酔いどれサーヴァントを召喚した!? (小此木)
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酔いどれサーヴァントを召喚した!?

ハーメルン初心者様誤字報告ありがとうございました。


 

 

 

聖杯戦争

 

この戦いはそう呼ばれている。聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎のサーヴァントがその覇権を競う。他の六組が排除された結果、最後に残った一組にのみ、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。勝利のためには、マスターか、そのサーヴァントを撃破。若しくは、マスターの令呪を無効化し、強制的にマスターとしての資格を失わせることが必要となる。

 

そして、今回は第四回目。第四次聖杯戦争が始まろうとしていた。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。―――――Anfang、――――――告げる、――――告げる。」

 

此処は御三家と名高い"間桐"の家。今回のマスターに()()()()()間桐雁夜は自身の契約するサーヴァントを召喚する為、儀式を続ける。しかし、この儀式は彼自身が快く請け負った事ではない。人質…好いていた幼馴染の娘の命を救う為の事。この数時間前もやけ酒を行い未だ口臭は()の臭いが混じっていた。

 

「――――されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。 汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

今此処に歴史に名を遺す英霊を呼び出す儀式が整った。

 

が、

 

そこへ現れたのは―――

 

「何か酒の臭いがしたから来たんじゃが。ひっく。…酒はどこかのぅ?」

 

腰の曲がった一人の酔いどれの老人だった。それも、白髪リーゼントの。

 

「………雁夜、お前の魔術の資質は兄の鶴野を超えていたんじゃが…外の世界で此処まで落ちていたとは…()()話は無しじゃ。冥土の土産に儂の魔術で死ぬがいい。」

「…ま、待ってくれ!桜ちゃん、桜ちゃんだけは!!」

「五月蠅い!死ね!!「うぃ~、ちぃっと黙っとてくれんか?()よ」…ウグッ!?」

 

間桐の当主、臓硯は雁夜の不甲斐ない有様に落胆し即殺めようとしが、突然臓硯は動かなくなってしまった。

 

「さて、五月蠅い()は黙らせた。お主、」

「…な、何が…どうなって…」

「なに、軽く()()()()()しただけじゃ。ちと聞きたいんじゃが、お主―」

 

そして、雁夜が呼び出したであろう老人は『()を持っていないか?』そう聞いて来た。それを聞き老人を呆然と見ていた雁夜は、すぐさま我に返り、

 

「…さ、」

「ん?〝さ〟とは何じゃ?」

「…桜ちゃんを!…ゴフ!!こ、この屋敷の、地下に幽閉…されている、桜ちゃんを救ってくれ!!」

 

そう懇願した。自身が召喚しただろう目の前の老人は、どうやったかは分からないが臓硯の動きを封じた。藁にも縋る思いで雁夜はその老人へそう言ったのだ。

 

「…任せろ。」

「…た、頼んだ…」

 

その言葉を後に、雁夜の意識は遠のいていった。

 

 

 

■□■□

 

 

 

「…う、く…」

 

俺は、まだ生きてるのか?

 

「…お目覚めかな?」

「あ、アンタは―」

 

このファンキーな爺さんは…俺が召喚したサーヴァント!?

 

「臓硯は!?桜ちゃんは!?」

「これこれ、そう慌てるでない。桜と云う娘子は…ほれ、そこじゃ。」

 

そこって、俺が寝ている隣?…ああ、疲れて寝ちゃったのか。

 

「…良かった、桜ちゃんが無事で。」

「それと、あの()は駆除しておいたぞ。この屋敷中にいたからの。」

 

そうか、そうか。この爺さん、屋敷中の虫を駆除してくれたんだな。有り難い事だ。

 

ん?屋敷の虫って?…あれ?

 

む、虫ぃー!?

 

「お、おい爺さん!蟲ってあの庭に居た老人の姿をした()()か!?」

「そうじゃが、それがどうした?それに、お主の体の中に居た蟲も駆除しておいたぞ。(ちと、()()した部分もあるがの。)」

 

お、俺の体の中に居た蟲も!?ま、魔力回路は…問題ない。と云うより前より調子が良いだと!?一応パスが繋がっているようだが…この爺さんどんな英霊なんだ?

