アズールレーン ―炎ノ翼― (キリュー)
しおりを挟む

Prologue

どうもー桐生瑞鶴でーす。
今回はアズールレーンの二次小説を書いてみましたー。

本作品は、原作ゲーム設定(一応)踏まえつつ、オリジナル設定・オリジナル展開(その他オリジナル用語有り)でお送りします。

初めてなので駄文ですw

苦手な方はブラウザバックを推奨します。

では、スタート~\(^o^)


海底資源開発 不明物質研究報告書

2020/5/12 調査ポイント マリアナ海溝

Log1

 

私は科学者。具体的には、海底資源学の研究者。

年齢は23歳であとは…性別は女性。名前は諸事情につきここでは控えさせてもらうわ。

 

今回、私はとある物質の採集の為に日米海底資源開発機構という組織と一緒にここ、マリアナ海溝に来ている。日米海底資源開発機構とは日本とアメリカが共同で海の開発に力を入れる組織で、 結成は2015年…おっと、今はそれよりこの報告書を完成させることが優先だったわ。

 

今から5年前にミッドウェー諸島沖の海底から青く光る正体不明の高エネルギー物質を発見した。それから1ヶ月後、ハワイ沖の海底火山から青い噴火がおきた。その時の噴出物とミッドウェー諸島沖の物質が一致したため、本格的な調査が始まった。今では世界中の海にこの物質があることが解っているわ。新たな海底資源になるかもしれない物質として注目されているから、世界の国々のお偉いさん達が皆期待している。でも、私にはこの物質は開けてはいけないパンドラの箱のような気がする。

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2020/9/24 日本 東京都 海洋水産資源研究所

Log2

 

マリアナ海溝から持ち帰った不明物質を解析した。

実は今回新たな発見があったわ。不明物質はマリアナ海溝を含めた色んな海から採集してはこの研究所に集められる。そしてこの不明物質の事だが、この物質はある程度の量が集まると不可思議な力が作用する事が判明した。というのも、解析中に私はその物質の上にうっかりペンを落としてしまった。その直後、まるで意思があるかのようにペンが突然ひとりでに動きだした。あちこちに飛び跳ね回るからおかげで研究室はメチャクチャ。

でもこれは確かな発見だったわ。

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2020/10/10 日本 北海道 釧路 北日本大学 深海生物研究室

Log3

 

今日は私の卒業した大学を訪問した。

深海生物研究室には私が学生時代にお世話になった教授がいる。教授に先月の発見を話したら大層驚いていたわ。ついでに君も立派になったなと誉めてもらったわよ。

最近、教授は不可解な噂を耳にすると言っていた。教授の知り合いの漁師がここの所よく変な形の割りと大きな魚影を見るらしい。教授も私もそれは気のせいだと思う。でも教授は念の為に調べているみたい。

 

それはそうとして、先月の新発見の代償としてメチャクチャにした研究室を見た所長からこっぴどく叱られて始末書を書かされたわ。ホント最悪。

 

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2021/1/3 日本 東京都 海洋水産資源研究所

Log4

 

新年明けましておめでとうございます。

でも私の研究に正月という概念は無い。大晦日から今日にかけて、研究室には私一人。別に寂しくは無い。なぜなら私にとってこの研究が全てだから。

 

去年の10月に教授から聞いたあの噂。あれは本当だった。ミッドウェー諸島沖、ちょうど不明物質が最初に発見されたあの海に、正体不明の人型生物が米軍に発見された。見たところその生物は戦艦の主砲のような物を武装しており、こちらを確認するや否や突如として、主砲らしきものを撃ってきた。幸い、米軍の艦はギリギリ被弾せず、速やかにミサイルでその生物を追い払った。

あれは何だったのか、なぜ姿を現したのがミッドウェー諸島沖だったのか…。

 

なぜだか私にはこの不明物質と関係がある気がする。

 

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2021/4/24 日本 東京都 海洋水産資源研究所

Log5

 

先月、例の生物がサンフランシスコの近くで米軍に捕獲された。そのサンプルが先週届いた。そして今日とんでもない発見をしてしまった。こいつは生物でありながら生物らしからぬ存在。身体の構成が全くもって理解の域を越えている。なによりも驚くべき所はこの生物の身体の構成物質とあの不明物質が完全に一致したこと。

私の予想が当たってしまった…。

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2021/6/15 日本 東京都 海洋水産資源研究所

Log6

 

あまり時間が無いので、簡潔にまとめてさせてもらう。

 

不明物質について更に解ったことがある。

以前のペンの事件以降、なぜ「物」に命を宿らす力があるのか研究していた。まだ詳しいことはまだわからないがこの物質には思念体、言わば九十九神の様なものを生み出す力があるらしい。この報告書を見ている人はさぞかし意味がわからないと思っているだろう。安心して、研究している私も今理解が追いついていないまま、これを書いているから。この力とあの生物との関係は未だに解らないまま。

この不明物質の名称をメンタルエネルギーと呼ぶことにした。

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質研究報告書

2021/7/7 日本 東京都 海洋水産資源研究所

Log7

 

由々しき事態になった。ハワイ沖近くを航行していた商業船が例の生物に襲われ、沈没した。

 

もはや、メンタルエネルギーの研究どころではなくなった。

 

ギリシャ神話にならって、やつらのことをこう名付けた。

 

 

 

 

セイレーン

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、Log127まで省略

 

 

 

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質及び海上起動兵器研究報告書

2022/12/2 ミッドウェー諸島 海上兵器開発研究所。

Log127

 

私は今、メンタルエネルギーで抽出した思念体に戦える身体を与える研究をしている。第二次世界対戦で活躍した世界中の艦船の思念体を使っている。

 

世界の制海権はほぼセイレーンに奪われたっと言っても過言じゃない。この研究が繋がっていつかセイレーンから海を取り返せるのか、なんの意味も無く終わってしまうのか、それとも、この技術を誰かが戦争に使うか

 

私には、知る由もないだろう。

 

 

この世界を救う為なら私は自分自身の犠牲も厭わない

 

 

 

 

 

このLog127を、最後の報告書とする。

 

 

艦船少女研究主任 海底資源学者

山科 明日香(やましな あすか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはどこ?皆は?翔鶴姉はどこ?

 

 

私は……私の名前は……瑞鶴……

 

 

たしか…エンガノ岬沖海戦で私は沈んだはず…。海の底は暗くて冷たいとこなのかなと薄れゆく意識の中、私は最後にそんなことを考えていた。あの「グレイゴースト」には結局勝てなかった。でも悔いは無い。願うことなら敵ではなく、友軍として一緒に戦いたかった。

 

おかしいな…もう目を覚ますことは無いはずなのに…。

 

そんなことを思いながら私は、文字通り目を開けた

 

 

そこにあったのは、真っ暗な海の底じゃなかった。

 

目の前にあるこの透明な板は、たしか"ガラス"って言ったっけ?

 

どうやら私はガラスできた筒の中にいるみたい。

 

ガラスの向こうには、なにやら騒々しい機械が沢山置いてあった。近くにある"ツクエ"の上には、"カミ"と"エンピツ"みたいなものがある。たしかあれはニンゲンが"モジ"っていうものを書くときに使う道具だったっけ?

今の私ならニンゲンの手を持ってるから使えるかな?

 

ニンゲンの手……?

