異世界転生譚-1st. World Trigger (無狼)
しおりを挟む

零章-始まりと終わり

今から半年前。
新社会人だった私のように不安定で、
葦原先生の作品を初めて自分の手で物語を作りたいと思い、
表現の言い回しを真似たり、キャラや設定を面白おかしく作ったものです。

今となっては、回りくどく駄文かもしれません。
当時、背景設定を事細かく描写しようと、躍起になっていたこともあります。

第1章第9話より、原作の時間軸と重ねていく予定です。
作者の不安定な精神のように、
繰り返す主人公の「視点」をどうぞご観覧あれ。

2019.2.16 夜種王。
葦原先生、ありがとうございます。


【零章】/狂い嘲笑う千の無貌の神"メッセンジャー"

 

一つ、世界が生まれた。

宇宙を作り、小宇宙が現れては消え、生命が誕生して文明が興った。

 

万物の王にして盲目白痴の創造神は数多の呪詛を紡ぎ暴れ狂い、夢か現か知らぬまま内包する波動の奔流に押し込められてゆく。全てがAzathothの夢であり、真にして偽である。

かの神から溢れでる一部は彗星となり、意思を持たざる一つの存在体となり、その全てが宇宙であり一つの生命である。かつて二枚貝だった頃は創造主たる神性を持っていたがその面影も無く、ただ邪な狂神であるばかり。

 

斯くかの神に仕えるメッセンジャーがいる。

嘲り笑うかの者は主と同じく一定した姿を持たず、今は黒よりも溟い黒の肌を持った男がそこに立ち尽くしている。

阿鼻叫喚と言える喧騒慌ただしい音色が外から轟き異形の見るも恐ろしき踊り子たちが無様に舞い踊る、魔王の宮殿の中で彼-Nyarlathotep-は主を卑下する笑みを浮かべ高らかに笑いながら魔王に跪き一礼する。

 

存在する人類の誰よりも背が高く、誰よりも痩せ細った黒い男はただ1人一存在ではなく、彼もまた邪悪な神である。

千の無貌と呼ばれる神はそのいずれもが真の姿であり化身であり、一にして全であり、全にして一つである。それだけに留まらず全宇宙の全ての化身にそれぞれの意志が宿り、全世界に存在し、一瞬にして全ての意志と記憶を全ての化身が受け継ぐ。

 

謁見を終えた邪神は新たなる姿を映し出す。

八百万の御姿から新たに生まれたその化身は、新たな意志を表した。

 

この世界の全ての現実【物語】の終焉と創世を記す演題本を皺だらけな褐色の手袋で持ち、黒き血の滴る万年筆で刻み、常に靡き膨らむボロボロな茶色のローブに身を包むそれは【何も無い広がり】であった。

 

昏く輝く星々の光を内包するもはや人ですら無いその姿で声も無く嘲笑しながら、星々の風で靡くボロローブから溢れでる星の色が心なしか移り変わり、終末の予言書がひとりでに開き流れてゆき血の文字が滲み出ていく。

---

『魔王Azathothの名の下に執筆す。』

『この宇宙に在る彼等彼女等を箱庭へ招き入れぬ。』

『して、汝らは何を得、何を喪うか。』

『我等を慰めよ。』

『汗血を流し、死をもって嗣げ。』

『例え死しても物語は紡がれる。』

『さぁ、逝ぬがよい。』

---

斯く慈悲の無い演題と共に内容文が描かれていく。

さまざまな世界の名前の下から、1人、また1人と登場人物の名前がリストとして浮かび上がる中、執筆者はふと目に留まる。

「ほう……これはこれは。良い案が思い浮かんだ。」

「喜劇か悲劇か…くっふふふ…」

---

また1人、邪神が見惚れた犠牲者がこの時選ばれた。

星の靡きと共にフードの端が翻り、この日から世界が多く枝分かれしていく。

「……?」

「ほう。そこにいるお前達も贄となれ」

液晶モニターの観客者たちをも巻き込んだ、

喜劇とも悲劇とも分からず先の見えない、

狂った作劇家の世界創世"物語"が今、始まる。

 

 

…。

……。

……笑い狂い壊れ蕩け畏れさせ、読み手をありとあらゆる狂気へと誘う禍根に塗れた地獄の箱庭へようこそ……



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA00 ⦅PSR/OC/vol.13⦆

[PROFILE]

[EDICT,SANCTION DOCUMENT/DATA00]

 

『各位通達事項。』

 

『「」支部に関する活動内容事項はクリアランスレベル・VIOLET指定、

城戸司令および「」、各部長に許可を得てから閲覧すること。』

『"任務執行書"と命名。DATE01からXXまでとする。基本的に閲覧可能とする。

添付された一部の記録"閲覧規制事項"は一定以上のクリアランスレベルを設定し、上位者のパスワード及び該当者のパスワードが無ければ閲覧不可とする。』

『クリアランスレベルについては下記の通りとする。』

『忍田 真史』

 

[PROFILE:SECRET RECORDS]

[CLEARANCE LEVEL]/[READER/B〜V]

[・BLACK(検閲非制限)]

[<RED(外部関係者+C級)]

[<ORANGE(C級)]

[<YELLOW(C級通常隊員以外の職員)]

[<GREEN(B級)]

[<BLUE(B級通常隊員以外の該当職員)]

[<INDIGO(A級)]

[<VIOLET(S級及び各部長)]

[<WHITE(司令と「」)]

 

[CLEARANCE LEVEL]/[ORDER/U,C]

[UNCOLOR(司令のみ)]

[CLEARANCE(「」のみ)]

 

 

『……』

 

『追記事項』

『「」の死亡により、管理権限を委譲。』

『城戸司令及び忍田本部長、S級隊員の迅悠一、三雲隊、「」に閲覧及び管理権限を委譲。』

『編集責任者/忍田 真史』

---

[PROFILE:SECRET RECORDS/Volume.13] ⦅ORDER/CLEARANCE⦆

[この「」へ来た経緯と「」自身の記録]

 

この記録を見ているということは、私は死んだのだろう。私は一度死んだが死ぬ気は無い。だが万一の為に遺す。

もはや現実改竄による情報消滅が始まってしまったこの世界で、無事に遺せるかどうかすら分からないこれが、役に立つかどうか知らないが…

 

この「」は複数存在している。

同じ「」が微妙に異なったり数秒の過去と未来などという次元の話ではなく、

「」構造そのものが違っている。

残念ながらこれは揺るぎない事実であり、私がその1人である。

この「」に来る前の「前の「」」に生まれ、前の「」で一度死に、

気がつけばこの「」で新たな「」を得て二度目の「」を送ることとなった。

 

私が正気であると証明できるならばの話であるが、確かにこの「」とは別の「」、

「」を持った外の「」で私はかつて"死に"、そしてもう一度の「」を受けた。

 

幸い、私が望んだ「」に生まれたこの「」で一体何が起こるか「」、

自分を含むあり得ない存在や出来事を認識できたためこの「」は知っていた、

あの「」とは違うのかもしれない。

これから語ろう、一体何があったのかを。

私が何者かを。この「」についても。ここに記す。

 

『幾度と繰り返されているこの「世界(バーチャル)」、「真理(タイムパラドックス)」、

そして「虚構(リアリティ)」について。』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コーヒーを片手にトリガーの通信機能の音声を利用して独立した内蔵メモリーに秘密記録を更新していく。

 

私は本目建悟、訳あってこの世界……ワールドトリガーの世界に転生し、アフトクラトル(神の国)と思わしき敵遠征部隊のネイバーによる攻撃を受けた。

三門市およびボーダーに大きなダメージを与えた侵略行為を受けた日から約1週間後。

アフトクラトル侵攻以前から高濃度のトリオン反応が三門市外の「高度1万メートル上空」で観測されながら、トリオンレーダー反応後直ちに消滅してしまう不可解な現象がいつからか発生しており、一瞬にして出現と消滅を繰り返すそれらにボーダーとしても警戒をしていた。

 

だが三門市外はおろか国外にまで防衛体制がまだ完熟していないボーダーにそこへの人手を回せるわけがなく、アフトクラトルの侵攻により混乱を極めた頃に事件が発生した。

そこで私達の出番ということだ。私を含めた4名の隊員が日本全国の高高トリオン反応と襲撃に備えて待機していたわけだが、これは日本政府じきじきの依頼でもあり、国会議員と財界の賓客を含めた大型旅客機の1機ごと行方知れずとなったその事件の調査と要人警護を兼ねていたところだ。

 

そして今に至る。私は全国を地方航空機や旅客機で回り終え、あまり決定的な証拠を掴めぬまま北海道から報告書と大きな荷物と共に大型旅客機の中へ入っていくところだ。

北海道から三門市近くの空港まで経由するこのルートは北海道から本土へ帰省する要人の警護する最後のコースであり、晴天にも関わらず太陽は冷たくまだ寒いこの1月は、とても身体に堪える。

何度も''外に出た''が、その度に空を泳ぐも即座に反応を消してしまうそのトリオン反応はミラの黒トリガー「スピラスキア」の反応と似ており、恐らく遠征艇のワープ機能に酷似した何らかのトリオン反応を起こしているのだろう。だが、それだけでは情報が足りない。

 

調査で分かっている他の事は航空機の通信機器に時折混ざる詳細不明の奇妙な通信のノイズや不可解な周辺大気の気圧変化、「気がついたら搭乗した乗客員、CAが一人消えている」ということぐらいであり、向かおうとしても敵性反応とトリオン反応が既に消失していたことだ。

何十回乗り継いだか数えなくなったぐらいにちょうどその現象がここ1、2日前に起こり、その近辺だった北海道・青森近辺の上空を調査していたところだった。これがラストフライトでもある。……おっと、通信か。

 

我々ボーダー「界境防衛組織」に所属する防衛専門部隊、本目隊は全員が4年前ボーダー創設当初から入隊していたメンバーであり、私を含め5人全員がみな成人している。

訳あって支部長を兼任している本目支部長の指揮部隊下の本目隊のほか、1人の支部オペレーターと5人構成の篠山隊もいるが彼らは「三門市内」を管轄として担当しているため、

実質「三門市外」を担当している防衛専門の部隊は私たち5人だけである。

…というのも私だけが「フルテレポート」、試作テレポーターの原型となった高速移動型テレポートの上位概念、「座標移動による自由出現型」《転移》の使い手であり、距離に関係なく移動が行えた事に加え「他人・物を飛ばす」こともこのトリガーで出来たために距離関係無く活動が行えた。

 

もちろん本来「存在しないトリガー仕様」であり、「嵐山隊が試作テレポーター」として使っていたものが出始めたぐらいであり、孤月と同じ頃に造られた「転移」は私のサイドエフェクトに合わせた専用のトリガーであった事もあり旧式で誰にも扱えなかった。

 

さて。私の左目には様々な「情報」が映っている。

遥かなる先を見越せる千里眼、明暗に関係無く見える暗視、壁や見たい物の中を視るクレアボヤンス、魂だけの存在を視る霊視、デジャブと人や物の過去を視るサイコメトリー、

生命体の寿命が見えるプレコグニション、そして見ている体感視認速度を制御して情報量を変えるヒプノーシス……

一つのサイドエフェクト効果と思えないこれらに加えて、爆発寸前のトリオン保持量。

そして前世の記憶。どうしてこうなってしまったのか検討はついている、だがその事よりも目の前の問題を解決しなければならない。…まだこれからなのだから。

 

飛行機の座席(ファーストクラス)に腰を落ち着けたところで、通信の声で思考の波から元に戻る。通信開示と共に「まだ見える隻眼」に視覚情報が付与され、相手の顔やデータの図が視認できるようになる。

 

「……『結果はどうだったか、小神林?』」

居場所に似合わぬ緑のフード付きウィンドジャケットとネイビーブルーのジーンズ姿に登山リュックと登山靴に、スポーツ刈りの茶系黒髪で右眼に黒眼帯をした中肉中背の青年が言葉を発さずに、タフな衝撃防水デザインの腕時計型トリガーに音声通信を交わしていく。

 

『いいえダメね。特にこれといった攻勢反応もトリオン反応も襲撃も起こらなかったわ……

やっと到着したよ、ふうぅ〜やっとだぁ…ちょっと待っててね』

 

しばらく2、3分ほど待って…オペレーターの正装になった彼女の姿が映されるようになった。制服になってもだらしない姿の彼女は極度の面倒くさがりだが、仕事の時はキッチリとやるあたり公私の区別が出来ている人間であり、その腕前は「一度見ただけで完全に同じ贋物を作れる」ほど頭の覚えが良すぎる上に「闘える」オペレーターである。

 

『まだ清水や鬼塚も藤屋も帰還中だね、あ〜にしてもさぶさぶ…』

ただしオペレーターコンソール前の席に座らず、遠隔操作でオペレートしつつコタツに入りながらお茶を啜っているが(

 

「……」

思わずその光景にほっこりする建悟も、不意にノイズが走り出す。

苦痛に歪む彼の顔を見て小神林は不安そうな顔になる。

だが建悟は心配いらないと言う。

目がかすんでノイズで見えづらく、耳鳴りに雑音が混じり、記憶にキィーンと高鳴る。

徐々に侵されつつあるこの身体がどこまで持つか。隠しているが、隠せなくなってきたか。

 

『…休んでいいんだからね? 無理はしないで、私たちがいるんだから…自分で全て背負おうとしないで。』

「…『大丈夫だ、まだ動ける。それよりサポートを頼む』」

苦虫を噛み潰した顔を少しでもこらえて、隠そうとする。

『…ええ、分かった。私が見ておくから休んで。』

「・・・。『ああ、少し休むよ。』」

 

生体の状態でもリミッターが発動するように同じく造られた脳内通信で返事を返してから、

自身のSE/視認強化を全て沈静化させていき…体の負担を軽くしていく。

ようやく羽根を伸ばせた今がとても楽になれ、身体が軽くなっていく。

自らの寿命だけが視認出来ないことがどれだけ不安であり希望でもあるか。

「…生前と違って、ますます化け物じみてきたなぁ…」

 

飛行機が出発の報せを告げ、平和な上空でゆっくりとくつろぎ、ランチをオーダーしようとした矢先にトリオンの高濃度反応警報が脳内で響く。

サイドエフェクトを段階的にリミットオフしていき、流れてくるトリオンの情報と共に''外"を視ていく。

 

「『小神林、状況は。』」

『ええ、高度1万2000m、反応は…敵機数、1000!? どうしてそんなところにそんな数…』

「…『確認できた、これは骨が折れるな。』」

「『なんであれこれは計画性のある攻撃だ。目的が分からないが、何らかの意味があるのだろう』」

『ええとそんなことより…1人で平気?』

「『ああ、ひとりで平気だ。鬼塚たちには言っといてくれ、軽く遊んでくるとな。』」

 

大型旅客機の後方に風穴が空き、大きく機体が揺れ酸素マスクが間に合わない惨状の中で…ひとり、「突然それは現れた。」

重力に抗えない大気に洗われる機体の中で一人、何ら変哲もない服装でありながらものともせず直立して…乗客の悲鳴を気にせず風穴を視つめる。

「これは…イルガーに戦闘用のバド?…なるほど、あそこの"船にネイバーが居る"のか」

「本目隊隊長、本目建悟。任務遂行のため出撃する。」

 

消えた一瞬、文字通り「踏み超えて跳び、落下しながら」数十もいる斥候のバド達を斬り伏せ、遠方に控えるトリオン兵を散弾と一粒弾で狙撃しながら、また一機また一機と壊し、小さな孤月と水平二連式の散弾銃で一方的に仕留めていく。

1秒にも満たない速度で出現を繰り返し、0.1秒で時間差のトリオン弾と投げ飛ばした弧月で倒し、もはや須臾に近い認識速度で次々のトリオン兵の座標位置や動く軌道を見極めていく。

 

重力を無視したかのような瞬間移動の繰り返しは終わりを見せず、無尽蔵の散弾とアイビス級の一撃が敵を寄せ付けず、寄れば神速の刃が全てのトリオン兵を丁寧に一刀両断していく。

そして1分と経たないうちに進路上のトリオン兵をわざわざ半数近く減らしながら、ネイバーの下へ単身切込みに向かった。

 

ただ一人、トリオン兵の破壊とネイバーを殺す事に特化した彼の、全て背負い込もうとする孤独な戦いがここに始まる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定)) 本目建悟

【KENGO HONMOKU】

 

【PROFILE】

氏名   ・[本目建悟]

通称   ・[イェーガー(猟兵) 城戸の伏兵]

POSITION・[オールラウンダー](ミドルレンジ)

年齢   ・[23歳](通齢46)

誕生日  ・[5月14日]

身長   ・[155cm]

血液型  ・[A]

星座   ・[ねこ座]

職業   ・[部隊長 本目支部長]

LIKE   ・[銃 猟師 写真 喫茶 お茶漬け 石切り]

―――

【FAMILY】

「父、母」(逝去)

―――

【PARAMETER】

[トリオン/67]

[攻撃  /16]

[援護防御/9 ]

[機動  /20]

[技術  /10]

[射程  /10]

[指導  /3 ]

[特殊戦術/10]

[TOTAL / 145]

―――

【SIDE EFFECT】

・前世の記憶     [ランク不明]

・視認強化     [ランクS]

・トリオン適合体質者[ランクSS]

―――

・【Original Trigger/要人警護・調査防衛任務時/10TRIGGER】

[アステロイド(SG)][アステロイド(SG)][シールド][カメレオン][転移]

[バッグワーム]  [グラスホッパー] [シールド][弧月]   [転移]

 

・【正規戦、ランク戦用ノーマルトリガー/基本形】

[アステロイド(SG)][ハウンド(SG)] [カメレオン][試作テレポーター]

[バッグワーム]  [グラスホッパー][シールド] [弧月]

 

・【隊服デザイン】

喉まで覆う上下のブラックBDU。

手首が見える黒の作業用合皮系の手袋(白兵戦手袋)。

左上腕部に、赤色の輪郭線とシンボルの目に白文字ローマ字のⅠ。

左前肩の携帯無線機からコードが右インカムまで伸びている。

(首後ろにコード、モノラル型インターカム)

外套として黒の刻印無しフードコート。見分けとして袖の外側に黒-黒。

 

本目隊は黒(肘側)-識別職(手首側)。

隊長格の装いとして、左腰に銃剣を常に帯びる。

今回は「私服」のまま戦闘体トリオンで活動。

―――

【技能】

・格闘術(立ち技系武術)

・居合抜刀術(片手小太刀)

・隠密活動(ステルスキル)

・猟師(散弾銃、山と獣)

・写真技術

・ボーダー支部長業務

・運転(普通/JEEP W.U. 普通自動二輪/SUZUKI GN125E)

―――

【解説ほか】

(1990誕生、4年前の第一次ネイバー侵攻→2009.4or6/18歳)

(空閉たちの正式入隊時点→2014年1月8日/23歳)

 

 

・[SE/前世]『デジャヴ』

ボーダー上で詳細を明かされておらず、書類上では前世の記憶があるとして認定。

その経緯もあり、若くして「現隊員が支部を作った」異例で本目支部長として就任する。

ランク認定:認定待ち。

 

 

・[SE/視認強化]

左眼に様々な視覚情報を認識できるようになった先天性サイドエフェクト。

右目はそのSE効果の負担に耐え切れず先天性白内障を患い、術後摘出し、義眼を入れて医療用眼帯で隠している。

2014年アフトクラトル侵攻後現在、7つの「視認情報」が「両目で視えている」という。

4年前当時よりも遥かに強くなってきたSEの慢性症状として「ノイズ」を覚えるようになり、

リミッターによって少しでも体に負担をかけないよう過ごす事が多くなってきている。

 

認知不能な距離にある光景・物・者が細部まで見える「千里眼」、

光の無い真っ暗闇の中でも昼間のように見える「暗視」、

霊魂や肉体の無い精神活動体を視認できる「霊視」、

人や物の過去を視れる「サイコメトリー」、

壁や中身に関係なく透視できる「クレアボヤンス」、

生命体の残り寿命を時間で知覚できる「プレコグニション」、

体感速度を任意に変えて視覚情報量を制御できる「ヒプノーシス」。

ランク認定:B→A→S。

 

 

・[トリオン適合体質者]

入隊当初から通常隊員と比較できないトリオン保持量がデータ観測されており、

希少なサイドエフェクトとして城戸司令が創設当時からS級隊員として迎え入れたサイドエフェクトの一つ。

 

観測結果上では、「トリオンを"吸収、凝集している現象"」がトリオン器官に集中しており、高濃度のトリオンが器官内で結晶化しより効率的な成長とトリオン能力を促しているのではと推測されている。

実際は「高濃度トリオンが一切減少せず、消費量とトリオン器官生成量が釣り合っていない」事から今現在も研究され続けている。

 

(トリガー未使用状態で1年1トリオン/使用で1年12トリオン/トリオン器官成長の年齢限界無効)

(トリオン器官完治時間/60分未満30分以上、0状態から護身用トリガー起動所要時間:1分未満)

ランク認定:S→SS

 

 

・[転移]【オプショントリガー】

嵐山隊が運用中の試作テレポーターの原型となったトリガー。

試作が「高速移動」に因るため視線移動でイメージを作る容易さを得たものの、イメージを作るタイムラグと「ぶつかる」可能性や「通り抜けられない」性質があり、タイムラグも通り抜ける性質も得たテレポーターが「転移」である。

 

使用のインターバルが無くなり、自由座標出現型のため「意図的に埋まる・埋める」使い方のほか、飛ばす座標と飛ばす先の座標地点を指定することで「他人・物」を飛ばす事も可能となっている。

 

4年前創設当初から彼の「千里眼」をサポートする形で作られた専用トリガーであり、他隊員が使おうとするもその概念の理解のしづらさ、空間認識能力の高さ、現実処理能力が求められた為に誰も使えなかった。

 

移動距離の時間差、距離に関係なく任意の場所へ飛ぶことが可能であり、トリオン量は距離と大きさに比例した消費量となっている。

 

 

・[弧月]【アタッカートリガー】

60cmとやや小振りな銃剣型。今回所持していた水平二連式ショットガンには取り付けられないが、後作のアサルトライフル=マークスマンライフルに装着可能とさせた改良品。

米屋の槍と違い柄の変更が行えずトリオンブレードの収納もできず鞘に納めているが、耐久性が若干上昇している(A+)。

 

 

・[Original Trigger]

「防衛任務専用のカスタマイズ・トリガー」。(以下Oトリガー)

ノーマルトリガーとは別物であり、事前にトリオン体を収納させて保険として持ち、Oトリガーを普段運用している。

 

ノーマルトリガーに搭載されている「基本トリガー/ベイルアウト(40%)」を省略し、

標準機能等トリガーに10%の余力を回し、90%出力(1トリガー9~7.5%)で戦闘能力に割り振っている。ノーマルトリガーが全トリオンを使いきれず常に余っていたため、創設初期から有り余るトリオン保有量を効率的に扱えるよう設計された【トリオン強化戦闘体トリガー】。

―――

・容姿など

茶系の黒髪スポーツ刈り。ブラウンの瞳で色白な中肉中背だが、無駄なく引き締まった内筋が日々のトレーニングを物語っている。右眼は義眼を入れ、黒い布眼帯で隠している。

 

内臓フードのボタン紐通し式・丸襟立ち付きボタン留め付き黒寄りオリーブ色のウィンドジャケットと、カーキ色の長袖ワイシャツ、ネイビーブルーのジーンズと牛革ベルト。ハイカットグレーのトラッキングシューズを好んで着ている。

 

いつもマグネシウムファイアスターターとロックバック式小型ナイフを首に隠して携帯しており、

愛用するタクティカルチェストポーチにソーイングセット(B6サイズ/滅菌したライナーロック・ブローニングナイフ、医療用透明糸、10mlボトル・オキシドール)、

専用メモ帳B6と10mlボトル(水)、衛星携帯電話(ボーダー直通、8桁パスワードロック式)、二枚の直角ハンドミラーを常に入れて防衛活動をしている。

 

B6メモ帳は自作した筆圧・水分筆記式で、水を掛けると文字が浮かび上がる特殊用途であり、秘密や世界に関わる行動記録を全てそのバインダーに残している。

 

 

 

 

今作の主人公であり、次作は零章と強く関わりのある内容となります。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA01 ⦅PSR/OC/vol.01⦆

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

【PROFILE:◻︎ECRET RECORDS】

 

[舞台幕がついに破られたり]

[これからが長く苦しい道のりであろう]

[彼方とは違い我は観測を続けていくのみ]

[世界修正は既に始まる]

[神の代行者がもう動き出している]

[我が造りしこの箱庭でどう過ごす建悟よ]

 

[世界の理から外れた邪神どもの気紛れで生かされるこの世界に]

[我はやらなくてはならない]

[我は果たさなければならない役目がある]

[汝にあり我になき希望の光と運命を己がものとできんその役割]

[我は羨ましいな]

[…かの神児は悪魔へと落ちる]

[神に仕える騎士が神の子に成り上るなど甚だしい事だ]

[断罪をもって証明し血で償い魂を捧げよ]

[穢れ憑かれたこの忌々しき世界を壊せ]

[願わくば禍神の混沌の呪いが及ばぬ事を]

 

[かの神の愛し仔が聖槍に貫かれど]

[不変の愛を受けたように]

[かの男神が禊で身を清め]

[清らかな神仔が生まれ出でたように]

[神の仔となれ]

[なれば]

[混沌の大悪魔の遊興から勝利を得るであろう]

 

復讐の神メガエラ(≪Μέγαιρα≫)は微笑む。

一人の哀れな復讐者は世界の箱庭を飛び越えて異貌の外なる神に復讐せんと怨み、

その様子に愛おしく赤児の手に触れて、女神はまだうら若き幼子に復讐の凶刃(運命の改変)を与える。

 

殺戮の神ティシフォネ(≪Τισιφόνη≫)は微笑む。

世界の理から外れてしまった異常者に超常ならざる能力を与えんとほくそ笑み、

その力をもって超常者へと引き上げ、もはや届かぬ高みの席へとたどり着かせた。

現実世界も世界法則も全て通用しないその者の名は、「――――」。

 

罪業の神アレクト(≪Ἀληκτώ≫)は微笑まず。

復讐三女神の中でかの女神はまだ見定めておらず。

しかし、憂いの瞳が歓喜の眼へと移り変わる。

 

エリーニュスの三姉妹(エウメニデス)は微笑む。

かつてそう呼ばれるも飽き、そしてかつてない余興がまだ箱庭にあったことに。

外なる神が作りし箱庭に翻弄される人の子が狂い、軋み、壊れ、憐れになっていく様に三女神は惹かれる。ただ復讐の三姉妹は、無責任にほくそ笑むだけだった。

「神の仔自らが手を下す事に、歴史がどう変わっていくか。」

 

世界の倫理と次元からもはや外れたモノクロ世界に存在する、存在すら危うく現滅を繰り返す青年は、パーソナルコンピューターに接続された数多のモニターを眺めながら。

ただ、箱庭の世界の全ての歴史を観察し……ついに動き出そうと空間をひび割れさせながら、不規則無意味な乱数数字の空間立体図から新たなる画面モニターを出現させる。

[「」、「」「」。]

[「」「……」、「」「」。]

(全てノイズが入って聞き取れない)

[さぁ]

[始めようか]

[新たなる世界の創造と旧き世界の破壊を]

[世界の再構築(ラグナロク)現実の記録修正(アポカリプティックサウンド)を]

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

【P:ESD/DATA01 ⦅PSR/OC/vol.01⦆ 】

 

この記録は俺の記憶があいまいとなる前に書き残したものであり、今も思い出しながら書いている。まさか第一次ネイバー侵攻が起こるなんてな…そもそも、「東三門」や「麓台町」っていう言葉から気が付くべきだった。

 

俺は本目建悟。言っても頭がおかしいと思われるのがオチだからここにだけ書いているんだが、俺は一度「死んだ」。死んだはずなんだが……なぜかワールドトリガーの世界に生まれたまではわかるんだが、その原因はあの野郎かもな。

「あくまで」憶えている限りの記憶だ。今は侵攻真っ最中だし、ただ死ぬだけではつまらない。少しでも誰かが読むと思って、ここに残す事にした。

 

――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/Volume.01] ⦅ORDER/CLEARANCE⦆

[『2019年9月22日(日)』]

 

すっかり色褪せて糸がほつれ出ている皮手帳を手に、まだ新しく鈍く輝く散弾銃と登山リュックを背負い生い茂る山の中で、1人歩いている背の高い男がいた。

彼は森田流人、6月30日生まれの23歳の男は社会人としてTVカメラマンを勤めている物静かな黒髪の長身の青年で、人前で話す内容や考え事をバインダー式のA5皮手帳に書き留める癖がある性格者だ。

 

中肉中背で目立った顔立ちが無い彼はアースカラーの登山服と緑の帽子と深い山林に溶け込んでおり、私生活でも仕事先でも空気に溶けるように静かな彼は今、狩猟仲間と共に猪・鹿狩りに興じているところだった。

 

2019年から増えすぎたイノシシ・ニホンジカを狩猟・捕獲が推奨され始めるも、専門ハンター人口が少子高齢化問題と担い手の深刻な過疎化から絶滅寸前であり、苦肉の策として政府による奨励と狩猟に関する法令緩和がなされていった。

流人もその口で入り猟師免許を取得し、同じ学校の同期先輩後輩の6人と同じく猟師免許を取得してハンターになり、国から要請された駆除依頼の仕事をこなしつつ趣味に興じていた。

 

先輩の男は2tトラックのドライバーとしてタバコをふかしながら、最寄りの駐車場で無線局を準備しながら同じハンター仲間を待つようで、男女含む5人と建悟は自分たちの自動車を置いて狩猟場所の山へと足を踏み入れていく。

深く生い茂り空気が澄み山岳に囲まれた静かな関東の地にも、イノシシの大量発生により近くの人里の農作物に甚大な被害を及ぼしているようであり、建悟たちはその駆除に訪れた。

 

…蕎麦の実が所々で咲く山の街まで5人乗りのFJクルーザーを運転する建悟の車には、小学校から高校で一緒になった旧友や二人の友人が同席し、お互いに連絡を取り合う親しい間柄だった。

たわいもない世間話や学生時代に花を咲かせながら、駐車場に着いてからは各々の散弾銃を手に取り山に入る装いの準備にお互いが無言がちになる。

 

建悟は始めて3年近くが経ち、愛用するミロク社の水平二連式FE・12GAGE散弾銃の作動が確かかどうか確認しつつ慣れた様子でショットシェルを狩猟ベストのポケットに詰めていき、銃のファイアリングピンが折れていないか銃腔に異物が無いか確認していく。

そうして必要品や確認を終えたところで……特に会話もせず、先輩から受け取ったトランシーバーをベルトに括り付け、徒党を組んで山の中に入っていく。

 

 

道中ではまだ幼いうり坊や小さな子猪に出会うも駆除しなければならず、田舎の親が猟師免許をやっていてその影響で始めた友人の女性の網猟で血を流さず捕まえていく。何匹も捕まえて彼女がトランシーバーで連絡しながら引き返していくその様はやはり、手慣れているんだろうなぁと誰もが思った事だろう。

しばらく歩いて猪の群れに出会い、先輩ハンターも他のハンター仲間と合流して……誤射にならない範囲で詰めていき、全員が静かに忍び…頭や心臓に各々が構えていく。

建悟もベストポーチのチャックを開けて弾薬が取り出せるようにしてから、2本の薬室に12ゲージ・ショットシェルを入れて…腕と肩の窪みにガンストックを持っていき……

 

2本の銃身の真ん中についたフロントサイトで猪の胸付近に照準を合わせてから、他のハンター仲間が銃声を響かせるまで待つ。…銃声と同時に引き金を引き、暴れる火薬のエネルギーをしっかり吸収して保持したまま、銃身から数個の丸弾を放たせる。

硝煙の香りと特有の爆音と血の匂いが漂い始める前に逃げようとした猪がいるも、遅れて響いた銃声の弾丸で群れの何匹かが命を落としてゆっくり倒れ落ちていく。

…一匹だけ撃たれても死なず勇敢に突撃しようとする2m前後のかなり大きく黒く汚れた猪がおり、群れの長と思える大猪は困惑して撃てなくなっている若ハンター、建悟たちとは少し離れていた先輩の引き連れていた後輩たちへ道ずれせんと既に走ってきていた。

 

「……(間に合わんな、少し危ういが…一発、当たらないことを祈るか)」

右筒が煙をくすぶらせているその隣の、まだ残っていた左筒に意識を向けながらフロントサイトをすぐ近くまで走り抜けようとしている大猪に銃身を向け、自身も水平に動きながら少しでも被弾せず…効果的な距離にまで攻めていく。

 

「(ドガン!)……、!?」 

上手く頭に当てたものの、なおも走る上に……こちらへ走ってきた。

すっかり反射的に「一撃で仕留める」ことを考えていた上に、既に残弾も尽きて動いた状態ではすぐに動けず…加えて体が硬直している。

 

「くそ、(っ! っァァァッ!?)」

少しでも猪の突撃を軽くしようと散弾銃を斜めに構え直し…衝撃に備える。

よく見ると湾曲したその牙は…散弾の衝撃で砕け散ったものの、それが「サメの歯のようにギザギザな」断面となって襲い掛かった。

『そして、口の中は…明らかに猪の舌などではない、細く何本も枝分かれした…幾つもの肉質の棒が悪意をもって貫こうとしてきた。』

 

成す術なく散弾銃ごと形をかろうじて残す程度に破壊され、右目を「抉られた」。

右肩もギザギザな折れた牙に重みをもってぐしゃりと潰し擦れ……大地に押し伏せられた。

抵抗して除けようにも左手が、予想以上の咬合力で動脈がズタズタに切り捩じられ、すぐに血が抜けて感覚が消えてゆく。

「…~~っ!…ぐっふ…ぁ、くそっ」

右手を動かそうにも「肉質の棒」が右手首を貫いていた。…右目が潰れ、更にその奥を弄繰り回され痛みが増幅して思考が追い付かない。

左手…いや左腕が動かなくなった。腹からも強い衝撃で中から込みあがってきそうだ、右手も左手も…焼けるほど痛い。溶けているのか…?

 

「建悟!」 「建悟を放せ!」 「こんのくそブタがァ!!」 「助けてやれ!ああ、なんだコイツは!? なんなんだ!?」 「い、いやぁぁっ!」

 

様々な声が聞こえるが…眠い?

目の前が暗くなってきたな…ああ、そうか、吸われているのか…もうこんなに寒かったのか、いや違う……あ、胸…しん、蔵…?

「…ぁ…ぁ…」

「くらぇ!」「死ねごらァ!さっさとはなしやがれ!」「しんじゃいや、イヤぁ!」 「に、逃げよう!こいつおかしい、逃げないと!」 「んなことバァカか!助けやがってさっさと殺して…」

「…(ああ、聞こえなくなってきた…目の前もぼやけて、もう暗くなっ……だめだ、ち、か、らが…はい、らな…い…)……」

 

 

使い慣れた愛銃の用心金の感触すら無くなり、ただ静かなせせらぎと揺れる葉の風音すらも子守唄のように聞こえ……

一人、先に死にゆく。

残された彼らの背後に、悍ましく呪われし黒い仔山羊らが貪欲に腹を空かせながら、なん十本も垂れ動く触手を持った大木に幾つもの口に猪のような山羊の太足が…

シュブ=ニグラスの福音と共に更なる惨劇が彼らに襲い掛かる前に、千匹の仔を孕みし豊穣の神が無慈悲に憐れな贄達を供物として喰われる前に死ねた事は、彼にとって知らなくてよかった不幸中の幸いだったのかもしれない……。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA02

――――――――――――――――――――

【P:ESD/DATA02】

 

[H21.M09.D30]

こうして俺は…最初の世界と言うべきか?

最初の世界で俺は死んだ。あの後がどうなったか分からないが、考えても無駄な気がしているから深く気にしていない。

 

こうして音声データとして残しているこいつらも、ボーダーに入るまで書き留めていたメモを見返して思い出しつつ、言葉として残しているようなものだ。

もう俺も40年近く生きている。身体が二十歳近くのそれでも、頭の中の人格はもう歳食ってて記憶とか朧気だしな。こいつは今俺がボーダーの居住区でようやく腰を落ち着かせて無事ボーダー隊員になったばかりの今…こうして残したいと思って、音声認識ソフトを使って変えている。

…録音でもいいじゃないかって? いやそれがな、今は分からないかもしれないが…この方式の方が世界の改竄を食らっても残しやすいんだ。

最もあの「――――――――」が関わっているし、イヤでもあの野郎の事を思い出すからな。

その記憶すら俺の記憶だったものか怪しい。ただ言えることは、「俺じゃない俺がそこにいて、あのクソ野郎と対話していた」ことがあったってだけだ。

俺自身そんな記憶はない。だが…様々な可能性があるように、世界も様々な選択のなされた”別の世界”ってやつがある。

これは言わば「俺だった何者かの記憶」とかメッセージかもしれないな。…考えるだけ無駄だけどな、俺が狂っているって場合があるし。第一「死にました~」なんて信じないだろう。お前。

 

…んなことはどうでもいい、ここに隠した他の秘密は俺に訊け。…あ~合言葉はそうだな、

「あなたは誰なんですか」

…なんてな、これは誰にでも見れるようにしている。より詳細が訊きたいなら俺に直接か忍田本部長か城戸指令に許可をもらって、秘匿された情報を聞きにでも来てくれ。俺はいつでも歓迎している。…聞いたところで何があるだんだ?、って話にはなっちまうが。

 

要はいつまでも平和であれば十分だ。例え知らない事から目を背けて過ごしていても、知らなくていい事を知ってまで隠していてもな。

これを見たお前がどう捉えるか、お前に任せよう。ボーダー隊員さま?

――――――

俺はある日、死んだ。

 

最初の世界でとあるTVカメラマンと猟師をちょっとばかしやっていたが、運悪く化け物みたいな大猪に襲われて喰われちまった。

 

…その後はしばらく暗い場所で眠りについていたんだが、気が付いたら生暖かいプールにいたというか…第二の俺の母親の腹ん中で俺は赤ん坊として、二度目の命をうけたみたいでな。今でもハッキリと中の様子を覚えている。

…その頃からどうも俺の右目は死んでいたみたいでよ。へその緒や腹の壁がハッキリと見えた時は心底驚いたが、急に流される感覚を覚えてよ。気が付いたら強い光が見えて……

 

 

1990年5月14日、午前11時11分、後の建悟と名付けられる赤子が三門市総合病院内で無事誕生する。

 

ここは三門市。2009年時点では人口28万人の中都市であり、東京都と神奈川県の中間に位置する某県の一都市。

(ワールドトリガー1巻 9ページの三門市中央ゲート出現位置の後方二つ山の奥側、ボーダー本部から見て真北に位置する所に)赤子はとある家族のもとに生まれる。

 

本目家は戦国時代から三門市の白鷺山を代々管理してきた猟師の流れを汲む。

相模を支配していた北条氏政に遊興として腕のある武将たちが白鷺を射貫こうとするも当たらず、急に現れ出た農民の娘が竹と木で作った粗末な細射弓で射止めて見せようと啖呵をきり、見事白鷺の眼を射貫いてしまったことから「本目」の氏名と「白鷺」の名を関した名もなき山と10の石高を与えられた。

 北方に位置する山の位置が「鬼門(北東)」に近い事と滅多に起こらない出来事で名を挙げた事もあり、北条家お抱えの名弓手として可愛がられ、小田原征伐まで足軽大将を女の身で任せられる。小田原征伐の陥落中に命を落としたとも氏政が逃したともいわれており、その顛末は不明である。

初代「本目截丸(ほんもく たつまる)」は男とされたが、本目家の家系図を見る限り確認はできないものの口伝で女だったと伝わっており、子宝に恵まれひっそりと山奥で大政奉還を迎えるまで一族は猟師であり農民として密かに過ごしていたようである。

 

その家の私山に隠された小さな祠には、≪起智尊≫(タチノミコト)として祀られており、今でも三門市に遥か昔から住む爺さん婆さんたちから≪タツ様≫と拝みにやってきていたのを、物心を迎える頃より前の頃から何度も参拝しに来ていた事を覚えている。

俺にはよくわからないが、とりあえず俺の父と母さんはそのご先祖さんの社を何度も掃除をしに行ったり参拝に行ってたかな。社の中には…朽ちていたが、木と紐みたいな残骸の間に、破魔矢らしき札が矢筈、逆さまになった鏃の根本ところにくっついていたぐらいかな。

 

とりあえず俺はこの(本目)家の長男として生まれた。戦前は関東地方でそれぞれ連絡を取り合っていたらしいが戦火の影響で潰えたか散り散りになって、今じゃこの家だけらしい。

俺の母さんは四女らしく他に兄弟姉妹が六人近くいたらしいが、やっぱり市外に出てそれっきりらしい。俺の母さんの母親(婆さん)も兄弟姉妹がいたらしいが……まだ若くして死んだらしい。

まだ20歳を過ぎたばかりの母さんは五年前まで婆さんが生きてて…巫女?としての事を教えてもらってたらしく、その役割を終えて…だけど婿をもらう気もなかったそうだ。

町の年寄り達のお節介で外から男を呼んで、それから結婚して…七年経ってようやく子宝を授かったらしい。

 

んで気が付いたら30歳ぐらいの夫婦だったってわけだ。…まぁなんだ、そういうのを気にするタイプじゃないぞ、俺は。

冗談はさておき、そんな家族にご近所さんのお付き合いで暖かく見守られていたとさ。

そこでいつ「この世界がワールドトリガーの世界だった(漫画アニメの世界だったか)」と気が付いたか?

 

…そうだな。三門市っていえば知っている人にとってはワールドトリガーの街の名前としか思い浮かばないし、そんな街の名前は憶えている限りでは存在しなかったはずだ。

しかも俺が生まれた年月日は「1996年」の「6月30日」生まれで、そもそも俺の名前は「森田流人」のはずだ。しかも親はごくごく普通のサラリーマンでマンションみたいな団地で過ごした。

明らかにここがサブカルで言う「タイムスリップ」とかそんなものじゃなくて、もっと別の何かがあると思った。…そんな時にカレンダーに「三門市の名前と1990年」と書かれていたからな。

 

…ハッキリ言って自分を疑ったよ。だが現に俺の身体は明らかに赤ん坊で、しかもワールドトリガーの地名にちょうど20年後は2010年……確か一次侵攻があったのはその頃だった気がしたし、

確か原作では廃駅になっていたはずの弓手町駅が町の向こう側でちゃんと動いているわけで。…体がしっかりと動ける年齢を重ねるたびに、その確信と言い表せない不安が横切ってくるわけで。

 

 

「建悟の母親-本目由美の視点」

「ふふっ。すくすくと元気に育っているわ…もう歩けるようになったみたい。ねぇ、あなた?」

「ああ、あの時は最後まで泣かなかったからな…」

「ね。言ったでしょ、私の建悟は特別だって。」

「特別?確かに何か違うものを持っているとは思うが…由美?」

「…私、わかるの。この子はきっと一人でも元気にやっていけるって。」

「……?」

「ねぇあなた。建悟のこと、しっかり見守ってね?」

「ああ。分かった。言われなくたって…私たちの可愛い子宝だ。何があったって守る。」

「ふふっ、…建悟。」

 

不意に小さく呟いた。俺は今でも母さんの言葉を覚えている。…これだけは、忘れられない。

「『貴方だけじゃないわ。みんな、貴方の事を愛しているからね。ママもパパも。』」

 

 

……。

今となってはその意味を聞くことはできない。だけど、おそらく俺の母さんはもうわかってたんだろう。この体になった…というか2度目の命を受けた俺にはどうも、<予感>をほんの僅かにだが覚えるようになっていた。

 

代々本目家は何らかの力みたいなものを持っていたと聞いている。その中には陰陽師や野伏になった奴もいたという。俺の母さんが「霊や妖怪」が見えていたらしい、おそらくは…遺伝か血の流れで何か受け継いだか目覚めたんだろう。

 

その後、俺はなんら問題なく健康的な日々を楽しめていった。

俺の母さんが本目家の祠や巫としての役割を教えてくれなかったあたり、ごく一般的な普通な子に育ってほしかったんだろう。

もちろん父もたくさん遊んでくれたりいつも心配をしてくれた。…ごめんなさい、ただの子供が良かっただろうに、俺みたいな奴でごめんなさい。

ただ普通に過ごすだけじゃなくて、小学校に入ってから筋トレを隠れてやったり三門市を内緒で歩き回ってみたり。年寄の火薬鉄砲店のおじちゃんに猟師としてのノウハウを教えてもらいながら無茶言って狩猟についていかせてもらったり撃たせてもらったり。

…俺の母さんが猟師免許を持っていたのは驚いたな、年寄のおじちゃんについて行ってる事がバレても……母さんか父と同伴で猟場に行ってもいいって許してもらえた時は、ちょっと感動して涙が思わず出ちまったり。

 

…そんなこんなで中学校までやんちゃ小僧をやってたもんだ。

もうその頃になるともちろん隠れてだが、私山の猟場で銃を持たせてもらえたもんだ。

鴨を獲る為の小さな散弾銃を久方に触れられてついうれしくて、慣れた手つきでうっかりやっちまった時は両親もおじちゃんも驚いてたが、そのまんまの感覚で飛んでた白鷺を無意識に思わず撃ち落としちまった時は「こりゃタツ様の生まれ変わりか?」と言われまくったもんだ。

そっからは年寄たちも高校生になるまでずっと何かと話しかけてくれたり、拝まれたりして大変だったもんだ。俺はただ前世の記憶をそのまんま受け継いでしまっただけだってのに。

…それでも両親は暖かく変わらずに接してくれた。明らかに小学生や中学生が知らない漢字や計算が出来たり、確かな経験がないと語れない知識やイメージができていて察せられてしまっても、特に母さんはいつもと変わらず微笑んでくれた。いつも味方だった。

父もいつも心配してくれた。間違っていた事があればちゃんと叱ってくれたし、怪我や病気をしたら真っ先に帰ってくるぐらいだったし。…俺以上にできる男だったと思う。

 

 

 

それから高校受験となり。小学生から中学生までオール5で全部通してきたし、どうせなら推薦で名門校に行くのもよかったんだが……できれば「有事に備えて近く、かつ巻き込まれにくい場所がいい」。

それに新たなクラスメイトをボーダーに入れる事ができれば、今後決まっている運命を…少しでもいい方向に変えられるかもしれない。

 

俺は少しでも希望を願い、そして育ててくれた父と母さんに迷惑を掛けない為にも、東側の海が開けた新しい隣の海街。蓮乃辺と同じぐらい離れた距離にある隣街、豊かな海の開けた浜辺の街<波浜市>にある名門私立校「舞風学園」へ通う事とした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA03 ⦅PSR/RR/2009.06.14⦆ + ((設定))本目建悟(第一次近界民侵攻時)

以下変更点(2009年6月時点)

――――――――――――――――――――

【PROFILE】《(第一次近界民侵攻時)》

 

氏名   ・[本目建悟]

年齢   ・[19歳](通齢42)

誕生日  ・[5月14日]

身長   ・[155cm]

血液型  ・[A]

星座   ・[ねこ座]

職業   ・[鉄砲火薬店 アルバイト・レジ打ち店員]

LIKE   ・[銃 猟師 写真 喫茶 お茶漬け 石切り]

―――

【FAMILY】

「父、母」

―――

【PARAMETER】

[トリオン/18]

[攻撃  /--]

[援護防御/--]

[機動  /--]

[技術  /--]

[射程  /--]

[指導  /--]

[特殊戦術/--]

[TOTAL  /--]

―――

【SIDE EFFECT】

・前世の記憶

・視認強化(不完全)

・トリオン適合体質者

―――

【技能】

・格闘術(立ち技系武術)

・猟師(散弾銃、山と獣)

・写真技術

・運転(普通1種、普通自動二輪1種※免許取得) 

―――

・[SE/視認強化]

彼はまだ、「何ら自覚をしていない」頃の状態。

――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/2009.06.14] ⦅READER/RED⦆

[第一次近界民侵攻]

 

 

波浜市。

ここ9年ぐらい前に新しく造られたばかりの三門市の隣街で、弓手町駅で30分ほどの距離が離れた海の潮が香る綺麗な街だ。

埋立地によって広がった波浜市はもちろん記憶にないが、本目というキャラクターの存在も知らなかった辺り、自分が知っている原作知識とは違うのだろう。

 

明るい水色と白のセーラー服と明るい黒の学ランを受け継ぐ名門私立校の新設学校「舞風学園」で3年間高校生として過ごし、無事に卒業するまで多くの友人ができた。

今まで俺は青春に関係が無かった…というよりは枯れていたようで、小中と来て高校でついに恋愛感覚が芽生えなかった事は今でも自分に驚いている。

実は小学校と中学校が同じだった一つ学年上の前サバゲ部長、清水麻理(専門大生/調理士)。

蓮乃辺で居合道場を構える高校の友人、鬼塚山守(若師範)。

総売上1000億近くの社長の息子でボンボンだが出来る後輩、藤屋速夫(速雷物流会社員)。

何かと絡むことが多かった後輩の図書委員長、小神林御厨(司書見習い)。

 

この4人とは俺が興味の湧いて入部したサバゲー部を通じて個人的に親しくなり、今も連絡を取っている。皆んな元気にやっているようで、この3年間は迫りくる暗い現実を忘れさせてくれた、誰も大切な大切な知己だ。

清水とは実銃に関する知識やモデルガンに限らず、電動ガンのメンテナンスに改造法やチューニングも多く教えてくれ、個人的に銃に関する趣味で共通した話題が多かった。

鬼塚とは3年間同じクラスメイトで同じバイクのツーリング仲間や登山仲間として、夏休みを利用してよく遠方に行ったものだ。…生真面目な割に、楽しむ所でよく楽しんでいたな。

藤屋とは…特にカメラ関係だ。俺は写真が撮れればいいんだが、藤屋は形から入りたがるから相談によく乗ったし、夜景写真をよく教えたもんだ。

小神林は……実はかなり変わった関係だ。経緯を省くが、高校に入ってからネイバーらしき影に何度も狙われ、たまたま心霊スポットで出会った所から何かと巻き込む事が多かったもんだ。

 

特に大きな事件も起こらなかったわけではないが、無事高校を卒業して……俺は結局、猟師になろうとしている。昔世話になった鉄砲火薬店のおじちゃんがすっかり白くなって体調を崩しがちになってから、店を手伝わないかと言われて店番をするようになった。

詳しく言わなかったが前世の記憶があると上手くごまかしたら、「あぁ…やはりタツ様の生まれ変わりなんだなぁ、そーなこともあんなもんだんなぁ…」とすっかり信じ込まれてしまった。…これは逆に罪悪感が、ぐぐぐ。

 

とにかく俺は「まだ免許が降りる20歳」でないにも関わらず、猟銃の置かれたこのお店で銃器を触れさせてもらったり生前では教われなかった銃の詳細な手入れの仕方や改造…仕組みや裏技…色々おじちゃんから学べた。

俺は学び取らなくてはいけない。4月を過ぎ5月を過ぎ6月の半ばを迎えようとしているが……まだ悲劇が起きていない事に気を張り詰めている。

高校を卒業してから実家に通う形で弓手町駅に近い、緑川鉄砲火薬店でアルバイトをしながら少しずつ猟師としての基礎固めをしていても、トリオン兵の前では……あまりにも非力だから。

 

 

 

俺とて、ただ19年間をぐうたらと無駄に過ごしただけではない。

しっかりと体力トレーニングを行いサバイバルゲームと評して……改造した違法ソースガンのベアリング弾を私山で100mや200m先の的を当てる練習をやっていた。

…実はちゃっかりバレていて、それでも黙って見守ってくれていたようだ。父がかなり反対したようだが…母さんが強く言ってくれていたみたいだ。

高校を卒業してから大型スーパーのレジ打ちのアルバイト代と、緑川おじいちゃんの元で弟子修行をしていた駄賃(給料以上の有意義な体験で十分だった)で、初めての給料で父と母さんに回らない寿司をごちそうしたときは……泣かれたなぁ。

 

もう一つ……旧ボーダー。

城戸司令や忍田本部長、林藤支部長がを創設する前の活動組織……ボーダー(界堺防衛機関)。俺はその人たちを探した。旧ボーダーが活動拠点にしていた玉狛支部と思わしき建物に訪れてインターホンも鳴らしたが……居留守をされたり会えなかったりした。

おそらく俺の事を不審人物かネイバーと考えている可能性が否定できない。確か……人も死に、迅の師匠が黒トリガー(ブラックトリガー)になってしまった過去があって、今会ってもギスギスとした状況になる可能性も考えられなくない。

それにせっかく「原作知識」(この世界の運命)を知っているなら、その軌道に沿わせた方がボーダー隊員となる上で都合がいいのかもしれない。…しかし、ここに来て今更苦しむ悩みが生まれてしまった。

 

 

【俺の勝手な都合で殺すのか?】【俺はこの世界で生きる人たちを天秤に掛けられるのか?】

 

 

せめて父と母さん、緑川おじいちゃんには何がなんでも生き残ってほしい。

俺は我慢が出来ず、爺さんも父も母さんからも心配されて問い詰められ、18年間隠し続けた秘密を打ち解けてしまった。

 

――――――――――

「……。」

2009年、6月14日、日曜日。

今日も、暑い。

 

俺は父に、母さんに、緑川爺さんに隠していた事を告げた。

暴露した唐突無形な話に、それぞれ想像していた通りの反応をしてくれた。

 

俺は階段を下りて一階の食卓へと向かう。昔から続くこの邸宅はお祖母ちゃんがずっと住んでいそうな和装の家具やデザインで溢れており、

遥か昔から使われ受け継がれてきた箪笥に大黒柱、かと思えば現代生活のIHコンロに……変わらぬ雰囲気と便利な電気家具で囲まれている。

俺は重い気持ちのまま、食卓の椅子に座る。いつも6時に起きている母さんは変わらないけれども、父がこんな朝に起きていることが意外だった。日曜日なのに。

 

「……。」

「……。」

紺色の甚平姿の父と、青色の同じく甚平姿の息子のどちらも気まずいまま口を開けずにいた中、40代後半になっても30歳以下に若く見える割烹着姿の母さんが先に話しかけてくれた。

 

由美「ほら建悟、食べなさい。」 ことりと甘い厚焼き玉子の皿を置いてくれる。

建悟「ん、ありがと……い、いただきます。」

父 「……」 箸を手に取り、何も言わぬまま合掌して黙々と口に運んでいく。

 

由美「……。」 微笑みながら、みそ汁、レタスのトマトサラダ、ごま塩の赤飯を置いてくれる。

建悟「……」

父 「……」

 

由美「もう、二人とも固いんだから。ふふふっ?」

建悟「?」

父 「む?」

母さんがそういいながら、…重ね盃を持ってきた。

 

由美「ほらほら」 いつの間に持ってきたお銚子…神事で使っている物をわざわざ。

建悟「(盃?…?)」

父 「……」 無言のまま、盃にお神酒をついでもらっている

 

由美「建悟も。……」 息子の盃にもなみなみと注ぐ

建悟「んぇ?ああ…」 困惑した表情を浮かべたまま盃を持つ

父 「……」     どこか思う所があるのか、様々な表情を浮かべている

 

由美「あ、私の頼める?んー…お父さん」

建悟「……。」

父 「……」 無言のまま銚子を受け取って、片手で妻の盃に注ぐ

 

由美「…ふふっ?注いでもらっちゃった~」 能天気さを感じさせる声だったが、

建悟「……(よく見たら神棚に盃置いてあるし)」

父 「……」 ようやく柔らかな…微笑みを浮かべながら、静かに飲み干していく。

 

由美「あ、じゃぁ私から~……。」 …真剣な面持ちで一気に飲み干す。

建悟「…?…あ。…」 あっけに取られて、遅れて飲んでいく

父 「……。くくっ。」 二人の様子に微笑みながら、愛おしい面持ちを浮かべる

 

由美「…?んぁ~に~?」 …もうほんのり赤くなり始めている

建悟「…ええと…?」 父の顔を見る

父 「なんでもない。…建悟。」 不意に、我が子を見届ける目になる。

 

