて」

 

ツバサ「ええ、そう…あなた達に会わせたい子がいるの」フフッ

 

 

 

ツバササーン!

 

ツバサ「!…来た」

 

穂乃果「お待たせしました…って、虎太郎くん!?」

 

虎太郎「…」

 

ことり「どうして虎太郎くんがこんな所に…?」

 

ツバサ「彼の方からわざわざ会いに来てくれたの…私達にある事を思い出させる為に」

 

海未「…どういう事ですか?」

 

英玲奈「実は…『大ショッカー』という組織が、私達の世界を侵略しようとしているんだ」

 

花陽「…『大ショッカー』?」

 

真姫「何よ、それ…イミわかんない」

 

凛「凛、ショッカーなら聞いたことあるよ!『仮面ライダー』によく出てくる悪い人達だって…」

 

ツバサ「そう…そのショッカーが幾つもの並行世界に存在する悪と結託して生まれた勢力、それが『大ショッカー』なの」

 

絵里「でも、どうしてあなた達がそんな事を知ってるの…?」

 

希「!…もしかして、ウチらと同じように夢を見たとか?」

 

ツバサ「ふふっ、そういう事…少し状況は違うけどね」

 

英玲奈「!?…皆、あのスクリーンを見ろ!」

 

?『やっほ~!みんな、はっちゃけてるかーいっ!?』

 

全員「!」クルッ

 

?『お馴染み、アキバレポーターでーっす!』

 

レポーター『今、何と…大きな飛行船が秋葉原方面に向かって飛んでるんだって!』

 

レポーター『スゴいねぇ?まるで戦艦みたいだねぇ!』

 

あんじゅ「!…まさか、あの空飛ぶ船がツバサちゃんの言ってた?」

 

ツバサ「ええ、あれが…『鬼の戦艦』よ」

 

穂乃果「『鬼の戦艦』…?」

 

絵里「どういう船なの?」

 

ツバサ「別名『時を走る船』…あれで時間の中を自由自在に往き来する事が出来るの」

 

ツバサ「『大ショッカー』はそれを持つ『オニ一族』と手を組んだ事で、あらゆる世界を往き来出来るように改造して…この世界へとやって来たの」

 

レポーター『あれ、飛行船から何かが飛ばされたぞ~…っ!?』

 

全員「!?」

 

レポーター『人…ミサイルを背負った全身黒ずくめの人が、こっちに向かってきてるよ!?』

 

レポーター『みんな、大変だー!逃げ…』ブツッ

 

穂乃果「!」

 

ことり「だ…大丈夫かなぁ、あのレポーターさん?」

 

海未「そうだと良いのですが…」

 

ツバサ「今のは大ショッカーの戦闘員…まさか、人間ミサイルで街を破壊するつもり!?」

 

真姫「それじゃ、街が滅茶苦茶になるじゃない!」

 

英玲奈「いや…それだけじゃない、このままでは私達の世界そのものが支配されてしまう」

 

凛「そんな…」

 

花陽「…!?」

 

希「花陽ちゃん、どうかしたん?」

 

花陽「た、大変です…あそこにある建物が!」

 

絵里「なっ…次々に消えていってる!?」

 

ツバサ「…とうとうこの世界に、滅びの現象が起きてしまったみたいね」

 

海未「滅びの現象?」

 

あんじゅ「実は…九つの並行世界と私達のいる世界の融合も始まってしまったみたいなの」

 

ことり「じゃあ、私達が夢で会ったあの男の人の言ってた事って…本当だったの?」

 

穂乃果「だとしたら…虎太郎くんは!」チラッ

 

虎太郎「…」スゥゥ…

 

全員「!!」

 

穂乃果「ちょっとだけ、透明になってる…!」ハッ

 

青年『このままだと、真っ先に消えるのはお前達の世界の《矢澤虎太郎》だ』

 

絵里「信じられない…まさか、本当にそうなってしまうなんて」

 

穂乃果「このままじゃ虎太郎くんが…一体、どうしたら良いの!?」

 

ツバサ「…落ち着いて、穂乃果さん」

 

穂乃果「えっ?」

 

ツバサ「彼がこうなっているという事は…もう一人の彼と繋がっているという証拠よ」

 

ツバサ「つまり、これからあなたがやるべき事は…分かるわね?」

 

穂乃果「…私がやるべきこと?」

 

ツバサ「ええ、あなたと絵里さんなら…きっと答えに導けるはずよ」

 

絵里「えっ…私も?」

 

ツバサ「そう、あなたも」フフッ

 

絵里「…?」

 

ツバサ「さて…彼は穂乃果さんと絵里さんに任せて、私達は街の人々の避難誘導をしに行きましょう?」

 

海未「あの…本当に穂乃果と絵里の二人だけで、大丈夫なのですか?」

 

ツバサ「にこさんと三人でいれば大丈夫よ…穂乃果さん、にこさんに連絡してもらえる?」

 

穂乃果「あっ…はい!」

 

あんじゅ「じゃあ、あなた達は…私と一緒に神保町までついてきてくれるぅ?」

 

ことり「は…はいっ!」

 

花陽「分かりましたっ!」

 

英玲奈「では…君達は私と共に秋葉原へ向かおう」

 

凛「よ~し、行っくニャー!」

 

真姫「仕方ないわねぇ…」ハァ

 

ツバサ「二人は私と一緒に神田に行きましょう…準備は良い?」

 

海未「はい!」

 

希「ウチらに任しとき!」

 

ダダダッ…

 

絵里「皆…」

 

穂乃果「それじゃ、にこちゃん…気をつけて来てね!」ピッ

 

絵里「…にこ、大丈夫だった?」

 

穂乃果「うん、ただ…こころちゃん達と別れて探してたみたい」

 

絵里「そう…あの二人も無事だと良いのだけど」

 

穂乃果「…ねぇ、絵里ちゃん」

 

絵里「何?」

 

穂乃果「私、夢の中であの男の人に言われて思い出したんだけど…」

 

青年『ディケイドとお前達の世界に存在している特殊な力を持った二人の少女を逢わせる』

 

絵里『その二人の女の子って誰なの?』

 

青年『お前達の方がよく知ってるんじゃないのか?特に…お前と、お前がな』

 

絵里「!…やっぱり、穂乃果も?」

 

穂乃果「…うん」

 

絵里「そう、じゃあ…ちょっと試してみる必要があるのかもしれないわね」

 

穂乃果「へっ…何を?」

 

絵里「…ふふっ、任せて!」

 

虎太郎「…」

 

 

 

虎太郎「!」ハッ

 

にこ「?…虎太郎、どうしたの?」

 

虎太郎「…!」ダッ

 

にこ「ちょっ…虎太郎!?」

 

穂乃果「虎太郎くん!」

 

絵里「待って!」

 

モモタロス『おいおい…どこ行くんだよ!?』

 

虎太郎「…おーろらー」

 

モモタロス『あ…オーロラ?』

 

 

 

虎太郎「!…あったー」ダダッ

 

モモタロス『オメー…あの中に入るのか?』

 

虎太郎「…」コクリ

 

モモタロス『…しゃあねぇ、もしもの時は俺が何とかしてやる』

 

虎太郎「ありがとー…!」ダッ

 

 

 

虎太郎「!…いたー」

 

ツバサ「…」

 

モモタロス『あれは…さっきのおでこの広い姉ちゃんじゃねえか、何でこんな浅い川で寝転がってんだよ?』

 

虎太郎「たすけるー…」トコトコ…ジャブジャブ

 

モモタロス『!…はぁ、分かったよ』

 

モモタロス『深くはないしな…よっと!』

 

M虎太郎「よっこら…せっと」ヒョイ

 

ツバサ「…っ」パチリ

 

M虎太郎「…」スタスタ

 

ツバサ「え?…!!」

 

 

 

ツバサ「まさか『μ'sの世界』の矢澤虎太郎に助けられるなんてね…ありがとう」ナデナデ

 

虎太郎「…」

 

ツバサ「それにしても、彼が真の姿になれる程に回復していたなんて…こうなったら早く私の世界に戻らないといけないわね」

 

ツバサ「でも、キバーラを探している時間は無いし…!」

 

虎太郎「…?」

 

ツバサ「そうだ…あなた、ほんの少しだけ私の手助けをしてくれない?」

 

ツバサ「力を貸してほしいの…お願い」

 

虎太郎「…」コクリ

 

ツバサ「!…ふふっ、ありがとう」

 

ツバサ「じゃあ、行きましょう…『電王の世界』へ」

 

虎太郎「…!」

 

 

 

ツバサ「…」スタスタ

 

虎太郎「たーみなるー…!」キラキラ

 

ツバサ「…あったわ、ここよ」

 

虎太郎「!」

 

ツバサ「…」コンコン

 

…ドウゾ

 

ツバサ「失礼します…!」ガチャ

 

?「…ふふっ、こんにちは」

 

虎太郎「!…にてるー」

 

ツバサ「…あなたが、ここのターミナルの駅長ね?」

 

駅長「その通り…しかし、驚いたわ」

 

駅長「私とここまで似ているなんて…まるで双子のようね?」

 

ツバサ「ふふっ…奇遇ね、ちょうど私もあなたと全く同じ事を思っていたわ」

 

駅長「…それで、私に何か?」

 

ツバサ「実は…このターミナルに保管している金色のデンオウベルトと『契約』のライダーチケットを譲ってほしいの」

 

駅長「そう…でも、それは無理よ」

 

駅長「時間を改変する事は決して許されない…例え、あなたの過去に何があろうと」

 

ツバサ「それなら安心してちょうだい…私が変えたいのは、時間じゃないから」

 

駅長「!…どういう意味?」

 

 

 

駅長「なるほど…そういう事情なら、仕方ないわね」

 

駅長「受け取りなさい…これが、金色のデンオウベルトと『契約』のライダーチケットよ」スッ

 

ツバサ「…ありがとう」

 

ツバサ「さて、次は…ちょっと良いかしら?」スタスタ

 

虎太郎「?」

 

ツバサ「このブランクカードをあなたの額にかざして…完成っと」スッ

 

モモタロス『なっ…これ、俺じゃねぇか!?』

 

虎太郎「ふぁいなるふぉーむらいどー…」

 

ツバサ「ふふっ、もしかして…私がイマジンの存在に気付いてないとでも思った?」

 

モモタロス『オ、オメー…!』

 

ツバサ「安心して…助けてもらった恩もあるし、あなたが中に入っている事は誰にも言わないから」

 

ツバサ「それに、私は…このカードをもう一人のあなたに渡したいだけだから」

 

 

 

デネヴ「じゃあ、このカードを…」

 

ユウコ「ディケイドに渡せば良いのね?」

 

ツバサ「ええ、私は次の世界に行かないといけないから…それじゃ」ダッ

 

ユウコ「あっ…ちょっと!?」

 

デネヴ「…行っちゃったなぁ」

 

ツバサ「お待たせ…じゃあ、行きましょう?」

 

虎太郎「…」コクリ

 

 

 

ツバサ「…改めてありがとう、私の為に手伝ってくれて」

 

虎太郎「だいじょーぶー…」

 

ツバサ「ふふっ、やっぱり…あなたも優しいのね」

 

虎太郎「?」

 

ツバサ「こっちの話よ、それじゃ…もう一人の私によろしくね」

 

虎太郎「…!」ビシッ

 

ツバサ「…」スタスタ

 

 

 

虎太郎「…」トコトコ

 

モモタロス『おい、元の世界に戻ってきたは良いけどよ…これからどうすんのか分かってんのよ?』

 

虎太郎「…だいたいわかったー」

 

モモタロス『本当かよ…!』

 

ゴルドラ「…見つけたぞ、貴様には人質になってもらう」

 

モモタロス『来やがったな…おい、行くぜ?』

 

虎太郎「…」フルフル

 

モモタロス『はぁ!?何でだよ!』

 

虎太郎「…まだー」

 

モモタロス『!…ちっ、分かったよ』ハァ

 

ゴルドラ「少し眠っていてもらおう…大首領様の、崇高な目的の為に」スッ…

 

虎太郎「…!」

 

 

 

M虎太郎「…ってワケだ」

 

ゴルドラ「ふざけた真似を…行くぞ、ミミヒコ」

 

シルバラ「兄ちゃん…ああ!」

 

サヨ「あなた達…もしかして、その子ごと『モモタロス』を倒しちゃうつもり?」

 

ゴルドラ「人質として捕まえていたが…大首領様がいなくなった今、やむを得ん」

 

シルバラ「さ~て…お前は一体、どんな音で潰れるかな?」

 

シルバラ「人間の子供は…良い音がするからなぁ」

 

M虎太郎「けっ、相変わらずセンスの悪ぃ趣味してやがるな…」スッ

 

シルバラ「!?」

 

ゴルドラ「そのベルトは…!」

 

M虎太郎「へっ…今から俺のカッコ良い変身、見せてやるからよく見とけ」ポチッ

 

サヨ「…」フフッ

 

M虎太郎「変身!」

 

『ソードフォーム』

 

ミニ電王「…俺、参上!」

 

シルバラ「あのガキ…電王にまで変身しやがった!」

 

ミニ電王「言っておくが、このサイズでも俺は…最初から最後までクライマックスだぜ!」

 

ゴルドラ「…っ!」

 

ミニ電王「へへっ…行くぜ行くぜ行くぜー!」ダッ

 

 

 

ディケイド「…まさか、今のはもう一人のオレの記憶か?」

 

戦闘員「イーッ!」バッ

 

ディケイド「!」スッ

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「はっ!」ザシュッ!

 

戦闘員「イーッ!?」ドサッ

 

ディケイド「ふぅ…!」ハッ

 

ディケイド「という事は、オーロラを通った後に出会ったツバサは…」

 

ディエンド「ツカサ、亜里沙…準備は良い!?」

 

キバーラ「うん!」

 

ディケイド「!…ああ」

 

ディエンド「よし…!」スッ

 

『アタックライド…クロスアタック!』

 

(ディエンドが一枚のカードをディエンドライバーに入れたのを確認したオレは…紫色に光るキバーラサーベルを持ったキバーラと一緒に敵を斬りつけた)

 

キバーラ「えいっ!」ズバッ!

 

ディケイド「ふっ!」ザシュッ!

 

戦闘員達「イーッ!?」バタバタッ

 

(ディエンドのクロスアタックの効果で、技の威力が増したオレ達は…次々と戦闘員達を倒していく)

 

ディケイド「…さすがだな、亜里沙」

 

キバーラ「えへへ…ツカサもね!」

 

ディエンド「!?…二人とも、危ないっ!」

 

キバーラ「えっ?」

 

ディケイド「!」

 

 

 

~世界の破壊者、ディケイド…9人の女神に出逢い、その瞳は夢を見る!~

 

 

 

ツバサ(この世界の私が初めてキバーラに会ったのは…ちょうど街の人々の避難誘導を終えた頃だった)

 

ツバサ「穂乃果さんとも連絡が取れない…まさか彼女達、もう『仮面ライダー』に変身しているというの?」

 

?「ツバサちゃーん!」ダダッ

 

ツバサ「あれは…あんじゅ、英玲奈!」

 

英玲奈「すまない、私もあんじゅも避難誘導は終わったんだが…途中まで共に行動していた二人とはぐれてしまった」

 

あんじゅ「私も…一緒に行った二人と離ればなれになっちゃったわぁ」

 

ツバサ「…そう、残念ながらこっちも同じよ」

 

英玲奈「やはり、そっちもか…困ったな」

 

あんじゅ「そうねぇ…皆、無事だと良いんだけど」

 

ツバサー!

 

ツバサ「?」クルッ

 

あんじゅ「あれは、白い…」

 

英玲奈「…蝙蝠?」

 

キバーラ「ツバサ~!」

 

ツバサ「キバーラ?…もしかして、キバーラなの!?」

 

キバーラ「見つかって良かった…この世界のあなたに、もう一人のあなたが書いたこの手紙を渡しに来たの!」スッ

 

ツバサ「!…もう一人の私から?」

 

キバーラ「ええ!」

 

ツバサ「ありがとう…早速、読んでみるわ」ピラッ

 

ツバサ「…!!」

 

英玲奈「どうした、ツバサ?」

 

あんじゅ「何が書いてあったのぉ?」

 

ツバサ「私達の世界を救う為にとても重要なミッションよ…キバーラ、一緒に手伝ってくれるかしら?」

 

キバーラ「ええ、もちろんよ!」

 

ツバサ「二人も…良い?」

 

あんじゅ「!…なるほどね、何となくツバサちゃんがしようとしてる事が分かっちゃったわぁ」

 

英玲奈「そうだな…全く、ツバサの思いつきには相変わらず苦労するな」ハァ

 

ツバサ「…」フフッ

 

 

 

英玲奈「…ここが『ファイズの世界』にある『スマートブレイン』という企業か」

 

あんじゅ「意外と普通の会社なのねぇ?」

 

ツバサ「見た目だけなら、ね…コインロッカーのパスワードは」ピッピッ

 

『453145』

 

英玲奈「!…開いたぞ」

 

あんじゅ「随分と大きい荷物ねぇ…これって全部、ベルトかしら?」

 

英玲奈「こっちの方には栄養ドリンクのような瓶が入っているな…注意書きには『ベルトを使用する前に服用してください』と書かれてある」

 

ツバサ「じゃあ、これを私達の世界まで運んだら…二人はディエンドのパワーアップカードを探しに向かってくれる?」

 

ツバサ「私は…この荷物を『彼女達』に託したら、キバーラと一緒に『クウガの世界』に向かうから」

 

英玲奈「ああ、任せろ」

 

あんじゅ「うふふっ…♡」

 

 

 

キバーラ「…いなかったわね、矢澤ニコ」

 

ツバサ「そうね、考えられるとすれば…『μ'sの世界』との融合の影響で彼女の存在が消滅してしまっている可能性があるわ」

 

キバーラ「あなたの世界の『μ's』メンバーとも連絡が取れないっていうのに…それで、この『アギトの世界』に来てどうするつもりなの?」

 

ツバサ「彼女ならまだ大丈夫のはずよ…ほら、噂をすれば」

 

?「あれ?…ツバサさん!?」

 

ツバサ「ふふっ、久しぶりね…ホノカさん」

 

ホノカ「どうかしたんですか?」

 

ツバサ「ええ…実は、あなたにお願いしたい事があるの」

 

ホノカ「私にですか?…良いですよ、何でも言ってください!」

 

ツバサ「…ありがとう」フフッ

 

ツバサ(承諾したホノカさんを連れて自分の世界に戻った私は…彼女に、にこさんの二人の妹さんを雪穂さんと亜里沙さんに会ってもらうよう説明させた)

 

ツバサ(にこさんか穂乃果さんであれば、幼い彼女達が素直に言う事を聞いてくれると思っていた私はその為に…二つの世界を訪れていたのだ)

 

ツバサ(それからホノカさんが消滅するのを見届けた私は…ディエンドのパワーアップカードと三つのバックルと三枚のラウズカードを発見した英玲奈、あんじゅと合流した)

 

ツバサ(私達は一旦、ツカサくんと『μ's』を取り戻そうとする雪穂さんと亜里沙さんのサポートに回る為に戦いの場所へと向かい…それぞれのバックルを使って変身した)

 

ツバサ(そして雪穂さんと亜里沙さんの活躍でツカサくんが目を覚まそうとしている間に、私達がキバーラと共に向かったのは…)

 

 

 

?「…」

 

『八代 愛笑』

 

?「…思えば、この世界の私がお前に最初に会ったのは一年前だったな」

 

?「私が勝手に『アイドル研究部』の部室に入ったら…PCのキーボードを打って、一人でにやけてるお前を見つけて」

 

?「確か…あの時は『スクールアイドル?10年早えよ!((┗―y(`A´)y-~ケッ!!』って、掲示板に書いてたんだよな?」

 

?「私が後ろから『スクールアイドル?』って聞いたら…お前がビックリして、イスから転げ落ちて」

 

?「やがてスクールアイドルに興味を持った私が毎日、お前に何度もお願いして…折れたお前が一緒に組んでくれるようになって」

 

?「きっと、あの時の私は喜んでたんだろうな…スゴく」

 

ザッザッ…

 

?「!」バッ

 

A-RISE「…」

 

?「…お前ら」

 

ツバサ「思い出してくれたかしら?…別の世界のあなたの記憶を」

 

?「!…ああ、ハッキリとな」

 

あんじゅ「うふふっ…じゃあ、一緒に来てくれるわよねぇ?」

 

?「…本当に、私で良いのか?」

 

英玲奈「当然だ、君が来なければ…意味がない」

 

?「そうか…全く、しゃあねぇな」ハァ

 

ツバサ「ふふっ…さあ、行きましょうか?」

 

ツバサ「『小野寺 愛笑』さん」

 

?「…!」

 

ツバサ(それから私達は彼女を始めとしたある人物達を各世界から連れて、自分の世界に戻った)

 

ツバサ(先にキバーラを亜里沙さんの所へ向かわせて『彼女達』と合流した私達も…戦いの場へと赴いた)

 

 

 

ディエンド「…っ!」スッ

 

『アタックライド…バリアー!』

 

ディエンド(急いでディエンドライバーに一枚のカードを入れた私は…ディケイド達の前にエネルギーの壁を放ち、どこからか飛んできた攻撃を防御した)

 

キバーラ「雪穂…ありがとう!」

 

ディエンド「私も亜里沙やツカサに助けてもらってるんだからお互い様だよ…それより、今のは?」

 

ディエンド(ディケイドは…近くで転がっているある物を見つけた)

 

ディケイド「!…これは」

 

キバーラ「ヨーヨー…?」

 

ディエンド「違うよ、亜里沙…これはコマっていうの」

 

キバーラ「コマ?」

 

ディエンド「そう、手やヒモを使って回すおもちゃだよ」

 

キバーラ「へぇ…これがコマなんだ」スッ

 

ディケイド「触るな!」

 

キバーラ「!?」ピタッ

 

ディエンド「どうしたの、ツカサ?」

 

ディケイド「それは独楽の形をした…爆弾だ」

 

キバーラ「え…爆弾なの!?」

 

ディエンド「どうしてそんなものが?」

 

ディケイド「おそらく、奴の仕業だ…そうだろ?」

 

ディエンド「!…あれは」

 

キバーラ「オーロラ…!」

 

『ハイジャックフォーム』

 

?「…その通りだ」スタスタ

 

ディエンド(変身すると同時に、オーロラから出てきたのは…首に赤いマフラーを巻いた傷だらけの戦士だった)

 

ディエンド「あのライダーは…?」

 

ディケイド「幽汽だ…記憶を失う前、オレは奴に会った事がある」

 

キバーラ「そうなの?」

 

ディケイド「ああ、だが…その時の奴とはどうやら少し違うらしい」

 

幽汽「俺の手を煩わせるな…ハァッ!」ブンッ!

 

ディエンド(幽汽は鞭を振るいながら…再びコマの形をした爆弾を私達にぶつけてきた)

 

ガガッ!

 

キバーラ「きゃあっ!」

 

ディエンド「うわっ!?」

 

ディエンド(攻撃をまともに受けてしまった私とキバーラは…同じく攻撃を受けたディケイドとは別の方向に吹き飛ばされてしまった)

 

ディケイド「ぐっ…!」ゴロゴロ

 

幽汽「一人一人、ゆっくり始末してやる…まずは貴様からだ」スタスタ

 

ディケイド「…っ」

 

ディエンド「ううっ…!」

 

キバーラ「ツカサ…!」

 

クウガ「!?…ツカサ!」

 

アギト「いけない…早くツカサくん達を助けに行かないと!」

 

カブト「それなら、私がクロックアップで…!」ダッ

 

幽汽「邪魔をするな!」ブンッ!

 

ディエンド(幽汽は近付こうとしたカブトだけでなく…ライダーに変身した『μ's』の全員に爆弾を投げつけた)

 

ガガガッ!

 

μ's「うわぁっ!?」

 

キバーラ「お姉ちゃん!」

 

ディエンド「皆!」

 

カブト「くっ…これじゃ、ツカサ達に近付けない!」

 

ファイズ「でも、このままだと…ツカサ達が危険よ!?」

 

ブレイド「何とか助け出さないと…え?」

 

龍騎「二人の女の子が雪穂ちゃん達の方に向かってる…って、ニャニャ!?」

 

響鬼「あれって…こころちゃんとここあちゃんやない!?」

 

キバ「隠れてたんじゃなかったのぉ!?」

 

クウガ「危険だわ…すぐに二人を連れ戻さないと!」

 

アギト「!…いや、待って」

 

電王『どうしたの、穂乃果ちゃん…?』

 

アギト「きっと二人には何か考えがあるんだよ…行かせてあげよう!」

 

八人「はぁ!?」

 

クウガ「アンタね…何、言ってるのよ!?」

 

アギト「二人なら大丈夫だよ…だから、私達は周りにいる戦闘員の人達をやっつけよう!」ダッ

 

クウガ「っ…全く、しょーがないわねー!」ダッ

 

ディエンド(こころちゃんとここあちゃんは…幽汽に気付かれないように、私達の元まで走ってきた)

 

こころ「はぁはぁ…ゆきほさん!」

 

ここあ「ありさおねえちゃん、だいじょうぶ!?」

 

ディエンド「っ…こころちゃん?」

 

キバーラ「ここあちゃん…?」

 

こころ「わたしたちもなにかみなさんのちからになれないかとおもい、あおいカバンのなかをさがしてみたら…すごいものをみつけたんです!」スッ

 

ディエンド「!…これって、デンオウベルト?」

 

キバーラ「でも、このデンオウベルト…ことりさんのと違って金ぴかだよ?」

 

ここあ「それをこのチケットといっしょに…なにもかいてないカードにかざしてみて!」スッ

 

ディエンド「これは…青鬼?」

 

キバーラ「『契約』って何のことなのかな…とにかく使ってみようよ、雪穂!」

 

ディエンド「う、うん…!」

 

ディエンド(私が最後のブランクカードに金色のデンオウベルトと『契約』の判子が押されている青鬼が描かれたチケットを吸収させていると…)

 

幽汽「!…貴様ら、何をしている?」

 

ここあ「あっ!?」

 

幽汽「邪魔をするなって言ったはずだ…消えろ!」ブンッ

 

ディエンド(こころちゃんとここあちゃんの存在に気付いた幽汽が…私達の方に向かって爆弾を投げつけてきた)

 

ディケイド「!?…逃げろ、お前ら!」

 

こころ「いまです!」

 

キバーラ「雪穂!」

 

ディエンド「…っ!」

 

ディエンド(二つのアイテムを吸収し、絵柄の入ったカードをディエンドライバーに読み込ませた私は…幽汽に向かって引き金を引いた)

 

『カメンライド…ニューデンオウ!』

 

ディエンド(すると…私達の目の前に一人の若い男の人が現れた)

 

?「…」

 

こころ「!…やっぱり、まちがいありません!」

 

ここあ「ってことは…あのイマジンも!」

 

キバーラ「…えっ?」

 

?「…」パチパチッ

 

ディエンド(男の人が指を二回鳴らした直後…青鬼の怪人が現れ、持っていた傘で爆弾を防いだ)

 

ガガッ!

 

ディエンド「!?」

 

幽汽「何!?」

 

ディケイド「!…あの二人は」

 

こころ「のがみこうたろうさんと…!」

 

ここあ「テディだ!」

 

幸太郎「…」

 

テディ「…」

 

ディケイド「…!!」

 

ディエンド「『野上幸太郎』と…」

 

キバーラ「天丼?」

 

テディ「!?」ズコッ

 

幸太郎「…!」プッ

 

テディ「違います、天丼じゃなく…テディです」

 

幸太郎「いや…こいつの本当の名前はアレクサンドルビッチだ」

 

テディ「なっ!?…おい、幸太郎!」

 

キバーラ「そうなんだ…さっきは私たちを守ってくれてありがとう、アレクサンドルビッチさん!」

 

テディ「え?あっ、いえ…お気遣いなく」

 

テディ「って、そうではなく…私の名前は!」

 

キバーラ「天丼なの?」

 

テディ「だから、天丼じゃなくて…!」

 

幽汽「貴様ら…何故、また邪魔をする!?」

 

テディ「!」バッ

 

幸太郎「邪魔しに来たんじゃない…俺達はこの世界を守る為に来たの!」

 

幽汽「何を意味の分からん事を…ふざけるなっ!」ダッ

 

ディケイド(幽汽はサヴェジガッシャーという大剣を持って…幸太郎達に襲いかかろうと走り出した)

 

幸太郎「さてと…少し危ないから、ここは俺達に任せて下がってくれる?」

 

ディエンド「あっ…はい!」

 

ディケイド(ディエンド達が下がったのを確認した幸太郎は…金色に輝くNEWデンオウベルトを腹部に装着した)

 

幸太郎「変身!」

 

『ストライクフォーム』

 

ディケイド(ベルトの中央部にパスを通した幸太郎は…鋭利な電仮面や胴体のターンテーブルから全身に繋がるデンレールが特徴的な藍色の戦士に変身した)

 

ディケイド「そうか、あれが…」

 

こころ&ここあ「『NEW電王』!」

 

電王『…えっ、電王?』

 

ブレイド「ですが、ことりが変身している電王とは色々と違うみたいですね…」

 

NEW電王「…テディ、行くぞ!」パチパチッ

 

テディ「ああ…今の私達なら、楽勝だ!」バッ

 

ディケイド(NEW電王が指を二回弾いたのを合図に…テディは銃剣マチェーテディへと変形し、NEW電王の手に渡った)

 

NEW電王「はっ!」ガキンッ!

 

ディケイド(NEW電王がマチェーテディで幽汽のサヴェジガッシャーを受け止めると…マチェーテディがNEW電王に話しかけてきた)

 

テディ『幸太郎、カウントは幾つにする?』

 

NEW電王「12…いや、10で行ける!」

 

テディ『分かった…10!』

 

NEW電王「はぁっ!」ガッ!

 

幽汽「ッ!?」

 

ディケイド(NEW電王はカウントが始まると同時に、幽汽の腹部を蹴りつけて距離を取ると…)

 

テディ『9…8…7』

 

NEW電王「…!」スッ

 

『フルチャージ』

 

ディケイド(NEWデンオウベルトにパスを通し…身構えた)

 

幽汽「その技は効かないと言ったはずだ…ハァッ!」ブンッ!

 

テディ『6…5…4』

 

NEW電王「ほっ、ふっ、はっ!」ガガッ!

 

ディケイド(それからNEW電王は幽汽が繰り出した独楽型の爆弾をマチェーテディで全て弾き落とすと…)

 

幽汽「な…何ッ!?」

 

テディ『3…2…1』

 

NEW電王「!」バッ

 

ディケイド(マチェーテディを高く放り投げると同時に自分も高く飛び…)

 

テディ『0!』

 

NEW電王「やぁっ!」ドカッ!

 

ディケイド(『ストライクスパート』というキック技で幽汽にダメージを与えた)

 

幽汽「グワァッ!?」ヨロッ…

 

NEW電王「分かった?…『俺達』の強さが、本物になってきてるって事が」

 

幽汽「そのようだな、しかし…この程度の攻撃では俺は倒れん!」

 

NEW電王「ああ、だからカウントが『0』になったここからが…本当の戦いなんだ!」パシッ

 

幽汽「なっ…!?」

 

テディ『今だ!』

 

ディケイド(NEW電王は落ちてきたマチェーテディをキャッチすると…『カウンタースラッシュ』という技で幽汽を斬りつけた)

 

NEW電王「はぁーっ!」ズバッ!

 

幽汽「グワァァァァッ!?」ゴロゴロ

 

テディ『…やったな、幸太郎』

 

NEW電王「!…ああ」フゥ

 

ここあ「ス…スゴい!」

 

こころ「『さら電』ではくせんしていたハイジャックフォームの『幽汽』を…ひとりでたおしました!」

 

キバーラ「…違うよ」

 

こころ「へっ?」

 

キバーラ「きっとあの人は…一人じゃないから勝てたんだよ」

 

ここあ「そういわれてみれば、さっき…『俺』じゃなくて『俺達』っていってたきがする!」

 

こころ「なるほど…テディさんとのコンビネーションですね!」

 

NEW電王「…」スタスタ

 

幽汽「…」ハァハァ

 

NEW電王「…早く帰りなよ、あの人の所に」

 

幽汽「!」

 

NEW電王「あんた達の新しい時間は…もう、始まってるはずだからさ」

 

幽汽「…」スゥゥ…

 

NEW電王「きっと、あの人も…待ってると思う」

 

幽汽「!…フッ、そうだな」スゥゥ…

 

ディケイド(幽汽はそう言って消滅すると…NEW電王はオレの方を向いた)

 

NEW電王「…で、あんたが新しいディケイドで良いんだよね?」

 

ディケイド「!…ああ」

 

NEW電王「実は…『ヤツ』からあんたへの伝言を頼まれてるんだ」

 

ディケイド「…『ヤツ』?」

 

NEW電王「それは…!」

 

ディケイド「?…!」バッ

 

ディケイド(空を見上げたオレ達は…飛んでいる『鬼の戦艦』を見つけた)

 

キバーラ「あれが…『鬼の戦艦』なの?」

 

ディケイド「…ああ、そうだ」

 

ディエンド「ちょうどオトノキの真上に飛んでるね…どうやって中に入って虎太郎くんを助けに行くの?」

 

ディケイド「そうだな、空を飛ぶ物があれば良いんだが…ん?」

 

キバーラ「何かが船から飛んできてるね…えっ!?」

 

ディケイド(それはミサイルを背負って特攻をかけてきた…大ショッカーの戦闘員達だった)

 

NEW電王「あれは…マズい!」

 

ディケイド(オレ達が一斉に伏せようとしたその時…突如、空から現れた巨大な列車から放たれた弾丸が戦闘員達を撃ち落とした)

 

ディエンド「!…今のって、デンライナー?」

 

NEW電王「いや、違う…キングライナーだ」

 

キバーラ「キングライナー…?」

 

ディケイド「デンライナーを始めとした時の列車を格納する事が出来る超大型車両だ…もしかして、アンタが呼んだのか?」

 

NEW電王「え?い…いや、俺じゃないけど」

 

ディエンド「じゃあ、誰があの列車を…?」

 

?「私達が借りたのよ…『電王の世界』にいる、駅長さんからね」

 

ディケイド「!」バッ

 

ツバサ「…」フフッ

 

英玲奈「やあ」

 

あんじゅ「ハロ~♡」フリフリ

 

ディエンド「ツバサさん…英玲奈さん、あんじゅさん!」

 

キバーラ「どういうことですか?」

 

ツバサ「私達はディケイドである彼が正気に戻ろうとしていた間に…キバーラの能力を借りて、色々な世界を巡っていたの」

 

ツバサ「大ショッカーの魔の手から、この世界を守る為に…ね?」パチッ

 

ディケイド「なるほどな、それでキングライナーが…だいたいわかった」

 

あんじゅ「うふふっ、でも…まだこれで終わりじゃないわよぉ?」

 

ディエンド「えっ…そうなんですか?」

 

英玲奈「ああ、大ショッカーに対抗する為には…出来るだけ多くの仲間の協力が必要だったからな」

 

キバーラ「仲間の協力…?」

 

ツバサ「そう、だから…直接連れてきたの」

 

ツバサ「この世界と色々な世界にいた…多くの仲間達を!」

 

ディケイド「この世界と、色々な世界…!!」ハッ

 

 

 

戦闘員「イーッ!」ドカッ!

 

アギト「わぁっ…!」ゴロゴロ

 

クウガ「穂乃果!」

 

カブト「大丈夫!?」

 

アギト「う、うん…何とか!」

 

響鬼「それにしても…キリがないなぁ」

 

ファイズ「そうね、どれだけ倒しても…減っているような気がしないわ」

 

龍騎「むしろ増えてきてるよ!?」

 

キバ「このままじゃ、私達…」

 

電王『…まだだよ、みんな!』

 

アギト「!…ことりちゃん」

 

電王『みんなで戦えば、怖くなんかないよ…行こう!』

 

電王『《ラブライブ!》だって、みんなで一緒に頑張ってきたんだよ…やれるよ!』

 

八人「…!」

 

電王『だから諦めちゃダメ…せっかく、せっかくここまで来たんだから!』

 

ブレイド「…私だってそうです」

 

アギト「海未ちゃん…!」

 

ブレイド「せっかく『ラブライブ!』にも優勝したというのに…大ショッカーにこの世界を乗っ取られてしまうなんて、絶対に嫌です!」

 

ブレイド「私だって誰よりもこの世界を守りたい…そして、九人でする最後のライブを最高の形で迎えたいのです!」

 

八人「!」

 

ブレイド「だから…行きましょう!」

 

アギト「…うん、行こうっ!」

 

戦闘員「貴様ら…さっさと諦めて、大人しく我々に降伏したらどうだ!?」

 

アギト「そんなことしないよ!」

 

アギト「だって…誰だって、人の未来を奪うことなんて出来ないもん!」

 

アギト「もしそれでも人の運命があなた達の手の中にあるのだとしたら、私が…ううん、私達『μ's』が奪い返してみせる!」

 

カブト「…あなた達がどれだけ束になっても、私には勝てないわ」

 

カブト「何故なら私達は…常に進化し続けているのだから」

 

カブト「…おばあさまは言っていた」スッ

 

カブト「私達の進化は光より速い、全宇宙の何者も…『μ's』の進化にはついてこられない」

 

電王『私達は負けないよ、例え弱くたって…何もしない言い訳にはならないから』

 

電王『だから私は戦うよ…《μ's》のみんなと一緒に!』

 

ブレイド「…私達はどんな状況でも絶対に屈する訳にはいきません」

 

ブレイド「今の私には…『μ's』という共に戦う仲間がいます」

 

ブレイド「だから私達はその決められた運命と戦い…そして、必ず勝ってみせます!」

 

ブレイド「人々を守る為に…この想いを込めて!」

 

龍騎「そうだよ…ここでやられるわけにはいかないニャ!」

 

龍騎「凛は一人で戦ってるんじゃない…今は『μ's』のみんなで、チームなんだから!」

 

ファイズ「そもそも私は…こんな所で、止まってられないのよ!」

 

ファイズ「迷ってるうちに誰かの夢が消えてなくなるのなら…例え戦うことが罪だとしても、私はその罪を背負う!」

 

ファイズ「だから、私達は人の夢を奪うあなた達と戦う…スクールアイドルとして!『μ's』として!!」

 

響鬼「ウチは…この世界や皆の夢を守りたい!」

 

響鬼「その為に世界を蝕ませようとするあなた達をここで止める…『μ's』の皆で、この世界を守る!」

 

キバ「みんなで手を取り合えば…この世界はもっと良くなるはずだって私は信じてる!」

 

キバ「だって私達は…スクールアイドル『μ's』だから!」

 

戦闘員「フン、貴様らスクールアイドルが『仮面ライダー』になった分際で…生意気な!」

 

クウガ「言っておくけど…私達はただのスクールアイドルなんかじゃないわ」

 

戦闘員「何だと!?」

 

クウガ「私達は大銀河宇宙ナンバーワンスクールアイドル『μ's』よ…皆の笑顔を守るためなら、私は皆の笑顔を奪おうとするアンタ達と戦う!」

 

カブト「そうよ、例え『仮面ライダー』の力が無くても…」

 

アギト「私達は大ショッカーなんかに負けない!…たぁーっ!!」ダッ

 

?「ちょっと待ったーっ!」

 

μ's「!?」クルッ

 

ヒデコ「…」

 

フミコ「…」

 

ミカ「…」

 

アギト「み…みんな!」

 

ヒデコ「ちょっと、皆…なーにやってんの!」

 

電王『えっ…ええっ?』

 

フミコ「そうよ!あなた達、こんな所で何しようとしてるの?」

 

ミカ「ディケイド達がすぐ近くで戦ってるんでしょ…忘れたの!?」

 

ブレイド「いや、それは…」

 

ヒデコ「だったら尚更、こんな戦闘員に体力使っちゃダメでしょ…さっ、行った行った!」ススッ

 

アギト「でも私達、今は『仮面ライダー』だし…」

 

ヒデコ「だから余計ダメなの!」ズイッ

 

アギト「えっ…!?」

 

ヒデコ「だって…穂乃果達はこの世界や音ノ木坂を守る為に、今まで戦ってきてくれたんでしょ?」

 

フミコ「だから、次は私達が助ける番!」

 

ミカ「私達も協力したいから!」

 

ヒデコ「そう、私達だけじゃない…みんなもだよ!」スッ

 

μ's「…!」

 

エクシードギルス「安心して、穂乃果さん…私は、不死身よ!」

 

穂乃果「マナちゃん!」

 

『Hyper Cast Off…Change Hyper Stag Beetle』

 

ハイパーガタック「絵里、やっぱり僕は僕にしかなれない…でも、これが僕なんだ!」

 

絵里「!…ヒヨリ」

 

『Absorb Queen…Fusion Jack』

 

ギャレン・ジャックフォーム「大丈夫よ、園田さん…彼らは、私の手で倒す!」

 

海未「サヨコさん…!」

 

ビュウゥゥゥ…

 

『サバイブ』

 

ナイトサバイブ「凛、生きて夢を叶えなさい…私はそれを望んでいる」

 

龍騎「ユイちゃん!」

 

ホースオルフェノク激情態「さて、この空を守るのは誰なんでしょうか? …なぁ、真姫?」

 

ファイズ「…ユカ」

 

『ラ・イ・ジ・ン・グ』

 

ライジングイクサ「花陽ちゃんの為なら、私は戦士として戦うわ…イクサ、爆現っ!」

 

パールシェルファンガイア(青)「花陽を闇に包もうとするあなた達に、夜が来る…!」

 

キバ「メグミちゃん…ミオちゃん!」

 

サキ「…彼女達だけじゃないわよ」

 

響鬼「あっ、あだっち!」

 

マコ「実はユカちゃん達と同じように、真姫ちゃん達を助けたいと思っている人達がいたの…私達がいる世界とは別の世界で」

 

ファイズ「助けたい人…?」

 

シオリ「それは…今の私達の世界には、いない人達」

 

ブレイド「いない人達?…まさか!」ハッ

 

『Evolution』

 

ワイルドカリス「彼女達に…近付かないで!」

 

ブレイド「!…アマネ」

 

『Standing By…Complete』

 

オーガ「夢を奪おうとする、あなた達大ショッカーの…罪は重い!」

 

ファイズ「サヤ…!」

 

長髪の男「…」

 

響鬼「校長…先生?」

 

長髪の男「…大丈夫ですか、お師匠様?」

 

響鬼「えっ…お、お師匠?」

 

サキ「『キリュウ アスム』…自称あなたの弟子、だそうよ?」

 

アスム変身体「自称ではありません…れっきとした、あなたの弟子です」

 

響鬼「えっと…ちょっと待ってください、理解が追いつかないです」

 

アギト「あの希ちゃんが標準語になってる…!」

 

カブト「あまりの出来事に追いついていけないのね…無理もないわ」

 

シズカ「まだまだいるよ!」

 

キバ「へっ…そうなの?」

 

ママ-!

 

キバ「!」クルッ

 

?「ママ~!」ギュッ

 

キバ「ピャア!?」

 

?「私だよ、ママ…会いたかった」

 

キバ「私と同じキバ!?…って、ママ?」

 

?「ハルナだよ!晴れの菜っぱと書いてハ・ル・ナ…ママとは違うでしょ?」

 

キバ「ハルナって…だ、誰なのぉ!?」

 

シズカ「実はその子ね、もう一つの『キバの世界』から来た新しいキバで…花陽ちゃんの子どもなんだって」

 

キバ「…ほぇっ?」

 

七人「ええーっ!?」

 

キバ「えっ!ちょっ、えっえっ?えぇーっ!?」

 

NEWキバ「よろしくね、おばさん達!」

 

ファイズ「おっ…誰がおばさんよ!?」

 

響鬼「別に気にしなくてもええんやない?この子から見たら、確かにウチらはおばさんやし…」

 

ブレイド「良くありません!第一、私達はまだ高校生なのですよ!?」

 

カブト「そんな事よりも、花陽…相手は誰なの?」

 

龍騎「そうだよ、かよちん…凛達に内緒で誰と付き合ってたの!?」

 

キバ「えっ、いや…ええっ!?」

 

アギト「誰なの、花陽ちゃん…ねぇ!教えてよぉ~!?」ユサユサ

 

キバ「だ、だ、だ…ダレカタスケテー!」

 

キバットバットⅣ世「イェ~イ、祭りだ祭りだー!」

 

電王『あ、あはは…?』チラッ

 

クウガ「…」

 

電王『にこちゃん、どうかしたの?』

 

クウガ「別に…何でもないわよ」

 

電王『…?』

 

 

 

ディケイド「各世界からのライダーが、こんなに…!」

 

?「…ちょっと、私達を忘れないでくれる?」

 

ディエンド「!」バッ

 

ディケイド(ディエンドが振り返ると…そこには強化服を着用した一人の少女がいた)

 

ユキホ「…」

 

ディエンド「ユキホ!?」

 

キバーラ「あれ、何か…前に着てた強化服と違うね?」

 

ディケイド「それは『G3-X』…『G3』の強化型だ」

 

キバーラ「あっ、ホントだ…肩に『G3-X』って書いてある!」

 

ディエンド「何で、もう一人の私までここに…?」

 

ユキホ「実は急にいなくなったお姉ちゃんを探してたら、ツバサさん達に会って…『彼女を取り戻す為に力を貸してほしい』ってお願いされたの」

 

ディケイド「そうか…ん?」

 

ディエンド「どうしたの、ツカサ?」

 

ディケイド「そういえば…さっき、私達って言ってなかったか?」

 

?「そうだよ!」

 

キバーラ「へ?…あっ!」

 

?「えへへ…久しぶりだね、亜里沙!」

 

キバーラ「アリサ!」

 

アリサ「アリサもこの世界を助けに来たよ…お姉ちゃんやみんなを守れる、この力と一緒に!」パシッ

 

ディケイド(いつの間にか腹部にベルトを装着していたアリサは…空から飛んできた何かをその右手に掴んだ)

 

キバーラ「!?…それって」

 

ディエンド「黒いカブトゼクター…?」

 

ディケイド「カブトのプロトタイプである『ダークカブト』に変身できるダークカブトゼクターだ…アンタ、いつの間にそれを?」

 

アリサ「それが『いなくなったお姉ちゃんを助けたい』って思ってたら…ツバサさん達と一緒に、この黒いカブト虫さんが迎えに来てくれたの!」

 

ツバサ「彼女のいる『カブトの世界』を訪れた時…世界の狭間にいたダークカブトゼクターが一緒についてきたの」フフッ

 

キバーラ「そっか…じゃあ、アリサとその子は運命で繋がってたんだね!」

 

アリサ「うんっ!」

 

ユキホ「…じゃあ、そろそろ私達も行こうか?」

 

アリサ「そうだね…行こう、ユキホ!」

 

ユキホ「私は生きる為に戦う、生きる事を…素晴らしいと思いたい!」スチャ

 

アリサ「みんな、この世界を頼んだよ…変身っ!」

 

『Henshin』

 

ディケイド(すると、マスクを装着したユキホはG3-Xになり…アリサはダークカブトゼクターをベルトに着けてダークカブト・マスクドフォームに変身した)

 

ダークカブト「キャストオフ!」

 

『Cast Off…Change Beetle』

 

ダークカブト「…てぇ~いっ☆!」ダッ

 

ディケイド(それからすぐにキャストオフしてライダーフォームになったダークカブトは…ゼクトクナイガンを持って走り出した)

 

G3-X「あっ、ちょっと待ってよ!」ピッピッピッ

 

『カイジョシマス』

 

G3-X「…はぁっ!」ダッ

 

ディケイド(G3-Xは『GX-05 ケルベロス』のロックを解除し、ガトリングモードに変形させると…ダークカブトを追いかけながら戦闘員達に向かっていった)

 

キバーラ「二人とも…気をつけてねー!」

 

ディエンド「それにしても、まさか…もう一人の私達までこの世界に連れてくるなんて」

 

ツバサ「ふふっ…ごめんなさいね、驚かせちゃって」

 

あんじゅ「さ~てと、これで完全にフルハウス…最終決戦に相応しいステージになりそうね?」

 

英玲奈「ああ、そうだな…私達も行くぞ」

 

ツバサ「ええ…私達『A-RISE』の本気を、大ショッカーに見せつけてあげましょう!」

 

ディケイド(そう言ってベルトを出現させた『A-RISE』の三人は…スーツとマスクを着用する事で変身した)

 

1号(NEXT)「ふっ…!」

 

2号(NEXT)「うふふっ…」

 

V3(NEXT)「…はっ!」

 

ディケイド「…!」

 

 

 

ミカ「さあ…皆、ここは私達に任せて!」

 

アギト「でも…本当に大丈夫なの?」

 

フミコ「大丈夫、だから穂乃果達はディケイド達と一緒に世界を救う事だけ考えてて…ね?」

 

ミカ「そうそう、心配しないで!」

 

フミコ「ディケイド達の所に着くまでに、私達がサポートするから!」

 

ヒデコ「もちろん私達も…これを使って、ね!」スッ

 

ファイズ「!…それって、まさか!?」

 

ミカ「そう…『スマートバックル』と『変身一発』だよ!」

 

フミコ「私達はこれで…皆と一緒に戦うよ!」カシュッ!

 

ゴクゴク…

 

ミカ「ぷはっ…よし!」

 

ヒデコ「フミコ、ミカ…行くよ!」

 

ヒフミトリオ「変身!」

 

『Complete』

 

ライオトルーパー1「…」

 

アギト「へ…変身した!?」

 

ライオトルーパー2「さあ、走って!」

 

ライオトルーパー3「色々な世界の皆で作る道を!」

 

アギト「…」フフッ

 

八人「?」

 

アギト「…やっぱり、変だよ」

 

アギト「こんな大変なこと、ホントに…やっぱり、みんな変だよ!」

 

アギト「さあ…みんな、行こう!!」ダダッ

 

ライオトルーパー1「行っけー!」

 

ライオトルーパー3「全力で走れー!」

 

戦闘員「愚かな…全力で奴らを始末するぞ!」ダッ

 

『ファイナルベント』

 

グルグルグル…ドカッ!

 

戦闘員達「イーッ!?」

 

アギト「!」

 

オルタナティブ・ゼロ「答えはお前達の中で出ているんだろ?…だったら、早く行け!」

 

龍騎「その声…山田先生ニャー!?」

 

『チャージアンドアップ』

 

電王『!』バッ

 

デネヴ『最初に言っておくな?…この姿は、さすがのウチでもビックリやー!』

 

ゼロノス・ゼロフォーム「そして、最後に言っておくわ…私達は!」ダッ

 

ゼロノス&デネヴ「『かーなーり、強いっ!!』」ガガガッ!

 

電王『ユウコちゃん…!』

 

響鬼「ねぇ、今の人達…何となくウチらに声が似てなかった?」

 

ファイズ「そう?…別に似てないと思うけど」

 

響鬼「そうかなぁ…!」

 

羽撃鬼「音撃奏・旋風一閃!」ヒュウゥゥゥ!

 

煌鬼「音撃拍・軽佻訃爆!」バシィィィン!

 

西鬼「音撃響・偉羅射威…偉羅射威、偉羅射威!」チリ-ン!

 

凍鬼「音撃殴・一撃怒涛!」ゴォォォン!

 

響鬼「あの人達は…そっか、あだっちが集めてくれたんやね?」

 

ライオトルーパー3「まだまだ…もっと、もーっといるんだから!」

 

ライオトルーパー2「皆、準備は良い!?」

 

大勢の人々「おー!」

 

μ's「!」

 

ライオトルーパー1「ツバサさんからこの世界が危ないって聞いたから、皆に呼びかけたの…穂乃果達の為に集まってって」

 

ライオトルーパー1「そしたら…来たよ、全校生徒や全国のスクールアイドルが!」

 

ファイズ「私達の為にこんな大勢の人達が手伝ってくれるなんて…本当、イミわかんない!」フフッ

 

ライオトルーパー1「総員…変身せよっ!」

 

大勢の人々「変身!」

 

『Complete』

 

ライオトルーパー達「はぁぁぁっ!」ダッ

 

 

 

キバーラ「ハラショー!!」

 

ディエンド「あれは…!」

 

V3「ふふっ…見ての通りよ」

 

2号「あなた達が今まで、旅をしてきてくれたおかげで…」

 

1号「これだけの人数が集まった」

 

ディケイド「!…なるほどな、だいたいわかった」

 

V3「さあ、時は来たわ!」

 

2号「世界は違っても、私達は敵同士じゃない!」

 

1号「我々は一つ!」

 

ライダー達「今の私達は…《仮面ライダー》!」

 

 

 

μ's「はぁはぁ…!」ダダッ

 

ブゥゥゥン!

 

クウガ「!…今のは」クルッ

 

???「おらぁぁぁっ!」ドカッ!

 

戦闘員「イーッ!?」バタッ

 

クウガ「トライチェイサー2000?…!」

 

???「…」カポッ

 

クウガ「!!」

 

???「久しぶりだね、にこ…」

 

???「いや、今は…にこにーって呼んだ方が良いのかもな」

 

クウガ「マナミ…!」

 

マナミ「私も戦うよ…だから、早く行け!」

 

マナミ「スクールアイドルのお前自身が笑顔でなきゃ…世界中の人を笑顔に出来る訳無いだろ!?」

 

クウガ「!…何よそれ、命令のつもり?」

 

マナミ「ああ、命令だ…お前ならきっと出来る」ビシッ

 

クウガ「…マナミ」

 

アギト「にこちゃん…」

 

クウガ「分かってるわよ…行くわよ、みんな!」ダッ

 

八人「うん!」

 

マナミ「頼んだぞ、にこにー…変身!」

 

クウガ・アルティメットフォーム(ダークアイ)「…はっ!」ダッ

 

μ's「…!」ダダッ

 

エクシードギルス「頑張ってください!」

 

ハイパーガタック「足元、気を付けて!」

 

ギャレン・ジャックフォーム「辿り着けるわ!」

 

ナイトサバイブ「慌てないで!」

 

ホースオルフェノク激情態「こっちだ!」

 

ライジングイクサ「そのまま真っ直ぐ!」

 

パールシェルファンガイア(青)「頑張って…!」

 

ワイルドカリス「走って!」

 

オーガ「転ばないで!」

 

アスム変身体「この先、左です!」

 

NEWキバ「お~い…こっちだよー!」

 

ゼロノス・ゼロフォーム「早くしなさいよ…!」

 

G3-X「もう一息!」

 

ダークカブト「良い感じだよー!」

 

アギト「みんな…!」

 

カブト「…皆にお礼しなきゃね」

 

アギト「うん…みんな、本当にありがとう!」

 

アギト「私達、一生懸命頑張ります!」

 

アギト「今のこの気持ちを力に変えて…絶対、守ってみせるね!」

 

V3「…」フフッ

 

アギト「だって、私達がこの世界を守ろうとするのは…!」

 

カブト「学校が大好きで…」

 

ファイズ「音楽が大好きで…」

 

クウガ「アイドルが大好きで…」

 

龍騎「踊るのが大好きで…」

 

キバ「メンバーが大好きで…」

 

響鬼「この毎日が大好きで…」

 

ブレイド「頑張るのが大好きで…」

 

電王『歌うことが大好きで…』

 

アギト「『μ's』が…大好きだったから!」

 

μ's「だから、私達は…絶対に諦めない!」

 

 

 

ディケイド(『μ's』がそう言うと、ライドブッカーから一枚のカードが飛び出してきた)

 

ディケイド「…!」

 

キバーラ「どうしたの、ツカサ?」

 

ディケイド(それを掴んだオレはカードに九人のライダーの力が宿ったことを確認した)

 

ディエンド「このカードは…?」

 

ディケイド「これは…オレと『μ's』のもう一つの力だ」

 

アギト「みんな、お待たせ~!」

 

ディケイド「来たか…皆、力を借りるぞ!」

 

カブト「え?」

 

クウガ「どういう意味よ?」

 

ディケイド「すぐに分かる…とりあえず、縦一列に並んでくれ」

 

アギト「えっ?う、うん…みんな並んでー!」

 

カブト「…こんな感じで良いかしら?」

 

ディケイド「ああ…行くぞ」スッ

 

μ's「!」

 

クウガ「アンタ…まさか!?」

 

ディケイド「そのまさかだ」スタスタ

 

『ファイナルフォームライド…オールラ・ラ・ラ・ライダー!』

 

クウガ「ちょっと待ちなさいよ!?まだ、心の準備が…!」

 

アギト「ちょっとくすぐったいよ!」ポンッ

 

クウガ「にこぉ!?」

 

ディケイド(キバの前に立ったオレが一枚のカードをディケイドライバーに装填すると…並んでいた『μ's』が次々と前にいたメンバーの背中を押した)

 

龍騎「ちょっとくすぐったいニャ!」

 

ファイズ「ちょっとくすぐったいわよ?」

 

ブレイド「ちょっとくすぐったいですよ」

 

響鬼「ちょっとくすぐったいやん?」

 

カブト「ちょっとくすぐったいわよ!」

 

電王『ちょっとくすぐったいよ?』

 

キバ「ちょっとくすぐったいです!」

 

ディケイド「ちょっとくすぐったいぞ」ポンッ

 

ディケイド(九人のライダーは…それぞれの形態に変形した)

 

クウガゴウラム「痛たた…アンタね!何気にやってるけどけっこう痛いのよ、これ!?」

 

ディケイド「ことり、雪穂、亜里沙…まずはオレ達であのミサイル背負った戦闘員達を撃ち落とすぞ!」ブンッ

 

ディケイド(オレは二枚のカードをディエンドに投げて渡した)

 

ディエンド「!」パシッ

 

クウガゴウラム「無視するんじゃないわよ!」

 

ディエンド「撃ち落とすって…どうやって?」

 

デンオウモモタロス『こういう事だよ!』パシッ

 

ブレイドブレード「ふふっ…行きますよ、ことり!」

 

ディケイド(デンオウモモタロスは二人にお手本を見せるように…ブレイドブレードに変形したブレイドを持った)

 

キバーラ「あっ…そっか!」パシッ

 

キバアロー「一緒に頑張ろうね、亜里沙ちゃん!」

 

ディエンド「なるほど!」パシッ

 

ファイズブラスター「雪穂…やるからには、ちゃんと当てなさいよ?」

 

ディケイド「…!」スッ

 

リュウキドラグレッダー「みんなで…行っくニャー!」

 

『ファイナルアタックライド…』

 

ディケイド(オレはディエンドと同時に二枚ずつのカードを…それぞれの変身アイテムに入れた)

 

『リ・リ・リ・リュウキ!』

『ブ・ブ・ブ・ブレイド!』

『ファ・ファ・ファ・ファイズ!』

『キ・キ・キ・キバ!』

 

ディケイド「はっ…はぁーっ!」

 

デンオウモモタロス『え~いっ!』

 

ディエンド「…ふっ!」

 

キバーラ「やぁっ!」

 

『キバッていくぜー!』

 

ディケイド(オレ達はそれぞれの技で…『鬼の戦艦』から射出された戦闘員達を撃墜させていく)

 

キバーラ「やったの、かな…?」

 

ディケイド「いや…まだだ!」

 

ディエンド「え?…うわぁっ!?」

 

ディケイド(それでも敵の攻撃は止まず…オレ達は吹き飛ばされてしまった)

 

ディケイド「ぐっ…皆、大丈夫か!?」

 

電王『う…うん!』

 

龍騎「い、痛いニャ~!」

 

キバ「!…元の姿に戻ってる?」

 

ファイズ「どうして!?イミわかんない!」

 

ブレイド「おそらく、さっき受けた攻撃のせいでしょうね…」

 

キバーラ「あれ…お姉ちゃんたちは?」キョロキョロ

 

ミンナー!

