食戟の守護者 (シエロティエラ)
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 ◎幸平創真(衛宮士郎)

 

 正規英霊となった衛宮士郎の代役も終わり、世界から解放された元守護者エミヤ。そのまま消滅するはずだったが、悪戯好きの魔術師の配慮? によって「食戟のソーマ」の世界に憑依転生することになった。調理技術は生前、契約後そのままのため、原作ソーマよりも格段に高い実力を持つ。ただ、自身の生れ落ちると同時に城一郎に現れた令呪によって、実力を縛る戒めを付けてもらっている。

 魔術回路は生前契約後そのままのため、再び固有結界、魔術が使える。しかし、世界が戦闘とは無縁のために現在は包丁を投影したり、食材を解析するのにとどまっている。それでもチートであるのは仕方がない。チョンボしてでも美味しい料理を作りたいからとは本人談。

 

 家族構成は父親と妹イリヤ、母親は死別。原作同様「食事処ゆきひら」を経営している。経営状況、周囲環境も原作と変わらず。調理の際は「ゆきひら」の黒シャツに真っ赤な腰布、真っ赤なハチマキをつける。幸平創真の服装で、白い部分が赤に変わったのみ。尚、令呪を解かれて本気になると、別の装いを身に付ける。

 城一郎との料理勝負の戦績は450敗39勝と、原作と違って白星もある。

 

 〇ステータス(FGO記載、エミヤのステータスより抜粋)

 

 ・筋力D、耐久C、敏捷C、魔力B、幸運E、宝具?

 

 ・心眼(真)B

 修行、鍛錬によって培った洞察力。

 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場に残された活路を導き出す戦闘論理。逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。本作では料理勝負などで真価が発揮される。

 

 ・投影魔術C

 道具をイメージで数分だけ複製する魔術。彼の場合は固有結界から零れ落ちたものであるため、本人が破棄するか、修復不能になるまで破壊されるまで消滅することはない。

 

 ・無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス):ランクE~A

 固有結界と呼ばれる特殊魔術。術者の心象世界を現実世界に浸食させ、具現化させる魔術。

 本作品では他人に対して使うことはない(予定)。

 

 ・令呪の戒めS

 自身の年齢にそぐわぬ技量を縛るために、自らに課した縛り。これによって技量は原作ソーマ並みに落とされている。しかし発想力や応用力はそのまま。城一郎の明確な意思によって、その戒めは初めて解かれることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◎幸平城一郎(衛宮切嗣)

 

 士郎に看取られた後、輪廻転生の果てに食戟のソーマの世界に生れ落ち、才波城一郎として生きることになる。この世界に生まれるまでに、あらゆる世界の自分の経験を共有したことにより、エミヤの正体、グランドオーダーの自分、プリズマの自分のことを知る。記憶、経験そのものは切嗣であるが、城一郎としての側面が強い。イメージでいえば、才馬城一郎の前世が切嗣で、そのことを覚えている状態。

 料理技術は城一郎と同レベル。ただし、原作城一郎が経験した挫折はない。原作での失踪期間では、元の切嗣と同じ傭兵として活動していた。その過程で亡き妻アイリと出会い、創真(士郎)を授かる。妻はその後、定食屋を開いたときに交通事故で死別、定食屋をシロウと二人で経営する。

 理由は定かではないが左手の甲に令呪が宿っており、現在一画使って創真に戒めを課している。尚戒め自体は創真の要望によるもの。

 

 〇ステータス《FGO記載、エミヤ(アサシン)より抜粋》

 

 ・筋力D、耐久C、敏捷A+、魔力C、幸運E(EX)、宝具B++

 

 ・魔術B

 魔術を習得している。翻って、魔術を知るが故に魔術師を殺す術に長けている。本スキルのランクは、本来であればキャスターとの戦闘時には各種判定のボーナスとして働く。

 現在このスキルの使い道は、傭兵稼業以外ではない。

 

 ・単独行動A

 本来であればアーチャーのクラス別スキルとなる。単身での行動に生前から慣れていた彼に与えられたスキル。マスターからの魔力供給がなくとも、最大で一週間程度の現界が可能となる。

 本作では無用の長物と化しているスキル。

 

 ・気配遮断A+

 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

 

 ・スケープゴートC

 戦場を生き抜く狡猾なテクニックの集合。生贄、身代りとしての意味を持つ。本作ではあまり使われない。

 

 ・聖杯(聖母)の寵愛A+

 何処かの時代の聖杯に、彼は深く愛されている。その愛は世界最高の呪いにも等しい。本スキルの存在によって、彼の幸運ランクは跳ね上げられている。特定の条件なくしては突破できない敵サーヴァントの能力さえ突破可能。ただしこの幸運は、他者の幸福を無慈悲に奪う。彼自身は本スキルの存在に気づいておらず、時折聖杯から囁きかけられる「声」も耳にしていない。

 また今世の妻の愛も加わっており、その加護は本当に世界最高峰の呪い級まで強化されている。

 

 

 

 

 ◎幸平イリヤ

 

 創真の血のつながった妹、城一郎の娘。現在小学三年生。創真や城一郎とは異なり、転生はしていない、純粋にこの世界に生れ落ちた魂のイリヤ。ただし、ステイナイトやプリヤのイリヤの、並行世界の同一人物。キャラ設定としては、プリヤのイリヤが全く魔術に関わっていないものに近い。イリヤが五歳の時にアイリが亡くなったため、性格はプリヤよりも落ち着いている。

 料理の腕は実家が定食屋なこともあり、小学生基準で考えればできるほう。レシピを見て、多少時間を掛ければ大概の料理は作れる。包丁の扱いは、創真と城一郎に仕込まれているため、同年代より格段に扱うことができる。本人はデザート作りを得意とし将来は「食事処ゆきひら」に、洋菓子デザートもメニューに加えることを計画している。

 今作では、倉瀬真由美よりは出番がある予定。

 

 



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0. プロローグ



 なんか新作が出来たので投稿します。正直自分でもあまり見たことないクロスなので、どう書いていこうか、悩みながらやっております。

それでは皆様ごゆるりと。





 

 

 

 守護者時代とはうって変わった平和な時間、男は今まで擦り減らしてきたものを拾うように、己の内が満たされていくのを感じた。そして今、自身の体が透け始めているのが理解できる。足から順に感覚が無くなり、まるで現界を終えるサーヴァントのように崩れていくのがわかる。

 

 

「……いってしまうのですね」

 

 

 ずっと傍らにあり続けた、黄金と青の少女が口を開く。わかっていた別れだが、それでも悲しんでしまうのは人の性か。

 彼女の向こうに見える雲海からは、ゆっくりとだが歯車が落下しているのが見て取れる。それに伴い、少しではあったが存在した緑が、徐々にこの世界を満たしていくのも見て取れる。傍らにある剣には蔓が巻き付き、小さな花が咲いていた。

 

 

「……これで私もお役御免か。実に長かったが、最後に君と過ごせたのは私にとって素晴らしい時間だった」

 

「シロウ……」

 

 

 目の前の少女が目を伏せる。座の主が変わり、魂は同一とするものが来るだけである。が、どちらかが消えるのではなく、協力して存在する道はなかったのか。同じ魂を持っていても、全く別の存在として成り立つことはできなかったのか。何度考えても未練を残してしまう。

 しかし当人はもう満足とばかりに、纏っていいた白いマントも脱ぎ、はめていたグローブも抜き取り、身に纏うは黒いインナーとズボンのみだった。戦う兵装はもう身に付けていなかった。

 

 

「セイバー、私を頼む」

 

 

「え?」

 

 

 優しくかけられた声に少女が顔を上げる。その目に映った男は、生前でも浮かべたことがないかもしれない笑顔を浮かべていた。

 

 

「私を頼む。知っての通り、私よりも危なっかしい奴だからな。凛や桜、イリヤと共に支えててやってくれ」

 

「シロウ……わかりました、任せてください。セイバーの名において誓います。」

 

「ああ、安心した」

 

 

 男がそう言うと共に、男の後ろから一つの足音が近づいてきた。男は振り返り、そこにいた三人目の人物に目を向けた。

 

 

「……やれやれ、世界が違えばここまで変わるとはな」

 

「それはこっちのセリフだ。だが……お疲れ様」

 

「ふん、ではオレは永い休暇に入るとしよう」

 

 

 そういった男はその手に白黒の双剣、彼らの代名詞ともいえる夫婦剣を投影し、瓜二つの青年の前に突き刺した。

 

 

「餞別だ。とっておけ」

 

「俺の夫婦剣とお前の夫婦剣、見た目と構造は同じだが、重ねてきた年月と経験が違うからな。俺のも渡そう」

 

「礼は言わんぞ」

 

「お互い様だ」

 

 

 最後まで軽口を叩く二人は、以前まで殺し合いをするような間柄だったとは思えなかった。寧ろ同一人物というより、兄弟や好敵手と言った表現がしっくりくるようにうかがえた。少女もそれを察したのだろう、目じりに涙を溜めながらも、二人を微笑みながら見つめている。

 

 

「ではな、精々未熟者らしく頑張るといい」

 

「抜かせ、オカンが」

 

 

 その応酬を最後に、男は完全に消えていった。完全に消失した場所には一組の夫婦剣しか刺さっておらず、青年が渡した剣は持っていったことが窺えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後に小僧に言いたいことを言い、視界がブラックアウトする。じきに消滅するだろう。全身を襲う浮遊感に身を委ね、何もない空間を漂う。