 

私はゆっくりと自分の手を見た

 

 

 

ニンゲンは、私の船体(からだ)の中にいて、私の操船をしたり、艦載機を発着させていたりしていた。

 

 

 

 

 

今は……私が、ニンゲンになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、長い年月が過ぎた……。

 

 




アズールレーンキャラでは瑞鶴とエンタープライズが好きですねw

一応、大体の設定としては、主人公は瑞鶴。もう一人の主人公はエンタープライズってとこですね。


エンタープライズ×瑞鶴もっと増えてほしいですねw

エンタープライズは次回から登場させたいと思っていますので、そこのところシクヨロ。

更新は基本不定期です。

作品内登場する大学や組織、施設はすべてフィクションです。

できれば、評価と感想の方をお願いしますm(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 ―孤高ノ鶴戦士 編―
Episode 1 ―海と少女たちの世界―


どーも、O.m.mでーす。
今回から第一話始まります。
それではどーぞー。


はるか未来の世界、地球上の海は謎の人型深海生物「セイレーン」により支配されていた。

 

人類は彼らに対抗すべく"艦船少女"を創りだし、さらには対人型深海生物国際海洋連合「アズールレーン」を設立した。

 

しかし、愚かなことにセイレーンの力をバイオテクノロジーとして利用しようとする思想が現れ始めた。

そして、その思想は国をも動かしついには、反アズールレーン派「レッドアクシズ」が誕生した。二つの信念がぶつかり合い、仕舞いには戦争へと発展した。

 

そして現在、アズールレーンとレッドアクシズは膠着状態を極めていた。

 

 

 

 

「エンタープライズ、ただいま任務から帰投した」

執務室に響く凛々しい声、彼女の名は"エンタープライズ"

ユニオン及び、アズールレーンのエースとして活躍している。グレイゴーストの異名を持つ彼女の実力はどの鎮守府でも欲しいほどである。

「お疲れ様、エンタープライズ。もう今日は休んでていいからな」

「ありがとう指揮官。私は大丈夫だ。緊急事態になればいつでも出撃できる」

「頼もしいな。でも無理はするな」

「あぁ、わかっている」

 

他愛ない会話を済ますと彼女は執務室を後にした。

 

 

 

この鎮守府はかつて、旧日本国と旧アメリカ合衆国が共同で使っていた世界最大の国際鎮守府。他にも、フランスやドイツなども共有していた。太平洋に浮かぶ巨大な人工島で、島の中には都市もあり、鉄道も走っているほどの大きさだ。

 

しかし、今は所属している艦の殆どがユニオンとロイヤル。他の国の艦はほんのわずかしか所属していない。

 

 

 

エンタープライズがしばらく歩き向かった場所は、艦船少女たちが住む寮の少し離れの小屋だった。近くに小さな川が流れており、竹林に囲まれたそれはまるでかつての日本の姿を再現していた。

 

そしてその小屋の中には、彼女の親友が一人で住んでいた。

 

「"瑞鶴"いるのか?」

 

エンタープライズの"親友"。

彼女の名は、"瑞鶴"

 

アズールレーン唯一の重桜空母。

 

この鎮守府で瑞鶴以外の重桜の艦船は工作艦の明石だけ。

 

鉄血軍と重桜軍がレッドアクシズに寝返った時から殆どの艦が撤収した。それでもアズールレーンに残り続けようと抗う艦もいたが結局は敗れ、()()()()となっている。

 

ユニオン・ロイヤルが多数在籍しているなかで、鉄血はわずか数名、重桜は戦わない明石を除いて瑞鶴たった一人なのだ。

 

 

小屋の中を探せど親友の姿はない。

「『クナイペ鉄血』にでも行っているのか?」

 

瑞鶴を探しにエンタープライズは小屋を後にした。

 




今回は少し短めという感じです。
まぁ、初めてなのと作文の才能が壊滅的なので後々に編集はしていくつもりです。

それでは次回もお楽しみに~。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 2 ―二人の幸運艦―

お ま た せ

第二話、スタート!


赤城せんぱ~い 、加賀せんぱ~い、おはよーございまーす!

 

 

雪風ちゃん、今日も元気いっぱいだね!

 

 

 

翔鶴姉、今日も演習頑張ろう!絶対にあのグレイゴーストを追い抜いてやるんだから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、どうして?

 

なんで皆行っちゃうの?

 

そんなのおかしいよ…。

 

赤城先輩、あなたには失望しました。

 

 

 

翔鶴姉は、行かないよね?

 

 

 

そんな………翔鶴姉まで、なんで…。

 

 

 

 

アノ空母ヲ沈メロ

奴ハ重桜ノ艦デアリナガラ、ユニオンナンゾニ肩入レシテイル

 

奴ヲ、裏切リ()瑞鶴ヲ始末シロ

 

 

我々アズールレーンヲ裏切ッタ重桜ノ空母カ

精々、背中ニハ気ヲツケルンダナ

 

 

 

コノ裏切リモノガ

コノ裏切リモノガ

 

 

 

 

 

 

 

ズイカク……

 

 

 

 

ズイカク…

 

 

 

 

 

瑞鶴

 

 

 

 

 

 

 

「ん?あ、おはよー ティル」

 

「"おはよう"じゃない瑞鶴。あなた、いつまで店で寝てるつもり?」

 

 

鎮守府内のバー、「クナイペ鉄血」。主に戦艦や空母が通う店。

 

 

 

「あなた、今朝ここに来たのよね?もう夕方よ」

 

「あっれ~?私そんなに寝てた?」

 

グラスを拭きながら寝ている瑞鶴を咎めているのはここのマスターであるビスマルク型二番艦、ティルピッツ。数少ない鉄血の1人。

 

 

「生活習慣が乱れたら、戦闘時に船体(からだ)が持たないわ」

 

「だって、昨日の朝から徹夜で委託だったんだもーん。休みの日ぐらいはダラダラしたいわ」

 

「どうやら生活面も明石に管理させないとダメなようね」

 

「!? やめてよティルー!()()()()()()()()生活まで管理されるとか冗談じゃないわ~!もはやエンガノ沖で沈んだ時より悪夢よ~。せめてヴェスタルさんにして~」

 

ティルピッツの言葉に頭を抱えて拒否する瑞鶴。

 

「自分が沈んだ時の事をネタにするものじゃないわ。

それにヴェスタルはなんだかんだで甘やかすからダメよ。他の子達と違って、()()()()()()()()()()()()()からもっと大切に扱うべきよ。…………それと明日の演習はどうするの?」

 

 

「………」

 

 

「まぁ、任務と違ってあれは自由参加制だから強制はしないわ。でもたまには顔を出してあげなさい。因みに明日はエンタープライズも出るわ」

 

 

「…演習には出ないわ。私にはやらなきゃいけないことがたくさんあるから。それに演習に出たとこでどうせグレイゴーストには勝てないし。それよりも、重桜の問題を解決したい。私があの人たちを止めていれば、こんなことにはならなかった…。だから私がやらなくちゃいけないの。そのためには多少無理する必要があるの。だから……明石ちゃんの管理だけは勘弁して!ね?」

 

拝むように頼む瑞鶴。それに呆れるティルピッツ。

 

 

「あなたという人は本当に……」

 

 

「なら私が君の面倒を見てやろうか?」

 

「え?」

 

いつの間にか、グレイゴーストことエンタープライズが店に来ていた。

 

 

「全く、あまりティルピッツを困らせるんじゃないぞ瑞鶴。彼女は君のため言ってくれているのだからな」

 

 

「うぅ…だって~…」

 

「それと瑞鶴、明日の演習久しぶりに出てみないか?今回は敵じゃなく同じチームで入ってほしいんだ。他の子にも声をかけたが、明日の予定が合わなくて今回は無理らしい。」

 

 

「グレイゴーストと一緒に戦えるなら…それも悪くないかも」

 

「決まりだな」

 

 

その時、店のドアが音をたてながら思いっきり開いた。

 

「にゃー!瑞鶴こんなところにいたにゃ!今日の昼に船体メンテナンスに来るように言ったにゃー!」

 

「……あああー!忘れてたぁぁ!!」

 

「早く来るにゃ!」

 

「わ、わかったから…髪引っ張らないでー!痛てて」

 

 

明石に引っ張られ、瑞鶴は店を出た。

 

 

 

 

「冗談じゃなく真剣に考えたほうがいいかも」

 

「まぁ、瑞鶴は私が見ているから大丈夫さ」

 

 

「あの子、一年前まではあんな風じゃなかったわ。

演習にも積極的に参加して、いつかあなたを越えるって息巻いていたわ。でも、重桜がアズールレーンに反逆してからあの子は変わった。それこそ、前から多少の無茶はしていたけど、純粋に強くなりたいって気持ちを感じられた。けど今は本当に無茶ばかりする。何かに追われているみたいに。きっとあの子はどこかで責任を感じているのよ」

 

 

「そうか……瑞鶴…」

 

 

「最近はあの子の船体メンテナンスの頻度が上がっている。このままでは本当にあの子、潰れてしまうかもしれないわ。それにアズールレーン反逆前から、瑞鶴と重桜の間には大きな亀裂が走っていた。ずっと辛い思いをしてたのよ」

 

 

 

「ああ、だからこそ私が彼女を支えるんだ。彼女の苦しみにずっと気づけなかったからこそなんだ」

 

 

夕暮れの鎮守府。海は夕日の色に、染まっていた。

 




お気に入り4件ありがとうございます!
いやー本当にうれしいですね!



