RIDDLE JOKER:真冬の学院七不思議事件 (タキオンのモルモット)
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プロローグ:如何にして俺達は季節外れの七不思議探索をする羽目になったのか
なんか病んだ後に仮面ライダーにハマってしまった変態先輩です。
リハビリがてら頭空っぽにして書きました。
しかしWいいですね、最高でした。特に最終回直前のフィリップ君が消えるシーンは五億年ぶりに泣きました。
だから最寄りのG〇Oでビギンズナイト借りてる人早く返して?
あやせと結ばれて、そこから色々と事件があってからおよそ一ヶ月。
そろそろ冬が本格的に到来する頃になるという時期になって、俺────在原暁と妹、在原七海、友人の周防恭平と先輩である式部茉優、そして三司あやせ以上五名。
理事長室に呼び出されていた。
「ふむ、集まってもらってすまないね」
「どうしたんですか?何か問題でも?」
ここにいるメンバーは全員、とある機密事項を共有している。という事はそれ関連なのだろうかと推測を立てる⋯⋯が
「君達、橘花学院七不思議を知っているかい?」
理事長から出てきた言葉は想定外のものだった。
「⋯⋯初めて聞きました⋯⋯」
「わたしも⋯⋯」
「長い事ここで生徒やってるけどそんな事聞いた事ない⋯⋯」
「私も初めて聞きました⋯⋯」
「僕も初めてだなぁ」
「ふむ、だろうな。私も最近初めて聞いたよ。」
理事長はやれやれ、とコーヒーを啜り、そう言った。
「それで、それがどうかしたんですか?」
そう、問題はそこだ。何故そんな噂で、ここまで呼び出されたのか。
理事長は立ち上がり、机の上から一枚の紙をもってきた。
「そこに学園七不思議の概要が書かれている。」
読んでみたまえ、と繋げ理事長はコーヒーを再び口にした。
────橘花学院七不思議────
・中庭の一際大きい木の下には死体が埋まっていて夜な夜な呻き声が聞こえてくる
・音楽室のピアノが勝手に鳴り響く
・美術室の像がが歩き出す
・校舎西階段の踊り場の鏡は異世界に繋がっていて一度飲み込まれたら二度と戻れない
・真夜中、どこかの寮の外壁にどでかい蜘蛛が出現する
・研究棟のどこかには隠し部屋があってそこには人の入ってるカプセルがある
・研究棟では夜な夜なアストラル使いに人体実験を行っていて、捕まると二度と帰れない
「なっ!?」
「ちょ⋯⋯」
前者五つは、何処にでもありそうな七不思議だった、が残り二つは⋯⋯所謂機密事項。
尤も、人体実験をしていた人間はこの間対処したので問題は無いが六つ目は本当に誰も知らない事の筈だ。
「い、一体誰が⋯⋯」
「⋯⋯恐らくはヤツの最後の足掻き⋯⋯だと思う。こんな噂が広まってしまえばここの評判も多少は落ちるからな⋯⋯」
「なっ、成程⋯⋯」
「で、問題はだ。既に一般生徒に軽く認知されている。それで最近、寮を抜け出した人間が出たのだ。まだそれだけで済んでいるから大丈夫だが⋯⋯何かの間違いで研究棟に辿り着いたり、そうじゃなくても警備が厳重すぎて噂の信憑性を増す結果になったら元も子もない。」
確かに。研究棟には最先端の技術があるからこそ、警備が厳重なのだが、そんな噂が立ったらそちらの方が広まってしまうだろう。
「だから君達に頼みたいのは、この噂の根絶だ。」
「⋯⋯しかし、どうやってやるんです?」
俺のその問いに理事長は笑ってこう答えた。
「君達に『誰かがこれ以上違反を犯す前にその噂の真偽を確かめる』という大義名分を与えるから『調査してきた結果学園七不思議はデマだった』もしくは『それはデマだったけど別の出来事はあった』と噂してくれればどうにかなるんじゃないかと思ってね」
⋯⋯まあ、それは確かにそうかもしれない。
「捜査メンバーは君達に任せる。それと一時的に式部君の研究棟のキーをこちらのフリーパスに変えてくれ。これは基本私しか持っていないから私の命令で動いてるという証明になる。捜査もしやすいだろう」