 暫くそうしていると、何やらこちらに話しかけてくるものがあったが、無視してそのまま漂っていた。暫く何やら呼びかけられたのだが諦めたのだろう、声が聞こえなくなった。安心したのも束の間、何やら吸い込まれる感覚に襲われた。消滅するのかと思ったが、どうも違うらしい。海流に呑まれるかの様に体が抵抗できずに吸い込まれる。

 

 

「じゃあ第二の人生、楽しんでおいで。押し付ける形になったけど、話を聞かない君にも非があるよ。まぁ悪いことはない、あの子に人としての喜びを教えてくれた君だからね」

 

 

 最後に聞こえたのは男の声と杖の鳴る音、見えたのは鮮やかに咲く花と真っ白な髪だった。

 

 次に体を襲ったのは、非常に窮屈であるという感覚。狭い場所、何やら液体のようなもので満たされいている暗く狭い場所に閉じこめられている。外から何やら声が聞こえるが、こっちはそれどころではない。いきなり閉塞空間に入れられたのだ、戦場を渡り歩いても多少パニックになる。

 暫く、といっても体感時間5時間ほどだが、ついに頭が広い場所に出た。続いて肩、腕、尻、足の順に閉所から出てくる。体は動かし辛く、信じられないが誰かに抱えられている。大の大人を抱きかかえるなどと思ったが、どうも様子がおかしい。

 

 

「奥さん、生まれましたよ!!」

 

「お父さんも、よかったですね!!」

 

 

 そんな声が聞こえてくる。どうも誰かが生まれた。そして場の状況を察するに、その生まれた赤子とはどうも私らしい。信じたくはないが、未だぼやける視界でどうにか鏡を見つけ、確認したから信じるほかなかった。ついでに言えば容姿は元と似ており、白髪に軽く日焼けした肌、虹彩は利休白茶(りきゅうしらちゃ)色をしていた。虹彩はじきに鈍色へと変わるだろう。

 

 

「それにしても、この子泣かないですね。まさか……」

 

「そういえば、まだ産声を上げてない……」

 

 

 そんな声が聞こえた。ぼんやり見える母らしき女性の顔も、何やらショックを受けている様に見える。だが体は子供でも、大きく泣き声を上げることに抵抗を覚えた。だから私は産声を上げる代わりに、その女性に向かって拙い動きで腕を伸ばした。女性もそれで察したのだろう、恐る恐る私に手を伸ばし、私を抱きかかえた。

 改めて女性を見ると、いやはや、一度だけ切嗣の写真を盗み見た見た覚えがあるが、イリヤの母親にそっくりだ。顔を傾けて父親らしき男に目を向けるが、切嗣とは全く似ていない男がいた。

 肩までかかる長い茶髪を結ばずにオールバックにし、こちらを優しそうな目で見ている。しかしその奥に、鬼神のごとき熱を内包しているのが見て取れた。

 

 

「産声こそあげてないが、大丈夫そうだな。アイリ、ありがとう」

 

「ええ。城一郎と私の、初めての子供」

 

 

 夫婦で話をしているのが聞こえたが、私は驚き、目を見開いてしまった。父と名乗る男、城一郎の声は切嗣と瓜二つだったのだ。だから私は思わずつぶやいてしまった。

 

 

「ぃいあん(爺さん)……ぃいうぅ(切嗣)……」

 

 

 無論赤子の体なので舌も回るはずがなく、母音の身での発音となった。しかしそれでも伝わったのか、城一郎は私同様、目をこぼれんばかりに見開いた。

 

 

「まさか……し……」

 

 

 彼が何を言わんとしたかわかる。そして今の言葉でわかった。城一郎、魂はどこかの世界で私に出会った切嗣が転生したものだと。わかったからこそ私は必死に口を開いた。もしかすると彼は彼女に、イリヤに会えなかったかもしれない。だから少しでも安心させようと、拙い舌を回した。

 

 

「ぃいあ(イリヤ)……あぃおう(大丈夫)……ぃああぇ(幸せ)……」

 

「ッ!? そうか……そうなのか……」

 

「どうしたの城一郎? この子も、いったい何を……」

 

 

 私の想いを理解した城一郎(きりつぐ)は声を詰まらせ、顔をくしゃりと歪ませた。母、アイリは状況を理解できていないが、城一郎は私の手を優しく握り泣きながら何度も「ありがとう」と小さく呟いていた。奇しくも彼に救われた状況と同じような感じになったが、此度は依然と異なるものであった。

 そんな彼を母はゆっくりと片腕で抱きしめ、もう片方の腕で私も優しく抱きしめた。イリヤは雪の精の様だと思ったが、母はまるで聖女の様だと思ってしまった。

 母も貰ってしまったのだろう、静かに嗚咽を漏らす城一郎と共に涙を流した。私も、産声こそは最後まで上げることはなかったが、自分でも気付かぬうちに、悠久の時の経て、枯れたと思っていた涙を流した。

 

 

 

 






 完結していないのものが多いのに、新しいものを書き始めるのは、我が事ながらいただけないですよね。そんな奴は腹筋するほうがいいでしょう。 
 というわけで新作です。ソーマとエミヤのクロスですが、完結は連帯食戟、若しくは秋の選抜までかと思っております。

では皆さん、次回はハリポタでお会いしましょう。


さて、腹筋しなきゃ。



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入学編
一ノ皿.:はじまりは唐突に





第一話。原作でもそうですが、一番初めの頃は、余り話が進まないですよね。
それではどうぞ。




 

 

 

 

「士郎、遠月に行ってみないか?」

 

 

 城一郎(オヤジ)にそう聞かれたのが、何度めかもわからぬ料理勝負のあと、店も閉じて明日の準備をしている時だった。今回はチャーハンで勝負をし、同級生の倉瀬さんと現在小学生のイリヤ、それと「食事処ゆきひら」も名を連ねるすみれ通り商店街の現商店会長、富田友哉氏を加え、三人体制で勝負を行った。結果は敗北、父のほうが一枚上手だったということだ。

 それは兎も角、イリヤは既に就寝に入っており、現在起きているのは私と城一郎だけである。因みにいうと、私の容姿は令呪で縛った際―正直もう一度見たいとは思わなかったが―元の赤毛と肌に色が戻っており、イリヤもその私しか見たことがない。

 

 

「それで、その名で呼ぶということは、何か重要な問題があるのだろう?」

 

「察しがよくて助かるよ。実はね……」

 

 

 城一郎は私限定で真面目な話になると、彼の前世、切嗣の様な口調になる。これも、お互いが生前、前世で深い関係にあったことも関係しているだろう。イリヤに対しては、普段のおちゃらけた態度と溺愛ぶりだが。

 で、何故私が遠月への入学を勧められているのか。深いところはまだ話せないが、どうやらそこの総帥から個人的に頼み事を幾つかされたらしい。遠月はそこらの料理学校とは一線を画する。そこでは完全なる弱肉強食。そこで実力の見合わない生徒は篩をかけられ、退学という道を辿ることになる。料理の道を行くものは、そこに入学するだけでも箔がつくといっても過言ではない。

 それで肝心の総帥の依頼だが、どうやら城一郎はその中でできないものがあったようだ。しかしその出来ないものは、私が引き受けてくれれば、達成できるという。その一つが、遠月への入学だそうだ。

 

 

「理由は分かった。その際店を一時休業にすることは否めないだろう。だがイリヤはどうする?」

 

「それは大丈夫だ。俺についていくか、申し訳ないが倉瀬さんの家が下宿OKを出している。ただ、お前が承諾しなければ、このまま家に二人で過ごすことになる」

 

「……イリヤはなんと?」

 

「あの子は……お前の意志を尊重するそうだ。まだ小学生のイリヤに我慢させることは心苦しいが、今回ばかりは背に腹は代えられない事態なんだ」

 

 

 さて、非常に考えさせられる。私としては、イリヤを下宿させるのは、倉瀬さん宅とはいえ、余り了解を出したくない。かといって城一郎に連れられるとなると、最悪転々と移動を繰り返すだろう。せっかく今の学校で友が出来たのだ、引き剝がすわけにはいかない。

 

 

「……一つ手がないことはない。」

 

「何だい?」

 

「余り使いたくはないが、ここに住んだまま私が遠月と往復するか。それか私が寮で一緒に住み、毎朝送り迎えするか」

 

「……言っておくけど、遠月の敷地はかなり広いよ? 総帥なんて車で移動したりすることもあるし」

 

「……そこは私の本気でどうにかする」

 

 

 結局話はつかず、翌日イリヤを交えて話し合い、倉瀬さん宅にお願いすることになった。非常に心苦しいが、こちらも渋々納得する。ただし、出来るだけ週一で家の掃除に戻り、顔を合わせるということで決着がついた。

 

 

「……すまないイリヤ。こんなことになって」

 

「ううん、大丈夫だよお兄ちゃん。私知ってるもん、お兄ちゃんは優しすぎるぐらい優しいこと。頼みごとが断れないことも」

 

「……イリヤ」

 

「でもちゃんと帰ってきてね? 私、お兄ちゃんとお父さんが頑張っている間、料理の練習して待ってるから。」

 

 

