Fate/Apocrypha Lost (紫 カナメ)
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序章 新たなる外典 第一節 第二次聖杯大戦

聖杯戦争(せいはいせんそう)

 

七人の魔術師(マスター)が喚び出した

七騎のサーヴァントが互いに殺し合い、万物の願望機たる『聖杯』を奪い合う代理戦争__

 

しかし、七人と七騎(そのルール)から逸脱(はず)れた外典(Apocrypha)があった__

 

 

極東の地より奪い去られた大聖杯__

 

遥か東欧(ルーマニア)の地にて喚び出された

 

15騎のサーヴァント。

 

従うは七騎、黒のサーヴァント。

 

抗うは七騎、赤のサーヴァント。

 

そして__調停者(ルーラー)

 

七騎対七騎の聖杯大戦は、一人のホムンクルスの少年によって幕を閉じ、大聖杯は世界の裏側に封印された。

 

___そして25年後。

 

南西部の地(イギリス ウェールズ)で異変が起きた。

 

約200年前の聖杯戦争で滅んだと言われている魔術師一族、『クリスティア』がウェールズの約八割を支配し、

魔術協会、聖堂教会、アインツベルン、遠坂、間桐の御三家に宣戦布告をした。

 

25年前のとは違う、七騎対七騎対七騎対七騎(・・・・・・)の聖杯大戦を始めよう__と、

 

現クリスティア家当主、『アルヴァルトス・グリティ・クリスティア』はエクストラクラス、復讐者(アヴェンジャー)の召喚に成功し、戦力に加えた。

 

魔術協会はこの異常時対をすぐに解決すべくクリスティア一族が潜伏している古城_『白亜(はくあ)城塞(じょうさい) 』に100人の討伐隊を向かわせたがそのアヴェンジャー一騎によって全滅した。

 

何か大きくて鋭利なもので斬り裂かれて死んだ者。

上半身や下半身、頭部を何かに抉られて死んだ者。

獣に食い散らかされた様な無惨な姿になって死んだ者。

100人全員、目も当てられない姿で発見された。

 

その翌日、魔術協会宛に手紙が届いた。

 

『我々クリスティア一族は中型の大聖杯を造り出すことに成功した。その大聖杯にアインツベルンが造り出した大聖杯とは違う完璧なシステムを起動させ、前代未聞の

七騎対七騎対七騎対七騎の聖杯大戦をイギリス、ウェールズの地で行う。

 

我々クリスティア一族は『(くろがね)の陣営』。

 

魔術協会は『(こがね)の陣営』。

 

そして、ユグドミレニアに次ぐ魔術師一族_『ラーヴォルバ一族』は『(しろがね)の陣営』。

 

アインツベルン、遠坂、マキリの御三家は『(あかがね)の陣営』。

 

我々の目的は200年前の復讐である。

 

聖杯大戦(これ)は我々を裏切り、見捨てた魔術師に対する罰である。

 

我々クリスティア一族の魔術師(マスター)黒化英霊(サーヴァント)を甘く見るなよ。

 

クリスティア一族現当主_アルヴァルトス・グリティ・クリスティア』

 

この手紙により、魔術協会は聖堂教会と手を組み、七人の魔術師(マスター)を集め始めた。

 

そして、西の魔術師一族、ラーヴォルバ一族現当主

『ディニクス・ファルフィフ・ラーヴォルバ』は全国に散らばった血族の中から優秀な魔術師六人をカーディフにある城塞に集めた。

ディニクスは魔術協会とクリスティア一族を打ち倒し、大聖杯を我が物にしようと企み、聖杯大戦に参加した。

 

クリスティア一族の(くろがね)の陣営_

 

アインツベルン、遠坂、マキリの御三家の(あかがね)の陣営_

 

ラーヴォルバ一族の(しろがね)の陣営_

 

魔術協会と聖堂教会の(こがね)の陣営_

 

七騎対七騎対七騎対七騎の前代未聞の聖杯大戦が、

 

今、幕を開ける____!!



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開幕前‐金‐前編

タグに入れられなかったので書いておきます。
Fate/prototype、face
藤丸立香→ぐだ子、岸波白野→ザビ子
原作キャラの鯖化(※サーヴァント化)あり(重要)
オリジナルサーヴァント、オリジナルマスターあり(重要)
オルタ化、黒化あり(重要)


イギリス、ロンドン_魔術協会本部、時計塔。

 

一週間前に第二次聖杯大戦の開戦報告の手紙が届き、

魔術協会は七人の魔術師を時計塔に集めた。

 

人類保障機関カルデア所属の魔術師、『藤丸立香(ふじまるりつか)』。

 

ユグドミレニア一族の血族、『フロスト・フォルヴェッジ』。

 

魔術師殺しの異名を持つ魔術師専門の殺し屋、『衛宮竜胆(えみやりんどう)』。

 

現魔術科学部長、『ロード・エルメロイⅡ世(にせい)

 

衛宮竜胆の部下でもあり、弟子でもある『岸波白野(きしなみはくの)』。

 

沙条(さじょう)家の見習い魔術師であり、自分から大戦に参加したいと言った『沙条彩巴(さじょういろは)』。

 

そして、今回聖堂教会から派遣された監督役兼マスター、『言峰和泉(ことみねいずみ)』。

 

合計七人の魔術師(マスター)(こがね)の陣営に集まり、ロード・エルメロイが用意した、サーヴァントを召喚するために必要な触媒(しょくばい)を全員受け取った。

 

立香はルーン文字でケルト神話の内容が刻まれた木板の欠片。

 

フロストは黒い布の切れ端。

 

竜胆は炎のように赤い矢。

 

ロード・エルメロイは赤いマントの切れ端。

 

白野は鞘に六文銭の家紋が描かれた短刀。

 

彩巴は下半分が折れてなくなっている金色の柄に茶色い刃の剣。

 

和泉は紫色の2匹の蛇の様な物が入った紫色の液体の瓶詰め。

 

受け取った後、和泉の提案でそれぞれサーヴァントを召喚したらブリジェントの教会に集合することにした。

 

 

 

その夜、竜胆と白野はロンドンのとある廃虚で召喚の儀を始めることにした。

 

サーヴァントを召喚するための魔法陣をふたつ書き、それぞれの触媒を陣の前にある台に乗せた。

 

「七騎対七騎対七騎対七騎の第二次聖杯大戦…合計28騎の英霊が現代に喚び出されるなんて…信じがたい話だ」

 

「そうだな、ハクノ。これはイカれたシステムだ。最初聞いた時はオレでも驚いたよ。クリスティアはこの聖杯大戦(ゲーム)の難易度を上げてオレ達が大聖杯に目が眩んでいる醜い姿を見たいらしい。

それに問題はクリスティアだけではない。ラーヴォルバや御三家を敵に回すなんて正気の沙汰ではない。

特にラーヴォルバはユグドミレニアに次ぐ優れた魔術師が多い一族だ。中には代行者や魔術協会の講師だった者もいる。__よし、準備完了だ。いくぞハクノ」

 

「はい、先生」

 

二人は移動して、詠唱を唱え始めた。

 

『_素に(ぎん)(てつ)(いしずえ)に石と契約の大公。

 

手向ける色は『(こがね)』。

 

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、

 

王国に至る三叉路(さんさろ)循環(じゅんかん)せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度、ただ満たされる刻を破却(はきょく)する。

 

___告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い。この意、この理に従うのなら応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総(とこよすべ)ての善と成る者。

 

我は常世総ての悪を敷く者。』

 

詠唱を唱えている時、白野が追加の詠唱を唱えた。

 

『__されど(なんじ)はその眼を混沌(こんとん)(くも)らせ(はべ)るべし。

 

汝、狂乱(きょうらん)(おり)に囚われし者。我はその鎖を手繰(たぐ)る者。』

 

『__汝、三大(さんだい)言霊(ことだま)(まと)七天(しちてん)

 

抑止(りょくし)()より()たれ。天秤(てんびん)の守り手よ!』

 

詠唱を唱え終えた瞬間、ふたつの魔法陣から光が溢れ、廃虚内を飲み込んだ。

 

光が消えると、それぞれの魔法陣に誰かが立っていた。

 

竜胆の方には、額に二本の赤い角が生えた長い白髪に赤い瞳の和装の赤い弓を持った美しくも勇ましい女性。

 

白野の方には、逆立った赤毛に左頬に六文銭の刺青があり、同じく左裾に六文銭が描かれた赤い陣羽織に短い袴を着用した男が立っていた。

 

「サーヴァント、アーチャーインフェルノ。召喚に応じ参上した。これにより契約は成立した。衛宮竜胆、わたしは貴方の(しもべ)、存分にお使いください。」

 

「インフェルノ…?」

 

「…申し訳ございません。都合により真名を名乗ることができないのです。どうかインフェルノと呼んでください」

 

「……あぁ、」

 

「ふむ…服装からして日ノ本の者であることはわかるが…真名を明かすことが出来ぬとはな…同じ陣営のサーヴァントとしてよろしく頼むぞ、」

 

「はい、よろしくお願いします。……ところで貴方は?」

 

と、アーチャーが問うと、白野はハッと正気に戻り、男に声をかけた。

 

「…バーサーカーで間違いないよね?」

 

「あぁ、俺はバーサーカークラスのサーヴァントだ。そして、俺の触媒を使い、狂化の詠唱を唱えて俺を喚び出したのは貴様だな?小娘。」

 

「……あなたが、バーサーカー…」

 

「真名は後程で良いだろう?……それで、倒すべき敵は何処にいる?」

 

「まぁ、落ち着け。敵と戦う前にやることがある」

 

竜胆は触媒をアタッシュケースに仕舞い、煙草を取り出した。

 

「ブリジェントの教会に行くぞ。アーチャー、バーサーカー、霊体化しろ。アーチャーはともかく、バーサーカー。お前は目立つ。」

 

「承知」

 

「フン…言っておくが、俺は貴様をマスターと認めていないからな。魔術師ならばその力を証明させ、俺を納得させるのだな」

 

と、アーチャーとバーサーカーは霊体化して消えた。

 

「……しかし、とんでもない奴を召喚したな、お前。」

 

「でも…彼は本当にあの武将なのかな?」

 

「……確かに見た目も伝承とは如何なるが、間違いないだろう。そろそろ夜明けだ。行くぞ、ハクノ」

 

「…はい、先生」

 

二人は荷物を持って廃墟を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残り27騎___

 

 




軽く登場人物紹介

金の陣営_魔術師(マスター)

『フロスト・フォルヴェッジ』
ランサーのサーヴァントのマスター。
カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアの娘で魔術協会の生徒でもある。雪の様に白いセミロングに空色の瞳が特徴的。召喚魔術が得意。

衛宮竜胆(えみやりんどう)
アーチャーのサーヴァントのマスター。
魔術殺しの異名を持つ魔術師専門の殺し屋の女性。
仕事先で白野と出会い、部下(弟子)にした。
同じ魔術師専門の殺し屋の自分と目付きが似ている兄が居るという。

沙条彩巴(さじょういろは)
セイバーのサーヴァントのマスター。
沙条家の三女で見習いの黒魔術師。薄茶色の髪に青い瞳の少女。行方不明になっている双子の姉である次女を探していてその手掛かりをつかむために今回の大戦に自ら参加を希望した。長女は亜種聖杯戦争で亡くなったという。

後編に続きます。


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開幕前‐金‐後編

10年前の東京の亜種聖杯戦争で綾香お姉ちゃんが行方不明になった…

お父さんも愛歌お姉ちゃんも亜種聖杯戦争で死んじゃって…わたしだけになった。綾香お姉ちゃんは優しくて賢くて、わたしの憧れだった。

いくつか手掛かりをつかんだものの、お姉ちゃんは見付からなかった。

 

「……会いたいよ、綾香お姉ちゃん…」

 

結局お姉ちゃんは見付からず、わたしは絶望した。

そんな時、魔術協会でお世話になっているロード・エルメロイ先生からイギリスの第二次聖杯大戦の話を聞いて、わたしはその大戦に参加することを決めた。

 

大戦に参加すればきっと、お姉ちゃんを見つける手掛かりを掴むことが出来るかもしれない…!

 

と、わたしは思った。エルメロイ先生にやめなさいと言われたけど、召喚科の学部長、ロッコ・ベルフェバン先生にダメ元で何度も参加をお願いして五日後に許可を得られた。

エルメロイ先生から触媒を貰い、わたしはすぐに生け贄や魔法陣の用意をした。

神父さんの話によると、銀の陣営と銅の陣営は既に動き出しているという。

 

わたしも強くてカッコいいサーヴァントを召喚して、戦いながらお姉ちゃんの手掛かりを見つける!

 

深夜__

 

わたしは人気(ひとけ)の無い森の奥で生け贄の血でずれない様に魔法陣を書き、触媒を魔法陣の前にあるアタッシュケースの上に置いた。

 

「剣の触媒ということは、セイバーかライダーのサーヴァントを喚び出すことができるはず…」

 

わたしはすぐに魔法陣の前に立ち、詠唱を始めた。

 

「__素に(ぎん)(てつ)(いしずえ)に石と契約の大公。

 

手向ける色は『(こがね)』。

降り立つ風には壁を。四方(しほう)の門は閉じ、王冠(おうかん)より出で、

 

王国に至る三叉路(さんさろ)循環(じゅんかん)せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度、ただ満たされる刻を破却する。

 

___告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い。この意、この理に従うのなら応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総(とこよすべ)ての善と成る者。

 

我は常世総ての悪を敷く者。

 

__汝、三大(さんだい)言霊(ことだま)を纏う七天(しちてん)

 

抑止(りょくし)()より来たれ。

 

天秤(てんびん)の守り手よ!」

 

サーヴァントを召喚する詠唱を間違えずに唱えると、魔法陣から光が溢れ、辺り一面を飲み込んだ。

 

しばらくすると光が消え、誰もいなかったはずの魔法陣の上に、フードを深く被り、赤いマントを羽織った一人の騎士が居た。腰には黄金の柄の剣が掛けてあった。

 

「………」

 

「あなた、は…?」

 

と、聞くと騎士はフードを外し、素顔を露にした。

 

橙色の紐で後ろに髪を纏めた光輝く金髪、炎の様な橙色の瞳、女の様な顔立ち、透き通る様な白い肌。

 

「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。我が(マスター)、沙条彩巴…騎士として、貴女を全力で守りましょう」

 

「セイバー…最優のクラス!?やった…やったぁ!」

 

嬉しさのあまり、わたしは跳び跳ねた。しかも、見た目、鋭い眼光、最強のサーヴァントに違いない…!

あ…とりあえず一旦落ち着かないと……

 

「こほん…はじめまして、セイバー。わたしがあなたのマスターの沙条彩巴。彩巴って呼んでね」

 

「承知した。よろしく頼む、イロハ。」

 

「………ところで、あなた男?」

 

「? 男だが…?それがどうしたんだい?」

 

「いや、顔を見た時一瞬女の人かなって思って…声若干低いからもしかして男の人かなぁ、って…」

 

「…生前からよく女性だと間違えられるんだ。私の仲間の一人で理性蒸発した子が居てね…その子は見た目が完全に女の子なのに初めて会った時に私のことを女だと勘違いしてね…」

 

「へぇ…」

 

「……それで、私は何をすればいいのかな?」

 

「あ、そうだね…それじゃあ、ブリジェントに向かおう。みんな待っているかもしれないし!」

 

「承知した。我がマスター」

 

彩巴は触媒と魔法陣を片付けて荷物を持ち、セイバーと共にブリジェントへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

残り26騎___

 

 




オリジナルサーヴァント紹介
【セイバー編】
真名と宝具は後に明かされるので属性やクラススキルについて説明します。

【セイバー】
属性未定 特性アルトリア顔、愛する者
身長/体重 170cm/66kg 性別 男性
一人称「私、俺(親しい人にしか使わない)」
二人称「貴方、貴女、貴様」
クラススキル
「騎乗B」「自己回復(魔力)A」「魔力放出B+」


次回は銀の陣営_


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開幕前‐銀‐

__我々、ラーヴォルバ一族は25年前に魔術協会と離反したユグドミレニア一族に次ぐ優れた魔術師一族だ。

 

錬金術も黒魔術も降霊術(こうれいじゅつ)も召喚術もその他の魔術もユグドミレニアを超える優れた使い手ばかりだ。

…………だが、我が一族の中で根源の渦に到達した者はいない。

 

だからこれはチャンスだ…!

(こがね)の陣営も(あかがね)の陣営も(くろがね)の陣営も、全ての陣営を討ち倒し…

大聖杯を手に入れ根源の渦に到達する。

 

そのためなら、例え調停者(ルーラー)だろうが復讐者(アヴェンジャー)だろうが、邪魔する者は全て排除する。

 

それに、我々には最強のカード(・・・・・・)がある。

 

大聖杯は、我々ラーヴォルバ…(しろがね)の陣営の物だ…!!