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(そこには変形したままのアギト、カブト、響鬼、クウガがいた)

 

ディエンド「お姉ちゃん!」

 

アギトトルネイダー「さあ、二人とも…私に乗って!」

 

ディエンド「えっ…何をするつもりなの?」

 

ヒビキアカネタカ「ふふっ、もちろん…決まってるやん?」

 

ゼクターカブト「『鬼の戦艦』の中に入って、虎太郎くんを助けるのよ!」

 

キバーラ「そっか…さすがお姉ちゃん、かしこい!」

 

ディケイド-!

 

ディケイド「?」クルッ

 

ディケイド(オレが振り返ると、そこには…NEWデンライナーの扉から手を振るこころとここあがいた)

 

クウガゴウラム「こころ、ここあ!」

 

こころ「あっ…おねえさまがゴウラムになってます、ここあ!」

 

ここあ「ホントだ…スッゴーい!」

 

クウガゴウラム「いや、別になりたくてなったわけじゃないんだけど…」

 

ディケイド「アンタ達、それは…?」

 

ここあ「じつはね…わたしたちがこうたろうとテディにおねがいしたんだよ!」

 

NEW電王「…」フゥ

 

ディケイド「!…アンタも手伝ってくれるのか?」

 

NEW電王「まあね、何かヤバそうだし…それにあの船の事は俺達もよく知ってるから」

 

NEW電王「…良いだろ、テディ?」

 

テディ『ああ、問題ない』

 

NEW電王「まあ…召喚された身だから、いつまでこの世界にいられるのか分かんないけど」

 

こころ「さあ、この『NEWデンライナー』で…『鬼の戦艦』のなかにいるこたろうをたすけだしてください!」

 

ここあ「たのんだよ、ディケイド!」

 

ディケイド「ああ…ありがとな、お前ら」

 

ココロ-!ココア-!

 

ディケイド(すると…こころとここあを呼びながら、誰かがオレ達の所までやってきた)

 

こころ「このこえは…!」

 

ここあ「ママ!」

 

にこの母「…」

 

ディケイド「!」

 

にこの母「ん?…あら、あなたは!」

 

ディケイド「!?…まさか、オレの事を覚えているのか?」

 

にこの母「もちろん…『ディケイド』と『にっこにっこにー♡』の母、ですから!」

 

ディケイド「!!」

 

クウガゴウラム「ママ…」

 

にこの母「うっふふふ…さあ、この子達は私に任せて行きなさい!」

 

ディケイド「…母さん」

 

クウガゴウラム「ふふっ…全く、しょーがないわねー!」

 

クウガゴウラム「こうなったら私も全力でサポートするわ…行くわよ、ツカサ!」

 

ディケイド「…ああ!」

 

ミンナ-!

 

ディエンド「えっ?…お母さん!?」

 

穂乃果の母「頑張りなさいよー!」ブンブン

 

ことりの母「この学校と世界の未来を…あなた達に託します!」

 

真姫の母「皆のお母さん達も集めて、あなた達を全力で応援しちゃうからね~!」

 

穂乃果の父「…」ビシッ

 

アギトトルネイダー「お父さんまで…何か、照れくさいね」エヘヘ

 

ディエンド「!…ふふっ、そうだね」

 

キバーラ「雪穂、穂乃果さん…行きましょう!」

 

ディエンド「うん!」

 

ディケイド(オレはNEWデンライナー、ディエンドとキバーラはアギトトルネイダーに乗って…『鬼の戦艦』へと向かった)

 

ディケイド(周りを飛行するクウガゴウラム、ゼクターカブト、ヒビキアカネタカが特攻をかける戦闘員達を撃墜させてくれたおかげで…戦艦との距離は一気に近付いた)

 

テディ『幸太郎、私達も攻撃だ!』

 

NEW電王「ああ!」

 

ディケイド(車内でマシンデンバードに乗るNEW電王も…NEWデンライナーの装備を使って、戦艦から発射される戦闘員達を撃ち落としていく)

 

ディケイド(そして…NEWデンライナーとアギトトルネイダーは『鬼の戦艦』より高い所まで上昇した)

 

アギトトルネイダー「着いた…雪穂も亜里沙ちゃんも、覚悟はできた!?」

 

キバーラ「へっ、覚悟?」

 

ディエンド「覚悟って…!」ハッ

 

ディエンド「ちょっと待ってよ、お姉ちゃん!さすがにここからじゃ遠い…って!?」

 

アギトトルネイダー「よ~し…いっけぇぇぇ!」ブンッ

 

キバーラ「わぁっ!?」

 

ディエンド「そ、そんな無茶なぁ~!!」

 

ヒューン…ドーン!

 

ディケイド(突然、アギトトルネイダーに投げ出されてしまったディエンドとキバーラは…『鬼の戦艦』の中へと落ちていった)

 

ゼクターカブト「ちょっと何してるの、穂乃果!?」

 

アギトトルネイダー「あれ…ダメだった?」

 

クウガゴウラム「虎太郎のいる操舵室に向かわせるつもりだったのに、いきなり放り出すバカがどこにいるのよ!?」

 

アギトトルネイダー「あっ!?ご、ごめ~ん!!」

 

ディケイド「はぁ…余計な事をしてくれたもんだな、アホノカ」

 

アギトトルネイダー「ア、アホノカ!?」

 

ヒビキアカネタカ「まあまあ、二人とも無事に船の中に入れたんやし…ええんやない?」

 

ディケイド「全く、仕方ないな…とりあえずオレは先に操舵室のある位置に降りて、もう一人のオレの救出に向かう」

 

ディケイド「二人と合流するのはそれからだ…引き続き操舵室のある位置に接近するまで、援護を頼む!」

 

ゼクターカブト「分かったわ!」

 

ディケイド(アギトトルネイダー達、そしてキングライナーの援護を受けながら、NEWデンライナーは操舵室のある位置までやってきた)

 

NEW電王「見つけた、あそこだ!」

 

ディケイド「よし…行ってくる!」

 

アギトトルネイダー「気をつけてね、ツカサくん!」

 

クウガゴウラム「絶対に虎太郎を助け出しなさいよ!」

 

ディケイド「ああ、当然だ…はっ!」バッ

 

ディケイド(NEWデンライナーから飛び降りたオレは…『鬼の戦艦』の操舵室へと入っていった)

 

 

 

ディケイド「もう一人のオレがいるのは…この奥か」スタスタ

 

オラオラー!

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(操舵室の奥に入ると…もう一人のオレが変身したミニ電王がゴルドラ、シルバラと戦っていた)

 

ゴルドラ「…フンッ!」

 

シルバラ「オラァ!」

 

ディケイド(ゴルドラとシルバラはそれぞれ持っていた錫杖と金棒をクロスさせてエネルギーを貯めると…ミニ電王に光弾をぶつけた)

 

ミニ電王「いてっ!?」バチバチッ

 

シルバラ「ハッ、お前…潰し甲斐が無さ過ぎるな!」

 

ミニ電王「うるせぇ!俺がテメーらみてぇな鬼なんかに負けるかよ!?」

 

ゴルドラ「負けた方が鬼なのだ…それが歴史だ!」

 

シルバラ「そう、お前はもう…終わりだ」

 

ゴルドラ「そして俺達『大ショッカー』の伝説は…ここから始まる!」

 

ディケイド「…さて、そいつはどうだろうな?」

 

シルバラ「!…テメーは、大首領!?」

 

ゴルドラ「いや、今はディケイドと呼ぶべきだろうな…何をしに来た?」

 

ディケイド「手伝いに来たんだ…桃太郎さんの鬼退治に、な」

 

ミニ電王「あぁ!?誰が桃太郎だ!」

 

ディケイド「まあ、そう言うな…後できびだんごやるから」

 

ミニ電王「わーい!きびだんごだー!嬉しいな~!…って、何でオメーがきびだんごやる側なんだよ!?」

 

ディケイド「主従関係は大事だろ?」

 

ミニ電王「…どういう意味だ?」

 

ディケイド「アンタはオレより下って事だ」

 

ミニ電王「何だと…もういっぺん言ってみろ!!」

 

シルバラ「テメーら、さっきからくだらねぇ漫才ばっかりしやがって…潰すぞ!」ダッ

 

バシュッ!

 

シルバラ「っ!?」

 

ディケイド(その時…音ノ木坂の制服を着た少女が、シルバラに向かって紫色のゲームパッドのような何かから光線を発射した)

 

?「…」フフッ

 

ディケイド(青いリボンに赤茶色の髪をなびかせる少女は…オレ達に向かって、何故か優しく微笑んでいた)

 

ゴルドラ「どういうつもりだ?…『大神官ビシュム』」

 

?「だから、さっきも言ったでしょ…今の私の名前は『サヨ』だって」

 

シルバラ「んな事どうでもいいんだよ…まさかテメー、裏切るつもりか!?」

 

サヨ「私は元からあなた達なんかの味方になったつもりはないわ…ディケイド、あなたにこれを」ブンッ

 

ディケイド「?…!!」パシッ

 

ディケイド(オレはサヨと呼ばれる少女から…マゼンタカラーのタッチパネル式アイテムを受け取った)

 

ディケイド(アイテムの画面には…クウガからディケイド、十人のライダーズクレストが刻まれていた)

 

ディケイド「これは…『ケータッチ』?」

 

サヨ「それは、今まで旅をしてきた…あなたへのご褒美よ」

 

ディケイド「…ご褒美?」

 

サヨ「ええ…今のあなたになら、それを使いこなせるはずよ」

 

サヨ「その代わりといってはなんだけど…これから始まる『私達』の計画の邪魔だけは、絶対にしないでね?」

 

サヨ「もし邪魔したら…あなたの命は、無い」

 

ディケイド「…!」

 

サヨ「うふふっ♡…じゃあ、またね?」スタスタ

 

シルバラ「おい、テメー…待ちやがれ!」ダッ

 

ディケイド(サヨはオーロラを出現させると…一緒に置かれていたピアノと共に、どこかの世界へと移動していってしまった)

 

シルバラ「チッ…消えやがった!」

 

ディケイド「…?」

 

ゴルドラ「ハァッ!」ガガッ!

 

ディケイド「!…うわっ!?」ゴロゴロ

 

ディケイド(ゴルドラが放った鉄のつぶてによって…オレは吹き飛ばされてしまった)

 

ミニ電王「おい、大丈夫かよ!?」

 

ディケイド「ああ…このくらい問題ない」

 

ミニ電王「ヤロー、チマチマしたもん投げやがって…行くぜ行くぜ行くぜぇー!」ダッ

 

ゴルドラ「…フン」

 

ディケイド「あっ、おい…待て!」

 

シルバラ「オラッ!」ブンッ

 

ディケイド(ミニ電王を追いかけようとしたオレだったが…不意討ちを仕掛けようとしたシルバラが、オレに向かって金棒を振り回してきた)

 

ディケイド「っ!」サッ

 

シルバラ「ハハハ…よく避けたな、お前?」

 

ディケイド「お前に付き合ってる暇は無い…そこを通せ!」

 

シルバラ「フン…や~だねっ!」ブンッ

 

ディケイド「…!」

 

 

 

ディエンド(お姉ちゃんのドジのせいで、私は…『鬼の戦艦』の中で気を失っていた)

 

キバーラ「雪穂…しっかりして、雪穂!」ユサユサ

 

ディエンド「ん…はっ!?」ガバッ

 

キバーラ「大丈夫?」

 

ディエンド「痛ったぁ…もう、お姉ちゃんってば本当におっちょこちょいなんだから!」

 

キバーラ「あはは…ところで、ここは?」キョロキョロ

 

ディエンド(広い部屋の中にいた私達の周りには…難しい装置がたくさん置かれていた)

 

ディエンド「『鬼の戦艦』の中っていうのは確かなんだろうけど…多分、操舵室じゃないと思う」

 

キバーラ「そうだよね…早く操舵室に向かわないと!」ダッ

 

ディエンド「!…待って、亜里沙!」

 

キバーラ「えっ?」ピタッ

 

ディエンド「今…何か、奥の方から物音が聞こえなかった?」

 

キバーラ「!…ホントだ」

 

ディエンド「どうしようか…?」

 

キバーラ「…行ってみよう!」ダッ

 

ディエンド「あっ…ちょっと、亜里沙!?」ダッ

 

 

 

ディケイド(オレは次々と繰り出されるシルバラの攻撃を避けるのが精一杯で…ゴルドラと戦うミニ電王になかなか近付けないでいた)

 

ディケイド「くっ、何か手は…!」ハッ

 

ディケイド「そうだ…これを!」スッ

 

ディケイド(ケータッチを出したオレは…クウガからキバまでライダーズクレストを順番にタッチしていった)

 

『クウガ』

 

『アギト』

 

『リュウキ』

 

『ファイズ』

 

『ブレイド』

 

『ヒビキ』

 

『カブト』

 

『デンオウ』

 

『キバ』

 

シルバラ「させるかよ!」ブンッ

 

ディケイド「…ふっ!」ササッ

 

シルバラ「何!?」

 

ディケイド(シルバラの攻撃を避けたオレは最後にディケイドのライダーズクレストをタッチすると…バックルを右腰に移すと同時に、ケータッチをベルトに装着させた)

 

『ファイナルカメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(するとオレの肩から胸にかけて横一列に、クウガからキバまでのカメンライドカード九枚が張り付けられた)

 

ディケイド「…」

 

ディケイド(やがて頭にも一枚のカメンライドカードが張り付き…オレはディケイド・コンプリートフォームへと変身した)

 

シルバラ「なっ…テメー、何だそのダセー姿は!?」

 

ディケイド「ダサい、か…確かに最初はそうだろうな」

 

ディケイド「だが…見慣れれば、何て事はない!」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!」バッ

 

ディケイド(オレは右腰のバックルを押して飛び上がると…オレとシルバラの間に、リング状に変化した九枚のカード型エネルギーが二つ出現した)

 

シルバラ「!?」

 

ディケイド「はぁーっ!!」

 

ディケイド(二つのリングの間に入ったオレは強力なエネルギーを纏い…シルバラに向かってキックを放った)

 

シルバラ「グッ…何だ、この力は!?」

 

ディケイド「これはDCDU(ディケイドアンリミテッド)…オレと『仮面ライダー』達の技だ!!」

 

シルバラ「グアァァァッ!?」

 

ディケイド(オレが着地すると…同時に上空から更に強力なエネルギーがシルバラを包み込んだ)

 

ゴルドラ「!?…ミミヒコ!」

 

ミニ電王「よそ見してんじゃねえ!」ザシュッ

 

ゴルドラ「ガハッ…!」フラッ

 

ミニ電王「…へへっ」スッ

 

『フルチャージ』

 

ミニ電王「行くぜ…俺の超必殺技!」ダッ

 

ゴルドラ「!…そ、その技は!?」

 

ミニ電王「だぁっ!」ガッ!…ゴッ!

 

ゴルドラ「グフッ!?」

 

ミニ電王「おりゃあぁぁぁっ!」ドカッ!

 

ゴルドラ「グワァァァァ!!」

 

ディケイド(ミニ電王はゴルドラに向かって二度、回し蹴りを放った直後…飛び回し蹴りのデンライダーキックを決めた)

 

ミニ電王「…ふっ、決まったぜ」

 

シルバラ「に、兄ちゃん…!」

 

ゴルドラ「ミミヒコ…どうやら、我々はもう限界のようだ」

 

シルバラ「そっか…テメーら、あばよ!」

 

ゴルドラ「全ては、夢と消えるか…『大ショッカー』に栄光あれぇぇぇ!」

 

ディケイド(オレ達の技を受けたゴルドラとシルバラは倒れ…そのまま爆発した)

 

ミニ電王「ふぅ…ん?何だ、そのカッコ」

 

ディケイド「…」

 

ミニ電王「って、無視かよ…!」

 

ディケイド(ミニ電王がツッコミを入れていると、空からNEW電王と元の姿に戻ったテディがやってきた)

 

NEW電王「よっと…あれ、もう終わったの?」

 

ディケイド「ああ、こいつがいたおかげでな…」

 

ミニ電王「?…おう、幸太郎に天丼じゃねえか!」

 

NEW電王「えっ!モモタロス!?」

 

テディ「どうしてここに…!」

 

ミニ電王「へへっ…よっこらせっと!」

 

ディケイド(ミニ電王が変身を解くと…赤い鬼のイマジン『モモタロス』が虎太郎の身体から分離し、目の前に現れた)

 

モモタロス「実は『ディケイド』のヤツから『プリンが欲しいなら協力しろ』って頼まれてな…それにしても、スッキリしたぜ!」

 

NEW電王「…やっぱり、そんな事だろうと思った」ハァ

 

モモタロス「あぁ?何だよ、それ…」

 

テディ「気にするな」

 

モモタロス「気にするなって言われたら余計に気になるだろうが、天丼!」

 

テディ「天丼じゃない…テディだ」

 

モモタロス「天丼!」

 

テディ「テディだ!」

 

ディケイド(モモタロスとテディがそんなやりとりをしている間に…オレはついに、もう一人のオレと出逢った)

 

虎太郎「…」

 

ディケイド「…アンタが、もう一人のオレか」

 

虎太郎「…これー」スッ

 

ディケイド「!」

 

ディケイド(虎太郎は…オレに九色に光る宝石が埋め込まれた指輪を渡してきた)

 

ディケイド「オレにくれるのか?」

 

虎太郎「…」コクリ

 

ディケイド「そうか…ありがとな」ナデナデ

 

虎太郎「…!」フフッ

 

 

 

ディエンド(私達が物陰に隠れて、部屋の奥の方を覗くと…そこには何かを探すように棚を物色している男の人がいた)

 

?「…どうやら、もうこの世界には僕が探しているお宝は無いみたいだね」

 

?「この箱の中の指輪は…一つだけ足りないみたいだけど、まあ良いかな」

 

キバーラ「…誰だろう、あの人?」ボソッ

 

ディエンド「さあ…見た感じ、大ショッカーの人ではなさそうだけど」ボソッ

 

?「さてと、君達がそこにいるのは分かっているよ…そんな所でひそひそ話をしないで早く出てきたまえ」スチャ

 

ディエンド「!?」

 

ディエンド(私達に気付いていた男の人は…私が持っているディエンドライバーと全く同じ銃を隠れていた私達に向けた)

 

キバーラ「な…何で、あなたが雪穂と同じディエンドライバーを!?」

 

?「君達が高坂雪穂と絢瀬亜里沙か…君達に興味は無いが、この世界の君達が『仮面ライダー』に変身している事には興味がある」

 

ディエンド「!…あなた、何者なんですか?」

 

?「…僕は海東大樹」

 

海東「『彼』を追っている、通りすがりの仮面ライダーさ…覚えておきたまえ」フフッ

 

 

 

NEW電王「さて、じゃあ俺は…この『鬼の戦艦』をどこか安全な場所に降ろそうかな」スタスタ

 

ディケイド(NEW電王は操舵室の奥にある舵の方へと向かった)

 

NEW電王「えっと、確かここに『切り札』の石が…!?」

 

ディケイド「…どうした?」

 

NEW電王「無い…『鬼の戦艦』を動かす『切り札』の石が、どこにも無い!」

 

ディケイド「!?」

 

テディ「まさか、そんなはずは…!」

 

ゴゴゴ…

 

ディケイド(その時、オレ達は…『鬼の戦艦』が少しずつ下降している事に気が付いた)

 

モモタロス「おいおい…マズいんじゃねえか、これ!?」

 

NEW電王「こうなったら、早く脱出しないと…!」

 

テディ「しかし…あの子達はどうする!?」

 

ディケイド「二人ならオレが何とかして探し出す…アンタ達は先にもう一人のオレと脱出してくれ!」ダッ

 

NEW電王「あっ、おい!?」

 

ディケイド(オレは雪穂と亜里沙を探す為に…操舵室を飛び出して行った)

 

虎太郎「…がんばれー」フリフリ

 

 

 

ブレイド「!?…『鬼の戦艦』が」

 

龍騎「段々、落っこちていってるニャ!」

 

キバ「あのままだと、オトノキにぶつかっちゃう…!」

 

ファイズ「どうなってるのよ、一体!?」

 

電王『…あれ?』

 

ブレイド「どうかしましたか、ことり?」

 

電王『今、誰かが船からオトノキに飛び降りたのが見えたような…』

 

ファイズ「飛び降りたって…あの高さから?」

 

電王『うん、気のせいだったのかな…?』

 

ブレイド「…ひとまず、私達でオトノキに行って確認してみましょう」

 

キバ「!…うん、そうだね」

 

龍騎「よーし、みんなで…行っくニャ~!」ダッ

 

 

 

ディエンド「…!」

 

ディエンド(私達は…『海東大樹』という男の人と話していた)

 

キバーラ「『彼』って、ツカサのこと…?」

 

海東「そういえば君達の仲間も『彼』と同じ名前だったね…でも、僕が追っているのは君達の知っている『ツカサ』とは違う『士』の方さ」

 

キバーラ「!…もしかして、海東さんって」

 

海東「…?」

 

キバーラ「…その人のことが好きなの?」

 

ガガガッ!

 

ディエンド(彼は持っていたディエンドライバーで…私達の足もとを撃ってきた)

 

ディエンド「ひいっ!」

 

キバーラ「うわぁっ!?」

 

海東「…やめてくれないか、僕をそういう風に仕立て上げるのは」

 

キバーラ「で、でも…」

 

ディエンド「わー!?やめて、もう何も言わなくていいから!」スッ

 

ディエンド(私はキバーラの口を塞いだ)

 

キバーラ「~!」モゴモゴ

 

海東「全く緊張感が無いね、君達は…!」

 

ゴゴゴ…

 

ディエンド「!?」パッ

 

キバーラ「ぷはっ…な、何?」

 

海東「沈むのさ、この『鬼の戦艦』は…僕が操舵室から船を動かす『切り札』の石というお宝をいただいてきたからね」スッ

 

ディエンド「え…ええっ!?」

 

キバーラ「ダメだよ、そんなことしたら!」

 

海東「君の説教なら聞くつもりは無いよ…僕の行き先は、僕だけが決めるからね」

 

キバーラ「違うよ…変身していないあなたが、無事じゃ済まないかもしれないんだよ!?」

 

海東「!」

 

キバーラ「ここから一緒に脱出しよう…私、手伝うから!」

 

ディエンド「亜里沙…!」

 

海東「…」

 

キバーラ「だから、私たちと…!」スタスタ

 

海東「…」スチャ

 

ディエンド(しかし、彼は…キバーラに向かってディエンドライバーの銃口を向けた)

 

キバーラ「!」

 

ディエンド「!?…亜里沙!」

 

海東「…甘いね、君達は」

 

 

 

テディ「どうする、幸太郎?」

 

NEW電王「仕方ない…ひとまず、この子を連れてここから飛び降りるぞ!」

 

モモタロス「あぁ!?おい…マジかよ!」

 

NEW電王「大マジ…さあ、俺に捕まって!」

 

虎太郎「!」ガシッ

 

NEW電王「はぁっ!」バッ

 

テディ「…はっ!」バッ

 

モモタロス「チクショー…こうなったら、覚悟決めるしかねぇ!」バッ

 

 

 

ディケイド「雪穂、亜里沙…いたら返事しろ!」ダダッ

 

ディケイド(オレはその時…ディエンドとキバーラを探して『鬼の戦艦』の中を走っていた)

 

ディケイド「どこにいるんだ、あいつら…ん?」

 

ディケイド(ふと目をやると、そこには…玉座の間へと繋がる扉があった)

 

ディケイド「…一応、確認してみるか」

 

ギィ…

 

ディケイド「!?」

 

ディケイド(中に入ると…あちこちで大ショッカーの戦闘員達がミイラ化し、横たわっていた)

 

ディケイド「これは…?」

 

戦闘員「…あ」

 

ディケイド(オレに気付いたのか、戦闘員の中の一人が掠れた声を出した)

 

ディケイド「!…おい、何があったんだ?」

 

戦闘員「き、吸血…鬼」

 

ディケイド「…吸血鬼?」

 

戦闘員「く、クローン…なる、た…」ガクッ

 

ディケイド「!!」

 

サァァ…

 

ディケイド(戦闘員達の身体が一斉に崩れ落ちると…部屋の空気が腐敗臭で充満した)

 

ディケイド「…っ!」ダダッ

 

ディケイド(急いで玉座の間を出たオレは再び、ディエンドとキバーラを探しに向かった)

 

ディケイド「無事でいてくれよ…雪穂、亜里沙!」

 

 

 

アギトトルネイダー「あっ…ねぇ、あそこから飛び降りてる人達がいるよ!」

 

クウガゴウラム「虎太郎がいるわ…無事だったのね!」

 

ゼクターカブト「でも、ツカサ達がいないわ…」

 

ヒビキアカネタカ「多分…雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんを探しに行ってるんやろうね」

 

アギトトルネイダー「あれ?何か…見覚えのある赤い鬼がいるような?」

 

ヒビキアカネタカ「…!」ゾクッ

 

クウガゴウラム「?…どうしたのよ、希」

 

ヒビキアカネタカ「何か今、オトノキの方から嫌な気配が…!?」

 

ヒビキアカネタカ「危ない!」ササッ

 

クウガゴウラム「!?」

 

バシュッ!

 

ヒビキアカネタカ「きゃあっ!」バチバチッ

 

ゼクターカブト「!?」

 

クウガゴウラム「なっ…希!」

 

アギトトルネイダー「希ちゃん!?」

 

ヒビキアカネタカ「良かった…皆が、無事…で」フラッ

 

アギトトルネイダー「…!」

 

ゼクターカブト「希…希ぃぃぃぃっ!!」

 

 

 

モモタロス「あ~れ~!?」ヒュゥゥゥン…

 

NEW電王「よっと」ストッ

 

テディ「ふっ…!」スタッ

 

モモタロス「あいてっ!?」ドーン!

 

テディ「…大丈夫か、モモタロス?」

 

モモタロス「痛て…大丈夫なワケねぇだろ!」

 

NEW電王「大丈夫みたいだね…ほら、オトノキに着いたよ」

 

虎太郎「せいもんー…!」

 

モモタロス「あぁ?…!」スゥゥ…

 

テディ「私達の身体が…」

 

幸太郎「って事は、どうやら…俺達が元の世界に帰るカウントダウンが始まったみたいだな」

 

虎太郎「…ありがとー」

 

幸太郎「いや…お礼を言うのは、俺の方だよ」

 

虎太郎「?」

 

幸太郎「あんた達のおかげで、俺達はこの世界に来られた…ライブは見られなかったけどね」

 

幸太郎「でも、めちゃくちゃツいてる…『今が最高』だよ」

 

虎太郎「…?」キョトン

 

テディ「私が説明しよう、実は幸太郎は『μ's』の大ファn…」

 

幸太郎「テディ?」ジロッ

 

テディ「!…何でもない」

 

幸太郎「ったく…やめろよな、もう」

 

テディ「すまない…」

 

虎太郎「?」

 

幸太郎「…まあ、とにかくこの世界にいるあんた達に会えて良かったよ」

 

幸太郎「あんた達の世界にも、未来に繋がる新しい時間が始まってるんだって…分かったからさ」フフッ

 

虎太郎「…!」

 

幸太郎「じゃあ、俺達はこれで…あいつや『μ's』によろしく」

 

テディ「では…失礼します」ペコリ

 

モモタロス「へへっ、じゃあな…虎太郎!」

 

虎太郎「ばいばーい…」フリフリ

 

モモタロス「もう変な事に巻き込まれるんじゃねえぞ…こう見えて俺達は、超忙しいんだ!」スゥゥゥゥ…

 

虎太郎「…いっちゃったー」

 

ドーン!

 

虎太郎「!?」クルッ

 

虎太郎「…!」ダッ

 

 

 

クウガゴウラム「何よ、今のビームは!?」

 

アギトトルネイダー「オトノキの方から飛んできてたような…!?」

 

アギトトルネイダー「にこちゃん、絵里ちゃん…あそこ!」

 

ゼクターカブト「…!?」

 

クウガゴウラム「!…そんな、嘘でしょ?」

 

アギトトルネイダー「このままじゃ、みんなが…助けに行こう!」

 

クウガゴウラム「ちょっと!ツカサ達はどうするのよ!?」

 

アギトトルネイダー「ツカサくん達なら大丈夫だよ…だって私、そう思いたいんだもん!」

 

クウガゴウラム「…!」

 

ゼクターカブト「私も穂乃果と同じ気持ちよ…だから行きましょう、にこ!」

 

クウガゴウラム「はぁ…全く、しょーがないわねー!」

 

 

 

ディエンド(彼は…キバーラに向かって、銃口を突きつけていた)

 

キバーラ「…」

 

海東「…なんてね、冗談さ」スッ

 

ディエンド「えっ…?」

 

ディエンド(そう言って彼はディエンドライバーを降ろすと…何かが入った箱をキバーラに渡そうとしていた)

 

ディエンド「よ、良かった…ビックリした」ハァ

 

海東「さあ…早く受け取りたまえ」

 

キバーラ「これは…?」パカッ

 

ディエンド(キバーラが箱を開けると…中には、それぞれ色の違う宝石が埋め込まれた九つの指輪が入っていた)

 

海東「君達にはその九つの指輪は使えないよ…それは、彼女達にとっての大切なお宝さ」

 

キバーラ「!…彼女たちの、お宝?」

 

ディエンド「それって『μ's』のことですか?」

 

海東「さあ、どうかな…!」

 

ユキホ-!アリサ-!

 

ディエンド「この声は…」

 

キバーラ「ツカサ!」

 

海東「…君達は彼と一緒に早く脱出したまえ」

 

キバーラ「えっ、でも…」

 

海東「人の心配をするより自分達の心配をしたらどうかな?…それに、僕にはこのお宝もあるからね」ピラッ

 

ディエンド(彼はポケットから一枚の写真を出すと…私達に自慢気に見せてきた)

 

ディエンド「!?」

 

キバーラ「それは…ことりさんの写真?」

 

海東「そう、これは伝説のカリスマメイド『ミナリンスキー』の生写真…この世界で最も価値のあるお宝さ」

 

キバーラ「そうだったんだ…ことりさん、スゴい!」

 

ディエンド「は、ははは…何か頭痛くなってきた」

 

海東「…さて、そろそろ行くとするかな」

 

ディエンド(その時、彼の後ろに不思議なオーロラが現れた)

 

キバーラ「!」

 

ディエンド「そのオーロラは…!」

 

海東「君達も自分自身のお宝を大切にしたまえ、君達のそのお宝は…とても僕には奪えそうにないからね」スタスタ

 

キバーラ「あっ、待って!」

 

海東「君達と会う事はもう無いだろう…だけど決して、この世界を忘れはしないよ」

 

海東「…士、君にあの世界のお宝は独り占めさせないよ」ボソッ

 

ディエンド(オーロラの中へと入った彼は…どこかの世界へと移動してしまった)

 

キバーラ「…行っちゃった」

 

ディエンド「あの人…『自分達のお宝を大切にしろ』って言ってたね?」

 

キバーラ「うん…一体、どういう意味なのかな?」

 

ディエンド(私達が少し考えていると…ディケイドらしきライダーが私達のもとにやって来た)

 

ディケイド「いた…雪穂、亜里沙!」ダッ

 

ディエンド「ツカサ!…って、何なのその格好!?」

 

ディケイド「これはディケイドの強化形態…コンプリートフォームだ」

 

ディエンド「き、強化形態?」

 

キバーラ「ってことは…パワーアップしたの?」

 

ディケイド「ああ」

 

キバーラ「ハラショー…スゴいね、ツカサ!」

 

ディケイド「まあな」

 

ディエンド「遺影じゃん、それ…」ボソッ

 

ディケイド「何か言ったか?」

 

ディエンド「…ううん、何でもない」

 

ディケイド「それなら良いが…二人ともその様子だと、無事みたいだな?」

 

キバーラ「うん!あれ…そういえば、虎太郎くんは?」キョロキョロ

 

ディケイド「もう一人のオレなら野上幸太郎に任せてる…『奴』に出くわす前に、オレ達も早くここから脱出するぞ!」

 

ディエンド「や…『奴』?」

 

キバーラ「誰なの、それ?」

 

ディケイド「話は後だ…急いでここから脱出するぞ!」

 

ディエンド「脱出するって言ったって…どうやって脱出するのさ?」

 

ディケイド「…思い切って飛び降りる」

 

ディエンド「は!?」

 

ディケイド「高度が低くなっている今なら問題無いはずだ…行くぞ!」ダッ

 

キバーラ「うん!」

 

ディエンド「ちょっ、ちょっと…本気でそれで行くつもりなの~!?」ダッ

 

 

 

ディケイド(オレ達は『鬼の戦艦』から飛び降り…オトノキの正門へと着地した)

 

ディケイド「はっ!」スタッ

 

キバーラ「…ほっ!」ストッ

 

ディエンド「っと…!」ストンッ

 

ディケイド(オトノキの校舎にぶつかると思われた『鬼の戦艦』は…役目を終えたからか、直撃する寸前で崩落しながら消滅していった)

 

ディケイド「ふぅ…どうやら、何とかなったみたいだな」

 

キバーラ「良かったぁ…」ホッ

 

ディエンド「良くないよ!こっちは全然、生きた心地しなかったんだけど!?」

 

ディケイド「うるさいな、いきなり…どうどう」

 

ディエンド「だから…私は馬じゃないってば!」

 

ディケイド「モーモー」

 

ディエンド「牛でもないっ!!」

 

キバーラ「ぷっ…あはははは!」

 

ディケイド「!」

 

ディエンド「…亜里沙?」

 

キバーラ「ご、ごめんね…何だかやりとりしてたら面白くなっちゃって」

 

ディエンド「!…もう、亜里沙ったら」フフッ

 

ディケイド「…」フフッ

 

キバーラ「えへへ…」

 

ディエンド「…ねえ、やっぱり私達って変わってるのかな?」

 

ディケイド「多分な、でも…それで良いんじゃないか?」

 

ディケイド「オレ達は…きっと、このままで良いんだ」

 

ディエンド「!…うん、そうだね」

 

ドーン!

 

ディケイド(その時、突然…校庭の方から大きな爆発音が聞こえてきた)

 

ディエンド「!?」

 

キバーラ「今のは!?」

 

ディケイド「…分からない」

 

キバーラ「私、行ってみる!」ダッ

 

ディケイド「なっ!?…おい、亜里沙!」

 

ディエンド「…私も行ってみる」

 

ディケイド「!…雪穂?」

 

ディエンド「夢で見た覚えがあるの…もしかしたら、お姉ちゃん達に何かあったのかも!」ダッ

 

ディケイド(ディエンドとキバーラは…一目散に校庭へと走って行った)

 

ディケイド「はぁ…全く、仕方ないな!」ダッ

 

 

 

ディケイド(校庭に辿り着いた二人は…突然、立ち止まった)

 

キバーラ「…!」ハァハァ

 

ディエンド「そんな…ウソでしょ?」

 

ディケイド「おい、お前ら…!?」

 

ディケイド(呆然とする二人に追いついたオレは…衝撃の光景を目の当たりにした)

 

μ's「…」

 

ディケイド(そこには…倒れている『μ's』の九人がいた)

 

ディエンド「お姉ちゃん!」ダダッ

 

ディケイド(二人はそれぞれの姉の所へ走り出し、起こそうとした)

 

ディエンド「ちょっと…お姉ちゃん!」ユサユサ

 

穂乃果「…」

 

ディエンド「返事してよ…お姉ちゃん!」

 

キバーラ「お姉ちゃん、目を覚ましてよ…」

 

絵里「…」

 

キバーラ「お姉ちゃん!」

 

ディケイド「…」スタスタ

 

にこ「…」

 

ディケイド「…おい、にこ」

 

にこ「…」

 

ディケイド「しっかりしろ…姉ちゃん!」ユサユサ

 

にこ「…」

 

ディケイド「…!」チラッ

 

ことり「…」

 

海未「…」

 

凛「…」

 

真姫「…」

 

希「…」

 

花陽「…」

 

ディケイド「この世界にはもう『大ショッカー』の大幹部はいないはず…なのに、どうして『μ's』の九人が?」

 

ディケイド「…!!」ハッ

 

ディケイド「まさか…!?」クルッ

 

ディケイド(その時…近くの方で禍々しい闇に包まれた何かが現れた)

 

キバーラ「うっ!?」

 

ディエンド「何…?」

 

???「…」スタスタ

 

キバーラ「人?」

 

ディケイド「違う…『奴』だ」

 

ディケイド(やがて、その闇の中から出てきたのは…刺だらけの身体に醜い鬼のような顔をした赤黒い怪人だった)

 

???「…」

 

キバーラ「…あなたは?」

 

???「オノレ、ディケイド…!」

 

ディケイド「!」

 

???「オノレ…ディケイドォォォォッ!!」

 

ディエンド「何なの、あれ!?」

 

ディケイド「…『鳴滝怪人体』」

 

キバーラ「ナルタキって…もしかして、ゼイビアックスっていう人のこと!?」

 

ディケイド「いや、あいつとは似ても似つかない…全く別の世界の生命体だ」

 

ディエンド「別の世界?」

 

ディケイド(オレは…もう一人のオレがとある小説で読んだ覚えのある事を言わずに、二人に『鳴滝怪人体』の事を説明した)

 

ディケイド「奴については…ある文献に記録されていて、オレも実際に読んだ事がある」

 

ディケイド「元々、人間だった奴は自分の世界に絶望し…理想郷を探そうとあらゆる並行世界を旅しているうちに怪人と化してしまい、自分の存在を失った」

 

ディケイド「怪人となった奴は自分の存在を繋ぎ留めるべく、人々の生命エネルギーを吸収しながら…ずっと生き長らえようとしていた」

 

ディケイド「しかし…オレとは全く別の『ディケイド』との激しい戦いによって、奴は倒された」

 

キバーラ「じゃあ、どうしてあそこに…?」

 

ディケイド「奴は『大ショッカー』が数多の世界から結集した科学技術によって造り出された…所謂、クローン体」

 

ディケイド「おそらくオレが正気に戻った事を知った大ショッカーの戦闘員達がオレを倒す為に、目覚めさせたんだろう…だが所詮、奴はクローンだ」

 

ディケイド「理性も持たずに目覚めた奴は、本能の赴くままに部下の生命エネルギーを吸い上げると…『鬼の戦艦』を抜け出して『μ's』を襲った」

 

ディケイド「そして、奴はこの世界を本物である自分自身の生前の目的だった『正しい世界の創造』…『自分にとっての理想郷』に変えようとしている」

 

ディケイド「といっても…今の奴がやってる事は、ただ暴れてこの世界の平和を壊しているだけだがな」

 

キバーラ「!…そんな」

 

ディエンド「何とか止めることは出来ないの!?」

 

ディケイド「…オレが倒す」

 

ディエンド「!」

 

キバーラ「ツカサ…?」

 

ディケイド「お前達は…『μ's』を頼む」スタスタ

 

ディエンド「…待って!」

 

ディケイド「!」ピタッ

 

キバーラ「ツカサだけに戦わせたりなんかしないよ?」

 

ディエンド「私達も…皆がいるこの世界を守る為に、一緒に戦う!」

 

ディケイド「…お前ら」

 

鳴滝怪人体「ディケイド…ディケイドォォォッ!!」ダッ

 

ディケイド「行くぞ…!」

 

キバーラ「うんっ!」

 

ディエンド「…うん!」スッ

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ディケイド(接近してくる怪人に向かって…一枚のカードをディエンドライバーに装填したディエンドが攻撃を仕掛けた)

 

ディエンド「ふっ!」ガガッ!

 

鳴滝怪人体「…」

 

ディケイド(銃弾は全て命中したが…怪人にダメージは与えられていない様子だった)

 

ディエンド「嘘でしょ…効いてないの!?」

 

鳴滝怪人体「ウゥッ…!」バシュッ!

 

ディケイド(怪人は呻きながら、オレ達を狙って口から光線を吐き出してきた)

 

ディケイド「避けろ!」サッ

 

キバーラ「!」サッ

 

バチッ!

 

ディエンド「うっ!?」ドサッ

 

ディケイド(光線は僅かに反応が遅れたディエンドの肩を掠め…ディエンドは思わずその痛みに膝をついてしまった)

 

ディケイド「…!」

 

キバーラ「雪穂!」

 

ディエンド「だ、大丈夫…大丈夫だから」

 

キバーラ「雪穂…」

 

鳴滝怪人体「グウゥ…!」

 

キバーラ「…お願い、もうやめて!」ダッ

 

ディケイド「!?…亜里沙!」

 

キバーラ「やぁっ!」ブンッ!

 

鳴滝怪人体「…」ガキンッ!

 

ディケイド(キバーラはキバーラサーベルで怪人を斬りつけようとするが…怪人は硬い殻と刺で覆われた腕で、難なく受け止めてしまう)

 

キバーラ「っ…えいっ!」ブンッ!

 

鳴滝怪人体「…」ガキンッ!

 

ディケイド(キバーラの細い剣は怪人の太い腕に弾き返されてしまい…キバーラは地面に叩きつけられるように吹き飛ばされた)

 

キバーラ「きゃっ…!」ゴロゴロ

 

ディケイド「亜里沙!…くっ!」ダッ

 

鳴滝怪人体「ディケイドォ…!」

 

ディケイド「はっ!」ゴッ!

 

鳴滝怪人体「ッ!?」

 

ディケイド(コンプリートフォームであるオレの攻撃は…怪人に有効のようだった)

 

ディケイド「よし、これなら…!?」

 

鳴滝怪人体「グオォォォォッ!!」

 

ディケイド(怪人が突如、空に向かって吠えると…その咆哮は空気を震わせて空中に幾つもの光線を作り出した)

 

ディケイド「あれは…!」

 

ディケイド(光線はゆっくりと一つに集まると、巨大な光の球に変化し…怪人の頭上へと降りてくる)

 

鳴滝怪人体「…!」スッ

 

カッ!

 

三人「っ!?…うわぁぁぁっ!」

 

ディケイド(怪人が右手と上げた直後、光の球は弾け…オレ達に襲いかかった)

 

ディケイド「かはっ…!」

 

雪穂「…っ」

 

亜里沙「うぅ…」

 

ディケイド「雪穂、亜里沙!…っ!?」ドサッ

 

ディケイド(全身に痛みが走り…オレの変身は解かれてしまった)

 

ツカサ「…ぐっ」

 

ツカサ(身体が熱い、息が苦しい…オレは一歩も動けない状態だった)

 

鳴滝怪人体「オノレ、ディケイド…」スタスタ

 

ツカサ(怪人はオレを始末しようと…ゆっくりとオレに近付いてきた)

 

ツカサ「…!」

 

雪穂「…ツカ、サ」

 

亜里沙「ツ…カサ…!」

 

ツカサ(オレの旅や彼女達の世界は…こんな所で終わるのか?)

 

ツカサ(そんなの…嫌だ、オレは)

 

ツカサ(そうだ…オレ達は、絶対に)

 

ツカサ「…諦め、ない…!」

 

鳴滝怪人体「…?」ピタッ

 

ツカサ(すると、倒れていたオレ達の前に…見覚えのある小さな背中が見えた)

 

虎太郎「…」

 

ツカサ「!…お前」

 

鳴滝怪人体「キサマ、ナンナンダ…?」

 

虎太郎「…とおりすがりー」

 

雪穂「!」

 

虎太郎「…かめんらいだー」

 

亜里沙「…!」

 

虎太郎「おぼえておけー…!」

 

ツカサ「!!」

 

鳴滝怪人体「!…オノレ、ディケイド」

 

鳴滝怪人体「オノレェェェッ!!」

 

?「はぁーっ!」ブゥゥゥン!

 

ツカサ(怪人が再び光の球を作ろうとしたその時…とある三人がマシンに乗ったまま、怪人にぶつかっていった)

 

ドカッ!

 

鳴滝怪人体「グアッ…!」ゴロゴロ

 

…キキッ!

 

ツカサ「!」

 

ツバサ「ふぅ…何とか間に合ったようね」

 

ツカサ「アンタ達…!」

 

英玲奈「彼が…私達を呼んでくれたんだ」

 

あんじゅ「『μ's』がピンチだから、戦闘員達を倒したら音ノ木坂に来てほしいって…ねっ?」

 

虎太郎「…」コクリ

 

ツカサ「…虎太郎」

 

虎太郎「ゆびわー…」

 

ツカサ「!…これを、嵌めれば良いのか?」スッ

 

虎太郎「!」コクコク

 

ツカサ「…!」

 

ツカサ(オレが自分の左手の薬指にリングを嵌めた瞬間、埋め込まれていた九色の宝石が眩い光を放った)

 

鳴滝怪人体「グゥッ…ガァァァッ!?」

 

ツカサ(光を見た怪人が苦しみ始めると同時に…オレと雪穂と亜里沙の三人がその光に包まれた)

 

ツカサ「…これは」

 

雪穂「身体の痛みが、ひいていってる…?」

 

亜里沙「!…そうだ」スッ

 

ツカサ(亜里沙はポケットから…小さな箱を取り出した)

 

ツカサ「それは?」

 

亜里沙「もらったの…『彼女たちにとっての大切なお宝』だって」

 

雪穂「…!」

 

海東『君達にはその九つの指輪は使えないよ…それは、彼女達にとっての大切なお宝さ』

 

ディエンド『それって《μ's》のことですか?』

 

海東『さあ、どうかな…』

 

雪穂「そうか、ってことは…亜里沙!」ダッ

 

亜里沙「うん…やってみよう、雪穂!」ダッ

 

ツカサ「…?」

 

ツカサ(雪穂と亜里沙は…次々と『μ's』メンバーの左手の薬指にそれぞれのメンバーのイメージカラーと同じ色の宝石が埋め込まれた指輪を嵌めていく)

 

虎太郎「!…てつだうー」ダダッ

 

亜里沙「ありがとう、虎太郎くん!」

 

雪穂「じゃあ…虎太郎くんはにこさんに、このピンクの宝石の指輪を!」スッ

 

虎太郎「…!」ダッ

 

ツバサ「一体、何をしようとしているの…?」

 

虎太郎「…がんばれー」スッ

 

にこ「…」

 

亜里沙「お姉ちゃん…!」スッ

 

絵里「…」

 

雪穂「お願い…目を覚まして!」スッ

 

穂乃果「…」

 

ツカサ(やがて全員に指輪を嵌めると、九つの指輪の宝石が輝き…『μ's』の九人を光で包み込んだ)

 

ツカサ「!…あれは」

 

穂乃果「…」

 

 

 

『穂乃果…穂乃果!』

 

穂乃果「んぁ…?」パチリ

 

『目が覚めた?』

 

穂乃果「ここは…?」ムニャムニャ

 

『あはは…まだ寝ぼけちゃってるみたいだね?』

 

穂乃果「ふぇ?…!」

 

『…こんにちは』

 

穂乃果「あなたは…何でだろう?」

 

穂乃果「初めて会ったはずなのに…私はあなたのことを、よく知ってる」

 

『ふふっ…当たり前だよ!』

 

『だって、私達九人はずっと…穂乃果達《μ's》と一緒にいたんだから!』

 

穂乃果「…一緒に?」

 

 

 

『そう…初めて出逢った時はどう接したら良いのか分からなくて、沢山考えてきた』

 

『でも今では…絵里がいない生活が考えられないくらい、私にとって当たり前の存在になってる』

 

『時には自分のように、時には友だちのように…こんな風に考えられるあなたに出会えて、私は本当に幸せだなって思う』

 

絵里「!…ええ、私もあなたに出会えて…本当に幸せよ」

 

 

 

『不安なこともたくさんあったけど…あなたがそばにいるって思うと頑張れたし、何より自信が持てたよ!』

 

『だからことりと一緒に、一心同体になって輝ける素敵な場所にいられたことは…私の人生の宝物だよ!』

 

『どうかな?同じように、あなたも思っていてくれたら…嬉しいな』

 

ことり「うん…うん、私も同じ気持ちだよ!」グスッ

 

 

 

『海未ちゃんと一緒に駆け抜けたこの時間は…私の第二の学生時代だったよ』

 

『笑いと汗と涙と…たくさんの感動を与えてくれて、本当にありがとう!』

 

『これから先も穂乃果ちゃん、ことりちゃんの幼馴染二人や…《μ's》のみんなと仲良くねっ!』

 

海未「はい!必ず…あなたと誓った約束を果たしてみせます」

 

 

 

『私は凛ちゃんからいつも元気と笑顔をもらってるよ…どんなに落ち込んでいても、凛ちゃんの笑顔を見ると本当に気分が晴れるの!』

 

『私ね、いつか出来たらいいなって思ってた夢が一つあったの…それは、大きなステージでキラキラな衣装を着て踊ること』

 

『そんな絶対に叶わないと思ってた私の夢を叶えてくれたのは、凛ちゃんだよ!』

 

凛「えへへ…あなたにそう言ってもらえるなんて、何だか照れるニャ~」

 

 

 

『実は私も、最初のあなたと同じように…音楽を諦めようとしていた』

 

『だから、真姫ちゃんに出逢う事がなければ私も今…こんなに楽しく歌ってなかったと思う』

 

『色んな物を初めて、改めて知れたよ…たくさんステキな景色を見せてくれて本当にありがとう!』

 

真姫「それを言うのは私の方よ…こう見えて、あなたにはとっても感謝してるのよ?」

 

 

 

『これから先、別々の道を歩んでも…希と一緒に歩んできたこの時間は私にとって特別で、かけがえのないものだよ』

 

『希に出会えたこと…《μ's》のみんなに出会えたこと…希と一緒に過ごした時間…そして、希と一緒にみんなの笑顔を見られたことが私は何より嬉しかったよ!』

 

『本当にありがとう…そして…大・大・大・大・大好きっ!』

 

希「ウチも…あなたの事が大・大・大・大・だ~いすきっ!」

 

 

 

『私ね、時々…《もし貴女に出逢っていなければ、今の自分はどうなってたんだろう?》って真剣に考える事があるの』

 

『それほどまでに…今が自然で楽しくて、大切な日常で』

 

『だから、あふれ出してくる《ありがとう》がムダになってしまわないように一日一日を…限られた時間を楽しみながら大切にして、しっかり歩んでいくね?』

 

花陽「うん!私も…あなたに『ありがとう』って思いながら、これからを歩んでいくね?」グスッ

 

 

 

『自分の強い思いも、家族への思いも…《μ's》のメンバーへの思いも、私はぜーんぶ分かってるんだからね!』

 

『だって私は…大銀河宇宙ナンバーワンアイドルのにこちゃんの一番最初のファンなんだから!』

 

『にこちゃんにはいろんなことを教えてもらったし…今、こうして私もたくさんの人に愛されてるのはにこちゃんのおかげだよ!』

 

にこ「!…ふふっ、私が変われたのはあなたがずっと、隣にいてくれたからなのよ?」

 

 

 

『こんなに私の中であなたの存在が大きくなるだなんて、最初の頃は思っていなかったけど…あなたに出会って、私の人生は大きく変わった』

 

『穂乃果、あなたは私の太陽だよ…あなたの輝きの一部分でいられることが、私の誇りで…私の《いのち》だよ』

 

『出会ってくれてありがとう…これからもよろしくね?』

 

穂乃果「…うんっ!」

 

穂乃果「これからはもっとよろしくね…だって、だって私達とあなた達は…離れたり出来るはずないんだから!」

 

穂乃果「形は変わっても…私達はずっと、あなた達と同じ『μ's』だよ!」

 

 

 

『絵里、まだまだこれから色々なことがあると思うけど…一緒に頑張っていこうね!』

 

『ことり…みんなに誇れるように愛をたくさん込めて、頑張っていこうね!』

 

『海未ちゃん…稽古の合間はちゃんと水分と塩分を摂取してね!』

 

『凛ちゃん、絶対一緒に…ラーメン食べに行くニャ!』

 

『真姫ちゃん…これからもずっとお互い、かけがえのない存在でいようね?』

 

『希、今までありがとう…そして、これからもよろしくね!』

 

『花陽…またいつか会った時は、私ももっともっと素直に貴女への気持ちを伝えられるようにするね?』

 

『にこちゃん…これからもずっとずっと、あなたの一番のファンでいるからね!』

 

『大好きだよ、穂乃果…あなたの半身より』

 

μ's「…ありがとう、みんな」

 

 

 

穂乃果「…はっ!?」ガバッ

 

雪穂「うわぁっ!?」

 

絵里「ここは…!」

 

亜里沙「お姉ちゃん!」ギュッ

 

にこ「ケガはない、虎太郎?」

 

虎太郎「!」コクコク

 

ツカサ(指輪の光によって…『μ's』の九人は目を覚ました)

 

穂乃果「そうだ、私達は確か…!」ハッ

 

鳴滝怪人体「グウゥ…グガァァァ!!」

 

絵里「あの怪人に襲われて…でも、もう私達は負けたりしないわ!」

 

にこ「その通りよ…アンタだってそうでしょ、ツカサ!?」

 

ツカサ「!…ああ、でもオレだけじゃない」

 

雪穂「…そう、私達だって」

 

亜里沙「想いは一緒だよっ!」

 

ツバサ「さあ、皆で行きましょう…この世界を元の平和な世界に戻す為に!」

 

ツカサ「そういう事だ…虎太郎、お前は安全な所に隠れてろ」

 

虎太郎「!」ダッ

 

ツカサ(虎太郎が少し離れた場所に避難したのと同時に…オレ達は横一列に並び立った)

 

鳴滝怪人体「…?」

 

穂乃果「世界を守るために…スクールアイドルになる!」

 

海未「そんな私達の夢が…!」

 

ことり「もう一度、全速力で走り始めます!」

 

花陽「アイドルになる夢を叶えた私達が…!」

 

凛「また九人で…笑顔全開に弾けるニャ!」

 

真姫「大切な仲間をくれたこの学校を、守る為に!」

 

絵里「不可能に思えた遠い夢も…!」

 

希「この九人なら、可能に変えていける!」

 

にこ「そんなメンバーに出会えたことが…『奇跡』だから!」

 

ツバサ「だから…私達、スクールアイドルは!」

 

英玲奈「応援してくれる人々がいる限り、一つになる!」

 

あんじゅ「そう、皆が求めてくれる限り…何度でも!」

 

雪穂「そして…私達は、新しく生まれてきたもう一つの夢を叶える!」

 

亜里沙「ツカサや色々な世界の人たちと出逢ったおかげで生まれてきた…もう一つの夢を、叶えてみせる!」

 

ツカサ「その為にオレは…彼女達と共に、この世界を守り抜いてみせる」

 

ツカサ「お前のような奴に…この世界を自分だけの理想郷になんてさせやしない!」

 

鳴滝怪人体「!…オマエハ、オマエタチハ…ナンナンダァァァァ!!」

 

にこ「はぁ!?アンタ、そんな事も知らないの!?」

 

絵里「だったら…教えてあげるわ!」

 

穂乃果「私達は音ノ木坂学院スクールアイドル…『μ's』と!」

 

ツバサ「UTX高校スクールアイドル…『A-RISE』と!」

 

ゆきあり「通りすがりの…スクールアイドルと!」

 

ツカサ「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!!」

 

鳴滝怪人体「…オノレ、オノレェェェェェッ!!」

 

雪穂「叶え…もう一つの、夢」

 

亜里沙「叶え、私たちの新しい…夢!」

 

ツカサ「行くぞ…これが、最後の戦いだ!」

 

全員「うん!」

 

ツカサ(オレ達はそれぞれの変身アイテムを出現させ…構えた)

 

全員「変身!!」

 

ツカサ(オレ達は最後の戦いに挑む為に…変身した)

 

ディケイド「…」

 

鳴滝怪人体「ディケイド…ディケイドォォォッ!!」ダッ

 

V3「まずは私達が行くわ…はっ!」バッ

 

ディケイド(『A-RISE』が変身した三人のライダーは…走ってくる怪人に向かって、同時にライダーキックを決めた)

 

バキッ!