 

「お、俺の名前は間桐雁夜。爺さんアンタは?」

「儂の名は()()。早速だが、」

「ああ、聖杯戦争の事だ「いやいや違う。」…ん?」

「儂に()をくれんかの。さっきから手が震えて…」

 

って、酒がきれてふるえてるよこの爺さん!?仕方がない、酒なら此処の蔵にいくらかあったハズ。

 

 

 

 

 

「で、爺さん。アンタには感謝してもしきれない「お爺ちゃんありがとう!!」…桜ちゃんも蟲に襲われずにすんだしな。で、聖杯戦争なんだが、俺はアンタの望みを全力で叶えるようサポートをする。」

「ん?儂の望み?もう叶えられとるわ。この()()()()を飲むと云う望みがな。」

 

ん?

 

「えぇっと、望みは、叶ったのか?」

「ああそうじゃ。」

 

んん?

 

「な、名のある英霊と見るが、アンタはそれでいいのか?」

「違う違う。儂は英霊ではない、()()じゃ。それに、儂にとって酒は命。まぁ、死んでしまっているが、こうして様々な世界を回り酒を楽しんでいるしの。」

 

え、英霊じゃない…だと!?

 

「じゃ、じゃあ、聖杯戦争に付いては!?」

「な~んも知らん。ちょっと遠出をしながら漂っていたら、こっちから酒の臭いがしての。変な黒塗りの騎士が通路を遮断して、邪魔じゃったからそいつをノッキングしてこっちに来たわい。」

 

く、黒塗りの騎士?…それ、俺が召喚しようとしたバーサーカーの英霊じゃね!?

 

「…そ、それは壮絶な戦いで?」

「いや、数秒じゃ。全然強くは無かったからのう。」

 

あ、空いた口が塞がらない!!

 

「ま、酒を貰った()があるからの。その、聖杯なんちゃらの手伝いぐらいするぞい。」

 

俺はこの日、目の前の次郎と名乗る老人に桜ちゃんを助けてもらい。

 

「か、顔が元に戻ってる!?」

 

未知の技術で体を治療され以前の…いや、以前より体調が良くなり。

 

「さて、お主の要望じゃ。すこ~し鍛えてやるぞ。」

「よ、よろしくお願いします!!」

 

そして、一人でも桜ちゃんを守れるよう鍛えて貰った。フフフ、何度臨死体験をしたか覚えていない。それに、何故か食欲が増えて身体能力が上がった気がするんだが、気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タンカーのコンテナ並ぶ倉庫街で恐らくセイバーとランサーの二人が対峙している。それを俺は双眼鏡で眺めていた。

 

「…今は出ていかないほうがいいみたいだな。」

<バリ!!>

「ッ!?何だ!!」

 

だが、突然稲妻と共に1台のチャリオットが空から降り立った。決闘に横槍か。

 

『双方、剣を収めよ!王の前であるぞ!!』

 

チャリオットには一人の大男と少年が乗っていた。可愛そうに、無理やり連れて来られたのか少年は涙目だった。

 

『我が名は征服王イスカンダル!!此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した!!』

 

そして、何処に誰がいるかも分からないのに大声で真名とクラスを叫んだ。自身の真名やクラスは情報を隠ぺいする為バレないようにするのが普通だが、彼のイスカンダルはそれを自身が言い放った。昔の武将みたいな英霊だな。そして、あろう事かセイバーとランサーを自身の配下にならないかと話だしたぞ!?ま、当然二人はその申し出を断ったけどな。突然真剣勝負を中断させられたし、他にも要因はあるだろうが、当然と言えば当然の結果。

で、次には自身を〝王〟と言ったライダーに怒りを覚えたサーバント、恐らくアーチャーの登場により話はややこしくなってきていた。

 

『…おい、そこでこそこそ隠れている雑種。とっとと出てきたらどうだ?』

 

やべ、見つかっちまった。

 

「…どうしよう。」

「儂一人で行く。ちいっと、挨拶してくるわ。」

「済まない次郎さん。」

 

この日から第四次聖杯戦争が…いや、聖杯戦争自体が終わりに近づいたと俺は感じた。

 

