やはり俺が315プロにいるのはまちがっている。 (Hoffnung )
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アニメSideM編
プロローグ


プロローグなので凄く短いです。
八幡も誰だお前みたいになってるかもしれませんがご了承くださいませ。


千葉県にある総武高校では朝のHRが始まる前の時間帯

土日が終わり再び一週間が始まる月曜日である。

おはようと挨拶や、だりー帰りてー等といったやる気の無い声が飛び交う中、一人机に突っ伏してる生徒がいた、"比企谷八幡"というのだが彼が机に突っ伏して寝ている(もしくは寝たフリをして人間観察をする)のは日常茶飯事だが今日の様子は少し違った。

 

(……やべぇよまじやべぇよ。)

 

彼は頭を腕を使い枕のようしていたが机に突っ伏してる顔の目ははっきりと開いてる...死んだ魚ような濁った目だが...

彼は迷っていた、それはもう凄まじく迷っていた。

机に突っ伏る前、この総武高校に向かう通学路...否、その前日からも迷っていたのだ、己自身に起きたあるまるで戯言と取られてもおかしくない純然たる事実を。

 

(まじかよ、あいつらにどう説明したらいいんだ...?)

 

"あいつら"とは彼にとって決して下らないとはいえなくない関係になった"奉仕部"と呼ばれる部活に所属している彼曰く知り合いと言う2人の部員の事だ。

"雪ノ下雪乃"、"由比ヶ浜結衣"の2名である。

 

(説明するべきか?...いや小町が勝手に情報流すだろうから話す必要はない...か...?)

 

(だがこういうのは自分の口で話すべきなんじゃねぇのか?......いやほぼ間違いなく嘘だと思うだろうな...なんなら雪ノ下の罵倒がついてくるまであるな。)

 

彼の頭の中で"氷の女王"の2つ名を持つ奉仕部の部長の罵倒してくる姿がありありと想像できて思わずうへぇ...と声を出しそうになる。

 

(しかし、こんなん普通ありえねぇだろ自分でもまだちょっと受け入れられてねぇよ...)

 

制服の内ポケットから何日か前に貰った1つの名刺を取り出す

何日か前に貰った物なので端っこの部分が少し折れてたりするがそれでも綺麗な名刺だ。

"315production プロデューサー 石川"

白を基調とし爽やかな空を思わせる青で書かれていた。

彼はここで1つため息を吐きむくっと体を起こす、そしてそのまま軽く体をそり頭を傾けて天井を仰ぐようにみる。

 

 

(...まさか俺が...このぼっちマスターの俺が...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイドルになるなんて...

 

 

 

総武高校2年F組 比企谷八幡

そう彼は本日の月曜日の前日、日曜日と土曜日、学生や社会人達も含め働くのではなく休みとされている土日。

 

その土日という僅か二日間で彼はアイドルになったのだ。

 

 

315プロダクションという1つのアイドル事務所のアイドルに。

 

そのプロダクションのプロデューサーと名乗るものにスカウトされたのである。

 

 

 




エタらないように努力はしますが、基本的に更新は遅めになると思います...

気長に待っていただけると嬉しいです。


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第一話

なんか思ってたより反応多くてびっくりしてます。
感想は絶賛募集中です。

誹謗中傷を含めた感想でも私自身が設定を間違えたりしてる場合は指摘してくれるとありがたいです。

後、作者はSideMはエムステはやっていても本家のモバの方はやっておりませんので本家のイベントのネタ等をいれる事が難しいです。


何故この俺、比企谷八幡がアイドルになる事になったのか、それは数日前の金曜日まで遡る。

 

土曜日、それは部活のある学生や社会人にとってはまだ学校へ通学したり、会社に通勤したりする曜日、全くご苦労様な事だ。

 

だがこの俺、比企谷八幡が所属する奉仕部は土曜日にまで学校に出向いてするような部活ではない。

あの何故正式な部活として機能しているかもわからない奇妙な部活でも大会に向けて日々せっせと時間を割いて部活動に勤しむ運動部のように土曜日までやる部活じゃなくて入部した時(ほぼ強制的に入部する形だったが)内心ほっとしたものだ。

 

...まぁ偶に駆り出される事とかあるけどさ

 

無視してるとスマホのメール欄がメンヘラチックを超えて怪文書染みてくるんだよな、マジでいい加減そろそろ誰か平塚先生貰ったげて、最近自惚れじゃねぇけど狙われてる気がして怖ぇーんだよな。

 

まぁそんな訳で特に学校に向かう理由も無い俺が休日にする事といえば、二度寝して惰眠を貪り適当にゲームでもして、スマホを使ってネットサーフィンする、まさに至福の時とも言える完璧な休日だ。

 

勉強?学校の授業と予備校、後はテスト期間前以外は特に勉強する必要性感じられないんだよな、大学に必要な教科の勉強は大体収めたしいけるだろ、以前雪ノ下にも言った通り俺はそこそこ優秀なんだぞ。

 

数学なんて物は知りません、なにそれ美味しいんですか?

 

だがしかしまぁ...

 

「暇だな...」

 

俺は一人小町どころかカマクラすらいない部屋のソファーに寝転がりながら一人愚痴る。

人間誰もが休息を必要とする生き物だが休息が余りにも長すぎると苦痛すら感じるものだ、まぁ俺が今感じてるものは苦痛では無く唯の退屈、なのだが。

 

たかが退屈だと思う事無かれ、様々な娯楽があることで金さえ払えば退屈とは解消出来るこの現代に生まれ育った現代っ子である俺にとって退屈とは一種の死活問題だ。

どうする、思い切ってゲーセンとか行ってみるか?いや目ぼしいものが無かったらただの無駄足になるし最悪DQN...最近じゃ死語だっけこれ、まぁ不良とかにも絡まれたりする可能性とかあるからこれは最終手段だな、ゲーセンに出向いた時にユーターンした事が何回あることか、許すまじ不良。

 

そんな事を考えながらスマホの日付をチラ見する、ほんとスマホ一つで色んなことが出来るから便利な世の中になったもんだ。

 

...ん?ちょっと待て今日ってもしかして...

 

(あ、やべ今日ラノベの発売日じゃん)

 

俺としたことがすっかり忘れてた、最近お気に入りライトノベルの発売日って今日だったわ。

好きなラノベだし続きも気になるのでなるべく早く読みたいって思って、公式ホームページで発売日まで確認してたというのに忘れてしまっていた。

設定が凄く気に入っていたから続刊は発売日になったら直ぐに買おうとしてたんだよな、あのラノベは主人公が孤独に一人で戦おうとする設定が凄く良い、最近よく見る唯主人公がヒロイン達にモテてハーレムを形成するだけのラノベとは違って孤独で在ろうとする姿が良いんだよな。

 

本屋に着いたら売れ切れて完売!ということは作品の人気的にありはしないだろうが早く行くのに越したことはない、その分早く続きを見れるとゆうメリットだけでも十分外出してまで買いに行く価値はある。

そう判断するや否やネットサーフィンを中断し服を着替え始める、外に出る予定なんてなかった為当然の様に寝間着のままであったが故に着替える羽目になってしまったが、流石の俺も寝間着のまま外に出る勇気なんて物は持ち合わせていない。

 

財布や携帯といった最低限の荷物だけを手早く纏めて持ち外に出る、さっさと済ましてしまうとしよう、時間は待ってはくれないからな。

 

俺は早速自転車にまたがり目的のラノベを買う為自転車を漕ぎ始めた。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

シャーと自転車の小気味良いタイヤの回転する音が聞こえる、さらにその上に目線を向けて見れば書店の袋、中身は言わずもがな先ほどまで言っていた件のライトノベルだ。

 

早く行くという選択肢は英断だった、俺がいつもご贔屓にしてる書店ではどうやら取り扱い、というかそもそもの在庫が少なかったらしく俺が取った一冊は運良くも最後の一冊だったようで再入荷は未定との事だった。

 

危なねぇところだった、もし行くという判断がもう少し遅れていれば今頃俺はまた自宅より少し遠い書店へとチャリンコのペダルを漕いでいたところだろう。

店の本棚に陳列してなくて店員さんに勇気を持って(ぼっちには店員さんに話しかけるだけでも大きな勇気を必要とするんだぞ、大げさだなんて言うんじゃねぇぜ)訪ねた努力も報われると言うものだ。

 

しかし在庫が元々少なかったとはいえ自分のお気に入りの作品が、それも結構マイナーな系統の作品がそれなりに売れているという事実は嬉しいものだ。

 

俺の周りにライトノベルが好きで語れる奴が居ない為、是非とも機会があればこの作品の事を語ってみたいものだ、まぁ俺はネットでの口コミを見るだけで終わるんですけどね、はい。

 

 

…材木座?誰それそんな奴いたっけ?

 

「せっかくだしマッカンでも買ってくか、臨時収入もあった事だし買って帰るとしよう」

 

自転車を漕ぎながら誰に言う訳でも無くポツリと思わず独り言を漏らす、危ない危ない、人気が無い所で良かった、こんな台詞聞かれてたら軽く三回は死ねる。

目的のライトノベルを購入し俺とした事がどうやら気分が舞い上がってるらしい、落ち着け、こんな場面由比浜にでも見られたらあっという間に雪ノ下にも拡散されてしまう、最近は鳴りを潜めてきた罵詈雑言がまたぶり返すかもしれない、ほんとに初期の頃の雪ノ下の態度はマジで俺が訴えたら勝てるレベルだと思うんだ、つまり、今の雪ノ下が学生生活をエンジョイ(してるのか良くわからないが)のは逆説的に俺の所業なのでは無いだろうか。

 

っべー、やっぱ俺って仏に匹敵する八幡大菩薩だったわ。

 

だがマッカン買って行きたいと思った事は純然たる事実なのだ。誰一人として知り合いに会う事もなく帰宅しようとし矢先ふと思ったのだ、どうせならマッカンでも買ってゆこう、家でゆっくりとマッカンを傍らにラノベを読むのも悪くない。

最近臨時収入もあったことで財布にまだ余裕があるので折角だから買って帰ろうと思ったって訳だ。

 

因みに何故臨時収入とは何だ?と疑問をお持ちの方の為にお答えするが親父のAVの隠し場所を見つけてさりげな〜く伝えたところ親父からお小遣いが貰えたってだけだ、俺に口止めするぐらい怖がってる所あれだけどこの前かあちゃんがご飯の時に出したの親父だけツナ缶だった時点でバレてるって事に気づけよ...なんて思っていたがそれは心の中に留めておいた、流石の俺でもかあちゃんは怖いのだ。

 

自転車を走らせ向かう目的地は自動販売機、唯の自動販売機と思うなかれ俺が向かう自販機は俺みたいな学生の財布事情に有難いコスパが良い自販機なのだ、人通りの少ないところに設置してある為か購入価格が非常にリーズナブルになっており何度もお世話になっている、ほんといつもありがとうございます。

 

需要と供給の関係とは良く言ったもので人通りの多いところに設置してある自動販売機は平均して一本辺りの値段が120〜160円と高いのだ、確か富士山の頂上じゃ缶コーヒー一本200円だっけ?アホくさ馬鹿たけぇよ。

だがしかし、俺が向かう自販機では千葉のソウルドリンクにして俺の血潮、そうマッカン、正式名称MAXコーヒーがワンコイン、つまり100円で買える神みたい、いや神自販機で、そんじょそこらの自販機とは格が違う。

 

破格だ、破格過ぎる、それ故に俺もその自販機は愛用しておりよく利用する。

自転車を走らせ程なくして目的の自動販売機の前につく、幾ら人通りが少ないとはいえ自販機の前を占領するのはいささか迷惑過ぎるだろうから手早く買って買えるか、俺は財布を片手に手早く購入して帰宅する予定だったのだがここで問題が発生した。

 

「さて、とっと買いますかねっとマッカンは......売り切れ、だと...?」

 

そう、彼の目的であるMAXコーヒーが売り切れていたのである、100円と記載されているボタンの下に売れ切れの文字が赤く光っている。

もしかしたら光の加減の影響でそう見えるだけかもしれないと淡い期待を込め小銭を投入しボタンを押してみるが反応は無い、わかりきっていた結果だがどうやら本当に売り切れているらしい。

 

「ここの自販機が売り切れてるとこなんて初めて見たぞおい、...はぁしゃあねえ諦めて他のところで買うか。」

 

軽くため息を吐きながらレバーを下ろし先ほど入れた小銭を回収し財布へと戻す。

何もマッカンが売っているのはここだけではない、他の自動販売機やコンビニ等、販売されているところは幾らでもあるのだ。

ここの自販機が安いからというだけで来ただけであって値段を問わなければそこら辺のコンビニでも入れば容易に入手できるのだ。

一番近くのコンビニはどこだったっけな...と思考を巡らせていると声をかけられた。

 

「あの、すいません、少しよろしいでしょうか?」

 

「あ、すいません直ぐどきますんで...」

 

どうやらいつのまにか他にこの自販機を利用しようとした人が来たらしい、自販機の近くに立ったままだったのでさぞ邪魔だったろうと思い軽い会釈と謝罪をしそそくさとコンビニへと向かおうとした。

 

「いえ、そこの自販機ではなくあなたにお話ししたい事があるのですが...今お時間よろしいですか?」

 

「え、俺ですか?あ、はい少しぐらいなら大丈夫ですけど...」

 

どうやら自販機ではなく自分に用があったらしい、しかし誰だ...?自分のクラスメイトでも碌に話さないせいか名前なんて全然覚えてなんかないが今話しかけてきた人は間違いなく初対面の人だ。

声や体格からして男性なのであろう、だが男性にしては長い髪を縛り肩にかけており、優しそうな目つきや顔立ちから一瞬女性とも思ってしまいそうなスーツを着こなしている中性的な顔立ちをしている男性である。

一瞬落とし物でもしたのかと思ったが自分の財布や携帯は自分の手元にあるし本屋で購入したラノベも、袋に入れた状態で自身の自転車のカゴの中に入っている。

その話はないだろうと即座に判断したが他に何かあるだろうか?と思考を巡らそうとした矢先に相手が再び話しかけてきた。

 

「ありがとうございます、実は僕こういうものでして...」

 

と、流れるようなスマートな動きで名刺入れから1枚の名刺を取り出し両手で差し出してきた、それを同じく両手で受け取る。

"315production プロデューサー 石川"と記載されている。

 

「315プロダクションでプロデューサーをやらせていただいております、石川と申します。...失礼かも知れませんがお名前を教えていただくことは出来ますでしょうか?」

 

「え、名前ですか?比企谷八幡ですけど...」

 

「比企谷八幡さんですね、お答えいただきありがとうございます、それでは比企谷八幡さん早速本題に入らさせてもらいたいのですが...」

 

初対面の男に自分の本名を正直に伝えて良かったのかと言った直後に気付いたが聞いた張本人は視線を俺に一切離す事なくじっと構える、なに俺の事好きなの?一目惚れっていう展開を男から受けるのは流石に勘弁願いたいんだが。

 

話しかけてきた男性、石川と名乗る男は両目をしっかりと俺の目線に合わせこう言ったのである。

 

「単刀直入に言わせていただきます、我がプロダクションのアイドルになっていただけませんか?」

 

「.........は?」

 

思いもよらなかった言葉に俺は思わずそう返すしかなかった。




文才が欲しい...めちゃくちゃ欲しい...

話し短いですがちょくちょく更新していく予定です。
丸々放置する予定はありません、こんな作品ですがお気に入りしてくださった方ありがとうございます。

一様次回で八幡のスカウト話が終わる予定です。


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第二話

これで八幡のスカウト話しはラストになります、キャラの性格とか完全に理解できないから結構つまるなぁ...


「我がプロダクションのアイドルになっていただけませんか?」

 

……この人は何を言ってるんだ?アイドル?…俺が?あの歌って踊るアイドルを?

 

全く予想だにしてなかった言葉に思考が一瞬フリーズしてしまったが直ぐに口を開き返事をした。

 

「あ、結構です、アイドルとかどう考えても無理なんで」

 

サラっと、当然のように断った。

 

当たり前だ、俺がアイドルになんてなれる訳がないし何よりもこんな人通りの少ないところで話しかけて来て「アイドルになってください」等、胡散臭いにも程がある。

 

何故、よりにもよって俺をスカウトしようと思ったのかと疑問に思うが、どこかのテレビ番組のドッキリ企画でもやっているのだろうか。

 

『いきなりアイドルになってくださいと言われたら本当にアイドルになるのか?ならないのか?』

なんて企画でもやっていて反応をカメラでも撮っているのだとしたら、もしそうなら直ちにこの場から離れねばなるまい。

 

バラエティ番組で笑いのネタとして放送されるなんて絶対にごめんだ、間違い無く俺の黒歴史上トップクラスの物になるのは確実。

自分がアイドルになれると思った勘違い男のルッテルを貼られることは必須、んでもってSNSで実況をしてるような人達にだってネタとして笑われるまでがセットってとこだろ。

 

このように、直ぐ様帰ってしまえばテレビに放送される程の取れ高のある映像なんて撮れて等いないだろうし、お蔵入りになる可能性だって充分にある、何よりも俺は一刻も早く帰って自転車の籠の中で揺れている袋の中のラノベが読みたいのだ。

 

マイソウルドリンクであるマッカンを片手に至福の時を過ごす、こんなところで時間を食ってる場合ではない。

 

「え、あのもう少しだけでもお話しを聞いていただきたいのですが…」

 

「結構です、では、これで失礼します」

 

「えぇ!?ちょ、ちょっと待って下さいー!」

 

慌てた様子で男性が駆け寄ってくるが俺のそんなこと知った事ではない、さっさと自転車にまたがりこの場を去ろうとした。

 

「あれ?お兄ちゃんじゃん、今から帰るところ?」

 

「…え、小町?なんでお前ここに?」

 

だが、それは1人の人物の登場によって中断された。

俺、比企谷八幡の最愛の妹こと比企谷小町である。

 

「いや、今日朝からららぽに買い物に行くって言ったじゃん?それが終わったから帰ってるとこだよ〜」

 

「ららぽにって…ああお前朝にそんなこと言ってたな。」

 

なんでこんな人通りの少ない所で鉢合わせるんだと思ったが大方歩きスマホでもしながらブラブラとここまで来てしまったんだろう、全く、お兄ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!!

 

因みに原作をしっかりと読んで下さっている読者様なら知っていると思うが、俺らの言うららぽとは俺を始めとする多くの近隣住民が良く利用する大型商業施設、ららぽーとの略称だ。

 

ショッピングを楽しむのも良し、レストランで腹を満たすのも良し、映画館等の娯楽施設も豊富にあるのでお金さえあれば1人でいっても困ることはない。

デートスポットとしても有能なので小町みたいな学生だけに限らず連日多くの人が利用する大型商業施設なのである。

小町の話では朝から出かけていたようだが携帯をチラ見すると既に15時を回っていた、朝から出かけているならもう用事が済んでいてもおかしくない時間帯だろう。

 

「お兄ちゃんは何してたの?朝の様子から今日は一日ぐーたらしてるだけかと思ってたのに…ってその人誰?…はっ!まさかのお兄ちゃんのお友達!?」

 

「違ぇよ、んーそうだな…ああこの人はな、多分テレビ番組のドッキリの仕掛け役かなんかだろうよ、撮影されるなんて真っ平ごめんだからとっとと帰るところだ。」

 

「え!?ちょっと違いますよ!僕はドッキリの仕掛け役とかではないです!比企谷さんを是非、我がプロダクションのアイドルになっていただけないかなっとスカウトさせて貰えないかとお話ししていた所でして…」

 

慌てて手をわちゃわちゃさせて必死に否定しているが、別に本当にドッキリの仕掛け役ではなかろうがアイドルへのスカウトなんて最初から受ける気なんてない。

何が悲しくて自分の顔を晒してアイドル活動なんかしなきゃならないんだ、第一、成功するのが本の一握りという世界である芸能界にだなんてもっての他、第一の就職希望は専業主夫だが、せめて自分で働くとするならばもうちょっと安定した職に就きたい。

 

丁度いいタイミングで小町もいることだし、これを理由に一緒に帰ろうと踵を返そうとしたところまたもやそれが中断させられた。

 

「ん?ん〜ん?ほほう?アイドル?スカウト?…すいませんお兄さん、ちょーっとそれ、詳しく聞かせて貰ってもいいですか?」

 

「おい、小町!そんなの構わなくっていいんだぞ!」

 

不味いことになった。

 

どうやらアイドル、スカウトと言ったキーワードに反応したらしい小町が詳しい話を聞こうとしている、良くよく考えてみれば小町からすれば食い付きそうな話題だ、sit!おお、マイシスター、頼むから早く話を切り上げておくれ。

 

だが、そんな俺の願いも虚しく、そんなの関係ねぇ!と言わんばかりのスタイルで話を聞く気満々だ、どうやら聞く耳を持ってくれなかったらしい。

ねぇ、妹にも無視されたら俺、とうとう死にたくなるよ?泣くぞ?

 

「はい、あの…比企谷さんとはどういったご関係でしょうか...?」

 

「あ〜まだ自己紹介が済んでませんでしたね!すいません、私、比企谷八幡の妹で比企谷小町っていいます!よろしくお願いしまーす!」

 

「なるほど!妹さんでしたか、僕は石川と申します。」

 

納得がいったようで声を少し弾ませ俺に渡したように名刺をもう一枚小町に両手で手渡した。

 

「んー何々?315プロダクション プロデューサー 石川って…315プロダクション!?」

 

「え、何小町そのリアクション、そんなに有名なところなのか?」

 

妹の予想外のリアクションに思わず疑問を尋ねてしまう、え、315プロダクションって俺が無知なだけでよっぽど有名な事務所なのか?

 

「有名っていうか少し話題になったの!あのJupiterが移籍した会社だって小町のクラスメイトが話してた所だったからびっくりしたの!SNSとかでも話題になってたんだけどお兄ちゃん知らないの?」

 

「Jupiter?…ああ、一時期小町がキャーキャー言ってたやつか、あのグループもう見なくなって消えたかと思ってたけど移籍してたのか?結構大手に所属してたって聞いたことはあったけど」

 

「チッチッチ…違うよお兄ちゃん!Jupiterは961プロを辞めてフリーで活動してたんだけどつい最近移籍したの!それが315プロ!今まで他の大手からのスカウトがいっぱいあったんだけどそれぜーんぶ、断ってフリー活動してたのに無名の事務所に移籍したから話題になったんだよ!」

 

「へーそうだったのかー」

 

熱心に語る小町に反比例するような軽い返事を返しつつ記憶を探り始める。

 

Jupiter

 

俺が初めてその存在を知ったのは正確な日は全くもって覚えてはいないが小町と2人で晩御飯を食べていた時につけてたテレビの音楽番組だった気がする。

 

小町の友達に大ファンがいるらしくその友達からたくさん話しを聞かされてた為か大ファン!とまではいかなくともテレビ越しにキャーキャー言うぐらいには好きなグループだというところから知った筈だ。

 

天ヶ瀬冬馬、御手洗翔太、伊集院北斗の3人でなってるアイドルグループでメンバーの名前を小町から教えられた為なんとなく覚えたのを思い出した。

 

とはいえ、特に芸能人に興味がある訳でも無く、ましてや男性アイドル、テレビをつけた時に番組に出ていたらなんとなくああ、こいつらかってなるぐらいの認識は持っていた。

 

しかし、最近では全然見なくなったと思っていたがフリーで活動していたというのなら納得である。

コネや事務所の財力が物をいうであろう芸能界で大手事務所からフリー活動に変わればメディアの露出が減るのは当然だ。

積極的にメディアへの露出ができる大手から何故フリー活動になったかは全くもってわからないがきっとそうせざるを得ない状況だったのだろう。

 

ゴシップ記事なんか書かれてたっけな?ぜーんぜんわからんぞ。

 

「お兄ちゃん!このスカウト受けるべきだって!Jupiterだよ?あのJupiterが移籍した事務所なんだからきっといい所に間違いないよ!」

 

「あー待て待て小町、いいか、まず、俺は全く持ってアイドルに興味なんてない、次に成功するかも定かじゃないし、それにだ…1つ考えてみろよ…」

 

俺はまたがっていた自転車から降り小町の前まで歩き右手をサムズアップの形にして、その親指で自身の顔を指した。

 

「……俺だぞ?」

 

「……納得したよお兄ちゃん…」

 

我ながらこの説明だけで納得されてしまう事は悲しいものである。

だがここで口を挟んだ男がいた。

 

「そんな事はありませんよ」

 

石川と名乗った315プロのプロデューサーその人だ。

 

「僕は比企谷さんを見つけた時に..."輝き"を感じたんです。」

 

「…は?輝き?」

 

俺は思わず疑問に満ちた声がでた、輝き?いきなり何を言い出すんだこの人、妹である小町も自らの兄から"輝き"を感じた、と評されて目を丸くして石川さんを見つめる。

 

「はい、この人なら多くの人々に未来を、希望を、そして笑顔を…そんな"輝き"を与えることが出来る、そして見せてくれると…そう私は感じたんです」

 

「…あの、そんな"輝き"だとか大層な事言ってますけど俺は全然そんな人間なんかじゃないっすよ、ほら目は腐ってるし、ぼっちだし、コミュ障だし、数学は壊滅的だしで全然その…"輝き"とかを感じるような人間じゃないと思うんですけど…」

 

余りにも自分の事を過大評価するこの人に自らの短所を挙げてゆく、自分で言ってなんか悲しくなって来た。

そんな俺の気持ちとは正反対の笑顔でクスっと石川さんが笑う、え、とうとう馬鹿にしに来たんですか?

 

「ですが、貴方にはそんな短所なんかを軽く跳び超えてしまう程の魅力があります、僕は…貴方がステージで輝く姿を是非見てみたい」

 

!!!

 

「こう言ってしまうと唯の僕の我儘のように聞こえますが…僕が貴方を…比企谷さんを見つけた時に思ったんです、この人だ!…って、本当ですよ?」

 

そう言ってまたクスリと笑った。

余りにもストレートに俺の事を語るこの人に思わず息を呑んでしまった、いつもの俺なら、こんな事を言われようが世迷言だと切り捨てて片付けていただろう、だが…ここまで真っ直ぐに人の事を話す人物なんて少なくとも平塚先生ぐらいしか知らない。

 

「…お兄ちゃん」

 

ここで小町が八幡の元に近づいた。

 

「…お兄ちゃん!やっぱりこのスカウト受けるべきだよ!!小町こんなにお兄ちゃんの事を見てくれる人初めて見たもん!もうJupiterとかそんなの無しにこんな人がプロデューサーやってるプロダクションならもう入るしかないよ!!」

 

 

「…小町」

 

私、感動してます!と言わんばかりに目をキラキラさせて興奮しながら自分にアイドルになれと諭してくる、正直Jupiterと同じ事務所効果補正も入っているだろうがどうやら本気で、そう思っているようだ。

 

だが俺はアイドルになるつもりなんて毛頭ない、そう返そうとした。

 

…しかしながら、かくいう俺もこの人が世迷言や戯言で自分を評価してる訳ではないとわかった、わかってしまった。

 

「………」

 

数秒程無言になり思考し始める、そしてある結論に達し軽く微笑んだ。

 

「……もし失敗したら、小町、養って貰うからな…」

 

小町の方に向けていた顔を石川プロデューサーに向き直し目線を合わせた。

 

「……俺、全然芸能界とかわかんないですけど…スカウト、受けさせて貰っていいですか?」

 

「!!、はい!勿論です!」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

後はトントン拍子だった、あの後、両親に連絡し一度石川さんを自宅に招いたのである。

両親は俺がアイドルにスカウトされた事、それにそれを受けた事等に終始驚いてる様だっが石川さんの説明と俺の決意表明を元に成績を落とさないことを条件にアイドルになる許可を得た。

 

さらにその翌日実際に事務所に出向き、一通りの説明や契約書等を書き俺は晴れて315プロ所属のアイドルになったのである。

 

そこまで思いを馳せたところで俺は椅子に持たれ掛かっていた体制を戻し内ポケットから取り出した名刺をポケットに入れ直す。

 

まぁ、なっちまったもんはしょうがねぇか、…はぁ、本当にあいつらにはどうやって説明したもんか…

 

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

 

朝のベルが教室のスピーカーから鳴り響く、生徒達はお喋りを中断し、自らの席に着き始めた、朝のHRが始まろうとしている。

 

確か今日は事務所に行って俺の所属するユニットのメンバーと顔合わせするってプロデューサーが言ってたな…

 

思考を今日の放課後の予定の事に切り替える。

自分がアイドルとして活動するユニットメンバーとの顔合わせが正に今日、あるというのだ、315プロは個人ではなくユニット単位で売り出してゆく方針らしく、つまり、自分がアイドルをやるにあたって重要な要素。

 

ここからそこそこ距離はあるのでHRが終わったらそのまま向かわねばなるまい、そう判断した所に俺が所属するクラスの担任であり奉仕部の顧問をしている平塚先生が教室へと入ってきた。

 

……早く学校終わんねぇかなぁとどこか楽しそうに心の中で愚痴を吐いた。

 

 




皆さん、エムステでワートレ中国始まりましたね...
作者は翔太の衣装が取れればいいかなぁと思っておりますので少し走ります。

大体500万ぐらい走れば大丈夫ですかね...?

後、次回オリキャラが出る予定です、設定を固めてますので次回の更新は少し遅くなります。
気長にお待ちくださいませ。


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第三話

皆さまに少しお詫びがあります。
第二話における石川Pの一人称を私→僕に変更させていただきました。プロデューサーの一人称を間違えるという痛恨のミスをしてしまい大変申し訳ないです。
アイマスアニメのプロデューサーの一人称は
赤羽根P→俺
武内P→私
石川P→僕

と別れてるんですよね、大変失礼致しました。

それでは第三話をお楽しみ下さいませ。


俺がアイドルとして315プロに所属する事になって数日。

学校が終わり生徒達がそれぞれ帰路に着いたり、部活に勤しむ中俺は駅に向かい事務所へ向かう為の電車の中に揺られていた。

本来なら俺も部活に行かなきゃならないが、どうやら315プロの都合上この日しか空いてないそうで今日は部活を休んで事務所へと向かっている。

 

あ、因みに顧問の平塚先生には許可を既にとってある、流石に無断欠席はまずい…まぁ事情を説明した時には事情が事情だったんで飲んでいたコーヒーを盛大に吹き出しそうになってはいたがちゃんと許可は貰った、平塚先生から奉仕部にはちゃんと休みの連絡はしてくれるみたいだしな。

 

そんな訳でガタンゴトンとレールの上を走る電車に揺られながら俺は思考を張り巡らせる。

 

『比企谷さんと一緒に活動する事になるユニットメンバーの顔合わせがありますので、学校が終わり次第事務所に来てください』

 

俺がアイドルになる事が決まった翌日にプロデューサーに言われた言葉だ、俺と組む事になるユニットメンバー、それの顔合わせをする為に事務所に向かっている。

 

…ここまで話せば流石にもう解るだろう。

そう、俺が考えているのは何を隠そうそのユニットのメンバー達の事だ。

 

どうやら俺がが所属する事に315プロダクションはアイドルとして売り出していく際、個人個人のソロで活躍するのでは無くユニット単位で売り出してゆく方針らしい。

つまり、晴れて315プロのアイドルとなった俺もその例外では無くユニットを組んでアイドル活動をする事になるのだ。

元々三人組のユニットとして売り出す予定で二人までは見つかっていたのだが最後の一人、つまり俺が見つかるまで予想以上に時間が掛かっていたらしく所属する事が決まってそうそうユニットメンバーとの顔合わせ、って話だ。

 

 

おい、やべえよユニットとかマジで聞いてないねぇって、八幡ぼっちだよ?ぼっちなんだよ?ユニット?俺に孤立して死ねと申すか!!…いや巫山戯るのはここまでにしておこう、なんか材木座みてぇになってるし、第一そんな事無くても元々孤独じゃねぇかよ俺。

 

一応どんな人が自分と同じユニットになるかと質問したら、プロデューサーからは『お楽しみです』なんて、笑顔ではぐらかせられた、因みに人数は2人、俺を含めて3人組のアイドルユニットとして結成する運びだ、までは教えて貰った。

 

正直ユニットなんて俺からすれば勘弁して欲しいってのが本音だ、てっきり俺はソロで売り出していくかと思っていたからアイドルとして所属する事を承諾した部分だってあったんだが…もう済んでしまった事は仕方ない、時間は元には戻らないんだからな、悩むだけ無駄ってもんだろう。

 

そう割り切ろうとしても自他共にエリートボッチの称号の冠する俺がまだ見ぬメンバーの事が気になるのは当然の事だった。

 

いや真面目に俺とよっぽどそりに合わない奴だったら最悪だろ、就職した人が辞める理由として多く挙げられる人間関係、俺も例に漏れずトラブルが起きそうなら即座にプロデューサーに頭を下げて事務所を出て行くだろう自信がある、何が楽しくてそりに合わない奴と組んでアイドルしなきゃならんのだ。

 

実際に俺、幾らかバイトをした事があるが先輩が糞過ぎて初日にバイトをばっくれて辞めた経験があるしな…電話とか掛かってこなかったけどもう2年ぐらい前だし時効だろ。

 

……まぁあのプロデューサーがスカウトした人だったら大丈夫か

 

アイドルなんて道を蚊ほども考えてなかった俺をスカウトしたあのプロデューサーがそんな人をアイドルとしてスカウトしてくる訳がないと不思議な信頼がある、俺も何故だがわからないがあのプロデューサーはそんな摩訶不思議な魅力があるのだ、と張り巡らせていた思考に取り敢えずは結論を出し引き続き電車に揺られながら俺は事務所に向かっていった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

目的の駅に到着し、駅から徒歩で歩きしばらくして俺の目指す場所である315プロダクションのある場所まで来た。

俺はとある建物の前に止まりそれを見上げる。

 

『齋藤ビルディング』と書かれた看板が見える建物だ、プロデューサーからは新しく立ち上げたばかりの事務所とは聞いてはいたが自社ビルとは中々経済力がある方なんじゃないか?

 

まぁ流石に雪ノ下の実家に匹敵、とかは無さそうだが。

 

一階には年季が入ってるであろう弁当屋があり『たまごや』と書かれている、その店の前には2つの自販機が並んでおり事務所から直ぐに出たら近くに自販機があるのはありがたい、なんて思いながらその建物へと入った。

階段を上がりドアの前に立つと、"315プロダクション"と自分が貰った名刺と同じようなデザインがされた紙がドアのガラス部分にテープで貼り付けてあり如何にも手作り感が満載って感じだ、なるほど、確かに新しく立ち上げた事務所らしい。

 

ドアを軽くノックし失礼します、と軽く声を出しドアを開けた。

 

「あのーすいません、比企谷ですけど只今到着しました」

 

「…ん?今の声は…あ!比企谷君ですね!少し待ってて下さい、今直ぐプロデューサーさんを呼んで来ますね!!」

 

「あ、山村さんこんにちは、んじゃあ、待たせて貰いますね」

 

「はい!そこのソファにでも座っておいて下さい!プロデューサーさーん!」

 

ドアを開けて到着した旨を伝えるとこの315プロで事務員である山村賢(やまむらけん)さんに出迎えされた。

この山村さんは大学生らしく、先日契約書等を出す時に訪れた時に初めて会ったがメガネが自分の頭の上にあるのに気付かなかったりと何処か抜けてる人という印象だ…あの調子で本当に事務員が務まるのかと思ったのは内緒な。

 

「あ、比企谷さん!お待たせしました、学校お疲れ様です。道順等は大丈夫でしたか?」

 

奥の方から山村さんに呼ばれてプロデューサーが歩いてきた、スーツを脱ぎシャツの上からサスペンダーを装着していてるラフな格好での登場だ。

プロデューサーが道を間違えなかったかと心配して来たが先日案内して貰った時に大体の道順は頭に入っている。

 

「大丈夫です、道順はこないだ来た時に覚えましたし、何よりもこの年にもなって迷子とかには流石にならないんで」

 

「そうでしたか、それは良かったです。では比企谷さんが最後なので少し急ぎましょう他のユニットメンバーの方は先程到着して別室に待機していただいてます」

 

「あ、そうなんですか、すいません直ぐに向かいます」

 

「大丈夫ですよ、もう2人は奥の方の別室の方に待機しているので間違えないで下さいね。後、顔合わせが終わり次第、お話しがありますので終わったら呼んでいただくようお願いします」

 

「…え、いきなり顔合わせですか?」

 

「?はい、そうですが…何か不都合がございましたか?」

 

「あ、いや、わかりました、ありがとうございます」

 

プロデューサーの言葉に思わず困惑の声を出す、一応問題ないと返しはしたが問題大有りだ、いきなり初対面の人と親睦深めて、それが出来たら呼んでね!とかハードルが高過ぎるんですがそれは…いや、それより早く向かった方がいいな。

 

プロデューサーの説明により俺のユニットのメンバーは奥の別室にいると判明した、待たせてるみたいなので早めに行かなければなるまい、時間は有限、いつまでも待たせている訳にはいかない。

席を立ち奥の部屋に向かう、そうすると程なくしてドアが見えてきた、他に部屋に通じるであろうドアはないのでここが待機している別室で間違いないだろう。

 

すう…はぁ…と軽く深呼吸をする、初対面の人と、それもアイドルとして活動する為のメンバーと顔合わせするのだ俺がぼっちで無くても大半の人は緊張するだろう…するよな?

兎に角、これまでの人生で殆ど友達がいなく交友関係に乏しい俺がそれ以上に緊張するのは自明の理と言っても良い。

だがここで突っ立っていても終わる訳じゃない、意を決してドアをノックしつい部屋の中へと入った。

 

「失礼します、あの遅れてすいまs『バサバサバサッ!!』うおっ!!?」

 

部屋に入室して俺が挨拶をしようとした途中でかなりでかい音と共に何かが飛んで来た為思わず驚いてしまう、もう少しで床に尻餅をつくとこだったぞ…てか何が飛んできた?羽音?室内で…?

 

「あー!そっちに行ったら駄目だろう!私の鳩がとんだ粗相を犯してすまないね、怪我はないかな?」

 

「はい、大丈夫で、す………」

 

「……?、どうかしたかな?」

 

 

何やこのイケメン

 

 

やっべ、良く解んねぇけど思わず関西弁になっちまった、何故部屋に入って来て早々に謎の物体が飛んで来たのとかそんな些細な疑問がどうでも感じるくらいのイケメンが目の前にいる。

例えるなら少女漫画のヒーロー(少女漫画におけるヒロインが恋する男キャラのこと)がそのまま現実に出てきたかのような見た目をしている、馬鹿な、背景に薔薇が見える、だと…!?