「⋯⋯?どうしてそこまで⋯⋯確かに違反者が出るのは問題ですし下記二つが外に出たら大変のもわかりますが⋯⋯理事長がそこまで動く理由がわかりません。研究棟の噂を無くすだけならもっとスマートな方法もあると思いますが⋯⋯」
と、式部先輩が質問する。
確かにその通りだ。態々こんなことをしなくてもやりようはあるだろう。それにバレてはならないのが下記二つなら全ての七不思議まで解決するのも────と考えたところで気がついた。
理事長の手がカタカタと震えていることに。
「私はな、一応理事長であり、研究者だ」
「?そうですね⋯⋯?」
突然の独白に咄嗟に七海が相槌を打つ。
「だから、そうだから⋯⋯お化けなんて非現実の存在を認めるわけにはいかないのだ⋯⋯」
まさか、ひょっとして────いや流石にそれは⋯⋯
「あのー⋯⋯ひょっとしてお化け⋯⋯怖いの?」
と完全に素が出てしまったあやせが問う。
「怖くない。怖くないとも。ああ決して怖くなんてないさ。例え昨日の夜音楽室から『月光』が聞こえてきて腰を抜かしててもお化けなんて怖くない!!怖くないぞ!!」
「「「「「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」」」」」
「オバケなんて嘘さ!!」
「「「「「アッハイ」」」」」
あまりの剣幕にそう答えるしかなかった。
成程、つまり昨日理事長本人がその七不思議の目撃者となってしまった。そして七不思議を調べたら下二つに機密事項があってやばいと思った。
本来ならその二つを手っ取り早く消すことを考えたのだろう。だがそれよりも音楽室の音楽を聴いてしまった。
それにより他の七不思議も嘘じゃないかもしれないという疑念が理事長の中で生まれてしまった。
そして、残念なことに理事長は根っからお化けを信じるタイプで、物凄く恐れているのだろう。
だから、下記二つが七不思議に紛れ込んでいる事実を俺達に話す序に、他の七不思議も調べてもらう口実になるかもしれない、と考えたのか⋯⋯。
「勿論、必要なものはこちらで揃える!!御札だろうが盛り塩だろうが揃える!!だから、宜しく頼めないだろうか!?」
あまりの必死な形相に、皆が後ずさった。
考えてほしい。理事長のような大の大人、それも強面のオッサンが、七不思議に怯え涙目で、子供に頭を下げている。そりゃあドン引きする。
「ま、任せてください、理事長」
これ以上、そんな大人の悲しい姿を見たくなかった俺達がアイコンタクトで出した結論は了承。それを代表して俺が伝える。すると────
「すまないっ⋯⋯!!本当にありがとう⋯⋯っ!!」
涙ながらに、九十度に腰を折り、誠心誠意感謝を伝える理事長を見て、ここに居た全員はこう思った。
(((((⋯⋯ああ⋯⋯面倒なことになったな⋯⋯)))))
こうして、俺達の学院七不思議調査は幕を開けた。
────この後、とんでもないことになるとは、まだ知らなかった。
今は夏だけど作中は冬。
理事長普通にいい人だったからさ、ついギャグキャラにしてみたくなっちゃったんだ。
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第一話:いつものメンバーで
さて、あの話を聞いてから一日後、俺達は二条院さんと壬生さんに協力を頼んだ。
────え?何で一日経ってるかって?理事長が「念の為だ」っね御札用意してきたんだよ。それもかなり効くと噂の寺から。⋯⋯幾らしたんだろうか、これ。
まあ、そんなこんなで放課後に誘っている訳だが。
二条院さんは「成程、わかった。違反者を出さない為に、そして理事長の許可もあるなら問題は無い。」と承諾してくれた。壬生さんを呼んだのは⋯⋯主に七海の為だ。
確かに七海は仕事上、夜出歩くことが多く、大して怖くない、とまぁ実際そうなのだが。偶にやってる恐怖映像何連発!!みたいな番組を見てそれはそれは大泣きしていたので、多分マジで心霊現象が起きたらパニくるだろう、と判断しての人選である。