エンタープライズ、ホントイケメンやーヽ(*´▽)ノ

今回初登場のティルピッツ。なんかバーでマスターしてるようなイメージがあったのでこの配役にしました。

因みに本作品の設定では、瑞鶴とティルピッツは旧知の仲です。


では、次回もお楽しみに~。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 3 ―重桜の灰霊―

投稿遅くなってサーセーン!!

今、前期試験中で投稿が遅れています。
でも、一応、基本不定期投稿って言ったから、悪クナイヨ(・∀・) 。

ん?試験はどうしたって?

………………………


第3話ドーゾ!


素晴らしい。あの幸運艦の思念体を抽出することに成功した。

 

 

 

 

抽出すべき最低限の思念体5つを揃えた。

 

 

 

 

これでセイレーンにも対抗できる。

 

 

 

 

お前は山科主任が残した最後の切り札だ。

 

頼んだぞ、コードZ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁぁ~…。よく寝た~」

 

差し込む朝日の光に目が覚めた。

 

これで戦争じゃなかったらこのまま二度寝していただろうね。

 

不意にトントンと、玄関の戸が鳴った。

 

「ん?朝早くから誰?」

 

寝ぼけ眼を擦りながら、私は戸を開けた。

 

「おはよう瑞鶴!今日は演習だ。準備はできてるか?」

盆栽仲間のクリーブランドが艤装姿で迎えに来ていた。

 

…そうだった。今日は演習に行く日だった。

 

 

 

 

 

鎮守府近くの海域。主力艦隊は瑞鶴・エンタープライズ・オクラホマ。前衛艦隊はクリーブランド・ラフィー・サンディエゴ。

演習の相手はロイヤルと鉄血の混合チーム。

 

 

 

号砲とともに演習が始まった。

 

「終わりだ!」

始まりと同時にエンタープライズがスキルを発動しながら艦載機を飛ばした。

 

―SKILL ACTIVATION "Lucky E"―

 

 

「いきなり、それ使うかー!」

 

相手チームの1人、Z1は彼女が放った爆撃を喰らいながら突き進んだ。

 

「聖なる光よ、私に力を…!なんちゃって♪」

 

―SKILL ACTIVATION "装甲空母"―

しかしイラストリアスによるスキル発動で前衛のダメージは無効化。

 

 

「ありゃイラストリアスをなんとかしなくちゃダメかな~」

 

相手の反撃に頭を抱えるクリーブランド。

 

一連の様子を、後方から伺っていた瑞鶴。

 

 

しばらく何もしなかったが、敵前衛のシールドが解除されたと同時に、彼女も動き出した。

 

瑞鶴が持っている刀「妖刀"鶴翼"」を、飛行甲板に当て付けそのまま削るように横へ振った。振られた刀からはいくつかの火の玉が飛び散り、それはやがて艦載機の形に成っていった。

 

飛ばされた艦載機がまず狙ったのはイラストリアス。少しでも早く彼女をリタイアさせる魂胆であろう。

避けられないように艦載機はイラストリアスの頭ギリギリまで低空飛行し、その高度のまま一気に爆撃を放った。

 

演習では基本、実弾ではなくペイント弾を使うため、瑞鶴の集中爆撃を喰らったイラストリアスはペイントまみれになっている。そのため彼女は撃沈判定が出され、近くの監視船に引き上げた。

 

「ごめんなさい、やられちゃいました~。後のほうよろしくお願いしますね」

 

「くっそー。イラストリアスがやられちまったぜ。でもこれで負けるZ1様じゃない!」

 

しかし、瑞鶴から放たれた戦闘機のひとつが前衛の主砲の砲口にペイント弾を撃ち込んだ。弾はキレイに砲口の中に入り、砲身の中で破裂した。

 

「こんなのありかよ!弾がでねぇ!」

 

破裂したせいで砲身が曲がり、目詰まりを起こしてしまう。

 

「今だ!一気に行くぞー!」

クリーブランドを先頭に前衛が反撃にでた。

 

「オクラホマさんお願いします!」

 

「え、あっ、はいっ!瑞鶴さん!」

 

 

最後はオクラホマの砲撃でトドメをさし、演習は終わった。

 

 

「これはやられたな…」

 

「ロドニーも敵ながら感心させられました♪さすが『重桜の灰霊(グレイゴースト)』の異名は伊達じゃありませんね」

 

 

「え?!瑞鶴、そんな異名持ってんのか!?」

 

「いや、私も初耳なんだけど…」

驚くクリーブランドに対し、瑞鶴は唖然としている。

 

「ホント、恐ろしいぜ。相手の武器壊して無力化するとか、演習じゃなかったらオレたちとっくに沈んでたな。でも実戦じゃあこのZ1様の実力はこんなものじゃないぜ!ハッハッハー!!」

 

 

「私がグレイゴーストなんて二つ名ふさわしくないわよ。"七面鳥"で十分と思ってるわ」

 

自分のライバルであり、目標であった人物の異名が自分自身にもつけられていることに戸惑う瑞鶴。

 

「良かったじゃないか、もっと誇りに思うべきだぞ。だから謙遜なんてするな瑞鶴」

 

本家の"灰霊"からは公認を得ているようだ(たった今)。

 

 

 

 

 

演習が終わり、即席のチームはその場で解散となった。

 

「本当に瑞鶴さんはお強いですね」

「全く、セイレーン共が哀れになってくぐらいだ」

 

海上にはクリーブランドとロドニーが残っており、瑞鶴の話題で盛り上がってた。

 

「でも、あんな戦い方…」

 

「ええ、以前まではしませんでしたね。一年前まではそれこそ、セイレーン相手の実戦では少々過激で合理的過ぎる戦い方はしていましたが、演習では必ず空母として正々堂々と戦ってましたね。やっぱり……」

 

「ああ、あの事件が瑞鶴を大きく歪ましてしまったんだ。何よりあいつが本気で笑ってるところ、もうずっと見てないんだ」

 

 

 

その時だった。

 

「『緊急事態発生 緊急事態発生』」

 

鎮守府に緊急サイレンが鳴り響いた。

 

「なんだ、なんだ!?」

「セイレーンかも知れませんね…」

 

 

「『鎮守府付近の海域で、民間商業船がセイレーンに襲撃を受けているという通報が入った。直ちに出撃できる者から随時、救出および撃退に向かえ』」

 

「これはヤバイことになったな!」

 

「ええ、行きましょう!」

 

 




ついにセイレーン様がご登場!?

ここから物語が急展開!?(からの結局大したことなし?)

次回も、お楽しみに。

感想お待ちしてまーす。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 4 ―襲撃―

アズールレーン一周年、そしてアニメ化決定おめでとうございます!

アニメのなかで動きまくるエンプラと瑞鶴が見たいですねー。

というわけで、誠に御勝手ながらこの二次小説をアズールレーン一周年記念作品としてタグに追加させていただきます。

この作品を全てのアズレンファンとアズールレーン製作者の方々に捧げます。


では、第4話スタート。


あー!また負けた!

 

やれやれ。君は全く諦めないな、瑞鶴。

 

当たり前じゃない!待ってなさい!絶対ぜーったいアンタに勝ってやるんだから!