 

 

 

 

 

 

 

イギリス カーディフ__ラーヴォルバの城塞。

 

ラーヴォルバ一族が拠点としている城塞。

 

12代目現当主、ディニクス・ファルフィフ・ラーヴォルバは、黒いコートを羽織り、銀の陣営の魔術師(マスター)達が待つ広場へ向かっていた。

彼の前には、白い獅子を模した兜を被り、白銀の鎧を纏ったひとりの騎士が居た。

兜で素顔が見えず、鎧と白いマントで体格がわからず、男か女かは不明だが、明らかに普通の人間ではなかった。

 

「……ディニクス卿、現在の状況は?」

 

「は、金の陣営がセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーを召喚し、ブリジェントに向かっております。

一方、銅の陣営は人手不足でマスターに相応しい者を探しております。

鉄の陣営の行方は、現在捜索中です」

 

「そうか、ならばこちらも急がねば先を越されるな。我が陣営の他の魔術師は?」

 

「六人全員が我が一族の中でも優秀で凄腕の者ばかりでございます。

錬金術の専門家、元時計塔一級講師。

『ガーディナ・オルグド・ラーヴォルバ』

 

様々な科学や魔術について研究している白魔術師。

『アニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバ』

 

古代の魔術について研究している一族の中でも高齢な魔術師。

『オニビティス・ナービクァ・ラーヴォルバ』

 

一族の中でも残虐極まりないと称されている黒魔術師。

『ヴィルクス・ニキグル・ラーヴォルバ』

 

元聖堂教会、代行者。一族最強の男。

『ギベオン・ドュリス・ラーヴォルバ』

 

宝石製の優れたゴーレムを作り出す若きゴーレムマスター。

『トゥニティニス・エルクトゥ・ラーヴォルバ』

 

六人全員、触媒を渡しております。王の配下に相応しい英霊が召喚されるでしょう」

 

「それは頼もしいな、何せ28騎の英霊が殺し合う最大の聖杯大戦なのだからな。期待しているぞ」

 

「は、」

 

 

広場に着くと、銀の陣営のマスター、六人全員が揃っていた。『王』が玉座に座ると、ディニクスはその隣に移動した。

 

「それぞれの触媒を台に置け、」

 

ディニクスが指示を出すと、六人は指示通りに触媒を台の上に置き、それぞれの位置に移動した。すると、ヴィルクスがスッと手を上げた。

 

「ディニクス卿。少しよろしいですか?」

 

「……なんだ?ヴィルクス卿」

 

「私の触媒なのだが…少し物足りないと思ってね。狂化の詠唱を追加する許可を貰いたい」

 

「…ほう、良いだろう。許可する」

 

「感謝する。ディニクス卿」

 

ヴィルクスは礼を言い、自分の位置に移動した。

 

「こほん…では、始めよう」

 

広場の明かりを全て消し、六人は召喚の詠唱を唱え始めた。

 

「__素に(ぎん)()(いしずえ)に石と契約の大公(たいこう)

 

手向ける色は『(しろがね)』。

 

降り立つ風には壁を。四方(しほう)の門は閉じ、

 

王冠(おうかん)より出で、王国に至る三叉路(さんさろ)循環(じゅんかん)せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度、ただ満たされる刻を破却する。

 

___告げる。汝の身は我が下に。我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い。この意、この理に従うのなら応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総(とこよすべ)ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者。」

 

ヴィルクスは不気味な笑みを浮かべ、狂化の詠唱を唱えた。

 

「__されど汝は、その眼を混沌に曇らせ侍るべし。

 

汝、狂乱の檻に囚われし者。

 

我はその鎖を手繰る者」

 

「__汝、三大の言霊を纏う七天。

 

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

六つの魔法陣から光が溢れ、広場全体を飲み込んだ。

光が消えると、六つの魔法陣の上に六騎のサーヴァントが跪いていた。

 

「「_召喚の招きに従い参上した、我ら(しろがね)のサーヴァント。

我らの運命は、銀のマスター(ラーヴォルバ)と共にあり。

我らの剣は、貴方方(あなたがた)の剣である。」」

 

六騎のサーヴァントを見て六人のマスターは笑みを浮かべ、ディニクスが口を開いた。

 

「ご覧ください。彼らこそ我が陣営の最強のカード。

すなわち、王の配下でございます。」

 

と、言うと『王』は立ち上り、被っていた兜を脱いだ。『王』の素顔を見て、六人のマスターと六騎のサーヴァントは動揺した。

 

後ろに纏めた金色の髪、青く美しい瞳、透き通る様な白い肌。『王』は美しくも勇ましい金髪碧眼の女性だった。

 

「召喚の招きに従い参上した英霊達よ、我は(しろがね)ランサー。まずは私の配下として他の3つの陣営を殲滅せよ」

 

ランサーの言葉を聞き、六騎のサーヴァント達は跪きながら頭を下げた。そしてディニクスがランサーを除く、広場に全員に向けて、語り出した。

 

「彼らの召喚により、我々はまた更に勝利へと進み出した。全ての陣営を抹殺し、大聖杯を奪還する!

我が一族を侮辱し続けた魔術協会でも!アインツベルン、遠坂、マキリの御三家でも不可能だった根源の渦に到達し、我々の偉大さを思い知らせてやろう!

 

さぁ、我が同士達よ。この大戦に勝利し、新たなる道を開くために、

 

我が王__騎士王アーサー・ペンドラゴンに己の命を捧げよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

残り15騎__

 

 




(しろがね)の陣営【紹介】

『ディニクス・ファルフィフ・ラーヴォルバ』
ランサーのサーヴァントのマスター。
ラーヴォルバ一族現当主。大聖杯を奪おうと企んでいる。
見た目は三十代ぐらいの男性だがダーニック同様、結構な歳らしい。

『ガーディナ・オルグド・ラーヴォルバ』
セイバーのサーヴァントのマスター。
いつもスーツで三十代ぐらいの黒髪の男。

『アニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバ』
アーチャーのサーヴァントのマスター。
可憐な栗色の髪の少女。

『オニビティス・ナービクァ・ラーヴォルバ』
ライダーのサーヴァントのマスター。
車椅子に座っている白髪の老爺。

『ヴィルクス・ニキグル・ラーヴォルバ』
バーサーカーのサーヴァントのマスター。
神父服の上に白衣を羽織った眼鏡をかけたカーキ色の髪の男。

『ギベオン・ドュリス・ラーヴォルバ』
アサシンのサーヴァントのマスター。
代行者の服装をした女と見惑う様な青年。

『トゥニティニス・エルクトゥ・ラーヴォルバ』
キャスターのサーヴァントのマスター。
長袖の黒いジャンパースカートを着た金髪の少女。



次回は銅の陣営__


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開幕前‐銅‐

Fate/GrandOrdcr二部のキャラが出てきます。
ほとんど原作キャラ
会話無し


冬木(ふゆき)の聖杯戦争では、土地の霊脈(れいみゃく)に核となる大聖杯を埋め込み、その上で聖杯戦争で奪い合う小聖杯に魔力を注ぎ込んでいた。

 

この様な普通の魔術師には不可能な冬木の聖杯戦争の複雑なシステムを構築したのは、三つの魔術師一族、「アインツベルン」、「遠坂」、「マキリ」の『最初の御三家』である。

 

85年前の第二次世界大戦直前に行われた第三次聖杯戦争に参加していた『ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア』は聖杯戦争の途中で小聖杯が失われ、第三次聖杯戦争は有耶無耶に終結した。しかし、ダーニックはある偶然から冬木の地下にある大聖杯の存在を知り、彼が当時所属していたナチスドイツ力を借りて大聖杯を強奪した。

そして、第二次世界大戦の混乱の中、ナチスドイツからも大聖杯を隠し、当時のユグドミレニアの本拠地、

『トュリファス』の霊脈に繋いだ。

 

 

そして、今回の第二次聖杯大戦___普通の魔術師には不可能だったはずの大聖杯製造にクリスティアが成功したと聞いて、御三家は直ぐ様一族の中から七人の魔術師(マスター)に相応しい者を探ったが、四名しか集まらなかった。止む終えず、御三家のうち遠坂が魔術協会と聖堂教会と手を組んで人手不足を防いだ。

マスターに選ばれたのは、

 

遠坂凜(とおさかりん)

 

間桐慎二(まとうしんじ)

 

間桐桜(まとうさくら)

 

イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

 

カドック・ゼムルプス。

 

バゼット・フラガ・マクレミッツ。

 

レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。

 

マスターが決まった二週間後、魔術協会の金の陣営の代表、ロード・エルメロイⅡ世と御三家の銅の陣営の代表、遠坂凜の代わりに父、遠坂時臣(とおさかときおみ)が時計塔で話し合いをし、その結果金の陣営と銅の陣営は同盟を結んだ。

大戦が開幕した時、共に協力し、鉄と銀の陣営を殲滅した後、生き残った者達で聖杯をめぐって殺し合うという条件付きの契約だが、両陣営のマスター達はそれでも良いと同盟に賛成した。

 

その後、銅の陣営は七騎のサーヴァントを召喚に成功した。

遠坂凜はランサー。間桐慎二はライダー。

間桐桜はバーサーカー。カドック・ゼムルプスはキャスター。

バゼット・フラガ・マクレミッツはアーチャー。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンはアサシン。

レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイはセイバー。

 

それぞれサーヴァントを召喚した後、戦場でたるウェールズへ出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

残り8騎__

 

 




次回は鉄の陣営__


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開幕前‐鉄‐

200年前_クリスティア一族は魔術協会と協力し、御三家が作り出した聖杯について研究していた。

互いに協力しあい、供に研究し続け、のちにクリスティアと魔術協会は固い絆で結ばれた。

__だが、当時のクリスティア一族の当主である

ロナウド・メラロイ・クリスティアが聖杯の構造の謎が解けたことを知った当時の魔術協会の学部長達はそれを自分達の者にしようと企み、クリスティア一族の屋敷に攻め込んでクリスティア一族の九割が犠牲となった。

裏切られたと知ってロナウドは絶望し、聖杯の構造が書かれた資料を息子に託し、屋敷に火を放って自殺した。

 

当時の魔術協会の者達は、クリスティア一族は聖杯戦争に参加して敵マスターの逆鱗に触れ滅ぼされたと嘘の情報を資料に書いた。

 

__そう、

 

実際、クリスティア一族は聖杯戦争に参加していなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

イギリス ウェールズ__

 

現クリスティア一族が潜伏している巨大都市_『暗黒迷宮都市スティア』。

その中心にある黒い城の中にある広場に(くろがね)の陣営のマスターとサーヴァントが集まっていた。

 

クリスティア一族現当主

『アルヴァルトス・グリティ・クリスティア』。

 

クリスティア一族次期当主

『ミリウォル・ファニカ・クリスティア』。

 

ありとあらゆる黒魔術を研究し、取得した魔術師

『ルジャット・ワーヴィトュ・クリスティア』。

 

宝石魔術と黒魔術を使う天才魔術師

『ユミリア・カレミスア・クリスティア』。

 

悪名高い魔術師殺しの神父

『ロディニオ・ダヴス・クリスティア』。

 

格闘術と魔術を扱う若き殺し屋

『ヤン・シャオファ・クリスティア』。

 

アルヴァルトス直々に率いれた生き人形

『ロゼリア・オーラム・クリスティア』。

 

そしてクリスティアによって召喚された黒化英霊(鉄のサーヴァント)達。

 

バーサーカー、アサシン、キャスター、ライダー、ランサー、アーチャー__そして、アヴェンジャー(・・・・・・・)

アルヴァルトスが元はセイバークラスだった英霊を大聖杯を使い、アヴェンジャークラスに変えたのだ。

 

「諸君、時は来た。200年前我々一族を裏切った魔術師達に復讐する時が来た。

まずはラーヴォルバの城塞を襲撃し、その隙に調停者(ルーラー)と監督役を抹殺する。」

 

「アルヴァルトス。監督役の始末はわたしがするわ」

 

と、手を上げたのはアーチャーのマスター、ユミリアだった。

 

「……監督役には金のアサシンが付いている。出来るのか?ユミリア」

 

「問題ないわ。わたしのアーチャーの宝具を解放すれば街ごと消すことが出来る…何人も犠牲になってもわたしには知ったこっちゃないわ。あの監督役を殺すためにわたしはこの大戦に参加したのだから…!」

 

「……良いだろう。では調停者(ルーラー)討伐は貴様に任せるぞ、ロディニオ」

 

「お任せを。このロディニオ、必ずや調停者(ルーラー)の首を取ってきます!行くぞ、バーサーカー!」

 

「Arrrrrr…」

 

「わたし達も行くわよ、アーチャー。あなたの大好きな復讐の時間よ」

 

「ふふふ…張り切ってますねユミリア。よろしい、私の蒼き復讐の炎の矢でコトミネイズミを焼き尽くしましょう」

 

「ふ、頼りにしてるわ。アーチャー」

 

ロディニオとユミリアが広場から立ち去った後、アルヴァルトスは話を続けた。

 

「ロゼリア、ミリウォル、ヤン、ルジャット。貴様らはラーヴォルバ城塞を襲撃し、金の陣営、銀の陣営、銅の陣営をラーヴォルバ城塞に向かわせる様にしろ。あと、真名を解放するのは無しだ。いいな」

 

「「は、」」

 

四人も広場から立ち去り、アルヴァルトスとキャスターだけになった。

その時、アルヴァルトスは顔を手で覆い、はぁ…と溜め息をついた。

 

「……さぁ、始まるぞ…地獄の聖杯大戦が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残り1騎___

 

 

 




鉄のマスターの紹介は後程で
すみません

次回は零__


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開幕前‐零‐

真名バレ注意


__(わらわ)には、自由などなかった。

 

(おのれ)で行動を決める事もできず、幕府(ばくふ)の者はその存在に(おそ)れおののいていた。

反面、利用価値があるものだから常に手元に置きたがる。

周りにはまともに信じられる相手などおらず、

奉行所(ぶぎょうしょ)内の暗い部屋にただただ閉じ込められていた。

江戸はまさに、外すら見る事の叶わぬ鳥籠(とりかご)であった。

 

……妾は、遥か昔に人を捨てた者だった。

妾のこの身は、直に触れる者をことごとく毒によって

侵して殺してしまう。

人の温もりなどずっと忘れていた…

熱を失い、心の奥底まで冷たくなっていた。

 

だが、ある者と出会って、妾は人を忘れた自分を憎んだ。

その者と過ごしているうちに妾の心は少しずつ温かくなり、いつか江戸の空を皆と見ると約束を交わした。

……妾にとって、あの者は妾に温もりを思い出させてくれた大切な人間だ。

 

 

 

『__検索(サーチ)開始』

 

 

 

『____________検索(サーチ)終了_

 

__一件一致。

 

_体格適合。_霊格適合。_血統適合。_人格適合。_魔力適合。』

 

 

 

 

 

『_元人格の同意獲得

 

 

__霊格挿入(インストール)開始。

 

 

 

____現界完了(げんかいかんりょう)

 

 

 

サーヴァント調停者(ルーラー)。』

 

 

イギリスにあるとある小さな街_その街の廃教会にひとりの少女が立っていた。

 

ふたつの鈴を下げた帽子を被った白く美しい和装の長い銀髪の少女_今回の第二次聖杯大戦の調停者(ルーラー)だった。

 

「……得体の知れぬ妾に肉体を貸してくれてありがとう。

__調停者(ルーラー)蟲奉行(むしぶぎょう)此度(こたび)の戦いの(まも)りを(つかさだ)ろう」

 

 

 

 

 

 

調停者(ルーラー)』__

 

聖杯自身に召喚され、聖杯戦争という概念そのものを守るために動く、絶対的な管理者。

部外者を巻き込むなど規約に反する者に注意を(うなが)し、場合によってはペナルティを与え、聖杯戦争そのものが成立しなくなる事態を防ぐためのサーヴァント。そのため現界するにマスターを必要とせず、

中立(ちゅうりつ)審判(しんぱん)」として基本的にどの陣営に組する事もない。

ルーラーは本来、通常の聖杯戦争で召喚される事は無い。召喚される事態は大きくわけて二つ。

 

ひとつは「その聖杯戦争が非常に特殊な形式で、結果が未知数なため、人の手の及ばぬ裁定者が聖杯から必要とされた場合」。

 

もうひとつは「聖杯戦争によって世界に歪みが出る場合」である。

 

ルーラーは勝利者が叶えようとする願望に例えそれが我欲による物であろうとも干渉(かんしょう)しない。

だが、「世界の崩壊を招く」願いは絶対に許容せず、聖杯戦争によって世界の崩壊が理論的に成立すると見なされた時点でルーラーは召喚される。

 




これで今回の第二次聖杯大戦で活躍するサーヴァントとマスターが揃いました。金以外はまだサーヴァントの紹介をしていませんが、次章で書こうと思います。
そしてこの物語の主人公は次章に登場します。



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次回予告 第二次聖杯大戦の開幕

役者は揃った。

 

南西の地(イギリスウェールズ)で繰り広げられる四つの陣営による魔術師(マスター)英霊(サーヴァント)達の殺し合い__

 

 

最高の敏捷性と高い白兵戦能力がある

Lancer(ランサー)』(槍兵)。

 

魔術師(マスター)の天敵」とされる

Assassin(アサシン)』(暗殺者)。

 

高い機動力と強力な宝具を数多く所有する

Rider(ライダー)』(騎兵)。

 

基本能力を問わず、ただ狂う事で破壊のみ特化している

Berserker(バーサーカー)』(狂戦士)。

 

基本的にランクA以上の魔術を持つ英霊が該当する

Caster(キャスター)』(魔術師)。

 

高い単独行動スキルと射撃能力を持つ

Archer(アーチャー)』(弓兵)。

 

バランスが取れた能力から最優と称される

Saber(セイバー)』(剣士)。

 

合計28騎の英霊が現代に喚び出され、大聖杯をめぐる四つの陣営による最大規模な聖杯戦争が始まる__

 

 

「この地に集いし一騎当千、万夫不当の英霊達よ。()れは尋常な聖杯戦争にあらず、七騎と七騎と七騎と七騎___

四陣営の争う大戦(・・)である。

 

調停者(ルーラー) 蟲奉行(むしぶぎょう)

この戦いの護りを司ろう!」

 

25年の時を得て、再び聖杯大戦が幕を開ける__

 

欲望、正義、混沌、復讐、友情、虚偽、裏切り、愛情、悲劇、恐怖、運命____そして『真実』。

 

この大戦で全てが明らかとなる。

 

25年前の外典(Apocrypha)とは違う『if』の物語__

もうひとつの外典(Apocrypha)

 

これは、サーヴァントの物語でもマスターの物語でも、血に塗られた復讐劇でも絶望に汚染された悲劇でもない。

 

これは__『隠された真実を探る物語』である。

 

果たして勝利を掴むのは_

 

(こがね)』か、

 

(しろがね)』か、

 

(あかがね)』か、

 

(くろがね)』か……

 

そして、どの陣営にも属していない謎のサーヴァントが大戦に乱入する__

 

「我が愛剣の炎に焼かれるがいい、いくぞ無銘のサーヴァント!」

 

「……来い、金のセイバー!」

 

ふたつの刃がぶつかる時、更なる最悪が訪れる__

 

「……我が名は、アヴェンジャー。キサマらを抹殺する者だ」

 

28人の魔術師(マスター)と28騎の英霊(サーヴァント)による、過去最大規模の第二次聖杯大戦_

 

大聖杯を手に入れるのは誰か、クリスティア一族の復讐劇、ラーヴォルバの野望、魔術協会が隠す200年前の秘密__

 

第二次聖杯大戦が、

 

今、開幕する__!



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番外編①プチ☆あぽくりふぁろすと!

序章が終了したので番外編です!
メタ発言、キャラ崩壊、中の人ネタがあるのでご注意を。
本作とは一切関係ありません。
絵柄はちびちゅきを想像してください。
Apocrypha、その他fateシリーズやFH、ムシブギョーなどの原作キャラも出てきます。


ジャンヌ「ルーマニアの聖杯大戦から25年の月日が経ったifの話ですか…今度の敵は天草四郎よりも手強そうですね…」

 

火鉢「いやいやいやいやいやいやいやいやっ!!!!

