異形に寄生されて女へと変異したが、この身体も悪くない (ゲルパンマン♥山崎)
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01 その始まり・一

 

 

「うぎ……も、もっと、そっと運んでくれぇ……」

「苦しいかもしれませんが、毒が心配です!少しでも速いほうがいいです!耐えてください!」

「いぎ……いぎぎ……」

「おい死ぬんじゃねえぞ。新しいメンバー募集とかクソ面倒だ」

「おま……いぎぎ……おま……」

 

 俺たちのパーティは今、モンスターの巣となっている森から脱出するため走っている。

 トロール殲滅のクエストを完了して気が抜けていたのだ。

 俺が小便をしていると、ヤブから黒い蛇が現れてふくらはぎを咬まれてしまった。

 

 ん……?いや……噛ま……ちが……体内に……俺の……

 

 いや、そんなはずはない。そう、蛇に咬まれたのだ。歯型も残っている。

 即座に毒を吸い出して応急処置をしたが、あえなく俺の身体は麻痺し、全身に激痛が走っている。

 汎用毒消しも飲んでみたが効果はなかった。

 そんなわけで、今俺は仲間のサイモンにおぶられ、パトリックの悪態を聞き流している。

 男三人のむさ苦しいパーティだ。

 

「もうすぐ出口ですよ。森から出れば転移石を使えます。今使うべきでしょう」

「わりぃ……うぎぎ……高ぇのに……」

「これだけで今回の利益パアだぞ。ゲイル、メシ奢りな」

「まぁ赤字じゃないだけマシと思いましょう。こんな時の保険が転移石なんですから」

「が……げ……」

「おいやべぇ、白目剥いてる」

「石準備!即使用!」

「ヤー」

 

 

 

 ううう、身体が熱い。だるい。喉が乾いた。水が欲しい。暗い。夜か。何処だここ。ベッド。宿か。水。水が欲しい。ああ、すぐそこにあった。水差しが。

「ゴクッゴクッ……ふぅー」

 一息ついたがダメだ。もう力が入んねえ。寝よ。

 考えるのは明日だ。

 

 

 

「おはよう、ゲイル。体調はどうですか?」

 朝ストレッチをしていたらサイモンがやってきた。

 俺たちのパーティは中々の稼ぎを持っているから、全員一部屋ずつ宿をとっているのだ。

 

「おう、おはよう。もう大丈夫だ。すまねぇ。面倒かけたな」

「もう起き上がって大丈夫なんですね。大事に至らず良かったです」

「いやあ焦ったわ。本気で死を覚悟したね、今回は」

「気をつけてくださいね。生き残れても、後遺症で動けなくなることだってあるんですから」

「ナハハ、わりいわりい。腹減ったわ。奢るからメシ食いに行こうぜ。パトリックは?おっと」

 

 ドアを開けて部屋を出ようとした所を丁度パトリックと鉢合わせた。

 

「おう、おはようパトリック。昨日は悪かったな。メシ行こうぜ。奢るから」

「……もう大丈夫なのか。昨日の苦しみ様は凄まじかったが」

「一晩寝たら完全回復だぜ。むしろ調子が良いくらいだ。教会寄ってくれたんだろ?記憶ねえけど」

「並の回復力ではないな。無事ならそれでいい。約束通り奢って貰おうか。教会の寄付分も含めてな」

「わかったわかった。いつもの所でいいよな」

 

 この宿のメシはマズいから取っていない。

 数少ない朝もやっている食事処で朝食をとりつつ、次請けるクエストや今後の予定を話し合うのが宿で休んだ翌朝の恒例だ。

 今日もいつもの食事処へ行き、いつものように相談を始める。

 

 

 サイモンは騎士崩れだ。

 丁寧な口調、サラリとしたブラウンの髪、優男風な顔、それに高い身長で女にモテる。

 ある程度動きやすさを重視した白銀の鎧と盾、そして片手剣を使い、敵の攻撃を弾き返し、体勢が崩れた所に追い打ちをかけるのを得意とする。俺達の鉄壁のガードだ。

 何をして騎士を外れてしまったのかは知らんし興味がないから訊かない。まぁそういうもんだ。

 

 パトリックはレンジャーだ。

 黒い短髪に黒いレザー装備で身を固めた、目つきの悪い男だ。こいつも身長が高くてムカつく。

 斥候、周囲の警戒、罠の解除等一通りこなし、更に簡易な回復魔法が使え、敵の背後に忍び寄り短刀による急所への一撃で後衛から切り崩していくエキスパートだ。

 ぶっきらぼうで口が悪いが、これで敬虔な教会信者なのだから人間わからない。

 

 そして俺、ゲイルはキャスターだ。

 サイモンとは違いくすんだ茶色の短髪で、中肉中背。身長は……まぁチビではねぇよ。チビでは。

 広範囲殲滅からボス格への一点集中瞬間火力まで、火力に関することならなんでもござれ。属性も三種までカバーし、拙いながらも前衛もこなせる。天才とはまさに俺のことよ。

 その分支援魔法はからっきしだけどな。

 

 俺たちのパーティはルーク級。

 ポーン→ナイト→ビショップ→ルーク→クイーン→キングと格が上がっていく。

 たった三人パーティでルーク級に上がったやつなどほとんどいない。

 俺たちが有能である証左だ。クイーン級もこの三人なら問題ないと信じている。

 

「よっし、んじゃ今日明日は俺の体調の様子見って事で、森での雑魚相手や採取をメインでいいな」

「はい」

「ま、しょうがないだろう」

 

 転移石の損失は痛いが、俺達は焦らない。

 損失を取り戻そうと躍起になって死んでいったパーティをたくさん見てきたからだ。

 今回の失態は明らかに俺個人の責任だが、それでもこいつらは怒らない。そういったアンラッキーはいつだって自分に降りかかる可能性があるものと割り切っている。良いメンバーに巡り会えたと誇りに思う。

 まだ金には余裕があるし、余裕がなくても最低限食うだけなら困らない実力があるのが俺たちだ。やはり金銭的なゆとりは精神的なゆとりを産む。

 また一歩ずつ前進していこう。

 立ち止まっている暇などないのだ!

 

 そうして俺たちの日常は回っていく。

 

 

…………

「どぅわ!!クソ!わりぃ!そっち行った!」

「あ?問題なし。おい、前まではこんな雑魚くらい切り伏せれただろ」

「おっかしいなぁ。体調に不備はないんだが。(なま)ったかなぁ」

「キャスターでも身体は鍛えておいて損はありませんからね。明日から早朝、僕と一緒に訓練しましょう」

「うげー……嫌だけど付き合っとく。嫌だけど」

「ついでに教会にも来い」

「それは遠慮する」

 

 

…………

「あれ?ゲイル、今日の食事少なくありません?」

「ああ、なんか最近すぐ腹が膨れんだよ」

「後遺症とかやめろよ?」

「んだよ、俺は今日も絶好調だっつの。食欲がないわけでもないしな」

「冒険者家業は体力が命ですよ?土壇場で力がでないとかやめてくださいね」

「大丈夫大丈夫。体調はいいんだよ。むしろ燃費が良くなって好都合だ」

「そうですか。まぁ問題がないのならいいんですけどね」

 

 

…………

「我が魔力は灼熱。昏き底より溢れ、煮えたぎり、喰らい尽くせ。我こそ深淵なり。我こそ奥底なり。爛れ、溶かし、侵食せよ。――――捧げる」

「退避!」

「――ボルケイノ!!…………ふはは。さすが俺。見ろよこれ。ハッキリ境界線がわかるぜ。森で火炎使って延焼なしだぜおい」

「ゲイル、なんか少し声変わりました?」

「そうだな。少し高くなったか?」

「いやおいそんなことより俺の見事な魔力操作を見ろよおい。そして褒めろよ」

「あーはいはいすげえすげえ」

「素晴らしい火力ですね。火力だけなら随一ですよ」

「おいこれ本当にめっちゃ難しいんだからな?わかってる?」

 

 

…………

「あん?ゲイル、今日も娼館には行かないのか。良い心がけだ」

「おう、なんかそんな気分じゃねぇ。あと別に宗教は関係ねぇ」

「あの毎日通ってたゲイルが……僕は行きますけど、パトリックもたまにはどう?」

「地獄に落ちるがいい。性交は生涯ただ一人だけと決まっている」

「あはは……ま、そうだよね。じゃあ僕だけで行ってきます」

「おう、行って来い。いい女が入ってたら教えてくれ」

「あ、興味はあるんですね。わかりました。では行ってきます」

「フン……おいゲイル。お前ちょっと立ってみろ」

「え?なんだよ」

「いいから。立て」

「はいはい……っと。これでいいか?」

「やっぱり……お前少し縮んでるぞ」

「うええええちょっやめろよ!お前の勘違いだろ!高身長だからっていい気になるなよ!」

「縮んでいるというよりも、全体的に小柄になったような……いや、むしろ……」

「な、なんだよ」

「……いや、なんでもない」

 

 

…………

「……おいゲイル」

「なんだ?」

「お前、今の自分の姿に何も疑問を感じないのか?」

「なんだよ。唐突に。あー?いつも通りの俺じゃん」

「教会に行くぞ!おいサイモン!手伝え!」

「はい!」

「んな?おい、やめろ。俺はどこも悪くねぇって」

「はいはい。病人はみんなそういうんです。むしろまったく自覚がないのが問題ですね」

「めんどくせぇ。肩に担いじまえ。丸太のように」

「はい。よいしょ。うわ、軽くなりましたね、ゲイル。なんか柔らかいし、匂いも……なんか……」

「おいっクソ、なんだお前ら!」

「騒ぐな。教会で診てもらうだけだ」

「やっぱり、あの時の毒か何かですかね。治るといいんですけど」

「薄々気づいてはいたんだが……もっと早くから行動するべきだったな。本人が元気なのが裏目に出た」

「俺はどこも悪くねぇっ!俺はどこも悪くねぇっ!」

 

 そうしてゲイルは担がれ、教会へと運ばれた。



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02 その始まり・二

 そうしてゲイルは無理やり教会に連れてこられ、治療を行う神父の前に座らされる。

 神父はもう高齢ではあるが、体格は未だガッチリとして背筋は伸び、たまに剣の素振りすら行う人間だ。

 声もしわがれておらず、ハキハキと低い声で喋る。身長こそ高くはないが、祭服から着替えれば屈強な老紳士と見紛う風貌である。

 たくましい冒険者が多いこの街の神父ならば、たくましくならねば務まらないと鍛え上げた結果だ。

 

「それで?お嬢さんはどこが悪いのかな?」

「いやどこも悪くないんだが、こいつらが勝手に」

「……重症だな。お嬢さんと呼ばれても違和感を覚えてねえ」

「まぁここまで来たら大人しく受けてやるよ。とことん調べてくれ。何もねえだろうけど」

「神父様、先月連れてきた男を覚えていますか?急患で、僕がおぶってきた、気絶した中肉中背の男です」

「ん?ああ、覚えているとも。パトリックの仲間の若者だな。私が浄化をかけた。その彼がどうかしたのかね」

「その男が、その後これになったんだ。しかも本人に自覚がない」

「なんと?神父をからかってはいけない。天罰が落ちてしまうよ」

「本当だジジイ。俺は教会の人間を騙さねえよ」

「ふむ、確かにパトリックはそのような人間ではないな。ふ~む。どう見てもお嬢さんだ。これがあの時の白目向いて泡吹いてた男か……私もこんな症状は初めて見る」

「どうだ?治せるか?」

「……服の中をみたい。どうなっているのかね?」

「神父様?正気ですか?」

「勘違いをしてはいけない。私は女性の病人もたくさん見てきたが、間違いなど一度として起こしていない。だからこそ神父をやっているのだ。信用したまえ」

「サイモン、この神父は本物だ。信用しろ」

「そのようですね。疑って申し訳ありませんでした」

「なんだ?脱げばいいのか?わかったわかった」

「うおっ」

 

 ゲイルはポイポイと服を脱ぎ始める。その脱ぎ方に色っぽさは何一つなく、男気溢れる脱ぎっぷりだ。

 そんな男らしい行動とは裏腹に、冒険者とは思えないシミひとつない肌が露わになり、大きすぎず小さすぎず、まさに丁度よいサイズの揺れる乳房が男たちの視線を集める。

ゲイルは今年24になるはずだ。しかしその肌は日焼け一つなく、10代の如きハリと美しさを持っている。

 そしてブーツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、最後の下着まで脱いで、あっという間に裸となった。

 胸は膨らみ、腰はくびれ、ヒップへの曲線が魅力的な、完全に女性の身体付きだ。三人はゴクリとツバを飲み込む。

 たくましいとまでは行かないが、無駄を削ぎ落としたその肉体は、娼婦とは違う魅力を引き出している。

 髪の毛は特に伸びていないためベリーショートだが、それがまた肉体とマッチし、健康的で無垢な印象を強くさせる。

 その股間に、男性器はついてなかった。

 毛も生えておらず、見るからに一度も使われたことのない割れ目だけがあった。

 

「これは……」

「ヒュー」

「つるつる……っていや、そこまで脱がなくて良かったんですよ……今更ですけど」

 

 男性陣は口々に感嘆の声をあげるが、当のゲイルはどこ吹く風だ。

 

「な?何もねえだろ?」

「あ、ああ……ねえな。大事なもんが」

「ゲイル、今の自分の身体を見てさ、何か思う事ないのですか?」

「ああ?あー、まぁ、冒険者にしてはちょっと筋肉足らねえとは思ってるよ。でも俺はキャスターだしこんなもんだろ」

「これです。おかしいですよね。頭が」

「なんだとおい」

「幻覚系に掛っている疑いあり、と。ふむ、口を開けて」

「あーーーー」

「異常なし。触るよ」

 

 神父はゲイルの首元、頭を触る。添えた左手が探知魔法のため淡く輝く。

 左手は輝いたまま、打診を始める。

 

「ふっ、んっ、くっ」

「変な声出すなよ」

「出ちまうんだよ。んっ」

 

 その手が、鎖骨から順に徐々に下へ降りていく。

 

「ふ〜む、む?これは……とても弱いが……何か反応がある」

 

 ゲイルの下腹部。女性ならば子宮がある場所だ。

 

「何かありました?」

「何かはわからないな。だがとても弱々しい。この程度ならば……いや、肉体をこうも変容させたモノだ。ナメないほうが良いな。ホアアッ!!」

「ブハハ、ホアアだってホアア。その顔でホアアって、ブハハ」

「……ふむ、中のものは消えたようだ。後は肉体の問題だな」

「それで?治るのか?」

「わからないな。浄化も一応は掛けてみるが、以前効果がなかったのだろう?何しろ前例がないからな。いくつか試しては経過を見る、の繰り返ししかあるまい。まずは……ホアアッ!!っと、もう一つホアアッ!!……ふむ、こんなものだろう。とりあえず今日は終わりだ。もう服着なさい。目の毒だ」

「長期戦ですか……」

「チッ」

「一応なんかあったのか。あれか?おしっこの石とかか?すっげえ痛えらしいな、あれ。小さいうちに見つかってよかったわ」

 

 当の本人であるゲイルは何も理解せず、服を着始める。

 

「ふむ……おいゲイル。ちょっと待て。お前娼館好きだよな」

「お?おう、最近行ってねぇけど。なんだよ唐突だな。ああでもそろそろ行きてえな。またアカネちゃんを抱きたい」

「そこで女に何をする?」

「え、何って、ナニだよ。言わせんな、おいニヒヒ。なんだパトリック、お前も実は興味津々か。今度一緒に行くか」

「真面目な話だ。いや、俺自信バカバカしいと思っているが、真面目な話だ。女にする事を順番に言え」

「えーなんだよ意味わかんねぇ。えーと、おっぱい揉んで、キスして、乳首いじって、ペロペロして」

「今お前の胸についてるそれはなんだ?」

「あ?俺の胸?ん?あれ……ん??あ????」

「女の股ぐらが濡れたら、お前はどうするんだ?」

「え??ん??どうするっておま、そりゃ俺のチンポコをだな」

「それはお前のどこにあるんだ」

「あ??どこってお前、ここに。うん????あれ????」

 

 ゲイルはしきりに疑問符を浮かべながら、自分の身体を触り、観察し、目をこすり、首を傾げる。

 その顔色が徐々に悪くなっていく。

 

「あーーーー!!!なんじゃこりゃーー!!!!」

「やっと気づいたか」

「パトリック、ナイスです」

「こんな簡単な誘導に何故今まで思い至らなかった……」

「理性を取り戻せたのは今日の私の施術よりも大きな功績だ。誇っていいのだよ、パトリック」

「おい!おれの!おれのチンコが!ない!おっぱいが!おれにおっぱいが!ニヒヒ!」

「なんでちょっと嬉しそうなんですか……」

「どうせいつでもおっぱい揉み放題とか考えてるんだろ」

「あーーー!チンコがないともうアカネちゃんとパコパコ出来ない!」

「もうちょっと真面目に考えてください。直前まで狂ってたんですよ、あなた」

「あー……、面目ない」

「まぁ、今日はこれで終了だ。また明日様子を見て施術を行う。暇を見て来なさい」

「おう、ありがとよ神父。これ寄付金な。今後もよろしく」

 

 そうして三人は教会を去り、帰路につく。

 

「あぁ……俺のチンコが……」

「いつまでグダグダ言ってるんだ」

「ま、まぁ、正気には戻った上、原因と思われるモノは取り除けたんです。初日にしては十分な前進ですよ。このまま治療を続ければ元に戻れますって。たぶん」

「そうだな。そうだよな!おう!お前らにも面倒かけたな!助かったぜ!」

「俺たちも気をつけねばならんな。自覚を奪う効果は恐ろしい。仲間割れになりかねん」

「そうですね。一応ギルドにも報告をしておきますか」

「もう明日にしようぜ。今日は休み休み。たまにはいいだろ」

「じゃあ僕が行ってきますよ。お二人は先に休んでてください」

「頼む。俺はちょっと買いたいものがあるから店に寄っていく」

「よろしく頼むわ。後で酒場行こうぜ。また奢るわ」

 

 三人は一度解散し、ゲイルは一人宿へ戻る。

 

「……チンコ…………俺も……俺の中に……それを……」

 

 今は入れる側ではなく、入れられる側である事を考えると、ゲイルの心臓がドクンと大きく跳ねた。

 その呟きは誰にも聞こえなかった。

 

 



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03 神父・一

 

…………

「じゃあ今日も教会行ってくるわ。先にメシ食っててくれ。俺も後から行く」

 

「はい、また後で」

 

「ちゃんと寄付しろよ。ケチんなよ」

 

「わかってらあ」

 

 あれから3日経った。

 ゲイルの肉体が元に戻る兆しは未だない。

 しばらくは日帰りの探索を行い、日銭を稼いだら教会へ赴いて神父から治療を受けることとなった。

 

「おう、来たぞ神父。今日も頼むわ」

 

「少しは言葉遣いってもんを覚えたほうがいいな、若人よ。ほら、そこに座って服をめくって」

 

「あいよ」

 

 ゲイルが服をめくると、神父が下腹部に手を添える。

 治療が始まり、じんわりと下腹部が熱を帯びてくる。

 

「ん……ふう……はぁ……」

 

 その刺激に淫らな声が漏れてしまう。

 ゲイルの乱暴な言葉遣いは照れ隠しだ。本当は、この刺激が待ち遠しくてたまらない。

 ゲイルはちらりと神父の股間を見る。

 祭服が内側から盛り上がっている。もう高齢だというのに。

 

 チンコ。ペニス。男性器。

 それの事を意識すると、頭がボーッとして変な気分になってくる。

 ゲイル自身おかしいと思っている。

 今まで男色の気などなかった。今でもないと断言できる。

 こんな姿になっても自分は男だ。

 男と寝るなどもってのほかである。

 その認識は強くある。

 にも関わらず、神父に下腹部を撫でられると、男のそれを意識せずにいられなくなってしまう。

 

 どう考えても症状が悪化している。

 この前の施術で消えたと思われた体内の何かは、未だ健在だったのだ。

 伝えなければ。

 治療してもらわなければ。

 これ以上悪化したら、これからどうなってしまうのかわからない。

 ゲイルとて、危機感は持っている。

 持っているはずなのに。

 

 神父を前にして快感を目前にすると、どうしても躊躇してしまう。

 もう少しくらい、この感覚を楽しんでもいいだろう。明日ちゃんと伝えよう。

 昨日もそう考え、そして今日もまた、明日へ先送りすることにした。

 

 神父に目を向ける。

 神父の祭服を内側から押し上げているそれを思うだけで、心臓が高鳴ってしまう。

 ゲイルの中の"男性"が不快感を訴えてくるが、それへの興味が、好奇心が抑えきれない。

 神父が執拗に下腹部を撫で回す。

 手のひらからじんわりと伝わってくる熱が、下腹部に別の切なさを生み出してくる。

 不快感が薄れていく。

 気持ちいい。頭がボーッとしてくる。もっと撫でて欲しい。

 

「んっ……ふうんっ……はぁっ……」

 

 目を閉じて快感に浸っていると、唐突に神父の手が離れていく。

 それがたまらなく残念だった。

 

 

 

 

 神父のペニスはいきり勃っている。

 

 神父が初めてゲイルの裸を見たとき、もはや排泄にしか用をなさないと思っていたペニスが、何十年かぶりに怒張したのだ。

 この数日間、神父はゲイルの治療が終わった後、その乳房の形、その柔肌の感触を思い出して、独りその怒張を慰めている。

 彼女が数分前までこの部屋に居た。

 この椅子に座っていた。

 その肌に触れていた。

 残り香を感じる。

 それだけで神父は達するのに十分だった。

 

 教会には数人のシスターがいる。年若いシスターもいるが、彼女らに劣情を催したことなど一度としてない。

 ゲイルだけなのだ。神父のペニスが反応するのは。

 ゲイルと顔を合わせるだけで、その感触を思い出し、そして後に待つ治療という柔肌を堪能できる瞬間の期待に、すぐにいきり勃ってしまう。

 

 神父は強く意識する。この女を、このメスを犯したい。自分の肉体がそれを欲していると。

 ゲイルが元男性であることなど瑣末事だ。

 神父にとってゲイルは女だ。犯したいメスだ。

 それを治すだと。

 男に戻るだと。

 耐えられない。

 死別した妻にすら、こんな感情を抱いたことはなかった。

 

 下腹部を撫でる手のひらが、彼女の熱を伝えてくる。

 暖かい。

 たまらない弾力ときめ細かさのある柔肌。

 稼いでいる冒険者のキャスターだけあって、健康的で血色良く、ほどよく筋肉がついている。

 細いウエスト。めくられたシャツからほんの少しだけ乳房が覗く。

 撫でている場所は、女の下腹部。普通ならば子宮のある場所。

 ここに、この奥に、自分の子種を放ちたい。注ぎ込みたい。孕ませたい。

 神父のペニスが更に硬さを増し、先走りが滲んでくる。

 

 神父の中の悪意が囁く。

 さあ、今日もあれをやれと。

 若い頃、戯れで覚えた「催淫」の魔法。

 その効果は余りにも弱々しく、肌に触れなければならず、更に対象者もハナからその気がなければ効果がないというガッカリ魔法だった。

 

 だが、それは若い頃の話。

 今ならば。

 この境遇に加えて、あの頃と比較にならない魔力と操作技術を身に着けた今ならば。

 

 神父は葛藤する。

 積み上げてきた良識が。

 神父という立場が。

 人生の先達としての意地が。

 

 悩み、自己嫌悪を感じつつも、結局神父は催淫魔法を使う。

 治療を装いながら、女を淫らにする魔力をゲイルの子宮へ送り込む。

 ゲイルに気付かれないよう、細心の注意を払って、ひっそりと、だが確実に浸透させる。

 昨日も、一昨日も、同じことをやっている。

 自分は何をしているんだと罪悪感を覚えながらも、その欲望を抑えきれない。

 

 連日の様に送り込まれた魔法は、着実にゲイルの身体を蝕んでいった。

 初日は平然としていたゲイルも、今では見るからに発情している。

 3日かけて、ようやくここまで育て上げたのだ。

 

 ゲイルを食い入るように見つめる。

 乳首が浮き上がったシャツ、みずみずしい唇、上気した頬、熱い吐息。

 目をつむり、内股をもじもじさせ、慣れない快感に戸惑いながらも、それを求めつつある身体。

 ほのかに漂ってくるメスの香り。

 神父のペニスが痛いほど勃起する。

 

 身体は十分熟した。

 理性もとろけ、素直に性感を受け入れ始めている。

 

 もう頃合いだろう。

 もう我慢できない。

 自身の"女"を実感してもらう時が来た。

 

 

 

 神父は唐突にゲイルから手を離して立ち上がると、部屋のドアを施錠する。

 ガチリと物々しい音がなり、密室となった。

 

「し、神父……?どうしたんだ?」

 

「……なんでもないよ。治療を続けよう」

 

「あ、ああ……」

 

「……今日からは身体を元に戻す施術も試してみよう。立ち上がって」

 

「お、おう……」

 

 神父の不審な行動を訝しんだゲイルだったが、治療を続けるとの言葉に素直に従い、立ち上がった。

 催淫魔法でとろけた頭が、快楽を優先した。

 

 神父は、ゲイルの真後ろに移動し、後ろから抱きしめる。

 

「し、神父……?」

 

「動かないで。そのまま目を瞑って、楽にするんだ」

 

「ああ……」

 

 ゲイルとて、これが治療ではない事は薄々気付いている。

 今すぐ神父を跳ね除ければ、これは終わる。

 きっぱりと拒絶すれば、神父は二度とこんな真似をしないだろう。

 だから。

 だからゲイルは、神父の言葉に従う事にした。

 

 神父は後ろから両手でゲイルの肢体を撫で回す。

 シャツの中へ手を入れ、下腹部を、へそを、胸を、乳房を。

 撫でながら全身へ催淫魔法を巡らす。

 

「うああっ……あっ……ああ……」

 

 ゲイルの脳内が色欲に塗りつぶされていき、眼から理性が薄れていく。

 乳首はツンと上を向き、撫でる度に身体が小刻みに震え、腰をくねらす。

 乳房を揉み、乳首をこねくり、へそを撫で、下腹部をさする。

 触れられた場所がじんわりと熱を持ち、その愛撫がゲイルを悶えさせる。

 

 ゲイルの尻に、神父の怒張したペニスが、服越しにグイグイと押し付けられる。

 意識せざるを得ない。

 ゲイルの心臓が早鐘を打つ。

 

 男のペニス。

 以前まで自分にもついていた、今はもうないもの。

 神父の硬くなったペニスが、グイグイと自己主張をしてくる。

 女と交わりたいと。

 交尾がしたいと。

 その女とは、明らかに自分のことで。

 自分のペニスがなくなった代わりにある、その穴に挿入したいと。

 ペニスが、自分の、この中に……

 

 そんなことを考えると、変な気分が一層強くなり、頭がくらくらして背筋がゾクゾクしてくる。

 おかしい。

 おかしい。

 そんなはずはない。

 自分は男なんだ。

 そんなものに興味はない。

 そのはずなのに。

 それを求めてしまう自分がいる。

 確かに不快感を感じている。それは間違いないのに。

 その不快感を超えて求めてしまう事が、背徳的な興奮となって余計に昂ぶらせる。

 ああ、そうだ。

 これは治療だ。

 これを受けなければ、昔の自分には戻れないから……

 だから……

 

 ゲイルはまったく抵抗せず、神父からされるがままに愛撫を受ける。

 神父の手のひらが、下腹部から更に下へ、ズボンの中へと入っていく。

 体格が縮んだせいで、ゲイルのズボンはベルトを緩めずとも簡単に手が入ってしまうほどぶかぶかだ。

 違う違うと思いつつも、その手がそこへ近づいていくほど、ゲイルの期待感が高まっていく。

 そして。

 

「ひゃうっ♥」

 

 甘い刺激とともに声が漏れる。

 今までの喘ぎ声とは全く違う、悦びを孕んだ嬌声。

 ゲイルは自分自身が出してしまった声が信じられない。

 

 その嬌声に、神父は笑みを浮かべる。

 やっと女の声を出させてやった。

 もっと可愛い声を聞かせてくれ。

 神父は良い気になって、ゲイルのズボンのベルトを緩め、ホックを外す。ぶかぶかのズボンと男物の下着がぱさりと床に落ちていく。

 丸裸になっていく下半身に、ゲイルは、怒りよりも、羞恥心よりも、何よりも先に期待が高まる。

 期待してしまう。神父が与えてくれる快感を。

 既に十分濡れている秘所から、愛液が太ももを伝っていく。

 そしてその願いはすぐに叶えられた。

 

「あっ♥ んうっ♥ はうっ♥」

 

 神父の手がクリトリスを転がし、性器をいじられ、ゲイルは女の快感に翻弄される。

 同時に捏ね回される乳首が、先程とは打って変わってジンジンと強い快感を伝えてくる。

 乳房も、へそも、下腹部も、性器を触られた途端に活性化したかのように、甘い刺激と共に電流のような快感を発する。

 乳房を根本からぎゅっと絞られると、乳首が敏感になって切なくなる。

 触られた箇所が次々に熱を持って火照り、じわじわと疼いてくる。

 クリトリスを触られただけで、勝手にあられもない声が出てしまって抑えることが出来ない。

 

「んくっ♥ はんぅっ♥ し、神父……これも、治療、なんだよな……?」

「……そうだとも。君の身体を元に戻す為に必要な事だよ」

「そ、そっか、んきゅうっ♥ なら、しょうがねえな……」

 

 治療の為。

 そういう名目で、神父は女の身体を弄ぶ。

 そういう名目で、ゲイルは与えられる女の快楽を楽しむ。

 

 そう、これは治療の為。

 決して、淫らな行為ではない。

 昔の身体に戻るためには避けては通れない、必要な施術。

 

 官能にとろけたゲイルの頭が、意図的に都合のいい解釈を選択する。

 これが本当に治療か否かなど、もうどうでもよかった。

 ただこの瞬間をもっと長引かせる理由が欲しかった。

 

 神父はゲイルを後ろから抱きしめながら、次の行動に移る。

 先程とは打って変わって優しく、秘所の入り口の周りを撫でる。

 もちろん催淫魔法は持続させ、片手は乳首を捏ね、尻にペニスを擦り付けるのを忘れない。

 クリトリスも避け、入り口の周りだけをただ優しく愛撫する。

 

「あ……♥ はあっ♥ ふう……ん……♥」

 

 意図的にその"女の穴"を避けた焦れったい愛撫に、ゲイルは余計にその場所を意識してしまう。そこへの切なさが募っていく。

 尻に当たるペニスが、入りたい入りたいとねだってくる。

 そして十分焦らした所で神父が語りかけた。

 

「指を入れるよ」

「はあっ♥」

 

 それを聞いて、ゲイルの口から無意識に期待感たっぷりの吐息が漏れてしまう。

 神父は満足げに口元を緩ませ、ゲイルの期待に応える。

 まずは中指一本だけ。

 ゲイルは官能に濁った目で、自分の股間をじっと見つめる。

 指が入る瞬間を、今か今かと待っている。

 

「んっ!んくううううん♥」

 

 ぴっちりと閉じた割れ目に男の指がゆっくりと侵入していく。

 自分の中へズブズブと入っていく指を眺めながら、同時に肉を掻き分けて自分の中へ入ってくる感覚に、ゲイルの背筋にゾクゾクと甘い電流が走る。

 

「あっ♥ はっ♥ ゆびっ♥ わかる♥ なかに♥ あっ♥ あっ♥」

 

 視覚からも、これが紛れもなく女としての快感だとわかる。

 自分は男なのだから、この快楽に屈してはならない。

 なのに。

 自分は男のはずなのに、女の快感に翻弄されている現状が、また背徳的な快楽となってゲイルを昂ぶらせる。

 ダメだとわかっていても抗えない。

 抗いたくないとすら思えてくる。

 そうして悶えていると、二本目の指が挿入され、望み通りまたその快楽に翻弄された。

 

 熱い。

 狭い。

 うずめたその指の感覚が、神父の欲望を煮えたぎらせていく。

 二本の指をグニグニと動かすと、それに合わせてゲイルは身体をくねらせて悶え、甘い声をあげる。

 自分の愛撫に悦ぶ女の姿に、神父は更に興奮する。

 ここにペニスをうずめたら、どれほど気持ちがいいだろうか。

 

 指を挿入してすぐの所に、膣壁とは違うヒダがある。

 処女膜。生娘なのだ。

 神父は感動する。今のめぐり合わせに。

 あの仲間のどちらか、もしくは両方と既に行為を済ませている可能性は十分考えていた。

 だが最初にチャンスを掴んだのは神父だったのだ。

 神父は強く決意する。

 今ここで自分が頂く。

 自分のペニスがこれを貫く。

 自分こそが、彼女の初めての男となり、存在を刻みつけてやると。

 神父はまた催淫魔法を使う。

 今度は全力で。もう気付かれても構わない。

 気付かれてももう離さない。

 秘所を掻き回す右手と下腹部を撫でる左手、両手から放たれる強烈な魔力がゲイルに襲いかかる。

 

「あっ♥ んぐっ♥ あううううううっ♥ うくううううっ♥」

 

 神父が全力で発した魔法によって快感が増幅され、ゲイルは挿入された指の快感だけで絶頂してしまった。

 身体を仰け反らせ、挿入された神父の指をきゅうっと締め付け、腰はガクガクと痙攣する。

 

 初めて経験する"女"の絶頂。脳髄が痺れるようなその快楽に、ゲイルは酔いしれる。

 

 ゲイルは知っている。

 神父が催淫魔法を使っている事を。

 先日から治療の度に、さっきも、そして今も自分に使われている事を。

 知っていながら抵抗していない。

 

 始めは本当に治療の為の魔法だと思っていた。催淫魔法に似通って見えるのも気のせいだと思った。

 まさか神父がそんな暴挙に出るなど。

 その夜、堪らない身体の疼きに、女の身体で初めて自慰をした。

 イクことはまでは出来なかったが、女の快感の扉を叩いてしまった。

 

 それからだ。

 身体の奥底が訴えてくるのだ。

 もっと、もっと気持ちよくなりたい。快感を味わいたい。

 神父はそれを教えてくれる。

 抵抗しないほうがいい。

 受け入れた方が気持ちよくなれる。

 もっともっと深い快感を、自分では知らない快感を教えてくれる。

 

 翌日、神父を前にして、一発ぶん殴ってやろうという思いがしぼんでいく。

 結局何も言わず、その日も神父の"治療"を受けた。

 一度それを許してしまえば、もう拒むことは出来なかった。

 

 その日の自慰は昨夜よりも激しかった。だが絶頂までは至れない。

 奥底からの欲求が大きくなっていく。

 欲しい。欲しい。もっと欲しい。

 もっと気持ちよくなりたい。

 その為には……男の、それを、ここに……♥

 

 思った通り、神父はゲイルの知らない快感を教えたくれた。

 初めてイク事ができた。

 初めての女の絶頂は、癖になりそうなほど刺激的で、甘美だった。

 だが、絶頂の余韻に震えながらまも、ゲイルはまだ満足していない。

 もっともっとと奥底から欲求が湧いてくる。

 

 その欲求は、一体どこから来るのか。

 ゲイルは昔からセックスが好きだったが、そこまで執着するほどではなかった。

 

 神父が治療と称して掛けていた魔法は、実はそう強いものではない。ゲイルにバレる事を恐れ、本人が思っている以上に弱いものとなってしまっている。

 

 ならば、何がゲイルを色欲に狂わせているのか。

 そんな疑問は、両者とももう思いつきもしなかった。

 

 

 絶頂の波が去り、ゲイルはくたりと脱力する。

 神父に寄りかかり、抱きしめられ、祭服越しに勃起したペニスを擦り付けられている。

 愛液が床のズボンを湿らせ、部屋中が発情したメスの香りで充満している。

 神父はゲイルをきつく抱きしめたまま、うなじに鼻をつけ、大きく息を吸い込む。

 

 女の香り。

 メスの匂い。

 神父のペニスが更に硬くなる。

 それだけで射精してしまいそうだ。

 

 もう神父の我慢は限界だ。

 ゲイルを力任せに抱いて診察台へ転がし、両足の間に身体を潜り込ませる。

 

 美しいピンク色の粘膜が神父の前にさらされる。

 それを見て一層息を荒くし、神父は祭服を乱暴に脱ぎ捨て、怒張したペニスを露わにした。

 ゲイルの心臓がドクンと大きく跳ねる。

 

「あうっ♥ やっ、神父……ダメ……それは……」

「……ふうーッ。大丈夫。任せなさい。最高に気持ちよくしてあげるよ」

 

 ゲイルは怖くなる。

 怖いのは、獣となった神父でも、レイプまがいの行為に対してでもない。

 快感そのものだ。

 指だけでとてつもない快感だったのだ。

 これでペニスを入れてしまったら。

 もう戻れなくなる。

 忘れられなくなる。

 知ってしまう。本当の女の快楽を。

 もう後戻りできなくなるという確信に近い予感がある。

 

 だが神父は止まらない。

 興奮した息遣いでペニスを握り、ゲイルの濡れそぼった秘所に当てがう。

 

「ふあっ♥ あっ♥ やめっ、それはっ、んくっ♥ ダメっ、神父っ」

 

 当てがわれただけで甘い刺激が走り、ゲイルの腰がビクリと震える。

 二人の心臓の鼓動が早くなる。

 ゲイルは口では拒否しつつも、抵抗らしい抵抗はしていない。

 恐怖しつつも、期待もしているのだ。

 

 今まで体験したことのない快感が味わえる。

 興味が無いと言ったら嘘だ。

 だがそれは同時に、何かを失うことになる。

 その代償が何なのか、ゲイル自身もよくわからないが、大きな何かを失ってしまうという予感がある。

 頭の片隅から警告が発せられる。

 ダメだ。本当にダメだ。

 この快楽に流されてはいけない。

 今ならまだ間に合う。

 眼の前の神父を張り倒し、あらゆる魔法を行使してこの場から立ち去れ。

 そうすれば、時間はかかっても以前の日常に戻れる。

 早く目を覚ませ。

 

「んあっ♥ あっ♥ あっ♥ やっ♥」

 

 脳裏にそんな言葉が浮かんだ瞬間、神父がまた催淫魔法を使いながら、ペニスの先端で秘所の入り口をくすぐってきた。

 あられもない声がゲイルから漏れ、脳裏の警告がかき消える。

 刺激に呼応して、秘所の奥の奥からじくじくとした官能の波が押し寄せ、ゲイルの脳を淫らに染めていく。

 失うものが大きいとわかっていても、身体の奥底からその快楽を知りたいという欲求が湧き上がってくる。

 ダメだダメだと思いつつも、その好奇心に抗えない。

 

 秘所がヒクヒクと物欲しそうに動き、とめどなく溢れる愛液が診察台へ垂れていく。

 ペニスに存分に愛液をまとわらせ、ついに神父が腰を突き入れ始める。

 

「あああっ♥ だめぇ♥」

 

 拒否の声には、既に悦びの色が多分に含まれていた。

 ゲイルの中へ侵略を果たそうとするペニスが、すぐに侵入を阻むものに当たる。

 処女膜だ。

 二人の心臓が高鳴り、熱を持つ吐息が止まらない。

 神父はゲイルに覆いかぶさり、それを破るため一度力を抜く。

 

「ああ……♥」

 

 ゲイルはその結合部から眼が離せない。

 ペニスの先端、ほんの少しだけが、既に自分の体内に入っているのだ。

 ダメだという意識が、もっと奥に欲しいという意識に飲まれていく。

 入り口をくすぐられる度に、奥が切なく疼いて堪らない。

 

 そして神父は、意を決してペニスを思い切り突き入れた。

 

「んぐうううううううッッッ♥」

 

 一気に体重がかかり、ペニスがその膜を突き破る。

 勢いのままにペニスが全て入りきり、膣の最奥を突く。

 破瓜の痛みとともに強烈な快感がゲイルの脳天へ流れ込む。

 

 身体の中から押し広げられる感覚。

 体内で感じる肉棒の熱さ。

 疼き続けた奥が満たされる。

 男の物をすべて咥え込んだ充足感が湧いてくる。

 

 破瓜の痛みすらも快感に変わり、ゲイルを絶頂へ押し上げていく。

 無意識に神父の身体にしがみつき、足を絡め、その快感に身体を震えさせる。

 

「んーッ♥ んっ♥ んっ♥ んーッ♥」

 

 かたや神父は感動していた。

 求めた女の処女を奪った。

 求めた女のはじめての男となった。

 あの仲間たちよりも自分が先に頂いてやった!この私が!

 得も言えぬ達成感と優越感に感動する。

 

 今ペニスを最奥まで突き入れている。先端が一番奥に届いている。

 ああそうだ。ここだ。この中だ。

 すべての準備は整ったのだ。

 最後の仕上げを注いであげよう。

 昂ぶる感情のままに、眼の前の唇にキスをし、舌をねじ込んだ。

 

「んぐっ!?」

 

 唐突に入ってきた舌に、ゲイルはビクリと震える。

 男とのディープキスに嫌悪感がこみ上げ、身体がこわばる。

 だがそれも一瞬でとろけてしまった。

 以前まで娼婦としていたキスと全然違う。

 甘い快感が脳に直接なだれ込んでくる。

 舌を合わせる度に下腹部がキュンキュンとしびれる。

 自分の体内に入っているペニスがとても愛おしく思えてくる。

 すぐにゲイルからも舌を絡めだした。

 

 ずるい。

 あの娼婦たちは、毎回こんな……

 ずるいなぁ。

 俺も……

 もっと……

 

 口にも秘所にも男の物を咥え込み、ゲイルからも迎え入れて熱烈に絡み合う。

 完全に女としての性交の快楽に溺れている事は明らかだった。

 

 舌を絡める度に、膣がキュッキュと締まり、ペニスを愛撫する。

 ピストンをしなくとも、神父のボルテージはどんどん上がっていく。

 すぐに精液がせり上がってきた。

 神父は我慢などしない。するつもりがない。

 唇を離してゲイルの身体をしっかりと抱き込み、ペニスを限界まで押し込む。

 宣言する間もなく、精液が発射した。

 

「ふぁっ♥ ふああああっ♥ なかっ♥ なかでっ♥ んくううううっ♥」

 

 初めての中出しに、ゲイルはまた快感に打ち震えながらギュッとしがみつく。

 ゲイルの方からも、もっと奥深くへとペニスを受け入れる。

 膣内射精がどのような結果をもたらすのか、ゲイルとて理解している。

 だが今は、この快楽をもっと深く味わいたい、もっと深く知りたいという欲求に支配された。

 

 無遠慮に押し付けられるペニスの圧迫感が強く"オス"を想起させる。

 そこへ胎の奥に熱い熱い子種が注ぎ込まれ、否応なく自身の"メス"を感じさせられる。

 今まさに種付けをされているという実感がゲイルの脳髄をとろけさせ、女の快楽へとのめり込ませる。

 

「あああ……♥ だめぇ♥ んくっ♥ これだめぇ♥ だめなのにぃ♥」

 

 下腹部の中へ熱い快楽が注ぎ込まれ、身体に染み込んでいく。

 知ってしまった。

 これが本当の女の快楽。

 ああ、こんな……

 こんなの知ってしまったらもう……

 もう……

 

 膣は出された精液を一滴も逃すまいと収縮するとともに、蠕動運動を繰り返して奥へ奥へと運び込もうとしている。

 意志とは無関係にうごめく下腹部に不思議な安心感を覚えながら、自分の体内で感じるペニスの脈動と、注ぎ込まれる精液の快感に浸る。

 

 神父はまた感動に震えている。

 感動しながら、容赦なくドクドクと精子を送り込む。

 今のゲイルと出会って、ほんの数日前に抱き始めた願望なれど、正しく念願が叶ったのだ。

 きつく抱きしめてくるゲイルの頭を撫でる。だがペニスを押し付ける圧力は一切緩めず、最後の一滴まで奥で出し切る。

 

「う~♥ うくっ♥ う~~っ♥」

 

 女として初めての性交に、初めての中出し。

 衝撃的な快感の連続に、ゲイルの中の常識が書き換わっていく。

 絶頂の余韻に浸り、それでも注ぎ込まれてくる精子の熱さに震えるゲイルにその自覚はない。

 だが確実に、ゲイルの価値観がこの瞬間変わったのだ。

 

 神父のペニスが萎え、ズルリと膣から抜け落ちる。

 神父はゲイルの絶頂が一息ついたのを確認すると、その場を離れて魔法で濡れタオルを用意する。それでゲイルと自分の身体を綺麗に拭いた。

 精液を放ち、幾分か冷静になった頭が自責の念を訴えてくる。

 ゲイルの秘所は、先程までの行為が嘘のように、新品のごとくぴっちりと閉じられている。

 この秘所に、今さっきまで自分のペニスをぶち込んで、この奥に、この胎の中に膣内射精をしたんだと思うと、また怒張してきてしまいそうだった。

 だが今ばかりは、自己嫌悪のほうが勝った。

 

 ああ、やってしまった。

 ひとときの欲望に身を任せ、彼女を犯してしまった。

 自分は聖職者であるのに、催淫魔法まで使って罠にはめるように行為に及んでしまったのだ。

 彼女からの信頼、教会の信用、神父という立場、すべてを裏切る行為だ。

 許されることではない。

 深い後悔と同時に、更なる欲望が芽生えてくる。

 まだ抱き足りない。もっと抱きたい。

 出来ることなら、誰にもこの女を渡したくない。自分だけのものにし、そして自分の子を孕ませたい。

 

 ふとゲイルを見ると、やっと余韻から抜け出したようで、フラフラしながら服を着ている。

 罪悪感が押し寄せてくる。

 謝罪の言葉を吐こうとした時、また悪意が鎌首をもたげてきた。

 

 謝罪?

 今更謝って、それでどうするんだ?

 男に戻す手伝いでもするのか?こんな極上の女を。

 こんなチャンスを掴んで、それを自ら手放すのか?

 よく考えろ。こんな状況、二度とないぞ。

 よく思い出せ。

 あのマンコにチンポぶち込んで、奥にたっぷり中出しした時の快感を。

 どうせ老い先短い人生なんだ。

 今までの禁欲生活の分、最後にちょっとくらい美味しい思いをさせてもらおうぜ。

 それに、最後はあいつも悦んでたじゃないか。

 あれはもう肉欲の虜だ。

 誘ってみろよ。

 乗ってくるぜ。絶対。

 明日も、明後日も、まだまだ楽しめるぞ。

 もしかしたら、本当に孕ませれるかもな。

 

 理性と欲望の間でまた神父が葛藤する。

 しかし、神父の理性と欲望の戦いは、既に一方的なものとなっていた。

 

「あ……明日からは夕食をとってからここに来なさい。また……また明日、"治療"を行おう」

 

 言ってしまった。のうのうと。悪びれもなく。どう聞いても、明日も情事をする宣言だ。

 ゲイルがその気になれば、神父は破滅だ。

 教会は破門。街で築き上げてきた信頼も全て失い、この歳では他の働き口もなく、そのまま野垂れ死ぬだろう。

 いや、神父という立場の者が淫行を行ったと露見するのを教会は嫌い、ひっそりと処分されるかもしれない。神父はその想像にブルリと震える。

 神父はこの時、罰を欲していたのだ。

 その行いを悔い改め、そしてまた神の道へと歩むための罰を。

 適切な対応があれば、この神父は理性を取り戻し、自責と後悔の念によって更に強固な信仰を作り上げ、真に信頼される神父としてこの街に有り続けただろう。

 ゲイルの肉体すら治してみせたかもしれない。

 だが、ゲイルの返答は。

 

「お、おう……わかった。明日夜に、また来る。……()()()()()()()()()()

 

 罰どころか、その淫行を肯定してしまった。情事の約束を受けてしまった。

 二人とも胸を高鳴らせる。

 神父は、神の道に反すると知りながらも、明日の行為に。

 ゲイルは、快楽の為に、神父の誘いを了承してしまった背徳感に。

 

 そうしてゲイルは教会を後にする。いつもより遅い合流に、どんな言い訳をしようか考えながら、いつもの酒場へ向かう。

 

 ゲイルの下腹部に小さなハートマークの刻印が現れたことには、どちらも気付かなかった。

 

 



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04 神父・二

 

…………

 一晩経って、ゲイルは激しく後悔し、頭を抱えていた。

 神父のジジイと、事もあろうに性交をし、そして絶頂して満足感すら得てしまった事に対してだ。

 

 あの時はおかしくなっていたのだ。

 そう、以前も自覚を奪われたように、今回も狂わされたのだ。

 それに神父も魔法を使っていた。あれは明らかに催淫魔法。それのせいだ。

 今回は自分で冷静になれた。自分は大丈夫だ。自分は男なのだ。

 そう強く言い聞かせる。

 

 昨日はあんな受け応えをしてしまったが、ゲイルはもう情事に至るつもりはない。だがなんとか治療だけでもやってもらわなければ、自分は一生このままだ。

 パトリックの話では、彼以上に優秀な神父は他にそうそういないらしい。

 昨日の神父の行動から多少訝しむが、パトリックの言葉ならと信用することにした。彼はああ見えて正直で善良な人間なのだ。

 神父を訴えるのは簡単だが、それでは何も好転しない。神父の良心に期待し、説き伏せるしかないだろう。

 憂鬱な気分を引きずりながら、ゲイルはぶかぶかになってしまった冒険者装備に着替えるのだった。

 

 

 そうして、今日の稼ぎを終えて帰ってくる。

 

「あれ?今日は神父の所に行かないのですか?」

 

「あー、ちょっと憂鬱でよぉ」

 

「なんだ。昨日は回復の兆しが見れたとか何とか言っていたじゃないか」

 

 昨日神父との情事で遅れた言い訳はそういう事にしておいたのだ。

 

「まあそれはそうなんだが……

 あー、なんというか。

 神父の視線や手付きが……その……いやらしいというか」

 

「おい、あの神父様に限ってそれはない。侮辱は許さんぞ」

 

「あはは、ゲイルが自意識過剰や被害妄想ですか。

 本格的に女の子になってきたんじゃないですか?

 面倒な女方面に」

 

「やめろお!まじでやめろお!」

 

「神父様はもう高齢だ。勃つものも勃たないだろう。

 仮に間違いがあったとしても、戦闘力なら完全にお前が上だ。簡単に振り払える。

 まぁあの神父様に限って有り得ないが」

 

 それが勃つし、有り得たんだよなあ。ゲイルは一人そう思い、頭を掻く。

 ゲイル自身もそれを振り払う気が全く無かった事実は棚に上げて。

 

「まあ今日は先にメシ食って、教会が閉まる前に駆け込むわ」

 

「そうですか。久しぶりの三人揃っての夕食ですね」

 

「昨日はともかく、一昨日もその前も三人揃ってたろ」

 

「そういう事じゃないんですよ」

 

「フ……随分ナイーブな事だな」

 

「いいじゃないですか、別に」

 

 理解できないゲイルを尻目に、サイモンとパトリックはクスリと笑う。

 そうしていつものようにバカな話やクエストの相談をしながら三人で夕食を摂った。

 

 

 食事を終え、その時間が来る。目の前には教会。来てしまった。

 

「うっし!」

 

 ゲイルは気合を入れる。

 その場の空気に流されてはならない。気をしっかり持て。

 情事は徹底的に避ける。治療だけ行って貰い、すぐ帰る。それだけだ。

 向かうは神父の部屋。

 

「たのもーう!」

 

「うお!ああ、なんだ、君か。年寄りを脅かしてはいけない。天罰が落ちてしまうよ」

 

 そう言う神父の股間は、既に盛り上がっていた。

 

「ストップ。すまん、神父。

 昨日はああ言ったが、もうそういう行為をするつもりはない。

 なんだ、ほら、惑わされてたんだよ。

 以前のように」

 

「……そ、そうか……もう、終わりか……」

 

 神父は愕然とした表情をしたが、すぐに持ち直し、頭を下げた。

 

「……すまなかった。

 謝って済む事ではないのはわかっている。

 いくらでも罰を受けよう。

 もう衛兵に連絡はしているのかい?

 それとも、事は内密にして私だけ出頭しようか。

 君にも立場があるだろう」

 

「おいおい早まんなよ。そこまでのもんじゃねえ」

 

 ゲイルは安堵した。神父にも良識が残っていた。やはりパトリックが信用した神父だ。

 

「強引にでも振り払わなかった俺にも問題はあるし、わかってくれればいいんだ。

 それで、都合のいい話だと思うが、治療だけは続けて欲しい。寄付金も多く払う」

 

「わかっている。

 私が責任持って治療を行おう。

 寄付金も普段通りで構わない。

 私がしてしまったことを鑑みれば、本当ならば無料でやってやりたいくらいなのだが……」

 

「教会には教会の事情があるんだろ。治療さえして貰えればそれでいいさ」

 

「すまないな……助かる。

 では本日の治療を行う。

 君も気をしっかり持て。

 私も誘惑に負けぬよう堪える」

 

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はむっ♥ ちゅっ♥ ぢゅるっ♥ れろれろ♥ はんっ♥」

 

 10分後、彼らは対面で座りあったまま、舌を絡めあい、お互いの性器を服の上から愛撫していた。

 どちらが先に理性をなくしてしまったのか。

 ゲイルが神父の怒張したペニスに手を出したのが先か。

 神父がゲイルの下腹部を撫でながら催淫魔法を発動したのが先か。

 もはや誰もわからない。

 ただ一つ確実なのは、どちらが先であってもその誘惑を振りほどけなかったと言う事だけだ。

 

 ゲイルのズボンは、既に絞れば滴るほどの愛液を吸っている。

 神父のズボンも、怒張したペニスの先端部分に先走りが滲んできている。

 服の上からのもどかしい愛撫にゲイルの腰が勝手にクイクイと動き出す。

 神父のペニスがさすられる度にピクピクと動く。

 舌を絡めながらどちらからともなく立ち上がり、お互いのベルトを緩め、ズボンが床に落ちる。

 淫行の匂いが部屋に充満する。お互いがお互いの香りにクラクラする。

 

 キスを止め、二人の唇に架かった橋が糸を引いて落ちていく。

 上気した顔を突き合わせ、荒く熱い吐息を鼻先で感じる。

 もはや二人はこれから行う行為に疑問など浮かばない。

 頭の中は交尾のことでいっぱいだ。

 

 ゲイルは男物の下着を脱ぎ捨てると、後ろを向いて机に手を付き、尻をキュッと上げる。

 そのまま片手を股間へ這わし、指で秘所を開いて神父のものを誘う。

 早くここへ来てくれ。この中へ入れてくれと目で訴える。

 神父はそこへ目が釘付けになり、ペニスが限界を超えて怒張する。

 誘われるままにゲイルの腰を掴み、ピンク色がむき出しの秘所へペニスの先端をピタリと当てる。

 

「んっ♥」

 

 入り口にペニスが接触し、甘い刺激にピクリと腰が震える。

 この数分間に、頭の中で何度も想像していた男女の性器を交える行為が、今やっと現実になる。

 神父が腰を進めると、ペニスがその中へズブズブと沈んでいく。

 

「んくうううううっ♥」

 

 待ちかねたペニスが肉壁を掻き分けて入ってくる。

 ゲイルはそれだけで軽い絶頂に達し、身体を弓なりに反らしながら小刻みに震えてしまう。

 最奥まで挿入され、そのペニスのすべてを咥えきると、得も言えぬ快感と充足感を覚える。

 ゲイルはだらしなくとろけた表情を晒し、奥まで入りきったペニスの感触を味わう。

 

 一方神父は、膣が与えてくる容赦ない快感に堪えていた。

 未だ初々しさの残る処女のごとき狭さと、ねっとりと絡む熱い膣壁がペニスを襲う。

 それだけでもう神父は限界だった。

 だが神父は堪える。まだ早い。まだ楽しみたい。何よりも、男として女を満足させたい。

 ペニスの根本に力を入れ、せり上がってきそうな精子を堰き止める。うねる膣壁がまた更なる快感を与えてきた。悩んでいる暇は無い。

 

 神父は効率的に快感を与えれる行動を考え、その最奥、子宮口に狙いを定める。

 後ろから挿入したまま、立ち位置を更に前へ移動し、ゲイルの身体をきつく抱きしめてペニスを更に奥へと押し込む。

 

「はううっ♥」

 

 深く挿入されてゲイルも悦んでいる事に神父も気を良くする。

 そして子宮口にペニスを押し当てた状態で、小刻みにピストンを始める。

 両腕で抱きしめたまま、ゲイルの服の中に手を入れてその乳首を転がす。

 

「ひゃうっ♥ だめっ♥ それっ♥ んはっ♥ あっ♥ あっ♥」

 

 ゲイルの口から漏れる女の嬌声に、神父のボルテージも上がっていく。

 連続で最奥をグッグッと刺激する。

 ゲイルの下腹部の中で、精子を放つ口と精子を受け取る口がチュッチュッとキスをする。

 その度にゲイルの脳と背筋にゾクゾクと快感が走り、頭の中が色欲でトロける。

 更に興奮を促すため、神父は語りかける。

 

「私はっ、この奥でっ、ここでっ、出したいんだ!これのっ、意味がっ、わかるかっ」

 

「んくっ♥ だめっ♥ わかるっ♥ おくっ♥ なかでっ♥ ふあっ♥ だめっ♥」

 

 執拗に子宮口を刺激すると共に、言葉によって中出しを意識させる。

 更に小刻みのピストンを続ける。

 

「ダメだと?嘘だっ、君のっ、ここはっ、こんなにもっ、欲しがってっ、いるぞっ」

 

「はうっ♥ うそっ♥ うんっ♥ ほしいっ♥ でもっ♥ だめっ♥」

 

 結合部から愛液が溢れ出て、ゲイルの太ももを伝っていく。

 子宮口を連続でノックされ、神父の言葉が昨日の種付けの快感を想起させる。

 

 ゲイルは焦る。この快楽はマズい。本当に癖になってしまう。快楽に飲まれてしまう。

 身体の奥底がそれを強く欲してきている。

 今ナカで出されれば間違いなく気持ちいい。

 一番奥にぎゅ~っとペニスをくっつけられて、子宮口に直接熱い精液を出されてしまう。

 昨日よりももっと、もっと深い絶頂を体験できるだろう。

 そんな誘惑がゲイルを襲う。

 頭の片隅が危機感を訴えてくる。

 だが、一度女の快楽を知ったゲイルに、危機感は簡単に霧散した。

 "それは本当に抗うべき事なのか?快楽に飲まれても、別に悪いことではないだろう?"