 

ハイハイ、諦める日もね。

 

 

 

 

 

私は馬鹿だった……。

 

あんなに辛い思いをしていたなんて…。

 

君は重桜と対立し、アズールレーンを守ろうとしていた。

 

そんな中で、私と勝負することが君にとっての唯一の支えだったのに。私はそれを知らずにあしらってばかりだった。

 

私だって、本当は君のことを……。

 

 

 

あの時、君は同胞殺しを覚悟して私達を助けてくれた。

 

 

おかげで君は祖国、重桜から裏切り者とされてしまった。

 

 

 

 

本当にごめんよ…、瑞鶴…。

 

だから、これからは君と向き合う。

 

もう、あんな思いはさせない。

 

 

 

約束する。君のことは必ず私が守る。

 

 

 

 

 

あの時、私は彼女にそう誓った。

 

 

 

 

けど、誓うにはもう遅すぎた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けたたましく鳴り響くサイレン。

 

先ほどの演習メンバーが対応することになった。

 

 

「ラフィー、眠い…」

 

「我が儘言うなラフィー。しょうがないだろ?」

 

「なになに?お祭り~?」

 

 

眠そうに目を擦っているラフィー。

 

そもそもの状況を理解していないサンディエゴ。

 

不安要素が二つもあることに頭を抱えるクリーブランド。

 

 

 

現場に到着した六人。そこには数体のセイレーン(タイプ スカベンジャー)に襲撃され、今にも沈没しそうなタンカーがあった。

 

エンタープライズが矢を弓に装填し、艦載機を放とうとした瞬間。

 

彼女の横にいた瑞鶴がセイレーンに向かって全速で走った。

 

彼女の存在に気づいたセイレーンが瑞鶴に向かって砲撃したが、弾が当たる前に彼女は()()()

 

否、正確には大きく跳び跳ねた。

 

 

宙を舞う瑞鶴。鶴の翼に似せた羽織の裾が大きくはためかせるその姿はまるで本当に空を飛んでいるようで…。それは、とても美しいものだった。

 

そして着水と同時に炎を纏った刀でセイレーンを、斬った

 

敵の砲撃を舞う様に避ける瑞鶴。

 

「…!エンタープライズ!前!前ー!」

 

「…え!?うわっ!」

 

 

彼女の戦い方のあまりにもの美しさに、つい気をとられてしまったエンタープライズ。

ギリギリで回避した。

 

 

「よくわからないけど~やっちゃえ~!」

 

―SKILL ACTIVATION"私はNo.1!"―

 

 

サンディエゴが対空砲を機関銃代わりにあちこちへ乱射している。

 

「痛…!?おい!お前の弾がこっちに被弾したぞ!サンディエゴ!」

 

おかげでクリーブランドに誤射してしまい、要らぬ被弾をうけてしまう。

 

「私も負けていられないな!」

 

「自己リミッター…解除」

 

後に続いてエンタープライズも艦載機を飛ばし、ラフィーも戦闘体制に入った。

 

 

六人の猛攻撃に劣勢を強いられるセイレーンたち。

しかし、彼らも黙ってはいない。

 

反撃に出るべく、仲間を呼び寄せた。

 

海面からは十体ものセイレーンが浮上してきた。

 

「しまった!増援を呼ばれた!」

「……」

 

戦慄するエンタープライズ。

黙って敵を睨みつける瑞鶴。

 

タンカーには、まだ避難できていない乗組員たちが大勢いる。

 

その時だった。

 

「『緊急対応部隊へ、こちら司令部。重桜海軍が再び攻めてきた!至急、応戦を頼む!今すぐに!』」

 

「な…!」

 

「おいおい、こっちはまだセイレーンと交戦中だぞ!何言っているんだ!」

 

 

すると瑞鶴が。

 

「…どういう事ですか!?まだ乗務員たちを救出していないんですよ!!」

 

「『すまない…。これは私ではなく上からの、うわっ!

 

 

 

…………上官命令だ。黙って従え重桜空母。それとも、仲間打ちが嫌なのか?』」

 

「……ッ。彼らを見捨てろと…?」

 

 

「『従わないのなら、君を退役処分にするが?』」

 

退役処分。艦船少女にとって、それは処刑である。

 

 

「瑞鶴、私が妹たちを救援に呼ぶ。だからここは従おう。」

 

「……」

 

「…行こう、瑞鶴」

 

 




今回、初めて登場したセイレーンさん。

種類分けでは、タイプ○○という感じにしています。


では、また次回~。

感想お待ちしてまーす。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 5 ―裏切り者―

こんにちはー、こんばんはー、おはようございますぅー。

今回は一年前のお話になっています。

時系列ではゲーム本編第3章でヨークタウンが飛龍に沈められるあたりです。

どのような経緯で瑞鶴が重桜と縁を切ったのか。

第5話で明かされます。


それは今から一年前のことであった。

 

 

 

 

 

 

 

「姉さん。 姉さん…どこ?

 

 

 

姉さん……海が…燃えてるわ…

 

 

ごめんなさい…姉さん…彼らを守れなくて…」

 

 

 

 

「神よ、煉獄にいる憐れな羊たちを救い出してくれたまえ。この全ての犠牲に憐れみを、私たちの未来の行く先に光を。どうか私たちに、戦う勇気を授けてくれたまえ」

 

 

 

しかし、神に祈ったところで、何も変わらないのが現実だ。そういう歴史なのだから。

 

 

だが全てはたった一人の艦船少女により、歴史にほんの僅かなズレが生じた。

 

 

 

 

 

 

「これが僕たちの、最後の反撃だ!」

 

 

「きゃああ!」

 

 

白兎の空母から放たれた艦載機が今正にユニオンのとある空母を襲おうとしていた。

 

 

「姉さん!!」

 

妹二人は叫んだ。このままでは自分の姉が沈んでしまう。

 

 

その妹の一人、エンタープライズは駆け出した。

だが、間に合わない。

 

「このままじゃ、姉さんが…!

 

 

 

 

 

頼む…誰か、姉さんを…姉さんを……助けてくれ…!」

 

 

 

 

 

 

だが、誰も助けてくれない。

 

空母、ヨークタウンは飛龍に沈められる。

それが、この歴史のシナリオだから。

 

 

 

沈められる、…はずだった。

 

 

 

 

 

飛龍の放った艦載機が、どこからか飛ばされた別の艦載機によって撃ち落とされた。

 

 

「……え?」

 

飛龍もヨークタウンもそして、エンタープライズとさらにその妹ホーネットも、今の状況が理解できなかった。

 

 

 

何故ならそこにいたのは。

 

翼の羽織を身に纏った鶴の戦士、瑞鶴だったからだ。

 

 

 

「…も、もしかして、やっとレッドアクシズに入ってくれるんですか?それで僕たちの救援に来てくれたんですね!?…でも、それならなんで僕の艦載機を…」

 

瑞鶴はただ黙って飛龍や他の重桜海軍の艦船少女たちを見つめていた。そこには当然、赤城や翔鶴も含まれていた。

 

 

そして次の瞬間……。

 

 

 

「……!?」

 

 

それは信じられない光景だった。

 

 

「ず、瑞…鶴…さん…。な…ぜ…?」

 

 

 

瑞鶴の刀が、飛龍の腹を貫いていた。

 

 

 

「飛龍!!」

 

彼女の姉、蒼龍が駆けつけた。

 

「あ…、姉さん…僕、死ぬ…の…?」

血を吐きながら弱々しく飛龍は呟いた。

 

「そんなわけがないでしょう!必ず助けるから!だからしっかりしなさい!」

 

 

「大丈夫、さすがにコアまでは壊してないから死にやしないよ」

そんな様子を他人事の様に見ながら冷徹に話す瑞鶴。

 

「あなた…どういうつもりですか……!」

蒼龍は自身の妹を傷つけた瑞鶴を睨みつけた。

 

 

 

瑞鶴はしばらく黙っていたが、やがて…。

 

「私は何度も止めた。何度も説得した…。でも、皆は無視し続けた。そしてとうとう、一線を越えた。今のは警告よ。これ以上、皆を傷つけるつもりなら…それは私が許さない。だからお願い…。もうやめて…」

 

 

 

「やめろと言われてやめる愚か者がどこにいる」

白狐の空母、加賀は瑞鶴の説得を否定する。

 

「全ては"あの計画"のため…。さぁ、そこを退きなさい瑞鶴。私は今からそこの空母三姉妹沈めたくてたまらないの」

 

