比企谷提督と千葉鎮守府 (血塗りの晶)
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鎮守府海域編
1.提督にならざるを得ない


艦これと俺ガイルのクロスが書きたくなってしまった。
只の自己満足ですが、よろしかったらどうぞ。


                                                    

これは、一人の高校生が海上の安全を守り、世界を救う話です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「青春とは嘘であり、悪である。」

こんなことを彼が言っていたのは僅か数ヵ月前のことであった。

高校生が何を言っているのか?

高校生が何を知っているのか?

高校生が何を偉そうに語っているのか?

生徒指導の平塚教諭は呆れていた……。

 

 

「はぁ、なんでこんな作文になったんだ……」

 

 

「いや、俺なりに高校生活について振り返った結果なんですが……そもそも先生は俺にどんなことを求めて作文なんか書かせたんすか?俺に書けるのはこの程度の事くらいなんですが?」

 

 

「全く君は……高校生活で少しは充実したような思い出みたいなものは無いのかね?」

 

 

「はぁ…」

 

 

職員室の一角では、平塚教諭と総武高校のある男子生徒がそのようなことを話していた。

平塚教諭はタバコを吸いながらため息をつき、男子生徒の方は力の無いような目で上を見たり下を見たりしながら面倒な感じに話をしていた。

 

 

「とにかく、これはやり直し。来週までに書き直してこい、いいな?」

 

 

「…うす」

 

 

「はぁ、本当に分かっているのかね……?」

 

 

「い、いや、もちろん分かってますよ……本当に」

 

 

そんなこんなで彼は職員室の扉に手を掛けて、そのままトボトボと出ていった。

 

 

「はあ、疲れた。早く帰って小町に会いたい」

 

 

学校は放課後の時間で、帰宅する生徒や部活に勤しむ生徒が廊下を行き交いしている。

そんな中で、彼はボソッとそんなことを言った。

死んだ魚のような目をして、この世の全てを恨むようなそんな生気の無いような雰囲気を醸し出しながら、下駄箱へと一人歩いていた。

 

 

彼の名は『比企谷 八幡』(ひきがや はちまん)

後に艦隊を率いて、日本の安全を守る仕事につくことになるれっきとした提督になる高校生である。

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷はそのあと自転車に乗って家に最短のルートを使って帰りついた。

無論、いつも使っている通学路だ。

時間的には五時になるほんの10分前位の時間である。

どこに寄るでもなく、迷うことなく家にと帰りついたのだ。

高校生ならば、帰り道に友達と飲食店に寄ったり、娯楽施設に寄って遊んだりするものなのだが、彼はそれをしない。

彼は高校生活の中において友達と遊んだりもしなければ友達もいない……彼は一人孤独に高校生活を送っている。

俗に言うボッチというやつに属する。

 

 

「ただいま…」

 

 

疲れたような覇気の無い声で帰宅を告げる。

玄関の前で思わず倒れてしまう酔っ払って帰ってきた父親のような、そのくらいフラフラしたような足取りでリビングへと向かう。

まだ、妹である小町は帰ってきておらず、比企谷家は静寂に包まれている。

 

 

小町はまだ帰ってきてないのか……はあ…お兄ちゃん寂しいわぁ、誰か慰めてー!……っても家には寝ているカマクラしか居ないんだがな。

 

 

リビングにはソファの上で気持ち良さそうに寝ている猫が一匹だけ。

この猫はカマクラといって、比企谷家で飼っている猫だ。

真っ白な毛で、なかなかに頭もいい部類の猫である。

 

 

「……フニャzz…」

 

 

「………」

 

 

目付きの悪い男子高校生がソファの上で寝ている猫をじっと見つめている、そんなシュールな光景がほんの1分程度続いたが、そのうちに比企谷は、冷蔵庫に向かって歩き出した。

 

 

「……うん、やっぱりマッ缶なんだよなぁ」

 

 

黄色と黒のカラーである缶の飲み物を取り出して、味わうようにゆっくりと喉に流したあとに比企谷はそう言った。

マッ缶とは、マックスコーヒーのことで、黄色と黒のデザインがとても目を引く。

千葉では有名でその特徴と言えばコーヒーでありながらとてつもなく甘いというもの。

コーヒーと思って知らない人が飲んだりしたらきっとものすごく驚くだろう。

比企谷はそのままマッ缶も持って、リビングのソファへと向かう。

 

 

「ふぅ……」

 

 

そのままカマクラが寝ているソファの反対側に座り、そのあとは、テレビを見ながら何をするでもなくただ無気力に座っていた。

そのまま、しばらくはテレビを眺めていたが、次第に比企谷の瞼は下へ下へと落ちていき、比企谷は眠りへと誘われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、お兄ちゃん。今からご飯作るね」

 

 

「あ……あぁ、悪い今何時だ?」

 

 

「今は7時だよ、お兄ちゃん。全くテレビも付けっぱで寝てて、電気代がかかるからちゃんと消してから寝てよね」

 

 

「すまん……」

 

 

比企谷はいつの間にか眠っていた。

そして、今は7時。

小町が帰宅しているから、部屋は明るくなっている。

………いや、決して俺がいるから部屋の雰囲気が暗くなってるとかではなく、物理的に電気がついているとかだから。

そこら辺は勘違いしないでほしい。

 

 

比企谷が寝てから二時間程度がたっていた。

まだ重い瞼は下へと再び落ちようとするがそれを制止して比企谷は立ち上がった。

 

 

「なあ、小町。今日は随分帰りが遅かったんだが、何かあったのか?」

 

 

「ん?…いゃ、特にないけど……あっ!そうそうお兄ちゃんにいい知らせがあるのです!」

 

 

何かを思い出したのかあざとさ全開でニヤニヤしながらハイテンションになる小町。

 

 

「な、なんだ急に……はっ!もしかして彼氏が出来たとかか!?お兄ちゃんは認めないぞ!」

 

 

「いきなりなに言ってんの?お兄ちゃんさすがにキモいよ……外でそのシスコンを見せないでね、小町が恥ずかしいから」

 

 

さっきのテンションはどこへやらまるでゴミを見るような目だ。

いや……目は腐っていると言われようとも、おれ自身は腐っていたり、ゴミみたいな汚物じゃないから、そんな目で見ないで!さすがに俺も傷つくから!

 

 

「はあ、小町が言いたかったのは、お兄ちゃんの就職先が決まったから良かったねってことだよ……」

 

 

「はっ!?」

 

 

まさしく比企谷は状況の理解できないといった今日一番の驚きの表情を見せる。

比企谷の脳内CPUは処理が追い付かずにショートしていた。

 

 

いや、なんなんだそれ!?

そもそも俺はまだ高校生であって、就職先が決まるわけは無いはず、ましてやどこかの会社のお偉いさんと関係を持った覚えもない。

ていうか、人間関係を全くもってないまである。

……あれ?最後のはなんだか自分が考えたことなのになんか悲しくなってきたわ……。

 

 

「お兄ちゃん……今とてつもなく下らないこと考えてるでしょ……」

 

 

「いや、そんなことは無いぞ。ただ俺が働くというのは俺自身のプライドや何よりも今まで生きていきた中で確立されてきた信念を裏切ることになるから、俺は俺自身の就職に対して真っ向から反対する!俺は専業主夫という大きな夢を持っているんだ!」

 

 

「……うわ、これだからごみいちゃんは………そんなちんけなプライドなんかはへし折ってしまいたいよ小町は……」

 

 

またもやゴミを見るような目だ!

失礼な!ちんけなプライドとはなんだ!?

俺なりに色々と考えているというのに。

 

 

比企谷の目が更に濁ったのと、小町が兄をまるで廃棄処分された残飯を見るような目で見ていたのは言うまでもない。

部屋に漂ったどうでもいいような下らない会話の作り出した、どうでもいいような雰囲気に、小町は呆れ、比企谷は納得できないといった表情を見せていた。

これが比企谷家のいつもの少し捻た会話なのである。

 

 

「取り敢えずお兄ちゃん、国の方からお兄ちゃん宛に働いて欲しいって書類みたいなのが沢山来てたよ……うん、読むの面倒だったからなに書いてあるかは知らないけど」

 

 

「国!?なんでだ?俺を公務員の社畜地獄に送り込むつもりか?」

 

 

小町はそんなことをややテンション低めで言い、五ミリ程度にまとまった書類を比企谷に渡した。

 

 

はあ、いったいなんなんだ?

書類には国の安全云々かんぬんって書いてあるんだが……危険な仕事ではなかろうか……?

 

 

「……取り敢えず、ざっと見てみるか」

 

 

パラパラと書類の束をめくりながら粗く目を通していく。

そして最後の書類にはとんでも無いことが書かれていたのだった。

 

 

 

『比企谷八幡を千葉鎮守府の提督に任命す』

 

 

ただそれだけを見た時に比企谷は動揺を隠せないような表情を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きを書くかは未定です。




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2.彼は明日を憂鬱に感じる

反応が素朴な感じであったんで、取り敢えずこの話は続けてみます。


あっ!お気に入りしてくれた方はありがとうございます。




                                                   

 

国からの書類の最後を見た瞬間に、俺の中にある解析装置がエラーというエラーを次々に起こした。

『比企谷八幡を千葉鎮守府の提督に任命す』

このたったの一行によって比企谷は混乱している。

もともと妹からの急な就職先が決まったよ、よかったね。みたいな報告から状況を把握できていないのに、提督って文字を何回も何回も見直して、彼はそれでもいまだに何が起きているのか、理解が出来ない。

書類を渡してきた愛しの妹は、真剣そうに比企谷の方をじっと見ている。

心なしかキラキラした感じの雰囲気が妹である小町に漂っているのは気のせいなのだろうか?

そんなことを考えて、頭に焼き付いて消えない書類の一行を考えないようにしようと比企谷は必死になって意識しないようにしていた。

だが、妹の小町の発言によって意識せざるを得ないことになる。

 

 

「それで?どんなことがかいてあったの?」

 

 

「いや、別に…………タイシタコトジャナイヨ……」

 

 

そう言い放った瞬間に小町からの鋭い反論が飛んでくる。

 

 

「嘘だね。お兄ちゃん知ってる?何かを隠そうとしているときのお兄ちゃんは、何故かは知らないけど片言になるんだよ」

 

 

「うっ……さ、さいですか…」

 

 

「うん!でっ、本当はどんなことが書いてあったの?」

 

 

「……提督になれって書いてありました……」

 

 

「「………」」

 

 

小町の感じた感情と比企谷の感じている感情には大きな温度差があるのだが、そのときは一瞬の沈黙ができた。

ただ、小町にとってはダメな兄が国から必要とされていることがさぞ嬉しいことなのか、沈黙のあとはそれはそれははしゃいでいた。

 

 

「やったねお兄ちゃん!!これで将来性が皆無に思えていたごみいちゃんは無事に救われて、全うに働くことになったのです!」

 

 

「愛しの妹小町ちゃん、俺は提督になりたくないんだが?」

 

 

「えー、なんで!?絶対やった方がいいって、公務員なら安定してるじゃん!きっとお兄ちゃん幸せに暮らせるよ!あっ、今の小町的にポイント高い!」

 

 

兄の意見などどこ吹く風、まるで聞いていない。

それどころか強引に丸々書類の話に乗っかろうとしている始末、お兄ちゃん妹がこんなに残念だなんてちょっと悲しいよ……。

さて、茶番はこのくらいにして、本格的にどうするのか考えなければ……。

まず、この書類自体を怪しいと俺はにらんでいる。

つまり何らかの詐偽の類だろうという俺的視点の可能性だ。

次に、これが本当だとして、わざわざ高校生に、それもどこにでもいるような普通の………ボッチのこんなガキ勤まるような仕事が本当にあるのだろうか?

更にダメ押し!

………なんで俺が選ばれた?

もしかして、何かの罰ゲームでは無いだろうか?

比企谷を一番上手く騙せたやつか優勝的なアレ。

解せぬ……。

 

 

結局比企谷はそのまま書類をリビングの机に置いた。

時間的には比企谷が目覚めてから30分位が経っていて、そのまま夕食も出来ていない状態だった。

 

 

「小町、取り敢えず夕飯にしようぜ。腹が減って死にそうなんだが」

 

 

「うおっと、いっけない!話に夢中でご飯が炊けていないのです!今から急いで作るね♪」

 

 

あざとくそう言って小町は台所へと向かっていった。

たく、それを言うなら夢中じゃなくてお前の場合は、考え方が霧中だったわ。

 

 

どうでもいいようなことを頭の中で巡らせているなかで、ふと、書類の方に目を向ける。

本当になんでこんなものが来たのか検討がつかない。

 

 

今日は母ちゃんも親父も帰ってこないしな……。

どうしたものか。

幸いにも俺は帰宅部たから十分に時間を確保出来るのだ。そこら辺のリア充ではない。

リア充でないから他人に割くべき時間さえ自分の時間として扱える。

クソ、なんて有意義なんだ俺は(涙目

 

 

比企谷家では、両親が共働きで、いつも帰りが遅い。

そのため、家には比企谷と小町の二人になるときが多いのだ。

二人の時は小町が料理を作り、比企谷は風呂掃除などをすることになっている。

親が早く帰ってくるのは、主に土曜日、日曜日くらいなものでまさに仕事を鬼のようにこなしているバリバリのエリートサラリーマンなのだ。

その事もあってか比企谷は働きたくないなどと嘆くようになっていた。

 

 

「そうだお兄ちゃん。明日学校で直接国の人がお兄ちゃんに会いに来るから」

 

 

「ん?お前このクソ長い書類面倒だから読んでないとか言ってなかったっけ?」

 

 

「はぁ……なに言ってんの?そんなの一番上に書いてあるんだから嫌でも目につくでしょ……」

 

 

比企谷は机の書類を再度見直してみる。

すると確かに総武高校に来ての説明があるなどの説明が載っていた。

 

 

「……はぁ、これ本当にそうなのか……」

 

 

「お兄ちゃんファイトだよ!」

 

 

「いいから、余所見しないで料理に集中しろ、怪我しても知らないぞ」

 

 

「は~い♪」

 

 

全く、うちの妹はなんてあざと可愛いんだ!

……いやいや、そっちじゃないんだ!!

なに?学校に直接的に関わってくるだと!?

なにそれ、そんなの本当にこの書類を書いたのが国で俺は社畜ルートまっしぐらじゃ無いですかぁ……。

しかも学校に来られたら逃げられないじゃないですかぁ……なんてことだ!

俺の専業主夫になるという、理想郷への道は閉ざされようとしているというのか、いや!そんな横暴はこのエリートボッチである八幡が許さないぞ!

 

 

そんなこんなしているうちに、どんどんと時間だけが無情に過ぎていく。

8時頃には夕飯を食べ終えて、そのまま気がつくといつの間にか11時になっていた。

彼は書類を何度も何度も見直してみるのだが、イマイチこうなった理由に納得がいっていない。

 

 

「……妖精が見える?艦娘?と相性が良い?何を書いてんだこれ書いた奴は?頭の逝かれた狂人なのではないだろうか?」

 

 

自室でそんなことを一人ぼそぼそと言いながらベットに寝っ転がっている。

端からみたら、書類のことではなく、ぼそぼそ呟いている方が不審に見えるくらいだ。

 

 

「………明日、学校でどうなるかだな」

 

 

そう最後に呟いて、比企谷は部屋の電気を消して、眠りに付こうとした…………のだが……。

 

 

眠れねぇ……。

そもそも明日のことが気になり過ぎて正直眠れる気分じゃない。

 

 

それから、比企谷が眠りについたのは2時位であった……。

 

 

 

 

 




取り敢えず、これからどれくらい続けようかは正直なところ未定です。


あんまり話進まなくてすいません……。


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3.大本営の人現れる

まだまだ続けられますかね。
取り敢えず今回は、今回は続きました。おめでとう?


ルーキー日間ランキング?なるものに載っていました!
良かったですわ(あんまり凄くない位置




まあ、駄文ですが楽しんで頂けている方が居れば幸いです。



 

 

 

 

 

朝、比企谷は興奮して4時に起きていた小町によって5時に起こされることになった。

昨日は早くに眠れなかった為にとてつもなく眠気が襲ってくる中で、ハイテンションである小町を軽くあしらいながら、小町が腕を奮っていつもは作らないような豪華な朝食をうとうとしながら食べ、なんか香水みたいなのをかけられてとっても、良い匂いがする制服をきて、内心学校になんて行きたくないなと思いながら、登校の準備をしていた。

 

 

全く、だから昨日といい、今日といい、小町のテンションがおかしいんだが?

なんか、ディスティニーランドに行った時くらいにテンション高いんだが、気のせいだろうか?

 

 

「さあ、お兄ちゃん!頑張ってね!小町はお兄ちゃんが危ないかもしれない仕事をするのは不安だけど、こんなところで腐らせておくよりも新鮮なお兄ちゃんであってほしいから応援してるよ!あっ、今の小町的にポイント高い!高すぎてお兄ちゃんが帰りにケーキかなんか買ってくるほどかなぁ?」

 

 

「いや、意味わかんねぇわ……いってきます」

 

 

「行ってらっしゃい♪」

 

 

玄関前でそんな会話をして、そのまま高校へと自転車で向かった。

いつもなら小町が後ろに乗せろとか言うのだが、今日はそんなことも言わずに、久しぶりの一人登校である。

柄にもなく気を使っているようにも感じた。

そんなの必要ないんだがな……。

……いや、別に寂しいとか無いから。

たださりげなく俺の心配をしてくれている辺は嬉しいな。

 

 

自転車をゆっくりとこぎ進めていき、それでもいつもよりも少し早いくらいの時間に学校に到着した。

昇降口には、特に変わりないいつもの風景。

下駄箱のところで各々の生徒が友達と話ながら楽しげに教室に向かっていく。

比企谷はそのいつもの光景に若干ながら安堵しつつ、それでも内心は気が気でない。

何しろ今日誰かが俺に用事があって来たとしたならば、それは比企谷の就職への道が開けてしまい、最悪就職先が決まってしまうのだ。

 

 

「………」

 

 

無言のまま比企谷は教室に向い、最短距離で自分の机にたどり着き、そのままイヤホンをして、机に突っ伏した。

それからの一日の授業はまるで流れるように過ぎていき、何を話しているかも頭に入ってこない。

考えているのは、今日起こりうる大イベントへの事。

 

 

「はい、今日の授業はここまでだ!しっかりと復習しておくように。それから課題も来週しっかりと出すように」

 

 

気が付くと授業は終わっていて、そのまま下校時刻になっていた。

 

 

はあ、帰るか……結局なにもなかったな、只のイタズラだったな。イタズラにしてはなかなか心臓に悪いやつだわ。

 

 

速く学校から出ていきたい。

比企谷は、そう思いやや早足で昇降口に向かおうとした。

 

 

「比企谷、お前に用があるっていう怪しい男が学校に来たんだが、何か知っているか?」

 

 

「……アッ…ハイ…何か知ってますよ……」

 

 

「どうした?目がいつもの倍くらいに濁っているぞ?」

 

 

「いえ、気にしないでください」

 

 

平塚先生から直々に俺の人生終了のお知らせを受けたわ。いや、なんか涙が出てきそう。

 

 

結局比企谷はそのまま平塚教諭同伴のもと、その男がいるという応接室に出向くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、応接室に来たのだが……。

 

 

「やあ、君が比企谷くんかい?」

 

 

「はぁ、そうですが……」

 

 

「比企谷、この男とはどんな関係なんだ?」

 

 

「平塚先生、俺もよく分からないです……ていうかこの人誰ですか?」

 

 

「はは、いきない酷い扱いだね」

 

 

応接室には、スーツ姿のまだ二十代くらいの青年がいた。

顔の彫りが深くて、すげーモテてそうなやつ。

その上、饒舌そうな雰囲気がプンプンしてくる、リア充でよくいそうな感じだ。

しいて言うなら葉山に近い感じか?

 

 

「あの……それで、あなたは一体だれなんすか?」

 

 

「ああ、自己紹介がまだだったね。私は佐々木、一応大本営からの使いの者だよ」

 

 

「あの、大本営か!」

 

 

平塚先生も驚いているな。

なにせ大本営といったら、今までお手上げ状態だった深海棲艦問題を解決した国家組織で、ニュースにもなった。

大本営といったら、主に海上の防衛に関しての事に携わっている組織だ。

つまりこの人の言っていることが本当にそうなら俺が提督になって、海上の安全の為に働いてくれってそういうことになるんだよな。

 

 

「はい、私は大本営の者です。そして比企谷八幡さん、あなたは提督としての才能を見込まれて、提督に選ばれました」

 

 

「はぁ、そうですか……ひとつ聞いて良いですか?」

 

 

「構いませんよ」

 

 

「何故貴方はここへ来たときに大本営の人間だって名乗らなかったんですか?名乗っていれば不審者に間違われたりしないでしょ?」

 

 

佐々木はニヤリと口角を上げ、まるでイタズラが好きな子供のように笑顔になってこう言った。

 

 

「それはもう、比企谷さんにハラハラドキドキしてほしかったから!」

 

 

ウゼー!!

なんなんだこの人は?

馴れ馴れしい上に、おまけに自由奔放な小悪魔系の性格かよ。なに考えてるか分かんないし、ニコニコし過ぎて怖すぎる!!

何よりこういう人間は苦手なんだよなぁ……。

 

 

「そ、そうですか。……本題に移って貰っていいっすよ……」

 

 

「はい!では、本題に移りますね!」

 

 

「……まあ、私はいない方がいいかもしれんな。比企谷私は仕事も有るし席を外させて貰うよ。何かあったら職員室まで来てくれ………で、ではな!」

 

 

「……うす」

 

 

そう言って平塚先生は応接室から出ていった。

そしてそのまま俺はこの人と二人きりになってしまったのだ。

なんというか、平塚先生がこの人に対しての警戒心を無くしたことでこんな状況になったと推測出来るんだが、果たしてあの先生の対応はどうなのだろう?

結局この人が面倒な人臭いから逃げただけなのではないだろうか。

 

 

「それじゃ比企谷君、これからの事について説明するね」

 

 

「はあ、……よろしくお願いします」

 

 

さっきのふざけた感じではなく、少しだけ真面目な顔になった。

まぁ、流石に大事な話だけあってふざけるわけにはいかないのだろうな。

 

 

「では、まず最初に聞きたいのは……」

 

 

何を言われるのか、検討がつかない。

急に本気と書いてマジと読むくらいに真剣な顔つきになった佐々木さんにびびる。

 

 

「比企谷君は女の子は好きかなぁ?♪」

 

 

「……は?」

 

 

「いやね、艦娘の説明は読んだよね」

 

 

「ええ、まぁ読みましたが、深海棲艦と戦える唯一の戦力ですよね……」

 

 

「そ、それでその艦娘ってのが、まあ~美人さんばかりでね、比企谷君はそういうのに興味あるかなぁ~って思ってね」

 

 

「……えっ、それってつまり…」

 

 

「みんな女の子としてみてあげてくれよ♪」

 

 

「提督の件はお断りで!」

 

 

いきなり何を言い出すかと思えば、何をいってるんだこの人は?

