転生したら平安時代だった件について (鬼怒藍落)
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平安時代~幼少期~
プロローグ


初めての転生物。気付いたら書いていた。


 

目が覚めたら平安時代だった件について、いきなりそんなこと言われても何言ってんだこいつってなるが、そう思った君達は正常だ。俺もそんなこと言われたら同様の反応すると思うし、そんな奴がいたら、離れて冷めた目で見守るのが吉だ。もちろん夢だと思ったが、こんな綺麗な建物見たことないし、どこかで習った寝殿造りの建物があるってことで判断したんだが……多分あってるはずだ。

 

 そんなこと言う俺の自己紹介でもしようとしたが、元の名前はノイズの様な物が聞こえて思い出す事が出来ない。でも一つ覚えてるのは最後に”Fate/Grand Order”というスマホアプリをプレイしていた事だ。その中で一番好きでそして聖杯を捧げた、茨木童子というキャラの水着が実装されると聞いて、狂喜乱舞しながらコンビニまで走り、魔法のカードを購入。その後、家で全て注ぎストーリーガチャで茨木童子を狙うというアホなことをした後から記憶がない。

 

 我ながら何をしているんだ?

 そこは、ピックアップ中に回せと思う人もいると思うが……言わないでくれ。ピックアップがあまり来ないんだ。

 まあ、そんなことは置いておこう。今の状況に比べたら些細なことだ。今、俺は朱殷の髪をした凄い美人の女の人に抱きかかえられている。

 そして俺は悟った……これ転生じゃん。

 

 

 □月■日 曜日は知らん 晴れ

 

 

 転生したと悟ってから三年が経った。赤ん坊時代? ははは殺すぞ、あれは黒歴史だ。聞いたら殺す慈悲はない。

 まあ筆を持つ事が出来るようになったの日記でも書こうと思う。

 

 そしてこの両親やばいと知った。この両親何か書きたいとショタボイスで言ったら、紙を簡単に渡してきたからだ。平安時代では紙は高価なはずだしそれを簡単に渡すなんて何者だよ、とか思ったが日記が書けるなら良しとしよう。細かい事は考えてはいけない。

 

 それでは今日あった事を書こうと思う。

 

 まぁ転生したらまずやる事と言ったら……転生特典の確認だ。だって。誰だって憧れるだろう? 無限の剣製とかゲイボルグとか無限の魔力とか。完全記憶能力とか。

 

 それでまずはFateの中でも屈指の中二能力の一つである無限の剣製を試そうと「投影開始」とか叫んでみたが何も出なかった。両親に見られ死にたくなった。その他にも試した見たが何も起こらず余計に虚しくなってもうやめる事にした。

 

 

 □月〇日 曜日?良い奴だったよ 晴れ

 

 今日は走ってみようと意気込んで外に出ようとしたら、父さんに止められた。

 

 夜にこっそり抜け出そうとしたはずなのに、何故か一瞬で見つかって変な笑いが出た。

 

 

 

 □月△日 曜日の霊圧が消えた! 晴れ

 

 そう言えば今の俺の名前を書いてなかったことに気付いた。今世での名前は空亡(そらなき)だ。この名前を聞いて両親は中二病?とか思ったがせっかくもらった名だ。大事にしよう。

 

 あと今日俺は、なんか頭重いなーとか、変な考えで頭を触ったら手が切れた。なんで? と思い家にある池で自分の顔を見ていみると頭に鋭利な一本の白い角と黒い二本の角が生えていた。

 その時に俺はマジで困惑して変な奇声を上げてしまった。両親がその声を聞きやってきてその姿を見てさらに奇声を上げた。

 

 いつも優しい母さんの頭には、俺の真ん中に生えているのと同じ鋭利な角が生えていて、父さんは俺に生えている残った角と同じ黒い角が生えていた。

 悲報、俺の両親が人間じゃなかった件について。そのまま俺は脳のキャパが超え気絶した。だってさ、三歳にこれはきついって情報が多すぎる。

 

 

 

 □月×日 

 

 朝起きると、両親に呼び出された。昨日の事で話があるらしい。覚悟はあまりできてない。少し怖いからだ。俺はかなり緊張しながら両親が居る部屋に向かった。

 

 今思うと、この家広いよね? とか何で他に人がいないの? とか両親は何者!?とか現実逃避をしていたが哀れになってきたので部屋に着いた時にはもうやめた。改めて自分の鋭利ではない黒い角を触る。うん、リアルの角だ。鬼とかについてる。正直中二病の頃は鬼になりたい!とかよく考えていたので冷静に考えると、とても嬉しくなった。これも多分現実逃避だったんだろう。

 

 そして俺はそんな気楽な考えで部屋に入り、そこには昨日の姿の両親が居た。両親の顔はいたって真面目で自分が馬鹿なことを考えていたことを知った。母さんの名は夜刀(やとう)。父さんの名は骸鬼(がいき)。かっこいい名前だな。人間じゃない気がするとか思っていたけど、マジで人間じゃないのは驚いた。

 

 母さんの前に座ると、真剣な顔つきで話し始める。俺の正体はどうやら半分鬼で、もう半分は神だったようだ。これを聞いた時、俺は頭が真っ白になった。自分が人間じゃないと分かっても他人に聞かされるとかなり違った。

 心のどこかでは自分は人間だと思っていたのだろう。それだけではなく神などと言われても理解できない。

 

 そんな俺を置いて母さんは話しを続ける。自分達の事を……母さんは夜刀神という神のようだ。夜刀神それは、その姿を見た者を一族諸共に滅ぼす神であるという事を聞いたことがある。あとは妖力が凄いらしい。どこかで調べて見つけた記憶がある。母さんが滅ぼすなんて、いつもの性格からは全く思いつかなかったが、嘘が嫌いな母さんのことだ、冗談でこんなことをいったりはしないだろう。

 それに父さんの種族は、骸童子というらしい。凄く中二心をくすぐるなこの名前。骸童子、その鬼は死者の骨を操ったり、無から様々な形の骨作れるらしい。強度は自由、収縮自在。どんな場所でも一瞬で作れるという物のようだ。

 つまり俺は半神半妖? 何だそれ初めて聞くぞ。そんな現実味の無い話を聞かされ俺は混乱したまま部屋に戻った。

 

 

 □月◇日 曜日?もうわからない。きっと晴れ

 

 俺は未だ混乱している。いきなり夜刀神とか骸童子とか言われても分からない。自分が人間じゃないことも現実味がないし、心のどこかでまだこれは夢だと思っていたからだ。

 

 夢から覚めたら水着茨木を引くんだってずっと思っていた……だけどこれは現実だ。

 ただ純粋に怖かった。目が覚めたら得体のしれない世界に居て、何もわからない。帰りたい。それが俺の中を支配した。

 

 いくら覚めろと願っても、帰らない。死ねば帰れると思って首でも絞めて死のうとしたけど、本能でそれはできない。元々凡人だった俺にそんな勇気はないからだ。 

 角で手を傷つけ、いくら血を流しても、すぐにそれは塞がってしまう。そこに両親が駆けつけてきた。多分だが俺の流した、血の匂いでも嗅いだのだろう。

 

 二人は何でこんな事をしたのか聞いてきた。慌てて、今まで見たことのない表情で怒っていた。俺はただ……二人が怖かった。人間じゃなく簡単に命を奪える力を持った二人。意味が分からない。理解したくない。俺は両親を拒絶した。化物と泣き喚き罵倒した。

 

 衝動のままに、ただただ感情を撒き散らした。自分の溜めていたものを全て……それなのに両親は受け入れてくれた。そんなの関係ないと、君は俺達の息子だよと。それを聞き俺は今世で初めて泣いた。年相応にさっきの恐怖から来る涙ではなく安堵の涙をひたすらに。

 

 俺は嬉しかった。こんなのでも息子でいいと知れて。俺はずっと怖かったのだ、元々この場は別の空亡の居場所だったはずなのにそれを奪ってしまったことが、だがそれは許された。

 

 二人は笑顔で言ってくれたこれで本当の家族になれたと。俺はそれが嬉しくて二人に抱きついた。

 

 これ以上は恥かしいので、やめにしよう。今回の日記はここまでだ。

 

 

 

 

 

 




魔王と勝利の方は来週中に絶対出します。待っていてください。


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日記2

あんまり進まなかった。空亡目標を決めるの巻


 ☆月○日 もはや曜日は分らない 雨

 

 あの出来事から二年が経った。正直、未だ父さんたちが少し怖いけど……関係は前よりずっといい物だと思う。俺は無意識に二人を避けていたことを自覚して二人と一緒に居る時間を増やした。母さんの語る話を聞き、父さんと稽古をする。そんな毎日を過ごしていた。

 父さんの稽古はきついが、せっかくのファンタジー世界だ、強くなってみたいと思う。

 それに、この体はスペックがやばい。ジャンプすれば屋根を超えらえるし、岩を殴ったら壊れるし、十メートルぐらいから落ちても無傷だし。半神半妖のスペックスゲー! てか半神半妖って言うのだるいから。これからは鬼蛇と呼ぶことにした。何故か凄くしっくりというか、しっぽりくるし、呼びやすい。鬼蛇、空亡。これらが俺の妖怪としての名だ。今決めた。

 

 そしてこの日は、俺の能力を試すことにした。母さん達から聞いた能力だと、俺の力は言霊と骸童子の骨を操る力らしい。言霊って聞いてよくわからなかったがそこは母さんが分かりやすく教えてくれた。

 

 言霊とは言、葉に妖力を込め言ったことを現実にする事が出来るらしい。いまいちよくわからなかったが実際に母さんは見せてくれた。母さんが燃えろと言ったら木が燃えたし、火よ消えろと言ったら火が消えた。ようするに劣化版空想具現化(マーブル・ファンタズム)らしい。かなりやばい。

 

 空想具現化とはアルクェイド・ブリュンスタッドや朱い月とか型月でのやばい奴ら筆頭が使う事が出来る能力で呼んで字の如く、空想を具現化する力だ。世界と己の意思を繋ぎ、世界を自分の思い描いた通りの環境に変貌させることができる。例えば砂漠を氷河に変えたりもできるんじゃないかな? 要するにヤバイ。それに近い能力が使えるってやばいよね。

 それだけじゃなくて父さんの力もある。あれ?俺、最強じゃん……そう思ったが、使えなきゃ意味がないしこの力に慢心したら、某慢心王みたいにになってしまう。それはやめといた方が良いのでいろいろ頑張ってみよう。能力だけに頼らず鍛錬とかね。

 

 ☆月△日 雨

 

 前の日記では色々頑張ると言ったが何をしようか考えてみたが何も思いつかなかった。なんか今日雨でやる気でないしー部屋でゴロゴロ過ごしていたそんな時、俺はあることを閃いた。そうだ一先ず目標を立てる事にしようと。何をやるにも目標を決めないとどうにもならない。例えば強くなるって決めても、どこまでかを決めなければ永遠に終わらないから。

 

 そして俺が決めた目標は神咒神威神楽の天魔みたいになることだ!

 

 だってかっこいいし、俺も――太・極――随神相――神咒神威!とかやってみたい。だってあれ一度見たらやりたくなるじゃん?無間焦熱とか無間叫喚とかのオサな技を使ってみたい。男なら誰でも目指すと思うんだ。

 母さんの種族は一番好きなキャラの天魔・夜刀の元の夜刀神だし丁度いいかもしれない。

 

 だが冷静に考えようどうやって言霊を鍛えるんだ?……よくある限界まで能力を使うって奴をやってみるか?なんかそれで総量上げている本とか読んだ気がするし。

  

 そうと決まれば早速実行!と意気込んで俺は妖力を初めて使おうとしたが……妖力ってなんだ?という事態が発生してしまった。本当に妖力って何だよ、明日母さんに聞いてみるか。今日は目標も決めたし明日また続きを書こう。

 

 

 ☆月×日 晴れ

 

 母さんに聞いたが、帰ってきた答えは「分かんない?」だった母さんが分からなければ誰が分かるんだろうか?

 あまり父さんはこういうの分からなそうだから聞くの避けてたけど、駄目もとで聞いてみたら「鍛錬だ!」と言われて何故か俺は刀を振っていた。そう気付いたら俺は刀を振っていたのだ。何で?とか、ワット?とかいろんな言葉が溢れてきたが、突っ込まなかった俺は偉いと思う。

 

 そして分かった事がある刀は重い。絶対に五歳児に持たせるものじゃないよ。馬鹿なのかな父さんは。いつもは色々頼りになるけどこういうことになると馬鹿って母さんが言ってたけどこういう事だったんだね。僕は一つ賢くなれたよ。

 

 それで父さん曰く俺には剣の才能があるらしい。マジで!?ってめっちゃ喜んでしまってその場で飛び跳ねたら父さんも一緒に喜んでくれた。それと壬生宗次郎も目指せるんじゃねとか思って目標が増えてしまった。

 

 

 剣の最初の目標は首飛ばしの颶風(かぜ)を覚える事にした。きっと出来るはずだ人間努力すれば何でもできるって言ってたし。もう人間じゃなかったけど。

 

 

 

 ☆月◇日

 

 今日こそ妖力の修行することにした。修行法はもう適当に集中して出してみる事。きっと出来るだろうという謎の確信があったのは覚えてる。この体になってからよく感が当たる気がするし、きっとできると思ったんだろう。

 うん、改めて考えるとほんと馬鹿じゃん、過去の自分を殴りたい。マウント取ってボコボコにしてやろう。

 

 それから俺はひたすら集中して自分の中にある妖力を探してみた。瞑想すればいいって前世の友達が言っていた気がするし信憑性は高いだろうと信じて……その後二時間程瞑想していたらなんか出た。

 

 すごく赤黒いオーラだってけどきっとこれが俺の妖力だろうと確信できた。俺の中のものだ。多分自分が一番理解できる。それにそれを出している間は安心できたのだ。心地が良かった。

 

 抑えていたものを全部出したような開放感。俺はそれがどのぐらい出せるのか気になってしまい。全力で出してみた。そうした瞬間胸の中で何かを縛られる感覚が俺を襲った。全身を鎖で拘束されながら体を四方に引っ張られる感じ。痛かった今生で初めて感じる痛み。前、自分を気付てけた時とは比べ物にならない程の激しい痛み。

 

 痛い、痛い、痛い、痛い、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!

 

 

 死にたくない。いやだ!

 

 そう思った俺は更に妖力を放出した。この痛みを紛らわすように、痛みを忘れるために。そしたら妖力が周りに広がり続け、辺り一面を染めた時。何かが砕ける音がした。

 その後、俺は気を失って気付いたら母さん達に看病せれていた。起きた途端にすごい怒られたかと思うと、母さんは泣き出してしまい罪悪感が……これからは気を付けて修行すると俺は誓った。もう母さんには泣いて欲しくないから。マザコンじゃないよ。ファザコンでもない。二人の事は大好きだけど。

 

 

 

 




次は一気に進むよ、水曜までには投稿する予定。待っててね。
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日記3

水曜日に出すといったな!残念連続投稿だ!ふはははは!ヒロイン登場。


 ∀月■日

 

 あれから二か月たって、首飛ばしの颶風、蠅声が出来るようになってしまった。

 自分でもあの技を完成させたときはびっくりしたぜ。完全に深夜テンションだったから、斬撃を飛ばすにはどうすればいいかとか考えながら刀を振っていたある日、技名を言えば行けるんじゃね!?という完全にアウトな思考になっていて。

 首飛ばしの颶風――蝿声とか叫んでいたら、無意識に言霊を使っていたらしく四百回目ぐらいから何かが飛ぶようになっていった。

 

 これが蝿声の感覚かと俺は悟ったその後は夕食の時間まで練習をしていた。

 練習をして俺は分かった事がある。俺の蝿声は込める妖力によって威力が変わるらしい。元々首飛ばしの颶風は込める殺気によって変わる技なんだが……殺気なんて元一般人の俺に分からないし、多分これでいいだろう。

 

 父さんにこの技を嬉しくて見せたら「こうか?」とかいって一発で真似された。死ぬほど悔しかった。

 慰めてくれたけど絶対逆効果だな。余計惨めになってこの日は不貞寝した。

 

 絶対に蝿声を完成させてやる。なんか忘れてる気がするけど……。

 

 

 ∀月○日

 

 寝たら忘れていたことを思い出した。俺の目標は天魔の技を使う事じゃん、言霊を鍛えないといけない。

 

 そういう事で今日は父さんに模擬戦をしてもらった。父さん曰く、戦えば何とかなるって即答したので、そうなのかと納得し戦うことになった。

 

 結果? そんなの分かるだろう?簡単に言うと、負けた。それも五秒で、その時の俺の顔は(゚∀。)みたいになってたと思う。 

 全く理解できなかった。真剣で蝿声を使って父さんに攻撃したら次の瞬間、俺は下から骨に突き上げられて、空を舞ったんだ。

 昇竜拳をくらったキャラの気持ちが理解できた。リアルでドウッフという声を上げながら俺は飛んで行ったのだ自分のことながら笑えてしまう。 

 

 手加減しようよ……父さんそんな考えのまま俺は横になっていったら、母さんが凄い妖力を放ちながら現れた。空間が震えるほどの妖力の圧、動けない。呼吸すらつらくなる。

 

 母さんが怖かった。いつもの怒り方とは違うもっと私、怒ってますよオーラを感じた。

 

 父さんは冷や汗をこれでもか!っていうくらいに流し、物凄い早口で言い訳をしていた。

 

 いつも父の姿では想像できないほどに弱々しい姿。離れていても俺でも恐怖するこのオーラを直接に浴びている父さんはどれほどの恐怖を感じているのだろうか?きっと俺なんかでは想像できなかっただろう。

 

 母さんは言い訳する父さんを置いてたった一言だけ言った。

 

「埋まれ」

 

 その一言で父さんは地面に埋まり二日間放置されていた。

 

 この家で一番強いのは母さんと知った日だった。

 

 

 

 ∀月△日

 

 父さんが今日は知り合いとその子供が来るから、鍛錬するなよと言われて、暇だから瞑想することにして。一時間程瞑想していたら、不意に誰に肩を叩かれた。

 

 せっかく久しぶりに瞑想してたのに誰だよ? とか思って横を見たら角の生えた金髪の少女が居た。

 

 ていうか、ばらきーだった。

 

 Fate/Grand Orderの時より背が低く俺と同じぐらいの歳だと思う。

 

 その時の俺は一周回って冷静になっているが、日記を書いている今凄い動揺している。大好きな茨木童子に会う事が出来たんだぞ、やばいだろ。

 

 茨木の口調は言葉足らずで凄い可愛かった。 

 見栄を張って吾と言う姿は写真に収めたかったが、カメラがこの時代にはないので無理だった。

 この時ばかりは神を呪った。なんでこの時代にはカメラがないんだよ!と叫びそうになったが茨木に変な目で見れたくないので自重した。

 

 てことは今来てるのは茨木の母親? よし今すぐに会いに行こう茨木の母親とか見てみたい。

 それで茨木童子に君の事を聞かせてと聞いてみた。そしてその直後に俺は気付いた。質問を間違えたと。ナンパかよ!?とか思ったがもう、後には引けなかった。

 

 それで茨木の名前を知れた。茨木童子の名は。茨木(あや)らしい。

 

 まぁやっぱり名前はあるか、茨木童子の名前の由来は、確か茨木の苗字を持つ人間が血を舐め鬼になったという物だったはずだ。名前はあると思ったが綺麗な名前だな絢って、今日は最高の日だな茨木童子……いや絢の名前が知れたし。

 

 ……でもその日は絢の母親には会えなかった。絢と話していたら一日が終わってしまったからだ。絢と話して絢はマザコンということが分かった。fgoで知ってたけど母親の事好きだろ今日話したことの七割は母親の話だった。でも茨木と話すのは楽しかったので別にいい。

 

 

 ∀月×日

 

 次の日は絢の母親に会った。雅というらしい。

 雅さんは見た目は瓜二つだった。身長も160センチはありそうであと一部が大きかった。何とは言わないが……言ったら未来の茨木がかわいそうだ。だって英霊の茨木は140センチぐらいだったし、

 おねがい遺伝子仕事してあげて。昨日の絢が言ってた「いつか母上みたいになるんだ!」と目を輝かせて言っていたのを思い出すと……何故だろうか、涙が出そうだ。

 

 あとカリスマがやばかった。平伏したくなるオーラみたいなものを感じて、今すぐに部下にしてくれと頼みそうになった。何とかとどまったが

 

 そして……今日、一番驚いたのは、俺の父が百鬼夜行の長という事を知った事だ。それで雅さんはその傘下らしい。ちょっと意味が分からなかった。

 

 百鬼夜行ってあれでしょ? 何百種類の妖怪が列をなすやつでしょそれの長って? この父が?鍛錬馬鹿での脳筋の? いやいや、ありえないって、絶対に雅さんが百鬼の長でしょ?カリスマが段違いだもん、とか思ったが母さんもそう言っているし嘘じゃないみたいだ。

 

 家の父が百鬼の長だった件について。

 

 これもしかして俺もその後継ぐことになるの?つらい。

 

 

 ∀月◇日

 

 祝!骨を使えることになった。今日は絢と戦うことになってその時、偶然に父さんの真似をしたら下から骨が出てきて絢の炎を防いだのだ。自慢の炎を防がれたことで絢はは落ち込んでいたが、不覚にも可愛いと思ってしまい申し訳なかった。

 絢が拗ねてしまったので言霊でいろいろ見せたり蝿声を見せたら機嫌がよくなりなんとかなった。

 

 それで今日から絢が三年ぐらいこの家に泊まることになった。狂喜乱舞しそうになったが、俺は何とか自分を抑えガッツポーズで済ましておいた。変な目で見られたがまあ良しとしよう。

 

 俺達の生活はここからだ!

 

 

 

 

 




茨木童子は鬼の名前だからね別の名があってもいいじゃない。Byタワシ


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空亡の日常

これが俺の生き様だ(一日三連続投稿)

日記は前回で終わり。またあるかも?

茨木の口調難しい。難しいよね?ね(威圧)


「くはははは喰らえ空亡!叢原火」

 

「ちょまっ絢、それは洒落にならな……あぶね焼け死ぬぅ!」

 

「知らんぞ空亡、(なれ)(われ)の菓子を奪ったのが悪いんだろう!」

 

「あれ絢のだったのか!?謝るから火はやめてくれ!」

 

「知らぬ!許すわけなかろう!おとなしく燃えろ」

 

「それは拒否するだって死にたくないからなぁぁ危なっ髪燃えたぞ!?」

 

「汝が避けるのが悪いだろう!おとなしく死ね!」

 

「遂に死ねって言ってきたぜこの子、雅さんに言ってやるからな馬鹿絢!」

 

 今日、俺の朝はこんな馬鹿げた喧嘩から始まった。絢の餅を俺が食べ俺が悪いんだけどさ……でも火はないよな、下手したら死ぬぞ。そうだ(あや)とは茨木童子の名前だ。茨木童子という名は人間が付けたものだし元の名前があるのは当然だろう。

 

 そして俺達は十分ほどの追いかけっこは屋敷の庭で続けたんだが、この喧嘩の結末は……ひどく残酷な物だった。そう……母さんがうるさいという理由で俺達を庭に埋めたのだ。母さん寝起きは機嫌悪いからな。埋めれた俺達は頭だけがさらし首の様になって放置された。それだけじゃなくて俺は遊びに来た動物に頭を突かれたり乗られたりした。

 許さない。餌を上げた恩を忘れやがって……。 

 

「なぁ空亡、吾らはいつまでここに居ればいいのだ?」

 

「知らねぇよ絢、夕食までじゃないか。それと絢、ごめんな餅食って」

 

「もうよい。鬼である吾はいつまでも細かいことを気にする器ではないわ」

 

 そう見栄を張る絢だが少し表情もむすっとしているので、完全に許してくれたわけではないだろう。

 今度、別の甘い餅でも作って許してもらおう。絢の拗ねる姿は可愛いが、笑ってる姿の方が断然いい。当たり前だよな?

 

 埋められているそんな俺達の元に足音が聞こえてくる。この気配は母さんだろう。この屋敷には基本、絢に俺、母さん、父さんの四人が居る。何年も一緒に居て皆の気配くらいは完全に覚えた。

 

 そして案の定、俺達の目の前に現れたのは朱殷の髪そして額に一本の鋭利な角が生えている女性だった。

 やっぱり母さんだ。何の用だろう?まさかもう出してくれるのか?

 

「あれ、二人共?何で埋まってるの?落とし穴でも作って落ちた?」

 

「母さんが埋めたんだぞ」

 

「そうだったかな?覚えてない」

 

「夜刀、寝ぼけてたんだろう。それより吾達を早く出してくれないか?」

 

「ごめんね、二人共もう寝ぼけないようにするよ、ちょっと待ってね」

 

「そうしてくれ母さん」

 

「『上がれ』」

 

 母さんがそう言うと、地面が急に盛り上がった。そして俺達はそのまま地面から出されて、土まみれで飛び出した。

 

「汚れたな絢」

 

「だな空亡、湯を沸かしてれないか?早くお湯に入りたい」

 

「了解だ絢、十分ほど待ってくれ」

 

「うぅ、母上がくれた着物が汚れてしまった」

 

 よし、今すぐに風呂と洗濯の準備だ。絢の泣き顔など絶対に見ない、涙など流させない。

 俺はそう絢に出会った時から誓ったんだ。

 

 俺は全力で言霊を使い、湯を沸かしてから着物を洗う。

 舐めるなぁ!俺のかかればこの程度三分で終わる。言霊を舐めるんじゃねぇ!…………使い方違う気がするけど。

 

「おおぉ!空亡早いな、風呂はもう沸いたのか?」

 

 声がする方を見ると、そこには布を体に巻いた絢が居たが、それを見ても俺は特に何も思わないだってさ……今、絢は七歳だぜ、それに興奮するのはロリコン以下の糞野郎だし。

 それに前世で茨木に惚れたり理由はその生き方や聖杯に託す願いだ。酒呑の笑顔が見たいというこの子の願いに俺は惹かれたのだ。

 

 まぁ無駄話は置いておいておこう。風呂に入った後俺は、茨木の体を洗い、髪を結う。流石にいじり過ぎると怒られるが、いろんな髪型の茨木の姿を見てみたいし。ポニテとかツインテとかお団子とか。

 俺の結い方は全部独学で覚えた。

 俺に髪を弄られている絢は足をブラブラさせながら終わるのを待っている。結局、今回の髪型はポニーテイルにした。俺のかなり好きな髪型だし絢の髪の長さ的に丁度いい。

 

 

「終わったのか空亡?」

 

「完璧これなら雅さんにも褒めらると思うぞ」

 

「なんと母上が!?早く見せたいぞ!」

 

「次、雅さんが来るのは二日後だ。それまで待……て」

 

 そう一言いうたびに絢が悲しそうな顔になっていく。……なんか罪悪感が

 

「また結ってやるから」

 

「本当か!?なら頼むぞ!」

 

「可愛い」

 

 可愛い。茨木は俺に花が咲いたような笑顔を浮かべてきた。可愛い。大事なことなので二度言った。

 

「な、な、可愛いと言うな空亡!吾は鬼だぞかっこいいと言え!」

 

「ほいほい絢はかっこいいよ」

 

「ふっ分かればいいのだ。これから気を付けろよ」

 

 ほんと可愛い。適当にあしらったのに胸を張る絢は可愛い。

 もはや鬼じゃなくて天使だろうこの子。

 

 風呂から出た俺は、父さんとの日課の鍛錬を行うことにした。

 

 

「よし空亡今日は蝿声だっけ?それを強化するぞ!」

 

「父さん蝿声はもうある程度できるんだけど……」

 

「何を言うんだ空亡!技という物は日々進化する!故に鍛錬に修行試し切りそれを何回

もやるんだ。努力は裏切らないぞ!」

 

「そうなのか父さん。俺やってみるよ」

 

 なんか丸め込まれた気がするけど。父さんは嘘は言わない、嘘を言えないというか使えない。騙すことを嫌うからな、父さんはそこがいいところなんだけど、妖怪らしくないんだよな。

 

「良しまずは殺気の出し方だ。この技は殺気の量で威力が変わるんだろう。ならまずは、殺気を出せるようにしないとな!見本を見せるぞ」

 

 そう言った直後。父さんから何かを感じる。寒気を覚えて俺は身構える。何かしなければ、殺されるという事を本能で覚ったのだ。言霊を使おうとするが恐怖で何もできない。

 

「あ、出し過ぎた。やばいだっ大丈夫か空亡!?」

 

「父さんこれ……からはそれ……やめてくれ、怖かった」

 

「あぁ約束する。本当に空亡大丈夫か、怪我してないか?俺が殺気を放つと何かがいつも壊れるんだが空亡に怪我はないよな?」

 

「大丈夫……父さん……怪我はないだから離して、指が食い込みそう」

 

「本当にすまん空亡」

 

 今日は初めて殺気を感じる事が出来た。怖かったので忘れるために今日はもう寝る事にした。俺の布団には絢が寝ていたが疲れていたので気にせず今日は寝た。

 

 

 

 




骸鬼さんは天然馬鹿。
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明日は休もう。疲れた。


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骸鬼の日記

二日連続投稿。誰か褒めて二日合わせて四話書いたよ。骸鬼さんの日記。


 

 骸鬼だ。突然だが俺には息子がいる。空亡という俺の嫁の夜刀との子だ。夜刀は男っぽい名前だがちゃんと女だ。初めて会った時の事も語ろうと思うが、今日は空亡の事を語ろう。

 

 

 

 空亡は不思議の子だった。泣かないし他の感情を全く出さなかった。何か病気でも持っているのかと思って、百鬼夜行の仲間の一人であり薬剤師の(ぜん)に聞いてみたら特に異常はなかった。でも俺達に甘えないし。遊ぼうとしなくて心配だったんだが、空亡は三歳になった途端に紙を頂戴って俺と夜刀に頼んできたのだ。

 

 

 紙なんて何に使うんだ?とかは思ったが初めて空亡が物を欲しがったのが嬉しくて、何枚か紙を上げることにした。その日から空亡は日記を書くようになり、感情を出すようになっていった。

 教えてないのに文字を書く空亡はもしかした天才じゃないかなど夜刀と笑ったのもいい思い出だ。

 そして、俺も空亡の事を日記に書くことにした。我が子の成長日記だ。

 

 

 □月■日  晴れ

 

 日記を書くようになったその日から、空亡はいろんなことをやるようになった。庭に居ると思ったが「投影開始」などと、いきなり言いだしたのだ。その言葉には妖力が込められており、夜刀神の言霊が発動しそうになったが、空亡に生まれた直後にかけた封印術がうまく機能して、何も起こることはなかった。俺はそれを見て安心したんだが、何故か空亡は絶望したような顔して落ち込んでいたが何故だろう?

 

 

 □月〇日  晴れ

 

 

 次の日、空亡が家から出ようとした。空亡にかけている術が教えてくれたが危なかった。少しでも遅れていたら空亡は帰って来れなくなっていただろう。本当に危なかったこの家の外はある夜刀が作った術が発動しており、道を知るもの以外が迷い込むと、ほぼ確実に戻ってこれないのだ。これからは空亡に監視を付けようと思ったが、夜刀に止められた。流石に過保護だって言わてしまった。自分ではそんなつもりはないんだがそうなのか?

 

 □月△日

 

 そして次の日は、空亡の奇声で俺達は目を覚ました。庭の方からだった。俺と夜刀は人間の姿に変化するのを忘れてしまい。妖怪の姿のまま空亡の下に行ってしまった。空亡の額には三本の角が生えていた。

 

 

 これはありえないはずだった。空亡にかけた封印は空亡が10歳になるまで効力がある筈なのに。空亡にかけた封印は妖力を完全に抑えて妖怪に変化しないようにするという物なのはずだ。

 

 

 そして空亡は人間じゃない俺達の姿を見てさらに奇声を上げて倒れてしまった。

 最初は何で倒れたか分からなかったが、今まで人間の姿で人間として空亡を育てていたのでいきなり異形の姿を見たら驚くだろう。自分で気絶されたことで夜刀はいじけていたが。

 

 □月◇日  晴れ

 

 そして次の日俺達は決心した。空亡に自分たちの事を話そうと、妖怪であることを包み隠さず空亡に伝えると。空亡が起きた後に俺達の部屋に呼び全てを空亡に話した。自分たちの種族や空亡が人間ではないことを空亡は心の底から困惑していたようで話を聞いた後整理したいと言って部屋に戻ってしまった。

 

 やっぱり伝えるの早かったかと思ったが、今更隠しても意味がないと思うので丁度良かったかもしれない。

 

 

 

 

 □月◇日 確か晴れ

 

 空亡の部屋から血の匂いが漂ってきた。それもあり得ない量の血の匂い。何でそんなの匂いがするなどの思考すらできずに空亡の部屋に向かったら。そこには腕から大量の血を流し角が血まみれになってる。夜刀神の角は真剣と思うほど鋭利で頭突きでもすれば突きの代わりにもなる。それで自分を傷つけたのだろう。

 

 空亡に俺達は何でこんな事をしたのか怒ったが空亡は俺達の姿を見て化物と言ってきた。今まで全く出さなかった感情を表に出して。そして自分の事を空亡は語った。前世の記憶を持つ俺がもしかしたら父さんの本当の子供の命を奪ってしまったのかもしれないと思い、罪悪感で潰れそうになっていたことを。 

 

 これを聞いた俺は後悔した。空亡がこんなに悩んでいたのに、何もしてあげられなかったことを。

 そして俺達は同時に空亡を抱きしめた。

 もうかける言葉は決まっている。

 俺達は言った君以外の空亡は俺達の息子じゃないと、別の空亡が生まれても。君が過ごした時の様には過ごせない、だから気にしないでくれ、どんなものを抱えていても君は俺達の息子だよ。

 

 それを聞いた空亡はまた泣いてしまったけど、さっきとは違う安堵の涙で、俺はそれを見て嬉しかった。空亡と本当の家族になれた気がして夜刀も同じ気持ちの様で心から喜んでいたと思う。

 

 そしてこの日からだろうか?空亡が俺達に甘えるようになり感情をよく出し俺達と一緒に居るようになったのは。

 

 

 ☆月×日 晴れ

 

 空亡は妖力の出し方を俺に聞いてきた。俺は感覚で出しているからうまく説明が出来ないので鍛錬だって言ったら、空亡は素直に鍛錬を開始した。よく観察していると空亡は剣の才能を持っていた。それを伝えると空亡は年相応に喜びその場で飛び跳ねた。それが自分の事のようにうれしくて自然と笑みがこぼれた。

 

 

 ☆月◇日

 

 

 この日は驚いた。空亡にかけた封印が強制的に破壊されたのだ。今日も空亡達を守る力を手に入れるために鍛錬していると空亡の部屋から頭がおかしくなるような妖気を感じた。空亡の部屋からだ。俺は部屋に慌てて駆け込むと空亡が倒れていて封印が解けていた。無理やり空亡が妖力を放って。すべて使ってしまったんだろう。十秒後ぐらいに夜刀が息を切らしながら走ってきて。空亡の無事を確認した。無事なことを確認すると夜刀は泣き出してしまった。余程空亡の事が心配だったのだろう。俺も気が抜けた途端、腰が抜けてしまった。

 

 その後は空亡を叱り一日は終わった。空亡は早く強くなって俺達に追いつきたいと言っていて、微笑ましかったな。そのせいであまり強く怒れなかったけど。俺は親ばかじゃないぞ……多分。

 

 

 

 




明日も書ければかく。今日かもね?
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茨木との模擬戦

今日も連続DA.
なんか変なテンションになってきた。


 

 

 転生してから七年が過ぎた。平安時代は結構不便って聞いていたけど慣れると意外と楽だった。風呂は言霊で沸かせるし、自然は豊かだし絢は可愛いから最高だ。父さん母さんは前世より何倍も優しいし。そんなある日、父さんがいきなり言い出した。それも唐突に突拍子もなく。

 

「さて空亡!今夜は出かけるぞ夜刀も準備しろよ」

「父さん外に出れるのか!?」

 

 今生に来て初めて外出できるのか、凄いワクワクする。京の都に行ってみたいし、でもどこに出かけるんだろうか?

 

「そうだ空亡、久しぶりに皆で出かけようと思ってな」

「皆くるんだ楽しみだね」

「ああ!今日は10年ぶりぐらいの全員集合だ空亡にも紹介するぞ」

「皆って誰だ父さん?」

 

 そう言ったが父さんは百鬼の長じゃん。

 妖怪達か会いたいな。

 前世では妖怪大好きだったし山童(やまわろ)とかマイナーな奴いっぱい調べたな。それに会えるかもしれないなんて感動だ。今日は凄い気分いいからなんかもう色々できる気がする。絢に手伝って貰おう。

 

「父さん夜までちょっと絢と鍛錬するけどいいか」

「ああいいぞ鍛錬はした方が良い」

「空亡、怪我しないでね」

「分かった母さん」

 

 俺はそう言ってから屋敷の中に向かっていく。確か絢は屋敷でおやつを食べている筈だし絶対いるだろう。基本絢はおやつを食べて俺と戦うか、笑ってるくらいしか知らないからな。そこが可愛いけど。

 

「絢、鍛錬するぞ!」

「なんだ空亡か鍛錬かいいぞ吾も暇だからな。吾の火力も前より上がったし試したいのでな」

「よしなら庭に行こうぜ」

「そうだな」

 

 そのまま俺達は庭に出て、各々武器を構えた。

 

「空亡、汝はそれでよいのか?」

「あぁこれはずっと一緒にいる剣だからなこれ以外は違和感があるんだ」

「そうだな汝は二年程その剣を使っていたからな、それ以外を使う汝など違和感しか覚えぬわ」

「なんか煽られた気がする」

「気のせいだ空亡早くやるぞ」

「了解だ絢、『土壁』」

 

 俺は言霊を使い土の壁を作り出す。土の壁は一瞬で俺達を囲んだ

 

 これ結構頑丈なんだけど……父さんこれ腕の一振りで壊すんだよ、これ出来るようになるまで半年かけたのにさ、「よし耐久確かめるぞ」と言われ壊されたのはさ、結構つらかった。だけど絢ならまだ壊れないはずだ……壊れないよな?

 

「空亡これは初めて見るぞ、何時の間に覚えたんだ?」

「絢に隠れて半年間でいろんな技を覚えたからな、お前を驚かせるために頑張ったんだぞ」

「くはは、楽しみだな吾を驚かせてみろ」

「了解いたしました。俺の言霊をとくとご覧あれ」

「空亡、似合わないぞ、寒気がするわ」

「やっぱりか、俺もキモイと思ったし」

「……いい加減やるぞ興がそがれるわ」

「ごめん、そうしようか絢」

 

 いい加減話すのが飽きた俺達は、武器を構えた。

 

「まずは俺からだ水槍」

 

 水が言霊により現れ、その水は一本の鋭利な槍を作り出す。それは走る絢を追尾して行き。数百本に分裂した。槍は絢を囲み一斉に襲い掛かった。全方位から放たれる水の槍は絢の小さき体を貫くためだけに存在しおり、避ける事は出来ない。

 

 そんな回避不可能な状況で絢はにやりと笑うこの状況が嬉しいかの様に、そしてそのまま絢は体から炎を噴出させた。全てを包むような炎の渦は、水槍をすべて蒸発させる。その炎の渦を絢は腕に纏い真っ直ぐと俺に向けてはなって来る。これを防がなきゃ俺は消し炭になると確信できるほどの熱気。俺は急いで骨で壁を作り出す。骨壁は地面から俺の前に現れて炎を防いだのだが、骨壁は全てが消し炭になる。

 

 ちょっと予想外なんだが……前より火力が上がってないか? 今までだとこの骨壁(こつかべ)で完全に防げてたはずだよな? 絢も修業したのか?