 強がって入るけど、まだ小学低学年。浮かべる笑顔とは反対に目じりには涙がたまっている。それを放っておくような愚行は、此度の私と城一郎はしない。二人でイリヤを抱きしめ、それぞれの荷物を持って出発した。後ろで手を振る倉瀬一家とイリヤに返しつつ、角を曲がった私たちは一気に走り出す。

 早朝の人通りのない商店街ならば、魔力の身体強化も最大限で行動できる。今の私と城一郎のスピードは、F1並みは出ている。一般人では目に捉えることは出来ないだろう。

 私はそのスピードを保持したまま、遠月までの最短距離を一気に駆け抜けた。さて、入学試験を受けることになるが、何をするのやら。

 

 

 

 







はい、ここまでです。
原作ではMOBによる地上げと、その撃退のための料理場面がありましたが、本作では飛ばしました。如何に令呪で縛られているとはいえ、原作ソーマでもその場の機転で撃退できましたし、する必要はないと判断しました。

次回は例の入学試験です。お楽しみに。



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二ノ皿:編入試験



予告通りの更新です。
今回はサブタイ通りの編入試験の話です。原作展開と薙切えりなの様子が少し違いますが、出来るだけ忠実になるよう描写したつもりです。

とはいえ、相手が純粋な創真じゃない以上どうなることやら。




 

 

 

 遠月茶寮料理学園、通称”遠月学園”。

 中東部と高等部各三年制のの料理学校であり、日本屈指の名門料理学校である。所謂料理界の「虎ノ門」と言っても過言ではない。少数精鋭教育を行い、そのためか毎年の卒業生は数人ほどだという。

 ここまでくると当然退学率も非常に高くなるのは想像に難くないだろう。しかし、最早異常とも受け取れる遠月の実力主義だがそれ故か、「在籍したという履歴だけでも料理人としての箔が付き、卒業すれば料理界における絶対的地位が約束される」とまで言われている。まぁ私自身話に聞いているだけで、本当と所は知らないが。

 

 しかしまぁその編入試験をこれから受けるわけなのだが、右を見ても左を見ても良いところの御坊ちゃん御嬢ちゃんばかりである。中には研磨を積み重ねてきただろうと見て取れる者もいるが、殆どが左程厨房には入っていないだろうことが、手を見ればわかる。包丁を握ったり、食材を扱ったり、熱い調理具を持ったりとでできる、ちょっとした皮の厚みなどが、薄いものが大半だ。いや、もしかするとそう言った料理を提供していないという店の可能性もある。安易に決めつけるのは良くないだろう。

 しかし現に私に絡んできている少年は、自らの実家がいかに高級料理店であるか。私の実家である大衆食堂とはどれほど異なる次元に存在するかを、それはそれはまるで自分の手柄のように話している。話しては私を見下しているのだが、はてさて、その地位を築くために一体彼の親やその前がどれほど苦労したのか、まるで理解していないのだろう。

 

 考え事をしていると、何やら会場内がザワザワと騒がしいことに気が付いた。やれやれ、どうにもこの世界に生れ落ちてから気が抜けているらしい。私が人の気配に気づかぬほど考え事をするとはな。

 考え事を一度切り上げて顔を上げると、何やら一人の、いや二人の少女が増えていることに気が付いた。片方は腕を組み、もう片方は何やら書類を腕に抱え、まるで秘書然としている。腕を組む少女はまるで金糸や絹の様な滑らかさがうかがえる色と質の髪。十人中十人が振り返るであろう美貌に抜群のプロポーション。しかし一番目を引くのが、まるで冷水の様な冷たささえ感じる目で合った。成程、写真で見たことはあるが、彼女が彼の「神の舌」を持つという薙切えりなか。

 

 するとここで受験生が一斉に退出し始めた。どうやら薙切嬢は卵で一品作り、舌を満足させろとのこと。どうやら今回の試験管の仕事に不満らしい。というより、どうにも自分以外を見下している感じがしないでもないが。

 

 

「こちらの食材は自由に使っていいのか?」

 

 

 口調を不本意ながら、あの未熟者の様にして問う。私の言葉にようやく残った受験生がいることに気づいたのだろう、一瞬ではあるが驚愕した表情を秘書の娘と二人して浮かべていた。

 

 

「ええ、卵とここにある食材を使い、私を満足させる一品を作りなさい。制限時間は一時間よ」

 

「……承知した。では暫しお待ちいただこう」

 

 

 彼女の承認を聞き、私は頭に真っ赤なハチマキを、腰には紅のエプロンを結び着ける。卵は使うとわかっているため、残りの食材を観察する。それによって分かったのは、どうやら()()()()()()()()()()()()ということ。一般市場に出回るような食材は一切ないようだ。

 はてさてどうしたものか。メニューは幾らでも思い浮かぶのだが、高級食材ばかりとなると少々難関である。庶民の食材だからこそ成せる調理もあり、そうなるとここで作れるメニューも限られてしまうのだ。

 

 

「どうしたの? 早く調理なさい」

 

 

 薙切嬢がいら立つように声をあげる。事実いら立っているのだろう、隣の秘書の娘もこちらを不機嫌そうに見つめてきている。

 

 

「さて、何を作るか考えていたものでね。失礼した、すぐに取り掛かるとしよう」

 

「貴様!? えりな様に対して何という物の言い方を!!」

 

 

 何やら秘書の子が喚いているが、彼女に構う時間はない。作る料理を決めた私は、食材を手にとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 乗り気じゃなかった試験監督の仕事。さっさと済ませるために内容を少々変更し、受験者を一気に減らすようにしむけた。結果は上々、全員が腰抜けで退場したと思っていたけど、一人だけ受験者が残っていたことに驚いた。

 名前は幸平創真、出身は商店街の大衆食堂で家族は妹と父親のみ。何やら昔父親に連れられて世界を回っていたらしいが、詳細は記入されていない。しかし大衆食堂出身ならば実力も作る料理もたかが知れているだろう。対して期待する必要もない。

 

 そう思っていた。

 制限時間まで残り十五分というところで美味しそうな香りが漂ってくる。正直いうとここまで食欲を誘う香りは今まで嗅いだことがない。米の炊きあがる香り、何かを煮込んでいるのか、出汁と調味料の香りが部屋を満たしていく。しかしそこまで来ても私は彼が何を作っているかわからなかった。

 

 

「幸平……創真君でいいのかしら? 貴方は何を作っているのですか?」

 

 

 私がそう問いかけると、今度は彼が驚いた表情を浮かべた。まるで私の言うことがわからないとでも言うように。その表情が何故か私を馬鹿にしているように感じ、非常に私をいらだたせた。

 

 

「……ああすまない。確かにわからなくて当然だ」

 

「何ですって!?」

 

「いや、語弊が生じた。今作っているのは私の実家でも限られたものにしか作っていない品目だ」

 

「……」

 

「まぁ出来てからのお楽しみだ。そら、丁度米も炊けた」

 

 

 そう言いながら土鍋の火を止める。時間、加熱加減、どれをとっても私の知る最上の米の炊き方と相違ない。そして小鉢に入れているのは、つい先ほど私と質疑応答しながら作っていた炒り卵。中に何やら来い茶色いものが輝いているが、アレは何だろうか。

 

 

「幸平創真君、品目は?」

 

「ふむ、名前など考えたこともなかったが。そうだな、あえてこれに名を付けるとすれば、『幸平流化けるふりかけご飯』だな」

 

 

 品目名を聞いたとき、私は思わず唖然としてしまった。この舌を持ち、それに見合う技量を身に付けるべく努力し身に付け、食の上流階級の地位についた私の食べる品目が、「ふりかけご飯」だというのか。

 

 

「ふざけないで!!」

 

「ふざけてなどいない」

 

「ふざけてるわ!! この私に、そんな下等なものを食べろというの? もういいわ緋沙子、帰りましょう」

 

 

 私が帰ろうとすると、彼は盛大なため息をついた。まるで私を可哀そうな子でも見るような目つきで、哀れんだような目で私を見ている。その目が何故か私を引き留めた。

 

 

「えりな様? 如何がされました?」

 

「いえ、少し」

 

 

 私は緋沙子の問いに曖昧に返し、彼のほうに顔を向けた。

 

 

「……何か言いたいことでもあるの?」

 

「さて、ね。しかしどうやら試験官殿は私の料理がお気に召さないらしい。となれば、私は帰るだけだろうよ」

 

 

 まるで、いや確実に私を皮肉っている物言いに、何とも言えない憤りを感じた。現に彼は料理の皿だけを残し、片付けを済ませて帰る準備を始めている。もうこちらに興味がないとでもいう様な態度だ。

 

 

「では私は退出しよう。ふりかけご飯(ソレ)は煮るなり焼くなり、好きにするといい」

 

 

 彼はそう言って退出した。室内にいたのは私と緋沙子だけ、他には誰もいない。私は一瞬躊躇しながらも箸に手を伸ばし、ふりかけをかけて一口食べた。

 

 

 

 

 

 

 第92期編入試験、幸平創真、この者を合格とする。

 

 

 

 






以上です。
次回は例の演説ですが、さてどうしましょうか。流石に中身はエミヤなので創真のようなことはしないとは思いますが。

ではまた次回にお会いしましょう。




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三ノ皿:入学式



ああ~ハリポタを書こうにも、話の展開がどうにも上手くいかないです。
気分転換にと予告なしでこちらを更新した次第ですが、はてさてどうしたらいいものやら。

さてどうぞごゆるりと。





 