 

「え、ええ大丈夫ですって鳩?なんでこんな所に...?」

 

件のイケメンが少し小走りでこちらに駆け寄って言葉を掛けてくる、その様すら様になっているのだから、さぞ、鏡を見るのが楽しいだろう。

少し落ち着きを取り戻して気付いたが、俺にめがけて飛んで来たのは真っ白な鳩であったらしい、今は床に歩きながら時折クルッと言った鳴き声をあげている。

 

「この鳩は私の私物でね、何匹か連れて来たので久しぶりにパフォーマンスの練習をしていたのだが指示を誤ってしまってね…いやぁ申し訳ない。……あれ?君がもしかしてプロデューサーが言ってた最後の子かい?」

 

「あ、はい多分そうです、プロデューサーの方からここに待機してるって言われたんで来たんですけど...」

 

と、ここで駆け寄ってきた男がパァと効果音がつくのでは無いかと思うような笑顔を見せた。

 

「やっぱり!!いやぁ待ってたよー!君が私のユニットメンバーの2人目だねー?確かにプロデューサーが言ってたみたいに中々秘めてる物を感じるじゃあないか!早くもう1人にも伝えないと!」

 

「あ、あの、すいませんお名前をお聞きしたいんですけど...あ、俺、比企谷八幡っていいます」

 

いや、フレンドリー

 

全くもって予想だにして無かった反応だがどうやら悪い人では無いらしい、イケメンなのは気に食わないが。

にしても、やたらとハイテンションな様子で肩をバシバシ叩きながら笑顔で話しかけてくる、そこそこ痛いので肩を叩くのは勘弁して貰いたい。

 

だが、この男性が自分のユニットメンバーである事はわかったのだがなんて呼べば良いかがわからない、名前を訪ねるが自分の名前も教えてなかったのであらかじめ教えておこう。

 

「おっと、これは失礼、私としたことがテンションが上がっちゃって自己紹介をするのが遅れた、コホン、では改めて...私の名前は真丈拓哉(しんじょう たくや)だ、よろしくね、比企谷君。」

 

「はい、こちらこそよろしくお願いします。」

 

軽く咳払いをすると自己紹介をしてくれた。

 

どうやらこの男性は真丈拓哉、という名前らしい、爽やかイケメンとでもいうのであろうか俺が所属するクラスのトップカーストグループのリーダーである葉山と似たような感じがする、まぁあいつは真丈さん程、気さくに話しかけてはこないが。

 

……にしても見れば見る程、非の打ち所がない容姿だ、俺よりも少し高いぐらいの高身長に(くす)んだ銀髪をした甘いマスクをした好青年、本当に自分と同じ男性というくくりなのかと疑いたくなるぐらい容姿に差があって泣きそうだ、こんな人と一緒にユニットを組むとか軽い公開処刑な気さえする、誰だよ天は二物を与えずとか言った奴。

 

「あの、すいません真丈さん、1つ聞きたい事があるんですけど...その鳩が私物って...?」

 

「ん?あぁその鳩かい?ははは、恥ずかしながら私は元はマジシャンをやっていてね、その名残だよ、結構有名なサーカスとかにも出させて貰ったこともあるしソロでマジックショーをやった事だってあるからさ…マジックには、結構自信があるよ?」

 

「マジシャン!?まじかよプロデューサー、すげぇ人をアイドルにスカウトして来たんだな...」

 

興味本意で聞いてみたら、まさかの元マジシャンというのは驚きだ、この容姿でマジシャン?チートか?人生チートでも使ってるのかこの人?

しかしながら、元とは言えマジシャンをやっていた人をアイドルとしてスカウトしてくるとはあのプロデューサーはやっぱり普通じゃない。

俺がプロデューサーの事を少し感心していると、真丈さんは床を歩いていた鳩を回収し、ゲージの中に入れ始めた、全部で5羽程いるだろうか。

 

「まぁ、兎も角これから同じユニット、仲間になるんだ、気楽に話しかけて貰っても構わないよ?あ、これプレゼントね」

 

「わ、すげぇ...ありがとうございます、家で飾らして貰います」

 

そう言って真丈さんは手を前にだすと、手首を軽く捻るようにして空中を掴む、すると何も無いところから一輪の花を出現させた。

目と鼻の先と言うべき距離で行われたにも関わらず、全くと言って良い程タネがわからなかった。

流石は元マジシャンというべきか、見事な手腕だ…

 

「じゃあ挨拶も終わったことだし、もう1人の方にも挨拶しにいこうか、彼、1番早く来たみたいだから寝て待ってたみたい、さっき私は挨拶を済ませたけどまた寝ちゃったしね、奥の方にいるから一緒に行こうか」

 

「わかりました、そうさせて貰います」

 

どうやらもう1人のユニットメンバーが奥の方で眠りこけているらしい、ならさっさと顔合わせを済ませてしまおう、プロデューサーから何か話しがあるとも言っていた事もあるが、早め済ませた方が時間効率もいいだろうし。

ほんの少し室内を歩くと直ぐに人影が見えた、どうやら帽子を深く被って眠りこけてるらしく、頬づえをつき椅子に座って寝ている。

 

「おーい、神波君、神波君、最後の子が来たよ?起きてくれたまえ、時間は有限なんだ起きたまえ」

 

「…ん〜なんだぁ?…くぁ…」

 

「だからもう1人の子が来たんだって、ほら早く起きたまえ。」

 

真丈さんが椅子に眠りこけていた男をそう言って軽く揺り、起こす、気怠そうに返事を返したその人は寝惚け眼であくびを噛み殺しつつ寝ていた椅子から起き上がった。

 

デカイ

 

かなり身長がある、椅子から立ち上がってみれば身長170はある俺を普通に見下ろせる身長だ。

 

「…ん?なに?この腐り目が最後の奴?」

 

「おい」

 

起きて早々に余りにもストレートに俺の特徴である死んだ魚の目を指して呼んだ為思わず突っ込んでしまった、ほっとけや。

確かに腐ったような目をしてるような事は認めるし、事実ではあるが初対面である人に対して些か失礼過ぎやしないか?

 

「こらこら、腐り目なんて失礼な事言うものじゃないよ、この子には比企谷八幡という立派な名前があるんだ、とりあえず自己紹介したまえ」

 

「ああそうか、あー……ま、なんだ、とりあえず自己紹介だな...俺は神波狩人(かんなみ かりひと)まぁ、よっぽど変な名前じゃない限りは好きに呼んでくれて構わないぜ?あぁ、後、いきなり腐り目なんて言って悪かったな」

 

「あ、はい、もう良いですよ、自分の目が腐ってるって事はもう充分知ってるんで……俺は比企谷八幡っていいます、よろしくお願いします」

 

どうやら彼は神波というらしい、180後半はありそうな身長に、全体的にダボっとした服装をして、髪を一部分ツーブロックにしており、ピアスも何個かつけている…普段の俺なら絶対に近づかないであろう人種だ。

 

「おう、よろしくな、いやぁ余りにも腐ってるような目ぇ、してたもんだから特殊メイク?ってやつでもやってんのかと思ったぜ」

 

「これデフォなんですが…」

 

「ケハハッ!まじか!?こりゃすげぇ、ちょいと血のり付けるだけでゾンビに直ぐなれるじゃねぇか!ハロウィンで人気者間違い無しだな!」

 

「いや、その古傷を抉るのはやめてください、なんで一昨年の俺の事知ってるんすか」

 

当時の小町のテンションに合わせて血のり使ってみたら大騒ぎだったんだぞ、息子が死んでる!って…息子の生死ぐらい頼むからわかってくれよ母ちゃん。

 

少し話して見た限り随分と大雑把な性格をしているように見える、見に纏う雰囲気といい、学校のクラスのカーストで言ったら間違い無くトップクラス、教室の後ろの方で集団で騒いでるタイプの人種だろう。

 

「古傷?なんの事か良くわかんねぇけどとりあえず顔合わせも済んだんだし、そろそろプロデューサーでも呼ぶか?このまま3人で駄弁っててもしょうがねぇわなぁ」

 

「それもそうだね、私が呼んで来よう、少し待っていてくれ」

 

「お〜う」

 

「うっす、わかりました」

 

どう、話を切り返そうと悩んでいたら意外にも向かうからプロデューサーを呼ぶ流れにしてくれた、良かった、どうやら理屈が通じないタイプの人種では無いらしい。

俺と神波さんの2人が軽い返事を返し真丈さんを見送る、程なくしてプロデューサーを連れて拓哉が戻ってきた。

 

「皆さんどうやら顔合わせは済んだようですね、じゃあとりあえずそこの椅子にそれぞれかけて下さい」

 

3人がそれぞれ返事をし、近くにある椅子へとそれぞれ腰を下ろした。

プロデューサーも開いている椅子へと座り3人に向かって口を開く。

 

「皆さん3人共、本日はお忙しい中、集まっていただきありがとうございます、それでは早速本題に入りますが…単刀直入に行きましょう、皆さんのユニット名が決まったので発表したいと思います!」

 

「お!マジかよ早ぇな!もう名前が決まったのかよ、そりゃ楽しみだ」

 

「ほう、ユニット名か…我々がアイドルとして活躍する為の新たなる、名か…気になるな、早く教えてくれないかい?」

 

「あ、まず、そこからなんすね、てっきり事務的な話しかと…」

 

「勿論それもお話ししますよ?でもやはり先にこれを伝えて起きたかったんです。少し待って下さいね?」

 

プロデューサーは懐に抱えていた紙を広げ始める、かなり大きいサイズのようだ、紙を広げ終わりプロデューサーがその場に立つそしてその紙を両手一杯に広げた。

 

「皆さんは今日から!

 

"Fantastic Dreamers"

 

です!!」

 

 

墨で大きく書かれたFantastic Dreamersの文字、俺に…いや俺達3人に与えられた新たなる名前がそこに堂々と刻まれていた。

 

 

 

 




遂に出ましたオリキャラ!!

いやぁ案外オリキャラを考えて喋らすのって難しいですね、途中で口調やらの調整をしていたら思ったより時間がかかってしまった...

オリキャラのプロフィールは希望があれば載せます、後感想絶賛募集中です、実際に感想が2件来たのですがガッツポーズをして喜びました、良い執筆のモチベーションアップになりますので出来ればくれると嬉しいです!

あと、お気に入りがまた増えていましたので、お気に入りして下さった方大変ありがとうございます、この作品を今後ともよろしくお願いします。


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第四話

時間が…!!時間が足りない…!!←デレステ、エムステ、シャニマス兼任してるP感

最近エムステのワートレとデレステのしゅがみんイベントにシャニマスもしてたりするとどうしても執筆速度が遅れるんですよね…

まぁそれは兎も角おまたせしました
どうぞ



プロデューサーからの今後の活動について等といった事務的な話も一通り終わり、再び3人だけとなった俺、真丈さん、神波さん、もとい"FantasticDreamers"はほんの少しの自由時間を貰った。プロデューサー曰く交流を深めて欲しいとの事だ。

 

今後のユニット活動をするにあたって交流を深める、至極もっともな理屈だが俺みたいなぼっちにハードルが高いですよプロデューサー…会話する事に慣れていないぼっちが出会って数時間程度の人間とコミュニケーションを取るってどんだけハードルが高いのかを理解して欲しい。

 

例えるなら…銅のつるぎで竜王を倒せとか言われるレベル、高すぎる?いやいや、エリートぼっちにとってはそれぐらいの難易度だから。

だが、初対面同士の3人だ、いきなり交流を取れ、なんて言われてもそれぞれ自分の事でもして時間を潰すだろう、そう俺はどこか気楽に思っていたが…

 

「でさ?そっから走って来た奴が腕をエルボーの形にしてこう思いっきり、バチコーン!!みたいな音させて顔面ぶん殴ったのよ!殴られた奴ぶっ飛んでいってさ…6〜7mぐれぇかな?飛距離もえぐくって思いっきり倒れたもんだからさ、俺さそれ見て初めて『うっっわ!人死んだ!!』って思ったね」

 

「oh…中々凄い現場に出くわしたんだねぇ」

 

「いやいやいや、なんすかその魔境、そんな警察沙汰不可避の傷害事件が起こるような治安の所絶対行きたくないですよ」

 

「人ってあんなに飛ぶんだ、ってある意味勉強にはなったわ」

 

…思ってたより話が全然弾んでいた。

 

適当にスマホでも弄って時間を潰そうとしていたら神波さんの「そういえばさぁ、前にこんな事があったんだけど聞いてくんね?」という軽い口上から始まり話が展開していったのだが…これが中々内容が濃いもんでついついツッコんでしまうのだ。

 

この人あれだ、人のパーソナルスペースを守る心のシャッターを無理矢理バールでこじ開けるタイプの人だわ。

 

今はその神波さんが過去に実際に遭遇したという体験談を語っている。

話を聞く限り、どうやら神波さんは元はストリートダンサーをしていたらしく、結構治安が悪いと評判の地域の路上で一通りパフォーマンスをし終わったところにトラブルに出くわした体験談で、酔っ払った不良集団の抗争に運悪く巻き込まれたらしい。

 

「まぁ、結構治安悪いってのは知ってたからな、んで、殴られた奴死んだかな?って思ったけど思ってたより頑丈で直ぐに立って『何すんだコラァッ!!!』って激怒して乱闘騒ぎになってたぜ、ま、結局ポリが来て両方纏めて御用になってたけどな」

 

「まぁ、そんだけの騒ぎになったなら妥当だろうね、神波君も含め多くの目撃者がいた事だし現行犯で捕まるのは当然か」

 

「ていうか、そんな騒ぎあったら見てる場合じゃないだろ、警察を呼ぶなりそこから離れたりするべきだろ…」

 

俺は神波さんに偶々そこに居合わせたとはいえ、そんな警察が出張ってくる程の乱闘騒ぎになった所を見物しとくのはおかしいのではないかと突っ込む。

警察を自分でも他の誰かに頼んで呼んで貰うかして早めに事態を鎮圧して貰うべきだ。

もしくは、関わりを持たないようにそこから即座に離れるかだ。

 

あ、因みに俺がそこに居合わせた場合とる行動は絶対に後者な。

警察なんて呼んで事件関わりたくないし、何より絶対面倒臭い、乱闘騒ぎをするような人種も得意じゃないから一目散に逃げる事を選択するだろう。

 

「馬鹿言え、あんなおもしれぇお祭り騒ぎになったんだぜ?見なきゃ逆に損だろ?俺、見てるだけの第三者だったし」

 

「あ、はい」

 

そんな俺の関わりたくない精神とは裏ばらに神波さんの思考回路は俺とは全く違うらしい。

騒ぎに首を突っ込むの上等とケラケラと笑っている神波さんに軽く…いやかなり畏怖を覚えてしまう、ちょっととんでもない人とユニットとを組まされたかもしれんぞこれは…

俺が今後のユニット活動の不安を募らせていると、「そう言えば…」と真丈さんが口を開いた。

 

「比企谷君は何かやってたりはするのかい?私は元マジシャン、神波君はストリートダンサーをやってたみたいだけど…比企谷君は学生だし、何か部活とかやってたりする?」

 

「あ、それ俺も気になってた、なんかやってんのか?」

 

「えっと一応、奉仕部って部活をやってます」

 

質問してきた真丈さんらに自身が所属している部活である奉仕部の名前を伝える。

ん?とあまりピンと来てない様子の真丈さん、まぁそうなるよな、てかあんな訳がわからん部活が2つもあって堪るか。

すると、神波がほへーっと感心したように声をあげた。

 

「はー、最近のガキったぁ随分とませてんだなぁ、部活動に風俗があんのかよ八幡、おめえ意外とやることやってんだな」

 

「いや、全然違ぇよ」

 

奉仕部という名前からどうやらそういう事をする部活だと思ったらしい、神波さんの頭の中はピンクのお花畑…いや機械に例えるならネジが数本欠けてる欠陥品かなにかだろうか。

ニヤァ…と口角を上げ、せせら笑いながら言った為、思わず敬語を使わず突っ込んでしまった…いや、年上とは言えこの人に敬語を使うべきなのか…?常識的に考えて敬語使うべきなんだけど神波さんに関しては些か疑問が生じてくるな。

 

「そんな訳ないだろう、学生がやる部活だよ?設定からして緩い漫画じゃあるまいし、常識的な範囲に収まるちゃんとした部活だろう。奉仕…奉仕という言葉から察するに何かになんらかの見返りを求めずに手伝いをする部活といったとこかい?」

 

「あーそういう風に解釈してくれて助かります、でも手伝いをするってのは少し惜しいですね、なんて言いますか自己変革を促させる部活...らしいです、飢えてる人に魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教えるといった感じですかね」

 

神波さんの頭の緩い発言とは打って変わって好意的な解釈を返してくれた真丈さんに俺が入部した日に部長である雪ノ下が言っていた例えをだし説明する、自分でも違いがよく解らないがボランティア部等ではない事を言うと真丈の方は納得したように頷いたが神波は頭に?を3つ4つ浮かべてそうな表情をして首を捻っている。

 

「あーなんか良くわかんねぇけど変わった部活やってんだな、で、それってどんぐらい活動してんの?珍しい部活だから結構依頼とか来たりすんのか?」

 

「一応活動は毎日って事になってますけど依頼を受ける頻度は一ヶ月に1、2回程度ですね、部員が少ない上になんていうか…交友関係に乏しい奴らばっかなんで知名度は殆どないと思います」

 

なんじゃそりゃ、と神波さんが呆れた顔をして突っ込む、実際所属している自分が言うのもなんだが奉仕部は謎の多い部活だ。

世界を変えたいという雪ノ下とそれを面白がった平塚先生が顧問している事で成り立っている部活であり、これが入部するまでは雪ノ下1人で部活をしていたのである。

 

ぼっち気質が大半な為知名度なんてそれこそ知る人ぞ知るといったところだろう、一応校内に案内のポスターは貼ってあるらしいが。

故に依頼が回ってくる事は顧問である平塚先生の紹介によってくるか、由比ヶ浜や小町のような部員・親族等からの繋がりからくるような事が大半で1人で奉仕部に依頼をしてくるなんて奴は悪いが俺の記憶には無い。

 

だから基本的に部室で暇を持て余しているし、暇な時は各自好きな事をして時間を潰しているだけだ。

…考えれば考えるほど部活として成立しているのが不思議だな、真面目に総武高校は奉仕部の事を何だと思ってんだろう。

ここで神波があっ、と何かを思い出したように声を出した。

 

「あのさぁ、俺たちユニットを組む事になったけどよ、リーダーって誰がやるんだ?こういうの早めに決めておかねぇと不味くないか?」

 

「そういえばそうっすね、一応リーダーは決めておいた方が良いと思いますけど…誰にします?」

 

神波さんの発言によってユニットリーダーを決めてなかった事を思い出した。

プロデューサーがユニットの事で伝えたのはあくまでも"Fantastic Dreamers"という名前だけ、後の話はスケジュールの調整やレッスンの日程決めであって、リーダー等は一言も口にはしていなかった、これは自分達で決めておいてくださいという事なのだろう。

…単純に伝え忘れていた可能性も拭えないがそう言う事にしとおこう。

 

「ユニットのリーダーか…じゃあ年齢からして私がリーダーをやろうか?無難な案だが一応ここは年功序列で行くのはどうだろうか」

 

「俺はそれでいいっすよ、拓哉さん結構しっかりしてるみたいだし連絡忘れとかなさそーすもん。八幡はどうだ?」

 

「俺もそれでいいと思います、俺がリーダーやれとか言われてもハードル高過ぎるんで……」

 

ユニットリーダーに真丈さんが率先してリーダーをやろうと提案する、神波そんと勿論もそれに特に文句はなかった俺もあっさりと承諾した。

俺がリーダーなんてやったらユニットが纏まらなすぎて直様空中分解しそうだ。

年功序列で一番高いのが真丈さんなのだが彼の年齢はなんと27歳、最初に聞いた時は驚いたものだ、若々しいルックスをしている爽やかイケメンがまさかの27歳だったのだ、どうやらこの人は常人とは肉体年齢における速さが違うようだ、某野菜人かよ…

俺は22、3辺り、下手したら大学生かと予想を踏んでいたが4、5歳も年上だったので驚きさも増しだった。

因みに神波さんの年齢が22歳、俺が17歳である、因みにもうちょいで18になるぞ、これ豆な。

と、ここでガチャリと音がした、ドアの開く音だ。

 

「皆さん随分と長いこといらっしゃいますがお時間は大丈夫ですか?特に比企谷さんは未成年ですのでご両親に連絡を取っているか確認をしに来たのですが……」

 

「時間?…おっとこれは本当だプロデューサーの話が終わってから随分と話しこんでしまったようだねもうこんな時間だ」

 

「あ、ほんとだ、やっべぇ結構話してたんだな俺たち」

 

「ほとんど神波さんが話してたような気がしますけどね…」

 

ドアを開けて入ってきたプロデューサーの言葉に俺達ファンドリ(Fantastic Dreamersの略称、いちいち書くの面倒だから略した)のメンバーは一斉に時間を確認する、携帯で確認したところ時計の数値はは自分達がプロデューサーとの話が終わってから一周と少し程たっていた、思ってたより雑談、もとい神波さんの過去話に熱中していたらしい。

 

「今日のところはここら辺でお開きにしましょう、明日は休日ですが先程お話したように皆さんとはまた別の新人ユニットらと先輩であるDRAMATIC STARSと顔合わせする予定があります。集合時間までにはくるようにして下さいね?」

 

「わかりました」「うっす」「了解した」

 

3人共それぞれプロデューサーの言葉に返事をする、明日自分達とはまた別のユニットと一緒に先にこの事務所に入って現在レッスン中であるDRAMATIC STARSと顔合わせする予定らしい。

 

「それでは皆さんお疲れ様でした、気をつけて帰って下さい。」

 

「「「お疲れ様でした」」」

 

俺の初めてのユニットメンバーとの顔合わせはこれで終わった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

あの顔合わせから一夜空けて休日である今日は、普段の俺なら惰眠を貪っている時間だが今日は他のユニットと合流し、顔合わせをする為、事務所に向かっていた。

てか、顔合わせばっかだな、全然アイドルらしい事してねぇぞ。

プロデューサーによればひとまずこれで315プロのアイドル事業を本格的に始動させるらしく、各ユニット事のレッスンのシフト表や宣材写真の撮影日の調整等をしているらしい。

朝の通勤ラッシュに直撃した為、休日でありながら事務所にくるまでにかなりの体力を消耗してしまった、休日なのに出勤て何だこりゃ、日本人はもっと休んでも良いと思うんだ。

事務所の前に着くと、弁当屋『たまごや』の前に学生であろう2人が喋りながら自販機にお金を入れて飲み物を購入している。

片方の学生は肩にギターケースのような物を背負っていることから、軽音部、音楽部といった部活の学生だろうと判断した。

 

 

2人とも制服を着ていた為これから学校に行くのであろう、休日までご苦労様なこって、そう思いつつ"齋藤ビルディング"と書かれた扉を開けようとする。

だが、その扉を開けようとした時先程の学生2人も扉に近づいて来ていた…どうやらこいつらもこの建物に入るつもりらしい。

 

「マジにマジっすよ!マジメガグレートだったっすー!!」

 

「そんなにこの前のカラオケ良かったのか?良く行くなー、そんなに行っててお金とか大丈夫なのか?

 

「心配ご無用っす!ちゃーんとオレっちそーいうお金とか計算して行ってるんすよ!」

 

 

「へー、何だ、四季のことだからてっきり…ってあ、すいません先に入りますか?」

 

「え、いや別にそっちが先に入ってもいいけど…この上事務所しかないぞ?そこになんか用があるのか?」

 

この建物は一階の弁当屋を除けば全て315プロの事務所らしく、事務所に用がなければ入る必要性なんてない場所だ。

 

「え!?君もこの上の事務所に行くの?それってひょっとして…」

 

「あー!!わかったっす!!俺たちと同じアイドルっすねー!?」

 

どうやらこの2人も学校では無くこの上の事務所に用があるらしい、どうやらメガネを掛けたやたらハイテンションな奴の台詞から察するに.....

 

「確かに俺は一応アイドルって事になってるが…お前らもそうなのか?」

 

「はいはいっすー!!俺、High & Jokerのアゲアゲボーカルこと伊勢谷四季(いせやしき)っすよー!!」

 

「えっと、俺は同じくHigh & Jokerでギター担当の秋山隼人(あきやまはやと)って言うんだ、よろしくな」

 

どうやら俺は一足早く、他のユニットとエンカウントしてしまったらしい。




ハ イ ジ ョ だあぁぁぁぁ!!!

いやーやっとこさSideMでのアイドルを出せました…
次回の予定としては一話のドラスタに皆んなで挨拶するまでの時間帯に起きた八幡とハイジョの絡みにしようと思っております。
執筆が遅くなりそうですがどうかご容赦下さい。
後、オリキャラである真丈と神波のプロフィールを載せて欲しいという要望をいただきましたので載せますね。

キャラプロフィール
オリキャラ1
元マジシャン
真丈拓哉(しんじょう たくや) 27歳
176センチ 58キロ 出身地 東京
靴のサイズ 26センチ 誕生日 5月6日
星座 牡牛座 AB型 両利き

趣味 マジックで驚いた顔を見たり、笑顔になった顔を見ること

特技 マジック 複数の言語を操れる 暗記

座右の銘
「人を"魅了する"という魔法は実在する!」

キャラプロフィール
オリキャラ2
元ストリートダンサー
神波狩人(かんなみ かりひと)22歳
186センチ 65キロ 出身地 埼玉
靴のサイズ27.5センチ 誕生日 4月2日
星座牡羊座 B型 右利き

趣味 適当な場所で音楽をかけてダンスすること
特技 ダンス全般 パルクール

座右の銘
「同じ阿保ならおどらにゃ損損、人生楽しまなきゃなー」

一応エムステの履歴書を参考にして制作してみました。

後毎度の事ながら感想募集中です、踊って喜びます。
それでは次回の更新も気長にお待ち下さいませ。


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第五話

大変お待たせしました!

感想がくるたびに踊って喜んでいる作者です笑笑
今回の話が現段階で1番文字数が多い話となります。

後、今回の後書きの欄を最後まで読んでいただきたいです、お願い致します。

それではどうぞ!


High & Jokerというユニットに所属しているという四季と隼人にあった八幡だが外で話すのもなんだしという事で事務所で話そうという事で一緒に階段を上がっている。

 

「えー!八幡っちの所属してるユニットって、Fantastic Dreamersって名前なんすね!かっこいいっすー!!」

 

「俺たちのHigh & Jokerってユニット名も悪くないと思ってるんだけど、Fantastic Dreamersっていうのもかっこいいなぁ…!」

 

「お、おう…まぁ考えたのプロデューサーだけど…サンキュ」

 

階段を上がりながら少し話をしているが、八幡が所属するユニットと名前を言い、自己紹介をしたところユニット名が2人の琴線に触れたらしく、かっこいいと褒めてくる。

嫌味などでは無く純粋に褒めてくるので思わず照れてしまった。

捻くれ者と言われている八幡だが、純粋にかっこいい等と褒められて嫌がる人間はそういないだろう。

流石の八幡もそこまで捻くれてはいない。

そうこうしているうちに事務所のドアの前に着いた。

横に設置してあるインターフォンは壊れていて使えないので隼人が軽くノックをし隼人、四季、八幡の順で事務所に入っていく。

 

「ただいまー、おーい春名、夏来、旬、買ってきたぞー」

 

「お!待ってました!」

 

「おかえりなさい、…やっぱり僕の分のお金は払いましょうか?」

 

「おいおい旬、罰ゲームで負けた奴が飲み物買ってくるって約束だったろ?俺たち勝者、あいつら敗者、OKー?」

 

「……でも隼人と四季にも悪いし……旬が払うなら俺も……」

 

「あー!!流石旬っちと夏来っちすねー!俺がけなげーに貯めてるお小遣い使って買ったんすからね、払ってくれるなら払って欲しいっすー!」

 

「おい、四季!罰ゲームで負けたんだからちゃんと守らなきゃ駄目だろ?」

 

「えー?それ言い出したの隼人っちじゃないっすかー、しかも言い出した自分が負けてるし」

 

「うぐっ!?そ、それは今関係ないだろー!?」

 

事務所に入って早々に恐らく同じユニットであろうメンバーと雑談し始める隼人と四季。

八幡が若干置いてきぼりになっているが八幡にとってはいつもの事、そこまで気にしてはいない。

出迎えたメンバーは3人で、バンダナを頭に巻いた奴、真面目そうな奴、ゆっくり喋る奴だ。

その3人が座っている椅子の近くのテーブルにトランプが散らばっている、どうやら彼らの話から察するにそれを使って遊んでいて罰ゲームとなり罰ゲームをしている最中に自分と遭遇したのだろうと結論をだす。

余談だが、八幡は中学時代に女子の間で自分に話しかけるという罰ゲームが行われていたらしくそれを知った当時の八幡は大いに傷つき、黒歴史の1つとなっている。

 

「だから罰ゲームなんて辞めましょうと言ったのに…あ、すいません放置してしまって、315プロのアイドルの方ですか?」

 

「あ、ほんとだすいません、椅子空いてるんで適当に座って下さい。」

 

「お、おう、お気遣いありがとうございます…」

 

八幡の存在に気づいたらしい2人は八幡に謝罪と共に席に座るように促す、椅子に座るともう1人の方も軽く頭を下げてきた、謝罪しているのだろう。

テーブルに八幡を除いた全員の飲み物を置いた隼人と四季も同じく椅子に座る。

 

「あー、俺はさっき秋山達とは下で会ったんだが…俺は比企谷八幡だ、Fantastic Dreamersってユニットに所属してる。」

 

「お、そうなのか!俺、"若里春名"、High & Jokerでドラム担当してるピッチピチの18歳です♪よろしく!」

 

「その情報いります?はぁ…僕は"冬美旬"です、キーボードを担当しています、よろしくお願いします。」

 

「えっと……俺、"榊夏来"…ベース担当してます……よろしく…」

 

「おう、よろしくな」

 

どうやら頭にバンダナを巻いてる奴が若里春名、真面目そうなのが冬美旬、ゆっくり喋るのが榊夏来というらしい。

ギター、ベース、ドラム、キーボード、ボーカルと揃っている事からこいつらのユニットのコンセプトはバンド辺りだろうと予測はつく。

 

「ああ、えー比企谷だっけ?なんかすげぇ目ぇ腐ってんなぁ、なんかの病気だったりするのか?」

 

「あー!それ俺も気になってたっす!八幡っちー、なんでそんなに目が腐ってるんすかー?」

 

「うるせぇよ、デフォなんだよほっとけ」

 

開幕早々に春名とそれに便乗した四季が八幡の目について聞いてくるがそれを一蹴する。

神波といい初対面の人に失礼な奴らである。

 

「春名、四季!初対面の人に失礼過ぎるでしょう!…すいません比企谷さん、うちの馬鹿共が失礼しました。」

 

「あの…ごめん…なさい…」

 

流石に失礼過ぎると旬が春名と四季を叱責する、本人達の代わりに旬とその隣にいた夏来が一緒になって謝ってくる。

よかった、どうやらこいつらはまともなようだ。

 

「あー、もういいや、俺が目腐ってるってのは事実だしな…」

 

「えっと…俺はその目、えー、個性的で良いと思うよ!…多分…」

 

おい秋山、そんなしどろもどろで慰めてきても説得力皆無だぞ。

春名と四季は旬に怒られて直ぐに2人とも謝罪してきた、自分達でも失礼だと感じたのか申し訳なさそうな顔をしている。

 

「そういや春名っちー、大富豪の続きやるっすかー?」

 

「そうだなーまだ時間はあるしやろうぜ、罰ゲームは次は無しにしようか。」

 

「あっ、比企谷もやるか?大富豪皆んなでやってたんだけどさ。」

 

「…大富豪?すまん俺ルール知らねぇや。」

 

どうやら彼らはトランプで大富豪をしていたようでその続きをやろうかと話していたところ隼人から八幡も参加するかと提案してくる。

だが悲しきかな、交友関係に乏しいぼっちでありやる機会がなかった八幡に複数人でやるトランプゲームのルールがわかる訳がなく参加を遠慮する旨を伝える。

せいぜい複数人でやるトランプのゲームで知っているのはババ抜き、七並べ、ポーカーくらいのものだ。

 

「大丈夫だってー、ちゃんとやりながら教えるからさ。」

 

「そうすっよー!大富豪は皆んなでやった方が楽しいっすー!」

 

「…はぁ、わかったよ。」

 

八幡は春名と四季の説得により参加するという意思を伝える。

幸い八幡は事務所が指定した集合時間よりかは早く来ているのだ、時間潰しに持ってこいだろう。

四季が散らばっていたトランプを集めシャッフルし、全員に配り始める。

因みに席順は八幡を時計の12時あたりと置き換えて時計回りに、旬、夏来、四季、春名、隼人である。

 

「配り終えたっすー!じゃ続き始めるっすよー!!」

 

「じゃ比企谷、まず大富豪ってのはさ…」

 

カードを全員に配り終え大富豪を開始しようとする、八幡の横に座っていた隼人がどうやらルールの説明をしてくれるようだ。

八幡を含むHigh & Jokerの面々は大富豪を開始した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「よし!これでどうだ!!」

 

「あー!隼人っち同じ柄のカードまだ持ってたんすかー!?俺もうないっすー!」

 

「もう、殆ど同じ柄のカードを持ってないであろうこの状況で出すとは…隼人にしては結構やっかいですね。」

 

「……俺も…もう、ない…」

 

隼人が皆んなの手札が残り僅かのところで♠︎の4と♣︎の4の2枚を同時に出してくる、柄に縛りがないので4以上の数値のカードを2枚出せなければ再び隼人のターンとなり残り1枚しか持っていない隼人が大富豪(大富豪における一位のこと)になってしまう。

だがここで八幡が隼人に質問した。

 

「なぁ秋山、これって4以上のカードを2枚出せばいいんだよな?」

 

「え?うん、そうだけど。」

 

「んで、7を出したらカードを1枚隣に渡せるんだよな?」

 

「そうだよってまさか…」

 

「そのまさかだ、ほい7を2枚出して残りを渡してはい上がりっと。」

 

「「「うわーー!!!」」」

 

隼人、春名、四季の3人が八幡に先を越され3人揃って仲良く叫んだ。

隼人に関しては大富豪になれると思っていた為か、叫びも増しである。

因みに八幡がやった行為は7渡しといい、7のカードをその場に出すと自分の手札から好きなカードを1枚次の人に渡せるルールであり、要らないカードなどを相手に渡せるカードなのだが八幡がやったように7渡しによってカードを全部渡して上がる事も可能だ。

これで1番先に上がった八幡が大富豪である。

 

「うわー!まじかー、やられた。」

 

「ちょっと待てよ、これ柄がどっちも固定されてるじゃんか…」

 

「流石八幡っち…やる事がえげつないっす…」

 

八幡がその場に出したカードは♠︎と♣︎の7であり柄を縛っているのである。(大富豪では同じ柄が連続で重なっていると縛りとなりその柄しか出せなくなる)

八幡が最後に出した置き土産である。

 

「♠︎と♣︎の7以上ですか…出せますね。」

 

ここで八幡の次であった旬が♠︎と♣︎のJを出す。

どうやら八幡が渡した2枚でそろってしまったようだ、旬は内心運が良かったとほくそ笑んでカードをその場に出す。

 

「ここで柄固定からのイレブンバックっすか!?旬っちもえげつないっすー!!」

 

「♠︎と♣︎の10以下はもう全部出てるぞ!」

 

「って、ことは…」

 

「上がりですね。」

 

「「「うわーー!!!!」」」

 

またもや3人が叫んだ、騒がしい奴らである。

因みに、旬がやったイレブンバックとはトランプのJのカードを出した時、カードの強さが逆転するルールである。

大富豪におけるカードの強さは2が1番強く、3が1番弱い為、旬がイレブンバックしたことによりJ以下のカードを出さなければならないが柄が固定されておりJ以下の♠︎と♣︎のカードはもう全部出ていた為に再び旬のターンとなり残り1枚となった旬もあがったのである。

 

「あ、❤︎の6……ありがとう、旬…」

 

「夏来も上がりか!って俺出せるじゃん!俺も上がりー!」

 

「あ!!俺も出せるっすー!」

 

「えー!?マジかよ俺が大貧民かよー!!」

 

旬が❤︎の6を出して上がったので次の夏来が持っていた最後のカードを出せたことにより夏来も上がった。

それに続き隼人、四季、春名の順で上がっていき最後に上がった春名が大貧民(大富豪における最下位のこと)になってしまった。

 

「はーっていうか比企谷強すぎじゃね?さっき教えたばっかだよな?」

 

「八幡っちカードの使い方が嫌らしかったっすー…」

 

「まぁそこまで難しいルールじゃないしな、カードは使い方次第だからそれ相応の使い方をしてただけだ。」

 

「それだとしても順応性高いってー…」

 

八幡を含めたHigh & Jokerの6人は大富豪を始めてからの回数はさっきのを含めて3回やったが1回目でもう慣れた八幡が1番手札が多い状況からその手札を駆使し、八幡がやれるだけの嫌がらせを繰り返し1回目は富豪(大富豪における二位のこと)になったのだ。

その後の2回は2回連続で大富豪となり初心者とは思えない好成績を叩き出したのである。

 

「どうする?もう一回大富豪やるか?」

 

「僕たちは結構やりましたし、何か違うゲームに変えますか?」

 

「別に俺はいいけど」

 

「俺、次はババ抜きしたいっすー!!」

 

「じゃあ四季の案でいこう、皆んな次はババ抜きやろうぜ!」

 

「…うん…わかった…」

 

なにか違うゲームに変えようか?と春名と旬が訪ねてきたが八幡は別にゲームを変更しようが構わないのでそのまま承諾する。

四季の案によって次はババ抜きをするようだ。

トランプを再度集め、シャッフルしようとした所ガチャリという音と共にドアが開いた。

 

「おはようございます、あれ?比企谷君じゃないか、先に事務所に来ていたんだね、おはよう。」

 

「あ、真丈さん、うっすおはようございます。」

 

事務所に入ってきたのは八幡が所属しているユニットであるファンドリのリーダーをしている元マジシャンだった真丈拓哉その人だ。

八幡の存在に気付き、八幡に向かって歩きながら挨拶をしてきた為、自分もそれにならって挨拶しかえした。

相変わらず爽やかなイケメンフェイスである、とてもじゃないが27歳には見えない。

 

「結構早くに着いていたんだね、すまないね、待たせてしまったかい?」

 

「いや、全然そんな事ないっすよこいつらとトランプしてましたし。」

 

「そうだったのかい、君たちは全員同じユニットなのかな?」

 

「え?あ、はい!俺たちHigh & Jokerってユニットなんですけど…」

 

真丈の質問により隼人が代表して自分達のユニット名を紹介する、そのまま隼人達は順番に自己紹介をしていき真丈もそれにならって自己紹介をした。

 

「ふむふむ、秋山君、若里君、伊勢谷君、冬美君、榊君だね、わかった覚えたよ、トランプを使って遊んでたのかい?」

 

「はい、さっきまで大富豪してまして。」

 

「なるほどね、…秋山君、少しトランプ借りていいかい?」

 

「え?はい良いですよ。」

 

真丈は秋山に許可を貰いテーブルに散らばっていたトランプを手際よく集め整える。

そのままトランプを色んなやり方でシャッフルし始めた、元マジシャンというだけあって鮮やかな手腕である。

パラパラっとカードが次々と宙に舞い、カードが混ぜられている、その鮮やか過ぎる手腕に八幡だけにあらずHigh & Jokerの面々もおお…っと感嘆の声が出る。

そうして一通りシャッフルし終わったのか手を止め綺麗に整えられたトランプを片手に持ち見せつけるように前にだす。

 

「同じ事務所の誼みだ、ちょっとしたマジックをお見せしよう。」

 

どうやら今からマジックを披露してくれるようだ、マジックという言葉にHigh & Jokerの面々は各自反応を見せ、少し騒がしくなったが真丈が指を唇に当てしーーっと口に出す。

ピタっと騒ぎが止まり再び静かになる、唇に指を当てる仕草にどこか色気を感じてしまう。

静かになり、自分に注目している事を確認した真丈は綺麗に整えたトランプを思い切り宙にばら撒いた。

 

「ああ!!」

 

隼人の声だ、52枚あるトランプをばら撒こう物なら後片付けが大変な事になる、同じような事を思ったのかそれぞれ皆んなが反応を見せるがそのトランプは地面に落ちる事は無かった。

ばら撒いた方とは違う逆の方の腕をまるで描くようにしてトランプを回収したのである。

まるで手に吸い寄せられるような回収の仕方に八幡は思わず息を呑んでしまった、紛れも無い神業である。

全てのカードを1枚足りとも地面に落とさずに回収して見せた真丈はフフッと軽く笑った。

 

「皆んな自分の体を見てご覧?」

 

真丈が自分に注目していた視線を自身の体に向けるように指示をする。

皆んなは最初キョロキョロしていたが時期に違和感を感じそれを見つけて騒ぎだした。

 

「え?ってあー!!いつの間に!?」

 

「カードが胸ポケットに入ってたっすー!!」

 

「俺はバンダナに挟まってたぞ!?いつの間に仕込んだんだ!!?」

 

「僕も胸ポケットでした…!!凄い……!!」

 

「!!……俺はうなじ付近に…あった……!!」

 

トランプのカードが1枚ずつ彼らの体のどこかに仕込まれており驚きの声を次々と上げていた。

八幡もそれに習い自分の体を調べてみると、シャツの袖口にカードが1枚引っかかっており思わず目を見開いて驚いてしまった。

 

「すっっげーーーっす!!今のどうやったんすかーー!!?」

 

「いつの間に仕込んだんですか!?凄すぎるぜ!!」

 

「俺こんな凄いの始めて見た!!どうやってやったんですか!?」

 

四季、春名、隼人が興奮しながらどうやったのかと真丈に質問するが真丈は微笑みながら「マジックの種明かしはマジシャンにとって御法度だよ」とやんわりと断る。

 

「本当に凄いです…!こんな凄いマジックを見せていただいてありがとうございました。」

 

「俺……すっごいびっくりした…尊敬します…」

 

「元マジシャンってのは知ってましたけど、ここまで凄えとは思ってませんでした…凄かったっす。」

 

旬、夏来、八幡も真丈に向かって惜しげも無い賞賛を送る、総勢6人から絶え間なく送られる言葉に真丈もご満悦だ。

 

「ふふっ、ありがとう、喜んで貰えて嬉しいよ。」

 

まださっきのマジックの余韻が残っているのか熱気が冷めずに騒いでいる中、真丈が思いだしたように八幡に言った。

 

「そういえば比企谷君、もう少しで神波君が来るみたいだから悪いとは思うのだがお開きにして貰っていいかい?少しだけだが軽いミーティングをしたくてね。」

 

「あ、そうなんですか?わかりました、あーすまんこうゆう事だからさ…」

 

「いいってそんなの!流石にこれで怒る程わかんない年じゃないよ!」

 

「これはアイドルというお仕事ですからね、流石に仕事を優先するな、なんて言いませんよ。」

 

八幡がトランプの続きに参加出来ないことを伝えると隼人と旬から気にしなくていいとの言葉が返ってきた。

残りの春名、夏来、四季も同じ意見らしく声をかけて来る。

八幡は椅子から腰を上げ軽い会釈をし真丈と共に歩いていった。

八幡が315プロに入って初の他のユニットとの絡みはこれで終わった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

後からやってきた神波にマジックの事を伝えると自分も見たかったと不満の声を上げたがまた違うマジックを見せてあげるという真丈の言葉に納得していた。

その後ミーティングを済ませたところにプロデューサーから連絡が入った、どうやらいよいよとDRAMATIC STARSとの顔合わせがあるらしい。

事務所の広間に八幡らファンドリを含めて総勢14人、新人ユニットである4ユニットが集結した。

 

「どうぞお入り下さい。」

 

プロデューサーの言葉に待機していたユニット全員が室内に入る、奥の方に見える3人が恐らくDRAMATIC STARSなのだろう。

 

「皆さんに新しく加入する新人アイドルの方々をご紹介します!」

 

プロデューサーの言葉にその場にいた新人ユニットが一斉に挨拶をした。

 

"よろしくお願いします!!"