 一瞬そんな事を考えたら、もう迷いは消えてしまった。

 

 神父の限界は近い。

 神父は片手を下腹部へ移動し、愛おしく撫で回す。同時に下腹部の内部へ向けて全力の催淫魔法をぶち込む。

 

「出すぞっ、この中にっ、この奥にっ、いいかっ、出すぞっ」

 

「ひぐっ♥ だめっ♥ なかっ♥ んぐっ♥」

 

 撫で回される"この中"が期待感でいっぱいになる。

 疼いて疼いて、欲しくて欲しくて堪らない。

 

 もはやゲイルの言う"だめ"など口先だけであり、ゲイル自身もそれを迎え入れる事しか頭になく、ゲイルの意思で膣をキュッキュッと締めてペニスをしごく。

 神父は両手をゲイルの股関節に回して腰を強く引き寄せ、ペニスを奥へ突き入れる。

 ゲイルもそれが射精の合図だと理解し、膣を収縮して一滴も逃さないようにする。

 精子を放つ口と受け取る口がぴったりと密着する。

 ゲイルの望み通り、二つの口がぎゅ〜っとくっつき、限界となった神父が精液を解き放つ。

 

「孕めぇっ!」

 

「んくうううううッッッ♥」

 

 待ちに待った種付け射精が、ゲイルの子宮口へ殺到する。

 胎の奥へ直接注ぎ込まれる子種が、強烈な快感となってゲイルの脳に流れ込む。

 

 強く意識した種付けの快感。

 孕めと唱える神父。

 子宮口へ直接注がれる精液の熱さ。

 そして催淫魔法がその全ての快感を増幅させる。

 

 ゲイルの脳髄を絶頂の電撃が駆け巡り、全身を仰け反らせて痙攣させる。

 

「もっと!奥へ!孕めえっ」

 

「んくうっ♥ んくっ♥ んっ♥ はうっ♥」

 

 神父が更に強引に奥へとペニスをねじ込んでくる。

 もうこれ以上はないと思われた結合が、更にほんの少し深くなった。

 先端が子宮口へめり込んだのだ。

 

「んぐううううッ♥ うっ♥ うっ♥ らめ♥」

 

 下腹部の奥に快感の塊のような熱が注がれてくる。

 最奥に接したペニスから、子宮口へダイレクトに熱い衝撃を受ける。

 その度に全身がビクンビクンと痙攣し、頭の奥に直接射精されてるかの如く、中出しを感じて絶頂する。

 精液の熱さを最奥で感じる度に、身体の奥底から悦びが溢れてくる。

 

 ゲイルの脳髄に刻み込まれる。

 中出しの快楽が。

 種付けの快感が。

 子宮口で受ける精液の味が。

 また一歩、ゲイルは女の快楽へとのめり込む。

 神父は老いを感じさせぬほど長い射精をし、大量の精液をゲイルの中へ注ぎ込む。

 ゲイルは度重なる絶頂の中、癖になっていくその快感を貪った。

 

 射精が終わっても、ゲイルはそのまま絶頂の余韻に浸り、後ろから抱きしめる神父にその身体を預け、くたりと脱力した。

 

 神父は一滴残らずゲイルの子宮口へ精液を注ぎ終えると、そのペニスは萎えて膣からこぼれ落ちてしまう。

 やはりゲイルの膣は新品のごとくぴっちりと閉じる。

 不思議な事に、奥で大量に出した精液は一滴たりとも垂れてこなかった。

 

 ゲイルはとろけた表情で神父の腕の中で脱力している。そんなゲイルを診察台に寝かせ、昨日と同じようにその身体を綺麗に拭く。

 自分の身体も一通り拭き、脱ぎ散らかした衣服を集め、着衣を整えると、また神父は自己嫌悪に陥る。

 

 また欲望に流されてしまった。

 自分の心はこんなにも弱かったのか。

 若人が時に道を誤ってしまうのは仕方のない事だ。

 そんな時こそ、人生の先達であり、そして何より神父である自分が、若人を導かねばならぬと言うのに。

 

 鬱々と悩み続ける神父を尻目に、昨日より大分遅れてゲイルが余韻から立ち直る。

 診察台の脇に、綺麗にたたまれて魔法で軽く乾燥までされた下着とズボンを見つけ、それをのろのろと履いていると、神父から声がかかった。

 

「軽蔑しているだろう……

 あれだけ大見得をきって結局このざまだ……

 私は神父を引退しよう。

 君の治療には私から別の者を紹介する。

 安心したまえ。私以上の実力者だ」

 

 それに対してゲイルは何を言うべきか悩む。だがいい言葉が思いつかない。だから、ゲイルはその言葉を聞かなかったことにした。

 

「神父、……()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ゲイルは赤面しながらそれだけ言って、教会を後にした。

 それを聞いた神父は自己嫌悪を止めた。股間がまた勃起する。

 

 ゲイルの下腹部に刻まれた小さなハートの刻印が、ほんのり桜色に染まっていた。

 

 



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05 神父・三

 

 

…………

 

「んなははははは!パトリック!おい!お前も少しは飲めよ!」

 

「やめろ。お前はもうこれを飲んどけ」

 

「あ~?なんだァ?こきゅこきゅ……ブハァ~水じゃん!なははははは!」

 

「いつになく上機嫌ですねぇ。あ、僕カルアミルクおかわり」

 

「おい!パトじゃねぇおいサイモン!そんな女子供の酒飲んでんじゃねぇよ。これを飲め」

 

「なんですかこれ。またスピリタスとかじゃないですよね」

 

「いいからいいから。クッといけクッと」

 

「くんくん……ん?そんなに強くない?ゴクリ……水じゃないですか!」

 

「んなはははははは!ばーかばーか!パトリックも黙ってないでなんか言えよ、おい!」

 

「おい、やめろ、抱きつくな。おっぱいがうぜえ」

 

「あー?てめぇ俺のおっぱい様に何いってんだ?揉むか?童貞ボーイには特別に許可してやんよ」

 

「うぜえ絡み方してんじゃねえよ。ほら、サイモンが飲みきったらお開きだ。せっかく転がり込んだ金を一晩でパアにする気か」

 

「あたしぃ、酔っちゃったみた~い☆」

 

「こいつ置いて帰ろうぜ」

 

「今のは僕もイラッと来ました。ゲイル、先帰るんで、支払いお願いしますね」

 

「うそうそ待って待って。ワリカンワリカン」

 

「それはそうと、ゲイルは今日は教会へは行かないんですか?」

 

「あーしまった忘れてた。もう遅いな。どうしよ」

 

「あのジジイは律儀だ。まだ待ってるかもしれん。見るだけ見に行って、明かりが消えてたらすぐ帰ってこい」

 

「しゃーねえな。面倒だけど寄ってくかぁ。世話んなってるし」

 

「うっわ、ゲイルが殊勝なこと口走ってる」

 

「さては偽物だな。本物を返せ。本物におっぱいはついていない」

 

「でも身長は今と同じくらい」

 

「ちくしょーてめーら他人事だからって!前でも流石にこんなちっさくねーから!めっちゃ縮んでるから!てめーらがでけえんだよ!」

 

「はいはい、ゲイルちゃん、もうお開きでちゅよー」

 

「おいこらサイモーン」

 

「金払ってくる。めんどくせえから共有資金から払っとくぞ」

 

「あ、はい。お願いします」

 

「……どっせい!」

 

「うっお!ちょっと!店内でドロップキックはやめてくださいよ!」

 

「しっかりキャッチしやがって……くそ、体重も筋力も足りてねぇ」

 

「まぁいいじゃないですか。焦ることないですよ。治療は前進してるんでしょう?」

 

「……おう、そうだな。……まぁ俺が真の姿を取り戻せば、お前なんぞチョチョイのチョイだぜ」

 

「おやおや?思い上がりも甚だしいですね。昔の姿を取り戻した所で、ゲイル程度の体格で僕は止められませんよ!」

 

「ぬおおおおお」

 

「おう帰るぞ、って、なんでゲイルは小脇に抱えられてんだよ」

 

「ちょうどいいところに!ゆけ!パトラッシュ!サイモンの息の根を止めろ!」

 

「誰がパトラッシュだ、誰が」

 

 

「んじゃあ俺は教会寄ってみるわ。先帰っててくれ」

 

「明かりが消えてたらすぐ戻ってこいよ。突撃してジジイに迷惑かけんじゃねえぞ」

 

「わかってるよ。んじゃな、おやすみ」

 

「はい、おやすみなさい」

 

 

 

 

 ゲイルは一人教会への道を歩く。

 早くも酔いは覚めていた。

 だが、別のものに酔っているかもしれない。

 

「はあっ、はあっ、はあっ」

 

 教会へ行くことを忘れていたなど嘘だ。

 息が荒くなる。

 胸が高鳴る。

 気がはやる。

 この道を通るだけで秘所が湿ってきてしまう。

 もうパブロフの犬状態になっているのだ。

 

 神父の部屋の明かりはまだついていた。

 物音を建てないように教会へ侵入し、神父の部屋をノックする。

 

「はあっ、神父。き、きたぞ」

 

「おお、待っていたよ」

 

 あれから更に三日経つ。あれ以来、二人は毎日セックスをしている。

 もうまともな治療は行っていない。

 昨日など、お仕置きされるシスターごっこプレイをしつつ、お互いに催淫魔法を掛け合って楽しんだほどだ。

 

「今日は遅かったじゃないか。もう来ないのかと思っていたよ」

 

「わ、悪い。今日はそこそこ高価なもんが手に入って、みんなで飲んでたんだ」

 

「いいんだよ。こうして来てくれたんだから。さ、今日も……」

 

「ん……♥ 神父……♥」

 

 酒場や仲間との探索中こそ今までどおりのゲイルだが、情事では完全に女として出来上がっている。

 もう男とまぐわうことに忌避感は一切ない。

 今やゲイルは、神父との性交が楽しみで仕方なく、教会へ足を運ぶ時点で既に顔が上気して股間が濡れ始めているほどだ。

 

 楽しみなのは神父も同じだ。

 ゲイルが訪れる時間が近づくと、そわそわと落ち着かなくなり勝手にペニスがいきり勃ってしまう。

 

 たった数日。

 たった数日で肉欲に溺れてしまった。

 あれだけ後悔していたゲイルも、敬虔な信者であった神父も。

 

 ゲイルが部屋に入ると、すぐに抱き合い、唇を重ね、お互いの体温を感じ合う。

 ムードを上げる雑談もしなければ、お茶を淹れることもない。

 診察の真似事すらしない。

 そんなことよりも、一刻も早く繋がりたい。

 

 恋人のように熱烈に舌を絡めながら、ズボンの上から勃起したペニスをさする。

 服の上からでもわかるほど、大きく硬く、そして熱くなっている。

 今日もこれを自分の中へずっぽり入れられて、たくさんピストンして、そして一番奥の大事なところへ向けて射精されてしまうのだ。

 期待感に背筋がゾクゾクしてくる。

 ゲイルは中出しが大好きだ。

 熱い精液が腹の奥へビュルッと注がれ、じんわりと染み込んでいく感覚が好きだ。

 同時に、膣内射精の瞬間に、奥底からとてつもない歓喜が湧いてくる。幸せでいっぱいになり、絶頂を迎えるのだ。

 昨日も、一昨日も、初めて犯された時から毎日毎日中出しされ、すっかり病みつきになってしまった。

 いつしか本当に孕んでしまうかもしれない。

 もしかしたら、もう既に、このお腹の中に……♥

 

 ゲイルの身体が小刻みに震える。

 キスと期待感と想像だけで、軽く達してしまったのだ。

 頭の奥がジンジンと痺れ、理性がとろけていく。

 もう堪らない。

 

 キスを続けながら、手早く服を脱いでいく。二人共、意識的に脱ぐのに手間取らない服を選んできている。

 

 二人で産まれたままの姿になると、ゲイルは神父の首に腕を回して片足を上げる。

 さながらポールダンスのように、腰をくねらせて神父のペニスと自らの秘所を擦り付ける。

 ぬちぬちと卑猥な音が鳴り、粘っこい愛液が秘所とペニスの間に糸を引く。

 その姿は娼婦のようで、男だった面影は未だ短い髪の毛くらいだ。

 ゲイルの秘所はすぐにでも受け入れられるほど濡れており、神父のペニスもガチガチに勃起している。

 前戯などいらない。

 男と女の粘膜を結合させる準備は、服を脱ぐ前から整っている。

 

 神父は掲げられた片足を持ち上げて腰を抱きしめると、ペニスをゲイルの秘所へ挿入する。

 ちゅぷりと亀頭が入り込み、そのまま奥まで飲み込んでいく。

 ゲイルの膣は、連日のセックスによって十分にほぐれ、神父のペニスをうまそうに咥え込んだ。

 

「ん〜っ♥ はあっ♥ きたあっ♥」

 

 膣へ潜り込んでくるペニス。

 肉を押し広げてきて、熱くて、硬くて、大きくて、奥に当たって。

 内側からその存在感を主張してくる。

 もうその形をしっかり覚えてしまっている。

 自分の体内へ挿入されているオスの性器が、ゲイルを一層女の快楽の深みへと引きずり込んでいく。

 

 神父も行為に慣れ、入れてすぐに射精してしまうような事はもうない。

 だがゲイルの膣が名器であることに違いはない。

 絶妙な熱さの蜜壺がペニス全体を満遍なく包み込み、熟した果実のような柔らかさでありながら、愛おしげにキュッキュッと締め付けてペニスを刺激してくる。

 神父はもうこの身体の虜だ。

 

 早速膣壁がうごめいて精液をねだり始めた。

 慣れたとはいえ、その刺激は相変わらず甘美だ。

 神父も負けじとペニスを最奥まで突き入れ、その先端で子宮口を捏ね回し、ゲイルを攻め立てる。

 

「んっ♥ あんっ♥ くうんっ♥」 

 

 神父は孕ませたいという欲求が強い。

 しかし、欲望に忠実になったとはいえ、ゲイルが嫌がるような事は極力やりたくない。

 あくまでもゲイルとの性交が特例なだけで、未だ強い信仰心も持っており、そう悪人にはなりきれない。

 冒険者にとって妊娠は致命的だ。普通ならそのまま引退となる。

 それは間違いなくゲイルにとって本意ではないだろう。

 ならば、悦ぶようにしてしまえばいい。

 神父はそう考え、密かにゲイルを調教している。

 

 行為の度に、言葉と催淫魔法を駆使し、徹底的に膣内射精を意識させる。

 射精の瞬間に局所的に催淫魔法を使い、中出しの快感を覚え込ませる。

 だが催淫魔法は必要最低限に絞る。

 催淫に頼っていては、自分からそれを望むようにはならない。

 しつこいほどに子作りを連想する言葉をささやき、射精時は必ず孕め孕めと声を掛ける。

 膣内射精の快感だけでなく、必ずその結果とも結びつけて印象付けさせる。

 そして徐々に催淫魔法の威力を下げていき、今までの中出しの快感を思い起こさせる言葉を掛ける。

 

 神父の手腕か、ゲイルの資質か、調教は面白いほどゲイルに浸透した。

 早くも催淫魔法なしでしっかりイクようになった。

 妊娠のリスクを知った上で、中出しも求めるようになってきている。

 ついでに、行為中はよく甘えるようになってきた。

 メスとしての自覚が出てきたのだろう。

 

 そして今日。

 今回は少し意地悪な趣向で攻めようと神父は考えていた。

 神父は腰をきつく抱きしめ、深く突き入れて子宮口にペニスをムチュウっと密着させる。

 

「はうううんっ♥」

 

 そのまま唇をぴったり合わせ、声も唾液も外へ漏れないようにして、お互いの口の中だけで舌を絡め合う。

 立ったままきつく抱きしめ合い、性器と口を重ね合わせる。

 

「ん~♥ くちゅくちゅ♥ んっ♥ ちゅるる♥」

 

 ペニスは子宮口にみっちり押し当てたまま動かさない。

 ただひたすらキスを続ける。

 

 しばらくすると、二人の結合部からだらだらと愛液が溢れ、糸を引いて床へ垂れる。

 ゲイルの片足がカタカタと震え、腰を支えていないと立っていられなさそうだ。

 目が潤み、キスが激しくなり、体温が高くなってくる。神父もそれに合わせて激しく舌を絡める。

 膣がキュッキュッと小刻みに収縮し、精液を搾ろうと愛撫してくる。

 それでもペニスは子宮口に押し付けたまま動かず、ひたすらキスだけを続ける。

 

 またしばらくすると、たまらなくなったゲイルの腰がクイクイと動き始める。

 そこへ神父はゲイルの腰をしっかりときつく抱え込み、壁へ押し付け、微動だにしないよう固定する。

 ゲイルはもう立っていられず、きつく抱えられたのをいいことに、全体重を神父に任せて両足でその身体にしがみつく。

 更に深くペニスが突き刺さり、ゲイルの背筋に快感が走る。

 

「ひぐっ♥」

 

 神父はゲイルの両足を自分の肩に掛け、そのまま壁に強く押し付けて固定し、その尻を掴んだ。

 まんぐり返しの状態で駅弁になったような姿勢だ。

 もうゲイルは自由に動けない。

 神父にされるがままの体位になった。

 

 やはりペニスは深く押し込んだまま動かず、舌を絡めることだけに専念する。

 そうしてお互いの唾液を味わい続けていると、ついにゲイルが限界となる。

 

「はうう♥ うくっ♥ おねっ、おねがい♥ もう、動いて♥ せっ、せつないの♥」

 

 眼を潤ませ、とろけた表情で唾液を垂らすゲイルがおねだりを始めた。完全にメスの顔だ。

 男だった頃のプライドを捨て、メスとして男に媚を売る顔だ。

 神父のペニスがもう一回り膨れ上がる。

 

「うう〜っ♥」

 

 ゲイルの下腹部の中は熱々に火照り、ゲイルの愛液と神父の先走りが混じり合いドロドロだ。

 焦らしに焦らされた膣と子宮口が、ヒクヒクと物欲しそうに震えだす。

 下腹部の筋肉もヒクヒクと震え、外からわかるほどその切なさを訴えている。

 

 しかしまだ焦らす。

 いじらしいゲイルの姿に、神父も乱暴にピストンして存分に種付けしたい欲求が湧いてくるが、まだゲイルを焦らす。

 神父は子宮口に押し当てたペニスの先端をピクリピクリと動かしてほんの少しの刺激を与えながら、ゲイルの耳元で囁く。

 

「一番奥まで押し込んで、そこにぴったりとつけながら射精するよ。

 子宮口に目一杯キスをして、そこへ直接熱い熱い精液を注ぎ込む。

 私の精子がこの門をくぐり抜けて、その奥の君の卵子を犯すんだ」

 

「ひぐっ♥ はうっ♥ だめ♥ うくっ♥ ん〜っ♥」

 

 そんな言葉を囁きかけられ、ゲイルは一人で絶頂に達する。

 

 種付けの快楽を脳髄に刻み込まれたゲイルは、それを喚起する言葉だけで性感を得るようになってしまった。

 今のように十分に焦らせば、それだけで絶頂してしまうほどに。

 神父は囁きを続ける。

 

「今行っている行為の本来の目的をちゃんと知ってるかい?

 これは交尾。

 今、私と君で子作りをしているんだ。

 わかっているかい?」

 

「んうっ♥ しってるっ♥ わかっ、わかってるう♥ んくううううっ♥」

 

 神父の囁きがゲイルを絶頂へと至らせる。

 足をピンと伸ばし、背筋を仰け反らせ、涙とよだれを垂らして悦ぶ。

 膣がキュウッと収縮し、まだ出されていない幻の精液を奥へ運び込もうとうねりだす。

 

 しかしいくら絶頂してもホンモノは来ない。

 神父の囁きが、膣内射精への欲求を高めていく。

 

「私のペニスが硬くなって、君の中にずっぽり収まっているだろう?

 君に種付けしたい、君を孕ませたいって思ってるからこうなっているんだ」

 

「あうううっ♥ んくうっ♥ ほっ、ほしいっ♥ はううっ♥」

 

「種付けしていいかい?

 奥に注ぎ込んでいいかい?

 私の精液を、全てこの奥で飲み干して、私との子を孕んでくれるかい?」

 

「はらむっ♥ はらむからっ♥ ほしいっ♥ ほしいのっ♥ うごいてっ♥ だしてっ♥ おくにっ♥」 

 

 神父が満足気に微笑み、抽送の開始を囁く。

 

「動くよ。私ももう限界だ。すぐに射精してしまいそうだ」

 

「うんっ♥ はっ、はやくっ♥ うごいてっ♥ だしてっ♥」

 

 神父が奥までずっぽりと入ったペニスをやっと動かし始める。だがそのスピードはひどく遅い。

 ゲイルの膣壁をカリ首でひっかきながら、ゆっくりとその中からペニスを引き抜いている。

 

「ひうううううううっ♥」

 

「見てごらん。君の中から私のペニスが出てきたよ」

 

 ゲイルの中からペニスが引き抜かれていく様を二人で観察する。

 愛液でヌラヌラと光り、膣の温度で熱々となったペニスが姿を現す。

 最後に残った亀頭だけは、膣がチュウチュウと吸い付いて出てこない。

 

「はっ、はうっ♥ でてっ♥ でてきちゃったっ♥ だめっ♥ ほしいっ♥ おくにっ♥」

 

「すぐに一番奥へ入れてあげるよ」

 

 その言葉通り、神父は打って変わって唐突にペニスを突き入れた。

 

「んぐうううううううっ♥ んぐっ♥ はぐっ♥」

 

 パチュンと肉がぶつかり合う音が響く。

 予期してなかった突然の快感に脳髄が痺れ、全身が痙攣する。

 ゲイルは必死に神父の首にすがりつき、女の快楽を貪る。

 そこから神父は容赦ないピストンを始める。

 

「はぐっ♥ あぐっ♥ いまっ♥ いってうっ♥ らめっ♥ んぐっ♥」

 

 強く壁に押し付けられ、ゲイルの中を激しくペニスが出入りする。

 肉がぶつかる音が連続で響く。

 奥を突かれる度に背筋に電流が走り、ゲイルは連続絶頂させられてしまう。

 度重なる絶頂に精液への欲求が高まり続けるが、一向にそれが注がれてこない。

 ペニスをもっと刺激して射精を促そうとしても、連続絶頂の波に飲まれ、膣は思うように働いてくれない。

 

 ずっと焦らされ、言葉責めで昂ぶらされ、ゲイルはもう中出しして欲しくて堪らない。

 子宮口にぎゅ〜っとくっつけて、その欲望をぶちまけて欲しい。

 遠慮なく子種を注ぎ込んで、孕ませて欲しい。

 早く胎の奥で精液の熱を感じて、種付けの歓喜に包まれたい。

 膣が、子宮が、脳髄が、身体の奥底が、精液を欲して欲して、気がおかしくなりそうになる。

 

 その時、ゲイルの下腹部のハートの刻印に変化が起こる。

 小さなハートを中心に、それを囲む一回り大きなハートの縁取りが浮かび上がり、全体が鮮やかなピンク色に染まる。

 交尾に夢中になっている二人はその変化には気付かなかったが、神父が別の異変に襲われる。

 

「ぬうっ!?」

 

 ペニスの先端が弾力のある何かに当たり、そのままズブリと亀頭が飲み込まれたのだ。

 焦らされてアツアツになった今の膣よりも熱く、吸盤のごとく吸い付き、柔らかくもコリコリとしたものが亀頭をしごき、裏筋は少しザラザラとした感触が刺激してくる。

 あたかも精液を搾る事に特化したかのような刺激だ。

 とてつもない快感にすぐに精液が昇ってくる。

 

「くうっ、出る出る!孕めっ!孕んでくれえっ」

「あうっ♥ あぐっ♥ はぐッッッ♥」

 

 神父は堪えきれなくなり、ペニスを更に奥へ突き入れて欲望のままに射精する。

 その瞬間、ゲイルの腹の中で射精の熱を感じ取り、歓喜が溢れてくる。

 だが今回は一味も二味も違った。

 

 射精が。

 精液が。

 膣の、お腹の、更に奥へ、直接注がれてくる。

 熱い。

 今までよりも、ずっと。

 間違いない。

 子宮に、直接きてる。

 流し込まれてる。

 種付け、されてちゃってる。

 

 ゲイルの脳に中出しの歓喜がなだれ込んでくる。

 今までは、じわりと身体に染み込むように消えていた精液の熱が、今は胎の奥に封じられているかのようにぐるぐると渦巻き、種付けの快楽を持続させる。

 まだまだ神父は精液を注いでくる。

 孕め孕めと呟きながら、子作りの種を流し込んでくる。

 神父のペニスから精液が注ぎ込まれる度に、身体がビクンと痙攣し、また滞留する胎の熱が絶頂から降ろさせない。

 孕ませる気満々の中出しを受けて、膣も子宮も悦んでいる。

 そして何よりも、ゲイルの脳髄奥底からくる歓喜が止まらない。

 種付け射精を受けて、この上ない幸せが込み上げてくる。

 果てしない絶頂の渦に涙を流してもがきながらも、全身にほとばしる強烈な快感に酔いしれる。

 

 今まで知った気になっていた女の快感が塗り替えられていく。

 ゲイルの脳髄に、一層深く中出しの快感が刻まれる。

 メスとしての悦びを実感し、染まっていく。

 染まっていってしまう事すらもまた快感となって、ゲイルを更なる深みへと誘う。

 

 神父は全身全霊でゲイルに種付けをする。

 亀頭を包む肉が猛烈に精液を吸い上げ、更に精液を搾ろうと亀頭を刺激してくる。

 奥へ奥へ、もっと奥へと念じながら、その腰を押し付ける。

 思いも寄らない亀頭への快感が大量の射精を強制してくる。

 その快感に抗うことなく、存分に種付けを行う。

 

 首にすがりつき、絶頂に震え続けるゲイルがたまらなく愛おしい。

 普段は男口調のゲイルが、イクと途端に甘えてくる。そのギャップが、種付けの興奮を一層引き立たせる。

 

 たっぷりと欲望を吐き出しきると、流石に疲れてゲイルを抱えたまま診察台へ移る。

 ペニスは多少柔らかくなったが、まだ硬さを維持して突き刺さったままだ。

 

 診察台でゲイルを下にして覆いかぶさり、その頭を撫でる。

 未だ絶頂に震え、涙目でとろけているゲイルを見つめ、その唇にキスをする。

 舌を入れると、ゲイルも朦朧としながらも舌を絡めてきた。もう癖になっているのだ。

 またムクムクと欲望が鎌首をもたげてくる。ゲイルの膣内で一度は柔らかくなったペニスが復活する。

 そのまま容赦なく体重を掛けて最奥まで突き入れ、種付け射精をしてゲイルを絶頂させた。

 

 神父は本気で孕ませる気だ。

 孕ませてさえしまえば、正式に妻として迎えられる。ゲイルを自分一人のものにできる。

 神父は過去に妻と死別している。

 教義的にはその妻唯一人を愛し、死別したとしても他者との性交は許されない。

 だが子供が出来たとなると話は別となる。

 一体どのような理論なのか理解不能だが、宗教とは得てしてそういうものだ。

 

 もう神父は悩まない。ゲイルとの淫行を心から楽しみ、そして嫁にするつもりで、本気で孕ませるつもりで中出しをする。

 ゲイルを嫁にする事を考えていると、またペニスが滾ってきた。

 組み伏せている愛しい女の一番奥へ再度押し込み、子種を注ぎ込む。

 

「また出るよ……私の精子を、君の子宮へ届けるよ。

 そうすると、どうなるんだっけ?」

 

「う〜っ♥ あっあかちゃんっ♥ できちゃうっ♥」

 

「そうだよ。

 君のここも、私の精子とくっつきたい、受精したいって言ってるね。

 さあ出すよ!受け取ってくれ!」

 

「はあああっ♥ きてう♥ せーし♥

 きす♥ きすして♥ ぎゅってして♥ ん〜♥」

 

 この日始めてゲイルは宿へ戻らず、一晩中神父と子作りに励んだ。

 神父は一晩で計八回の射精を行い、ゲイルも神父の腰へ足を絡みつけ、自分から奥へと招き入れた。

 

 度重なる膣内射精にイキ癖までつけられ、孕むことにも悦びを見出すようにされてしまった。

 神父の調教は完了したのだ。

 

 

 神父は気づかない。

 射精の直後、ゲイルの子宮から極小の何かが神父の尿道へ流れ込み、睾丸へ、そこから体内へと侵入している事に。

 

 神父は気づけない。

 高齢にも関わらず、八回の射精は異常だと言う事に。

 今の神父自身の行動も感情も、古くから彼を知る者からすれば明らかに異常だと言う事に。

 

 神父は疑問に思わない。

 神父の亀頭を射精に導いたモノが何なのか。

 何が、何によって変化させられたものなのか。

 疑問は何一つ浮かんでこない。

 

 神父はもう、ゲイルの虜だった。

 



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06 サイモン・一

 

…………

「ゲイルさ、神父様とセックスしてますよね」

 

「ヒグッ」

 

 今日の稼ぎを終えて、丁度サイモンと二人きりになった時、唐突にそう言われた。

 ゲイルは一瞬言葉に詰まる。

 

「フハハ、俺が? あの爺さんと?ありえねえ。そもそも俺はゲイじゃない。ゲイルだけどゲイじゃない」

 

「その冗談、すごく面白いですね」

 

 サイモンは微笑みながら真っ直ぐ見つめてくる。

 ゲイルは脂汗をだらだら流し、目が泳ぐ。

 

「嘘つくの下手ですね、相変わらず」

 

 サイモンの態度は至って普段通りだ。怒るわけでもなく、問い詰めるわけでもなく、呆れるわけでもなく、ただ柔和に微笑むだけ。

 ゲイルは早くも誤魔化すことを諦めた。

 

「……ああ、神父とヤッてる。……すまねえ」

 

「別に謝る必要なんてありませんよ。ゲイルは昔から性にはおおらかでしたし、僕も人の事言えません」

 

「はぁ〜、まいったな。いつから気づいてた?」

 

「疑い始めたのは、夕食に遅れて来た日からでしょうか。あの回復の兆しが〜とか言い訳してた日ですね。翌日から教会に行くのが夜になりましたし」

 

 完全に始めから疑われていた事に、ゲイルの頭が痛くなってくる。

 

「それとこの前、教会に泊まって宿に戻ってきませんでしたよね。それでほぼ間違いないと確信して、その翌日、つまり昨日ですね。跡を付けて実際に確認しました」

 

「うわ……」

 

 自分の行動も迂闊と思うが、サイモンの行動力にゲイルは少し怖くなる。

 

「声、外まで漏れてましたよ。行為の時は随分可愛い声で甘えるんですね。驚きました」

 

「うっ……」

 

 ゲイルの顔が赤くなる。

 ゲイル自身も行為中の言動を思い返すと恥ずかしくなってくるくらいだ。それを仲間から告げられ、今すぐ隠れたい気分になる。

 

「安心してください。パトリックはまだ気づいていません」

 

「あいつは……あの神父への信頼がバリ高いからなぁ」

 

「彼はそもそもお人好しですからね、あれで。あんまり人を疑わない人間なんですよ、あれで」

 

「やっぱり、知ったらショック受けるよなぁ」

 

「自分からは特に伝える気は有りませんよ。隠すなら隠し通して下さいね」

 

 仲間に隠し事をしている事に、ゲイルは憂鬱になる。

 逃げるように話を元に戻した。

 

「それで、どういうつもりなんだ? 神父との関係を断てって話でもないんだろ」

 

「ええまあ。ゲイルは……その……神父様を愛しているんですか?」

 

「ブクスッ! ないない! それはない! まぁなんだ。娼館代わりだよ」

 

「教会を娼館代わりですか。罰当たりですね。それを聞いて安心しました。それで、ゲイルはもう"それ"を治療する気はないんですか?」

 

 "それ"とはつまり、女の身体のことだ。

 ゲイルは少しだけ悩む。

 どう答えるべきか迷ったが、正直な心境を話しておくべきだと判断した。

 

「……正直言うと、このままでもいいかと思い始めてる。

 もう6:4(ロクヨン)7:3(ナナサン)くらいで、このままが優勢だ」

 

「そうですか……治す気が全く無くなった訳ではないんですね」

 

「ああ」

 

 女の快楽にドハマリのゲイルだが、男の身体に未練がなくなった訳ではない。

 探索中にはやはり昔の体力が恋しくなる事は多い。

 ギルドランクやクエストを最優先に考えるのならば、男が断然有利だ。以前のゲイルならば、元に戻るために全力を尽くしただろう。

 

 だが、ゲイルは知ってしまった。女の快楽の味をすり込まれてしまった。

 神父によって教え込まれたそれは、男だった頃の快楽よりも遥かに深くその身に浸透した。まるで、肉体そのものがそれを望んでいるかのように。

 ゲイル自身は認めていないが、ゲイルの中の優先事項が冒険やギルドランクよりも女の快楽が上になりつつある。それを認めようとしない感情と、それに悦びを覚える感情がせめぎ合っている。

 現状のその答えが、女:男が7:3(ナナサン)という訳だ。

 

 ゲイルは気づいていない。

 それまで生き甲斐だった冒険への熱意よりも、女体への執着へ傾いてしまっているという事に。それも、この短期間で。

 未練が残っているのは本当だ。だが、それはあくまで"昔の体力"への未練であって、真に"男の肉体"への未練ではないという事に、ゲイルは気づいていない。

 プライドを守るために"悩んでいる"というスタンスを取っているだけで、既に結論は出ている。その事にゲイルは気づけない。

 

 そしてサイモンは、次の言葉を吐いてしまう。軽い気持ちで。

 それはサイモン個人の趣味と、子供じみた小さな嫉妬心。

 神父というパーティ外の人間からメンバーがなぶられるのがただ気に食わない。そんな少年のような感情からの言葉。

 それが、ゲイルを更に女体へとのめり込ませる原因になるとは露知らず。

 

「では、明日の休み、僕とデートしてください」

 

「……えっ、なんで?」

 

 ゲイルの心臓がドクンと跳ねる。

 なぜそんな考えに至ったのか、ゲイルは全く理解できない。

 理解できないが、嫌ではなかった。

 

「いいじゃないですか。今のゲイル可愛いですし。デートしましょう。僕と」

 

「……わ、わかった……」

 

 ゲイルの顔が熱くなっていく。

 どういうつもりで誘ったのか。からかったのか。本当にただ遊び歩くだけの可能性も否定できない。

 しかし、ゲイルもサイモンももう子供ではない。普通デートと言えばその後の行為も含まれる。含まれてしまう。

 誘われている。この自分が。仲間から。サイモンから。そういう目で見られている。自意識過剰だろうか。

 肉体関係を。性行為を。

 してしまうのだ。

 サイモンと。

 

 この話を切り出されてから、その可能性を頭の片隅でずっと考えていた。

 どんな理由で迫られるのか。

 脅されたり、無理やり関係を迫られる事を想像していたが、サイモンがそんな人間ではない事はゲイルもよく知っている。

 予想外な方向からではあったが、結局そうなってしまった。

 サイモンのたくましい腕に抱かれ、その甘いマスクと口づけし、ペニスを入れられてしまう。

 顔が赤くなり、鼓動が早くなるのを実感する。

 

 期待しているのだ。

 サイモンと、セックスする事を。

 

「では明日、午前中には迎えに行きます。パトリックには僕から上手いこと伝えておきますね」

 

「あっ、ああ……」

 

 サイモンと別れてからも、ゲイルの心臓は早鐘を打ち続け、吐息も熱いままだった。

 

 その晩、神父に明日は来られない事を伝えると、翌日分も含めてたっぷり中出しされた。

 

 神父に抱かれながらも、頭の中では別の男の事を考えていた。

 

 

 

…………

 

 

「ちょっとゲイル! 午前中には迎えに行くって昨日言いましたよね!?」

 

「ふわっ。やべ寝過ごした!?」

 

 ドアをドンドン叩く音と、いつになく憤ったサイモンの声で目を覚ます。

 ゲイルは慌てて時刻を確認する。まだ朝9時前だった。

 

「おいサイモ〜ン、午前中と言っても早すぎるだろ〜」

 

 頭を掻きながらドアを開けて、サイモンに文句を言う。

 

「おはようございます、ゲイルってくっさ!ゲイルくっさ!」

 

「あーまぁ昨晩神父とヤッて帰ってきてそのまま寝たから……」

 

「バレたからって明け透けすぎですよ……格好も肌着だけですし……おっぱいぽろんしてますよ」

 

「いいじゃねえか、お前だし。前から気に入った娼婦の話くらいしてただろ」

 

「神父様を娼婦と同じ扱い出来るのはゲイルだけですよ……ちゃんと身体拭いてから来てくださいよ。下で待ってますから」

 

「わかってるわかってる。着替えたら行くわ」

 

 身支度を済ませ、下で待つサイモンと合流する。

 パトリックは朝から出かけているようだ。

 サイモンが上手い事伝えたらしいが、一体何を伝えたのか、ゲイルは頭を捻る。

 

「ゲイル、いつもの格好ですね……」

 

「あ? これ以外の服はみんな探索装備だよ。お前は結構気合入った格好してんのな」

 

 今日のサイモンの格好は、カジュアルでありつつ清潔感があり、その長身を活かした服装だ。

 仲間の中で一番身長が低い事を気にしているゲイルには嫉妬してしまう出で立ちである。

 

「デートですから。たとえ相手がゲイルでも、女性とのデートであれば相応の格好をします」

 

「そりゃなんともかんとも」

 

 "御苦労なこった"と思いつつも、案外満更でもないゲイルだった。

 仲間から、サイモンから女として見られている事にこそばゆい嬉しさを感じてしまう。

 同時に、自分を女として見られたからこそ、サイモンを男として……異性として意識してしまう。

 照れくささと共に、じわりと性的な興奮が湧いてきてしまった。

 赤面してきそうな考えを頭を振って追い出し、冷静さを取り戻す。

 

「とりあえず朝食食べに行きましょうか」

 

「お、おう、そうだな。メシにしよう。うん。いつものとこ行こうぜ」

 

「いえ、今日は僕のオススメの店に行きましょう。宿から少し遠いですが、綺麗で良い店ですよ」

 

「そうか?まぁ美味けりゃいいや」

 

 二人で取り留めのない雑談をしながら歩く。

 サイモンに案内されて食事処に入り、適当な席に着く。

 言われたとおり、綺麗で良い雰囲気の店だ。

 いつもの店よりもワンランク上といった趣である。実際料金もワンランク上となっているが、ゲイルたちには問題ない。

 

「へぇ、いい店じゃないか」

 

「そうでしょう?まぁ時間が時間なんでメニューは限られてますけど。僕はAモーニングにします」

 

「じゃあ俺も同じもので」

 

 品のいい給仕服を着た店員に注文を伝える。程なくして食事が運ばれてきた。

 二人揃って食べ始める。

 

「ゲイルの服、サイズもぶかぶかじゃないですか」

 

「そりゃ昔のままだからな。おっ、高いだけあって美味いな」

 

「もしかして下着も昔のままですか?」

 

「そうだよ。別に困ってねえし。この食感……これ一度揚げてあるのか?手間がかかっている……」

 

「もしかして! ブラも着けてないんですか!?」

 

「ちょっ、おまっ、声でけえよ。……ああ、着けてねえよ。なんか照れくさいし。……ほおお、柔らかくもあり、それでいて弾力のあるパンだ……素晴らしい」

 

 サイモンは手を頭に添えてハアーと大きなため息をつく。

 

「食事を終えたら服屋へ行きますよ!」

 

「え? いいよ別にこのままで。ん~、この味は……トマトとオリーブと、この塩は岩塩だな……なんだこのハーブは……」

 

「僕が嫌なんです! 服の代金はすべて僕が持ちますから!」

 

「まじで? やっりい。いくいく〜。……ん? このマッシュポテト……まさか二種の芋を混ぜて……?」

 

「その食事と同じくらい服装にも気を使ってくださいよ……」

 

「サイモン、この店、すげえ気に入った。にひひ」

 

「そうですか。まぁ喜んでもらえて何よりです」

 

 二人で朝食を済ませ、またサイモンに案内されて服屋へ行く。

 連れてこられたのは高そうなブティックだ。

 当然ゲイルは今まで一度も用のなかった店である。

 サイモンは堂々と入店し、ゲイルはその後をおっかなびっくり付いていく。

 

「あら、サイモンくん、いらっしゃい。今日連れてる女の子は……また独特ねぇ」

 

「はい、またお世話になりに来ました」

 

 店に入ると妖艶な雰囲気のある中年女性が出迎えた。

 老いを感じさせながらも見事に美しさと溶け込ませ、まさに"マダム"の言葉の印象直球なマダムだ。

 

「おい、こんな店じゃなくてよ、もっと庶民的な……しまぬらとかでいいんだが」

 

「ダメです。僕がお金を払うんですから、僕が選んだ店で買いましょう」

 

「おい……おま……」

 

「あら、その子がウワサの子なのね?可愛いじゃない。肌も綺麗だし、嫉妬しちゃうわねぇ」

 

「え? 何? 俺ウワサになってるの?」

 

「あはは、知らないのは本人だけってやつですね」

 

 サイモンは微笑みながら続ける。

 その表情は普段と変わらないが、ゲイルにはとても楽しそうに見えた。

 

「何はともあれ、まずは下着です。すいません、採寸と、いくつかブラを試着させてやって下さい。探索用に動きやすい物と、純粋に似合う物。似合う物は今この場で着けていきますね」

 

「は? おい馬鹿言うなよ」

 

「ヨーコちゃーん、お客様よ〜、採寸して差し上げて〜」

 

「は〜い、ただいまぁ。あ、サイモン様。いらっしゃいませぇ」

 

 奥の部屋から店員と思われる赤いくせ毛の少女がパタパタと小走りでやってくる。

 この少女もサイモンと顔見知りらしい。

 

「何お前常連なの?」

 

「ええ、そうですよ。ほらゲイル、何やってんの。向こうで服脱いで、サイズ測ってもらって。試着も」

 

「ちょっ、押すなよ。わかった、わかったから」

 

 サイモンに急かされて、カーテンで仕切られた試着室に入る。試着室と言っても4畳半ほどはある小部屋だ。

 大きな鏡が壁に貼り付けられている。

 

「では採寸いたしますので、お召し物を脱いでくださぁい」

 

「お、おう……」

 

 ゲイルは上半身裸になりその乳房をあらわにする。以前教会で脱いだように男気溢れる脱ぎっぷりではなく、そこには若干の照れがあった。

 流石にもう勢いで全裸になったりはしない。

 

「わー、お姉さんお肌キレイですねぇ。それでは測らせて頂きまぁす」

 

 店員は見るからにまだ10代だが、その採寸の手際はかなり良い。

 そこにマダムがやってきた。いくつか下着を抱えている。

 

「見た感じこのサイズかしら? 一応着けてみなさいね」

 

「あ、オーナー。胸はこれよりもワンカップ大きいですぅ」

 

「あら、そうなの? 耄碌しちゃったかしら」

 

「オーナーの目はまだ狂ってませんよぅ。お姉さんのアンダーが見た目より細いんですぅ。服もだぼだぼでしたし」

 

「そう? ありがと。じゃあそのサイズ持ってくるわね」

 

「えっ、ゲイルの胸ってそんなに大きかったんですか? 見た目からはわからないものですねぇ」

 

「おいサイモン、何しれっと混ざってんだ、てめぇ」

 

「ゲイル、また少し小柄になったんじゃありません? 身長も測ってみたらどうですか? どこまで変化するのかわかりませんから、体格は結構こまめに記録したほうがいいですよ」

 

「わ、わかったから。お前は向こう行ってろよ」

 

「はいはい。ゲイルのランジェリー姿、また後でしっかり見せてくださいね」

 

「チッ……」

 

 悪態をつきながらもゲイルの顔は赤い。横にいる店員の顔も赤くなっていた。

 

「いくつか持ってきたわ。何二人して赤くなってるのかしら?」

 

「何でもねえよ」

 

「はわ……はわわ……また後で……しっかりって……そういう……」

 

「……なぁおい、ブラってどうやって着けるんだ? 外すことは出来るんだが、着け方はイマイチわからないんだ」

 

「あっ、はい、これはですね。胸をカップに収めて、後ろを……」

 

「おぉ、胸が軽い……うん、ぴったりだ。これは確かに着けていたほうがいいな」

 

「しっかりとカップに収める事が大事ですからねぇ。スポーツタイプでも同じですよぉ。お姉さん、形も良いんですから、ちゃんとブラを着けないと垂れてしまいますよぅ」

 

「垂れ乳は俺も嫌だな。デザインはどうでもいいや。これにしよう」

 

「どうでも良くなんかないです!」

 

 サイモンの叫び声だ。カーテンの向こう側で聞いていたようだ。

 

「デザインはどうでも良くなんかないです! サイズはわかったんですね!? ゲイルがどうでもいいと言うのなら、僕が選びます! 良いですね! 後でなしとか言わないで下さいよ!」

 

「お、おう……」

 

 いつになく必死なサイモンに気圧されて了承する。

 カーテンを少しめくって様子を窺うと、サイモンはウキウキで下着を選んでいた。

 サイモンとはそこそこ長い付き合いだが、今まで一度として見せた事の無い生き生きとした表情である。

 流石のゲイルも少しキモいと思ってしまった。

 

 サイモンが下着を選んでいる間手持ち無沙汰となり、ふと鏡を見る。

 映るのはベリーショートの髪の女だ。以前のゲイルでも標準的な女よりかは高かった身長は、既に女性としても少し低めであり、ゲイルのコンプレックスが刺激される。

 宿には鏡は置いておらず、未だゲイルは鏡に映るこの顔が自分だという認識が薄い。

 我ながらかなり良い顔立ちだとゲイルは思う。可愛らしさと美しさが絶妙に混ざり合った顔つきだ。自分が男なら間違いなく迫っていただろう。

 なんだか照れくさくなってきて、鏡の前で百面相をして遊びだすと、隣りにいた店員がくすくすと笑いだした。

 

「お姉さんはこういったお店には普段来られないんですかぁ?」

 

 どうやら鏡を珍しがっていると思われたようだ。ゲイルたちにはそうでもないが、実際庶民には中々お目にかかれない代物である。

 



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07 サイモン・二

 

「ああ、今日が初めてだよ」

 

「もったいないですよぅ。お姉さん綺麗なんですから」

 

「そうは言っても俺は冒険者だからな。どうしても優先順位は低くなる」

 

「うわぁお姉さん冒険者様だったんですねぇ。引き締まったお身体をされているのも納得ですぅ。やっぱりサイモン様とはそこでお知り合いに?」

 

 少女は目を輝かせて訊いてくる。そういったロマンスが好きなようだ。

 

「知り合いにっていうか、数年来の仲間だよ。サイモンとは」

 

「えっ、あっ、ってことはお姉さん、ウワサの……」

 

「すまん、俺はそのウワサとやらを聞いたことがないんだ」

 

 噂や流行にはさっぱり興味のないゲイルだが、流石に自分の事となると気になってくる。

 店員に噂の内容を聞こうか迷っていると、サイモンが声をかけてきた。

 

「ゲイルー、いいですか? これ試着してみて。下着が決まったらこの服も着てみて下さい」

 

「……多くね?」

 

 サイモンは返事を待たずにカーテンをめくり、服を手渡してくる。

 ゲイルは今上半身はブラしか着けてないが、もうどうでもよくなっていた。

 サイモンが持ってきた服は、ブラだけでも10着ほど、そこにシャツやらセーターやらスカートやら短パンやら、何故かドレスまで持ってきている。

 

「ショーツだけ先に一つ代金を払ってきました。いつまでも男物のパンツなんて履いててはいけません」

 

「毎度ありがとうございまぁす」

 

「はい、ゲイル。これはもう代金払ったから、今すぐ履き替えてくださいね。汚いパンツは捨ててしまいましょう」

 

 サイモンが渡してきたのはレースのショーツだ。娼婦が履いているのを見るのは大好きだったが、いざ自分が履くとなると少し抵抗がある。

 ゲイルが着替えるためズボンを脱ごうとするが、サイモンがいつまでもゲイルをじっと見ている。

 

「おいサイモン、いつまで覗いていやがる。シッシッ」

 

「あはは、ゲイルももう一端の女の子ですね。わかりました。お楽しみは後にとっておきます」

 

 サイモンは言いたい事を言うとひらりと試着室から遠ざかった。

 ゲイルは調子を狂わされっぱなしである。

 

「クソッ」

 

「はわっ、お、お楽しみって、やっぱりそういうっ」

 

 店員がまた真っ赤になっている。

 ゲイルの顔も赤いが、今顔が赤いのは断じてサイモンの言動のせいではなく、下着を着替える事の羞恥と言い聞かせる。

 

 サイモンから受け取ったショーツをまじまじと見る。

 今着けているブラと揃いの柄のショーツ。

 男を誘う事も目的の一つとしたデザインをしている。

 今から自分はその下着を身に着けてしまう。

 ブラはまだ機能性の為という言い訳が出来たが、これにそんなものはない。

 夜の教会だけでなく、昼間、日常まで"女性"に侵食されてきたのだ。

 これを履いたら本格的に女性としての人生が始まってしまう。そんな気がしてくる。

 

 ゴクリとツバを飲み込む。

 見れば見るほど羞恥心が湧いてくる。

 こんなものを、自分が身につけてしまう。

 サイモンが選んでくれた下着を。

 サイモンが選んだ、扇情的な、下着を。

 迷いはある。抵抗感もある。

 だが、ゲイルの頭の片隅で、()()()()()()()()()()()()()()と囁く自分がいる。

 始めは、ゲイル自身すらその囁きの意味がわからなかった。

 しかしすぐに感づく。「都合がいい」の意味を。

 気づいてしまうと、一瞬にしてそれを身につけることの好奇心が膨れ上がった。

 そしてゲイルは、羞恥で顔を真っ赤にしながら、ズボンと男物のパンツを脱ぎ。

 そのショーツに足を通した。

 ゲイル自身の意思で。

 

 顔を上げると、鏡の中に上下揃いのランジェリーに身を包んだ女がいた。

 顔を上気させ、濡れた瞳をし、妖艶な表情でじっとこちらを見ている。

 その姿はとても美く、魅力的で。

 この姿を見た男は、サイモンは、興奮してくれるだろうかと期待に胸を膨らませた。

 

「ほ、本当に男物の下着……やっぱりお姉さん……お、お兄さん?」

 

 店員は顔を赤らめながらも興味深げにゲイルを見てくる。

 先程から初々しい反応をする店員に、ゲイルの悪戯心がくすぐられた。

 

「店員さん、気になる?俺の身体」

 

「はえっ!? いえっ、そんなっ」

 

「触ってみるか?」

 

「はわっ!? いいいいいえいえいえいえいえいえ!」

 

「ほら」

 

「ひええっ」

 

 ゲイルは少女の手をとって、無理やり自分の乳房に押し当てる。

 少女は真っ赤になりながらもゲイルの乳房を凝視し、手のひらはおずおずと乳房に指を沈めてくる。

 

「や、柔らかい。それにすべすべで、さらさらで、シミもなくて……お姉さんが羨ましいです。私はこんなくせっ毛だし、肌も……」

 

 そんな事をつぶやかれてしまった。軽い気持ちでからかっただけに、ゲイルは少し罪悪感を覚える。

 "店員さんも可愛いよ。自信を持って"などと言うことは簡単だが、そんな気休めの台詞を吐いたところで納得などできないだろう。何を言うべきか悩む。

 

「店員さん、俺は一種の事故によってこの身体になった。ハッキリ言って自分で見ても魅力的な身体だと思っている。羨ましがる気持ちはわかる」

 

 手を開放して、店員の両肩を掴む。ゲイルはいつになく真面目に語りかける。

 

「だがな、冒険者にとっては女性ってだけで大分不利なんだ。俺はキャスターだが、だからといって体力や筋力がいらないわけじゃない。どうあがいても持久力は必要で、持てる道具や装備の重量も限られて、場合によっては俺も前衛の真似事すらするんだ。俺が今の身体になって、必ずしも喜んだと思うか?」

 

 店員の少女がハッとして見つめ返してくる。

 

「俺たちは今ルーク級冒険者だが、もしかしたら俺のせいでクイーン級に上がれないかもしれないんだ。男の俺ならば上がれたかもしれないのに。俺はキャスターだったからまだマシだ。女になったのが前衛のサイモンかパトリックだったら、もしかしたらその時点でメンバーの交代、最悪パーティ解散もあり得る」

 

 少女はショックを受けたようで、少し涙目になってきてしまった。

 ゲイルは慌てて少女の頭を撫でながら方向修正する。

 

「すまんすまん。別に攻めてるわけじゃない。他人を羨ましいと思うのはもうしょうがない。それが人間というものだからな。だけど卑屈になるのはやめとけ。俺にはサイモン並の筋力も耐久力もない。だけど、サイモンには俺並の殲滅力はない。それと同じことだ。事実を事実として受け止め、自分に必要なことは何かを考えるんだ。君は仕立て屋を目指しているんだろ? 仕立て屋と冒険者を比べて卑屈になってどうするんだ」

 

「えっ、なんで私が……」

 

「あれ? 違った? あの部屋から出てくる時、ちらっとミシンが見えたからてっきりそうじゃないかと」

 

「い、いえ、あってますぅ。そうですね。ありがとうございます。少し気が楽になりました」

 

 そう言って少女が微笑む。その笑顔が可憐で、ゲイルはつい少女を抱きしめた。

 

「ふわっ、おふっ、む、むねが」

 

「おっと悪い」

 

「いえ、その、あの、ご、ごちそうさまですぅ」

 

 少女が真っ赤になって不思議な礼を言った。

 そこにカーテンの向こうから声が掛かる。

 

「でもゲイル、偉そうなこと言ってますけど、もう男に戻るつもりあんまり無いんですよね」

 

「ちょっ、シッ!綺麗に纏めたんだから水差すなよ!」

 

 向こう側でサイモンがちゃっかり聞いてたのだ。

 

「えっ、なんでですかぁ?」

 

「さあ、なんででしょうね。まったく、ゲイルのせいでクイーン級に上がれないかもしれないというのに」

 

「お前ちょっとこれ売り場に返してきて」

 

「ええっ! 僕が選んだ服、ちゃんと着て見せて下さいよ!」

 

 言えるわけがない。

 女の快楽が忘れられないからなどと。

 

 

 

 その後ゲイルは、店員の"ブラは同じサイズでも細部が違いますんで、絶対に試着をしてくださぁい"という強い勧めによって、結局サイモンが持ってきたブラを全て試着し、その中でも特にフィット感の良かった物を選んだ。

 ショーツについてはもはや面倒になってきたゲイルがサイモンと少女とマダムに丸投げした。

 そして着せ替え人形が始まった。

 

 

 初めに着せられたのは、Tシャツにジーンズ、そこにカジュアルなジャケットを合わせたもの。

 ジーンズは細見で、太ももとふくらはぎをキュッと引き締め、脚を細長く見せるタイプのものだ。

 短い髪の毛とボーイッシュな服装がマッチしつつも、それでいて一目で女とわかるシルエットが魅力的である。

「これはまぁ、特に抵抗感はないな。物はレディースだが男でも通用する格好だ」

「お姉さん、かっこいいですぅ」

「流石に初めは肩慣らしになる服を選びました。でも可愛くないからボツですね。ゲイルのくせに背が高く見える服装とか、生意気なんですよ」

「てめぇ、喧嘩売ってんのか?」

 

 

 次は、へその出た白のハイネックノースリーブにミニスカートとスパッツ、その上からひらひらしたカーデを軽く羽織ったものだ。

 ゲイルの顔が赤い。

 本格的に女の格好となり、照れくささが勝るのだ。

「くぅっ……ハズい……そ、そんなにへそを見るな、へそを」

「いいですね。可愛いですよ。今の僕と並んで歩いても見劣りしません」

「ムカつく言い回ししやがって」

「ところで知ってますか? スパッツの下に下着は履かないのが本来の着方らしいですよ? ちゃんと脱ぎましたか?」

「知らねぇよ。ちゃんと履いてるわ。普通に」

「残念です。まぁ可愛いので買いましょう。次着るときはちゃんとショーツを脱いで履いて下さいね」

「脱がねぇよ」

 

 

 次は、ニット生地の長袖ワンピースだ。

 セーターの裾をそのまま長くしてワンピースにしたような服である。

 伸縮する生地が身体にぴったりと張り付き、ボディラインを魅力的に見せる。

 スカート丈は短めで、歩くと太ももが覗き、下着まで見えてしまいそうだ。

「わあ、よくお似合いですぅ」

「露出は少ないけどこれエロくね?」

「わかります。とてもエロいです。見えそうで見えないのが男心をくすぐりますね。計算づくの作りでしょうか」

「そ、そんなことありませんよ! け、計算なんて」

「これ店員さんが作ったの? やるなぁ。こう、ちょっとキュッとしてボディラインがわかるのが、この滲み出るエロさの原因かな?」

「女の子が着るセーターというのは何故こうも可愛らしいのでしょうか。買いますね。こっちのだぼだぼのやつも後で着てくれません? 気だるげな感じで」

「しょ、しょうがねえな」

 

 

 次は、黒いドレスだ。

 背中が大きく開き、腰近くまで入ったスリットからショーツの紐が覗いている。

 ブラも外したので乳首が浮き出てしまっている。

 当然だが、ゲイルはドレスなど初めて着る。

 ゲイルの顔は真っ赤になって羞恥に耐えている。

「お姉さん、綺麗……」

「ぐう……ジロジロ見んじゃねえよ……そもそもこんなドレス必要ないだろ?着る状況がねえんだから……」

「いやぁ、一度着て欲しかったので。とても似合ってますよ。買いますから定期的に着てくれません?」

「そ、そうか……いや、いらねえし着ねえよ」

「そうですか。買いましょう」

「着ねえっつってんだろ」

「そうですね。買いますね」

 

 

 次は、やたらひらひらの多いゴスロリ服だ。黒を基調にところどころ白があしらわれ、コルセットでウエストを絞ってその細さと胸が強調される。袖も襟もひらひらで、膝丈のスカートは層状にひらひらだ。そこに横縞のニーソックスが加わる。

 またもゲイルの顔は真っ赤だ。

 そのひらひらの多さにドレスよりも強い羞恥を感じている。

「も、もういいだろ。着替えるわ」

「まだ早いですよ。もっとよく見せてください。はい、回って、ほら、よく見せて」

「うう……」

「お姉さん、可愛いですぅ」

「ええ、本当に可愛いらしいですよ。とても可愛い。よくお似合いです。いやあ、可愛いですねぇ」

「や、やめろよぉ」

「あ、これも勿論買います。今この瞬間に立ち会えた事に感謝するほど可愛いです。明日も着てください」

「き、きねえよ……」

 

 