 

「何を呆けているのだ空亡?吾の焔は常に進化するのだぞ、この程度予想できるだろう?」

「あぁ予想通りだ絢まだ行くぞ!」

「……吾は嘘は好かんぞ」

 

 ばれてーら、何でばれるんだ? 俺には分からない。鬼の感か? だとしたら凄いな。

 

「ごめん見栄を張った」

「汝は分かりやすいからな、もう嘘つくなよ」

「肝に銘じる」

「分かればいいのだ。次は此方から行くぞ!」

 

 絢の背から、炎の羽が生える。そのまま凄まじい速度で俺に飛翔する。俺が視認できないほどの速度まで絢は加速して――――俺は土壁まで飛ばされ、そのまま壁を砕き血反吐を吐く。いくつか背中に壁の破片が刺さってしまう。

 

 痛いな、絢は前より強くなり過ぎだろ。こんな事、前は出来なかったし一度雅さんの所に帰った時に覚えたのか?俺もその時に修行したんだが絢の成長はおかしい気がする。

 

 大丈夫だよなこれ原作始まる時に強化されない?嫌な予感しかしないぜ。

 

「空亡、汝の技を見せてくるんだろう?早くやって見せろ、吾は退屈だもっと楽しませてみろ!」

「ここまで期待されたら、今の所唯一成功しかけている技使うか」

「半年間で覚えたのか?くはは楽しみだ、待ってやろう!」

 

「成功してくれよ、ほんと」

 

 これ成功したの一部分だからな、でも茨木を驚かせるには丁度いいかもしれない。 

 

() () () () () () () ()九十(ここのたり)

 

布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)

 

血の道と血の道と其の血の道返し(かしこ)(たま)おう

 

禍災(かさい)に悩むこの病毒(びょうどく)を この加持(かじ)にて今吹き払う(とこ)の神風

 

(たちばな)小戸(おど)(みそぎ)を始めにて 今も清むる(わが)が身なりけり

 

千早振(ちはやふ)る神の御末(みせい)(われ)ならば 祈りしことの叶わぬは無し

 

――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間叫喚(むげんきょうかん)!」

 

 この詠唱に言霊を込めると、ほぼすべての妖力が持っていかれる。体にある物が無くなった感覚がして、この技は一瞬だけ発動した。俺の白蛇のような肌色の腕が黒く染まる。否、少し紫が混ざった黒。紫黒(しこく)の肌に変化したのだ。それが地面に触れるだけで地は腐り、酷い匂いが辺りに充満する。

 その匂いに不快そうな顔をした絢は、鼻を抑えるそぶりをしてこう言った。

 

「空亡それはなんだ?」

 

 だがそんな声は俺に届かない。全くこれが制御できないのだ。 

 

 おかしいぞ、前は二分持ったのに。それに変化させられる部分も手だけだったのに腕一本腐食毒に変化している。なんでも前より強力になってるんだ?それよりヤバイ抑え……られな――――。

 

「空亡、妖力使いすぎ『封』」

 

 母さんの声と微量の妖気を感じたかと思うと、俺の腕は元に戻った。そのまま俺は地面に力なく倒れる。ていうか妖力使えない。

 

「つか……れた。死ぬぅ」

 

「馬鹿空亡模擬戦で本気出さないで」

 

「分かった……母さん」

 

「どういうことなんだ夜刀?空亡は何しようとしたんだ?」

 

「秘密、空亡から聞いて」

 

「……分かったのだ。それで空亡、大丈夫か?」

 

「結構……限界」

 

 もうしばらく絶対に使わない。今の技が制御できるようになるまで百鬼夜行まで休ませてもらおう。

 

「母さん……ちょっと寝る」

「しっかり休んでね」

 

 

 




次回は骸鬼さんのカリスマが火を噴くぜ!

あと今日出した話は全て今日に書いています。書き貯め無しです。

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百鬼夜行

昨日ルーキー日間五位だっためっちゃ嬉しい。
オリキャラのオンパレードだ。そしてギャグ回みたいに……気のせいだよね?


 

よし夜だ。妖力もある程度回復したし、これで父さん達の百鬼夜行に着いて行けるだろう。立ち上がるか……あれ?なんか頭に柔らかい感触を感じるんだけど……何これ?

 

「儂の膝はどうじゃ二代目?」

 

 上を見てみると白く長い髪に黒い線の入ったの美人な女性が、俺の顔を覗き込んでいた。その顔はとても綺麗な笑顔で、どこか安心できるような笑みだったので見惚れてしまう。何だこの人母さんレベルで美人なんだけど……誰だこれ?

 俺はすぐに脱兎の様に女性の膝から逃げ出すと、女性は揶揄(からか)うような笑みを浮かべてから俺に向かって話しかけてくる。

 

「なんじゃ?儂に見とれたのか、カハハ無理もないのう」

「いや誰だよ」

「なぬ?聞いとらんのか?」

 

 

 何も聞いてないのですがそれは……いやマジで誰だよ。こんな人あった事ねぇよ。ていうか忘れないと思う絶対この人キャラ濃いと思うし。でもまずは質問に答えるか。

 

「なにも聞いてない」

「むぅ困ったのう、言うとけとあの二人に頼んだんじゃが」

「あの二人って父さん達か?」

「そうじゃそうじゃ、骸鬼たちじゃ。お主はあやつらの子供もじゃろう……あってるよな」

「あってるんだがお前が誰か教えてくれないか?」

 

 父さんのこと知ってるのはいいけど、この人に俺は会った事ないし、警戒しといた方が良いだろう。俺は警戒しながら女性の顔を見てみると女性と目が合った。目が合った時に女性は俺の顔を見つめたかと思うと、見惚れるような程の綺麗な笑みを返してきた。

 

 クソッ女性経験皆無な俺にはどうすればいいか分からないぞ。なんだこれどうすればいいんだよ、誰か教えてくれ。

 

 そしてここで問題だ。もしも、めっちゃ美人の女性とコミュ障が二人きりになったらどうしますか?

 

 答えは簡単だ……何もできない。だってこんな状況になったことないからな!

 でも美人と言ったら母さんだけど、母さんは別だからな七年間ずっと一緒に居て、慣れたし。

 

 

「儂から聞くが、誰だと思うんじゃ?」

「質問したのはこっちなんだが」

 

 

 質問を質問で返すな!とか言いたい凄く言いたい。

 この人苦手だ。勝てる気がしない。戦闘系じゃなくてこういう口喧嘩というか揶揄い合いで、俺はこの短いやり取りで悟ってしまった。

 

「良いじゃないかこういう遊びも大事じゃぞ」

「俺は父さん達の所に行きたいから早くしてくれ」

「一時期だが半年間毎日お主の生活を見ていたんだがな、お主は骸鬼と夜刀の事好きすぎるだろう」

 

 待ってくれ。今、聞き捨てならない事聞こえたんだけど、半年間見ていたという、ありえないことが聞こえたんだけど!?

 

「待ってくれ……半年間ってどういうことだ?」

「言葉の通りじゃよ空亡、察しが悪いのう」

「ストーカーじゃないか……」

「すとーかー?という物は分らないんじゃが。多分そうじゃと思うぞ」

 

 この時代にはストーカーという言葉ないが、いるんだな初めて知ったぜ。でもさ「いい加減本当に誰だよ」あ、言葉に出てた。

 

「本当に分からなそうじゃし、そろそろ答え合わせでもするかのう。儂は”ぬらりひょん”名は(おぼろ)じゃ」

 

 は?え?わっと?予想をはるかに超えるビッグネームなんだけど!?ぬらりひょんって漫画やラノベとかで妖怪の総大将とか呼ばれてるやつだよな?うろ覚えだけど。

 そんな妖怪が何でこんなところに?待って意味が分からない。かなり混乱している。それもマジで。でもぬらりひょんって爺さんの姿で現れるんじゃなかったっけ?こんな美人とか知らないんだけど。

 

 なんかもうこの流れ二年ぶりぐらいだけど言うか。ふぅ、ぬらりひょんが俺のストーカーだった件について。

 

 あははは、何だこれ?

 

「さてと空亡。骸鬼の所に行くぞ遅れてしまうぞ、遊び過ぎじゃ」

「朧が原因だよな!?」

 

 これは理不尽だ。叫ばせてくれそう思ったが既に叫んでいた。

 

「カハハそうじゃのう」

「笑い事じゃねぇよ」

「酒でも飲むか?儂は飲む」

「唐突だな、それよりまだ俺七歳!酒飲めない!」

「うるさいのう、ゆっくり飲ませてくれんのか?」

「もう俺にどうしろと!?」

「笑えばいいのじゃ、さすればなんとかなる……多分な」

 

 朧は親指を立ててそう言った。不穏な一言を足して。

 もうやだ疲れた。おうち帰る。あ、家ここだ。もう帰ってた。逃げられないぜ、終わった。

 

 こんな混沌とした現場に足音が近づいてきた。障子の外に二メートルぐらいある人影が見えた。でけぇこれも妖怪なのか?俺がそう戦慄しているとその人影は障子を開けてこの部屋に入ってきた。

 

 その人影の姿を見て噴き出しそうになる。だってさひょっとこの面を付けた大男が現れたからだ。

 

 無理だこれ……反則だろ?こんなの誰だって笑うって無理だ噴き出したら殺される。

 耐えるんだ……俺よ……俺のならできるきっとできる。

 

 俺は自分と戦っていると。大男は話し始めた。

 

「朧、二代目は起きたのか?まさか遊んでるんじゃないだろうな?」

 

 わーすっごいイケボ。もう無理これ……噴き出す。

 

「おお狒々(ひひ)か呼びに来るのが遅いぞ、遅かったのでな空亡で遊んでおったのじゃ!」

「朧、あまり二代目で遊ぶな、そろそろ他のやつらも待ちくたびれてる。酒抜かれるぞ?」

「うぐっそれは嫌じゃ。儂は先に行ってるのでな狒々、空亡を頼むぞ」

「了解した。俺は二代目と話すこともあるしな」

「また後でな空亡」

 

 朧は俺にそう言って気配が消えた。さっきまでそこに存在したのに気配が霧散して消えたのだ。

 

 さっきまで朧はいたよな?幻覚かでも酒は残っているし幻覚ではないだろう。それより狒々と呼ばれたこの妖怪だ。話があるらしい。

 

「お初にお目にかかります二代目。俺は狒々、猿の妖怪です大将には百年程前から仕えております」

 

 凄い真面目なこと言っているがひょっとこの面のせいで全く真面目に感じられない。これは俺が悪いのか?いや悪くないよな?

 

「二代目、明日からなのですが、俺は貴方の教育係を任せれましたので、よろしくお願いします」

「分かったよろしくな」

「大将から頼まれましたので精一杯やらしていいただきます」

「分かったそろそろ父さんの所に行こうか」

「そうですね他の妖怪も待っていますし夜刀様が寝てしまいます」

「母さん妖怪なのに夜弱いからな」

 

 

 俺はそのまま何故か狒々に肩車されて、父さんが居る庭まで連れて行かれた。狒々の肩車は安心できて、また眠りそうになったが、何とか持ち堪える事が出来た。庭の近くに行くとは莫大な妖力を感じて眠気が吹っ飛んでしまった。

 

 そして庭に居たのは。大百足、山犬白骨化した馬、何十メートルもある大蛇、ぬらりひょんが鬼、天狗、河童、狗神、土蜘蛛その他にも何百も超える妖怪の数々まさしく百鬼夜行。そしてその中心にはいつも…鍛錬ばっかしていて天然で親バカな父親がいる。

 

 いつも見ている姿なのに気配が違った。異質でとても恐ろしいのに付いて行きたくなるような強者の気配。これは本当に父さんのなのか?そう思うほどにこの父さんはかっこよかった。

 

「父さん?」

「おお空亡起きたのか。見てみろこれが俺の百鬼だこれをお前にずっと見せたかった。どうだ感想は、全部俺の仲間だぞ!」

 

 父さんは俺に誇らしげに言った。その顔はとてもいい笑顔で。嬉しそうだった。俺は猛烈に感動した。そして自然に言葉が漏れる。

 

「父さん凄い!」

「そうだろう!凄いんだぞ皆は、俺に足りないものを補ってくれる。俺を支えてくれる。何度も一緒に戦い宴会を何度も開き、笑いあった。そんな家族みたいな百鬼夜行なんだぞ、凄いだろ!」

 

 そう誇らしげに言う父さんはとてもかっこよかった。

 

「そして空亡。これをお前が継ぐんだ。俺の息子であるお前が、この百鬼を!」

 

 今日は幻聴まで聞こえるのか?おかしい事が聞こえたんだけど……。

 

 そう言う父さんに母さんは近寄り父さんの服を引っ張って。

 

「骸鬼まだその話は早いと思う」

「いや今日言う、いい機会だしな。空亡」

「はい?」

 

 間抜けな返事が出てしまった。いろんな妖怪に聞かれたかも恥ずかしい。

 

「空亡は百鬼を継ぎたいか?」

「分からない。いきなり言われても困る」

「そうか?ならまた今度な!」

 

 気になるんだけどでも、今じゃ聞いても困惑するだけだと思うから聞かないようにしよう。

 

「さぁ今日は朧月だ。百鬼夜行には良い夜だろ?夜刀、結界を解け、今から京に向かうぞ!好きに騒ぎ笑い人間を驚かそう楽しもうぜ」

『おおぉぉぉ!』

 

 そして百鬼夜行が始まった。

 先に言うが最高だった何があったかはまた今度。

 

 

 




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茨木視点の空亡

投稿する場所間違えた、お騒がせしてすいません。


 

 くははははは吾だ。茨木絢である!今宵は吾が友である空亡の事を語ろうではないか!くははは、心して聞くがよい!

 

 奴と出会ったのは。吾が五つの時だった。その日は母上が入っている百鬼の長に会うという予定だったのだ。吾は暇ということもあり、この広い屋敷を探索することにした。探索していると感じる事が出来たのは……狂いそうになる妖力。認めたくないがその量は母上に匹敵していただろう。

 

 吾はこの妖力を持つ者が百鬼の長かと思ったが……後に冷静に考えてみたのだが長の方は母上と話していたことを忘れておった。

 

 話を戻すか。吾はその妖力が感じる部屋に行くと一匹の鬼が居た。

 朱殷の色をした髪に、まだ小さいながらある程度整った容姿。そして三本の角。そんな容姿を持つ鬼が瞑想していた。妖力を放ちながら。

  

 その時吾はこんな量の妖力を常日頃から出しているのか?どんな量なのだ?とか思ったりもしたものだ。 

 どんな妖怪も妖力を出し続ければ疲れるはずだ。それもこんな量だぞ?倒れるに決まっている。なのにこの空亡は、汗を一滴すらかかずに瞑想を続けていた。 

 こいつ面白いな当時の吾はそう思い好奇心を持ち吾は空亡の肩を叩いた。

 

 しかし五分間叩き続けたが空亡は全く気付いてくれなかったのだ――――その時の吾は泣いてないぞ!鬼は泣かないのだ!

 

 無視するこの空亡に吾は腹をたててしまい、一撃を本気で喰らわせた。言っておくが吾は悪くないからな!あの時無視した空亡が悪い!

 

 その一撃でやっと気付いたのか、空亡は吾の方を見たのだそしてその瞬間、空亡は硬直した。思えば本当に石みたいな固まり方だったな……今思い出すと笑えたぞ。

 

 しかしその時の吾は、硬直した空亡に不覚にも驚いてしまい、何していいのかわからなかったが。一応聞こえた言葉があったそれはとても早口だったので断片的だったのだが。

 

「いや、ファッ!?なんでばらきー!?ここfateだったのか!?」

 

 吾にはふぇいと?という物は理解できなかったのだが、空亡が言った事で意味ない物は少ないから、何か意味があったのだろう。

 

 その時吾は母上に習った鬼らしい態度で空亡に接したのだが……何故か空亡に和むような表情で見られていた。馬鹿にされている気もしたが気のせいだった。

 

 

 その後、少しの間、無言のまま時間が過ぎた。流石に気まずくて話しかけようとした瞬間に空亡方から吾に話しかけてきた。

 「君の事を教えて欲しい」とそんなことを聞いた吾は一瞬戸惑ってしまった。

 だってこの言葉は母上を口説いた父上の言葉と聞いていたからだ。吾は今口説かれているのかと思ったがそんな気は空亡になかっただろう。2年間一緒に居てそのぐらいは分かるようになったのだ。

 

 その時は吾の事より母上の事を多く話して一日が終わってしまった。百鬼の長を見たかったのだがな残念だった。それに吾の事を聞いてくれたのに母上の事ばかり話してしまったがつまらなくなかっただろうか?

 

 空亡と会った次の日は夜更かししてしまい昼の間ずっと寝てしまった。昼寝から覚めて吾が見たのは修羅のような表情を浮かべた母上の姿。吾はその時、妖生で初めて恐怖した。

 

 そしてその次の日、吾は空亡の強さが気になったので模擬戦をすることにしたのだ。空亡も吾の力を知りたかったらしいのでな。丁度良かったぞ。

 

 吾は昨日の自分に対する怒りを全て炎に込めて最大火力を放ったのだが……空亡が虚空から骨の壁を生成して全てを防いだのだ。自慢の炎をを防がれたその時の吾はショックを受けて拗ねてしまった。その時の吾は子供ぽかったな。

 

 そんな吾に言霊でいろいろな物を作って見せてくれた空亡は優しかったのだ。水で出来た龍や鳥は幻想的でとても美しかった。言霊でこんな事が出来るのはその日初めて知ったな。

 

 あと空亡が見せてくれたのは蝿声という技だ。斬撃を飛ばすなど、どんなことを考えて思いついたのかわからなかった。まず斬撃は飛ばないはずだろう?

 なのに空亡は斬撃を飛ばし近くの山の一部分を斬り飛ばしたのを見た吾は唖然としていあのだが。空亡の次の一言で我に返った。その一言は。

 

「まだ完成してないけどごめんな」

 

 これで完成してないとはどういうことだ!?そう突っ込みたかったが吾の人物像が崩れる気がしたのでな。やめておいた。

 

 

 それから空亡と一年過ごしてしてみて、分かった事がある。空亡は親の事が大好きという事と色々勘違いしているみたいなのだ。言霊とは何が起こるか鮮明に想像しないといけないのに。ありえない想像力で言霊の力を使えるのだ。たった一言で炎をの巨人を作った時は感動したぞ。

 

 ……そして後は……あまり言いたくないのだが、空亡は鬼らしくない。どちらかというと人間っぽいのだ。これは吾の直観なのだがな。

 

 そんな人間らしい空亡を見て吾は決めたのだ。空亡を立派な鬼にすると、鬼としての見本になると。

 そう誓ったのだが空亡の力は日に日に増していった、これじゃあ吾が教える事が無くなってしまう。そうおもった吾は一度修行として母上の元に帰った。今ままで母上がしてくれた手加減を無くしてもらい、半年間毎日のように母上との殺し合いをした。そのおかげでかなり強くなる事が出来たのだ。

 

 そして空亡の家に戻ったのだが。空亡も修行をしたらしいく前より力が上がっていた。吾はまた空亡の事で驚いたが。吾は同時に嬉しくもあったのだ空亡が強くなることが。

 

 母上が言っていたのだが。これが弟というやつだろうか?そう考えるとしっくりくるな。吾は空亡を弟と思っていたのか。吾が姉かなんか嬉しいかったのを覚えておる。

 

「絢、夕食だぞ」

 

「なぬ?もうそんな時間なのか待っていろ空亡すぐ行くのでな」

 

「分かった」

 

 今日はここまでだな……また続きは今度語ろうではないか。

 

 

 




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狒々と空亡~朧を添えて

 

「天殺」

 

 その声と共に放たれたのは、戦斧による斬撃。何とか剣で防いだが……その攻撃を受けた剣には罅が入り、天をそのまま落としたような衝撃が俺を直接襲う。そんな衝撃に耐えきれず俺は地面に足が沈んでしまった。

 

 重い……潰れ……る。

 

 あ、駄目だ。威力あり過ぎ。

 

 俺はそのまま地面に叩きつけられた。

 

 くそ痛い、たんこぶ出来た。でもたんこぶで済むなんてこの体は丈夫すぎるんだけど、下の地面なんか割れているし。

 

「狒々、手加減してくれ」

「でも二代目?手加減しましたよ」

「これでか!?」

「はい、いつもの半分以下に抑えときました」

 

 妖怪っておかしい、俺も妖怪だけどさ、俺はこんな規格外じゃないって。俺は父さんの百鬼夜行を見て気付いたんだ。俺、弱くないかって?父さんの百鬼のメンバーの誰にも勝てないし。

 

 特に雅さんとか朧とか狒々に土蜘蛛がやばい。そして後から知ったんだが雅さんは人間の間で茨木童子と呼ばれているらしい。原作では絢はその名を絢が継いだんだなーという変な納得をしたこともあった。

 

 その4人の中でさ、朧が更におかしいんだ。

 なんなのあいつ強すぎない? 気配と認識を操るってマジでなんなんだよ……いくら切ってもそこにはいないし、見つけてもそれは自分の気配を固めたものだし、それになんか増えるし。下手したら最恐だよな。それによく俺を揶揄って来るし。朧は本当に苦手だ。

 

「二代目、そろそろ再開しますよ」

「了解した。でけど狒々もうちょっと、すこしだけ抑えてくれ、さっきからほぼ一撃で地面に叩きつけられてなんかいろいろ限界だ」

「でもこのままじゃ強くなれませんよ。もっと修行しないと」

「分かっているんだが……こうもワンパンされると……な」

「なら技でも鍛えますか?」

「そうする……てか頼む」

「了解しましたよ。では二代目、打ってきてください」

 

 狒々はそう言ってから武器を置いた。狒々には修行を手伝ってもらうようになり半年が過ぎた。やる事と言えば、狒々にボコボコにされ技を打ち込む、そのぐらいだ。

 半年間も頑張ったが、毎日のように地面に叩きつけられている気がするんだよな。模擬戦しても数発しか当たられないし、せっかく当たったその攻撃もほぼ傷になれないし。

 

 でも、そこで諦める俺ではない。

 父さんの百鬼を継ぐために俺は強くなると決めたからな。

 父さんに百鬼を継ぐかと聞かれた日から俺の夢は決まったのだ。だけどまだ父さんに言っては無いんだがな、。この夢を教えたのは絢と狒々だけだ。だって恥ずかしいから。

 

「狒々、いくぞ。蝿声!」

 

 俺の修行の成果であり、唯一神咒神威神楽で再現できる技でもある蝿声を狒々に打ち込んだ。蝿声は今の皆に隠れてずっと練習してる技の一つで、毎日、何百発も使っている。今では本家とは威力が全く違うが、この蝿声はもう俺の技と言えるかもしれない。

 

「前より早いですね二代目。でもまだですよ、これじゃあ足りません」

 

 狒々は一言だけ俺を褒めたかと思うと、蝿声を腕一本で止めた。

 

 あぁーまた止められた。前より何倍も練度を上げて山真っ二つに出来たのに、それを腕一本で止めるって何?なんのなの?

 

「威力は前より上がってますね。また夜隠れて修行でもしたのですか?」

「何で知ってるんだよ」

「そりゃ腐っても俺、二代目の師匠的なやつですのでそのぐらいわかります」

「師匠ってすごいな」

「そうです二代目、今日はここまですね。俺も疲れました」

 

 狒々も疲れることあるんだな……意外だ。

 勝手な俺のイメージだけどさ、狒々はよくいるやる気はあまり出さないけどほんとは最強クラスの力を持つ強キャラだと思っている。今だって俺が使える最大の技を使ったんだぜ?

 本当に俺はここに居るとなんかさ、どんどん自信が無くなるんだよな。ここまで簡単に防がれると……。

 

「狒々が疲れるなんて病気か?」

 

「俺も生きてますし、疲れる事はありますよ」

 

「それもそうだな」

 

 疲れない生き物なんていない、多分これ名言。なんか、かっこいいし。俺の迷言帳でも作ろうか?

 

「それでは二代目俺ちょっと水浴びしてきます」

 

「分かった狒々、また後でな」

 

 俺はそのまま狒々と別れて屋敷に戻った。明日こそ狒々に一泡吹かせやる。父さんの百鬼を継ぐには狒々は絶対に倒さなきゃいけないし。

 

 今日も限界まで妖力を使って増やしていこうか、これが俺の修行法で最も安定しているから。そし今日の夕食何だろうな?母さんの料理は全て美味しいし修行の後の楽しみになっている。

 

 あれ?一瞬だけだが朧の気配を感じた。……気のせいか。すぐに消えたし。

 

 

 ◇◇◇

 

 儂は空亡が居なくなった時を見計らい姿を狒々の前に現した。今から話すことは空亡に聞かれない方が良いからな。

 急に現れた儂に狒々は特に驚く様子はなくていつもの調子で話しかけてくる。

 

「朧か何の用だ?」

 

「決まっておろう?お主の事を話しに来たのじゃ」

 

「俺の事か?朧が二代目のこと以外で話しかけるのは珍しいですね」

 

「……お主、空亡の事になると口調変わるよな」

 

 そう儂はジト目で睨むと、狒々は少しだけ顔を逸らして面を深くかぶってしまった。

 

「気のせいだ……それより話とはなんだ?」

 

「気付いているだろう?変化を解け」

 

「ばれてるか……仕方ない」

 

 狒々はそう言い、自分にかけている変化の術を解いた。そして儂の目に映ったのは、酷く傷だらけで二つに分かれている一本の腕だった。

 血が周りを染めて、ぴちゃりぴちゃりと垂れていく。

 その様子はこっちまで痛みを感じる錯覚まで起こしてしまう。

 いたそうじゃのう。

 

「狒々、空亡にかっこつけたい気持ちはわかるのじゃが。空亡の攻撃は避けろよ。それ一週間は治らんと思うぞ」

 

「うるさい。しょうがないだろう朧。二代目の力はあの歳に似合わないものになっている。変に自信を付けたら困るからな。俺が騙さないといけない。そうすれば今よりもっと二代目は強くなるだろう」

 

「だからってこの方法か?よくわからんのう。素直に言えばよいだろう?空亡の喜ぶ顔が見れて最高じゃぞ。あやつは感情が出やすいからな……そして儂が見たいから伝えろ、狒々」

 

「それはお前の欲だろう。俺が二代目の修行を任せれている。お前は口を出すな」

 

「ぶーつまらんのう。まぁ傷の認識を変えておくぞ狒々これなら傷の痛みは誤魔化せるだろう」

 

 狒々も空亡の事を思ってやってるのなら、少しぐらい手助けでもしてやるかのう。見返りは求めるが。

 

「感謝する……今度好きな酒でもおごろう」

 

「まじか!?言ったな!忘れんぞ!」

 

 やったのじゃ、酒ゲット。ふふふ儂に酒を奢るというのは自殺行為だと教えてやるぞ。楽しみにしておれ!

 

 それと夕食か……儂の分もあるよな?なくてもこっそり空亡の分でもいただくとするか。あとは寝床に潜り込もう。楽しみじゃなー。

 

 

 

 




本日三度目なんとか間に合った。
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骸鬼さん少し戦う

昨日お気に入り200人突破した嬉しい。


 

 照り付ける太陽、何処までも広がる雲一つない青い空。周りには自然が広がり心地よい風が流れている。鳥は(さえず)り宙を舞う。あぁ、なんと素晴らしい朝なのだろか。

 

 俺にはこんなこと似合わないって?ははっ!そうかそうか……俺もそう思うから安心しろ。 

 落差が激しいが、今はこんな俺に合わないことでも言わないと、この状況から逃避などできない。

 

 あぁ本当に素晴らしい日だな。だからさ……誰でもいい……誰でもいいんだ……助けてくれ、頼む。何でもしようこの時だけは対価も払おう……だから俺を救ってくれ!

 

 そう俺は声には出せないが心の中で叫ぶ。 

 生き残りたいからだ……こんなところで死んでたまるか!

 

 

 既に体はボロボロで、体中から汗が流れている。意識も失いそうだ……腕一本すら動かすことがつらく感じる。妖力も底をつきかけて、もう動く事などできない……だが、まだだ!

 

「俺は……俺は!勝つんだ……生き残るんだ!」

 

 俺は限界を超え立ち上がる。死にたくないという思いの為だけに。ただ明日も絢と過ごすために……俺は死ねないんだよ絶対に!

 

 俺の姿を見たら誰かは笑うだろうか?惨めだなとか笑うだろうか?それでも構わない!俺は……決めたんだ生き残ると!

 

 自分を鼓舞するように叫ぶ。

 どんな状況にも絶望しないように、屈しないように……ただ目の前の存在に立ち向かおう!

 

「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 俺は駆けた今世最大の絶望に向けて。

 無理だろう。勝てないだろう。もうわかっている。理解している。だがな……男には負けられない時があるんだ!

 

「首飛ばしの颶風――――――蝿声!」

 

 己が全てを懸けた全身全霊そして最大威力の蝿声を放つ。残る全ての妖力をこの一撃に全て込めて。

 

「届け……届いてくれ!」

 

 この一撃が届くこと願う――――

 

「空亡、舐めているのか?」

 

 そんな無情な声が俺の耳に響く。そして俺は何かに吹き飛ばされた。何十メートルも吹き飛ばされどんどん空気が薄くなる。空が暗くなり地上から離れていく。

 

「地球って青かったんだな」

 

 あぁ綺麗だ全てを忘れらるよこの後はどうなるんだろう?地面に激突するのか?いたそうだな。そう考えるうちにどんどん地上が近づいてきて俺は未来を予想する。体が丈夫だけど絶対にいたいだろうな。

 

 よく見ると屋敷が見えてきて、父さんの姿ついでに見えてきた。落ちるのって結構早いんだな。

 わーお、あーすっごい父さんの回りに何百本もの骨の槍があるよ……俺骸童子の能力本気で使ってもに十本程度しか作れないんだけど……何、あの数は?あははははは、もうどーにでもなーれー。

 

「空亡、刃は潰してある。気絶位程度で済むだろうから安心して気絶しろ。ゆけ骨槍」

 

 骨槍は全て俺の方を向き、一切の迷いもなく飛んでくる。それはさながら弾幕の様に空中に居る俺に逃げ場はなく一直線に飛んでくる骨槍に俺は成す術もなく被弾する。

 そのまま俺は意識を失った。

 

 

◇◇◇

 

 

「唐揚げとバナナは空を飛ぶ!?」

 

「ふぉあっそっ空亡!?いきなり意味不明なことを言うでない、驚いたであろう!」

 

 ちょっと待って俺も分からない。どんな夢見ていたんだよ俺は?唐揚げとバナナという組み合わせも分からないが……空を飛ぶって何だよいみわからねぇ。

 

 

「大丈夫だ絢。俺も分からないから」

 

「汝が分からなければ、誰が分かるというのだ?」

 

「わからないな」

 

「馬鹿な空亡だな……いやこの場合はアホか?」

 

「どっちでもいい。絢、俺はどのぐらい寝てたんだ?」

 

「二日だ。それにしても爽快な吹っ飛び具合だったな。この吾ですら笑ってしまったぞ」

 

 絢に見られていたのか。ふふ、あはは、アハハハハ!……鬱だ死のう。

 

「空亡?なんか変なこと考えているな?やめろつまらぬだけだ。やらなくてよい」

 

「絢?なんか自然に心を読まれた気がするんだけど、気のせいか!?」

 

「そうだったな最近、汝の考えをあてられるようになってきたぞ。何故だろうな?」

 

「俺が知りたいんだけど」

 

「吾にも分からぬからな、気にしなくてよいわ」

 

 いやいや、気になるって心読まれるってなんでだよ。変なこと考えられなくなるだろうが。もしもなに?絢が英霊になったら、直感でも覚えるのかスキルに追加されるの?

 

 それはそれで強そうだけどさ。自己攻撃バフに宝具バフ、防御アップに星だしといかついたらもう最強じゃん。星5の性能の超えるよ?もはや星6だよ。

 

 そんなバカみたいな妄想は頭の片隅にやって、絢と今は話そう。最近話してなかった気がするし沢山話したい。

 

 

「絢は最近どうだ?」

 

「唐突だな空亡特に変わりないぞ。毎日汝らと過ごして修行。あとは特に思いつかぬな」

 

「本当に変わってないな絢は」

 

「うるさいぞ空亡、吾を馬鹿にしたのか?」

 

「そんなつもりはないぞ褒めたんだ」

 

 そう俺が言うと絢は嬉しそうに笑いだした。

 そう言えば俺は絢の笑いのツボが分からないな。どうなっているのだろうか?

 

 

「くはは褒めたのか……もっと褒めるがよいぞ空亡」

 

「絢はまさに鬼だなかっこいいぞ」

 

「そうだ吾が鬼だ!くははは!」

 

 あぁー癒されるわーやっぱり絢は可愛いなーずっとこの家に居てくれないかな?……それは無理か絢には雅さんが居るし。

 なにより絢は雅さんが大好きだからな引き剥がすのは駄目だろう。可哀想そうだしな。

 

 過去の俺をまた呪う事になるとは何で父さんの力が見たいって言ったんだよ。その結果があれだぜ骨槍による気絶に大気圏突破。父さん化物過ぎるだろう。言霊は全て効かなかったし。ほぼ一撃で倒してくるし。最高威力の蝿声も簡単に止めるし。

 

 くそう頭、痛くなってきた。

 

 

「空亡まだ疲れが残ってるだろう?まだ寝ていろ」

 

「いやもう疲れは取れたけど……あれ?それより父さん達は?」

 

「京へ出かけているらしいぞ、知人に会いに行くそうだ。吾らはその留守番だ」

 

「そうなのかなら俺もおきてないとな」

 

「別にいい。空亡、汝は寝ていろ吾一人で出来るわ」

 

「そうか……ならもう少し寝させてもらおう……本当にいいのか?」

 

「良いと言っておるだろう。早く寝るがよい」

 

「分かった絢、だから叩くな地味に痛い。爪刺さってる」

 

「早く寝ろ出なければ吾はキレるぞ」

 

 何でこんなに寝させようとするのだろうか。まあ絢の事だ心配してくれてるのだろう。優しいな……あれ?……異常に眠くなって……きた。何故だ?まぁいいか寝よう。

 

 おや……すみ……絢。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 よし空亡は寝た。吾の術が効いてよかったわ。

 これなら暫くは起きぬであろうな……だいじょうぶだよな?今からの光景は空亡にあまり見えたくないのでな。

 ふぅ、そろそろか。

 吾は溜息を吐き心を整える。そんな時吾を何者かが後ろから抱きしめてくる。はぁこんな時になんだ?

 

 

「絢よ空亡は寝たのか?」

 

「朧か。しっかり寝させといたぞ、暫くは起きん」

 

「儂が教えた術をしっかり使えて偉いのう。流石は雅の娘じゃ」

 

「今は褒めるでない……そろそろ来るぞ」

 

 吾はそう言い気配を探る。屋敷の外に百以上の人間と妖怪の気配を感じる事が出来る。予想より多いな。吾達で足りるか?でも朧が居るし大丈夫であろう。それに狒々も居るのでな。

 

「朧よ狒々は如何した?」

 

「狒々のやつは武器を研いでおるのじゃ、今宵は長くなるのでな」

 

「そうか……確かに長くなるな」

 

 そしてその時、夜刀が屋敷にかけていた屋敷に結界が破られ、百を超える者達が屋敷に侵入してきた。

 

 

「朧、行くぞ!」

 

「分かったのじゃ空亡を守るぞ」

 

「……二代目を守るのは俺だからな」

 

「狒々も来たのか、これでそろったのう」

 

 

 吾達は気配が集まっている所に飛び出した。

 

 

 




次回、空亡防衛戦。
昼頃か明日の朝のこの時間に登校。

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空亡君防衛戦

今回の話空亡出番ないです。主人公ってなんだっけ?

空亡君防衛戦って言いにくいな(小並感)


 

 

 吾達が外に出ると、外には吾が感じたとおりの数の人間や妖怪達が居た。

 あの妖怪ども人間と手を組んだか……誇りの無い奴らだ。大方、骸鬼に恨みのある奴らを集めたのであろう。無様だな、一時の恨みで人間と手を組むんて。

 この中で気配が強いのは先頭に居るこの男か……だが弱いな。

 

 

「それで汝らは何の用だ?」

 

「知れたことよ妖ども、夜刀神様の子供を差し出すがいい。さすれば貴様らを(めっ)せずにおいてやろう」

 

「くはははは面白いこと言うな人間が、吾らが空亡を差し出すと思うたか?そんな考えが出るとは……はっ何とも面白い頭だな」

 

「妖風情が我らの提案を断るのか!?お前たちこの三匹の害虫を殺せ!!」

 

「そう怒るでないわ、しかし、まぁ、あれだ。吾だって腹をたてているのだぞ?」

 

 吾は今にも腸が煮えくり返りそうだった。

 吾の義理ではあるが弟の空亡を奪いに来たというだけでも!頭に血が上っているのに、この人間達の態度が更に吾を刺激する。

 

 殺してしまおうか……こいつらを、空亡には悟られないように、速やかに。

 最近吾は戦っていなかったからな、その間に溜まった鬱憤……汝らで晴らさせてもらおうか。

 

「故に汝らには死んでもらうぞ?」

 

 吾は最終警告としてそう伝える……無駄だろうがな。

 

「ふざけるな!お前たち何をやっておる!早く行け」

 

 そう男は命じるが、男の周りに居た何人もの人間や妖怪はすでに死体になっていた。やはり朧の仕事早いな。

 周りの仲間を殺された男はそれを見て絶句していた。そして、その視線は横に固定されている。男の横には長い髪をした女性、朧が刀を持ちながら居た。

 

「すまぬのう。話が長くて何人かもう殺ってしもうたわ、まぁ許せ」

 

 朧は長い話に飽きたらしく。すでに何人か殺したようだ。吾の分は残っているから別にいいんだが、少し呆気ないし、拍子抜けだな。

 すでに死体となった者達を見て何人かは唖然としている。そして最初に我に返った主犯と思わしき男は叫び散らす。

 

「なっ、お前たち何やっている!其処にいるだろう殺せ!」

 

 近くに居る朧を殺せと男は命じる。その事でやっと我に返った人間たちは朧を殺すために武器を振るう。朧はその武器をひらりはらりと花弁のように躱す。

 

 

「ほれほれ儂はここじゃぞ当ててみせよ。遅いのう。また一人死んだぞ……仮にもここは百鬼の本拠地だぞ?もしかして?この程度で落とせると思ったのか?」

 

 朧は現れたり消えたりしながら、落胆した様な、飽きた様な口調で独り言を言う。

 そのまま一人また一人と殺していく。

 こいつら本当に空亡を攫いに来たのか?流石に弱すぎるぞ……はぁ作業になるのか。期待はしていたのだがな。

 だが、そんな弱い奴らでも一人も逃がさない。空亡に害を成そうとした。その時点で汝らは自ら死を選んだ事と同じだ。

 

「というわけだ汝らは死ね、狒々やるぞ」

 

「了解した。二代目の敵は俺が葬る」

 

 狒々は被っている面を外し素顔をさらす。その事により狒々にかかっていた変化の術が解かれ狒々の体が女性の物になっていく。腕が細くなり背も少しだけ縮んでより女性らしい姿に。顔だちは凛々しく、敵を見るその目は研ぎ澄ませたかのような切れ長の目であった。もしも男がこの姿を見たならば、戦いの最中と言えども見惚れてしまうかもしれぬな。

 やっぱりこっちの姿の方がしっくりくる、いつもの男の姿だと違和感を覚えるのでな。

 

「狒々は何故空亡に性別を偽るのだ?素直に明かせばいいだろう?」

 

「恥ずかしんだよ、二代目にこの姿を見せるのは……それに俺が女だとばれたくない……それに俺女っぽくないし」

 

 そう顔を赤くして答える狒々は、さっきまでと声が変わり透き通る様な綺麗な声になっていた。……空亡なら女だと知ってもこれまでと変わらず接すると思うのだが……何故恥ずかしがる必要があるのだ狒々は?