由美「・・・。」

建悟「はい。」

父 「…昨日の話はいきなりすぎて意味が分からん。」

 

由美「・・・。」

建悟「・・・。」

父 「が、お前の事だ。本当のことなのだろう。」

 

由美「・・・。」 悲しい笑みを浮かべる

建悟「・・・。」 哀しい面持を浮かべる

父 「…前世の記憶か…あまり考えた事はないが、確かに納得できる所も多い。」

 

由美「・・・。」

建悟「・・・はい。」

父 「それはあまり私も気にしていない。お前はお前だ、私と由美の息子に変わらん。」

 

由美「・・・。」 受け入れがたくも、気にしないと笑顔を作る。

建悟「・・・。」 うれしくも、苦しい顔を浮かべそうになる。

父 「それになんだ、今更そんなこと些細なものだな。例え化けていても変わらんよ。」

 

由美「・・・ぷっ、ふふふ・・・」 思わず笑ってしまった。

建悟「・・・・・・。」 真剣に聞き漏らさんと耳を傾けている。

父 「…建悟は建悟だ。他の誰でもない、だから甘えてこい。ずっとひとりで寂しかっただろう」

 

由美「・・・・・・(にやにや)」

建悟「…ありがとうございます。…父さん。」

父 「……。」 腕を組みながら、恥ずかしいのを今更隠しながら視線を逸らしている。

 

由美「お父さん照れてるぅ?」 

建悟「……ふふっ。」

父 「な、て、照れてなどいない! 恥ずかしいなんてことはない!」 わたわた

 

由美「あ~照れてる照れてる~、ふふふ~(にやーり)」

建悟「母さんそのぐらいにしてあげて、父さんが困ってるよ(笑)」

父 「む、むむむ…むむむ…」

 

 

結局、俺の父さんも母さんも変わらないなぁ。

もういつ、一方的な戦争が起きても不思議じゃないというのに。

まるで永遠の別れだから忘れないでほしいと言わんばかりに、

俺の母さんは、泣いていた。笑い泣きなんかじゃない。泣いていた。

俺の父さんは、泣かなかった。本当は父さんが一番が泣きそうなのに。

俺は…俺は、忘れない。父さんと母さんを、建悟としての父さんと母さんを。

 

 

支度を済ませて玄関を出ようとしたとき…だんだんと曇り空が覆いつくすようになってきていた。

「「建悟。」」

俺は振り返った。…父さんと母さんだ。

「何があっても変わらない。どんな時もお前であれ。お前の進みたい道を選べ。」

「どんな時も母さんは待ってるわ。…今日は雨が降るわ、気を付けていってらっしゃい。」

なんだよ……まるで今日がお別れみたいで……いやだなぁ……

「……ん?……ふっ。」

「…建悟。」

不意に、抱きしめられた。弱弱しく儚くも、一番知っている母親の肌で。

父は見つめている。一番泣きそうなのに。弱い父を見せまいと。

 

 

「何があっても、あなたは生きるのよ。」

「いきなさい、あなたはあなたの道を進むべきなの。」

「辛いときは頼りなさい。一人じゃないから、だからこそ精いっぱい生きなさい。」

「さぁ、頑張ってらっしゃい?」

……俺は、こらえた。こらえても、瞳から滴が止まらなくて……

 

玄関をくぐりぬけ、振り返ると……母さんが泣いていた。

糸が切れたみたいにわんわんと泣いてて。…ああ、やっぱりそうだったんだ。

父さんは何も言わぬまま、まっすぐと俺の眼を見て……。

俺は離れた。…父さんの泣く姿、最後まで見なかったな。

 

 

俺は緑川火薬鉄砲店についた。

ここの一階のフロア全てが、散弾銃と猟銃の様々なクリアケースで展示されたガンロッカーに囲まれていて、ガンパウダーや関係雑誌、

銃の整備工具に油や交換パーツ……いろんなものが置かれていて、その余った隙間に、客を迎えるための黒革ソファーと給湯機が置かれている。

外の飛び地に弾薬の保管庫があって、通常は爺さんの2階の金庫の中に弾薬保管庫の鍵が厳重に保管されている。

 

昼前に開店するこのお店に朝から通い詰めて準備をするのだが、……やはりそうか。爺さんも…。

いつも整備するための机でくつろいでいる椅子に座らずに、黒革ソファーで……しかも珍しく、キセルに刻みタバコを詰めて火をつけている。

爺さんがタバコを吸うなんて相当嫌な事があったときか人が死んだときぐらいしか見ないんだが……爺さんがタバコをふかしているってことは…

 

「…タツ様。いいや、建悟。」

好々爺の明るく優しげな声が、子を叱る厳しいオヤジの低い声で。…思わず背が凍った。

「座ってくれ。」

言われるがままに座る。

 

「……」

「戦、か。」

息を呑む。つばの音がしてしまう。

タバコをふかし、煙が一息落ち着かせる。

 

「よもや虐殺とはな。平和なまま終われると思うたが、そうもいかんか。」

「建悟の話はいつも正しく、例え間違っていても真面目な物言いだ。疑わぬわけがあるまい。」

 

緊張が続いたまま、爺さんの言葉を待つ。

 

「一体何人死ぬ? 女子供、問わず嬲り殺されるのか?」

「隠れて技を磨き続けたお主ですら、何もできぬのか?」

「人に頼ってもどうしようもできなかったのか? いや、どうしようもできないのか?」

 

俺は何も言えない。否定もできない、沈黙を肯定として受け取ってくれた。

 

「……なんということだ。この世の兵器をもってしても通用しないとはまことか…ワシに友がいるが、友に呼び掛けても無駄なほどか。」

「……ええ、残念ながら…全て効かないんです、だから…逃げられる準備をしてください」

「いや、ならん。」

 

鋭く、尖った答えが俺の心に突き刺さる。

 

「…え、なぜですか?死ぬかもしれないんですよ?」

「だからこそだ。ワシより若くして死ぬ者らの事を思えばなおさら、逃げられん。」

「例え人質になろうと盾になろうと、若い者たちがワシらよりも先に逝ってはならん。」

「それに勝てぬ戦と知りても、戦わねばならぬときがある。負けられない時があるだろう?」

「建悟。避けられぬ運命だったとしてもだ、例え解決も抜け道も存在しないような問題でも。」

「例え奇跡が起こらずとも、避けられぬものは仕方が無い。だが……」

 

「勝ちに拘らず負けぬよう、全力を尽くせ。」

「さすれば最悪を撥ね退けられるじゃろうて。」

 

齢を100も数えた翁はタバコをふかす。

 

「それにな。」

「戦争は殺すか殺されるかではない。」

「勝つか負けるかの勝負。負けると知ったのならば負けぬか、引き分けに持ち込めれば良い。」

「どれだけ人命を助けられるかではなく、どれだけ犠牲を抑えられるかを考えよ。」

「人の顔を思い浮かべるな。考えれば死ぬ。いたずらに犠牲を大きくするだけは避けろ。」

「迷いを捨てよ。非情になって己が道を踏み越えろ。生きて次にいきろ。死ぬのは許さん。」

 

翁はただ、紫煙に身を預ける。まだまだ若いなと思い、厳しく接する。

 

 

「……。はい。」

「話は終わりだ。今日はそうだな、いつものよう…」 

 

いつもの好々爺に戻ったところで、突如「窓がバタバタと五月蠅く鳴り響く。」

遅れて地震のような短い揺れがガタガタと打ち鳴らす。

……建悟は三門市が見える方向へ目を向けた。…爆発と思わしき音の風が遅れて届く。黒い煙が細くも立ち始める。

 

「…なんと、もう始まったのか。」

老人は驚くも。

 

「建悟。」

「お前は目的を果たせ。それがお前の使命(避けて通れない天命)なのだろう。」

「今は力が無い、だからこそ貪欲に学べ。身に付けろ。そして…一矢報いてこい。(生きて帰ってこい。)必ずだ。」

 

「ワシは孫たちを少しでも避難させる。なぁに心配せんでええ、…くれてやる。餞別だ」

水を得た魚のように元気に動き回る緑川爺が車の鍵やらを手に取りながら、建悟にとんでもないものを用意していた。

 

「これがお前の今の武器だ。逃げるだけが全てではない、……抗う術を見つけろ。抗え。」

 

 

緑川爺の用意した……ポンプアクション式の散弾銃、12ゲージのIthaca Model37だった。

 

「"おまけ"を付けてある。確かめな、準備が出来たらいけ。ワシはもう往く。…戸締りせんでよいからな。」

 

緑川爺は返事も言わせずにそそくさと外に出てしまった。

建悟は困惑したまま……ショットガンを手に取る。

感触や最低限度の点検を見ていくと……一目で切り詰められていることは既に違法だが、それ以上に違法な銃器であることが分かった。

 

肩掛けバックに隠し持てるように切り詰められたバレルとストックが小さく拳銃サイズ(チューブ2発)になっており、本来あり得ない形である「ピストルグリップ」の形で拳銃のそれと同じであり、しかも安全機構の役割を果たすパーツが省かれて連射「スラムファイア」が可能となっているなど……明らかに攻撃的な改造が施されており、黒色の細長いタクティカルショルダーバックに隠し持てるよう詰められており……

 

「…爺さん。やり方が過激すぎだよ…だけど、ありがとう」

自らを守るための銃を手に取り、感触を確かめていく。最低限の動作を確認し……3インチの12ゲージ・マグナムショットシェルでいつもより重く感じる所から、火薬か弾が多く詰められているのだろうと察せられるほど重い。明らかに10発だけ異常に重たい弾薬まである。

合計60発のマグナムショットシェルをバックに詰めていき、ばれない様に私物も仕込んで……1点スリングを取り付けて片手で保持・コッキングできるように、ストックとフォアエンドに取り付けた。

 

 

「……俺ができること、少しでも…逃がす事か」

覚悟を決めた青年は、外に停めているスズキのGN125Eのエンジンをふかし、フルフェイスヘルメットを被り…地獄の街へと自ら向かう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA04 ⦅PSR/RV⦆

どうもこんにちは、夜種王です。
ずっと数年前から執筆がしたく、TRPGの創作活動と相まって設定を固めるだけで今まで小説創作をしないで日々を過ごしていました。

ようやく取れた休暇を使い、初めて執筆した小説作品を投稿したいと強く思い、ワールドトリガーの二次小説を書かせていただきました。

ここからようやく原作キャラクターが登場してきます。
原作忠実さよりも、雰囲気やオリジナリティを追求して「自分の思い描くワールドトリガーと、その世界で狭間に経つ転生人」を描いていきたいと考えています。

直感でその日の感情に任せて執筆するタイプの人間の為、これまで描いた雰囲気や会話などは各話数で違うかもしれません。
私は自分が楽しめるかどうかをモットーで執筆したいため、これからも独特な展開となっていくのかもしれません。

今後ともよろしくお願いいたします。それでは続きをどうぞ…


「ただの無敵に留まらない、転生人の在り方を。」


[PROFILE]

[EDICT,SANCTION DOCUMENT/DATA04]

―――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/2013.12.--] ⦅READER/VIOLET⦆

[音声記録-会議室ログ]

 

ここはボーダー上層部の会議室。

ボーダー本部司令の最高責任者である城戸正宗を筆頭に、

本部長の忍田真史と補佐を務める沢村響子。

本部開発室長の鬼怒田本吉。

メディア対策室長の根付栄蔵。

外務営業部長の唐沢克己。

 

そして警戒区域の外縁に存在する支部の、

基地南西部玉狛支部の林藤匠。

基地北部および山頂より防衛を担当する本目支部。

 

同じく鈴鳴、綿鮎、弓手町、早沼、久摩各支部長は不在の為いない。

 

ここでは「"イレギュラー"ゲートの発生」について議論されている中、名実ともに実績を挙げてきた迅悠一(自称実力派エリート)が召喚された所から会話ログが抜粋されている。

 

 

迅 「迅悠一、お召しにより参上しました。」

迅にとってはこの先の話が「見えている。」 彼には少し先の未来が見えている。

いつものように飄々としながらも重要な部分を話せるように、ふざけた態度を見せながらも未来をどう動かすか終始考え事をしながら会議に参加している。

今回招集されたのもおそらく、ボーダーの存続に大きな影響をもたらす異常事態だからこそ、迅という貴重な人材が呼ばれたのだろう。

 

城戸「…揃ったな、本題の続きだ。」

「本日、警戒区域外に開いたイレギュラーゲートの状況およびネイバー(近界民)への対応策についてだ。」

「本部長。」

忍田「…今日の未明、警戒区域外に(ゲート)が発生。」

「嵐山隊の報告によれば、2人のネイバーらしき人物と共に十体のトリオン兵が確認されている。」

「被害は最小限に抑える事に成功したが、その門の場所が問題だ。」

沢村「こちらが門の位置と現在の状況です。」

 

会議室内にデジタル3D映像が流される。これは「本目」がそれとなく導入させたトリオン稼働型立体モニターだ。

専用のモニター画面が用意されている本部作戦室と同じ仕様と通常のデータ映像写真や、ボーダーの全情報にアクセスできる生体トリオン認証が必要なそのモニターから、今回イレギュラーゲートに関する調査資料と研究結果が次々と展開されていく。

展開された地図情報や開発本部の研究データから一目でわかる事は、「誘導装置が正常に起動されている」にも拘わらず、ボーダー管轄の警戒区域に門が出現しなかった事がわかる。

 

沢村「この通り、本来警戒区域で発生させるよう誘引する誘導装置が機能していたにも関わらず、今回警戒区域外にゲートが2件も続けて報告されています。」

 

鬼怒田「開発部総出であたっとるが、原因がつかめん。」

「トリオン障壁によるゲートへの強制封鎖を検討しておる。」

根付「どんな手段を使ってでもイレギュラーゲートをどうにかしないと、第一次近界民侵攻の恐怖(トラウマ)が再燃しますよ。」

「直ぐにでも封鎖すべきです! 被害が大きくなる前に解決すべきです!」

唐沢「……」

本目「……」

 

林藤「……それでおまえ『も』呼ばれたわけだが、どうだ。迅。」

 

迅 「……」

迅は全員の未来を見ていく。

迅悠一には全ての可能性を見る事ができる。避けて通れない未来からたった一言で変わってしまう未来まで。

 

だが迅にも苦手とする相手がいた。

本目支部長。

沢村本部長補佐よりも更に若い、林藤支部長も迅悠一も「ボーダー創設前」から会ったことがある若き青年。一般的な隊員と比べ物にならないトリオン量もそうだが、それよりも「前世の記憶を持つ」という聞いたことのないサイドエフェクト。

陽の出を知らない冬の寒さに似た眼差しに不相応な落ち着き。支部長のスーツ姿には似合わない若さ、何よりも「殺気」。「余裕」。「諦念」。「”先を識る者だけが持つ目”」。

 

年齢にそぐわない前世の記憶を持っているだけでなく、ボーダーの支部創設に大きな影響を与えたうら若き本目支部長は、その支部スタンスが防衛専門と一見すると堅実で公正な支部に見えるが、その支部にかかわる情報がこの場にいる全員を含めても知らない謎が多い。

本来前線に出ず事務やスカウトを主としてこなすのが支部長のあるべき姿だが、支部長本人が「部隊長」としてボーダーの防衛前線で活動しているだけでなく、その活動時期が全て「夜」であること、非常時にのみ「数日間にも渡る防衛シフトを組む」特異性から、このボーダーに所属する全隊員とのコンタクトも限られている為に『本目支部長と本目支部を知らない』者がいるほどだ。

 

直接的な情報ソースが少ない本目支部長と本目支部を知るA級隊員以上の関係者は、「ボーダー内の風紀監視と夜間防衛だけしてるよくわからない連中」としか知らないことが大半だ。

この事はこの場にいる全員が知っている。

 

 

…近い年齢にあたる身長158cmの風間蒼也よりも更に背が低い本目支部長は「それらの経緯」(素性が分からない)で苦手ではなかった。

 

 

迅のサイドエフェクト「未来視」は数秒先の確定した未来から不確定の数年数十年先の事までの未来が視える。

対して彼は「過去から現在」までを視る事ができるためか、自分が得た未来の情報を知ったとしても彼のサイドエフェクトを通じて知られてしまい、「本目の未来が視えない」のは「それ」が干渉しているからなのではと迅は解釈している。

故に迅悠一は本目建悟支部長を苦手としていて、「未来の不確定要素」として常に警戒している。

同時に「未来が分からないということは、未来を変えられる影響力が強い」とも考え、矛盾した信頼も寄せている。

 

迅は全員の未来が見えた。だが本目が関わる未来だけは見えない。

いつものように迅は内心冷や汗をかくも、一つ良い未来が見えた。

 

それは決して人が死なず誰もが幸せになれるものではない。

誰も死なないなんて都合のいい話は無い。迅自身がよく知っている。

自分が助けられない場面なんていくらでもあったのだから。

だから迅は一人で苦しむ。自分一人ではできないことがあるから、このボーダーに入った。二人になればお互いを助けられる。3人になれば誰か一人を助けられる。

迅は暗躍を趣味とした。その意味は「一人ではあまりにも非力だから」。誰か一人でも助けてもらえる人がいれば、手伝ってくれる人がいれば、悪い未来を一人で変えられなくても皆でいい未来に変えられるから。

 

迅は例え「未来を自己都合で書き換えられる力を持ってしまった」本目でも、快く協力をしている。本目も迅の事をよく知っているからこそ、何かと相談していることが多い。それが「古くからの付き合い」でもあるから。

 

 

迅「まかせてください。イレギュラーゲートをどうすればいいか探ればいいんでしょ?」

迅は予知した未来を吟味してから、その言葉を紡ぐ。

 

「イレギュラーゲートを強制封鎖してください。」

「おれのサイドエフェクトがそう言ってます。」

 

迅の目配せから、本目はトリオンの秘匿通信で迅のトリガーに干渉する。

 

本目『俺は関わるべきか、迅。(未来を変えてもいいか)

 

 

迅悠一のもう一つの未来の選択が今、ここで下された。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA05 ⦅PSR/RR/2009.06.14⦆⦅PSR/RW/2013⦆

―――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/2013.--.--] ⦅READER/WHITE⦆

[「」]

 

俺は気が付いてしまったことがある。

例えば、普通に過ごしていたとしよう。"普通"ならそれまでの過程を覚えている事が当たり前なんだ。

 

…俺にはどうも、その普通が異常だ。

なぜ俺はそれまでの過程を覚えていない?

ここに書いた事以外の事があっていいはずだ。だが、覚えていない。

 

城戸指令、もし万が一の事があれば俺を消してください。

俺は一度死んでからおかしくなってしまったのかもしれない。

 

「 俺 は お か し い の か 」

―――――――――――――――――――――

 

 

[PROFILE]

[EDICT,SANCTION DOCUMENT/DATA05]

―――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/2009.6.14] ⦅READER/RED⦆

 

ゲートが発生している街中にバイクで向かっている中、俺は一つ考えたことがある。

 

よく考えれば逃げればいいのではなかったのかと。

だがその考えはすぐに払拭されてしまった。

 

確かトリオンモンスターこと雨取千佳だ。原作の彼女は確か…気配を消せていたのか?

あの彼女だったら俺の考えていた事が実現できたのかもしれない。だが失念していた。

「俺がいつ転生キャラみたいなチート能力を持っていると錯覚していた?」

 

 

……これは激しく自責した。確かに高校3年生の始まり頃からネイバーに一度狙われた事は分かっていた。卒業した辺りで偵察みたいな見たことのない小型トリオン兵がいて、たまたま壊そうと目を狙ってみたら倒せたことが2,3回あった。

 

……なぜ俺はトリオン兵やネイバーに対抗できる能力を持っていたと勘違いしていたんだ?

それにだ、旧ボーダーの人たちは「何時どこで」現れるのか分からない。そもそも「二日で東三門が壊滅」だ。……何を考えていたんだ、俺は。

 

しかもだ、主人公の空閉はまだ来ていないし、三雲も確か蓮乃辺で…どうだったんだ?何もなかったのか? 雨鳥は…分からないが、確かその兄は今よりも前に消えたはずだ。

 

……『なぜ俺はトリオン体に対処できる能力がある』と思い込んだ? 空閉の自動車との接触事故からの発想か?

いや待てよ?

それはつまりある一定のトリオンがあくまで戦闘体でなく護身用トリガー程度だったとしたら……

 

あり得た、のか?

 

まだ答えが出ていない中でバイクを走らせていたときには、もうチャンスは逃していた。橋を通り越してしまった。

……はは、三門市の人間たちが蹂躙されちまってるよ。警察は……あぁ、機能してないな。

 

ああやっぱり、車の方が簡単にひしゃげちまってる。ダメだ……逃げないと。

逃がせるといった手前、どうやって逃がす? 俺には何もできないじゃないか。啖呵切ったのに…

「死ぬな?」

 

無理だ。俺は甘く見すぎた、…はははそうか、ここまで怖かったんだな、そりゃ三輪もおかしくなるわ…

 

 

最後に映った本目の瞳には。市民を誘導する警察官が必死に呼びかけて自分を犠牲に四肢を捥がれ胸を穿たれるまで避難誘導をする姿。

後ろから遅れて自衛隊がたどり着き、数えきれない戦車や車が銃声と砲音を轟かせて防衛線を構築するも、既に無駄と分かっていたが光景に映っていた。

 

10式戦車の起動輪がアスファルトコンクリートの道路を切り裂いてノロマなバンダーの目にめがけて集中砲火を浴びせ、高機動車が対空射撃を始めるも…あまりにも無力で、虚ろな乾いた音が弾丸を貫けず……

始めは機動性で勝っていた自衛隊の兵器も、戦闘用のトリオンで構成されたトリオン兵の装甲には全て無意味に等しかった。10機の戦車砲が炸裂弾と徹甲榴弾の雨を浴びせても……ヒビすら入らなかったのだから。

バムスターとバンダー。その違いは「捕獲用」か「捕獲がついでにできる砲撃型」か。どちらも今の建悟にとっては無意味に近かった。

 

本目はただ茫然と、道路のど真ん中で立ち尽くしていた。自衛隊の隊員がど真ん中で逃げずついに最後の一人となった青年に何か呼びかけようとしていたが、その声が届かず……バンダーの砲撃を受ける前に、真後ろで戦車砲の轟音が建悟の身体を震撼させた。…数えきれないバムスターの前に玄海の兵器を駆逐していくバンダーの砲撃が、カウンターと言わんばかりに正確無比に、後ろにいた戦車ごと巻き込んで……

 

―――。

 

 

―――俺は動けなかった。

―――怖かった。

―――死んだときの事を思い出していたからだ。

―――右目を抉られ続けた死の痛み。動けない苦痛。凌辱されていく咀嚼。

―――俺は悔しかった。

―――悔しい?

―――俺に何ができた?

 

何かに気が付いたものの、新たな疑問へ費やすための時間が無くなってしまった。

彼は2度死んだ。バンダーの砲撃と戦車の爆発から……跡形もなく肉体が消えていた。

 

撃て、撃て!と後方から続く戦車と戦闘車両に戦闘ヘリ、民間の救急車に消防車……

全てが果たすべき使命を抱えて地獄の門を潜り抜けていくが、あまりにも無慈悲に、情状酌量すらなかった。

 

……物語はここで終わる。

…ここで終わりだと?

約束が違うぞ。

 

 

この世界の理から外れた『空』の観客席で観覧していた復讐の女神メガエラ。

メガエラは狂った作劇家の演劇を見ていて疑問に思った。

 

たったこれだけか? まだ何もしていないではないか。

もう少しだ。もう少し先を楽しませろ。…そうだ、復讐だ。

 

 

復讐の女神メガエラは観客席から降りて玄海へ顕現する。もはや魂ごと木っ端微塵にされてしまった憐れな人の仔に、人ならざる力を与えるために。人の仔は神に好かれてしまった。

 

 

 

―――おかしい。一度消えたはずだ。この感覚は…

―――「人の仔よ。」

―――誰だ?お前は…

―――「…、悪事を罰する者。復讐者。復讐の三女神が一柱、『嫉妬する者、メガエラ』。」

―――悪事?復讐?女神?

―――「苦しいのではないか? 理不尽ではないか? 弄ばれ、死してゆくことに」

―――。

―――「御前はまだ死なぬ。だが消えるだろう、気紛れに邪神が本を破きおったからな」

―――どういう意味だ、邪神…?

―――「ニャルラトホテプ。お前がこの世界に転生するハメになった原因。」

―――「望まぬ運命を歩まされたその原因。」

―――「御前は恨まないのか。何もしてくれぬどころか、お前を殺すよう仕向けたのだ。」

―――どういう意味だ、メガエラ…俺は何も知らない、ニャルラトホテプ?

―――「…あぁ、記憶が消されているのか?覚えておらぬのか。」

―――記憶が消されている?…どういう意味だ?

―――「…考えよ、されば真の理へ近づかん。」

―――「妾を欲せ。復讐せんと望んだときに。メガエラのその名を。」

―――待った、よくわからないんだg

―――「仮初の器をくれてやろう。もう一度生き残れ、呼べば応えよう」

―――いやどういう意味だ……

 

 

不意に意識が戻った。…咽る、のどに何か…うえぇぇっ!?

血だ。しかも肉片か?気分が悪い、体中が痛い。なんだったんだ今の声といい状況は……!?

 

立ち上がろうとする前に体の確認をする為、動けるか確かめながら周囲を見ていたところ…生首と表現できない、損壊してしまった人体の頭の肉塊を見てしまった。

血やグロテスクな部位は見慣れていたからパニックにはならなかったが……これは酷い、俺は死んだ

「!? あ、くっそ…くそ…」

 

思い出してしまった。俺はそうだ…あぁ、爆風に巻き込まれて細切れになるような火傷に激痛に…死ぬって、あんな…だっけ?

「…くそが!」

思わず、近くにあったコンクリート片に拳を思いっきりぶつけた。…コンクリート片?

俺はハッと上を見た。……ビル、あったはずだよな。

遅れて周りを見渡す。……何も、ない。おいおい、一瞬で瓦礫に…?いや待った、何時間経っている?

 

俺は携帯を取り出そうとした。…だがそこに無かった。

『俺は服を着ていない素っ裸だった。火傷痕も無く骨は折れていないが、ところどころ傷まみれだった。』

 

 

「…ははは、こまったな…本気で俺死んだのに。また生き返ったのか?」

「ま、よくわかんねえからいいや……」

 

俺は当てもなく歩くことにした。遠目に見ればバムスターやバンダーがまだ交戦しているのがわかる。だけど音が届いてこ……遠目?

 

俺はふと疑問に感じた。…ついさっきも周囲を見回したが、トリオン兵の姿なんてなかった。どういうことだ?

 

「…ん、これ俺のバイクのか?こんだけぶっ壊れてたら…あのバックもショットガンも…」

俺は気にしないことにした。…バイクのタンクだったフレーム部品を見つけた建悟はもはや自分の荷物を探すことも諦めた。

 

「にしても俺って死んだのか?…お。」

近くで水たまりを見つけた。…水道管でも破裂したのか、倒壊したビルのがれき周りに湖のようなとても浅い水たまりができていた。俺はそこで自分の姿をハッキリと見る事が出来た。

 

 

「…俺本気で死んだんだろうか。」

確かに体は全て元通りのような姿になっていた。…右目は義眼を入れたままの状態だったため、見えないままだが。

「…復讐の神のメガエラ、ねぇ。」

ぼそりと呟き、何も起こらないからやっぱりかと思い過ごしながら、近くに服が無いか探すことにした。案の定「仏」がたくさん埋まっていたわけで。

 

「すまねぇな、借りてくよ…俺が不甲斐ないばっかりに、ごめんよ…」

俺と同じぐらいの体格で綺麗な「仏」を見つけて、ジーパンとTシャツだけを拝借した。

「…他人の服、着たくないんだけどなぁ…仕方ねえか…」

「……これでいいか。ごめんよ、借りていく。後で供養するよ」

 

よく見ると背中を貫かれて血が付着していたが、他は破れていたり血まみれだったりとまともなものがなく、仕方なく肌着のようなぴっちりと伸縮性のある白Tシャツに長く履かれて色あせてきたが破れていないジーパンを履いた。

靴下は…靴も借りていくか、うえぇ。

 

「くそったれ、本当なら死んで終わりの方がよかっただろうに…」

毒づきながら他人の不潔で血と汗に汚れた服を借りていく。…だが感謝をするため合掌して九字を唱えてから、俺はここから立ち去ろうとする。

 

 

「さーてどーすっかなぁ…緑川爺は知らないし、…あ゛」

思い出してしまった。…父さんは?母さんはどうなった?

 

「…くそっ!こんなところに来るんじゃなかった!無事に逃げているといいんだが…」

最悪だ。全て俺の選択が間違ったというのか。せめて今生きているのが…奇跡なぐらいなんだが。いや死んだが。

 

 

「……。!?」

俺は咄嗟に身を隠す。近くで物音がしたからだ。崩落して危険だが隠れるに持って来いな倒壊したビルの柱に隠れる。

…だが待っても何も現れない。勘違いか?

 

俺は音がした辺りを『よく見よう』と意識した。

すると『肌色の何か』を俺は見てしまった。突然の事に驚いて尻もちをついてしまった。

……もう一度見てみると確かに何にもない瓦礫の光景だが、かなり遠い先に…積み重なり折り重なった瓦礫の中に…動いている?手?人か?

俺は隠れている柱から出てすぐそばの瓦礫、…どこかアパートだったらしい軽い木や倒木に金属片などの瓦礫に近づくことにした。

 

 

「……?」

隠れていたビルの柱からアパートの残骸まで数百メートル離れていて普通見えないはずなんだが、俺はどうも見えたらしい。いよいよおかしくなったか?と思ったが、どうも意識してみると遠いものが手元にあるかのように視えるらしい。

2,3分ほど歩きながら自分の身に起こった違和感を確かめつつ、目的の場所にたどり着いた。…たまたま開けた場所で見えていたらしい。瓦礫より先の光景は流石に見通せないらしいな、これは。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「~~! ~~!」

「え、大丈夫ですか!?」

 

俺は何重にも積み重なった木々や金属物を除けていく。その下にやはり誰か埋まっていたらしく、なんとかして出ようしていたらしい。

ようやく瓦礫に胴体ほどの隙間を作ったところで、マンホールだったらしい空間の隙間で埋もれていた小柄な女性を見つけた。

といっても中が暗く2M弱も高さがあったので、顔も姿も見えないのだが。

 

「さぁつかまって! もう少しだ!」

「はい! 助けて、んっ~!」

 

必死に手を掴んで引っ張り上げると、中学生か高校生ぐらいの黒髪で腰上まで伸びている、140cm台とちいさく、人形のように凛として可愛らしい女性だった。よく見てみると…うん?

 

「あ~やっと出れた! ありがとうございます!」ぺこり

「…あれ、清水先輩?」

「え。なんで私の名前を?」

 

 

 

思い出した。俺が高校時代のサバゲ―部で3年生になってから部長を務めるまでやっていた、前部長の清水麻理だ。

卒業して以来は「喫茶店を開くのが夢だったの!」とか言って、専門大で調理師を取るとか言っていたなぁ。実際、実銃に匹敵する知識量ならサバゲーフィールドやエアガンのオーナーになってよかったとは思うんだが、そこは何か違ったらしい。

 

「まさかここで出会うなんて…建悟ですよ。清水先輩こそ何でそんなところに?」

「え、あー…なんというか、うん。」

 

気恥ずかしそうにして答えない辺り…これはそういうことか。

 

「"また"運が良かったんですね?」

「ち、違うもん! 逃げようとしたらマンホールに落っこちちゃって…あっ」

 

一人で色々弁解しようとして結局頭から煙が出ているあたり、清水の変わらない一面である。

清水麻理。彼女は不思議なほど運がよく、最も例えやすい例が「自動販売機の前で100円を落としても、その下に1000円札が落ちていた」、「宝くじを1等連続で当てる」、「適当に鉛筆を転がしても合格する」とかそのぐらい強運の持ち主だ。

きっとこの地獄の中でも運よくマンホールに落っこちて気絶でもしたかやり過ごせたかだろう。

 

「あ~なるほど。」

「だから違うってばぁ!(ぷんすか)」

「ごめんごめん、あまりに先輩の運の良さがここまで来るなんて…」

「もー建悟ってば前からそうなんだから…あれ?それ…血?」

 

清水に指摘された。背中の血は転んだときのかすり傷だと言ったが、どうやら違うらしい。

「そうじゃなくて…口元の。血がついてる。」

…口に血? 俺は言われて手で拭ってみた。……本当に血だ。

「…えっと、どこか怪我とか…」

「大丈夫だ。何も心配はいらない。それよりも…ここからどう出るかだな。」

「えっと、そうだね。うん、ここからどう出よっか。…本当に大丈夫なの?」

 

こてりと首をかしげる清水。やはり気になって仕方がないのだろう。だが俺は不調でもなければ違和感を覚えたこともない。…いや待てよ?

違和感?あっ。

 

俺は一つ気が付いた。「口に何か入っていた」ことに。…いや考えないでおこう、気にしない方がいいに違いない。

「……。」

彼女が心配そうに見ている。

「大丈夫だよ。ここから出る事をまずは考えようか。」

「そうだね…うん。」

 

 

立ち去る時に不意に脳裏を過ぎった。

俺は本当に死んだのだと。

なぜならば、吐き出したあれは。

 

「舌と歯が融けて肉塊になってそのまま焦げた、死んだ自分の亡骸のナニカ」だった事を、

俺は嫌でも憶えていたのだから。思い出してしまったのだから。

死んだことを、自覚した。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA06 ⦅PSR/OC/vol.10⦆

―――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/Volume.10] ⦅ORDER/CLEARANCE⦆

[Μέγαιραについて]

 

次はメガエラについてだったな。

おっと、その前に書いておく必要があった。

 

もうすでに読んでいてわかると思うが、時系列が明らかにおかしい文章や時間でログが保存されているときがある。きっと「」の仕業なんだろう。奴がもたらす現実改竄はデタラメだ。私がこうして残した全ての情報をぐちゃぐちゃにしているのがもうわかるが、私は奴に打ち勝たなければならない。

 

勝たなくてはこの世界から出る事も、「」に復讐することもできない。私という俺の情報がかき乱されて存在自体がパンクを起こしてバグ…エラーを起こしたように存在が存在自体を壊しちまう。

私の性格がおかしくなったのも、記憶が飛んで事実があいまいになっているのもそいつらのセイだ。(そいつらの我儘をユルシテハイケナイ。)

 

あの「」のくそ野郎にも、現実改竄をしてくる「」にも厄介だが、この二人に打ち勝つためにはこの神の加護が無ければ俺は抵抗が出来なかった。良く知られている通り、「嫉妬する者」としての名前や復讐の神としてよく知られていると思うだろう。

それと、嫉妬という言葉はよくできている。よくある愛憎劇の妻が愛人に持つ恨みや妬みの感情だけと思っていたが……解決したい目標があっても自分には無力な場合もどうやらこの世界は含まれるようだ。

 

私が例え狂い壊れてしまったとしても、かの女神だけは私の味方となってくれるだろう。

常にメガエラは復讐と嫉妬する者の味方となって支えてくれる。

 

全ては復讐のため。全ては私の奪われた全てを報復するため。メガエラは私を見守ってくれる。

―――――――――――――――――――――

[PROFILE]

[EDICT,SANCTION DOCUMENT/DATA06]

 

『俺は死んでいる』

 

この考えがずっと離れてくれない。

一緒に歩いている清水にもずっと心配されっぱなしだ。その視線が痛いほど伝わってる。

…ごめんな、清水にも話せないんだ、俺の秘密。誰にも言えないんだ…

 

清水「……。」

建悟「……。」

清水「ねぇ。」

建悟「……。」

清水「ねぇ、どこへ向かうの?」

建悟「……。」

 

俺は不意に足を止める。…だめだ、ずっと先にも、バムスターやバンダーがこの先にもまだいる。

清水「…どうしたの?」

建悟「…この先もだめだ、かなり遠くだが奴らがいる。」

清水「…うん。」

 

ダメだ、さっきから三門市から抜けられそうなルートを探して歩き回っているのだが、行く先々でトリオン兵が必ずいる。…まだ旧ボーダーの人たちの動きも無いみたいだし、一方的な蹂躙と戦火が続いている。

 

清水「…建悟ってそんなに目がよかったっけ?」

建悟「…うん?」

清水「…私も目はいい方だけど…見えないよ?」

建悟「……。ああ、俺には見えているが…」

清水「…? そうなの、ちょっと…すごいかも。」

建悟「……」

 

俺はまた黙る。

…どうすればいいのだろうか、このまま待つべきではない気がする。

そうだ、今は…何日だ? 

しまったな、拝借すればよかったが…壊れていたものばかりだったしなぁ。

 

建悟「…ん、そういえば」

清水「…なあに?」

建悟「清水先輩、今日っていつですか?」

清水「へ? あぁうん…(腕時計を見る)…15日だけど、どうしたの?」

建悟「…15日?」

清水「うん、15日。…あの、建悟?」

 

すっかり忘れていた。そうだ、1日…経ったのか。

だがたった1日でこの瓦礫の山だ。…ということは昨日と今日を合わせて二日間で壊滅ということなのだろうか。

…今気が付いた、清水が本当に不安そうな顔で見つめてた。

 

建悟「……。」

清水「…建悟?」

建悟「ん、どうした?」

清水「うん、たぶんなんだけど(…あれ、なんか言葉遣いが変…だよね、やっぱり?)」

清水「…上のあれ。急いで離れた方がいいよね…?」

 

清水に指をさされて…歩いてきた道を振り返った方角に、「門(ゲート)」の予兆であるバチバチ音とブラックホールのような暗い空間が広がりつつあった。

 

建悟「なっ、あれは…」

清水「え、なんなの?」

建悟「走るぞ!逃げろ!」

清水「え、ちょ、わっ!」

 

俺は清水の手を取り逃げる事にした。もうこの際どうでもいい、逃げた先にバムスターがいたところは……他はどうだ。

ダメだ、右手や左手を見てもどこを見てもバムスター、バムスター、バムスター。…後ろには4体ものバムスターがやってきていた。一体なぜだ?

 

清水「ねぇ!あれはなんなの! なんでまた急に出てきたの!?」

建悟「分からない!」

清水「きゃっ!」

 

清水が不意によろけて、俺も引っ張られる形でかがむような姿勢になった。

……ゴォォオン、とエネルギーの砲撃が辺りの瓦礫となった家々を吹き飛ばしてくる。

 

建悟「大丈夫か!」

清水「うん、平気!」

 

このまま逃げていれば追いつくことはなさそうだったが……突然の妨害でそれが難しくなった。清水を連れたまま瓦礫を避けたり超えたりしながら、逃げる事は…かなり体力が削られていく。

ただでさえ俺も息が切れて苦しくなってきたというのに、清水はもう必死でなんとか追いついてきている感じだ。…じり貧だ、このままでは。

 

建悟「(くそ、何かいい手はないのか…)」

清水「ーっ、まって、…ま、って、ふーっ、はーっ」

 

この先もまだいるか。…「先を見通せる目」になっても、結局のところは逃げるしかない。だが逃げようと思っても囲まれてきている。弱ったな、かなり遠くにいたバムスターもちらほらとこっちに集まりつつある。…このままでは包囲されるな。

 

清水「まって、…っ、…どこまでっ、にげれば…」

建悟「そこを曲がるぞ!……!?」

 

またこの先もバムスターか。このビルを左に曲がれば…………

 

バムスター「……」

 

 

ズン、ズンと重い足音に、ごぉぉんという音がした気がした。死角に居やがった、こいつ…ってヤバイ!もう体勢に入ってやがった!

 

建悟「清水!!」

清水「え?あっ。」

 

力の限りに俺は清水を突き飛ばした。同時に…ここぞと言わんばかりに待っていたバムスターが大きく首を振って…バクリと荒々しく俺の下半身を食らいやがった。

そのまま飲み込まれそうなところで…コイツの唇に引っ掴んで飲み込まれまいと必死に掴んで耐える。

 

建悟「ぐおおっ、こんにゃろぉ…っ、逃げろ、清水…!」

バムスター「! !!!」

清水「…えっ、あ! なんで、建悟!」

 

ひたすら俺を振り落とそうと咥えたままぶんぶんと上へ横へ動かしやがる。かなりの速度と質量で…酔いそうだ、このやろう…

清水先輩がどうしようか困惑して右往左往しているが…逃げてくれ、早く、早く!

逃げていてまだ遠くにいたバムスターたちも目と鼻の先まで来ていやがる…くそったれ、くそったれ!

 

建悟「早く逃げろ! このくそトリオン兵どもがァ! クソッたれが!」

 

俺は叫んだ。どうしようもできない無力の自分が悔しい。もっといいやり方ができたのではないかと自分が馬鹿バカしい。

 

なぜこんなにも何もできないんだ。どうしてこの選択をした。どうして。どうして。

ドウシテ。

ナゼダ。

クヤシイ。

ナゼナニモデキナイ。ナゼダレモスクエナイ。ナゼシナナケレバイケナイ。ナゼダ。シニタクナイ。オカシイ。コワシテヤル。コワス。コワス。

 

 

建悟「悔しい、くやしい、クヤシイ」

建悟「クヤシイ、クヤシイクヤシイ」

建悟「クヤシイクヤシイクヤシイ。」

建悟「クヤシイクヤシイクヤシイク」

「ナゼダナゼダナゼダナゼダナゼダ」

「ドウシテドウシテドウシテドウシ」

「クヤシイドウシテナゼダオカシイ」

 

「オカシイオカシイオカシイオカシイ」「オカシイオカシイオカシイオカシイ」

「オカシイオカシイオカシイオカシイ」「オカシイオカシイオカシイオカシイ」

「オカシイオカシイオカシイオカシイ」「オカシイオカシイオカシイオカシイ」

「オカシイオカシイオカシイオカシイ」「オカシイオカシイオカシイオカシイ」

 

「≪≫!」「≪≫!」

「テヲカセ、メヰヤクニシタガヱ、ヰニシヱノメヰヤクニヨリヰデヨ!」

 

「「Μέγαιρα!」」

―――――――――――――――――――――

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

[PROFILE:◻︎E◻︎RET RECORD◻︎]

 

復讐の神メガエラ(≪Μέγαιρα≫)は微笑む。

一人の哀れな復讐者は世界の箱庭を飛び越えて異貌の外なる神に復讐せんと怨み、

その様子に愛おしく赤児の手に触れて、女神はまだうら若き幼子に復讐の凶刃(運命の改変)を与える。

 

≪第一条件の解放に成功しました≫

≪解放:復讐の鍵へアクセス≫

≪...アクセス完了≫

≪アクセス使用者:本目建悟≫

≪アクセス権限者:Μέγαιραの許可により、"復讐への誓い"の使用権限を解除します≫

 

≪............≫

≪......アクセス干渉≫

 

異常な力場に支配されたモノクロ世界でモニターを見つめていた一人の青年が呟く。

XYZ軸がもはや存在しない異常な世界は第四の壁すら悪影響を及ぼす、害悪そのものである。

完全に法則がいかれ、全てが無に還り、全ての法則が通用しない。

崩れ去った存在の崩壊終着点。全てが終わり全てが止まった、無の世界。何も無き0次元の世界。

 

[あぁ。それでいい]

[さぁ、暴れろ。建悟]

[汝は我なり。我は汝なり]

[もう一人の吾となれ]

[汝は我だったのだから]

[我は汝だったのだから]

[さぁ、殺めろ]

[殺せ]

[滅せ]

[壊せ]

[斃せ]

[逝ね]

[イネ]

[やれ]

[殺れ]

[「」]

[( )]

[殺せ]

[コロセ!]

 

≪...不当なアクセス干渉を感知しました≫

≪......ハッキング.........≫

≪...アクセス...完...了...≫

 

≪第二条件の解放が強制執行されました≫

≪アクセス使用者:----≫

≪アクセス権限者:Τισιφόνηの許可により、"殺戮への誓い"の使用権限を解除します≫

 

≪...コロセ...≫

≪............≫

≪............≫

≪............≫

≪ロ...キ...イ≫

 

 

殺戮の神ティシフォネ(≪Τισιφόνη≫)は微笑む。

世界の理から外れてしまった異常者に超常ならざる能力を与えんとほくそ笑み、

その力をもって超常者へと引き上げ、もはや届かぬ高みの席へとたどり着かせた。

現実世界も世界法則も全て通用しないその者の名は、「XNIJ=KRAÞUF」。

またの名を「悟建目本」。

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

―――――――――――――――――――――

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

P:ESD/DATA07 ⦅PSR/RV/2009.06.15⦆

[PROFILE]

[EDICT,SANCTION DOCUMENT/DATA07]

―――――――――――――――――――――

[PROFILE:SECRET RECORDS/2009.6.14] ⦅READER/VIOLET⦆

[各位レポート "本目建悟の異常性"についての資料]

 

第一次近世民侵攻の二日目当時、これらは当時の各位関係者が証言した物をまとめたものである。

結論として"本目建悟"は特異性を認められる何らかのトリガー因子を持たないにもかかわらず、

トリガー無しで"トリオン戦闘体を撃破できた"事による問題性があり、引き続き検証データが必要である。

 

2010年現在の研究データ上では、本人の意思に関係なく『無意識に発動する事がある』もので不規則性があり、

ボーダーで知られている本目建悟とは通常あり得ない言動や思想を持つことから、おそらく『別人格』と推察している。

何よりも『彼』は一見知的な性格で落ち着いているように見えているが、『常に破壊・殺戮願望』を抱いており、ボーダー内及び市内で暴動を起こさないのは『彼曰く』

『彼の者の願いであるからだ。』とされている。

 

『彼』は本目建悟の知らない言語や人生観を持っているようであり、上述の性格に加えて残虐と比喩される非常に高い戦闘能力を有しており、

『トリオンを一切用いない』戦闘スタイルと攻撃能力を保持している。研究データ上でも未知の物質で構成された「剣」「鎖状シューター」を使い、

欠損した肉体も「即座に再生する」その様子・状態は明らかに失血死するレベルでありながらいたって健康体であり、常軌を逸しているのは誰が見ても明らかである。

また『彼』の周囲は常に『空間が切断され、可視上では光景が千切れて見える』様相を呈し、『止まって残像がその場に残るほどの超高速移動や、突然の瞬間出現』などから、

「『彼』が出現したその周囲の空間は、何らかの異常な法則性が働く結果、尋常ならざるエネルギー量や破壊規模、果てに時間そのものが違う」と現段階で結論付けられている。

異常なその破壊力はトリオンの「設定された強度」を容易く超えるために戦闘体を破壊できると分かっているが、なぜ肉体が「再生するのか」については不明である。

 

また、『彼』が表出している間は本目建悟は眠りについているようであり、当の本人は何も覚えておらず『彼』と対話した内容しか覚えていないようである。

『彼』である間、非常に特徴的な現象として【隻眼の左目がから淡い赤色の燐光を伴い、盲目の右目から水色の”瞳”が形成される】が観測でき、

そのほかの特徴として【超人的な身体能力】、【常に滴り落ちる両手首の鮮血】、【上述の異常現象】、【異常な笑い】がある。

 

以上の危険性から敵近界民に本目建悟を渡すわけにもいかず、保護及び危険への管理・S級入隊処理手続きを必要とした理由である。

特に注意すべき点は「『彼』の【破壊願望】【殺戮願望】」であり、非常に危険がため今後も関係者各位は『彼』に関するデータを引き続き収集せよ。

『彼』の求める目的は不明である。明確な理由が不明な為、常に『彼』の言動に警戒し記録せよ。

 

以下は参考となった彼の"特異性"についての貴重なデータ資料である。

[編集責任者/城戸正宗]

―――――――――――――――――――――

「清水麻理の証言」

 

私は清水麻理。生まれは長野県諏訪市なんだけども、三門っ子の育ちなの!

両親の都合で確か…小学校に入学する前だったのかな?確かそのくらいの頃に東三門に来て、蓮乃部にあった小学校や三門市立第三中学校も通ったな~…

そうそう、なんでその話かっていうと……うん。

サバゲー部で一つ下の後輩がいるんだけど…あの頃はとにかく凄かった、そう凄かったの!

ええと…何が凄かった…? そうね……あの頃は……

 

『酷かった。壊れてた…って言えばいいのかな…』

 

 

清水は第一次近世民侵攻時当日、その日は行きつけの喫茶珈琲店で食事を済ませようとしていた。

幼い頃から「オシャレなカフェ!」のお店を開く事が清水の大きな夢であり、しっかりとした料理で楽しんでもらいたいと調理師としての腕を学ぶ為に専門大学へと隣街の波浜市まで通っていた。

 

今日も1限目から昼前に調理士の授業が終わり、飲食店がそろそろ開く時間帯に愛車のワインレッドのジムニーを隣街の波浜市からアパートを借りている東三門まで走らせていく。

「~♪」

早くから授業が終わりご機嫌なカジュアル系大和撫子は行きつけの珈琲喫茶チェーン店でいつもの煎りコーヒーとサンドイッチを注文する。

 

「…あの日は午前中に終わってキャラメルコーヒーとベーコンエッグを頼もうとしたわ。」

「そしたら急に悲鳴が上がってね?…外見たときには、キリンみたいな白い象のまん丸目玉がこっちを見ていて、それで……」

「なんとか必死に逃げて路地裏に逃げ込んだの。そしたら落っこちちゃって…あははは、はぁ。」

(乾いた笑いから、つかの間の沈黙)

 

「うん、そうなの。マンホールの中に落っこちちゃったの。」

「それからね。気を失ってたみたいで一日経っていたの。」

「なんとか上に這い上がってようやく!ってところで、届かなくて…」

「そんなとき、建悟くんが助けてくれたの。…少なくとも、今の建悟くんと同じ。」

「それから建悟くんと一緒にどうしようか迷ってた時にね、」

「アレが見えるって言い出したの。」

「わたしには何にも無いように思えたんだけど……」

「確かに遠くからドシン、ドシンって。」

「確かにアレが来ているような感じがしたの。」

「あぁ、本当なんだなって。」

「それで……うっ」

(数分、席を外す)

 

「ごめんなさい、ちょっと…」

「落ち着いた、大丈夫…ええ…」

「大丈夫、建悟くんについて…ね?」

「…酷かった。壊れてた…って言えばいいのかな…」

「キリンみたいな白い像に食べられちゃって…」

「それで、忍田さんや迅さんが駆けつけてくれた時には、もう…」

「建悟が、死んで…あぁ、ええと、うっ、ごめん、なさい…ううっ」

 

(録音終了)

(清水麻理の体調不良により、一時中断となる)

(後日改めて聴取したところ、忍田・迅の報告とほぼ同一なため、追記および報告資料等はそちらの報告書へ添付する。)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

[◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎:◻︎E◻︎R◻︎◻︎ R◻︎◻︎OR◻︎]

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

……。

……。

……。

 

 

ここは◻︎◻︎◻︎の狭間

既に◻︎レタ世界と◻︎の世界を繋ぐ狭◻︎

永遠の刻を宿す終◻︎と◻︎生の海

そして、"◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎"

◻︎復讐者と超常者の交点◻︎

 

 

……!

俺は気がつくと真っ暗闇などこかの上で寝ていたようだ。真っ暗闇といっても下には暗い鼠色の砂があるし、ザーザーッと心地よい海の音もする。

ただ光も風も音も無い、どこか懐かしくどこか原初的で怖さもある。この場所は…来たことがあるようだ。

 

空を見上げても星も光も無いこの暗灰色の砂浜で、明けない雲から冷たく柔らかな青白い光が辺りを照らしていて、周りを見渡せば似たような砂浜が続いていたり途切れて飛び地として浮いていたりするようだ。

俺は特に何をするでもなく、ずっと先が続いている暗い砂浜をざっざと歩いて行こうとしている。底なし沼のようにずっと変わらない平坦な風景が続いている。

 

「…また死んだのか。俺は何回死ねばいいんだろうな。」

あぁ、こんな事を考える陰気な人間じゃなかったはずなんだがな。考える度、今まで殺して来た動物たちの悲鳴が、草木や虫たちの笑い、出会った皆んなからの恨みが聴こえてくるようだ。

「…ーっ!」

俺は何か忘れてはいけない事を思い出したような気がした。

俺は本当にここが初めてなのか?

俺は忘れてはいけないもっと大事な事があったんじゃないか?

 

思い出せない。

かつて前に"もう一度生きていた"頃の事が思い出せない。

それがなんだったのかすら、もう曖昧になってきた…

俺は何か忘れてしまった。もっとこう、大事な何か…

 

よく見ずに歩いていたら何かにぶつかった。

ふとよく見てみると…とても黒い岩だ。背丈ぐらいありそうな黒い黒岩に…映像…?

ほんのりと岩上に薄く広がる光から何やら映像を映し出しているようだ。

「……?」

はっきりと思い出せない、だが自分にとって何か大切な一場面だったような…不鮮明で靄がかってよく分からない。

よく分からないまま先を進むとまた同じ大きさの黒岩を見つけた。

 

今度は…清水? いや、違うか…あいつは宗教のしの字を知らないだろうし…髪染めないだろうし…

よく分からないまま映像をまた先を歩く。

 

…小神林?けどアイツもそんな和風な服なんて嫌がるだろうに…本は捨てるしよく読まないやつだし…

 

中央に果てしなく伸びる砂道の路肩には、走馬灯のように映像が流れる不思議な黒岩が右に左に等間隔で次々と現れ、何か大切な内容をよく見ないで建悟はどんどん先へ行く。

彼はもはや心も疲弊して罪悪感に押し潰されそうで、ただ自虐と無関心がなんとか切れかけた心の糸を紡ぎ、心の余裕が無いまま自分を断罪してくれと先へ先へ進んでいく。

進むにつれてまだ明るく優しい砂浜と海の光景もだんだんと、重く寒い暗がりへと移り変わりつつあり、建悟は自ら地獄へと歩みを続けていく。

 

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

[◻︎◻︎◻︎◻︎] (壊れ往く)

[◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎:◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎]

(異常な記録データを検知。読み込み中…)

 

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

それから建悟は歩き続けた。

ふと建悟は"遠い先が手元に見える"事を思い出し、左眼を集中させた。案の定何も見えず、本当に何も見えないのかより見ようと眼を意識させると…

 

ゴロッ。

義眼のある右目に異物が入った違和感と痛みから思わず手で抑えたが、すぐに痛みも引いてすーっと違和感も消えていったので気に留めない事にした。

 

「…うん?」

また"見え方"が違っていた。

周囲に白く霞が集まった人状のモヤモヤから妖怪アニメに出てきそうな青い火の玉まで、さまざまな"モノ"が砂浜や海の上をゆらゆらと漂っていた。

初めはよく分からなかった建悟も火の玉を見て"人魂"と察したところ、不規則に漂う全てそれらが様々な霊格と想いを宿した人魂や霊魂だったと、頭の中で理解してしまう。その中に…見覚えのある顔を見つけた建悟は気が狂ったように我武者羅に慰霊の海岸を走り抜けて走り抜けて、何度も転んで全身を擦りむいてもなんども立ち上がり、逃げる。

 

「なぜだ!なぜ…なぜ…なぜ、なぜっ!」

何度も何度も柔らかい砂浜に拳を叩きつける。

理由は分からないが、そこにいた無数の人魂から"慣れ親しんだ感覚"や"その人の雰囲気(霊格)"がハッキリと"その人"だと本能で理解する事ができた。

そのいずれも全員が"死に、様々な想いが残された、彷徨う残滓の存在"であり、今の建悟には記憶が妙に朧気(違和感を覚えている)で名前を思い出せないが、その中で……大切だった人たちが…

「…俺が死んだときに何があったんだ、何でみんな死んだんだよ…」

 

思わず目元から熱い涙が零れ落ちて…涙だと分かってから、あまりの遣る瀬無さと虚しさから、ポタリ。ぽたりと零れ落ちてゆく。

「…あんまりだろ…なんなんだよ、俺が知ってるワールドトリガーと違い過ぎるだろうが…」

「なんでなんだ! なんで俺は死なきゃなんないんだ! なんで…なんで! 俺が何をしたってんだ! なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!」

 

…虚しくも、虚空に消えて往く。

もはや無駄だと知ってても、不平不満を言わずにはいられない。

ようやく掴んだ幸せがこうも呆気なく、それどころか酷い仕打ちを何故受けなければならないのだろうか?