 次は、テカテカした素材の紫色のブラとショーツに、やたら丈の短いライダースジャケットとショートパンツだ。

 ブラとショーツは布の面積が少なく紐で縛るもので、水着に近く、どんな素材なのかテカテカキラキラしている。

 ショートパンツは股下ほぼゼロで水平に切られ、股上も骨盤までしかない。

 更衣室で普通にショートパンツを履いてボタンを止めたところ、マダムからダメ出しをされた。

 このショートパンツは、ボタンもジッパーも全開が正しい着方であると。むしろめくってショーツを見せびらかすくらいがいいと。

 その出立ちは正しくビッチ。

 自分がこんな格好をするなど、ぞわぞわと変な気分が湧いてきてしまう。

「おらぁ!! 注文通り着てやったぞクソァ!!」

「はわわ……えっちですぅ……」

「満足かぁ!? ええ!? サイモンよお!! いい趣味してんじゃねえかオイ!!」

「あら、それ選んだのあたしよ? 若いならこれくらいやってもいいじゃない」

「マ、マダム……」

「これはこれは……小麦色に日焼けしてると一層栄える装いですね。むき出しの太ももが眩しいです。下腹部のハートのタトゥーシールもエロかわいくていい味出してますね。買いましょう」

「冷静に評価してんじゃねえよ。もう着ねえから買う必要ないぞ」

「……でもゲイルさ」

 サイモンがこっそり耳打ちしてきた。

「ヤケクソのフリして、実はそれ着て興奮してるでしょう?」

 ゲイルは何も答えなかったが、その代わり耳まで真っ赤になった。

「買いますね」

 

以下略

 

 

 大量のお買い上げとなった。

 

「おいおいおい、なんだこの金額。いくらなんでも買いすぎだろ。量も量だし減らしてもいいんだぞ。半分くらいに」

 

「いえ、問題ありません。これで」

 

「毎度ありがとうございまぁす」

 

「なぁサイモン、俺は冒険者だからな? この衣服を保管しておく場所もねぇし、持ち運ぶことも出来ねえし、有事の際は処分するからな? わかってるよな?」

 

「あら、それならウチで預かるわよ。サイモンくんはお得意様だし、それくらい構わないわ。奥の部屋に掛けておくから、いつでも使ってちょうだい」

 

「これはこれは、ありがとうございます。助かります。いやぁ良かったですね。いつでも可愛い格好ができますよ」

 

「べ、別に嬉しかねぇよ」

 

 そうは言いつつも、なんだかんだでゲイルも着せ替えを楽しみ、可愛いと言われて満更でもなかった。

 ちなみに今のゲイルの服装は、ふんわりとした品の良い白ブラウスと黒のプリーツミニスカート、それに黒のガーターストッキングだ。

 ゲイルは動くたびにヒラヒラとはためくスカートに気が気でない。前を気にすると後ろから、後ろを気にすると前から下着が見えてしまいそうな気になるのだ。

 ガーターストッキングも羞恥の原因の一つだ。

 スカートの中に隠れた、最上部にあしらわれたレース部分、そしてガーターストッキングと太ももの境界。

 ゲイル自身も間違いなくエロいと確信している。鏡を見て、ゲイルの心のペニスが勃起したほどだ。

 それが自分自身なのだと思うと、極度に恥ずかしい。

 慣れない格好のおかげで自意識過剰が多分に含まれているが、周りからのお世辞がゲイルを余計に羞恥へ追い込む。

 

 その羞恥心は嘘ではないが、本当のところは少し違う。

 扇情的な下着を身に着け、かわいい服を着て、そんな自分に興奮している事が恥ずかしいのだ。

 そう、ゲイルは女の格好をする事に興奮している。

 そして周囲からそれを見られる事にも興奮している。

 女の格好をすると言うことはつまり、自分が女であることを自分自身が認め、そして周囲に宣伝することに他ならないから。

 知られてしまう。バレてしまう。

 自分自身がもう完全にメスであることを。街のペニスたちに。

 それこそ自意識過剰だとゲイル自身もわかっているが、わかっていても興奮してしまう。

 

 特に仲間であるサイモンからの視線が気になってしょうがない。

 さっきから可愛いと言ってくれているが、それは服の事だけだろうか。今の自分を魅力的だと感じているだろうか。

 本当に自分を女として見ているのだろうか。

 そして、サイモンのペニスは勃起するのだろうか。

 考えるほど、ゲイルの頭はぽーっとしてくる。

 どんな大きさだろうか。どんな形だろうか。入れた感触は神父とどう違うのか。どれだけ自分を気持ちよくしてくれるのだろうか。

 ゲイルはずっと頭の片隅でそんな事ばかりを考えている。

 昨日からずっと。

 



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08 サイモン・三

 

 いつの間にか昼飯時も過ぎ、二人は時間外れの昼食をとる。

 ゲイルの服装はブティック会計時のままだ。

 街を歩いているときも、食事処に入った今も、誰かに見られてる様で落ち着かず、ゲイルは未だ羞恥に赤くなっている。

 今回はゲイルの自意識過剰などではなく、実際に注目を集めていた。

 ゲイルたちのパーティはその活躍からそこそこ有名であり、活動拠点であるこの街ではかなり顔が売れている。

 ゲイルの身体の事も既に多くの人間に知られており、特に友好のある人物からはその事でからかわれたりもする。

 だがゲイルは頑として今まで通りの態度と服装を貫いてきた。

 そのゲイルが、ついに女の服を着て、顔を赤らめモジモジとしながら、妙に上機嫌のサイモンとともに歩いているのだ。

 注目を集めない訳がない。

 

 ひそひそと話し声が聞こえる。

 あの隣の女は誰だ。またサイモンの女遊びか。しょっちゅういい女連れやがって。待て、あの女にしては短い茶色の髪の毛は。いやまさか。やめろよ……モロ好みだったのに。頼んだらヤらせてくれないかな。あの二人デキてんのか?あの顔見ろよ、どう見ても恋する乙女だぜ。おい三人パーティでペアが出来るってそれ。パトリック哀れ。まぁパトリックだし。三角関係かもしれんぞ。うわ想像するだけで楽しい。

 

 初めて見る借りてきた猫のようなゲイルに、サイモンは楽しげに笑う。

 二人のデートは続く。

 二人で甘い物を食べ、二人でアクセサリーを眺め、二人で装備を吟味し、二人で手を繋いで歩いた。

 服装にも徐々に慣れていき、ゲイルも純粋にデートを楽しむようになる。

 だがそれと反比例する様に、時が立つほど、夜が近づくほど、ゲイルは別の要因で緊張してくる。

 

「美味しかったですね。また来ましょう。次は三人で」

 

「あっ、ああ……」

 

 今夕食を終えた所だ。ゲイルは何を食べたのかよく覚えていない。

 

「じゃあ、行きましょうか。もうお待ちかねのようですし」

 

「ひくっ」

 

 サイモンはゲイルの腰に手を回し、導くように歩いていく。

 ゲイルも昔は毎日のように通っていた、その道を。

 サイモンに連れられて、ゲイルもよく知るその建物へと導かれる。

 路上でウリをする女と何度も利用したその宿に、サイモンと共に入る。

 昔とは逆の立場で。

 鼓動の音がひどくうるさく感じる。

 暑くもないのに汗が出てくる。

 買ったばかりのショーツを汚してしまっている。

 

「この部屋ですね。どうぞ」

 

 ドアを開けるサイモンに誘われ、その部屋の中へ入る。

 見慣れたベッドがある。二人で寝るサイズの大きなベッドが。

 見慣れた部屋とまったく変わらないはずなのに、何もかもが違って見えた。

 サイモンも入室し、そのドアが閉まる音が聞こえた。

 

 その瞬間、後ろから乱暴にベッドヘ押し倒された。

 強引にキスをされ、股間を捏ねるように愛撫される。

 

「はぶっ、はんっ、んっ♡ ちゅっ♡ れろっ♡」

 

「はあっ、はあっ、全くもう、下着をこんなに湿らせて、クリトリスも大きくして……」

 

「はんっ♡ あんっ♡」

 

「その上すぐ舌を絡めてきて。あの神父にどこまで調教されてしまったんですか?」

 

 サイモンはベッドの上で膝立ちになり、乱暴にベルトを外すと、ズボンと下着を同時に下ろす。

 

「もう我慢しなくてもいいですよね」

 

 サイモンのペニスがあらわになる。既に勃起し、天へ向けてそそり立っている。

 それを見ただけでゲイルはうっとりしてしまう。

 大きい。神父のモノよりも三割は太く長い。こんな大きいもの、大丈夫だろうか。

 ムアッと漂う男の香りにクラクラする。

 

「舐めてくれません?」

 

「あっ、はあっ♡」

 

 ゲイルは実はフェラチオは未経験だ。

 神父がそれを要求しなかったし、特に自分からやろうとも思わなかったのだ。

 今からこれを、サイモンのペニスを舐める。口で咥える。

 考えるだけで背筋がゾクゾクし、下腹部が熱くなってくる。

 目の前に差し出されたサイモンのペニスに、恐る恐る舌を這わす。

 お世辞にも美味しくなど無い。

 だが、むせ返るほどのオスの匂いが、ペニスの味が、その行動そのものが、ゲイルを更に興奮させた。

 

「ゲイルー、おままごとじゃないんですよ? もしかしてフェラ、はじめて?」

 

「お、おう……」

 

 それを聞いてサイモンは俄然やる気が出る。

 早速、神父がまだ汚していない新雪を見つけたのだ。自分の色に染めたい欲求がじわりとうずく。

 

「ホラ、知らない訳じゃないでしょう? 両手で持って、咥えて、舌で亀頭を愛撫するんです」

 

「んっ♡ ふ……ちゅぷ……♡」

 

 ゲイルは言われた通りに手を添えてそれを口に含み、亀頭を舐めだす。

 サイモンは微笑みながらゲイルの頭を撫でる。

 

「そうそう、いい調子ですよ。気持ちいいです」

 

 本当のところは今ひとつと思っているサイモンだが、ゲイルは褒めれば調子に乗るということを長い付き合いで知っている。

 実際、それを聞いたゲイルは嬉しそうに顔を緩ませながらペニスを頬張り、その亀頭、裏筋に舌を這わす。どのような動きが良かったか、男だった頃を思い出しながら。

 サイモンの思惑通り、快感の度合いが上がる。

 ゲイルの口の中でペニスがピクピクと動き、きちんと快感を与えているという実感にゲイルはまた夢中でペニスを舐める。

 

 ゲイルの興奮は止まない。

 今行っている行為は、ただ男を悦ばせる為だけの行為。ゲイルには何も快感はない。

 そのはずなのに。

 自分の意志で男のペニスに舌を這わす事に、何故かゲイル自身も悦びを見出し、興奮してしまっている。

 着実にメスとしての階段を登ってしまっている自分に、ゲイルは興奮する。

 ゲイルはうっとりとしながらフェラチオを続けた。

 しばらく新鮮で初々しいフェラを頭を撫でながら楽しんだサイモンだが、更なる快感を求めてゲイルに要求する。

 

「ゲイル、もっと奥まで咥え込めれません?」

 

「ぢゅるっ♡ れろ♡ はあっ♡ もっと……奥に?」

 

「そうです。根本まで咥えこんで、頭を激しく前後させるんです」

 

「いや……でもこれ……」

 

 ゲイルは逡巡する。

 サイモンのペニスは大きい。こんなものを奥まで咥えこんだらどう考えても苦しいだろう。

 だが、それを想像するとゲイルの背筋がゾクゾクと震える。

 迷いなどすぐに消え去った。

 

「できませんか?」

「や、やってやるよ……♡」

 

 ゲイルは意を決して、再度サイモンのペニスを口へ含む。

 それをゆっくりと深く咥えこんでいく。

 口に充満し鼻から抜けていくオスの匂いがゲイルを淫靡に染めていく。

 だがやはり苦しい。

 顎が疲れる。

 喉が圧迫される。

 何度もえずきそうになる。

 息も苦しい。

 涙が出てきてしまう。

 そこにサイモンが優しく頭を撫でてきた。

 

「あはっ、ゲイル、随分とろけた顔で咥え込みますね。そんなに美味しいですか?」

 

 そう言ってサイモンはさわさわとゲイルの頭を撫でる。

 大きすぎるペニスを喉奥まで咥え込み、そこに快感なんてありようもないはずなのに。

 ゲイルの顔は、眼は涙に潤み、頬は赤く染まり、その表情は間違いなく快楽にとろけていた。

 サイモンからそれを告げられた事で、ゲイル自身気づいていなかったその快楽を自覚する。

 一度気づいてしまえば、快楽の波がどっと脳内になだれ込んできた。

 

 頭の奥までオスの匂いで充満し、クラクラしてくる。

 自分の快楽よりも、男に奉仕することを優先している行為に、背徳的な興奮が湧いてくる。

 苦しいはずなのに。美味しくなどないはずなのに。

 男のペニスを咥えると、何故か歓喜が湧いてくる。

 もっと欲しくなる。もっと舐めていたくなる。もっと奥へ咥えたくなる。

 この快楽をもっと知りたい。もっと深く深く知りたい。奥底から欲求が湧いてくる。

 その欲求に突き動かされ、ゲイルは一気に根本まで咥え込む。

 ペニスが食道まで侵入し、頭の奥に鈍い快感が撃ち込まれ、脳髄に響き渡る。

 ふらついてしまいそうな快感に耐え、また更なる快感を求めてストロークを始めた。

 

「ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ ぢゅるるっ♡ ぐぽっ♡ ぐぽっ♡」

「あっ、すごいっ! ゲイル、それっ、すごくいいですよ!」

 

 サイモンが感嘆の声を上げる。

 ゲイルは更に抽送のスピードを上げる。

 ゲイルの喉奥は性感帯となったかのように、抽送の度にゲイルに快感を与えてくる。

 鈍痛の様な快感が次々と脳へ送り込まれ、買ったばかりのショーツに愛液が染み込んでいく。

 あまりにも早すぎる順応や、喉奥が変異したかのように唐突に感じる快感に、ゲイルは何一つ疑問を抱かない。疑いを持たない。

 そんなことよりも、新たに発見したその快楽に夢中になり、必死に抽送を繰り返し、喉奥にペニスを打ち付ける。

 

「ぢゅるるるっ♡ ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ ぐぽっ♡ ちゅるっ♡ ぢゅるるっ♡」

 

 舌を突き出し、肉棒に絡め、愛おしそうに舐め回す。

 奥まで咥え込んだときは喉を嚥下の要領で波打たせ、浅い時は舌で亀頭と裏筋を刺激する。

 サイモンが悦んでくれることが、ゲイル自身も嬉しくて堪らない。

 しゃがみこんだゲイルの股から粘つく愛液が布団へ垂れていく。

 

「うっ、くっ、すごいっ、ゲイル、もう出ます!」

 

 サイモンの限界の言葉に、ゲイルの期待が高まる。

 喉奥に欲しくて欲しくて堪らない。ぐねぐねとうごめいて精液を歓迎する。

 サイモンの腰に両腕でしがみつき、限界までそのペニスを喉奥に迎え入れる。

 熱烈な射精の催促に、サイモンもこの時ばかりは理性を忘れ、しがみついてきたゲイルの頭を強く抱え込み、容赦なくその奥へペニスを突き入れた。

 そして待望の精液が発射される。

 

「くうぅぅっ! ううっ! 全部! 全部飲んで!」

 

「んぐっ♡ うぐっ♡ くっ♡ ごきゅっ♡ こきゅっ♡」

 

 一発目の特に濃い精液を喉奥でしっかりと受け止める。神父とは比較にならない勢いで精液が吹き出てくる。

 精液を噴出するペニスの脈動、喉奥にぶち当たる射精の衝撃、そしてじわりと染み込んでくる熱さがたまらない。

 ゲイルの喉が大きく波打ち、奥に叩きつけられた熱い精液をコクリコクリと嚥下していく。粘り気の強い精液が喉に絡みつき、じわじわとゲイルの芯に熱を伝えてくる。

 ゲイルの顔は完全にとろけ、注ぎ込まれる精液をうっとりしながら喉で味わう。

 あぁ、今喉の奥に出されている。自分の中に精液が。中出しされている。

 喉奥への射精を中出しと関連付けた瞬間、脳髄に刻み込まれた快楽が活性化し、その熱さが、味が、匂いが、喉奥で脈動するペニスが、更なる快感を発露しだす。

 精液の熱さが脳にまで伝わってくる気がする。

 頭の奥まで精液で満たされるような感覚に陥る。

 フルフルと小刻みに震えて軽い絶頂に至ってしまう。

 口も喉もいやらしい匂いでいっぱいになり、呼吸の度に下腹部がうずいてくる。

 舌が、喉が、脳が、フェラチオの味を覚えていく。

 

 ペニスを舐める興奮。喉まで咥え込む快感。そして注がれる最高のご褒美。

 男に奉仕する悦びに目覚めてくる。

 ゲイルの奥底から歓喜が溢れてくる。

 サイモンをもっと喜ばせたいという衝動が湧き上がってくる。

 更に強く腰にしがみつき、射精を続けるペニスをもっと喉の奥へと迎え入れる。

 頭をかき抱かれながら、断続的に注がれる若い活力を股を濡らし、うっとりした顔で味わう。

 

「んくっ♡ こくっ♡ こくっ♡ ちゅるっ♡ ぢゅるるるるるっ♡ んくっ♡ はふう♡」

 

 射精が終わると、頼まれもせずに尿道に残った精液を吸い出し、舌の上で転がしてよく味わってから飲み込んだ。

 その姿に、早くもサイモンのペニスにまた血液が集まり始める。

 

「すごく良かったですよ。本当にフェラ始めてですか?」

 

「はぁ♡ はぁ♡ はっ、始めてだよ……」

 

「どうでしたか? 初めてのペニスと精液の味は」

 

「……ま、また……やってやっても、いいよ……」

 

 顔を真っ赤にしながらそう言った。

 サイモンはそんなゲイルを見てクスクスと笑う。

 

「なぁ、サイモン……♡」

 

 ゲイルは立ち上がり、ブラウスのボタンを一つ一つ外していく。

 今日買ったばかりのブラに包まれたたわわな胸が、少しずつ露わになっていく。

 そしてすべてのボタンを外し、ブラウスを脱ぎ捨て、ブラを見せつけるように胸を張る。

 

「……お、お前が選んでくれたこれ……に、似合ってるか?」

 

 サイモンは布団の上に座り、ゲイルの全身を舐め回すように観察する。

 特にスカートを、その中を気にしているようだ。

 

「ええ、とても魅力的ですよ……下も見せてください」

 

「ん……♡」

 

 魅力的と言われ、ゲイルは顔を赤くしつつ嬉しそうに笑う。

 サイモンのリクエストに応え、ゲイルはスカートの端をつまんでその中を晒す。

 ショーツは既に愛液に濡れ、光を反射して輝いている。

 

「ああ、やっぱりとってもエロいですね、そのガーターストッキングとショーツ……」

 

 サイモンの手が秘所へと伸びていく。

 

「ひゃっ♡ あんっ♡ んっ♡」

 

 サイモンが慣れた手付きで秘所の入り口とクリトリスを捏ね回す。

 下着からじゅわりと愛液が染み出し、太ももを伝ってストッキングを湿らせていく。

 

「ゲイルがこの格好に着替えてから、ずっとこのスカートの中が気になってました。

 とても素敵ですよ。

 レースが扇情的で、太ももの白い肌とストッキングの黒の差がエロティックで……

 ほら、見てください。もう勃起してしまいました」

 

「んっ♡ んくぅっ♡ はあっ♡ あっ♡ あっ♡」

 

 ねちっこい愛撫に加え、勃起したペニスを目にして、期待感がゾクゾクと背筋を走っていく。

 サイモンからしっかり女として見られている事に嬉しさと興奮が高まる。

 

「ゲイルのここももうトロトロで準備万端ですね。フェラしながら感じてたんですか?」

 

「あんっ♡ うんっ♡ くっ咥えながらっ♡ これがっ♡ ナカっ♡ ナカに入るって♡ はうっ♡ 考えるとっ♡ せっ切なくって♡ んっ♡」

 

「大分甘い声になってきましたね。可愛いですよ」

 

「はあっ♡ ひうっ♡ やっ♡ は、恥ずかしい♡」

 

 慣れない女性扱いに、ゲイルは赤面しっぱなしだ。

 だが同時に嬉しさと興奮がどんどん湧き上がってくる。

 サイモンの愛撫は的確で、捏ね回されるクリトリスから鋭い電撃が子宮へ向かってビリビリと駆け巡る。

 入り口しか触られてないにも関わらず、奥まで捏ねられてるかの様に錯覚する。

 ゲイルの快感が蓄積していく。

 

「はっ♡ はっ♡ もういきそう♡ いっちゃう♡」

 

「一度イっておきましょうか。可愛い声を聞かせてください」

 

 サイモンの手が激しく動き、快感の度合いが上がる。

 ゲイルの官能は瞬く間に駆け上がっていく。

 膝がガクガクと震え立っていられなくなり、スカートから手を離して、目の前のサイモンの頭を抱きしめる。

 

「んぶっ」

 

「はっ♡ はんっ♡ んっ♡ ん〜〜ッッ♡」

 

 ゲイルは全身を強張らせ、絶頂を迎える。

 秘所からとても熱く粘っこい愛液がとろとろと溢れ、サイモンの指を伝い輝く糸を引いて垂れていく。

 

「は〜っ♡ は〜っ♡ はあ〜っ♡」

 

 イった後もゲイルはサイモンの頭を抱きしめ、胸に埋ずめたまま余韻に浸る。

 呼吸が整ってくると理性を取り戻し、抱きしめる腕の力を緩める。

 胸に顔を埋めたサイモンと目があった。

 つい衝動に任せて抱きしめただけに、ゲイルは気恥ずかしくなってくる。

 顔を赤くして目を泳がせてると、サイモンの顔が近づいてきた。

 そのままなし崩し的に唇を重ねる。

 

「ん……ふ……♡ ちゅ……♡」

 

「……ブラ、外しますね」

 

 ついばむようなキスをしながら、背中へ回したサイモンの手が、ゲイルのブラのホックを外す。

 はらりとブラが落ち、ぷるんと乳房が開放される。

 

「ん……はう……♡ れろ……♡ んふ……♡」

 

 サイモンは片手でゲイルの肩を抱き、もう片手で乳房を揉み始める。

 ちろちろと舌先だけを絡め合いながら、慣れた手付き乳房を揉みしだき、乳首を転がす。

 ゲイルはすぐにサイモンの愛撫に流され、身を委ねてしまう。

 経験豊富なだけあって、サイモンは上手い。

 愛撫だけでなく、セックス中の言動そのものが上手い。

 単純に気持ちいいだけでなく、掛けてくる言葉や愛撫の仕草一つ一つがゲイルの気分を盛り上げるのだ。

 肩を抱かれながら胸を揉まれ、舌を舐め合い、ゲイルの心臓はドクドクと高鳴る。

 その鼓動は肉欲によるだけのものではない。

 ゲイルの"女の精神"が昂ぶっている。

 サイモンと身体を重ねることが嬉しい。楽しい。自分も抱きしめたい。もっと抱きしめて欲しい。そんな感情が溢れてくる。

 肉欲の興奮に混じって、それとは違う昂ぶりが感じられる。

 戦闘の興奮とも、子供の頃の初恋とも、男だった頃の性交の興奮とも違う、初めて経験する胸の高鳴り。

 それは女として一種の本能的な、恋愛体質とでも言える精神。それが芽生え始めているのだ。

 制御できない渦巻く感情。

 理解できない未知の感覚。

 だが不思議と不快感はない。

 初めて知るこの高揚感を、もっと、もっと。

 

 催淫魔法など使われていないのに、触られた場所がぴりぴりと敏感になる。

 言葉だけで身体中がぞわぞわする。

 胸を揉まれると下腹部がキュンキュンと切なくなる。

 キスが最高に心地いい。頭の奥が熱くなってくる。いつまでも舌を絡めていたい。

 ああ、でも、それよりも……

 この下腹部の中が切なすぎて……

 

「はっ♡ はっ♡ な、なあ……サイモン……♡」

 

「ええ、僕もそろそろ我慢の限界です。ゲイルはどんな体位をご所望ですか?」

 

「だ……抱き合って、したい……♡」

 

「ふふ、また可愛らしい事を言いますね。僕も抱き合ってヤりたいです。ヤりましょう」

 

「……♡」

 



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09 サイモン・四

 

 

 ゲイルはスカートを脱ごうと手をかける。

 その瞬間、サイモンからストップがかかった。

 

「あ、待って。スカートとストッキングは脱がないで下さい。ショーツだけ脱いで下さい」

 

「お前……そういうのが好きなの……」

 

 ぶち壊しだ。

 折角ノッてた気分が冷めてきてしまう。

 ゲイルはスカートの中に手を入れ、ショーツだけをスルスルと脱いでいく。

 

「あ〜、えっろ! その仕草すっごくいいです! いい! エロい! いいですね! そのままこっち見てください!」

 

「くう……」

 

 ぶち壊しなセリフがサイモンの口から続く。

 評価を改めざるを得ない。

 だが、なんとも馬鹿馬鹿しいと想いつつも、ゲイルは嬉しい。

 今自分が女として魅力的であれている。

 自分がサイモンを興奮させている。

 それが堪らなく嬉しく、そして昂ぶってしまう。

 なんて都合のいい感情。ゲイル自身もそう思う。

 その自覚があっても、サイモンから向けられる肉欲に滾った視線に、ゲイルはゾクゾクと興奮してしまう。

 

 呆れ返るような素振りを見せながらも、ゲイルが満更でもない事をサイモンは見抜いていた。

 スルスルと落ちていくショーツと秘所の間に、輝く愛液の糸が伸びていく。

 足元までショーツが落ちると、すぐさまサイモンが手を出す。

 

「そんな呆れた顔しても……」

 

「はうんっ♡ やっ♡ だめっ♡」

 

 サイモンの指が、抵抗なくちゅぷりと秘所へと潜り込み、中から愛撫する。

 

「こっちは正直ですね」

 

「んうっ♡ やっ♡ あうっ♡ はんっ♡」

 

 膣の中を指がクニクニと動き回ると、さっきまでの素振りが嘘のようにとろけたメスの顔を晒す。

 ゲイルはたまらず腰が引けて内股になり、サイモンの腕を掴んで快感に耐える。

 

「ここですか? ここが良いですか?」

 

「うっ♡ うっ♡ うっ♡」

 

 サイモンの指が、膣の最奥を指でつつく。

 子宮口を刺激される度に、脳天へピリッと電流が流れる。

 だがその刺激は、くすぐる様なものでしかなく、求める刺激とは程遠い。

 挿入された指も、ゲイルが望むものよりも遥かに細い。

 快感と共に欲求が膨れ上がっていく。

 キュンキュンと下腹部が切なそうに泣いている。

 欲しい、欲しい、と奥底から求める声が聞こえる。

 男のものが、サイモンのそれが、欲しくて欲しくて堪らない。

 

「うっ♡ うっ♡ さっサイモン♡ んっ♡ サイっモンっ♡ あっ♡ あっ♡ ん~っ♡」

 

 ゲイルの悶える姿に、サイモンのペニスが一段と硬くなる。

 今目の前で、自分の愛撫に震え、甘い声で自分の名前を呼んでいる人間は、つい先月までこんな快楽を知らず、こんな顔を晒す人間じゃなかった。

 そもそも女ですら無かった。

 共に肩を並べて戦い、酒を呑み交わし、低俗な話で盛り上がる仲間だったのだ。

 それが何の因果か、身長は縮み、骨格は華奢に、体格は丸みを帯び、胸は膨らみ、股間の男の象徴が無くなった代わりに女の穴が空いてしまった。

 そして今、その女の穴をいじられて、甘い声を上げて悦んでいる。

 特に一番奥が好きなようで、ここをつつくと明らかに反応が違う。

 サイモンは知っている。最奥をくすぐった時のこの悶え方は、意図的にそうさせられたもの。他者によって、ここで快感を得るように仕込まれたもの。

 ゲイルは既に男のペニスの味を知り、女の快楽をみっちり教え込まれ、完全にメスとして出来上がってしまったのだ。

 いい歳して少年のような夢を語り、冒険を心から楽しんでいたあのゲイルが今、官能に染まった顔で喘いでいる。

 ゾクゾクと興奮してくる。

 無垢だった……わけではないが、当時は知りもしなかった快楽に、今ではどっぷり浸かってしまっているのがわかる。

 堕落してしまった仲間への何とも言えない興奮と共に、サイモンは酷く悔しさを感じる。

 

 初めてを奪ったのがあの神父だなんて。

 あの神父にこんなに染められてしまったなんて。

 悔しい。悔しい。悔しい。

 大切な仲間だから手を出すべきじゃないと、涙を呑んで自重していたのに。

 こんなことなら、僕が頂きたかった。

 僕がゲイルを女にしたかった。

 手を出したのがパトリックならまだ許せる。だが神父はダメだ。部外者だ。外野だ。許せない。

 パトリックには悪いけど、あんな老人にゲイルを渡すくらいなら、僕が貰う。

 本気で抱くかせてもらう。僕ももう、我慢の限界だし。

 

「あっ♡ はっ♡ サイモンっ♡ もうっ♡ もうっ♡」

 

「ええ、さ、来てください。僕の上に」

 

「んっ♡ はっ♡ あはっ♡」

 

 ベッドの縁に座るサイモンのペニスは、大きく、そして見事なまでに天を向いて自己主張していた。

 ゲイルはスカートの縁をつまみ上げながらサイモンへ跨がる。

 指の愛撫だけで焦らされ続けたゲイルは、脳内も秘所もすっかりとろとろだ。

 この太くて長いサイモンのペニスを秘所に挿入できると思うと、胸が高鳴り呼吸が荒くなる。

 一刻も早く中へ迎え入れたい。膣がヒクヒクと男を欲しがっている。

 スカートの内側から熱い愛液がとろりと滴り、サイモンのペニスへと垂れる。

 ペニスがビクリと震える。硬さも大きさも最高潮にギンギンだ。

 ゲイルは怒張したペニスを愛おしそうにさすり、スカートの中の自分の秘所へ当てがう。

 ただ当てがっただけで、熱くトロトロに火照った秘所からじゅわりと愛液が溢れる。

 今から仲間と、サイモンと、一線を越えてしまう。

 仲間との肉体関係などトラブルの筆頭。出来るだけ避けるべき。ゲイルとて知っている。

 しかしもうどうでもいい。そんなことよりも交わりたい。女の悦びを感じたい。ゲイルの脳内はそれ一色だ。

 ゲイルの息が更に荒くなる。頭の奥までもが熱い。

 

「はっ♡ はっ♡ はあっ♡ んっ♡ はうっ♡」

 

 ゆっくりと体重をかけていき、愛液を溢れさせながらズブズブとゲイルの中へペニスが沈み込んでいく。

 アツアツに火照った粘膜が、ペニスを包み込んでいく。

 

「んんんん~~っ♡ んくうううっ♡」

 

 腰がガクガクと震え、背筋に快感が走り続ける。

 体験したことのない大きさの肉棒がゲイルの膣を押し広げていく。

 溢れ出た愛液が次から次へとペニスを伝い、ベッドを湿らせる。

 サイモンの両手が伸び、大きな手のひらでゲイルの顔を下からそっと包み込む。うなじから顎までを覆われ、そのまま唇を重ねる。

 サイモンの舌がゲイルの口内へ入ると、ゲイルの瞳と精神は一層とろけ、懸命に舌を絡めあった。

 

「んうぅっ♡ ちゅるるる♡ れろ♡ はっ♡ ぢゅるるっ♡ はうぅっ♡」

 

 キスによって更に愛液の分泌が増え、だらだらとペニスを伝っていく。

 同時に滑りも良くなり、小刻みに震えながらサイモンのペニスを徐々に飲み込んでいく。

 深く迎え入れるほどに、ゲイルの快感と歓喜が膨れ上がっていく。

 先端が子宮口に到達してもまだ全て咥えきっていない。

 ゲイルはそれでも構わず体重をかけ、ペニスを飲み込んでいく。

 もっと奥へ、もっと深く、全部この中へ受け止めたい。

 深く深く交わって、一番奥で子種を受け取りたい。

 ペニスが入り込んでくると、ゲイルは奥底から湧き上がってくるその願望に支配されてしまう。

 

 そして二人は対面座位で結合した。

 

「はあ~っ♡ んふっ♡ くふっ♡」

 

「くううっ、ゲイルの中っ、すごいですね」

 

 二人は唇を離し、お互いの身体をギュッと抱きしめ合う。

 ゲイルは足を絡めてしがみつき、脳天まで貫かれているような快感と深い一体感をじっくりと味わう。

 体内深くに潜り込んだペニスが、子宮そのものをグイグイと押し上げ、その先端が子宮口にめり込んできている。

 膣がギュウギュウと張り詰め息苦しさを感じるが、それ以上の快感と充足感に深い溜め息をはく。

 何よりも、その先端が既に子宮口を越えている事が。

 サイモンの発射口は既にその奥へと照準を定めている事が、否応なくゲイルの期待感を高める。

 

 サイモンもゲイルをギュッと抱きしめ返してその後頭部を撫でる。

 ゲイルから漂う女性の香り。甘えるようにしがみついてくる小柄な身体。ねっとりとペニスに絡みつく熱い膣の感触。

 堪らない興奮と快感がサイモンに襲いかかる。

 サイモンにとって、ペニスは全部は入りきらないのが普通だ。それが根本までずっぽりと収まっている。

 大きなペニスは自慢でもあったが、同時にコンプレックスでもあった。女性から引かれる事も珍しくないのだ。

 それをゲイルは、自分から挿入し、完全に咥え込み、そして悦んでいる。純粋に嬉しさがこみ上げてくる。

 もちろん、ガバガバな穴などではない。絶妙な弾力でチュウチュウと吸い付き、ぬるぬるとまとわりつき、熱い粘膜で包み込んでくる。

 入れているだけで達してしまいそうだ。

 サイモンは確信する。ゲイルは極上の女だと。

 もっとこの快感を長く楽しむためにも、まだイッてはいけない。もったいない。

 サイモンは深呼吸し、息を整え、一度クールダウンする。

 

「ふうぅ~」

 

「んっ♡ んふうっ♡ サイモンのっ♡ おっ♡ おっきいっ♡」

 

 しかし、耳元で囁かれるゲイルから淫靡な吐息が、サイモンのクールダウンを阻害する。

 

「あうっ♡ はぁっ♡ 俺っ♡ セックスしちゃってる♡ 仲間とっ♡ サイモンとっ♡」

 

 ゲイルの頭の中はセックスの興奮でいっぱいだ。

 ついに仲間と一線を越えてしまった。

 それまで三人一緒に築いてきた大切な何かを、今この瞬間打ち捨ててしまった気がする。

 パトリックに申し訳ないと思いつつも、その背徳感がゲイルを一層興奮させる。

 

「んくうぅっ♡ はうぅっ♡ んん~っ♡」

 

 ミチミチと限界まで広がった膣、グイグイと子宮を押し込んでくる感触、膣内でビクビクと動く感覚が、ゲイルの意識を情欲一色に染め上げていく。

 足りないピースがきっちり埋まったかのような満足感、男に抱かれる安心感がゲイルを包み込む。

 フェラチオも好きになったが、この格別な快感は女性器でしか味わえない。

 昨日サイモンに訊ねられた時は3割ほどは男に戻りたいと答えたが、もし今同じ問を訊ねられたら、ゲイルは間違いなく10:0で女を選ぶ。

 ゲイルはもう、男性としてのセックスに未練はない。

 ペニスは自分にあるべきものではなく、自分が迎え入れるもの。

 男に抱かれる安心感に酔い、女の快楽に感動し、この身体になった幸運に感謝する。

 

「くうっ、これはヤバイっ。すぐにでもイッてしまいそうです」

 

 "イッてしまいそう"

 サイモンのその言葉がゲイルの奥底に響いていく。脳内で木霊し、身体が疼き、求めだす。

 射精。精子。中出し。

 欲しい。欲しい。体内奥深くに突き刺さったペニスから、自分の中心へ向けて熱い精液を注入して欲しい。

 男の本能の赴くまま、今まさに銃口が狙うその先へ流し込んで欲しい。

 強烈な欲求がゲイルの奥底から込み上げてくる。

 

 その欲求に突き動かされ、ゲイルは更にきつく抱きつき、腰をクイクイと押し付け、もっと深く、身体の芯までペニスを迎え入れようとする。

 膣壁がぞわぞわとうごめき、蠕動運動を繰り返して咥え込んだペニスを更に奥へ引き込もうとする。

 頭の片隅で、「まだ早い。ゆっくり性交を楽しみたい」、「もっと焦らされてから欲しい」などの考えも浮かんでくるが、一度走り出した欲望は止まらない。

 

「くおっ! なっ、何ですかっ!? これっ!?」

 

 唐突に未知の快感に襲われ、サイモンが驚嘆の声を上げる。

 

「うっ! くっ! ゲイル!」

 

 サイモンの抱きしめる力が強くなる。ゲイルの身体を抱き込み、結合を深くして、亀頭がずぶりと子宮口へ一層めり込む。

 

「んくうう~っ♡ うあっ♡ あっ♡」

 

 サイモンのその行動の意味をゲイルが察知すると同時に、それがきた。

 子宮口にめり込んだその先端から、子宮の中へ直接注ぎ込まれてくる。

 

 びゅくびゅく。とぷとぷ。

 

「んっくぅ~ッ♡」

 

 繋がりあった性器の最奥、身体の中心が暖かくなっていく。

 ゲイルも力いっぱいサイモンの身体を抱きしめ返す。

 体内でペニスがビクンビクンと跳ねる。

 精子を送り込む脈動が体内から感じられる。

 サイモンの子種が、自分の胎内へと殺到してくる。

 種付けされてる。孕まそうとしてる。子作り行為をしてる。

 眼の前の、この男と。

 

「あはっ♡ はあ~っ♡ はっ♡ はうっ♡」

 

 子宮内が精液で満たされていくほどに、脳内が幸福で満たされていく。

 ゲイルに根付いた膣内射精の快楽が、問答無用で絶頂へと押し上げていく。

 サイモンの肩に頭を置き、癖になってしまった中出しの快楽を貪る。頭の奥がメスの悦びでいっぱいになり、無意識に全神経が膣内のペニスと注がれる精子へ集中してしまう。

 今ペニスの中を精液が駆け上がってくるのを感じる。ビクンと跳ねると、ビュルッと精液が注入され、下腹部の奥が熱くなる。自分の中へ精液が溜まっていくのを感じられ、また幸福感が膨れ上がる。

 自分がメスであることを強烈に思い知らされ、どうしようもないほどの歓喜と快感が溢れてくる。

 神父とは違うペニスの形。

 神父とは違う射精の感覚。精子の味。

 ゲイルはまた一歩女の快楽にのめり込んでいく。

 

 サイモンは、ゲイルの身体を抱きしめたまま、自らの腰にゲイルの身体を押し付け、結合を深くしたまま力を緩めようとしない。

 一滴残さずゲイルの子宮へ注ぎ込み、自分の子種を染み込ませたい。そんな欲求に駆られている。

 

 サイモンは普段、避妊を徹底している。相手がゲイルでも変わりなく避妊をするつもりだった。直前までは。

 流石に妊娠は不味い。サイモンとしても、ゲイルとしても、パーティとしてもよろしくないだろう。本意ではない。

 しかし、ゲイルの体臭を嗅ぎ、フェラをされ、唾液を交換すると、膣内射精の欲望がどんどん沸き上がってきたのだ。

 内心はマズイと思いつつ、なし崩し的にナマで挿入してしまうと、ドクンと心臓が高鳴りその欲望が強まった。

 種付けしたい。孕ませたい。強烈に湧き出る願望。

 ゲイルの奥が呼んでいる。求めている。僕の子種を。そんな都合のいい幻想が頭に浮かぶ。

 ゲイルの嬌声がオスの本能を刺激してくる。発情したメスの香りが理性を奪っていく。

 そして、不意に訪れた快感をいいことに、欲望の赴くまま、存分に膣内射精をする。ゲイルの身体を力任せに抱きしめ、腰に押し付けて、強制的に。

 

 その射精は、余りにも甘美。

 直前まで考えていた避妊の事が吹き飛んでいく。避妊を考えていた事がバカバカしいとすら思えてくる。

 サイモンとて、中出しが初体験などではない。魔法や薬物で避妊しての中出しは何度も経験しているし、昔はそんな事すら気にせずにヤッていた時期もある。

 だが、その快感は比較にならない。

 

 煮えたぎる欲望を解き放つ開放感。

 一度は他者に奪われてしまった仲間を取り戻している正義感と、自分のモノにしている征服感。自分も仲間を汚してしまっている背徳感。

 そして、禁忌としてきた中出しという行為。その意味への興奮と快感。

 ペニスが脈動する度に、オスの本能が満たされていく。

 サイモンは心の中で、ごめんなさいごめんなさいと繰り返す。今取り返しのつかない事をしている。ゲイルの人生を大きく左右する事を、自分が強制している自覚はある。だがゲイルの身体を解放する気はさらさら起きなかった。むしろ、無理やり種付けをするという行為が、余計にペニスを昂らせ、中出しの快感を引き立たせる。

 

 そんな中、ゲイルが身じろぎする。

 腰の位置を調節して1ミリでも深く挿入する動き。クイクイとゲイルの腰が動き、位置が決まれば、すぐさま強くしがみついて姿勢を固定する。

 精子を送り込む度に、膣が波打ち根本から絞り上げ、耳元で幸せそうな声が聞こえてくる。

 サイモンの罪悪感が急速に薄れていく。

 ゲイルが悦んでいる。迎え入れてくれている。歓迎している。僕の精子を。幻想ではなかった。

 後ろめたさからくる暗い興奮が消える。代わりにこみ上げてくる、純粋な歓喜。

 

 強制じゃない。無理やりじゃない。

 求められている。求めてくれている。

 ゲイルの中が、膣の奥が、呼んでいる。誘っている。もっと精子をくれと。

 応えなきゃ。ゲイルが望む通り、もっともっと注ぎ込んで……

 この奥を、僕の種で満たしたい。

 孕ませたい。孕ませたい。孕ませたい。

 ゲイルに、僕の子を宿したい。

 

 今まさに満たしていったはずのオスの本能が、爆発的に膨れ上がっていく。

 ゲイルをそのまま押し倒し、正常位でペニスを押し付けて最後の一滴まで精液を注ぎ込む。

 

「んはっ♡ んくうう~~ッ♡ ナカっ♡ きてるぅ♡」

 

 体位が変わっても、ゲイルはペニスを離すまいとアランにしがみついたままだ。

 サイモンは早くも次の射精の準備に取り掛かる。

 

 じゅっぷ、じゅっぷ、ぬっぷ、じゅぷぷ。

 

 サイモンの大きなペニスが、ゲイルの中を出入りする。

 ゲイルがしがみついているため、ストロークは浅めではあるが、その蜜壺は問題なくペニスに快感を与え、サイモンのボルテージを高めていく。

 

「んあっ♡ あっ♡ ふあっ♡ サイモンっ♡ サイモンっ♡」

 

 甘い声で名前を呼ばれ、ペニスが憤る。

 

「フッ! フッ! 待ってくださいね! また出ししますから! また射精しますから!」

 

「んくっ♡ きすっ♡ んっ♡ きすっ♡ きすしてっ♡ んあっ♡」

 

 求められるまま、サイモンはゲイルにキスをする。

 舌が激しく絡み合い、唾液が口元を伝っていく。膣がキュッキュッとペニスを締め付け、ピストンの快感が上がる。

 

「んちゅっ♡ んっ♡ ちゅるっ♡ んちゅるるっ♡ ぢゅるるっ♡ んふっ♡ ちゅるっ♡」

 

 恋でもしているかのように、ゲイルの脳内は桃色だ。

 身体をきつく抱きしめられ、激しくディープキスをし、送られてくる唾液を飲み干し、男の性器をいっぱいまで迎え入れて奥を突かれる。

 ゲイルは今、女としての悦びを全身で感じている。

 サイモンのオスの匂いに包まれ、舌を絡める度に脳が痺れて理性が削られていく。

 膣が別の生き物のようにちゅるちゅるにゅるにゅるとペニスに絡みつき、奥を刺激されると子宮が悦んでしまう。

 

 いつまでもこうしていたい。

 いつまでも抱き合って、絡み合って、交わっていたい。

 それと同時に、早く奥に射精して欲しい、サイモンの種を注ぎ込んで欲しいと、本能が求めてくる。

 相反する願望に揺れながら、ゲイルは夢中でサイモンを愛し、そしてサイモンに愛される。

 

 ほどなくして、ペニスが一際深く挿入され、そのまま体重をかけてくる。

 ついに来てしまう。やっと来る。

 ゲイルは一抹の寂しさと、それを越える期待感に胸が高鳴る。

 変異した子宮口が、サイモンの亀頭をじゅぷりと飲み込む。性行をより長く楽しむ為にあえてやらなかったが、もう我慢出来ない。

 唇も、身体も、腰も、性器も、全身を密着させて、念願のそれが行われる。

 

「んぐ~~ッ♡ ふう~~ッ♡ んくうう~ッ♡」

 

 重なり合った唇からメスの嬌声が漏れる。

 ゲイルの一番奥へ、どくんどくん、びゅるびゅると、サイモンの子種が注ぎ込まれる。ゲイルもサイモンにぎゅうっとしがみつく。

 三度目の射精とは思えないほど大量の精液が、ペニスを通ってゲイルの中心へと向かっていく。

 紛れもない種付け行為。押し付けてくる腰、掛けてくる体重、緩める素振りのない腕。疑いようもなく、その中出しはサイモンの意思で行われている。

 女として見られてる。孕まそうとしてる。子供を仕込もうとしてる。

 中出しの快感と、サイモンから向けられる欲望がゲイルを興奮させ、全身を震わせて絶頂する。

 

「んあッ♡ うあ~ッ♡ ああ~~ッ♡」

 

 キスをしながらうめき声のような嬌声が響く。

 精子の到来を子宮が悦んでいる。

 膣が歓迎してペニスを根元から絞るあげる。

 脳内に直接射精されているかのように、射精の度に快感と幸福が脳内に溢れてくる。

 絶頂に悶えながらも、しがみつく脚も、絡みつく舌も、一向に緩めない。

 全部、一滴残らず奥へ、一番奥へ。

 もっと、もっと抱きしめたい。

 包み込みたい。寄り添いたい。

 女の幸せを、もっと深く感じたい。

 

 ゲイルの願望に呼応して、下腹部の刻印が変化を始める。

 更に一回り大きなハートで縁取りされ、その側面からツタのような線が伸び、渦を巻く。

 ハートを子宮とするならば、あたかも卵管のような紋様が加わった。

 変化は肉体にも表れる。

 膣がうねうねとうごめく。密壺の形が徐々に変わっていく。

 そして、サイモンのペニスの形状にピッタリと合致する穴へと変貌した。

 

「んくッ!?」

 

 完全に噛み合った性器でのセックスは、この上ない一体感と安心感を与えてきた。

 唐突に膨れ上がる快感に、サイモンはまた精液をぶちまけてしまう。ドクンドクンと度重なる種付け射精に、ゲイルが幸せそうな声をあげる。

 一体何が起こったのか。サイモンが疑問を覚えるが、その疑問は一瞬にして吹き飛んでいく。

 

 ただただ、この感覚をもっと感じていたい。

 ずっとゲイルと繋がっていたい。自分のペニスを、ゲイルの中にずっと収めていたい。

 

 サイモンの思考はそれに支配された。快感の原因などどうでもいい。

 完璧に噛み合う密壺とのセックスは、それほどまでに甘美だったのだ。まさしく、運命の女と思ってしまうほどに。

 サイモンは、射精しながらゲイルの中をこねくり回す。この穴を、もっと自分のペニスに馴染ませるように。この穴に、自分のペニスを覚え込ませるように。

 その度に、ゲイルから甘い声が響き、サイモンのペニスを余計に滾らせた。

 

 そして長い長い射精が終わると、どちらからともなく唇を離す。

 二人して熱っぽい溜め息を吐き、眼と眼があうと、またどちらからともなく抱きしめあう。

 射精が終わっても、サイモンのペニスはゲイルの中でギンギンに勃起したままだ。

 

 多幸感を感じているのはサイモンだけではない。ゲイルもまた、ピッタリと噛み合う性器の感触に打ち振るえている。

 ずっとこのままでいたい。サイモンのペニスを、ずっと咥えていたい。

 大きなペニスがみっちりと自分の中に収まり、本来入っちゃいけない所まで挿入されている。

 今や女性としても小柄な体格の自分に、サイモンのペニスは大きすぎて、息苦しいはずなのに。

 身体の中で触れ合っている部分が、とても愛おしくて、幸せがこみ上げてくる。

 お胎の中があったかい。

 たくさん中出しされてしまった。

 サイモンの、せーし……

 サイモンの、子種が……この、子宮のなかに……♡

 

 妊娠を意識したことで、膣が勝手にペニスに奉仕を始めてしまう。

 膣壁がうごめいて、肉棒をにゅくにゅくと愛撫する。

 サイモンがそれを感じ取ると、サイモンからも腰を動かし始めた。

 じっくりとゲイルの中を捏ねる。

 ゆっくり、ゆっくり、じれったいほどの遅さで、その蜜壺をかき回す。

 

「んふあ……♡ うあ……♡」

 

 二人できゅっと身体を抱きしめ、ねっとりと性器が絡み合う。

 得も言えぬ快感と幸福感、そして安心感が二人を襲う。もう離れたくないとすら思えてくる。

 激しくピストンする必要など無い。

 ただこうして抱きしめあって、ペニスを挿入して、挿入されて、お互いの体温を感じていたい。

 言葉を交わさなくとも、お互いがそう思っていることを感じ取った。

 

 サイモンが体位を変える。

 ゲイルの身体を抱き起こし、サイモンが下になった。サイモンが上から体重をかけると、少し苦しそうだったのを気遣ったのだ。

 ゲイルはサイモンの厚い胸板に抱きつき、さっきまでサイモンがやっていたように、ゆっくりと腰を動かす。

 

「ん……♡ んはあ……♡ くう……♡」

 

 動く度に、切なさが募る。

 動く度に、満たされていく。

 動く度に、サイモンのペニスに馴染んでいき、新しい快感が生まれてくる。

 ゲイルはどんどんメスとしてのセックスにハマっていく。

 男だった頃のセックスよりも、何倍も大きく、深く、愛おしいと感じる。それはゲイルの常識を覆してしまうのに、十分すぎる破壊力を持っていた。

 終わってしまうのが惜しい。もっと深く、ゆっくり、じっくり。

 この愛おしく、切なく、満たされる交わりを、もっと……

 

 ごくごく小さな動きだけで、二人の性感は際限なく高まっていく。

 そしてついに、サイモンが限界を迎える。

 

「ゲイル……イきそうです……」

 

「ん……♡ いいよ……また、なかに……♡」

 

 ゲイルの尻を押さえ込み、腰を押しつける。

 二人でしっかりと密着し、三度目の中出しが行われる。

 

「んっ♡ んふう……っ♡ きてる……♡ あっ♡ はっ♡ はあ……っ♡」

 

 ドクンドクンと精液が注がれる。

 量こそ減っているものの、それがもたらす快感と幸福は変わりない。

 サイモンは迷いなく一番奥で精子を放ち、ゲイルはナカへの吐精を感じる度にビクビクと震えて悦ぶ。

 

 二人のまぐわいは終わらない。

 ただ抱きしめあい、お互いの性器をじっくりと絡ませ合う。

 変異した子宮口で亀頭を刺激して強引に搾精する事も出来たが、そんな事はしたくなかった。この幸福な性行を、そんな無粋な行いで汚したくなかった。

 だが、その子宮口は愛おしそうに亀頭を包み込んだままだ。

 ゲイルはもうこの奥以外で精子を受け止めるつもりはなく、サイモンもこの奥以外への射精など考えられない。

 

 二人はベッドの上できつく抱きしめ合い、唇を合わせて今の幸福に酔いしれる。

 もっと深く結合しようと身じろぎはするが、激しいピストンは行わない。必要がない。

 ただ挿入しているだけでも、二人の性感は高まっていく。

 

 ゲイルの膣壁がペニスにねっとりと絡みつく。

 サイモンのペニスから先走りが分泌され、ゲイルの子宮をじわりと熱くさせ、またにゅくにゅくとペニスに奉仕を始める。

 サイモンが限界となると、そのままドクドクと精液を流し込み、ゲイルは胎内への種付け射精に悦び震える。

 ただそれだけが、幸せで幸せでたまらない。

 時に舌を絡め、時にお互いの首筋にキスをしながら、何度も何度も射精し、その度にゲイルは絶頂して悦んだ。

 

 かれこれ2時間ほど種付けの幸福を分かち合い、もうサイモンの精子も尽きたところで、二人は深い溜め息を吐く。

 精子が尽きてもそのペニスは未だ怒張し、ゲイルの奥深くに突き刺さっている。

 二人共疲れ果て、結合したまま脱力する。心地よい疲労感だ。

 だが、どちらも抱きしめ合った姿勢は変えるつもりがない。しがみついた脚をほどく気も、抱きしめた腰を離す気もない。

 

 ゲイルは大量に精液を注ぎこまれた下腹部が愛しくてたまらない。

 今この奥が熱く感じるのは、注ぎ込まれた精液の余熱か、それとも別の何かか。

 そんな事を考えていると、また疼いてくる。欲しがってしまう。

 深く咥え込んだままの膣が、うねうねとペニスを愛撫し、精液をねだる。

 だが流石にサイモンとて、そうそう精子の生産は追いつかない。

 疼きはしても、ゲイルもサイモンをこれ以上追い込むつもりはない。

 そうして二人は抱き合ったまま眠りに落ちた。

 睡眠中も、サイモンのペニスは怒張しゲイルの密壺を押し広げ、ゲイルの膣はそのペニスに負けじと収縮し、愛おしげにしゃぶり続けた。

 

 目を覚ましてすぐ、サイモンはようやく生産された数少ない精子を早速最奥へ注ぎ込み、ゲイルは中出しの快感で目覚める。二人で微笑みながら、快感と幸福にひたる。

 時間ギリギリまで二人は抱きしめ合う。股間をぴったりと重ね合わせ、もっと奥へ。もっと深く。もっと芯へ。

 突き入れたい。  迎え入れたい。

 注ぎ込みたい。  注がれたい。

 ただそれだけのために抱きしめ合った。

 サイモンには、未だオスの本能が滾っている。

 ゲイルは、ペニスを咥え込めば否応なくメスの快楽に飲まれてしまう。

 二人とも、激しく混じり合う交尾をしたいという欲求もあった。

 だが今はそれ以上に、ただ抱き合ってお互いを感じていたかった。

 

 

 二人で手を繋いでいつもの宿へと戻る。

 会話はない。口を開けば、また求めてしまいそうだから。

 指と指を絡め合って繋ぐこの手が、最大限の妥協にして、理性と切なさの境界。

 これ以上は求めてしまう。

 これ以下は切なすぎる。

 

 ゲイルは下腹部を愛おしそうに撫でる。

 サイモンから中出しされた大量の精液が、まだその中で存在感を主張している。

 変異してからまだ初潮は来ていない為、孕むことはないとは思うが、特異なこの身体は"もしかしたら"もありえる。

 そう考えると、また秘所がじわりと疼いてくるとともに、愛しさが膨らんでくる。

 この感情は嘘でも幻でもない。

 

 ゲイルはまた一つ女に近づいた。

 だが、今までのようなただ快楽を貪るだけのものではない。

 

 こうして、サイモンの体内にも、ゲイルの子宮から"何か"が送り込まれた。

 サイモンとの幸福なセックスを経て、ゲイルの意識にも変化が生じる。

 

 本当に孕んでみるのも悪くないかもしれないな、と。

 

 



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10 パトリック・一

 

 サイモンとのセックスから三日後の事。

 ゲイルは、サイモンから重要な話があると呼び出された。

 

「いいですか?このままでは僕らのパーティは間違いなく解散します」

「え?なんで?」

「なんでって、僕らの関係のせいですよ。パトリックが気付いていないとでも?」

「え、まさか気付かれてる?あいつはすぐ態度に出るし、そもそも気付いてたら何か言ってくると思うんだが」

「はい、正解です。全然気付いてませんね、彼。プフフッ」

「おい!」

「ですが、いつまでも彼の愚直さに期待をしていてはいけません。いつかは気付くでしょう。そこで」

 

 サイモンは一息間を置く。勿体ぶった言い回しだ。

 

「ゲイル。パトリックともセックスしてください」

「はあ!?なんで!?」

「彼はああ見えて純情な童貞ボーイです。一度抱いてやればもうゾッコンですよ。間違いない」

「お前、ちょっとパトリックを馬鹿にしすぎだろ……そんなうまくいくか?教会信者の初めてを奪うってそれガチギレもんだぞ」

「大丈夫ですよ。僕も協力しますし。ゲイルならうまくいきます。絶対」

「なんなんだよ、その自信は……わかったよ。今のままならどっちにしろ解散なんだろ。やるしかねぇな」

「……パトリックとの性行為に少し期待してますね?」

「うっ」

「僕という者がありながら……昨日も隠れて神父様とヤッてた事だって知っているんですよ」

「パトリックとのセックスを持ちかけたのはお前じゃん!そ、それに神父は……しょうがないだろぉ。あいつが、も、求めてくるんだから……」

「なるほど。…………ふむ」

「……おい、流石に神父を襲撃したりはすんなよ」

「大丈夫です。悪いようにはしません。しかしながら、これは僕らパーティの死活問題なのです。土壇場であの神父に台無しにされても困るんですよ。ちょっと……そう、お話をするだけです。大切なお話を」

「おい、本当に無茶なことすんなよ。神父個人はともかく、教会はやべーからな」

「わかっていますよ。大丈夫。さ、もう別の男の話はやめましょう」

「ひゃっ♥ はんっ♥ またっ♥ いきなりっ♥」

「今日も可愛い声を聴かせて下さいね」

「はうっ♥ あっ♥ んんっ♥ もうっ♥ 覚悟しろよ♥」

 

 ゲイルは一瞬でメスの顔になり、唇を重ね、熱烈に舌を絡め合う。

 今のゲイルの格好は、あの時買った黒いドレス。

 座っている場所は、サイモンの膝の上。対面ではなく、背中をその胸板に預けて寄り掛かっている。

 ゲイルは下着を着けてきていない。ノーパンでサイモンの膝の上に座っている。

 そしてサイモンは、ドレスの下から手を入れてクリトリスを弄り、指を挿入してきたのだ。

 やはりというべきか、二人はあれから毎晩身体を重ねている。

 男に奉仕する悦びを覚えたゲイルは、ブティックからいくつかの衣装を宿へ持ち帰り、サイモンの為だけに毎晩違う衣装に着替えてセックスを楽しんでいる。

 ドレスに着替えた時からゲイルの秘所は既に湿り始めており、一見サイモンと普通に会話をしているように見えて、秘所はずっと疼いていた。

 もう口でも子宮でも、サイモンのペニスと精液の味をしっかり覚えてしまっている。

 