 

 

■□■□

 

 

 

彼は千鳥足で現れた。

 

「アイリスフィール、下がって。」

「クッ、バーサーカー…か?」

「むぅ、これは…」

「お、おい!酔ってる爺さんが侵入して来たじゃないか!!」

 

片手に酒瓶、腰は曲がっており白髪リーゼントという井出達。

 

「…フン、我が試してやろう。」

 

アーチャーが突然老人へ向け、街灯の上から4つ宝具を射出した。老人は微動だにせず、宝具が直撃した影響か土煙が老人を中心に広がっていった。

 

「な、何やってんだ!相手は一般人だぞ!!」

「たわけ!こんな時間、こんな場所に老人が入って来るものか!…ッ!?か、体が動かん!!」

 

ウェイバーの声に反論するアーチャーだったが、突如土煙の中から何かがアーチャーに命中した。

 

「奴は本当に只の老人か!?」

「え!?」

「坊主には見えなかったか。奴め、飛んできた宝具を全て()()で止め、その反撃に小さい器具から何か射出しアーチャーめに命中させおった。」

「そ、そんな事…あ、あの老人一般人じゃない!!」

「そう言っているだろう。何故そこまで驚く?」

「え、英霊みたいなパラメーターが見える!!ク、クラスは…ってええ!?」

 

ライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットが魔術師の能力で見えた物をライダーに伝えた。

 

名前:ノッキングマスター次郎

フルコースメニュー

オードブル(前菜):百葉のクローバー

スープ:コンソメマグマ

魚料理:王陸鮫

肉料理:アシュラサウルス

メイン(主菜):ET米

サラダ:グラナレタス

デザート:オアシスメロン

ドリンク:ドッハムの湧き酒

 

「…何だそれは?」

「な、何だって言われても、そうなっているとしか言えないんだ!!」

 

普通分かるものはサーヴァントのクラス、筋力、耐久、敏捷、魔力、幸運で稀に宝具の一部が分かる程度だ。なのに、分かるのは名前と何故かフルコースのメニューだった。

 

「…済まんが、少し静かにしてもらえんかの。せっかくの月見酒が台無しじゃ。」

 

その言葉を発した後、その老人はいつの間にか消えていた。

 

「な、何だったんだ!?」

「分からん。だが、只者ではない事だけは分かったな。」

 

そして、動けるようになったアーチャーを筆頭に皆それぞれの拠点へ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故、何故ですジャンヌ!!」

「私はジャンヌではないと言っているだろう!!」

 

彼の老人は圧倒的だった。

 

「ん?何じゃこいつ等?ノッキング。」

 

キャスターが召喚した数多の魔獣も数秒で動きを止める謎の技術。

 

「オウ、爺さん。駆けつけ、一杯。」

「魂に染みる味わい。」

 

聖杯問答中ライダーやアーチャーが持っていた全ての酒を飲みほす程の大酒豪。

 

「切嗣!やめろー!!」

「令呪を持って命ずる!セイバー〝聖杯〟を破壊しろ!!」

 

破壊され聖杯から溢れ出した液状のアンリマユ相手に、その老人は落ち着いていた。

 

「あれ程忠告したのに、中身を出してしもうたか。…さて、あれはちと厄介じゃの。少し酒を断つか。」

「次郎さん大丈夫なんですか!?」

「あれぐらいなら、問題ない。ノッキングライフル、ハードタイプじゃ。」

 

酒を断つと雁夜へ発した直後、両手に小さな器具を持ち眼ではとらえられない速度で何かを射出。

 

「動きを止めたが後の処理が面倒じゃし、ふっ飛ばすか『ビッグバン』!!」

 

いつの間にか黒髪で筋肉隆々の男に若返っていた次郎のパンチで、アンリマユは()()へと打ち上げられその途中で消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ちゃんただいま。」

「お帰り、お義父さん。」

 

第四次聖杯戦争が終わり、数カ月が経った。雁夜はルポライターの情報収集が終わり、今日数日ぶりに帰って来たのだ。

 