 

「めんどくさいやつだな汝は」

 

「うるさい絢、今は集中するんだ。こいつらを殺すぞ」

 

「分かっておる。早く終わらせるぞ」

 

 吾らは敵に向かって駆けだした。空亡の敵を一体残らず滅するために。吾は一気に跳躍して妖力を一気に集める。周りに熱気が広がり辺りの温度を一時的に上がる。そして吾の腕の中に少量の火が灯る。

 

「くははははは!喰らえ人間、叢原火!」

 

 吾は人間どもに向かって叢原火を放つ。叢原火は空中で巨大化していき人間と妖怪を包み込む。肉を燃やし骨を焼く。全てが灰になり空へ消えた。少しでも死体は残さない。空亡にばれたら困るのでな。

 

「絢、俺の分も残せ、俺にもこいつらを殺させろ。二代目を攫うなどぬかす塵どもを駆除するのは、師匠である俺の仕事だ」

 

「なら競争でもするか狒々よ?」

 

「乗った俺は負けんぞ……天殺」

 

 狒々は自分の得物である巨大な戦斧を構えて、得意技である天殺を放った。狒々は天殺を放つ直前に、斧を巨大化させた。巨大な斧は広範囲を一気に叩き切った。あの威力……吾も受けたらひとたまりもないだろう。家が終わったら狒々はそのまま別の敵を探しに行った。吾との勝負に勝つためにもっと敵が多い場所を見つけるつもりのだろうな。

 そして、この攻撃から生き残った僅かな人間は、闘志を燃やしたまま吾らに向かって来る。

 

 無謀である……強い奴が一人もおらんな……本当にこいつらは何故この戦力でここに来たのだ?

 ん?おかしいぞ朧の気配が消えたぞ何処行ったのだ?……だが、あいつはこの中で一番強いし、別に負けはしないだろう。こいつら弱いし。

 

 そのまま吾は虫を駆除するかのように作業的に炎を放ち、人間どもを焼死させる。

 つまらぬなぁ。そんな事を考えて、また次の獲物を見つけようとし――――その瞬間、吾の元に何かが飛んできた。

 

 無理だこれは……避けられない受け止めるしかない。

 吾は無理やり体勢を変えそれを受け止めたのだが、反動で後ろに吹っ飛んだ。吾はその正体を確かめてみるとそれは狒々だった。

 

「なにっ狒々どうした!?」

 

「絢……やばい奴がいる鬼だ」

 

「鬼だと!?なぜこんな弱い奴らと居るのだ!?」

 

「知らない……だが気をつけろ……俺を簡単に飛ばす奴だ。強い」

 

「どうした私の話でもしてるのか?猿妖怪」

 

「……来たぞ!」

 

 吾はその声を聞き言葉が出なかった。この声は聞いたことがある。否、今より吾が小さいときに何度も戦ってもらった。何度も会話を交わした。何で汝がいるんだ……。

 声の主は吾を見て嬉しそうに話しかけてくる。

 

「おお絢か!久しぶりだな雅は元気か?」

 

「何故、汝がここに居る!?星熊童子!」

 

「勇儀姉さんと言ってもいいんだぞ絢?」

 

「ふざけるな星熊!問いに答えろ!」

 

「怒んなよ、察しが悪いな絢は。そういうの直しとけって言っただろ?でも私は優しいから答え合わせはするけどな。簡単だぞ絢、私がお前達の敵という事だ。さぁそれじゃ!戦おうか!」

 

 

 




今日は水着茨木実装日だ絶対に当てるぞ!

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遅れましたが、やうゆうさん、RPG大好きさん誤字報告、誠にありがとうございます!


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星熊と狒々

 (空亡)おめぇの出番ねぇから!
 なんかさ水着茨木が来ない悪夢見たけど気のせいだよな!な!
 ふっ、魔法を使うしかないのか(財布を見て)

あ、そうだ(唐突)
前回若干シリアスっぽく書きましたが……俺にシリアスは無理だったよ。
戦闘描写ムズイでござる


 

「何故だ星熊!汝程の者がどうしてこやつらに味方をする!?」

こいつはこんな奴らに味方する奴でないはずだ。まさか!?何かに操られているのか!?

 

「そういえば……なんでだっけな?そうだそうだ思い出したぞ。空亡というやつと戦いたくてな。あの二人の子だぞ?絶対に楽しめるだろう。だからこいつらについてきたんだけど……こいつらは何でここに来たんだ。目的を聞かされてないんだよ」

 

「馬鹿なのか貴様は!?」

 

「むーばかとは酷いな絢」

 

 何故だろうな?吾のやる気が一瞬でそがれた。もう先程の緊迫感は無く変な空気が流れている。

 

 

「いや星熊、吾らと戦う必要なくないか?」

 

「やだ戦いたい」

 

「子供か貴様!」

 

「鬼だ!」

 

 前は……こんな子供っぽい奴だったか?吾の記憶ではもっと勇ましかったのだが……記憶違いか?

 ……吾よ思い出すのだ。星熊はどんなやつだった?駄目だ……今思い出してみたんだが、星熊は母上と酒を飲んでいるか、酒の飲み過ぎで母上に絡んでる姿の記憶しかない。

 ――――もっと星熊のいいところを探るのだ吾よ……見つけなければいけないのだ。でなければ今まで吾の憧れの一人であった星熊が、ただの駄々をこねる子供に見えてしまう。

 

 

「あやあや、いいから戦わないか?」

 

「吾は絢だ。あやあやではない」

 

「可愛いじゃないかあやあや。これからそう呼ぼうか?」

 

「やめろその名は気に入らん」

 

 星熊は本当にふざけているのか?

 今回空亡を眠らせたのは夜刀を祭っていた者の残党が空亡を攫いに来るという予言をされた吾らは二手に分かれる事にした。 

 骸鬼と夜刀はその本拠地を破壊しに行き、吾らは襲撃者を皆殺しにすることが役目だった。空亡の命が狙われると聞き、かなり吾は緊張していたのだが……星熊のせいでその緊張が解かれてしまった。

 

「なぁ星熊よ、吾が今度空亡に頼めば戦ってくれると思うぞ、だから今日はおとなしくしていろ」

 

「そうか戦えるならそれでいいぞ……でもそれならどうしようか?私……朧のやつをどこかの山に飛ばしてしまったぞ私も何処に飛ばしたか分からん。なぁ絢探しに行くか?」

 

「お前がい「待てよ絢」なんだ狒々?」

 

 狒々は吾の言葉を遮った。なんだろうな?

 

「そこの鬼と話させろ」

 

 狒々はそう言い、とても不満そうな敵意を含んだ表情で星熊を睨んでいた。凛々しい顔を少し歪ませながら妖力を敵意として星熊に放っているが……星熊は特に気にしていないようだ。

 

「おい鬼」

 

「なんだ猿妖怪?」

 

「お前はただ戦いたいというそんな理由で?二代目の襲撃者に手を貸したのか?」

 

「え?あいつら襲撃者だったのか?」

 

 それすら知らなかったのか……どんどん星熊の地位が割れの中で下がって行く様だ。これ以上見たくない。敵意を向けていた狒々すら呆れてしまっている。それでも何とか持ち直し狒々は星熊と話そうとする。

 

 

「……鬼お前はふざけているのか?」

 

「ん?私はいたって真面目だぞ?逆にどうしてふざけていると思うんだ?」

 

「俺はお前を許せない。そんな軽い考えで二代目に害を成そうとしたお前を……それにいきなり俺を投げたこともあるしな……だから俺は今からお前と一発戦おう。お前が本当に二代目に敵意がないか確かめる」

 

「おお、私と戦ってくれるのか?嬉しいぞ!」

 

 なんで星熊は喜んでいるのだ?狒々は敵意に交じり殺気すらも放っておるのだが。鈍感という話では済ませられないだろう。ここまで行くともはや尊敬することすらできるな。

 

「早く()ろう!戦ろう!猿妖怪」

 

「うるさい……すぐ黙らせてやるよ鬼」

 

 星熊はとても楽しそうに、今からの戦いに歓喜して好戦的な笑みを浮かべながら拳を構えていた。

 しかし狒々はそれとは対極に表情は冷めていた。凛々しい顔は何も表情を浮かべていなく周りに殺気だけを放っている。その殺気は鋭利な刃物の様に鋭く無差別で吾にも届く。体が裂かれるという未来を強制的に吾に想像させてしまい。

 吾はここから動く事が出来なかった。動くと死ぬ……そう吾の本能が語り掛けてくるのだ。

 

「何でこんなことになったのだ?吾には分からん」

 

 今吾が願うのは空亡が起きないということだけだな。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 星熊は拳を狒々は戦斧をその手に構える。二人の強力な妖が放つ妖力は互いに押し合い、喰らいあう。強大な力のぶつかり合い。それにより空間が悲鳴を上げて亀裂を生みだした。

  

 この場の雰囲気はまさに一触即発。狒々に星熊、二人のどちらかが動けばこの闘争は開始はされるだろう。時間が少し経つにつれて膨れ上がっていく妖力に互いに緊迫感が高まっていく。

 

 そして三十秒ほど妖達は睨み合い同時に駆けだした。大地を蹴り敵の元へ。

 この時……鬼と猿の一夜限りの闘争が幕を開けた。

 

 始まりは、狒々による戦斧の振り下ろしだった。狒々からすればただの振り下ろしであるが、異常なものがあったそれは速度。星熊の目に捕らえられないほどの怒涛のラッシュ。

 神速すら超えるこの一撃を星熊は一発でも受ければ次の一撃も避けられない。

 狒々のこの振り下ろしは一撃目で動きを封じ、二撃目で体を折り、三撃めで体を砕く。そしてこの技は相手が死ぬまで終りは来る事がない。

 

 もしもこの攻撃を空亡に対して放ったとたなら空亡は成す術も無く肉塊になるだろう。

 

 しかし目に捕らえられないという事は星熊にとって些細なものでしかない狒々のラッシュを気配で感じ、全てを受け流す数十発を超える攻撃は星熊に当たる事は無かった。

 

「おおお!早いねぇ全く見れなかったよ。まだ早くできるのかい?」

 

「……余裕そうだな鬼……」

 

「いや結構つらいぞまだ腕が痺れるからな」

 

 それだけ会話を交わし狒々は再度攻撃を開始しようとしたが――――

 

「次は私だ!吹っ飛べぇぇぇえ!」

 

「なっ――――――」

 

 その星熊の声とともに放たれた拳をぎりぎりで反応して防ぐ事が出来たが狒々は彼方吹き飛ばされた。一瞬で狒々の見える景色は変わりつづけた。何とか止まる事が出来たのだが、その直後に凄まじい速度で迫ってきた星熊に一撃入れられる。

 

「グガァッ!」

 

「よし入ったぁぁ!」

 

「俺を舐めるなぁ!」

 

 狒々はそう叫びながら戦斧を巨大化させる。そのまま仕返しとばかりに星熊に向けて薙ぎ払う。攻撃を当てたことで喜んでいた星熊の無防備な腹に巨大な戦斧の一撃が叩き込まれる。

 

「良いねぇ良いねぇ!もっと打ち込んで来いよぉ!」

 

「言われなくても……やってやるよ!」

 

 狒々は跳躍して星熊の真上まで飛び、上空から戦斧を自分の何倍もの大きさに巨大化させて星熊に叩きつけた。

 

「面白いなぁ凄く楽しいぞ!」

 

 星熊は拳一つでその斧を殴りはじき返す。それを見た狒々は絶句し動きが止まる。

 

「墜ちろぉぉ!」

 

 星熊は空中で静止する狒々の上を取り地面に向けて叩き落とすが、同時に星熊も地面に叩きつけられる。

 

「何が起きた?」

 

 星熊は今の状況を理解できなかった。自分が攻撃したはずなのに何故か自分も地面に叩きつけられるなんて脳が付いて行かなかったからだ。

 

「もういい見た目なんか気にしない……お前は危険だ二代目に近づけさせない」

 

「ふふそれでどうするんだ?」

 

「殺す」

 

「やってみろ私はここだぞ?」

 

 狒々の姿は完全に変わる腕が黒く変色してさらに伸びる。

 分かりやすく言えばスーパーサイヤ人だろうか?

纏う妖力も、放つ殺気も、その存在感もすべてが異質な物になる。星熊は更に歓喜するまだまだ遊べると。そして狒々は言った。

 

「仕切り直しだ」

 

 




次回に続く。

空亡君は多分次でる、うん多分。

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鬼と狒々決着

 

「おっと危ない、先程より圧倒的に早いねぇ」

 

「うるさい……早く殺されろ」

 

「いやだそれじゃ楽しめないだろう?」

 

「どうでもいい。いいから死ね」

 

「怖いな怒るんじゃないぞ」

 

 星熊は余裕そうな態度で狒々に接しているが、内心は穏やかではなかった。狒々の攻撃は全て威力が桁違いな物になっている。一発でも掠ればその部分は断ち切られ、簡単に消し飛ぶだろう。

 

 

 実際に星熊は開幕直後、狒々の一撃を受け左腕が使い物にならないというレベルではないほどに破壊されている。肉を勿論、骨は砕かれ190度腕が曲がっている。

 

 通常、星熊の戦闘方は捨て身の素手喧嘩(ステゴロ)。自分が傷を受ける事に愉悦を覚えるのだが……最初の一撃でその考えを改めた……これは受けてはいけないと。

 

 星熊は理解している。

 狒々は本気で自分を殺すつもりだ。

 もちろん星熊は何度も自分を殺しに来た相手と戦った事はある。しかしほとんどは人間で星熊の命を脅かすことはなかった……だが狒々は違う。

 

 人間の何倍もの力を持つ妖怪。それも最上位に位置する程の妖怪である。

 

 筋力

 

 速度

 

 耐久

 

 敏捷

 

 これらすべてが人間とは比べ物にならない。星熊は甘い考えは捨てた。この勝負は楽しむものではない、ただ勝つために効率よく動くことを決める。

 

 

 そして狒々が仕掛けた。

 

「これで死ね」

 

 星熊から跳躍して距離を取る。腕に持つ戦斧を縮めそこに妖力を流し込むと戦斧が黒く染まる。形が徐々に変形していき、斧の刃が開き口の様な物に。そして龍を模した様な形になった。装飾として尾が伸び狒々の腕に纏わりつく。狒々の黒い腕を覆い尽くし斧に生える尾は籠手となった。

 

「喰らいつくせ、暴龍の戦斧」

 

 そしてそれを……狒々は解放した。戦斧は一気に巨大化して口が開く。その攻撃は邪魔な物を全て喰らいながら星熊に迫る。

 

「なっ、まず――――」

 

 星熊はそれに反応する事が出来なかった。鮮血が舞う。痛たたましい咀嚼音が戦斧から鳴り響き、星熊を喰った戦斧は夥しい量の赤い液体を口から流している。

 狒々は戦斧の形をを戻して血を拭う。死んだと確信した狒々は一言漏らした。

 

「久しぶりの餌だったな」

 

 武器をしまおうとする狒々の元に絢が歩いてきた。

 

「なぁ狒々」

 

「なんだ絢」

 

 絢は狒々に向かって笑みを浮かべながらこれから起こることを思い浮かべて、狒々に一言謝った。

 

 

 

「悪いが……勇儀はあの程度では死ななんぞ?」

 

「何だと?」

 

「あははははは!楽しいぞ!楽しいぞ!ここまで私を負傷させた奴は久しぶりだ!夜刀

と雅ぐらいだぞ?ここまでやったのは!誇れよ猿妖怪!」

 

 そう言いながら笑う星熊の姿は、腹が抉られ、左腕は食いちぎられていて、すでに死んでいていいほどの傷なのにその場に立っている。星熊が生きている事に唖然として狒々は動けなくなっている中で星熊は続ける。

 

「これを使うのは三度目だ。頼むから死なないでくれ」

 

 星熊は狒々を褒めてそして忠告した。死ぬなよと……ただ一筋の願いを込めて。

 瞬間星熊の気配が一瞬消えたと思うと……爆発したかと思うほどに妖力と気配が膨れ上がる。

 そして星熊は動き出した。

 

 一歩目、星熊は大地を蹴った。それと同時に大地が割れ大気が揺れる。狒々はまだ動けない星熊の妖気に圧倒されているからだ。

 

 二歩目、さらに大地を踏み込み狒々の前に現れて拳を構えた。狒々は咄嗟に態勢を立て直しその攻撃を防ごうとする。

 

 三歩目、溜めていた力を全て開放して、踏み込むと同時に拳を狒々に叩きこむ。防御すら貫通して腹に直撃して肉を貫き骨を砕いた。

 狒々が受けたのはただの一発の打撃の筈なのに、感じたのは数百発にも感じられるほどの衝撃。それに当然耐え切れる事が出来ずに悲痛な声を上げて狒々は飛んで行く。

 

 

「グッ―――――ガァッ」

 

 そのまま狒々は骸鬼の屋敷まで飛ばされ壁を突き破る。壁を破る度に狒々の傷は増えていき血を流し続ける。もはや悲鳴すら出ずにただ塵の様に飛ばされる。狒々はそのまま、十部屋程突き破りとある少年が寝ている部屋に突き刺さった

 

 

 ◇◇◇

 

「あれ、夜なのか?」

 

 俺は何で寝てるんだろうか?あぁ絢と話していたら眠くなったんだった。うんぐっすり眠れた。それにしてもさっきから外がうるさいな。よく眠れたんだけどまだ寝てたい。さいきんあんまり眠れなかったから。

 あれ?なんか色んな所から妖力感じるんだけど、何が起こっているんだろうな?

 

何かを突き破る音がどんどん近づいて来る……うーん嫌な予感がする……この部屋から逃げた方が良いかもしれない……うん出よ―――

  

 その時、部屋に高速で何かが飛んできて、俺の真横に突き刺さった。

 

「ファッ!何!?何が飛んできたんだ!?ちょっまて怖い!?」

 

 俺が恐る恐る横を見ると……そこには、全く見たことがない長身の女性が瀕死の状態で刺さっていた。

 考えるより先に俺は女性に駆け寄り声を掛ける。

 

「おい大丈夫か!?」

 

 大丈夫じゃないとは分かっているだが、まずは意識があるか確認したかった。初めて見た筈なのに何故か無性に心配だった。この人を助けないとそんな考えが頭を過る。

 

「二……代……目?」

 

 その声はいつも聞いている声より高かったが誰かが分かった。こいつは狒々だ。でもなぜ女に?そんな考えは捨てよう今は狒々を助けないと……どうする?どうすれば助けられる?

 

「なんで……起きて……いるんですか?」

 

「そんな事はいい!何でそんなことになっている―――」

 

「猿妖怪生きてるかー?」

 

 全く聞いたことがない声が俺の耳に響く。

 俺はその声が聞こえた方を見ると見知らぬ女性が片腕を血に染めこちらに向かっていた。まさか……こいつが狒々をここまでやったのか?

 

「おおー結構飛んだみたいだが生きてるなほんと凄いよ……ところでお前は誰だ?」

 

「なぁお前」

 

「なんだ殺気がこもってるけどどうして怒っているんだ?」

 

「お前がやったのか?」

 

 そう言う俺の声は自分でも怖いくらいに低かった。今まで一回もだしたことない声それほどまでに俺は怒っていた狒々を俺の師匠をここまで瀕死に追いやったこいつにただひたすらに殺意を覚える。

 

「私だがそれがどうした?」

 

「うんうん……分かったお前がやったんだな、うん死ね」

 

 俺は骨を使って武器を造りだしたそして初めて覚えた殺気と妖力をそれに込めて一言。

 

「首飛ばしの呪風(かぜ)――蝿声」

 

 首を落とす呪いの斬撃を相手に向かって放った。

 

 




がちぎれ空亡君参上!
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初めての殺意

忠告、この小説は男女平等です。戦いに善悪なし。女も男も殺し合うとても平和な小説です。苦手な人は気を付けてね。


「首飛ばしの呪風――蝿声」

 

 呪風は飛ぶ鬼蛇の一言により、この一撃に込める思いは対象の斬首。

 

 刎ねろ。

 

 殺せ。

 

 死ね。

 

 呪詛を纏いながら斬風は星熊の細い首へと一直線に飛んで行く。その斬風は神速を超え刹那の内に星熊の首まで迫る。

 

「危なっ、これ絶対まずいやつだ!?」

 

 星熊はその斬風を首に直撃する瞬間に何とか横に逸らす。斬風は逸らせらせたが勢いは消える事はなく全てを斬り裂き続けて空に消えた。

 

「おい、お前落ち着け!何でそんなに怒ってるんだ!?今の技はもう使うな、危ないから子供が放っていい技じゃないぞ!?」

 

「あーそうかーまずは狒々を治さないとなー『治れ』」

 

 空亡は不気味なくらい陽気な声で言霊を使い一瞬のうちに狒々の傷を完治させる。狒々の砕かれた骨は完全に再生して肉もすべて戻った。狒々の姿は朝空亡が見た完全な無傷な状態に。

 

「どういう力か分からないが猿妖怪も治ったし私も怪我がやばい。少年怒るの止めようぜ」

 

「確かになお前も死にそうだな……治してやるよ『治れ』これでいいだろ?」

 

「ああ、ありがとう。でも急に落ち着いたなお前どうしたんだ?」

 

「だってなぁ!直したって事はいくら攻撃してもいいんだろぉ!?」

 

 空亡は年相応の無邪気な弾むような声でそう言った。

 

「は?どういうこ――――――」

 

 星熊は空亡の言ったことが一瞬理解できずに空亡に聞こうとした瞬間、星熊の足が歪み捻じり切れた。

 

「おかしいな胴体を狙ったんだが?初めてだから分からないなもう一回やるか。『(まが)れ』」

 

 ―――――突然だが、歪曲の魔眼という物をご存じだろうか?

  

 空の境界という型月作品の浅上藤乃(あさがみふじの)というキャラの持つの能力だ。

 この魔眼の能力は、視界内の任意の場所に回転軸を作り、歪め、捻じり切る「歪曲」。この魔眼は複雑なことはできないが、物の大きさ物理的な強度に左右されず問答無用で曲げられる。

 簡単に説明するとこんな感じ能力。そして空亡はそれを言霊で再現した。

 

 空亡は記憶の中の浅上藤乃の力を模倣して再現する。しかし正気の空亡はそんなことはしない。元々、空亡は一般人。現代日本で根付いたその精神が無意識に命を奪うという行為を恐れ、枷をしていた……しかし今はその枷が外れている。目の前の存在を殺すためだけに普段セーブしていた力を全て開放するのだ。

 

 ――――――長々と色々語ったが、要するに空亡は今世で初めてガチギレしているのだ。怒りで我を忘れるやばい奴。それも力があるだけ尚更厄介だ。そしてその力は蛇神である夜刀神と鬼である骸童子の力。我を忘れ正気を失っている今の空亡はこの力を好きに使うだろう。何が良いたいかって?一言で済ませるとしたらやばい。

 

 普段使えない技も無意識に妖力を抑えて使えなかったが、この状態の空亡に抑えるという意志はもう残ってない。故に疑似的ではあるが普段できなかった技が使えるかもしれないということだ。

 

 空亡の目標は神咒神威神楽の天魔になる事という馬鹿な願望。

 この場で空亡が再現するのは天魔大獄(おおたけ)。戦友の為と戦った誇り高き男。その男の異能を今、空亡は敵の為に使う。

 

 

「――太・極――

 

随神相――神咒神威・無間黒肚処地獄(こくとしょじごく)

 

 しかしあくまで再現。死を願い続け追い求めたことなどない空亡には一撃必殺などという効果は使えなくて、せいぜい出来るとしたらを対象を粉砕させるぐらいだろう。

 言霊により空亡の腕に大獄の事と全く同じ籠手が形作られる。

 

 空亡はそのまま星熊に拳を握り振りかぶる。

 

 足が捻じ切られた星熊にはそれを避けるすべは無く。星熊の未来はここに確定した。

 

「死ね」

 

 星熊の目の前まで拳が迫り直撃する寸前、星熊は。

 

(あぁこれ駄目だ死――――)

 

「そこまでじゃ空亡。落ち着け」

 

 空亡の拳は星熊のほんの僅か数センチほどで朧に抑えられていた。

 

「朧、退けこいつを殺す」

 

 今だ殺気を放ちながら拳を動かそうとする空亡を朧は軽く叩いた。空亡は無防備な自分の頭をいきなり意味もなく叩いた朧に困惑して一瞬殺気を解く。

 

「朧、何するんだ!」

 

「だから空亡落ち着けと言ってるじゃろ。この戦いにお主の出番はない」

 

「狒々がやられたんだぞ!父さんの百鬼の仲間が!」

 

「空亡なぜこんなことになったか知っておるか?」

 

「知らないが、でも狒々が!」

 

「話を聞け空亡。まず今回の戦いは狒々の早とちりと勇儀の天然が原因じゃ」

 

「どういうことだ?」

 

 朧と話したこている内に落ち着いてきた空亡はその言葉を聞き疑問を浮かべる。

 

(え?どういうこと?狒々を俺の部屋まで飛ばしてきたのはこの鬼だし、この鬼は手が狒々の血らしきもので染まっていたし、狒々をここまで痛めつけた敵だと判断したんだけど、なんか違うの?)

 

「茨木が普通にこのバカを説得して戦いを終わらせたんじゃがな、狒々のやつが戦いを仕掛けてのう。まぁそれに乗ったこいつも悪いんだが、それで始まってなぜか殺し合いになり今に至るほら笑えるじゃろ?」

 

「わらえないよ……えぇじゃあ俺の勘違い?」

 

「そうじゃな。それに勇儀はお前を止めようとしてたぞ」

 

「………………すいませんでしたぁぁぁぁ!」

 

 空亡はその場で勇儀に向かい本気の土下座をする。頭まで地面に埋めて。勇儀はさっきまで自分を殺そうとしていた相手が。地面に頭を埋めながら土下座してくるという謎の状況に勇儀は混乱する。どうしたらいいだこれ?

 

「えっと少年頭を上げろ。もともと私がここに来たのが悪かったからそう謝るな。調子に乗ってやばい技まで使っちゃったし。少年はあの猿妖怪が大切だから怒ったんだろ?ならお前は謝らなくていいぞ。むしろ誇れあの星熊勇儀を殺しかけたんだぞってな!」

 

 勇儀はここまで痛めつけられながらも空亡の行いを許しそれだけだでは無く肯定した。そんな勇儀を見る空亡はこれが姐さんと呼ばれる存在か、器が大きすぎる。そんな考えが生まれ空亡の口が勝手に動いた。

 

「姐さん名はなんというのですか?」

 

「姐さん?まぁいい私の名は勇儀。星熊勇儀だ」

 

「勇儀姉さん。許していただきありがとうございます。この恩は一生忘れません」

 

「そんな気張らなくっていいって……なら私の傷を治せそれで終わりだ」

 

「その程度でよければ『治れ』」

 

「これでしまいだ。ちょっと疲れたから私は寝る。休ませてくれ」

 

「どうぞ休んでください」

 

「空亡なんかいつもと違うのじゃ」

 

 多分気のせいである。




終わり方が納得いかないからいつか変わるかも。


常識妖怪朧さんであった。次回空亡勉強するの巻。


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朧さんのスーパー妖怪教室

朧さんのターン!


 

 見知らぬ部屋。そこに何故か俺は縄に縛られている状態でいた。うん全く訳が分からないな。どういう事なんだ?周りにあるのは酒瓶、酒瓶、酒瓶。酒瓶しかねぇ。

 酒臭い。凄いくさい、ていうか吐き気が……おぇ。

 

「よし起きたな空亡。酒臭いのは我慢してくれ」

 

「我慢できるレベルじゃないんだが」

 

「仕方ないのう。……臭いの認識を変えた。これでいいはずじゃ」

 

 凄い。さっきまで臭かったはずの酒の匂いが一瞬で消えた。朧の能力ってどこまで応用が利くんだよ、便利すぎるだろ。夜刀神の言霊はイメージを強くしないといけないから意外と不便なんだよ。俺がよく使う水槍はたった一つの言葉に敵を追うイメージと増えるイメージを同時にしなけれないけない。

 俺の能力である夜刀神の言霊の仕組みは、まずは何を起きしたいかをイメージ、次に言葉に妖力を込み、最後に言葉を発する。そしてその言葉のとおりの現象が起きるという物だ。ちゃんと何が起こるか想像しなければ発動すらしない。

 

 そして改めて朧を見てみると、朧の姿がいつもと違っていた。髪を後ろで束ねてポニーテールに。いつも若干着崩している着物はちゃんと着ていて、巻いているサラシを付けずにいるせいで、抑えられている胸が強調されている。

 

「……………やばい」

 

 やばい俺の性癖にドストライクなんだけど。え?なにこれ?朧ってこんな綺麗だったの?いやいやいやいや、ありえないって。あの朧だよ?基本屋敷で酒飲んで一日中ごろごろしてる駄目妖怪だよ?俺が知るかぎり父さんたちの次に強いけどさ。これ誰なの偽物?うちの朧がこんなに綺麗なはずはない。

 

「さてさて朧先生の勉強会はじめるぞ、しっかりついて来るのじゃ空亡。ん、どうしたのじゃ?」

 

「……よし待つんだ朧、まずその恰好は何だ。そして此処は何処だ」

 

 何とか平常心を保つんだ空亡。俺なら出来るぞ空亡。頑張るんだ空亡。

 

 よし自己暗示完了。これで大丈夫。朧は基本酒臭いんだいつものを思いだすん――――――

 

 何時もの朧を思い出そうとしていた俺の目の前に、朧に顔があり今にもくっつきそうだった。そのまま朧は俺の角を触らないようにしながら角が生えていない部分を触っていた。

 

「ふむ、熱は無いようじゃな。昨日の言霊に妖力を込め過ぎたせいじゃないかと思ったんじゃが何ともないみたいで安心したぞ」

 

「え?いや、は?朧さん何やってるディスカ!?」

 

「なにをそんなに驚ているのじゃ?儂はただボーッとしていたお主に熱があるか確かめたんだが……何か悪かったか?」

 

「いや悪いとかじゃなくてですね顔が近いというかなんというか……離れてくれませんか?」

 

「お主いつもと口調が違うぞ?……ほう、そうかそうか。そういうことか可愛い奴じゃ」

 

 朧は最初は分っていなかったようだが何かに気付いたようだ。ていうか女に可愛いと言われて喜ぶ男はいない。そして何に気付いたんですかね俺は知りたくないよ。

 

「ふふふ、空亡お主、儂に照れているのかこの姿か?」

 

「いやまっさかー。そ、そんなわけないぞ。ははははは、おかしなこと言う朧だな。そそ、それより何で俺はここに居るんだ?」

 

 よし!俺は完璧に話を逸らせた。あまりの完璧さに俺も寒気を覚えるぜ。ふっやっぱり天才だな。動揺してか何なのか、俺は凄い変なキャラになっている気がする。それは気のせいではないだろう。うん、これだけは断言できる。どんなテンションであってもな。

 

「お主流石に動揺しすぎじゃ。少しキモイのう……しかしそれほど儂の姿が好みという事か。手間をかけたかいがあったぞ、お主の意外な一面も見れたのでな。さてと、ふざけるのはこれぐらいにして本題に入るとするかのう。今日はお主に妖怪の事を説明するぞ」

 

「了解した」

 

 ここまで連れてきてそんなことを説明するのかでも妖怪から妖怪の事を聞ける機会なんて滅多にないと思うしここは聞いておこう。

 

「妖怪は他になんて呼ばれているか知っておるか?」

 

(あやかし)と物の怪だっけ?」

 

 昔、妖怪にはまっていろいろ調べていた時に、本とかにそう書いてあったし多分あってるはずだ。俺、自分の名前は思い出せないけど他の事は何故か鮮明に覚えてるよな。不思議だ。

 

「そうじゃ、よく知ってるのう空亡。そして知ってるか?妖怪には人間の意識から生まれた物と自然から生まれた者の二種類が存在するのじゃ。前者は人間に近い姿の者が多く、後者は異形の姿の者が多い」

 

「自然に生まれた者に異形が多いのは人間には想像できぬからだ。空亡質問だ。もしも龍を何も情報を与えられず名だけで想像してみろと言われたら答えられるか?」

 

 それは無理だな。あんな牙があり爪がある空飛ぶ妖怪なんて名前だけじゃ想像できない。

 

「無理だな、朧」

 

「そうじゃろう?こういう簡単に想像できない姿をしたものが基本的に自然から生まれるのじゃ」

 

 

「そうなのか朧、なら人間が作った妖怪はどういう者達なんだ?」

 

「人間が作った妖怪の代表的な者を上げるとしたら、ろくろ首や唐傘お化け、一反木綿。これらは、人間のそういう者が居るかもしれないという考えから生まれた者なのじゃ。例えばろくろ首などは、首が伸びる人間に近い生き物がいるかもしれないそれが襲って来る。そういう考えから最初のろくろ首が生まれ、その姿を見たものがさらに噂を広めて数を増やす。そういう仕組みで妖怪は人間から作られ増えていったのじゃ」

 

「そうだったのか」

 

 今まで妖怪は全て人間の想像から生まれた者だと思っていたが。全く違ったんだな、凄い勉強になった。妖怪がそういう物としたのなら、朧というかぬらりひょんは前者の人間が作った妖怪だろうな。確認してみるか。

 

「ぬらりひょんは前者であってるか朧?」

 

「よくわかったな空亡。正解した空亡には褒美として一つ教えて野郎。ぬらりひょんは

初めて生まれた時から一人しか存在していないのじゃ」

 

「…………?」

 

 えっと……どういう事?

 

「察しが悪いのう空亡。説明すると、儂こそが最初に生まれたぬらりひょんなのじゃ」

 

 駄目ぬらりひょんの朧さんは、ただ一人しか存在しない妖怪だった件について。てことはかなり年取ってい―――――

 

「年齢を聞いたら殺すぞ……空亡」

 

 俺はもうその事を考えないようにしてから、朧に気になる妖怪の事を聞き続けた。かなり有意義に時間を過ごして今日一日が終わったんだが、この部屋は何処なんだろう?こんな場所は屋敷にはなかったし、見たことがない。疑問を残したまま部屋を出ると横は俺の部屋だった。

 

 いや、おかしくない?いつもは横の部屋には何もなかったはずだよな?あんなに酒なんて置いてないし何より何年も過ごしたような跡も感じられた。俺はよくわからなかったので朧に聞いてみた。すると返ってきた答えは。

 

「この部屋か?この部屋は日当たりが良く居心地が良かったのでな、気に入ってしまい、骸鬼たちにばれないように認識を偽りずっと暮らしていたのじゃ。言うなよ空亡約束じゃぞ?」

 

「うんわかった約束だ。でも朧?なんかそれだけが理由じゃない気がするんだが……気のせいだよな?」

 

「そんなことはないぞ。ただあの部屋に居るとな毎晩お主が寝た後すぐ迎えて、寝顔を無る事が……できる……のじゃ……」

 

 朧は何故か自分から白状していき、どんどん声が小さくなっていった。朧は馬鹿なのだろうか?

 言い終わった朧の顔は真っ青になっていて、そんな朧を見る俺は冷え切って目をしていただろう。ともかく朧になぜこんなことをしたのか聞こうか、楽しみだな。

 

 

 その二日後、朧は何故か庭に埋まった姿で発見されたが、俺は何もしていない。

 

 

 




俺なりの妖怪の考えどうでしたか?
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南宮 那月さん。やうゆうさん。誤字報告ありがとうございました。本当にいつもありがとうございます。


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どうやったら京に行けるのか考えた挙句、ぬらりひょんに頼むことにした空亡君

タイトルが思いつかなくてこうなった。




 

 転生してから10年たった。今までと変わった事があるとすれば、父さんとの百鬼のメンバーと勇儀がこの屋敷に住むことになったぐらいだ。

 百匹を超える妖怪達が全てこの屋敷に住んでいる。

 そんなこともあり、この屋敷は毎日賑やかで退屈もしないんだが俺は猛烈に思う事があった。それは――――――――

 

「外に出たい」

 

 屋敷の庭とかなら出れるけど、屋敷の外に出たことが一回しかない。せっかく平安時代に居るんだし、京の都しっかり見ておきたい。そう思って一言漏らした言葉は、隣に居た少女に拾われた。

 

「どうしたんですか若?」

 

「ごめん雪花(せっか)何でもない」

 

 この少女は雪女の雪花。少し前から俺のお目付け役として雇われている妖怪だ。その姿は分かる人には分かるかと思うが、ぬらりひょんの孫の氷麗(つらら)と完全に同じ姿をしている。雪女と言えばこの見た目だからね、全く違和感がない。

 

「外へ出たいんですか?でも駄目ですよ若、今日は勉強しなきゃいけません。それが終わったら一緒に遊びましょうよ?」

 

「いや屋敷の中じゃなくて京に行きたいんだよ」

 

 俺は雪花になら教えて大丈夫かと思いそう言ったんだが雪花はそう言った瞬間に俺の肩を慌てた様子で掴んで言ってきた。

 

「駄目です若!外は陰陽師とかいるんですよ、それに若じゃ絶対迷います!」

 

「え?俺、方向音痴だと思われてるの?酷くないか?」

 

「なにいってるんですか?若は方向音痴ですよ?いやですねーこないだもこの屋敷の地下で迷ってたんじゃないですかー」

 

「……しょうがないだろ初めて地下の存在知ったんだし気になったんだがから……それに俺は迷ってない」

 

 迷ってねーし、迷ってねーし……ただ地下が広すぎたのがダメなんだ。何のなんだよあの地下は、この屋敷の何倍もの大きさ有ったんだぞ?この屋敷は山に出来てるんだけど、まさか山の中が全部屋敷の一部とかおもわないだろ。どんなだけ時間かけて作ったんだよ?妖怪ってスゲーや。

 

 話を戻そうか、このままでは屋敷の外に出られない。どうすればいい?