……いや、字から薄々予想してたけどさ……流石に深海棲艦と戦える唯一の戦力が可愛い女の子なんて思わないじゃん。

 

 

「まあ、待ってくれ比企谷君。こんなチャンス2度と来ないかもしれない。それに鎮守府は海岸沿いの市街地なんかよりもずっと安全だし、何より快適に過ごせると思うんだ。悪い話じゃないはずなんだけどね。比企谷君なら目付きさえ治せばなかなかイケメンだしいい感じになると思うんだけど、艦娘達も君に好意を抱くかもよ?」

 

 

「いや、目はデフォルトなんで変わんないですし、大体俺に好意を抱くような人は、変人かよっぽどのお人好しくらいですよ。………ただ、まぁ、小町も応援してくれてるので……少しは考えて見ようと思います…」

 

 

確かに悪い話じゃない。

安全を保証され、快適な生活もあるという。

そんないいところがあるのなら行ってみたい、例えそれが偽りだったとしても、確かめるくらいならいいかとも思う。

 

 

「そうか、来週までに書類に書いてあった電話番号までに電話してくれ。いい返事を待っているよ。提督になってくれるというのであれば、君を千葉鎮守府に案内しよう」

 

 

「そうしてください……」

 

 

「ああ、また君に会えるのを楽しみにしてるよ、それじゃ私は帰るね。先生によろしく伝えておいてね、よろしく!」

 

 

俺は貴方に会うと疲れるのであんまり会いたくないんですが……。

佐々木さんは何か他にも用事があったのか、そう言うとすぐに応接室から出ていき、そのまま応接室には俺だけになった。

 

 

「……平塚先生に報告だけして俺も帰るか…」

 

 

比企谷は職員室にいる平塚先生とどんな感じだったかなどを話し、特に何かあるわけでもなくそのままの足で家に帰ったのだった。

 

 

はぁ……小町がどんな反応してくるか……正直面倒臭そうだな……。

 

 

案の定、比企谷は最愛の妹である小町に今日は何があったかなどを質問攻めにあって、心底疲れたとか、疲れてないとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ続くか未定ですね、色々と初めてなもので勝手がよく理解できてないのです。


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4.千葉鎮守府

感想とか誤字の報告とか色々とありがとうございます。
それから中々話が進まなくてすいません……。




比企谷が佐々木という大本営の男に出会ってから、ちょうど一週間がたっていた。

比企谷は、あのあとの学校生活でも鎮守府で提督になるかなるまいかとその事ばかりをかんがえていた為に比企谷から物凄いオーラが出ていて怖いと、密かにクラスの一部で噂になっている。

もちろん、そんなことは比企谷は気付いておらず、気付いたとしても気に止めている余裕はない。

何故なら今日が、提督になるのを快く承諾するのか、それともなりたくないと異論を唱えるのか、そんな大切な日である。

比企谷は大いに悩み、そして今は平塚先生からお呼び出しを受けている職員室。

 

 

はあ、またなのか?

何回作文のことでこの人は俺を呼び出すんだよ?

俺の事好きすぎだろ……怖いわ。

 

 

「比企谷、三度目は無いぞ。まともな作文位書けるようになれ。現国の成績は良いのになんでこんなのになるんだ?意味が分からん」

 

 

「いや、俺も意味が分かんないです……」

 

 

結局前回の作文を俺なりに凄く真面目に書き直したつもりなのだが、いまいちこの作文の素晴らしさが平塚先生に伝わっていないようだ。

 

 

「はぁ……比企谷。最近のお前はいつもと違うぞ?先週の件のことでか?」

 

 

「えと…いやまぁ、そうっすね。先週のことで返事をしないといけないんですよ……今日までに…」

 

 

平塚先生は少し哀れむかのような視線を送ってきている。……いや、そんな可哀想な子じゃないから、むしろ色々と凄いから俺。

 

 

「……そうだな、何はともあれ比企谷自身が決めることだ……悔いの無いようにしっかり決断したまえ」

 

 

「はい、善処します…」

 

 

今日はそのままお咎めは無しで、すんなりと解放された。

何だかんだ言って、この人は中々憎めない人だ。

俺なんかの事をきちんと見てくれている。

平塚先生が俺と同い年だったのなら惚れてしまいそうだ。

そんな仮定の話は意味無いが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷は電話に、あの日もらった書類に書いていった番号を打ち込んでいた。

一週間前の返事をするために……。

 

 

「……はい、こちら大本営ですが?何故この番号を知っているのですか?貴方は誰ですか?」

 

 

「…あの、比企谷八幡といいます。その、佐々木さんに代わって貰えますか?千葉鎮守府の件についてのことで話がしたいです」

 

 

「えっ!?あっ、わかりました。先程は失礼な対応をしてしまい申し訳ございません……。佐々木大将ですね少々お待ちください」

 

 

最初電話かけたときはなにこいつ?不審者?みたいな反応をしていたが、鎮守府の事って用件伝えた途端に態度大分かわったな……やっぱり鎮守府や提督は重要なのだろうか。

 

 

 

 

「は~い、代わりました佐々木ですぅ。比企谷君、提督の件について答えは出たかな?」

 

 

ほんの10秒程で佐々木さんが電話に代わっていた。

電話越しに大将と言われていた佐々木さん。

あんなんだけと実はめちゃくちゃ偉い人っぽいのは気のせいだろうか……。

………こんな変な人なのに。

 

 

「はい、俺なりに答えは出しました」

 

 

「そうか、どんな答えでも君の意思は尊重するつもりだから安心してくれていいよ」

 

 

「………提督……やりますよ」

 

 

「…そうか、良かった」

 

 

顔は見えないものの、安堵している感じが凄く伝わって来る。

この人は真面目にやるときとふざけるときのギャップというものが凄くて、分かりやすい。

その反面で、かなり駆け引きとかが得意そうな人であると思う。

 

 

「あの、鎮守府に行くのって……」

 

 

「ああ、それね。出来れば明日案内したいんだけど……ちょうど土曜日だし、何か予定とかあるかい?」

 

 

「いえ、空いてます……土曜日でお願いします」

 

 

「うん!分かったよ、明日の午前九時頃に家に迎えに行くから……なんで家を知ってるのか?とかは……まぁ、突っ込まないでね。まぁ~これからよろしくね比企谷君!」

 

 

「……なんか、不安になってきました…」

 

 

こうして、比企谷は千葉鎮守府での提督になることを決めた。

比企谷が提督になることは大本営中に知れ渡り、一部では盛大に盛り上がったとか……。

比企谷が提督になったことで、千葉鎮守府の機能の向上が急激に推し進められ、その流れで千葉鎮守府を国最大の鎮守府にしようとそんな者まで現れることになった。

なにはともあれ、千葉鎮守府はこれからの始動に備えられて、多くの資材などが運び込まれている。

もちろん比企谷はそこまでの大事になっているなんて、知るよしもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

───────────

 

ついに、この日が来てしまったか………緊張して、昨日は五時間しか寝れなかったわ……いや、いつも通りか……。

 

 

比企谷は早朝に目が覚めてしまい、そのまま9時までは特に何かすることもなく、ただソワソワと佐々木が来るのを待っていた。

……もちろん、あの甘いコーヒーを飲みながら……。

 

 

「さて、行きますか……」

 

 

比企谷はソファから立ち上りノソノソと玄関に向かう。

9時になったのだ。

休日用の私服に着替えて、いつもよりも気合いを入れた服装で9時を迎えた。

そして比企谷は玄関のドアを開けた。

 

 

ガチャ

 

 

「やあ、比企谷君!おはよう!さっそく鎮守府へと向かおうか!」

 

 

「……あの、いつから玄関の前に立ってたんですか……?」

 

 

「いや、いつからってそりゃ7時くらいだよ♪」

 

 

「………すいません、怖いです」

 

 

玄関の扉を開けるとそこにはニコニコとした佐々木が立っていた。

それも7時から立っていたと言うのだ。

比企谷の反応は、当たり前のように怖いです、だった。

 

 

「まあまあ、取り敢えず車に乗ってくれ、鎮守府に向かうから」

 

 

「はい…」

 

 

見ると中々に高そうな黒い車が家のすぐそばに止まっていた。

なにこの人は?

やっぱり偉い人か!?

………もう少しまともになってください……。

 

 

車に乗って、比企谷はそのまま鎮守府へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたよ、比企谷君」

 

 

鎮守府と呼ばれる施設は、想像していたよりも大きく、まさに軍の基地といったところだった。

高い塀で囲まれており、確かに安全そうなところである。

大きな門が、この施設の凄さを表現しているようにみえる。

 

 

「……ここが、鎮守府ですか」

 

 

「うん!ようこそ!千葉鎮守府へ、歓迎するよ!提督」

 

 

比企谷はそのまま佐々木さんと共に鎮守府へと足を踏み入れたのだった。

こうして、比企谷は提督としての第一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すいません、次は艦娘出しますから……。


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5.秘書艦との出逢い

艦娘出します!

それからお気に入りが100突破です、ありがとうございます!


 

 

 

千葉鎮守府、千葉の太平洋沿いの海岸に建設された、日本の海上の安全を守る軍事施設。

一見してみるとどうも如何にもの軍人が沢山いそうなむさ苦しい感じを醸し出しているようなところなのだが、実際のところは、ほとんど誰もいない。

いわば無人の防衛拠点みたいな感じになっている。

 

 

……軍事施設の割には、なんか人の気配がまるでない。

 

 

比企谷がそう感じるのも無理は無いことだった。

比企谷が鎮守府に入ってから一度も人とすれ違ったりもしていないのだ。

流石に不安になってきた比企谷は、疑問を佐々木に尋ねた。

 

 

「…あの、ここって誰も人いないんすか?」

 

 

「ん?なんでそう思ったんだい?」

 

 

「いや、さっきから人の気配がしなかったのと、現に鎮守府に入ってから全く人とすれ違わなかったからです。人が居たとしたら普通は何処かしらで出会ったりするもんじゃないですか?」

 

 

「そうだね、正しくその通りだ。ここには僕達とあと一人しかいない。鋭いね比企谷君」

 

 

なんだか嬉しそうにそう答える佐々木に比企谷は不信感を抱く。

なんか企んでそうな感じなのだ。

それは、悪いことでは無いのだろうが、比企谷にイタズラしようとしている魂胆が丸見えなのだ。

 

 

「………何しようとしてるんすか?」

 

 

「別に~♪」

 

 

確信した。

この人相当のやんちゃな感じの人だわ。

こんなのが軍のお偉いさんで、国は大丈夫なのだろうか?

……大丈夫か、仕事できそうだしこの人。

 

 

「まあ、比企谷君。イタズラとかはしないから安心してくれ」

 

 

「ちょっと、俺の考えてることを読まないで下さい、怖いです」

 

 

「ははっ!俺が考えていることは、ここにいるもう一人の人物に君が逢ったときにどんな反応をするのかが楽しみだなぁ~って思っているだけだよ」

 

 

「趣味が悪いっすよ……」

 

 

それ以上の事は特に話さずに、軽く鎮守府の施設についての説明を佐々木さんがして、それに対して比企谷が相槌を打ったりたまに質問をしたりと、当たり障りの無いまま、最後の部屋まできた。

 

 

「さあ、ここが最後だ」

 

 

「ここはどういうところなんですか?」

 

 

「この扉の先は、君の仕事場になる。執務室というところだよ」

 

 

「……執務、ですか。……なんか大変そうっすね…」

 

 

「開けるよ」

 

 

佐々木はそう言って執務室の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室というのはなんというか第一印象で、綺麗な感じの落ち着いた雰囲気の部屋だった。

特に目立つように家具なども無く、棚や、執務用と思われる机と高そうなイスがひとつあるだけ。

赤いカーテンがと赤い絨毯が部屋のバランスを整えていて、まさに俺のなかで最高の部屋と言った感じだった。

………それから、ん?

横には、もうひとつ机とイスががあって………誰か座っていた。

 

 

「……あの、誰かいるんですけど…」

 

 

「そうだね比企谷君。彼女は誰だと思う?」

 

 

「……分かるわけ無いじゃないですか…」

 

 

するとそこにいた女性がこちらの声に気づいて振り向いた。

 

 

「……なにやってんのよ、佐々木提督は…」

 

 

「いや、悪い悪い。仕事中だったぁ?」

 

 

どうやら佐々木さんとは知り合いのようだが、なんなのだろうか、髪は綺麗な銀色で、頭にはなんとも言えない最先端ぽそうなのを着けている。

おまけになんというかまだ未成年って感じだし、どう言うことだ!?

 

 

「はぁ、まあいいわ……それで、そこの目の腐った男は誰なの?」

 

 

「ああ、紹介しよう。彼はここ千葉鎮守府の提督に着任する比企谷八幡君だ」

 

 

「……えと、……あの、比企谷八幡です。よろしくお願いします」

 

 

「ふぅん…あんたが司令官ね。まぁ、目を治せば悪くないんじゃない。せいぜい頑張りなさい。……私は叢雲(むらくも)よ、よろしく」

 

 

いきなり過ぎるこのシチュエーションに少々戸惑う俺なのだが、落ち着け、俺はボッチを極めたボッチだ。

何事にも冷静に客観的に物事をとらえて落ち着いて行動する。

まず、明らかにおかしい疑問をぶつけて見せる。

 

 

「……あの、佐々木さん。流石にこの子は軍の人じゃないですよね?もしかして軍人さんのお子さんか何かですか?」

 

 

「……はぁ?なに言ってんのあんたは?私は艦娘よ。ちゃんと海で戦っているわ。現に書類仕事してたでしょ?それに子供扱いしないでくれる?」

 

 

「…そういうことだ比企谷君、彼女は艦娘で君の職業は提督。これの意味としては、彼女達は海域で戦い、その指揮をとるのが君の役目だ。それはさっき説明したでしょ?それにここに来る前に艦娘は女の子でとっても可愛いと言っていたはずだけど?」

 

 

確かにそうだ。

聞いていた通りに女の子が居て、彼女は艦娘だという。

分かっていたとしてもやっぱりいざその状況を体験するとやっぱり納得できないものなのである。

 

 

「いや、実際に自分の目で確認すると、やっぱり驚いてしまった節があったもので……いや、そのすいません……まあ、俺もまだ未成年でガキですしね」

 

 

「そうだね、これからは君の知らないことだらけだ。今回は驚くのも無理は無いことだし、これからも驚くことがあることだろう。でもまぁ、これからはどんなことがあろうとも柔軟に対応をしていくことが必要になる、だんだんと慣れていって君は凄い提督として評判を大本営に届けれるように頑張ってね。応援しているよ。君は自分をガキと思っているかも知れないが私は期待しているよ。」

 

 

「ありがとうございます、佐々木さん」

 

 

そもそも俺も未成年だし、こういうこともあるのだろう。

俺は提督になったのだ。

子供としての自分では無く、一人の社会人として自覚を持たなければいけないのかも知れない。

…………あれ?専業主夫はどこにいったんだろう……。

 

 

「さて、そろそろ帰るかな。大本営での仕事がまだ山積みなんだ」

 

 

佐々木はそう言って、執務室から出ようとした。

比企谷もそれに続いて出ていこうとしたら、いきなり服の襟を捕まれた。

 

 

「ぐぇっ!!」

 

 

「あんたどこに行くの?」

 

 

「……いや、家に帰るんだが…」

 

 

「あんたは今日からここに住むのよ?それとも聞いてなかったの?」

 

 

いや、聞いてない。聞いてないはず、そうだ!佐々木さんなら何とかしてくれるかも!

 

 

「あっ!ごめん比企谷君。そういえば、そういうことになってたわ。大本営から出来るだけ早くに提督を着任させなさいって命令でてたわ。……えと、まぁ、頑張れ!!」

 

 

そのまま佐々木さんは人間とは思えないような速度で執務室から出ていき、俺はまんまと鎮守府に住まわされることになったのだ。

クソ!佐々木さん一生恨むからな!!

 

 

「取り敢えず、あんたはこれに着替えなさい。提督の制服よ。必要なものは全て揃っているから、執務、明日からやりなさいね」

 

 

「………はい」

 

 

取り敢えず、俺は鎮守府に着任したのだった……。

ほんとに酷い話だわ。

 

 

 

 

 

その後比企谷は妹に連絡をとり、鎮守府で暮らすことやその他諸々の言うべきことを伝えて、両親からの許可も下り(国が関係しているためすぐに了承)その日から比企谷は鎮守府に住むことになった。

次の日は日曜なのに仕事は嫌だとか……叢雲と比企谷しかいない静かな鎮守府に比企谷の声が響き渡ったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 




期待に応えられるように頑張りたいです!


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6.着任初日の朝御飯

UA10000にいきました。
ありがとうございます。


 

 

 

 

さあ、今日は気持ちのいい日曜日!

天気は快晴!絶好の昼寝日和だ!

さて、何故か早くに目が覚めてしまったのだが、これから二度寝をする。

日曜日とは二度寝をするための日である!(偏見

……て言うかなんだかいつもよりも寝心地が良いのは気のせいなのだろうか?

ベッドはベッドなのだが、なんだかこう、家のベッドの割にはかなり大きい感じと、とても感触がいい感じがしていて……。

 

 

「何時まで寝てんのよ!早く起きなさい!」

 

 

「はっはい!」

 

 

気のせいではなかった。

そうだった……昨日はここに見学程度の気分で来たはずなのに、何故かいきなりここに住めだの、明日から仕事があるだのと言われていたわ……。

くそ!やっぱり佐々木さんがこういうことをちゃんと伝えてくれなかったからだ!

恨むぞ!!

 

 

「……はぁ、なに考えてるのか知らないけど、早く顔を洗ってきなさい。昨日よりも目が腐っているわよ」

 

 

「……この目はデフォルトだよ…」

 

 

「はい、はい……朝御飯は取り敢えず作ってあるから顔洗ったら一階の食堂まで来なさいよ。執務は取り敢えず10時からにしとくから」

 

 

「……ああ、分かったよ」

 

 

しぶしぶベッドから下りて、比企谷は洗面所に向かう。

執務の隣の部屋は比企谷の為の部屋があり、寝室はもちろんのこと、お風呂やトイレ等も最先端のものを使用しており、まるで高級ホテルの一室のようになっている。

テレビもしっかり完備されていて、仕事のあとにもちゃんとくつろげる環境もある。

それからついでに朝の6時にアラームがセットされたデジタル時計までもが部屋にあった。

比企谷曰く、時計さえなければ天国のような空間……だそう。

 

 

はあ、いきなり仕事とかどこの社畜ですかね俺は……はい、国の社畜ですね俺は……。

 

 

新品の洗面所にて、顔を洗って、それでもまだ眠気が拭いきれていない。

一応昨日言われた通りに提督の服を着る。

真っ白の海軍の軍服のようで、かなり分厚くてしっかりしている。

階級は少佐、そう昨日比企谷は叢雲から教えられた。

文字どおりに肩には階級によって変わるであろう、刺繍のようなものがされている。

 

 

「……提督か…」

 

 

そう静かに呟く。

 

 

……ん?

そういえば昨日、叢雲から制服に着替えろと言われて、提督の服を着たはずだが……。

 

 

比企谷は脱いだ服を見る。

さっき着ていたのは提督の制服で、今着替えたのも提督の制服。

全く一緒のものだ。

 

 

「……はぁ、疲れすぎて気が振れてきてるわ……取り敢えず一階の食堂に行くか……腹へったし」

 

 

取り敢えず、脱いだ服をベッドの上に放り投げて自室の出口である扉の方へと歩いていく。

そして、自室から出て、階段を下りて一階にある食堂へと向かう。

比企谷の自室、それから執務室は建物の三階に当たるところにある。

景色も良く、窓ガラス越しに海を見下ろすことが出来る。

 

 

……食堂ってどこだっけ?

いや、佐々木さんからざっと説明もされて、確かに食堂は見たんだが、流石に広すぎね?

部屋が多すぎて流石に覚えきれなかったわ……。

 

 

「……はぁ……何をしているの?あんたは」

 

 

「……えっと、食堂が…分からなかったです…」

 

 

「食堂はこっちよ、早く来なさい」

 

 

うろうろとしていたら叢雲と運良く鉢合わせたわ、いや、このまま鎮守府で食堂を探す為に半日かかったとかってことになったら佐々木さんに笑われるような間抜けな話題になり得るかもしれなかったわ……叢雲…マジで感謝だわ…。

 

 

早足で歩いていく叢雲の後をいつも歩く感じについていく比企谷、身長差があるお陰でそのスピードは変わらない。

そして無事、比企谷は食堂へとたどり着けた。

 

 

「いや、なんか悪いな。鎮守府で迷うなんて……ありがとな…」

 

 

「……まぁ、いいわよ。あんたも昨日来たばかりなのだから。それより早く朝御飯食べましょ」

 

 

「そうだな」

 

 

そのまま席につき、叢雲が作ってくれたという朝御飯を食べる。

ご飯、味噌汁、鮭の塩焼き、サラダ、ヨーグルト、麦茶、いたってシンプルな朝食だが、どれもしっかりとした味付けがされていて凄く美味い!

いっそのこと彼女は専業主婦でも目指した方がいいかもという位のレベルに料理はとても美味かった。

 

 

「……そういうば、ここって叢雲しかいないのな」

 

 

「…ええ、そうよ。でも、深海棲艦と戦うには私だけではどうしようも出来ないわ」

 

 

……は?

 

 

「…えっ?じゃあどうすればいいんだ?叢雲は艦娘なんだろ?一人じゃ勝てないってことか?」

 

 

「そうよ、最初の出撃は鎮守府近海の警備任務かしら、少なくとも私を含めて三人は居てほしいわね」

 

 

お茶を啜りながら落ち着いた感じで、叢雲は受け答えをする。

 

 

「…他の人員はどうすればいいんだ?」

 

 

「……建造するのよ」

 

 

……えっ?建造?何作るの?

 

 

「……えっと、建造?」

 

 

「そうよ、艦娘を建造するのよ。昨日建造ドッグも見ていたはずよ」

 

 

そういえば、建造ドッグも昨日の説明の中にあった。

実際に実物も見た。

何を作るのかを聞いたら、あの人はお楽しみに♪とかいって教えてくれなかったな……マジでなにやってんのあの人は……。

 

 

「どうやるんだ?建造って」

 

 

「そう…建造のやり方は聞いてないのね………執務は後程やるわ。艦娘ももう少しほしいところだったから丁度いいわね。取り敢えず食べ終わったら建造ドッグまで行って艦娘を建造するわよ」

 

 

「お、おう…分かった」

 

 

こうして建造することになったのだが、叢雲は既に食べ終わっているはずなのに一向に建造ドッグに向かおうとしない。

何故なのだろうか?

もしかして、提督である俺のことを待ってくれているのだろうか?

俺なんかのことを待ってくれるなんて、本当に良いやつだと思う。

だが、俺はこんな優しさを素直に受けられない性分なんだ。

 

 

「……なあ叢雲。俺に気を使って残ってなくて良いぞ。建造ドッグに先にいっていても問題ない」

 

 

「はぁ?あんたは何言ってんの?あんたを一人にしたらまた迷子になって時間が無駄になるじゃない。お喋りはいいから早く食べなさい」

 

 

「……え……はい、すいません」

 

 

どうやら同情ではなく、ただ俺が迷うからだったらしい。……なんというか俺は提督としての威厳というものがまるで無いようだ……なんというか、情けない。

 

 

そのまま、朝食を食べ終わり、比企谷は叢雲と共に建造ドッグにむかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これからも精一杯頑張ります。
話進まなくてすいません…。


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7.建造を行う妖精は単純に凄いと思う

前書きで書くことが無いです…。
そう言えば、今回は新しい艦娘が登場します。


  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建造ドッグ、ここは艦娘を作り出すことが出来るというなんとも不思議な場所である。

確かに大きな機械があるのだが、ここから艦娘…つまり人間が誕生するなんて、中々におかしな話だ。

生命は何もコウノトリが運んでくる訳ではないのだから。

生命が誕生するということはそんなに単純なことではなく、もっと大きな大変なことなのだ。

………それなのに…。

 

 

「……なぁ、本当にここから艦娘が出てくんのか?イマイチ想像が出来ないんだが……」

 

 

「大丈夫よ、ちゃんと艦娘は建造されて、ここに艦娘として現れるのだから」

 

 

やっぱり信じられん。

 

 

「……いや、でもなぁ……原理とか全然分かんないんだが…」

 

 

「あら、原理なんて簡単よ。そこにいる妖精さんが艦娘を作るだけのことよ」

 

 

えっ?なにそれ。妖精って……ここはファンタジーな世界じゃないんだぞ。

だいたいこの世界に妖精なんているはすが……。

 

 

「………はっ?何このちっちゃいの……人形?」

 

 

「それが妖精よ、今さっき説明したばかりじゃない」

 

 

いや、叢雲さん。

説明して、なんでも分かるなんて無いですからね。

妖精って普通に何?ってなるから!!