 家にて残った荷物をまとめ、シャッターを下ろす。しばらくはこの家に戻ることもないだろう。騒がしくも楽しかった数日前を思い出し、次いで自嘲するように笑みを浮かべる。生前はこんな当たり前を望まず、知己や愛した誰かの制止も無視し、戦場を駆け巡っていた自分が、まさかこのような日常を惜しむとはと。

 

 

「……必ず帰ってくるさ、あの子(イリヤ)のためにも」

 

 

 今頃城一郎はどこかの名店で料理をしつつ、ついでに戦場も駆け回っているだろう。せめて「正義の味方」を本気で目指さず、家族の幸せも視野に入れていることが救いか。

 そんなことを思いながら家を後にすると、商店街の向こうから、何人かの人影を確認した。早朝で本来ならまだ大多数が寝ている時間なのだが、誰だろうか。生来の鷹の目で確認すると、その人影は倉瀬一家とイリヤだった。全員が私服であることから、残りの荷物でも取りに来たのだろうか。ここで彼女らに見つかって長話になると、入学式に間に合わなくなるだろう。そう考えた私は、全速力でこの場を後にした。

 

 

「あれ? ……今の風はなに?」

 

 

「……お兄ちゃん」

 

 

 そのような声が聞こえたが、私はそれを無視して駆け抜けた。こんなもっともらしい理由を並べているが、結局のところ、私が気まずいだけだ。一人残すことになったイリヤに、顔向けできないだけである。

 無様な姿をさらしながらも、私は遠月の校門に辿り着いた。目の前にはトランプがらの派手なスーツの男が立っている。

 

 

「君が幸平創真君だね? こちらへどうぞ」

 

 

 そう言って案内されたのは、まるでよく大河ドラマなどで見る、戦国時代の作戦本部のような場所だった。というか、俗にいう全校集会のようなものは外で行うのだな、遠月は。

 暫く待機していると、段々と人が集まってきた。そして総帥の言葉やえりな嬢の演説など、プログラムを消化していく。そしてついにというべきか、私の挨拶が回ってきた。というか、実質を足しの挨拶が入学式最後のプログラムなのだが。

 

 

「尚、今年はなんと高等部に編入生が一名加わる。最後は彼の挨拶で〆としよう。では幸平創真、ここへ」

 

 

 とても老人とは思えない遠月総帥、薙切仙左衛門の言を受け、壇上に上がる。成程、皆が皆同年代の料理学校志望者と比較すると、比べることが烏滸がましいと言える実力は有しているのがわかる。だが、どうやら実力はあるが、厨房に立ったことがないのが殆どか。まぁ一目見た限りだし、実際は私の見当違いというのもあるだろうが。

 

 

「……紹介にあずかった、オレは幸平創真という。ここの卒業倍率と方針は話には聞いているけど、まぁそれは皆承知の上だろうな。そのうえでオレは言う、そんな事情は些末なこととな。十年、下町の定食屋とはいえ、現場で修練したオレの見解を言わせてもらおう」

 

「編入試験受験者にもいたが、みんなは基本大変質の良い食材ばかり扱っていただろう。それによって食材に不自由はなかったはずだ。ここまで言えば、現場を知るものは分かるだろう、店を働けばそんなことは当たり前ではない。本来あるはずの食材が無かったり、何らかの原因で本意でない大失態を犯すこともある。それによって絶望や挫折を味わうだろう。それでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「実家が高級料理店だの家柄が良いだの、遠月に入学しただの進級しただの、そんなものは現場では糞の役にも立たんし腹も膨れん。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。現場で求められるのは正確性と迅速性、適応力と応用力だけだからな」

 

 

 それだけを言い、私は壇上から降りた。一瞬遅れて盛大な野次と怒号、罵倒が鳴り響いた。そりゃそうだ、私が逝ったのは彼らのこれまでの研磨を全否定することだから。しかし私は自分が間違っているとは思わない。それは城一郎との武者修行(迷惑行為)を通して聴いている。

 数ある世界の名門料理店の板長や総料理長の弁では、「如何に遠月出身であろうと、現場に適応できなければ、それはただの迷惑だ。それならば素人や一般の料理学校出身者を雇い、一から鍛えたほうがいい」とのこと。全員が全員ではないが、遠月卒業生や入学履歴持ちは余計なプライドを持つものが多いそうな。

 

 

「所詮噂と思いたかったが、この現状を見るとな」

 

 

 目は口程に物を言うとは言うが、これでは口以上に語っているというだろう。嘆息しながら元の待機室に戻り、持ってきた荷物を纏める。今日からここの寮である、極星寮で私は生活することになる。まぁ入寮に試験があるらしいが、恐らく料理関係だろう。余程失敗したり、採点が厳しくなければ大丈夫なはずだ。

 ……さて、と。

 

 

「いつまでコソコソしているつもりだ? 入学式での堂々とした姿のほうが似合ってるぞ?」

 

「う、五月蠅いです!! ……気づいていたの?」

 

「生憎気配には敏感でね。だが君の身の潜め方がお粗末、というのもあるが」

 

「……」

 

 

 私の揶揄いにわかりやすく顔を赤らめるえりな嬢。そうとも、君にはそんなコソコソすることが、どうにも似合いそうにない。他者を見下すのは褒められたものではないが、遠坂凛(かのじょ)同様、堂々と構えているほうが薙切えりなには似合っている。

 

 

「それで、何か聞きたいことがあったのでは?」

 

「……そうね。聞かせてほしいのは入試の料理よ」

 

「あれか……やはり舌にあわなかったかね?」

 

「いいえ。認めるのは本当に癪だけど、美味しかったわ」

 

「それは良かった。ならば私も作った甲斐があると言うものだよ」

 

 

 そう会話しながらも、私は荷物を纏める手を緩めない。そんな私を黙ったまま見つめるえりな嬢。ピリピリとはしていないが、居心地の良いとは言えない沈黙が空間を支配する。

 

 

「貴方は……どうしてあんなことを言ったの? 曲がりなりにも此処の生徒は、最高峰の場所で最難関の研磨を重ねてきたのよ? いくらあの料理で私に美味しいと感じさせても、彼らに勝てるとでも?」

 

「現場を知らぬものに何といわれたところで、私は何とも思わん。仮令実力を持っていても、いざ発揮できなければ役に立たん。それは私の経験でわかる。武者修行で訪れた名店の店主も同じことを言っている」

 

「……そう。でも、個々の生徒を甘く見ないことね。すぐに足元を掬われるわよ?」

 

「それならそれを楽しみにしておこう」

 

 

 荷物もまとめ終わり、背中にからって残りの荷物も手に取る。どうやらここから寮までは少し遠いらしい。走れば問題ないが、誰かに見られれば大事になる。近々スクーターの免許を取る必要があるな。

 そんなことを考えながら待合所を出ようとすると、再度えりな嬢から話しかけられた。その横にはいつの間にか秘書の子もいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荷物を纏めて出ていこうとする彼に、咄嗟に声をかけてしまった。本当にわからない。あの「ふりかけご飯」を食べたときから、どうにも彼のことが気になってしまう。この感情は分からないけど、唯一つ確実なのは、これが「恋慕の情」や「慈愛の情」といった類ではないということ。私は絶対的な舌を持つと同時に、食した料理のイメージが頭に浮かぶ。編入試験の前に食した汁物は、まるでゴリラと混浴しているような、そんなひどい味だった。

 しかし彼の料理は違った。一見普通で何の特別性もない「ふりかけご飯」、しかしその実は工夫の塊だった。

 炒り卵はパラパラとそぼろ状になっており、炊き立ての米と綺麗に混ざり合う。ふりかけには鰹出汁で手羽先を煮て作った煮凝りが混ぜられており、ご飯の熱で煮凝りが染み込み、湯気で香りが立つ。まさにこれ以上ない「ふりかけご飯」と言えるもので、私の知らない世界だった。例えるのならそう、まるで天使に愛撫され、その柔らかな歌声と翼で包まれているような、そんな感覚だった。

 

 至福の一瞬、そう思えるほどの料理を味わっていたのだけれど、その直後、まるで煉獄に突き落とされたような錯覚を覚えた。地獄の様な、いや、それは間違いだろう、正しく地獄に自分は突き落とされていた。あたり一面は瓦礫や地面すら見えない炎の海、空は煙で覆われ、それでもその存在を示す真っ黒な太陽。そしてその後、熱い風が凪いだ後に、私は荒野に立っていた。

 周りは無限と言ってもいいほどの剣が立ち並び、空は分厚い雲と巨大な歯車で覆われている。あたりには草も生えておらず、剣以外には燃える炎と舞う火の粉、そして砂塵のみ。周りを見ると、一際小高い丘が見受けられた。その天辺に、何やら人影のようなものが見受けられた。確認しようとしたころには、私は試験場に戻っていた。

 今のは錯覚だろうか、それとも食べたもの全員が見えるのだろうか。私は脇で心配する緋沙子にも食べてもらった。どうも私は腰を抜かし、脂汗を掻いていたらしい。何か変なものを入れたのかと緋沙子は警戒しながら食べたけど、私とは違い、料理のおいしさで腰を抜かしていた。