 

ついに、315プロは本格的に始動する。




長かった…!!
今回の話は今までで1番難産でした…ハイジョと八幡の絡みからどう一話の終わりに繋げようかと四苦八苦しておりました笑笑

次回からついにアニメSideMにおける2話に入ります!
つまり、アイマス恒例の宣材写真回です!!
やっと次の回に入れてほっとしてます、作品内でのスピードが遅くて申し訳ないです。
感想は毎度のことながら絶賛募集中です、作者が布団に頭突っ込んで喜びます


最後に1つお願いがあるのですが、ある重要な連絡がありますのでお手数をお掛けしますが作者のページにアクセスしていただき、活動報告の欄を見ていただきたいのです。

この作品のこれからの展開に関係する重要な事ですので、一度見ていただけると嬉しいです。


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第六話

お誕生日おめでとうー!!いぇーい!!ふっふー!!

…え?誰の誕生日かって?決まってるじゃないですか八月八日は舞田類と比企谷八幡の誕生日ですよ!
皆んなお祝いしなきゃ!!

一日おせーよだって?……あ、本当にすいません、ふざけてすいませんなんかモチベ全然上がらなかったんです八日中にはあげるつもりだったんです本当にすいません。

後今回のお話ですがアニメを見返して構成を立てていたところアニメの構成上の関係で今回の話は大分短いです。
え?これだけ?と思うかもしれませんがこうしないと文字数が多すぎたりして偏りがでるみたいな問題が出てくるので申しわけないです
では、どうぞ。


ぽかぽかと暖かい日差しが315プロの事務所の窓から入りこんでくる、暑すぎず、寒すぎずちょうどいい春特有の心地よい暖かさだ。

天気は快晴、空には清々しい青空が広がっていた。

今日一日は雨の心配はしなくてもいいだろう。

 

「良い天気ですねー」

 

「ええ、絶好の撮影日和です。と言っても今日は室内ですけどね。」

 

315プロの事務員である山村賢が窓の外を見て机を吹きながらプロデューサーである石川に話しを降る、プロデューサーは賢の言葉に同意するも今日行う事は天候は関係ない為ほんの少し残念そうに言葉を紡ぐ。

部屋にいるのが勿体ないぐらいの天気であるのでそれも当然かもしれない。

 

「ああ、今日は皆んなの宣材撮影でしたっけ。」

 

今日は315プロに新しく所属したDRAMATIC STARSを始めとする5つのユニットが宣材写真の撮影を行うのだ。

プロデューサーは各ユニットのスケジュールが書かれている大きなホワイトボードに新しく予定を書き込みながらそれに同意の意を示す。

やはりというべきか、各ユニットがレッスンを中心としてスケジュールが書かれているのに対し、Jupiterだけスケジュールの欄の密度が濃い、961プロから315プロに移籍するまでのJupiterの活躍を考えればそれも当然と言えるだろう。

 

「"Beit"、"High & Joker"、"S.E.M"、"Fantastic Dreamers"彼らが来てからレッスンも大分進みましたし、デビューの準備も急がないと。」

 

一通りスケジュールをホワイトボードに書き込み終わり、振り向きつつプロデューサーが言った。

ひとまずは本格的に始動する事になった315プロだが、レッスンは各ユニットごとのレッスンは進んでいるもののメディアへの露出に向けた準備はまだ整ってはいない。

 

「"Jupiter"は既に次のライブで忙しいですし。」

 

「楽しみですね。」

 

だかしかし元々別の事務所でアイドルとして活動していたJupiterは別で皆んなが今日宣材写真を撮影しに行くなかJupiterは次のライブに向けてのレッスンをしているのだ。

彼らの人気に比べればまだまだ小さな箱だが本人達は小さな箱だからと気を抜くようなアイドルではない。

自分達のライブに来てくれるファンの為に絶賛レッスン中なのだ。

 

「本人達も気合充分です!」

 

天ヶ瀬冬馬 元961プロ所属アイドル

 

御手洗翔太 元961プロ所属アイドル

 

伊集院北斗 元961プロ所属アイドル

 

「新人さん達にも期待しちゃいますね!」

 

「でしょう!"Beit"はある商店街で大人気だった子達をスカウトしたんですけど以前から仲の良いアルバイト仲間さんでしたし。」

 

賢の新人ユニット達の期待が持てるという言葉にプロデューサーは心の底から嬉しそうに返事をする。

どうやら自分がスカウトとしたアイドルの卵達が評価されたのがよっぽど嬉しかったようだ。

その頃、何処かの通りである3人組が横に並んで歩いてる。

先程プロデューサーが言った"Beit"のメンバーだ。

今日の撮影が楽しみなのか笑顔で歩いているメンバーの1人を片方は微笑ましそうに、もう片方は微笑んではいるが少し心配そうにそのメンバーの事を見ている。

 

鷹城恭二 元コンビニバイト

 

ピエール 元着ぐるみバイト

 

渡辺みのり 元花屋

 

「そういえばピエール君の後ろにいつも黒服の人達がいますよね?」

 

「ああ彼らはSPです。」

 

「SP…?」

 

「ええ、ピエール君は某国の王子様なので。」

 

「は、はぁ…」

 

ピエールの後ろに隠れながら尾行していたSP達だが隠れていた和菓子屋のおばちゃんから和菓子を勧められていて慌てていた。

護衛をしているようだが余りピエールに存在を出したくないらしい。

 

「元高校教師の"S.E.M"、彼らは思うところあって揃って学校を辞めてアイドルの道を選びました。」

 

「あー、気になりますね。」

 

次にプロデューサーが話したのS.E.Mだ、なんと彼らは3人組のユニットなのだが全員が元高校教師なのだという。

ユニットの平均年齢が1番高く28.3歳とアイドルにしては異色とも言えるのでは無いだろうか。

 

硲道夫 元数学教師

 

舞田類 元英語教師

 

山下次郎 元化学教師

 

S.E.Mというユニット名は彼らの担当していた教科の頭文字を組み合わせた物だ。

 

「"High & Joker"の5人は同じ学校の軽音部で楽曲は全部自分達で作ってるんですよ!」

 

「なるほど楽しみですね!」

 

プロデューサーが話したのは先日八幡とトランプゲームをした5人組ユニットであり全員が現役の高校生であるHigh & Jokerだ。

普通軽音部は、既存曲などを使って活動するのだが高校生でありながら自分達で楽曲を作っているというのだから驚きである。

 

若里春名 元ドラム担当

 

秋山隼人 元ギター担当

 

伊勢谷四季 元ボーカル担当

 

冬美旬 元キーボード担当

 

榊夏来 元ベース担当

 

「"Fantastic Dreamers"は友好関係が少し不安でしたが今のところ順調のようです、今後に期待できます。」

 

「ユニット内で仲の良い事にこしたことはないですからね。」

 

続いては八幡が所属する315プロの中で1番遅くに結成したユニットであるFantastic Dreamersである。

元マジシャン、元ストリートダンサー、元奉仕部とバラバラだが今のところユニット内での関係は悪くなく期待できるユニットだ。

 

真丈拓哉 元マジシャン

 

比企谷八幡 元奉仕部

 

神波狩人 元ストリートダンサー

 

「そして、"DRAMATIC STARS"は元パイロット、元弁護士それに元外科医」

 

「これだけバラエティに富んだ事務所も中々ないでしょうね。」

 

「でしょう?」

 

天道輝 元弁護士

 

桜庭薫 元外科医

 

柏木翼 元パイロット

 

総勢17人、5ユニット、これが現在の315プロのアイドル全員である。

これだけ様々な経歴を持つアイドル事務所は山村の言う通り中々ないであろう、まぁそんな事務所が全くないと言えば嘘になる。

個性豊かなアイドルがいる事務所は765プロを始め、876プロ、最近では346プロなどが活躍しているようだ。

プロデューサーと山村賢が和やかに話しをしているとガチャリとドアが開く音がした。

 

「のんびりしてていいのかい?」

 

「あ、社長!大丈夫ですよ、時間なら…」

 

事務所に入ってきたのはこの315プロの最高責任者であり、315プロダクションを立ち上げた張本人、このプロダクションの社長である"齋藤孝司"が入ってきた。

青を基調としたシャツに"315"と白でデザインされたお手製の自社シャツを着ての登場だ、爽やかな格好で登場した筈なのに室内の体感温度が上がった気がする。

社長の言葉にまだ時間はあるとプロデューサーは笑いながら伝えようとするが社長の言葉にその笑みは消える事になった。

 

「その時計、昨日から止まってるんだよ。」

 

「…ええ!?」

 

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった、時計がそもそも止まっているならば自分が指定した約束の時間に間に合わないかもしれない。

自分が指定したにも関わらず自分が遅れるなんて洒落にならないとプロデューサーは思い、一通りの荷物一式を持ち事務所から飛び出した。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「なぁ、結局宣材写真ってどうすんのが正解なのかね?やっぱインパクトあった方が良いかぁ?」

 

「唯インパクトがあるだけでは駄目だろう、我々のオーディション等で今後使われるのだからもっと慎重に選ばなければ。」

 

「もう普通に無難な格好で良いと思うけどな…」

 

全5ユニットがプロデューサーの指定した集合場所に集まり、思い思いに話しを咲かせている中、神波が今日の宣材写真についての疑問を投げかけてきた、真丈はもっと慎重に選ぶべきではないかと答えるが特に難しく考えず普通の格好で良いんじゃないかと八幡も答える。

今日は315プロダクションのアイドルの宣材写真撮影の日だ、プロデューサーから良かったら各自で服装を持ってきていいという連絡があったが八幡の家にそんな格好のレパートリーがある筈も無く手ぶらで今日は来ていた。

盗み聞きしなくても聞こえてくる他ユニットの会話から察するに大半のユニットは服装を持って来てないようだ。

だがファンドリの近くにいた元高校教師ユニット、S.E.Mは違うようだ。

 

「あ、やっぱひきがやもそう思う?おじさん無難な格好で良いんじゃない?って言ったんだけど人々の記憶に残る方が良いんじゃないかと言われてね…3人揃ってセットで持ってきたよ。」

 

「Yes!!俺たちのimpressionをmany peopleにrememberして貰わなきゃね!ね?ミスター硲!」

 

「うむ、山下君安心したまえ、過去50年の人気アイドルの特徴を集積分析している。今日の撮影はバッチリだろう。」

 

八幡の発言におお同士を!とばかりに話しかけてきたのはS.E.Mの山下次郎だ、どうやら彼も無難な格好で良いんじゃないかとユニットメンバーに言ったようだが却下されたらしい。

舞田類、硲道夫と続くが硲道夫の発言に八幡は疑問を抱く。

過去50年の集積なんてしたら驚く程古い格好になるのではないか…?

ちょっと硲さん大丈夫ですか?と思っていたところ誰かが走ってくる音が前の方から聞こえてきた。

どうやらプロデューサーのようだ。

 

「珍しいな、プロデューサーが走ってくるなんて。」

 

「はぁ、はぁ、すみませんお待たせしました。」

 

そうとう急いで来たのだろう、プロデューサーの額には汗がジンワリと馴染んでおり息も切らしている。

普段落ち着いた雰囲気を出しているプロデューサーがこうなっていると一種のギャップの様な物も感じてしまう。

そんなプロデューサーの様子にDRAMATIC STARSの天道輝がそんな皆んなの心配を代表するように心配の言葉をかけるがどうやら大丈夫らしい。

 

「大丈夫ですよ、俺たちが早く来ちゃっただけですから。」

 

「皆んな気合い充分だぜ!」

 

同じくDRAMATIC STARSの柏木翼がプロデューサーに援護の言葉を掛けた、実際ここにいるアイドル達は自分達で早めに集合時間に到着していたのだ。

八幡はもう少し遅くくるつもりでいたが朝ぱらからそうそう自身の家に神波がやってきて起こしに来たのである。

朝早くにインターホンを押してきて聞き覚えのある声が聞こえて来たと思ったらまさかのユニットメンバーだった八幡は思わず声を出して驚いてしまった、両親や小町に事情を説明するとやたらもてなされていた。

神波はガハガハと笑いながらもてなしをしばしば堪能し八幡を連れ、途中で真丈と合流し集合場所に向かったのだ。

わざわざ自分の家から離れた千葉までご苦労なことだ。

 

「あの…今日はJupiter来ないんですか?」

 

「Jupiterはライブの準備が」

 

Beitの渡辺みのりが今日はJupiterは来ないかと質問するがどうやらライブの準備忙しいらしく今日は来ないようだ。

まぁそれも当然だろうと八幡は思う。

自分達の様な新人アイドルと違い、Jupiterは既に一時期はトップアイドルとも言われたベテランなのだ。

当然自分達との行動が一部合わなくなるだろうとは容易に想像できる。

 

「はいはいはーい!プロデューサーちゃん!俺ライブ見たいっす!憧れの関係者席でお願いしまっす!」

 

「良い勉強の機会になる、可能なら我々も見学させて貰えないだろうか?」

 

「だよなぁ、俺もアイドルのライブってやつ気になるぜ。」

 

先日知り合った四季のライブに行ってみたい発言に同意するように硲、神波とプロデューサーに問いかける、自分達もそのライブを見てみたいと。

かくいう八幡も黙ってはいるが気になってるのは事実だ、他のアイドルもそのようで少し騒めいている。

 

「そうですね、それなら折角ですしステージの裏側も見てみましょうか!えーそれではライブに行きたい人ー」

 

プロデューサーがライブに行きたいかどうかを自分が挙手して質問してくる、その問いに間を置く事もなくすぐ様一気に手があがる、我こそはと手をビシっとあげる者や控え目に手を挙げる者、因みに八幡は後者である。

 

「わかりました、それでは全員参加という事で。」

 

どうやらここにいる全員がJupiterのライブに行きたいらしくそれを確認したプロデューサーが微笑みながらそれに承諾する。

 

「皆さん、まずは今日の撮影ですよ!」

 

だが、今日はJupiterのライブに行くかどうかの問答をしに来たのではない、宣材写真の撮影をしに来たのだ。

プロデューサーの案内で移動が始まるが八幡はある事を考えていた。

……早く帰ってプリキ○ア見てぇ…

そう、今日は日曜日、彼の好きなニチアサがお預けなのである。

早く帰って見たいと心の中でぼやきながら横で騒いでいる神波の話しに真丈と共に時折相槌を打ちながら歩いていった。




中身がねぇ…

今回の話はほぼ紹介パートなのですが話は全然進まないわ、表現するのが難しいわであんまり執筆してて楽しくないんですよね…

ていうか執筆してる時にもアニメ見てる時にも思ったけど山村相槌しか打ってねぇな。

山村ァ!お前もうちょっとセリフ捻れぇ!!執筆してて楽しくねぇーんだよ!!(八つ当たり)

後毎度の事ながら感想絶賛募集中です、携帯ぶん投げて喜びます。
実際に感想くるとすんごい嬉しいんで感想くればくるほど執筆のモチベが上がる!筈!……多分


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第七話

ほげええええぇぇぇぇぇ!!投稿やぁぁぁ!!!
いやはや皆様お久しぶりぶりです、更新大変遅くなり申し訳ありません、実は執筆していてデータが不慮の事故で全部吹っ飛びましてモチベが駄々下がりしておりました。

それではどうぞ


遅れて来たプロデューサーの案内でようやく今回の宣材写真の撮影をする為のスタジオに到着した。

 

入って見た中の内装は幾らかの機材と撮影する際に使う白い大きなスクリーンがあるだけで割と小さいスタジオで、全体的に白い内装をしている。

 

小さい、とは言ったが、プロデューサーの計らいにより新人アイドルには少々勿体ないぐらいの大きさのスタジオで、腕も確かなスタッフさん達も集めてくれたみたいだ。

正直、俺が想像してた場所なんかよりずっと広い、アイドルっていっても新人だしな、もっとこじんまりした所でやると思ってた。

 

そんな事を考えていたら、ここで一旦ユニットごとに着替えるようで所謂衣装部屋という所に案内された、入ってみるとかなりの種類の衣装が置いてありスペースも結構あるようだった。

それに驚きつつも、各ユニットは思い思いに衣装を選んび始めた。

 

やべ、てっきり衣装さんとかがコーディネートしてくれるものだとばっかり思ってたから何も対策なんてしてないぞ、服とかどういう基準で選んだら良いんだよ・・・露出度とかか?さっぱりわからん。

 

「なぁこんなんとかどうだ?割と良さげじゃね?」

 

「俺に聞かれたってわかりませんよ・・・」

 

そんな訳で俺にアドバイスを求めるのは勘弁して下さい神波さん。

選んだ2つの衣装持ってきてどう?ってされても良いんじゃ無いですか?ぐらいしか返せませんから。

 

「失礼、それとどれを組み合わせるつもりだい?……ふむ、いや神波君、その組み合わせは相性が悪い、こっちの方が無難だろう」

 

俺が返答に困っていると、真丈さんが助け船を出してくれた。

流石はハイスペックイケメン・・・俺や神波さんとは違って、しっかりとお洒落には精通しているらしい。

大丈夫?今のところ俺と真丈さんとの共通点が直立二足歩行ぐらいしか無いんですがほんとに同じ男性というくくりなんですか?自信ごっそりと無くなるんですが。

 

まぁ、元から自信なんて無いんですけどね。

 

「え?そうなんすか?いやぁ、服なんて選ぶとか禄にした事ねぇからなぁ…拓哉さん助かりますぜ」

 

「別にこれくらい構わないよ、スタイリストさん程じゃないが一応人並みに見えるようには見繕えると思うよ」

 

「へーそうなんすね、俺はもう選ぶの面倒臭いしこれにしますわ」

 

神波さんが衣装を取り出し組み合わせを提示するが真丈さんはそれを冷静に神波さんと見比べ、より良くなるようにコーディネートし直す。

全くといっていいほどお洒落なんてしない俺にはどう良くなったかさっぱりわからないが、どうやら神波さんの衣装は決まったらしい。

 

俺もそれに続いて物色するがやっぱり何を選べばいいかさっぱりわからん、偶に買い物する時に話し掛けてくる店員の恐怖に怯える事はないが今回選ぶのは自分の私生活で着る私服では無くアイドルとして宣材写真に使う為に選ぶのだ、無難な格好で良いんじゃないかと言っていたがどれが無難になるのかと頭を悩ませる。

 

衣装の中にはパーティーとかで使われそうなコスプレ衣装もあったが完全に無視だ。

ていうか、こんなん誰が着るんだ、アイドルとしての宣材写真の撮影に要らなくね…?

そんな事を思いながら頭を悩ませ選んでいた所、真丈さんが声を掛けてきた。

 

「比企谷君、随分と悩んでるみたいだけど大丈夫かい?」

 

「あ、なんつーか…それっぽいの選ぼうとはしてるんですけど、俺も全然お洒落とかしないんであんまりわかんないんですよね…」

 

真丈さんが悩んでいる俺を見かねて心配してきたようだ、俺も神波さんと同じく余り自分の服はそこまで凝ったりしない。

自分の私服から連想して選べば良いのではと思ったが、しかし俺は自分で言うのも何なんだが、日常生活で"I LOVE 千葉"なんてプリントされたシャツを着るような人種だ、こういう時に自分の私服のレパートリーとダサさに泣きたくなる。

そこらにかけてある適当に取った服を自分に当ててみたりするがやっぱりしっくりこない、だがそんな俺にここでまたもや真丈さんが1つ助言をしてきた。

 

「比企谷君はさっきから黒、白、グレーといった色ばかり選んでいるようだけど・・・それじゃ駄目だ、もうちょっとアクセントがつくようにもう少し明るい色を入れた方がいいね、少し待ってなさい」

 

「え?真丈さん?」

 

俺にそう言い残し真丈は小走りで衣装の方に向かい物色し始める、見た目に色のアクセントなんて高レベルな事を要求する・・・そんな事を考えているといくつかの衣装を持って真丈さんがこちらへと戻ってきた。

両手にたくさんの衣装を器用に抱えており良く零さずに持ってこれると少し関心してしまう。

再び俺の近くにきた真丈さんは持ってきた服を俺に順番に当て始め、それを素早く繰り返し衣装の見定めをしている。

 

「・・・うん、いいね、比企谷君この組み合わせで着てみなさい、恐らくこれが君に似合ってるだろう」

 

「え?もう決まったんですか?…まぁとりあえず着てみます」

 

 

 

真丈さんに渡された服を一旦試着室で手早く着替えて見る、青と白を基調とした服装だが所々に先程いったアクセント、ってやつだろうか、赤等の明るい色がちらほらと見える、自分では絶対選ばないであろうコーディネートに思わず困惑してしまう。

 

 

自分にこの服装が似合っているのか…?変じゃねぇの…?

 

 

そう思いながら試着室から出てきた八幡にそれを察したのか真丈が話しかけて来た。

 

「あんまり納得してないって感じだね、まぁ普段着慣れない格好をするとそう思う物だ、徐々に慣れるよ。」

 

「そうゆうもんなんですかね?まぁ俺もこれ以上の服装が選べるとは思えないんでこれにしますけども…」

 

八幡は再び鏡を見て未だにしっくりこない自身の姿を再確認する、確かにこれは自分に似合う格好なんだろうけども何かが違う気がする。

あれこれ考えてる内にどうやら他のユニットも衣装を選び終わったらしく全員揃って撮影されるスペースに移動した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

先程訪れた場所に戻ってきたがやはりここの撮影場所はかなり広い、とてもじゃないが新人アイドルが使う様なスタジオには見えない。

撮影に協力してくれるスタッフさんもチラホラと見える、プロデューサーがカメラを弄っている人に近づき挨拶をしていた。

 

「今日はアイドルの卵達だって?楽しみだね。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

どうやら今日の宣材写真を撮影してくれるカメラマンらしくかなりのベテランのようだ、挨拶を済ませいざ撮影!と行きたかったがそうもいかなかった。

 

「プロデューサー!君はこんな男とユニットを組めと言うのか」

 

「プロデューサーからも言ってやってくれよ、俺は地味だとは思うんだが…」

 

DRAMATIC STARSの桜庭薫と天道輝だった、2人の格好は桜庭の方はネクタイをキッチリ閉めた黒いスーツだがもう片方である天道は明らかにおかしい。

赤い紋付き袴をしており、それに星のマークがデザインされた格好での登場だ。

正月特番かよ…そんなんどこに売ってたんですかと八幡は思わず心の中で突っ込んでしまった。後、それで地味だったら俺は空気じゃないか…あ、それはいつもの事だった。

どうやら2人の様子からしてこの格好で撮影に挑むらしい。

桜庭さんはまだいいとして天道さん正気か…?

1人だけまともな格好してる柏木さんがすっごい居心地悪そうなんですけど。

どうやらインパクトある格好にするかフォーマルな格好にするかで揉めた結果、各自持ってくる事にしたらしい。

それだからって天道さんそのチョイスはないだろ…

 

「これでいきましょう。」

 

「「「え?」」」

 

「良いのかよ?」

 

プロデューサーのまさかのOK発言に3人は戸惑うが「はい」と確かな声でもう一度肯定するプロデューサー、DRAMATIC STARSのメンバーもそれに納得し撮影の準備をし始めた。

 

 

……いや良くねぇだろ!!

 

 

八幡は心の中で全力で突っ込んだがそれがプロデューサーに届く事などなく、撮影は開始された。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

撮影が始まり次々とユニット事で撮影され、八幡達ファンドリの番になった、とりあえず個人個人の撮影が済み3人揃っての撮影を受けているが中々上手くいかない

 

「うーん、比企谷さん、もうちょっと自然な笑顔でねー」

 

 

一番カメラマンから駄目出しを受けているのは八幡だ、普段から写真に写る機会等皆無に等しい彼が"アイドルとして"の写真を撮るのはかなり難易度が高い。

必死に自然な笑顔を作ろうと奮闘しているがやはりぎこちない、カメラマンも苦笑いが多い。

これまで受けて来たレッスンでも八幡はビジュアルレッスンが一番苦手だった、これでもレッスンのおかげでマシな方にはなっているのだがどうも上手くいかない。

 

「比企谷君、リラックスだよリラックス。」

 

「八幡、慌てるこたぁねぇ、じっくりいこうぜ。」

 

「…なんかさっきからすいません」

 

メンバーの励ましに罪悪感でいっぱいになる、宣材写真という大事な仕事なのに足を引っ張ってしまって非常に申し訳ない、そもそも写真を撮られるのが苦手というのもあるがこんだけ駄目出しされると流石に凹んでくる。

ボーカルレッスン等では、音程を取るのが上手いと褒められたりはしたがそれ止まりだ。

この2人はどっちも元々はプロのパフォーマーなのだ、奉仕部という特殊な部活をやっているとはいえ(極度のぼっち気質も含めよう)それ以外は普通の学生である八幡が劣るのは自明の理であった。

 

 

この後なんとか宣材写真の撮影はなんとか全ユニット終わった。

今は全員そろってパソコンに写っている撮影した宣材写真の出来を見ているのだが……

 

「コスプレ大会かよ……」

 

「ブッ!あはははははは!!!言えてるそれ!!やべぇこれ!」

 

「だから反対したのに…」

 

八幡が思わずボソッと漏れた一言に反応した春名が笑い出したのを筆頭に幾人かも笑い始める。

無理もないだろう、モニターに写っているのは赤い紋付き袴をきた天道とスーツを着こなした桜庭、そしてなんとか自然にしようとしている柏木の3人が写っているDRAMATIC STARS。

青ジャージを揃ってきて最後に決めポーズを取った写真で終わっているBeit(渡辺みのりの迫力が凄い)

何世代か前のロックバンドか?と言わんばかりのトゲトゲした黒い衣装を着てそれぞれポーズを取っているHigh & Joker。

そしてピンクと白を基調とした体操着のような衣装を着てローラースケートを装着し、ちゃっかり3人揃って決めポーズを取っているS.E.M

真面目に撮影したFantastic Dreamersが馬鹿なんじゃないかと思えるぐらいの変人軍団がそこには写っていたのだから。

 

「おい拓哉さん!やっぱ俺らもこんぐらいインパクトあった方が良かったんだって!さっきの部屋の隅っこにあったステーキの着ぐるみとか選んだ方が良かったじゃないんすかー?」

 

「神波君、確かにこの場では明らかに我々が浮いているが確かに言える事はステーキの着ぐるみを着るのだけはありえない。」

 

ええー!?と神波が声を上げるが八幡は真丈の意見に心底同意する、なんだよステーキの着ぐるみって…そんなの誰が着るんだよ…

そういえば765プロのアイドルがそんなの着てたよねーみたいなスタッフの会話が八幡の耳へ聴こえてきた。

マジかよ765プロ

八幡が765プロという存在に戦慄しているとモニターを後ろの方から覗き混んでいたプロデューサーが言葉を発した。

 

「これが皆さんの見せたい姿ですか。」

 

プロデューサー、本当にこれが見せたい姿ならここにいる大半の人達とやっていけない自信があるぞ。

 

「これはこれで魅力的ですが。」

 

バラエティー的にですか?

 

「あの!プロデューサーさんに質問! 」

 

隼人がプロデューサーに向かって軽く手を上げながら質問する。

 

「宣材写真ってさ、オーディションとかに使われるんでしょ?」

 

「だからメガメガインパクトな写真が良いかなーって、その方がいっぱい仕事くるっすよね?」

 

伊勢谷、多分そのいっぱいくる仕事恐らく殆どバラエティーだけになると思うぞ。

 

「そうだよな、俺たち無名だし、目に付いた方が少しでも覚えて貰える…だろ?」

 

「ただインパクトだけを求めるともどうかと思うね、ユニット自体がそういうコンセプトで売っていくのなら兎も角、インパクト狙いだけで撮った宣材写真で偏った印象を持たれてしまうのは悪手だと思うのだが…」

 

「ふむ、真丈君の意見も一理あるな、確かに私は過去50年の人気アイドル達を集積分析して衣装を選んだが…我々S.E.Mが思い描くアイドル像とは一致していない。」

 

「って事はこの写真…」

 

山下の言葉にプロデューサーが頷く、八幡からすれば当然だが撮り直しする方向に決まったようだ。

 

「もう一回ちゃんと考えようぜ!やっぱりこういうのは自分達で決めたいんだ!」

 

「何とか都合つかないでしょうか?」

 

「うむ、挽歌出来るならば是非とも。」

 

「次は俺も工夫する。」

 

「やふー!僕、頑張る!」

 

「僕達のイメージにも関わりますし…」

 

「そんなにダメっすか…!?」

 

「逆に俺たちは無難過ぎたな、次はもうちょい弾けようぜ。」

 

「そうだね、もうちょっと自分達をアピールできるようなインパクトを盛り込んでもいいかもしれない。」

 

 

天道の発言を皮切りに、次々と皆んなが発言してゆく、どうやら日を改めて本格的に撮り直しするようだ。

八幡自身もこの宣材写真には何故だがなんとなく納得していない、撮り直しは願ったり叶ったりだ。

プロデューサーがカメラマンにその事を伝えているが少し難しいそうな表情をしている。

 

「撮り直し?…スケジュール次第かなぁ」

 

「こちらには来週ライブが入っていまして。」

 

プロデューサーが自身の手帳を見せながらカメラマンと交渉している、どうやら少し厳しそうだ。

 

「うーん、この辺りで調整してみますか。」

 

"ありがとうございます!!"

 

 

カメラマンさんの優しい配慮に全員が頭を下げる、こちらの勝手な都合で撮り直しさせてもらうのだ、次こそは決めなくてはなるまい。

 

「あ、そうそう!ライブ見学の件ですが当日は朝7時現地集合となりましたので皆さんよろしくお願いしますね。」

 

その後プロデューサーからの諸注意が幾らかされた後今日のところは解散となった。

自分達の見せたい姿を考えてくるという1つの課題をプロデューサーは最後に言っていた、自分達の見せたい姿とはなんなのだろうか…

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

ライブ当日、この日は先日宣材写真を撮った日とは違って空模様が芳しくなく、大雨が降っていた。

どうやら大型の台風が通過しようとしているらしくかなり規模が大きいようだ、雨が激しくなる前にと早めに家を出て正解だったと八幡はライブ会場でしみじみ思った。

真丈や神波をはじめ、多くのメンバーが集合していたが皆一様に濡れていたりと台風の被害を食らっていたようだ。

 

「おはようございます!」

 

「あ、輝さん!」

 

「どうしたんだ?」

 

最後に天道が到着したようだ、だがスタッフ達の様子がおかしい、気になって天道が質問した。

 

 

《高気圧の影響で進路を変えた今回の台風は勢力を強め各地に被害を出しながら北上しています。》

 

電源がつけられているTVからニュースキャスターの声が廊下に響く、今回の台風はかなりの大型らしく、各地に渋滞や土砂崩れのような二次災害まで起こっているらしい。

 

「関東は通過しないようですよ、でもどうもメインスタッフさん達が…」

 

「どうです?状況は。」

 

柏木翼が天道に今回の台風は幸い関東を通過しない事を伝えるがどうやらメインスタッフさん達が被害にあったらしい、プロデューサーが確認したところ通行止めや渋滞などで大幅に遅れるとの事だ。

 

「今いるスタッフは予定の半分ほどです。機材が揃っていてもメインスタッフが居ないとなると多少の押しでは済まなくなります。」

 

「315プロさん…残念ですが今回のライブは中止にすべきです。お客様が来てから準備が間に合いませんでしたでは大問題ですよ。」

 

幾人かのスタッフがプロデューサーに話しているのが聞こえる、スタッフさん達の言ってることは最もだろう、Jupiterは961プロという大手を辞めたとはいえファンがいなくなった訳じゃない。

彼らの移籍する前の活動によってファンも少なからず増えているし、所謂熱狂的な固定ファンだっているのだ。

その中には地方などの遠い所からやってくるファンも大勢いるだろう、この日の為にスケジュールを調整したファンもいるだろう。

Jupiterの人気に匹敵していないこのライブ会場はまだ彼らの人気に比べれば不十分だ、当たる確率など競争率も合わさって果てしない数に到達しているだろう。

そんな様々な人が楽しみにしていたライブがいざ会場に来てみればライブは中止ですなんてなったら下手したら暴動が起きる。

変に足掻かずに早めに中止の告知を出してしまった方がライブ会場とファンのどちらの被害も少なくすむだろうから。

だがプロデューサーが出した答えは中止では無かった。

 

「ライブはやります。」

 

「はぁ!?」

スタッフさん達から驚きの声が上がる。

 

「あのですね…人手がなきゃどうにもならないでしょう。」

 

「人手ならここにあるぜ。」

 

スタッフの1人が少し呆れながらプロデューサーに諭そうとしたが、そこに待機していたJupiterの天ヶ瀬冬馬の声が響いた。

 

「俺達、ステージの設営は一通り経験しています。」

 

「意外と楽しいんだよねアレ。」

 

冬馬に続いて北斗、翔太と発言する、どうやらJupiterの3人揃って来たらしい、しかしながらステージの設営経験があるとは彼らも移籍する前はかなり苦労をしていたのだろうか。

 

「いやしかし…貴方達はアイドルでしょう?ホントにそんな事が出来るんですか?いや出来たとしてもこの人数ではとても…」

 

「あの!俺にも手伝わせてください!こんな時に見てるだけなんて出来ない!」

 

スタッフさんの苦言に天道が堪らずといった様子で名乗り上げた、彼の強い正義感はこんな時に黙ってられる程薄情ではないという事だろうか。

 

「出来ることはまだある筈だ。」

 

「俺達も手伝うっす!!」

 

「やふー!僕も、手伝う!そしたら、ライブ、出来る!」

 

「まぁ俺達新人なんでせいぜいコキ使って下さいや。」

 

「こんだけ人数いるんすから使わない手はないだろ。」

 

次々と八幡も含めたアイドル達から声が上がる、実際にJupiterの3人を除いても17人もいるのだ、八幡が言った通り使わない方がないだろう。

 

「…今回だけですよ。」

 

「ただし!必ずスタッフの指示に従って下さい、安全第一、良いですね?」

 

 

"ありがとうございます!!"