「あれ?次郎さんは?」

「次郎お爺様なら、この世界の酒を楽しむんだって出て行ったちゃった。」

「ハァ、まぁ仕方ないな。いつ帰って来ても大丈夫なように部屋は綺麗にしておこうな。」

「うん!…あ!次郎お爺様に良い物貰ったよ!」

「へぇ、どんなものだい?」

「へへへ、次郎お爺様のフルコースだって!!」

 

桜は雁夜の養子になり、あの忌々しい間桐の屋敷を出て次郎を含め三人で暮らしている。少しさびれた古民家だったが、普通に暮らすには問題なかった。

 

「…い、生きているのかい?」

「そうだよ。でも、()()()()()は私達に合わせてるって!」

「こ、これも修行か…」

 

雁夜と桜の二人は聖杯戦争中、次郎に戦い方を教わっていた。そのお陰か、大体捕獲レベル100ぐらいなら二人とも苦なく倒せるようになっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は様々な場所を旅している。

 

「フム、かるであ?何じゃそれ?」

 

別の宇宙でノッキングと云う技術を極めた男。

 

「人類が滅亡してしまっては…酒が飲めんからの。儂にとって酒は命。ま、今は死んで()()じゃがな。」

 

酒を愛し家族を愛した男。

 

「あ奴がソロモンか。久々に『ニ狼』と云う名を思い出してみるかの。」

 

特徴はその頭にあるリーゼント。

 

「周りの奴も邪魔じゃ。『グランドノッキング!!』」

 

彼の力の前に、あのギルガメッシュやヘラクレスでも全く敵わなかった。

 

『ミリオンノッキング!!』

 

彼は未知の〝酒〟を求めこの世界を旅する。

 

「そろそろ雁夜君と桜君の元へ帰ってみるかの。」

 

偶に拠点に帰る時もあった。

 

「あ!次郎お爺様おかえりなさい!!」

「おお、桜君か。大きくなったの。」

「次郎さん!貴方がフルコースに設定した捕獲レベルですが、弱くなってるって言ってもあれは無いでしょう!!」

「そうか?」

 

彼の名前はノッキングマスター次郎。ファンキーな格好の老人である。

 



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まずは胃袋を掴めと教えられました!!

 

 

 

第四次聖杯戦争が終結して早数年。

 

最後まで残ったマスターの名は間桐雁夜。

 

そして、聖杯から流れ出したアンリマユ(この世全ての悪)は、雁夜の召喚した()()の次郎のパンチによって大気圏で消滅した。

 

しかし、聖杯を出現させる為にアイリスフィール・フォン・アインツベルンは死亡。その夫であるセイバー(アーサー王)のマスター衛宮切嗣は、今回敗北してしまった為アインツベルンに娘のイリヤを奪われた。そして、孤児だった赤髪の少年『士郎』を養子に久宇舞弥を妻とし、最後まで娘を思いながら士郎達に看取られながらこの世を去った。

アーチャー(ギルガメッシュ)のマスター遠坂時臣は、娘である桜が間桐臓硯に『調整』させられそうになった事実を知り激怒。間桐家に今後一切の魔術の使用と研究を禁止しその権限を永久凍結した。桜の調整を未然に防いた雁夜とそのサーヴァントである次郎に感謝し、桜が雁夜になついている事からそのまま養子として預けている。

 アサシン(ハサン・サッバーハ)のマスターだった言峰綺礼は(この世界では)ギルガメッシュにそそのかされる事無く、父とそのまま教会で神父をしている。

 ライダー(イスカンダル)のマスターウェイバー・ベルベットはイスカンダルに誓った言葉を胸にランサー(ディルムッド・オディナ)のマスターケイネス・エルメロイ・アーチボルトの元へ戻り魔術を学んでいる。

ケイネスはウェイバーが触媒を盗んだことで激怒していたが、自身が早々に負け弟子であるウェイバーがイスカンダルとギルガメッシュに認められたことを真摯に受け止め、ウェイバーへ3カ月の謹慎とその間身の回りの雑用でそれを許した。だがウェイバー曰く、『今後絶対やらない』と言っていた。余談だが、ディルムッドはアーサー王との一騎打ちで負けその時ソラウへの魔眼は解除された。今では、夫婦円満で稀に時計塔へ愛妻弁当を持ってくると云う…リア充爆発しろ(おぉっと、作者の本音が…