 

 そんなことがあったからか、あの地獄はなんなのか。次に彼に会ったときはそれを聞こうと思い、この時まで待っていた。試験は勿論合格なため、ここに入れば確実に顔を合わせる。

 隠れていたのを当たり前のように見破られたのは驚いたけど、そんなことは問題ではない。例の地獄について聞こうとしたけど、何故か口から出なかった。出ていこうとした彼に再度聞こうとしたけど、何故かためらってしまった。まるで聞くべきではないとでもいうように、口から言葉が出てこない。

 

 

「……聞きたいことはあれど、口にできないと言ったところか」

 

「……」

 

 

 彼の問いに頷くことしかできない。それを見た彼は見下すのではなく、あくまで冷静に私のことを視ていた。そんな目の前の彼が、あの荒野の人影に重なって見えてしまった。何度も口を開くけど、言葉が出てこない。そんな私の様子に、隣に立つ緋沙子が心配そうにこちらを見る。

 

 

「今は何も言うまい。そちらの心が整い次第、再び問うといい。私はいつでも君を待つ」

 

 

 彼はそう言うと、今度こそこの場を後にした。それでも私はその場に立ったままだった。緋沙子は私の様子を見て不安に思ったのだろう、この所の独断ではあったけど、この後の仕事をキャンセルしようと、予定表をめくり始めた。彼女の心遣いは嬉しいけど、キャンセルするわけにはいかない。

 

 

「ありがとう緋沙子、でも大丈夫。仕事はキャンセルしなくていいわ」

 

「ですがえりな様……」

 

「大丈夫よ。さぁ、行きましょうか」

 

 

 私はそう言い、この場を後にした。慌てて緋沙子も駆け寄り、一緒に迎えの車に乗る。今はその時じゃないのだろう。でも時がくれば、その時がくれば、彼に効くことになるのだろう。そしてその時に、この何とも言えないモヤモヤとしたものもわかるかもしれない。

 そういえば他にも気になることがある。彼の口調は非常に高校生らしくない。挨拶冒頭に見せた態度と、一人称が「私」になることがあるが、そちらが彼の自然体にも見える。そのことも、一緒に聞けたら聞こう。

 

 

 

 

 




なんだかシリアスな感じになってしまいましたね。しかもえりながえりならしくないような気がします。でもすみません、これが限界です。
さて、次回は入寮試験ですね。ああ~遅々として進まないな~。

ではまたお会いしましょう。



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四ノ皿:入寮試験



ああ~本当にハリポタが描けない。
推敲を重ねるうえでどうしても壁にぶつかるんですよね。キャラを忘れたりとかなんなりで。
というわけで、更新です。





 

 

 

 

 会場から極星寮までの道のりは、通常ならスクーターや自転車などを利用してもいいだろう距離を私は、大きめのスポーツバッグ二つ―よく学生の使うエナメルのものではない―を抱えて駆けていた。まぁその程度の距離ならば、私や城一郎が本気を出せば五分とかからない。だからだろうか、道中何人かの生徒とすれ違ったが、あちらは私を認識するまでもなく、ただ風が通り過ぎたと思っただろう。ただ今後のためにも、せめて自転車ぐらいは用意しておいたほうが良いかもしれん。

 

 しばらく走ると、ようやく地図に示された極星寮に到着した。さて外観だが長年使われて年季があることがうかがえる。壁には所々蔦が這い、色は所々褪せている。まぁそれも仕方がないだろう、この施設は城一郎の学生時代からあったそうだから、少なくとも三十年近くは経過しているということだ。

 で、建物を解析してみると成程、見た目に反して基盤や壁などはしっかりしているようだ。加えて床なども丁寧に使われているのだろう、多少の年月による劣化は見受けられるものの、基本的には問題ない。多少居住区らしき場所に丸太や恐らく動物だろうものが確認できるが、些末事だろう。

 

 

「さて、入るとするかな」

 

 

 玄関ドアのノッカーに手をかけ、四回ノックをする。ここで重要なのが、三回ノックをするのはあくまで親しい間柄でのことだ。二回はトイレだから問題ない。四回をくどく感じるようならば、二回二回でやるのも一手だろう。

 

 

「はいはい、誰さね」

 

 

 中から老婆だろう、しかし張りのある威勢のいい声が聞こえた。

 

 

「扉の向こうから申し訳ありません。本日よりこの極星寮に入寮しようと志願する、幸平創真といいます」

 

「ほう? ここに入りたいって?」

 

 

 その言葉と共に目の前の扉が開かれた。そこから出てきたのは髪を帯で縛る小柄な老婆だった。しかしその鋭い目は、彼女がただならぬものであることを窺わせるには十分だった。

 

 

「ふーん? 見たところ高校から入った、てとこかい?」

 

「ええ。ところであなたは……」

 

「ああ名乗っていなかったね。あたしは大御堂ふみ緒、ここの寮母さね。まぁとりあえず入んな」

 

 

 ふみ緒さんに案内され、私は厨房に入った。はて、説明を受けるだけならば厨房に入れられることはないだろう。それに恐らく私が入寮することは城一郎から連絡が逝っているはず。

 

 

「さて、あんたの話は書状とここの総帥から聞いている」

 

「……ふむ」

 

「でもだからといってなんもなしに入寮させるわけにはいかないね。ここに住む子供らは全員試験を受けて合格したんだ」

 

「ということは?」

 

「当然あんたにも受けてもらうよ。あんたも料理人なら、皿で語るのが筋じゃないのかい?」

 

 

 成程、実に的を射る話だ。私だけ特別扱いというのもおかしな話だろう。となれば話は早い。

 私は荷物から調理道具、と言っても包丁だけだが、を取り出し、腰と頭に紅のエプロンと手ぬぐいを巻き付けて調理場に立つ。

 

 

「さて、私は何を作ればいいのかね? あるもので挑戦させてもらおう」

 

「まぁ焦りなさんな。もうすぐ……」

 

「ふみ緒さーん、ただいまー!!」

 

「ほれ、あんたの前の合格者たちが帰ってきたよ」

 

 

 そういうや否や、何人かがこの厨房にはいてきた。髪を頭の上のほうで二つに結った少女に長い髪をストレートに伸ばした少女、眼鏡をかけた少年にガタイの良い少年が二人、最後に左右を三つ編みに結んだ少女と目元が前髪に隠れた少年が入ってきた。この状況、そして先ほどのふみ緒さんの言葉。成程、彼ら彼女ら全員に振る舞えとのことか?

 

 

「ほう、察しがいいねぇ」

 

「あれ? この人さっきの」

 

「おうおう、スピーチでデカいこと言ったやつじゃねぇか。ここにいるってぇことは」

 

「もしかして入寮試験か?」

 

「マジ!? あたしらすごいところに帰ってきた感じ?」

 

 

 皆が次々に口を開くが、どうやら私の先程の言葉にはさほど嫌悪感は抱いていないらしい。それを知り少しほっとした。当然だ、自分で蒔いた種とはいえ、これから同じ建物で過ごす者と気まずくなりたくはない。

 

 

「さて幸平。試験方法は簡単、私を含めたこの人数の半分以上を満足させる料理を作りな。制限時間は一時間、使っていいものはこの場にある食材だけ。バッグにも入っているなら使っていいさね」

 

「了解した、では少々お待ちいただこう」

 

 

 開始の合図と同時に厨房内の食品の確認に移る。基本的な調味料は一通り揃い、その他パン粉や小麦粉などのものはある。反対に肉や魚、野菜などの食材が見当たらない。精々水水煮の缶詰が数個あるだけである。まぁ野菜は念のためいくつか持参していたから問題ない。しかし米などがないとなると、少々口寂しい気がしないでもない。

 だがそんなことは今はいいだろう。私はエプロンを結び直し、調理に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理に取り掛かる幸平の手際は、正直流石としか言いようがない。彼の履歴から、長年現場で働いてきたのが手に取るようにわかる。ああ、確かに遠月の生徒は研磨を積んできたのだろう。だがそれはあくまでも技術上の問題。実際に現場に出てすぐに対応できるものはいったい何人いるのやら。それこそ、この幸平みたいに遠月に入るまで現場で働いていた人間だけだろう。

 特に目を奪われるのはその包丁さばき。刃物の切れ味を確かめる方法に「切り戻し」というものがあるが、この子の包丁は、素材が切られても生きているように感じられる。加えてまるで食材が料理されるのを喜んでいるようにも感じられる。

 

 暫く、約一時間ほどで人数分の料理が用意されていたが、何故か皿の上にはジューシーなハンバーグが乗せられていた。しかしこの厨房には肉の類はなかったはず。しかしなんなのだ、この皿に乗るハンバーグは。そしてその横にある卵スープも、ハンバーグに引けを取らぬほど輝いて見える。

 

 

「幸平……あんたこれは」

 

「なに、丁度鯖缶を見つけたものでね。()()()()()()()()()()だから私は使ったまでだよ」

 

「ということは、これはさしずめ鯖バーグと言ったところかい」

 

「ねぇねぇ二人とも、もう食べてもいい? これ見せられたらもう……」

 

「同感だぜ!! なぁいいだろふみ緒さん」

 

「そうだね。じゃあ実食!!」

 

 

