魔破竜人リントヴルム 第2部 (魔破竜人リントヴルム製作委員会)
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野戦!力の代償の結末

知床半島か、富士の樹海か…宗麟とヴィヴィルと九頭龍博士は相談した結果、富士の樹海のNightmare matterを回収することに決まった。ヴィヴィルの体内からの反応を頼りに富士山へやってきた一行だが、登山客が謎の爆発に巻き込まれて死亡する事故があったために警察が警戒態勢を敷いていた。何とか警察の目を盗み、樹海に踏み込む3人だったが、そこへボロボロのジャージを着たみすぼらしい男が現れた。

 

博士「君は…まさか自殺志願者か?」

 

男「はっ、かつては俺も自殺を考えていたがな…その時に煉光財閥に拾われた。そして…この樹海に入った奴を手当たり次第に殺してるんだよ!それが仕事だからな!ここから先は一歩も通さないぞ。」

 

どうやら男はネオ・キマイラだったようだ。ガントレットを起動した。「アモン」、「クレイモア」!Docking!Phase RED!『クレイアモン』!

 

悪魔のような姿のクレイアモンは宗麟達に剣を抜いて襲いかかる。宗麟も負けじとリントヴルム、ファフニールフォームに変身して剣劇を繰り広げる。だが、戦いの最中にクレイアモンは目からビームを地面に向かって発射する。リントヴルムは不思議な行動に首を傾げるが、ヴィヴィルが叫んだ。

 

ヴィヴィル「すぐにその場から離れて!」

 

リントヴルムはヴィヴィルの指示通り、クレイアモンから距離を取る。すると、突然地面が爆発した。どうやらビームを当てた場所に地雷を埋め込める能力があるらしい。クレイモアと合体しているからだろうか。

 

宗麟「もしかして登山客を爆破して殺したのもお前か!?」

 

クレイアモン「ああ、そうさ!楽しそうに山を登ってるのが腹立たしくて爆殺してやったんだ!」

 

宗麟「なんて奴だ…許せねえ!」

 

リントヴルムは反撃に必殺技のドラグーンバーストスラッシュを食らわすが耐えきられてしまう。だが、九頭龍博士が護身用に持っていた『高出力電子レーザーキャノン MarkⅡ』でクレイアモンに追い打ちをかける。さすがに命の危機を感じたのか再び地雷を爆発させ、クレイアモンはどこかへ逃走してしまった。

 

ヴィヴィル「煙幕みたいな方法で逃げたわね…でも、あのクレイアモンってネオ・キマイラ…なかなか手強いわ。てことはこの先には奴みたいなネオ・キマイラがゴロゴロいるってことなのかしら?」

 

博士「その可能性は充分にある。しかし、1体でここまで苦戦していたら我々が保たない…どうすべきか。」

 

すると、変身を解除した宗麟がハッと気づく。

 

宗麟「博士、電子レーザーキャノンをリントヴルムに当てれば『リントヴルム・エレクトリック』にパワーアップできるんじゃないですか?Inferno総統を倒した時にみたいに!」

 

博士「いや、そう簡単な話ではないのだ。確かにリントヴルムのパワードスーツには電子レーザーキャノンを当てればエネルギーを吸収できる機能はある。だが、今まで黙っていて申し訳なかったが…成功率は50%なんだ。」

 

ヴィヴィル「じゃあ、あの時は50%の成功を引き当てただけってこと?」

 

ヴィヴィルの言葉に博士は首を縦に振る。そして、最後に恐ろしいことを付け加えた。

 

博士「もし失敗すれば…宗麟は感電死してしまうだろう。」

 

(続く)

 



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漆黒!捨て身の戦の結末

ヴィヴィルの体内にあるNightmare matterの反応をもとに、ついに富士の樹海に隠された2つ目のNightmare matterを発見した宗麟達。だが、そこへまたもやクレイアモンが現れた。しかし、クレイアモンの様子がおかしい。クレイアモンは再びガントレットに触れる。すると、黒いオーラがクレイアモンを包み、このような音声が流れた。

 

「ネオ・キマイラ…Phase Black!Dead or alive!」

 

オーラが晴れるとクレイアモンは雄叫びをあげながら突撃する。ヴィヴィルはとっさにバリアで皆を守るが、剣撃を2回受けただけでバリアが破壊されてしまった。宗麟はリントヴルム、ファフニールフォームに変身するも地雷の爆発で吹き飛ばされてしまう。ダイナマイトの爆発ですらびくともしないファフニールフォームが吹き飛ぶなどとんでもない威力であることが明らかだろう。

 

宗麟「博士…このままでは俺達は負けてしまいます…どうか俺にレーザーキャノンのエネルギーをください!」

博士「いや、しかし、失敗すれば君は死んでしまうぞ?それでもいいのか!?」

宗麟「ですが、もうこれしか方法がありません!早くお願いします!」

クレイアモン「何をごちゃごちゃぬかしてやがる!そろそろくたばれ、リントヴルム!」

 

満身創痍のリントヴルムに再びクレイアモンの攻撃が襲いかかる。見かねた博士はついに決断し…レーザーキャノンの引き金を引いた。レーザーがもろに当たり、苦しむリントヴルムだが、パワードスーツが光り輝き出した。何と2度目も成功したのである。リントヴルムは「リントヴルム・エレクトリック」にパワーアップし、クレイアモンの地雷の爆発も電磁バリアで塞ぎ、反撃の必殺技の「ドラグーンエクシードバーストスラッシュ」でクレイアモンを見事に撃破したのであった。

 

しかし、クレイアモンの変身が解け、人間の姿に戻った自殺志願者の男の脈を測ってみると…死んでいた。その事実に驚くヴィヴィルと狼狽える宗麟。そこへ一機のドローンが飛んできた。

 

ドローン音声「Phase Blackに引き上げたにも関わらず、負けるとは愚かな地球人だ。」

宗麟「何だこのドローンは!?お前は誰だ!」

ドローン音声「我が名はデルミエン星、エラクレル帝国大臣『バラノイアス』。しかし、末端の存在とはいえ、Phase Blackのネオ・キマイラを倒すとは…仕方ない。今回は我々の負けを認めよう。それに免じてこの場所に隠したNightmare matterは貴様達に譲ろう。ただし、まだ地球にはNightmare matterがあと4つ残っている。エラクレル帝国の計画を始動するためだけならば2つも我が手にあれば十分だ。では、さらばだ。下賎な地球人共よ。せいぜい、短き余生を楽しむが良い。」

宗麟「ふざけるな!待て!」

 

だが、ドローンは天高く昇って行き、虚空へと消えた。宗麟達はただ唖然と突然現れたドローンを見送るしかなかった。

 

 

その頃、宗麟達がいる場所から約3kmほど離れた地点では…クレイアモンの他にもう1体、Nightmare matterを守っていたネオ・キマイラ「ナギナタラスク」がいた。しかし、ナギナタラスクはすでに死体の状態だった。人間に戻る間も無く殺されていた。

 

紅鬼「とほほ、何でオラだけ知床に連れて行ってもらえなかったべか。蒼鬼のやつは今ごろ姐御と北海道でイチャイチャしてんだべか…羨ましいべ。」

 

愚痴をこぼしながら血痕の付いた斧を担ぐオーガアックスの姿があった。どうやら、彼がナギナタラスクを倒したらしい。

 

紅鬼「しかし、見張りのネオ・キマイラは大したことなかったが、肝心の『ないとめあまたあ』はどこにあるべか?」

 

どうやらヴァネッサ陣営もNightmare matterを狙って本格的に行動を開始してるようだ。

 

(続く)



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闇討!魔弾の射手の結末

知床半島の森の中を進むヴァネッサと蒼鬼。2人は歩きながらこんな会話をしていた。

 

ヴァネッサ「ところで、なぜ紅鬼を富士の樹海の偵察に向かわせたのだ?偵察ならお前の方が向いていると思うのだが…」

蒼鬼「いや、姐さんと紅鬼を2人きりにしたらマズイと思いましてですね…」

 

ヴァネッサと紅鬼と蒼鬼は同じアパートに住んでいるのだが、紅鬼はたまにヴァネッサに度が過ぎる悪戯をする。ヴァネッサの風呂を覗いたり、ヴァネッサの尻を触ったりなどである。しかし、当のヴァネッサは「風呂に入りたいなら私が入ってるからもう少し待て」とか「背中にゴミでも付いてたか?」とまったく気にしていない。だが、それでも紅鬼と2人きりにするのはいろんな意味で危ないと思い、蒼鬼が同行したのであった。

 

蒼鬼「姐さん、喉乾いてませんか?水なら俺がたくさん用意してあるので良かったらどうぞ。汗を拭きたいならタオルもありますよ。」

ヴァネッサ「すまないな、蒼鬼。」

 

さすがはホストクラブでバイトしてただけはある蒼鬼。女性のケアはお手の物のようである。2人は歩き続けて羅臼湖にやってきた。煉光財閥から奪ったNightmare matterの隠し場所が記された地図によると羅臼湖の湖底に隠してあるという。さっそく2人は羅臼湖に近づくが、その時…

 

蒼鬼「ぐわっ!?」

ヴァネッサ「どうした、蒼鬼!?」

 

急に蒼鬼の左肩が何者かに撃ち抜かれた。振り返ると木の上にネオ・キマイラがいた。その名は「スナイバーン」。どうやらここの湖周辺でNightmare matterを守る番人の役割を担っているようだ。スナイバーンはライフルのような弾丸を指先から発射可能であり、木の上から2人を狙撃しようとしていたのである。ヴァネッサはリンドレイクに、蒼鬼はオーガランスに変身するが、正確に死角から飛んでくる弾丸に防戦一方になる。

 

ヴァネッサ「このままではジリ貧だぞ!どうすれば…」

蒼鬼「姐さん、俺に考えがあります。賭けのような方法ですが…」

 

ヴァネッサは蒼鬼の策に少し躊躇うが、もうその方法しかないと承認し、スナイバーンに向き直り、何とリンドレイクの変身を解除した。

 

ヴァネッサ「貴様の目的は私を捕縛することだろう?こちらにはもう打つ手がない。大人しく投降しよう。」

スナイバーン「物分かりが良いな。では、そちらに向かうから待っていろ。」

 

スナイバーンは木から降りてヴァネッサと対面する。だが、スナイバーンには疑念があった。

 

スナイバーン(待てよ…こんなにもあっさり降参するだなんて…もしかしたら罠かもしれない…仕方ない。ここは慎重に行こう)

 

スナイバーンはヴァネッサを捕縛する前に「持ち物をすべて捨てろ」「その後、両手を挙げろ」と細かく指示する。ヴァネッサは指示通り、キューブ状になったパワードスーツやナイフ、さらには財布までもを地面に置いた。

 

スナイバーン(何!?本当にただ降参しただけだったのか?)

 

しかし、その直後、

 

蒼鬼「もらった!」

 

オーガランスがスナイバーンの背後から飛び出し、槍でスナイバーンを後ろから貫いた。どうやらこの一連の流れは蒼鬼の作戦だったようだ。ヴァネッサもスナイバーンがダメージを受けた隙を見計らって再度、リンドレイクに変身。必殺技の「ドラグーンシャドウブレイク」でスナイバーンを撃破するのであった。

 

ヴァネッサ「蒼鬼の作戦、うまくいったな。しかし、よくこんな作戦思いついたな。」

蒼鬼「地球に来た時に偶然読んだ『三国志演義』って書物に出てきた「空城の計」を参考にした作戦なんですよ。あえて敵を自分の陣地に簡単に招き入れて敵の警戒心を誘う作戦ですね。」

 

もし、これが本能のみで動くゲノム魔獣が相手だったら失敗し、ヴァネッサは死んでいただろう。しかし、人間の理性や思考力が合わさっているネオ・キマイラだからこそ、この作戦は成功したのである。

 

ヴァネッサ「すまない、蒼鬼。今日はお前に助けられてばかりだな。」

蒼鬼「俺は死にかけていたところを姐さんに拾われた恩がありますからねぇ。構いませんよ。好きなだけ頼ってくださいな。」

ヴァネッサ「ありがとう。私はこんな優しい部下を持って幸せ者だ。」

 

だが、和やかなムードになっている場合ではない。ヴァネッサと蒼鬼は羅臼湖の湖底にあるNightmare matterを回収に向かうのであった。(続く)




【おまけ】(※与太話です)

ヴァネッサ「湖底に潜るために水着とやらを用意したぞ!」
蒼鬼「姐さん、水着買ったのですか?」
ヴァネッサ「うむ。なかなか機動力が高そうなものを格安で売ってもらったのだ。スリングショットというのだが…」
蒼鬼「ダメっすよ、姐さん!?そんな紐みたいな水着は!胸とかお尻とかはみ出ますって!ほら、俺はオーガランスに変身しますから、姐さんは俺が持ってきたウェットスーツ使ってください。」
ヴァネッサ「何!?そうなのか、蒼鬼。そういえば、これを売ってくれた商人は後でスタジオに来てほしいって名刺をくれてな…」
蒼鬼「そのスタジオは後で紅鬼と一緒に潰しに行きますね。絶対いやらしいアレじゃん…はあ、姐さんの警戒心のなさは頭が痛いっす…」


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禁忌!願望の最果ての結末

高校2年生の友里恵は学校の授業で博物館を訪れた。つまらないと苛立っていた友里恵は少し魔が差して「関係者以外立ち入り禁止」の部屋に入ってしまう。そこにはガラスケースの中に入った壺があった。友里恵は好奇心からガラスケースを外し、壺の蓋を開けてしまった。その時、何か煙のような物が吹き出し、友里恵の頭上で消えた。友里恵はその光景に呆気にとられるが、この部屋に近づく足音でハッと我に返り、部屋から逃げた。一方、部屋の扉を開けた守衛の男は驚いていた。

 

守衛の男「蓋が開いている!?まずい…奴の封印が解けてしまったようだ。」

 

そのガラスケースには「開けるな危険」と張り紙が貼ってあったが、友里恵は見逃してしまったようだ。

 

その夜、枕元にアガシオンと名乗るアラビア風の装いと頭にターバンを巻いた青年が現れ、「何でも願いを3つだけ叶えてやろう」と友里恵に声をかける。友里恵は半信半疑で「明日、憧れの先輩に告白するから成功させてほしい」と頼む。

 

翌日、友里恵は部活の帰りに先輩に呼び出される。何と、その先輩も前から友里恵が好きだったらしく、今日告白しようと思っていたのであった。友里恵はもちろんOKし、一緒に自転車で2人乗りをして帰る。だが、そこでとんでもないアクシデントが起きた。居眠り運転をしていたトラックが友里恵と先輩の乗った自転車に突っ込んで来たのである。その事故のおかげで友里恵は足が動かなくなるほどの重傷を負い、最悪寝たきりになるかもしれないと医師に宣告されてしまった。

 

友里恵はまた再びアガシオンを呼び出し「私の足を今すぐ治して」と願う。すると、ある外国人の医師からアメリカの病院で手術をすれば治ると連絡が来たために友里恵はアメリカで治療を受け、見事に足が完治した。しかし、後に衝撃の事実が舞い込んできた。何と友里恵の足を治すための莫大な治療費を母親が負担しようと自殺してしまい、その保険金で友里恵の足は治ったというのだ。悲しみに暮れ、泣き叫ぶ友里恵。友里恵の父親もやりきれない表情で娘を見つめていた。

 

一方その頃、九頭龍研究所では…

 

クシナ「ヴィヴィルちゃん、「猿の手」って小説知ってるかしら?」

ヴィヴィル「いえ、知らないわ。」

クシナ「猿の手のミイラが出てくる話なんだけど、その猿の手は何でも願いを3つ叶えてくれる代わりに何らかの代償を願った人に与えるの。願いが壮大であるほど大きくて残酷な代償が返ってくるのよ…」

ヴィヴィル「ふーん。また読んでみようかしら?あら、そう言えば宗麟は?」

クシナ「博士の夜食を買いに行ってるわよ。」

 

その夜、友里恵は涙ながらにアガシオンに懇願する。「お母さんを生き返らせてほしい」と。アガシオンが頷いた直後に家のドアを叩く音がした。友里恵が恐る恐る扉を開けると…そこには土と泥に塗れ、身体が半分白骨化している母親のゾンビが立っていた。パニックになり、鍵を閉める友里恵。しかし、母親のゾンビは窓を割ってリビングに入って来た。急いで家を飛び出す友里恵だが、ついにガレージに追い詰められてしまった。

 

絶体絶命の友里恵だったが、買い物帰りの宗麟が偶然近くを通り、悲鳴を聞いて駆けつけてきた。宗麟はガレージにあったスパナで母親のゾンビを殴り倒した。すると、アガシオンがガレージに友里恵の様子を見に来たため、宗麟はアガシオンに問いかける。

 

宗麟「このゾンビを呼んだのはお前か?」

アガシオン「何だ。私は良かれと思ってやったのだぞ?」

 

宗麟は怒りに震えてリントヴルムに変身し、アガシオンに殴りかかる。しかし、アガシオンはリントヴルムのパンチやキックをかわすと、後ろに回り込んで武器のチェーンで首を絞めた。しかし、リントヴルムも負けじと後ろ向きに走り、ガレージの配電盤にアガシオンをぶつけて引き離す。距離を取ったリントヴルムはファフニールフォームにチェンジしようとするが、アガシオンの伸ばしたチェーンで変身アイテムが弾かれてしまった。だが、反撃にリントヴルムは接近してきたアガシオンを巴投げで投げ飛ばし、ガレージから放り出した。追撃として、リントヴルムはドラグーンボルトブレイクを撃とうと構えるが…

 

アガシオン「よそう、リントヴルム 。我々が戦っても無意味だ。それに仮に私を倒してもこの娘の母親は戻らない。私は、ただ封印を解いた人間の願いを聞くという使命を果たしただけだ。私は3つの願いを叶え終えたら再び眠りにつかなければならない。次に目覚めるのはおよそ100年後だ。」

 

アガシオンはそう言うと友里恵の母親のゾンビと共にすうっと消えていった。リントヴルムは意外な戦いの幕引きにただ呆然と立ち尽くすだけだった。

 

数日後、友里恵は母親の墓参りにやってきていた。すると、後ろから中年男性に声をかけられた。この男は友里恵が前に訪れた博物館の守衛だった。男は友里恵に静かに言い聞かせる。

 

守衛の男「俺も実はアガシオンの封印を解いたことがある。たまたまある山で土の中から壺を掘り出したんだ。俺はアガシオンに冗談で「俺を不老不死にできるのか?」って言ってしまった。もちろん願いは叶ったよ。でも、俺はそのせいで一生死ねない身体になってしまったんだ。病気も一切かからないし、怪我しても傷が瞬時に治る。歳もとらないんだ。だけど、その代償は…「孤独」だった。妻も息子も親友も先に歳を重ねて死んでしまう。ついには孫やひ孫にすら先立たれたよ…!俺を知ってる人なんて誰もいなくなってしまった…!」

 

こうしてこの男はアガシオンは眠っている壺を博物館に保管し、以後、同じようにアガシオンによって不幸になる人間を出さないよう博物館の守衛になり、日夜アガシオンの壺を監視していたのだという。友里恵は自分の軽はずみな行動からこのような結果になったことを守衛の男からの話で深く反省するのであった。

 

そして、友里恵は母親の墓参りが終わった後、また別の墓に向かう。その墓石には…友里恵が憧れていた先輩の名前が彫られていた。

 

(完)

 



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戦友!迎え撃つ仲間の結末

4日後に迫ったNightmare matter争奪戦のために戦力を集めることになった宗麟達。まず、九頭龍博士は何か当てがあるらしく、朝早くから出かけていった。あとは最低でも1人は確保しないといけない。宗麟は悩んでいた。

 

宗麟「1人目は俺が出るとして、もう1人は…ヴィヴィルか?いや、確かにヴィヴィルにはバリアの能力はあるものの、Infernoと戦っていた時の記憶はない…だから、実質戦闘経験はゼロに等しい…どうすればいいのか…?」

 

おそらく相手はリンドレイクの他にオーガアックスとオーガランスを出してくるだろう。どちらも並みのネオ・キマイラなら瞬殺できる強さを持っている。今のヴィヴィルに任せるのは明らかに荷が重い。どこかに頼れそうな人はいないか…そう考えて宗麟とヴィヴィルはある公園を通りかかる。すると、ホームレスの人々のための炊き出しが行われていた。その炊き出しのボランティアの中にいたのは…

 

美沙子「宗麟さん!ヴィヴィルちゃん!お久しぶりね。」

宗麟「美沙子じゃないか!まさか君と会うとはね。」

 

超能力が使える少女、美沙子だった。しばらく美沙子と共に炊き出しの列を整理しつつ談笑していると一台の車が公園の前に止まった。そこから降りて来たのは煉光財閥の社員だった。何とこの公園の土地を煉光財閥が買い取ったため、ホームレス達に立ち退きを要求して来たのである。

 

社員「この土地には煉光財閥の新しいオフィスを建てる予定だ。早くここから1人残らず出ていけ!」

宗麟「待て!ここで遊ぶ子供達やホームレスの皆の居場所はどうなる?どうせお前達はネオ・キマイラを使って力づくで契約したんだろう!それぐらいお見通しだ。」

 

その言葉に逆上した社員の男はガントレットを起動させる。「ウロボロス」!「クロスボウ」!Docking!phase Red!「クロスボロス」!という音声と共にネオ・キマイラに変身した。クロスボロスは身体全体から毒矢を射出し、ホームレスやボランティアの人々を次々に毒殺していく。宗麟はリントヴルムに変身し、ヴィヴィルは周辺の人々の避難誘導にあたる。リントヴルムはクロスボロスの攻撃をかわし、必殺技の「ドラグーンボルトブレイク」をぶつけるが、耐えきられて反撃を許してしまう。一方、公園の隅にはなぜか目をつぶってじっとしている美沙子がいた。リントヴルムは美沙子に危険だから避難しろと言うが…

 

美沙子「今よ!はあっ!!」

 

瞑想していた美沙子がカッと目を見開いて叫ぶ。すると、クロスボロスが空中へ大きく吹き飛ばされた。どうやらこれは美沙子の超能力のようである。おそらくテレキネシスを攻撃に使えるように応用したのだろう。宙を舞うクロスボロス目掛けて、リントヴルムは今度は「ドラグーンライトニングブレイク」を放った。さすがにそれには耐えきれず、クロスボロスは爆発。変身が解除された煉光財閥の社員はヨタヨタと逃げ帰ったのであった。

 

宗麟「まさかまた君に助けられるとはね…」

美沙子「私も宗麟さん達の役に立ちたくて、少しだけ戦えるように超能力を鍛えたの。さっきの技は10分くらいチャージが必要だけど、撃てばブルドーザーも軽く吹き飛ばせる威力になるわ。」

 

その話を聞いたヴィヴィルが美沙子をNightmare matter争奪の団体戦にスカウトしようとする。しかし、宗麟は並のネオ・キマイラならば瞬殺できるオーガアックスとランス相手は身体は普通の人間の美沙子には危険だと止める。だが、ヴィヴィルには何か考えがあるようだった。

 

ヴィヴィル「美沙子ちゃん。急で悪いけど貴女の力を貸してほしいの。いいかしら?」

美沙子「任せてください!そうと決まれば特訓しに行きましょ!」

 

頼られて嬉しそうな美沙子と対照的に心配そうな宗麟。しかし、もう迷っている時間はない。3人は争奪戦の準備をするのであった。

 

(続く)



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先鋒!鬼と竜娘と少女の結末

そして、4日後…ついにNightmare matter争奪戦が始まった。ルールは3つ、「基本的には1対1」「変身が解除されるか、ダウンして10秒以内に立ち上がらなければ負け」「負けたチームは持っているNightmare matterをすべて相手チームに譲渡する」というものであった。ヴァネッサチームは先鋒は紅鬼を出してきた。一方、宗麟チームは先鋒にヴィヴィルを指名するが、ヴィヴィルは紅鬼に向かってこう言う。

 

ヴィヴィル「ねえ。ひとつ特例を認めて欲しいのだけどいいかしら。私の他に、もう1人地球人がいるの。一緒に戦ってもいいわよね?」

 

ヴィヴィルが指差す先には美沙子がいた。つまり、紅鬼はヴィヴィルと美沙子を2人同時に相手することになるが、紅鬼は…

 

紅鬼「いいだよ。何人来ようと同じことだ。しかし、女が2人か…これは斧を使う必要ねえな。素手で相手してやんべ!」

ヴァネッサ「紅鬼がいいと言ってるからそれは認めてやろう。ただし、お前達2人の内、片方が戦闘不能になったらその時点で負けでいいか?」

 

ヴィヴィルはこっちのハンデを認めてもらったからそちらのハンデも飲むべきとヴァネッサからの提案を認める。

 

いよいよ、先鋒戦『ヴィヴィル&美沙子VSオーガアックス』の戦いがスタートした。

 

オーガアックスに変身した紅鬼は斧を投げ捨て、ヴィヴィルに素早く拳を突き出す。しかし、ヴィヴィルもバリアで防御する。オーガアックスの拳や蹴りがバリアを何度も穿つ中、美沙子はバトルフィールドの端でずっと神経を集中させていた。

 

ヴィヴィル「美沙子の時間を何としても稼ぐわよ!」

紅鬼「ふん!その前にお前のバリアが破れるのが先だべ!」

 

そして、ついにオーガアックスの回し蹴りがヴィヴィルのバリアを破壊してしまった。その衝撃でヴィヴィルは尻餅をつく。

 

紅鬼「可愛い娘をいたぶるのは趣味でねえが…これも戦いだべ…とどめだ!」

 

ヴィヴィルに拳を振り上げるオーガアックスだが、その瞬間にヴィヴィルが叫ぶ。

 

ヴィヴィル「今よ、美沙子!」

 

美沙子はヴィヴィルの言葉にカッと目を開いて念動力をオーガアックスに飛ばす。しかし、オーガアックスにかわされてしまった。

 

宗麟「マズい!作戦が失敗したのか!?」

紅鬼「残念だったべ。お前の攻撃は初動が分かりやすすぎるべ。そんな攻撃ではオラを捕らえることは…」

 

だが、ヴィヴィルと美沙子は落ち着いていた。

 

美沙子「後ろ見た方がいいわよ。」

 

美沙子の言葉にハッと背後を振り返るオーガアックス。目の前には…回転しながら飛んできた自分の斧が迫っていた。その斧によって、オーガアックスは肩から脇腹にかけて深い切り傷を負う。

 

紅鬼「ぐわぁー!?ガハッ…まさか…二段構えの攻撃だったとは…ちっ、すまねえ姉御…オラはここまでだ。」

 

オーガアックスはバタリと倒れて紅鬼の姿に戻ってしまった。

 

先鋒戦を制したのは「ヴィヴィル&美沙子」だった。

 

宗麟「お疲れ、ヴィヴィル、美沙子。それにしてもよく勝てたな。」

美沙子「ヴィヴィルちゃんが考えてくれた作戦でね。まず私はテレキネシスのエネルギーを半分に分けたの。片方は飛ばして攻撃する用、もうひとつはオーガアックスの斧を奪って、コントロールして攻撃する用に。これなら仮に一撃目が決まらなくても、もう一発相手に当てることができるわ。」

ヴィヴィル「でも、ここまでクリーンヒットするなんて予想外だったけどね。」

 

紅鬼「姉御、不甲斐ねえとこ見せちまったべ…」

ヴァネッサ「済んだことを悔やむな、紅鬼。私達が2勝すれば問題ない。」

蒼鬼「んじゃ、次は俺が行きます。まあ、いつも紅鬼の尻ぬぐいは俺の役目ですからねぇ。さあ、俺の相手は誰だ?」

 

蒼鬼の言葉に立ち上がった人物は…

 

九頭龍博士「私が出よう。」

 

(続く)

 



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中堅!昔の敵は今の味方の結末

九頭龍博士はかつてInfernoに所属していたギルバート博士の研究所跡からゲノム魔獣を1体持ち帰り、契約。さらにヴァネッサ達との戦いに備えて、戦闘訓練も施したという。

 

蒼鬼「何が出てくるかと思いきや、ただの時代遅れの生物兵器かい。それが相手なんて俺もなめられたもんだ。」

博士「それはどうかな?こいつは敵対していたとはいえ、私の友であったギルバートの最新作だったようだぞ。まあ、リントヴルムと戦わずしてお蔵入りになったそうだが。」

 

オーガアックスは槍を構えてパチャカマックに突撃するが、突如、オーガランスとパチャカマックの間に突風が吹いた。面食らったオーガランスはよろけ、その隙にパチャカマックの蹴りがヒットする。

 

蒼鬼「まさか…天候を操る能力があるのか?」

博士「ご名答。しかし、それを見破ったところで勝てるかな。」

 

パチャカマックは次は雷を連続でオーガランスに落とす。オーガランスは雷を横移動しながらかわしつつ、距離を徐々に詰めてくる。しかし、博士はオーガランスの行動を冷静に指摘する。

 

博士「お前、さてはパチャカマックを配電盤の前まで誘導しようとしているな?大方、お前の槍を配電盤にぶつけてショートすることによる爆発でも狙っているのだろう?そうはさせるか!」