問題はそこじゃないから!!?何よ29騎って!?ただでさえルーマニアの聖杯大戦もヤバかったのになんで増やしたのよ!?イギリス吹っ飛ぶわよ!!??ていうかなんで真田居んのよ!?白野あんた、とんでもない外道を召喚したわね!?しかもバーサーカーで!!白野死ぬわよ!?裏切られて食い殺されるわよ!?」

 

真田「おっと、心は硝子だぞ」←

 

青セイバー「男でアルトリア顔の英霊…一体彼は何者なのでしょう…?」

 

ネロ「いや、理性蒸発と聞いたらひとりしかおらんだろ…」

 

アストルフォ「えぇ!?まさかだとは思ったけど嘘~!?スッゴい久しぶりじゃん!」

 

シャルルマーニュ「懐かしいなぁ、うちの唯一の常識人でよくローランに振り回されていたよなぁ…オr…もが!?」

 

マシュ「ネタバレ厳禁ですよ!シャルルマーニュさん!!」

 

アストルフォ「本当に久しぶりだねー!オr…むぐぐ!?」

 

カムイ♀「だからネタバレは駄目ですってば!」

 

アルジュナ「鉄のアーチャー…何処かで会った様な…」

 

カルナ「何処かで見た顔だな」

 

カムイ♂「じゃあ、鉄のアーチャーはインド系サーヴァントかもしれないってこと?」

 

火鉢「まだそうと決まったわけじゃないからあまり深く考えない方がいいよ」

 

モードレッド「な…なんで父上が…!?しかも…しかも…」

 

青セイバー「ん?」

 

モードレッド「……セイバーの父上より大人っぽいしカッコいいな」

 

青セイバー「ブチッ)…………約束されし(エクス)、」

 

全「「……へ?」」

 

青セイバー「勝利の剣(カリバー)ァァァァァァァァァァァァっ!!!!!」

 

全「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!??」」

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

 

 

‐おまけ‐

 

ジーク「スペースが空いたのでここで大事な説明を話そうと思う。

まず、開幕前‐金‐の前編にオルタ化ありと書いてあっただろ?あれはfateに出てくるサーヴァントと他の原作のキャラがオルタ化するという意味で分かりやすく言うと、

fateの場合、公式ではオルタ化していないサーヴァントがオルタ化する。

「ジークフリート」⇒「ジークフリート【オルタ】」

 

他の原作の場合、闇堕ちの様な感じだな。

「マルス」⇒「マルス【オルタ】」

 

次に、この物語の世界は原作のApocryphaと同じで第四次聖杯戦争は行われていなくて、イリヤスフィールは存在していて衛宮士郎は存在していないんだ。

この世界のカルデアは人理焼却が起きていないが藤丸立香はカルデアの新人魔術師として存在している。

岸波白野とレオナルド・ビスタリオ・ハーウェイも普通の魔術師として存在しているんだ。

 

分かりにくかったかな…とにかく、今回の第二次聖杯大戦が本格的に始まればルーマニアの聖杯大戦より大変なことになるのは間違いないが、それを解決するのは彼らの役目だ。

 

Fate/apocryphaLost(アポクリファロスト)、これからもよろしく頼む」

 



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第一章 動き出す黒き影 第一節 名前の無い子羊

__ここはどこなんだろう。

 

なにも、おもいだせない…

 

くらい…つめたい…からだがうごかない…

 

おれは…だれなんだ?

 

 

コポコポッ…

 

 

『……こいつが■■■■のか…良い出来だ』

 

『後は起こして■■■■の力を使うことが出来るか試すのみですな』

 

 

ゴポポッ…

 

 

くるしい…さむい…だれか…だれか、たすけ……

 

し…しにたくない……しにたくない…

 

たのむ…ここからだしてくれ…

 

 

ピシッ…ビキビキッ

 

 

「__仮想宝具(かそうほうぐ)擬似展開(ぎじてんかい)

 

 

バリイィィンッ!!

 

 

はしった。

 

とにかくはしった。

 

こわくて、こわくて、こわくて、こわくて……

 

あたまのなかがまっしろになっていて、

 

ほそくてよわいあしをひっしにうごかして、

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…っ…!」

 

 

きづいたら、おれはよくわからないばしょにいて

 

あしはもううごかず、おれはじめんにたおれた

 

だんだんしかいがかすんできて、からだぜんたいがうごかなくなった。

 

いやだ…こんなところで、しにたくない…

 

いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ…いやだ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラーヴォルバ城塞__庭園。

 

アニムフィスはオニビティスと一緒に庭園に咲いている花の世話をしていた

 

「オニビティスお祖父(じい)様のこの庭園…いつ見ても美しいですね。普段から花の世話とかをしているのですか?」

 

「私ももう年だからな…今では魔術の研究よりも、こうして植物の世話をするのが日課となっているんだ。優しく丁寧に育てると、愛らしく美しい花が咲くんだ」

 

「へぇ、」

 

「いつか、病気で眠っている孫に、この庭園を見せて喜ばせたいんだ。私の孫、ミクシィは生まれついた頃から体が弱く、ほとんど歩けない状態だった。次第に体を動かすこともままならなくなって、今は意識がない状態なんだ」

 

「……では、お祖父様が聖杯にかける願いは…」

 

「あぁ、ミクシィの病気を治す。根源の渦の到達よりも、私は孫を…ミクシィを救いたい」

 

「………」

 

「アニムフィス、お前は聖杯に何を願うんだ?」

 

「……私は___」

 

「マスター!」

 

と、二人の前に現れたのは緑色の外套を着たオレンジ色の髪の青年_アニムフィスのサーヴァント、銀のアーチャーだった。

 

「どうかしたの?アーチャー」

 

「良いから、こっち来て見てくれ」

 

アニムフィスとオニビティスはアーチャーに連れられ、庭園の最奥に辿り着いた。

ふと、アーチャーの足下を見てみると、ひとりの細身の少年が倒れていた。

 

女のような長い黒髪、透き通る様な白い肌、足の裏は血だらけで、ぶかぶかのワイシャツを着ていた。

 

「どうやって…城塞には強力な結界が張ってあるのに…」

 

「おそらく突き破って入ってきたのだろう。他の陣営の刺客……ではなさそうだな」

 

「…っ…うぅ…」

 

「!?…大丈夫ですか?聞こえますか?」

 

と、アニムフィスは座り込んで少年の体を起し、抱き寄せると、少年は苦しそうに魘され、瞼をゆっくりと開け、今にも消えそうな声で言った。

 

「ぁ…たすけ、て……おれは…まだ、しにたく…ない…」

 

少年はまるで舌足らずな子供の様な口調で「たすけて」と言った。そして瞼をゆっくりと閉じ、気を失った。

 

「…で、どうしますか?殺るならサクッと殺りますが」

 

「……アーチャー、すぐに毛布とタオルを持ってきて。オニビティスお祖父様、他の皆さんにはこの事は内密に、何をされるかわかりませんから」

 

「え?お…おう…」

 

「だが…何故だアニムフィス?」

 

「……こんなに傷付くいて倒れて…よっぽど怖い思いをして必死に逃げ出してきたに違いない。こんなか弱い子を見捨てるなんて出来ません。」

 

「…そうか。ならば、協力しよう。待っておれ、すぐにライダーを呼んでくる」

 

「!…ありがとうございます。」

 

「っ…ぅ…うぅぅ……」

 

少年が魘されると、アニムフィスは少年を優しく抱き締めた。

 

「大丈夫。あなたは、私が必ず助けますから……」

 

 




銀のアーチャーの設定変えました


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第二節 異変

聖杯大戦開幕から二日後……

 

ブリジェント_聖堂教会が管理しているとある教会。

 

言峰和泉(ことみねいずみ)は、二日前に先にブリジェントに着き、金側のマスター達が来るのを待っていた。

だが、30分前に魔術協会から届いた手紙を読んで、眉間にシワを寄せていた。

 

「…………」

 

「何かあったの?マスター」

 

と、和泉の背後に現れたのは黒いローブを身に纏ったひとりの少年だった。少年の両足には足枷があり、長い鎖で繋がっていた。

 

「…ウェールズに潜伏していた魔術協会の魔術師からの報告です。鉄側のサーヴァントとマスターが動き出しました。彼らは三手に別れてラーヴォルバ城塞、こちらブリジェント、そして二日前に現界が確認されたルーラーがいる街にへと向かっていったそうです。

鉄の陣営…クリスティアの狙いはおそらく私とルーラーでしょう。ラーヴォルバ城塞を襲撃し、注意をそちらに向け、その隙に私とルーラーを抹殺するつもりなのでしょう。」

 

「…で、どうするの?」

 

「こちらに向かっている皆さんに伝令を送ります。アサシン、見張りをお願いします」

 

「…了解」

 

 

 

 

 

 

一方、竜胆と白野、アーチャーとバーサーカーは竜胆が運転する車でブリジェントに向かっていた。二日前、白野の提案でアーチャーとバーサーカーに霊体化しなくても出歩ける様に服を買った。バーサーカーは最初嫌がっていたが結局白野に負けて着た。ちなみにアーチャーは凄く嬉しそうに着たという。

 

「この近くに街があるから今日はそこのホテルに泊まろう」

 

「「はい、先生/マスター」」

 

「……ふん」

 

と、会話をしていると、鞄の中に入れていた伝令が送られる魔法道具が動き出した。

白野は伝令を写した紙をペリペリっと取り、読んだ。

 

「…これは…!…先生、和泉神父から伝令です。鉄のサーヴァントが動き出しました!」

 

「なに!?」

 

竜胆は急いでブレーキをかけ、車を止めた。

白野から伝令を写した紙を貰い、内容を読んだ。

 

「……ブリジェント、ラーヴォルバ城塞、ルーラーがいる街。成る程、邪魔な監督役の和泉神父と調停者のルーラーを抹殺するためにラーヴォルバ城塞を襲撃して注意をそちらに向ける。なんとまぁ…鉄の陣営は真面目に大戦する気はないようだな。白野、ふたてに別れるぞ」

 

「え?」

 

「オレとアーチャーはラーヴォルバ城塞に向かう。お前はバーサーカーと一緒にブリジェントに向かって和泉神父が居る教会を監視しろ。決して、目立たないようにな。こっちが終わったらブリジェントに向かう。

じゃあな」

 

「え、ちょっ…先生!?」

 

と、言い残して竜胆はアーチャーと一緒に車に乗ってラーヴォルバ城塞に向かって行った。

 

「……ブリジェントまでまだ一日かかるのに…どうやって行けと…」

 

「………はぁ、今日中にブリジェントに着く方法がひとつあるぞ」

 

「…………え?」

 

「お前には危険かもしれないが…それでもやるか?」

 

「や…やる、やります!」

 

「……ほう、良い返事だ」

 

バーサーカーは意地悪そうな笑みを浮かべた。

この「今日中にブリジェントに着く方法」の内密を知った白野が後悔して監視どころではなくなるのは、また後の話___




あらすじ変えました。
注意してくれてありがとうございます。


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第三節 呪縛の影に囚われた者

同時刻_彩巴(いろは)とセイバーのもとにも伝令が送られてきた。

彩巴は偶然ロード・エルメロイと筋骨隆々の偉丈夫、ライダーに鉢合わせ、ライダーとセイバーは共に戦う仲間に挨拶をした。

 

「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯大戦でライダーのクラスで現界した。同じ金の陣営としてよろしく頼むぞ若き騎士よ!」

 

「はい、お初にお目にかかります。征服王イスカンダル殿。この場合、私も真名を名乗るのが当たり前ですが…事情があって今は名乗れません。ですが、これだけは言えます。私はシャルルマーニュ十二勇士のひとりで、盟友の名はローランと言います。騎士として、全力を尽くします」

 

「おぉ!あのシャルルマーニュ十二勇士の…そうだとすれば、相当腕の立つ騎士の様だな」

 

と、互いに挨拶をした後、彩巴達はエルメロイが用意した車に乗り、ブリジェントに向かった。

 

車内で和泉神父が送ってきた伝令について彩巴はロード・エルメロイから話を聞いた。

 

彼によると、同盟した銅のマスターと他の金のマスターはそれぞれ三組に別れて遠坂凛、藤丸立花、カドック・ゼムルプス、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンはラーヴォルバ城塞。

間桐慎二、間桐桜、フロスト・フォルヴェッジ、バゼット・フラガ・マクレミッツはウェールズ。

レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイはルーラーがいる街にへと向かったという。

 

「のう、坊主。何故ウェールズに向かう必要があるのだ?確かウェールズは此度の聖杯大戦開幕を宣言した敵陣営が支配し、拠点としている土地であろう?」

 

「何か、考えでもあるのですか?エルメロイ殿」

 

と、ライダーが聞くとセイバーも問い、エルメロイは運転しながら二人の質問に答えた。

 

「ウェールズに向かった理由は、今ウェールズにはサーヴァントが一騎しかいないという理由で警備が薄くなっているはずというレオナルドの考えだ。私達はブリジェントに向かい、和泉神父を守る」

 

「あの、竜胆さんと白野さんは?」

 

「…彼らからは何故か連絡が来ていない。おそらく情報を漏らさないためか、何か良からぬことを企んでいるか…」

 

「…………」

 

ロード・エルメロイが運転する車は急発進し、ブリジェントの標識が見えてきた。

 

「あと少しでブリジェントに着く、相手は一人だとは限らない。気を付けろ」

 

「………!?止めてください!!」

 

と、突然セイバーが声を上げ、エルメロイは咄嗟にブレーキをかけ、車を止めた。

 

正面の方を見てみると、そこには一人の虚ろな瞳の少女が立っていた。長い髪に、巨大な槍を携えた鎧姿の女戦士だった。

よく見ると、少女の体に何か黒い靄の様なものがまとわりついていた。

 

「……これ以上、先に進まれると…困ります」

 

と、少女は小さな声で言った。

 

「ライダー…」

 

「あぁ、わかっておる。あれは間違いなくサーヴァントだ。しかも黒化されておる…」

 

「……申し遅れました。私は鉄のランサー、『ブリュンヒルデ』と申します。マスターから敵に会ったら真名を名乗る様にと言われましたので…」

 

鉄のランサー、ブリュンヒルデはセイバー達に自分の真名を明かした。サーヴァントにとって、真名は自身の伝承と伝説を知られ、その弱点をさらす様なものでほとんどのマスターとサーヴァントは真名を明かさないようにしている。

 

「……イロハ、ここは私に任せてほしい」

 

「え?」

 

「私が彼女を足止めしている間にブリュンヒルデに向かって教会に行くんだ。」

 

「で、でもそんなことをしたらセイバーが…!」

 

「大丈夫、無事に帰ってくると約束しよう。ライダー、エルメロイ殿、イロハを頼む」

 

「良いのか?相手は神霊だぞ…!?」

 

「北欧神話の女神だろうと、私はこの剣で断ち斬る。」

 

「……そうか、ではセイバー。後は任せたぞ」

 

「ライダー殿もどうかお気をつけて」

 

セイバーは車から下り、スーツ姿から赤いマントを羽織った騎士の姿に変わった。

 

「……貴方が私の御相手ですか…困ります」

 

「すまないが、貴様にはここで死んでもらう。来い、鉄のランサー」

 

セイバーが剣を抜いた直後、エルメロイは車を走らせ、二人を避けてブリジェントに向かって行った。

 

「…逃がしませんよ」

 

と、ランサーが車に向かって攻撃をしようとした瞬間、セイバーはランサーの槍を弾いた。

 

「貴様の相手は私だ!」

 

「…邪魔する人は…困ります」

 

鉄のランサーは槍を構え、セイバーに向かって振るった。セイバーは剣で上手く槍をかわし、鉄のランサーの脇腹を狙って剣を構えた。

 

「我が愛剣は十二翼の炎の一翼!」

 

と、セイバーの剣の刀身が炎を纏い、鉄のランサーの脇腹を斬り裂いた。

 

「!…っ…!?」

 

鉄のランサーは脇腹を手で押え、一旦距離を取った。

傷口からはジュウゥ…と鎧が溶け、肉が焼ける音が鳴った。

 

「っ…金の、セイバー…!こ…ころ…ころ…コロコロロ…ころ…コロロ…ころ…!!」

 

鉄のランサーは狂った様にブツブツと呪文を唱えるかの様に呟いていた。

 

「来い、呪縛に囚われし悲しき女神よ。我が愛剣でその呪縛ごと貴様を焼き尽くしてやろう」



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第四節 迷子の小鳥と心優しい魔術師

コポッ…ゴポゴポッ……

 

 

っ…くるしい…いきが、できない…

 

 

ゴオオォォォ…

 

 

ながされる…まっくらなきおくのうみのそこに…

 

 

『__助けて…』

 

『痛いよぉ…』『頼む誰か…!』『嫌だ…嫌だぁ!』『苦しい…』『死にたくない…死にたくない…』

『なんでこんなことに…』『せめてこの子だけは…!』『おっ(かあ)…痛いよ、苦しいよぉ…』『怖い…』『誰か、助けて…』

 

きこえる…たくさんのひとがくるしんでいるこえが…

 

もういやだ…ききたくない…!