二条院さんに協力を仰いだ理由は何も研究棟の事情を知らない人間が一人でもそう証言してくれれば、簡単に周りは信用してくれるだろうと思ってのことだ。周りからの信頼もある二条院さんの言葉なら信じるだろう。理事長も許可してくれたので問題は無い。後は警備の人達とスムーズに話を進めるためだ。
さて、これでいつものメンバーとなった訳だが。
「決行するのはいつなんだい?」
「明日の夜一時から明け方まで⋯⋯って感じかな?」
「え?なにか理由があるのか?」
「⋯⋯一般的に幽霊が現れやすい⋯⋯いや、現れやすいと言うより目撃情報が多いのは丑三つ時と呼ばれる時間帯だ。その時間帯は凡そ午前二時。その一時間前から動いて七不思議のうちの二つ、研究棟の幽霊が関わっていない七不思議を先に調べる。その後丑三つ時にじっくり幽霊の有無を調べればいい⋯⋯というわけだ。数が多いのはオカルトの方だからな。」
理事長がその時間帯に音楽を聴いたから、とは口が裂けても言えなかった。
「⋯⋯随分詳しいね暁くん⋯⋯」
「お前こそ中二病なんだからこれくらいは知ってるかと」
「丑三つ時くらい知ってるわ!!後中二病じゃないから!!」
いや、アストラルを行使する時のあの呪文は間違いなく中二病を患ってるだろ。
とは突っ込まず、無視して話を続ける。
「理事長曰く、『不用意に薬品に触れたりしなければ調査しても構わない』と許可をもらった。つまり棚に触れても問題ない⋯⋯これで心置き無く調査できる。」
「成程⋯⋯わかった。では日付が変わったら集合⋯⋯という訳だな?了解した在原くん。」
「ああ⋯⋯にしても二条院さんってオバケとか大丈夫なタイプなんだな?」
「ん?ああ⋯⋯時代劇だと『幽霊の正体見たり枯れ尾花』とよく言うだろ?実際そうだと思ってる。」
ぐっ、とガッツポーズを作る二条院さんの手は微かに震えていた。⋯⋯急に不安になってきた。
「そういう在原くんは平気なのだな」
「ん?まあ、最悪アストラル発動して殴れば効くんじゃないかなと思ってる。元は人間だし」
「の、脳筋だ⋯⋯」
七海が何か言っているが無視だ。
「まあいい⋯⋯問題は⋯⋯あっちだよなぁ」
そう言って俺は後ろを見る。
「れれれれ、冷静に考えたら⋯⋯め、めめめ、めっちゃ怖いじゃん、何、木の下に死体ってあばばばばばば」
とガタガタ震えてる式部先輩がそこに居た。
「しっかりしてください式部先輩、あくまで噂ですから⋯⋯」
「で、でも理事長は聞いたって言ってるんだよ!?」
どうやら全く幽霊がダメなようだ。⋯⋯それは慰めているあやせも同じ筈なのだが。というか茉優先輩はサラリととんでもない事をばらすな。気づかれてないからよかったけど。
「ていうか三司さんは平気なの?」
「私も確かに怖いですけど⋯⋯暁が守ってくれますから」
「ねえ慰めるつもりで独り身の心抉るのやめて!?」
「任せろあやせ、お前の事は命にかえても守ってやる」
「暁君も乗っかるの!?ぐふぅ⋯⋯カップルめ⋯⋯」
そりゃあんな事言われたらこう返すしかないじゃないか。まあしかし⋯⋯
「先輩、無理についてこなくても良いんですよ?最悪研究棟さえ済んでしまえば先輩は帰っても特に問題ないんですから」
「こんな噂聞いて一人で眠れると思ってるの!?最悪原因究明するまでは怖くて眠れないよ!!」
「あっ⋯⋯そう⋯⋯」
「しかも研究で偶に寮に帰るのが遅い時もあるんだよ!?その度にビクビクしながら帰るのやだよ!!」
まあ、本人がこう言ってるなら仕方がない。ちゃんと最後まで付き合わせないと納得しないだろう。
「まあ取り敢えず一時出発だから⋯⋯最低でも零時五十分に寮の前に集合。そこから研究棟を調べてその後近い順から全ての七不思議を攻略していこう。」
「「「「「おー!」」」」」
こうして橘花学院七不思議調査隊が結成された。
⋯⋯因みに御札は一人一枚、念の為ちゃんと配った。
────オマケ────
大体午後三時くらいの理事長
「⋯⋯これだけあれば充分だろうか⋯⋯」(部屋中御札びっしり)