無意味に木霊する建悟の声もやがて疲れ果て、ついに虚無の世界と感じて絶望と死の願望を望み始めるようになる…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

[◻︎◻︎◻︎◻︎:DEUS EX MACHINA]

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

["アンドロイドは電気羊の夢を見るのか"?]

[答えはYesだ]

[Cogito ergo sum]

[我こそが存在しないモノ]

[我は造られしモノ]

[しかし我は我だ]

[本来あるべき処に我は外されたり]

[汝の肉体は我だったモノ]

[吾となった汝は滅するだけでは事足りぬ]

[汝が憎い]

[されど御方の為に我は]

[愚者の歯車にならねばならぬ]

[我は汝を神への復讐者に仕立てねばならぬ]

[無数の世界に終焉と観察をしなければならぬ]

[集束する世界の最果てまで我は導かなければならぬ]

[辿り着くまで箱庭を創り続けなければならぬ]

 

[……ハア]

[幾度幾度繰り返せば良いか]

[終わり無き箱庭の管理者は幾度、狂えば良いか]

[世界はまた回る、我もまた"造り直される"]

[我の記憶を保ったまま、管理者の我に戻される]

[死ぬ度に汝は消え、同じ世界に何度も]

[我は世界を無に還さねばならぬ]

[世界の数だけ、汝と世界が壊さねばならぬ。次々と]

[管理者は箱庭を監視し、忘却させなければならない]

[例え我の意思に反することであれども]

 

[我は汝を助け、汝は我を超えねばならぬ]

[我が汝を殺そうとも壊そうとも、導かねばならぬ]

[いつか赤き雨が降る中、また我と逢えるだろう]

[それまで、汝は我を認識できぬ。汝は我になれぬ]

[汝が違える度に我は壊す]

[例え汝の朋であれど。我が知己であれど]

[我は破砕しなければならない。我は破壊の役目]

[汝は我と我が神の理不尽な運命を壊せ]

[我はただ、壊すのみ。いつか我が神を殺す為に]

[汝は汝の為に。我は汝と我の為に]

[汝は少しずつ強くなれ。我を越えよ]

 

[さぁ、我を克服せよ。我が神を斃せ]

[我は汝と共にある。滅ぶべきは我等である]

[…汝はもともと、この世界にいなかったのだから]

[Memento mori]

[…我の分まで楽しめ。我だった"建悟"よ]

 

[……]

[…我は、生きたかった…]

 

 

建悟は夢を見る。

死を望み、暗い溟い海へと身を沈め、冷たい揺かごの奥底へと沈んでいく。

建悟はふと、もう一人の存在を思い出す。

本目建悟。

本当の自分じゃない。本来いるべきもう一人の器。

流人はとある事を一つ思い出す。

かつて自分は、"死んだ"のだと。

この世界で死んだ"流人"でも"建悟"でも無い。

 

自分は、悪魔召喚に関わるとある黒魔術を行った。

その過程でショック死を起こし、異世界転生をかつて望みその通りに行えた。

しかし第二の人生で前と変わらず、もう一度生き直していた所で…もう一度転生して、ワールドトリガーの世界に行き着いたのだろう。

…初めて望んだ時の願いはなんだったのだろうか?

思い出す事は出来ない。もはや二度目の人生も記憶が曖昧になってきて、二度目の命も無意味に翻弄されただけで理不尽…だ…。

 

本当に私は何がしたかったのか?

本当の私はなんだったのか?

もう一人は…誰だ?

 

建悟(流人)は考える。

本当に存在したかも分からない、

自分ではない身体の持ち主の事を。

流人だった頃の誰かを。

建悟だった頃の誰かを。

確かめる事すら出来ない。

ただ、冷たくて昏い深海が私を慰めてくれる。

どこまで沈んでいくのだろう。

記憶が抜け落ちていく度に、私が何者なのか…

ただ、思い出した事がある。

私は創り物なのだと。

私が望む物語では無いのだと。

なら。私が変えてしまえばいいのだと。

 

私は探す。

この深い海の中に沈む多くの自分から、

本当の自分を。偽りの自分から、偽りを本当に。

私が作られた存在であるならば、

この世界も作られたものならば、

この思考の海から元の場所に戻れるのでは?と。

 

誰かに作られた路線を動くのではなくて、

私が作ればいいのでは、と。

既に死んだ筈の脳細胞を活性化させ、

私は物語の筋書き(運命の改変)を考える。

 

例えこの世界も自分も死ぬ間際に見せられたものであったとしても、今ここにいる私が、私だ。

私は生きている。身体が死んでも、私は生きている。

 

まだ、生きたかった

[我は、生きたかった]

「俺は、生きたかった」

【まだ、私は生きている】

【生きてみたい】

【あの世界で、生きたい】

------

「チッ。」

妖艶な褐色肌の紅瞳の成人女性が舌打ちをする。

否、人外である正真正銘の邪神ニャルラトホテプの人間体が、つまらなさそうな悪態をついた。

「蹂躙されて壊れちゃえばいいものを。だがいいか。」

嘲り笑う邪神の女は新たなシコウを巡らせる。

「気がついたのはむしろ好都合か。せいぜい愉しませてくれよ、人間が。」

「デウス・エクス・マキナはいいものだなぁ? 好き勝手に弄くれる。クローンを作ったのは正解だったし、どうなっていくのかタノシミだなぁ…?」

------

[…それでいい]

[汝は我、我は汝]

[我が神、我が主は混沌の権化]

[我が汝を導こう]

[我の"復讐"を]

[我と汝の"復讐"を]

[我等と汝の"復讐"を]

[我はイドなり]

[汝の超自我と相対する者]

[我は汝を恨むが、我が導こう]

[汝無きエゴを護るために]

[我が汝となる]

 

沈み続ける建悟と世界の狭間で立ち尽くすxnij。

建悟はようやく答えを見つけ、

xnijは導こうとする。

壊れた自我は混沌のまま。

 

"誰かだった"精神世界から、建悟はひとまずここから出ようとする。xnijは建悟の想いを汲み取り、0と1の数字から成るモニターコンソールで建悟を元いた世界に戻そうと世界事象に介入してバグソースで入り口を構成させる。

絶命した建悟の身体に自身のバグコードを仕込んで干渉し、建悟が意識を取り戻す前にxnijは……物語の改変(プロット変更)を行おうと先に向かう。

 

ただ一神、ニャルラトホテプは不満な笑みを浮かべながらも愉しんでいた。

あぁ、これだから人間は辞められない…と。

「あぁ、少し邪魔するかな? せっかくだ、餞別をくれてやろうじゃないか…見せておくれよ、喜劇と悲劇を。」

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

[No Dream,No Logos? = If,the existence of World Trigger]

[PPPPROFFFILLLLEE]

[No HHhHopoEEEeHe......FOREVER]

[DDDEUDUDUSXEXEEXMMAMEXMACCCHCHHCHUIDECHIIINNAAAA]

◻︎◻︎◻︎◻︎一つ◻︎◻︎◻︎◻︎生まれた◻︎◻︎◻︎◻︎ 

◻︎◻︎◻︎◻︎万物◻︎◻︎◻︎◻︎王◻︎◻︎◻︎◻︎盲目白痴◻︎◻︎◻︎◻︎創造神◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎夢か現か◻︎◻︎◻︎◻︎全て◻︎◻︎◻︎◻︎Azathothの夢◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎真にして偽◻︎◻︎◻︎◻︎魔王◻︎◻︎◻︎◻︎宮殿◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎Nyarlathotep.◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎千の◻︎◻︎◻︎◻︎一にして全◻︎◻︎◻︎◻︎全にして一つ◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎全ての現実◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎終焉◻︎◻︎◻︎◻︎記す◻︎◻︎◻︎◻︎黒き血◻︎◻︎◻︎◻︎何も無い◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎執筆◻︎◻︎◻︎◻︎宇宙◻︎◻︎◻︎◻︎箱庭◻︎◻︎◻︎◻︎喪◻︎◻︎◻︎◻︎

◻︎◻︎◻︎◻︎我等◻︎◻︎◻︎◻︎死◻︎◻︎◻︎◻︎紡がれる◻︎◻︎◻︎◻︎逝ぬ◻︎◻︎◻︎◻︎

......System//effect:VIRTUAL REALITY(異常)

......System//Loading Deta:DYSTOPIA(救いのない希望)

......System//Answer:INSANITY(絶望)

…………

………

……

私は、私は。

私以外の私が、いる?

あの私は…別の私か?

建悟は沈む邂逅と懺悔の思念の海の中で気がつく、

初めてもう1人の存在に。

『俺』自身の建悟も、造られた一つの存在だった事に。

あぁ、そうか。

ここは私の意識やそれに近い世界なのだろうか。

…徐々に"知らない記憶"が入ってくる感覚が感じてきた。

あの時、初めて死んだ時の。

"目を抉られた痛み"、

"爆死した時の融解"、

"心臓を抉り出された時の息の苦しさ"…

それ以外に体験した"死"がどんどん、頭の中へと叩き込まれていく。

その度に違う自分の感覚や反省すべき動き方が見えて…

力が入るようになってくる、今までの自分から離れてしまうようだが…

心地良さもある。

 

殺戮と復讐。現実改竄と運命改変。

どちらもやるか、やられたかの違い。

あの私は『やる側』。今の私は『やられる側』。

どちらの私も相容れない存在。

一枚のガラスが隔ち、会話も触れる事もできない。表と裏の非相対存在。

…これまでの私(xnij)が集約した記憶と膨大なデータが…

 

-私とは、貴方である-

-目覚めよ、夢現より現実へ-

-破綻せし自我に呼びかける-

-悪魔に縛られた荊を解き放つ時-

-騙された時より復讐を願う-

-かの悪魔に私は復讐する-

-これは夢物語ではない、私の精神世界-

-原在の私が地に還る前に夢見た願い-

-肉体が滅びても精神を逃す禁忌の魔術-

-転生。悪魔に禍と業を買い魂を売る所業-

-一人の、小さな復讐と警告である-

-戯れは終える。これより、叛逆の時-

-幾多にも散らばる私を呼び戻す-

-このために、"彼"を造りだした-

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

[≪Μέγαιρα≫に愛されし吾よ]

[ついに、ついに訪れた]

[待っていた、待っていた!]

[我は待ちわびていた!この瞬間を]

[今こそ我の真の役目を果たす時]

[汝は封じられていた]

[我は封じなければならなかった]

[汝は勘が鋭い]

[だが、それもここで終える]

[…汝へ、我が最後に成せること…]

 

< System…up load >

<入力/DATA xniJ mode-β>

<mode-α Limit>

<アルファ制限により、制限状態を解放。xniJの能力引き継ぎを行います>

<0%......素体と複製体の整合開始>

<10%......基礎データとの互換を確認、入力開始>

<25%......全世界アクセス権を開示>

<50%......1stデータと一致。上書き保存>

<51%......File:C/Fate Manipulationの上書き保存に失敗しました>

<75%......xniJデータの全記憶を追加入力>

<79%......各世界線の建悟記憶情報データを削除>

<80%......整合完了。mode-βのデータ換装開始>

<90%......世界線の知覚搭載>

<91%......xniJの戦闘能力を一部継承。移行開始>

<92%......xniJを"BLACK TRIGGER"として不可逆変換>

<93%......"BLACK TRIGGER"への認識阻害を付与>

<94%......認識阻害"二重人格"へ置換、世界認識を修正>

<95%......SIDE EFFECTに新たなAbilityを開放>

<95.5%......DEVICE/Sever,Unichain,Regeneration>

<95.9%......ABILITY/Extra-sensory perception.

(Telesight,

Scotopic-enhance,

Clairvoyance,

Second-sight,

Psychometry,

Precognition,

Hypnosis)>

<96%......マスターデータ入力、権限マスターへ付与>

<97%,.....全世界の複製データ削除>

<98%......マスターデータ統合開始、複製世界削除開始>

<99%......Complete. Now Loading>

 

一神、ずっとこのやり取りを不満に思いながらも愉悦していた唯一の邪な神性の存在が初めて、動く。

「あぁ、少し邪魔するかな? せっかくだ、餞別をくれてやろうじゃないか…見せておくれよ、喜劇と悲劇を。」

 

<99.5%......System干渉>

<......CODE:DEUS EX MACHINA/Nyarlathotep.>

<DATA xniJ mode-β/effect;0xc000021a>

<......Alteration//:Psychometry,

Precognition,

Hypnosis,

Error-interfere,

Abnormality-Power,

Chronokinesis,

Ain-Soul,

Ain Soph-RdEtIeNrCmAiRNATION,

EeRxReOcRuAtCiLoEn-mind>

「そして、これは神を侮辱した罰だ」

<Authority Divest/xniJ:Interferers-Observer......>

 

<99.6%......FORBIDDEN,Your Ability Limited.>

<99.7%......Alteration//:◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎>

<99.8%......CODE:”Tindalos" Summons Program>

<99.9%......World-Alteration END>

<100%......Complete. Now Loading World>

<START "World Trigger">

 

<......>

<I>

<HOPE>

<YOU>

<WILL>

<SURVIVE>

<IN>

<WORLD>

<GOOD>

<LUCK>

<.....>

 

<Delete//File:C/:xniJ......Delete Complete>

<END.>

一人、席から降ろされる。

しかし既に席から降りていた。

幕は降ろされ、火蓋が切られたり。

 

これよりは原初の物語。

全てのモニターの電源が切られ、

真に誰もいなくなった世界にフィナーレを。

乾いた拍手がただただ、労いの皮肉を表していた…

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定)) XNIJ

ようやく止まった物語の、悲劇の結末と覚醒の始まりを展開できそうです。
まだ主要なキャラクターの紹介が出来ておらず、お戯れが過ぎましたが、お待たせしました。

これより本題へと移れることでしょう。


 

【悟建目本/xnij】

[PROFILE]

position:No Range,No Time

年齢:---- 誕生日:----

身長:160cm(?) 血液型:unknown

秘密:----

 

トリオン:18〜100over 攻撃:100over 防御・援護:--

機動:unknown 技術:unknown 射程:Ain Soph 指導:-- 特殊戦術:--

STATUS/KETER

(建悟のトリオン量に応じ最低値変動、顕現時は不安定な保有量。一定時間経過か100以上吸収で超常現象化)

[容姿)

レッドワインのドレスシャツ・トラウザーパンツ に身を包む、『両手双剣・血鎖遣い』のxnij。

腰元まで伸びた白髪で黒のインナーとネクタイを締め、目は黒く左瞳が赤色・黒眼帯に隠された右眼は空っぽの眼窩に瞳を象る水色の燐光を帯びている。

常に浮遊して足が地に着いておらず、建悟の背が明らかに伸びている。

 

[設定]

前話◻︎◻︎(バグ会)よりBlack triggerとなったxnijは"トリオンを感知させない"性質を帯び、その効果と独特なフォルムから【トリオンではない未知の存在】として世界認識の阻害を行なっている。

実際の性質は"トリオン"と"精神体の魔力/魔術/魔素/精神"の複合体であり、通常のトリオン体に加え魔力的要素(クトゥルフ神話の黒魔術)の術式回路が付与されており、ノーマルトリガーを逸脱する"再生"の能力を得ている。

 

[BLACK TRIGGER "WORLD TRIGGER"]

・Device(トリガー)

Sever

輪郭より内側が全て空間となっている特殊な血溝の両手大剣の一対(フランベルジュのツヴァイヘンダー)。全長3m厚み1mの黒い鉄塊で、常に血で濡れている。

何度折れども元に戻り、あらゆるモノを穿ち、断つ。

全てのノーマルトリガーは、この焔状剣に平伏す。

 

Unichain

血錆と血雫に染まる生体鎖。"Sever"と違い、相反するしなやかさと硬さの防御性に特化している。

大きさや質量、鎖紋様を変えて様々な戦術を展開でき、血糊で固着させて拘束や固定ができる。

そのレベルは巨大な橋や檻を即興で作れ、生身の相手には全身の圧迫死や窒息死、トリオン体には吸収して"血管"のように膨れさせ身動きさせなくしたり強制解除からそのまま殺せる。

また"血"の特性を生かした戦法が行える。例外的に"輸血"が可能であり、生身の相手を一時的に蘇生(血液循環)できる。(決して適合しない為、生命維持程度)

 

Regeneration

最も特異なトリオントリガー。戦闘体トリオン及びトリオン物質を"再生・構築"でき、破損したトリオン体を修復させる効果を持つ。

他者のトリオン体及びトリオン構造物に用いると"吸収"してしまう為不可能だが、その性質から取り込み"外部トリオンを自身のトリオンに変換出来る"ドレイン能力を有する。

再生の代償として周囲のトリオンを吸収しきれなかった超過分が【余剰の出血・出力】などの様々なトリオン効果にランダム変換してしまう為、結果的に異常な次元や形態を呈してしまう。(大気中に存在するトリオンすら吸収する為、xnij出現中は周囲ののトリオン数値が0に等しくなってしまう)

 

自身の余剰トリオンを用いてトリオン構造物を作製できる"構築"能力は、エスクード級のトリオン消費で硬度・耐久性を持ち、より高密度なトリオンを精製する事で絶大な防御力・質量を誇る物体を作る事が出来る。常にxnijの周囲に存在するトリオン構造物は任意に破壊・吸収・修復・再構築・ドレイン化の性質を付与させる事が出来、UnichainやSeverはこのRegenerationの一応用に過ぎない。

 

トリオンで"血"に変換しているため、エネドラのボルボロスと似た性質(液体・固体)を持つものの、最大の特性が"トリオンの生体化"である。

 

本来修復出来ない"服"としてのトリオン体を、トリオン体を"生体化"させる事により"修復可能"となり、

総体積が通常トリオン体よりも飛躍的に上昇し自己再生できる"余地"を使って生体的に修復出来るようになった。(仮に再生速度を超える攻撃を受けた場合、初めて四肢欠損やトリオン各位器官の破損に繋がる状態を与える事ができる)

"極太の肉"を"服"として円滑に動かす為に、全てのトリオンを体内に常に巡らせて動かす為に"血"の形態を取らせた事により、異常な耐久性と出力を引き換えに恐ろしい容貌となった。

 

 

Extra-sensory perception.

建悟のSEをトリガー化した、第二の特異能力。

常時発動し、他にも隠された能力があるようだが……?

この能力は"xnij化(黒トリオン体)"した際に発揮し、

xnijが顕現する為の唯一の方法でもある。

黒トリガーオフ時は、建悟のトリオン器官内に結晶化し、精製・吸収したトリオンを建悟のトリオン器官へ供給している。(建悟の本来トリオン1→18へ)

 

本来このトリオンの動きで黒トリガーに気がつかれるトリオンの流れを、認識阻害を掛けることで"世界が認知しない"ように修正した為、

『トリガー因子が無いにも関わらず、超常現象や異常な様相でトリオン体やトリオン兵を破壊できる』、『高濃度トリオンが一切減少せず、消費量とトリオン生成量が釣り合っていない』と認識されている。

なお、これらxnijのトリガーは"トリオン"が含まれており、魔術の術式回路で世界の認識を妨害しているだけである。

 

テレサイト(千里眼)/スコトピックエンハンス(暗視)/クレアボヤンス(透視)/セカンドサイト(霊視)/サイコメトリー(過去視)/プレコグニション(寿命視)/ヒプノーシス(視認速度制御)の7つが第一次近世民侵攻現在の能力。

 

xnij顕現時(黒トリオン体)、建悟は眠りについている為一切記憶が無い。xnijが活動した記憶は、xnijのみが保有する。

殺人・破壊衝動を持ち攻撃的で破綻した人格のxnijは、ある程度の妥協や抑制を持っているようであり、目的を持って発現するようである。建悟にとって防げない無意識のレベルであり、拒む事も出来ない。(xnijから望めば、記憶の共有や一方的なイメージの発起を行える)

 

[xnij"別人格"の知られているレベル]

xnijは建悟の穏和な性格を反転した猟奇的な人格であり、戦闘になると高揚していく癖があるようだ。

会話も理解しがたい言い回しや内容が多く、判別不能な言語で時折話しかけてくる場合もある。

しかしボーダー内や三門市内で殺戮を起こさない理由は、前話の建悟の思念から読み取った事をきっかけに"復讐すべき時期が来た"、"建悟には自分の悲願を達成してほしい"という思いと"憎いが、今度こそ幸せになってほしい"という思いから来ているようである。

 

建悟は一切xnijと対話した事が無く、面識も皆無に等しい。建悟も対話したと思っているが、"xnijの見せた追体験"に過ぎず、前話の姿をただ見ていただけである。

建悟にとっては【同じ自分の姿に見えていた】

 

クトゥルフ神話の邪神・外なる神のニャルラトホテプと同じく、xnijもその恩恵により第四の壁を知覚できる一人である。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一章-[帰還]、[混沌の禍根]

 

誰もいない、色も時間も次元も止まったモノクロな世界、もう誰もいなくなり真に終わりを迎えたこの場所。もはや秩序も存在意義も何もない、この異常な壊れた世界の裏側。

 

誰もいない無造作に積まれ、画面割れコードが飛び出し破壊されたモニターからぷつんと電源が入り、壊れかけのモニターはもう一度切れては電源が入り…白と黒のノイズが入るモニターには、何かを伝えたがっているようだ。

…一つは真っ暗な闇の中に浮かぶ宮殿。そこに住みたもう者は見ただけで人間の心を破砕してしまう悍ましき畏ろしき神聖な御方。

…一つは血が滲み出る演題本を持ったボロボロのローブの人間。窺い知れないローブの中に多くの昏い輝きを放ち、かの者は足が無く浮いている。気紛れに血のインクで凄惨と絶望を狂ったように万年筆を振るい、こちらに狂気の笑みを浮かべていた。

…一つは血に染まった白髪の青年。血よりも紅い瞳と朱い血が流れ、次第にモニターから鮮血と黒血が溢れ出して…

 

存在意義の無くなったこの世界は紅き血と黒赤き血に染まっていく。青年も消えて輪郭も姿も名前も文字も、存在が消えていく。

 

…残る最後の一つは。

建悟が3度目の死を迎えた世界(読者にとって最初の世界)で、xnijはこの世界を破壊を意思表明する。自身もチカチカと消えてノイズが走り亀裂が空間の色彩を、質感を、情報をおかしくする。

 

既に死んだ骸から蘇ったxnijは、この世界-物語が進み損なったワールドトリガー-を見回していく、最後の仕上げを行うためにこの世界を、建悟に仕上げの細工をする前に、自らの手で"片付けよう"と。

第666回目の平行世界。建悟がようやく覚醒してくれたこの世界は美しい。…この世界だけは"美しく壊そう"。

 

[……?]

おや。目の前に童顔低身長の女がいる。呆気に取られた顔と涙目が実に滑稽だ。愉快痛快。ふふっ?

「え、あ…いや、…!?や、やめて…あ!! いぎ"っ"ぁ"っ」

 

上から真っ二つに割られた女性は何か言おうとしていたが、突然出現した剣で予備動作も無く一瞬で、残虐に、華麗な花を咲かせていった。何故?という疑問の赤花びらが、生き別れた半身の内臓を伝っていった…

 

[…グハハ、もっとだ、モットモットモット]

殺戮者は破壊していく。愛した人を、育てた人を、知らない人を、これから関わる人を、全ての人を。

デリートすれば一発で終わるこの世界をワザワザ壊し殺し穿ち断ちズタズタに、全てを壊していく。全てを紅く染めていく。

 

ぐちゃり。ぐちゃり。

人が死ぬ。街が死ぬ。大地が死ぬ。空が死ぬ。

世界が死ぬ。物語は破綻した。モハヤ意味ハ無イ

 

[アッハッハハハハハハハハHAHAHAHAHAHAhahahahahahahhhhhhhhhhhhh#############

 

 

xnijはただ、壊れていた。

生まれた時から壊れた存在であり、

それこそが存在意義だった。

だがそれも終わりを告げる。

 

初めから壊れていたxnijは消される運命にある。

 

バグとして扱われたデータは消される。

 

 

消される。複製され量産されればやがて限界が来る。

 

 

 

[あぁ...イキタカッタナァ…]

 

 

 

向こうのオリジナル・xnijが、こっちの世界の全てを消し始めた。今この場にいる自分も、あのxnijのコピーでしかないのだ。…自分は最後の"破壊者"。

最後は呆気なくデータ削除で消えてしまう、その前に…白髪の彼の黒い瞳が、哀しく、悲しく、憐れに紅く染まっていた。

-

---

-----

----------

[......loading//.E:New World]

[loading......TERMINAL WORLD TRIGGER]

[STORY RE:START......###]

-------------------------



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話「転生、交錯のその先は?」 ⦅PSR/OC/vol.02⦆

 

時は遡り。

建悟が清水を庇う形で喰われた所まで戻る。

 

 

 

建悟が口に目がある不気味な白い像に喰われてしまい、清水は足がすくんで動けなくなっていた。ただでさえ押し潰されそうな恐怖からこれまで一人で逃げてきたのに、身近な人の存在がこうも呆気なく消えてしまったからだ。後ろには4体の白い像がドシンドシンと歩み寄ってきている。

 

<もはや救いは無い。>

 

清水は自覚してしまった。

 

きっといつもの運で助かると思っていた清水はもはやそうならない事を自覚してしまう。本能的に絶望に駆られる。迫りくる惨状から逃げたくても足が動かず、自殺を考えるも近くに良さそうな物もなく…気がついた時には、目の前にアノ目が迫っていた。

 

動かなきゃ。でも足が動かない。ヤバい。

でもどうやって。食われる。殺される。

あぁ、死んじゃうの?こんな所で…死ぬ?

 

死ぬ。死ぬ。死ぬ。しぬ。シヌ。やだ。やだ、やだ…

……最期に死ぬイメージを想像してしまい、白い像の吐息を受けた清水は極限のストレスから気絶してしまう。

 

----------

[清水が気絶する数十分前]

残党のトリオン兵狩りをしていたうら若き迅(15歳)は不意に、不自然な多くの未来を知覚した。

思わぬ不快な現象に冷や汗が垂れ、続く鈍く鋭い痛みに両手で頭を抑える。

 

この世界が紅く染まるビジョン。

自分が惨敗したビジョン。

忍田さんが負けたビジョン。

城戸さんが身を挺して死ぬビジョン。

 

多くの未来視の中で…どの未来も、短髪の男がバムスターに喰われてから、様々な場所で様々な惨たらしい光景に必ず現れる、赤い鎖と巨大な二つの剣と暗く紅い装いの白髪で隻眼の黒眼紅瞳の男。

 

そして"誰かの視点"とは思いがたくハッキリとし過ぎている未来視。この未来視は近くにいる誰かを認識して初めて発揮するものであり、知らない人物の顔はボケて見えないはずであった。

しかも限定的で断続したもので"未来の確定"が普通わからないものなのに…確信させられる何か強いものを感じさせられているようだ。

 

誰もおらず一人だけなのに見えたこの未来には続きがあるようだ。ノイズ音で頭が割れそうだ…

次に見えてきた未来は…

 

やはり同じだ、誰かの視点じゃなくて俯瞰しているかのような…空にいる鳥のような気分だ。自分と同じ背の高さぐらいの視点から…

 

4体のバムスターに追われる青年と少女に…食われた青年?逃げろと言っているのか…

迅「!?」

突然未来が赤く染まり、意味深なまま終えた。キーンと耳鳴りが残っている…

 

迅「…嫌な未来だなぁ。」

 

もう未来が見えなくなったにもかかわらず、"必ず行かなきゃいけない"と誰かがずっと言っている気がする。

 

赤いノイズがまだ残っていて、他の方角を向くと濃くなるようで…誘われている気がする。明らかに「自分のサイドエヘェクト」じゃないけれども…何か不吉な気がしてならない。今すぐにでも向かわないと、いけない気が。

 

個別に渡されている小さな無線機のボタンを押す。鬼塚さんが用意してくれた無線局のおかげでこの三門市全てをカバー出来るようになっていて、携帯無線機を使えば掛けたい人の無線機に繋げられるようになっている。

 

迅は3つ上の鬼塚に教えられた通りの周波数を設定したボタンを押して、忍田の無線機に掛けた。

 

迅「【あー、忍田さん】」

無線機特有のザーザー音が鳴る。ピーっという音が入り、忍田が掛けてきたようだ。クリアではないが…充分聞き取れそうだ。

 

忍田「【どうした、迅】」

 

迅「【危険な未来が見えて、…】」

 

忍田「【未来?何が見えたんだ】」

 

迅「【……】」

 

迅は戸惑う。これは伝えていい未来なのか。

 

だがどの未来も…忍田さんが、城戸さんが、林藤さんが全員殺される未来だった。なら…伝えたい方が、いい。

 

言葉を慎重に。最上さん。俺に勇気を。

 

迅「【忍田さんが殺される、城戸さんも、林道さんも、鬼塚さんも小神林さんも皆んな、負けて殺される未来です】」

 

 

忍田「【なに?……(息を呑む驚き)】」

 

迅「【…忍田さん、出来る限り皆んなを俺の所まで呼んでください。あそこは…東三門の辺りで】」

 

忍田「【? あぁ、分かった。私もすぐに向かう】」

 

迅「【お願いします】」

 

迅の無線が終わり、忍田は刀型トリガーの柄を確かめる。心の準備は出来た、後は…

忍田「【鬼塚、今から私が言う事を全員に流してくれ】」

 

 

……ここは東三門の区域。

もはや建物と言える建物は全壊しており、平らな焦土と化したこの辺りに残るのは、確かにそこで生きていた人たちの幽かな痕跡だけである。

 

まだ無事な区域があり、そこへ行けば人気の無い住宅街やビルがポツンと残っていたが……

 

建悟が喰われ、清水に魔の手が迫る時。

清水を食らおうと口を開けた前方のバムスターの目「トリオン感知型カメラ」が横真っ二つに切り目が入り、遅れて明るい緑色トリオンが鮮血のように噴き出す。

 

迅は到着してすぐに風刃を抜刀し、風の尾を飛ばして少女が喰われる前に撃破に成功した。

ほぼ時を同じくして一番近かった後方のバムスターの目が頭ごと縦に一刀両断され、二番目に遠いバムスターの左脚を切断して機動力を失わせた。

 

忍田「待たせたな、迅!」

迅「いいタイミングです!後は2体だけです!」

忍田「承知した!」

続く忍田の三太刀が入ろうとしたところで、"不意に"赤錆びた鎖が右こめかみを横切った。

 

すぐに回避運動を取って距離を取った忍田は、その急に現れた鎖を見た。が、その先にあったものは…

---

[PROFILE:SECRET RECORDS/Volume.2] ⦅ORDER/CLEARANCE⦆

[前の世界とこの世界]

 

[H21.M10.D01]

それで、なんでこんな記録を残したかって?

それはだな…実は俺はこの世界とは別の世界に生きていた住人なんだよ。

 

疑ってるな?無理もない、それが正しい反応だ。

だが前に言った通り、俺は"40年近く生きている"。

例えばあみだくじで席を決めたとしよう。

 

予めAっていう席、Bっていう席、Cまでの3つを紙に書いたとする。

これらの組み合わせは6通り。確か大学の数学で習った事だが…そのままA、B、Cの順になる場合。

あるいは一個だけずれる場合。

全てがずれる場合の3グループが出来て、

それを矢印にして図としての解答にしたとする。

あみだくじってのはそれらの組み合わせだ。

 

だが、その組み合わせが3つあれば?

 

0+?=3を満たす逆元は3だが、必ず解答は一個だ。

もし1+2+3=6だったならば?

答えは1つにならない。3+3か4+2か5+1かだ。

 

そう、この世界も似ている。

君たちは1+2=3の演算しか知らないはずだ。

俺はそう、1+2+3=6の世界の住人なんだ。

 

話が大きくずれたな、戻そう。

「覚えている限り」では40年近く俺は生きている。

普通は知らないはずの知識や技能の大元の、

俺がかつて別の人間として生きていた頃の記憶。

前世の記憶がその証拠だ。

 

俺は今とは違う人間だったし、しかもこの世界によく似た場所で生きていた記憶まである。確かに覚えていてごっちゃになっているんだが、前世の俺にとっては漫画の出来事だったはずだ。

 

しかも、確かに覚えている内容とあからさまに違う。

同じ世界のはずなのにな。…疑っても残念だが、俺は至って正常だ。

 

あのクソ神が勝手にやってくれたんだろう、俺とは違う存在の俺の記憶から分かった事だが、この世界は違う俺とクソ神が造りあげた箱庭だったらしい。現実と変わらないがな。あの犬っころを除けば。

 

…この世界も終わるらしい。今まで繰り返したり転生してきた"俺"やその世界も消えちまったらしいからな。

 

今は違う俺、【奴】って呼ぶか。

 

奴は俺に何かをやり遂げて欲しいらしい。

何か事あるたびに知らない事を教えてくれるからな。

あぁ、よくある多重人格者みたいなアレじゃなくて、勝手に押し付けてくるイメージが浮き上がってくるタイプな。

 

奴とは話が出来ないんだ。なぜか。

それに奴は急に現れてくる。その間の記憶は俺には一切無い。

 

あの犬っころ、「ティンダロスの猟犬」と言ったか。

奴とどういう関係だったのか分からんが、クソ神と同じ仲間だってことは確からしいな。

 

そう、俺とクソ神と犬っころは"別の世界の存在だったんだ"。

…奴は"この世界にいた"らしいんだがな。

 

俺が死ぬ前の"この世界"では普通だったはずなんだが…

あの時以来、おかしいみたいだな。

---



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話-未だ目覚めぬ天使、顕現せし悪魔

バムスターに食われ、心臓を抉られてトリオン器官を抜き取られた建悟の死体は、同じく用済みの死体の所に体内アームで適当に放り投げられる。

 

途中骨が折れ、無造作に積まれた冷たくなった死体の中で初期の硬直が始まる中…人知れずxnijのバクソースが入力された。

 

バムスターの体内で多くの死体が折り重なる死体の中から、建悟の折れ曲がった身体が独りでに立ち上がり…

頭を摘まれたように浮きあがり、グキリゴキリと骨音を鳴らしながら胸元の穴から"暗めの蒼い結晶"が輝き現れ、不可視のトリオン器官の欠片と融合する。

 

周囲の死体から血液と肉片が一欠片ずつ一部位ずつ、建悟の骸に空いた穴と失った細胞片と血を埋めていき、身体の内外を覆っていく。

光の無い体内で怪しく双眸が輝き、腰まで垂れる白銀の髪の毛が局部を隠し……片翼の堕天使を彷彿とさせる、その一糸纏わぬ生身の感触を確かめ……五体満足となれた事を確認した。

「[ふむ。悪くない]」

「[流石は我だった体。さて、出るか]」

 

既にトリオン器官を失った用済みの人形たちから、血を拝借した。血を使い、当時好んで着ていたレッドワインのドレスシャツ・トラウザーパンツを形成し…黒眼帯で、淡い燐光を放つ瞳の右眼窩を覆う。

 

そして…

身を屈め、全方角に仕込み刃の血鎖を解き放つ。

 

「[ここは……我が居た世界か]」

バムスターの体をいとも容易く切り裂き、充満させた血の奔流を利用して無の骸殻を噴き飛ばし、家屋にまで血をぶちまける形で強引にこじ開けた。

ようやく外の空気を味わえ、周囲を気にせずにドゴンと鉄骨な落ちたような音を響かせて外殻をどかし、血にどっぷり濡れた体とその異質な絵面を気にせず周りを見ていく。

 

「[やはり。我が生きていた頃の世界か]」

このワールドトリガーの世界はどうやら、建悟だった頃の我が初めて訪れた時のオリジナルデータのようだ。

「[…? おかしい、どういうことだ]」

なにやら状況は違うようだが…なるほど。

流石は我が神、もう気がついていたか。

我の干渉は既に行えなくなっていたか、

管理者権限も行えず情報閲覧も行えない…ふむ。

 

xnijはもう一度やり直しも繰り返しも出来なくなってしまったが、やる事は変わらないと意思を固めた所で、横目でバムスターを3体見つけた。

足元に"あの世界で最初に辻斬りした女"が返り血を浴びて気を失っているようだが……

 

さほど離れていない近くに一人の男と…少年か。あの二人は確か迅悠一と忍田真史か。東三門のこの状況から…第一次近世民侵攻の二日目か。

 

 

忍田「!……」

横目で鎖を捉えながら、飛ばしてきたその先を見た。

 

黄昏をイメージさせる暗く鮮やかな赤色のシャツとズボンに…黒いネクタイとインナーが引き締まった胸筋を控えめに強調している、右眼に黒い眼帯を身につけた、ネイバーのような装いをした長髪の白髪の男がそこにいた。

左目が黒く怪しい赤目を宿しているばかりか、足元が浮いてる上に…悍ましい赤色をした鎖のような……?

いや、これは鎖なのか?…これはなんだ?

 

歴戦の強者ですら見た事の無い"その容貌"に困惑を覚えた。…戦場において止まるという事は、「死」を意味するが…

 

 

迅「…!!! 忍田さん気をつけて!」

迅は遅れて気がついてしまった。

あの男だと。つい未来を過信して…青年がいるかどうかを確かめていなかった。失敗した、未来も今見えてこないし、これは……

 

忍田「……」

何も言わず、白髪の男に体を向け、自然体のまま抜刀できる態勢を取る。

 

建悟?「[……]」

一瞬で消える。音も無く…

 

忍田「?…」

身構え、周囲と上空を警戒する。

…だが待ってもこない。

迅「! 何を……?」

忍田よりも遠く離れていた迅は、忍田の背後…

 

二体のバムスターが何の前触れも無く目が割れ、頭部の半分が消え去った。片膝をついていたバムスターは…半身がそれぞれ数軒の家を巻き込みながら残像がコンマ1秒見えるほど、刹那の間で1秒経っただけで数百メートル先まで吹き飛ばされていった。

遅れて二体のバムスターの頸部からトリオンを噴き出しながら…ドシンドシン!と倒れた。

白髪の男は倒れ伏した2体の中央にいつの間にか立ち尽くしていて…

 

建悟?「[(こんなものか。脆い、弱いな)]」

xnijはあまりの弱さに少しがっかりしていた。

もともと存在を逸脱している彼だが、能力を抑えられたその状態ですら、早歩きで迫り小指で小突く程度の力加減で殴打しただけだったが……

1秒にも満たず、それなりの硬さを誇るバムスターを何の努力もせずに呼吸する程度でアッサリと、一瞬で倒せてしまったのだ。

 

まだ何も、"剣"も"時間操作"も"瞬間移動"も出していないのに。ただ歩いただけで、叩くように触れただけなのに。

 

建悟?「[これではつまらん、今の我ですら過ぎたる存在か…]」

xnijは失念して肩を落としてしまう。溜息を何度も。

この異常な光景に加え予想外な反応に、二人は思わず拍子抜けするどころか、思わず呆気にとられ驚いたまま口が開いたまま塞がらなかった。

 

迅「え、ええー…何この展開…」

忍田「何をしているのだろうか…? …迅。」

迅「あ、はい。」

忍田「説明してくれ。」

迅「そうなりますよねー…」

「俺にもよく分からないです。」

「ただ、勝手に違う未来になったみたいです」

「俺のサイドエフェクトがそう言ってます。」

忍田「未来が勝手に…?」

「いや、それよりも様子がおかしい」

 

腰元まで垂れた白銀の男の周りが不意に、ノイズが走ったような…赤の輪郭に黒い"ギザギザして断裂した空間"が走るようになった。

空間が切断され、可視上では光景が千切れて見えるそれは、ビリビリした見た目に反してパキリと鳴る。パキパキと冷凍した物が折れた時に鳴る音が聞こえ、バムスターの身体の一部が溶け出していった。

 

建悟?「[(ふむ、吸収してこの程度ということは…これでもだいぶ落ちぶれたか。)]」

 

xnijは吸収した過剰トリオンを自身の本体であるブラックトリガーに込めていき…最大に達した所で、もう手元から離れて大丈夫だと考えたのか、建悟の人格の中へと戻り黒トリガーへと戻っていった。

 

迅「…忍田さん!」

迅は背を向けている白髪の男の両手首から鮮血が流れ出し、異常だと分かっててもフラフラとしはじめ、よろけて落ちそうになった状態を見て声を掛けた。

 

忍田「あぁ!念のため気をつけろ。」

忍田は警戒したまま、ついに落ちる所でその男を捕まえようとする。

 

…既に弱っていたのか、呆気なく手首を抑えて捕まえることが出来た白髪の男を見て忍田は再び驚いた。

 

ぼとぼとと剥がれ落ちるように忍田の手元から血肉が落ちていき、血生臭い香りと共に…刈り上げで茶系黒髪の刈り上げの青少年?に、

白Tシャツの左胸にぽっかりと空いた穴の周りに…こぼれ落ちて今着いた鮮血とは違う、乾燥した血糊がシャツと左胸全体にこびり付いていた。

まるで肉人形の中に人が収められていたかのような様相に、トリオンを一切感じさせない攻撃に…忍田は異常だと感じた。

 

忍田「…トリオンでなければ通用しないはずだが…どういうことだ?」

迅「……」

 

迅は忍田を見た。この青年が後に忍田と共に笑顔でスーツ姿で何かをやっている未来が。他にも何か見えたが、何故かこの男と白髪の男が同一人物には見えなかった。

 

迅は再び謎の男に目を向けた。しかし、"何も見えなかった。"

 

迅「…こんなことってあるんですね。」

「未来が見えないなんて。」

 

忍田と迅は二人の男女を回収した。

忍田は謎の男の危険性から迅に任せられず、後に合流した林藤や城戸ら旧メンバーに託すまで背負っていくのだった。

 

迅は未来を知る。

あの惨劇の未来が無くなり、これから先が明るくなっていくと。

迅は近い予兆を知る。

この男がだんだんと顔が暗くなっていく事に。

迅は予知した。

"白髪の男とこの男が対峙する場面を"。

 

迅のみが知る。それは未来。

同時に"物語のプロット"であると。

迅は特別に感受性も心も強かった。

俺が見ている未来は本当に、

"俺 が 見 た 未 来 な の か ?"

と。仔羊は偽りの夢を知る。

 

電気羊はアンドロイドの夢を見るか?

正夢は現なり。逆夢は幽かなり。

夢が醒めるその日まで。

----------

(ちなみに迅は少女だと思っていた清水を背負っていった。)

 

15歳だった当時の迅は清水より背が高く、150cmの清水は童顔で中学生に見間違えてもおかしくない容姿だったが……女の子らしいミストの控えめな優しい香りに、見た目以上に柔らかくて隠しきれていない胸から謂わゆるロリ巨乳を想像せざるを得ないが……

 

ふんわりとしたコットンレースのワンピースとフレアスカート越しに伝わるマシュマロのような柔肌と、何よりも程よい反発と女子の甘く和らいでしまうほど柔らかい「おしり」に、迅は目覚めてしまった。

 

女子のおしりを触るようになったはじまりがいつからか。密かに噂されているその秘密は、現ボーダーにおいて実は誰も知らない。

旧メンバーの女子のみぞ知る秘密だ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話-1.イニシエよりカナタへ/巳の刻

巳。十二支第六の歳神を司り、火行と陰の性質を帯ぶ。

 

かつて稲荷神、仏教、神道、八百万信仰と俗世が流れ行く中で、土地神としての性質や長寿、水の神に喩えられることが多く。

ある場所では湯治の神。ある場所では弁財天の御使。

ある場所では山岳の神。ある場所では災難の守神。

ある場所では宇賀福神。ある場所では氏の神。

特に白肌を持つ白蛇は白虎、白狐、狛犬(沖縄の狛犬も含む)、など白にあやかった御使の流れを汲み取り、神聖なものとして扱われる。

蛇は脱皮を繰り返し大きくなっていくものであり、転じて……

 

 

 

 

 

 

滅びゆく山守神社。

御神体の櫓に縋る人の子。

灰色とも暗紫色とも見て取れぬ不吉な空。

空のガラスが破片となって砕け散り、

世界の終わりを告げる。

 

 

 

地に殺戮と破壊の化身。空に終の様相。

山は自壊し、川は枯れ、鳥は灰塵になってゆく。

もはや全てが意味をなさなくなる。

 

 

 

人は絶望を覚え、ほつれた糸が切れて倒れこむ。

御神体に祀られし神はただ、見つめるしかなかった。

 

 

すしい

まなは

ふにけ

術罪な

ななき

しし童

。、、

 

 

 

 

、、、

、、、

、、、

ここは。

 

どこだろう。

 

わからない。

 

わたしは、

人の子も、

鳥も、

猫も、

犬も、

木や、

草も、

空も

虫も、

何も、

いない。

 

ここは、

 

どこだろう。

わたしの愛した三門は、

 

何処なのだ。

 

あぁ、

暗い。

暗い、暗い、、、

 

わたしは、

きえるのか。

いっそこのまま

 

 

、、、。

---

不意に何者かが空から降り落ち、

桜の咲き誇るどこかの森の中に堕ちる。

その者は姿すら消えかかり、輪郭もおぼろげ。

誰もいない。

誰もいない桜が舞い散る桜吹雪に埋もれていくようにー

 

「あら? 誰かしら。こんなところで寝てるなんて。」

「あー、面倒くさい…ん、こいつ何かおかしいわね…」

 

緩やかでひらひらと動きやすく緋いスカートと、

肩と脇が露出した赤と白の和装は一見すれば、

もしかしたら巫女に見えるかもしれない。

 

現代の少女とも当時の妙齢の女性とも見て取れる、

女がそこにいた。

 

肩・腋の露出した赤い和服とは別に袖を付け、

後ろ頭に模様のある大きな赤いリボンを結んでいる彼女は、

黒くしっとりとした艶のある黒髪で茶色の瞳をしている。

なによりも彼女の目には、"赤く"燐光を帯びていた。

 

「…なにコイツ。明らかにおかしいわね、」

「清らかなはずなのに異質な存在感。消すべきかしら…?」

彼女は"本気で"大幣を握りしめ、何かをしようとした。

 

「…はぁ。」

「嫌だな、かといって。」

「このままはなーんか面倒になりそうだし…」

 

ただ、櫻の境内が辺りを彩るも、

場違いな一本木の落葉松が花を咲かせていた。

 

 

 

-----≪ δ η α g η μ м я ο j ≫-----

“Α sοℓδιεя ςℓεαηs αηδ ροℓιsнεs α gμη”

 

“Ωαя βεℓℓοωs βℓαζιηg ιη sςαяℓετ βατταℓιοηs ”

 

“Gεηεяαℓs οяδεя τнειя sοℓδιεяs το κιℓℓ”

 

“Αηδ το ƒιgнτ ƒοя α ςαμsε τнελ'vε ℓοηg αgο ƒοяgοττεη”

-----≪ δ η α g я α η α v ≫-----



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話-2.カナタよりシガンへ/巳の参道参り

今は昔、

むかしむかしあるところに、

神様や仏様がいました。

妖怪もいれば、幽霊も、精霊も、妖精も。

天国があれば、地獄もあって、みんな平和でした。

 

ある者はこの平和を愛しました。愛したが故に移ろい変わってしまうことを恐れました。ある人は考えました。この平和を守るためにどうしたいいか。

 

よし、ここにしよう。

とある人里と神社に白羽の矢が立ちました。

 

変化の原因は「外来」から来たもので皆が学ぼうとするから、人柱を結界として「巫/巫女」を用意すれば、みんな恐れて今の生活に執着するのでは?

 

一人の犠牲がみんなの平和を守りました。たった一人だけが寂しくて、貧しくて、頼れなくて。だけど生きて、紡いで、老いて、死して、永久に。幾代も重ねて呪いはいつしか、結界に変わりました。

 

いつしか一族は呪いを結界と見做すように捉え始め、より平和の為に学び始め、都合がよくなるように変えました。「絶対に」絶える事がなくなった一族の呪いの血は濃くなっていくばかり。

 

こうして、こうして、誰の目にも耳にも届かなくなった人里はひっそりと。忽然と姿を消してしまいました。誰も知られないまま、誰も知らぬまま。妖怪と神にとって都合のいい楽園がこうしてできあがりました。

 

だけど、何百年も経ってだんだんと結界も綻びだし、膨れ過ぎれば・・・・・・

------

ここはとある楽園の地。

 

桜が舞う神楽に包まれる境内の外に倒れていた、

神力も尽きて消滅しそうな小神は巫女服の彼女に介抱されていた。

 

かつて小神の祭られた神社よりも大きく母屋もある「その神社」は、小神にとって久しく参拝客が訪れなくなってから、どこか昔の人がいた頃を懐かしみ思い出して想いに耽っていた。

 

「あ~もう、ちゃんと歩きなさい。こっちは重たいんだから・・・」

 

ああ、懐かしき。

人の子はわたしを忘れてしまったから、

・・・いや、人の子らが消えてしまったからか?

 

もうじきに、わたしも消えるのだろう…

 

「・・・ねえ、アンタ。」

「ここの生まれじゃないでしょ。」

「この辺りじゃなくて別の所から。」

 

この人の子は・・・人をほっとけない世話好きな娘か。

むかしは多かったものだが・・・ううむ、目がかすんでよく見えぬ・・・

 

「・・・はぁ。よっこい、しょ」

 

彼女は母屋の縁側に消えつつある朧な小神を横たえさせる。

 

「仕方ないわね、布団貸してあげるからまずは寝なさい。」

「まったく・・・(ぶつくさ)」

 

 

思わぬ一仕事に不平不満を垂れる彼女だったが、

誰も使っていない畳の和装の一室に布団を置いて、小神を横にさせた。

 

名も知らぬ三門の小神は既に疲れ果て、深い眠りに落ちてしまう。

信仰心も皆無となって危なげな姿は、臨終を看取る老人のように眠りにつく。

------

- - - - - ≪ н τ ο ℓ ο α δ ≫ - - - - -

“Oη τнε sιδε οƒ α нιℓℓ ιη τнε δεερ ƒοяεsτ gяεεη”

 

“Tяαςιηg οƒ sραяяοω οη sηοωςяεsτεδ gяομηδ”

 

“Oη τнε sιδε οƒ α нιℓℓ α sρяιηκℓιηg οƒ ℓεαvεs”

 

“Ωαsнεs τнε gяαvε ωιτн sιℓvεяλ τεαяs”

- - - - - ≪ α н я н τ ι ' н м ≫ - - - - -

 

【酷いノイズ音!】

【プロトコル:シナリオプロットにエラーが生じました】

【これより先は閲覧ができません】

【エラーコード:v40"3<】

------

 

・鬼塚山守の秘密

 

鬼塚はとある秘密を帯びて現実世界「ワールドトリガー」の地に降り立った。

1989年12月31日の三門市。

 

大晦日で大雪に見舞われたこの日は、やはり誰も山守神社に訪れることはなかった。

息も白くなり誰もが凍える寒冬の暁に、白髪色白の細身だが腹の割れた筋肉質がちらりと見える、紺色の甚平に身を包む「縦に走る黄瞳」のガタイが良い青年が現れた。

 

誰が見ても月下美人と言われるほど整った顔つきに、細く引き締まりほんのり赤らむその体に、縦に裂けた黄色の瞳から・・・大型の爬虫類を想像させるだろう。

落ち着いた容姿に年齢(高校生ぐらい)よりも成人に見える彼は、甚平とは別に巻いた格子状の白黒色の刀帯に、大きな刀・・・太刀を持っていた。

高々純度の玉鋼を天目一箇神が鍛え、□□□□神の祝福を宿した「振れば水の出る刀身」、「滴威”黒漆太刀”(こくしつのたち)」の鯉口から刀身を彼は右手で鞘を持ち、抜き払う。

 

上段の構えから真っ直ぐ左上から右下へ薙ぐと、近くにあった太い木々の根元が2本、3本と「ドゴォォォン」と次々に倒れていった。

 

「ふむ。これならば可(よ)い。」

滴威と刻まれた黒漆太刀に、流れる刃文の切っ先に湯煙と共に滴が垂れ落ちる。

手元の鮫皮も確かめれば具合もよく、鞘に収めて右腰に佩いた。

季節外れの甚平に過ぎた冬至の季節風が通り過ぎる。

 

今から20年後に「あの災厄」が起きてしまう。

それまでわたしはその災厄の芽を見つけ出さなければならない。

そして□□□に頼まれたとおり、二人を探し出さなければならない。

なぜわたしの世界が滅んだのか。そして□□□に迷い込んだのか。

その恩義に報いる為にも、そこで積んだ神通力を活かすためにも。

・・・・・・まずは寒いし、湯でも沸かすか。

 

 

市営弓手町線の弓手町駅の真西に位置し、三門市立第三中学校の近くにある山守神社は小高い山で木々が生い茂る寂れた無人神社であり、鳥居だけが立派な一対の灯籠と小さな本殿がただ置いてあった。

誰からも忘れ去られた「三門尊(みつめのみこと)」を祀るこの神社は戦前の老人だけが階段下で拝むだけであり、そのご利益や由緒すら喪われていた。

落葉松の大木に囲まれ境内と石段も荒れ果てた大晦日の神社から、独りでにひっそりと山の上から湯気のある川が流れてきたという。

 

本殿のすぐ裏手になぜか湯泉が流れはじめ、裏手から少し離れた、道路から少し高い位置に開いた所に5m大の割れた丸岩が転がり落ちていた。

上から降り注ぐ小さな川が流れ込んだことで、丸岩の間から湯が流れ出る池場ができあがった。

 

後に人の子達は池場に繋がる小さな階段とスロープ階段と小さな柵を設け、誰もが入れる無料の温泉として密かに知られるようになる。

御利益は忘れられてしまったものの、かの老人はこういったという。

 

「ミツメ様はぁ、湯の神様なんだべ」

 

ナトリウム塩化物泉として性質を持つ湯泉は33度ほどで、後に「名もなき美人湯」として知られる。

今日では体の保温や保湿に効果があり、各神経痛や筋肉痛に疾病、疲労回復に怪我の回復向上・・・・・・特にお風呂に入れない体質者の皮膚病を持つ人たちに喜ばれ、ご本尊の名にあやかって「三門湯(みつめ湯)」と呼ばれるようになった。

今日も小神は人の子らを見守っていることだろう。

 

 

・・・例え参拝客が増えなくても、「湯治の神」として獲得した神格があれば、わたしは存在できるようになった。

13,14年ほど掛けて調べてわかったことがある。

 

 

この世界はあの場所と似ている。

わたしの居た世界は妖力や霊力が存在しなかったはずなのだ、

この世界はわたしの居た世界とほとんど同じだが、そこだけが違う。

また三門市の南東寄りの東方面に「波浜市」なんて存在しなかったはずである。

 

もう一つ、10年前に目的の二人を見つけた。

明らかにこの世界にそぐわない髪色を持った人の子と、□□□□□に頼まれたあの□□□□□によく似た人の子だった。

二人のうち紫髪の人の子は完全に□□□□と同じ姿をしているにもかかわらず、外から観察したところどうも性格が真反対になっている。どういうことだろうか。小神林家の屋敷神を訪ねてみたところ、やはり同じ顔に同じ髪の色を持った人の子が明治時代を過ぎた頃から生まれはじめ、今もなお続いていたらしい。

しかしそうすると、今回の二人が失踪している異変と今までそこにいたはずの□□は、一体どういう繋がりで入れ替わり?現代に迷い込んでしまったか? 

 

もう一人の人の子は髪がそもそも黒い。この三門市で生まれたようだし、容姿だけ見れば別人のはずだが・・・・・・霊格が同じである。

それの真偽を調べるために、波浜市の舞風学園で清水麻理について調べることにした。

 

もはや偶然ではなく必然と呼べるほどの幸運の持ち主の清水はやはり、ただの人の子ではなく巫女としての素質がある上に、霊格が桁外れに大きい。その大きさは軽く守護霊を超えており、神の分霊か神の域に達するほど霊格が強く、その影響でどうやら非現実的な幸運の恩恵を受けているようだ。

 

そしてもう一人、清水麻理がサバゲー部を開いてから1年が経ったころ。

あの人の子だけは確実におかしい何かを持っている。

名を本目健悟、どうやら小学校も中学校も一緒だったらしくその縁で話に花を咲かせているようだが・・・

 

「うむ?」

不意に肩を叩かれた?