 

 

「……いや、説明はされたが…」

 

 

「とにかく妖精さんが艦娘を作るの。いい加減に現実をみなさい。今までのあんたの常識と今この環境の常識とでは全くの別物なのよ」

 

 

「そうだな……順応性を高めようと思う」

 

 

「…それでいいのよ」

 

 

まあ、現実を真摯に受け止めて、俺なりに理解していくしか無いか……。

提督として、しっかりしていかなければ……。

 

 

「……建造ってどうすればいいんだ?」

 

 

「そこに資材を入れるのよ。燃料、鋼材、弾薬、ボーキサイトの四種類が主な材料になるわ」

 

 

「なるほど……量はどうすればいい?」

 

 

「取り敢えず、まだこの鎮守府には十分な資材が確保しきれていないから、艦娘を建造するのに最低限必要な全て30のレシピでいきましょ」

 

 

「……おう、全て30だな」

 

 

……30って、単位はどれくらいなのだろうか?

グラム?キログラム?トン?

まぁ、いいか……。

あと、トンってことは無いな、うん!

 

 

「……資材入れたぞ、ん?一時間って書いてあるが……これは何だ?」

 

 

「建造にかかる時間よ。時間によってどのような艦娘が建造されるのかが変わってくるのよ。もうひとつドッグがあるからそっちでも建造しちゃいなさい」

 

 

「ああ、分かった」

 

 

叢雲に言われるがままにもうひとつのドッグにも最低値の資材を投入する。

時間は22分………なんというか……。

 

 

「………なあ、叢雲」

 

 

「…ん?何かしら」

 

 

「…建造ってこんなに速いもんなのか?」

 

 

「そうね、正直私もこんなに速いのは前々から不思議に思っていたわ。……これも妖精さんの力ってことかしらね?」

 

 

「……ええ、妖精って…なんか今凄いやつだと実感したわ」

 

 

そんな会話をしている最中にも、妖精はせっせと働いている。

こんなにちっこい妖精が艦娘を一時間や数十分程度で作り出すことが出来る。

なんというか、やっぱり色々と受け入れられない現実が目の前にある現実……。

訳が分からなくなって考えてることがめちゃくちゃになっている。

何が『受け入れられない現実が目の前にある現実』だよ!何言ってんのか俺でも分からんわ!

 

 

「……あんた、なんか目が凄く泳いでいるわよ?大丈夫…?」

 

 

「…いや全然大丈夫です」

 

 

どうやら動揺しているのがばれていたようだ……オーケー……クールにポーカーフェイスを貫こうか。

 

 

「……それから建造についてもうひとつ言うことがあるわ」

 

 

「…ああ」

 

 

「この建造には時間が決まっているけれど、実は建造の時間を短縮することが出来るのよ」

 

 

なに!?

 

 

「それはどういうことだ!?これ以上に短くなるのか?」

 

 

「ええ、このバーナーを妖精さんに渡すと、今すぐにでも仕上げてくれるわ」

 

 

と言いながら叢雲は傍においてあったバーナーを持ち上げる。

サイズ的には普通に見えるが、妖精に持たせるには少しばかり大きいくらいのバーナー。

特に変わったようなものでも無く、シンプルな感じだ。

このバーナーで建造の時間を短縮出来るのなら、短時間に多くの艦娘を建造して、あわよくば艦娘だらけの世界にでも出来るのではないだろうか?

 

 

「……なあ、これってどのくらい有るんだ?」

 

 

「残念ながらバーナーはとっても便利だけど、ここにはこれひとつしか置いてないわ。欲しかったら調達してくるのね」

 

 

「まぁ、そうか……取り敢えずコレ使ってみても良いか?」

 

 

「良いんじゃない?あんたが提督なんだから一々私に許可なんて要らないわよ」

 

 

「そうか……なら使うぞ!」

 

 

取り敢えず、一時間のドッグの方を作業している妖精にバーナーを渡す。

妖精は嬉しそうにバーナーを受け取った。

……妖精って可愛いな。

 

 

ボオオオォォォ!!!

 

 

バーナーを受け取った妖精さんが、いきなり資材に向かってバーナーを炊きはじめた。

俺が何しても火の粉すら出なかったバーナーから、凄まじい火力で炎が噴射されている。

これが妖精さんの力なのだろう。

見た目によらずに圧巻の働きである。

 

 

「……艦隊に新しいメンバーが加わったようね……出迎えなさい」

 

 

「……えっ!あ、あぁ…そうだな。悪いぼーっとしてたわ」

 

 

どうやら建造は既に終わっていたようだ。

しかし、今の建造……バーナーを使ってから5秒もかからなかった……。

凄まじいと心の底から思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの……軽巡洋艦、神通(じんつう)です。…どうか、よろしくお願い致します……」

 

 

本当にドッグから艦娘が出てきた。

分かってはいたことなのだが、やっぱり驚くわ、これ。

 

 

「……ああ、えっと。俺はここの提督の比企谷八幡だ。神通さん、これからよろしくお願いします」

 

 

「……ちょっと、なんで私は呼び捨てなのにこの子には『さん』をつけるのよ?」

 

 

いや、なんで早々そこにツッコミ入れるんだよ。

建造出来ての第一声がそれって……叢雲、大物過ぎ……。

あと、神通さんは中々俺と同じ臭いが……いや、流石に失礼だわ……。

こんな美人がボッチなはずは無いな、うん!

 

 

「……提督?…その……私は…どうすれば良いのでしょう……?」

 

 

「…えっ……叢雲、どうすればいい?」

 

 

「……そうね、取り敢えず軽巡洋艦が建造出来たのだから出撃しても良いんじゃない?」

 

 

なら、そうだな。やることは取り敢えず決まった。

 

 

「よし、なら今すぐに出撃し「あっ!待ちなさい。その前にあんたは書類仕事についての方が優先よ!」

 

 

「………えっ…!?」

 

 

書類……仕事。

なんてことだ、書類仕事なんて……書類仕事なんて……。

 

 

「ほら、早く行くわよ。神通、あなたも着いてきて」

 

 

「……え、はい。…とにかくよろしくお願い致します…」

 

 

「………仕事……したく…な…い」

 

 

出撃をさせようとした比企谷であったが、叢雲が執務について思い出した為、比企谷はあえなく書類仕事へと駆り出されたのだった。

今までの執務について忘れていた分、どっとやる気が失せていく比企谷であった。

ちなみに、もうひとつのドッグで建造されていた艦娘はそのまま放置。

執務が終わるまでドッグの中で待機となった。

比企谷が連れていかれる光景を、妖精はじっと見つめていたという……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




忙しくて書くのが大変ですねw




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8.執務なんて間違っている

疲れたぁ~休みがほしい!!
もうすぐお盆休みですね!


それからいきなりUAが200いきました!
正直今日200いくとは思いませんでした!
ありがとうございます!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、結局は書類仕事なのか……。

どんな仕事にもやはり書類仕事ってのは必要に思えてくる。

昔は肉体労働による身体的な疲れを人は体験していたというが、現代では身体的な疲れよりもデスクワークなどで溜まってくる精神的な疲れが物凄い。

サラリーマンはパソコンとにらめっこをして、俺は今、机の上に置かれている様々な書類の数々とにらめっこをしている………。

 

 

「……はぁ~、なあ、これってやんないと駄目なの?」

 

 

「当たり前でしょ、なんであんたがここにいると思ってんのよ?」

 

 

「……デスヨネー…」

 

 

「………あの、提督さん…元気無さそうだけど……大丈夫…?」

 

 

現在の状況としては、俺が沢山の書類を前にして、萎えてしまい。

そのまま、叢雲にやらなくてもいいかい?って助けを求めるかのように聞いたところ、叢雲からやりなさいとのことに、さらに俺の精神が………ってところで神通が俺のボロボロの精神を心配してくれている。

こんな状況となっている。

………自分の考えていることながら、俺って相当の駄目なヤツだな、これ。

 

 

「いや、大丈夫だ…少なくともこうなることは分かっていたことだしな」

 

 

「…なら、なんで抵抗するのよ?分かっていたならそのままおとなしく書類仕事してればいいのに」

 

 

「ばっか、お前。専業主夫志望の人間が働かされることを容認して、おとなしく言うことを聞くなんて……そんなの俺のプライドが許さないんだよ」

 

 

「……そんなちんけなプライド……折れてしまえばいいのに」

 

 

叢雲よ、提督に対しては暴言をやめてほしいわぁ。

……それからその台詞、何処かで聞いたような台詞だな。

例えば、愛しの妹である小町ちゃんからつい最近言われたような台詞だ……。

 

 

「……提督、大変なら…その…お手伝いしますよ?」

 

 

うん、神通よ……お前は天使なのか?

こんなに優しくされたこと中々無いからマジで惚れそうになったわ。

いや、俺はどこまで憐れなんだよ!!

 

 

「いや、一人でやれる。神通と叢雲は出撃しても良いぞ?」

 

 

「あんたの書類仕事が安定したらね」

 

 

「……さいですか」

 

 

流石に無理かぁ…。

別に逃げようなんて思っていないが、だがしかし、この量はなぁ……。

新しく鎮守府として出来たからなのか、資料が少ないし、こりゃ中々厳しいかもしれないな。

 

 

「……まぁ、あんたが仕事を覚えるまでは、色々と手伝うつもりよ」

 

 

「…えっ、いいのか?」

 

 

「何?不満なの?」

 

 

「いや、むしろありがたい」

 

 

「えっと、私も提督の仕事……至らずながらお手伝いします」

 

 

「神通さんも手伝ってくれるのか……まぁ、なんだ……二人ともありがとな!」

 

 

いやー、素直に感謝を言葉にするってすげぇ恥ずかしいわ。

しきりに叢雲が珍しいもの見たような変な顔になっているが、俺だって感謝くらいするから、分かってないだけで希に感謝とかするから!

 

 

「提督さんの為なら!それから、神通さんじゃなくて普通に神通で良いですよ提督」

 

 

「…ああ、分かった」

 

 

 

「………さて、まずは大本営に提出する報告書からね、鎮守府での収入や支出をまとめたり、海の戦況とかを報告するくらいね」

 

 

そのまま、表情をいつもの感じに戻して話を始める叢雲。切り替えが速いのは凄いとつくづく思う。

 

 

「…ああ、ちなみにそう言う計算とか、俺苦手なんだが……」

 

 

「……あんたは、計算できるようにしなさいよ………」

 

 

対応が塩対応過ぎて………計算とかマジできついんだがなぁ……。

 

 

「…あの、お茶淹れてきますね」

 

 

そう言って神通は執務室から出ていき、俺はマンツーマンで叢雲からの執務指導を受ける。

言い方とかは厳しいが、丁寧に教えてくれるのはとても有り難い。

当たりがきついのは、黙認しようか……。

 

 

 

 

 

暫くして、お茶を淹れてきた神通が執務室に入ってきて、比企谷たちは暫く休憩ということになり、比企谷が艦娘についてのことを叢雲や神通に尋ねて、それに二人が答えたりするような、そんな休憩になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、再開するか…」

 

 

十分ほど休んで、比企谷は執務を再開しようとしたのだが……。

 

 

「……あっ、もう12時よ、お昼にしましょうか」

 

 

「……えっ、もうそんな時間か……」

 

 

「…思いの外、建造ドッグの方でかなり時間を使ってしまったからかしら?まあ、いいわ。取り敢えず食堂に行きましょ、何か作るわ……それからあんたたちも手伝いなさいよ」

 

 

「はい、お手伝いしますね」

 

 

「まぁ、任せっきりってのも申し訳無いしな。もちろん手伝うぞ、何せ俺は専業主夫希望の将来有望な人材だからな」

 

 

どうやら建造ドッグの方でかなり時間を潰していたようだ。

なんだかんだで、この執務のレクチャーが始まったのがよていの10時を過ぎていた感じだから、そうなるともう昼になっているのも納得がいく。

専業主夫である俺の力が発揮される時が来たというのか……。

最近主夫らしいことしてないが……。

まぁ、料理とかは小町が中学上がる前まではやっていたし、そこそこは大丈夫だな。

 

 

「さあ、食堂に向かいましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂に着いて、そのまま厨房へと入る。

朝は叢雲に作ってもらって厨房に入らなかったが、ものすごく広い。

鎮守府の建物自体がかなりでかいから、厨房がでかいのも納得がいく。

椅子や机がずらりと並んでいる食事スペースもざっと百人位は入りそうな広さ………まあ、現状は三人しかここに居ないんだがな。

まあ、そんな訳で厨房での昼食作りが始まった。

叢雲がメインを担当し、神通が汁物を担当、俺はというとサラダやデザートなどの簡単な物を担当した。

 

 

「……出来たわよ」

 

 

「おお、お疲れ様」

 

 

「お役に立てて良かったです」

 

 

見事に分担作業になったことで、時間も短縮されて、30分もかからずに完成した。

叢雲は、ハンバーグを作り、神通さんはそれに合わせてコーンスープ、俺は特に目立ったものは作っていない。

野菜を刻んで、盛り付けて、ドレッシングをかけてサラダを作り。

デザートは林檎をカットして皮を剥いただけ。

 

 

「あんたはサラダとデザート担当だったけど、中々料理とかも得意そうね。林檎の皮を剥くときとかなんだか慣れていたし、野菜を刻むときの包丁さばきとかも意外だわ」

 

 

「そうですね、提督が料理しているとき、格好良かったです!」

 

 

「……そ、そうか」

 

 

俺は今顔が真っ赤になっていることだろう。

神通よ、格好良かったなんてボッチに言ってはならない禁止ワードだ。

俺みたいなエリートボッチで無ければ勘違いしている場面である。

それから叢雲が俺の包丁さばきを誉めてくれたのは単純に嬉しかったです、はい!

 

 

結果的に昼食もとても良い仕上がりで、神通のコーンスープもとても良い風味で、特に叢雲が作ったハンバーグは絶品でレストランでも開いたらどうなのかと思ってしまうくらいだった。そして、大満足で昼飯を食べ終えた。

 

 

「うん、すげぇ美味かったわ」

 

 

「まっ、当然のことね♪」

 

 

「はい!ハンバーグ、とても美味しかったです」

 

 

誉められて照れる叢雲……中々レアかもしれん……。

 

 

「さあ、食事も済んだし、執務の続きをするわよ!」

 

 

「……えぇ、やっぱり?」

 

 

「当たりでしょ!ほら、さっさと執務室に行くわよ!」

 

 

いやぁぁぁぁぁ!!!

折角美味しい料理を食べてハッピーエンドで終わると思っていたのに……こんな…こんなことになるなんて…………流石に叢雲も執務のことを忘れる訳が無いんだよなぁ…。

はぁ、仕事するか……。

 

 

「…あの、後片付けは任せて下さい。それから建造ドッグの方にもう一人建造してましたよね?私が迎えに行っておきますね」

 

 

「……ああ、神通頼むわ」

 

 

「はい、任せて下さい」

 

 

そのまま執務室に戻り、何とか一通りの執務について学んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務については十分に学ぶことが出来た。

結局時刻は午後6時……俺は頑張ったのだ………。

それから神通が迎えに行った、22分の時間で建造出来た艦娘は、夕立だった。

 

 

「白露型駆逐艦の夕立です。提督よろしくお願いします!」

 

 

「……あぁ……よろしく」

 

 

「……提督さんお疲れっぽい?」

 

 

「ああ、俺は今お疲れっぽいわ……」

 

 

「はいはい、今日の執務は終わりだから後は自由にしてて良いわよ。お疲れ様」

 

 

執務は終わり、新たな艦娘である夕立を迎えて、これで一応大団円………いや、俺が疲れている時点で大団円とは認められないわ………。

 

 

こうして比企谷の日曜日はとてつもなくハードなものとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本当にアイディア無い……。


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9.学校は嫌だが、戸塚は天使

さて、駄文過ぎますがどうか暖かい目で見守ってほしいです。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、人は仕事をするのだろうか?

苦痛である仕事を毎日毎日して、出勤していくサラリーマンの目は、俺の目同様にゾンビのようだ。

毎日毎日、ノルマがなんだと言われて、赤字が出れば上から怒られ、昇進はおろか、最悪仕事が無くなるかもしれない恐怖に毎日直面している。

日々怯えながら過ごしている社会人とは、一体何のために居るのだろうか?

本当にそう思う。

故に俺は、そんな苦痛を何十年も味遭わなきゃいけない社会人になるよりも、専業主夫という家に入る安全安心なまさに家族に尽くす職業をすることを…………。

 

 

「………起きなさい!!」

 

 

「……ふぁ、なんだ!?」

 

 

「ようやく起きたわね……って、なんでまた布団に潜ってんのよ!!あんたは潜水艦なの?」

 

 

「……嫌だ……朝…嫌い」

 

 

どうやら変な夢を見ていたようだ……。

それにしても夢の中でまで働くことに対しての拒絶反応を示していたとは………これはもう働くなという天からのサインなのでは無いだろうか?

 

 

「ほら、今日は平日よ……あんたはまだ学校があるでしょうに」

 

 

「……いや、学校はあれがこれでそれだから……」

 

 

「………全然説明になってないじゃない……取り敢えず暫くはあんたは学校に通うことになってるの。大本営からの命令よ、あと少しすればあんたは高校を卒業したってことになるから手続きが終わるまでは学校に通いなさい」

 

 

「…えぇ、その手続きって国の力でやるやつ?」

 

 

「そうよ、国の力でやるのよ、なんとでもできると思うわよ」

 

 

すげぇな!!

ある種の情報操作なのだろうが……国のやることだ、抜かりは無いのだろう。

ってその前にまだ眠い……正味学校に行きたくない。

仕事するのも嫌なのだが、学校に通うってのも嫌なことだ。社会の枠にはまるための訓練である学校。集団でうまく順応していくやつが社会でもうまくやっていく確率が高いからだ。

だが、うまくやるだけが社会に出てから必要なのではない。

仕事が出来るか出来ないかで生きていけるか変わるのだ。

ちなみに俺はたぶんこの鎮守府に就職することになってしまったから何も言うことができないが……。

 

 

「…そうか、まぁいいか。取り敢えず朝食食べたいわ」

 

 

「もう準備してあるわ、神通と夕立は既に食堂にいるから、あんたも早く来なさいよ」

 

 

「…ああ、了解だ」

 

 

ガチャ

 

 

昨日と同じように、叢雲が比企谷を起こし、比企谷は叢雲が自室から出ていったのを確認してから提督の制服ではなく本日は学校の制服に着替える。(家から比企谷の着ている総武高校の制服が届いていた)

顔を洗って、未だに昨日の疲れがとれていない脳を何とか機能させる。

 

 

「……眠い」

 

 

そう呟いてから、自室を出て食堂へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、美味い!ありがとな神通」

 

 

「いえ、これくらい構いませんよ」

 

 

今日の朝食は神通が作ってくれた。

フレンチトースト、久々にそんな洒落たのを朝食に食べた気がする。

 

 

「う~ん♪美味しいっぽい!」

 

 

「そうね、とても良くできているわね」

 

 

叢雲と夕立にも好評だったようだ。

こんな朝食が毎日食べられるのだとすれば、提督の仕事も案外悪くない………後は計算系の執務さえ無ければ、俺としては働くにしても不満は無い。

 

 

「そういえば提督さん、昨日と服装が違う。今日はどこかに行くっぽい?」

 

 

「ああ、今日は学校にいかなきゃならないっぽいな」

 

 

「あんたがその口調だと違和感しか無いわね……」

 

 

叢雲の俺への発言が中々辛辣になってきた気がする………元からか…。

 

 

「まあ、とにかくだ。俺は今日は学校へ行かなきゃならん。……行きたくないが…」

 

 

「本音が漏れてるわよ……」

 

 

「…んんっ!!鎮守府については叢雲に任せる。今日の所は叢雲が指揮をとってくれ」

 

 

「まっ、仕方ないわね」

 

 

学校に行くとなると色々と艦娘達に迷惑をかけてしまうな……今回は叢雲に甘えてしまったが……。

今度ちゃんとお礼しておこう。

 

 

「…神通に夕立も俺が留守の間ここを頼むわ」

 

 

「はい、任せて下さい!」

 

 

「分かったっぽい!」

 

 

「……さっ、そろそろ時間よ、ここから学校までは少し遠いから大本営の人が車で送ってくれるらしいわ。早く行きなさい」

 

 

マジか!車での送迎までしてくれるなんて、流石大本営って感じか。

 

 

「……まぁ、待たせるのも悪いからそろそろ行くわ」

 

 

「「「行ってらっしゃい」」」

 

 

叢雲はクールに澄ました顔でそう言い、神通はにこりと微笑んで、夕立は子供のように元気にそう言っていた。

 

 

行ってらっしゃいと言われると、なんだかとても気分がいい。

……学校には行きたくないが…いや、学校にも俺の楽園があるではないか!

そう……戸塚という天使に学校で出会えるのだ!

 

 

「ああ、行ってくるわ」

 

 

そう艦娘達に言い残して、比企谷は鎮守府の正門へと向かった。

叢雲の言っていた通りに、鎮守府の正門前には高そうな黒い車が待機していた。

運転手が大本営の人だと服を見て理解した比企谷は、急いで車に乗り込む。

そのまま車は総武高校へと走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ………学校に着いたのは良いんだが……俺が黒い車から降りようとした時に、何故か注目されてしまった。

まあ、あらかたこの車が悪いのだが……取り敢えず学校の前で降りる予定だったが、変更して学校から少し離れた人通りの少ない道で降ろして貰った。

いや、あそこで降りていたらあらゆる人の目線で死んでしまうとこだった……。

そのまま、少し歩いて、母校である総武高校に到着した。

下駄箱に憂鬱な気分で入っていくと、後ろから声をかけられた。

 

 

「おはよう!八幡!」

 

 

「…毎日俺のみそ汁作ってくれ………」

 

 

「えっ!?どういう意味?」

 

 

「あっ!いや、すまん。なんでもない」

 

 

朝から戸塚に出会えるなんて……これはもう今日一日運勢最高なんじゃないだろうか?

 

 

「ねぇ、八幡?何かいいことあったの?」

 

 

戸塚……戸塚に今日朝一で出会えたことこそがいいことだ。

 

 

「そうだな、いいことはあったな」

 

 

「そうなんだ!良かったね!」

 

 

戸塚が微笑む……天使か!?

 

 

「八幡、一緒に教室まで行こ?」

 

 

「もちろんだ!」

 

 

戸塚と教室に行けるなんて、俺はここで今日の分の運を使い果たしているのではなかろうか?

戸塚と一緒に教室に向かい、そのまま教室に入ると、いつもの騒がしい教室だった。

色々驚くばかりの二日を過ごした俺にとっては、なんというかこの平日の学校がとても久々に感じられた。

それからはいつもの月曜日の日課。

決まった授業を受けて、昼を食べ、また授業を受けて、そのまま放課後に突入。

結局、なんにも変わることの無い月曜日の学校で過ごし、そのまま一日が過ぎていった。

特に何かあるわけでもない一日。

今日あった学校での主な出来事と言えば、戸塚と一緒に教室に向かったこと。

戸塚とお昼を食べたこと。

休み時間に戸塚と話したこと位だ。

うん、今日は中々良い日だったな!

 

 

「八幡、僕部活あるから。またね!」

 

 

「ああ、また明日な」

 

 

戸塚はそう言うと少し小走りで教室を出ていく。

比企谷は戸塚が見えなくなったあとに、教科書やノートを鞄に入れて、そのまま帰ろうとした。

校門付近の学校の駐車場には黒い高級車が止まっている。

………まあ、ですよね。

そのまま人目に晒されながら高級車へと乗り込んだ。

 

 

今日学んだことは、高級車で学校に送っていくのはやめてほしいということ。恥ずかしいし、何より目立ってしまう。

それから戸塚は天使であるということ。理由は言うまでもない、戸塚は可愛いからだ。

 

 

比企谷は途中、家に寄り、小町に少し会ってから鎮守府へと戻った。

鎮守府では、艦娘が出迎えてくれて、それを嬉しく思った比企谷はニヤニヤしてしまい。叢雲に割りと真顔でキモいと言われたのだとか……。

それから大本営からの通信で、比企谷が学校への登校をしなくて良くなるのには、早くて一週間はかかるとのこと。

それを聞いた比企谷は、内心大本営すげぇ!!学校なくなって良かったと思いつつも、戸塚に会えなくなるという事実に少しだけガックリしたのだとか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これからも頑張って書くのでよろしくお願いしますね!


