ストライク・ザ・アルファ (第0真祖)
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南宮零

「あああああははははは! ははははははあははははははぁ!」

 

 狂ったように笑う少年の周りには夥しい量の肉塊と、地面を赤く染める血に満ちていた。

 赤い五方星が浮かんだ瞳からはおぞましい気配が感じ取られる。

 

『GAAAAAAAA!!!』

 

 と、狂ったように笑う少年に向かい炎で出来た馬、水の蛇、雷の鳥などが迫る。

 

「『存在の解析、解除』」

 

 が、少年が片手を振るうとあっさりと消え去る。

 

「ぐおおおお!」

「があああ!」

 

 今度は人と獣を掛け合わせたよう異形が襲いかかる。が、少年は慌てることなくギョロリと視線を向ける。

 

「『砕けろ、潰れろ』」

 

 天から響くような声が発せられると、その通りになった。潰れ、砕け、死に絶える。

 

「『α(始まり)は破壊だ。我は何も生み出さない恵まない救わない。ただ消すだけ…真っ白に』」

 

 取り囲む異形達が後ずさる。少年は彼等が肉片へと変えた両親と、自分が砂へと変えた妹を見る。

 

「な、何なんだ……何なんだよお前はぁ!?」

「『神、悪魔、邪神、勇者、化け物。貴様らは何て呼ぶ?』」

 

 一人が恐怖に狂いそうになりながら叫ぶと少年の口と天から響く声が逆に問いかけてくる。しかし、答えられる者は一人もいない。

 

「く、くそぉ! 殺せ、殺せぇ!」

「『殺す? 我を殺す!? ふは、ふはははは! 笑わせるな、たかだか一柱の神の裏切りで不死を失った無能の子孫どもが! この世界で真祖などと仰々しい呼び名の虫螻を頂点とする塵芥共が我を殺す? ふははは!』」

 

 少年は可笑しそうに笑う。

 

「黙れ! あんなモノが頂点だと? この世界でもっとも優れているのは我々だ!」

「『はははは! 堕ちた神の残り滓のけだものが、優れている? どこまでも道化に相応しいな………褒美だ、加減して殺してやろう……【我、神の技法を真似て真祖の力を呼び起こす】『獅子の黄金』(レグルス・アウルム)!』」

『GUOOOOOOO!!!』

 

 と、黄金の雷で掲載された獅子が現れる。だがその体は数本の鎖に貫かれており雄叫びもまるで痛々しい悲鳴のようだ。

 

「『あはははは! この程度にそんな顔を浮かべるか。恐怖し、絶望するか。はは、はははははは!』」

 

 

 

 

「───ん───くん! ──零君!」

「────んぁ、もう放課後かぁ?」

 

 ふあぁ、と大きな口を開けて欠伸する少年に、少女は怒ったように頬を膨らませる。

 

「まだお昼だよ! ていうか、授業中ずっと寝てたでしょ!」

「いいんだよ俺は、みさきちの弟子っていうステイタスで就職させてもらうから内申点とか」

 

 と、叱ってくる少女の言葉を受け流し再び眠りにつこうとする別名『中等部の三年寝太郎』こと南宮零。将来の夢は眠ること。何なら永遠に寝ていたいとは本人談。

 目の前が見えないだろうと突っ込みたくなる黒い眼帯で顔の上半分を覆っているが、下半分だけでも整った顔だというのは何となく解る。

 

「ほう……随分と言うようになったな」

「ッ!?」

 

 その言葉に零がギギギと壊れたブリキのように硬い動きで振り返る。そこには冷酷は笑みを浮かべるゴスロリ姿の美少女が居た。

 

「ま、マスター………」

「目を離すと直ぐこれだ。少し躾が足らなかったか………少し、借りていくぞ」

「あ、はい………」

 

 

 

 

「それでマスター、本当の用件は何なんだ?」

「ん? ああ、すまん。楽しみすぎて忘れていた」

「……………」

 

 鎖で宙吊りにされた書類上息子のジト目に、ゴスロリ少女(成人済み)の南宮那月は怒るな怒るなと肩をすくめる。

 

「あ、でもこの格好癖になりそ………ぐぅ」

「寝るな」

 

 那月が手に持っていた扇子を閉じ振るうと距離があるにも関わらずスパァン! と扇子が頭を打つような音が響いた。

 

「獅子王機関がお前に監視をつけようとしているから、忠告をな」

「ししおー? 何だっけ?」

「貴様、どうやらまだ寝ぼけている様子……」

「冗談ですごめんなさい。でも何で俺を? つか、何で今更?」

「安心しろ。別にお前がその気になれば()()()()()()()()()()()()()()()()事がバレたわけではない。バレぬ為に、お前はわざわざ岬から格闘技を、私からは人間が扱える魔術を教わっているのだしな。ただ、この前のあれだ………暁古城が第四真祖になって初めての暴走………」

「ああ………」

「あれで()()()()()()()()なったのだろう。自業自得だバカめ……二度目の人生を息苦しくするとか、Mなのか?」




キャラクタープロフィール

名前:南宮零
身元引受人:南宮那月
神のミスによって殺され勝手に転生特典を決められた挙げ句神の気まぐれによって暴走する危険まで組み込まれた。暴走の際自らの手で妹を殺してしまう。
転生させた神をひどく憎んでおり、普段から眠るのは前世と今世の家族を忘れぬよう夢で見るため。
基本的な戦闘スタイルは岬指導の下鍛えた武術と仙術、那月から教わった空間魔術。
転生特典は「寂しがり屋の悪魔」の力である「全ての式」。ストブラの世界においては天部の術式すら再現可能。
もう一つは元ネタである伝勇伝のα。此方は暴走したらおもしろそうだという理由でつけられた。神を嫌うのはこれが理由。
αを何時かは喰らおうと思っているが暴走を恐れなかなか実行に移せない。戦闘スタイルはαの出現を押さえるため力をせずにすむからと言うのが主な理由だが他人のためとなるとそれも忘れて使ってしまう。
初恋の相手は那月だが本人も自覚していない。那月に対してのみ若干Mが入るが縛られた那月をみたいというSな願望もある。
暁凪沙のクラスメートで不真面目な彼を叱る凪沙という光景が日常茶飯事。
小動物が好きで廃教会に良く赴く。
因みに転生特典は名前のみしか知らず、ストブラも伝勇伝も知識にない。


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