 

パチャカマックは天候を吹雪に変えて、配電盤を雪で埋めてしまった。これでは爆発しても湿り気のせいで大した威力にはならない。

 

蒼鬼「ちっ、見破られてたか。」

ヴィヴィル「お互い、手の読み合いになってるわね。」

 

まるで将棋でも指しているかのような頭脳派同士の戦闘が繰り広げられる。しかし、そんなオーガランスが突然足を止めて、パチャカマックに言い放つ。

 

蒼鬼「さっきから落雷が全然当たってないな。しょうがねえからハンデをやるよ。5秒くらいここに止まってやる。どうした?動かねえ的に当てられないほどお前はノーコンなのかい?」

 

その言葉にムッとしたのかパチャカマックはオーガランスに向かって雷を落とす。だが、博士はオーガランスの意図にハッと気づいたが時すでに遅し。落雷はオーガランスに当たったものの、蒼鬼が踏み込んでいる先ほどの吹雪の雪解け水に雷が当たり、電流が走る。そのまま水たまりに片足を突っ込んでいたパチャカマックは感電してしまった。自らの電撃をくらい、がっくり崩れるパチャカマックの心臓に…オーガランスが伸ばした槍が突き刺さっていた。

 

蒼鬼「よし…どうやら勝負あったな。」

博士「まさか…パチャカマックがこんなに挑発に弱い性格だとは思わなんだ。」

 

パチャカマックはそのまま前のめりに倒れて力尽きた。この勝負はどちらが勝ってもおかしくない一進一退の攻防だったが、蒼鬼の勝利となった。

 

博士「やられたな。パチャカマックの性格までは計算に入れてなかったのが敗因だ。やはり、戦闘訓練の相手をロボットに任せきりだったのがいけなかったか…」

ヴィヴィル「博士、気を落とさないでください。むしろ、オーガランスの戦闘データが取れただけでも良しとしましょう。」

宗麟「それに次はいよいよ俺、リントヴルムが行きますよ!さあ、かかって来い、リンドレイク!」

 

紅鬼「お疲れだなぁ、蒼鬼。」

ヴァネッサ「よくやったな、蒼鬼。ほら、ささやかかもしれないが私からのお礼だ。」

蒼鬼「やめてくださいよ、姐さん。頭を撫でるなんて…」

紅鬼「いいなぁ…オラもなでなでされたかった。」

 

各陣営のやり取りが終わった後、ついに宗麟とヴァネッサ、2人が向かい合う。宿命の対決が始まろうとしていた。

 

(続く)

 

 

 



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大将!竜人対戦乙女の結末

宗麟「いよいよお前との直接対決か…行くぞ!俺は負けるわけにはいかないんだ!」

ヴァネッサ「それはこちらも同じだ。さあ、どちらがNightmare matterを手中に収める権利があるか…今ここで決着をつけよう!」

 

2人はほぼ同時にリントヴルムとリンドレイクに変身した。そこからしばらくは息詰まる戦いが展開されるが、リントヴルムが必殺技の「ドラグーンライトニングブレイク」を繰り出す。そして、リンドレイクも「ドラグーンシャドウブレイク」を放ち、2つの必殺技がぶつかる。その威力はほぼ互角だった。

 

宗麟「なぜだ…?ドラグーンライトニングブレイクは初代のリンドレイクの必殺技の倍の威力はあるはずなのに…?」

ヴァネッサ「ああ。リントヴルムとリンドレイクのパワードスーツの性能はほぼ同じだと聞いている。ならば、あとは変身者の力量が物を言う。私は今日まで血を吐くほどの鍛錬を積み重ね、そして、私の人間より進化した肉体でそれを昇華したのだ。」

宗麟「やっぱりお前は人間じゃなかったのか。」

ヴァネッサ「そうとも。私は『デルミエン星人』だ!」

 

そう言うとリンドレイクは跳躍し、回転しながらドロップキックのような跳び蹴り『ドラグーンダークネスブレイク』をリントヴルムに放つ。リントヴルムは回避しようとするも、なぜか身体が動かなくなり、避けられなかった。そのままモロにリンドレイクの新必殺技を受けて、リントヴルムは地面を転がる。リンドレイクはとどめとばかりに倒れたリントヴルムの追撃に向かう。このままでは変身解除で敗北するのは時間の問題だ。

 

博士「諦めるな、リントヴルム!フォームチェンジだ。前もって私がバハムートフォームを強化しておいた…それを使え!」

 

九頭龍博士の言葉にリントヴルムは立ち上がり、バハムートフォームにチェンジした。すると、バハムートフォームに電流が流れ、『リントヴルム・バハムートエレクトリック』になった!どうやら博士はこの戦いの前に高出力電子レーザーをバハムートフォームのパワードスーツにも注入し、強化していたのであった。

 

宗麟「ヴァネッサ…あまり地球の技術も侮ってもらっちゃ困るぜ…これが人間の底力だ!」

 

リントヴルムはリンドレイクにまるでさっきまでの劣勢が嘘のようにラッシュを叩き込み、追い詰めていく。そして、必殺技の『ドラグーンエクシードブレイブブラスター』でリンドレイクを吹き飛ばした。変身解除され、ヴァネッサは倒れ伏した。

 

ヴァネッサ「私の…負けか。仕方ない。我々のNightmare matterを譲渡しよう。」

宗麟「いや、俺ももう少しで負けそうだった…それにお前から学ぶこともあったぜ。立てるか?」

 

ヴァネッサはフッと微笑み、宗麟から差し出された手を握ろうとする。しかし、その時だった。

 

ヴィヴィル「宗麟、危ない!」

蒼鬼「姐さん、伏せるんだ!」

 

ヴィヴィルと蒼鬼がほぼ同時に飛び出し、ヴィヴィルはバリアを、蒼鬼は槍で何かを弾き返した。それは何と銃弾であった。気がつくとこの争奪戦が行われた工場地帯は…煉光財閥の武装集団やネオ・キマイラに包囲されていたのであった。

 

(続く)

 



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苛烈!包囲網をぶっ壊せの結末

煉光財閥の武装集団に囲まれた工場地帯。これでは見つからずに脱出するのは不可能に近い。しかし、ここで蒼鬼が動き出した。

 

蒼鬼「紅鬼、お前は姐さんを連れて逃げろ。ここは俺が食い止める。俺はお前よりは傷が浅いからな。」

紅鬼「無茶だべ!?蒼鬼1人でこの人数を相手にするのは危険だ。それに蒼鬼だって負傷してるのは同じだろうよ。」

ヴァネッサ「蒼鬼…わかった。私はお前を信じる。紅鬼、すまないが肩を貸してくれ。」

 

何とヴァネッサは蒼鬼を置いて撤退を選んだ。抗議する紅鬼にヴァネッサはこう言う。

 

ヴァネッサ「きっと大丈夫だ。進んで囮を申し出たってことは私達には思いもよらない何か策があるに違いない。私はそれに賭けようと思う。」

 

ヴァネッサは紅鬼と共に、そして、九頭龍博士と美沙子はヴィヴィルのバリアの後ろに隠れて戦線を離脱する。一方、蒼鬼とリントヴルムはこの場に残った。

 

蒼鬼「リントヴルム。あんたも逃げて構わないぞ?」

宗麟「そうはいかない。俺達の真剣勝負をぶち壊しにした奴らは許せないからな。」

蒼鬼「ならば俺の考えた作戦に協力してくれ。」

 

作戦はまずはオーガランスが陽動を行い、その隙にリントヴルムがこの包囲網の敵将を一気に攻め落とす…というものだった。早速、リントヴルムは蒼鬼から「おそらくこの場合、指示を出す役割の奴は周りを見渡せることができるような高所にいるはずだ。建物の屋根の上とかを当たってみてくれ」と言われたため、工場の一番高い建物の屋上にやってきた。すると、そこには…マントを着た白塗りの顔の男が立っていた。

 

謎の男「ふっふっふ。ようこそリントヴルム。私の名はデルミエン星、エラクレル帝国の大臣『バイラノス』だ。」

宗麟「何!?これはお前の仕業か!」

バイラノス「いかにも。しかし、私はまだ戦わないぞ。少しだけ貴公の力を試させてもらおう。出てきたまえ、金木沢専務。」

 

すると金木沢と呼ばれた煉光財閥の専務がバイラノスの後ろから現れてガントレットを起動。ネオ・キマイラ「ガネシュリケン」に変身した。リントヴルムはガネシュリケンに飛びかかるが、ガネシュリケンの能力、雨のような手裏剣の乱舞に苦戦を強いられる。

 

バイラノス「ではせいぜい頑張ってくれ、金木沢君。またいつか会えるといいな、リントヴルム。」

 

そう言うとバイラノスは煙のように消えてしまった。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。リントヴルムはガネシュリケンの手裏剣に対抗するため、ファフニールフォームにチェンジ。手裏剣を鎧で弾きながら必殺技の「ドラグーンバーストスラッシュ」を放つ。しかし、ガネシュリケンに傷を負わせたものの、バルムソードを掴まれてしまい、リントヴルムは反撃に鼻で突き飛ばされてしまった。ガネシュリケンはとどめを刺そうと倒れたリントヴルムに迫るが…ここでガネシュリケンに部下からの連絡の無線が入った。

 

ガネシュリケン「こちら金木沢。どうした?…何!?我々のトラックが燃えている!?」

 

どうやらこれはオーガランス、蒼鬼の作戦の一部のようである。煉光財閥が工場地帯を包囲するために武器などの物資を積み込んだトラックを燃やすためにオーガランスはガスタンクやドラム缶の灯油などを利用して爆破テロを行なった。その連絡がガネシュリケンに来たのである。

 

ガネシュリケン「何?バイラノス大臣は武器や物資を補給するために一時退却を命じた?馬鹿者!その間にリンドレイクに逃げられたらどうする!仕方ない。私はその命令に背いてでも、Nightmare matterを奪還してやる!みすみすリンドレイクを捕縛する千載一遇のチャンスを無駄にしてたまるか!」

 

ガネシュリケンはあろうことかリントヴルムを放置してヴァネッサを追跡し始めた。今、もしもガネシュリケンに追いつかれてしまったらヴァネッサや博士、美沙子の命も危ない。リントヴルムは戦いのダメージを引きずるようにフラつきながら立ち上がり、ガネシュリケンを追いかける。果たして間に合うのか!?

 

(続く)

 

 



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窮地!巨象の蛮行の結末

紅鬼「もうすぐ脱出できるべ。姐御、頑張ってくれ!」

ヴァネッサ「すまないな、紅鬼。肩を貸してもらわないと歩けないとは私は情けない…」

ヴィヴィル「止まって、みんな!出口に何かいるわ!」

 

そこにいたのはヴァネッサを追ってやってきたネオ・キマイラ「ガネシュリケン」だった。

 

ガネシュリケン「さあ、大人しくヴァネッサをこちらに渡せ。」

 

しかし、もちろん満場一致で拒否である。ガネシュリケンはヴァネッサを力強くで拉致しようと襲いかかる。だが、それに割り込むかのように九頭龍博士が電子レーザーキャノンをガネシュリケンに撃つ。しかし、ガネシュリケンに簡単にかわされてしまう。だが、美沙子が外れたレーザーを超能力で曲げてガネシュリケンの背中にぶつけた。さすがのガネシュリケンもダメージを受けて後ずさる。

 

ガネシュリケン「おのれ、虫ケラが!私をコケにするとどうなるか教えてやろう!」

 

ガネシュリケンはPhase Blackになり、強化され巨大化した手裏剣を次々に飛ばしてきた。ヴィヴィルのバリアだけでは防ぎ切れず、美沙子を庇った九頭龍博士が足を負傷してしまった。だが、ここで安全な場所にヴァネッサを避難させてきた紅鬼がオーガアックスとなって応戦。しかし、手負いのオーガアックス1人ではガネシュリケンを止めることはできなかった。ついにガネシュリケンはオーガアックスに土を付け、とどめを刺そうとした…その時だった。

 

蒼鬼「待たせたな!足止めご苦労さんだ、紅鬼!」

 

オーガランスが破壊工作を終えて戻ってきたのであった。オーガランスは槍を伸ばして、ガネシュリケンの膝を貫いた。足がもつれたガネシュリケンが倒れて無防備になった瞬間にオーガランスが「今だ!リントヴルム!」と合図を送る。

 

宗麟「ドラグーンライトニングブレイク!」

 

ファフニールから通常フォームに戻ったリントヴルムが工場の屋根の上から急降下し、ドラグーンライトニングブレイクをガネシュリケンに直撃させた。さらにオーガアックスが駄目押しに斧をブーメランのように回転させてガネシュリケンを斬り裂いた。そのままガネシュリケンは爆散し、金木沢専務に姿が戻ったものの、彼は息を引き取っていた。

 

一方その頃、工場地帯の中心部ではエラクレル帝国大臣のバイラノスが部下から報告を受けていた。

 

バイラノス「何?金木沢が死んだ?まあいい。奴は命令違反を犯したのだ。当然の報いだろう。それより、早くここから引き上げるとしよう。もう欲しい情報は十分に手に入った。」

 

バイラノスは部下の用意した車に乗り込むと煉光財閥のトラックに乗って工場地帯を後にした。

 

そして、宗麟達はヴァネッサの様子を見に行く。彼女はどうやらリントヴルムとの戦いの傷が癒えてきたようである。

 

宗麟「ヴァネッサ。あんたの敵も煉光財閥なんだろ?だったら、俺達で力を合わせて戦わないか?」

ヴァネッサ「いいだろう。お前は私に勝ったんだ。ここは素直に負けを認める。まだ煉光財閥には謎が多いから、それなりの人手も必要だ。ただし…!私は今度こそリントヴルムに勝つからな!次はどれだけネオ・キマイラを倒したかで勝負だ!」

 

負けず嫌いなところは先代のリンドレイク、夜刀 辰弘と似ているようだ。宗麟とヴァネッサがこれで手を組むことになったが、ヴィヴィルは訝しげな顔でヴァネッサを見つめる。

 

ヴィヴィル(でも、どうして私達がNightmare matterを巡って決闘することが煉光財閥に筒抜けだったのかしら…?まさか…!煉光財閥のスパイがいる…!?)

 

(続く)



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聖槍!白銀鏡の騎士(前編)の結末

ボロボロなコートに身を包み、眼帯を付けた傷だらけの顔になってしまった織田川。実はあの後、Infernoの総統から用済みと判断され、軍用ヘリから爆撃されたものの、かろうじて生きていた。しかし、爆発に吹き飛ばされて海に投げ出された織田川はそのまま無人島に漂流し、数日間そこで彷徨っていた。さらに爆発の衝撃で片目を失明してしまっていたのである。織田川は宗麟達が住む街に舞い戻ったが、その心は怨讐に染まっていた。憂さ晴らしに絡んできた不良を返り討ちにし、持ち物を根こそぎ奪い取ってやったが、それでも気は晴れない。

 

織田川「リントヴルム…奴のせいで俺は警察を免職されたどころか、家族とも縁を切られてしまった…もう俺には失う物は何もない…ならば奴を嬲り殺してやるしかない!」

 

明らかに逆恨み以外のなにものでもないが、そこへ人影が忍び寄る。

 

バイラノス「いいね、その復讐心。しかも、相手がリントヴルムと来た。どうだい?私がリントヴルムを始末するプランニングをしてあげようか?」

織田川「あんたは…まさか!煉光財閥の関係者か!間違いない。その服に付けた社章が何よりの証だ。確か煉光財閥はリントヴルムを敵視しているのだろう?その噂は聞いている。」

バイラノス「話が早くて助かるよ。では、私の話を聞いてくれ。首尾よく行けば一生遊んで暮らせる報酬もお支払いしよう。」

 

 

翌日。九頭龍博士と宗麟とヴィヴィルとクシナの4人は九頭龍博士の知り合いの『真戸野博士』の研究発表会に来ていた。真戸野博士が試作したのは『ヒエロニムスマシン』という物であり、物質から放射される光学的特性と電気的特性を併せ持つエネルギーを測定、放射することにより、遠隔的に人や動物、植物の病気の診断や治療、害虫駆除などを行う装置であった。しかし、九頭龍博士はこの装置の開発には反対していた。確かに少量のエネルギーの照射ならガン細胞や病原菌、害虫を消滅させることができるが、最大出力で照射すれば人間を消滅させてしまう。だから、殺人に使われる恐れがあるからやめるんだという意見をこの研究発表会で言うつもりであった。

 

織田川「待て!そのヒエロニムスマシンは俺がいただこう。さあ、大人しく寄越せ!」

 

そこへ、警備員を拳銃で射殺した織田川が乱入してきた。しかも、左腕にはガントレットを装着している。

 

宗麟「お前、生きていたのか!?しかもそれは…ネオ・キマイラの変身アイテムか!」

織田川「久しぶりだな、龍崎宗麟。さあ、まずは貴様を片付けてその後ゆっくりヒエロニムスマシンをいただくとしよう。」

 

「『アンドロマリウス』!『ドリル』!Docking!Phase RED!『アンドリルウス』!」

 

織田川はネオ・キマイラ、「アンドリルウス」に変身して周りの報道陣や研究員を次々に殺傷する。宗麟はリントヴルムに変身し、これを止めに入った。最初は強力なドリルの威力に苦戦を強いられるが、九頭龍博士のレーザーキャノンの援護射撃により形成逆転。リントヴルムはバハムートフォームにチェンジし、必殺技のドラグーンブレイブブラスターを放とうとするが…

 

織田川「おのれリントヴルム!ならばこれを食らって消えろ!」

 

アンドリルウスは真戸野博士を押し退けてヒエロニムスマシンを起動し、エネルギーを最大出力まで上げた。だが、九頭龍博士はそれは想定済みであり、あらかじめ「ヒエロニムスマシンのエネルギーを相殺する装置」を会場に持って来ていた。織田川が発射したヒエロニムスマシンのエネルギー波と九頭龍博士が発射したそれを相殺するエネルギー波がぶつかる。すると、突然予想外の事態が起きた。何とエネルギー波がぶつかり合っている空間が歪み出し、その歪みから黒く禍々しい粒子が噴き出す。そして、それがアンドリルウスに吸収されたのだ。アンドリルウスはその粒子を浴びて苦しみ出した。そして、声にならない悲鳴で悶えながら跳躍。そのまま会場から姿を消してしまった。

 

宗麟「織田川が逃げたぞ!追わないと…」

博士「いや、待て。まずはここで被害に遭った人々の保護が優先だ。」

クシナ「ついでにヒエロニムスマシンも九頭龍研究所に移送しましょうか。しかし、博士…さっきの空間の歪みは…」

博士「ああ、にわかには信じがたい話だが…おそらく何らかの力で『この世界とは別の世界』と繋がってしまったのかもしれない…」

 

やがて、謎の空間は歪みどんどん閉じていく。だが、その空間の歪みから一瞬だけ銀色に輝く騎士のような姿が見えたのを宗麟は見逃さなかった。

 

宗麟(あれは何だ…?まさか、異世界の…?)

 

(後編へ続く)



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聖槍!白銀鏡の騎士(後編)の結末

 

ヒエロニムスマシンを九頭龍研究所に移送し、解析を進める九頭龍博士。どうやらこのヒエロニムスマシンのエネルギー波は数秒だけだが並行世界と繋がる力を持っていたようである。時空を歪ませるほどの力を持つエネルギーはやはり危険であると九頭龍博士は真戸野博士に説明するが、真戸野博士はま納得いかない様子であった。

 

真戸野「あなた方が危惧するのはわかる。だが、ここで発明を中止するのは科学者としてだな…」

ヴィヴィル「お言葉ですが、この発明はいつか必ず恐ろしいことを引き起こしますよ。」

 

しかし、ここで事件が発生。何とアンドリルウスが警視庁に出現し、警察官を襲い始めているという。急いで宗麟はリントヴルムに変身して現場に向かう。だが、リントヴルムが目の当たりにしたのは3m以上に巨大化し、ケンタウロスのような身体になった「アンドリルウスW」だった。リントヴルムはファフニールフォームに変身してこれを迎え撃つが、アンドリルウスWのドリル型ミサイルはダイナマイトでも壊せないファフニールフォームの装甲を砕いてしまう威力であった。尋常じゃない強さの連続攻撃についにリントヴルムは変身解除に追い込まれてしまった。しかし、アンドリルウスWは突然跳躍し、どこかへ去って行った。

 

宗麟「あいつ…なぜとどめを刺さなかったんだ?」

九頭龍博士「どうやら奴は織田川の復讐心が原動力となっている。警察に復讐した後に向かうのは…」

ヴィヴィル「織田川は家族に縁を切られたということがわかってるわ。つまり、次は実家に向かったに違いないわよ。」

 

ヴィヴィルの予測通り、アンドリルウスWは織田川の両親が住んでいる住宅街へ向かっていた。宗麟一行はそこへ先回りし、さらにヒエロニムスマシンとそれを相殺する装置を持っていく。2つのマシンを向かい合わせて九頭龍博士はこう言った。

 

九頭龍博士「この戦いは現時点では勝つことは難しい。そこで、もう一度並行世界の入り口を開くことにした。そうすれば、アンドリルウスがパワーアップしたようにリントヴルムもパワーアップできるかもしれない。」

クシナ「今はそれにすがるしかないわ。成功する保証はないけど…」

 

九頭龍博士とクシナは2つのマシンを起動させる。しかしその時、アンドリルウスWがやってきた。宗麟はリントヴルムバハムートフォームに変身するも、現在の最大戦力であるバハムートフォームですら防戦一方に追い込まれてしまう。このままでは決定打を与えられないまま時間切れになってしまう。その時だった…

 

ヒエロニムスマシンとそれを相殺する装置のエネルギー波がぶつかり並行世界の入り口を開けた。だが、そこから現れたのは白銀に輝く騎士であった。そう、それこそ宗麟があの時に見た並行世界の英雄『ナイトユニコーン 』であった。皆があっけにとられる中、ナイトユニコーンは真っ先にアンドリルウスWに向かっていき、体当たりでアンドリルウスWを横倒しにする。反撃のミサイルの乱射も素早い動きでかわし、一気に距離を詰めて槍の一撃でアンドリルウスWの胴体を貫いた。これがナイトユニコーンの必殺技「ユニコーン・ギャロップ」である。完全にグロッキー状態になったアンドリルウスWは駄目押しと言わんばかりにバハムートフォームの必殺技「ドラグーンブレイブブラスター」で大爆発を起こした。

 

宗麟「君は…あの時の…そうか!アンドリルウスがパワーアップした原因の謎の粒子を追ってきたんだな?」

 

ナイトユニコーンの世界では『エビル・マシン』という悪のロボットが存在している。そのエビル・マシンの一機である『アンドロマリウス』がナイトユニコーンとの戦いで破壊された際に漏れ出たエネルギーがこちらの世界へヒエロニムスマシンによって開かれた時空の歪みを経由してアンドリルウスと融合したのだという。ナイトユニコーンはそのアンドロマリウスの発する特殊な波長を追ってこの世界にやって来たのであった。

 

織田川「くそ…ならば龍崎 宗麟!貴様だけでも消してやる!」

 

往生際悪く織田川はまたヒエロニムスマシンを奪い、最大出力に上げて宗麟を狙う。その時、ヴィヴィルが叫んだ。

 

ヴィヴィル「宗麟!あの壁の後ろに隠れて!」

 

そこにあった壁には九頭龍博士がヒエロニムスマシンの調整をしている間にヴィヴィルが貼り付けた板があった。宗麟は急いでその壁の裏に入る。すると、ヒエロニムスマシンのエネルギー波をヴィヴィルの貼り付けた板が反射した。実はこれはかつてEXゲノム魔獣『ベルゼブブ』と戦うために使用した「特殊反射板」であった(※魔破竜人リントヴルム第1部14話参照)。ヴィヴィルは事前にそれを用意していたのであった。反射されたエネルギー波は…織田川に直撃した。ヒエロニムスマシンの力で身体がどんどん消滅していく。

 

織田川「なぜだ…なぜだ…なぜだ!どうして俺はこんな終わり方しかできないんだ!俺は結局利用されて終わるのかああああ!」

 

悲痛な絶叫の末、身体がすべて消えてしまった。後には何も残っていない。

 

九頭龍博士「これで分かりましたかな、真戸野博士。ヒエロニムスマシンはこのように人間1人消すことができる機械だ。私はやはりこれは封印すべき発明だと思う。」

 

真戸野博士は織田川が消滅した瞬間を見ていたため、首を縦に振るしかなかった。

 

宗麟「ナイトユニコーン…君のおかげで助かった。感謝するよ。そうだな…もしも君の世界が危なくなったら、今度はリントヴルムが助けに行くぜ!」

 

ナイトユニコーンは無言で力強く頷く。やがて九頭龍博士と真戸野博士がそれぞれの装置を起動させ、再びエネルギー波をぶつけ合わせる。空間が歪み、並行世界の入り口が開く。ナイトユニコーンは悠々とその中に入っていった。

 

宗麟「ありがとう、ナイトユニコーン!」

 

世界を超えたヒーローの共闘。それは住む世界は違えど正義はひとつである。そのようなことを体現した戦いであった。

 

 

バイラノス「あーあ、織田川君はやっぱり失敗したか。まあ、戦闘力は悪くなかったが計画性がない上に精神力は問題外だ。所詮は未知なる力の奴隷だったわけだね。やれやれ、とんだハズレくじを摑まされたものだ。」

 

警視庁の建物の屋上で織田川が戦死した訃報を聞いたバイラノスはため息をつきつつ、空を見上げたのであった。

 

(完)

 

 

 



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驚嘆!帝国のすべての結末

リントヴルムとの戦いを経て、宗麟達と共にエラクレル帝国と戦うことを決意したヴァネッサは九頭龍研究所に迎え入れられた。そして、ヴァネッサは自らは何者なのかを話した。

 

ヴァネッサの母星であるデルミエン星にはかつて2つの国があった。科学が発達し、ロボットや人工知能、人造人間が充実している街が大多数を占めるエラクレル帝国、帝国と同じ技術力を持ちながらも国王の方針で国民は自給自足で牧歌的な生活を送り、自然豊かなフェルドナ王国。ヴァネッサはフェルドナ王国の王女であった。しかし、ヴァネッサの妹がエラクレル帝国の皇帝のもとへ嫁いでから数年後、エラクレル帝国の大臣であるバイラノスが「フェルドナ王国は優れた科学技術を持ちながら、それを利用せず、進化を拒む堕落した国家である」という声明を発表。それが広まり、エラクレル帝国がフェルドナ王国に侵攻。あっという間にフェルドナ王国はエラクレル帝国に占領され滅亡してしまった。ヴァネッサは命からがらエラクレル帝国から逃げ、地球に亡命してきたのであった。

 

ヴァネッサ「そして、私は地球でエラクレル帝国に復讐し、帝国から妹を助け出す計画を立てた。そこで見つけたのが、デルミエン星人ガルトの研究資料だ。」

宗麟「ガルト?誰のことだ?」

ヴァネッサ「地球では『Inferno』という組織を作り、総統と名乗っていた人物だ。」

 

Inferno総統ことガルトが発見したエキゾチック物質…それこそが無限の可能性を秘め『Nightmare matter』である。ヴァネッサはInferno壊滅後、総統のラボからリンドレイクのパワードスーツを盗み出し、自らの戦力としていた。だが、ついに地球にもエラクレル帝国の魔の手が迫って来たことを知った。ゆえにヴァネッサは破壊活動も辞さない非情な行動をしてでもNightmare matterを集めようとしていたのである。

 

ヴァネッサ「Nightmare matterはガルトの研究資料によれば地球には5つ隠してあるようだ。その内の2つは我々の手の中に…」

ヴィヴィル「違うわ。富士山の麓に1つ、知床半島に1つ、そして私の身体の中にも1つあるわよ。」

ヴァネッサ「そうだったのか…残りの2つは北極海の海底と南極大陸の地下にある。どちらもかなりの極地だ。現状は私達にはNightmare matterは3つあるが、それではまだエラクレル帝国を倒すことはできない。龍崎 宗麟…いや、リントヴルム。このままでは地球はエラクレル帝国に侵略されてしまうだろう。それを阻止し、帝国を滅ぼすために力を貸してくれ!」

宗麟「わかった…!これからは俺達は仲間だな!地球を守るために一緒に戦おう。」

 

宗麟とヴァネッサは握手を交わした。そして、話は紅鬼と蒼鬼に移る。

 

紅鬼「オラはもともとフェルドナ王城の庭師のゲノム魔人だったべ。だけど、城の従者は皆、帝国に殺されちまったべな。でも、オラは運良く生き残れて姫様…いや、姐御と再会することができただ。そして、祖国の仇を討つために一緒に戦うことにしただよ。」

蒼鬼「俺は元々はエラクレル帝国で作られたゲノム魔人だったが、俺は時代遅れって理由から廃棄される予定だった。だけど、処分場に転がっていたところを姫さん…いや、姐さんに拾ってもらったんだ。そこから俺は姐さんの戦いに同行することになったのさ。」

 