 

スタッフは負けたと言わんばかりの表情で八幡達のステージ設営の参加を許可してくれた。

許可をくれた315プロの面々はやる気充分だと瞳を輝かせている。

 

「さぁ!皆さん早速準備を始めましょう!!」

 

そして、ライブを間に合わす為、八幡達は行動を開始した。

 

 




はい、今回はアニメ第2話のAパートの話しですが、自分この回大好きでしてライブに間に合わない!どうしよう!という状況に俺達が手伝うぜ!みたいな流れがめちゃくちゃ好きなんですよ

ここら辺は男性ならではって感じですよね、従来のアイマスには無かった部活のような感じがあってとても好きなんですよ

次回はライブの設営と宣材写真の続きですね、後毎度の事ながら感想絶賛募集中です。
作者が飛び跳ねて喜びます、感想くればくるほどモチベ上がるタイプなので是非感想お願いします!(感想乞食)
それでは次回もお楽しみに。


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第八話

皆さま大変お待たせして申し訳ございません、リアルで仕事やらが忙しくて碌に執筆する時間がございませんでした。
エタるつもりはないのでご安心下さいませ。
さて、今回でアニメ第2話のBパートは終了になります、後皆さまが楽しみにしているであろう八幡達のLive回ですがやる順番が決まったのでお伝えします。
此方の予定としてはアニメ第5話のS.E.M回と第6話のW回の間にしようと思っております。
後、最後に後書きを良くご覧にいただくようお願い致します。
では、どうぞ


「すみませーん!予備のコードってこっちに置きました?」

 

「奥のボックスですよ。」

階段から走ってきた天道の質問にプロデューサーがそれに答える。

ありがとう、と感謝を伝えて直ぐに別の作業に戻った。

 

「スタッフの現在地はここですね。」

 

「渋滞、雨、信号、風、路面状況を考え…ふむ、到着はおよそ240分、4時間程かかると思われる。」

 

「そこまでになんとか形にしておきたいですね。」

 

いざ、ライブの準備を始め各自手分けして作業している中プロデューサーと硲道夫がスタッフ達の到着時間を予測していた。

プロデューサーがスタッフ達の現在の情報を伝えると道夫が地図を見てスタッフ達の大体の到着時間を割り出してしまったのである。

 

「にしてもそんなにハッキリ解っちまうなんて流石は元先生っすね!」

 

「へー硲さん渋滞予測まで出来るんですね、数学教師ってそんな隠しスキルみたいな物持ってるものなんでしょうか。」

 

道夫の余りにも的確な渋滞予測に近くで準備していた天ヶ瀬冬馬と真丈拓哉が関心するように言葉を発した。

渋滞予測が出来る人材等そうはいないだろうにそれを容易くやってみせたのだから大した物である。

 

「ノンノン!ミスター硲だからだよ!」

 

「それに元教師でもここじゃ解らないことだらけなんで。」

 

「むしろ色々と教えていただきたい。」

 

「ちょ!大袈裟っすよ…」

 

冬馬と真丈の関心の言葉に舞田類が否定の言葉をかける、渋滞予測が出来るのは硲道夫だからであって普通の数学教師は出来ないと、それに便乗するように山下次郎が声をかけ硲道夫が頭を下げた。

冬馬が慌てたように言葉をかけるが無理もない、彼らS.E.Mは元教師ユニットだが現時点での315プロでの最年長組に当たるのだ、人生としての先輩、さらに元とはいえ学校の教師ともなれば冬馬の反応も無理はないだろう。

自分達以外殆ど年下である環境で素直に頭を下げられる姿勢には眼を見張る物があり彼らの器の大きさが伺える。

 

「私もそれなりに人生経験積んでるつもりですけど流石にアイドルはした事ありませんからね、そういう事に関しては天ヶ瀬君、私にも是非ともご教授お願いしたい。」

 

「え!?真丈さんまでっすか!?そんなにかしこまらなくても…」

 

「おーい、拓哉さん冬馬が困ってんるんでやめてあげて下さい。」

 

「何してんすか…てか硲さん渋滞予測なんてよく出来ますね、そんなのやる機会なさそうなんですけど。」

 

「ん?あぁ確かにやる機会は無いが私の培った数学の知識を応用しているだけだ、比企谷君も出来るようになるだろう。」

 

真丈の悪ふざけで更に冬馬を困惑させていた所に作業を一旦中止した八幡と神波の2人が寄って来た。

神波は真丈の事を軽く笑いながら止めているが八幡はそれに若干呆れながら硲さんの優れた渋滞予測技術に関心していた。

数学教師だからといって渋滞予測なんて出来る先生はそうはいないだろう、自身が通っている総武高校はかなりの進学校だとは思っているが彼のように渋滞予測なんて出来る先生はいやしないだろう。

 

「いや、俺文系だから数学捨ててるんで無理ですね。」

 

「数学が苦手なのか、数学は受験だけに関わらず他にも色々な用途に使われる重要な教科だ、捨てるのという選択肢はお勧めしないな、だが安心したまえ苦手というならば私が教えよう、どのぐらい苦手なんだろうか?」

 

「あーなんていうか…こう言っちゃ悪いんすけど全部すかね、なんか中学ぐらいからついていけなくなって他の教科で補ってたんで全然やってないっす。」

 

「?全部?中学時代からそうなのか?」

 

「あ、はい…なんかすいません。」

 

八幡は硲さんが怪訝そうな顔から拍子抜けた表情に変わった事で罪悪感を覚えてしまい謝罪をする。

自分が受け持っていた教科を中学時代から捨てていたと言われればちょっとした怒りが湧いてきてもおかしくはない。

もしくは数学は嫌われる要素が高い教科なので怒りではなく哀しみを覚えているのかもしれない。

そう思っていたがここで硲さんが思いにもよらない発言をした。

 

「…良いだろう!!」

 

「…は?」

 

八幡はいきなりの賞賛に思わず声が出てしまった、一体なにが良いのだろうか。

 

「数学を捨てていてそれを改善して来なかった事にはいただけないがそれだけやっていないという事は君にそれだけ成長の余地があると言うことだ!!」

 

「え?ちょ、ま」

 

「安心しなさい比企谷くん!君の数学嫌いは私が解決してみせよう!!授業をしよう!補習もしよう!勉学に向ける情熱を数学に向ければ数学嫌いは克服できるだろう!」

 

「え、あのほんと待って…」

 

「分からないと思ったら直ぐに質問して貰って構わない!比企谷くん、この設営が終わったら共にスケジュールの調整をしようではないか!」

 

「あらら、硲さんの情熱のスイッチが付いちゃたよ。」

 

「おー!ミスター硲、passionに溢れててhotな感じだね!」

 

「え、あの山下さん助けてくれません…?」

 

「あー、ごめんねひきがや…硲さんの情熱スイッチ入ったらおじさんじゃ止めるの無理無理、まぁ一応学力向上にはなりそうだしがんばれ。」

 

「ミスター比企谷!人生はchallengeだよ、頑張って!」

 

「ええ…嘘だろ…?」

 

どうやら硲さんによる数学の補習は決定事項らしい、正直言って勘弁して欲しいがこうもここまで熱く迫られると中々断り難い。

 

…しかし、初めて熱血教師っての見たな…

 

これだけ情熱に溢れてる先生は八幡の人生の中では見たことがない、唯一八幡自身も認めていて時折格好いいと思ってすらいる現国教師及び奉仕部の顧問である平塚先生でさえこの情熱は上回ってはいないだろう。

平塚先生は自分が好きな熱血ネタで勝手に盛り上がっていたり、アラサーで独身なの事を気にして傷ついているような一件どうしようもない先生に見えるが、生徒思いでありいざという時には頼れる存在であることを八幡は良く知っている。

だが、そんな平塚先生すらもこの硲道夫という男は上回っているように感じた。

付き合って日が浅く、会話もこれをいれて数える程しかないとゆうのに何処までも生徒思いな"情熱"が伝わって来た。

 

…自分が小学生の時にこんな先生に出会っていたら何か変わっていたのだろうか…

目が腐って物事を捻くれて考えるようになった小学生の頃の自分を…

何故教師を辞めてアイドルの道へと進んだんだろう、何か辞めざるを得ない状況にでもあったのか…?

 

 

「おー?八幡おめえ補習して貰うのかよー、まぁまぁ頑張れや、ケハハハハハハハハハ!!」

 

「なんだ比企谷君数学が苦手だったのかい?水臭いじゃないか、いってくれれば私も手を貸したのに、まぁ硲さんにしごいて貰いたまえ。」

 

「神波さんうるさいっす、はぁ…はい頑張りますよ…」

 

神波の茶化しを流しつつ、了解の意を示す。

憂鬱だと心の中でぼやくがこの決定が覆すことも無さそうだ、もう潔く諦めて補習を受けるのが吉だろう。

 

「あの、すいません皆さん、交流を深めてくれるのは僕としては大変嬉しいのですがまずはLiveの設営から…」

 

プロデューサーの言葉にハッと我に返った一同は一、二言言葉を交わしそれぞれの作業に戻った。

因みに八幡らファンドリがやっているのはポップ制作の手伝いだ、時間は有限なのだからスピードアップして作業せねばなるまい。

ファンドリ達は時折話を振ってくる神波の話に耳を傾けながら時々相槌を打っていった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

Liveの為に集まったファンがポツリポツリと来た頃には雨も大分小降りになってはきたが悪天候には違いない。

ポップ制作を終えたファンドリらはそれぞれ別れて他のユニットの手伝いをしにいっていた。

真丈はドラスタと共にファン達の案内に、神波はハイジョのみんなと機材の取り付けに、そして八幡はBeitと共に物販の手伝いをしているのだ。

この悪天候の中、随分と早く来たファンの為に前倒しで物販をやっているが中々上手くやれていると思う。

元は全員同じ商店街で働いていたらしく接客業はなれているようで鷹城恭二と渡辺みのりはテキパキとした様子で物販を捌いていた。

 

「えぇと…これと、これと、これ足して…はちまん!これ、いくつになる?」

 

「どれどれ…えーと4200円だな。」

 

「ありがとう!おまたせしました!4200円です!」

 

八幡はまだ日本語に慣れていないピエールの補佐係として物販に参加している。

ピエールの天真爛漫な笑顔の接客にファン達も笑顔だ、可愛いー!と言った声も多く上がっている。

 

「次のお客様お待たせしました、お会計5800円になります。」

 

「……」スッ

 

「ありがとうございました。」

 

ねぇ幾ら横のピエールが可愛いからって俺の顔と見比べて塩対応するの辞めよ?

こっちに並べば良かったってのがめちゃくちゃわかるんですけど

 

また心に1つ傷を負った八幡であった。

 

「はちまん、はちまん!笑顔笑顔!スマイル、スマイルー!」

 

「…ああ、スマイルスマイル!」

 

ああこの世には戸塚に続きピエールって性別があったんだな、なんだよそのスマイルっていいぞもっと流行らそうぜ。

 

そして新しい性別(八幡の中で)が増えた八幡であった。

 

 

 

男、女、戸塚、ピエール←NEW!

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

Liveの準備が着々と進み、とうとうメインスタッフ達が到着したとの知らせを受け一旦ステージ前へと集合していた。

 

「こんなにも手際良く進めてくれてたとは…ホントに助かったよ!!」

 

「ありがとう、後はこちらに任せて下さい!」

 

"よろしくお願いします!!"

 

「"Jupiter"の3人はリハの用意に入りますよ。」

 

「「「はい!」」」

 

プロデューサーの言葉にJupiterの3人が返事をしその場を去る、どうやらセットが整いやっとリハーサルが出来るようだ。

Jupiterとプロデューサーが出ていった後、ステージに明かりが灯り背景のスクリーンや機材のライトが一斉にステージを彩った。

 

「「イエーイ!!」」

 

「「おお!!」」

 

ステージが一気に華やかになった事で思わず315プロの面々は感嘆の声を上げる、八幡はステージに関しては少し機材を運ぶのを手伝ったぐらいでしか参加していないがそれでもいざステージが自分達の頑張りで完成したとなると感慨深い物がある。

 

「?どうしたんですか?」

 

「ああいや、なんかいいなって思ってさ。」

 

柏木翼が天道輝の様子を見て疑問を投げかけるが天道はそれに笑いながら朗らかに返事をした。

 

「俺たち前の職業も全然違うし年齢もバラバラでさ…そんでもって一人一人も全然似てないんだよなってな。」

 

「確かに凄い取り合わせかも。」

 

「まあねーこんなおっさんが皆んなに混じってアイドルなんて中々無いよね。」

 

天道が己自身が感じたことを語り始める。

 

「俺…今まで全然別の生き方してたのにいきなりアイドルなんて出来んのかな?って思ってたけど皆んな理由があってここにいるんだよな。」

 

「きっとこれから色んな奴と出会って今までやった事も考えた事ないような仕事をして知らない色んな場所に行くんだ。」

 

「そういうの…スゲー楽しみだって思ったんだ。」

 

天道のそんな言葉にその場にいる315プロの面々が頷いている、八幡もやるからにはトップアイドルにはなってやると思っている口だ、これからどんな事が起きるのか、不安の方が大きいが何があるのか楽しみというのも勿論ある。

 

「あーあーテステス。」

 

そんな事をいっている内にJupiterの3人がステージに上がってマイクテストをしていた。

 

「えー今日は皆んなほんとありがとうな。」

 

「お陰でエンジェルちゃん達の期待を裏切らずに済むよ。」

 

「あ、そうだ!ついでに歌ってく?めっちゃ気持ちいいよ!」

 

冬馬と北斗がステージの上から感謝の言葉をかけてくるが、その隣にいた翔太がついでに歌っていかないか?との提案を投げかけてきた。

確かに翔太の提案は魅力的だ、本物のステージで歌うという経験をお客さんの前ではないとはいえ体験できるのだ。

だか、その提案に乗った者は居なかった。

 

「おいおい、そりゃあ無粋ってもんだぜー?」

 

「ふふっ、そうだよね。」

 

「うんうん、very excitingだけど。」

 

「うむ、今回は遠慮しておこう。」

 

神波を筆頭に次々とアイドル達から否定の声が上がる、八幡は最初なんの事だか良くわからなかったが直ぐに言いたい事を理解した。

 

「時間なら少しはまだある筈だよ?」

 

「いや、そうじゃなくてさ。」

 

翔太が皆んなの反応に時間を気にしているのかと質問するが天道が皆んなを代表するように声を上げた。

 

「やっぱり初ステージは俺達のデビュー曲で決めたいからな!直ぐステージに立ってみせるぜ!」

 

天道のそんな言葉に一瞬きょとんとしたJupiterだが直ぐに顔を引き締めた。

 

「!!…ああ!!いいじゃねーか!俺たち"Jupiter"も負けねーぜ!同じ事務所のメンバー同士!皆んな仲間でライバルだぜ!」

 

「冬馬くんほんとこういうの好きだよねー」

 

「う、うるせえな!!」

 

天道の突き出した拳に呼応するように冬馬も拳を突き出し強く返事をする、そんな嬉しそうな冬馬の様子に翔太か茶化したがそれはもうご愛嬌だ。

 

「俺もこういうの嫌いじゃないんで、…あ、薫さんも!」

 

「…なんだ?早くステージで最高のパフォーマンスがしたい…それだけだ、勿論僕はソロでも構わないが。」

 

「ええ….そんなこと言わないで下さいよー!」

 

ドラスタがそんなやりとりをしながらも拳を前に突き出してるのを見て次々と他のユニットも拳を前に突き出す。

そして、その場に暖かい笑い声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、完全に晴れ、ファンの多くが集まって来た時には八幡達もスタッフさん達を手伝い、受付や物販などを手伝っていた(八幡はまたピエールの補佐をやっていたが相変わらず見比べられて傷ついていた)

そして、全てのファンが会場に入り終わりステージの方へ移動し関係者席の方でファンとはまた違う席でLiveを鑑賞する。

 

"キャー!!!!"

 

ステージにライトが付きJupiterが現れると黄色い歓声が割れんばかりに響いた。

 

「皆んな!俺たちJupiterのLiveへようこそ!!」

 

「皆んなお待たせー!今日は一緒に楽しもうね!」

 

「エンジェルちゃんにエンジェルくん!忘れられない日にしよ☆」

 

Jupiterの言葉一つ一つに観客が湧き、黄色い歓声がこだまする、そんなファン達を満足そうに笑顔でいたJupiterも次の工程へと入った。

 

「それでは一曲目聞いて下さい!"BRAND NEW FIELD"!」

 

そして怒涛のJupiterのLiveが始まった…

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「良い天気ですねー」

 

「ええとても」

 

「それこの間撮り直した宣材写真ですよね?」

 

「ええ、そうですよ。」

 

この前とは打って変わって良い天気になった315プロの事務所で山村賢とプロデューサーが話をしていた。

山村の質問にプロデューサーは嬉しそうにこの前撮り直した宣材写真達を見る。

 

「ホントに不思議な事務所ですね。」

 

「でしょう?」

 

プロデューサーが得意げに笑顔で振り返る。

 

「きっと…計り知れない可能性と出会える、それが…楽しみなんです!」

 

胸を張って笑顔で語るプロデューサーの後ろのホワイトボードに何枚かの写真が貼ってあった、この前撮り直した宣材写真達である。

DRAMATIC STARS 、Beit、High & Joker、S.E.M、そしてFantastic Dreamersのそれぞれのユニットの写真である。

皆んなそれぞれ前職をモチーフ(学生は制服)した衣装をきて写っており前に撮った宣材写真よりもより個性が映える写真となっていた。

ファンドリは真丈はビッシリした黒のスーツにシルクハットとステッキを持って鳩を出して笑顔で写った写真、神波は髪をばっちりセットしてダボっとしたファンキー風な衣装を着て大胆不敵に笑った写真、そして八幡は総武高校の制服に腕を腰に当て立っている写真。

そして各それぞれのユニットごとで写真を撮り、最後に真ん中に315プロ全員が写った集合写真が写っていた。

これからを期待させる、新人アイドル達の姿が確かにそこに写っていた。




はい、これでアニメ第2話が終了ですが、以前意見を募らせていただいた際に八幡達のLive楽曲についてどうするかという問題ですが、もう作者自身が作詞したオリジナル楽曲を出すことに決定いたしました!!
既存の楽曲を使うとハーメルン様の利用規約に触れてしまう為、八幡達のLive会なのに歌詞を入れながらの描写がしにくいんですね、ですから作者が作ってしまえばもう著作権は私の物ですので好きに書き放題です!もう既に半分以上は出来ているのでこうご期待下さいませ。
あと、また意見を募りたいと思っておりますのでお手数ですが作者のページにアクセスしていただき活動報告の欄をご覧にいただきたいです。
あ、感想は絶賛募集中です、諸手を上げて喜びます
では、長くなりましたが次回もお楽しみに


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第九話

エタる気ありませんとかぬかしときながらバリバリエタってました申し訳御座いませんでした。
アニメ3、4、5話にどう組み込もうかと考えていたのに原作のストーリーが完璧過ぎて介入出来ねぇ!って頭抱えてたのが原因です。
なので3、4、5話は終わって八幡達のオリジナルストーリーになります、何話かに分けて書きますのでまた亀更新&不定期更新ですがゆるゆると更新して行きます


「…すいません、もう一度言って貰っていいですか?」

 

比企谷八幡は目の前に座っているプロデューサーにそう聞き返した、プロデューサーはチラッと八幡の方を見ると直ぐに自身の手元に持っている書類に視線を戻し

 

「次の音楽番組のパフォーマンスにおけるセンターですが、センターを比企谷さんに務めて貰おうと思います。」

 

「待って」

 

今度は静止した、俺がセンター?センターってあのライブで真ん中で踊るあのセンターですか?

…俺が?いや有り得ない、何かの間違いの筈だ。

 

「すいません、もう一度お願いします。」

 

「ですから、センターに比企谷さんをt「勘弁して下さい」ええ!?」

遂に許しを乞うてしまった、何故俺がセンターなのか甚だ疑問だがセンターなんか死んでもごめんだ。

センターなんてやった日には緊張やストレスで爆破四散しそうだ。

 

指先ひとつでダウンさ〜なんてフレーズを頭にかけて現実逃避しているが現実は無情である。

 

「ええっと…比企谷君がセンターをやるってのは少し前に相談して決めた事なんだ、まぁそんな反応されるのは予想出来てたけど…。」

 

「そそ、プロデューサーと拓也さんと俺の3人で相談したんだよ、ま、頑張れよ〜期待してるぜ。」

 

「なんで俺のいない所で話進んでるんですか?」

 

なんで勝手に決めちゃってるの?ねぇ?

そういうの俺の古傷抉るからやめてもらえませんかね、まるで俺が空気みたいじゃないか、あ、俺普通に学校生活じゃ空気だったわテヘ

学校生活"じゃ"でもねぇな、常時ステルス状態ですらある。

その精度たるや、同じクラスの奴らから比企谷って誰?って言われるレベルだ。

 

「でも比企谷君、君この相談の時にいたら断固拒否するでしょ?」

 

「当たり前じゃないですか」

 

「即答かよ、おい…」

 

真丈の問いかけに即答した八幡に神波が呆れた様子で突っ込むがそんな事はどうでも良い、このセンターをやるという状況をどうにかせねばならない。

考えろ考えろ、ぼっちのハイリソースな頭の回転はこういう風な時の為にある筈だ。

 

「ですが比企谷さん、もう既にこれは決定していまして向こうの方にもそのように申請してしまったので修正はほぼ効きません。」

 

「なん…だと!?」

 

あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!

"音楽番組出演の打ち合わせすると聞いて来たら突然センターをやる事になり、それがほぼ確定事項になった"

な…何を言ってるかわからねーと思うが俺だって訳がわからない、頭がどうにかなりそうだ、催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃねぇ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わっているぜ、逃げ道を事前に防ぐとかそれは酷いと思うんですがプロデューサー。

 

「ええっと比企谷君、一応君をセンターに選んだ理由はちゃんとあるんだ。」

 

「…まぁ一応聞きます。」

 

ま〜た、そんな事言う〜なんて横から神波さんの茶化す声が聞こえてくるが無視だ無視。

 

「比企谷君をセンターにした理由としては"認知度の差"なんだ。」

 

「"認知度の差" ?」

 

「そ、認知度の差だよ。」

 

今まで顔を横に向けて喋っていた真丈さんが身体の向きを整えてより俺に合わせるように姿勢を正した。

なまじビジュアルが良いのでたったそれだけの行動でもまるで映画のワンシーンかのような錯覚すら見えそうだ。

人の上に人を作らずなんて言葉はとうの昔に戯言だと割り切っていたがこんな事で改めて気づかされる。

畜生、なんでイケメンなんて概念が存在してんだ

滅べ

 

「以前にも言ったと思うけど私は元はマジシャンだって話をしただろう?自分で言うのもなんだが私はそれ故にその業界じゃ割と認知度はあるんだ。」

 

「なるほど…確かにそれはTVとかで紹介する時とかネタになりますもんね。」

 

真丈さんって結構有名なんだな、マジシャンどころか世間で売れてるってカテゴリーに入ってるような芸能人でも知らない事があるぐらい疎い俺なんかが知ってる訳も無かったがどうやら真丈さんは認知度が高いらしい。

 

若干感心していると反対の方向からトントンと肩を叩かれた、なんだと振り向けば、ニヤついている神波さんの顔がある。

 

「おい八幡、俺だってそこそこ有名なんだぜ?だからある程度公平を保つ為っつーことてセンター譲ってやったんだからよ。」

 

「え?そうなんすか?…全然それっぽく無いんですけど」

 

「うわ、ひっでぇナチュラルにディスりやがった。」

 

おーおーひでぇひでぇ傷ついたぜ俺ぁなんて芝居がかった言動と動作をしつつ神波さんは自身のポケットに手を入れてスマホを取り出し何か打ち込み画面を指で幾らかスクロールするとほれ、と言うと同時にスマホの画面を俺に見せつけて来た。

 

"第○○回○○市ダンスフィスティバル優勝!神波狩人!"

 

なんてかかれた文字が画面に表示されていた、スマホを受け取ると画面をスクロールさせて見ていけばどうやら良くあるネット記事のようだ。

画像も添付されておりダンスした後なのか若干汗の跡が残っている神波さんが笑顔で写っている、写真が少し暗いのは会場で直接撮ったからなのか画像も多少は荒いが間違いなく写っているのはこの男だと認識は出来た。

1番下の関連記事の欄にも同じく神波狩人の名前が踊っている、視線を神波さんに戻せばどうだと言わんばかりのドヤ顔をしている。

 

このスマホ、直ぐそこのゴミ箱にぶん投げるぞ。

 

「ま、てな訳で拓也さん程じゃないんだろうけど俺にも固定ファンとかいるんだぜ?あー奉仕部…だっけ?変わった部活やってようが世間的な露出じゃ1番下だし映像とかで1番映るのはやっぱセンターなんだと、だからセンターに選ばれたって訳。」

 

ハイ!この話終わり!なんて言って八幡からスマホを回収し仕舞いつつ悠々自適に姿勢を戻して椅子に座り込む。

俺はこの2人からの事情を説明されてなんで俺がセンターになったかなんて疑問は晴れた。

だが理屈はわかっていても感情はどうにも出来ないのが人間の性ってやつだろう、センターやるという事実は最早覆らないという事実を再確認し深いため息をする。

やっべぇよもうなんか緊張してきた、胃がキリキリとするような感覚もする

もうお家帰りたい、飴舐めたい、続けるのこれ?

 

後はプロデューサーから番組の一連の流れの再説明と諸々の諸注意なんかで打ち合わせは終わった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「んーっぷはぁ!やっと終わったなーさーて何するかね?」

 

「帰宅で良いんじゃないか?真っ直ぐに」

 

「おいおい、折角午後からオフなんだから何かしようぜ?じゃなきゃ勿体無いじゃん。」

 

俺たちFantastic Dreamersの今日の予定はさっきの打ち合わせで終わり、午後からは自由、アイドル風に言うとオフだ。

このこだわりは大事、紫○蘭ちゃんも言ってた。

ア○カツ!は良いぞ

 

「2人共昼食はまだだよね?神波君の言う通り親交を深めるという事でお昼ご飯でもどうかな?」

 

さんせー!!と勢いよく神波さんが答えるが正直戸惑う、終わったら直行で帰るつもりだったし手持ちのお金もそんな無かった筈だ。

 

「あ、お金の心配なら大丈夫だよこれくらい奢るさ。」

 

「行きます」

 

即答した、タダで食べれるなら乗っといた方が正解だろこれ

神波さんもあざーす!なんて言いながらお辞儀してる、いや真丈さんマジ太っ腹、イケメン滅べなんて思ってごめんなさい超良い人。

 

「ははは、お手柔らかにね、何かリクエストあるかい?」

 

「リクエストかーやっぱ肉?いや寿司ってのも良いよなぁ」

 

「俺はラーメンですかね、今気分なのだと"なりたけ"って店のラーメンが良いです。」

 

「結構具体的だね、ええとなりたけ…」

 

「あ、そこは案内するんで大丈夫です。」

 

真丈さんが携帯で場所を調べようとしたが手で制した、そこは俺のお気に入りの店でもあるし多少は常連だって自覚もある最早庭同然だ、一色と一緒に言った時も色々言われたが最終的には高評価だったし味は問題無い筈だ。

真丈さんが神波さんに確認を取ると快くオッケーのサインを出した、ぶっちゃけ不味くなかったらなんでも良かったらしい。

 

「じゃーとっとと行こうぜー、飯食い終わったらボウリングとかして遊ぶべ。」

 

「え、ご飯食べたら終わりじゃないんすか?」

 

「大丈夫だってー!俺知り合いが働いててでちょっとお得にしてくれるとこ知ってからさ」

 

「いや金銭的な心配じゃなくて自由に使える時間が欲しいんですが。」

 

俺と神波さんがこんな感じで会話してる様子を見ながら時折笑う真丈さんの3人で目的のラーメン屋と向かった。

…席空いてるといいな

 

「因みに八幡その店どんぐらい行ってんの?割りかし自信有り気な感じだったじゃん?」

 

「…店員の挨拶で今日の味のアタリが解るくらい?」

 

「大分通ってんなおい」

 

うるせぇ大きなお世話だ。

余談だが無事ラーメンは食べれたし美味しかった。

神波さんの紹介だったアミューズメント施設でまた一波乱あったがそれはまた別の話

 

 

 




前書きにも書きましたが半年近くも放置しててすいませんでした、今回はあくまでも八幡達のストーリーのプロローグという事で話自体はそこまで進みません。(その上短い)
ゆっくりと展開していく予定です。
感想、評価絶賛募集中です、よろしくお願いします


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番外編 宣材写真

今回は番外編です、エタってた間にちょこっと書いてたネタを完成させました、本小説の宣材写真回である第八話について八幡達が悩むシーンも無くあっさりと終わってしまったのでそれの補完って感じですね実はこんな事がありましたよーっていう
後、この話では他マスのアイドルが出ます(名前だけ)ので越境苦手な方はごめんなさい、ではどうぞ


初めての宣材写真の撮影が終わり俺たちを含めた全ユニットが宣材写真の出来に納得出来ず結局撮り直しすることになったが正直なところ宣材写真をどう撮るか、なんて良く解らない。

なんせ、自分で言うのもあれだが俺は写真を撮る機会が無いに等しい

一緒に写真を撮る友達なんていない、学校の行事での撮影でも存在感の薄さからなのかカメラマンにも気付かれず碌に撮られて無かったしましてや自分で撮る所謂自撮りなんてのも生まれてこの方した事も無い。

別に写真なんて無くても良いやなんて考えすら浮かんでいた気もするが実際写ってなくても支障なんて無かったしな。

自分は"どんな人物か"を伝えて、自分を売り込む為の宣材写真等解る訳も無かった。

 

だがこんな俺でも、この様子だと非常に不味い事は理解している。

人は見た目で判断するという研究結果があるように大抵の人間はまず容姿で判断するという事が多い。

大事なのは中身、性格だ!なんて主張する人間もいるが馬鹿じゃないのかと思う、確かに中身ってのは大事だ。

外見だけの薄っぺらいスカスカの人間なんて幾らでも見てきたし、俺もそういう風に思ってる。

 

だが、良く考えて欲しい、簡単で有りがちな、シチュエーションを思い浮かべてみよう、読者の諸君も是非、想像して欲しい。

 

 

朝、遅刻しそうになり走っていたら道の角からパンを加えた女の子とぶつかった、お互いにぶつかった事に謝り別れる。

あの子は恐らく同じ学校の制服だった、どんな子なんだろう気になるな…

 

 

 

 

ハイ、ストップ

 

 

ここまで漫画でありそうなシチュエーションを頭に思い浮かべて想像して出てきた女の子の容姿はどうだった?十中八九可愛い子、最低でも普通よりちょっと上ぐらいの容姿をしていたんじゃないだろうか。

 

 

これが所謂ブス、と呼ばれる人種だったらどうだろうか?

 

自分が遅刻しそうになってたら何故かパンを咥えて走って来て、前方不注意で自分にぶつかって来たブス。

 

…これで性格が気になるか?あの子は一体どんな子なんだろうと気になるか?まぁ、まず気にならないだろうな、もしかしたら憤りすら覚えそうだ。

 

だがしかし、これが美少女だったらどうだ?このシーンがまるで運命の出会いかの様なキラキラした物に早変わりだ。

一目惚れだってするかもしれない、だがブスにはそれが無い。

美男美女は一瞬で好きになる事が出来るが不細工はゆっくりと時間をかけて好きになる、そんな工程が必要なのだ。

 

こ◯亀の両さんだって言ってるだろ?シンデレラは美人だからこそ物語が成立するって。

 

わかったらもう二度と人は見た目じゃ無いよ!なんてほざくなよ。

 

……長々と語ったが要するに人ってのはまず見た目で判断する、第一印象が悪ければその後の行動がよっぽどの事じゃ無い限り受けた評価は覆すことは無い。

 

つまり、あのコスプレ大会の様な宣材写真を使ってしまえば最初の印象はそれで固定されちまう、それだけは避けたい。

俺たちのユニットは無難な服装でまだ問題は無かったが、パンチが弱い、というより個性が無いそうだ。

 

如何に相手に好印象を抱く様に宣材写真を撮ってもらうか、これを次回の再撮影までに考えてこなくちゃいけない。

 

「はぁ…ハードル高くね?」

 

「ん?なんの事だ?」

 

宣材写真の事ですよ、と一緒に帰路の道を共にしている同ユニットメンバーである神波さんにそう返す。

因みにちゃんと真丈さんも一緒だ、何やら調べ物をしているようでさっきからちょこちょこ検索を掛けているようだが。

 

「あーさっきの撮影の事な、確かにまた考えろなんて言われても困るよなぁ実際」

 

「今回ばかりは同感ですね…」

 

「おい、そりゃどう言う意味だ」

 

おっと、口が滑った

 

「…実は私もさっきからそれの事を模索しててね、ちょっと話したいから座れる所に行かないかい?時間も時間だし夕食がてらに、近場のレストランでも行こうじゃないか」

 

今まで黙っていた真丈さんが口を開いた、どうやら食事をするついでにさっきの宣材写真の事について話があるらしい。

 

「へ?レストランっすか、…まぁ俺は別に良いぜ、腹も減ってたしな」

 

「俺も良いですよ、付き合います」

 

撮影が終わったら速攻で帰ってゴロゴロする予定だったが仕事に直結するというなら無視は出来ない、再撮影するというのならどうせなら前回よりもクオリティを上げときたいしな(宣材写真が原因で変な仕事でも持って来られたらそれこそ困る)

 

3人とも意見が一致したので目的を変えてレストランに向かった。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

……俺は今非常に機嫌が悪い。

 

「で、では、ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さいませ…」

 

「ありがとう、なるべく早く呼ぶ用にするよ」

 

「い、いえ!そんなとんでもない!では失礼します…!」

 

 

レストランについて早々に空席があってスムーズに座れたのは良かったが案内した恐らく俺とそう年齢が変わらないであろうバイトのウェイトスさんは真丈さんにメロメロって感じだ、真丈さんはそれを自覚してるのかどうかは知らないがまた甘いマスクを振り撒くもんだからもうウェイトレスさんは顔真っ赤のまま去っていった。

なんでこんな光景ご飯食べに来たついでに見せられなきゃいけねぇんだ、爆ぜろ

 

「おっとすまないね、少しお手洗いの方に行かせて貰うよ、先にメニュー見といてくれないかい?」

 

「「うっす」」

 

「ん、じゃあ失礼するよ」

 

ウェイトレスさんが去って早々にトイレの方に向かってしまった、真丈さんの言葉に従ってテーブルにあるメニューを開いた。

パスタとかでいっか、特に拘りも無いし。

 

「おい、八幡」

 

「なんですか?」

 

「お前ぇ…さっきの、どう思う?」

 

メニューを開いた矢先に神波さんが問いかけてきた、さっきの、とは多分真丈さんとウェイトレスさんの事を言ってるんだろう。

 

「どうって…爆ぜろとしか」

 

「だよなぁ!?あんなの許される訳ねーべ!甘いマスク振りまいていてあのウェイトレス骨抜きにしてたじゃん!!?男なら許せねぇって!」

 

「わかりみが深い」

 

どうやら神波さんも俺と同じような心境だったみたいだ。

あんな甘いマスクを無自覚に振りまけるか?いや無い、即ちギルティ

 

「なぁ、ここはちょうど拓哉さんもいねぇんだ、更にこのテーブルにはタバスコが置いてある…後はわかるな?」

 

「…真丈さんの口にする物に入れると?」

 

「その通ーり!少しぐらい痛い目に合ってるとこ見て笑うぐらいの権利、俺たちにはあるだろ?」

 

メニューの近くにあったタバスコの瓶を弄びながら神波さんは活き活きとした表情で語る、どうやら俺の心境とは別にこれを口実にただ単に悪戯したいだけらしい、なんだ期待して損した。

後半の言い分には若干同意するが

 

「何があるんだい?」

 

「「おわっ!?」」

 

突然後ろの方から話しかけられて思わず驚いてしまった、どうやら戻って来たらしい。

声を掛けつつテーブルに戻り俺と神波さんの向かいの席に座る。

因みに今の俺たちは

 

俺 神波さん

[テーブル]

真丈さん

 

こんな配置だ。

 

「どうしたんだい?タバスコなんか弄ってるけど」

 

「あーいや、これはその…そうそう!ピザ食べたいなーみたいな話してたんですけど俺はタバスコかける派だから八幡はどうなんだ?って話してただけなんすよー」

 

「…あ、俺もタバスコは別にいけるんで何のピザにするかって相談してただけなんで安心してください。」

 

「あ、そうなのかい?仲が良いね、ピザか…私はシンプルなやつの方が好きだなぁ」

 

真丈さんが手元にあるメニューをペラペラとめくりながら話を終わらせてくれたのでなんとかバレずに済んだ。

神波さんの機転は助かったな…てか俺は安心して下さいってなんだよ、これからなにかするみてぇじゃねぇか。

 

「…うん、私も決まったし店員さんを呼んでも良いかな?」

 

「え、あ、ちょっと待って下さい、俺まだ決めてねーんすよ、な?八幡も決まって無いよな?」

 

「俺はさっきメニュー開いた時に決めましたよ。」

 

「え!?早くね?マジかよ、決めて無いの俺だけだったのか…ちょっと待って、直ぐ選ぶわ。」

 

「フフフ、そんなに急がなくても大丈夫だよ。」

 

この後、程なくして全員分の注文を頼んだ、真丈さんが気を利かせてくれてピザを2枚も奢ってくれるそうだ、マジ太っ腹

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「…さて注文も頼んだ事だし本題に入ろう、宣材写真における格好の事だが私の考え…というより先人達の知恵とでも言おうか?それを参考にしようと思ってるんだ。」

 

「先人達の知恵って…なんかすげぇ感じするな…」

 

「いや神波君、それ程対したことでは無いさ、ただ此処は無理にインパクトを与え過ぎないようにってね。」

 

そういうと真丈さんは自身の荷物を少し探るとiPadを取り出し画面を見せて来た、俺と神波さんが一緒に覗き込むとそこには

"346プロ全アイドル表"

なんて書かれたタイトルがある、良く見てみるとどうやら346プロって所のアイドル達の情報を紹介しているホームページの様だ。

346プロ…俺でも聞いたことあるな、大企業じゃねぇかあそこアイドル事務所もやってたんだな。

 

「346プロ…?なんで別事務所のアイドル表なんすか?」

 

「いや、宣材写真をどうするかと考えていた時、私達315プロダクションにはある特徴があるだろう?そう、前職の有無だ。」

 

「…あぁ、何と無くわかった気がする。」

 

「お、比企谷君察しが早いね恐らく君が思ってる事と同じ事を言おうとしてるんだ。」

 

真丈さんから前職の有無という言葉が出た時に何と無く察したのだ、あぁそう言えば315プロって無理に魅せようとせずとも注目を浴びつつ印象を与えられる材料あるじゃんって。

それは前職だ、高学歴な職業が揃っているDRAMATIC STARSや、元はバイトしていたBeit、元高校教師のS.E.Mが代表例だろう。

High&JokerやJupiterは前職と呼んでいいかわからないがまぁ似た様なものだろう。

1番訳わからないのはDRAMATIC STARSだ、なんだよ弁護士、外科医、パイロットって勝ち組じゃねぇか普通にそっちの方が安定だろ。

 

「前職の有無って…ああ!そういう事か!確かにそれ方面で売り出した方がわかりやすいよなぁ」

 

「お、神波君も気づいたみたいだね、今日の撮影では皆んな色んな格好をしていたけれども前職に纏わる服装を来た方がシンプルかつ分かりやすいんじゃないかなって思ってね、それにほら」

 

真丈さんが手元に表示されている画面をスクロールし、アイドルを1人1人紹介していく。

 

「346プロは人材が豊富って聞いたから調べてみたらビンゴだったよ、例えば元CAの相馬夏美さん、元OLの三船美優さん、元保育士の持田亜里沙さん、ここには書いてないけど噂じゃ元は秘書をしてたっていう和久井留美さんとかね、彼女達それぞれ割と前職の特徴がある宣材写真だろう?」

 

「確かに…実際に見ると本当に解りやすいな…」

 

「はぁーまさかこんな単純な事とはなぁ、あーなんだっけ?灯台なんちゃら…「灯台下暗し」あ、そうそうそれだ!サンキュ八幡。」

 

これでも俺は国語だけで見れば学年3位だ、舐めんな。

真丈さんは俺たち見せていたiPadの電源を切り、自身の荷物に仕舞い込むと話しを続けた。

 

「そう、単純なんだ、別にそこまで難しく考える必要も無いしお手軽だからね、かと言って与えられる効果は十分に期待できる…先程の彼女たちの様にね、どうだろうか?これが私が話したかったことなんだけど…」

 

「俺は賛成ですわ、八幡は?」

 

「文句無しって感じです、これ以上の最適解を出せなんて言われたら正直時間足りねぇ。」

 

俺も神波さんも真丈さんの考えに賛同した、何もそこまで難しく考える必要となかったのだ。

学ぶ事とは真似ることなんてのは良く言ったものだ、実際にこれで成功しているのだからアイドルとして素人の俺たちが無駄に凝って受けるかどうかに賭けるよりも効果は期待出来る。

そう理解すると肩の荷が降りたようだった、なんだよ真面目に考えてた俺が馬鹿みたいじゃねぇか。

 

「お待たせしました、ご注文の品をお持ちしました。」

 

「お!待ってました!あ、そのハンバーグ俺のっす。」

 

どうやら話している間に料理は出来たらしい、話しも一区切りついた事だしグットタイミングである。

俺の目の前にパスタが置かれ、真丈さんの所にも料理が置かれる。

ピザも程なくして到着した。

 

「じゃあ後は食事を楽しむとしようじゃないか、Jupiterのライブ見学もあるし忙しくなるよ、では…」

 

いただきます、そう3人で言って食事始めた。

因みに真丈さん辛いの全然イケるらしくタバスコ作戦はそこまで功を成さなかった。




如何でしたでしょうか?作者としては書き溜めてたネタをようやく解放出来てスッキリとした気分です。

感想、評価絶賛募集中です誤字指摘など大変助かるのでよろしければお気軽にご指摘くださいませ


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第十話

話が進まねえ(創作物下手くそ芸人感)
今回も割と短めですね、ライブに入るまでの下準備といいますか…取り敢えず後2話ぐらい挟んでからようやくライブかな?なんて作者は思ってますので気長にお待ちくださいませ…
ではどうぞ


「っはぁーー…やぁっと終わった…」

 

センターを務める事が確定した日から早数日後、俺は1人315プロの廊下をとぼとぼ歩いていた。

やっと終わった、とはつい先程までに受けていたレッスンのことだ。

そこには大抵一緒にいる真丈さん、神波さんの姿は無い、完全に俺1人である。

この315プロでアイドルをする事になってそこそこ経つがこの事務所の方針であるユニット毎に売り出していくというスタンス故にこのエリートぼっちたる俺がほぼ常にさっきいった2人をはじめとする同じ事務所のアイドルと一緒にいる事が多かったが今日はとある事情の為にフリーである、とある事情とは俺が所属しているユニットであるFantastic Dreamers(略してファンドリなんて呼ばれもするぞ)のメンバーの年齢がそれに絡んでくる。

 

3人の年齢は27、22、17…17とは言わずもがな俺、比企谷八幡の事だ(因みに27が真丈さんで22が神波さんだ)、もう察しの良い人は気づいた人がいると思うがファンドリのメンバーの中で俺だけが唯一の未成年であり現役の高校生である事だ。

 

まず未成年、つまり18歳未満は労働基準法に則って夜10時以降に働く事は出来ないし、現役の学生である以上義務教育ではないが学校にも通わなくてはいけないのだ。

既に成人済みである2人と全く同じスケジュールなど組める筈も無く学校帰りの夕方からレッスンしたり貴重な土日を返上してユニット毎にレッスンしたりしてるのだが今日2人はそれぞれ違う用事があるらしく恐らく今日は遭遇する事はないだろう。

 

…あれ?今更だけど俺働き過ぎじゃね?