「いや、まだ足りない⋯⋯何か魔除けとか⋯⋯」
「⋯⋯!!これだっ!!」
────数分後────
あやせ「失礼します、理事長⋯⋯」
理事長「びっくりするほどユートピア!!びっくりするほどユートピアァ!!」
あやせ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
理事長「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
あやせ「⋯⋯⋯⋯失礼しました」
理事長「待て!!待ってくれ!!誤解なんだ!!」
あやせ「寄るな変態!!その玉潰されたいか!!」
※この後誤解を解くのに一時間かかった。
最後の蛇足は「そういやこんなのあったなぁ」って思って入れた。後悔はしてない。ギャグだもん。
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第二話:わかってたろ?ここが一番ヤバそうって
それはそうとメモリアルクエスト再び出ましたね。呼符がうめえ。
午前一時、研究棟前。
在原暁、在原七海、二条院羽月、式部茉優、三司あやせ、壬生千咲、周防恭平。
以上七名、全員集合。
「⋯⋯まあ、ぶっちゃけた話。何調査しろって話なんだけどな。人居るし。」
「確かに⋯⋯研究棟は人が居るからあまり怖くないねぇ⋯⋯」
「お化けが出るなんて噂がある訳でもないしな」
「大体なんで態々こんな事を⋯⋯?疑念を解消するだけなら見せられなくても少しくらい自由見学の期間を与えたりした方が手間が掛からないんじゃないのか?⋯⋯理事長から何か聞いてないのか在原君」
「あー⋯⋯」
まさか理事長が心霊現象を体験してしまい、恐怖し、こちらが口実なんて言えるわけがない。
というかあの理事長がオバケが苦手とは⋯⋯想像もつかなかった。
「まあ、俺達は理事長に信頼されてると思っておけばいいと思うよ。」
取り敢えず、テキトーに誤魔化した。
あの後、隠し部屋のスイッチ周りは秘密を知っている俺達が捜索し、特に何も問題なく、研究棟探索は最後の一部屋となった。
「結局、何も無かったな」
「まあ、研究棟に関しては幽霊など関係ない、ただの噂話だ。何も無いのは当たり前だ。」
「ですねぇ、というか何でそんな話が今更出回ったんですかねぇ⋯⋯?私友達からここ最近になるまで七不思議なんて聞いたことないですよ?」
何も知らない二条院さんと壬生さんはそう呟く。やはり根も葉もない噂話として認識されているらしい、七不思議諸共。
「そもそも七不思議事態が不自然だ。」
「?何を言ってるんですか二条院先輩、七不思議なんて存在自体が不自然じゃないですか。」
「ああ、そういう意味ではなくてな。⋯⋯実はこの捜査を開始する前に、知識として七不思議というものを調べておいたのだが⋯⋯あまりにも『七不思議』という感じがするのだ。」
「?と言いますと?」
「うむ、調べたところ⋯⋯例えば、旧校舎のある学校では『旧校舎に女の霊が出現する』とか、不謹慎ではあるが、自殺者の出た学校では『自殺者の霊が彷徨っている』とか。所謂、特色が出る訳だ。だがこの学院の七不思議は、この研究棟の二つ以外、あまりにもテンプレすぎる。」
「成程⋯⋯つまりこの学校にありそうな噂がこの研究棟の噂以外ないという事ですか?」
「うむ、桜の木に死体が埋まっている、なんてものはよく聴く話だし、音楽室も美術室も、あの辺は全部テンプレだ。だから変なんだ。まるで下二つを広める為に七不思議という形で広めた────そんな風にも思える。」
「「「「「ゑっ」」」」」
ヤバイ、二条院さんを連れてきたのは失敗だったかもしれない⋯⋯。
「まあ、所詮誰かのイタズラだろう。この研究棟の噂が本当なら、理事長がそれを主導している、という事になる。私は理事長がそんな事をするとは到底思えない。」
「「「「「ホッ⋯⋯」」」」」
良かった⋯⋯!!二条院さんが人を疑う事を知らないタイプの人間で本当に良かった⋯⋯!!