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10.千葉鎮守府近海に出撃

そろそろ艦これっぽい話を書きたいかなって思っていたら長くなってしまった。
駄文ですがご了承下さい。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は俺がここの千葉鎮守府に来てから2週間が経った。

結局学校は卒業したことになり、クラスの生徒には、俺が転校するってことで説明をしたらしい。

学校が終わったのが三日前、それまでは学校勉強と鎮守府の執務のやり方やら色々と大変だったが、ようやく鎮守府の執務一択になった。

ただ、叢雲から計算位はしっかりとやりなさいってことで数学の勉強は仕事の一環としてさせられている。

叢雲は計算などが得意なようで、叢雲が直接俺に勉強を教えてくれている。

毎日二時間やるから本当にきつい!……数学は勘弁してほしいところだ。

さて、俺もそれなりに執務にも馴れてきたということで、今日はいよいよ艦隊を出撃させる。

 

 

「よし、今日は鎮守府近海の警備任務を行う。旗艦は叢雲で、神通と夕立も一緒に行ってくれ」

 

 

「いよいよ出撃、腕がなるわね!」

 

 

「頑張ります!」

 

 

「やっと海に出れるっぽい!!」

 

 

艦娘達のやる気は十分だな、一応鎮守府近海に深海棲艦がいるという報告が大本営から来たからな、仕事はしなければ……叢雲曰く、今ここら辺に来ている深海棲艦は弱い部類らしいが、気を抜いては駄目だな、ボッチは常に最悪の状況を想定して行動するものなのだ。

 

 

「ああ、三人とも、今回の警備任務はあくまでこの近海の安全を維持することだ。相手の戦力は常に分からない状況らしいから、強い奴がいることを想定して行動してほしい」

 

 

「そうね、敵は偵察部隊って聞いているけど、最悪対処しきれないのが来ている可能性も視野に入れておくわ」

 

 

「………頼むぞ、叢雲。陣形は出来るだけ単縦陣で、艦載機とかが見えたりしたら輪形陣にするなどして上手くやってくれ」

 

 

「わかったわ、あんたは鎮守府に居る間、しっかりと昨日の分の数学を復習しときなさいよ?」

 

 

「………ぜ、善処します…」

 

 

「提督さん、頑張ってっぽい!」

 

 

「…あの、被弾してしまったらどうすれば良いですか?」

 

 

神通が被弾について比企谷に聞く。

 

 

確かに、被弾についてはどうしようか……取り敢えず無理する場面では無いんだよな。

 

 

「……そうだな、被弾したら大事をとって撤退してくれ」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

「よし、他に質問はあるか?」

 

 

「………特に無いわね」

 

 

三人とも沈黙し、叢雲が特に質問が無いと答える。

さて、出撃か……。

 

 

「じゃあ、三人ともちゃんと帰ってこいよ」

 

 

比企谷の言葉に頷く三人、抜錨の掛け声と共に艤装を展開させた叢雲、神通、夕立は海へと進んでいった。

比企谷は三人の姿が見えなくなるまで海の方を眺めていたが、三人が見えなくなると下を向いてため息をついた。

 

 

はぁ、行ったか………正直心配過ぎる、彼女達は本当に大丈夫なのだろうか?

女が戦い、男が安全な場所でふんぞり返って指揮をとるなんて、色々とおかしい気がする。

………だが、俺には戦う力も度胸も無い。

ここで待つことしか出来ないのだ。

あぁ、自分の不甲斐なさに初めて嫌気が差してくる。

…………取り敢えず、数学やるか。

叢雲が帰ってきて予定のとこまで進めてなかったらマジギレされそう。

………まぁ、なんだかんだであいつはマジギレとかしないんだがな。

 

 

「………執務室に戻るか…」

 

 

ひと言そう呟いて、比企谷は執務室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲side

───────────

 

 

取り敢えず深海棲艦が確認されたって言うからから来てみたけど……それらしいものは見当たらないわね。

ここら辺のはずなんだけど……。

 

 

「神通、夕立、注意して、ここら辺のはずだから」

 

 

「はい!分かりました!」

 

 

「敵が来たらやっつけるっぽい!」

 

 

広い海、鎮守府近海といっても鎮守府からは何キロか離れている。

あたり一面海の水がキラキラと輝いている。

どうして?なんで深海棲艦が一隻も見えないの?

……意味が分からないわ。

 

 

それから暫く三人は鎮守府とは反対に進んで行ったが、未だに深海棲艦の姿を確認は出来ない。

しかし、何もいないと思っていた前方の水中から深海棲艦が姿を現したのだ。

 

 

「なっ!?来たわよ!全艦臨戦態勢!単縦陣を意識して!」

 

 

「分かりました!陣形を維持します」

 

 

「し、深海棲艦って水中から出てくるっぽい!?」

 

 

通りで気付けない訳ね……。

相手は駆逐イ級が二隻、明らかに偵察部隊の小規模な艦隊ね……。

 

 

「二人とも、相手は駆逐艦よ。今日が初めての戦闘だけど、落ち着いて対処すれば問題の無い敵よ」

 

 

「はい、魚雷も自発装填済みです!」

 

 

「深海棲艦なんて、水底にぽいするっぽい!!」

 

 

……なんとかなりそうね。

 

 

三人は単縦陣を意識して、主砲を敵深海棲艦に向ける。

12.7㎝砲、戦艦などの装甲の分厚い敵には中々ダメージか通りずらいが同じ駆逐艦なら話は別。

神通に関しては、叢雲や夕立よりも一回り大きい14㎝砲、当然駆逐艦を殲滅するには十分な戦力が整っている。

 

 

「全艦、一斉射!!」

 

 

ドンドンドドーン!!!

 

 

叢雲の合図で三人が同時に発砲する。

轟音と共に砲弾がイ級に向かって放たれる。

何発かは、イ級のすぐ側の水面に落ち、大きな水しぶきを挙げる。

そして、放った砲弾の内の二発がイ級に直撃した。

 

 

「当たったっぽい!」

 

 

グギャァァァッ

 

 

深海棲艦は不愉快な音を発して水の中に沈んでいく。

これなら行けるわ!

 

 

一隻沈めたところでもう一隻のイ級は黙って見ている訳でもなく反撃してくる。

 

 

「全員旋回!砲撃を回避!!」

 

 

間一髪のところで回避に成功した。

だが、まだ安心は出来ない。

そのままイ級はこちらに向かって突っ込んでくる。

 

 

「魚雷を用意して」

 

 

「用意しました!」

 

 

「ぽいっ!」

 

 

さあ、これで終わりよ!!

 

 

「沈みなさい!」

 

 

魚雷計18本がイ級に向かって放たれる。

当然イ級は避ける暇もない、そのままこちらにスピードを上げて突撃してくる。

 

 

バッシャァァァァン!!!

 

 

魚雷がイ級に当たったようで、砲撃の時より大きな水しぶきが挙がる。

 

 

「………どうですか?」

 

 

神通が不安そうに叢雲に向かって問いかける。

 

 

「……イ級、轟沈ね……付近に敵影なし、任務は成功よ」

 

 

「やったぁ!!提督さん、誉めてくれるっぽい?」

 

 

「提督なら誉めてくれますよ、夕立ちゃん」

 

 

はぁ……思いの外緊張したわ……旗艦って大変ね…。

でもまぁ、悪くは無いわね。

司令官……頑張ったわよ……。

 

 

「さあ、二人とも帰るわよ」

 

 

「「はい!(ぽいっ!)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

──────────────

 

 

 

 

あ~、数学疲れたわぁ……。

経費の計算とかはできる奴がやってくれるとか無いのだろうか……。

それより、あいつらは大丈夫なのだろうか?

正直なところ、心配で執務どころじゃなかった。

 

 

「…………まぁ、叢雲なら問題ないか…」

 

 

比企谷はそう一人の執務室で呟く。

比企谷は叢雲に対しての評価が高く、しっかりしている叢雲のことを信頼している。

たったの2週間で信頼なんてものが出来るのかって思うかも知れないが、比企谷は叢雲のあらゆることに対する姿勢に一目置いていたのだ。

 

 

「……さて、執務も終わって暇だなぁ」

 

 

何しようか……やることも無いな……んっ?この要望用紙って確か大本営に欲しいものを要望できるやつだよなぁ?

………よし。

 

 

比企谷は紙に少しだけペンを滑らせた。

それから比企谷はペンを置き、窓から海辺をただボーッと眺めていた。

三人の帰りはいつだろうか?そんなことを考えながら………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲、神通、夕立が海に見えると、比企谷は急いで艦娘が戻ってくる防波堤にむかった。

 

 

「艦隊が戻ったわよ……深海棲艦、駆逐イ級二隻轟沈、艦隊の損害ゼロ、上手く行ったわ」

 

 

「………お疲れさん、ありがとな」

 

 

労いの言葉を三人に向かってかける。

 

 

「提督さん!私、攻撃当てたっぽい!誉めて誉めて~♪」

 

 

「ああ、本当にありがとう夕立、今度俺のおすすめの飲み物を飲ませてやる」

 

 

ん?何を飲ませるかだって?マッ缶に決まってるじゃないですかぁ。

 

 

「提督のお役に立てて本当に嬉しいです」

 

 

「おう、神通もお疲れさん。どうだ、疲れたか?」

 

 

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。提督はやっぱり優しいですね」

 

 

そうか、神通よ……俺に対してそこまで言って良いのか?惚れてしまうぞ?

………ていうか惚れましたわ……。

 

 

「はぁ~……またニヤニヤしているわよ、執務はちゃんとやったんでしょうね?」

 

 

「ああ、滞りなくやっといた。取り敢えず入渠してこいよ、怪我とかは無くても一応な」

 

 

「そうね、なら入渠してくるわ。神通と夕立も行きましょ?」

 

 

「はい」

 

 

「ぽ~い!」

 

 

三人はそのまま入渠ドッグへと向かっていった。

比企谷は無事に鎮守府に三人とも帰ってきたことに安堵して、入渠ドッグに三人を見送った後に、執務室へと戻り、今回の出撃の結果などを書き記していた。

ペンを滑らせながら、自然と口元が綻んでしまっていることに比企谷まだ気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




文がなぁ……下手ですいません……。
気に入ってくれたら感想とか気軽にどうぞ。


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11.佐々木からの頼み

いつもありがとうございます!

駄文ですしご都合主義ですが、それでもいいなら楽しんでいって下さい!



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府近海への出撃を大本営に報告したら、何故か佐々木さんから電話がかかってきた。

何事かと思い、佐々木さんに何かありましたか?って聞いたところ。

とっても良いことだよ!って言われて、何故か本日の昼に会うことになってしまった……。

あの人自由過ぎだろ……。

 

 

佐々木に呼び出され、比企谷はサイゼリヤにて待ち合わせということで、今は鎮守府近くのサイゼリヤの席に一人で座っている。

昼時なのもあり、混雑しているなか一人席に座っている姿は中々珍しい。

頼んだものと言えばドリンクバーだけ、静かに佐々木の到着を待っていたのだった。

 

 

はぁ、あの人何やってんの?

もう12時で、そろそろ人目がきついんだが……。

 

 

『今どこですか?』

 

 

そんな端的なメッセージを送信する。

 

 

ピコ

『ごめんごめん!後少しで着くからそこで待っててよ。すぐ行くから( ̄∇ ̄*)ゞ』

 

 

いや、人待たせておいて謝るのは良いがその顔文字は一周回って失礼だろ………。

本当にやることが滅茶苦茶な人だわ……。

 

 

メッセージの返信から実に15分位が経過して、ようやく佐々木がサイゼリヤに到着、軽くごめんと謝った後に比企谷のいる席の正面に座った。

 

 

「………遅いっすよ、何してたんですか?」

 

 

「いやぁ、なんか大本営から電話かかってきてさぁ、色々と面倒なこと話さなきゃだったってだけだよ。本当にごめんね比企谷君」

 

 

「…いや、別にいいですけど」

 

 

まあ、中学の時とかは待ち合わせして、その場所に行ったら結局誰も来なくって、帰ろうとしたら他のとこで楽しそうに待ち合わせてた奴らがいて本当にショックだった。

………来てくれるだけ俺にとっては良いことだわ。

……………俺ってかなり憐れなやつだな、やっぱり。

 

 

「えと、比企谷君、大丈夫かい?なんか元気無さそうだけど?」

 

 

「あっはい、大丈夫です。ちょっと過去の黒歴史がフラッシュバックしただけです」

 

 

「そ、そうか……えっと本題に入ろうか……」

 

 

「はい」

 

 

佐々木は少し気まずそうにそう言う。

比企谷の顔色を伺って、何かしてしまったと感じているようだ。

そんな佐々木の行動に比企谷も申し訳なく思ってしまう。

 

 

過去のこと思い出しただけで気分が落ちるっていうのが良くないな………今後は少しずつ治していかなきゃかな?

 

 

「まあ、端的に言うとね。君の鎮守府は近海の深海棲艦を沈めた功績がある。大本営はこの事を大層喜んでいる、始動したばかりなのに戦闘でいい戦いをしたからだ。ここまではいい?」

 

 

「はい、そこは理解しました」

 

 

「でね、実はある鎮守府が新しく出来たんだけど、そこの提督も君同様にまだ着任して間もない、新米って訳なんだよ」

 

 

「えっと……」

 

 

つまりどういうことかよくわからない。

えっ?何?なんか佐々木さんがニヤニヤし始めた。

………怪しい。

 

 

「ズバリ言う!そこの提督と演習してくれない?」

 

 

出たよほら、俺が対人スキルゼロなの知ってて言ってそうだ。なんでそんなこと言うかだって?

佐々木さんがさっきっからニヤニヤして話してるんだよ。

 

 

「それで?比企谷君は受けてくれるかい?艦娘同士の練習みたいな感じで、君の鎮守府にもメリットはあると思うんだが……どう?」

 

 

「確かに、メリットはありそうですね。でもなんで俺個人にそんなこと頼むんですか?大本営からの命令であれば、俺はイエス、ノー関係なしに受けざるを得ない状況に出来ると思うんですが……わざわざ佐々木さんが頼む理由はなんですか?」

 

 

比企谷はそう尋ねると、佐々木は少しばかり渋い顔をする。

 

 

「まあ、本当は演習なんて誰でも良かったんだよ。でも実はそこの子も君と同じ総武高校からの引き抜きでね、演習って言っても君以外は年齢が離れててさ、話しやすいようにって感じなんだよ」

 

 

比企谷は佐々木の説明にすぐに反応する。

 

 

「理解しました、それでその人に何かあるんですか?佐々木さんが気にする何かが」

 

 

「鋭いね君は、実はあんまり鎮守府でも元気が無いらしくて、君みたいな同世代の子と会わせれば元気になって仕事の方もいい方向に向かうんじゃないかってね。ちなみにこれは私個人からのお願いだ。断ってくれても構わない」

 

 

「そうですか……」

 

 

比企谷は佐々木の方をじっと見てこう言った。

 

 

「受けますよそれ、面倒ですけど……まぁ、こっちにもメリットありますし」

 

 

「そ、そうか!ありがとう、比企谷君!」

 

 

その話の後は、実にほんわかした世間話などに話がシフトチェンジ、途中料理などを注文して、色々と比企谷と佐々木は話をした。

 

 

「比企谷君って彼女とかいる?」

 

 

「いるわけ無いじゃないですか……わざとですか、それ?」

 

 

「あはは、良いだろ別に……じゃあ愛人は?」

 

 

「……いないですよ、高校生に何聞いてるんですか………」

 

 

「君は高校生じゃ無いじゃないかw」

 

 

「揚げ足とらないでください」

 

 

佐々木が比企谷に他愛もないことを聞き、それに比企谷が短く答えるというような感じで会話は地味に盛り上がっていた。

 

 

「…そろそろいい時間だし、ここら辺にしようか」

 

 

「そうっすね、意外と楽しかったですよ」

 

 

時間は2時頃、実に二時間ほど話をしていた。

ファミレスで食事をするだけなら一時間もかからないこともある。

比企谷は久しぶりに砕けた話を出来て、実はかなり嬉しかった。

 

 

「ま、男同士でしか話せないこともあるよね。はい、俺の電話番号。好きなときに気軽に電話していいよ。あっ!朝の九時とかは駄目ね、毎日会議あるから」

 

 

「すいません、何かあったら電話しますね」

 

 

そう言って比企谷は佐々木から差し出された電話番号の書かれた紙を受け取る。

 

 

まあ、メッセージでもいいが、ちゃんと話したりもしたいしな。

 

 

「じゃあ私はこれで、演習の日は後程連絡するよ。演習は君の鎮守府近海でやるからよろしくね!じゃあね!」

 

 

元気にそう言って、佐々木は黒い車に乗り込む。

そのまま、手を振りながら大本営のある方向に車を走らせて行ってしまった。

 

 

前々から思っていたが、大本営の関係者ってみんな黒い車に乗っているのだろうか?

 

 

比企谷はどうでもいいようなことを考え、そのままゆっくりと鎮守府に向かって歩き出した。

今日の執務はやりたくないなぁ、なんてことを道中心の中で思いながらも、結局は行くところもない比企谷は鎮守府に直帰し、このあと鎮守府でみっちりと執務をこなした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




内容が薄いのは文を書くのが苦手だからですよ。
出来ればこういう文章を上手く書けるようになりたいものですね。
感想とかはお気軽にどうぞ。


総武高校の人は誰が出るんですかね?
お楽しみに






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12.叢雲は戦艦が来るのを不安視する

お気に入り300ありがとう!
応援してくれる方々、作品を楽しんでくれている方々に感謝です!
タグに準じて駄文ですが、どうぞ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が鎮守府には現在艦娘が三人いる。

内訳は駆逐艦である叢雲、夕立。

軽巡洋艦である神通。

叢雲曰く、この艦隊はまだまだ艦娘が少ない、決定打を打てるような艦娘がいない、今後は駆逐艦や軽巡洋艦などの小型の艦だけでは深海棲艦を倒していけない、だそうだ。

つまり何が言いたいかと言うと、もっと強力な戦力がここの鎮守府に欲しいと言うことだ。

戦力が欲しいなら今やることはひとつだけ………。

 

 

「建造ドッグに行って建造やるぞ!」

 

 

「……あんた、執務中に急にデカイ声出さないでよ、びっくりしたじゃない!」

 

 

「わ、悪い……」

 

 

ジト目で見てくる叢雲に少し小さくなって謝る比企谷、執務室での光景としてはいつもの光景になり始めている。

 

 

「でも、あんたにしては珍しく元気ね。いつもならもっとジトジトした雰囲気が出てるはずなのに」

 

 

「おい!俺はジトジトした雰囲気なんぞ出してない。第一それじゃ俺がナメクジみたいに言われてるようで気に食わん!」

 

 

叢雲と比企谷は互いに書類にペンを滑らせながらそんな会話をしている。

比企谷は執務にも慣れてきており、取り敢えず報告書等をまとめることに関しては中々の腕前になってきた。

経費の計算等に関してはまだまだで、そちらの方は叢雲がやっている。

ふと、叢雲のペンを動かす手が止まる。

 

 

「あんたそう言えば、演習するって言っていたわよね?」

 

 

「ああ、そうだな。いつかは分からないがそのうち佐々木さんから連絡がくるから、演習はそのときだな」

 

 

比企谷めペンを止めて叢雲の方を向いて答える。

叢雲は少し考えたような素振りを見せて、やがてイスから立ち上がった。

 

 

「ああ、だから急に建造とか言いだしたのね、私がこの鎮守府に戦力が足りないってこと言ったから」

 

 

「まあ、そう言うことだ。演習するにしても力不足なのは相手に失礼だからな」

 

 

立ち上がった叢雲はそれを聞いた後に執務室の扉の前に歩いていた。

 

 

「建造するんでしょ?早く着いてらっしゃい」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

言われるがままに比企谷は叢雲の後を歩く。

叢雲はやっぱり速足であるが、比企谷との歩幅の関係で、普通に歩いている比企谷と速度はほとんどの変わらない。

ふと、立ち止まり比企谷の方へ叢雲が振り向く。

叢雲のその目は少しだけ泳いでいる。

 

 

「ねぇ、あんたはもし………いや、いいわ」

 

 

「ん…何だ?」

 

 

「……な、なんでもないわ!」

 

 

「あ?そうか……」

 

 

何を言いかけたのか?

そのまま言いたいことを言わないなんて、叢雲らしく無いな。

まあ、いいか……。

 

 

それから何故か気まずい雰囲気となり、ドッグに着くまで会話は全く無かった。

叢雲は少し下を見ながら何か考えてるような感じで歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建造ドッグ

───────────

 

 

 

 

建造ドッグに着いた。

なんでか叢雲は目を合わせようとしないんだが………よく分かんない状況だ。

 

 

「あ、あの叢雲?出来るだけ強いの建造したいんだが……その、どうすればいい?」

 

 

「…えっ!そ、そうね、なら戦艦狙いでいくわよ!」

 

 

「お、おう…」

 

 

なんか叢雲が変なテンションになってて反応に困る……いや、困るというよりも新鮮と言うべきか。

 

 

「資材の量は、燃料400弾薬100鋼材600ボーキ30で良いわ」

 

 

「あ……了解、にしても資材多くね?前回神通や夕立建造したときの10倍位の資材なんだけど……」

 

 

いや、割りとマジでここまで資材使うとは思わなかった。

 

 

「それだけ資材を使うほど戦力になるってことよ」

 

 

比企谷の疑問に対していつものクールな表情を保ち続けながら答える叢雲。

さっきみたいな気まずさは無くなっている。

 

 

「よし、建造したぞ、時間は………四時間か…これは良いのか?」

 

 

「ええ、四時間は恐らく戦艦ね。建造は取り敢えず成功ってことね。でも戦艦が出来たら……」

 

 

「ん?何かあるのか?」

 

 

さっき同様に表情を曇らせる叢雲、再び比企谷は叢雲に問いかける。

しかし、またしても叢雲は言葉を濁して、さっさと建造ドッグから出ていってしまった。

 

 

なんだったんだ、一体?

 

 

「妖精さんや、このバーナーで建造時間の時短してくれるか?」

 

 

比企谷がそう言って、妖精にバーナーを手渡す。

前回同様に嬉しそうに妖精はバーナーを受け取り、そして建造ドッグの方へとバーナーの火を放射する。

 

 

 

ゴオォォォォォッ!!

 

 

「……やっぱりすげぇわ、妖精って…」

 

 

瞬く間に建造が完了した。

後は、どのような艦娘が来ているのかだ………。

 

 

比企谷はゆっくりとどんな艦娘が来たのかを艦娘のリストを見ながら確認する。

 

 

 

「えっと、お前は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲side

────────────

 

 

 

 

はぁ、何をしているのかしら……。

ハッキリと物を言えないなんて、私らしく無いじゃない。

 

 

「はぁ……」

 

 

叢雲はため息をつき、落ち込んだ様子で執務室の方向へと歩いていた。

建造ドッグに向かうときのような感じのスピードよりもゆっくりと、まるで体が重くなっているような、そんな歩き方をしていた。

 

 

なんでちゃんと話せなかったのよ………やっぱり、戦艦が来たら……駆逐艦なんて、私なんて要らないって思われるのかしら?

いやいや、何弱気になってるのよ!らしく無いじゃないの!