土日返上して働くとかマジ社畜の鑑じゃねぇか。

 

今日のレッスンは一応この後もう一回短時間のレッスンを残すのみだが俺は今日個人的な用事が待ち構えているのだ。

それは数学の補習、塾とかでは無くこの事務所に所属しているアイドルによる補習だ。

以前Jupiterのライブの設営を手伝った際に元数学教師である硲道夫さんによって数学の補習を受ける事が決まってしまったからだ。

あの後、頻度は少ないがお互いの都合があった時に補習を受けている。

俺は数学のこの分野が苦手というタイプでは無く数学自体が苦手(尚、数学に関しては学年最下層の模様)なので幅広く教えて貰っているがワンツーマンで受ける数学は経験した事は無く、硲さん自体も熱心に教えてくれるので割りかし基本だけなら理解出来てきた気はする。

 

だがこの後も予定が詰まっているのは純然たる事実、俺に自由時間をもっと恵んでくれとばかりの心境でまた再び溜息を吐く。

幸せが逃げる?ほっとけ。

 

「!、やふー!はちまん!何してるの?」

 

こ、この声は…?

漫画のキャラなら闇堕ち一直線じゃないかと思うような心境の中聞こえて来たのはまるでそう、天使の声。

この俺の中で天使と名高い戸塚に匹敵するこの声の持ち主は間違いない。

 

「ピエール?どうしたんだ?」

 

同じこの315プロに所属している別ユニットであるBeitのメンバーであるピエールしかいない、嬉しい事に以前ライブ設営の手伝いの内の物販を手伝った時に日本語がまだ不自由であるピエールのサポートに回った事があるが、そのお陰でそこそこ懐かれているのだ、いやマジで嬉しい。

 

「ぼく、これからレッスン!いーっぱい歌う!」

 

ピエールは俺の問いかけに笑顔で元気良く答えてくれた、正しく天使その物である、まさかこの男だらけの315プロでマイエンジェルである戸塚に匹敵する程の天使に巡り会えるとは思ってもいなかった。

…戸塚は男?ほっとけ、戸塚は戸塚っていう新たな性別なんだよ。

 

歌うっていう内容から恐らくボーカルレッスンだろうなと検討を付ける、因みに俺がさっきまでやっていたレッスンはビジュアルレッスンだ。

姿勢が悪いだとか散々言われたのでものすごいメンタルが傷ついた、正直言ってばっくれなれるならばっくれたいレッスン不動のNo.1である。

 

「はちまん!こんどセンターするってほんと?」

 

「ああ本当だぞ、黒歴史になりそうな予感しか無いがやるだけやってみる、もうどう足掻いたってほぼ確定してるからな。」

 

「ほんとなの!?ぼくもセンター!お揃いだね、ステージから見える笑顔、とーっても綺麗!だからはちまんも頑張る!…じゃなくてえてっと頑張って!」

 

ピエールが自分と同じセンターであるという事が解るととても嬉しいそうにした後、拙い日本語だがにばーっと笑顔で応援してくれた。

なにこれ今日俺死ぬの?尊みがやばいんですけど、浄化されそう。

 

「おうありがとな、本番も良かったら見てくれ。」

 

「うん!きょうじやみのりと一緒に見る!ぼく、これからレッスンだから行かなくちゃ、またね!」

 

「ああ、頑張ってこいよ」

 

たたっと足音立てながら小走りでレッスンルームの方へと走っていった、なるべくクールに振舞っていたつもりだがちゃんと出来ていたか?手を顔に当ててみたら口角が上がって…あ、これ出来てねぇじゃん。

て事はピエール、にやけてた俺にまであんな風に会話してくれたの?マジもんの天使じゃんやっべぇ。

 

改めてピエールは天使だという事実を再確認しながらその場を後にした。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「そういえば比企谷君、次の番組でセンターをやるそうだね。」

 

「え?あ、はい、そうですけど」

 

事務所の一角にある大きなホワイトボードを使った補習を受けていたところ唐突に硲先生(補習中は元が高校教師というのもあり硲さんでは無く、硲先生と呼んでいる)が声を掛けてきた。

補習内容は学校に合わせてくれるらしく、教科書を事務所に持ち込んで基本問題を徹底的に復習している。

類題を解いている途中だがほぼ終わりかけていたし硲先生もそれを見計らったのだろう。

 

「そうか、私は以前のライブでセンターを務めていたからな、少し親近感の様な物を感じたのだ」

 

「センター…ああ、受験生に向けたあのライブですね?」

 

うむ、と俺の質問にその通りだと頷く硲先生、あのライブとは硲先生が所属する元高校教師ユニットS.E.Mは以前に受験生に向けてのライブステージを披露した事があるのだ。

凡そアイドルとは思えない衣装と斬新かつインパクトなパフォーマン スは学生に大いに満足させた。

インパクトがデカ過ぎて一時的かなり話題になったくらいだ、俺の学校でも廊下で踊ってる奴をもう何人も見たし学生をターゲットにしたS.E.Mは大いに成功したといっていいだろう。

 

「私は以前センターを務める際、やはり多少ばかり不安だったが山下君や舞田君が共にいた事で私は大いに勇気づけられた。

比企谷君、君も真丈君や神波君という仲間を信じて大きな舞台に自信を持って立ちなさい、以前私に友達がいないだのという話をしたぐらいの君にとっては難しい事かもしれないが何も恐れずに"仲間"を頼りなさい。」

 

…この人は何でこんなにも真っ直ぐに常人だったら歯痒くなるだろう台詞をこうも容易く言えるのだろうか、ちょっと前の俺ならこの言葉に捻くれた回答を投げつけていそうな内容だがこうもストレートに伝えられるとどうも困る。

俺はどうやら最初にアイドルにスカウトしたプロデューサーと同じく真っ直ぐに伝えてくる人間に弱いらしい、こんな事言われたらさ…

 

「…わかりました、期待に応えられる様なステージにしてみせます。」

 

「うむ、君の出演する番組の放送日が一層と楽しみになった、期待している、では雑談はこの辺りにして補習に戻ろう。

教科書の次のページにある例題8をーーー」

 

硲先生はいつもは無表情に近い硬い表情を浮かべている顔に柔らかい笑みを浮かべながらそう答え、補習へと戻った。

ピエールといい硲先生といい、ここまで言われちゃもうやるしかないよなぁ…なんて思いながら俺は硲先生の言うとおりに教科書のページをめくりながらそう考えていた。

この時、俺の中にあったセンターをどうにかして回避出来ないものかという考えはとうに無くなっていた。




今回も話短くてすいません(深々とした土下座)
これ以上書こうとするとどうしても中途半端になってしまうので今回も短めです、本当にすいません

早くライブしろよなんて思うかもしれませんけれどもあっさりとライブに行っちゃうと折角のデビューライブなのになんか薄くなるかなぁなんて作者の考えでダラダラと伸ばしております。

感想、評価等絶賛募集中です、次回もお楽しみに


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第十一話

前半は俺ガイルキャラが出てきますので苦手な方は少し注意かもです、口調難しい…
ライブ回まで後もうちょっとって感じです、最近筆のノリがいいのでそこそこ良い執筆ペースですが突貫工事気味なところも多々ありますので誤字などあれば報告してくださると嬉しいです。
ではどうぞ


最近、比企谷君が部活に来なくなった。

何故なのかはわからない、特に変わった事も無かった筈だし私も由比ヶ浜さんも一色さんもわからないという。

最初は唯単にサボっているだけかと思っていたのだけれどあの男は意外にも律儀で平塚先生からこの部活に入部させられてからはほぼ毎日ちゃんと来ていたし特に何もない日でも部活終わりまでちゃんと付き合うぐらいの男だ。

 

だけれど余りにも来なさ過ぎる、そもそも学校に来ていないのかとも思ったけれでも由比ヶ浜さんや戸塚さんの話では毎日ちゃんと学校に来てるのだと言う。

平塚先生にも理由を聞いてみたが「今はまだ話すべきじゃないな。」なんて言われてはぐらかされた。

直接会いに行けば良いと思うが私は彼とは違って国際教養科に所属している為か彼とのエンカウント率は自然と低くなるし、彼は昼休みになると彼曰くベストプレイスとやらに行ってしまうようだ(戸塚さんから聞いた事があるだけでそれがどこなのかは知らない)こうなると唯でさえ影の薄い彼を探すのは困難を極めるうえにどこかでわざわざ探す事でも無いと割り切っていたのかもしれない。

 

だが蓋を開けてみれば来る日も来る日も来ない状況が続いている状況だ、今現在この奉仕部の部室にいるのは私1人。

由比ヶ浜さんはどうやら課題の不備で居残りを食らったみたいで一色さんは生徒会の書類が貯まってしまっているので処理に忙しくてこれないなんて話をしていた。

誰かの物や紅茶の入ったコップを置くために私1人の時では設置していなかった長テーブルの端っこで本を読んでいるが何故か頭に入って来ない。

 

…どうしてしまったのかしら私は、この私とあろうものが寂しいだなんて感情を抱いてそれに動揺してるなんて。

こんな状況は1年生…いやこれまでもずっとそうだったでは無いか、常人とは違って大抵の事はなんでも出来たし群れて楽しむなんて下らないとすら思っていた。

 

だがどうだろう今の私は、つい数ヶ月前までは有った部室での風景が思い浮かびそしてそれを恋しく思ってしまっている、そんな馬鹿ななんてプライドが邪魔して思っていたけれどこんな状況になってる自分をどう取り繕えば良いのだろうか、どんなに言い聞かせても何処からか滲む様に出てくるこの感情。

 

ふう…なんて溜め息をつきながら愛用の猫のイラストが刺繍されたブックカバーを付けた本を閉じる、寂しい、どうしようもなく寂しい。

これが今の私…雪ノ下雪乃の現在の姿だ。

 

「…今日はここまでにしようかしら」

 

私以外に誰もいない部室に私自身の声が響く、チラッと設置されている時計を見ればまだ5時を少し過ぎたくらいだった。

いつもならまだまだ部活をやっている時間だが今日はもうそんな気分では無い、お悩み相談メールも一通り受理し終わっている事だし何か適当な事情でも言えば問題無いだろう、普段真面目にやっているのだから。

本を鞄の中にしまい込み、もうすっかりと冷めてしまった紅茶を喉に通すと鍵を持って席を立とうしたその時だった。

タッタッタッと誰かが走ってくる音がする、この教室がある学舎は放課後は需要が少なく滅多に人が来ない場所だ。

もしかして依頼なのかしら、そうだとしたらこのまま帰るなんて選択肢は無い。

 

足音は止まる事無く寧ろどんどん大きくなって行きそして…

ガララッ!!

 

「ゆきのん!ゆきのん!大変、これ見て!!」

 

「…由比ヶ浜さん、部室に入る時はもう少し静かに入って貰えると嬉しいのだけれど。」

 

「あ、ごめんゆきのん…はっ!そんな事よりこれ見てよ!」

 

足音の主は同じ部員である由比ヶ浜さんだった、あんまり大きな音を立ててドアを開けるものだから少しビクッとしたのは秘密だ。

由比ヶ浜さんはそうとう急いで来たみたいで肩で息をしている様だったけど私の注意を聞くないやな手に持っていたスマホを持ちながら近づいて来た、見てという言葉から何かスマホで見せようとしてるのでしょうと推測を付ける。

 

「ほら!これどういう事だと思う!?」

 

「…由比ヶ浜さん、私に音楽番組のHPなんて見せられても反応に困るのだけれど。」

 

あ、ごめん間違えたと由比ヶ浜さんが謝ってスマホを改めて操作しだす、どうやら見せたい内容は音楽番組の事に関しての事らしい。

毎週末のゴールデンタイムにやっているその番組は芸能関係に疎い私でも知ってる程のメジャーな番組だ、恐らく由比ヶ浜さんのことだから大手のアーティストが出演するだとかそういう情報を伝えたかったのだろう。

 

由比ヶ浜さんには悪いだろうけど私にとってはどうでも良い情報だ、軽くあしらった後部活を再開しようなんて思っている内に由比ヶ浜さんの操作が完了したのか画面を再び私に見せてくる、今度は見やすい様にか指でズームしながらだ。

 

「ほら!ここ!」

 

「ごめんなさい由比ヶ浜さん、私はそこまで興味は………

 

は?」

 

なるべく傷付けずにやんわりと断ろうとして言葉を紡ごうとしたが由比ヶ浜さんが見せて来た液晶に写った文字列がその行為を中断させた。

思わずは?なんて気の抜けた声を出してしまったがその文字を見た瞬間にそんな些細な事は彼方へと吹っ飛んでいた。

由比ヶ浜さんの手からスマホを受けとり再び目にしてもその文字は変わる事は無い、見間違いでもなんでも無かった。

概要欄を見れば出演者一覧の文字が、そしてその一覧の中にある人名が彼女をここまでの動揺を誘った、その人名とは…

 

「ゆ、由比ヶ浜さん、何故…何で…

 

比企谷くんの名前が出演者欄に載っているの?」

 

比企谷八幡、その文字がHPの出演者欄に確かにその名前が載っているのだ。

比企谷八幡なんて名前早々被る様な名前じゃ無い、だが万が一という事がある、どうやらそのページから出演者達の詳細などが載っているページに飛べるらしく詳細と書かれているボタンを押し確認してみたが液晶に写った写真は正に自分達が知っている比企谷八幡その物でーーー

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

『…で?比企谷くん、これはどういう事かしら、しっかりとした説明が欲しいのだけれど。』

 

「え、ほらその…あれだよあれ、あれがこうしてあれがあれなんだよ。」

 

事務所帰りにマイスイートエンジェルである小町からの着信に意気揚々と出てみれば氷の女王こと雪ノ下雪乃様が降臨なすった、ひえぇ…怖いよぉ…

 

『あら?私は"しっかりとした説明"を求めたのだけれどあれなんて抽象的な表現で説明しないで下さる?それとも最早人間の言語すら理解不能になったのかしらヒキガエルくん。』

 

「おい小学生の頃のトラウマ掘り返すのを止めろ、一時期結構気にしてたんだぞ。」

 

あれ途中からヒキがとれて唯のカエルになってたからな、他にも比企谷菌やら色々派生はあったけど。

 

…どうやら話を聞く限り、由比ヶ浜経由で俺が某メジャー音楽番組に出演する事を知り、それを問い詰める為に連絡した際に無視する可能性が低いであろう小町に協力して貰ってこっちに連絡を寄越したらしい。

 

「…はぁ、わーったよ、1から説明するけど流石に全部説明してたら時間がかかりすぎるんでな、所々掻い摘んで説明するぞ。」

 

『掻い摘んで、ね…どこか後ろめたい事でもあるのかしら?』

 

「言ってろ、時間効率の問題だ、ダラダラと説明しても時間の無駄だろ、要点だけでもしっかりと覚えたらテストだって高得点は取れるだろ?それと同じだ。」

 

軽口を叩きながらも随分と久し振りな感覚に少し安心した様な感じがした、絶対言わねぇけど。

それから俺は雪ノ下に所々掻い摘みながら、しかし重要な場所は解る様になるべくわかりやすく説明した。

説明を全て終える頃にはもう既に15分程の時間が過ぎているようだった。

 

「〜〜〜ってな風に今に至るって感じだ、あ、質問タイムは程々にしてくれよ、普段あんまり喋らねぇから喉が少し痛ぇ。」

 

『…そう、わかったわなら質問は今はよしておきましょう。』

 

「ああ、そうしてくれると助かる。」

 

意外にも俺が説明してる間は雪ノ下は黙って聞いてくれていた、一々罵倒もして来なかったしどうやら本気で聞いていたらしい。

正直なところ説明が終わり次第に次々と質問責めに会うと思っていたがそれは杞憂に終わったようだった。

 

『でも、1つだけ…良いかしら…』

 

「何だ?なるべく手短に答えられる奴で頼むぞ。」

 

唯でさえボーカルレッスンで喉を虐めた後だったってのに、これ以上長話させられたら慣れてない八幡の喉の機能死んじゃうよ?

 

『比企谷くんの…その…出演する番組は何日なのかしら?』

 

「ん、そんな事か、確かーーーー」

 

これでもちゃんとプロデューサーから渡された資料ぐらいは読み込んでいる、雪ノ下に俺が出演予定の日にちをしっかりと伝えた。

プロデューサーが作成した資料自体が間違っていなければこれで問題無い筈だ。

 

『そう…わかったわ、まぁ精々頑張りなさい?自己承認欲谷くん。』

 

「谷しかあってねぇじゃねぇかよ…まぁ応援はサンキューな、期待して良いぞ。」

 

『ええ、公共の放送で放送事故を起こすの楽しみにしているわ。』

 

「おいそこ、それ結構起こさないか心配にしてんだから不安を増長する事を言わない。」

 

『あら?貴方は存在自体が放送事故の様な存在では無くて?放送事故谷くん、ウフフ…』

 

だから谷しかあってねぇって…最後に楽しそうに楽しそうな笑い声までプラスしちゃってさ、可愛いとか思っちまっただろ。

 

「言ってろ、てかそろそろ終わりにしていいか?俺外にいるから寒いんだわ。」

 

『そう、確かに私も結構長電話していた自覚はあったしそろそろ終わりにしましょうか。』

 

「ああ、寒くてしょうがねぇよ、じゃあな。」

 

ようやく氷の女王との戦いが終わった…ずっと外で電話していたせいかかなり寒い、まだまだ暖かい季節とはいえ夜に長時間いれば冷えるのは当たり前だ。

帰りにあったかいマッカン買って帰ろう、しかも滅多にやらない二本買いだ、悪くない。

俺はマッカンを買う算段を立て冷えた体を手で擦りながら帰路へと足を運んだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

雪ノ下と話して翌日の315プロのレッスン室、良く磨かれた床にキュッキュッとレッスンシューズの小気味良い音が聞こえる、だがそれ以上に聞こえてくるのは目の前のステレオから流れてくる音楽。

それは俺、いや俺たちもう何度も何度も聞いた音楽だ、ラスサビも終わった、後は決めるだけ……!!

 

「「「!!」」」

 

音楽が鳴り終わるのと同時に俺、真丈さん、神波さんの3人は揃って決めポーズをとった、最初はこれをやる事に恥ずかしさが凄まじかったが今じゃもう慣れたもんだ、慣れって怖い。

 

「…すっげぇじゃねぇかよ!最初の頃とは見違えるぐらいに良くなってるじゃねぇか!なぁ、翼!」

 

「はい!3人ともすっごく格好良かったです!!」

 

「ハァ、ハァ…ありがとう、ございます…」

 

息を切らして肩で息をしながら通しでやっていた所を見学していたDRAMATIC STARSの天道輝と柏木翼の賞賛を俺が返した。

どうやら次のレッスンスケジュールがここらしく、時間もあるという事でTVでライブ経験のあるDRAMATIC STARSが見学していたのだ。

 

「3人とも以前は結構バラバラだったのにさ…今じゃ結構形になってきてる、くぅ〜っ良いよなぁこういうの!」

 

「わかります!最初はバラバラだったのに1つの目標に向かって団結して取り組む…俺もパイロット時代に良く経験したのですっごいわかります!」

 

「だよなぁ〜〜!!」

 

「ケハハハハ、そりゃどうも。」

 

天道さんと柏木さんが俺たちの通し練習を見て褒めると同時になんか勝手に盛り上がっている、なんかああいう風な姿見てると社会経験がある大人というよりも男子高校生に近い物を感じるな。

神波さんは体力にかなり余裕があったのかストレッチしながら軽く笑って礼を言っている、マジで通しでやったのに殆ど疲れてないような様子の神波さんの体力はどうなってんだ、バ○オのタ○ラントかよ。

 

「いやぁ、良かったぜ!なぁ桜庭はどう思った?」

 

「…僕か?」

 

「お前以外にどこに桜庭がいるんだよ。」

 

天道さんは一歩下がって黙っていた桜庭さんに話を振る、天道さんの言葉に多少イラッとしたのかジロリと天道さんを睨みつけると仏頂面に磨きが更にかかっている。

なんか桜庭さんって誰かに似てると思ったらルミルミに似てる気がしてきた、林間学校の時の。

 

「そうだな…僕の意見としては、真丈さんはステップが半歩分程遅れているところが幾らか見られたし、比企谷くんは全体的に悪くない物のどこか遠慮してる節があるのか多少不自然だった、神波くんはダンスこそ完璧だが発声が半音単位でずれる事が4、5回程あったな。

総合すると、いまのパフォーマンスでは完璧には程遠い、プロのステージでは無いな。」

 

「ハハハ…手厳しいね…ハァ、ハァ…」

 

「あっちゃ〜、やぁっぱ外してたかぁ…今回は割りかし自信あったんだけどな…」

 

「ハァ、ハァ、色んな人にアドバイス貰いましたけどやっぱ俺がセンターっていう個人的な違和感が現れてたりするんですかね…?」

 

天道さん、柏木さんと違って随分辛口の評価だ、確かに俺たちは最初よりかは揃って来た自覚はあるがまだまだ甘いって事も勿論解る。

 

「またお前はそんな事言ってら…」

 

「純然たる事実だ、彼らがさっきの賞賛で思い上がって本番で失敗なんかすれば被害を被るのは彼らなんだぞ。

天道、お前こそ手放しに褒めるのはどうかと思うがな。」

 

「何おう!良いところを探すってのは良い事じゃんか!褒められて育てた方が効果的だなんて研究はちゃんとあるんだぞ!」

 

「逆にそれが逆効果になるパターンもあるがな、僕たちはアマチュアじゃ無くプロなんだぞ?完璧なステージを披露するのは当然のことだろう。」

 

「まぁまぁまぁまぁ!落ち着いて、輝さん、薫さん!」

 

今度は急にいがみ始めた、止めに入った方が良いのかと思ったが柏木さんがいつもの事ですからなんていって笑顔で静止して来たのでやめておいた。

柏木さん大変そうだな…

 

「ふぅ、どうやら時間みたいだねそろそろ出て行かなくちゃ。」

 

「あれ?もうそんな時間ですか?」

 

どうやらそんなやり取りをしてる間にそこそこ時間は経っていたらしい、もう少しで交代の時間だ。

 

「りょーかい、翼〜あんまり無理すんなよ〜」

 

お気遣いありがとうございますーなんてほんわかした声をバックにレッスンルームを後にした、勿論、退出する時に失礼しました、お疲れ様でしたなんて挨拶はしてある。

 

「うーん、やっぱり完全に合わせる事は難しいね。」

 

「俺ら結構経歴とかバラバラだもんなぁ、ただダンス合わせるだけなら簡単なんだけと、歌とか入ってきちまうとちょいとキツイもんがあるわな。」

 

「でも、もう本番まで一週間切ってますからね、それまでにはなんとか形にしたいところです。」

 

俺たちが出演する番組の収録日までもう一週間を切っている、悠長にしてる暇は無い、一刻早く合わせなければ本気でやばい。

 

「昼飯食ったら屋上で自主練でもしようぜ、賢さんに聞いたら屋上でも近所迷惑になら無い範囲内ならオッケーらしいぞ。」

 

「それは有難いね是非とも使わせて貰おう、私もパフォーマンスはしっかりとした物にしたいからね、でなきゃこの曲に失礼だ。」

 

神波さんの提案に真丈さんが肯定の意を示す、目線でチラッと聞いてきたが俺だって賛成だ。

真丈さんが懐から出したのは一枚のCDケース、安物の透明なCDケースだが中に入っているCDは俺たちとってとても大事な物だ。

 

それは俺たちのユニット曲のデモ音源。

この世に2つと無い、俺たちFantastic Dreamersの為の曲だ。

初めてプロデューサーからこれを手渡された時は思わず3人で感嘆したものだ、貰ってからもう何日も経つがその間にレッスンする度に流し体に染み込ませていった大事な音源。

これに収録されている曲を俺たちが実際にステージで歌って踊るのである、収録後にはちゃんとしたレコーディングの予定もあるらしくテレビの番組が最速でのお披露目になるらしい。

 

「…ぜってぇ成功させようぜ、ここまで来たらもう後は観客達の度肝を抜くぐらいのとんでもねぇパフォーマンスを見せてやろうじゃねぇか。」

 

「ふふふ、熱いね、まぁ私も同感だけど。」

 

「俺、こういうノリ本来ならそこまで好きじゃ無いんすけど…でもやっぱ、成功させたいって気持ちがその、凄いです。」

 

神波さんの言葉を筆頭に真丈さんも俺も同意した、俺がこんなスポ根漫画みたいな展開を味わう日がくるなんて予想だにしてなかった。

だが、悪くない。

 

「ま、腹が減っては戦はできぬって言うし、とりあえず先に飯食いに行こうぜ〜!」

 

「そうだね、直ぐに練習はしたいし下の階の弁当屋に行こうか。」

 

「弁当なら持ち運びできて屋上で食べればそのまま練習が出来るし効率的だな、俺も賛成っすわ。」

 

「んじゃ、決まりだな!俺はさっきに行ってるぜ!とうっ!」

 

弁当屋だと決まるやいなや、神波さんは1人階段かなりスピードで駆け下りていった、子供か。

 

「…ああ、神波君行っちゃたよ、しょうがないなぁ」

 

「あの人結構自由っすよね、まぁとっとと向かいましょう、正直俺も腹結構減ってるんで。」

 

真丈さんの横顔を見ながら俺も淡々と告げる、実際かなり空腹だし早く行きたいという欲求が凄い。

ふふふ、と真丈さんが微笑むように笑うと俺に目線を合わせ…

 

「奇遇だね、私もだよ。」

 

悪戯っ子の様にそう答えた。

もう既に見えなくなっている神波さんを追いかけ、少し早めに下の階で経営している弁当屋に向かって2人揃って階段を駆け下りた。




久々に結構がっつり書きました…指が少しいたいのでちょっと休みたい気分です。
八幡と雪乃のシーンはこの作品を作ろうと思った際に絶対に入れようと思っていたシーンでもあるのでやっと執筆出来て嬉しい限りです。
感想、評価絶賛募集中です。
感想くれると作者は飛び跳ねて喜びますのでモチベ向上の為になにとぞ…!(感想乞食)
それでは次回もお楽しみに


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第十二話

やっと出来ました…体調不良でここ最近寝込んでまして更新出来なくてすいません

さて、今回の話は待ちに待った八幡達のライブ回前半になります、そこそこボリュームある内容になったと思いますのでご期待ください!


「へー315プロの皆さまって過去に前職を持っていた方が多いんですねぇ、奇抜と言いますか...面白い事務所なんですね」

 

「ははは、私もそう思いますよ、色んな方達がいて毎日が楽しいです」

 

「まぁそれだけバラエティに富んでいる事務所ですから退屈とかしなさそうですよねぇ」

 

「ええ、前職ならではの豆知識を教えてくれる時もあるんですよ」

 

「ほほう?例えばどのような豆知識でしょうか?」

 

「そうですね、この前元パイロットの柏木さんに____」

 

真丈さんがいつも俺達に向けるような自然な笑顔でトークを返して会話のドッチボールがどんどんと形成されていく、そこには俺から見ても場慣れしているというか全くもって緊張していないように見えた。

司会の人(俺でも知ってるような大御所の人だ)と真丈さんの軽快なトークにスタジオにいる観客や、俺達と同じ出演者達は時折感嘆の声、又は笑い声が上がるが俺はそれどころじゃない、いつ会話の矛先がこっちに向くか、会話を振られてもちゃんと話せるか、いま現段階で変に思われていないか、そんな不安と緊張で心臓はバクバクだ。

もう既にバクバクを越えて心臓が締め付けられるように痛い、締め付けられ過ぎて潰れるんじゃないかと軽い錯覚さえ覚えそうだ、出来るもんなら今すぐにでもここから逃げ出して家に帰りたい。

できるだけ平静を取り繕いながら不自然じゃないように横にいる神波さんの様子を確認っといや何ともなさげに呑気にトーク内容について笑いだしたぞ、鉄か!あんたのメンタルは鉄か!

相変わらずこの人は何と言うか...心臓に毛でも生えてるんじゃないかと最近思ってきた。

 

 

「___では、Fantastic Dreamersの皆さんのCDが販売されるそうですのでよろしくお願いします!」

 

「はい!ではさせて頂きます!...比企谷君、神波君いくよ(ボソッ)」

 

やべ、変な事を考えてる内に出番が回ってきたぞ、真丈さんが横にいる俺達にだけに聞こえるような声で合図を出してきた、大丈夫だから落ち着け、本番前に配られた台本と打ち合わせの通りにやれば問題なんてねぇ、頼むから噛んで全国のお茶の間の笑いのネタになるだなんて展開にはなってくれるなよ。

 

「えー315プロダクションから新しくデビューします、私たちFntastic DreamersのCDが明後日から全国のCDショップ等で発売することが決定いたしました!」

 

「収録内容といたしましては、俺達の曲が2曲と当事務所の課題曲が1曲、更にCD購入者だけが聞ける俺達のボーナストラックが2つの豪華5本立てです」

 

「そして!初回限定生産盤には、CDのお渡し会とトークショーイベントに参加できるシリアルコードと俺等3人の内誰かのオリジナルカードが付属してるんでぜってぇ買ってくれよな!」

 

「是非皆さんのお手元に大切に保管していただいて、沢山聞いてもらったら嬉しいです!よろしくお願いします」

 

「はい、ありがとうございました!」

 

 

 

パチパチパチパチパチパチ!!!!

 

 

観客席や同じひな壇に座っている出演者達から大きな拍手が送られてきた、どうやら何事もなく上手く宣伝出来たらしい。

宣伝する為に手に持っていたサンプルのCDを座っている席の横にしまい込みながらほぅ、と軽く息を吐いた。

たったこれだけのことだが俺が生きてきた短い人生の中でもトップクラスの緊張を味わった気がする、小中高と学生生活の中で様々な黒歴史を作ってきて多少は耐性がついているだなんて思ってはいたがやはりと言うべきか全国で放送される大型番組に出演していると意識していると俺が今まで経験してきた物が紙くずのように思えるほどの重圧がのしかかってきて吐きそうだった、こんなにも胃薬が欲しいと思った事は初めてだ。

 

因みに明後日に発売と言っていたが実際には今日から二週間以上の話だ、どうやらこの番組は二週間前に収録を行って放送するらしい。

真丈さん→俺→神波さん→真丈さんの順番にやったCDの宣伝は、後で編集して発売日のテロップを出したりバックで俺達の曲を流してより分かり易くするとプロデューサーが言っていた。

その分実際にやる俺達はカメラに向かって無音の中でやらなきゃいけないので思いのほかシュールだったとだけ言っておく。

だがシュールだろうがなかろうがそんな事は言っていられない、今現在撮影されているこれはリハーサルでもない紛れもなく本番なのだから。

 

そう、俺、いや俺達Fantastic Dreamersは遂に収録本番を迎えてしまっている。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「っっっっはぁぁぁぁああああ、すっげぇ疲れた...もう帰りてぇ…」

 

「お疲れ様でした、…大丈夫ですか比企谷さん?」

 

「クッソでけぇ溜息吐いてねんなぁ、そんなに緊張する程の事でも無かったろ?」

 

「誰もが神波さんみたいなメンタル持ってるとは思わんでくださいませんかね」

 

あの後、トークパートの撮影が一通り終了して今は俺達の控え室にいる。

新人という事もあってかかなり質素な部屋だが差し入れの飲み物や、設置してあるテーブルにお菓子がいくつかあったりと他にも様々な気遣いを感じられるものがあり、流石は大型番組の控え室だと実感していた。

部屋に入るなりデカイ溜息を吐いて弱音を言う俺に舞台袖で控えて一緒に付いてきていたプロデューサーが気遣う言葉とともに飲み物を差し出して来た、それを受け取りながら神波さんの軽口を若干の皮肉を含めながら返す。

 

だって仕方ないじゃん、あんなの普通にいられる方がおかしいって、若干俺達に対して面白くないって感じの視線も感じたし。

早速ペットボトルのキャップを開けてお茶を喉に流し込むが、あんな環境にいた為なのか普通のお茶の筈なのに随分と美味く感じる。

これが俺がこよなく愛する千葉のソウルドリンクことMAXコーヒー、通称マッカンならば文句無しなのだがどうやらこのTV局には置いてないらしい、何故あのソウルドリンクが置いていないのか俺には到底理解できない。

もうそろそろ法律で全国のあらゆる施設にMAXコーヒーを設置する事を定めたほうがいいんじゃないだろうか、これが一部の地域の人しか飲めないとか人類の損失だろ。

 

 

「そうカッカすんなって、ちゃんと出来てたんだしオールオッケーっしょ、な、プロデューサー?」

 

「はい、後はライブパートを収録して終わりですから頑張って下さいね?舞台袖で控えめながら応援致しますので」

 

「控えめなんか言わずにもっとはしゃいだっていいんだぜ?ま、ばっちし決めてやかっら期待していてくれよ?」

 

「勿論です!」

 

プロデューサーの返事に気を良くした神波さんがケハハハハといつのも様子で笑うとガシャリと控え室のドアの開く音がした。

 

「お待たせ、話は終わったよ、番組プロデューサーも期待してるってさ、2人とも問題無いかい?」

 

部屋に入って来たのは真丈さんだった、真丈さんは控え室に戻る前に番組プロデューサーに呼び止められたみたいだったが言葉から察するにただの世間話らしい。

俺は平気ですと簡単な返事だけ返し、神波さんは俺に続いて右に同じく、と真丈さんに向けて返答した。

 

「ふふふ、それは良かった、本番は今から約45分後、結構時間があるから自由に過ごして構わないそうだ」

 

「まじけ?そんなにあるんすか?じゃ、なんか適当な物でも買って腹ごなしとしますかねーっと」

 

「腹ごなしって...もう少しで歌って踊るんだよ?吐いたりしないかい?」

 

「平気っすよ拓哉さん、リハーサル前にカツカレー食ってましたけど大丈夫だったんで多分いけますって」

 

「神波君、君カツカレーなんて食べてたのかい...」

 

神波さんの衝撃発言に真丈さんは呆然とした、今からやる曲結構ダンス激しいんだぞ、カツカレー食うとか馬鹿かよ。

あ、馬鹿だったわこの人、馬鹿じゃなかったらそんな状況でカツカレーなんて食わねぇわ。

 

「比企谷君はどうするんだい?このまま待機?」

 

「俺はそうしたかったんですけど...妹からサイン貰ってこいってお願いされてるんでね、ダメ元でサインの交渉に行くつもりです」

 

「あ、ダメ元なんだね」

 

「押して駄目なら諦めるが座右の銘なもんで」

 

鞄から先日購入しておいたサイン色紙を取り出しながら真丈さんにそう返した、俺だって待機していたいがマイシスターこと小町から収録するついでに小町の好きなアーティストのサインを貰ってきて欲しいとお願いされたのだ。

俺は絶対にめんどくさいだろうと思って最初は拒否の体制を貫いていたが、どうやらよっぽど好きなアーティストらしくしつこく粘ってきたのだ。

最終的には泣き落としに発展したのでそれに落ちてここに来る前に色紙を購入したのだ。

マイスウィートエンジェルである小町にあそこまでされたら受けるしかないよね、やっだー八幡ってばちょろい。

 

「比企谷さん、僕もついていったほうがいいでしょうか?」

 

「大丈夫っすプロデューサー、本番前にはちゃんと戻るんで」

 

じゃ、っとそれだけ返して俺は部屋を出た、やるんだったらとっとと済ますに限る。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

結果からいうとサインは貰えた。

しかもかなりあっさりと。

 

てっきりガードがめちゃくちゃ固くて貰えるもんじゃないだなんて想像してたが中々気さくな人ですんなりサインを貰えたのだ。

小町に貰えかった時用の謝罪文も一応考えてあったがその必要が無くなって万々歳である。

ただ1つ気になるのがサインに『比企谷小町さんへ♡』と書いてあることだ、ハートだ、ハートである。

 

我が妹にハートなんぞ付けて媚を売るなんざ許せん!