 

鳴滝怪人体「グゥッ!?」

 

ディケイド「今だ…『μ's』!」

 

アギト「うん!」

 

ディケイド(『μ's』の九人は…強化形態になる為の準備を始めた)

 

アギト「はっ…!」

 

ディケイド(バーニングフォームにフォームチェンジしたアギトが太陽の光を浴びると…装甲が剥がれ、シャイニングフォームへと変身する)

 

カブト「ハイパーキャストオフ!」

 

『Hyper Cast Off…Change Hyper Beetle』

 

ディケイド(飛来してきたハイパーゼクターを左腰に装着して角を押し下げたカブトは…ハイパーフォームへと変身した)

 

電王『みんな、来て…超てんこ盛りだよ!』ポチポチ

 

『モモ ウラ キン リュウ…クライマックスフォーム』

 

ディケイド(電王がケータロスの下四つのボタンと通話ボタンを順番に押して、ベルトに装着すると…背中に翼が生えた超クライマックスフォームに変身した)

 

ブレイド「次こそ勝ちます!」

 

『Absorb Queen…Evolution King』

 

ディケイド(ブレイドは左腕のラウズアブソーバーに『アブソーブカプリコーン』のカードをセットすると…『エボリューションコーカサス』のカードを通してキングフォームへと変身した)

 

龍騎「…ニャッ!」スッ

 

ボォォォ…

 

『サバイブ』

 

ディケイド(カードデッキから『サバイブ -烈火-』のアドベントカードを取り出した龍騎が炎を巻き起こすと…ドラグバイザーツバイにカードを通し、サバイブへと変身する)

 

ファイズ「行くわよ!」ピッピッピッ

 

『Standing By…Awakening』

 

ディケイド(ファイズブラスターに『5』キーを三回押した後に『ENTER』キーを入力し、ファイズフォンを挿し込んだファイズ…ブラスターフォームに変身した)

 

響鬼「響鬼、装甲…はぁっ!」

 

ディケイド(装甲声刃《アームドセイバー》を持った響鬼が真っ赤な炎に包まれると同時に…赤銅色のアームドディスクアニマル達が彼女の全身を包み、装甲響鬼へと変身する)

 

キバ「キバット…お願い!」スッ

 

キバット「おっしゃー!」

 

『ガルルセイバー!』

 

『バッシャーマグナム!』

 

『ドッガハンマー!』

 

『タツロット!』

 

タツロット「びゅんびゅーん…行きますよ~!」

 

ディケイド(キバはドガバキフォームにフォームチェンジした直後にタツロットを左腕に着けると…ドガバキエンペラーフォームに変身した)

 

クウガ「見てなさいよ…超変身!」ビリビリッ

 

ディケイド(アルティメットフォームになったクウガは電気エネルギーを身体中に走らせると赤い目のまま、ライジングアルティメットフォームへと変身する)

 

ディケイド「よし…!」スッ

 

『シャイニング』

 

『ハイパー』

 

『スーパークライマックス』

 

『キング』

 

『サバイブ』

 

『ブラスター』

 

『アームド』

 

『ドガバキエンペラー』

 

『ライジングアルティメット』

 

『ファイナルカメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド(ケータッチを取り出し、九つのライダークレストを押した後にディケイドのライダークレストを押したオレは…最強コンプリートフォームに変身した)

 

ディケイド「…」

 

鳴滝怪人体「!?」

 

アギト「ことりちゃん、花陽ちゃん…行くよっ!」

 

電王『うん…!』スッ

 

キバ「うんっ!」

 

アギト「…はぁっ!」

 

『フルチャージ』

 

タツロット「ウェイクアップフィーバー!」

 

キバット「キバれぇぇぇぇっ!!」

 

Printemps「はっ…たぁーっ!!」ドカッ!

 

鳴滝怪人体「グオッ…!」フラッ

 

ディケイド(アギトの強化シャイニングライダーキック、電王の超ボイスターズキック、キバのドガバキエンペラーブレイクが決まり…怪人に一瞬の隙が生まれた)

 

ブレイド「凛、希…準備は良いですか!?」スッ

 

響鬼「もちろん!」

 

龍騎「大丈夫ニャー!」スッ

 

『Spade Ten』

 

『Spade Jack』

 

『Spade Queen』

 

『Spade King』

 

『Spade Ace』

 

『Royal Straight Flash』

 

響鬼「…『音撃刃 鬼神覚声』!」ジャキッ

 

『ファイナルベント』

 

龍騎「ドラグランザー!」バッ

 

響鬼「…!」スゥ

 

ブレイド「っ…!」

 

lily white「やぁーっ!!」ザシュッ!ゴッ!

 

鳴滝怪人体「ガアッ!?」ヨロッ

 

ディケイド(続いて龍騎のドラゴンファイヤーストーム、ブレイドのロイヤルストレートフラッシュ、響鬼の音撃刃 鬼神覚声が炸裂し…怪人にダメージを与えていく)

 

カブト「決めましょう…にこ、真姫!」

 

ファイズ「ええ!」

 

クウガ「当然よ!」

 

『Kabuto Power』

 

『Thebee Power』

 

『Drake Power』

 

『Sasword Power』

 

『All Zecter Combine…』

 

カブト「マキシマムハイパーサイクロン…!」

 

『Maximum Hyper Cyclone!』

 

ファイズ「『5532』…『ENTER』!」ピッピッピッ

 

『Exceed Charge』

 

クウガ「ふっ…!」ビリビリッ

 

BiBi「はぁーっ!!」バキッ!バシュッ!

 

鳴滝怪人体「グウッ…!?」ドサッ

 

ディケイド(カブトのハイパーマキシマムサイクロン、ファイズのブラスタークリムゾンスマッシュ、クウガのライジングアルティメットマイティキックが命中し…怪人は吹き飛ぶ)

 

ディケイド「雪穂、亜里沙…決めるぞ!」

 

ディエンド「うん!私達の手で…」スッ

 

キバーラ「この世界を守るっ!」

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

キバーラ「…とうっ!」バッ

 

ディエンド&キバーラ「やぁぁぁっ!!」ズバッ!バシュッ!

 

ディケイド(ディエンドのディメンションシュートとキバーラのソニックスタッブが発動し、怪人は苦しげに呻いた)

 

鳴滝怪人体「ウグッ…!」

 

ディケイド「ふっ!」バッ

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

ディケイド「はぁぁぁぁぁっ!!」ガッ!

 

ディケイド(飛び上がったオレは…怪人に向かって、コンプリートフォームの中で最も威力のある強化ディメンションキックをぶつけた)

 

鳴滝怪人体「グワァァァァッ!?」ゴロゴロ

 

ディケイド「…!」スタッ

 

鳴滝怪人体「…グゥ…ガッ」ヨロッ

 

クウガ「!?」

 

カブト「そんな…まさか、まだ立ち上がれるなんて」

 

ディエンド&キバーラ「…」スタスタ

 

アギト「えっ?…雪穂、亜里沙ちゃん!?」ダッ

 

ディケイド「待て」スッ

 

アギト「…!」ピタッ

 

V3「ここは…彼女達に任せましょう」

 

ディケイド(変身を解いた雪穂と亜里沙は…怪人に近付いていった)

 

鳴滝怪人体「…?」ハァハァ

 

ギュッ

 

ディケイド(そして、二人は…怪人の手を握った)

 

鳴滝怪人体「!?」

 

雪穂「…無理やり甦らされて、辛かったんだよね」

 

鳴滝怪人体「…!」

 

亜里沙「でも、もう大丈夫だよ…私たちがあなたの力になるから!」

 

雪穂「だから…これ以上、もう戦わなくて良い」

 

亜里沙「安心して…ねっ?」

 

鳴滝怪人体「…」フゥ

 

ディケイド(雪穂と亜里沙の言葉を聞いて、安堵の溜息をついた怪人は二人の手を優しく放すと…光となって消えていった)

 

ディケイド(それはまるで…この世界から、旅立っていくかのようだった)

 

キラキラキラ…

 

虎太郎「…きれー」

 

 

 

ツカサ(キバーラの能力で、それぞれの世界に帰ろうとする人々を見送る為…オレ達は音ノ木坂学院の正門へとやってきた)

 

ツカサ「!…何?」

 

雪穂「キバーラも別の世界に行くの?」

 

キバーラ「ええ、アタシだけにしか出来ない旅をしてみたくなったの!」バサバサ

 

亜里沙「そっか…さみしくなるね」

 

ツバサ「…ありがとね、キバーラ」フフッ

 

キバーラ「ふふっ…ツバサも達者でね!」

 

雪穂「…それに、ユキホとアリサも」

 

亜里沙「助けてくれてありがとね!」

 

ユキホ「気にしないでよ…あなた達が私達のいる世界を救ってくれたから、今の私達がある訳なんだし」

 

アリサ「そうそう!だから、アリサたちもお返ししに来たんだよ?」

 

にこ「マナミ…また、会いましょう?」

 

マナミ「…ああ、必ずな」グッ

 

花陽「みんな…行ってらっしゃい!」

 

メグミ「じゃあね、花陽ちゃん」

 

ミオ「…またね」

 

シズカ「それじゃ!」

 

ハルナ「ママ…ばいばーい!」

 

凛「ユイちゃん…ありがと、ね?」

 

ユイ「…ええ」

 

海未「アマネ、シオリ、サヨコさん…ごきげんよう」

 

アマネ「じゃあね、海未…」

 

シオリ「海未ちゃんも元気でね!」

 

サヨコ「園田さん…また会いましょう」

 

真姫「皆…ありがとう」ニコッ

 

サヤ「…!」フフッ

 

マコ「うん!」

 

ユカ「…お、おう///」

 

絵里「ダスビダーニャ、ヒヨリ」

 

ヒヨリ「絵里…大丈夫、僕がそばにいる」

 

穂乃果「…マナちゃん、また会う時までお互い頑張ろうねっ!」

 

マナ「はい、お互いにファイト…ですね」フフッ

 

希「二人にはかなわんなぁ…これでもウチ、ビックリしてたんよ?」

 

サキ「ふふっ…悪かったわね」

 

キリュウ「ですが、これで私達も…お師匠様の力になる事が出来ました」

 

希「うふふっ…ん?」

 

ユウコ「…」

 

希「!?…ま、真姫ちゃん!」

 

真姫「何?…って、うぇえ!?」

 

ユウコ「…」

 

ことり「ツカサくん…あれ、ユウコちゃんにあげても良い?」

 

ツカサ「!…ああ」

 

ことり「…あの、ユウコちゃん!」ダッ

 

ユウコ「?」

 

ことり「…これ、あげるね?」スッ

 

ユウコ「!…それ、ディケイドが撮った写真じゃない」

 

ことり「…うん」

 

ユウコ「どうして…?」

 

ことり「…今の私はもう、この写真に頼らなくても大丈夫だから」

 

ユウコ「!」

 

ことり「だから、ユウコちゃんにあげる…受け取ってくれる?」

 

ユウコ「…ええ、大切にするわ」

 

ことり「!…よ、良かったぁ~」ホッ

 

ユウコ「…ありがとね」ボソッ

 

キバーラ「みんな~、そろそろ行くわよー!」

 

ツカサ「じゃあ…またな、お前ら!」

 

キバーラ「くすくす♡じゃあね~…ぐるぐるぐるぐる~!」

 

ツカサ(キバーラはユキホやアリサ達の周りを高速で周回すると…彼女達を元の世界へと連れて行った)

 

亜里沙「本当に、ありがとねー!」ブンブン

 

雪穂「…行っちゃったね」

 

穂乃果「みんなもありがとう!」

 

ツバサ「…いえ、お礼を言うのは私達の方よ」

 

ヒデコ「そうそう…穂乃果達やディケイドがいなかったら、この世界が大変な事になるかもしれなかったんだから!」

 

オーイ!

 

全員「?」クルッ

 

ツカサ(そこには…台車を持った音ノ木坂学院の教師がいた)

 

山田「お前ら…準備出来たぞー!」

 

フミコ「あっ…はーい!」

 

ツカサ「…準備?」

 

ミカ「アキバドームに行って、ライブの機材のセッティングをするの!」

 

ヒデコ「オトノキの全校生徒も全国のスクールアイドルも皆、手伝ってくれるって!」

 

μ's「ええっ!?」

 

穂乃果「私達もやるよ!」

 

山田「ダメだ…お前達は学校だけじゃなくて、この世界まで救ったんだぞ?」

 

絵里「でも…!」

 

山田「今日は頑張ったんだから、こっちは私達に任せろ…良いな?」

 

μ's「!…は、はい」

 

山田「よし…行くぞ!」ガラガラ

 

ヒデコ「さーてと…これから忙しくなるよ!」

 

フミコ「トロッコや動くステージに…やる事づくしだね!」

 

ミカ「腕が鳴るよ~!」ダッ

 

ツカサ(ヒデコ達は大きな機材を運びながら…オトノキを後にした)

 

ツバサ「…そろそろ私達もUTXに戻りましょうか」

 

英玲奈「そうだな、事務所の人がまだ待ってくれていると良いのだが」

 

あんじゅ「きっと大丈夫よぉ…これから事務所の人間としてマネージメントしてくれる私達の生徒会長さんが今頃、色々と頑張ってくれてるだろうし♡」

 

ツバサ「ふふっ…だったら尚更、急がないとね?」

 

ツカサ「…色々、世話になったな」

 

ツバサ「あら、前に別の世界の私が言ったはずでしょ?私達『A-RISE』は…やりたい事をやっただけよ」

 

ツバサ「その子にも助けられたし…」チラッ

 

虎太郎「…」

 

ツカサ「!…そうか」

 

ツバサ「…じゃあ、行くわね」スタスタ

 

穂乃果「…」

 

ツバサ「…ねえ、楽しみにしてるから」クルッ

 

ツバサ「あなた達の…ファイナルラブライブ!」

 

μ's「…はい!」

 

ツカサ(そう言って『A-RISE』の三人は…UTXへと向かった)

 

亜里沙「あっ…そうだ!」

 

ツカサ「?」

 

亜里沙「ツカサ、雪穂…ちょっと来て!」

 

雪穂「どうしたの、亜里沙?」

 

亜里沙「あのね…!」ヒソヒソ

 

雪穂「!…そっか」フフッ

 

ツカサ「…なるほどな、だいたいわかった」

 

μ's「…?」

 

 

 

ツカサ「準備は良いか?」

 

μ's「はーい!」

 

ツカサ(亜里沙の提案で、オレは…この世界の『μ's』を撮ろうとしていた)

 

希「えへっ…!」トンッ

 

凛「ニャ~!」グイグイ

 

花陽「ふふっ、二人ともやめてよぉ~…」

 

絵里「もう、にこったら…押さないで~」フフッ

 

真姫「ふふっ…そうよ~?」

 

にこ「気にしない気にしな~い!」グイグイ

 

海未「またやってますね…」フフッ

 

ことり「みんな、ふざけないのっ」

 

穂乃果「ふふっ…じゃあ、みんなでアレ…行くよ~!」

 

穂乃果「せーのっ!」

 

μ's「『ラブライブ!』」

 

カシャッ

 

ツカサ(オレがトイカメラのシャッターを切った後も…『μ's』の九人は、楽しく笑い合っていた)

 

雪穂「…どう?」

 

亜里沙「撮れた?」

 

ツカサ「ああ…きっと最高の一枚になったはずだ」

 

雪穂「それを聞いて、安心したよ…!!」

 

亜里沙「雪穂?…!!」

 

ツカサ「!」スゥゥ…

 

ツカサ(ふと自分の身体を見ると…オレは消えかけている事に気付いた)

 

μ's「!!」

 

雪穂「ツカサの身体が、透けてる…?」

 

亜里沙「何で…どうしてなの!?」

 

虎太郎「…たびだちー」

 

雪穂「!…旅立ち?」

 

亜里沙「別の世界に行っちゃうってこと?」

 

ツカサ「…そうだ」

 

ツカサ「どうやら、この世界でオレがやらなきゃいけない事は終わったらしい」

 

雪穂「終わったって…!」

 

亜里沙「そんな…私たち、新しいもう一つの夢が出来たんだよ!?」

 

亜里沙「ツカサにはいつか、スクールアイドルになった私たちのライブを見て笑顔になってほしいの!」

 

雪穂「そうだよ…聞いてなかったの!?」

 

雪穂「せっかく『μ's』とは違う形でスクールアイドルの素晴らしさを広めていこうと思ってた所だったのに…それを待たずに行っちゃうなんてヒドいよ!」

 

穂乃果「…止めちゃダメだよ、二人とも」

 

雪穂「お姉ちゃん…何を言ってるの!?」

 

絵里「ディケイドとして別の世界から来たツカサは本来…この世界には長くいられないの」

 

亜里沙「!…どういう意味、なの?」

 

ことり「確かにツカサくんが別世界の私達を助けてくれたおかげで…私達のいるこの世界は、消えなくなった」

 

海未「だからこそ、ディケイドであるツカサが異変が収まったこの世界に長くいれば…また別の異変が引き起こされてしまう可能性があるのです」

 

ゆきあり「!!」

 

雪穂「で、でも…そんなの可能性の話じゃないですか!」

 

亜里沙「そうだよ!何にもならないかもしれないのに…」

 

凛「凛達、知ってるよ…スクールアイドルである凛達『μ's』は…本当は『仮面ライダー』になっちゃいけないんだって」

 

雪穂「…え?」

 

真姫「それでも、未だに私達が変身能力を持っていたのは…ツカサがこの世界にずっといたからよ」

 

希「ウチらも今になって気付いたんやけど、この世界の異変は…どうやらツカサくんがナルタキって人を倒したところでもう終わってたみたいなんよ」

 

亜里沙「!」ハッ

 

音也『再び《μ's》の物語は紡がれた』

 

雪穂「じゃあ、あの時には…もう?」

 

花陽「うん…だからさみしいけど、私達にはツカサくんを止められない」

 

ツカサ「いいんだよ、止めなくて…それにオレとこの世界の虎太郎は同じ『矢澤コタロウ』という人間だ」

 

虎太郎「…」

 

ツカサ「オレがこの世界に留まれば、真っ先にこの世界の虎太郎が消えてしまう恐れがある…虎太郎を危険な目に遭わせる訳にはいかないんだ」

 

ゆきあり「…!」

 

にこ「…」

 

ツカサ「だから、オレはこの世界を旅立つ…お前達ともこれでさようならだ」

 

ツカサ「虎太郎…お前にも、世話になったな」ナデナデ

 

虎太郎「…!」

 

ツカサ「よし…じゃあな」スタスタ

 

ツカサ(オレがオトノキの正門を出ようとした…その時だった)

 

ダダッ…ガシッ!

 

にこ「いい加減にしなさいよ!!」

 

ツカサ(目の前にやってきたにこが…オレの両肩を掴んだ)

 

ツカサ「…!」

 

にこ「それでカッコつけてるつもり?バッカじゃないの!?」

 

にこ「あの子達はね…アンタを、今までずっと一緒に旅してきた大切な仲間だと思ってるのよ!」ユサユサ

 

雪穂「…!」

 

亜里沙「にこさん…」

 

ツカサ「…」

 

にこ「なのに、アンタは…それで良いわけ!?」

 

にこ「アンタだって…あの二人を、大切な仲間だって思ってるはずでしょ!?」

 

にこ「だったら、ちゃんとあの子達に向き合ってから行きなさいよ!」

 

にこ「それくらいしても…バチは当たらないはずでしょ!?」

 

ツカサ「…姉ちゃん」

 

穂乃果「あーあ…言いたいこと、にこちゃんに全部言われちゃったね」フフッ

 

ツカサ「!」

 

絵里「にこや穂乃果だけじゃないわ…『μ's』の皆が同じ気持ちよ」

 

穂乃果「だから…ちゃんと聞いてあげてよ、雪穂と亜里沙ちゃんの気持ちを!」

 

ツカサ「お前ら…」

 

希「一番大切なのは…彼女達の気持ちよ?」

 

ツカサ「!…全く、仕方ないな」ハァ

 

ゆきあり「!」

 

ツカサ(オレが雪穂と亜里沙の前に立つと…少しの間、誰も喋らなくなった)

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

ツカサ「…あの」

 

ツカサ(その沈黙に耐えられなかったオレが口を開こうとした瞬間…オレの身体に二つの温もりが重なった)

 

ギュッ

 

ツカサ「!!」

 

雪穂「…っ」グスッ

 

亜里沙「うぅ…」ヒック

 

ツカサ「おいおい…お前ら、通りすがりのスクールアイドルなんだろう?」

 

ツカサ「こんな事して…本当に良いと思ってるのか?」

 

雪穂「…そんなの、良いに決まってるじゃん」

 

亜里沙「だって…私たちと、ツカサは」

 

ゆきあり「『仲間』なんだから…」

 

ツカサ「…!」ツー

 

ツカサ(それを聞いて…オレの目から零れる一筋の涙が頬を伝った)

 

ツカサ「っ…バカだな、お前ら」

 

ツカサ「本当に、バカだよ…!」

 

にこ「…ホント、世話が焼けるんだから」

 

穂乃果「…」フフッ

 

絵里「うふふっ…」

 

ツカサ(少し経って…二人はオレから離れた)

 

雪穂「…ごめんね、ツカサ」

 

ツカサ「?」

 

亜里沙「私たち、ツカサとの約束…半分だけ守れなかった」

 

亜里沙『あなたと私たちの目的は《μ's》や私たちの世界を助けるために、九つの世界を救うこと…』

 

亜里沙『そして、あなたの記憶が戻るようにお手伝いすること!』

 

雪穂「ツカサの記憶が戻ったことに関しては…私達、何も出来なかったからさ」

 

亜里沙「だから…」

 

ツカサ「…それなら、気にするな」

 

ゆきあり「えっ?」

 

ツカサ「オレは『コタロウ』としての記憶を取り戻したと同時に…『ツカサ』という新しい自分を見つける事が出来た」

 

ツカサ「それは…お前達が一緒に旅をしてくれたからこそ、出来た事だ」

 

ツカサ「だから…ありがとな、二人とも」

 

雪穂「!…ツカサ」フフッ

 

亜里沙「ツカサ…えへへ、こちらこそ!」ニコッ

 

ツカサ「ふふっ…!」スゥゥゥゥ…

 

ツカサ(オレの身体は徐々に透け…ほとんど消えかけていた)

 

ツカサ「…そろそろ、行かなきゃな」

 

雪穂「!…ねえ、ツカサ」

 

ツカサ「ん?」

 

亜里沙「最後に一つだけいい?」

 

ツカサ「?…ああ」

 

雪穂「もしもの時まで…『さようなら』は取っておいてくれる?」

 

ツカサ「…!」

 

亜里沙「きっと私たち…いつかどこかで、また出逢える気がするの!」

 

雪穂「その為に…ありふれた言葉は、寂しくなるから言わないでおきたいなって思うの」

 

亜里沙「そう、だから私たちは笑顔で…『さようならへさよなら!』だよっ!」

 

ツカサ「…さようならへさよなら?」

 

亜里沙「うんっ!」

 

ツカサ「何だよ、それ…また随分と無茶苦茶だな?」

 

亜里沙「えへへ…だって、言いたくなっちゃったんだもん!」

 

ツカサ「言いたくなったって…」

 

雪穂「ふふっ…でも、私達らしくて良いでしょ?」

 

ツカサ「!…ああ、そうかもな」

 

亜里沙「『μ's』のみんなも一緒に…良いでしょ?」

 

絵里「亜里沙…ええ!」

 

ことり「うんっ!」

 

海未「もちろんです!」

 

凛「面白そうニャ~!」

 

真姫「良いんじゃない?」

 

希「いいやん!」

 

花陽「じゃあ、みんなで言っちゃおうか!」

 

にこ「ふふっ…全く、しょーがないわねー!」

 

穂乃果「ツカサくん、本当に…私達の世界を救ってくれてありがとう!」

 

雪穂「別の世界に行っても…私達のこと、見ててよね?」

 

亜里沙「また会おうね…ツカサ!」

 

μ's「さようならへさよなら!」

 

雪穂「…さようならへさよなら!」

 

亜里沙「さようならへ…さよなら!」

 

虎太郎「…」グッ

 

ツカサ(皆が笑顔でそれを言うと同時に…虎太郎がオレに向けてサムズアップをしてくれた)

 

ツカサ「…ああ」グッ

 

ツカサ(消えゆくオレは皆に向けて、サムズアップをし…笑顔で言った)

 

『さようならへさよなら!』

 

 

 

ツカサ「…」フゥ

 

ツカサ(写真館へと戻ったオレは…自分の部屋から持ってきたアルバムのポケットの中に、二枚の写真を入れようとしていた)

 

ツカサ(一枚は…白い制服を着て朝日を見つめる『A-RISE』の三人とサイクロンやハリケーンを整備しながら『A-RISE』の三人が笑い合う写真)

 

ツカサ(もう一枚は、オトノキの制服を着て笑顔で笑う『μ's』の九人と…)

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(オレの知らない…九人の女性達が写っていた)

 

ツカサ「…誰だ?」

 

ツカサ(その時、アルバムの中の一ページが光り出した)

 

ツカサ「!…これは」ペラッ

 

ツカサ(ページを捲ったオレは…とある一枚の写真が変化している事に気付いた)

 

ツカサ(その写真は…オレが雪穂や亜里沙に初めて会った時に撮影した写真だった)

 

ツカサ(中学の制服を着て驚いた顔をしている二人の写真には…『入学式』の看板が立て掛けられたオトノキの正門前で、オトノキの制服を着て笑い合う二人の姿が加わっていた)

 

ツカサ「…ふふっ、そうか」

 

ツカサ「これで本当に…あいつらの世界は救われたんだな」

 

?「その通りだ」カシャッ

 

ツカサ「!?」バッ

 

ツカサ(オレが振り返ると、そこには…マゼンタカラーのトイカメラを持った青年がいた)

 

青年「…」

 

ツカサ「アンタは…門矢士!」

 

士「…」フフッ

 

 

 

μ's「…?」

 

亜里沙「あれ…?」キョロキョロ

 

雪穂「私達、何でオトノキに…?」

 

虎太郎「…」

 

にこ「えっ…どうして虎太郎が一緒にいるの?」

 

虎太郎「…でぃけいどー」

 

全員「!」

 

穂乃果「ディケイド…って、誰?」

 

虎太郎「!」

 

絵里「私達にも分からないわ…」

 

にこ「そういえば…そんな名前の『仮面ライダー』を虎太郎がよく見てたような気がするわね」

 

雪穂「!…仮面」

 

亜里沙「ライダー…?」

 

海未「雪穂、亜里沙…どうかしましたか?」

 

雪穂「…それが、私達にも何が何だかよく分からないんですけど」

 

亜里沙「なんとなく…どこかで聞いたことがあるような気がするんです」

 

花陽「えっ、二人が?」

 

ことり「二人とも、どこで聞いたか…思い出せる?」

 

雪穂「…いえ」

 

亜里沙「何も、分からなくて…」

 

真姫「そう…だったら、無理に思い出そうとする必要もないんじゃない?」

 

凛「そうそう…そのうち思い出せるよ!」

 

亜里沙「…そう、なのかな?」

 

雪穂「そうだと良いんだけど…」

 

希「あれ?…この写真は」ピラッ

 

虎太郎「!…それー」

 

希「へっ?」

 

虎太郎「…」

 

希「そっか、虎太郎くんのやったんやね…はいっ!」スッ

 

虎太郎「…!」

 

希「大事な写真なんやろ?」

 

虎太郎「…うんー」

 

コタロー!

 

虎太郎「!」クルッ

 

にこ「こころ、ここあ…!」

 

ここあ「もう…どこにいってたの、こたろう!?」

 

こころ「きゅうにいえをとびだして…さがしてたんですよ!?」

 

虎太郎「ごめんなさーい…」ペコリ

 

こころ&ここあ「…!」

 

ここあ「ふふっ、まったく…」

 

こころ「しかたがないですね…さあ、わたしたちといっしょにかえりましょう!」

 

虎太郎「うん…」

 

こころ「それではおねえさま…『μ's』のみなさん!」

 

ここあ「ライブのれんしゅう、がんばってね!」

 

にこ「!…ええ」フフッ

 

穂乃果「うんっ!」

 

虎太郎「…またー」フリフリ

 

雪穂「え?あっ…うん、またね」フリフリ

 

亜里沙「またねー!」ブンブン

 

絵里「…あら?」チラッ

 

穂乃果「どうしたの、絵里ちゃん?」

 

絵里「変ね…私、いつの間にリングなんて嵌めてたのかしら?」

 

花陽「えっ…絵里ちゃんも?」

 

凛「凛達もだよ!」

 

海未「不思議ですね…まさか『μ's』の全員が知らないうちに、それぞれのイメージカラーと同じ色の宝石が埋め込まれたリングを嵌めていたなんて」

 

希「これは一種の…スピリチュアルやね!」

 

真姫「そんな訳ないでしょ…?」

 

ことり「…私達、何か夢でも見てたのかな?」

 

にこ「夢…そういえば、何か見たよう気がするわね」

 

穂乃果「…!」ハッ

 

『私達九人はずっと…穂乃果達《μ's》と一緒にいたんだから!』

 

穂乃果「そうだ…これだぁぁぁぁぁ!!」

 

全員「!?」

 

雪穂「ちょっ…いきなり何なの、お姉ちゃん!?」

 

穂乃果「あっ、ごめ~ん…」エヘヘ

 

亜里沙「もしかして…何かひらめいたんですか?」

 

穂乃果「実はね…ある人達に向けて、私達『μ's』の九人で曲を作りたいなって思ったの!」

 

雪穂「ある人達にって…えぇっ!?」

 

亜里沙「今からですか?」

 

穂乃果「うんっ!」

 

穂乃果「作りたいの…『もう一つの私達』の、最後の曲を!」

 

雪穂「でも、もうアキバドームのライブの日まで時間が無いんだよ?皆さんだって急には…」

 

絵里「ハラショー!」

 

亜里沙「!…お姉ちゃん?」

 

花陽「それ、良いと思う!」

 

凛「テンション上がるニャ~!」

 

海未「それなら、まずは…歌詞から考えないといけませんね!」

 

希「うっふふ…真姫ちゃん、曲は出来る?」

 

真姫「!…ええ」フフッ

 

ことり「衣装はどういうのが良いかな、にこちゃん?」

 

にこ「そうね…新しい衣装を作るより、ここはあえて『μ's』が九人になってから初めて披露したあの曲の衣装をグレードアップさせてみたらどう?」

 

穂乃果「それ、良いね~!」

 

穂乃果「よ~し…じゃあ、これからみんなで頑張ろー!」

 

μ's「おー!」ダダッ

 

雪穂「あっ…ちょっと!」

 

亜里沙「…行っちゃったね」

 

雪穂「うん…!」ハッ

 

亜里沙「どうしたの?」

 

雪穂「今、何時だっけ…!?」

 

亜里沙「十時…くらいかな?」

 

雪穂「やっぱり…ほら、学校!」

 

亜里沙「へっ?…あーっ!?」

 

雪穂「完全に遅刻じゃん…早く行こう、亜里沙!」ダッ

 

亜里沙「うん!」ダッ

 

ユキホ…ハヤクハヤク-!

 

ワカッテルッテバ-!

 

少女「…」シャカシャカ

 

 

 

ツカサ(オレは写真館で…『門矢 士』に出会った)

 

士「『光写真館』という名前だけじゃなく、中まで一緒か…大体分かった」

 

ツカサ「どうして、アンタが…!?」

 

士「忘れ物を届けに来たんだ…ほら」ゴトッ

 

ツカサ「!?…これは、雪穂やツバサが持っていたディエンドライバー?」

 

士「写真館の玄関前に落ちてたぞ…おそらく、こいつは今はお前が持っていた方が良いと判断したんだろう」

 

ツカサ「分かるのか、そんな事?」

 

士「ああ…大体、だけどな」

 

ツカサ「…一つ、聞いていいか?」

 

士「何だ?」

 

ツカサ「あの『キバーラ』は…アンタ達の仲間の『キバーラ』と同じ『キバーラ』なのか?」

 

士「…さあな」

 

士「だが、これだけはハッキリと言える…俺の知ってるヤツは『くすくす♡』なんて笑い方はしない」

 

ツカサ「そうか…なるほどな、だいたいわかった」

 

士「…それで、アンタは『これから』も旅を続けるつもりなのか?」

 

ツカサ「!…ああ、旅が教えてくれたんだ」

 

ツカサ「人々を笑顔にする『スクールアイドル』と…人々の笑顔を守る『仮面ライダー』の素晴らしさを」

 

ツカサ「だから、それを伝える為にオレは『これから』も…旅を続けていくつもりだ」

 

ツカサ「何故ならこの世界は…無限に広がっているんだからな!」フフッ

 

士「!…ったく、幸太郎のヤツ…どうやら何も言ってないみたいだな」ハァ

 

ツカサ「言ってない…?」

 

士「お前、旅をするのは良いが…元々は高校に入るつもりだったんだろ?」

 

士「だったら…ちゃんと、高校に行かないといけないんじゃないのか?」

 

士「お前の世界の…音ノ木坂学院にな」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

士「まだ分からないのか?」

 

士「だったら…これを見てみろ」スッ

 

ツカサ(士はオーロラを出現させると…オレにある世界で過ごしている人々の光景を見せた)

 

ツカサ「…!!」

 

 

 

?「…」コンコン

 

ハーイ!

 

?「…」ガラッ

 

かおり「あっ…こんにちは、樹里くん!」

 

樹里「こんにちは、かおり先生…一緒にお昼ごはん食べませんか?」

 

かおり「ふぇっ…私と!?」

 

樹里「うん…先生がイヤじゃなければ、だけど」

 

かおり「そ、そんな事ないよぉ…先生は樹里くんに誘ってもらえてすごーく嬉しいよ!」

 

樹里「ホントに!?」

 

かおり「うんっ!」

 

樹里「えへへ…嬉しいなぁ」ニコッ

 

かおり「うふふっ…♡」

 

 

 

斗里「…どうだ?」

 

萌「う~ん…こっちの味付けの方が斗里くんらしくて良いと思うにゃ!」

 

斗里「そうか…しかし悪いな、俺の作った『Alisaランチ』の試食に付き合ってもらって」

 

萌「ううん、萌は大丈夫だよ!」

 

萌「今月ピンチだから、お昼代浮くし…」ボソッ

 

斗里「今月が何だって?」

 

萌「あっ…ううん、何でもない!」

 

斗里「なら良いんだが…あっ、そういえば」

 

斗里「今朝、釣りに行ったら…金色のザリガニが釣れたんだ」

 

斗里「ザリガニを釣りに来た訳じゃなかったから、すぐにリリースしたんだがな」

 

萌「へぇー、金色のザリガニなんて今どき珍しいにゃ~…って!?」ガタッ

 

萌「金色の…ザリガニ~ッ!?」

 

 

 

?「つぎはひめりのばんだね…そうやくん?」

 

蒼矢「…」コクリ

 

ひめり「えっと…こっちかな?」スッ

 

蒼矢「…」

 

ひめり「やっぱり…?」スッ

 

蒼矢「…」

 

ひめり「…えいっ!」バッ

 

蒼矢「!」

 

ひめり「えっ、こっちがババだったの!?」

 

蒼矢「…」

 

ひめり「そうやくん、つよすぎるよぉ~…どうやったらそんなにつよくなれるの?」

 

蒼矢「…?」キョトン

 

ひめり「わからないんだ…?」

 

蒼矢「…」コクリ

 

ひめり「そっかぁ…うふふっ!」ニコッ

 

蒼矢「…!」フフッ

 

 

 

慧「…良いメロディだね、今のは何て名前の曲なの?」

 

葉太「この曲は…『花陽の決意』という題名です」

 

慧「!…そっか、素敵な題名だね?」

 

葉太「あ、ありがとうございます…!」グゥゥ…

 

慧「あれ…もしかして、お腹空いてるの?」

 

葉太「は、はい…///」

 

慧「だったらさ…お昼、何か作ってあげようか?」

 

葉太「そんな、慧さんに作ってもらうなんて…自分で作りますから」

 

慧「そんな事言わないでさ…こう見えて私、餃子には自信があるんだよ?」

 

慧「私の作る餃子はご飯と合わせたら最高なんだ!」

 

葉太「ほ、本当ですか?…ありがとうございますっ!」

 

慧「ふふっ…どういたしましてっ!」

 

 

 

光穂「それで…今日は何にするの、弓未ちゃん?」

 

弓未「そうですね、どうしましょうか…あら?」

 

光穂「…?」

 

弓未「こちらは…新商品、ですか?」

 

光穂「うん、そうだよっ!」

 

弓未「…ほむまんと何が違うのですか?」

 

光穂「!…ふっふっふ、聞いて驚くなかれ」

 

光穂「それはね…中が白あんになってるんだよっ!」

 

弓未「…白あん、ですか?」

 

光穂「うん、だから…『ゆきほむまん』って名前なの!」

 

弓未「なるほど…これは光穂先輩が考えたのですか?」

 

光穂「ううん、それはね…きぃちゃんと旦那さんが二人で考えたお菓子だよ!」

 

弓未「そうでしたか…では、こちらとほむまんを二個ずつください」

 

光穂「毎度あり~っ!」

 

ミツホ-!

 

光穂「ほぇ?」

 

ほむ婆「あんた、またこしあんとつぶあんを間違えて頼むなんて…一体、何度言ったら分かるんだい!?」

 

光穂「えっ…嘘!?」

 

ほむ婆「そんなつまらない嘘をつく暇があるかい!全く、どんだけドジなんだい!?」

 

光穂「そんなに怒らないでよ~…どうどう」

 

ほむ婆「だから、私は…馬じゃないって言ってんだろ!!」

 

光穂「ご…ごめんなさ~いっ!!」

 

弓未「ふふっ…今日も賑やかですね」クスクス

 

 

 

?「矢澤くん…少し良いだろうか?」

 

にこの母「あら、鬼龍チーフ…どうかしたんですか?」

 

鬼龍「実はまた…沙耶と愛笑が」チラッ

 

沙耶「何よ、私と一緒は嫌だって言うの…?」グギギ

 

愛笑「何だよ、それはお前の方だろ…!」グギギ

 

にこの母「!…全く、しょうがないわねぇ」ガタッ

 

にこの母「ちょっとちょっと…さっきから何を揉めてるの、あなた達!?」

 

沙耶「だから…私はここから後ろに下がっていった方が良いって言ってるの!」

 

愛笑「何言ってんだよ、逆だ!」

 

愛笑「ステージの広さを考えたら、前に出て目立った方が良いだろ!?」

 

沙耶「だからこそ引いて、大きくステージ使った方がいいって言ってるんじゃない!」

 

愛笑「いーや…絶対、前に出るべきだ!」

 

にこの母「振付の事で揉めていたのね…でももうやめなさい、そんな喧嘩は!」

 

沙耶「でも、愛笑が…」

 

愛笑「だって、沙耶が…」

 

にこの母「私から見れば…どっちの振付にも良い所があるんだから、両方取り入れれば良いと思うわよ?」

 

にこの母「だって、あなた達はどっちも皆を笑顔にしてくれる…プロのアイドルには変わりないんでしょ?」

 

二人「!」

 

にこの母「私はそう思うわ…だから、もうそんな事で喧嘩なんてしちゃダメよ?」

 

にこの母「あなた達はいつだって、どんな時も笑顔でいなきゃ!」

 

にこの母「ほら…にっこにっこにー!」

 

二人「…!」

 

愛笑「…沙耶、悪い」

 

沙耶「愛笑…ごめん、私も言い過ぎたわ」

 

愛笑「じゃあ…ここは間を取って、二人で新しいフォーメーション組んでやってみるか!」

 

沙耶「そうね…早速、二人で新しいフォーメーションを考えてみましょう!」

 

にこの母「…」フゥ

 

鬼龍「すまない…それにしても、いつ見ても見事だな」

 

鬼龍「さすがは警察官…と、いったところだろうか?」

 

にこの母「!…いえ、今の私はもう警察官なんかじゃなくて通りすがりのマネージャーです」

 

にこの母「それと…『にっこにっこにー♡』の母、でもありますから!」フフッ

 

 

 

ことり「穂乃果ちゃーん、待って~!」

 

海未「穂乃果、いつも言っているでしょう?」

 

穂乃果「あはは…ごめんごめん」

 

海未「いつも同じ所でタイミングがズレていますよ?」

 

穂乃果「えへへ、ダンスって難しいねぇ…」

 

にこ「寒いってどういうことよ!?」

 

真姫「正直に言っただけでしょ…」

 

凛「にこちゃんは相変わらずニャ!」

 

希「あと三十秒!」

 

絵里「もう少しよ…頑張って!」

 

花陽「は、はい…!」フラフラ

 

海未「さあ…休憩終わったら、ステップの確認を始めますよ?」

 

八人「はーい!」

 

穂乃果「もう海未ちゃん…疲れたよぉ~!」

 

ことり「ふふっ…!」

 

にこまき「むぅ~…ふんっ!」プイッ

 

凛「ニャ~…」

 

絵里「ハラショー!」

 

花陽「ぜぇぜぇ…」ホッ

 

μ's「あはははっ…!」

 

 

 

ツカサ(オーロラ越しにその光景を見たオレは…ある一つの考えに辿り着いた)

 

ツカサ「まさか、これは…オレのいた『μ'sの世界』?」

 

士「そう、お前が元々いた『μ'sの世界』は…怪人が今まで存在してこなかった平和な世界に再構築されたんだ」

 

ツカサ「そんな…あの時、ゼイビアックスによって完全に消滅してしまったはずじゃ」

 

士「誰も完全に消滅したなんて言ってないだろ?」

 

ツカサ「…え?」

 

士「確かにお前のいた『μ'sの世界』はあの時の戦いと…九つの世界との融合の影響で消滅しかけていた」

 

士「だが、お前が『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』の特殊な力を持った二人と出逢って旅をしてきた事で…世界は甦った」

 

ツカサ「特殊な…力?」

 

士「そうだ、あの世界の『高坂雪穂』にはライダーに関連するアイテムをカードとして変化させる力があり…『絢瀬亜里沙』にはカードの能力自体を変化させる力を持っていた」

 

士「つまり、あの二人には…宿命を『改造』させる能力があったんだ」

 

ツカサ「…『改造』」

 

士「そして…その二人の力は、幾つもの世界を写真に撮ってきたお前に受け継がれている」

 

ツカサ「!…オレに?」

 

士「ああ、自分自身の記憶を取り戻したお前がこれまでに出逢った人々を写真に撮った事で覚えていたおかげで…お前の世界は甦ったと同時に生まれ変わった」

 

士「お前自身が望んだ形に『改造』されてな…即ち、今までしてきたお前達の旅に一つも無駄は無かったって事だ」

 

ツカサ「…!」ハッ

 

ほむ婆『どんな旅にも無駄はないからね…どんな人生にも無駄がないのと同じさ』

 

ツカサ「そう…だった、のか」

 

士「それと誰かからの間違った情報で勘違いしているようだが、お前と一緒に旅をしてきた『高坂雪穂』と『絢瀬亜里沙』の二人がいるあの世界は…『μ'sの世界』じゃない」

 

ツカサ「なっ…はぁ!?」

 

士「よく見ろ、あれを…」スッ

 

ツカサ「?…!」

 

ツカサ(士が指差す背景には…背を向けた九人の少女と、音ノ木坂学院が描かれていた)

 

ツカサ(だが…その九人は、少女というよりかはどこか大人っぽいような雰囲気があった)

 

ツカサ「あれは『μ's』…じゃない?」

 

士「いや、間違いなく『μ's』だ…あいつら九人もな」

 

ツカサ「…どういう意味だ?」

 

士「この世界は本来、九つの世界とは異なる…同じ名前の別世界と繋がるはずだった」

 

士「その二つの世界の名前が…『ラブライブ!の世界』だ」

 

ツカサ「!!」

 

士「そして、二つの世界は繋がった…お前が九つの世界との融合を止めた事でな」

 

ツカサ「…そうか、それが本当のあるべき世界だったのか」

 

士「ああ」

 

ツカサ「でも…あの九人が『μ's』っていうのはどういう事なんだ?」

 

士「…そのリングを、右手の中指に嵌めてみろ」

 

ツカサ「!…これを?」

 

士「そうだ…それと、これはお前が持っているべきだ」スッ

 

ツカサ(士はシルエットが描かれた三枚のカードを…オレに手渡した)

 

ツカサ「このカードは…?」

 

士「すぐに分かる…じゃあ、俺は行くぞ」クルッ

 

ツカサ「もう行くのか?」

 

士「色々と忙しいからな…また会おう、元気でな」スタスタ

 

ツカサ(そう言って、士は…別世界へと繋がるオーロラの中へと吸い込まれていった)

 

ツカサ「…ああ、またな」

 

ツカサ(士を見送ったオレは…九色の宝石がキラリと輝くリングを左手の薬指から右手の中指に付け替えた)

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(その瞬間、シルエットしか見えなかった三枚のカードが光り出した)

 

『カメンライド ディエンド』

 

『カメンライド キバーラ』

 

ツカサ(そのうちの二枚は…雪穂と亜里沙の力だった)

 

ツカサ「雪穂、亜里沙…」チラッ

 

ツカサ(そして、最後の一枚には…『μ's』とだけ描かれていた)

 

ツカサ「?…何だ、このカード」

 

ツカサ(何となく気になったオレは、ディケイドライバーを装着し…そのカードを入れてみた)

 

『ソングアタックライド…ミュ・ミュ・ミュ・ミューズ!』

 

 

 

ツカサ(気が付いたオレは…知らない場所にいた)

 

ツカサ「!」

 

ツカサ(前方には大きなステージがあり、周囲には大勢の人々が…これから始まると思われる何かを待ちわびていた)

 

ツカサ「…ここは?」

 

?「『東京ドーム』だ」

 

ツカサ「はぁ?…!?」

 

ツカサ(オレの隣には…チューリップハットにコートを着用し、眼鏡をかけた見覚えのある中年男性がいた)

 

鳴滝「…お前が新しいディケイドか」

 

ツカサ「な、鳴滝…!」

 

ツカサ(『μ'sic Forever』と書かれたハチマキを帽子の上に巻いた鳴滝は…二本のサイリウムを持って、周りにいる人々と同じように何かを待っている様子だった)

 

鳴滝「おのれディケイド…お前の旅によって、世界は再び混沌を迎えた!」

 

鳴滝「何やら別の世界の私が世話になったようだが…私は決して、お前のようなひよっこを認める訳にはいかん!」

 

ツカサ「いや、それより…何だその変な格好は!?」

 

鳴滝「見て分からないのか?私は…『μ's』のライブを見に来たのだ」

 

ツカサ「はぁ!?…ん?」

 

鳴滝「!…いよいよだな」

 

ツカサ(その直後、ステージに九人の女性が現れた)

 

ツカサ「あれは…!」

 

ツカサ(ステージに立った九人の女性は歌い、踊り、走って…多くの人々を笑顔にしていた)

 

『小泉花陽』

 

『矢澤にこ』

 

『星空凛』

 

『東條希』

 

『西木野真姫』

 

『絢瀬絵里』

 

『園田海未』

 

『南ことり』

 

『高坂穂乃果』

 

ツカサ(その姿は…紛れもなく『μ's』だった)

 

ツカサ「ふふっ…なるほどな、だいたいわかった」

 

ツカサ「そうか、彼女達がもう一つの…!」

 

オノレディケイドォォォ!!

 

ツカサ「?」チラッ

 

ツカサ(オレが声のする方を見ると…そこには係員達に抑えられながら、興奮している様子の鳴滝がいた)

 

鳴滝「スクールアイドルというのは、なんて素晴らしいんだぁぁぁ!!」ジタバタ

 

ツカサ「鳴滝…ああ、オレもそう思う」フフッ

 

ツカサ(しばらくして、ステージにいる九人の中でセンターとして立っていた女性が…観客に向けてこう言った)

 

女性「ここ、ドームでライブをして…本当に本当にスゴい事なんだけど、何だか…不思議と怖くはありませんでした」

 

女性「それは…この九人だから」

 

女性「そして、穂乃果達九人がいるから…!」

 

女性「そして何より…『ラブライブ!』を愛してくれる、皆がいるから!」

 

ツカサ「…!」

 

女性「ありがとう…『μ's』は限られた時間の中で精いっぱい輝く、そんな女の子達です」

 

女性「私達も彼女達の後を追って、こうして今まで歩んできたけれど…これからは少し形を変えていくかもしれません」

 

女性「でも、この輝きはずっと続いていくんです…皆が『μ's』の事を…『ラブライブ!』の事を、ずっとずっと大好きでいてくれたら!」

 

女性「私達はしばらくこういう形で会えなくなるかもしれないけど、私達は…ずっと『μ's』です!」

 

女性「今日まで本当にありがとう…これからもどうぞ、よろしくお願いしますっ!」

 

アリガトー!

 

女性「っ…ありがとう」

 

女性「約束はちょっとまだ出来ないんだけど…私は、私達は絶対にまた皆に会いたいと思ってる」

 

女性「それは…『十八人』同じ気持ちだと思っています」

 

女性「だから…この言葉を受け取ってください!」

 

女性「また会うその日まで…みんな、ファイトだよっ!!」

 

ワァー!!

 

女性「ありがとうございました!」

 

ツカサ「…穂乃果」フフッ

 

ツカサ(スクールアイドル…『μ's』)

 

ツカサ(それは…とある一ページから生まれた)

 

ツカサ(彼女達が別世界にいる彼女達と向き合う事で、彼女達は一心同体となり…)

 

ツカサ(オレ達は、その想いに光を見つけ…今まで応援してきた)

 

ツカサ(そんな『μ's』を中心とした、人々の想いによって…『ラブライブ!』はドームライブが開かれるまでになり)

 

ツカサ(今もまた、色んな場所で…新しい夢が生まれている)

 

ツカサ(そして、彼女達が次に披露する曲は…!)

 

女性「…次で、本当に最後の曲です」

 

女性「『μ's』…ファイナルシングル」

 

『MOMENT RING』

 

 

 

ツバサ「!…始まる」

 

エレナ「…」フフッ

 

アーライズ!アーライズ!

 

アンジュ「うふふっ…完全にフルハウスねぇ?」

 

エレナ「…二人とも、準備は良いか?」

 

ツバサ「ええ!」

 

アンジュ「もちろん…!」

 

エレナ「よし、じゃあ行くぞ…我々は一つ!」

 

アンジュ「『A-RISE』として…もう一度、ステージで輝きましょう!」

 

ツバサ「ええ、私達…三人で!!」

 

 

 

シズカ「みんな~…今日は『TETRA-LIFE』のライブに来てくれてありがとう!」

 

ワァー!ヒューヒュー!

 

シズカ「実はここで…バイオリンを弾いてくれるスペシャルゲストを呼びたいなと思ってます!」

 

シズカ「私達の前身ユニットである『TETRA-RICE』のメンバーのハナヨちゃんです…それではどうぞ~!」

 

ハナヨ「…」ペコリ

 

パチパチパチ…

 

ハナヨの母「…」パチパチパチ…

 

ハナヨ「…!」スッ

 

ハルナ「た、大変だよぉ~!」ガラッ

 

ハナヨ「えっ?…ハルナちゃん!?」

 

ハルナ「未来が大変なことになってるの…ママの力を貸して!」ガシッ

 

ハナヨ「いや、あの…ええっ!?」

 

ハルナ「こうしてる間にもネオファンガイアが私のことを…行くよ、ママ!」ダッ

 

ハナヨ「ダ、ダ、ダ…」ズルズル

 

キバット「よ~し…未来もキバるぜー!」バサバサ

 

ハナヨ「ダレカタスケテー!!」

 

 

 

コトリ「モモちゃん、ウラちゃん、キンちゃん、リュウちゃん…まだ話したい事があったのに」

 

コトリ「さよならも、言えなかったよぉ…!」グスッ

 

パナ「…ううっ」ポロポロ

 

コトリ「またいなくなっちゃうなんて、イヤだよぉ…!」

 

モモ「…」

 

ウラ「…」

 

キン「…」

 

リュウ「…」

 

ズィーク「…」

 

モモ「…マズいわね」

 

モモ「完っ全にタイミング逃したわ…困ったわね、せっかく『ドッキリ大成功!』みたいな感じで『私達、参上!』の札まで作ったっていうのに」ハァ

 

ウラ「センパイ、早く出て行った方が良いんじゃないの?」

 

モモ「無理に決まってんでしょ、アンタ…あんだけ泣かれたら出て行けるワケないじゃない!」

 

ウラ「じゃあ、私が…!」スッ

 

モモ「何でアンタが行くのよ!?」ガッ

 

ズィーク「…コトリ、何故私の名を呼んでくれなかったのですか!?」スッ

 

キン「ちょっと、オーナーさんが最初に行ったらおかしくなっちゃうよ!」ガッ

 

リュウ「じゃあリュウが行く~!」スッ

 

モモ・ウラ・キン「ダメ!」ガッ

 

リュウ「ニャッ!?」

 

ズィーク「何故、私の名を呼んd…」スッ

 

モモ・ウラ・キン「座ってて!」ガッ

 

ズィーク「私が真っ先に…!」スッ

 

四人「いいから座って!」ビシッ

 

リュウ「…って、うわっ!?」

 

モモ「?」クルッ

 

コトリ「…」

 

モモ「!?」

 

コトリ「…何、してるの?」

 

モモ「あっ、あはは…どうもー…」

 

コトリ「みんなっ…みんなぁ~!」ダダッ…バッ!

 

五人「わぁっ!?」ドサッ

 

コトリ「うふふっ…!」

 

モモ「ふふっ…こうなったら、私達でコトリを胴上げよ!」

 

ワーッショイ!ワーッショイ!

 

パナ「よ、良かったぁ…」グスッ

 

ユウコ「…行きましょう、デネヴ」スタスタ

 

デネヴ「!…うん」

 

 

 

ヒヨリ「アリサちゃん…ハラショーランチ、オーダー入ったよ!」

 

アリサ「うんっ!」

 

カランカラン…

 

子供達「ヒヨリー!」

 

ヒヨリ「だからヒヨリさん、だろ…どうしたんだ?」

 

男の子「ぼく、おでんがたべたい!」

 

女の子「わたしも!」

 

ヒヨリ「!…あいよ、おでん入ったよー!」

 

アリサ「はーい!」

 

女の子「ねぇ、かしこいかわいいおねえちゃんはどこへ行ってしまったの…?」

 

ヒヨリ「うん?あのお姉ちゃんはね…今、豆腐を買いに行ってるんだよ!」フフッ

 

~その頃、海外では~

 

スタスタ…

 

ランナー「コンニチワァ…!」

 

エリ「…」クルッ

 

ランナー「コ、コンニチワァ…?」

 

エリ「…おばあさまが言っていた」スッ

 

エリ「私はかしこいかわいいエリーチカ…天の道を往き、総てを司る者よ」フフッ

 

 

 

サキ「…綺麗な朝日ね」

 

ノゾミ「…実はウチがキリュウ校長と最初に出会った時も、この屋久島の朝日を一緒に見たんよ」

 

サキ「!…そう」

 

ノゾミ「うん…ええなぁ、太陽って」

 

サキ「…私は、今まで一生懸命生きてきた」

 

ノゾミ「?」

 

サキ「スクールアイドルになって…皆と頑張って、お父さんにも認められて」

 

サキ「それもこれも、全部…ノゾミが支えてくれたから」

 

ノゾミ「…!」

 

サキ「実はあなたに憧れてたの、初めて会った時から…ずっとノゾミみたいになりたいって」

 

サキ「でも、それじゃダメなんだって…気が付いたの」

 

サキ「あなたの真似をするだけじゃ…本当に私がちゃんと生きてるって事には…ならないんじゃないかって」

 

サキ「それが、ノゾミの教えてくれた事なんだって…分かったの」

 

ノゾミ「…これでもウチ、ずっとあだっちの事が心配だったんよ」

 

サキ「!」

 

ノゾミ「やっぱり難しいなぁ、強く生きてくのって…でもな?」

 

ノゾミ「ウチは信じてるんよ…人間はいつだって変われるんやって」

 

ノゾミ「だから、あだっちには…あだっちらしく生きてほしい」

 

ノゾミ「何があっても…ね!」フフッ

 

サキ「…ノゾミ」

 

ノゾミ「鍛えたね、あだっち…出逢った頃からずっと、あだっちはウチの自慢の友達やったよ!」

 

サキ「ふふっ…ありがとね、ノゾミ!」シュッ

 

ノゾミ「うふふっ…ぶいっ!」シュッ

 

 

 

シオリ「ウミちゃ~ん!」

 

ウミ「!…はい?」

 

シオリ「お願いがあるんだけど、お使いに行ってくれないかな…これ」サッ

 

ウミ「贈答用の花束ですか…分かりました、行って参ります!」

 

ウミ「…とは言ったものの、この花で良かったのでしょうか?」スタスタ

 

ウミ「…!」

 

アマネ「…」フフッ

 

ウミ「アマネ?」

 

アマネ「ウミ…」

 

ウミ「アマネ…!」

 

ウミ「…気のせいでしたか」

 

アマネ『私は…いつだってあなた達の心の中にいるから』

 

ウミ「!…ふふっ」スタスタ

 

 

 

マコ「んっ…あ~!何か久しぶりだよね、こんなによく晴れたのって?」

 

ユカ「ふわぁ~…てか、超眠いんだけど」

 

マキ「でも、さっきまであなた達…本気で寝てたわよ?いびきなんかかいちゃって」

 

ユカ「えっ…マジでか!?」

 

マコ「そういえば何か…変な夢を見たような気が」

 

マキ「夢っていえば…私、新しい夢が見つかったわ」

 

ユカ「へぇ…どんな夢なんだよ?」

 

マコ「教えて、マキちゃん!」

 

マキ「…!」ハッ

 

マコ「…どうしたの?」

 

マキ「いえ…何でもないわ」

 

ユカ「それで…何なんだよ?マキの新しい夢って」

 

マキ「…スクールアイドルであるあなた達の衣装をクリーニングしてる時に思ったの」

 

マキ「世界中の洗濯物が真っ白になるみたいに…皆が、幸せになりますように」

 

マコ「そっか…素敵な夢だね!」

 

マキ「…」

 

ユカ「ん…マキ?」

 

マキ「…」スヤスヤ

 

マコ「!…寝ちゃってるね」

 

ユカ「ビックリさせんなよ…じゃあ、アタシ達もひと眠りするか」

 

マコ「…うん」

 

マキ「ふふっ…」スヤスヤ

 

 

 

リン「今日は疲れたニャ~…あれ?」

 

リン「喫茶店がある…行ってみよう!」ダッ

 

リン「…ニャ?何か聞こえる」

 

オバサン…モウイイカラ!