そして、2人はネオ・キマイラに変身するためのガントレットをエラクレル帝国軍人からそれぞれ奪い、「オーガアックス」と「オーガランス」に変身できるようになったのである。ちなみに2人の名前もオーガ=鬼ということにちなんでヴァネッサから命名されたそうだ。さらに2人はヴァネッサの身分がバレないように『姐御』や『姐さん』とヴァネッサの呼び方を変えたのであった。

 

しかし、もっと話を聞きたいのはやまやまだが、ネオ・キマイラが出現したという知らせが入った。先にリントヴルムが事件現場の銀行へ向かう。銀行ではネオ・キマイラ「スルトマホーク」が暴れていた。

 

スルトマホーク「やはり来たか。銀行の金も奪えて、リントヴルムもおびき寄せることもできる一石二鳥の作戦は上手くいったようだ。」

 

リントヴルムはスルトマホークに立ち向かうが、何とスルトマホークは4体に分身してリントヴルムに襲いかかり、リントヴルムは1対4の戦いに大苦戦する。しかし、その時、怪我を治療し終えたリンドレイクとオーガアックスとオーガランスが加勢に現れた。これで4対4となった。リンドレイクは「ドラグーンシャドウブレイク」、オーガアックスとオーガランスはそれぞれ斧と槍の一撃でスルトマホークの分身を撃破した。そして、残ったスルトマホーク本体もリントヴルムの「ドラグーンライトニングブレイク」で撃破したのであった。

 

宗麟「これは頼もしい仲間だ。これからよろしく頼むぞ!」

ヴァネッサ「ふん、あくまでエラクレル帝国を倒すまでの同盟だ。必要以上に馴れ合う気はない。」

紅鬼「素直じゃねぇべな、姐御。」

 

こうして九頭龍研究所はより一層賑やかになったのであった。

 

一方その頃、煉光財閥の本社では…

 

バイラノス「私が潜り込ませた走狗は上手くリントヴルムの懐に入ったようだね。さあ、後は我が帝国の目的を果たすために作戦を開始しようか。」

 

ヴァネッサ達は敵か味方か…まだわからないようである。

 

(続く)

 

 

 



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狂騒!エスパーの恋の結末

美沙子のよく行く公園ではあるロックバンドがライブをよくやっていた。そして、美沙子は毎回ライブに来ていた。毎回ライブに来てくれる美沙子に惹かれていったベースのユウタは美沙子に「来週、オーディションを受ける。もしオーディションに受かったら俺と付き合ってくれないか?」と告白された。とりあえず、返事を保留にした美沙子は宗麟達に相談する。

 

宗麟「うーむ、俺は恋愛は良くわからんな…」

ヴァネッサ「私もだ。」

紅鬼「美沙子ちゃんは可愛いからこうなるのも当然だべなぁ…しかし、オラの美沙子ちゃんを狙うとかその男ぶっ殺して…」

蒼鬼「それより美沙子が危ないから紅鬼をぶっ殺すか…」

 

なかなか思うような答えが出ない美沙子はヴィヴィルにも聞いてみた。すると、ヴィヴィルは「オーディションの前日に応援してあげたらどうか」と提案されたため、応援に行くことにした。

 

しかし、オーディション前日に美沙子はいつもの公園に行こうとした時、突然知らない少女にいちゃもんを付けられ公園から追い出されてしまった。どうやらその女性は華那と言い、ユウタの幼馴染であり、昔からユウタのことが好きだったため、ユウタが惚れている美沙子を目の敵にしていたのであった。モヤモヤしながら帰路に着く美沙子はちょっと仕返しにテレキネシスで華那を道端で転ばせてやった。

 

やがてオーディション当日。ユウタのバンドは結果は惜しくも落選だったがある音楽プロデューサーの目に留まり、スカウトされることになった。しかし、デビューできるのはボーカルとギターだけだったため、ベースのユウタはいらないと言われてしまった。しかし、ユウタは悔しさを堪えてバンド解散を進言。ボーカルとギターを送り出したのだった。しかし、その一部始終を知った華那は親の伝手を使って煉光財閥から入手したガントレットを使い、ネオ・キマイラ『チュパンジャラム』に変身し、ユウタを認めなかった芸能事務所を破壊し始め、さらにプロデューサーの首筋に噛みつき吸血。プロデューサーを昏睡状態にしてしまった。その破壊活動を目撃した美沙子は陰に隠れてチュパンジャラムを超能力で押さえつけるが、美沙子の体力的に長くは保たなかった。しかも、最悪なことにチュパンジャラムに美沙子の存在がバレてしまい、美沙子は疲労困憊の状態でチュパンジャラムに追い回される。逃げ回りながら美沙子は最後の力を振り絞り、テレパシーを飛ばした。

 

美沙子(助けて…リントヴルム…!)

 

そのテレパシーを受けた宗麟はヴィヴィルと共にすぐに研究所を飛び出して現場へ急行。そこにいたのはチュパンジャラムに行き止まりに追い詰められた美沙子だった。宗麟はリントヴルムに変身し、チュパンジャラムに摑みかかる。ヴィヴィルは美沙子をバリアで庇い事なきを得た。だが、チュパンジャラムも負けじとベンチや鉄骨、さらには近くに止めてあった自動車までもを丸めて投げ飛ばしてきた。リントヴルムはセイリュウフォームにチェンジし、素早いフットワークで攻撃をかわすと必殺技の「ドラグーンフリズアタック」を繰り出す。しかし、威力が不充分だったのかチュパンジャラムに弾き返されてしまった。今度はパワーに秀でるファフニールフォームにチェンジし、飛んでくる物を鎧で弾きながら突進。必殺技の「ドラグーンバーストスラッシュ」で大ダメージを与えた。あまりのダメージに変身解除した華那。そこへ騒ぎを聞きつけたユウタがやってきた。

 

ユウタ「華那…お前何でこんなことを…」

華那「私は…ユウタのこと小さい頃からずっと応援してたのに…気づいてもらえなかったのが寂しかった。だからそれが悲しくて、悔しくて…」

ユウタ「そうか…ごめんな。一番俺を応援してくれてたのは華那だったんだな。すまないと思う。お前の気持ちに気づいてやれなくて…」

 

ユウタはそっと泣き崩れている華那に寄り添う。美沙子は華那の心をテレパスで読み、「ユウタのことはもう許してるから…あとは華那さんの気持ちに応えてあげて」と助言する。ユウタは美沙子のことは諦めると言い、助言の通り、華那の思いを聞いてあげた。そして、2人は晴れて付き合うことになったのであった。

 

美沙子「ごめんなさいね、ユウタ君。私にはもう好きな人がいるの。その人は勇敢で、いつも何かを守るために頑張ってる姿がとてもカッコいいのよ。」

 

そう言った美沙子の目線の先には宗麟とヴィヴィルが立っていた。

 

宗麟「しかし、こんな一般人にまでネオ・キマイラの力が出回ることがあるなんてな…」

ヴィヴィル「ええ。より一層の警戒が必要ね。」

 

(続く)

 




『美沙子のその後』(苦手な人は閲覧注意)

ユウタの一件から翌日。自身の携帯の待ち受けを見て微笑む美沙子がいた。

美沙子「うふふ、私。こんなに人を好きになったこと初めてかも。」

その待ち受けには…美沙子とヴィヴィルのツーショット写真が表示されていた。

まさかのキマシタワーなのか、それとも友情として好きなのか…それは美沙子のみぞ知る。

解説というか余談:美沙子は自分の好きな人を「勇敢でいつも何かを守るために頑張ってる人」と言っていたが、確かにリントヴルムと時には一緒に敵に立ち向かい、バリアを使って仲間を守るところはヴィヴィルにも通ずる。宗麟だと思った方、残念だったな(笑)


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約束!走れ紅鬼の結末

ある日、バイト帰りに空き地を通りかかった紅鬼は数人の中学生に暴力を振るわれていた女子中学生を目撃。まずは紅鬼の姿で止めに入るが全然聞く耳を持たなかったため、一時的にオーガアックスに変身して一喝した。すると、さすがに危機感を覚えたのか中学生達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。紅鬼に礼を言ういじめられていた女子中学生の名は美波。彼女は真純というクラスの女子グループのリーダー格の娘から毎日いじめを受けていたらしい。しかし、紅鬼は「オラがあいつらを脅かしてやったからもういじめられることはないだろう」と美波を励ました。そして、美波に「またいつでも君の相談にオラが乗ってやるべ」と言い、美波と別れた。

 

しかし、現実はそう上手くはいかなかった。何と美波は紅鬼と出会った翌日からクラスメイト全員に避けられ、さらに皆に近づこうものなら化け物や悪魔呼ばわりされ、箒で殴られたり、石を投げつけられたりしてしまう。終いには教師達も美波を警察や精神病院へ連れて行くべきだと言い出す始末であった。実は美波はネオ・キマイラを操って真純達を襲ったという根も葉もない噂が広まっていた。故にこのような事態になったのだと言う。自分に責任を感じた紅鬼は美波の両親や真純達いじめっ子の家を回って誤解を解くと美波と約束する。さっそく善は急げと走り出す紅鬼。美波も空き地で紅鬼を待つことにした。一方、紅鬼の様子がおかしいと思ったヴァネッサは宗麟達にも相談する。

 

だが、ここで事件が起きた。何と真純が空き地にやって来て、美波に対し、「あんたがヤバい奴と仲間になって怖がられるのは気にくわない」と言い出す。そして、親が煉光財閥で働いている真純の彼氏が親からガントレットを無断拝借し、ネオ・キマイラ「コカトバリスタ」に変身して襲いかかって来た。

 

美波「もうやめて!どうしてこんなことするの!?」

真純「どうせあんたは次はあの化け物を使ってあたし達を殺す気なんだろ?なら、殺される前に化け物であんたをぶっ殺してやるんだよ!」

 

空き地に置いてある粗大ゴミの山に隠れる美波だが、飛行できるコカトバリスタに見つかるのは時間の問題だ。その頃、紅鬼は九頭龍博士からネオ・キマイラ出現の知らせを受けるがまだ美波の自宅にたどり着いていなかった。急いで現場に向かいたいところではあるが、美波との約束を破るわけにもいかない。全力疾走で美波の自宅へ向かう紅鬼。そして、空き地ではついに美波がコカトバリスタに見つかってしまった。このまま万事休すかと思われたその時!

 

宗麟「そこまでだ、ネオ・キマイラ!」

ヴァネッサ「ここからは私達が相手だ!」

 

何とリントヴルムとリンドレイクの2人が駆けつけた。コカトバリスタは2人を相手にも怯まずに挑み掛かるが、息の合った2人のコンビネーションの敵ではなかった。まず、ジャバウォックフォームにチェンジしたリントヴルムがコカトバリスタを「ドラグーンストライクキャノン」で撃ち落とし、とどめにリンドレイクが「ドラグーンシャドウブレイク」を放ち、コカトバリスタを撃破したのであった。真純の彼氏はそのまま失神してしまう。

 

真純「ちっ、こうなったら…皆に電話を…」

 

コカトバリスタが倒された後、真純はグループの皆を呼び出そうとするが…

 

真純「ちょっと!?何で来れないの?」

真純の友達「ごめーん。今、青い髪のイケメンなお兄さんとカラオケ行ってるからまた後でねー」

 

実は蒼鬼が真純の友達をナンパし、カラオケに連れて行くことで足止めしていたのであった。これもヴァネッサの話を聞いたヴィヴィルと蒼鬼が考えた作戦に違いない。もはや手詰まりになった真純にヴァネッサが歩み寄り…平手打ちを見舞った。

 

ヴァネッサ「馬鹿者!なぜ貴様は自分がすべての発端だということに気づかない?貴様は自分の罪から逃げることしか頭にないのか!」

宗麟「もし、悪いと思うなら謝りに行けよ。悪いがもう君を擁護してくれる者はここにはいない。」

 

真純は粗大ゴミの陰で震える美波に涙ながらに土下座して謝罪。そして、二度と暴力を振るったり、嫌がらせをしたりしないと約束したのであった。

 

真純が帰った後、空き地に誤解を解くために東奔西走していた紅鬼と真純の友達とカラオケに行っていた蒼鬼が帰ってきた。傍らには宗麟の様子を見に来たヴィヴィルもいる。

 

紅鬼「美波ちゃん。ごめんな。オラのせいで大変な騒ぎになっちまったべ。でも、大丈夫。あんたのご両親とお話しして来て誤解は解いて来ただ。」

美波「ありがとうございます、紅鬼さん。でも、まだ明日の学校で皆に責められないかな…」

紅鬼「そんな時はいつでもオラを頼ってくれ。力になるべよ。美波ちゃん。君に今必要なのは仲間だべ!」

 

そこへヴァネッサと宗麟も口を挟む。

 

ヴァネッサ「紅鬼の仲間は私の仲間でもある。だから、私も君に力を貸そう。」

宗麟「ヴァネッサの仲間なら俺だって仲間だ。だから、君は1人じゃない。」

ヴィヴィル「そうよ。今ここにいる皆が仲間よ。貴女を傷付ける輩は私が許さないわ!」

蒼鬼「はは、いじめに対してなら確実に過剰防衛だなこの面子だと。」

紅鬼「ほら、美波ちゃん。この短時間でこんなにもたくさんの仲間が出来たべ!」

 

紅鬼のその一言に笑顔で頷く美波。彼女の心に光が射した瞬間であった。

 

宗麟「しかし、また一般人がネオ・キマイラになったのか。最近、多いな。」

ヴァネッサ「おそらく煉光財閥の社員が身内にいるから変身アイテムが手に入るのだろうな。だが、何か恐ろしい事態の前兆の気がするのは私だけだろうか…」

 

(続く)

 



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剛球!熱闘野球大会の結末

※今回のエピソードは本編には一切関係ないパラレルワールドです。


子供達の野球クラブの練習場を煉光財閥の買収から守るために宗麟はチーム集めと監督探しに奔走する。とりあえず、事情を研究所で話すが、研究員の中に野球が得意な知り合いはおらず、さらにはバイラノスの約束した期限は2日後のため、呼べてもここに来れるかわからない状態である。そこで九頭龍博士とヴィヴィルが宗麟のチームに入ると名乗り出てくれた。さらに話を聞いたヴァネッサと紅鬼と蒼鬼も手を挙げたため、これで一気に6人揃った。そこに偶然研究所へやって来ていた美沙子も協力を申し出る。これで後2人となった。

 

クシナ「じゃあ、私は応援ね。チアガールにでもなればいいかしら?」

博士「いや、クシナ君。あと2人必要だから君も出てくれ。」

宗麟「確かに。てか、おばさんのチアガールとか誰得なんだ…痛い痛い!」

クシナ「私はまだ27よ!」

 

宗麟は足を思い切りクシナに踏まれた。しかし、クシナも博士の頼みなら断れないという理由でチームに入ることになった。そして、あと1人…その時だった!

 

辰弘「話は聞かせてもらった!俺をチームに入れろ!」

宗麟「お前、何で生きてんだよ!?」

辰弘「ギャグ補正だ…と言いたいところだが、あの世からお前達の様子を見ててな。居ても立っても居られなくなった。」

宗麟「死んでからさらに丸くなったな…」

ヴァネッサ「貴方が初代リンドレイクか。よろしくお願いしよう!」

 

とんでもないところで新旧リンドレイクが出会ってしまったが、とりあえずこれで9人揃った。次は監督を探す宗麟。すると、知り合いに1人できそうな人物を見つけてアポを取った。彼女の名は…「深郷由希菜」。フェスタのアイドルの1人だ。

 

宗麟「由希菜!君に野球チームの監督を頼みたい。全員、野球はど素人だけどうちのチームはただの人間だけじゃなく、ロボット工学の権威から超能力者、宇宙人、人造人間、幽霊までいるぜ!」

由希菜「わぁお!どこぞの女子高生が喜びそうなメンツがいるよ!?宇宙人、人造人間、超能力者以外興味ありませんって言われちゃうよ!?」

 

最初は由希菜も「野球は走る以外できない」と消極的だったが宗麟は何とか頼み込み、由希菜にこのカオスなチームの監督になってもらった。かくしてここに恐るべきドリームチームが完成した。

 

宗麟「チーム名はどうしようか?」

辰弘「やはりここは竜人がたくさんいるから…」

ヴァネッサ「『ドラ○ンズ』でどうだ?」

蒼鬼「いろいろ問題になりそうだからやめてくださいよ、姐さん…」

 

とりあえずチーム名は「アース・デルミエンズ」に決定した。地球とデルミエン星人の共同チームという意味合いだ。そして、2日間みっちりした練習が始まった。と言っても全員ほぼ野球はど素人のためルールを覚えるのに1日かかり練習できたのはたった1日だけだったが。

 

そして迎えた試合当日。だが、煉光財閥は何と社内に野球部がある。つまり社会人野球チームが相手というのだ。しかも、そのチームにはプロに行けそうな人物も何人かいるらしいのである。早くも不安を覚える由希菜監督だが、キャプテンの宗麟は絶対に勝つと闘志を燃やしていた。いよいよ試合開始を告げるサイレンがなぜか子供野球クラブの練習場に鳴り響く。無駄に本格的であった。審判のバイラノスがプレイボールを告げ、1回の表は煉光財閥野球部の攻撃から始まった。ピッチャーは何と美沙子である。美沙子は球速は70kmも出ていないが持ち前のテレキネシスを活かしてボールの動きを操り、カーブ、シュート、フォーク、スライダーにスプリット、さらにナックルボールまで投げ、相手バッターを大いに惑わせた。ただ、やはり美沙子は野球未経験のため、ボールを曲げ過ぎてフォアボールになってしまったり、球速が遅すぎるために挙動を見切られて打たれたりもしてしまった。しかし、それをフォローしたのが守備陣である。ショートの宗麟はゴロを確実に取って捌き、センターの紅鬼は自身の怪力を活かしてレーザービームのような送球を見せる。そしてセカンドの蒼鬼は槍を伸ばしてボールを突き刺してフライをキャッチする…

 

由希菜「それはさすがに反則なんじゃないの!?」

蒼鬼「でもルールには『槍を所持してはいけない』とは書いてなかったぞ?」

由希菜「誰も使わないからだよ!」

 

しかし、審判のバイラノスは『デルミエン星人は常識にとらわれてはいけない』という意味不明な判定を出し、蒼鬼の槍の所持、使用を認めた。だが、終わってみれば失点は1点となかなかに健闘した。

 

さて、お次は1回の裏、宗麟達の攻撃である。1番バッターは何と九頭龍博士だった。

 

由希菜「博士は野球できるんですか?」

博士「何、安心したまえ。私の発明したこの『AIで球種やボールの動きを分析して自動でスイングするバット』があれば大丈夫だ。」

宗麟「ド○えもんの道具みたいだな…」

博士「さらに足にはホバークラフト機能が付いたスパイクを履いている。これがあれば…」

 

宣言通りに博士はボールを打ち返す。しかし、走ろうとしない。だがその直後、ホバークラフト付きスパイクが起動し、博士は空中に浮いたまま一気に一塁へ進む。

 

宗麟「すげえ!これなら走らずに済むな。」

 

ところが判定はタッチアウトであった。

 

博士「なぜだ!?ちゃんと一塁に行ったではないか!」

バイラノス「いや、あんた地面から数ミリ浮いてるからベース踏んでないじゃん。」

博士「しまった!!」

由希菜「発明品はすごいけど野球が何かがまずわかってなかったね…」

 

二番バッターはヴィヴィル。しかし、相手ピッチャーが投げ方を誤り、ボールはヴィヴィルの身体目掛けて飛んで来る。通常ならデッドボールだがヴィヴィルは反射的にバリアを展開したため、ボールがバリアに跳ね返されて外野まで飛んでいった。思わぬ事態にてんてこ舞いになる守備陣を横目にヴィヴィルはダイヤモンドを全力疾走。三塁まで到達した。

 

ヴィヴィル「すごいわ!私が身体にバリアを張ったからデッドボールがスリーベースヒットになったわよ!」

由希菜「どっちにしろヴィヴィルちゃんの大切な体に当たりそうになってる時点でアウトだと思うな、俺は!?」

 

そんな監督のツッコミを余所に次の三番ヴァネッサはヒットを放ち出塁。さらに四番の紅鬼は怪力を利用してセンター前ヒットを飛ばして見事に1点を返すことに成功し、1回の裏は終了した。

 

宗麟「さあ、ここでGame highlight!番組の尺の都合で2回以降はダイジェストにさせてもらうぞ。」

由希菜「メタ発言は自重しようよ…」

 

まずは辰弘が何と二打席連続ホームラン。しかし、その後、警戒されてしまい、次の打席では敬遠されてしまう。その態度にブチ切れたのかヴァネッサからパワードスーツを引ったくり、リンドレイクに変身し、ピッチャーに向かう。慌てて宗麟がリントヴルムに変身して止めに入り、何とか死人が出かねない乱闘は阻止された。

 

そして昼休みにクシナが一言もらしたのは…

 

クシナ「あいつら本当に鼻に付くわね。相手チームのドリンクに筋弛緩薬でも混ぜてやろうかしら?」

博士「早まるなクシナ君。」

由希菜「それって完全に悪の組織の手口だよ。」

 

さらに午後からの回では今度は紅鬼がデッドボールを食らい、キレた紅鬼がピッチャーに迫る。しかし、ここで蒼鬼がヴィヴィルとヴァネッサと美沙子にクシナがなぜか持参して来たチアコスを着るように指示。そして、3人は紅鬼の前でセクシーポーズを取る。すると、紅鬼は一気にデレデレ鼻の下を伸ばして落ち着いたのであった。

 

由希菜「紅の人単純過ぎだね。てか、1試合で2回も乱闘起こるなんてそうそうないよ…」

 

そしていよいよ試合は9回の裏を迎える。泣いても笑ってもアース・デルミエンズの最後の攻撃である。現在の点数は10対8と2点差で負けている。この回で何としてでも2点以上は取らなくてはならない。ところがここでアクシデントが発生した。

 

博士「大変だ!次のバッターの美沙子が試合中ずっと超能力を使っていたからぶっ倒れてしまった!」

宗麟「どうしよう…俺達はギリギリ9人しかいないからな…こうなったら最後の手段!ピンチヒッターを呼ぼう。由希菜、打席に立ってくれ!」

由希菜「ちょおっ、俺もできないって言ったよね!?ボールに当てることすらしたことない人にやらせるって結構だけど今更か知ってた!」

博士「安心しろ。君にはさっき使った私の発明品、AIバットとホバークラフト付きスパイクを貸してやろう。」

 

最初は自信なさげだった由希菜だが、博士が盛り上げるために登場音楽を流してくれた(BGM:巨人の星のOP)それで少し背中を押された由希菜が相手チームに向かって叫ぶ

 

由希菜「俺がアース・デルミエンズ、監督!深郷由希菜である!!」

宗麟「なんかいろんな漫画が混ざってんな…」

 

AIバットの力はてきめんであり、ちょうどいいタイミングでボールを打ち返した。さらに由希菜はホバークラフト付きスパイクを巧みに操り、何と二塁まで走塁に成功した。だが、次のバッターの博士は普通のバットを使ったため、三振。続くヴィヴィルもフライを取られてアウトになってしまい2アウトと追い詰められてしまった。かなりピンチな状況となってしまう。

 

ヴァネッサ「こういうのを何と言うんだっけか?確か蒼鬼に教えてもらった言葉で…あ!『ハイサイのジン』だったか?」

蒼鬼「沖縄のお土産にありそうなお酒になってますよ。それをいうなら『排水の陣』でしょ…」

 

しかしながらそんな大ボケをかましたヴァネッサはヒットを放ち、塁に出た。さらにここで紅鬼がバッターボックスに斧を持って立つ。

 

由希菜「だからそれは反則じゃないのかな…」

紅鬼「だけどルールには『斧を持ち込んではいけない』とは書いてないべ。」

 

結果、斧はバイラノスの温情判定でギリギリOKになった。しかも紅鬼は斧でバントした。四番がまさかのバントという前代未聞の状況に意表を突かれて相手の送球が遅れてしまい、紅鬼はセーフとなった。ついに迎えた最終回2アウト満塁。打席に立ったのは…宗麟だった。

 

宗麟「俺は絶対にホームランを打ってやるぜ!」

 

ピッチャーが振りかぶり、第1球…投げた!

 

宗麟「DraGO!リントヴルム!」

 

何と宗麟はスイングをする直前にリントヴルムに変身。そのリントヴルムの2トンの威力のパンチを放てる腕力で…ボールを場外へ運んだ!

 

宗麟「やったぜ!逆転満塁サヨナラホームランだ!」

 

逆転勝利でゲームセットととなり、宗麟達は勝利を喜んだ。さすがにこの結果には納得いかないと相手チームから抗議があったものの、バイラノスの「ならこの面倒くさい試合をもう1回やり直すか?」と言われたため、煉光財閥野球部は馬鹿馬鹿しくなって帰ってしまったそうだ。

 

宗麟の提案でチーム全員で記念写真を撮ることになり、監督の由希菜をセンターに皆が集まった。

 

ヴィヴィル「辰弘、死んだ貴方が写ってたら心霊写真にならないの?」

辰弘「余計なこと言うんじゃねえよ。」

 

かくして野球大会はこれにて幕を下ろした。これは果たして夢なのか。夢としたら誰の夢なのか。だが、そんなことも気にならないほどの楽しい時間が流れていた。

 

(完)

 




●ざっくりとしたスタメン紹介

一番 キャッチャー 「九頭龍真太郎」…ご存知九頭龍博士。発明品や明晰な頭脳で皆をサポートするが野球ルールがイマイチ理解できていない

二番 レフト 「ヴィヴィル」…バリアが使えるためデッドボールがヒットになり、タッチアウトが無効である

三番 サード 「ヴァネッサ」…身体能力が高いため攻めてよし、守ってよしの万能選手

四番 センター 「紅鬼」…持ち前の怪力で剛腕を誇る。しかし、キレやすいのが欠点

五番 ショート 「龍崎 宗麟」…主人公らしく安定した活躍を見せる

六番 セカンド 「蒼鬼」…九頭龍博士とは違う意味で頭が切れる策略家

七番 ファースト 「夜刀 辰弘」…初代リンドレイク。体は死んでも運動神経は死んでない

八番 ライト 「櫛田 七海」…クシナさん。外野は楽そうだからという不純な動機でライトになったらしい

九番 ピッチャー 「美沙子」…ある意味一番このチームで身体を張って勝利に貢献した人物

監督 「深郷由希菜」…時にツッコみ、時にボケる、人情味あふれる監督兼選手

審判 「バイラノス」…なぜかデルミエン星出身の人物を贔屓していた。いわゆる奈良判定ならぬ「デルミエン判定」だろうか


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推理!花弁に潜む闇の結末

警察の話によれば被害者は毒物を吸引して死亡したらしいが、その毒物の原因が全く不明であり、捜査が難航しているという。そこで九頭龍研究所に毒物の出所を突き止めてほしいとの依頼が来たのであった。九頭龍博士とクシナと宗麟。そして臨時の助手という名目で唯一現場にいた蒼鬼も同行した。まず、第一発見者である慶樹と早希に話を聞くが被害者の資産家はただの客であり、知り合いではないと言っていた。次に殺人現場のトイレを調べる。

 

博士「トイレは特に怪しいところはないな。薬品を使ったという形跡もない。」

宗麟「博士、ゴミ箱にマスクが捨ててありました。」

博士「それは今関係ないだろう。」

 

しかし、クシナの何気ない一言で蒼鬼の目の色が変わった。それは裏口のゴミ袋入れて捨ててあった花だった。

 

クシナ「黄色い百合の花なんて珍しいわね。」

蒼鬼「待て…その花を見せてくれ!」

 

蒼鬼は黄色い百合のような花を回収した。翌日、蒼鬼はヴァネッサにその花を見せた。すると、ヴァネッサは衝撃の一言を放つ。

 

ヴァネッサ「これは…デルミエン星…私の故郷のフェルドナ王国に自生している植物だ!間違いない。しかし、なぜこんなところに?」

 

ヴァネッサによればこの花は『プルード』と言い、フェルドナ王国では貴族の間で人気のある観賞用の花だという。さらに九頭龍博士が蒼鬼の持って来た花を調べたところ、プルードの花粉はアルコールと混ざると猛毒になることがわかった。蒼鬼の推理によれば被害者は酒気帯びの状態でトイレに行き、この花の花粉を吸引して死亡したというのだ。

 

宗麟「しかし、そんな危険な花がデルミエン星では観賞用なのか…」

ヴァネッサ「私達デルミエン星人には無害だぞ。毒になるのは地球人だけのようだ。」

 

その日の夕方、証拠を掴んだ蒼鬼は慶樹と早希を問いただすために例のクラブへ向かった。しかし、その数分前に慶樹は何者かと電話をしていた。

 

慶樹「もしもし、バイラノスさんですか?大変です!あの花の正体に気づいた奴がいるんです。どうしましょう?」

バイラノス「ああ、十中八九リントヴルムの関係者に違いないね。だったら君にチャンスをあげよう。もし、リントヴルムの関係者を誰か1人でも抹殺できたら君の殺人を財閥の力を使って隠蔽してあげるよ。もちろん武器は貸してあげるから店の裏に置いておくね。」