 そうだ!朧なら助けてくれるんじゃないか?よし、これが終わったら朧に頼みに行こう。

 

「外は駄目ですけど、わ、私と遊びましょう若?勿論、勉強が終わってからですけどね」

 

「もう半日ほど続けているだが。それも妖怪の事ばっかり」

 

「当然です!」

 

 雪花はドドン!と効果音が付きそうな勢いでそう言った。

 

「若は将来百鬼を背負うんですから、妖怪の事は知らないといけません今日はあと二十種類は覚えてもらいますよ!」

 

「それってどのぐらいかかるんだ?」

 

「今は丁度(うし)(こく)ですので二辰刻(しんこく)後の(さる)の刻までですね若」

 

「長くないか?」

 

 確か、一辰刻が現代の二時間だから、俺はあと四時間勉強するのか……勉強を始めたのが辰の刻からだったから、合計八時間勉強することになるじゃん。でもまぁ妖怪の事知れるのは別にいいか、楽しいしからな。その後俺は申の刻までひたすら勉強した。

 

 勉強が終わった俺は床ですこし休憩していた。

 

「疲れた。うん凄い疲れた。でもめっちゃ覚えた俺頑張ったスゲー頑張った」

 

 今日は京に行くつもりだったのに、こんなに疲れるとは思ってなかったぞ、でも俺は京へ行くんだ。何故か無性に今日行きたくてな。そろそろ朧の所に行くか。

 

「何を頑張ったんだ空亡楽しいそうだが」

 

 絢は削った氷に甘葛(あまづら)をかけたものを食べながら俺に話しかけてきた。美味そうだな、それより絢に久しぶりに会った。やっぱかわいい。

 

「久しぶりだな絢、雅さんの所に帰ってたんじゃなかったのか?」

 

「久しぶりだな。今帰ったんだ空亡」

 

 二週間前から絢は雅さんの所にいきなり帰ったんだが……前より妖力上がってない?

 

「そういえば何で帰ってたんだ?何か用事でもあったのか?」

 

「母上にまた修行を付けて貰ってたのだ。また戦おうぞ空亡」

 

「そうだなそれは楽しみだ。そうだ絢、今日俺は京に行こうと思うんだが一緒に来るか?」

 

「京の都か、骸鬼達に怒られるぞ?」

 

「大丈夫だ絢、安心しろ。朧に頼めばなんとかなる気がする……怒られても朧のせいにすればいいし」

 

「汝は鬼か?」

 

 絢は呆れながらそう言った。リアルで汝は鬼かを聞けたのは幸せだな、これは頭に永久保存しよう。そう決めた。

 そういえば朧は今日はどこにいるんだろうか、一回も見てないんだが……いつもの場所か?

 

「絢、今日は朧の事見てないのか?」

 

「見てないな、朧の事だ酒でも飲んでいるのだろう?」

 

「ならあそこか、絢ついてきてくれないか」

 

「了解したぞ空亡、吾も京に行きたいのでな付いて行くぞ」

 

 絢も着いてきてくれるのか、よしこれで見つかった時に怒られる量が減る。今の俺は凄く鬼をしているぞ、ふふふまたこれで汝は鬼かが聞けるのか……でも怒られるの嫌だな父さん怖いし。

 

「よし絢、酒蔵に行くぞ。どうせ朧はあそこで酒を盗み飲んでいると思う。全部飲まれる前に速く行かないと」

 

「そうだな、前も母上に渡すための土産の酒を朧は勝手に飲んだのでな、またせっかく用意したのを飲まれたらたまらんわ」

 

「朧だからなしかたない」

 

「朧だからな。いい加減、大妖怪の自覚を持ってほしい物だ」

 

 俺達は呆れた笑いしか出なかった。朧かっこいいときは本当にいいんだが……普段がなぁ、ただの酒飲みだから尊敬できないんだ。カッコいい所を見ても次の日酒飲んで絡んでくるのを見ると……はぁ。

 

「なんじゃお主ら儂のこと話しているのか?馬鹿にされた気がしたぞ」

 

 いきなり俺の後ろから朧が酒を飲みながら話しかけてきた。やっぱり酒臭い。今日はすでに何本飲んだんだよ、絶対に十本以上飲んだろこれ。

 

「よくわかったな朧、吾達は汝の話をしてたのだ」

 

 朧、かなり勘が良いんだな。もう、あんまり馬鹿にしないようにしよう。ばれたらさらに揶揄われそうだしなあ、でも丁度いいや今、頼めばいいや。酒飲んだことを父さん達に言わないという条件で交渉すれば簡単に連れて行ってくれるだろ……多分。

 

「京に行きたいのか空亡?いいぞ、その代わり黙ってろよ。夜刀は怒ると怖い」

 

「汝が飲まなければいいだけだろ」

 

「それは分るけど……なら飲むなよ朧」

 

「辛辣だな二人とも……だがな酒を飲むのはやめられないから仕方ないな」

 

「そうなのか朧?」

 

「そうだ。絢、空亡、では行くぞ」

 

「了解」

 

「分かったのだ」

 




汝は鬼かがリアルで聞きたい。聞きたくない?
この小説あまりすすんでないからそろそろ進めないと……という事で次回から京の都編ぽいの始めます。
Innocentさん誤字報告ありがとうございました。
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追記、今回の誤字脱字、句読点忘れの量が改めて見たら頭がおかしい量になっていたことをお詫びします。


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空亡君京へ向かう

 さて短いですが京都編の初まりです4~6話で終わると思うので、どうぞお付き合いください。


 

 さぁ!よっしゃ京へ行けるぞ!ヤッタ―外だー京だーいやっふぅー!あ―――何だこのテンション?

 なんか一瞬で冷静になった。外に出れるのは嬉しいけどさ、このテンションはやばいだろう。傍から見たら変人だ。俺の今までのキャラが崩れそうなので自重しよう。

 幸い、声には出してないと思うし何とかキャラは守られただろう。

 

「空亡、汝は変なこと考えていなかったか?」

 

「いや別に、何も考えてないぞ?」

 

 もはや絢は勘が良いというそういうレベルじゃない気がするんだけど……なんなんだ、絢は鬼と覚の半妖なのか?まぁそんなわけないか、絢は純粋な鬼だし。御伽草子や羅生門にはそんな逸話なかったから。

 

「そうだ朧、京まであとどのぐらい?」

 

「ふむ……そうだな徒歩であと二日ぐらいじゃ」

 

「なん……だと」

 

 思わずBLEACHネタで返してしまった。

 えーまじ?二日もかかるのか?父さんの百鬼の朧車とか借りられなかったのだろうか……などと考えてみたものの、借りたら父さん達にばれる事が確定しているので、徒歩の方が良いだろう。

 

「大丈夫じゃ、お主たちの体力であればなんてこともないぞ。それに空亡、お主の修行にもなるしな」

 

「なぁ朧、休憩はないのか?」

 

 今の朧の話し方だと二日間仏塔市で歩くような言い方だったんだが……気のせいだよな?そうであってほしいな切実に。

 しかし俺に向けて放たれたのは無情な一言であった。

 

「ないぞ。儂、京で見たいのあるし急ぐのじゃ」

 

「まさか……今日、俺達を連れていくのはそのついで?」

 

「そうじゃよく分かったのう」

 

「そうだったのか」

 

 でもいいか、京に行けるんだしな。よし頑張って歩くぞ!

 

 二十分後、俺は真っ白に燃え尽きていた。外が暑い。かなり暑い。俺ってそう言えば半分蛇神じゃん?それは暑さに弱いよねー。あははははは、あーうん。だめもう限界。ちょ倒れる。今ってさ現代でいう夏なんだ。昔は現代より涼しいって聞いてたんだけどそんなことはなかった。全然暑いじゃん。

 

 

「なぁ絢、俺の骨は拾ってくれ」

 

「なぬ空亡?どういうことだ?」

 

「今日……暑……す……ぎ」

 

 バターン!そんな音と共に俺はその場にギャグマンガみたいに倒れてしまった。

 ふははは笑える転び方だぁぁ!

 俺はそのまま倒れた拍子に山から何メートルも転げ落ち、山を一気に突破した。落ちる途中で何度も木にぶつかりなが岩を砕き、いろんなものを巻き込んで山の麓に力なく倒れた。

  

「痛いめっちゃ怪我した。お外怖い」

 

 俺が山の麓で目を回しながらそんなことをつぶやいていると目の前に絢が跳躍して飛んできた。FGOでも見たけど跳躍力半端ないなー五重塔くらい軽く飛び越せるんじゃないか?

 そんな事を考える俺に絢は歩み寄り呆れた顔で……

 

「空亡情けないぞ」

 

 こう言われたことは今生では初めてだけど……絢に言われるのが一番つらいな……あぁ、三回ほど死にたくなった。鬱だ。冬眠しよう夏だけど……なら夏眠か。

 

「空亡!良い転がりっぷりじゃな笑い転げそうになったぞ」

 

「酷いな朧」

 

「ここに酒があったら今のを見ながら飲んでいたところだぞ?誇れよ空亡」

 

「どうしよう全くと言っていいほど誇れない!なんでだろうな?」

 

 ここまで褒められてうれしくないのは初めてだな前世でも経験したことなかったぞ。今度朧の酒に唐辛子でも入れておこう。別に仕返しではない……多分恐らくきっとめいびー。

 

「空亡?儂の酒に悪戯したらわかってるな?」

 

 やめておこうか……なんか嫌な予感した。俺は朧の一言なんて聞こえてないぞ、決して、決して!怖い訳ではない。

 

「さて空亡これで時間が半日は縮まったのじゃ。あと一日休まず行くぞ」

 

「頼む……休ませて」

 

「駄目じゃ」

 

 こんなの酷いや理不尽だ。俺はそんな不条理を心の中で叫びながら諦めて歩くことにした。何刻歩いても絢と朧は息が切れる様子がない。何で汗一つかかないんだ……俺も同じ妖怪なのにおかしいな?家に帰ったら修行しよう。

 俺はそう軽く現実逃避しながら蛇に変化して地を這って行く。歩くよりこっちのほうが楽だ。

 

 この姿なんだが、一年ほど前に俺って半分蛇なことを思い出したので、変化できるんじゃないか?という思い付きで試してみたら四回ほどで出来るようになった。

 初めは視線がいきなり高くなったり足が消えて驚いたんだが……この姿、意外と便利だった。蜷局を巻けばなんか落ち着くし、この姿で雪花と寝るとひんやりして気持ちいいし木に巻き付いて寝ると面白いし。

 見た目を分かりやすく例えると、朱殷の色したダラアマドュラにいつもの角を生やしたそんな感じの姿だ。大きさは三メートルくらいか?

 

 更に四刻程たってから絢は歩くのが飽きたらしく、俺の上に乗って寝ている。真上から寝息が聞こえとても落ち着かないが……何とか平常心を保っている。そんな中、朧は相変わらず疲れた様子は無くて酒を飲みながら歩いているやっぱり朧は凄いよな。

 

「あとどのぐらいだろうな?そろそろ寝たい」

 

「そろそろじゃな空亡、夜明けまでには着くと思うぞ」

 

 夜明けまではあと三刻程だなここまで長かった。俺はこんなに歩いたというか這った?のは初めてだ。かなり疲れた、早く京に行って休みたいな。

 

「あ、なんか歌でも歌うのじゃ空亡、暇じゃ」

 

「唐突だな朧じゃあ、かごめ歌でも」

 

「何故それを選んだんだ?まあいい歌え」

 

「かーごめかごめ―――――」

 

 歌い終わった。結構自信あるぞなんせ前世では聞きまくったからな!

 あれ?なんか周りから気配を感じる一~八人程……というかそもそも人なのか?

 

「空亡、上手い歌だな目が覚めたぞ?」

 

 絢、起きたんだ。絢は俺の上から降りて褒めてきてくれた。歌が絢に褒められたは嬉しいな。でも嫌な予感がするんだ。

 

「妙にうまいんじゃな空亡。そういえばお主の歌を聴き霊が集まってきたぞ?かなりの数だな」

 

「朧?何言ってるんだ幽霊?ははは、マジ?」

 

「マジだな空亡、吾等の近くに沢山おるな」

 

「マジじゃお主に集まってきておる逃げるぞ」

 

「朧、絢、逃げなきゃどうなるんだ」

 

「そうだな……お主に一生憑き纏うなそれが嫌なら―――」

 

 俺は朧がそう言い終わる前に人間の姿に戻り全速力で駆けだした。そう……それも今まで出したことのない程の速度で。

 俺は半神半妖のとしての身体能力をすべて使いひたすら走る。全てを置き去りにして。音を超え神速に。

 絶対に逃げ切ってやる!憑かれてたまるかぁぁぁぁ!

 

「空亡、汝はどこに行くんだ!?」

 

「空亡迷うなよー」

 

 そんな声も聞こえずに俺は、目の前に見える都にまで入り、目的も分からないまま、ずっと走り続けた。

 どこまで走ったか分からずに立ち止まり、一度冷静になって考えてみてから俺は一言漏らした。

 

「ここは何処だ……迷った」

 

 俺の前にあったのは……廃神社だった。

 

 

 

 




ぎりぎり昨日間に合わなかった。


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空亡君黒髪美少女と出会う

 
 黒髪ロング+無口=天使

この計算は合ってる気がするんだ。どう思う?
 
あ、そうだ今回ちょっと描写濃くしてみました。ノベルゲーム風に。
なんかホラーっぽい(小並感)

あと、セリフが減った。それに4000文字超えた、何故だろう?(純粋な疑問)
今回結構自信あるぞ


 

 空を見上げると、一面の星空が視界を埋め星が流れている。その景色はまさに宝石を散りばめたように鮮やかだ。更に輝く星たちがさざ波の様に打ち寄せる。そしてそれに照らされる廃神社は廃れているはずなのに、幻想的な雰囲気をを醸し出している。

 そして虫の音が周りに鳴り響く中、俺はこの光景に感動して立ち尽くして一言漏らした。

 

「綺麗だ」

 

 でも何かがおかしい。少し前まで夜明けが近く、日が出ていた筈なのに、今では真夜中の様になっている。さっきまで星など出ていなかった。

 本当にあと少しで日が出るという状況だった筈だ。その事実でこの場所が異常ということが分かる。

 そして俺は幽霊から逃げる途中で気付ければよかったのだが、この廃神社に来る道にいくつか墓石があったのを思い出した。

 その墓石からは微量の妖力を感じる事が出来て、俺の勘が大音量で警告をしてくれていたのにもかかわらず、それを無視してここまで逃げて来た。馬鹿なのか俺は?

 

 fate風に言えば俺の直感はBぐらいあるはずだ。なのにそれに従わず無視した俺は、正真正銘の馬鹿だろうな。我ながら呆れてしまう。

 

 あぁ、うんマジでどうやって戻ればいい?京の町並みなど俺は当然分からない。だって京に来た事は今生ではないからな……それに現代でも数回程度しか京には行っていないし、町を覚えていろとかは俺には無理な話だ。

 だからこそ俺は思う。何故ここまで来れた?先程も言ったが、俺は京の町並みなど分からない。俺は適当に出鱈目にただただ逃げ回っていただけなのだ……それで立ち止まったらここに居た。

 

 逃げている途中にも違和感はあった。適当に逃げていた筈なのに導かれるような?呼ばれているような?そんな感じもした。

 ここは何かがおかしい……とか考えてみたもののおかしいことは明らかだった。だって神社の周りに広がるのは森だったからだ。

 

 え、何で森? さっきまでは町の中だったよな? この廃神社に来たときは墓石が周りにあったが少しの民家は見えたのだ……だが、今は周りに広がるのは夜の闇を纏った森だけだ。暗い森の中は、全くと言っていいほどに見通すことはできない。しかし森の中に”何”があるのかそれが簡単に想像できてしまった。

 

 見えないはずなのに俺の頭に浮かぶのは、何千、何万を超える無数の墓。闇が全てを包んで、俺の視界を漆黒が染めていく。俺の頭のの中には墓が現れ……そしてそれに彫ってある名前までが想像できる……そう、出来てしまったのだ。

 

 墓に浮かぶのはすべて同じ名前。それはたった二文字で、とても馴染み深く。大切な親に付けて貰った自分の名。

 

 ”空亡”

 

 その二文字が赤く滴る液体で書き殴られていた。

 

 ゾクリとに俺の背中に悪寒が走る。真っ暗な闇の中でも、その墓に刻まれた名前は嫌という程に鮮明に見える。

 

 

 

 俺はこの場に居てはいけない。

 

 逃げなければ駄目だ。

 ここは駄目だ。

 そんなことばかり考える中。もう一つ暗闇から感じられるものがあった。それは”視線”おびただしい数の目が俺を凝視する。

 

 十、百、もしくは千か?そう錯覚するほどの視線の群れ。俺はそれから目を逸らそうとした。この目は危ないと悟ったからだ。

 

 その瞬間―――目が合った。

 

 ニタァそんな、ねっとりとした笑みを浮かべた表情が……俺の目の前に浮かんだのだ。

 

 それを見た瞬間に俺は無我夢中に走り出した。

 

 この神社まで逃げたせいで体力はこれっぽちも残っていないが、体から足りないものを全てをひねり出し、何とか絢達の所に戻るために―――――

 

 

 どのぐらい走ったんだ?どこまで来たんだよ……もう何刻も逃げ続けている筈なのに……どこまで逃げても一向に景色が変わる様子がない。

 ひたひたと”何か”の足音が近づいて来る。見てはいけない。この足音は最初逃げた時から急に聞こえてきた。

 その数は分らないが、捕まっていいことは何一つありはしないだろう。

 

 

 まただ……またこの神社に戻ってきた。ここには既に何百回も戻されていて、もう諦めた方がいいのでは?などとも考えるようになっていた。

 

「はぁ……はぁ……もう……駄目……だ……捕まる」

 

 この空間は無限ループしている。その事実に気付いたのは何度目だっただろうか?

 この空間では一定の場所まで行くと、神社の前に戻される。戻される時には一瞬だけだが妖力を感じる事が出来るが、それを確かめる余裕はない。そんな暇があったら一秒でも早く逃げた方がいいから。

 

 しかしだ……もうそろそろ俺の体力というか、いろいろやばいので気絶寸前!

 

 はははは!あー面白いね。笑えない?余裕そうに俺は振る舞うんだが……もう無理だ。いっそ楽になろうか。

 

 そんな諦めかけている俺の頭に電流が走った。

 

「そうだ神社に逃げこもう!」

 

 この時、俺は体力が限界だったせいなのか、こんな思考になったんだが……後で思い返してみると、馬鹿以外の何者でもなかったよな。

 俺は神社がやばいと思って逃げたのに……何で神社に逃げこむという思考になったんだろうな?疲れってやべーぜ。

 

 そんな思考のまま、俺は急に方向転換をして上へ跳び、神社の中に入ろうとしたのだが戸の鍵が閉まっていた。

 まぁそこは色々万能な言霊を使い開けたのだが。

 神社の中に入るともう”何か”はいなかった。入った瞬間霧散するように”何か”たちの気配が消えたのだ。

 

「助かったぁぁぁ」

 

 俺は溜まった疲れを全て凝集したような言葉を漏らす。しかし本当に疲れた。ここまで走り続けたのは今世では初めではないか?一生分逃げ続けたかと思ったぞ。もうできれば逃げたくない。もうこりごりだ。

 俺は疲れを癒すために横なったんだが―――――ゴト、ガサ。

 

 横になろうとした瞬間に俺の耳にその音が響いた。

 

「……………」

 

 あぁ疲れているのか、ついに幻聴まで聞こえるようになってしまった。寝ないとな……うん、これ以上俺は何かをやるという気力がないので、今日はもう寝よう。

 だから俺の近くにある黒い棺なんて一切見えないし、それが揺れているなんてことは絶対に気のせいだ。うん気のせいだ。だからもう寝てしまおう。

 

「ミツケタ」

 

 何か聞こえたけども、俺は寝るんだ、おやすみ!

 

 俺は強制的に頭を地面にぶつけて、無理やり気絶した。

 

 

 ◇◇◇

 

 空亡が吾達を置いて京に入ってしまった。

 近くに集まってきた霊たちは吾らが人間ではないことを知り、一目散に逃げだした。はぁ気配ぐらい確認すればいいのにな。これだから霊という物はまったく……。

 

「ふふふ、まさか空亡があそこまで驚くとはな凄い……笑えるぞ時々馬鹿にするかのう。楽しみじゃ」

 

「笑い事ではないぞ朧。空亡のことだ、今頃どこかで迷っていると思うぞ、見つけないと吾らが怒られる。早く探しに行くぞ」

 

「そうじゃな……儂の用事もそのついでに成せばいいじゃろ」

 

「そういえば朧、用とは何なんだ吾は気になるぞ」

 

「連れてきたのは儂じゃしな、教えていた方が良いだろう。今、京では神隠しが流行っておってのう。それを昔からの知人に解決してくれと頼まれ受けたんじゃ」

 

「……なぁ朧?」

 

 吾はこの話を聞いて嫌な予感がしたのだ。

 

 神隠しというのは、決められた範囲に入った少量の霊力を持つ人間や。妖怪などを取り込み力を増していくという一種の怪異だ。

 神隠しから戻った人間は記憶が無くなる。それは基本的に霊力と共に隠されていた時期の記憶を奪われるからだ。それで妖怪は妖力を全て奪われその神隠しに取り込まれて消える。

 そして神隠しとは、その奪った力を糧にして範囲や規模、取り込める量が変わっていくという物だ。

 

「その神隠しはいつから現れた?」

 

「二年ほど前じゃないくら。そしてその神隠しは儂が探しても見つからなくてのう。だから今回はお主たちを餌に誘き出そうと……」

 

「その事については後で話を聞くが……空亡がやばくないか?」

 

「どういういことじゃ……あれ?やばいんじゃが」

 

「絶対に空亡はまきこまれるぞ」

 

 洒落にならぬな。

 

 空亡ほどの妖力と神力を持つものだ。取り込まれたら確実に神隠しの規模は京を覆うほどになるだろうな。それだけは阻止しなければならない。朧はそれを察したのか。やばくないか?やばい。やばいのじゃ、などと何度も呟いている。

 

「朧今すぐに探すぞ」

 

「やば……そうじゃな」

 

 吾等はそのまま人間に姿を変えて京の都に入って行った。

 

 

 ◇◇◇

 

 視界が暗い、真っ暗だ。昨日の夜の森とは違うなにかに覆いかぶさられたような感じの暗さだ。それに、なんか、すっごく息苦しいんだけど……体が、熱い。凄く、熱い。

 

 何故だ?何故こんなに体が熱いんだ……?

 

 そして体が何でか分からないが重い。体が重くて、うまく動けなくて、寝返りすら打つ事が出来ない。

 まさか……風邪をひいたのか?それなら納得が付く。

 昨日はかなり疲れたからな……無理もないだろう。でもなんか……近くに気配を感じる。昨日、俺は寝る時は一人だったし、周りにはあの黒い棺しかなかった。一先ず何があるかを確認するために目を開けてみよう。

 

「…………Watt?」

 

 無駄にいい発音と共に俺はその言葉を唱えた。

 

 俺の横に居たのは……腰まで伸びる純黒の髪に、真っ白く透き通る様な白い肌。そして人形のように整っており成長したら誰もが美人と認める容姿。そんな姿をした少女が俺の横で寝ていた。

 

Wer sind Sie(ヴェーア ズィント ズィー)?」

 

 訳が分からな過ぎて、俺はドイツ語で貴方は誰ですか?と寝ている少女に問いかけた。

 

「スー……スー……」

 

 ……あぁこれは幻覚か。

 これはやばいな、どうやら俺は幻覚が見る程に頭がやばかったらしい。そうだな……もうちょっと寝るか……幸い、ここは昨日の廃神社だ。ここ出られないことが分かってるし、まだ寝ててもいいだろう。

 

「………」

 

 

 そう目をつむってみてはみたものの……

 

「すぅー……すぅー……やっと……見つけた……はなさない……ふへへ……」

 

 この幻覚さん俺に抱き着いているんだけど……それにさっきから耳に息がかかって、なんか体が反応してしまう。

 

 ふぅ、一体どうしてこうなった!? 何で俺は見知らぬ黒髪美少女と寝ているんだ!?

 

「……動かないで……寝にくい……」

 

 そのまま俺にさらに強く抱き着いて来るこの美少女。

 あぁぁなんかいい匂いする。

 

「そうじゃねぇよ!」

 

 何でこうなった!?ちょっと待ってくれ?えっと……何でこうなった!?

 そんな同じことを何度も唱える程に、俺の頭は混乱の極にいる。いや、本当にマジのガチで誰なんだこの子?

 

「……ふひひ……離さない……はむ……甘い」

 

 大佐!報告です!なんか俺は甘噛みされているでございます!

 もはや日本語も危ういし、大佐という謎のキャラを作るほどにやばい俺の頭。

 

「……んむ、ん、んんぅぅ」

 

 ちょっと待って頼むから密着しないで!? なんかもうさっきから無駄にエロイ声を俺にかけないで、それに吐息が……俺がまだ子供の体でよかったよ……じゃなきゃ色々ヤヴァイ。絢がいなきゃ俺の精神は負けていた。

 

「なぁ頼むから離してくれ……あとまた甘噛みを始めないで……物凄く地味に痛い」

 

「……やだぁー……もっとかむぅ」

 

 何なのこのエロゲ展開?俺はそんなことを考え、脳がキャパを超えて意識が落ちた。 

 

 




なんかいろいろ長くなったが反省も後悔もしていない!fateも元々あっち系のゲームだからね最後のシーンがあってもいいじゃない。まぁ疑似朝チュン程度セフセフ。
良ければ感想やお気に入り登録お願いします。

今回の誤字がまた酷すぎました。本当にすいません。


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黒髪美少女が自分を主と言ってくるのだが……これなんてエロゲ展開?by空亡

誤字修正が自分で出来る範囲完全に終わりました。今まで読みずらかったと思いますがこれからは皆さまにもっと読んでもらうために頑張って行きたいと思います。

タイトルは十分間程考えてこうなった。

京都編長引くかもしれない。そして今回もノベルゲーム風に……なんかこっちの方が書いてて楽しい(小並感)あと長いよ。


 

 うぅー妙に頭が痛い……何だこれは?……ていうか……俺は……一度起きた筈なのに何でここで寝ているんだ。それに……寝る時はなかった筈の薄い布の様な物が、俺の上にかぶさっている事も分かる。とても寝やすいな……気持ちいいし、もう一眠りしてしまおう――――――――――

 

「じゃねぇよ!」

 

 寝るなよ俺! もう俺は十分寝たんだよ!睡眠などいらぬわぁ!……そんなふうにテンションを上げたものの……何で俺がまた寝ているのかが分からない。

 

 まぁそれは、気にしない方向でいこうか。それより今俺がやることは目を開け周りを確認することだろう。視界を広げ世界を見る。情報を目から頭に送る。それが大事。

 

 そして目を開け見上げた瞬間、俺の目に映ったのは……とても美しく、可憐な少女の顔。その顔は満面の笑みでまさに花が咲いたような笑顔だ。可愛いとキレイが両立して共存している。そんなよくわからない感想を浮かべた俺は反射的に目を逸らした。

 

 そして目に入ったのは肌色というより……白陶器の様な真っ白な美脚。少女の細い太ももが綺麗に組まれていて、その隙間か何かが見える。

 

 …………ノーパン……だとぉぉ!?

 

 まて、まて、まて……おちけつんだ俺よ……今まで俺はいろんな美少女や美女を見て慣れてきたはずだろう?この程度の難関……乗り越えてみせる!

 そう決意を固める俺に向かってその小さな口を開いて俺に何かをを伝えようとしてくる。

 

「……主……ちゃろー☆です!」

 

 その声と共にポーズをとる微少女。誤字にあらず。

 ピカー、キラッ!などという効果音がこの場に流れた気がした。

 

「……ちゃ? ちゃろー?」

 

 俺はなんかとても間の抜けた返事を返してしまった。無理もない反応に凄く困ったから……逆に……俺はどう反応すればよかったんだ?

 

「えっと? 何、今の?」

 

「……主……おかしい……これは未来的に……絶対……流行る……挨拶……だよ?」

 

「よくわらんが……そうなのか?」

 

「うん……流行る……私が……決めた……ぶい」

 

 少女は俺に向かってVサインを決めてきて、どや顔で言った。何故か怒りがわかないどや顔。俺は自然と立ち上がり、少女まで近づいて自然な動きで頭を撫でる。

 

「……主……むぅ……急に……撫でるなぁ……にゃぁ」

 

 何だこの可愛すぎる生き物は? もしも絢がいなければ俺はこの少女に惚れていた。そんなレベルをとっくに越していて俺がこの少女に向ける感情はあれだな……そうだペットか愛玩動物だ。意味被ってるな……。

 

「さて……そろそろいいだろう」

 

「どうしたの……主」

 

「おまえ……誰だよ?」

 

「……ガーン……」

 

「自分で効果音を出すなよ……」

 

「なら……どーん?」

 

「それはなんか違くないか?」

 

「……難しいわね……」

 

「口調変わったぞ?」

 

「……私……戻った」

 

「良しそれでいい」

 

「……わーい……」

 

 美少女はばんざーいをすると共に無表情のままそう言った。

 

「さて真面目にやろう」

 

「そうだよ……主……ふざけないで……」

 

「なぁ? 殴っていいか?」

 

「……主……加虐趣味……目覚めた?」

 

 少女は首をこてんと傾げて可愛らしく聞いてきた。

 

 あはははマジで殴ってやろうかこいつ? だがこんなことで怒る空亡さんではないのだ。俺は心が広いと有名だからな……ろくろ首がそう言っていたし。だから俺は心が広いんだろう……多分。

 

「……主……わたしは……どんな……性癖も……答えられるよ?……よろしく?」

 

「はははそうかーお前はどうしても俺を異常性癖者にしたいようだな……なぁおい、喧嘩なら買うぞ?」

 

「……主……もしかして……被虐趣味……ごめん……気付かなかった」

 

「良し、お前だけは絶対に殴るそこ動くなよ今か―――――――――」

 

「……ぷーくす……主……滑稽……笑える……ぷぎゃー……」

 

 この少女を殴ろうとした瞬間に俺あなぜか体制を崩し地面にバターン!と頭から激突する。いひゃい。何だろうここまで綺麗な激突はもはや保存した方が良いのでは?そう思うほどに今のはギャグマンガみたいに転んだ。

 

 ……俺は何もない所で転ぶほど阿保ではない……まさかこいつが!?

 

 俺はすこし恨みのこもった視線を少女に送る。

 

 じー

 

「……主……照れる……」

 

 じー

 

「……じー……」

 

 じー

 

 何故か俺達はこのまま一時間ほど見つめ合っていた。

 特に意味もなく時間が過ぎていき、神社の外に鳥がさえずっている。とても綺麗な鳴き声だなー、心が落ち着く。そして俺はその声を聞き冷静になった。

 

 

「……俺は何をしていたんだ?」

 

「……主……分からない……」

 

「そうだいい加減聞くが……お前は誰だ?」

 

「……私?……私は……そういえば……誰でしょう?」

 

 えぇ?

 少女はまたも首を傾げてから逆に俺に問いかけて来た。悪いが少女よ俺に聞かれても……困るんだが……だって俺君の事知らないし……。

 

「いやな、俺が聞いたんだが?え?自分の名前分かんないの?」

 

「……難しい……主……助けて……」

 

 少女は翡翠の色をした瞳を潤ませて、懇願するように俺に助けを求めて来た。

 うぐっ、この表情は反則だ……今まで見たことのある。可愛い表情ランキングの上位にランクインした。この表情は、ふむ、6位ぐらいだな。全部で7位まで存在していて、今の所は、6位以外はすべて茨木の表情だ。

 

 しかしだな、こんな表情で頼まれたら、男として断るのは駄目だ……でも、ここは……心を鬼にして答えるしかない。俺は体も鬼だけどな!

 

「うーんそれは難しいな、この問題は俺程度では解決できそうにない……まぁがんばれよ!」

 

「……主……鬼……鬼畜……はくじょーものー……ぐすん……」

 

「じゃあ聞くが、俺はどうすればいいんだ?」

 

「……なら……主……笑おう……グッ……」

 

 なんか、一周回ってこの子のキャラが面白く見えて来た。何故だろう? またも俺は少女に近づいて頭を撫でる。少女はそれが気持ちいいのか。自分から頭を俺の手に擦りつけてくる。……この少女は猫の妖怪なのか?

 もはや行動が猫にしか見えないんだが……。

 

「……にゃー?……」

 

「何故だ? なんで猫の真似をした?」

 

「……気分?……」

 

 いちいち、俺に確認を取るように話しかけて来るの止めない? 

 ちょっと俺の鼻から赤い液体が流れそうなんだけど……あ、触ってみると、もう液体は流れていた。くっ不覚!

 ……まじめにやるか、そろそろ。

 

「いい加減、遊び過ぎだ。名前を教えてくれ」

 

「……後悔するよ……主……」

 

 何だ空気が急に変わったぞ? シリアスっぽく少女の表情が固まる。さっきまでふざけてたのは全てが演技と錯覚するほどに少女の雰囲気が370度ぐらい変わる。なんだ……なぜ急にシリアスに?

 

「……私は……椿妃(つばき)……よろしくね?……主……」

 

 そう少女……椿妃はそう言った。その名を椿妃が唱えるとに室内なのに風が吹きはじめて、椿妃の純黒の髪を揺らし始める。その姿はとても美しくとても絵になり、俺は見惚れてしまう

 

「じゃあ……主……いただきます……」

 

 何を食べるんだ椿妃は?

 

 俺はこの時とても無知で愚かであり……この先の地獄が待っている事を知る由が無かったのだ……もしも過去に戻れるなら自分を殴ってでもこの場から逃がすだろう。それほどの運命がこの後俺に襲いかかるからだ。

 

「……順番……間違え……た……主……名を……」

 

「俺は空亡(そらなき)だ。よろしくな」

 

 何で俺は、椿妃の言いたいことが分かったんだ?どうでもいいか。

 

「……えへへ……知ってる……」

 

「ならなぜ聞いたし?」

 

「……主の……口から……ききたかった」

 

 にっこりと椿妃はまた俺に笑いかけてきた。

 少し椿妃と過ごして分かった事がある。この子は話すときに少し間が空くがとても感情が豊かだ。こっちもそれにつられて、感情をだしてしまうほどに……勝手な判断だけど、多分、椿妃は悪い子ではないだろう。

 それは置いといて、何で俺を知っているんだろうな。俺は当然、椿妃とは今が初対面だ。

 

「椿妃? 何で椿妃は俺を主と呼ぶんだ? それに俺たち初対面だろ?」

 

「……主は……主……それだけ」

 

「分からないな?」

 

「……気にしなくて……いい……主……」

 

 もう俺は完全に椿妃に対する警戒を解いていたのだろう。何言われても違和感がないし、気にならない。

 おかしいな?椿妃とのやり取りはなぜか懐かしい物がある。

 

 今気づいたんだが……さっきから椿の顔が赤いんだが……それに息も荒い。具合でも悪いのか?

 

「……はぁ……はぁ……あるじぃ……あるじぃ……あついよぉ……」

 

 何この急展開? ちょっと俺の頭でが付いて行けませんわぁ……

 

「……でも……あるじ……悪いから……仕方……ないよね?」

 

 どういう事でしょうか? 俺が悪者にされてしまいました? 誰か説明してくれないか、頭が働くことを放棄しているんだが……そんな俺を見る椿妃は獲物を狙う猫のようで舌なめずりをしている。なぜでしょう? 嫌な予感が止まりません。

 椿妃はどんどん息が荒くなっていき目の焦点も合わなくなっている。

 

 

 

「……主と……二人きり……生殺し……もう耐えられない……いただきます……」

 

 その瞬間、椿妃は驚異的な跳躍をして俺に飛び乗ってきて、俺はそのまま押し倒された。

 わーお反応できなかったぜ……空亡君ビックリ。

 

「えっと何するのですか?」

 

「……ア八ッ」 

 

「椿妃さんや何をするおつもりで?」

 

「……ナニ……だよ?」

 

 ……あー成程ね……うん。

 

「助けてー!誰かー!犯される!少女に犯されるー!?」

 

「……大丈夫……上だけ……見てて?」

 

 それは男のセリフゥゥゥ! あ、まって服脱がさないで! チョ誰か!?待って!まっアァァァァ―――――――

 

 ぴちゃり……ぴちゃり……そんな音が……廃れた神社に響く。

 

 そんな場所で俺は床に押し倒され、少女とは思えないほどの力に固定されたまま、純黒の髪をした少女に体中を舐め回される。

 

 何十分も続くこの行為に俺は抵抗する気力はいつからか……失っていた。

 

 少女は興奮し理性を失っている様で獣のように俺の体を求めてくる。求めてくると言っても……性的な物ではないはずだ。

 

 まだ十歳の俺の体には精通という物が来ていないのでな……それで俺は嫌な予感がしたので下半身を覆う布はなんとか守ったが、上の服は完全に引きちぎられて何も纏っていない。

 上半身はもう椿妃に舐められていない場所など無く、体中は唾液で湿っている……はぁ、いつ終わるのだろうか?

 美少女に舐められるという特殊なシチュエーション。見る人が見れば興奮する状態だが……俺は全く嬉しくなかった。

 

 

「……堪能した……満足……」

 

「……うぅ、もうお婿に行けない」

 

「……体を舐めただけ……健全……」

 

 俺は全身を椿妃に舐め回されて汚されてしまった。悲しい。絢、助けて。

 

 

 ◇◇◇

 

「む? 空亡に呼ばれた気がするぞ? 気のせいか……」

 

「絢? そっちはどうだ? 空亡の手掛かりは見つかったか?」

 

「まだだ朧、空亡の妖気は感じるのだが……何かに邪魔されていてな。見つからん」

 

「……まさか本当に神隠しに取り込まれたか?」

 

「空亡は方向音痴だ。迷ってるだけだろう?」

 

「そうじゃな……まだ神隠しに空亡を取り込む力はないだろう」

 

「引き続き探すぞ朧」

 

「儂は聞き込みしてくるぞ」

 

「了解した」

 

 その場で二人は分かれて空亡の捜索を再開した。空亡がどうなっているか知らずに……。

 

 

 




 
 ちゃろー☆のネタ分かる人いるかな?
椿妃ちゃん可愛くかけたかな?
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ギャグとシリアスを混ぜてはいけない(戒め)by空亡

感想千恋の事がほとんどで笑うんだけどまぁ面白いからいいか

あ、ハピメア届いたしやるか。
みんなの推しは誰かな?まだやってないから気になるぜ!
昨日はむっつり忍者のルートをまたやった。よかった(小並感)
ちょっとホラーだよ。


 

 俺の目の前には人形の様な綺麗な少女。その顔は満足そうな、とても嬉しそうな表情で俺を見ている。その表情を見ていると、こっちまでもが自然と笑顔になるだろう。そんな少女の前に座る俺の衣服は乱暴に破られ、俺の体は少女の唾液でぬれている――――――――――

 

「さて椿妃さんや」

 

 今はこの少女に問いたださなければいけない。じゃなきゃ俺が不憫だ。

 

「……主……恥ずかしい……変態……」

 

「それをやったのはお前ってこと自覚ある?」

 

「…………てへ……私……悪くない……」

 

「そう言うやつはな、自分が悪いと自覚している人が多いんだぞ……そしてそんなことを言うのはどの口だ?なぁおい」

 

「……いひゃい……あるじ……ひっぱるなぁ……」

 

 ほう、結構椿妃の頬は伸びるな、絢にはこんなことしたことないからこの反応は新鮮だ。グニーと縦横斜め縦横無尽に俺は椿妃の頬を引っ張りまくる。仕返しだこれで反省しろ!

 ―――ドカン!!!

 

「ゴッフ!」

 

 椿妃の頬を引っ張ていると、重いボディーブローが一発、俺の腹に突き刺さる。

 

「……いたい」

 

「……主……わるい……殴るよ?……」

 

「それは殴ってから言うセリフなのか?」

 

「……もう……殴ってた……面白いね?……」

 

「どうしよう何も面白くない」

 

「……私は……面白い……グッ……」

 

 こいつ!絶対いつか殴る。俺はそう決意を固めた。そう決意する俺を面白そうに見ている椿妃は笑っている。

 なぜ椿妃は俺と居るだけなのに幸せそうにしているんだろうな? 何度目か分からないが、また言おう。俺は椿妃とは初対面だ……だからこそ、なぜ俺はこんなに懐かれているかわからない。やっぱり誰かと間違えているのか?