 

 

 

『■■兄さん』

 

 

 

 

「!?」

 

ラーヴォルバ城塞のとある一室。長い黒髪の少年は目を覚まし、見覚えの無い天井が目に入った。

 

「ここ、は…?」

 

少年はまだ舌足らずな子供の様な口調でぽそりと呟き、ゆっくりと体を起こした。

 

真っ白な壁に床には赤紫色の絨毯(じゅうたん)が敷いてあった。部屋はそこそこ広く、机や椅子などの家具が置いてあり、少年はふかふかのベッドの上に居た。

 

服装も最初に着ていたぶかぶかのワイシャツではなくサイズもピッタリな白い男物のワイシャツに、ストリングタイ(紐ネクタイ)、紺色の長ズボンに変わっていた。

 

ガチャッ

 

「目が覚めた様ですね」

 

と、扉を開けて部屋に入ってきたのはアニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバとガーディナ・オルグド・ラーヴォルバだった。

 

少年はふたりが入ってきた瞬間、怯えて「ひっ…」と声を出した。

 

「怖がらなくても大丈夫ですよ。私はアニムフィス・ノーラム・ラーヴォルバ。庭園で倒れていたあなたをここまで運んだんです」

 

「おれ、を…?」

 

「はい。ここは安全ですから、どうか安心してください」

 

「……アニムフィス。この少年のことは他の奴らには黙っておくが、出入り口の前に見張り役のホムンクルスを二体つけるからな。あと、この別館に訪れる者はあまり居ないが、くれぐれもこの少年を城塞の外の確実に安全な場所(・・・・・・・・)に送るまでは別館の外には出すな。良いな?」

 

「はい、ガーディナ叔父様。協力してくれてありがとうございます。」

 

「いや、可愛い姪っ子のためなら私はなんでも協力しよう。こう見えて私は人を欺く演技が上手いからね」

 

と、言ってガーディナは部屋から出て行った。

 

「具合はどうですか?お腹とか空いてませんか?」

 

「あ…いや、だいじょうぶ…です…」

 

「そうですか…早速ですが、あなたは何故あんな所に?」

 

「……おれにも、わからない。ただ、さむくてくらいばしょにずっといて…こわくて、くるしくて…しにたくないっておもってひっしににげだしたんだ。しぬのがこわくてこわくて、にげるのにひっしになってきづいたら、

あのていえんのなかでたおれていた…」

 

「……そうですか。」

 

と、アニムフィスは少年を優しく抱き締め、頭を優しく撫でた。

 

「…え?」

 

「とても怖かったのね、大丈夫。あなたは私が守りますから…」

 

「…あり、がとう……」

 

アニムフィスは少年からゆっくりと手を離し、微笑んだ。

 

「そうだ。お名前はなんというんですか?」

 

「なまえ?…おれの、なまえは………………ごめん、おれになまえはないんだ」

 

「そうですか…じゃあ、代わりに私がつけます!」

 

「え?…い、いいの?」

 

「はい!ええと…『月夜(つくよ)』なんてどうでしょう?」

 

「つくよ…?」

 

「はい。前日、書物庫で日本の神話の本を読んだんです。その中で月詠(つくよみ)という神様が一番印象的であなたの髪の色、綺麗な黒で外見などが私が想像していた月詠に似ているので…」

 

「つくよ…つくよ……月夜…いいなまえだ。ありがとう」

 

「ふふ、どういたしまして。しばらくの間、よろしくお願いしますね。月夜くん」

 

「あぁ、よろしくたのむ。アニムフィス…ながいからアニムってよんでもいいか?」

 

「えぇ、良いわよ」

 

アニムフィスと謎の少年、月夜…ふたりの出会いによって第二次聖杯大戦の運命が大きく変わるとは、

まだ誰も知らない____。

 



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第五節 招かれざる来訪者

真名バレ、若干ギャグあり


ブリジェント_教会。

 

和泉は礼拝堂の十字架の像の前の椅子の上に座り、黒い手帳を読んでいた。礼拝堂内には彼以外誰も居らず、窓から射し込む夕日が礼拝堂内を照らしていた。

 

「……来ましたか。」

 

と、手帳を閉じ、和泉はゆっくりと立ち上がって後ろに振り向いた。

礼拝堂の入り口には、空色のセミロングでゴスロリを着た少女が立っていた。

 

「…はじめまして、かしら?言峰和泉(コトミネイズミ)。」

 

「はい、お初にお目にかかります。私が言峰和泉ですが、…貴女(あなた)は鉄の陣営のマスター、ユミリア・カレミスア・クリスティアですね?」

 

「あら、よく知っているわね。あの男(・・・)から聞いたのかしら?」

 

「えぇ、私の養父、言峰綺礼(ことみねきれい)師から聞いております。何せ、一級魔術師の才能を持つ天才魔術師と…」

 

「…それ、あの男が言ったの?」

 

「はい。」

 

「………じゃあ1つだけ教えてあげる。あの男、言峰綺礼は外道極まりない悪党よ!」

 

ユミリアはぎりっと歯を噛み締めて怒りの表情で和泉に言った。

 

「……悪党、とは、どういう意味なのでしょうか?」

 

「そのまんまの意味よ!あの男は私の父を殺して挙げ句の果てに父を殺した罪を兄に擦り付けた!兄は無実の罪で処刑されて、母は精神を病んで自殺…あいつの所為(せい)で…私の大切なものが壊された!!あいつは善人なんかじゃない…人を操り人形の様に弄ぶ根っからの外道よ!!!!」

 

「……それがどうしたのですか?」

 

「え…?」

 

我が養父(綺礼師)が外道なのはよく聞いております。養父(ちち)は愉悦を求めているだけ、根っからの外道?外道極まりない悪党?それがどうしたのですか?人が快楽を求めるのは当たり前じゃないですか。それと同じです。我が養父が外道極まりない悪党なら、私も貴女も同じ外道ということになるじゃないですか」

 

和泉の発言を聞いて、ユミリアの中で何かがブツンッと切れた。

 

「……あっそう…あなたもあの男と同じ外道なのね…もういい、殺してやる。あの男もあんたも!やりなさい、アーチャーっ!!」

 

と、ユミリアが叫ぶと、和泉に向かって青い炎を纏った矢が飛んできた。

 

「……片付けてください、アサシン。」

 

ジャラリッ

 

矢が和泉に当たりそうになった直後、何処からか長い鎖が伸びてきて矢を弾き飛ばした。

和泉の前に現れたのは、黒いローブを纏い、両足に鎖に繋がれた足枷を着け、鎌の様な形状の槍を持った少年__『(こがね)のアサシン』だった。

 

「チッ…金のアサシン…!」

 

「不意討ちを突くなんて最低な魔術師だね。キミ」

 

「アサシン、手加減をする必要はありません。侵入者を抹殺してください」

 

「っ…アーチャー、命令よ。金のアサシンとあのイカれ糞餓鬼神父を殺しなさい!」

 

と、ユミリアが言うと、彼女の隣に黒髪に褐色の肌、白い服装に弓を携えた少年の様な風貌の弓兵、『(くろがね)のアーチャー』が現れた。

 

「その風貌…インド系の英霊ですか、面白い。ならば、久々に私も本気を出しましょう」

 

和泉はにやりと笑みを浮かべて両袖から紅い剣の様なものを取り出した。

 

「!黒鍵(こっけん)!?まさかあんた…代行者(だいこうしゃ)!?」

 

「はい。では、お覚悟を。ユミリア・カレミスア・クリスティア嬢。私も全力で貴女の首を斬り落とします」

 

 

 

一方、教会の外では__空中に教会を監視しているひとつの影がいた。

背中に大きな紅い蝶の羽根が生え、ゆっくりと羽ばたいていた。

 

金のバーサーカーだった。

 

「…どうやら始まったみたいだな。あの神父はどう対抗するか見物(みもの)だな。………ところで、貴様はいつまでそうしているつもりだ?」

 

バーサーカーの胴体には、ガタガタと震えて青ざめていた白野がしがみついていた。

 

「た…たた、確かに今日中にブリジェントに着いたけど…まさか飛ぶとは思わなかった…今思えば、私高所恐怖症(こうしょきょうふしょう)だったわ…というか、なんで蝶の羽根生えてるの…!?」

 

「いろいろ事情があってな、気にするな。…少し移動するぞ」

 

と、バーサーカーは羽根を羽ばたかせ、ゆっくりと教会の近くにあった建物の屋根の上に移動した。

 

「わわわっ!?ゆ、揺らさないでぇ!!」

 

白野は落ちないように手足に力を込め、がっしりとしがみついた。

 

「そう慌てるな、しっかりと押さえている。落ちたらすぐ拾うから安心しろ」

 

「落とすなよ?絶対に落とさないでよっ!?」

 

「それはフリか?」

 

「違うわっ!!」

 

と、そんな会話をしていると、爆発音と共に教会の屋根に穴が開き、ふたつの人影が現れた。

 

「……一旦降ろすぞ」

 

「…へ?」

 

バーサーカーは白野の服をがしっと掴み、建物の屋根の上に向かって投げ飛ばした。

 

ドサァッ!

 

「あいたぁっ!?っ…何するのバーサーカー!?」

 

「貴様はそこに居ろ。死ぬぞ」

 

戸惑いながらも、白野は教会の屋根の上をよく目を凝らして見ると、鉄のアーチャーと金のアサシンが戦っていた。

 

ガキンガキンと鉄がぶつかり合う音が響き、鉄が擦れて火花が散っていた。

 

「っ…アサシンなのに槍を使うのですか、暗器(あんき)とか使わないのですか?」

 

「…この槍は、僕が生まれた理由でもある槍。それが宝具になっただけ…」

 

「…『不死殺しの槍(ハルペー)』。女怪メドューサの首をはねた伝説の槍…だとすれば貴方の真名はその(宝具)の名前が分かれば理解出来ます。」

 

「……………」

 

黄金の剣を持てる者(クリュサオル)。女怪メドューサの息子であり、ペガサスの双子の兄弟。それが貴方の真名ですね?」

 

「…そういうお前こそ、その弓にその風貌…そして額に埋め込まれている宝石。マハーバーラタの神霊…………

 

シヴァの化身、アシュヴァッターマン」

 

「…おやおや、上手く前髪で隠していたつもりですが、バレちゃいましたか」

 

鉄のアーチャー、アシュヴァッターマンは前髪をかき上げ、額に埋め込まれている青と紫色に輝く宝石を見せた。

 

「同じ神の力を持つ者同士、己の力を相手に見せつけるのも悪くはありませんね。貴方を見ていると私を殺したあの男を思い出しますね」

 

「…確実に仕留める。女怪メドューサ(かあさん)を殺したこの不死殺しの槍(ハルペー)で、お前の首を落とす」

 

「ではこちらも、一生消えることの無い美しくも残酷な復讐の蒼き炎に焼かれて死んでください」

 

ギリシア神話の神霊、インド神話の神霊。果たして勝利の旗を掴むのはどちらか____

 




作者の呟き

サバフェスガチャエドモン欲しい…
コーヒーとか触媒にしたら来るかな…
男鯖の水着どれもカッコいいけどロビンしか持ってない…畜生(´・ω・`)

無涯「Twitterにでも呟いていろ」

有虚「せっかくシリアスな展開になってんのに台無しじゃねぇか。」

ジーク「ええと…こんな作者だが、これからもこの小説をよろしく頼む」

アキレウス「良かったら評価してくれ!」

メドューサ「クリュサオル…頑張ってください…!お母さん応援しています!」

アルジュナ「アシュヴァッターマン…許さんぞぉ…」

カルナ「アシュヴァッターマン…久しいな。しかし、少し背が縮んだか?」

霧隠、由利「「お(やかた)/幸村(ゆきむら)様ぁぁああっ!!」」

キャスギル「喧しいわ馬鹿者っ!!ネタバレは控えろと何度も言っているであろうがぁ!!!」

根津「いや、もうバレているで(そうろう)。」

エドモン「残酷な事だ…」


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第六節 狂気に汚染された湖の騎士

血飛沫(ちしぶき)注意。
真名バレあり。


 

同時刻_白いワンピースの上に桜色のコートを羽織り、ピンクのパンプスを履いた少女、ルーラーはトランクを持って乗っていたバスを降りた。バスを降りて近くの街にあるタクシーに乗り、カーディフに向かう予定だった。

 

着物の姿だと目立ってしまうため、現界した街で服を買い、ただの旅人として振る舞っていた。

 

「………ん?」

 

と、ルーラーは遠くの方から計り知れないほどの殺意を感じた。

 

「…この邪気、この殺気…妖術で汚染された英霊か」

 

ルーラーが後ろに振り向いてみると、そこには真っ黒な影を纏った漆黒の鎧姿の騎士が立っていた。

 

「Arrrrrr…」

 

「狂化の術がかかっている。…貴様、狂戦士(バーサーカー)か」

 

と、ルーラーが問い掛けた瞬間、漆黒の騎士からギギギギ…と音が鳴り、雄叫びを上げた。

 

「Arrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrっ!!!!」

 

バーサーカーは赤い脈の様なものが浮き上がっている黒いチェーンソーをエンジンをかけて持ってルーラーに襲い掛かって来た。

 

ルーラーはそれを避けて着物姿に戻り、一旦距離を取った。

 

「……貴様、(わらわ)調停者(ルーラー)であることを承知で襲っているのか?」

 

「Arrrrrr…Uooooooooooo!!」

 

「…言語を話すことが出来ぬのか、」

 

また、バーサーカーがルーラーに襲い掛かろうとしたその瞬間__

 

「セイバー!」

 

と、何処からともなく少年の声が聞こえた。直後、バーサーカーは何かに弾き飛ばされ、かなり離れた所に落下した。

 

ルーラーの前には、赤と黒の鎧を纏い、赤紫色のマントをたなびかせ、黒い龍の角の様な髪飾りを付けたオレンジと黄緑のオッドアイの金髪の騎士が居た。

 

(あかがね)のセイバー』_

 

「危ないところでしたね、ルーラー」

 

と、声をかけてきたのは金髪で緑色の瞳の少年、銅のセイバーのマスター。レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイだった。

 

「さて、あれが(くろがね)の陣営が召喚した黒化英霊ですか…禍々しい魔術がかかっていますね」

 

「…あれはこの地に伝わる伝説の騎士王に仕えていた騎士の英霊、湖の騎士。というらしい」

 

「ルーラー特有のスキル、『真名看破(しんめいかんぱ)』ですか。湖の騎士…となるとあれは円卓(えんたく)騎士(きし)のひとりですか、湖の騎士…ランスロットですか」

 

「……サー・ランスロット」

 

と、銅のセイバーはぼそっと呟いた。

 

「バーサーカー!何をしているのだ!?さっさとルーラーを殺さんかぁっ!!」

 

「「!」」

 

バーサーカーの後ろから怒鳴り声が聞こえた。そこに目を向けてみると、神父服を着た中年男性が居た。

 

「あれは、鉄のバーサーカーのマスターでしょうか?」

 

「殺れ!バーサーカーっ!!銅のセイバーを殺し、ルーラーの首を取れ!!」

 

「A…arr…!」

 

鉄のバーサーカーのマスター、ロディニオ・ダヴス・クリスティアはバーサーカーに命令をするが、バーサーカーはギギギギッと震えているだけで一歩も動かなかった。まるで目の前に立っている銅のセイバーに怯えている様に…

 

「チッ…仕方あるまい!令呪(れいじゅ)を持って命ずる、バーサーカー!恐れず銅のセイバーを殺せ!!更に令呪を持って命ずる、セイバーを倒したらすぐにルーラーの首を取れ!」

 

と、ロディニオが言うと、彼の右手の甲にあった令呪が二画消えた。

すると、バーサーカーが唸り声を上げ、真っ黒に染まった剣を取り出した。

 

「…無毀なる湖光(アロンダイト)か、」

 

「Arrrrrr…!」

 

「言語の話し方を忘れ、ただ唸り、ただ殺すことしか出来なくなった貴様に___円卓の騎士を名乗る資格はない!」

 

「「!!!??」」

 

その時、その場の空気は一瞬で凍り付いた。セイバーの空気が変わり、重すぎる殺気がその場にいた者達の背筋をぞぞっと震わせた。

 

「貴様に宝具を使う必要は無い。ましてや、首を落とす必要も無い。その忌々しい鎧ごと斬り裂いてやる」

 

「Pe、lli…no…re…!…a…Arrrrrrrrrrrrrrrrrr!!」

 

バーサーカー、ランスロットは無毀なる湖光(アロンダイト)を持って銅のセイバーに向かって走り出した。

 

「そうだ!殺せ、バーサーカーっ!セイバーを倒し、ルーラーの首を取れ!!聖杯が欲しいのなら騎士道などくだならいものを捨て、思う存分に暴れ、破壊するがよい!!」

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!」

 

「…ここまで愚かだとはな、ランスロット卿。_残念だ。悪いが、カーディフの白亜の城塞にいるあの子(・・・)にお前のその無様な姿を見せたくはないのでね」

 

アロンダイトがセイバーに突き刺され様とした時、一瞬だけその光景がスローモーションの様に流れた。

セイバーはアロンダイトを避け、腰に差していた剣の柄を握り締めた。

 

ブシュウウゥゥゥゥゥッ!!

 

その時、一瞬何が起きたかレオナルド以外誰もわからなかった。ただ、わかっていることは、バーサーカーがセイバーによって胴体を斬り裂かれ、傷口から鮮血が噴水の様に吹き出ているということだ。

 

「Arrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!?」

 

「……せめて、安らかに眠れ。ランスロット卿」

 

バーサーカーは地面に倒れ、足から少しずつ消滅していった。

 

「ば…馬鹿な…わ、私のサーヴァントが…!?有り得ぬ…有り得ぬ!」

 

「ですが、これが現実です。鉄のバーサーカーは消滅、鉄の陣営のサーヴァントは残り6騎になりました。」

 

と、レオナルドが言った直後、数台の黒い車が走ってきて、止まると中から魔術協会の関係者が降りてきた。

 

「ロディニオ・ダヴス・クリスティア。貴方を捕虜として捕らえます。後でじっくり話を聞かせてもらいますから」

 

ロディニオは関係者に車に乗せられ、魔術協会に連れていかれた。

 

ルーラーはチラリと銅のセイバーの方を見た。セイバーの顔と鎧、剣にはバーサーカーの血がべっとりと付いており、恐ろしい姿をしていた。

 

(……さっき言っていたあの子(・・・)とは一体…)

 



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第七節 悪夢を支配する無邪気な少女

『ぐだぐだ帝都聖杯奇譚』を追加します。
若干ネタバレあり(?)。


ラーヴォルバ城塞_別館。

 

 

アニムフィスは書物庫から大量の本を持ってきて月夜(つくよ)に見せていた。

 

「これはケルト神話の書物でこちらはメソポタニア。あと、アーサー王伝説や征服王イスカンダルの書物です。どれも迫力があって面白いですよ♪」

 

「アーサー、イスカンダル、クー・フーリン、ペルセウス、アキレウス、ジャンヌ・ダルク…どのほんもとてもおもしろいよ!」

 

「特におすすめなのは、この(ほのお)紋章(もんしょう)シリーズです!」

 

「ほのおの、もんしょう?」

 

「はい!邪竜を倒した英雄王マルス、ロイ、エフラム、リン、アルム、シグルド、クロム、カムイなど、たくさんの英雄の伝説が書かれた書物なんですよ!」

 

「へぇ…よんでみてもいい?」

 

「はい!良いですよ」

 

英雄の話で二人は盛り上がっていた。と、その時、コンコンッとノックが聞こえ、ガチャリと扉が開き、ガーディナが部屋に入ってきた。

 

「アニムフィス、その少年と共に急いで城塞の外に出るんだ」

 

「え?どうしてですか?」

 

「…(くろがね)のサーヴァントがこの城塞に向かっている、ここも巻き込まれて戦場と化すに違いない。城塞の西側の門の外に車を用意した。急げ」

 

「は、はい!月夜くん、走れる?」

 

「う…うん、なんとか」

 

「そう、じゃあ行きましょうか」

 

 

一方_ラーヴォルバ城塞の正門にランサーとディニクス、その他の(しろがね)のマスターとサーヴァント、合計10人が立っていた。

 

「…ギベオン、アニムフィスとガーディナは?」

 

「結界の調子を見に行くとガーディナ卿が言っておりました。アニムフィスはわかりません。」

 

「ディニクス卿、アニムフィスなら心配要らないと思いますよ」

 

「…どういう意味だ?ヴィルクス」

 

「先程、ガーディナ卿と共に西側の門に向かっているのを見ましたから。おそらく一緒に結界の調子を見に行ったのでしょう」

 

「……そうか」

 

「ディニクス卿、来たぞ」

 

と、ランサーが言うと、遠くの森の方から何かが現れ、物凄い速さで城塞に向かってきた。

 

「あれは、鉄のアヴェンジャーの使い魔(・・・・・・・・・・)ですな」

 

「なに?…どういうことだ?」

 

「魔術協会の掃除部隊がウェールズを拠点としている都市に向かっている最中、突如現れたアヴェンジャーが黒いムカデ(・・・・・)の様な巨大な使い魔を数匹喚び出し、掃除部隊はひとり残らず黒い蟲によって喰い殺されました。その様子を私が放った使い魔を通じて観察していましたので、」

 

「……となると、あれは人では倒せないモノか」

 

ランサーは一歩前に進み、白くて大きな槍の柄を握り締め、持ち上げた。

 

「我が領地を汚すモノは誰であろうと許さん。ディニクス卿、命令を」

 

「…聖槍を解放し、我が領地を汚すモノを排除せよ、ランサー」

 

と、ディニクスが命じると、ランサーは槍を構え、魔力を槍に集中させた。

だんだん槍に光が集まり、やがて集まった光は螺旋状になった。

 

「最果てより光を放て。其は空を裂き地を繋ぐ、嵐の錨! 『最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

 

ランサーが宝具を放った瞬間、使い魔が居た場所に向かって巨大な光の柱が落とされた。使い魔は消滅し、森に巨大な荒地が出来た。

 

「さぁ、我が同士、銀のマスターとそのサーヴァント達よ。我が領地に汚れた足を踏み入れた愚者共に鉄槌を下すがいい!」

 

「「(おう)っ!!」」

 

 

アニムフィスとガーディナ、月夜は城塞を出て車に乗り、遠く離れた街へ向かっていた。

 

「街に着いたらその少年を降ろし、すぐに応援に向かうぞ」

 

「はい、ガーディナ叔父様」

 

「………」

 

あと少しで森を抜けようとしたその時、突然車が止まった。

 

「なっ!?」

 

「え!?」

 

くすくすくす…ふふふ…

 

と、少女の笑い声が聞こえ、様子を見るために三人は車から降りた。

 

あははは……ねぇ、どこに行くの?