…まぁ気の良い人だったので小町に良い土産話も出来たしチャラにしてやろう。

 

 

しかしまぁ、ついでにTV局内を散策しているが…

 

「やっぱないか…」

 

恐らくこのTV局内の最後の売店内でそう呟く。

 

ない、とは俺が先程も言っていたマッカンの事だ。

淡い期待を込めて探していたがやはり見つからない、飲み物コーナーを3往復程うろちょろするがやはりあの黄色をベースにした愛しのソウルドリンクの姿は見えなかった。

店内に設置してある時計を見るとサインを貰うのがスムーズに済んだ為かサクサク進めてたとはいえ散策しても部屋を出てから15分程過ぎたぐらいしか時間が過ぎていなかった。

 

後30分弱、部屋で体と心を休めるのには充分な時間だろう。

とっとと戻って大人しく待機でもしていようと思いながら売店から速やかに退店し少し長めの廊下の端っこを歩く。

とてもじゃないか真ん中なんて歩けたもんじゃない、学校ですら端っこに歩いていてカースト上位集団からしたら更に壁に張り付くレベルで道を譲るのに。

 

と、そんな事を考えていると向こうから複数人の話し声が聞こえてきた。

遠くて何を話しているかは聞き取れはしなかったが全員男性だということは直ぐにわかった、見えた姿は黒を基調としたラフな衣装。

6人程で形成されているあのグループは確か同じ番組に出演していた今売り出し中の若手ダンスグループじゃなかっただろうか。

 

見るからにわかるイケイケ感、ここが学校であるならば確実にカースト上位に属している集団だ。

似たようなのが同じユニットに所属してはいるが複数人で来られると完全に俺のキャパシティを超えている。

オーバーキルも良いところだ、なるべく視線を合わせない様に、そして更に壁によりながら歩く。

ステルスヒッキーという一種のスキルまで習得している俺だ、相手に感知されるまでも無く終わるだろう。

 

そう思いながら彼らを横切ろうとしたが____

 

「っ!いってぇなおい、おい!お前何してくれてんだよ!」

 

「あぁ!こりゃひでぇわ、お前さぁ今日のパフォーマンスに支障が出たらどうしてくれんの?」

 

「お前同じ番組に出演してたよな?…ちょっと来いよ」

 

「あ、わかってると思うけど逃げんなや?」

 

「……は?」

 

あまりの超展開にそんな間抜けな声を出すのがやっとだった、彼らに半強制的に体を引っ張られて場所を変える為に移動させられる。

どうやら肩同士がぶつかってそれに怒ってるって感じだったが冗談じゃない。

 

ぶつかって来たのは明らかにこいつらだ、俺がわざわざ端っこに寄って歩いてたのに何故かグループにいた端の奴がいきなり肩を横切りざまにぶつけてきたのだ、それも間違いなくわざとだろう。

それを種に逃げないようにと1人に肩を掴まれて拘束されてしまった、半強制的に移動しながら見たこいつらの顔は笑っていた。

 

やってやった、これからこいつで遊ぶのが楽しみだと言わんばかりの顔をしていたのだ、どう見ても怒ってるって顔じゃない。

 

(…フラグ回収早くないっすか?)

 

そんな事を考えながら俺はこいつらに連れ去られた。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

「なーんでこんな陰キャがアイドルなんだよ」

 

「ゾンビみたいな目できめえったらありゃしねぇわ」

 

「明らかに場違い過ぎんだろ、対してルックスも良くねぇし」

 

「粋がるなよ雑魚」

 

「こんな奴がアイドルにとか笑うわ、ギャグかよ」

 

連れ去られて少し経つがさっきからずっとこんな感じだ、最初は肩がぶつかった事に対しての言葉だったがヒートアップして最早俺を只々野次るだけになっている。

人通りの少ない端だが距離はそこまで無かった筈だ、ここから解放されたとしても控え室まではダッシュすれば充分時間までに間に合う。

 

で、何故ここまで俺を責め立てるのか最初はわからなかったが…こいつらの言動から大体の目星は付いた。

 

「俺達は全然選ばれなかったのにさぁ、なんでお前みたいな陰キャが選ばられる訳?」

 

「3年かかってようやく俺達は出れたんだぞ?そこんとこわかってんの?ん?」

 

何がわかってんの?だよ、はい!凄いです!とか返せばいいのか?

…大体の目星が付いたとはいったがそれはどういう事かというとどうやらこいつらは新人である俺、いや俺達Fantastic Dreamersがこの番組に出演してる事がたいそう気に食わないらしい。

 

さて、これを読んでる皆さんも薄々思ってはいなかっただろうか?

なぜライブもした事もない、デビューシングルすら発売していない新人アイドルである俺達が大型の番組に出演することが出来たのか。

実は俺が今出演しているこの番組には『新人枠』という物がある。

 

『新人枠』とは、この番組内でまだデビューして間もない新人を紹介して盛り上げよう!なんて企画らしいが毎週ゴールデンタイムに放送されていて大物アーティストだって毎週の様に出るこの番組に新人枠として出演する事は下手なCM1本作るよりも宣伝効果が高いらしい。

 

それも当然だろう、こんな大型番組なら毎週これを楽しみにしている人は沢山いる上に、放送中のSNSの加速度は驚異的な速度を誇る。

番組の#(ハッシュタグ)がついた呟き達で、トレンド1位なんてさも当然の様に獲得する。

そんな番組の中で出演し結果を残せればSNSが普及したこのご時世、拡散力が高い人が拡散してしまえば宣伝効果はうなぎのぼり、実際、この番組に新人枠として出演したグループと出演しなかったグループのデビューシングルの売り上げの初動を見ると雲泥の差とも言わんばかりに開く事も多々あるようだ。

 

当然の様にこの番組に出演する事を目的とした新人達は星の数ほどいるらしく、そして大抵が出演出来ていない。

番組プロデューサーが滅多にOKを出さないからだ、俺達のプロデューサーはこの番組にJupiterが出演出来るように営業をかけていた時に物のついでと言わんばかりに口説き落として俺達にこの仕事を持ってきたのだ。

あのプロデューサーは薄々仕事が出来る人だなとは感じていた物のまさかここまでやってくるとは思わなかったので最初に仕事を持って来た時はあの真丈さんですら軽く呆然としたものだ。

プロデューサーはトーク担当の真丈さんに出来れば315プロダクションの話題を出して宣伝して欲しいと頼んでいたが真丈さんはそれを見事に遂行していたのは先程の収録の様子で明白だった。

 

とまぁこれが俺達が番組に新人枠として出演出来ている理由なのだが…

 

「あの、俺も色々準備があるんで控え室に行かなきゃならないんですけど」

 

「は?いやそれ俺らも同じだからww新人なんだし碌な準備ないから平気っしょww」

 

「それにさぁ、お前新人、俺ら先輩、お判り?」

 

解りたくもねぇわ、さっきから適当に頭も下げたり色々試みてはいるが全くもって相手にしてくれない。

強行突破で逃げようにも周囲を囲まれてて例え今ここで俺が走ったとしても直ぐに捕まるだろう。

にしてもさっきからこいつらの言動は中々支離滅裂なんだけど、日本語話してるのに日本語通じねぇとかなんなの?

 

何か録音出来る物があれば録音でもしときたいが直ぐに戻ろうと思ってたので鞄の中に入れっぱなしの携帯がこの上なく恋しい。

こんな現場を抑えれば充分こいつらの抑止力にはなるのだが…そうする手段が現時点で無いのでこいつらの気の済むまでか、それともこいつらの出番の時間が近づいて自ずと辞めざるを得なくなるまで待つの二択ぐらいしかない。

どっちも時間が過ぎれば解決する、こいつらの言葉を適当に聞き流しとけばその内終わるだろ。

 

「おい、お前ほんとにわかってんのか?あぁ!?」

 

「うぉ!?」

 

どうやら俺がさっきから聞き流している姿勢がわかったらしく激情して俺の胸ぐらを突然掴んで来た。

 

ちょ、服が伸びる!これ、センスが無い俺の為に小町が選んでくれた一張羅なんだぞ!

 

胸ぐらを掴んでいた奴が割と直ぐに手を離すもんだからその拍子に俺は思わず尻餅を突いてしまう…この感にもダセェやら馬鹿にする声が投げつけられたが無視だ、無視。

 

「ッチ、あーこいつマジでウザいわー、もう何発かやっちゃっても良いんじゃね?」

 

「やっちまえよww俺もこいつウザいって思ってたしww」

 

「賛成ー顔はやめとけよ、勘づかれる可能性あっからww」

 

「あ、言っとくけどチクったらどうなるかわかるよな?」

 

1人が言いだした事を良い事に流れに便乗してどうやら俺に暴力を加える流れになってしまったようだ。

…まずい事になった、体格は完全にこいつらの方が上だ、俺が抵抗してやり返したとしてもそれを良い事に更にヒートアップして苛烈になる可能性の方が高い。

2人がかりで俺を無理矢理立たせてもう1人は殴る準備だと言わんばかりにシャドーボクシングし始めた、残りの奴は観戦に洒落込むって感じだ。

 

…殴られるなんて随分と久しぶりだが、精々耐えるとするか

 

「んじゃ、一発m「待てや、こらボケども」ぇぇ!……え?」

 

俺を殴りかかろうとして振りかぶった腕が止まった、俺を含めこの場にいる全員が硬直した。

 

それは威圧感のある声だった、いざ俺を殴ろうとしたこいつが動きを思わず止めるぐらいの。

 

その声はとても聞き覚えがあった、ここ最近毎日の様に聞いている声だ。

 

そして、その声は途轍もないぐらいの怒気が感じられる声だった。

 

声の発生源に俺を含め全員が注目した、身長は180前半はある長身だ、髪型を編み込んでツーブロックで決めている長身の男が青筋を立てながら目を見開いていたのだ。

この長身の男を俺は良く知っている。

 

「…神波さん」

 

「よう、探したぜ」

 

俺の声にいつもの調子で軽く笑みを浮かべ返事に答えた、だがその笑みは直ぐに消えてまた怒気を孕んだ顔に変貌した。

 

「八幡…ちょっと待ってな、直ぐにこいつら…」

 

"全員お前に頭下げさせるから"

 

そう俺に付け足すように言葉発したこの男は

 

同じユニットメンバーの神波狩人その人だった。

 




前半が終了いたしましたが、少し長くなりそうなのでもしかしたら中半も入るかもしれないです…

後、ちょっとしたアンケートを活動報告にていたしておりますのでよろしければ作者のページにアクセスして下さいませ。

感想、評価どちらも絶賛募集中です!
次回もお楽しみに


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第十三話

八幡達のライブ回、中編です。

本作品初の1万字越えの回になりました、この回のプロットは練っていたのですがいざ書き始めると中々思うようにいかず…大変お待たせしました、どうぞお楽しみくださいませ


俺が少し前から絡んでいる若手ダンスグループの奴らはそれはもうデカい態度を取ってくれた、そのデカさたるや自分たちが複数人とゆうことも相成って更に増長しあまつさえ俺にリンチまがいの事しでかそうとしたぐらいだ。

だがそんなこいつらは現在......

 

「んで?なーんでうちのメンバーにこんな事しでかしてる訳?」

 

「い、いやこれは、その...」

 

「は?聞こえねぇよ、お前さぁ、もっとハキハキとしゃべれや...で?こいつだけじゃなくてお前らにも聞きたいんですけど?」

 

ジロリ

 

「ひぃ!!」

 

「こ、これは...ええっと...」

 

「その、何と言いますか...」

 

「あ?あったま悪いんかお前ら?俺はぁ、理由を知りてぇだけなんだわ、お前らのウダウダしてる仕草なんざ欠片も興味ないわけよ、だからさぁ...は・や・く・こ・た・え・ろ」

 

「ひっ」

 

...そこに乱入してきた神波さんに震えていた。

 

庇われている俺が言うのもおかしいかもしれないが今の神波さんはガチで怖い、なんていうかもう神波さんの怒りでここらへんだけ空間歪んでるみたいだもん。

矛先を向けられてない俺ですらブルってるんだからあんなのを直接向けられたら俺は腰を抜かす自信すらあるぞ、正に今その矛先が向いているこいつらはたまったもんじゃないだろう。

 

さっきまで散々俺を野次ってくれた奴らだが正直ここまでの圧に当てられて震えているこいつらに少しばかり同情する...ま、助けようだなんて考えはこれっぽっちも思ってないけどな。

 

そんな事を考えていると小声で話していた奴らの言葉を聞いてより一層と神波さんは声を荒げた。

 

「はぁぁぁぁあ!??肩がぁ?ぶつかったからぁ?おい、馬鹿も休み休み言えや、そんだけの事で八幡にリンチ紛いの事してたって訳かぁ?」

 

「ひっ、は、はい…」

 

神波さんが言葉を区切り区切りに強調して話すもんだからより一層とこいつらが縮こまる、俺に絡んでいた時の態度が欠片も見えない。

まるで借りてきた子犬のようと表現した方がいいんじゃないかってぐらい縮こまっているようも見える。

 

「はーくっだらねぇ、もしかしたら八幡も何かやらかしたのかと思ったけどたったそれだけかよ…八幡、一応聞いとくけどそれってワザとか?」

 

「んな訳ないだろ…ぶつかって来たのは明らかにそっちですよ」

 

呆れた様子の神波さんにいきなり振られて少し困惑しかけたが直ぐに自分の言い分を伝える…一瞬ビクッとしそうになったのは内緒だ。

 

「ほーう?んじゃ、勝手にぶつかって来ておいてこんな事してたって訳?あーこれは駄目なやつですわー」

 

そんな言葉をいつもの軽い感じで言いながら神波さんが首をゴキリと言う音を鳴らして全体を見渡す。

 

「うっ…い、言いがかりだ!」

 

「そ、そうだそうだ!証拠もねぇじゃねぇかよ!」

 

「こっちは6人もいるんだ!そいつの捏造かも知れねぇだろ!?」

 

「勝手な決めつけでこっちが悪いなんて良く断言出来んなお前!」

 

「これこっちが正しかった場合ちゃんと謝罪してくれんのか!?」

 

とんでもねぇ事を言いだしやがった、嘘なんてこれっぽっちもついてねぇよ純然たる事実だろうが。

 

一人がなぁ!?なんて言いながら仲間に視線を向けて同調してこっちが正しいんだという空気を作り始める、次第にヒートアップしいつもの調子を取り戻し始めたのかまたもやさっきまでの大きい態度になっていく。

俺が苦手な"皆んなの意見"って奴だ、基本的に多数派の意見と少数派の意見がぶつかった時多くの場合勝つのは圧倒的に前者、学校の様な閉鎖的な空間では特にそうだろう。

こいつらも普段からこんな感じで乗り切ってきたのかこの流れが凄く自然だ、このノリの被害にあってきた人達が不憫でならない。

 

多数派の意見には少数派は黙って従うしかない、集団心理が多く作用される日本人ではそう珍しくない光景だ、俺だってそうだ、俺1人で出来ることなんてたかが知れてる。

 

「うるせぇよ、黙れカス共」

 

「ひっ!?」

 

だが、この男、神波狩人にはそんなものは関係ないようだった。

 

たったの一声で盛り上がって来ていたこいつらの増長を一発で黙らせ場を静寂が支配する、圧倒的な”個”が群れた者を叩き潰す、それぐらいの凄みと威圧感がある声だった。

少し見渡してから頭をボリボリとかきだすと、あのさぁという前置きと共に神波さんが喋りだす。

 

「八幡はさぁ、こんなしょうもねぇ嘘つくような奴じゃねぇんだわ、確かに八幡は目が腐ってたりして胡散臭ぇかもしんねぇけどこれは確実に言えるわ」

 

後半に関しては少しおいと突っ込みたくなったがまぁ全体的にフォローしてくれたので良しとしよう。

神波さんのその発言から数の暴力が通じないとわかるとこいつらは目に見えて焦り始めたがそんな時とうとう自分たちの本音を叫び始めた。

 

「う、うるせぇ!!大体てめぇら生意気なんだよ!!」

 

「そ、そうだ!何、ぽっと出の弱小プロダクションのグループのくせに新人枠なんて出れるんだよ!」

 

「俺らがあん時にどんだけ頭下げても出させて貰えなかったのに!!」

 

「不公平だ!なんでお前らなんかが出れるんだよ!!」

 

もはや支離滅裂、この四字熟語がこれ程までに適切な場面に遭遇するなんて人生わかんないものだ…まぁ俺、大した年齢生きてないけどさ。

俺を野次る時にも発していた俺達を気に食わない理由を次々に発し始め、ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。

 

神波さんが第三者から見ても良く判るぐらいに面倒くさいという雰囲気を醸し出しながらハァとため息をつく。

 

「知らねぇよ、つかマジでそんなのこっちが知ったこっちゃねぇわ…何と無くわかったけど俺らが気に食わなかったから痛い目に合わせてやりたかった、んで、3人の中で狙い易いであろう八幡をターゲットにした訳ね…」

 

チラっとこちらに神波さんが視線を向けると俺に指をさしてまた喋り出す。

 

「おい、こいつまだ高校生だぞ?お前ら見たところ俺とタメ(同年齢)ぐらいだろ?高校生相手にイキるとか恥ずかしくねーのか」

 

神波さんの言葉にこいつらは驚く事にその自覚があったのか途端に気まずそうになった、中には目を伏せる奴までいる始末である。

だが、そんな奴らの様子を気にする事なく神波さんは話を再開する。

 

「大体さぁ…こんな人目のつかねぇ端っこで多人数で1人をボコろうとするとかどう考えても正しい訳ねーべ、お前らこれを武勇伝にでもして語るつもりだったのか?」

 

「「「「「「……………」」」」」」

 

ぐうの音も出ない、近年では死語とすら言われている表現だったが正にこの表現が相応しいと思わせる程の正論であった。

 

当然だろう、世間からしたら多人数で1人に乱暴な行為を働く事を良しとするなどよっぽど特殊な事情でも無い限り良しとはしない行為だ。

 

謎理論を展開してきた流石のこいつらも何も言い返せないようでだんまりとした空気になる、あの、俺までこの空気の巻き添えになるの勘弁して貰えませんかね。

 

すると、このだんまりとした空気の中で神波さんが俯いているこいつらの顔をぐるりと見渡した。

 

「後さぁ…俺、実は少し前から見てたんだけどよ…誰か"泣かす"とか言ってなかったっけ?…あぁそうだよお前だな、俺がちゃんとお前を泣かしてやろうか?お?」

 

ガシッ!

 

「…え?うぉ!?ぐぅ…」

 

「あぁ!?」

 

「う、浮いてる…!?」

 

突然、俺を野次る時に使われていたフレーズが気に食わなかったらしい神波さんがそれを言ったであろう奴の首根っこを掴んで持ち上げた。

 

おお…すげぇ、人が首根っこ掴まれて持ち上がる所なんて初めて見た…

 

成人男性を1人首根っこを掴んで持ち上げるのはそう容易な事ではない、バトル漫画なんかじゃ良く出てくる表現だが体重が平均60〜70台の成人男性を片手で持ち上げるというのは相当の筋力と体力を持った者にしか出来ない芸当だ、まさか現実でこれを拝める日がくるとは…神波さんの180を超える長身も相まって10センチ以上は浮いてるんじゃ無いだろうか。

持ち上げられている奴は苦しそうに逃れようと必死にもがいている。

 

 

てかおい、でもこの状況ってヤバいぞ、ここだけ見たら問題起こしてんの明らかに俺らだろ。

俺は流石にやり過ぎだと慌てて神波さんを止めようとするがそれはもう遅かったようだった。

 

パシャリ!っとこの緊迫した状況にシャッター音が響いたのだ。

 

「と、撮った!撮ったぞ!!」

 

「で、でかした!!どうだザマー見ろ!これでお前らは終わりだ!」

 

「わかったらとっとと降ろせ!こいつをばら撒かれたくなかったらなぁ!!」

 

っ!だから不味いと思ったんだ!こんな絵面、どう見てもこっちが恫喝紛いの事をしてる様にしか見えない!

 

こいつらの内1人が懐からスマホを取り出しカメラ機能でこの様子を撮影したのだ、水を得た魚のごとく弱みを握った事でさっきまでの沈黙が嘘の様に騒ぎだす、自慢気に液晶画面にその写真を表示させてこちらに突き出して見せ付けてくる様は腹が立つとしか言いようがなかった。

そいつらの液晶画面に写ってる写真はやはりというかアウトな絵面だ、こんな物ネットなんかに流されたらスキャンダル不可避だろう。

 

神波さんは首根っこを掴んで持ち上げていた奴を乱雑に地面に降ろすとさっきまで威勢良く上げていた声を上げずに黙り込んだ。

それをチャンスと思ったのか更に増長し次々と囃し立てる、くそッ、サインを貰いに行っただけなのにこんな事態になるなんて予想すらしてなかった…!

 

完全に上下関係が反転した、アイドルとして弱みになる材料を握られて正に絶体絶命、あれをばらまかれるのは相当やばい、もうこうなったら土下座でもなんでも良い、こいつらの暴走を止めなければ…!

 

腹を瞬時にくくり、俺がいざとなったら舌で靴でも舐めようだなんて覚悟を決めて膝をついていざ土下座の形に入ろうとする、だがそれは待て、と神波さんが手で静止して止まった。

 

いや、あんた今どういう状況かわかってますか!?俺達現在絶賛絶体絶命中なんですけど!?と目で訴える。(目が腐ってるからアイコンタクトなんて出来ねーだろとか思った奴、絶許)

 

そうすると神波さんはこっちの目を見て、"まぁ見てろ"そう言われた気がした。(だから腐ってるからアイ_以下略)

 

「ほらほらどうしたぁ!?さっきまで散々俺らが悪もんみたいに扱ってくれちゃってさー!」

 

「しかも見ろよ!衣装が見事に伸びちまってる!これは慰謝料もんですわー!」

 

「おら、黙ってないでさっさとする事があんだろ?あやまr「私達が謝る必要なんて何処にもないよ、あ、でも服の事に関してはごめんね?」る……え?」

 

ピロリ、といった電子音と共にまた新たに乱入者が現れる、スマホを横に向けて顔付近に持ち、それを持ち直してその人物はスマホをまた操作する。

 

「全く、今は便利な時代になったよね、私が学生の頃なんてガラケーが全然主流だったのにさ、いやはや技術の進歩ってのはほんと凄いよ」

 

うんうんとうなずきながら心の底から関心してるような声色でその乱入者は語り出す、ポチポチと操作し終わったらしいスマホをまた同様に横持ちにすると俺達全体に見えるようにこちらに向けると____

 

 

『う、うるせぇ!!大体てめぇら生意気なんだよ!!』

 

『そうだ!何、ぽっと出の弱小プロダクションのグループのくせに新人枠なんて出れるんだよ!』

 

『俺らがあん時にどんだけ頭下げても出させて貰えなかったのに!!』

 

『不公平だ!なんでお前らなんかが出れるんだよ!!』

 

「……は!?」

 

「こーんな動画も簡単に撮れちゃうんだから」

 

写っていたのはさっきまでのこいつらの映像、それをスマホを持っている片手の指で器用にスライドさせながら動画を飛ばし飛ばしでダイジェストの様に見せつける、その動画に目に見えて焦り始めるこいつらを横に沈黙を貫いていた神波さんが声を上げた。

 

「遅いっすわ、拓哉さん!ったく、俺軽くびびったじゃないですか」

 

「ははは、ごめんよ、でもベストタイミングだっただろう?」

 

まぁな、と軽く返事を神波さんが返した、この快活そうに笑う男は元マジシャンであり、俺達のユニットリーダーでもある男、真丈拓哉だった。

 

「あ、あんたは...確か元マジシャンの...」

 

「ああ、覚えていてくれて嬉しいね、それぐらいの知性はあって安心したよ、どうもFantastic Dreamersのリーダーを務めています真丈拓哉です、どうかお見知りおきを」

 

真丈さんがさらっと毒を吐きながら飄々とした態度で呑気に自己紹介をするが、その眼は全く笑ってなどいない。

例えるなら氷...そう氷だ、まるで雪ノ下みたいな、いやひょっとするとそれ以上かもしれない、それぐらいの冷たさが感じられる眼だ。

俺は雪ノ下で慣れているので冷たいっと言った感想が頭の中にでてくるが慣れていない神波さんは横で怖ぇ...なんてつぶやいている、正直いつも穏やかなイメージがある真丈さんがこんな雪ノ下みたいな冷たい眼をするとは予想外だった。(今、雪ノ下の怒りの波動みたいなのが感じられたがきっと気のせいだろう)

 

真丈さんは懐にスマホを直しながらこいつらに向けて話を再開する。

 

「早速だけど単刀直入に言おう、この件は手打ちにしないかい?私たちも君たちも今日は争いにきたんじゃない、音楽番組に出演する為に来たんだろう?違うかい?」

 

「て、手打ちぃ?」

 

冷たい眼をするものだから何をする気だと思ったが、真丈さんが提案したの意外にも平和的解決法だった。

身構えてしまっていたこいつらもえ?って感じの反応だ、しかしその態度が下手にでてると勘違いしたのか1人が声を荒げた。

 

「ふざけんな!こっt「1から10までキチンと教えなきゃいけないのかな?時間が無いんだよ」うっ!」

 

言わせないとばかりに真丈さんがすぐさま言葉を遮ると懐からスマホを取り出すとまたもや動画を再生し始める、再生した場所はこいつらが神波さんを撮ってはしゃいでる場面だ。

 

真丈さんは暗にこう言っているのだ、『お前たちに拒否権はないぞ』と。

 

こいつらがさっきまで自慢げにしていた証拠写真は物事の背景が捏造しやすい”写真”だからこそ弱みになるレベルの代物になるのだ、だが動画は違う。

物事の背景がしっかりと分かってしまいその上今回はこいつらが写真を撮って何をしようとしてたかまではっきりと写っている、どっちが信憑性があるかなんて最早説明しなくてもわかるだろう。

 

このままやり合うのとここでおとなしく引いておくか、どちらが賢い選択かなんてことも言っているのだろう。

流石のこいつらもこのままやり合うのはまずいと判断したのか、少しのためらいの後。

 

「...くそっ、おい行くぞ!」

 

引く事を選んだようだ、リーダー格の号令に従うようにして他の奴らも次々と去ろうとするがそれを呼び止める者がいる。

 

「あぁ少し待ちたまえ、君たち」

 

「なんだよ...もう終わりじゃなかったのか?」

 

呼び止めたのは解散を提案した張本人である真丈さんだった、さっさとこの場を離れようとしていた奴らは非はそっちにあるにも関わらず相変わらず態度は尊大だ。

真丈さんはそんな態度も気にせずにまた話始める。

 

「いやぁ、君たちの所属する事務所…○○とかいったっけ?私の記憶が正しければだけど」

 

「は?…そうだけど…?」

 

「そこのお偉いさんと個人的に交流があってねぇ…もしかしたら君たちの処分が…いや、なんでもないよ、じゃあお互い良いパフォーマンスをしようじゃないか」

 

「いやいや、待てよ!?」

 

真丈さんがとんでもない事を言い出した、まさかのこいつらの上の人と繋がりがある発言をしたのだ。

しかも"処分"だなんてキーワード、そんな物をちらつかされてはいそうですかとすぐ様に解散しようとする程こいつらも馬鹿ではないのか、すぐに真丈さんに食ってかかる。

 

「おい、それってどうゆう事だよ!?」

 

「い、いくらなんでも新人アイドルのあんt「私がその程度の事が出来ないとでも?」…え?」

 

またもやこいつらの言葉に重なる様に発言した言葉にこの場の雰囲気がガラリと変わる、まるでそう、重力がここだけ強くなった様な...どんよりとしつつ緊迫した雰囲気へと変貌する。

 

神波さんの独壇場だった時とは全然違う、神波さんは怒り等からくる威圧感からの雰囲気だったが、真丈さんは…そう支配。

 

「へぇ...出来ないと思われてるんだぁ...この私が、ねぇ」

 

含みのある言い方をしてぐるりと見渡す。

 

 

 

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い、いやガチで怖いぞ!?

 

 

 

この場が真丈さん中心になっているような…俺から言わせて貰えば葉山がもっているスキル、ザ・ゾーン(詳しくは原作を読もう)を更に強化した様な、今の真丈さんからは最早一種の王の様な風格さえ感じる。

 

有無を言わさないような雰囲気に真丈さんの言葉がどんどん真実味を帯びてゆく、更に追い討ちとばかりにまた動画を再生し始めた、その行動にこいつらはまたもや狼狽している。

 

いくらこいつらでも上にこの動画がバラされたらマズイのか分かってるのか目に見えて青ざめる。

 

「まぁ、私は出来るだけ波風立てたくない性分でね、君たちがどうしたら良いかは…わかるよね?」

 

「は、はいぃ!!ぜ、絶対ばらしませんから!」

 

「お願いです!ど、どうか社長だけには!」

 

「やっと最近軌道に乗ってきたとこなんです!」

 

「お願いします!お願いします!か、勘弁して下さいぃ!!」

 

「ふむ、よろしい、物分かりの良い子は好きだよ、さ、行きたまえ」

 

その言葉に懇願していた奴らが次々とこの場を素早く去って行き、ここには俺達三人だけが取り残された。

姿が見えなくなると直ぐに真丈さんと神波さんが俺の側へ寄って来た。

 

「はぁ、全く...あんなに慌てるぐらいなら最初からしなければ良いのに...大丈夫かい?」

 

「大丈夫っすよ、手ぇだされる前に乱入しましたし」

 

「念のためだよ、もしかしたら私たちが見つける前に何かされていたかも知れないだろう?」

 

「あ、はい、それに関しては大丈夫です…見てたんですか?」

 

「あぁ、わりぃ、見つけて直ぐに凸ってやろうと思ったんだが拓哉さんに止められてさ」

 

「あの状況で突撃してたら丸く収めるのは難しいと思ったんだ…ごめんね」

 

2人から気遣いの言葉がかけられるがその言葉達の中に合った情報から実は少し待機していた事がわかった、そういえば神波さんも"少し前から見ていた"って言ってたしな。

会話の内容を聞くに、どうやら真丈さんの指示っぽい、まぁ神波さんなら今本人が言ってた通りに直ぐ様突撃しそうだ。

 

介入に遅れた事を2人して謝罪してくるが気にしてないですよ、と一言入れる、実際真丈さんの判断は間違って無かったしな。

 

「色々と話したいところだけれど残念ながら余り時間がない、急いで控え室に戻ろう」

 

真丈さんの言葉に側にたてかけてあった時計で時間を確認するともう指定されていた時間まで5分ちょっとあるかどうかだった。

 

余計に時間かけてくれやがって!!今更あいつらに対して怒りの感情がでてきたがここで憤っていても仕方ないと早々に心を切り替えて頭を冷やし、神波さんの掛け声で急ぎ足で俺達は控え室へと向かった。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

あの後急いで控え室に戻ってきた俺達はプロデューサーから軽くお叱りを受けてしまった、特に俺は早々に出て行った癖して中々戻って来なかった張本人であるからか、他の2人よりも少し厳しめに注意を受けた。

 

まさか同じ番組の出演者とトラブルになってましたなんて言える筈も無く、3人で事前に口裏を合わせて単純に俺が道に迷ってしまいそれを見つけるのに時間がかかってしまったとゆう趣旨をプロデューサーに伝えた。

 

プロデューサーからは余り自分勝手に行動し過ぎないようにとまるで小さな子供に聞かせるようなお叱りをこの年齢になって受けてしまった、でもその後”無事で本当に良かったです”と心から安心した笑顔で言われて少し嬉しかった事は秘密だ。

 

 

 

時間も押しているとゆう事で俺達はすぐさま衣装室へと向かいライブに向けての準備を進めている、既にトークパートを収録するときにメイクはあらかた済んでいたので少しの手直しぐらいで早々に終わり今は俺達Fantastic Dreamersの専用衣装に袖を通している真っ最中だ。

前にDRAMATIC STARSのデビューする時に言っていた通り、ユニットごとに合った衣装制作してくれていて俺達は各々の衣装を着て調整しているところだ。

 

最初にお披露目した時と先日行われたリハーサル、そして今、この衣装に袖を通すのはこれで3回目だ。

未だに慣れない衣装姿をした鏡に写る自分を見るがまるで俺が俺じゃないみたいだ、腕を広げたりして後ろを見たりと全身を回るように確認する、神波さんから似合ってるぜ、と声をかけられるがそれでも違和感が拭えないのはしょうがない。

 

「支度はすんだかい?...比企谷君、安心したまえ、ちゃんと似合っているよ」

 

「え?あ、あぁ、ありがとうございます、でもやっぱなんか慣れなくて」

 

そんなことをしているとどうやらチェックが終わったらしい真丈さんが声を掛けてきた、俺はそれに返事を返すが真丈さんはそっか、と柔らかく微笑んでいる、本当にさっきと同じ人物かと疑いたくなってしまう程の柔らかな笑顔だ、少なくとも怒らせてはいけない人物リストに加えておこう。

 

「やっぱそうだよなぁ、少なくとも俺はこんなデザインの服着ねーし」

 

「でも悪くないデザインだろう?私たちのユニットのコンセプトに合った衣装だからね」

 

「ま、そうっすねぇ、八幡もそう思うだろ?」

 

「はい、まぁ確かに奇抜なデザインしてるけど」

 

「ケハハハッ、言えてるな」

 

3人で自分たちの衣装の事に関して言い合うが確かに神波さんの言う通り、俺が普段では絶対に着ないであろうデザインをしていると思う。

赤、青、黄色、緑...様々な色がところどころにあしらわれており、メルヘンとまでは行かないものの結構ファンシーなデザインの衣装だ。

ユニット名をモチーフにしたらしいが少なくとも俺は服屋で買い物をする時にこんなデザインの服が置いてあったら手に取りもしないだろうなと思う衣装...まぁ普段着とステージの上で歌って踊るアイドルの衣装を比べるのは野暮だと思うが。

 

話していると神波さんがそうだ!と声を上げる、俺と真丈さんはなんだなんだと視線を向けると神波さんはいつも道理の快活な笑顔でこう言った。

 

「せっかくだし円陣組もうぜ!ライブ前にいっちょ団結といこうや!」

 

「良い案じゃないか、士気を高めるには悪くない提案だね、比企谷君はどうだい?」

 

「円陣っすか...俺はパスで」

 

「えぇーー!?嘘だろ、この状況でやらねぇ選択肢とか無いっしょ!なぁー八幡折角だしさぁ、やろうぜー?」

 

神波さんの提案に拒否の意を示したところ、相変わらず馴れ馴れしく絡んでくる。

 

「ちょ、むさ苦しい、野郎の抱擁とか普通にノーセンキューなんですがそれは」

 

「んな悲しい事言うなよー、なぁあー?なぁあー?」

 

「いや、しつこい、いい加減に離れろ...」

 

「ふふふ...仲が良いなぁ、では失礼して...」

 

神波さんの暑苦しい抱擁と格闘していると、真丈さんが俺と神波さんとの間に乱入し腕をほどきつつ自ら己の腕に絡めて神波さんの言っていた円陣の形になる。

真丈さんはともかく片方の神波さんは180前半はある長身であるために俺の肩が意図せずして持ち上がるような体制になって少し痛い。

その不満を目線で伝えるがそれはどこ吹く風と言わんばかりに流されてしまった、俺ははぁ、と観念したようにため息を吐き腕をなるべく楽になるように組みなおす。

もうここまでやったらおとなしくやってやろうじゃないか、顔を少し上げると2人の顔が凄く近い。

 

「ごめんね、いきなり割って入って」

 

「いやいやいや、俺からしたら全然オッケーっすよ!ほら、八幡も素直になったみてぇだし」

 

「ここまでやられたらもうやるしかないかなって...さっさと済ましますわ」

 

冷たいこと言うなよー!と真横から聞こえてくるが無視だ無視。

聞こえてくる言葉を右から左へ聞き流すモードになろうとしていると真丈さんがなにやら神妙な顔になった。

 

「...この体制でなんなんだけど...少し良いかな?」

 

真丈さんのいつになくしんみりした声のトーンに神波さんはさっきまで俺に騒ぎ立てていた声を潜める、俺と神波さんは真丈さんの問に言葉ではなく首を縦に振る事で肯定の意をしめした。

それを見た真丈さんはありがとう、と綻んで話し始めた。

 

「私はね...実は不安だったんだ」

 

ポツリと呟く。

 

「いつも、余裕ぶったりしてるけど、実は私って臆病な性格でねぇ、アイドルになるって決めた時も、本当にこの選択が正しいのか...とか思っちゃったりね、君たちと初めて会った時も、内心びくびくしてたものさ」

 

ははは、とここで少しだけ笑うと話を再開する。

 

「神波君は自由奔放だし、比企谷君は普通の高校生かと思えば捻くれてたりね、ユニットのリーダーを決めようって話になった時に私が最年長なんだから私が行かないとって思って立候補したけれども、この癖の強いメンバーをどうやって纏めれば良いんだろうって内心頭を抱えたものさ」

 

「でもね、リーダーとしてメンバーの事を理解しなくちゃって、思って観察とかしたりしたんだけど、神波君は身勝手な人かとも思ったけれども実は他人を気遣えて、周りを明るく出来るムードメイカーだったり、比企谷君は捻くれててるけども意外と細かい所も気付けて...そして根はとっても優しい子なんだってわかったりさ、君たちの何気ない良い所を見つけるたびに嬉しかったんだ、あぁ、私はこんなにも素晴らしい人達と同じユニットになったんだなぁってさ」

 

だからね、と一泊、真丈さんは間を置いた。

 

「私はね、とっても幸せ、こんなに良いユニットメンバーと同じトップアイドルという大きな目標に向かってこの3人でステージの上に立てる事が凄く幸せなんだ、今日のライブ、私たちならきっと...いや絶対、絶対成功できるって確信してるんだ、だから今言うけど...これからもよろしくね.........な、なーんて、ごめんちょっと重かったかな?」

 

 

真丈さんの激白は、そんな気の抜けた言葉で締めくくられた。

 

黙り込んでしまっている2人の様子に不安を覚えたのか少し苦笑いしながらこちらの様子を伺っている、いや、俺達はなにも真丈さんの言葉に重さを感じて黙りこくってしまっているわけではない。

 

「......拓哉さん」

 

「な、なんだい神波君、や、やっぱり重かったかな?」

 

もう一度言うが俺達は真丈さんの言葉に重さを感じている訳でも、ましてや引いている訳でもない。

 

心配そうに伺っている真丈さんの腕を解き、言いだしっぺの神波さんが組んだ円陣をといてしまった。

ますます困惑する真丈さんに神波さんは両肩にガッと言わんばかりに肩を掴むと...