 

「なぁ椿妃? 俺を誰かと間違えていないか?」

 

 ――――この言葉は禁句だった。

 それを聞いた瞬間、椿妃の表情が絶対零度のように冷たくなる。目から光は消えて深い闇を固めた様な瞳に変化する。その瞳が俺を見据え、そして椿妃が口を開く。

 

「……それはないよ……主……それだけはない……私が間違えるはずがない……その声……名前……仕草……癖……妖力……すべてが私の知る主の物……何で……そんなひどいこと言うの?」

 

 今の椿妃の目を見ていると飲み込まれそうになる……暗い闇だ。一度入ったら抜け出せず、逃げる事は出来ないだろう。

 

 深淵の様な黒い瞳。

 

 突如、周りに夜が訪れる。先程まで明るかった空間を闇が覆い包み込む。椿妃の影が外まで伸びて、外でなにかが生まれ始める。この部屋の回りから気配を感じた。

 

 音がする。

 

 べちょり……ぐじゅ……ドン……ドン。

 

 何かが垂れる音、何かが腐る音、神社の戸を叩く音、それが俺の耳に響く。戸の外に蠢く何かが現れた。

 

 深い闇の塊だ。

 

 それは戸の外に居て姿が見えないはずなのに俺の頭にはっきりと浮かんでくる、見えるのは人影。

 

 人影とわかったが大きさや男か女かは分からない。男にも女にも子供にも見える。大きさも陽炎の様に伸びたり縮んだり広がったり……それは一定の形を保たない。

 

 それの顔が見える……だが顔は真っ暗で表情は何一つたりとも……伺えない。

 

 これには意志も感情も何も存在しない。どす黒くて濁っていて気持ちが悪い……それなのに、何故か俺には寂しそうに見えた。

 

 目の前の椿妃の存在すら忘れ俺はそれをじっと見つめる。するとそれに穴があった。暗い顔の中でも一層暗い底無しの穴。全てを飲み込むような穴がじっと俺を見つめている。

 

 時が遅くなる――――

 

 体中から汗が噴き出す――――

 

 息も荒くなり――――

 

 落ち着かない――――

 

 怖い。

 

 そんな俺を置いて、それは外から……じっと……見つめていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ―――」

 

 呼吸が荒くなる。怖い! 怖い! 怖い!

 

「……主……可愛い……」

 

 そんなふうに恐怖する俺に椿妃は手を添え恍惚とした表情で見つめてくる。それがさらに俺の恐怖を駆り立てる。

 

 椿妃は異常だった。何が異常か、それは分からない。俺にそれを理解することはできない。だけど……異常ということが分かる。

 

「……やっぱり……主は……主……間違えない……可愛い……その感情……もっと頂戴?……」

 

 そうして椿妃は俺の顔を近づけてきた。咄嗟なことに加えて、今俺を襲っている恐怖で反応できずに固まってしまう。そのまま硬直する俺の唇を椿妃は奪う。

 

「……んっ……はぁ……んんぅー……あるじぃ……」

 

 餌を貪る獣のように俺の口内を蹂躙する。俺に向けて恐怖と快楽が襲う。周りに得体のしれないものが居る恐怖、少女に犯される快楽、それが両立してもう何も考えられない―――――――

 

「……逃がさない……離さない……もう二度と……だから……私に……溺れて?」

 

 働かない頭にそんな椿妃の声が響く、頭の中が溶かされるほど蠱惑的な声だ。俺はその声に身を委ねて溺れたくなってしまう。今感じる恐怖をすべて忘れて、快楽に犯され壊れたい。そう本能が語る。もう……分からない。めんどくさい、どうでもいいか、溺れよう。

 

「……そう……それでいいよ……主……私は……怖くないよ……ただ主は……私の物になればいいの……これから起こることから……全部逃がしてあげる……守ってあげる……だから、ね?」

 

「……椿妃」

 

 俺は自然とその名を呼ぶ。それが嬉しかったのか椿妃は純粋な笑みを浮かべてにっこりと、そして――――――

 

「……主…受け入れ「誰か助けてくれ!!!」……邪魔が入った……糞が……」

 

 今の悲鳴で俺は我に返る事が出来た。

 

「……役立たずども……ちゃんと殺せよ……良い所だったのに……数多い……めんどくさい……ちょっとまっててね……主」

 

 椿妃は暴言を吐き何かを確認してから、俺を安心させるように笑いこの部屋から出て行った。

 

 危なかった……本当に危なかった。あのままだと椿妃に何か奪われていた。それもかなり大切な物を……何でこんな好感度高いの? 本当に俺達は初対面だよ? てか病んでないか椿妃。

 

 今ならこの部屋から逃げられるのではないか? 行ける気がする……よし逃げるか。俺の直感が逃げ切れると言っている。

 俺は恐る恐る神社の戸を開けると……なにかと目が合った。

 

 生気のない顔に、だらんと垂れた舌、そして潰れている目。その体からの腐臭で吐き気を覚える………

 

「アイエー!? ゾンビ? ゾンビ何で!?」

 

「アー?」

 

「あのーゾンビさん? 退いてくれませんか?」

 

「ア」

 

 ゾンビは親指を立てて退いてくれた。優しい世界。

 

「ありがとうゾンビ。そうだ。どっちに逃げればいいと思う?」

 

「アー? アッチダ」

 

「ありが……喋った!?」

 

「シャベッテナイナイ」

 

「そうだよな……喋ったよな!?」

 

「イヤイヤゾンビハシャベラナイッテ、ソラナキウケルー」

 

 何だろうこのチャラ男っぽいゾンビ。それより平安時代はゾンビって呼び方だっけ? 食屍鬼って呼ばれてたはずだけど……あとなんで名前を知っているんだ? 

 

「何で道を教えてくれるんだお前?」

 

「イヤナー、ツバキニギャクレサレタタンジャンオマエ。サスガニカワイソウニナッテ」

 

「凄い聞き取りずらい。何とかならないか?」

 

「(ヾノ・∀・`)ムリムリ、オレゾンビダカラカタコトダケ」

 

 なんかうざい。こいつすごく馴れ馴れしいんだけど?

 

「ツメタイナーソラナキ、アンナニイッショニタタカッタナカジャナイカ」

 

「俺とお前は初対面だ」

 

「ア、ヤベ。イマノワスレテ……ツバッキーニオコラレルカラ」

 

「……気になるんだが」

 

「イイカライイカラ、ハヤクニゲルゾ」

 

 逃がしてくれるならいいんだけど……なんか腑に落ちない……でもいいか逃げられるし。そして俺はゾンビ「戒だ」戒と逃げることになり外に出たんだが、外に出てみると、そこには地獄が広がっていた。

 

 外には戒と同じような食屍鬼が居て人を食べている。

 死屍累々、食屍鬼に殺された人間は全てが重ねられ山となっている。それに群がる食屍鬼。少しの生きている人間が。次々と殺されていく。

 

「……うぷっ……おぇぇ」

 

 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!始めて見る死体。それも綺麗な物ではなく、無残に食い荒された惨たらしい物。人間だったことが分かるのは、辛うじて原形をとどめている頭を見たからだ。それ以外は捥がれ曲げられ喰い千切られている。

 

「オイソラナキ、コノテイドデハクナヨ。ムシシロ」

 

「はぁ……そんなこと言われたって無理だ。初めてだからなこんなの見るのは」

 

「デモジカンネーゾ? ツバッキーニバレル。コッチダ」

 

「……わかった」

 

 俺は吐き気を抑えながら、戒に付いて行く。付いて行き五分ほど経って民家に着いた。その建物は何故この場にあるか分からないほど普通で、安心できる作りだ。戒はここに連れてきてどうするつもりだ?

 

「ハイレジュップンホドデモドレル」

 

「信じるぞ」

 

「アァ、シンジロ」

 

 俺はその言葉を信じて民家の中に入る。

 民家に入って十分ほどたった途端に、俺は圧倒的な浮遊感を感じた。まって? 何で俺は空に居るの?

 下に見えるのは京の都、横を飛ぶのは綺麗な鳥。俺は風を感じながら落下していた。あーうん、ちょっとわかんない。民家の中に居たら空中に居た件について。

 

「アァァァァァァ! おーちーるー! しーぬー、うわァァァァ!」

 

「なんだ? 空亡の声が聞こえるぞ? 吾の耳は壊れたか?」

 

 真下から絢の声が聞こえた。久しぶりに聞く絢の声だ。やっぱりいいな、心が安らぐよ。

 そうか俺は……逃げられたんだな。よかった。でもこのままじゃ絢にぶつかるよな?

 

「絢退け! 潰れるぞ!」

 

「なぬ? 空亡!? 何で空におるのだ!?」

 

「だからどけ!」

 

「無理―――――」

 

 俺はそのまま絢の上に落ちた。大丈夫か? かなりの勢いでぶつかってしまったが。すぐ退かなければ。

 

 ふに。

 

 ふに? なんか変な音が聞こえた……うん。手に柔らかい物の感触があるな、柔らかい。これは何だろう?

 目の前にあるのは絢の顔。その顔は耳まで真っ赤に染まり目にも少量の涙を浮かべている……どうしたんだ? 退こうとして手を動かすとまた柔らかい感触が……あ、これ何か分かった。絢の胸だ……はははは、あーうん、ごめんなさい。土下座したら許してくれるかな?

 

「絢……許して?」

 

「な、なな、な」

 

「七」

 

「汝は馬鹿かー!!??」

 

 ゴッス!

 

 そんな音と共に、俺の腹に絢の腕が突き刺さった。わーこれ、撲殺天使で見たことある気がするー。死ぬ……これ……死ぬ。

 

「絢……いたい」

 

「知るか……汝が悪―――空亡おい!? 大丈夫か!?」

 

 絢は急いで俺から腕を抜いて体を揺すってくる。それ逆効果……そう考えてから……俺は意識が落ちた。まーた気絶か、なんかもう慣れたよ。




 
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椿妃ちゃんは少し病んでる

ハピメア面白い好き(語彙力)

今回は京都の町の探索を開始するぞ
伏字いっぱい。


 

 私は作られた妖怪だ。無数の死者と骸を合わせて出来た最悪の妖。生れた瞬間、私にあったのは、生者への恨み。憎悪、妬み、殺意、苦しみ、復讐心といった悪い感情だった。でも……生まれた私には心と感情が無かった。中にある感情も全てが他人、私を作った妖怪は感情のままに暴れろとか言っていたけど、全く分からずに何も出来ない。そんな私を見た妖怪は失敗作として百年近く閉じ込めた。

 

 何年も、何年も、暗い牢で一人で過ごす毎日。幸い心と感情がない私は寂しくはなかった。百年と少しが経ったある日、私の製作者が別の妖怪に殺された。その妖怪は私をいきなり仲間にすると言ってきた。私には”仲間”という物が分からなかった。だからそれが知りたくて、私はその妖怪に付いて行く事にした。

 

 そしてその妖怪は私に名前をくれた。”椿妃”という名前だった。その名前を付けた理由はこの時期は椿の花が綺麗だったから、適当だなと思った矢先にその妖怪の仲間? が「それでは安直すぎるぞ」と呆れていた。

 

 その妖怪が次に出した名前はなぜか、ポチだった。私はそれだけは嫌だったので椿妃を選んだ。私はその時始めて感情が覚えた嬉しいという感情だ。初めて他人からもらった名前それが堪らなく嬉しくて泣き出してしまった。

 その時妖怪は「え、ポチ駄目だった?」などと見当違いなことで戸惑っていたのを、今も覚えている。可愛かったな■■は、それから何年も私は■■の仲間と過ごした。その時間が楽しくて、愛おしくて、何よりも大切だった。

 

 そんなある時■■は一人の人間を連れて来た。綺麗な白髪の少女だった。■■はいきなりその少女と結婚するといった。少女も満更ではなさそうで、反対する妖怪もいたが大半の妖怪は賛成した。私のはその時、胸が痛んだ。初めて感じる痛みだった。ある妖怪に聞いてみるとそれは恋だと言っていた。「お主は■■が好きだと」そんなことを言われ私は、初めて自分の気持ちに気付いた。でも、もう遅かった。■■には好きな人が居る。私に出る幕はない。そう自分を押し殺し我慢した。

 

 ――――――その一か月後、■■は少女に殺された。その日は皆、宴会を開きお祝いをしていた、■■の為だ私は■■世少女が遅かったので部屋に見に行った。そしてみた光景は涙を流しながら弓を持ち放心する少女と矢に貫かれて死んでいる■■。私はその光景が信じられなくて気絶した。次に目を覚ました時には全てが狂っていた。鬼の少女は後を追いぬらりひょんは酒に逃げ狒々は人間と敵対した。私はその後千年以上■■を生き返らせる方法を探した。そして見つけたのが”聖杯”私はそれなら空亡を救う事が出来ると悟りそれを求めた。

 

 私は聖杯戦争の参加者とサーヴァントを殺し聖杯を満たし願いをいった。■■を助けたいと次の瞬間、私は過去に戻っていた。そして私の地獄が始まった。■■を助けるために何度も何度も繰り返す■■が死ぬと時間が戻る。そのたびに■■に出会い失敗する。何度繰り返しても■■は死んでしまう。何をしても■■は死んでしまう。何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、■■が死ぬ姿を見せられて心が壊れそうだった。もう嫌だなどは言えない。聖杯に願った私は、願いから逃げられない。■■を救うまで私は繰り返す―――――でも、もういいよね? どうせ繰り返すんだ一回ぐらい■■を自分のものにしても許されるよね? 

 

 だから、今回は■■が子供に時に出会うことにした。いつもなら準備して大人の時で出会うんだけど。今回は子供の時に出会い、精神を壊して、心を奪って私だけを見るようにすればいい。ずっと犯して私に依存させればいい。

 

 そう考えたら楽だった。今までの重りが全て消えた。簡単だった。■■を手に入れればいいんだ。管理すればいいんだ、ずっと私が一緒に居ればいい。子供の■■は家から出る事が出来なかった。

 でも一度だけ会う事が出来た。■■が百鬼夜行と一緒に外に出た時に私は見つける事が出来た。一瞬で確信した。あれは空亡だと、私が愛する空亡だと、その後は私は神隠しを新しく作った。空亡が来たときにすぐに捕まえる事が出来るように。

 

 そして私は一度捕まえた……もう離さない逃がさない永遠に一緒。ねぇ空亡? 貴方もうれしいよね? だから私と一緒に暮らそう? そうすれば何も心配することはないんだよ?

 

 

 

 ◇◇◇

 

「…………ん、んん!? 怖い! 何だ嫌な予感がするんだけど!?」

 

 悪寒が止まらない何? 俺何されるの!? ひとまず落ち着こう。

 

「知らない天井だ」

 

 やったぜ人生で一度は言ってみたいセリフを言う事が出来た。

 

「……ここは」

 

 見たことない天井だ首を動かい周りを見るとここが知らない部屋だと分かる。

 

「何で……俺はここに?」

 

「汝が気絶したからだ空亡……起きたな? おはよう」

 

「……おはよう絢。何で俺はここに居るんだ?」 

 

「それは……えっと……すまぬ」

 

 絢は顔を赤くしてなにか言いずらそうな様子だ。

 どうしたんだ俺がここに居るのと絢は関係あるのか? あと腹が物理的に痛い。穴が開いたようなそんな感じかな?ちょっと腹を見てみよう。

 腹には包帯が巻かれていた。えっとなにがあったの? 絢は傷を確認する俺を見てだらだらと汗を流している。……あー思い出してきた俺は絢の上に落ちて……む……胸を……謝ろう。

 

 

「絢……すまん。お前の「それ以上は言うな」了解」

 

「吾も悪かった汝を殺しかけてしまった」

 

「別にいい生きてるし」

 

「だが!?……吾の気がすまん」

 

「なら今度俺と戦ってくれ、それで許す」

 

「そんなんでいいのか空亡?」

 

「ああ、だから気にするな」

 

 生きてるしね、このぐらいで好きな妖怪に傷ついて欲しくないし。

 

「ふぇあー……おあ~よじゃくうほぉぅ……」

 

 揶揄う雰囲気が無く別人みたいな緩い雰囲気で朧が現れた。なんか可愛い

 

「あ、うん朧ちゃろー」

 

「空亡? 何だそれは?」

 

「え?なに……伝染してた」

 

「どうしたんだ? なんか変だぞ?」

 

 あの女め……何時の間に俺にちゃろー☆をうつしていた? 自然と口から出たぞ?

 

「くうほぃぅ?……あっ…………」

 

「えっと朧さん?」

 

「フンッ!」

 

 朧はいきなり自分の頬を両手で気合を入れるために叩いた。痛そうだ。少し涙目になってる。

 

「くぅ………いひゃいのじゃ……しかし儂の今まで立てていた人物像を崩すさないようにするにはどうすれば」

 

「朧? いろいろ声に出てるぞ?」

 

「……まじか……儂……終わった……」

 

「朧……涙に目になってるぞ?」

 

「言う必要ないじゃろぉぉ……もうどうでもいいのじゃ……お酒飲みたい」

 

「何か朧が可愛い」

 

「そうだなあの朧が……」

 

 世界って不思議だ……あの朧が……。

 

「そうじゃ空亡昨日は何故空から落ちてきたのじゃ?」

 

 これ言ってもいいのかな? まぁいいか。俺は昨日の事を覚えている限り伝えた。それも言う必要のない少女の事まで。

 

「空亡それは神隠しじゃな……てか犯されかけるのは笑えるぞ? なーなーどこでその少女と出会ったのじゃ?」

 

 前言撤回、朧は可愛くない。やっぱりうざい。言うんじゃなかった。それより絢はなんで俺の方を睨んでいるんだ? その姿も可愛いが腑に落ちない……地味に俺の腕の皮引っ張る止めない?

 

「……絢、痛いって」

 

「……ぐぬぬ……汝がわるいぞ空亡」

 

「何で!?……理不尽だ……」

 

「……汝が悪い

 

 酷いや、俺は悪くないと思う。絶対に被害者だと思う。

 

「そうじゃ空亡なぜ京都に行きたかったんだ?」

 

「美味しい物が食べたい!」

 

「……毎日食ってるじゃろ」

 

 ジト目で睨まれた。いやな、俺は毎日母さんの手料理食べてるよ? でもね俺は外食がしたい。うどんとか食べたい。

 

「京のうどんが食べたい。天ぷら食べたい。削り氷が食べたい。むぎなわが食べたい!」

 

「そ、そうかなら都に行くか?」

 

「行く!」

 

「即答じゃな絢はどうする?」

 

「いくが……金はあるのか空亡?」

 

 金か……絢は難しい事を言うな……勿論……

 

「無いぜ☆」

 

 ぐさッ可哀想な物を見るような目で俺は睨まれた。

 

「吾もないどうするんだ朧?」

 

「儂が払うから大丈夫じゃ」

 

「朧が神か」

 

「儂は妖怪じゃ」

 

 そうだった朧は妖怪だでも今が女神に見える。いつかお酒を買ってあげよう。

 

「じゃあ行くぞ空亡、絢」

 

「了解したのだ朧」

 

「分かった朧、うっどん、うっどん、天ぷっら」

 

どんだけ食べたかったのだ空亡は

 

「何か言ったか?」

 

「何も言っておらぬ行くぞ」

 

「ひゃったー……かんだ」

 

可愛い

 

可愛いのじゃ

 

 なんか馬鹿にされてる気がするんだけど……気のせいだと信じたい。くそうこうなったら朧の金を全部使ってやる……やっぱやめよう可哀想だし。じゃあ京へ行こう。

 

 

 

 

 

 




次回は探索だぞ(デートともいう)

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信楽焼田貫さん、南宮 那月さん誤字報告ありがとうございました


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今日の京は魔京なんつって……ごめんなさいby空亡

タイトルごめんなさいこれしか思いつかなかったのデス。
朧さんキャラ崩壊


 

 京の町に着いた。色々新鮮だ。平安時代の京はこんな感じなのか。

 結構人もいるな……あるぇー狒々が居るぞー……何か言っているな、耳を澄ませてみよう。

 

「ここら辺から二代目の気配がする……待っててください二代目。絶対に見つけますからね、俺から逃げた理由たっぷり聞かせてもらいます……ふふふ」

 

 あ、これ駄目なやつだ。逃げないと……狒々は異様な雰囲気を纏っていた。一目でわかる。今の狒々はやばいと、椿妃と同じ雰囲気がするし。よしここから今すぐ離れよう。

 

なぁ絢に朧ここから離れよう

 

「何故だ空亡? それに何で小声なのだ?」

 

声がでかい。ばれる小さくしてくれ

 

しかたないな。誰にばれるのだ?

 

 俺は声を出さないように狒々の方を指さす絢は俺の指さした方を見て察したようだ……これでもかと言いたいほどに冷や汗を流している。絢と俺は顔を見合わせた。そして――――

 

逃げるぞ

 

了解だ空亡

 

「なんじゃお主ら仲い……い……のう……お主ら逃げるぞ」

 

 俺達は朧に気配を消してもらって、この場から逃げ出した。見つかったらヤバイ。その思いは今、三人の心一致させて一心不乱に走り出す。暫く逃げてから俺は朧に尋ねた。

 

「なぁ朧どこに向かうんだ?」

 

「儂の昔なじみの店がある。そこに向かうぞ」

 

「分かった」

 

「あの店か楽しみだな」

 

 絢も表情に楽しみと出ているそんなにいい店なのだろうか?それから俺達は店に着いた。その店では鮎の塩焼きを売っているらしい。

 皮はパリパリ塩は完璧と言っていいほどいい感じに振られており! 凄く食欲を刺激する匂いが俺の鼻を襲う。身も引き締まっていて焼かれた体は光っている。

 なんだこれは!? 本当に鮎なのか!? いやこれは鮎ではない……鮎様だ!!

 あのー絢さん? そんな冷めた目で見ないでくださいますか? 何故だかとっても悲しいです。

 

「ここの鮎はうまいぞー空亡」

 

 そう言いながら髪に鮎が付かないように髪をかき上げ食べる姿はどことなく色気を感じられる。絢は少し指に着いた鮎の破片を舐めながら、俺に視線を送って来る。上目遣いのまま俺の方を見る絢はかわいすぎて死ぬ……あ、鼻血が。

 

「…………」

 

「どうしたのだ空亡鼻血が出てるぞ?」

 

「あぁー気のせい気のせい、絢はそのまま食べてていいよ」

 

「まさかまだ傷が残っておったのか? 大丈夫か空亡?」

 

 絢はそう言いながら少しずつ涙目になっていく……なんだこれ? 何だこれ? 天使? 天使なのか? もう無理、鼻血がまた……でる。

 

「空亡布じゃこれで押さえろ」

 

「あ、ああ、ありがとう朧」

 

「気にするな……食べないのか?」

 

「食べるよ」

 

 俺は鮎の頭から丸呑みする蛇の癖なのか俺は魚を丸呑みしてしまう。まぁ味は分るからいいんだが。少し苦い皮、口の中で雪の様に溶けて崩れる身。苦みを消してくれる塩。完璧だ。こんな美味しい塩焼きは今まで食べてことがない。この店は神だまた来よう。てか崇めよう。蛇神が崇めるって変だけど。

 

「うまいなー」

 

 俺は自然と口からその言葉が漏れた。あぁ美味しい鮎の塩焼きがこんなにおいしかったのならうどんはどうなのだろうか? 今から涎が……。きっつねうどん♪きっつねうどん♪き~つ~ね~うどん!……何だこの歌? 冷静に考えると……かなり恥ずかしいぞ……声に出てないよな?

 

「空亡……可愛いのう」

 

もうちょっと歌ってもいいのだぞ?

 

「あはは聞いてた?」

 

「ばっちりな、可愛かったぞ?」

 

 俺の容姿は母さん似の中性的な容姿だそれも女性に偏っている。傍から見たら俺は女に見えるだろう……ははは、あーうん。

 

「……いっそ殺せよ! ひと思いに殺してくれよ!……このままじゃ恥ずか死する」

 

「……可愛いのう」

 

「死んでやるぅ! お前らみんなみちづれだぁ! ああぁぁぁ!」

 

 やろうおぶくらっしゃー俺を止めれるものはいないんだぁ!

 

「よしよし空亡、落ち着くのだ……もうなにしたって遅いぞ? 周りを見てみろ」

 

 俺は絢に抑えられて頭を撫でられえている。ぐすん……惨めだそれになんか絢に母性を感じれる。ん? 周り……周りには和むような表情で俺を見てる通行人の姿が……何人かは鼻血を出している……終わった……いろいろ終わった。もうやだぁ屋敷帰るぅ。雪花に慰めて貰おう。

 

「これこれ空亡うどん食べるのであろう?……ぷっ」

 

 この場の全員殺せば……証拠隠滅? そこからは早かった俺は言霊を使う。

 

() () () () () () () ()九十(ここのたり)

 

布留部 由良由良止 布留部(ふるべ ゆらゆらと ふるべ)

 

血の道と血の道と其の血の道返し(かしこ)(たま)おう

 

禍災(かさい)に悩むこの病毒(びょうどく)を この加持(かじ)にて今吹き払う(とこ)の神風

 

(たちばな)小戸(おど)(みそぎ)を始めにて―――――」

 

 詠唱の途中で俺は絢に羽交い絞めにされた。あ、胸の感触が……

 

「やめるのだ空亡!? それは洒落にならぬ!」

 

 でも今は……俺はやるんだ!!

 

「離せ絢! 全員殺すぅぅ!」

 

「落ち着けぇ! そんなことしても意味がないぞ!」

 

「いやだ! じゃなきゃ死でやる! 道連れだ!」

 

「かはははははは、空亡が壊れあははははは!」

 

 朧は腹を抑えながら大爆笑してる。ふふふふ……ブッ殺す!

 

「まずは朧だぁ!」

 

「ちょ、そら、あはははは!」

 

 つい地面に転がりながら笑い出した……絶殺。

 

「かれその神避(かむさ)りたまひし伊耶那美(イザナミ)

 

 出雲の国と伯伎(ははき)の国 その(さかい)なる比婆(ひば)の山に葬めまつりき

 

 ここに伊耶那岐(イザナギノミコト)

 

 御佩(みはか)せる十拳剣(とつかのつるぎ)を抜きて

 

 その子迦具土(カグツチ)(くび)を斬りたまひき

 

――太・――」

 

「空亡その技は使うなと骸鬼に言われているだろう! やめろぉ! 早まるなぁ!」

 

「こうなったら――太・極――無間山葵!」

 

「なんだそれはぁぁぁ!?」

 

 そう俺が唱えるとともに、無数の削った山葵が、朧の口の中に入った。

 ふっいいざまだ。笑えてくるわ。

 

「なんじゃそら……ぶふぉ! かりゃい……いひゃい……つーんとくるぅ」

 

「ざまぁ! 朧ざまぁ……ごめん」

 

「かひゃいのじゃぁ、口がかひゃいのじゃ……うぅーそらなきひどいのじゃ」

 

 やばい程の罪悪感が……俺は悪くなくない。絶対に俺が悪い、やり過ぎた。この埋め合わせは絶対にしよう。絢に凄くジト目で見られてる。あ、やばい俺が悪者じゃん……。

 

「朧、何でも言うこと聞くから……許してくれ」

 

やったのじゃなら空亡儂の屋敷に来てくれ絢もな」

 

「そのぐらいなら……まて何か言わなかったか?」

 

「からいのじゃー」

 

 凄い棒読みなんだが……でも俺が悪い、付いて行こう。

 

計画どうり

 

「何か言ったか?」

 

「何でもないのじゃー」

 

 その後は京の端にあるという朧の屋敷まで向かった。

 

「じゃあ空亡に絢、酒を飲むぞ!」

 

「酒かよいな、どんな酒だ?」

 

「いや俺は未成年……そう言えばこの時代そんな法律なかった気が……飲むか」

 

 今日ぐらい付き合ってやろう、俺が悪かったからな。あれ、意外とおいしい、お酒美味しい。

 

「お主らと飲む酒もよいのう。月見酒じゃ、ほれ綺麗じゃろう? 春になったら桜も咲く、また飲もうではないか?」

 

「本当だ月が綺麗だな……この時代は綺麗な物ばっかりだ現代とは違う

 

「そら……なき……吾は眠い……ねる――――」

 

 絢がそう言っていきなり倒れてしまった。絢の手から酒瓶が転がってきて俺の足元にその瓶にはこう書いてあった。眠酒。この酒を飲み干すと寝ます。どんな妖怪でも一発だぞ☆効果は八岐大蛇で実証済み安心して眠らせてね☆……え?……この酒やばくない? まさか俺のも?……

 発情酒このおさけわぁどんなに不能な人や妖怪、興奮しない女でも一瞬で発情するぞキラッ。注意、飲むときは一人で飲まないでね。一人遊び(意味深)という目的のために作ったのじゃないからね☆酒解神ちゃんよりー。

 いっぱい子供作ってね♥

 

「はー……はー……」

 

 頭がくらくらする。やばい何も考えられない、朧がエロイやばい。もうどうでもいい本能に従えば……。

 

「効いてきた効いてきたよしよしこのまま既成事実を……あ、やばいのじゃ儂の酒、間違えたこれ酔怪(よいかい)。妖怪殺しと言われる最強の酔わせるためだけの酒じゃ……やっべ」

 

 何か言ってるが、気のせいだろう……思考よ戻れ、流石に駄目だ。

 

「『覚めろ』」

 

 すごい言霊凄い。一瞬で酔いがさめた。やっぱ言霊ってスゲーや

 

「しゃけおいしー……そらなきー……なーそらなきー?」

 

「何だ朧?」

 

「よんだだけじゃーふへへ」

 

「…………幻覚か……朧が酔うわけないし」

 

「しょらなきーなんでふたりおるのじゃー? うれしいのー」

 

 がっつり酔っぱらってるね! それはもうべろべろに朧は俺の方に倒れて抱き着いてきた。豊満な胸が俺に当たり足を絡めてくる。女性特有のいい匂いがする。それに胸の感触がー……朧デカイ。

 

「なーそらなきー?」

 

「どうした朧?」

 

「よんだだけじゃー……ふひひー……あははー」

 

「何この妖怪可愛い!」

 

「儂が可愛い? うれしいのじゃー空亡の酒も飲ませるのじゃー」

 

「それはやばい……やめろ朧!」

 

「儂に逆らうなーのませろよー」

 

 俺の静止も聞かず朧は発情酒を飲んでしまった。朧の目がとろんとなり息も荒くなっている。

 

「からだあついのじゃー、ぬぐー」

 

 わーお、女の裸初めて見た。

 

「空亡? 暑いのじゃ……覚ましてくれんか?」

 

「あ、ちょ、やめ……あーーーーーー」

 

 先に言おうオネショタはなかった。何とか俺は守り切った。

 

 

 




今回やばいって何回使っただろう?
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一夜限りの胡蝶の夢

 この話には伏線いっぱいだよ見つけてみてね。ちょっと急展開かも。短いよ


 

 なんか花畑にいた……あれぇ俺は何とか貞操を守ってから疲れて寝てた筈なんだけど。何で外に居るんだ? あぁ夢か。夢なら仕方ないな。それにしても綺麗だなこの花畑、周りに咲く花が黒百合しかない。

 黒百合畑だ……でもおかしい黒百合は独特な臭いがする筈なんだけどな、ここ一帯に広がるのは懐かしくて、とてもいい匂いだ。夢で匂いって感じるんだな初めて知った。

 黒百合の周りに集まっているのは蝶だけだ。花畑ならもっといろんな虫がいてもいい気がするけどな、見渡してみてもいる二種類しかいなかった。鮮やかな漆黒の蝶とその蝶とは真逆の雪のような雪白(せっぱく)の蝶。 おかしい、俺の記憶が記憶が正しければ、普通の黒百合は蝿が集まる筈だ……新種か? 

 あれ、何で俺こんなに黒百合の事を知っている?

 

 

 ズキ―――――変な頭痛が、二日酔いとはなんか違うな、痛い抉じ開ける様な痛みだ。痛い、ここに居たくない。

 

 痛い―――

 

 痛い―――

 

 イタイ―――

 

 おかしい。ここに来てから頭痛が収まらない。……いたい……痛すぎる。割れる、頭が割れる。離れなきゃここから早く。

 しかし俺の意志とは真逆に俺の足はこの花畑の奥へと進んで行く。止まってくれ、戻ってくれそんな思考を無視してさらに奥へ――――――

 

 

 気付いたら俺は花畑の中心に居て、頭痛はもう消えていた。

 今、俺が居るこの場所には霧が立ち込めており、周りには漆黒と雪白の蝶。黒百合の周りを飛ぶ蝶はとても幻想的で今まで見た物と比べ物にならない。しかし……何故だろう? 懐かしい。だがこんな光景は今生では見たことがない前世か?うっまた頭痛が……何でこんなに痛いんだ? それと切ない、何なんだこの光景は?

 この夢は前世の記憶なのか? 

  

 うぐっ頭が……何なんだよ!? 俺に何を見せたいんだこの夢は!? 耐えられない。頭を割った方が良いと思えるほどの激しい頭痛。

 俺を地面に倒れそうになり、少し後ろに後ずさる。

 

 がさり。

 

 俺が後ずさった事により、花が揺れて音が鳴る。静かなこの空間にその音が響く?

 

「誰じゃ?」

 

 この口調は朧か? 助かった、今は一人でいるのがつらい。少しでも知っている妖怪が居るだけで安心できる。

 

「朧?」

 

「誰だそれは? 妾はそんな名前ではないぞ?」

 

「誰だ?」

 

「ちょっと待っていろ、そっちへ向かう」

 

 誰だ? こんな声は聞いたことがない筈だ。なのに記憶が疼く、頭痛が再発してより酷くなる。

 ズキ―――――近づかないでくれ。この声は駄目だ。異常にこの声の主に、俺は会いたくない。

 

「来るな……来ないでくれ!」

 

「大丈夫か? 辛そうだが……まっていろ、妾も治療くらいはできる。楽になる筈だそこに居てくれ」

 

 やめろ。この声は嫌だ。聞きたくない。この声を聞くと悲しくなるんだ。やめてくれ、近づかないでくれ、心配そうに俺に声を掛けるな。

 俺は何故か動けなくなっていた。この声は俺を拘束する。動けない体が言う事を聞かない。今俺の元に向かっている奴には会いたくないはずなのに、何故か体は動いてくれない。動け! 動け! 動いてくれ!

 

 

 そんな無駄なことを繰り返している間に、俺の前に声の主が現れた。

 その姿は、様々な蝶の刺繍が施されている漆黒の着物を纏っており、髪は黒百合の花の様で、着物から露出している肌は病的なまでに白い。そんな少女だった。この花畑をすべてまとめた様な黒い少女。

 狂いそうになるほどの痛みの頭痛が俺を襲う。やめてくれ俺の前から消えてくれ……この少女を見ているとおかしくなりそうだ。何で俺は初対面の筈の少女をここまで嫌う?

 

「ッおまえは」

 

 少女は信じられないようなものを見るような目で俺を見たかと思うと、急に駆け寄ってきた。俺を抱きしめてきて、あやすように背中を摩って来る。そうされている内に頭痛が引いてきた。

 この少女に抱きしめられると安心する。さっきまであんなにも嫌だった少女に、とてつもない安心感と懐かしさを覚えてしまう。俺の頭痛が消えると同時に、少女は俺から離れて優しい口調で言ってきた。

 

「もう大丈夫だ。これで頭痛は収まるであろう。ゆっくり妾から離れろ」

 

 俺は何とか息を整えて、少女に話しかける。

 

「はー……はー……お前は?」

 

「妾はそうだな……那美(なみ)とでも名乗っておこう」

 

「那美?」

 

 何で俺はこの少女の名前を聞くだけで懐かしく感じるんだ? 何だこんなにも悲しくなるんだ?

 

「気にするな、これは夢だ、忘れてしまえばいい。そうだこれも何かの縁だ。この夢から覚める前に、おまえの話を聞かせてくれんか?」

 

 俺はその質問に自然と首を縦に振り、これまでの事を話し始めた。那美は俺の話を、嬉しそうに、楽しそうに、安心した様な、悲しそうな、少しづつ話を進めるたびに那美は表情を変えていき、自分の事のように俺の話を聞いてくれる。

 俺はそんな那美に、気付いたら警戒を忘れ、心を開いていた。

 

 俺が話し終えると、黙っていたが口を開く。

 

「ふふ、楽しそうな妖生だな。妾は話を聞けて嬉しいぞ……それにしてもおまえは、いろんな妖怪に好かれているのだな。何人かは病んでいる気がするぞ?」

 

「いやないって、俺を好く奴なんていないから。ありえない、だって俺だぜ?」

 

 今、この少女にあるのは異様な懐かしさ、しかしそれも気にならないほどに、俺はこの少女との会話を楽しんでいた。

 

「もう少しは自信を持て、今時鈍感は流行らない」

 

「ちょっとよくわからない」

 

「ふふ、そうか仕方ない奴だかわらないおまえはそうだ。その椿妃という少女は危ういぞ? どうするつもりだ?」

 

「どうするって言われてもなぁ……あいつは俺を誰かと間違えているっぽいし、あんな綺麗な子に想われる奴は幸せ者だよなまったく」

 

本当にかわらぬなそうだ。おまえは椿妃を助けたいのか?」

 

「分からない……いや力になりたい。椿妃は辛そうな表情をしていた。俺をそいつと間違える程に、つらいことがあったと思うんだ。一度俺は椿妃と縁を結んでしまった、見て見ぬふりはできない」

 

「それでこそおまえだ■……そろそろ夢が覚める。今夜の事は忘れたほうがいい……でも、せっかく来たんだ、贈り物くらいはさせてもらうぞ」

 

そう言って、少女は俺の手を取り息を吹きかけた。それを終えると、那美はにこりと微笑み、俺の意識が暗転する。

 

 

 

 さっきのは夢だったのか? しかし、頭痛も懐かしさも覚えていて、妙に現実感があった。胡蝶の夢というやつなのだろうか? 

 

 酒臭ぇ、昨日は朧に酒を飲まされたんだっけ? 酔った朧に酒をかけられて臭いが服についた。洗わないとな、その前にもう一眠り、何故だか無性にまたあの場所に行きたいから。寝たらあの少女に会える気がするから。

 

 瞳を閉じようとする俺の視界に、蝶が見えた気がした。

 

 




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何気ない日常

久しぶりの二本投稿空亡君オンドゥル語を覚える


 

 いない? いない? いない空亡が居ない どこに行ったの? 逃げた?ありえない。ここから出るにはあの道を知らなければ……あいつか、あいつは空亡が作った肉人形私の言うこと聞かないこともあったが、空亡からもらったてことで我慢していた。

 だけど今回は許せない。やっと空亡を私のに出来た筈なのに……許さない。どうしよう? 空亡が作ったあいつは頑丈でほぼ死なない。今はあいつを殺すより空亡を一刻も速く探さないと、もう京から逃げてるかもしれない。ふふふ待っててね……空亡。

 絶対見つけて私の物にするから、全部忘れさせて私に溺れさせてあげるからね……空亡が私の物になるって考えたら……なんか興奮してきた……まぁいいか。

 私の力で牢屋を作らないともう絶対に逃がさないから。そのあとはどうしようかな?