「あんっ♥ ちゅるっ♥ れろちゅぷっ♥ ぢゅるるっ♥ はんっ♥ ちゅうっ♥」

 

 ドレスに隠れた下腹部の中で、サイモンの二本の指が秘所からちゅぷちゅぷと出入りし、親指でクリトリスを転がされる。

 サイモンの愛撫に腰をピクピクと震わせながら、夢中で舌を絡め合う。

 ゲイルは、尻の下にあるサイモンのペニスがズボンの中でムクムクと怒張していくのを感じる。

 キスは続行しながらモゾモゾと腹筋側へ移動し、少し腰を上げながら手早くベルトを外してホックとジッパーを開ける。

 サイモンのペニスが開放され、ゲイルの股間の前でブルンとそそり勃った。蒸れたオスの匂いに膣の奥が疼いてくる。

 しゅこしゅこと慣れた手付きでペニスを愛撫する。

 先走りを塗りたくりながら優しく鈴口を捏ね、棒全体をさすりつつ裏スジだけは強めに刺激する。

 昔を思い出しつつ、サイモンにしっかり教えられた、手での愛撫。

 舌を絡めながらお互いの性器を愛撫し合う。

 出来る事なら喉奥で奉仕したいと思っているゲイルだが、今は舌と舌を重ね合うのに忙しい。サイモンがキスを優先するのなら、ゲイルはそれに合わせるのだ。

 キスを続けながらペニスをさすり、サイモンの吐息が荒くなるのを感じる。

 

「はあっ、ゲイル、もうっ、出そうですっ」

 

 早くもサイモンが根を上げる。サイモンの弱点を知り尽くしているからこその早さだ。

 

「手と口とナカ、どこがいい?♥」

「ナカっ、ナカでっ、お願いします!」

 

 ゲイルの問に、サイモンが即答する。

 今までも何度か同じ問い掛けをしているが、サイモンは必ず中出しを選ぶ。

 ゲイルは微笑んで、ドレスをめくり中腰になってそそり勃つペニスを秘所へ導く。

 

「んくっ♥ んっ♥ ん〜〜〜〜っ♥」

 

 ペニスが膣を掻き分け押し入ってくる快感に、上体を弓なりに反らせて悦ぶ。

 未だキュウキュウと処女の如き狭さを感じるにも関わらず、宛てがうだけで膣のうねりによってペニスを奥へ奥へと勝手に飲み込んでいく魔性の穴だ。

 ゲイルの体格からすれば些か大きいペニスを、背面座位でどんどん飲み込んでいく。ついにゲイルの尻がサイモンの下腹部に接触し、また先程のように膝の上にぺたりと座る体勢になる。

 体勢こそ同じだが、そのドレスの内側ではサイモンのペニスをずっぽり咥え込んでいる。ゲイルの頭の奥に痺れるような快感が走り回っている。

 ペニスが下腹部の内部を強引に押し上げ、ヘソの辺りがぽっこりと膨れ上がってきてしまった。

 撫でればその中に肉棒の存在を感じられ、ゲイルは愛おしさと満足感と安心感、全てが混ざった幸福感がこみ上げてくる。

 奥まで咥え込むと、すぐ精液への渇望が湧いてきてしまう。

 

「はううっ♥ んんっ♥ ぜんぶっ♥ はいった♥」

「うっ、ゲイルぅ……」

「はあっ♥ ほらっ♥ サイモンのがっ♥ ここまでっ♥ 来てるっ♥ さわって♥」

 

 後ろから抱きしめてくるサイモンの手のひらを、ぽっこり膨らんだ腹に誘導して撫でさせる。

 サイモンがその膨らみを撫でると、ゲイルの中のペニスが更に怒張した。

 

「はうっ♥ 中でっ♥ おっきくなった♥」

「くうっ、出るっ、出るっ、出ます!」

 

 だがそれでサイモンに限界が訪れた。

 サイモンの身体がくの字に折れ、上に乗っているゲイルの身体を抱き込み、強く押さえつけて結合を深くする。子宮口に無理やり亀頭をねじ込み、最奥へ向けて全力で精液が噴出してくる。

 

「うくっ♥ うぐうっ♥ うっ♥ でてるっ♥ おくっ♥ いちばんおくっ♥ んくうううっ♥♥♥」

 

 どれだけ男を攻め立てていても、どれだけ余裕があったとしても、種付け射精をされてしまえばゲイルの身体はいとも簡単に屈服してしまう。サイモンにきつく抱き込まれたその腕の中で、ゲイルは注ぎ込まれてくる子種の熱さと勢いに身を悶えさせて絶頂し、頭の中まで精子の事でいっぱいになる。

 ゲイルの子宮と心が満たされていく。脳髄に電撃が走り、快感が全身を駆け巡る。

 力強い射精とそのペニスの脈動は、実際にビューッビューッと音が鳴っているのではないかという錯覚までゲイルに与え、その振動を腹に伝えた。

 ねじ込まれたペニスからダイレクトに子宮へ精子がなだれ込み、女の快楽に支配される。

 子宮口は亀頭をキュッと包み込み、最後の一滴まで子宮の中へ導く。もはやゲイルの子宮口は、精子を子宮まで迎え、そして送り込む器官として完全に変異が完了している。

 

「はああっ♥ おくっ♥ あつい♥ はあっ♥ すごいっ♥」

 

 射精が終わってもサイモンのペニスはまだ怒張し続けた。

 先端が子宮口に突き刺さったままピクピクと震え、ゲイルに小刻みに快感を与えてくる。

 

「んっ♥ あんっ♥ 動くとっ♥ 感じちゃうっ♥ ……まだ、できるよね♥」

「ええ、もちろんです。たっぷり楽しみましょう」

「うん♥ いっぱい奥に注いで♥ 流し込んで♥ 孕ませて♥」

「はい、今日こそあなたを僕だけのものにしますよ」

「ひゃんっ♥」

 

 満たされたばかりの胎をサイモンに撫でられ、下腹部内のペニスと共に愛しさが溢れてくる。

 孕む、孕ませると言う言葉が本気なのか、プレイの一環なのか、どちらもよく理解していない。あまり考えていない。

 ただ、こういった言葉がより二人を興奮させ、セックスを刺激的なものにする事だけは知っている。

 何故興奮するのかは、二人共わからなかった。気にしなかった。

 二人はその後もいろんな体位で交わり、その全てをゲイルの子宮が受け止め、最後に対面座位で最高の幸福を分かち合って、また結合したままで眠りに落ちた。

 セックスの度に、中出しを受ける度に、ゲイルはその快楽にのめり込んでいく。依存していく。

 夢中で抱きついてくる男、注ぎ込まれる子種の熱さ、満たされていく子宮と心。

 ただ快感だけでなく、それら全てがゲイルにとって幸福となっている。

 脳髄に刻み込まれたその快楽は、回数を重ねる度に、徐々に徐々に、その深さを増していった。

 

 

…………

 ゲイルは悩む。パトリックの事だ。

 どんな顔をして誘えばいいのだ。

 向こうは男としてのゲイルの顔しか知らない。普通に誘っても気色悪いと思われるだろう。

 そもそも信者は誘った所でなびかない。肉体関係は生涯ただ一人だけと教義で決められている。

 

「考えすぎですよ。押し倒してチンポしゃぶって、勃ったらぶち込んでしまえばいいんです」

「お前パトリックの事嫌いなの?」

「嫌いだったらあなたを抱かせませんよ」

「マジか?なら俺の事、体のいいパーティのオナホにしようとしてないか?」

「そういう扱いして欲しいんですか?」

「い、いや、そ、そんなこと……ない、ょ……」

「そこはハッキリ断って下さいよ……そう言うゲイルこそ、僕らの事バイブか何かと一緒にしてますよね。特に神父なんか」

「おう、この話はもうやめようぜ。パトリックだよパトリック」

「はいはい。僕が全力でバックアップしますから、ガンガンアプローチしてください」

「わ、わかった」

 

 

〜〜〜〜

「ん?なんだこれは」

「あ、わりいパトリック。それ俺の下着だ。洗濯物頼むとき落ちたんだ」

「お前……ゲイル?ゲイルか?おいおい、ついに女装まで始めたのかよ。……これが……お前の……下着だと?」

「そうだよ」

「お前……こういった下着を履いているのか?」

「ああ。普段着はともかく、いい加減、装備も今の体格に合わせねえとな。土壇場で裾を踏んで転ぶなんてポカはしたくねぇし」

「あ、ああ、そうだな。だが下着まで女物にする必要はないだろ」

「あー……女の身体には女の身体の事情があんだよ」

「そ、そうなのか」

「そうだ。あんま気にすんな。迷惑はかけねぇ……ようにするから。"迷惑はかけない"と言い切れない所が情けねえなぁ」

「フン、お前こそ小さな事を気にするな。仲間のリスクはパーティのリスク。即ち俺のリスクだ。お前はお前の役割を果たせ。それでいい」

「ヒュー、頼りにしてんぜ。それはそうと、いつまで俺の下着握ってんだ。返してくれ」

「あ、ああ、すまん」

「じゃあ俺はこいつも洗濯頼んでくるわ。またな」

「ああ」

……

「ただいま。どうよ」

「なかなか良かったですよ。ゲイルに対して女を感じてますね。パトリックの価値観が揺れ動いているのがわかります」

「だろう?フハハ。俺に役者の才能まであることがわかってしまったな」

「しかしパトリックめ……女物の下着を手にしたらやる事は一つでしょう!?何故匂いを嗅がない!?」

「さすがの俺もどん引きぃ」

 

 

〜〜〜〜

「よ、ようパトリック」

「あん?……また女装をしているのか。前からそういう趣味でもあったのか?」

「いや、この身体になってからだ。やっぱこういう服が似合うとわかるとよ、気分もノッてくるというか。まだ少し違和感はあるが、自分でもなかなかイケんじゃねって思ってる。どうだ?可愛いだろ?」

「フン、ま、似合ってるといえば似合ってるんじゃないか」

「煮えきらねえ返事だなぁ」

「俺はいつものゲイルを見慣れているからな。どんな格好をするのもお前の勝手だが、少しはプライドを持ったらどうだ。ファンが悲しむぞ」

「あ?ファン?」

「そうだ」

「誰の?」

「お前のだ」

「俺!?サイモンやお前じゃなくて!?俺にもいんの!?」

「お前な。ルーク級三人パーティの火力役キャスターにファンがつかないはずないだろ。花形だぞ」

「お、俺に……ファンが……」

「そうだ。まぁ身体のことはしょうがないが、それでも今までの自分を貫いてきただろ。今の女々しいゲイルを見たら、ファンはどう思うだろうな」

「着替えてくる!」

「そうしろ。いつものお前でいい。いつものお前がいい」

……

「あなたが説得されてどうするんですか!」

「だ、だって俺にもファンがいるんだぜ!?がっかりさせられないじゃん!」

「安心してください。今のゲイルを見たらむしろファンが増えますよ」

「え?なにそれ」

「しかしパトリックめ……僕がプロデュースしたこのゴスロリゲイルを見てなんですかあの態度は……許せませんね。めちゃくちゃ可愛いのに」

「お前のその女性服に対する熱意はちょっと危ないし怖いよ」

 

 

~〜〜〜

「僕は今日、女の子と約束があるのでこれで失礼しますね」

「そうか。ゲイルはどうなんだ」

「俺は普通に食うぞ。パトリックと二人でメシは久しぶりだな」

「そうだな」

「酒くらいは付き合えよ。たまにはいいだろ」

「フ、そうだな。たまにはいいか」

……

「おはようございます。よく眠れましたか?」

「おはよう……まだちょっと酒残ってるわ……」

「反省会を始めます」

「くあ〜っ。あいよ」

「ゴホン。……ふ ざ け て る ん で す か!わざわざ二人きりにしたのに!なんで何事もなく二人で飲んで、普通に朝までグースカ寝てるんですか!」

「いや……今回は俺も結構頑張ったんだぞ。薄着になったり、胸元見せたり」

「ちゃんと遠くから見てましたよ!それで出したセリフが"酔っちゃったみた〜い"って!頭空っぽの女でももう少し気の利いた事言えますよ!」

「ぐっ……」

「挙句の果てに、本当に酔い潰れて介抱されてるじゃないですか!パトリックにおぶられて帰ってきて!」

「最近ホント酒に弱くなっちまってさ……でもペースは昔のままグイグイいっちゃって……」

「老化を実感してきた中年みたいな言い訳なんか聞きたくありません!」

「わ、悪かったよ……」

「しかしパトリックめ……女が酔い潰れたら連れて行く所なんか一つでしょう!これだから童貞は!」

「ひゃっ♥ あんっ♥ ちょっ♥ ゆびっ♥ なんでっ♥」

「あなたのせいで寝不足でムラムラしてるんです!相手して貰いますよ!」

「んっ♥ はんっ♥ んもうっ♥ しょうがねえなぁ♥ はむっ♥ ちゅうっ♥ んんっ♥」

 

 そうしてサイモンのフォローの元、ゲイルはパトリックを誘惑し続けた。

 だが、セックスの経験ばかりがあるだけで、そこへ至るまでの男の誘い方は何一つ知らないゲイルと、敬虔な信者の上そういった事に疎いパトリックはまったく噛み合わなかった。

 湯浴み中に来訪、トイレでばったり、探索中のラッキースケベ。

 サイモンプロデュースによるそれらイベントを、パトリックはことごとく見て見ぬ振りでスルーした。

 失敗を重ねる度に、サイモンはゲイルに小言を言い、精子を注いだ。その度にゲイルは悦んだ。

 



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11 パトリック・二

 そうして、また三日が経過した。

 結果だけを見れば、ゲイルはこの三日間、サイモンと(たまに神父と)セックスをしていただけである。その前の三日間と何も変わっていない。

 ついにサイモンがキレた。

 

「あのクソ童貞、ふん縛って犯しちゃいましょう」

「おい冷静になれ」

「逆に生涯童貞でいることを強制させるのもいいですね。僕らの濃厚なセックスを見せつけるだけ見せつけて、彼には一切手を出さない。寄り付く女はすべて僕が食う」

「お前にしか得ねーじゃん」

「ああああああああああもう!!

 悩んでる僕が馬鹿みたいじゃないですか!

 こんだけゲイルとセックスしてても、あいつまったく気付かないし!

 ゲイルの誘惑が拙いとしても、こんだけやって反応なしって、あいつインポかホモですよ!」

「……なぁ、一つ訊きたいんだが」

「なんですか!?」

「何でそんなに必死なんだ?パトリックの童貞を奪う事はそんなに重要な事なのか?俺らが娼館に行くのを不愉快に思いながらも何も言わなかった様に、この関係も気にしないかもしれんぞ」

「……僕はですね。この三人のパーティ、この三人組の関係をこの上なく大切に思っているんですよ。僕ら二人が肉体関係だと分かれば、パトリックは必ず遠慮しだします。それが嫌なんです」

「じゃあなんで俺をデートに誘ったんだよ」

「そ、それはまた、僕の病気といいますか。かわいい女の子が目の前にいたら口説くのは当たり前でしょう?」

「はぁ?なんだそれ」

「僕だって始めは普通に遊ぶだけのつもりだったんですよ!?勿論セックスなしで!

 そしたらゲイル、着せ替えしたら想像以上にかわいいし、日が暮れてるとめちゃくちゃ意識しだすし、そんな据え膳食うしかないじゃないですか!」

「お、俺のせいだって言うのかよ!」

「全部とは言いませんけど、ゲイルにだって責任の一端はありますよ!

 あの時のゲイル、顔真っ赤にして見るからに発情してましたからね!?あんなのゲイルから誘ったようなもんですよ!

 それに……それに、あんなセックス経験したらもう忘れられないじゃないですか!

 ゲイルだってそうでしょう!?」

「それは、まぁ、その……」

「僕は単に自分の欲望に正直なだけです。

 パーティは維持する。ゲイルとの関係も続ける。

 問題点はパトリック。それならば巻き込んでしまえ。

 それだけです。

 そしてそれは、話がこじれる前に達成させねば意味がないのです」

「は〜ん。わかるような、わからんような」

「ゲイルは結構ドライですからね……僕がどれほどこのパーティを大切に思っているかわからないでしょう」

「そんな大切なら始めっから俺を誘うなよ……まー、そこまで言われちゃ、今更降りる訳にはいかないな。次どうするよ」

「……どうしましょう。彼の童貞力を侮ってました」

「信仰心って言ってやれよ。もうマジでふん縛るか。ハハハ」

「……本当に実力行使、してしまいますか」

「……やるか?」

「やりましょう。もうヤケです」

 

 そういう事になった。

 

 

 

「ジジイ、隅の方や高い所の拭き掃除が完了した」

「おお、ありがとう、パトリック。いつも仕事が早いな」

「フン、年寄りが無茶をするな。雑務なんぞ誰にでも任せればいいんだ」

 

 パトリックは暇があれば教会や孤児院を手伝いに来ている。

 容貌と態度で誤解されがちだが、彼はこの上なく善良な人間である。

 そして童貞である。

 

「まだ何かやる事はあるか?」

「そうだな……では倉庫に来てくれないか。頼みたい事がある」

「わかった」

 

 二人で教会裏手の倉庫に入る。昼間だというのに中は真っ暗だ。

 

「ジジイ?この倉庫、こんなに暗くはなかっただろう?なにかうぐうッ!?!?」

「すまないな……本当にすまない。だが私はもう、彼女のいない生活など考えられんのだ」

「う……ぐ……ジジイ……なん……」

 

 神父の手には物々しいメイスが握られていた。パトリックを後ろから強打したのだ。

 全力の一撃から、即座にあらゆる弱体化魔法を連射され、最後に睡眠の魔法がかけられる。

 神父とパトリックの実力差はあまりにも大きいが、不意打ちをここまで全力でやられてしまってはパトリックとてどうしようもない。何せ相手は全幅の信頼を寄せる神父だ。

 逆に言えば、ここまで完璧な不意打ちをしなければ、どう足掻いても太刀打ちできないのが二人の実力差である。

 殴られたパトリックの後頭部が陥没し、血が噴出している。

 一般人ならば死んでしまうレベルの打撲だが、そこは流石神父である。パトリックの意識だけを落とし、()()()()()()()()()()()()

 かくして、パトリックは五体満足で捉えられたのである。

 

 

 

「ちゅぱっ♥ ちゅるるるっ♥ ぢゅるっ♥ はあっ♥」

「う!?」

 

 ペニスが熱い何かに包まれ、激しくまとわりついてくる。腰が砕けそうな快感。

 今まで体験したことのない快感にパトリックは目覚めた。

 大きなベッドの上で寝かせられている。

 両腕は後ろで縛られて動かせない。パトリックにも解けない特殊な結び方だ。

 

「な、なんなんだ、一体……」

「ちゅぱっ♥ あ、起きた?」

 

 パトリックが声と刺激の方に目を向けると、下腹部にゲイルがいた。

 今までパトリックのペニスを舐めていたのだ。

 

「ゲイル?これは一体どういうことだ……」

 

 未だ朦朧とする頭で状況を理解しようとする。

 

「お前が悪いんだぜ?俺の誘惑をことごとく無視するんだから……はむっ♥ ちゅるるっ♥ れろれろ♥」

 

 そう言って、ゲイルはまたパトリックのペニスを愛おしそうにしゃぶり始める。

 通じているようで、全く噛み合っていない会話。

 ゲイルは、まるで娼婦のような表情でペニスを舐めている。

 パトリックが初めて見る、メスの顔のゲイル。

 今まで見せていた、いい加減で、陽気で、飄々として、女好きで、身長を気にしていて、そして超一流のキャスターのゲイル。

 そのどれでもない。

 男性である事を捨て、女としての色欲に染まったゲイル。

 パトリックは雷に撃たれたかのようなショックを受ける。信頼していた仲間が、こうも変貌してしまったのだ。

 どう考えても女性化が原因だろう。

 パトリックは思う。

 神父は何をしていたのだ。今の自分の状況を鑑みるに、神父ともあろう人間が誑かされてしまったのか。

 サイモンはどうしたのだ。最近ゲイルとよく行動を共にしていたが、まさかサイモンまで下ってしまったのか。

 そして何よりも、その変貌に一切気づいていなかった自分の愚かさが憎い。何と言う愚劣。

 最近の自分への不可解な行動の数々はそういう事だったのか。

 自分が何とかしなければ。

 パトリックが使命感に燃える。今ゲイルを救えるのは自分しかいないと。

 それこそが、今自分に与えられた役割だと確信した。

 ゲイルを取り戻すのだ。

 あの頃の、燦然と輝いていたゲイルを!!

 だが状況は最悪に近い。

 身体は縛られ身動きが取れず、ゲイルを正気に戻す方法も解らない。

 強引に蹴っ飛ばして足で絞め殺す事も出来るが、殺してしまっては本末転倒だ。

 チャンスを待つんだ。虎視眈々と。

 

 

 ゲイルは愛おしそうに、火照った顔でフェラチオを続ける。

 パトリックのペニスは特別大きくはなかった。

 だが反り返りとカリが大きく、何よりもとても硬い。あの二人のペニスよりも、ずっと硬い。

 ゲイルはしゃぶりながらも、早くこれを秘所に入れたくてウズウズしている。

 この反りは間違いなくイイ所に当たる。

 この大きなカリは引き抜く時に凄い快感を与えてくれるだろう。

 そしてこの硬さ。早くこの硬さを味わいたい。これで奥を突いて欲しい。そして、最奥で……

 ゲイルの子宮が疼いてくる。もう入れたくてたまらない。

 フェラチオに夢中のあまり、パトリックが縛られている事を忘れていた。ならば、我慢の必要などない。

 

「ちゅぷ♥……はあっ♥ パトリック……」

「……ぐ……やめろ……」

 

 フェラチオを止め、パトリックに馬乗りになる。割れ目に怒張したペニスが食い込む。

 ゲイルは腰をクイクイと動かし、ペニスと秘所を擦り合わせる。

 割れ目がペニスを挟み込み、溢れた愛液が纏わり付く。ちゅくっ♥ちゅくっ♥と淫らな音が鳴る。

 

「はあっ♥ ふふっ♥ お前の初めて、貰うぞ♥」

「やめろゲイル……正気に戻れ……」

 

 ゲイルは膝立ちになり、秘所を指で開いてパトリックに見せつける。

 毎日のように性交をしていても、ゲイルの秘所は未だ瑞々しいピンク色だ。

 パトリックが照れたように視線を逸らす。

 その少年のような反応がまたゲイルを興奮させる。

 露わにされた秘所から愛液が滴る。

 パトリックの怒張したペニスに糸を引いて落ち、ピクリと動く。

 もう待ちきれない。

 ペニスを秘所へ宛てがう。

 一際硬い亀頭がじゅぷりとその中へ沈んだ。

 熱い膣がペニスを迎え入れる。

 

「ぐうっ!」

「ああっ♥」

 

 ゲイルの膣が悦んでいる。新たなペニスの到来を歓迎している。

 パトリックに結合部を見せつけるように、わざとゆっくり挿入していく。

 

「んん〜〜っ♥ 入ってくる♥  お前のがっ♥ 俺の中にっ♥」

「ぬぐうっ……」

 

 そしてペニスの全てを飲み込む。

 ゲイルは奥まで突き刺さったパトリックのペニスの味に、身体を仰け反らせて悦ぶ。

 あの反り返りが、思った通り弱点を直接刺激してくる。

 大きなカリは、中で少し動くだけで膣壁をえぐってくる。

 そしてその硬さ。咥え心地が、下腹部の中での存在感がたまらない。入れているだけで脳天に鈍い快感が止めどなく流れてくる。

 

「はっ♥ はっ♥ やっば♥ お前の♥ すごいっ♥」

 

 小刻みに震えながら、じっくりとパトリックのペニスを味わう。

 パトリックのペニスの形を覚えていく。

 同時に、仲間を犯しているという背徳感が、ゲイルの背筋にゾクゾクと快感を走らせる。

 早速子宮口がペニスを迎えに行って、鈴口にチュッとキスをする。

 その瞬間である。

 

「うっ!」

「ふあっ♥ あっ♥ あぐっ♥ うくううううっ♥♥」

 

 最奥に熱い衝撃を受け、快感の濁流がゲイルを襲う。

 射精したのだ。

 子宮口が夢中で吸い付き、子宮への直接通路を開ける。

 そこに、溜まりに溜まった濃厚な精液が殺到した。

 

「うぐううっ♥♥ あうっ♥ うぐっ♥ はうっ♥」

 

 ただでさえ中出しでのイキ癖がついているゲイルは、予告なく特濃精液を注ぎ込まれて連続絶頂に追いやられる。

 深く咥え込んだまま身体がビクビクと震え、胎の中で滞留する熱い精液が何度も絶頂に押し上げてくる。

 子宮がキュンキュンと悦んでいる。

 身体中が女の悦びに満ちていく。

 射精は一瞬だけだった。

 だがしかし、その一瞬だけで十分な量の精液を注ぎ込まれ、胎の中の熱と種付けの幸福感で何度も絶頂した。

 

 脳髄が悦んでいる。幸せでたまらない。

 何度味わっても色褪せない。何度でも味わいたい。

 もっともっとと奥底が求めてくる。

 ゲイル自身ももっともっとと快楽を求める。

 それは奥底からの欲求に当てられてではない。

 意図的に捻じ曲げられた欲望からではない。

 ゲイル自身が純粋にメスの快楽を求めたのだ。

 それほどまでに、メスの快楽がゲイルの全身に、脳髄に浸透し、元の身体への未練を完全に断ち切った。

 もっとメスの快楽を。

 ゲイルと奥底からの願望がシンクロする。

 

 刻印が進化を始める。

 皮膚に焼き付いてる様にしか見えないハートの刻印が、妖しくうごめき出す。

 ハートの根本からツタの様な線が左右に伸び、ハートに巻き付くかのような描写が加わり、色も妖艶な紫となる。

 そして変化は肉体にも訪れる。

 膣がうねる。その形を変えていく。もっと快感を与え、そして快感を得られる形へ。

 咥え込んだペニスに最適な形へと適応させる膣となる。

 そして今咥え込んでいる、パトリックのペニスにぴったり適合する形へと変化していく。

 その形が変わっていくほどに、むず痒く甘い刺激が二人に襲いかかる。

 

「くう……なんだっ、これはっ」

「んっ♥ あんっ♥ あはっ♥」

 

 ただひたすらに焦れったい刺激。それがどういう意味を持つのか、ゲイルは即座に理解した。

 

「あんっ♥ これはっ♥ こういう事だよっ♥」

 

 ゲイルが一気に腰を引き抜き、そしてまた奥まで飲み込む。

 

「んくううううっ♥♥♥」

「ぐううっ!」

 

 その一往復だけでゲイルは絶頂した。

 脊髄から脳天まで貫くような快感。

 カリが膣壁をえぐり出すかのような刺激。

 ぴったりフィットした膣は、どう動いても確実に弱点を攻めたてる。

 そして完璧に噛み合った突起と穴の結合は、それもまた一つの幸福感をもたらしてきた。

 

 完璧に適合した膣は、極上のピストンを創り出したのだ。

 

 動くほどに気持ちよくて幸せになれる。

 ゲイルは夢中で腰を振る。

 ピストンの度に絶頂し、幸福が溢れてくる。

 パトリックは充血した眼で奥歯を噛み締めて堪えているが、同様の快感に攻め立てられ、限界も近い。

 感じているはずの幸福感も必死で振り払う。

 

「はうっ♥♥♥ んくっ♥♥♥ ひうっ♥♥♥」

「うっ!ぐっ!ウッ!?」

「はんっっ♥♥ またっ♥ でてるっ♥ うくううううッッッ♥♥♥」

 

 女の快楽の絶頂とピストンの幸福の上から、更に種付けの快感と幸福が注ぎ込まれる。

 許容量を超えた快感に、ゲイルは身体をこわばらせつつ、パトリックの胸板に倒れ込んでしまう。

 

「ひぐっ♥ はうっ♥ んくっ♥」

 

 息も絶え絶えに、ひたすらなだれ込んでくる絶頂の快感を貪り食う。

 パトリックに全身を預け、身体を震えさせ、だらしなくトロけた顔で、注がれる精液と全身を襲う快感に嬉し涙とよだれを流して悦ぶ。

 今回の射精は一瞬などではなく、ゲイルの中でペニスが脈打つ度に次々と注ぎ込まれてくる。

 強烈な絶頂の波に全身の自由がきかずとも、ペニスを咥え込んだ下腹部はしっかりと働き、精子は一滴も溢れさせず全てその子宮へ運ばれ、そして飲み込んだ。

 精液が注がれる度に身体がビクビクと痙攣する。ゲイルの頭の中に電撃が走り、幸福に満ちていく。

 ゲイルは今、最高に幸せだった。

 

 



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12 パトリック・三

 二度目の射精も終わると、パトリックのペニスは萎えてズルリと抜け落ちた。

 ゲイルは絶頂の余韻に浸る。

 吐き出された精液が、未だ胎の中でグルグルと熱を持ったまま滞留している。

 そのまましばらく胸板に身体を預けていると、パトリックが唐突に喋りだした。

 

「師匠……そうか、これが……そういうことなんだな」

 

 あの瞬間をパトリックは見ていた。

 刻印が変化する様子をしっかり確認していたのだ。

 昔パトリックの師匠から教えられたモノと特徴が合致する。

 幸運にも対処法も知らされている。

 

「フッ。師匠……俺はまだ未熟だが、俺がやらねばならないのだな。ゲイル、今助けてやる」

 

 パトリックはこれが運命に思えて仕方ない。

 パトリック自身がこれを教えられたのも、ゲイルと出合い、パーティを組んだ事も、全て今この時のための布石なのだと感じる。

 ゲイルは訳がわからないが、なんだか楽しそうだからそれに乗る事にした。

 

「うっ……くっ……パト、リック……にげろ……」

「ゲイル!?まさか正気に戻ったのか!?」

「にげろ……おれは……もう……はやく……にげろ……」

「駄目だ!お前を置いて逃げれるか!!」

 

 ゲイルは笑いがこみ上げてくるが、必死で堪える。

 逃げるつもりがないのならば、縄を解いてみよう。何をしてくれるのか気になる。

 湧き上がる好奇心に突き動かされつつも、演技を続ける。

 

「これが……さいごだ……もう……おれは……」

「ゲイル!?縄が!?」

 

 パトリックにしなだれ掛かると共に、魔法で縄を焼き切った。

 そのまま気絶した風を装う。

 これでパトリックは自由だ。さてどうするんだろう。

 ゲイルはイタズラを楽しむようにワクワクしてくる。

 

 パトリックがゲイルの頭をさわさわと優しく撫でる。

 普段のパトリックからは考えられない行動だ。

 ゲイルの鼓動が強くなってくる。

 キスでもするんだろうか。それともガッツリ犯されるだろうか。何か知らない魔法か技能を掛けられるのか。

 純粋にゲイルを気にかけるパトリックに、少し罪悪感が湧くが、今更だ。

 

「ゲイル……こんな身体になっても、俺はお前を愛しているぞ……」

 

 突然の告白にドキリとする。

 いや、ちょっと待て。

 今の言葉には不自然な要素が含まれていた。

 "こんな身体になっても"?

 それは、つまり……

 聞いてはならない事を聞いてしまった。

 知ってはならない事を知ってしまった。

 ゲイルから脂汗が浮き出てくる。

 

「ゲイル……今浄化してやる」

 

 体勢を変えられ、パトリックが後ろから体重を掛けてきた。

 パトリックのペニスはまた怒張し始めている。

 普段ならば期待でいっぱいになる筈が、今は何故か背筋に寒気が走った。

 いやまさか。あの善良なパトリックがそんな。

 ゲイルの脂汗が増える。

 

「今、正気に戻してやるからな」

 

 パトリックのペニスがゲイルのアナルに添えられる。

 ゲイルから滝のように脂汗が流れる。

 

「やっ、だめっ、そこは違ンッ――――!」

 

 我慢できず静止の声をかけるも、一足遅かった。

 容赦なく硬いペニスが突き立てられ、直腸に沈んでいく。

 ゲイルのアナルは一般人と変わらない。

 何一つ変異しておらず、経験も一度としてなく、前立腺もなくなっている今、当然快感など全く湧いてこない。

 

「ぐおおっ!てめっ、ちょっ、まじで、やめっ」

 

 冷水を被ったかのように一気に冷静になり、素のゲイルの声が漏れた。

 

「おおおゲイル!正気に戻ったのだな!やはりこれに間違いはなかった!」

 

 素のゲイルの声が、パトリックの意味不明な思想に説得力を与えてしまった。

 

「今悪しき物を祓ってやる!うおおお!」

「いぎぎ!うぎぎぎ!!」

 

 アナルを乱暴にピストンされる。

 激痛がゲイルを襲う。

 ゲイルは必死で逃げ出そうと暴れるが、筋力でパトリックに適うはずもなく、うつ伏せでガッチリホールドされて、されるがままに掘られるだけだ。

 逃げ出す事は早々に諦め、流石に痛すぎるアナルの力を抜いて、痛みを軽減しようとする。

 激しい痛みの中、強い後悔の念を覚える。

 どうしてこうなった。なんでケツ掘るのが浄化なんだよクソ……と。

 だがその奥で、ほんの少し快感がくすぶり始めた事に、ゲイルはまだ気付いていない。

 

「うおおおお!ゲイル!好きだ!愛している!正気に戻れえええ!!」

「いぎっ!いぎぎ!くうっ!」

 

 ホールドされたまま強く抱きしめられ、直腸にパトリックの精液が注ぎ込まれる。

 腹の奥に熱さを感じる。子宮とは違い快感はない。

 ゲイルは、ヤレヤレやっと終わったか酷い目にあった、などと思っていた所で、変化が訪れる。

 じわりと感じる腹の奥の熱さ。

 それは間違いなく、ゲイルの中に注ぎ込まれた物の熱さ。

 今ゲイルの中に精液が注ぎ込まれたのだ。

 

 脳髄に刻み込まれ、身体に染み渡った快楽が活性化する。

 直腸への射精と結びつき、過去の快感が想起される。

 ゲイルの官能が疼き始めた。

 秘所が湿り始め、頭の奥に痺れが走る。

 

「うっ♥ んくっ♥ なんでっ♥ んんっ♥」

 

 ゲイルから艶のある声が出る。

 その声に、パトリックは勘違いを促進させる。

 

「くっ……やはり俺程度の浄化では力が足りないか……ならばもう一度だ」

「んっ♥ はんっ♥ あっ♥ んぐっ♥」

 

 また乱暴にズコズコとピストンされる。

 パトリックのペニスは萎えない。

 先程と全く同じ筈なのに、ゲイルから嬌声が漏れる。

 ゲイルは信じたくない。無様にケツを掘られて喘ぐなど。

 直腸から分泌液と精液が漏れ、ペニスの滑りが良くなったせいだ。そう自分に言い聞かせる。

 だが、ただそれだけで、嬌声が漏れるほどの快感など得られるはずがない。

 早くもアナルが変異を始めたのだ。

 

「ゲイル!受け取れえっ!」

「んくうっ♥」

 

 再度直腸に精液が注ぎ込まれる。

 ゲイルの腹の奥がまた熱さ感じ、それがトリガーとなってゲイルの脳が性感を覚えていく。

 少しずつ、だが確実にアナルが快感を覚え始める。

 

「はっ♥ はあっ♥ はんっ♥」

「まだなのか……くっ!まだだ!まだ俺は負けていない!」

 

 またピストンが開始される。

 パトリックは夢中になって腰を振る。

 膣とアナルで二発ずつ出したというのに、パトリックのペニスはギンギンに勃起したままだ。

 

「はっ♥ あんっ♥ んくっ♥」

 

 硬い肉棒がゲイルのアナルを出入りする。

 パトリックの立派なカリが粘膜を擦り上げる。

 反り返りが縦横無尽に直腸を刺激する。

 ピストンの度にゲイルの背筋にゾクゾクと快感が走るが、まだゲイル自身は頑なにそれを拒んでいた。

 しかし我武者羅に腰を振るパトリックが、一際奥へペニスを挿入した時、それは起こった。

 

「はぐうっ!?♥」

 

 パトリックの剛直が、直腸側から子宮を圧迫したのだ。

 既に快楽の虜となっている子宮への刺激に、ゲイルの脳が揺さぶられる。

 その一撃だけで腰がピクピクと震え、思う様に力が出なくなる。

 軽く絶頂してしまったのだ。

 

「フッ、見えたぞ。ここが貴様の弱点だな!」

 

 パトリックが勝ち誇った様な声を上げる。

 ペニスをギリギリまで引き抜かれ、そして……

 

「や、やめっ、ひぐうううッ♥」

 

 強烈な突き入れ。

 子宮に重い衝撃が走り、ゲイルは絶頂に達してしまう。

 

「フン!フン!フン!どうだ!」

「あぐっ♥ はうっ♥ んくっ♥ ひうっ♥」

 

 パトリックは執拗に子宮を攻め立てる。

 パトリックのピストンも、いつしかそのカリでより腸壁をえぐる様に、ゲイルをより悦ばせる角度で出し入れするようになってきている。

 アナルの入口が擦れる甘い刺激に酔いしれ、腸の粘膜をえぐられて背筋に快感が走り、子宮への衝撃で頭の奥に電撃がほとばしる。

 ゲイルのプライドにヒビが入る。

 セックス漬けの毎日によって堕落した脳が、その快感を受け入れ始める。

 必死に快楽に堪えるゲイルに自分自身が問いかけてくる。

 

 もうしっかり気持ちよくなっているじゃないか。

 何がそんなに気に食わないんだ?

 アナルセックスなんてそれほど珍しい事じゃないだろう?

 それにほら、まだこの快感も知ったばかりの序の口だ。

 この先に、まだ俺の知らない快楽が待っているぞ。

 今からでもよく味わってみろよ。

 パトリックのかた~いペニスが、お前の中を出たり入ったりして、子宮を裏側から悦ばせてくれてるぞ。

 そうしてお前の中に濃~い精子がビュルビュル出されるんだ。

 二十数年間童貞を貫いた男の精液だぞ。

 子宮で受けた時、とても気持ちよかっただろ?

 ほら、今も(おまえ)は、こんなにいやらしい声を上げて悦んでいるじゃないか。

 何故俺はこんなにもつらい思いをして、快楽に抗っているんだ?

 

 ついにゲイルの意思がアナルの快楽に屈服する。

 今まで逃げるように引っ込めていた尻を突き出し、ゲイル自身もピストンに加わる。

 今まで以上にカリが腸壁をえぐっていく。

 硬く大きな反り返りはたまらない挿入感をもたらしてくる。

 裏側からの子宮への刺激は、膣からとは一味違った快感を与えてくる。

 ああ、こんな快感を今まで拒否していたなんて!!

 ゲイルの頭の中は新たな快楽を貪ることでいっぱいになる。

 夢中で腰を振り、アナルでペニスをしごき、精液を求めた。

 もうゲイルにプライドはない。プライドを捨て、快楽を選んだのだ。

 

「出るぞ!ゲイル!」

「はぐっ♥ うんっ♥ おくっ♥ らしてっ♥」

「うおおお!元にっ、戻れえっ!」

「んくうううっ♥♥♥」

 

 直腸から子宮を刺激されながら、熱い精液が流し込まれる。

 射精を受け、ゲイルは身体を仰け反らせて絶頂する。

 これまでの射精と何も変わらない筈なのに、ゲイルの脳の奥にドロリとした快楽がなだれ込み、絶頂へ導いてくる。

 腹の中に感じる精液の熱さが全身に溶け込んでいく。

 圧迫された子宮まで熱さが伝わり、愛液がだらだらと溢れてくる。

 脈動するペニスが直腸を震わせてくる。

 アナルの快楽がゲイルの脳髄に刻まれていく。

 新たな快楽の芽生えにゲイルの全身が歓喜に震える。

 全身に染み渡るような直腸射精《なかだし》の絶頂を、ゲイルはじっくりと味わう。

 もうアナルへの忌避感は完全に消え去った。

 腸壁がうねり、ペニスをしごいて最後の一滴まで精液を搾り、アナルで飲み込んでいく。

 ついにゲイルのアナルも変異し、精液を求めてうごめく新たな性器となったのだ。

 求められれば、口でも膣でもアナルでも悦んでペニスを咥え込み、精液を啜るだろう。

 

「あっ♥ はあっ♥ はあっ♥ んっ♥」

 

 ゲイルは肩で息をして余韻に浸る。

 だが、パトリックはそれを許さなかった。

 

「ぬう……まだ浄化出来ないのか……しょうがない。どちらが先に限界を迎えるかの勝負という訳だな」

 

 アナルの中で、ビキビキとパトリックのペニスが勃起する。

 

「ふあっ♥ まっれ♥ らめっ♥ いまっ♥」

「フン、やっと底が見え始めたか。ならばこのままやりきる!」

 

 ゲイルの静止も聞かず、パトリックはピストンを始める。

 ゲイルを力任せに組み敷き、乱暴に何度も突き入れ、その度に悲鳴にも似た嬌声がゲイルから漏れる。

 パトリックは本心でゲイルを助けようとしている。

 昔師匠が弟弟子に行っていた、悪しきモノに取り憑かれた時の対処法を愚直にこなす。

 たとえその対処法が、パトリックを誤魔化すための師匠の嘘っぱちだったとしても、少なくともパトリックの行動は純粋な想いによるものである。

 その筈だった。

 今パトリックの脳内で、肉欲が渦巻いている。

 初めて経験する女の蜜壺。

 ペニスに流れる極上の快感。

 射精の瞬間の得も言えぬ高揚感。

 欲望のまま、女を物のように扱う背徳感。

 それが仲間、よりによって愛するゲイルである事で、その黒い快楽は膨れ上がっていく。

 パトリックは真性のゲイと言う訳ではない。ただ恋した相手が不運にも男だっただけだ。

 同性にそんな感情を抱いてしまった自分を恥じた。元々諦めていた。仲間になれただけでも御の字とした。

 そのゲイルが女になった。

 始めはパトリックも喜んだ。運命を感じた。だが、何かが違ったのだ。

 パトリックは、あくまで"男のゲイル"に恋をしたのだ。女になったゲイルではない。

 それを察した時、パトリックは途方に暮れたが、その想いは消えなかった。

 これが正しい対処法だと信じて、男に戻れと念じながら夢中でゲイルを犯し、その快楽を貪る。

 ゲイルの穴の熱さが、粘膜のうねりが、その声が、パトリックを興奮させ、そして苛立たせる。

 本当のゲイルはこんな簡単に屈したりしない。

 本当のゲイルはそんな声で喘がない。

 本当のゲイルはアナルを掘られて悦ばない。

 本当のゲイルは……自分のこんな行動を許さない。

 しかしそれでも、それでも今ゲイルと身体を重ねているという事実は、パトリックを際限なく興奮させた。

 愛している者との性交の喜び。

 そして愛しているはずのゲイルを乱暴に扱い、性処理の道具のように犯す悦び。

 今まで善良を貫いてきた男の、隠れた性癖の発露だった。

 口ではゲイルの為を装いつつ、パトリックはその暗い快楽に溺れていく。

 

「うっくううううっ♥」

 

 ゲイルの直腸へまた精液を流し込む。

 奥に突き入れてドクドクと射精すると、ゲイルを征服している、自分のものだとマーキングしている、そのような感覚に陥り、それがまたとてつもない高揚感となる。

 熱い粘膜がペニスに絡みつき、アコーディオンのようにペニス全体をしごいてくる。

 ゲイルも悦んでいる。求めている。

 パトリックのペニスは萎えない。一度もアナルから引き抜いていない。

 すぐさまピストンを再開する。

 ゲイルの中で射精する度に欲望が鮮明になっていく。

 この女を滅茶苦茶に犯したい。

 この魅惑の穴をもっと犯したい。

 いくらでも射精出来そうな気分だった。

 パトリックの目的と手段が完全に入れ替わった。

 

「はんっ♥ はぐっ♥ うくっ♥ あうっ♥」

 

 もうゲイルはだらしなく顔をトロけさせて力なく倒れ伏しているが、ペニスが子宮裏を突く度にビクンビクンと身体がこわばり、アナルがキュッキュッと締まる。

 それが絶妙に心地よく、パトリックは何度も子宮裏を思いっきり突き上げる。

 脱力したゲイルとは無関係に、腸壁はナメクジの如くペニス全体に絡みつき、際限なく精液をねだってくる。

 不思議なことに、何度も吐き出したはずの精液はアナルから垂れてこない。ゲイルが痛がっていた最初だけだ。

 しかしパトリックもゲイルも、そんな事はもはやどうでもよかった。

 二人共、知ってしまったその快楽を夢中で貪る。

 パトリックは更なる快感を求めて様々な形でゲイルのアナルを犯す。

 

 頭をベッドへ押し付けて犯す。

 抱きかかえ、ゲイルの自重で深く挿入させて犯す。

 乳房を根本から絞り、乳首をきつくつねって犯す。

 クリトリスを捻り上げて犯す。

 羽交い締めから後頭部をホールドして犯す。

 

 犯す。

 犯す。

 犯す。

 

 ゲイルは犯される度に絶頂する。

 精液を流し込まれる度に絶頂する。

 力任せに締め付けられ、アナルを乱暴にほじられ、そしてまた絶頂する。

 ゲイルの脳髄に刻みつけられていく。

 サイモンの巨根で開花しそうになったまま燻っていた快楽。

 男に屈服し、乱暴に犯される快楽をしっかり教え込まされた。

 

 完全に脱力し、肩で息をしながら絶頂に震えるゲイルは、やはり幸せそうだった。

 

 

 次の日から、ゲイルは普段から女性の服を着るようになる。

 自分が女であることを周囲に知らしめるように。

 ゲイルはまだ、三種類のペニスの味しか知らないのだから。




しばらく休載して、しっかり書き溜めてからまた連載します。


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13 三人の新たな生活

 その後、サイモンが突入してネタばらしをすると、パトリックは怒った。

 怒りながらゲイルのアナルを乱暴に犯し続けた。

 しかしそこは惚れた弱みである。パトリックに組み敷かれたゲイルが嬌声とともに頼み込めば、パトリックは折れざるを得なかった。

 そして彼ら三人は、ゲイルを介して仲良く肉体関係となる。

 三人の生活は一変した。

 

…………

「んん〜っ♥ ちゅぱっ♥ れろれろ♥ ちゅるっ♥」

「じゅるるっ、ゲイル、出ます」

「んん〜〜っ♥ あっあっあついっ♥ はうううっ♥ んくうっ♥ んっ♥ うあっ♥」

「ぐううっ、もっと奥っ、もっと奥にっ」

「終わったか?よくただ抱き合うだけでイケるな。理解できん」

「あっ♥ あっ♥ まらでてる♥ ああ〜っ♥ なかっ♥ なからしっ♥ あうっ♥」

「うっ、くうっ、気持ちで繋がっているんですよ、僕らは」

「俺は繋がれてないとでも?」

「ふ~……あはは、どうだか〜?」

「チッ、お前よりいい声出させてやるよ。交代だ」

「はいはい」

「あっ♥ んっ♥ やらっ♥ まっまらっ♥ まらぬかないで♥」

「だそうです。悪いですね。はあ〜〜。ずっとこうやって抱き合っていたいです……」

「うう……ゲイルぅ……」

「そ、そんな泣きそうな顔しないで下さいよ!もう少ししたらゲイルも落ち着きますから!」

 

 

…………

「はあっ♥ んっ♥ あんっ♥ イクッ♥ イクぅッ♥」

「フウッ、フウッ、いいぞ!ちゃんとイク時に宣言できたな!ご褒美だ!受け取れ!」

「んぐっ♥ きたっ♥ せいしっ♥ イクっ♥ イックぅ〜〜〜っ♥」

「ううっ、うっ、ゲイルっ、戻れっ、男にっ」

「パトリック……いい加減認めましょうよ。それで元に戻るわけがないって。今更男に戻られても困りますし」

「ううっ、俺だってなあ……わかってはいるんだ……」

「はあ、僕も一度はそれだけ熱烈に恋をしてみたいですね」

「……あれほどのまぐわいをしておきながら、お前はゲイルを愛していないのか?」

「そりゃ愛してますけど、僕の言う愛とパトリックの言う愛には大きな格差があるんですよ。もちろんゲイルの愛ともね」

「ふん。わからん」

「わかんないでしょうね。あはは」

「んくっ♥ おっ、おれは♥ おまえらのチンポ♥ だいすきだぞ♥ ひくっ♥」

「あなた、これに恋してるんですよ」

「やめろ。わかってる。そらっ!そらっ!」

「ひゃうっ♥ はうっ♥ あんっ♥ すきっ♥ らいすきっ♥」

「俺も!好きだ!ゲイル!」

「僕はまだ見張りですか……」

 

 

 

 ゲイルたちは、暇さえあれば何処でもセックスに耽った。

 森の中で、洞窟の中で、キャンプで、木陰で、宿で、路地裏で。

 朝も、昼も、夜も、関係なしに、ムラッと来たら人の目を盗んでゲイルの口を、膣を、アナルを犯した。

 

 そんな爛れた生活が一ヶ月続いた。

 

「……パトリック、どれくらい残ってます?」

「ギリギリ切り詰めて一週間分といったところだ。お前は?」

「僕も似たようなところです……このままではいけませんね」

 

 そう、金欠だ。彼らは今、パーティ結成最初期以上に貧乏だ。

 セックスに夢中になるあまり、彼らの稼ぎは激減した。

 目減りし続ける財布の中身に、いつかこんな日が来るとわかってはいた。明日は真面目に収入を得ようと毎日のように考えていた。だが、ゲイルを目の前にするとどうしても肉欲に抗えない。

 

「よ〜し、たまには真面目に狩りに出かけようぜ!数日かけて稼ぎのいいダンジョンに潜ろう!」

 

 ゲイルが意気揚々と声を上げる。

 そこにサイモンが冷ややかな声を投げかけた。

 

「そうですね。大きな稼ぎが必要です。ですが、ゲイルは留守番です」

「な、なんで!?」

「……お前が近くにいると俺たちが我慢できねえんだ。理解しろ」

「何だよそれ!俺だって金欠なんだぞ!」

「わかって下さい……今日こそはちゃんと稼ごうと、ずっと思いながらこうなってしまったのです。僕も散々悩みましたが、ゲイルが一緒にいるとどうしても難しいんですよ。ゲイルの穴が魅力的なばっかりに……」

「そ、そうか?そんなに魅力的か?えへへ」

「今の、全く褒めてませんからね。そういう訳で、僕ら二人でカインスタ火山に出向いて稼いで来ようと思います。分け前はゲイルの分も含めてキッチリ三等分。一ヶ月程で帰ってきます」

「え〜、なんか俺だけ怠け者みたいだなぁ……それにちょっと長くね?もうちょっと短くても……」

「いえ、この機会に本気で稼ぐつもりです。帰ってきたらまた四六時中犯しますからね」

「え、あ、う、うん……♥」

「おい、やっぱゲイルも連れて行こうぜ。ゲイル、離れる、オレ、ツライ」

「なんでカタコトになってるんですか。散々話し合いましたよね。ゲイルが近くにいるだけで絶対同じことになります。今回は脇目も振らずに金を稼ぎましょう」

「うう……ゲイル……つらい……抱きしめてくれ……」

「はいはい、よしよし。でもなパトリック、俺への気持ちを打ち明けたからって、その行動はちょっとキモいからな?」

「行為のときはかなり攻めなのに、甘えたがりでもあるんですよねぇ、このクソ童貞(元)」

「そうだサイモン、冒険の準備にも金はいるだろ。俺の服売っぱらおうぜ。結構な金になるだろ」

「ダメダメダメダメ!!!絶対ダメ!ぜ〜〜〜〜ったいダメ!」

「お、おう……お前のそういうところも、やっぱキモいよ」

「コホン。まぁ、とにかく、僕らは明日の昼にはここを発ちますんで、申し訳ありませんがゲイルはゲイルで暮らしていて下さい。ゲイルの魔法ならばどこでも引っ張りだこでしょう」

「どーかな。火力役ってのはどのパーティでも必ず一人はいるからなぁ。まぁなんとかやるわ。俺も素人じゃねえし。それと、ホラよ」

「ん?なんですかこの袋。お金?」

「俺の金だよ。準備金は必要だろ。使えよ。あと俺の分け前も三等分はいらねえよ。俺の方でも何か稼いどくから。そっちもしっかり稼いでこいや」

「ゲイル……ありがとう。使わせて貰います。それと……」

「ん?なんだよ」

「ぼ、僕も抱きしめて下さい」

「ぷっ、ほら、おいで」

「うう……ゲイル……僕だって本当は辛いです……」

「はいはい。俺もお前らと離れるのは辛いよ」

「うう……離れてる間、神父とセックスするなとは言いませんけど、ほどほどにして下さい……」

「わ、わかってるよ」

「……ふう。もう大丈夫です。じゃあ僕らはもう寝ますね」

「なんだ?今晩はヤらないのか?」

「ヤりたいですけど、体力は残しておきたいですから」

「……俺はやる!今晩で出し尽くす!ゲイルぅ!」

「ええ!?パトリック!?今日は我慢しようって言い出したの貴方でしょう!?」

「あんっ♥ もう♥ ひゃっ♥ サイモンはっ♥ んっ♥ いいのか?♥」

「……僕もヤります!」

「ふふっ、おいで♥」

 

 ゲイルは、妖艶でありつつも母のような笑みで二人を迎え入れ、その晩も激しく愛し合い、子宮とアナルに何度も子種を注ぎ込まれた。

 

 

…………

 次の日、ゲイルは正午前に目が覚めた。

 出発には少し早い時間だったが、二人は既に発った後のようだ。

 昨晩出された精液がまだ体内に残っている感触がして、身体が火照ってきてしまう。

 この一ヶ月間、ずっと二人の若い男(+たまにたくましい老人)の性欲を一身に受け、それまで以上にセックス漬けにされたゲイルは、これからしばらく二人のいない日々に一抹の寂しさを感じる。

 しかしいつまでもボケッとしている訳にはいかない。サイモンに渡した金以外にもちゃんと手持ちは残してあるが、今日明日の食事で綺麗に消える程度しかない。宿の金は事前にまとめて払っておいたのが功を奏した。

 とりあえず数日間森に篭もってそれなりの金を稼いでおこう。あそこならば最悪自給自足も不可能ではない。十分な安全マージンを徹底すればソロでも問題ないだろう。多少余裕が出来たらギルドで臨時メンバー募集の張り紙でも確認することにしよう。

 そう考え、ゲイルはいそいそと身体を拭いて、新調した装備に着替えるのだった。

 



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14 新たな獲物

 

 "ドラゴンコック"は、最近この街へやってきたナイト級の4人パーティだ。

 42歳の槍使いバイエルをリーダーに、少年が三人。剣士のオルドー(14)、斧使いのライゼン(14)、ヒーラー兼バッファーのセジル(16)という前衛に偏ったパーティだ。

 最年長であり一線を退いたバイエルが十代の少年たちを育成中のパーティである。

 この街へ来たのは、例の森へ挑戦する為だ。今まで彼らが活動していた場所と比べれば、難易度は跳ね上がるが稼ぎも跳ね上がる。

 それと同時に、今までほぼゴリ押しで勝ち続け、天狗になった少年たちに、現実の厳しさを教えてやろうというバイエルの考えだ。

 

「よし、キャンプは張ったな。これから森に入る。もう日が傾き始めているから様子見だけだ。今回ワシは基本的に手出しをしない。お前らの力だけでなんとか切り抜けてみろ。撤退のタイミングをよく考えろよ」

「あ?それオレらに言ってんの?オレらリーダーと違って才能あるんで」

「撤退?そんな文字知らねッスわ。強者であるオレたちには必要ない文字ッスね」

「オレらにかかればヨユーッスよ、ヨユー。ま、御老体は休んでなって」

 

 少年たちは調子に乗りまくりだ。バイエルは過去ルーク級パーティ所属の経験があるが、少年たちはそれを知らず、四十過ぎてもナイト級から上がれない中年だと思い込んでいる。彼が今ナイト級に甘んじているのも、全て少年たち育成の為だ。

 バイエルは内心で嗤う。

 これも勉強だ。悪く思うなよ、と。

 

 それから三十分後。

 少年たちは、130cmほどの人型の木にボコられていた。

 

「ちょ!バフバブバブバフ!バフ切れた!はやく!」

「セジル!ヒール!イッテ!クオラァ!イッテェ!はやく!」

「うるせぇ!こっちに!敵が!来てんだよ!壁ぇ!しっかり働けや!クソ!」

「だからまず俺ら前衛立て直すんだよ!」

「ならぁ!まずぅ!こいつも!引き受けろや!」

「あーー!!しぬ!しぬ!はよ!ヒールはよ!」

 

 森のモンスターはとにかくタフなタイプが多い。

 この小さな木人は、形が人型をしているだけで急所のような箇所はなく、生半可な攻撃はすぐ再生され、一匹に手間取っているとどんどん追い込まれていく。

 とはいえ、少年たちの実力でも、全員で一匹ずつ確実に処理していけばここまで追い込まれる事はなかっただろう。

 だが図に乗った少年たちは、見た目だけで取るに足らない雑魚と判断し、散開して各個撃破を狙った。

 結果がこのザマである。

 後方で一部始終を観察していたバイエルはほくそ笑む。

 予定通りだ。これで少年たちも大分頭と肝が冷えただろう。そろそろ助けてやる頃合いかと思い、武器を構える。

 

 その時である。

 その場にいる全員が、冷気を感じた。

 ただの涼しい風などではない。身体の芯から冷えていくような冷気にゾクリと身震いする。

 少年たちが闇雲に振り回していた武器が、モンスターを粉々に砕いた。

 ありえない。今まで刃がめり込むだけだったというのに。

 よく見ればモンスターに白い霜がついている。全身が凍りついているのだ。

 いつ、どの瞬間に凍りついたのか。目の前にいた少年たちですら解らなかった。

 

「攻撃!考えるな!畳み込め!」

 

 森の奥から声がかかる。若い女の声だ。薄暗くて人影は確認できないが、青白い魔法の光が二つ見える。

 指示を出された少年たちの行動は素早かった。

 真っ先にセジル周辺の敵を倒し、セジルは即座に回復とバフを振る舞う。そして凍りついたモンスターを順次撃破していく。後衛のセジルもメイスを持って攻撃に参加する。雑魚の掃討ならば彼らは得意なのだ。

 すべてのモンスターが粉々に砕かれると、森の奥から人が歩いてきた。

 

「キミたちにここはまだちょっと早かったんじゃないかな〜?危なくなったら逃げることも覚えなきゃ、簡単に死ぬよ?」

「ウッヒョ」

「マブい……」

「ほんげー」

 

