疵面 生き残った男の子 (sca)
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疵面

ギャグ、一発ネタです。


 ドーン

 

 まるで大砲の着弾音のような音が響き渡った。

 しかし実際には大砲どころか空砲ですらない。 

 なんとこの音、ドアをノックする音だというのだ。

 その証拠にノックしたドアはもともとボロボロなことを差し引いても無残な形に変形している。

 後一回でもノックをしたら確実に壊れるだろう。

 そんな強烈なノックをかました張本人は実にのんきな様子で二発目のノックをドアにかまそうとしていた。

 その男を一言で表すなら『巨体』この一言に尽きるであろう。

 2メートルを優に超える巨体、ボウボウと不潔な長い髪、顔はひげに隠れているせいでほとんど見えない。

 明らかに不審者な男の名前はルビウス・ハグリッド。ホグワーツの鍵と領地を守る番人だ。

 

 (やれやれ、何でまたこんなところに居るのやら。ここまでくるのはなかなか骨だったぞ)

 

 ハグリットは今、生き残った男の子、選ばれし者、例のあの人を倒してのけたあのハリーを迎えに行く為にここにきたのだ。

 

 (どうせあの連中のことだろくな説明もしていなかろう……)

 

 あの連中とはダーズリー一家のことである。

 あの一家はそろいもそろってコッチコチのマグルだ。

 ハリーの叔母でもあるペチュニアは姉であるリリーに対して嫉妬していたことも知っている。

 まず、ハリーは碌な扱いはされては居ないだろう。

 しかし、そんなのも今日で終わりだ。

 ホグワーツ魔法学校への入学。

 その日が来るのをハグリットはずっと待っていたのだ。

 

 

 (待たせたなハリー、今迎えに来たぞ)

 

 ハグリットはドアを開けるべく、もう一度ノック(あくまでノックである)をするために拳を振り上げた。

  

 カチャッ

 

 ドアがハグリットのノックによって破壊される前に鍵が開いた。

 その音を何とか聞き取れたハグリットは振り上げた拳をそのまま引いた。

 

 (ふん、ようやく出おったか。バーノンの豚野郎が。)

 

 あのノックによって壊されては堪らないと出てきたのだろう。

 予想より素直で少々拍子抜けだが案外あの銃とか言うステッキで戦うつもりだろうか。

 いや、そんなことになっても問題ないだろう。

 なんせ今の自分は魔法を使う許可を特例で貰っているのだ。

 そもそもこの巨体に銃で勝てる訳が無い。

 そんな事を思いながらドアが開くのを見ていたハグリットだが、次の光景に目を疑った。

 

 「な!?」

 

 ドアの先にいたのは、一人の男だった。

 大きい、最初にハグリットが思ったのがそれだった。

 190程であろうか、確かに身長が高いだけではなくがっしりとしている筋肉質だが。巨人とのハーフであり、250センチを超えるハグリットから見ればそうたいしたことの無い大きさだ。

 しかしその体の大きさだけではない凄みを持っていた。

 

 (いったい誰何だ、こいつは。いや、いったい何なんだこいつは。)

 

 ハグリットがその男に気おされて突っ立って居ると後ろから声が聞こえた。

 

 「ハリーそいつに近づいちゃいかん!」

 

 そう叫んだのはダドリー家の大黒柱バーノンだ。

 なぜかハグリットの知っているバーノンよりもだいぶ身体が締まっていてデブではないがそんなことはどうでもいい、それよりも。

 

 (ハリー…だと…)

 

 ハグリットは改めてこのハリー(仮)を見てみた。

 まず注目すべきはその顔。

 その眼光は迂闊な質問をはさませない

 疵―――向き合う者を怯ませずにはおかぬ、深く大きな稲妻型の傷。

 左額から右頬に向けて一つ、右こめかみから口元を縦断して左頬に向けて一つ。

 増えたり、大きくなり過ぎていたりして突っ込みどころ満載だ。

 もうすでにハグリットはオサレな顔で固まったまんまだ。

 

 そんな中ハリー(仮)に肩を叩かれた。

 

 「…行こうか」

 

 ここから先をハグリットはあまり覚えていない。

 

 

 

 次回予告

 

 ホグワーツの入学式の日に現れた巨漢、ざわめく生徒と教師たち。

 

 「ギャー、砕ける、わしの精神が砕けるー」

 

 死に掛ける組み分け帽子。

 

 ("アレ"がリリーとポッターの子供…だと…)

 

 オサレに固まるスネイプ。

 

 「キャートロルよ」

 

 彼は拳を握る。

 

 

 

 

ロン「お前ら、なんで俺が魔法を使わないかしているか?