 

 

 

 ◇◇◇

 

「うぇ……あだまい゛だぃ……おぇぇ……ッなんか寒気が!?」

 

 なにこれ!? 二度寝から覚めて、二日酔いになったと思ったら寒気するんだけど……命の危機じゃない何かを感じる。貞操の危機? ……ないか……ないよね? 大丈夫だよね? ていうか昨日も襲われたばっかなんだけど、本当にやばかった。理性がピンチで朧がエロ過ぎた。なんか日本語崩壊してる。

 酒に酔っていつもの性格が全部変わって甘えてくるし、全裸だったしなにより体を密着してくるし……落ち着こう思い出したらやばい……それより頭痛が……おぇぇぇうぷぅ……気持ちわりぃ……ちょっと外の空気でも吸うために庭に出ようかあれ? なんか目が開けられない。本当に頭が痛い。水……水ぅ、そうだ言霊で出せばいいじゃないか! 

 

「『水』」

 

「冷たいのじゃ!!??」

 

「え?」

 

「なんじゃ!? 敵襲か!? 空亡無事か!?」

 

 どうやら言霊を出す位置を間違えてしまったようだ。テヘペロ☆ キモイな。うん俺キモイ。二日酔いって怖い、色々テンションがおかしくなってる。

 朧には悪いことし……た……な? 

 俺の目の前には水に濡れてびしょびしょの朧が、いつもどうやって維持してるか分からないぬりひょんの孫のリクオの様な髪は完全に真っ直ぐになっており俺の完全に好みの髪型。それに少し火照った体は透明感があり濡れた髪は瑞々しさがあり、もはや意味がない程に着崩れた着物は、水のせいで肌にぴったりと張り付いている。

 要するに一言で説明すると、クソエロイそれで十分だ。

 

「あの……その……失礼しましたァァァ!」

 

「な!? 空亡どうした!? ……くしゅん、さむいのじゃー」

 

 俺はこれ以上この場に居ると本当に理性がやばいんで、屋敷を飛び出し逃げ出した。あれは反則! 分かるか? 俺の前世での女性経験は皆無に等しいよ、今生でもちゃんと喋れてるか怪しい俺だぜ? それがあれを見たらねよし絢のこと考えてこの雑念を消し去ってしまおう……あの姿の絢を想像してしまった。胸……なかったけど……

 消え去れ俺の煩悩! これからまともに二人の事見れないだけど……話す度に今の光景が頭に浮かびそうで、いや駄目だ。この煩悩を消し去るまで俺は走り続けよう。俺は変態じゃないんだーーー!

 

 あ、いて誰かにぶつかった。そう言えば俺、かなり酒臭いじゃん何でこんな状態で出てきたんだよ? ぶつかった相手に失礼だ。ぶつかった時点で失礼だと思うけど。

 

「誰だ? 二代目? 二代目!? ふふふふふ、やっと見つけましたよ。二代目を連れて来たクソ妖怪はどこですか?お話ししないといけません。大丈夫ですただ話し合うだけですから、ふふふふふ」

 

 あ、俺たち終わった。この狒々ヤバイ病んでやがる。遅すぎたんだ。

 あのーこれーまずくないですか? 説教で済む話じゃない気がするんですけど……まさか永久外出禁止コース? それは嫌だなー……と楽観しているんだが、内心俺はガクブルを超えた何かになっていた。ははは、もうどうにでもなーれ。

 

「二代目? 何をそんなに怯えているのですか? こんな二代目初めて見ます。新鮮ですね、名残惜しいですが、ハヤク、オボロノトコロニツレテッテクレマセンカ?」

 

 狒々の凛々しい顔は満面の笑みを浮かべている筈なのに目が一切笑ってない。冷めきっている。

 

「ひぃ」

 

「ねぇ? ハヤク」

 

「了解しました!」

 

 この状態の狒々には誰も勝てない、俺はそう悟った。そして俺は屋敷まで狒々を案内してしまった。これから起こる地獄も知らないで。屋敷に帰ると朧と絢はまだ寝ていた。ごめん絢、朧はいいとしても、絢が怒られるのは、かわいそうだから何とか逃がしてあげたい。朧を犠牲にして絢を助ける方法を探せ―――――

 

「二代目? 何を考えているのですか」

 

「イエマリモ!」

 

 びっくりしてオンドゥル語が出てしまった。よく言えたな俺

 

「毬藻って、何言ってるんですか二代目」

 

「えぇ、狒々聞き取れたの?」

 

「二代目の言ってることは分りますよ、当然です」

 

「ははは、そうなんだ」

 

 なんか違和感が……那美の言っていた事は冗談だったんだよね? みんなが病んでるなんて、ないって……ないはずだ。俺はそう信じよう。だってそう信じないと怖い……あれ? みんな病んでないよな? 狒々は俺の事心配してくれているだけだし椿妃は(多分)俺じゃない誰かの事を好きなはずだし、絢は可愛いし。朧だけはありえない。雪花は……

 

『若ー金魚ですよ、きんぎ――――水に落ちましたちょたすけ――――がぼ……ゴボ……凍らせればいいんでした』

 

 とか……

 

『若どこです――――誰ですか!? 落とし穴を掘ったのは! 待って出られない、若ー! 助けてください!』

 

 とか……

 

『もういいです! 怒りましたよ! 家出します!』

 

 などと言ってかまくらを作って引きこもって二時間無視すると帰って来るし。さらにこれだけじゃくて……

 

『若ー? 水浴びですかー? 私も入りますよ……あったかい? 熱い? 熱い!? ちょ若!? あつっ何でお湯に!? 溶けます! 私溶ます!」

 

 そんな思い出しかなかった……今度、優しくしてあげよう。休暇も上げよう。雪花は何時も頑張ってるからな。俺そう言えば雪花に頼りすぎかもしれない。朝起こしてもらってるし洗濯くれるし遊んでくれるし。あれ雪花って完璧? 一番お世話になってるじゃん……もう落とし穴掘るの止めよう。

 

「むー……そふぁなきぃ? おはよう良い朝だな……吾は何時の間に寝てたのだ? ……狒々?」

 

 最初は寝ぼけて目をこすっていた絢だが狒々の姿を見るなり顔がどんどん青くなっていった。空はもう真っ青に……。

 

「なんだ? 絢も共犯者だったのか? 雅の説教を楽しみにしていろよ」

 

 とてもいい笑顔で狒々は言った内容は絶望的だけどな。絢はこれまで見たことないようなほど顔を青くして、わなわなと震え、こっちに助けを求めている。絢、ごめん俺は無力だ。人も妖怪も神も絶対に負ける戦いがあるんだ。そういう時はな犠牲を最小限抑えるのに限るんだ。

 ここまで来れば分かる俺が……何をすればいいか、それは――――

 

「朧が逃げてる!」

 

「オボロ?」

 

「ッ逃げようとしておらんぞ!? 儂はこの場から動いてないぞ!? 逃げようとしてもないぞ……絶対じゃ」

 

 まじか適当に朧が逃げてると言ってみたけどマジで逃げようとするとは馬鹿だな。もうオボロの事は狒々に任せるとして俺はこの場所から逃げ出そう今なら逃げ切れるはずだ。一応状況を見ておこう。「母上に怒られるハハハは……は……はは……吾終わった」とか言いながら部屋の隅で独り言尾呟いている絢に「狒々さんそんな怒らないで……儂は空亡の頼みを聞いただけじゃ……だからその無表情で見るのはやめてくれんか?めっちゃ怖いんじゃが」ガクブルしながら狒々に言い訳をする朧。うん平和だな。俺は何も見ていない。だから空亡はクールに去るぜ…………

 

 よっしゃー外でれた! ビバ平和! これで俺はあとは逃げるだけよし逃げるぞーー!

 

屋敷から外に出て五分ほどで俺はあの神社に居た……目の前にはハイライトがしごとしていない目をした椿妃ちゃん。これやばくね? まじやばくね?

 

「……主……ミツケタ……もう……離さない……よ……えへへ」

 

 言ってることは可愛いんだが……その後ろから生える四本の巨大な骨の腕は何ですか? 俺には分かりかねます。

 

「ずっと……一緒……だよ?」

 

 できればこのセリフ病んでない子に言われたかったなー

 




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病んでる骸のお姫様

さて後二話で京都編は終わりです。長野県行ってたんで投稿できませんでした。また二日三日のペースに戻していくんでこれからもよろしくお願いします。


 

「月が……綺麗だね……主……」

 

「さっきまで昼だった筈なんだけどな? あとそれ男のセリフ」

 

「……我君を愛す……私は……こっちのほうが……好きだよ」

 

 うーん会話のドッチボール。

 

「聞いて? あと離してくれない骨の腕が肉に食い込んでる」

 

「……えへへへ……やだ……だって……逃げるでしょう?」

 

「それは逃げるよ……やべ」

 

「……ほら……やっぱり……だから離さない……もう二度と……ねぇ……二人だけで暮らそう……空亡……この場所は不変……寿命ないし……安全だよ……主には……私だけ……私には主だけ……だからね」

 

 椿妃の声が頭に流れてくる。それは麻薬の様に思考を溶かし、理性を壊して、依存させるような、優しい声だった。うん、これはあかんやつですね、これ以上聞いてたら抗えなくなる。

 

 ……今頃気付いたんだが、椿妃の背中から生える腕に泥らしきものが纏わり付いているがあれはなんだ? とてつもなく嫌な予感と、寒気を感じる。なんだろう俺の直感スキル(推定B)が言っている。あれ精神やばくなるよーって……直感さん? そんな代物ならもうちょっと真面目に忠告してくれないか?……それならあの泥が原因じゃね? 椿妃が病んでんのと俺をその主と間違えてるの泥のせいじゃないか?

 

「なぁ椿妃?」

 

「……なぁに……主?……」

 

「お前の腕に纏わりついている泥は何?」

 

「……泥って?……」

 

 俺がそう椿妃に聞いたら腕に纏わりついていた泥が消えた。どうやら椿妃には気づかれたくないみいだ。ますますあの泥が元凶説出てきたぞあれを無くせば椿妃は正気に戻るきがする? まずは話を逸らして椿妃に離してもらおう。そろそろ体が痛い。骨も何本か折れてる。なんか体からぎちぎち音が鳴ってるし、このままじゃ死ぬ気がするから。

 

「……なんでもない。そうだ椿妃君の事を聞かせてくれるか?」

 

 かなり唐突だけど、こうすれば話を変えれる気がする。

 

「…………ぽ……」

 

 なんか顔が赤くなったどういう反応?

 

「……嬉しい……主が……私のこと……聞いてくれる……なんて……」

 

 花が咲いたような笑みを浮かべて椿妃は泣いていた。

 えぇ何で泣くん?

 

「泣くな椿妃。何で泣いたんだ?」

 

「……嬉しくて……主に……私を知って……もらえるのが」

 

 泣くほどなのか……。

 

「……何から話そう……かな……そうだ……」

 

 椿妃はそう言い、一呼吸おいてこう切り出した。

 

「……主は……未来って……信じる?……」

 

 俺はFGOの未来を知っているし、元々、平成から来たんだ信じないわけないんだが、椿妃はどうしてこんなことを聞くんだ?

 

「信じるが……なんでそんなこと聞くんだ?」

 

「……私は……未来から……来たんだ……」

 

「…………わっと?」

 

 まさか俺と同じ転生者!? いやでもそれじゃあ、俺を主っていう必要がないし……どういう事だってばよ。待て俺よおちけつ、あーだからネタが分かるのか。うん納得、まさか俺と同じ境遇の人がいるとは……世界は広いなぁ。

 

「……じとーーーー……」

 

 ちょっと椿妃? ジト目で見ないでくれ。なんか俺がアホの子に見られている気がするから……。

 

「……主……考えてる……こと違う……」

 

「え? 転生者じゃないのか?」

 

「……違うよ……この世界の……未来から……」

 

 ………………よし、意味が分からない。まず椿妃が転生者じゃないことは半分ほど分からないけど分かった。……考えている事を読まれるのはもう諦めた。でも何でわかるんだ? パロールって奴か? 話がそれた、落ち着こう。えっど、つまりどういうことなんだ?

 

「……私はね……何度も……やり直しているの……主……空亡を……助けるために……」

 

「まて……話が繋がらない。今、椿妃は何を話してるんだ?」

 

「……?……私のこと……聞かれた……から……答えてる……だけだよ?……」

 

「オーケー了解。ひとまず、話を全部聞くそれからだ」

 

「……わかった……主……続けるね……」

 

 それから椿妃は話してくれた。未来から自分が来た事。俺と仲間にしてもらった事。何個か誤魔化すよう所があったが椿妃が俺を主と呼ぶ理由は分かった。そうか俺は百鬼を継げたのかそれの仲間の一人で主と呼ぶのか。未来の俺……何で椿妃は病んでるの? 好感度上げたの? できれば未来の俺がこれを処理してもらって欲しかったんだけど。あれ?……何で椿妃はこの時代に居るんだ? まずどうやって来た? 

 

「椿妃?何でお前はこの時代に居るんだ? 来る必要なくないか?」

 

 聞いてみたものの、そう言えば最初に椿妃は俺を助けるって言ってなかったか? 未来の俺に何かあったのか? それを助けるために? 俺が子供に時代に来る必要あったのか?

 

「……そうだ……主は……今……目の前に居るんだ……閉じ込めないと……」

 

 ……なんかまた病んでるモードになった。地雷は何だろう? 俺には分からない……あと椿妃の背また腕が生えているそれにやっぱり泥が付いているんだよなぁ。fateで泥って嫌な予感しかしないけど。アンリマユじゃないよな?

 

「……主……私じゃだめ?……一緒にいようよ?……」

 

「よし落ち着こうぜ。あとその泥しまおうか?」

 

「……泥?……さっきから……どうしたの?……変だよ?……」

 

「一番変なのオマエなんだが? 自覚ある?」

 

「…………?……」

 

 自覚はないみたいだな……はははつらいぜ。

 

「……ここには誰も居ない……私だけだから……安全だよ?……」

 

「安全と言いながら、じりじり近づいてきて後ろの腕を広げるの止めようぜ? あと泥が増えてる」

 

 一歩ずつ確実に俺に近づいてきて腕の数が増えて行くの軽くホラーなんだけど。腕に泥が纏わりついてる。なんか予想なんだけど、あれ椿妃の感情に合わせて増えていないか?

 

「……主……もう離さない……」

 

 逃げないとやばい。俺の直感が言っている。あれ? あれ? 足が動かない?…………いつの間にか俺の周りには骨で出来た腕がいっぱいあって俺の足を掴んでるんだけど。これは何てホラーゲーム? 椿妃は骨を使える妖怪だから……病んじゃったよ椿妃ちゃん☆かな? 今はふざけてる場合じゃねぇ、逃げないやばいんだけど、逃げられないという状況になっている。うん絶望的ー

 

「あ、痛い。骨が食い込んでる、ギシギシ鳴ってるーちょっとこれ骨折れる。せめてもうちょっと緩めてくれないか?」

 

「……だって……主を……離したくない……永遠に

 

なんか不穏な言葉聞こえたんだが!?

 

 よくいる鈍感係主人公だったら聞き逃していたことを俺の耳は拾ってくれた。絶対に永遠にって言った。

 

「……むー……主……声……大きい……」

 

 俺が悪いのか?

 

「今の一言は危ない」

 

「……うるさいから……先に閉じ込める……」

 

「ちょまっ、やめ、やめろー!」

 

「……ふふ、主……お休み……起きたら……何も考えなくて……いいから」

 

「空亡!? ここか!? 返事をしろ!」

 

 あ、絢の声だ。絢ちゃんに来たこれで勝つる!

 

「ちっ茨木童子……邪魔させない……」

 

 俺を地面に拘束したまま椿妃は外に出た。

 え? 離してくれないの? 俺このまま? 足が痛くなってきた。

 

「ヨッソラナキクロウシテルナ、オモシロイゼ」

 

 天井にぶら下がっている戒が話しかけてきた。こいつ!? 髪が下がらないの術を会得してるだと!? 前、暗闇や気付かなかったけど戒って俺に似てるな。あとゾンビっぽくない顔は白いけど舌もたれてないし目も白目じゃない。

 

「そうだソラナキ話がある。椿妃の事だ」

 

 俺の声? それに片言じゃない。口調も同じだ。

 

「まだ口調戻らないな……なぁ空亡、椿妃を助けてくれ」

 

 俺の声に近いけど少し低くなっている。俺が年を取ったらこんな感じだろうか? それにあのふざけた感じも今思えば俺に似てるし……

 

「椿妃には第三次聖杯戦争の聖杯を奪ってこの時代に来た。そのせいで少量だが聖杯の泥に犯されて精神が汚染されている。それから救ってやってくれ」

 

「お前はできないのか?」

 

「俺は未来のお前の力の残り滓から作られた肉人形だ。お前にあったおかげでここまで回復したんだがもう限界だ。椿妃の事で未来のお前が俺を作った。こうやって泥が表に出た時に椿妃を救えるようにな。俺が拘束を解くから椿妃の元へ向かってくれ」

 

「了解した。信じるぞ」

 

「あぁ、信じろ最後に伝言だ「いつの俺か分からないがおまえはきっと病んじゃったよ椿妃ちゃんとか考えただろ? 安心しろ俺もだ。俺の経験からいくともう病んでるのはデフォだ。はっ笑えよ」以上だ」

 

「笑えねーよ!」

 

 

 




ちょっとしたアンケートというかリクエスト募集?がありますので活動報告へお願いします。内容は出してほしいキャラと性格。基本妖怪でお願いします


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空亡捜索茨木童子

少し時間を戻して朧、絢、狒々視点。


「だいたい朧は、いつも酒を飲んで……二代目に悪影響が出たらどうするだ? おい何で目をそらしている? なんか言えよ」

 

「……飲ませてないぞ……儂は断じて、空亡に酒を飲ませておらん」

 

「おい朧? お前二代目に酒を飲ませたのか?」

 

 朧を何やっておるのだ? 自分から暴露して……それより吾は自分の心配しなければいけないぞ、母上に怒られる……吾は死にかもしれぬ。前に怒られた時は甘味が七日程喰う事が出来なかったのだ。それに口もきいてくれなくて……今思い出しただけで恐ろしい。母上と喋れないどころか無視されるなんて耐えられる訳がない……言い訳を考えなければならぬな。

 

「おい朧、本当二代目に酒を飲ませたのか?」

 

「……飲ませておらぬぞ」

 

 朧は冷や汗を流し、震えながら、醜い言い訳をしている。ばれているのに言い訳を続ける朧には、もはや尊敬すら覚えてしまうな。まずい、このままでは吾らだけが説教を受ける事になってしまうさっきから黙っている空亡も巻き込もうではないか! 吾ながら良い案だ。ふふふこれこそ鬼であるな! そうと決まれば空亡を……なぬ? 空亡がおらぬぞ? まさか……逃げたのか、吾らを囮に? 酷くないか………てっそれより空亡馬鹿ではないか? 少し前に攫われたばかりだろう。……まずくないか?

 

「なぁ狒々に朧」

 

「何だ絢? いま朧を説教してるんだが」

 

「絢、助けてくれ……」

 

「空亡が居ないぞ」

 

「…………は? 二代目はここに居る……いないだと!?」

 

「空亡ならさっき出て行ったぞ? 気付かなかったのか? 鈍いのう」

 

 朧は気付いていたようだ。そして気づいていなかった吾らを揶揄いながら笑った。

 ……呆れて何も言えぬな、朧は遂にボケたのか。空亡がまた捕まるぞ……吾も落ち着いてしまっている早く探しに行かなかれば。

 

「……おい朧? なぜ俺にそれを伝えなかった?」

 

「…………てへ」

 

「流石に殺すぞ?」

 

「冗談じゃよーぬらりひょんの冗談じゃー。さー探しに行くぞ。また空亡が捕まってしまうぞそれはまずいからな」

 

「お前の事はあとで大将と夜刀様に伝えておくから、今すぐ二代目を探しに行くぞ」

 

「それ死刑宣告なのじゃ! 早く探しに行くぞ」

 

 吾らはそうして外に出たのだが外には異変が起こっていた。今は時間的に朝の筈なのに周りは夜になってる。それにさっきから周りから妖怪の気配が感じられる。この夜が妖怪を呼んでいるのだろう。まぁ吾らに害はないが人間には迷惑だろうな。

 

「朧、俺が来たときは朝だったはずだ。俺は夜になるまで説教してたか?」

 

「一時間ぐらいだったぞ?」

 

「だよな俺の勘違いじゃないはずだこれは妖怪のせいだよな……これ放置してると陰陽師出てくるよな」

 

「これ早く解決しないと本当に陰陽師来るぞ? 多分空亡を攫った奴の仕業だと思うのじゃ……勘じゃけど

 

「勘なのかだかお前の感じは当たるからな……ということでお前ら別れて探した方が効率がいいから別れるぞ」

 

「了解したぞ狒々―――っ何か来るぞ!」

 

 別れようとした瞬間に吾らの元に何かが高速で近づいてきた。それは……巨大な白骨化した蛇だった。吾らに敵意を向けて威嚇している。

 

「でかいのう……これ何でこれ生きてるじゃ? 儂、始めて見るぞ」

 

「俺も初めてだ此奴生気がないな……死んでる。二代目を攫った奴の傀儡だろうな」

 

「空亡を攫える時点でかなり実力はあると理解していたが……傀儡まで使えるのか厄介であるな」

 

 骸を使える妖怪だと思い当たるのは骸鬼と空亡と同じ骸童子の筈だがそれはないはずだ。骸童子は現在あの二人しか存在しない。相手は何の妖怪なのだ? 吾の炎が効くかどうか、心配だな。

 

「一先ずこいつを片づけるぞどうせ傀儡だ壊しても問題は無い」

 

「吾も賛成だ今は空亡を探さなければいけないしな」

 

「儂がやっていいか?」

 

「朧がやるなら俺達はもう二代目を探しに行く。お前は実力だけはあるからな」

 

「実力だけって酷いのじゃ儂だって真面目にやる時がやるんじゃぞ?」

 

 普段の行いを見直してみても朧は駄目妖怪だ。でも妖怪としては正しいのか? 欲望のままに過ごすそれは妖怪として正しい形なきがするが……やっぱ駄目だな。朧のいいところを探そうとしてみたが、無理だこいつは……駄目な酒飲みだ。

 

「じゃあもいいくぞ。絶対にないと思うが死ぬなよ」

 

「その心配はいらんのじゃ儂はただ一匹のぬらりひょんじゃぞ?」

 

「そうであろうな」

 

「じゃあまかせるのじゃ儂もすぐ終わらせる」

 

 そう言葉を交わして吾と狒々に朧は別れた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 さてさてこの蛇は意外に強いな……めんどくさくなってきた。儂……やっぱり逃げていいかのう? 空亡は探すのだが戦うのめんどくさい。

 

「やるかぁ」

 

 すぐに終わらせれば問題ないか……”あれ”使えばこの程度ならすぐに燃やせるし。

 儂の馬鹿にしたような言い方に蛇の傀儡は怒りを浮かべている。

 感情もあるのか結構よくできているのう。ちょっと傀儡遊びと行こうか。

 

「鏡花水月」

 

 儂がそれを発動した直後に傀儡は儂に突撃してきた。この一撃を受ければ儂の様に細い体なんてすぐに砕けるだろうな。

 

「………!?」

 

 驚いてる驚いておる。今傀儡はこう思っているであろう。攻撃したはずなのに当たってないと、儂の体を通り抜けたと。

 

「ほれほれこっちじゃよ、手の鳴るほうへ。もっときてみよ、もしかした当たるかもしれんぞ?」

 

 傀儡は馬鹿の一つ覚えの様に何度も儂に突撃してくる。

 

「ほれまたはずれじゃよ? 儂はここに居るのにな、ほれほれその程度じゃいつまで経っても儂を殺せんぞ?」

 

 こいつはこう思っているだろうな。認識している筈だ。ここにいるはずなんだ。なのに触れない。まぁ傀儡にそんな考えがあるとはおもんが。

 儂の技、鏡花水月。これはぬらりひょんの本質を表す技じゃ。ぬらりくらりと現れては幻のように消え、また現れるまさにぬらりひょん! これのおかげでただ飯が食い放題。儂って本当に天才じゃのう。

 そうじゃそろそろ飽きてきたのう……燃やすか。

 儂は愛用している妖酒が注いである杯を取り出し、息を吹きかける。そこから青い炎が溢れ出し傀儡の体に纏わり付く。

 

「奥義・明鏡止水"桜"この波紋が鳴りやむまで炎の中で燃え続けるがよい。これにて傀儡遊びは終了じゃ」

 

 儂は杯の酒を飲み―――熱いのじゃぁ。この酒燃やしたのじゃった。

 

 「さて空亡を探すかのう」

 

 

 ◇◇◇

  

「此処は何処だ? 何で俺の周りにこんなに傀儡が真っ直ぐ探していた筈なのに」

 

 俺の周りには五十以上傀儡が集まっている。何十種類もの骸の傀儡、一体は弱いがこの数だ、かなり時間はかかるだろう。

 

「はぁこんな時に何で俺は戦斧を忘れるんだよ。近くに良い木があるなこれ使うか」

 

 俺は俺の身長の三倍ほどある木を無理やり抜いて構える。

 

「ぶっ殺す二代目に会うためだ悪く思うなよ!」

 

 

 ◇◇◇

 

 空亡を探して半刻ほど過ぎたんだが……いい加減傀儡の数が多すぎるぞ、吾の炎も弱くなってきた。そろそろ見つけないとな、攫った奴と戦う時めんどくさいぞ。そんなときだったこの傀儡とは全く違う量の妖力を持った者の気配を感じる。

 

「汝は何者だ?」

 

 吾は残る炎をすべて使う覚悟で身構える。この相手は母上と同じ気配を感じる。多分だが鬼であろうな。吾で勝てるかどうか……

 

「拙者は鬼童丸。おまえの気配は覚えがあるなたしか雅殿の娘か?」

 

「母上を知っておるのか?」

 

「ああ知っているぞ、拙者は雅殿とは幾度となく戦を共にした戦友というやつだ」

 

「何故ここに居るのだ?」

 

「骸鬼殿に呼ばれてな拙者は正式に百鬼に加わろうと思いここまで来た。だがどういう状況だ?」

 

 吾は分かりやすいように簡潔に伝え手伝って貰えるように説得をしてみた。どうやら手伝ってくれるようだ。

 

「ここに来る途中で何か見つけたか?」

 

「そういえば……変な空間があったな何かを無理やり閉じた様な……そこか?」

 

「感謝する。そこに向かうぞ手伝ってくれるか?」

 

「お前が雅殿の娘というだけで手伝わない理由はない」

 

 吾はそのまま鬼童丸の案内に従いその場所に向かった。そこは廃神社で異常なほどの妖力がここから感じられる。結界が張られているがそこから漏れる少しの妖気でこれだ。悔しいが、今の吾ではこの結界を破る力はないどうすればいいのだ?

 

「汝はこれの結界を破れるか?」

 

「出来るぞこの程度ならな」

 

「破ってくれ」

 

「了解した」

 

 鬼童丸が刀を抜き一呼吸した。そして次の瞬間。

 

『剣戟”梅の木”』

 

 無数の剣戟が一瞬にしてはなたれ結界を破った。

 

「”梅の木”は無限に広がる枝葉の如き剣この程度の結界紙と同じだ」

 

 すごかった今の攻撃は我では絶対に防げない。これを防ぐにはあと何年かかる? 鬼童丸味方でよかったな。

 結界が破られた先には無数の墓が聳え立つ森だった。この先に空亡が速く行かねば。

 我は森の中で大声で名前を呼ぶ。

 

「空亡!? ここか!? 返事をしろ!」

 




リクエスト妖怪一体目鬼童丸登場!口調大丈夫かな? まだまだ活動報告のリクエストは募集しているのでどんどんコメントしてください。感想待ってます。


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鬼蛇と骸の姫前編

ちょっと長くなったので二話に分けます気が付いたら7000文字超えたので次回で京編は完全に終了です。そして今回9割茨木視点です。


  

 吾の目の前の空間が歪んだ。そしてそこから黒髪の少女が現れる。 

 その少女が纏う気配は、禍々しくて恐ろしい。この世の狂気をまとめている様で、底知れぬ怒気を感じられる。顔は無表情だが覇気を感じる事が出来る。この少女は吾らを殺すつもりだろう。既に身を削るような殺気が吾らを襲っている。

 

「……汝は……何者だ?」

 

 吾は、こいつの放つ気配に潰されそうになりながらも、なんとか口を開く。

 

 口が渇く。

 

 体が震える。

 

 動悸が激しくなって息が苦しい。

 

 こいつは今まで相手した中で最上位の妖怪だと確信できる。骸鬼や夜刀に母上そして朧と土蜘蛛、横に居る鬼童丸、それらと並ぶ大妖怪だ。吾では逆立ちしても勝つ事が出来ない。

 

「……茨木童子……お前は……主には……会わせない……ここで殺す……消し飛べ」

 

「っ絢殿避けろ!」

 

「ッ―――――ぐっ―――がぁっ!」

 

 吾は避けられないことを悟り、何とか吾を襲う”何か”を防御した。しかし、それはあまりのも重く、吾は地面に足が埋まってしまう。このままでは、次の攻撃は避けられないだろう。それを分かっているこの少女はすぐに二撃目の”何か”を放った。回避は不可能、今の威力じゃ受け流すことなどできないし、一撃受けた感じ重すぎる。吾の力では跳ね返せない。

 吾はやられると思った瞬間に、鬼童丸に突き飛ばされた。そのおかげで地面から抜け出す事が出来たが、鬼童丸は慌てていたようで力加減が出来ておらず、吾は後ろの森まで飛ばされる。

 

「っ綾殿のすまぬ!」

 

「いやいい! 助かった!」

 

「……よそ見……しないほうが……いいよ?……すぐ死んだら……つまらない」

 

「くっ貴様! 吾を愚弄するか!」

 

「……今の……貴方じゃ……私に勝てない……これは事実……私の恨み……晴らさせてもらう……それにお前を殺せば……空亡は多分精神が弱くなる……そこに付け込めばいい……」

 

 吾はこいつと初めて会う筈だ。何でこんなに敵意を持たれておるのだ!? ちっそんなこと考えている場合ではないな……気を抜くと簡単に吾は死ぬぞ、だが幸い鬼童丸が居るある程度は戦えるだろう。それと最後の方、不穏なこと言わなかったか? 吾はこいつに恨まれることしたのか?

 

「そう簡単に綾殿は殺させんぞ!『剣戟”梅の木”』」

 

 鬼童丸は高速の攻撃は全てこの少女に放たれる。それは先程結界を破った時よりも早く一撃一撃が確実にこの少女の命を奪いに迫っていく――――しかし、少女はこの攻撃を前にしても怯まずに、その場から動かずそっと手を出した。するとそこから異様なまでの密度を持つ骨の塊が形成され始めた。

 ”梅ノ木”はこの骨の塊にことごとく防がれていた。

 

「……早いけど……威力足りない……この程度……これで……十分」

 

「――――硬いな……これならどうだ?」

 

 鬼童丸は二本目の刀を抜いて十字に構える。そして………

 

「『櫻花』」

 

 その名を言った途端に、視認できないほどの速度の斬撃が放たれた。この技は先程の何倍だ? どう考えても速度が上がっている。一撃の速度に威力そして数、その全てが”梅の木”をはるかに凌駕している。”櫻花”が先程の骨をいともたやすく粉砕して。今度は確実に少女に至った。

 

「獲った!」

 

「……痛ッ!……くそ……」

 

「”梅の木は天に昇る無数の枝葉の如く、”櫻花”はあたかも億万の花が吉野の山に散るが如く、梅の木の十倍の速さで”斬撃”する、あと何発で貴様は沈む?」

 

「……だけど……目は慣れた……」

 

「なぬ?」

 

「……次は……こっちの番……お前は……殺す必要ないから……はじき出す……喰らえ……主曰く……ロケットパンチ!……」

 

 少女の後ろから、巨大な骨の腕が現れる。それは何十もの骨を合わせて作られている様で禍々しい形をしている。そしてそれは妖力を纏いながら回転し始める。骨の元に風が発生してそれに周囲の者が吸い込まれていき、吸い込まれたはしから、粉々にされていく……そしてそれは放たれた。回転し、周りを巻き込みながら一直線に鬼童丸へと。それは、その巨大さからは想像できないほどの速度で一瞬のうちに鬼童丸の元までたどり着いた。

 

「―――――――――っ重いな―――それに回転が「……吹き飛べ」」

 

 そのまま鬼童丸は巨大な腕に捕まれこの空間から叩き飛ばされた。

 

「鬼童丸!」

 

「綾殿すぐ戻る! 少し持ち堪えてくれ!」

 

 そう言われもきつすぎるぞ……どうする?……

 

「……まぁすぐ殺すから……安心して……死んで……」

 

 そして少女の後ろから5本もの骨の腕が現れる。それは、吾の体の何倍もあり。この細い吾の身など簡単につぶす事が出来るだろう。その腕は吾に伸びてきて何百もの連打を放ってきた。隙は無く威力も絶大。一発でも掠れば即死するであろうな。

 吾はそれを愛用している大剣で何とか流して防御する。しかし時間が増すごとに威力も速度も上がっていき。一発防ぐのにも体力を大きく消費する。

 

「ぐぅ―――クソッ!」

 

「……そのまま……潰れろ……」

 

 ついに大剣が耐えられなくなり、罅がはいる。

 

 どうする? 考えろ。どうすればいいかを。

 

 

 勝利は不可能。

 

 逃走も不可能。

 

 逆転?

 

 逃げ切る?

 

 時間稼ぎ? 

 

 それとも命乞いでもするか?

 

 ―――――――いや、違うな。吾は何を弱気になっているのだ? 

 吾は鬼だぞ? 妖怪の代名詞とも呼ばれる鬼だ。

 理不尽の塊と人間に呼ばれ。そして自然を操る鬼だぞ? 

 この程度……倒せないくどうする? 炎が足りない? 妖力が足りない? 素早さが、体力が……全てが劣っていると? ありえぬだろう! 吾は鬼である! 傲慢で、無敵で、強欲な! それがこの少女如きに負けていいとでも? そんなの! 母上に知られたらもう相手にされないどころではないだろう!? ならばどうする? 勝てばいいどんなに醜くても、意地汚くても勝てば勝者なのだ。五臓六腑すべて捨てる覚悟で挑むしかないな……くはは、くははは! 

 

 滾る! 血が滾る!

 

 この身に流れる鬼の血がこいつを殺せと叫んでいる。勝とうではないか……殺そうではないか! 

 

 その考えに至った吾に、変化が訪れる。

 吾の腕がより赤く染まり、角が伸びる。背中から炎が溢れ羽のようになる。罅のはいった大剣を炎で修復して、より太く巨大にする。

 そして残った妖力を全て炎へ転換して体に炎を纏わせる。

 

「……変わった?……」

 

「そうだな……行くぞ?」

 

 羽を使い一気に飛翔するそして速度を上げて少女に間合いを詰めて腰をかがめて腕を突き刺す。少女の体から赤い花が咲いたよに血が噴き出す。少女は吾の速度の変化に反応が遅れ、回避する事が出来なったみたいだ。

 そして刺した腕から少女の体を燃やす。飛び散った血は全てが蒸発し、鉄の臭いと肉の焦げる臭いが周りに漂よう。

 

「このまま炙り続けるぞ?」

 

 吾はそう言いながら地面に少女を叩きつける。

 さらに火力を上げる。少女の体を全焼させる勢いで。

 油断した少女のにもはや命はない。確実に殺す。

 

 

 ―――――しかし、次の瞬間不可解なことが起こった吾が宙を舞っていたのだ。さっきまで少女を叩きつけていた吾が……。

 状況を確認するために先程までいた場所を見ると、少女は立っていた。腹に穴は開いているが、平然な顔をしている……何が起こった?

 

「……熱かった……油断した……もうしない……」

 

「ちぃ!この程度では堪えぬか! ならもう一度!」

 

「……同じドジは踏まない……だけど……警戒必須……」

 

 吾は少女に左手で殴り掛かり右手で大剣を振るう。

 同時に迫る攻撃に、少女は一瞬考えるそぶりをしてから、腹の中に手を入れて刀を取り出した。その刀も腕と同じようにいろんな種類の骨が固めて作られていて、歪な形をしている。数多の妖怪と人間の骨で出来た歪で禍々しい異形の刀。少女は、その刀で大剣を防ぎ、返しの刃で拳を弾く。鉄のぶつかり合うような音が響き、耳が痛む。

 

 一瞬だけ少女と目を合わせてから、吾は蹴りを放つ。炎を纏った蹴りは空気を焼きながら少女に迫る。少女はそれを腕で防いだが、予想以上の威力だったようで、軽くよろめいて後ずさる。

 

 隙を見せたな? 吾はそのまま再度蹴りを放つ。

 

 ――――しかし、それは突然空間から現れた骨の壁に防がれた。それは死者の頭蓋骨をありつけたもので、それらはすべて苦悶の表情を浮かべている。その頭蓋に吾の炎は飲み込まれていく。苦悶の表情を浮かべながら、炎を吸い込む頭蓋は恐ろしい物だった。

 

「……ごちそう……さま……妖力……うまうま……椿妃ちゃん回復☆……」

 

 この少女は今更ながら椿妃と言うらしい……吾の力が奪われたのか……それだ相手は回復するだと? 面白いな吾はまだ攻撃をうていない……この技は椿の妖力を使っている筈だ。そうじゃなきゃ反則だからな。できるだけ使わせて消耗させ続ければいつか勝てるかもしれん。希望は見えた。勝機はある。ならば! それを掴みとるまでよ!

 しかし、楽しいなこの戦は……鬼としての本能が、もっと激しい戦を望んでいる。

 忘れていたが、戦の作法くらいちゃんとしなければな。

 

「おい……貴様、名を名乗れ」

 

「……おまえ……やっぱり……変わらない……名乗るよ……私は椿妃……餓者髑髏(がしゃどくろ)の椿妃……」

 

「吾も名乗るぞ、吾は絢、茨木絢である。偉大なる吾が母上雅の娘」

 

「それで何がしたかったの?」

 

「いやこれは大事だろう?」

 

「……変わらないんだね……」

 

 そう言った椿妃の顔はとても穏やかで優しい物だった敵意など全く感じさせないように。でもそれは一瞬で、すぐに無表情に戻る。

 

 

「でも……殺――――――く」

 

「おい! どうした!?」

 

「まって……なにこれ!?……空亡……違っ……何で……私は空亡を閉じ込めて!? いや……戦いたくない!」

 

 椿妃の様子が一変した。

 頭を押さえて喚きだす。まるでさっきまでの事を信じたくないように。

 そんな椿妃の体からは泥が溢れ出して、椿妃を包んでいく。

 黒く、この世の悪意を詰め込んだような最悪の代物。

 

 ”これ”は危険だ。

 

 ”これ”は駄目だ。

 

 ”これ”存在してはいけない。

 

 吾は初めて恐怖した。

 

 怖い

 

 怖い

 

 怖い

 

 コワイ。

 

 椿妃の姿が変わったいく。椿妃の姿が溶けるように消えて霧と泥が発生する。周りに悪意と、どす黒い妖力の渦が溢れ出す。そして――――現れたのは。体中に泥を纏った。巨大な黒い骸骨だった。骨一本一本が全て数多の死者の骸を合わせて出来ている。骨で腕は六本あり、胸の部分に結晶がありその中に椿妃の姿が見える。

 

 泥が垂れた。

 

 そして中から黒い人影が無数に出現しはじめら。どう考えても人間ではないこいつらは意思を持っていない気がする。いや、何かを言っている。聖杯? 何のことだ?