 

ヨクニアッテルワ…コレモキテミナサイヨ!

 

ヤメテッテ!

 

ワタシノカンニマチガイハナイワ!

 

リン「…?」

 

ガチャ…ガンッ!

 

リン「へぶっ!?」ドサッ

 

ユイ「もう、これ以上は着せないで…って!?」

 

リン「痛いニャ~…あれ?」

 

ユイ「ご、ごめんなさい…大丈夫?」

 

リン「あっ、うん…!」

 

ユイ「…?」

 

リン「…」ジー

 

ユイ「何?」

 

リン「その服…かわいいニャ~!」ギュッ

 

ユイ「なっ、ちょっと…離れなさい!」

 

リン「さすがユイちゃん、花鶏高校の人気スクールアイドルだけあるニャ~!」スリスリ

 

ユイ「っ!何で私だけがこんな目に…///」

 

リン「えへへっ…!」

 

 

 

ユキホ「…」スタスタ

 

ユキホー!

 

ユキホ「あれ…マナ?」

 

マナ「一緒に帰ろう!」

 

ユキホ「!…うん」フフッ

 

マナ「…実は私ね、スクールアイドルになろうと思ってるの」

 

ユキホ「えっ…そうなの?」

 

マナ「うん、ホノカさん達がスクールアイドルをやってきたのを見て…私も頑張ろうと思うの」

 

マナ「まずは基礎体力をつける為に…これから神田明神の男坂で特訓だよ!」

 

ユキホ「スゴいじゃん…私も応援するよ!」

 

マナ「!…ありがとう」フフッ

 

ユキホ「あっ、そうだ…その前にウチに寄ってかない?」

 

ユキホ「スクールアイドルを始めるお祝いに…今日はマナの食べたい和菓子、私が何でもおごるよ!」

 

マナ「良いの?」

 

ユキホ「うん!」

 

マナ「じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな?」

 

ユキホ「よし、そうと決まったら…!」ガララッ

 

ユキホ「お姉ちゃーん!」

 

ハーイ!

 

マナ「…!」

 

ホノカ「おかえり、ユキホ…あっ!」

 

マナ「こんにちは!」

 

ホノカ「マナちゃんも…いらっしゃい!」

 

ホノカ「さっ、こちらどうぞ…今日は何にする?」

 

マナ「じゃあ…ほむまんで!」

 

ホノカ「かしこまりました!」

 

ユキホ「私もそれで…今日は私が出すから!」

 

ホノカ「おっ、毎度あり~!」

 

ユキホ「…」フフッ

 

 

 

ニコ「にっこにっこにー♡…はい!」

 

ニッコニッコニー!

 

ニコ「全然ダメ、もう一回!」

 

ニッコニッコニー!

 

ニコ「そこのアンタ…気合入れて!」

 

ニッコニッコニー!

 

ニコ「はい、ラスト一回!」

 

ニッコニッコニー!

 

ニコ「良い笑顔ね…やれば出来るじゃない!」

 

アハハハハ…

 

ニコ「オッケー…その笑顔、忘れるんじゃないわよ!」

 

チャオ-!ニコニー!

 

ニコ「ふふっ…にっこにっこにー!!」

 

ニコ「…それにしても、今日は一段と晴れてるわね」スタスタ

 

ニコ「キレイな青空…あの子達を連れて見せたいくらいだわ」

 

ニコ「アンタ達も笑顔でいるんでしょ?…マナミ、ツカサ」フフッ

 

 

 

?「…」ポチッ

 

(音楽プレーヤーを停止させた制服姿のオレがイヤホンを外し、空を見上げると…澄みきった青空の中を飛び回る二羽の白い鳥を見つけた)

 

?「…!」

 

(その直後、一枚の羽根が…どこかへと舞っていった)

 

?「…そうか、だいたいわかった」フフッ

 

ガチャ…

 

アレ?チョットアリサー!?

 

?「!」

 

亜里沙「あれ?…屋上に誰かいるよ、雪穂!」

 

雪穂「だから、そう言ってるじゃん…もう」

 

?「…」

 

亜里沙「!…あなたは確か」

 

雪穂「隣のクラスの矢澤コタロウくん…だったよね?」

 

コタロウ「…ああ」

 

亜里沙「ハラショー…あなたがコタロウくん!?」

 

亜里沙「いつもあなたの話、樹里から聞いてるよ…樹里と友達になってくれて本当に嬉しいよ!」

 

コタロウ「いや…こっちの方こそ、一緒にいられて良かったよ」

 

コタロウ「ありがとな…雪穂、亜里沙」

 

ゆきあり「!」

 

亜里沙「へっ?」

 

雪穂「今、何て…」

 

コタロウ「…ここ、使うんだろ?」

 

雪穂「え?…あっ、うん!」

 

コタロウ「邪魔したみたいで何か悪かったな…じゃあ、オレはこれで」スタスタ

 

ゆきあり「…ツカサ!」

 

コタロウ「!」バッ

 

亜里沙「…あれ?」

 

雪穂「私達、何で矢澤くんの名前を間違えて呼んだんだろう…?」

 

亜里沙「ホント、何でかなぁ…ごめんね?」

 

コタロウ「…いや、別にいい」スタスタ

 

雪穂「あっ…待って!」

 

コタロウ「?」クルッ

 

亜里沙「本当に、ありがとう!」ニコッ

 

雪穂「…ありがとね」フフッ

 

コタロウ「!…ああ」

 

ギィ…バタン

 

(オレが校内に入り、階段を降りようとした時…二人の話し声が聞こえてきた)

 

雪穂「日陰も無いし、雨が降ったら使えないだろうけど…やっぱりここしかないよね、贅沢は言ってられないし」

 

亜里沙「うん…でも、ここなら音も気にしなくて済みそうかも!」

 

亜里沙「よーしっ、がんばって練習しなくちゃ!」

 

雪穂「…ねえ、亜里沙」

 

亜里沙「ん?」

 

雪穂「…やり遂げようよ、最後まで!」

 

亜里沙「雪穂…うんっ!」

 

亜里沙「絶対、一緒に…やり遂げようね!」

 

コタロウ「…やり遂げろよ、最後まで」フフッ

 

コタロウ「さあ、今日も行くか…『彼女達』の想いと一緒に、誰も見た事のない新しい世界へ」スタスタ

 

(叶え、みんなの夢――)

 

(叶え、もう一つの夢――)

 

コタロウ「叶え…新しい、夢」ポチッ

 

(階段を降りてからイヤホンを着けたオレは、これまでの旅を思い出しながら…音楽プレーヤーの再生ボタンを押した)

 

『Stay the Ride Alive』

 

 

 

 

 

~Journey though the Lovelive!~

 

 

 

 

 

ラブライブ!×平成ライダー

クロスオーバーSS

『9つの道はいつか重なって』

 

 

 

 

 

~完~





















(それからしばらく経ったある日、異変を感じてとある世界へと向かったオレは…顔や胸に『X』のマークが刻まれている機械兵と戦っていた)

『カメンライド…ディケイド!』

ディケイド「はっ!」ガッ!

機械兵「…!」ドサッ

ディケイド「こいつが『ガーディアン』か…とても『守護者』なんて名前には思えないな、一発でやられるようじゃ」ハァ

ディケイド「しかし、一体…この世界で何が起きてるんだ?」

?「…知りたいですか?」

ディケイド「!」バッ

(オレが振り向くと…そこには、オトノキの制服を着た一人の少女がいた)

少女「…」

ディケイド「…?」

少女『私は…《悪魔の科学者》ってところです』

ディケイド「アンタは確か、あの時の…!」

少女「それは…あなたが九つの世界の『仮面ライダー』達を破壊しなかったせいなんです」

ディケイド「破壊って…はぁ!?」

少女「…私のあの時の言葉、覚えてますか?」

少女『あなたが全ての仮面ライダーを破壊する者だからです…何故なら《創造》は《破壊》からしか生み出せませんから』

少女『残念な事だけど、何も残してはいけないんです…何も』

少女「あなたは全ての『仮面ライダー』を破壊しなければいけなかった…でも、仲間にしてしまった」

少女「そして、ある物を残してしまった…それは大きな過ちでした」

ディケイド「残した…どういう事だ?」

少女「…」スッ

(少女はオレの質問には答えず…制服のポケットから小さなボトルを二つ出した)

少女「ディケイド、今から私が…あなたの旅を終わらせます」シャカシャカ

ディケイド「…!」

(それから少女は特殊な形状をしたベルトを腹部に装着し…そこに二つのボトルを挿入した)

『ラビット!』

『タンク!』

少女「…」グルグル

(それから、ベルトの右側にあるレバーを回転させた少女は…)

『Are you ready?』

少女「…変身」

(少女の前後にプラモデルのパーツのような装甲が現れると…それらが少女を覆い、赤と青の二色の戦士に姿を変えた)

『ラビットタンク!!』

???「…」

ディケイド「…!」

???「さあ、実験を始めましょう…!」ダッ

(戦士はオレに対して攻撃を仕掛けてきた)

???「ふっ!」ブンッ

ディケイド「!」サッ

???「はぁっ!」バッ

ディケイド「っ!」ササッ

(オレは戦士が繰り出してくる攻撃を全てかわした)

???「!…あなた、どうして戦わないんですか?」

ディケイド「…」

???「答える気は無いという事ですか…だったら、これで!」シャカシャカ

(戦士は…別の二本のボトルを出してきた)

ディケイド「なっ…それは!?」

『ミューズ!』

『アライズ!』

???「…」グルグル

『Are you ready?』

???「…ビルドアップ」

『サニーデイソング!!』

(ベルトのレバーを回した戦士は…赤と青の形態からマゼンタとシアンの形態に変化した)

???「…これなら、やる気になってくれますよね?」

ディケイド「『サニーデイソング』か…そうか、だいたいわかった」スッ

(オレは…三枚のカードをライドブッカーから取り出した)

ディケイド「雪穂、亜里沙…借りるぞ」

『カメンライド…ディ・エンド!』

『カメンライド…キバーラ!』

(三枚のうち二枚のカードを連続でディケイドライバーに装填したオレは…身体の色をマゼンタからシアンに変え、キバーラサーベルを手にした)

???「っ…!」グルグル

ディケイド「…!」スッ

(戦士がベルトのレバーを回すと同時に、オレも最後の一枚のカードを入れた)

『ボルテックフィニッシュ!!』

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

???「ふっ…!」バッ!

ディケイド「…はっ!」

???「やぁーっ!」

ディケイド「はぁーっ!」

(輝く戦士の跳び蹴りとオレの青く光るキバーラサーベルの斬撃がぶつかり合い、大きな爆発が起こった)

少女「きゃっ!」ドサッ

ツカサ「うわっ!?」ゴロゴロ

(オレ達の変身は強制解除され、共に吹き飛ばされてしまった)

少女「変身が…」

ツカサ「…引き分けってところだな」

少女「!…そうですね、あなたもそれ以上は戦えないみたいですし」フフッ

ツカサ「…」

少女「ひとまず『μ's』ボトルと『A-RISE』ボトルの起動実験の方は成功しましたから…あなたを倒すのは次の機会という事にしましょう」スタスタ

ツカサ「待て!…アンタ、何者だ?」

少女「…『ビルド』」

ツカサ「『ビルド』?」

少女「創る、形成するという意味の『ビルド』ですよ…世界の破壊者であるあなたとは正反対の存在です」

ツカサ「!」

少女「以後、お見知り置きを…See you!」スタスタ

ツカサ「…仮面ライダービルド、か」









(その夜、オトノキの制服を着た私は…『浦の星女学院』の音楽室でピアノを弾いていた)

サヨ「…」~♪

(曲を弾き終えて音楽室を出た私は…屋上に上がり、遠くにそびえ立つ巨大な壁を眺めた)

サヨ「あれが…『スカイウォール』」スッ

(私はポケットからゲームカセットの形状をした紫色のアイテムを取り出した)

サヨ「…クローン体として造られたのは『μ's』の九人だけじゃないわ」

サヨ「待っててね…皆」カチッ

『マイティアクション・エーックス!』

サヨ「…うふふっ♡」

~The Next Sunshine!!〜


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話『あれから』
#1


ゆきあり「前回の『ラブライブ!』」

亜里沙「アキバドームで第三回『ラブライブ!』を開くために、海外でのライブを成功させたお姉ちゃんたち『μ's』!」

雪穂「でも、日本に帰ってきたお姉ちゃん達『μ's』はファンのみんなから次のライブを期待されていて…」

ツバサ『私達は続ける…あなた達にも続けて欲しい』

絵里(私達はやっぱり…スクールアイドルである事にこだわりたい)

穂乃果『…見つかったよ、答え』

雪穂「それから、改めて活動を終えることを決意した『μ's』は…」

亜里沙「全国から集まったスクールアイドルのみんなと一緒に、ライブを開いた!」

穂乃果『今の私達なら、きっとどこまでだって行ける…どんな夢だって叶えられる!』

穂乃果『伝えよう…スクールアイドルの、素晴らしさを!!』

ゆきあり「そして『μ's』の最後のライブは…!」


(夏に入る直前、オレは…とある重要な任務を遂行していた)

 

少年「…」

 

?「~!」ジタバタ

 

少年「おい、ジッとしてろ…な?」ナデナデ

 

?「…!」

 

少年「良い子だ…ちょっとくすぐったいぞ?」ヴィーン…

 

?「…」

 

少年「よし、もう大丈夫だ…ほら」スッ

 

子アルパカ「メェ~ッ!」ピョンピョン

 

茶アルパカ「メェェッ…♪」

 

白アルパカ「メェ~♪」モシャモシャ

 

少年「ふぅ…これで今年の毛刈りは終わったな」

 

子アルパカ「メェ~?」

 

少年「…もしかして、ありがとうって言ってくれてるのか?」

 

子アルパカ「メェ~!」スリスリ

 

少年「!…どういたしまして」フフッ

 

タイヘンヨー!

 

少年「…?」クルッ

 

???「はぁはぁ…」バサバサ

 

少年「!…お前は」

 

???「話は後よ、とにかく一緒に来て…ぐるぐるぐるぐる~!」グルグル

 

少年「おい、ちょっと待てキb…おわぁぁぁっ!?」

 

(オレはヤツの能力によって無理矢理、とある世界へと連れて行かれたのだった…)

 

 

 

(それは…中学三年生に進級してから間もない頃の事だった)

 

ユキホ-!

 

雪穂「んー?」クルッ

 

同級生A「雪穂は高校、どこ受けるの?」

 

雪穂「!…UTX、だけど」

 

同級生B「やっぱりそうだよね~!」

 

同級生A「音ノ木坂は無くなっちゃうみたいだし…受けてもしょうがないもんね?」

 

雪穂「…うん、そうだね」

 

(あの時の私は…おばあちゃんやお母さんも通っていたオトノキに進学する事を諦めていた)

 

(何故なら、オトノキは…生徒数の減少が原因で廃校になる事が決まりかけていたからだった)

 

(でも、現役でオトノキに通っているお姉ちゃんだけは…それを受け入れられなかったみたいで)

 

穂乃果『そんなことない、ことりちゃんと海未ちゃんとでなくならないように考えてるの…だからなくならない!』

 

雪穂「どうにか出来る問題じゃないのに…ホント、お姉ちゃんってば頑固なんだから」ハァ

 

同級生A「えっ?」

 

同級生B「何か言った?」

 

雪穂「あっ…いや、何でもない何でもない!」ブンブン

 

キーンコーンカーンコーン…

 

同級生A「あっ…ホームルームの時間だ!」

 

同級生B「早く席に座ろう!」ダダッ

 

雪穂「…」

 

先生「はーい、皆さん…おはようございます!」ガラッ

 

生徒達「おはよーございます!」

 

先生「今日は皆さんに新しいクラスメートを紹介します…さあ、入って!」

 

雪穂「…?」

 

(先生に促されて、教室に入ってきたのは…クリーム色のロングヘアに青い瞳が特徴的な女の子だった)

 

?「こ、こんにちは…絢瀬亜里沙です!」

 

亜里沙「ロシアからやってきました…まだ日本に来たばかりで慣れないところもありますが、よろしくお願いしますっ!」ペコッ

 

パチパチパチ…

 

雪穂「…かわいい」ボソッ

 

先生「それじゃ絢瀬さんの席は…そうね、高坂さんの隣が空いてるからそこに座ってもらいましょうか」

 

亜里沙「はい!」スタスタ

 

雪穂「!」

 

亜里沙「…よろしくね、高坂さん!」ニコッ

 

雪穂「え?あっ…うん」

 

(これが…私と亜里沙が初めて交わした会話だった)

 

 

 

(それから少し経ったある日…教室で昼休憩を過ごしていた私は音楽プレイヤーである曲のライブを再生しながら、鼻歌を唄っていた)

 

亜里沙「フフフフフフフン、フンフフンフン…」~♪

 

雪穂「…?」チラッ

 

雪穂「!…お姉ちゃん!?」

 

亜里沙「へっ?」

 

雪穂「あ、いや…ごめん!」

 

雪穂「見るつもりじゃなかったんだけど…動画に私のお姉ちゃんっぽい人が映ってたから、つい」

 

亜里沙「お姉ちゃんって…『μ's』の!?」ガタッ

 

雪穂「うわぁっ!?」ビクッ

 

亜里沙「ねえ、高坂さんって…『μ's』の妹なの?」

 

雪穂「ミ、ミューズ?」

 

亜里沙「知らないの?オトノキのスクールアイドル…『μ's』!」

 

雪穂「『μ's』って…!」ハッ

 

雪穂『これ、お姉ちゃんのー?宛名がないんだ…《μ's》って書いてあるけど?』

 

雪穂「まさかお姉ちゃん…学校のために、スクールアイドルを?」

 

亜里沙「教えてよ、高坂さん!」ズイッ…ガシッ

 

雪穂「絢瀬さん!?い、いや…顔近いから!」

 

亜里沙「お願いお願いお願い!」ユサユサ

 

雪穂「あ、絢瀬さん…ちょっと待っt」

 

同級生A「あれ…雪穂、もう絢瀬さんと仲良くなってる?」

 

同級生B「良いねぇ~…青春って感じだね!」

 

雪穂「いや…見てないで何とかしてよー!」

 

(その出来事がきっかけで…私と雪穂はよく話すようになり、お互いに名前で呼び合うようになった)

 

(別のクラスにいたもう一人の子とも仲良くなり…いつの間にか私達三人は、友達になっていた)

 

(三人で一緒に『μ's』のライブを見て…一緒に感動して、笑って、ドキドキしていた)

 

 

 

(それから中学を卒業した私と亜里沙は…お姉ちゃん達『μ's』が守ったオトノキに入学した)

 

(そして、二年後…私達はアイドル研究部の部長と副部長になった)

 

(私達は興味を持った新入生にライブに来てもらい、部に入ってもらう為に…アイドル研究部の活動内容を伝えた)

 

(でも、その数ヶ月後…私達二人にある出来事が起こった)

 

キーンコーンカーンコーン…

 

雪穂「よっと…」ガタッ

 

雪穂「…」チラッ

 

亜里沙「…」

 

雪穂「…」スタスタ

 

後輩「…」ハァ

 

?「おい…ちょっと良いか?」

 

後輩「あっ、山田先生…」

 

山田「あの二人、何かあったのか?」

 

後輩「実は…部活の事で喧嘩しちゃって、それっきりずっと話していないみたいなんです」

 

山田「何…あんなに仲の良かった二人がか?」

 

後輩「はい…そのせいで、今度開催される『東京スクールアイドルワールド』というイベントの出場も辞退してしまって」

 

山田「!…そうだったのか」

 

後輩「ええ、今まで先輩達が喧嘩しているところを見た事が無かったんですけど…それだけに心配で」

 

山田「そうだな…大丈夫だと、良いんだがな」

 

亜里沙「…」ハァ

 

 

 

(その頃、神田明神では…)

 

黒髪の少女「ついに、やってきましたわ…ここですわ!」

 

青髪の少女「これが『μ's』がいつも練習していたっていう階段かぁ…」

 

金髪の少女「…」

 

青髪の少女「?…どうかした、鞠r」

 

金髪の少女「ううん、何でもない…それより三人で登ってみない?」

 

黒髪の少女「そうですわね…!」

 

青髪の少女「よし…じゃあ、行くよ!」ダッ

 

金髪の少女「ふふっ…負けないわよ~!」ダッ

 

黒髪の少女「あっ、ちょっと…二人ともお待ちなさい!」ダダッ

 

青髪の少女「よっと!…そっか、ここを『μ's』が登ってたんだ」

 

金髪の少女「『ラブライブ!』を目指す為に…!」

 

黒髪の少女「はぁはぁ…ええ、そうですわ」ゼェゼェ

 

青髪の少女「あれ、もう疲れたの?」

 

黒髪の少女「まさか…それより、お参りを済ませたら次は音ノ木坂学院に向かいますわよ!」

 

青髪の少女「確か、今の音ノ木坂のスクールアイドルって…『μ's』のメンバーの妹さん達がやってるんだよね?」

 

黒髪の少女「ええ、その通りですわ!」

 

金髪の少女「ホントに『μ's』が好きなのねぇ…」

 

黒髪の少女「さあ、時間がありませんわ…早くお参りに行きますわよ!」

 

?「…」ジーッ…

 

青髪の少女「ふふっ…!」クルッ

 

?「!」サッ

 

青髪の少女「…気のせい、かな?」

 

金髪の少女「?」

 

黒髪の少女「どうしたのです?」

 

青髪の少女「今、誰かが見ているような気がして…」

 

?「…」ジーッ…

 

青髪の少女「!」バッ

 

?「…」ササッ

 

青髪の少女「…やっぱり、誰かいる」

 

黒髪の少女「怪しいですわね…」

 

金髪の少女「もしかして…オバケかしら?」

 

青髪の少女「っ!?…はぐぅ!」ギュッ

 

金髪の少女「Oh!?」

 

黒髪の少女「何を言っているんですの…大体、こんな場所に幽霊なんている訳が」

 

青髪の少女「!…はぐぅ」ガクガク

 

金髪の少女「ふふっ、よしよし…」ナデナデ

 

黒髪の少女「…はぁ、仕方ないですわね」スタスタ

 

青髪の少女「き、気を付けてよ!?」

 

黒髪の少女「大丈夫ですわよ…さっ!」ススッ

 

黒髪の少女「さささっ…さっ!!」チラッ

 

シーン…

 

黒髪の少女「ほら見なさい、幽霊なんてどこにも…」

 

?「…」スッ…グイッ!

 

黒髪の少女「!?…ピギャァァァッ!!」

 

二人「!」

 

シーン…

 

青髪の少女「…き、消えた!?」

 

金髪の少女「!…ちょっと、大丈夫!?」ダッ

 

黒髪の少女「…うぅ」

 

青髪の少女「しっかりしてよ、ダイy…!」

 

???「…う~ら~め~し~や~」

 

青髪の少女「はぐぅぅぅぅっ!?」ガシッ

 

金髪の少女「Oh!?ちょっと果なn…って、うちっちー!?」

 

うちっちー「…驚かせちゃってごめんね」

 

金髪の少女「え?」

 

うちっちー「君達には悪いんだけど…今の音ノ木坂学院には、近付かないでもらえるかな?」

 

金髪の少女「…それ、どういう事?」

 

うちっちー「実は最近、あの辺で不審者が出没してる事案があって…だから、スクールアイドルである君達を危険な目に遭わせたくないんだ」

 

金髪の少女「不審者?…それって、どっちかっていうとあなたじy」

 

うちっちー「とにかく、ボクは急ぎの用があるから…気を付けて『東京スクールアイドルワールド』に臨んでね!」ドタドタドタ…!

 

金髪の少女「あっ、ちょっと…っ!」ズキッ

 

黒髪の少女「う~ん…」

 

青髪の少女「はぐぅ…」ガクガク

 

金髪の少女「…脚が痛む今、追いかけるのはバッドね」ボソッ

 

金髪の少女「でもあの子…どうして、私達がスクールアイドルだって分かったのかしら?」

 

 

 

(放課後…私は屋上で一人、溜め息をついていた)

 

亜里沙「…」ハァ

 

(私はあの日、喧嘩した事を…強く後悔していた)

 

亜里沙『…結局、誰も入部してくれなかったね』

 

雪穂『うん…皆、せっかく興味を持って私達のライブにまで来てくれてたのに』

 

亜里沙『やっぱり私達…《μ's》みたいなスクールアイドルにはなれないのかな?』

 

雪穂『そんな事無いよ…私達だって、いつかお姉ちゃん達みたいなスクールアイドルに』

 

亜里沙『でも、私達…まだ一度も《ラブライブ!》の決勝に出た事無いんだよ?』

 

雪穂『…!』

 

亜里沙『この前の《ラブライブ!》だって、最終予選にすら行けなかったし…』

 

雪穂『…それ、私のせいだって言いたいの?』

 

亜里沙『えっ?』

 

雪穂『あの時、私が歌い出すタイミングを間違えたから…予選落ちしたって言いたいの?』

 

亜里沙『違うよ…私、そんな事言ってない!』

 

雪穂『言ってるじゃん…亜里沙だって、サビのステップ間違えてたクセに!』

 

亜里沙『!…どうして、今更そんな事言うの!?』

 

雪穂『そっちが言い出したんじゃん!』

 

亜里沙『私だって…雪穂がもうちょっと優しく教えてくれたら、ステップだってもっと早く覚えられるよ!』

 

雪穂『私の教え方が悪いって言うの!?』

 

亜里沙『だってそうでしょ!?』

 

雪穂『あのね、私は忙しいの…一人で歌詞や振付を考える身にもなってよ!』

 

亜里沙『私だって、作曲や衣装作りで大変なんだよ!?』

 

雪穂『それをここで言って何になるのさ?何も始まらないし、誰も得なんてしないでしょ!?』

 

亜里沙『先に言い出したのは雪穂の方だよ!?』

 

雪穂『だったら、私のせいにしようとしないでよ!』

 

亜里沙『だから…してないってば!』

 

雪穂『してるじゃん!』

 

亜里沙『もういいよ!こんな事になるんだったら…あの時、雪穂の言う事を聞かない方が良かった』

 

雪穂『…!!』

 

亜里沙『もしあのまま《μ's》に入ってたら、私…どうなってたのかな』

 

雪穂『…そう、じゃあもういいよ』クルッ

 

亜里沙『え?』

 

雪穂『私…やめるから、スクールアイドル』スタスタ

 

亜里沙『!!』

 

雪穂『…じゃあね』ギィ…

 

バタンッ!

 

(それ以来、私は…雪穂と話をしなくなってしまった)

 

亜里沙「はぁ…私、何で雪穂にあんな事言っちゃったんだろう?」

 

亜里沙「『もし《μ's》に入ってたら』なんて、雪穂に言っても…仕方が無い事なのに」

 

亜里沙「私…これから、どうすればいいの?」

 

 

 

(私は…アキバにあるスクールアイドルショップにやってきていた)

 

雪穂「…」

 

(店内には、第一回『ラブライブ!』が開かれてから三年目を迎えた今でも…『μ's』や『A-RISE』のグッズコーナーがあった)

 

雪穂「…」スタスタ

 

(お店を出た私はUTXへと向かい…大型スクリーンで次の『ラブライブ!』が来年の三月に開催される事を知った)

 

雪穂「そっか、次は三月なんだ…!」

 

(次の瞬間、UTXのスクリーンには…第二回『ラブライブ!』に優勝したお姉ちゃん達『μ's』のライブ映像が流れた)

 

雪穂「…やっぱり、無理だよ」

 

雪穂「いくら練習したって、お姉ちゃん達みたいには…っ!」ダダッ

 

(堪えきれなくなった私は…そのまま走り出した)

 

雪穂「…」

 

亜里沙『私…もしあのまま《μ's》に入ってたら、どうなってたんだろうって』

 

(私はあの時、亜里沙が『μ's』に入ろうとするのを止めた事を…強く後悔していた)

 

(私が不甲斐ないばかりに…亜里沙に辛い思いをさせてしまった)

 

(それなのに、私は…!)

 

雪穂「…」ゼェゼェ

 

(いつの間にか私は、人気の無い路地裏へとやって来ていた)

 

雪穂「はぁ…私、何で亜里沙にあんな事言っちゃったんだろう?」

 

雪穂「『スクールアイドルやめる』なんて…亜里沙に言っても、どうにもならないのに」

 

雪穂「私…これから、どうすればいいの?」

 

 

 

(その時…どこかから、音楽が聞こえてきた)

 

~♪

 

亜里沙「!…この音は」

 

(綺麗な音色を聞いて、すぐに音楽室のピアノの音だと分かった私は…音楽室へと向かった)

 

(真姫さんはもう卒業したはずなのに…一体、誰が弾いてるんだろう?)

 

亜里沙「…」チラッ

 

(私が音楽室を覗くと…そこにはバレッタで赤茶色の長い髪をお嬢様結びにして留める黄色い瞳の女の子がピアノを弾いていた)

 

?「…」~♪

 

亜里沙「!…あの子、スゴい」

 

(その曲はどこか悲しくて、切ないけれど…いつの間にか私は彼女のピアノに引き込まれていた)

 

?「…」フゥ

 

亜里沙「ハラショー!」パチパチパチ…

 

?「!」

 

亜里沙「とっても良かった…感動しちゃったよ!」

 

?「ウフフッ…ありがとう、嬉しいわ」

 

亜里沙「オトノキの制服の水色のリボン…もしかしてあなた、一年生?」

 

?「ええ…『来年』からね」

 

亜里沙「えっ、来年…?」

 

?「…」フフッ

 

 

 

(その時…私は後ろから走ってきた誰かとぶつかった)

 

ドンッ!

 

雪穂「うわっ!?」

 

?「!」ドサッ

 

雪穂「あっ…大丈夫ですか!?」

 

?「…!」

 

雪穂「あれ、もしかして…ナツミ?」

 

(私は偶然、友人の『ナツミ』と出逢った)

 

ナツミ「…」

 

(中学三年の時…彼女は私と一緒に、ロシアから転校してきたばかりの亜里沙によく日本の文化を教えたりしていた)

 

(三人でよく遊んでは、亜里沙の家に行って絵里さんのオープンキャンパスのスピーチを聞いたり…『μ's』のライブも一緒に見に行ったりした)

 

(だけど、二学期に入る直前…彼女は両親の仕事の都合で静岡の学校に転校する事になってしまった)

 

(それから彼女が転校した後も定期的に連絡は取り合ってたけど…こうして彼女と直接会うのは、三年ぶりだ)

 

雪穂「こっちに来るなら連絡してくれれば良かったのに…元気だった?」

 

ナツミ「…!」グイッ!

 

(ナツミは何も言わずに…そのまま私の手を引いて走り出した)

 

雪穂「えっ?…ちょっと、どうしたのナツミ!?」

 

ナツミ「…」ダダッ

 

 

 

亜里沙「来年って、どういう事なの?」

 

(女の子は私の質問には答えず…こんな事を言い出した)

 

?「…この曲、ドビュッシーの月の光っていうの」

 

亜里沙「え?」

 

?「巣から旅立てない雛が、一人寂しそうに月を見上げるの…哀しいと思わない?」

 

亜里沙「…?」

 

?「旅立てずに一人寂しく、ただ月を見上げるだけなんて…ヒドい話よね」

 

亜里沙「…あなた、何者なの?」

 

?「私?…ウフフッ♡」スッ

 

(女の子はお腹に派手なカラーリングをしたベルトを着けながら、制服のポケットから紫色の何かを取り出した)

 

亜里沙「!?」

 

?「私の名前は…『サヨ』」カチッ

 

『マイティアクション・エーックス!』

 

(『サヨ』という女の子が紫色の何かのスイッチを押した瞬間…突然、音楽室のあちこちにチョコレートのようなブロックが設置された)

 

亜里沙「えっ…何、これ?」

 

サヨ「…変身」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!!』

 

(女の子がベルトに紫色の何かを挿した瞬間…女の子の姿が変わった)

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マーイティアクショーン…エックス!!』

 

???「…」スタスタ

 

(黒い戦士になった女の子は…右腕に紫色のゲームパッドのようなものを装着し、私にゆっくりと近付いてきた)

 

亜里沙「…!」

 

(その瞬間、何となく私は…自分の命が狙われている事を察した)

 

『ギュ・イーン!』

 

黒い戦士「ハッ!」ブンッ!

 

亜里沙「きゃっ!?」サッ

 

(私はギリギリのところで黒い戦士の攻撃を避けると…後ろにあったブロックが真っ二つになってしまった)

 

亜里沙「嘘…!」

 

黒い戦士「フフッ♡…フッ!」バッ

 

(黒い戦士は再び私を襲おうと…右腕に装着したチェーンソー型の武器を振り下ろしてくる)

 

亜里沙「っ!?」

 

(ダメ…このままじゃ、避けきれない!)

 

?「危な~いっ!」ガッ!ゴッ!

 

黒い戦士「グッ…!」ヨロッ

 

亜里沙「…あれ?」

 

(その時、私を助けてくれたのは…小さな白いコウモリだった)

 

キバーラ「ふぅ…何とか間に合ったみたいね?」

 

亜里沙「!?…コ、コウモリが喋った!」

 

黒い戦士「…もしかしてあなた、私達の邪魔をする気?」

 

キバーラ「ふふっ、アタシはアタシのやりたい事をやるだけよ…くすくす♡」

 

黒い戦士「!…そう」

 

亜里沙「えっと、あなたは…?」

 

キバーラ「アタシは通りすがりのキバット族よ…あなた達にどうしても会わせたい子がいるの」

 

亜里沙「…私達?」

 

キバーラ「ええ…ここはアタシに任せて、あなたは早く学校の正門まで向かいなさい!」

 

亜里沙「で、でも…」

 

キバーラ「早くっ!」

 

亜里沙「!?…う、うん!」ダダッ

 

黒い戦士「…」

 

キバーラ「さあ…どこからでも、かかってらっしゃい!」

 

黒い戦士「…こうなったら、仕方ないわね」スッ

 

『チュ・ドーン!』

 

キバーラ「なっ…!?」

 

黒い戦士「ウフフッ♡…ハァッ!」バシュッ!

 

 

 

亜里沙「はぁはぁ…!」ダッ

 

(校舎を出た私は…急いでオトノキの正門へと向かっていた)

 

亜里沙「あと、もう少し…」

 

『シャカリキスポーツ!』

 

亜里沙「!?」バッ

 

(私が振り向くと…自転車に乗った黒い戦士がオトノキの校舎から飛び出してきた)

 

亜里沙「そんな…!」

 

黒い戦士「逃げても無駄よ…フフッ♡」

 

(このままだと追いつかれる…そうなったら、間違いなく私は襲われる)

 

亜里沙「…そんなの、嫌だ」

 

(私、まだ雪穂と仲直りしてないのに…このまま一生お別れなんて嫌だ)

 

(だから、だから私は…)

 

黒い戦士「さようなら…ハッ!」バシュッ

 

亜里沙「…!」

 

(私に向かって、黒い戦士の右腕の武器からビームが放たれた…その時だった)

 

『アタックライド…レッカダイザントウ!』

 

ガキンッ!

 

(突然、黒い戦士と私の間に何かが地面に突き刺さるように現れ…黒い戦士の攻撃を防いだ)

 

亜里沙「…?」

 

黒い戦士「なっ…どうしてこんなところに盾が!?」

 

?「違う、これは…(つるぎ)だ」

 

亜里沙「えっ…!」

 

(その時、私の前で大きな剣を背負い上げたのは…)

 

亜里沙「…『ディケイド』?」

 

ディケイド「…」

 

(あれ…どうして私、この戦士の名前を知ってるんだろう?)

 

(初めて見たはずなのに…初めて会ったような気がしない)

 

黒い戦士「あなたは…!」

 

ディケイド「…『百火繚乱』!」ブンッ

 

(ディケイドは黒い戦士に向かって赤い剣を振り回すと…辺り一面を炎で覆った)

 

黒い戦士「なっ!?」

 

ディケイド「…一緒に来い、亜里沙」スッ

 

亜里沙「…!」

 

ガシッ

 

(差し伸べられたディケイドの腕を掴んだ私は…急いでオトノキを後にした)

 

黒い戦士「!…ハァ、逃げられちゃった」

 

黒い戦士「まあ、良いわ…この子から彼の拠点を聞き出せば良い事だし」ガサゴソ…ヒョイ

 

キバーラ「う~ん…」

 

黒い戦士「…ウフフッ♡」




~#2へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#2

(私を連れたまま、ナツミは…何かから逃げようとしている様子だった)

 

ナツミ「…」ダダッ

 

雪穂「ねえ…何があったの、ナツミ!」

 

ナツミ「!」ピタッ

 

雪穂「…どうしたの?」

 

?「見つけたぞ、黒崎ナツミ」

 

(私達の目の前には…白いスーツの着た男の人がいた)

 

雪穂「!…あなたは?」

 

白スーツの男「…我が名は『スーパーショッカー』の大幹部・アポロガイスト」

 

白スーツの男「幾多の世界にいる『μ's』以外の全てのスクールアイドルを消し去る為にやって来た…貴様らにとって迷惑な存在なのだ」

 

雪穂「…はい?」

 

白スーツの男「黒崎ナツミ、これが最後の警告だ…貴様が持っている『世界を変える力を持つ物』を我々に寄越すのだ」

 

ナツミ「…」フルフル

 

白スーツの男「そうか、ならば…アポロチェンジ!」

 

(そう言って白いスーツの男の人は…赤と黒、二色の怪人に姿を変えた)

 

アポロガイスト「フフフ…!」

 

雪穂「な、何!?」

 

アポロガイスト「まずはスクールアイドルである貴様のユメノチカラをいただく…!」スッ

 

雪穂「ユメノチカラ…?」

 

ナツミ「…!」ドンッ!

 

(アポロガイストという怪人が顔面から白い何かを外してかざしたのを見た途端…ナツミが私を突き飛ばしてきた)

 

雪穂「うわっ!?」

 

ナツミ「っ…!」ドサッ

 

雪穂「えっ、ちょっと…ナツミ?ナツミ!」ユサユサ

 

ナツミ「…」

 

(ナツミはまるで魂を抜き取られるかのようにその場に倒れ込み…そのまま意識を失ってしまった)

 

雪穂「しっかりしてよ、ナツミ!」

 

アポロガイスト「馬鹿め…こんな奴など庇って、何になるというのだ」

 

雪穂「!…私を、庇った?」

 

アポロガイスト「そうだ…お前と絢瀬亜里沙は『μ's』という偉大なスクールアイドルを穢す迷惑な存在なのだ」

 

雪穂「!!」

 

アポロガイスト「さあ、今度こそ大人しくユメノチカラを差し出すのだ!」スッ

 

(…どうして、どうしてあなたにそんな事言われないといけないの?)

 

雪穂「…そんなの、嫌に決まってるじゃんか」

 

(私、まだ亜里沙とやりたい事があるのに…このまま言われて終わるなんて嫌だ)

 

(だから、だから私は…)

 

雪穂「…!」

 

『アタックライド…クロックアップ!』

 

ドカッ!バキッ!

 

アポロガイスト「グハッ!?」ゴロゴロ

 

雪穂「…!」

 

?「…久しぶりだな、雪穂」

 

雪穂「えっ…?」

 

(その時、私を助けてくれたのは…)

 

雪穂「!…『ディケイド』」

 

ディケイド「…」

 

(あれ…どうして私、この戦士の名前を知ってるの?)

 

(初めて会ったはずなのに…初めて見たような気がしない)

 

ユキホー!

 

雪穂「!…亜里沙?」

 

亜里沙「大丈夫?」ダダッ

 

雪穂「わ、私は何とか…でも」チラッ

 

亜里沙「え?」

 

ナツミ「…」

 

亜里沙「!…もしかして、ナツミ?」

 

雪穂「…」コクリ

 

亜里沙「…でも、どうしてナツミが?」

 

雪穂「それが、私にも何が何だか…」

 

ディケイド「…おい、お前ら」

 

ゆきあり「!」

 

ディケイド「そいつを連れて、早くここから逃げろ…良いな?」

 

亜里沙「う…うん、分かった!」

 

雪穂「?…今の声、どこかで」

 

亜里沙「早く行こう、雪穂!」

 

雪穂「う、うん…よっと!」グイッ

 

ナツミ「…」

 

ゆきあり「…!」ダッ

 

(私は亜里沙と一緒にナツミを担ぎながら…急いでその場を後にした)

 

 

 

『アタックライド…スラッシュ!』

 

ディケイド「はっ!」キンッ!

(オレは…ライドブッカーをソードモードにして、アポロフルーレを振るうアポロガイストと交戦していた)

 

アポロガイスト「グッ…ディケイドめ、よくも我々『スーパーショッカー』の邪魔を!」キンッ!

 

ディケイド「…オレはただ、あいつらに大事なことを気付かせる為にこの世界に来ただけだ」

 

アポロガイスト「フン、何を訳の分からん事を…ハッ!」ブンッ!

 

ディケイド「…!」サッ

 

(後退してアポロガイストの攻撃を避けたオレは、一枚のカードを取り出し…それをディケイドライバーに装填させた)

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディケイド!』

 

(その直後、オレとアポロガイストの間に数枚の大きなカード型のものが現れた)

 

ディケイド「やあーっ!」ブンッ

 

(オレは一気に駆け抜け、それら全てを潜り抜けると…アポロガイストを斬りつけようとした)

 

(これは『クウガの世界』でザルボに放ったのと同じ『DCDS(ディケイドスラッシュ)』…オレ一人の技だ)

 

アポロガイスト「…!」サッ

 

ガキンッ!

 

ディケイド「!?」

 

(しかし、アポロガイストは…ガイストカッターという盾でオレの技を防ぎ切った)

 

アポロガイスト「フフフフフ…!」

 

ディケイド「…やはり、一筋縄ではいかないみたいだな」

 

?「ディケイドごときに何をしているのです?…アポロガイスト」スタスタ

 

アポロガイスト「!…貴様は」

 

ディケイド「…!」

 

(戦っていたオレ達の前に現れたのは…顎にうっすらと髭を蓄えているグレーのスーツを着た男だった)

 

?「どうやら手こずっているようですね…ならば、同じく『スーパーショッカー』の大幹部であるこの月影ノブヒコが始末してさしあげましょう」

 

(そう言って月影と名乗る男は腹部に黒いベルトを出現させると…装甲を身に纏い、白銀の戦士へと姿を変化させた)

 

?「…」

 

ディケイド「お前は、シャドームーン…!」

 

シャドームーン「…ハァッ!」ダッ

 

(シャドームーンはサタンサーベルを手にすると…素早い攻撃でオレに襲いかかってきた)

 

ズバッ…ザシュッ!

 

ディケイド「うわっ!?」

 

シャドームーン「新たなディケイドの力とやらはその程度ですか?…フンッ!」バッ

 

ディケイド「うっ!?」

 

(シャドームーンは両手からシャドービームを放ち…オレの身柄を拘束する)

 

シャドームーン「手ぬるい…ハッ!」ブンッ

 

ディケイド「っ!?」

 

(シャドームーンによって、オレは…近くのゴミ置き場に放り投げられてしまった)

 

ガッシャーン!

 

シャドームーン「…フン」スタスタ

 

…スッ

 

『カメンライド…ブラック!』

 

シャドームーン「!?」バッ

 

DCDBLACK「…」

 

(一枚のカードを入れたオレは…立ち上がり、BLACKへとカメンライドしてポーズを構えた)

 

DCDBLACK「…仮面ライダー、BLACK!」バッ!ググッ…

 

シャドームーン「その姿はブラックサン…どこでその力を手に入れたのか知らないが、面白い」フッ

 

DCDBLACK「この力を手に入れたのも『ゴルゴムの仕業』ってヤツでな…だが、面白いのはそれだけじゃないぞ?」スッ

 

シャドームーン「…何?」

 

(オレは四枚のカードを取り出すと…一枚目のカードをディケイドライバーに装填させた)

 

『アタックライド…キングストーンフラッシュ!』

 

DCDBLACK「はっ!」カッ!

 

(オレはシャドームーンに向けて、ベルトから強烈な閃光を放った)

 

シャドームーン「ッ!?」

 

『カメンライド…ブラック!アールエックス!』

 

(目眩ましに成功したオレは二枚目のカードをベルトに入れて、再びポーズを構えた)

 

DCDRX「オレは太陽の子…仮面ライダー、BLACK!RX!!」バッ…シュバッ!

 

シャドームーン「!…RXだと?」

 

(名乗りの構えを取ったオレはすぐさま片手で地面を叩いて前方へ飛び上がると…捻りを加えた回転をしながらシャドームーンに向かってキックを放った)

 

DCDRX「RXキック!」ガッ!

 

シャドームーン「グアッ!?」フラッ

 

DCDRX「まだだ!」

 

『フォームライド…ロボライダー!』

 

DCDRX「やぁっ!」

 

(ロボライダーへとフォームライドしたオレは…シャドームーンに向かって強烈なパンチを放とうとした)

 

シャドームーン「!」パシッ!

 

(しかし、シャドームーンは…オレの攻撃を受け止めてしまった)

 

DCDRX「…!」

 

シャドームーン「流石はディケイド…ですが、甘く見てもらっては困ります」グググッ…!

 

(シャドームーンはそのままオレの拳を握り潰そうとしてきた)

 

DCDRX「ぐっ…それなら、これだ!」スッ

 

『フォームライド…バイオライダー!』

 

シャドームーン「!?」

 

(バイオライダーへとフォームライドしたオレは…身体をゲル状に変化させ、シャドームーンから距離を取った)

 

DCDRX「…っと」スタッ

 

(オレがシャドームーンに次の攻撃を仕掛けようと、地面に着地してゲル化を解除させた…その時だった)

 

アポロガイスト「アポロショット!」ガガッ!

 

DCDRX「うわっ!?」

 

(ゲル化を解除させる隙を狙ったアポロガイストの銃が火を吹き…オレは近くの建物の壁に激突するまで吹き飛ばされてしまった)

 

アポロガイスト「フン…」

 

シャドームーン「!…何のつもりだ、アポロガイスト」

 

アポロガイスト「ディケイドの相手はこの私だ…つまり、貴様は迷惑な存在なのだ」

 

シャドームーン「ほう…どうやら、どちらの立場が上か分からせる必要があるみたいですね?」

 

アポロガイスト「黙れ、この私がディケイドを倒し…『スーパーショッカー』の最高幹部となるのだ!」

 

シャドームーン「愚か者め…ハァッ!」ダッ

 

(カメンライドの効果が切れたオレが立ち上がると…シャドームーンとアポロガイストはいつの間にか交戦を始めていた)

 

ディケイド「…何だかよく分からないが、不思議な事が起こったみたいだな」

 

(二人の大幹部が気付かないうちに…オレはその場から撤退し、雪穂と亜里沙達を追い掛けた)

 

 

 

?「フフフフ…」

 

亜里沙「…!」

 

雪穂「何なの、あれ…?」

 

(ナツミを担ぎながら逃げていた私達は…巨大な球体に乗りながら宙を浮く怪人に遭遇した)

 

?「初めまして、私は…『スーパーショッカー』の大幹部『十面鬼』ユム・キミルと申します」スタッ

 

亜里沙「!…『スーパーショッカー』?」

 

雪穂「…あなた達、何が目的なんですか?」

 

十面鬼「我々は黒崎ナツミの『世界を変える力を持つ物』…そして、あなた達の夢を奪いに来ました」

 

十面鬼「『μ's』と違って、何も生み出せないまま『スクールアイドル』だと名乗る…愚かなあなた達の夢を」

 

ゆきあり「!!」

 

(その言葉は…私達の心を傷付けるには、十分な言葉だった)

 

(これまで私達はお姉ちゃん達『μ's』に負けないようなスクールアイドルになろうと…ずっと頑張ってきた)

 

(でも、私達は…未だに『μ's』のようなスクールアイドルにはなれていない)

 

(それを指摘された私達は…何も言い返す事が出来ず、ただ立ち尽くしていた)

 

ゆきあり「…」

 

十面鬼「さあ、大人しく差し出しなさい…抵抗しなければ痛みなどは伴いません」スタスタ

 

ゆきあり「…!」ハッ

 

(私達が気付いた頃には、もう…怪人はすぐ目の前まで近付いてきていた)

 

十面鬼「…さようなら」スッ

 

(十面鬼が私達二人の首を掴もうとした…その時だった)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

ガガッ!

 

十面鬼「ッ!?」

 

ゆきあり「え?」クルッ

 

ディケイド「…」

 

(再び私達を助けてくれたのは…銃を構えたディケイドだった)

 

十面鬼「何ッ…ディケイドだとォッ!?」

 

ディケイド「…」スッ

 

『カメンライド…アマゾン!』

 

(ディケイドは二枚のカードを取り出し、一枚をベルトを入れると…迷彩色のトカゲのような見た目をした戦士に姿を変えた)

 

DCDアマゾン「…」

 

亜里沙「…あなた、どうして」

 

雪穂「私達を…助けてくれるの?」

 

DCDアマゾン「…はっ!」ダッ

 

『ファイナルアタックライド…ア・ア・ア・アマゾン!』

 

(私達の質問には答えず二枚目のカードを入れたディケイドは背びれを開閉させると、すぐさまジャンプし…)

 

十面鬼「!?」

 

DCDアマゾン「大・切・断っ!!」ズバッ

 

(上から下に腕を振りかぶり…手首の刃で怪人を斬りつけた)

 

十面鬼「ガハッ!」ゴロゴロ

 

(技を受けた怪人が吹き飛ばされるのを見たディケイドは…元の姿に戻った)

 

ディケイド「…」フゥ

 

十面鬼「グッ、貴様が何故…アマゾンの力を!」

 

ディケイド「…『トモダチ』から譲り受けてな」

 

十面鬼「なるほどな…だが、ここにいるのは私だけではない!」

 

ディケイド「何?」

 

『…カメンライド』

 

ディケイド「!」バッ

 

?「ヘン…シン…」

 

『ディ・エンド!』

 

(突然、何者かが青い銃から光を放つと…それらがその人物を覆って禍々しい怪物へと変貌させた)

 

???「グゥ…」

 

亜里沙「!?…あれって、もしかして!」

 

雪穂「ディエンド…!?」

 

ディエンド?「グオォォォッ!!」

 

ディケイド「チノマナコディエンドか…ったく、また厄介なのが出てきたな」ハァ

 

チノマナコディエンド「グォォ…!」スッ

 

『カメンライド…ジーデンオウ!』

 

(ディケイドに向けて、一枚のカードを装填した銃のトリガーを引いた青い怪物は…そこから一人の戦士を召喚した)

 

G電王『…高坂雪穂、絢瀬亜里沙』ピピピッ

 

ディケイド「…?」

 

G電王『幾つもの世界を変えた容疑で…お前達を処刑する』スチャ

 

(戦士は胸の装甲についている目を赤く光らせながら…私達に銃口を向けた)

 

ゆきあり「!?」

 

ディケイド「…!」ダッ

 

G電王『ハッ!』ガガガッ!

 

ディケイド「うっ!?」

 

(ディケイドは私達の前に出ると…戦士の攻撃から私達を庇ってくれた)

 

雪穂「…ディケイド!」

 

亜里沙「大丈夫!?」

 

ディケイド「…っ!」ダダッ

 

(ディケイドは何も言わず、戦士達に向かって行ったけど…)

 

G電王『ディケイド、お前の行動パターンは読んでいる…今だ!』

 

十面鬼「ディケイド返し!」カッ!

 

ディケイド「なっ…おわっ!?」ゴロゴロ

 

(ディケイドは顔を光らせた怪人の力によって…私達がいた場所まで戻されてしまった)

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

Cディエンド「ウゥッ…!」ガガッ!

 

ディケイド「ぐはっ!?」

 

(更にディケイドは…青い怪物の攻撃を受けてしまった)

 

ディケイド「…」ハァハァ

 

亜里沙「ディケイド!」

 

雪穂「どうしてそこまで…?」

 

ディケイド「…オレに掴まれ」スッ

 

ゆきあり「へ?」

 

ディケイド「早く!」

 

ゆきあり「…!」ガシッ

 

『アタックライド…インビシブル!』

 

(ナツミを連れたまま、私達が彼の肩を掴んだのを確認したディケイドは…新たなカードをベルトに入れた)

 

十面鬼「待て!」

 

G電王『フッ!』ガガッ!

 

(戦士の放った銃弾が届く前に…私達はディケイドの能力で姿を消した)

 

十面鬼「…クッ、逃がしたか」

 

 

 

(いつの間にか、私達は…根府川駅の前へとやってきていた)

 

亜里沙「あれ、私達…どうしてこんな所に?」

 

ディケイド「…少し歩くぞ、ついてこい」スタスタ

 

雪穂「えっ…ちょっ、ちょっと!」ダッ

 

(そのままディケイドについていった私達は…近くの海岸にある写真館へとやってきた)

 

雪穂「ここは…?」

 

ディケイド「…『光写真館』だ」

 

亜里沙「『光写真館』?」

 

ディケイド「そうだ…オレにとっても、お前達二人にとっても思い出の場所だ」

 

雪穂「えっ、私達の…思い出の場所?」

 

亜里沙「私、ここに来た事ないよ?」

 

雪穂「私も…ところで、あなたは何者なんですか?」

 

ディケイド「オレか?オレは…」

 

ゆきあり「…?」

 

ディケイド「…いや、まずはそいつを安全な場所に寝かせてからだな」チラッ

 

ナツミ「…」

 

ゆきあり「あっ…」

 

ディケイド「…ついてこい」ガチャ…スタスタ

 

雪穂「あっ、ちょっと…!」

 

亜里沙「待ってよー!」ダッ

 

(私達はディケイドに促されると…眠ったままのナツミを運びながらそのまま写真館の中へと入っていった)

 

 

 

?「大幹部ともあろう者が…揃いも揃って何たる醜態だ!」

 

十面鬼「も、申し訳ありません…ジャーク将軍!」

 

ジャーク将軍「アポロガイスト、シャドームーン…貴様らもだ」

 

アポロガイスト「グッ…!」

 

シャドームーン「…」カシャンカシャン…

 

ジャーク将軍「どこへ行く?」

 

シャドームーン「…私は誰の指図も受けるつもりはありません」

 

シャドームーン「ですが、もうディケイドなどに惑わされるつもりもありません…次はこの私が『世界を変える力を持つ物』を奪ってみせましょう」

 

カシャンカシャン…

 

ジャーク将軍「!…フン」

 

アポロガイスト「ジャーク将軍!」

 

ジャーク将軍「ムッ?」

 

アポロガイスト「次は、この私こそが…『世界を変える力を持つ物』を奪ってみせるのだ!」

 

ジャーク将軍「ほう、出来るのか?」

 

アポロガイスト「当然だ…いずれ私は人類にとって、大迷惑な存在となるのだからな」

 

ジャーク将軍「そうか…ならば、貴様に新たな力を与えよう」

 

?「報告します!」

 

ジャーク将軍「どうした、蜂女?」

 

蜂女「もうすぐ…あの究極の生命体が復活します!」

 

ジャーク将軍「フム、分かった…いよいよか」

 

ジャーク将軍「…皆の者、聞け!」

 

大幹部達「…!」

 

ジャーク将軍「これより我々は…正式に『スーパーショッカー』として復活する!」

 

ジャーク将軍「この世界の全てのスクールアイドルの夢を奪い、他の世界も侵攻すれば…やがて全世界は我々の物となる!」

 

ジャーク将軍「その為にまずは…奴らから『世界を変える力を持つ物』を奪い取り、この計画を確実なものとさせる!」

 

アポロガイスト「…!」

 

G電王『全ての世界は…我々《スーパーショッカー》が必ず管理する』ピピピッ

 

十面鬼「…チノマナコ、彼らを召喚しなさい」

 

『カイジンライド…!』

 

Cディエンド「グゥゥ…!」バシュッ!