キャスター(ジル・ド・レェ)のマスター雨生龍之介は、(原作同様)切嗣に狙撃され死亡した。

 

 

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

 

 

 

「舞弥おば様、下準備終わりました。」

「流石桜ちゃん!最近、美遊にも懐かれてるし…これなら士郎を任せても大丈夫だわ!!」

「そ、そんなおば様!?」

 

此処は衛宮家。衛宮切嗣と地味婚(婚姻届けを出しただけの結婚)した久宇舞弥(ひさうまいや)と切嗣の養子になった士郎、切嗣と舞弥の娘である美遊が三人で住んでいる。今日は士郎の通う穂群原学園の後輩である桜が家に来ていた。

 

「か、家庭料理を習いに来ているだけですって!!」

「その反応、隠したって無駄無駄ァ!!大河ちゃん達を呼んで式は盛大に挙げるわよ!…私は出来なかったからね。」

「おば様…」

 

桜は義父である雁夜にサプライズで家庭料理を食べさせたいと同じ部の先輩だった士郎に相談し、士郎とその義母である舞弥に家庭料理をここ最近学びに来ていた。

 

「でも、今日は先輩遅いですね。」

「う~ん、そうね。新しい部活に入ったって言ってたし、それ関係じゃない?」

「…新しい、部活、ですか。」

 

しかし、今日は士郎の帰りが何時もより遅い。

 

「ま、そのうち帰って来るでしょ!桜ちゃん、晩御飯は家で食べて行きなよ。」

「で、ではお言葉に甘えて。(先輩に何かあったんでしょうか?)」

「じゃ、決まりね!美遊!桜お姉ちゃんが晩御飯一緒に食べるってー!!」

「本当!?やったー!!」

 

桜と舞弥、美遊の三人は楽しい会話をしながら夕飯を食べ、周りが暗くなってきたので桜がそろそろ帰る時間になってしまった。

 

「うぅ、桜お姉ちゃん…」

「こらこら、桜お姉ちゃんを困らせないの。」

「また明日も来るから。ね。」

「――――ぜ、絶対だよ!!」

「もぅ、この子ったら。ごめんね桜ちゃん。それと、帰り道気を付けるのよ。」

「はい。では、失礼します。」

 

 

 

 

 

 

「セイバー避けて!!」

「クッ!!」

 

人気の無い公園で大きな爆発が起きた。

 

「大丈夫か遠坂!セイバー!!」

「衛宮君は来ちゃダメ!ほとんど一般人なんだから、これ以上近づいたら死ぬわよ!!」

「でも!!」

 

桜が待っていた人物、衛宮士郎はそんな公園で二人の少女を心配していた。

 

「でもも、へったくれもないわよ!私達魔術師の問題に巻き込まれただけのアンタが此処で死んだら寝覚めが悪いってだけ!だから早く逃げなさい!!」

 

士郎がつい最近知り合った少女、遠坂凛。世話焼き体質が災いし、彼女の態度が最近おかしいと彼女の友人に相談を受け快く受けたのが運の尽き。彼女が今住んでいるという遠坂家の別荘に行き、玄関の鍵が閉まっていなかった事で泥棒が入ったと勘違い。(ただ単に鍵をし忘れていただけの遠坂家直伝?のうっかりである。)その泥棒を捕まえようと屋敷に侵入し、ある部屋で何かブツブツ言っていた凛を発見。泥棒が潜んでいる可能性があったので、彼女を守る為部屋に突入し…魔法陣の真ん中に立ってしまった。

 そして、召喚されたのがセイバー(アーサー王)だった。士郎は簡単な説明を凛から受け、此処まで知ってしまった以上手伝うと言い出した。テコでも動かない士郎に凛は半ば呆れ、それを受け入れた。危ないときは身を潜め絶対に出てこないとを言い聞かせ、渋々聖杯戦争の相棒兼弟子と云うことに落ち着いた。それで今二人は相手サーヴァントの襲撃に逢っていた。セイバーと対峙しているのは巨漢のバケモノ。大木の様な武器を軽々と振り回し、理性のかけらもない雄叫びをあげセイバーに襲い掛かっている。