「瑞鶴。これは決して悪い話じゃないのよ?"あの計画"が上手く進めれば重桜は世界で一番強い帝国に生まれ変われるのよ?ユニオンも、セイレーンも、もはや敵では無くなる。お姉ちゃん素晴らしいと思うけどね。それにその計画を進めるためには瑞鶴、()()()()()()()()()のよ?」

 

赤城、翔鶴も瑞鶴の話に耳を傾けようともしない。

 

 

 

「なんで……。どうしてそこまで重桜にこだわるの!?私たちは重桜じゃなくて、日本の艦でしょ!?かつて敵だった皆が今は仲間になってくれているのに…。そんな皆を裏切ってまで、重桜を!…うっ!」

 

突然背中に火傷の様な痛みが走った。

 

 

「本当に貴様は駄目な奴だな五航戦の。貴様の戯れ言を馬鹿正直に聞いてくれるとでも思ったか?」

 

いつの間にか放った加賀の艦載機が、瑞鶴に爆撃を喰らわしたのだ。

 

 

「………」

 

 

 

「そこを退きなさい。まぁ退かなくても貴方ごと沈めれば問題はないわ」

 

赤城は大量の爆撃機を放った。

 

 

 

「ず、瑞鶴…!」

エンタープライズは思わず叫んだ。

 

仲間から集中攻撃を受ける瑞鶴。飛行甲板が真っ二つに折れた大破状態になっていた。

 

 

「……そう。わかったわ…」

 

攻撃を受けても無抵抗で黙っていた瑞鶴が口を開いた。

 

 

 

「貴方も諦めが悪いわねぇ」

 

 

「…赤城先輩あなたには失望しました。私は、皆に戻って欲しかった…。一緒にこの戦争を終わらしたかった…。でも、もうあなたたちを()()()()()()()()()()()()()

 

 

「黙っていれば調子の良い事ばかり口にしよって!!殺れるものなら殺ってみろ七面鳥ぉぉ!!」

 

加賀は赤城の倍の艦載機を放った、…が。

 

「!?」

 

瑞鶴は刀を横に一振り、火炎を撒き散らしながら艦載機を打ち消した。

 

 

 

「上等だ…女狐…

 

 

 

 

 

 

 

 

オマエラ全員皆殺シニシテヤル

 

 

 

 

―SKILL ACTIVATION"◼️◼️◼️◼️"―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先は一瞬の出来事に見えた。

 

 

瑞鶴は刀で色んな重桜艦船少女たちを斬りつけた。

 

 

 

海が血で真っ赤に染まった。

 

 

だが、やはりどこかに躊躇があったのかコアまでは破壊しなかった。

 

それでもやられた艦船少女たちは皆、轟沈寸前の状態で、赤城・加賀・翔鶴もまともに戦える状態じゃなかった。

 

 

赤城率いる艦隊はほぼ壊滅状態に追い込まれ、やむを得ず撤退した。

 

 

 

 

 

返り血を浴びた瑞鶴。ゆっくりとエンタープライズの方を向いた。その目はどこか悲しそうなものだった。

 

「ハ…、ハハ…。ハハハハハハハハ……。

 

もっと早くこうしていれば良かった…………」

 

 

 

 

エンタープライズは瑞鶴に近づき、そっと彼女を抱き締めた。

 

「約束する。君のことは必ず私が守る」

 

 

 

エンタープライズに抱き締められながら、瑞鶴はそのまま意識を手離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここが歴史の転換点になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは随分おもしろい事になったわねぇ」

 

「えぇ、今回はかなり興味深いものになるわ」

 

 

この一連の様子を影から観ていた者がいた。

 

 

 

「まさかあんな"特異点"が存在するとは思ってなかったわよ」

 

「どの時間軸にも存在しない唯一無二の"特異点"。これなら我々の更なる進化と種の繁栄が期待できるわ。これも全てメンタルエネルギーのお陰ね」

 

「もう我々を下等生物とは言わせない。次に生存の覇権を握るのは私たちセイレーンよ。ま、そのセイレーンという名前自体人間が勝手につけたものだけどね。私は結構気に入ってるわ」

 

 

「「あはははははは!!」」

 

 

 

 

深海のそこで高らかに笑う二人。

 

その"特異点(瑞鶴)"が、いずれ彼らの種を滅ぼすことになるとは露知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に至る……。




今作品にはオリジナルのスキルが存在します。
設定では"エクストラオリジナルスキル"という名前で、本来は存在しないスキルです。

特定の艦船少女のみだけがもっている言わば、固有特殊能力(?)みたいなもの。

今回、瑞鶴が発動したエクストラオリジナルスキルに関しては今後明かされる予定です。

因みに瑞鶴の他にもあと4人、エクストラオリジナルスキルを持っていますが、これ以上は今後のストーリーのネタバレになるのでこの辺で。

ではまた次回。




予告。

本作品お気に入り10件越えとアズレンアニメ化を記念して、「炎ノ翼」のスピンオフ短編集三部作を書くことにしましたー。題名だけ決めてる。
「―アスカ― 始まりの物語」
「炎ノ翼 EPISODE―Z―」
「GLAY GHOST―翼ノ絆―」

ん?いつ公開だって?…そのうち公開。(本編ssが進んだらちゃんと作るよー)




2018/9/21 追記

「ご機嫌麗しゅうございます。メイドのベルファストです。
今回は作者に代わって読者の皆様に本作品の設定について、お知らせがあります。先日放送されましたアズールレーン公式生放送にてキャラクターの正式な決定が成されました。正式名称は『艦船』のようです。

意味は


Kinetics……動力学→兵器

Artifactual……人工的→兵器

Navy……海軍→軍艦

Self-fegulative……自律的→自己のある

En-lore……伝承、史実への接続

Node……端子、分岐点、接続点

KAN-SEN(艦船)



本作品ではゲーム原作設定を踏まえたオリジナル設定にしています。なので今後設定の変更も予想されます。
(現時点での本作品のキャラクターの名称と設定は『海上起動型思念兵器"艦船少女"』となっており、現在は変更の予定はありません)

上記のことから、作者は公式設定を取り入れつつ、オリジナルの要素で書いていきたいとの事です。
指揮官の皆様、何卒ご容赦くださいませ」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 6 ―動きだす運命 狂いだすシナリオ―

皆様、大変長らくお股× お待たせしましたぁ!!


色々忙しかったものつい更新が先伸ばし~先伸ばし~って感じで気づけば今日!!



物語はさらに大きな展開を!(以外と無かったり)




そぉれではぁ~、第ぃ6話ぁ~

スゥタァ~トォだぁ!ゲハハハハハァ!!


もう、私には誰もいない…。

 

先輩も、お姉ちゃんも、もう昔みたいには戻らないの?

 

 

 

私は、ひとりぼっち……。

 

 

 

 

 

 

あの時、もし数分私が来るのが遅かったら、ヨークタウンさんも、グレイゴーストも、皆沈んでいた…。

 

 

 

 

もっと早くに阻止できていれば、こんなことにはならなかった…。

 

 

 

 

全ては、止められなかった私のせい…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府の整備ドックが重桜艦隊に襲撃され、海兵や整備士たちは皆、パニックに近い状態だった。

 

 

幸い、今回襲撃してきた艦隊は量産型の艦のみで艦船はいなかった。

 

 

 

「クリーブランド、少しいいか?」

 

「なんだ?エンタープライズ」

 

 

現場への道中、エンタープライズは密かにクリーブランドに話しかけた。

 

 

「ドックが襲撃されたと言っても今の所はそこまで被害が大きいわけじゃない。だからなるべく穏便に済ましたい。威嚇攻撃でなんとか追い払えないか?」

 

「できないことは無いと思うけど、どうしてだ?」

 

 

少しだけ沈黙してから、彼女は言った。

 

 

「もう、瑞鶴に同士打ちなんてさせたくない。彼女がこれ以上、傷つくのを見たくないんだ…」

 

 

「なるほどな。わかった!やってみるよ!」

 

「ありがとう、クリーブランド。ん?どうやら私の艦載機が艦隊を見つけたようだ」

 

 

「……ッ」

 

 

 

「瑞鶴、落ち着け」

 

エンタープライズの言葉に反応して急ぎ足になった瑞鶴をクリーブランドがなだめる。

 

 