~#3へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#3

サヨ「…」カタカタカタ…

謎の少女A「ねぇ~…」

サヨ「何?」

謎の少女A「さっきからずっとパソコンとにらめっこしてるけど…まだ終わらないのぉ~?」

サヨ「あともうちょっと」

謎の少女A「えぇ~…」ショボン

ガチャ

謎の少女B「お待たせー…ディケイドの居場所、あの白いコウモリの子から聞き出してきたよ!」

謎の少女A「本当!?」ガタッ

謎の少女B「うん、試しにくすぐってみたらすぐに教えてくれたよ!」

キバーラ「も、もう無理ぃ…」ピクピク

サヨ「ありがとう…後は、これを完成させるだけね」カタカタ…タンッ

謎の少女B「!…そっか、いよいよなんだね?」

サヨ「ええ、でもこれを完成させるには…どうしてもあるデータが必要なの」

謎の少女A「それにしても…人間ってホントに不便な生き物だよねぇ」ハァ

謎の少女B「そうだね…ゲームなら、やられちゃってもコンティニューして生き返ることができるけど」

謎の少女A「人間は命を落とせば、そこでゲームオーバー!…だもんねっ?」

サヨ「!…そうね」クスッ

三人「フフフッ…アハハハハッ!」

サヨ「…じゃあ、行ってくるわ」

謎の少女A「うんっ!」

謎の少女B「頑張ってね!」

サヨ「ええ…!」カチッ

『マイティアクション・エーックス!』


(私達は写真館の一室にあるベッドにナツミを寝かせ…介抱していた)

 

ナツミ「…」

 

雪穂「ナツミ…」

 

亜里沙「…あれ?」

 

雪穂「どうしたの?」

 

亜里沙「ナツミの制服のポケットから、何かが見えたような気がして…」

 

雪穂「…!」ハッ

 

白スーツの男『《世界を変える力を持つ物》を我々に寄越すのだ』

 

雪穂「もしかして…ナツミ、ちょっとごめんね」ガサゴソ

 

亜里沙「雪穂?」

 

雪穂「あった!…多分、このゲームのカセットみたいな物が私達を襲ってきたあの人達が言ってた『世界を変える力を持つ物』なんだと思う」スッ

 

亜里沙「!?…それって」

 

雪穂「何か知ってるの?」

 

亜里沙「私、さっき…学校で襲われた時に見た!」

 

雪穂「えっ…学校で襲われた!?」

 

亜里沙「うん、女の子がこれと同じ形をした色違いの物を使って…私に襲いかかってきたの」

 

雪穂「そうだったんだ…ん?」キョロキョロ

 

亜里沙「そういえば、ディケイドがいない…どこに行ったんだろう?」

 

…ガチャ

 

ゆきあり「!」

 

(その時、部屋の扉を開けたのは…)

 

少年「…」

 

亜里沙「…?」

 

雪穂「あなたは…」

 

少年「…それを持って、こっちの部屋に来い」スタスタ

 

ゆきあり「…?」

 

(私達二人は…彼に言われるまま、撮影スタジオのある部屋へと入った)

 

亜里沙「ねえ、ディケイドに変身してたのって…あなたなんだよね?」

 

少年「…」

 

雪穂「答えて…あなたは一体、何者なの?」

 

少年「…」スッ

 

ゆきあり「え?」

 

(彼は私達に指を差すと…私達の名前をフルネームで呟いた)

 

少年「『高坂雪穂』…『絢瀬亜里沙』」

 

ゆきあり「…!!」

 

(すると…私達は彼に関する記憶を全て思い出した)

 

雪穂「嘘…もしかして、ツカサ!?」

 

亜里沙「ツカサなの!?」

 

少年「…ああ」

 

亜里沙「でも、スゴく背が伸びてる…!」

 

ツカサ「色々あってな…この二年で二十センチくらい伸びた」

 

雪穂「そんなに!?」

 

亜里沙「ハラショー!」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「それにしても、私達…何で今の今までツカサの事を忘れてたんだろう?」

 

亜里沙「そういえば…何でかな?」

 

ゆきあり「う~ん…」

 

ツカサ「…ところでお前ら、何か大事なことを忘れているんじゃないのか?」

 

亜里沙「へっ?大事なことって…」

 

雪穂「あっ!…それって、これの事?」スッ

 

ツカサ「…」

 

雪穂「結局、これが『世界を変える力を持つ物』って事なの?」

 

ツカサ「…詳しい事はオレにも分からない」

 

ツカサ「だが『スーパーショッカー』は…『世界を変える力を持つ物』やスクールアイドルであるお前達のユメノチカラを狙って、再びこの世界に来た事だけは確かだ」

 

亜里沙「!…そうだったんだ」

 

雪穂「ちょっと待って、それより…『スーパーショッカー』って?」

 

ツカサ「『スーパーショッカー』は『大ショッカー』の生き残った大幹部達で構成された組織だ…奴らは『世界を変える力を持つ物』を手にする事で、再び全ての世界を支配しようと企んでいる」

 

亜里沙「じゃあ…ユメノチカラは?」

 

ツカサ「…ユメノチカラは人間が生きる為の原動力みたいなものだ」

 

亜里沙「原動力?」

 

ツカサ「ああ、大幹部であるアポロガイストは残り僅かしかない自分の寿命を延ばそうと…ユメノチカラを人々から吸収する事で生き永らえているんだ」

 

雪穂「そんな…!それじゃ、ナツミは!?」

 

ツカサ「落ち着け、命まで取られた訳じゃない…ただユメノチカラを抜き取られたせいで意識を失っているだけだ」

 

亜里沙「そっか…それにしても、何でこのアイテムをナツミが持ってたんだろう?」

 

ツカサ「おそらく九つの世界と融合していた間に何かの弾みでこの世界にやってきて、放置されたままだったこいつを最近になって拾ってしまったのが原因だろうな…」

 

ツカサ「そして、家族を巻き込まないよう出来るだけ遠くへ逃げようとした先で…お前達と再会したという事だろう」

 

亜里沙「なるほど…!」

 

雪穂「いや…そんな偶然あるの、普通?」

 

ツカサ「それよりも、お前ら…喧嘩してたんじゃなかったのか?」

 

ゆきあり「はっ!?」

 

亜里沙「ふ、ふんだっ!」プイッ

 

雪穂「むっ…ふん!」ムスッ

 

ツカサ「喧嘩を目撃したキバーラから話を聞いてだいたいわかってはいたが…まあいい、やってみるか」ハァ

 

亜里沙「?…やってみるって」

 

雪穂「何を?」

 

ツカサ「お前達が今、どういう状態なのか…試しに『μ's』を召喚してもらおうと思ってな」

 

雪穂「は!?」

 

亜里沙?「『μ's』って…お姉ちゃん達を!?」

 

ツカサ「そうだ…これと、一枚のカードを使ってな」ゴトッ

 

ゆきあり「!」

 

亜里沙「これって…」

 

雪穂「ディエンドライバー?」

 

ツカサ「そうだ…亜里沙、このカードを持ってみろ」サッ

 

亜里沙「私が?」

 

ツカサ「ああ…『μ's』を念じながらな」

 

亜里沙「『μ's』を念じながら…うん、分かった!」

 

雪穂「…」

 

亜里沙「っ…!」

 

ツカサ「…どうだ?」

 

亜里沙「う~ん、大丈夫だと思うんだけど…」

 

ツカサ「確認してみるか…雪穂」

 

雪穂「何?」

 

ツカサ「ディエンドライバーにそのカードを入れて『μ's』を召喚してみろ…もちろん、お前も『μ's』を念じながらな」

 

雪穂「う、うん…亜里沙、それをこっちに渡してくくれる?」

 

亜里沙「うん!」スッ

 

雪穂「…じゃあ、行くよ!」

 

『カメンライド…』

 

シーン…

 

雪穂「…?」

 

亜里沙「あれ?」

 

雪穂「トリガーもちゃんと引いたはずなのに…どうして何も出てこないの?」

 

亜里沙「もう一回やってみてよ!」

 

雪穂「うん…行くよ!」

 

『ライド…』

 

雪穂「おかしいなぁ…も、もう一回!」

 

『ライド…』

 

亜里沙「お願い…今度こそ!」

 

『ファイナルライド…』

 

シーン

 

亜里沙「一体、どういう事…?」

 

雪穂「…これ、壊れてるんじゃないの?」

 

ツカサ「いや、残念ながら正常だ…何故ならそれはおもちゃだからな」

 

ゆきあり「おもちゃ!?」

 

ツカサ「ああ」

 

亜里沙「何でおもちゃなんて渡してきたの?」

 

ツカサ「実は『COMPLETE SELECTION MODIFICATION』版と間違えて買ってしまってな…やっぱり、DX版はダメだな」

 

雪穂「理由になってないし、知ったこっちゃないよ!!」

 

雪穂「もう!これ以上変な事するつもりなら…私、もう何もしないよ!?」

 

ツカサ「分かった、悪かったよ…ほら」ゴトッ

 

亜里沙「!…このディエンドライバー、今までのよりも青いね?」

 

雪穂「本当だ…シアンがベースになってるからか、全体的により青っぽくなってるね」

 

ツカサ「こっちは正真正銘の本物だ…まだ未完成のものだから、変身は出来ないけどな」

 

雪穂「召喚は出来るって事?」

 

ツカサ「そうだ…ひとまず、これでやってみろ」

 

雪穂「…本当にこれで大丈夫なんだよね?」

 

ツカサ「もちろんだ…まさかお前、オレの事が信じられないのか?」

 

雪穂「さっきのアレで信じられる訳ないでしょ!?」

 

雪穂「ったく、もう…行くよ!」スッ

 

『ファイナルカメンライド…ミューズ!』

 

雪穂「はっ!」バシュッ!

 

ツカサ「…!」

 

少女達「…」

 

亜里沙「あれは…『μ's』!」

 

雪穂「いや、待って…何か私達が知ってるお姉ちゃん達と違う気g」

 

穂乃果「あなたの想いをリターンエース!高坂穂乃果です!!」パコーン!

 

真姫「誘惑リボンで狂わせるわ…西木野真姫!」クルクルクル

 

花陽「剥かないでっ!私はまだまだ青い果実…小泉花陽です!」ジタバタ

 

希「スピリチュアル東洋の魔女・東條希!」サッ…

 

海未「恋愛未満の化学式…園田海未です!」スチャ

 

ことり「私のシュートでハートのマークつけちゃうぞ♡南ことり!」シュバッ

 

凛「キュートスプラーッシュ!星空凛!」スッ

 

絵里「必殺のピンクポンポン、絢瀬絵里よ!」フリフリ

 

にこ「そして私、不動のセンター…矢澤にこニコ!」シュコー…

 

μ's「私達、部活系アイドル…『μ's』です!!」

 

ゆきあり「…」

 

ツカサ「…なるほど、確かにオレ達の知ってる『μ's』ではあるな」

 

雪穂「全然知らないんだけど!?」

 

亜里沙「でも、いつもと違って新鮮だよ?」

 

亜里沙「スクールアイドルとして、色んな部活の服を着るっていうのも面白いと思うし…」

 

穂乃果「だよねだよねっ!」

 

雪穂「いや…どう考えてもふざけてるようにしか見えないんだけど!?」

 

穂乃果「そんなことないよ!ほら、もう一度みんなで…」

 

雪穂「やらなくていいから!」

 

雪穂「ツッコまないといけない所がたくさんあるけど…まず、にこさんの顔が見えてないじゃん!」

 

にこ「…」シュコー…シュコー…

 

雪穂「しかも何かダー○・ベ○ダーみたいな呼吸音まで聞こえてきてるし!剣道の防具着た時って普通、そんな息遣いしませんよね!?」

 

凛「スィ~スィ~…」

 

亜里沙「…ところで、海未さんのその格好は何の部活なんですか?」

 

海未「化学部です」スチャ

 

凛「スイスイ~!」

 

雪穂「ちょっと凛さん、ちょいちょい変な動きしながら話の中に割り込んでこないでもらえます!?」

 

亜里沙「…じゃあ、花陽さんは?」

 

花陽「えっと…多分、演劇部かな?」

 

雪穂「多分って…っていうか、そもそもそれでステージに上がるなんてあり得ないと思うんですけど」

 

絵里「!…確かに」

 

雪穂「気付くの遅いですよ!ノリノリで『必殺のピンクポンポン』とか言ってる場合じゃないですからね!?」

 

絵里「…は、はい///」

 

雪穂「お姉ちゃんもお姉ちゃんだよ!『あなたの想いをリターンエース』って…せっかくもらった想いを返してどうするのさ!?」

 

穂乃果「…!」ハッ

 

雪穂「まさか…リターンエースの意味知らないで言ってたの!?」

 

穂乃果「そ、それくらい分かってるよぉ~!」

 

ツカサ「やはりこうなったか…お前ら、後で呼び直すから一旦カードに戻ってくれ」

 

穂乃果「あっ、うん…分かった!」

 

雪穂「!…消えた」

 

ツカサ「…よし、もう一回だ」

 

雪穂「えぇ…また?」

 

ツカサ「当然だ…亜里沙、やってみろ」スッ

 

亜里沙「うん、分かった!」

 

ツカサ「…」

 

亜里沙「…はい、雪穂」スッ

 

雪穂「…うん」

 

『ファイナルカメンライド…ミューズ!』

 

雪穂「行くよ…はっ!」バシュッ!

 

ツカサ「…!」

 

少女達「…」

 

雪穂「あれ、また私達が知ってるお姉ちゃん達と違う気が…って!?」

 

亜里沙「わぁーっ!?」

 

穂乃果「かぁっ…!皆さん、お久しぶりぃ…我々はスクールアイドル『μ's』である!」

 

穂乃果「今日はイメージを覆すアナーキーでパンクな…」

 

八人「ふふっ…」

 

μ's「新たな『μ's』を見ていくが良い!」

 

亜里沙「ひっ…!」ビクッ

 

ツカサ「…」

 

雪穂「…」

 

穂乃果「おおっ…これはインパクト大みたいだね!?」

 

凛「いけそうな気がするニャ!」

 

雪穂「…座って」

 

穂乃果「へっ?」

 

雪穂「いいから座って!!」

 

μ's「!?…は、はい!」ササッ

 

雪穂「…どうしてそうなったのか、説明してもらえる?」

 

穂乃果「え、えーっと…何でだっけ?」

 

雪穂「分かんないの!?」

 

穂乃果「うっ!?」

 

絵里「雪穂ちゃん、違うの…ふざけていた訳じゃないの!」

 

雪穂「その格好じゃどっからどう見てもふざけているようにしか見えませんよ!?」

 

亜里沙「お姉ちゃん…怖い」

 

絵里「!」ガーン

 

ことり「あの、それが私達…雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんのイメージからこうなったの」

 

雪穂「えっ…は!?」ボソッ

 

海未「そうなんです…二人のイメージが一致していないと、どうしてもこういった形で出てきてしまうのです」

 

穂乃果「そうそう!私達、召喚されただけだよ…だから怒られるなんて心外だよっ!」

 

凛「そうニャそうニャ!」

 

ジャラッ…

 

亜里沙「あの、鎖が…」

 

穂乃果「うわぁっ!?と、とにかく…怒られるのは納得できないよ!」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな」ハァ

 

ツカサ「お前ら、悪いがもう一度カードに戻ってくれるか?」

 

にこ「はぁ…全く、しょーがないわねー!」

 

亜里沙「…また消えちゃった」

 

雪穂「つ、疲れたぁ~…」ハァ

 

亜里沙「それにしても…どうして私達のイメージが一緒にならないのかな?」

 

雪穂「…そりゃそうでしょ、スクールアイドルに対して真剣に取り組んでいるのはいつも私だけなんだからさ」

 

亜里沙「!…それ、どういう意味?」

 

雪穂「言葉通りの意味だけど?」

 

亜里沙「どうしてそうなるの!?」

 

雪穂「『もし《μ's》に入ってたら』…なんて言ったのは、どこの誰?」

 

亜里沙「あっ…でも、雪穂だって『スクールアイドルやめる』って言ってたじゃん!」

 

雪穂「なっ…あのね!?」

 

ツカサ「おいおい、お前ら…そんな喧嘩してる場合じゃないだろ?」

 

雪穂「!…でも、亜里沙が」

 

亜里沙「だって、雪穂が…」

 

ツカサ「まだ分からないのか?」

 

ゆきあり「え?」

 

ツカサ「そもそもちゃんとした『μ's』を召喚出来なかったのは…お前達が二人揃って、スクールアイドルとしての自分を見失っているからだ」

 

ゆきあり「!?」

 

ツカサ「お前達…あの時に言ったもう一つの夢、覚えてるか?」

 

雪穂「あの時に言った…」

 

亜里沙「もう一つの…夢?」

 

ツカサ「やはりな…その様子だと、どうやらそれすらも忘れてしまっているみたいだな」ハァ

 

雪穂「…どういう意味?」

 

ツカサ「お前達は、オレとの旅の途中で…それを叶えようと決意していた」

 

ツカサ「だが、時の流れや変化と共にそれらをいつの間にか忘れてしまったせいで…スクールアイドルとしての自分さえも見失ってしまったんだ」

 

亜里沙「!?…そんな」

 

ツカサ「実際、スランプなんだろ?…お前達」

 

ツカサ「じゃなかったら…『もし《μ's》に入ってたら』とか『スクールアイドルやめる』とか、思ってもないような事言わないだろうしな」

 

亜里沙「あ…」シュン

 

雪穂「うっ…」コホン

 

ツカサ「こうなったら思い出してもらうしかないな…お前達が『これから』もスクールアイドルを続けるにあたって、どうしなければいけないのかを」

 

雪穂「思い出してもらうって…」

 

亜里沙「どうやって?」

 

ツカサ「そうだな…まずは、あの世界を救った時の思い出でも振り返ってみるか」




~#4へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#4

μ's「前回のラブライブ!」

ツカサ「『μ'sの世界』での高校生活と両立させながら、幾つもの世界を旅するオレが次に訪れたのは…」

早乙女リリエル『私達《護星天使》と一緒に…殿様を探してください!』

神楽坂ミナモ『一筆奏上!』

ツカサ「オレは彼女達と協力し、悪魔に操られていた殿様を取り戻す…!」

神楽坂レンヤ『俺とツカサが…この世界の運命を革命してやる!』

シンケンレッド『シンケンレッド、参る!』

ディケイド『オレとレンヤの力だ…殿様、背中頼むぞ!』

ツカサ「こうして『スーパー戦隊の世界』の異変は収まった…」

ツカサ「しかし、その直後にディエンドライバーを奪われて…!」


ツカサ「思い返せば…色んな事があったな」

 

雪穂「いやいやいやいや!」

 

ツカサ「どうした?」

 

亜里沙「私達、そんな世界に行った覚え無いよ!?」

 

ツカサ「当たり前だろ…さっきのあらすじは、お前達と別れてからしばらく経った後に訪れた世界で起きた出来事だからな」

 

雪穂「だったら回想する意味無いじゃんか!!」

 

亜里沙「あれ…そういえば最後、ディエンドライバーが奪われたとかって言ってなかった?」

 

雪穂「そうだよ!何でそんな大事なことをサラッとあらすじ紹介なんかで済まそうとしちゃったの!?」

 

ツカサ「別に気にする程の事じゃない」

 

雪穂「気にするよ!!」

 

ツカサ「そうカッカするな…だったら次は、オレが『μ's』を呼び出してやる」

 

亜里沙「えっ…ツカサが召喚するの?」

 

ツカサ「今のオレにとっては簡単な事だからな…雪穂、そのディエンドライバーとカードを貸してみろ」

 

雪穂「う、うん…?」スッ

 

ツカサ「よし…じゃあ、召喚するぞ」

 

『ファイナルカメンライド…ミューズ!』

 

ツカサ「…ふっ!」バシュッ

 

μ's「…」

 

雪穂「…!」

 

穂乃果「!…おおっ、服がちゃんとオトノキの制服に戻ってる!」

 

亜里沙「お姉ちゃん!」ギュッ

 

絵里「亜里沙…ごめんなさいね、心配かけて」ナデナデ

 

雪穂「…ツカサ、ちょっと聞いていい?」ボソッ

 

ツカサ「何だ?」

 

雪穂「オトノキの制服を着てるみたいだけど…今、ここにいるお姉ちゃん達は三年前の『μ's』って事で良いの?」

 

ツカサ「いや、彼女達はオレのイメージから生み出されたライダーとしての記憶を持った状態の『μ's』…つまり思念体だ」

 

雪穂「…そう、大体分かったよ」

 

ツカサ「お前…本当に分かって言っているのか?」

 

雪穂「ツカサにだけは言われたくないんだけど!?」

 

穂乃果「ねぇねぇ!聞いたよ、二人とも…色々と困ってるんだって?」

 

雪穂「!…ま、まあ」

 

絵里「一体、何があったの?」

 

亜里沙「実は、私達…」

 

 

 

雪穂「…という訳なんです」

 

ことり「そうだったんだ…」

 

海未「まさか未来の雪穂と亜里沙も、かつての私達と同じような状況になっていたとは…」

 

亜里沙「だから、これからどう変われば良いんだろうって…悩んでるんです」

 

穂乃果「…変わらなくてもいいんじゃないかな?」

 

亜里沙「えっ、穂乃果さん…?」

 

雪穂「ちょっと!こっちは真剣に相談してるっていうのに…」

 

穂乃果「だからだよ?」

 

雪穂「…は?」

 

亜里沙「どうしてですか?」

 

穂乃果「だって…あの時、二人が私に教えてくれたでしょ?」

 

亜里沙「!…あの時?」

 

穂乃果「うんっ!だから…大丈夫だよ!!」

 

雪穂「大丈夫って、そんな無責任な…」

 

?「へぇ…驚いたわね、まさか『μ's』までいるなんて」

 

全員「!」クルッ

 

黒い戦士「…ウフフッ♡」

 

ツカサ「なっ…お前は!?」

 

亜里沙「どうして、あなたが…!」

 

黒い戦士「…動かないで」スチャ

 

ナツミ「…」

 

(黒い戦士は、意識を失ったままのナツミを捕まえ…右腕に装着した紫色のゲームパッドのような物をナツミに突き付けていた)

 

雪穂「ナツミ!?」

 

黒い戦士「余計な事をすれば、人質であるこの子の命は無いわ」

 

亜里沙「そんな…!」

 

黒い戦士「この子を解放する条件はたった一つ…あなた達二人のうち、どちらかのユメノチカラを私に差し出す事よ」

 

ゆきあり「!」

 

ツカサ「お前もユメノチカラを狙って…させるか!」ダッ

 

黒い戦士「…フフッ♡」スチャ

 

ナツミ「…」

 

亜里沙「ナツミ!」

 

ツカサ「!?」ピタッ

 

黒い戦士「言ったはずよ?…動けば、人質の命は無い」

 

ツカサ「ぐっ…」

 

黒い戦士「ウフフ…良い子ね?」

 

真姫「…本当にやるの?」ヒソヒソ

 

にこ「ここまで来て、何怖気ついてんのよ!」ヒソヒソ

 

黒い戦士「でも、またいつどこで私達の邪魔をしてくるか分からないし…ここはやっぱり、あなたの方からユメノチカラを貰っちゃおうかな?」スチャ

 

ツカサ「!」

 

雪穂「ツカサ!」

 

黒い戦士「…さようなら、ディ・ケ・イ・ド♡」

 

(彼女がツカサを攻撃しようとした…その時だった)

 

真姫「待って!」

 

黒い戦士「?」

 

真姫「…」

 

絵里「真姫…?」

 

真姫「一つだけ聞かせて…あなた、何者なの?」

 

黒い戦士「…そんなに知りたいの?」

 

真姫「ええ、だからこうして聞いてるんだけど」

 

黒い戦士「…私は神」

 

黒い戦士「またの名を…仮面ライダーゲンム」

 

亜里沙「ゲンム?」

 

ゲンム「そう、私は別世界に存在している財団の来たるべき壮大な計画を遂行させる為に動いているの…」

 

ツカサ「!」

 

真姫「…」

 

雪穂「計画?」

 

ゲンム「ええ、素敵でしょう?」

 

ゲンム「いずれはあなた達も…神である私の才能を讃える事になるでしょうね!」

 

全員「…」

 

ゲンム「フフフッ…アハハハハハハハハ!」

 

真姫「はぁ~…何それ、イミわかんない」

 

ゲンム「!…何ですって?」

 

穂乃果「ちょ、ちょっと真姫ちゃん…!?」

 

真姫「話が漠然としていて意味が分からないって言ってるの…あなた、そんなのでよく『私は神』だなんて言えるわね?」

 

ゲンム「!!…そう」

 

ゲンム「そこまで言うなら、予定変更ね…最初はあなたから消してあげる」スチャ

 

(ゲンムが狙いをツカサから真姫さんに変えて武器を向けたその時…真姫さんはある人の名前を叫んだ)

 

真姫「…にこちゃん!」

 

にこ「くらいなさい…ラブにこアターック!!」ドカッ!

 

(にこさんは一瞬の隙を見せたゲンムに向かって、お尻から体当たりをしていった)

 

ゲンム「ウッ!?」ヨロッ

 

ツカサ「今だ…はっ!」ドンッ!

 

(にこさんのヒップアタックでゲンムがふらついたのを見たツカサはゲンムを思い切り突き飛ばした)

 

ゲンム「グハッ…!」ガッシャーン!

 

(ゲンムが倒れて動けない間に…ツカサは解放されたナツミの身体を担いだ)

 

ツカサ「よし…お前ら、急いでこの写真館から出るぞ!」

 

亜里沙「う、うん!」

 

雪穂「分かった!」

 

(私達と『μ's』は…急いで、ナツミを担いだツカサと一緒に写真館の外へと逃げ出した)

 

ゲンム「…ゆ…せない」

 

ゲンム「許せない…許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せないッ!」

 

ゲンム「私を馬鹿にした、あの子だけは…絶対にッ!!」

 

 

 

謎の少女B「あれ~…?」キョロキョロ

 

謎の少女A「どうしたのー?」

 

謎の少女B「さっきの白いコウモリの子、どこに行ったか知らない?」

 

謎の少女A「…ふぇっ?」

 

謎の少女B「さっきまでこの机の上にいたはずなんだけど…逃げられちゃったのかなー?」

 

謎の少女A「…」

 

謎の少女B「あれ、どうしちゃったの…お~い?」フリフリ

 

謎の少女A「!」ガタッ

 

謎の少女B「うわっ!?」

 

謎の少女A「私、ちょっと様子見に行ってくる!」ダダッ

 

謎の少女B「え…あっ、ちょっと!?」

 

 

 

(逃げ出した私達は…根府川駅から少し離れた海岸へとやってきた)

 

ゆきあり「はぁはぁ…」

 

ことり「みんな、大丈夫?」

 

花陽「な、何とか…」

 

穂乃果「それにしてもビックリしちゃったよ~!」

 

海未「私も驚きました…まさか、真姫があんな事を言い出すなんて」

 

真姫「にこちゃんにやれって言われたから仕方なくね…まあ、あんなに上手く引っ掛かるとは思わなかったけど」

 

凛「にこちゃんの体当たりもスゴかったニャ!」

 

にこ「ふふん…どうよ、このにこにーの見事な作戦!」

 

絵里「さすがにこね!」

 

亜里沙「でも、写真館の場所がバレちゃったね…」

 

雪穂「うん…これからどうしようか、ツカサ?」

 

ツカサ「そうだな…!」

 

(その時、私達のすぐ近くにオーロラが出現し…そこから四体の怪人が現れた)

 

イカデビル「イ~カ~デ~ビ~ル~!」

 

ガラガランダ「ガラガランダ~!」

 

サイ怪人「グオォォォ…!」

 

シュバリアン「俺はクライシス最強の戦士…怪魔ロボット・シュバリアン!」

 

亜里沙「!…あれって」

 

雪穂「まさか、スーパーショッカーの怪人!?」

 

ツカサ「くっ…奴らにもオレ達の居場所がバレてしまったみたいだな」

 

???「気付かなかったようだな…ディケイド」

 

ツカサ「!」クルッ

 

(振り向くと、私達の後方には…杖を持った金色の顔の男の人と蜂のような格好をした女の人がいた)

 

ジャーク将軍「…」

 

ツカサ「ジャーク将軍、蜂女…どういう意味だ?」

 

蜂女「お前達が庇っているその女に、予め発信機を付けておいたのだ…お前達と会う前からな」

 

ナツミ「…」

 

雪穂「えっ、どこについてたの!?」

 

亜里沙「あれ…肩に何かついてるよ!」

 

ツカサ「!…おそらく、それが発信機だろうな」

 

絵里「困ったわね…何とかしてこの危険な状況を切り抜ける方法は無いかしら?」

 

穂乃果「そうだ!また私達が『仮面ライダー』に変身しちゃえば良いんじゃないかな?」

 

にこ「何言ってんのよ…私達はライダーに変身して戦った記憶を持ってるっていうだけで、ライダーには変身出来ないのよ!?」

 

穂乃果「あっ…そうだった!」

 

???「…さあ、大人しくユメノチカラと『世界を変える力を持つ物』とこちらに渡すのだ」

 

ツカサ「!」

 

スーパーアポロガイスト「フフフフフ…」

 

ツカサ「奴は…そうか、ファンガイアの力を得て強化したのか」

 

シャドームーン「…フン」

 

十面鬼「…」

 

Cディエンド「グオォォォ…」

 

G電王『裁判は必要ない…全員、この場で処刑だ』

 

(スーパーショッカーの大幹部や怪人達に囲まれてしまった私達は…じりじりと波打ち際の方まで後退していた)

 

ツカサ「全く、仕方ないな…こうなったら」スッ

 

G電王『フッ!』バシュッ!

 

ツカサ「おわっ!?」

 

(変身しようとカードを取り出した途端、G電王に足元を撃たれたツカサは…すぐ後ろにいた私と亜里沙にぶつかった)

 

雪穂「うわぁっ!」

 

亜里沙「きゃっ!?」

 

穂乃果「!?…雪穂、亜里沙ちゃん、ツカサくん!」

 

雪穂「痛た…」

 

絵里「大丈夫!?」

 

亜里沙「う、うん…」

 

G電王『…逆らえば実力を行使する』

 

ツカサ「もうやってるだろ!」

 

にこ「?…ちょっと、今何か落としt」

 

『STAGE SELECT!』

 

全員「!?」

 

(次の瞬間、私達とスーパーショッカーは…いつの間にか採石場へと移動していた)

 

ツカサ「これは…!」

 

ジャーク将軍「何が起こった?」

 

?「…私が場所を変えたの」

 

ジャーク将軍「!」バッ

 

ゲンム「ウフフッ…♡」

 

蜂女「貴様は大神官ビシュム…裏切り者が何故ここに!?」

 

ゲンム「決まってるでしょう?あなた達みたいな野蛮な組織に…これ以上、私の計画を邪魔される訳にはいかないからよ」

 

十面鬼「何…だとォッ!?」

 

ゲンム「出番よ、皆…それっ♡」

 

(オーロラを出現させたゲンムは私達が見た事の無いロボットを召喚させた)

 

Xガーディアン「…」

 

全員「!?」

 

ゲンム「…じゃあ、そっちのあなた達はスーパーショッカーの妨害をお願いね?」

 

XガーディアンA「!」ダッ

 

(ゲンムがそう命じると…召喚されたXガーディアン達の約半分がスーパーショッカーの怪人達に挑んでいった)

 

蜂女「おのれ!」

 

ジャーク将軍「愚か者めが…!」

 

Sアポロガイスト「奴は私以上に迷惑な存在なのだ!」

 

シャドームーン「フン…!」

 

ツカサ「…よし、今のうちに」

 

ゲンム「逃がさないわよ?」

 

ツカサ「!」

 

ゲンム「フフフッ…さあ、行ってらっしゃい」

 

XガーディアンB「!」ダッ

 

(命令を受けた残りのXガーディアン達は…オレ達に襲いかかろうと走ってきた)

 

ツカサ「全く、仕方ないな…お前達だけでも先に行け」

 

亜里沙「ツカサ!」

 

雪穂「でも…!」

 

ツカサ「後で必ず追いつく…いいから夏ミカンを連れて逃げろ」

 

雪穂「な、夏ミカン?」

 

亜里沙「もしかして、ナツミの事…?」

 

ツカサ「他に誰がいる…早くしろ!」

 

ゆきあり「…分かった!」

 

ツカサ「お前達も…頼んだぞ?」

 

穂乃果「う、うんっ!」ダッ

 

ツカサ「…変身!」

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

ディケイド「はっ!」ガッ!

 

XガーディアンB「…!」ドサッ

 

(ディケイドに変身したオレがXガーディアンを相手にしていると…ゲンムが雪穂達を追いかけていった)

 

ゲンム「お先に…ウフフッ♡」ダッ

 

ディケイド「おい、待て!」

 

XガーディアンC「!」ブンッ

 

ディケイド「ぐっ…!」サッ…ゴッ!

 

(オレは攻撃してきたXガーディアンの一体をカウンターで返り討ちにしたが…その間に別のXガーディアンが背後から襲いかかってきた)

 

XガーディアンD「…!」ダッ

 

ディケイド「!?…しまった!」

 

???「ちょっと待った!」

 

XガーディアンD「!?」ピタッ

 

ディケイド「?…今の声は」

 

『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!』

 

???「よっと…えいっ!」ガッ!

 

XガーディアンD「!」ドサッ

 

(Xガーディアンの一体を倒して現れたのは…赤と青、二色のカラーリングをした戦士だった)

 

『イエーイ!!』

 

ディケイド「アンタは…『ビルド』!」

 

ビルド「…」フフッ




~#5へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#5

(その頃、意識を失ったままのナツミを連れて逃げていた私達と『μ's』は…)

 

バグスターウイルス「…」

 

雪穂「…嘘でしょ?」

 

亜里沙「そんな…もしかして、私達」

 

花陽「囲まれちゃったのぉ!?」

 

ことり「どうしよう、穂乃果ちゃん…」

 

穂乃果「…やっぱり、生き残るには戦うしか!」

 

絵里「でも、変身する為のアイテムを持っていない今の私達じゃ…」

 

にこ「…それならあるわよ、一つだけね」

 

真姫「え…にこちゃん?」

 

にこ「…」スッ

 

(にこさんが取り出したのは…黒と黄緑色のカラーリングをした、ゲームソフトの形をしたアイテムだった)

 

亜里沙「それって!」

 

雪穂「ナツミの…どうしてにこさんがそれを!?」

 

にこ「別に盗んだわけじゃないわ…ツカサがアンタ達とぶつかった時に落としたのを拾っただけ」

 

海未「ですが、そんな物で変身出来るかどうか…」

 

凛「あれ…でもそれ、ゲンムってライダーがベルトと一緒に着けていたのを見た気がするニャ!」

 

にこ「そうよ、だから…私が試してみるわ」

 

希「にこっち…本気?」

 

にこ「当たり前でしょ…アンタ達の笑顔は、私が守る!」カチッ

 

『仮面ライダークロニクル…』

 

にこ「…ゲームスタート!」

 

『Enter The GAME! Riding The END!』

 

(アイテムを起動させたにこさんは左胸にシール型のワッペンが貼られた茶色い戦士に姿を変えると…帽子を被り、背中にリュックサックを背負いながらこう名乗った)

 

ライドプレイヤーニコ「超絶、最強、天才…ライドプレイヤーニコ、参上!」

 

十人「えぇ~っ!?」

 

穂乃果「ほ…本当に変身しちゃった!」

 

RPニコ「行っくわよ~…はっ!」

 

『HIT!』

 

バグスターA「!?」フラッ

 

RPニコ「ほらほら、遅いわよ!」

 

『HIT!』

 

バグスターB「…!」ヨロッ

 

(変身したにこさんはあちこちを飛び回りながら、次々と怪人達を攻撃していく)

 

亜里沙「スゴい…初めてクウガじゃないライダーに変身したはずなのに」

 

雪穂「まさか、あんなに戦えるなんて…」

 

RPニコ「ふふっ…一気に行くわよ~!」

 

(変身したにこさんが残り一体になった怪人を倒そうとした…その時だった)

 

『シャカリキスポーツ!』

 

雪穂「!?…今のって」

 

亜里沙「あっ…にこさん、後ろ!」

 

RPニコ「!」クルッ

 

ゲンム「ウフフッ♡…グレード3」スタスタ

 

『ガシャット!』

 

(ゲンムは黄緑色のゲームソフトのようなものを起動させると、すぐにベルトに装着してレバーを開閉させた)

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!!』

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マーイティアクショーン…エックス!!』

 

『アガッチャ!!シャカリキ!シャカリキ!バッドバッド!シャカっとリキっとシャカリキスポーツ…!!』

 

(ゲンムはスポーツバイクを召喚すると…バラバラに解体されたスポーツバイクがゲンムの上半身と合体した)

 

雪穂「自転車と…!」

 

亜里沙「合体しちゃった!?」

 

ゲンム「『スポーツアクションゲーマーレベル3』の力…あなたに見せてあげる」

 

『ガッシューン…』

 

(先程の黄緑色のアイテムをベルトから外したゲンムは…ベルトの横にあるスロットにそのアイテムを挿した)

 

『ガシャット!キメワザ!シャカリキ・クリティカルストライク!!』

 

希「!?…にこっち、逃げて!」

 

RPニコ「…!」

 

ゲンム「もう遅いわ…ハァッ!」ブンッ

 

(右肩の車輪を取り外したゲンムは…変身した状態のにこさんに向かって、ブーメランの要領で車輪を投げつけた)

 

『GREAT!』

 

RPニコ「きゃぁっ!?」

 

『カイシンノイッパツ!』

 

(ゲンムの技をまともに受けたにこさんは…変身を解除し、そのまま倒れ込んでしまった)

 

にこ「ううっ…」ドサッ

 

真姫「にこちゃん!」ダッ

 

(真姫さんが倒れたにこさんのもとへと走っていく)

 

穂乃果「あっ、真姫ちゃん!?」

 

真姫「大丈夫?」

 

にこ「…っ」ハァハァ

 

ゲンム「…」ヒョイ

 

(にこさんが落としたゲームソフトのような物を拾ったゲンムは…こう話し始めた)

 

ゲンム「知らなかったわ…まさか、この世界に複製品の『仮面ライダークロニクル』が紛れ込んでいたなんてね」

 

μ's&ゆきあり「!?」

 

雪穂「じゃあ、それは…」

 

亜里沙「『世界を変える力を持つ物』じゃなかったって事…?」

 

ゲンム「あなた達は何も知らないのね…まあ、知らない方が良い事もあるわ」

 

真姫「…どういう意味よ?」

 

にこ「うっ…ううっ!」

 

真姫「!」

 

亜里沙「何があったんですか!?」

 

にこ「はぁはぁ…!」スゥゥゥ…

 

雪穂「!…にこさんの身体が、透けてる?」

 

ゲンム「…この『仮面ライダークロニクル』は、起動した時点で変身した人物を強制的に『ゲーム病』に感染させられる能力を持っているの」

 

真姫「『ゲーム病』?…そんな病気、聞いた事が無いわ」

 

ゲンム「でしょうね…でも」スタスタ

 

真姫「!」

 

(ゲンムはゆっくりと…にこさんを介抱している真姫さんに近付こうとしていた)

 

絵里「真姫!」

 

ゲンム「あなた達がそれ以上知る必要も無い…さっきの恨み、今ここで存分に晴らしてあげるわ」

 

真姫「…あなた、随分と根に持ってるのね」

 

ゲンム「当然でしょ?だってあなたは…神であるこの私を侮辱したんだもの」

 

真姫「…」

 

穂乃果「大変だ…早く助けに行かないと!」

 

絵里「待って、闇雲に動いて刺激させたら…あのライダーが次に何を仕出かすか分からないわ!」

 

ことり「で、でもっ…このままだと二人が!」

 

海未「っ…何とかこの状況を回避できる方法は無いのですか!?」

 

花陽「…だ、だ」プルプル

 

希「!…花陽ちゃん?」

 

花陽「だ…だ、だ…」プルプル

 

亜里沙「もしかして…花陽さんも『ゲーム病』に?」

 

雪穂「でも、花陽さんは変身してないはずだよ!そんな事がある訳…」

 

花陽「だ、だ…だっ!」

 

凛「あっ!?もしかして、かよちんは…」

 

ゲンム「…?」

 

花陽「誰か助けてー!!」

 

(それは…花陽さんの心からの叫びだった)

 

 

 

(今、私は…とある小さな星にたった一人で暮らしていた)

 

ザザーン…

 

?「…」

 

(誰も救うことのできない、誰の手も届くことがなかったはずのその星)

 

(でも…女神様になった私が訪れてから、その星にはたくさんの命が宿るようになった)

 

女神「~♪」

 

(私の周りにはキレイな海、太陽の輝き、優しい風、そして…美味しいみかんがたくさんなってる木々で溢れていた)

 

女神「ふふっ…!」

 

(その時、どこかから誰かの叫び声が聞こえてきた)

 

ダレカタスケテー!!

 

女神「今、誰か助けてって…ちょっと待ってて!」

 

女神「すぐに他の世界にいるみんなと一緒に助けに行くから!」カチッ

 

『オレンジ!』

 

(私がある物を取り出すと…ジッパー状で縁取られている扉がすぐ近くに現れた)

 

女神「だから、諦めないで…はっ!」ダッ

 

(走り出した私は…開かれた扉の中に飛び込んでいった)

 

 

 

ビルド「…やあ!」

 

ディケイド「お前…どうして、オレを助けたんだ?」

 

ビルド「え?どうしてって…それは勿論、世界をラブアンドピースにする為だよ!」

 

ディケイド「何だ、その理由は…ん?」

 

ディケイド「そういえば…お前、話し方が前に会った時と違っていないか?」

 

ビルド「あっ…あはは、やっと気付いてくれたんだ?」

 

ビルド「まあ、でも今はこんな状況だし…その話は後にしようよ!」

 

ディケイド「は、はあ…?」

 

ビルド「よーし…じゃあ、一気に片付けるよ!」スッ

 

(ビルドはドリル型の武器とマゼンタカラーの小さなボトルを取り出すと…)

 

ビルド「この『μ's』ボトルをセットして…っと!」

 

(武器のソケットにボトルを装填し、ドリル部分に九色のエネルギーを纏わせた)

 

『Ready go!』

 

ビルド「行っくよ~…!」

 

『ボルテックブレイク!!』

 

ビルド「やぁーっ!」バッ!

 

(ビルドは残っていたXガーディアン達に武器を突き出すと…そのままドリルからリング状になった強力なエネルギー波が放たれた)

 

Xガーディアン達「…!」バタバタッ

 

(ビルドの技によってダメージを受けたXガーディアン達は…身体から火花を吹き出した後、倒れながら爆発した)

 

ビルド「ふぅ~…よし!」

 

ディケイド「今度は何が目的なんだ、あいつ…ん?」チラッ

 

(オレがふと近くを見ると…さっきまでスーパーショッカーと戦っていたXガーディアン達は全て倒されていたようだった)

 

ディケイド「!?…スーパーショッカーの幹部がいない?」

 

?「そぉ~れ!」バチンッ!

 

ビルド「うわっ!?」

 

(ビルドは何者か背後から鞭のようなもので攻撃され…ダメージを負ってしまった)

 

ディケイド「!」クルッ

 

ガラガランダ「ガ~ラガラガラガラガラ!」

 

ビルド「痛た…」

 

ディケイド「ビルド!」ダッ

 

十面鬼「ディケイド返し!」バッ

 

(オレはガラガランダからビルドを守ろうとしたが…間に割って入ってきた十面鬼の能力によって、オレの攻撃は弾かれてしまった)

 

ディケイド「うっ!?」ゴロゴロ

 

十面鬼「フン…甘いな、ディケイド」

 

ディケイド「奴までいたのか…これは厄介だな」ハァ

 

ビルド「それなら、良い考えがあるよ!」

 

ディケイド「…本当か?」

 

ビルド「うん!…でも、それには条件があってね」

 

ディケイド「条件?」

 

ビルド「…君が持っている、その新しいディエンドライバーを貸してほしいんだ」

 

ディケイド「は…はぁ!?」

 

十面鬼「貴様ら、何をグダグダと話している…やれ」

 

ガラガランダ「覚悟しろ、仮面ライダ~…!」ダッ

 

ビルド「!?…このままじゃ二人ともやられる、早く!」

 

ディケイド「いや、いきなり貸せと言われても…」

 

ビルド「後でちゃんと返すから…お願い、この通り!」

 

ディケイド「…全く、仕方ないな」ハァ

 

(オレはビルドにシアンカラーのディエンドライバーを渡した)

 

ビルド「!」

 

ディケイド「ほら、一度だけだぞ?」

 

ビルド「…ありがとう、ツカサくん」フフッ

 

ガラガランダ「喰らえ~っ!」

 

(ガラガランダが右手の鞭をしならせてビルドを追撃しようとすると…同時にビルドは二枚のカメンライドカードを取り出した)

 

ビルド「さあ、実験を始めようか!」スッ

 

ディケイド「!?…そのカードは」

 

『カメンライド…』

 

ビルド「…ふっ!」バシュッ!

 

 

 

花陽「うぅっ…!」グスッ

 

凛「かよちん…」

 

ゲンム「…残念だけど、助けを呼んでも無駄よ」

 

ゲンム「神の力を持つ者でもいない限り、私が創ったこの仮想世界を出る事は絶対に不可能なのだから」

 

絵里「!…仮想世界って」

 

穂乃果「ウソ!?」

 

亜里沙「じゃあ、私達…」

 

雪穂「このままこの世界から出られないって事!?」

 

ことり「!?…ねぇ、あそこにいるのって」

 

八人&ゆきあり「!」

 

ジャーク将軍「フン…」

 

Sアポロガイスト「さあ、大人しく我々に『世界を変える力を持つ物』を渡すのだ!」

 

シャドームーン「それを持つのは、君達より…スーパーショッカーである我々こそが相応しい」

 

シュバリアン「ついでに貴様らも始末してやる!」

 

Cディエンド「グゥゥゥゥ…!!」

 

海未「っ…そうこうしているうちに、スーパーショッカーにも追いつかれてしまいましたね」

 

亜里沙「どうしよう…このままじゃ!」

 

穂乃果「…諦めちゃダメだよ」

 

雪穂「え…お姉ちゃん?」

 

穂乃果「だって、雪穂や亜里沙ちゃんも…歌を作って、ステップを覚えて、衣装を揃えて」

 

穂乃果「自分達なりにスクールアイドルをがんばってきたんでしょ?」

 

亜里沙「!…はい」

 

穂乃果「それなのに…こんなところで全部終わっちゃうなんて、そんなの絶対に間違ってるよ」

 

雪穂「…」

 

穂乃果「私だってイヤだ…この九人でやって良かったって、がんばってきて良かったって…そう思いたいの!」

 

穂乃果「そう…思いたいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

(お姉ちゃんがそう叫ぶと…突然、上空に何かが現れた)

 

全員「!」

 

亜里沙「あれは…みかん?」

 

雪穂「いや、オレンジでしょ…でも何で空にあんなものが?」

 

(すると…光の球はスーパーショッカーがいる場所へと落下し、大幹部達を吹き飛ばした)

 

ジャーク将軍「ぬぅっ…!?」

 

穂乃果「うわぁっ!…何なに?」

 

(やがてその光の球から姿を現したのは…オレンジの皮のような鎧を身につけた紺色の戦士だった)

 

???「よっ…着いたっ!」スタッ

 

穂乃果「!」

 

ジャーク将軍「貴様、何者だ?」

 

???「…私は『鎧武』」

 

鎧武「仮面ライダー…鎧武だぁっ!」

 

 

 

ディケイド「…!」

 

(ビルドがシアンカラーのディエンドライバーで召喚したのは…とある世界からやってきた二体だった)

 

アマゾンオメガ「…」

 

アマゾンアルファ「…」

 

ガラガランダ「!?」

 

十面鬼「アマゾン…だとォッ!?」

 

(そのうちの一体である赤のアマゾンアルファは…オレを一瞥して、こう言ってきた)

 

アルファ「…見てて」チラッ

 

ディケイド「!」

 

アルファ「私達、アマゾンの戦いを」スタスタ




~#6へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#6

オメガ「…」

 

アルファ「…オメガ」

 

オメガ「…!」コクリ

 

(アマゾンアルファに促された緑のアマゾンオメガが無言で頷くと、二体のアマゾンは…ゆっくりと十面鬼がいる場所まで歩き出した)

 

ガラガランダ「させるか~!」ダッ

 

ディケイド「!…おい、待て」

 

ガラガランダ「?」

 

ディケイド「お前の相手は…」

 

ビルド「僕達だよ!」シャカシャカ

 

(持っていた武器を銃に変形させながら、水色のボトルを装填したビルドは…再び九色のエネルギーを纏わせた)

 

『Ready go!』

 

ガラガランダ「!?」

 

ビルド「さてと…『Aqours』ボトルの威力、試させてもらうね!」

 

『ボルテックブレイク!!』

 

ビルド「はぁっ!」ガガッ!

 

(ビルドは武器を縦に振り回すと…数字の『1』になるように、それぞれの色で輝く九発の銃弾を連射させた)

 

ガラガランダ「ガッ…ヌワァァァァッ!?」

 

(全ての銃弾を浴びたガラガランダは光り輝きながら…その身を爆発させた)

 

ビルド「…ふぅ」

 

十面鬼「貴様、よくも…そこをどけ!」ダッ

 

アルファ「…ふっ!」サッ…ガッ!

 

(アマゾンアルファは十面鬼の攻撃を避けると…素早い動きでカウンターを繰り出した)

 

十面鬼「ウッ…は、早い!」

 

オメガ「…!」バッ!

 

(それを見たアマゾンオメガは飛び上がると、バク転からのムーンサルトで華麗に十面鬼の背後に回り…)

 

十面鬼「!?」

 

アルファ「あなたの戦い方は…決して、悪くはありません」

 

オメガ「…っ!」ガブッ!

 

(首筋に噛みつき、十面鬼に更なるダメージを与えた)

 

十面鬼「グァッ!?」

 

アルファ「ただ、もし私達を狩ろうとしているのだとしたら…諦めた方が良いかもしれません」

 

十面鬼「何…だと?」

 

オメガ「…バカにしないで」ボソッ

 

十面鬼「!」

 

オメガ「この戦いは…遊びじゃない!」

 

『Violent Punish』

 

(ベルトの右側のグリップを捻り、腕のカッターをヒレのように大きくさせたアマゾンオメガは…)

 

オメガ「うあぁぁぁぁぁっ!!」ザシュッ!

 

十面鬼「なっ…グハァァァッ!?」

 

(腕のカッターを勢い良く振り下ろし、身体を真っ二つに裂かれた十面鬼はそのまま爆発四散した)

 

ビルド「終わったみたいだね…お疲れ様!」

 

アルファ「お疲れ様です」

 

オメガ「…ふんっ」プイッ

 

ディケイド「…」

 

(それから程なくして、召喚の効果が薄まっている二体のアマゾンは自分達の身体が消えかけている事に気付いた)

 

アルファ「!…どうやら、私達の出番はここまでみたいですね」スゥゥ…

 

ビルド「うん…そう、みたいだね」

 

ディケイド「…」

 

アルファ「では、機会があればまた…もちろんツカサさんも」

 

ディケイド「!…今、何て言った?」

 

オメガ「こんなに近くで喋ってるのにわざわざ聞き直すなんて…姉様、この人バカ?」

 

ディケイド「なっ…おい、誰がバカだ!」

 

オメガ「あなたしかいないでしょ?」

 

ディケイド「はぁ!?あのな…!」

 

オメガ「じゃあ姉様がさっき、どういう意味で言ったのかハッキリ分かるように言ってあげる!」ズイッ

 

ディケイド「な、何だよ…?」

 

オメガ「…生きて、ツカサ」スゥゥゥ…

 

ディケイド「!!」

 

アルファ「いつか、私達の我が儘を聞いてくれるその日を…楽しみにしていますから」スゥゥゥ…

 

(そう言いながら、少女の姿に変わった二体のアマゾンは…元の世界へと戻っていった)

 

ディケイド「…一つ、聞いても良いか?」

 

ビルド「何かな?」

 

ディケイド「お前…そのカード、一体どこで手に入れたんだ?」

 

(オレはビルドが『カメンライド アマゾンオメガ』と『カメンライド アマゾンアルファ』のカードを所持している理由を聞こうとした)

 

ビルド「…さあ、どこでだろうね?」

 

ディケイド「あくまで白を切るつもりか…まあ、答える気が無いならこれ以上は聞かないけどな」

 

ビルド「…」フフッ

 

?「た、大変よ~!」バサバサ

 

ディケイド「?…あいつは」

 

 

 

穂乃果「がい、む…?」

 

鎧武「ほぇ?」クルッ

 

(私達の方を振り返った鎧武は…お姉ちゃんを見て、何かに気付いた様子だった)

 

鎧武「あっ…あぁーっ!?」

 

穂乃果「わっ!?」ビクッ

 

鎧武「もしかして…もしかしてっ!」

 

穂乃果「えっ、何!?」

 

鎧武「『μ's』の高坂穂乃果さん…ですよね!?」

 

穂乃果「あ…は、はい」

 

鎧武「やっぱり…私、スクールアイドル『μ's』の大・大・大・大・大ファンなんです!」

 

穂乃果「えぇ~っ、そうなの!?」

 

鎧武「はい!」

 

雪穂「あ、あの…」

 

鎧武「ん?」

 

亜里沙「あなたも仮面ライダーなの?」

 

鎧武「うん、そうだよ!」

 

鎧武「『助けて』って言ったのはあなた達だよね?…って!?」

 

μ's「…?」

 

鎧武「あぁーっ!?」

 

μ's「!?」ビクッ

 

鎧武「『μ's』が、九人…全員揃ってる!」

 

鎧武「スゴい…奇跡だよ!!」

 

ことり「び、びっくりしちゃったぁ…」

 

海未「表情はよく分かりませんが…この喜びようを見ていると、どうやら私達のファンだというのは嘘じゃないみたいですね」

 

鎧武「あ…あの、もしこの戦いが終わったら握手してくれませんか!?」スッ

 

穂乃果「あはは…うん、良いよ?」

 

鎧武「やったぁ~!」

 

ジャーク将軍「フンッ!」ブンッ

 

穂乃果「あっ!?…危ない、後ろ!」

 

鎧武「!」クルッ

 

ガキンッ!

 

(背後から剣を振るってきたスーパーショッカーの大幹部の攻撃に気付いた鎧武は…櫛形切りのオレンジの形を模した刀でそれを受け止めた)

 

ジャーク将軍「ほう…貴様、このミドラー剣を受け止めたか」

 

鎧武「それだけじゃないよ?」

 

ジャーク将軍「何?」

 

(その直後、ベルトの左腰に装着されていた剣を取り出した鎧武は…鍔のような部分を大幹部に突きつけた)

 

鎧武「そりゃっ!」ガガッ!

 

ジャーク将軍「グッ!?」

 

(鎧武から至近距離で銃撃を受けた大幹部は…ふらつきながら後退した)

 

鎧武「ふふん、どーだっ!」

 

穂乃果「ほぇ~…スゴいね!」

 

鎧武「…穂乃果さん達『μ's』がいてくれたおかげですよ?」

 

穂乃果「えっ?…私達が?」

 

鎧武「はい…私は『μ's』の皆さんから大切なことを教えてもらいました」

 

鎧武「普通の子が精いっぱい輝くにはどうしたらいいのか…どうすれば穂乃果さんや『μ's』の皆さんみたいに輝けるのか」

 

ゆきあり「!」

 

穂乃果「そっか…それで、答えは見つかった?」

 

鎧武「…はい」

 

鎧武「私は、私の景色を見つけることにしました…仲間の『みんな』と一緒に!」

 

穂乃果「ふふっ…それなら、良かった」

 

鎧武「えへへ…!」

 

ゆきあり「…」

 

穂乃果「よ~し!それじゃ、その仲間の『みんな』のためにも…ファイトだよっ!!」

 

鎧武「はいっ!…あっ」

 

穂乃果「どうしたの?」

 

鎧武「実は私、その仲間の『みんな』を…」

 

ゲンム「そこまでよ」スチャ

 

全員「!」

 

(ゲンムは真姫さんを人質にして、鎧武を止めようとした)

 

穂乃果「真姫ちゃん!?」

 

ゲンム「邪魔をすれば…この子が消える事になるわよ?」

 

鎧武「…!」

 

ゲンム「まあ、あなたがやめたとしても…この子の大切なお友達が消滅する事になっちゃうけど」フフッ

 

にこ「…ううっ」スゥゥゥ…

 

真姫「っ…あなた、どこまで卑怯なの!?」

 

ゲンム「あなたが私の才能を馬鹿にしたからよ…さあ、どうするの?」

 

鎧武「…」

 

ゲンム「このままこの子を犠牲にして戦う?」

 

ゲンム「それとも降参して戦うのを…や・め・る?」

 

鎧武「…やめないよ」

 

ゲンム「!」

 

鎧武「やめるわけないじゃん…!」

 

鎧武「だって私達には…これからやらなくちゃいけないことがたくさんあるんだもん!!」

 

ゲンム「…何ですって?」

 

ジャーク将軍「ビシュムよ、お前の好きにはさせんぞ…イカデビル!」

 

イカデビル「!」

 

ジャーク将軍「ビシュムが人質にしているあの二人を、消せ…!」

 

イカデビル「ハッ…イ~カ~!」ダッ

 

亜里沙「みんな、見て!イカの怪人が真姫さんとにこさんの方に向かって行ってるよ!?」

 

シャドームーン「フン、こうなれば…この私が『命の灯火』を!」

 

Sアポロガイスト「抜け駆けは許さんぞ、シャドームーン…『ユメノチカラ』はこの私の物なのだ!」

 

サイ怪人「グゥゥ…!」

 

シュバリアン「フハハハ…」

 

Cディエンド「グオォォ…!」

 

雪穂「でも、他の大幹部や怪人達がこっちに…!」

 

鎧武「…大丈夫だよ」

 

穂乃果「へ?」

 

鎧武「だって、私には…一緒に戦ってくれる仲間の『みんな』がいるから!!」

 

…ビュゥゥゥゥゥ!!