大体まだここには艦娘も少ないのだから……大丈夫よ。

 

 

「ふぅ……一体どんな娘が来るのかしら……」

 

 

いつのまにか執務室の前まで来ていた。

叢雲は落ちきった気分のまま、執務室の扉を開き、そのまま執務を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

────────────

 

 

 

 

比企谷は走っていた。

執務室に向かって、その目は真っ直ぐに前を見ている迷いなき目、全力で階段をかけ上がり、あっという間に建造ドッグから執務室に戻ってきたのだ。

 

 

バンッ!!

 

 

比企谷が勢いよくドアを開けたためか叢雲が一瞬ビクッとなり、比企谷の方を見る。

 

 

「……あ、あんた、急にどうしたの?」

 

 

「………叢雲、助けてくれ!!」

 

 

「………は?」

 

 

比企谷のその必死な顔に驚く叢雲、建造ドッグにいたのに何かあったのかと考え、比企谷に何があったかを聞こうとした時だった。

 

 

「ヘーイ!!提督、なんで逃げるデース!!」

 

 

執務室には叢雲の見知らぬ外国人が入ってきた。

 

 

「や、やばい!追い付かれた」

 

 

くそ、執務室まで来たら逃げ場が無い、どうする?

 

 

「ちょ…ちょっと!何?どういうことよ、説明しなさい」

 

 

「いや、戦艦を建造したまでは良かったんだよ!だがな……なんか急に俺を捕まえようとしてきたんだよ!」

 

 

いや、マジでビビったわあれ。

とっさに本気で避けたわ。

 

 

「ご、誤解デース!悪意なんて全く無かったネ!ただ少しスキンシップをとろうとしただけヨ?」

 

 

「いや、そんなこと知らん!ボッチは過剰なスキンシップに弱い生き物なんだ。……建造怖いわ……戦艦怖いわ……」

 

 

「あ……あんたは戦艦…欲しかったんじゃ無かったの?」

 

 

困惑ぎみの叢雲が比企谷に確認するように聞く。

 

 

「欲し…かった、だがこうなるなんて聞いてないわ!!ビックリして心臓が止まるかと思ったわ!なんなら可愛い駆逐艦を建造した方が良かったまであるぞ!」

 

 

駆逐艦は戦艦よりも火力や装甲などが大きく劣るため、要らなくなるのでは無いかという叢雲の不安はどこへやら。

拍子抜けた感じの表情になる叢雲。

そして叢雲の頭に一抹の可能性が過った……。

 

 

「…………司令官……あんた実は……ロリコン?」

 

 

「いや!なんでそうなるんだよ!!お前の発想がぶっ飛ぶなんて、明日は雪でも降るのか?」

 

 

「そうデスヨ!提督はロリコンに違いないデース!」

 

 

叢雲の言葉に便乗する外国人っぽい艦娘。

比企谷は二人の言葉に疲れたような表情で反論する。

売り言葉に買い言葉、話は進まないまま言い争いが続く………主に外国人っぽい艦娘と比企谷の。

流石に叢雲も埒が明かないと思い、取り敢えず話を終わらせる。

 

 

「……それで、彼女はなんて艦娘かしら?」

 

 

「Oh、自己紹介がまだでしたネ!私は英国で生れた帰国子女の金剛デース!よろしくネ!」

 

 

と、元気に自己紹介をする。

彼女は金剛型戦艦の一番艦である金剛、比企谷の鎮守府では、現状もっとも頼りになる即戦力に位置する。

 

 

「いや、帰国子女ってのはもっとお淑やかだろ……嘘つくなこのエセ外国人が!!」

 

 

「提督こそ、私を建造したくせに文句がおおいネ!」

 

 

「これは事故なんだよ!もっとちゃんとした艦娘を建造するつもりだったんだよ!礼儀をわきまえろ!」

 

 

「なっ!私は提督と仲良くしたかったからああしただけで、私はなんにも悪くないデース!」

 

 

「……はぁ、この言い争いはいつまで続くのかしら…」

 

 

執務室はいつもよりはるかに賑やかになっている。

比企谷と金剛は言い争い、叢雲はこめかみを押さえながら呆れている。しかし、叢雲は少しだけ嬉しそうに口元に笑みを浮かべる。

結局、比企谷は駆逐艦や軽巡洋艦とかをもっと建造するとか言い出し、金剛は妹が欲しいから戦艦のほう建造して欲しいと言い争う。

戦艦が来て、叢雲は自分が必要にならないか少し不安だったが、どうやらそんな心配はないと感じ、安堵を覚え、比企谷を秘書艦として、これからも見守ることを決意した。

比企谷は特に艦娘の強さに関係なく自分の思ったように接している。

戦艦だから態度を変えたりしないのだ。

叢雲はそのような比企谷が提督で良かったと、そう感じながら比企谷と金剛の言い争いを終わるまで静かに聞いていた。

まるで昔の後悔が無くなったかのような雰囲気で………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少しだけ叢雲が過去に何かあるっぽくしました。
ちなみに叢雲はヒロインにしようかなって迷ってます。
金剛はアンチにはならないので悪しからず。


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13.金剛、初陣デース!

休みが欲しい……。
お気に入り400もいきました!感謝です!
それから助言なども個人的に頂きました。とても嬉しいです。
これからも頑張りますね!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三回目の建造によって、俺は戦艦クラスの艦娘を建造することに成功した。

名前は戦艦の金剛、自称英国で生れた帰国子女……だそうだ。

フレンドリーと言われれば聞こえは良いが、悪く言えば馴れ馴れしい……俺にとっては苦手なタイプの人だ……ただ、佐々木さんクラスのイタズラ大好き小悪魔系の人とは違う分変な企みとかはしないようで、最近としては大分慣れてきた。

しかし、慣れてきたと言っても金剛の接し方には中々慣れそうにない……。

 

 

「ヘーイ提督ぅ!紅茶はいかがデスカ?」むにゅ

 

 

「……い、いや!金剛離れろ……ち、近い!」

 

 

て言うか色々と当たってる!!

何とは言えないが、二つの大きなアレが……マジで理性の化け物が敗北して八幡の八幡がぁ……!

 

 

真っ赤になる比企谷に構いもせずに金剛はグイグイと比企谷の腕にしがみつき、比企谷の執務の手が止まっている。

金剛のスキンシップは留まることを知らず、建造された時のように比企谷にとっては過剰な物だった。

しかし、比企谷は既に金剛と和解もしており、スキンシップも容認してしまったこともあってか中々どうすることも出来ずにわたわたしている。

 

 

「金剛、止めときなさい。うちの司令官はそういう耐性の無いコミュ障なのよ………残念なことにね。おまけにデレデレしててどうしようもなく駄目ね」

 

 

最近叢雲さんの毒舌が酷くなった気がします、はい……。

て言うか叢雲のそういう発言が慣れてきてしまった自分はどうにかしているかもしれん……別に蔑まれて喜ぶような性癖はもってねぇからな!!

あと、別にデレてねぇから………。

 

 

執務をしながら興味無さげに金剛へと叢雲が言う。

比企谷はその言葉にすごく納得がいっていない模様。

 

 

「ねぇねぇ?私の出撃はいつになりそうデスカ?早く海に出て提督の役にたちたいネ!」

 

 

「そうだなぁ……お前の実力とかも見てみたいし、今日出撃してみるか?」

 

 

「はーい!私の実力、見せてあげるネ!」

 

 

「そうだな…………あと、本当に離れて……」

 

 

結局金剛は俺から離れる気配が全く無い。建造したあとのイメージとか最悪なはずだったのに、どうしてこう好感度が高いのかが甚だ疑問だ………いや、別に抱きつかれて喜んでるとかじゃねぇから!

むしろ困ってるから!

 

 

「離れてと言いながら、金剛がくっついているときに抵抗しないのは司令官らしいわね」

 

 

少し嫌味っぽくそう言いながら、ふんっとそっぽを向く叢雲。

 

 

「…ん?………お前って……実はツンデレ?」

 

 

「はぁ?どこをどう見たらそうなるのよ!?あんまりふざけたこと言うと酸素魚雷を喰らわせるわよ!」

 

 

「………すいません、調子乗りました…」

 

 

なんとなくツンデレなのか?と思った比企谷はつい口にしてしまったが、叢雲のガチトーンの声にビビり即座に謝る。それを見た叢雲は情けないと思いつつ、いつものクールな顔になり執務を続けた。

 

 

「ま、まぁ金剛は今日出てみようか……随伴艦は神通でいいか。叢雲は執務手伝ってほしいし、夕立はまだ寝てるからな」

 

 

「……それは、起こしなさい」

 

 

すかさず良いタイミングでツッコミを入れる叢雲に比企谷はデスヨネーといったような反応。

 

 

「………えっと、つまり私は今日出撃出来るってことデスカ?」

 

 

「あぁ…そういうこと、神通は部屋にいるから呼んどくわ。取り敢えず艤装準備して、海で待っててくれ」

 

 

「わかったヨ!じゃあ先に行ってるネ!」

 

 

執務室から金剛は出ていった………て言うかなんであいつが執務室に居座るんだよ?よく考えれば意味わからんわ……。

…………さて、神通を呼び出して出撃させるか……まぁ、今回は様子見だし鎮守府近海でいいか……。

 

 

比企谷は神通を鎮守府内の放送で呼び出し、神通と金剛の元へ向かった。

叢雲は執務をすると言って執務室に残ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛side

─────────────

 

 

 

 

 

 

さあ、いよいよ私の実力を提督に認めて貰うときがきたネ。沢山活躍して、提督と一緒に紅茶が飲みたいネ!

 

 

金剛はかなり気分が上がっており、出撃をワクワクしながら待っている。

暫くして、比企谷が神通を連れて、金剛の待っている場所まで向かってくるのが金剛には見えた。

金剛は高ぶる気持ちを少し押さえて、比企谷を出迎えた。

 

 

「さぁ、行きましょうカ?」

 

 

「……ああ、金剛待たせたな。お前の活躍に期待してるぞ。神通も頼んだ」

 

 

「はい、提督……行ってきますね」

 

 

神通はひと言だけそう言い、金剛共に海に繰り出した。

金剛はと言うと、比企谷に対してブンブンと手を振り、ニコニコしながら抜錨した。

不覚ながら比企谷は、その笑顔にドキッとしてしまったのを必死に隠しながら二人を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘイ神通!今日はよろしくネ!」

 

 

「はい、一緒に出撃するのは初めてですね。よろしくお願い致します」

 

 

性格が全く違いそうな二人は意外にも仲良くなった。

敵に遭遇するまでは色々と鎮守府の事で雑談などをしていた。

 

 

神通はとってもいい人ネ!

私、ここの鎮守府に来て良かったデス!

 

 

「金剛さん!敵、深海棲艦です!」

 

 

「はっ!分かったネ!」

 

 

金剛は敵のいる方向に主砲である35.6㎝連装砲を向ける。

戦艦ならではの迫力ある主砲、敵の深海棲艦は駆逐が二隻、軽巡洋艦が一隻、相手の方が数で上回っているものの戦力としては圧倒的に勝っている。

 

 

「全砲門、ファイアー!!」

 

 

ズドーーーン!!!

 

 

まるで地震が起きたかのような振動が水面に広がる。

大きな爆発音が聞え、深海棲艦がいたであろう位置には深海棲艦の姿は無かった。

 

 

「……あ、あの金剛さん……敵がいなくなりました……」

 

 

「……これで任務は完了ネー!」

 

 

金剛は満足そうにそう言うと、くるりと方向転換、鎮守府の方を向いた。

神通は金剛の実力に絶句、何せ一度の砲撃で3隻すべてを沈めたからだ。

水面には深海棲艦の残骸であろう、艤装の破片が漂っている。

 

 

「さあ神通、早く帰還するデース!」

 

 

提督、誉めてくれるカナ?鎮守府に戻るのが楽しみにデース!

 

 

「……は、はい……帰りましょうか……」

 

 

二度目の出撃は神通の想像を絶するほどあっさりと終わり、帰り道も神通は金剛と話をしていた。

 

 

「……あの、金剛さんは提督さんとすごい喧嘩したのに……どうしてそんなに慕ってるんですか?」

 

 

任務に向かう道中で喧嘩したことなどを聞いた神通はそんな素朴な疑問を尋ねた。

 

 

「ああ、そのことネ!実はね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

回想

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「英国で生れた帰国子女の金剛デース!よろしくお願いしマース!!」

 

 

「ああ、よろしくな。戦艦が来てくれて良かったわ」

 

 

「そ、そうデスカ……」

 

 

ああ、なんて優しい提督………これは!提督の期待に応えて、私の提督への愛を示さなければいけないネ!

 

 

「……ん?どうした?」

 

 

「…………バーニング…ラ~~ブ!!!」

 

 

金剛が抱きつこうとしたところ、比企谷はとっさのことだが見事に避けて見せた。

 

 

「うわっ!!なにすんだ!!」

 

 

「ちょっ…なんで逃げるデース!?」

 

 

そのまま比企谷は執務室に向かって走りだし、金剛が追いかける。

そして、執務室での喧嘩の経緯に至る。

 

 

 

回想終了

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うことがありマシタ!」

 

 

「………それって、提督も金剛さんもどっちも悪いような気がします……叢雲さんは……巻き込まれた感じですね…」

 

 

若干引きぎみで感想を述べる神通。

 

 

「でも、喧嘩しても提督の事は嫌いにならないネ!」

 

 

「ひ、直向きってことですかね?」

 

 

神通と金剛はそんな話をしている間に鎮守府が見えてくるところまで来ていた。

結果として、金剛の戦力は鎮守府随一と神通の報告書にまとまっていて、金剛は千葉鎮守府のエースとしての称号をてに入れた。

比企谷に誉められた金剛は子供のように喜び、比企谷と金剛はそれなりに仲良くなった。(ほとんどが金剛の一方的な好意によるもの)

それ以来、金剛は毎日のように執務室に入り浸るようになり、比企谷にベッタリだという。

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!


これから少し更新が遅れるかもですがよろしくお願いします。



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14.資源不足と叢雲が怖い

さて、次回から少し更新が遅れるかもです……かもですから!



佐々木さんから演習の頼みを受け、それから俺は鎮守府の戦力の補強を続けた。

艦隊は基本、六隻での編成ということを叢雲から聞いたため、残り少ない資材を使い、二人の艦娘を建造した。

空母レシピでの建造と重巡洋艦のレシピで回し、軽空母の鳳翔と何故か重巡洋艦のレシピでは駆逐艦が建造された。

駆逐艦の方は島風という。

こいつがなんともキャラが濃いやつで、編成した艦娘全員で鎮守府近海に出撃した時のことだが、出撃するときに俺が見送ったのだが他の艦を置いて、物凄い速度で一人進撃していった。かなり自由奔放な感じな艦娘だった……。

鳳翔は………とってもいい人だったわ。

料理上手いし、家事とかもしっかり出来るし、何より誰に対しても優しいお母さんみたいな存在に思える。

叢雲に以前まではよく料理とかを任していたが、秘書艦である叢雲には色々と頼りすぎていた感がある。

叢雲の負担を減らすために鳳翔さんに料理とかをしてもらうようにした。

ようやく鎮守府が整ってきたような感じだ。

……が、建造したからなのか、今月分の資材がカツカツな状況になってしまった。

話が長くなってしまった。

つまり俺が何を言いたいと言うとだ。

 

 

「今月って出撃………出来ないかもしれん」

 

 

「……そうね、資材が無いものね」

 

 

資材不足で出撃がしにくい状況に陥っていた。

 

 

「……やっぱり、建造し過ぎが問題だったか?」

 

 

「艦娘を5人建造しただけじゃない!出撃のし過ぎよ!」

 

 

「あ、はい……スイマセン……」

 

 

しゅんとする比企谷を尻目に叢雲は考え込む、現状の資材不足では深海棲艦との戦闘が十分に出来ないからだ。

 

 

「……取り敢えず、金剛は強いけれど、戦艦だから消費も激しいのよ。無闇な出撃命令は控えなさいよ」

 

 

「ああ、悪かった……」

 

 

原因としては比企谷が強力な金剛を鎮守府近海の警備にやたら多く当てていたからである。

金剛は戦艦であるため、駆逐艦の資材の消費量と比べるとはるかに多い。

それをまだ比企谷は把握出来ていなかった為にこのようなことになってしまった。

 

 

「……まあ、艦隊を六隻ちゃんと揃えて整えたのは、良いことよ。これからはコストとかもしっかり確認していきましょ、金剛だけ練度が急上昇していてバランスがおかしくなるわ」

 

 

「……ああ、いや叢雲の一番練度高いんだが……」

 

 

「何か?」

 

 

「……何もないです…」

 

 

叢雲が一睨み、それでいて比企谷は押し黙る。

比企谷の在籍する比企谷鎮守府では、叢雲が最高練度を誇り、次点で出撃回数の多かった金剛、その他の艦娘達はみんな同じくらいになっている。

 

 

というか叢雲の睨み付けるで俺のライフがコリゴリ削れるんだが………これは鳳翔さんに癒してもらうか……いや、そこ!変態とか言うな!変な意味じゃねぇからな!……多分な。

 

 

比企谷と叢雲はいつも通り執務をこなしている。

いつもと違うことと言えば金剛が比企谷にくっついていないことだ。

珍しく金剛は比企谷の所に来ていない。

資源不足で出撃しているとかでも無いため、金剛は鎮守府にいるのだ。

 

 

「そう言えば、今日はあんたの金剛が来ていないわね……いつもはベッタリなのに……」

 

 

「おい……その発言には色々と誤解を招くような要素があるからやめろ………俺のって何だ、俺のって……」

 

 

「あら、違ったかしら。………茶番はこのくらいで本当に珍しいわね」

 

 

「ネタバラシしちゃったし………まあ、確かに珍しいとは思うが……別に金剛も忙しかったりするだろ?」

 

 

最近はずっと出撃させ過ぎてたし……疲れとかもありそうだが……あいつ馬鹿みたいに元気だけど本当は大丈夫じゃないとかあるのだろうか?

 

 

「まあ、私としては執務が静かにやれて良いことよ」

 

 

「……さいですか」

 

 

執務は思いの外はかどっているが、いつもと違う感じからなのか違和感をすごく感じる比企谷、叢雲も同じに感じていた。

 

 

「……はぁ、どちらにしても資材は必要になるわ。遠征に行くしか無いわね」

 

 

「……遠征か……出撃と何が違うんだ?」

 

 

叢雲の提案に理解が追い付かない。

遠征って……旅行的なこと?

 

 

「いい?遠征は主に物資の調達の為に艦娘が海に出ることよ。で、出撃は深海棲艦を沈めたり、追い払ったり、海域を奪還する為に海に出ることよ」

 

 

「……なるほど……つまり遠征は敵と交戦しないってことでいいのか?」

 

 

「場合によるけど、それで良いわ。それで?遠征はどうするの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うことでこの執務室の一件もあり、このままでは良くないと思った俺は………。

鎮守府の艦娘を放送で会議室に呼び出した。

 

 

「えっと、みんな集まってくれてありがとう。えー、鎮守府に資材が不足しているということだ。今から遠征に行ってもらう」

 

 

無事全員が揃い、遠征に行く艦娘を選出する。

 

 

「取り敢えず遠征は金剛と………」

 

 

「はぁ?あんた執務室で話聞いてたの!?燃費悪い艦に遠征行かせるなんて馬鹿じゃないの!?提督マニュアルを復習させるわよ!」

 

 

比企谷の選出に叢雲が説教をする。

特定の遠征意外は基本的に燃費の良い艦娘を行かせるのがセオリーなのだ。

この場合は駆逐艦や軽巡洋艦だと叢雲が補足説明を比企谷にする。

 

 

「……あ…す、スイマセン………なら旗艦神通でそれから島風と夕立、遠征お願いできるか?」

 

 

「……えっ、はい。勿論大丈夫…です」

 

 

「……わ、私に任せる…っぽい!!」

 

 

「……えっ……やっぱり?そ、そうよね、だって私が一番だもん……」

 

 

「えっと、いいと思いますよ」

 

 

「……う、うん!…それでOKネ!」

 

 

神通、夕立、島風がそれぞれ同意したところで、今回の会議室の集まりは解散になった。

取り敢えず、叢雲以外の艦娘達は叢雲の迫力に圧倒されて唖然としていた。

ほとんどが会話になっていなかったものの、遠征に行く組がはっきりと決まった為、遠征に行く艦娘達は準備をし、それ以外の艦娘達は各々のすることをしていた。

比企谷はと言うと、叢雲から艦隊の運用についてみっちりと教授されていた。

結果としては、遠征に行った組のお陰で、緊急時の出撃に使える分の資材が確保でき、取り敢えずの問題は解決したのだった。

大本営からの資材供給は月に一回のため、その一週間ほど後には多くの資材が千葉鎮守府に供給されたという。

それから、この鎮守府で一番怒らせると怖いのは現状、叢雲ということになったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
少し短いですがお許し下さい。


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15.千葉鎮守府データの確認

どっちにしても、来週からは更新が出来なくなります。
すいません……。

今回はかなり短め、少しだけ鎮守府の状況整理ってのを話の中でしていってます。
ちゃんとしたの書けなくて本当にすいません。


資源枯渇問題で比企谷が叢雲に散々に怒られた次の日の事。

その日は天候も良く、出撃日和なのだが、枯渇した資源のお陰で出撃をする艦娘は居ず、鎮守府は少しだけ静かな感じになっていた。

比企谷も勿論、艦隊運用に必要な知識などを叢雲にみっちりと叩き込まれて、執務室に缶詰、何事もない一日の事……。

 

 

「なら、これはどうすれば良いんだ?」

 

 

「敵の編成から見れば、やっぱりこれが良く使う編成よね。ただこの場合は─────」

 

 

「なるほど、つまり─────」

 

 

「そう、よってここは──────」

 

 

窓の開いた執務室に心地よい海風が吹き込むなかで、比企谷と叢雲の艦隊運用に関する勉強は真剣そのもの。

どのくらい真剣かと言うと、佐々木に対応するときに、敬語になるようなくらいにマジなのだ。

 

 

 

 

『千葉鎮守府戦力図

戦艦

金剛 練度13 改装不可

 

航空戦艦

データ無し

 

重巡洋艦

データ無し

 

航空巡洋艦

データ無し

 

軽巡洋艦

神通 練度9 改装不可

 

重雷装巡洋艦

データ無し

 

練習巡洋艦

データ無し

 

駆逐艦

叢雲 練度19 改装不可

夕立 練度8 改装不可

島風 練度4 改装不可

 

正規空母

データ無し

 

軽空母

鳳翔 練度4 改装不可

 

装甲空母

データ無し

 

水上機母艦

データ無し

 

潜水艦

データ無し

 

潜水空母

データ無し

 

潜水母艦

データ無し

 

補給艦

データ無し

 

揚陸艦

データ無し

 

工作艦

データ無し

 

海防艦

データ無し

 

改装航空戦艦

データ無し

 

以上、千葉鎮守府戦力図、艦娘六人在籍。

提督 比企谷八幡 少佐

                    』

 

 

…………ふむ、改めて見直して見ると、やっぱりまだ戦力は十分には確保出来て無いのか……。

ほとんどがデータ無しの艦種、データありの艦種はわずか四種類。

いや、レパートリーが少なすぎだろここ!