 人影は吾を見ると一斉に襲い掛かってきた。一体一体、全員が違う武器を持ち吾を殺そうと走り出した。このまま何もしなければやられるだろう。吾は迎え撃とうしたがそれは失敗だった。

 

 泥を出していただけの椿妃が動き出して、吾に向けて六本全ての腕を使い攻撃してきたのだ。

 その攻撃は全部の腕が意思を持つように、自由自在に動いて吾をおってくる。咄嗟なことで反応がうまくできずに、何回目かの攻撃で吾はそれに直撃する。

 

「グッ!―――ガァッ!――――」

 

 吾は地面に叩きつけられ血反吐を吐いた。今ので骨の大半が逝った。動けない。そんな吾に近づくのは人影。絶体絶命。そんな言葉がよく似合うな……

 

「セイハ『燃え尽きろぉ!』GAAAAAAA」

 

 この声は? 

 

 聞きなれた声と共に周りの人影は燃え尽きたは。そして吾は霞む視界の中で声のする方を見る。

 

「……おい……空亡……なのか?」

 

「悪い……絢。遅れた今から俺は椿妃を救う」

 

 空亡の姿いつもと違った髪が伸び纏う妖力も増えている。明らかに強くなっている。なにがあったんだ?

 

「戒のおかげで拘束は解けたんだが敵が多すぎてな……やっぱり椿妃には聖杯の泥が……今、助けるからな」

 

「どうやるのだ……何を言っておるのだ?」

 

「この泥を全て燃やす」

 

「出来るのか?」

 

「あぁ今の俺じゃ無理だから力を借りるんだが。行くぞ」

 

 空亡が息をすった。その瞬間心地よくて暖かい炎のような妖力が流れ始める。

 

「求めた渇望は仲間たちが道を見失わないように閃光となって燃え続けたい。夜都賀波岐が一柱。『人物模倣』天魔・母禮。その大極を今此処に顕現させよう」

 

 そして空亡はその詠唱を紡ぎ出した。

 

 かれその神避りたまひし伊耶那美は

 

 

 その一文を唱えると空亡の髪の色が変わる。血の様な朱殷の色から鮮やかな金髪に、体には黒い鎧を纏い、目の色も変化する。その姿は女のようで美しかった。

 

 

 

 出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき 。

 

 

 

 周りの空間を炎が包みだしここ一帯を別の空間に変化させる。雲が発生し始めて、雷だけが降り注ぐ。それは周囲の人影を倒していき。

 

 

 

 ここに伊耶那岐

 

 

 

 次に空亡の手に二振りの刀が現れた。一本は赤く炎を纏っている。もう一本は白い雷を纏っている。それは一本だけで妖怪と錯覚するほどに妖力が込められている。

 

 

 

 御佩せる十拳剣を抜きて

 

 

 空亡の後ろに妖力が集中し始める。それは形を成していき。

 

 

 

 その子迦具土の頚を斬りたまひき

 

 

 

 ――太・極――

 

 

 随神相――神咒神威・無間焦熱

 

 

 そして空亡は巨大な女武者を出現させた。

 

 

 

 




大極発動! そういえば何でシュピーネさん大極ないんだろう?

 まだリクエスト募集してますので活動報告を見に来てください。そうだ知り合いが自分のSCP記事書いてくれましたので活動報告に貼ります。次回は明日投稿。
 良ければ感想とお気に入り登録お願いします。




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鬼蛇と骸の姫後編

さーラストだ
めっちゃ頑張ったよ。主人公やっと活躍するよ。
 今回は大極発動! やっぱり無間大焦熱大好き。炎と雷はロマン!


 

 かれその神避りたまひし伊耶那美は

 

 

 出雲の国と伯伎の国 その堺なる比婆の山に葬めまつりき 。

 

 

 ここに伊耶那岐

 

 

 御佩せる十拳剣を抜きて

 

 

 その子迦具土の頚を斬りたまひき

 

 

 ――太・極――

 

 随神相――神咒神威・無間焦熱

 

 ”太極”それは形を持った一つの宇宙、主たる者の渇望に沿い、絶対の法則として顕現させる天魔の咒法。

 要するに固有結界の強化版。母禮の仲間たちが道を見失わないように閃光となって燃え続けたいという渇望を元に全ての法則を捻じ曲げる。ここに広がるのは一つの世界。空には雷鳴、地には灼熱。無限に広がる焦熱地獄。俺がこの技を使うのは許されないかもしれない。天魔・母禮の思いなど俺は背負えないし、理解などできない。だけど椿妃を救うのに最適な技はこれしかない。

 どんなことを思われもいい。だけど……今は力を貸してくれ。

 

 

 よし、発動出来た。でもねこれでさ、しかし……何も起こらなかった……とかになったら、シリアスブレイクを超えた何かになるからね。”人物模倣”この技は長く使いすぎると、性格まで変わるかもしれないという。かなり危険な技だ。しかし、これを使わなければ今の俺には完全に大極を使う事が出来ない。それで使えても五~七分程度しか使えないんだが……。

 

「……空亡? その姿は何だ?」

 

「俺のちょっとした戦闘形態? そんな感じだ。絢、酷い傷だな……すぐ治す。『治れ』よし、これで完璧」

 

 今の俺は、戒の中にあった。未来の俺の妖力を取り込んで、何倍にも強化されている。

 それも長く続かないけど……だってこれさかなり無理をしたドーピングだぜ。正直、体が爆発しそう。

 だけど……たった少しだけでいい。椿妃を救える時間だけでいいから、この力を使えればいい。

 

「さてと……絢は休んでいろ俺一人で救うから」

 

「空亡、今の暴走している椿妃は強いぞ、ひとりじゃ無理であろう」

 

「大丈夫だ絢、正直今の状態じゃ絢を巻き込んでしまうから出来るだけ離れていてくれ。頼む」

 

「しかし―――」

 

「本当に危険なんだ頼む」

 

「仕方ないな……救ってくれよ、吾は椿妃に聞きたいことがあるからな」

 

「任せろ」

 

 

 こうしている間に少し時間が過ぎてちょっとやばいけど―――覚悟決めろよ俺。

 

 

 ◇◇◇ 

 

 椿妃の体からは海と錯覚するほどの量の泥が溢れ出しそこから絶え間なく影英霊が生まれ出す。英霊の紛い物であるそれらだが……戦闘能力は決して低くない。ミノスの牡牛。霧の殺人鬼。クリミアの天使、ケルトの英雄。

理想の王それらすべての影英霊が自分を生み出した椿妃を守りながら、空亡を殺すために殺到する。その手に持つのは強力な武器の数々。この戦力ならば一国程度は簡単に滅ぼせるだろう――――――しかし、この影英霊は塵の様に空亡に殺されていく。

 人間的な悲鳴は上げられず、獣じみた絶叫と肉の焼ける音と爆音と雷鳴の狂想曲が絶え間なく、かつ容赦なく鳴り響き焦熱地獄を彩り塵殺していく。

 

 ただただ死ね――――どんな英霊の影か、そんなものはどうでもいい。

 

 今は邪魔だ、紛い物は死んでいろ。

 

 邪魔するなら殺す。

 

 群れるなら殺す。

 

 そんな思考を持ちながら鬼蛇は神の如き力を振るう。雷鳴を轟かせ、灼熱の花を咲かせる。今この場を支配するのは一匹の半神半妖。一人の少女を救うその為だけに力と技を振るう。

 

 椿妃は聖杯の泥に犯され暴走し精神を乗っ取られている。悪を広げろ狂気を巡らせろこの世界を地獄に染めろ。そんな意志を持ちながら椿妃の力を使いづづける。骨の無限再生と傀儡術。そして自分の影英霊。

 

 それら全てを使い邪魔をしてくる妖を殺しつくそう。

 

 

 展開されるのは神話の様な大戦。巨大な髑髏の妖を朱殷の髪をした英雄が妥当するよな光景。

 しかし真実は呪いに犯された姫を助けるという英雄譚。常人がこの場に居れば瞬く間に肉塊と化し物言わぬ骸となり果てるだろう。この光景を後に絢は忘れる事がないと語っていた。

 

 影英霊はもう何百もの数がやられていた。それはそうだ。影英霊と空亡では基本性能が段違いだからだ。影英霊は英霊の紛い物であり、本来の英霊の性能の十分の一以下。それに対して空亡は半神半妖。そして、その身を限りなく天魔に近づけていて未来の自分の妖力まで吸いこんで強化されている。差が出来るのは当然だった。

 

「Gaaaaaa!」

 

 そう椿妃の意識を奪っている聖杯の泥は咆哮する。その体の骨を異常なまでに再生させ始めた。元々の異形の姿が更に異質な物へと変貌する。さらに巨大になり腕は増え頭蓋には角体を覆う泥は移動して一振りの剣と化していた。それは一撃を放つ。それを空亡は女武者を操り防ぐ。刀と剣がぶつかり周りの空間を震わせる。大気悲鳴を上げ歪みだす。女武者は雷と炎の刀を四本巧みに使い。切り、防ぎ剣を交わす。

 

「泥を一気に燃やす距離まで移動しないとな………あと少しか」

 

 空亡の狙いは一つ椿妃を蝕む泥を全て燃やす事。

 そのために時間稼ぎとして女武者を使い。自分はその間に全部燃やせる距離を見つけ出すのが第一目標だった。今、経過した時間は四分ほど、残り最大で三分、最低二分ほどしか時間がない。

空亡は更に椿妃に近づいていく。影英霊を燃やして雷で貫く。そして辿り着いたのは椿妃の真下。

 

「着いた……ここなら全部燃やせるな……ゆくぞ『火柱』」

 

 空亡がそう言うと周りにいくつもの火柱が出現しはじめた。神秘的で神威を纏った天魔・母禮の炎。魔性を焼き浄化する咒法。この炎なら聖杯の泥すら焼き払う事が出来るだろう。

 

「おお、道神よ。憤怒して魔性を撃破せよ。あなかしこ

オン・ケンバヤ・ケンバヤ・ウン・ハッタ

 火柱掃射!焼き払え!」

 

 すべての火柱が椿妃に纏わり付く泥を焼く。

 泥は悲鳴を上げながらうごめき抵抗しているみたいだ。しかし火柱は勢いが収まるどころか強くなって炎の量が増えていく。この炎は呪いを焼く力しかない。椿妃に一切ダメージは入らないだろう。

 

「これで救える……未来の俺、約束は……守ったぜ」

 

 そんな時だった椿妃の体が崩れ出し、少女の姿の椿妃が落ちてくる。空亡は一気に椿妃に近づき受け止めた――――その瞬間、椿妃の体から先程とは比べ物にならないほどの、黒く赤き線が入った泥が、空亡と椿を包み込む。

 

「っなんだ!?」

 

 

 ◇◇◇ 

 

何が起こった? ここは何処だ? 周りには聖杯の泥が塗り固められていて部屋の様になっていた。

 

 何でだ? 泥は全て焼いた筈だ。椿妃の体の中に最後に潜んでいたのか?

 

 ッッッ――――――――頭の中に何かが流れ込んでくる。

 

 憎悪。

 

 狂気。

 

 憤怒。

 

 絶望。

 

 軽蔑。

 

 嫉妬。

 

 罪悪感。

 

 殺意。

 

 壊せ、呪え、犯せ、潰せ、絶やせ、滅ぼせ、奪え、消せ、殺せ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ、コロセ。

  

 頭が壊れそうだ。

 

 コロセ

 

 惨殺、斬殺、撲殺、絞殺、刺殺、欧殺、毒殺、薬殺、扼殺、轢殺、爆殺、鏖殺、圧殺、焼殺、抉殺、誅殺、溺殺、射殺、銃殺。この世にある全ての殺し方が頭に浮かぶ。気が狂う。自我が崩壊する。俺は何故ここに居る? 分からない。

 

 怖い、耳を塞ごうとしたが感覚が無い。まず俺は何処にいるンダ? オレとハ何ダ? 分からない わカらなイ? わか……らない……。

 

 ふと、俺の耳に泣き声が届く。

 少女の声だ。何で聞こえるんだ? 何処から聞こえるんだ? 俺は何もわからなかったがこの声がする方に動き出した。

 

 少し歩くと頭に何かが浮かび出す。それは、牢屋の中に居る少女の姿だった。その少女に朱殷の色の髪をした男が前に現れて話しかけている光景だ。

 

「……貴方……誰?」

 

「俺か? 俺は百鬼空亡(なきりくうぼう)だ。昔はそらなきって呼ばれていたけどな」

 

「……私を……どうするの」

 

「仲間にする」

 

 男は少女の頭を撫でてからそう言った。優しそうに笑いかけている。

 それは安心するよな笑みだった。何でこの男は笑っているんだ?あとその顔ムカつくからやめろ。少女はその顔を見て驚いたような顔をして。

 

「……え?……」

 

「え?」

 

「……え?……仲間って何?」

 

「…………えっと……えーと……えーと?」

 

 男は冷や汗を流しながら、後ろに居た角の生え金髪の女性にむかって、恥ずかしがりながら聞き始めた。

 何だろうこの男? 凄く馬鹿っぽい。でもなぜか親近感が……

 

えっと絢? 仲間って何?

 

「空亡……汝は……呆れて何も言えんぞ。吾らだろう」

 

あっありがとう絢。なんかごめん

 

「別にいいが空亡お前かっこつけようとして今のはダサいぞ?」

 

「……ふふっ……面白い……いいよ……仲間?になるよ」

 

 少女が今のやり取りを見て、何故か笑い出してから、仲間になると言い出した。分からないけど俺が馬鹿にされた気がしたんだけど……。

 次に頭に流れて来たのは、椿の花が沢山咲く場所に、男と少女と男に仲間がいるところだった。そして男は少女と手を繋ぎながらこの場所を歩いていると、唐突に話始めた。

 

「オマエ名前がないと不便だろ? 俺が考えてやるよ……椿妃でどうだ?」

 

「……どうして……その名前なの?……空亡……」

 

「見てみろよこの満開の椿の花を綺麗だろ? お前と出会ったのはこの時期だ。この椿の花が咲く時期に俺達はお前に出会う事が出来た。それのお前は綺麗だろ花みたいにな、この時期で俺が好きな花と言えば椿妃だから。そんな理由だ。あれ? なんで顔が赤いんだ?」

 

 駄目だこいつ天然だ。ムカつくんだけど何故か異常にむかつくんだけど!

 

「……えっと……わかんない……」

 

「そうか……ならいいか。絢!名前決めたぞ椿妃だ」

 

「おい空亡どういう理由でその名前にしたんだ?」

 

「だって椿の花が綺麗だからな!」

 

「安直すぎるぞ……」

 

 絢と呼ばれている女性はまたもや呆れて頭を押さえている。

 

「じゃあ……ポチとかどうだ?」

 

「……やだ……椿妃がいい……あれ? なんでだろう……目から水が……」

 

「なして? ポチ駄目? というか泣かないで、そんなにポチ嫌だったのか…………真面目に考えろよ俺、女にポチはないだろう……」

 

「空亡………汝が悪い……椿妃でいいよな」

 

「……うん……なんで……泣いてるんだろう……私……」

 

 歩みを進めると次から次へと流れていく。そして次の光景は椿妃が一人だった。周りには死体が広がり黒い泥が溢れる器の前で何かを言っている。

 

「……我……聖杯に……願う……」

 

 空亡にもう一度会うために

 

 空亡を救うために

 

 私をも一度あの暖かい日だまりに戻してください。

 

 私の幸せを返してください。

 

 そして……椿妃は光に包まれた。

 

 

 その光景を最後に遂に泣き声の近くに俺は来た。というか俺が空亡じゃん。未来の俺……あんな奴なんだ……エミヤが自分を否定するの分かる気がするよ。なんか違う気がするけど。

 

 目の前に泣いている椿妃が居る。椿妃は泣きながら耳を塞いでいて、それはまるで現実から逃げたいみたいで、もう何も聞きたくないといった様子だった。

 椿妃は俺に気付いて今にも消えてしまいそうな声で話しかけてきた。

 

「……空亡……なんで……来たの?……私を殺してよ……私は……貴方を閉じ込めようとしたんだよ……」

 

 そんなことで泣いているのか……そんな事気にしなくていいのにな。俺は椿妃を救いたい。その思いでここに来た。

 

「……俺がお前を救いたいというのは駄目か椿妃?」

 

「……なんで……」

 

「未来の俺に頼まれたのもあるし、何より俺はお前の記憶を見て救いたいと思ってしまった。それでは駄目なのか?」

 

「……おかしいよ……空亡……私に優しくしないで……」

 

 椿妃は俺を拒絶する。それは罪を裁いて欲しい罪人のようで俺に裁いて欲しいみたいだった。だが、それは無理だ。椿妃の事はもう許しているし。なによりこれは聖杯の泥が悪い。椿妃は詐欺られただけだ。椿妃は何も悪くない。救いたいという願いを悪用された被害者だ。

 

「それは無理だ。椿妃、俺はお前を許している。そんなに自分を責めるな」

 

「……それは……できない……私は……空亡に……絢に……酷いことをしたんだよ……許されちゃだめなんだよ……」

 

 何でこんなに自分を責めるのかな? もういいのに。なら望みを叶えてやろう。罰を与えよう

 

「―――椿妃、そんなに自分が許せないか」

 

「……うん……」

 

「――なら椿妃俺からお前に罰を送る」

 

「……分かった……速く言って……私を罰して……」

 

「――――椿妃、俺の仲間になってくれ」

 

 罰を求めた椿妃は予想外の内容に驚いたような顔をしている。

 

「……え?……」

 

「それがお前に与える罰。俺が生きている間ずっと……俺の仲間でいてくれないか?」

 

「……なんで……なんで……」

 

「罰は与えた。これでいいだろう?」

 

 椿妃は更に泣き出して俺に笑いかけてくる。吹っ切れたようだ。それに合わせるようにこの空間が晴れる。泥の空間が椿の花が咲き誇るとても綺麗な場所に変わった。広がる青空に何種類もの椿の花。未来の俺が椿妃に名前を付けた場所。

 

「……空亡は……頑固だね……罰をくれないんだ……」

 

「そうだな俺は頑固だ。椿妃ここから出るぞ。もうお前は仲間だ。それに父さん達にも紹介しないといけないしな」

 

「……まだ……答えてないよ……」

 

「え? 駄目なのか?」

 

「……駄目じゃ……ないよ……」

 

「なら出るぞ」

 

「……うん……」

 

 俺はこの空間から出る方法考えてなかった。……久しぶりにあの技使うかこの空間も敗れると思うしあれなら。でも経津主神・布都御魂剣。までは使えないけどな。残りの妖力的に……だからあの技だ。

 

 

「『人物模倣』壬生宗次郎。蝿声!」

 

 刀を取り出し技を放つそれは何物にも邪魔されずに飛んで行きこの空間を切り裂いた。それにより俺達は外に出る事が出来て。さっきの夜の空間にまで戻っていた。周りには絢に朧と狒々。そしてぬら孫の鬼童丸。いやなんでさ……まぁいいか。

 

「空亡。救えたんだな。お帰りだ」

 

「救えたよ絢……ただいま」

 

 ◇◇◇

 

 この話の後日談としてはめっちゃ父さん達に怒られた勝手に抜け出したことに、自分の命を危険にさらしたこと。周りを巻き込んだ事。そして怒られた後に褒められた。椿妃を救ったことを。そして俺は気付いたんだ。椿妃に仲間になってくれって言ったの……あれ、ほぼ告白じゃんと……めっちゃ恥ずかしい。

 

 そして今、俺は椿妃に襲われかけている。うん。自分で言って意味わからない。

 

「なぁ椿妃さんや……なしてここに居るの?」

 

「……恩返し?……」

 

「じゃあ離れてくれない?」

 

「……えへへ……やだ……」

 

「これ見られたら困るんだけど……だから離れて」

 

「ねぇ……空亡……本当に……ありがとね」

 

 椿妃はまさに花のような笑みを浮かべて俺に抱き着いてきた。あぁ仕方ないなその笑みは反則だ。

 

「これからよろしく頼むぞ」

 

「うん!」

 

 

 




 
 次回から平安時代青年期に入ります。青年期のキャラは今募集しているリクエスト次第で変わっていくのでできればリクエストを送ってくれると嬉しいです。
 ということでここまでの感想や評価にお気に入り登録できればお願いします!


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平安時代~青年期~
鬼蛇の時は進む


 時は進み空亡君は一六歳になりました。という事で今回より青年期百鬼(なきり)編を開始します。リクエストで来た妖怪はこの章に出しますので。まだまだ募集します。
 そして!今回出るのは、おまもりひまりの静水久と東方Projectの伊吹萃香です。

 ロリがいっぱいだこの小説ロリキャラ何体出てるんだろう?(純粋な疑問)

俺は……ロリコンじゃない。

あと今回セリフが少ないので苦手な人は注意。



 

 ”この時が止まればいい”と思った。

 これは勝手だが誰でも、一度くらいはそう思った事があるのではないか? 素晴らしき一瞬を少しでも長く持続させたい。その瞬間を永遠に繰り返し大切な者達と少しでも長く共有したい。

 

 その瞬間は、何度も繰り返しても飽きる事はなく、もしも飽きたとしても、”この時だけは”と、そう思える瞬間が誰にでも存在するんだ。

 それを失いたくない。それが自分の手から消えるのが堪らなく恐ろしい。そんなことを一度でも考えたことがあるだろう?

 

 俺にとってその瞬間は、”今”と言えるだろう。父さんの仲間の百鬼と絢、椿妃と戦い、笑い、泣いて、怒り、悩む、そんな家族みたいな妖怪達と一緒に過ごす今の時間こそが、俺の日常であり、掛け替えのない宝物。この瞬間だけは、何者にも奪わせない。壊させない。守る為に、繰り返す為に、この時が永遠に止まればいい。そんなことを俺は最近思うようになっていた。

 

 そう思うほどに、今があまりにも心地よい。あまり変わらず過ぎていく日々を、俺はいつまでも続けていたいと思っていた。

 

 でも、それでも……時は過ぎる。何があっても時間は進む。何事も永遠には続かない。

 

 時が過ぎる程にこの日常から遠ざかる。

 

 時が過ぎる程に仲間は減っていく。死という毒が俺の体を蝕んでいく。

 

 俺は自分が死ぬという未来を知っている。椿妃を助けた時に何度も見せられた……椿妃の記憶でだが。その途中で俺の未来で出来る仲間が死ぬ事も……その光景を想像するだけで俺は正気でいられなくなる。この宝物が失われる未来が、何よりも許せなくて……時を止めたくなってしまう。

 

 俺はこれでいいのか? 俺はこのままのずっと幸せな日常に居続けては駄目なのか? そんな事を問い続けながら、俺はこの日常を過ごしていく。

 

 それが俺、空亡(そらなき)の今の生き方だ。

 

 

 ◇◇◇

 

 あ、どうも空亡です。ついでに鬼蛇やってます。椿の事件から六年が過ぎました。俺はすくすくと育ち? 今では前世での年齢にまでと届きそうなっています。

 いやー時間が過ぎるのは早いですね。空亡さんは驚きが隠せません。でも本当に平和って素晴らしいですね。そんなことをしみじみ思ってしまいますよ。

 

 ん? どうしてそんなことを言うのかって? それは現実逃避です。そのぐらいは察してください。え? 無理? 頑張ってくれ俺は応援している。

 

 まぁそれは置いておいて……しょうがないので、今の状況を空亡さんが説明してあげようではないか! 感謝するがいい! ふはははは! うん、やめようこのテンション。なんか、すごく死にたくなるからな。

 

 いい加減くどいな。簡単に説明すると……今の状況は二人の鬼が山を投げ合っている。そうだ山を投げ合っているんだ……何言っているんだこいつは? とか思うだろ? 俺もそう思うぜ、そんな非常識……だけどな目の前でマジで実際に起こっているんだ。それどころか互いの持つやまで殴り合ってる。あぁ本当に頭可笑しい。

 

「なぁ空亡? 勇儀たちはなぜこんなことをしているのだ?」

 

 俺の横には心底不思議そうな顔をしながら、首を傾げている茨木童子の絢がいる。絢もそう思うのか……だよな、意味わかんないよな。俺も鬼だがこんな事できないぞ……まずやろうと思わない。

 というか笑いながら山で殴り合うって何? 片手で山を持つってどういうこと……どんな馬鹿力なんだよ……。

 

「絢……俺にも分からない。本人たちに聞けばどうだ?」

 

「空亡……(なれ)は馬鹿か? 今の二人が話を聞くわけないだろう?」

 

「ははっ、だよなー分かってた」

 

 目の前で殴り合っている鬼の名前は星熊勇儀。もう一人はツルペタ幼女の伊吹萃香―――――

 

「ちょあぶっまっ『防壁』!」

 

 あぶねー俺に山が飛んできた。それもとても巨大な……俺じゃなかったら死んでるぞこれ……。

 

「おいふざけるな萃香! 今のは死ぬぞ!」

 

「ねぇ空亡? 今私のこと馬鹿にしたよね?」

 

「黙れツルペタ幼女の馬鹿萃香! お前の心はその胸と同じで小さいなヴァーカ!」

 

 俺が萃香を挑発しているのにはわけがある。それもとても深い訳が……あれだけは何があっても許さない。

 

「空亡? 遺言はそれでいいね? 『奥義・三歩壊廃』」

 

 あ、これ終わったわ……それは反則じゃないか? そんなことを考えている間に、萃香は二歩目を終えていた。あと一歩で俺を殴るだろう。今から防御は間にあわない……いや……違う。間に合わないから諦めろ? おとなしく殴られてしまえ? ふざけるな!  これ喰らったらマジで死ぬからな……死にたくないから、あれを使うか。

 

「『人物模倣』聖餐杯

 詠唱破棄

 黄金聖餐杯(ハイリヒ・エオロー)

 

 俺が知る限り最高レベルに防御力が高い技。だけどラインハルトの肉体ではないから、せいぜい”形成”くらいしか模倣できないけどそれに発動時間も一瞬、でも一瞬だけ防げればいい。だけど、それだけじゃ怖いから、久しぶりに骨を使って壁を作ろう。腕を合わせ骨の壁を作り出す。

 

 萃香の拳が迫る。一枚目の壁が一瞬で破られ、て二枚目三枚目とどんどん破られて俺に拳が届く。それは、すさまじいほどの衝撃を俺の体に伝えてきて、跳ね飛ばされる感覚と浮遊感を感じ俺は後ろに吹っ飛ばされた。

 

「うおぉぉぉぉぉ―――――」

 

俺は防御はできたが、萃香に吹っ飛ばされてしまった。

 なんだろなこの既視感(デジャブ)、前にもこんなことあった気がする……それにしても暇だな……それに、空の旅はもう何度も経験しているし……今更、新しい事は何もないだろう。

 俺は暇なので、なぜ萃香がここに居るかという事を説明しようと思う。

 

 あれは二年前だっけ? 勇儀姐さんが「友達を連れてくる!」といきなり言いだしたことが始まりだった。勇儀姐さんは連れてくる前に、その友達は鬼で何度も一緒に戦った事があると言っていたのを今も覚えている。

 そして俺は、その時点である程度の予想がついていたんだが案の定、伊吹萃香だった。

 いやさ、多分萃香も居るんだろうなーとか思っていたよ……だけど本当に居るとやっぱり驚くよね。

 俺は萃香を見てやっぱりか、という顔をしていたみたいで、それが萃香の癇に障ったのか分からないが、戦うことになってしまった。

 

 俺は嫌だったんだが、勇儀姐さんや朧達が面白そうだな!と言い、あれよこれよと話が進んで逃げられない状況に……もう笑うしかないよねーと悟りながら俺は萃香と戦った。

 

 もうわかるかもしれないが、その時俺は俺はやらかした。

 俺は萃香と戦う少し前に、天魔・奴奈比売の大極である”無間黒縄地獄”を使えるようになったこともあり、テンションがグレンラガンしていたんだと思う。

 今の俺がもし、過去に戻れるならぶん殴って止めるぐらいに……

 それで何をしたかというと……開幕、大極を発動させて萃香を影の海の中に沈めてしまった。

 

 この大極の能力は、自身の影に触れた者を強制的に停止させること。

 そして影に接触した者は脳裏に禍々しき女の声が響き。狂えるほど愛しい男に手を伸ばすような、過ぎ去った刹那を悔やむかのような叫び声を聞かされ続ける事に……その叫び声は、対象の精神を破壊するというおまけ付き。何でそんな凶悪な技を使ったんだろうね? 俺にはいまだわからない。

 

 話を戻そう。その技ですぐに勝負は終わってしまい、それが悔しかったのか……ことあるごとに勝負を仕掛けられるようになった。最初は自分の家からここに来ていたが、めんどくさくなって萃香はここに住むようになったということだ。

 

 そして……俺が萃香を煽る訳だが、萃香に俺が大切にとっていた酒を飲まれたからだ。 

 その時の俺は十四歳だけど妖怪は十三歳から酒を飲んでいいことになっているので、問題ない。

 その酒は、酒の神が作った神酒で、手に入れるために、その神の試練を成功させなきゃいけなかった。その試練の為に三か月を消費してして、なんとか手に入れた酒を全部飲まれてしまったのだ。許せないよな? そんなこともあり、俺は萃香を煽るように……

 その関係は今も続いて、日常化しているといったそんな感じだ。

 

 さてと、今俺は何処にいるんだろう? 結構飛んでいるんだけど……という落ちてない? 

 俺はそう思い下を見てみると湖があった。 

 なんでー? そんなことを考える間に湖が目の前に。

 当然のように俺はドボンする。それも勢いがあったせいかかなり深くに。

 

 知ってるかい? 鬼も溺死するんだぜ、と父さんが言っていたことを思い出し、俺は慌ててもがきだす。誰だって溺死は嫌だからね。

 

 いくらもがいても、一向に上に上がる気配がない。あれ、普通にやばくない? そう思った直後、俺の肩を誰かが叩いて声を掛けてくる。

 

「ねぇあなた、なにやってる……なの」

 

 話しかけてきたのは翠の髪の少女で、俺を見て心底不思議そうにしている。わーおまたfateじゃないキャラだ。確かおまもりひまりの蛟である静水久(しずく)だっけ。 何でここに居るんだ……あ、それより息が限界だ。やばい……死ぬ。

 

「何でここにいる……なの」

 

「ちょ……助け……がぼぉ」

 

「馬鹿……なの? しょうがない……なの」

 

 静水久は俺の手を掴んで湖の外まで送ってくれた。本当に危なかった。あとすこしでも、静水久が遅れていたら俺は水死体に……恐ろしい。

 

「それで貴方はなんでここに居る……なの」

 

「空中旅行してたらその成り行きで?」

 

「まったく分からない……なの」

 

「大丈夫だ。俺も分からないから」

 

「貴方馬鹿……なの?」

 

「馬鹿じゃない阿保だ」

 

「どっちでもいい……なの」

 

「酷くないか?」

 

「初対面だしこんなもの……なの」

 

 なんだろうね初めて出会う感じのキャラだ。

 調子狂うな。

 

「で聞くんだけどさ、ここ……何処?」

 

「私の家……なの」

 

「えっとここから骸葬山に行く道知らないか?」

 

 俺の家というか俺が住む山の名前は骸葬山という名前だ。中二臭い名前だが結構気にっている。というか本当にどこまで来たんだよ。こんなところ初めて来るぞ。

 

「あそこは百鬼の本拠地……なの。最強の鬼である骸鬼が住んでる山何の用……なの?」

 

「あそこに住んでるんだけどな、此処初めて来るんだ帰り道を知ってるか」

 

「知ってる……なの。教えてもいいけど見返りをよこせ……なの」

 

「了解した俺の秘蔵の酒がある。それでどうだ?」

 

「それはいらない……なの。削り氷をくれればいい……なの」

 

「それでいいなの屋敷にいい甘葛があるから丁度いいな」

 

「それは楽しみ……なの。早くいくぞ……なの。名前は?」

 

「俺のか? 俺は空亡だよろしくな」

 

「私は静水久よろしく……なの」

 

 




リクエストはまだ募集しています。よろしければ感想や評価、お気に入り登録お願いします。そして次回はあのキャラが……あの伝説の男が!

「どうやら(ワタクシ)の出番のようですねぇ、皆様方、私の宴をお見せしましょう」
書き方元の方が良いかな?

そして加糖さんにジェノさん誤字報告ありがとうございます。


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紅蜘蛛男

さぁ紅蜘蛛の登場だその日のうちに出すという。我慢できなかった。仕方ないね……ちょっと今回グロいよ……多分



「そう言えば空亡、貴方は何の妖怪……なの? 空亡からは妖怪と神の気配を感じる……なの」

 

「よく気付いたな静水久、これでもかなり気配を消してるはずなんだが……」

 

「私はこんな姿でも長生きしている……なの。その程度分かるに決まっている……なの」

 

 そういう物なのか、妖怪の姿ってなんかさm強い奴ほど幼女の姿をしている気がする……と考えてみたけどそれはないな。母さんとか朧とか成長した女の姿しているし、母さんは蛇神だけど。

 そうだ。蛟である静水久は俺と種族が似ているのかな? 蛟は蛇だし……そういえば、確か蛟は(マムシ)が五百年以上生きるとなる妖怪と聞く。

 ということは……静水久は五百歳以上ってことか? 絶対強いじゃん。萃香みたいに煽らないようにしよう……命の危機が危ない。

 なんか日本語崩壊した。

 それに蛟って事はまだまだ強くなるじゃん。蛟は千年で龍に更に五百年で角龍となり、そして更に千年を経て応龍となるといった化物妖怪だ。

 

「それで種族名としてはどういうの……なの。それになにか失礼なこと考えなかった?……なの」

 

 なんでだろうな? 初対面の筈なのに俺の心が読まれている……俺ってそんなに分かりやすいのか? あとジト目はやめろ。会って間もない妖怪にジト目されるのは若干つらい。

 

「勝手にだが鬼蛇って呼んでいる。語呂良いだろ?」

 

「初めて聞く……なの。確かに語呂がよくて覚えやすいね……なの」

 

 やった語呂が良いと言われた。結構気に入っているからねこれ。あの伝説のホモロリと同じぐらいで語呂が良い気がする。

 それでだけど、さっきから静水久を観察して気になることが……なんで静水久はずっと濡れているんだ? そのせいか体は幼女なのはに色っぽい気がする……

 

「静水久なんで濡れているんだ?」

 

「水の妖だから?……なの」

 

「でも雪女は凍ってないぞ雪の妖なのに」

 

「凍ってたら動けないよね……なの。やっぱり阿保……なの」

 

「阿保とはひどいぞ?」

 

「さっき自分で言ったのは空亡……なの」

 

 言ったけ? あ、言ってたわ。俺、どんどん阿保キャラになっている気がするんだけど……気のせいだと信じたい。

 

「そういえばそうだな……」

 

 ちょっと話を変えよう。なんか変な空気になってきた。話を変えないと、じゃなきゃどんどん自分で自爆してアホなところを見られまくるかもしれない。

 

 最近、雪花にまで「若はアホですねー」とか言われる始末。ははは、なんかどんどん虚しくなってきた。

 

 それに最近さ、他の妖怪にまでなめられているのか分からないが俺の部屋によく遊びに来るんだ……そのせいで俺のプライバシーが仕事していない気がする。 遊びに来るときは決まって俺の部屋。俺の立場ってどうなっているんだろう?

 

「空亡? さっきから暗い顔しているよ……なの。どうしたの?」

 

「いや……色々思い出してへこんでいるだけだ。気にしないでくれ余計に惨めになる」

 

「そうなんだ……よくわからないけど分かった……なの」

 

「………………」

 

 それでさ……さっきから気になっているんだけどね、ここを通るの何回目? もう十回以上この景色を見た気がするんだけど……。

 

「…………なぁ」

 

「…………なに……なの」

 

「…………迷ったのか?」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

 お互いが無言。無駄な時間が一分ほど過ぎる。風が吹き、鳥が鳴くそんな場所で俺達は無言で立ち尽くす。この時間はただただ無駄に過ぎていき、二分ほどたってから静水久が口を開いた。

 

「…………てへ?……なの」

 

 静水久はポーズを取ってそう言った。…………うん。

 

「あはは」

 

「ふふ」

 

「おい……どうするんだ?」

 

「感じろ……なの」

 

 なるほど……全く分からない。fgoに意味が分からない? 感じるんだ。みたいなセリフあった気がするけど。無理だよな。何を感じればいいか……それは全然わからない。

 

「まじでどうしよう……なの」

 

「考えはないのか?」

 

「まったくないぜ……なの」

 

「それは大変だな」

 

「そうだね!……なの」

 

 にっこりと笑って、そう言う静水久。今、静水久と居て一時間ぐらいたったんだが結構打ち解けた気がする。

 俺コミュ力あったんだ嬉しいな、前世は酷かった気がするから。

 でもおかしいなさっきから微量だが妖力を感じられる。多分、妖怪が住んでいるからだと思っていたが……明らかに技を使った時のように異質な気配を感じる。

 

「…………静水久……気付いているよな?」

 

「当然……なの。数は一人で妖怪、敵意あり……なの」

 

 すごいな……流石だ。敵の情報までわかるなんて。こういうことを出来る妖怪は周りに沢山いるが、それはどれも何百年も生きた者達だ。

 妖怪は長く生きる程そう言うのが分かるようになるのだろうか? 