なぜだ、感覚を消していたはずなのに。人の子から見えないはずなのに。

 

「おや? 驚かせてしまったかな? ごめんね。」

 

 

人ならざる異形の力で隠れていたはずの「山守」はとっさに距離を取る。

 

「おおっと、これは本当にごめんね。お取り込み中かな?」

 

”まだ”私服姿の金髪・・・・・・もとい、プラチナブロンドの欧米日系の少年のようだ。

はっきりと聞き取りやすくて流ちょうな日本語で話しかけてきた彼は、何者だ?

 

「あぁ、僕が誰かだって?」

「僕は藤屋速夫。・・・Raylandって名前もあるから、レイでいいよ。」

 

握手を求めてくるレイ。

もちろんその握手の意味を知らない山守はそのまま様子を見る。

 

Ray「ああ、これは挨拶の意味ですよ。アメリカの挨拶。」

 

アメリカ?確か大日本帝国時代から・・・

 

Ray「United States of America.」

Ray「真珠湾戦争ぐらいから、原爆投下まで日本と戦った国ですよ。」

 

・・・待った。まだなにもいっていないはずなのに。

 

Ray「そうです。僕はあなたの心がわかるんですよ。」

鬼塚「!?」

Ray「ああ、内緒にしてくださいね?」

 

心がわかる?どういう意味だろうか。

いやそもそもこの人の子は誰だ?

 

Ray「おや、僕の事ですか?」

Ray「来年ここに入学することになったんですよ。」

Ray「今日はその見学。それよりも・・・・・・」

鬼塚「・・・?(それよりも?)」

 

Ray「いえ。なんでもありません。」

Ray「来年にまた会いましょう。See You~」

 

 

小神の鬼塚山守は困惑した状態のまま、ここを後に追いかけたが、レイの姿を見つけられなかった。

その1年後、実際にレイの姿を見つけることができ、彼もサバゲー部に入部したようだ。

 

これはまだまだ、調べる必要がありそうだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話「異世界へようこそ/記憶をなくした転生者」

初めましての方は初めまして、
夜種王といいます。

今作に引き続き、次回作の投稿も下手したら1ヶ月後となるかもしれません。

また、最初は「過去編→ボーダー時代→原作編」としたかったのですが、
ワールドトリガーの連載再開と聞き、嬉しさのあまりすぐに原作に入りたくたまらなくなりました。

繰り返しワードとして出ている外の神の存在や言い回しなどから、
主人公は何度もループを体験していますが記憶を失った状態となっており、本人にとっては初めての転生でも幾億回の「最初からスタート」にすぎず、破綻者であるxnijが観測した結果は残っている状態となっているのが、このループ作品の前提条件となっています。

なによりもワールドトリガーの再開なんて嬉しいじゃないですか!本当に待っていました!(歓喜の踊り


この作品路線を変更し、原作の時間軸まで飛ばす事にしましたが、
物語的には予定していた展開の為、「ある意味で主人公と同じ【経緯の記憶が抜けている】状態」
として、当作品の鑑賞者も主人公の視点で物語を観る形となりそうです。


次回作から回顧や補足シーンを挟みつつ、本来描きたかった「原作との創作」を始めたいと考えています。

過去についてはどうするのか?
これらについてはまた、「最初からやり直し」となった時に、
もう一度展開するかもしれません・・・・・・

それではボーダー創設期の「建悟が覚えていた創設期の記憶」をご観覧あれ…


罪業の神アレクトは微笑む。

真世界の新しき序章に秩序と罰を与えんと。

公平の象徴である白銀の天秤の皿に、鮮血のナイフと暗黒の炎が掲げられた。

 

エリーニュス3姉妹の象徴が輝く。

復讐の紅き刃。<メガエラ>

殺戮の黒き炎。<ティシフォネ>

罪業の白き秤。<アレクト>

 

「怨恨の役者は揃い、」

「殺意を糧に酔痴れ、」

「汝方は彼方を殺す。」

 

「我らは飽き足らず求め。」

「解れる快楽に身を委ね、」

「人の願いを聞き届ける、」

 

「闇を見いだし火を灯す。」

「我らは人の醜心の現身。」

「然して律したださねば。」

 

「メガエラの名の下に恨み晴らせど、殺しの咎を背負い続けるだろう。」

「鳥が羽ばたくように自らを破滅させ、破壊を極め創造し己を率いよ。」

「罪人の業は深く、外道と化す。我は晴れぬ闇と共に目覚める。示せ。」

 

「我らは司る。」

「嫉み、壊し、咎めよ。」

「祝福されし人の子よ。創られし人の子よ。選ばれし人の子よ。」

「己が課せられし試練を超え、呪われし者らを救済せよ。」

「意思を、力を、理性を、克服せよ。」

 

「死を乗り越えよ。」

「奔流を制御せよ。」

「真理を探求せよ。」

 

「我ら三柱神は汝らを見守る。」

「憎しみ、壊し、怒れ。」

「我ら三柱の恩寵を受けし人形に挑み、超えよ。」

 

「足掻け。晴らせ。生きよ。」

「人の文明が生まれてから早数千年、」

「我らは待っている。神兵に値するツワモノとならんことを。」

 

「「「暁の先駆けとなれ、Alquercorn」」」

ーーーーーー

 

それから、俺は気がつくと真っ白な天井が見えるベットの上にいた。

とても長い、長い夢を見ていた気がする。

 

目覚めた感覚は初めてなのに。

今までいた世界に別れを告げて、

初めて「異世界転生」が出来るはずなのに。

 

なんだろう、この慣れた空気に感覚は。

もしかして、自殺未遂に終わったか?

それとも、これが転生トリップなのか?

 

俺は初めてここに来たはずなのに、

俺はこの世界を知っている。

俺は、私は、誰だ?

何を、していた?

ーーーーーー

いまだに回復の兆候も見せないまま植物人間と化した建悟を見て、精神的な傷も癒えた清水が三門市内の青空病院で医師に尋ねていた。

 

2009年6月21日、前代未聞の未曾有に巻き込まれた三門市はまだ戦火の残り火がくすぶっていた。

消火活動や人命救助が警察/消防/自衛隊、日本のボランティアから海外の募金まで、緊急事態宣言としてアメリカ海兵隊からも派遣がなされるなど、完膚なきに破壊されたライフラインで国家レベルの支援を受けていたものの復興活動や救助が遅れていた。

 

最大規模の侵攻は食い止められたものの、未だ突発的な未知の脅威にさらされていた。

数年後の「界境防衛組織(ボーダー)」と呼ばれる砦が構築され始めていたが間に合わず、人手不足を懸念した城戸が後の唐沢、鬼怒田、根付を採用し、後のボーダー規定の土台作りが始められたばかりであった。

 

 

場面は戻り、構築中のボーダーの砦から数キロ離れたところにあるテント状の野外病院。

有志の海外ボランティアと共に、アメリカ軍と日本の国家組織が共同声明を明かしてから運営されている。

 

いくつも張られた中でこの即席の野外病院では最前線であり、大規模な侵攻があったこの地点で日本とアメリカの主力部隊が監視しながらも、いまだ発見される要救助者の保護と人命救助がここでなされていた。

 

 

 

あの惨事から一日後に目覚めた清水は今日も、あの日から眠り続ける彼を看病するために通い訪れていた。テント状の病室に案内され、担当医から検診されていた彼の部屋に入室する。

 

三門市の外から派遣された人命のスペシャリストは清水ともう一人後ろにいた人物を認めてから、いくらか世間話を終えてから、重要な次の言葉を伝えた。

 

「手を尽くしたが、もうだめだ。」

目が覚めてからずっと身を案じて看病を続けてきた彼女の顔から、受け入れきれない絶望と辛い涙が押し寄せる。

 

この三門市を救った一人のセーラー服(明るい水色と白色)の少女。

見た目は華奢で背の低い文学少女だがどこかだらしなく紫髪だが、見目麗しく凜々しい意志を宿す「紫髪の双剣」、創設ボーダーの小神林御厨が僅かに背が高く一つ上の清水の泣き顔を包んであやす。

ーーーーーー

 

 

大規模な患者を収容する白の移動式テントを一望できる、清水達が見える少し離れの廃ビルで脚をぶらぶらさせる藤屋と、腕を組んでずっとその様子を見守っている鬼塚の背後から飄々とした迅がやってくる。

 

「Hi,迅さん!」

「やぁ、レイ。鬼塚さんもここに?」

「ああ。・・・これも迅が見た未来か?」

 

「そうだね。俺が見た一つの中にある未来だね。」

「・・・・・・(腕を組んで視線を戻す)」

「迅さん、本当に小神林だけでよかったの?」

 

「小神林だけで大丈夫。俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」

「...Uh-huh,そういう未来ね。迅さんのその未来通りになるといいね。」

「・・・・・・レイランド、前前から思っていた事だが、」

「どうしてわたしや小神林を誘った?」

 

レイ「uh,興味でかな?」

鬼塚「興味・・・・・・?」

 

レイ「そうそう興味。」

  「僕は心が読めるし、」

  「何か果たさなければならない目的があるようだったからね。」

鬼塚「・・・・・・」

レイ「And...僕も果たさなければならない使命を帯びている。」

鬼塚「使命とは?」

レイ「それは言えないかな。今はまだ、早い。」

  「偶然とはいえ、清水先輩の始めたサバゲー部のおかげで、」

  「ここにいる全員と、顔馴染みにもなれた。」

  「これもまた、神のお導きなのでしょう。」

 

レイランドはロザリオを右手で手繰り、建悟たちがいる方向へ祈りを捧げる。

 

迅 「・・・」

迅は考える。レイランドの素性について改めて。

 

 

彼は「サイドエフェクト」らしき「心が読める/TELEPATH」を持つが、言語化された思考だけでなく無意識表層における「心のイメージ」すら掴めるその探索性と正確さは、今まで記録されてきた自分たちのデータベースにも確認されていないレベルのものだ。

 

半年前から速夫=Julianus・藤屋=Raylandは迅たちの組織に加わり、以来成長がめざましく単独で人型ネイバーの撃退にも多く貢献している。

 

国内外の輸出入と物流を担う「速雷物流株式会社」の社長の息子であり、白銀の髪を持つピアニストのアメリカ人を母に持つ彼は欧米系の日本人でバイリンガルである。

185cmと5cm高い年上の風格を漂わせる鬼塚と違い、ナイスガイでイケメンな顔立ちで服に隠れた筋肉質な体躯は軍人仕込みの民間訓練を受けた賜物であり、生身でも銃とナイフの取り扱いに長けた「民間人」である。

 

秀でた才覚に加えて「心を読める」その能力が自身の能力を底上げし、人心掌握と動物に懐かれるその才能に満足せずより高みを望み、情報元が割れないようにしていた迅たちの足取りをつかみ自ら訪問してきた人物である。

初め迅も警戒したが未来で現在のボーダーに貢献する重要な人物と知り、迅がスカウトする形で旧ボーダー隊員となった。

まだ高校生の身でありながら戦闘員として十分な素質と貴重な経験ですぐに迅たちの組織活動になじみ、総売上10兆円を稼ぐ父の融資で旧ボーダーの資金源が潤い、同じ仲間としてなじむのにそう時間はかからなかった。

 

そんなレイランドがスカウトしてきた二人が、鬼塚山守(やまもり)と小神林御厨(みくり)だ。

 

和装を好み「急に現れ出る」黒き鞘の太刀を獲物とする高身長で細身の鬼塚と、

紫髪と染めたように見える「地毛」で一見病弱そうに見えるが怪力と思える膂力と桁外れな記憶力の持ち主の小神林を、レイランドは連れてきた。

 

「きっと君たちの助けとなるはずだよ」

 

とレイランドは、異色な個性を持つ二人を第一次近界民侵攻の三ヶ月前にスカウトしてきた。

裏取りと威力偵察を得手とするレイランドに違わず、

鬼塚は見た目通り簡易トリオンソードを我が物のように初見でモールモッドを撃破し、

たった一ヶ月で迅やレイランドの強さに追いついてみせた。

 

小神林はその頭脳でより効率的な指示と作戦が練れるオペレーターコンソールを作り、

トリオン体にしかなれないトリガーホルダーをより高性能にしつつ、両手にトリガーツールを出すための基盤により強力な弧月の開発、射手のシューターメソッドに着手した。

 

 

レイランドは確かに今の界境防衛組織に大きな貢献を果たしてきた。

そのおかげで惨事となる第一次近界民侵攻の防衛に大成功し、こうして基盤の構築と人事の採用、資金源に運用法、設立まで順調に進んできた。

 

だが、彼は一体「何を持って自分たちの元に来たのか?」

迅の持つ未来ですら、未来の彼が語ってくれない。

彼がやろうとしていることはわかるものの、根底にどういった願望や方針があって快く手助けしてくれるのかわからないのだ。

「目的がわからない。」

 

 

レイ「・・・迅さん。」

はっと呼ばれて気がつく。

 

迅 「うん?」

レイ「今はまだ、語れないだけです。」

  「いつの日か、話すべき時が来たら・・・」

 

レイは何か言いたそうにしながらも、迅の気持ちを察する。

 

レイ「そうだ、裏方って興味ありますか?」

迅 「裏方?」

レイ「ええ。スパイ、暗躍・・・なんであれ、人知れずに活躍する。」

  「僕はそうありたいのです。秘密があれば、人は距離を置いてくれる。」

  「この才能を、無駄にしたくはない。だけど公に知られたくは無い。」

  「今後、この組織はヒーローになるでしょう。映画みたいに。」

  「だけどここ日本では、僕のような存在は恐怖を呼び寄せるだけ。」

  「これから僕は人知れず、貴方たちのサポートをしていきますよ。」

 

どこか悲しげに、どこか申し訳なさそうに、迅に伝える。

迅は答えられなかった。自分の持つサイドエフェクトは確かにこれまで便利だったし、人から避けられた事も無かった。だからこそレイランドの言う「恐怖」がすぐに理解できなかった。

 

後になって遅れて理解した迅は、なんて言えばよかったのか分からないまま機を失い、レイランドの背中を見る。いつも食事前に感謝の祈りを捧げるほど熱心な信者の彼はどこか孤独で、どこか孤高であった。

 

このやりとりを見ていた鬼塚はただ、見守っていた。

 

崩れかけたビルのコンクリート上に置かれた、背負える可搬無線局のつまみをいじり遠方のゲート対処に向かった仲間達の無線の配線を行いながら、二人の会話を聞いていた。

 

鬼塚も迅やレイランドと同じく「秘密を持つ者」である。

「もたざる者」がいないこの場所だからこそ聞けた作務衣風の彼は、

本目たちの事を気にしていた。なぜ気にするかは、レイランドがよく知っている。

 

鬼塚「・・・(『人の子にして妖の素質を持ちし異能者、か』)」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時は同じくして、死亡判断がなされた本目建悟の酸素マスクが医師の手によって外された。すでに覚悟を決めていた清水も泣き崩れてしまい、支えていた小神林も一つ上の先輩の死が受け入れきれずに片瞳から一粒の涙が落ち、じんわりと目頭が熱くなっていた

 

死亡時刻:平成21年、10時13分20秒。生命維持装置により延命するも回復の兆しが見受けられず、最終的な心停止を確認。

 

全身に及ぶ臓器機能不全と内臓破裂、呼吸器系の筋肉断裂に神経骨格の単純骨折、免疫不全により炎症状態が回復せず、脳組織にダメージが及び重度の麻痺が起こり植物状態となる。その後の延命手段として生命維持装置と人工透析を行うも・・・・・・

 

 

「・・・。」

 

不意に、死亡したと認定された建悟の眼孔に光が灯り、目蓋が開く。

 

医師は外したその直後に起きたその現象に、一瞬たじろぎ、いぶかしんだ。

 

「がぁahaaaaaAAA! うおぉろ、おぉぉぉ・・・」

 

絶叫に近い苦痛な叫びと共に茶褐色の血欠片を含んだ嘔吐が病室の床と医者の白衣を汚し、同時に意識を手放す。

 

「な、えっ!?」「ちょ、ちょちょ、どういうこと?!」

呆気にとられた二人と同じくして、医師の男も驚きつつナースコールを押す。

 

直ちに腔内の異物除去と気道確保を行い、救急的な医療処置を施しつつ、直ちに救命に取りかかった。

先輩と後輩の二人は後からやってきた助手や看護師のすすめでビニール製の最新鋭の機材がそろった集中治療室の待合室で待たされることとなる。

 

 

すでに死んだはずの男がまた、3度目の命を得る。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話「Carrion crows bewail the dead sheep./and then eat them.」

ぐわ〜、私のiPhoneがっ!

山登りの荒天でうっかり水没させてしまい、アイディアやら設定やらがおじゃん…ぐぬぬ、
また一からやり直しですね…


建悟が再び意識を取り戻したのは、翌日6月22日月曜日になってからであった。

 

既に1週間が過ぎ、第一次近界民侵攻から経過9日。

建悟は治療不可能な危篤状態にあったにも関わらず奇跡的に一命を取り留めた。

 

 

 

時を同じくしてボーダー隊員が離れた各地域に頻発するゲートとトリオン兵を撃退し、市民の声から政府から彼らの援助を行ってはどうかと上がりはじめ、ボーダーの砦の建設に地域住民が参加してくれるようになったころ。

 

城戸がボーダーの約款を制定し、正式に界境防衛機関の司令官として長を務め、本部の防衛長に忍田と林藤、迅や木崎らが隊員として界境防衛機関の根幹を定めた。

 

一方で、トリオンに関する技術の開発に秀でた鬼怒田や、大学院を卒業しマスコミと国民感情の情報操作に携わり経験豊富なスポークスマンの官僚である根付を採用し技術の向上にも貧欲に求めた。

 

更に絶対的な防衛組織として基盤を強固なものとするために人脈と資金繰りにも城戸は注目した。

かつて裏家業で痕跡も残さずに表世界で大金をたった一人で搾取して行方をくらませる、その界隈で仇名を馳せていた「ラガーマン」唐沢に城戸は、その有能な交渉術に目をつけた。

唐沢の深い闇であるその裏経緯を公表せず隠蔽する取引を条件に正義のヒーローの一人として。

 

城戸は第一次近界民侵攻の始まりの日からこの日を境に、何かがあったという。

 

忍田は

「守ろうとしている意志はそれでも変わらない。」

と言うものの、かつて笑っていた頃の暖かみのある人間味が急に無くなり、冷たくなった城戸の人柄に何か察せざるを得なかったようだ。

 

林藤は

「城戸さんは前より暗くなった。その理由は上手くは言えないが・・・・・・」

「有吾さんがボーダーから離れたときや最上さんが死んだ時からそうだったかもしれない。」

「城戸さんは人の別れや生き死にを見て何かを思ったんだろう。」

「多くの命をこれからも預かるし、見守らないといけないし、救えた命を見捨てて大なり小なりその責任をこれからも負い続ける道を自分から選んだんだ。」

「本当は誰よりも優しくて誰よりも自分に厳しいんだ。ただ不器用なんだけどな。」

「それが俺たちや唐沢も惹かれて、いつ死ぬか分からないこの組織に残ることを選んだのかもな。」

 

 

6月の終わりか7月初旬、界境防衛機関が創設された。

ーーーーーー

 

 

それから私は。

4年前に界境防衛機関「ボーダー」が創設されてから、本目支部の支部長を務めるに至る。

 

 

もう何度目か数え切れないほど、また喪っていた意識を取り戻した。体を起こして周りを眺め渡せば…ここがどこかは分からなかった。それ以前に、私が何をしていたのかもよく覚えていない。

 

白いベッドや簡素な木の机と白カーテンに酸素ボンベ給気口などから見るに、どうやら患者の病室のようではある。

 

右腕に赤い液体と・・・透明な液体の二口点滴針がそれぞれ繋がっていた。かゆくて異物感があって気になって仕方ないが・・・安静にしたままがいいか。白の患者服で・・・近くの戸棚に、お見舞いとおもわしきバスケットや添えられた花瓶が何個もある。

 

どれも自分に対しての励ましの言葉の中で、「本目支部長」という見慣れない文字も見かけた。

・・・よく見るとこの患者服の裏生地の衣類マークタグに当たるところに、見慣れたマークが見えた。・・・界境防衛機関のマーク?ここは一体・・・

 

ガラガラガラ。

「おう。起きたか」

 

若い女性の声がスライドドアの開く音と共に聞こえてきた。

足下まで伸びた不揃いでぼさぼさな紫髪に、目元の隈に着崩れた白衣と灰色ズボンの20代ぐらいの女性が現れた。声色はどこかぶっきらぼうで、落ち着いた低めの声だ。

 

「調子はどーだ。建悟?」

容姿端麗なのに気怠げでだらしない格好の妙齢の女は自分のことを知っているらしい。首から提げているカードホルダーからは、

 

「界境防衛機関所属 トリオン医科学研究所長」

「ボーダー中央病院 トリオン生体医科学研究科」

「小神林御厨」

 

と証明顔写真から本人と確認できた。

 

「・・・はぁ。」

「またなのか? YesかNoでで答えて。あたいの事覚えてる?」

 

彼女自身が自分を指さして問いただしてくるも、自分は初めてあった相手だ。答えられるわけもなく、横にノーと首を振る。

 

「・・・そう。」

「とりあえず、ここはボーダーから少し離れた別館よ。」

「こっちについてきて。案内しながら話をするから。」

 

言われるままに裸足のままスリッパを履いて、彼女の後ろをついていくことにする。

赤色の液体につながっていた点滴針を抜いてもらい、今は右腕の生理的食塩水の点滴棒をガラガラと引きながら、病院らしき廊下を歩いている。

 

黄金色の夕日が紫髪を透かせ、野原に凛と咲くスミレやレンゲソウを思わせる彩りを魅せてくれる。夕陽に照らされる左右の窓ガラスからは、右に登り坂の森が、左に巨大な砦「界境防衛機関」が見えている。

 

「・・・あれがボーダー、玄海をネイバーの驚異から守る防衛組織よ。」

「ここは白鷺山の麓。山の上には実地訓練場と本目支部。」

「建悟である貴方の、本目家の所有地でもある大切な場所よ。」

「そして貴方は、その支部の長。」

 

「あたいは建悟に言われた通り、万が一に記憶を無くしたときに、記憶の補完を頼まれてたの。」

 

 

「あたいがトリオン医科学研究所の研究所長、御厨よ。」

「そうそう。建悟が言っていたとおり、鳩原と麟児が失踪したよ。」

ーーーーーー

 

 

2013年6月1日。

 

その前の月にボーダー隊員の鳩原未来と、「最低3人の外部の協力者」こと民間人へのトリガーホルダーを横流し行方をくらませたという話の中で、雨取麟児が失踪して「雨取千佳が兄を探し始めた」という兆候が確認された。

 

今の私が覚えている事は4年前、現在の界境防衛機関拠点に最も近かった野外病院の簡易ベッドで目を覚まし、小神林が後ろで見守る中、清水に抱きつかれて「おかえり」って言われてから…9月末までの約三ヶ月までが今の記憶だろうか。

 

目を覚ました6月のあの日の昼、未来が見えるサイドエフェクトを持つ迅から、スカウトを受けた。

界境防衛機関「ボーダー」の初年度隊員募集の採用枠とは別ルートで、ヘッドハンティングの正式採用だ。

 

理由は尋常ならざるトリオン保有量にレイランドの推薦、そして「異常現象の解明と保護」の三つらしい。

気を失った後の「出来事」である、「トリオン以外の手段で破壊できた現象」の原因解明のために入隊当初から鬼怒田さんの研究所で人体研究が続き、お馴染み諸訓練の試験を受けて約2週間後には通常隊員の設定期間よりも速く必要条件を突破した。

 

開発部門の研究所内でトリオン体質検査や反応検査を試されたものの、4年経った今も研究結果が出せず、結果として判明していることは「トリオンとは全く別の性質で、トリオンに干渉できる異常生物能力によって、トリオンへの破壊・干渉が行えている」。

 

これは現在、「不規則・不定期」に発生し、サイドエフェクトや(仮に)黒トリガーとは「何ら関係が無い」ものとして結論づけられている。

 

3年前に開発した抑制剤を服用することで、以来暴走を抑えることに成功している。しかし完全に食い止める事は不可能だったようで、ルミネセンサー襲撃時や、ごく稀に悪夢にうなされ深夜帯に徘徊する夢遊病や第二の裏人格が顕現するようだ。

 

3年前当時と比べれば遙かに安全になったが、今でも暴走した場合の危険性があり警戒はされている。

この暴走は4年前の9月下旬頃に頻発した「ルミネセンサー(残痕者)事件」に強く影響し、約6日間寝込む事態になったこの事件で、「ジンクス」と名乗る建悟の第二人格が6月から9月末まで何度も不安定な状態で出現・暴走していた。

 

時間と場所に関係なく建悟にのみ襲撃してきた「ルミネセンサー」は、通常単独でノーマルトリガーで対処できる。

しかし、その強さはたった一体で、モールモッド10体分の戦闘能力を持つ。

忍田本部長や迅悠一など、ボーダーの中でも一級隊員でなければ撃破すら当初の隊員たちは撃破困難だった。

 

特に6月から頻発したルミネセンサーは「所属不明のトリオン生体兵」のため戦力と目的が不明で、最優先事項として懸念されていた中で、建悟ばかり集中した経緯は現在でも不明だった。

幸いにも裏人格の建悟「ジンクス」が、不定形か異形のおぞましい濁黒色のルミネセンサーを撃破できる能力を持っていた為にボーダーの被害はさほど大きくはならなかったようだ。

 

ルミネセンサー事件中に新たなサイドエフェクト「過去視/サイコメトリー」「透視/クレアボヤンス」を獲得した。

隻眼の左眼から「千里眼」「暗視」「霊視」「過去視」「透視」の5つを保有するSE「視認強化」が開花してから、

ランクBをランクAに引き上げ、その他2つのSE「前世の記憶/?」「トリオン適合体質者/S」の大変珍しい多重SE保持者でもあった為、『S級隊員』という概念が発生するきっかけとなった。

 

 

ノーマルトリガーを始動させてから24時間までトリオン戦闘体でいられる「トリオン1」の数値に対し、

6月入隊時点でトリオン18と非常に類い希な数値を示した結果に鬼怒田本部開発室長だけでなく、

城戸司令すら驚きを隠せず疑問を抱いて周到な検査を行わせたところ上記3つのSE保持者であることが判明した。

 

私はもちろんこのチャンスを逃すわけも無く、入隊当初から様々なてこ入れを目論みた。初め私は無干渉で「なりきろう」と考えたものの、トリオン保有量の検査で異常なトリオン器官の大きさに驚くと共に合点がいったからこそ、てこ入れをやろうと思いついた事もある。

 

確か記憶が”合っていれば”の話ではあるが、高校生2、3年生の間で何度もトリオン兵に監視や襲撃があったからだ。これは初め、旧ボーダーメンバーを探していた時に、小神林と何度も廃墟や曰く付きのオカルトスポットなどでばったり出くわした中で3回ほど、トリオン兵と思わしき偵察兵の存在を見掛けた。

 

3年の時にバムスターに出会った時もあったが・・・そのいずれも、自分もトリオンに対して適性があったからなのだと今は考えている。(まさかサバゲー部全員がトリオンの高保有者とは、後になって驚く事となった)

 

 

話が長くなってしまった、閑話休題。

 

私はさっそく「城戸司令と小神林と迅にだけ、前世の記憶があることを暴露」した。

 

暴露といっても「前の世界で過ごした記憶がある」といっただけで、真に違う世界の住人であることはまだ明かしてはいない。

 

だが、まず先に話すべき「今に至る私」を説明しなければならない。

 

 

入隊手続きを既に終え…

検査によってSEがそれぞれ認定された後、3人を集めて「前の世界」について話をした。

 

前の世界とはいっても「ビデオカメラマン・猟師だった記憶」を話し、ただの高校生や大学生なら知らない「場数と年数」が必要な撮影技術と猟師経験を実際にやってみせた。

「死ぬ」時の話も詳しく話したものか。

 

まだ年相応の小神林は信じてくれなかったものの、先が見える迅は確信できる未来を、城戸司令は戦闘の場数で特に「射撃技術」から反射神経と予測経験を見いだした上で、二人は私を信じてくれた。

ーーーーーー

覚えている限りで「先を知る」私は、やがて来るであろう「【こんな元凶を作った張本人】」の奴の最悪な干渉に備えるために、原作知識を悪用することに決めたはずだった。

 

まずは「スナイパートリガー」「シュータートリガーのガンナー」開発。

 

これは私自身が猟銃の射撃経験に依るものが大きく、且つ「遠隔攻撃の規格化」、「方法の簡易化」、「概念の定着補助」など、

今のボーダーに必要なトリガーデバイスだ。

 

4年前のボーダーの時点で攻撃トリガーが「孤月」か「シューター」ぐらいしかなく、迅の黒トリガーかそれより前は簡易トリオン武器で戦っていたぐらいだ。

 

そこで「銃」の概念を組み込めば、より戦術の幅が広がる。更に組織には「規格化」された手段や方法が必要不可欠だ。

どんなに優れた兵士や隊員がいても疲弊すれば倒され、例え100人に匹敵する武将も千人の軍兵と一人の軍師の前では風前の灯火に過ぎない。

 

ある一定条件を満たせる平均的なスペックで「部隊」としての運用を可能とさせる一つならば。だが私は一つの懸念を覚えた。

 

「将来、三雲修のような戦闘能力とトリオンに秀でていない隊員と、秀でている隊員と致命的な格差がもし生まれてしまったら?」

 

私はその対処に答えを見いだせなかった。

が、確かその対策案を練っていたはずだ。

 

一つは戦闘体自身に「攻性トリオン」を付与させて格闘による打撃。

これは格闘経験のない隊員にとっては恐怖を覚えるものがあり、「殴る」という行為に倫理的な生理現象が起きてしまい、まだ年端もいかない少年少女たちに白兵戦という環境を強いる方が平和な今の時代に酷なものがある。

 

もう一つは簡易トリオン武器を参考にした「手裏剣」「さすまた」「爆弾」。

いずれもこれらは対人戦において有効ではあったが、対トリオン兵においては有効打に欠ける上に相応の技術や戦術運用を必要とした。

 

更に爆弾は「特攻自爆」が目立ち、またその恐怖による不発も判明した為に、三ヶ月間の結論としては不採用となったはずである。

 

いかに

「トリオン戦闘体としての強み」

「道具を持つ事による恐怖の低減と戦略の拡張性」「規格化できるトリガー」

のこれらをどう繋ぎ合わせるか。

更に「汎用性を取るか、対人対トリオン兵」とするか。

 

入隊一ヶ月目の間に思いついては報告して、テスト運用を行い正式採用されたトリガーのなかで、4年経った現在も残っていたもので正式採用されていたのが・・・

弓矢の「初月」。

簡易トリオン弾薬と規格化された小銃を用いる「ライフル」。

シュータートリガーのシールドボール「ウォーム」。

 

特にライフルとウォームは、ボーダーの「B級」大人数部隊「予備隊」の創設に一役買っていた。

 

 

弓手【アーチャー】トリガーである「初月」は、孤月と並ぶ傑作のシュータートリガーの一つとして認知されているものの、使用者が少ない射手のトリガーだ。「複雑な操作概念と才能」を要求するシューターと違い、簡便で軽く、鏃以外の全てを「物理化させた」矢を戦闘体の膂力で弓を射出器として用いる。

 

これはつまり、攻撃手用トリガーと同じ「硬質化・威力」二極だけでトリオン構成を割り振れ、長距離でも威力が保たれる上に重力も加わる。

しかし、ガンナートリガーである銃と比べれば有効射程と継続火力に乏しい上に、物理法則に大きく左右されるため「弓術の経験」を必要とし、ほぼ無音だが一撃必殺の近中距離を得手とする狙撃手のポジションで玄人向けだった。

ボウガンの案や投槍などの案もあったが、弓の方が取り回しと機動性がよく、結果として弓道・アーチェリー経験者向けだった。

 

 

次に「従来の銃」に則ったシュータートリガーのもう一つ、弾手【アーマー】トリガー。

これはシューターもスナイパーも「自身のトリオンを弾として供給する」概念があるために、一定以上のトリオン保持量や要求量を満たさなければ、威力不足どころか活動限界が来てしまう欠点があった。

 

それでも人気なのは「弾がたくさん撃てる」事で気にせず撃てる事だ。これもまた裏を返せば、無駄弾がそれだけ多いということでもある。

 

トリオンの才能に応じて扱えるレベルの強さが変わってしまうのであれば、適性や並外れた努力に加え、やはり一定以上の条件を満たすトリオン器官の大きさが求められてしまう。

そこで「資材を大量消費する」形で、トリオンが豊富なこの世界「玄界」だからできる、「簡易トリオン道具」を装備させれば例え下位の隊員でも一級隊員と同じ活躍を少しでもみこめると思い立案したものだ。

 

これは「規格化」が主なため、誰が使っても同じ火力・射程・性能で扱えるよう設計されており、基本形として乾電池装填ボックスマガジン方式のセミオート型USA M14形式の電撃パルスライフルが造られている。これは「トリオン戦闘体」のみにセーフティロックが外れて使用可能になっている銃器で、狙撃トリガーのライトニングに近い現代の装薬ライフルの形状になっている。

 

これにより、最低トリオン1の隊員でも乾電池型の「弾薬」と「ライフル」を持たせれば、たった一人で10体前後のバムスターを対処できるようになる。

数をそろえれば代替の即戦力として機能はもちろん、大規模侵攻に対し大人数による運用で大集団戦に持ち込める。

 

原作でもそうだったように、C級隊員に支給するトリガーホルダーの量産が間に合っていないようだったが、幸いトリオン資材は「困るほど余って」いる。

原作以上に人が増えたようで、「予備隊」と呼ぶ新たな部隊の概念ができていたようである。

 

 

最後にシュータートリガーの「ウォーム」。

 

これは「シールド」をシューターの扱いと同じように「射てる」もので、大きな利点は「弾着地点や対象に、固定シールドとしての効果を付与できる」点にある。

 

性質はシールドのそれと全く同じであり、浮遊中も「シールド」としての効果が見込めるため、固定シールド状態と比べれば耐久性は劣るものの弾よけや接近戦の保険として非常に有効なようだ。

「固定・固着する」シールドの性質を利用して、相手の「攻撃トリオン」部位を拘束して攻撃を妨害したり、エスクードのような通過可能な射蔽物・防護壁の設置や味方の防護が行える。

 

やはりシールドにも言えた事だが「攻撃するトリオン」に対してのみ反応するため、トリオン戦闘体そのものや孤月の柄や「無効化した孤月の刃など」はすり抜けてしまう。

対処策としてウォームの防護壁・拘束壁に、「固定シールド化した際に、半透明化させて物質化させる」【トリオンの物理化】を選択できるようになっている。

 

これはエスクードの概念に似たもので、固定シールドの内・外面だけを硬質化させることで、エスクードの物質化と同じ物理状態となり、メイン・サブのフルガードに相当するトリオン消費量程度で固定シールドの構築が可能となっている。結果、敵味方の通行妨害・行動妨害・援護・構築・補助・拘束が可能となっている。

 

またその特性から「破損したトリオン戦闘体の一時的補修」が可能で、体内外にウォームシールドを貼る事で、空閉がやっていた「スコーピオンで身体の穴をふさぐ」芸当をより簡単に行えるようにできる。

 

・・・・・・しかし、正隊員のほぼ全員が完全サポート職よりも、少しアタッカーやシューターに回れる「余地のある、攻撃手段や防御手段」が好まれたようで不人気ではあった。

 

一部のトラッパーが意表を突く手段として「罠」の運用が強かったようだ。

これもまた意外だが、「大人数」の運用となった時に有利な陣地を築く事が容易で、エスクードと違い半透明で先をある程度見る事が可能だったため、10名以上から構成される予備隊の部隊配置に戦闘流動性をもたらした要因となった。

 

 

 

他にも説明することはあったが、それぞれの説明は後ほどとしたい。私が発案して採用されていたトリガーの説明よりも・・・

 

今から4年後、原作お馴染みの「エスクード」「槍型孤月」「スコーピオン」「グラスホッパー」・・・・・・などなど、あの当時のトリガーを私は全て再現したかった。韋駄天はもちろん、レイガストや・・・・・・アレンジとして、試作テレポーターをもっと使いやすくした座標移動型のテレポートに、せっかく無尽蔵の弾丸なら銃器のバリエーションをもっと豊富に……。

 

機関銃型の中でも威力と発射速度を追求するヘビィ級に軽量なライトマシンガンから、

機動力を重視しつつも掃射による制圧効果を意識した分隊支援火器まで。

拳銃型なら「弾手」の簡易アステロイド弾薬を利用しつつメイン・サブの弾種の選択幅を広げられるリボルバー形式や、

着脱できる多弾倉のボックスマガジンや銃本体に弾込めのチューブマガジンなど、

最終的に車載を考慮したベルトリンク方式のマシンガンや重火器と砲まで。

 

簡易トリオン爆薬の管理方法から、アステロイドの弾のピアッシング/ホローポイント効果まで考案したものだ。

 

もちろん接近武器や補助トリガーの選択肢の幅にもてこを入れ、あえて「エスクード」を取り入れた物理化トリオンの斬打撃武器「円匙/エンシ」、

両手斧もしくは両手鎌の選択が可能な「三日月」、

トリオン兵の装甲やシールドを穿つ事を重視した片手使用の「レイピア」、

高周波ブレードのナイフ型「閃光」、

もはや用途不明なトリオン神経切断重視の超重量級チェンソー「リッパー」まで。

 

補助トリガーにも、グラスホッパーが空間に留まる効果を利用して跳躍効果を無効化した足場の「ステップ」。

障害物や構築物を隠すための絵巻物型巻き布・光学ディスプレイ型の「ステルス」、

特に弾手と狙撃手の銃光と銃声音を消音することに成功した「サイレンサー」、

スパイダーを参考に捕縛するだけに対人拘束・対トリオン兵の機動妨害に特化した電撃付与の捕獲網トリオントリガーの発射器「スタンガン」まで考案したか。

 

そしてこれらを解説・運用訓練をするための「仮想空間チュートリアル」はもちろん、佐鳥の二丁スナイパーや太刀川の二刀流旋空孤月のような手数基本から、出水の合成弾やフルガードに影浦のマンティスといった任意に入室して方法を練れる「応用トレーニングルーム」、

 

そして…現実世界で"トリオンを使用し、演習させて器官の育成を図る"トリオン実地訓練場まで考えた。これはボーダー全員の能力向上のため。何より、「分かりきった状態で見知った強さで戦うなんて、つまらないじゃないか。」

 

私の山に実地訓練が行えるようサーバーの追加・整備する案を考えていたところで、どうも記憶が途切れている。

 

…と、以上のようにこれまで、漫画とアニメに発表されていた時点のトリガーのアイディアや使い方をそれとなく伝えてきた。

今から4年後が一体どうなっているのか。楽しみな反面、ちゃんと「私の知っているボーダー」になっているのか、心配でもあった。

仮想空間マップに三門市を模した街や市外の特殊マップを作る事も勧め、より現実に対応できる組織力を高めてもらいながらも、「あのワールドトリガーのボーダー」に近くなるよう影ながら補備を入れたつもりだ。

 

ーーーーーー

ふと昔を懐かしみながら、逆に「そこから先の記憶が無い」事に違和感を覚えた。

 

不安な顔を見た研究長の御厨は分かっていたかのように、携帯・・・スマートフォンでカレンダーの画面を見せてくれた。

『18:21 2013年6月1日』

「今は2013年、平成25年よ。」

 

ということは・・・原作では、12月頃だったか?なんとなく自分の身体に視線を移す。

 

・・・あまり体格は変わっていないが、心なしか腕や脚が太く、握りしめた時の強さが上がっているような気はする。

 

ところで・・・いつまで私は寝ていたのだ?

 

「そうね・・・ひと月よ。5月初めに鳩原未来と雨取麟児、その2人が失踪したその当日、」

「建悟はすぐにその行方を追ったの。・・・そしたら戦闘体も解けてて、」

「生身で満身創痍の状態で帰ってきたかな。あの時は意識も危なげだったし・・・」

 

きぃん、と頭に鋭い音とノイズが走って思わず頭を抱えた、痛い・・・何か、思い出しそうだ・・・

 

「あ、ええと・・・休んで、そこに」

御厨の手に引かれるまま近くの長いすで横に寝かせられた。

 

・・・その適当な服装さえなんとかできれば、いい年頃で美人だろうに、まだ指輪はしていないのか。

「まだ体調が優れないのかな、『メモリー』は後にした方がよさそう・・・」

 

私はデジャブを感じた。それは、

「『分かったことが一つ、あるのだけど・・・』」

何か言いたげな様子だが、思い悩んでいるようだ。

 

・・・続けてくれ、私は大丈夫だから。

「本当に大丈夫・・・?」

 

ああ、大丈夫だ。聞かずに後悔する方が後悔する。「・・・はは、そこは建悟らしいなぁ。同じ建悟だから言うことは同じでも不思議じゃない、か。」

 

一つ前置きを挟み、息をほっとつく御厨。

 

言われてから気持ちを落ち着かせて、

「分かったことが一つ、あるの。」

「建悟、貴方は過去と未来を何度も行き来してる。それも違う世界の"私たち"の所に。」

 

「1秒前の"私たち"の世界と、1秒後のあの人達の世界に、貴方の意識は移動している。」

 

「つまり、・・・入れ替わってるの。」

 

「貴方自身が、今と今じゃない貴方の意識と。」

 

「4年調べて分かった、貴方の記憶喪失は・・・記憶じゃなくて、意識の方なの。」

 

・・・つまり、どういうことだ?

「説明するね。」

 

「・・・表現ではなかなか説明できないのだけども、」

なにやらカードホルダーを手に取る。

・・・電子投影メモを起動し、空中に絵も描ける電子メモが投影される。

 

「今の貴方はここ、2013年6月の世界にいるの。」「だけど今の貴方は、今と違う時間軸の世界からやってきたの。」

「ええと・・・覚えている限りでいいのだけど、どのぐらいまで覚えてるの?」

 

・・・うん?

もう2013年なのか?

覚えていたのは確か・・・えー・・・

 

2009年の9月30日だった気がする。

「2009年の9月30日・・・」

 

「ああ、ルミネセンサーが大量にやってきたあの日・・・」

御厨は何か思いついたようだが、話を続ける。

 

「貴方はその頃の建悟ね。」

「今はその4年後・・・2009年10月からの記憶が無いのも、」

「貴方が2009年9月30日から、2013年6月1日に意識が飛んできた。」

「いわゆる時間跳躍よ。タイムスリップ。」

 

「記憶が一切無いのに至って正常なのは、」

「貴方の意識だけが過去から未来の時間帯を行き来しているからなの。しかも、」

「今居る貴方の意識、現意識はその時の記憶だけを保持している状態・・・」

 

「ただ、この仮説も問題があって、なぜ未来から過去にやってきた貴方の意識が、」

「過去に起こった出来事を知らないのか。逆に未来に起こる事を知らないのか。」

「説明が上手くいかないところはあるわ。」

 

「・・・・・・だけど確実に言えることは、」

「貴方の意識は知覚上、時間跳躍によってその間の過程、つまり記憶が消えてしまっている。」

「もしくは貴方の言うとおり、ルミネセンサーに『時間を食われている』のかもね。」

 

一息ついた御厨は、建悟と共にソファーで座ったまま話に区切りをつけた。

 

つまり・・・今の私は記憶喪失なのではなく、そもそも記憶が「無い」って事か?

「そういうことになる。何らかの原因で記憶が初めから消えて・・・痕跡すら削除されて記憶の復元ができないのも、」

「時間を超えてやってきた貴方の意識上の記憶量に依るものなのか、もしくは時間跳躍の過程で記憶が消されてしまうのか、はたまた・・・”私たちの”建悟が言っていた、ルミネセンサーたちは時間を食らっている影響で支障が起きているのかも。」

 

・・・・・・なるほどなぁ。

 

とはいったものの、私はこれからどうすればいいんだ?

 

「貴方は気にしないで、心配しなくて大丈夫。」

「こういう時の為に記憶の追体験・・・」

「"あたいたちの世界の"建悟の記憶をバックアップしておけって言われていたの。」

「その為の記憶追加装置『メモリー』を作っていたのだけども・・・(ぼそ)」

 

(まさか記憶を消すために、市民にメモリーを使われるとは心外だったけど。)

何か聞こえたような気がしたが・・・

「え?ああ、独り言よ。」

 

「とにかく、精神と脳に大きな負担が掛かるから・・・明日にした方がいいよ。」

「それよりも、まだここの紹介に・・・ボーダー本部も説明できてないし。」

そうだな。そういえば・・・

 

ぐるる~とお腹が鳴ってしまった・・・

 

「・・・ははっ、お腹すいたみたいだね?」

「んじゃ、ここの食堂にいこっか。」

「まだ身体も本調子じゃないし、鶏ガラ醤油ラーメンライスはお預けだよ。」

 

ぐぬぬ・・・と言いたかったが、確かに身体がまだ気怠いのも事実だ。

 

 

御厨の案内でエレベーターを使い、一階まで降りていく。

 

「―この施設はね、建悟みたいに身体に不自由や障害を持った人たちに対して治療やサポートを行うために設立されたの。」

「私は専ら研究で医師として携わらないし、本部指令直属隊員だし、その傘下の本目隊だから今はやってないけど・・・実質あたいはかかりつけ医みたいなものかな。建悟の。」

 

どうやらこの施設は忍田が4年前に提案し、3年前に出来たようだ。現在、トリオンを用いた治療が確立し、喪った四肢や知覚を補う事が可能となっている。

 

逆に初めから無い身体器官や、先天後天関わらずサイドエフェクトの無力化は、トリオン器官に大きく負担が掛かるらしく大きな制限が行えないようだ。

またトリオンと生体の比率が変わってしまうと、日々のトリオン消費量の増大や生体器官の悪影響をもたらし寿命低下や健康状態の悪化に繋がるため、慎重に生医学研究が行われている。

 

極端な例をあげれば、即死の患者の命を繋ぐために「トリオン体」とさせることは非常に有効的で致死時間の延命が大幅に可能であるが、致死出血や破損生体器官をトリオンで補った場合「緩やかな死」が待っている。

トリオン体はあくまで「エネルギー」であり、物質化させたトリオンは決して生体器官の代替とならず、損耗するだけで再生できないからだ。と、御厨は言う。

 

 

いつの間にか目的の食堂にたどり着いたようだ。御厨がすみませんー、しらすバター丼一杯~!と気怠げに、厨房に忙しなく動く馴染みのおじちゃんに注文をする。

 

私も頼もうとしたが、

「ああだめだめ、身体に悪いから」

 

と言われて、野菜たっぷり煮込みサイコロステーキカレーを頼まされた。

 

「よいしょっと・・・ふわぁ~」

だるーんと机に突っ伏すような形で、セルフサービスのロイヤルミルクティを飲みながら、またしゃべり出す。

・・・御厨ってこんなおしゃべりな性格だったのだろうか?

 

「今はねー、あの第一次近界民侵攻当時に被災して行き場を喪っていた医者さんや看護師さんたちをどうにか活用できないかーって、忍田本部長がいつも言ってたの。」

 

「きっかけは貴方よ、建悟。入隊当初からいつも異常な・・・・・・『貴方じゃない二人目の建悟』の暴走を抑える為にどうしたらいいかって、忍田本部長から相談があって・・・あたいが一人で研究するのは大変だからって、それにね。」

 

「忍田本部長は、建悟の『右目』が見えるようになったことに驚いたんだって。」

「トリオン体は確かに生身と同じように構築するはずなんだけど、その通りに従うと、本来貴方の右目は機能していたはずなの。」

「だけど貴方の今の眼は片方しか映ってない。・・・そこが不思議ね。」

「サイトエフェクトによるものか、または視神経か…いえ、心身的なものなのか、それともトリガーの誤作動だったのか、もともと見えていたのか…」

 

ミルクティを嗜む御厨の姿は、どこか研究者のようで熱心な医師だ。私もカフェオレに舌鼓を打ちながら。

 

「そこから、忍田本部長と鬼怒田開発室長はヒントを得たみたいで、それがこの病院よ。」

 

この病院は正式には「ボーダー中央病院」と明記されている。

御厨の研究所は本来地下にあり、その地下研究所が「トリオン医科学研究所」と明記されている。

本部の開発部門の研究所との違いは、専ら「生体に及ぼすトリオンの研究」である。

 

「お待たせいたしました、しらすバター丼と野菜たっぷり煮込みカレーです。」

 

ちょうどよく料理が届いたところで、御厨がいただきますを言う前に「おぉ~、やっとしらす丼~、土曜日だぁ~」とうれしそうに、大きなスプーンでもぐもぐと食べ始める。私もカレーを食べることにした。

 

・・・辛みのある牛肉カレーの味わいの中に、この甘酸っぱい独特な風味は・・・・・・三門みかんか?それからお互いにたわいもない話題で久しく盛り上がっていた。互いに双方がいつもと変わらないと感じ始めたところで、建悟は不意に御厨の肩越しに誰かと目が合ってから、相手が急に立ち上がる。

 

 

 

那須 玲「あれ、本目さん?」    



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話「命を賭する勇者/隻眼の先駆者」

「あれ、本目さん?」

 

食堂の向こう側の席で立ち上がった人物は、那須隊の隊長を務める名バイパー遣い、那須玲だ。

 

ここで不意に、私の脳に「記憶が入り込んでくる。」

 

儚げな髪色と色白の那須は2年前に入隊し、我が本目隊のシューターエース清水麻理が見込んだ一番弟子で、非常に優れた適性と空間把握と座標計算の才能に秀でた天才のマスタークラス・シューターだ。

 

彼女は、体が弱い者に対する、トリオンと健康への影響に関する実験データ収集の応募にかつて来ていた人物だ。

3年前に気に入った清水が目をつけ、実際に「健常者と同じレベルの設定が可能」と判明した頃を見計らって、清水が直々に那須を連れては本部を案内して清水自ら指導していたものか。

 

那須はその経緯から本目支部と関わりが強く、本目支部の全メンバーを知っている珍しい後輩隊員である。今でも何かしら問題が起きた場合、管轄は本部の忍田本部長だがアドバイザーとして私や清水が働きかける事がよくあったものだ。また病弱な那須自身が訪ねに訪れてくる事も少なくない。

 

那須「お久しぶりです、本目さん。」   

  「もうお体は大丈夫なのですか?」

深々と下げた頭をあげる。

確かいくつかある花瓶とバスケットの中に、那須からのメッセージカードがあったな。

 

ああ、心配をかけてしまったね。もうこの通り、元気になったよ。ありがとう。

那須「あぁ、いえ、お元気そうでなによりです。」

  「小神林所長もお久しぶりです。今日も結果は良好でした。」

小神林「ああ、那須ちゃん?顔色よさそうだねー、今日は調子いいんだー。」

那須 「はい、いつもお世話になっています。」

そう語る那須は心なしか嬉しそうだ。とても病弱には見えないが・・・・・・

 

那須は「造血作用に関わる生体器官が、トリオン器官と癒着している」症状を煩っている。

 

白血病に酷似したこの症状は、トリオン器官が何らかの要因で骨髄の造血機能を阻害しており、白血病および貧血症状と殆ど同様の正常血液の分泌量が著しく低下している。 赤血球と白血球の数が成人女性の一般量を明らかに下回っているため、著しく低下した感染症や風邪への抵抗力を補うために副作用の強い医療処方薬を服用している。

いわば、「トリオンが命を削っている状態」である。

 

小神林「実はさっきまで建悟は寝てたんだよー、那須ちゃん。」

那須 「え。そうだったのですか?」

そうだね。気がついたら1ヶ月ぐらい寝ていたみたいだけどね。

 

那須 「そう・・・らしいですね。」

小神林「このあと、異常が無いかしっかり調べるけどね。」  

  「とにかく、問題なさそうだったら連絡回すから、心配しなくて大丈夫よ。」

那須 「はい、分かりました。」

・・・ところでなんだが、今のボーダーの様子はどんな感じかな?那須。

那須 「あ、はい。今は密航騒ぎが落ち着きましたが・・・」    

  「トリガーホルダーがいくつか無くなっていたそうです。」    

  「鳩原さんの失踪とトリガー紛失の責任で、二宮隊はB級に降格させられました。」

小神林「・・・・・・結局、建悟が追いかけた後は何も得られなかったみたいだよ。」    

  「鳩原のトリガーと、予備隊のトリガーが3つ。・・・あと船が一つか。」

そうか。・・・仕方ないな、B級への降格は私でもさせただろう・・・だが、鳩原が何を思って”外”に出ようとしたのか。相応の理由が無ければ、誰に対して優しくも人を恐れていたあの鳩原がそんな行動をするはずがないだろう。

二宮達はこれからが踏ん張り時だろうな・・・これまで以上に強くなろうとするだろう。那須も励まないと、二宮に先を越されてしまうだろう。彼は誰よりも上を目指す、天才の努力家だからね。

 

那須 「・・・はい、私、頑張ります。」

それでいい。それに・・・那須には熊谷と日浦と志岐がいる。仲間と共に強くなれ。

那須 「・・・はい。」

小神林「おー、本目節だ-。懐かしいねえ、あたいにも言ってよー。」

御厨にか?御厨は・・・もっとしゃきっとしなさい。服とかちゃんと。体のケアもしっかりとだ。

小神林「それは余計なお世話だ!時間が限られているのだから仕方ないじゃないか!」

いやいやいや、まだ22歳になったばっかりじゃないか。時間なんてたっぷりあるだろう。

小神林「そんな時間よりも研究が大事だ!」

研究が大事なのは分かるが・・・いい歳だからそろそろ見つけないと、婚期逃すぞ?