 

「......どうしてこんなタイミングでそんな話するんですか?」

 

「...え?」

 

一筋の涙を流しながらそう言った。

 

「んな事言われたら泣いちゃうでしょうがーー!!」

 

そう、俺達は真丈さんの言葉に…あり大抵に言ってしまえば感動していたのだ、神波さんなんて号泣とまではいかないけど感極まったのか泣いてすらいる。

 

正直言って俺も少し涙が出てきそうだった。

 

…まぁ、出なかったけどさ

あの、神波さん?肩を掴んでぶんぶん揺さぶってらっしゃいますけどそろそろ話した方が良くないですか?

目回してるように見えるんですけど

 

「ちょ、神波君、ストップ、ストップ!!」

 

「おろ?あ、すいません…」

 

「う、うん大丈夫だよ…せ、世界が歪んでいる…」

 

揺らし過ぎだ、なんて心の中でツッコミながら真丈さんの元に駆け寄り、大丈夫ですか?と声をかける、一応多少視界が揺らいでいるだけで後は問題無いらしい。

 

コンコン!

 

『Fantastic Dreamersさん!本番10分前です!準備が終わり次第バックステージへと直ちに向かって下さい!』

 

俺達がそんな馬鹿みたいなやり取りをしていると、番組スタッフさんからの声がドア越しから聞こえて来た。

ちゃんとノックをしてくれる辺り、しっかりとマナーを守ってくれていて助かった…今、結構カオスな状況だからな…

 

俺がわかりました、と返事をするとスタッフさんの立ち去る足音が聞こえた、それが終わったと同時に咳払いしながら真丈さんが再び立ち上がる。

 

「んんっ!さて、仕切り直しといこうじゃないか、あんまり時間は無いから手短かにね」

 

「あーすいません、俺のせいで」

 

「全くですわ、三半規管に異常をきたすレベルで揺らすとか頭おかしいんじゃ無いんすか?」

 

「そこは『大丈夫ですよ』とか言う所じゃねぇの!?」

 

「…神波さんだから?」

 

「こ、これが思春期、いや反抗期ってやつなのか…?」

 

なーんか神波さんはそういう雰囲気になる人じゃ無いんだよなぁなんて思っているとまた真丈さんが穏やかに笑った。

 

「ふふふ…君達はやっぱり仲が良いね、やっぱり私は素晴らしいユニットメンバーを持ったと確信出来るよ…では、今回のライブ、絶対に成功させよう」

 

スッと手を前に出してかざした。

 

「そうだな、こんなとこでつまづいたらトップとか夢のまた夢、だもんな」

 

その行為を察してその上に手をかざす。

 

俺は…

 

「…勿論です、絶対に成功しましょう」

 

そう、胸に、心に、誓いながら自分の手を2人の手の上に重ねた。

 

俺達3人の視線が交差する、少し静寂になるが直ぐに破ったのは他でもないリーダーの真丈さんだ。

 

「Next Artist!Fantastic Dreamers!!

…Are you Ready?」

 

まるでネイティブが話すような流暢な発音の英語で真丈さんが音頭を取る、簡単な英語だ、俺どころか神波さんですら解る。

俺と神波さんは一瞬視線を合わせ____

 

「「おう!!」」

 

力強く返事を返した

 

「We areー?」

 

続けて真丈さんが言ったのは俺達が所属する事務所、315プロダクションの掛け声のお約束、そう尋ねられた時はこう答えると決まっている。

 

俺達は足を上げ、床を思い切り踏み切って…!!

 

「「「315ーーーーー!!!!」」」

 

思い切り叫んだ

 

 

緊張や不安なんて物はもう存在しない、やる事は全てやった

 

 

後は…

 

 

ライブをするだけだ!!

 

 

 




次回!!やっと!!ライブします!!!

いつか言っていたオリジナル楽曲も披露予定ですので乞うご期待くださいませ!!感想、評価絶賛募集中です!!感想多いとモチベ上がるのでなにとぞ…!!

後、活動報告の方でちょっとしたアンケートも行なっておりますのでよろしかったらご一読くださいませ

では次回もお楽しみに


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第十四話

お待たせしました、いよいよ八幡たちのライブ回です!

作中で使用している楽曲ですが僭越ながら作者が作詞したものになりますので規約には引っかかってないはずですのでご安心下さいませ(クオリティもお察しですが)

一応フルで作ってあるのでご要望があれば何処かにフルの歌詞載せます

また今回も10000字越えの中々ボリュームのある回になっておりますのでその分お楽しみいただければ嬉しいです

ではどうぞ!


バックステージから上がったステージからは今か今かと待ち侘びている雰囲気がビシバシと伝わってくる。

スタジオの雰囲気はもう終盤、残すは俺達のステージだけだ。

明かりが照らされていない暗いステージの上で真ん中に立ち、一度深呼吸をした。

 

もう覚悟は決めた、弱音なら事務所のメンバーに吐いた。

 

横には…同じステージ立つメンバーがいる。

 

ちらりと目線を左右に向ける、それに気づいたのか真丈さんからはウインクが返ってきた...相変わらずそんなイケメンにしか許されない仕草が似合う人だ、実際にイケメンなのだから似合うのは当然なのだが。

 

神波さんからは拳を握った状態から親指を立てるサイン、所謂グッジョブって時に使われるサインが返ってきた。

 

少し観察してみたが2人とも前職が人前に立ってパフォーマンスをする職業なだけあって目に見えて緊張をしてる様子はない、むしろ落ち着いているようにすら見える。

 

なんなら2人とも笑みまで浮かべてやがる。

 

...頼もしい限りだ、なら、俺だけがいつまでも委縮しちまってるのは恰好つかないよな。

 

 

『それでは、本日の新人枠!披露していただきましょう!Fantastic Dreamersで"My Story"!』

 

番組の司会者のアナウンスがスピーカーを通じて会場に響き渡る、今立っているステージの上から横目にカメラに写っている俺、いや俺達の姿が見える。

 

目を瞑りゆっくりと深呼吸をする、やることは全部やったんだ。

 

 

後は...ライブをするだけ。

 

 

聞き覚えがあるイントロが会場に鳴り始める、この仕事を受ける前からレッスンで流すたびに体に染み込むように覚えていった俺達のデビュー曲。

 

これをお披露目するのはこの番組が初だ、試聴動画すらまだ公開していない。

 

絶対に、絶対に成功させてみせる、そう改めて心に決めながらも音楽に合わせてスッテプを踏み踊り始める。

 

 

イントロの段階で少し体が温まってきた、この調子なら開幕早々に失敗するなんてことはなさそうだ。

 

 

心臓の鼓動がどんどん早くなってゆく、だがそれに反比例するように緊張感や不安が次々に薄れていく、真丈さんが言ってたじゃないか、俺達なら絶対にこのライブを成功出来ると。

 

 

...なら、信じてみようじゃねぇか。

 

 

そして...ついに歌い始めた。

 

 

 

『ここが正にSTART LINEさ! 向かい風じゃなく追い風なんだ』

 

 

『絶好のチャンスだ さぁ踏み出してみようぜ』

 

 

『やってみなくちゃ始まりもしないから 取りあえず一歩ずつ』

 

 

よし、最初の歌いだしは上手くいった!

 

 

特に音も外しちゃいないし、歌詞だって飛んでねぇし、ステップも踏み間違えていない。

 

 

頼むから、頼むからやらかしてくれるなよ俺...!

 

 

そう思いながらリズムに乗り体を動かし次に備える。

 

 

『うまくやり過ごしても 次はどうするんだ?』

 

 

『そんなの限界があるだろ』

 

 

パフォーマンスが順調に決まっていくさなかにある事を思い始める。

 

それは今俺が感じているステージの事だ。

 

 

マイクへと発した歌声がスピーカーを通じて会場に響き渡っていく、リハーサルの時にも経験した感覚だが本番ではこうも違うのか...!!

 

 

番組側が俺達に合わせて観客たちに配ってくれた様々な色のペンライトの海をみながらそう心の中でそうぼやく。

 

 

Jupiterのライブで感じたあの熱気が、声援が

 

 

 

直にくる...!

 

 

『まだまだ君は進みだせる』

 

 

『一秒毎に進歩するほどの勢いで走りだそう』

 

 

ここからだ...ここからこの曲は真価を発揮し始める。

 

 

音楽のリズムが変わりはじめ全ての楽曲の見せ場、サビへと向かい始める。

 

 

『失敗した昨日の事や』

 

 

『かけがえのない今日という今も』

 

 

『次に進みだす明日へ!』

 

 

さぁ...今からだ

 

俺達3人はより声を大きく張り上げた!

 

 

『始まる物語 in Yourself!』

 

 

『散りばめていこうか Various Colors!』

 

 

『少しずつ進んでいけばいいさ!』

 

宣材写真を撮る際に見たJupiterのライブは今でも覚えている、客席とは違う所謂関係者席、そこで見たライブは圧巻の一言だった。

 

 

確か伊瀬谷をはじめとするハイジョの奴らが騒いでたっけな、あと渡辺さんも。

 

 

あの時感じた会場の熱気たるや凄まじいものがあった、あの人々の熱気が俺達に向いてくるのだ。

 

 

その圧で押しつぶされそう感覚に陥るがなんとか耐えてみせる、もうサビも終わるじゃねぇか。

 

 

...ん?もう?

 

 

もう終わるのか...?

 

 

『おとぎ話のように綺麗じゃなくったって良いから』

 

 

『ずっとあなただけのEpisodeを作り続けていこうよ...!』

 

 

サビが終わった所で音楽が転調し始めた、テレビ特別版であるショートバージョンだからだ。

曲は一気に佳境に入る、ここで特に大きく移動していなかった俺達のフォーメーションが変形する。

 

センターにいた俺の代わりにまず踊りでたのは神波さんだ、神波さんはより一層ダンスを激しくしたかと思うと_____

 

 

 

観客や出演者達の席から驚きの歓声が上がる、神波さんはなんとその激しいダンスの勢いを一切殺さずに両手を流れるように床につきヘッドスピンをし始めたのだ。

 

 

 

その回転の回数たるや一回や二回なんてレベルじゃない、凄まじい勢いで回転し足の位置も上下に、交差する等、単調な動きでは無くそんな激しい変化さえ見せつけた。

 

 

 

更にその勢いを止めることなく床に足をつけ決めポーズ、それに拍手と歓声が巻き起こる。

 

 

続いてフォーメーションが再び変わり前に次に踊りでたのは真丈さんだ、懐からハンカチを取り出すと一度観客に見せつけそして、それを大きく振りぬいた。

 

 

バサバサバサバサッ!!

 

 

またもや歓声が巻き起こった、大きく振りぬいた何の変哲もなかった筈のハンカチから数羽のハトが飛び立っていったからだ。

 

 

真丈さんが訓練した真っ白なハトたちはただ真っ直ぐには飛ばず客席を旋回し飛び回りそしてはけていった、ハトたちに集まっていた観客の注目がステージに戻るやいなや真丈さんはさっきのが挨拶だと言わんばかりに次々とマジックを披露し始める。

 

 

スピーディーにこなしてるのに次々と披露されるマジックはどれもこれも高クオリティのものばかりで披露されるたび仕切りに歓声が飛ぶ。

 

 

そしてマジックに使っていた道具を全てしまい込み綺麗なターンを決めると...ウインクをした。

 

 

歓声、いや黄色い歓声が会場を包み込んだ。

 

 

会場のボルテージは最高潮に達する、人々の熱気が、声がステージの上の俺達にガンガン伝わってくる。

 

 

そして元のフォーメーションに戻る時、それぞれのパフォーマンスを終えた二人と目が合った。

 

 

(後は頼んだよ、比企谷君!)

 

 

(決めろ八幡!)

 

 

そうアイコンタクトで伝えてきた...と思う。

 

 

ここからは俺のソロパートだ、二人のように前職の経験を生かしたパフォーマンスが無い俺の為にと3人で考案した俺の見せ場。

 

 

3人の中で一番歌が上手いとレッスントレーナーさんに評価されていたが故の演出、2人はこの演出の為に場を温める、言ってしまえば前座を引き受けてくれたのだ。

 

 

その前座は終了し、最後は俺が決めるのみ。

 

 

マイクを強く、強く握りしめた。

 

 

歌う...歌い切ってみせる!

 

 

『あの時 あの場所での自分を 否定しなくたって良いじゃないか』

 

 

『きっと君はまたやってみせるさ さぁ信じてみよう』

 

 

『生まれ 紡ぎ 溢れ出したこのEmotion!』

 

 

 

暗かった照明がつきステージを再び照らだした...!

 

 

 

『始まる物語 in Yourself!』

 

 

『散りばめていこうか Various Colors!』

 

 

『少しずつ進んでいけばいいさ!』

 

 

『推し量られた価値なんて No Thank You!』

 

 

『自分らしく在ろう Go My Way!』

 

 

『たとえ過去が頼りなくっても!』

 

 

最後の転調だ、遂に終わるのだ、俺達のステージが。

 

 

終わってしまうのだ、この得も言われぬ感情が溢れ出すこのステージが。

 

 

『もがき苦しんだ結果だって良いから』

 

 

『これからも君だけのEpisodeに進み続けよう...!』

 

 

指を3・1・5の形になるように順番に折った。

 

 

『最高の未来へと...!』

 

 

3人のユニゾンした歌声が響き渡った。

 

 

ダンスを継続させながらもフォーメーションを変形させてゆきそれに合わせて音楽も終盤を迎える。

 

 

そして、決めポーズ...!

 

 

俺達のパフォーマンスが終わり会場は一瞬の静寂が場を支配した、だがそれはすぐに破られることになった。

 

 

”キャーー!!”

 

 

”うおーー!!”

 

 

観客たちの歓声がそれを破ったからだ。

 

 

「ハァ...ハァ...!!」

 

体が熱い、まるで全力疾走した直後のように体が火照る。

 

手の甲で額の汗をぬぐう、べたついた汗独特の湿り気が俺の手を濡らした。

 

肩で息をしている状態だ、今俺の顔の頬は自分でもはっきりとわかるぐらいに赤くなっていることだろう、達成感、疲労感、安堵感、いろんな感情がごちゃ混ぜになって体から湧き出てくる。

 

だが、そのこみあげてくる感情の中で一番強く感じるのは...楽しかった。

 

 

そう、ただひたすらに、シンプルに...楽しかった。

 

 

もっと、もっと歌いたい、もっと踊っていたい。

 

 

もっと...ステージの上に立っていたい。

 

 

そんな普段の俺らしくもない感情だった。

 

 

ぼんやりと上手くまとまらないうわついた頭で考えていたらポンと肩を叩かれた、首を少し向けて確認してみればそこには神波さんの姿があった。

 

どうやら近くによってきていたらしい、もうろうとしていて良く聞き取れはしなかったが確実にこう言った。

 

 

”やったな”と

 

その言葉に俺は思わず破顔した、あれほどまでに感じていた緊迫感が嘘のように解けてゆく。

 

 

「まだ終わってないよ」

 

そんな状態の俺に話かけてきたのは真丈さんだ、どうやら真丈さんも近くに来ていたらしい。

その言葉に慌てて我にかえるとまだ拍手喝采は終わっていない、案外俺がほうけていた時間は僅かだったらしい。

 

...そうだよな、俺達のステージは終わったんだ。

 

家に帰るまでが遠足ですって良く言う事だしさっさと終わって帰るとしよう、疲れた俺の体を癒し受け止めてくれる愛しき布団のある我が家へ、そして...仲間が待っている事務所へ。

 

 

左右にいる2人とアイコンタクトとり、改めて正面のほうに向く、そして___

 

 

 

 

「「「ありがとうございました!!!」」」

 

 

3人そろって綺麗に観客席に向かって礼をした。

 

 

俺達のその行動に鳴りを潜めかけていた拍手喝采が再び巻き起こった。

 

 

...俺は今日という日を恐らく生涯忘れはしないだろう、拍手と歓声を浴びて調子を良くした神波さんが俺の肩を組んではしゃいでいるが今はそんな何時もは鬱陶しいとしか思えないスキンシップもなぜか嬉しかった。

 

 

 

 

アイドルになって...良かったかも...しれないな。

 

 

 

そんな事を胸の奥底で思いながら俺達の初ライブは幕を閉じた、自分で言うのもなんだが...最高のステージになったと思う、これがテレビで放送されると言う楽しみが増えちまったな。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あれからもう一週間になるんすね」

 

「んぁ?何がだ?」

 

今日のレッスンを終えて事務所の居間で俺と神波さんが休んでいるとたまたま視界に入った壁にかけてあるカレンダーの日付を見ながら俺はそう呟いた。

 

俺のその呟きに神波さんが不思議そうな声色で尋ねてくる、俺はそれに軽いため息を吐いた。

 

「何って...あの収録からもう一週間もたったのかって事ですよ」

 

「あの...あぁテレビのやつか!確かにはえぇもんだなぁ」

 

俺の返答に思い出したと言わんばかりのリアクションが返ってきた、いやあれだけの事があったのに忘れるか普通?この人は相変わらず自由奔放が過ぎるんじゃないだろうか。

 

俺はまた軽く溜め息を吐いた。

 

一週間、それがあのライブの収録が終わってから今日まで経った日数だ。

 

 

この日数をもう一週間と捉えるか、まだ一週間と捉えるかは個人差があるだろうが今回に限っては俺は前者の方である。

収録した日の記憶だって鮮明に思い出せるしなんなら事務所のパソコンに撮影された収録時のデータだって全て残っているのに何故だか未だに現実味がない、狐に化かされた、というべきか、まぁそれだけあの日が濃かったって事だろうな。

 

ていうか俺達の現段階でのアイドル活動の中で間違いなく一番デカい仕事だったろ、なんでそんなに反応が軽いんだ。

 

そんな神波さんに呆れと驚きが半々ぐらいの感情を感じていると軽い足音が聞こえてきた、一瞬誰だと内心身構えたがその正体はすぐにわかった、俺達の視界にその人物が写りこんだ来たからだ。

 

「あれ、比企谷くんに神波さんじゃないですか!ちょっと待っていてくださいね、すぐにお茶を入れてきますから!」

 

「あ、山村さん、ありがとうございます」

 

「うーっす賢さん、ご気遣いどうも」

 

その人物とは315プロダクション唯一の事務員、山村賢その人だった。

 

パタパタとなにやら世話しない挙動でお茶を入れている光景が見える、それに危なかしさを感じるがどうやらそれは杞憂に終わったらしく程なくして山村さんがお盆に4つの湯飲みを乗せながらこちらへと向かってきた。

 

「お待たせしました!ささ、どうぞどうぞ!」

 

「あざーすっ...んん、うんめ」

 

山村さんが運んできたお茶を軽い礼を返しながら手に取って流れる様に口元に運び啜る。

神波さんの様子やお茶の状態を見る限りそこまで熱くはなさそうだ、軽い猫舌気味の俺にとっては有難い。

 

こちらに来る時に転んだりするんじゃないかとも思ったがそれも杞憂に終わったようで良かった、山村さん偶に書類とかこけてばらまいてるからな...

 

神波さんにつられるように目の前に置かれた湯飲みを口元に運び啜る、うん、美味い。

 

熱すぎず冷たすぎずのちょうどいい温度だ、緑茶のほのかな苦味がレッスン後の体に良く染みる、マッカンのような甘い飲料のほうが好みだがこういうのも良いものだ。

 

何でもない1日の中のゆったりした一服の時、俺はこんな時間が嫌いじゃない。

 

「ふぅ...やぁっとキテ〇ちゃんから人間になったぜ...」

 

「は?とうとう頭でも狂ったんですか?」

 

お茶を飲んで一服ついた神波さんがサラリと何もおかしくないように呟いた。

 

いきなり何を言い出すんだこの人は。

唐突にとんちんかんな事を言いだした神波さんは俺に向かってチッチッチッと指を左右に揺らしてせせら笑った。

なんだその腹立つ仕草は、湯呑みのお茶ぶっかけるぞ。

 

そんな俺の心境もつゆ知らず、神波さんはいつもの大胆不敵な笑顔で意気揚々と解説し始める。

 

「ほら〇ティちゃんってリンゴ何個分とかで表すだろ?」

 

「...まぁ、そうですね」

 

確か身長がりんご5個分で体重がりんご3個分だったっけな。

 

「今日俺朝飯作んのも買うのもめんどくさくて家にあったリンゴ2つ食って事務所に来た訳よ」

 

「ほう」

 

「んで喉乾いた時に自動販売機で適当に押して買ったのがリンゴジュースだったのよ」

 

「はぁ」

 

「更に俺このお茶飲むまでそれ以外なんも食ってねぇんだ」

 

「...で?」

 

そこまで言った神波さんはふふんと得意げに笑うと

 

「つまり俺は今の今まで実質キ〇ィちゃんだったんだよ」

 

「ちょっと何言ってるかわかんないですね」

 

何をとち狂ったことを言い出したかと思えば...なんだよキテ〇って、ボケが秀逸過ぎるぞ、っておい山村さん爆笑しとるがな。

 

よっぽどツボに入ったのか腹抱えて笑ってるじゃねぇかよ、おーい山村さん、あなたの肘が湯飲みに当たりかけてますよー。

 

案の定と言うべきか山村さんが肘を湯飲みを引っ掛けて大騒ぎ(山村さんと神波さんが)してるとそれを横目につけっぱなしにしていたテレビのニュースから俺の興味を多々引く内容が出て来たのだ。

 

『えー続いてのニュースですが来週放送予定である某音楽番組で悪質な暴力行為があったとしてその首謀者と思われし若手ダンスグループである〇〇が今日の朝、警察に___』

 

 

......ん?

 

 

 

「あれ?ひょっとしたらこれって...?」

 

「あー、やっぱしニュースに出るよなぁ」

 

「?神波さんなんか知ってるんですか?」

 

やっぱりなと、いった雰囲気で呟いた神波さんにそう俺は尋ねた。

 

俺なんも知らねぇんだけどどゆこと?

 

「はぁ?八幡おめぇ知らねえの?あんとき撮影した動画、あるだろ?あれが流出してあいつら只今絶賛大炎上中だぜ、ニュースサイトとかで今引っ張りだこだぞ、知らなかったのか?」

 

「え!?そうだったんですか?!」

 

まさかまさかの展開に思わず目を見開いて驚いた、普段そこまでニュースに興味無かったりSNSなんかをやってないことが裏目に出るとは...

携帯をすぐさま取り出して電源をつけ、元々本体に搭載されているニュースアプリを開いてみる。

 

あいつらの記事は...あったあった神波さんの言う通りトップに躍り出ていたので直ぐに見つかった、画面をタップして記事を一通り読んで見るがかなりあの時の事が詳しく書かれている。

 

この記事への感想の欄を覗いてみると...うわぁ...滅茶苦茶ぼろ糞にぶっ叩かれてるな、コメントの数が十や百なんてレベルじゃない、数千はコメントがあるぞ。

 

『酷い』『あり得ない』『失望した』『ライブの円盤捨てる』『現場での態度が最悪ってのは本当だったのか』『二度と表に出てこないで欲しい』『ざまあみろ』『ファンだったとゆう事実が恥ずかしい』

 

...適当に画面をスクロールしていくつかコメントに目をとうしてもこれだ、中にはかなりの長文での誹謗中傷のコメントも結構ある、こりゃああいつらもう完全に社会的に終わったろ、オーバーキルも良い所だ。

 

「にしても意外だな、八幡こうゆう時事ネタとか直ぐキャッチしてそうな印象だったんだが」

 

「...あんましニュースとか興味無いですし、SNSとかもやってないもんで...]

 

確かに世が今何が話題だとかは興味がない、今回のように芸能関係なら尚更だ。

だがそれでも自分が神波さんにすら情報収集能力に劣っているといゆう事実に軽くショックを受けてしまった。

 

今度からニュースぐらいはちゃんと見よう...

 

「あれ、もうテレビにも出てるのかい、マスコミってこうゆう事は仕事が早いよねぇ」

 

「あ、拓哉さんも知ってたんすか?」

 

俺が1人静かにそんな決意を新たに決めた所でこの場にまたもや人が現れる、俺達のユニットのリーダーこと真丈拓哉さんその人だ、後ろには一緒に入ってきたのかプロデューサーの姿も見えた。

いつの間にか事務所の居間に来ていたらしくテレビを見ながら山村さんが予め用意しておいてくれていたお茶を啜っている。

 

「知ってると言えば知っているよ、なんせこの動画を流したのは私だからね」

 

「「......え?」」

 

 

俺と神波さんの声が思わずはもってしまった、開幕早々とんでもない爆弾発言をぶち込んで来たぞこの人。

 

「...え、ちょっと待って下さい、拓哉さんがこの騒ぎを引き起こしたんすか?」

 

「全部が全部って訳じゃないけどね、まぁ概ねそうだよ」

 

「...やり過ぎじゃないですか?今えぐいぐらい炎上してるんですけど」

 

「何を言ってるんだい比企谷君、あんな明確な暴力行為にでといて私が手打ちに済ますなんて思ったかい?もし本当に手打ちなんかで済まそうだなんて話になったら例え世界中が許したとしても私が許さないよ、ああゆう輩は完膚なきまでに叩き潰しておかなきゃね」

 

「まぁ至極ごもっとともで...」

 

「あ、あのぅ皆さんなんのお話をされてらっしゃるんですか...?」

 

真丈さんからかえって来た返答にまぁそうだよな、とゆう感想を抱く。

 

いくらなんでも手打ちなんかで済まされるのどうにもおかしいと思ったんだ、時間が無かったとはいえあれだけで事が全て済んでしまうのはなんか釈然としない気持ちになったのは事実なのだ。

 

...いやまさかここまでやるとは思って無かったけどさ。

 

俺が1人納得していると困惑したような声がかけられる、事務員の山村賢さんだ。

どうやらこの一件はもプロデューサーは知っているらしく苦い顔をしているのが見て取れた、だが事務員である山村さんは別らしく戸惑いの表情がありありと読み取れる表情をしている。

 

まぁいきなりこんな話展開されたらこうもなるわな、俺だったらこんな話目の前で展開されたら気になって人間観察と評して盗み聞ぎを始める事だろう。(あくまでも俺がそいつらと関わりがないってのが味噌だぞ)

 

「てゆうか八幡、おめぇなんで逆にそんな冷静なんだよ、お前もろ被害者だぜ?トラウマぐらいできててもおかしくねぇだろ」

 

「いやぁそれはその...時間が過ぎるの待てば終わる問題だったし早々に聞き流してたんでそこまで心理的なダメージは無いっすね」

 

「メンタル鬼みてぇに強いな、なんでそんなに達観してんだよ怖ぇよ」

 

「俺のメンタルなんてちょっとした事で直ぐに傷つくザコメンタルですよ」

 

なんなら布団に潜って夜中に1人で叫ぶまである。

 

「ええっ!?そ、そんな事があったんですか!?比企谷くん大丈夫なんですか!」

 

「山村さん大丈夫ですって、ほら何とも無いですから...」

 

どうやら山村さんが真丈さんから事情を聴き終わったらしく驚きの声を上げるとともに心配そうに声をかけてきた、やたらベタベタとしてくるので俺はやんわりとそれを拒否しながら無事だとゆう趣旨を伝える。

 

神波さんがあいつらに手を出されるまでに乱入してくれたからフィジカル面は本当になんら問題は無いんだよな。

 

「許せませんね!プロデューサーさん、事務所から正式に抗議の電話をかけましょう!」

 

「賢さん賢さん、もう終わってるぜ、終わったからこうなってんだからよ」

 

「へ?あ、そっかぁ...」

 

憤怒の表情を浮かべて激高する山村さんに神波さんがそれとなく宥めて顎でテレビをしゃくる、テレビはまだあいつらの事に関しての報道が流れており今はみんなの反応は__みたいな事をやっている。

内容は先ほどみたニュースサイトのコメント欄と同じようにかなり激しい誹謗中傷も紹介されている、こんな真昼間にそんな物紹介して大丈夫なのか。

 

「まぁ色々あったけれどももう安心して大丈夫さ、二度とこうゆう事態が起こらないように私が思いつく限りの処置と対策はやってきたし彼らのシーンを全面的にカットして放送する意外はなんら問題なく放送されるみたいだよ」

 

「え、真丈さんそんな事まで済ませて来たんですか?...でもこうゆう事って時間が凄いかかると思うんですが」

 

「あぁ実は天道さんにも事情を説明して協力してもらってね...弁護士って凄いね、お陰で円滑に話を進める事が出来たよ」

 

うわぁ悪い大人の顔をしていらっしゃる...容姿が整ってる為か増しで怖く見えるな。

 

なんで天道さん?...あぁそういえば天道さんって元弁護士だっけ、そら話がスムーズに進むわけだ。

 

俺が1人そんな事を思っているとさっきから黙っていたプロデューサーから事務所の外に出るように施される、俺は湯飲みに残っていたお茶を全て飲み干した後それに従い俺は事務所のドアを開けて外に出た。

 

...まぁなんでこう外に出ることになったのか大体予想はつくが。

 

「すいません比企谷さん、そのトラブルについてお話が...」

 

「...あぁやっぱりですか?」

 

「未成年である比企谷さんを極力巻き込みたくは無かったのですが、事件の被害者となると流石にどうしても...」

 

申し訳ありませんとプロデューサーに頭を下げられる、俺は本日何回目かわからないため息を吐いた。

 

まぁ流石にこれだけの大事の当事者ともなれば報告されてはい終わりでは済まないだろうといゆう事は容易に想像出来ていた、これから事情聴取ってやつだろうか。

 

そんな俺の予想は当たっていたようで、色んなとこまでいかなければならないらしく車で順番に巡っていくそうだ。

恐らくは数時間は優にかかるだろうという事が瞬時に分かってしまい思わず頭を軽く抱えた。

 

グッバイ、俺の残りの休日...

 

そんな事を胸に秘めながらプロデューサーの誘導に従って車に乗り込み事務所を後にした。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「重ね重ね申し訳ありません比企谷さん、こんなにお時間を取らせてしまって...」

 

「もう良いですよプロデューサーさん、1、2時間で終わるだなんてこっちも思って無かったですし」

 

車の運転中にもう太陽も沈みかけて薄暗い社内の中で本日何回目かわからない謝罪の言葉を俺にかけてくるがそれを俺はもう良いんだと返答した。

 

さっきはあの収録の日に俺を軽く叱った事も謝罪してきたがそれに関しては強くこっちが反対した。

 

プロデューサーは事前に一緒についていこうかと聞いたにも関わらずそれを覚えているから良いと言って断った挙句に最終的には道に迷ってましたと言って時間ギリギリに帰ってきたのは他でもない俺なのだ。

 

大口叩いてそんな体たらくで帰って来たらが怒るのが普通だろう、俺だったら怒鳴り散らしはしないが心の中で切れ散らかす自信がある。

プロデューサーの立場からすれば怒るのが普通の対応なのだ、何にもプロデューサーは悪くない。

 

「後の処理は僕の方でしておきますのでこのまま家までお送りいたします、なにか事務所の方に忘れ物、持って帰りたい物等はございますか?」

 

「いや大丈夫です、このまま家までお願いします」

 

「わかりました、なるべく早く到着出来るようにしますね」

 

事務所を出てそれなりに時間が経っている為かプロデューサーからこのまま送ってくれるといゆう提案をありがたく頂戴する、事務所を出てからも時計の針はもう4周はしているだろう、かなり遅い時間だから世の部活帰りの学生や仕事終わりのサラリーマン達で今電車は混みまくっているだろうからありがたい事だ。

 

プロデューサーとの会話をそこで一旦終了しお互いに無言になり、横目にプロデューサーが運転してるのを確認した後俺は助手席から窓越しに外をボーッと眺め始める。

 

この車が動く事によって次々と変わる景色にマ〇オを出現させて脳内で動かす遊びって結構楽しかったりするんだよな、え、普通はしない?ほっとけ。

 

〇リオを脳内で召喚して動かす遊びに興じているとプロデューサーの声が聞こえてきた、俺に話しかけている訳ではなさそうだ、恐らく独り言だろう。

 

「次のBeitの仕事はこうで...それが終わったら書類を...」

 

どうやら運転中で愛用している手帳が開けないためか口で発する事でスケジュールの確認をしているようだ、全くご苦労様ってやつだ、だがプロデューサーの様子を良く見るとどこか顔色が悪いように見える。

 

...そういえばプロデューサーが休んでるの見たこと無いんですけど、ほぼ毎日事務所へと向かってるけど絶対一回は合うよな...もしかして休んでいない?おいおい労働基準法どこいったよ、仕事を取ってきてくれるのはすげぇありがたいけどいい加減プロデューサー休んだ方がいいんじゃないか。

 

そうこうしている内に俺の家の前まで到着しプロデューサーに礼をしながら助手席のドアを開けて車から降りる、愛しの我が家の目の前にやっと着いたこともあってかここに来てようやく達成感のようなもの感じる。

 

「それでは比企谷さんお疲れ様です、明日からまた頑張りましょうね」

 

「お疲れ様です...あの、プロデューサー少しいいですか?」

 

「?...はい何でしょうか?」

 

俺の呼びかけにプロデューサーが怪訝そうな顔をして顔をのぞかせる...うん、やっぱり顔色が普通じゃない。

 

「プロデューサーさんってちゃんと休んでるんですか?顔色、普通じゃないですけど」

 

「え、お休みですか?すいませんここ最近中々取れていなくて...ではお言葉に甘えまして今の仕事が一段落つきましたらお休みを取らせていただきますね」

 

「倒れでもしたら元も子もないと思うんで...じゃそれだけです、お疲れ様でした」

 

「はい、お疲れ様でした」

 

プロデューサーはいつもの柔らかい笑顔を浮かべると車のエンジンを再起動させ走り去っていった、俺はそれを一通り見届けると俺も家に入るべく踵を返す。

 

伝えようとしたことは伝えたんだ、今日は色々あって疲れた事だしさっさとお布団の中で眠らせて貰うとしよう。

 

 

...なぜだ?良くわからねぇけど胸騒ぎのような感じがする

 

 

結局、俺は実際に眠りにつくまでこの正体不明の胸騒ぎは消えなかった。

 

 

だが、この胸騒ぎの正体はすぐにわかることになった。

 

 

朝起きてスマホのメールを確認するとこんなメッセージが入っていたからだ。

 

 

”プロデューサーが倒れた”と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかかでしたでしょうか、正直ライブパートの描写がとても難しくつたない物になってしまわれたのではにかとひやひやしております。

次回!!やっとWがでます!悠介、享介...おそくなってごめんよ...

感想、評価絶賛募集中です、感想くれる度に作者がガッツポーズをして喜びますので是非お気軽に感想をお書きくだしませ。

あと活動報告の方で軽いアンケートを実施しておりますのでよろしければそちらの方もよろしくお願いします

それでは次回もお楽しみに


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第十五話

お、お久しぶりです…
なんか面倒くさくなって放置してたら最終更新日から1年たってました…一応かけたので久しぶりに更新です


「なんでだよ…なんでなんだよ!!」

 

悲痛な慟哭が病室内に響き渡る。

 

「神波さん…」

 

その慟哭に呼応する様にベッドの上で横たわっている男は糸の如き細い声を挙げた。

 

「約束、約束したじゃねぇか!俺をトップアイドルにするって!」

 

「…申し訳ありません」

 

叫びを挙げた男は心底この現状を受け入れたく無いとばかりに嘆く、更にそれに反比例するように細い声がまた挙がる。

まるで、映画のワンシーンの様だ、と俺は少しばかり思った。

…B級映画の、だがな。

 

「あの言葉は嘘だったのかよ!信じて頑張ってきた俺の努力はどうなっちまうってんだよ…!」

 

ああ、いい加減このやり取りを見るのも疲れてきた。

 

「糞、糞、糞ったれ…!なんで世の中どうでも良い奴が生きて、あんたみてぇな男は長生き出来ねぇんだ!」

 

「…ねぇ、神波さん」

 

「…んだよ」

 

いやぁ真に迫る演技ですね、アイドルじゃなくて俳優でも結構上目指せるんじゃないですか?