 

絵里「!?…これって」

 

花陽「か、風?」

 

(すると突然、強い風が吹き荒れ…スーパーショッカーの動きを止めた)

 

シャドームーン「グッ…何だ、この風は!?」

 

ブゥゥゥン!ピロピロー!

 

シュバリアン「ウッ!?」フラッ

 

海未「な…何ですか、あの小さなおもちゃの車は!」

 

ガッ!ゴッ!

 

Cディエンド「グオォッ!?」グラッ

 

凛「あ、あっちはパーカーが空を飛んでるニャ!」

 

(その直後、どこかからミニカーや空を飛ぶパーカーが現れ…大幹部や怪人達を牽制する)

 

…キラッ

 

希「ん?…今、空で何か光ったような」

 

???「シャイニィィィィィィィィィッ!!」ゴォォォォ!

 

全員「!?」

 

ドーンッ!

 

(空から光る何かが勢い良く落下し…スーパーショッカーの大幹部達を勢い良く吹き飛ばした)

 

Sアポロガイスト「グハッ!?」ゴロゴロ

 

雪穂「ちょっと!今度は何が落ちてきたの!?」

 

亜里沙「ロケット…じゃない、もしかして人?」

 

ロケットの戦士「痛ったぁ…ほっ!」ムクッ

 

(落ちてきたのは…宇宙飛行士のような姿の白い戦士だった)

 

希「えっと…だ、大丈夫?」

 

ロケットの戦士「へっちゃらよ!着地には失敗しちゃったけどね…てへぺろっ!」

 

希「…着地?」

 

ロケットの戦士「ええ、実は私…宇宙から来たの!」

 

希「そっか…宇宙からなんて、スピリチュアルやね?」

 

ロケットの戦士「ふふふっ…あなたとは良いダチになれそうね!」

 

希「!…ダチ?」

 

ロケットの戦士「イエース!何故なら私は…全てのスクールアイドルと友達になるガールだからよ!」ドドンッ!

 

(白い戦士は胸を拳で二回叩くと、同じ手で力強く希さんの方を指した)

 

希「全てのスクールアイドルと友達か…ふふっ、面白そうやね?」

 

ロケットの戦士「じゃあ、早速…手を貸して!」

 

希「手?…うん」スッ

 

(白い戦士は希さんと二回握手をすると…上下に二回、拳を合わせた)

 

ロケットの戦士「オーケー…これが『友情のシルシ』よ!」

 

希「『友情のシルシ』か…良いやん!」

 

Sアポロガイスト「ッ…貴様、何者だ!」

 

ロケットの戦士「Oh!?自己紹介が遅れたわ…私は仮面ライダーフォーゼ!」

 

希「…フォーゼ」

 

フォーゼ「ダチを困らせているのはあなたね?」

 

Sアポロガイスト「だとしたら、何だというのだ!?」

 

フォーゼ「もちろん、ダチを泣かせるようなマネは…」

 

???「ぶっぶー!ですわ!!」

 

(フォーゼが話をしている途中でそんな大声を上げて割って入ってきた人物は…何故か、花陽さんと絵里さんの間にいた)

 

花陽「み、緑のライダー…?」

 

絵里「緑?…私の方からだと、黒のライダーのように見えるわ」

 

緑と黒の戦士「いえ…どちらも、ですわ」

 

(花陽さんと絵里さんの現れた戦士の姿は右半身が緑、左半身が黒の二色に分かれていた)

 

シャドームーン「貴様は、まさか…!」

 

緑と黒の戦士「あら…どうやら私達の事を知っているみたいですわね?」

 

緑と黒の戦士「そう…私達は仮面ライダー、ダブr」《ピギィィィィィッ!?》

 

花陽「ピャアッ!?」

 

緑と黒の戦士「…ちょっと、まだ私が喋ってる途中ですわよ?」

 

緑と黒の戦士《あっ…ごめんなさい、おねえちゃん》

 

緑と黒の戦士《でも、この人たち…よく見て!》

 

緑と黒の戦士「もう…何なんですの?」クルッ

 

絵里「…」ジーッ

 

緑と黒の戦士「ピギャァァァァァッ!?」

 

えりぱな「!?」ビクッ

 

緑と黒の戦士「ミミミミミ…『μ's』のエリーチカ!?」

 

緑と黒の戦士《花陽ちゃんも…それに穂乃果さんたちもいるぅ!?》

 

絵里「…もしかして、このライダーも」

 

花陽「私達のファン、なのかな…?」

 

シャドームーン「私を忘れるな!」ダッ

 

緑と黒の戦士《!?…おねえちゃん、後ろ!》

 

緑と黒の戦士「分かっていますわ…はっ!」ガッ!

 

(後ろから迫ってくる大幹部に気付いた緑と黒の戦士は…マフラーを靡かせながら、左脚で大幹部に強烈な回し蹴りを放った)

 

シャドームーン「ガハッ!?」ヨロッ

 

緑と黒の戦士「え、エリーチカ!」《は、花陽さんっ!》

 

えりぱな「?」

 

緑と黒の戦士「ここは私達が…」

 

緑と黒の戦士《がんばルビィ!》

 

花陽「!…う、うん」

 

絵里「ところで、あなたは…?」

 

緑と黒の戦士「私は…いえ、私達は」

 

緑と黒の戦士《二人で一人の、仮面ライダー…》

 

緑と黒の戦士「《Wです(わ)!》」

 

花陽「…二人で一人の」

 

絵里「W…ハラショー!」

 

シャドームーン「グッ…Wめ、前のようにはいかんぞ!」

 

W「は?あなた…何を言っているんですの?」

 

シャドームーン「何だと…覚えていないのか!?」

 

W「どういう訳かは存じませんが…今、私達はあなたが『μ's』の皆さんを泣かせようとしていた事だけはハッキリとこの目で見ましたわ」

 

W《あの人から『μ's』のみんなを守ろう…おねえちゃん!》

 

W「ええ…もちろんですわ!」

 

???「さーてと、それじゃ…そろそろ私も手伝っちゃおうかな?」

 

海未「?…はっ!?」ビクッ

 

(海未さんがふと横を見ると…そこには胸にタイヤをたすき掛けにした赤い車の戦士がいた)

 

タイヤの戦士「んー?」

 

海未「な、何なのですかあなたは!?」

 

タイヤの戦士「私?私は…仮面ライダードライブ」

 

ドライブ「アピールポイントは…実家のダイビングショップを手伝っているうちに鍛えられた泳力と筋肉、かな?」

 

海未「き、筋肉…?」

 

ドライブ「うん!試しに触ってみてよ…ほら、ちょっといい感じでしょ?」

 

海未「…で、では」コホン

 

ドライブ「…」

 

海未「!…これは」

 

ドライブ「どう?」

 

海未「…確かに、良く鍛えられていますね」

 

ドライブ「…!」フフッ

 

ドライブ「よ~し…それじゃあ、ハグしよっ!」ギュッ

 

海未「ええっ!?さ、流石にそれは…///」

 

ドライブ「ふふっ、良いから良いから!」

 

シュバリアン「貴様ら…さっきから一体、何をやっている!?」

 

ドライブ「何って…ハグだけど?」

 

シュバリアン「ハグだと…?ええい、スーパーショッカーをコケにするつもりか!」

 

ドライブ「いや、別にそんなつもりは…」

 

シュバリアン「黙れ…このスーパーショッカー最強の怪魔ロボットであるシュバリアンが、貴様を始末してやる!」

 

ドライブ「…あちゃ~、何だか怒らせちゃったみたいだね」

 

海未「私にはあなたが火に油を注いだようにしか見えなかったのですが…」

 

ドライブ「そうなの?…まあ、別にいっか」

 

ドライブ「どっちにしても、倒すべき敵だって事には…変わりないからね!」

 

Cディエンド「グゥ…」スッ

 

『アタックライド…ブラスト!』

 

(怪人が変身したディエンドがディエンドライバーにカードを装填し、凛さんを攻撃しようと狙っていた)

 

Cディエンド「ガァッ!」ガガッ!

 

凛「!」

 

ガキンッ!

 

(しかしその銃弾は…凛さんの前に現れたオレンジ色と黒のパーカーを羽織った戦士の大きな剣によって全て受け止められていた)

 

パーカーの戦士「…」

 

凛「ニャ…ニャニャ!?」

 

パーカーの戦士「ふぅ…」パサッ

 

(被っていたパーカーのフードを脱いだ、その戦士の顔は…まるで人魂のようだった)

 

凛「さっきまで、凛の前に誰もいなかったはずなのに…どうして?」

 

パーカーの戦士「…ずら?」クルッ

 

凛「ず、ずら?」

 

パーカーの戦士「!?…い、いえ」

 

凛「あなたは?」

 

パーカーの戦士「オラは…」

 

凛「…オラ?」

 

パーカーの戦士「はっ!?…ま、またオラって言っちゃったずら」シュン

 

凛「大丈夫だよ!凛だって…いつも『ニャ』って言ってるよ?」

 

パーカーの戦士「!…本当ずら?」

 

凛「うん、本当だよ…にゃんにゃんにゃーん!」

 

パーカーの戦士「ふふっ…ありがとうずら!」

 

凛「気にすることないよ!…ところで、あなたは?」

 

パーカーの戦士「あっ、えっと…オラは仮面ライダーゴースト!」

 

凛「えっ、あなた…幽霊なの?」

 

ゴースト「ずら」

 

凛「…ちょっとだけ、触ってみても良い?」

 

ゴースト「?…うん!」

 

…スカッ

 

(凛さんはゴーストに触れようとしたが…ゴーストの身体は霞のように凛さんの手を突き抜けてしまった)

 

凛「本当に幽霊なんだ…スッゴいニャ~!!」

 

ゴースト「えへへ…照れるずら」ポリポリ

 

Cディエンド「グォォォ…」

 

凛「!…そうだ、あの化け物が持ってる銃を取り返してもらっても良いかニャ?」

 

ゴースト「あの銃を?…良いよ、マルに任せるずら!」

 

ことり「…あれ?」ヒョイ

 

(ことりさんは地面に落ちていた赤い何かを拾った)

 

ことり「メダル?…でも、何で半分こに割れてるんだろう?」

 

???「ん~、どこ行っちゃったんだろ…?」キョロキョロ

 

ことり「?」クルッ

 

(ことりさんが後ろを向くと…そこには赤い頭に黄色い胴体、そして緑色の脚をした三色の戦士がいた)

 

三色の戦士「あっ!?ごめん…そのメダル、私の!」

 

ことり「こ…これ?」

 

三色の戦士「うん、スッゴく大切な物なんだ!」

 

ことり「そうだったんだ…はい!」スッ

 

三色の戦士「ありがとう!」

 

ことり「私も大切な物を無くすと、よく不安になっちゃう事があるから…気持ちがスゴく分かるんだ」

 

三色の戦士「そっか…ん?」クンクン

 

ことり「?」

 

三色の戦士「…その制服、可愛い!」

 

ことり「えっ…制服?」

 

三色の戦士「うん、私…制服には目がなくって」エヘヘ

 

ことり「本当?実は私も…」

 

三色の戦士「あなたも?…私達、色々と一緒だね!」

 

ことり「ふふっ、奇遇だね!」

 

三色の戦士「あはははっ…」

 

サイ怪人「ブオォォォォ…!」

 

三色の戦士「!…さてと、そろそろあの怪人をやっつけないとね」

 

ことり「あ…そういえば、あなたは?」

 

三色の戦士「私は仮面ライダー…オーズ!」

 

ことり「…オーズ」

 

オーズ「さあ…行くよ!」

 

ゲンム「ウフフッ、それじゃ…さ・よ・う・な・ら♡」

 

真姫「…!」

 

『GAME START!』

 

ゲンム「!?」バッ

 

真姫「今のは…?」

 

???「たぁーっ!」ドカッ!

 

『HIT!』

 

ゲンム「ウッ!?」ゴロゴロ

 

『HIT!』

 

バグスターC「…!」ドサッ

 

『GAME CLEAR!』

 

(ハンマーのような武器でゲンムを攻撃しながらウイルスの最後の一体を撃破し、真姫さんとにこさんを助けたのは…ゲンムとは色違いの姿をした戦士だった)

 

色違いの戦士「…」

 

真姫「あれは…色違いの、ゲンム?」

 

にこ「…?」

 

(さっきまで消滅が進んでいたはずのにこさんの身体は…いつの間にか止まっている様子だった)

 

イカデビル「今のうちに…」スススッ…

 

『コネクト…プリーズ!』

 

ガガッ!

 

イカデビル「ゲソーッ!?」ゴロゴロ

 

にこ「!…何なの今の、手品?」ムクリ

 

(銃のような武器でイカの怪人を攻撃して現れたのは…黒いロングコートを身に纏う赤い戦士だった)

 

ロングコートの戦士「…」

 

真姫「うぇえっ!?…にこちゃん、大丈夫なの?」

 

にこ「え、ええ…もう平気よ」

 

真姫「そう…無事で良かった」フフッ

 

色違いの戦士「二人とも、大丈夫?」

 

真姫「あっ…ありがとう、おかげで助かったわ」

 

にこ「ところでアンタ達は?」

 

色違いの戦士「…私は、仮面ライダーエグゼイド」

 

ロングコートの戦士「我が名は、天界より堕とされし指輪の魔法使い…仮面ライダーウィザード!」ギランッ

 

真姫「…エグゼイド?」

 

にこ「ウィザード…?」

 

エグゼイド「私はピアニストやゲーマーである傍ら…ドクターとして、皆の命を『ゲーム病』から救う為に戦っているの」

 

真姫「…皆の、命を?」

 

エグゼイド「ええ…だって命は、何よりも大切なかけがえのないものだもの!」

 

エグゼイド「私はそれを…音楽やゲームに、教えてもらったから」

 

真姫「!…奇遇ね、ゲームについてはあまり詳しくないけど私もピアノの経験者として同じ想いよ」

 

真姫「あと、医者の娘としても…ね」

 

エグゼイド「ふふっ…私達、気が合いそうね?」

 

真姫「そうかも」フフッ

 

にこ「ねぇ…アンタのそれ、もしかしてキャラ?」

 

ウィザード「!?」ギクッ

 

にこ「…図星みたいね」

 

ウィザード「キャ、キャラじゃないっ!」

 

にこ「アンタ…分かりやすいわね~」ニヤニヤ

 

ウィザード「うぅっ!?もう…ちーがーうー!」ジタバタ

 

ゲンム「あなた…どうして私の邪魔をするの!?」

 

エグゼイド「えっ?いやいやいや、待ってよ…元はと言えばあなた達が悪い事をしていたからでしょう!?」

 

ゲンム「うるさい!私の許可無く…この仮想世界に入る事は許さないっ!!」

 

エグゼイド「はぁ、やっぱりこうなっちゃうのね…」ハァ

 

イカデビル「貴様ら…俺様の事を忘れてなイカ~!」ダッ

 

にこ「また来てる…ちょっと、さっきの手品で早く何とかしなさいよ!」

 

ウィザード「手品じゃなくて、ま・ほ・う!」

 

ウィザード「見てなさい…こうなったら、あなたをリトルデーモンにして私が最後の希望にしてあげるんだからぁ!」

 

にこ「は、はぁ?…リトルデーモン?」

 

ウィザード「そうよ…あなたは、この堕天使の魔法によって救済されるの!」

 

にこ「…何言ってんの、アンタ?」

 

ウィザード「くっくっく…そうと決まれば儀式を始めるわよ、リトルデーモン?」

 

にこ「人の話を聞きなさいよ!…ってか、誰がリトルデーモンよ!」

 

真姫「良かったわね、にこちゃん…仲間が出来たみたいで」

 

にこ「どう見たらそうなるのよ!?」

 

雪穂「…えっと、あのライダー達が」

 

亜里沙「あなたの仲間?」

 

鎧武「うんっ!みんな、準備は良い?」

 

フォーゼ「オフコース!…あなた達とタイマン、張らせてもらいマース!!」

 

W《おねえちゃん!何だかゾクゾク…ううん、ワクワクするね?》

 

W「ええ…ハードボイルドに、決めてみせますわ!」

 

W「《さあ、あなた達の罪を…数えて!!》」

 

ドライブ「脳細胞もトップギアになってだいぶ良い感じだしね…ひとっ走り、付き合ってよ!!」

 

ゴースト「マル達の未来に繋げるために…命、燃やすずら!!」

 

オーズ「私達で皆の手を掴もう…全速前進、ヨーソロー!!」

 

ウィザード「堕天使ヨハネとリトルデーモン達の力、見せてあげる…さあ、ショータイムよ!!」

 

エグゼイド「行きましょう…ノーコンティニューで、クリアしてやるわ!!」

 

鎧武「ゼロからイチへ…イチから、その先へ!」

 

鎧武「今、全力で戦おう…ここからは私達のステージだぁっ!!」




~#7へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#7

シャドームーン「ハッ!」バシュッ!

 

(大幹部の一人は両手から怪光線を放ち、Wを捕縛する)

 

W「うっ!?」

 

シャドームーン「吹き飛べ!」ブンッ

 

W《ピギィッ…!》ゴロゴロ

 

シャドームーン「…」カシャン…カシャン…

 

(投げ飛ばしたWに更に攻撃しようと…大幹部はゆっくりとWに接近していた)

 

W「くっ…こうなったら、メモリを変えますわよ!」

 

W《うん、おねえちゃん!》スッ

 

『ルナ!』

 

(金色のUSBメモリのようなものを右手に持ったWはWの形に展開された腹部のベルトを一度閉じると…ベルトから緑色のメモリを引き抜いた)

 

シャドームーン「…今度こそ、消えろ!」ブンッ!

 

『ルナ・ジョーカー!!』

 

(引き抜いた場所に金色のメモリを挿し、再びベルトを展開させたWは…右半身だけ色を緑から金へと変えた)

 

W《えいっ!》グルグル…ガシッ

 

シャドームーン「なっ…!?」

 

W「…お返しですわ」

 

W《え…えいっ!》ブンッ

 

(右半身の色を変えたWは右腕をありえない長さまで伸ばすと…その腕を大幹部の身体に巻き付けて、勢い良く投げ飛ばしてしまった)

 

シャドームーン「ウグッ!」ゴロゴロ

 

W「その程度の攻撃で、私達に勝てると思うなんて…片腹痛いですわ」

 

W《おねえちゃん…次はアレで行こう!》スッ

 

『サイクロン!』

 

W「!…確かに、あの技を試すにはちょうど良い機会かもしれませんわね」スッ

 

『トリガー!』

 

(Wは緑と青、二本のメモリを取り出すと…ベルトに挿されている別の二本のメモリと交換した)

 

『サイクロン・トリガー!!』

 

W「ふっ!」ガガガガッ!

 

(右半身を緑色、左半身を青色に変えたWは左胸に出現した銃を素早く手に持ち…立ち上がった大幹部に向かって連続で弾丸を放った)

 

シャドームーン「グッ!?」

 

W「決めますわよ…」スッ

 

『サイクロン!マキシマムドライブ!!』

 

W「《トリガー・エアロバスター!!》」ガガガガガッ!

 

(ベルトから緑色のメモリを引き抜いたWはそれを銃に装填すると…銃口から強烈な風圧を纏った弾丸を撃ち出した)

 

シャドームーン「い、いつか必ず影が光を…グハァァァァッ!!」

 

(弾丸を受け、吹き飛ばされた大幹部は爆発し…Wは勝利した)

 

W《やったね、おねえちゃん!》

 

W「…ええ」フフッ

 

 

 

サイ怪人「グォォォォ!」ダダッ

 

オーズ「おっと!」サッ

 

(オーズに突進攻撃を避けられた怪人は勢い余って後ろの木に激突してしまう)

 

バキッ!

 

オーズ「うわっ、折れちゃった…やっぱり威力スゴいなぁ」

 

サイ怪人「グゥゥ…!」ダッ

 

オーズ「また来た!?えっと、メダルメダル…」アセアセ

 

サイ怪人「グォォォッ!」ダダッ

 

オーズ「!」スッ

 

(白色と青色、二枚のメダルを取り出したオーズは腹部のバックルに入っていた三枚のうち左と中央のメダルと交換すると…右腰に装着されていたフリスビーのようなものをバックルに素早く通した)

 

『サイ・ウナギ・バッタ!』

 

(するとオーズの頭部は大きな角が生えた白に、胴部は青く変化し…腕からは鞭のようなものが装備された)

 

オーズ「焦ってテキトーに選んじゃったけど…よっと!」ガシッ…ビリビリッ!

 

サイ怪人「!?」

 

(オーズは腕の鞭で突進してきた怪人を拘束して動きを止めると…電気ショックを与え、怪人を痺れさせた)

 

オーズ「えいっ!」ガッ!

 

(その隙を突いてオーズはバッタのように高く跳び上がると…怪人に頭突きを浴びせた)

 

サイ怪人「ウガッ…」ヨロッ

 

オーズ「あれ?テキトーじゃなかった…じゃあ、次はこれで決めるよ!」スッ

 

『タカ・カマキリ・チーター!』

 

(取り出した三枚のメダルをベルトの三枚と交換したオーズは頭部を赤、胴と腕を緑、脚を黄色に変化させると…)

 

オーズ「それっ!」ビュン!

 

ザシュッ!

 

(目視出来ないほどの速さで走り回って怪人を翻弄させながら、両腕の刃で斬りつけ…怪人に更なるダメージを与えた)

 

サイ怪人「グォッ…!」フラッ

 

オーズ「…よし、そろそろ行くよ!」

 

(大きな剣を取り出したオーズは銀色のメダルを三枚ほど投入し…)

 

『トリプル!スキャニングチャージ!!』

 

オーズ「はぁっ…セイヤーッ!!」ザシュッ!

 

サイ怪人「ウガァァァァァッ!?」

 

(怪人を空間ごと真一文字に切り裂き、怪人は爆発した)

 

オーズ「っと…うん、良い感じだね!」

 

(その直後、空間は何事も無かったかのように元に戻っていた…)

 

 

 

Sアポロガイスト「スーパーガイストカッター!」ブンッ

 

フォーゼ「…!」スッ

 

(大幹部が刃のついた盾を投げるのと同時に、フォーゼはスイッチのようなものを二つ取り出し…ベルトの右側に挿さっていた二つのスイッチと交換した)

 

『シールド・オン』

 

ガキンッ!

 

(その時、フォーゼの左腕にスペースシャトル型の盾が装備され…大幹部の攻撃を完全に防いだ)

 

Sアポロガイスト「何!?」

 

『ガトリング・オン』

 

フォーゼ「シューティーング!」ガガガッ!

 

(次にガトリング砲を左脚に装備したフォーゼは、大幹部に向かって銃弾を容赦なく連射していく)

 

Sアポロガイスト「ヌゥッ…!?」ヨロッ

 

フォーゼ「まだまだ行くわよ~!」スッ

 

(フォーゼは再びスイッチを二個取り出し、ベルトに嵌まっていたスイッチと付け替えた)

 

『フラッシュ・オン』

 

ピカッ!

 

(右腕を懐中電灯のように変化させたフォーゼは電灯を光らせ、大幹部の目を眩ませると…)

 

Sアポロガイスト「ウオッ!」

 

『スモーク・オン』

 

プシュー…

 

(右脚に装備された装置から煙幕を放出し、大幹部を混乱させる)

 

Sアポロガイスト「おのれ…どこにいる!?」

 

『ビート・オン』

 

フォーゼ「ここデース!」ギュイーン!

 

(フォーゼはスイッチを差し替えて右脚の装置をスピーカーのようなものに変えると…そこから大音量の音楽を流した)

 

Sアポロガイスト「グワァッ…何なのだ、この耳障りな音楽は!」

 

『ウインチ・オン』

 

フォーゼ「今のうちに…ほっ!」グイッ!

 

(左腕をクレーンに変えたフォーゼはそれを大幹部の身体に掛けて引っ張ると…)

 

Sアポロガイスト「ムッ!?」

 

『チェーンアレイ・オン』

 

フォーゼ「ふっ、えいっ!」ゴンッ!ガンッ!

 

(棘の鉄球がついた右腕で大幹部を殴打し…)

 

Sアポロガイスト「グハッ…!」

 

『シザース・オン』

 

フォーゼ「チェストォー!」ガッ!

 

(すぐさま左腕をハサミのような武器に変え、大幹部を突き攻撃で吹き飛ばした)

 

Sアポロガイスト「ヌワァッ!?」ゴロゴロ

 

フォーゼ「これで決めるわ!」スッ

 

『ロケット・オン』

 

(フォーゼは右腕の装備をロケットに変えると、ロケットを噴射させて飛び上がった)

 

フォーゼ「ライダーロケットパーンチッ!」ドカッ!

 

Sアポロガイスト「ガハッ…」フラッ

 

フォーゼ「ア~ンド…!」

 

『ドリル・オン』

 

(加速した勢いでパンチをぶつけ、空へと浮かんだフォーゼは…右腕のロケットを解除する代わりに左脚にドリルを装備して回転させる)

 

『ドリル・リミットブレイク!!』

 

フォーゼ「ライダードリルキーック!!」ギュィィィン!

 

(フォーゼはベルトの右側のレバーを引くと、ドリルを高速回転させたまま大幹部に向かって降下していった)

 

Sアポロガイスト「私は何度でも、迷惑な奴として…グアァァァァァッ!?」

 

(大幹部はフォーゼのドリルによって身体を貫かれ…その身を爆発させた)

 

フォーゼ「ふふっ、シャイニー!」

 

ヒューン…パサッ

 

フォーゼ「!…これ、何かしら?」ヒョイ

 

 

 

イカデビル「さっきのようにはさせなイカ~ッ!」ダッ

 

ウィザード「…堕天使ヨハネの魔法、見せてあげる」スッ

 

(指輪を右手の中指に嵌めたウィザードは腹部のバックルのレバーを操作した直後、バックルに指輪を読み込ませ…)

 

『バインド…プリーズ!』

 

ガシッ!

 

(突然現れた魔方陣から金属の鎖が飛び出し…怪人を拘束させた)

 

イカデビル「ウ、動けなイカ…!」

 

ウィザード「ふふっ…」スッ

 

『ビッグ…プリーズ!』

 

バチンッ!

 

(指輪を変えて再びバックルに指輪を翳したウィザードは右隣に現れた魔法陣に腕を突っ込み…怪人の目の前に現れた魔方陣から巨大化した腕で怪人に強烈な張り手を喰らわせた)

 

イカデビル「ゲソーッ!?」ゴロゴロ

 

ウィザード「ねぇ…良かったら、あなたも私のリトルデーモンになってみない?」

 

イカデビル「誰がお前みたいなイタい奴の使い魔なんかになりたイカ!?」

 

ウィザード「イタいって言うなっ!…そう、それならもう謝ったって許してあげないんだから!」スッ

 

『コピー…プリーズ!』

 

イカデビル「ふ、増えたっ!?」

 

『キャモナ・シューティング・シェイクハンズ!』

 

(指輪の効果で二人に増えたウィザードは動きを完全にシンクロさせながら…持っていた武器についている掌のように見える部分に左手の中指に嵌めた指輪を翳した)

 

『フレイム…シューティングストライク!!』

 

ウィザード「終焉(フィナーレ)よ…煉獄の炎で、灼き尽くしてあげる」

 

『ヒー・ヒー・ヒー!』

 

ウィザード「やぁっ!!」ガガガッ!

 

イカデビル「グッ…スーパーショッカー、バンザ~イ!」ドサッ

 

(ウィザードがトリガーを引くと銃口から炎を纏った銃弾が放たれ…撃ち抜かれた怪人は撃破された)

 

ウィザード「ふぃ~…はっ!?」

 

ウィザード「いけない、ヨハネとした事が…!」アセアセ

 

ウィザード「こほん…どうだった、我がリトルデーモン達?」

 

ウィザード「この堕天使ヨハネの活躍を見て…」クルッ

 

シーン…

 

ウィザード「って、誰も見てないんかーいっ!」

 

 

 

ジャーク将軍「フッ!」ズバッ!

 

鎧武「うわっ…!」

 

(鎧武は長剣を使う大幹部の剣技に圧倒されていた)

 

ジャーク将軍「所詮、貴様らは普通の人間…余に敵うはずが無い」

 

鎧武「!」

 

ジャーク将軍「トドメだ…!」ブンッ

 

ガキンッ!

 

(しかし、大幹部がトドメを刺そうと振り下ろした長剣は…鎧武の持つ二本の剣によって防がれていた)

 

ジャーク将軍「!?」

 

鎧武「…確かに、私達は普通だよ」ボソッ

 

ジャーク将軍「何だと?」

 

鎧武「それでも…私達は絶対に、輝きたいんだぁぁぁぁぁっ!」ザシュッ!

 

(鎧武は二本の剣で同時に斬りつけ…大幹部を退けた)

 

ジャーク将軍「グゥッ!…どういう事だ!?」

 

鎧武「こういうことだっ!」

 

(鎧武はベルトの右側にある小刀型のパーツを一度だけ押し下げると…)

 

『オレンジスカッシュ!!』

 

鎧武「はっ…セイハァァァッ!!」ズバッ!

 

(輪切りにしたオレンジを模した刀剣の方にエネルギーを充填し、大幹部を切り裂いた)

 

ジャーク将軍「ヌワァァァァァッ!?」

 

(斬られた大幹部は爆発し…鎧武は戦いに勝利した)

 

鎧武「…やったぁ!」

 

 

 

シュバリアン「貴様にスーパーショッカー最強の力を見せてやろう…ハッ!」ガガッ!

 

ドライブ「…!」パシッ

 

(怪人が右手から光弾を発射するのを見たドライブはどこからかやってきた一台のミニカーを掴むと…それを左手首のブレスレットに装着されたミニカーと交換した)

 

『ターイヤコウカーン!ドリームベガス!』

 

カッ!

 

(怪人の光弾が爆発し、辺り一面に砂煙が立った)

 

シュバリアン「フン、この程度か…!?」

 

ドライブ「…」

 

(砂煙が晴れると…そこにはスロットのリールのようなタイヤを胸に掛け、両手にチップを模した盾を装備するドライブが無傷で立っていた)

 

シュバリアン「バ…バカな!」

 

ドライブ「さあ、次はこっちの番だよ!」

 

『ターイヤコウカーン!ディメンションキャブ!』

 

(左手首のブレスレットに別のミニカーを装備したドライブは胸のタイヤを升模様のついた黄色い物に変えると…胸部のタイヤを境に体を分離させながら、怪人に接近した)

 

シュバリアン「グッ…!?」

 

『ターイヤコウカーン!マッシブモンスター!』

 

(身体を元に戻しながらミニカーを替えたドライブは胸のタイヤを顔のついた紫色の物に付け替え…)

 

ドライブ「…はぁっ!」ガブガブッ!

 

(装備された両手の牙で怪人に噛みつき、ダメージを与えていく)

 

シュバリアン「グアッ…!」

 

『ターイヤコウカーン!ジャスティスハンター!』

 

ドライブ「このまま確保しちゃうよ!」

 

『ハン・ハン・ハンター!』

 

(更にミニカーと胸のタイヤを交換したドライブはブレスレットを三回操作すると…円形の柵を怪人に向かって投げつけた)

 

シュバリアン「ッ!?」

 

(すると、巨大化した柵が怪人を閉じ込め…)

 

『ヒッサーツ!フルスロットル!ハンター!!』

 

ドライブ「はぁぁぁっ!!」

 

(ベルトを操作して飛び上がったドライブは、空中に複数出現させたタイヤの間を通過し…加速をつけながら柵に向かって強烈なパンチを放ち、中にいる怪人を撃破した)

 

シュバリアン「グォアァァァァァ!?」

 

ブゥゥゥン…キキッ!

 

ドライブ「ふぅ…ナイスドライブ、だね!」

 

 

 

Cディエンド「グォォッ!」ガガッ!

 

ゴースト「…」フワッ…

 

(ディエンドはゴーストに向かってディエンドライバーで攻撃しようとしたが、浮遊したゴーストによってその銃弾はいとも容易く避けられてしまった)

 

Cディエンド「!?」

 

ゴースト「どうしたずら?…そっちが来ないなら、今度はマルの方から行くよ!」ガッ!

 

(ゴーストは手にしていた大剣を使って、ディエンドを斬りつけた)

 

Cディエンド「グッ…ガァッ!」ガガッ!

 

ゴースト「ふっ!」スゥ…

 

(ディエンドは反撃を試みるが、ゴーストは姿を消して…)

 

ヒョイッ

 

Cディエンド「ッ!?」

 

(ディエンドライバーをディエンドから取り上げていた)

 

ゴースト「これは返してもらうね…もう人の物は盗んじゃダメだよ?」

 

Cディエンド「!…オォォォォッ!!」ダダッ

 

ゴースト「むぅ…分かってくれない子には、マルがお仕置きするずら!」

 

(走ってくるディエンドに、ゴーストはベルトのグリップを操作し…)

 

『ダイカイガン!ガンガンミナー…ガンガンミナー…オメガブレイク!!』

 

ゴースト「ふっ…えーいっ!!」ズバッ

 

(大剣にエネルギーをチャージし…ディエンドを両断した)

 

Cディエンド「ウガァァァァッ!?」

 

フワフワ…スタッ

 

ゴースト「…ほっ、何とか取り返せて良かったずら~」

 

 

 

『FIGHT!』

 

エグゼイド「ふっ!」

 

『HIT!』

 

(エグゼイドはゲンムに向かって跳び上がり、ハンマーのような武器で攻撃をヒットさせる)

 

ゲンム「ウグッ…ハァッ!」ブンッ

 

エグゼイド「えいっ!」ガッ!

 

(ゲンムがエグゼイドに車輪型の武器を投げつけるが、エグゼイドはハンマーでそれを叩き落とし…ゲンムを驚かせた)

 

ゲンム「何ですって!?」

 

『ガッシューン…』

 

エグゼイド「ふっ、ふっ…行くわよ!」

 

(ベルトから引き抜いたゲームソフトのようなものに何故か息を吹きかけたエグゼイドは、それを左腰のホルダーに挿すと…)

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

『マイティ!クリティカルフィニーッシュ!!』

 

エグゼイド「やっ…はぁーっ!!」バコッ!

 

(エグゼイドは地面をハンマーモードで叩き、衝撃波を起こした)

 

『PERFECT!』

 

ゲンム「ウッ…ウワァァァッ!?」

 

『会心の一発!!』

 

(衝撃波を避けられなかったゲンムは倒れ…大きな爆発が起こった)

 

『ガッシューン…』

 

エグゼイド「…はっ!」パシッ

 

(その直後、ゲンムがベルトに装着していた黄緑色のゲームソフトのようなものがエグゼイドの頭上に落ちてくると…エグゼイドはそれをキャッチした)

 

『GAME CLEAR!』

 

 

 

ゴースト「はい!」スッ

 

(私はゴーストからディエンドライバーを受け取った)

 

雪穂「!…ありがとうございます」

 

フォーゼ「そういえば、こんな物を拾ったんだけど…これもあなた達のかしら?」スッ

 

(フォーゼが取り出したのは…先程、スーパーショッカーの大幹部の一人がユメノチカラをナツミから吸収した時に使っていたアイテムだった)

 

亜里沙「あっ!?それって…」

 

雪穂「いえ…でも、それがあれば眠ったままのこの子の意識もきっと戻ると思います」

 

ナツミ「…」

 

フォーゼ「なるほどね…OK、そういう事ならあなた達に預けるわ!」スッ

 

亜里沙「ありがとうございます!」

 

穂乃果「それにしてもスーパーショッカーの大幹部達をみんなやっつけちゃうなんて…私、感動しちゃったよ~!」

 

鎧武「えへへ、それほどでも…///」

 

穂乃果「ふふっ…これで、一件落着だねっ!」

 

???「…まだよ」

 

穂乃果「えっ?」クルッ

 

ゲンム「…」ハァハァ

 

全員「!?」

 

ゲンム「まだよ…まだ、私は!」ハァハァ

 

(ゲンムは立ち上がりながら右腕の武器に白いカセットを装填した)

 

エグゼイド「待って…ライダーゲージがゼロになったら、ゲームオーバーで命を落とす事はあなただって知ってるはずよ!?」

 

ゲンム「ええ、知ってるわ…でも」スッ

 

『ガッシューン…』

 

エグゼイド「!」

 

ゲンム「私は…どんな手を使ってでも、このガシャットを完成させないといけないの」

 

『ガシャット…キメワザ!マイティ・クリティカルストライク!』

 

ゆきあり「!?」

 

ゲンム「フッ!」バッ

 

オーズ「!…まさか、今度はあの子達を狙って!?」

 

鎧武「早く何とかしないと…えっと、えっと~!」

 

エグゼイド「私に任せて!」スッ

 

『ガシャット!』

 

エグゼイド「大・大・大変身!」

 

『ガッチャーン!レベルアーップ!』

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!エーックス!!』

 

『アガッチャ!!シャカリキ!シャカリキ!バッドバッド!シャカっとリキっとシャカリキスポーツ…!!』

 

(黄緑色のカセットをベルトに嵌めたエグゼイドはスポーツバイクを召喚し…エグゼイドの上半身と合体した)

 

『ガッシューン…』

 

エグゼイド「お願い…間に合ってっ!」

 

『ガシャット!キメワザ!シャカリキ・クリティカルストライク!!』

 

エグゼイド「はぁっ!」ブンッ

 

『GREAT!』

 

ゲンム「カハッ!?」ドサッ

 

(エグゼイドが投げた車輪がぶつかり、地面に落下したゲンムの胸部に表示されているゲージが全て真っ黒になってしまった)

 

鎧武「!…ねぇ、あれ」

 

ゲンム「…」

 

エグゼイド「ライダーゲージが…」

 

ゲンム「…フンッ!」ガッ!

 

(ゲンムは突然、自分自身の胸に右腕の武器を突き刺した)

 

全員「!」

 

ゲンム「グッ…グアッ、グウッ!」ハァハァ

 

オーズ「…い、生きてる?」

 

エグゼイド「あれだけのダメージを受けたはずなのに…あなた、何者なの!?」

 

ゲンム「フフフ…良いわ、教えてあげる」

 

(白いカセットに何かを吸収させたゲンムは…変身が強制的に解除され、少女の姿になった)

 

サヨ「…」ニィッ

 

(戦士達は、にやりと笑う彼女の顔を見て驚きの声をあげた)

 

鎧武「…へ?」

 

八人の戦士「えぇ~っ!?」

 

エグゼイド「わ、私…?」

 

(その直後、少女の後ろからジッパーのようなものが出現した)

 

鎧武「!…あれって」

 

(開かれたジッパーから出てきたのは…二人の少女だった)

 

謎の少女B「…」

 

オーズ「えっ…!?」

 

謎の少女A「…」

 

鎧武「ウソ…でしょ?」

 

エグゼイド「どうして、私達がもう一人いるの…?」

 

サヨ「…ウフフッ♡」




~#8へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#8

(オレとビルドのもとに飛んできたのは…キバット族のキバーラだった)

ディケイド「キバーラ…お前、今までどこをほっつき歩いてたんだ?」

キバーラ「そ、そんな事…別にどうでもいいでしょ!?」

ディケイド「どうでもよくないだろ!」

ビルド「まあまあ…それより、何があったの?」

キバーラ「そう、それが大変なの!」

キバーラ「実はこの仮想世界に逃げ込んでツカサ達を探してた途中で、スーパーショッカーの怪人達が『アイツ』に乗り込んでいるのを見つけて…!」

ディケイド「…『アイツ』?」

ビルド「『アイツ』って…誰なの?」

キバーラ「それは…!?」

…ズシーン…

ビルド「…この音、何?」

ディケイド「これは…まさか、足音か?」

ビルド「足音?」

ディケイド「ああ、こんな馬鹿みたいに大きな足音を立てるような奴は…おそらくスーパーショッカーの中では『アイツ』ぐらいしかいない」

キバーラ「雪穂ちゃんや亜里沙ちゃんは?」

ディケイド「ディエンドライバーで召喚した『μ's』と一緒に逃げてもらったんだが、ゲンムに後を追い掛けられてしまってな…」

キバーラ「そんな…それじゃ、早く追い掛けないと!」

ディケイド「当然、そのつもりだ…アンタも少し手伝ってくれるか?」

ビルド「うん…もちろん、協力させてもらうよ!」

ディケイド「よし…急ぐぞ!」ダッ


少女B「…」

 

少女A「…」

 

サヨ「…」

 

エグゼイド「あなた…誰なの?」

 

サヨ「…私は『桜内梨子』」

 

エグゼイド「!?」

 

少女B「『渡辺曜』…」

 

オーズ「…!」

 

少女A「そして…『高海千歌』」

 

鎧武「!…じゃあ、あなた達はもう一人の私達ってこと?」

 

少女A「…私達は、あなた達であってあなた達じゃないの」

 

オーズ「どういう事?」

 

少女B「私達九人は…財団のある計画の為に動いてるんだよ」

 

W《財団?》

 

ウィザード「ま…まさか、封印されしパンドラの箱を開けるつもr」

 

ゴースト「やめるずら」

 

ドライブ「それより、今…『私達九人』って言わなかった?」

 

W「つまり…!」ハッ

 

フォーゼ「私達のドッペルゲンガーもいる…って事ね?」

 

少女B「…さあ、どうだろうね?」フフッ

 

少女A「梨子ちゃん、ごめん…コウモリさんに逃げられちゃった」

 

サヨ「そう…でも、気にしなくて良いわ」

 

サヨ「欲しいデータは手に入ったし…もう帰りましょう?」

 

少女A「…うん、分かった」

 

(橙色の髪をした少女が真後ろに浮かぶ大きなジッパーを開けると…そのまま他の二人の少女と共に中へ入ろうとしていく)

 

鎧武「ねぇ!」

 

少女A「…」ピタッ

 

鎧武「あなた達は、これから何をしようとしているの…?」

 

少女A「…ゼロにするんだよ、全部」

 

鎧武「!」

 

少女A「そして…必ず、天下を私達の物にする」スタスタ

 

鎧武「…」

 

サヨ「その時、あなた達の心に映る水晶が砕けずに輝き続ける事が出来るのか…楽しみにしているわ」

 

エグゼイド「…!」

 

少女B「今度会った時は…ライダー同士、楽しく戦おうね!」

 

オーズ「!…それって」

 

少女A「…じゃあね」スタスタ

 

ウィザード「あっ…こら、待ちなさい!」

 

ドライブ「逃がさないよ!」ダッ

 

サヨ「…フッ!」ガガガッ!

 

W《ピギッ…!》

 

ゴースト「ずら!?」

 

(赤茶色の髪の少女が右腕の武器でライダー達の足元にビームを放つと…三人の少女達はジッパーの中に入り、閉じられたジッパーは消滅してしまった)

 

フォーゼ「!…消えた」

 

W「逃げられてしまいましたわね…」

 

鎧武「…」

 

エグゼイド「…大丈夫?」

 

鎧武「あっ…うん、ちょっと考えごとしてただけだから!」

 

オーズ「考え事?」

 

鎧武「うん…でも、もう平気だよ」フフッ

 

穂乃果「…」

 

真姫「…もう、イミわかんない!」

 

にこ「絵里、私達にどうなってるのか説明しなさいよ!」

 

絵里「…」ポカーン…

 

希「ダメよ、にこっち…えりちは新しい仮面ライダー達の事だけで頭がいっぱいになってるんやから」

 

海未「それにしても、私達…完全に放置されてしまっていますね」

 

凛「何か不本意だニャ…」

 

花陽「仕方ないよ、凛ちゃん…今の私達には戦う力が無いし」

 

ことり「!…どうしたの、穂乃果ちゃん?」

 

穂乃果「…きっと、私達には分からなくて大丈夫だと思う」

 

八人「えっ?」

 

穂乃果「うん…大丈夫だよ、きっと」フフッ

 

…ズシーン…

 

雪穂「…ん?」

 

(どこかから大きな音を聞いた私達は…思わず辺りを見回した)

 

ズシーン…ズシーン…

 

亜里沙「この音…何だろう?」キョロキョロ

 

雪穂「それに、段々と近付いてきているような…って!?」

 

(すると…いつの間にか巨大なロボットのような怪人が私達のもとへと接近してきていた)

 

全員「!?」

 

キングダーク「…」

 

穂乃果「うそ…!?」

 

鎧武「…デカくないすか?」

 

キングダーク「…!」スッ

 

ゆきあり「!?」

 

(突然、キングダークは屈みながら右手を伸ばし…私と亜里沙とナツミの三人を掴んだ)

 

ガシッ!

 

雪穂「わぁっ!?」

 

亜里沙「く、苦しいよ…!」

 

ナツミ「…」

 

穂乃果「雪穂!?」

 

絵里「亜里沙!」

 

キングダーク「…」ヒョイ

 

ゆきあり「うわぁ~っ!?」ヒュウゥゥゥ…

 

(キングダークに捕まった私達三人は…そのまま口の中へと放り込まれてしまった)

 

 

 

戦闘員A「ス、スーパークライス要塞が動かない!」

 

戦闘員B「何だと…まさか、時でも止まっているのか!?」

 

ドカーン!

 

戦闘員達「イーッ!?」

 

???「…」スタスタ

 

 

 

花陽「た、大変ですっ!」

 

穂乃果「雪穂と亜里沙ちゃんが…早く助けないと!」

 

鎧武「ま、待って!ここは私達が…」

 

?「おい…お前達、無事か!?」ダッ

 

穂乃果「あっ、この声は…!」

 

鎧武「…ツカサくん?」

 

ディケイド「なっ!?…お前達、どうしてここに?」

 

鎧武「いや~…どこかから『誰か助けて』って声が聞こえたからつい、いてもたってもいられなくなっちゃって」ポリポリ

 

オーズ「私達は鎧武から『一緒に行こう!』って誘われて…せっかく伸ばしてくれた手を掴まない訳にはいかないなって!」

 

ディケイド「なるほど、そういう事か…だいたいわかった」

 

にこ「何…もしかしてアンタ、このライダー達と知り合いだったわけ?」

 

ディケイド「まあ、色々あってな…」

 

エグゼイド「私達、それぞれ自分のいた世界をツカサくんに助けてもらったんです」

 

穂乃果「えっ…そうなの!?」

 

ことり「実は私達もほとんど同じなの…あなた達もそうだったんだね?」

 

W《うゆ!》

 

真姫「…それで、後ろにいるライダーは?」

 

ビルド「あ、初めまして!ボクは…」

 

ディケイド「こいつは仮面ライダービルド…自意識過剰な正義のヒーローだ」

 

ビルド「えぇっ!?ちょっと!」

 

ディケイド「それよりも…後ろに気を付けた方が良いんじゃないか?」

 

ビルド「…えっ、後ろ?」クルッ

 

キングダーク「…!」ズシーン!

 

(キングダークはその巨大な足を地面に押さえつけ…オレ達を踏み潰そうとした)

 

μ's「わぁ~っ!?」ゴロゴロ

 

八人の戦士「うわぁっ!」ドサッ

 

(オレ達は何とか回避するが…その影響で発生した衝撃波によって、吹き飛ばされてしまった)

 

ビルド「危なかったぁ…もう、早く言ってよ!」

 

ディケイド「いや、だから言っただろ…今」

 

ビルド「遅いよ!もう少しでぺしゃんこになるところだったんだよ!?」

 

キバーラ「それより、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんはどこなの?」バサバサ

 

絵里「それが…あの怪人の中に!」

 

ディケイド「はぁ!?」

 

ビルド「そっか、それなら…まずは彼女達の救出を優先しなきゃだね」

 

ディケイド「それはそうだが…あいつが簡単に体内に入れてくれると思うか?」

 

ビルド「出来るよ!だってこれでもボクは…天っ才物理学者なんだよ?」

 

ディケイド「自分で天才って…何だか胡散臭いな」ボソッ

 

ビルド「あっ!ちょっと…今、胡散臭いって言ったでしょ?」

 

ディケイド「ああ」

 

ビルド「開き直った!?…分かった、そこまで言うなら見せてあげるよ!」スッ

 

(ビルドは一枚のライダーカードを取り出すと…カードをシアンカラーのディエンドライバーに装填した)

 

『カメンライド…』

 

ビルド「さあ、次の実験を始めようか!」

 

ディケイド「…待て、何か変な予感がするんだg」

 

ビルド「それっ!」バシュッ!




~#9へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#9

雪穂「…」

 

亜里沙「…ねえ、起きて!雪穂ってば!」ユサユサ

 

雪穂「…ん」パチリ

 

亜里沙「雪穂!」

 

雪穂「…あれ、亜里沙?」

 

亜里沙「良かった…!」ギュッ

 

雪穂「ちょっ、ちょっと!?」

 

雪穂「急に抱きついてこないでよ、恥ずかしいから…///」 

 

亜里沙「あ、うん…ごめん」パッ

 

雪穂「もう…!」

 

ナツミ「…」

 

雪穂「ナツミもいる…じゃあ、ここは!」

 

亜里沙「多分、さっきの大きな怪人の身体の中…なんだと思う」

 

雪穂「やっぱり…」

 

亜里沙「…ねえ、雪穂」

 

雪穂「ん?」

 

亜里沙「あの…そのね?」モジモジ

 

雪穂「…この前は、ごめん」

 

亜里沙「え?」

 

雪穂「私…お姉ちゃんや鎧武の言葉で、ふと思い出したんだ」

 

穂乃果『変わらなくてもいいんじゃないかな?』

 

穂乃果『だって…あの時、二人が私に教えてくれたでしょ?』

 

亜里沙「えっ、雪穂も…?」

 

雪穂「!…もしかして、亜里沙も?」

 

亜里沙「えへへ…うん!」

 

鎧武『私は《μ's》の皆さんから大切なことを教えてもらいました』

 

鎧武『普通の子が精いっぱい輝くにはどうしたらいいのか…どうすれば穂乃果さんや《μ's》の皆さんみたいに輝けるのか』

 

鎧武『私は、私の景色を見つけることにしました…仲間の《みんな》と一緒に!』

 

亜里沙「だから…私もごめんね、雪穂」

 

雪穂「…亜里沙」

 

亜里沙「私、改めて気付いたんだ…私は『μ's』の皆が九人で一緒に一歩ずつ進むその姿が大好きなんだって」

 

亜里沙「でも、私が大好きなスクールアイドル『μ's』に私はいない…だからね!」

 

亜里沙「やっぱり私は、私のいるハラショーなスクールアイドルを目指したいの…雪穂と一緒に!」

 

雪穂「…うん、そうだね!」

 

亜里沙「ふふっ…とっくの昔に気付いてたはずなのに、何でこんな当たり前の事忘れてたのかな?」

 

雪穂「何でだろうね…私達、いつか『μ's』に負けないくらい楽しいスクールアイドルを目指そうって話してたのに」

 

亜里沙「本当にね?」

 

雪穂「ぷっ…あはははっ!」

 

(私達は笑い合いながら…スクールアイドルを続けるにあたって『これから』をどうしていけば良いのか、だいたいわかったような気がした)

 

?「…茶番は終わりか?」

 

ゆきあり「!?」バッ

 

蜂女「フフフフ…もう逃げられないぞ」

 

G電王『動くな』スチャ

 

ゆきあり「…っ!」

 

 

 

(ビルドがシアンカラーのディエンドライバーで召喚したのは…あの『嵐を呼ぶ五歳児』だった)

 

しん王「オラ、参上!」

 

ディケイド「やっぱり…」ハァ

 

フォーゼ「ワーオ!?プリティーボンバヘーッド!」

 

しん王「お、フォーゼ!おひさしぶりぶり~」

 

フォーゼ「チャオ~!…って、あれ?」

 

フォーゼ「私達、前に会った事あったかしら…?」ボソッ

 

ドライブ「う~ん…この声、前にどこかで聞いた事あるような気がするんだけどなぁ」

 

真姫「ねえ、それより誰なのよ…この子?」

 

しん王「オラ、野原しんのすけ5さい…好きなロボはカンタムロボ!」

 

しん王「ねぇねぇ、それよりおねいさんたち…釣りは磯釣りと川釣りどっちがすき?オラに釣られてみな~い?」クネクネ

 

ことり「へっ…わ、私達?」

 

海未「そうですね…私は断然、川釣りの方でしょうか?それに川の上流には必ず山がありますから!」

 

凛「山…ひぃっ!?」ビクッ

 

穂乃果「凛ちゃん、急にどうしたの…?」

 

しん王「お?…おお~っ!?」

 

しん王「おねいさん!おねいさんふたりの美しさにオラ…泣けるで!」

 

絵里「え、私と希の事…?」

 

しん王「特にそこのおねいさん、かーちゃんのかわりにオラの新しいママになってぇ~…答えは聞いてない!」

 

希「あはは…どうやらウチら、しんのすけくんに気に入られちゃったみたいやね?」

 

ディケイド「…それで、どうしてあの五歳児を呼んだんだ?」

 

ビルド「あの子の力があれば、キングダークの体内に入れると思ってね…しんちゃ~ん!」フリフリ

 

しん王「お?」クルッ

 

ビルド「例のあれ、やってくれるー?」

 

しん王「ほうほう…ブラジャー!」

 

ディケイド「!…まさか、例のあれって」

 

しん王「ちからとわざのふうしゃがまわる…ちちよははよいもうとよ!ぶぇっくしょ~い!!」ビュッ!

 

(しん王はバックルを鼻に装備すると…敵の足元に大量の鼻水を噴射し、キングダークの動きを封じた)

 

キングダーク「!?」ネチャァ…

 

ビルド「やったね、しんちゃん!」

 

しん王「いやー…それほどでも~///」

 

W「…今のは、褒められるような技なんですの?」

 

ビルド「後はこれで…フォーゼ、受け取って!」ブンッ

 

フォーゼ「Oh!?」パシッ

 

(フォーゼがビルドから受け取ったのは…特別なアストロスイッチだった)

 

ビルド「それをフォーゼドライバーに挿して、使ってみて!」

 

フォーゼ「?…分かったわ」

 

『しんちゃん、オン!』

 

(フォーゼがスイッチをドライバーに挿して起動させると…しん王の変身を解除したしんのすけ自身がフォーゼの腰に巻き付けられていく)

 

しんのすけ「あっは~ん♡」

 

フォーゼ「ワーオ!なかなか面白そうなモジュールじゃない?」

 

ディケイド「…なかなかエグい事してるな」

 

にこ「それ、よく人を無理やり武器とか乗り物にしてるアンタが言う…?」

 

しんのすけ「出発おしんこ、ナスのぬかづけー!」ボオッ!

 

(フォーゼをジェットパックの要領で飛び上がらせるしんのすけを確認したビルドは…)

 

ビルド「来た…フォーゼ、そのままボク達を捕まえて!」

 

フォーゼ「オッケー…絶対に放さないわよ~!」ガシッ

 

(フォーゼにオレ達を捕まえさせ、キングダークの顔の付近まで浮上した)

 

キバーラ「へっ!?」

 

キングダーク「…?」ポカン

 

ディケイド「おい、何のつもりでこんな…!」

 

ビルド「行っけぇ~!!」

 

しんのすけ「お助け上等ー!」

 

フォーゼ「シャイニーッ!」ブンッ!

 

(すると、キングダークのぽかんと開かれた口に向かってフォーゼはオレとビルドを思い切り投げつけ…オレ達はキングダークの体内へと落ちていった)

 

ディケイド「おわぁぁぁぁっ!?」

 

キバーラ「い~や~!」ヒュゥゥゥ…

 

オーズ「は、入ってっちゃった…」

 

スタッ

 

フォーゼ「よっと…スイッチ・オーフ!」

 

しんのすけ「ふぅ~…作戦成功だゾ!」

 

エグゼイド「あれで良かったの!?」

 

W《ねぇ、ところでしんちゃんの横に立っているのって…ブタさん?》

 

しんのすけ「お?」

 

伝説のイマジン《…》

 

ウィザード「もしや、新たな敵!?」

 

ゴースト「でも、そんな風には見えないずら…」

 

しん王「オラのすくいのヒーロー、ぶりぶりざえもんだゾ!」

 

鎧武「ぶりぶり…?それって、どんなヒーローなの?」

 

しん王「むか~しむかし、あるところにぶりぶりざえもんというすくいのヒーローがいました…おわり」

 

花陽「終わっちゃったのぉ!?」

 

伝説のイマジン《…!》サアァ…

 

ことり「何か…怒ってるみたいだったね?」

 

海未「ですが、反論しようとした瞬間に砂になって崩れ去ってしまいました…」

 

しんのすけ「!?…思い出したゾ!」

 

鎧武「ふぇっ…何なに?」

 

しんのすけ「もうすぐアクション仮面が始まっちゃう…早くおウチに帰らなくっちゃ~!」

 

全員「!?」ズコッ

 

しんのすけ「んじゃ、そーゆーことで~」スゥゥゥ…

 

真姫「ちょっと、待ちなさいよ!?」

 

凛「!…消えちゃった」

 

穂乃果「ぶりぶりざえもんさんもいないね…あれ?」

 

穂乃果「そういえば、何かを忘れてるような…」クルッ

 

キングダーク「…」スッ

 

鎧武「…あ、忘れてた」

 

ズシーン!