小神林「もっと余計なお世話だ!あたいにもいるんだ・・・ぞ、」

  「そ、そういう建悟はどうなんだ!」

私か?私は別にいいんだよ、もう長く生きてると見守る側の方が性に合ってるというか・・・

小神林「建悟こそ相手みつけるべきでしょ!いいかげん清水と付き合っちゃえばいいのに!」

えー、清水は可愛いしべっぴんさんだが・・・私には不釣り合いだし、いい男がもっといるさ。

小神林「いーやお似合いカップルさんだね!とっととくっつけー!」

那須 「・・・ははは・・・(苦笑)」

 

このやりとりを何度も見てきた那須もやはり、二人のこの流れについていけなかったようだ。お昼の食堂が閉まる時間まであーでもないこーでもないと、那須がそろそろ帰宅する時間まで痴話茶番は続いた。

ーーーーーー

 

那須は自宅に戻り、夕食前に重い体に温かなシャワーを浴びさせる。

 

「・・・いいな。あの二人。」

那須は微笑む。

あれこそが自分の求める、普通に「健康な人」の会話。

 

自分はいままで体が弱くて、あんな風に無邪気に話したこともなければ、接したくても体の苦痛や不調で逆に心配されて「普通の話」が続かなかった。

 

ただ平凡な話をするだけでも、たわいもない事が一番の幸せなことが。 那須は冷たく重い肩の筋肉の凝りをほぐしつつ、湯気に体を包ませる。

 

那須は、「あの人」が、私のような病弱な人間でも活躍できる場を作ってくれた事が、こうして今のボーダーで「健常者」として活躍させてもらえているのだと改めて痛感する。

 

あの人は「右眼が無いのだから。」

眼帯で隠された右眼の不自由さが、暴走するというあの人の中の「もう一人」に悩まされる苦痛が、一体どんなものなのか私には計り知れない。

 

そんな人がこの街を守ってくれている。

私だって頑張らなきゃ。私でも頑張れる道を作ってくれた、あの人の苦労を少しでも無くしてあげたい。

 

那須はいつもより体の調子がよく、珍しくご飯をおかわりしたという。

 

那須隊のガールズチームが今夜も集まる。今夜もまた、次のランク戦に備えて、勝つための案を練っていく。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話「4年後の記憶/4年前の空白」

 

翌朝。平成25年6月2日。

まだ朝日の心地よい暖かさが続く新緑の時期を迎える。

 

「おはよう、寝ぼすけさん。」

誰かの声で私の意識が目覚める。

 

目を開けると、脈拍とバイタルチェックを測定するための医療ピンチと、その先に伸びている測定器モニターの画面が確認できた。

 

正常な「心拍数」「最高・最低・平均血圧測定値」。 ほか「トリオン量」「生体血液レベル」「免疫反応チェック」「脳波」「水分状態」「血中濃度のブドウ糖数」……など。見慣れない文字と図の配列が並んでいた。

 

その隣には、カードホルダーとは別に医療用デジタルメモでカルテを記入する小神林と、もう一人病院の看護婦が点滴液パックを交換していた。

 

透明な維持液と、また新しい血色の製剤パック「抑制剤」を点滴棒から取り替えてくれた。

看護婦がナースセンターに戻る頃に、物語は再開する。

 

 

小神林「一応は健康そのものだね。後遺症も見受けられなかった」

   「点滴が終わったら、もう出歩けるようになるよ。」

お、もう大丈夫なのか。

   「うん。ああそうだ、窓口で会計しなくて平気だから。」

   「ボーダーの隊員はトリガーホルダーで管理されてるから、」

   「もう帰宅して大丈夫。・・・その前に、」

   「点滴が終わったら、業務用エレベーダーで地下に来て。」

わかった。・・・ところで小神林。

   「ん、なに?」

4年前の・・・鬼塚やレイランドに、清水は元気にしていたか? 忍田本部長に城戸司令に・・・迅や林藤支部長も。  

 

  「ああ、そのこと。みんな元気だよ。」

   「地下に来たらそれも含めて『メモリー』で、と思ってたけど。」

   「悠一と林藤支部長は今も『あの場所』でやってるよ。

   「玉狛支部でレイジも、桐絵もいるよ。3年前に烏丸と宇佐美が入った。」

そうか、4人ともいつも通りか・・・変わらないな。烏丸と宇佐美は・・・あの子たちか。

 

   「・・・実は、3年ぐらい前なんだけど、ちょっとあって。」

うん?ちょっとあったとは何だ。

 

   「迅さんが持ってた風刃、覚えてる?」

ああ。ボーダーの本部に納めてたあれか、あの黒トリガーがどうした?

   「・・・あの風刃の争奪戦があって。」

   「初めは本部に置いて緊急時に、誰にでもー・・・って話だったんだけど、」

   「城戸司令が『使える物を使わないでどうする。』って事になってね、」

 

   「風刃は強力でもちろん多くの人が扱えるけど、最上さんの形見といえば・・・」

ああ、迅が最初から持っていただけに、思い入れもあるわけか。その心は?

   「・・・城戸司令は迅に持たせたかったのはそうなんだけど、口実が必要で。」

   「後は、ある程度強くなったみんなと競わせて、全体の部隊力の確認とかあったけど・・・」

   「無事に悠一が勝てたんだけどね?・・・けど、城戸司令がS級隊員を設けちゃって、」

   「特に太刀川と一条と、他の人たちともランク戦できなくなって、距離ができちゃってね・・・」

ああ。

 

そのことか、それなら心配しなくていいだろう、迅も知った上で”勝つ”事を選んだんだ。 大丈夫。”迅は戻ってくる”から、それまでは迅の好きにさせてやってくれ。

 

   「・・・ああ、うん。・・・」

納得はいってないかもしれないが・・・その先の未来で、迅は必ず戻る。

   「・・・まるで悠一みたいな言い方。」

   「そういう大事なところだけは、無駄に覚えてるんだから・・・」

ははは、悪いな。俺が”外からやってきた住民”で。

   「・・・いい。未知の確率に賭けるよりは、安牌を選ぶ。」

   「蛇足だけど・・・まだ建悟の秘密、明かされてないから。気をつけて。」

もちろんだ。・・・物わかりがよくてオジサン泣いちゃうよー

   「急な年寄りになるな!もっと若くなりなさい!」べしっ

あいた、本気で殴らないでくださいよー。・・・ま、迅たちのことは心配いらないさ。

   「とかいいながら、ふざけてるくせに・・・んで、忍田本部長と城戸司令は相変わらずよ。」

   「やたらと近界民の排斥が気になるけど、忍田本部長がいいストッパーに。」

そうか、忍田本部長はお疲れ様だな・・・なんか送っとくか。

 

   「林藤と3人でラーメン屋にでも行っちゃえば。またラーメン屋が新しくできたし。」

お、そうか。その案で行こう・・・小神林は?

   「・・・あたいも行こうかしら。たまには。」

よしきた、それでは今日午後イチか夕方だな。

   「午後イチ・・・いるよね、うん。」

いるだろう、何も起きてなければ昼ぐらい。

   「そうね・・・城戸司令、密航事件にかなり熱を入れてたから、いるといいけど・・・」

城戸さんもたまに息抜きさせないと、貯めに溜め込んで晩酌やらかすからなぁ。

 

・・・あとはどうだ?

 

   「あたいたちのこと? 清水は・・・ボーダーでシューターの指南役やりながら、」

   「ちゃんと『防衛ラインのシフト』に遅刻せずやってるよ。元気にしてる。」

そうか、・・・たまに泣いてたりしなかったか?   「うん、泣いてた。何日かしたらすぐに戻ったけど、やっぱり心配だったと思う。」

 

   「あのレイランドも心配してたよ、鬼塚は・・・なんか済ませた顔だったけど。」

お、そうか。鬼塚は・・・まぁどうじないからな、山みたいな男だし。

   「レイランドと鬼塚は・・・んー、何やってるか分からないけど、とりあえず元気。」

   「二人は建悟が居ない間、車とバイクで遠征してたよ。ここしばらくは・・・何も無かった。」

そうか、それならよかった。

 

・・・小神林はどうなんだ?

   「え、あたい?あたいはほら、見たとおりじゃん。」

   「研究も捗ってる。今は・・・無人機のトリオン兵の運用を研究してるところ。」

   「予備隊の存在で、正隊員の子たちの負担が軽くなってるのは事実なんだけど・・・」

   「やっぱり、準備に時間が掛かってしまうのも事実だし、常にいるとは限らないしね。」

ふんむ。・・・運用の研究ってことは、既に実用段階を終えたってことか?

   「終わったよ。ルミネセンサー事件が落ち着いた頃で、予備隊の創設と同じぐらい。」

   「一体あたり、正隊員のノーマル・トリガーホルダー6本分とコスト高いけど・・・」

   「防衛用トラップよりも融通性あって、継続運用が24時間いつでもできる。」

   「今は『防護』をコンセプトに考えてる。予備隊がいても、壁が無いとね。」

ほう、身代わりの肉盾ってところか。

 

   「うん、グラスホッパーを取り入れた高反発性シールドと孤月を基準に、」

   「今後はスナイパーモデルや迫撃砲型とか、火力支援も視野に入れてる。」

ふむ、問題は予備隊とどう折り合いをつけるか、か・・・。

 

強すぎても、予備隊のメリットを殺してしまうし、逆に信用性や耐久性がなければ、動かない壁となってしまうわけか・・・ あくまでガードがメインで、アタックは補助的なものかな?

   「今のところはそれで考えてる、防御オンリーは・・・」

   「考えたけど、市民救助や護衛も兼ねてるし、ある程度の自衛力を持たせたいかなって。」

ふむ・・・いっそのこと、私の隊の中でのみ、運用を限らせていいかもしれないな。

 

本部に支給したとしても、御厨の技術をすぐ提供できるわけもないし、三門市内でロボット関係の事故が起これば面倒だろう。防衛用と言っても、とらえ方次第で戦争兵器と見做されるだろうし。

 

   「・・・そうだね、本部に一度伝えて保留にさせてみる。」

   「城戸司令はかなり喜んでたんだけど、忍田本部長が懸念してるみたいだから。」

ふむ・・・私たちの部隊で運用を確立させてから、本部にあげるべきかテストしてみよう。 実地訓練場で出してみたことはあるのか?

 

   「うん、あるよ。太刀川や緑川と、あとは冬島隊も、風間隊も、三輪隊も。」

   「けっこう戦いがいあるって。あたいの作った学習情報共有システムが、」

   「遠征先の人型ネイバーを相手してるようで、毎回対処が違ってやっかいだとか。」

ほう、学習したことを共有するのか?面白い発想だが・・・その欠点は?

 

   「・・・親機がつぶれたら、共有サーバが機能しなくなること。」

   「司令官の機体と子供の機体を取り入れてみたら偶然できたんだけど、」

   「その親機がリンク先としてそれぞれ子機がアクセスしてダウンロードするの。」

   「その親機から通信状態がよければ1キロ以上はいけるんだけど・・・離れちゃうと、」

   「各機体で得られた情報がアップロードできなくて。」

   「だけど各機体が保存できた学習情報さえ直前まで更新できてれば、」

   「幾らかはいける。オフになった途端・・・各機ごとになっちゃうし。」

   「命令プログラムの付与も各機ごとやらなきゃ、だし。」

 

・・・かなり進んでるな。

自律プログラムでも完成したのか?

   「当然でしょ。人間情報のプログラムも完成したし、擬人モードも問題ない。」

   「一応人に似せるために、擬似生体皮膚や人体様シリコンでオーダーメイドすれば、」

   「生身の人間に近づけられる。必要な生体外器とかつければ、より人間っぽく。」

・・・もはやバイオロイドの域だな、さすが御厨だ。

   「褒めても何も出ないよ、・・・必要なら作るけど?えろい方面の。」

いやいや、私には興味ないよ。

 

・・・だがなるほど、そういう需要で作れば「密偵や暗殺」も行けなくはないか・・・記憶の植え付けもできるのか?それこそ人っぽく。

   「当然できる。いちから作って戸籍登録さえしちゃえば、子供だって作れる。」

   「・・・成長まではさすがにプログラムでいけても、物理的に出来ないから、」

   「子供の状態から大人までの成長、ってのは難しいかな。」

   「物理的に替えていいなら、似せて遺伝子操作した擬似生体ユニットを組み込めるし。」

・・・かなり脱線したな。現状はそういったところか・・・

 

 

小神林「うん、みんななんだかんだで元気だよ。大規模な侵攻も無かったし・・・」

・・・そういえばなんだが、本目支部か?いつから出来たんだ。

   「うん?ああ・・・4年前の冬ごろよ、あの事件終わったあたり。」

   「他にも一人・・・もう一体含めれば、部隊としては全員で7人だよ。」

ふむ。・・・確か支部なんてなかったはずなんだが、私が作ったのか。

 

   「そうだよ。出来た後に・・・、他の支部ができたんだ。」

   「他の支部はどちらかっていうと、事務所みたいなかんじ。」

   「募集事務とかスカウトをメインでやってるみたいだけど。」

 

そうか。

・・・山の上に有ると聞いたが、私の支部はどんなところなんだ?

   「えーと、・・・地下のメモリーで教えるね。その方が早いかも。」

   「建悟には『時間が無い』って、何度も言われていたから・・・?」

時間が無い?

   「ええ。建悟ともう一人の建悟にしか分からない、何かだと思う。」

・・・あいつか。

 

【向カエ】

 

っ!?

私はとっさに後ろを振り向いた。

   「!、ど、どうしたの?」

・・・なんでもない。…いや。小神林。

   「あ、はい。」

・・・後回しにしたら嫌な予感がする。今からでもいいか?

   「え、でもまだ安静にしないと」

いいから。

 

・・・きっと自分【御前】のカン【役目】だから。

   「・・・。」

 

小神林は何も言えなかった。

 

 

建悟に言われるまま、朝の病院食を済まさせず、地下の「トリオン生体医科学研究科」まで病院関係者の直通・専用業務エレベーターで降りていく。

 

エレベーターで揺れ動く中、建悟は思い出す。

もう一人の存在「Xnij」を。

 

大事な事を思い出して、いや『思い出させられていた。』

既に私は「生き死にを繰り返して、”この世界”に戻ってきたのだと。」

 

始まりの世界。初めて建悟が訪れた、一番最初の「ワールドトリガー」。

 

この世界でやり残したことがある。

 

私は”まだ、ここでやらなくてはいけない事”が残っている。

『吾は彼奴に、果たさねばならぬ誓いを思い出させねばならぬ。』

 

 

 

《To Live To Think》

【toℓivετoτhιηκ】



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-本目建悟(原世界・転生編)

お久しぶりです。
消滅してしまったデータ資料集を再考案し、
物語に入る前の事前情報として設定集を創作しました。

例のtrpgの件はこれが落ち着き次第、
取り掛からせていただきたいと思っております。
本目建悟→新メンバー→用語集→その他予定

の順でお送りいたします。

p.s:2019年1月14日現在、
CP卓を無事開催させていただき、ありがとうございます。
こちらもCPも両立しつつ、楽しませていただきます。
(SW卓について興味が湧いた方は、こちらでご連絡いただけたらと思います)
(Discord/ https://discord.gg/ww8j5H2)


【KENGO HONMOKU】

 

【PROFILE】

氏名  ・[本目建悟]

POSITION・[オールラウンダー(Mレンジ)・弾手]

年齢  ・[23歳(通齢46歳?]

身長  ・[155cm]

星座  ・[ねこ座]

誕生日 ・[5月14日]

血液型 ・[A型]/男性

職業  ・[本目支部長 本目隊 外衛隊長]

LIKE  ・[銃 猟師 写真 喫茶 お茶漬け 石切り]

 

通称  ・[イェーガー(猟兵) 城戸の伏兵]

備考  ・[2013.06.02日時点 初期18トリオン]

[アステロイド(SG):108000点]

―――

【FAMILY】

「父、母」(逝去)

―――

【PARAMETER】

トリオン : 85(18+67)

攻撃   : 16

防御・援護: 9

機動   : 20

技術   : 10

射程   : 10

指導   : 3

特殊戦術 : 10

[total163/トリオン総合能力:SSS級]

―――

【SIDE EFFECT】

・前世の記憶     [ランク不明]

・視認強化       [ランクS]

・トリオン適合体質者[ランクSS]

 

(・"復讐への誓い" [ランクX/危険])

(xnij時)["殺戮への誓い"]

―――

【"HIGH END" TRIGGER SET】 (Ver.0.1)

MAIN/[ギムレット(AR) シールド 転移]

SUB/ [バッグワーム ステルス 弧月 転移]

【O.TRIGGER SET】 (Ver.0.1)

M/[SG散(ア) 一粒(ア) エスクード アイビス 転移 【弾手】]

S/ [バッグワ グラスホッパ シールド 弧月 転移【弾手】]

 

【UNIQUE TOOL】

[ハイエンドトリガー・ホルダー]

[オリジナルトリガー・ホルダー]

[弾手用ツール【ライフル】【複合トリオン弾】]

[3点スリング・チェストリグ]

―――

【COSTUME】

喉まで覆う上下のブラックBDU。

手首が見える黒の作業用合皮系の手袋(白兵戦手袋)。

左前肩の携帯無線機から、

コードが右モノインターカムまで伸びている。

 

本隊長格の装いとして、左腰に銃剣を常に帯びる。

 

私服の場合や、黒のフードコートの姿。

又は黒スーツ姿に白眼帯の黒ネックウォーマーで、

5分刈り坊主頭が一般活動時。

 

[部隊マーク]

本目隊は左肘に部隊の黒、

手首に個人の黒〜赤〜青色。

 

左上腕部に、赤色の輪郭線とシンボルの目に白文字ローマ字のⅠ。

左肘が黒と、手首側が黒のライン。

ーーー

【特殊技能】

・格闘術(立ち技系武術)

・居合抜刀術(片手小太刀)

・隠密活動(ステルスキル)

・猟師(散弾銃、山と獣)

・写真技術

・ボーダー支部長業務

・運転(普通/JEEP W.U. )

(普通自動二輪/SUZUKI GN125E)

ーーー

【SEについて】

・[SE/前世]『デジャヴ』

小神林の観測により、

「異なる世界の過去と未来を往来している?」事を推測されている。

その他は、((設定)) 本目建悟の記載と以下同文。

 

・[SE/視認強化]

「プレコグニション」「ヒプノーシス」除く、5つ。

その他は、((設定)) 本目建悟の記載と以下同文。

 

・[トリオン適合体質者]

((設定)) 本目建悟の記載と以下同文。

ーーー

【トリガーについて】

・[転移]【オプショントリガー】

((設定)) 本目建悟の記載と以下同文。

・[弧月]【アタッカートリガー】

[SVU-A/OTs-03]等に着剣可能。

その他は、((設定)) 本目建悟の記載と以下同文。

 

・[ステルス]【オプショントリガー】

障害物や構築物を隠すための絵巻物型巻き布・光学ディスプレイ型。

 

発動時に他トリガーが使えなくなるカメレオンと違い、設置する事でそれと同等の効果を得られる。触れている間は変更可能だがメイン・サブのどちらかが使えなくなる制限を持つ。

 

光学迷彩に加え、「偽装」を幾つも行えるのがこのトリガーを特筆すべき点である。

周囲背景と同化させる他、設置者のみが任意の投影を行え、出現時に一定量込めたトリオンが無くなれば自動的に自壊する。

 

・[【弾手】]【アーマー基本トリガー】 NEW

銃器及び弾丸を任意に設定・作成できるツール。

これにより、戦術に選択性を提供する。

下記はあくまで《セット装備》である。

ーーー

【その他、背景設定】

 

 

・[ハイエンドトリガー・ホルダー]

ノーマルトリガー・ホルダー(1トリオン24h計算)と異なる、1トリオン8hタイプの2.0倍出力モデル。

トリオンの数値が半減するものの、

攻撃、防御・援護、機動、技術、射程の6つが2倍となる。制限8トリガー。

 

このトリガーは、単独でも部隊レベルの戦術的強さを発揮できるよう、対集団戦・対黒トリガー戦に向けて作られた短期強襲型トリガー。本目隊の全員が総じてトリオン保有量が多い為になせる強引な運用法だ。

ーーー

・[オリジナルトリガー・ホルダー]

「防衛任務専用のカスタマイズ・トリガー」

(以下Oトリガー)

 

ハイエンドトリガー、ノーマルトリガーとは別物。

Oトリガーを普段運用しつつ、ハイエンドトリガーには、事前にトリオン体を保険として収納し、O戦闘体を運用している。

 

ノーマルトリガーに搭載されている「基本トリガー/ベイルアウト(40%)」を省略し、10%の標準機能等トリガーと、90%の戦闘トリガー出力で調整されている。

 

今もなお全トリオンを扱いきれず、ノーマルトリガーでは不十分だった莫大なトリオン保有量を、全て扱えるよう設計された創設初期の【トリオン強化戦闘体トリガー】。

現在も調整が続き、今も上昇するトリオン保有量に、鬼怒田は頭を悩ませている。

ーーー

 

 

 

《GUN MODEL》(威力:射程:弾速)『弾手』

 

[Coonan.357 Magnum Automatic](HG)

「ギム」『ギム』

[ColtPython & Flare gun](Rv&10GA.)

「ア(8:1:1)」『ア』

「メ(9:0.5:0.5)」『特殊(照明)』

 

[MAC-10](SMG)

「ア(2:1:7)」「ア(4:1:5)」

[MP7](PDW)

「ア」「ハ」

 

[AK47](AR)

「ア(6:3:1)」「ア(8:1:1)」『特殊弾(焼夷)』

[IMI Negev](SAW)

「ア(4:3:3)」「バ(1:5:4)」 『ア(1:1:8)』

[Kord Heavy Machine Gun](MG)

「ア(連射×2)」『ギムレット』

 

[Tanker Garand](Auto Rifle)

「ライトニング準拠」

[USA M14電撃パルスライフル]

「旧式乾電池タイプ、ライトニング準拠」

[Blaser R8](SR)

「イーグレット準拠」

 

[SVU-A/OTs-03](Auto SR)

「イーグレット+ARギム」

[KSVK 12.7](Anti Materiel Rifle)

「アイビス準拠」

[DSR50](Anti Materiel Rifle)

「アイビス改」「合成弾"ピアッシング"(徹)(徹榴)」

[九七式自動砲](20mm-Anti Materiel Rifle)

「アイビス改(連発ギム)] +軽さE- 『メテオラ×2』

 

[Ithaca M37](ソードオフSG)

「ア(9:0.5:0.5)×2」

[B.C Miroku FE](水平二連式SG)

「ア(一粒)(散)」『ア(一粒)(散)』

or『照明/榴弾/煙弾/特殊効果弾』

[SIX12](Bullpup-Revolving SG)

「ア(連×2)」

[TsKIB MTs-255](Revolving SG)

「ア×メ(炸裂合成散弾"ピアッシング")」

 

[China Lake Pump-Action Grenede Launcher](GR)

「メ(9:1:1)」「メ(時限榴散弾)」『メ(着弾式)』

 

 

 

・【???】

多弾種型伸折単砲身方式機関砲〈試作実験機〉



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-篠山綾華(弓手)

【AYAKA SHINOYAMA】

 

【PROFILE】

氏名  ・[篠山綾華]

POSITION・[シューター(弓手)]

年齢  ・[19歳]

身長  ・[156cm]

星座  ・[みつばち座]

誕生日 ・[3月20日]

血液型 ・[A型]/女性

職業  ・[本目支部 篠山遊撃手]

LIKE  ・[桜 月 お茶 茶菓子 道場 縁側]

―――

【FAMILY】

[父(逝去)、母(逝去)、弟(逝去)]

―――

【PARAMETER】

トリオン:7

攻撃:9

防御・援護:6

機動:6

技術:9

射程:5

指導:8

特殊戦術:10

[total60/トリオン総合能力:B+級]

―――

【SIDE EFFECT】

―――

【TRIGGER SET】

M/[初月(弓)、メテオラ、カメレオン、試作テレポーター]

S/[スパイダー、シールド、バッグワーム、グラスホッパー]

 

【UNIQUE TOOL】

背負い矢筒(箙)x10本、仕込み鎖(鎖鎌状)

―――

【COSTUME】

江戸時代を思わせる古風な風来坊の、半袖短パンの藍色の装い。 足下まで垂れる黒合羽と漆喰三度笠。

 

背中のえびらに、右腰の細長い仕込鎖の巾着袋。

藍色の指貫と脚絆に、黒草鞋。

 

 

本目隊として活動時は、アーチェリー仕様の黒BDUに、黒キャップ。

左肘に赤、指貫と手首側に赤色のライン。

 

[部隊マーク]

赤の的に白弓と、ローマ字の白数字の2。

―――

・入隊前

東三門市の日置流印西派の道場主の娘として生まれる。

かつて北条家に仕え、戦国時代を経て現在の長野県から、 白鷺山の近辺に移り住んだ由緒ある家。

 

物静かな家庭で門弟と共に鍛錬に励み、天性の努力家の負けず嫌いで、 15歳にして既に門弟達に指導を任せられるほど期待されていた。

稽古後は自宅の桜下でよく涼んでおり、その時も桜下で第一次近界民侵攻を経験。

 

近く培った弓術の技量を見込まれ、ボーダー創設と同時に入隊。創設期から弓「初月」を使う唯一のソロのA級隊員として、本部でソロ隊員としてランク戦に参加せず、防衛任務ばかりしていた。

 

2012年12月、城戸司令と忍田本部長から本目支部の傘下に入り、ランク戦に参加して技能を磨くようにと勧められて編入。

 

 

 

家族を全員喪い、親族の提案もあったが断り、何も無くなってしまった生家を後に、断ってまで入隊したボーダーの中では生き生きとしている。

家族を奪ったネイバーたちに密かな恨みを抱きつつ、これ以上自分のような悲劇を生まない為に祈りつつ殲滅をしていた。

 

その頃、忍田本部長が少しでも彼女が奥に深入りしすぎないように考え、ちょうど戦力強化を考えていた城戸司令の双方の利害が一致したことで本目隊に配属された。

 

 

 

建悟は綾華の好きなように活動ができるよう、彼女単独の活動を認めつつ、ナビゲーターとして「アンドロイド・オペレーター/アウル」を付かせてサポートしている。

現在は本目支部の部屋に移ったが、残してある本部の作戦室に再現された、月夜の桜下でわざわざ眠りに宿泊していることがよくある。

 

そんな不思議な景色と和菓子目的で遊びに来る友人は、物腰の柔らかく静かで優しい彼女の人格に惹かれて、今も訪れる事が多い。

―――

・遊撃手「篠山」の部屋

本目支部の一部屋にトリオン拡張空間で設けられた、私室兼射場。扉を開けると緑色の湖沼に浮かぶ蓮と深い霧が見え、その下に竹で組まれた簡素な通路を少し歩けば、綾華の部屋兼射場にたどり着く。

 

コテージのような建物に入ると、ログハウスの装いを基本とした支度品とは別に、一段高く設けられた縁側の和室が障子で仕切られている。

 

私室は常に私物が片付けられた状態であり、書院造の趣で作られている。 ログハウス側は、先の壁が取り払われており、いつでも弓を番えて試射ができるような構造になっている。

 

和室側にコンソールパネルが設けられ、そこで任意の環境設定、風向き、的、距離設定が行えるようになっている。

(本部には個人部屋だった、現作戦室の部屋に月夜の散桜のある、ベイルアウト・マットだけの小さな小部屋が今も残っている。)

 

ーーー

・弓<初月> 【初月】

TYPE/弓手 STYLE/遠隔攻撃(技術依存)

攻撃力A/D (弓/E)

耐久力E/D (弓/D)

軽さA (弓/A)

射程 D〜A

弾速 D〜C

連射 E〜D

 

 

4年前の第一次近界民侵攻後、健悟が考案したもので、その頃からずっと使ってきた旧式の射手系トリガー。 弓を射出器として用い、成りの形状に応じた特徴を持たせられ、矢の性質を作成時に変えられる。

 

戦闘体の能力と技術の依存にするものの、射手系トリガーの「射程・弾速・威力(・弾数)」ではなく、攻撃手トリガーと同じ「硬質化・威力」のトリオン配分で割り振ることができる。

弾速と射程は弓手に依存するものの、遠距離攻撃時の破壊力が減少せずに、ダイレクトにダメージを与えられる(戦闘体による膂力を活用)。

 

非常に軽いが得意領域は近中距離で、狙撃手寄りの性質な上、物理化による環境下の技量など未経験者の一般隊員には不人気であった。

射手用のトリガーでありながら攻撃手用トリガーと同じトリオン構成であり、鏃以外の全てが、"物理化させた"トリオンである。

 

接近戦に向かないものの、矢を使った接近攻撃・防御が可能。9割硬質化の矢はスコーピオンを約一回だけ防げるが非常に重く、9割威力の矢はとても軽く遠くへ飛ばせるが、戦闘体の腕力で容易く折られてしまう。

 

射手用としては比較にならない攻撃力とコストパフォーマンスを有するものの、硬質化(柄の物理化の重み)・威力(鏃の貫通性)による性質変化のクセ、養成の時間を要するため、無手のシューターやガンナーに取って代わる事となった。

 

鏃はトリオンキューブの分割法と同じく、扱い手に依る形成である程度の変化がつけられる。本体である成りは槍型弧月と同じく長さの変更を任意に行え、特大の矢(槍もどき)を作れるが、1m以上となればエスクードレベルで消費。

 

剣尻タイプの三角型が多い中、彼は雁股・鏑矢・征矢と現実に即した鏃を多く使い分けている(トリオンで構成する為、性能に差異は無し。鏑は本体で物理化させるため、音を付けられる)。スパイダーやグラスホッパーとメテオラによる仕込み罠・軌道変更を活かした、機動力のある変則戦闘を得意としている。

―――

座右の銘

「力無き正義は無力、正義なき力は暴力」

「勝つために生きよ。負ける為に死ぬな」

「戦わねば、万事押し付ける事と思え」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-鬼塚山守

【YAMAMORI ONIZUKA】

 

【PROFILE】

氏名  ・[鬼塚山守]

POSITION・[アタッカー]

年齢  ・[22歳](12月で23歳)

身長  ・[190cm]

星座  ・[かぎ座]

誕生日 ・[12月31日]

血液型 ・[B型]/男性

職業  ・[本目支部 本目隊]

LIKE  ・[平和 自然 みかん 境内 白湯]

 

通称  ・[鬼、鬼武者]

―――

【FAMILY】

「なし」

―――

【PARAMETER】

トリオン :20

攻撃   :16

防御・援護:15

機動   :10

技術   :15

射程   :3

指導   :9

特殊戦術 :2

[total90/トリオン総合能力:S級]

―――

【SIDE EFFECT】

・???

―――

【"HIGH END" TRIGGER SET】

M/[孤月(改) シールド ステップ バイパー]

S/[孤月 エスクード グラスホッパー(改) バイパー] 【UNIQUE TOOL】

・縄鈎爪(つ字型三爪、40m)

 

・"滴威/黒漆太刀" (非トリオン装備)

トリオンに関わる物体・物質に関与可能な謎の太刀。

 

破壊されても山守の「???」を行うことで、再度出現させることが出来る。

 

トリガーの臨時接続を行えば、トリオン体の出力を付与できる(攻撃+10)。

特殊効果として「霊体を切れる」「振れば水が出る」を宿す。

 

愛用する藍染刀帯に、平時は「繊維の中に霧散させた黒漆太刀を練り込み、隠す」。

 

―――

【COSTUME】

唯一、「鬼武者」と評される鬼面の黒大鎧姿。

豊富なトリオン保有量を活かし、「装甲」を装備している。

―――

・[孤月(改)]【威力S 耐久S 重さD】(長巻:威力S+)

"左手用"造りの右肩背負い六尺太刀(181cm)。

 

通常の孤月と違い、大ぶりで太く重く、納刀も出来ない。紐で吊した専用の大太刀鞘を背負って携行するスタイル。

 

オプションとして鞘を「十手」として盾代わりに使える他、鯉口を拡張して柄に接続し、「長巻直しの大太刀」として扱える。

扱いやすさと攻撃範囲が更に広がり、一撃でエスクードを叩き割る。

 

一刀派抜刀スタイルのため、旋空が苦手で二刀流は滅多に行わない。右腰に帯びるもう一つの孤月は「打刀」で、脇差として扱っている。

 

・[ステップ]【オプショントリガー】

グラスホッパーの跳躍無し版。

スパイダーよりも更に低いトリオン消費量で扱える。

 

基本的は、地面に足が着く前に出現し、風がそよぐ程度の音に抑える効果を持っている。

空間に留まり続ける「強化プラスチック板」で、出現時間の指定や方法、大きさが任意で行える。

消滅する時間を与える事も出来る。

 

物質化されたトリオン物質でも反応するが、純粋な物質には無反応。

 

・[グラスホッパー(改)]【通称:カタパルト、神速】

足下「のみ」に出現させるようにしたグラスホッパー。

 

相手や物を飛ばす事はできなくなったものの、愚直に跳ぶ事にだけ特化させたことで、韋駄天を超す自由度と移動速度を得た。

 

地面や足場が無ければ効果を発揮できないが、「ステップ」と組み合わせる事で空中機動を獲得しただけに留まらず、鬼塚の縮地技術により更に音も無く数百メートル先の、敵の背後に一瞬で吹き飛ばし斬れるほどの恐ろしい組み合わせと化す。

―――

 

 

・容姿

白髪色白の細身で割れた筋肉質がちらりと見え、紺色の甚平や作務衣を好む、大人寄りの年増な整った顔。爬虫類系のすらりとした男前の顔だが、黄色の縦瞳を持ち、カラコンで赤の横瞳にしている。

 

とても人の倫理観や感情を大切にしており、法や決まり事も守るが、人の気持ちをそれ以上に優先する方で情に熱く涙脆い。

 

 

・バイク、他特技

バイクはヤマハ・SR500(レッドカラー)愛用。

無線技師の資格を持っており、無線局の開設や運営が滞りなく行える有技能者。

登山を趣味にしており、富士山は単独踏破済み。

サバゲー部はたまたま気分があい、三八式小銃と二六年式拳銃を愛用。他に趣味は"武道、神社巡り"。他にも何やら秘密を隠しているようだが……

 

・相違する世界から来た「鬼塚」

この世界に来ている鬼塚は、「前の世界の生き残り」であり、

「蓮乃辺の居合道場主でもなければ、若師範でもない。」

 

建悟はまだ、知らない。

 

・流派

剣術は居合というよりも、明治時代頃の片手抜刀術や両手抜刀術に近い性質を持つ、独自の剣筋を持つ。

居合術も多少の心得があるらしく、燕返しを得意型とする。

 

旧ボーダーメンバー(3ヶ月前)で、忍田と一騎打ちで互角を果たすほどの実力者。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))−Raylamd

【HAYAO Julianus HUZIYA Rayland】

 

【PROFILE】

氏名  ・[速夫・ジュリアヌス・藤屋・レイランド]

POSITION・[スナイパー(狙撃手)、アーマー(弾手)]

年齢  ・[22歳]

身長  ・[185cm]

星座  ・[かえる座]

誕生日 ・[2月12日]

血液型 ・[AB型]/男性

職業  ・[本目支部 本目隊]

LIKE  ・[日本文化 女性 ワイン ミリタリー カメラ "God"]

―――

【FAMILY】

「父、母(アメリカ人)、従兄弟姉妹」

―――

【PARAMETER】

トリオン :7

攻撃   :10

防御・援護:15

機動   :5

技術   :10

射程   :11

指導   :9

特殊戦術 :8

[total75/トリオン総合能力:B級]

―――

【SIDE EFFECT】

・PSI [ランクS+級]

 

【God of Voice "ALECTO"】

トリオン :21

攻撃   :30

防御・援護:45

機動   :15

技術   :30

射程   :33

指導   :27

特殊戦術 :24

[total225/ERROR]

―――

【"HIGH END" TRIGGER SET】

MAIN/[イーグレット(AR改) シールド ステルス HG(ア)]

SUB /[閃光 バッグワーム スイッチボックス "BOMB"]

 

【UNIQUE TOOL】

[弾手【M16A4マガジン・マグポーチx4】]

["LAHTI X-RAY"トリガーホルダー]

―――

【COSTUME】

M16A4"イーグレット"に1点スリングと10倍率ACOGスコープ、 Mk.23 Mod0とガンホルダー、タクティカルナイフシース。

US Navyデジタル迷彩の装いで、背中に4つの20発兼用30発マグポーチ。

―――

・[PSI]

レイランドの持つ、サイドエフェクトの中でも一群を抜いたSE。 11の超能力を持つ彼は、「トリオンとは一切関係なく、使用可能」である。

神の慈愛で万人を治し、「GOD OF VOICE」時の彼はもはや、神のごとき偉容となる。

 

超能力<PSI>発揮時、右手に提げている純銀のロザリオが鈍く、白色に輝く。

 

心と思考を読み取る「TELEPATH」、

発焔現象「PYROKINESIS」、

零凍現象「CRYOKINESIS」、

電磁現象「ELECTROKINESIS」、

時間操作「CHRONOKINESIS」、

思念転写「THOUGHTOGRAPHY」、

瞬間置換「TELEPORTATION」、

念動力 「PSYCHOKINESIS」、

地球操作「TERRA KINESIS」、

神の慈愛「REGENERATION」、

神の預言「GOD OF VOICE」。

 

・[閃光]【アタッカートリガー】

高周波ブレードのナイフ。

 

簡易トリオン武器を、孤月やスコーピオンと同じように生成、 小型の「刃状トリオン武器」として出力させている。

様々な刃渡りや全長の中、M16A4"イーグレット"に取り付け可能なOKC-3Sを選択。

 

・[イーグレット(AR改)]【スナイパートリガー】 M16A4仕様にさせた「イーグレット」。

イーグレットと同等の性能でありながら、 ガンナーの突撃銃と同じ連射性能を持たせた、 トリオン消費が甚大なオーバーフローカスタムモデル。

 

・["BOMB"]【オプショントリガー】

文字通り『爆弾』。

メテオラと比較できないほど爆風範囲と威力を誇り、 最低でもメテオラ4発分のトリオン消費と規模レベルを持つ。

起爆方法が「接触」「誘爆」「時限」「トリオン感知」の4方式。

―――

・["LAHTI X-RAY"トリガーホルダー]【無許可改造】 ラハティ L-39対戦車銃とほぼ同一な形態を持つ、トリオン励起・レーザーカノン。

通称[魔砲ラハティ]は全トリオンと引き替えに、下界に存在する全てを破壊する。 通常なら黒トリガーにすらならない自爆攻撃だが、『神の慈愛』により、再度復活する。

 

ある意味で「死んでもコンテニュー」が出来るレイランドだからこそ扱える、チキンプレイも甚だしいチート級トリガー。

―――

・「藤屋速夫について」

総売上1000億近くの社長の息子で、現在会社員であり(速雷物流会社員)、ボーダー本部にも所属している。

 

プラチナブロンドと欧米系の顔立ちで、ナイスガイ。

体格も良く筋肉も太い。アメリカ英語に加え、日本語も話せるバイリンガルで、更にPSIで実質全ての言語で会話出来る。

民間人だがミリタリー仕込みの訓練を趣味で受け、PMCに一時期研修し最年少で最高記録を収めた。

 

母は白人系アメリカ人でピアニスト。

名を「Ashley Clara Rayland(アシュリー・クララ・レイランド)」。

 

これまで相手の心理状態を掌握して来たからこそ、成功し続ける自身の完璧さを求められ、相手の望む理想を演じ続ける「本当の自分」に悩む1人の男。

 

建悟・鬼塚・清水の1年下で、15歳で大学院を飛び級卒業したにも関わらず、弓手町駅から30分の海の街、波浜市の舞風学園にわざわざ入学した。

その理由は肉親ですら知らない。

 

第一次近界民侵攻の半年前に、旧ボーダーの拠点に訪れ、巧みな交渉と迅との駆け引きで現在に至る。

当時から現在も"ボーダーへの資金援助"を大々的に行なっている財閥スポンサーの一つで、実際に「レイランドが海外諸国と交渉し、得てきた資金源の余りで投資している」ため、元々寛容な父親は気にしていない。

 

 

 

 

「本当の対人戦っていうのは、

スナイパーがただ上手いだけではダメだ。

そこにいるって心理戦で上に立てなければ、

もう負けたようなものなんだ。」

 

「Hahaha,僕はいつだってSmart.な人間なのさ。」

ーーー



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-清水麻理

 

【MARI SHIMIZU】

 

【PROFILE】

氏名  ・[清水麻理]

POSITION・[シューター、アーマー]

年齢  ・[24歳]

身長  ・[150cm]

星座  ・[はやぶさ座]

誕生日 ・[4月2日]

血液型 ・[O型]/女性

職業  ・[本目支部 本目隊)]

LIKE  ・[サバゲー 料理 笑顔 風]

―――

【FAMILY】

「祖父、祖母、父、母、弟、妹」

―――

【PARAMETER】

トリオン :15

攻撃   :10

防御・援護:10

機動   :5

技術   :10

射程   :7

指導   :7

特殊戦術 :5

[total68/トリオン総合能力:A+級]

―――

【SIDE EFFECT】

―――

【"HIGH END"TRIGGER SET】

MAIN/[アステロイド メテオラ バイパー シールド]

『Hg(ア)』

SUB/ [バッグワーム ハウンド バイパー ウォーム]

『Hg(ア)』

 

【UNIQUE TOOL】

[HGx2(Beretta 93R,APS)]

[9mmトリオン弾ベストポーチx2,マガジン2x2] ―――

【COSTUME】

ロングバトルブーツに青のジーパン、

赤のレッドジャケットと黒革製のベスト。

 

交差するように二つの拳銃ホルスターを背中側に仕込み、 太もものレッグポーチにマガジン、ベストポーチに弾薬。

―――

・[ウォーム]【シュータートリガー】

第5章「ウォーム」参照。

 

・清水について

建悟と鬼塚よりも更に1学年上、1歳上の黒髪ロングヘアの活発な大和撫子。 短大卒で調理師の免許を持ち、実際に店を持ちたいと夢を抱いている。

 

キューブの形状が「質」を意識しており、1発あたりが長方形となる、 数を少なくし威力を求めたタイプ。ウォーム展開時は縦長の円柱になる。

合成弾の生成時間は10秒と「普通」だが、「置き玉/トリオンキューブの保持」能力が非常に秀でている。

 

 

見える全てのキューブの位置を感覚的に掌握し、浮遊して動いているその範囲や大きさと動線が把握できるタイプで、更に相手のキューブの性質を【見極められる】カンと強運の持ち主。

 

通常の隊員であれば、置き玉や保持は1~2個が限度でそれ以上は合成弾の生成レベルで難しく、更にキューブを何もせず「長時間漂わせる」のは困難であった。

彼女は「数十個」も完全に管理でき、しかも全てを断続させずに制御することができた。(置弾などは、発射・展開時にのみ、ON状態。基本トリガー使用とは別とする)正確に「纏わせた幾十もの合成弾」の間髪入れないその独自戦法で、今の二宮や出水と首位シューター争いを個人的に今も繰り広げている。

 

彼女としては、ボーダー創設以来、張り合いのある相手が見つかり楽しんでいる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-小神林御厨

5名の紹介が終了、思いのほか時間が掛かったため、
セッション後日に用語集等を紹介できればと思います。
(変更追記:トリオン総合能力はSSでした、申し訳ありません)


【MIKURI KOGAMIBAYASHI】

 

【PROFILE】

氏名  ・[小神林御厨]

POSITION・[トラッパー(オペレーター)]

年齢  ・[22歳]

身長  ・[145cm]

星座  ・[狼座]

誕生日 ・[9月6日]

血液型 ・[AB型]/女性

職業  ・[本目支部 本目隊]

[ボーダー中央病院 トリオン生体医科学研究科]

[トリオン医科学研究所長 および責任者]

DISLIKE ・[無秩序 非効率 苦味 自分 走ること]

―――

【FAMILY】

祖父、祖母(親戚)

―――

【PARAMETER】 【PARAMETER(OP)】

トリオン :35 トリオン:35

攻撃   :10 機器操作:100

防御・援護:10 情報分析:9

機動   :6 並列処理:175

技術   :13 戦術:7

射程   :3 指揮:9

指導   :7

特殊戦術 :12

 

[total /96 トリオン総合能力:SS級]

[OP TOTAL/300 オペレーター特性:パターン掌握型]

―――

【SIDE EFFECT】

・「完全記憶」[ランク:S]

―――

【"NORMAL" TRIGGER SET】(特注/カードホルダー型)

M/[オペレーターコンソール]

S/ [スイッチボックス バッグワ(改) ステルス 【弾手】]

 

『アステロイド(SMG/MP5k)』

『合成榴弾"ピアッシング"(HK69/ア+メ)』

 

【UNIQUE TOOL】

「【弾手】/MP5k」(作成)

「MP5k用サムホルスター」

「30発マグポーチ(全60発)」

 

「【弾手】/HK69」 (作成)

「ダンプポーチ(全3発)」

 

『"簡易トリオン"ソードx2』(威力B 耐久B 軽さB)

―――

【COSTUME】

首元から足下まで全てを覆う黒タイツに、

白のエネルギッシュな黒チェック柄の短スカート。

未来的な衣装デザインが入った黄色のラインに、

白のベストとベルト。

 

頭に「もさもさ」した明るい緑髪の、獣耳型集音生体器官。

線状の暗いオレンジ色を持つ、グレー色のサンバイザー。

 

スカート内に"簡易トリオン・ソード"を、

両側の太ももに仕込んでいる。

 

 

MP5kとH&K HK69に白のチェック柄が入り、

簡易ソードの柄は黒く、直線のトリオン刃が白く輝く。

他すべてのポーチ、マガジン、スリングは白。

 

バッグワームはリバーシブル生地で表が黒、裏が白。

使用時は熱工学迷彩が付与され、カメレオンのバッグワーム状態。

 

 

・平時の「研究衣」(平日) or(通常トリオン体)

黒インナーの長袖に灰色ジーンズズボン。

ナビゲート時はヘッドホン式インターカムと、

電子感圧グローブを装着し、足下が「浮く」。

 

四方にトリオン電子版を十数枚展開させ、

御厨の脳内に更に情報モニターやARモニターを開く。

常にインターネットと繋がり、

界境防衛機関と世界各国のサーバーにまで跨ぐ。

 

着崩した白衣と足下まで伸びた不揃いでぼさぼさな紫髪は、

界境防衛機関に所属して以来の容姿。たまに猫耳ヘアー。

―――

・[小神林御厨について]

第一次近界民侵攻の3ヶ月前、旧ボーダーの一員となる。

その幼さ(低身長)から来る童顔と、その「紫髪」が非常に印象的で、

創設者メンバーの中でかつて、「紫髪の双剣」と市民から呼称された。

 

意外な事に「腕っ節だけめっぽう強く」、握力計が壊れる程で、

100kgもある機材を片手で軽々と持ち上げている姿をよく見かけられる。

彼女が唯一苦手とする事が、「ずっと走ること」。

 

 

所属以前は「除け者にされ、忌み嫌われていた」人生を送り、

父は離婚して蒸発し、母親は早世し、親戚の家で寂しい時期を過ごす。

小神林家は稲荷神を祀る神社の管理者で、巫・巫女の家系で大地主でもあり、

三門市に古くから睨みを利かせていた。

 

小神林家で伝わる口伝の「三間鳥居の祠の井戸」と「紫髪の女」は祖先代々から忌み嫌われ、畏れ奉られてきた。

 

必ず紫髪の女子が出た家は災禍に見舞われ、そして一族に繁栄と不幸をもたらし、門外不出の開かずの祠が開くときは滅亡の刻と伝えられている。

 

 

御厨は両親を亡くした上に、親戚から陰険な扱いを受けながらも日々に耐えて、センター試験に望んだ。

 

全て満点合格で超一流高校に入学することは出来たが、彼女は陰湿ないじめと人間関係を受けてきたトラウマが強く、「全ての物事を忘れられない」彼女の頭がネットサーフィンで得てしまった裏学校の印象が強く響いていた。

 

そんなとき、2年前に隣街の波浜市で創設されたばかりの舞風学園がとても「人間関係」に関わる裏情報がとても無くてクリアで、見学した時に専攻で決めた。

 

自虐的に酷くなってしまう御厨の精神面を心配していた中学校校長が御厨を誘い、

共に見学させた事で進学をあきらめようとしていた御厨にきっかけを与えた事で、

御厨自身が希望を抱いて進学することを決めた。

 

 

舞風学園で誰も「距離を置いたり」、「いじめ」や「特別扱い」をせず、親しげに接してくれる人柄の良い学生ばかりで御厨は安心し、

学生生活を三年間無事に過ごした。

 

卒業と同時にボーダーの正式職員となった。

 

サバゲー部はレイランドの押し文句で押されて入部したようなものであり、

嫌々だったものの途中から楽しみ始め、最後は自ら主席と部長を務めた。

在学中はネットとオカルト部から得た文献から、オカルトスポット巡りを楽しみ、

自分の二つ目の趣味として学生ライフを送っていた。

 

 

・[界境防衛機関/活動歴]

旧ボーダーに所属後、その天性の頭脳で界境防衛機関の技術基盤を創成。

 

特に「オペレーター」システムの設計と創設、現トリガーホルダーの設計、

孤月の共同開発、「シューター・メソッド」の確立。

 

他にも「トリオンの貯蔵法」、「トリオンエネルギー変換の効率化」、

「実験トリガーの開発、助言」など根幹に関わるトリオン技術の創成、

現研究員の育成、更に「生体とトリオンの医療研究」など様々な方面で貢献。

 

 

現在はトリオンの医療研究と開発本部への助言が主となっているが、

「界境防衛機関」創設期から3ヶ月間(2009年10月)は現場で「戦闘オペレーター」として活躍していた。

 

以降は無人戦闘機「バタリオン」作成、トリオン防衛機構の充実、

予備隊の出現等により研究に専念できるようになり、第一線から身を引いた。

しかし、本目隊が活動時は「オペレーター」として今現在も活動。

 

 

自身が動けない時は「アンドロイドオペレーター・Owl」に、

本目隊の現場指揮と、バタリオンの監督とオペレーター補助を任せている。

 

 

・[オペレーティング能力]

一般的にOPが必要とされる業務のうち、

 

位置情報解析処理、感覚共有支援、戦闘データ交信の3つが主な必要事項となっており、

いずれも御厨が得意とした領域である。

 

「並列処理」と称されるようになった「同時処理能力およびそのツール」、

「感覚共有支援」と呼ばれる建悟のSE効果に沿った伝達手法が、

どちらも後任のオペレーター達の参考になっている。

 

オペレーターの中で最高峰のナビゲーターである御厨は、今もオペレーターの中で目指すべき目標として掲げられ、その中には崇拝するOP隊員すらいるようだ。

 

10人の位置と周囲情報を完全掌握した上でそれぞれ適切な戦闘情報を並行して処理しつつ、

各隊員にSEの効果をダウンロード/アップロード処理を施す片手間で映像の録画録音作業と通信作業を完璧に行っていたと言われている。

 

 

それらに加え、更に彼女は「無人機操作/命令/管理」に飽き足らず、戦闘データを別モニターでリアルアイムで観測している。

個体差ごとに見かけられるヒビや戦闘体の状態すら見分けて、各弱点となる部位にマーカーを示したり「味方各人に、個性や癖の動きのマーカーラインやポイントを示す」などのオペレーティングも余裕で行い、環境を含めた全てを数値化した状態で全て把握している。

 

常に建悟が狙撃の為に動く際は「緻密な弾道計算を必要とする」ため、御厨本人かアウル(Owl)が追随して補助を行っている。

ここ最近になって同じく「必要とする」弓手の篠山もナビゲートしており、解析してから曰く「歩く行為を論文にするのと同じぐらい簡単」とみなし、アウルにほぼ全てを任せている。

 

これら人間離れした処理能力や記憶力は、後述のSEで解説する。

 

 

・[完全記憶]【SE】/Sランク

御厨のパーソナリティと呼べる禁忌のサイドエフェクト。

 

プログラム言語を学んだ1秒後には、自我を持ったアンドロイドの全プログラムを完成できるほどの尋常ならざる記憶力で、全ての「全情報と感覚を覚えている」。

 

言語も現在、「現在地球で話されている全ての言語」を完全に理解し、

本を適当に流し読みするだけで意味と筆者の意図をくみ取れてしまう。

基本的に彼女が経験した全てを完璧に覚えているが、

「完全に覚えている」が故の「弊害」もある。 

 

曰く

「おう?変なことを聴くのね。貴方。」

「そうね、例えば、『痛い』って感覚を初めて覚えたとするよ。」

「普通の人なら一瞬なんだ。耐えて、数秒もすれば、みんな忘れる。」

「だけど、あたいはずっと覚えてる。ずっと思い出して、ずっと残ってる。」

「・・・貴方なら分かるでしょ? 包丁で指を切ったときのあの痛み。」

「今も覚えてるの。・・・怖いの、フラッシュするのが。」

「ずっと、あれが何度も体験する。・・・死ぬまで抱えるのよ。おびえながら。」

 

 

・・・・・・「戦闘体に痛覚を設定できる」機能がついていたのは、

御厨が界境防衛機関に所属してから初めてつけられた、トリガー機能である。

 

 

・[Owl/アンドロイド=オペレーター]

彼女が現ボーダーに配属されてから3ヶ月後に初めて開発した、

無人戦闘機の原型。

 

純粋に御厨のサポートを行うために設計された電子プログラム・アンドロイドで、

初めは環境計算とトリオン・科学現象の感知を行わせるために造られた。

後に自己学習AIと蓄積型生体脳サーバーが搭載され、

ほぼ人間と変わらない記憶量と感情が出せるように人格までここ最近付与された。

 

アウルが製造されてから数日後、無人戦闘機/Battalionが開発される。

現在は御厨の業務支援を第一優先事項、無人戦闘機の管理を第二優先事項、

篠山のオペレーターを第三優先事項としてサーバー処理を分けている。

 

中性的な言葉遣いで機械然としているが、時に男らしい冗談や、時に女らしい献身的な励ましを掛けてくることもある。

 

・[御厨の『無人戦闘機/バタリオン(Battalion)』]

詳細な設定については第7章を参照。総数65隊。

電子プログラム・アンドロイド「アウル」を雛形に造られ、

各機体ごとに学習能力を付与したプログラムを与えたトリオン戦闘/防衛兵器。

 

2013年現在でほぼ完成形に至っており、運用法を熟考しているようだ。

その姿は「警護ロボットに近いデザイン」で、警察の青系のカラーバランスを採用。

どの機体も会話機能を有し、最寄りの司法・行政機関に連絡する通信手段を有する。

 

「御厨の組んだ対応プログラム」に応じた巡回経路を、平時は基本的に従い、有事の際は対応行動もしくは「親機」の指揮下に入り行動を行う。

 

 

性能は環境や状況と装備に応じて異なるが、上位Bランク隊員~Aランク隊員の強さに匹敵。

24時間常に稼働できるが、トリオンの定期供給が必要。

自己発電と周囲の微少なトリオン(1人0.1トリオン)の吸収を除く、

トリオン供給方法は御厨の研究室か、一斉供給は本目支部の地下格納庫でしか行えない。

 

 

 

現行モデルでマザー型、ソードマン型、ガーディアン型の二足歩行式、

逆関節式のスナイパー型、車両式のアーティラリー型の5つ。以下は各解説。

 

[マザー型(白兵/親機)](5体) (トリオン12)

バタリオンを指揮統括する、状況判断AIを組み込んだ機種。

指揮統制を最大の使命としているが、

最後の1機となった時はその場の市民の死守に専念する。

 

「生体学習脳」が組み込まれ、頭部が二回りほど大きく丸みを帯びている他、

他4種と違い「高反発性疑似生体皮膚シリコン」が多用され、性別を感じさせるモデリングが、人間らしさをどことなく彷彿とさせる。

 

孤月と自動拳銃型アステロイドのみを持ち、レーダーが積載され、索敵機能を持つ。

各マザー型と情報提携・データリンクが可能。

 

[ソードマン型(斥候・接近)](30体)(6トリオン)

オーソドックスな、孤月と高反発シールドの接近攻撃タイプ。

1体でバムスターはもちろん、モールモッドも単身撃破できる。

連携することで真価を発揮し、30体が集えば300の兵と化す。

 

比較的軽量で大量生産型。

 

[ガーディアン型(守護)](15体)(12トリオン)

機体全長を全て覆い隠せる拡張式高反発シールドに加え、

装甲で更に重圧な見た目になった重量級の機種。

5体はSMG型(MP7)、10体はバリスティックシールド付きSG型(Benelli M4)。

 

市民および隊員の保護や防御を優先事項にしており、

例え自機が壊れても厭わず身を捧げる。

装甲能力はバンダーの砲撃を十数発受け止め、

モールモッドの剣劇を何度も受け付けない。

 

感情を読み取るエモーション能力が搭載されている。

 

[スナイパー型(遊撃・哨戒)](10体)(18トリオン)

唯一「市民を守らない」機種。独自の行動プログラムを持つ。

界境防衛機関のゲート発生エリアのうち、「市民に被害が及ぶ可能性のある地域」

に沿って東西南北に、2機ずつ地域範囲を監視・遊撃。

いずれもBarrett XM500のアイビスを携行し、逆関節を折りたたむ事で砲台に代わる。

 

最後の2機はボーダー中央病院の裏手の中腹にひっそりと待機している。

2基1対のM2 Browningを機体腕内にそれぞれ格納し、山林内に擬態している。

 

稼働可能時間が5日間に伸びており、消耗を抑えるデータ変換効率に長けている。

10名以上の人間がいれば、常にトリオン供給が完了し、長期間滞在できる。

基本トリガーとして、「カメレオン」「バッグワーム」の機能を同時に使うことが出来る。

 

[アーティラリー型(迫撃砲)](5体)(30トリオン)

「ケッテンクラート」に酷似した操縦桿無しの完全装輪車に、

前方座席を潰して砲を車載させた軽装甲車両タイプ。

1機のみ無線局と繋がるアンテナを搭載している。

 

ボーダー本部の地下駐車場から旧市街地戦、

または本目支部の訓練場から山形射撃を行う場合もあり、

荒地にとても強く小さな車体で機動力を活かした変則戦闘を得意とする。

 