 奥から現れたのは、大きなとんがり帽子にマントを羽織ったキャスターの女だ。

 それだけならば比較的よく見る魔術師の出で立ちだが、それ以外の服装が独特だった。

 二の腕まである長手袋。手の甲部分には丸いクリスタルが取り付けられている。

 胴体はレオタードとミニスカート。レオタードは身体にピッタリと張り付いてヘソの窪みが浮かび上がり、膨らんだ胸、くびれた腰、安産型の尻のエロティックなボディラインを強調すると共に、腰からカットされたきわどいハイレグが超ミニのスカートの中へ伸びていっている。

 上にも下にも短すぎる超ミニスカートが歩く度にひらひらと揺れ、レオタードが収束していっている魅惑の股間がギリギリで見え隠れし、男の劣情を駆り立てる。

 鋭いハイレグによって腰の素肌が露わになり、薄っすらと骨盤が浮かぶ。

 下腹部にはレオタードの脇から紫色の紋様が覗いており、妖艶な雰囲気を増加させている。

 その下は太ももまであるオーバーニーソックス。ミニスカートとオーバーニーソックスの間に、ごくわずかの白い肌が見え、何故かそこに目を奪われる。

 ブーツはふくらはぎまでの編み込みで、少しヒールが高く、すらっとした脚を更に長く見せている。

 すべて黒、紺、茶をメインの色とし、白いツタが絡みつくような模様で統一されている。どれも安くない素材であり、その作りもしっかりとしつらえてある。ただデザインだけの衣装ではない。

 冒険の為の実用性を考慮しつつ、最大限にセクシーさを重視した特注の装備である。

 それら全身の装備とは違い、片手にはごく一般的な安めのショートソードを持ち、完全にミスマッチな大きなカバンを背負っているが、少年たちはそういった見たくない部分は意識の外へ放り出すタイプだ。

 帽子から覗く顔は、茶色のショートボブに紫色の瞳。身体はしっかりと成熟した女でありながら、その顔立ちは少し幼さが残る。

 少年たちはその女のエロティックな出で立ちと美貌に見惚れ、挨拶すら忘れ固まってしまった。

 そこに遅れてやってきたバイエルが声をかける。

 

「済まない、お嬢ちゃん。本来ならばワシが出向くべき所に手間を掛けさせてしまったな。ワシの名はバイエル。こいつらはワシのパーティメンバーだ」

「ウッ……バイエル……」

「はて、以前お会いしたことがありましたかな?」

「あ〜〜……違います。噂で少し。お会いできて光栄です。もしかして逆に邪魔をしてしまいました?」

「おっと、その話はご内密に。今はただのナイト級のオッサンだ。助太刀も的確なものだったよ。ありがとう。お名前を聞かせて貰ってもいいかね?」

「う……い……る……る、イラーナ。ぉ私の名前はイラーナです。よろしく、バイエルさん」

「ああ、よろしく。お嬢ちゃん」

 

 二人はギュッと握手をする。

 

「セジルでっす!担当は支援魔法!お姉さんと同じキャスターでっす!やっぱ同じタイプはお互い語り合える事があると思うんだ!よろしく!」

「ああうん、よろしく。でも私は火力特化で、支援魔法は一切出来ないんだ。悪いね」

「ふおおおおお手ぇやわらけぇ!」

「あっ!てめ!おっオレはオルドー!剣士!お姉さんも剣使うんだろ!?お互い語り合える事があると思う!よろしく!」

「ふふふ、よろしく。残念ながらこれは凍らせた敵を砕くためだけの物で、剣の腕はからっきしなんだ。昔はもう少しマシだったんだけどね」

「クンクン……はぁ……いい匂いがする……」

「拙者、ライゼンと申します。斧による一撃必殺を得意とします。以後お見知りおきを」

「てめ、くっせえキャラ作ってんじゃねえよ!」

「ふふ、よろしく。さっきの木人も一撃必殺出来てればもっとカッコよかったよ」

「はあ……手ぇちっさ……かわいい……結婚して下さい」

「あっ!何言ってんだ!ずっけぇ!オレも!」

「バッカテッメ!順番ってもんがあるだろ!手は握ったから次は一本のポッティーを両端から食べ合うんだ!結婚はその後!」

「そそそそそそんなのエッチすぎるだろぉ!女の人の前で何てこと言ってんだよ!」

「変態かよてめえ!ごめんなさいこいつが!しっかり言い聞かせておくんで!」

「責任を取ります!結婚しましょう!」

「あ!お前まで!オレもオレも!結婚して下さい!」

「う〜ん、キング級になったら考えてあげる」

 

 三人の頭の中で、イラーナと共に数々の冒険を繰り広げ、旅の中で親睦を深め、キング級となり世界中の称賛を浴びながら二人が結ばれるストーリーが作られる。

 

「うおおおおおお!」

「ああで……こうで……よし!」

「これが運命(さだめ)と言うものか」

「あまりこいつらをからかわないで貰えるかい。ところでお嬢ちゃんは一人かね?」

「ええ。もう日も暮れるんで、適当な場所でキャンプしようかと」

「帰還しないのかい?ソロで野宿を?大きなお世話かもしれんが、ワシらのキャンプに来んかね。ソロでは身体も休まらんだろう。何、あいつらに不埒な真似はさせんよ」

「……いいのですか?なら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」

「うっし!」

「やった!」

「ナイス!リーダーナイス!」

 

 そうして、ズボンにテントを張った四人の男は、自分たちのキャンプに女を招いたのだった。

 男たちはほくそ笑む。新たな獲物がかかったと、期待に股間を膨らませる。

 果たして、"かかった獲物"は本当に女の方なのだろうか。

 男たちは上機嫌でキャンプへ女を案内する。

 招き入れた者が、蝶などではなく、蜘蛛である事などつゆ知らず。

 



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15 それぞれの思惑

少年たちの会話部分は、作者自身も一人一人誰がどのセリフを喋っているか、なんて考えてません。


 

 少年たちは食事の用意をしている。

 イラーナが手伝いを申し出ると、「お姉さんはゆっくりしてて!!」と追い返されるのだ。ならば代わりに食材だけでも提供しようと言う事で、立派なキノコと鹿肉が追加される事となった。

 とはいえ、調理法は洗って切って即席スープの素と一緒に煮込むだけだが。

 しかし今日はお客様がいる。お客様が特定の条件に合う場合、いつもの調理に一手間加えるのがこのパーティの習わしだ。

 お客様が若い女性の場合に限り、一手間を。

 少年たちが料理をする間、バイエルはイラーナと談笑という名の監視をする。

 

「おい、やるのか」

「やるしかないでしょ、あんな上玉」

「リーダーから合図があったよ。十番使えって。ガチだな」

「うっわ、十番かよ。えっぐ。まぁあんな美人に使わずしていつ使うんだって話だよな」

「あー、俺も十番使ってお姉さん犯したいなぁ」

「ヌリヌリ。この椀な。間違えるなよ」

「はあ、お姉さんもリーダーの毒牙に掛かっちゃうのかぁ」

「ああ、オレの嫁が中古に……」

「あ?誰が誰の嫁だって?」

「夢くらい好きに語らせろよ」

「オレは中古でもいい……むしろ経験豊富な方がなんか興奮する」

「うっわ理解できねえ」

「でもあの格好だぜ?もう経験済みだろ」

「そうだよな……勃ってきた」

「バカッ!イラーナはそんな女じゃない!」

「なんで呼び捨てなんだよ」

「うるせえ!イラーナは清らかで純粋な女なんだよ!まだ処女に決まってんだ!」

「うわ、必死すぎ」

「どっちにしろその処女もリーダーが食っちまうわけだが」

「あ〜〜〜〜……イラーナ……逃げて……オレと一緒に……」

「リーダーの後だとガバガバなんだよなぁ」

「てめえが粗チンなだけだろ」

「んだとてめぇ」

「やめろよ。俺らもう同じ穴で繋がった兄弟だろ」

「それが一番腹立つわ」

「その言い回しやめてくんない?なんか寒気がする」

 

「このキノコ……お姉さん、知っててやってるよな、これ。わざとだよな」

「なんだよおい、キノコ持ってでっかいチンポとか言うなよ」

「ちげえよバカ。このキノコ、精力増強効果あるんだよ。クッソ強力な」

「なに!?キノコだけにか!」

「え、じゃあ、これをくれたって事は……」

「つまり、オレたちと熱い夜を過ごすため……」

「バカッ!イラーナはそんな女じゃない!」

「うわ、まただよ」

「うるせえ!イラーナは清らかで純粋な女なんだよ!このキノコは偶然今日の獲物だっただけ!」

「まぁそう考えても不自然ではねえな。実際クッソ高価だし」

「そんな高えの?こんなのが」

「これ一房で俺らの稼ぎ二週間分ってとこだ」

「はぁ!?こんなのが!?」

「それだけ貴重なんだよ。森の奥地は大人数は行動しにくいし、こいつ自身もかなり強い」

「強い?ちっせぇキノコじゃん。いや、あんな木人にやられたオレらが言える事じゃねえけど」

「このキノコ、獣系のモンスターに寄生して凶暴化させんの。討伐にはビショップ級五人以上必要って昔どっかで聞いたわ」

「……お姉さん、何者?」

「……低く見てもルーク級の実力があるのは間違いないね」

「……やめたほうがよくね?そんな人、敵に回したくねえんだけど」

「でももう皿にヤク塗ったし……リーダーもヤル気満々だし」

「なんだよ、今更怖気づいたのか?オレはヤるぞ。ナイト級でしかないオレが、遥か高みに居る女を組み伏せて犯せれるとかクッソ興奮するし」

「いや、気持ちは解るんだけどさ、今日の魔法思い出せよ」

「あの凍結魔法?そりゃ見事ではあったけどさぁ」

「バッカテメェ。あの女はな、あの混戦の中で敵とオレらを精密に選り分けて、敵だけを凍結させたんだぞ」

「……更に言うと、いつ魔法が発動して、どの瞬間に凍りついたのかさっぱりわかんねえ」

「どちらにしても怒らせたらカチンコチンポが粉々だ」

「ゾゾゾ……お、オレイチ抜け」

「ニ抜け」

「サン抜け」

「ど、どうすんだよ。リーダーはチンポおっ勃ててお姉さんと楽しく談笑中だぞ。死なねえかなアイツ」

「まかせろ。ワタシにいい考えがある」

「嫌な予感しかしねえ」

「全部リーダーのせいにしちまえばいいんだよ。オレらの椀に睡眠薬を塗りたくれ。そうすりゃ怪しまれるのはリーダーだけだ」

「ウッヒョ冴えてるぅ」

「いいか?目が冷めても知らぬ存ぜぬを貫くんだぞ。オレらは何もしていない。全てリーダー一人がやった事。いいな?」

「ラジャ」

「了解」

「よし、行くぞ」

「みんな〜ごはんができたわよ〜」

「キャラ作ってんじゃねえよ!」

 

 

 大きめの鍋で作られた具沢山のスープ、というよりも雑多な食材のポトフ的な料理をバイエルが椀によそっていく。

 

「ささ、お嬢ちゃん。簡単なもので申し訳ないが、こんな適当な調理でもなかなか美味いもんだよ」

「わぁ、いい匂いですね。頂きます」

 

 全員に椀が行き渡った事を確認すると、イラーナは盛られたポトフ(?)を食べ始める。全員がその光景を注目し、しっかりと嚥下したことを確認するとバイエルは満足そうに微笑んだ。

 調理中、イラーナはバイエルと談笑していながらも、魔法を利用した聞き耳によって少年たちの会話をしっかり聞いていた。

 四人の男から代わる代わる犯される事を期待していただけに少年たちの選択にはガッカリだが、男はもう一人いる。せっかくヤる気になっているのだ。思惑通りガッツリ犯して貰おう。

 早くペニスをぶち込まれたい。思いっきり奥を突かれ、子宮口をこじ開けられ、その中に熱い精液を注がれたい。イラーナは期待感で下腹部が疼いてくる。

 愛液が奥から湧きあがり、レオタードの股間にシミが出来る。

 心なしか、身体が火照ってきた。椀に塗ったというクスリの影響だろうか。どんな快楽をもたらしてくれるのか楽しみだ。

 そんなことを考えながらも顔にはおくびにも出さず、イラーナは男たちと楽しそうに談笑をする。こんな罠を仕掛けなくとも、誘ってくれれば即座にそのチンポを咥え込んであげるのに。イラーナの気がはやる。

 

 その内、少年たちがバタバタと昏倒した。調理中に話していた睡眠薬だろう。

 

「えっ!?ど、どうしたの!?」

 

 何も知らない風を装って驚き、少年の一人を抱き起こそうとしてやる。一応体温脈拍その他を観察してみたが、本当にただ眠っているだけのようだ。

 バイエルも少年の一人の眼や呼吸を見ている。

 

「ふうむ、眠っているだけのようだな。今更だが、一応この食事ももう食うのはやめておこう。まぁこの三人だけが眠りこけるってことは、たぶんこいつら自身が何かやらかしたんだろう」

 

 バイエルは知ってか知らずか、そのような事を口にする。実際のところバイエルは少年たちが昏倒した経緯は知らない。だが基本的にはどうでもいいと思っている。面倒は見てやっているが、どうせ見習い。代わりなどいくらでも調達できる。死ぬならそこまでの人間よ。バイエルはそういう人間だ。

 少年たちを担いでテントに寝かせ、イラーナとバイエルの二人で見張りをしながら茶を飲む。

 

「面目ない。まさかこんな事になろうとは。あいつらは後できつく叱っておく」

「まあまあ、本当に彼ら自身に問題があったと確定した訳ではありませんし」

「眠くなったらいつでも寝てもらって構わない。ワシは一晩くらい大丈夫だ」

「バイエルさんもちゃんと休みましょう。起こしてくれれば交代しますよ」

「つくづく面目ない。甘えさせて貰うとしよう」

 

 それっきり会話もなく茶を飲む。

 イラーナは身体が火照って行くのを感じる。この茶もそういう効能のものかも知れない。彼はヤる気なのだ。ならば雰囲気を盛り上げてやろう。

 そう判断して、イラーナはマントと帽子を外す。

 マントに隠されていた白い素肌の肩が現れる。

 見えにくかった豊満な胸がプルンと揺れて存在感を主張する。

 

「はあっ」

 

 少しわざとらしく、熱っぽい吐息を漏らす。

 腰を反って伸びをし、自分でも自身のあるボディラインを見せつける。

 超ミニのスカートから股間がギリギリ見えるか見えないかの絶妙な角度を保つ。

 バイエルの視線を感じる。匂いで勃起している事までわかる。

 

 イラーナは姿勢を変え、膝を立てて体育座りになり、上気した顔で熱い視線を送る。

 バイエルの視線が、今までスカートに隠されていたそこに集中する。

 レオタードが食い込み、一本のスジが出来ている。バイエルがよくよく目を凝らすと、一部分だけ布地の色が濃くなっている。丁度蜜壺の入り口が、うっすらと。

 

「ど・こ・を・見・て・る・の?ふふっ」

 

 赤い顔で扇情的な視線を送るイラーナ。その瞳と下腹部のタトゥーが紫色に妖しく光る。

 バイエルの肉欲に火がつく。目の前の女を犯したい欲望がムラムラと湧いてくる。

 

「ねえ……見てるだけでいいの?」

 

 イラーナは体育座りから、少しずつ股を開いていく。

 魅惑の部位が徐々に露わになっていく。

 きわどいハイレグ。肌とレオタードの境界。股関節の付け根。ほんのり盛り上がった恥丘。そしてスジのような食い込み。

 布一枚で隠された秘所がバイエルの眼に映る。バイエルが思ったとおり、股間のその部分にはシミが出来ていた。その奥から滲み出す液によって。男のモノをそこに挿入する為の準備がなされているのだ。

 バイエルのペニスは既にズボンの中で硬く怒張している。女のそこへ挿入する為に。

 

「格好からそうだとは思っていたが、やはり淫乱だったのだな」

「えっちな女は嫌い?」

「大歓迎だ。お嬢ちゃんのような美人に迫られて嫌がる男などおらんよ」

「ふふっ、ありがと」

 

 そう言ってバイエルはイラーナの隣に移動すると、腰抱いて自分の方へ引き寄せる。



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16 バイエル・一

 

 そう言ってバイエルはイラーナの隣に移動すると、腰抱いて自分の方へ引き寄せる。

 そのまま手を下腹部へ移動し、ねっとりとした手付きでヘソの周りを撫で回す。撫でながらその手は股間へ伝っていき、レオタードに出来たシミを二本の指で押し込む。

 穴の入り口を刺激され、甘い快感がイラーナに走り、奥からじゅわりと愛液が溢れシミが一層大きくなる。

 

「ひゃっ♥ んもうっ♥」

「もう濡れてるじゃないか。そんなに期待してたのかね?」

「あんっ♥ うんっ♥ もっとして♥」

 

 イラーナはバイエルにしなだれ掛かり、テントが張られたズボンの股間を撫でる。ベルトに手を掛け、中のイチモツを開放しようとする。隣にいるだけで、バイエルから漂うオスの匂いに疼いてくる。

 バイエルはレオタードの縁からその内側へ手を入れ、下腹部の肌を直に撫で回す。ゾクゾクとした快感がイラーナに走り、あられもない声が漏れる。バイエルはレオタードを強く引っ張り上げ、股間へきつく食い込ませる。また愛液がじゅっと滲み出し、股間部分全体に愛液が染み込んでしまう。

 

「あっ♥ はんっ♥」

 

 イラーナは股を大きく開き、腰を浮かせて愛撫を催促する。ベルトに手を掛けているが、股間に食い込んでくるレオタードで感じてしまって、思うようにベルトを解けない。

 

 イラーナは異変を感じる。ただレオタードが食い込むだけで頭が痺れるほどの快感に襲われる。

 それにやけに息が荒くなる。身体が熱い。じっとりと汗が湧いてくる。いつもより心臓の鼓動が大きく聞こえる。バイエルから漂うオスの匂いに頭がクラクラする。

 そして何よりも、身体の疼きが止まらない。どんどん大きな疼きとなっていく。下腹部の中が切なくてたまらない。男のモノを呼んでいる。

 ついさっきまで頭を痺れさせていたレオタードの食い込みが、今や疼きを加速させるだけの物足りないものとなってきた。

 膣が、下腹部の中が切ない。

 入れて。いじって。ほじって。突き刺して。

 切なさを満たして欲しい。

 

「はんっ♥ ねえっ♥ ゆびっ♥ いれてっ♥ なかが切ないの♥」

「本当に淫乱のお嬢ちゃんだな。よしよし。こうか!」

「んくうううっ♥」

 

 レオタードが開放されたかと思うと、唐突に二本の指を秘所に突き入れられ、快楽の奔流がイラーナの脳髄を襲う。ただ指が入っただけでビクビクと痙攣して絶頂してしまった。

 じゅっぷじゅっぷとバイエルの指が秘所を出入りする。その度にイラーナは絶頂し、ビクンビクンと身体を痙攣させる。

 

「んぐううっ♥ ふぐううっ♥ んふううっ♥」

 

 バイエルは二本の指で、膣の中を広げたり、膣壁を掻き回したり、弱点の場所が解るとそこを激しく攻め立てたりして、イラーナに快感を与え続ける。

 イラーナはただ指で膣内を掻き回されるだけでイキ狂い、良いように弄ばれてしまう。

 

「はぐうううっ♥ んくうううっ♥」

 

 そうしてひとしきり絶頂を味わわせると、バイエルは唐突に指を引き抜く。

 息も絶え絶えなイラーナは、絶頂の余韻にぐったりするが、すぐにまた身体の疼きがやってくる。

 

「はあっ♥ はあんっ♥ んうっ♥ ねっねえ、やめないで♥ もっといじって♥」

「お嬢ちゃん、ワシのモノも気持ちよくしてくれんかね」

 

 バイエルは自分でベルトを外し、その怒張したペニスをさらけ出す。

 強烈なオスの匂いに、イラーナはその匂いだけで甘イキしてしまう。

 

「んんっ♥ んくうっ♥」

「さ、お嬢ちゃん。まずは舐めてくれよ」

「はっ♥ はあっ♥ なっなめるっ♥ なめるからっ♥ いじって♥」

「ハハハ、よしよし、上手くできたらご褒美をあげるよ」

 

 イラーナはバイエルの股間の前でしゃがみこみ、そのペニスにむしゃぶりつく。

 バイエルは上機嫌だ。思い描いた通りに事が運んでいる。イラーナには早くも快楽依存の兆候が現れている。完全にクスリがキマっているのだ。今この女は快感が欲しくて欲しくてたまらない状態だ。これからキメセクの味と、誰がそれをもたらしてくれるかをしっかり教え込む。そうしたら専用の性奴隷の完成だ。

 興奮でペニスがギンギンに勃起する。だが挿入はもう少し我慢。感じる快楽が強烈なほど、それを与えてくれた存在を大きく感じるのだ。

 イラーナはぺろぺろちゅぱちゅぱと亀頭を舐めている。さあ教育してやろう。

 レオタードからくっきり浮き出でた乳首をつまみ、捻り上げる

 

「んぐうううっ♥」

 

 クスリで敏感になっているイラーナは、それだけで腰を反らせて絶頂に達し、ペニスから口を離してしまう。だらしなくトロけた顔でバイエルの股間にくたりとへたりこむ。

 

「お嬢ちゃん、もっと奥まで突っ込んでしゃぶってくれ」

「はあっ♥ ちくびっ♥ きもちよくてっ♥ いっ、イッちゃったっ♥」

「上手く出来たらこいつをおまんこにぶち込んでやるからよ」

「はっ♥ あはっ♥ こっこれがっ♥ わたしのなかにっ♥ んくっ♥」

「チンポだ。チンポ。そしてお前のそこはおまんこだ。言ってみろ」

「ち、ちんぽっ♥ ちんぽほしいっ♥ おまんこにっ♥」

「よしよし、よく言えたな。ご褒美だ。そらっ」

 

 バイエルはまたイラーナの乳首をひねり上げる。

 

「ひぐうううっ♥」

「さあフェラチオを再開しよう。上手にできたらちゃんとおまんこいじってやるよ」

「はっ♥ はっ♥ はあっ♥ じゅぷぷっ♥ くぽっ♥ じゅるるるるっ♥」

「おっ、いいぞ。そのチンポの形をよーく覚えろ。お前のおまんこの中に入るチンポの形だ」

「んふっ♥ じゅるるるっ♥ れろれろれろっ♥ じゅぷぷぷっ♥」

 

 イラーナはペニスを喉まで咥え込んで夢中でフェラチオをする。自らの快楽の為、喜んでバイエルに奉仕をする。

 バイエルは座ったままで足をイラーナの真下まで動かし、濡れそぼった股間につま先を押し付ける。レオタードの股間部分はもうビチャビチャになっており、押すと水を吸ったスポンジのように愛液が滴った。

 

「んぐっ♥」

「そのままフェラチオを続けろ。ご褒美だ。足でいじってやる」

 

 フェラチオの最中唐突に与えられた快感に、イラーナは一瞬むせそうになる。ご褒美という快楽に嬉しさがこみ上げ、更に熱を上げてペニスを咥え込む。

 

「じゅぷっ♥ じゅぷぷっ♥ くぽっ♥ んぐっ♥ じゅるるっ♥ れろれろっ♥ んくうっ♥」

「いいぞ。上手いじゃないか。それがワシのチンポだ。お前を気持ちよくするチンポだ。しっかり覚えろ」

 

 ペニスを喉まで咥え込みながら、つま先が与えてくる快感に悶える。イラーナはフェラチオをしながら腰を振って、股間をつま先に擦り付けるようになる。

 

「じゅるるるっ♥ くぽっ♥ くぽっ♥ んはっ♥ じゅぷぷっ♥ んくっ♥ れろれろっ♥」

 

 愛おしそうにペニスをしゃぶり、喉奥まで迎え入れて男を悦ばせ、腰をクイクイと振って男のつま先でオナニーをする。まさしく淫乱の姿だ。

 

「もう出そうだ。いいか。まだ飲み込むなよ。口の中に精液を貯めろ。こぼすなよ」

「んっ♥ んふっ♥ くぽっ♥ くぽっ♥ じゅるるるるるっ♥」

「そうだ、いいぞ。くうっ!出るぞ!」

 

 その瞬間、射精と同時にバイエルはイラーナの乳首を思いっきりひねって弾く。

 

「んぐッッッ♥!?♥♥♥!?」

 

 乳首から脳へ快感の電撃がほとばしり、口の中にドピュドピュと精液が流し込まれる。絶頂にビクビクと身体が震えるが、イラーナは言いつけ通り咥え込んだペニスだけは決して放さず、しっかりと口の中で精液を溜め込んだ。

 頭の中が精液の匂いで一杯になる。それだけで子宮が疼き、愛液が溢れてくる。

 

「よーし、いい子だ。口を開けて見せてみろ」

 

 イラーナは口を開け、中の精液を見せる。栗の花の香りがあたりに漂う。

 

「よしよし、偉いぞ。まだ飲み込むな。口の中でワシの精液をよーく味わえ。ご褒美をやる。立て」

 

 ご褒美の言葉に期待感がこみ上げ、子宮がキュンキュンと疼いてくる。

 バイエルは、立ち上がったイラーナのレオタードをずらして秘所を露わにし、二本の指で女性器を開く。イラーナの胸が高鳴り、愛液が垂れてくる。

 ムアッと漂うメスの匂い。ピンク色のほとんど未経験にも思える粘膜。ペニスを誘ってヒクヒクと物欲しそうに震える蜜壺。

 バイエルはもう片方の手の二本の指を真っすぐ伸ばし、その魅惑の穴の真下で停止させた。

 

「お前がそれを飲み込んだら、この指をお前のおまんこにぶち込んでやる。いつでも飲んでいいぞ」

 

 それを聞いて、イラーナの秘所から流れる愛液の量が増える。白く粘っこい本気汁が奥から溢れ出し、秘所からそのまま真下へ糸を引いて滴り、バイエルの指にかかる。

 またあの快感がくる。おまんこに指が入って、中をいじってくれる。指が、バイエルの太い指が、穴のすぐそこに用意されてる。もうすぐ味わえる。

 膝が震えてくる。鼻息が荒くなる。呼吸の度に香る精液の匂いに頭がとろけてくる。秘所がヒクヒクと催促する。

 一刻も早く膣に、おまんこに指をぶち込まれ、中をいじって貰いたいのに、期待感だけで先程から甘イキしてしまって嚥下できない。

 

「遅いぞ。カウントダウンだ。ゼロで飲み込め。5、4」



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17 バイエル・二

 

「遅いぞ。カウントダウンだ。ゼロで飲み込め。5、4」

 

 バイエルの有無を言わさぬ命令に、イラーナの緊張が高まる。

 

「3」

 

 鼓動が早くなる。

 

「2」

 

 愛液が滴る。

 

「1」

 

 舌の上の精液を奥の方へ送る。

 

「0」

「ゴクッ」

 

 じゅぷっ♥

 

「ふぐううううううっ♥♥♥ んーっ♥♥♥ んーっ♥♥♥ んぐううううううっ♥♥♥ あぐっ♥♥♥ んぐっ♥♥♥」

 

 指を突き立てられ、強烈な絶頂の嵐がイラーナの脳を駆け巡る。

 上体を弓なりに反らせ、腰はガクガクと痙攣し、涙を流して絶頂する。

 クスリによる感度の上昇、精液を飲み込む興奮と鼻孔にこびりつくその匂い、焦らされ火照った身体、そして大きな期待感による自己暗示。それらの相乗効果によって想像を絶する快感がイラーナの中で巻き起こる。

 先程の手マン絶頂によって、バイエルの指がどれほどの快感を与えてくれるのかをしっかり植え付けられたイラーナは、ただバイエルの指が膣に入っているだけでも快感が想起されて、それがまた次の絶頂を呼び起こす。

 プシャッと潮まで吹き、涙とよだれでどろどろのあられもない顔をさらす。膝がガクガクと震えて立っていられず、バイエルの腕に縋り付く。

 腰砕けなイラーナに、バイエルは指を更に突き入れて、膣の中から強引に腰を持ち上げる。深く突き刺さった指が今まで届かなかった膣の奥を刺激する。

 

「んっぐううううっ♥♥♥」

 

 イラーナはまた身体をビクビク震わせて激しく絶頂する。

 それでご褒美は終わりなようで、もう指が引き抜かれていく。

 膣は指を逃さまいとチュウチュウと吸い付いて引き止めるが、存分に濡れそぼり、何も引っかかりのない指を止めることはできない。

 ちゅぼっ♥と淫らな音を立て、湯気を立てたべとべとの指が膣から出てくる。

 

「はうううっ♥ んくっ♥ はぐっ♥ はあああっ♥」

 

 指が引き抜かれてもイラーナの絶頂は続き、荒い息で地面にへたり込みむとそのまま倒れ込み、ビクビクと痙攣する。

 イラーナは今もイキ続けているにも関わらず、もう下腹部の奥が切なさを訴え、疼いてくる。まだ足りない。もっといじって欲しい。もはやイラーナは、自分の身体の異変を冷静に見つめることが出来ない。ただ疼きを満たしたい。バイエルに満たしてもらいたい。それだけが頭の中を占める。

 ついにイラーナは、自分の指を秘所に入れてオナニーを始める。

 

「あふっ♥ あっ♥ はんっ♥ んくっ♥」

 

 ちゅぷちゅぷと秘所から指が出入りする。しかしイラーナの指は細く、バイエルほど奥にも届かない。もどかしい快感だけがイラーナの中に蓄積していく。

 

「おっおねがいっ♥ ゆびっ♥ いれてっ♥ いじってっ♥ おっおねがいいっ♥」

「お嬢ちゃん、指でいいのかい?」

「あっ♥ はっ♥ ゆびっ♥ ねえっ♥ いじって♥ たりないの♥ わたしのゆびじゃっ♥ たりないのっ♥」

「お嬢ちゃんが指でいいのなら良いけどよ」

 

 イラーナのおでこに勃起したペニスがベチリと当てられる。鈴口から漏れ出た先走りがおでことペニスに糸の橋をかける。

 むせ返るほどのオスの香り。ペニスに残る精液の匂いがイラーナの頭をトロけさせる。

 

「ほら、こいつじゃなくていいのか?」

「はっ♥ はっ♥ ちっ、ちんぽっ♥ れろっ♥ ぺろぺろ♥」

 

 イラーナはすぐさまペニスを舐め始める。バイエルからいじって貰いたい一心で。

 

「違う違う。こいつをおまんこに入れたくはないのかい?」

「あっ♥ はっ♥ おまんこにっ♥ ちんぽっ♥」

「そうだ。チンポをマンコに入れるんだ。指よりも太くて、指よりも長いだろ?」

「ゆっゆびよりながいっ♥ ふといっ♥」

「指よりも奥に届く」

「おっおくうっ♥ はうううっ♥」

「カリが中を引っ掻くぞ」

「うくっ♥ ううっ♥」

「どうする?指がいいか?」

「ちんぽっ♥ ちんぽがいいっ♥ ちんぽくださいっ♥」

「よしよし。素直だな。可愛いぞ。じゃあ、どこに、何を、どうして欲しいか、ちゃんと言って、おねだりしろ。そしたらご褒美だ」

「あっ♥ あはあっ♥ おっおまんこっ♥ おまんこにっ♥ あなたのおちんぽをっ♥ いっいれてっ♥ いれてくださいっ♥」

「入れるだけでいいのか?」

「うごかしてっ♥ おっおくにいれてっ♥ たくさんっ♥ おまんこのなかっ♥ じゅぽじゅぽってっ♥ してくださいっ♥」

「よーし、良く出来たな。どこに入れて欲しいんだ。広げてよく見せてみろ」

「ここっ♥ ここにいれて♥ はうっ♥ ちんぽいれてっ♥」

 

 イラーナは地面に仰向けになったまま、その秘所を広げて見せる。

 その蜜壺はアツアツに火照り、ヒクヒク、クパクパとペニスを欲しがって、だらだらとヨダレを垂らしている。

 元々勃起していたバイエルのペニスが更にギンギンに怒張し、先走りがトロリと垂れる。

 

「はっ♥ はっ♥ はやくっ♥ はやくいれてっ♥」

「すっかり出来上がっておるね。完全に男を悦ばせる為だけの穴になってるな」

 

 イラーナの秘所にペニスが添えられる。穴の入り口がちゅっちゅっと吸い付き、中へ誘おうとしてくる。

 望み通り、じゅぷっ♥と亀頭がその穴に侵入する。

 

「ひゃうううっ♥ きたっ♥ ちんぽきたっ♥ もっとっ♥ もっとおくっ♥ きてっ♥」

「おっと残念」

 

 そしてじゅぷりっ♥とすぐに引き抜かれる。

 

「ああああっ♥ なんで♥ おねっおねがいっ♥ いれてっ♥ ちんぽっ♥ ちょうだいっ♥」

「いやあ、どうしようかなあ」

「おっおねがいしますっ♥ おねがいしますうっ♥ ああああっ♥ くださいっ♥ ちんぽくださいっ♥」

「ハハハ、じゃあ中出ししていいかい?」

「はっ♥ はあっ♥ な、なかっなかだしっ♥」

「そう、中出しだ。ワシとお前の子供を作る行為だ。だがワシは責任をとるつもりはない。どうする?」

「にっにんしんっ♥ はうっ♥」

「そうだ。妊娠だ。もちろん射精は一回で終わりじゃない。何度も何度も中出しする。あつーい精子を一番奥に、何度も出す」

「ああっ♥ なっなんどもっ♥ なかだしっ♥」

「そうだ。このチンポをおまんこの一番奥へ入れて、ワシの子種をお前の子宮へ、この胎の中へ注ぎ込む」

「ふああっ♥ おっおくにっ♥ せーし♥」

「お前の一番ふかーい所に、熱い精子がドクドク注がれるんだ。指よりも気持ちよくて何度も何度もイクぞ」

「んくううっ♥ ゆっゆびよりもっ♥ イクっ♥ イきたいっ♥」

「そうしてこの奥の子宮で、ワシの精子とお前の卵子が合体して、ワシらの子供が出来るんだ。この胎の中でな」

「ふああああっ♥」

「子供が出来たら冒険者も続けられないな。働くことすらできなくなるかもしれん。でもワシは知らんよ。金も出さないし一切関わらない。それでもやるかい?」

「あうっ♥ あうううっ♥」

「どうする?ワシはどっちでもいいぞ。嫌ならやめよう。セックスももう終わりだ。ワシは寝させてもらおうかな」

「だめぇっ♥ やっ、やるっ♥ にんしんっ♥ してもいいっ♥ だからっ♥ いれてっ♥ ちんぽいれてっ♥ せーしっなかだししてっ♥」

「よーし!確かに聞いたぞ!ご褒美だ!ぶち込んでやる!」

 

 バイエルはヤクキメ調教の成功を確信する。この女は堕ちた。あとは仕上げだけだ。

 イラーナはバイエルに命令され、仰向けで尻を高く掲げまんぐり返しをし、その真上からペニスを当てがわれる。

 

 バイエルから命令をされ、それを素直に聞いてしまう自分に、イラーナは全く疑問を感じない。それどころか、自ら進んで奉仕したい欲求まで湧きつつある。

 この欲求を満たしてくれるバイエルの為ならば。

 気持ちいいご褒美をくれるバイエルの為ならば。

 そんな願望すら湧いてくる不自然さを、イラーナはもう自覚出来ない。

 

 イラーナの眼の前には、今にもヴァギナに突き刺さりそうなペニス。この体勢だとペニスが入っていく様子も、出てくる様子もしっかり見える。下腹部の奥がキュンキュンと期待と切なさを訴えてくる。はやくはやくと急かせてくる。

 

「さあ今からワシのチンポがお前のおまんこに入るぞ。よく見ておけ」

「はああっ♥ くるっ♥ ちんぽくるっ♥ はっはやくっ♥ はやくっ♥」

 

 穴の入り口が吸盤のように亀頭に吸い付く。イラーナの腹筋から下腹部にかけての筋肉までもがヒクヒクと震え、ペニスの到来を心待ちにしている。

 

「そりゃああ!」

「んっぐうううううううッッッ♥♥♥」

 

 怒張したペニスがついにイラーナのヴァギナに挿入される。一気に最奥まで入り込み、子宮口にぐっと押し付けられる。

 イラーナは、先程の指と負けず劣らずの激しい絶頂を迎え、挿入されたペニスをキュウっと締め付ける。

 

「どうだ!チンポの味は!うまいか!ワシのチンポの形をおまんこでしっかり覚えろ!」

「んぐううッ♥♥♥ んんーッ♥♥♥ はうううううッ♥♥♥ んっ♥ んっ♥ んーッ♥♥♥」

 

 イラーナの中で絶頂が嵐のように暴れまわる。まんぐり返しの姿勢のままビクビクと身体が震え、足の指がぎゅっと締められる。

 激しい絶頂の中でも、イラーナはバイエルの言いつけ通り自らのヴァギナに挿入されたペニスをじっと見つめ、膣で感じるペニスの形をしっかり覚え込もうとする。



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18 バイエル・三

 イラーナの中で絶頂が嵐のように暴れまわる。まんぐり返しの姿勢のままビクビクと身体が震え、足の指がぎゅっと締められる。

 激しい絶頂の中でも、イラーナはバイエルの言いつけ通り自らのヴァギナに挿入されたペニスをじっと見つめ、膣で感じるペニスの形をしっかり覚え込もうとする。

 入り口から子宮口に押し付けられるまでの長さ、膣を押し広げる太さ、反り具合、亀頭の大きさ、カリの高さ、硬さ、そして熱さ。眼の前で自らの秘所にずっぽりとハマり込んだ男のイチモツをよく味わう。

 膣がキュウキュウクネクネヒクヒクとうごめいて、そのペニスの味を、形を、感触を、与えられる快感を、しっかりと記憶していく。

 バイエルのペニスが最上の快楽を与えてくれるものとして、強く深く意識に植え付けられていく。胸の中でバイエルの存在がこの上なく愛しくなっていく。

 絶頂の嵐は収まっても、中でペニスが少し動かされただけで電撃が走るような快感に襲われてしまう。

 

「んくうううっ♥ はうああああっ♥」

「よーく覚えろ。これがお前に最も快感を与えるチンポの形だ」

 

 下腹部の中でピクリピクリとペニスが動き、体重をかけてねっとりと子宮口を捏ねられ、またあっけなく絶頂する。

 バイエルのペニスを覚えていく程に、そのペニスを咥え込んだヴァギナが熱くたぎってくる。眼の前で愛しい人のペニスが自分の中にずっぽりと収まっている。

 今まさに愛しい人と交尾をしていると思うと歓喜が溢れ、甘イキが止まらない。

 愛しさに呼応して膣がうごめく。

 その反りに、太さに、長さに、カリに、ぴったり適合する形状へ。愛しい人のためだけの、愛しいペニス専用の蜜壺へと変化し、名実ともにバイエルの言葉を実現させる。

 勿論、最高の快感を得るのはイラーナだけではない。

 

「くおおおっ!すげえ……最高だぜお前」

「ひううっ♥ はっ♥ はっ♥ はうううっ♥」

 

 バイエルから褒められ、イラーナの胸の内が暖かくなっていく。もっと褒めて貰いたい。もっと尽くしたい。イラーナの愛情が高まっていく。

 

「動くぞ。すぐ出ちまいそうだが、それだけイってりゃ問題ないな」

 

 そう言うとバイエルは腰を上げていく。

 イラーナの眼の前で、自分の中から愛しいペニスが出ていってしまう。

 カリが膣壁を引っかく快感と共に、中を満たしていた愛しい肉棒が引き抜かれ、切なさが押し寄せてくる。

 もっと入れていて欲しい。もっと重なり合っていたい。そんな欲求がイラーナに湧き上がる。

 

「ふあっ♥ あっ♥ あっ♥ でてくるっ♥」

 

 愛液でヌラヌラと光るペニスが亀頭を残して姿を表す。これが先程まで自分の中に入っていたと思うと、また中が疼いて仕方ない。

 そしてまたイラーナの中にずぶずぶと沈んでいく。膣壁をかき分け、愛しいペニスが自らの中へ入っていく。激しい快感と共に切なさが満たされていき、喜びに変わっていく感覚にイラーナは打ち震える。

 

「んくうううっ♥ うあっ♥ んぐっ♥」

 

 最奥まで到達し、子宮口にみっちりとキスをされ、再度ペニスとヴァギナが、突起と穴がぴったりと噛み合う。

 イキっぱなしのイラーナに最高の幸福感までが加わる。

 

「くうっ!なんだこのマンコ……やべえ……」

 

 バイエルが驚嘆の声を上げる。たった一往復で射精感が込み上げてきたのだ。数多くの女を同じ手口で犯してきたバイエルだが、ここまでの快感、幸福感まで感じる女は初めてだ。

 超高価な十番のクスリを使って正解だったとバイエルは思う。この女はもう自分の虜、自分のモノに間違いない。そう思うと更に射精感が増してきた。じっくり犯したかったがそうも言ってられないようだ。

 バイエルはペニスにぐっと力を込めると、ピストンを再開する。先程のようなゆっくりではない。本気のピストンだ。

 じゅぽっ♥じゅぽっ♥っと淫らな音を立てて、ペニスがヴァギナの中を出たり入ったりする。

 イラーナはずっとイキまくっており、悲鳴の様な嬌声を上げて悦んでいる。

 ピストンの度に熱い粘膜が絡みつき、極上の快感がペニスを襲う。

 何よりも、奥まで挿入しきった時の、ぴったりと完全にハマった感触がこの上なく心地よく、気を抜いたらそれだけで射精してしまいそうだ。

 じゅぽっ♥じゅぽっ♥と最高のコキ穴をギリギリまで堪能する。

 ほんの数往復だけで限界が訪れ、イラーナを完全にメス奴隷にする最後の仕上げが昇ってくる。

 

「出るぞぉ!精子が出るぞ!子宮で味わえ!」

「んんーッ♥ んふーッ♥」

 

 バイエルは宣言通り引き抜く気などなく、更に体重をかけて子宮口を圧迫し、その奥へペニスをねじ込む。イキ狂ってゆるくなった子宮口に亀頭がムチュウっと押し込まれ、その門をこじ開ける。

 そしてめり込んだ先端から、子宮へ直接熱い精液が発射される。

 

「うあ゛あ゛あ゛あ゛ッ♥♥♥ あ゛あ゛あ゛ッ♥♥♥」

 

 どぷどぷと子宮に注ぎ込まれる精液に、イラーナの絶頂は止まらない。膣がキュウキュウとペニスを締め付け、全身が小刻みにビクビクと震える。頭の奥に快感と幸福がなだれ込み、身体の自由を奪う。

 下腹部の中が熱い精液で満たされていく。薬を盛られ、良いように犯されているにも関わらず、バイエルが愛しくて愛しくてたまらない。

 

「あ゛あ゛あ゛っ♥ うあ゛っ♥ うあ゛っ♥ あああああっ♥」

 

 胎の中に注がれていく精液がわかる。子宮の中に溜まっていく量がはっきりわかる。快感もさることながら、真に愛しい人からの種付け射精の歓喜を初めて実感する。

 イラーナの記憶のあらゆる物事が過去のモノへと錆びついていき、バイエルの存在が唯一無二の愛する者として刻まれていく。

 自分の幸せはここにあった。

 バイエルとの出会いに感謝しかない。

 最愛の人に抱かれ、最愛の人の子種を注がれ、性行為の本当の心地よさを、女としての幸せを知ったのだ。

 感極まって涙まで出てくる。

 イクことしか出来ない身体に鞭を打ち、まんぐり返しの姿勢から足を下ろし、バイエルの腰へ足を絡める。そしてバイエルの首へ腕を回し、その唇にキスをする。

 

「ちゅるっ♥ ちゅぱっ♥ ちゅるるるっ♥ ちゅっ♥」

 

 バイエルの口の中へ舌を入れ、熱烈に舐め回す。

 イラーナの最奥で射精を続けるペニスがビクンビクンと跳ねる。

 熱烈なキスと抱擁に、バイエルの興奮も更に高まる。完全に自分の女となったいう実感がバイエルを昂ぶらせる。

 しっかりと腰にしがみつき、深く繋がり合ったイラーナの下腹部の中で、ビュクビュク、ビクビク、ドクドクとペニスが脈動する。

 バイエルは純粋にこの女を孕ませたいと思い始める。

 責任を取るつもりはさらさら無いが、プレイの一環でも、責任回避の言質でもなく、一匹のオスとしてこのメスを孕ませたい。本能がそれを欲している。

 ペニスは萎えない。むしろ明確な子作りの欲求にみなぎってくる。

 ムラムラと湧いてくる本能に身を任せ、まだ尿道に残る精液も気にせず、バイエルはピストンを再開する。

 

「ふうっ!ふうっ!はあっ!はあっ!出してやるぞ!もっと出してやる!」

「あぐっ♥ んぐっ♥ まっれっ♥ はうっ♥ せーしっ♥ まらっ♥」

 

 イラーナの静止の声も聞かず、腰を打ち付ける。

 今度のピストンは快楽を貪るためでも、イラーナを堕とすためでもない。

 ただ種付けのためのピストン。自分の子種をこの女の子宮に注ぎ込み、孕ますためのピストンだ。

 ぼちゅっ♥ぼちゅっ♥っと乱暴にペニスが抽送される。イラーナへの気遣いなど一切ない。

 完全に独りよがりのセックス。だがそれでもイラーナは快感を感じ、バイエルから激しく求められている事に歓喜する。

 また精液を注いでもらえる。種付けしてもらえる。

 それを察しただけで、イラーナの子宮はすぐにキュンキュンと子種を欲しだす。

 イラーナのヴァギナがバイエルのペニスをしごく。亀頭に、裏筋に、ペニス全体に、甘美な刺激を与える。

 すぐさま精液が上がってきた。イラーナは射精前のペニスの脈動をその蜜壺でしっかり察知し、頭の中が種付け射精の事でいっぱいになる。

 

「くっ!イクぞ!二度目の種付けだ!」

「んぐっ♥ くるっ♥ せーしくるっ♥ おくっ♥ おくにらしてっ♥」

 

 イラーナはバイエルの腰に足をぎゅっと絡める。

 みっちりと押し付けられた最奥で、子宮口がその口を広げバイエルの亀頭にむしゃぶりつく。

 コリコリとした弾力のある子宮口が亀頭を包み込み、精液の退路を断つ。

 そして熱い精子がイラーナの胎へと注ぎ込まれる。

 震える身体で必死にバイエルをかき抱き、下腹部の中へドクドクと注入さる快楽がイラーナを連続絶頂へ追い込む。

 

「んっくうううっ♥ せーしっ♥ なからしっ♥ イクッ♥ イックううううううっ♥」

「ふうううっ!まだ出るぞ!しっかり孕め!」

 

 イラーナはギュッとバイエルにしがみつき、もっと奥にペニスを、もっと奥に子種を迎えようとする。バイエルは射精に合わせてペニスをグッと押し込んで奥へ子種を注ぎ込む。

 バイエルは責任など考えず容赦なく種付け射精を行い、イラーナは嬉しそうにそれを子宮で迎え入れる。

 

「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ♥ なかぁっ♥ でてるうっ♥」

 

 イラーナの思考が歓喜に染め上げられ、連続絶頂に拍車をかける。

 亀頭を咥え込んだ子宮口が更に快感を与えて精液を搾り、子宮へ誘う。

 

「あ゛あ゛あ゛っ♥ あうううっ♥ あうっ♥ んうっ♥ うくううっ♥」

 

 バイエルは、フェラも含めて都合三度目の射精というのに驚くほど大量の精液を存分に種付けしながら、バイエルの身体を強く抱きしめて中出しの歓喜に震えるイラーナの様子にほくそ笑む。

 

 イラーナに盛った十番のクスリはただの媚薬などではない。このクスリは強い依存性を植え付ける禁薬。薬物そのものへの依存でなく、効果中に受けた体験に強い執着と依存性を植え付けるものだ。

 特にセックス、とりわけ絶頂体験との相性は凶悪であり、一度植え付けられたが最後、クスリが抜けた後でも植え付けられた執着と依存は消えず、以後はクスリを使わずとも、同じ条件下で絶頂する度に執着は強くなっていく。

 それがクスリの影響と知っていようとも抗えない。絶頂の度に擦り込みは深くなり、深く擦り込まれた記憶が快感を想起してまた絶頂を呼ぶことで加速度的に依存度が増していく。

 そしていつしか身も心も完全に依存し、尽くす事に至上の喜びを感じるようになるのだ。

 他にも、感度上昇、軽微の知能低下、酩酊感などを引き起こす薬物を配合しており、前述の効果をサポートする。

 勿論欠点もある。依存対象が性行為そのものや、特定の体位などになってしまっては、ただ誰にでも股を開く売女になって終わりだ。快感を与えた人間を依存対象としてしっかり認識させねばらならない。

 その点も完璧にハマった実感をバイエルは感じている。

 六回。このクスリを使って六回絶頂させれば、もはやそれ無しでは生きていけないほどの執着が植え付けられると言われる。

 この女の絶頂回数は六回どころではない。手マンでも十回はくだらなく、チンポを入れてからはずっとイキっぱなしだ。

 もう明日から、バイエルの顔を見るだけで濡れ始め、尽くす事に喜びを感じ、どんな命令でも従うだろう。例えそれが、理性が忌避する命令だったとしても、彼女はもうそれを拒めない。迷いつつも必ず実行する。それほど深くハマった実感がある。

 そして更に何度も何度もイかせ、バイエルに完全に依存させる。心の底から愛するようになるのだ。

 

 イラーナを犯しまくる日々の始まりに顔がニヤけてくる。

 顔もいい。身体もいい。冒険者としての腕まであるときた。利用法はいくらでもある。

 まずはこの魅力的な身体を隅々まで堪能しよう。飽きたら客を取らせるのも良い。いや、そんな事しなくともガキ共と組ませれば十分稼ぐことができる。こいつを抱くのはワシ一人だけでいい。この女はワシだけのものだ。

 バイエルはもう感情を隠す気がなく、だらしない皮算用のニヤケ顔を晒す。

 精子は出し切ったがまだペニスは衰えない。夕飯のキノコのせいだろうか。

 好都合だ。このまま攻め立て、しっかり刻みつけよう。絶頂の余韻に浸っているところ悪いが、まだまだ何度でもイキ狂って、堕ちて貰う。

 そう考え、イラーナの子宮に再度ペニスを突き立てる。

 



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19 バイエル・四

 精子は出し切ったがまだペニスは衰えない。夕飯のキノコのせいだろうか。

 好都合だ。このまま攻め立て、しっかり刻みつけよう。絶頂の余韻に浸っているところ悪いが、まだまだ何度でもイキ狂って、堕ちて貰う。

 そう考え、イラーナの子宮に再度ペニスを突き立てる。

 

「はうんっ♥」

 

 その時だ。

 子宮にめり込んだペニスの鈴口から、細長い何かがつるりと尿道に侵入した。

 

「うぬぅっ!?」

 

 尿道を逆流する何かの感触が、強烈な快感となってバイエルに襲いかかる。

 細長い何かはあっという間に睾丸にまで流れ込み、嬉しそうに中でビチビチと跳ね回る。

 バイエルの脳裏に警鐘が鳴り響く。何をされた!?体内に入り込んだ!?何が!?ヤバイ!ここには切り落とす以外の対処法がない!この女、なんだ!?

 

「ぐうっ!?きさっ!何をっ!」

「はあっ♥ んはあっ♥ ね〜え♥ もっと楽しもう?」

 

 バイエルは咄嗟に離れようとしたが、腰に絡まった足がそれを許さない。

 イラーナの瞳とタトゥーが妖しく光る。膣がうねりペニスを刺激する。何かが侵入した睾丸がビクビクと震え、熱くなってくる。バイエルの頭の奥が痺れる。

 バイエルが危機感を抱いたのはほん短い時間だけだった。何もかもが遅かったのだ。奥底からグツグツと湧きあがる肉欲に飲まれ、バイエルの理性が吹っ飛ぶ。

 イラーナに突き刺さったままのペニスが限界を超えてビキビキと勃起し、イラーナの膣を広げる。

 

「んふうっ♥ すてき♥ もっと犯して♥ もっと出して♥」

「グフウーッ!フウーッ!」

 

 肉欲に支配されたバイエルが乱暴にペニスをピストンする。子宮口を突き上げては引き抜き、突き上げては引き抜きを繰り返し、獣のような交尾をする。

 

「ひうっ♥ あぐっ♥ はうっ♥ ああっ♥ すごいっ♥ このちんぽもっ♥ すきっ♥」

「フウッ!フウッ!ウグウ〜〜ッ!」

「んくううううっ♥ でてるうっ♥ どぷどぷでてるっ♥ はううっ♥」

 

 今のバイエルには、セックスを楽しむために我慢をするという意識はない。

 出したくなったら即座に出す。本能の赴くまま、最奥に突き入れ、先端を子宮へめり込ませて注ぎ込む。

 そしてまた極上の穴を犯す。

 

「ハアッ!ハアッ!フグッ!フグッ!フグッ!」

「あぐっ♥ んぐうっ♥ そうっ♥ もっと♥ もっと激しくっ♥」

 

 理性を飛ばされたバイエルは怒張したペニスを何度も何度も打ち付け、そしてイラーナの最奥で種付け射精をする。

 

「イクッ♥ あぐっ♥ なからしっ♥ はんっ♥ なからしすきっ♥ んっくううううっ♥」

 

 射精の度に、睾丸から精液と共に細長い何かが子宮へ舞い戻り、射精が終わると新たな何かが尿道を通ってバイエルの睾丸に侵入を果たす。

 バイエルは理性を飛ばされながらも、尿道を何かが駆け巡る快感にすっかり病みつきになり、ピストンの度に射精する。そしてまた尿道を犯される。

 だがその快楽も長くは続かなかった。

 勃起の強制、理性のない交尾、度重なる射精。それら異形がもたらす強引な手法に、バイエルの体力も限界となる。

 もはや精液はほとんど出ず、異形がペニスの中を行き来するだけの射精をして、バイエルは気絶した。

 

「はあ〜〜っ♥」

 

 イラーナことゲイルは、意識を無くしたバイエルを気にする様子もなく、身体を転がして無理やり騎乗位になると、自分の下腹部を愛おしそうに撫でる。胎の中では新鮮な精子がグルグルと廻り、未だ怒張したままのペニスで栓をされている。

 潤んだ瞳、トロけた顔で、ゲイルは下腹部の中にあるペニスと精子が与えてくるたまらない幸福感に浸る。

 クイクイと腰を押し付け、膣内のペニスをもっと深く咥え込み、膣を押し広げて子宮にめり込む感触に酔いしれる。

 半日ぶりのセックスと中出しに身体中が悦び震えている。

 睡眠中すら犯され続けたこの一ヶ月間、ゲイルの体内に精液が入っていなかった時間の方が短い。今やゲイルにとって、精液が体内に注がれた状態が普通なのだ。

 

 刻印はあれから更に成長し、ツタは茨のように変化し、左右へ伸びて真後ろの尻で絡み合い、下腹部には枝分かれした茨があたかも卵管と卵巣のようなカーブと渦を描いている。

 刻印は見た目こそ下半身だけに留まっているが、その侵食は今や全身に至り、そして脳にまで及んでいる。

 

 ゲイルはもはや人間ではない。

 乗っ取られたのではない。操られてもいない。人だった頃の意識も記憶もしっかり残っている。

 そもそも、この寄生体に自我や意識と言う物はない。あるのは寄生生物としての本能だけだ。

 ゲイルはその類稀なる魔法の才能を発揮し、この寄生体と刻印を解析し、完全に支配下に置く事に成功したのだ。

 全身隅々まで、脳に至るまでの侵食も、ゲイル自身の意図によって成されたものである。

 ゲイルはもはや、人でも寄生生物でもない。

 二つが融合した、新たな種となったのだ。

 

 ゲイルの望みは変わっていない。

 もっと快楽を。もっと気持ちいい性行を。もっと精液を。

 そういう意味では、バイエルとのセックスはとても刺激的だった。

 

「あっぶねー。マジでクスリに飲まれるところだったわぁ。このクスリ、ヤッバいなぁ。こんなの普通の人じゃ抗えねえわ。今でもバイエルが愛しく思えるもん。でも、そっかぁ、ガチで好きになるってこういう感覚なんだなぁ。あいつらが帰ってきたらこれ使ってヤりたいなぁ」

 

 そう呟いて、ゲイルは気絶したバイエルを抱えてテントに寝かせ、心拍体温等の安否を確認すると、一度だけキスをして離れた。 

 そして、その隣で眠りこける少年たちを見て舌なめずりをするのだった。



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 ┣ 番外 バイエルルート・一

 

 翌朝、ゲイルはバイエルの腕の中で目覚めた。

 隣で寝息を立てているバイエルを見て、ゲイルは自然と笑みが漏れる。

 バイエルの香りに包まれ、昨夜の情事が思い起こされる。

 その指が、そのペニスが、バイエルが与えてくれた快感が想起され、目覚めたばかりだと言うのに股間が疼き、湿ってきてしまった。

 欲しい。またいじられたい。

 ペニスをこの中へ迎え入れたい。

 目一杯乱暴にピストンされて、奥に射精して欲しい。

 ゲイルの欲望が膨れ上がり、胸の中はバイエルのことだけで占められていく。

 そこでふと異変に感づく。

 

 なんだこの感情は。

 不自然すぎる。

 あいつらにすら、ここまで強い感情は持っていないというのに。

 なぜ?

 いつから?

 まさか薬物のせい?