慶樹「あ、ありがとうございます!」

 

そんなやりとりがあったとは知らない蒼鬼は開店準備をしているクラブに押し入り、ホステスの早希とボーイの慶樹を呼んだ。

 

蒼鬼「おい、昨日の客を殺したのはお前だろう?」

慶樹「な、何だ。証拠はあるのか?」

蒼鬼「クラブのゴミ袋から黄色い花が見つかった。この花はアルコールと混ざると猛毒になる性質を持ってる。そしてお前はこれを利用してあの資産家を殺したんだ。」

 

蒼鬼の話ではまず、資産家に大量に酒を飲ませてトイレに行かせる。その時、慶樹がトイレの花瓶の中身をプルードにすり替える。さらに、花粉を吸わないようにマスクを着けて『故障中』の個室に隠れる。そして、トイレに充満したプルードの花粉を資産家が大量に吸引し、死亡。その後、トイレの個室から出た慶樹が第一発見者を装って警察に通報し、その後、証拠隠滅のためにプルードをゴミ袋に入れて捨てた…という殺害計画だったのだろうと述べる。それと早希もグルであり、資産家を唆してたくさんのボトルを空けさせたのだろうと蒼鬼は言い放った。

 

早希「すごいわね…貴方の言ってることはほぼ正解だわ。ええ、そうよ。私達はあの男を殺す計画を立てていた。」

慶樹「俺達は2年前から付き合ってたんだが、金に困ってた。その時、あの資産家が早希に結婚を申し込んだんだ。早希があいつと婚約した後にあいつが死ねば遺産は早希のものになる…そういう筋書きだったんだよ。」

蒼鬼「その花の正体を知ってる奴がここにいたことが運の尽きだったな。」

 

しかし、慶樹は「お前を消せば俺の犯行を知る人物はいなくなる」と言い、バイラノスからもらったガントレットを起動。ネオ・キマイラ『ボルガウロスMark Ⅱ』に変身した。突然のネオ・キマイラの出現にパニックになる店内を尻目に蒼鬼もオーガランスに変身しようとするが…早希が蒼鬼の後頭部を消火器で殴り、変身を中断させた。ダメージを受けた蒼鬼はボルガウロスの膝蹴りと体当たりを食らい、さらには火炎放射で大火傷を負ってしまう。だが、その時の炎が厨房に入ってしまい、小規模なガス爆発が発生。店がどんどん燃え始める。

 

ボルガウロス「お前は早く逃げろ、早希!」

早希「でも、慶樹が…」

ボルガウロス「俺はこいつにとどめを刺す。それから行くからさっさと店から出るんだ!」

 

ボルガウロスは早希を裏口に押しやり、無理矢理外へ放り出した。そして、倒れ伏した蒼鬼にとどめを刺そうとするが…

 

ヴァネッサ「蒼鬼!助けに来たぞ!」

 

何と燃え盛るクラブにリンドレイクが突入して来た。どうやら蒼鬼の後を皆で付けていたようだ。店の外では宗麟とヴィヴィルが周辺の避難誘導や消防署への連絡を行なっていた。そのおかげで店の前には消防車や救急車が集まっている。一方、炎上する店内でリンドレイクはボルガウロスと格闘していた。最初は火炎放射や斧の攻撃に苦戦するも、動きを見切ったリンドレイクはボルガウロスの斧を手刀で叩き落とし、反撃に跳び膝蹴りを入れた。不利を悟ったボルガウロスはガントレットをphase Blackに切り替えようとするもその隙にリンドレイクに回し蹴りを見舞われて店の外へ吹っ飛ばされた。その衝撃でガントレットの電源が切れてしまい、変身解除に追い込まれた慶樹は逃げようとするが…

 

紅鬼「ここで待ち伏せしといて良かったべ。さあ、観念しろ!」

 

待ち構えていた紅鬼に取り押さえられたのであった。

 

ヴァネッサ「蒼鬼ー!どこにいるんだ!」

 

消防車の放水で火はあらかた治ったが黒煙がすごくて前が見えない状態で蒼鬼を探すヴァネッサ。すると、宗麟とヴィヴィルが外からヴァネッサを呼ぶ。

 

宗麟「ヴァネッサ、蒼鬼なら無事だ!」

ヴィヴィル「非常口から脱出したみたいよ!」

蒼鬼「いやー、気絶から目を覚ましたら偶然目の前に非常口があってさ。助かりましたよ。」

ヴァネッサ「ああ、良かった。まったく、心配させるな。」

 

ホッとするヴァネッサだが、和やかな空気も束の間。紅鬼に押さえつけられた慶樹が救急車へ担架で運ばれる女性に向かってジタバタ暴れながら叫んでいた。

 

慶樹「早希!どうして君は店に戻ったんだ!」

 

どうやら早希は一旦は外に出たものの、慶樹が心配になり店に引き返してしまったようだ。そのため、煙を大量に吸い込み、一酸化炭素中毒で倒れてしまったのであった。

 

 

そして、翌日。こんなニュースが流れた。ある高級クラブがガス爆発により火事になり、『浦賀 早希』さんが一酸化炭素中毒で意識不明の重体になり、病院で死亡が確認された…というところでテレビを消す宗麟。

 

宗麟「あの人…死んでしまったのか…」

ヴァネッサ「ふん。自業自得だろう。あやつらだってプルードを使って殺人を犯してる。」

ヴィヴィル「でも…何だかやりきれないわね。あれ?蒼鬼は?」

紅鬼「朝早くから出かけて行ったべ。」

 

慶樹は帰らぬ人となった早希を悼み、涙を流して病院の前の公園にいた。そこへ蒼鬼がやって来た。

 

慶樹「何だてめえ…俺を笑いに来たのか?」

蒼鬼「さあな。でも、これでわかっただろう。お前は非日常的な力に溺れた結果こうなったんだ。」

慶樹「何が言いたい…?」

蒼鬼「お前と長話をする気はないが、最後にこれだけ言っておくぞ。ある映画の台詞の受け売りだけどな…」

 

蒼鬼「大いなる力には、大いなる責任が伴う。」

 

ハッと息を飲む慶樹。だが、次の瞬間。蒼鬼の姿はどこにもなかった。

 

目先の欲望に囚われた人間の救いようのない物語の救いようのない結末。知っているのはデルミエン星の人造人間ただ1人であった。

 

(続く)

 

 

 

 



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極寒!零下百度の戦場の結末

残すところ後2つとなったNightmare matterを手に入れるため、北極海と南極に向かうことになった宗麟達。この計画を達成するために南極には宗麟、九頭龍博士、ヴィヴィルが、北極にはヴァネッサ、紅鬼、蒼鬼が向かうことになった。

 

宗麟「南極は俺に任せろ。ヴァネッサも気をつけるんだぞ?」

ヴァネッサ「お前に心配されるほどじゃない。私にはリンドレイクの力と頼もしい仲間がいる。だから、大丈夫だ。」

 

宗麟とヴィヴィルは博士の伝手で南極調査隊の船に乗せてもらう。乗組員の中で数少ない女性ということでちやほやされるヴィヴィルと名のある科学研究所の所長ということで敬われる博士に対して宗麟は雑用ばかりさせられたものの、南極に無事に到着した。博士は調査隊に「個人で調査したいことがあるから1日だけ別行動させてくれ」と申し出、宗麟達はNightmare matterの捜索へ出発した。特殊な寒冷地に対応した防護服を着用した3人はまもなく南極の南部に足を踏み入れる。

 

宗麟「博士!このエリアに入った途端に吹雪が激しくなりました。」

博士「ここ一帯には人工的にブリザードを起こす装置が多数仕掛けられているのだろう。おそらく煉光財閥の仕業に違いない。」

ヴィヴィル「それならこの近辺にNightmare matterがきっとあるわね。」

宗麟「しかし、なぜ煉光財閥はこんな場所に隠したんだ?」

ヴィヴィル「南極に北極海に富士の樹海に知床半島…全部極地ばかりなのは誰も近づけないし、それだから監視のネオ・キマイラもたった1〜2体で済むわ。本当に誰にも渡せないものを守るならなかなか合理的な判断じゃないかしら。」

 

なるほどとヴィヴィルの分析に頷いたのも束の間。Nightmare matterが光り輝いている場所が見えてきた。しかし、そこにはやはりネオ・キマイラが立っていた。ヒュドランチャーMark Ⅱである。

 

ヒュドランチャー「おやおや、-100℃にも達するブリザードの中をよく生き残れたものだ。だが、その幸運もここまで。全員血祭りにあげてやろう!」

宗麟「ふざけるな!俺達はお前を倒してNightmare matterを手に入れる。そして、エラクレル帝国の侵略を阻止するんだ!」

 

宗麟はリントヴルムに変身し、立ち向かうもヒュドランチャーの強化されたロケットランチャーに苦戦を強いられる。その威力は氷山を抉り、氷の雪崩を起こすほどであった。

 

宗麟「あんなものまともに食らったら、ファフニールフォームでも耐えきれないかもしれない…どうすれば…」

 

その時、博士はハッと何かに気づいた。

 

博士「リントヴルム!セイリュウフォームにチェンジしろ!そして、敵の攻撃をかわしつつ徐々に接近し、必殺技を叩き込め!」

 

その言葉を信じた宗麟はヒュドランチャーの攻撃をかわしつつ、セイリュウフォーム自慢のフットワークでどんどん距離を詰めている。だが、相手も負けじとリントヴルムを狙ってロケットランチャーを連射する。周りの氷山や氷河が次々と崩れていく中、ついにリントヴルムがヒュドランチャーの正面に躍り出て、必殺技の「ドラグーンフリズアタック」を繰り出した。冷気を纏った槍がヒュドランチャーに刺さり、リントヴルムはそのままヒュドランチャーを氷河へ投げ飛ばした。ヒュドランチャーがぶつかった氷河の一部が崩れ落ちる。ヒュドランチャーはなんのこれしきと立ち上がろうとするが…

 

ヒュドランチャー「ん?ぐわぁっーーー!?」

 

ヒュドランチャーの頭上に大量の氷塊が雨あられと降り注いだ。そう、これが博士の狙いだったのである。さらにヒュドランチャーがロケットランチャーを乱射したために氷河に歪みやヒビが入っていた。その氷河も次々と崩落していく。

 

博士「皆、早くここから離れるぞ!」

宗麟「でも、博士…Nightmare matterが…」

博士「それは後でいい!」

 

宗麟達は全力疾走でその場を離れた。ギリギリのところで大規模な氷河の崩壊に巻き込まれることなく調査隊の基地まで逃げきれた。

 

そして、数時間後…

 

宗麟「博士!先ほどの吹雪が嘘のように晴れてます。」

博士「うむ。うまくいったようだな。わざとヒュドランチャーにロケットランチャーを氷河へ撃たせて、氷河が一気に崩れ落ちるのを待っていたのだ。そして、氷河が崩れて海に沈んだことにより、その周辺に設置してあるブリザードを起こす装置もすべて海の底に沈んでいったのだよ。ついでにヒュドランチャーも氷河と一緒に海の底だ。」

ヴィヴィル「なるほど。最初からこれが目的だったのね。私は知能指数だけは高いけど博士みたいにその場その場の機転は効かないわ。憧れちゃうわね。」

 

そしてついに、宗麟達は南極の氷山の一角に隠されたNightmare matterを発見し、回収することに成功した。残りはあと1つである。

 

宗麟(北極に向かったヴァネッサ達は大丈夫かな…?)

 

(続く)



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激動!燃える北の海の結末

宗麟達が南極に向かったのに対し、ヴァネッサ達は北極へ向かうことになった。だが、残念ながら九頭龍博士には北極へ行くための伝手はなく、ヴァネッサ達は定期的に北極にあるNightmare matterの様子を見に行く煉光財閥の監視船に船員に変装して乗り込んだ。

 

ヴァネッサ「うまく乗り込めたはいいが…行きは良くても帰りが難しいぞ…」

紅鬼「確かにそうか。Nightmare matterを持ったままじゃ監視船には乗れねえべ。」

蒼鬼「だから、帰りは最悪この船をジャックして戻るしかない。厳しい連戦になりそうだ。」

 

そんな話をしている間に3人を乗せた監視船は北極に到着。ヴァネッサ達は蒼鬼があらかじめ持って来た睡眠薬を船員達の飲み物に混入させて船員が全員眠ってしまった隙に船を降りてNightmare matterの隠し場所へ向かう。辺りはやはり猛吹雪であったが、デルミエン星人であるヴァネッサとゲノム魔人である紅鬼と蒼鬼には関係なく、ずんずんと地図を頼りに隠し場所へ向かう。やがて、目的地が見えて来たが、そこには案の定、見張りのネオ・キマイラが待ち構えていた。しかも、3体もいる。サーベルが武器の「オーガサーベル」、大きな盾を持つ「オーガシールド」、身体中に回転カッターを持つ「オーガギロチン」と紅鬼や蒼鬼と同じ種類の敵だった。

 

オーガシールド「良く来たな、リンドレイク…それに貴様らは我々の同族か。」

オーガサーベル「同じシリーズだからって敵ならば容赦はしない。我々は最新型だ。旧型に勝ち目はない。」

オーガギロチン「リンドレイクも時代遅れのオーガもまとめてズタズタにしてやらぁ!」

 

3対3の戦いがついに幕を開けた。ヴァネッサはリンドレイクに変身し、オーガサーベルに立ち向かう。紅鬼の変身したオーガアックスはオーガギロチンに、蒼鬼の変身したオーガランスはオーガシールドにそれぞれ挑みかかった。互いに譲らぬ一進一退の攻防が続く中、最初に動きがあったのはリンドレイクであった。オーガサーベルの突き出したサーベルにジャンプでかわした後に足を巻きつけてオーガサーベルの顔面に蹴りを入れた。リンドレイクはオーガサーベルが怯んだ隙に必殺技の「ドラグーンダークネスブレイク」を繰り出し、オーガサーベルを撃破した。

 

一方のオーガアックスはオーガギロチンのカッター攻撃に苦戦していた。斧は振りかぶる隙が大きいため、隙間からカッターで斬られるために相性が悪かった。しかし、オーガアックスは何と武器の斧をブーメランのように投げる。だが、オーガギロチンにかわされてしまい、丸腰になってしまう。ところが油断したオーガギロチンをオーガアックスは懐に入り込んで背負い投げを決めた。カッターで背中から出血したものの、敵の意表をつくには十分であった。面食らったオーガギロチンは態勢を立て直そうとするが…後ろから飛んできたオーガアックスの斧がクリーンヒットし、そのままがっくりと崩れ落ちた。

 

紅鬼「前にオラが食らったヴィヴィルと美沙子ちゃんの作戦を参考にしてみたべ。うまくいって良かっただ。」

 

そして、オーガシールドは神妙な面持ちで2人の戦場を見ていた。

 

オーガシールド「何、あの2人が負けただと?仕方あるまい。ここは私が仇を…」

蒼鬼「待てよ…俺はまだ負けてないぞ。」

 

そこには目元から血を流すオーガランスがふらつきながら立ち上がった。

 

オーガシールド「何だ。まだ生きてたのか。まあいい。貴様の負けだ。貴様はエラクレル帝国のゲノム魔人だろう。同郷のよしみで命だけならば助けてやろう。」

蒼鬼「いや、死ぬのはお前の方だ。仕方ない。できればこの手は使いたくなかったんだけど…お前に教えてやろう。実は俺は…」

 

オーガシールドはオーガランスから語られた衝撃の発言に思わず盾を落としてしまった。

 

オーガシールド「貴様…ハッタリだとしてもタチが悪いぞ。」

蒼鬼「いいや。これはれっきとした事実だ。さて、そういうわけだから死んでくれや。」

オーガシールド「ぐっ、駄目だ。今貴様に攻撃したら私が殺されてしま…うぐっ!?」

 

オーガシールドは戦闘態勢を解いた瞬間にオーガランスの槍の一撃で心臓を貫かれてしまい、息を引き取った。

 

ヴァネッサ「紅鬼、蒼鬼!無事だったか?」

紅鬼「姐御!オラは何とか勝てただよ。」

ヴァネッサ「おい、怪我してるじゃないか紅鬼。大丈夫か?」

紅鬼「何のこれしき!こんな傷は姐御がハグしてくれたら治るべ。」

ヴァネッサ「そうか。それで治るなら協力しよう。」

 

ヴァネッサは紅鬼の冗談を間に受けて紅鬼を抱きしめた。

 

紅鬼「ムハー!姐御のいい匂い…」

蒼鬼「どさくさに紛れて姐さんの胸に顔埋めようとするな。ほら、離れろ馬鹿。」

 

蒼鬼は紅鬼をヴァネッサから引き離す。

 

ヴァネッサ「お前も無事だったか蒼鬼。何だ?傷が浅いな。そんなに簡単に敵に勝てたのか?」

蒼鬼「あはは。ちょっと交渉させてもらいましてね。」

 

何がともあれ無事で良かったとヴァネッサは2人を称え、Nightmare matterを回収した。その時、紅鬼が何かを見つけた。

 

紅鬼「姐御!あそこにUFOがあるべ!?」

蒼鬼「何でこんな場所に乗り捨てられてるんだ?」

ヴァネッサ「ちょうどいい。中に入って調べてみよう。」

 

3人は北極の真ん中に着陸していたUFOの内部に入る。コクピットまで行くが、人気はまるでない。

 

蒼鬼「こりゃエラクレル帝国の技術でできた円盤だな。どこのマヌケが忘れていったか知らないが、これを操縦すれば日本までひとっ飛びですぜ。」

ヴァネッサ「よし、操縦は任せよう。蒼鬼、よろしく頼むぞ。」

紅鬼「いやー、本当にラッキーだべな。わざわざ監視船にまで戻らなくていいんだべ。」

 

こうして3人はUFOを発進させ、北極から一気に日本へ飛んだのであった。だが、UFOの内部には…実は1人、何者かが潜んでいた。それは…

 

バイラノス(ふふ、見事に計画通りだ。私がわざわざこのUFOを用意したかいがあった。私のスパイにはまだまだ生きていてもらわないと行けませんからねぇ…ヒッヒッヒ。)

 

バイラノスは3人がUFOを操る姿を格納庫に隠れて伺っていた。

 

(続く)



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悪夢!舞い戻りしガルトの結末

年末ということもあり、九頭龍研究所では忘年会が開かれていた。と言っても、主催のクシナ以外の研究員は皆、帰省してしまっている。いるのはクシナの他、研究所に住み込みしている宗麟、ヴィヴィル、ヴァネッサ、紅鬼、蒼鬼、そして研究所近くに住んでいる美沙子の7人である。

 

クシナ「皆、料理を食べ終わったら企画の方に行くわよ!全員参加の『王様ゲーム』!」

紅鬼「いよっ!待ってました!」

 

すっかり飲みまくって出来上がっているクシナに呆れ顔の宗麟とヴィヴィルを余所に簡単なルール説明の後にゲームがスタート。最初は…

 

美沙子「私が王様ね。じゃあ、3番が4番に壁ドンする。」

ヴァネッサ「3番は私だ。」

紅鬼「オラが4番…」

 

しかし、紅鬼がそう言い終わらない内にヴァネッサは紅鬼の首根っこを掴み、壁に叩きつけた。

 

紅鬼「痛てあ!姐御、壁ドンってそんな悪役レスラーが使うような技じゃねぇべ!」

ヴァネッサ「何、そうなのか?すまなかった…」

クシナ「つ、次に行きましょうか…」

 

続いて王様になったのはヴァネッサだった。

 

ヴァネッサ「では、1番!」

宗麟「お、俺か。」

ヴァネッサ「明日、研究所の玄関掃除を頼む。」

宗麟「いや、当番決めるゲームでもねぇから!」

 

続いて何と紅鬼が王様になった。

 

紅鬼「やった!オラだべ!2番の人はオラに膝枕をする!誰だ?ヴィヴィルちゃん?美沙子ちゃん?姐御?」

蒼鬼「おい…2番俺なんだが…」

紅鬼「うそーん!?」

 

そして、ついにクシナが王様を引いた。

 

クシナ「やったわ!じゃーあ、5番の人は私とポッキーゲームする!誰?紅鬼くん?蒼鬼くん?この際、宗麟でもいいわね。」

ヴィヴィル「なんで私が5番なのよ…」

クシナ「え?…ええっ!?」

 

結局2人はその場の空気に負けてポッキーゲーム(寸止め)をすることになった。

 

宗麟「百合ネタ多いなこの番組…」

美沙子「はあ、私がポッキーゲームしたかったな…」

蒼鬼「メタ発言と問題発言は自重してくれ…」

 

その時、部屋に九頭龍博士が駆け込んで来た。

 

博士「皆、来てくれ!ついに完成したぞ。日に日に激化するネオ・キマイラとの戦いを乗り切るために私が開発した新たなる戦力…「メカカマック」だ!」

 

それは以前、博士が契約していたゲノム魔獣『パチャカマック』を強化改造してサイボーグ化したものであった。オーガランスと戦い、死亡したパチャカマックを博士の技術で復活させたのだという。早速、広いホールに移動し、起動させようとしたが様子がおかしい。

 

メカカマック「くははは!感謝するぞ、九頭龍真太郎よ。余はリントヴルムに復讐する機会を得た!」

宗麟「その声は…Inferno総統!」

メカカマック「いかにも。余は万が一死亡した時に備え、余が開発したすべてのゲノム魔獣に余の意思をインプットしていたのだ。さあ、リントヴルム!余と戦え!今度こそ貴様に勝つ!」

 

それを聞いたヴァネッサはリンドレイクに変身しようとするが、宗麟に止められる。

 

ヴァネッサ「なぜ止める?奴は敵だぞ!」

宗麟「しかし、あいつは俺との決闘を望んでる。大丈夫だ。俺は総統には負けない。それにあいつに聞きたいこともあるしな。」

 

宗麟はリントヴルムに変身し、メカカマックと対峙する。そして、ついに戦いの火蓋が切られた。序盤はメカカマックの落雷攻撃や吹雪、強風による妨害に苦戦を強いられる。だが、その戦いの最中、リントヴルムはハッと思い出す。相手はオーガランスに槍で心臓を貫かれている…ということは弱点は…

 

宗麟「そうか!胸部が弱点だな!」

 

リントヴルムはバハムートフォームにチェンジし、腹部に渾身のパンチを見舞う。さらにそれに怯んだ隙に必殺技の『ドラグーンブレイブブラスター』で胸部を撃ち抜き、爆破させた。

 

メカカマック「ぐわぁー!くっ、やはり余の身体ではないと勝てぬか…」

 

メカカマックはバラバラになってしまった。ところが、宗麟がメカカマックのバラバラ死体に駆け寄り、頭部を担いで博士に向き直る。

 

宗麟「博士。総統…いや、ガルトに聞きたいことがあります。脳だけでも復元できませんか?」

博士「わかった。胴体を再生させなきゃ大丈夫だろう。待っていろ。」

 

九頭龍博士はメカカマックの頭部のみを復元し、まるで晒し首のようにメカカマックを台に置き、皆で取り囲んだ。すると、メカカマックが目を開けた。

 

メカカマック「くそ。屈辱だな。勝負に負けて、生き恥を晒すとは…」

宗麟「それよりお前に聞きたいことがある。」

ヴァネッサ「ガルト…お前はエラクレル帝国の民だろう。ならば、フェルドナ王国が滅びた後の帝国の現状も知っているはずだ。洗いざらい話してもらおうか。」

メカカマック「よかろう。余は帝国に怨みがある。口を噤んだところで何の価値もない。だが、これを聞いたら貴様らは絶望するかもしれぬがな…」

 

やけにあっさりとヴァネッサの質問に答える姿勢を見せるInferno総統ことデルミエン星人ガルト。彼の口からは一体どのような話が語られるのだろうか。

 

(続く)

 



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憎悪!人造人間の謀の結末

Inferno総統ことデルミエン星人ガルトはエラクレル帝国の現状を宗麟達に説明した。その話によればエラクレル帝国は…すでにバイラノスの支配下に置かれているという。国民はすべてゲノム魔人に成り代わり、エラクレル帝国民はほぼ全員地下シェルターに避難しているか、強制収容所に入れられ、毎日ゲノム魔人の延命のための材料に換えられているという悲惨なものであった。

 

総統「地下シェルターに行けるのはエラクレル帝国の中でも富裕層だけだ。残りの平民は収容所内で自分がゲノム魔人達の材料にされるのを待つだけであろう。」

ヴァネッサ「待て!皇帝はバイラノスのそんな横暴を許しているのか!?」

総統「残念な話だが…皇帝はすでにバイラノスに殺害されている。今いる皇帝は奴が作ったクローンだ。」

 

皆が驚きと落胆の色を隠せない中、ガルトは淡々と話を続ける。

 

総統「これでわかったろう、ヴァネッサ王女。もう手遅れであるとな。」

ヴァネッサ「じゃあ、まさか…私の妹の『ルネア』も…」

 

ルネアとはヴァネッサの妹であり、エラクレル帝国の皇帝のもとへ嫁いで皇女となった。しかし、ガルトは首を横に振る。

 

総統「ルネア皇女殿下は生きている。無論、ヴァネッサ王女が帰ってくるまでの人質としてな。まあ、この話を信じるか、信じないかは貴様らしだ…っ…あ…終わっ…切れ…」

 

メカカマックの頭部は静かに瞳を閉じた。博士によればどうやらエネルギー切れだと言う。しかし、何とか情報は聞き出せた。

 

宗麟「だけど、総統…いや、ガルトの話が全部事実なら俺達のしてきたことは一体…」

ヴィヴィル「宗麟。それは言わない方がいいわ。」

 

九頭龍研究所はかなり幸先の悪い新年となってしまったが、これはまだ後に起こる事件の序章に過ぎなかった。

 

年が明けて数日後、オペレータールームにいたクシナが血相を変えて部屋に飛び込んで来た。

 

クシナ「大変よ!今監視室から入った情報なんだけど、セキュリティシステムが何者かに破壊されたみたい!」

博士「そんなバカな!?ここのロックはリントヴルムのパンチやキックでも壊れないほど頑丈なはずなのにか?」

 

監視カメラの映像を見てみるとそこにはバイラノスが我が物顔で研究所に侵入している光景が映し出されていた。急いで宗麟はリントヴルムに変身し、バイラノスの前に立ちはだかる。

 

宗麟「お前!何にしに来た!」

バイラノス「これはこれはリントヴルム。わざわざお出迎えとは私も随分出世したものだ。だが、今回は君に用はない。いや、むしろ私がメインではないのだ。」

宗麟「どういうことだ…?」

 

外を見ると研究所の周りを警官隊や自衛隊、さらにはマスコミまでもが取り囲んでいた。

 

バイラノス「君達、九頭龍研究所は『ネオ・キマイラ』を製造している…という情報を流させてもらった。」

ヴィヴィル「嘘!?どうやってそんなデマを人々に信じさせたのよ!」

バイラノス「ははは!我が煉光財閥が製造していたネオ・キマイラの資料をすべて君達の研究所の名義に書き換えさせてもらったよ。私がそれを抑えたことにしたのさ。しかも、君達はオーガアックスとオーガランスを匿っているが故にこの偽造は誰も疑わないだろう!」

宗麟「てめぇら財閥の罪を全部俺達に擦りつけようというのか。なら、お前をまずはぶっ倒す!」

 

リントヴルムは必殺技の「ドラグーンライトニングブレイク」を放つが…バイラノスに片手で弾かれてしまった。

 

宗麟「なにっ!?どうして無傷なんだ!」

バイラノス「私は常に最新型に更新される謂わば『成長するゲノム魔人』。中でも成長率の高さで私の右に出る者はいない。故に君の攻撃に瞬時に対応できたのだよ。」

宗麟「何てふざけたスペックだ…ぐはっ!?」

 

バイラノスはリントヴルムに手から光弾を放って吹っ飛ばした。倒れるリントヴルムにバイラノスは問う。

 

バイラノス「もし、君達の持っているNightmare matterをすべて私に献上するならば今すぐにこの民衆達を帰してあげよう。ただし、拒否するなら…ネオ・キマイラという怪物を育てている危険な研究所としてここを我が煉光財閥が差押えよう。さあ、どうする?」

 

宗麟は迷った。このまま正面から戦っても勝ち目はない。かと言ってNightmare matterは絶対にバイラノスに渡してはいけない…果たしてこの二者択一に宗麟はどんな答えを出すのか…

 

ヴィヴィル「駄目よ、宗麟!この取り引き自体が罠の可能性もあるわ。だから絶対に渡しちゃいけない!」

蒼鬼「いや、ここで世論を敵回せば俺達は身動きが取れなくなる。ここはあえて渡して、後で戦って奪還するべきだ。」

 

珍しくヴィヴィルと蒼鬼の意見が真っ二つに分かれていた。

 

(続く)



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不退!真紅の覚悟の結末

(もし、君達の持っているNightmare matterをすべて私に献上するならば今すぐにこの民衆達を帰してあげよう。ただし、拒否するなら…ネオ・キマイラという怪物を育てている危険な研究所としてここを我が煉光財閥が差押えよう。さあ、どうする?)