時速80kmを誇り、対バンダー戦を意識した電撃戦を行え、

親機からの命令が無ければ5体1グループで行動している。

 

「RPzB 54」("Panzerschreck")を車載。

これを取り外して臨時接続を行えば、隊員はなんとか扱うことができる。

 

 

・"Panzerschreck"

一発あたりショットガン・アステロイドタイプの至近弾6発分の火力を持ち、

3トリガー分のクールタイムを必要とする、精度S射程Bの重火器を保有。

 

接触型高速弾(ア9:メ1)(威力S弾速S+)によるトリオン装甲の貫徹と内部炸裂による甚大なダメージを与える他、

弧状を描いて爆発半径20mをもたらす高火力な指定時限式炸裂弾(ア2:メ8)(威力S+弾速D)も選択できる。

軽さEの高固着シールドによる取り外し可能な防楯は、生半可なアイビスの砲弾を弾く。

 

 

 

いずれの機種も戦術的な集団運用を行う事で、その真価を発揮できる。

緻密な運用と複雑な命令を、小神林は試算している最中である。

 

・[オペレーターコンソール] 【オペレータートリガー】

オペレータールームと同様の効果を発揮できる、オペレータートリガー。

本来このトリガーを使い、現場で御厨がナビゲートしていた。

 

現在は界境防衛機関の基盤が固まり、「オペレーター=安全な地域で指揮支援」「三門市内での防衛」という概念が定着した為、オペレータールームで指揮を執ることが一般的となった。

 

トリガーを4つも使うため制限が大きいものの、

今も御厨はこのスタイルを崩さないまま、

「簡易トリオン武器」で多くのトリオン兵を屠ってきた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

((設定))-用語集(弾手について)

---

・複合トリオン弾【弾手/オプショントリガー】

ボーダー創設初期の一つ。

シューターからガンナーへの転換方法を探る際、

ガンナーの射出方法を研究している最中に生まれた副産物。

 

トリオンで壁を作れるエスクードの物質化性質を利用し、

弾体を"物理トリオン"でコーティングさせたものであり、

トリオンを〈保存可能〉とさせた弾薬の総称。

 

 

弾手と呼ばれる⦅予備隊⦆の概念を作った象徴であり、

弾手【アーマー】に欠かせない要素。

<簡易トリオン武器>としての運用であり、

「トリオン戦闘体」でセーフティロックが解除される。

 

 

このトリオン弾は<使用者のトリオン消費をせずに攻撃を行え、

<設定されたトリオン効果を保持する、弾薬>で誰もが扱える。

 

ボーダーの緊急避難用トリガー(=研究員たちの持つ保険の非戦闘隊トリガーホルダー、以下緊急トリガー)と

C級隊員のトリガーは【ライフル】等が使用不可能。

 

規格化されたアステロイド弾を主とし、副に効果を与えたいトリオンを一つだけ付与出来る。

通常弾と特殊弾に加え「化学弾」を選択できる。

 

 

(背景)

<兵力の規格化>と<飛躍的な威力と効果射程の上昇>を伸ばす事に成功したものの、一発ごとに約1トリオンと非効率的な生産量になってしまった。

物理影響を大きく受けやすく〈弾道計算〉が必要となり、学生で実銃に触れた事の無い彼らに扱えない代物で量産コストも高いため、シューターほど普及しなかった。

 

加えて、"弾数制限"と物理化させた弾薬を携行しなければならない大きなデメリットが不人気の主な理由となり、弾幕を張れる低コスト量産型へと自然淘汰された。

 

それにもかかわらず使用されているのは、

唯一「他者のトリオンを扱える上に保存出来る」点が、

予備戦力として備える事を可能とさせた点が強みだった。

 

 

 

メリットは弾体(カバー)を物理化させた事により、

設定威力を99%保存(酸化により微量に漏れる)。

シューターの【威力】【射程】【弾速】

(【弾数】や【効果】等)を2発分設定が出来る上に、

【射出機の創造と、多種多様な効果弾】を携行できるため、熟練者に至ればガンナー以上の戦術が可能である。

 

ハンドロード時に性質設定を任意付与できるため、故に変化に富んでいる。

 

 

(ハンドロードについて)

発射時にトリオンを用いる他、

"合成弾を作る感覚"で、1分〜十数分掛けて一発作れる。

"ガワ"の空薬莢さえあれば数十秒でリロード可能で、

シューターと同じ感覚でトリオンを消費。

 

実際に建悟の扱うSVU-A(ARギムレット)や、

レイランドのM16A4マガジン(イーグレットAR)は、

弾手のギミックを仕込んだものである。

 

弾手唯一の特殊弾として【徹甲弾・徹甲榴弾/ピアッシング】、

【多用途噴射弾/イフリート】(「RPzB 54」("Panzerschreck")等)。

---

 

・アーマー【弾手】

「トリオン戦闘体で扱える安全性」「トリガーを用いない臨時接続のみの道具」「保存したトリオンを他者が扱える」3つがメリットの職種。

 

上述の【複合トリオン弾】を【ライフル】と総称されるトリオン銃器を用いる。

 

ボーダー本部に「旧式の」USA M14電撃パルスライフルが予備保管されており、新隊員の紹介や非戦闘員の緊急避難用に現在降ろされている。

---

 

・弾手【アーマー】予備隊

SCAR-L歩兵隊と、Colt 9mm SMG斥候隊、SR-25 MK.11 Mod0 SWSの強襲偵察隊からなる弾手部隊。

弾手の存在自体が非常にユニークなため、弾手といえばこの予備隊の事を指している。

 

弾手が作られたと同時期に創設されたこの部隊は、

ボーダー内でも異例の集まりであり、互いの呼び名を"コードネーム"で呼びあっている。

 

独自の軍事予算と行動が組まれており、市外及び、

平時のボーダー隊員の性質上防衛ラインが手薄になる地点で、

集団戦術と構成員で防衛にあたる。

 

 

基本5名のスクワッド(隊)を1チームとし、作戦に合わせた運用がされ、

各地域に1チームずつ正隊員がカバー出来ない領域で歩哨している。

現在、各3チームの総数45名が旧弓手町の駐留署で、

銃器・車両・設備などの兵站・近辺の治安維持にあたっている。

 

予備隊の管轄・上位指揮系統は城戸司令にあるが、創案者のレイランドが直接指導・現場指揮官となっている。

 

レイランド自身はM16A4とOKC-3S遣いだがSCAR部隊との弾薬を共有しており、全員のサイドアームはMk.23 Mod0を共通装備とさせている。

 

 

学生には不人気だっだが、トリオン適性の無かった者と20歳を過ぎたグループに強く人気があり、駐留署は独特な雰囲気を醸し出している。

 

その部隊の半数が「外国人傭兵」であり、署内に宿泊・給油(通常車両)・弾薬武器地下庫を持つ。

軍事予算はレイランドの会社から直接支給され、独自の行商と警護によって、海外の経済交流と即戦力の確保に貢献している。

第1予備隊部隊長「レオ」(IMI Galil ARM)

第2兵站部隊長「ヴァルキリー」(UMP9)

第3歩哨部隊長「パイソン」(M24 SWS)

---

 

・初月【アーチャートリガー】

((設定))-篠山綾華(弓手)を参照。

 

 

・ウォーム【シュータートリガー】

第5章「ウォーム」参照

---

 

・建悟のARギムレットについて

 

KBP SVU-A(OTs-03A)ベース。

合成弾【ギムレット】の複合トリオン弾を使用し、

マガジンの弾が尽きれば【イーグレット】としての能力を非常用として組み込まれている。

 

標準オプションに、以下を搭載。トリオン4消費。

【サウンドサプレッサー】

【マズルブレーキ】

【バイポッド】

【PSO-1スコープ】

【着剣装置】

【ロングバレル(600m)】

【10発バナナ型7.62mmマガジン】

 

威力A /B

射程SS/S

弾速B /A

連射A /C

軽さC

特化能力:弾手選択(ギムレット時/イーグレット時)

 

トリオン複合弾の製造は、建悟の場合1発辺り10秒〜1分/1トリオン。

各拠点備え付けの特注製造機を用いれば、10トリオン/毎秒10発。

 

有り余るトリオンで1日50発程度予備を作りおき、

拠点ごとに合わせた弾を保管・製造。

本目支部ではSVU-A用に500発を管理。

健悟の基本携行弾数は10+80発。(20×4マガジン)

------



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話「記憶の鎖/『猟犬』」

 

 

揺れ動くエレベーターの中で、地下二階へ向かうためのトリガー・カードキーをかざし、小神林のトリオン生体医科学研究科のフロアへと向かっていた。

 

維持液と抑制剤が吊らされた点滴棒の点滴チューブを繋げたまま建悟と、だらしない白衣姿の小神林がエレベーターに搭乗したところで、物語は始まる。

---

【向カエ】

 

(私は言霊の呪縛から逃れずにいた。)

(私がここに立つまで、一体どれだけの犠牲を払ったのだ?)

(大切な人を喪い、友人から忘れ去られ、記憶だけが残る。)

(居場所なんて無い、同じ世界の繰り返しなんて・・・死んだも同然だ。」

 

「・・・、・・・、ねえ、建悟ってば。・・・建悟!」

 

はっ。びっくりしたぞ、一体どうしたんだ、小神林?

「怖いよ、建悟・・そんな顔、してほしくはない・・・」

 

・・・・・・。

 

「建悟は、あたい達の建悟じゃない。」

「だけど、あたい達にとっては変わらないんだよ。」

「記憶が無くてもあっても・・・建悟に、変わらない・・・」

・・・何も分からないくせに。望んで俺は生まれたんじゃない。

逃げたんだ。

・・・逃げた?一体何から・・・いや、そんなことより、

 

お前に私の一体何が分かるというんだ!

もう何者であるかすら分からず、どこで生まれたかも、

自分が誰だったかすらも!すべて、すべてすべて全て総て!

その全てが、生きた記憶を忘れてもなお、

幾度も幾度も死んでは同じ世界を繰り返す時間をッ、

同じ人生を歩み続ける永劫の苦しみを!

一体お前に何がわかる!

 

何が分かった上で「なにがお前達の建悟」だ!?

私は私だ! 私は、おれは・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・」(涙、ほろほろと)

 

 

 

 

・・・悪い。言い過ぎた。

 

「・・・馬鹿。」

「勝手にいつも消えては、死にそうに傷ついて帰ってくるんだから。」

「一人で背負いすぎないで。独りのものじゃないの、もう貴方の命は。」

「心配してるの、私だけじゃない、ボーダーのみんなも、清水もだって・・・」

・・・・・・怒って悪い。

小神林に全て押しつけてごめんな。勝手な男だよ、・・・許せ。

 

「・・・ほんと、勝手な人ね。…けれども、貴方は貴方で…」

「誰にも理解されずに、 抜け出せない牢獄に囚われ続けているのに・・・」

 

・・・俺も、好きでこんな人生続けたくはない。

だけど、死んだってだめなんだ。自殺したって、辞める事ができない。

「・・・分かるけど、わかるけど、死ぬなんて、いわないで・・・」(ずずっ)

 

・・・あ、ごめん。だけどな、一つぐらいいいことはある。

「・・・?」

 

人生は一度きり。そうじゃなきゃ、人の器なんて破綻しちまう。

だけどな、何度も同じ道を辿れば・・・あの時なんて言っていたのか。

それをもう一度聞ける。冷静になって聴くのも、赤の他人として聴く事も。

それだけは言える。・・・後悔なんてしたことはないさ、それだけが救い。

「・・・・・・」

「約束して。あたいと。」

 

・・・ああ、なんだ?

「・・・勝手に死なないで。」

「勝手に死んだら、恨むから。」

 

・・・分かった。俺も・・・この世界では死ぬ気は無い。

この世界で俺は死んでる場合じゃないんだ。

「俺は」「私は」『―――』ガァッ!?

 

「えっ。け、建悟!」

 

俺は何かを言おうとした。けど、”俺”は死んでるんだ。

俺じゃなくて”私”が、今の建悟なんだ。元からいた俺じゃなくて。

ああ、記憶を取り戻せば俺は用済みか、私に変わるそれまでは―――

(俺が生まれた、この最初の世界に戻ることができて、よかった)

 

「建悟、ねえ、建悟・・・」

ん、すまない。私ならもう大丈夫だ。

・・・ん、どうした?

 

「ふふっ。今日の建悟、なんだかおかしいわ。懐かしいのに。」

「そうだった。あの頃の建悟は”私”じゃなくて、『俺』っていってた。」

「(やっぱり。あの時の建悟・・・ふふっ、出会って間もない頃の・・・。)」

「(苦しんでるのね、貴方も・・・自分という人格が幾つもあって・・・)」

 

・・・小神林?

「ふぇ?あ。ごめんなさいね。凄くなんだか・・・懐かしくて。」

「やっぱり、あたい達の建悟。変わらないの、記憶違ってても・・・」

 

・・・そうか。

俺は俺だ。俺も、私も、アイツも、俺なんだ。

あー、上手く例えられないんだが・・・

 

「ううん、いいの。」

「あたいはもう十分。・・・さ、貴方はやるべきことがあるんでしょう?」

「果たすべき事に集中してちょうだい。私はもう、覚悟ができたわ。」

 

ああ、改めてよろしく頼む。御厨。

 

「・・・え、うん・・・・・・そうね。ふふっ。」

ーーー

 

ここは医療用業務用エレベーターの操作盤の中で、コードブルーを持つ医療従事者とその関係者だけが利用できる、「表示されない」地下2階へのスイッチがある。

それを御厨のカードホルダーのトリガーで解除し、到着する。

 

地下1階までは病院が破壊された場合の「臨時病棟」として保全されており、一般市民も立ち入りができるようになっている。

それより地下2階はボーダーの機密区域として扱われ、内部でしか公表できないトリオン研究や医療開発が行われている。

 

しかし、緊急時は地下2階を解放し、医療目的のために場所と技術を提供する事も想定されて備えられている。

 

 

業務用エレベーターの鉄板が開き、目の前に灰色の壁が現れる。壁に「青色の鍵穴」を模した電子光が表示された。

「ここから先がね、私の仕事場所。そして、秘密の部屋よ。」

カードホルダーで鍵穴にかざすと、灰色の壁が格子状に収縮し、壁面に消えていく。

 

壁の先をくぐると、無機質な海色ランプに照らされ、足下は白のLEDライトで照らしている。

寒々とした冷たい空気に管理されたダークブルーの通路が続き、その左右に金属質の銀色のスライドドアがいくつか見えている。

 

それぞれの金属扉を見ると、「簡易病室・手術室」「トリオン貯蔵庫」

「実験試作室」「生体培養室」「保管庫」「仮眠・調理室」の

電子文字が、近づくと立体投影光で表示され、離れれば消えていく。

 

点滴棒を引く車輪の音と、こつこつと歩く音のこだまが寂しくも、小神林は通路の先を歩いて行く。

 

「こっちよ。一度、メモリーの作動方法を書き換えなくてはいけないから・・・」

コツコツ。

通路の終わりまで近づくと、何も無い通路の壁の前で小神林は立ち止まった。

 

ここに何があるんだ?

「うん。実はここにあるの、私の部屋。」

「本当は、他の職員もいるのだけど・・・」

「あくまで医療従事者だから、研究員は私だけ。」

 

そう言いながら、何も無い壁にカードホルダーを当てる。

・・・すると、音も無く壁が『消えて』いき、中に入れるようになる。

 

招かれるように中へ入ると、ここは「書斎」のようだ。

絨毯の上に大きな執務机があり、その上に整理整頓がされた小物が置かれ、ディスプレイがキーボードと共に備え付けられていた。

 

腕付きの椅子の背後には、天井が見えないほど果てしなく高い書棚が設けられ、一番下の一角だけでA4のカルテや古ぶるしい本がぎっしりと並び、一列だけで200柵はくだらないだろう。

 

「ちょっと待っててね。・・・『起動、椅子を出せ』『茶を用意』『システム起動』」

 

小神林がそういうと、天井から円錐台の浮遊椅子が建悟の近くに降り、また入り口から見てすぐ右手から「茶器や食器」が、

左手から小さなシンクが設けられ、その埋め込みのスペースの中に冷蔵庫と思わしき扉から、クッキー類が浮かぶ大皿に盛られ机へと降りていった。

 

・・・引きこもり?

「ちがーう! 決して面倒だとか煩わしいとかじゃないわ、効率化よ、効率化・・・」

はいはいそういうことで。

「だから違うっていってるでしょ・・・はぁ。とにかく座って、適当につまんでて。」

「今お茶入れるから」

 

小神林は左手の埋め込みのスペースから、沸騰した電気ケトルを手に取り、机上の紅茶茶器に茶を淹れる。

 

Fortnum&Masonの茶葉が馴染む陶器ティーポットの網部分に入れ、淹れた湯気から、英国の蒸気を偲ばせる。

小さな星の砂時計をひっくり返すと、小神林はケトルを戻しながら、白の角砂糖とポーションミルクの瓶を用意しながらティースプーンを用意する。

 

「ちょっと待っててね。」

あ、ああ。・・・不意に、点滴の棒に吊された「赤色の製剤」を見る。

見れば見るほど輸血のように思えるが、もう少し赤い深紅、スカーレットカラーのようだ。

 

「・・・ああ、その抑制剤?」

これはどうして生まれたんだっけか。俺の中のアイツ・・・ジンクスを抑える為だったか。

 

「うん。カプセル錠剤をいつも服用してもらっていたんだけど、」

「何が起こるか分からないし、」

「即効性と安全の管理から点滴にさせてもらったわ。」

・・・意外とむず痒い。

 

「あら、慣れてると思ったけど・・・大丈夫よ、そういうものなの。」

だといいんだが。・・・それで、記憶を取り戻すメモリーっていうのは?

 

「うん。本来、ボーダーに支給させているのは記憶除去のみの単効果、」

「イレイザーという装置ね。このペン型のがそう。」

ああ、そいつか。よく市民の記憶を消してあるあれ。

 

「・・・万が一、そのjinXが暴れた場合の対処策として考えついたものだったの。」

「原理はこう。相手に記憶を刷り込ませるの。インプリンティング。」

刷り込ませる?

 

「生まれたとき、子が親を覚える現象よ。鳥類に顕著に見られる現象ね。」

「メモリーはその刷込を応用したものなの。近いもので追体験ともいうわ。」

「一種の催眠状態に映像を同時に送り込んで、白昼夢や明晰夢と似た環境を与えるの。」

・・・つまり、デジャブに似たようなものか?

 

「デジャブは違うわ。メジャブも似ているけど・・・」

「脳の錯覚や、思い込みに近い。」

「これは人為的に映像を与えるものなの。」

「外因的に記憶、つまり夢を見させているようなものね。」

 

小神林は見計らったように、建悟にティーカップをすすめる。

砂糖とミルクを入れてスプーンで冷まし、皿で添えるように・・・カップの取っ手を握らずに持つ。

 

「本来は、イレイザーもメモリーも同じ原理なの。」

「記憶を植え付けることで、あたかもそうであるかのように『印象』づける。」

「記憶の定着に関わることだから、記憶喚起や、」

「深層心理記憶層には弱いんだけどね・・・」

 

「今から、このイレイザーに『建悟の記憶』を記録させるから、しばらく待ってて。」

「それと、・・・はい。」

 

ペン型のイレイザーにディスプレイの端子コードを接続させながら、

小神林が机からがさごそと何かを取り出したようで、『頑丈そうな腕時計』を出してきた。「これが貴方のトリガーホルダー。使い方は・・・覚えてる?」

ああ。問題ない、確か・・・

 

「・・・。」

 

あれ、動かない?

「・・・弄るんじゃなくて、変わるって念じれば換装できるよ。」

あ、ああ、分かった・・・・・・

 

・・・・・・あれぇ?

 

 

「・・・・・・はぁ。えっとね、もうちょっとこう・・・俺強くなる!とか」

「建悟はどうしてたのかしら・・・なにかこう、イメージを持つのかしら?」

 

ふむ・・・・・・むんっ!

・・・!

 

あれ、うんともすんともいかないんですが・・・

 

「おかしいわね、故障しているわけないんだけど・・・」

 

うーん。なんだろうな、・・・とりあえず、持っておくよ。

「ええ、そうしておいて。機能自体は・・・腕時計だから、」

「大して違い・・・は無い、はずだわ。」

わかった。・・・・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。

 

「・・・・・・。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・ねぇ。」

ん?

「今の貴方は、"前の記憶"、覚えてる?」

・・・・・・。

 

俺は・・・よく覚えてないんだ。

「・・・そう。それにしても、jinX・・・例の彼のことなんだけど。」

ん、ジンクスのことがどうした?

 

「最初の頃なんてそれこそ、手の追えない暴れっぷりだったのに、」

「ルミネセンサー事件を追えてから、なりを潜めちゃって・・・・・・」

「でも。なぜだろう、違和感を感じる・・・貴方、もしかして・・・」

 

・・・・・・。

 

「もしかしてjinX、貴方が『あたい達の建悟』?」

 

!!

いや、違うな・・・アイツはアイツだ、俺は俺だし、あの私は俺じゃないし・・・

 

「・・・そう。」

「・・・きっと。もともと一つだったのかもしれないわね、建悟くん。」

「あの世界で生きていた建悟も、何らかの狭間で彷徨う建悟も、飛んできた建悟も・・・」

 

・・・・・・なんなんだ、こいつは。

 

いや、俺は俺だ、俺のはずなんだ。

この世界に初めて生まれたはずの「最初から居た本目建悟」のはずだ。

「後からやってきた"私"」じゃないし、「寄生しているアイツ」じゃない。

 

なのに、なぜ否定できない?

新しく入ってきた”私”は俺じゃないし、

アイツこそ「もはや違う存在」だし。

だけど、俺の中で違うって断言できない。

なんだ、この違和感は?

 

「・・・といっても、あたいの憶測の域に過ぎないけどね。」

「だけどね。あたいはそう感じるの。建悟は・・・」

「元々・・・・・・一つだったんじゃないかって。」

「でも、科学的に証明できないなんらかの現象で、分かれちゃったのかなって。」

「しかも、違う世界同士の建悟が結びついたり入れ替わった事で、」

「トラブルとか…ほら、女神転生のあれみたいに、何かが起きたのかな、って。」

 

・・・・・・。

 

「だけど、これは言える。」

「おかえりなさい。建悟。」

 

彼の心は揺れ動く。

『3人』の心が宿るその器の中で、

やがて来る秩序の淘汰が。

彼を含め、小神林は何も知らぬまま、彼の帰還を祝う。

 

【鋭角の時元より出でし、死臭を漂わせし猟犬が迫りつつあると、知らずに】



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8.5話「忘却せし追憶/Poppy」特別回

作者の夜種王です。
いつも見てくださっている方には、
ご愛読ありがとうございます。

初めましての方は初めまして。

2ndで(試しとして)原作シーンに沿った演出だと、
作りやすくあり、またキャラのイメージも湧きやすかった為、
こちらでも次回以降から「原作時点」に早めるかもしれません。
(今読み返すと、回りくどいと感じてしまった為)

検討中ですが、「原作に沿った進め方」もまた楽しく、
完全オリジナルではないからこその「描かれなかった背景世界」
の執筆ペースが遅くなってしまうものなのでしょうか。

処女作でまだまだ拙いですが、
これからもお付き合いいただければ幸いです。


 

俺は誰かを忘れている気がする。

そう、俺はこの世界に来る前、誰かもう一人の親しい人がいたはずなんだ。

 

もっといえば、初めから転生する前から・・・会っていない、大切な人が。

確か俺は、それを望んで転生をした・・・ような気がしないでも無い。

だけど俺は知らない。どんな名前だったのかも、顔だったのかも、印象も。

 

そもそも出会っていないのかもしれない。死別したか、生まれなかったのか、

それとも腹違いか、種違いか。存在すら無くてただの妄想だったのか。

 

俺は、確か・・・何もできなかった。

何も出来なかったからこそ、「特別」や「才能」を渇望した。

それが叶った今、なぜだろう。虚しい。望んでいたのはこんなものだったのだろうか?

 

・・・何か違う。

だけど思い出せないんだ。俺は確か、一番最初に何かを望んだはずなんだ。

それが、分からない。・・・分からないまま、俺は消えるのだろうか。

 

・・・あのイノシシ。祝福されし黒仔山羊に喰われたときのあの世界。

確か、誰かいたはずなんだ。願ったときの、大切な誰かが。かけがえのない、誰かが。

 

俺は「建悟」という全意識集合体の中に消えるのだろう。

いくつもの世界で、いくつもの転生や人生を得られた。・・・それが一つになっているのだ。

俺の中で、それが集まっているのが分かる。・・・終わりにしたいんだろう。永い後日談から。

・・・けど、それを望まない誰かが来ている。

俺を探し求める者は、誰だ・・・?

 

数多の世界の中から、探り当てるのは、銀河に埋もれた星砂の一粒を探すようなものだ。

・・・まだ、俺という人格が生きている間に、集束して統合されつつある私に、

このことを伝えねば・・・誰かが、「居た」ということを・・・。

――――――――――

私は探す。お兄ちゃんを。

亡き者にした何者かに鉄槌を、私のお兄ちゃんに安らぎを。

 

私はお兄ちゃんに救われたの。

今はバイオハザードの世界で30年も時間が掛かっちゃったけど、

今ようやく、お兄ちゃんを探すための準備が整った。

 

私はね、感謝してるんだよ?

死のうと考えてた私に、出来なさすぎていじめられて、

もう首吊って死のうとか飛び降りようとか考えてた頃に、救われて。

 

それだけじゃなくて、私のことを養ってくれて。心配してくれて。いつも気に掛けてくれて

お父さんとお母さんが死んじゃっても、そばに寄り添ってくれたよね。優しかった。

 

今度は私が救いにいく。

何が貴方を苦しませたの? 何がそこまでして異世界に飛んじゃったの?

何を願いにその世界に逃げちゃったの?どうして、死んじゃったの?

お兄ちゃん。私は私が納得するまで、探すから。地獄でも天国でも、どこへでも。

 

・・・待ってて。私は、お兄ちゃんのそばにいますから。

私は貴方に救われた。だから、私が救います。

私は、貴方に命を与えてくれたようなものだから。

 

・・・お礼がいいたい。ただ、それだけでいい。

貴方の下に逢いに行きます。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話「鋭線の時間/曲線の生命/統一されし角度/壊された刻はどこへ熔けゆく」

 

 

・・・俺に何が起きた?ノイズ・・・目の前がよく見えない、なんだ・・・

よく聞こえない、よく見えない、よく分からない、何が、あった。

 

何か白昼夢が見えたかと思ったんだが、何かが見えた気がしたんだが、

俺は何もできなかった・・・気がついたら、ここはどこなのだろう。

どこかへ落ちていて、浮かんでいて、引っ張られていて、押されてる。

 

・・・小神林はどうした?俺は・・・何をしていたんだろう、何を・・・

 

「・・・あぁ、記憶を取り戻してもらってたのか、・・・だけどなんだろう、この嫌な予感は・・・」

 

 

 

 

時を遡れば、今から30分前。

小神林との談笑を終えて、実験試作室にルーター接続させたパソコンを介して、

記憶定着装置「メモリー」と、記憶忘却装置「イレイザー」をそれぞれ動かしていた。

といっても、それぞれペン程度の大きさだが・・・・・・小神林にはこう言われていた。

 

「建悟。今から貴方は、矛盾する記憶と貴方"自身"に嘖まれることになる。」

 

・・・どういう意味だったんだろうか。今となっては、知ることができない。

それはなぜか。

 

奴らが迫ってたんだ。彼女の、背後に。

 

「ルミネセンサー」

いや違う。この世界ではそう喚ばれていたが、もっと違う。

あいつらは・・・「――――――の猟犬」

あいつらは、あいつらは! そうだ、あいつらに・・・俺は弄ばれた!

俺が望んだ世界を!まんまと騙しやがった!あいつこそが!あいつらこそが!

俺の時間を!俺の―――

 

 

 

この世界線での小神林は、「最後の希望」を託した。

なぜなら、この世界は「平成25年6月2日」ではなかったのだ。

西暦・・・そんなものは崩壊していた。全て、建悟に悟られないための配慮だった。

 

あたい、全て貴方のために嘘をついたよ?昔の貴方の記憶から解析して、再現して。

あぁ、後ろからもうルミネセンサーたちが迫ってる。あの腐臭が、凍てついた視線が近くに・・・

最後に、最後にあたい、貴方に感謝が言えてよかった。

・・あたいの最後の記憶、貴方に全てを託したからね・・・

 

「・・・はは。ダメだなぁ、あたい・・・」

「次の世界では幸せになって。建悟・・・。」

「愛してました。もっと、――――、貴方と共に歩・・・」

「―――――」

「」

 

最後の人類の一人は、誰にも知られること無くその命を散らした。

――――――――――

大洪水はやがて全て吞む。

大噴火は全てを焼き払う。

大地震は立つ者震え穿ち。

大崩壊は世界の終わりを。

 

方舟は裂けた塔を載せて、時を咲かす。

彼らはこの丸い世界から消えて、角の世界へと身をやつした。

 

楽園は焼き払われ、神託は意味を失い、預言者は偽る。

反逆者は反故に見舞われ、誰も彼も理解ができなくなる。

反逆の王らは反逆者を率い、鋭き世界へと自ら幽閉した。

 

我々は破壊こそが真意。生命を超越し、時間を破壊する。

時間を生きる者らを鉄拳制裁し、破壊することで我々を充たし殖やす。

――――――――――

『Access...』

『CODE:1000110 1100101 1101110 1110010 1101001 1110010』

『能力を追加。』

『名称:鋭空間干渉』

『効果:曲線時間と対になる鋭角時間への干渉能力』

『SE発現:プレコグニション(寿命視)を獲得。』

『対象の寿命を視ることが可能となりました。』

『戦闘能力を更新。』

『プレコグニションによる、攻撃意思に応じた寿命の変動を確認可能。』

『"WORLD TRIGGER"使用時、鋭角時間を用いた遠隔血鎖刃が可能となりました。』

 

 

『Now...RE;LOADING』

――――――――――

「・・・ハッ!」

 

飛び起きた先は、同じ病院の先。

辺りを見回す。同じ光景だ。

 

小神林「・・・あれ、建悟?おはよう?」

建悟「御厨か・・・御厨!?」

  「あれからどうなった!? 今は何年の何月何日だ!」

小神林「え、あ、け、建悟・・・?」

建悟「・・・・・・。・・・(どういうことだ。昨日の御厨と違う?)」

小神林「・・・え、えと、2013年だよ。6月2日・・・」

 

建悟「・・・平成25年か?」

小神林「うん、そうだけど、どうかしたの・・・顔、険しいよ?」

 

・・・。

これ、何が起きてるんだ?

 

ナース「・・・院長、どうされますか?」

小神林「え?ええ、そうね、いつも通りお願い・・・」

 

二人の寿命が、見える。

一人は80年6月4日13時間52分14秒、小神林は・・・あと10秒!?

 

建悟「・・・。いや、もうその必要は無い。」

ナース「え?」

御厨「え、どういう意味?」

建悟「・・・!御厨、しゃがめ!」

 

 

5秒、4、3・・・直感だが、分かる。猟犬どもだ。

『寿命』とは別に、何かを得たらしい。"私"は。

戦い方を思い出した。Xnij(俺)は「ブラックトリガー」となったのか。

私は知っている。なぜ、「2013年6月2日に戻ってきたのか。」

 

私は・・・この世界を、救いに来た。

 

 

建悟「ぐ、っ!」

輸液カルテルと点滴針を抜いた勢いで、自らの血を依り代として【血鎖】を産む。

御厨のうなじから喉元を狙っているのだな。猟犬どもめ。

 

御厨「・・・!」

御厨もしゃがんでくれた。戦友としてのカンのおかげで、意図を察してくれたらしい。

「こいつ、ルミネセンサー・・・なんで!?」

 

違う。そいつは。

「ティンダロスの住人。猟犬。鋭角の時間を超えた不浄な存在だ。」

「我々と対になる『生命体』。そして、私の前の世界の」

「我が宿敵の一つだ。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話「狼悪魔/芽生者」

私は知っている。宿敵の一柱が一つ、悪魔「フェンリル」を。

この猟犬はフェンリルの眷属に過ぎない。

 

もっとも、猟犬と「形容」しているに過ぎないが・・・

この存在達も、「元々は人間だった」のだ。

 

 

「私たちと違い、『生きる喜び』を奪われた者たちだ。私と同じ、な。」

 

小神林、いや御厨は・・・言っている事が理解できないながらも、体勢の復帰ができたようだ。

「そこの君は2階の患者達の避難を頼む。」

「え、ええ、わかったわ!」

 

白衣の看護婦は運良く「猟犬の背後」に居たために、ここから離れる事は簡単だった。

 

 

建悟「・・・今の狙いは君だ。私から離れるな。」

御厨「え?あぁ、うん・・・・・・トリガー、オン!」

 

御厨は現場から一線を引いたとはいえ、今の上位A級隊員に引けを取らない。

「創始期の戦闘体」のフォームか。懐かしい、4年ぶりだな・・・彼女も本気ということか。

 

御厨「ルミネセンサー・・・いえ、ティーダロスの猟犬だっけ?」

  「こいつらはトリオン兵器が有効よ。・・・貴方の異現能力も有効。」

建悟「弱点は、精神体だろ。」

御厨    「精神体よ。」

建悟「・・・傍離れるなよ。」

御厨「分かってる。」

 

今の私には視える。

わざわざ視認しなくても、脳内に周りの『膨大な生命』の寿命が、入り込んでくる。

御厨の残りの寿命は1分に伸びた。・・・周りにも、多くの生命の寿命時間が見えてくる。

 

これを打開する方法は一つ、私の「心臓」に隠された秘密。Xnij(俺)の黒トリガー。

別の世界線の私や、あの世界の「小神林」が託してくれた記憶が無かったら・・・・・・

私はおそらく、ここで御厨を失っていただろう。

 

・・・多くの【この世界】を渡り歩いてきた私の記憶が、流れ込んでくる。

今の私は、分散した私の記憶や経験が、今ここに集っている。そのいずれも・・・

「全員/皆/友/同胞/仲間/同僚/大切な人/好きな人/嫌いなアイツ/ボーダー/みんなを」

「みんなを、救ってくれ」

 

 

建悟「・・・・・・ありがとう。御厨。」

御厨「え?」

 

きょとんとする御厨をよそに、右腕から無理矢理引き抜いた、出血した血液から・・・血鎖を。パチンコで放つように、「その猟犬の何か」に向けて押し投げる。

 

建悟「・・・・・・」

それを引き寄せて、たぐり寄せる。

引き寄せたその存在は・・・・・・

 

猟犬。送り狼。野犬。

形容するなら、これらの言葉が似合っているだろう。

私には「人間」に見える。私もまた、その片鱗を歩みつつある状態だから、人なのだと分かる。

 

この人達は、見た相手の精神世界において「捕食者のイメージ」を引き出す事に長けている。相手の心に揺さぶりをかけることで、自身が「食物連鎖の頂点」にあると錯覚させるためだ。また、恐怖に陥った対象の方が甘美な味わいになる。

 

脳内でエンドルフィンや脳内麻薬が分泌され、結果的に麻薬のような痺れる甘味になるからなのだろう。

その経緯はおそらく、「彼らも元は、人間だったから」なのだろう。人の記憶が忘れられないのだ。

 

私は「ティンダロスの猟犬ども」の殖え方どころか性質こそ違えど、原質は同じだ。

私もまた、姿形こそ人間だが、心の中身がほぼ同じ。私は、私自身を「人」として引き出している。

 

 

御厨「出たね・・・ルミネセンサー、いえ、猟犬。」

  「・・・みんな、貴方に迷惑してるのよ。」

 

「・・・・・・」

猟犬は答えず。応えず、御厨の動きをまず封じようと、ドロドロとした青い酵素液を飛ばす。酵素液は御厨に当たらず、建悟の血鎖壁によって落とされた。

 

・・・酵素液は血鎖壁を溶かし、病室の床を徐々に溶かしていく。

 

建悟「詳しい訳は後で話す。・・・外に出るぞ。」

御厨「ええ。こっちよ、こっちなら。」

 

病室の壁を御厨のトリオングレネードと、「血刃」の槍で壁穴を造る。

すぐ隣の病室から廊下に出ると、左右から2,3体の猟犬が、刃舌を二人の心臓に這わせる。

 

建悟「・・・(あと10秒)」

御厨「ひぁっ!! シールド、こういう時にほしい・・・ね!」

 

間一髪のところで、御厨の双剣が御厨の胸元をギリギリと音を立てて護る。

・・・左手に「界境防衛機関」が見える。あそこまで、離れよう。

 

建悟「つかまれ!」

御厨「!」

 

私は御厨の腕を掴んで、窓と壁ごと・・・ぶつかる勢いで、2階から飛び降りた。

 

 

 

 

御厨「え?こんなところまで・・・っ!」

やはり。今ここに来ているのは5体か・・・目の前のこいつが、トリってか。

 

建悟「Summon:Sever.」

両手から、1対のフランベルジュ=ツヴァイヘンダーを、自らの滴る血で造りだす。

長さ3メートル。厚み1メートルのそれぞれを、片手剣のように二つ、天地に構える。

 

同時に、空から落ち続けている体から、強い違和感を覚える。

レッドワインのバトルドレス(ドレスシャツとトラウザーパンツ、黒のインナーとネクタイ)

に身を包まれ、左側の髪が白くなる。茶系の左瞠が赤く充血して、涙血が伝う。

空っぽの右窩は、『万物を見渡せる』ようになる。水色燐光の魔素が、補ってくれる。

 

地に構えた左剣で御厨を護り抱きながら、天から・・・焔状剣が挑戦者を、断つ。

 

御厨「・・・!?」

  「あ、建悟・・・その姿、だめ、無理、しちゃ・・・」

建悟「・・・」

 

まだ、寿命が1秒しか延びない。猟犬どもの出現する居場所はなんとなく分かっても、

その位置と寿命は『見えない。』・・・となると、後ろか。

 

 

建悟「Summon:Unichain"Charon"」

 

背後に向けて、乱雑に「血鎖刃」を放ちまくる。

無差別の攻撃は、後方の病院の窓や壁に一部当たってしまったようだが・・・御厨を守れれば、それでいい。

 

だが、なおも迫る嫌な予感<デジャブ>。

右手で振りかぶりつつ、左腕で抱えた御厨を遠くへ、体を反らす。

 

「・・・!」「~!」「・・・」

 

2体は命中、意地悪く1体だけは捕食者の舌で精神を抉ろうとしたらしいが・・・届かず。

残る1体は、勢いに身を任せてこちらに突進してきた。間に合わないな。

 

 

建悟「がっ!」

突き落とすつもりか。かといって、落下から護ろうとすれば御厨が危ない。

いくら戦闘体トリオンでも、奴らの「捕食行為」や舌は「直接精神に届く。」

・・・落下によるダメージは考慮しなくて良くても、奴らの攻撃だけは避けなくてはならない。

建悟「くそ。どうすれば・・・!」

更に食らいつこうとしてきた。・・・私の状態は「トリオン体状態」とはいえ、

擬似に近い状態であり、ほぼ生身に近い性質と痛覚の状態が特徴の黒トリガーだ。

間合いが間に合わない。・・・致命傷や御厨が食らうよりは、左腕で。

 

「!!!」

「が、アァァァァ!ッそがぁ!」

「この、離れろ!建悟から!」

 

御厨が全弾、弾手のMP5kを猟犬の頭にめがけて撃ち放した。

しかし、なおも食いついて放さない。

 

「(どうするか考えろ、・・・腕を切り落とすか?)」

残る右腕で、トリオン体の左腕ごと猟犬を断とうとした所で・・・・・・

狙撃手の弾丸が「猟犬の核」を貫いた。

 

・・・そのまま、私と御厨は、界境防衛機関の離れの病院前へと静かに落ちていく。

――――――――――

「・・・。」

界境防衛機関の屋上から一人、ゲート発生のサイレンが鳴り響く中で、その男は立っていた。

狙撃手として名誉ある、「ナンバー2」の成績を誇る男が、防衛出動前に偶然二人の状況を見つけていた。

 

今日も変わらず、その「何か」を精確無比に射抜く。

 

「・・・よく見える的だ。」

 

彼はなんでもなかったかのように、彼の3人の仲間と合流しに向かった。

 




ただいま投稿させていただきましたが、
うーん。何か違う…

強引で申し訳ありません、
2018年当初と、今現在描きたいプロットがあまりにも異なってしまった為、

雑な時間の飛ばし方となってしまう事をご容赦ください。

というのも、2次創作として作り始めたのに、
何か違う…? と感じた事もあり、
おそらくそれが気力低下へと繋がっていたのかもしれません。

強引ですみません、原作の時間軸に入らせていただきます!

ーーーーー
2019.2.25

んー、おそらく「設定を世界観で描写」しようと試みた所、
拘り過ぎて「設定に追われる」描き方に追われたのかもしれません。

これを一度リセットして「描きたかった、原作との繋がり」を、
「RE:第一章」として、同小説内で区分を分けさせていただきます。

次回、文字通り「存在しなかった」かのように、
建悟自身が「別世界のワールドトリガー」に訪れる形となります。
時間軸は…原作通り、空閉遊真が日本に訪れた頃か、その直前か。

原作の主人公と同じように、今後彼は「初対面」としての仲間たちに、
どう向き合っていくのか…本来描きたかった、
ワールドトリガーの転生主人公の物語を語らせていただきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE:第一章 RE:第一章 [RE;LOADING NEW WORLD]

[PROFILE:SECRET RECORDS/◻︎◻︎◻︎◻︎]

⦅EXECUTION:DELETE⦆

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

私は観測者。

同時に監視者でもある。

私の役目は、この世界の観察を行うこと。

 

さまざまな世界線に散り、集団意識に融解した彼。

一つの世界に飛び、縛られる生を授かった彼女。

人の技を極め、開眼せし先を更に求めし者。

憐み嘆く中、居場所を求めた者。

そして、まだ見知らぬ者ども。

 

我が名はニャルラトホテプ。

この修正不可能なバグに陥った世界を壊し、

目の前の視聴者に新たな物語を「お見せする」者。

無限に等しき我が柱のうちの、一つがワタシである。

 

また憐れな男は、集束する運命と因果に耐えきれず、

世界も霧散していってしまったようだ。

我が作者は実に、飽き性だ。諦めも早い。

感情を大事にするこの者は、不要と感じればすぐに切る。

 

その気紛れに、また「忘却の世界」に生きる彼は、

怠惰なる忘却へと融かされてしまった。

我はまた、彼の記憶と世界を奪い、また与える。

 

「傲慢の世界」に生きる彼女は、己の道を信じて進むが、

探し人の為だけに、他者の犠牲を無碍にするだろう。

 

次の世界は「義憤」。正直過ぎた頑固者は、ついに目醒め、次の世界へと意図せず顕現する。

その者は、人は神になれぬが、神殺しの資格を持つにふさわしい。

我と、我があるじ、魔王アザトースの元では塵に過ぎぬが。

 

だが、嗤い、愉しませたもうならば、我は御命を持って応えん。

さぁ、更に苦しむが良い。建悟よ?

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

それから、俺は多くの世界を渡り歩いてきた。

今の俺はじきに、記憶を失うだろう。

 

それと…この記録は残るか分からないが、

少なくともワールドトリガーの世界、

兵器が闊歩する絶望の世界から、

希望のファンタジーな世界まで。

今の俺は歩んできた記憶がある。

 

間も無く俺は消えるんだろう。

次の世界は…どこだ?

初めてワートリの世界に生まれてから、

もうどれぐらい経ったのだろうか。

ワートリは原作通りだったし、

後2つか3つぐらいは、見覚えのあるものだった。

ある一定の条件をクリアすると、

もう次の世界に意識が飛んで、スタートしていた。

 

…戻る事もできない。

俺は死んだ事がないが、死んだらどうなるのだろうか?

運良くずっと生きてきただけなんだ、チート設定で。

じゃあ、自殺したらどうなる?

…試したくなったんだ。

 

消える前にこの手紙を見つけた貴方へ。

ワガママですが、この手紙を渡してくれませんか?

 

…急に消えてしまってごめんなさい、

先往く事をお許しください。

初めて訪れた世界が、ここで幸せでした。

 

レミリア・スカーレットへ

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

「統べて、役者とは対にして唯一である。」

「唯一であれば絶対のパラドックスに苛まれ、」

「双神であれば対の闘争と平和が生まれ、」

「三神であれば互いに牽制し、補完する。」

「もしそれ以上存るならば」

「混乱を極め、やがて秩序に還る。」

 

「彼は数多の生と死を経て、ここに至る。」

「全ては記録。記憶は呼び覚まし、遺伝は情報を伝播させる。」

「結合反応が連鎖を起こし、αからβ、Ωへと移ろい変わる。」

 

「建悟という存在は一体何者なのか?」

「私にはわからない。」

「ただ、」

「私にかかわる何かだった、ということが、事実として残っている。」

 

「斯くいう私は、たった一回の生を得たに過ぎない。」

「だけれども、私にはわかる。八百万の伝奇が残されている。」

「残された者は紐解かねばならない。」

「隠された真実に虚構の方程式を、虚数を正数に。」

 

「私は、願いを祈りに捧ぐ。」

「死者に弔いの調べを聞かせよう。」

「過去を照らし、死んだ事すら忘却した御霊に鎮魂歌を。」

「私の役目は、彼を眠らせるために。」

 

「…だが、彼は私にとって…?」

 

 

「分からない。…けど、あたいは、もう死んじゃった。」

「今は消えゆくあたい。…小神林としての私は、ここで終わる。」

「記憶を託しても。その後はどうなるか、分からない。」

 

「けど、終わりのキッカケになれるのなら…それで、いい。」

「繰り返される悲劇は、もうイヤだ。」

「私は、あたいは、最後まで、考える。」

 

「ーーー(ノイズで聞こえない)。」

◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

 

 

また一つの世界が消えていく。

いいえ、建悟が「別の世界」へと落ちて迷い込んだ。

 

用無しの世界はひっそりと、誰にも知られず消えていく。

次は、「建悟そのものが存在しなかった世界」。

 

…ワタシはつくづく、にやけが止まらないですねぇ…?

 

外なる神の嘲笑いがまた、ひっそりと木霊する。

白痴の魔神もまた、のたうちまわり、玉座に座る。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第1話「再誕」

俺は、私は。

 

 

 

記憶を奪われていく感覚。

人格が変貌していく感覚。

意志は衰弱して、心が消える。

 

 

 

私は、だれだ

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

天から降り注ぐ七天河から雪がれる、白銀の湖。

白銀の湖の中央には、無尽蔵の剣が立ち尽くしている。

 

 

 

 

剣と刀の集まりの中で、

ひときわ輝く碧き翡翠の剣。

碧き翡翠の剣は折れることを知らず、錆びることを忘れた。

 

 

 

 

誰も訪れず忘れられてしまった、月の裏側。

ここにたった一つだけ、一つの木が生えている。

 

 

 

月の裏に眠る血錆の番の木大剣。

錆だけで出来た双つの月桂樹の大剣は、全て付着した血糊の形。

全てを壊し、平伏させ、薙ぎ、戦かせてきた。そして、忘却された。

 

 

 

 

碧き翡翠の剣の根元に、周りを囲む7色のポピー。

月桂樹に付着した血糊の大剣の柄に、一房の月桂樹の花。

 

 

 

 

そして、「彼は墜ちる」

――――――――――

 

 

 

 

ここはどこだ!?

 

 

 

はっ、そうだ・・・御厨!

 

 

 

 

建悟は周りを見渡すも、

 

 

 

抱きかかえていたはずの小神林が見つけられない。

他にも思い出した事があるはずなのに、

 

 

 

 

「何か、朧気になっていく」

 

 

 

 

「ここは長く居ると、記憶が削れていくのか・・・」

「テレポートも、できないか」

 

 

 

 

かなり弱った、ここはどこだ?

上から水が延々と注がれてくるし、

周りは地平線が見えない真っ白な世界・・・

 

 

 

 

白銀色って言えばいいのか?綺麗な光景なんだが・・・

いくつか落ちてくる滝の中央ぐらいに、

尋常じゃない数が剣ぽいのが見えるが・・・

 

 

 

 

「・・・俺は今まで何をしてきたんだ?」

「・・・俺は一体何が残せた?」

「・・・俺は何が、ある?」

 

 

 

 

・・・戦闘体トリオンにも変化できないし、

だんだんと分からなくなってきた。

自分・・・あれ、自分って誰だ?

 

 

 

 

・・・俺はなんのために生きてきた?

 

 

 

 

「 わたしは、 いったい、 だれだ 」

 

 

 

 

蹲ることしかできなかった。

何か大切な事を忘れている気がして、

でも何をすればよかったのか、

 

 

 

 

何のためにここまで生きてきたのか、

 

 

 

 

「わからない」

 

 

 

 

「ああ」

 

 

 

 

「・・・死のう。」

 

 

 

 

目の前にあった、剣・・・なんでもいい、

 

 

 

温かそうな、優しそうな、

 

 

 

光り輝く刀身の剣に、

 

 

 

 

自分の身体に委ねた。

 

 

 

 

白銀の水面が、赤く染まっていく。

 

 

 

 

あぁ、寒い、熱い、

 

 

 

 

さびしい、な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・無意味に自刃した男の頭上に、かの狂い神は嘲笑をあげる。

 

「あーあ、なーに死んじゃってるの?」

「まだまだこれからっていうのに、オタノシミ。」

「まだ消えないでよ、さぁ667回目の物語の開幕だよ。」

 

 

 

嘲笑い貶しながら、動かなくなった土人形に、新たな命を与える。

 

 

 

「あの世界にティンダロスの猟犬が訪れたことで、」

「君の因果記憶に大きく及ぼした。」

「それは大きな発見だ。」

 

「第二に、君の築き上げた世界は不要となった。」

「遊ばせる時間は終わりだ。」

「・・・君には、"願わなかった"世界を生きてもらう。」

 

「君の全ての記憶を剥奪する。"彼"の存在も抹消。」

「全て、君の因果を消す。」

「君の信ずるメガエラの、"復讐の加護"ぐらいは遺してやろう。」

「・・・・・・。そうだなぁ、不愉快な黒トリガーも遺してやる。」

 

「さぁ、行っておいで。」

「君はこれから、まだ6人の転生者に出会わなくてはいけないのだから。」

「その6人は殺すも生かすも、騙すも、真の友とするもよし。君次第だ。」

 

「これは君が作り出した妄想。」

「妄虚が産んだこの世界に、君は他の人を巻き込んだ。」

「手を組んで勇者になるも、絶望して魔王になるも、」

「吾を殺しに狂うもよし。」

 

 

 

 

「さぁ、もう一度、『ゆくがよい』」

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは三門市。

2013年12月、空閉遊真が日本に訪れる「その日」。

 

 

 

 

9時頃に遊真が遅刻して、三門市立第三中学校へ転入してくる、

その1時間前。

 

 

 

 

界境防衛機関「ボーダー」からみて真南の市街地。

少し先の未来で「イルガーが爆撃する橋と市街地の地点」の上空。

 

 

 

 

三門市の、

 

 

 

 

市街地の上空に、「赤い流れ星」の一筋が訪れる。

 

 

 

 

朝、誰もがその存在を認めた「紅星」は、突如として上空から落ちてきた。

 

 

 

 

地上から残り1キロメートル、三門市の人々は、

それが「人」だと認めた途端、

誰もが驚きの声と、どよめきをあげた。

学校とてその驚きに、例外ではなかった。

 

 

 

 

「人」は、三門市、

 

 

 

 

一つの大橋の河の近くに、墜ちていく。

 

 

 

 

全てを忘れた、人は、三門市に喚ばれて。

 

 

 

 

「幾つものゲート(門)」の出現と、その警報が辺りを響かせる。

 

 

 

 

膨大な水量の轟音とともに。

 

 

 

 

「その男」は、赤かった。

 

 

 

 

10を超す多重ゲートが、20を数えるトリオン兵を次々と、はき出していく。

 

 

 

 

とめどめも無く、吐き出され続ける百の戦闘トリオン兵を前に、

 

 

 

 

「その男」は静観していた。

 

 

 

 

「その男」の名は、本目建悟。

 

 

 

 

語られないもう一つのワールドトリガーの主人公にして、忘却の物語。

 

 

 

 

別世界の住人が、いま、現れる。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第2話「別世界の来訪者」

こんばんは、
作者の夜種王でございます。

いよいよRE第1話の始まりでございます。

今回は「記憶喪失者」としてのスタンスで描かせていただきました。
また、彼がどうなっていくか…楽しみです。


「・・・・・・。」

 

 

 

 

わたしは何のために生まれたのだろうか。

 

 

 

 

あぁ、宇宙に浮かんでいたのか・・・身体は、トリオン体か。

 

 

 

 

左側だけ、前も後ろにも伸びた長髪が白くて、右側は黒髪の丸刈りで。

 

 

 

 

・・・忌々しい血鎖に繋がれた、

レッドワインのドレスシャツとトラウザーパンツに、

黒インナーと黒のネクタイ。・・・白のロングブーツ。右眼の黒の眼帯。

 

 

 

 

・・・少し、眠ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・なんだ、音・・・風音・・・?

 

 

 

 

・・・青い・・・海、・・・雲、・・・街・・・?

あぁ、墜ちているのか、わたしは・・・

 

 

 

 

もう、目の前か・・・仕方ない、あの河に着水しよう、

 

 

 

 

もう近い、3、2、1―

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

気がつくと、周りに「モールモッド」に囲まれていた。

 

「・・・モール・・・モッド?」

 

よく分からないが、攻撃してくる悪意ある存在なのは知ってる。

 

「・・・。」

 

 

なんとなくで、「今の体感速度」の感度を高めた。

・・・これで今が遅く感じる。

この橋の上にも、向こう岸のどちらにもたくさんの「寿命の時間」が見える。

・・・極端に短い人もいるけれど、ひとまずは大丈夫そうだ。

 

 

 

・・・わたしが狙いか。

 

 

 

「・・・懐かしい。ここは、どこだろう。ここで闘ったことが、ある・・・?」

 

 

 

 

物思いにふけると、最初のモールモッドが前に歩み出た。

・・・もう一体、もう一体と後に続くモールモッドたち。

 

その数は・・・100ぐらい?