 あたしの掛け声で全員が一口運ぶ。途端に私たち全員が腰を抜かしそうになった。いや、事実何人かは座ったまま抜かしている。

 正直鯖缶のハンバーグなんて生臭くて食べたものではないと思っていた。しかし現実はどうだ? 肉を使っていると言われたら信じてしまいそうな、そんな肉厚感。だというのにふわりとした食感を醸し出す焼き方。

 そして隣の卵スープ。汁物は出汁ですべてが決まるといっても過言ではないが、しかしこの厨房には出汁の基になる食材はなかったはず。なのにどうして、上質な素材から丁寧にとったと言える風味が体に染み渡る。ハンバーグのソースといいスープの出汁と言い、いったいどうやってこれほど物を。

 

 

「幸平……だっけ? お前どうやってこのスープを!?」

 

「ハンバーグも美味しい!!」

 

「それに何だろう……まるで実家にいる様な安心感があるわ……」

 

「気に入ってもらえて何よりだ。こちらのソースは鯖汁、缶詰の残り汁にポン酢と水溶き片栗粉を混ぜ、さっぱり風味にしている」

 

 

 皆が食べる最中に始まる幸平の種明かし。考えもしなかった素材を利用していることに、ただただ驚きを覚えるしかない。特にスルメを出汁に使うなど、いったい誰が考えるだろうか。更には生臭くて殆ど捨てられる鯖汁も、まさかこんなソースに変化するとはだれも思うまい。

 ただただあたしたちは、目の前の逸品を平らげていく。これ以上ないというほどの意外な組み合わせに、全身で衝撃を受ける。それと同時にどこか懐かしい感覚のする味。しばらく考えていたが、ようやく思い出すことができた。

 今の今まで何故忘れていたのか、この懐かしさは母の味である。無論それぞれの家庭にそれぞれの味があるから、全員がそれを感じることはまずない。しかし現状はどうだろうか。この場にいる皆が皆、故郷に手紙を出そうなどと口々に言っている。

 

 

「……合格だよ幸平。まったくなんてガキだい」

 

「ねぇねぇ、もっと他にない!?」

 

「すまないが、この場ですぐに出せそうなものはこれが限界でね。もう少し時間を掛けていいのなら、まあ何か作れるが」

 

「「「是非とも!!(……)」」」

 

 

 そういうや否や悠姫と涼子、そして意外にも伊武崎峻の三人が立ち上がり、厨房を後にした。やれやれ、それぞれの得意の具材がどう化けるのか、知りたくて仕方がないのかねぇ。

 

 

「どう思うんだい、一色?」

 

「正直、驚かされました。入学式の話は聞きましたが、彼の言葉が力を持つことは、この料理が証明している。僕も考えつきませんでした」

 

「そうさねぇ。あたしも長生きしているけど、まさかこんな料理があるとは」

 

 

 いつのまにかいた一色と喋りながら、ワイワイと騒ぐ子供らを見つめる。涼子がお米のジュース、悠姫がジビエ、そして伊武崎がスモークを持ってきた。昨日よりもさらに騒がしくも楽し気な空気が厨房を満たしていく。

 こりゃ、今年はすごい子たちが入ってきたねぇ。

 そう思いながら、いつの間にか幸平に用意されていた昆布茶で、のどをゆっくりと潤した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういえば幸平のやつ、腕があんな二色に分かれていたかねぇ。髪の毛も、心なしか白いのが混じってる気がするけど、まぁ気のせいだろうさ。

 

 

 






はい、ここまでです。
原作ではふみ緒さんしか食べませんでしたが、本作では寮生全員が食したということにしました。尚、品目は原作通りにやっっております。

さて、次回は一色先輩との初バトルにするか、それともすっ飛ばしてシャペル先生の授業にするのか、迷っています。
「芽生えッ!!」をやりたいですけど、文章で表現できる自信がないw

では次回お会いしましょう。




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伍ノ皿:遠月十傑



はい、またも予告なしの更新と相成ってしまいました。
でもハリポタよりもこっちのほうが今はどんどん書けるんですよ、申し訳ありませんけどどうぞご容赦ください。

それではどうぞ。





 

 

 寮生の全員に夕食を振る舞い、一旦風呂に入った後に丸井という少年の部屋に集まることになった。彼自身勘弁してくれと言っていたが、なんだかんだいって了承する当たり、彼も満更でもないのかもしれんな。一応後で疲れに効くお茶を出すとしよう。

 それにしても、ここの生徒は驚かせてくれる。麹にジビエ、天ぷらなど、それぞれの分野に精通しており、私にとって目から鱗の活用法が出てくる。いつの間にか参加していた一色慧という先輩も、何かしら強みを持っているのだろう。というより、ふみ緒さんに認められなければこの寮にいないだろうし、何より二年に進級している時点で相応の実力を持っているのだろう。

 

 

「それにしてもやれやれ、宴にしても節度を持たねばな」

 

 

 そしてみんなで何やかんや騒ぎつつ、夜が更けているのも相まって、宴に参加した殆どが寝入ってしまっていた。まぁ榊涼子が持ち込んだ「()()()()()()()」もこの惨状に一役買っているのだろうが。

 

 

「……起きる気配もなし、片づけは私がするか」

 

 

 この程度の散らかりようなら、さほど時間はかかるまい。私を満足させたたくば、この三倍、いや十倍は用意するといい。そう考えると、実家の「ゆきひら」は厨房以外、非常に手持無沙汰になっていた。イリヤはある程度自分でやっていたし、城一郎も、多少は杜撰なものの、ある程度清潔にしていた。だから厨房の掃除以外はやることがなかった。

 まぁそれはさておき、ものの十分程度で綺麗さっぱりに部屋を片付けることができた。一応ここは丸井少年の部屋であるため、彼の個人所有物には手を出さなかった。そして片付けている途中に気になってはいたが、約一名こちらを見つめている者がいる。

 

 

「……起きていたのなら手伝ってほしかったがね。まぁ今更ではあるのだが」

 

「それはすまなかった。正直いうと君が気になっていたからね、観察させてもらってたのさ」

 

「人間観察とは、いい趣味とはいえないな」

 

「ふふふっ、どうやらそのしゃべり方が君の素のようだね」

 

「長らくこういう話し方だったものでな、無礼なことは謝罪するが、意識せんと抜けんのだ」

 

「先輩としては直したほうがいいというべきだろうけど、そっちの素のほうが仲良くできそうだ。出来れば他のこの前でも出せたらね」

 

「……善処しよう」

 

 

 私との問答を、にこりとした笑顔を絶やさぬまま行う男、一色慧。その服装は三角巾に裸エプロンと、何ともまあ個性的な衣装と来たものだ。彼自身が楽しみ、周りも笑って流していることから指摘はしなかったが。私の周りにはいなかった人種なため、どう対処するか少々悩んでしまう。遠い記憶の中で、無茶苦茶を体現した虎も、そんな破天荒な服装はしなかった。

 

 

「……さて、期待通りの情報は得られたのかね?」

 

「う~ん、まだかな。料理の腕は先程の宴や試験でわかっているけどね。入学式の発言に見合う実力だと思うよ」

 

「それで? 何か不満なことでも?」

 

「なんていうのかな。君を見ていると、まるで何かに縛られているような、実力を出し切っていないような、そんな感じがするんだ」

 

「……」

 

 

 正直いうと驚いた。

 料理の味と動きだけで判断したという。表情には出さなかったが、彼の人間観察技術は、生半可な環境では養えないものだ。それ相応の場と経験がどうしても必要となる。

 

 

「見事な推測だ。その慧眼は称賛に値する」

 

「ははは、光栄だよ」

 

「その技量は普通では身につくまい。何者かね?」

 

「そうだね、紹介しようか。僕は一色慧、この寮に住まう二年生だ。そして遠月の最高決定機関、『遠月十傑評議会』の第七席を務めさせてもらっているよ」

 

「成程、要するに幹部の一人、というわけだな」

 

 

 先輩として、そしてこの学園の有力者として、私という存在を見極めていたのだろう。そしてその目で、私の実力がこんなものではないと感じ取ったわけだ。いやはや、私はこの世界の人間を少し見くびっていたのかもしれんな。

 

 

「どうだい? 今使える食材は限定されているけど、僕と料理勝負してみないかい?」

 

「それを受ける私のメリットは?」

 

「曲がりなりにも十傑に名を連ねる、僕の実力を知ることができる。そして僕は、君の今の全力を知ることができる。互いにいい条件だと思うよ」

 

「……いいだろう。では私は今の全力でやる。あなたも全力でやってほしい」

 

「成立だね。じゃあ食材は(さわら)で、僕からいこう」

 

 

 そう言うと一色は立ち上がり、部屋備え付けのキッチンへと向かった。その際も裸エプロンなのは変わらず、その臀部が丸見えであったが気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……起きているならそう言えばよかろうに」

 

「……巻き込まれたくないからな。だがこの勝負、興味がある」

 

「そうか」

 

「それより、そっちの口調のほうが自然だな」

 

 