 

 

「………叢雲、ここってまだまだ未熟な鎮守府だな…」

 

 

「……今さら何言ってんの?なんとかするのよ……あんたが」

 

 

ですよね………。

 

 

比企谷は自分の鎮守府の戦力を再度確認する。

目に見えて艦種も少なく、在籍する艦娘を少ない。

これではまだまだ千葉の海の安全が守れないのだ。

 

 

「……つーか何気にお前一番練度高いだろ?まとめててビックリしたわ、一人ずば抜けてて……」

 

 

「そこまで高くも無いわよ、佐々木大将のとこは私なんかより遥かに高練度で強力なのが要るわよ。それこそ、ここの第一艦隊を佐々木さんのとこの艦娘一人で完封できる位には強いのがいるわね」

 

 

「まじか……あの人変な感じだがスゲーな……」

 

 

「………変わってるのは否定しないわ…」

 

 

佐々木の凄さに再度驚く比企谷、元々出会った当初はただの変な国からの人としか捉えていなかったが、佐々木の事を知れば知るほどに、比企谷の佐々木に対するイメージなどが変わっていくのだった。

ただ、変人というイメージは固まったままである。

 

 

「さて、次は鎮守府の施設と資材の状況か……」

 

 

そう言いながら比企谷は書類の中から一枚の書類を手元に置く。

 

 

『千葉鎮守府、施設及び資材備蓄状況

 

艦娘寮舎

 

現在の収容人数 6人

 

最大収容人数 150人

 

 

建造ドッグ数

 

現在二ヶ所

 

最大四ヶ所

 

 

入渠ドッグ数

 

現在二ヶ所

 

最大四ヶ所(施設の面積は最大初期の12倍)

 

 

食堂

収容人数最大100

(今後の増設 可能)

 

 

工廠施設

増設計画あり、予定三ヶ月後

 

 

 

 

その他施設及び鎮守府総面積については軍事機密の為差し控える。なお、今後の鎮守府拡大は戦果に応じて実施予定。

 

 

 

資材状況

燃料 200

 

弾薬 340

 

鋼材 440

 

ボーキサイト 700

 

 

以上、資材状況。

 

 

 

 

                     』

 

 

 

「…………だそうです……」

 

 

「あんた、頑張りなさいね。特に戦果の辺りとか」

 

 

「……ぜ、善処致します…」

 

 

大本営からまとめられたここの状況を見て、比企谷は少し気が重くなる。戦果に応じて増設ということは比企谷 が頑張らなければならないのだ。

千葉の為に頑張る。

比企谷がなんとかマッ缶の為だと心の中で割りきった頃、それまでしまっていた執務室のドアが開き、いつもの艦娘が勢いよく入ってくる。

提督ー!!と叫びながら我が鎮守府の要となった帰国子女の艦娘。

叢雲と比企谷はまたかと思いつつも、いつもの事ながら、気にせずに、いつもの日常を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
こっからの更新は本当に不定期になってくると思いますから明日出せるか分かりませんが、これからもよろしくお願いいたします。(絶対に出せないとは言っていない)


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16.マッ缶が鎮守府に届く。

さて、マッ缶が鎮守府に登場しました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、君たちは俺の大好物の飲み物を知っているだろうか?

いや、知っていることだろう……誰もがその味に感動し、人々を繋げることのできるか力を持つその飲み物、これを知らないものなど俺は居ないと思っている。(勝手な持論)そう、マッ缶である。

黄色と黒の警告色のその缶からは想像絶する味がするコーヒーが入っている。

俺は初めてそれを飲んだとき、とても感動したのだ。

これほどまでに美味い飲み物がこの世に存在したのかと………そうまでに思っていた。

つまり、何が言いたいのか?って言うとだ。

マッ缶は世界一だと俺は思う。

そして、何故マッ缶の話をしたかと言うとだ!

本日、我が千葉鎮守府にはマッ缶が箱単位で大量に届くのだ!!

 

 

比企谷は何時もなら叢雲に起こされて起きる時間の六時よりも遥かに早い四時に起きて、鎮守府の大きな門の前で一人、いや二人で立っていた。

 

 

「それで?なんで着いてきたの?」

 

 

「ん~?なんだか提督さんが生きた目をしてたからですかね。それから目が覚めてしまったからですね!」

 

 

「……い、生きた目って、いつもは死んでるって遠回しに言ってるじゃねぇか……まぁ、いいか………実際そうだし……」

 

 

「そこ……認めるんですね………」

 

 

鎮守府の門の前に向かっていったら、足音が後ろからして、振り向いて見たら鳳翔が笑顔でおはようございますと挨拶をしてきた。

そのまま素朴におはようと返事をして、そのままこちらに向かったら、鳳翔も着いてきたというのが今鳳翔と俺が門のとこに立っている状況である。

 

 

「そう言えば、提督さんは何の目的でここに?」

 

 

「ああ、言ってなかったか?今からここにトラックが来て、箱単位のマッ缶を持ってきてくれるんだよ」

 

 

「……マッ缶…ですか?」

 

 

「そ…マッ缶だ」

 

 

はてと首をかしげる鳳翔さん………なんか癒される……。

て言うか何気に鳳翔さんが近くに立っていて、凄く恥ずかしい……本人は無意識なのだろうか?俺はかなり顔が赤くなっていることだろう。

 

 

顔を真っ赤にして恥ずかしがる比企谷をよそに鳳翔はマッ缶について何なのかを考えている。

涼しい早朝の空気はとても澄んでいて気持ちが良い、そんな朝の海風が鎮守府に向かって吹いてくるとき、丁度一台のトラックが鎮守府の前に停車した。

 

 

「あの、提督?トラックが止まりましたよ?」

 

 

「あ、ああ……ありがとう」

 

 

少しキョドって答えたが、鳳翔は気にした様子は無い。

そのままトラックの方へと二人で行き、運転手にマッ缶、合計で120本分を荷台からおろしてもらい、そのまま鎮守府の倉庫に持っていくことになった。

 

 

「悪いな、こんなことに付き合わせて」

 

 

「いえ、好きで付き合ったことですから」

 

 

「そ、そうか…」

 

 

好きとか言われて一瞬勘違いしてしまうとこだった。

………気を付けよう。

 

 

鳳翔と共に倉庫まで来た比企谷はよいしょとマッ缶の入った段ボール箱を置く。

比企谷よりも鳳翔の方が多くの段ボールを持っていたのは言うまでもないことである。

 

 

「これでいいな、サンキュな鳳翔」

 

 

「いえいえ、それにしてもこれって飲み物ですかね?」

 

 

「ああ、甘いコーヒーって感じだな……手伝ってくれたし飲んでみるか?」

 

 

「えっ!?良いんですか?」

 

 

驚いたような反応の鳳翔さん……癒されるわ……。

 

 

「………え、えっと提督……じゃあひとつ頂きます」

 

 

「ああ、俺の一番のオススメだ」

 

 

比企谷は箱から一本マッ缶を取り出し、鳳翔に手渡す。

遠慮がちに受けとる鳳翔だが、マッ缶に興味があるのか自然と蓋に手が延びる。

カシュッっとした缶ジュースを開けるときの音と共に甘い香りが漂ってくる。

 

 

「では、頂きます……」

 

 

鳳翔は目を閉じて、味を確かめるかのようにマッ缶を飲む。自然と比企谷は緊張してくる。

マッ缶は受け入れられるのだろうか?そんな事を考える。

 

 

「こ、これは!……とっても甘いですが…美味しいですね!」

 

 

「そうか、気に入ってくれて良かったわ」

 

 

瞬間、比企谷安堵し表情が緩む。

鳳翔もそれを見て笑顔になる。

 

 

「でも、甘いのが苦手な方には少しきついかも知れませんね」

 

 

「そうなんだよなぁ……中々この味を分かってくれる人は少なくてな」

 

 

「ふふっ、私はどのような味でも大丈夫ですから、甘いこのコーヒーも美味しかったですけどね」

 

 

もう一口マッ缶を飲みながら鳳翔はそう言う。

 

 

分かってくれる人も居るんだな……ああ、この味はやっぱり最高だ……。

 

 

比企谷もマッ缶に手を延ばし、味わうように舌を滑らせてから飲む。

コーヒーの苦味を放物とさせる風味とは反対の甘いまろやかな後味が舌に残る。

鳳翔と比企谷はマッ缶を飲み終えると、軽く話をしながら食堂や執務室のある建物まで歩いてその後それぞれ挨拶をして、比企谷は執務室に、鳳翔は食堂の方へと向かっていった。

 

 

「分かる人も居るもんだな……夕立とか島風も気に入るんじゃないか?」

 

 

比企谷は嬉しそうに執務室に入っていった。

当然ながら叢雲の姿は無い。

いつもよりも早い執務の始まる時間でもない執務室。

比企谷は最近執務室に設置した冷蔵庫に箱から取り出したいくつかのマッ缶を入れる。

 

 

「……さて、少しだけ仕事するかな…」

 

 

珍しく仕事を自発的に始める比企谷、朝日が丁度執務の窓から比企谷の頬にやんわりと照りつける。

比企谷はマッ缶が届いたことによる嬉しさとマッ缶を理解してくれる者がいる嬉しさに気分を高揚させ、比企谷の手は止まることなく執務を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします。


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17.司令官が早起きなのは間違っているわ

叢雲視点でいきます。

それからお気に入りが500に到達しました!
ありがとうございます!
これからもできる限り頑張っていこうと思います!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは朝日が差してきて、いつも司令官を叢雲が起こす時間。

叢雲がいつも通り提督を部屋まで起こしに行こうとしたときの早朝のことだった。

 

 

 

 

鎮守府の執務室に続く廊下はまだ薄暗く、唯一の明りと言えば窓からこの建物に差してくるやんわりとした日光くらいだ。

あくびが出てしまいそうな位にまだ薄暗く、寒い。

ただ、勤務時間なのでまだ自室で寝ているであろう司令官を起こさなければならない。

 

 

「……はぁ、本当に司令官としての自覚はあるのかしら?」

 

 

呆れたようにため息をつく。

普段から比企谷の事を一番近くで見ている叢雲だからこその反応であった。

 

 

「司令官、そろそろ時間よ。早く起きて朝食前の執務をしなさい」

 

 

そう言いつつ、比企谷の自室である扉のドアノブに手をかけて扉を開く。

しかし、そこには叢雲が予想していない光景が広がっていた。

 

 

……司令官が……いない!?

 

 

もしかしてと、あわてて自室の扉を閉め、隣に隣接している執務室の扉に手をかける。

いや、そんなはずはないと心に言い聞かせて、ゆっくりと扉を開ける。

不思議と執務室のドアの開く音は不気味に感じられる。

 

 

 

 

 

 

!!!

 

 

執務室の中を見た叢雲は、驚きの表情を浮かべた。

 

 

「………ん?叢雲か……朝の分の執務なら終わったが?」

 

 

「し、司令官!!あ……あんた、熱でもあるの?今日は休みでいいから自室で安静にしてなさい」

 

 

「は?いや、待て。なんで俺がどこか具合が悪いって前提で話進んでんだよ?状況が理解できないぞ?」

 

 

はて?と首をかしげる比企谷だが、叢雲はそれどころでは無い。

いつもは自分が起こすまでぐっすりと眠っているだらだらとした司令官、それが叢雲の比企谷に対する印象なのだ。

 

 

ど、どういうこと!?

何時もなら、こんなに早くは起きないはず……しかも、心なしか目がキラキラしている。

……不気味でならないわ……。

 

 

「司令官?何か悩みとかがあれば相談にのってあげても良いわよ?」

 

 

「……いや、今度は悩んでる人ですか……俺はどんな風に見えてんだよ……」

 

 

叢雲は分からない。

比企谷が何故いつもと違う行動を取るのかが理解しきれない。

執務室の空気はなんとも言えないような変などんよりとした空気になり、比企谷と叢雲の会話はイマイチ噛み合ってない。

 

 

「いや……だって……あんたが早起きなんて……おかしいじゃない!」

 

 

話が通じていないのを感じた叢雲は比企谷に右手の人差し指を突き付けて、直球で思っていることを口にした。

それを口にした途端に比企谷の目が腐っていくのを叢雲は感じる。

 

 

「お前、俺に対しての評価が低すぎるんだが……まあ、いいか……」

 

 

「それで?あんたはなんでこんな早くに?理由がないなら今すぐにベッドで安静にさせるわよ?」

 

 

頭をガシガシと掻きながら、面倒くさそうな表情を浮かべる比企谷は、頭のアホ毛を上下に揺らしながら説明を始めた。

 

 

「実は、大本営に欲しいものがあるからって要望用紙に書いて、提出したんだよ。そしたら今日届けてくれるって言うから早起きして受け取ったんだよ。それが早起きの理由だ」

 

 

……え?私が……勘違いした?

 

 

「で、でもどうしてそれで今あんたが仕事をしている理由になるのよ!?あんたなら受け取ったら寝たりするはずよ!!」

 

 

「おい、偏見すぎるだろ……嬉しくて目が冴えてな、眠れなかったから仕事を終わらせておこうかと思ったんだよ」

 

 

変などんよりとした空気がまるで化学変化で別の物になったかのように、拍子抜けしたような感じになった。

 

 

「……つまり、あんたはなんとも無いってこと……?」

 

 

「ああ、そうだ」

 

 

「全部私の勘違いってこと……?」

 

 

「だから、そう言ってるだろ」

 

 

比企谷がそう言った瞬間、叢雲はうつむき、顔を真っ赤にしている。

執務室に本格的に太陽が照りつけてきた。

 

 

「……えっ……む、叢雲?」

 

 

叢雲はうつむいたままプルプルと震えている。

比企谷は何事かと思って、思考を巡らすが、そのせいで叢雲が拳を握りしめていることに気付いていなかった。

 

 

「この、腐り目司令官!!」

 

 

「ぐへぇっ!」

 

 

握りしめている拳で殴った訳ではなく、右足から繰り出される強烈な蹴りによって比企谷は執務室の床に轟沈した。

 

 

まったく……心配かけさせるんじゃないわよ……紛らわしいのよ……。

 

 

「……り、理不尽だ……」

 

 

「ふん!」

 

 

 

 

比企谷を地面に沈めた叢雲だったが、沈めた比企谷を優しく起こし、そのまま食堂へと二人で向かったのだった。

 

 

なんだかんだで相性がいい二人であった。

比企谷が叢雲に余計な事を言って再び沈められたのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
短いのは……すいません。


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18.話が脱線する

比企谷……




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マッ缶が鎮守府に届き、俺の今日の一日の運勢は最高のはずだったんだがな……。

何故か早朝に執務終わらせていたら叢雲に蹴られた。

まったく俺に落ち度など無いはずなのだが……挙げ句の果てに、なんで蹴ったのかを聞いたら顔を真っ赤にし、また蹴っ飛ばされて尻が真っ赤になった。

本当に解せぬ……。

 

 

叢雲と食堂へと来ていた比企谷はそう回想する。

 

 

「提督おはようごさいまーす!!もう食堂始まって5分たってるよ?おっそーい!!」

 

 

「ああ、おはよう島風。……て言うかお前はブレねぇな……」

 

 

比企谷が食堂に入ってかけられた第一声は島風からだった。

島風はぴょんぴょんと兎のようにジャンプし、頭に兎のような飾りを着けている。

足元には島風がいつも連れている連装砲ちゃんがいる。

食堂には既にいい香りが漂っていて、自然と気分も良くなってくる。

 

 

「提督?そう言えばなんか制服が汚れてるよ?なんでぇ?」

 

 

「ああ、それな。さっき物凄い怖いやつと戦ってたんだよ。恐ろしかったわ、アレ……」

 

 

「ふーん……提督、叢雲が後ろで怖い顔してるよ?」

 

 

ビクッとする比企谷の後ろには口元は口角が上がっているが、目が笑っていない叢雲の姿があった。

物凄く黒いオーラが見えるほどに比企谷の背を見ながら立っている。

 

 

……これってさ、俺助からなくね?

 

 

「いや、叢雲待ってくれ!!」

 

 

「物凄い怖いやつとねぇ?………誰のことかしら!?」

 

 

今度は蹴りではなく直に腹パンチを食らった。

痛すぎて声がでねぇわ……。

 

 

そのまま地面に倒れ込み、悶える比企谷。

食堂は鎮守府の艦娘が全員揃っていて(現状六人しかいない)なんとも気不味い空気となった。

口々に他の見ていた艦娘は夫婦喧嘩だとか、色々と話していた。(正確には鳳翔、夕立、神通の三人)

 

 

「え……えっと提督?生きてる?」

 

 

「いや……島風……死にそうだわコレ……」

 

 

途切れ途切れにそう答える比企谷はなんとも痛々しい感じの雰囲気でそう言った。

叢雲は怒って食堂から出ていき、終始食堂は沈黙に包まれたが、やがて皆平常な感じに戻った。

 

 

「提督?大丈夫デスカ?」

 

 

倒れている比企谷に手を差し出して来たのは金剛。

語尾がカタコトになる外国人のような話し方と綺麗な茶髪で、性格は比企谷に対しても、他の艦娘に対してもとても親身になってくれる。とても優しい艦娘である。

一応、千葉鎮守府で最大の火力を誇るエースというポジションになっている。

 

 

「……大丈夫だ、ありがとな」

 

先程のいざこざを見ていた金剛はこちらに歩み寄り比企谷の倒れている前に膝を着く。

そして、金剛の差し出した手を掴み比企谷は立ち上がる。

 

 

「提督?叢雲を怒らせたデスカー?」

 

 

「んー?俺もよく分かんねぇんだよな。なにもしてないはずなんだが……」

 

 

いや、本当に心当たりがないんだよなぁ……強いて言えば朝の蹴り飛ばされたやつだって俺なんも悪くなかったし。

 

 

「提督なんかしたんじゃないの?あっ!提督が遅いからだ!!」

 

 

「島風、全ての基準を速さで考えるのはやめような……取り敢えず、本当になんもしてないはずだ」

 

 

島風はそう言われると頬をぷくっと膨らませて、提督が色々遅いからだよー!と比企谷に何度も言う。

比企谷はそれを適当にあしらう。

 

 

「でも、叢雲はどうしたんデスカネー?」

 

 

「さぁ?取り敢えず飯食べてから何とかしようか……鳳翔さん、よろしくお願いします」

 

 

「はい、今持ってきますね」

 

 

厨房にニコニコとしながら立っている鳳翔に比企谷は数メートル離れた位置から聞こえるように声をかけた。

鳳翔は返事をして、厨房で料理などを盛り付けた皿などをお盆に乗せていく。

そのまま比企谷の方へと歩いていった。

比企谷は、鳳翔が厨房で準備している間に近場にあった机に腰を下ろした。

 

 

「お待たせしました。本日の朝食です」

 

 

「ありがとう、鳳翔さん」

 

 

料理を受け取り、箸を使い、そのまま口へ温かいご飯を運ぶ。

 

 

「うん、美味いな!」

 

 

「それは良かったです!」

 

 

比企谷の感想に満足そうに鳳翔は頷く。

 

 

「……それで提督?叢雲さんと喧嘩なんて珍しいですね。何かあったんでしょうか?」

 

 

それとなく聞いてくる鳳翔、だが比企谷もよくわかっていない為、よく分からないと鳳翔にも答えた。

食堂には現在四人、比企谷、鳳翔、金剛、島風、四人は机を囲んでどうしてこうなったのかを話し始めた。

 

 

「そもそも、どういう経緯なのかがわからないデスネ」

 

 

「それなんだよなぁ……まず、俺が朝早くに起きたからついでに執務してたら驚かれて……蹴られた……」

 

 

「……提督……やっぱり提督が何かしたんでしょ……」

 

 

「いや、島風はなんで俺が悪いって方向に持ってこうとするんだよ!今の話の中で俺に落ち度なんてねぇだろ」

 

 

うん!俺に落ち度など無いはず!

これは覆せない事実だ。

 

 

比企谷はどや顔で島風に弁解する。

島風はまるで腐った何かを見るような蔑んだ目で比企谷を見ていた。

 

 

「そもそも、提督が朝早くに起きたのってアレを受け取とったことですよね」

 

 

「ああ、マッ缶受け取ったからだ」

 

 

「マッ缶……デスカ?」

 

 

鳳翔と比企谷は分かっているものの、朝の事をしらない金剛と島風は分かっていない様子だ。

 

 

「……提督?マッ缶って何ー?」

 

 

よく分からないからかマッ缶について比企谷に島風は尋ねる。

金剛も、マッ缶がなんなのかを知りたいような目を比企谷に向ける。

 

 

「マッ缶ってのは、まぁコーヒーみたいなやつだな……」

 

 

「コーヒーって……苦いじゃん!」

 

 

「提督は紅茶よりもコーヒーの方が好きデスカ?」

 

 

コーヒーが好きって訳じゃなくて、マッ缶が好きなんだよなぁ……まあマッ缶甘いし……。

 

 

「いや、マッ缶はコーヒーであって、コーヒーで無いんだ!マッ缶とは──」

 

 

マッ缶の長々とした比企谷の雑談の後ににいつの間にか叢雲の話からマッ缶の話に逸れてしまった。

しばらくマッ缶の話から抜け出せないことになる四人であった。

鎮守府の食堂では、四人の意味の無い話し合いが繰り広げられ、広々とした食堂には話し声が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
話は次に続きます。



明日は無理でーす(泣)


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19.ネガティブ思考

中々出せずにすみませんでした。
色々忙しくて、のんびりと出していくことになりそうですがご了承下さいませ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲を怒らせてしまった比企谷は、何故叢雲がお怒りなのかが理解できず、そのまま鳳翔、金剛、島風を巻き込んで話し合いを朝の食堂でしていた。

開いた窓から心地よい海風が吹き抜ける中で、叢雲の話からマッ缶の話に逸れてしまった状況。

早々に話が逸れていることを指摘した鳳翔によって、マッ缶の話から抜け出せた四人であった。

 

 

「提督、話が変わってしまいましたネ……マッ缶……今度飲んでみマス……」

 

 

「そうか……話、戻すぞ……」

 

 

マッ缶の話からイマイチ抜けきれていない金剛を見ながら比企谷は鳳翔と島風にも目を向けた。

 

 

「朝の時間に提督が叢雲さんに蹴られたって話ですよね?」

 

 

「その話だ、話を戻すが俺はなにもしていない!」

 

 

鳳翔の確認の問いかけに比企谷は肯定の意を示し、自分にはなにも非がないと比企谷は主に島風に向けてそう弁明する。

 

 

「提督?犯人は大体そう言うんだよー!」

 

 

「いや、それじゃどうしても俺が悪くなるじゃねぇか……」

 

 

納得していないような島風だが、取り敢えず話を進めるために一旦落ち着かせた。

……いや、むくれても駄目だから……納得してないって凄い分かりやすいから。

あと、その怒り方あざといです。

 

 

「あの提督?いいデスカ?」

 

 

「ああ、なんだ?やはり俺に非があると申すのか?」

 

 

「なっ、なんでそういう方向に進めていくネー!……そうじゃなくって叢雲は実は怒ってはないんじゃないかって思ったんデスヨ」

 

 

比企谷のネガティブな反応にすこしツッコミ気味に言葉を発する金剛。

金剛の言ったことがさも以外だったようで、比企谷は少し表情を変えて金剛を瞬きもせずに見て、驚いている。

 

 

「えと、どういうことか分かんないんだが……」

 

 

「つまり、ジャパニーズツンデレってやつデース!」

 

 

「いや……やっぱり意味わからん」

 

 

金剛の意見に対してかなり辛辣な感じで返答する比企谷、島風もよく分かっていないような感じで、鳳翔はニコニコしている。

 

 

「叢雲ってツンデレか?俺はデレてるとこ見たこと無いんだが……」

 

 

「提督、実はあのデレてないあの感じがツンデレというやつかも知れませんよ?叢雲さんは提督のことを心配していたんだと思いますから」

 

 

鳳翔は比企谷に対してにこやかにそう告げる。

 

 

「そうなのか……俺にはよく分からねぇ……」

 

 

「叢雲と仲直り、してきたらどうデスカ?喧嘩は良くないネ」

 

 

「提督おっそーい!仲直りもおっそーい!早くしてきてよ!」

 

 

優しい口調でそういう金剛と子供のように比企谷に言葉を無鉄砲にぶつける島風、うんと相槌を打つ鳳翔、意外にも島風が気を使っていることが意外である。

本当に意外だ……うん、意外だ……。

 

 

「……なら、そうするわ。取り敢えず三人ともありがとな」

 

 

比企谷の感謝の言葉を聞いて、三人はそれぞれ感じたことは違うかも知れないのだが、心なしか少し照れ臭そうな反応をしていた。

比企谷は礼を三人に言った後に急いで叢雲の居そうな場所へと探しに向かった。

金剛、島風、鳳翔は比企谷の背中を微笑ましそうに眺めていたのだった。

 

 

「ヘーイ!ゼカマシも中々提督に対して優しいデスネー!」

 

 

「なっ!?そんなことは……って!私ゼカマシじゃなーい!!」

 

 

比企谷が居なくなった食堂では金剛が島風に構っていた。

もっとも、島風はゼカマシなどと呼ばれて、少し否定ぎみな感じで接しては居たのだが、鳳翔はそれを自分の娘の和気藹々とした日常でも見るかの如く満面の微笑みを浮かべてじっと二人の話を聞いている。

 

 

「て言うか、金剛さんは私の名前を間違えないでよ!」

 

 

「英国では左から読むものなのデス!」

 

 

島風の右から島風とカタカナで書かれた所をみて自信満々にそう言い放つ金剛、結果的に島風はその金剛のみも蓋もない言葉に対して少し不機嫌になって、頬をふくれさせたままだったが、話している内に機嫌もよくなったのだった。

三人は比企谷の事で色々と話、三人の居る食堂は終始笑いに包まれる場面もあったりしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




見てくれてありがとうございます!
艦これ二期おめでとう!!