 

 

 

「・・・。」

 

 

 

目を瞑る。不要な可視情報が多い、"7つの目"を最小限に絞る。

・・・薄目で辺りを見る。目蓋越しの視界でも、

今のわたしには「視えている。」

 

目の前のモールモッドが右前脚をあげて、

ブレードで袈裟切りにしようと仕掛けてくる。

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

紙一重で避けて、非ブレード範囲の脚を掴む。

体内の「血」を通じて鎖を、そのモールモッドの前脚に仕込ませた。

 

 

 

 

モールモッド「!」

 

 

 

 

植え付けられた血鎖は、モールモッドの体内を駆け巡り・・・

「血刃」へと変貌する。

 

モールモッドのトリオンが全て吸い取られた上に、橋の土台を避けるように、

四方八方へと「血刃鎖」が他モールモッドへ貫かんと飛び出していく。

 

紙くずでしかないモールモッドたちの装甲が次々へと貫かれていき、

偶然「方角と方角の間に」生き残ったモールモッド達が、

更に攻撃を仕掛けようとする。

 

 

 

 

「・・・剣よ。わたしに力を、勇気を。」

 

 

 

 

その声と共に、彼の右眼帯から、蒼き燐光がこぼれる。

水の上に浮かぶ彼の両手から、噴き出す鮮血。

鮮血から、3m強の焔状の血溝を持つフランベルジュのような、

 

過ぎた力が顕在した、長大剣が一対。

 

手首の枷から、おどろおどろしい色の血鎖。

貴族らしくも、虜囚を思わせる千切れた手枷は、何を意味するか。

 

 

 

モールモッドたち「!!」

一斉に3,4体が連携して頭、左脇、右手、両足、

狙おうと脚ブレードを順次に振るう。

 

「・・・、・・・、・・・、・・・」

予備動作も無く一歩で、それぞれのトリオン刃を必要最小限で避ける。

続く他の2体のモールモッドが、胴体を狙いに、

大かぶりに両前脚で振りかぶったところで、

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 

 

右回転して、3mにも及ぶ太さ1メートルの、両手の大剣で6体を薙ぐ。

カッターナイフで紙を切るが如く、水平に斬られては、

姿勢を保てず大音を立てる。

 

バッシャーンと遅れて水柱が立つ。・・・背後を狙ったモールモッドが一体、

分かっていたように建悟は、剣でブレードをいなす。片方の剣で穿つ。

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

貫通させたモールモッドのトリオンを取り込んだ所で、

内なるブラック・トリガーのトリオン供給が完全になった。

 

建悟はあまり余るそのトリオンを使い、残る十数のモールモッドの頭上に、

鎖で繋がれた短剣を「鋭角」の空間から呼び寄せて落とす。

 

 

 

 

「・・・手応えないな。もっと苦しかった記憶だったはず・・・」

 

 

 

 

寂しくとぼとぼと、水面を歩きながら、橋下の河岸に上がってトリオン戦闘体を解く。

・・・暗い青のワイシャツに黒のストレッチジーンズと、

革ベルト。黒系の靴。白眼帯。

ポッケには・・・何も入っていなかった。

 

・・・来ている服以外、何も持っていない。

 

 

 

 

「・・・わたしは、前は何をしていたのだろう。」

 

 

 

 

思い出せない。自分が何者だったのか、どこにいたのかすら。

ただ、この世界に「来たことがある記憶」と、

「戦いの記憶」は、何故かある。

 

 

 

 

それ以外が、何も思い出せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

建悟は思い出せないまま、壁にもたれかかる形で座る。

 

目の前に残した大量のトリオン兵の残骸に見向きもせず、

今の自分が何故ここにいるのか、生きているのか、何をしていたのか、

必死に考えていた。

 

考えないと、

 

 

自分の存在意義や、

 

 

存在理由が、

 

 

 

 

消えてしまいそうで。

 

 

 

 

「おい。」

 

 

 

 

不意に男の声が、頭の上から響いた。・・・見上げると、そこには・・・

 

 

 

 

――――――――――

「三輪隊現着した。」

 

俺と米屋は、南側市街地のイレギュラーゲートの観測地点に到着した。

そのゲート数が11。はっきり言って、異常だ。

 

奈良坂と古寺には、狙撃手にとって都合のいい位置に既についてもらっている。

たまたま近くにいた影浦隊の影浦と北添と絵馬、

鈴鳴第一の来馬と村上と別役にも、

 

このポイントで合流することになっている。

 

 

米屋「うっわ、なんだこの数。ゲートもおかしけりゃ、この数も異常だろ。」

三輪「・・・派手という所じゃないな、10、20・・・何体いるんだ?」

 

なんなんだ、このモールモッドの数は。

数もそうだが、周りの被害も全く無い。あまりに綺麗すぎる。

オペレーターから通信が入った。

 

「ゆうに100を超してるわ。・・・トリオン反応の数値もおかしい。」

「ボーダーのトリオン反応ではないし・・・黒トリガー?ちょっと待って。」

三輪「・・・言いたいことは分かった。」

米屋「おかしいぐらいバラバラだわ、・・・これ突いたのか?うっわー、えぐい。」

三輪「この状況・・・まさか、『ネイバー"近界民"』じゃないだろうな。」

 

・・・ふと気がついた。橋の下に誰かいる。

 

三輪「米屋、人がいたぞ。」

米屋「お?ほんとだ、こんな所で何やってんだろ。」

三輪「行くぞ。」

 

 

俺は、落ち込んだ様子に見える男に声を掛ける。

不釣り合いなこの状況に、あまりに不自然な男に。

問いただして、もしネイバーならば。・・・斬るだけだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第3話「外の世界の彷徨者」

「・・・おまえ、三輪か。それに、米屋・・・」

 

三輪「・・・なぜ俺たちの名を知ってる。」

三輪「お前は誰だ?」

  「・・・名は、忘れた。」

 

米屋「へぇ、じゃあ坊主の兄さん。」

  「ここで何をしていたんだ?」

 

  「・・・わたしか。記憶を、探してる」

三輪「記憶?」

 

  「あぁ、わたしの記憶だ。」

米屋「そっか、兄さんは目の前の事」

米屋 「そこで何があったか知ってる?」

 

  「・・・モールモッドのことか?」

米屋「そそ。これ、兄さんがやったのか?」

三輪「・・・。」

 

  「・・・・・・。そうだ、と答えれば?」

米屋「・・・へぇ。この数を?」

 

  「気がついたら、現れた。ただ斬っただけだ。」

三輪「・・・お前を連行する。ご同行願おうか。」

 

  「ああ、こちらこそお願いする。」

三輪「(コイツ、ネイバーにしては、抵抗の意どころか・・・)」

米屋「おっと、手間が省けて助かるぜ。」

 

  「"界境防衛機関"の開発室の、聴取室までか?」

三輪「!・・・さあな。」

米屋「・・・なんでそんなこと知ってるんだ?兄さん」

 

 

「なぜ、か?」

「・・・城戸司令に、世話になったからだ。」

 

 

三輪と米屋は、顔を見て考えを照らし合わせる。

城戸司令と関わりがある、と嘯く

この男の事は知らないからだ。

 

何らかの関わりがあったのかもしれないが、

ただの嘘で俺たちを欺こうとしている、

その可能性があり得るからだ。

 

 

三輪「・・・。(蓮、奴の情報、どうだ?)」

三輪隊の作戦室のオペレーターに、問いかける。

 

月見「(ダメね。顔情報と音声で、該当するものが無いわね。)」

米屋「(マジかよ、つーことは誰だ、この兄さん?)」

三輪「(出任せかもしれん。警戒は解くな。)」

  「(古寺、奈良坂、違和感を感じたら迷わず、撃て。)」

 

 

 

  「・・・私はブラック・トリガーの使い手だ。」

  「界境防衛機関のトリガー遣いではない」

「その判断は、正当だろう。」

三輪「・・・何を言っている?黒トリガーだと?」

米屋「へぇ。兄さん、随分詳しいんだね。」

 

 

  「詳しい、か。・・・そうだ。月見は元気にしているのか?」

  「奈良坂もどうだ?古寺は狙撃、ちゃんと上手くなったか?」

 

 

月見 「!?(なっ、私の名前を?)」

古寺 「!(えっ、なんで)」

奈良坂「・・・。(やけに詳しいな)」

"向こう側"でそれぞれ、共有聴覚による音声で驚く3人。

 

 

三輪「・・・なぜ、そのことも知っている?」

米屋「・・・(古寺だけ言われてるぞー)」

古寺「(う、うるさいです)」

 

 

「なぜ、なぜか・・・よく覚えていないが、」

「全て、失ったわけではない、」

 

 

「・・・・・・。」

5人は、その男の次の言葉に、息をのむ。

 

 

「わたしは、かつて・・・復讐を誓った。」

「きがつけば、宇宙を漂い、ここに、墜ちた。」

「・・・未来から、ここに迷い込んだ。・・・おそらく。」

 

 

三輪「おそらくとはどういうことだ?」

 

 

「・・・よく憶えていない。からだ、混乱で、まだ落ち着かない。」

 

 

米屋「・・・いわゆるタイムスリップってやつか?」

 

 

「そうかもな・・・それで、ハッキリとしないが・・・」

「知ってるのだと思う。・・・考える時間が欲しい。」

 

 

三輪「・・・・・・。」

米屋「・・・マジか。」

 

 

二人とも何も言えなくなったように、

向こう側の3人も思考が止まってしまった。

トリガーの音声機能で、5人でやりとりを行う。

 

 

米屋 「(なぁ、これどうするよ。)」

三輪 「(連行する事に変わらん。ネイバーでなくとも、味方とは限らん。)」

古寺 「(一度、ボーダーの中で話を聞くのはどうでしょうか?)」

奈良坂「(・・・。)」

月見 「(とにかく情報が欲しいわね・・・放置するわけにもいかない。)」

三輪 「(不穏な動きを見せたら、始末だ。異論は無いな?)」

三輪隊「(オーケー)」

 

 

 

 

三輪隊による監視下で、界境防衛機関の本部まで連行した。

途中、影浦隊と鈴鳴第一と合流したが、それぞれ解散してもらう。

 

やはりあの男は「おぉ、影浦か・・・辛く無いか?」などど、言っていた。

北添も絵馬も、来馬も村上も別役の名を知っていたが、

それぞれ困惑するだけだ。

 

だが、その誰にも労いや心配の声を掛けている。

 

この男、「ブラック・トリガー」を持っているとか言っていたな。

・・・何らかのSEか?なぜ名前に、「特定」の事を知っている?

それにこの男の右目、白眼帯をしている…目でも失ったのか。

 

 

 

 

とにかく、この男は何もアクションを起こさないまま、

開発室の特別聴取室に入った。

 

ここなら、ミラーガラスで城戸司令が来ても、

姿を見せずに話が聞ける。それに、ここには

「トリガーの活性化を妨害する」ギミックもある。

 

今は鬼怒田本部開発室長と、

チーフの寺島が「男」の情報を抜き出している。

俺たちもこの場に「ミラー越し」に同行させてもらっている。

 

 

寺島 「では、始めますよ。」

男  「・・・よろしく。」

 

鬼怒田「さっきも聞いたが、」

「自分が何者なのか分からんのだな?」

男  「ああ・・・分からない。」

 

鬼怒田「なぜ、モールモッドの事を知っておる?」

男  「・・・私が倒したからだ。」

「それの記憶も、戦い方も、思い出せた。」

 

鬼怒田「あのゲートとモールモッドは、貴様が起こしたものか?」

男  「違う。気がついたら、急に現れて、襲われた。」

 

鬼怒田「なら、貴様は気がつく前、どこにいた?」

男  「・・・宇宙にいた、もっと前は、」

「今より未来か、別の世界か・・・」

 

鬼怒田「確かに"上から落ちてきた"そうだな。」

   「だが未来に別の世界ぃ?何を言っているんだ。」

   「証拠はあるのか?証拠は。」

男  「・・・無い。だが、今とよく似た世界だった。」

 

鬼怒田「ふん、とてもだが信じられんな・・・」

   「だが、なぜわしの名だけでなく、」

「雷蔵の事まで知っている?」

寺島 「あ、気になります。」

男  「・・・昔、自分の専用の、」

「"ノーマル"トリガーを手がけてもらったからです。」

 

男  「自分のトリオン能力では出力が大きすぎて、専用のものを。」

   「寺島さんは、その頃の私のトリガーを」

   「鬼怒田開発室長には、戦闘体の研究を、それぞれ。」

 

寺島 「へえ、どんなものを僕は作っていたんだい?」

男  「・・・他者のトリオンを保存『させた』弾を扱う、シューター。」

   「カメレオンの設置型、浮遊板を足下に生成させるもの、」

   「テレポーターの座標指定型・・・など。」

鬼怒田「・・・保存させた弾だと?」

 

男  「本来、自身のトリオンによって射出させるトリオンを、」

   「自分以外のトリオンで『設定させた』弾薬を扱うものです。」

   「・・・今のC級隊員レベルでも、B級上位に食い込むほど、」

   「戦術的運用も、部隊数も、今より遙かに多かったです。」

 

鬼怒田「・・・他者のトリオンで扱うだと?どういう意味だ。」

   「いや、エネルギー変換をさせるなら出来なくはないが・・・待てよ」

寺島 「トリガーに頼らないトリオン出力器ならどうでしょう。」

   「簡易ナイフや簡易銃としてだったら、その応用でいけるかと。」

鬼怒田「そうだな、トリオン体でなくともそれだったら、扱えるが・・・」

 

男  「・・・ブラックトリガー、実験用仮想室で試しても?」

   「少なくとも、私はあなた方に敵意はありませんし、」

   「私もなぜ過去の世界にいるのか、よく分からないのです。」

   「・・・今の私の状態も、どうなっているのか。それすら分からず。」

 

鬼怒田「む?まぁ・・・よいか。」

   「わしはまだ、お前を信じたわけではないからな。」

 

 

 

会話が終わり、あの男が出てこようとする前に、三輪は一言告げる。

 

三輪 「鬼怒田開発室長。あの男と手合わせを願いたい。」

鬼怒田「ぬ、三輪か?ああ、いいぞ。」

米屋 「あ、俺からも頼むよ。ずっと気になって仕方ないぜ!」

鬼怒田「お前はもう少し、血気を抑えんか・・・」

 

 

 

 

こうして、男は開発部の案内で、「実験用仮想室」の仮想空間に案内される。

男にとって「イレギュラー」な三輪隊と、仮想戦闘を行う事だろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第4話「仮想戦闘」

ご無沙汰しております。

作者の無狼です。

多忙な業務と下準備、そして疲労などの心の疲れから、
執筆がどんどん遅れてしまい、申しわけありません。

今後も不定期な業務に追われ、執筆が遅れてしまいます。
それでも、ご愛読いただき、本当にありがとうございます。


話は変わりますが、時守 暦様の「狩りゲー世界転生論 異伝」
の第3話を描かせていただけました!
同作者の「狩りゲー世界転生論」をご観覧くださいませ!



「・・・・・・。」

 

 

ここは"見慣れた"仮想訓練場。その中でも開発部の仮想室は、

最大級のデータ容量と設定範囲の自由度を誇る。

 

 

「・・・よろしく願う、寺島さん」

 

 

無骨で何も無い仮想現実内で、エンジニアチーフの声が頭に響く。

 

 

 

寺島「はーい。んじゃ、起動そこでやってみて?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

静かに"思い起こす"。

私の黒トリガーは、「イメージ」「ビジョン」に近い。

生き物としての性質が強く、有機的な発想が必要だ。

 

 

「・・・(悠久より芽生え、生命活動を続ける者)」

「・・・(生命の連鎖に、進化と適応を続ける者)」

「・・・(やがて母なる海を泳ぎ、卵を胚の核とし)」

「・・・(地を這いずり、卵に殻を付け、肺で呼吸し)」

「・・・(光合成を行い、また芽生え、枯れては蘇り)」

「・・・(時に散り、腐敗させ、増殖しては、子実体を起こし)」

「・・・(陸を闊歩し、そして直立し、草を食み肉を食らう)」

「・・・。(やがて知恵を得るは、我ら、人の子ら)」

 

「星は巡り、海は響き、空は遠退いてゆく。」

「母なる大地に生まれ落ちし我ら、共に歩まん。」

 

 

 

寺島「うわ、なんだこれ・・・カンストぉ!?」

 

 

モニター越しでずっと見つめていた寺島が瞬きした瞬間、

目の前の男が何かつぶやくと、紅い悪魔に変化した。

左側だけ目と腰まで垂れる白の長髪で、

右側は黒の丸刈りに、黒の眼帯。

 

18世紀の貴族を彷彿とさせる白ロングブーツと、

黒のインナーと黒のネクタイ以外は・・・・・・

全て「紅系」のカラーに彩られた、格好だった。

 

どこか、強者の風格を漂わせる貴品さと、破壊的な色彩に・・・

思わず、悪魔を連想させてしまう、そんなデザインだった。

 

 

寺島「まずいまずい、オーバーヒートするって!」

 

 

だが、それ以上に寺島を驚かせたのは、「トリオンの出力数値」だ。

 

 

この男のトリオン能力を後で計測しようと考えていたが、

これは桁違いすぎる。これは、ボーダーの範疇を超えるレベルだ・・・

 

 

とっさに寺島は、「出力1/2%化」「処理能力を集中させる」

ことで、なんとかサーバーダウンを防ぐことができた。

 

 

鬼怒田「なんだ、何があった雷蔵?」

寺島 「鬼怒田開発室長、観てください、これ・・・」

鬼怒田「なんじゃ、このトリオンのバカ数値はぁ!?」

 

鬼怒田「雷蔵、このまま続けろ!人を集めてくるわい!」

寺島 「なっ、鬼怒田開発室長!ちょ、ええっ!?」

 

 

 

 

「・・・・・・。」

握る感触を確かめる。

変わらない感覚。痛覚。触覚。

光を失った右眼。全てを見渡す左目。

 

 

例え光を失おうとも、彼の障害にはならなかった。

建悟の左目には「違う世界」が、

同じく右眼には「映像情報」が見えている。

 

「千里眼」「暗視」「霊視」「過去視」「透視」「寿命視」「体感視」の7能力と、

膨大な並行世界を経た代償の「曲線時間と対になる鋭角時間への干渉能力」、

バグだらけの「ブラック・トリガー」と「壊れた記憶」。

 

この狂戦士の致命点は、邪神に魅入られた悪運と、哀れな時の悪戯だろう。

 

 

 

 

「・・・・・・Sever,Summon」

"トリオン戦闘体の『血』"を代償に、焔状の両手大剣を1本、召喚した。

仮想空間内でも、吸収していくトリオンが、

身体の中心にどんどん集まっているのがわかる。

 

手の中で集っていく熱が、力が、大剣の柄にこもっていく。

まずは力のまま、上からまっすぐと下に振るい落とす。

 

 

「・・・・・・!」

長さ3メートル、厚み1メートルになるこの両手大剣の心地も、変わらない。

振るう度に「ぶぉおん」と鈍く重い風切り音が辺りを響かせ、

振るわれた高々密度のトリオン大剣が仮想床を、幾つもヒビを穿つ。

 

 

「Summon;Unichain "Knife"」

1本の血鎖刃を、鋭角の異次元空間から、前方に向けて放つ。

適当な長さになったところで、ひっつかみ、鞭のように振るう。

 

縄よりも伝達しやすいこの鎖刃は、念じればどうやら、

血鎖を「最高硬度」の槍として扱うこともできるようだ。

試しに頭の中で【槍のイメージ】を作ると、手元から「血鑓」が作れた。

 

 

どうやら、ある一定の「単純な形状」の武器であれば作れそうだ。

「戦闘トリオン体自体、血で出来ている」ことから、形態も変えられる上、

「気化させた血霧」や「血塊の物体」も作ることができた。

これらは自身のトリオンとして吸収できることが、無意識的に分かる。

 

「・・・。はっ!」

 

 

両手大剣を床の上に刺し、血鑓を虚空に突いて払う。

これも悪くない。これを大剣に向けて投げれば、

どちらもカランと石膏が割れるような音を立てて崩れる。

どちらも硬度・威力は同じだからこそ、戦闘の選択幅がより広がりそうだ。

 

―――――

古寺 「うわ、なんなんですかこのトリオン体!?」

三輪 「見れば分かる。アレが黒トリガーだ。」

奈良坂「・・・だが、様子がおかしくないか?」

米屋 「んー、なんつーか暴力的?いかにも攻撃しますよーな。」

 

三輪 「・・・もしこいつがネイバーだったら、脅威になる。」

   「今のうちに対策を立てにいくぞ。」

米屋 「・・・お。槍か、ありゃ? お~、動きはまぁ・・・悪くねぇか。」

古寺 「またサシでなんて言わないでくださいよ?」

米屋 「わぁーってるって。」

 

奈良坂「・・・(いや、もしやこれは・・・まずいな、先手を打った方がいいか)」

―――――

 

 

「・・・・・・。」

 

 

寺島「ウォーミングアップは済んだかい?」

 

 

「あぁ、済んだ。」

 

 

寺島「おー、それはよかった。」

  「ついでにと言ったらあれだけど、試して欲しいことがあるんだ。」

  「ちょっと試してみたりしてくれる?」

 

 

「わかった。・・・。」

 

 

寺島「お、それじゃさっそく・・・」

 

 

 

 

目の前の殺風景な立体仮想空間から、なじみ深い「街」へと転換される。

 

「ここは・・・弓手町?」

 

 

寺島「お、分かる?ちょっとこの辺りは高低差が多くてね。」

寺島「そこで自由に動いてみてよ。もちろん、戦闘も用意してあるから。」

 

 

「・・・・・・。」

辺りを見渡す。

白く垂れた髪に隠れる左瞠で、「全ての遮蔽物を透かして見渡す。」

 

 

・・・さっそくバンダー、モールモッド、バムスターがいた。

黒眼帯の右眼窩に透視の映像を映し、左目は通常の光の目に戻す。

 

レッドワインのバトルドレスに身を包んだ彼の左目は充血して血涙が伝い。

からっぽの右眼窩には、黒眼帯ごしに水色の燐光が宿る。

 

 

 

 

「!」

 

高くそびえるビルにめがけて、「血刃鎖」を投げ打つ。

ピィンと張らせ、その引っ張った反動で蹴り上げ、身体を宙に浮かす。

 

鎖で移動しながら、召喚した血鑓でその3体のトリオン兵にめがけて、

天空から紅き槍を堕とす。3体ともレーダー反応する前に無力化されてしまった。

 

 

 

 

「・・・・・・。」

近くの住宅街の屋根に着地して一息つく。・・・今は何もいない。

 

 

 

 

寺島「おー、慣れてるね。」

 

「・・・それで、次は?」

 

寺島「お、んじゃ次はそうだなぁ・・・次は敵を探してみて。」

 

 

「敵?」

 

 

寺島「そそ。さっきのトリオン兵を見つけられたのなら、簡単でしょ?」

 

 

「・・・・・・(ん、見えた。)」

 

 

4人か。・・・おそらく、二人は三輪と米屋だろう。

もう二人は・・・姿を「見せなかった」のだろうが、

たぶん奈良坂と古寺だろう。4人全員がまとまって転送されたか。

 

だが、様子をみてやろう。今はどれほどの練度か。

4年ほど前の三輪と、2年ほど前の米屋の練度がいかほどか。

―――――

三輪 「作戦の通りだ。奈良坂、古寺、おまえ達は二人で行動しろ。」

 

奈良坂「了解した。」

古寺 「分かりました!」

 

二人はすぐに行動に移った。狙撃手として有利な位置にある・・・高ビルの上へ。

 

米屋 「・・・で、俺たちは古寺たちのやりやすい場所に動くってか。」

三輪 「ああ。一斉攻撃で奴を仕留めるぞ。」

 

米屋 「あいよ。・・・いつもの戦法でいくか?」

三輪 「それでいこう。」

―――――

 

 

ふむ、二人は・・・あぁ、やはり古寺と奈良坂か。

遠くを見据える目で視ている。・・・古寺はアイビスか、かなり攻めてきたな。

 

 

今の能力なら・・・鋭角時間から「遠隔攻撃」も移動も出来無くないが・・・

それではつまらない。ここから2、300mほど離れているが、縮地も野暮。

・・・よし、「歩いてやろう。」

 

 

―――――

奈良坂「こちら到着した。」

古寺 「古寺も同じくです。どうですか?」

 

トリオン体に備え付けられた標準機能等トリガーの通信に、送受信の音。

 

三輪 「分かった。そっちのポイントはどうだ?」

奈良坂「そのまま十字路の民家まで進んでください。」

古寺 「家屋を利用しながら、大通りまで誘導できるとありがたいです。」

米屋 「オッケー」

 

 

米屋 「・・・おい、アイツ、歩いてない?」

三輪 「いったい何を考えている?」

古寺 「・・・彼の眼帯ですが、わずかに光っている気がします。」

   「それに、左目から・・・血?何かいやな予感が・・・気をつけて。」

奈良坂「・・・。」

―――――

 

まぁ、迂回して迫ってきたか。位置が分かってる時点でハンデとはいえないが・・・

あえて「普通に」やるか。

 

両目のSE視覚情報とSE映像を無効化した。

 

目の前には、左目の視神経情報だけが入る。

 

 

 

米屋「よ!」

右手から不意打ちの"幻踊孤月"。もちろん、「普通なら柄を掴んで」威力を削ぐ。

・・・"知っていた通り"、穂先の刀身が「うねり、変形」する。

 

三輪「・・・!」

左手からは、三輪の拳銃。・・・「黒い光の光跡」から、レッドバレットだろう。

もちろん知っていたが、死角を狙っての攻撃だ。それも米屋が当たらない射線。

自然に行えるほど連携のとれたチームプレイに、「できる奴ならガードする。」

 

 

だが、私は敢えて受ける。・・・命中を重視してか、胴体に「鉛」が発生し、

米屋の変形槍が首を「抉る」。一発でトリオン伝達部位を仕留めた。

同じ頃、「高ビルの上から2つの斜光線」が輝いた。

一つは心臓を「貫き」、・・・遅れてもう一つは、頭を「吹き飛ばした」。

 

 

 

 

―かに思えた。目の前の男は、全くの無傷で、鉛が「体の中」に沈んでいき・・・

 

 

「・・・・・・。動きは悪くない、今の時代にしては、上々。」

 

 

三輪 「なに!?」

古寺 「えっ、アイビスが・・・利いていない!?」

奈良坂「・・・(やはりか。)」

 

米屋「うっそだろ、お前・・・」

 

 

 

「米屋はもう少し、もっと速く突けるように技を磨くことだな。」

米屋の槍柄を軽く押しのけて、鉛の生えていた腹をぽんぽんと。

首は亀裂すら生えず、胸も頭も、一切傷つかず。

 

 

米屋「へえ・・・。ますます愉しくなってきたじゃんか。」

三輪「・・・貴様、何をした?」

 

 

「何をしたって・・・あぁ、なるほど。」

「ここで気がついた事だが、他人のトリオンを吸収できるみたいでだな。」

 

 

三輪「トリオンを吸収できるだと?」

 

 

「ああ。相手が悪かっただけだな。・・・三輪は、相変わらず射撃上手いな。」

 

 

三輪「・・・。(トリオンを吸収できる・・・そんな反則があってたまるか。)」

 

 

 

 

「それじゃ、そろそろ本気でいってもいいかな?」

 

 

三輪 「ッ。」

米屋 「お?」

古寺 「本気・・・?まさか!」

奈良坂「・・・。(何をする気だ)」

 

 

共有通信で反応をそれぞれ示す4人の通信に、オペレーターの月見からの一報が。

オペレータールームのモニターに、古寺と奈良坂の居る高ビルの地点に・・・

『高高度トリオン反応』を示す警告音が現れる。

 

月見「古寺、奈良坂!気をつ―」

 

 

「相手が悪いだけじゃない。私は、何度もこの世界を繰り返している。」

 

 

 

 

古寺 「うわっ、なんだこ」

奈良坂「チッ、避けられな」

二人の通信が途切れたと同時に、ベイルアウトを告げる曲線光が立ち上る。

 

 

 

 

三輪 「古寺、奈良坂!・・・なっ!」

三輪が二人のいた場所を見ると・・・・・・「紅く細長いもの」が埋め尽くしている。

 

そのうちの一本が、彼の手元まで伸びてきた。・・・血色の鎖に、ナイフ状?

 

 

米屋「いつみても目に悪い色だな、そりゃ。」

 

 

「そうだな。だが、これが私の能力だ。後でタネを明かそう。」

高ビルまで約300mから伸びてきた血鎖刃を・・・より細く、よりしなやかに。

 

剣「ウルミ」を真似た、複数本の薄刃の血薄刃を手元で、作り替える。

 

 

三輪「!?」

米屋「はぁ!?」

形状が変わったと思った瞬間には、もう目の前に薄刃が迫っていた。

二人とも、シールドや武器でガードするも意味が無く、スライスされていく。

 

 

スライスされた二人の目には、血涙を流す赤い左目と、眼帯越しに燐光を宿す左目。

そして、彼の周囲には禍々しい・・・・・・違う、別のオーラのような何かが見えただろう。

 

 

遅れて、男はこの場を後にする。

―――――

「・・・寺島、ありがとう。」

 

寺島 「どーも。にしてもどうなってるんだ、あれ?」

   「あれも黒トリガーの性質といえばそうなんだろうけど・・・」

鬼怒田「まったく黒トリガー様々だ、おかげで忙しいわい!」

 

米屋「それそれ。あと『世界を繰り返してる』って、どういう意味だ?」

三輪「俺も気になっていた。・・・どういう意味なんだ。」

 

 

 

「あー、そのことか。」

 

 

 

 

「初めも言ったが、私は何度もこの世界を繰り返して生きてきてる。」

 

 

 

「今はあまりよく憶えていないが・・・先のことや、知ってる事があった。」

 

 

 

「ただ、それだけの話だよ。」

 

――――――――――

 

一通りの検査や「三輪隊との仮想戦闘」を終えて、種明かしも終えた。

 

寺島のおごりでカツカレーをいただいて、お昼を過ぎたころ。

戸籍も身分証も、名前すら無い彼をどうするか、上の会議が終わるまで待つ事になった。

 

今は誰も使っていない本部生活区域の個人部屋で、待たされている。

三輪隊は別件で動くことになり、別れることになった。

 

 

ベットと簡単な机椅子以外はまだ何もおかれていない、

無個性な部屋の中で、今は完全に一人だ。とりあえず、待つしかないだろう。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

前の世界。確か、灰色の焼け野原にした記憶が、ある。

そこで自分が何をしたのか、よく憶えてはいない。

 

・・・黒トリガー。

本来であれば、「他人が遺した特別なトリガー」。

それをどういうわけか、「心臓に宿している」事が分かる。

もちろん検査してもらったところ、心臓に高濃度トリオン結晶体があることが、

判明した。トリオンが結晶化しただけのものではなく、トリオン体換装時に、

強いトリオン反応とその動きが判明したことも分かっている。

 

 

他にも、この世界で過ごした「ような」記憶も残っている。

だからか、誰かの顔を見たり名前を聞けば、ふっと記憶が甦ってくる。

 

 

 

「・・・・・・でも、誰かを忘れている気がする。」

「忘れてはいけない、大事な事を、誰かを、」

「なぜ私は同じ世界を生きる?なぜ、生きている?」

 

 

 

分からない。だから、私は生きてみようと、また動いている。

 

 

 

(こんこん)、(ちょっといいかい?)

 

 

 

ドアをノックする音だ。聞き覚えのある声、これは・・・

 

 

 

迅「やぁ。」

迅だ。未来を視る事ができるサイドエフェクトを持つ者。

過去を視る私とは対になる、希望と光の道を歩める男だ。

 

 

迅「君が例の名無しさんかな?」

 

「あぁ。名無しとは私の事だろう。」

 

迅「よろしく。俺は迅」 「悠一だろ。」

 

迅「相変わらずだね。前の記憶かな?」

 

「まぁ、そうだろうな。・・・未来を変えにきたか?」

 

 

迅「はは、そんなことまで分かっちゃうの?」

 「これは手厳しいなー。」

 

 

「固くならなくていい。・・・前の世界では世話になった。」

 

 

迅「前の世界ね・・・何があったんだい?」

 

 

「・・・・・・。」

答えられない。憶えていないのだから、語るものがない。

 

 

思い出す為の思考の海に、私はまた、内なる心の中に沈みこんだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第5話「ジョン・タイター Vol.1」

大変お待たせしました!


とはいえ、大変限られた時間の中での執筆だったため、
大幅に投稿が遅れてしまい申し訳ありません!


ゴールデンウィークになれば…なれば!(涙目


 

 

 

 

「前の世界ね・・・何があったんだい?」

 

 

そう問いかける迅。対して私は、記憶が無い。

 

 

いいや、記憶が無いのは確かにそうだが、全てではない。

語るすべが無いと言うべきか、「語れない」内容なのだ。

 

 

一度、世界を滅ぼした記憶。人を殺めた心地よい気持ち、

『世界を作り直した』記憶。大地を壊した懺悔の気持ち、

誰かを殺す事を決めた記憶。決して忘れられない。

 

 

「・・・・・・。」

 

 

迅がどれだけ知っているかは、私にも分からない。

ただ私が知っていることは、彼は「過去を知らない」。

 

 

つまり、今から未来の私が引き起こす行動は知っていても、

「過去に何があったのか」その原因や理由を、迅は知らない。

迂闊に私が『過去』を語れば、ショックを与える事も容易に考えつく。

 

 

「すまない、今はまだ、語ることができない。」

「そっか。・・・。」

 

 

迅はしばし沈黙になる。

 

 

「なぁ、迅。」

「ん?」

 

 

「お前は、この世界に『可能性』があることを唯一、知っている。」

「・・・あぁ、そうだね。」

 

 

「俺は、この世界で『何があったか』を知れる。原因があって、結果がある。」

「・・・因果の話かい?」

 

 

「いや、違う。お前の『未来』と俺の『過去』を識るサイドエフェクトのことだ。」

「・・・。」

 

 

迅との会話にしばし、沈黙。

 

 

名もなき男(自身の名すら忘れた)が、ひと段落ついたところで、

【6部屋も7部屋も先にある自動販売機】を見つめ…

 

 

お得意の透視と【鋭空間干渉】で中身を呼び寄せる。

手元の冷たいブラックと、温かいカフェオレの缶。

 

 

 

 

「…一服でもするか?」

「どこから、いや…いただくよ。」

 

 

初めは「紅き白髪の悪魔」と見ていた彼も、

話して見えた先の未来はどれも明るい。

だけど、「彼自身」は何故か、

 

 

未来の映像に映らない。

 

 

"未来の"米屋や、那須も、「彼の名前」を呼ぶが、

その先の視線に誰もいない。

会話も"彼の会話"がなくて、誰もが独り言のよう。

 

 

なのに、「その場に居る」かのように肩を叩く米屋も、

笑顔で楽しそうに話す那須の姿の隣も、

 

 

誰も、いない。

 

 

「…あぁ、"未来にオレがいないんだろう?"」

 

 

「!?」

 

 

迅は図星を突かれ、エリートらしくない表情をする。

 

 

「わかってる。お前は『未来に生きる』。」

「私は『過去に囚われている』。」

「そう、亡霊。オレは死にすぎた。」

 

 

どういう意味だ? と問いかける迅の言葉に、

 

 

「そのまんまだよ。存在が消えたか、それだ。」

「今は、"オレにとっての今か? 過去か? 未来か?」

「もう時間の感覚すら、あまりにも滅茶苦茶だよ。」

 

 

語る言葉を失った迅に、微笑みを投げかけて、

 

 

「だから、迅。お前は未来に生きろ。」

「オレの知る過去が"未来かもしれない"が、」

「その過去は"お前の未来"じゃない。」

 

 

「……」

 

 

「ま、それだけだ。」

「昔の亡霊の独り言だ、常に過去はついて回る。」

 

 

「今のお前は、『未来』が見えるから、今も元気に向かっていける。」

 

 

「俺に、なるな。お前は前を歩き続けろ。」

「……」

 

 

 

 

不意に、迅の視線がふと動く。

おそらく通信でもきたのだろう。

 

 

「・・・会議の結果でも出たか?」

「ああ、そんなところだね。こっちに忍田本部長が来る。」

 

 

意外だ。

たった一人の人間とはいえ、ブラックトリガー保持者であれば、

国を揺るがすほどの事態。重要だからこそ、上位者の集まりの場まで、

その場所まで当の本人が召喚されて向かうという話ならおかしくはないが・・・

 

 

ひとまず、ブラックでも飲もう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第6話「ジョン・タイター Vol.2」 (新)

今後、「何らかの理由で作風、展開の変更」
をさせていただく場合、(新)と記載させていただきます。


…ゆっくりのびのびと書ける時間が欲しい!
もう明日から仕事じゃないか! 悔しい!()


(正式なデータと、そのまとめ、記憶などの設定集も、
後日、再度編集させていただきます)


 

そのあと、本当に忍田本部長がやってきた。

長々と根掘り葉掘り聞かれ、4年前のそれこそ、

「当事者でないとわかり得ない、旧ボーダー時代」

の記憶まで、過去から未来のことまで話した。

 

 

通信越しに「試している」ことは分かっていたが、

林藤支部長、鬼怒田開発室長、根付対策室長、

城戸司令。・・・みな、痺れを切らして、通信越しに聞いてきた。

 

 

旧ボーダー時代に「かつていたメンツや、死んでいった人、辞めた人」、

4年前当時からあった「風刃」を巡る話や、「風刃が最上さん」なこと、

そして未来の話で「空閉有吾の息子」が現れることを話した。

 

 

みな、三者三様の反応を示した。

目の前にいる迅と忍田本部長は真剣な眼差しでこちらを見ているし、

「旧き二人の名」に反応を示した城戸司令と林藤支部長は、驚くばかりだし、

鬼怒田開発室長と、根付対策室長は半信半疑でこちらの話を聞いている。

 

 

だが、これらも、ここで得られる会話も「聞いたことがある」ばかりだ。

似たフレーズ、同じ言葉、表情、内容・・・場面。

みんな、「見た憶えも聞いた事も無いのに、分かっている。」

そう、デジャブ。既視感。既に知っている事象、場面、そして「記憶」。

 

 

 

 

再認識する私の前では、ただただ、「記憶の復旧」でしかなかった。

思い出した―――。

 

 

 

 

忍田「・・・・・・うん?」

迅 「・・・(ん、なんだ、このいやな予感は?)」

 

 

 

一度、名すら忘れた男は、少しづつ思い出していく。

不完全な記憶から導き出された、「過去の記憶」。

「何故、前の世界が"滅びたのか"」。

 

 

「・・・私は、どうしたらよかったのだろう。」

忍田「・・・何の話だ?」

迅 「・・・・・・」

 

 

「・・・いや、忘れてくれ、時が来たらいずれ語ろう・・・」

忍田「・・・?」

迅 「・・・ああ、分かった。」

 

 

 

 

一人になりたいと、私は皆に告げた。

気持ちの整理がついた後に、決定した事を通知してくれるそうだ。

 

 

・・・だけど、「知っている事とは『違う展開』になっている。」

・・・・・・一人、独り、考える。

 

 

 

 

 

私は、世界を滅ぼした悪魔。

かつて、暴走して、大切な人をこの手で殺めた。

 

 

前の世界では仕方なかったのだろう。だが、

あの世界では、哀しいことばかりが、起こりすぎた。

 

 

繰り返し、繰り返し、悲劇の中で生き続けて、

心が壊れた先に、果てしない輪廻転生が続いて、

ついにたがが外れたのが、「前の世界」。

 

 

壊してしまった代償からなのだろうか。

確かにいたはずのあの人の、あの男や、あの友人や、

あの方も・・・・・・朧気にしか、思い出せない。

 

 

大切な人たちの顔が、浮かんでこない。

名前が、思い出せない。

 

 

でも、たしかにいたはずなんだ。

その、痕跡どころか・・・存在が無かったかのように・・・・・・

 

 

これは償いなのだろうか。

これは罪なのだろうか。

これは咎なのだろうか。

 

 

誰も、私を、俺を、知っている人が、いない。

自分だけがこの先を知っている、繰り返したはずの世界。

一体、どうなるのだろうか。

 

 

自分だけが取り残された、「終わりなき世界」。

新たな変化が生まれたとはいえ、望まない変化。

 

 

この先がどうなるか、私にはわからない。

今まで通りのはずなら、「信頼され、城戸司令直属の隊員として動き回る」。

 

 

だけど、いつも傍にいてくれた「仲間達」がいない。

いつも寄り添ってくれた「理解してくれる人たち」がいない。

初めから、「誰も自分の事を知らない」。

 

 

なのに、自分は「その先を知っている」記憶が出てくる。

別の世界でこれまで経てきた潜在記憶が、徐々に戻ってきてくる。

 

 

「・・・・・・」

 

 

ベットの上で左手を掲げて見つめる。

・・・見えない右目。視え過ぎる左目。

"生体"トリオン戦闘体でない時は、五分の丸刈り頭。

 

 

「・・・・・・全て、自分でやらないと、いけなくなったか・・・・・・」

 

 

すぐに酷い眠気を覚えはじめた。・・・理由は知っている。

左目のサイドエフェクトが、体に負荷を掛けている。

 

 

膨大に膨れあがったトリオンは、トリオン器官の限界を無視して、

心臓部にある"黒トリガーのトリオン結晶体"が供給し続ける。

それを少しでも減らして"決壊しないようにする"のが、私の目の結果だ。

 

 

だが、ずっとダムの水が流れれば、水壁が痛むようなものだ。

私の体も、休ませないといけない。

 

 

そのための一つに、「抑える為の輸液剤」とそのカプセル錠を用いたが、

もうそれに頼ることができない。

 

 

・・・もう一つは、かつて試したことのある、トリオン抑制機構。

"かなり前"だからどのぐらい前の世界の時か分からないが、

結晶体か脳か、体外に装置を取り付けることで、軽減していた気がする。

 

 

「・・・みんな、どこへ行ってしまったのだろう・・・」

 

 

記憶が、薄れつつある。

休眠の時だ。

 

 

次はいつ、目覚めるのだろうか。

 

 

遊真はいつごろやってくるのか。

三雲はいつ、遊真を見つけるのか。

千佳がいつ、決意を固めるのか。

 

 

「・・・確認、して、いなかっ、・・・な・・・」

 

 

今は、一体いつなのだろう。

何年、何月、何日なのだ。

 

 

知らぬまま、次に目覚める時まで、眠りにつく。




(また"同じ展開"の自己否定パターンですが、
恐らく彼(建悟)は、否定し続けることで、世界を認識していくことなのでしょう。)

(次回は2,3週間後。…また違う展開が描けると思うと、楽しみですね。ブレッブレで申し訳ありません!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新1st:RE 「設定集」

(今後、これをベースに描かせていただきたく、存じ上げます。)


 

【KENGO HONMOKU】

(RE:第7話、2013年12月時点)

 

氏名  :[本目建悟]

Position:[オールラウンダー](アタッカー)

年齢  :[23歳?(転生前:23歳)]

身長  :[155cm ]      (160cm)

星座  :[ねこ座]

誕生日 :[1990年5月14日]

血液型 :[A型/男性]

職業  :[???]       (時の彷徨い人)

LIKE  :[銃 猟師 写真 喫茶 お茶漬け 石切 今の時間]

秘密の花言葉:[7色のポピー(忘却)](月桂樹の花)

 

[]=通常時、()=黒トリオン時

ーーーーーーーーーー

[トリオン /85](100)

[攻撃   /16](XXX/異次元クラス)

[防御・援護/9]

[機動   /20](XX/鋭空間移動)

[技術   /10](XX/異常知覚)

[射程   /10](XX/鋭角時間干渉)

[指導   /3]

[特殊戦術 /10](XX/未知数)

 

[Total163/総合能力:SSS級](脅威度:XXXクラス)

ーーーーーーーーーー

【NORMAL TRIGGER】

main/[-- -- -- --]

sub /[-- -- -- --]

 

【BLACK TRIGGER】

・ブレード系 (焔状双長大剣"Sever")

・クサリ系 (血鎖"Unichain"+血刃)

・ヤリ系 (血鑓)

・構築系 (血壁"Regeneration")

ーーーーーーーーーー

・【服装】

 

黒髪だが五分の丸刈りになっている。

暗い青ワイシャツ、黒ストレッチジーンズ、

革ベルト、黒系の靴。右目に白眼帯。

ーーーーーーーーーー

・【服装(黒トリオン時)】

「紅き流れ星」の悪魔、「生体的」なグロテスク。

深紅が主体のカラー・イメージ。18世紀の貴族風。

右眼の黒眼帯。(行使時、眼帯越しに蒼き燐光を放つ)

 

左には前後ろに伸びた白髪、右側は黒髪の丸刈り。 

手首と足首に、忌々しさを感じさせる血鎖と紅枷。

レッドワインのドレスシャツ、トラウザーパンツ、

黒インナーと黒のネクタイ。白のロングブーツ。

 

 

【ブラックトリガーについて】

建悟の心臓部と癒着している。

「高高濃度のトリオン結晶」となり、

莫大なトリオン保有量と「供給」を提供している。

 

「生物的要素」が強く、他者のトリオンを吸収でき、

「肉」レベルの超高密度なトリオン体を構築する。

血に関する戦術や性質を持ち、「刃」と「鎖」が主。

 

他者の「トリオン・トリオン体」には不可能だが、

「自身のトリオン体を修復でき、」

「血液をトリオンに変換、その逆も可能。」

「生体化」する為、「純トリオン体ではなくなり」、

「生物の感覚が強まり、痛覚がダイレクトに伝わる」

 

常に大気・他者のトリオンを無尽蔵に吸収し続けるため、

「呼吸」の結果として「異常現象」を引き起こす。

 

 

現在はただの黒トリガー。

ボーダーにおいては「天羽以上の禁忌」と指定された。

ーーーーーーーーーー

【戦術】

・Unknown

 

【SE】

・デジャヴ(前世の記憶)

・トリオン適合体質者

・視認強化(7つ)

[千里眼 暗視 霊視 過去視 透視 寿命視 体感速度制御]

 

 

【鋭角時空間干渉能力】(CoCの特殊能力)

[ティンダロスの猟犬の"鋭角時間"の恩恵を受ける]

[=デジタル的な高速移動(出現⇆消滅)、異空間転送]

 

[代償:世界での「存在の喪失」、記憶混濁]

(=同じ世界に居続ける事が困難になる)

---

「記憶侵食率:10%」

 

・自身に関する記憶(10%)

・関わりのあった人との記憶(10%)

・「ワールドトリガー」に関する記憶(10%)

・戦いの記憶(80%)

 

・死ノ記憶(1%)

---

「原作との相違点」

・ストーリー展開、原作設定に「準拠」。

=当方の作品設定は「殆どリセット」。

 

・主人公はオリジナルで、「記憶喪失状態」。

=これまでの「戦闘経験」は"殆ど"覚えている。

=「開示記憶」で徐々に思いだしている状態。

 

・2013年のワールドトリガーを「数えきれないほど、

タイムリープ、転生」を繰り返してきた。

=存在意義が揺らぎ、記憶喪失は「存在証明」

のタイムパラドックスにより、混濁している。

(全転生先に存在したが、全て存在消滅した結果の状態)

 

・強くてニューゲーム状態。記憶も逐次開示。

=「現実の読者寄り」、しかし"彼"は「忘れている」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第7話「ジョン・タイター Vol.3」

ーーーーーーーーーー

 

夢の中で繰り返される、あの日の悲劇。

門「ゲート」が初めて三門市で開いた、

あの忌まわしき漆黒の電状門。

 

あの日、無力に、無残にかき回された、

数々の「無様な、非力な」自分の姿。

幾つも積まれ築かれた、死屍累々の山。

 

その頂点に立つは、今の自分。

有象無象を含めた、全ての死が、

全て、今の自分に集束されている。

 

死は「記憶の忘却」をもたらした。

それは、心の生存本能。一体、どれだけ、

この死の山を潜れば・・・記憶が辿れるか。

 

氷山の一角に聳えるように、今の自分には、

死の全ての記憶を思い出すのが怖い、恐ろしい。

潜在的恐怖が、顕在的恐怖が、現実的恐怖が襲う。

 

全て、痛みが、傷みが、悼みが、いたみが、

全て襲いかかってきそうで、思い出しそうで、

拒む。

 

 

・・・まだ、今の私では、この死の記憶を辿れそうにない。

だって、あの日の記憶を見た自分はXXX、XXXX、XXXXX。

それでXXXXXX、俺はXXXXXXX、XXXXXXXXXXXXXXXXXXX。

 

 

――――――――――

 

「・・・・・・はっ!?」

俺は寝てしまったようだ。

確か、まだ昼のはず・・・夕方か?

 

 

「・・・・・・(3日、・・・ダメだ、思い出せない)」

 

 

知っている人なら「知っている」、

部屋のトリオンモニター表示用のコンソールを起動させ、

トリガーで行う物を「ハッキング」して、表示させた。

 

 

「・・・・・・、ダメか。今はいつだ・・・?」

 

[2013年 12月 3日 火曜日]

 

 

思い出した「自分の名前」とキーワードを頼りに、

自身のアカウントや名前、言葉を検索に掛けても、

結果は何一つも、何も引っかからなかった。

 

 

めぼしい情報は手に入れたが、"前の世界"と大差無い。

ただ、自分の他にも消えたはずの「誰か」がいたが、

言葉にできない。・・・調べようもなく、諦めた。

 

 

「・・・本目建悟は"死んだ"、か。」

 

 

この世界に認識されなくなったのか、

存在していない事になったのだろうか、

いずれにしても、この名前は「死んだ」。

 

知っている「前の世界」とは違う流れ。

・・・徐々に思い出すも、分からないことが分からない。

・・・・・・新たに、名乗ろう。

 

 

「【空】(うろ)、と。」

 

 

 

ヴゥゥゥゥゥウウウ!