 

楽しいところ?それとも面白いところ?

 

知りたいなぁ、とぉっても知りたいなぁ♪

 

くすくすくす…ねぇ、教えて

 

なんでこんな所にいるの?どこに行くの?

 

それとね、それとね……

 

「なんでお兄ちゃんからわたしのオトモダチと同じ匂い(・・・・)がするの?」

 

「「!!??」」

 

「え…!?」

 

突然、月夜の背後に赤と黒のゴスロリを着た金髪赤眼の少女が居た。

 

「はじめまして、お兄ちゃん。わたしは鉄のアサシン。わたし、お兄ちゃんとオトモダチになりたいな」

 

「っぁ…」

 

月夜は背後に現れた少女、アサシンがあまりにも恐ろしすぎて動けず、声が出なかった。

 

「スンスン…やっぱり同じ匂いがする。わたしのオトモダチのひとり…黒いお面を被った長い髪のおサムライさんと同じ匂い。ねぇ、どうして?オトモダチなら…教えてくれるよね?」

 

「ぁ…ぁ…」

 

「やれ、セイバー!!」

 

と、ガーディナが叫んだ瞬間、突然現れた何者かが月夜を引き寄せ、アサシンに斬りかかった。

アサシンはその攻撃を避けて、距離を取った。

 

「わっ、とと…もう、レディに向かって失礼じゃない」

 

「いたた…き、きみは?」

 

月夜を引き寄せ、アサシンに斬りかかったのは、白髪でポニーテールに『誠』と大きく書かれた羽織を着た和装の少女、(しろがね)のセイバーだった。

 

「…無事ですか?月夜殿、私は銀のセイバー。我が主、ガーディナ様の命により、貴方を守ります」

 

「…なるほど、あなたがキャスターのマスターが言っていた抑止力(りょくしりょく)によって喚ばれたサーヴァント?」

 

「………」

 

「むう…何か言ってよぉ、つまんないなぁ」

 

「黙れ、妖擬(あやかしもど)き。我が愛刀、『菊一文字(きくいちもんじ)』で貴様のその首を断つ」

 

「あはははっ…やれるものならやってみなさいよ、おサムライさん」

 

鉄のアサシンと銀のセイバー__月夜と同じ匂いがするアサシンが言う『オトモダチ』の正体とは_?

 

そして、この城塞襲撃により、この大戦が大きく傾くとはまだ誰も知らなかった。




セイバー変更しました


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第八節 十二翼の炎の一翼

 

一方_ブリジェントから少し離れた荒野では、金のセイバーと鉄のランサーの激闘が繰り広げられていた。

 

ランサーの容赦無い攻撃を避けたり弾いたりしながらセイバーは隙を狙っていた。

 

「……これでは決着が着きませんね、」

 

ランサーはボソッと呟き、セイバーから一旦距離を取った。

 

「?」

 

「このままでは決着が着きません。マスター、宝具を使用する許可を」

 

と、ランサーが言うと何処からか男の声が聞こえた。

 

『良いだろう。宝具の解放を許す』

 

「感謝します…」

 

ランサーは槍を構え、宝具を使用した。

 

「好き。嫌い。好き。嫌い。好き。嫌い。好き、好き好き好き好き好き…」

 

まるで呪いの呪文を唱えている様に呟き、空高く上昇した瞬間、槍がどんどん変化し、巨大化した。

 

「あれは…私も本気を出さないと負けますね」

 

セイバーは剣に魔力を集中させ、炎を纏わせた。しかもその炎は今までのより大きく燃え上がっていた。

呪文を唱え終えた後、ランサーは巨大化した槍を構えて突進してきた。

 

「『死がふたりを分断つまで(ブリュンヒルデロマンシア)』!」

 

そのタイミングでセイバーは大きく燃え上がった剣を構え、大きく振るった。

 

「炎の一翼よ、我を守る壁となれ!『焔の重壁(ウォールフレイム)』!!」

 

剣を振るった瞬間、分厚い炎の壁がセイバーを守るように大きく燃え広がった。

その壁にランサーの槍が刺さると、炎が動き出し、ランサーの巨大化した槍を尖端から飲み込んで行った。

 

「な…!?」

 

やがて炎はランサーに覆い被さり、閉じ込めた瞬間爆発した。爆発を直に受けたランサーは落下し、ドサッと地面に叩きつけられた。

 

「…………」

 

セイバーが近付いてもピクリとも動かなかった。

 

「……気絶しているのか、」

 

とどめを刺そうと、剣を構えた瞬間__

 

ゴゴゴゴゴゴ…

 

「ん?」

 

突然、地面が揺れ、セイバーは何かがこちらに向かってきていると直感した。

 

「なんだ?何が来るんだ?」

 

次第に揺れは強くなっていき、二人の横の地面がボコボコッと盛り上がってきた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」

 

それは聞いたことの無いおぞましい鳴き声だった。地面を突き破って現れたのは、巨大な黒いムカデの様な姿をした化け物だった。

 

化け物は気絶しているランサーを口の中に入れ、セイバーの方に顔を向けた。

 

『……キサマガ金ノセイバーカ、マサカコイツニ負ケルトハ…使カエンナ、ランサー』

 

「!?……貴様は誰だ?誰の使い魔だ?」

 

『俺ハコノ役立タズヲ回収ニシキタダケダ、キサマト戦ウ気ナド無イ。サラバダ、金ノセイバー……イヤ、

シャルルマーニュ十二勇士ノ英雄ヨ』

 

黒い使い魔は地面に潜り、その場から去った。

 

「…イロハのもとに戻らなければ」

 

セイバーは急いでブリジェントに向かって走り出した。

 



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第九節 怒りと悲しみの蒼炎は消えることなく

数分前、ブリジェント_教会

 

和泉(いずみ)とユミリアの対決はユミリアの負けが目に見えていた。

最初はユミリアが黒魔術を使って遠距離戦で押していたが、隙を突かれて黒鍵(こっけん)を避けたり防いだりしながら免れていたが、和泉は養父、言峰綺礼(ことみねきれい)から教わった『八極拳(はっきょくけん)』を使い、ユミリアの肋骨を二本、右腕の骨一本を折り、腹部を数発殴った。

 

ユミリアは一時、倒れていたが二分後に起き上がり、ふらふらとしながら立っていた。

 

「はぁ…はぁ…や、やるじゃない…流石あの男の息子ね」

 

「血は繋がっていませんが、養父(ちち)は私に黒鍵の扱い方、八極拳についててきぱきといろいろ教えてくれましたから。…さて、もう負けを認めたらどうですか?例え倒すべき敵であっても女性を痛め付けることはあまり好ましくないもので」

 

「…はっ、何紳士ぶってんのよ…外道が、負けは認める、だけどあんたをこの街ごと吹き飛ばして私も死ぬわ」

 

と、ユミリアは令呪がある右手を出し、大声を上げた。

 

「令呪を持って命ずる!宝具を使用し、ブリジェントを住民ごと吹き飛ばせ!!」

 

令呪が一画消えると、教会の屋根の上で戦っていた鉄のアーチャーが笑みを浮かべていた。

 

「承知しました」

 

アーチャーは一本の矢を取り出し、弓を構え、空に向けた。

 

「我が愛する者を奪った愚者に鉄槌を。天空から降り注ぐのは復讐で燃え上がる蒼炎の雨。全てを壊し、全てを焼き尽くせ。『破壊と復讐の閃光流星(ブラフマシラーストラ・リヴェンジアロー)』!」

 

蒼く燃え上がる炎の矢は天高く飛んでいき、見えなくなった瞬間、一本の矢から千本以上の炎の柱と変わり、ブリジェントに向かって降ってきた。

 

「なるほど、炎の雨ですか。街ごと吹き飛ばすなんて、貴女も相当外道ですね」

 

「あはははっ!!これで終わりよ、言峰和泉!あんたとあの男のせいでこの街は吹き飛ぶの!!地獄で罰を受けなさい!!!」

 

「…そろそろ頃合いですか」

 

と、和泉はユミリアを無視して携帯を取り出し、何処かに連絡した。

 

「もう良いですよ、やっちゃってください。フロストさん(・・・・・・)

 

その瞬間、ひとつの閃光の様なものが高速で飛んでいき、炎の柱を次々と爆破させた。

 

「なっ!?」

 

「ふう、事前に電話番号を交換しておいて正解でしたね。」

 

ピッピッ

 

「白野さん、残ったやつは頼みましたよ」

 

ピッ

 

と、言った瞬間、五回爆発音が響き、ユミリアはアーチャーの宝具を防がれたことに驚愕して座り込んだ。

 

 

 

 

一方_白野とバーサーカーは五本の炎の柱を破壊していた。

 

「最初会った時、電話番号を交換してって言われたのはこの為だったのか…」

 

和泉とユミリアが戦っていた時、突然白野の携帯が鳴り、画面を見てみると和泉からの着信だった。和泉は壁に回り込み、攻撃を免れながら白野に電話したのだ、

 

『監視しているのはわかっていますよ。少し頼みたいことがありまして、鉄のアーチャー…アシュヴァッターマンの宝具の中にひとつだけ、対城宝具があります。それが発動すればブリジェントは吹き飛んで多くの犠牲者が出ます。もし、それが発動した場合、残さず全てを破壊してください。

貴女のバーサーカー…真田幸村(さなだゆきむら)の『蟲人(むしびと)』の能力で』

 

「まさか俺の能力を知っているとはな…鉄の鱗粉であの炎の柱を破壊したのは良いが、最初のあの閃光は…」

 

「うん、金のランサーの宝具だね」

 

 

 

 

「嘘よ…だって、破壊と復讐の閃光流星(ブラフマシラーストラ・リヴェンジアロー)は…アーチャー、

アシュヴァッターマンの…」

 

「えぇ、対城宝具です。…ですが私達金の陣営には神霊が三騎いましてね、その中でもランサーは我が陣営で最も最強と言われる神霊なんですよ」

 

「っ…だけど、私のアシュヴァッターマンも神霊なのに…!」

 

「それを遥かに上回るほどの強さを持っているんですよ。()は」

 

「く…」

 

その時、ユミリアは最後の足掻きにナイフを取り出して和泉に斬りかかった。

しかしそれは簡単に避けられてしまった。

 

checkmate(チェックメイト)ですよ。ユミリア・カレミスア・クリスティア」

 

と、和泉は黒鍵を一本取り出し、ユミリアのナイフを持っていた左腕を根元から斬り落とした。ゴトンッと左腕は指先をピクピク動かしながら床に落ちた。傷口からは血が溢れた。

その時、上から三本の矢が降ってきて和泉はそれをかわした。その直後、矢が爆発し、教会内に煙幕が充満した。

 

「……おやおや」

 

煙幕が消えると、そこにユミリアの姿は無く、斬り落とされた左腕だけが残っていた。

 



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第十節 悪鬼羅刹の復讐鬼

ラーヴォルバ城塞から少し離れた森の出口付近_

 

鉄のアサシンの攻撃を受けたが銀のセイバーと銀のアーチャーの連携攻撃によってアサシンから離れて隠れることに成功した。

 

「アニムフィス、セイバーとアーチャーと共にアサシンを足止めをしている間にその少年だけでも逃がすんだ。」

 

「え…ですが他に鉄のサーヴァントが潜んでいる可能性が…!」

 

「森の出口に護衛のホムンクルスが居る。彼らと一緒にこの場から逃げ出せれば少年は助かる」

 

「……月夜くん」

 

「…だいじょうぶ、ここからはしればすぐにたどりつける」

 

「そうですか…では、その作戦を実行しましょう」

 

「待て、セイバー」

 

「はい」

 

と、セイバーは腰に差していた刀を一本鞘ごと取り出して月夜に渡した。

 

「護身用に持っていてください。その刀は私の愛刀のひとつ、加州清光(かしゅうきよみつ)です。」

 

セイバーは真っ白な長い帯を二本取り出して刀の鞘の二ヶ所にくくって背負う様に月夜の背中に刀を当て、腹の少し上の辺りでしっかりと結んだ。

 

「扱い方は難しいと思いますが必ず貴方の力になると私は信じています」

 

「ありがとう、セイバー…」

 

「いえ、」

 

「では、始めましょう」

 

 

 

「どこに行ったんだろう?もっと遊びたいのに…」

 

アサシンは頬を膨らませて月夜達を探していた。コツンっと小石を蹴りながらつまんなそうな顔をしていた。

 

「おサムライのお兄ちゃんもどっか行っちゃうし、同じ匂いを辿ってみたら違かったし、つまんないなぁー」

 

と、ふらふらしているとがさごそと音が聞こえた。

現れたのは、銀のセイバーと銀のアーチャーだった。

 

「あぁ!みーっけ♪」

 

アサシンは無邪気な笑みを浮かべて二人に襲いかかってきた。

 

その隙に遠くに隠れていたアニムフィスとガーディナは月夜を森の出口に向かってアサシンに気付かれない様に走れと指示を出した。

 

月夜は必死に出口に向かって走り出した。

その間にセイバーとアーチャーは一気に攻撃しだした。

 

「あはははっ!……あれ?この匂い…」

 

「「??」」

 

「間違いない!おサムライのお兄ちゃんの匂いだ!お兄ちゃんが近くにいる!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「うん!お兄ちゃんはとっても強くてこの前たくさんの魔法使いさんを八つ裂きにして綺麗な血の海を作ったんだ!」

 

「「!!??」」

 

「お兄ちゃんの名前はね、鉄のセイバー…じゃなかった。『鉄のアヴェンジャー』っていうんだ♪」

 

「!? 月夜くん…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…えぐっ…はぁ…!」

 

月夜は必死に走り、出口に向かっていた。

セイバーから護身用に貰った刀を背負い、アニムフィスとガーディナの言われた通りに後ろを振り返らず真っ直ぐ走った。

 

あと少しで出口だ…!と思った直後、ラーヴォルバ城塞の方から爆発音が聞こえた。月夜は驚いて顔を後ろに向けた。

城塞の方から煙が立ち上ぼり、また何度も爆発音が響いた。

 

ガッ

 

「わっ!?」

 

ドサッ

 

余所見をして月夜は何かに躓いて倒れた。

 

「いたた…ん?」

 

ふと、鉄の様な臭いがして手に濡れた感触があった。躓いたものを見てみると、上半身と下半身が斬り裂かれた死体だった。

 

「!? うわああっ!!?」

 

と、辺りを目を凝らして見てみると、あちこちに斬り裂かれた死体がいくつもあった。

 

「ぁ…あぁ…!?」

 

月夜は恐怖のあまり立ち上がれなくなった。その時、奥の方から足音が聞こえた。

 

「誰だ?」

 

奥の方から現れたのは、露出している部分が全く無い黒い重圧な甲冑に黒い蟲の様な怪物の頭部を模した黒い兜を被り、顔の上半分を隠している毛先が黒と灰色の長い白髪の男だった。男の手には黒い靄で刃の部分が覆い隠された大太刀があった。

 

「…子供?何故こんな所に…」

 

「ぁ…」

 

「…キサマ、このホムンクルス共の仲間か?何故ここにいる?」

 

男は月夜の首もとに黒い靄で覆われた刃を向けた。

 

「お…おれ、は…」

 

「……ふん、まぁ良い。先程の爆発…アサシンが銀のサーヴァントを二騎見つけた様だな」

 

と、男が言った瞬間、月夜の背筋が凍った。

このままこの男を行かせれば…アニムフィス達は……

 

「っ…!」

 

月夜は勇気を振り絞って立ち上り、背負っていた刀を抜いた。

 

「……なんのつもりだ?」

 

「…らさきは…」

 

「!」

 

「ここからさきは、いかせない!」

 

月夜が刀を構えた瞬間、刀に魔力を集中させた。

青い光を纏った刀を男に向けて振るったが、あっさりと避けられた。

 

「…強化の魔術か、…だが、動きも鈍いし握りが甘い!」

 

ドカッ

 

「かはっ…!?」

 

大太刀で腹部を殴打され、月夜は吹っ飛ばされ木に背中を打ち付けた。

 

「あぐ…っ!」

 

それでも諦めずに月夜は立ち上り、刀を構え直した。

自分がここでこいつを止めないと、アニムフィス達が殺される…

 

「そんなのは…いやだ!」

 

「!」

 

突然、月夜の体に大量の魔力が溢れ、刀に集中した。次第に月夜の髪の毛先の色が黒から灰色に変わって目の色が濃い瑠璃色からワインレッドに変わった。

 

仮想宝具(かそうほうぐ)疑似展開(ぎじてんかい)!」

 

溜まった魔力が刃に集まり、打刀から太刀の刃に変わった。月夜は刀を男の胸部を狙って大きく振るった。

 

「っ…」

 

男は大太刀で光の刃を止めたが、月夜の魔力が強すぎて甲冑と兜にビキビキッと亀裂が走った。

 

あと少しで男の刃を弾くことが出来る__しかし、

 

バチバチッ!

 

「!? がぁっ…!?」

 

突然、月夜の体に電撃を浴びた様な痛みが襲いかかり、光の刃は消え、月夜は刀を落として膝を付いて座り込んだ。

 

「っ…ぐぁ…!」

 

「…大量の魔力を一気に使ったのが仇となったな、小僧」

 

男は大太刀を持ち上げ、月夜に向かって振るった。

 

「っ…!!」

 

月夜は目を瞑り、歯を食い縛った。

 

ザンッ!ブシャァッ

 

「……あれ?」

 

痛みが無い…?