 

ヴィヴィルの意見を取るか、蒼鬼の意見を取るか…迷う宗麟と返事を待つバイラノスが対峙している最中。隠れている紅鬼と蒼鬼はこんな話をしていた。

 

紅鬼「なあ、蒼鬼。前に姐御に教えてもらった話なんだが………って知ってるか?」

蒼鬼「お前…まさか…正気か?」

紅鬼「でも、もうこれしか方法がねえべ!やるしかねぇ!」

蒼鬼「待て!戻って来い紅鬼!」

 

突然紅鬼が動き出し、何と民衆の目の前でオーガアックスに変身。最前列で構えている自衛隊員達に斬りかかろうとしたのである。

 

宗麟「やめろ、紅鬼!どうしたんだ!?気でも狂ったのか?」

 

リントヴルムはファフニールフォームに変身し、パニックになる民衆の盾になった。しかし、オーガアックスは攻撃の手を緩めなかった。仲間であるために本気になれないリントヴルム。だが、オーガアックスが蚊の鳴くような声でリントヴルムにそっと耳打ちする。

 

紅鬼(リントヴルム…オラを倒せ。わざと負けてやるから。ネオ・キマイラであるオラを倒せばリントヴルムも研究所も信頼回復になるはずだべ…)

宗麟(でも、お前はそれでいいのか紅鬼…)

紅鬼(研究所を守ることは姐御を守ることでもあるべ。さあ、早く…!)

 

リントヴルムは済まないという気持ちを押し殺してドラグーンバーストスラッシュを放つ。ただし、剣を前後逆に持ち替えての峰打ちだった。変身が解除されて倒れる紅鬼。その戦いの一部始終を見ていた民衆はリントヴルムに拍手や声援を送った。どうやらこれでリントヴルムや九頭龍研究所は正義の味方であることが証明できたようだ。ぞろぞろと帰って行く民衆達。しかし、バイラノスは面白くないと言った表情だった。

 

バイラノス「仕方ない。ここは計画を変更しよう。本当は九頭龍研究所を無力化してから行うはずだったのだが…」

 

バイラノスは瞬時にヴァネッサの前にワープするとバリアのような空間を展開して自分とヴァネッサを包み込んでしまった。

 

バイラノス「ヴァネッサ王女…貴女をデルミエン星で処刑します。大人しく降伏してくださいな。」

ヴァネッサ「バカにするな!そう簡単に私が諦めると思っているのか?」

 

ヴァネッサはリンドレイクに変身し、バイラノスに有無を言わせず殴りかかる。しかし、やはり何度拳を入れてもバイラノスの身体にはかすり傷も付かない。リンドレイクは必殺技の「ドラグーンダークネスブレイク」を繰り出すがバイラノスに片腕で止められて足を掴まれてしまった。

 

バイラノス「やれやれ。仮にも王族だから手荒には扱いたくなかったが…抵抗されるのも面倒だ。」

 

次の瞬間、バイラノスはリンドレイクの右足をへし折った。リンドレイクは激痛に叫びながら悶絶する。片足が動かない状態で倒れるリンドレイクにバイラノスが迫る。

 

一方、バリアの外ではリントヴルムが剣を何度もバリアに叩きつけたり、九頭龍博士も高出力電子レーザーキャノンを発射したりするもバリアはビクともしなかった。するとそこへ隠れていた蒼鬼が駆けつけて来た。

 

宗麟「早くヴァネッサを助けないと…!」

蒼鬼「遅れてすまんな。俺は今からこのバリアを突破する。」

博士「そんなことができるのか?」

蒼鬼「俺はエラクレル帝国の技術なら大抵のことはわかる。このバリアはネオ・キマイラなら自由に出入りできるんだ。ならば、俺が変身して中に入るぜ。」

 

蒼鬼はオーガランスに変身し、バリアに入る。そして、バイラノスに立ちはだかった。

 

蒼鬼「バイラノスさんよ。ここからは俺がお相手しますよ。姐さんがいたぶられるのを黙って見てられませんからねぇ!」

 

蒼鬼は不意打ち気味に槍を伸ばすがひらりとかわされた。その直後にバイラノスはオーガランスの後ろに回り込み、背中に回し蹴りを見舞った。動きは小さいが威力は凄まじいものだったらしくオーガランスはそのまま大きく蹴り飛ばされてバリアの壁に叩きつけられ、頭部を強打したのかその後、気を失ってしまった。

 

バイラノス「中古品の分際で私の邪魔をするなど愚かな。古き物が新しき物に勝てるわけないだろうに。何の勝算があって私に挑んだのだ。」

 

バイラノスは再びリンドレイクに近づこうとする。宗麟も博士も必死にバリアを壊そうとするがもはや間に合わない。そして、バイラノスがついにリンドレイクに手をかけたその時…

 

リントヴルムと戦い気絶していた紅鬼がハッと目を覚まし、飛び起きたのであった。

 

 

(なあ、蒼鬼。前に姐御に教えてもらった話なんだが………

 

『泣いた赤鬼』

 

って知ってるか?)

 

【続く】



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残火!鬼から騎士への結末

紅鬼「待て!これ以上姐御に近づいたら…即座に首を刎ねるべ!」

 

オーガアックスに変身した紅鬼は斧をバイラノスの首に近づける。しかし、バイラノスは不敵な笑みを浮かべたまま足を一歩踏み出した。

 

紅鬼「このっ!…えっ!?」

 

オーガアックスが斧を振り上げた瞬間、オーガアックスの腹部に穴が空いていた。何とバイラノスは指先からレーザーを発射し、オーガアックスの腹を撃ち抜いたのである。

 

紅鬼「ぐはっ!…ち、ちくしょう…!」

 

オーガアックスは一瞬のうちに変身が解けて紅鬼の姿に戻って倒れた。

 

バイラノス「ヴァネッサ王女、貴女の部下は教育がなってないようだ。強者の道を妨げるなと教えなかったのかな?」

ヴァネッサ「貴様…!蒼鬼だけじゃなく紅鬼まで…!絶対に許さないぞ!」

バイラノス「はあ、足を折ったのに静まらないか…ならば次は口を閉ざすとしよう。」

 

バイラノスは足に光のオーラを纏わせ、垂直に飛び上がり、そのまままるでドラグーンボルトブレイクのような飛び蹴りを繰り出した。ヴァネッサはついに死を覚悟して目を閉じた…が、ヴァネッサに攻撃は当たらなかった。代わりにそのバイラノスの蹴りを受けたのは…

 

紅鬼「姐御…無事で良かった…オラの顔…見えるだか…?今までありがとう…オラは姐御…いや、姫様のこと大好きだっ…」

 

倒れ伏すヴァネッサに笑顔を向ける紅鬼…その背中でバイラノスの攻撃を受け止めて…光の渦に飲み込まれて消滅していった。

 

ヴァネッサ「ああ…ああ…うわぁーーー!!」

 

もはや文字で表せない悲痛な叫びをあげるヴァネッサ。外からバリアを破壊しようとしていた宗麟と九頭龍博士も唖然としていた。一方のバイラノスは膝を押さえて顔をしかめていた。

 

バイラノス「一度ならず二度までも…この技は1日1発が限度だからな。仕方ない。今回は退散しよう。それでは、王女様。ごきげんよう。」

宗麟「待ちやがれ!この外道が…」

 

だが、バイラノスはそう言い終わらない内に瞬間移動で居なくなってしまった。

 

(数時間後)

 

宗麟「クシナさん、ヴァネッサの様子は…」

クシナ「足は骨を折られたけど、宇宙人だからかもうくっつきかけてるわ。けど…心の方は…」

 

バイラノスの一撃を変身していない状態で受けた紅鬼はその命を落としてしまった。ヴァネッサは数時間経った後もずっと声を殺して泣いていた。

 

蒼鬼「姐さん…あいつは姐さんを命がけで守った勇敢なやつですよ。こうなることは俺達は覚悟して姐さんに着いていったのですから。」

ヴァネッサ「でも…私のせいで…紅鬼が…!」

ヴィヴィル「だめよ、蒼鬼。今はそっとしておくしかないわ。」

 

周りで見ていた皆はもう何も言えなかった。

 

翌日。紅鬼の葬儀が行われた。宗麟、ヴィヴィル、九頭龍博士にクシナを始めとする研究所の研究員達、美沙子、そして紅鬼と絆を結んだ美波(第20話参照)まで来ていた。特に美波は紅鬼の死が受け入れられず、ずっとすすり泣いていた。皆が鎮痛な面持ちで参列する中、来ていない人物が2人いた。1人はヴァネッサである。彼女はまだバイラノスとの戦いの怪我が完治していないため、研究所で寝たきりであった。やがて葬儀が終わった後、宗麟はヴィヴィルに呼び出された。

 

宗麟「こんな時にどうしたんだよ、お前。」

ヴィヴィル「いい?落ち着いて聞いてほしいの。私、とうとう掴んだわ…バイラノスと裏で繋がっていた人物の正体を。」

 

何とヴィヴィルはついにスパイを見つけたという。さっそく宗麟はヴィヴィルに案内され、スパイである人物のもとへ来た。

 

ヴィヴィル「ついに見つけたわ…この裏切り者!」

宗麟「嘘だろ…お前だったのか…!?」

 

2人の目の前に立っていたのは…

 

蒼鬼「へえ、よくわかったな。まあ、証拠は出揃ってるんだろ?言い逃れは…できないよぁ。」

 

(続く)



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謀反!蒼き鬼の矛先の結末

ヴィヴィル「蒼鬼…あなたがスパイだとやっと今日確証が持てたわ。まあ、それ以前にも不審な行動が多かったのよね。」

蒼鬼「へえ、そうかい。それで、どこが怪しかったんだ?一応、興味あるから聞いてやるよ。」

 

まず、ヴィヴィルが指摘したのはNightmare matterの争奪戦の時。決着が着いた直後に煉光財閥の武装集団が突入してきた。しかも、なぜか蒼鬼はその敵の位置を鮮明に把握していた。おかげで一番に敵の襲撃に気づいていた。さらにリントヴルムをネオ・キマイラのガネシュリケンのもとへ誘導し、同士討ちも図っていた。ただし、これはバイラノスの命令をガネシュリケンが無視したために失敗に終わったが。それと、蒼鬼がデルミエン星にしかない植物である「プルード」を使った殺人事件の時も、火事になった店から脱出に成功した理由を説明した時、こう言っていた。

 

(いやー、気絶から目を覚ましたら偶然目の前に非常口があってさ。助かりましたよ。)

 

ヴィヴィル「偶然にしては話が出来すぎよね。私はこの時あなたはバイラノスに助けられたと思うのよ。バイラノスはあなたが死んだら困るものね。」

蒼鬼「ご名答だよ。他にもあるのだろ?」

 

最後にヴィヴィルが話したのはヴァネッサから聞いた北極に行った時に乗り捨てられていたUFOを拾って帰ってきたことだった。おそらくバイラノスが蒼鬼を北極に置き去りにしないためにあえてUFOを用意したのだろう。そうじゃなければどう考えても不自然である。

 

宗麟「お前はなぜバイラノスの側に…」

蒼鬼「何を今更…俺はエラクレル帝国で作られたゲノム魔人だ。帝国で生まれたものは帝国のために死ぬ…それが使命なんだよ。俺が課せられた任務は『万が一、Nightmare matterがヴァネッサに総取りされた場合はひとつ残らずそれを奪え』というんだ。じゃあ、Nightmare matterはいただいた。俺はズラからせてもらうぞ。」

 

蒼鬼の手には内部を真空にすることができる特殊なアタッシュケースのような鞄があった。これは九頭龍博士がNightmare matterは反物質である可能性があるため、大気と反応して対消滅を起こさないようにと製作した保管用ケースである。だが、蒼鬼は持ち前の頭脳を活かして博士の研究を手伝ったりしていたため、博士からは信頼されていた。それ故に保管用ケースの隠し場所も教えてもらっていたのだろう。博士の研究に愛想良く付き合ったのもこの日のための演技だろうが。

 

宗麟「行かせるか!DraGO!リントヴルム!」

蒼鬼「俺とやるのかい?しょうがねえな…」

(オーガ!ランス!Docking!phase RED!オーガランス!)

 

2人はほぼ同時に変身し、戦い始めた。序盤はオーガランスが元々あまり直接的な戦闘は得意ではないのか、リントヴルムが押していた。しかし、途中でリントヴルムが攻撃の手を止めてしまう。

 

宗麟(ダメだ…もしこいつを殺したら…ヴァネッサはどうなる…?独りになってしまうのか…?)

蒼鬼「甘いな!リントヴルムさんよぉ!」

 

ハッとリントヴルムが防御態勢を取った時にはもうすでに遅かった。リントヴルムの胸部をオーガランスの槍が貫いていた。そのままがっくりと崩れて、その場に横たわるリントヴルム。直後にヴィヴィルが駆け寄った。

 

ヴィヴィル「宗麟!しっかりして!宗麟!!」

 

ヴィヴィルの悲痛な叫びをバックにオーガランスはその姿のまま、Nightmare matterの入ったケースを片手に闇夜に消えていったのであった。

 

(続く)



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雲散!離反者の行方の結末

蒼鬼「オーガランス。ただ今帰還しました。お望みの物を入手いたしましたよ。」

バイラノス「ご苦労。さて、これで我が地球侵略計画は完遂する。このNightmare matterのエネルギーで最強のネオ・キマイラを作り上げる…そして、全地球人を滅ぼし地球をゲノム魔人の星に変えるのだ!」

 

バイラノスの笑い声が響く。だが、蒼鬼は落ち着いた様子で相槌をうち、こう言った。

 

蒼鬼「バイラノス様。貴方はまだ財閥の仕事が残っておられるでしょう。このNightmare matterを実験場へ移送するのは俺がやります。」

バイラノス「ふむ。気が効くではないか。では、お前に任せるとしよう。くれぐれもそのケースを絶対に手放すなよ?」

 

蒼鬼は無言で頷くと踵を返してバイラノスのもとから去っていった。

 

一方その頃、九頭龍研究所では蒼鬼の処遇について、宗麟と九頭龍博士の意見が真っ二つに分かれていた。博士は「蒼鬼が裏切ったのはまぎれもない事実。Nightmare matterを取り返すためにも見つけ次第撃破しろ」。対する宗麟は「蒼鬼がそう簡単に裏切るはずがない。何か理由があるはず。だから、話し合うべきだ」というものであった。だが、どちらの意見を採用しようにも、蒼鬼の足取りが掴めない以上、実行することはできない。その時、宗麟が手がかりを発見した。それは宗麟のスマホに入っていた蒼鬼のスマホからの着信…宗麟はこれを辿っていけば蒼鬼の居場所がわかるんじゃないかと提案する。博士はダメ元だが、他に手がかりがないからやってみるかと蒼鬼のスマホの追跡を開始する。すると…蒼鬼のスマホは煉光財閥の管理するビルの中にあることが判明した。

 

ヴィヴィル「これしか手がかりがない以上、蒼鬼を追うならこれを辿るべきじゃないかしら?」

宗麟「博士…行かせてください!お願いします!」

博士「そこまで言うなら仕方ない。だが、成功であれ、失敗であれ速やかに結果を得て報告してくれ。そろそろバイラノス達も本格的に行動を開始するだろう。もう我々には時間がないことも忘れるなよ。」

 

宗麟とヴィヴィルは急いで煉光財閥の管理するビルへ向かう。すると、そのビルの地下駐車場に蒼鬼のスマホが置いてあった。しかし、そこに立っていたのは…

 

煉光財閥の社員「バイラノスさんにここで待機してろと言われたが…まさか本当に来るとはな。飛んで火に入る夏の虫とはこのことを言うのか。」

宗麟「くそっ、結局罠だったって言うのか!」

 

社員の男は有無を言わさずガントレットを起動。オーガシリーズの1体である「オーガパンツァー」に変身した。宗麟もリントヴルムに変身して対抗するも、蒼鬼のことが気がかりになっていることに加え、オーガパンツァーの強力な砲撃に追い詰められていく。だが、ここで予想外の展開に。

 

ヴァネッサ「何をしているリントヴルム!その程度の敵に手こずるなんて情けないぞ。」

 

何と怪我が完治したヴァネッサがリンドレイクになって現れた。オーガパンツァーもリンドレイクに発射口を向けるがそれより素早くリンドレイクは移動し、必殺技の「ドラグーンダークネスブレイク」を見舞った。リントヴルムもバハムートフォームにチェンジし、必殺技の「ドラグーンブレイブブラスター」を食らわせ、オーガパンツァーを撃破するのであった。

 

宗麟「いいのか、ヴァネッサ?紅鬼は死んで、蒼鬼は君を裏切った…だから、君はとてもこの戦いには連れて行けないと思ってた。」

ヴァネッサ「紅鬼は死んでしまったが、蒼鬼はまだ生きている。私はもう大切な人を失うのはたくさんなんだ。フェルドナ国王女の誇りにかけて、そして、1人の蒼鬼の仲間として、私は私自身の力で決着をつける!」

 

ヴァネッサの熱い気持ちに応えるように宗麟は力強く頷く。一方のヴィヴィルは蒼鬼のスマホを調べていた。すると、ヴィヴィルが声を上げる。

 

ヴィヴィル「ねえ、このスマホから何か聞こえるわ…一定のリズムで何かをトントン叩くような音が…」

宗麟「もしかしたら何かのメッセージなのかもしれないな。よし、研究所へこれを持って帰ろう。」

 

そして、スマホから聞こえる謎の音をオペレーターのクシナに解析してもらった。その結果、これはモールス信号であることが判明した。

 

クシナ「これは…アルファベットの羅列を表しているわね。解析すると…『D・i・e・ w・i・t・h・a・n・i・g・h・t・m・a・r・e』だわ。これをすべて繋ぎ合わせると…『Die with a nightmare』になるわね。」

ヴィヴィル「この英文…訳するとこう読めるわ…」

 

そして、ヴィヴィルの口から衝撃的な言葉が放たれた。

 

ヴィヴィル「蒼鬼の残したメッセージは…『悪夢と共に死ぬ』…!」

 

(続く)

 



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相愛!蒼い涙の結末

『悪夢と共に死ぬ』…これが意味することがわからず、宗麟達は悩んでいた。だが、悠長に苦悩している時間はない。バイラノスの地球侵略計画は着実に進んでいる。もはや一刻も無駄にできないという中、ヴィヴィルがハッと声をあげた。

 

ヴィヴィル「悪夢…つまり『Nightmare』だわ!蒼鬼はもしかして…Nightmare matterと心中する気なんじゃ…」

宗麟「まさかそんな…!?でも、何のために?」

 

不穏な空気が流れる中、九頭龍博士が部屋に戻って来た。

 

博士「皆、これを見てくれ。蒼鬼がNightmare matterを盗み出した保管庫からこんな物が見つかった。」

 

博士が持って来たのはカセットテープだった。どうやらこれは蒼鬼が残した物らしい。博士は再生機器にカセットを入れて再生する。すると、こんな蒼鬼の声が流れてきた。

 

《姐さん。これを聞いてるってことは俺はもう九頭龍研究所から出て行ってるはずだよな…》

 

一方その頃、バイラノスは蒼鬼がNightmare matterを自分に変わって実験場に運搬してくれることにすっかり安心しきっていた。だが、彼の耳に衝撃の情報が飛び込んで来た。

 

部下のゲノム魔人「バイラノス様!オーガランスが貴方様のUFOを無断で操作し、そのまま逃走しました!」

バイラノス「何だと!?くっ、奴を信用してマスターキーを渡しておいたのが間違いだったか。オーガランスを追え!発見次第撃墜しろ!」

 

怒り心頭のバイラノスを余所にNightmare matterが3つも入ったケースを持ってバイラノスの移動用UFOを飛ばす蒼鬼。そして、太平洋のど真ん中の上空にUFOを止めた。おもむろにケースを開ける蒼鬼。そして、こうつぶやいた。

 

蒼鬼「結局、俺はエラクレル帝国に逆らうことはできなかった…だからといって、命の恩人である姐さんを死なせるわけにはいかない。それなら取るべき方法はただひとつ…この争いの種を永遠に消し去るしかない…!」

 

蒼鬼はNightmare matterをまず2つ取り出した。そして、それを重ね合わせた。すると、その力によってUFOの外の空間が歪み、亜空間が展開された。さらに、蒼鬼はオーガランスに変身し、最後の1つのNightmare matterを体内にねじ込んだ。その瞬間、凄まじい量のエネルギーがオーガランスの身体に流れ込み、早くも身体はオーバーヒートを起こしそうな状態だった。声を殺してはいるものの、その苦痛に七転八倒する蒼鬼。ボロボロの、破裂寸前の身体を何とか起こして、UFOの扉を開けた。

 

蒼鬼「はは…やっぱり俺にはこんな最期がお似合いだな。いずれ捨てられる運命だった…だから、それが今来ただけなんだ…なのに…わかっているのに…どうしてこんなにも悲しいんだ!」

 

そして、オーガランス、いや、蒼鬼はNightmare matterが作り出した亜空間に飛び込む。

 

蒼鬼(紅鬼…お前は俺の初めてできた友達だった…感謝してるぞ…姐さん…不甲斐ない俺を許してくれ…そして…絶対に俺の後を追わないでくれ…お願いだ…)

 

その直後、亜空間の中で大爆発が起き、やがて亜空間も爆発の衝撃で消え去った。こうして5つの内3つのNightmare matterは失われてしまったのであった。

 

バイラノス「オーガランスが死んだか…しかもNightmare matterの力でワームホールを作り、それらを道連れにしてしまったか。ええい!忌々しい!あの愚か者め!だが、こちらにもまだNightmare matterが1つだけ残っている。できれば5つ全部使う予定ではあったが、計算上は1つでも強大なネオ・キマイラを作り出すことは可能だ。いよいよ、始めるぞ。地球の人類はすべて我々ゲノム魔人に成り代るのだ!」

 

 

 

ところ変わって九頭龍研究所。ふと、宗麟は疑問を覚えた。

 

宗麟「それにしてもなぜ蒼鬼はモールス信号やカセットテープにメッセージを残したのでしょうかね?」

博士「きっとバイラノスが存在を知らないものを使ったのだろう。奴はおそらく地球に来てから日が浅い。地球の文化や技術をすべては把握できてないだろう。だから、蒼鬼の行動が発覚することはなかった。」

 

そして、宗麟、博士、ヴィヴィル、ヴァネッサは全員蒼鬼の残した音声に集中する。すると、そこには…

 

《俺はエラクレル帝国で作られたゲノム魔人だから帝国に逆らうことはできない。でも、姐さんには生きていてほしい…そんな思いから俺は争いの種となるNightmare matterをこの世から消すことにした。もし、5つ全部がバイラノスの手に渡ってたらもう勝ち目はなかった…俺1人の犠牲で姐さんが生き残れる確率が上がるなら安いものっすよ。だからこれは俺の遺言だ。俺のスマホの中にバイラノスが最強のネオ・キマイラを生み出すためのに向かう実験場の地図のデータが入っている。おそらくあいつは明日にはそこに向かうはず。先回りして実験場を破壊すれば最悪の事態は免れる。》

 

そして、一旦音声が止み、無音状態が数秒続いた。やがて小さな声だが蒼鬼の声が聞こえてきた。

 

《姐さん…いや、ヴァネッサ姫様。俺は貴女に助けられてとても感謝しております。しかし、それと同時に祖国を取り戻すために戦う、気高く美しい貴女に俺は心を奪われました。俺はホストクラブでバイトしてたけど、どの女性にも皆魅力を感じませんでしたね。だって、俺は姐さんを愛してましたから。すみません。身の程知らずで。でも、俺が貴女を守ろうとしたのは単なる忠誠心だけじゃなかったんですよ》

 

 

 

《最期にこれだけ言わせてください。姐さん。俺は貴女が好きでした。》

 

音声はここで途切れていた。その瞬間、ヴァネッサは再生機器の乗った机を壊れんばかりに叩き、顔をうつむけて泣き叫んだ。

 

ヴァネッサ「紅鬼、蒼鬼!2人とも!どうして私を置いていくんだ!ずっと一緒にいて欲しかった…それだけで良かったのに!私はついに独りになってしまった…これからどうすればいいんだ!」

 

その時、ヴァネッサの肩に宗麟はそっと手を置いた。そして、こう続ける。

 

宗麟「もう無理するな、ヴァネッサ。君はもう戦わなくていい。辛いんだろう?なら、ここから先は俺に任せてくれ。バイラノスだけは絶対に許さない!あいつは俺が倒す!」

 

ヴァネッサは何も言わなかった。泣き止んだが、顔を上げることはなかった。

 

宗麟「博士、クシナさん。ヴァネッサをお願いします。俺はこれから蒼鬼が教えてくれた実験場へ向かいます!」

ヴィヴィル「私も行くわ。もうこれ以上、後手に回って仲間が減るのは嫌だから。」

博士「わかった。だが、私も戦いを最大限アシストしよう。最高戦力で臨まなければ勝てる相手ではないだろうしな。」

クシナ「さっき、アメリカの科学研究所からハワイ諸島近海でおよそ地球上には存在していない物質による高濃度のエネルギー波の反応があったって報告が来たの。きっとそれが蒼鬼くんなのね…うん。私も九頭龍博士と同意見だわ。リントヴルムが勝てるように全力を尽くすわよ!」

 

さっそくバイラノスと決着をつけるために装備を整える宗麟とヴィヴィル。いよいよ最終決戦の足音が聞こえてきた。果たして、リントヴルムの運命は?そして、ヴァネッサはどうなるのか。

 

(続く)

 



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先陣!元凶を倒せの結末

バイラノスの野望を阻止すべく、まずは作戦会議を始める一同。まずはヴィヴィルから口を開く。

 

ヴィヴィル「おそらくバイラノスは蒼鬼の予想外の行動に多少なりとも狼狽してるはずよ。だから、絶対に失敗できないから実験場はかなり守りを固くするとみたわ。」

宗麟「まずいな…ことは一刻を争うというのに…バイラノスのもとへたどり着けないのでは元も子もない。リントヴルム1人で間に合うか?」

 

しかし、九頭龍博士は宗麟の懸念を冷静に返した。

 

博士「…ひとつだけそれを解決できる方法がある。私はメカカマックを修復し、Inferno総統…いや、ガルトを再び蘇らせた。今は研究施設を貸し出して私やクシナくんと共にゲノム魔獣を作っている。」

 

どうやらガルトはバイラノスの打倒には賛成らしく、あろうことか九頭龍博士に技術提供してやろうと持ちかけてきた。博士は研究員達と共にガルトのゲノム魔獣を製作し、バイラノスとの戦いに投入するという。

 

宗麟「利害の一致とはいえガルトと手を組むことになるとはな…」

ヴィヴィル「でも、戦力が多いことに越したことはないわ。ちょっと複雑だけど。」

 

こうして、リントヴルム、ヴィヴィル、そして、ガルトと博士が製作したゲノム魔獣達は煉光財閥所有の土地に作られた実験場へ向かう。まるで戦の前のような光景である。蒼鬼の残した地図を頼りに進むとヴィヴィルの予想通り、ゲノム魔人の武装集団がずらりと実験場の前に陣取っていた。目測だと500人は下らない人数であった。迂回しようにも周囲が高い崖に囲まれているため、道はひとつしかない。しかも、武装集団にはほぼ全員にネオ・キマイラに変身するためのガントレットが割り当てられていた。ここで一斉に変身されては500体以上のネオ・キマイラに袋叩きにされてしまうだろう。

 

ヴィヴィル「いい、宗麟?今から私とガルトから借りたゲノム魔獣達が陽動を行うわ。その間に貴方は奥の実験設備を破壊して。まだ対策が見つかってないからバイラノスを無理に倒す必要はないわよ。」

宗麟「そうは言うけどおそらく戦いは避けられないだろうな…危なくなったら撤退も視野に入れないとだ。」

 

そしてついにヴィヴィルの作戦がスタートする。まず、Exゲノム魔獣のセト(第1部24話参照)が重力を操って皆の身体を軽くし、全員を崖の上に移動させた。そして、中にガルトの意識が残るメカカマックが叫ぶ。

 

メカカマック「皆の者…撃て!」

 

その合図を皮切りに崖の上にいる遠距離攻撃持ちのゲノム魔獣達が防衛戦を張るゲノム魔人達に一斉射撃を行なった。まさか崖の上から奇襲されるとは思っていなかったバイラノスの軍勢は総崩れとなった。

 

メカカマック「よし…かかれ!」

 

続いて接近戦が得意なゲノム魔獣達が崖から次々と滑り下り、敵陣になだれ込んだ。敵は何とかネオ・キマイラに変身して対抗する者もいたが、半数は間に合わずに変身する前にゲノム魔獣に倒されていった。そんな混戦の最中、リントヴルムはそれに紛れてセイリュウフォームで猛ダッシュ。バイラノスのもとまで一気にたどり着いた。

 

バイラノス「ああ、何をやっているんだあの馬鹿共は。時代遅れのガルトが作った中古品達に手こずるとはエラクレル帝国の未来が心配だ。まあいい。ガルトの始末はリントヴルムを片付けてからにするとしよう。」

宗麟「そんな高をくくってられるのも今の内だぞ、バイラノス!俺はお前の計画を阻止しに来たのだからな。DraGO!リントヴルム!」

 

宗麟はまず、セイリュウフォームの必殺技「ドラグーンフリズアタック」を繰り出す。しかし、バイラノスにひらりとかわされてしまう。続いてジャバウォックフォームにチェンジし、必殺技の「ドラグーンストライクキャノン」を発射するが、それも片手でかき消された。続いてファフニールフォームにチェンジし、必殺技「ドラグーンバーストスラッシュ」を叩きこむが、ノーダメージであった。

 

バイラノス「やはり威力も攻撃パターンも私の成長には追い付けていないな…リントヴルム…少しは楽しめるかと思った私が愚かだった…もういい!消えろ!」

 

バイラノスは両腕から極太の光弾を発射し、リントヴルムを吹き飛ばした。地面を転がるリントヴルムを嘲笑うバイラノス。

 

バイラノス「もはや君を倒すのはいつでもできるな。せっかくだ。君に私の実験をじっくり見せてあげよう。そこでおとなしく寝転がっていたまえ。」

 

しかし、リントヴルムは反論することなく立ち上がる。そして、実験設備の方に向かって叫んだ。

 

宗麟「今だ、ヴィヴィル!」

ヴィヴィル「上手くいったわよ、宗麟!」

 

果たしてバイラノスの強さに絶望していた宗麟が希望を取り戻したその理由とは何なのか!?