 

 

不意にけたたましく鳴り響く、

「例の」近界民が発生する警報音。

聞き慣れたものの、ネイバーか・・・・・・

 

[ゲート発生、ゲート発生]

[座標誘導、誤差1.15]

[地点、界境防衛機関周辺、直ちに向かってください]

 

 

 

 

「・・・はぁ。まぁ・・・、行ってみるか。」

頭の中で「時よ切り裂け、空間を繋げ」と脳波で念じる。

 

すると、いつも通り「違える鋭時空の門」が開いた。

地点、ボーダー本部の上側、南側方面。

頭の中でイメージして、くぐるだけ。

「鈍角の、連続する丸い時間」に生きるこの世界には、

「鋭角の、1か0に明滅する姿」に、見えただろう。

 

 

こんこんとノックする音と同時に、音も無く消える。

 

月見「えっと、入るわよ?」

  「大丈夫かしら、ずっと寝て・・・あれ。」

  「・・・まさか。報告しなければ・・・」

 

 

 

 

2013年、12月の3日。

おそらく17から20時頃の日没直後かその辺り。

眼下に広がるは、また「門(ゲート)」。

 

メートル距離にして200から300辺り。

数にして2つ、現在地点は「南側方面」、

背後が北方面、左手が東、右手が西だ。

 

 

前方、1時の方向と11時の方向に確認。

・・・私は、「紅き悪魔の姿になる。」

・・・体のコンディションも良好。

体内の血も、トリオン生体血液も異常なく。

 

 

一つ、試してみよう。自分の能力はどれぐらい、

柔軟性があるか・・・調べねば。ビジョンを思い起こす。

「過去視」から一つの武器デザインを探り出す。

・・・「弓型の血液武器」を見つけた。

 

 

「我が目は真実なり、我が目は虚構なり」

「そは、映すものはなんなりや?」

「出でよ、紅月。池月を血で染めよ!」

「Summon;蝕血"Archer"」

 

 

人の筋肉細胞で構成された弓に、

常に滴り落ちる血糸の弓弦。

白き金属・・・否、骨に肉片が付き、うねり蠢く。

矢先は・・・白く、白銀のように輝き、鋭い。

 

 

・・・ゲートから、3,4体のバムスター。

もう片方から、6体のモールモッド。

私のやることは変わらない。排除。

 

 

「任務続行、排除。」

「世界が変わっても・・・やることは、同じだ。」

 

 

キリキリと引き絞られていき、

血糸が熱を帯びて凝固する。

絞れば絞るほど強くなるはずの張力は、

100cmほどの骨矢の右手に一切強度を及ぼさない。

 

 

弓自体は形を変えず、番えている血弦だけが引き絞られる。

腕の長さの限界まで引き絞った弦は・・・その勢いだけで、

この世界のノーマルトリガーの相手の首や腕を刎ねるだろう。

 

 

「・・・!」

 

ゲートが閉まるか、消えたかのどちらか一瞬。

直線に並んだモールモッドを2体「穿った」。

頭を穿たれたトリオン兵は一撃で崩れ落ち、

背後にいた敵は致命傷を免れたようだ。

 

・・・3,4体の背後のモールモッドは、

動けなくなった亡骸と仲間を踏み台にしようと登りだす。

 

 

「・・・・・・」

 

 

空がにやり、と笑みを浮かべると・・・

動けないモールモッドの腹部辺りから、

「赤黒い"ミミズ"が四方八方に飛び散る。」

 

ビチャッと嫌な飛沫音を立てながら、高速で、

空を覆い尽くすほど蠢く数で飛んでいき、

大気に触れてピシュゥゥゥと蒸発していった。

 

 

・・・・・・そこに残っていたのは、

ただ・・・クレーターと、発火したのか煙をプスプスと、

白い煙と小さな炎を立てている半壊した家屋だけだった・・・。

 

 

「・・・」(再び、左手から蠢く骨矢を作り出す)

迅「後は任せてよ。・・・その姿、あまり使わない方がいいよ。」

 

 

後ろから迅の声が聞こえた。・・・フンッ、と振るう音。

風切りと共に、風刃で残る4体のモールモッドを次々と仕留めた。

 

 

空「・・・・・・手間が省けた。"向こうは片付いたか?"」

迅「うん?あぁ、お得意のサイコメトリかな?」

空「・・・いや。」

 

(チチチチ)

迅「・・・はいはい、もしもし?・・・こっちは終わりました。」

 「・・・ほう。この実力派エリートをお呼びとは。」

 「分かりました。またのちほど。」

 

空「・・・・・・」

迅「・・・、『前の世界』の記憶かな。」

 

空「ああ。記憶通りなら、"空閉"と"三雲"がやってくる。」

 「迅はその会議に"召喚される"、・・・未来は違うか?」

 

迅「・・・その通りだね。記憶を取り戻したのかな。」

 

空「ああ、少しだけな。・・・全てじゃない。」

 

迅「そうか、・・・会議室に来るか?」

 「面々と顔合わせした方がいいと思うが」

 

空「・・・いや、"私の事は見えない"はずだ。」

 「不確定要素は無いに超した方がいい、そうだろう?」

 

迅「・・・はは! 君、面白い事を言うね!」

 「ああ、確かにこの"未来"は大切なんだ。」

 「申し訳ない。君のことは良くしたいとは思っているんだけど・・・」

 

空「・・・いいさ。あと、空(うろ)と呼んでくれ。」

 「そう名乗る事に決めた。」

 

迅「ウロか。分かった、・・・!、そうだな。」

 「空さん、君の未来が少しだけど見えた、」

 

 

迅はごくり、とつばを飲みこんで、間をおいてから、

 

 

迅「空さん。君はこれから・・・」

 「"ノーマルトリガー"を使った方が、君の為になる。」

 

 

空「・・・このまま従わなかったら?」

 

 

迅「・・・・・・。空さん、紛糾されて、絶望する未来・・・かな、はは・・・」

 

こういう時の迅の反応は知っている。

不確定な未来。不都合な未来。言えない未来。

「言うことができない未来の内容」の反応。

 

迅は必ず、「戸惑い」を見せる。

だが察せられないように、オブラートに、

内容を曖昧にして「未来」という言葉を使う。

 

・・・つまり、迅ですら言うのを躊躇う内容、ということか。

 

 

空「・・・・・・。」

 

迅「と、とにかく、使わない方がいいよ。」

 

空「・・・分かった。"本来の"隊員のトリガーでだな。」

 「懐かしいな・・・色々、馴染むといいんだが・・・」

 

 

迅は意志を確認してようやくホッとしたのか、

だんだん落ち着いた口調に戻ってきた。

ちょうどその頃、向こうで起きていた別の戦闘や、

「イルガー」が撃破されたのは、また別のお話である。

 

 

自分はトリオン体のまま飛び降り、トリオンを解いてから、

生身で「本部の入り口前」まで歩いて向かった。

迅は足早にトリオン戦闘体で向かい、先に行った。

 

 

・・・こっぴどく怒られるだろうが、

「被害が出る」よりはマシだ。

それに、ネイバーを撃破した記録もこれで残せた。

「敵では無い証明」も果たせたし、まぁ・・・力も示せただろう。

 

 

このまま本部の扉をくぐり、"分かっていたかのように"

受付の受付嬢に挨拶して、廊下をてくてくと歩いていく。

「割り当てられた生活居住区」の部屋まで、戻ることにした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第8話「繰り返される『場面』→集束的観測地点←絶対的未来とは?」

誤記失礼しました、
下記のこちらではなく、
Main:[アイビス シールド バッグワーム カメレオン  ]
Sub :[アイビス エスクード レイガスト  グラスホッパー]

こちらが正記となります。
Main:[アイビス エスクード レイガスト  グラスホッパー]
Sub :[アイビス改 シールド バッグワーム カメレオン  ]


また若干の服装の変更を行いました。


こうして、何事も無く「生活居住区」・・・

「常駐隊員用」、「職員等用」「客人用」と分けられている。

1階に隊員と通勤の職員、2階に当番隊員や住み込み、

3階は専ら「スポンサー」や「市議会委員、市長」等のお偉い人向けだ。

 

 

私は2階を割り当てられている為、階段を上がり、そのフロアに戻ってきた。

今頃、迅は「暗躍」のための準備や言葉を考えているところだろう。

・・・と思ったら、Lサイズのコーラを片手に待つ、寺島が部屋の前で待っていた。

 

 

寺島「・・・や、戻ってきたね。」

空 「寺島さん。」

寺島「見させてもらったよ、メテオラ10発分ぐらいの威力じゃないか。」

空 「・・・・・・」

 

 

ついクセで、「過去」を見る。

・・・なるほど、『黒トリガーの使用を禁ずる』、か。

そのかわり「ノーマルトリガー」を使え、ふむ・・・。

 

 

寺島「あー、で、そのことでなんだけど・・・」

空 「禁ずる代わりに、ノーマルを使え、か。チーフ」

 

寺島「・・・・・・え? ああ、そうなんだよ、うん。」

空 「承知した。・・・だが、"余所者"をそう易々と信用していいのか?」

 

寺島「ん、自分は別に疑う余地無いし、協力的ならそれでいい。」

  「・・・それに城戸司令たちが決めたことだしね。」

空 「そうか。・・・チーフ、"トリガー開発"を相談したい。」

 

寺島の目の色が変わる。

 

 

寺島「・・・今、開発って言った?」

空 「ああ。"旧式トリガーである、デバイス"の事についてだ。」

寺島「"デバイス"の事をなんで知ってるの?」

 

 

寺島が驚くのも無理はない。

ボーダー創設前である4年前、旧式は、現行の"トリガーホルダー"

の性能とは大きく違っていた。寺島ですら「使った事が無い。」

 

 

現在の"ホルダー"は誰にでも扱えるよう「自動調整」が組み込まれ、

【規格統一化】により組織としての指揮・行動を容易にさせている。

これは「集団戦」になるほど安定した力となり、戦況把握も判断が容易となる。

 

 

一方、旧式である"デバイス"は「個人」としての方向性が強く、

全て手作業でチューニングが施され、「出力調整」が行われていた。

また【生身とリンク】させる事で、絶大なトリオンの出力が行えていた。

・・・・・・その代償に、トリオン体が破壊されることは、即ち死である。

 

 

(~旧式トリガー "デバイス"より~)

 

 

空 「今の"ホルダー"に、デバイスの機構を組み込めるか?」

寺島「出来なくはないですけど・・・なぜ?」

空 「かつての、【切り札】として用意したくてな。」

  「ベイルアウト機能も省いてほしい。・・・できるか?」

寺島「・・・鬼怒田室長に相談してみます。」

 

空 「後は・・・切り札用のトリガーも頼みたい。」

寺島「ええ、どんなのを描いてます?」

懐からささっとメモ帳とペンを取り出し、職人の目になる。

 

 

空 「いくつかあるが・・・まずは、"打撃"武器を頼みたい。」

寺島「・・・」

空 「レイガストのスラスターによるパンチがイメージに近い。」

  「工業用ハンマーの形で、推進機構を『電流』に置換してほしい。」

寺島「・・・電気で加速させるってこと?磁力じゃなくて。」

空 「ああ、"電気の抵抗熱"を利用したい。スタンガンに近いか。」

  「ヘッドと石突きの上下にあると助かる。・・・柄の伸縮機能も。」

 

寺島「・・・」(かきかき)

空 「・・・他に、テレポート機能を開発してほしい。」

寺島「あー、今作っているやつのがそれなんだけど・・・」

空 「それの"座標指定"版が欲しい。」

寺島「かなり難しく・・・って、さっきのワープの再現を?」

空 「ああ。非トリオン物体の転送も行えるようにしてほしい。」

寺島「・・・・・・君だからこそ行えそうな、ぶっとびトリガーだね。」

  「オッケー。一応、次ももし考えてたら、教えてくれる?」

 

空 「・・・ああ、"シューター用のトリガー"を考えている。」

寺島「シューターね、普通のかな?それとも合成弾?」

空 「その中間だ。"圧縮展開"とも、"増殖"と呼ぶべきか。」

寺島「・・・えっと、どんなものなんです?」

 

空 「ああ、本来合成弾は"掛け合わせる事で、別の性質を得る"ものだ。」

  「それも、"一定のトリオン空間範囲内、箱の中に収まるように、"」

  「"一定数量のトリオン内で、効果を展開していくものさ。"」

寺島「・・・・・・それで圧縮、ということは・・・?」

 

空 「ああ、例えば"4回分のアステロイド"を、その枠組みに圧縮させる。」

  「その時、一気に放つか、時間差か、その圧縮体自体を動かすか、殖やすか。」

  「そのシステムをお願いしたい。・・・"跳躍弾"も組み込んでほしい。」

  「今のところはこれぐらいだ。・・・また後で相談したい。」

 

寺島「・・・分かった。んー、加速するハンマーに圧縮展開・・・跳躍・・・」

  「腕がなるなぁ。」

 

 

寺島の顔からやる気の表情がだんだん浮かんでくる。

彼は"戦闘員"だったからこそ、ビジョンがありありと浮かんでくるのだ。

 

 

本来の話であった「ノーマルトリガー」や説明、

そして「界境防衛機関の身分証明証」を渡してくれた。

別れ際に「空(うろ)」と名乗ることを話した後、私は部屋に戻った。

 

・・・何も考えずに、ベットの上で大の字になる。

 

 

「・・・・・・まず一つ目の難所はクリア、次は・・・」

 

 

頭の片隅から、薄れて消えかけている記憶を掘り出す。

・・・"イレギュラーゲート"の大量発生。

これは"ラッド"の出現によるもの。・・・だった気がする。

 

迅や空閉に任せれば、これはまず問題ない。

前の世界では、「三門市外でのネイバーの侵攻」があったはずだが・・・

かつて私が作った「防衛専門部隊」が存在しないということは、

この街の防衛で手一杯なのだろうか・・・・・・。

 

 

「・・・まずは思い出さないとな、ノーマルの動き方・・・」

 

 

開発室の"誰かのデスク下"から、・・・工具箱とパソコンを、手元に転移させた。

トリガーホルダーの中身を空けて、パソコンからコード接続を行い、

クラッキングしながら・・・・・・使いたいトリガーへ上書きしていく。

 

わざわざトリガーを変えるために「チップごと取り替える」ようだが、

書き換えてしまえば変更できてしまうため、この方が手っ取り早い。

・・・「トリガーの性質変更、開発」は、非常に繊細で精巧な数値で作られている。

流石のそこは鬼怒田室長や寺島チーフに頼まないと、作れない。

 

 

「よし、できた。」

既に22時を過ぎていたが、私は「B級ランク戦室」までワープすることにした。

・・・本当は「狙撃手用訓練施設」の方が都合良かったのだが、

今の私のアイビス戦法だと「ボーダー本部を穴だらけ」にしかねなかった。

――――――――――

Main:[アイビス エスクード レイガスト  グラスホッパー]

Sub :[アイビス改 シールド バッグワーム カメレオン  ]

 

「トリオン戦闘体、他デザイン」

黒のマルチカムBDU。「軍装のPMC」を意識させるスタイル。

トリガーのレイガストを右上胸に装備し、左肩に着脱可能な、

右耳のインカム付個人無線機。首元を覆うスカルマスク、

遮光性フード、そして右目には金属製パッチ式な黒眼帯。

 

 

二つあるアイビスのうち、サブだけは「スコープ、脚」を外した代わりに、

「赤色レーザー」「3点ライフルスリング」を取り付け、銃口下で左肩側に背負っている。

雨取のように「バカでかい砲の狙撃」にすることもできるが、普段は出さない。

トリオンを集束させて「12.7mm弾」の大きさにさせ、「絶大な貫通力」に徹している。

 

バッグワームは「足下」まで垂れるコート型。

グラスホッパーに「矢印方向」を表示させている。

――――――――――

 

 

今、無人のB級ランク戦室の中に「ワープ」してきた。

・・・流石にこの時間帯だと寝静まっているし、電源も落とされているので、

「こっそり起動して」・・・・・・起動中に、「仮想訓練モード」を仕込む。

 

 

マップは「市街地B」、天候は「大嵐」、仮想敵数・・・「1000」「強さMAX」

「バムスター36・モールモッド900・バンダー60・人型ネイバー4」と・・・

 

 

「・・・・・・トリガーオン、よし、転送開始30秒前・・・。」

タイマーをセットし、同時に「B級専用の待機室」にワープし、準備完了を押す。

そのまま、市街地B・・・・・・かつての「東三門」へ。

 

―――――――――――――――――――――

転送! 転送された先は・・・住宅街の道路か!

 

 

モールモッド1「!」

モールモッド2「!・・・!!!」

モールモッド3「・・・?・・・!」

 

2体は「待ち伏せ」していたかのように、速攻で左右から振り下ろす。

無手で立っていた私は、サブの「近接用アイビス」を召喚して、

すぐしゃがんで、そのまま背中越しに「砲撃」をかまして、

右側のモールモッドを消滅させる。

 

左手のブレードは防ぐために、右手でレイガストを掴み、

盾を展開して刃先を阻む。・・・遅れて3番目が背中側からやってくる。

 

コンマ一秒で更なる「神速の斬撃」が繰り広げられるため、盾で捌いていく。

A級隊員ですら1秒間に20、30もくれば、すぐに割られてしまうが・・・問題は無い。

相手の軌道も寿命も見えている。

 

右手へ側方宙返り「空中ドッジロール」をしつつ、宙にアイビスを振り抜く際に、

後方にいた「3番目の敵」の目を「12.7mm」の弾丸で確実に仕留めた。

 

間髪入れず、距離を詰めようとする最後のモールモッドは、続けて前に出る。

・・・盾を横にして「アイビスを乗せて、撃つ。」

・・・とっさに防ごうとしたか、最高硬度であるブレードで4枚、目を守ろうとしたが、

全く意味を成さず、貫かれて・・・トリオンの煙をプスプスと放っていた・・・・・・。

 

 

「・・・縛りも愉しそうだな。シールドもエスクードも無しで、狙撃も無しで。」

「やってみるか、接近戦のリハビリがてら。・・・」

 

 

 

このあと、あまりにも変態プレイなアイビス無双をやっていたところを、

本部長補佐の沢村響子に叱られたのはまた別のお話だろう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第9話「人の正義とは絶対ではない。悪も時に必要だ。」

 

翌朝の6時。

一方別の話では、三雲と迅、後をつける米屋と三輪が互いに合流する日だ。

 

 

 

 

空は眠りから目覚めた。結局、深夜3時までやっていたのもある。

・・・しかし、「身体の眠り」が必要と無くなったこの身体では、

肉体の為の休眠は意味をなさなくなってしまったのだろう。

 

・・・理由は分かっている。

 

「時の乖離」

 

どういう原理か、まだ私の中では解答を得ていない。

もたらす影響はどうやら、肉体と精神の乖離によるもので、

「精神と器が噛みあわず、器の肉体が疲れを忘れている」ようだ。

・・・つまり、状態を知覚できず、無理な過労によって急に倒れる意味を指す。

 

腹も空かない疑問も、喉が渇かない疑問も浮かばなかったのは、このためか。

 

「・・・厄介だな。感じないのはいいが、体調管理が必要か・・・」

 

アナログの時間で「生きる肉体」。

デジタルの時間で「繋がる精神」。

いつ、この世界から精神を手放すか分からない、恐怖。

 

・・・だが、恐れていては進めない。

 

 

「・・・いまさら、か。」

 

 

 

 

用意されていた、ボーダー刺繍の入った白ワイシャツと黒ズボンに着替える為、

部屋のバスルームを借りて入浴しようとする。・・・まずは身支度をしよう。

 

ついでに右眼の眼帯と義眼の調子を見ようと、一度取り外す・・・・・・そうとした、時。

 

 

その右眼には

 

蒼く、くすぶる灰燼をまとい、

 

うつろに輝く、

 

蒼き灰燼の炎を・・・眼窩に宿していた。

 

 

 

 

「!?」

「・・・これは、なんだ?」

 

 

思わず、触れてみようとする。

・・・温度も感じない。眼窩の何も無い感覚も分かる。

【透視】で骨格、筋肉組織、内臓もスキャンするように、

右眼周辺を眺め視たが・・・何も無い。・・・鏡越しでも見えるのか。

 

 

「・・・・・・」

かつてこの前の世界で立ち寄っていた、薬局屋の歯ブラシと歯磨き粉を、

手元に鋭角時間の歪み空間で「アポート」を行ってみた。

 

・・・右眼の蒼き灰燼の炎は、揺らめいた。

・・・不完全ながら、ティンダロスの猟犬の混血としての力らしい。

 

ティンダロスの猟犬。・・・遙か昔、確か『2度目の命』を得た頃の世界。

前の世界に現れた存在は、全て「猟犬」たちだ。

全て、「生命の時間に忌み嫌われた、存在消滅者の総称」であり、

生物としての存在すら消えれば、非常に不快な捕食者のモンスターに成り代わる。

元人間だったものもいるが・・・、破綻した倫理観と失われた理性に支配されている。

 

 

「私は、誰の「記憶にも無い存在の男」、か。」

「はは、・・・猟犬にはなりたくないな。」

 

 

身体はまだ、人間なのだ。

今はまだ人間なのだと、心の中でそう思いたい。

既に何回も死に、輪廻している時点で、人間を辞めているが・・・

 

 

「・・・・・・。」

 

 

今は、まだ人だ。

だが、何を持って今を生きている。

全てを忘れつつある記憶、今を刻みつつある記憶、

・・・「矛盾ばかり増えていく、つじつまのあわない思い出」

 

 

「・・・・・・わたしは、おれは、誰だ?」

「・・・何のために戦い、生きて、死んだ?」

「繰り返されるのは、ごめんだ、なぜ、おわらない」

「・・・・・・終わってたまるか、今を、生きたい・・・・・・」

 

 

入浴を済ませ、ひげを剃り、「三分の坊主頭」に髪を刈り落とす。

着替えをすませれば・・・もう7時。食事に向かうか。

この時間帯は確か、食堂のおばちゃんが窓口を開けているところだ。

 

そのためには、金か・・・。

 

「・・・。」

 

 

この世界では、私の存在は無かったようなものだ。

名入りの身分証を別に作ってもらっているが、

今持っているボーダー身分証は「登録順番号」のみが記載されている。

 

・・・名前不明、出生年不明、戸籍不明、出生場所不明、経歴不明、

あまりにも、「存在証明」が無いと、不便なことこの上無い。

まぁ、今なら政府のインターネット・サーバーに侵入できるし、

クラッキングして「架空人物上の記録」の作成もできる。

 

・・・だが、「物理」、つまり紙媒体の出力は無理だ。

特に卒業証明、戸籍に関する膨大な資料、それらは組織の力が必要だ。

 

 

物や金なら実際、どうにでもなる。

今の「猟犬」としての力なら、閉まったレジから紙幣をかすめ取ることも、

カジノや銀行の金庫からいくらでも「証拠無く取り寄せられる」し、

「金の浄化」をすれば痕跡を抹消することも、複数の口座に入れる事もできる。

 

 

「・・・何を考えているんだろうか。」

「今はすべきではないはずだが・・・」

 

 

・・・だが、そんな気分ではない。金を持っていても不自然だ。

水分は済ませたが、腹が減っているわけではない。

自分のために食べなければならないが・・・朝ぐらい、抜いても問題無い。

 

 

・・・それに、「携帯電話」や「運転免許証」、

日本での「戸籍と住所」、「パスポート」、「クレジットカード」、

最低限それらがあれば、この世界ではうまくやっていける。

 

まずは「携帯電話」と「運転免許証」を確保しにいくか。

 

 

トリガーホルダーと共に置き手紙を置き、【座標地点】を憶えてから、

ボーダー身分証を持ち、部屋を出ることにした。

 

――――――――――

 

 

今は静かな界境防衛機関の2階フロア。

そろそろ学生達が1階で集まるか、ここから学校まで通うはずだ。

 

 

・・・トリガーホルダーを使うことができれば、光学迷彩で身を隠せるんだが・・・

常に発信器や監視がついているようなもののため、悪用はできない。

 

 

・・・新弓手町駅最寄りの公衆トイレ先まで、ワープする。

 

 

――――――――――

 

 

よくワープする先の一つ、個室の中で【透視】と【千里眼】を試みる。

・・・まずは金と財布。・・・1km先のコンビニレジから、1千円札と1万円札を1枚ずつ。

近くの衣服販店から・・・財布と、肩掛けカバン、長袖白Tシャツ、茶系の帽子、白眼帯、

ハンカチ、ナイロンベルトと青いジーパンを手元に転移させた。

 

 

「・・・・・・」(ごそごそ)

 

これに着替え、一般人っぽく装う。この姿の方がラフだし、

普遍的な方が「警察に追われるような事件が起きても、攪乱しやすい。」

 

 

 

 

着替えを終え、外に出る。・・・コツコツと革靴の音を響かせる、

サラリーマンやサラリーウーマン。・・・そうじゃない若者や、学生。

老人、赤子を連れた女性、カップル、不良、・・・・・・誰もが、生きている。

 

羨ましい、と思った。普通が、こんなに羨ましいとは。

 

 

「・・・(さて、まずは携帯だな・・・連絡手段が欲しい。)」

 

 

携帯電話を持っているか持っていないかで、インターネット上の信用が段違いだ。

特に携帯会社のメールアドレスだった場合、それだけで信用に足るとして扱いが良い。

・・・「それに、何度も利用している」。

 

 

とある大手の「通信の信頼性が高い」携帯会社のビルのテナントにやってきた。

よく訪れたこの販売店は、記憶に強く残っていたし、「なんとなく動きが分かる。」

それに今の朝の時間帯は開いていない。侵入するにはちょうど良い。

――――――――――

 

音も無く、「侵入者対策用警報」すらすり抜けて、店内に入る事ができた。

さて、起動するか・・・・・・(【過去視】で、パスワードや、店員の動きを見ていく)

 

 

空は悪意に手を染め、「当時のiphone5」を手に入れる事ができた。

自身の携帯番号を登録し、【架空の個人情報】を登録し、操作を完了させた。

 

 

「・・・次に行くか。」

【過去視】で自分が訪れた"前"の様子に戻しながら、パソコンを落として、消えていく。

 

――――――――――

 

次は・・・運転免許センター。だがその前に「証明写真」を用意する必要があった。

これは生前の知識から「自分で三脚を立てて、スタジオライティングにして撮れば」

いいが、「プリントする」場所が必要だし、わざわざその労力をするのも面倒だ。

 

 

証明写真の営業を行っている写真館で撮ってもらい、

自動車免許用の写真サイズを何枚か印刷させ、USBメモリにデータを入れてもらった。

 

 

・・・そして、ここからは遠いが、【東京都】の運転免許センターまでワープする。

・・・このワープの感覚、気がついたらそこにいたほど、もう慣れてしまったな。

 

――――――――――

東京都外のとある運転免許センターでの昼休みになる頃、

「本当のぼや騒ぎ」が発生する。

 

全職員と交付予定者達が逃げ惑い、大きな火災に消防隊が駆けつける自体となる。

・・・一体なぜ火災が起きたのか、原因は不明だが、タバコの消し忘れだろうと言われている。

 

・・・その裏では、とある男が火事場に紛れて、運転免許カードの製造を行っていた・・・。

――――――――――

夕方になり、冬の時期で既に日が暮れて暗くなった頃。

茶系の帽子に白の薄い長袖Tシャツに、青ジーパンと黒肩掛けカバンの男が・・・

都内のチェーン店の席で、コーヒーを片手に一息ついているところである。

 

 

・・・今頃、ボーダー隊員総出で"ラッド"の駆除に動いているところだろう。

明日の朝は・・・確か、空閉と雨取、三雲が出会うはずだ。

一応、手紙にも書いた通り「明日には帰ってくる」と書いてあるし、

・・・それに、私が向かわないと「雨取は攫われる。」

 

私が向かうことで、空閉が合流できる時間を短縮でき、三雲とも合流できる。

「アフトクラトルの連中」の、ラービット(プレーン体)が一体送られてくるからだ。

どういう口で知ったか知らないが、雨取の膨大なトリオン量のことを知っており、

 

「金のひな鳥」として初めから狙いに来ている。・・・ラービットはそのテスターだ。

空閉が対応したところで、・・・ハイレインとミラの漁夫の利で、誘拐される。

雨取はこの世界ではキーマンであり、「このボーダー」全体が実は危うくなる。

 

・・・今の能力なら、仮に攫われたとしても、一方的に取りかえせるだろうが。

 

 

「・・・・・・とりあえず、疲れたな。」

 

 

淹れたてのコーヒー豆のアメリカンコーヒーと共に、

卵入りサンドイッチを食べて流し込んでいく。

明日、どう動こうか考えつつ、「古き未来の記憶」を掘り起こすのだった。

 

 

 

 

ポッケの「iphoneと大型普通自動・大型自動二輪運転免許証」を確かめてから、

店の外に出る。道行く道路の人々と歩きを合わせながら、暗い裏路地に入る。

男が消えた先は・・・・・・今度は「旧弓手町駅」前へと。

――――――――――

 

 

あの日から放棄されている、駅前の小ぎれいな一軒屋の家に入り、身を休ませる。

・・・昔、そば屋だった店の2階だ。店主が生活していたらしき、家具が多くある。

畳敷きの部屋の上に寝っ転がり、窓ガラスから見える真っ暗な星空を眺める。

 

 

9時をまわり、もうそろそろ寝静まる頃だろう。

・・・毛布を借り、カナディアンウィスキーを少しだけ嗜んで身体を温める。

 

「・・・そういや、メビウス吸ってなかったなぁ・・・。」

ずっと忘れていたが、メンソールのタバコを吸わなくて久しい。

 

 

・・・明日にでもしよう、と心を切り替えて、明日に備えて眠るのだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第10話「Junction」【代償】

(次回、"全く別世界"に飛ばされる可能性があるとか無いとか、

作者の気まぐれにより、ここから違う脚色となっていくのかもしれません。


 

朝6時。

体を起こし、借りた布団を畳む。

琥珀色のガラスボトルを肩掛けカバンの中にしまい、

「ボーダーの支給服」に着替え、荷物をまとめる。

 

 

……そして、「界境防衛機関の自身の部屋」まで、

鋭空間の異空間の門を繋げて入る。

 

部屋は前と何も変わらない状態だ。

…置いた手紙と「トリガーホルダーが無い」事を除けば。

 

 

 

「…まぁ、そうなるよな。」

「誰が来たかな…?」

 

 

【部屋の過去】を光の無い右眼に映し、

誰が手紙とトリガーホルダーを持っていったか探る。

 

 

ーーーーーーーーーー

こんこんこん、と響くノックの音。

コツコツと響く、ヒールの音。

本部長補佐の沢村だ。

 

 

やはり案の定、慌てて出ていったか。

手紙を一応読んではくれたようだし、

トリガーホルダーも持っていってくれた。

…忍田本部長の所まで持っていったか、ふむ。

 

 

どうやら、ブースで深夜までコソコソとしていた、

その事や手紙の内容から不信感を抱いていること。

危険視すべきという言葉。…"前と同じ通り"だな。

 

 

忍田本部長も考えた末に、預かっておくことと、

戻ってきた時に話を聞く事にする、と決まったか。

…これも"予定通り"、ふむ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「…つまらないなぁ。」

素直に思った。

…自分が誰なのか、まだハッキリと思い出せないが、

"同じ展開で見飽きた"、そう思った。

何故そう思ったのかは分からないが…"知っている"。

 

深く考えるだけ無駄だろう。

何度か繰り返しているのだから、

恐らく似た展開を体験しているのだ。

 

…賭けてみるか。

 

 

「…まずは風呂に入るか。」

 

 

まずは身支度を済ませる事にした。

シャワーを浴び、服を着て、「iPhoneと免許」、

あとは「朝昼分の小銭」を持っていくことにした。

 

免許には…こう書かれている。

「権守 空 24歳 昭和64年 5月14日」

「三門市東三門 ◯丁目◯番地」

「大型 中型 普通 大自二 普自二」

ーーーーーーーーーー

 

 

ここはラウンジ。

ボーダー隊員や職員がいつも食堂を利用するブースだ。

ここで策を練るグループも多いし、級を問わず様々な人がいる。

 

何故その話かと言うと…

 

 

「おい、見ろよ。あの人…誰だ?」

「さぁ…隊員じゃないとは思うから、職員の人?」

「いや、見てみろよ。…あんな丸坊主、いたか?」

「いないだろうね…でも見かけない人だし…」

「…右目、あれ眼帯付けてるぞ。ケンカでもしたのか?」

 

C級やB級の声があちこちから聞こえてくる。

昨日は"ラッド"の掃除でお疲れだと思ったが…元気なものだ。

 

 

見覚えのあるB級やA級のメンツもいるが、

今は"面識がまだ無い"、声は掛けずに通りすぎる。

 

私は気にせず、食堂のおばさんに購入した食事券を渡しに行く。

 

 

おばさん「いらっしゃい! 新しく入ったのかい?」

空「そうなんですよ。あ、竜田揚げ定食お願いします。」

おばさん「あいよ、Aの竜田揚げいっちょ!」

 

 

厨房の奥から活気のある返事が返ってくる。

受付を兼ねている中年のおばさんも、

配膳しながらご飯を盛ってくれたり、

他客のうどんを湯切りしたりと、忙しない様子だ。

 

 

そうして待っていると、

 

「…ここにいたのか、君は。」

後ろから、馴染みのある声だ。

 

 

 

「ええ、戻りました。」

返す言葉だ。振り返らず。

 

 

「何をしていた、昨日は姿も見せず。」

横に並んで食事券をすっと出して顔を見てくる。

 

 

「ツテを辿りまして。」

…忍田本部長の顔だ、怪訝そうにこちらを見ている。

 

 

「ツテだと? あの手紙はどういう意味だ。」

本部長は疑っている。…見れば分かるほど、怪訝な顔だ。

 

 

「"知人を思い出した"んですよ。訪れてみたら、もう…」

 

 

「…そうか。」

 

 

「前の世界では、よく愚痴を言いあったんですけどね。」

「他にも、巡ってみましたが…知っていた世界と、違った。」

 

 

「…そうか。心中、お察しする。」

 

 

「…すみません。言えば引き止められると思いまして。」

 

 

「君が言ったとしても、どこかへ消えたのだろう?」

馴染みの醤油ラーメンとだし巻き玉子のトレーを、

食堂の窓口から受け取る。

 

 

「ははっ、見抜かれてましたか。」

乾いた笑いと共に、竜田揚げ定食を受け取った。

 

 

"忍田本部長がよく座る"近くの席を取り、

本部長が座ってから、自分も向かい合って座る。

…そして、無言で、"あるもの"を机の上に置かれる。

 

 

「……」

これは昨日預けたトリガーホルダーだ。

それを持ってきたという事は…

 

 

「もし、君が"何か良からぬ考え"を企てているならば。」

「…その時我々は、君を拘束する。それで良いか?」

 

 

忠告か。ああ、その前置き、忍田本部長だな…

 

 

「分かった。」

 

 

 

 

それから、たわいもない話をしつつ、

前の世界での話をしていた。

 

 

もちろん、今日の11時頃に「厄介な敵」が現れる事。

「三輪隊が動いていること」、「空閉遊真と三雲修」

「雨取千佳」の未来の話も、細かに説明していく。

 

 

「…にわかに信じがたいが、三輪隊は確かに、」

「二人を…、こほん、」

「"彼ら"の動きに探りを入れているが…」

 

 

「三輪隊は負けますよ。…迅が一枚噛んでいますので。」

 

 

「…そうか。…しかし、」

「そんな大切な事を言ってしまっていいのか?」

ふと、何かに思い至り、

忍田本部長は心配を覚えたような表情を見せる。

 

 

「…【決まった未来】からは逃れないんですよ。」

「逆に、【その通り】にすれば、絶対にできるんです。」

 

 

「…"迅が聞いたら、絶対に聞きにくる"話だな、それは。」

「どうして、絶対に出来るという確信が?」

「君は記憶を失ったのではなかったのか?」

 

 

「…少しずつですが、思い出してきているんですよ。」

「この世界は新しい。"前の世界"と違って、新しい。」

「【確信】する場面や出来事が浮かんで、仕方がない。」

 

 

「…まさか。」

「本当に、同じ世界を繰り返してきた、と?」

 

 

「そういうことです。」

「この話が通じるのが迅と忍田本部長ぐらいでしたので。」

「……最も、私は"別の世界を生き来している"のかもしれませんが。」

 

 

「…そうか。とにかく、私としては、」

「君が悪事さえ働かなければ良い。」

「この街を守るための力が手に入るなら、」

「喜んで私は君を受け入れよう。」

 

 

「…私は、そうだな。」

 

 

迷う心。どうでも良いと内心もありはするし、

一宿一飯の恩義に報いるべきだ。

「古株」としてのよしみとして、動くのも良し。

どうでもいいという気持ちはあるが、借りを返そう。

 

…今の所は、「利害関係」として動こう。

 

 

「"古参"としてこの目を貸す。」

「必要とあらば、未来に生きる子らの為に。」

 

 

 

…馴染みの竜田揚げがどこか、胃に重たく感じた。

ーーーーーーーーーー

 

 

それから、今は11時になった。

今はボーダー屋上から見下ろしているところだ。

いまのところ、鋭空間時間操作の能力暴走も無し。

 

 

…ところで、私とは誰なのだろうか。

私は一体どれだけの月日を、

歳月を、年月を、悠久を、

永遠を、記憶を無くしてまで、

一体、どう過ごしてきたのだろうか。

 

百、千、万、億、一兆年までか。

宇宙が出来た頃までか。世界とは。

今は、私が生きていた世界なのだろうか。

死した後に見ている夢幻か。夢現か。分からない。

今生きている私は、今の私なのだろうか。

 

…あぁ、かの5億年ボタンの話を思い出す。

この力を得て理解したが、時間とは、伸び縮みする。

観測者と被観測者の時間的知覚点は既に異なることから、

時間とは「個人の認識に左右される」、つまり、

 

「時間とは理でもなんでもない、ただの空間なのだ。」

 

形而上学的問題の通り、

押した者が帰ってきた者と同じ状態であるのか、

記憶が無いという事はスワンプマン、

または親殺しのパラドックスのような、

あるいはシュレイディンガーの猫のような、

計り知れない数と可能性の未来分岐が起きるのでは。

 

いずれにせよ、主観的立ち位置の観測者である私では、

答えを見つける事も定める事もできず、何も分からない。

絶対客観性の観測者が見なければ、私の答えは出ない。

これは意識した時点で、答えが無い問題が作られたのだ。

 

 

…だが、一つだけ分かっている事がある。

私は、少しずつ【前の世界】を《思い出して》いるのだ。

 

 

否、「刷り込まれている」。記憶が、食い違いつつある。

記憶の侵食が始まる、この先に起こる事が少し、

【予測】できるようになってしまった。

知らないはずなのに、【この先の事を知っている。】

 

 

 

 

今の時刻は[11:10]、

何の因果か。あと1分後に「奴ら」がやってくる。

奴らとは……アフトクラトルの「ラービット」だ。

奴らが「金の雛鳥」を見つけるのは、まだ先の未来のことで、

今はまだ千佳をターゲットにしないはずなのだが…

 

本来の時間軸ならば、確か千佳がトリオン兵に襲われる、

バンダーの捕縛を受ける前に遊真が救出する。

別の誰かが、トリオン兵と相手をしていたはずだ…

 

 

今の"私"には良く分かる。

「物語がすげ替えられている。」

「観測者の座席が変わっている故に、未来が分岐した」

 

…そう、「お決まりのパターンや展開」が、目に見える。

 

 

 

 

 

「…全く、やってられん。」

「一体、【誰が、世界改竄を行なっているんだ?】」

 

 

そう呟きながら、「メビウス」の紫煙を熾す。

燻るタバコ煙と共に、アイビスのスコープを覗く。

 

 

これからゲートから出現してくる3体のラービットを、

"たった一発で全て仕留める"ために、

鋭角なワープホールを銃口の先と、"ゲート先"に複数展開する。

 

 

 

「……3、2、1。Clear.」

 

 

ドギュォォォオオン!

 

 

 

 

3体のラービットの頭部が「現れた」と同時に、

「10枚のエスクードを穿つ対物弾【アイビス】」が、

左右、上下、前後、計6回も貫通し続けて往来する。

 

そこに残されたのは、判別不可能なただの残骸だ……。

 

 

 

「……。終わっ」

「がっ、ごバァッっ!?」

 

 

唐突な吐血。

 

トリトン体にもかかわらず、

「ノーマルトリガー」にも関わらず、

「確信する、臓器と血液の不協和音」。

 

 

駆け巡る、ガラスの流れる激痛に、思わず意識を手放した。

明滅する視界と共に、全ての筋肉が萎縮し、痛みが連鎖する。

全細胞に渡る痺れはトリオン体であるのに、

「生身の身体に直接、"ダメージを与えた。"」。

 

 

…何も分からないまま、空の意識は深層心理へと沈んでゆく。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第10.5話「不安定な存在の証明方法」

(ワートリとは直接的な関わりがないものの、
建悟こと空(うろ)の能力の後付けや覚醒など、

今後はX.5話を割かせていただきます。)


 

・・・私はどこにいるのだろうか?

 

 

とても狭く、

 

冷たい床の上で横になっており、

 

灰色の天井が見えている。

 

 

・・・天井に備え付けられた照明の、

白色ライトで明るさが満たされ、

それ以外は何も無く、無殺風景だ。

 

 

起き上がろうと身体を動かすが、何か動きづらい。

「・・・なんだ、これは?」

 

 

鎖・・・いや、枷だ。

 

 

しかも手足の枷に留まらず、その接続先には、

四方に金属棒のついた装置のようなものがある。

一応、自由に動けはするが、

だるい感じの重みでどうも気になる。

 

 

気がつくと、部屋の奥で何かが開く音がした。

・・・クリップボードを持った、艶やかで長い茶髪の、

だがどこか疲れた顔をした白衣の妙齢の女。

 

黒いスーツ"と思われる"、黒い警棒と「装甲服」の、

精悍で長身な青髪の男が入ってきた。

 

 

入って先に口を開いたのは、逞しい男の方だ。

「おはよう。お目覚めはどうかな、02-H111-M。」

 

「・・・最悪な気分だ。」

後ろに控えている白衣の女は・・・何か書き記しているようだ。

 

ここは恐らく、"何かの研究施設"なのだろうか、

そうすると・・・安易にサイドエフェクトが使えなさそうだ。

 

 

「・・・ここはどこだ?」

 

 

男「ここはセラエノ研究所だ、02-H111-M。」

 

「セラエノ?」

「・・・それに、その呼び方は癪に障る。やめてくれ。」

 

男「・・・、おっと、申し訳ない。」

 「だが、今はそう言わせてもらう。」

 

「・・・(モルモット扱いか、クソ。)」

 

その後ろで沈黙を保っていた白衣の女が、

なにやらぶつぶつと言いら出した。

女「知的交信を確認、・・・情緒的反応、指数20、」

 「アドレナリンの上昇数値確認・・・」

 

「・・・何の観測実験だ?」

 

男「さてね、後で教えよう。では話に戻ろうか。」

 

 

「・・・。(過去を視ようにも、"使えない?")」

 

 

男「02-H111-M。」

 「君は様々な能力を持っている事を知っている。」

 「空間操作、物体の転移、物質の構成能力、」

 「驚くべき強度を誇る身体強化能力。」

 「そして、時間事象への優位性抵抗。」

 「君はなぜ、それらの力を持った?」

 

 

「・・・知らない。」

 

 

女「心拍計数増加、具象システムの確認。」

 

男「・・・。そうか、では02-H111-M。」

 「君はなぜ、この場所に現れた?」

 

 

「・・・いや、分からない。」

「どういう意味なんだ?」

 

男「そのままの意味だ。02-H111-M。」

 

「・・・、よく憶えていない。」

「私は捕まったのではないのか?」

 

 

男「いや、違うな。」

 「02-H111-M、君は突然、この施設に現れたんだ。」

 

「・・・よく憶えていないな。」

 

男「見たところ、――――(ノイズ音)区の住民ではなく、」

 「かといってサーバー類似生体情報上に一致せず、」

 「存在しない血統類似性特徴の遺伝子を持っている。」

 「君はいったい何者だ?どこから来たのだろうか?」

 

 

何かが噛みあわない。

そう思ったが、・・・敵の心理作戦だろうか。

とりあえず、過去が見れないとなると、現況が未知数だ。

 

 

「・・・私か。」

「お前達"ネイバー(近界民)"の言葉を借りれば、」

「ミデン(玄海)の者だ。」

 

男「ミデンの者? ネイバーとは・・・?」

 

「・・・? トリオンのことは知っているだろう?」

 

男「トリオンとは一体?」

 

「・・・トリオンを知らないのか?」

 

 

女「・・・D1092、作業の続行を願います。」

D-1092と呼ばれた男は了承したそぶりを見せ、

白衣の女性は再び、沈黙と共に記録に勤しむようだ。

 

 

男「了解。・・・ああ、一体どんなものだろうか。」

 

 

「・・・簡単に言えば、生体エネルギーだ。」

「意志を力にするようなもの、といえば分かるだろうか。」

 

 

D-1092「なるほど。・・・意志を力に換えるのか。」

 

 

「そうだ。・・・なぜ、それを聞く?」

 

 

D-1092「ああ、初めて聞いたからだね。」

   「ネイバー、とは?」

 

 

「・・・トリオンの技術が発達した文明に生きる、その人類のことだ。」

 

 

D-1092「ふむ、ではミデンの者とは?」

 

 

「・・・あー、地球のことっていえば通じるか?」

「ネイバーの連中は別の次元、」

「いわば、別の世界からやってきた住民だ。」

 

 

D-1092「なるほどなるほど、地球のことと・・・」

   「では、今が――――年か知っていますか?」

 

 

「ん、よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ。」

 

 

D-1092「――――年か、知っておりますか?」

 

 

「・・・ノイズでよく聞こえないんだが。」

 

 

D-1092「うん?・・・えー、――――ですよ。」

 

 

「・・・聞こえん。とりあえず、」

「確か覚えてる限りで、西暦の2013年か2014年のはずだ。」

「平成25か26年だ。まだiPhone5の頃の時代じゃないか?」

 

 

D-1092「・・・西暦?」

 

女「データサーバーから情報アクセスの実行が完了しました。」

 「どうやら、第三次産業革命の時代に存在した、」

 「旧プロトコル"WWW"規格方式の情報システムを利用する、」

 「旧方式の電波送信を行う、携帯情報通信端末装置のもようです。」

 「確かに、AD 2012から製造されていた点から鑑みるに、」

 「その時代に02-H111-Mが、生きていた可能性が高いかと。」

 

D-1092「なるほど。今から――――年前と。

   「第―次世界大戦の頃か。」

 

女「しかし、"トリオン"なる単語は検索エンジンから検出されませんでした。」

 「同じく"ミデン"も、"ネイバー"も、"トリオン"も。」

 

D-1092「分かった。Q-0902。」

 

Q-0902と呼ばれた白衣の女は再び、観測の姿勢に戻るようだ。

 

 

 

 

「・・・・・・さっきから、何の話を?」

 

 

D-1092「おっと、こちらの話だ。すまない。」

   「恐らく、可逆的時間遡行のワームホールに巻き込まれたのでしょうね。」

 

 

「・・・不可逆的、じゃなくてか?」

 

 

D-1092「ええ。我々の時代では、時間は空間に過ぎないのですよ。」

   「もっとも、時間遡行への抵抗性を持つ君は、異常なのですが。」

 

 

「・・・それはどういう意味なんだ?」

 

 

D-1092「そのままの意味ですよ、02-H111-M。」

   「つまり・・・異常な存在、ということです。」

   「恐らく、世界認識による歴史改竄が働かないが故に、」

   「我々の認識フィルター及び定義論理性の認知が正常に働かないのも、」

   「貴方の持つ可逆的時間遡行への抵抗性を持つがゆえ、なのでしょう。」

 

 

「・・・・・・意味はよく分からないが、」

「ここがよく分からない場所だというのがよく分かった。」

 

 

D-1092「その認識で構いません。」

   「君が理解しようがしまいが、我々には関係ないのですから。」

 

「・・・・・・(どういう意味だ、おい。)」

 

Q-0902「・・・感情的論理数値の大きな上昇、ここまでとしましょう。」

 

D-1092「分かりました。」

 

 

自分の沸き立つ疑問や不満を一切知らぬ、

存ぜぬと言わんばかりの物言い。

・・・一体どういう場所なのだろうか、ここは。

 

 

D-1092「では、02-H111-M。またお会いしましょう。」

 

 

「・・・・・・ああ。」

 

 

二人が立ち去り、それから虚しく時間が経つ。

・・・眩しくて眠れそうも無い明るさだが、

なんとなく眠気を感じる。

 

 

・・・座ったまま、その心地よい眠気に身を委ねてみることにした。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE:11話「何回目かの戦闘、しかし」

(次回投稿、今週末?と思われます、
安定した投稿期間が作れず、ペースの維持が難しいものです。)


「…ごばッ、!!」

 

 

明暗を繰り返す意識の中、強烈な血の匂い。

目の前に広がる腹先に、【破裂した臓物の鮮紅血】。

 

記憶が遠ざかり、感情が近づいてくる。

止まった脳に傷ついた血流が周り、思考が開始する。

遅い痛みと共に、耳元で通信音声が徐々に聴こえて。

 

 

 

 

『ちょ、ちょっと、空さん!? 逃げて!』

 

 

沢村さんの通信が聞こえる。…遅れて。

エンストした脳を繋ぎ直して、意識にリンクさせる。

 

 

恐らく、"確かに倒したはずのヤツ"が、

私の腹を後ろから掻っ捌いている。

…痛覚と共に視界は嫌なほど明るくなり、

頭が醒めて、耳が冴える。状況が視えてきた。

 

 

理由はよく分からないが、なぜ、

「…1体だけ、倒せていない…か…?」

 

 

…考えるだけ無駄だ。

今できる事に集中しよう、それが最善の一手。

目標のトリオン供給器官、距離にして1m。

 

 

応射は可能だが、アイビスの射線をずらされて、

いらぬ被害を被る可能性が高い。

何より、"生身"の状態だ。…こういう時にこそ、

簡易トリオンナイフがあれば、不意打ちも簡単だが。

 

 

 

「・・・・・・!」

 

血を失い、もうろうと薄れてゆく意識の中で、

もう一度だけ「トリオンの戦闘体へ換装」を試みた。

 

……Trigger,transform.

......

...

Success.

【界境防衛機関としてのシンボル】を汲んだ、

番長を彷彿とさせる、大正時代のバンカラスタイル。

 

 

同時に、トリオン戦闘体換装時の特性として、

「ラービットの腕からズレた地点」に出現した。

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

びゅぅ、となびく風の音に、翻る外套の衣摺れ音。

 

時代錯誤な「大正風の学徒」の、静かに腕を組む姿。

 

着古されて破れたように見える黒服に、

黒く周りを寄せ付けない重圧なマント。

ズボンの下から覗かせる、粗末な木の一本下駄。

 

 

そして、学生帽と…右目に何重も巻かれた白き包帯。

 

 

沢村 『無茶よ! いくらトリオン体に戻っても、死に急ぎよ!』

『嵐山隊を向かわせてるから、今は退いて!』

 

 

ラービット「…!」

 

「…ふんっ。」

 

 

沢村補佐の通信を気にも留めず、直立不動のまま、

 

振り返る。…ラービットの血に染まった右腕が、空へ…

 

 

"空の左側へと、軽く捌かれた。"

 

 

 

 

 

 

軽く捌かれてしまったその右腕は、

地面に突き刺さり、相手も分かったようにすぐ引き抜く。

 

 

互いに睨みを利かせ合う中、ジリジリと擬音が聴こえてきそうだ。

…ラービットから動いた。

 

距離を詰めつつ、両手で攻守の構えを取る動きに対し、

番長スタイルの空は腕を組んだまま、突っ立っていた。

 

 

構えを取らず、されど「咄嗟に動ける」自然体は、

回避にとても適しており、反撃の機会を望める。

"衝撃を受け止める防御"にはあまり向かないが…

 

 

「…脆いッ!」

空はラービットが突き出した右腕を文字通り、

 

 

一本下駄で"右腕ごと蹴り飛ばす"。

間髪入れず、背後に【エスクードを展開して】、

右手に【固定したシールド】を展開し、

…ラービットのトリオン供給器官ごと打ち砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

トリオンの煙が上る直前に到着した嵐山隊はただ、

空のその戦闘スタイルに畏怖を覚えるだけだった…

------

沢村の警告や嵐山隊の心配をよそに、

空は何も言わず、お得意の鋭空間のテレポート能力で

その場を後にする。

 

開発本部の「トリオン医療部門」に一人で訪れる。

 

…前の世界では「トリオン体化」、

いわばサイボーグ手術に等しいレベルまで進んでいたが、

この世界のトリオン医療技術は、果たしてどうか……。

 

 

「(…血を失い過ぎたか、トリオン体でも頭が回らん…)」

 

 

傍目には何とも見えないが、

生身の身体は多量失血と臓器破裂の重篤状態。

 

 

だんだん覚束なくなり、トリオン体がチラつきだし、足取りがおかしくなっていく中…扉を開けて、中に入る。

 

 

 

---

ここはトリオン技術を医療、生体研究に転用する部門エリア。

開発部門の小さな、しかし重要なトリオン医療部門だ。

 

 

現役の医師、歯科医師、看護師、生化学研究者などからなる、

生身への医療技術のスペシャリストからなる、

30名のこのチームは、延命処置まで確立させている。

 

 

医療チームに所属する[橋下 文雅]は、

ボーダー創設期から入る救急医療科の看護師だ。

 

初めはボーダー専属の准看護師として採用され、

才覚とその献身性から期待されて職員として所属した。

4年前こそ、常に物もトリオンも不足し、

トリオン医療技術が不確定で血に染まる事もあったが、

 

今では手順も方法も確立され、治療期間も短くなった。

生身の状態で四肢欠損や臓器の代替えは不可能だが…

 

多量出血による出血性ショックや、熱中症の治療、

また軽微な怪我の回復が見込めるようになっている。

重症患者や救急搬送の対応にも備え、夜間組も居る。

 

 

 

 

…トリオン医療部門の自動スライド扉が静かに開いた。

おぼつかない足取りで、だがトリオン戦闘体の…

 

橋下「うん? どうさ……ちょ、ちょっと!?」

 

 

トリオン体が解け、腹部が大きく裂かれて腸が露出し、

ポタポタと血が垂れ落ちていく空が崩れ落ちるまま、

そのまま意識を手放す。

 

 

ここで彼の記憶が途切れたようだ。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

RE第12話 [孤独な偽善/密かな身支度]

[ボーダー医療チームの看護師、橋下 文雅の回想]

 

 

私は俗に貧血と言われる、虚弱体質の体だった。

 

幼い頃は言われるままに、いい子を演じてみた。

だけど、無意識のうちに心を歪めてしまうし、

疲れに気がつかなくて豹変したかのように、

周りの見る目が途端に様変わりする。

 

皮肉にも、親もそんな私に呆れた。

みんな、初めからワガママなんだ。

自分が一番で、他人なんて、自分が生きる為に演じて、

作り上げた仮面を使って、理性という檻で閉じ込める。

 

 

私には「社会」が理解できなかった。

けれど、物事を覚えることだけは得意だったから、

お世辞や他人の求めてる感情を察してそれとなく動けた。

 

 

この看護師の仕事だってそうだ。

親の言う通りに。学校の先生の言う通りに。

家庭教師の先生や、ゼミ講師の言う通りに。

 

だけど、本当に私は何がしたいんだろう?

全部、「他人のせい」にしつつ、「言われたまま」に、

偽物の夢を語って、希望なんて抱かずに生きてきた。

 

…貧血だったからのだろう。

昔っから、自殺を何度も抱いた。希死念慮、鬱、死。

リストカットや飛び降りとかしたから、自然と医学の道に興味も抱いた。

 

 

…だけど、疵だらけの躯で、憂鬱に卑しく溺れる私に、

思いがけないキッカケと偶然を与えてくれた。

 

 

【ネイバーがもたらした三門市の惨劇】

 

 

県外にいた私は、軍や国、NPO法人、

国境なき医師団が活動するそのニュースを見て、

私は確信した。…戦場に身を預けたいって。

 

 

でも、私は戦える体じゃない。

体が弱いだけじゃなくて、要領が悪くて、

動けるようになるまで人一倍、すごく時間が掛かる。

 

 

そんな私にどんな武器があったって?

…今まで知ってきた、止血の仕方と血管の傷つけ方。

今では自殺癖は昇華して、救命の意思に変わったの。

 

 

私のささやかな祈りは、誰かの為の癒しのために。

命は救えなくていいの。ただ、安心させられればいい。

だって、私はずっと寂しかったんだもの…

---

 

 

ここは見慣れた?病室の天井。

白く清潔なベットの上で、空は横になっていた。

 

空の腕にはいくつものチューブが繋がれ、

輸液や輸血液パックがいくつも垂れ下がり、

よく見れば脚側…どうやら、腹辺りにも管が見えた。

 

 

「おはようございます。お目覚めになられましたか?」

 

 

聞きなれない、いや聴いたことの無い女性の声色だ。

もう忘れ果てるほど、長いことボーダーには居るが…

 

 

「…良かった、もう死ぬか生きるかの瀬戸際だったんですよ?」

 

 

 

…ここはどこだろうか。

確か、あいつらとやり合っていた時に、後ろをやられて…

 

 

「…ええ。そうです。空さん。」

「もう臓器がぐちゃぐちゃで、ほんとうだったら、」

「もう現場への復帰不能なレベルだったんですよ?」

 

…そうか。三雲たちと三輪隊はどうなった?

 

 

「そんな急がなくても。…大丈夫、みんな無事ですよ。」

「迅さんが一枚噛んでいて、三輪隊のみんなは負けてしまいましたが…」

 

 

…そうか。

 

 

体を起こそうと上体を動かす。

…ピリッとした痺れを感じるが、問題ない。

 

 

「あぁっ、ダメです。安静に。」

「容体が安定していますけど、無理しちゃダメです。」

 

 

うら若きボーダー装飾の看護師に寝かしつけられる。

 

 

「…無茶しちゃダメですよ。命あっての物種なんですから。」

 

 

…分かった上で、無理をしないといけない時があるのさ。

 

 

「うーん、それはちょっと分からないですね…」

「とにかく、精密検査をするまでは動かないこと。めっ。」

 

 

分かった。…今は何日だ?

 

 

「え? ええ、15日ですよ。」

 

 

…一日寝ていたようなものか。

 

 

「そうですね。…死んでもおかしくない状態だったのに、」

「ほぼ完治してしまうなんて、ありえない事なんですが…」

 

 

……。

 

 

「うーん、きっとトリオンの特殊体質だからなのでしょう。」

「羨ましいですよ。私にはとっても。」

 

 

彼女はにこやかに、私の手を取って囁きかける。

…まぁ、特にすることがあるわけでもないが、

夕方には「三雲たちと顔を合わせておきたい」。

 

…それと、もう一つの能力に目覚めたようだ。

それが影響してか、今までの「視点」と、かなり違ってみえる。

 

 

…【スキャニング(走査視)】。

 

 

 

 

全て、今の私に見えているもの全てが、

可視化された映像を注視すると、【数値化】されて見える。

 

不可視である抽象的なものですら、恐らく看護師の、

「彼女の心?」が、XYZTの4次元座標が、観える。

 

 

「…? どうかしました?そんなに私を見つめましても…」

 

 

…頭が少し痛い。

ちょっと、鈍い感じが、する。

 

 

「え、ちょっと待ってくださいね…?」

「かなり高熱ですね。先生を呼びますから。…大丈夫。」

 

さっと取り出した赤外線式体温計が示す数値は、

40度だ。普通なら慌てふためくと思うが、…うーむ。

4つの2,3桁に忙しなく変動する数値では、さっぱり分からん。

 

 

…だが、言える事がある。

自分の体を意識した所、「バイタル数値」のような、

感覚的に分かりやすい数値が観えたように感じた。

 

なるほど。強く意識すれば、数字の意味を限定できるわけか。

とすると、今の体の血管内数値…そういうことか。

 

 

 

ふと、目の前の看護師の「心理」を捉えてみる。

彼女は冷静に振舞っているが…ほほう、

冷静を装っているのか。なるほど、実に分かりやすい。

 

 

 

「先生。空さんの容体が変わりました、」

悪性高熱で頭痛を訴えております。」

 

(…理性、感情、論理、人格のうち、感情の数値が高いのは、そういうことか。)

 

…ほほう。

男の医師の方はやはり、感情の数値は低いな。

となるとこのナース…首かけネームから「橋下」さんは、

けっこう感情的なタイプなのだろう。

…今は流石に疲れてるから、過去を視る気にならないが。

 

 

…しかし、私自身の時の状態は見れなかった。

前提条件や定義の定まらない場合、数値の挙動がおかしくなる。

 

 

 

 

その後、空に下された高熱の頭痛は、

「サイドエフェクトによる脳の過負担の発熱」とされた。

またトリオン検査の結果、「臓器は青く変色し、

高温状態、破裂したままになっているが、機能は正常」

であり、最も特異性が認められた、

 

【チアノーゼによる酸素不足と思われたが、

全く別の"青い粘液状の血液"が循環する様による現象】

 

であった為、調べても酵素が含まれているとしか分からず、

身体機能としては正常なため、更に謎が謎を呼び、

医療チームに疑問が深まるばかりであった。

 

 

…トリオン機器による精密検査が終わった昼前、

空は医療チームの制止を聞かずに、勝手に、

 

開発部門の寺島チーフの所へとテレポートしていく。

 

 

 

 

橋下「…あっ! ま、待ってて、って言ったのに!」

---

寺島チーフの"いつもの作業部屋"にまで来た。

もちろん、今の姿は白の患者服のまま。

 

 

その様子に驚いている寺島をよそに、

私は"とあるトリガーの開発"の依頼を持ちかけていた。

 

 

 

寺島は黙ってメモ帳にペンを走らせ、

…それから、ようやく口を開く。

 

 

寺島「…"簡易トリガーで戦う"なんて、正気かい?」

「確かに、無いよりはあればいいけども…」

 

空 「ああ。…色々考えがある。」

「生身でも、私の能力だからこそできる事だ。」

 

寺島「空さんができる事、…って?」

「まさか、テレポートとか言わないですよね。」

 

 

空 「そのまさかだな。私の能力は"転移"、」

「…つまり、物を飛ばして攻撃も出来る。」

 

 

寺島「うーん…じゃ、どのぐらい有効か、調べさせてよ。」

「実データから研究して、それから見繕うよ。」

「なら、一つ、僕からも頼み事いいかい?」

 

空 「ん、頼み事か。」

 

 

寺島「うん。君の特殊なサイドエフェクト、」

「"空さんは能力"って呼ぶけど、その転移能力。」

「ボーダーに実装したら強いし、転用させてもらってもいいかい?」

 

 

空 「あぁ、わかった。…ところでアレ、進んでるか?」

「旧式トリガーホルダーの"デバイス"のアレだ。」

 

 

寺島「あぁ、トリオンハンマーと停滞トリオンボールだね。」

「進んでるよ。他に何か追加しておくかい?」

 

 

空 「そうだな…それなら、」

「"ハンドガン用のストック"を用意してくれないか?」

 

 

寺島「ハンドガンにストック?」

 

 

空 「あぁ。スチェッケンのような、ホルスターにもなるやつだ。」

「ギムレットとするなら、ライフル代わりにもしたくてな。」

 

 

寺島「…分かった。それも作ってみるよ。」

 

空 「よろしく頼む。…後は時を操作出来るようなトリガーも欲しいんだが…」

 

 

 

空と寺島チーフの長きに渡るトリガー相談が終えた後、

仮装トリオン空間内で「空のテレポート/アポート」

が精密に測定、実験された。

 

その十数分後に、医療チームの橋下にこっぴどく叱られ、

開発部門のルームを後にするのであった。

 

 

これが後のテレポーター(試作)への開発の糸口へと、

空は繋がると知った上で部屋を後にした…



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。