Alice gear aigis〜Ravens rebirth〜 (Shukurea)
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運び屋を名乗るオッさんがアクトレスを取り纏めるそうです。

最近のアリスギアはストミでのフロム臭が強くなってきた。

ならば、鉄臭い世界の住人がいてもいいよな?




その日、成子坂製作所所属アクトレスは落胆した。

だが、後々を考えればこれが妥当だとも言えるのかもしれなかった。

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「はあ、俺も潮時かよ。ハハハ…」

荒れ果てた星、幾多もの争いで荒野だけが広がる星の上で1機の武装ヘリが墜落し、先程まで相棒だった人型の機械と共に燃えていた。

「ま、楽しかったぜ。相棒。今からそっち行くからさ、そっちでも好きなように生きようぜ。ハハハ。」

享楽的に生きてきたその男は死ぬ直前か、走馬燈のような光景を見て最後に思ったことがあった。それは、遥か昔にとある革命家たちが切り開こうとした外の世界だった。

「次は、この星の外に行きたいもんだなぁ…」

 

その瞬間、武装ヘリは燃料タンクからの爆発により跡形もなく消し飛んだ。

 

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AD:230X 中東シャード とある傭兵御用達の運送武装ヘリにて

 

 

「は?成子坂製作所から依頼だと?ラインアークさんよ。」

30代の男は電話を聞いて何の冗談だと言わんばかりに笑い飛ばす。

男がいるのは紛争の文化を残すシャード・中東シャードである。

そんな鉄と血の匂いがする世界の住人に、21世紀の文化を残すシャードから依頼が来るなんてめったに無いからである。

「どうやら、アクトレスを率いる隊長に当たる人物を採用したいらしくて。貴方にその話をしてくれって言われたんですよ。まあ、貴方がそんな話には乗らないと思いますがね。」

ラインアークと呼ばれる電話の先にいる男は皮肉まじりに用件を伝える。彼も簡単に話には乗らないと分かりきっているようだ。

「ですが、一つ興味深い噂を聞きましてね…アクトレスの傭兵なる存在が東京シャードに居るそうですよ。それも2名ほど。貴方、最近協力したんですよね?ならば、彼女らのようなアクトレスが『◾️◾️◾️』になり得るとしたら。どうですか?」

「…面白いじゃねぇか。成子坂のアクトレスが◾️◾️◾️になり得るってか。ハハハ。まあ、最近の運送屋も暇になったんだ。その話、乗らせて貰えるか?」

運送屋の男はラインアークが予想もしなかった依頼の承諾を発言した。予想もしなかった為か、ラインアークは驚きつつ

「意外ですね。貴方がこの手の話に便乗するとは…分かりました。詳細事項は折り返しのメールに添付します。そちらを確認の上で、後日に予定日を連絡しますので…頼みますよ。」

「ハハハ、まあいつも通り頼むぜ。っても血と鉄のこの世界じゃないがな!」

 

————————

 

所戻って、成子坂製作所。

ここに所属する比良坂夜露、兼志谷シタラ、百科文嘉は新しく着任した隊長にそれぞれ異なる反応を示していたが、何よりも30代のナイスミドルだ。普通なら10代後半から20代を採用すると考えていた彼女らの予想を裏切る事にもなった。

「…ん?どうした、そんな口を開けてさ。あ、開いた口が塞がらないってか?それとも伝達ミスをラインアークがやらかしたか?ハハハ。」

30代近いナイスミドルな男は享楽的な笑いを浮かべて不思議がる。

「まあ、自己紹介はしないとなぁ。アンタらの依頼で着任したファットマンだ。呼び方は好きにしてくれや。これからよろしくな、ロクデナシ共!」

「まさか、こんなナイスミドルに依頼するなんて…ラインアークが信頼できなくなりそう…」

「えー、もっと元気のある若い人だと思ったんだけどなー。」

「どういうことっすか⁉︎年齢とかを考えて同年代の人って依頼したと聞いたんですけど?」

各々が疑問と落胆を挙げる。だが、年齢差があることを言われた為か

「おいおい、まだ俺30代だぞ?それに戦場の経験則も学んでないガキ雇っても的確に判断なんて出来ないだろ?だから暇そうにしてる傭兵兼運送屋の俺が選ばれたってハナシさ。」

享楽的な声でありながら戦場の冷酷さを交えた話を聞いて、三人は納得しつつも緊張した顔をする。

「あー、そんな強張った顔すると美人顔が台無しだぜ?まあ、すきにやろうや。ハハハ。」

 

———————

 

同時刻 所在地不明

 

暗い部屋にて2人の人間が報告を受けていた。

「◾️◾️、件の傭兵が成子坂の依頼を受けて着任したとのことです。」

「ありがとね◾️◾️◾️◾️◾️♪。アレが『彼』と共に戦場を駆け抜けた運び屋《ストーカー》ねぇ…。中々面白そうじゃない?彼が新たな◾️◾️◾️を見いだせるか、楽しみだぜ。ギャハハハハハ!ハーハハハハ!!!!」

 