 後方から聞こえてくる会話から察するに、伊武崎君も起きているのだろう。それに気配からして吉野君と榊君もそろそろ起きるはずだ。

 さて、彼に今の全力を出すと言った手前、本気でやらなければならないだろうね。とはいえ、勝負ごとに手を抜くという無粋なことはするつもりはない。

 彼、幸平創真君の実力は未知数だ。試験の時の腕前で判断するだけでも、調理者としての実力は群を抜いていると判断できる。もしかすると、上級生でも多くの者が彼に食われてしまう、そんな潜在性をのぞかせてくれる。何で彼が全力を出せないかはわからないけど、今回はその一端でも知れたら十分な収穫だろう。彼の実力の高さも、多分伊武崎君あたりなら気づいているかもしれない。

 

 

「さぁ出来たよ」

 

「それで、品目は何かね?」

 

「『鰆の山椒焼き・春キャベツのピューレ添え』だよ。さぁ、食べてみてくれ」

 

 

 僕の勧めるままに、各々が箸を持って一口食べた。それによって伊武崎君は固まり、創真君は若干目を大きく開いた。彼は驚いているのかも知れない。料理人は皿で語る。口外にしていなくとも、彼はそれをわかっているようだ。いや、この寮に住まうみんなはそれをわかっている。そして己の分野を特定し、日々研磨に努めている。成功と失敗、その二つが織りなす「研究」と「成長」を毎日かみしめている。

 僕自身、周りから胡散臭いだの言われたりしているけど、悩みがないわけではない。行き詰ることもあるし、絶望することもある。でもそれを糧として、前に前にと進んできた。

 

 

「どうかな? 僕の今の全力をこの皿に載せたつもりだよ」

 

「……春の素材を生かし切った料理。これほどに繊細な一皿を、この短時間で仕上げるとはな」

 

「……流石は十傑としか言えない」

 

 

 二人とも言葉少なげだけど、しっかり味わい評価してくれているみたいだ。それだけでも、今回この一品をだした甲斐があると言うもの。

 

 

「さぁ、次は創真君の料理を、食べたいな」

 

 

 僕も意図せずして声が低くなってしまう。僕の料理を味わう彼の目は、まるで鷹のように、研ぎ澄まされた剣のように鋭くなっていた。一瞬その目が鋼のように光ったのは気のせいだろうか。

 意を決した彼は布を巻き、徐に立ち上がった。

 

 

「では私も、貴方と同じく鰆、そして春をテーマにしたものを作ろう。少し待っていてくれ」

 

 

 そう言うと彼は鰆の切り身、オリーブオイルを用意し、フライパンで焼き始めた。美味しそうな音と香りが次第に漂ってくる。

 

 

「ん~あれ? 寝ちゃったてか……」

 

「え? ……やだ!? 飲みすぎちゃった、お米のジュース」

 

 

 おや、吉野君と榊君も起きたようだね。

 

 

「あれ?」

 

「幸平君、まだお腹空いているのかしら?」

 

「料理対決だそうだ」

 

 

 起きたばかりの二人に、伊武崎君が丁寧に説明していく。それを聞いたふたり、特に吉野君は爛々と目を輝かせながら、僕たちのほうを見つめてくる。彼の手際は流石の一言だ。迅速に的確に、それこそ彼の言葉を借りるならば、現場で鍛え上げられた技量だ。遠月に籠っているだけでは、恐らく身につかないもの。

 

 

「二人が料理対決!? 何で何で?」

 

「さぁな。でもこの勝負、先輩から吹っ掛けてたぜ」

 

「「え?」」

 

 

 僕から勝負を仕掛けたのは意外だったのかもしれない。なんせ二人の視線が僕に刺さっているからね。でもそれが気にならないくらい、僕は緊張をしている。彼のように実力が計り知れないのは、十傑を除いて数えるほどしかない。彼がどんな料理を出すのか、非常に興味をそそられている。

 それにしても気のせいだろうか。何度か彼が動くたびに、紫電のような、光る鎖のようなものが見えた気がした。そしてその時に彼が微妙に顔を顰めていることも。

 

 

「お待たせした。『鰆のおにぎり茶漬け』だ」

 

 

 その言葉と共に僕らに出されたのは、見たところ工夫が少ない、いたって普通のお茶漬けだった。

 

 

 

 






「めばえっ」まで行けなかった、残念。
さて次回は創真の料理と、アニメ五話の内容を少し、書いていくつもりです。何分文章を書くのが下手なもので、進むのが遅々としてしまいます。

それではまた次回。




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陸ノ皿:春と心



なんか書けちゃいました。そしてソーマに似合わぬ感じになってしまった気が。
ま、まぁまだ序盤ですし、大丈夫ですよね。


それではどうぞ。





 

 

 

 

「本来ならば鮭を使うのだが、今回は鰆でアレンジした。是非君たちも食べてくれ」

 

 

 創真君の言葉と共に、僕ら彼女らの前に置かれたのは既にお茶の注がれた御椀。鰆の香ばしい匂いとお茶の香りが、僕たちのの食欲を大いにそそった。

 

 

「ありがとう!! 注いであるのはなあに?」

 

「塩昆布茶だ。このお茶の持つ柔らかな塩気とコクが、〆として重宝される。お茶漬けにすることで、寝起きの君らの体にも余り負担はないだろうからな」

 

「もう~こんなの出されたらお腹が減るに決まってんじゃん!!」

 

 

 椀の中には真っ白なおにぎりとそこから覗く小さく切られたいくつかの鰆。市紅茶(しこうちゃ)色の昆布茶には、三つ葉と塩昆布が降られている。ぱっと見では、余りにふつうのお茶漬け。如何にも大衆食堂で出される一品というわけだが、さてその実はどのようなものなのか。

 

 

「んじゃあ早速、いっただっきまーす!!」

 

「「「いただきます」」」

 

「召し上がれ」

 

 

 食膳の挨拶と共に、まずは一口ほおばる。

 その時口の中が弾けた。

 お茶漬けにしたにも関わらず、ジューシーに仕上がっている鰆の身。何よりその皮がザクザクとした食感に仕上がっており、噛むたびに旨味が湧き出てくるのがわかる。ただ炙っただけではこの食感を作り上げることは出来ない。魚の皮をバリッとしたものに仕上げる調理法は恐らくアレだろう。

 

 

「創真君。この鰆はポワレで焼き上げられているね」

 

「「ポワレ!?」」

 

「ふむ、御名答」

 

 

 ポワレとは、フランス料理におけるソテー、焼き方の一つ。焼きながらその油をかけることにより、均一に素材を焼き上げる手法である。しかし、僕らの知る限り、大衆和食をメインに扱う一般の食事処では、この手法を使うことは珍しい。

 

 

「一体君は何処でこの技術を? 申し訳ないけど、君の経歴を見る限り、知る機会は少ないと思うのだけれど」

 

「以前父親に連れられて武者修行という名の道場破りを世界でやっていてな、その時に身に付けた。手法自体は父親から聞いてはいたがね」

 

「なるほど」

 

 

 彼の経験で身に付けた技術。一見和食にそぐわないと思われる手法だけど、お茶に浸かっていない身はザクザクと、少し浸した部分はまた異なる味わいがあり、食べる人を驚かせ、綻ばせる形になっている。彼のこの一品でわかる。国境やジャンルに囚われることのない、自由な料理だ。そしてこのポワレは、皮に厚みのある魚の調理にもってこいの手法だ。今回使った鰆は勿論、鮭にもピッタリの焼き方である。

 純白のおにぎりはまるで雪。それがつかる透き通った昆布茶はさながら雪解け水。そしておにぎりから現れる鰆は、まさに春の生命力。このお茶漬けは、春の芽吹きの一瞬を表現していると言っても過言ではない。

 

 御椀から掻き込む手を止められない。一口食べたならまた次、一口含んだならばまた次と、食べる手を休めることができない。エネルギッシュでありながら、非常に緻密なバランスで構成された一品。初春の刹那を体現したこの品はまさに。

 

 

「(めばえっ)!!」

 

 

 自然と目から涙が零れる。それほどにまで僕はこの品に感動し、美しいと感じた。これほどの品を食べられたとは、なんて光栄なことだろう。

 

 

「美しい雪解けだったよ、創真君」

 

「いや。貴方の品こそ、爽やかな春風を感じた。素晴らしい勝負に感謝する」

 

「(何だべ、この状況? 半裸の泣いている先輩と、同級生がなんか握手してるだ……)」

 

 

 何か視界の端で田所君が動揺していたけど、僕は気にしないことにした。

 

 

 

 

 

 --------------------

 

 

 

 

 

「ところで創真君、君は何を目標にここで学んでいくのかい。他の生徒と同じく、十傑入りも視野に入れているのかい?」

 

「一色さんには申し訳ないが、私は十傑には興味ないよ」

 

「え?」

 

 

 部屋を片付け、丸井君をしっかりベッドで休ませた後、僕らは創真君の部屋に移っていた。僕らはそれぞれ使った包丁の手入れを行っていた。僕ら二人以外は、既に各々の部屋で就寝に入っている。彼らは自分たちの探求するものを見据え、日々研究に費やしている。それに多くの生徒が、遠月十傑に名を連ねようと、互いに蹴落とし合いつつも、努力を続けている。

 その中での、彼の興味ないという発言に僕は引っかかりを覚えた。向上心がないというわけじゃないだろうけど、彼の在り方は遠月としても非常に珍しい部類と言える。過去の卒業生でも、十傑に興味を持たない人は両手の指の数ぐらいしかいないかもしれない。

 

 

「じゃあ一体何を目指してるんだい?」

 

「そうだな。ここで見聞を広げたいというのは嘘ではない。だが一番の目標は……」

 