 そんなはずはない。

 あらゆる毒物に対しての対処はしっかり準備していたはずだ。

 まさか……

 

 ゲイルの記憶に、それに該当するクスリがたった一つだけある。

 禁薬中の禁薬。

 所持していることが発覚しただけで牢獄行きは確定。

 人の精神を捻じ曲げる悪魔の秘薬。

 それを使われたのだ。間違いない。

 

 まさかバイエルがそんなものまで所持し、ここで使ってくるとは思いもよらなかった。

 警戒が足りなかった。

 ゲイルの顔に焦りの色が見え始める。

 セックスは好きだが、一人の男にいいように弄ばれるなど御免だ。

 今もバイエルを見るだけで胸が高鳴り、下腹部が疼いてきてしまう。

 クスリの効果を自覚して、その強さを実感する。

 こんなものが数年前まで合法だったなど驚きだ。

 王家や貴族に対して使用される危険性を考えれば、禁薬指定も納得である。

 それが今、自分の身体を蝕んでいる。

 今すぐここを離れなければ。

 もうバイエルに関わってはいけない。

 これ以上の進行は絶対に避けねばならない。

 徹底的に逃げ、なんとしてでもこの効能を消す方法を探すのだ。

 

 そうしてゲイルは、物音一つ立たてずに彼らのキャンプを発った。

 バイエルから離れる事の胸の苦しみを、クスリのせいと言い聞かせて。

 

 

……

「リーダー、お姉さんどこにもいないっすよ」

 

「逃げられちまってるじゃないすかぁ。十番まで使って」

 

「リーダーヘタクソだったんじゃないすか?」

 

「そうかそうか。いないか。まぁいいだろ。こういうこともある」

 

「そんなぁ。リーダーのおこぼれにありつけるかもって思ってたのに」

 

「朝からボッキボキなんですけど?」

 

「くんくん……お姉さんの残り香がある気がする……」

 

「お前らは勝手に眠りこけただろうが。そんなチキンどもにおこぼれなどない」

 

「ぐう」

 

 目覚めたらイラーナが消えていたことに、少年たちは露骨に落胆した。

 だがバイエルは一人余裕の表情でニヤニヤ笑っている。

 バイエルは確信に近い自信を持っている。

 クスリの効果に。

 昨夜の情事に。

 その条件付けに。

 逃げたからと言って焦る必要などない。もはや手遅れなのだ。

 逃げると言う事は、つまりクスリの効果がしっかり現れている証拠。

 即座に逃げなければならないと感じるほどの危機感、焦燥感を抱いたという事。

 むしろあの状態から自らの異変を自覚して逃げおおせた精神力は賞賛に値する。

 バイエルのイラーナに対する評価が更に上がり、ペニスがいきり立つ。

 

 もう逃げられんぞ。結末は既に決定しており、後は早いか遅いかの違いしかないのだ。

 禁薬を持っていることを告げ口される?

 別の街へ逃げられる?

 甘い甘い。

 この禁薬による会心の条件付けがキマったのだ。

 気を強く持てば乗り越えられる領域などとっくに超えている。

 こちらはゆっくりと後を追い、追い詰め、そしてしっかりと再教育を施してやろう。

 次は逃げるという発想そのものを無くすほどに。

 さあ、楽しい楽しいキツネ狩りの始まりだ。

 

 

…………

「今日も良かったよ、イラーナちゃん。また指名するから」

 

「んふふ、ありがと。待ってるね」

 

 バイエルから逃げて一週間後。

 イラーナことゲイルは、拠点から馬車で二日ほどの街で娼婦として働いている。

 路銀が尽きたのだ。

 この街の周囲にはまともに稼げるモンスターは出没せず、金を稼ぐ手段として最も手っ取り早いのが娼婦だった。

 ゲイルとて、ルーク級冒険者としてのプライドと、身体を売る仕事への忌避感があったが、背に腹は代えられない。

 というのも最初のうちだけだった。

 一度仕事として行為をしてしまえばその忌避感とプライドも吹き飛び、今や楽しんで客と肌を重ねている。

 客からの評判も上々だ。

 だが、ゲイルの気分は晴れない。

 

 珍しいことに、この店は避妊具の装着を徹底している。

 破ったことが発覚すれば、嬢は即刻クビ、客は数ヶ月間出禁な為、ゲイルからこっそり持ちかけてもそれに乗る客にはまだ当たっていない。

 客は常連が多く、中出しの魅力は惜しいが、それよりも出禁のほうが辛いと経験則で知っているのだ。

 期待の新人イラーナ嬢に辞めて欲しくないからという客もいる。

 かくして、ゲイルはこの一週間一度もナカで精子を受けれず、悶々としているのだ。

 

 それは嘘ではない。

 嘘ではないが、本当の憂鬱の原因はもっと別の事だ。

 

「はあ……」

 

 ゲイルは待機室に戻り、椅子に座ってため息をつく。

 セックスは楽しい。気持ちいい。客とのセックスでも何度も絶頂している。

 それは間違いないはずなのに、やはり中出しをして貰わないとイマイチ満足できない。もちろんそんな素振り、客の前ではおくびにも出さないが。

 セックスをしていると、どうしてもあの日のバイエルとの行為が脳裏にチラついてしまう。

 あの時の、あの強烈な快感が忘れられない。

 客に秘所をいじられても、バイエルの指ほどではない。

 どれだけ立派なペニスも、バイエルのおチンポには敵わない。

 どのようなプレイをしていても、あの時の情事と比較してしまい、物足りないと感じてしまう。

 気がつけばまたバイエルの事を思い出し、身体が火照り、奥が疼いてくる。

 

「はあっ、はあっ」

 

 切ない。この欲求を満たして欲しい。

 机に突っ伏し、頭の中があの人のことでいっぱいになっていく。

 あのたくましい腕、たくましい身体、太い指、そしておチンポ。

 あの時のように、ナマでおチンポをブチ込まれて、一番奥で……

 吐息が熱い。

 身体が火照る。

 だらりと垂れ下げた腕が、自然とスカートの中へ入っていき、その秘所に指を這わそうとした、その時。

 

 コンコン!

 ドアのノック音にビクリと身体が震え、ハッと正気に戻る。

 

「イラーナさん、ご指名入りました。準備お願いします」

 

「あ、は、はい!わかりました。ちょっと待ってください」

 

 今私は何をしようとしていた?

 バイエルを思って?

 オナニーを?

 冗談ではない。

 一時の気の迷いだ。

 そう、疲れが溜まっているのだ。

 なにせここに来てから食事と睡眠時以外はずっと客をとっていたのだ。疲れも溜まる。

 拠点の街から離れてしまえばそう簡単には見つかりはしないのに、焦りすぎだ。

 金も十分貯まったことだし、そろそろ別の街へ移ってしばらくゆっくり休養でもとろう。

 あいつらを追いかけて火山へ行くのも悪くないな。

 

 そう気を取り直して、鏡で化粧とワンピースドレスをチェックして問題ないことを確認し、案内役の黒服についていく。

 

「今回のお客様は特別な方なので、失礼のないようにお願いします。まぁイラーナさんなら大丈夫だとは思いますが」

 

「はーい、わかりました」

 

 黒服に案内された部屋の前で注意を受ける。

 はじめてのことだ。

 まぁ、この店で働き始めてまだ数日。どこぞのお貴族様でも来ているのだろう。

 

 コンコン!客が待つ部屋をノックする。

 

「おう、入ってくれ」

 

「失礼いたしまっ!?」

 

 ドアを開けた瞬間、中にいた客に腕を掴まれる。

 そこにいたのは、絶対に会ってはならないあの人。

 

「よお、お嬢ちゃん。逢いたかったぜ」

 

 それはまさしく恋い焦がれたあの人。

 

「た、助け!」

 

「無駄だぜ」

 

 全力で逃げようとするが、バイエルに掴まれた腕はびくともしない。

 後ろからは黒服に背中を押され、無理やり部屋へ入れられた。

 黒服の言葉を思い出す。

 外堀は埋められているのだ。

 

「バ、バイエル……なんで……」

 

「探したぜ、イラーナちゃんよ。いや、ゲイルと呼んだほうがいいか?」

 

 素性がバレている。

 いや、それどころではない。

 

 一週間ぶりに見るバイエルの顔。

 既に下着姿だ。

 掴まれた腕から温もりが伝わってくる。

 胸が高鳴る。

 顔が赤くなっていく。

 漂ってくる彼の体臭に身体が疼きだす。

 

 ゲイルの直感が警鐘を鳴らす。

 クスリの影響はまったく抜けていない。

 それどころか、一週間ぶりの再会に嬉しさすら湧いてきてしまう。

 不味い。

 逃げなければ。

 

「は、離せ!」

 

「おうよ」

 

「ぐっ!?」

 

 力任せに腕を引っ張られ、勢いのまま手を離される。

 一気に部屋の真ん中まで放り込まれてしまった。

 ゲイルはバランスを取り直すとすぐにバイエルから距離を離す。

 部屋の隅の大きなベッドまで離れ、隠し持っていた緊急用のナイフを取り出し構える。

 対してバイエルは余裕の表情で悠々と待ち構えていた。

 

「おお、怖い。そんな物騒な物、しまってくれないか」

 

「なんで、こんなに早くここが……」

 

「あ?ガハハハハ!本気で言っているのか!」

 

「な、なんだよ……」

 

「お嬢ちゃんよ、あの街からここまで、しっかり足跡を残してきてるじゃないか。それこそ、わざとやってるんじゃないかと勘ぐるくらいにな」

 

「う、うそだ……」

 

「嘘なんかじゃねえよ。そもそもだ。なんでわざわざ“イラーナ”なんて名前で働いてんだ。流石にその名前を聞いた時は赤の他人か囮工作かと思ったが、まさかご本人様だとはな」

 

「うっ、ぐ……」

 

 ゲイルにその自覚はない。

 だが、これまでの行動を振り返ると、ゲイルは確かにわざと痕跡を残してるとしか思えない行動をしている。

 

 拠点の街を発つ時、ギルドへ挨拶し、どこへ向かうかを伝えた。他の人にも聞こえるよう、大きな声で。

 道中、馬車を襲ってきた魔物を凍結させ、破壊せずにその場に残してきた。長時間持続させる魔法まで掛けて。

 この街に着いても、あのエロティックな特注装備のまま行動した。見せびらかすように。

 そして今、バイエルも言う通り“イラーナ”と名乗って行動している。

 他にも多数。

 それらの行動は、どう見ても……

 

「誘ってんだろ?ワシを」

 

「ち、違う……そんなつもりは、ない……」

 

「いいや、違わない。お前は求めてんだ。このワシを。心の底でワシを求め、ここまで導いたんだ。お前自身が」

 

 ゲイルの全身に脂汗が流れ、手はカタカタと震える。

 自分自身が信じられなくなる。

 仮にここを逃げられても、この先また自分自身が裏切るかもしれない。

 だが諦める訳にはいかない。

 このままではゲイルの人生はバイエルの都合のいい肉便器なのだ。

 心の何処かで、むしろそれを望んでいる自分を頭を振って追い払う。

 

「迎えに来てやったぞ」

 

「ひうっ」

 

 その言葉がゲイルの心に浸透していく。

 バイエルが、自分を迎えに来てくれた!

 自分の為に、自分だけの為に、ここまで来てくれた!

 こみ上げてくる歓喜を必死で振り払い、震える手でナイフを構え直す。

 

「やれやれ、強情だな」

 

 バイエルはおもむろに下着を脱ぎ、ペニスを露わにした。

 まだ怒張しておらず、ブラリと垂れ下がる。

 

「なっ、何のつもりだ!」

 

「何のつもりも何も、ここは娼館で、おぬしは娼婦、そしてワシは客だ。やることは一つだろう」

 

「帰れ!お前とはやらない!」

 

 言葉とは裏腹に、ゲイルはバイエルのペニスから視線を外せない。

 下腹部がキュウキュウとそれ求めて疼く。

 愛液が溢れ、太ももをツーっと伝っていく。

 今すぐそれにむしゃぶりつきたい欲求に駆られる。

 

「はあっ、はあっ、はあっ、んくっ」

 

「くっくっくっくっく……」

 

 ゲイルのもはや疑いようのない状況に、バイエルは笑みを浮かべる。

 

「さあ、こいつを気持ちよくしてくれよ」

 

 バイエルはじりじりとゲイルを追い詰めていく。

 顔は相変わらず余裕だが、絶対に逃さないという決意がにじみ出ている。

 バイエルもベッドに上がり、ゲイルは完全に部屋の隅へ追い込まれてしまった。

 

「く、くるなくるな!くるなぁ!」

 

 ゲイルは震える手で躍起になってナイフを振り回す。

 技術も何もない、完全に素人の振り回しだ。

 そのナイフが、バイエルの指先をかすめる。

 じわりと血がにじみ出してきた。

 

「あっ、ああぁ……」

 

 ゲイルの顔色が瞬く間に青ざめていく。

 手の震えは更に激しくなり、持っていたナイフが落ちる。

 

 バイエルを傷つけた。

 大切な人を傷つけてしまった。

 自らの手で。

 

 クスリによって捻じ曲げられた価値観が、ゲイルを絶望に落としていく。

 

「ご、ごめ、ごめんなさ……」

 

 咄嗟に出てしまった謝罪の言葉を、ギリギリの理性がせき止める。

 

 何を。

 今何を口走ろうとした。

 謝る?何故。

 どこに謝る必要性がある。

 すべてあの男が原因じゃないか。

 これは全部クスリのせい。

 幻覚みたいなものだ。

 

 そう言い聞かせ、身体と心を奮い立たせる。

 崩れ落ちそうな足に気合を入れてしっかり立ち、憎々しげにバイエルを睨みつけた。

 思いとどまりはしたものの、ゲイルの胸中は未だバイエルを傷つけてしまった罪悪感が渦巻いている。

 

「くっくっくっく……」

 

 当のバイエルは楽しそうに笑い、おもむろにナイフを拾い上げると、真後ろの壁に向かって無造作に投げた。

 それほど強く投げたようには見えなかったが、ストン!とナイフは壁に突き刺さる。

 

「さ、これで武器はなくなった」

 

「くっ……」

 

 完全に追い込まれ、退路を塞ぐように立ちはだかるバイエルが、切られた片手を差し出してくる。

 

「傷を舐めてくれ。優しくな」

 

「そ、そんなこと……」

 

 やるわけ無いだろう。

 続けて言いたかったその言葉は、喉の奥に消えた。

 差し出された手をじっと見つめる。

 ナイフの傷はとても浅い。

 冒険者ですらない一般人でも日常的にある切り傷程度の浅さだ。

 ゲイルはゴクリのつばを飲み込む。

 

 舐めたい。

 自分が傷つけてしまった指を、自分の口で癒やしてあげたい。

 優しく舌を這わし、乾きつつある血を舐め取りたい。

 

 欲求が溢れてくる。

 理性を総動員し、その欲求に抗う。

 

「あ……あう……」

 

 手が顔に近づいてくる。

 身体の震えが止まらない。

 指先が唇に触れた。

 今口を開けば。

 舌を出せば。

 舐めてしまう。

 バイエルの指を。

 

「口を開けな」

 

 バイエルの言葉に、身体が逆らえなかった。

 逆らう事を、拒んだ。

 軽く開かれた口から、バイエルの指が侵入してくる。

 こみ上げてくる歓喜を抑え込むのが精一杯だった。

 

「あっ……あう……ふ……」

 

 噛み切ってやれと理性が訴えるが、身体は言うことを聞いてくれない。

 バイエルの匂いが、味が、頭をとろけさせていく。

 愛しい人の血の味に、身体が火照ってくる。

 脳の奥がピリピリする。

 

 口の中をバイエルの指が優しく愛撫していく。

 舌の上を右に、左に、奥に、先端に。

 奥歯から順に歯をなぞっていき、前歯を通って逆の奥歯まで。

 舌の裏、歯茎、天井。

 指が口の中をねっとりと掻き回していく。

 溢れた唾液が首筋へと伝っていった。

 

「んっ……んく……あふ……」

 

 ゲイルは全く抵抗しない。

 抵抗できない。

 おとなしくされるがままに、バイエルの指を受け入れている。

 ゲイルとて頭ではわかっている。

 

 このままではまずい。

 抗わなければ。

 戦わなければ。

 逃げなければ。

 

 だが動けない。

 バイエルの指が、その愛撫が、あまりにも甘美すぎる。

 抵抗する力が出せない。

 気を抜くと今にもその腕にしがみつき、夢中で舐め回してしまいそうだ。

 頭の奥がビリビリと痺れる。

 秘所がペニスを求めてウズウズする。

 バイエルの味が溶け込んだ唾液をこくりと飲み込むと、身体の芯から熱くなってくる。

 二本の指で舌をつままれると、何故か下腹部に甘い刺激が走る。

 ほんの少ししか開いていなかったはずの口は、いつの間にか大口を開け、バイエルの指を迎え入れていた。

 

「はーっ、はーっ、んっ、はーっ」

 

 ゲイルの顔は朱に染まり、表情はとろけ、息も荒い。

 膝は震え、ワンピースから覗く太ももを愛液が伝っていく。

 完全に発情している。

 他の客には一度として見せなかった、メスの本能がむき出しの顔。

 抵抗一つせず、口の中をされるがままにされ、それに悦びを感じている事に疑いようはなかった。

 

 ゲイルの淫らな顔に、バイエルは満足そうな笑みを浮かべると、その口から指を引き抜いた。

 指と唇の間に唾液の糸が伸び、だらりと垂れる。

 途端にゲイルは胸が締め付けられる思いに駆られる。

 もっとバイエルからいじられたい。

 この甘美な刺激がもっと欲しい。

 湧き上がってくる欲求を頭を振って追いやり、またバイエルを睨む。

 

 ゲイルはまだ諦めていない。

 限りなく小さくなってしまったが、それでも理性の光は消えていない。

 

 まだ自分の意志で舐めていない。

 まだ舌を這わしていない。

 まだ自分は屈していない。

 

 もはや子供の言い訳にしかなっていない理屈。

 それだけが最後に残ったゲイルの理性、プライドだ。

 

 バイエルは、今からそれを折る。

 

 先程まで口の中に入っていた、唾液でぬらぬらと光る指をゲイルの前に突き付け、語りかける。

 

「もう一度言うぞ。傷を舐めてくれ」

 

 二度目の命令。

 ドクンと強く心臓が鳴る。

 従いたい、今すぐバイエルに甘えたい。そんな欲求が湧き上がってくる。

 頭の中がぐるぐるする。

 直感がヤバイと告げている。

 

「ふーっ、ふーっ、ふーっ」

 

 舐めたい。

 

 ……一度くらい。一度くらいなら。

 ダメ。

 それが危険な誘惑だと、わかりきっている。

 今も理解している。

 絶対に従ってはならない。

 意思に反して、どんどんあふれてくる唾液を拭う。

 

「ふうっ、ふうっ、ふうっ」

 

 舐めたい。

 

 ダメだ。堪えなければ。

 もう寸分の余裕もないのだ。

 一度でも受け入れてしまったら、あとは転がり落ちるだけ。

 わかりきっている。

 従ってはならない。

 手だけではなく身体まで震えてきた。

 

「はっ、はっ、はっ、はっ」

 

 舐めたい。

 

 わかってる。

 わかってるけど。

 今の震える身体とぐるぐるまわる頭では何一つ冷静に考えられない。

 冷静に。冷静にならないと。

 その為に、少しだけ。

 ほんの少しだけ、バイエルからの刺激を貰えば。

 それで、今の状態から少しは回復するだろう。

 これはクスリのちょっとした影響なんだ。

 これを鎮めるために、ほんの少しだけ舐めるんだ。

 そうすれば、少し冷静になって、ここから逃げる手を考えられる。

 そう、これは、逃げる為に、必要な、行為。

 決して、屈したわけでも、なめたいわけでもない。

 にげるんだ。

 そして、あいつらに、たすけてもらおう。

 あいつら、ばかだけど、たよりになるし。

 だから……

 

「はふっ、ふう……、はぁ……」

 

 ゲイルは口元を拭うことすら忘れ、だらだらと唾液が滴り自分の手にかかる。

 しかしそれを全く気にかけず、食い入るようにバイエルの指先を見つめ続ける。

 そしてついに、震えながらおすおずと舌を伸ばし、自らその指に舌を近づけていく。

 舌先が指に付いた瞬間、激しい快楽の奔流がゲイルを襲う。

 もうその衝動を抑える事はできなかった。

 

「ひくっ、ぴちゅ、ちゅる、んっ、はう」

 

「くくく……いい子だ」

 

 世界が一瞬にして色づいていく。

 乾いた心が瞬く間に華やいでいく。

 

 自分の意思で奉仕するその指は、今まで以上に甘美で、刺激的で、目頭が熱くなってくる。

 直前に考えていたことはすべて吹っ飛んでしまった。

 そんなことよりも、今この快楽を貪ることのほうがずっと重要だ。

 脳の奥からジクジクと快感が湧いてくる。

 バイエルに頭を撫でられ、幸福が溢れてくる。

 

 今まで何を拒んでいたんだろう。

 温かいものが私の中に流れ込み、満たされていく。

 この人に尽くせることが幸せで。

 この人に撫でて貰える事が幸せで。

 話しかけられるのも、見つめられるのも、彼からの何もかもが幸せで。

 これから抱かれると思うだけでイッてしまいそう。

 この人の為ならばなんだって出来る。

 始まりは仕組まれたものだったかもしれない。

 でも、今のこの気持ちは偽物なんかじゃない。

 この幸せは嘘なんかじゃない。

 やっと気づけた。

 私はこの人を愛している。

 愛しているんだ!

 

 感極まるゲイルの頬を涙が伝っていく。

 果たしてそれは、嬉し涙か、それとも別のものか。

 ゲイル自身にもわからなかった。

 

「はっ、ちゅぱ、れろ、ちゅる、んっ」

 

 ゲイルは指に舌を絡める。

 両手でバイエルの手を包み、愛おしそうにしゃぶりつく。

 傷をいたわるように優しく、性器を悦ばすように淫らに。

 バイエルの指の動きに合わせて舌を動かし、愛撫する。

 

「よし、もういいぞ」

 

「ちゅぽっ……んはあ……」

 

 ゲイルの態度は先程までと打って変わってしおらしく、そして積極的だ。

 視線からは反抗的な色が消え去り、代わりに甘えるような色が加わった。

 バイエルの顔色をうかがうような素振りが見えるのは、今までの態度に後ろめたさを感じているのだろう。

 クスリによる認識の改変が理性を上回ったということだ。

 

 バイエルが破顔する。

 あの日の行為中のゲイルと同じ状態だ。

 もう逃さない。

 今ここできっちり教育する。

 

 ふと、バイエルは試したくなる。

 このゲームは始めからバイエルに有利すぎる。

 ならばゲイルにもチャンスを与えるべきだろう。

 絶対優位を確信しているからこその、バイエルの余裕。

 ベッドの上であぐらをかき、余興を始める。

 

「さあ、どうして欲しい?何でも言ってみろ」

 

「はあ……はあっ……んっ、そ、その」

 

「今までのことは気にしなくていい。今お前が望む事を言え。何でもやってやろう。さあ、どうする?」

 

 これは一種の賭けだ。

 バイエルが一方的に行う賭け。

 バイエルには、ゲイルはもう手遅れであり、虜となっている自信がある。

 だが、もしこれが演技ならば。

 もし理性があるならば。

 バイエルをここまで騙し通す演技ならば、惜しみない称賛を送るべきだろう。

 今この瞬間に、一瞬でも理性を取り戻せるならば、それは素晴らしい精神力だ。

 敗北を認めてもいい。

 ここで拒絶する要求が出来るのならば、バイエルはそれに従うつもりだ。

 今すぐ帰れと言われれば帰ろう。

 今後一切視界に入るなと言われれば、可能な限りそれを守ろう。

 とはいえ、ここまで深くハマってしまったのならば、理性を保ちつづけるほうが地獄だろうが。

 

 バイエルの気まぐれにして、ゲイルの最後のチャンス。

 そして、その返答は。

 

「キス……」

 

「ん?」

 

「キス……して欲しい……ギュッって抱きしめながら、キスして……」

 

「……ふはは」

 

 ゲイルは真っ赤になりながら上目遣いでそう言った。

 賭けの勝利と、ずいぶんと可愛らしい要求に顔が緩む。

 

 これで義理は通した。

 もうチャンスなど与えない。

 堕とす。

 堕としきる。

 家族よりも、仲間よりも、自分の命よりも、尊厳よりも上に、バイエルという存在を刻みつける。

 

「だ、だめ?」

 

 ゲイルは顔色をうかがいつつも、期待たっぷりの視線を送ってくる。

 その視線の先の人間は、ゲイルという一個人の精神を完膚なきまでに書き換えようというのに。

 

「くくく、来な」

 

 バイエルが腕を広げて誘うと、ゲイルは満面の笑みでバイエルに飛び込んだ。

 そしてしっかりと抱き合い、唇を重ねる。

 

「んっ♥ はむっ♥ ちゅる♥ んふ♥」

 

 舌を絡める。

 唾液を交換する。

 呼吸を感じる。

 体温が交わる。

 一つ一つがゲイルの幸福となり胸の中を暖かくしていく。

 もうゲイルの頭の中は、これからの性行為のことでいっぱいだ。

 心の片隅で、トゲのような引っかかりを感じる。

 何か後ろ髪を引かれるような、大事な事を忘れているような感覚がある。

 だが愛する人に抱きしめられ、濃厚にキスを交わす感激の前にはあまりにも無力だった。

 頭の奥がジンジンと痺れ、今まさにバイエルのモノとなっていっている実感がある。

 それすらも嬉しくて、愛しさが溢れてくる。

 夢中でバイエルを抱きしめ、舌を重ね合わせ、唾液をすする。

 

 ゲイルの腹部にピトピトと硬いものが当たる。

 ワンピースの下から内側へ侵入し、抱きしめられると同時に押し付けられている。

 大きくなっている。

 硬くなっている。

 熱くなっている。

 ゲイルの中に入りたいと訴えている。

 自分がバイエルから求められている証に、精神が昂ぶる。

 下腹部はキュンキュンとそれを欲し、秘所からは愛液が溢れてしまう。

 キスを続けながら、ペニスと腹部を擦り合わせる。

 腹に先走りを塗りたくり、ちゅくちゅくと淫らな音を奏でる。

 ゲイルの愛撫に、ペニスがピクピクと反応する。

 それが愛しくてたまらなかった。

 

 バイエルはお返しとばかりに、抱きしめたゲイルの後ろから股の間へ手を回し、下着をかき分け、ゲイルの蜜壺へ指を挿入する。

 

「んくぅん♥」

 

 二本の指がゲイルの膣内をゆっくり描き回す。

 あの時しっかりと覚え込まされた指の挿入に、記憶と身体が反応する。

 たまらず身体が跳ね、唇を離してしまう。

 

「ふあっ♥ はんっ♥ んうっ♥」

 

 バイエルはその唇をすぐに追いかける。

 ゲイルの頭を片腕でしっかり抱きしめ、嬌声を上げるその唇を強引に塞ぎ、舌を捩じ込む。

 

「んーっ♥ んっ♥ んっ♥」

 

 ビクビクとゲイルの身体が跳ねる。

 快楽と幸福の奔流に、ゲイルは身悶える。

 バイエルに身体を預け、されるがままに愛撫を受ける。

 眼は完全にとろけ、身体は脱力し、舌だけは夢中で絡め合う。

 バイエルの指が動く度に、ゲイルの意志とは無関係に腰が跳ねる。

 何度も何度も甘イキさせられ、イク度に頭の奥に電流が走る。

 心のトゲが小さくなり、その分愛しさが膨らんでいく。

 少しずつバイエル専用の自分へと変わっていっている事が嬉しくてたまらない。

 だが、激しい絶頂までは絶対にさせてくれない。

 もどかしい快感がゲイルの中に溜まっていく。

 それも限界を迎えようとした時、バイエルはピタリとキスと愛撫を止めた。

 上と下、両方の口から粘つく液が滴る。

 

「ふう。期待には答えられたか?一目瞭然か。くくく」

 

「はーっ♥ はーっ♥ んっ♥ はーっ♥」

 

 バイエルから解放され、息も絶え絶えにコクコクと頷く。

 

 



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 ┣ 番外 バイエルルート・二

 

 そのままゲイルはベッドへ押し倒される。

 熱い息を吐くバイエルに上から押さえつけられる。

 ついにその時が来たのだと、ゲイルの心臓が高鳴る。

 

 今から犯される。

 客とのお遊戯なんかじゃない。

 本当の性交。

 本当のセックス。

 本当の交尾。

 認めたオスに身体を差し出し、その熱い槍で貫かれ、子種を注ぎ込まれる。

 考えるだけでゾクゾクと甘い快感が走る。

 

 ゲイルは顔を朱に染め、濡れた視線を送りながら股を開く。

 仕事用の、小さな布と紐だけの淫らな下着が、ゲイルのメスの部分だけを隠している。

 いや、まったく隠せていなかった。

 下着はしっとりと濡れて肌に張り付き、硬くなったクリトリスも、熟れた性器も透けて見える。

 張り付いた薄布の向こう側で、ヒクヒクと物欲しそうに痙攣する穴がはっきり見えている。

 

 バイエルの興奮が高まっていく。

 開脚の命令などしていないし、そんな教育もしていない。

 ゲイル自身の思考による行動だ。

 ゲイルの意思で股を開き、バイエルを誘い、求めている。

 犯されたがっている。バイエルに。

 バイエルのペニスが最高潮に大きく硬くなった。

 

 バイエルは、ゲイルの極端に布地の少ない下着をずらし、ギンギンに勃起したペニスを蜜壺に添える。

 

「あっ♥ はあっ♥ ふあっ♥」

 

 ずっとヒクヒクと欲しがり続けた蜜壺が、添えただけのペニスに吸い付き、その内側へ取り込もうとうごめく。 

 待ちに待ったバイエルのおチンポ。

 思い返せばこの一週間、ゲイルは寝ても冷めてもバイエルの事ばかり考えていた。

 もうあの時から恋をしていたんだと感じる。

 神を信じないゲイルも、自分の運命の幸福を歓び、感謝する。

 おチンポとの接触部分からピリピリと甘い快感が走ってくる。

 これからこれが挿入される。

 バイエルの所有物としての証を刻みつけられるのだ。

 ゲイルの心臓が早鐘を打つ。

 ゲイルが手のひらを差し出すと、バイエルはそれを握ってきた。

 指と指が絡み合う。

 

 言葉を交わさなくても手を握り返してくれた事が嬉しい。

 恋人繫ぎが嬉しい。

 そのゴツゴツした大きい手が愛しい。

 伝わってくる体温が愛しい。

 秘所の入り口をくすぐるおチンポが愛しい。

 

 ゲイルはさっきからその想いだけで甘イキしっぱなしだ。

 それゆえに、とても切ない。

 はやく。

 はやくひとつになりたい。

 

「ふうーっ」

 

 バイエルが大きく息を吐く。

 くる。

 

「ふあああああっ♥ ふあっ♥ んあっ♥」

 

 ずぶずぶとナマのおチンポがゲイルの中に入っていく。

 避妊具の事など、両者とも頭にない。

 肌で感じていた愛しさが、ついに体内から感じ始める。

 ほんの少し挿入されただけでゲイルは絶頂に至ってしまう。

 甘イキの連続で昂ぶり続けた分、その絶頂はとても大きい。

 

「んくううううっ♥ んあっ♥ すきっ♥ すきいっ♥ らいすきぃっ♥」

 

 頭の中までペニスに掻き回されているかのように、ゲイルの思考はまとまらない。

 ただ膨れ上がる愛しいという感情が口から漏れる。

 手をギュッと握ると、バイエルもギュッと握り返す。

 繋いだ手と手から伝わる心地よい温もりが、ゲイルにこの上ない安心感を与えてくる。

 ペニスは肉をかき分けて進み、最奥まで到達する。

 

「くううっ、相変わらず最高のまんこだな」

 

「うっくううう♥ はうっ♥ はあっ♥ ふあああっ♥」

 

 バイエルのペニスが奥までずっぽりと入り込み、その凹凸がピッタリと重なる。

 ゲイルの膣は、以前のセックスの時、バイエルのペニスに合致する形状に変化したまま変わっていない。

 あの日、既に身体は堕ちていたのだ。

 ゲイルの理性は拒んでいたとしても、身体は正直にバイエルを求め、知らず知らずの内にバイエル専用の蜜壺として固定化したのである。

 そして今、身体に続いて精神も堕とされ、喜んでペニスを咥え込んでいる。

 ほんの30分前の思考すら忘れ、一週間ぶりの愛しいおチンポに貫かれて、頭の奥からこみ上げる歓喜と深い安堵に浸っている。

 

 これだ。

 ずっとずっとこれが欲しかった。

 あの時しっかり記憶に焼き付けたバイエルのおチンポ。

 客では絶対に味わえなかった、ペニスと膣が完璧に噛み合う感覚。

 私の鍵穴に、唯一適合するキー。

 このおチンポが、本当の私を気づかせてくれた。

 本当の愛を教えてくれた。

 この瞬間もどんどん”新しい私”が溢れてきてる。嬉しい。

 愛しいおチンポに膣を押し広げられる快感。

 愛しいおチンポをすべて迎え入れる幸福。

 ナマのままの亀頭が子宮口をくすぐるのがたまらない。

 他の男とは全然違う。

 嬉しくて、愛しくて、幸せで、気持ちよくて、イクのが止まらないのに安心する。

 もう駄目なんだ。

 もう自分はこのおチンポなしで生きていけない。

 もうこのおチンポに逆らえない。

 でもそれがたまらなく嬉しい。

 

 ゲイルは、脳内でジクジクと自分が書き換わっていく快感に身を委ねる。

 身も心もバイエルの虜であることを実感し、ゲイルの愛は更に膨らんでいく。

 

 バイエルはペニスを深く突き立て、最奥を捏ね回す。

 奥まで味わい尽くすように。

 自分のモノだとマーキングするように。

 誰が主人なのか教え込むように。

 脳天まで貫かれるような快感がゲイルを襲う。

 亀頭が子宮口にむっちりとキスをする。

 鈴口から漏れ出た先走りが、一足早くその奥へ流れ込む。

 その瞬間、麻薬的な多幸感がゲイルの脳になだれ込んできた。

 

「ッくうううううっ♥」

 

 下腹部がビクビクと波打つように痙攣し、膣がペニスをギュウギュウと締め付ける。

 ほんの一滴、子宮に入った甘い汁が脳髄を激しく痺れさせる。

 

 今、バイエルの体液がこの中に。

 この胎の中に入った。嬉しい。

 微量ではあるがこの中にも精子が混ざっていると思うと激しく昂ぶってくる。

 でも足りない。

 むしろ飢餓感が高まってしまった。

 一週間分の渇きは一滴では潤わない。

 もっと欲しい。

 

 膣が覚醒したかのようにグネグネと動き始め、ペニスを激しくしごく。

 それに呼応するように、バイエルも本腰を入れて性交を楽しみだす。

 すぐさま本格的な抽送に取り掛かる。

 

 ゲイルの秘所から、ぬらぬらと愛液で光るペニスがズルリと出てくる。

 膣がカリ首にチュウチュウと吸い付いたまま、亀頭まで引き抜くことを許さない。

 そしてまた、ぐぷうううとゲイルの体内へ戻っていく。

 肉をかき分け、穴を広げ、奥まで押し入り、限界まで押し込んで最奥を捏ねる。

 ゲイルの絶頂は止まらない。

 動かれてイク、引き抜かれてイク、入れられてイク、捏ねられてイク、伸し掛かられてイク、キスされてイク、手の温もりでイク、見つめられてイク。

 バイエルの一挙手一投足すべてがゲイルの快感となって絶頂へ追い込む。

 何よりも、この動きは射精のための準備運動。

 この後に念願の膣内射精が待っている。

 その期待感と興奮だけでゲイルはイってしまいそうなほど脳が痺れてくる。

 抽送が徐々に早くなっていく。

 

「んーッ♥ んッ♥ んぐッ♥ うーッ♥」

 

 じゅぽっじゅぽっじゅぽっ。

 ゲイルの膣をペニスが往復する。

 ただの前後運動ではなく、腰を使ってえぐりこむようにゲイルを攻め立てる。

 ねっとりと絡みつく膣がペニスをしごき、バイエルを昂ぶらせる。

 はちきれそうなカリ首が膣壁を擦り上げ、ゲイルをイかせる。

 二つの粘膜が絡み合い、擦り合い、高めあっていく。

 ペニスが全て入りきると、その完璧な一体感に両者の頭が痺れる。

 ストロークの度にバイエルのボルテージが上昇していく。

 ゲイルはずっとイキっぱなしだ。

 

「ふん!ふん!ふん!ワシのモンだ!もうお前はワシのモンだ!」

 

「んっ♥ んぐっ♥ うっ♥ うんっ♥ ものっあなたの♥ あなただけのっ♥ ものっ♥ ものにしてっ♥」

 

「出る!出るぞ!」

 

 バイエルの本気のプレスがゲイルの最奥を襲う。

 捏ね回すような甘さは一切ない、完全に種付けのためのプレス。

 ペニスが子宮口をこじ開け、銃口の狙いが定まる。

 

「あ゛っ♥ あ゛っ♥ あ゛っ♥ くる♥ くる♥ きて♥」

 

 無理やりこじ開けられた子宮口は、むしろそれを望んでいたかの様に、打って変わってチュウチュウと吸い付いてペニスに甘える。

 バイエルはその中へ勢いよく精液をぶちまける。

 子を宿すための胎へ、ドクドクと種が注ぎ込まれていく。

 種付けの熱さを下腹部の中で実感する。

 多幸感の波が押し寄せ、ゲイルは絶頂の渦に落とされる。

 今まで体験したことのない、深い深い絶頂に。

 

「うあ゛あ゛あ゛っ♥ うあ゛っ♥ あ゛っ♥ あ゛っ♥ あ゛あ゛あ゛っ♥」

 

 あつい。

 どんどん入ってくる。

 うれしい。

 しあわせ。

 

 ゲイルの心が塗り替えられていく。

 歓喜が全身に巡っていく。

 心のトゲの最後の一欠片が消えていく。

 

 この瞬間、それまで”ゲイル”と呼ばれていた人格は完全に消え去った。

 記憶こそそのままではあるが、その精神・価値観はもはや別人である。

 バイエルを愛し、バイエルに忠誠を尽くし、バイエルの為だけに生きる存在へと成り果てたのだ。

 それは記憶喪失や催眠術のような生易しいものではない。

 割れた卵がもう孵らないのと同じように。

 彼女が”ゲイル”に戻ることはない。

 

 迷いが完全に消えた。

 むしろ今まで何を迷っていたのかすらもうわからない。

 新しい自分に生まれ変わったという確信に、ゲイルは涙する。

 その涙は、心の底からの感涙だった。

 

 吐精の脈動に合わせてペニスが奥へ押し込まれ、その度にゲイルの胎の中に暖かさが広がっていく。

 程なくしてバイエルの射精が止まるが、二人のまぐわいは止まらない。

 ペニスは挿入したままゲイルの片足を持ち上げ、側位でまた乱暴に抜き差しが始まる。

 

 挿入の角度が変わったペニスはまた違った刺激をゲイルに与える。

 ゲイルも誠心誠意バイエルに尽くし、変則的な膣の動きで愛しいおチンポを悦ばせる。

 どんな体位に変わろうとも、最奥に到達すれば必ずピッタリと噛み合う。

 ゲイルが意識しなくとも、膣が勝手に形を調節するのだ。

 正にバイエル専用のチンポコキ穴としての働きだ。

 

 側位で激しくピストンされながら、そのまま身体を回し、寝バックへと移る。

 バイエルはうつ伏せのゲイルへ全身で伸し掛かると、腰を深く突き入れる。

 その瞬間、二人の結合部から脳髄へ電撃が走る。

 

「ぬおおっ!?」

「ひぐっ♥」

 

 ペニスと膣の一体感だけではない。

 腰が砕けそうなほどの快感が二人を襲った。

 この二人にとって、この体位、寝バックが最高の組み合わせだったのだ。

 バイエルはその一突きだけであっけなく二発目を発射してしまう。

 

「くおっ!くっ!おっ!うおお……」

「あ゛っ♥ あ゛〜〜♥ あっあっ♥ あ゛〜っ♥」

 

 先程の本気の種付けとは違う、"ただ気持ちよかったから出た"だけの射精が、ゲイルの胎の中を心地よくしていく。

 ゲイルはビクビクと小刻みに肩を震わせて膣内射精での絶頂を味わう。

 不意の射精であっても、ペニスはピッタリとその奥へ狙いを定め、子宮口は愛おしそうにペニスに吸い付き、その中へ子種を導いた。

 二度目の射精が子宮の奥へ注がれていく。

 幸せの種がゲイルの全身に染み渡っていく。

 

 二度目の射精が終わってもまだペニスは隆起したままだ。

 バイエルは休みなく次の行動へ移り、後ろからゲイルの肩を抱きしめる。

 抱きしめるというにはいささか乱暴で、どちらかといえばホールドに近いが、ゲイルにとっては熱い抱擁だ。

 それだけでまたゲイルの胸は熱くなる。

 がっちりとゲイルの上半身を固定しながら、バイエルは背筋と腰を使ってピストンする。

 速度はゆっくり、だが力強くねじ込む。

 より奥深くへ子種を注ぐというバイエルの強い意志が感じられる。

 

「ふうっ!ふうっ!ふうっ!」

「お゛っ♥ お゛っ♥ お゛っ♥」

 

 ストロークこそ長くはないが、最高に噛み合う体位で、最高に噛み合う粘膜同士の性交は、激しく脳髄を痺れさせる。

 5往復。

 出したばかりだというのに、たった5回のピストンでバイエルは再度射精した。

 

「ぐっ!ぐう……ッ!孕め……孕めェ……ッ!」

「お゛うっ♥ んぐ〜〜っ♥」

 

 今度は暴発などではない。

 絶対に孕ませるという決意を持った種付け射精だ。

 ゲイルの腰が浮き上がりそうなほどグイグイとペニスで突き上げられ、それと同時に抱きしめられた身体をぐっとペニスへ押し付けられる。

 元々深く噛み合っていた性器が、更に深く突き刺さる。

 三度目とは思えない量の精液が子宮へと注ぎ込まれ、ゲイルは幸福に落とされる。

 

「あ゛〜〜♥ なからし♥ いっぱい♥」

 

 種付け射精の快楽で、ゲイルはもう何度目かわからない絶頂にビクビクと震える。

 バイエルからの扱いは恋人とは言い難く、ただの性欲処理に近いものがある。

 だがゲイルは心から幸せだ。

 相手がバイエルならば、今のゲイルはいくらでも際限なく幸せになれる。

 そういうものとなったのだ。

 

 バイエルはゲイルとの性交の快感に病みつきだ。

 この穴ならばいくらでも出せそうだと思えてくる。

 現に三回出してもまだ萎えない。

 それどころか、奥から奥から肉欲が湧いてくる。

 たぎる。

 失った若さが戻ってきたかのようだ。

 それほどまでに、この女を気に入ったのだろうか。

 年甲斐もなく一人の女に夢中になるなど、少年のようだと自嘲が漏れる。

 だがそれも悪くない。

 好きな時に犯し、いくらでも中出ししていい便利な女を手に入れたのだ。

 久しぶりに、衝動に身を任せてまぐわうのもいいだろう。

 この女の最初の仕事にして、今後の人生の大半を占める役割だ。

 しっかり楽しませてもらおう。

 

 バイエルはゲイルの奥へ存分に注ぎ込むと、すぐに活動を再開する。

 繋がったまま強引に身体を起こして背面座位へと移行し、両足でゲイルの股をガバッと開かせる。

 

「ふえあっ♥ んあっ♥」

 

 ずっぽりと根元までペニスを咥え込んだ結合部と、へその辺りを内側から盛り上げている様が露わになる。

 卑猥な姿勢に、ゲイルの顔が羞恥に染まる。

 以前のゲイルならばともかく、今のゲイルは恋する乙女なのだ。

 愛しい人の前で卑猥な姿を晒すのは羞恥が伴う。

 だが、その羞恥心すらも愛しさと興奮のスパイスとなりゲイルを昂ぶらせる。

 

 ゲイルはバイエルへ向けて首を回すと、艶っぽい息を吐きながら口を開けて舌を出す。

 キスのおねだりだ。

 バイエルは笑いながらそれに応え、突き出された舌をしゃぶり、自分の舌もゲイルの口の中へ入れる。

 お互いの舌を絡め合う。

 口の中を味わう。

 唾液を流し込み、そして送られてきた唾液をすする。

 萎えこそしていなかったものの、最高潮ではなかったバイエルのペニスが、ゲイルの下腹部の中でビキビキと硬くなる。

 

「んふうっ♥ んっ♥」

 

 バイエルは肩から腰へ抱きしめていた腕を移し、力任せにゲイルの身体を上下させ、ペニスをしごく。

 

「んおっ♥ おふっ♥」

 

 完全に道具のような扱いだ。

 だがそんな扱いよりも、ゲイルにとっては唇が離れてしまったことのほうが切なかった。

 バイエルはそれを気にも止めずピストンを続ける。

 へその盛り上がりがピストンに合わせて前後する。

 乱暴な抽送を繰り返し、そしてまた最奥へ深く突き刺し、子種を注ぐ。

 

「くおお……まだ……もっと出るぞ……」

「うくう~~っ♥ うっ♥ う~♥」

 

 もっとキスをしたかったゲイルだったが、胎の中に染み込んでいく子種の快楽に勝るものはなく、すぐ多幸感で塗り替えられた。

 体位はまた寝バックへと戻る。

 それからは、寝バックで出す→別の体位で出す→寝バックで出す→別の体位で出す、の繰り返しとなった。

 バイエルは寝バックがとても気に入ったようだ。

 

 膣内射精を受ける度に、ゲイルは自分の存在価値を実感する。

 今まさにバイエルに必要とされ、そして役立っている。

 バイエルの女としてきちんと役割を果たせている。

 それが今のゲイルにとって唯一のアイデンティティだ。

 その証として注ぎ込まれる熱い愛が、ゲイルの脳をとろけさせて思考を奪っていく。

 

 バイエルはもはや何度目かわからない射精をゲイルの中へ注ぎ込む。

 

「くおおお……孕め……しっかり孕めぇ」

「うあ~♥ あっあっ♥ あ~~♥ はらむう♥ はらむぅ♥」

 

 とろけた意識の中、ゲイルはバイエルの言葉をリピートする。

 だが口に出したことで、しっかり脳へと命令が行き届いた。

 それを成す為に、朦朧とした頭が全力で回転しだす。

 

 ゲイルの類稀な魔術の才覚。

 異形による肉体を変異させる力。

 男たちから受け取ってきたヒトの遺伝子。

 そして、クスリによって植え付けられた、狂気と言えるほどの愛。

 すべてを総動員し、ゲイルはそれを成し遂げる。

 

 排卵。

 

 ゲイルはそれまで無意識のうちに、子を成す為の機能を不完全のままにしていた。

 それを急遽成熟させ、卵子を排出したのだ。

 

 愛する人の子を孕みたい。

 ただその一心で。

 

 子宮内はバイエルが吐き出した精液のプールとなっている。

 既に卵管深部にまで到達していた精子たちが、できたての卵子に殺到する。

 無数のオタマジャクシが、与えられた使命を完遂すべく卵子をつつく。

 今自分の卵子が、バイエルの精子に犯されている。

 卵子の感覚などありようもないはずなのに、ゲイルはそれを感じ取る。

 今まさに自分の卵子と結合しようと、たくさんの精子に取り囲まれ、好きなようにされているのを感じる。

 むず痒いような快感が下腹部の奥で湧き上がり、その瞬間を今か今かと心待ちにする。

 愛しい人に犯されながら、自分の胎内でもまた犯されている状況に、頭がぐるぐるするほど興奮する。

 

「もう一発だ……出るぞ!」

 

「ふあっ♥ ん~~っ♥ んっ♥ んくっ♥」

 

 今。

 今、中出しされたのと同時に。

 卵子の膜を突破された。

 結合した。

 受精した。

 バイエルの精子と、自分の卵子が、受精した。

 

 感激が押し寄せてくる。

 涙がはらはらとこぼれ落ちる。

 下腹部から暖かいものがこみ上げてくる。

 好きな人の子をなせる事がこんなにも素晴らしいものだとは思わなかった。

 

 そうして、体力も魔力も消耗したゲイルは眠りにつく。

 ゲイルが眠ってもバイエルは構わず犯し続け、ひたすら子種を注いだ。

 ゆっくり休むとは程遠かったが、ゲイルは幸せだった。

 

 



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 ┗ 番外 バイエルルート・三

 

…………

 

 翌朝、ゲイルはバイエルの腕の中で目覚めた。

 隣で寝息を立てているバイエルを見て、ゲイルは自然と笑みが漏れる。

 バイエルの香りに包まれ、昨夜の情事が思い起こされる。

 その指が、そのペニスが、バイエルが与えてくれた快感が想起され、目覚めたばかりだと言うのに股間が疼き、湿ってきてしまった。

 欲しい。またいじられたい。

 ペニスをこの中へ迎え入れたい。

 目一杯乱暴にピストンされて、奥に射精して欲しい。

 ゲイルの欲望が膨れ上がり、胸の中はバイエルのことだけで占められていく。

 そこでふと気づく。

 大事な仕事を怠っていたことに。

 

……

 

 バイエルは目覚めた。

 昨夜はとても燃えた。

 この歳にして、一晩での発射回数を大幅に更新してしまった。

 自由にできるメスを手に入れた事に興奮していたのだろうか。

 新しい装備を買って舞い上がっていたあの頃を思い出す。

 昨夜は疲れ果てて寝たにも関わらず、不思議と身体に疲労は残っていない。

 むしろ活力がみなぎる。

 まぁ、悪いことではないだろう。

 

 ふと辺りを見回す。

 女がいない。

 まさか……

 

 バイエルが布団をめくると、そこに女がいた。

 

「ちゅぽっ♥ ちゅぷっ♥ ぢゅるる♥」

 

 お掃除フェラをしていた。

 ペニスを咥えたまま、甘える様な上目遣いで目覚めたバイエルを見て微笑む。

 

「んふふ♥ んっ♥ ちゅぽっ♥ ちゅぽっ♥」

 

 ギンギンになった。

 

 

「お前は!おあずけも!できんのか!」

 

「はんっ♥ あんっ♥ ごめ♥ ごめんなさい♥」

 

「何を!悦んで!いるんだ!」

 

「あっ♥ あっ♥ うっうれしくて♥ またっ♥ おチンポ♥ うれしいっ♥ すきっ♥ だいすき♥」

 

「とんだ淫乱だ!そうやって誰にでも股を開くのか!」

 

「やら♥ ちがう♥ あんっ♥ バイエルだけっ♥ あなただけ♥ らから♥」

 

「そら!出すぞ!どこに欲しい!」

 

「んっ♥ なかっ♥ なかにらしてっ♥ ん〜〜っ♥ イクっ♥ イクっ♥」

 

「ぬおおおお!」

 

「んくう〜〜〜ッ♥」

 

 

 寝起きから即座に一発ヤって頭が冷えたバイエルは考える。

 この女の処遇についてだ。

 

 女は嬉しそうにペニスを咥え、尿道に残った精液をすすっている。

 その頭を撫でてやると、また嬉しそうに目を細めて手のひらに頭を擦り付けた。

 

 たしかゲイルと言ったか。

 同じ名前のルーク級キャスターの噂はよく耳にするが、まさかこいつなのか?

 元男など信じられない。

 完全に色狂いのメスじゃないか。

 一種の呪い憑きのようなものだろうか。

 自分に感染ったりしないだろうか。

 まあ、その穴に散々チンポ突っ込んで出し入れしたんだ。

 今更だろう。

 なるようにしかならん。

 重要なのは、今こいつは極上のメスで、ワシの所有物だって事だけだ。

 

「おい」

 

「ふぁい」

 

「もういい。チンポから口を離せ」

 

「んっ、ちゅぷっ、う……はい……」

 

 女は名残惜しそうにチンポから口を離した。

 

「お前はもうゲイルという名は捨てろ。これからは……そうだな、もうイラーナでいいだろ。お前の名はこれからイラーナだ」

 

「私の……名前……うれしい……」

 

 源氏名をそのまま名付けられた女はぽろぽろと涙を流しだした。

 意味不明だ。

 

「これで……これで、何もかも、私の全部、あなたのものになったよ」

 

 どう返答してやるのが正解かわからんから、とりあえず抱きしめてやった。

 困ったときは黙って抱きしめて撫でてやればいい。

 女の機嫌はだいたいそれで治る。

 

「んふふ……幸せ……」

 

「聞きたいことがある。そのままでいいから聞け」

 

「うん♥ はぁ……バイエルの匂い……♥」

 

「昨夜からやたら身体の調子がいい。若返ったように活力がみなぎる。お前、何か知ってるか?」

 

「気に入ってくれた?私の身体に巣食ってるものの力だよ。先週ヤった時、バイエルにもお裾分けしたの」

 

「何?ワシもお前のようになるのか?」

 

「大丈夫。害はないよ。私がさせない。それとも女の子になりたい?」

 

「ごめんだ。このままでいい」

 

「うん、私もこのままのバイエルが好き」

 

「くくく……ある程度自由は効くのか。利用できそうだ。お前にも手伝ってもらうぞ」

 

「うん、何でも言って。何でもするよ」

 

「よしよし。もう十分だろう。離れろ」

 

「もうちょっと……もうちょっと……」

 

「おい、もう行くぞ。準備もあるだろう」

 

「う……わかった……」

 

 

 こうして、何ひとつの未練なく、「ゲイル」の名は捨てられた。

 

 以降、ルーク級キャスターとして名を馳せたゲイルは消息不明となる。

 当時のパーティメンバーが血眼になって探す様は、滑稽を通り越して悲痛だったが、見つかることはなかった。

 彼らのパーティは、一時は噂になったがいつの間にか消えていった数あるパーティの一つとして幕を下ろしたのだった。

 

 

 

…………

 

 

 それから数年後。

 魔族との抗争が激しくなり、全面戦争も時間の問題と囁かれ始めた頃。

 一つの噂が流れる。

 

 勇者と並び立つほどの強さを持つ男がいる。

 その男はもう五十路も近いというのに、その肉体は衰えることを知らず、むしろ未だ成長していると言う。

 そしてその傍らには、美しいキャスターの女が甲斐甲斐しくついて回り、男をサポートしていると。

 その歳で性欲も旺盛で、戦いの後は人目も憚らずキャスターの女と激しくまぐわうのだそうだ。

 

 

「イラーナ!帰ったぞ!イラーナはいるか!」

 

「お帰りなさい。ここに」

 

「ヤるぞ!」

 

「……はい♥ いつでも使ってください」

 

「大分腹が大きくなったな」

 

「んっ♥ んっ♥ はいっ♥ 私とあなたの愛しい子です♥」

 

「ふっ!ふっ!今度はちゃんと産むんだぞ!」

 

「んっ♥ あなたがっ♥ 無茶を♥ しっ、しなければっ♥ 前の子もっ♥ ちゃんと産まれたんですよ♥」

 

「ふん、悦んでチンポ咥えたくせに、よく言うわ」

 

「だって♥ だって♥ バイエルのおチンポ♥ だいすきっ♥」

 

「ふっ!調子出てきたな!口調が昔に戻ってきたぞ!」

 

「はんっ♥ あっ♥ すきっ♥ あいしてう♥ いっぱいすきっ♥」

 

「そら!出すぞ!もう一人つくれ!」

 

「きて♥ きて♥ イクっ♥」

 

「くうううっ!」

 

「んう〜〜〜ッ♥」

 

…………

 

「グフッグフッグフッ……いああ……いああ……」

 

「あ、起きた?なあに?バイエル」

 

「ウッ、ウッ、ウッ」

 

「うんうん、そうだね。大丈夫だよ。私はずっと側にいるからね。さ、もうお休み。幸せな夢をみてね……」

 

 イラーナに抱きしめられ、バイエルは眠りに落ちていく。

 

 そう、夢だ。すべてバイエルの夢。

 現実は、表立った魔族との抗争などなく、戦争の気配もなく、バイエルは勇者並みの強さを持てなかった。

 

 寄生体の力を利用し、その片鱗が見えたのは確かだ。

 だがバイエルには、イラーナのような魔術の才能はなかった。

 それを無理矢理イラーナと同じ領域にまで高めようと寄生体に掛け合った結果がこれだ。

 今やバイエルは大半の知能を失い、身動きも取れず、大半を眠って過ごし、たまに起きてはうわ言を発するだけの存在だ。

 せめて幸せな夢をと、イラーナが昔体験した薬物を参考に、独自に調整を施して投与している。

 生命活動のすべてをイラーナに頼っており、彼女がいなければ数日と生きることが出来ない。

 

 だがイラーナは幸せだ。

 愛するバイエルを独占できる。

 他の女に目移りもしない。

 イラーナにとってバイエルは生きる理由そのものだ。

 そして、愛するバイエルはイラーナがいなければ生きていけない。

 二人で寄り添いあい、二人だけで完結した世界。

 イラーナにとって最高の世界だ。

 

 眠ったバイエルに、イラーナが微笑み、語りかける。

 愛おしそうに下腹部を撫でながら。

 

「ふふっ、バイエルぅ……もうすぐ……もうすぐだからね……」

 

 初めての受精のときはちゃんと着床してなかった。

 二度目、三度目はきちんと成長せず流産してしまった。

 いっぱい泣いちゃった。

 四度目でやっと産まれはしたが、ヒトじゃなかった。

 次こそ。

 次こそちゃんとしたバイエルの子供を産むんだ。

 

「うふふっ、待っててね……

 いっぱい実験したんだよ?

 どうやって孕んで産まれるのか、すっごく詳しくなったんだから。

 今度こそちゃんと産まれるよ。

 私とバイエルのかわいい赤ちゃん。

 この子が産まれたらお祝いしようね。

 久しぶりにお話できるようにしてあげようかな。

 あなたもパパの声が聞きたいよねぇ。

 私もいっぱいお話したいよ」

 

 全く反応のないバイエルに、イラーナは語りかける。

 その表情に悲観の色は全くない。

 ただただ幸せそうに、一人で話し続ける。

 

「バイエルぅ……愛してるよ……ずっとずうっと一緒だよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

「フウッ!フウッ!フウッ!ゲイル!ゲイル!好きです!ゲイル!」

 

「はんっ♥ あっ♥ あっ♥ さいあく♥ アタシをっ♥ 犯しといて♥ 別の名前♥ 呼んでるし♥」

 

「フウッ!ゲイル!戻ってきてください!ゲイル!」

 

「はっ♥ はっ♥ さいあくだけど♥ さいっこうっ♥ アンタの♥ これっ♥ すごいっ♥」

 

「うううっ!ナカに!ナカに出ししますよ!」

 

「ふあっ♥ ちょっ♥ マジかよ♥ しょっ、しょうがねえな♥」

 

「ぐうううううっ!ゲイルぅ!ゲイルぅ!」

 

「くう〜〜〜っ♥ ほ、ほんとにっ♥ ほんとにっ♥ 中出しっ♥ してるし♥ う〜〜っ♥ うっ♥」

 

「ぐううっ!うっ!うっ!」

 

「う〜〜〜っ♥ はっ♥ な、なにこれ♥ なっ♥

 おっ、おなかンなか♥ なんかきてる♥ あっ♥ あ゛あ゛っ♥

 いっイクの♥ とまんない♥ あ゛~~ッ♥ だめ♥ くるし♥

 う゛~~ッ♥ なかでっ♥ うごいてる♥ たすけ♥ こ、こわいっ♥」

 

「もっと!もっと出しますよ!」

 

「あ゛~~っ♥ やめっ♥ なんっ♥ たすけ♥

 はっ♥ ぐっ♥

 い゛ぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!」

 

「大丈夫!受け入れて!」

 

「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!