あんなふうになりたかったんだよ。

あの人の生き方見てたらよぉ……

魔法やることすら女々しく思えちまってよぉ。」




感想あれば連載にするかも。


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ダイアゴン横丁

これでたぶん終わりだ。


 小汚いパブ「漏れ鍋」。

 その中に彼はいた。

 190を超える巨体、そしてそれだけで周りを威圧する眼光。

 安っぽそうな木の椅子を軋ませながら深く腰掛けるその姿はまるでマフィアのドンだ。

 周りには酒の空き瓶が散らばっている。

 店主を含めて周りの客は遠巻きに見ているだけだ。

 彼の名はハリー・ポッター。

 かつて世界を恐怖に陥れた闇の帝王を打ち滅ぼした「生き残った男の子」伝説の人物だ。

 

 

 ダーズリー家の引止めを振り切ったハリーだが、ハグリットのオサレ化が続いていたためほぼ会話なしのままこの漏れ鍋に到着したでオサレ化が解けたハグリットによって今説明が行われている。

 

 「つまり、お前はこの魔法界では英雄なんだ。ハリー」

 「…そうか」

 

 この妙な迫力を持つ男がハリーだとは信じがたいがとりあえず説明を行っているハグリット。

 いつの間にか大量の酒を飲んでいるところはスルーだ。

 

 「ハリー…?ハリーポッターか?」

 「アレが?」

 「嘘つけ、確か11歳のはずだぞ」

 「でも、額に疵が」

 「他にもたくさん在るじゃねぇか」

 「でも例のあの人を倒したなら普通じゃなくても…」

 

 周りも騒ぎ出す。

 そのとき店主が勇気を出してその真偽を確かめようとしたときだった。

 ハリーがハグリットの話を聞きながら戯れに空き瓶を手に取った。

 その瓶は上の部分が取れていた。

 正確には捻り取られていた。

 ハリーの桁外れの腕力によって壊されていたビンだ。

 それを正確に繋ぎ合わせて両の手で"握った"。

 

 「そうだな、大体の説明も終わったしそろそろダイアゴン横丁に行くか」

 「…ああ」

 

 そのまま立ち上がる巨漢二人。

 そしてテーブルに先ほど置かれていた瓶が置かれていた。

 "くっついた状態で"

 

 「…えっ…え、え~」

 店主が店の奥に行く二人と瓶を交互に見ながら困惑の声を漏らした。

 触ったり、持ったりしてみたが外れる様子は無い。

 あのハリーポッター?が魔法を使った様子は無かった。

 杖すらも持ってい無かったのになぜ。

 店主はもはやハリーポッターが本人かどうかなど忘れるほどの混乱状態に居た。

 客の一人が瓶に近づくとある変化に気づいた。

 「…この瓶、他の瓶よりも縮んでる」

 周りが怪訝な顔をしていると、いつの間にか居た無精ひげを生やした男が喋りだした。

 「聞いた事がある、深海では海底での圧力によりサッカーボールはピンポン玉サイズに、カップラーメンはおちょこ大のサイズにまで圧縮されてしまうと聞く。」

 彼の説明により店の住人すべてが理解した。

 あのハリーポッターがおこなったのは単純に握力でくっつけると言うなんともシンプルな物だった。

 なんというワザマエ!なんという男らしさ。

 その男は説明を終えるとテーブルに金を置いて颯爽と出て行ってしまった。

 彼の名はネビル、ネビル・ロングボトム。

 今年からホグワーツに入る一年生である。

 

 ダイアゴン横丁。

 そこは魔法使いの使う魔法道具が売られている横丁だ。

 非合法の物を多く使っているノクターン横丁もあるのだがここであまり説明しない。

 ハリーは今魔法使いにとって最も重要な道具、魔法の杖を買いにオリバンダー杖店へと足を運んだ。

  魔法使いにとって最も重要であるはずの杖を売っているにしては、店中は随分狭く、そしてみずぼらしい。

 中に入ると奥のほうから一人の老人が歩み出てきた。

 店の中には巨漢二人と老人が一人、もともと狭い店のためものすごく窮屈に感じる。

 ハグリットは用事があったのだが、自分のことは棚に上げてハリーが店を壊しそうだからと言う理由で付いてきた。

 

 「いらっしゃいませ。その巨体はよく覚えていますよ。樫にヘルハウンドの毛、23センチ。耐久性に優れる。折られてしまったと聞きましたが…。まだ役にたっているようでよかったですよ」