 

恐る恐る顔を上げてみると、誰かが自分を守る様に覆い被さっていた。

 

「げほっ…」

 

月夜を守る様に覆い被さっていたのは、銀のセイバーのマスター、ガーディナだった。

 

「ガーディナ、さん…!?」

 

「……キサマは、銀の陣営の…」

 

「はああぁぁぁっ!!」

 

その直後、銀のセイバーが現れ、男に斬りかかった。だが男は刃を上手く使い、セイバーの攻撃を弾いて距離をとった。

 

「マスター!月夜さん!ご無事ですか!?」

 

「お…おれはだいじょうぶ…だけどガーディナさんが…!」

 

「!?…傷が深い…早く手当てをしないと…!」

 

「…その羽織、俺と同じ日ノ本(・・・・・)の英霊か。『誠』と書かれた青い羽織、そして今の三段突き…新撰組の病弱で若き天才剣士_沖田総司(おきたそうじ)だな。まさかこんな小娘だったとは…」

 

「日ノ本の…貴様、何者だ?その黒い甲冑に刃を隠した大太刀…一体いつの時代の英霊だ?」

 

「………俺に真名など無い。黒化された時、生前の記憶を半分も失ったからな。」

 

男は大太刀を地面に突き立て、鍔に手を乗せた。

 

「今の俺の名は…復讐者(アヴェンジャー)。常世の神をも滅する邪神の化身…『邪神アヴェンジャー』だ。」

 




次回_第一章完結


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第十一節 ふたつの疑問

一章最終回です。
真名が少しずつですが明らかとなって来ましたね。
現在の脱落者は鉄のバーサーカー一騎だけ、これから
どうなるかぜひ、お楽しみください。


ルーラーと監督官殺害は失敗_鉄の陣営はバーサーカー、『ランスロット』を失い、更にはそのマスターであるロディニオ神父が魔術協会に連行された。監督官を殺害しに行った鉄のアーチャー、アシュヴァッターマンのマスター、ユミリアは重傷を負い、左腕を失った。そして、足止めをしていた鉄のランサー、ブリュンヒルデが全身に火傷を負い、気を失った状態で鉄の陣営の城に運ばれた。

 

ランスロットは銅のセイバーによって瞬殺され、ユミリアは監督官との戦闘で重傷を負い、ブリュンヒルデは金のセイバーによって重度の火傷を負った。

 

「…少し奴らを甘く見ていたようだな」

 

鉄のキャスターは現在の状況をモニターの様に映し、見ていた。

 

「それにしても、ロディニオという男…まったく役に立たなかったな。サーヴァントを雑に扱ったのが仇となったな」

 

キャスターは、はぁ…と溜め息を吐いてモニターを消した。

 

「…アーチャー、お前のマスターの容態は?」

 

と、キャスターは後で壁に凭れかかっている鉄のアーチャー、アシュヴァッターマンに声をかけた。

 

「手当てが早かったおかげで、なんとか一命はとりとめましたよ。遅かったら出血死していたかもしれません」

 

「そうか…なら良い。アシュヴァッターマン、バーサーカーを失った分、お前にはしばらく扱き使わせてもらうからな」

 

「承知しました。なら早速、バーサーカーのマスターであるあの役立たずを口封じに始末しましょうか?」

 

「それはアサシンに任せる。今からアヴェンジャー達に引き上げる様に伝令を出す。お前はブリュンヒルデの様子を見てこい。神霊だからと言っても、不死身ではないならな」

 

「はい、私とて不死身ではありませんし、貴女もそうでしょう?ケルト神話の影の国の女王_『スカサハ・スカディ』殿」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

ラーヴォルバ城塞__

 

 

「邪神…アヴェンジャー?」

 

銀のセイバー、沖田総司はアヴェンジャーの名を聞いて少し動揺した。

黒化の影響で生前の記憶を半分も失い、自身の真名を失った。確かに、アヴェンジャーの外見に掃除屋である魔術師を皆殺しにし、黒いムカデの様な奇怪な使い魔を操る能力は_邪神、災いを与える邪悪そのものである。

 

沖田はアヴェンジャーは、自分と同じ日ノ本の英霊と言っていたことを思い出し、彼は神霊じゃないかと考えた。

スサノオかヤマトタケルなど、日本には多くの神がいる…もし、彼が神霊だとすれば、辻褄(つじつま)が合う。

 

「…その小僧はキサマらの仲間か?マスターには見えんが…」

 

「月夜殿は関係ない、彼はこの大戦とは無関係だ!」

 

「…なら、先程の仮想宝具とは一体なんだ?サーヴァントでもマスターでもないなら…何故あの様な大量の魔力を出すことが出来る?」

 

「え…?」

 

「………」

 

「…まぁ良い。部外者だろうとも、俺に刀を振るったんだ。その小僧は俺の敵、敵は速やかに始末せねばならない」

 

「っ…」

 

アヴェンジャーが大太刀を構え、危険を感じ取ったセイバーも刀を構えた。

月夜はガーディナの背中の傷を自分の上着を使って止血し、傷を覆う様にかけて結んだ。

 

「…ごめんなさい…おれのせいで、こんな……」

 

「はは…大丈夫だ。これくらいの傷でくたばったら魔術師失格だ」

 

と、その時_____

 

ドオオオオオオオオオオオンッ!!

 

「「!!??」」

 

先程の爆発よりも大きな音が森中に響いた。すると森の奥から銀のアーチャーとアニムフィスが走ってきた。

 

「おーい!旦那ぁ!セイバー!!」

 

「…あれ?月夜くん!?」

 

「アニムフィス…いまのばくはつは…?」

 

「説明は後回しだ。早く逃げんぞ!」

 

「え、逃げるって…何があったんですか?」

 

「…誰かさんが森中に爆弾を仕掛けてそれが爆発して山火事状態になってる!」

 

 

 

ラーヴォルバ城塞から結構離れた城塞跡地の展望台で双眼鏡を使い様子を見ているふたつの影があった。

 

「これで奴らは袋の鼠…大きく燃え広がった火を消すのにも時間がかかるだろう。」

 

「作戦成功ですね。マスター」

 

展望台に居たのは金の陣営のマスター、衛宮竜胆と金のアーチャー、アーチャーインフェルノだった。

 

「しかし、鉄と銀の陣営はともかく、同盟を結んだ銅の陣営まで巻き込んでしまう可能性が高い作戦ですが…大丈夫なのでしょうか?」

 

「そう簡単にくたばるような奴らだったらな。所詮子供の寄せ集め、大戦で最後まで生き残る確率はとても低いだろう」

 

「そうですか…」

 

ピロピロピロリッ ピロピロピロリッ ピッ

 

「あぁ、オレだ。……そうか、わかった。今からそっちに向かう」

 

ピッ

 

「和泉神父は無事だ。あと、鉄のアーチャーと鉄のランサーの真名がわかった。ブリジェントに向かうぞ、インフェルノ」

 

「承知、」

 

竜胆とインフェルノは展望台から飛び降りて着地し、車に乗ってブリジェントに向かって走らせた。

 

 

一方_ラーヴォルバ城塞から離れた森の出口付近では、アヴェンジャーと交戦していたセイバーと月夜を庇って重傷を負ったガーディナのもとに駆け付けて来たアニムフィスとアーチャーと合流し、一刻も早く脱出しようとしていた。

 

『アヴェンジャー』

 

と、アヴェンジャーの頭の中にキャスターの声が響いた。

 

『バーサーカーが殺られ、ランサーと小娘(ユミリア)が重傷を負った。作戦は失敗だ、すぐにライダーとアサシンと合流して撤退しろ。これは命令だ』

 

『……あぁ、』

 

アヴェンジャーはキャスターの命令に従い、アサシンとライダーを探しに地面を蹴って大きく飛び跳ねた。近くにあった木の枝の上に着地し、チラッと月夜達の方を見て、そのまま森の奥へ入っていった。

 

倒れているアサシンを見つけて抱き抱えてライダーのもとへ急いだ。その時、月夜達がいる方へ向かって走っている一人の少女の姿が目に入った。

 

「…あれは、ルーラーか?」

 

バチバチッ!

 

「!?」

 

少女…ルーラーの姿を見た途端、アヴェンジャーの頭の中で電撃を浴びた様な痛みが走った。

 

「っ…なんだ、これは…?」

 

ズキズキと頭が痛い…アヴェンジャーは離れた場所の地面に着地し、手で頭を押さえた。

 

「俺は…あの小娘を知っている…のか…?」

 

黒化された時、生前の記憶を半分失った。覚えているのは自分の大切なものが目の前で傷つけられ、殺されていく光景のみ…復讐、憎しみ、邪悪…俺は一体、誰なんだ?

 

 

 

 

 

 

月夜達は炎上する森から脱け出し、すぐにガーディナの手当てを始めた。

 

「酷い傷…少しでも位置がずれていたら致命傷よ」

 

アニムフィスは回復の魔術を使い、止血し、傷口を塞いだ。

 

「すごい…まじゅつってひとをたすけることにもつかえるんだね…」

 

「えぇ、…ですがこのままにしておくわけにはいきまはせん。城塞に戻って本格治療を…」

 

「戻るって…城塞の方の森は大きく燃え広がっています!どうやって戻れば…」

 

と、その時_ラーヴォルバ城塞の方から巨大な風が吹き、燃え広がっていた炎が次々と消えていった。実に有り得ない光景だった。

 

「アーチャー…あれは」

 

「あぁ、間違いない。キャスターの宝具だ」

 

風が消えると、森の奥から十人の人影が現れた。

 

銀のランサーとディニクス・ファルフィフ・ラーヴォルバ。

銀のライダーとオニビティス・ノーラム・ラーヴォルバ。

銀のバーサーカーとヴィルクス・ニキグル・ラーヴォルバ。

銀のアサシンとギベオン・ドゥリス・ラーヴォルバ。

銀のキャスターとトゥニティス・エルクトゥ・ラーヴォルバ。

 

銀の陣営のサーヴァントとそのマスターが全員揃って月夜達の前に現れた。

 

「…アニムフィス。これは一体どういうことだ?」

 

「ディニクス卿…」

 

「…何故ガーディナ卿が負傷している?それにその少年は_」

 

と、ディニクスが月夜の方に目を向けた瞬間、アニムフィスと銀のセイバーが月夜の前に立った。

 

「彼はこの大戦には無関係です。だから_」

 

「…何があったのか隠さず全て話せ」

 

「…………実は__」

 

アニムフィスは月夜のこと、アヴェンジャーのことを全て話した。ただ、月夜が結界を破って入ってきたことだけは言わなかった。

 

「邪神アヴェンジャー…か、厄介な敵が現れたな。アニムフィス、その少年をこちらに寄越せ」

 

「お断りします」

 

「…その少年はアヴェンジャーと戦っていたのだろう?ならば相当の実力を持っているはずだ。彼を我が戦力に加えたい」

 

「それでもお断りします。彼はまだ子供で、とても臆病なんです。それに彼は大戦に巻き込まれただけの一般人です」

 

「だが、その少年の所為でガーディナ卿は負傷した。この責任はとってもらわなければならない」

 

「っ…」

 

「そこまでだ」

 

と、次に現れたのは、鈴が付いた大きな帽子を被った白い着物姿の長い白髪の少女_ルーラーだった。

 

「話は聞かせてもらった。その者はこの大戦には無関係な人間だ、それを無理矢理戦力に加えるのは非道すぎる。」

 

「…調停者、ルーラーか。だがこの少年の所為でセイバーのマスターが負傷した。この責任は彼自身にとってもらわなければならない」

 

「その必要は無い。ガーディナ・オルグド・ラーヴォルバは、その少年を守るために負傷した。奴は無事でいてほしいと思ってその少年を庇った。違うか?銀のセイバー」

 

「え?あ、はい!マスターは月夜殿を早く安全な場所に送るためにいろいろと準備をしていました。月夜殿がアヴェンジャーに襲われそうになった時、誰よりも速く駆け付けたのはマスターでしたから…」

 

「ガーディナ伯父様…」

 

「…ごめんなさい…おれのせいで……」

 

「銀のアーチャーもセイバーもそのマスター達も其奴を守るために必死に守った。そんな彼らの思いを踏み躙るなど妾は許さん」

 

ルーラーはアニムフィス達の前に立ち、強く言った。

 

「もし、この者達に危害を加えようとするのなら…妾が相手になってやろう。…貴様らを妾の毒で侵し殺してやろう」

 

「……極東の姫君か」

 

と、ランサーは口を開いた。

 

「私も同意見だ」

 

オニビティスは手を上げ、アニムフィス達の方へ歩き始めた。

 

「ガーディナは善意で彼を庇って傷を負った。だから月夜くんもガーディナもセイバーもアニムフィスも何も悪くない。人を助けるのも魔術師の役目だからな」

 

「……そうか、ならばその少年は大戦が終わるまでラーヴォルバ城塞で保護しよう。だが、ひとつだけ条件がある」

 

「条件…?」

 

「月夜…セイバーと契約し、銀のマスターとなれ」

 

「「!!??」」

 

ディニクスの言葉を聞いて、その場に居た者達は驚愕した。マスターになる_それは、月夜が聖杯大戦に無関係な人間ではなくなるという意味だ

 

「待ってください!それでは彼が戦力に加わるという意味じゃないですか!?」

 

「城塞の中から指示を出せば良いだろう。厳重に結界をはり、護衛をつける。彼が安全で何もしなければ良いのだろう?」

 

「でも…!」

 

「だいじょうぶだよ。アニムフィス」

 

「え?」

 

「おれのせいでガーディナさんがけがをしたんだ。それに、みんなにはせわになったしいろいろおしえてくれた…だから、おれはみんなにおんがえしをしたい」

 

「月夜くん…」

 

「たしかにたたかうのはこわかった…だけど、もうだれかがきずつくのはみたくないんだ。」

 

「……良いのか?」

 

「うん、ありがとうルーラー。それに…アヴェンジャーにききたいことがやまほどあるんだ」

 

「…交渉成立だな。では城塞へ戻るぞ」

 

ディニクス達は城塞に向かって歩き出し、月夜も続いて歩き出そうと立ち上がった瞬間、アニムフィスが月夜を抱き締めた。

 

「ごめんなさい…あなたを巻き込んでしまって…もっと早く、脱け出せていれば…」

 

「…ありがとう、アニムフィス。でもきめたんだ。こんどはおれがまもるって」

 

「……待て、月夜」

 

「!」

 

「お主…本当に良いのか?大戦に関わるということは死にに行くのと同じだぞ。それでもお主は行くのか?」

 

「…それでも、おれはいくよ。アヴェンジャーとたたかいに」

 

「…そうか。なら、必ず生き残れ」

 

「うん、ありがとう」

 

月夜はアニムフィス達と共にラーヴォルバ城塞へ向かっていった。残されたルーラーは夜空に浮かぶ満月をみつめた。

 

「…月夜とアヴェンジャー。何故月夜は、アヴェンジャーに会いたがっているんだ?それにあの大量の魔力…奴は本当に人間なのか(・・・・・)?」

 

ふたつの疑問を残して、三つの争いは幕を閉じ、また新たな争いへと向かっていった。

 

 




一章完結です。ネタがうまく浮かびません…(´・ω・`)
次は次回予告(擬き)です。


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次回予告 第二次聖杯大戦‐中編‐

 

大きく広がる荒野で繰り広げられる四陣営による大戦_

 

北欧神話の神霊と騎士王伝説の最強の騎士が手を組み敵を討ち倒し、

 

祈りの木が生い茂り、炎の一翼が舞い上がる。

 

復讐と憤怒の矢の雨が降り、征服王の軍勢が走り出す。

 

古き時代の海賊が鋼の砲弾を放ち、神殺しの神槍が敵の心臓を突き穿つ。

 

悪夢さえ飲み込む闇のドレスを纏った無邪気な少女。北欧の女神の嫉妬と悲しみの槍が愛する者を貫く。

 

極東の英霊は大切な者を守るために刀を振るう。

 

黒髪の少年と白髪の復讐者_

 

そして常世の蝶を宿す美しくも禍々しい調停者(ルーラー)

 

少年はやがて青年となり、恐怖に立ち向かい、守るために剣を振るう。

 

悪しき者を討ち倒すために真の力を手に入れる。

 

「もう誰かが傷付くのは見たくない…俺は守るために戦う。これは…俺が選んだ道だ!!」

 

「ならば、俺はキサマのその守るために戦うものを壊そう」

 

ついに暴かれる聖杯の真実_クリスティアの本当の目的とは……

 

「私はお前を許さない…たとえ神がお前を許したとしてもだ!!」

 

「あぁ…やはり『復讐』とは良いものですね」

 

「シグルド…会いたかった…シグルド……」

 

神霊と神霊の戦い__

 

「ブリュンヒルデ…そこまで堕ちたか、父として悲しいぞ…」

 

「優しく殺してあげるからじっとしてよ」

 

「あの俊足馬鹿、こんなヤバイやつに参加していたのかよ…トロイア戦争の方がましじゃねぇか…」

 

「お父様…私も頑張りますね」

 

騎士王と最強の騎士の戦い__

 

「久しいな、アルトリア。いや…銀のランサー」

 

「…やはり貴方でしたか、鉄のバーサーカー_ランスロット卿を討ち倒したのは」

 

全ての英霊が集う時、全ての真実が暴かれる。

 

「聞け!この領域に集いし、一騎当千、万夫不当の英霊達よ。相容れぬ敵同士であろうと、今は互いに背中を預けよ!大戦で散っていった者達の為に、全てを奪おうとする鉄の陣営を討伐し、人類を脅かす大聖杯を破壊せよ!我が真名は蟲奉行(むしぶぎょう)!この大戦の護りを司り、貴公らの盾となろう!」

 

調停者(ルーラー)の力が解き放たれし時、集った英霊達は力を合わせ、守るべきもののために己の真の力を解放する。

 

「我は(くれない)の一翼。我が剣は王を導く炎の剣。手向けとして受けとるがいい!!」

 

「嵐の王、亡霊の群れ、ワイルドハントの始まりだ!」

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める杜__」

 

「真の王とは悪逆非道な暴君であり、真の強さとは己を写す鏡なり。真の剣とは研ぎ澄まされた己の心なり」

 

27騎の英霊により大戦_第二回戦の始まりである。

 



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番外編②プチ☆あぽくりふぁろすと!とお知らせ

ノッブ「なんじゃこのぐだぐだ展開は?作者とうとう頭イカれたか?」

 

沖田「仕方ないですよ。だってfateの小説を本格的に書くの二ヶ月ぶりですからそりゃあネタも尽きますよ…」

 

(じゃ)ンヌ「ド低脳だし、真名伏せるの下手だしね…やる気あるのかしら?」

 

ノッブ「もう少し他のfate二次創作を書いている作者を見習ってほしいのぉ」

 

サクラ「……あの、皆さん。もうカメラ回ってますよ?」

 

三人「「!!??」」

 

邪ンヌ「え…じゃあ今の会話、読者に見られた?」

 

お春「はい、全部ばっちりと…」

 

ノッブ「ぐ…ぐだぐだ過ぎるといってもこの小説を削除するとは言っておらんからな!?読者の期待に応えるように作者にはしばらく国語を学ばせないとな…!」

 