 

「え、みや…衛宮!お前は衛宮切嗣を知っているか!!」

「切嗣って、親父を知っているのか!?」

 

そして、そのマスターと思われるのが紫を主とした服に包まれた純白の少女。

 

「お、親父ですって!?お母様とイリヤを捨てたくせに!何もかも奪ったくせに!!」

「ど、どう言う事だよ!?お母様?イリヤ?分かるように説明してくれ!!」

 

彼女は士郎に言う。捨てられたと。何もかもを奪い目の前から忽然と消えたと。母を、楽しかった家族の時間を、大切な思い出を、奪ったと。

 

「そ、そんな事親父はしない!何かの間違いに決まってる!!」

「なら、お母様を殺した事実は?何年経ってもイリヤに会いに来ない理由は?」

「そ、それは、何か事情が!!」

「なら!本人に聞いて「…んだよ…」ん?何?聞こえないわ。」

「…死んだよ。3年前だ。」

「…そう。」

 

意気消沈の二人。そして、

 

「完全に蚊帳の外だわ…」

 

話に付いて行けず、置いてきぼりの凛。

 

「マスター!早く指示を!これ以上戦いを長引かせたらこっちが不利になる!!」

「バーサーカー!逃げられたらまずいわ!此処でそのサーヴァントは仕留めて!!」

「ウォォォォォォォォォォ!!」

「ッ、分かったわ!此処は私と衛宮君を連れて撤t<シュコン!!>い?何今の音!?」

 

荒々しい戦場に乾いた音が響いた。

 

「マ、マスター!か、体が動かない!!」

「ど、どう言う事!?」

「どうしたのバーサーカー?早く殺りなさい!!」

「ウゥゥゥゥゥ。」

 

両者のサーヴァントは何故か動けなくなってしまった。

 

「…何だか凄い事になっていますね。先輩。舞弥おば様と美遊ちゃんが心配していましたよ?」

 

そして、暗闇から姿を現した人物に士郎と凛は驚愕した。

 

「「桜!?」」

 

 

 

■□■□

 

 

 

先輩の事だからまた誰かの相談やお願いを聞いているのでしょうけど、ちょっと心配です。一応何をやっているか見て帰りましょう。

 

「えっと、先輩にあげたストラップに特殊な臭いを付けてて良かったです。臭いは…こっち?公園がある方角?夜、公園………夜のデート!?」

 

ど、何処の誰ですか!?()()先輩は絶対渡しませんよ!!

 

「ハッ!まさか、相談やお願いを口実に呼び出され…襲われているのかも!!直ぐ貴方の桜が駆けつけます!先輩(の貞操)無事でいて下さい!!」

 

見ツケマシタ!()()先輩ヲ(たぶら)カス売女ハドコデスカ!!

 

「あれ?何で姉さんが?それに綺麗な騎士さんと、野獣?が戦っている?ん?どういう状況ですかこれ?」

 

う~ん、考えても分からないですし、聞いてみましょう。まずは、ノッキングして大人しくしてもらいますね。

 

「ノッキングライフル、ノーマルタイプです。」

 

ノッキング箇所は、そこと、そこ!!

 

<シュコン!!>

 

ふぅ、女騎士さんはいいとして、あの野獣下位のデビル大蛇並みの難しさでした。でも、次郎お爺様の言いつけ通り、二体以上ノッキングする場合の条件。ほぼ同時のノッキングは成功ですね。

 

「では、事情を聞きに行きましょう。流石にこの状況はデートじゃないですよね。良かった。」

 

姉さんでも先輩は譲りません!数年かけて(ようや)く胃袋を掴める距離になったんですから!!

 

「…何だか凄い事になっていますね。先輩。舞弥おば様と美遊ちゃんが心配していましたよ?」

 

あ、そう言えば義父さんに遅くなる旨を連絡し忘れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、桜ちゃんが居ない!?こ、これが反抗期!?JC、JK特有の感情か!?俺は喜べばいいのか、悲しめばいいのか…」

 

今日初めて一人で夕食を食べた雁夜は、そんな頓珍漢なことを考えていた。

 



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