 

全員「うわ~っ!?」

 

 

 

蜂女「ここはキングダークの中、逃げようとしても無駄だ…さあ、今度こそ『世界を変える力を持つ物』をもらうぞ!」ダッ

 

ゆきあり「!」

 

G電王《…フンッ!》ガガッ!

 

蜂女「ウッ!?」ドサッ

 

雪穂「…え?」

 

亜里沙「な、何が起こってるの…?」

 

G電王《…》

 

蜂女「き、貴様…裏切ったのか!?」ハァハァ

 

G電王《…この組織について、過去のデータを調べさせてもらった》

 

G電王《スーパーショッカーの前身である大ショッカーは、己の欲望のままに世界を支配しようとしていた…そして、この事実を隠蔽したまま私を操ろうとした》

 

G電王《このまま誰かに任せれば、世界は必ず過ちを犯す…よって、今後は人工イマジンであるこの私が全ての世界を管理する》

 

蜂女「何だと…どういう意味だ!?」

 

G電王《言葉通りの意味だ…世界の完全なる管理の為、人間もスーパーショッカーも全て私が排除する!》

 

蜂女「…ッ!」

 

G電王《パーフェクトウェポン…ハァッ!》バシュッ!

 

蜂女「グッ…ウワァァァァッ!!」

 

G電王《…次は、お前達を処刑する》スタスタ

 

ゆきあり「!」

 

G電王《消え去れ!》ブンッ

 

?「危ない!」

 

ザシュッ!

 

雪穂「あれ、何ともない…!?」

 

ディケイド「…っ!」

 

(オレはG電王から雪穂達を護る為に…G電王が振り下ろすデンガッシャー十手モードを全身で受け止めていた)

 

亜里沙「ツカサ!」

 

G電王《おのれディケイド…私の邪魔をするな!》ズバッ!

 

ディケイド「うわぁっ!」

 

(更なるG電王の攻撃によって…オレの変身は強制的に解除されてしまう)

 

ツカサ「ぐっ…」ドサッ

 

雪穂「ツ…ツカサ!」

 

亜里沙「大丈夫!?」

 

G電王《最早、裁判をする必要も無い…このまま纏めて処刑する》

 

(G電王がオレ達にトドメを刺そうとした…その時だった)

 

キバーラ「え~いっ!」ガッ!ゴッ!

 

G電王《ウグッ…!?》

 

ゆきあり「キバーラ!」

 

キバーラ「ここはアタシに任せて…それより、早くツカサを!」

 

亜里沙「う…うん、分かった!」

 

雪穂「ツカサ…立てる?」

 

ツカサ「まあ、一応な…お前達こそ大丈夫か?」

 

亜里沙「うん!ディエンドライバーも取り返してもらったし…こんな物も手に入ったよ」スッ

 

ツカサ「それは…もしかして、アポロガイストのパーフェクターか!?」

 

雪穂「これさえあれば、ナツミの意識も戻るんだよね?」

 

ツカサ「勿論だ…だが、それには条件がある」

 

雪穂「条件?」

 

ツカサ「…貸してみろ」

 

亜里沙「え?…う、うん」

 

(亜里沙からパーフェクターを受け取ったオレは…自分の顔にパーフェクターをかざした)

 

シュウゥゥゥ…

 

ツカサ「うっ…!」

 

ゆきあり「!?」

 

(すると、パーフェクターは…オレからユメノチカラを吸収し始めた)

 

雪穂「ち、ちょっとツカサ!」

 

亜里沙「何をしてるの!?」

 

ツカサ「っ…このパーフェクターはユメノチカラを、別の人に分け与えられる物でもある」

 

亜里沙「えっ?」

 

ツカサ「つまり、誰かのユメノチカラを吸収しない限り…こいつでユメノチカラを奪われた人の意識を元に戻す事は出来ないんだ」

 

雪穂「!…じゃあ、ツカサが今してる事って!?」

 

亜里沙「ナツミ達を元に戻す為に、自分のユメノチカラを分けようとしてるの…?」

 

ツカサ「う、ぐ…っ!」シュウゥゥゥ…

 

雪穂「でも、そんな事したら…今度はツカサが!」

 

ツカサ「くっ…心配するな、オレはこれまで色々なスクールアイドルや仮面ライダーに出逢ってきた」

 

ゆきあり「…!」

 

ツカサ「今更、こんな事ぐらいでオレのユメノチカラは…うっ!?」

 

シュウゥゥゥ…

 

ツカサ「ぐっ…うわぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

キングダーク「…」

 

エグゼイド「そんな…まさか、もう動けるなんて」

 

ことり「ど、どうしよう…?」

 

オーズ「あの怪人の中にはツカサくん達がいるし…下手に攻撃は出来ないね」

 

海未「しかしこのままでは、私達もライダーの皆さんも踏み潰されてしまいます!」

 

キングダーク「…」フワッ

 

穂乃果「ま、また来た~っ!?」

 

キングダーク「…!」ピタッ

 

鎧武「!…怪人の動きが、止まった?」

 

穂乃果「な、何で…?」

 

???「…私が、この怪人の流れる時間を止めたからだ」

 

全員「!?」バッ!

 

黒き時の戦士「…」




~#10へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#10

戦闘員「ど、どうした…キングダークが動かないぞ!?」

戦闘員「グッ…スーパークライス要塞、応答せよ!」

戦闘員「こちら、キングダーク内部!…?」ザーッ…

戦闘員「どういう事だ…まさか、スーパークライス要塞までやられt」

ビルド「ほいっ!」ゴッ!

戦闘員「イーッ!?」ドサッ

ビルド「…ふぅ、これでもう大丈夫かな?」

ビルド「それなら後は中にいるディケイドのお友達を救い出すだけだね…よし、ボクも急いで探さなくっちゃ!」ダダッ


ツ…サ…ツカサ!

 

ツカサ「ん…?」パチリ

 

シュウゥゥゥ…

 

雪穂「ツカサ!」

 

亜里沙「しっかりして!」

 

ツカサ「!?」

 

(オレの両腕を掴み、支えていたのは…雪穂と亜里沙の二人だった)

 

雪穂「くっ…!」

 

亜里沙「…うぅっ」

 

(しかし、そのせいでパーフェクターは…雪穂と亜里沙のユメノチカラまでも吸収しようとしていた)

 

ツカサ「お前ら、何で…?」

 

雪穂「…決まってる、でしょ?」

 

亜里沙「『仲間』…だから、だよ」

 

ツカサ「!」

 

亜里沙「遅くなっちゃったけど…私達、やっと思い出したんだ」

 

雪穂「ツカサとの旅の途中で見つけた…もう一つの、叶えたい夢を」

 

ツカサ「…お前ら」

 

亜里沙「私達はそのもう一つの夢を今度こそ叶えたい…だって、ようやく思い出したんだよ?」

 

ツカサ「…」

 

雪穂「だから私達もこんな所で倒れたりしないし…ナツミや同じようにユメノチカラを失くした皆も、絶対に助けてみせる!」

 

亜里沙「皆にはいつも笑顔で楽しく過ごしていてほしいからね…だからツカサ、一緒にやろう?」

 

雪穂「っていうか…ツカサがいてくれないと、もう一つの夢を叶える意味が無くなっちゃうしね!」

 

ツカサ「…全く、仕方ないな!」フフッ

 

ゆきあり「ふふっ…!」

 

シュウゥゥゥ…

 

ツカサ「っ…よし、このまま三人で行くぞ!」

 

ゆきあり「…うんっ!」

 

 

 

ビルド「どこにいるんだろう…ん?」

 

ギィ…

 

ビルド「扉が少し開いてる…何だろう、この部屋」チラッ

 

蜂女「グッ…」ハァハァ

 

ビルド「…!」

 

蜂女「こうなれば、最後の手段だ…ネオ生命体よ!」

 

ネオ生命体「…どうしたの、ママ?」

 

蜂女「お前に全てを支配する力を与える為に…私は、再びこの身を捧げる!」

 

ネオ生命体「!…ありがとう、いただきます」バクッ!

 

ビルド「!?」

 

蜂女「…ハハ、アハハハハハハッ!」

 

ビルド「か…怪人を、食べてる?」

 

ネオ生命体「フゥ、ごちそうさま…美味しかったなぁ」ゲプッ

 

ネオ生命体「ところで…ねぇ、いるんでしょ?」

 

ビルド「…!」

 

ネオ生命体「そんな所に隠れてないで…僕と一緒に遊ぼうよ、お兄ちゃん」

 

ビルド「…気付いてたんだね、でももう一個はハズレ」

 

ビルド「ボクは…お兄ちゃんじゃなくて、お姉ちゃんだよ」

 

ネオ生命体「そうなの?」

 

ビルド「よく間違われちゃうけどね…それと悪いけど、ボクは君と遊ぶつもりは無いよ」

 

ネオ生命体「つまんないなぁ…じゃあ、これならどうかな?」

 

ビルド「え?…!?」

 

 

 

黒き時の戦士「…」

 

鎧武「…『ライダー』?」

 

穂乃果「海未ちゃん、あれ見て!顔に『ライダー』って書いてあるよ!?」

 

海未「あんなに大きく書かれていれば誰でも分かりますよ!」

 

オーズ「き、君は…?」

 

黒き時の戦士「私は『オーマジオウ』…未来より現れし、時の王」

 

ゴースト「み…未来ずら?」

 

オーマジオウ「…受け取るが良い」

 

フォーゼ「What?…!」パシッ

 

凛「これを、凛達に…?」

 

オーマジオウ「そう、Wには三つ…他の者にはそれぞれ二つずつ与えている」

 

W「!…何故、私達には三つなんですの?」

 

オーマジオウ「…じきに分かる」

 

W《でも…何だろう、これ?》

 

花陽「懐中時計かな?」

 

絵里「ストップウォッチのようにも見えるわね…」

 

オーマジオウ「…また会おう、さらばだ」ボソッ

 

真姫「?…今、何か言っt」クルッ

 

シーン…

 

エグゼイド「いない…!」キラッ

 

ドライブ「何か、この時計…光ってない?」

 

ピカッ!

 

ウィザード「熱っ!?」

 

ことり「!…これって」

 

希「それぞれ、ライダーの顔とウチらの顔に変わったみたいやね…」

 

にこ「というか、この時計に描かれてある私達の顔…どこかで見た事がある気がするんだけど」

 

穂乃果&鎧武「…オーマジオウ、かぁ」

 

 

 

(オレ達がしばらくユメノチカラを与え続けていると…パーフェクターに亀裂が入った)

 

…パキッ

 

ツカサ「もう少しだ…ありったけのユメノチカラを、こいつに注ぎ込むぞ!」

 

ゆきあり「…うん!」

 

三人「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

シュウゥゥゥ…パリンッ!

 

(ユメノチカラを限界まで吸収し、砕け散ったパーフェクターから…小さな光の球が幾つも弾け飛んできた)

 

ゆきあり「わっ!?」ドサッ

 

ツカサ「!…やったか」ハァハァ

 

雪穂「あ、あれは…?」

 

ツカサ「ユメノチカラだ…これで、人々の意識も元に戻るはずだ」

 

亜里沙「じゃあ…!」

 

ツカサ「…ああ、もちろん夏ミカンもな」

 

(ユメノチカラはそれぞれどこかへと飛び去っていき…そのうちの一つはナツミの体内へと戻っていった)

 

ナツミ「…」パチリ

 

雪穂「!…ナツミ」

 

亜里沙「ナツミ!」ダッ

 

(雪穂と亜里沙は意識を取り戻したナツミのもとへと駆け寄る)

 

ナツミ「…?」ムクリ

 

雪穂「もう平気?」

 

ナツミ「…」コクリ

 

亜里沙「良かったぁ…」ホッ

 

ナツミ「…っ!」ガサゴソ

 

ゆきあり「?」

 

ナツミ「…」スッ

 

(ふと何かを思い出した様子のナツミは…突然、自分自身が着ている服のポケットからシアンカラーのケータッチを取り出した)

 

ツカサ「それは…ディエンド用のケータッチか」

 

雪穂「…これを、私に?」

 

ナツミ「…」コクリ

 

亜里沙「あっ、もしかして…それが『世界を変える力を持つ物』なんじゃないかな?」

 

ナツミ「!」コクコク

 

雪穂「そっか…じゃあ、スーパーショッカーはこれを狙ってたんだね」

 

ツカサ「結局、それでどうやって世界を支配するつもりだったのかは分からないままだけどな…!」バッ

 

キバーラ「へぶっ!」ベチャッ!

 

亜里沙「あっ…キバーラ!?」

 

キバーラ「う~ん…」

 

G電王《…フン》

 

雪穂「!…ナツミ、安全な所に隠れてて」

 

ナツミ「…!」コクリ…ダダッ

 

亜里沙「キバーラ…今度は、私も一緒に戦うよ!」

 

キバーラ「へ?…ホントにっ!?」ガバッ

 

亜里沙「うん!」

 

ツカサ「…そういえば、戦いの前にオレ達三人だけでこうして並び立つっていうのは初めてな気がするな」

 

雪穂「ふふっ、確かにそうかもね…でも」

 

亜里沙「私達は三人だけじゃない…幾つもの世界にいるスクールアイドル皆の想いと一緒に、頑張るんだよ?」

 

キバーラ「そ・れ・に…アタシの事も忘れないでよね!」バサバサ

 

ツカサ「!…ふふっ、そうだったな」

 

G電王《…理解に苦しむな》

 

ツカサ「何?」

 

G電王《高坂雪穂と絢瀬亜里沙…貴様らは先程、スクールアイドルという夢がどうとか言っていたな?》

 

ゆきあり「!」

 

G電王《貴様らの活動について調べた上で『μ's』のデータと比較させてもらったが…貴様らはこれまでに、何の成果も挙げていないというデータが出ている》

 

ゆきあり「…」

 

G電王《要するに貴様らは…『μ's』と違って、スクールアイドルとして何も生み出せていない》

 

G電王《そんな惨めな貴様らが何故、スクールアイドルなどという偶像をまだ続けようとする…何故、世界を管理しようとする私に抗おうとする!?》

 

雪穂「…何でって、そんな事も分からないの?」

 

G電王《何?》

 

亜里沙「私達は好きなの…スクールアイドルがどうしようもないってくらい、大好きなの!」

 

G電王《好きだと?たったそれだけの理由で…貴様らの活動など所詮、何の意味も持たない愚かなものだというのに!》

 

ゆきあり「データだけで勝手に決めつけないでっ!」

 

G電王《!?》

 

亜里沙「私達はこれからもスクールアイドルとして活動を続ける…ツカサやお姉ちゃん達、皆に私達のライブを見てほしい!」

 

雪穂「そして、いつか私達は『μ's』とは違う形でスクールアイドルの素晴らしさを広めて…人々やこれから出てくる新しいスクールアイドルに勇気を与えたい!」

 

亜里沙「それが私達の、叶えたい…」

 

雪穂「もう一つの…夢なんだ!」

 

G電王《貴様ら…一体、何者だ!?》

 

雪穂「知らないのなら教えてあげる…私達は、通りすがりの!!」

 

亜里沙「二人で一つの、スクールアイドルだよ…覚えておいてよっ!!」ビシッ

 

ツカサ「…おい、それオレが言う決め台f」

 

ゆきあり「行こう、ツカサ!」

 

ツカサ「人の話聞けよ!?」

 

ゆきあり「…」フフッ

 

ツカサ「ふふっ…全く、本当に仕方のないスクールアイドルだな!」スッ

 

(バックルを装着したオレがカードを取り出すのと同時に…雪穂と亜里沙の二人も変身する為の構えを見せた)

 

三人「変身!」

 

『カメンライド…ディ・エンド!』

 

『変身…チュッ♡』

 

『カメンライド…ディケイド!』

 

仮面ライダーキバーラ「…はぁっ!」ダダッ

 

(まず、キバーラに変身した亜里沙がキバーラサーベルを手にして走り出し…G電王を斬りつけようとする)

 

G電王《!》ガキンッ!

 

(G電王は十手モードのデンガッシャーでキバーラサーベルを受け止め…すぐさまキバーラに反撃を仕掛ける)

 

G電王《フン…その程度の攻撃で、私に勝てると思うな!》ブンッ!

 

キバーラ「とうっ!」バッ!

 

G電王《何!?》

 

(キバーラは跳び上がってG電王の攻撃を避けると…後ろに回り込み、あの技を繰り出した)

 

キバーラ「笑いのツボ…えいっ!」ドスッ

 

G電王《!…ハハ、ヌハハハハハハハ!?》

 

ディエンド「あの技、効いてるみたいだね?」

 

ディケイド「人工イマジンにも効果あるんだな…」

 

キバーラ「雪穂、今だよ!」

 

ディエンド「あっ…うん!」スッ

 

(ケータッチを出したディエンドは…画面に描かれた九つのライダーズクレストを順番にタッチしていった)

 

ディエンド「えーっと…こ、こうかな?」

 

『ダブル』

 

『オーズ』

 

『フォーゼ』

 

『ウィザード』

 

『ガイム』

 

『ドライブ』

 

『ゴースト』

 

『エグゼイド』

 

ディエンド「出来た…はっ!」スッ

 

『ファイナルカメンライド…ディ・エンド!』

 

(やがてケータッチをベルトに装着したディエンドは…頭に一枚、胸にWからエグゼイドまで八枚のカメンライドカードが張り付けられた)

 

キバーラ「おおっ…ハラショー!」

 

ディエンド「え…何、このカッコ?」

 

ディケイド「それはコンプリートフォーム…ディエンドの強化形態だ、オレが知ってるのとはちょっと違うみたいだけどな」

 

キバーラ「良いなぁ…私もパワーアップしてみたい!」

 

ディエンド「いや、でも…こんなんだよ?」

 

キバーラ「何で?強そうだよ!」

 

ディエンド「えぇ…」

 

G電王《き…貴様ァァァァァァッ!!》

 

キバーラ「!」

 

(笑いが治まったG電王は、キバーラに憤慨すると…デンオウベルトにバリアを張った手をかざした)

 

G電王《パーフェクトウェポン…!》

 

ディエンド「!?…亜里沙!」

 

ディケイド「危ない!」ダッ

 

G電王《消え去れッ!》ブンッ!

 

(十手モードのデンガッシャーに赤と青、二色のエネルギーを纏わせたG電王は…キバーラに向かって強烈な衝撃波を放った)

 

ディケイド「っ!」バッ!

 

キバーラ「きゃあっ!?」ゴロゴロ

 

(オレはすんでのところでキバーラを庇い、G電王の『ワールドエンド』を回避した)

 

ディケイド「間に合って良かった…無事か、亜里沙?」

 

キバーラ「う、うん…ありがとうツカサ!」

 

G電王《おのれディケイド…よくも!》

 

『ファイナルアタックライド…ディ・ディ・ディ・ディエンド!』

 

ディエンド「…それはこっちの台詞だよ」スチャ

 

(ディエンドがカードを装填したディエンドライバーの銃口をG電王に向けると、そこから三方向にカード型のエネルギーが出現した)

 

G電王《ッ!?》

 

ディエンド「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」バシュッ!

 

(上空に向けてディエンドが引き金を引くと…ディエンドライバーの銃口から分裂した三発の光弾がカードを通過した直後、レーザー状となってG電王の身体を貫いた)

 

G電王《グ…グワァァァァァァァ!!》

 

(ディエンド・コンプリートフォームの『ディメンションバスター』を受けたG電王は消滅し…オレ達は勝利した)

 

ディエンド「…」

 

キバーラ「雪穂~!」ギュッ!

 

(亜里沙はキバーラに変身したまま、通常形態に戻った雪穂のディエンドに抱きついた)

 

ディエンド「おわぁっ!?」ドサッ

 

キバーラ「えへへ…やったね!」

 

ディエンド「!…うん」フフッ

 

ディケイド「…」ハァ

 

ディエンド「何?」

 

ディケイド「いや…本当、お前らって相変わらずだよな」

 

キバーラ「変わらないって?」

 

ディケイド「人目を憚らず、イチャイチャしてるところとか…」

 

ディエンド「だからイチャイチャしてn…!」

 

ディエンド「あれ、あれ…あれあれあれ~?」

 

ディケイド「?」

 

ディエンド「もしかして…ツカサ、羨ましいの?」

 

ディケイド「は、はぁ!?」

 

キバーラ「えっ…そうなの、ツカサ?」

 

ディケイド「そんな訳無いだろ!」

 

ディエンド「照れなくても良いのに~…」

 

キバーラ「ツカサもこっちに来て良いんだよ?」

 

ディケイド「照れてない!誘うな!」

 

ディエンド「どうどう…」

 

ディケイド「馬じゃないっ!!…!?」ハッ

 

ディエンド「!…ぷっ」

 

キバーラ「ふふっ…あははは!」

 

ディケイド「…やられた、まさかオレがこのツッコミをする事になるとはな」

 

キバーラ「やるね、雪穂…ナイスだよ!」

 

ディエンド「まあ…私もそれだけ成長したって事かもね?」

 

ディケイド「成長って言うのか、それ?」

 

キバーラ「…確かに!」

 

ディエンド「あはははっ…」

 

(オレ達が三人で笑い合っていると…突然、目の前に誰かが転がり込んできた)

 

?「うわぁっ!」ゴロゴロ

 

三人「!?」

 

ビルド「痛た…あっ、ディケイド!」

 

ディケイド「!…ビルド」

 

キバーラ「ツカサ、この人は?」

 

ディケイド「オレ達の味方である事は確かだ…少なくとも、今はな」

 

ビルド「初めまして!…そっか、君達が雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんだね?」

 

キバーラ「へっ?」

 

ディエンド「何で、私達の事を…?」

 

ビルド「ディケイドから話を聞いたんだ!」

 

ビルド「それに、ボクもスクールアイドルが凄く大好きでこの時d…じゃなくて、この世界にいる君達のライブを見にやってきたんだ!」

 

ディエンド「そ…そうなの!?」

 

ディケイド「…それで、何があったんだ?」

 

ビルド「そうだ、今はそれどころじゃなかったんだった…実はスッゴく強い怪人が現れて!」

 

キバーラ「!?…あ、あれ見て!」

 

???「…」スタスタ

 

(オレ達の前に現れたのは、円盤状になって浮かんだレリーフに映る緑色の肌をした少年と…仮面ライダーのような見た目をしたバッタの怪人だった)

 

ディケイド「!…『ドラス』か」

 

ディエンド「ドラス?」

 

ディケイド「とある世界で屑鉄などの金属を取り込んで造り出された邪悪な金属生命体だ…その強さは、スーパーショッカーの中でもトップクラスだ」

 

ネオ生命体「フフ、君達も僕と遊びたいのかい?…良いよ、遊んであげる」

 

(ネオ生命体がそう言った直後、液状化したドラスは…目視出来ない程の速さでビルドに接近してきた)

 

ディエンド&キバーラ「危ない!」ドンッ

 

ビルド「っ!?」

 

ドガッ!

 

キバーラ「きゃっ!?」ゴロゴロ

 

バキッ!

 

ディエンド「うっ…!」ドサッ

 

ビルド「!…ボクを、助けた?」

 

(ビルドを庇い、ドラスの強力な攻撃を受けたディエンドとキバーラの変身は強制的に解除されてしまった)

 

雪穂「…」

 

亜里沙「…」

 

ビルド「君達、大丈夫!?…しっかりして!」ダッ

 

雪穂「…よ、良かった」

 

亜里沙「あなたが、無事で…」

 

ビルド「…どうしてボクを助けてくれたの?」

 

亜里沙「だって…あなたも、ツカサの仲間なんでしょ?」

 

ビルド「えっ…」

 

雪穂「だったら、同じツカサの仲間の私達が助けるのは…当たり前の事だよ」

 

ビルド「…!」

 

ネオ生命体「それで終わりなの?…もっと僕と遊ぼうよ」

 

(ドラスはゆっくりと歩き、ビルド達の方へと近付いていた)

 

ドラス「…」スタスタ

 

『ファイナルカメンライド…イチゴウ!』

 

?「…待て」ガシッ

 

ドラス「?」クルッ

 

DCDネオ1号「…命は、尊い」




~#11へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#11

(とある世界で入手した一枚のカードをディケイドライバーに装填したオレは…強靭な肉体美を誇るメカニカルで猛々しい1号の姿にカメンライドし、ドラスの肩を掴んだ)

 

ネオ生命体「!…何、その変なカッコ?」

 

DCDネオ1号「…これは、人間の平和と自由の為に戦い…生きて生きて生き抜いた、一人の『英雄』の姿だっ!」ドンッ!

 

ドラス「ッ!?」ズサァ…

 

(オレは100tもの威力があるライダーパンチで…ドラスを後退させた)

 

ネオ生命体「フフッ、面白いね…だったらこれはどうかな?」

 

(ドラスは右肩の赤い球体から…破壊光線『マリキュレイザー』をオレに向けて発射した)

 

バシュッ…ドーンッ!

 

ゆきあり「ツカサ!?」

 

ビルド「ディケイド!」

 

ネオ生命体「アハハハ…ッ!?」

 

DCDネオ1号「…」

 

(しかし、この1号にカメンライドしたオレの身体には…傷一つついていなかった)

 

ネオ生命体「…ズルいよ、それ」

 

DCDネオ1号「問答無用だ、今度はこっちから行くぞ…はぁっ!」バッ

 

『ファイナルアタックライド…イ・イ・イ・イチゴウ!』

 

(高く跳び上がったオレは、バックルに一枚のカードを入れ…集まってくる風のエネルギーを右足に集中させた)

 

DCDネオ1号「うおぉぉぉぉっ!!」ドガッ!!

 

ドラス「…ッ!」

 

(『ライダーキック』を受けたドラスが吹き飛ばされたのを確認したオレは…カメンライドを解除させた)

 

亜里沙「や…やったの?」

 

ディケイド「…ぐっ」フラッ

 

雪穂「ツカサ!?」

 

ビルド「おっと!」ガシッ

 

ディケイド「!…ビルド」ハァハァ

 

ビルド「疲れてるみたいだね…まあ、あんな力を使えば無理もないだろうけどね」

 

ディケイド「っ…戦う前に、色々とあったからな」

 

亜里沙「戦う前?…あっ!」

 

雪穂「ひょっとして、あの時に…?」

 

ツカサ『こんな事ぐらいでオレは…うわぁぁぁぁぁっ!!』シュゥゥゥゥ…

 

ディケイド「まあな…万全な状態であれば、さっきの『ライダーキック』で何とかなったんだろうが」

 

ドラス「…!」ガバッ!

 

ディケイド「くっ…あいつ、もう動けるのか」

 

ネオ生命体「…よくも、よくも僕の遊びを邪魔したな!」

 

ドラス「…」スッ

 

(怒り出したネオ生命体に反応したドラスは…茶色のUSBメモリを取り出した)

 

『ダミー!』

 

ビルド「あ、あれは!?」

 

ディケイド「『ガイアメモリ』…!」

 

ドラス「ッ…ウガァァァァァッ!!」

 

(ネオ生命体はダミーメモリを体内に取り込んだドラスと融合し…猛獣に似た顔にアンモナイトのような形状の装甲を持つ『アルティメットD』に変化した)

 

アルティメットD「…お前ら、許さないぞ!」バッ

 

(敵は胸部から『アルティメットボム』と呼ばれる爆弾をオレ達の手前に放ってきた)

 

ドーン!

 

ゆきあり「うわぁっ!?」

 

ディケイド「これは…目眩ましか!」

 

ビルド「前が見えない…!」

 

アルティメットD「…オォォォォッ!」バッ!

 

(爆煙の中から飛び出してきた敵は…とてつもないスピードで雪穂と亜里沙に襲い掛かろうとした)

 

ディケイド「!?…お前ら!」

 

ビルド「危ないっ!」サッ

 

ガッ!

 

(雪穂と亜里沙を庇ったオレとビルドは…敵に首を掴まれてしまった)

 

ビルド「うぐっ!」

 

ディケイド「かはっ…」

 

アルティメットD「…お前達では所詮、俺には勝てない!」ググッ

 

…ドンッ!

 

アルティメットD「!?」

 

ナツミ「…!」

 

(敵が首を締め上げる力を強くしようとした、その時…隠れていたはずのナツミがアルティメットDに体当たりをしてきた)

 

亜里沙「ナツミ!?…っ、キバーラ!」

 

キバーラ「え~いっ!」ガッ!ゴッ!

 

アルティメットD「グォッ!?」

 

雪穂「今のうちに…はぁっ!」ガガッ!

 

アルティメットD「ガァッ…!」ヨロッ

 

(やがてキバーラに突撃を命じた亜里沙の機転と雪穂のディエンドライバーによる銃撃によって…敵はオレ達を放し、後退した)

 

ナツミ「…?」ダッ

 

ビルド「ふぅ…ありがとう、助かったよ!」

 

ナツミ「…!」フフッ

 

ディケイド「お前達にも助けられてしまったな…ありがとな」

 

雪穂「今さら何言ってるのさ…あんなの当たり前の事でしょ?」

 

亜里沙「ツカサ達やナツミが頑張ってるんだから…私達も、頑張らない訳にはいかないよ!」

 

キバーラ「ふふ~ん♪…えっへん!」

 

アルティメットD「お前達、何故そんな状態で戦い続けようとする…いい加減諦めろ!」

 

ディケイド&ビルド「…諦めるかっ!!」

 

アルティメットD「!?」

 

ディケイド「オレ達が…夢と向き合ってきた少女達を、忘れない限り!」

 

ビルド「その想いや輝きを穢したり踏み躙ろうとする悪者を…ボク達は、絶対に許さない!」

 

アルティメットD「お前達…一体、何なんだ!?」

 

ディケイド「覚えておけ!」

 

ビルド「ボクは!」

 

ディケイド「オレは!」

 

ビルド「愛と平和を守る…」

 

ディケイド「通りすがりの…」

 

ディケイド&ビルド「仮面ライダーだっ!!」

 

 

 

穂乃果「…ん?」

 

…キラッ

 

全員「!」

 

穂乃果「私達の顔をした方の時計が…」

 

鎧武「また、光ってる…何が起こったの?」

 

…カッ!

 

全員「っ!」

 

穂乃果「ま、まぶしい…って!?」

 

鎧武「光に…吸い込まれる~っ!」

 

全員「うわぁ~!?」

 

鎧武「も、もおっ!今度は何なのーっ!?」

 

 

 

(オレとビルドがそう言うと…オレと雪穂が持つ二つのケータッチとオレが持つ三枚のカード、そしてビルドが持つ一枚のカードと二つの小さなボトルが光り輝いた)

 

雪穂「な、何が起こってるの…?」

 

ビルド「…そうか!」

 

亜里沙「えっ?」

 

ディケイド「!…なるほどな、だいたいわかった」

 

ビルド「ふふっ…じゃあ、実験を始めようか!」

 

ディケイド「ああ、だが…ちょっとくすぐったいぞ!」

 

(オレはまず、一枚のカードをバックルに入れた)

 

『ファイナルフォームライド…ビ・ビ・ビ・ビルド!』

 

ビルド「はい、亜里沙ちゃん…雪穂ちゃんも!」スッ

 

(次にビルドは…一枚のカードを亜里沙に、シアンカラーのディエンドライバーを雪穂に渡した)

 

雪穂「…!」

 

亜里沙「このカードは?」

 

ビルド「それはボクの一番大好きなスクールアイドルの輝きが込められたカードなんだ…ディエンド用のケータッチを持っている今の君達なら、それを使いこなせるはずだよ」

 

ディケイド「…そして、これもな」スッ

 

(オレは亜里沙に一枚のカードを手渡した)

 

亜里沙「!…これって」

 

ディケイド「お前達の想いをこの二枚のカードに込めて…ビルドにぶつけろ」

 

雪穂「は?…いや、良いの!?」

 

ビルド「うん、気にしなくて良いよ!」

 

雪穂「えぇ…ホントに?」

 

亜里沙「それに、私達に上手く出来るかどうか…」

 

…ギュッ

 

(すると、雪穂と亜里沙の手を優しく握ったのは…ナツミだった)

 

ナツミ「…」コクリ

 

ゆきあり「!…ふふっ」

 

亜里沙「よ~し…やってみよう、雪穂!」

 

雪穂「そうだね、亜里沙…もう一つの夢を叶える為に!」

 

(雪穂と亜里沙は二枚のカードをシアンカラーのディエンドライバーに装填し…想いを込めながら、ビルドにその銃口を向けた)

 

『ファイナルカメンライド…ミューズ!』

 

『ファイナルカメンライド…アクア!』

 

雪穂「痛みは…」

 

亜里沙「一瞬だよ!」

 

ゆきあり「…はぁぁぁぁっ!」バシュッ!

 

(二人が引き金を引くとディエンドライバーからマゼンタと水色に輝く二色の光がビルドに向かって放たれ…)

 

ビルド「頼んだよ…『μ's』ボトル、『Aqours』ボトル!」スッ

 

(ビルドは二本の小さなボトルに…その光を吸収させる)

 

ビルド「…っ!」

 

(そして、光を吸収させた二本の小さなボトルは一つとなり…大きな飲料缶ぐらいのサイズのボトルに変化した)

 

ビルド「っと…出来た、実験成功だよ!」フリフリ

 

(変化したボトルをビルドが振ると…ビルドの周りから二組のスクールアイドルの曲名らしき文字列が宙に実体化して現れた)

 

『僕らのLIVE 君とのLIFE』

『君のこころは輝いてるかい?』

『僕らは今のなかで』

『青空Jumping Heart』

『それは僕たちの奇跡』

『未来の僕らは知ってるよ』

 

ビルド「…」フリフリ

 

亜里沙「雪穂、あれは…?」

 

雪穂「いや…私にも、何が何だか」

 

ビルド「…よし!」カシュッ!

 

『スクールアイドルフェスティバル!』

 

ビルド「…」グルグル

 

(プルタブを開ける要領でボトルを起動させたビルドは…ドライバーに装填し、レバーを回した)

 

『Are you ready?』

 

ビルド「ビルドアップ!」

 

『キラッと輝く!スクールアイドルフェスティバル!!』

 

(やがてビルドはマゼンタ、水色、白のトリコロールの光り輝く姿に変わった)

 

『イエイ!イエーイ!!』

 

ビルド「!…この姿は」

 

ディケイド「それは二組のスクールアイドルの輝きと…通りすがりのスクールアイドルの想いを乗せた、夢の力だ」

 

ビルド「そっか、これが…スゴいよ!最高だよ!?天才だよ~っ!!」

 

アルティメットD「おのれ…ウガァァァァァッ!」ダッ

 

ビルド「おっと、忘れてた…はっ!」ブンッ

 

(右脚を振り回したビルドは、ハートの形をした宝石のようなエネルギーを敵に向けて大量にばらまくと…)

 

バンッ!

 

アルティメットD「グゥッ…!」フラッ

 

(まるで泡が破裂するかのように全ての宝石が弾け…そこから発生した衝撃波が敵の動きを止めた)

 

ビルド「決めるよ、ディケイド!」

 

ディケイド「ああ…これでラストだ!」スッ

 

(オレが一枚のカードを取り出すと同時に…ビルドはドライバーのレバーを素早く回した)

 

ビルド「…」グルグル

 

『Ready Go!』

 

ビルド「勝利の法則は、決まった!」

 

『フルコンボ・フィニッシュ!!』

 

(それに続くように…オレも、ディケイドライバーに最後の一枚を装填した)

 

『ファイナルアタックライド…ビ・ビ・ビ・ビルド!』

 

ディケイド「…ふっ!」バッ

 

ビルド「ほっ!」バッ

 

(オレ達が跳び上がると…管状になって交差する二本の放物線が敵を拘束する)

 

アルティメットD「ッ…!?」

 

ディケイド「はぁーっ!!」

 

ビルド「やぁーっ!!」

 

(その放物線の中を光と共に、ウォータースライダーのように滑り降りていくオレ達は…敵にキックを命中させた)

 

(これは『DCDN(ディケイドニューワールド)』…オレとビルドの技だ)

 

アルティメットD「…!!」

 

カッ!

 

(そして、オレ達は…光の中へと包まれていった)

 

 

 

ネオ生命体「!?…ここ、どこなの?」キョロキョロ

 

ディケイド「…ここは、ライブ会場だ」

 

(オレと元の姿に戻ったビルドは…ネオ生命体の両隣に立った)

 

ネオ生命体「えっ…ライブ会場?」

 

ビルド「そうだよ!」

 

ネオ生命体「どうして、僕をそんな所に…」

 

ディケイド「お前に見せたいものがあってな…あれを見てみろ」

 

(ネオ生命体が視線を向けた先のステージには…二組のスクールアイドルが楽しそうに踊りながら歌っていた)

 

ネオ生命体「あの子達は?」

 

ディケイド「彼女達は、音ノ木坂学院のスクールアイドル…『μ's』と」

 

ビルド「浦の星女学院のスクールアイドル…『Aqours』だよ!」

 

穂乃果「『μ's』!」

 

μ's「ミュージック・スタート!!」

 

?「『Aqours』!」

 

Aqours「サーンシャイーン!!」

 

(彼女達の歌声が響くそのライブは…客席にいる多くの観客を魅了させ、笑顔になっていた)

 

ネオ生命体「!…あれが、スクールアイドルなの?」

 

ディケイド「そうだ…オレは『μ's』から、たくさんの笑顔をもらった」

 

ビルド「ボクも、こんな世界があるんだって…『Aqours』の皆から教えてもらったよ」

 

ネオ生命体「そうなんだ…羨ましいなぁ、僕ももっと早く知ってたら良かったな」

 

ディケイド「…今からでも、遅くないと思うぞ?」

 

ネオ生命体「え?」

 

ビルド「そうそう…いつ好きになっても良いんだよ!」

 

ディケイド「お前が彼女達に出逢って、好きになったその瞬間が…お前にとっての夢の始まりなんだからな」

 

ネオ生命体「!」

 

ビルド「ふふっ…!」

 

ネオ生命体「…ねぇ、一つ聞いてもいい?」

 

ディケイド「何だ?」

 

ネオ生命体「僕もいつか…人間の女の子に生まれ変わったら、スクールアイドルになれるかな?」

 

ビルド「えっ、スクールアイドルになりたいの?」

 

ネオ生命体「うん…やっぱり、無理かな?」

 

ディケイド「そんな事無いと思うぞ?」

 

ビルド「そうだよ!」

 

ネオ生命体「ホ、ホントに?」

 

ビルド「うん…スッゴく素敵な夢だよ!」

 

ビルド「もし君がいつか、どこかの世界でスクールアイドルに生まれ変わっていたら…その時はボク達が全力で応援するよ!」

 

ディケイド「その通りだ…それに、スクールアイドルと仮面ライダーはいつだってお前のそばにいる」

 

ディケイド「だから…その夢を諦めるな」

 

ネオ生命体「!…エヘヘ、ありがとう」ニコッ

 

(ネオ生命体は優しく微笑むと…光の粒子となって、空へと消えていった)

 

ビルド「ふふっ…!」

 

ディケイド「…またな」

 

 

 

(その直後、オレとビルドの意識は…キングダークの体内へと戻った)

 

ディケイド「…」フゥ

 

亜里沙「ツカサ!」ダダッ

 

(すると…雪穂と亜里沙、ナツミの三人が何故か慌ただしい様子でオレ達のもとへと駆けつけてきた)

 

ナツミ「…」ハァハァ

 

ディケイド「?…どうしたんだ、お前ら」

 

雪穂「どうしたもこうしたも無いよ…っていうか、さっきの聞こえてなかったの!?」

 

ビルド「さっきって?」

 

亜里沙「それが…今の戦いで、この怪人の自爆装置が作動したらしいの!」

 

ディケイド「は?…はぁ!?」

 

ビルド「全然聞こえなかったよ…それで、あと何秒で自爆するの?」

 

雪穂「…二十秒後、だそうです」

 

ビルド「え?…二十秒しか無いの!?」

 

ディケイド「随分と早いな…おそらく、普通に脱出しようとしても間に合わないだろうな」

 

亜里沙「大丈夫、任せて!」

 

雪穂「!…待って、もしかして亜里s」

 

亜里沙「キバーラ!」

 

キバーラ「はいは~い!」バサバサ

 

ディケイド「!?…おい、まさかお前また」

 

キバーラ「いつもの行くわよ~…ぐるぐるぐるぐる~!」グルグル

 

ディケイド「おわぁぁぁっ!?」

 

(キバーラの能力によって、オレ達は無事にキングダークから脱出し…スーパーショッカーとの戦いを終えた)




~#12へ続く~


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

#12

(意識が戻ったオレ達は…根府川駅からすぐ近くの海岸にいた)

 

ディケイド「…!」

 

亜里沙「ここって…」

 

ビルド「どうやら、ゲンムが作った仮想世界から戻ってこられたみたいだね?」

 

オーイ!

 

雪穂「?」クルッ

 

穂乃果「雪穂~!」ダダッ

 

鎧武「ツカサくーん!」ブンブン

 

(振り向くと、九人の『μ's』と八人の仮面ライダーがオレ達のもとへと駆け寄ってきていた)

 

絵里「良かった…亜里沙、どこも怪我してない?」

 

亜里沙「うん!」

 

ディケイド「しかし、お前達…いつの間にあの仮想世界を脱出していたんだ?」

 

穂乃果「う~ん…それが、私達にもよく分からなくて」

 

雪穂「どういう事?」

 

オーズ「それが、私達…色々あって光の中に吸い込まれてたんだけど」

 

エグゼイド「意識が戻った時には全員、ここにいて…」

 

ディケイド「…はぁ?」

 

ビルド「まあまあ…こうして無事に皆揃ってあの仮想世界から出られたんだし、別に気にしなくても良いんじゃないかな?」

 

ディケイド「いや、しかし…」

 

にこ「にこもその意見に賛成よ…それに、そんなことをずっと考えたって答えが見つからないんじゃキリがないでしょ?」

 

ディケイド「!…確かに、それもそうだが」

 

ビルド「じゃあ、この話はおしまいって事で!」

 

穂乃果「いや~…それにしても、私達がさっき見ていた夢は何だったんだろうね?」

 

雪穂「えっ、夢…?」

 

亜里沙「どんな夢なんですか?」

 

海未「それが…『Aqours』というスクールアイドルの皆さんと一緒にライブをしていたという夢なんです」

 

ディケイド&ビルド「…!」

 

八人の戦士「!」

 

ことり「会ったのは夢の中でだったけど…『Aqours』のみんな、スッゴく可愛かったね!」

 

穂乃果「うん!またあの子達に会えると良いなぁ…ねぇ、あなたはどんな夢を見たの?」

 

鎧武「ふぇっ?…へっ、私ですか!?」

 

穂乃果「うん…あれ、どうかしたの?」

 

鎧武「い、いえ…何でもないです!」アタフタ

 

穂乃果「…?」

 

鎧武「あははは…えっと、うまく言葉にできるかどうかは分からないんですけど」ポリポリ

 

鎧武「…憧れの人達と、一緒にいる夢を見たんです!」

 

穂乃果「そっかぁ…素敵な夢が見られて、良かったね!」

 

鎧武「はいっ!」

 

穂乃果「じゃあ…はい!」スッ

 

鎧武「えっ?」

 

穂乃果「握手だよ、握手…だって戦いが終わったらするって約束だったでしょ?」

 

鎧武「!…い、良いんですか!?」

 

穂乃果「うんっ!」ニコッ

 

鎧武「うわぁ~…じ、じゃあ!」フキフキ

 

(鎧武は自分の右手を腿で拭い…穂乃果と握手を交わした)

 

ガシッ

 

穂乃果「…ふふっ!」

 

鎧武「えへへ…!」

 

W「…あ、あの~」

 

えりぱな「?」

 

W《そのぅ…わ、私たちも握手してもらってもいいですか!?》

 

絵里「!…ええ」スッ

 

花陽「わ、私で良ければ…!」スッ

 

W「《あ…ありがとうございますっ!!》」ガシッ

 

ゴースト「良いなぁ…オラも、凛さんと握手したいずら」ボソッ

 

凛「うん、良いよ…はい!」スッ

 

ゴースト「あっ…ふふっ」ガシッ

 

真姫「感謝してるわ…本当にありがとう」

 

エグゼイド「いえ、私達はそんな…!」アセアセ

 

海未「謙遜する事はありません…皆さんが来てくれなければ今頃、無事では済まなかったはずですから」

 

ドライブ「気にする必要無いって…ねえ?」

 

オーズ「うん…仮面ライダーもスクールアイドルも、助け合いでしょ?」

 

ことり「助け合い?」

 

フォーゼ「ええ!それに…もう私達は友達でしょう?」

 

希「!…ふふっ、それもそうやね?」

 

ガシッ!

 

(真姫さん達四人の『μ's』メンバーとエグゼイド達四人の仮面ライダーも…お互いに握手を交わした)

 

にこ「…」チラッ

 

ウィザード「…」

 

にこ「…ん」スッ

 

ウィザード「!?」ビクッ

 

にこ「そこまでビックリすることないじゃないのよ!…握手よ、握手」

 

ウィザード「!…そう、やはりあなたも私のリトルデーモンに」

 

にこ「なってない」

 

ウィザード「ツッコミ早っ!?」

 

にこ「ほら、どうするのよ?…早くしなさい」

 

ウィザード「じゃあ…っ、やっぱりいい!」

 

にこ「はぁ?何でよ!?」

 

ウィザード「何となく!」

 

にこ「ア、アンタね…私を誰だと思ってるのよ!」

 

ウィザード「リトルデーモン」

 

にこ「だ~か~ら~…違うって言ってるじゃない!」

 

…ワシッ

 

にこ「にこぉぉぉぉぉ!?」ビクッ

 

希「…ダメやろ、にこっち?」

 

にこ「の、希…!」

 

希「ちゃんと仲良くしないと…わしわしMAX~!」ワシワシ

 

にこ「いやぁぁぁぁぁ!?」

 

ウィザード「ひっ…!」ガタガタ

 

フォーゼ「ファンタスティーック!…あれ、私も皆と仲良くしようとしない誰かさんにやってみようかしら?」

 

ウィザード「ひぃっ!?」ビクッ

 

ドライブ「本当にやったら現行犯で確保するよ…っていうか、訴えるよ?」

 

フォーゼ「イッツジョーク☆」

 

オーズ「あはは…」

 

ウィザード「…」チラッ

 

にこ「うぅっ…」ピクピク

 

エグゼイド「ほら、よっちゃんも…ちゃんと握手して?」

 

ウィザード「だからヨハネ!…もう、分かったわよ!」スタスタ

 

…スッ

 

にこ「…?」

 

ウィザード「た…立てる?」

 

にこ「!」

 

ウィザード「さっきはその…えっと、からかったりしてごめんなさい」

 

にこ「…何よ、意外と素直でかわいいところあるんじゃない」フフッ

 

ウィザード「なっ!?」

 

ガシッ

 

にこ「…ありがとね」

 

ウィザード「う、うん…///」

 

鎧武「…」フフッ

 

穂乃果「ふふっ…!」スゥゥゥ…

 

雪穂「!…お姉ちゃん」

 

絵里「…どうやら私達の役割は、ここで一区切りみたいね」スゥゥゥ…

 

亜里沙「そっか…ありがとう、お姉ちゃん!」

 

雪穂「お姉ちゃん達『μ's』が教えてくれたおかげで、私達も大切な事に気付けた…だから!」

 

ゆきあり「『これから』私達は…夢に向かって、精一杯駆け抜けます!!」

 

μ's「!」

 

ゆきあり「…」フフッ

 

穂乃果「うん、ファイトだよっ!」スゥゥゥ…

 

(穂乃果が代表して、雪穂と亜里沙にエールを送ると…『μ's』は九色の光となって消えていった)

 

鎧武「…じゃあ、私達も元の世界に帰るね」

 

ディケイド「ああ…お前達にも、色々と世話になったな」

 

雪穂「そうだね、それに…ディエンドライバーまで取り返してもらっちゃったし」

 

鎧武「いーのいーの!前から私達もツカサくんに世界を守ってくれたお礼がしたいなって思ってたし…それに」

 

亜里沙「それに?」

 

鎧武「…『μ's』に会えたから!」

 

ディケイド「!…そうか」フフッ

 

鎧武「うんっ!」

 

(鎧武が『クラック』と呼ばれる異空間と繋がる扉を出現させると…八人の戦士は続々とその扉の中へと入っていく)

 

八人の戦士「…」

 

鎧武「じゃあ、またね!」

 

ディケイド「…ああ、またな」フフッ

 

(『クラック』が閉じられ、鎧武達がそれぞれの世界へと帰っていったのを確認したオレは…ディケイドの変身を解いた)

 

ツカサ「!…そういえば、ビルドはどこに行ったんだ?」

 

亜里沙「あれ、本当だ…こっちの世界に戻ってきた時は私達と一緒にいたのに」キョロキョロ

 

雪穂「えっ?それなら、さっき…」

 

希『わしわしMAX~!』ワシワシ

 

にこ『いやぁぁぁぁぁ!?』

 

ビルド『…ねえ、雪穂ちゃん』ボソッ

 

雪穂『はい?』

 

ビルド『実はボク、もう帰らなくちゃいけないんだけど…ディケイドからシアンカラーのディエンドライバーを完成させるように頼まれちゃって』ヒソヒソ

 

雪穂『えっ、そうなんですか…?』

 

ビルド『うん…だから、そのディエンドライバーを渡してもらっても良いかな?』

 

雪穂『もちろん構いませんよ…どうぞ!』スッ

 

ビルド『ありがとう…じゃあ、またね!』

 

雪穂『あれ、ツカサに何か言わなくても大丈夫なんですか?』

 

ビルド『大丈夫大丈夫…またすぐに会う事になると思うから!』ダッ

 

雪穂『?…行っちゃった』

 

雪穂「っていう事があったんだけど…」

 

ツカサ「はぁ?…お前、あのディエンドライバーをビルドに渡したのか!?」

 

雪穂「ツカサが完成させろって言ってたんでしょ?」

 

ツカサ「オレがそんな事を言う訳無いだろ!?」

 

雪穂「は!?…でも、ツカサが言ったってあのライダーが!」

 

ツカサ「とにかくオレは言ってない!」

 

キバーラ「あ~あ、また始まっちゃった…」ハァ

 

ナツミ「…!」オロオロ

 

キバーラ「心配しなくても大丈夫よ…この程度の喧嘩なら、すぐに収まるわ」

 

亜里沙「…二人とも、どうどう!」

 

ツカサ&雪穂「だから馬じゃないっ!…あっ」

 

亜里沙「ふふっ…あははは!」

 

雪穂「…ぷっ!」

 

ツカサ「…」フフッ

 

ナツミ「…?」キョトン

 

キバーラ「ほらね…本当、変わった子達でしょ?」

 

キバーラ「まあ、あの子達のそういうところが良いんだけどね…うふふっ♡」

 

雪穂「あっ…でも、こっちの方は渡せって言われなかったよ」スッ

 

ツカサ「!」

 

(オレは雪穂からディエンドライバー、ディエンド用のケータッチと…ビルドが雪穂に渡した一枚のファイナルカメンライドカードを受け取った)

 

ツカサ「…『Aqours』か、だいたいわかった」

 

 

 

オーマジオウ「…」

 

ビルド「お待たせー!」ダッ

 

オーマジオウ「…!」クルッ

 

ビルド「ネオディエンドライバー、預かってきたよ…色々と助けてくれて本当にありがとね!」

 

オーマジオウ「…私はただ、スクールアイドルと仮面ライダーが築き上げた歴史を守ろうとしているだけだ」

 

ビルド「ふふっ…そっか」

 

オーマジオウ「…!」スゥゥ…

 

ビルド「!…それは」

 

オーマジオウ「気にする必要は無い…ビルド」

 

ビルド「何?」

 

オーマジオウ「…後は、任せる」スゥゥゥ…

 

ビルド「あっ…うん!」

 

オーマジオウ「フフッ…では、さらばだ」スゥゥゥゥ…

 

ビルド「…またね、ジオウ」

 

シーン…

 

ビルド「さてと…じゃあ、ボクもそろそろ行こうかな!」

 

『タイムマジーン!』

 

ビルド「…さあ、次の実験を始めようか!!」

 

 

 

サヨ「…」カタカタカタ…

 

少女A「それにしてもビックリしたよ…」

 

少女B「うん…まさか、自分自身の命のデータを取っちゃうなんて」

 

サヨ「ああなるのは必然の結果よ…プロトガシャットを使い過ぎれば、どのみち私の身体は長くもたなかったでしょうし」

 

カタカタカタ…タンッ!