沖田「そ、そうですよ!邪ヴェンジャーと月夜殿の因縁もありますし、まだ登場していないサーヴァントもいますからね!」

 

邪ンヌ「ちょっとあんた、何よ『邪ヴェンジャー』って…私と被るじゃない」

 

サクラ「戦隊ものの悪役にいそうですね…」

 

ガイア「実際悪役だもんな、邪神アヴェンジャー」

 

青セイバー「なんか…魔神セイバーみたいですね」

 

槍ニキ「どっちかというとあいつ神殺しだからな…」

 

ノッブ「それにしても…作者今FGOのイベントとかバイトとかでバタバタしているからなぁ…」

 

お春「…あれ?今日は人数が割りと少ないですね」

 

沖田「あぁ、それはですね。ほとんどの方が休暇取ってルルハワ(※FGOの今回のイベントの舞台)にバカンスしに行ってます」

 

全「「な…なんだってーーーーーーっ!!??」」

 

 

 

(※ここから先はイベントネタバレ注意です。見たくない方は一番下のお知らせまでスクロールしてください。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルハワ__

 

 

 

有虚、フローラ、フェリシア「「「ガッデムホット(めっさ暑い/わ/です)っ!!!!!!!!」」」

 

有虚「あ″っっっづ!!!??くそ暑い!!南国ってこんなにも暑いのか!?おい真白!氷持ってきてくれ!!」

 

ロビン「いや、ここ室内だし、氷の部族のお二人さんはともかく…あんたの場合その暑苦しい外套と装備脱いで薄着着た方がいいぞ。ほら、あんたの弟いつも着ている暑苦しい着物と装備脱いで水着にパーカー着ていますよ」

 

シャルルマーニュ「無涯着替え速っ!?空港出て予約していたホテルの部屋に着いてまだ5分しか経ってねぇのに…」

 

シノノメ「いや、俺らが無理矢理更衣室に連れてって着替えさせた。」

 

アストルフォ「あー、だから不機嫌なんだ」

 

お竜「龍馬、速く海に行くぞ!」

 

龍馬「はいはい、ちょっと待っててね」

 

エドモン「クハハハハハッ!!」

 

クロム「テンション高いなエドモン…」

 

ルフレ♂「水着霊衣が実装されたからね」

 

ルフレ♀「バカンス…懐かしいです」

 

カムイ♀「そうですね♪これもBBさんのおかげですね!」

 

 

数日前……

 

 

BB『皆さん集まったみたいですね…今日は大事なお話がありまーす!』

 

全((また悪巧みか…))

 

BB『今ここに居る人全員でバカンスにいきま~す♪ほら、チケットもこの通り全員分ありま~す♪』

 

全『『マジか!!!!??』』

 

BB『は~い、マジでーす♪それでは数日後に備えて水着とか用意してくださいね~♪(悪い顔)』

 

 

 

無涯、ロビン((最後のあの表情…絶対何か企んでいるな…))

 

カムイ♀「さて、行きますか!」

 

ルフレ♀「最初はやはり海水浴ですかね?」

 

シノノメ「よっしゃあ!誰が先にビーチに着くか競争しようぜ!!」

 

クロム、お竜「「おう!」」

 

真白「日焼け止め持ってきて正解だったな…」

 

この時、カムイ達はバカンスを楽しんだが、このバカンスが全てBBの企みだとはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 




※お知らせ

皆さんこんにちは、作者のカナメです。
ぐだぐだ展開になってしまって読者の皆さんの期待を裏切ってしまって本当に申し訳ありません。
もし、修正した方が良いところがあったらコメントに書いて教えてください。
ちなみにこの小説、予定では三章で終わらせるつもりです。また、この小説に出てくるオリジナルサーヴァントが出てくる短編小説を書こうと考えています。
これからも『Apocrypha Lost』をよろしくお願いします。
評価やお気に入りもよろしくお願いします。


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第二章 白の守るための刃と黒の壊すための刃 第一節 冷たい鉄の心

ブリジェント_ホテル。

 

「随分と派手にやりあったそうじゃないか、神父」

 

「貴女こそ、森に爆弾を仕掛けるなんて仲間を巻き込むかもしれないのに、本当…酷い方だ」

 

ブリジェント教会、ルーラー、ラーヴォルバ城塞襲撃から二日後…竜胆と和泉はとあるホテルの一室で情報交換していた。

 

「銀のサーヴァントの真名はほぼわかった。中でも銀のランサー、アルトリア・ペンドラゴンは厄介だ」

 

「アルトリア…成る程、アーサー王ですか。しかもランサーとは、聖剣エクスカリバーではなく聖槍ロンゴミニアドと来ましたか」

 

「こっちのランサーと銅のセイバーやランサーがいればなんとかなるだろ。特に銅のセイバーは奴と顔見知りだからな」

 

「…こちらも鉄のサーヴァントの真名を掴めました。鉄のアーチャー、アシュヴァッターマン。鉄のランサー、ブリュンヒルデ。鉄のバーサーカー、ランスロット。そして…鉄のアサシン、『ブラッディ・メアリー』」

 

「ブラッディ・メアリー…血塗れメアリー、アメリカの都市伝説のひとつか」

 

「血塗れメアリーの情報は確保した鉄のバーサーカーのマスター、ロディニオ神父を尋問して得た情報です。見た目は金髪に青い瞳の少女で、悪夢を操る能力を持っているようです」

 

「成る程。」

 

「それと、ウェールズに潜伏していた方からの情報によると、鉄のキャスターはケルト神話の影の国の女王、『スカサハ』の可能性が出てきたという。」

 

「今回は前回のと比べて神霊が多いな…」

 

「前回はアキレウス、ケイローン、アタランテ、セミラミス、ジークフリート、アストルフォ、フランケンシュタインなど、様々なサーヴァントが召喚されましたが、今回は違う。ブリュンヒルデ、ランスロット、アーサー王、アシュヴァッターマン、クリュサオル、ブラッディ・メアリー、真田幸村、数多くのサーヴァントが召喚されている。被害も前回よりも多くなるでしょう」

 

「だろうな。実際ウェールズのとある街で千人以上が惨殺される事件があった。おそらくブラッディ・メアリーの仕業だろうな」

 

「そうですね」

 

「……さて、今度は何をすれば良いんだ?」

 

「はい。では竜胆さん達には…鉄のアサシン、ブラッディ・メアリーを始末してもらいたい」

 

「…悪霊退治か、了解した」

 

竜胆は立ち上り、掛けていたコートを手に取って部屋を後にした。

 

「……もう良いですよ、クリュサオル」

 

と、和泉が呟くと金のアサシン、クリュサオルが現れた。

 

「…あいつ、変な臭いがした。なんか…鉄臭かった」

 

「彼女は銃器を扱っていますからね。狙撃銃やマシンガン、ショットガンなど様々な銃器や爆弾、毒物など使って魔術師を殺していましたから」

 

「…邪魔なら殺しておくけど?」

 

「いえ、今は(・・)殺らなくて良いです。しばらく泳がせておきましょう」

 

『てめぇも清々しい顔をしといてとんだ外道だな、坊主』

 

と、窓際に一騎のサーヴァントが現れた。

ボロボロの黒い外套を着た首に灰色のマフラーを巻いたボロい布に包まれた槍を持った男だった。外套のフードとマフラーで顔は見えないが、声からして40代ぐらいだろう。

 

「おや、貴方が此処に来るなんて珍しいですね。ランサー、あの長い髭剃ったんですか?」

 

「あれはルーンでてめぇらのイメージ通りに化けていただけだよ。なんかめんどくさくなったからもうやんねぇよ」

 

「髭が無いと若く見えますね。現役だった頃みたいですね」

 

「ばーか、俺はまだ現役だよ。飲み込まれて死んでサーヴァントになった今でもな」

 

「…ところで、用件は何でしょうか?」

 

「話は全部聞かせてもらった。あいつ…ブリュンヒルデが鉄の陣営に居るって本当か?」

 

「はい、本当ですよ。やはり自分の娘(・・・・)だから心配なんですね、」

 

「…シグルドの馬鹿の所為で狂っちまったらしいが、それでもあいつは俺の娘だ」

 

「…子供思いの優しい父親ですね。では鉄のランサーは貴方に任せます。ランサー……いや、北欧神話の主神、戦争と死を司る神__『オーディン』。」

 

「…あぁ、任せろ。子供の責任は親の責任だ」

 

 



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第二節 囚われた小鳥

ラーヴォルバ城塞__

 

 

「少年の様子はどうだ?」

 

ディニクスは魔力供給用のホムンクルスが保管されている地下室でホムンクルスの様子を見ながらガーディナの部下に別館に保護している月夜の様子を聞いた。

 

「食事は普通に取っています。…ですが、アニムフィス様が持ってきた書物をずっと読んでいます」

 

「……そうか、」

 

二日前__月夜を別館の一室に入れて保護した後、彼はずっと本などを読んで応答などしなくなった。

 

原因はおそらく、ガーディナが怪我の所為で植物人間に近い状態になって意識が戻らないことを知ったからだろう。アニムフィスとオニビティスも彼を保護したことを報告しなかったから別館に入れなくなり、銀のセイバーも彼と契約することを延長してほしいと言ってきた。

 

自分の所為で多くの人に迷惑をかけたとショックを受け、心を閉ざしたのかもしれない。

 

「…所詮、子供か。致し方ない」

 

 

 

 

 

一方__地下二階にある拷問部屋では、ヴィルクスが椅子に座って古い書物を読んでいた。

その隣にある木製の台の上には臓器が取り出されている惨殺死体があった。

 

「……『太秦(うずまさ)は、(かみ)とも神と、()こえくる常世(とこよ)の神を()(きた)ますも』…。極東の国の古い書物の様だが…これは何かの(うた)か?」

 

ヴィルクスは、邪神アヴェンジャーについて調査していたところ、書物庫で彼の使い魔と似ている墨汁と筆で描かれた絵が表紙の書物を見つけ、読んでいた。

 

享保(きょうほう)…江戸時代のものか、」

 

ペラペラとページをめくっていると、ある文章を見つけた。

 

「ん?…塵外刀(じんがいとう)?」

 

その文章を読んでいるうちに、ヴィルクスはあることに気付いた。

 

「……これが、奴の正体か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別館___

 

 

「…………」

 

月夜は薄暗い部屋の中でペラペラと書物を読んでいた。目は虚ろで、何か悲しそうな表情をしていた。

 

自分の所為でガーディナが意識が戻らなくなり、アニムフィス、オニビティス、アーチャー、セイバーに迷惑をかけた。

自分さえいなければ…みんなは…

 

『つぎはおれがまもるから』

 

なにがつぎはおれがまもるからだ…けっきょくおれは…なにもできなかった。

 

月夜はひとつだけある窓の外の景色を見つめた。

 

「………、…………うずまさは~…♪かみともかみと きこえくる__とこよのかみを うちきたますも~…♪…」

 

今にも消えそうなか細い声でうろ覚えの子守唄を歌い出した。

 

……あれ?このこもりうた…どこできいたんだっけ…?

 

コンコンッ

 

「……だれ?」

 

『月夜様、お客様です』

 

と、重たい鉄の扉が開き、部屋に入ってきたのはひとりの女性だった。

 

「はじめまして、月夜くん。話はアニムフィスちゃんから聞いているわ」

 

「……あなたは?」

 

「…私はあなたを庇ったセイバーのマスター、ガーディナの妻のミシェイラよ」

 

「!?」

 

女性…ミシェイラは月夜に近付き、彼の手を優しく握った。

 

「月夜くん、よく聞いて…私はあなたを_____」

 

「!?」

 

 



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第三節 銅の戦士達

 

「随分と派手にやってくれたわねぇ…あんたのおかげで死にかけたわよ。魔術師殺しの衛宮竜胆さん?」

 

ウェールズの西にある街のとある喫茶店で金のマスターと銅のマスターが数人集まっていた。

 

銅のランサーのマスター、遠坂凜は森に爆弾を仕掛けた竜胆に激怒していた。

 

「あんたわざとやったでしょ!?わたしと藤丸達が森に居るとわかってて!こっちのアサシンが火薬の臭いに気付いていなかったらわたし達爆発に巻き込まれて木っ端微塵になるところだったのよ!?それに岸波白野と金のバーサーカーはいつ来るの!?もう集合時間とっくに過ぎているわよ!?」

 

「あいつとはしばらく別行動することになった。バーサーカーとエルメロイが居れば大丈夫だろう」

 

「いや、そういう問題じゃなくて……」

 

一方_二人の会話を外で見ている六つの影があった。

 

額にバンダナを巻いたギリシャ神話の兵士の服装を模した装備を着た青年、『銅のランサー』。

 

灰色と黒の服装に手足に黒い革製のベルトを二重に巻き付けているボサボサの茶髪に頭に犬の耳が生えている女性、『銅のアサシン』。

 

古代ギリシャの女神と同じ服装の長い金髪の少女、『銅のキャスター』。

 

青い外套の下にドルイドの服装をした長い青髪の男性、『金のキャスター』。

 

灰色の着物に石の仮面で顔を隠している黒髪の女性、『銅のバーサーカー』。

 

そして、竜胆のサーヴァント_『金のアーチャー』。

 

すると銅のランサーがはぁ…と呆れた様な顔をして溜め息をついた。

 

「かれこれ一時間あぁやってっけど…だんだん飽きてきたな…」

 

「あんたのマスターなんだからあんたが止めに行きなさいよ」

 

「よせよ、バーサーカー。俺一人が止めに行ったところでガンドが乱射するだけだって。なぁ、手伝ってくれよぉキャスター」

 

「え?わたしですか?そうですね…二人の間に金のアーチャーさんの矢を射れば…」

 

「やめなさい、オーキュロエー。」

 

「親子揃っておっかないことをしれっと言えるな…」

 

「あんたもでしょ、パトロクロス。あんたのその態度、どっかの俊足英霊そっくりよ」

 

「んだよぉ…岩長姫(いわながひめ)さん。」

 

「ふふ…皆さんはとても仲が良いのですね。キャスター」

 

「だよなぁ、アーチャー。バーサーカーとか感じ悪いしなぁ…」

 

「これで仲良くしているように見えるのかよ…インフェルノ、クー・フーリン…なぁ、ケルベロス。俺達ってそんなに仲良く見えるか?」

 

「………スンスン…」

 

「あ、悪い。怪しいやつが無いか探しているんだったな…」

 

パトロクロス。岩長姫。オーキュロエー。ケルベロス。クー・フーリン__五人共、それぞれの神話の名高い英霊達だった。

 

「しかし…セイバーのおっさん、急にどっか行きやがって」

 

「金のランサーさんも煙草を吸いに行くと言ったきり帰ってきませんね」

 

「そりゃあそうだろ。自分の娘が敵なんだからな、父親として考えたいこともあるだろうさ」

 

「父親…我が父、ケイローンも弟子であるアキレウスと戦うとわかった時…悩んだのでしょうか?」

 

「どうかな…俺的にはアキレウスの方が結構悩んだかもしれねぇな、あいつ…親しい奴が敵に回ったとわかったら少し甘くなるからな」

 

「そうかしら?私なら愚妹(さくや)が敵だったら容赦なく細切れにして擂り潰すけど(真顔)」

 

「せ、生前の恨みっすか?それ…やっぱ怖ぇわ…姫さん。そうだろ?(ひかり)御子(みこ)旦那(だんな)

 

「だな、パトロクロス。なんでこいつがバーサーカーで召喚されたのか納得出来るな」

 

「その顔、岩で擂り潰して粉にするわよ」

 

「「サーセン」」

 

「女性に対して失礼ですよ。キャスター」

 

「あらあら、うふふ…」

 

「スンスン…!」

 

「? どうした?ケルベロス」

 

「…血の臭いと、冥界と同じ臭いがする奴がこっちに向かっている」

 

「例の、ブラッディ・メアリーか?」

 

「わからない。マスターに伝えないと…」

 

「私と銅のキャスターさんが行ってきます」

 

「おう、頼むぞ、インフェルノ。」

 

 




紹介

銅のランサー『パトロクロス』♂

銅のキャスター『オーキュロエー』♀

銅のアサシン『ケルベロス』♀

銅のバーサーカー『岩長姫』♀

金のランサー『オーディン』♂

金のアーチャー『アーチャー・インフェルノ』♀

金のライダー『イスカンダル』♂

金のキャスター『クー・フーリン』♂

金のバーサーカー『真田幸村(蟲人)』♂


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第四節 主神と鋼王

一方_街外れの森の中、古びた展望台の上で金のランサー、オーディンは座って煙草を吸っていた。その隣では銅のセイバーが手摺りに寄りかかって草笛を吹いていた。

 

「♪~♪♪~」

 

「…意外とお前、笛吹くの上手いよな」

 

「はは、幼い頃_剣の稽古で休憩している時によく吹いていたんだ。あの子にもよく聴かせていた」

 

「…あの子って、銀のランサーのことか?」

 

「あぁ、隠れてこっそり吹いていたのを見られてしまってね…それ以来、聴かせてほしいとか、吹き方を教えてほしいと寄ってくるようになってな」

 

「ランサー…アルトリア・ペンドラゴンが幼かった頃から子供の扱いには馴れていたのか?」

 

「まぁな…よく周りから女たらしだとか言われていたが_実はそうでもないんだ。正直、私は女性と会話をするのが少し苦手でね…だが、王として礼儀正しく振る舞うと決めた。それで…気付いたら多くの女性と結婚して…ははは…」

 

「…お前まさか、天然か?」

 

「? なんだそれは?」

 

「いや、こっちの話だ」

 

ゆっくりと日が西に沈んでいき、辺りも暗くなってきた。

 

「…やれんのか?」

 

「え?」

 

「鉄のバーサーカーを殺った時みたく、銀のランサーも殺れんのか?」

 

「…あぁ、勿論だ。例え親しき者であろうとも、敵であれば私はこの剣を持って断ち斬る。……ガウェイン卿、トリスタン卿、ベティヴィエール卿、アグラヴェイン卿、ケイ卿、ガレス卿、エクター卿、モードレッド卿、そして…我が息子パーシヴァルであろうともだ」

 

「流石、選定の剣カリバーンを砕いた騎士だな。セイバー……いや、円卓の騎士、ペリノア王。」

 

「…大袈裟だ、オーディン。伝説の聖剣であろうと、剣は剣だ。貴殿の愛槍グングニルだって同じだろう?」

 

「…………………」

 

「完全で完璧な勝利の剣など存在しない。それはどの宝具であっても同じだ。神が作ったものだとしても必ず弱点がある。問題は持ち主の意志だ」

 

「ほう…」

 

「アルトリアは私に負けたくないという我欲が暴走し、聖剣の力が弱まった。ガウェイン卿は私に殺意を向けてその意思を武器に宿した。私を確実に殺せたのは彼の私に対する殺意が彼自身の力よりも強かった。私はその力に打ち負けてこの世を去った。その後の息子達にはとても迷惑をかけてしまった。謝罪してもしきれないほどな」

 

「…そうか。すまん」

 

「いや…気にするな。だが、いつか私はガウェイン卿と一騎討ちをし、どちらの剣が強いのか確かめてみたい。その前に私は、アルトリア…銀のランサーを討ち倒す」

 

「その意志…俺はお前が羨ましいよ、ペリノア。」

 

「だが、貴殿は昔の私には出来なかったことを成し遂げた。私も貴殿が羨ましい、オーディン」

 



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第五節 迫り来る恐怖と大戦の真偽

 

ラーヴォルバ城塞__ゴーレム工場。

 

「それにしても、見ず知らずの子供を内緒で保護した上にそいつを庇って重傷を負うなんて、ガーディナもアニムフィスも馬鹿だよね」

 

次の戦いに備えてトゥニティスは戦闘と防壁で使うゴーレムを造っていた。

 

「それにあいつ…本当にあのままにして大丈夫なのかなぁ?ねぇ、キャスター!キミはどう思うー?」

 

トュニティニスは、完成品のゴーレムの上に座って魔術書を読んでいる長い黒髪に黒装束、額に赤い紋章がある紅い瞳の少年、銀のキャスターに声をかけた。

 

「…別に、どうでもいいと思いますよ。あの少年、非力で臆病な感じですし、ディニクス卿が別館で保護すると決めたのですからほっとけばいいじゃないですか」

 

「それもそうだけど……」

 

「トュニティニス」

 

と、二人の前に現れたのは、ギベオンとヴィルクスだった。

 

「あれ?二人が一緒にいるなんて珍しいね。もしかしてデート?」

 

「違う。ディニクスの命令で俺達はウェールズに向かう」

 

「ウェールズ?どうして?」

 

「アニムフィス達を攻撃した鉄のアサシンがウェールズで大量殺人をしているという情報があってな。調査ついでに始末しに行くんだ」

 

「ふーん…気を付けてね」

 

「トュニティニス卿、キミもゴーレム製作をサボらないでしっかりとやるんですよ」

 

「わかった、わかった。じゃーねー」

 

二人は工場を後にし、城塞を出て車に乗り、ウェールズに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜_ウェールズのとある村、

 

村中に血の臭いと悲鳴が響いていた。

 

「いや…やめて!お願いだから…このけだけは…!」

 

「うわぁぁんっ!おかあさん、こわいよぉぉ!!」

 

 

「_泣かないで、大丈夫だから。わたしが…痛みも苦しみも感じない夢の世界に連れていってあげるから」

 

 

ざしゅっ!ブシュゥゥゥゥゥッ!!