 「あ…ああ」

 傘の方を見ながら言われて少しきまづそうにするハグリットを無視してオリバンダーはハリーの方を見つめる。

 「今日はそちらの方の初めての杖をお買い求めで?」

 ハグリットは驚愕した。老人はハリーを、さらに言うならば新入生だと看破したのだ。

 なんという洞察力。

 「ああ。お前さんも知っているだろう。ハリーポッターだ」

 その言葉に一切の動揺を見せずにハリーを見つめ続けるオリバンダー。

 オリバンダーはなるほど、と呟くと店の奥へと消えていった。

 十分ほど経って戻ってきたオリバンダーが持っていたのは大量の箱だった。

 そしてその中に在る物は、杖、篭手、剣、鉈、チェーンソウ、斧、様々だった。

 呆然とした顔のハグリット。

 それもそうだろう、杖を買いに来たのに持ってこられたのが殆ど杖ではないのだから。

 しかもその杖ですら突起やチェーンなどが付いていてとても杖とは言えない物なのだから。

 

 「まさかこれらを持ってくる日が来るとは思いませんでしたよ」

 オリバンダーは感慨深げに品物を見る。

 「このチェーンソウは神をk「いらねぇ…」でしょうな」

 どこか苦笑したようなオリバンダー。

 既にハグリットは固まっている。

 「しかし杖が無ければ魔法が使えませんが如何しますかな?」

 「…」

 無言で箱に近づき中をまさぐるハリーポッター。

 中から取り出したのは変哲も無い眼鏡だった。

 ハリーはその眼鏡を掛けて言った。

 「これだ」

 「…純銀と東洋の魔物『鬼』の血で作った眼鏡。きわめて凶暴です」

 「……」

 ハリーはテーブルにガリオン金貨を無造作にばら撒くと固まったままのハグリットを連れて店を離れて行った。

 

 

 

 

 

 マルフォイ「話しかける?冗談じゃない、杖持ったってオレァご免だね」

 




授業のシーンとか如何しろと言うのだ。


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ホグワーツ超特急

 (こいつはどういうことだ…)

 

 組み分け帽子は今混乱の境地にいた。

 新入生の組み分けをして何人目なのか、そんなこととうの昔に忘れてしまった。

 新入生を適した寮に振り分ける、それにたいして絶対の自信を持っていた組み分け帽子である自分

 確かに多少の期待をしていたことは確かだ。

 『例のあの人』を倒した伝説の英雄。

 生き残った男の子ハリーポッター。

 しかしそれでも組み分け帽子はいつも道理に組み分けを行うつもりだった。

 平等に、贔屓などせずに彼を適した寮に。

 

 (こいつは読めない?…いや、“はかれ”ないんだ)

 

 計る・測る・量る、これのいったいどれが正しいのかもわからず思い知った。

 はかりきれないという言葉の意味を。

 心が無いわけでも閉心術などで壁を作っているわけでも無い。

 それにも関わらず心の色も大きさも自分では認識できない。

 

 目の前の新入生に驚愕する組み分け帽子。

 無理もないことだったろう。

 この雄を取り巻く様々な社会的事情。

 義理?人情?責任?約束?

 そんな様々な人間模様から発揮される理屈や常識、人智を超えたある種神懸かり的な力

 

 そんな力は今までの新入生相手達には望むべくもない。

 それを発揮するには彼等はあまりにも無知で。

 あまりにも弱すぎ。

 そしてあまりにも幼すぎた。

 すなわち彼らが持ち得ないもの「精神力」である。

 

 今だ混乱から冷めえぬ組み分け帽子を見ながらグリフィンドールにいた新入生ロン・ウィーズリーは思い出していた。

 あの生き残った男の子、いやあの雄との邂逅を。

 

 

 

 

 ホグワーツ新学期初日。

 大勢の魔法使いがキングズ・クロス駅の中に居るであろうそこにハリーはいた。

 白いスーツを着た彼はマグル、魔法使い族問わずに注目されていた。

 さらに隣にはオサレになりすぎて若干痩せたハグリットが居るのだ。

 嫌でも注目されるだろう。

 

 「ハリー、俺はこれから別のルートで学校へ向かうがお前さんはここの9と3/4番線からホグワーツへ向かってくれ」

 

 本来なら既に新入生を迎える為に学校に居るはずのハグリットだが彼はハリーを野放しにすることが出来ずに駅まで付いてきたのだ。

 実際のところそこまで問題を起こしておらず、起こす気もないハリーだが、目を放した隙に問題を起こしそうな気がしてならないハグリットは心労で既に五キロ痩せていた。

 