(続く)

 



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天災!降臨せし最強の結末

バイラノス「君達…何のつもりかな?まさか実験場を爆破でもするつもりだったのかい?残念だったな。この実験場の機械には強力なセキュリティがかけられている。爆弾をセットしてもコンピューターが自動で爆弾を10秒以内に解除する。だから、いくらあがいても…」

 

だが、その直後に実験場が大爆発を起こした。バイラノスはハッと振り返る。機械がすべて破壊されたからだ。

 

宗麟「セキュリティがあることくらい対策済みだ。ヴィヴィルと…そして、もう1人の協力者のおかげで無力化することに成功したぞ!」

 

実験場に爆弾を仕掛けたヴィヴィルが宗麟にサムズアップする。そして、その横には機械やコンピューターを完璧に操作、ハッキングもお手の物なゲノム魔獣「グレムリン」(第1部15話参照)がいた。どうやらグレムリンがセキュリティを突破することに成功したようである。しかし、グレムリンは突如、バイラノスの指から放たれたレーザー光線に貫かれて倒れてしまった。

 

ヴィヴィル「ああっ!グレムリン!あんた…いい加減にしなさいよね!」

宗麟「そうだ!お前の最強のネオ・キマイラを作り出す実験は頓挫した。これで諦めもついたろう。さっさと自分の星に帰れ!」

 

だが、バイラノスは不敵な笑みを浮かべて、懐からNightmare matterの入った小さなカプセルを取り出した。

 

バイラノス「仕方ない…この実験で少しずつ私の身体に馴染ませようと思っていたが…いきなり本番に行くとしよう。そう。私は自らがネオ・キマイラの触媒になる予定だった…そして、その材料はこのNightmare matterなのだよ。つまり、私自身が最強のネオ・キマイラになるのだ!」

 

バイラノスはNightmare matterを自分の身体に直接ねじ込んだ。すると、凄まじいエネルギーの放出が起こる。さすがに宗麟もバイラノスから離れ、ヴィヴィルもバリアでガードする。この強大過ぎるエネルギーをバイラノスは制御しようというのだが、下手をすれば身体が破裂したり、融解したりしてしまう。果たして…その結果は…

 

宗麟「嘘だろ…あいつ…融合に成功しやがったのか!?」

 

バイラノスの姿が人型からおよそドラゴンとも鷲ともつかないようなおぞましい怪物へと変貌していた。大きさも約50m程に巨大化している。

 

「我が名は…バイラノスと、Nightmare matter…そして『地球』という惑星と融合せし、最強のネオ・キマイラ…『バイラノアース』だ!!」

 

リントヴルムもヴィヴィルもただそこへ呆然と立ち尽くすしかなかった。やがて再びバイラノアースが動き出す。

 

バイラノアース「融合は成功したようだな…ふははははははは!これこそ豎ゅa縺ヲ縺?◆蜉帙□?√%繧後〒蝨ー逅?b蜈ィ螳?ョ吶b遘グゴァァァ!!」

 

バイラノアースは背中から衝撃波を放ち、岩山を粉々に破壊した。

 

宗麟「あいつ…気が狂ったのか?」

ヴィヴィル「おそらくNightmare matterの影響ね。肉体は耐えきったけど、精神は完全に壊れてしまったみたいよ。」

宗麟「しかし、このまま止まっていても仕方ない!行くぞ!」

 

リントヴルムはバハムートフォームにチェンジし、必殺技の「ドラグーンブレイブブラスター」をバイラノアースに放つ。しかし、バイラノアースは翼を盾にして防ぐ。そして、反撃にバイラノアースは大きく羽ばたく。

 

バイラノアース「縺昴s縺ェ謾サ謦??閨槭¥繧ゅ?縺具シ∫ォ懷キサ繧茨シグルァァァ!」

 

文字で表せないようは狂気的な叫びの後、どこからともなく来た竜巻によってリントヴルムとヴィヴィルは吹き飛ばされてしまった。2人は何とか腕を掴み合いながら宙を舞う。しかし、限界がきて2人はそのまま離れ離れに投げ出されて飛んで行った。

 

宗麟「ヴィヴィルー!ぐわっ!?」

 

竜巻に巻き込まれて飛んできた岩に吹っ飛ばされ、リントヴルムはそのまま虚空に消えていった…ヴィヴィルも行方がわからなくなってしまった。

 

一方、九頭龍研究所では九頭龍博士が驚愕の光景を目の当たりにしていた。何とバイラノアースが現れてから世界各地で火山の噴火、地震、津波、猛吹雪、落雷、砂嵐など天変地異が多発していたのであった。日本でも巨大な台風が接近し、すでに東シナ海の島々が大打撃を受けているという。

 

博士「バイラノアース…というネオ・キマイラは地球の自然現象を思いのままに操る力があるのか…くそっ、これではリントヴルム1人ではとても勝ち目がない!」

 

悔しそうにコンソールを叩く博士。だが、その時、またもや驚くべき情報が入ってきた。

 

クシナ「博士!地球に謎の物体が接近しています!その質量はまるで…ブラックホール!?」

 

人工衛星から確かに真っ黒な物体が地球に近づいている映像が送られてきた。果たして、この正体は!?

 

(続く)



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崩壊!虚無の羽根の結末

世界各地で災害が多発する中、ついに東京上空に嵐を纏って出現したバイラノアース。翼から竜巻を発生させ、ビル群を次々となぎ倒していく。そのビルの中には煉光財閥の物もあったが、精神が完全に壊れ、暴走しているバイラノアースはそのような物はもはや眼中にない。

 

一方の九頭龍研究所は宗麟とヴィヴィルをGPSで捜索していた最中、クシナが人工衛星から送られてきた映像に驚嘆の声をあげた。

 

クシナ「博士!地球に謎の物体が接近しています!その質量はまるで…ブラックホール!?」

博士「なんだと!?これもバイラノアースの力なのか?」

 

しかし、映像は数分で切れてしまい、さらに九頭龍研究所全体が停電してしまった。どうやらバイラノアースの起こした台風がついに九頭龍研究所のある地域に直撃したようである。急いでシェルターに避難する研究員一同を尻目に九頭龍博士とクシナはヴァネッサがいる個室へ向かった。どうやら彼女にも避難を促すようであるが…

 

博士「あれ…?ヴァネッサの姿がない!?ついでにリンドレイクのパワードスーツもなくなっている!?どこへ行ったんだ?」

クシナ「まさか…バイラノアースと戦いに行ったのかしら!?」

 

個室の窓は開けっ放しで雨風が入っていた。どうやらここから抜け出したようだが、一体どこへ行ったと言うのだろうか。

 

 

 

 

 

その頃、実験場の岩山にいたメカカマックことデルミエン星人ガルトはバイラノアースの復活を目撃した後、竜巻に飛ばされた2人を探していた。すると、気絶していたヴィヴィルを発見する。

 

ガルト「しっかりしろ、ゲノム魔人002号。」

ヴィヴィル「貴方は…総統…いや、ガルトだったわね。まったく、貴方らしい呼び方だわ。」

ガルト「余は貴様に名を付けた覚えはないからな。それよりリントヴルムはどうした?」

ヴィヴィル「そうだわ!早く宗麟を探さなきゃ!」

ガルト「待て!どこへいく!」

 

走り出したヴィヴィルを追ってガルトも走り出す。果たして、宗麟はどこへ行ったのか。

 

 

 

 

 

宗麟「ここは…どこだ…?」

 

宗麟が気絶から目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。すると、宗麟に何者かが歩み寄る。

 

「僕、ホワイトホールを生成する能力を会得したんだ。それで君をこの中に入れたのさ。久しぶりだね、リントヴルム。」

 

宗麟はその姿を見て驚愕した。

 

宗麟「君は…ヤハウェー!?」

 

 

 

 

 

 

一方、東京上空のバイラノアースを高層ビルの屋上から見上げる人影が。それはヴァネッサだった。

 

ヴァネッサ「もう紅鬼も蒼鬼もいない…リントヴルムにも頼れない…ならばこれは私がけりをつけるしかない!フェルドナ王国最後の王女の名にかけて!」

 

ヴァネッサはバイラノアースに向かってキューブ状のパワードスーツを掲げる。

 

ヴァネッサ「DraGO!リンドレイク!」

 

宗麟に触発されたのか気合いを入れて変身するヴァネッサ。リンドレイクは単身、バイラノアースに立ち向かっていった。

 

(続く)

 

 

 

 

 

 



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斬空!星の聖剣の結末

風が吹き荒ぶ高層ビルの屋上から大きく跳躍し、バイラノアース目掛けて必殺技を放つリンドレイク。ドラグーンダークネスブレイクを纏う脚がバイラノアースの目元に向かう。しかし、バイラノアースが気づかないはずはなく、翼でリンドレイクの一撃を受け止めて弾き飛ばした。

 

バイラノアース「縺昴s縺ェ繧ゅ?縺ッ蜉ケ縺九↑縺?シ√¥縺溘?繧鯉シ!」

ヴァネッサ「ぐっ!?うわぁー!?」

 

リンドレイクはそのまま高度60mほどから真っ逆さまに落下する。何とか偶然真下にあったトラックの荷台がクッションになって最悪の事態は免れたが、もうリンドレイクは早くも立っているだけがやっとの状態である。高度60mから落ちて骨が折れていないのはデルミエン星人だからだろうが。

 

 

 

 

 

 

一方、宗麟を探すヴィヴィルとガルトは頭上から何かが舞い降りてくるのを目撃する。そこにいたのは…

 

ヴィヴィル「貴方は…ヤハウェー!?」

ガルト「見ろ!隣にはリントヴルムもいるぞ!」

ヤハウェー「おや、姿はだいぶ違うけど僕の父親と、僕の妹がいるね。」

宗麟「2人とも無事だったか!良かった。」

 

宗麟はヤハウェーの能力のホワイトホールで救助されたことを話す。そして、ヤハウェーはバイラノアースを倒すための対策を話し始めた。

 

ヤハウェー「僕は宇宙を旅する間に知能がある程度発達したんだよ。それにリントヴルムから正義の心を教えてもらった…だから、僕はバイラノアースを倒すことに協力しようと思う。」

宗麟「よし、そうと決まればバイラノアースのブラックホールに叩き込んでやろうぜ!」

 

しかし、ヤハウェーはそれではバイラノアースは倒せないという。なぜならバイラノアースの体内にはNightmare matterがある。その力を利用すれば空間を切除する、あるいはブラックホールの中にワームホールを作り、そこから脱出することも可能であるというのだ。

 

ヤハウェー「そこで僕はあえてバイラノアースをブラックホールで吸収する。そして、ブラックホールから脱出する瞬間…つまり無防備になるその隙を突いて、強力な一撃を叩き込めば勝機はあるよ。」

宗麟「強力な一撃といえばキングオブドラゴンフォームの必殺技なら…だけどこれを発動させるにはNightmare matterがないと…さすがに今からヴィヴィルの心臓から抜き出すわけにはいかないぞ。時間がないし、何より俺も含めて研究所の皆は納得しないだろう。」

 

だが、ヤハウェーは小さなホワイトホールを生成すると、そこに手を突っ込み、光り輝く物体を取り出した。それは紛れもなくNightmare matterだった。

 

ヤハウェー「僕がブラックホール内を移動していた最中に流れ着いて来たのさ。…誰かの死体と一緒にね。」

宗麟「わかってる。蒼鬼だろう…まさかこんな展開になるなんてな…」

ガルト「感傷に浸るのは後だ。早く研究所にこれを移送しなければ。」

 

研究所ある地域に直撃した台風はヤハウェーがブラックホールで吸収し、治ったという。ある程度設備が復旧した研究所に宗麟達は急いで戻った。

 

九頭龍博士「バイラノアースを倒すにはもはやヤハウェーの策にすがるしかない…早急にキングオブドラゴンフォームを復活させよう!」

 

宗麟とヴィヴィルも博士に着いて行こうとしたが、2人はヤハウェーに呼び止められた。どうやら会わせたい人物がいるらしい。ヤハウェーのホワイトホールからドレスを着て、宝石の煌めくティアラをつけた姫のような女性が出てきた。

 

「はじめまして、地球の皆様。私はエラクレル帝国の皇女にして、ヴァネッサ姉上の妹のルネアです。」

 

彼女はヤハウェーに連れられてエラクレル帝国から亡命し、かつて存在したフェルドナ王国城の城跡からあるものの封印を解いたのだという。彼女の手には1本の剣があった。

 

ルネア「これは初代フェルドナ国王の剣です。しかし、この剣は国王の遺言により封印されました。そして、フェルドナの王族にしか解けない封印が施されたのです。」

ヤハウェー「だけど、この剣をよく調べてみたら剣の刃の部分はNightmare matterのエネルギーとほぼ一致したんだ。つまり、酷似した、あるいはNightmare matterそのものかもしれないエキゾチック物質で作られている。」

ヴィヴィル「ガルトより先にすでにフェルドナ王国では発見されていたのね。しかし、反物質を材料にして剣を作るなんて恐ろしい技術だわ。」

 

ルネアはこの剣をキングオブドラゴンフォームの武器にして戦えばバイラノアースを倒せるかもしれないと提案する。宗麟もそれしか方法がないと頷き、ルネアから剣を受け取るのであった。

 

ヴィヴィル「初代国王はきっとこの物質が非常に危険なものであると気づいたんだわ。だから、剣に作り変えて封印した…賢明な人だったのね。」

ルネア「はい。おっしゃる通りです。」

 

そんな話をしている内に博士がキングオブドラゴンフォームのパワードスーツをガルトと共に運んできた。博士はヤハウェーから受け取ったNightmare matterをパワードスーツにセットする。すると、黄金に光り輝き出した。

 

宗麟「皆、必ずバイラノアースは俺が倒す。だから、リントヴルムの勝利を信じて待っていてくれ!DraGO!リントヴルム…キングオブドラゴンフォーム!」

 

最強形態になったリントヴルムはルネアから託された剣とかつてヤハウェーとの戦いで使用した盾を携えてバイラノアースのもとへ飛んで行く。果たしてリントヴルムは先に死闘を繰り広げるリンドレイクを救い、バイラノアースを倒すことができるのか!?

 

(続く)

 



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軌跡!最後の総力戦の結末

バイラノアースは高層ビルに体当たりを見舞い、満足に動けないリンドレイクを瓦礫の雨で押しつぶそうとする。万事休すか…と思われたがキングオブドラゴンフォームのリントヴルムが間一髪のところでリンドレイクを助け出し、そのまま空へ浮かび上がる。

 

ヴァネッサ「すまない…リントヴルム。私が脆弱なばかりに…」

宗麟「いや、君はよく頑張った。あとは任せてくれ!」

 

バイラノアースに向かって飛び立つリントヴルム。しかし、バイラノアースは反撃に吹雪を起こし、リントヴルムを凍らせようとする。徐々にリントヴルムの翼が凍りついていく。

 

宗麟「くそ、まずいな…ヤハウェー!来てくれ!俺は準備ができたぞ!」

ヤハウェー「わかった。バイラノアースをブラックホールで吸収しよう!」

 

ヤハウェーはブラックホールを東京上空に発生させ、空を飛び回るバイラノアースをブラックホールに吸い込もうとする。しかし、バイラノアースも必死に抵抗している。

 

ヤハウェー「質量が大き過ぎて…吸収できない…だけど諦めるものか!僕はリントヴルムから正義の心を教わった…その心は決して折れたりしないと!」

 

身体に強大な負荷を掛けてブラックホールを拡大させているため、ヤハウェーの腕の皮膚が裂けて血が吹き出た。その様子をルネアも心配そうに見つめている。そして、ついに…バイラノアースが抵抗虚しくブラックホールに吸い込まれて消えた。ヤハウェーは急いでブラックホールを閉じる。もちろんこれで終わりではない。バイラノアースはおそらく数秒後には空間を切り裂き、脱出してくるはずである。

 

 

一方、ヴァネッサはリントヴルムとヤハウェーの戦いを見て、自分も戦いたいと向かおうとするが現場に駆けつけたクシナに止められていた。

 

クシナ「だめよ、ヴァネッサ!そんな身体で戦ったら今度こそ本当に死んでしまうわ!」

ヴァネッサ「しかし、宗麟もヤハウェーも命がけで戦っているのに私だけ見ているだけなんて…」

 

だが、そこへ同じく駆けつけた九頭龍博士が口を挟む。

博士「ヴァネッサ…どうしても行きたいか?ならば私が君を強化してあげよう。ただし、この状態からバイラノアースに通る技が放てるのは1度だけだ。絶対に外さないと言えるなら力を与えよう。」

ヴァネッサ「わかった。私は必ずこの力をバイラノアースにぶつけてみせる…だから力をくれ!」

 

博士はその言葉に強く頷き、『高出力電子レーザーキャノン砲』を取り出した。どうやらこのエネルギーでかつてリントヴルムが『リントヴルム・エレクトリック』となったようにリンドレイクもパワーアップさせるという。博士はリンドレイクに向けてレーザーキャノンの引き金を引き、リンドレイクのパワードスーツに電気を纏わせ『リンドレイク・エレクトリック』にパワーアップさせた。

 

クシナ「博士、いつのまにそんな改良を…」

博士「来るべき戦いに備えてな。まあ、ヴァネッサに無断だったのは少し謝るべきところだが。」

 

リンドレイク・エレクトリックはそのままリントヴルムとヤハウェーのいる戦場に走り出すのであった。

 

そして、ついに空間が裂け、ブラックホール内にワームホールを作り出したバイラノアースがブラックホールから抜け出した。しかし、リントヴルムはその一瞬の隙を見逃さなかった。キングオブドラゴンフォームの翼で大きく飛翔し、バイラノアースに肉薄する。

 

宗麟「行くぞ!ルネアから託された剣の一撃…『ドラグーンファイナルノヴァダブル』!」

 

ルネアから託されたフェルドナ王家の剣から放たれた波動は高層ビルより巨大に膨れ上がり、さらにリントヴルムが2回剣を振るったため「X」の字を書いてバイラノアースにぶつかった。さすがのバイラノアースも防御するも、強大なエネルギーに押し負け、羽根がバラバラに砕け散り、斬撃がその身体に刻まれた。

 

バイラノアース「縺薙s縺ェ繝舌き縺ェ窶ヲ縺ェ縺懃ァ√′蝨ー逅?ココ縺斐→縺阪↓雋?縺代k!」

 

バイラノアースは文字では表せないような断末魔をあげて崩れ落ち始めた。その時、ヤハウェーが焦り出す。

 

ヤハウェー「マズい!あんな質量の物体が街に落ちたらここ一帯どころか日本全土が焼け野原になる!あれは小惑星が地球に衝突するより危険な状況だ!」

 

だが、そこへリンドレイク・エレクトリックが駆けつけてきた。そして、崩れ落ちるバイラノアースの真下に行き、エネルギーをチャージする。

 

ヴァネッサ「地球は壊させない…私の大切な人達がいるこの星を守ってみせる!『ドラグーンエクシードダークネスブレイク』!」

 

リンドレイクの身体全体から闇のように黒いがまるで黒真珠のように美しい輝きを持つエネルギー波が放たれた。その波動はバイラノアースを巻き上げて大気圏を超え、宇宙まで飛び上がった。

 

バイラノス(馬鹿な…私は完璧な生命だったはず…それなのにどうしてこんな下等な生命に…そうか…そういえば、エラクレル帝国の皇帝が私に殺される前にこんなことを言っていたな…)

 

(たった1人で成長しても…行き着く先は滅びだ…1人きりでは国も星も治めることはできないぞ)

 

バイラノス(皇帝の言葉が正しかったのか…認めたくないが、非常に悔しいが、その通りになってしまった…)

 

そしてついにバイラノアースは宇宙空間で大爆発を起こすのであった。

 

(次回、最終回に続く!)

 



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龍!そして未来への結末

宗麟「終わったのか…?」

ヴァネッサ「ああ、そうみたいだぞ。」

 

バイラノアースが消滅し、空が徐々に晴れ始めた。2人の立つ場所に光が差し込む。そこへ九頭龍博士とクシナが駆け寄る。

 

博士「リントヴルム、リンドレイク…2人ともよくやってくれた!ありがとう!」

クシナ「前は1人だったけど…今回は2人の勝利ね。」

 

宗麟とヴァネッサは博士とクシナにふっと口元を緩ませる。そして、2人は向かい合うと固い握手を交わした。

 

ヴィヴィル「リントヴルム!あれ?もう終わったの?」

ガルト「ご苦労だったな。まさかあやつを倒すとは…驚いたぞ。」

 

ヴィヴィルとメカカマックの身体のデルミエン星人ガルトもようやく現場に到着したようだ。そして、力を使い過ぎて意識が朦朧てしているヤハウェーをルネアが肩を貸しながらやってきた。

 

ルネア「お姉様!お久しぶりです。」

ヴァネッサ「ルネア!?どうしてここに…そうか。ヤハウェーに地球に連れて来てもらったのか。」

 

思わぬところで姉妹が再会した。実に約10年ぶりの再会のようである。そして、一同は一旦九頭龍研究所に戻る。ヤハウェーをしばらく休ませると彼は意識を取り戻した。それから腕の治療をし、ヤハウェーは復活を遂げたのであった。

 

 

 

 

九頭龍研究所の入り口には宗麟、九頭龍博士、ヴィヴィル、クシナといういつものメンバーに、ヴァネッサ、ガルト、ヤハウェー、ルネア、そして見送りに来た研究員が集まっていた。

 

宗麟「Inferno総統…いや、ガルト。お前はこれからどうするんだ?」

ガルト「余はこれから宇宙へ旅に出る。そして、誰にも邪魔されずに研究に没頭できる惑星に寝ぐらを構えようと思うぞ。」

ヴィヴル「もう宇宙征服みたいのは企てちゃ駄目よ?」

ガルト「何、余は科学者でもある。まず当面の目標は『ゲノム魔人』を超える新たな人造生命体の開発だ。それは途方もない時間を要することだろう。さらばだ、地球人。しかし、ここも悪くない星であったのが少し名残惜しいな。」

 

デルミエン星人ガルトはバイラノスが遺したUFOを自分用に改造した宇宙船に乗り込む。宇宙船はそのまま浮き上がり、空へと消えて行った。次はヤハウェーが口を開く。

 

ヤハウェー「ヴァネッサ…バイラノス亡き今、エラクレル帝国には新たな皇帝が必要だ。もちろんフェルドナ王国から奪った領土は返還になるはずだ。どうだろう?君が新しいエラクレル帝国の皇帝になってくれないか?」

 

しかし、ヴァネッサから返って来た言葉は意外な答えだった。

 

ヴァネッサ「いや、私はデルミエン星には戻りたくない。私は大切だった紅鬼と蒼鬼が命を散らしたこの星で死にたいんだ。それに皇帝になれば婚姻もせねばならないのだろう?私はあの2人以外は残念だが愛せない…」

宗麟「ヴァネッサ…なあ、だったらヤハウェーがエラクレル帝国の皇帝になればいいんじゃないか?」

ヤハウェー「僕が皇帝?僕はゲノム魔人…人造人間だ。そんな存在が皇帝になるなんて許されるのかな…」

 

しかし、ルネアがそっとヤハウェーに寄り添った。

 

ルネア「ヤハウェー様。私は貴方には十分に皇帝の資格はあると思いますわ。私がフェルドナの女王に、ヤハウェー様はエラクレルの皇帝に、お姉様は地球に残る…これでいいのではないでしょうか。」

宗麟「ヤハウェー。君がバイラノアースに立ち向かう姿は大変勇敢だった。その勇気と正義の心があればきっと君は素晴らしい皇帝になれるはずだ。」

ヴァネッサ「宗麟、ルネア…ありがとう!私は優しい妹と仲間に囲まれて幸せだ。」

 

ヴァネッサは思わず涙ぐみ、腕で涙を拭った。ヤハウェーもそれに了解したようで地球からデルミエン星に繋がるホワイトホールを作り出した。そして、宗麟と握手を交わした後、ホワイトホールの中に入る。そして、ついにルネアの番が来た。

 

ヴァネッサ「私のわがままを飲んでくれてありがとう。こんな立派にフェルドナ王族の人間として成長したことが本当に嬉しい。」

ルネア「お姉様は今までどれほど辛い思いをしてきましたか?どれほど痛い目に遭いましたか?私が帝国で皇女として何一つ不自由なく暮らしていた時、どれだけ苦しんでいたのでしょうか。だから、最後はせめてお姉様の意思を尊重したい…そう思った次第です。」

 

ヴァネッサとルネアは熱い抱擁を交わし、ルネアはヤハウェーと共にデルミエン星に帰っていったのであった。

 

 

 

 

 

翌日、バイラノアースによって甚大な被害を受けた街を復興すべくボランティアに精を出していたのは美沙子だった。

 

美沙子(テレパシーで感じ取れたわ…宗麟さん達は何か大きな戦いを乗り越えたみたいね。私も頑張らなくちゃ…いつか宗麟さんやヴィヴィルちゃんと一緒に私も戦いたいから)

 

そんな決意を胸に秘める超能力少女であった。

 

博士「では、これから研究発表会に行ってくるぞ。」

クシナ「いってらっしゃい…あ、博士。ネクタイちょっと曲がってますよ。」

博士「ああ、直してくれるのか。すまんな。」

 

そのような微笑ましいやりとりを見つめる宗麟とヴィヴィル…そして…

 

ヴァネッサ「おい、宗麟!書類はちゃんとまとめてファイリングしておけと言っただろう!」

宗麟「あ、悪い!忘れてた!」

ヴィヴィル「もう…相変わらずね。」

 

どうやらヴァネッサも九頭龍研究所の手伝いとして宗麟とヴィヴィルと共に住み込みするようになったらしい。これでより一層研究所が賑やかになったのであった。

 

ヴィヴィル(できればこの平和が長く続けばいいのになって思うわね)

 

ヴァネッサ(紅鬼、蒼鬼…2人が命をかけて守った地球、私の命…大切にするからな)

 

宗麟(もう使わないかもしれないパワードスーツ…しかし、リントヴルムは悪が現れる限り、永遠に不滅だ。きっとまたこう叫ぶ時が来るだろう…DraGO!リントヴルム!)