「どうやら、既に撤退していたようだ。幸いそこまで大きな被害は無かったみたいだ」

 

「ふぃ~良かった~」

 

一気に肩の力が抜けるクリーブランド

ちょうどその時妹のモントリピアから連絡が入る。

 

「『姉貴、セイレーンの方はなんとか片付いた。乗組員も全員救出した』」

 

「そっか!ありがと!モントリピア。

いや~とりあえず一件落着ってとこかな?」

 

 

「いや、まだ解決してないことがあるわ…」

 

「瑞鶴…」

 

「私、これから執務室に行って抗議してくる。どうして人命救出より重桜を優先させたのか…。例え憎き宿敵が目の前にいたとしても、命を助けることを優先するべきだわ。私はあの命令を絶対に許さない…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府執務室にてクリーブランド、エンタープライズ、そして瑞鶴の3人がそこにいた。

 

 

 

「指揮官、あの指示は一体どういうことなの!?もし、モントリピアたちが来なかったら、タンカーの人達みんな死んでたかもしれないんだよ!」

 

 

「…すまない瑞鶴。本当なら君たちには救出を優先させ、別の子たちに対応させるつもりだった…。しかし、モルドレン中将がわざわざ君を重桜の対応に行かせろと命令してきたのだ」

 

 

「モルドレン中将が…」

 

エンタープライズには先ほどの無線通信で瑞鶴に命令してきた声に聞き覚えがあった。

 

 

彼はエルドワ・モルドレン中将。反逆事件が起こる前から重桜を嫌っている男。上司や幹部には媚びを売り尚且つ、部下や艦船に対しては非常に傲慢な態度をとっている。

 

エンタープライズも彼のことを嫌っている。

「奴の事だ、きっと瑞鶴に同士打ちをさせて楽しむつもりだったんだ。彼女の心の傷を弄ぶなんて絶対に許されるべきじゃない!」

 

 

「その通り」

 

突然、後ろの方から男の声がした。振り返ってみるとそこにいたのはモルドレン中将本人だった。

 

「モルドレン中将…!」

 

「マーク大佐、その顔はよっぽど私に会いたくなかったみたいだねぇ。なんと失礼な男だ」

 

「モルドレン中将…なぜ瑞鶴にあんな命令を出したのです?」

 

相変わらずの傲慢な態度で悪びれることもなく話すモルドレン。

 

「"あんな命令"とはこれまた失礼な…。決まっているだろう、エンタープライズの言った通り、楽しむ為さ。自身の祖国を敵に回して戦う、こんなにも美しいことはない。正に美談だ。特に一年前の事件は実に素晴らしいものだった。観ていて愉快な気分だったよ」

 

「貴様、あの時の瑞鶴をショーの様に見ていたのか!あの子はずっと苦しんでいたんだぞ!!苦しんで苦しんで…、それでもここに残ってくれたんだ!それを貴様は、そんな瑞鶴の様子を見て楽しんでいたのか!!あの子の気持ちも知らずに貴様は…ッ!!」

 

モルドレンに掴みかかったエンタープライズ。涙まで流れていた。

 

 

「お、落ち着け!エンタープライズ!」

 

必死で彼女を宥めるクリーブランド。

 

「…私は大丈夫よ、グレイゴースト」

 

瑞鶴の一言でなんとか落ち着きを取り戻すエンタープライズ。

 

 

「……モルドレン中将、私はあの命令に納得しません。私で弄ぶのは大いに結構。でも、助けるべき命を無視した事は私は決して許しはしないわ。()()()()()()()()()()()!」

 

 

「なんだと…」

 

執務室の空気はより一層険悪な雰囲気に包まれた。

 

お互いを睨み合う二人。

やがてモルドレンが口を開いた。

 

「…裏切り者の重桜空母の分際でよくそんな口が利けるな。どうやらこの私を本気で怒らした様だ。本来なら問答無用にこの場で退役処分を下してスクラップにしてやるつもりだが…、君は何かと我が国に貢献してくれているからな、恩を仇で返すほど私は落ちぶれていない。特別に情けをかけてやろう。 退役処分は免除してやる。感謝したまえ」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「ただし……

 

 

 

 

二度とその面を私に見せるなぁ!

 

 

 

 

この重桜空母をユニオン及びアズールレーンから追放しろ!

 

 

「な、なんだって!?」

 

 

「……ッ」

 

 

「きっ、貴様ぁ!このクズ人間がぁ!!」

 

 

執務室の扉から二人の憲兵が入り込み、瑞鶴の腕を掴んで押さえつけた。

 

「瑞鶴に何をする気だ!彼女から離れろ!」

 

「人間様に攻撃(抵抗)して良いのかねぇ?エンタープライズゥ。さっきの発言は聞かなかった事にしよう。しかし、これ以上抗うつもりなら。貴様も、貴様の親しい者も、そして貴様の姉妹も、無事では済まさない。この鎮守府の艦ども全員が人質だと思いたまえ」

 

瑞鶴を押さえつけている憲兵を引き剥がそうとするエンタープライズだったがその一言で抵抗ができなくなった。

 

 

「モルドレン中将、どうか改め直してください。瑞鶴は私達のためここまで戦ってくれたんですよ。そんな彼女を追放するなんて私は反対です!」

 

「マーク大佐、君には家族がいるようだねぇ。妻と二人の幼い子ども…。私の権限ひとつで、どうにでもすることができるのだよ。生かすも殺すも全て私の匙加減…」

 

「あっ、貴方はという人は…」

 

 

「指揮官、グレイゴースト。私は大丈夫だから」

 

彼女を押さえつけていた憲兵二人は壁に叩きつけられており、既に伸びていた。

 

女性とはいえ、やはり艦。力は人間より何十倍も上だ。

 

 

 

「良いわ。それでアンタが満足するなら、皆に手を出さないのなら。その処分、喜んで引き受けるわ」

 

「マジかよ!?」

 

「正気かい!?」

 

「ほぅ…」

 

皆が瑞鶴の決断に驚く。モルドレンはいささか満足げな顔している。

 

「瑞鶴…、頼む!どうか考え直してくれ!」

 

「いいのよ、グレイゴースト。私のせいで皆にこれ以上迷惑はかけたくないから」

 

 

「そんな…」

 

 

 

 

「実に賢明な判断だ重桜空母。ならば今夜中にでもここから出ていってもらおうか。クリーブランド、エンタープライズ、そしてマーク大佐。もしも阻止するような行動を取れば、まぁどうなるか分かるな?奴が出ていくまで君たちを監視しているからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―本当にこれで良かったのか?瑞鶴…―

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方。沈み行く夕日が水平線を美しく照らしていた。

 

そこに極少数の荷物を艤装に付け加えた瑞鶴がいた。

 

 

自身の国を裏切ってまで、アズールレーンに残り続け、ユニオンの為に数々の実績を出して貢献してきた彼女がこんな風に捨てられるとは。なんと不憫なことか。

 

 

 

「私は幸運艦なんかじゃない…。もし本当に私が幸運艦なら、あの時、あの海で沈んだまま、眠り続けたかった…。こんなことになるぐらいなら…」

 

 

「瑞鶴…」

 

不意に、後ろから声をかけられた。瑞鶴は振り向いた。そこには自分の好敵手であり、ずっと憧れてきた"本当の"幸運艦がそこにいた。

 

 

「いいの?グレイゴースト。奴らに見つかったら只じゃ済まないわよ?」

 

「大丈夫さ、私は見つからない。それよりも瑞鶴、本当に行ってしまうのか…?」

 

 

「言ったでしょ?これ以上皆に迷惑をかけたくないって。これでいいのよ。私さえ居なくなれば、皆安心して過ごせる。私と関われば、きっとその子も目をつけられる。だから、実際こうなって良かったのよ」

 

「…ならば私も共に行く!言ったはずだ、君の事は私が守ると、だから…!」

 

エンタープライズは言った。一年前に誓った約束を。今一度、改めて誓おうとした。しかし。

 

「絶対にダメ!