 

 空気が張り詰める。

  

 いやにでも周りに集中してしまう。

 

 静水久と背中合わせになって、周りを警戒する。

 不意に、足音が聞こえた。ガサゴソとそんな音だ。

 相手は四足歩行か? 多分そうだろうな、この足音は歩くごとに三回から四回ほどの音がする。

 四速歩行の生き物はそんな感じの足音だったのを父さんに強制的に覚えさせられた。

 

「来るよ空亡……なの」

 

「了解した」

 

 すぐそこまで相手は来た。あと数秒もしないうちに俺達の前に姿を現すだろうな、俺はいつでも相手が来てもいいように、骨で刀を作り出す。もう来るな……

 そして現れたのは……狸だった。

 

「……狸?」

 

「そうだね……なんで狸……なの?」

 

 拍子抜けだ。警戒したのに狸なんて……損したな。

 それがいけなかった。今の刹那に張りつめていた空気と緊張感が自然と緩まってしまった。ならば―――敵がこの瞬間、この隙を見逃すはずの愚か者ではなく――――

 そして、一瞬のうちに俺の首と左腕に、何か丈夫なワイヤー? いや違う。細い縄のような物が巻き付いていた。

 

「――――空亡危ない!?」

 

 静水久は気付いたのか、そう声を荒げた。

 しかし、もう遅い。瞬時に俺の体は縄に縛り上げられて、木の方へ引き寄せられる。圧倒的な早業、気付いたのが遅れた俺は反応することなど出来ずに、俺は二度目の空中旅行を楽しむことになった。

 

「ガッ―――――痛ッ!」

 

 そのまま木に激突する。縛られたことに加えて、体勢は不安定だ。

 そんな状態では当然、受け身など、とれはしなくて後頭部と背中を同時に木に打ち付ける。

 かなりの速度ぶつかったせいで一瞬で意識が朦朧と煙り出す。

 

「くっ―――――かはっ―――――」

 

 痛みを味わう間にも、縄は活発に動き、俺を拘束するのを止める事はない。縄は生き物のように自在に動き、俺の体を締め付ける。激突したばかりの木に俺は、死刑を待つ罪人の様に磔にされた。

 

 その中でも左腕の拘束と首の拘束は、完全に獲物を逃がさないといったみたいに異常な執着を見せる蛇のようだ。

 呼吸が封じられる。意識が、所々途切れ始めていく。

 

「空亡! 今助け―――ッ」

 

 静水久がここに向かおうとした瞬間に、異臭が放たれる。

 とても嫌な臭いだ。生物が忌み嫌う死体の臭い。それも、ドロドロに溶かされてれて腐ったような……最悪な物。

 静水久の目の前には、半分白骨化して肉が腐った妖怪の死体が投げ込まれていた。

 人間より五感が鋭い妖怪は、当然より強く、この臭いを感じてしまう。

 離れた俺ですらも、鼻を覆いたくなるような酷い臭いだ。近くに居る静水久が感じる臭いは、これよりも何十倍も酷い物だろう。

 

 ……こうしている間にも拘束はより強くなる。……だめだ。ここで気絶したら死ぬ。死ねば楽になるこの痛みだが。楽になってしまったら、静水久までこの縄の餌食になる。

 それは阻止しないといけない。だが……もう、意識が飛びそうだ。

 俺は飛びそうになるのを止めるために舌を噛み切った。

 

「ごっ、ふ―――」

 

 鬼の再生能力のおかげで、すぐに舌は治ったが……人間だったらこれは自殺になっていただろう。

 口の中が赤く染まる。自分の血で噎せ返る。首を括られて頭に血が回らずに……視界が消えていく。

 

「―――――」

 

 ついに声すら上げられなくなる。体は動かない。目も機能しない。情報を得るには、鼻や耳を頼らなければいけないのに……死体の異臭が邪魔をする。最後に頼るしかない聴覚を頼ると……真上から、笑い声が聞こえて来た。

 

「ヒヒ、ヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒ」

 

 それは、とても不気味で、気味が悪く、不快感を覚える。そんな笑い声だった。

 

 ぎゅり、ぎち、ぎり、ぎゃ、ぎり……

 

 笑い声のほかに、不吉な音を俺の耳を拾う。

 香る臭いに鉄臭さが混じりだす。

 耳に届く音は、何かを縛り付けるような物。

 

 べちょり。

 

 そんな擬音と生暖かい感触を俺は感じる。

 俺の顔に降り注いだのは、無駄に生暖かくて鉄臭い液体のシャワー。とても規則正しい、心臓の痙攣みたいに淀みもないリズムで、それは俺に降り注ぐ……

 

 ぎゃぐり、ざく、ぎゅじゅ、ぶしゅーじゅぶ――――――びしゃ、どちゃ、べちゃり。

 

 擬音にするならこんな感じか? そうだ、だいたいこんな感じだろう。

 どんなに想像力が乏しい者でも、目の前で”何が起きているか”などという事は、嫌にでも想像できてしまうだろう。 

 

 そして、まだまだ拘束を強めてくる生き物のような縄が、肉に食い込み血が飛沫の様に流れ出す。もうわかるだろう? さっきから聞こえる、気持ちが悪く、不快な音は全て……

 

「私の奏でる音色は、お気に召しましたか? 名も知らぬ鬼よ」

 

 今、喋った男が俺の真上で……生き物を、輪切りにしている”音”という事だ―――

 




今更だけど静水久これでいいのかな? 結構前に見たやつだから分からない。
登場はした。セリフ一個だけだけど……なんか凄く強キャラっぽい気がするのデス。良ければ感想やお気に入り登録お願いします。あとリクエスト募集中です。ロート・シュピーネの直訳で赤蜘蛛にしたんですけど……これあってます?


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紅蜘蛛と鬼蛇~慢心駄目絶対bv空亡

 久しぶりだなぁこの感覚、三本目だぁ。
 やっぱシュピーネさんは凄いやどんどん書ける。そして今回主人公マジでキャラ崩壊。イキりまくった。


 

 真上から這うような音が聞こえる。その音を放つ主は、別の木に移動したようだ。

 未だ舌が痛む。それはそうだ、噛み切ったのだから……俺は縄に拘束されていて木に磔にされている。血が回らなくて視界が不安定だが、無理やりにでも息を集中させてm出来る限り眼球を動かす。もはや別の生物が暴れるほど動かし視界を何とか回復させようと試してみる。

 

 十秒ほどで、少し、本当にぼんやり程度だが見れるようになっていた。そして、俺の目に移り込んだ光景は、耐性がある俺だから見れるが、それはとても悲惨で残虐な物だった。もしも、まともな人間が見たとしたら、自分で失明させる程に。

 

 俺の目の前には、異形の蜘蛛が居た。顔は人間、体も人間だが……異常に発達した、蜘蛛の様な足に四本の紅い腕、肌の色も所々紅く、誰が見てもこいつは化け物だと思えるだろう。蜘蛛は木から木へ糸を張り巡らせて、此処一面全てを埋める程の巣を作っていた……何で気付かなかった? そう考えたが、こいつの能力だろうと答えを出して、すぐに思考を止める。

 そんな無駄なことを考えている暇があっるのなら、こいつの隙を見つけて抜け出す方法を探した出した方が良い。

 

 蜘蛛は俺を見て気味の悪い顔で嗤っている。現実味のない悪夢のような光景だが……屋敷にはいろんな姿をした妖怪も居るので、逆に落ち着いた。そのおかげか、なんのか分からないがこの息ができない状況に、少し適応したこれなら二分程度は死なないだろう……そう、呑気に考えている暇なんてないんだが。

 蜘蛛の巣には、こいつの餌となった妖怪達が縄に包まれ死んでいる。この光景をると、命なんてものは紙と同じくらいに軽い命に思えて来る。

 蜘蛛の巣にかかる姿は蝶みたいだ。

 

 そして俺は、一つの死体の顔を見てしまう。

 

 顔は半分がぐじゅぐじゅに腐敗して、残った部分は恐怖に歪み、涙を流したまま死んでいる。俺もこいつにやられたら仲間入りするだろう。

 しかし、ふざけるな―――この男は何をやっている? この妖怪達が何をしたんだ? 予想だが、何も知らずにここに迷い込んだんだろう。そしてこいつの餌になった。

 良い妖怪だったかもしれないのに、この妖怪達は殺されているんだ?

 

「殺――――」

 

 ”殺す”そう言おうとしたが。縄がさらに強く締まりだす。声が出せないので言霊は使えない。腕が拘束されているので骨は造りだせない。

 今すぐこいつを殺したい……だが、それが出来ないのが許せなくて、俺は、心の中で恨みを吐く自分の事を、何よりも先に殺したい。

 

「うーん、どうやら、私の人形はお気に召さないようですねぇ。残虐がうりの鬼にしては……どうやら随分と、まともな心をお持ちのようだ」

 

 煽るように俺に言う蜘蛛に、更なる殺意を覚える。今すぐに殺させろ。そう怒るが、縄は丈夫で、破る事が出来ない。

 

「さてと、こんな格好でいささか失礼ではありますが……改めて、私の自己紹介でも致しましょう。私は紅蜘蛛。この森は根城にする。所詮m快楽殺妖怪でございます。以後お見知りおきを、名も知らぬ鬼よ」

 

「糞が―――黙―――殺―――す」

 

 白々しく、無駄に丁寧な口調に……もはや俺の中には、殺意しか存在しなかった。脳が、本能が、”こいつを殺せ”と体を動かす。

 しかし、抜け出せるどころか、力を込めもがくたびに、俺の体に縄が食い込み、肉を抉る。

 

「無駄ですね、怒りに任せている。今のあなたではそれは切れない」

 

 その一言で、縄はより強く俺の体に圧力をかける。

 俺の怒りと殺意の感情に合わせるように、この縄の強度や動きはあがっていく。

 

 まさか……こいつの能力は…………

 

「よくわかりましたね。そう、それが私の能力! 赤蜘蛛の死縄。相手の感情に合わせてより硬く、より自在に動くという代物です。ついでに不可視にもなる。この縄で殺してきた弱者の数は、もはや数えるのを飽きました。試したことがありませんが……あの、狒々ですら、これに捕らえられたら最後、脱出できずに殺せる逸品だと……自負するぐらいですよ」

 

 あ? コイツイマナンテイッタ? 狒々をバカにした?

 

「そして、貴方も鬼でしょう? なら知っている筈ですあの鬼、骸鬼を……あの鬼のせいで妖怪という物が壊れてしまう!妖怪とは!誰にも縛られず、命令されず、自由に生を謳歌する!殺したいときに殺し、喰らいたいときに喰らい、犯したいときに犯し、奪いたいときは奪う……これこそが妖怪、欲に生きる者! なにが秩序だ! 何が仁義だ! 人間らしく、群れをつくるなど恥辱の極み! そんな物……くだらなすぎて御免被る!!」

 

 それどころか? 父さんの夢や歩んできた道、その全てをくだらないだと?

 

「だからこそ名も知らぬ鬼よ……私と手を組みませんか?」

 

 そう紅蜘蛛が言うと縄が少し緩む。そのおかげで空気を急に吸う事が出来て噎せ返ってしまう。

 

「手を組む? だと?」

 

 もう、なんだろうな……怒りがもはやわかない。こいつが哀れに見えてきた。あの鬼というたびに、此奴の顔には恐怖や様々な府の感情が浮かんでいた。

 余程、父さんが怖いのか……もうさ、答えなんて考えなくてもいいだろう? そんなの、一つしかないから……

 紅蜘蛛は俺ゆっくりと、舞台役者の様に近づいてきて…………

 

 

「良い案でしょう? 貴方にも不利益はないと思いますが? 一緒にあの鬼を殺して、妖怪の力を人間に知らしめてやろうではありませんか! 私が捕まえ貴方が殺す。それを分ければ十分でしょう? もう、私は嫌なんだ。あんな妖怪を超えた”何か”に怯えるしかないなんて……そんなことを考えるだけで狂いそうになる! 周りのぬらりひょんなどは怖くない、私の縄があれば! 貴方は見た限りかなりの力を持っている。その力を振るいたくありませんか? 私の手を取ってください、共に骸鬼達を制圧しましょう」

 

「なぁ紅蜘蛛?」

 

 その時の俺は……今までの妖生で、一番穏やかな顔をしていたそうだ。静水久が言うにはだけど、でもわかる気がする。俺はこいつを、憐れんでいたのだ。それは心から純粋に……こいつはな、自分より圧倒的上の存在を心から恐怖して、忌避し、弱者を狩ることでしか悦に浸れない臆病者。こんなのさ、憐れむしかないだろう?

 

「ん? 何ですか?」

 

「おまえさ、つまんないな」

 

「―――――――――」

 

 まぁ、ここまで俺がやられたのも慢心したのが原因だ。それは俺の悪い癖、こいつのおかげでもう慢心しないよ。

 

糞雑魚蛞蝓(クソザコナメクジ)のカス蜘蛛が、気持ちの悪いことをべらべらと語るんじゃねぇよ。お前馬鹿だろ? 臆病な妖怪のくせにしゃしゃりでてるな」

 

 こいつは? 俺の目の前で力を見せれば? 俺が、大人しく従うとでも? 残虐さを見せて? 自分に従った方が良いと思わせたかっと? あはははははは! 本当に……ふざけたやつだな?

 ああぁくそが、ちくしょうマジで笑わせてくれるなこいつ……

 なんかクソイキっている俺だけど。今だけはこのテンションでやらせてくれ。

 

「おいおい? ほら早く俺を殺してみろよ? え? できないのー? 紅蜘蛛さん? ウけるんだけど……それとさ、さっきからな、顔が近いんだよ糞雑魚がぁ!」

 

 拘束が緩んで、足がある程度動かせるようなった途端に、俺は紅蜘蛛の腹に、蹴りを思いっきり叩き込んだ。凄くスカッとした。

 

「づォッ――――ガァ――――」

 

 凄く簡単い紅蜘蛛はボールの様に吹っ飛んで行く。この程度の俺の蹴りなんて、狒々に放っても逆に骨が折れるだけだ。それに比べて……何だこれ? 

 

「……やっぱり、雑魚じゃないか、紅蜘蛛?」

 

 軽口叩いて、挑発して、ただただ煽りまくる。なんか思いつく限り言葉にしようストレス発散だ。

 そして俺は徐々に切れて来た。こんな奴になめきられて? 父さん達をバカにされたことと……なによりこんな奴に慢心して捕まった事――――

 

「この! 鬼がァッ」

 

 その瞬間、緩くだが、俺のことを拘束していた縄が一気に動き出す。それは俺を確実に輪切りにするように……

 

 言霊なんて使わない。骸童子の能力なんて使わない。ただ使うのは。勇儀姐さんから教わったステゴロのみ……

 おらぁ! 野郎マジブッコス!

 少し距離を取り相手を観察する……その必要ないな……殴って、抉って、捥いで、折って殺す。そうすれば死にぬだろ? コイツ。

 紅蜘蛛………そういえば……この紅蜘蛛とシュピーネさんは顔が同じだ……きっとシュピーネさんのfate版なんだなこいつは。戦闘の型も同じだし。そんな時だった。

 

「私を忘れるな……なの」

 

「なッ―――」

 

 完全に視覚外からの静水久の水の槍、それが紅蜘蛛の腹を抉る。そのまま紅蜘蛛は抉られた部分を押さて、苦悶の声を上げ始めた。

 

「――――ぐがぁァッ」 

 

 えー? えー? え? え? まじ?

 

 まぁいいか……

 

 俺は悶える紅蜘蛛の前に近づいて、にこりと笑い腹に腕を突き刺すした。紅蜘蛛は泡を吹き、白目をむいて全身から血を噴出し始めた。 

 どういう原理これ?

 

「あっくぅ――――ギャガアァァア!」

 

「『燃えろ』」

 

「まっ待ちなさい、私は貴方と――――」

 

「もういいんだ……」

 

 負けキャラの喚き声を聞くなんて、時間の無駄だ。この状態のまま、どんな醜態を晒したいのかしらないけど、そんなものを見たって、俺はまったく楽しくない。

 そう、だから殺す。違うな、これは慈悲だ。これ以上、シュピーネさんというかっこいいキャラを汚させない為に、さっさと退場させてあげよう。

 

「どうした貴方は私を殺す!?」

 

「逆に聞くぞ? 虫を殺すのに情がいるか?」

 

「――――――」

 

 恐怖と驚愕と怒りが混ざった。紅蜘蛛の表情を見下ろしつつ、俺は腕を一気に引き抜いた。その瞬間に紅蜘蛛の体の中身がぶちまけられる。

 あばよ、紅蜘蛛……シュピーネさんと仲良くやるんだぜ……

 




今回もありがとうございました。あと4キャラほどリクエストを募集します。コノ話が面白かったら評価やお気に入り登録、感想お願いします。


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賢者と呼ばれる大妖怪

リクエストで来たある妖怪が出てきます……分かり切ってると思うけど……。


 腕には殺したばかりの、紅蜘蛛の臓物と、俺の髪の色と同じ朱殷の液体がこびりついている。

 周りに広がるのは、鉄臭さだけ。

 風の吹く音も、虫の鳴き声も、動物が動く音さえ……何も聞こえない。

 本当は音はあるのだろう。ただ俺が音が聞こえないと、そう錯覚しているだけだ。

 

 俺は自分の意志で、初めて妖怪を殺した。

 相手の命乞いを無視しながら、怒りに任せて痛い台詞を吐きまくり……。

 俺は、命を奪ったんだ……臓器を中から抉りだした感覚や、肉を燃やした感覚は、俺の中に残っている。まともな精神を持つ者なら罪悪感を感じるはずだ。

 

 ―――だけど、俺が感じるのは……途方もない既知感。

 デジャブと言った方が良いか?

 俺は前世も合わせて、殺したことは初めての経験の筈だ。なのに、前にもこんなことがあった、そんなことを感じてしまう。こんな残虐なことを前世では普通だった俺が出来るわけがない。何より、こんな力は俺にはなかった。

 

 ――――――その時だった。

 俺の頭の中に、全く覚えのない映像が浮かぶ。

 欠損が全くない者達の死体の山。

 死体達の顔は、本当に死んでいるのか? そんなことを考える程に、穏やかで満ちているものだった。

 その死体の周りを、雪白と漆黒の二色の蝶が鮮やかに舞っている。

 死体が無数に並ぶ悍ましく、とても異常な光景。その場所には生が無く、死のみが全てを支配している。この場に居る蝶は死んだ者達の魂が形になったようで――――。

 

「空亡!」

 

「……どうした静水久?」

 

「話しかけても反応がなかった、大丈夫?……なの」

 

 静水久の声で意識が戻る……どうやら俺はぼけっとしていたらしい。

 周りを見渡してみると、いつの間にか辺りを夜の闇が支配していた。その闇を青白い月光が、切り裂くように照らしている。

 俺は、自分が殺した紅蜘蛛の死体に目を向ける。

 体に穴が開き、脇腹を抉られて、体中が焼け焦げた紅蜘蛛。その顔は恐怖に歪み恐怖を持っている。死ぬ瞬間、どんなことを思ったか俺には分からないが……。

 

「あぁ、大丈夫だ。それよりどうしたんだ?」

 

「道を見つけたこれで私を方向音痴とは言わせない……なの」

 

「一回も言ってないんだが……まぁいいか。というかその道で会ってるのか?」

 

「私の勘を信じろ……なの」

 

 それは、信じていいのだろうか?

 俺は不安でたまらなかった。今までの経験から分かるんだが、勘というのは当てにならない。幾度となく自分の勘を信じて行動したことがあるんだが……その結果が良かったことは片手で数える程しかない。

 

「むぅ、その顔は信じてないみたい……なの」 

 

「いや信じてるぞ?」

 

「疑問形で言っている時点で、信じる気が全く感じられないの」

 

「それは気のせいだ……気のせいだ……気のせいだぞ?」

 

「もういいの。空亡が私の事を馬鹿にして居る事は、十分に分かった……なの。でもいいのこれでも私は大人、このぐらいでキレる筈がない……なの」

 

 そう静水久は言っているが……その手に水を集めながら言っても説得力がない気がする……。やっぱりロリキャラはキレやすいのか――――。

 

 ひゅん。

 そんな音が、俺の耳の近くを通り過ぎた。

 その音がした方を、俺は見ると……見た瞬間に木が崩れ落ちた。

 おかしいな、木ってそんな簡単に切れないと思うんだけど……あれ? それって俺の勘違い? 

 

「空亡? 今私を馬鹿にしたよね……なの」

 

「そんなことはないからな……ただ萃香より小さいなとか思って――――あ」

 

「その萃香という奴はわからないけど……私をここまで馬鹿にしたやつは、初めて……なの。話は変わるけど最近、噂になっていた紅蜘蛛がここまで弱かったのは驚き……なの」

 

「こいつ有名だったのか?」

 

「最近、ここらへんで妖怪が消えているという相談が私に来てたの。だけど尻尾がつかめなくて……なの。それで二人組の妖怪が主に狙われているという。情報だけが手に入った……なの。でも中途半端な実力を持つ妖怪じゃ負けるかもしれなかったから、空亡を餌に使わせてもらった……なの」

 

「……おい……それ先に言えよ。言ってくれたら普通に手伝ったのに」

 

「空亡……怒らないの? 私は貴方を餌に使った。普通なら怒る……なの」

 

「だって俺は死ななかったしな、怒る理由が無いだろ? それに、いま倒さなかったらもっと被害が増えてきてたかもしれないだろ?」

 

「空亡……あなたは馬鹿……なの」

 

「だから言ってるだろう? 俺は阿保だ」

 

「空亡は阿保で馬鹿……なの」

 

「……馬鹿は余計だ……そういえば静水久、どうやって父さん達の所へ帰ればいい?」

 

「それなら、いい妖怪がいる……なの。私だけなら一瞬で移動できるけど空亡は無理……なの。私一人で。ちょっと呼んでくるの」

 

 そう言った瞬間に、静水久の姿が水へと変わり、一分ほど経ってから元の姿に戻った。

 

「すぐ来る……なの」

 

 もう呼んだのか? 早くない?

 

「誰がだ?」

 

 そう聞いたが、今呼びに行った妖怪の事だろう。どんな妖怪何だろうな? 待てよ、静水久の力だと自分が以外は移動させる事が出来ないんだよな……なら、その妖怪は自分で移動する力を持っているか、近い所に居るという事だろう。

 

 前者だと確実に強い妖怪だし、後者だとただの馬鹿だ。そんなことを考えながら三十秒待つと、空間が開いた。比喩ではなくぱっくりと黒い穴が空間に開き、その中には恐怖を煽る様な無数の目玉が。

 

 そして穴から……西洋傘を持った金髪蒼目の女性が現れた。

 その女性を俺は知っている。

 本来は、東方の世界に住むはずの大妖怪。

 本来操る事も見る事すらできない、境界を操る事が出来る、朧と同じ一匹しか存在しない伝説の妖。

 

「静水久? いきなり私を呼び出して何よ? 私……まだ眠いんだけど――――骸鬼?」

 

 八雲紫そのものだった。

 




短編と、異種族が共存する学園の鬼というオリジナル作品を書いてみたので。良ければ読んでみてください。それとリクエストあと二体ほど募集します。だけど……一つ条件が、まだ一回もリクエスト送ってない人限定です。


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女怖いby空亡

「あなた……骸鬼の気配を感じるけど、何者かしら?」

 

 拝啓、父さん母さんついでに絢。

 空亡さんは今、東方のやべーやつ筆頭に尋常じゃないほどの妖力を浴びせられています。

 空亡さんは……何か悪い事をしましたか?

 絢のおやつを食べたことですか? 雪花を落とし穴に居れた事ですか? 朧の酒を呑んだ事ですか? それとも……。

 俺は今までやった罪をひたすら思い出していた。

 だって、この妖怪怖いんだ。

 何でこんな冷たい目で見るんディスか? そんな目で見られて、興奮する空亡さんではありませんからね、無駄ですよ……無駄だからな?

 ですので、本当にその目はやめてください。マジこわです。

 

「ねぇ、早く答えてくれないかしら?」

 

「あの……その……ちょっと」

 

 空亡さん現在進行形で、しどろもどろになっていまする。

 これどうすればいいですか? 静水久さん? 貴方が連れて来たんですよこのやばい妖怪を? 何とかしてくれませんか? 空亡さんにはこの妖怪、手が余ってしまいますです。

 口調とかいろいろ崩壊するレベルで、本当に怖い。

 

「なにかしら? 早く答えてちょうだい?」

 

「息子です……」

 

「息子? そういえばその気配半分夜刀……嘘はないみたいね……一先ず信じるわ」

 

 どうやら生き残れるようです……やりました。母さんありがとう。貴方のおかげで空亡は生き残れます。それより何で紫様が此処に居るの? 絶対おかしいって、パワーバランス考えろよ……などと。そんな現実逃避紛いの事をしている俺氏。

 そもそも、何で紫様は父さん達の事を知っているの? 俺はこの世界に十六年住んでいて一回もあった事ないよ? どういう関係? 

 俺の中に紫様に対する疑問が溢れ続ける。

 ――――もう分からない、それが結論だった。だって分からないものは分らないんだから。

 月光に照らされる森の中、鳥や夜の虫が鳴いている。そんな中にいる俺はどうすればいいのかを考え続け居ていた。

 とういか、静水久が連れて来たのだから何とかしてくれない? この言葉も何度目だろうか? 

 

「紫そろそろ、そこらへんにするの。空亡が怖がってる……なの」

 

「ごめんなさいね……それで静水久、何で私を呼んだのかしら?」

 

「空亡が骸鬼達の屋敷に帰れなくて送ってくれ……なの」

 

「…………それを口実に骸鬼と会えるわね、よし連れってあげるわ。空亡でいいのよね」

 

「あ、はい空亡です。ミジンコと呼んでください」

 

「何いってるの? 連れてってあげるからこれに入りなさい」

 

 そう言って紫様は代名詞でもあるスキマを出現させた。

 

「これ……安全なのか?」

 

「なによ、安全に決まってるじゃない。私に間違いはないわ」

 

 何だろうかこの駄目妖怪感……朧と同じ気配を感じる。 もしやあまり怖くないのでは? 俺はそう思って安心した。紫様は能力がやばすぎるから偏見を持っていたのかもしれない。それを無くせば普通にいい妖怪なのかもな。

 俺はそう思いスキマに入った。

 

 ――――次の瞬間、俺は空中に居た。

 

「どういうことだよこれ!? 待って空中!? 何で!?」

 

 この体験……何度目だよ!?  

 真下には母さんが居た。庭の手入れをしている様で俺には気付いていないらしい。そして俺の真上には紫様が居て何かを喋っている。

 

「ごめんなさい。スキマ出す場所間違えてわ」

 

「間違えないって言ったよな!?」

 

「謝るわ頑張って生きてね」

 

 それは無責任すぎる気がするんだ。

 

「あれ? あ、お帰り空亡。何で空に居るの?」

 

「母さん助けてくれ」

 

「分かった。『止まれ』」

 

 母さんの言霊で俺は空中に停止させられた。助かったんだけど動く事が出来なくなった……これは助かったという事が出来るのだろうか?

 紫様が地面に降りて来た。そして母さんに挨拶を始めた……俺を空中に放置したまま。

 

「久しぶりね夜刀。相変わらず無茶苦茶ね」

 

「久しぶりだっけ紫?」

 

「そうよ貴方が夜刀と結婚してから私たち会ってないわよね」

 

「そうだったね。何で会いに来なかったの?」

 

 母さん何となくだけどそれは地雷な気がするんだ。その証拠に紫様から妖力が溢れている。

 

「ねぇ夜刀? 久しぶりに戦わないかしら?」

 

「なんで……分からないけどいいよ」

 

「ちょっと結界を張るわね『四重大結界』」

 

 俺が空中に停止させられている状態のまま、話が進み母さん達が戦うことになってしまった。いい加減、地面が恋しくなってきた。それよりこの結界をたった一言で作り出す紫様はさすがである。

 

「手始めに結界『夢と現の呪い』」

 

 紫様は空を飛びその技を使った。空中から妖力で出来た弾幕が放たれる。

 その弾幕は広がっては水に出来る波紋のように増えていき、母さんに狙いを定めては一斉に収縮する。それは母さんの周りを全て囲っており、母さんは逃げ場を失っていた。

 

「多いね……関係ないけど。『静止』『収縮』『形成:槍』『穿て』」

 

 母さんは四つの言霊を一斉に使う。

 紫様の弾幕が母さんの言霊に合わせて止まった。その後に全てが一箇所に集まって、形を作り始める。

 それは一本の槍だった。

 弾幕で出来た巨大な槍、近い物だとレミリア・スカーレットの『スピア・ザ・グングニル』だろうか? 七色に光る槍が最後の一言である『穿て』その言葉に従うように紫様の元へ飛翔する。

 

 

「まぁ予想はしてたけど……やっぱり効かないわよね。でも私の技を返すなんて……挑発しているつもりかしら?」

 

 紫様はスキマを出現させてその槍を飲み込まさせた。

 槍はどこかへ消えだろう。スキマの先は紫様しか知らないから。

 

「次は私からだよ」

 

 母さんはそう言って、武骨な大剣を取り出した。

 




次回へ続く。ジェノさん。誤字報告ありがとうございました。コノ話がよかったら感想やお気に入り登録お願いします。


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夜刀神

今回酷いかもしれない。


「次は私からだよ」

 

 その一言共に母さんは武骨な大剣を取り出した。

 ”それ”はよく見ると細部全てが蛇で出来ていた。悍ましい程の蛇の群れが大剣を覆い尽くしている。その蛇は動き続けては、這いずり回り脈動している。 

 しかし俺は気持ち悪いとは思う事はない……何故か安心するのだ。

 

「夜刀? それはやり過ぎじゃないかしら?」

 

「ゆかりもさっきの少し本気入ってた……ならそれにこたえるのが礼儀……蛇符『夜刀神(やつのかみ)の祟り』」

 

 母さんの大剣に纏わりついている蛇の一部が黒く染まる。その中から、瘴気のようなものが溢れ出す。

 その瘴気は周りの草木を枯らし腐らせていく。その瘴気に当たった物が全てが呪いを帯びて変質する。その瘴気は紫様の元へと向かい。覆いだした。

 十秒ほどで紫様はその中から抜け出す事が出来たが……口から夥しい程の血を吐き出し腕が一部腐敗を始めている。

 夜刀神とは、この世の厄災と祟りを言霊を使い操る蛇神だ。その姿を見ると一族全てを滅ぼすとまで言われている。今の技はその祟りを好きに込める事が出来るもので……今は内臓を破壊する祟りと腐敗の祟りを込めたのだろう。普通だったら、もう死んでいる筈だが……これは、流石紫様という事だろう。

 

「貴方私を殺すつもりかしら?」

 

「何いってるの? この程度で死んだら貴方は紫じゃないよ? 私と骸鬼と張り合える数少ない妖……もっと遊ぼうよ?」

 

「本当に貴方戦いになると変わるわよね? 戦闘狂なのは変わってないらしいのね……私も寝ててばかりじゃ、やっぱり体が鈍るわ、この程度の呪いにも抵抗できないなんて……目が覚めたわ。続けましょう?」

 

 

「うん! 鬼纏『夜刀転身』」

 

 大剣に纏わり付く蛇たちが母さんを包んでいく。母さんの体に蛇の鱗が現れ始めその角はより鋭利に鋭く刀のように尾が生え始めた。それだけではない背中から蛇の頭が二つ生えたのだ。

 何だこの姿……始めて見る。そもそも今更だけど、母さんが戦う姿を見るのも今回が初めてだ。これが本気なのか? 明らかに気配が変わった。

 

「……その姿、懐かしいわね。でも本気は出さないみたいね……何故かしら?」

 

「久しぶりだからね。それに疲れるから。じゃあ行くね?『火』『水』」

 

 母さんがそう言った。右側にある蛇の顔も口を開く。母さんが火と言い蛇が水と言った。その言葉に合わせるように母さんの両腕が変わる。左は水に右は炎に。

 

「『混ざり合え』」

 

 母さんが両腕を合わせると小さい球が出来た。それは本当に小さくて風にでも吹かれたら一瞬で消えそうなのに。異常な気配を放っていた。俺の鬼の血が騒ぐ、あれは妖怪が受けてはいけないと。あれは今の俺では、直撃でもしたら滅される。

 

「『二行混合水火転球』」

 

 そして、それ放たれる。結界を削りながら紫様の元に接近する。しかし紫様はそれを冷静に見てから一言。

 

「『五行の境界』解け(ほどけ)

 

 母さんが放った球はその解けの一言でただの水と炎になり掻き消けされた。

 

「むぅ、せっかく混ぜたのにー。紫、新しい技?」

 

「前これを喰らった時は体半分消滅させられたからね、この技の対策くらいつくっておくわよ……予想どうり使ってくれて助かったわ」

 

「ならもう一発?」

 

「それはやめてくれないかしら? これ結構疲れるから」

 

「えーケチ」

 

「ケチじゃない」

 

「ねぇ紫」

 

「なに夜刀?」

 

「お腹すいた。紫もご飯食べる? 作るよ?」

 

「…………はぁいいわよ私も疲れたし」

 

「なに食べるー?」

 

「うどんでお願いするわ」

 

 二人は急に勝負を止めて、屋敷の中に入って行った……俺を放置して……え? 放置なの? まず何で紫様は勝負始めたの? ちょっとよくわからない。

 俺が空中に放置されていると。真下に父さんが歩いてきた。

 

「空亡? 何してるんだ? それになんか懐かしい気配を感じるんだが……紫か?」

 

「父さん降ろしてくれない? そろそろ地面を歩きたい」

 

「ちょっと待ってろ……てい」

 

 頭上に骨が現れて俺は下に叩き下ろされた。もっと別の方法は無かったのだろうか? 凄い地味にだが痛い。

 

「とういか空亡は何でここに居るんだ? 萃香達と出かけていたはずだろ?」

 

「萃香に吹き飛ばされてな」

 

「……また煽ったのか、空亡は萃香で遊んで楽しいのか?」

 

「楽しいぞ父さん」

 

「……強く生きてくれよ我が息子」

 

 どういう事だろうか? なぜ今そんなことを言うんだろう?

 

「空亡? 何でここに居るのかなぁ? 一日ずっと探してたんだけど!?」

 

「あぁ萃香一日ぶりだな……何してたんだ?」

 

「言ったよね空亡、耳ないの? それとも頭が空っぽなの? まぁいいや。この匂いは夜刀のうどん? それに免じて許してあげる」

 

 許されてた。なんかよくわからない間に許された。それより絢が勇儀姐さんに担がれているの凄く可愛いだけど。

 

「空亡あれいい跳びっぷりだったな! それと萃香はめっちゃお前の事を探していたぞ? こういってるけど……」

 

「ちょっと勇儀! それは言わない約束でしょ!」

 

「はははは悪い悪い、許せって」

 

「絶対許さない。あとで裏山行くよ」

 

「おっいいぞ! 殴り合おうぜ萃香」

 

 どういうことだってばよ……。

 

「しょらなきー吾としょうぶだー?」

 

 茨木は寝言でそう言っている。可愛い。

 

「削り氷を所望する……なの」

 

「静水久はずっと、どこにいたんだよ?」

 

「友達の家……なの」

 

「マイペース過ぎないか?」

 

「どういう意味……なの?」

 

 そうか英語じゃ伝わらないのか……。

 

「何でもない。今から作るか削り氷、屋敷に入るぞ」

 

「了解なの」




次回から文字数戻します。3000~4000ぐらいに


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土蜘蛛襲来

誰が出るか予想しよう。そして今回は短め一日に出し過ぎた疲れタワシ状態です。何とか間に合いました。


 家の中に入ると中には混沌が広がっていた。

 待ってこれどういう状況? ちょっといきなりの事で頭が混乱の極みなんだけど……なにこれぇ?

 簡単に状況を説明しよう。父さんがぼろ雑巾のように倒れてる。さっきまで普通に元気だったはずなのに何でこんな状態に? ちょっと空亡さんのの腕は処理できませぬ……別の人に任せます。理解して……どうぞ。

 

 この状況を作ったのは母さん達だろう。だってその手に酒瓶持っているし。周りに何本も散らばっているし……飲み過ぎじゃない? この短時間で……。

 

「母さん? 紫様? 何があったんですか?」

 

「あー空亡だーのもーよおいしーよ?」

 

「ちょっと酒が足りないわよ? 持ってきなさい骸鬼の息子でしょう?」

 

 何この理不尽。屋敷に入ったら酒を持ってこいと言われた件について……。

 

「いまから俺は静水久に削り氷を作らないといけないから無理だ。父さんに頼んでくれ」

 

「分かったわよぉ。骸鬼起きなさい早く酒持って来てちょうだい」

 

「骸鬼ーおさけーじゃなきゃ骸鬼を飲むー」

 

「ちょっとまて!? 空亡! 父さんを助け―――――」

 

「強く生きろよ……父さん」

 

「無視して、早く行くの」

 

「分かった静水久……」

 

 俺達は台所まで移動する。あれを作るには、広くないといけないからな。

 しかし、この家には現在、氷の貯蔵はない。

 だが……俺には秘策がある。言霊だ。神の力をこんなことに使うなんて馬鹿じゃねーの? とか思うかもしれないけど……この力が便利すぎるのが、悪いと思うんだ。

 自然に起こる事なら基本出来るからね。氷なんて無限に作れる……あれ? 俺はこれで稼げるんじゃね? 作るのは一瞬だし。使うのは妖力だけだし……あ、やばい。久しぶりに良い案が浮かんだ。やっぱ空亡さんは天才だ。

 よしでは早速作り始めよう。

 

「『水』」

 

 美味しい削り氷の基本は美味しい水からだ。これは基本めっちゃ大事。だからこそ妖力百パーセント。言霊で出来た水が最適というわけですよ皆さん! 皆さんって誰だ?まぁいいか……。

 俺の言霊に合わせるように、用意した桶の中に凄まじい透明度を誇る水が現れた。その水はあまりの透明さ故に桶と一体化しているようにすら見える。

 

「空亡? 水は? 全く見えないの」

 

「安心しろ、ちゃんとあるから。次は『凍結』」

 

 その言霊をを使うと桶の中の水が、一瞬にして凍りだす。しかしその透明度は変わらず触らないと、そこにあるか分からない程だ。静水久は本当にあるか疑っていたみたいで、桶の中に手を入れた。

 

「冷たっ……なの。本当にあるとは驚き……なの。というか腕が少し凍った、冷たすぎる気がするの」

 

「……そんなに妖力を込めていない気がするんだけど……あ、込めたわ。すまん作り直す」

 

 そんな場所に一つの足音が響く。とてとてと、ゆっくりとした足音だ。

 誰だろうか? と考えてみたら、少しこの付近の空気が冷たくなったのを感じる事が出来たので、誰かはもうわかる。

 

「雪花? 何の用だ?」

 

「若が削り氷を作っている気配がしまして……だから来ました!」

 

「その気配を察せる能力はなんだなんだ? 初めて聞いたぞ?」

 

「だって若が作るやつ美味しんですよ! 雪女の私ですら少し冷たいと感じるんです。もう若に知られていると思いますが、私は冷たい物が大好きです。氷山を入れた風呂によく入りますし」

 

 すまない……初めて知った。結構お前とは一緒に過ごした時間長いけど……それは、今初めて知った……ばれないように何とか隠そう。

 ……拗ねそうだし。

 

「若ーこれ貰いますねー削ってきます!」

 

 そう言ってから雪花は嬉しそうには部屋に帰って行った。

 あの氷は削れるのだろうか? 俺はそれだけが心配だった……気を取り直して。俺は再度言霊を使う。さっきより妖力を込めずに作られた氷は少し脆かった。

 

「『カット』」

 

 ちょっとワラキアの夜を真似してみたり? イメージ込めればいいからね……割と喋る言葉は適当でいいのですよ。

 氷は空中に浮きどんどん削れていく。その姿はちょっと怖かった……というより気持ち悪かった。静水久も少し引いている。仕方ないと思うけど。だって……キモイもん。

 そのまま氷は宙で静止して木の器にとても綺麗に盛りつけられた。

 俺はそのまま棚に入っている甘葛を取り出して、削り氷にかける。甘い匂いが広がりその匂いが食欲をそそる。

 

「……貰っていいの? 凄くおいしそう……なの」

 

「あぁ約束だからな」

 

「感謝する……なの」

 

「おや? 美味しそうだねぇ。私にも分けてくれるかい?」

 

「誰!? 何者!?」

 

「私かい? 私は黒谷ヤマメだよ。黒谷蜘撲(くぼく)の一人娘さ。あんたが若様かい? 父様にあんたの事を聞いて遊びに来たんだ。そしたら甘味の気配がしてねぇ。分けてくりゃしないかい?」

 

 蜘撲とは父さんの百鬼夜行の幹部である土蜘蛛だ。見た目はぬらりひょんの孫のあの土蜘蛛なんだけど。娘がいるという話は聞いていたが、ヤマメとは驚いたな……東方キャラがこの世界に多くて、感覚が麻痺してきたけど……冷静に考えろ俺……似てなすぎないか!?

 

「蜘撲の娘? 似てないけど……なの」

 

「私は父様の娘さね。ほう、まさか二人共は父様の別の姿を見たことがない? これは失礼した。あの姿だけじゃわからないのも無理はない……まぁよろしく頼むよ若様?」

 

 なんか、今まで見た妖怪の中でかなり妖怪っぽい……。

 




ヤマメの口調は原作を意識してみましたこれでいいかな? 
あと空亡がこのすばの世界に行くという話を書いてみたので、読んでみてください。
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