 

「あぁ、血の雨って…なんて素敵なのかしら♪」

 

血の雨が振る中、無邪気な少女_ブラッディ・メアリーは躍り舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ブリジェント_ホテル

 

薄暗い部屋の中、和泉は一人、被害状況や敵陣営についての情報を纏めていた。アサシンは霊体化し、見張りをしている。ふと、横に置いていた携帯電話が鳴り、和泉は一旦手を止め、携帯を手に取った。

 

ピッ

 

「はい、言峰和泉です」

 

『お忙しい中失礼します、和泉神父。』

 

「おや、レオさん。どうかしましたか?」

 

『先程、ラーヴォルバが動きがありました。銀のアサシンと銀のキャスターが車に乗ってウェールズに向かいました。』

 

「やはり、ブラッディ・メアリーの件ですか…」

 

『はい。まぁ、これほど暴れれば彼らも黙ってはいられませんならね』

 

「ウェールズには金と銅のマスターとそのサーヴァント達が滞在しています。鉢合わせする確率は高いでしょう。」

 

『銅のマスター達には、僕が伝えておきます。…それと、この間捕らえた鉄のバーサーカーのマスター、ロディニオ神父の私物の中から、興味深いモノ(・・・・・・)を見つけましてね』

 

「……興味深いモノとは?」

 

『ギッチリと蓋を閉められた試験管に入った赤黒い泥の様な液体です。今、魔術協会でなんの液体か調べています。おそらく、霊薬か何かでしょう。液体についてロディニオ神父に聞いてみたところ…彼を含む六人のマスター全員が同じのを持っている。人を捨てる覚悟が出来たら飲めと言われた。…と、』

 

「…何か、嫌な予感がしますね」

 

『僕もです。アヴェンジャーのマスターは持っているかどうかはわからないが、何か秘密兵器があると言っていたそうです。』

 

「……この大戦には、いくつか疑問があります。慎重に、なるべく早く真実を探りましょう」

 

『わかりました。では、失礼します』

 

レオはそう言って、電話を切った。

 

「……そもそも…クリスティアが作った大聖杯は、本物なのか?」

 

 



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第六節 暗黒街の鼠狩り

 

深夜_竜胆と白野(はくの)、凜、カドック、(さくら)慎二(しんじ)立香(りつか)は街の中心にある噴水がある広場に居た。

 

鉄のアサシン_ブラッディ・メアリーを仕留めるためにマスターである彼らが囮となり、ブラッディ・メアリーを誘き寄せるという作戦だ。

 

この作戦を提案したのは竜胆だ。魔術師である自分達は奴にとってご馳走という考えで作られた作戦だ。

 

「というか、あんたまで来なくて良かったのに…大丈夫なの慎二?」

 

「ふ…ふん!あまり僕を見くびらない方がいいぞ遠坂、僕のライダーは君のランサーより強いからね。鉄のアサシンなんか木端微塵に吹き飛ばしてやるさ」

 

「それなら、カドックくんのキャスターと白野のバーサーカーだってあなたのライダーに負けないぐらい優れているわよ。特にカドックくんのキャスターとは一度手合わせしてもらったけど、ギリシア神話の英霊であるランサーがやられちゃうぐらい強かったわ」

 

「っ…おい、カドック!足引っ張ったらただじゃおかないからな!」

 

「うるさいなぁ…お前こそ足引っ張ったら許さないからな」

 

「ちょっと兄さん…!ごめんなさいカドックさん…」

 

「…別に、気にしてないよ。それより、体の方は大丈夫なのか?確か君は先月魔術師になったばかりだよね?狂戦士(バーサーカー)の扱いに慣れないと魔力を全部持っていかれて最終的には……」

 

「大丈夫です。魔力の使い方も、少しずつですが慣れてきました。それに…私はバーサーカーを信頼しています。彼女(・・)が私を殺したりはしません。そう…彼女と誓いましたから」

 

「………。」

 

「…休憩時間はもう終了らしい」

 

「「!!?」」

 

と、竜胆が言うと街中の街灯が次々とパリンッと砕け散っていった。

全ての光が消えた瞬間、クスクスと少女の笑い声が聞こえた。

 

「男の人が二人、女の人が五人。どれも美味しそう…クスクス…」

 

暗闇から聞こえる少女の笑い声…噴水の前に座っていた竜胆は吸っていたタバコを地面に捨て、踏んで火を消した。

 

「鉄のアサシン_ブラッディ・メアリーであっているか?」

 

「あれあれ?よくわかったね、お姉さん物知りだね!」

 

「『血塗れメアリー』…アメリカで一番有名な都市伝説で深夜に真っ暗な洗面所で鏡に向かって『血塗れ(ブラッディ)メアリー』と三回唱えると鏡の中から血塗れの少女の悪霊が現れ、唱えた者を呪いをかけて殺したり鏡の中へ引きずり込む…ポール・バニアンより有名で人々に恐れられている都市伝説…モデルになった人物や物語は多数あり、謎に包まれている」

 

「あはははっ!そうだよ、わたしがその血塗れ(ブラッディ)メアリーだよ。なんだかお姉さんとはお友達になれそうだね!」

 

「それはそれは…」

 

「じゃあ、お姉さんは最後に食べてあげる。最初はこの太陽みたいな綺麗な髪のお姉さんから__」

 

ヒュンッ

 

と、突然薄緑色の光が竜胆達を横切って暗闇に潜んでいた鉄のアサシンに命中した。

 

「!!?…い、痛い…!?痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛ぁいっ!!!?」

 

アサシンの悲鳴が暗闇に響く、竜胆は光が飛んできた方向に向けて懐中電灯を降った。

 

街から遠く離れた場所にある森林の手前には、バゼットと青いチャイナドレスの様な長袖の服装に長い緑色の髪の弓を持った女性、銅のアーチャーが居た。

 

バゼットは通信機を使い、竜胆に連絡をした。

 

『ザザッ…ザッ…急所は外れましたが、なんとか当たりました。後はそちらに任せます』

 

「感謝する。…遠坂!」

 

「わかってるわ!」

 

凜は持っていた宝石をアサシンがいる方へ投げた瞬間、宝石が砕け散り、中から光が溢れ出た。

アサシンの姿がはっきり見えた直後、カドックが動き出した。

 

「アサシンを凍らせろ、キャスター!」

 

と、言った瞬間、霊体化していた銅のキャスターが現れ、鉄のアサシンの周りに吹雪が舞い上がり氷壁の中に閉じ込めた。

 

「バーサーカー、やって!」

 

「ランサー、アサシンを穿ちなさい!」

 

白野と凜の合図で銅のランサーと金のバーサーカーが現れ、ランサーは槍で氷壁の中にいるアサシンの胸を穿ち、槍を抜いて一旦離れた直後、バーサーカーがバッと手を振った。

 

その瞬間、大きな音を立てて氷壁が砕け散った。

 

「やったか!?」

 

「これは確実に死んだな…」

 

と、慎二とカドックが言った瞬間、銅のランサーと金のバーサーカーが何かを感じ、手前に居た凜と白野を引き寄せた。

 

「「!!?」」

 

すると、砕け散った氷壁の中から赤黒い影が飛び出した。影はやがて人型に固まっていき、胸を穿たれ、砕け散ったはずの鉄のアサシンの姿になった。

 

「あーあ…ひどいなぁ、死んじゃうとこだったよ」

 

「…やはり、簡単には終わらないか」

 

ランサーは槍を構え、キャスターとバーサーカーは戦闘体勢に入った。

 

「にゃあにゃあ。…わたしが猫さんでお姉さん達はネズミさんね。じゃあ、10秒数えるからうまく逃げてね…」

 

と、鉄のアサシンはまた闇の中に隠れ潜み、10…9…8…と、カウントダウンをする声が響く。

 

「おい、衛宮!どうするんだよ!?このままじゃ僕達みんな殺されるぞ!!」

 

「…落ち着け、すでに準備は出来ている」

 

「はぁ?」

 

 

一方__広場から離れた場所に、アサシンと同じく闇に潜む複数の人影があった。

 

金のアーチャーと銅のアサシン、金のランサー、フロスト、イリヤスフィールの五人だった。

 

「第一の作戦は失敗したみたいね」

 

「んじゃあ、始めるか…アーチャー、準備はいいか?」

 

「いつでも大丈夫ですよ」

 

「わかったわ。アサシン、宝具の発動を許可する。でも、アサシン以外は食べちゃダメよ」

 

「……了解(ヤー)ご主人様(マイマスター)

 

「では計画通りにお願いします。ランサー、アーチャー…気をつけて」

 

「わぁってるよ、マスター。北欧神話の主神の力、見せてやるよ」

 

「お二方はここに隠れて指示を出してください。私はバーサーカーとキャスター、銅のセイバーと合流してきます」

 

「うん、気を付けてね」

 

金のアーチャーとランサー、銅のアサシンはその場から

立ち去り、闇の中にへと消えていった。

 



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第七節 ふたつの別れ道

 

竜胆達が鉄のアサシンと交戦している頃、彩巴とロード・エルメロイⅡ世はラーヴォルバ城塞から遥か東の森に居た。

まだ明らかとなっていない鉄のライダーの正体を探るために、竜胆とは別行動をしていた。

 

和泉神父にも協力してもらい、現在二人のもとには金のセイバーと金のライダーと金のアサシンが居る。

 

「衛宮竜胆の情報によると、ラーヴォルバ城塞を襲撃してきたのは鉄のアヴェンジャーと鉄のアサシンのみだったらしい。ライダーが姿を現さなかったのは、恐らく銀のランサーの宝具を避けるためだろう」

 

「この先には小さな村があります。もしかしたら、避難していた村の住民に紛れて逃走したかもしれませんね」

 

「そうだな。あの日、竜胆が起こした火事で村の住民は全員安全な場所に移動していた。もし鉄のライダーの姿が普通の人間と同じならば…逃走するのは簡単だ。協会が捕らえた鉄のバーサーカーのマスターによると、鉄のサーヴァントの一部は黒化した影響で霊体化が出来ないと言っていたな。聖杯の力で受肉した結果、霊体化は出来ないが、普通の人間に紛れることは可能だ」

 

金のセイバーの話によると、鉄のランサーは霊体化をする気配も無く金のセイバーに突っ込んで来たという。

鉄のバーサーカーも同様、霊体化せずルーラーを殺しに走っていたという目撃情報が多数あった。

 

「魔力で再現した乗り物ならば、消したりするのは簡単で、外見を見られないように何かローブの様なものを纏って逃走したかもしれない。」

 

「騎馬か馬車か…ライダーがどんな乗り物で戦うのか気になりますね」

 

「…ライダークラスのサーヴァントは多数の宝具を使用することが出来る。鉄のライダーがいつの時代、どの国の英霊なのかわかれば助かるのだが…」

 

と、二人が話していると、金のアサシンとセイバーが二人の前に現れた。

 

「二人共、敵が現れたみたいだよ。今ライダーが足止めをしている。」

 

「恐らく鉄の陣営が造り出したホムンクルス兵だろう。数は少ないが、それぞれ魔法道具を持っていた」

 

「あぁ、わかった。彩巴、君はセイバーと一緒にこの事を和泉神父に伝えるんだ。私はアサシンと共にライダーを応戦にし行く!」

 

「は…はい!」

 

二人はそれぞれ別れて行動した。エルメロイはアサシンと共にライダーが居る西へ、彩巴はセイバーと共に和泉神父に現在の状況を伝えるために南の野原に停めてある車に向かった。

 

 

 

「……動き出しましたか」

 

森全体を見渡すことが出来る崖の上で、真珠色の髪の少女、クリスティア家次期当主_ミリウォル・ファニカ・クリスティアは彩巴達を監視していた。

 

「ユミリアお姉様、ロディニオ叔父様、ランスロット様、ブリュンヒルデ様…あなた達の無念、ここで晴らします」

 

ミリウォルは右手を出し、令呪を使用した。

 

「令呪を持って命ずる。ライダー、宝具を開放し、金のセイバーを討ち倒してください」

 

令呪が一画消えた瞬間、ミリウォルの背後から馬の鳴き声が聞こえ、馬に乗った黒騎士がミリウォルの横を通り過ぎ、金のセイバーが居る方へ向かって崖を飛び降り、走って行った。

 

「…これで、本当に良いんですよね。アルヴァルトスお父様……」

 

ミリウォルは震えている手を握り締め、辛そうな表情をし、俯いた。

 

 

五日前__

 

彼女はユミリアと鉄のランサーの状態とロディニオが魔術協会に捕まり、鉄のバーサーカーが討たれたことを聞いて驚愕した。

実の父親であるアルヴァルトスからは金のセイバーを討てと命じられ、従ったが……彼女は自分達がしていることは正しいことなのか考え、自分達の一族の無念を晴らすために、そして父親に次期当主としての実力を見てもらうために参戦した。

 

だが、自分達がしていることは本当に正しいことなのか考えて探った結果、父親が聖杯戦争に関係ない人間を実験材料にしていることが判明した。

 

ミリウォルは現在、自分はクリスティアのために戦うか、それとも関係のない人間を守るためにクリスティアを裏切るか…彼女の頭の中は、ゆっくりと蝕まれていた。

 

「……ライダー。せめて…せめて、あなただけは生き延びて…私の、大切な黒騎士…」

 



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第八話 悲劇の戦乙女と漆黒の復讐者

暗黒迷宮都市スティア__

 

鉄のアヴェンジャーは、都市の広場で夜空に浮かぶ月を眺めていた。

 

蟲の頭を模した黒兜と黒い甲冑は月光に照らされ、長い白髪は美しく輝いていた。

 

「……」

 

その時、アヴェンジャーの前に長い髪に大きな槍を持った戦乙女、鉄のランサーが現れた。

 

「……完治したのか、ランサー」

 

「はい…金のセイバーから受けた火傷は全て治りました」

 

「…何故此処に?」

 

「マスターのご命令で、あなたとお話を…」

 

「……ひとつ聞こう。何故黒化が解けている(・・・・・・・・・・)?」

 

「…どういうことでしょうか?」

 

「惚けても無駄だ。俺は黒化したサーヴァントの気配を感じとることも出来る。それなのに、貴様からは一切黒化の気配を感じない」

 

「……バレてしまった以上、演技をする必要はもうありませんね」

 

ランサーは槍を構え、戦闘体勢を取った。

 

「……裏切りか、」

 

「はい。マスターがこれ以上犠牲者を出すわけにはいかないと、私は彼の提案に賛成し、一番危険なあなたを殺しにきました…」

 

「……何故裏切る?多少の犠牲は出るものだろ」

 

「それもそうですが…ある秘密を知ってしまいましたからね」

 

「ある秘密だと?」

 

「キャスターのマスターを除いて六人の鉄のマスター…そのうち二人は、もうすでに死亡していること(・・・・・・・・・・・・・)。それと…あなたのその身体についてのことも」

 

「……」

 

ランサーの発言で、一瞬でその場の空気が変わった。

 

「…秘密を知った以上、貴様らを始末しなくてはならないな」

 

アヴェンジャーは黒い靄に覆われた剣を具現化し、構えた。

 

「無理矢理だとはいえ…同じ陣営だった仲間を殺すと考えると…困ります」

 

「来い、ブリュンヒルデ。北欧神話の悲劇の戦乙女の力を見せてみろ」

 

「!…」

 

ふと、ランサーは兜越しに見えるアヴェンジャーの瞳を見て、頬を赤くし、目はとろんとなった。

 

「……シグルド…その真っ直ぐな眼差し、その闘気…シグルドなんですね…!?」

 

「は?」

 

カタカタと、槍を握っている手が震え、ランサーは嬉しそうに微笑んだ。

 

「シグルド…シグルドなんですね!?あなたは私の…それなら愛さなきゃ、殺さなきゃ…!」

 

ランサーはアヴェンジャーのことをかつて愛した人(シグルド)だと思い込んでいる。アヴェンジャーはその様子を見てはぁ…と、溜め息を吐いた。

 

「…哀れだな。かつて愛した男と俺を重ねるとは…なるべく苦しまないように殺してやる」

 

「あぁ、シグルド…私を愛して、優しく抱き締めて…!」

 

愛で暴走し始めた鉄のランサー、そんな彼女を苦しまず、痛みを感じないように殺そうと考える鉄のアヴェンジャー。

 

悲劇の戦乙女と漆黒の復讐者__同陣営のサーヴァントによる戦いの火蓋が切られる_!

 



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