 

「もし綺麗な花畑に来たとしましょう、ふと、折角だから花でも摘んで帰ろうと思いました、その時、神波さんならどんな花を摘んで帰りますか?」

 

「…1番綺麗な花だな」

 

「つまりはそう言う事です」

 

「ち、畜生…!!」

 

…そろそろ、これを見るのも止めた方が良いんじゃないか?個室とはいえそこそこうるさいぞ。

 

「ねぇ2人とも」

 

突然の第三者の声に、シリアスな雰囲気を醸し出していた2人が反応する。

おお!この状況を打破すべく、救世主(メシア)が現れたようだ。

第三者である男は2人を少し見渡すように間を置くと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこら辺で辞めにしないかい?その闘病ごっこ」

 

「え〜折角盛り上がって来てたのによ…悪いなプロデューサー、付き合わせてよ」

 

「いえいえ、私も楽しかったですから」

 

真丈さんの鶴の一声でようやく映画のワンシーンタイム(さっきまでの茶番)は終わったようだ。

いや、なっっがいんだよ、この茶番、もう30分過ぎてんぞ。

 

「いやぁ2人とも名演技だったねぇ、プロの指導を本気で受ければ俳優だって夢じゃないんじゃない?」

 

「お!やっぱそう思う?くぅ〜俺ってただでさえ歌って踊れるスペックしてる上に演技の才能まであるなんてなぁ…プロデューサー、こう言う路線の仕事もバンバン取って来てくれよ」

 

「はい!機会があれば是非!」

 

「マジかよ!期待しとくぜ!…おい、八幡何黙ってんだ、どうだったよこの俺の演技は!」

 

「いや糞長ぇなとしか」

 

「演技についての感想0(ゼロ)!?」

 

何を図々しく感想なんて求めてんだよこの人。

いやマジで実際に長かったんだぞ、さっきまでのシーンだけならまだ良かった、あれだけだったなら神波さんの演技についての感想もまぁそこそこ真面目には返してたと思う。

だが、実際に行ったのはあれとは違うシチュエーションで4回、納得いかなくて断念した回数が多分5回、んでもって今やってたのも加えると丁度10回になる。

演技についての感想を聞く前に、こんな長い茶番を何も言わずに付き合ってた俺と真丈さんをまず褒めるべきだろ。

 

「ちぇー、こんなシチュエーション滅多に無いんだから気合い入れたのにさぁ」

 

「気合い入れるのならアイドル活動の方でお願いします」

 

真面目に神波さんの身体的能力面では尊敬してるからぼっちにはキツいノリを降ってきたり、実行するのは勘弁して欲しい。

…今回の事に関してはそれに乗ったプロデューサーもプロデューサーだけどな。

 

「しかし、倒れたっていうから結構心配してたんだけど…まさか、ただの盲腸とはねぇ」

 

「そうそう!俺なんてプロデューサーがぶっ倒れたって聞いてたからさ、すっげぇ大騒ぎしちまったぜ!」

 

「その大騒ぎに迷惑を被った人間がここにいるんですがそれは」

 

「うっ…ご、ごめんて…」

 

ワザとらしく嫌味を言うと神波さんから謝罪の言葉が帰ってくる、俺はそれを聞いてはぁ、とため息を吐いた。

 

…実はと言うと、俺が先日プロデューサーが倒れたという内容の連絡をよこして来たのが何を隠そうさっきまで俳優気取りでノリノリで演じていたこの神波さんだ。

いやまじで驚いたんだぞ、朝携帯みたら鬼のように神波さんから着信あったら何事かと思いきやプロデューサーが倒れたってデカデカと書いてたんだからな。

まさかつい数時間前まで会ってた人間が倒れた、なんて経験はした事ない上にこれでもかってぐらい誇張した言い方で書いてたもんだから飛び起きて布団から落ちそうになったんだぞ、俺の至福の二度寝タイムを返せ。

 

 

「まぁまぁ比企谷君、そう意地悪せずに」

 

「…………わかってますよ」

 

「凄い間があるね!?」

 

真丈さんの慰めに渋々と言った感じで了承する…と言っても正直もう特に気にしてはないけどな、プロデューサーも無事みたいだし。

 

「本当にご迷惑をお掛けしてすいません、皆さんこれからが大切な時期だというのに…」

 

「気にすんなってプロデューサー、暇になったら自主練でもすっからさ」

 

「それにプロデューサーが予め取ってきてくれてる仕事も何件かありますしね、そう気に病むことじゃないっす」

 

プロデューサーが申し訳無さそうにしているがそれでもしっかりと仕事の予定がある様に調整してるのは流石だと思う、俺と別れる前もスケジュール確認とか色々やってたもんな。

盲腸で入院って形にはなるが、休んでもバチは当たりはしないだろう。

 

「まぁそういう事だから大丈夫だよプロデューサーさん、私達はそろそろお暇させていただくつもりだけど…他に何か連絡事項はあるかい?」

 

「いえ、先程話した内容で大丈夫です、お忙しい中お時間割いていただけてありがとうございます」

 

「だから気にすんなって、真面目だなぁ」

 

どこまでも腰が低いプロデューサーに神波さんが呆れたように呟く、偉そうにしろとまでは言わないがここまで腰が低いとなんだか申し訳なくなってくるぞ。

手術も無事に成功したみたいだし、今はゆっくり休んで下さい。

 

 

 

 

 

プロデューサーが入院している個室から退室すると、一通りの挨拶を済ます。

 

「じゃあここに来る前のも言ったけど私は用事があるから失礼するよ」

 

「うっす、了解です」

 

「右に同じく」

 

「うん、ではまた事務所で会おうか、またね」

 

バイバイ、と手を振って真丈さんは俺達と別れる、それに合わして俺達も振り返した。

…しかし分かってはいるがほんとイケメンだと人生得だな、ま、真丈さんレベルとなるとあんまりお目にかかれないけどな、笑顔を振り向いただけでそこらにいるナースさん見惚れてんぞ・・・あ、声かけられた。

 

しかもさらりと受け流した!どうやら声をかけられるのには慣れているらしい、畜生、もげればいいのに。

 

にしても、アイドルとしての知名度が全然無いの現在ですらこれなのに売れて有名にでもなったらどうなんの?大丈夫?過激派とかに暗殺とかされない?ユニットメンバーとして真面目に心配なんですけど。

 

「んじゃまぁ、俺達も行きますかね」

 

「うっす」

 

そんな俺の心情とは全く関係無い神波さんの言葉に短くだが相槌を返す、他に入院している知り合いがいる訳でもないし、プロデューサーのお見舞いが済んだのならもうこの病院に残る必要性は皆無だ、とっとと帰らせて貰うとしよう。

 

「あ、見てみろよ」

 

「?……どうしたんです?」

 

真丈さんと別れてすぐの突き当たりの廊下での事だった。

 

神波さんの言葉に振り返る、早く帰ろうとした矢先に…なんだってんだ?

ほれ、と神波さんが顎でしゃくる。

視線をその方向に向けて見れば…子供?

 

「サッカーして遊んでるぜ、楽しそうだよな」

 

「…はぁ」

 

神波さんの言う通り、窓の外から見える光景からは中庭と思われるスペースで小学校低学年ぐらいか?それくらいの年齢の子供達がサッカーをしている様子が見えた。

 

「つーか、この病院マジでデケェな、病院もデカけりゃ中庭もデケェ」

 

「そうっすね」

 

「…なんだよ連れねぇな、もうちっと良いリアクション返してくれてもいいんじゃねぇの?」

 

「ぼっちにそんな高等技術求めないで下さい」

 

良いリアクションってなんだよ、さっぱりわからないわ。

てか、俺にそんな話題振られてもどう反応すれば良いって話だろ、元気ですね!とでも返せば良いのか?

 

まぁ病院が広いってのは同意する、流石都内。

 

「ほら、なんかあーいうの見るとガキだった頃思い出してさ、懐かしーとか思ったりしねぇ?」

 

「いや、全く」

 

えー?なんて困惑した反応が返ってくるが思わないもんはしょうがない、強いて俺のサッカーしてた記憶なんてそれこそ小学生の時に数合わせの時に入れらた時ぐらいしか記憶に無いぞ。

 

…確か比企谷菌ってあだ名が出始めたのもその頃だっけ、バリアすら効かねぇってどんだけ強力だったんだよ比企谷菌。

 

「楽しかったなー、小坊の時は良くグラウンド出て遊んだわ」

 

「でしょうね、その成りでインドア派だったら驚きです」

 

「ケハハハハッ、完全にアウトドア派だったぜ」

 

予想どうり、だな。

 

神波さんが教室で大人しく読書しているイメージとか現段階では持てそうに無いな、今後も持てそうに無いけど。

 

ふと、神波さんが物思いに吹ける様な表情になる。

 

「……思えばあん時ぐらいだったか」

 

「何がです?」

 

「ん?あぁ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お袋に捨てられた時」

 

「…」

 

「…」

 

沈黙、静寂が一瞬でこの場を支配する。

 

「あ、悪ぃ、…気にすんな」

 

「…わかりました」

 

そんな神波さんの言う通り、気にしない事に決めた。

…正直気にならないと言えば嘘になるが、どうも俺が所属している315プロダクションは所謂、"訳あり"の人達が多い。

 

なんでアイドルなんてやってんの?と言いたくなる経歴の持ち主もいるが、必要以上に過去には触れない、そんな暗黙の了解がどこかあの事務所にはある。

 

だからといって、あの事務所が暗いとかそんなんは全く無いんだけどな、寧ろ明るすぎてビビるレベル、俺がもし本当にゾンビだったらとっくに浄化されてる。

 

あれ、明るい、というより日光で消えるのはドラキュラだったか。

にしてはトマト嫌いなんだよな俺。

 

「あ、そう言えば八幡」

 

「なんですか?」

 

さっきの話も終わって帰路につこうと歩いていると思い出したかのように神波さんが呼び止めた。

今度はいったい何だ?……普通に嫌な予感しかしないぞ。

 

コホン、と咳払いをした。

 

「悪りぃんだけどさ、ちょっとばかしk「お金なら貸しませんよ」おい!まだ言ってる途中だろ!」

 

…はぁ、こんな事だろうと思った、さっきまでのシリアスな雰囲気は何処行ったんだか…言ってる途中だとかほざいてるけど動揺しまくってるしもし違ったとしても中らずと雖も遠からずってとこだろ、神波さん分かり易いんだよなぁ。

 

「違うんですか?」

 

「うっ、あー…まぁ違わないってゆーか…」

 

「…お金関係の事か、"はい"か"いいえ"で答えて下さい」

 

「…はい」

 

俺の問いかけに目を少し反らしながら肯定の返事を返した。

 

やっぱり金じゃねーか。

 

そんな俺の呆れた様な視線が堪えたのかばつが悪い様に顔をしかめると直ぐに真剣な表情に切り替わる、お、次はどんな茶番が始まるんだ?

 

もし一人劇場紛いな事をし始めたら即座に無視して帰ってやろう。

 

え?酷い?知るか、時間は有限なんだからな。

 

「いいか?まず、俺、22、大人、お前、17、未成年、クソガキ、ここまではオーケー?」

 

「…はい」

 

「俺は八幡より4年長く生きてる、4年分の人生においての経験の差がある訳だ…これもオーケー?」

 

「はぁ」

 

「つ・ま・りだ、良識ある大人である俺が、クソガキであるお前に借金紛いの事なんざする訳ねーだろって事よ」

 

「ふーん」

 

…色々と言いたい事はあるが、神波さんの言い分には一理ある。

普段はあんなでも俺より4年もの歳月を重ねた大人、どうせ神波さんだからといって禄でもない事だろうとどこかで決めつけていたのだろう、人を色眼鏡で見るなんて、俺もまだまだだったみたいだな。

 

「わかりました、じゃあ何なんですか?」

 

「おう、俺に金くれや」

 

「貸すのよりずっと悪いじゃねーか!!」

 

前言撤回、やっぱ禄でもねーし、糞だわ。

 

「だから"悪りぃけど"つったろ?」

 

「悪過ぎるんだよ!何ちゃっかりタダで貰おうとしてんだ!!」

 

そういやさっき金関係ですか?→はい、って答えたばっかじゃねーか!一瞬でも期待した俺が馬鹿だった!!

 

「これのど・こ・が、良識ある大人なんですか?」

 

「…あのなぁ、高校生にはあんまり馴染み無いだろうから教えてやっけど借金して首が回らなくなって大変な目にあう奴なんざ珍しくないんだぜ?」

 

フッ、と自慢げに鼻息を鳴らす。

 

「だから借金を作ってそうならない為に、最初から"くれ"って言っけば問題無いだろ?」

 

「大有りだよ!大問題だわ!!」

 

何、「俺、頭良いだろ?」みたいな顔してんだよ、スマホ(カバー付き)ぶつけるぞ。

普段のキャラなぞ知ったこっちゃ無いと言わんばかりに俺は叫ぶ、一見まともな事言ってるように見えるけどクズの考えそのものだ。

 

「はぁ…一応聞きますが、くれって具体的にどれくらい欲しいんですか?」

 

とりあえずクズ発言は100歩…1000歩…いや10000歩ぐらい、本当は譲りたくないけど置いといて、だ。

値段によっては考えてやらん事もない、もしかしたら自販機でジュース買いたいから100円くれ、ってのもまだ可能性としてはある訳だからな。

 

「5万くらい!」

 

「帰ります」

 

一瞬でも期待した俺が馬鹿だったわ(2回目)

 

「待て!待ってくれっ!今月家賃分しか無くてマジでやばいんだ!頼む!待ってくれ!」

 

「それ俺に関係ないですし」

 

「あるだろ!?おんなじユニットじゃんか!」

 

「あれ?…ちょっと何言ってるかわかんないですね」

 

「あー!はちまーん!!」

 

これ以上はハッキリ言って時間の無駄だ、材木座みたいになってる神波さんは置いといて今度こそ帰らせて貰おう。

 

「わかった!俺が我儘過ぎたってのは認める!今度は等価交換といこうぜ!」

 

「…何です?」

 

等価交換、その魅力的なフレーズにもう一回話を聞いてあげることにした。

5万に見合うだけの条件を本当に提示してくれたのなら金はだそう、丁度この前給料入ったしな。

 

…さっきは関係無いなんて冷たい事を言ったが、あの絡まれた時に助けてくれた恩は未だにちゃんと感じてる、出来れば俺だって協力はしたい。

 

絶対に調子に乗るから言わないけど、一応尊敬はしてるんだ。

 

「いいか、八幡、よく聞け」

 

「…」

 

正に苦渋の顔、譲りたくは無いがこうなっては仕方ない。

そんな覚悟を感じる顔だ、さてさて、今度こそ…

 

「今日から一か月、弁当買ったら俺のおかずを…お前に一個やる!」

 

「話は終わりだ」

 

今度こそ交渉は決裂した。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

最早第二の材木座と化した神波さんをガン無視し、更に巻く為に病院内をうろつくこと早十数分。

 

やっべ、ここどこだ、完全に迷ったぞ、意外と広かったわこの病院。

 

やっぱり流石は都内と言うべきか、予想以上の面積の大きさに迷ったみたいだ……アイドルになってから迷うこと多くない?

 

院内の地図が設置されてれば助かるんだが、どうやら見渡す限りこの周辺には無さそうだ。

 

…人に話しかけて聞けばいいだろって思ったそこの君、俺にはハードルが高すぎて無理だと言う事を察してくれ、アイドルになっても俺がコミ障である事には変わりないんだからな。

 

そうこう行ってる内に一旦外に出てみる、ここは…中庭?やっべ、俺一周回って戻ってたのかよ、どんだけ彷徨ってたんだ。

考えなしに神波さんを巻く事だけを優先させ過ぎた結果がこれか…

 

って、おい!!

 

「うおっ!?」

 

俺がボーッと考えていると結構なスピードでボールが飛んでくる、顔付近に飛んで来たそれを寸でキャッチしてみせた。

 

あっぶねぇ、これレッスンで体動かして無かったら顔面に直撃だったんじゃないか?今はアイドルなんだからこんな顔だって商売道具なんだぞ。

 

「あー!ボールが!」

 

「お兄ちゃんごめんなさいー!」

 

「ボール返してー!」

 

「え?…あぁ、ボールね」

 

どうやら事故でこっちにボールが飛んで来てしまった様だな、故意的に当てに来たとは考え難いし、難しく考えずにさっさとボールを返してしまうか。

 

咄嗟にキャッチしてみせたボールを子供達に返そうとする為に近づくと、ひっ、と何処か怯えたような声を誰かが出した。

 

え?何その反応、傷付くんですけど。

 

「ゾ、ゾンビだ…!」

 

「ほ、本当に居たんだ…!」

 

「おい、近寄るなよ!」

 

「そうだ!感染しちまうぜ!」

 

「いや…た、食べないで下さい…!」

 

 

 

…泣いていいっすか?

 

 

 

ボール返そうとしただけでこの仕打ちとか俺が何したの?目が腐ってるって?やかましいわ。

 

…最近はマシにはなってきてると思っていたが、どうやらまだまだ小さい子には刺激が強かったらしい、なんなんだよ俺の目、そろそろ危険物とかに指定されたりしない?

 

「おーい、どうしたの?ボール引っかかった?」

 

「あ、悠介にーちゃん!」

 

「こっち来ちゃダメだよ!」

 

「ゾンビがいるんだ!感染ったら大変だよ!」

 

お?そんなに大変って言うんだったら感染してやろうか?あんまり比企谷菌を舐めるなよ?あの無敵のバリアだって容易く貫通する強力な代物だ。

感染ったら最後、バイオハザード間違い無しだぜ!

 

 

…自分で言ってて悲しくなってきた。

 

 

子供達の様子が気になったのか、病人服を来た男の人が松葉杖を使って器用にこちらに寄ってくる。

どうやらこの子供達と遊んでいたらしい、見たところ俺と同年齢ぐらいだし子供達の誤解も解いてくれるだろう。

 

「えー?ゾンビなんている訳ない、じゃん……」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…嘘だろ?」

 

「おい」

 

俺の期待を返せ。

何困惑した表情してんだよ、ちゃんと否定してくれ、そろそろ本気で凹むぞ。

 

「悠介、一体何なのさ、ボール取りに行くくらいで…」

 

「きょ、享介!ちょ、ちょっと本物のゾンビがいるかも!」

 

「いや違えよ」

 

そうこうしてる内に2人目まで現れた、見た目は……双子?

 

呆れた様子で来た男の人は、この病人服の人と顔が瓜二つ…眼鏡を掛けているか、いないかという違いは有るものの、ドッペルゲンガーなんじゃ無いかと思んじゃ無いかと思うレベルで顔が似ている。

 

ここまで似てる双子とか何気に初めて見たかもしれん、真面目に眼鏡の有無でしか判別出来ないんだが…てか

 

なんなんだよ今日は!俺ってそんなに酷い目をしてるか!?ここまで言われるぐらいまでは酷くは無かった筈だぞ!

 

「何言ってんのさ、この人に失、礼………」

 

「…」

 

「…」

 

「…」

 

「…え、本物?」

 

「んな訳あるか!!」

 

本日二度目の咆哮、グッバイ、俺のクールキャラ。

 

容姿も似てれば反応も似てる、そんな瓜二つの不思議な2人

 

その2人からして連続でゾンビに間違えられる、それがこの双子、悠介と享介のファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




前回投稿から、一年以上たっているの本当に申し訳ございませんとしか言い様が無い…コホン、やっとWの2人が出せましたよ…といっても八幡とあったばかりですがね、この話からオリキャラ2人の身の回り関係の話をちょくちょく入れていくつもりではあります

さて…次更新するのはいつになるのやら…(不定期更新野郎)


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第十六話

うーん、ゴールデンウィーク中に上げようと思ってたのに…やっとこさ投稿です。


第二の材木座(神波狩人)と化した同僚の魔の手から逃れて早小一時間。

今日も今日とて、サンサンと輝く太陽の下のもと俺、比企谷八幡は_____

 

「よしっ!ゴールっ!!」

 

「あぁ!ねぇ、今の出てたでしょ!?」

 

「出てないな、これで3対1だぞ、がんばれ」

 

「くそっー!!」

 

……都内の某病院の中庭にてサッカーの審判をしていた。

いや、マジで俺何でこんな事になってんだろ?

 

ゴールを決められて苦し紛れに反則だと抗議してくる子供に対して公平な審判を下す。

もっと駄々をこねるかと一瞬思ったが、試合の回転率を優先したのかさっさと次の展開に行こうするべく、文句を言いながらもボールを再び追いかけ始めた。

 

「おーい!飲み物買って来たよー!」

 

「ついでにお菓子も買って来たから,

欲しい子は順番に並んでね」

 

「「「わぁーー!!」」」

 

と、やってる内に俺にこの仕事(子供達のお守り)を頼んだ張本人達が帰って来たようだ。

双子が発した魅力的なワード達にさっきまで夢中になってたサッカーボールをほっぽり出して2人に群がる。

 

一通り配り終わり、子供達は飲み物とお菓子を片手に休憩タイムとなったのか散らばって思い思いにお喋りの花を咲かし始めた。

 

その様子を確認すると、2人は俺に近づき………

 

「はい!お疲れ様!助かったぜ♪」

 

快活な笑顔で俺にもスポーツドリンクを差し入れた。

 

 

 

 

 

 

「へー!八幡ってアイドルやってるんだ!」

 

「アイドルって言ってもまだ卵ですけどね」

 

「でもさ、もうCDデビューも決まってるんでしょ?スゲーじゃん!」

 

先程俺に快活な笑顔を俺に向けた蒼井兄こと、蒼井悠介(あおいゆうすけ)の言葉にはぁ、と返事を返した。

 

あの最悪とも言えるファーストコンタクトからかなりの時間が経ったにも関わらず、俺は未だに家に帰らずにスポドリ片手に都内の某病院の中庭にてお喋りの花を咲かせている。

 

帰りてえ

 

だが、そんな心中とは裏腹に、会話は続く。

 

「…正直意外だったな、アイドルなんて予想だにして無かったよ」

 

「多分、俺がそっちと同じ立場でも予想出来てないと思うので全然大丈夫っす」

 

多分、つーか絶対だろうけどな。

 

「ははは、気遣いありがとう、アイドル活動、応援するね」

 

「おう、あ、じゃなくて、ありがとうございます…」

 

日本語下手かよ、いつもの調子は何処行った現代文学年3位、唯の社交辞令だろうがよ。

 

蒼井弟こと、蒼井享介(あおいきょうすけ)の言葉にもちゃんとフォローを入れる、俺の見た目で初見の印象がアイドルに見えたと言うのならば眼科を勧めるレベルだ。

 

ほらそこ、自分で言ってて悲しくないのかなんて思わない、そんなの俺が1番わかってるよ。

 

…はぁ、何故この2人、もとい双子と話している状況になったかと説明すると少し時間を遡る事になる、まぁ出来るだけ短く纏めるさ。

 

どうやら、子供達がやっていた試合(ゲーム)がもう終了間近だったらしいのだが、そこで思わぬハプニング(俺にボールがぶつかりそうになる)が起こったことでそこで試合が子供達の中でそのまま流れてしまったらしい、いや、インパクト強すぎだろ、そんなに酷いか俺の目は。

 

消化不良となった子供達の為に、差し入れを買おうと思ったこの双子こと蒼井兄弟は俺に少しの間だけ面倒を見て欲しいというお願いを受けて今の今まで審判役を務めていたのだ。

 

…拒否しても良かったんだが、邪魔しちまったのは事実だしな。

 

んでもって、先程休憩タイムとなっていた子供達の元に丁度良いタイミングで親御さん達が来て、一通り自分たちの面倒見てくれていた、この双子、蒼井悠介と蒼井享介にお礼を、言って帰って行ってしまったのだ。

 

それで、手持ちぶたさになったこの双子に話しかけられ、今に至るって訳だ。

 

え?これで長い?これくらいで長いとか言ってたら一生文庫本読めねぇぞ。

 

・子供達帰る

・双子暇になる

・流れで双子、俺に話しかける

・中庭でお喋りタイム←今ここ

 

これなら大丈夫だろ、まぁ、俺もこんなにこの病院にいる予定じゃ無かったんだけどな、本来なら今頃電車の中で自宅目指して体を揺らしてた筈だ。

 

帰りてえ

 

「そんなに硬い口調とか良いって!気楽に喋ってよ!」

 

「いや、そういう訳にも…」

 

んな、ぼっちには厳しいハードルを…

 

「んー…八幡今いくつ?」

 

「…今年で18です」

 

「じゃあ、同年齢(タメ)だ!だったら敬語は無し!オレの名前も悠介って呼んでくれよ!ね、享介もいいよな?」

 

「うん、俺も享介でいいよ、俺達相手にそんな硬くならなくていいからさ」

 

「あ、はい、じゃなくて、おう」

 

こ、コミュ力高ぇ…

出会って1時間も無い人間にそんなにフレンドリーになれるか?

 

え?これくらい普通?ナニソレハチマンシラナイ。

 

だが、この提案は俺にとって非常に魅力的だ。

俺は基本的に人名を呼ぶ時は名字呼びだが、この蒼井兄弟は双子という性質上どうしても名字呼びじゃややこしくなる。

蒼井呼びしてたらどっちも反応しちまうからどうしたもんかとこの2人と話してる時に、実はこっそり考えてはいたんだよな。

 

蒼井兄、蒼井弟なんて文末につけて呼ぶことも考えたが、余りにも回りくどいというか面倒臭い。

 

「あおいあに」は5文字だからまだしも、「あおいおとうと」になると怒涛の7文字に突入だ、話してる最中にゲシュタルト崩壊起こしそう。

 

ゆうすけ きょうすけ

 

うん、字数も普通だし呼びやすい、堅苦しい敬語も無しなんて有難い提案も貰ったし、ここは受け入れておこう。

 

「わかった、ま、よろしくな悠介、享介」

 

「おう!(うん)」

 

そう、この瓜二つの双子は俺に返事を返した。

 

「2人はいつもこんな事してるのか?」

 

「あぁ、サッカーのこと?うん、前にせがまれてね」

 

「オレも病院生活に退屈してたし、それに乗ったって訳♪」

 

「…せがまれた?一般人だろうに何でサッカーを見てくれなんてピンポイントなお願いしたんだか」

 

そんな俺の言葉に2人は少し驚いた顔をして、顔を見合わせる。

 

…え?なんか不味かったか?

 

「…ひょっとして八幡ってオレ達のこと知らない?」

 

「知らん」

 

そう言葉を返すとマジかーっと悠介が空を仰ぐ。

 

…察した、これ俺が知らないだけで有名人なパターンだろ。

ユニットメンバーの2人と同じ感じがするぞこれ。

 

「まぁ悠介、俺たちのことを知らないって事はまだまだ知名度が足りないってことじゃない?」

 

「…だよな、よーし!早く足直してまた2人で頑張ろうぜ!」

 

「うん!とーぜん!」

 

…家に帰ったら2人の名前をネット検索にかけてみるか…

 

そんな事をぼんやり、頭の中で考えた。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

バラエティ番組という物がある。

 

テレビを付けたら高確率で、芸人を始めとする様々な著名人達が出演して視聴者に笑いを提供する事を目的として作られてるアレだ。

 

今、俺はそんなバラエティ番組で______

 

『おっと!これは凄い!みるみる内にゲージが溜まっていくぞー!』

 

「ほらほらもっと走れ八幡!時間無くなっちまうぞ!!」

 

「わかって、ますよ!そんな事…!」

 

 

……ランニングマシンで神波さんと一緒に走っていた。

 

マシンにある手すりを握って神波さんと軽口を流しながらかなりのペースで並走する。

 

つか、これ速くねぇ?どう考えても全力疾走してなきゃ転ぶレベルの速さなんですけども。

 

「うーん…エンカ、エンカ……ポイントカードのことかい?」

 

ブーッ!!

 

「お、思ってたより難しいね…」

 

不正解のベルが鳴り響く。

それと同時に会場から笑い声が響いた。

 

「後もうちょい…!」

 

『どうやらゲージが溜まったようです!では、ここでヒントチャンス!どちらを指名しますか?しかし、2度続けて同じ人に指名は出来ません!』

 

「すまない比企谷君!お願いするよ!」

 

真丈さんの指名を受けた俺は走ったばかりで火照っている体を奮い立たせてヒントを出す。

 

エンカ、この意味をそのまま教えずに伝えるには……

 

 

「とある和製英語を省略した言葉です、エンカ、から始まる英単語から連想すれば意味は合うと思います」

 

「あぁ、英単語なのかい?…エンカ、encount!なるほど、誰かと会うって意味だね?これなら『○○(人名)とエンカした』という例文でも不自然では無い!」

 

『正解です!』

 

ピンポーン!

 

「よしっ」

 

「よっしゃーーーっ!!!」

 

今度は不正解では無く、正解のブザーが響き渡り、それに合わせて会場からも拍手が鳴り響いた。

 

真丈さんが安堵した様に声を出すのと、神波さんが喜びの声を上げるのはほぼ同じだった、神波さんうるせえ。

 

ま、それは置いといて、だ。

直接的に答えを教えるヒントは出しちゃいけないから伝わるか不安だったが心配は杞憂に終わったようだ。

 

 

…少し長くなってしまったが、今現在俺の所属しているユニット、Fantastic Dreamersはこんな感じの体育会系クイズ番組に出演している。

 

いや、クイズなんてインテリな要素あるんだから座ってやらせろよ。

…なんて愚痴があるのは心の中だけの秘密だ。

 

ここで一応ルールを纏めておこうと思う。

 

①ランダムで解答者と指令者、もとい走者に組み分けられる。

 

②クイズのジャンルは数問毎にランダムで切り替わり、解答者は制限時間内に答えを出さなければならない。

 

③わからない場合は走者が走ることによってゲージが溜まり、ゲージが溜まればヒントチャンス、解答者が走者を指名して問題の答えのヒントを得ることが出来る。

 

④ただし、指名を受けた走者は直接的な答えを教えるヒントを出してはならない、更に解答者はヒントを出す人を二回続けて指名する事は出来ない。

 

⑤以上の条件を守りつつ、制限時間内にもっもと多く解答数が多いチームが勝ち。

 

というルールの番組だ。

 

クイズをする事で、ある程度の思考能力、走っている姿から運動能力、そして、チームで行うシステムの為、チームワークの高さも見れるとあって結構長年続いている人気番組で、俺達みたいな新人アイドルにとっての登竜門的な番組らしい。

 

話を聞くところによると、以前この番組に出演したS.E.Mの撮れ高が非常に良かったらしく、それからの伝でプロデューサーが再び営業を掛けて俺達にこの仕事を持ってきてくれたのだ。

 

マジであのプロデューサー、有能過ぎてびっくりする。

仕事を取って来てあるとは聞いてはいたが一か月以上も仕事があるようにスケジュールを調整してるとまでとは流石に思って無かった。

本当に何もんだよプロデューサー…

 

そんなこんなでこの番組の収録に参加している訳だが、このルールにしたがって決められた解答者は真丈さんで、必然的に残りの俺、神波さんが走者になったんだが、まぁ予想以上に凄かった。

 

何が凄いかっていえば勿論真丈さんのことだ、出題された問題の種類は多岐にわたり英単語、漢字といった基本的な事から法学、経済学と踏み込んだ学問、更には日常にも応用出来る雑学、という様にバラエティに富んだ物だが出題されて全て5秒以内には解答し、尚且つ全問正解という快挙を成し遂げたからだ。

 

解答者に決まったときは「まかせたまえ」なんていつもの調子で次々と問題を正解していく様はおもわず俺も唸ったものだ、正直凄すぎて俺と神波さんの出番が無かったのは気にしない、楽に勝てるにこしたことは無い。

 

そんな真丈さんの様子にスタジオにいる人達も驚いていたが、やはりというべきかとうとう解答につまるジャンルの問題が出てきてしまったそれが___

 

『「ワンチャン」という意味は俗に、どういう意味合いで使われているでしょうか? 例 (ワンチャン今日の宿題無いかもね)』

 

「わ、ワンチャン…?」

 

「神波さーん、走りますよーっと」

 

「うい」

 

若者言葉、それがさっきまで記述していた真丈さんの快進撃を止めた問題のジャンルだった。

 

俺や神波さんからすれば簡単な問題だが、日本にいた期間が少なく、ユニット中でも若干の世代のズレからなのかさっぱりわからない様でこうやってランニングマシーンを走り出すのも3回目だ。

 

ええ…?なんて困惑している真丈さんの顔を見ながらひたすら無心で足を動かす…やっぱこのマシン早くねぇ?設定ミスだろ。

 

そんな事をぼんやり考えていると真丈さんが困惑した表情を正解へと確信した確かな自信を持った表情に変わる。

 

お、これはさっきまでの…しめしめ、正解すればもう走らなくて済む…

 

あの聡明な真丈さんのことだ、若者言葉なんて基本的にからっぽの言語のしくみを理解したんだろう、表情からも自信がありありと浮かんでいる。

 

ヒントゲージを貯めるまでも無い、そう言わんばかりの表情から真丈さんは満を辞して言い放った!

 

「犬!!!」

 

ブーッ!!

 

『ハズレー!』

 

「ええっ!?」

 

爆笑

 

そう呼ぶにふさわしい今日1番の笑い声がスタジオ中に響いた。

確かに、確かに俗に言われてるけどさ……

 

「ケハハハハハッ!ケハハハハハハッ!!」

 

うるせえ。

 

横で大声で爆笑している神波さんの声をシャットアウトしながら俺は更に無心で足を動かした。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「ケハハハハハッ!!いやぁ傑作!傑作!!」

 

「もういいじゃないか、そろそろ勘弁してくれたまえ…」

 

「いや、くっ、ククク、アレは面白過ぎるだろ…」

 

「神波さん、思い出し笑いとか辞めといた方がいいっすよ」

 

「うん、そうだね、もっと公共の場の振る舞いという物をだね…」

 

「うへぇ、いきなり理論で責めて来やがった」

 

帰り道、収録が終わった俺たちは駅までの道を徒歩で歩いていた。

思い出し笑いもそうだが単純にしつこい、その話だすの局からの道を含めたらもう4回目だぞ。

 

1回目ぐらいは乗ったが、いつまでも同じ話で盛り上がれる程俺の脳は単純じゃ無い。

 

ちぇー、なんて言葉と共に神波さんはようやく口を閉じる、やれやれ、やっと終わったか。

 

「比企谷君、どうだった?今回の収録」

 

「え?俺ですか?…そうですね…」

 

落ち着くも束の間で真丈さんから新たに会話の火種を振られる、ただの世間話ぐらいなら適当にはぐらかしても良かったが…収録の感想ねぇ…

 

「なんつーか、ああいうクイズ番組ってこう、めちゃくちゃ段取りが決められててほぼヤラセみたいなもんだと思ってたので結構自由に動いて良いって言われたのは印象に残ってます」

 

「ああ、確かにそういう見方もあるか…」

 

「何だよ八幡、そんなもん気にしてたのか」

 

そんなもんと言われても俺にとっては気になってた箇所なんだからしょうがない。

 

「ヤラセ、ねぇ…実際ああいうのやって何が良いんだ?」

 

「まぁ、テレビ番組って言うのは"TVショー"だからね、ショーの為なら何だってするさ、例えばとあるレストランを取材する際にテレビ用に制服やら食器まで番組側が持参するなんてザラだよ?」

 

「うげぇ、知りたく無かったな…」

 

「ま、実際あの番組も相当やってたみたいだけどね…炎上しちゃって今はやってないらしいよ」

 

真丈さんからさらっと芸能界の闇の一端が語られるがまぁそんなもんだろうと寧ろ納得する。

テレビの情報を鵜呑みにするな、なんて良く言われるが本当にその通りで放送される情報なんざ番組スポンサーによって変わるからイマイチ信憑性は低い。

 

因みに信憑性の高さを順にすると、まず論文や学術誌、次にそれを基にした書籍に、次点で新聞、ネット、テレビ、んでもって最後に井戸端会議による情報ってなってるみたいだ、これ豆な。

 

ついでに、さっきの真丈さんの話には無かったが、台本に"ここで転がる"とか一見視聴者から見ればハプニングに見える様な物でも仕組まれたりするからマジで鵜呑みにしない方がいいぞ。

 

「あ、そういえば…」

 

「ん、何だい?」

 

「どうしました?」

 

そんなドス黒い闇の話の展開もそこそこに神波さんが思い出したかの様に声を上げる、何だろ、スケジュールの確認か?

 

「今日じゃね?俺たちが出た番組オンエアされんの」

 

「「…ああー」」

 

「反応うっっすいな、おい」

 

忘れてた、確かに今日の夜だったわ、後2時間ちょいぐらいだっけ?

 

「俺はばっちしダチとかに宣伝しまくったぜ、お前らは?」

 

「私は日本での知人が少ないからね…一応両親には伝えてあるよ」

 

「…部活仲間にちょろっと」

 

「おいおい、地味過ぎねぇ?」

 

地味だなんだ言われても真丈さんはよくわからないが俺は基本的に交友関係は狭いしな、アイドルになったってわざわざ周りに言いふらす必要も無いし特に俺からの宣伝はしてないな…雪ノ下とかにはバレたみたいだが…

 

そういやピエールも俺が出た番組を見るって言ってくれたし…へへっ、あんな天使が見てくれるって言うんならあんな目に遭いつつも頑張った甲斐があったもんだ…ん?天使、天使………って待てよ!?

 

 

 

戸塚だ!!元祖天使の戸塚には伝えてない!!

なんてこった畜生!!

 

俺と!した事が!戸塚に!アイドルやってる事を伝えてない!!

 

くっそ、どうする?今から実は俺アイドルやってるんだー!みたいなカミングアウトをするのは気が引けるがそんな事言ってる場合じゃない、戸塚に俺の晴れ舞台を見て貰う方が圧倒的に先決だ!

 

戸塚、ピエールという2人の天使に見守られる俺…もうこれは逆説的に俺は天界の住人と言っても過言では無いのではなかろうか。

やべぇな、ゾンビだの比企谷菌だの言われてたがとうとう浄化されてお空へと還る時が来ちまったみたいだな…

 

「…比企谷君、こう言っちゃなんだけどその…」

 

「おい、八幡そんなキメェ顔してんなって」

 

「あ、神波君!もう少しオブラートという物をだね…」

 

うるせえ、ほっとけ。

 

にしても番組が今日放送かぁ…十中八九小町が一緒に見よう見ようと言ってくるだろうが、わざわざリアルタイムで見たいという欲求も無いしな…どちからと言えばお布団に直行して睡眠したい欲求の方が強い。

自己承認欲求よりもしっかりと人類3大欲求の方へと考えが傾いている俺は実は相当人間が出来てるんじゃないだろうか。

 

え?寝言は寝て言え?おっけわかりました、今日は寝ます。

 

そんな事を頭の片隅で考えながら3人で帰路へ着く為に歩く。

何だかんだ言いつつもこの3人で話すときの空間は奉仕部とはまた違った心地良さがある気がするな。

 

さーて……小町にどう言い訳して寝ようかなぁ……

 

 

もう少しで身の回りで起こる騒ぎ等露知らずに俺は遂に到着した駅へのホームへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ちょっとした番外編挟む予定です。
多分皆さまお待ちかねだったんじゃないですかねぇ…ついにアイドル八幡が、原作俺ガイル勢の目に止まります!
書くキャラ一気に増えるだろうけど、頑張らなきゃ…!!

あ、後感想絶賛募集中でござます故よろしれければ…!
次回の更新も気長にお待ちください


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