 

アンタはユニオンの最重要戦力(エース)なんだから。

居なくなったりしたら誰がアンタの分の戦力を埋めるの?」

 

「そ、それは…」

 

「私の事はいいから。私は私のやり方でセイレーンと戦うわ。せっかく自由の身になったんだし」

 

瑞鶴は微笑んだ。それはとても暖かく、見ている者の気持ちを和らいでくれた。

 

「……そろそろ、行かなきゃ…」

 

瑞鶴は自身の航海進路を夕日とは真反対の方角に向けた。

 

「まっ、待って!」

 

エンタープライズは瑞鶴の手を掴んだ。

 

「お願い、行かないでくれ……」

 

「……」

 

それはいつもの凛々しい声ではなく、今にも不安に押し潰されそうな、か弱い声だった。

 

「失いたくない……。君を…、私にとっての光を…」

 

「…ごめん」

 

 

瑞鶴は握っている手を振り払った。

 

そして彼女は進み出した。

一寸先も見えない、暗い闇の中へ。

 

瑞鶴の姿がどんどん見えなくなっていく。

 

 

 

 

 

 

私にとって、君は光だった。

 

 

 

 

いつ終わるかも分からない戦争。私はとても辛かった。

 

世界最強の空母として期待される反面、私を恐れる者も多かった。

 

特に重桜の艦船たちは、私の姿を見ただけで怯えていた。中には憎しみの目で睨み付けられることもあった。

とても怖かった…。いつか彼女らに殺されるかも知れない。毎日が不安だった…。

 

でも、君は…。私の二つ名に、恐れる事も…、憎む事もしなかった。

 

それどころか良き好敵手と言って笑顔すら見せてくれた。

 

君はそんな私を照らしてくれた、たった一筋の光だったんだ。

 

 

 

 

そして、あの時…。私と姉さんと…、皆の命を守ってくれた。

 

 

だから、私は誓った。必ず君を守ると。

 

 

それなのに…、私は守れなかった…。

 

 

 

嫌だ…。

 

失いたくない…。

 

私の光を…。

 

行かないで…。

 

瑞鶴……私を置いて行かないで…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴は太平洋国際中央鎮守府がある所から東側へ少々離れた場所に今は使われていない古い泊地がある無人島に向かった。

 

しばらくはそこを拠点地にする予定である。

 

 

 

 

 

 

そしてそれから数日がたったある日の事であった。

 

 

 

 

 

「…ッ、こんな所で、まだ沈む訳には!」

 

瑞鶴は二隻の鉄血の艦船少女に襲われていた。

 

重巡のドイッチュラントとプリンツ・オイゲン。

 

 

「さぁ、観念してさっさと沈みなさい。裏切り者の下等生物」

 

突然の急襲に対応できず、大きく損傷してしまった瑞鶴。

 

 

 

「(このままじゃ、ホントに殺られる…。何か打開策は無いの!?)」

 

しかし、そうこう考えている内にドイッチュラントの砲口が瑞鶴に標準を合わせていた。

 

「(ここまでか…。また、沈むというのね…)」

 

瑞鶴は覚悟した。まさかこうもあっさりと何もかも終わってしまうとは予想もしなかった。

 

…と、その時だった。

 

突然、ドイッチュラントが爆発した。否、正確には背中に爆発が起こった。

 

 

急な火傷の痛み。ドイッチュラントは後ろを振り返った。

 

 

「な~に?どうかした?」

 

彼女を撃った犯人は、なんとプリンツ・オイゲンだった。

 

「オ、オイゲン…!これは一体どういうこと!?裏切ったわね!?」

 

 

「裏切る?別に私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()けど?」

 

それはあまりにも予想外な展開だった。

瑞鶴自身も何がどうなっているのか追い付いていない。

 

「それにセイレーンの力なんて、私は最初から信用してないし」

 

「だけど、オイゲン貴方の艤装だってセイレーンテクノロジーを取り入れて改造されているのよ!?」

 

「あぁこれ?この艤装、見た目だけだから。中身は普通の艤装よ?」

 

そう、プリンツ・オイゲンの艤装はセイレーンの力を一切使っていなかったのだ。

鉄血がレッドアクシズに入ってからというもの、自身の国がセイレーンの力で一体何を企んでいるのか探る為にわざと加盟していたのだ。

 

「強大な力は時として、そいつ自身の全て奪うわ。私には愛国心なんてあまり無いけど、それでも、一応私が生まれ育った国。間違った方向に進めば、正してあげる。それが国民としての務め。そうでしょ?瑞鶴」

 

「……」

瑞鶴は何も言えなかった。自身の国を見捨てた自分。もしかしたら、やり方次第で改善の余地がまだあったかも知れないというのに。

 

「この私をどうするつもり!?」

 

「まぁ、同じ国の艦のよしみだし。沈めることはしないわ。ただし…」

 

そういうとどこから取り出したのか縄を手に持つと、そのままドイッチュラントを縛りだした。

 

それも亀甲縛り。

 

 

 

「むー!むー!(> <)」

 

「それじゃあ、いってらっしゃーい♪

ま、せいぜいサメのエサにならないようにね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったの?プリンツ…」

瑞鶴は心配だった。たった今、自分と同じ様に祖国を裏切った。それがどれだけ辛く大変か、自分が嫌というほど味わってきた。

 

 

「大丈夫よ。()()()()()()()()()事だし。後で色々と偽装工作すれば良いだけの話よ。誰も私が裏切ったなんて気づかないわ。それに、これからアンタがやろうとすることがなんだかとても面白そうに思えたのよ。

私、アンタについて行ってあげてもいいわ」

 

 

 

「……、ありがとうプリンツ。

 

そうだ、さっそくだけど良いことを思いついたわ」

 

何かを閃いた瑞鶴。

 

 

「良いこと?」

 

「そう。プリンツ、アンタなら絶対に気に入るわ!」

 

 

 

 

 

規則正しく動く運命の歯車。それら全てが狂った時…。

 

世界は大きく動きだす。

 

 

鶴の戦士は、これから何を見ていくのか…。

 

そして、どのような世界を創りだすのか…。

 

 

新たなるシナリオが完成しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…




さて!なんだかんだでとりあえずここまで来れました!

全ては応援してくれた読者の皆様のお陰です!


第1章 孤高ノ鶴戦士 編はこれで終了です。

各章の終わりごとに「To be continued」ってつけることにしてます。


次回からは第2章 鋼鉄ノ血 編です。

お楽しみに♪

感想お待ちしてまーす。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 ―鋼鉄ノ血 編―
Episode 7 ―鶴と鉄血の国―


ハウディ!(ク○花風)

前回までシリアス続きだったので、息抜きのつもりで今回は少しギャグ回にしてます。

そしてビスマルク姉さんキャラわかんねぇ!!

肩の力を抜いてお楽しみくたさい。

第7話ドーン!


鉄血。旧名ドイツ。ビールで有名な国。

 

そんな国に1羽の鶴が、舞い降りた。

 

 

 

 

 

「…貴方が新人の空母って訳ね」

 

 

 

鉄血海軍のリーダー的存在であるビスマルク型一番艦、ビスマルク。

今、彼女の目の前には鉄血の新人と名乗るとある空母の艦船がいた。その空母の名は…。

 

 

「イエース!初メマシテ、ビスマルクさん!ワタークシは鉄血の空母、"ツルスキー"デース!ツルスキー型一番艦のツルスキーデース!」

 

当然であるが、このツルスキーの正体は瑞鶴である。

 

金髪のロングヘアのウィッグに、鉄血らしく赤と黒のコートを着込んでいた。ちなみにダテメガネをしている。

 

そしてよくある外国人の喋り方で完全に変装をしているつもりらしい。

 

 

 

 

…鉄血はそんな喋り方はしない………。

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれをプリンツ・オイゲンは影から見ていた。

 

「(……何やってるのよ…)」

いつも余裕の笑みを浮かべている彼女が、瑞鶴の変装に珍しく頭を抱えていた。

 

なぜこんな事になったのか。

 

 

時は瑞鶴とプリンツ・オイゲンが出会った時まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

「良いこと?」

 

 

 

「そう。プリンツ、アンタなら絶対に気に入るわ!」

 

 

瑞鶴の言う『良いこと』とは一体何なのか?