物語は、鉄と血の匂いがする世界の住人を受け入れたことで狂い始める。

鉄と血の匂いがする、全てを黒く焼き尽くす◾️◾️◾️の伝承すら持ち込んで。

そのイレギュラーな、規格外な流れになった物語の行く末は誰も予期や予想すらも出来なくなった。

では、開演の時間だ。これは、◾️◾️◾️を巡る鉄と血を交えた物語。

そして、舞台装置をぶっ壊す彼女たちの話だ。

 

Alice gear aigis〜Ravens rebirth〜

新たな◾️◾️◾️は、世界を自由に歩く力があるか。

この戦場はその解答を示す。

 




人物紹介
「ファットマン」
正式名:リチャード・グリーンベレー
年齢:31歳
性別:男
性格:基本享楽的
概要

成子坂製作所からの依頼で隊長として着任したナイスミドル。
基本的に享楽的に物事を見るが、頭の中では傭兵としての思考を有するので指示などは正確かつ冷静である。
バージニア・グリーンベレー(以下ジニー)と同じくグリーンベレーの一族に位置するが、「俺にそんな仕事は似合わない」と言って20歳の時に出奔。
以後、中東シャードで傭兵として仕事をするようになり、ラインアークという「来るもの拒まず」の反SINの輸送会社に武装ヘリによる運送屋を勧められてラインアークと同盟を結ぶ運送屋になった。
グリーンベレーという名前がある為か、ジニーからは少し距離を取られているがリチャード本人は好きなように生きて欲しいと思うのは山々とのこと。
また、誰にも語れない「荒れ果てた星」を知ってる…らしい。

ラインアークの連絡係
正式名:スティーブン・イェルネフェルト
年齢:42歳
性別:男
性格:紳士的だが、どこか抜けてる
概要

反SINを掲げる輸送会社「ラインアーク」の連絡係にして、オペレーター。
ラインアーク自体の創立時期から仕えているオリジナルメンバーであり、様々なノウハウを知り尽くしている有能社員ではあるが、何処かしら小さなうっかりをしてしまうことがある。
当人曰く、ラインアークが反SINを掲げたのは元々ラインアークのスローガンである「来るもの拒まず」が幸いして社内にてSINの信者が反乱を起こしたことがあり、信者を追放してから反SINを掲げるようになった。同時期にリチャードとも同盟を結び、互いに協力している。
尚、追放した信者について「どこかで既視感がある危険な目つきの奴らだった」と本人は語ってる。
また、彼が専属しているラインアークの契約傭兵・ホワイトグリントについてもどこか心配そうに気をかけている面が最近見られるのだとな無いとか…。


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ムラクモって存在はいつの時代もロクデナシばかり

今回はちょい短めです。

尚、これより原作という舞台装置をぶっ壊しますのでご了承ください。

長らくお待たせ致しました。継続して書くのは案外難産ですねぇ…


「俺〜は、ファットマン〜、戦場の運び屋〜。俺〜はファットマン〜。いつも運び屋〜。バンバ〜ンハバ〜ン…」

成子坂に着任したファットマンは何の曲か分からない鼻歌をしながら社内を案内してもらい、ある程度の施設を見てから事務室に着く。

「ほう。まぁ、ありふれた感じで一般的だな。あ、自己紹介は好きにしていいぞ。ラインアークが持ってきた資料でプロフィールは把握してるもんでな。えーと…比良坂さん、兼志谷さんと百科(ももしな)さんか。改めてよろしくな!」

ファットマンは享楽的な表情で話す。

「「「よろしくお願いします。」」」

3人は揃った挨拶する。先程の傭兵の考えが響いてるようにその声色から恐怖が抜けきってないようだ。

(あちゃー、これは下手なこと喋ったかなぁ…俺、昔から女心ってのが理解しにくいしな…ううむ。)

と、この空気を遮るようにファットマンの端末に電話が入る。(因みに着信音はdirty worker)

「ラインアークから?もしもし、依頼開始早々にどうした?…は?テレビだと?アクトレスニュースを見ろって?」

端末片手にテレビを点ける。そのニュースによると成子坂を叢雲工業が買収する準備をしている発表だった。

叢雲工業はアクトレス業界最大手とも言える大企業だ。そんな企業が成子坂を買収することは、ラインアークを経由して成子坂の依頼を受けているファットマンからしたら依頼契約と報酬が無に帰り兼ない事態であった。

「は?マジかよ⁉︎これじゃあ金も全部パーだぜ!マジにならないとちょっとマズイかもなぁ…」

「「「ええええええ⁉︎」」」

『すまない。この情報は電撃的に発表されてな…予め伝えるのは難しかった。だから一つだけ言うぞ。敵さんは大企業だ。あらゆる面から気をつけろ!こちらから新しく情報が入手できたらまた連絡する。頼むぞ、ファットマン!』

ラインアークがそう言うと通話が切れた。

「買収されて叢雲工業って事は…いきなり有名企業のアクトレス!現代のシンデレラだね!」

シタラが気楽そうに言う。

「バカ言うなよ!買収されたら俺も報酬受け取れないし、お前ら皆リストラだ!…だが、内情がラインアークでも掴めてないからなぁ。百科さん。この会社にそこら辺に通じた情報屋みたいなヤツは居ないのか?ラインアークが中身を捉え切れてない以上、そういう人間がいると助かるんだが。」