 

サヨ「…フゥ、完成したわ」

 

少女A「ホント!?」ガタッ

 

サヨ「ええ…複製品の『仮面ライダークロニクル』のガシャットやライダー達の貴重な戦闘データも手に入ったし、準備は万端よ」

 

少女B「そっか…いよいよ、始まるんだね?」

 

少女A「うんっ!」

 

少女A「ついに私達『財団X』が…世界の天下を、手にするんだ!」

 

サヨ「!…ウフフッ♡」カチッ

 

『デンジャラスゾンビ!』

 

 

 

(私達は根府川駅のホームで、沼津駅行の電車に乗るナツミを見送っていた)

 

雪穂「助けてくれてありがとね、ナツミ?」

 

ナツミ「…」フルフル

 

亜里沙「今度は私達がナツミに会いに行くから…その時は沼津の事、色々教えてね!」

 

ナツミ「…っ!」コクリ

 

(発車メロディが鳴り響くと…電車の扉が閉まり、ナツミは沼津へと帰っていった)

 

ナツミ「…!」フリフリ

 

亜里沙「またねー!」ブンブン

 

雪穂「…行っちゃったね」

 

キバーラ「さ~てと…そろそろアタシも行こうかしらね」

 

亜里沙「キバーラもありがとね!」

 

雪穂「聞いたよ、ツカサから私達の喧嘩を見たって…色々と心配かけちゃって本当にごめんね」

 

キバーラ「あなた達が仲直りしてくれたなら良いのよ…でも、その代わり!」

 

ゆきあり「?」

 

キバーラ「胸の歌を信じなさい…約束よ?」

 

ゆきあり「あっ…うん!」

 

ツカサ「…おい、それどこかで聞いた事あるような気がすr」

 

キバーラ「じゃあね~…ぐるぐるぐるぐる~!」グルグル

 

(ツカサの話をスルーし、キバーラは…再びどこかの世界へと旅立っていった)

 

ツカサ「…まあ、別にどうでもいいか」

 

亜里沙「じゃあ、私達も電車に乗って帰ろっか!」

 

ツカサ「ちょっと待て」

 

亜里沙「へっ…どうかした?」

 

雪穂「ここから電車だと、アキバ方面までは二時間ぐらいかかるんだよ?」

 

亜里沙「嘘…そんなにかかるの!?」

 

ツカサ「ここへはオレがあのオーロラを使ってここまで連れて来たからな…だから今回は、帰りもオレがオーロラを使ってアキバまで送ってやる」

 

雪穂「えっ、良いの?」

 

ツカサ「キバーラの能力を使うよりはマシだろ…ほら、お前達の学生鞄」スッ

 

亜里沙「あっ…ありがとね、ツカサ」

 

ツカサ「…あと、これ」スッ

 

(ツカサは私に長方形、亜里沙には正方形の小さな箱を渡してきた)

 

雪穂「え?」

 

亜里沙「この箱は…?」

 

ツカサ「…『カブトの世界』にいた時、話しただろ?」

 

ツカサ『亜里沙にはもっと似合うものをオレがプレゼントしてやる』

 

亜里沙「えっ…あの時の!?」

 

ツカサ「約束したからな…渡すのが遅くなって、すまなかった」

 

亜里沙「ううん…ありがとう、覚えててくれてスゴく嬉しいよ!」

 

雪穂「でも、私にまで…本当に良いの?」

 

ツカサ「ああ…どうせ渡すなら、お前にも似合う物を渡したかったからな」

 

雪穂「…そっか」フフッ

 

亜里沙「これ…今、開けても良い?」

 

ツカサ「勿論だ」

 

ゆきあり「…」パカッ

 

(私が箱を開けてみると、そこにはシアンカラーに縁取られた眼鏡が入っていた)

 

雪穂「!…これって」

 

亜里沙「雪穂、見て!」

 

(亜里沙が貰った箱の方には…白い蝙蝠がデザインされた小さなヘアピンが入っていた)

 

ツカサ「今の二人に相応しい物を選んだつもりだ…使うかどうかはお前達次第、だけどな」

 

亜里沙「ハラショー…可愛い!」

 

雪穂「こっちは度数までピッタリ…ありがとう、大切にするよ!」

 

ツカサ「気にするな…じゃあ、オーロラを出すぞ」

 

ゆきあり「うん…あっ!」

 

ツカサ「?…どうした」

 

ゆきあり「…」

 

ツカサ「用があるならなるべく早く言ってくれ…それに、すぐに帰らないと家族の皆が心配するぞ?」

 

亜里沙「…ねえ、ツカサ」

 

ツカサ「何だよ?」

 

雪穂「今、気付いたんだけどさ…もしツカサと別れたら」

 

亜里沙「私達…ツカサと一緒に旅してた記憶をまた忘れちゃうって事だよね?」

 

ツカサ「!…ああ、そうだ」

 

雪穂「やっぱり…そうなんだ」

 

亜里沙「せっかく思い出せたのに…」

 

ツカサ「…でも、オレはお前達と一緒にいた事を絶対に忘れない」

 

ゆきあり「!」

 

ツカサ「それに、お前達がもう一つの夢を叶える瞬間をこの目で見届けないといけないみたいだからな…オレがいないと意味無いんだろ?」

 

ゆきあり「ふふっ…うんっ!」

 

ツカサ「…」フフッ

 

亜里沙「そうだ…じゃあ、最後に三人で写真撮ろうよ!」

 

ツカサ「はぁ?何でまた…」

 

雪穂「だって、さっき…駅の前にあった証明写真機を見てボソッと呟いてたでしょ?」

 

ツカサ『…写真、か』ボソッ

 

ツカサ「き…聞こえてたのか!?」

 

雪穂「そりゃ、声に出てたし…」

 

亜里沙「私も聞こえたよ!」

 

ツカサ「…っ///」

 

亜里沙「ほらほら、照れてないで…早く撮ろうよ!」

 

ツカサ「照れてない!」

 

ツカサ「いや、それよりも…今から駅の入口に戻るのか!?しかも証明写真の機械で!」

 

雪穂「そんな訳無いでしょ…何の為にそのカメラ、首にぶら下げてるの?」

 

ツカサ「…!」

 

(私達は初めて、ツカサのトイカメラで三人一緒にいる写真を撮る事にした)

 

雪穂「ちょっと待ってよ…本当にこれで良いの、ツカサ!?」

 

ツカサ「仕方ないだろ、自撮りなんてした事無いんだから…」グググ

 

亜里沙「しそうにないもんね!」

 

ツカサ「どういう意味だよ!?」

 

…カシャッ

 

ツカサ「ん?」

 

雪穂「あ…」

 

亜里沙「…へっ?」

 

三人「あぁーっ!?」

 

(その後、私達はツカサが出現させたオーロラを通って…それぞれの家路に戻っていった)

 

(いつかまた…ツカサと出逢う、その時を信じながら)

 

 

 

(そして、あれから数ヶ月後…私達はとある場所にいた)

 

亜里沙「…思い出すね」

 

雪穂「…うん」

 

雪穂『わぁ~、スッゴい…こんな大きな看板が出てる!』

 

亜里沙『雪穂、写真!』

 

雪穂『はいはい!』スッ

 

亜里沙『ここを目指す写真!』カシャッ

 

ゆきあり「…」

 

?「高坂先輩、絢瀬先輩!」

 

ゆきあり「?」クルッ

 

後輩「…来ましたね、決勝!」

 

亜里沙「うん!」

 

後輩「私もマネージャーとして、今日までお二人を支えてきましたけど…ここまで本当に色々な事がありましたね」

 

雪穂「そうだね…あの時は、本当に迷惑かけてごめんね?」

 

亜里沙「私達が喧嘩しちゃったから、心配かけちゃったもんね…ごめん」

 

後輩「いえ…でも、一つ思う事があるんです」

 

亜里沙「えっ、思う事…?」

 

後輩「…私、お二人が喧嘩していた時に思ったんです」

 

後輩「『μ's』の皆さんは…どうして、部室や学校に何も残していかなかったんだろうと思って」

 

雪穂「…!」

 

後輩「だって、不思議じゃないですか…まるで『立つ鳥跡を濁さず』かのように、記念品や記録すら残そうとせずに卒業していくなんて…」

 

亜里沙「…良いんだよ、何も残さなくても」

 

後輩「え?」

 

雪穂「物なんかなくても、私達の心は…いつでも『μ's』と繋がっているから」

 

後輩「…繋がっている」

 

亜里沙「うん、だから…それで良いんだよ!」

 

後輩「…!」

 

雪穂「ふふっ…あっ!?」

 

亜里沙「どうしたの、雪穂?」

 

雪穂「早く会場入らないと失格扱いになるんだった…急ごう、亜里沙!」

 

亜里沙「あぁっ!?そうだった…急がないと!」ダッ

 

後輩「あ…先輩、頑張ってくださいねー!」ブンブン

 

亜里沙「ありがとねー!」

 

雪穂「私達の応援、よろしくねー!」

 

後輩「…」フフッ

 

雪穂「もう、遅刻しちゃうよ…っ!」ダダッ

 

亜里沙「うわぁっ…!」ドタドタ

 

後輩「…それで良い、か」

 

 

 

(やがて、衣装を着た私達はお互いの手を繋ぎ…舞台袖で出番を待っていた)

 

亜里沙「…長かったね、本当に」

 

雪穂「そうだね…途中で何度、挫けそうになった事か」ハァ

 

亜里沙「でも…これで、やっと叶うね!」

 

雪穂「…うん!」

 

…ヒラッ

 

ゆきあり「!」

 

(その時、私達の間を一枚の白い羽根が横切り…空を舞っていった)

 

亜里沙「…綺麗だったね、今の」

 

雪穂「でも、どこから飛んできて…!」

 

ワーワー!パチパチパチ…

 

亜里沙「出番だね…行こう、雪穂?」

 

雪穂「うん、亜里沙…そして叶えよう!」

 

ゆきあり「私達の…もう一つの、夢!!」

 

(そう言って、私達はステージへと向かった)

 

(同時に空に浮かぶ白い羽根の色が、別の色へと変わって輝いていた事を…私達は知る由も無かった)










#13



(…それから、ライブ会場を後にしたオレは写真館で一枚の写真を眺めていた)

ツカサ「…」ピラッ

(その写真には…オレと雪穂と亜里沙が三人で映る姿と、スクールアイドルとなった雪穂と亜里沙の二人が『ラブライブ!』決勝の舞台で最高のパフォーマンスを披露する瞬間が写っていた)

ツカサ「!…やり遂げたな、最後まで」

(二人が夢を叶える瞬間をこの目で見届けたオレは…二人が羽ばたいていくのを心から祝福した)

ツカサ「おめでとう…雪穂、亜里沙」フフッ

?「いや~…本当にスゴかったね、二人のライブ!」

ツカサ「!?」バッ

(オレが振り返ると、そこには…名札に『うちっちー』と書かれたセイウチの着ぐるみが立っていた)

うちっちー「ボクはさっき会ったばかりだけど…久しぶりだね、門矢澤ツカサくん!」

ツカサ「はぁ?何だ、門矢澤って…じゃなくって!」ガタッ

ツカサ「お前、誰だよ!?」

うちっちー「えっ…分からないの?」

ツカサ「分かる訳無いだろ、その格好で!」

うちっちー「イヤだなぁ…ボクだよ、ボク!」スポッ

(セイウチの着ぐるみはそう言うと…頭の部分を外し、オレに向けてその素顔を見せた)

ツカサ「だから、誰なn…っ!!」

(その人物の顔を見たオレは…その目を疑った)

(セミショートの黒髪に紫色の瞳…そして、中性的な顔立ち)

(その顔は、オレが出逢ったあの少女と全く違いのない…瓜二つのものだった)

ツカサ「お前…何で、ここに?」

?「実は君に協力してもらおうと思って未来から来たんだ…これから始まる『最強で最高のスクールアイドルの祭典』を開く為に!」

ツカサ「未来?…『スクールアイドルの祭典』?」

?「う~ん、とりあえず今から説明はするけど…先にこれだけは言っておくね!」

?「ボクは…君がよく知っている、あの子じゃない」

ツカサ「!…じゃあ、お前は」

?「ビルドだよ…仮面ライダービルド!」

ツカサ「ビルド?…って、はぁ!?」

?「えへへ…よーろしくー!」ビシッ



―――次回作『平成二期ライダー×ラブライブ!サンシャイン!!編(仮題)』へ続く―――


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

スピンオフ! ~The School Idol Rider~
File.1『陳情!A-RISEとゆきありのスピンオフ制作!!』


亜里沙「う~ん、私は…『Afterglow』かな!」

 

ツバサ「あら…意外ね、あなたは『Poppin'Party』や『Pastel*Palettes』の方が好みなんじゃないかと思っていたのだけど」

 

亜里沙「このボーカルの美竹蘭さんって子の声を聴いていると、何だか他人のような気がしなくて…ツバサさんはどのグループが一番好きなの?」

 

ツバサ「そうね…私は『Roselia』かしら」

 

ツバサ「高い演奏技術とメッセージ性のある歌、それに…」

 

亜里沙「…それに?」

 

ツバサ「この宇田川あこさんっていうドラム担当の子…どことなく、私に似ている気がするの」

 

亜里沙「えっ…この子が?」

 

ツバサ「ええ、何というか…魂みたいなものかしらね?」

 

亜里沙「魂…もしかしたら、私が蘭さんに感じているのと同じかも!」

 

ツバサ「ふふっ…きっとそうかもしれないわね」

 

ツカサ「何の話をしているんだ?」

 

亜里沙「あっ、ツカサ!」

 

ツバサ「亜里沙さんに勧められて、有名なアニメ作品に登場しているバンドの曲を聴いていたの」

 

亜里沙「それでツバサさんと作品に出てくるバンドの中でどのバンドが好きかって話になって…」

 

ツカサ「なるほどな…だいたいわかった」

 

亜里沙「ツカサも聴いてみる?」

 

ツカサ「いや、オレは大丈夫だ」

 

亜里沙「えぇ~…?」

 

ツカサ「また今度な」

 

亜里沙「じゃあ…ここに写ってる『ハロー、ハッピーワールド!』のこのミッシェルって子、どう思う?」

 

ツカサ「はぁ?…いや、どう見てもヘンテコな熊の着ぐるみにしか見えないが」

 

亜里沙「そっか…ツカサなら、この子のことを好きになりそうだと思ったんだけどなぁ」

 

ツバサ「確かに、彼の趣味嗜好を考えれば…この子以外あり得ないものね」

 

ツカサ「勝手に人の好みを決めるな!!」

 

雪穂「…」スタスタスタ…バンッ!

 

亜里沙「わぁっ!?」

 

ツバサ「いきなり机を叩くなんて…一体何があったの、雪穂さん?」

 

雪穂「…ツカサ、聞きたい事があるんだけど」

 

ツカサ「!」バンッ!

 

ツカサ「赤かった瞳の色が紫へと変わり、顔に文様を浮かばせながら古めかしい口調を使うのが…ユピテルの姉妹の一人である彼女の特徴だ」

 

雪穂「…何の話してるの?」

 

ツカサ「中川かのんに宿った『アポロ』の話じゃないのか?」

 

雪穂「全然違うよ!っていうか誰なの、中川かのんって!?」

 

ツカサ「見えたぞ…エンディングが!」

 

雪穂「見えなくていいよ!!」

 

亜里沙「ハピハピハッピクーレセント~♪」

 

雪穂「歌わなくてもいい!!」

 

ツカサ「ちなみに『マジカル☆スター かのん100%』は彼女が主役のスピンオフ作品で…」

 

雪穂「だから、説明もしなくて…あっ!?」

 

雪穂「そうだよ、スピンオフだよ!」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

亜里沙「スピンオフがどうかしたの?」

 

雪穂「いや、実は気になったことがあってさ…」

 

ツカサ「気になった事?」

 

雪穂「…私、ずっと不思議に感じてたの」

 

雪穂「どうして公式で誰も…『A-RISE』が主役の物語を書いてくれないのかなって」

 

亜里沙「あっ…!」

 

ツバサ「!」

 

ツカサ「…はぁ?」

 

雪穂「だって、おかしくない!?」

 

雪穂「私達の世界では第一回『ラブライブ!』にも優勝して、あんなに人気だっていうのに…」

 

英玲奈「それ以上言うな!」

 

雪穂「あっ…英玲奈さん!」

 

あんじゅ「大丈夫、もう良いのよ…何故なら私達の物語は応援してくれる皆の心の中で紡がれているのだから」グスッ

 

亜里沙「あんじゅさん…そんな!」

 

ツカサ「…おい、何だこの唐突な茶番は?」

 

 

 

?「やっほ~!みんな、まだまだはっちゃけてるかーいっ!?」

 

?「毎度お馴染み、アキバレポーターでーっす!」

 

レポーター「本編では危険な目に遭って出番がそのまま終わっちゃった私だけど…あの後、皆でちゃんと逃げ切ったよアハハハハハ!」

 

レポーター「そして…隣で解説をしてくれるのは、この人だーっ!」

 

鳴滝「『μ'sic forever』…解説の鳴滝だ」

 

レポーター「スゴいねぇ?こんな事が出来るなんて…まるでクロスオーバーしたSSみたいだねぇ!」

 

鳴滝「…」ゴホン

 

レポーター「あっ、ごめんごめん…まずはどうして『A-RISE』が主役の物語が作られなかったのか順番に説明していっちゃうよー!」

 

『A-RISEの三大悲劇』

 

レポーター「アニメ版『ラブライブ!』で曲を披露しながら初登場したスクールアイドル『A-RISE』…メンバーは綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅの三人で構成」

 

鳴滝「彼女達は作中で『μ's』の良きライバルとして圧倒的な存在感と才能を見せ…ファンの中に『アライザー』という新分派を生み出してしまう程の人気を見せたのだ」

 

雪穂「さすが!」パチパチパチ

 

亜里沙「スゴい!」パチパチパチ

 

 

 

レポーター「しかーしっ!」

 

 

 

ゆきあり「へっ?」

 

 

 

鳴滝「『μ's』の物語は劇場版を以て一区切りしてしまい…『A-RISE』がプロアイドルに転向してからどうなったのかは一切不明のままとなってしまった」

 

A-RISE「…」

 

亜里沙「あっ…!」

 

雪穂「ええ…嘘でしょ?」

 

 

 

レポーター「そこに転機が訪れたっ!」

 

鳴滝「劇場版公開中に『A-RISE』それぞれのメンバーを演じた声優さん三人が集結し、ブログやTwitterに写真をアップしたのだ」

 

鳴滝「それを見たファンは『次のμ'sのライブにはぜひA-RISEも出演させてほしい!』という声が公式に殺到した…!」

 

(※あくまで筆者の推測です)

 

 

 

亜里沙「わぁ~…!」

 

雪穂「そうそう、それだよ…そういうの待ってたんだって!」

 

 

 

レポーター「しかーしっ!!」

 

鳴滝「あくまで彼女達はライバルグループ…アニメ版で披露された持ち歌の二曲も劇中歌であるという理由からか、ライブイベントに出演する事は無かったのであった…」

 

(※勿論、筆者の推測です)

 

 

 

亜里沙「そんな…!」

 

A-RISE「…」

 

雪穂「あっ…しょうがない、しょうがないですよ!」

 

 

 

レポーター「更にっ!」

 

鳴滝「『μ's』のワンマンライブはファイナルを迎え、その一ヶ月後には英玲奈の中の人が声優業から退いてしまい…『A-RISE』の物語やライブが展開される可能性は無くなってしまった」

 

鳴滝「つまり『A-RISE』は…アニメ版と漫画版にしか登場しない不遇なスクールアイドルとなってしまったのだ」

 

レポーター「勿体ないよね、けっこう好きな人が多いのに…もちろん私も大好きだよっ!」

 

 

 

英玲奈「すまない…」

 

雪穂「いやいや、英玲奈さんのせいじゃないですから…もちろん中の方のせいでもないですし!」

 

亜里沙「でも『A-RISEの物語を見たい』って言う人がいるなら、マンガや『School idol diary』でも良いから作ってあげれば良いのに…」

 

あんじゅ「それは…難しい話ねぇ」

 

亜里沙「えっ、どうして?」

 

ツバサ「今、穂乃果さん達『μ's』の漫画版は…『電撃G's magazine』2017年11月号を最後に長期休載中」

 

ツバサ「おまけに『School idol diary』の展開は…」

 

雪穂「!…最近、ようやく『始まりの新学期』の単行本の発売日が決まったばかり」

 

ツバサ「そう…だから、良いの」

 

ツバサ「この物語の作者さんも含めて、多くのファンが私達の色々な二次創作の物語を書いてくれてる訳だし…ね」スタスタ

 

雪穂「あっ…ツバサさん!」

 

亜里沙「ねぇ、ツカサ…何とかできないの?」

 

ツカサ「はぁ?放っとけ放っとけ…英玲奈の中の人だって『A-RISEがまた登場するなら自分が演じる』と言ってくれているんだし、心配しなくても大丈夫だろ」

 

あんじゅ「でも、もしツバサちゃんがやさぐれちゃったりしたら…地獄兄弟に仲間入りしちゃったりなんかするかもしれないわよぉ?」

 

ツカサ「…!」

 

ツバサ『今、私を笑ったわね?太陽なんて…私が穢してあげる』

 

ツカサ「それは鬱陶しいな…全く、仕方ないな」ハァ

 

ツカサ「これは…『陳情』だな」

 

 

 

『陳情』

 

 

 

雪穂「でも、もし『A-RISE』の新しい物語が作られるのなら…私達の物語があっても良いと思うんだよね」

 

亜里沙「そうだね…私たちだって曲を出して、中の人とステージに立ちたい!」

 

ツカサ「…だったら、それも『陳情』だな」

 

 

 

『陳情』

 

 

 

『署名にご協力を!スピンオフ作品化 A-RISE&ゆきあり』

 

雪穂「スピンオフ作品の署名にご協力くださーい!」

 

英玲奈「お願いしまーす!」

 

あんじゅ「よろしくねぇ~?」

 

亜里沙「ありがとうございまーす!」

 

 

 

『株式会社サ○ライズ』

 

『ラブライブ!企画検討本部』

 

ツカサ「『ラブライブ!』の企画検討本部室だ…お前達の企画を作るべきかそうでないかは、部長の一存で決まる」

 

ツバサ「…ありがとう、行ってくるわ」

 

コンコン…ガチャ

 

『ラブライブ! スピンオフ A-RISE編・ゆきあり編 制作決定!!』

 

『近日公開!ラブライブ! スピンオフ 新たな伝説が今、開幕』

 

『ゆきあり 1stシングル発売!お披露目イベント開催決定!!』

 

『A-RISE 1stアルバム発売!ミニライブツアー開催決定!!』

 

『電撃G's magazine 10月号 大人気!私たちのアイドル A-RISE・ゆきあり 超てんこ盛り40ページ大特集!!』

 

『応募者全員サービス 超合金 統堂英玲奈!!』

 

女の子A「あっ、あの子達…ゆきありじゃない!?」

 

女の子B「A-RISEだ!」

 

女の子C「一緒に写真撮って~!」

 

女の子D「サインくださ~いっ!!」

 

あんじゅ「うふふっ…はいは~い♡」

 

雪穂「お、押さないでください!」

 

ツバサ「焦らないで…時間はたっぷりあるから」フフッ

 

亜里沙「はい、チーズ!」パシャッ

 

英玲奈「これが超合金…DX版とどう違うんだ?」

 

ワーワー!キャーキャー!カシャカシャカシャ…

 

 

 

ツカサ「…っていう、夢を見たんだ」

 

雪穂「…ゆ」

 

亜里沙「ゆ…」

 

ツカサ「どうした?」

 

ゆきあり「夢なんかーいっ!!」

 

ツバサ「やっぱり、朝食には…コーヒーよね」ズズッ

 

ツバサ「!…熱い」ボソッ

 

 

 

鳴滝「まさかの夢オチとは…おのれディケイド、私は諦めんぞ!」

 

鳴滝「A-RISE編とゆきあり編はいつか必ず公式が叶えてくれるはずだ…叶え、私達の夢ぇぇぇぇぇ!!」ビュオォォォ!!

 

レポーター「スタッフさんが用意した扇風機に当たりながら何か変な事言ってるよアハハハハ!」

 

レポーター「さあ、という訳で!次回もおっ楽しみに~!!」フリフリ




ツバサ「次回のラブライブ!」

「スクールアイドル・すいえいたいかーい!」

「いちばん強いグループはど~っちだ!?水泳大会編…!」

File.2『ガチ!スクールアイドル水泳大会!!向かい風五番勝負編』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

File.2『ガチ!スクールアイドル水泳大会!!向かい風五番勝負編』

レポーター&鳴滝「スクールアイドル・すいえいたいかーい!」

鳴滝「実録・いちばん強いグループはど~っちだ!?水泳大会編…!」


ツバサ「これより『μ's・A-RISE合同イベント 夏のスクールアイドル水泳大会』を開催します!」

 

あんじゅ「皆さん、正々堂々と…元気良く頑張りましょ~?」

 

穂乃果「私達『μ's』も精いっぱい頑張ります、みなさん…見ていてくださいっ!」

 

 

 

レポーター「おーっと!これは!?」

 

鳴滝「ふふっ…言ったでしょう、実録と」

 

レポーター「何と『A-RISE』が主催する『μ's』と『A-RISE』の合同イベント『夏のスクールアイドル水泳大会』だ…スゴいねぇ!楽しみだねぇ!!」

 

鳴滝「故にこの勝負はプールの水飛沫、プールで遊ぶスクールアイドル達…水泳に対する彼女達の真剣な眼差しを楽しむのが醍醐味だ」

 

鳴滝「水着を着たスクールアイドルの意地と意地とがぶつかり合う頂上決戦…これこそ、ファンが求めていた夢の対決だ!」

 

レポーター「ちなみに水泳大会といっても、あんなハプニングやこんなハプニングとかなんかは無いから期待しないでね~!」

 

鳴滝「今回は水上徒競走、水上綱引き、玉入れ、ボート漕ぎ競争、三人選抜自由形リレーの五番勝負だ…解答者にはどちらが勝つか予想してもらおう」

 

レポーター「どっちか勝つか、皆で予想しちゃお~!」

 

 

 

ツバサ「私は断然…『A-RISE』よ」

 

雪穂「あれ?ツバサさん…何でこっちにもいるんですか!?」

 

ツバサ「そうね…本編第20話と第21話を読んでもらえればここにいる私がどっちの綺羅ツバサなのか、察してもらえると思うわ」

 

雪穂「えぇ…急に本編の宣伝入れてこられても」

 

亜里沙「海未さんのポロリ、ないのかぁ…」シュン

 

ツカサ「逆にどうして期待してたんだよ…そんな事、この作品にある訳が無いだろ?」

 

ツカサ「だいたいこの作品はSSだ、文字じゃ何も伝わらないし…あの筆者にそういうのを書かせるのは色々な意味で経験不足だ」

 

雪穂「やめてあげなよ、急に作者の人をイジり出すのは!!」

 

ツカサ「どちらにせよ期待する意味は無い…第一、海未やにこや凛の水着がはだけても喜ぶヤツなんて少な…」

 

ヒュン!

 

ツカサ「う゛っ!」グサッ!!

 

…ドサッ

 

雪穂「ツカサぁぁぁぁぁ!?」

 

ツバサ「…自業自得ね」

 

亜里沙「それにしても…今の矢、どこから飛んできたんだろう?」

 

 

 

穂乃果「?…どうしたの、三人とも」

 

凛「何か、どこかで不本意なことを言われた気がしたから…」

 

海未「私が矢を放っておきました…念の為、弓矢を持ってきた甲斐がありました」

 

にこ「よくやったわ、海未!」

 

穂乃果「えっと…っていうか何で、弓矢持ってきてるの?」

 

 

 

ツカサ「…」チーン…

 

ツバサ「ひとまず、彼は放っておいて予想の続きをしましょう…あなた達はどちらが勝つと思う?」

 

亜里沙「私はもちろん『μ's』かな、だって…『μ's』には海未ちゃんやお姉ちゃんがいるし!」

 

雪穂「私は…引き分け、かな?」

 

ツバサ「あら、それはどうして?」

 

雪穂「どっちが勝つかというよりも…みんなには楽しんでいてほしいんです」

 

雪穂「お姉ちゃん達『μ's』にも、ツバサさん達『A-RISE』にも…それがスクールアイドルだと思うんで」

 

亜里沙「!…雪穂」

 

ツバサ「ふふっ、確かに…そうなってくれると良いわね?」

 

雪穂「…はい!」

 

ツカサ「…」ピクピク

 

 

 

レポーター「それでは解説者のこの人にも…勝負をどう見るか聞いちゃうよ!」

 

鳴滝「ずばり…『μ's』だな」

 

レポーター「ふむふむ」

 

鳴滝「実は最近の私は毎週、秋葉原のあるメイド喫茶に通っていてね…」

 

レポーター「…は?」

 

鳴滝「そのお店で私はいつもことりちゃんに接客してもらっていまして…なので、ことりちゃんの大ファンなんですよ」

 

レポーター「え…はぁ」

 

鳴滝「ちなみに私がお店一番最初に頼んだメニューはオムライスなんですが、ミナリンスキーはそれにケチャップで『大好き』と書いてくれt」

 

レポーター「うわぁ…おっと、勝負の準備が整ったぞ~!」

 

鳴滝「行け!『μ's』…ミナリンスキ~!!」ガタッ

 

 

 

『第一種目・水上徒競走』

 

英玲奈「第一走者・星空凛、第二走者・綺羅ツバサ」

 

凛「…」

 

ツバサ「…」

 

英玲奈「位置について…よーい、スタート!」

 

凛「行っくニャ~!!」ダダッ

 

ツバサ「…!」ダッ

 

凛「へっへーん…マットの上でも、かけっこはお任せだよっ!」

 

ツバサ「ゴールテープも切っていないのに、随分余裕の発言ね?」

 

凛「へっ?」

 

真姫「凛、曲がり角よ!」

 

凛「!?…う、うにゃぁぁぁぁ~っ!」ザパーン!

 

あんじゅ「ツバサちゃん…今よ!」

 

ツバサ「分かってる!」

 

英玲奈「只今のレース、綺羅ツバサの勝ち!」

 

 

 

花陽「続いて、第一走者・園田海未さん…第二走者・統堂英玲奈さん!」

 

海未「皆の分まで、私が勝たなくては…!」

 

花陽「位置について…よーい、スタートッ!」

 

海未「はあっ…!」ダダッ

 

英玲奈「!?…園田海未、速過ぎる」

 

花陽「ただ今のレース、園田海未さんの勝ちっ!」

 

 

 

『第二種目・水上綱引き』

 

にこ「私の相手は…」チラッ

 

あんじゅ「にこちゃん…よろしくねぇ~?」

 

にこ「…大会で一番かわいい試合が出来そうね!」

 

ツバサ「位置について…よーい、スタート!」

 

にこ「まずはぁ、軽く綱を引きながら~…」

 

あんじゅ「…えいっ」グイッ

 

にこ「うぎゃあっ!?」ザパーン!

 

あんじゅ「うっふふ…私の勝ち♪」

 

 

 

花陽「第二回戦は、高坂穂乃果さんと統堂英玲奈さんの対決ですっ!」

 

英玲奈「ほっ」グイッ

 

穂乃果「う、うわっ!うわぁぁぁぁぁっ!?」ザパーン!

 

英玲奈「…まだまだだな」

 

にこ「嘘でしょ!?勝負つくの早過ぎ!」

 

 

 

『第三種目・玉入れ』

 

花陽「ことりちゃん・真姫ちゃん・希ちゃんチーム対A-RISEチーム…A-RISEチームの勝利ですっ!」

 

 

 

『第四種目・ボート漕ぎ競争』

 

凛「絵里ちゃん・海未ちゃん・かよちんチーム対A-RISEチーム…μ'sチームの勝利ニャ!」

 

 

 

『μ's 30-70 A-RISE』

 

花陽「さすが『A-RISE』…王者の貫禄ですっ!」

 

希「さすがトップスクールアイドルは、体力も半端ないなぁ…」

 

真姫「っていうか、いくらなんでも…本気出し過ぎじゃない?」

 

にこ「次は最後の競技でしょ…もう『μ's』の負けは決まりってこと?」

 

絵里「心配しないで、最後の三人選抜自由形リレーは配点が大きいから…引き分けに持ち越せる可能性があるわ」

 

ことり「あはは…もう『μ's』の勝ちは無いんだね」

 

穂乃果「海未ちゃん…頑張ってね!」

 

海未「はい、任せてください!」

 

 

 

『最終競技・三人選抜自由形リレー』

 

希「それでは最後の競技は…凛ちゃん・絵里ち・海未ちゃんチーム対A-RISEチームの対決ですっ♪」

 

希「位置について…よーい、スタートッ!」

 

あんじゅ「!…ぷはっ」ザバァッ

 

凛「おかしいニャ…何で追いつけないんだろう?」バシャバシャ

 

あんじゅ「うふふっ…タッチ♡」パシッ

 

英玲奈「ここで大きく、差をつける…!」ザババッ!

 

凛「はぁはぁ…絵里ちゃん、頑張って!」パシッ

 

絵里「ええ、負けないんだから…!」バシャバシャ!

 

真姫「差が大分ついてるわ、追いつけないかも…」

 

ことり「でも、最後は海未ちゃんが頑張ってくれたら…!」

 

にこ「穂乃果…アンカーの海未に何か言ってあげなさいよ!」

 

穂乃果「分かった!…海未ちゃーん!!」

 

海未「!…穂乃果、私が最後に追い上げていきますかr」

 

穂乃果「水泳大会の最後だよ!思いっきり…楽しく泳いでねっ!!」

 

海未「…!」

 

海未「穂乃果…分かりました」フフッ

 

ツバサ「!…ふふっ、なるほどね」

 

ツバサ「そういうところが私達とは違う…違うからこそ、彼女達『μ's』は力を発揮できるのかもしれないわね」

 

英玲奈「ツバサ!」パシッ

 

ツバサ「…ええ!」ザバッ!

 

絵里「はぁはぁ…海未!」パシッ

 

海未「…はい!」バシャッ!

 

 

 

『μ's 30-110 A-RISE』

 

レポーター「全てのスクールアイドルの夢、それを現実としたのは何と…『A-RISE』だ~っ!」

 

 

 

亜里沙「海未さん、惜しかったけど最後の追い上げ…スゴかったなぁ~」

 

ツバサ「結果的には雪穂さんの願いが叶ったわね…流石は穂乃果さんの妹といったところかしら?」

 

雪穂「いえいえ、そんな…私はただみんなに楽しんでほしいなって思っただけですから」

 

亜里沙「海未さん…カッコ良いなぁ~!!」キラキラ

 

ツカサ「…はっ!」ガバッ

 

雪穂「あっ、やっと起きた…もう大丈夫なの?」

 

ツカサ「…オレは一体、誰だ?」

 

雪穂「へ?」

 

ツカサ「ここはどこだ?分からない…何も、思い出せない」

 

亜里沙「ツバサさん、これって…?」

 

ツバサ「…どうやら、また記憶喪失になってしまったみたいね」

 

ゆきあり「え…えぇーっ!?」

 

ツカサ「オレは誰だ…アンタ達は誰だ!?」

 

亜里沙「ツカサ…しっかりしてよ、ツカサ!」ユサユサ

 

雪穂「ツカサは『仮面ライダーディケイド』…通りすがりの仮面ライダーなんだよ!?」

 

ツカサ「はぁ?仮面ライダー…何じゃそりゃぁ!?」

 

 

 

鳴滝「よくやったぞ、園田海未…ディケイドが仮面ライダーとしての記憶を失った事で全ての世界は救われた!」

 

レポーター「水泳大会関係無いけどねアハハハハハ!」

 

レポーター「以上、スクールアイドル水泳大会でした…次回もおっ楽しみに~!」フリフリ

 

鳴滝「やった、やった…やったやったー!」

 

(※この後、ツカサの記憶はゆきありの二人によって無事に元の状態に戻りました)




雪穂「次回のラブライブ!」

「高坂穂乃果…『μ's』のリーダーとして、その名を知らない者はいない」

「何を言ってるの、この人達…」

File.3『どれだ!高坂穂乃果 究極の一枚を選べ!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

File.3『どれだ!高坂穂乃果 究極の一枚を選べ!!』

レポーター「高坂穂乃果…『μ's』のリーダーとして、その名を知らない者はいない」

 

穂乃果『ファイトだよっ!!』

 

レポーター「『μ's』のメンバー達を牽引する穂乃果ちゃん、その魅力は何?」

 

鳴滝「何より人を惹きつけるあのカリスマ性だな…どんな事でも思い立ったらすぐに行動し、センターに立った時の歌唱力の安定感は抜群とも言える」

 

レポーター「はい、残念でした~…全然違います」

 

鳴滝「何っ!?」

 

レポーター「彼女といえば…そう、ヒップ!」

 

鳴滝「え、ヒッ…?」

 

レポーター「お尻ですよ…お・し・り!」

 

レポーター「出産には骨盤が大きく張っていることが大事なんです…故に安産型こそ、良いスクールアイドルの」パンッ!

 

レポーター「決め手なんだって、アハハハハハ!」

 

鳴滝「いや、それは関係な…」

 

レポーター「そうだよね、雪穂ちゃん!?」

 

鳴滝「え…あっ、どうなんだ?」

 

 

 

雪穂「わ、私っ!?」

 

雪穂「いや、お姉ちゃんのお尻がどうかはよく知らないけど…スクールアイドルとして尊敬はしてるよ」

 

ツバサ「流石は雪穂さん…どうやら、あなたのお尻の大きさも伊達じゃないみたいね?」

 

雪穂「何でツバサさんまでその話に乗っかってくるんですか!?しかも、ちゃっかり人が気にしてることまで指摘してくるし!」

 

亜里沙「元気な赤ちゃんが産まれそうだよね!」

 

雪穂「亜里沙も乗らなくていいから!!///」

 

ツカサ「ふわぁ…御託はいいからさっさと問題に入ってくれ、こっちは眠たいんだ」

 

 

 

レポーター「おっと失礼!では…早速、チェックしてみちゃうよ!」

 

レポーター「穂乃果ちゃんのパンツはどーれだ!?」

 

レポーター「穂乃果ちゃんが履いた四枚のパンツ…でももちろん、昨日の穂乃果ちゃんが履いたのはたったの一枚」

 

レポーター「もう一度見てみよう…」

 

①黒の縞々パンツ

②オレンジのくまさんパンツ

③白の苺パンツ

④青の水玉パンツ

 

レポーター「さあ、昨日のパンツはど~れだっ!」

 

 

 

ツカサ「おい、何が起きている…急に見えないし聞こえなくなったぞ!?」ジタバタ

 

亜里沙「ツカサは見ちゃダメだし聞くのもダメ!!」

 

雪穂「っていうか…何なの、この問題!いくらスピンオフ編でもやって良いことと悪いことがあるんじゃないの!?」

 

ツバサ「…ここは、私に任せてくれるかしら?」スッ

 

雪穂「ツバサさん!…そうだ、ツバサさんならきっと運営の暴走を止めてくれるはz」

 

ピンポーン!

 

ツバサ「③!」

 

雪穂「えぇーっ!?」

 

亜里沙「ツバサさん…ファイナルアタックライド?」

 

雪穂「いや、亜里沙もツッコんでよ!っていうか…何でファイナルアンサーみたいに言ってるの!?」

 

ツバサ「ええ…ファイナルアタックr」

 

?「待って、言わないで!」

 

ツバサ「!?…あなた達は」

 

絵里「…」

 

亜里沙「お姉ちゃん!」

 

海未「…」

 

ことり「…」

 

雪穂「海未さんにことりさんまで…三人とも、どうしたんですか?」

 

絵里「助けに来たのよ…仲間として、ね?」

 

ツバサ「!…まさか」

 

海未「その通りです、同じ穂乃果を愛する仲間として…あなたが間違える姿を見たくありません」

 

ことり「だから…一緒にみんなで考えよう、ハノケチェンの昨日のパンツを!」

 

雪穂「えっ?何を言ってるの、この人達…めちゃくちゃ怖いんだけど」

 

ツバサ「皆…ありがとう!」

 

雪穂「何で感謝してるんですか!?」

 

亜里沙「良い話だなぁ…」グスッ

 

雪穂「いやいやいやいや!?ただただ変態が四人集まっちゃっただけじゃん!」

 

ツカサ「おい、何が起きている…おーい!」ジタバタ

 

絵里「…というのが、海未とことりの予想よ」

 

ツバサ「なるほど、それで間違いないのね?」

 

海未「はい、穂乃果は勝負下着を履くライブの日以外は曜日毎に履いている下着を順番に決めていますから…」

 

ことり「だから…私達の予想は、②!」

 

亜里沙「ファイナルアタックライド?」

 

ツバえりうみ「…ファイナルアタックライド!」

 

ことり「ヘ・ヘ・ヘ・ヘノケチュン!」

 

亜里沙「スピンオフ編ってスゴいなぁ…私、感動しちゃったよ!」

 

雪穂「…すみません、めまいがするんでもう帰ってもいいですか?」

 

ツカサ「おーい、誰かー!」ジタバタ

 

 

 

レポーター「では、正解の発表だ~!」

 

正解は…②オレンジのくまさんパンツ

 

鳴滝「ふむ、流石はホノキチ四天王…まさに愛と友情の勝利といったところだろうか」

 

穂乃果「いた…あの人です、私のパンツ盗んだの!」

 

鳴滝「…む?」

 

警察官「あー、君…ちょっと一緒に署まで来てもらえるかな?」

 

鳴滝「なっ…まさか!?」

 

レポーター「…」~♪

 

鳴滝「待ってくれ…私は、私は何もしていない!」

 

警察官「はいはい、話なら署で聞くから…」

 

鳴滝「お、おのれ…おのれディケイドォォォッ!!」ズルズルズル

 

レポーター「ディケイド全く関係無いねー!アハハハハハ!!」

 

レポーター「奥深いスクールアイドルの世界、次回もお楽しみに~!」フリフリ

 

穂乃果「ん?またね~!」フリフリ

 

(※この後、鳴滝さんは無事に冤罪を証明しました)




亜里沙「次回のラブライブ!」

「実際に言っていない台詞はど~れだ?」

「鳴滝ぃぃぃぃぃ!?」

File.4『クイズ!伝説の迷言の真相を暴け!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

File.4『クイズ!伝説の迷言の真相を暴け!!』

レポーター「『ラブライブ!』を知るにはまず台詞から…という事で、今回は『μ's』の台詞について幾つかクイズを出しちゃうよ!」

 

レポーター「それでは早速、第一問!」

 

レポーター「次の中で実際に言っていない台詞はど~れだ?」

 

①認められないわぁ(絢瀬絵里)

②いけませんことり(園田海未)

③ウチを入れて9人や(東條希)

 

鳴滝「ネットやSNSによって間違って広まってしまっているものもあるからな…子供達も知りたがっているだろう」

 

 

 

雪穂「えぇ…別に誰も知りたがってないと思うんですけど」

 

亜里沙「どの台詞も言ってそうな気がするね…」

 

ツカサ「…簡単な話だ」ピンポーン!

 

ツカサ「希が実際に言った台詞は『9人や、ウチを入れて』のはず…つまり③が正解だ」

 

ブブーッ!

 

ツカサ「…はぁ!?」

 

亜里沙「分かった!」ピンポーン!

 

亜里沙「海未さんがことりさんに言ったのは『ズルいですよ、ことりは』…だから、正解は②!」

 

ブブーッ!

 

亜里沙「えぇーっ!?」

 

雪穂「うーん…」ピンポーン!

 

雪穂「『認められないわぁ』って言ったのは絵里さんじゃなくて凛さんのモノマネだったと思うから…①?」

 

ブブーッ!

 

雪穂「違うの!?」

 

ツバサ「なるほど、という事は…!」ピンポーン!

 

ツバサ「これは引っかけ問題…つまり正解は一つじゃない、そうでしょう?」

 

ピンポンピンポーン!

 

三人「!?」ズコッ

 

ツカサ「何でだよ!?」

 

 

 

レポーター「その通り、正解は『全部言ってない』!」

 

鳴滝「正解を一つだと思ってしまうのが素人の浅はかさ…何を勘違いしている、ディケイd」

 

レポーター「言ってみたかっただけだねアハハハハハ!」

 

鳴滝「…」

 

レポーター「続いて第二問!」

 

レポーター「この中に実際に言っている台詞はど~れだ?」

 

①エリチカ、おうちに帰る!!!(絢瀬絵里)

②こう見えて彼氏いない歴17年よ!(西木野真姫)

③将来はたーくさんベビちゃんがほしいですっ!(東條希)

 

レポーター「ちなみに不正解の人には罰ゲームが待ってるんだって!」

 

レポーター「何だろうねぇ…楽しみだねぇ!」

 

 

 

雪穂「うわぁ…」

 

ツカサ「どれもこれも…恥ずかしい台詞ばかりだな」

 

亜里沙「あれ?そういえば真姫さんって一年生だから…」

 

ツバサ「②の『彼氏いない歴17年』という台詞には矛盾が生じるわね…」

 

ツカサ「分からないぞ?真姫の母親の中の人は17歳教の代表だしな…ことりの中の人も最近17歳教に入ったという話だし、娘も永遠の17歳になった可能性g」

 

雪穂「それ以上言ったら色んな人を敵に回すからやめて!」

 

ツバサ「そう考えたら、①と考えるのが妥当かしらね…最近の絵里さんには賢さが微塵も感じられないし」

 

雪穂「何でいきなりそんなヒドいこと言い出すんですか!?」

 

ツカサ「確かにツバサの言う通りだな…今やもう、絵里に対する世間のイメージは『かしこい()かわいい()エリーチカ()』ではなく『ポンコツ()かわいい()エリーチカ()』だ」

 

亜里沙「『最近の絵里はかしこくない』って…中の人にまで言われちゃってるもんね!」

 

雪穂「…亜里沙、本当は絵里さんのことあまり尊敬してないんじゃないの?」

 

ツバサ「③はどう?」

 

ツカサ「希は…媒体によって、キャラや話し方が違っていたりするからな」

 

ツカサ「まあ、そんなところも…あいつの魅力の一つなんだけどな」フフン

 

雪穂「え?何でそこで急に誇らしげになってるの…この作品の筆者に取り憑かれて頭でもおかしくなっちゃったの、ねぇ?」

 

亜里沙「難しいけど…よし!」ピンポーン!

 

亜里沙「…完っ全にフルハウス」

 

ブブーッ!

 

ツカサ「そうだよな、満員御礼だよな~…ってバカ!」

 

ツカサ「ったく…いいか?見てろよ」ピンポーン!

 

ツカサ「…ワレワレハ、ヒトツ!」

 

ブブーッ!

 

亜里沙「そうだよね、全員集合だよね~…っておバカ!」

 

雪穂「…ねぇ、真面目にやってくれないかな?」ゴゴゴゴ

 

二人「!…はい」シュン

 

ツバサ「…!」プルプル

 

雪穂「ほら、ツバサさんだって怒って…」

 

ツバサ「ぷふっ…二人とも、上手…」

 

雪穂「意外と寛容だった!」

 

ツバサ「だ、だって面白くって…」プルプル

 

雪穂「あのレベルのモノマネで!?」

 

ツバサ「と、とにかく…私が答えるから」ピンポーン!

 

ツバサ「正解は…全部よ」キリッ

 

ピンポンピンポーン!

 

 

 

レポーター「その通り!」

 

鳴滝「正解は…どれも真実だ」

 

鳴滝「②に関しては誤植ではあるものの、実際に発言してしまった事に変わりはない…よって②も正解だ」

 

レポーター「という訳で、正解者以外の解答者の皆には…スクフェスのμ's編メインストーリー第15章で誕生してしまった伝説の『アレ』を食べてもらっちゃうよ~!」

 

 

 

雪穂「『アレ』って…?」

 

亜里沙「!?…第15章ってまさか!」

 

ツカサ「穂乃果の伝言ミスとにこが急かした事によって、ことりがやらかしてしまった…伝説の!?」

 

グツグツグツ…

 

ツバサ「…チーズケーキ鍋、ね」

 

 

 

鳴滝「ファンの間で語り継がれている伝説を喰らうが良い…素人共が!」

 

レポーター「それじゃまずは鳴滝さん…試食の方、どうぞ~!」

 

鳴滝「何?…私もか!?」

 

グツグツグツ…

 

レポーター「さあさあ…遠慮せずに、ガブっといっちゃってください!」ガシッ

 

鳴滝「いや、私は食べるとは一言も言って…」

 

?「あっ…鳴滝さん!?」

 

鳴滝「ミ、ミナリンスキー!どうして君が!?」

 

ミナリンスキー「実は、ここに写真が…私の生写真があるって聞いて!」

 

鳴滝「何?…まさか、ディエンドから譲ってもらったこれの事か!?」ピラッ

 

ミナリンスキー「それです!毎週のようにお店に来てくれる鳴滝さんでも、それはダメなんです…今すぐ返してください!」

 

鳴滝「い…いや、これはダメだ!」

 

鳴滝「いくら君の頼みといえども…それは聞けない!」

 

ミナリンスキー「…じゃあ、このチーズケーキ鍋を食べてくれますか?」

 

鳴滝「は…え?」

 

ミナリンスキー「鳴滝さん…おねがぁい!」

 

鳴滝「はうっ!?」ズキッ

 

鳴滝「…良いだろう、ただし!」

 

鳴滝「ミナリンスキー…君の『あ~ん♡』が欲しい」

 

レポーター「うわぁ…本気でお願いしてるよ、この人」ボソッ

 

ミナリンスキー「かしこまりました、ご主人様!」

 

グツグツグツ…

 

ミナリンスキー「はい…あ~ん♡」スッ

 

鳴滝「あ~ん…!」パクッ…モグモグ

 

鳴滝「!?…ぐふっ」ガクッ

 

 

 

ツカサ「鳴滝ぃぃぃぃぃ!?」

 

ツバサ「さあ…まずは誰が食べるのかしら?」

 

雪穂「…私からいきます」スッ

 

亜里沙「ダメだよ!雪穂にはそんなことさせられない…だったら、私が!」スッ

 

ツカサ「…じゃあ、オレg」スッ

 

ゆきあり「どうぞどうぞどうぞ…」

 

ツカサ「何でだよ!?どうせやるだろうなとは思ってたが!」

 

ツバサ「それで…どうするの、やるの?」

 

ツカサ「!…全く、仕方ないな」ハァ

 

ツカサ「見てろよ、やはりオレは…通りすがりの仮面ライダーだ!!」パクッ…モグモグ

 

ツカサ「!?…っ」バターン!

 

雪穂「ツカサぁぁぁぁぁ!?」

 

ツバサ「やはり、これは…未来のスクールアイドルである雪穂さんと亜里沙さんには食べさせられないわね」ハァ

 

亜里沙「良い子のみんなは、絶対にマネしちゃダメだよ!」

 

 

 

レポーター「さすがリアクション芸担当のにこちゃんの弟くんだけあるねアハハハハハ!」

 

鳴滝「…」チーン…

 

ミナリンスキー「鳴滝さん、しっかり!」ユサユサ

 

レポーター「という訳で『μ's』台詞の歴史は以上…次回もおっ楽しみに~!」フリフリ

 

(※この後、チーズケーキ鍋はスタッフが美味しくいただけませんでした)

 

 

 

希「…いただけよ!!」




レポーター「次回のラブライブ!」

「ライダーファッションチェック!」

「ビルドで愛らしさ、モノスゲーイ!!」

File.5『チェック!ビルドのコーデはボトルが全て!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

File.5『チェック!ビルドのコーデはボトルが全て!!』

レポーター&鳴滝「ライダーファッションチェック!」

鳴滝「今回は『ラブライブ!』×『平成ライダー』クロスオーバーSSシリーズの次回作の主人公が変身するライダー…ビルドについて紹介しよう」


ツカサ「はぁ!?」

 

雪穂「ビルドって確か、あの時…」

 

亜里沙「私達を助けてくれたライダーでしょ?」

 

ツカサ「それより…次回作の主人公がオレじゃないって、一体どういう事だよ!?」ガタッ

 

 

 

鳴滝「残念だったな…もうお前が主役の時代は終わったのだ、ディケイド!」

 

レポーター「ではでは、早速チェックしていっちゃうよ~!まずはラビットタンクから!!」

 

レポーター「カワイイ女の子にもカッコイイお姉さんにも憧れてるコには売れ売れのメリハリコーデ!」

 

レポーター「ゆるふわ系&ミリタリー系のベストマッチで君の人気もヤベーイ事になっちゃうよ!」

 

レポーター「左頭部は話題のウサ耳風アンテナで恋するウサギちゃん♡をアピール!」

 

レポーター「右頭部は砲身風のアンテナで決めて…恐れ知らずのカッコ良さをパンツァー・フォーしちゃおう!」

 

鳴滝「そして最大のチェックポイントは…フルボトルだ!」

 

『μ's!A-RISE!ベストマッチ!!』

 

ビルド「…」グルグル

 

『Are You Ready?』

 

ビルド「ビルドアップ!」

 

『始まりのラブライブ!サニーデイソング!!』

 

『イエーイ!!』

 

鳴滝「フルボトルによってコーデを変えるビルドは、印象も一気に変える事が出来る…!」

 

レポーター「サニーデイソングのマゼンタとシアンの色合いで、一気にポップさアップ!」

 

レポーター「フルボトルさえあれば、ちょっとしたお出かけからパーティーまで…老若男女にウケる事も間違いなーいっ!」

 

 

 

亜里沙「良いなぁ…私、フルボトル欲しい!」

 

雪穂「私も!」

 

ツバサ「安心しなさい、こんな事もあろうかと…皆の為に用意してきたわ!」スッ

 

亜里沙「おおっ!」

 

雪穂「これが!」

 

ツバサ「家族の皆でシェアして使えるフルボトル…今回はμ'sフルボトルとA-RISEフルボトルをセットで提供するわ!」

 

雪穂「スゴい…欲しいです!」

 

亜里沙「欲しい~…!」

 

ツバサ「でも、今日はそれだけじゃないのよ…?」

 

雪穂「何ですか…一体、何があるんですか!?」

 

ツバサ「まだこれだけじゃないわ…綺羅ツバサ、頑張らせてもらったわ!」

 

亜里沙「頑張ったんですか?」

 

ツバサ「今回だけ…このフルボトルも同時につけちゃうの!」ゴトッ

 

ゆきあり「うわっ!?」

 

ツバサ「『μ's』と『Aqours』の輝きが何と一本に凝縮されたお徳用・スクールアイドルフェスティバル!」

 

『イエイイエーイ!!』

 

亜里沙「大きい…」

 

雪穂「何これ!?」

 

ツバサ「ねっ!頑張ったでしょう?」

 

雪穂「スゴいですよ…頑張りましたね、ツバサさん!」パチパチパチ…!

 

亜里沙「でも、これ…お高いんですよね?」

 

ツバサ「それが今日なら…何と、五万ドルクで!」

 

雪穂「ご、五万ドルク!?」

 

亜里沙「高いけど安い…はいっ、買います!」

 

ツバサ「ありがとう!」

 

雪穂「あの、NP後払いでも良いですか?」

 

ツバサ「もちろんよ!」

 

雪穂「じゃあ、セ○ンイレ○ンで三角フラスコと一緒に!」

 

ツバサ「はーいっ♪」

 

ツカサ「…おい、ドルクなんて通貨あったか?」

 

ツバサ「お買い求めはぜひ…フリーダイヤル『好き好き穂乃果さん』までお掛けください」

 

ツカサ「人の話を聞け!…というか何番なんだよ、それ!?」

 

ツバサ「なお固定電話・携帯電話・公衆電話・PHS・IP電話からは一切掛かりませんのでご了承ください」

 

ツカサ「じゃあ何からなら掛かるんだよ!?」

 

ツバゆきあり「ラブライブ~課外活動・購買部~♪」

 

ツカサ「…もう、次回作の出番来るまで寝とくか」

 

 

 

鳴滝「ツッコミを放棄しただと…おのれディk」

 

レポーター「とにもかくにも…次回作はビルドのボクっ娘系で愛らしさ、モノスゲーイ!!」

 

鳴滝「待て、あのまま放っておいて良いのか?いつかどこかから怒られるんじゃないのか!?」

 

レポーター「ライダーファッションチェック!」

 

鳴滝「あっ…チェ、チェック!」

 

レポーター「次回もおっ楽しみに~!」フリフリ

 

鳴滝「おい…私の話を聞け!」

 

(※このショッピング企画はフィクションです 登場した番号等は架空であり、実在する公式の某購買部及び某ネットショッピング動画とは一切関係ありません また全国のセブ○イ○ブン店舗で三角フラスコは取り扱いしておりませんのでご了承ください)




ビルド「次回のラブライブ!」

「そんな時は、アマゾンネオに変身だよ!」

「君もやってみよー!」

File.6『変身!アマゾンネオは哀しみを喰らえ!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

File.6『変身!アマゾンネオは哀しみを喰らえ!!』

?「ううっ…」グスッ

 

…ポンポン

 

?「え?」クルッ

 

ビルド「やっほー!」

 

?「!…だ、誰!?」

 

ビルド「ボクは仮面ライダービルド…よーろしくー!」

 

?「ビ、ビルド…?」

 

ビルド「それにしても君、泣いていたみたいだけど…何か悲しい事でもあったの?」

 

?「あっ、実は話せばちょっと長くなるんだけど…良い?」

 

ビルド「うん…大丈夫だよ!」

 

秋葉 伝子さん(仮名・20代)「私、アナウンサーになる為に田舎から上京してきたんだけど…ずっと変なテンションで中継するレポーターの仕事ばかりやらされてきちゃって」

 

ビルド「ふんふん」

 

秋葉「この間なんて気持ちの悪い変なおじさんの隣で仕事する羽目になっちゃったし…私、もう限界なのよぉ!!」

 

秋葉「ぐすっ…私だって、斜め四十五度からニュース原稿読んでみたいのにぃ…!」ヒック

 

ビルド「そっか、それは大変だったね…でも安心して!」

 

秋葉「…えっ?」

 

ビルド「そんな時は、アマゾンネオに変身だよ!」

 

秋葉「へ…変身?」

 

『ポーズレッスン アマゾンネオ』

 

ビルド「模範演技…これから変身ポーズを教えるよ、まずはボクのお手本をよーく見ててね!」

 

ビルド「行っくよ~…」スッ

 

『NEO』

 

ビルド「アマゾンッ!!」

 

ビルド「…これだけ!」

 

ビルド「さあ、実験を始m…じゃなかった」

 

ビルド「君もやってみよー!」

 

秋葉「!…これって、ベルト?」

 

ビルド「『ネオアマゾンズドライバー』だよ…これに注射器型のアイテム『アマゾンズインジェクター』を差し込むんだ!」

 

秋葉「いや、ネオアマz…何?」

 

ビルド「ポイント1・敵を探す!」

 

秋葉「スルー!?」

 

ビルド「早速、アマゾンズインジェクターを持って…目線を敵の方に向けてみよう!」

 

秋葉「え、敵って…どこにいるの?」キョロキョロ

 

ビルド「あそこだよ、あ・そ・こ…ほら!」スッ

 

秋葉「?…何も見えないんだけど」

 

ビルド「ポイント2・念じる!」

 

秋葉「またスルー!?」

 

ビルド「敵を見つけたら…一番に『生きたいんだ』って念じながら、ネオアマゾンズドライバーにアマゾンズインジェクターを差し込むんだよ!」

 

秋葉「わ、分かったわ…あれ?」ガチャガチャ

 

秋葉「…あの、これちょっと差し込むの難しいんだけど」

 

ビルド「そういう時は…カットを変えよう!」

 

秋葉「カ、カット?」

 

ビルド「もう一回やってみて!」

 

秋葉「は…はい」スッ

 

『NEO』

 

ビルド「ポイント3・思いっきり叫ぶ!」

 

秋葉「あ…アマゾンッ!」

 

シュウゥゥゥゥ…

 

???「で、出来た…ってあれ!?」

 

???「ちょっと…何、この姿!?」

 

ビルド「あっ、ごめんごめん…間違えて『初代うちっちー』の成分が入ったアマゾンズインジェクターを持ってきちゃった!」

 

初代うちっちー「何なの『初代うちっちー』って!二代目とかいるの!?」

 

ビルド「とにかく、これでアナウンサーとしての仕事も来るようになると思うから…狩られないように頑張って生きてね!」

 

ビルド「じゃっ!」ダッ

 

初代っちー「あっ、ちょっと!?…行っちゃった」

 

初代っちー「狩られないように生きてって一体、どういう意味で…え?」

 

アマゾンオメガ「…」スタスタ

 

初代っちー「ひっ…あ、あなた達は!?」

 

アマゾンアルファ「…!」ダッ

 

初代っちー「こっち来た!?…ひぃぃぃぃっ!」ダダッ

 

ビルド「…ポイント4・別のアマゾンには気を付けろ」ボソッ

 

ビルド「さあ、次は君達の番だよ…よーろしくー!」

 

(※この後、無事に秋葉さんは人間に戻りましたとさ…めでたしめでたし)




ツカサ「次回のラブライブ!」

「ずっと不思議に感じてたの、どうして公式で…主役の物語を書いてくれないのかなって」

「これは…『陳情』だな」

File.1『陳情!A-RISEとゆきありのスピンオフ制作!!』


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。