 だっ!だずげ!!ぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!

 うぎっ

 ぎっ

 ぎぅ……」

 

「……ダメですか……

 彼女なら、僕のゲイルになってくれると思ったんですが……

 はあ……

 次の人を探しましょう」

 

 

 

 

 

 

END



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20 アラン・一

本当ならバイエルの弟子たちがゲイルに犯される話を書こうと思ってましたが、イマイチ展開が膨らんでこなかったのでカット。
バイエルのパーティ全員と肉体関係はあるものと思ってください。


 

 

 その日、ゲイルは街の酒場で独り夕食を摂っていた。

 今日はあのエロティックな冒険者衣装ではなく、普通の服だ。とは言え、サイモンから貰った女物の服ではあるが。

 今日の装いは、ニットワンピースに黒のオーバーニーソックス。

 柔らかいニット生地が身体に張り付くように包み込み、ボディラインがくっきり現れる。胸の膨らみからくびれ、そしてヒップが魅力的な曲線を描く。裾は膝より上で太ももまで見えそうな長さだ。

 黒のオーバーニーソックスの上部にはレースがあしらわれている。歩く度に、太ももが上がる度に、ワンピースの裾からそのレースが見え隠れしている。

 もう少しで、その太ももの付け根、その裾の奥の暗闇の中まで見えてしまいそうである。が、決して見えない。決して見せない。

 

 街を歩いていたとき、ゲイルは周囲の男たちからたくさんの視線を感じた。

 ボディラインで男の目を引き、その目はギリギリ見える太もものレースを追いかけ、そして隠された秘部へと移っていく。

 ゲイル自身、理解の上でこの服装をしている。

 

 匂いがしてくる。男が発情している匂いが。勃起している匂いが。誰かまでかはわからないが、間違いない。

 自分を見て興奮したのだ。どこかの誰かが、今の自分をみてペニスをおっ勃て、交尾をしたいと、ペニスをぶち込みたいと思ったのだ。

 ゲイルの背筋にゾクゾクとした興奮が沸き立ってくる。

 ゲイルは今、そんな興奮を味わいながら食事をするという変態遊戯に勤しんでいる。

 

 あの日、バイエル&少年たちを利用もとい協力し、当面の生活費を稼いだゲイルは、街でより稼げるパーティに参加する方針へ切り替えた。が、なかなか良いパーティは見つからない。

 取り分がソロとほとんど変わらないか、むしろソロのほうが稼げる募集しか見当たらないのだ。ゲイル個人の能力が突出して高いということもある。

 味方が増える分、安全性は確実に上がるが、人数で割るだけに金銭効率は下がる。必要経費と割り切るべきかどうか、悩ましい。

 

 まあ焦る必要はない。生活費は十分にある。

 これからの稼ぎは、あの堕落した生活のための資金だ。あいつらも稼いでくるし、そう躍起にならなくてもいいだろう。

 そう考えると、取り分が少なくても参加してもいいと思えてきた。冒険は、とにかく安全が最優先だ。

 明日適当なパーティに声をかけてみよう。なに、気に入らなければそのクエスト完了でさよならすればいいのだ。

 

 仲間たちとの、あの堕落した生活を思い出し、ゲイルの股間が疼いてくる。

 あいつらが恋しい。今どうしてるだろうか。稼ぎは順調だろうか。別に目標金額に達していなくとも、早く帰ってきて欲しい。そんなことは、口にも態度にもおくびにも出さないが。

 

 ゲイルがもぞもぞしながら食事をしていると、一人の男が語りかけてきた。

 

「おっ、ゲイルさぁん、もしかして一人? オレと一緒に呑まない?」

 

「あ? ……てめえかよ」

 

 話しかけてきた男は、肩まである金髪を片手でかきあげながら、親友にでも出会ったかのような笑顔をゲイルに向ける。

 この男の名はアラン。

 過去一度だけ、ゲイル達とクエストを共にした事のある冒険者だ。

 アランは特定のパーティに加入せず、常に飛び入りで活動している。

 キリッとした顔つきに長身痩躯、小綺麗な出で立ちをしているが、その見た目に騙されてはいけない。

 自称ビショップ級、経歴も十分それを示しているが、その割に役に立たず、女とみれば誰彼構わず口説き、危険を察知したら、女すら見捨てて誰よりも先に逃げる男だ。

(※注釈 階級は、ポーン→ナイト→ビショップ→ルーク→クイーン→キングの順)

 

 今はルーキーの世話という大義名分で恩を売りつつ若人に自分の力を誇示したり、昔面倒をみたパーティに寄生したりして女を食っているらしい。

 どうみてもクズ男だが、それを理解した上で面倒を見ている女が数人いるのだから、余計に顰蹙と嫉妬の的となっている。

 手口がバイエルに似ているのも当然である。アランはバイエルのパーティから独り立ちした人間だ。

 

「よく俺だとわかったな」

 

「有名人よー? 今のゲイルさん。嫌でも目立つから。いやあ、近くで見ると納得だねぇ。チョーいい女じゃん」

 

「まあどうでもいいわ。シッシッ。お前が居るとメシが不味くなる」

 

「そう構えないでくださいよぉ。一度は組んだ仲じゃない」

 

 ゲイルもアランが嫌いだ。

 自分の実力を過大評価しているのが気に食わないし、女を見捨てるのも気に食わないし、喋り方がイラつくし、いちいち身振り手振りが大仰でイラつくし、モテるのもイラつくし、身長が高いのもイラつく。

 過去の協力で、勝手に行動し、勝手にピンチになり、勝手に逃げ出した件はゲイルは気にしていない。彼を選んだ自分たちの落ち度だと思っているからだ。

 

 アランが語りかけてきた理由など、言われなくてもわかる。

 下心だろう。

 女となったゲイルに、いつも一緒にいる二人の邪魔者がいない今が好機とみて口説きに来たのだろう。

 ゲイルとて相手は選ぶ。わざわざ嫌いな男と致す必要はない。

 何より、あいつらとの思い出で疼いた身体を、このクズ男で解消するのは癪だ。

 

「勝手に隣座ってんじゃねえよ。消えろ消えろ。てめえのツレと呑んでろよ」

 

「まあまあ、そう言わずに、ね? あの頃はオレも若かったんだよ。昔のことは水に流してさあ、楽しもうじゃない。オレ奢るからさ」

 

「おねーさーん、ロースカツとビーフシチュー、それとハイボール追加でおねがーい。会計は全部こいつね」

 

「はーい、ただいまー」

 

「うっ、遠慮ないね。でもそれ、Yesの返事って事でいいね? あ、お姉さん、オレにチキン南蛮とわかめサラダと……うーん、焼き鳥盛り合わせ、あと梅酒をロックで」

 

「はーい、承知しましたー」

 

「で? 何の用?」

 

「ゲイルさん、パーティ解散したんだって?」

 

「一時的に別行動してるだけだ」

 

「オレと組もうよ。損はさせないぜ」

 

「しね」

 

「先にお飲み物、お持ちしましたー」

 

「お酒が来たね。じゃ、オレたちの未来に乾杯」

 

「ねーから、そんなもん。んぐんぐ、ぱはぁーっ」

 

「根に持ってるの? 昔の事。誰にだって未熟ゆえの恥ずかしい経験はあるもんじゃない」

 

「昔の事は気にしてねえよ。単にお前が信用ならないだけだ」

 

「そう言わないでさぁ。オレも成長したんだ。昔のままだと思われてるのも心外なんだよね」

 

「ふーん。ごくごく」

 

「だからさ、汚名返上の為にも、一度でいいから組んでみてよ、オレと。絶対見直して貰えるからさ」

 

「ええ~~?」

 

 はっきり言って怪しすぎる。

 何せ、今まで謝罪一つなしのままお互い無視するような関係だったのに、この突然の手のひら返しだ。しかも、女になったゲイル一人になった時を狙って。怪しんでくれと言っているようなものである。

 が、食事を奢ってくれるのは助かる。組むつもりは毛頭ないが、適当に煮え切らない返事をして、今後も財布になってくれないだろうか、とゲイルは考えた。

 

「まあ、考えといてやるよ」

 

 心の中で「あいつらが帰ってきてからな」と付け加える。

 1対1でこいつと組むつもりなど毛頭ない。

 

「ホントか!? さっすがゲイルさぁん、懐も胸も大きい」

 

「お待たせしましたー。ロースカツとビーフシチュー、それとチキン南蛮とわかめサラダでーす」

 

「おっと、折角の料理の前に酒がなくなっちゃったね。オレの奢りだから、好きに頼んでよ」

 

「マッカラン、ストレートで」

 

「ね、年代物は流石にやめてくれよ?」

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「らからぁ! らからおまえはしんようならなんや、わかっへんのら」

 

「ちょちょちょ、ゲイルさん大丈夫? めっちゃふらついてるけど」

 

「あー? よゆーらし、よゆー。つぎのみへいこうれ」

 

「はいはい、こっちだよこっち」

 

「あ~~~……つかえた」

 

「うんうん、じゃあちょっと休憩できるとこ行こうね~」

 

「おうおう、らからおまえはしんようれきないんやれ」

 

「はいはい、こっちこっち。ここで一休みしようね。いやーゲイルさん、ちょっと引くほどチョロいわ」

 

 

 



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21 アラン・二

 

……

 

 

 ちゅぽっ、じゅぽっ。じゅぷぷっ、ちゅぽっ。

 

「あっ♡ あっ♡ んあっ♡ んっ♡」

 

「フッ! フッ! ヤベッ! コレッ! ヤッベ!」

 

 あれ……なんで俺……こいつとヤッてんだっけ……

 

「フッ! ふはは! まさか! マジでゲイルを犯せるなんてな! はは! フッ!」

 

 ちゅぽっ、じゅぷっ。ちゅぷぷっ、ちゅぽっ。

 

「あっ♡ あっ♡ あはっ♡ はうっ♡」

 

 だめ……チンポで頭痺れる……

 まぁいいや……気持ちいいし……

 

「フゥッ! フッ! へその下にこんなタトゥーいれやがって! フゥッ! ビッチかよ! エッロ! スッゲ! あーやっべイクイク!」

 

 あ……チンポ膨れてきた……

 しゃせい、するんだ……

 せーし、くるんだ……♡

 

「くおおお!」

 

「ふあっ♡ んっ♡ あふっ♡ んくううううっ♡」

 

 きっ、きてるっ♡ ナカっ♡ 中出しっされてるっ♡

 イクっ♡ イクっ♡ イッちゃう♡

 

「うおおお……スッゲ……吸い付いてくる……ヤッべ……ウッ! まだ出る……めっちゃ出る……」

 

「うあああ♡ うあっ♡ あうあ……♡」

 

 せーし、出てるっ♡ おなかのなかっ♡

 だめ♡ イってるっ♡ なかだしでっ♡ イってるっ♡

 好き勝手に♡ 犯されて♡ 中出しされて♡ イってる♡

 

「フゥー……無責任種付けぇ……たまんねぇ……」

 

「ふぐっ♡ うう~っ♡ か、勝手にっ♡ 中出しっ♡ しやがって♡ このっ♡ れっ、レイプ犯が♡」

 

「あ、ゲイルさん、酔い覚めた? ちょうどいいや、オレの女になってよ」

 

「はうっ♡ んっ♡ しっ、しねっ♡ しねっ♡」

 

「これでも? これでも?」

 

 じゅぷっ、じゅぷぷっ。

 

「はうっ♡ んくうっ♡ おまっ♡ やめっ♡」

 

 あたまっ♡ しびれるっ♡

 

「オレ、わかっちゃうんだよねぇ。女の子の弱いとこ。ほらっ、ほらっ」

 

「はうっ♡ らめっ♡ んっ♡ んん~~ッ♡」

 

 これっ♡ だめっ♡ すごいっ♡

 

「おおお、イッてるイッてる。締め付けスッゲェ。ねえ、いいじゃん。オレのチンポ気持ちいいでしょ? ねっ? ほらっ」

 

「くううっ♡ ふうっ♡ んっ♡ だっ、誰がなるかっ♡ んっ♡」

 

「じゃあさ、セフレならいいでしょ、セフレ。ゲイルさんとオレ、身体の相性バツグンじゃん?」

 

「おっ♡ お前のっ♡ 粗チンなんぞっ♡ おっお断りっ♡ だっ♡」

 

「う~ん、わかった。じゃあ無理やりにでもYesって言わせるわ」

 

「はっ♡ やっ♡ やれるもんならっ♡ やってみろよ♡」

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「あ~~っ♡ あっ♡ あう~っ♡ うっ♡ んっ♡」

 

 それから一時間後。

 ゲイルは、アランによって何度も何度もイかされ続けている。

 

「んっ♡ んっ♡ んん~~ッ♡」

 

「またイッたね。これで何度目?」

 

 アランの性技はすごかった。

 ゲイルが経験してきた男の中で、間違いなく最高に上手い。

 サイモンが、デートやムードなども含めた総合的に女性を喜ばせる技能に長けているのだとすれば、アランはセックス一点特化だ。

 単純に愛撫やペニスの突き方が上手いだけでなく、ゲイルの反応から即座に弱点を見抜き、的確に攻め立てる。

 もちろん、ただ弱点ばかりを攻めるのではなく、焦らしも組み合わせて女を悦ばす。

 ゲイルはあっという間に快楽でとろけ、ワンピースは脱がされ、下着は剥ぎ取られた。だがオーバーニーソックスは履いたままだ。アランの趣味だろう。

 女の快楽にどっぷり依存しているゲイルは、アランのもたらす快楽に為す術もなかった。

 

「ふぐっ♡ んんっ♡ んふぅっ♡」

 

「あ~、マンコめっちゃ締まる……ビクビク震えてオレのチンポチュウチュウ吸ってる……やっべ、オレもイキそ……」

 

 アランのイキそうという言葉に反応して、ゲイルの子宮がキュンキュンと切なくなる。

 ゲイルは何度もイかされているが、アランの射精は最初の一度きりだ。

 絶頂の度に中出しへの欲求が高まり、アランの言葉に否応なく期待感が膨らんでしまう。

 

「ねえ、欲しい? 精子欲しい? オレの女になるんなら中出ししてやってもいいよ」

 

「うっ♡ うふうっ♡ うっ♡」

 

「子宮降りてきたね。ゲイルさん、中出し大好きでしょ。ほらっ、一番奥までずぷうって入れてやんよ」

 

「んくううっ♡ ふああっ♡」

 

 正常位で伸し掛かるアランが、ゲイルの奥深くへとペニスを突き立て、こねくり回す。

 精子を求めて降りてきた子宮をペニスで押し返し、子宮口に先端がちゅぷっ♡ちゅぷっ♡と食い込む。

 ただでさえ中出しの虜となっているゲイルの身体が、激しくその欲求を揺さぶられる。

 

「なるって言ってよ。オレの女になるって。そしたらオレの精子がこの中に出るよ。中出しすっごく気持ちいいよ。ね?」

 

 ゲイルの中で欲望と理性が争い出す。

 本当ならば、今すぐにでも頷きたい。アランのチンポに屈服し、たっぷりと精子を注ぎ込まれ、幸せに包まれて絶頂したい。中出しでイキたい。

 しかし、ゲイルの脳裏によぎるのは、あのバイエルとの一件だ。

 相手を侮り、高をくくり、流されて、危うく正気を失う所だったのだ。

 ゲイルとて反省くらいする。

 とはいえ、その反省は遅すぎたのかもしれないが。

 

 ゲイルが快楽にとろけた声を上げつつ返答を濁していると、アランが痺れを切らした。

 

「あ~、じゃあ抜いちゃおっかな」

 

 ゲイルの中からペニスがズルリと姿を現す。

 ゲイルの下腹部の中にみっちりと収まっていた肉棒が引き抜かれ、得も言えぬ切なさがゲイルに押し寄せる。

 亀頭だけはチュウチュウと吸い付いているが、それでは足りない。今のゲイルは一番奥で中出しして欲しくて欲しくてたまらないのだ。

 むしろ、亀頭だけの挿入が余計に最奥への切なさを高める。

 

「うあああっ♡ うあっ♡ うあっ♡ あううっ♡」

 

 性欲に支配され、ゲイルは切なそうな声を上げる。

 ゲイルの方から中へ挿入しようとしても、アランに身体をガッチリと押さえ込まれ、ペニスを迎えれない。

 欲求だけが先走り、亀頭だけを咥えるゲイルの腰が勝手にヘコヘコと前後した。

 

「あー、その顔たまんねえ。チンポ欲しい? じゃあさ、月イチでまたセックスさせてよ。そしたら奥までチンポいれてあげる」

 

 唐突にアランの要求のハードルが下がった。

 普通ならば訝しむ所だが、今のゲイルにそんな余裕はない。

 ハードルが下がった事で薄れた抵抗感と、押し寄せる膣の切なさに、ゲイルはまた快楽に流されていく。

 

「いっ、いい……いいから、はっ、はやく……っ♡」

 

「ん? はっきり言って?」

 

「つっ、つきいちで、ヤらせてやるから……っ♡」

 

「うん、それで?」

 

「……っくうぅっ」

 

「ちゃんと言ってくれないとわっかんねーわ」

 

「つきいちでヤらせてやるから……おっ、お前のチンポ……奥までっ♡ いっ、入れてくれよぉ……♡」

 

「約束だからね。はい、ずっぷう~」

 

「んっくうう~~~ッ♡」

 

 その一突きだけで、ゲイルはあっけなく絶頂してしまう。

 ゲイルの頭の中が性行の快楽でいっぱいになっていく。

 自分の性器がオスの性器で広げられ、満たされていく。メスとしての悦びが奥底から湧き上がり、子宮から、"オスに尽くせ、奉仕しろ"と命令が送られてくる。

 切なさが募った分、肉をかき分けて入ってくるペニスが愛おしくてたまらない。

 ゲイルはすかさずアランの腰に足を絡め、もう逃がさないと必死でしがみついた。

 

「んくう~っ♡ はんう~っ♡ んん~っ♡」

 

「あ~~、すごい、イってるね。ほら、オレのチンポ、ゲイルさんのマンコにピッタリじゃん。やっぱオレら相性良すぎじゃね? ここだよね、子宮口。ほら、ここ、ほら」

 

「はううっ♡ はうっ♡ らめっ♡ んくうっ♡」

 

 アランのペニスの先端が、また子宮口へちゅぷちゅぷとキスをする。

 ゲイルの膣は、挿入されれば反射的に変形し、あらゆるペニスにピッタリと噛み合うようになっている。アランと特別相性が良いわけではない。どんな男でもそうなる。

 だが、今のゲイルにとってそんなことはどうでもよかった。今目に前にいるアランのペニスが、極上の快楽をもたらしていることに違いはないのだ。

 

 アランは決して思い切り突かない。ギリギリで満足させない。くすぐるように。馴染ませるように。焦らすように。的確にゲイルの欲求を刺激し、(たかぶ)らせる。

 執拗に行われる子宮口への愛撫が、ゲイルの中出しへの欲求を際限なく高めていく。

 

「中出ししてやるからさぁ、オレの女になってよ」

 

「なっ、なかはっ♡ らめっ♡ ぜったいっ♡ らめっ♡」

 

「そんな事言ってぇ。オレわかるんだからね。ゲイルさん、中出し大好きでしょ」

 

「せっ、せーりっ♡ きたからっ♡ ほっ、ほんとにっ♡ はらんじゃうっ♡ からっ♡」

 

 そう、ゲイルは先日、初潮を迎えていた。

 今までも、"来ないなぁ"とは思っていたが、ゲイル自身が特異な身体のため、そういうものなのだろうと安易に考えていた。

 生理が来なくとも、種付け孕ませプレイはとても興奮するし、中出しも気持ちいい。困ることはない。そう考えていた。

 

 それが、来た。

 本当に孕む可能性を、突きつけられたのだ。

 

 その時ゲイルは、今まで感じることのなかった、言いようのない不安を覚えた。

 本当に子を宿してしまったら、これからどうするのか。

 生活は。稼ぎは。いや、そもそもこの身体でまともな子が産まれるのか。

 

 その日、久しぶりにセックスをしないまま床についた。

 だが、そんな理性とは裏腹に、ゲイルの身体は男を欲して火照り始める。

 ペニスを、精液を欲しがって、身体が疼いてくる。

 連日のセックス漬けの生活は、既にゲイルに日常として染み付いているのだ。

 不安なのは間違いない。なのに、孕むこと、孕ませられることを考えると……

 不安とともに、じわりと滲み出てくる性的興奮を無視することは出来なかった。

 下腹部を撫でる。この奥が、切ない、欲しいと訴えている。

 

 翌日、ゲイルは街をうろついていた。服装は、男の劣情を掻き立てるもの。しかし娼婦のような下品さは出さないように。

 自分から男を誘う勇気はない。

 だが、もし襲われてしまったら。もし酒に酔い、油断したところを連れ込まれてしまったら。

 それはしょうがないこと。レイプ程度、どんな街でもよくある軽犯罪。

 強引に連れ去られ、拘束されて、力任せにペニスをぶち込まれ、中出しされてしまっても、それは事故のようなものだ。

 そう自分を正当化して、ゲイルは()()()()()()()()()()()、街を歩き、食事をし、酒を飲んでいた。

 そこに語りかけてきたのが、アランだったのだ。

 

 

 

「ふ~ん、生理今まできてなかったの?」

 

「なっ、なかったっ♡」

 

「生理来てから誰かとセックスした?」

 

「しっ、してないっ♡ これがっ♡ はじめてっ♡」

 

「じゃあさっきのオレの精子が生理後の新品子宮に一番乗りしたんだ。それで孕むかもよ?」

 

「ふああっ♡」

 

「うわ、マンコピクピクしてきた。ねえいいじゃん。一回中出ししちゃったんだしさ、二回も三回も変わんないって」

 

「だめだからっ♡ なからしはっ♡ ぜったいっ♡ らめらからっ♡」

 

 ダメと言いつつ、ゲイルの身体は勝手に動き出す。

 アランにしがみついたまま腰をクイクイと振る。ぢゅっぷぢゅっぷと淫らな音を立てて肉棒が出入りする。

 

「おっ、へへへ、身体は正直じゃん。わかったわかった。たっぷり中出ししてやっから」

 

 そう言うと、アランもゲイルの身体に抱きしめて、腰を小刻みに動かしだす。

 

「ん~~っ♡ らめっ♡ んくっ♡ んぐっ♡ らめなのにっ♡」

 

 ペニスが高速で前後し、子宮口を連打される。

 ゲイルはもう中出しの事しか考えられない。ピストンの快感を味わいながら、射精の瞬間を今か今かと待ちわびている。

 アランのペニスが既に限界が近い事がわかる。その体勢が、突き方が、中出し以外考えていない事がわかる。

 一突き毎に、どんどん精液への欲求が高まっていく。

 

 そしてアランは、ゲイルの細い肩を抱きしめ、腰に体重を掛けて押し付ける。

 ゲイルからもきゅっとしがみついて目を瞑り、深くなった結合と体内のペニスの感触に意識を集中する。

 二人で抱き合い、肌と肌、腰と腰を密着させる。

 子宮口にペニスの先端が潜り込み、中出しの準備が整う。

 そして、ペニスがビクンと跳ねると、ゲイルの子宮に熱い欲望が解き放たれた。

 

「んっ♡ んん~~ッ♡」

 

 胎の中に感じる熱さと脈動と共に、ゲイルの脳内に快感と幸福がほとばしる。

 待ちに待った種付け射精が、精神をとろけさせていく。

 

 大事なトコにずっぽり入った肉棒が、お前はメスなんだと訴えてくる。

 自分はもうどうしょうもなくメスなんだと強く実感できる、この中出しの瞬間が幸せでたまらない。

 身体の奥へ注ぎ込まれてくる男の熱い欲望が。

 身体の中心に流れ込んでくる暖かい粘液が。

 問答無用で自分のカタチを決定付けるのだ。

 アランがクズ男なのはわかってるはずなのに、とても愛おしい。

 もっと抱かれたい。もっと抱きしめたい。もっと抱きしめて欲しい。

 もっと注ぎ込んで欲しい。

 妊娠させるつもりでぶつけて欲しい。

 

 この前初めて経験した、月経。生理。

 子作りの準備がされてるんだ。この、胎の中で。

 もう、本当に、できちゃうかもしれないんだ。

 俺の、卵子が、男の精子と、がったいして……

 今日は危険日じゃないはずだけど、絶対じゃない。

 中出しされたら、にんしん、しちゃうかもしれないのに。ダメだってわかってるのに。

 もし……本当に……孕んじゃったら……俺は……♡

 

 体内深くに挿入された男性器から、ドクンドクンと精液が注入され、ゲイルはメスの悦びに眼を潤ませて小刻みに震える。

 子宮に注ぎ込まれる精液と、脳内に流れ込む多幸感がリンクする。

 種付け射精が幸福を呼び、幸福が快感を高め、また快感が幸福へ誘う。互いが互いを高め合い、ゲイルは更に中出しの快楽にのめり込んでいく。

 生理という妊娠のリスクを目前にしても、ゲイルはもうこの快楽を忘れることができない。

 いや、リスクを感じるからこそ、余計に快楽が甘美なものとなってしまう。

 中出し絶頂の快楽が、ゲイルの脳へ食い込み、焼き付いていく。精神が色欲に染まっていく。

 

「んう~~っ♡ ん~~っ♡ んふう~っ♡」

 

「おふう~、たまんねえ~。この女を征服してる感覚ぅ。くう~っ」

 

 ゲイルの奥底から何かがこみ上げてくる。

 まずいと思ったのは一瞬だけ。

 ゲイルの精神は、瞬く間にこみ上げてきた感情に飲み込まれた。

 

 ゲイルの枷は外された。

 

「んちゅ♡」

 

「んっ!?」

 

 突然ゲイルがアランの首に腕を回し、唇を重ねる。

 アランは困惑する。ゲイルからキスをされるなど思ってもみなかったのだ。

 それどころか、アランの口の中に舌が潜り込み、熱烈にかき回す。

 ヤル気になった女に恥をかかせるアランではない。即座にアランからも舌を動かし、恋人のように絡め合う。

 溶け合うようなディープキスをしながら、最後の一滴まで絞り出すように精子を流し込んだ。

 

「んふぁ……♡」

 

「へへ、どういう心境の変化? オレの中出しはそんなに良かったか?」

 

「うん……♡ おなかのなか、あったかい……♡」

 

 ゲイルははにかみながら答える。先程とは態度が全く違う。

 

「やっべ、その表情やっべ。ギンギンになったわ。また中出しするね?」

 

「うん♡ もっと犯して♡ 精子、ナカにびゅーってして♡」

 

 潤んだ瞳でアランに懇願する。

 枷が外れた事によって、ゲイルは一転して甘えだす。

 ゲイルからの、熱烈に舌を絡めるキス、愛しさを孕んだ嬌声、ペニスを包む膣までもが、アランを歓迎しているかのようだ。

 急変したゲイルの態度に、アランは少し戸惑ったが、すぐにセックスに夢中になる。

 それから二人は、時間を忘れて性交に耽った。

 二人の夜は更けていく。

 

 



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22 アラン・三

 

 

 何度目かわからない射精の後、アランが語りかける。

 

「なあ、オレの女になってよ」

 

 ちゅぷっ、じゅぷっ、ちゅっぷ。

 

「んっ♡ んっ♡ なるっ♡ なるっ♡」

 

 アランに跨がったゲイルが跳ねる。結合部からペニスが出入りし、ねっとりとした愛液が糸を引く。

 ゲイルの身体が跳ねる度に、乳房も同時にたぽたぽと揺れ、目を奪われたアランは無意識に腕を伸ばしてその乳房を揉みしだく。

 

「あんっ♡ んっ♡」

 

「オレがしたくなったらいつでもすぐヤらせてくれる?」

 

「はんっ♡ んっ♡ うんっ♡ いっ♡ いつでもっ♡ してっ♡ んっ♡」

 

「毎回中出しするけどいいよな?」

 

「あはっ♡ いいっ♡ なからしっ♡ たくさんっ♡ なからし♡ してっ♡」

 

 いつでもチンポを入れてくれる。いつでも中出ししてくれる。

 今のゲイルにとってこの上ない口説き文句だ。

 嬉しさがこみ上げ、二つ返事で了承する。

 

「んじゃーこれからゲイルさんはオレの女ね。誓いのキスしてよ」

 

「んふっ♡ ちゅっ♡ んはっ♡ んちゅるっ♡ れろれろ♡」

 

 言われた通り、ゲイルが唇を重ねながら腰を振る。

 魅惑的に、蠱惑的に、エロティックに。

 ただ舌を這わすだけではない。芯から相手を求めるように、感情を込めて舌を絡ませる。

 それは秘所も同じで、ペニスに熱烈に絡みつき、腰をしならせ、くねらせる。

 ちゅっぷちゅっぷとペニスが膣の中を往復し、リズミカルに膣をキュッキュッと締めてペニスに奉仕する。

 

「はふぅ。なあ、オレのチンポ好き?」

 

「すきっ♡ らいすきっ♡」

 

 当然、ゲイル自身もセックスを楽しんでいる。

 往復の度にカリが膣壁をこすり甘い快感が走る。

 ピストンの度に亀頭が子宮口を突っついて背筋に電流が走る。

 最奥まで挿入した時の深い一体感が女の幸せを呼び起こす。

 そして何よりアランの持久力だ。ペニスのサイズそのものは標準的だが、何発出してもペニスは萎えず、精液も濃いし勢いがある。

 アランもただゲイルの穴を楽しむだけではない。

 その自慢の手管でクリトリスや乳首を転がし、ペニスをスポットに擦り付け、ゲイルを悦ばせる。

 

「オレのことは?」

 

「すきっ♡ あらんすきっ♡ すきっ♡ ん~っ♡」

 

「オレも好き~。ん~ちゅっちゅっ。うへへ、ゲイルさんがこんなんなっちゃうなんてな。悪くないね、こういうのも。あ~またイきそう」

 

「んっ♡ んっ♡ いいよっ♡ だしてだしてっ♡」

 

 ゲイルは両手でハートを作り、へその下の刻印を指で囲む。下腹部の刻印は、わかる者ならばそれが子宮を象っているものとハッキリとわかる形状だ。

 

「ここっ♡ このなかっ♡ このおくにっ♡ せーしっ♡ らして♡」

 

 ここを狙え、ペニスの銃でその奥を狙い撃て、と誘う。

 

「あ~~も~~! そういうことするぅ!」

 

「あはっ♡ あんっ♡ はげしっ♡ すきっ♡ すきっ♡」

 

「フッ! フッ! ホントにデキても知らねえかんな! うおお!」

 

「うんっ♡ うんっ♡ はらませてっ♡ なかっ♡ なからしっ♡ してっ♡」

 

 アランもゲイルの太ももを掴み、下から突き上げて騎乗位の秘所に深く挿入する。

 そして体内でそそり立つペニスから、ゲイルをメスにする汁が噴出する。

 

「ん~~っ♡ んん~っ♡」

 

 狙いはもちろん一番奥。刻印が示す、その秘所の奥。

 とは言え、その発射口には、当然の如く子宮口がしゃぶりついている。ハナから狙いなど必要なく、ゴールのほうから迎えに来ているのだ。

 

「くおおお……お望み通り……孕ませたらあ……」

 

 アランが射精しながら下からグッと突き上げ、更に奥へとねじ込む。

 

「あ~~♡ あはあ~♡ きてるぅ♡ せーし、きちゃってるぅ♡ んくっ♡ くううっ♡」

 

 中出しの快感が頭の中をぐるぐると駆け回り、全身へ染み込んでいく。

 ゲイルは、今まさに種付けされている下腹部を撫でながら、ほとばしる快感と幸福を味わう。

 

 手のひらの感触が、チンポが入りこんでいる深さを伝えてくる。

 目線を秘所へ向ければ、アランのチンポが自分の中に潜り込んでいるのが見える。自分が男のモノを咥え込んでいる光景は、いつ見ても(たかぶ)ってくる。

 

「んんっ♡ んふうっ♡ ん~~っ♡」

 

 今また、アランのチンポが脈動して胎の中にぬくもりが広がる。

 ビクンと下腹部の中でチンポが跳ねる。

 あったかい精子が、びゅくっびゅくって注がれて、子宮が悦んじゃってる。

 アランの射精は二度や三度どころじゃない。全部ナカに出されてる。

 孕んじゃう。

 アランの赤ちゃん、孕んじゃう。

 

「はあ~っ♡ まっ、またっ♡ なかだしっ♡ されちゃった♡ どくんっどくんって♡ たねづけっ♡ されちゃったっ♡」

 

「ふう~。しっかり孕めよぉ。責任はとんねえけど」

 

 快感と感動に涙目で震えながら、ゲイルは下腹部を撫でる。その中には、アランが何度も注ぎ込んだ精液が貯まっている。

 ゲイルの感情に呼応して、刻印が紫色に光りだす。

 小さなハート型から始まり、卵管のような模様、そして茨のような模様が腰へ巻き付き、太ももにまで絡みつくように成長している妖しい刻印。

 刻印も中出しを悦ぶように、蛍のような淡い光が明暗を繰り返す。

 

 ゲイルの中で萎えつつあったペニスが、ムクムクと硬さを取り戻した。

 

「ふあっ♡ あはっ♡ なかでっ♡ んふっ♡」

 

 アランが身体の異変を感じ取る。

 ペニスがジリジリと熱い。頭がクラクラする。甘い香りが鼻を突く。

 心臓が早鐘を打ち、活気が溢れてくる。抑えきれない性欲が湧いてくる。

 もっとこの女を犯したい。もっと射精したい。もっと交わりたい。

 この女のナカに、奥に、自分の子種を植え付けたい。

 何かに当てられたかのように、オスとしての本能がグツグツと煮えたぎってくる。

 だが意識は鮮明だ。脳に血が巡る。理性が欲望を御する。

 この女をどう攻めるべきか、どうすれば楽しめるのか、どうすれば悦ぶのか、数々の手法が思い浮かんでくる。

 

「孕む確率、もっと上げてやるよ。いいよな?」

 

「あはっ♡ もっとっ♡ いっぱいっ♡ なからししてっ♡ はらませてっ♡」

 

 アランとゲイルは愛し合う恋人のように抱き合い、肌を密着させ、舌を絡ませ、唾液を交換し、子宮へ子種を注ぐ。

 

 ゲイルの態度の豹変には理由がある。

 

 ゲイルの身体には、バイエルに盛られたクスリの効果がいくらか残っている。ゲイルが意図的に残したものだ。

 完全に消すことは可能だった。

 が、それをゲイルが躊躇したのだ。

 

 ゲイルは元々ドライな性格である。特定個人に対して強い感情を持つことは滅多にない。

 そんなゲイルが、クスリによるものとはいえ、男を愛し、愛する男との満たされるセックスを体験してしまった。

 しっかりと根付いていた中出しの快楽に、更にそれが加わった時の多幸感、充足感はゲイルのそれまでの常識を易々と覆すものだった。

 

 "消そうと思えば、いつでも消せるから……"

 

 そう言い訳をして、危険とわかっているはずのクスリの効果をいくらか残した。

 枷が外れたことによって、それが表層に現れるのだ。

 今のゲイルは、枷が外れてしまえば、行為中の相手を本気で愛し、尽くし、甘え、そして甘えさせる。

 愛しい男との交わりは、あまりに甘美で、満たされて。

 子を孕み、産んでもいいとすら思うほどに。

 

 アランは欲望の赴くままに何度も種付け射精を堪能し、ゲイルも喜んでそれを子宮へと迎え入れる。

 快楽の為でもある。しかし快楽だけでなく、その行為による"結果"も含めて、子種を欲した。

 この時だけは、事実上紛れもなくゲイルはアランの女だった。

 

 二人のまぐわいは、空が白み始めるまで続いた。

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「ヤッちまった……」

 

 目を覚ましたゲイルは頭を抱えた。時刻は昼過ぎである。

 昨夜の事はしっかり覚えている。そこに至るまでの経緯から何もかも、しっかりと。

 無様に酔っ払い、簡単に誘導され、好き勝手に弄ばれ、結局快楽に負けてアランの女になる事を承諾し、数え切れないほど中出しされてしまった。

 

 中出し…… たくさん、中出しされてしまったのだ…… この子宮の中に。

 下腹部を撫でると、まだ中で精子の存在を感じる気がして、じわりと淫欲が芽吹いてきてしまう。慌てて頭を振って冷静さを取り戻す。過ぎてしまったことはもうどうしようもない。的中してないことを祈ろう。

 アランへの怒りよりも、自分自身の不甲斐なさに頭が痛くなる。幸いなことに二日酔いはないので、この頭痛は心理的なものだ。

 

 しかし、あいつは一体何を企んでいるのか。部屋にアランの姿はない。

 思い浮かぶのは契約魔術。相手から承諾の言葉を引き出すことで、行動を制限及び遵守させる高等魔術だ。一度成立してしまったら、それを覆すのは容易ではない。

 しかしアランは魔法などからっきしだったはず。高度な技術と知識が必要な契約魔術は、ほんの数年で習得できるほど生易しいものではない。

 とりあえず全身くまなく精査してみる。幸か不幸か、何も検出はされなかった。ひとまず安堵する。

 口約束ならば別にいい。相手は所詮アランだ。適当に知らぬ存ぜぬを貫けばいい。

 ベッドの上でこれからどうしようか考えていると、アランがドアから入ってきた。ミネラルウォーターの瓶を2つ持っている。

 ゲイルは今ニーソックスしか身に着けていない。咄嗟にシーツで身体を隠した。

 

「おぅ、おはよ。昨日は燃えたね。オレら、身体の相性バツグンじゃん。はい水」

 

「……んくんく。てめえ、勘違いすんじゃねえぞ。昨夜はアレだ。その……気分がノるとああなっちまうんだよ。別にお前が特別って訳でもねえからな」

 

「なに? 照れてんの? 可愛いとこあんね」

 

「ちがうわ、アホ」

 

 紛れもなく本心の言葉であるが、考え直してみれば、この言い方は勘違いを増長させるものだとゲイル自身も思った。

 どう伝えればいいか悩んでいると、アランがおもむろにズボンを下ろす。

 

「じゃあ早速、チンポしゃぶってくんない? はいポロン」

 

「は? しねよ」

 

「ねえ、ほら、しゃぶってよ。ゲイルさんが愛おしそうにチンポしゃぶってる顔が見たいな~」

 

「おい、いい加減にしろよ? ってかチンポくっせぇんだけど。……おい、なんで徐々に勃ってきてんだ」

 

「ゲイルさんがオレのチンポのニオイ嗅いでると思うと興奮してきちまった」

 

「変態かよてめぇ。いや、ホントくっせえから」

 

「そんな事言いつつさぁ」

 

「はあ、くっさ。ちんぽくっさ。スンスン、はあ、くっさ。んっ♡ んんっ♡ はあ♡」

 

「ニオイだけで興奮してるじゃん。昨日も思ったんだけど、ゲイルさんさぁ、大分仕込まれてるよね?」

 

 ペニスの匂いが麻薬の如くゲイルの脳に回っていく。

 顔の前に突きつけられたペニスが、ムクムクと少しずつ戦闘態勢へと移っていく。

 数時間前まで自分の中に潜り込み、大事なところを突き、そして精液を注入した姿へと変化していく。

 これが、この大きさのペニスが、自分の中に入っていたと思うと、また秘所が疼いてくる。

 アランの精液と自分の愛液が乾いたキツイ匂いに、ゲイルの意識は性欲にとろけていく。

 

「ほら、舐めて舐めて」

 

「はあぁっ♡ しょ、しょうがねえな♡ んくっ♡ れろっ♡ ぺろぺろ♡ ちゅぽっ♡」

 

「文句いいつつちゃんとフェラしてくれるゲイルさん大好き。サイコー。あ~、いいよいいよ~。そのまま咥えてよ」

 

「んふっ♡ ちゅる♡ ちゅっぽ♡ ちゅっぽ♡ ちゅぱっ♡ んちゅるっ♡」

 

「マンコも良かったけどクチも良いな。思った通り、めっちゃ愛おしそうに舐めてくれるし。そんなにオレのチンポ好き?」

 

「ちゅっぽ♡ ちゅっ♡ れろれろ♡ ちゅるる♡ ちゅっぽ♡ ちゅっぽ♡ ちゅっぽ♡ ちゅっぽ♡」

 

「あ~、ヤッバそれ。出る出る。口ん中に出すよ。ウッ」

 

「んふっ♡ んっ♡ くふっ♡ ん~♡ ちゅるる♡」

 

「おふ~。まだ飲みこむなよ。そのまま口開けて、オレに見せて」

 

「んっ♡ んふっ♡ はあ~っ♡」

 

「おー、昨日あんだけやったのに、またこんなに出たんだ。んじゃ、よく味わって飲み込んで」

 

「んくっ♡ んっ♡ んぐっ♡ んこくっ♡」

 

 アランの子種が、喉に絡みつきながらお腹の中へと落ちていく。

 身体の芯が熱くなっていく。

 息を吸い込めば、精液のニオイが脳に巡り、頭がクラクラする。

 

「どう? おいしい?」

 

「……んっ、んなわけないだろぉ♡ ばかあ……♡」

 

「そっかそっか。じゃあヤろうか」

 

「しょうが、ねえなぁ……♡」

 

 ゲイルは纏っていたシーツを払い、ベッドの上で股を開く。顔は紅潮し、その眼はもうペニスに釘付けで、期待たっぷりな視線を送っている。

 アランが上からのしかかり、勃起ペニスが秘所に当てられる。

 ゲイルの秘所はすでにしっとりと濡れ、前戯もなしにずぶずぶと挿入されていく。

 

「んくう~~ん♡」

 

 肉を掻き分けて、アランのペニスが奥まで入った。

 頭の片隅で警告が発せられる。

 "また簡単に流されて" "なんてバカなことを" "いいように利用されてるだけだ"

 わかっている。理解している。

 

 だが、アランという男に。

 自分よりも格下のクズ男に、ただの性欲処理に利用されて屈服させられる様を思うと、背筋がゾクゾクとしてくる。

 ゲイルの秘めたるレイプ願望が、奥までみっちりと挿入されたペニスの快感を増幅する。

 

「あ~、やっぱこのマンコ最高だわ~。一体感っつーの? たまんねえ」

 

「ち、調子っ♡ んっ♡ のんじゃっ♡ ねえよっ♡」

 

「昨日のかわいいゲイルちゃんはどこ行ったのかなぁ? しょうがねーわ。またオレが素直にさせてやっか。そいっ、そいっ」

 

「はうっ♡ ちゃ、ちゃんなんかつけてっ♡ んくっ♡ よぶなっ♡ てめっ♡」

 

「素直なゲイルちゃんが好きだなあ、オレ。ほら、子宮口いじめてやるよ」

 

「んくうっ♡ んくっ♡ はうっ♡」

 

「かわいいゲイルちゃんになあれ。そいっ、そいっ」

 

「ふあっ♡ んあっ♡ やめっ♡」

 

「また一番奥で種付けしてあげるからね~」

 

 アランのペニスがゲイルの弱点を刺激する度に、快感とともに愛情が沸き上がってきてしまう。

 身体が昨夜の快楽を覚えている。また溶け合うようなセックスを欲しているのだ。

 程なくして、ゲイルはアランのペニスによって素直にさせられ、二人はまた恋人じみた孕まセックスに没頭する。

 

 ゲイルが感じていたはずのアランへの嫌悪は、一晩の情事ですっかり霧散していた。

 

 

 



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23 アラン・四

 

……

 

 

 アランと出会ってから二日後。

 その夕食時。

 

 街のとある宿屋兼食堂は、大賑わいだった。

 この店は、料理が特別旨いわけでもなく、安いわけでもなく、酒の種類が豊富なわけでもない。

 昨日までは、この半分どころか五分の一も客がいなかった。

 

 何故一晩で大繁盛したのか。

 その理由は、ゲイルである。

 ゲイルは、この食堂でウェイトレスをやることになってしまったのだ。

 

 何故そんなことになったのか。

 時はその前日にさかのぼる。

 

 

 

 

 寝起きフェラからセックスした後の夜。

 

 睡眠を挟んだとはいえ、15時間以上ずっと食事なしで交尾をしていた二人は、流石に空腹に耐えきれず街へ繰り出した。

 

 腹は減っているが、快楽の余韻を引きずったままの、どこかぽやんとしたゲイルを引き連れて、アランはとある食堂へと赴く。

 そこで食事をしながら、アランがウェイトレスの仕事を紹介したのだ。

 ゲイルはまったく乗り気ではなかったが、アランによって無理やり承諾させられてしまった。

 

 アランのとった行動は、今までのセックスに比べればごく簡単なセクハラでしかない。

 人の目を盗んで、卑猥な言葉をささやく。太ももを撫でる。下腹部を軽くノックする。

 ただそれだけで、ゲイルは押し寄せる快楽の波に逆らえなかった。

 

 孕む可能性をささやかれると、またじわりと熱くなってくる。

 太ももだけでは物足りない。もっとさわって、いじって、抱きしめて、ぶち込んで欲しくなってしまう。

 下腹部をノックされるのが一番危ない。ついさっき、そのナカへと出されたものがたぷんと揺れて、甘い快感がゾクリと走ってしまう。

 

 そうして(たかぶ)らされてから、アランが交換条件を持ちかけた。

 

「この仕事請けてくれたら、この後すぐ可愛がってやるよ。なんならここの便所でも、そこの路地裏でヤッてもいい。奥までハメて、たっぷり中出ししてやるよ。どうする?」

 

 顔が火照る。

 頭がぐるぐるする。

 視線が定まらない。

 つばを飲み込む音がやけに大きい。

 汗が首筋を伝っていく。

 長い沈黙。

 

 そしてゲイルは、契約書にサインした。

 すぐに路地裏で3回中出ししてもらった。

 そのまま二人でゲイルの宿へ赴き、また激しくセックスした。

 

 

 

 

 

 昼過ぎに起きたゲイルは、また激しく後悔した。

 アランとのセックスなど、取引などしなくともどうせまたヤったのだ。アランの手管に乗せられて、交換条件にすらなっていない条件を飲んでしまった訳だ。自分の事ながら頭が痛い。

 とは言え、流石に今更断れない。アランの提示した「報酬」はもう受け取ってしまったのだ。これを反故にしてしまえば信用にも関わるし、相手がアランとは言え流石にゲイルのプライドが許さない。

 アランが提示した条件は、あくまでも「引き受ける事を条件にセックスしてやる」のため、ウェイトレスとしての給金はきちんと出るが、ゲイルにしてみればあまりに安い金額だ。

 全く持って旨味がない。あのクズを一発ぶん殴りたかったが、部屋には既にいなかった。"ちゃんと店に行くように"とメモと店への簡単な地図だけが残されている。

 気乗りはしないが、これもゲイル自身の失態が招いた事だ。

 気持ちを切り替えて、身だしなみを整え始めた。

 

 

……

 

 

 ゲイルがバイトする事になった宿屋件食堂は、過去に一攫千金を得た冒険者が始め、息子が継いだものだ。

 昔はそこそこ流行っていたらしいが、先代夫婦が亡くなってからはあっという間に寂れていった。元々先代のコネクションで成り立っていた宿なのだ。

 だが現店主の息子に焦りはない。先代の遺産はまだ十分にあり、彼一人暮らしていくのならまったく問題ないのである。

 ウェイトレスを募集しているが"暇すぎて退屈だし、潤いが欲しかったから"などという理由だ。手伝いが必要なほどの客は来ない。

 宿泊客に至っては、最後の客がいつだったかすら思い出せない。部屋の掃除もおざなりだ。好き好んでここに泊まる人間はいないだろう。

 

 そんな店に、突然アランが現れた。彼の悪評は店主も知っているため、あまり相手にしたくなかったが、アランは一方的に語り始めた。

 

 "なあ、取引しないか? オレがこの店の給仕に、とびきりの女を連れてきてやる。代わりに、そいつが働く日の売上の三割をオレに寄越せ。なあ、どうだ?"

 

 信用出来るわけがない。給仕に売上の三割など正気の沙汰じゃない。仮に、本当にイイ女が来ても、アランに騙されている可哀想な娘だ。そんな女を給仕にしても、こっちの気分が悪い。さっさと帰れと伝えるが、アランは食い下がる。

 

 "わかったわかった。白状してやろう。連れてくる女はゲイルだ。ルーク級の、あのゲイル。あのエロい格好してるあいつだ。知ってるだろ? 同名の別人なんて手は使わねえよ。間違いなく本人を連れてくる。金も売上じゃなくて利益の三割、いや二割でいい。どうだ?"

 

 その言葉には心が揺れた。ゲイルの事は街中で何度か見かけている。

 扇情的な格好をしながらも、纏う空気は娼婦とは一線を画す、とても良い女だ。あれが昔男だったなど信じられない。

 

 あれがウチでウェイトレスを……

 あれが料理運んでくれる……

 あれがコーヒー淹れてくれる……

 あれがベッドメイクしてくれる……

 あれが微笑んでくれる……

 あれが……彼女が注文をとって、僕が料理をして、合図をすると彼女が料理を持っていって……

 そんなん僕と彼女の共同作業ですやん!!

 

 独身のまま40を過ぎてしまった店主の胸と股間が熱くなる。寄ってくる女はすべて遺産狙いだと思って警戒しすぎた結果だ。

 そもそもこの店の売上などハシタ金だ。二割でも三割でも持っていけばいい。だがしかし、こいつはクズのアランだ。

 ルーク級ともあろう人間が、そう簡単にクズの口車に乗り、こんな寂れた宿の安い仕事を請けさせる事が出来るのだろうか?

 

 "へえ、そこまで言うなら売上の三割でいいよな? ならこの契約書にサインしな。"

 

 店主は訝しむ。ここまでこちら側に損がないのだ。

 店主の頭が金勘定に回り始める。元々この店の売上なんて二束三文、その上、この都市の税金は安い為、三割を取られても問題ない。計算が面倒になるだけだ。

 

 "まだ踏み切れないのか? しょうがないな。なら金貨3枚だ。これから一週間以内にゲイルを連れてこれなかったら、金貨3枚出す。契約書にも追記してやろう。どうだ?"