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20.仲直り

長らくお待たせしました。
というか、待たせ過ぎた……。
その割りに文字数少ないとか本当にすいません!!

反省してますよ……うん。


食堂で金剛、島風、鳳翔(さんにん)からアドバイス?のようなものや励ましの言葉を貰い、そのまま鎮守府内に居るであろう叢雲を探しに向かった。

 

 

叢雲が何処にいるのかというのは全くわからない状態であったのだが、何とか装備品を入れてある倉庫のひとつから備品整理中の叢雲を発見したのだった。

 

 

「よう、何してんだ」

 

 

「……別に、執務はどうしたのよ」

 

 

「お前がいないから金剛に仕事投げた」

 

 

「ほ、本気で言ってんの!?」

 

 

「…あぁ」

 

 

勿論嘘である。

このボッチであることを誇りに思っているエリートボッチのこの俺があんな由比ヶ浜みたいな抜けてそうなやつにギチギチの書類仕事を投げるはずがない。

普段の叢雲ならそれくらい気がつくはずだが、まあこんなすれ違いのようなことをした後だ。

俺も冷静でないようにこいつも少なからず思うこともあるのかもな。

 

 

「なにやってんのよ!計算ミスとか誤字とかばっかりで大本営に書類提出したら色々と被害を被るわよ!」

 

 

「だからこそお前を呼びにきた、執務室に戻るぞ叢雲」

 

 

比企谷がそのように言うが、驚いた表情をしたあと、やがて叢雲は顔を背けてその場に座り込んだ。

 

 

「……さっきまで、あんたにあんなこと言って、気まずいって、そう思ってたわ」

 

 

「ああ、俺もまぁ、気まずかったからな」

 

 

「あんたが声かけてきてすごく驚いたわ」

 

 

確かにいきなり声をかけたのは悪かったかもしれん。

すまん。

 

 

「いや、なんだ、お前がいないと計算系の執務がな……」

 

 

「そんなことだと思ったわ」

 

 

背けていた顔を比企谷の方に向けて叢雲は少し頬笑む。

不思議とその笑顔は自然なもののように見えた。

 

 

「司令官、さっきは急に怒鳴ったりして悪かったわ」

 

 

「いや、あれは俺が割と悪かったっぽいから、お前が謝る必要は無いんだが……むしろこっちが悪かったと思っている。その、悪かったな色々心配かけて」

 

 

「じゃあお互い様って訳ね。じゃあ和解したことだし、執務室に戻るわよ。朝のぶんがきっとかなり手付かずだろうしね」

 

 

ハラリと腰までかかる長い銀髪が揺れ、叢雲は立ち上がり倉庫の出入口に向かう。

比企谷もそれに続いて、数歩後ろを歩く。

 

 

まあ、何とか仲直りも出来て、なんだか安心した……。

取り敢えず執務室に戻って、金剛が執務してたとか嘘ついたことがバレて俺が叢雲から冷たい絶対零度の視線を向けられる以外はなんとかなってよかった。

 

 

「そういえば、後ろからつい来ているあれは何?」

 

 

「いや、な……なんだろうな……」

 

 

「ん?あんたえらく冷や汗をかいているじゃない。何か後ろめたいことでもあるの?」

 

 

ああ、忘れていた。

 

絶対金剛とかが尾行してんだろ!

俺でも分かるような下手くそな尾行だ。

辞めてくれ……マジでばれたら叢雲さんに処刑されちゃうから。

 

なんてことを内心で考えようが、伝わるはずも無い。結果的に言えば、この後金剛、島風(鳳翔さんはご飯の支度やら洗濯やらで忙しかった)は、叢雲にあっさりと見つかってこってり絞られた。

 

ついでに俺も……。

いや、なんでだよ!

 

金剛が執務してるとか嘘をついた罰らしいが、釈然としないのは俺が間違っていたからなのだろうか?

 

 

まぁ、取り敢えず。

仲直り出来たようで良かったわ。うん。

 

 

「なに悟ったような顔してるのよ! ほら、さっさとペンを動かす!!」

 

 

「もう、死んでしまう~~~………」

 

 

この後はお察しの通りに、執務室から数日分の執務を一気にやらされた。

いや、この鎮守府って仕事多すぎだわ!

 



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21.仕事が多すぎて可笑しい

旅行へレッツゴー!
ということで、今週は旅行に行きます!(^-^)


可笑しい……どうしてこんなにも仕事量が多いのか。

労働基準法に引っ掛かるぞー、そろそろ八幡の精神が火を吹いて、やがて小町のもとへ里帰りしちゃうまである。

 

 

……いや、単に小町に会いたいだけだな、それ。

仕事量のあまりの多さに、俺のキャパは既に決壊寸前だった。

 

 

いや、だってさ、

叢雲が演習とか海域の見回りとか行っている間は、事務処理とかは、全て俺が行っているのである。

 

 

秘書官を付ければ良いって?

ふっ、甘いな。

叢雲以上に仕事が出来る艦娘など、そもそもこの鎮守府には存在しない。

 

 

しっかりしている部類の神通さんも、海域に飛び出して、今頃は深海棲艦に向けて、火を吹いている頃だろう。

鳳翔さんは、家事で忙しいし、島風は何処行ってるか知らないが、捕まらないし、……いや、一応海域の警戒に当たってくれてんのか。

 

 

まあ、燃費の悪くてお留守番の金剛は如何せん馬鹿だし、なんなら由比ヶ浜と近いまであるぞ。

英語喋れても執務とかそんなやつ居るか?いや、この鎮守府に居るんだよ!

一文字目で手が止まるのとかやめてー!!

 

 

……いや、マジで困るわ。

 

 

脳内絶望会議を展開しつつも、淡々と執務をこなす。

しかし、そんな俺のもとに、面倒な奴が降臨したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、肩痛い。はぁ……」

 

 

おもいっきり伸びをしながら、油断していると、扉を開けて、目の前に立っていた。

えー……扉開いた音しなかったんですけど……。

 

 

「ん? 提督お疲れじゃん!」

 

 

「いや、なんで勝手に入ってきてんだよ」

 

 

目線の先には、最近建造をした、鈴谷が顔を覗かせていた。

 

 

「いや、鍵開いてたし、別に減るもんじゃないじゃん」

 

 

鈴谷、ごく最近だが、資材に余裕が出来てきたので、叢雲が『大型艦が無いと此処の戦力的にまだまだ不安だわ』って言っていたので、急遽戦艦レシピで建造をした。

その結果、戦艦ではなく、重巡洋艦の鈴谷が召喚されたのだ。

 

 

「はぁ、今忙しいんだよ。ほら、さっさと帰れ」

 

 

「もー、せっかく提督が疲れてそうだからアレ持ってきてあげたのにー」

 

 

黄色と黒の危険な感じの缶ジュースを取り出してくる鈴谷。

おいおい、それってもしかして……。

 

 

「おま……それはひょっとして、マッ缶……なのか?」

 

 

「もしかしなくても、これは提督が大好きと噂のマックスコーヒーだよ」

 

 

いえぇぇぇぇーす!!

いや、テンションが上がってしまった。

島風とか鳳翔さんとマッ缶を飲みながら楽しい日々を過ごしていたら、いつの間にか切れてたんだよ。

お陰で、二日前からマッ缶を喉に通していない。これは即ち、千葉県民が禁断症状を出す一歩手前。

危なかった、これは感謝だな。

 

 

「いや、ありがとな。ちょうど飲みたかった」

 

 

「えっ、良いって! 提督のために艦娘が尽くすなんて普通じゃん?」

 

 

なんて良い子なんだ。守りたい、この笑顔……いや、俺が守る笑顔は小町が一番、二番目が戸塚だ! 鈴谷、すまない……優先順位が一番でなくて。

 

 

ひしひしと、感情を上下に起伏させていると、眉をハの字にして、よく分からないといった顔になる鈴谷。

それを見て、俺は顔に出ていたか、と自覚してしまう。

ポーカーフェイスを心掛けよう、うん。

 

 

そこでふと、俺は思った。

尽くすのは普通ではないと……。

 

 

「なあ、鈴谷」

 

 

「ん?」

 

 

「例えば、俺が執務を手伝ってくれと言ったら、手伝ってくれるか?」

 

 

こんなことを聞いた後でなんだが、返事がかなり気になる。

て言うか怖い、断られた時が怖い。

断るときって、あらかた『なにこいつ?』『きもっ』『ヒキガエル……』とかって顔に出るんだよなぁ……おい、誰がヒキガエルだよ!

 

 

「そんなの……」

 

 

息を飲む……。

 

 

「当たり前じゃん! 多分私だけじゃないでしょ。皆快く引き受けてくれると思うよ。で?私に手伝って欲しいの?」

 

 

それはそれはとても良い笑顔、悪意の無い純真な顔で笑いながら、鈴谷はきっぱりとそう言った。

なんだろうか、このリア充みたいな鈴谷が、本当に良いやつに見えてきた。

俺の敵から、仲間のように俺のなかでの評価が急上昇した。……俺ってそんなにちょろいのかよ。

 

 

「なら、ちょっと手伝ってくれ。叢雲が今居ないから執務が大変なんだよ」

 

 

「おっけー、……で、どうすれば良いの?」

 

 

「ああ、適当に書類にサインとか判子とかあとは、さらりと報告まとめてくれ」

 

 

すると鈴谷、なんだが微妙な表情になり、目を逸らした。

 

 

「えっと、私……こういうの苦手なんだよね……」

 

 

こ、こいつもか……。

金剛タイプの人間なのかよ。てっきりリア充っぽいから何でもやれると思ってた、葉山みたいな。

いや、葉山のスペックで物事考えた俺がいけないわ、これ。

 

 

「な、なら。取り敢えず……取り敢えず……いや、仕事はあるんだよ」

 

 

「いや、別に気遣わなくていいから、知ってるし」

 

 

若干がっくりしている鈴谷を尻目に罪悪感が俺の元へと押し寄せてくる。

まあ、結果的には一から執務について教えるところから入った。

 

 

新人の育成は、先輩の基本。

俺は働く気は無かったが、最低限の指導力を身に付けようと努力を怠らない。材木座の意味の分からない言語とか比喩とか使用して説明したくないからだったが、まさかこんな所で生きてくるとは……。

 

 

そんなこんなで、俺と鈴谷のあたふたした執務は幕を開けたのだった。

 

 




見てくれてありがとうございます!


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22.俺が鈴谷に甘いのは、間違っていない

お久しぶりです。また会えましたね!





……エタっててごめんなさい!反省してます!m(_ _)m


執務なんてロクでもない。

だが、ロクでもないこの仕事をこなさねば、俺に給料は入らず、悠々自適な老後が送れない……いや、そもそも今働いている時点で間違っているんだよなぁ。働いたら負けであるというプライドを持った俺にとって、労働とは毒である。だいたい、俺をこんな美女だらけの場所に投入するという考え自体間違っているんだ。

 

……帰りたいなぁ。

 

と、無駄にげんなりと自己被害妄想を頭でくるくる回している。

横には今時女子高生っぽい鈴谷が書類とにらめっこを続けていた。

 

 

「……無理なら、休んでいてもいいんだぞ?」

 

 

「それ、私いる意味なくなっちゃうじゃん!?」

 

 

俺がそうやってやや低めの声で彼女に問いかけると、まるでお笑いのツッコミばりに勢いのよい返答が返ってくる。

ギリギリと歯ぎしりしながら、ゆっくりと書類の要点をまとめて鈴谷はなんとか報告書のまとめを行なっていた。

 

判子を押したりだとか、流石にそこら辺は彼女でも出来、その辺のことはすぐに終わりを告げたのだが、まだまだ面倒な仕事は多い。

 

会計報告とか、計算の苦手な俺にはちょっと何やってるか分かんない。って状態で、鈴谷も案の定計算が苦手っぽかった。というか、資材の費用とか、光熱費とか色々計算しないといけないのかよ。

多少の無駄遣いしてもいいくらいに時間に猶予を持たせてほしいところだ。

さて、そのことはとやかく言ったところで仕方がない。問題は、鈴谷にある。

 

 

……あの、計算どころか文章作成能力も中々酷いんですが。

はっきり言おう。

鈴谷に執務は向いていない。というか、事務仕事自体が彼女の性に合ってなさそうである。下っ端として働くのに慣れている俺に比べ、ここに来てまだ日にちも浅い彼女だ。当然と言ったら当然かもしれない。

 

 

「鈴谷、そろそろ休憩いれようか……」

 

 

「まじで!?」

 

 

「ああ、超まじだわ……ていうか俺無理にやらせてるわけじゃないからね?」

 

 

「分かってるって!」

 

 

本当に分かっているのか?

今思い出したかのような惚けた顔を見てしまい、軽くちょい嫌な上司みたいに自分を置き換えちゃったよ。

 

 

……いや、別に自分のことをいい提督だわ。とかナルシストな考えは持っていないが……。

っべ〜〜!……とか言う戸部みたいにポジティブじゃないし。

なんなら材木座からあのテンションを取った根暗キャラってほどまである。やだ、俺って材木座以下だった!?

まあ、材木座以下ということはないか……だって材木座だし。

変なことを考えてしまった……多分疲れているんだな、うん。

 

 

俺はマッカンを鈴谷には緑茶を差し出して束の間の休息に浸る。

それにしても、鈴谷がいると本当に空気が明るくなるというか、賑やかという俺には無縁の空気を与えてくれているような気がする。

 

 

「まあ、あれだ。鈴谷がいると執務室が明るくなるな」

 

 

「へっ!?」

 

 

しまった。柄にもないことを言ってしまった。

しかし、鈴谷は顔を俯けたまま固まってしまい、その表情を読み取ることができない。嫌われたらマジで今後の関わり方が分からなくなる。

不安を抱きつつ、そのまま沈黙を続けていると急に鈴谷が顔を上げた。

 

 

「提督は、私といて楽しい?」

 

 

唐突にそんな質問をしてくる。

想像もしていなかったようなことを言われ、言葉に詰まる。俺が楽しい? そもそも仕事中に楽しいと感じるというのはどうなんだろうか……いや、そういうことを言っているんじゃないんだろう。

俺らしい言葉で、俺の気持ちを伝える。

 

 

「一人でやっているより、気分は楽になったな。無言で黙々と作業をこなすのも嫌いじゃないが、ずっと一人というのも退屈だし」

 

 

「へー、そうなんだ。……というか、返答が捻くれてるね」

 

 

くすりと笑う鈴谷に顔を背けると、上機嫌になった鈴谷は俺の顔を背けた先に立ち、顔を覗き込んでくる。思わず顔を赤らめてしまい、さらに笑われた。

 

 

「提督って、面白いね」

 

 

「……面白かったら、友達沢山できてんだよなぁ。というか、休憩はもういいのか?」

 

 

「まだ休むに決まってんじゃん!……ほら、提督。肩とか揉んであげる♪」

 

 

上機嫌の鈴谷は、無理矢理こちらに近寄ってそのまま俺の肩に手を置く。

いや、ちょっと褒めたくらいで、心許しすぎやしませんかね。なにそれ。チョロインってやつなんですか?

 

 

俺の中で鈴谷の株が戸塚のすぐ下まで上昇していた。

 

 

「提督、どう?疲れ取れてる?」

 

 

肩揉みにそんな即効性なんてあるはずがない。……いや、美少女に肩を揉んでもらうという背徳感を加味すれば、疲れを感じないということもあるかもしれない。むしろ、耐性がなさすぎて疲れが増してしまうまである。

……おいおい、その理論だと逆効果になっちゃうんだが、何を言っているんだ俺は。逆に逆にと思考を掻き回しすぎて、最終的に無茶苦茶な結論に至ってしまった。反省しよう、うん。

 

 

「あのな、鈴谷」

 

 

「うんうん!」

 

 

いかん。鈴谷の期待に満ちた眼差しを裏切るわけにはいかない。戸塚以外にこんなにも煌びやかな瞳を持つものがいたとは……。

俺は心の底から思う。守りたい、この笑顔。

そうと決まれば、俺の返答は決まっている。

 

 

「……ああ、すげぇ癒されるわ。お前マッサージとか得意なのな」

 

 

秘技!取り敢えず褒めるである。

実際、鈴谷の肩揉みは的確に凝ったところを解してくれるような高精度なものであった。鈴谷の気分を害さないためにも少々誇張した表現をしたのだが、どうだろう。

 

 

「嘘っ、こうやって肩揉んであげたりって初めてなんだけど……」

 

 

「そうなのか。初めてには思えないくらい上手いぞ」

 

 

「えへへ、なんか照れる。提督に褒められるのって、なんだろう……心が温かくなる感じがする」

 

 

鈴谷は優しげな口調でそう言う。

そんな初々しい鈴谷の様子を俺もにこやかに眺める。……仮に叢雲にこんな視線を向けていたら、警察に突き出されるか、海底に沈められることだろう。執務中であればなおのことである。そう考えると叢雲怖すぎるだろ。もう少しヒロイン力を向上させてほしいものだ。

 

 

「……まあ、あれだな。執務はそんなに急いでやらんでもいいか。苦手なものを無理してやるなんて合理性に欠けるし、なにより俺に似合わない」

 

 

「おっ、提督サボっちゃうの?」

 

 

「断じてサボりじゃない。厳正な審査の結果サボタージュを推奨しているだけだ」

 

 

「それがサボりって言うんだよ。まあ、私もあんまり難しいこと出来ないから、提督がそう言ってくれるとちょっと気が楽になるね!」

 

 

まあ、無理を強いるのは俺のやり方ではないし、無理をするのも俺らしくない。残った分は、また叢雲にぶん投げてこっぴどく叱られるという不名誉な対価を貰っておこう。

 

 

「ということで、今日の執務はこれくらいにして……鈴谷、なにかしたいこととかあるか?」

 

 

「あっ、じゃあさ!私マンガとか読みたい!」

 

 

「そうか。……なら、近くのコンビニでマンガ本でも買ってくるか」

 

 

鈴谷に甘すぎるという指摘をしてくる輩よ。

……反論はしない。

 

 

「マジで!」

 

 

「まあ、俺もちょうど読みたい気分だったからな。叢雲にバレたら、鉄拳制裁待ったなしな危ない行為ではあるが……今日くらい大丈夫だろ」

 

 

「提督。私、提督に一生ついていくよ」

 

 

ストレスの発散は大事だから。そう、これは後々の鎮守府のために必要なことだから。決して、俺に対して純粋に優しく接してくれている鈴谷のささやかな願いを叶えるための行動ではないのだ。……ただ、利害が一致しただけであって、特に意味はない。本当に!(必死

 

 

「……じゃあ、行くか」

 

 

「うん!」

 

 

そのままテンションの高い鈴谷と共に執務を放棄し、俺はコンビニへと向かう。久しぶりのお出掛け。

騒がしいのは、そこまで好きではないと思っていたが、鈴谷とのコンビニでの買い物は少し楽しかった気がした。

 

 

……当然、後日。

俺と鈴谷は、執務をサボりマンガ本を読み漁るという奇行がバレたため、叢雲に延々と説教をされたのだった。

 

 

 

 

 

 



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23.演習への決意

アンケートにご回答くださった皆様ありがとうございます。
集計したアンケートを参考にし、今後の登場艦娘を考えております。
引き続きアンケートの募集をしておりますので、今後もよろしくお願いします。

それでは、どうぞ。



「マジか……」

 

 

視線の先にあるのは一枚の茶封筒。

A4サイズのその封筒の中には、『演習のご連絡』と書かれた書類が複数枚同封されていた。内容的は、文字通り、演習の予定が決定したので報告するとのこと。

……嫌すぎる。

有給使って、当日にばっくれてしまいたいくらいに憂鬱な気分だ。家に帰ってもいいだろうか。

 

 

「……なんだろうな。これが試練ってやつなのかもな」

 

 

「提督さん、また目が濁ってる。嫌なことでもあったっぽい?」

 

 

叢雲不在で臨時の秘書官を務めてくれている夕立は真っ直ぐにこちらをみつめてそう告げる。心配してくるような反応だから、ちょっと困る。俺の屁理屈を本気に捉えるなんて、ちょっと純粋すぎやしませんか?