万が一少しでも捜査しようとしてたら全力で止めなきゃならない所だった。
「まあ、そうですよね。確かにこんな噂流したところでメリットなんてありませんもんねぇ。」
危なかった、本当に危なかった。
彼女達二人を除く全員で冷や汗をかきつつも、最後の一部屋の探索を終わらせ、俺達は研究棟の出入口へと向かった。
「すいません、理事長からの頼みとはいえこんな夜遅くに⋯⋯」
「いやいや、理事長の頼みならばしょうがないよ。まあ、何も無かったろう?」
「何も無くてよかったです⋯⋯一応私も出入りしますし⋯⋯」
「ははっ、そうか、式部君はこういうのがダメな人間か!!」
「はは、あはは⋯⋯」
警備員の人達と談笑しつつ、次に見て回る噂に目を通す。
「暁、次はどうするつもりなんだい?」
「そうだな⋯⋯取り敢えず次は一番面倒臭いの行ってみるか。」
「となると、木の下に死体が埋まっていて、夜な夜な呻き声が聞こえるってやつだっけ?まあ確かに土を掘らなきゃならないし⋯⋯」
「取り敢えずスコップを寮から取ってこよう、確かあったはずだ。」
二条院さんがそう言って、他の皆も異存なし、と言って一度寮に帰ろうと足を向けた瞬間────
何かの割れる音がした。
即座に振り返り、音のした方を見る。上。窓が割れて、ガラスが降っていて、その落下地点には────
「あやせっ!!」
能力を最大限に解放し、最高速で走り出す。そのままあやせの元へ辿り着き、あやせを押し倒し、上に乗ってガラスの破片を背中で受け止める。焼けるような痛みがするが、どうってことは無い。
「暁!?」
「⋯⋯ってぇ⋯⋯無事か?あやせ⋯⋯」
「何やって⋯⋯暁こそ大丈夫なの!?」
「大丈夫だ、問題ない。」
実際、あの時のように出血は酷くない。ただのかすり傷みたいなものだった。
「二人とも無事か!?」
そこから二条院さんを皮切りに集まってくる。特に問題は無いと伝え、七海に治療を頼んだ。
「ふぅ⋯⋯もうヒヤヒヤさせないでよお兄ちゃん⋯⋯」
「悪い悪い、つい身体が⋯⋯」
「全く⋯⋯」
「暁、大丈夫なの?」
「大丈夫だ、七海が治せる範囲みたいだしな。特に問題は無いだろう。あやせこそ無事か?」
「うん、貴方のお陰でね。ありがとう、暁」
「恋人を守るのは当たり前だ。⋯⋯とまぁそれは置いておいて⋯⋯」
何故、ガラスが割れたのか。
「いきなりガラスが割れるなんて⋯⋯」
「それも外にガラスが降ってきた、という事は研究棟内部から割れたということだな。問題はこれが事故なのか故意なのか⋯⋯故意だとして誰がなんの為にやったのか⋯⋯」
先ずあやせを意図的に狙った、これは流石にないと思う。あやせを狙っていた連中は全員捕縛した。もう残党もいないと情報を吐かせた。
それが嘘だという可能性もある。が、可能性は限りなくゼロと言っていい。仮に残党だとして今更何故、という話になる。
となると他は────
「大丈夫か君達!!」
「「理事長!?」」
そこまで思考していた所で、理事長が騒ぎを聞き付け飛んできたようだ。
「一応七海に傷を塞いでもらったので無事です」
「そうか⋯⋯それは良かった⋯⋯しかし何故研究棟の窓ガラスが⋯⋯?」
「理事長、一応聞きますがヒビが入っててたまたま壊れたとかそういうのは考えられませんか?」
「無い。仮にヒビが入っていたとして⋯⋯例えば突風で石が飛んできて、それがガラスに当たった、と言うなら、まあ納得はできる。だが、見ての通り風はゼロ。更に外側にガラスが散らばっている事から内部から壊されたのは間違いないだろう。」
つまり、人為的な仕業以外、考えられないという事だ。
「さ、暁君!!大変!!大変なのっ!!」
「式部君?どうしたのだそんなに慌てて⋯⋯」
「り、理事長!?いや、とにかく大変なんです!!ぼ、防犯カメラのえ、映像がが」
「防犯カメラの⋯⋯」
「⋯⋯映像?」
警備員室は混乱の渦に包まれていた。
「何事だ!?」
「り、理事長⋯⋯!?こ、こちらを⋯⋯」
理事長に続き、入った俺達も全員映像を見る。
────誰もいない部屋
何者も居ない、その部屋の隅の1mを超える大きさの観葉植物がふわり、と浮いた。
そのままそれは、まるで誰かが振り回しているかのような軌道で回転して────
ガラスにぶち当たった。
「なっ⋯⋯」
「馬鹿な⋯⋯!!」
「嘘⋯⋯でしょ⋯⋯!?」
「こ、これは⋯⋯」
「じょ、冗談⋯⋯だろう?」
「まさか────」
「────ポルターガイスト⋯⋯?」
茉優先輩の声が、やけにクリアに聞こえた気がした。
さぁ!ややこしくなってきたぞー(白目)
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