 

 ――ただただ平凡な、愛する者達と生を過ごすことだろうな

 

 そういう彼の顔は、非常に穏やかなものだった。こんな表情をする子供、いや、人間を今まで見たことがない。まるで日々の平穏が一番であるかのような表情。誰かを弔ったことのあるような、悲しみを湛えた目。

 

 

「……失ったことが、あるのかい?」

 

 

 本来なら聞くべきでないだろう。自分でも嫌悪感が出るぐらいに、非常に不躾な問いかけだったと思う。記録上では、彼が母親を弔っていることは知っている。しかし彼はそんな僕を拒絶することがなく、こちらを見つめた。そしてその目に、僕は思わず恐ろしく感じてしまった。

 確かに目は輝いている。しかしそれは部屋の明かりを反射してのもの。その目には何もない。眼光に含まれた闇は深く、暗く、そこが見えない深淵の様。琥珀の瞳は色をなくし、人形の目ような印象を受けてしまう。

 

 

「失った、ああそうだな。多くのものを失い、弔ってきた」

 

「大切だった誰か、愛したはずの誰かの手を振り払い、その手に剣を握った」

 

 

 そう語る彼の目は僕を見ているが、僕を見ていなかった。

 

 

「多くのものを救う。そんなふざけた理想(のろい)を抱き続け、結局一番大切なものを救うこともできず、走り続けてきた」

 

 

 その闇は、常人ならば到底耐え切れないもの。子供や僕は勿論、ふみ緒さんや総帥のように、多くの経験を積んだだろう人間も耐えられないはずの何か。それに耐えるとなると、それは最早化け物のようなもの。

 

 

「……語りすぎた、忘れてくれ。明日も早い、先輩も休むといい」

 

「あ、ああ。そう、させてもらうよ」

 

 

 ようやく絞り出した声とともに、道具を持って退室した。

 

 

肉体に引っ張られているのか? オレとしたことが、間違うにも程度があるだろうに

 

 

 そんな言葉が聞こえてきたけど、気にする余裕がなかった。料理人の本質や心は、本人の意図しないところで料理に出てしまう。では彼の品は? 彼のお茶漬けに感じた芽吹きは、嘘なのか? それはないだろう。紛れもなく、あの一皿には彼の心が出ている。

 では今の目は? あの恐ろしいまでに伽藍洞(がらんどう)なあの瞳は、彼の一体何なのだろうか。部屋のそばには起きてきたのだろうか、田所君が膝を震わせながら廊下に座り込んでいた。もしかすると、彼の話を聞いていたのかもしれない。僕は彼女に付き添って部屋の前まで送り届けた後、自室に戻ってすぐに就寝に入った。また明日、いつも通りの僕でみんなと過ごせるように。

 

 

 

 






はい、ここまでです。
次こそ、次こそはハリポタの更新をしたいと思います。やっとあちらが描けそうな気がするのです。

それでは皆様、また次回。




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漆ノ皿:丼研はどげん?



予告とちょっと予定を変更し、新作を投稿しました。が、ハリポタの更新の前に、しっかりとこちらの小説の更新をしようと思いました。


それでは拙い文ですが、どうぞ。




 一色との料理勝負があった夜から数日後、特に大きなことはなく、創真は二度目の高校生活を過ごしていた。料理以外の学問に案しては、生前師やハッチャケ爺さんに叩き込まれたこともあり、特に苦労することなく過ごせている。勝負の翌日、「牛筋の煮込み」を作る際に多少の妨害を受けそうになったが、される前に不届き者を下がらせたため、特に問題はなかった。

 しかし問題が起きた。何と無しに田所恵とともに丼研の部室に立ち寄ったのだが、そこにいたリーゼントの先輩が、明日のジョーばりに真っ白に燃え尽きていた。

 

 

「……どうやら拙い時に来たようだな」

 

「ああ……せっかく来てくれて嬉しいけど……この部はおしまいだ」

 

「おしまい? どういうことだ?」

 

 

 先輩の言葉を聞き、少し創真は疑問に思った。仮にもここは料理学校、しかも専門分野が多彩であり、丼ものの研究をしていても可笑しくない。それが研究自体が出来ないとなると、なにやら妙なことが起きていることは想像に難くない。

 

 

「ああ。えりな様からの書状だ。この研究室を手に入れるために食戟を挑んできたのさ」

 

「それがなぜ終わりなんだ?」

 

「お前知らないのか!? 『神の舌』をもつえりな様に、食戟で勝てるわけないだろう!?」

 

「ただ正確な舌を持っているだけだろう? 無論技量もそれに見合ったものだろうが、端から諦めるのはいかがなものだ?」

 

 

 勿論、技量は相応に高いのだろう。話を聞く限り、彼女は今まで負けなしだったようだ。それに八百長などではなく、己の実力の身で勝ち上がっているようだ。だが上を目指す以上、彼女のような壁は必ずぶち当たると思うのだが。

 

 

「それで恐れをなした部員は逃走、残るはあんただけというわけか」

 

「すごいことに、相手の得意分野で勝負して勝つんだよ、薙切さんは……」

 

「成程な。このノートを見る限り、他の同好会や研究会も相当研究していることがわかるが……」

 

 

 創真は机に置かれた研究ノートをめくりながら、一人考え事に耽った。ノートには様々な丼のレシピが書かれており、オーソドックスなものから、生前では思いつきもしなかったものまで、事細かに研究されていた。これらがなくなってしまうのは、ハッキリ言って惜しい。自身が見たことのないレシピや世界を、たった一度の勝負事で失うのは、余りにもむなしいことである。

 

 

「……先輩、提案があるんだが」

 

「ああ? 何か欲しいのか?」

 

「いや違う。私が食戟に代わりに出よう。その代わり、この部活の研究成果(レシピ)をいくつかいただきたい」

 

「別にいいが、お前勝つ算段はついているのか?」

 

「ふむ……薙切えりなが試験官を務めた編入試験で、唯一私が合格した。とすればどうする?」

 

 

 創真の言葉に、僅かにリーゼント、小西部長に色が戻った。心なしか、しおれていたリーゼントも元気を取り戻したかのように立ち上がっている。

 

 

「そ、それなら喜んでお願いしたい!! 食戟は一週間後だ、テーマは丼だからなんでも使ってくれ」

 

「ふむ、交渉成立といったところだな」

 

 

 ノートを手に、教室から出るために扉へと向かった。そんな創真の背中に、小西は立ち上がったまま声をかけた。

 

 

「なぁ、なんでこんなに協力してくれるんだ? 俺たちはついさっき会ったばかりだぞ」

 

 

 彼の疑問は至極真っ当と言える。条件を付けているとはいえ、会ったばかりの人間に対して、ここまで協力するのは奇妙である。人は、否、生き物は得体のしれないものに対し、必然警戒態勢をとる。小西が少し警戒するような目で創真を見るのも、そう言った節理から見ると仕方のないものであった。

 

 

「別に大した理由はないさ。ただ、こつこつと積み上げられてきたものが、私の知らない世界がたった一人の欲望に蹂躙されることに、異議を唱えたかった。ただそれだけの個人的な理由さ」

 

 

 まぁもっとも、あの我儘少女の欲しがりは少々度が過ぎているようだがね。

 と言葉を発する創真に、小西は若干末恐ろしいものを感じた。今まで薙切えりなのやり方に陰ながら異を唱える者はいても、堂々と言ってのける度胸を持ったものはいなかった。

 しかしこの編入生は違う。決して世間知らずというわけではないだろう。料理についての知識も豊富に持っているに違いないし、料理界についても知らぬはずがないだろう。料理に関係しているならば、彼女の存在がどれほどのものか、わからぬ者はいないはず。

 そんな食の上流階級にいる薙切えりなを、あろうことか「我儘少女」と口にしたのだ。本人の耳に入ればどうなるか、想像したくもない。

 

 研究室を離れて時刻は夕方。空は夕焼けに彩られ、道は茜色に染まっていた。そこに極星寮方面に向かう道に、一台のバイクが走っていた。車体は夕方でもわかる深紅色に、装甲の内側は黒色に塗装されていた。その上に一人の男子生徒と一人の女子生徒が乗っていた。

 

 

「さて、期限は一週間後、時間は少ない。恐らく丼ものは庶民料理として根付きがちだから、彼女本人が出張る可能性は低いだろう。ならはせいぜい、審査員がド肝を抜き、且満足いくものを作らねばならんな」

 

「だ、大丈夫なの創真君? 負けたら丼研はなくなっちゃうし、創真君もただじゃすまないかもしれないんだよ?」

 

「まぁなるようになるさ。さて、そうと決まれば早速試作だな。済まないが、今晩の夕食は丼になるがいいか?」

 

「え? う、うん。たぶんふみ緒さんもOK出すと思うよ」

 

 

 夕暮れで日が沈む中、二人を乗せたバイクは止まらずに道を走っていた。

 

 






はい、ここまでです。
はぁ~データ消えたのがここまで響くとは。実は今回の話、元々は展開を早くするために、いきなり食戟の描写から始まるはずだったのですよ。それがこんなことに。

というわけで申し訳ありませんが、この小説は更新優先度を下げて、新しく投稿したダンまちと同程度のペースで更新しようと思います。

これからも私の拙作をよろしくお願い致します。



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