 「…ああ、分かった」

 

 返事一つにまで迫力が篭るハリーを不安に思いつつもハグリットはキングクロス駅を後にした。

 

 9と3/4番線それは9番線と10番線の間にある柵の向こうにある魔法使い族専用のプラットホームだ。

 ハリーは荷物を背負ったまま一切の躊躇無く柵に向かって歩き、そして次の瞬間には『9・3/4』と書かれた鉄のアーチを潜っていた。

 その先には紅色の蒸気機関車が停車しており、ホームの上には『ホグワーツ行特急11時発』と書いてある。

 

 「ここか…」

 

 そう呟いた瞬間か、それとも駅に付いた瞬間なのか、彼の近くから生物が消えた。

 

 「おい、ジョンどこへ行くんだよ」

 

 「僕の、僕のダニーが」

 

 「このマルフォイが…気分が悪いだと…」

 

 

 魔法使いのペットで在ろう猫やフクロウは野生の本能で感じたのだ。

 殺気でもなければ意識すら向けられていないというのに感じた威圧感。

 早く逃げなければ、一刻も早くここから逃げ出さねばならない。

 

 プラットホームは奇しくもハグリットの予想道理魔法使いのペットの暴走で騒然としていた。

 

 

 

 

 突然スキャバーズが暴れだしローブの中を移動する。

 いつもなら驚いて地面に転げまわるぐらいの事をするだろうにネズミの飼い主の少年はその場を一歩たりとも動こうとしない。

 彼の視線の先には一人の男がいた。

 この騒乱を起こした張本人である男、ハリーポッターである。

 しかし少年はその男の名前などは知らない。

 彼が例のあの人を倒した赤ん坊であったことなど知るはずもない。

 だというのに少年には分かっていた。

 この男だ、この男こそがこの状況を生み出したのだ。

 いまだ動物たちが暴れまわり魔法使いが悲鳴をあげるこの地獄を。

 

 少年が例えたようにその場は地獄であった。

 逃げ出そうと籠の中で暴れる梟、恐慌状態なのか飼い主に爪を立てる猫、叫ぶマルフォイ。

 その中を我関せずで進んでいく男がいる。

 彼が近くにいくと動物は先ほどの狂乱から一転、静止画のように動きを止めていた。

 いや、動きだけではない、呼吸も止めて瞬きすらも止めている

 草食動物が絶望的なタイミングで肉食動物に出会ってしまったかのように彼らはただ己を無価値にすることに終始した。

 呼吸をするな瞬きすらもするな、こちらに関心を持たせるな。

 彼らは魔法使いのペットは只管にこの男がこちらに意識を持ってこないように半ば祈っていた。

 比較的落ち着いている魔法使いですらも彼から発せられている威圧感によって半径五メートルほどの空間が出来た。

 示し合わせていた訳でも無く自然に。

 その中を悠然と歩く彼は、大型の獣のようであり王のようでもあった。

 

  

 

 その後彼はホグワーツ城に着くまでの汽車の中で大量の酒を飲みながらコンパートメントをまるまる一つ占領していた。

 いやそれどころか彼の乗っている車両には誰一人として乗客がいなかった。

 

 「…おい、あれって先生なのか?」

 

 「確かに生徒では無いだろうが杖も見えないしローブも着てないぜ」

 

 「でもマグルじゃ無いよな…」

 

 「そもそも人間なのか?」

 

 隣の車両からこちらを見ようとする生徒たち。

 それを気にも止めずたばこを吹かすハリー。

 そんな彼に近づく者が一人いた。

 周りの生徒の制止の声も聞かずに歩みを止めようともしない。

 そしてハリーのコンパートメントの前に立つ。

 

 「手前、本日よりホグワーツ魔法学校に入学するロナルド・ビリウス・ウィーズリーと申します。」

 

 そこでロンは息を止めた。

 そして数瞬かけて覚悟を決めた後に口を開いた。

 

 「あなたの名前は…」

 

 そのロンの問いに残っていたたばこを吸いきって、コンパートメントの中に紫煙を満たしてから答えた。

 

 「…ハリーポッター」

 

 

 此処に役者はそろった。

 

 生き残った男の子を中心に回る物語はここから始まる

  




 ハリーポッターを見たから書いたが、キャラが濃すぎて書きづらいことに気がついた。
 すまん、もう無理だ。
 クィレル先生の脛を握力で引きちぎるシーンが頭から離れない。
 女性キャラはたぶん近づかない。
 ハーさん「あそこだけ劇画タッチ…」


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