 

 

 

(完)

 




【緊急告知】

宗麟「皆、応援ありがとう!第1部から約1年半も連載できたこと誇りに思うぜ!」

ヴィヴィル「でも本編は終わっちゃったけど、もうちっとだけリントヴルムは続くわよ!」

宗麟「どこかで聞いたことあるフレーズだな…まあいいや。来週から『魔破竜人リントヴルム外伝』を全4回に渡って放送するぞ!」

ヴィヴィル「内訳はアンケートで1位になったお蔵入りエピソード1話分とゲスト回3話分を予定してるわ。所謂番外編ね。」

宗麟「まあ、最後にメタいことを言うがパラレルワールドだからヴァネッサ達の出番があったり、なかったりするがそこは了承してくれ。」

ヴィヴィル「ではでは、あと4回のお付き合いをよろしくね!」


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外伝第1章『戯曲!悲劇へは行かせない』の結末

(続いて明日の天気です。明日は高気圧に覆われ…)

 

テレビの音をBGMに机で書きかけの原稿を睨む男が1人。彼は「反町 龍太郎」。ヒーロー番組『魔破竜人リントヴルム』の脚本を担当している。どうやら締め切りが来週なのにも関わらず、まだ未完成のようだ。しかし、そんな状況を知ってか知らず反町はウトウトと机に突っ伏して眠ってしまった。

 

反町「はっ!いかんいかん仮眠をとるつもりが…あれ?ここはどこだ?」

 

反町は目を覚ますとなぜか森の中にいた。携帯を取り出そうとするがあいにくポケットには何も入っていない。辺りを見回すと自分の寝ていた場所のすぐ近くに鞄が落ちていた。中には何とさっきまでにらめっこしていた書きかけの原稿が入っていた。

 

反町「まさか…ここは…」

 

嫌な予感がした反町は森の中を進む。すると目の前にあったのは…あのお馴染みの研究施設だった。

 

反町「『九頭龍先端科学研究所』…しかも番組の架空の研究所だ。はあ、夢にしては冗談がキツいな…」

 

そこへ2人の男女が反町に近づいてきた。

 

宗麟「入り口に誰かいると思って来てみたら…誰だ?」

ヴィヴィル「あの、すみません。どちら様ですか?」

 

反町は思わず「宗麟とヴィヴィルだ!」と言ってしまいそうになるがその言葉を飲み込む。初対面なのに名前を知っていたら怪しまれてしまうからだ。反町は何とか取り繕う。

 

反町「いやその…道に迷ってしまってね。君達、街へ行く方法を知らないかい?」

宗麟「だとしたらかなりの距離があるな…」

ヴィヴィル「それだったら九頭龍博士に頼んで車を出してもらいましょうよ。」

 

反町は九頭龍研究所に案内されてしまった。今まで目にしてきた人や物はすべて番組の中にしかないものばかりであった。どうして自分は、何のために自分は『魔破竜人リントヴルム』の世界に入ってしまったのだろうか。しかし、反町は夢から覚めようとはしない。なぜなら心のどこかではこの世界にいれば書きかけの脚本のアイデアが閃くかもしれないと思っていたからであった。

 

博士「何?山で迷った人がいる?わかった。私が麓の街まで案内してあげよう。私もちょうど街へ行く用事があるからな。」

反町「あ、ありがとうございます。」

 

番組で見た通りの九頭龍博士に連れられ博士の車に乗り込む反町。博士とは道中ひと通りの世間話を交わしたが…反町には引っかかる部分があった。

 

博士「仕事は何を?」

反町「脚本家です。あの…『魔破竜…いや、ヒーロー番組のシナリオを書いています。」

 

ここでも危うく『リントヴルム』と言いそうになるがまた言葉を飲み込む。

 

博士「ほうほう、脚本家か。いやはや、私は理系ゆえにそのような文系の仕事にはてんで疎くて…良ければ話を聞かせてくれないか…」

 

そんな話をしながら街に到着する。反町は駅前に降ろしてもらい博士に礼を言って別れたが急いで駅前の喫茶店に駆け込む。急いで起きた時に持っていた鞄を開けて書きかけの原稿を確認する。そこに書かれていたのは…

 

(龍崎宗麟:「入り口に誰かいると思って来たが…誰だ?」)

(ヴィヴィル:「あの、すみません。どちら様ですか?」)

(九頭龍博士:「何?山で迷った人がいる?わかった。私が麓の街まで案内してあげよう。私もちょうど街へ行く用事があるからな。」)

 

今までの会話はすべて脚本に書いてあることそのままだったのである。もちろん書きかけであるためシーンが飛び飛びになっているものの、上手い具合に台詞は全部シナリオ通りだった。

 

反町「もはや気味が悪いなこの夢…いや、確かに番組でしか会えないキャラクターに実際に会えるのは貴重な体験なんだが…」

 

でも、反町はどこか寂しさも感じていた。本来自分は物語を作る側であって登場する側ではない。宗麟達に会えたとしても宗麟達はシナリオ通りの言動しか起こさない。まるで反町は世界に無視されているようだ…そんな感情が芽生えたその時…あっ!と声をあげてしまいそうなことに気づいた。

 

反町「大変だ!次の展開はモンスターが現れて暴れ回るシーンだ!しかもそれより先が真っ白だ!」

 

自分の原稿を見てパニックになる反町だが、もう遅かった。外で爆発音が聞こえたからだ。

 

モンスター「グルル!グルァァ!」

 

まるでリザードマンのような、はたまたエイリアンのような名状しがたいモンスターが駅前の広場で通行人を襲っていた。とりあえず、反町はモンスターから逃げるために喫茶店を飛び出すが…

 

反町「えっ!?うわぁっ!」

 

モンスターの発射した怪光線がガソリンスタンドに当たり大爆発を起こした。反町はその爆発の衝撃で吹っ飛ばされてそのまま原稿の入った鞄を持ったまま失神してしまった。

 

暴れ回るモンスターの前にようやくリントヴルムとヴィヴィルが到着した。リントヴルムはモンスターにパンチやキックを食らわせるがあまり効いていない。さらにモンスターの怪光線をヴィヴィルがバリアでガードするもバリアが簡単に破壊されてしまった。

 

ヴィヴィル「嘘でしょ!?これはどういうこと!?」

宗麟「俺達の攻撃が全部中途半端な状態にしかならない…なぜだ?」

 

だが、モンスターの攻撃もリントヴルムが片手で簡単に防御できる程度の威力であった。どうやらモンスターの攻撃も威力が不安定なようである。要するにどちらも決定打が足りないという状況であった。

 

ヴィヴィル「こうなったら必殺技の『ドラグーンボルトブレイク』を…」

宗麟「いや…だめだ!必殺技が使えない!しかもフォームチェンジもできないんだ!」

 

すると、モンスターは突然、リントヴルムに背を向けて走り出した。向かった先には倒壊したガソリンスタンドにいる気絶している反町のところだった。だが、そこへモンスターを追ってきたリントヴルムが反町を庇う。

 

宗麟「ヴィヴィル、その人を早く逃してやってくれ!」

ヴィヴィル「わかったわ!」

 

ヴィヴィルに揺り起こされてまたもやハッと目を覚ます反町。すると、脳内に直接こんな声が聞こえてきた。

 

(アイツを…消せば…オレは…負けない…)

 

反町「そうか…モンスターの奴は俺が狙いか。俺を消してモンスターは永遠に生き続ける気か…だが、どうする?ここには筆記用具もないし、こんな極限状況で原稿を書き足してリントヴルムが勝利する展開にするなんて無茶だ…でも、このままでは俺もリントヴルムもモンスターにやられちまうかもしれない…」

 

反町が葛藤している横でリントヴルムはモンスターと戦い続けるがやはり決め手に欠けるため、どちらも攻めあぐねている。これでは永遠に決着が着かない。

 

反町「仕方ない…最後の手段だが…奴をすぐに倒すにはこれしかない!」

ヴィヴィル「あっ!どこへ行くんですか!」

 

反町は身体を起こして鞄から原稿を全部出すとリントヴルムとモンスターがしのぎを削る場所へ向かう。やがて反町はリントヴルムとモンスターの間に割って入って叫ぶ。

 

反町「君達…本当に済まないと思っている…それもこれも俺が脚本を中途半端な状態で長いこと放置したのが原因だ…だから、決めた!俺はこの物語をもう一度書き直す!」

 

唖然とするリントヴルムとフリーズしてしまったモンスターを横目に何と反町は原稿をビリビリと破り捨てて、ガソリンスタンドの爆発で起きた炎に投げ込んだ。するとその直後、周りの空間が歪み出した。やがて竜巻に巻き込まれたように身体が浮き上がってぐるぐると回転し始める。おそらくこれは『物語』の崩壊なのだろう。そんな崩壊に巻き込まれている3人組がいた。リントヴルム、ヴィヴィル、モンスターである。モンスターは真っ先に消滅したが、リントヴルムとヴィヴィルは反町に何か必死に呼びかけていた。

 

宗麟「おーい!次は俺達どうなるんだー?」

ヴィヴィル「早く教えなさいよー!」

 

反町はその言葉にこう答えた。

 

反町「わからない!だけど待っててくれ!」

 

いつの間にか宗麟とヴィヴィルも居なくなっていた。反町はどんどん物語の崩壊の奥の奥へと落ちていく。やがて反町の目の前の光が消えて、視界は完全に闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

(さあ、始まりました!真夜中のバラエティ…)

 

ハッと目を覚ます反町。そこはいつもの自室だった。テレビは夕方のニュースからすっかり深夜番組になっていた。手にはビリビリに破いた新聞紙を持っていた。

 

反町「ヤバい!寝すぎた!もう夜中の1時だ…あれ?」

 

それまでスカスカだったはずの原稿が全ページびっしりとマスが埋まっていたのである。しかも、それは自分のさっきまで見ていた夢とほぼ同じ内容であった。

 

反町「いつの間に書いたんだこれ…。そうだ。試しにこれを監督に見せに行ってみよう。まだ1週間あるからたとえボツでも書き直す時間はあるな。」

 

 

翌日、反町は『魔破竜人リントヴルム』の監督にその脚本の下書きを見せに行った。すると、「オチがやや荒削りだけど、アイデアは斬新で面白い」と評価され採用となった。これを元にしたエピソードを来月あたりに撮影しよう。そういう運びになった。反町はホッと胸を撫で下ろしたのであった。

 

 

 

 

一方、ところ…いや、時空変わってここは九頭龍研究所。給湯室でクシナが紅茶を淹れているとそこへ宗麟がやって来た。

 

クシナ「あら、宗麟。珍しいわね。ここに来るなんて。」

宗麟「いや、何となく行きたい気分になって…というか身体に勝手に動いたというか…」

 

その返事にクシナはクスリと笑い、こう続けた。

 

クシナ「ねえ、宗麟。この世界は誰かが決めた世界で、私達の一挙一動も、もちろん人生も最初から決められているなんて話…信じるかしら?」

宗麟「まさかそんな…だったら俺が給湯室に来たのは誰かがそこに行くって決めたからってわけか?」

クシナ「ふふ、なんてね。でも、今もほら私達を見てる人がいるわ。」

宗麟「え?どこに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クシナ「ほら、画面の向こう側に。」

 

 

 

 

(完)



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外伝第2章『月華!ルナティック・クライシス』の結末

それはある月夜の晩に起こったことだった。犬の散歩をしていた1人の男性がある家の前を通りかかる。しかし、突然、ペットの犬がけたたましく吠え始める。

 

男「どうしたポチ?とりあえず近所迷惑だから落ち着け…うわぁっ!?なんだあれは!?」

 

犬が吠えている方向を見た男はあまりの恐怖に犬を引きずらんばかりの勢いで一目散に逃げ出した。その男が目にしたものとは身体は人間だが、その臀部からは尻尾が生え、顔は狼のまさに人狼が立っていたのである。

 

ローラ「大変だわ…私の正体を知られちゃった…早くこの街から出ないと…」

 

彼女の名はローラ。漢字では『狼羅』と書く。その字の通り彼女は人狼である。満月を見ると尻尾や牙が生えて暴走してしまうのだ。ローラは急いで荷物を纏めて家を出る。この家はどうやら空き家らしいがローラがこっそり住み着いていた。しかし、存在が明るみになってしまっては大変なことになると思い、街を出ようとする。その時だった。

 

博士「君、こんなところで何してるんだ?こんな真夜中に出歩くなんて…」

 

九頭龍博士がたまたま車で通りかかり、ローラに声をかけた。ローラは切羽詰まった状況であったため、ついこう言ってしまう。

 

ローラ「た、助けてください…!」

 

困っている人を見過ごせない博士は九頭龍研究所に彼女を保護する。やがて談話室に宗麟やヴィヴィル、クシナまで集まってローラの話に耳を傾けた。彼女はまだアイヌ民族が北海道にいた頃から存在していた人狼の一族の生き残りだという。しかし、シャクシャインの戦いでアイヌ民族が松前藩の支配下に置かれた際にその混乱の中、一族と離れ離れになってしまったのであった。その後、本州に流れ着いたローラは各地を転々としながら生活していたという。

 

宗麟「シャクシャインの戦い?つまり君は360年くらい前から生きてるってことかい?」

ローラ「そうなの。人狼の一族の平均寿命は500年以上だからね。ああ、皆は今どうしてるかしら…心配だわ。」

博士「わかった。それなら私が北海道まで送り返してあげよう。実は九頭龍研究所が管理する観測所が北海道にあってな。その土地の一部を君に貸してあげよう。仲間が見つかるまでの生活拠点にするといい。」

ローラ「え!?いいの?ありがとうございます!」

 

北海道に帰れるとわかって顔に笑みが浮かぶローラ。ただし、北海道行きの船を手配するのに丸一日はかかるため、それまでにローラを匿わなくてはならない。だが、研究所で匿うのはリスクが高い。なぜなら早くも研究所に『人狼を何とかしてくれ』『早く駆除してくれ』などの依頼が住民から殺到しているからだ。

 

宗麟「それなら俺の知り合いに不思議な力を持った娘がいるから掛け合ってみるぜ。何でも魔法少女らしいからな。ローラを上手く隠してくれるかもしれない。」

ヴィヴィル「魔法少女と知り合いなの宗麟?いや、人造人間の私が驚くのはちょっとおかしいけど…」

 

宗麟が向かった先は『相沢 涼』という名のフェスタ生の家である。どうやら宗麟と何度か交流があるらしく、さらに魔法少女であるという理由で、ローラを街の住民から隠してほしいと頼むのであった。涼は快く承諾してくれたため、安心する宗麟。だが、街には不穏な空気が流れていた。

 

 

 

 

 

 

真戸野博士「何?人狼が現れた?なるほど…ならばその人狼を我が最新技術で駆逐してやろうではないか!」

 

かつてヒエロニムスマシン(※聖槍!白銀鏡の騎士参照)を開発したものの、その発明が危険視されて失脚した真戸野博士。彼は名誉挽回のためにローラを自らの技術で倒すというとんでもない計画を立てていた。博士は倉庫から2体のサイボーグを引っ張り出す。

 

真戸野博士「私のサイボーグはまだまだたくさんあるが今回の相手は犬ころ1匹だ。『ガラティーンΣ』、『アロンダイトγ』だけで十分だろう。」

 

サイボーグの目に光が灯った。

 

 

 

一方その頃、涼は宗麟からローラを連れて街の港まで来て欲しいと連絡が来たため、ローラと共に家を出て港を目指す。街を堂々と歩いていてもローラが怪しまれないのは涼の魔法か何かの力で人々の意識を逸らしている…つまり意図的に存在感をなくしているということである。要するにドラ○もんの石こ○帽子のような効果である。

 

涼「もうすぐ着くよ。だから、もう少し頑張って。」

ローラ「貴女、すごい力が使えるのね。いや、人狼の私が言えたことじゃないか…」

 

だが、港で待っていたのは船…と2体の鋼鉄製のサイボーグを侍らせた真戸野博士だった。

 

真戸野博士「待っていたぞ、人狼。私はお前をずっと追跡させてもらっていた。さあ、人々の安寧を脅かす化け物は死んでもらおう!」

涼「そんな!どうしてローラを追跡することができたんだい?」

 

真戸野博士はまず、街中の監視カメラをハッキングし、映像をすべてチェック。さらに、アロンダイトγにレーダーをセットし、居場所を特定したのであった。涼の魔法はどうやら機械の目までは誤魔化せなかったようだ。やがて間髪入れずにガラティーンΣが腕のマシンガンから弾丸をローラに向かって放つ。涼とローラは何とか港に置いてあるコンテナに身を隠して事なきを得るが、散らばった弾丸を見てローラは戦慄する。

 

ローラ「これは…銀の弾丸…!人狼の弱点でもあるわ…!」

涼「あの博士は本気で君を殺す気だ…!」

宗麟「涼!大丈夫か!?」

 

そこへ虫が知らせて駆けつけたリントヴルムがやってきた。リントヴルムは涼とローラを守るようにして立つ。

 

宗麟「何も罪を犯してないのに人狼ってだけで殺すなんておかしいだろ!」

真戸野博士「はっ、血迷ったかリントヴルム。このまま放置すれば奴は必ず我々に危害を加えるだろう。第一、人狼は人間を食う、あるいは殺人を楽しむような者ばかりだ。私のデータに間違いはない!」

 

そして、2体のサイボーグをリントヴルムに差し向けて真戸野博士が叫ぶ。

 

「邪魔をするなら先に君から潰してやろう!リントヴルムに勝てばこのサイボーグの性能が高いことのへの証明になる!」

 

まずは腕に剣型の武器を装備したアロンダイトγがリントヴルムに斬りかかり、さらに遠距離からガラティーンΣがマシンガンを放ち、まさに死角のない攻めを見せる。しかし、リントヴルムもただではやられない。リントヴルムもマシンガンをかわしつつ、アロンダイトγに拳や蹴りを入れていく。そしてついにアロンダイトγをリントヴルムが追い詰めた。しかし、ここで恐ろしい事態が起きた。

 

ローラ「ヴ…ヴ…ヴァァァ!!」

涼「どうしたの、ローラ!?まさか…」

 

何とローラが暴走を始めてしまった。サイボーグ達との戦いの最中、日が暮れてしまい月が昇り始めたのであった。しかも、運悪く今日は満月の日だった。ローラから尻尾や毛皮が生える。ローラは涼の制止も聞かず、リントヴルムを背後から強襲。かつてない3対1の戦いに発展してしまった。

 

真戸野博士「ちょうどいい!リントヴルムと共に纏めて撃ち殺せ、ガラティーンΣ!」

 

暴れるローラを押さえつけるも、ガラティーンΣのマシンガンを食らうリントヴルム。さらにアロンダイトγも接近し、もはや万事休すか…だが、ついにここで涼が動き出す。

 

涼「今まで隠してたけど…この状況は黙って見てられない…助けるよ…リントヴルムも、ローラも!」

 

涼の身体が光輝く。そして、変身。その名も『グリーンセイバー』。彼女…いや、彼の真の力である。グリーンセイバーはまず、剣でガラティーンΣのマシンガンを弾き、アロンダイトγを突き飛ばす。さらに、ローラに手をかざし、彼女の動きを止めた。

 

宗麟「すげえ…これも涼の魔法か。ローラが放心状態になったみたいだ。」

 

そして、リントヴルムはガラティーンΣ、グリーンセイバーはアロンダイトγにそれぞれ立ち向かっていく。まず、リントヴルムはガラティーンΣのマシンガンを持ち前のフットワークでかわし、パンチを一発。怯んだガラティーンΣにとどめの一撃、『ドラグーンライトニングブレイク』を食らわし、爆破させた。一方のグリーンセイバーも華麗な剣戟でアロンダイトγを圧倒。袈裟斬りで斬り伏せた後、とどめの必殺技『ファイナルグリーンストラッシュ』で一気になぎ払い、爆破させた。

 

宗麟「涼…これが君の真の力だったのか。」

涼「うん。でもまだ解決してないことがある。ローラを助けなくちゃ!」

 

グリーンセイバーは魔法を解除する。すると、ローラが再び暴れ出した。しかし、グリーンセイバーは優しく寄り添い、ローラの肩に手を置いて語りかける。

 

涼(大丈夫…君を受け入れてくれる場所は必ずあるよ。リントヴルムも、九頭龍博士も君を受け入れてくれたように…もちろん僕だって…)

 

優しいグリーンセイバーの言葉と心を癒す魔法…その2つが重なってローラを正気に戻した。

 

ローラ「グルゥ…グア…うっ、うっ、ありがとう…」

 

唸り声がいつの間にか咽び泣きに変わっていた。

 

宗麟「まったく…こんなことは俺にはできない芸当だ。やっぱり涼を連れてきて正解だったぜ。」

 

その頃、自慢のサイボーグを一気に2機も失った真戸野博士は意気消沈しながらとぼとぼ帰っていったという。おそらくもうローラを追いかける気力も無いのだろう。

 

改めてローラは九頭龍博士が手配してくれた北海道行きの船に乗る。ローラは宗麟と涼に深々と頭を下げてお礼を言う。

 

ローラ「2人とも…私のために本当にありがとう!私は貴方たちのこと絶対に忘れない。辛いこと、苦しいことがあったら、諦めずに戦った2人を思い出すわ。」

 

最後は笑顔で手を振り、船に乗り込むローラ。それをまた笑顔で見送る宗麟と涼であった。

 

 

 

 

 

 

宗麟「ところで今さらなんだが…涼。君、男だったのかい?」

 

宗麟のストレートな質問に…黙って頷く涼であった。最後の最後で2人の間に変な空気が流れた。

 

(完)

 

 

 



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外伝第3章『幽玄!歌姫の影に』の結末

『Water Lily palace』…この劇場はかつて様々なコンサートやミュージカル、さらにはお笑いライブやマジックショーまで行われており、町の人々にも馴染み深い場所であった。だが、この町にショッピングモールを誘致する建設計画が決定し、劇場は取り壊しが決まってしまった。というのも、最近では町の人口が著しく減少しており、いくら一過性のあるイベントを企画しても限界があるという結論の元、惜しまれつつも取り壊しという形になったのである。そして、この劇場が取り壊される最後の催し物としてフェスタのアイドルである『睡蓮寺 小夜』のライブが開催さることとなったのである。ライブ当日、知り合いである宗麟と付き添いでヴィヴィルも会場にやって来ていた。

 

宗麟「さすがメジャーアイドルの小夜だ。すごい客の入りだぜ。」

ヴィヴィル「ふふ、こんなにたくさんの人が楽しみにしてるなんて…どんなライブか今から楽しみになってきたわ。」

 

しかし、舞台裏の小夜は予想以上の人の集まりに緊張していた。人前で歌うことは初めてではないがやはり少し引っ込み思案な性格があってか不安に駆られていたのである。いよいよ出番が差し迫る中、衣装を取りに行く小夜。すると、控え室の壁に今日の衣装がすでにかかっていた。さらに、メイクの道具も一通り揃えられており、飲み物やファンからの差し入れも綺麗に整理されていた。

 

小夜「あれ…いつの間に?どなたがやってくれたのでしょう…?」

 

その後も『歌う時は腹から頭へ声を抜くように出すといい』、『緊張する時は始まる前に何か身体を動かすといい。足踏みするとかでも構わない』などアドバイスのメモがいつの間にか舞台袖の壁に貼られていたり、小夜のライブ中にもまるで何人もの凄腕の裏方のスタッフがいるような照明やエフェクトの演出があり、ライブは大成功に終わった。小夜はライブが終わった後、周りのスタッフにお礼を言いにいくが皆、一様に「そこまでやった覚えはない」と返すのであった。

 

小夜「今日の私のライブを陰ながら支えてくれたのは…誰なんでしょうか…?」

 

控え室に戻ってきた小夜。その時、控え室の扉が音もなく開いた。そこから現れたのは顔を白い仮面で覆った燕尾服姿の男性であった。

 

ファントム「こんばんは、睡蓮寺小夜。私のことは…『ファントム』とでも呼んでくれ。」

小夜「きゃっ…あの…貴方は?」

 

彼はファントムというらしい。話によるとファントムはリハーサルの時に聞いた小夜の歌に感動し、それを聞かせてくれた礼として小夜のライブをサポートしたのだと言う。一方的にだが。そして、ファントムは小夜と同じ目線に跪き、こう言った。

 

ファントム「もしよければ、明日、私の前で一曲歌ってくれないか?何、明日はここは貸し切り状態だ。君が歌ってくれたら私は満足だから。」

 

最初は小夜も迷っていたものの、ファントムに頼み込まれて約束してしまった。

 

その翌日、たまたま宗麟は町で小夜を見かけたので声をかけた。小夜から事情を聞いた宗麟はハッと気づく。

 

宗麟「そういえばクシナさんからこんな話を聞いたことがあるな…『オペラ座の怪人』って小説があるんだが、なんかそいつってその物語に出てくる怪人みたいだな。」

小夜「でも…悪い人ではないと思いますよ…?」

 

しかし、宗麟はそのことが引っかかり、護衛も兼ねて小夜に同行することにした。すると、劇場から悲鳴と爆音が鳴り響いた。

 

作業員「た、助けてくれー!ショベルカーが暴走してる!」

宗麟「それは大変だ!早く止めないと!」

小夜「でも、どうしてそんなことが?」

 

急いで劇場に駆けつけると劇場の駐車場にはたくさんの重機や作業道具などが並べられていた。その中の一台のショベルカーが作業員を襲っていたのである。そのショベルカーを操縦していたのは…

 

小夜「ファントムさん…どうしてこんなことを…!?」

宗麟「あいつがそうなのか!?だけど、この状況は見過ごせない!DraGO!リントヴルム!」

 

宗麟はリントヴルムに変身し、まずは作業員を逃した。そして、ショベルカーを操るファントムの前に立ちはだかる。

 

宗麟「どういうつもりだお前!」

ファントム「私はただ約束を果たそうとしただけだ。なのに今日いきなり取り壊しが始まった…私はそれが許せなかった。私はあの娘の歌う場所を守る!」

 

ファントムはリントヴルムの制止も聞かず、ショベルカーで突進してくる。だが、リントヴルムも負けじとファフニールフォームにチェンジし、持ち前のパワーで押し戻し、反撃にバルムソードの一撃でアームを斬り落とした。不利を悟ったファントムはショベルカーから降り、今度は近くにあったスコップで殴りかかってきた。リントヴルムもスコップを剣で受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。しばらく拮抗状態だったがリントヴルムがファントムに左ストレートを浴びせて吹っ飛ばした。もんどりうって転がるファントムは痛みに耐えながら今度はクレーン車に乗ってリントヴルムにぶつかろうとするが…

 

小夜「もうやめてください…!」

 

小夜の必死な声に一瞬を気を取られたファントム。だが、ハンドル操作を誤り、クレーン車があろうことか小夜のいる場所に一直線に向かい始めた。小夜は声も出せずにその場に蹲る。

 

宗麟「危ない、小夜!DraGO、change!ジャバウォック!」

 

瞬時にジャバウォックフォームにチェンジしたリントヴルムは必殺技の『ドラグーンストライクキャノン』でクレーン車を大きく吹っ飛ばす。クレーン車はファントムを乗せたまま宙を舞い、100m先で大爆発を起こした。やがて粉々になったクレーン車の中からヨタヨタとスーツがボロボロになったファントムが出てきた。リントヴルムは変身を解除し、ファントムに詰め寄る。

 

宗麟「おかしいと思ったんだ。そんな状態になっても生きてる…いや、スコップでファフニールフォームと互角に渡り合えるなんて…お前は人間じゃないな?」

ファントム「ふふ…ご名答だよ。私は…僕はもう死んでいる…この劇場に彷徨う地縛霊さ。」

 

すると、ファントムの仮面が砕けた。その素顔は傷だらけだった。

 

ファントム「僕の本当の名前は『滝口 正樹』。舞台俳優をやっていた。」

 

ファントムこと正樹はこの劇場が舞台俳優としてデビューした思い出の場所らしい。だが、正樹はその後、交通事故で帰らぬ人となってしまった。しかし、未練の残る正樹は劇場に『オペラ座の怪人』を真似て、怪我をした部分を仮面で隠し、『ファントム』と名乗り、亡霊となって劇場に住みついていたのである。

 

ファントム「僕は小夜…君の歌に感動した。だから、僕もライブが楽しみで手伝ったのさ。でも、僕はこの劇場が壊される前に小夜の歌をこの思い出の場所でもう一度聞きたかった…」

宗麟「だけど取り壊しが早く始まってそれにお前は怒ったってのか。」

 

すると泣き崩れる正樹に小夜は優しく肩に手を置き…そのまま歌い始めた。

 

【♪こどもの頃に 聞かせてくれた

母(あなた)のウタが いつも心に響いていて

真似て歌った そのウタを

父(あなた)が いつも 褒めてくれた

 

そんな笑顔が好きだから いつもわたしは声をあげる

あの日のように 笑顔の花が咲きますように、と 

 

百万光年、離れても

わたしはウタを歌いましょう

皆で紡ぐアンサンブル

夜空に星が浮かぶように、きっとあなたを照らすから】

 

ファントム「これは…僕に…?」

 

【♪大人になって 思い出す

「歌ってほしい」と 誰かに言われたこと

悲しい時で とてもそんな気持ちにはなれなかったけど

それでも願い(ウタ)がここにあって 俯くわたしを前へと向かせた

 

そんな祈りに応えたくて わたしは今日も声をあげる

いつかのように 笑顔の星が浮かぶように、と

 

百万光年、その先に

ウタを想う 誰かがいるから

一緒に紡ごうアンサンブル

想いの調は夜空を越えて きっとあなたに届くから】

 

正樹の目から涙が零れる。これだ、これこそ自分が求めていた歌だと胸が熱くなっていた。

 

【♪希望の朝に 暗い夜

一期一会の人生で 別れはいつも突然だけど

それでも私はウタを歌う

抱いたユメは 心(ここ)に在るから

 

百万光年、離れても

わたしはウタを歌いましょう

皆で紡ぐアンサンブル

夜空に星が浮かぶように、きっとあなたを照らすから

百万光年、その先に

ウタを想う 誰かがいるから

一緒に紡ごうアンサンブル

想いの調は夜空を越えて きっとあなたに届くから

 

その心に幻想(ユメ)がある限り ウタはいつも貴方の傍に…】

 

正樹の身体が光り輝き始める。正樹は小夜に頭を下げ、笑顔を向けて消えていった。小夜の歌で未練が取り除かれて成仏したようである。

 

小夜「良かった…ファントム、いや、正樹さん。乱暴なのは嫌でしたけど…私の歌にここまで感動してくれた。」

宗麟「小夜、すごいな。俺はどう頑張っても死人だけは救えない。でも、君はリントヴルムにはできないことをやってのけた。それは誇りに思っていいぞ。」

 