危うく、優しくされたことに勘違いして惚れちゃいそうになる。いや、そこ。ロリコンとか言うんじゃありません。

 

 

「まあ、世の不条理を嘆いていたのは確かだな」

 

 

「世の不条理?」

 

 

「ああ、どうしてもやりたくないことであっても、強制的にやらせれる世界。……はぁ、休みたい」

 

 

……センチメンタルな気分になる。

だいたい仕事量もブラック過ぎる。それに加えて、俺以外の提督との交流を促してくるのは、本当に許されない。社交性などいらん。俺は必要最低限の人間関係だけで生きていけるエリートボッチの頂点に君臨する男なのだ。

 

 

「んん?提督さんはお仕事が大変ってこと?」

 

 

眉をひそめて夕立は首を傾ける。

うんうん。夕立、お前は俺の言っていることを理解しなくていいぞ。どうせ世界中のどこにおいても役に立たない言い訳だから。

 

 

「まあ、そういうことだ」

 

 

俺がそう言うと、夕立は納得したのか興味を目の前の執務へと移す。こう見えて、夕立は仕事が出来る方だ。既に予定よりも仕事の消化が進んでいる。こりゃ定時より前に仕事が終わりそうだ。……まあ、この鎮守府に定時なんて概念があるかどうか微妙なところではあるが。

普段であれば、18時頃までかかる仕事も、今日は1時間くらい前には終わっていそうな勢いである。

 

 

さて、根を詰めすぎても効率が落ちるだけだ。

 

 

「……夕立、腹減ったな」

 

 

「あっ、そう!夕立お腹空いたっぽい!」

 

 

「じゃあ、ちょっと早いが仕事切り上げて食堂でも行くか」

 

 

「そうするっぽい!提督さん大好き!」

 

 

有能で純粋で素直な夕立。

学校に通っていたら夕立は間違いなくトップクラスにモテることだろう。

 

 

「ほらほら、提督さん急ご!早くしないと食堂が混みだすっぽい!」

 

 

おまけに過剰なスキンシップまで……。恐るべし。

魔性の魅力を発揮する夕立に手をひかれながら、食堂へと向かうのであった。

 

 

そんなわけで食堂にきてみたはいいものの。

 

 

「誰もいないっぽい?」

 

 

食堂には、俺と夕立の二人だけというなんとも寂しい展開が待ち受けていた。いや、そもそも今は11時。お昼時にしては少し早いため、誰も来ていないなんてことは想定内である。しかし、食事を準備してくれる艦娘もいないというところまでは考えが及んでいなかった。

千葉鎮守府において、専属で食事を作ってくれる人がいるわけではない。だから、ここでは交代制でその業務をこなしていく必要がある。そして、今日の当番は……金剛だ。

 

 

「……もしかして、まだ寝てるとかな」

 

 

ボソリと呟くと夕立も苦笑する。

金剛は本日、食事当番を任されている。出撃などの予定もなく、この食事当番以外の用事は基本的にないはずだ。だが、ご覧の通り金剛はいない。時間的に早いというのは確かだが、それでも準備に時間がかかることも考慮するならば、この時間に金剛がいてもおかしくないはずなのに……。

 

 

「はぁ、俺も昼頃まで寝ていたい……」

 

 

「提督さん、儚い願望が混じってるっぽい」

 

 

食事が用意されていないことよりも、寝坊というワードに引っ張られしまった。分かる。俺も執務中ずっとゴロゴロしていたいと考えている。なんなら、働きたくないという理由で夜逃げしちゃうまで考えちゃう。……いや、冗談ですけどね。

 

 

「提督さん、どうする?」

 

 

「まあ、ないなら作るしかないだろ。手の込んだものは無理だが……まあ、簡単なものくらいなら作ってやるよ」

 

 

将来は専業主婦として、職場体験の希望届けを自宅と書いた男。料理スキルも人並みに自炊できるくらいはあると自負できる。

この状況なら、家事スキルを披露するのも致し方あるまい。

 

 

「夕立も手伝う!」

 

 

ぴょんぴょん飛び跳ねる夕立の好意に甘えて、俺は夕立と共に簡単にかつ大量に作れるカレーを作った。他の艦娘も同様に昼食がありませんなんていう悲惨な現場に遭遇させるのはあまりにかわいそうであるという夕立の意見によるものである。

まあ、具材とルー入れて煮込むだけだからな。料理初心者にも優しいのがカレー。そして、万国共通で愛されるほどに美味しいのもカレー。……ああ、カレーは最強なのかもしれない。

 

 

「美味しいっぽい!」

 

 

「そうか。夕立が手伝ってくれたおかげだな」

 

 

「本当に!?夕立凄いっぽい!」

 

 

「ああ、夕立はなんでもできるな。偉いぞ」

 

 

「えへへ、もっと褒めて褒めて〜」

 

 

小町にいつもしてきるように夕立の頭を優しく撫でる。

 

 

「ふわぁ、すごく癒されるっぽい〜」

 

 

夕立はとろけたような声で幸せそうにゆらゆら揺れる。俺のお兄ちゃんスキルは世界クラス。こうなることは必然。

……おいこら、俺は決してロリコンではない。

年下には優しくするというお兄ちゃんとしての本能が自然と発揮しているだけで、特別夕立に変な気を起こそうというわけではない。

頭を撫で終え、俺と夕立は再び食事を再開する。

 

特に何か特別な考えがあったわけではない。だが、俺はこの時ふと夕立に対してとあることを聞いた。

 

 

「なあ、夕立」

 

 

「ん?どうしたの提督さん」

 

 

「近いうちに別の鎮守府の提督と合同演習があるんだが……どう思う?」

 

 

なんとも曖昧な質問。

しかし、夕立はそれが何を知りたくて聞いているかというところまで追求してこない。代わりに彼女はスラリと答える。

 

 

「演習……なんか、面白そう!夕立も活躍できるっぽい!?」

 

 

無邪気にはしゃぐ夕立は、俺の心の片隅にあった不安を払拭してくれた。

楽しそうにその日を待ち望む。……俺には到底できないような考え方だな。

しかし、夕立のやる気を目の当たりにして、俺は一つだけ小さな決意をする。

 

 

演習がどのようなものであろうとも、この鎮守府にいる艦娘たちにとって有意義なものにしてやりたい。

 

 

俺にできることなど極めて少ないことは自覚しているが、それでもできる限りの後押しをしてやりたいと感じてしまった。誰かのために行動を起こそうなんて俺には似合わないと思うが、この演習は俺に対しての大本営から下される評価にも関わってくることだろう。

せいぜい、足掻いてみようか。

 

 

「夕立」

 

 

「ぽい?」

 

 

「演習……勝率を上げるんだったら、何をするのが最適解だと思う?」

 

 

「ん〜、経験を積む……とか?」

 

 

なるほど。模範的な回答だ。……しかし、俺の考えは違う。

 

 

「……演習、絶対勝とうな」

 

 

「うん!夕立頑張るっぽい!」

 

 

あえて、夕立の告げた言葉の合否を伝えずに励ますようにそう言う。

嬉しそうな夕立をよそに俺は至極冷静にその場で思考を巡らした。

問題は解決するだけが最適であるとは限らない。時には解消することによって、先延ばしにするという方法も有効なのだ。

 

 

うちの鎮守府はまだまだ始動したばかり。経験も実力も浅いところだらけだ。しかし、逆にその未熟な部分が武器になることもある。

あいにく、型にハマったやり方をするほど、素直に育ってきていないんでね。俺は俺なりのやり方で、ここにいる全員が認められるように布石を打つ。

 

 

「あっ、提督……昼食ですか?」

 

 

「提督速いね!よーし、私も負けないぞ〜」

 

 

「おっ、今日はカレーかぁ。久々に食べたかったんだよね〜」

 

 

いつの間にか12時を回っており、神通、島風、鈴谷が食堂へと入ってくる。

 

 

「このカレーね、夕立と提督さんで作ったんだよ!」

 

 

「えっ、マジで!提督の作ったカレーって、なんかめっちゃ甘口カレーになってそう」

 

 

引き笑いを浮かべる鈴谷。おい、なんでもかんでも甘くしてるわけじゃねぇよ。ちゃんと誰でも食べやすいように中辛にしたわ。

 

 

「いや、マッカンを混入させたりとかしてねぇから……」

 

 

「えっと、私は甘いカレーもいいと思いますよ」

 

フォローをするつもりだろうが、俺が甘いカレーを作ったことを時事実であるかのように言い出す神通。

 

 

「お腹すいた〜、は〜や〜く〜」

 

 

早食いを求めて、駄々をこねる島風。

 

 

「お前らなぁ……」

 

賑やかというか騒がしいというか、しかしながら、この空間が嫌いではないから驚きである。

 

 

「ほら、文句言わずにさっさと食えよ。残したら、叢雲のお説教コースな」

 

 

馴染んでいるということだろう。

これまでの俺であったら、考えられないような環境でこうして誰かと談笑をしている。

今日も千葉鎮守府は笑いが絶えない。



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24.叢雲は全てお見通し

熱出てて辛い……(ワクチンのせい)
遅くなりましたが、どうぞ。


俺が千葉鎮守府に着任してはや一月が過ぎ去った。

叢雲に教えられながら覚えた執務を日々こなし、朝早くから起床して、夜は決まった時間に就寝する。まさにハイスピード社畜ライフを送っている俺。

執務が激務なため、当然学校に通うことはなくなった。……おい、今ちょっと韻踏んでなかったか?中々いい感じじゃないか?……すみません。冗談です。

 

まあ、とにかく、俺の生活は千葉鎮守府に適したものへと完全にシフトしていた。学生気分でいた過去の俺はもうほとんどいない。目の前の仕事をひたすらに片付けることに必死すぎて、そんな余裕すらないからだ。マジでブラック。専業主婦を夢見た未来ある学生だった俺が……休日返上でヒイヒイ言いながら働くことになろうとは、いったい誰が想像しただろうか。

 

 

「……ダメだ。やはり俺が鎮守府の運営をしているのはまちがっている」

 

 

「はぁ、また始まったわ。提督の屁理屈ポエムが」

 

 

本日は、朝日が眩しい快晴の日曜日。

……そう、俗にいう休日出勤というやつである。……そもそも、俺は鎮守府にて寝泊まりしているので、休日出勤という言葉には若干語弊があるかもしれない。正しくは、永久出勤とでも言っておこうか。もう本当に号泣案件である。

 

愚痴りつつ、執務を進める俺を冷めた目で見ながら、完璧に仕事をこなしているのは、我らが鎮守府の頼れるエースである叢雲。執務に出撃にと忙しい毎日を送っている彼女であるが、常に仕事を高水準でこなしている。

時々サボりながら、死んだ目をしている俺とは真逆の存在。

 

 

「なぁ、休みはないのか。連日働いていると曜日感覚もクソもなくなってくるんだが」

 

 

労基に引っ掛かりそうなくらいに休みがない。そのことを叢雲に伝えると、肩をすくめて叢雲は動かしていたペンを置く。

 

 

「……そうね。いくら提督といえども息つく暇さえないというのは、ちょっと哀れに思うわ」

 

 

「お前も休みのないブラック社員の一人だがな」

 

 

「私は慣れてるからいいのよ」

 

 

どうでもいいという叢雲の態度は、本当に仕事に生きているというが伝わってくる。

 

 

「仕事ばかりしてるとそのうち後悔するぞ。お前も堕落する楽しさを知れ」

 

 

「私には必要ないわ。……私は艦娘。深海棲艦と戦うためだけに生まれてきた存在なのだから。アンタと私は違うのよ」

 

 

そう告げる叢雲は、どこか寂しさを漂わせる姿であった。

艦娘と提督は違う。その事実を認識していないわけではない。彼女たちには戦う力があり、俺みたいな非力な一般人とは責任も心持ちも全く違うのだろう。けれども、艦娘である彼女たちと共に鎮守府での日々を過ごす中で、艦娘という存在がただの兵器であるとは考えられなくなっていた。

一人一人にちゃんと感情があり、人間と同じように好きなこと嫌いなこと、喜怒哀楽だってちゃんとある。

 

もし世界が平和になり、深海棲艦という敵がこの世から姿を消したら、艦娘である彼女たちはどうなるのだろうか。役目を終えたからと夢みたいに消え去るのだろうか。きっとそんなことはないのだろう。

平和になった後の世界でも、彼女たちはちゃんと生きていかなければならない。その命が尽きるまで。

それなのに、来る日もくる日も仕事ばかりに明け暮れている艦娘が突然その仕事から解放されたらどうなってしまうだろうか。

 

 

答えは、人生の意味を見失う、だ。

 

 

「あのな、叢雲。俺が偉そうに言えたもんじゃないが、未来のこと……それこそ、10年、20年後のことを考えた方がいいんじゃないか。その時仕事がなくなっていたら、お前は何をしているんだ?一つのことに打ち込むってのは立派なことだが、擦り切れるまで努力を続けるってのは良くないと思うぞ」

 

 

説教めいたことを言い、はっと我に帰る。

なんとも俺らしくない。人生だ未来だと似合わないことをペラペラと喋ったと思うと恥ずかしさが一気に込み上げてくる。

 

くそっ、叢雲がしんみりした感じで社畜宣言するから思わず、仕事をしないことの大切さを説いちまったじゃねぇか。ていうか、真面目に働いている奴に働きすぎは良くないなんて、よく言えたな俺。

 

 

「……いや、悪い。失言だったわ。忘れてくれ」

 

 

慌てて、今の言葉を訂正するが叢雲は首を横に振る。

 

 

「……別にいいわよ。多分、アンタの言っていることは正しいと思うし」

 

 

「いやでもな……真面目に働いてもいないやつにそんなこと言われたら腹とか立つだろ」

 

 

俺だったら、そいつに対して当てつけとして鬼のような仕事を振ってやるとか微妙に辛い嫌がらせしちゃいそうになるぞ。なんなら、俺の分の仕事全部押し付けるまである。

俺はこんな風に自己中心的な考えを持っているが、叢雲は違うようだ。

 

 

「腹なんて立たないわよ。……確かにアンタは、集中が切れると挙動不審になるし、資材の管理とかは嫌がってこっそり他の艦娘に仕事流したりするのはあまり感心できないけど」

 

 

「ちょっと待って、なんで俺が資材の計算を他の子に任せてること知ってるの。怖いんだけど」

 

 

予想外のカミングアウトに動揺するが、叢雲は視線すら向けてこない。

 

 

「そんな些細なことはどうでもいいのよ」

 

 

「いや待て、全然些細なことじゃないから。えっ、なに?ここって監視カメラでも付いてんの」

 

 

「あーもう、話の腰を折るんじゃないわよ。アンタがそういう感じの性格だってことは私自身も把握しているつもりなの。今更ちょっとやそっと楽をしようとしたところで細かく注意しようなんて思ってないわ」

 

 

そう言い切ってから、叢雲は俺が片付けた仕事の書類をこちらに見せてくる。

 

 

「なんだよ……」

 

 

「この書類。……その、よく出来てるわ。最初に比べたら見違えるほどに良くなってる」

 

 

何が言いたいのか分からない。

 

 

「だからなんだよ……」

 

 

「私が言いたいのは、アンタは良くやってるってことよ。まともに仕事をしていないと自称している割には、頼んだことはちゃんと終わらせてる。提督、アンタは不真面目なんかじゃないのよ。信頼してるわ」

 

 

驚くことに叢雲は俺のことを高く評価してくれているようだ。

 

 

「それに、近頃は仕事が終わった後もこっそり何かしているみたいだし」

 

 

は!?

叢雲は、さも冷静にそう言う。

確かに俺は、演習に向けて下準備をしていた。誰にも気付かれないように、こっそりとだ。俺だけが知っているべき計画を叢雲は既に周知している。

 

 

「……なんで、そんなこと知ってんだよ」

 

 

「偶然よ。意図して尾行したとかそんなことしていないもの」

 

 

その言葉に信憑性はあまり感じられなかった。

しかし、そんなことの真偽に関しては、はっきり言ってどうでもいい。重要なのは、叢雲が俺がコソコソ動いていることを把握しているという事実のみだ。

 

 

「……見逃してくれないか」

 

 

「嫌よ。鎮守府内の艦娘全員に教えようかと思っているわ」

 

 

「おい、それは本当に……」

 

 

計画をバラそうという叢雲の言葉に思わず語気が強くなる。しかし、叢雲の表情は普段見せないような悪戯っ子のような不敵な笑みがあった。

 

 

「……どうしても、バラされたくないんだったら。条件があるわ」

 

 

これはフリではない。完璧に脅しである。まさか、艦娘に弱みを握られて脅される提督がこの世に存在していたとは……そう、俺だ。

彼女よりも立場が高いのは俺の方。言わないようにと命令して、口止めをするのは容易にできる。しかし、それを知らない叢雲ではない。

 

こいつ、俺がそういうことをしないと確信して言ってんな。

 

まあ、これは図星である。

流石に世話になった叢雲を提督という権限で縛りつけようとするほど恩知らずではない。つまり、俺はこの要求を鵜呑みにしなければならないということだ。なんとも情けない。しかし、不要な衝突を避ける選択をするのも、エリートボッチを極めていた俺ならではのやり方。

……見せてやるよ、俺の誠意。

決意を固めた後の俺の行動は早かった。

すぐさま執務室の床に膝をつけ、叢雲に顔を向け、余裕な声音で決め台詞を述べる。

 

 

「ふっ、土下座くらい朝飯前なんだよ……」

 

 

決まった。

スクールカースト最底辺経験者であるこの俺に怖いものなどない。土下座、反省文、罰則労働、大抵の不利益は耐え切ることができる!

 

 

「アンタの土下座なんか望んでないわよ!」

 

 

しかし、叢雲の要求したかったものはこれではなかったようだ。提督を屈服させて優越感に浸りたい感じなのかと思って床に膝ついちまったよ。

勘違い……。うぐっ、ちょっと心に。

八幡は心に大きなダメージを受けた。

……そこは大人しく土下座で納得しとけよ。早まった自分のことを盛大に恥じるが、そんな素振りを見せたところで叢雲が向ける俺へのヒヤッとした視線は変わらない。

 

 

「あのねぇ、土下座しとけばいいなんて浅はか過ぎるでしょう……」

 

 

「いや、俺にできる最大限の誠意を示しただけなんだが……」

 

 

「はぁ……自分のプライド捨ててまで、隠したいことなの?別に悪いことしてるわけじゃないんだから堂々とすればいいじゃない」

 

 

真っ直ぐとそう伝えてくる叢雲は、なぜ俺が秘密裏に動くのを望んでいるのか全く理解できないと言わんばかりにため息を吐く。しかし、俺も確固たる意思を持って動いている。

俺は矢面で堂々と立ち回るような人間ではない。裏方でひっそりと目立たないように仕事をこなす。例えそれが隠す必要のないことであったとしても、俺に根付いたその精神は変わらない。

 

 

「……まあ、注目とか浴びたくないからな」

 

 

そう呟き、俺は軽く伸びをする。

 

 

「そんなことだろうとは思ったわ。アンタは誰かに自分の功績をひけらかすような性格じゃないもの」

 

 

叢雲はまたかといったような顔をする。

しかし、俺は謙虚であるわけではない。本当に誰かの視線を集めることが嫌いなだけなのだ。

ひっそりと教室の隅っこで、平穏な時間を俺だけのために送りたいだけだ。アイラブボッチ。アイラブ千葉。アイラブ小町。

……気を遣って謎のテンションになっちまったよ。脳内貧困ボキャブラリーラップをかましながら、俺は会話しながらちょくちょく進めていた仕事を終える。

 

 

「まあ、あれだ。俺はあまり目立ちたくない。だからできれば他言無用で頼む」

 

 

「なら、私の要求を受け入れることね」

 

 

「……はぁ、分かったよ。叢雲、お前の要求を聞こう」

 

 

「聞き分けがよくて助かるわ」

 

 

結局押し切られる形で言質を取られてしまった。

一体どんなことを要求されるのやら。ややビクつきながら、叢雲の顔色を伺うと、ほんの少しだけ悪巧みしたような珍しい顔をする。

 

 

「……アンタの計画に私も巻き込みなさい」

 

 

そんな意外なことを言う叢雲は、驚くほどに頼もしいものであった。




アンケートの内容は、この先で反映させていただきます。沢山のご回答ありがとうございます。


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25.俺が勝利に貪欲になるのはまちがっていない

某日。

俺は、珍しく千葉鎮守府から出て、千葉駅前へと赴いていた。

更に付け加えるなら、この場所にてとある人との待ち合わせをしている最中である。

そわそわと落ち着きのないコミュ障全開な姿を晒してはいない。

ただぼんやりとゆったりと雲の流れる青空を見上げる。普段鎮守府での執務に集中している分、こうやって空を見上げる機会はあまりなかった。慌ただしい日々から、解放され時間の経過がとても遅いように感じる。

残念ながら、今日は息抜きをしようと思って、こんなところに出向いているわけではないが。

 

 

「ああ、比企谷くん。待たせたかな?」

 

 

どうやら待ち人が到着したようだ。

ニヤニヤしながら、緊張感の欠片も感じさせない面持ちの佐々木さん。こんなんで大本営内ではかなりの地位であるというのだから驚きである。ゆったりと歩いて向かってくる佐々木さんに軽く会釈をしながら、俺は口を開く。

 

 

「いや……そんなに待ってないっすよ」

 

 

否定の言葉を口にすると、佐々木さんは馴れ馴れしく肩を叩きながら、にこりと笑う。

 

 

「おお、嬉しいこと言ってくれるねぇ! 僕に気を遣わせないようにしてくれたのかな? うんうん! さながら、僕は比企谷くんの彼女みたいなって……おおっと、そんなに睨まないでくれよ。悪かったって」

 

 

悪いと言いながらも悪びれる素振りすら見せない。反省しているのかしていないのか、佐々木さんの表情からはそれすら感じ取れない。

睨み付ける気なんてなかったが、そんな佐々木さんの読めない態度が余計に不信感を煽るため、眉間のしわは自ずと消えない。

……というか、この人。自分のことを俺の彼女みたいな……とかシャレにならんこと言わないで欲しい。ないから。俺に彼女ができることも、佐々木さんがそんな立ち位置に居座る可能性も。……変な性癖に目覚めたわけじゃないだろうが、疑わしい発言は是非控えてもらいたい。

 

 

「……はぁ、取り敢えず移動しましょうか。人混みに酔いそうなんで」

 

 

「そうだね。あそこのカフェなんてどうかな」

 

 

佐々木さんの提案を受け入れ、俺は無言でカフェの方へと足を進める。

出会って数分、しかし疲労は既に数時間話していたのではないかと思うくらいにたまってしまった。

空いている席に腰を下ろし、注文した品が届くと佐々木さんは一息吐いてから、こちらを見定めるような視線を向ける。

 

 

「それで? 最近は順調かい?」

 

 

カフェ内でブラックコーヒーを啜りながら、諭すように佐々木さんは尋ねる。

因みに俺が飲んでいるのもコーヒーであるが、ミルク、砂糖増し増しの甘さたっぷり劣化版マックスコーヒーだ。若干苦味が残っているが、仕方がない。

 

 

「まあ、ぼちぼちっすね。取り敢えず鎮守府近海の安全は確保してるつもりですけど」

 

 

「十分だよ。よくやってくれているね。いやぁ、直々に君のことを引き抜いた甲斐があったというものだよ」

 

 

嬉しそうに微笑む佐々木さんだが、どうもそのにやけ顔が胡散臭い。

 

 

「……はぁ、ありがとうございます」

 

 

「あははっ、相変わらずテンション低いね。そんなに疑り深い眼差し向けられちゃうと流石の僕も傷ついちゃいそうだよ」

 

 

嘘つけ。

全然ヘラヘラしてるじゃねぇか。

というかこの人が泣いている絵が想像できない。何があってもニコニコしてそう。

少し苦いコーヒーを啜りながら、俺は佐々木さんとくだらない会話を続けた。意味のない会話であるが、会話自体が無駄であるわけではない。

本題を出す前の前座とも言えるだろう。

 

 

「……それで? 今日わざわざ僕のことを呼んでくれた理由。早速だけどご用件を聞こうかな」

 

 

佐々木さんの雰囲気が一気に変化する。

ピリついたと言うものではないものの、真剣さが多少なりとも宿っていることが素人目にしても感じられた。

 

 

「そんなに大層なことじゃないんですけど」

 

 

「うん」

 

 

「その、直近に控えてる演習のことで頼みたいことがあるんです」

 

 

「演習……ああ、あれね」

 

 

俺の言葉を正しく理解したのか、佐々木さんは納得したように頷く。

 

 

「演習のことか。……まあ、今回やるのは比企谷くんと新人の子の顔合わせが一番の目的でもあるから、そんなに身構えなくてもいいと思うんだけど」

 

 

「……」

 

 

「まあ、君にとっては違うのかもしれないね。……どうしても、勝ちたいって顔だ」

 

 

そう、俺は今回の演習においてあいつらに勝って欲しい。

理由は特にあるわけでもなく、俺自身の手腕が優れているということもない。だが、鎮守府で過ごす日々を肌身で体感して、俺がそう感じたのだから、仕方がない。

 

 

「佐々木さんの言う通り、俺は今回の演習で勝利が欲しい」

 

 

繕うことなくそう告げると、佐々木さんは興味深そうに表情を緩める。

 

 

「どうしてかな。君はそこまで勝負に固執するような性格じゃなかったように認識していたんだけど」

 

 

「別に、勝ちたい気分だっただけですよ」

 

 

熱血漢なんてものじゃない。

俺の声音に覇気が籠るなんてこともなければ、平常時と変わらない腐ったような目は健在だろう。ただ、今回の演習にこうも拘っているのは、自分でも驚いている。僅かな馴れ合いをしただけで、こうも感情移入をしてしまった。

 

 

「そうか」

 

 

佐々木さんはそれ以上深入りしようとはしなかった。面白そうにユラユラと身体を揺らして、空になったコップに視線を落とす。

 

 

「あの」

 

 

無言でいたままの佐々木さんに俺はたまらず声をかける。

佐々木さんはゆっくりと胸元にあるポケットからコンパクトサイズに折り畳まれた紙を取り出した。

 

 

「手段は選ばなくてもいい感じかい?」

 

 

「はぁ、まあ。ルールの穴をつければベストかと」

 

 

なんだか麻薬の取り引きみたいな会話である。しかしながら、佐々木さんは俺の返答を気に入ったのか、何度か頷いた後に折り畳まれた紙を広げて俺に見せてきた。

それが目に入った瞬間、俺はその用紙に手を伸ばしていた。

 

 

「手を貸すよ。でも、他言無用だよ?」

 

 

紙に書かれていたのは、とある艦娘の名前とその経歴。そして、『助っ人』という俺の望んだ文字が書かれていた。




久々の更新です


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