 

 ずいぶんと自信があるようだ。

 金には困ってないが、貯蓄は多いに越したことはない。何もせずに金貨が入ってくるのなら受けてやってもいいだろう。その金でウェイトレスの給金をはずんでやってもいい。

 契約書をじっくりと読み、罠が無いことを確認し、店主はサインしてやった。

 

 "くくく、ありがとよ。お互いWin-Winの関係でいこうじゃないか。間違いなくゲイルを連れてきてやるから、楽しみにしてな。ああそうだ、一部屋だけでいいから、きちんと掃除して、シーツも綺麗にしておけ。使うから。くくく。"

 

 そう言ってアランは帰って行った。

 売上の三割は流石に惜しかったかも、と思うものの、まず本当にゲイルを連れてこれるとは思っていない。

 どちらにしろ損はない。失敗しても金貨3枚丸儲けなのだ。

 ごく低確率でも"期待して過ごす"という楽しみが増えた。

 店主はそう考え、部屋の掃除の為に重い腰を上げるのだった。

 

 

 

 

 



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24 アラン・五

 

……

 

 

 

「やあいらっしゃい。アランから聞いてるよ。いや~、まさか本当にゲイルさんが来てくれるとは思ってなかったよ。請けてくれてありがとう。よろしく頼むね」

 

「お、おう……よろしく」

 

 店に出向いたゲイルを、店主が満面の笑顔で迎えた。

 ずいぶん歓迎されているが、元々全く請ける気が無かったゲイルは少し申し訳なく思ってしまう。

 

「それじゃあ、早速これに着替えて。二階の一番奥の部屋を使ってくれ」

 

 渡された仕事着は、白いブラウスに紺色のロングスカート、そしてエプロン。フリルがついた可愛らしいデザインだ。

 このような実用性よりもデザインを優先した服はかなり高価なはずだ。こんな寂れた宿に、こんな服を用意するゆとりがあるとは思えないが、それはゲイルが踏み込むべき領域ではないだろう。気にしないことにした。

 ゲイルは可愛らしい服を着るのが好きだ。服装一つで男からの視線が如実に変わるのがいい。男を手玉に取っているようで楽しい。

 元々身長にコンプレックスがあったゲイルは、今や完全に男には力と体格で敵わなくなってしまった分、こういう面で優越感を得ている。

 憂鬱なだけの仕事かと思っていたが、かわいい服を着れるのならば悪くない。

 ゲイルは前向きに考えて、渡された制服を抱えてウキウキしながら二階の部屋へと向かった。

 

「おーいてんちょーう! これちょっと胸がキツいんだけど~!」

 

「ホント? 悪いんだけど他に替えがないから、それで我慢してくんない?」

 

「あ~、まぁ入んない訳じゃねえし、しょうがないかぁ」

 

 ブラウスの胸元のボタンを外して少し胸をはだけさせたゲイルの姿は、大変いかがわしかった。

 

 

 

 

 ゲイルがウェイトレスをしている。

 

 その噂は瞬く間に街中に広まった。

 噂をばら撒いたのは当然アランだ。

 元々冒険者として名が売れており、近頃は(今までとは別種の)ファンが急増したゲイルだ。

 ランチタイムはとうに過ぎているというのに、ウェイトレスとして働くゲイルを一目見ようと、多くの男がその店に殺到した。

 

 チリンチリ~ン

 

「いらっしゃいませー。何名様ですか?」

 

「来てやったぞ、ゲイル! ギャハハ! マジでウェイトレスやってるし! ウヒャヒャヒャ! ウケる! しかも似合ってる!」

 

「ゲイルちゃ~ん! よく似合っててかわいいぞ! ゲハハハ!」

 

「お? てめえらかよ! ちゃんをつけんな、ちゃんを! あ~、4人? うん、そこに座れ、そこ。笑ってねえで売上に貢献しろや。この店、あんま旨くねーけど」

 

「給仕が料理にケチつけんなよ! あ~、なんかマシなのは?」

 

「ん~、オムライスが一番マシかな」

 

「んじゃそれで」

 

「俺も同じでいいや。ゲイルの料理評価はそこそこ信用できるし」

 

「お前等も? みんな同じ? おっけ。水飲んで待ってな。あ、はーい、只今お伺いしまーす。それじゃあな、ゆっくりしてけ」

 

「おう」

 

「…………かわいいな」

 

「…………うん」

 

「やっぱ結構おっぱいあるな……」

 

「揉みしだきてえ」

 

「ロングスカートでも俺には見えるぜぇ……そのケツ、そのふとももがよぉ……」

 

「お前ヤバいおくすりとかやってないよね?」

 

「ヤらせてくんねえかな……一晩誘ってみようかな……」

 

「いいんじゃね? サイモンとパトリックが帰ってきたらどうなるか知らんけど」

 

「う~ん、あいつら怖いからやめとく」

 

 そんなこんなで、ゲイルは真面目に働いた。

 

 

「マズくはねえけど、ホントに微妙な味だな! ギャハハ!」

 

「何かが足りねえ。何かが足りねえのはわかるんだけど……何が足りないかはわからん…… こんな微妙な味、狙っても出せねえよ」

 

「ゲイルがいなけりゃもう来ねえな、この店」

 

「ゲイルがいれば?」

 

「また来る」

 

「俺も」

 

 

 

 

 

 

 夕食時も過ぎて客もまばらになり、ゲイルが賄いを食べていた時、ふらりとアランが現れ、メモを置いていった。

 店の地下倉庫へ来いとのことだ。

 要件があるのならその場で言えばいいし、こっちを呼びつける態度にイラッときたが、ゲイルは手早くメシをかき込んで地下倉庫へと降りた。

 

「おい、とりあえず一発ぶん殴っていいか?」

 

「うわ、フキゲン」

 

「たりめえだろ。無理やりこんな仕事させやがってよぉ」

 

「それはちゃんと同意とったじゃん。ゲイルさんの甘さの結果だよこれは」

 

「ハァ、もういいわ。で? なに? 休憩時間も長くねえんだからさ、手短に頼むわ」

 

「どう? かわいい服着て働く気分は」

 

「最悪。見世物にされてる気分だ。何より、今てめーが目の前にいるからな」

 

「でもかわいいよ、その服着たゲイルさん。オレチンポ勃っちゃった。ほら」

 

 そう言ってアランはイチモツを取り出す。

 見事な勃起チンポがブルンと姿を現した。

 

「馬鹿かてめえ。こんなとこで出してんじゃねえよ。くたばれ」

 

「んじゃ、後ろ向いてそこに手ぇついてよ」

 

「え? や、ヤんの? 今? ここで? お、終わってからでいいだろ?」

 

「はやくう。オレもう我慢できない」

 

「擦り付けてくんなよ、服汚れるだろ…… ハァ、しょうがねえな……」

 

 そう言ってゲイルは、スカートの中に手を入れてショーツを下ろし、言われた通り後ろを向いて、積まれた箱に手を付く。

 

「ほら、早く済ませろよ」

 

「そーそー。ゲイルちゃん、オレの事わかってきたじゃん」

 

「ちゃんをつけんなっつってんだろ。ったく……あっ♡ んんっ♡」

 

 すぐにアランがロングスカートを(まさぐ)りだす。

 ペニスが蜜壺の入り口にぴたりと添えられると、ゲイルの意志とは無関係に甘い声が漏れる。

 そして、アランはゲイルの腰を掴み……

 

「ふああぁ……♡」

 

 ペニスが膣を押し広げていく快感に、ゲイルは背筋を反らせてビクビクと震える。肉をかき分け、抵抗なく奥まで入り込み、男女の性器がぴったりと重なり合うと、ゲイルの脳が淫欲に侵食され始める。

 アランに犯されてから幾日も経っていないにも関わらず、形も大きさもしっかり覚えてしまった、覚えさせられてしまったペニス。

 正常位とは違うバックからの挿入感が、新鮮な快感を与えてくる。

 

「んはああ……♡」

 

 自分の中に男を招き入れる事の悦びが、溜め息となってゲイルの口から漏れる。

 

「はあ~、飽きねえわ~、ゲイルマンコ。しょうがないとか言いつつもう濡れてるし、期待してたろ?」

 

 そう言いながら、アランはゲイルの服の中に手を入れ、隆起し始めた乳首をクニクニと捏ねる。

 アランの言うとおりだった。

 ゲイルは、アランが勃起チンポを出した時から、いや、ここに呼び出された時から既に、アランとのセックスを期待していた。

 アランは、良くも悪くも下半身に正直で、その言動のほとんどはセックスのためのものだ。

 ゲイルの中で、アランに話しかけられる事が、セックスのトリガーとしてすり込み始めているのだ。

 

「んっ♡ しっしてないっ♡ んふっ♡ はっ、早いとこっ♡ んっ♡ 済ませっちまえよっ♡」

 

「そんな事言ってぇ。チンポ入れた時、スッゲ嬉しそうな声出してたじゃん。一緒に楽しもうぜ?」

 

 アランは乳首への愛撫を続けながら、腰を使ってえぐりこむようにペニスを突き入れる。

 ペニスの先端と子宮口がちゅぷっ♡ちゅぷっ♡とキスをすると、その度に淫欲が脳に食い込んでいく。

 

「んうっ♡ んくぅっ♡」

 

「マンコのほうは素直じゃん。すぐ甘えてきちゃって。オレのチンポそんなに好きかぁ? へへへ」

 

 ゲイルの強がりとは裏腹に、その粘膜は早速ペニスに奉仕を始める。

 気持ちよくしてくれるおチンポを離さまいと膣が絡みつき、子宮口が愛おしそうに吸い付く。

 アランは気を良くして、執拗に乳首と子宮口をこね回す。

 ツンと上を向いた乳首をクニクニといじりながら、ペニスをゆっくりと抽送し、ゲイルの一番奥にちゅぷうっ♡と押し付ける。ゲイルの脳に大きな快感と愛しさが生まれ、理性が押し出されていく。

 そしてまたゆっくりと引き抜かれると、張り付いた子宮口がぷりゅっ♡と引き剥がされ、快感と同時に切なさが募る。膣の奥が寂しいと訴える。

 

「んくう~ん♡ はあっ♡ それっ♡ んくっ♡ だめぇ♡ んくう~っ♡」

 

 完全に調教済みの子宮口をねっとりと刺激され、脳内が淫欲に支配されていく。

 ダメと言いつつ、既にゲイルもアランに合わせて腰を振り、より深く、より快感を得ようと動いている。

 

 アランが乳首から手を離し、そのまま身体を撫でながら下へ伸ばしていく。そして、さわさわと太ももを撫でる。

 太ももを撫でられるだけでゾワゾワと快感が走る。股の内側が弱いようで、ここを撫でられると膣がヒクヒクと震えた。

 ゲイルは片足を上げて身体をひねり、立ち側位になりながらアランに顔を近づけていく。

 

 熱っぽい吐息。とろけた瞳。開いた唇と艶やかな舌。紅潮した顔。

 アランはすぐにキスの催促だと感づき、唇を迎えにいく。求めているのは、ただ唇を合わせるだけの児戯ではない。激しく舌を絡み合わせる、口で性行するかのようなキスだ。

 アランは上げられた片足と腰を抱え、その体位を維持しながら、ゲイルの口の中に舌を潜り込ませる。

 

 舌と性器、両方を同時に交える。ゲイルはこれが大好きだ。

 上も下も男と密着し、結合し、体温と鼓動を感じ、粘膜を絡め合う。

 男に求められ、交尾し、奉仕し、快感を分かち合う。それがこの上なく嬉しい。メスとしての感覚が膨らんでいく。

 頭の奥が痺れて理性が追い出されていく。交尾の事以外考えられなくなっていく。

 

 やばいっ♡ やばいこれっ♡ アランのちんぽっ♡ 弱いトコっ♡ 当ててきてっ♡ やばいっ♡ こんなの♡ 癖になるっ♡ 欲しくなってくるっ♡ 精子っ♡ 本気でアランの精子欲しくなってくるっ♡

 

 ぱちゅっ、ちゅぷっ、ぢゅぱっ、ぱちゅっ。

 舌の絡み合いは一層淫靡になり、腰使いが速くなる。

 アランはゲイルを横からしっかり抱きしめ、引き抜き、そして奥まで打ち付ける。

 



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25 アラン・六

 

 ぱちゅっ、ちゅぷっ、ぢゅぱっ、ぱちゅっ。

 舌の絡み合いは一層淫靡になり、腰使いが速くなる。

 アランはゲイルをしっかり抱きしめ、引き抜き、そして奥まで打ち付ける。

 

「ぷはっ。フッ! そら! フッ! 出すぞ! どこに欲しい!?」

 

「んっ♡ んぐっ♡ すっ♡ すきにっ♡ すきにしろよっ♡」

 

 どうせ何を言っても中出しするんだろうと、ゲイルはそんな返事をした。

 だがその瞬間、アランは腰の動きをピタリと止めた。

 

「んくっ♡ はっ♡ はあっ♡ はあっ……♡ なんっ、なんで……」

 

「まーたそんな事言って。ほらほら、正直に言いなよ。精子、どこに欲しい? ほらっ!」

 

 掛け声とともに、ゲイルの子宮口にペニスがグッグッと押し込まれる。

 

「んぐううっ♡ んくっ♡ んんっ♡」

 

「ちゃんと言ってくれないと外に出すよ? いい?」

 

 そう言って、力任せに腕を引っ張り、腰を押し付け、一番深く挿入した状態で動きを止める。

 

「はうあ……♡ あう……♡ あふ……♡」

 

 だめだ。これはだめだ。

 ゲイルは直感でわかってしまった。

 鋭敏な感覚が、下腹部の中でみっちりと肉を押し広げるペニスを寸分違わず感じ取る。

 今まさにペニスの先端が子宮口をこじ開け、照準をその中へと向けている。

 漏れ出たカウパーが一足先にその中へ滴り、ゲイルの脳を一層淫乱に仕立てていく。

 覚え込まされた肉棒の味が、何度も染み込まされた精子の味を思い起こしてしまう。

 もどかしい快感が急速に溜まっていく。

 ゲイルの意識がぐるぐると回る。

 

「うう~~っ♡ うっ♡ うっ♡ うう~~っ♡」

 

 欲しがってる。

 子宮が。

 頭の奥が熱くなって、種付けを求めてる。

 

 完璧に把握されている。

 自分の弱点。感じるスポット。特に好きなプレイ。

 ゲイルが既に、メスのセックスの虜になってる事も。

 効果的な焦らし方も、どの段階でイクのかすら把握されている。

 

 欲しい。精子欲しい。アランの精子を子宮にどぷどぷ出されてイきたい。種付けされてイきたい。

 だが、ここで言うことを聞けば、アランは更に調子に乗るだろう。

 もう既に、アランはゲイルを所有物かのように扱っている。

 これが更に図に乗るのだ。

 今はまだ、ただの性欲処理とウェイトレス程度で済んでいるが、次はどうなるかわからない。

 もっと過激な要求をされるかもしれない。

 

 今もアランがペニスをグイグイと食い込ませ、返答を迫る。

 "オレの物になれ"

 "屈服の言葉を吐け"

 そう言っている気がしてならない。

 

 事実、アランはゲイルの口からその言葉を引き出したいのだ。

 枷が外れたゲイルではなく、理性を保ったゲイルに言わせたい。

 その言葉を発することで、アランのペニスに屈したという認識を植え付けたいのだ。

 

 結合部から、ねっとりとした愛液が糸を引いて滴る。

 秘所にぶち込まれたペニスが、ゲイルの精神を蝕んでいく。

 焦れったい快楽が浸透していき、理性を溶かしていく。

 

 そして、ゲイルは―――

 

「……な、ナカ……♡ ナカに、出して……♡」

 

「ナカじゃわかんないわ。ちゃんと言ってよ」

 

「ち、膣の奥に♡ 子宮に……♡」

 

「子宮に精子入るとどうなるか知ってるよね? どうなんの?」

 

「こっ♡ 子供、デキちゃう……♡」

 

「いいの?」

 

「いっ、いいっ♡ 孕んでもいいから……♡ なかだし♡ してっ♡ してくれ♡」

 

 言ってしまった。

 クスリの効果は現れてないのに、この男に、中出しをねだってしまった。

 ひとときの快楽のために、自分から種付けしてくれと、懇願してしまった。

 アランもクズだが、自分も大概だ。

 もう生理まできて、本当に孕んでしまうかもしれないのに。

 宿るかもしれない新たな生命の、責任の取り方すら知らないのに。

 

 それなのに、なぜ……

 なぜこうも、興奮してしまうのだろうか。

 なぜ自然と笑みを浮かべてしまうのか。

 

「よしよし。じゃあ今の言葉、全部繋げて、おねだりしてよ。オレがその気になるようにさ、えろい感じで」

 

 ゲイルの喉がごくりと唾を飲み込む。

 そして、淫らな笑みを浮かべながら、口を開く。

 

「……い、いまみたいに♡ お前のチンポ♡ 一番奥にぎゅーってしたまま♡ しゃせいっ♡ して♡ し、しきゅうにっ♡ せーしっ♡ びゅーって♡ たっ♡ 種付け♡ してっ♡」

 

「うん偉い偉い。言えたじゃん。そら、ご褒美だぞ」

 

 褒められた。頭を撫でられた。それがとても心地よく、嬉しくなってしまう。

 そんな言葉、口先だけでこれっぽっちも心にないと、分かりきっているのに。

 

 アランがゲイルの肩をがっちりと抱きしめ、口の中に指を突っ込む。

 指が口内を掻き回し、ゲイルも愛おしそうに指を舐めまわす。

 そして、バックから小刻みに、しかし力強くピストンする。

 

「おっ♡ んおっ♡ おっ♡ んぐっ♡」

 

 ピストンはほんの数回だった。

 元々アランも限界だったのだろう。

 ゲイルのリクエスト通り、ペニスを一番奥へぎゅーっとくっつけ、先端が子宮口に潜り込み、ご褒美が噴出する。

 

「くうっ!」

 

「んぐ~~ッ♡」

 

 下腹部の奥に暖かいものが入ってくる。

 熱い粘液がゲイルの内部に注ぎ込まれる。

 

 

「んおッ♡ ん゛ん゛~ッ♡ お゛ッ♡ んおおッ♡」

 

 待ち望んでいた中出しに、腰と背筋がビクビクと震え、子宮からの歓喜が脳へと伝わっていく。

 流し込まれる子種を鮮明に感じ取り、ゲイルはうっとりとしながら快感と幸福の絶頂に浸る。

 膣内でペニスが脈動し、次々と子種を送り込んでいく。

 ビクン!といつもより大きくペニスが跳ねると、ビューッと勢いよく精液が注入される。

 その度にゲイルは嬉しそうな声を上げて、種付けの悦びに震える。

 

「んっくうう……ッ♡ はう……ッ♡ でて(れへ)っ♡ でてる(れへう)ぅ……ッ♡ へあぁ……ッ♡」

 

 アランは容赦なく一番奥に押し付けて射精する。本気で孕ませるつもりの射精だ。

 当たり前だ。そうお願いしたのは、他ならぬゲイル自身なのだから。

 

 これらすべて、自分を卵子を狙ってる精子。

 これらすべて、自分を孕ませるための精子。

 アランからこんなにも孕ませたいと思われてる。

 

 そう思うだけで感情が昂り、頭がおかしくなりそうになる。

 自分の尊厳を代償にした子作りは、身震いするほど官能的で。

 されるがままにアランの種付けを受ける。アランの精子をその子宮へと迎え入れる。

 孕んでしまうリスクすらも、興奮と快楽に変えて。

 

「おっほお……サイッコォ……まだ出るっ」

 

「くふうう~ッ♡ んん~ッ♡ はあっ♡ あっ♡ あっ♡ あはっ♡ あったかいぃ♡ あはっ♡」

 

 二人で中出しの快感を存分に堪能する。

 アランの脳が痺れ、せり上がってくる精子を次々とゲイルの中へと注いでいく。

 

 ゲイルとセックスをしてから、精液の量が劇的に増えている。

 硬さも長時間維持できるようになり、射精のタイミングすらある程度調節出来るようになってきた。

 これらの変化を、アラン本人は気づいていない。

 すべて、ゲイルと特別カラダの相性がいいせいだと思っている。

 

 アランは元々孕ませる事には大してこだわりはない男だ。

 もちろん中出しは好きだが、フェラもアナルもぶっかけも大好きである。

 むしろ、方々の女の世話になっている関係で、避妊には気をつけていたくらいだ。避妊具は必ずいつも携帯している。

 そんな男が、本気で種付けしている。

 ゲイルに対して特別な感情や独占欲を持っている訳ではない。

 今後の事など何も考えていない。ただ湧き上がる欲望に従って、中出しをする。

 

 最高に相性のいい女が手に入った。見た目も最高だし、具合も最高。理不尽にキレないし、ガッツリ犯しても反抗しない。それどころか悦ばれる。都合よすぎて笑えてくる。だから好きなように犯す。

 

 その程度にしか思っていない。

 もし仮にゲイルが妊娠したら、アランの女たちが黙っていないだろう。複数の女の世話になると言うことは、複数の女のご機嫌とりをしなくてはならないと言うことだ。

 すべての女に自分だけは特別と思わせつつも、公平に扱わなくてはならない。

 普段のアランなら分かりきっている事だ。

 普段ならば、ゲイルとも必ず避妊具を用いていたし、もっと様々なプレイを行っただろうし、そもそもゲイル一人にかまけて他の女を放置したりはしない。

 

 だが、アランは執拗にゲイルに種付けする。

 本気で妊娠させるつもりで中出しする。

 その行動に何も疑問を感じていない。

 ただ湧き上がる欲望に従って、"普段他の女にやっていることのちょっと過激版"のつもりで、ゲイルと子作りセックスに耽る。

 

 ただ奥底から湧き上がってくる欲望に従って。

 

 ドクドクと注ぎ込まれる熱い精液を、ゲイルの子宮が嬉しそうに飲み干していく。

 ゲイルの下腹部がヒクヒクと震え、傍からもそこが悦んでいることが伺えた。

 

「んはう……♡ だっ♡ だしすぎぃ……♡ んくっ♡」

 

 長い射精が終わり、ゲイルの口から熱い溜め息が出る。

 ペニスがチュポッと引き抜かれ、身体を放されると、ゲイルはふらつきながら箱に座った。

 

 精液が、この子宮に、子作りの部屋にたっぷり出された。

 目を閉じれば胎内にその存在を感じ取れる。暖かいアランの遺伝子が、この下腹部の中に。

 一昨日からずっと暇があればアランに種付けされている。

 こんな生活を続けていれば、妊娠は時間の問題だろう。

 もうすでに着床完了している可能性もある。

 数ヶ月後には、このお腹がぽっこりと膨らんでくるのだ。

 自分と……アランの。

 こいつとの赤ちゃんが……

 

 顔がカーッと熱くなる。

 それと同時に疼いてくる。今さっき精液を注がれたというのに、また子宮がきゅんとする。

 もっと欲しい。

 もっともっと、オスの子種が欲しいと子宮が言ってる。

 

 今まで散々中出しされてきたし……

 今更1、2回増えても……

 もし、もうデキてんなら、余計気にする必要ないし……

 まだデキてなかったら……

 は、孕む、確率、もっと上げたほうがいいよな……

 

 ゲイルはごちゃごちゃと考える。だが、その理屈はどこかおかしい。

 それもそのはず。ゲイルはただ自分に言い訳しているだけだ。

 "○○だから、しょうがなくアランとセックスする"

 そんな、自分を納得させる理由を無理やり作り上げているのだ。

 

 ゲイルはまだ、"しょうがないからアランに付き合ってやっている"という体でセックスをしているつもりだ。

 あくまでも、アランが襲ってくるからセックスに至るのであって、ゲイル自身はどうでもいい。むしろ逃げたい。

 という関係だと、ゲイル自身は思っている。快楽に飲まれて愛しさが暴走した時の事はノーカンだ。

 だから、ゲイルはああだこうだと理屈をこねくり回している。

 

 それは自分のプライドを守るためであったが、そのために身体を差し出すという本末転倒な事実には、ゲイルは気付いていない。

 

 ゲイルが交尾の続きを誘う言葉を掛けようとした時、一瞬早くアランが声を上げた。

 

「は~、出した出した。んじゃ仕事に戻っていいよ」

 

「うえ……? お、終わり?」

 

 今まではそのまま三、四発はしていたので、こちらから誘わなくとも、当然のようにすると思っていたゲイルは肩透かしを食らってしまう。

 

「だってまだ仕事中だし。それに、さっさと済ませろって言ったじゃん。何? もっとヤりたかった?」

 

「んっ、んなこと……ねえよ……」

 

 つい反射的にそんな言葉が出てしまった。

 わざわざアランに付き合ってやっているだけと言う名目に加え、まだゲイルはクスリの効果に飲まれていない。

 犯してくれなどと、言えるはずもなかった。

 だが、その身体は今もじくじくと火照り、オスを求めて疼いたままだ。

 

「あ、ちょっと待って。そんな寂しがりのゲイルちゃんにはこれをあげよう。仕事中、落とすなよ?」

 

「んあっ♡ なっ、なにをっ♡」

 

 

 

 



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26 アラン・七

 

……

 

 

 

「お~い、注文頼むわ~」

 

「……んっ♡」

 

「ゲイルさんゲイルさん、呼ばれてるよ」

 

「おっ、あっ、おう、悪い悪い、すぐ行く。……んくっ♡」

 

 仕事に戻ったゲイルは、どこか上の空だった。

 原因は、そのロングスカートの中にある。

 

 ディルドだ。

 

 ゲイルの秘所には、アランからのプレゼントであるディルドがずっぽりと入っている。

 そのまま仕事をするようアランに命じられ、それに従っているのだ。

 

 そのディルドは、柔らかく、太くもなく、カリもなければイボもない、つるりとしたシンプルなものだ。

 アランに問答無用でねじ込まれたものの、何の面白みもないその張り型に、ゲイルは少し落胆してしまった。

 ゲイルの蜜壺ならばしっかり咥えていられるが、普通の女ならば落としてしまいそうだ。

 だが、それは早とちりだった事をすぐ知ることとなる。

 挿入されたディルドが、ゲイルの中で風船のように膨らみ始めたのだ。

 内部から膨らんでいくディルドが、膣を押し広げていく。拡張していく。

 先程までのフニャチンは、打って変わって勃起チンポの弾力となって、ゲイルの中で存在感を主張し始めた。

 奥のほうが太く膨らんでおり、抜けにくくなると同時に、自然と子宮口に食い込んでくる。

 下腹部を撫でればほんのり盛り上がっており、中の異物の存在を感じられる。

 少し感じる息苦しさも、挿入の実感となって興奮を掻き立てる。

 

 これを挿入したまま仕事をする。落胆が興奮に変わっていく。熱っぽい溜め息が出る。

 ゲイルは顔を赤らめ、どこか困ったような笑顔をアランに向ける。

 ディルドをずっぽり咥え込み、秘所から根本だけが覗く様を見て、アランは満足そうな顔で「似合ってる」と言い、ゲイルは「馬鹿にすんな」と返したが、興奮していることはバレバレだった。

 そのままアランが下腹部を撫でながら問いかける。

 

 "どう? 一番奥にみっちり当たってる?"

 

 撫でられただけで甘い声がゲイルから漏れる。

 アランの問いかけに、ゲイルはこくこくとうなずく。

 膨らんだディルドの先端が、狙いすましたかのように子宮口に当たる。潜り込もうとしてくる。

 

 "これはな、そのための淫具。精子をここに閉じ込めておくための道具なんだわ。なら、こいつが()()()()()作られた物か、女を()()()()()()の物か、わかるよな?"

 

 ゲイルの背筋がゾクッと震える。顔と下腹部がカーっと熱くなっていく。

 アランの顔が近づき、耳元でささやく。

 

 "仕事が終わったら、たっぷり()()()をやるよ"

 

 その言葉に、全身がビクリと震える。期待感に子宮がキュンと疼く。

 そしてゲイルは、ショーツを履き、スカートを払い、服装を整え、何食わぬ顔で……

 少しぎこちない足取りで、仕事へと戻ったのだった。

 

 

 

 仕事中、ゲイルは上の空だった。

 ただでさえ欲求不満の状態で投げ出された上、ディルドまで入っているのだ。頭の中は男との交尾のことが渦巻いている。

 

 下腹部の中の異物感。

 身じろぎだけで甘い刺激が湧き上がり、歩けば振動が子宮に伝わって電流が走る。

 動きは精彩を欠き、思考もまとまらない。

 このままでは怪しまれる。バレてしまう。ちゃんと仕事に集中しないと。

 

 店の隅で、アランが酒を飲みながらしたり顔で笑い、軽く手を振る。憎たらしいと思いつつも、意識してしまう。

 ゲイルにだけ見えるように、セックスのハンドサインを出している。

 わざとらしく股を開き、盛り上がった股間を見せつけてくる。

 これまでのアランとのセックスが思い起こされ、ブルリと背筋が震える。

 危うくイクところだった。

 いけない。このままでは客の前で性欲に飲まれてしまう。そんな醜態は晒せない。

 

 抵抗することはいくらでも出来た。

 嫌ならばトイレで勝手に抜けばいいし、それ以前にアランを蹴っ飛ばして拒絶すればいいのだ。ゲイルならば雑作もない事である。

 だがゲイルは、何だかんだ言いつつも、素直にアランの要求に応えてしまう。

 

 期待してしまっている。アランとの性交を。アランがもたらす快感を。

 着実に堕落の道を歩んでしまっているという実感が、ゲイルを更に快楽の道へ掻き立てる。

 

 見られている。男たちに。

 人前で、秘所に男性器を模したモノを入れたの自分の姿を。

 今、男たちの前でチンポ入れてる。チンポ入れて気持ちよくなってるのを見られてる。

 やばい。やばい。

 明らかに怪しまれてる。倉庫から戻ってきてから態度がまったく違うのだ。店主はもちろん、幾人かの客も訝しんでいるだろう。

 自分でもわかるほど、女が発情してる匂いを出してしまっている。

 何人か勃起してる。メスの匂いに当てられて、女を犯したくなってるんだ。

 もし、今ここでバレちゃったら……バレちゃったら……♡

 そう考えるとゾクゾクと快感が走り、子宮がキュンと疼く。

 楽しんでいる。今の状況を。

 楽しんでいる事を実感すると、またゲイルの心臓は(たかぶ)っていく。

 

 妄想だけで、もう何度目かわからないオーガズムを迎えてしまい、必死でこらえて隠し通す。

 絶頂の度に理性が削られていく。

 だが、あくまでも小さな絶頂。大きな絶頂を迎えることは出来ず、欲求は溜まっていく。

 ただ入っているだけのディルドがとてももどかしく、本物のペニスへの渇望が膨れ上がっていく。

 子宮口が精子を求めて、ディルドにちゅうちゅうと吸い付き、膣の中で本気汁が分泌されているのがわかる。

 いつ太ももに垂れてきてしまうのか、ドキドキする。

 一分一秒がとても長い。

 でももうすぐだ。もうすぐ閉店の時間だ。

 やっと終わり。気がはやる。

 

 もうすぐアランとセックス終わったらアランとセックスこれが終わったらアランとセックスアランのチンポ奥までぶち込まれて中出しもうすぐセックスアランと子作りセックスはやくアランと種付けセックスガチハメ交尾したいはやくチンポほしい精子ほしいキスしたいおなかの奥に精子ほしいセックスしたいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしいチンポほしい

 

 平静を装いながら、ゲイルの脳内はそれだけがぐるぐると回っている。

 じれったいだけのディルドより、男のチンポが欲しい。一刻も早くチンポをぶち込まれて、思いっきりじゅぽじゅぽして、お腹の奥にびゅるーって……

 はやく。はやく。

 

 その時だ。店主、アランを皮切りに、店に残っていた男たち全員が、次々と立ち上がり始めた。

 

「……へあ?」

 

 セックスの事しか考えていなかったゲイルは反応が遅れる。

 気がつけば、ゲイルは男たちに取り囲まれていた。

 

「ゲ~~イルちゃ~~ん♪」

 

「へへへ……」

 

「な、なん」

 

 ゲイルが疑問の言葉を言い切る前に、真後ろから男の手が伸び、服の上からゲイルの乳首をギュッとつねる。

 

「んくううううッ♡」

 

 ゲイルの全身に電撃が走り、脳天に快感が撃ち込まれる。

 敏感になっていた身体は唐突の刺激に耐えきれず、大きな絶頂がゲイルを襲う。

 背筋を仰け反らせ、腰が勝手に浮き上がり、膝がガクガクと揺れる。

 この乳首つねりは間違いなくアラン。先日のセックスで散々イかされた手だ。とは言え、それが解ったところでゲイルにはどうしようもない。

 そんな姿を、周囲の男たちはニヤニヤしながら見つめている。

 ゲイルがイっている事は、誰から見ても一目瞭然だった。

 

「ははは、すっげー。乳首だけでイってるよ、コイツ」

 

 一人の男が声を上げると、次々と下卑た笑い声が上がる。

 ゲイルは立っていられず床にへたりこみ、そのまま仰向けで寝そべってしまう。

 そこに別の男が近づき、ゲイルのスカートを捲って隠していたその中を露わにする。

 

「おいおいゲイルちゃん、仕事中にこんなもん入れて遊んでちゃあダメだろ?」

 

 そう言いながら、ディルドをグイグイと押し込む。

 ディルドの事をあらかじめ知っていたかのような口振りだ。

 

「ふあッ♡ んくうッ♡ らめっ♡ らめっ♡」

 

「ははっ、おい、腰が動いてんぞ。何がダメなんだ? え?」

 

 さっき絶頂したばかりだというのに、奥への圧迫に反応してゲイルの腰が勝手にクイクイと動きだす。

 突っつかれてる。奥が、子宮が。待ちわびた最奥への刺激に身体が悦んでいる。

 すぐにゲイル自身の意思で腰を動かし始める。

 押し込まれると同時に腰を前へとせり出し、挿入を深くする。

 ぶじゅっと押し込まれ、子宮口にディルドが食い込むと、その度に頭の奥に快感の塊が打ち込まれる。

 

「お゛っ♡ お゛っ♡ いっ、イクッ♡ またイクッ♡ お゛っ♡」

 

「そうかいそうかい。ならイけっ! 無様にイけっ!」

 

「イクッ♡ イクッ♡」

 

「そらっ!」

 

 ゲイルが絶頂を迎えようとした瞬間、男がディルドを思いっきり引っ張った!

 

「んっぐううううッ♡」

 

 奥で膨らんだままのディルドが、膣を内側からめくりあげるように引き抜かれていく。

 ちゅぼっ!と瑞々しい音を立ててディルドが抜け、ゲイルの女の穴が男たちの瞳に映る。

 ムアッと香るメスの匂い。未だ少女のような鮮やかなピンク色の粘膜が、ディルドの形にぽっかりと開いたままヒクヒクと痙攣している。

 子宮口も膣と一緒に引っ張られ、物欲しげに震える様が、膣の入り口すぐそこまで降りてきている。

 湯気を立て、粘つく液を垂らす蜜壺とディルドに、男たちがゴクリとつばを飲み込む。

 

「んくっ♡ はあ~っ♡ あはっ♡ はあ~っ♡ はあっ♡」

 

 絶頂に震えるゲイルの呼吸に合わせて、膣がヒクヒクとしながら徐々に閉じていく。

 ディルドで開いた穴が塞がっても、その密壺は男のものを欲しがるようにくぱくぱと開閉し、ゲイルの腰も勝手に前後する。

 ホンモノが欲しい、はやくチンポを入れて欲しいと、ゲイルの放つ匂いが男たちにささやく。

 

「へへへ……いいだろ、もう」

 

「ああ、たまらねえ」

 

 もう我慢ならないと、男たちがズボンを脱ぎ始め、ペニスが露出される。

 形や大きさは違えど、すべてのペニスが天を向いてそそり立っていた。

 仰向けになって絶頂に震えるゲイルをアランが後ろから強引に抱き起こし、男たちの勃起チンポがゲイルの顔に突きつけられる。

 

 ゲイルは絶頂の余韻にふらついているが、いくつもの勃起チンポに囲まれ、蒸れた男の匂いに身体が反応する。

 眼の前には、先端にカウパーの水玉までつけた勃起チンポ。ニオイが脳を巡っていく。

 迷いなくむしゃぶりついた。

 

「んぢゅるっ♡ ぢゅるるるるっ♡ ぢゅぷぷっ♡ くぷっ♡ ちゅっぽ♡」

 

「おほっ! おおおっ! こいつはすげえっ」

 

「自分からしゃぶりだしたぜ。プライドねえのかよ」

 

 淫乱だの売女だのと男たちが口々に罵るが、ゲイルはそれどころじゃなかった。

 おいしい。ちんぽおいしい。

 ゲイルは夢中でペニスをしゃぶる。

 味そのものはまったく旨くなどない。そのはずなのに。

 男に奉仕している実感が精神を昂らせる。

 チンポに屈服している感覚が官能を増大させる。

 淫欲が味覚を支配して快感が溢れてくる。

 チンポを舐める悦びが頭の中でいっぱいになっていく。

 さっきまでの妄想が現実に起こっている。

 この後も……この後も、フェラだけで済まされるはずがない。それを考えるだけでゾクゾクと興奮してくる。

 秘所の疼きが止まらない。

 今舐めてるこのチンポに犯されるんだ。

 これがこの後、女の大事なトコに潜り込んで、子種を注入してくるんだ。

 ペニスを舐めながら何度も軽いオーガズムに襲われ、股間から粘液が垂れていく。

 

「ほら、こっちも気持ちよくしてくれよ」

 

 横から別のペニスが突きつけられると、手を伸ばしてさする。

 愛撫にあわせてピクピクと跳ねるペニスに、母性が刺激される。

 今咥えているペニスから口を離し、もう一本の溢れてきたカウパーを丁寧に舐めとる。

 ゲイルは二本のペニスを、不公平のないように、丁寧に、愛おしそうにしゃぶる。

 

「なあゲイルぅ。お前、孕めるんだって?」

 

 一人の男がニヤニヤしながら問いかけてきた。

 アランから話は聞いているのだろう。

 ただ、ゲイルの口からその言葉を引き出したいだけなのだ。

 

「ちゅぷっ♡ はあっ♡ ん……♡ せいり、きてる……♡」

 

「そうか。デキるんだな。中出ししていいか?」

 

「ひくっ♡」

 

 ついにきた。

 一瞬の迷い。

 汗が首筋を伝っていく。

 唾をコクリと飲み込む。

 

 でも、答えは初めから決まっている。

 そしてゲイルは淫らな笑みを浮かべて――

 

「……いいよ♡」

 

 その夜、ゲイルは9人の男に犯された。

 

 



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27 アラン・八

 

…………

 

 ついに来た。この街に。

 

 あの日、僕の村を救ってくれた、あの人の事が忘れられない。

 決して大柄なんかじゃないのに、その背中は、僕の瞳にとても大きく写った。

 圧倒的な火力。何種もの魔術の同時発動。

 戦場は、まさにあの人の為の舞台のようで。

 あの人はキャスターなのに、敵に近づかれても怯まない。不敵な笑みを浮かべて、剣を抜いて果敢に立ち向かうんだ。

 あの人に憧れて、僕もキャスターになった。

 キャスターの修行と平行して剣も練習してる。

 まだまだ未熟だけど、未熟なりにわかる。

 あの時の、あの人の技巧が、いかに並外れているか。

 二重詠唱(ダブルマジック)程度ならば、僕でもギリギリ出来る。実践レベルで使いこなしてる術者もたまにいる。

 だがあの人は、三重(デルタ)、いやもしかしたら四重詠唱(スクエアマジック)を実践レベルで使いこなし、しかも剣を振りながらやってのけたのだ。

 信じられない。

 

 噂を頼りに、ここまで来た。やっと来た。

 この街に、いるんだ。あの人が。

 会えるんだ! ゲイルさんに!

 たった3人でルーク級にまでなったパーティのリーダー的存在ゲイルさんに!

 握手してくれるかな!

 キャスターの大先輩としていろんな話が聞きたい!

 そして…… そして、あわよくば、弟子に!

 宿はとったし、早速ゲイルさんの居場所の情報を集めよう。

 

 

「え? ゲイル? えっへっへ…… なるほどなるほど。うんうん」

 

 ゲイルさんの居場所は驚くほど簡単にわかった。街のとある食堂にいるらしい。

 冒険者のおじさんが快く教えてくれたのだ。

 だが、おじさんは何やらしたり顔で"明日から俺たちは兄弟だ。がんばってこいよ、少年!"と肩を叩いてきた。意味がわからない。

 初対面の僕に対して、なぜそうも友好的だったのか。なぜ"今日から"ではなく"明日から"なのか。一体なにをがんばれと言っていたのか。

 しょっちゅうファンが押し掛けてて、なかなか会えないのかな? ゲイルさんだもんね!

 まぁ考えてても仕方ない。

 情報の真贋確認も合わせて、早速訪ねてみよう。

 

 

 

「おう、俺がゲイルだ。よろしく。依頼の話……って訳じゃなさそうだな。どうしたんだい、少年」

 

 そう言って出てきたのは、いかがわしい服装とハスっぱな口調がイマイチ噛み合っていないウェイトレスのお姉さんだった。

 着ている服は、元は給仕服だという事はわかるが、その改造が破廉恥なことこの上ない。

 胸元ははだけてて谷間とブラの端が見えてるし、白いブラウスから黒のブラが透けてるし、おへそが見えてるし、スカートは短いし、ストッキングは扇情的だし、ヒールの高い靴を履いてるし、本当にギリギリ給仕服の面影がある程度だ。

 なんか甘い匂いもしてヘンな気分になってくる。

 いやいやいや! 僕はそんな事の為に来たんじゃない!

 やっぱり誤情報だったみたいだ。

 

「申し訳ありません。人違いだったようです。僕が探しているのは男性の方で…… えーと、ルーク級のゲイルさんです。キャスターの」

 

「ああ、それ俺だよ俺。まあ、説明が難しいんだが、ちょっと事故ってこんな身体になっちまったんだわ。俺がそのルーク級のゲイルで間違いないよ」

 

「え……? いやいや、冗談ですよね? そんな話聞いたことありませんよ」

 

「いや、マジなんだなこれが。俺もビックリだよ」

 

「え……? う、嘘ですよね? 嘘ですよね!? ゲイルさんが! こんな!」

 

「え、何、どゆこと? 俺、キミとどっかで会ってた? ごめんな。人の顔覚えるの苦手なんだわ」

 

「あ……いえ、その……僕はただ、ゲイルさんに憧れて……」

 

「え! キミもしかして俺のファン!? マジ!? まいったなぁ。うへへへ」

 

「……あの、失礼なのはわかるんですけど、いくつか質問させて貰っていいですか? まだ、その、御本人だと……」

 

「おう、いいぞ。何でも訊いてくれ。何でも答えてやるぞ。うん。あ、仕事しながらになるけどいいよな?」

 

 ゲイルさん(?)がそう言うと、周りの客から茶々が入る。

 

「スリーサイズいくつ!?」

 

「初体験はいつ!? ってか誰!? やっぱサイモン!?」

 

「あーもー外野は黙ってろって! ほら、もう食い終わったんなら帰れよ。シッシッ!」

 

「……」

 

「質問はサイモンとパトリックの事でもいいぜ。まあ答えられる範囲だけど」

 

「おーいゲイルー! ちょっと頼むわー!」

 

「あ、はーい! あ…… い、今から? 客来てんだけど…… い、嫌じゃねえよ…… 今の時間はクチだけなんだけど…… わ、わかった。すぐ行く……♡」

 

「あ、あの」

 

「すぐ戻ってくるから、ちょっとだけ待っててな」

 

 

……

 

 

 

「そんな、まさか、ホントに……いやいやいやいや……」

 

「やっとわかったか? はい、しょうが焼き定食お待ち」

 

 その後、ゲイルさんを自称する女性は、給仕の仕事をしながら僕の質問に答えてくれた。

 未だ確信は持てないけど、質問した限り、この女性はゲイルさん本人の可能性が高い。まぁ、僕がゲイルさんについて知ってることなんて、たかが知れてるけど……

 僕のことはサッパリ覚えてなかったけれど、村での事はちゃんと覚えてくれてて、襲ってきたモンスターも僕の記憶と一致する。

 魔術にも詳しかったし、他のお客さんたちも彼女をゲイルゲイルと気安く呼んでいる。

 ここを教えてくれた冒険者のおじさんまでグルというのは流石に考えにくい。

 そもそも、僕なんかを騙す必要性が考えられない。

 まぁうん、百歩譲って女になってしまったのは認めるとしても、あの格好はなんなの……いかがわしすぎるよ……

 僕はどうすればいいんだよ……

 

 この店はなかなか流行っているようで、ゲイルさんは忙しそうだった。

 手慣れた動きで客を案内し、注文を受け、食器を回収し、せわしなく働きながらも、僕の質問にもしっかり答えてくれた。

 たまに店主や客の男と二人で、10分ほど奥の部屋へ引っ込むのは何かの打ち合わせか相談だろうか。

 その中には神父様までいて、そんな人に頼られるということは、やはり相応の信頼と能力を持っているんだろう。

 仕事の邪魔をしているようで、少し罪悪感が募る。

 特別お腹は空いていなかったが、隣の客が食べていたしょうが焼き定食がとてもおいしそうだったので、迷惑料も兼ねて注文した。

 普通においしくて完食してしまった。

 

 

 

 午後3時を過ぎ、人の波も大分落ち着いてきた頃、僕の向かいの席にゲイルさんが座った。自分で作ったらしきサンドイッチとカフェオレも持ってきている。

 

「ふいー、やっと一息つけるぜー。ここ座らせて貰うぞー」

 

 この人は確かにゲイルさんの可能性が高い。

 だからこそ、確信が高まるほどに、沸々と怒りが沸いてくる。訊かざるを得ない。

 バン!とテーブルを叩いて大声を出してしまう。

 

「ゲイルさん!」

 

「うおっ」

 

「なぜ!? なぜあなたがこんな仕事をされてるんですか!? あとサインください!」

 

「落ち着け。あー、この仕事は、まぁ成り行きかな。始めはやる気なかったんだが、やってみたら案外楽しくてね。サイン? ペンある? お、準備いいな。革袋に? えーっとこんな感じ? ふへへ、サイン書いちまったよ。俺のサインだぜ、おい。へへへ」

 

「ありがとうございます! 一生大事にします! でもゲイルさんともあろう方が、こんな店の給仕だなんてもったいないですよ! せめてもう少し立派な店で働きましょうよ! あと握手してください!」

 

「おいガキ、こんな店で悪かったな」

 

「店長、相手は子供なんだから。つか、わかってる? ついこの前までクソマズ飯の閑古鳥だったんだからな? 味が上がって客入り増えたの、間違いなく俺の功績だからな? はい、にぎにぎ」

 

「わ、わかってるよ。ゲイルさんには感謝してるって。いろいろお世話になってるし」

 

「おうわ…………ずいぶん綺麗で……柔らかい手ですね…… もう剣は握ってないんですか?」

 

「あ~、この身体になった時から筋力落ちてなぁ。逆に危なっかしくて、ちょっとした鈍器代わりにしか使えねえの。あんなに練習したのにな。ホントやんなっちゃうよ」

 

「そうなんですか…… それで、あの、元に戻る目星はついてるんですか?」

 

 ガタタッ!

 その瞬間、周囲の客が一斉に立ち上がった。

 

「ヒッ!」

 

 全員僕の方を睨んでいる。なんだろう。怖い。何かまずいことを口走ってしまったのだろうか。

 

「おい! バカ! てめえら! 威圧すんな! 相手は子供だっつってんだろ! 座れ座れ!」

 

「チッ……」

 

 ゲイルさんが一喝すると、あれだけ殺気を放っていた男たちが大人しく座っていく。

 これだけの男たちを黙らせる事ができるなんて、やっぱりゲイルさんはすごい!

 

「あ、ありがとうございます…… 僕、何かまずい事を……?」

 

「……いや、何でもねえよ。気にするな。あ~、元に戻る目星だっけ? 残念ながら今んとこゼロなんだわ。教会にも行ったんだけどな」

 

「ああ、それで先ほど神父様がいらしてた訳ですね」

 

「あっ、ああ、うん、そう。そういうこと」

 

「……あのう、たいしたことじゃあないんですが……」

 

「お? なんだ?」

 

「たしかに僕はまだ12歳で未熟ですけど、これでもナイト級の実力はあります。その、あからさまに子供扱いするのは止めてくれませんか?」

 

「ははは! わりいわりい! 12歳かぁ…… ふふふ」

 

 そんな感じで、ゲイルさんと楽しく談笑した。

 魔術についてとても為になる話ができたし、噂じゃわからないゲイルさんの武勇伝も聞けた。いい人だ!

 ゲイルさんが女性になってしまって、こんな所で働いてるのはちょっとショックだったけど、僕程度には知りえない事情があるんだろう。

 やっぱり来てよかった!

 

 この流れで頼んでみようかな?

 勢いで了承してくんないかな?

 よし、言ってみよう!

 

「あの、ゲイルさん! 折り入って、お願いしたいことが!」

 

「ん? なんだなんだ?」

 

「僕を、弟子にしてください!」

 

 そう言った瞬間、店内が一斉に静まり返る。

 静寂の中、店中の視線が僕に集まっている!

 また僕まずいこと口走った!?

 そして……

 

「ぶわはははははは!!」

「ぎゃはははははは!!」

 

 今度は一斉に笑い出した!

 わからない! 訳がわからない!

 でも何か腹が立ってきた!

 僕だけが笑われるのならば構わない。

 だけど、弟子にしてくれって言葉で笑われるということは、少なからずゲイルさんも笑われているということ!

 それは許せない!

 

「笑わないでください! 僕は大真面目です!」

 

「ひゃはははは!」

「よりによって、ゲイルの弟子って!」

「俺、期待していいの? あの少年と……」

「お前ホモかよ!」

「てめえだってゲイルにお熱だろうが!」

「違えよ! お前のそれと俺のこれは全然違えよ!」

 

 しかし誰も僕の話を聞いてくれない!

 

「みなさんわかってませんね!? ゲイルさんの本当の実力を! 僕はこの眼で見たんです! ゲイルさんの勇姿を! 戦う姿を!」

 

 丁度いい! あの時のゲイルさんがどれだけかっこよかったのか、存分に語ってやる!

 

「いいですか! これはもう7年ほど前、僕の村で起こった事なんですけどね!」

 

「ちょっ、少年?」

 

「大丈夫です! ちょっとみなさんにゲイルさんの凄さをわかって頂くだけですから!」

 

 

「見渡す限りのキラーウルフの群れ! その数、百や二百どころじゃない! 村どころか、ゲイルさんたちも絶体絶命!」

 

「うむ……」 「なんと……」 「ほう?」

 

「しょ、少年……も、もうやめ……」

 

「なんですか! ここからがいいところなんですよ! そこでゲイルさんが剣をこう構えて! シャイニングボンバー! キュイーン! 群れの中に閃光が走る! バババーン! たった一発で何十ものウルフが爆裂四散!」

 

「おお!」 「さすが!」 「なんと!」

 

「いいから……もう十分だから……俺シャイニングボンバーなんか知らねえから……」

 

「そんなわけで、ゲイルさんはとてもすごいんですよ。本当なら弟子の十人、二十人くらいいても不思議じゃない人なんです。わかりましたか?」

 

「ああ、よくわかった。笑って悪かった」

「別にゲイルと坊主を馬鹿にしたかった訳じゃないんだ」

「ゲイル伝説、良かったぜ。また語ってくれよな」

 

「ゲイルさん! わかって頂けましたよ!」

 

「そ、そうか……そりゃよかったな……」

 

「それで……あれ、なんで僕は…… あっ! そう! 弟子! 弟子にしてください!」

 

「いや、その、ごめんな? 今はちょっと弟子とか考えられないんだわ」

 

「そうですか…… いえ、こちらも無理を言って申し訳ありませんでした」

 

「そ、それとだな……」

 

 ゲイルさんが頭をかきながら照れくさそうに口を開く。

 

「まぁ……嬉しかったぜ、さっきの演説。話は大分盛ってたけど、俺のことマジで尊敬してくれてるんだなってのがすげー伝わってきたよ」

 

 少し顔を赤らめ、はにかみながらそう言うゲイルさんに、ドキリとしてしまう。

 僕まで照れくさくなってきて、顔から目をそらすと、そこには豊満な胸が。胸から目をそらすとスカートが。

 視線があっちへこっちへせわしなく動き、最終的にゲイルさんのおでこを見つめることで安定できた。

 ああ、でも、おでこを見てるつもりでも可愛らしい顔が視界に入ってしまう。

 

 いやいや! 何を考えてるんだ僕は!

 ゲイルさんは男だろう!?

 身体が女性になってしまったとはいえ、ゲイルさんはゲイルさん! その精神性までは変わっていない!

 気丈に振る舞っているようでも、ゲイルさん本人が一番気にしているはずだ。

 女性として見てしまっては、ゲイルさんのプライドを傷つけることになる。

 ちゃんと男性として見ないと!

 

「アドバイスが必要なら気軽に言ってくれ。弟子は無理だけど、話を聞くくらいはいくらでも付き合ってやるよ」

 

「わ、わかりました! 早速なんですが、三重(デルタ)についてなんですけど……」

 

「ああ、それな。理論的には二重(ダブル)とそう変わらないんだけどな……」

 

「え……? それ実際に出来るんですか? 机上の空論では?」

 

「問題はこの優先順位でな……」

 

「え~~っ? いやそれ、最悪逆流してドカンじゃないですか? どうやって安定させてるんです?」

 

「そこはまぁ訓練と勘と慣れでな?」

 

「危険すぎますよぉ……」

 

 

 

……

 

 

 紆余曲折はあったけれど、楽しい時間が過ぎ去るのはとても速い。

 夕食時が近づき、店がにわかに込みだしてきたのでそろそろおいとましようとした時。一人の男が近づいてきた。

 

「おう、ゲ~イル~、今日もよろしく頼むぜぇ」

 

 やってきた男はゲイルさんの肩に馴れ馴れしく腕を回して絡む。

 ここまで距離が近い人というと、この人がサイモンさんかパトリックさんだろうか?

 軽薄そうで、ちょっと苦手なタイプだ。

 

「ちょっ、アラン! やめっ! 今客の前だから! んっ♡ 今は!」

 

 違った。アラン? メンバーのお二方ではないようだ。ならこの男は一体誰なのだろうか。アランという名前にも覚えがない。

 

「ん? なにこのガキ」

 

「ああもう!」

 

 ゲイルさんが男の腕を乱暴に振りほどくが、男は特に気にする素振りを見せなかった。

 

「その子な、俺のファンだって。わざわざ俺を訪ねてきてくれたらしい。やっぱ俺すごくね?」

 

「ふ~ん」

 

「ど、どうも…… あの、あなたは? ゲイルさんとこの新しいメンバーの方でしょうか?」

 

「あ~、ちょっと説明がめんどいんだが、こいつは」

 

「アランだ。今のゲイルのパートナーだ。覚えとけよ、ガキ」

 

 ゲイルさんが説明するよりも早く、男が口を開いた。

 パートナー? 今までのメンバーお二人はどうしたんだろう。

 

「おい、違うだろ」

 

「ん? 違うのか? ならなんだ? 言ってみ?」

 

「ちっ、ちがっ♡ んっ♡ ちがわ、ない……♡」

 

「そうだよなあ? オレら相性バツグンだよなあ」

 

「……んっ♡ やめっ♡」

 

「あの、サイモンさんやパトリックさんはどうしたんですか?」

 

「……あいつらとは、ちょっと別行動してるんだ」

 

「捨てられたんだよ。いいかげん認めちまえよ」

 

「……あいつらに限ってそんな訳ねえから」

 

「どうせ向こうでいい女捕まえてよろしくやってんだよ。いいじゃねえか。お前にはオレがいるんだし」

 

「……」

 

「チッ、まだ分かってねえのか」

 

 何やら雰囲気が悪くなってきてしまった。

 お二人のことを訊くのはタブーだったのだろうか。僕はまた迂闊な事を口走ってしまったようだ。

 というか、僕はこの話を聞いていていいのだろうか。蚊帳の外だし、疎外感が募る。

 

「しゃあねえな。おい、店主! 今から部屋使うからな!」

 

「え~っ、流石にまだ早すぎだろぉ。これから夕食時で忙しくなるし、客の大半はゲイルさん目当てなんだから、いないと困るって」

 

「ウッセ! てめえもイイ思いしてんだから文句言うんじゃねえよ! おいゲイル、上行くぞ。しっかり分からせてやらあ」

 

「えっ、その、まだ、明るいのに……」

 

「あ? オレのもうビンビンなんだわ。嫌か?」

 

「いっ、嫌じゃ、ねえけど…… その……」

 

 ゲイルさんが顔を赤くしながら、チラチラと僕の方を見る。

 一体なんだろうか。もしかして、部外者には聞かれたくない話だから、席を外してくれとの目配せだろうか。

 

「……ふう~ん。おいガキ、お前も来い」

 

「え、僕もですか? 僕なんかが同席していいんですか? 部外者ですし」

 

「いいんだよ。ゲイル様直々のご指名だからな。ひひひ」

 

「お、俺は別に、そんな」

 

「ゲイルゥ…… ゎヵ……ぁぃっ……」

 

 アランがゲイルさんの耳元で何かささやくと、ゲイルさんは顔を更に真っ赤にして縮こまってしまった。

 

「ほら、上の部屋行くぞ。ガキもな」

 

「わかりました。けどガキガキって言わないでください」

 

 そうして僕は、軽薄そうな男アランとゲイルさんに付いていき、2階の一室へと招かれたのだった。

 

 

 



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28 アラン・九

 

………

 

 

 

「んじゃ、おっぱじめようぜ」

 

 アランは既にヤル気満々だ。少年が居ても、ズボンの盛り上がりを隠そうともしていない。

 

「あの、今から何を始めるんですか?」

 

「何って、ナニだよ。わかるだろ?」

 

「ごめんなさい。わかりません」

 

「マジかこいつ。12歳ってもうそういう年だろ。照れてんのか、猫かぶってんのか」

 

「あの、ゲイルさん? さっきから静かですけど、どうかしたんですか?」

 

「うえっ!? いやっ、その……」

 

 ゲイルは先程から、もじもじと照れくさそうにしながら、チラチラと少年を見ている。

 

「今からゲイルの本性を見せてやるよ」

 

「ゲイルさんの……本性?」

 

「よく見てろよ?」

 

「え?」

 

 そう言うや否や、アランが両手でゲイルの頭をがっしりと掴み、強引に唇を重ねる。

 

「んッ! んん~~~ッ!!」

 

「なっ!」

 

 少年は驚愕の表情で二人のキスを見つめる。

 女になってしまったとは言え、ゲイルは元男。少年はまだそこを割り切れていない。

 アランがホモなのか、それとも肉体さえ若い女なら誰でもいいのか。

 どちらにしても、尊敬するゲイルに対して邪な感情を抱いている事に違いはない。

 アランに対する嫌悪が高まっていく。

 だがそもそも、こんな蛮行をゲイルが許すはずがない。すぐに手痛い反撃を受けるに決まっている。

 少年が信じるゲイルならば。

 偉大な冒険者ゲイルなら。

 

 しかし、現実は違った。

 ゲイルは、一瞬だけ身体がこわばっただけで、抵抗らしい抵抗はしなかった。

 それどころか、ゲイルからもキスに応じ始めたのだ。

 

「んふっ♡ ちゅっ♡ ちゅぷっ♡ ちゅるっ♡ ちゅっ♡ ちゅぱっ♡」

 

 身体は瞬く間に脱力していき、アランに身体を預ける。

 ゲイルからも舌を突き出し、アランの口の中へと割って入り、舌を絡め合う。

 眼は早くも色欲にとろけ、潤んだ瞳でアランを見つめている。

 口元から唾液がこぼれ、首筋へと垂れていく。

 腰は引け、もじもじと内股を擦りあわせる様は、完全に発情したメスだ。

 

 目の前で行われる性的なキスに、少年の頭が混乱する。

 ゲイルが女性であることは頭で理解はしても、心では否定していた。

 いかがわしい服装、魅力的な身体、客の言葉、そして仕事中のゲイルの行動と、たまに上げる卑猥な声。

 それら全てから、目を逸らしていた。認めることを拒んでいた。

 しかしアランの強行が、ゲイルが女であることを否応なく少年に突きつける。

 

「ちゅぷ♡ ふぁ……♡」

 

 長い長いキスが終わり、ゲイルの口から熱い溜め息が漏れる。

 だがゲイルの表情は、どこか未練を感じさせる。もっとキスをしていたかったと、視線が語っている。

 それを象徴するかのように、唾液の糸が二人の唇を結んでいた。

 

「はあ……♡ なあ……♡ お、俺、もう……♡」

 

「"俺"じゃないよね?」

 

 そう言ってアランはゲイルの乳首を捻る。

 

「んくぁっ♡ わたっ♡ わたしっ♡」

 

「そうそう。ヤる時は"俺"禁止。めっちゃ萎えるし、ゲイルちゃんは女の子だから。いいな?」

 

「わっ♡ わかったっ♡ わかったっ♡ んうっ♡」

 

 乳首をつねられ、ゲイルは嬉しそうに身体をくねらせながらコクコクと頷く。アランの手が離れると、また少しだけ残念そうな顔をした。

 

「はい、じゃあ、めくって、よく見せて」

 

「ん……♡」

 

 命令を受けたゲイルが顔を赤くしながら微笑み、スカートの端をつまみ上げてその中を露わにする。

 スカートの中は、ガーターベルトと淫らな黒い下着。しかしその下着は、普通のものではなかった。

 

 極小の布。

 性器を隠しきれておらず、クリトリスが露出してしまっている。

 布はキュッと股間に食い込んでおり、陰部の形を浮かび上がらせている。

 その布の小ささは、むしろその場所に、女性器の一番大事な部分がある事を教えているかのようだ。

 極小の布からはV字に紐が伸び、腰のくびれで結ばれている。その結び目は誰でも知っている結び方。つまんで引っ張れば、簡単に解ける結び目。

 ただ男を誘惑するためだけにデザインされた下着。

 裸よりも淫らで、すぐにでも性行為に至れる下着。

 そして下腹部には、紫の淡い光を放つ、子宮を象ったエロティックなタトゥー。

 ゲイルはそれを、嬉しさと羞恥の混じった笑みでアランと少年に見せつける。

 

「あーエッロ! めっちゃエッロ!」

 

「んふふ……♡ みんなにたくさん弄られちゃった……♡ んんっ♡」

 

 アランはゲイルの尻を撫で回し、そして指を股間へと這わす。二本の指が小さな布をずらし、蜜壺の中へちゅぷりと沈んでいく。

 挿入に一切の抵抗はなく、くちゅくちゅ、ちゅぷちゅぷと卑猥な音を立てて蜜壺がかき回される。

 

「ふあっ♡ んっ♡ んくっ♡」

 

「おいガキ、気づいてたか? 店にいる間も、いろんな客がこいつのマンコ弄ってたんだぜ。こんな風にな」

 

「ひんっ♡ ふっ、ふつうのっ♡ お客さんも、いっ♡ いるんだからぁ♡ んあっ♡ やっ♡ やめてって♡ いってるのにっ♡」

 

「ああ? いいじゃねえか。そいつとも()()()なれば」

 

「んあっ♡ あっ♡ あっ♡ んんっ♡」

 

「おい、今客に犯される妄想しただろ。愛液だらだら出てきてんぞ」

 

 ゲイルの股間から愛液がぽたぽたと滴り、床を濡らす。

 膝はガクガクと震え、アランに掴まっていなければ立っていられなさそうだ。

 

「だって♡ んくっ♡ らって♡」

 

「おら、ガキがじっと見てるぞ。お前のだらしない姿をもっと見せてやれ」

 

「んくう~っ♡ んあっ♡ らめっ♡ んくっ♡」

 

「どうだ? これが今のゲイルの本性だ。幻滅したか? おい、謝ってやれよ」

 

「くひっ♡ ごめっ♡ ごめんなさいっ♡ んっ♡ んふっ♡ いんらんでっ♡ んくうっ♡ ごめんなさいっ♡」

 

 ゲイルは虚ろな目でよだれを垂らしながら、少年に謝罪する。

 

 キスに続き、アランからの一方的な命令を、ゲイルは従順に従う。その顔は羞恥と快楽と、そして歓喜が混じっていた。

 少年は始め、脅されて無理やりやらされている可能性を考えていた。

 だがその予想は、ゲイル自身によって否定されることとなった。

 ゲイルは楽しんでいる。

 アランに命令されることを。

 激しく舌を絡ませてキスをすることを。

 淫らな下着を身に付けることを。

 そのまま仕事をし、秘所をいじられることを。

 今日会ったばかりの少年に、あられもない姿を見られることを。

 

 昼間見せていた、気さくで、面倒見がよく、実力を鼻に掛けず、それでいて凛とした姿を示したゲイルの面影は、今はない。

 ただ夢中で淫行に耽り、男に媚を売り、もっと過激な行為に胸を膨らます、淫らな女の姿があった。

 

 少年の中のゲイル像が音を立てて崩れていく。

 

 ゲイルは謝罪しながら、少年から向けられるいろんな感情が混ざった視線に一層感情を昂らせる。

 その視線には、今まであった尊敬や憧れは感じられない。

 驚愕か、軽蔑か、嫌悪か、絶望か、それともまだ混乱のほうが大きいのか、ゲイルには判別出来ないが、ただ一つだけ、ゲイルにもわかるものがある。

 少年からの視線に、肉欲の灯火が混じっている事だけは。

 

「ふあっ♡ あっ♡ イクっ♡ イクっ♡」

 

「いつもより早いじゃん。ガキに見られて興奮してるのか?」

 

 ぢゅぷっ、ぢゅぷっ、ぢゅぷぷっ。

 アランが秘所を激しくかき回すと、それと共にゲイルの嬌声が速く、甲高くなっていく。

 

「おら、イキ顔もしっかり見せてやれ!」

 

「ひぐっ♡ んくう~~~ッ♡」

 

 ゲイルが盛大に絶頂する。

 腰が持ち上がるほどぐっと奥まで指を突き入れられ、つま先立ちで脚はピンと伸び、ビクビクと痙攣する。

 

 愛液でベトベトの指がちゅぽっと引き抜かれると、ゲイルは耐えきれず自分の愛液で濡れた床にへたり込み、倒れてしまう。

 荒い息に胸が上下し、寝そべったまま小刻みに震える。

 スカートはめくれ上がり、極小の布地に隠された秘部が少年の目に映る。

 秘所は存分に濡れそぼり、ガーターベルトの繋がったストッキングまで湿っている。

 ゲイルのあられもない姿に、少年がゴクリと生唾を飲み込む。

 

「はっ♡ はっ♡ はああ~……♡ あはっ♡ はっ♡ はああ……っ♡ んっ♡ んくっ♡」

 

「おいガキ。ゲイルが倒れちまった。そこのベッドまで運べ」

 

 唐突に呼ばれ、少年の身体がビクッと震える。

 

「えっ! いやっ、えっと、その……」

 

 運べと言われても、混乱する少年の頭ではどう動けばいいのかわからない。

 

「おら、なに照れてやがんだ。女が荒い息で倒れてるんだぞ? 大変じゃねえか。そっと抱き上げてベッドへ運ぶんだよ。ほら早くしろ」

 

 



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