宗麟と小夜は2人で正樹が消えた場所を見つめる。劇場がまた少しだけ広くなった気がしたのであった。

 

 

 

 

 

翌日、小夜は次のライブ会場に行こうとしていた。そこで再び宗麟に出会った。しかし、宗麟はなぜか元気がない。

 

小夜「一体どうしたのですか?」

宗麟「実はな…昨日、建設会社から…俺が壊した重機の請求が来た…」

 

どうやらアームを斬り飛ばしたショベルカーとドラグーンストライクキャノンで粉々にしたクレーン車を弁償しろと九頭龍研究所に請求が来た。もちろん宗麟は九頭龍博士にこっぴどく怒られ、向こう半年タダ働きになってしまったという。

 

宗麟「小夜…もし良かったら…お金貸してくんない?」

小夜「えっと…ごめんなさい。」

 

だよなぁ…と肩を落とす宗麟であった。

 

(完)

 

 

 

 

 



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外伝最終章『神判!黙示録の龍』(前編)の結末

『臨時ニュースをお伝えします!世界各国に謎の飛翔生物が襲来し、世界各国の都市を破壊しています!さらにその飛翔生物は炎や煙を吹き出し、その煙に触れた人々が吐血し、次々と死亡しています!』

 

突如、目に飛び込んできたニュースに宗麟は驚いた。およそファンタジーの世界でしか見ることができないようなドラゴンが何体も飛び交い、街を破壊し、人々を襲っているのである。そんな唖然とする宗麟の部屋に九頭龍博士が血相を変えて押しかけてきた。

 

博士「宗麟!今すぐパワードスーツを着て外に出るんだ!すでに研究所上空にもドラゴンが来てる…ここがやられたら終わりだぞ!」

ヴァネッサ「博士!私も行かせてくれ!リンドレイクのパワードスーツはどこだ!?」

宗麟「わかった!すぐ行くぜ!」

 

リントヴルムとリンドレイク、そして、高出力電子レーザーキャノンを装備した九頭龍博士が空を舞う8体ほどのドラゴンの真下へ向かう。さらに研究所の屋上に備え付けられている照明弾付き小型ミサイルがクシナの指示で発射された。照明弾により目を潰されて混乱するドラゴン達をリンドレイクは下降してきたドラゴンに必殺技の「ドラグーンシャドウブレイク」を放ち、博士はレーザーキャノンでドラゴンを黒こげにする。リントヴルムも負けじとジャバウォックフォームに変身し、「ドラグーンストライクキャノン」で一気に2体ほど撃ち落とした。しかし、その時だった。

 

宗麟「ぐっ…?なんだ…急に目眩が…しかも身体が重い…」

 

突然膝をついたリントヴルムに驚いたような視線を向けるリンドレイク。どうしたと問いかける前にさらなる異変がリントヴルムを襲う。

 

宗麟「かはっ!…何だこれ…血か!?」

 

リントヴルムは突如として吐血。博士もこの異常事態に気づき、リントヴルムに研究所の中へ戻れと促す。

 

博士「大丈夫か、宗麟!?いや、この状態で戦闘を続行するのは危険だな。ヴィヴィル!宗麟に肩を貸してやれ。」

ヴィヴィル「わかったわ。宗麟、歩けるかしら?」

宗麟「すまん…何だか俺の身体が変なんだ…」

 

宗麟はヴィヴィルと共に研究所に避難する。その後はリンドレイクと博士がドラゴン達と戦ったのであった。

 

その日の夜。テレビや新聞のニュースは世界各国に現れたドラゴン軍団のことで持ちきりだった。東京、ニューヨーク、ロンドン、モスクワ、パリ、北京、ソウル、シドニーまでドラゴンに襲撃され、すでに述べ1000万人以上の犠牲者が出ているという。幸い研究所上空に出現したドラゴン達はリンドレイクの奮闘により全滅したものの、新たな問題も浮上していた。

 

クシナ「宗麟…もしかしたら貴方、あのドラゴンが放出する毒にでもやられたんじゃないかしら?一度メディカルチェックを受けるべきだわ。」

宗麟「そうですね….じゃあ、お願いします。」

 

宗麟は研究所と提携している病院に向かった。診察を待つ間、宗麟が病院のロビーにいると…

 

「ねえ、貴方。もしかしてドラゴンを倒そうとしてるの?でも、それは諦めた方がいいわよ。」

 

どこから現れたのか1人の少女が宗麟に話しかけてきた。ハッと構えて彼女に問いかける。

 

宗麟「君は誰だ?あのドラゴンのことを知っているのか?」

ミライザ「私の名はミライザ。あのドラゴンの正体を知る者よ。」

 

ミライザと名乗る少女は宗麟にドラゴンの事について語り始めた。それによればあのドラゴン達は地球にはるか昔から存在する「抑止力」だと言う。その抑止力は地球に栄えし生物をリセットし、地球に新時代を到来させる…そういう役割があるとミライザは語る。

 

ミライザ「かつて地球を支配していた恐竜と同じように人類は絶滅の道を辿るの。」

宗麟「待てよ。確かにいつか人類は滅びの時が来るかもしれない…だけどこんななぶり殺しみたいな形で絶滅するなんて納得いかない!俺は絶対にこれを止めてみせ…ぐっ、うげっ…!」

 

吐き気と目眩にまた襲われ宗麟はロビーの椅子にへたり込む。

 

ミライザ「そんなボロボロの身体で何ができるの?貴方、もし次にドラゴンと戦ったら死んでしまうわよ。それでもいいの?」

 

宗麟は何も反論できなかった。ミライザはため息をついて宗麟の前から去っていった。

 

1時間後、宗麟は診断結果を見て驚愕した。何と宗麟の内臓は急激に老化していて身体の内部は80歳の高齢者の状態に近いというのであった。

 

宗麟「そんな…嘘だろ…?どうして俺の内臓はこんなにも老朽化してるんだ!?」

博士「それは私から説明しよう。まさかこんなことになるなんて…もう少し慎重に例の物質は扱うべきであったようだ。」

 

九頭龍博士の分析によればNightmare matterの力が原因のようである。このエキゾチック物質の力を利用すれば光の速さを超えることが可能という。すなわち光の速さを超えるということは時間の中を早く進む、つまりワープと同じ原理で時間の中を高速で移動することができるというのだ。要するに宗麟はキングオブドラゴンフォームに変身した際、Nightmare matterを二度も使った。これにより宗麟は肉体だけ光の速さを超えて未来に行ってしまったということになる。ゆえに急激に老化してしまったのである。現時点では老化の影響は体内にしか出ていないがもうしばらくすれば皮膚にも影響が出始めるだろう…と博士は推測している。

 

宗麟「そんな…もう元には戻らないのか?」

 

しかし、ここでヴァネッサがやってきて口を挟む。

 

ヴァネッサ「それを何とかするために今しがた星間通信機でデルミエン星のルネアに相談したら、フェルドナ王国の技術で何とかできるかもしれないと返答が来た。地球にそれを転送するから1日待ってくれと言われたぞ。」

博士「宗麟。不安かもしれないが今はそのフェルドナ王国の技術にすがるしかない。我々ではどうにもならないことなんだ。」

 

宗麟は何も言わなかった。その日は博士とヴァネッサと別れ、病院で経過観察をするため入院することになった。

 

宗麟(次に戦ったら死ぬ…ちくしょう…俺はこんなところで寝てる場合じゃない…!何とかしてあのドラゴン供を止めないと…!)

 

病院のベッドの上で悔しさを噛みしめる宗麟であった。

 

翌日、またもや世界中でドラゴンが飛来し、破壊活動を行っていた。今度は軍事施設を中心に攻撃を仕掛けているらしい。日本でも自衛隊が応戦するも、大苦戦を強いられているという。そして、やはりというべきか九頭龍研究所がある山にも数体のドラゴンが飛来した。

 

看護師「龍崎さん、失礼しますよ…あれ?いない…?」

 

一方の宗麟は病室の窓から飛び出し、研究所まで向かっていた。ときおりふらつく身体を引き摺り、ドラゴンに向かって叫ぶ。

 

宗麟「もうこれ以上、お前達の好きにはさせない!DraGO!リントヴルム!」

 

宗麟はリントヴルムに変身、ドラゴンは火炎弾を3体同時に放つ。さすがに避けきれないと思ったのかファフニールフォームにチェンジし、受け止める。だが、その時、宗麟の視界がぐらりと歪み、またもや吐血してしまう。

 

宗麟「ぐはっ…やっぱり俺の身体は老人になっているのか…」

 

3体のドラゴンは追い討ちに次々と火炎弾を発射する。ファフニールフォーム自身の防御力で何とか耐えているものの、衰えた身体にダメージがどんどん蓄積され、ついにリントヴルムはばったり倒れ伏してしまった。これを勝機と見た1体のドラゴンが急降下し、リントヴルムに接近。そのままとどめを刺そうとするが…

 

宗麟「そうは…させるか!」

 

なけなしの体力を振り絞り、接近してきたドラゴンの心臓にバルムソードをぶっ刺した。これにより1体のドラゴンが力尽き、撃破に成功した。だが、リントヴルムもがっくりと崩れ、意識を失った。残っていた2体のドラゴンが動かないリントヴルムに今度こそとどめを刺そうとする。その時だった。

 

ヴァネッサ「覚悟しろ、ドラゴン供!あれ?リントヴルム!?なぜここに?」

 

間一髪のところでリンドレイクが現れ、2体のドラゴンを撃退する。動けなくなった宗麟はリンドレイクが担ぎ、研究所まで運んだ。

 

ヴァネッサ「宗麟…どうしてこんな無茶をした?お前はもう自由に動ける身体じゃないんだぞ。ルネアから解決策が届く前に死んでしまったら元も子もないだろう。」

宗麟「でも…あのまま放ってなかったんだ…俺が戦わなかったらもっと多くの犠牲者が出てたかもしれないぞ…」

 

ヴァネッサは呆れたという表情で宗麟を見つめ、一旦宗麟の部屋を出る。そこへ入れ替わるように博士がやって来て口を挟む。

 

博士「宗麟。実は思わぬ収穫があった。リントヴルムがドラゴンを心臓を破壊して倒したおかげで死体を持ち帰って解剖することができたぞ。そして、驚くべき事実が判明した。調べるとドラゴンの脳と脊髄の部分は機械だった…つまり奴らは人工物だ!」

宗麟「何…?じゃあ、地球の抑止力というのは間違いだったのか…?くそっ…たぶんミライザってあの女は嘘をついていたということか。」

 

考えてみれば怪しい点がいくつかあった。ミライザは宗麟の前に現れて「ドラゴンを倒すな」とわざわざ忠告したこと。さらに主要都市でもないのに九頭龍研究所がある山に決まってドラゴンが毎日複数体現れることも不可解である。おそらくこれは少なくとも九頭龍研究所の戦力を警戒しているということになる。

 

博士「まずはそのミライザという少女を探さねばな。だが、宗麟。君は満足に動けないだろう。そこで私は協力者を募ることにした。」

 

果たして博士の言う協力者とは?そして…

 

ヴァネッサ「来たか、ルネア。」

 

研究所の庭にUFOが降り立つ。中からルネアが降りて来た。

 

ルネア「お姉様。お久しぶりです。積もる話もありますが本題に入りますね。これが約束の物です。これで宗麟さんを救えるかもしれません。」

ヴァネッサ「なるほど…これはゲノム魔人を作る際に用いる『人工細胞』か。」

 

(続く)

 

 

 

 

 



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外伝最終章『神判!黙示録の龍(後編)』の結末

宗麟「博士…協力者とは?」

博士「うむ…実はかつて真戸野博士から押収した危険な発明『ヒエロニムスマシン』…このエネルギーがあと少しだけ残っていたのだ。これを以前使用した時、そのヒエロニムスマシンの力を相殺するマシンとエネルギーがぶつかり、並行世界と繋がっただろう。それを使ってみた。」

 

しかし、どの並行世界とつながるかは完全にランダムである。おそらく九頭龍博士も藁にもすがる思いで使用したに違いない。だが、引き当てたのは奇跡的にリントヴルムと面識がある人物だった。

 

博士「紹介しよう。『アーヴェント・ゾネンウンターガング』君だ。」

アーヴェント「リントヴルム…だよな?俺の世界ではリントヴルムは架空の存在で宇宙人も悪の組織もいないんだ。でもまさか本当にリントヴルムが存在する世界があるなんてな。」

 

宗麟は突然の展開に目を丸くする。そして、こう返した。

 

宗麟「待ってくれ。いくらなんでもこの戦いに巻き込むのは気がひける。今までのネオ・キマイラとの戦いとはわけが違うぜ?」

博士「落ち着け宗麟。何も彼をいきなり戦場の真っ只中に放り込むわけないだろう。今回は九頭龍研究所と治療が終わるまでの君の護衛だ。それくらいなら任せていいかと思った次第だ。」

 

それくらいならいいかと宗麟も頷く。そして、その直後、ヴァネッサが宗麟のいる部屋に入ってきた。

 

ヴァネッサ「皆、デルミエン星から人工細胞が到着した。博士、これで何とかなるだろうか?」

博士「これを使えば老化した宗麟の身体の細胞も元に戻るかもしれないな。よし、早速注入に取り掛かろう。ヴィヴィル、君に任せてもいいか?」

ヴィヴィル「任せてください。こういう事態ために医学知識を頭脳にインストールしておきましたから。医師免許はありませんが場合が場合なので!」

 

ヴィヴィルが宗麟の治療に取り掛かろうとしたその時、外で雷鳴のような音が響いた。2人以外の博士、ヴァネッサ、クシナ、アーヴェントが様子を見に外に出る。すると、空にミライザの顔が大きく浮かび上がっていた。どうやら雲をスクリーンに見立てたホログラムのようだ。

 

ミライザ「私は地球の抑止力…人類は今、懺悔の時を迎えた。自然を汚染し、多数の生物を滅ぼした罪深き生命体はまもなく地球の意思、飛竜達によって滅亡する。人類よ。この滅びを受け入れろ。かつて太古の時代、地球を支配していた恐竜のように時代が変わるのだ…」

 

そして、ミライザの顔はフッと消えた。

 

博士「何が地球の抑止力だ、侵略者め!あやつの呼び出した飛竜は人工物であるという証拠もあるのに!」

アーヴェント「こんな自作自演を許すわけにいかないな。」

ヴァネッサ「九頭龍博士。出撃の許可を。あの自称抑止力の横暴は私が止める!」

 

博士は頷き、クシナに分析させたホログラムの出元をヴァネッサに見せる。そこはかつてバイラノスがNightmare matterと一体化するために使用していた実験場の跡地だった。ヴァネッサはその情報を基に出発し、実験場の跡地に向かうこととなった。

 

クシナ「貴女1人で孤独な戦いなるだろうけど、信じてるわ。必ず勝って帰ってくることを。」

博士「我々も最大限バックアップする。頼んだぞ、リンドレイク。」

 

ヴァネッサは新しく博士が開発したマシン『スレイプニルmarkⅡ』に乗って例の実験場へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

実験場に到着したヴァネッサはその視線の先にミライザを捉えた。だが、ミライザは余裕綽々でヴァネッサに語りかける。

 

ミライザ「やはり九頭龍研究所は警戒すべき戦力だったわ。何せ一番にここを嗅ぎつけるんだもの。」

ヴァネッサ「お前は何者なんだ!何が目的だ!」

ミライザ「私はかつてデルミエン星を支配していた種族『竜牙族』。正確に言えばそのクローンね。」

 

話によればミライザはヴァネッサ達のような地球人に近い容姿のデルミエン星人が現れる数万年前に存在した種族であり、現在のデルミエン星人のように独自の文明を持っていた。しかし、環境の変化、大規模な地殻変動により絶滅した。だが何と、竜牙族の王族は死後、古墳にミイラにした死体を保存する風習があったのだと言う。

 

ミライザ「私はそのミイラから採取された僅かなDNAを元にクローンとして蘇った…まあ、生前の記憶はないに等しいけど。そして、私を作ったのは『バイラノス』様よ!」

ヴァネッサ「そうか。これですべて合点がいった。バイラノスはお前に遺志を継がせようとしているのだな。地球を征服しろと。」

ミライザ「いいえ。地球を征服するつもりはないわ…私の目的、それは私の生みの親を殺した地球人に復讐することよ!」

 

そう叫ぶとミライザは懐からスイッチのようなものを取り出す。

 

ミライザ「私のお父様…バイラノスは私に最強の兵器を遺してくれた。さあ、現れなさい…『エル・ドラゴン』!」

 

実験場の地面が裂け、その地割れの中からせり上がって来たのはシルバーに輝く鋼鉄のドラゴンを模した戦車だった。しかもその大きさはざっと100mは超えている。もはや戦艦と言っても遜色がない。ミライザはエル・ドラゴンのジャンプし、コックピットに入った。

 

ミライザ「ドラゴンで世界を蹂躙した後、エル・ドラゴンで反抗する地球人を皆殺しにするのが私の計画よ。リンドレイク、さしずめ貴女はこのエル・ドラゴンのデモンストレーションの相手ね!」

 

有無を言わせず、エル・ドラゴンは四方八方にある砲台からミサイルを発射する。ミサイルの集中放火に晒されるリンドレイクであったがミサイルの軌道を読み、何とか紙一重でかわしている。だが、爆風の威力が凄まじく早くも身体がふらついている。

 

ミライザ「ふっ、無様ね。こんな巨大兵器を相手にまだ戦おうとするなんて滑稽を通り越して哀れよ。」

ヴァネッサ「ぐっ…お前、言い回しがバイラノスそっくりだな…だが、私はバイラノスを倒した戦士…お前ごときに負けはしない!」

 

すると再びミサイルがリンドレイク目掛けて飛び交う。リンドレイクはミサイルをかわしながらエル・ドラゴンに必殺技の「ドラグーンダークネスブレイク」を叩き込む…

 

 

一方、ここは九頭龍研究所。ヴィヴィルによる人工細胞の注入は成功し、後は細胞が活性化されるのを待つため安静にしていろと博士に言い渡され、自室で横になっていた。すると、外の廊下からこんな声が聞こえてきた。

 

美沙子(九頭龍博士、大変です!今、私のテレパシーで感じとったのですがヴァネッサさんが命の危機に瀕しています!)

博士(何だと!?よし、こうなれば私もありったけの武装を集めて救出に向かおう。リントヴルムがいない今、我々が戦わねばならぬのだから!)

 

おそらく宗麟の見舞いに来た美沙子と博士のやりとりであろう。それを聞いた宗麟もふらつく身体を起こす。

 

アーヴェント「身体はいいのか?」

宗麟「まだ休むべきであるのは百も承知だ。だけど…大切な仲間が死にそうなのに寝てるだけなんて我慢できないぜ。俺は行く…ん?あれは?」

 

起き上がった宗麟が目にしたのは慌てた様子で自身の乗って来たUFOに向かうルネアの姿だった。宗麟は部屋の窓から外へ飛び出し、ルネアを追う。

 

宗麟「待ってくれルネア!君は今からヴァネッサのところへ行く気か?」

ルネア「はい。ヴァネッサお姉様がピンチとお聞きしまして。助けに行こうと…」

宗麟「ならば俺もつれて行ってくれ!頼む!」

 

ルネアはまだ安静にしていた方がいいと宗麟を止めるが、そこへアーヴェントが追いつき、「自分も一緒に行く」と所信表明する。ルネアもさすがに2人の想いに負け、UFOに乗せることにしたのであった。

 

ルネア「さあ、飛ばしますわよ!しっかり掴まっていらして!」

宗麟「君、操縦桿握ると性格変わるんだな…」

 

ルネアの意外な一面が発覚したところでUFOは飛び立ち、ヴァネッサとミライザが戦う実験場跡地に超高速で向かった。UFOはエル・ドラゴンに捕捉されないスピードで接近する。あまりのエル・ドラゴンのスケールに驚く宗麟一行だったが、ルネアの指摘が皆を正気に戻す。

 

ルネア「あそこから入れそうですよ!突入しますか!?」

宗麟「おう!行かせてくれ!」

アーヴェント「俺も行くぞ。大丈夫だ。覚悟はできてる。」

 

宗麟とアーヴェントはルネアのUFOから放たれたレーザー砲で破った窓からエル・ドラゴン内部に突入する。一方のルネアはエル・ドラゴンと単身戦い、満身創痍のリンドレイクを助け出した。

 

ルネア「お姉様!ご無事ですか?」

ヴァネッサ「ああ、何とかな…しかし、ルネアの激しい運転でとどめを刺されるかもしれないな…」

ルネア「もう!失礼しちゃいます!」

 

冗談を言う余裕か、それとも妹を心配させないためかヴァネッサは床に伏せながらも軽口を叩くのであった。

 

 

一方、リントヴルムとアーヴェントはエル・ドラゴン内部に侵入し、防衛システムをかいくぐり、ついにミライザのいるコクピットに突入する。そこには不敵な笑みを浮かべたミライザがいた。

 

ミライザ「今更来てももう遅いわ。たった今、このエル・ドラゴンの試運転が終わったところよ。これから100万体は下らないドラゴン達と共に世界を破壊し尽くすわ!」

宗麟「だから俺達はそれを阻止するために来た…覚悟しろミライザ!」

 

リントヴルムがミライザに拳を突き出すがミライザは両腕を瞬時に肥大化させて攻撃を受け止めた。その腕は丸太のように太く、鱗に覆われていた。

 

ミライザ「息巻いている割には痛くも痒くもないパンチね…いい加減邪魔よ!」

 

ミライザは腕を振るうとリントヴルムを弾き飛ばした。どうやらこの能力は竜牙族独自の力らしい。

 

アーヴェント「リントヴルム!?大丈夫か?」

 

しかし、間髪いれずにミライザの追撃がリントヴルムを襲う。アーヴェントは何とか剣で受け止めた。

 

ミライザ「ふーん、貴方。反応はいいけど…まだちょっと剣が軽いわね?」

 

ミライザは腕だけでアーヴェントを突き飛ばす。何とか剣でガードしたが50m以上押し戻された。しかし、ミライザは不敵に笑うと豪腕をアーヴェントに向ける。

 

ミライザ「それに先に貴方を倒しておいた方がいいわね。身体がボロボロなリントヴルムなんていつでも倒せるわ。だから、まずは貴方を始末するわ!」

 

豪腕をふりかざし、ミライザがアーヴェントを襲う。だが、そこでリントヴルムが立ち上がる。

 

宗麟「させるか!ドラグーンボルトブレイク!」

 

リントヴルムの飛び蹴りがミライザの顔面へ迫る。しかし、ミライザはリントヴルムの右足を片腕で掴んだ。

 

ミライザ「あら、その程度の攻撃をかわせないとでも思ったのかしら。浅はかね!」

 

ミライザはそのままリントヴルムの足を握り潰そうとする。だが、その時だった。

 

アーヴェント「くらえ!星の剣の一撃を!」

 

アーヴェントがミライザが硬直した隙をついてミライザの腹部を斬り裂いた。予想外の一撃に怯むミライザ。そして、アーヴェントに気を取られてリントヴルムの足を掴む力を抜いてしまう。その瞬間をリントヴルムは見逃さなかった。

 

宗麟「ドラグーンボルトブレイク…リターン!」

 

掴まれた右足を軸に身体を捻り、左足で空中回し蹴りのようなドラグーンボルトブレイクをミライザの首筋に決めた。その渾身の一撃を食らってミライザは吹き飛び、コクピットの壁に叩きつけられた。

 

ミライザ「肉体に…大規模な…損傷…。自己修復は…不可能…」

 

ミライザの腕は魔物のような豪腕から華奢な少女の腕に戻り、彼女の瞳から光が消え、がっくりとうなだれて消滅してしまった。

 

アーヴェント「俺達…勝ったのか?」

宗麟「やったぜアーヴェント!君と俺は地球を救ったんだ!」

 

その一言にアーヴェントも笑みを浮かべる。だが、まだ地球の危機は終わっていなかった。エル・ドラゴン内部にけたたましい警報が鳴り響く。何事かと宗麟は思いモニターを起動させる。そこにはミライザが死んだことでコントロールを失い、狂ったように空を飛び回り、破壊活動を行う飛竜達の姿だった。

 

宗麟「まずいぞ!今はまだ実験場の破壊に止めているがこれが世界中に放たれたら大惨事だ!ミライザを倒した意味が…ぐっ…」

 

そう言った後、リントヴルムが膝をついて蹲った。

 

アーヴェント「おい、どうした?あ、まだ人工細胞が身体に浸透していないからか。しかし、これは絶望的な展開だ…リントヴルムはもう戦えるような状態じゃないぞ…」

 

ざっと目測でも1000体は下らない空を埋めつくさんばかりの飛竜の群れ。たとえリントヴルムが万全の状態でもアーヴェントとたった2人では倒し尽くすことは不可能である。だが、そこへ…

 

博士「遅くなってすまない。ようやくたどり着けたよ。」

ヴィヴィル「ごめんね、アーヴェント。無理させちゃって。だけど、ここから先は私に任せて!」

 

2人はどうやらヴァネッサを救出した後にルネアのUFOに乗って来たようだ。ただし、重傷を負ったヴァネッサを看病するためルネアはクシナと一緒に研究所に残った。博士はUFOの操縦をヴィヴィルに任せてここに来たようである。そうじゃなきゃ、ルネアの運転で2人は酔っていたことであろう。

 

宗麟「しかし、博士。外はもうすでに飛竜の群れが空を埋め尽くしてる…」

アーヴェント「まだまだこの戦力じゃ太刀打ちできないぞ。」

博士「いや、私は直接は戦わんよ。戦うのはこの…エル・ドラゴンだ!」

アーヴェント「なるほど、その手があったか!しかし、どうやって操縦を?」

ヴィヴィル「ふふ、私に任せなさい!私の頭脳はスーパーコンピューターに匹敵するレベルよ。この演算能力を使って操縦するわ。」

 

しばらくして、アーヴェントは満身創痍になりかけている宗麟に肩を貸しながらエル・ドラゴンから降りる。やがて博士とヴィヴィルを乗せたエル・ドラゴンは飛行モードに変形し、空へ飛び立った。飛竜の群れで真っ黒に染まった空へエル・ドラゴンはミサイルやレーザー砲を放ち、飛竜を一層する。飛竜達も火炎弾で反撃してくるがエル・ドラゴンの装甲が何とか持ち堪えている。ミサイルとビーム砲と火炎弾とブレスの応酬が約1時間ほど続いた。

 

戦いを終えたエル・ドラゴンが宗麟とアーヴェントのもとへ帰還する。ヴィヴィルによれば飛竜を全滅させることができたものの、ミサイルなどの武装はすべて底を尽き、燃料もあと僅かになってしまったという。それでも、宗麟はヴィヴィルを労った。

 

宗麟「ありがとう…今度こそ俺達の勝利だ…!」

ヴィヴィル「リントヴルムばかりに頼ってないでたまには私も活躍しないとね。」

 

 

 

 

 

 

実験場の空が晴れ、光が差し込む。青空が戻ってきたのだ。するとそこへものすごいスピードでUFOが飛んできた。中から降りて来たのはヴァネッサとルネアだった。

 

ルネア「いやっふー!お姉様、最高のフライトでしたね!」

ヴァネッサ「私は何度吐き気に襲われたことか…まあいい。それより約束のヒエロニムスマシン一式持ってきたぞ。」

宗麟「そうか。いよいよ別れの時か。」

 

宗麟はフラつきながらもアーヴェントに向き直る。

 

宗麟「まずは済まなかったな。別世界から来た君をここまで付き合わせてしまって…」

アーヴェント「大丈夫だ。俺はむしろ本物のリントヴルムと一緒に戦えるなんて思ってもなかった。だから、こんな貴重な冒険をさせてもらったことを感謝してる。」

宗麟「俺も感謝してるぞ。もし君がいなかったらミライザを倒せなかったかもしれない。ありがとう…!」

 

宗麟とアーヴェントは固い握手を交わす。そして、アーヴェントは博士が起動したヒエロニムスマシンとそれを相殺する機械で開いた別世界への扉に足を踏み入れる。

 

アーヴェント「さよなら。また会えるといいな。」

宗麟「ああ。向こうの世界の俺にもよろしく…!」

 

アーヴェントは微笑み返すと別世界へ帰っていく。その背中はまるで勇者のように堂々としていたという。

 

 

数日後。エル・ドラゴンはルネアがヤハウェーに頼んで呼んだエラクレル帝国の輸送用UFO数台に運ばれデルミエン星に回収された。博士はできれば研究したかったとやや悔やんでいたがこれでまた平和な日常が戻ってきた。しかし、宗麟は人工細胞が完全に浸透してない状態で無茶をしたため、身体が言うことを聞かなくなり、しばらく車椅子で生活することになってしまった。それでも懸命にリハビリを続け、もう少しで歩けるようになるという。

 

宗麟「戦いは終わった…だけど、まだ完全に平和になったわけじゃない。これからは俺達人間が自らの手で地球を守らないとな。」

 

病室の窓辺に手をつき、宗麟は窓の外を見つめて呟いた。

 

(完)

 

 

 

 

 

 

 



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