「一応、整備班の磐田さんなら分かるかもしれないから聴きに行きますか?」

「勿論だ。1ミリでも中身が掴めるならどんな手段でも使うさ。」

——————————

 

所変わって成子坂地下の整備室。

そこにファットマン一行が押しかけて整備班の磐田に事情を説明する。一応、アリスギアを扱うため、アクトレス3人組はアクトレススーツに着替えていた。

「…んで、俺んトコに来たってワケか。俺も寝耳に水でな、内情はよく分からないンだよ。無駄足踏ませてすまないが、そういうこった。」

「そうか…初日から押しかけて失礼かけちまったな。」

「ただ、正直言うと金銭的にこの会社が危ないからってのはあるのかもしれん。」

「…あー、成る程な。つまり、金銭的にヤバいから救済しつつ取り込むのがヤツらの狙いって考えられる…と。」

ファットマンは磐田の発言から簡略的だが把握する。

と、ここでファットマンの頭に引っかかってワードがあった。

「待て、今金銭的にヤバいって言ったか?具体的にはどのくらい赤字溜まってんだ?」

「「•••••••••••••••」」

「え?言いたくないくらい溜まってんのか?そうか••••」

そう言うとファットマンはため息をつきつつも

「んで、やるのか?借金返し代わりのヴァイス掃除をさ。俺はまあ…俺の生活費掛かってるし、やるべきとは考えるが。」

これがファットマンの生き方を表す言葉であるが、勘違いを招きやすいのも然りである。これに百科はちょっとだけ憤りを感じた。

「ファットマン、貴方は他人に考えを委ねているのかしら?」

「ハハハ、まあ言い方が悪かったな。俺の生き方ってのは『好きにように生きて、好きなように死ぬ。誰の為でもなく。』つまるところ、俺はお前らの生き方や考え方に異は唱えない。それに異を唱えてイキッて救えなかったことがあるからさ…。だからさ、お前らも自分らが思うがままにやってみようじゃねぇか…ってさ。あの依頼やりたいとか、こうして私は何々をしたいとかさ。あ、ただし命に関わる話なら別だがな!ハハハ。」

ファットマンが言ったのは傭兵兼運び屋としての矜持だった。

他人に異を唱えず、他人をその人が思うがままに生きようとさせることが人生を楽しむルールであると信じるが故に。

「ファットマンさんの言い方は分かりにくいです。けど、何か大切なことだって思います。私は、ヴァイスを倒して人助けをしたいんです。だから、私は行きます。隊長。」

夜露がそういうことに応じて

「なら、決まりだな。んで、ちょっと気になったんだが…俺はそこで指揮を執るだけか?そこの椅子に座っているだけでか?」

「まあ、そういうことになりますね。初日から忙しいですが、よろしく頼みます。」

いつもの武装ヘリでない為か、ファットマンはちょっとだけ慣れないように見える苦笑いを浮かべながら司令室の席に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

——————-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、コンソールの端にメール受信通知があったがファットマンはこのヴァイス討伐ミッションが終わるまで気づかなかった。

その依頼主は叢雲工業の関係者を名乗る人物であり、後にあらゆる意味で重要な事象を引き起こすトラブルメーカーでもあった。

 

 

 

 

送信者:吊り下げ男

件名:そこにいる傭兵に依頼をしたい

本文

突然の依頼、失礼します。私は叢雲工業の関係者であるが、最近の叢雲工業はキナ臭いことをしている。どうも違法な研究をしてるらしく、更には壁外区域にて発生した大型種を放置しているらしい。

だが、一介の関係者には調べることは容易ではない。

そこで、傭兵のアンタとアクトレスらに壁外区域の調査を依頼をしたい。詳細な話は浅草エリアのBar「老神」にて行いたい。なるべくアンタ1人でな。勿論、私も1人で行く。

とは言え、一方的に依頼するのも人間性的に申し訳ないと思う。

そこで、ちょっとしたギアを試験的に提供したい。これは叢雲工業としてではなく、一個人としてだ。無論、金の代わりに戦闘時の稼働データを頂きますが。

アンタのいる成子坂も資金難だ。ギアも手に入るし、壁外区域の養殖がクロで大型種を倒せば基本報酬に上乗せされ、更にギア使ってくれたらデータも手に入って私とそちらでwin-winでしょう。

返答を待ってます。

 




オリジナルギア紹介
G-AL-LG5:カラサワ(量産だと星3重力属性)
有志で集まった技術屋集団であるチーム−G製の実弾型スナイパーキャノン。かつて存在したという伝説がある名銃・カラサワ…を模して製作されたもの。
模して製作された為か、伝説が出来た時代ほどではないがアリスギア業界でも随一の破壊力を有する。
尚、専用型も設計段階は終了しているらしく、その際はエネルギー型スナイパーキャノンになるそうだ。

次回は序盤ミッションで登場する大型ヴァイスミッションのお話になります。
題名:毒蛾の対処方法は手慣れている


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