 

 

 

「私が、鉄血へ潜入するのよ!」

 

「…!?アンタ正気!?鉄血でもアンタの事は有名なのよ!できるわけないわ。

それに、どうして私が気にいると思ったの?」

 

 

「シンプルに変装すれば良いのよ。それに、もし鉄血がセイレーンに関する有用な情報を持っているとしたら、私はそれをこの目で確かめる義務があるわ。

 

それともうひとつ。

 

 

ビスマルクに、一度会ってみたいのよ。

 

彼女がどのような人物なのか、見てみたいわ」

 

 

落ち着きを取り戻したプリンツ・オイゲンは問いた。

「つまり、アンタは鉄血に紛れ込むことで、セイレーンを倒すための手がかりを掴むと同時に、ビスマルクの人間性について確かめたいってことね?」

 

「そういうこと」

 

「なるほどね。考えてる事は無茶苦茶だけど確かに、面白そうね♪」

 

 

 

 

 

 

―現在―

 

「(変装して潜入とは言ったものの、下っ端の女性海兵か掃除婦にでも化けるのかと思ってたけど、まさか有りもしない鉄血の艦船として潜入するなんてクレイジーにも程があるわ…。

あんなのすぐにバレるに決まってるでしょ…)」

 

 

 

「まぁ、最近はカンレキの無い艦すらも産み出せる位メンタルキューブによる建造技術が高まっているから、不思議では無いわね。よろしく頼むわ、ツルスキー」

 

「モチロンデース♪コチラこそシクヨロプリーズ!」

 

 

「(う、上手く騙せたぁ…)」

 

開いた口が塞がらないプリンツであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―グレイゴースト、私と勝負よ―

 

 

―勝つのは私だかな―

 

 

 

 

 

―今日の演習、絶対勝ってやる!―

 

―はいはい、勝てるといいな―

 

 

 

 

―グレイゴースト―

 

―また今度な―

 

 

 

―ねぇ―

 

―すまないが用事があるんだ、後にしてくれ…―

 

 

 

―ねぇグレイゴースト―

 

―…後でな…―

 

 

 

―グレイゴースト…―

 

―…君もしつこいな。忙しいんだ!あっちへ行っててくれ!!―

 

―…ごめん。そうよね…―

 

―えっ―

 

 

―迷惑だったよね?それもそっか。所詮、私は史実でも、今でも、負けてる。その癖にいつまでも付きまとう、只の邪魔者だもんね…―

 

 

―ち、違う!そうじゃないんだ!只、私は!―

 

 

―そういえば、()()()()()()()()があったんだった。もう行くね―

 

 

―待ってくれ、瑞鶴!違うんだ!私は…!―

 

―私は只…―

 

 

―怖かっただけなんだ…―

 

 

 

 

―頼むから行かないでくれ…―

 

 

―待って、瑞鶴…―

 

 

―待ってくれ…―

 

 

 

 

 

 

 

「…行かないで!」

 

いつも通りの朝。

 

しかしエンタープライズにとっては、もうずっといつも通りではない。

 

瑞鶴が失踪してから数ヶ月。未だに彼女の足取りすら掴めずにいた。中にはセイレーンに襲われて沈んだのではないかという説まで浮上し始めていた。

 

「夢か…」

 

あれからエンタープライズは同じ夢ばかりを見る。

その夢を見るたびに、自分を責めたくなる。

 

 

「汗をいっぱいかいたな…。シャワーでも浴びに行こう」

 

自分の嫌な記憶を洗い流すために、シャワー室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いでででで~!」

 

「なーにがツルスキーよ。なーにがシクヨロプリーズよ!」

 

 

一方で、瑞鶴はプリンツ・オイゲンに耳を引っ張られ(それはもう思いっきり)説教を喰らっていた。

 

 

「しかもあれで上手くいくなんて、アンタ絶対運だけで色々解決しちゃう奴でしょ?絶対」

 

「『世渡り上手』と言ってほしいわ。何はともあれ、潜入には成功したんだから良いじゃない♪『結果良ければ全て良し』よ!というわけで今日から瑞鶴改め、"ツルスキー"デース!そこんところシクヨロプリーズ♪」

 

「(殴りたいこの笑顔…)あんなんで騙せちゃうなんて、別の意味でこの国が心配になってきたわ…。あと、その名前はどちらかと言うと北方連合寄りよ…」




え、こんだけ?と思った読書の皆様。ごめんなさい!!

最近、超多忙だったのと、別のss書いちゃう計画性皆無の低能っぷりが祟ってこの始末…。

いつも応援してくれる皆様、本当にごめんなさい!!!

あと、予想してたよりも早くコードGイベント始まりましたね…。


このssにもコードG登場させる予定ですが、せめて本家が始まる前にコードG編書きたかったです。まぁ始まったもんはしかたねぇのでゆっくりプレイしながら書きます。



次回は絶対に満腹セットでお送りします!

では次回。

感想お待ちしてまーす(震え声)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 8 ―流れゆく血脈―

最近、仮面ライダービルドの主題歌聞いて思ったこと。
「なんか、アズレン瑞鶴が歌ってる感じがする」

何回も聞きすぎて耳がゲシュタルト崩壊(?)起こしたのか。


というわけで、このssのイメージ主題歌は「Be the one」(CV瑞鶴)

どうなる第8話!?(あと、全然サブタイトル回収してねぇ~)


試作品とはいえ、これは酷すぎる。失敗作だわ。

 

ろくに海の上に立つことすらできないなんて「艦船少女」としてどうなのかしら

 

 

 

 

 

……すまない

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい思念体が抽出されたわ。

艦船少女試作第1号コードM。立派な戦艦よ。

 

 

…アスカ、まさか私を捨てるのか…?

 

 

当たり前じゃない、今私が欲しいのは即戦力。

戦えない兵器はいらないの。

 

ま、待ってくれ!私だって戦える!必ず海の上にも立てるようにする!

だから!

 

 

…だから

 

お願い…私を捨てないでくれ…

 

 

 

 

 

さようなら、艦船少女試作第0号コード■。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「瑞鶴、何してるの?」

 

「ん?何って、艦載機作ってんのよ」

 

明らかにそれは艦載機ではなく只の紙飛行機。

 

 

「私達重桜の艦載機って他と違って結構特殊でしょ?だからカモフラージュの為に…」

 

そう言うと瑞鶴は紙飛行機に小瓶から青い液体(メンタルエネルギーを液状化し薄くしたもの)を垂らした。

すると、紙飛行機が青く光り出した。

それが何なのか、プリンツ・オイゲンはすぐにわかった。

 

「あ~なるほどね。『武装カスタマイズ』でごまかすのね。…てか、アンタよくカスタマイズの作り方とか知ってるわね。明石にバレたら只じゃ済まなさそうな気がするわ」

 

「大丈夫、大丈夫。そもそもこのシステム作ったの私だから」

 

「え、マジ?」

 

武装カスタマイズはメンタルエネルギー由来の元素変換能力(物質の構成元素そのものを変える力。その強さは純度によって決まる。瑞鶴の持っていた液体メンタルエネルギーの薄さの場合は、元素そのものは変わらないが形と見た目が変わる、もしくは見た目は変わらず"その物の概念"を変える。

例:紙飛行機→本物の艦載機

液体メンタルエネルギーはキューブを細かく砕き、鍋で煮る。この時水は多めに入れる。ある程度煮れば完成。因みにこの状態のまま冷凍庫で冷やせば劣化版メンタルキューブの完成になる)を利用して作った物。

 

 

「すみませーん。ツルスキーさーん?いらっしゃいますかー?」

 

コンコンっと部屋の扉が叩かれた。

 

「イエース、roomにinしてマスヨー」

「("roomにin"って…アンタねぇ…)」

 

 

鉄血の艦船の1人が瑞鶴を呼びにきた。

 

 

「ツルスキーさん、指揮官が貴方の歓迎会を開くそうです。二時間後に食堂に来てください」

 

そう言い残すと少女はどこかへ行った。

 

 

「ここの指揮官って新人入ってくる度に宴会開くの?」

 

「いや、歓迎会なんていつも開いてないわ」

 

「…?じゃあなんで?」

 

「さぁ?変な物でも食べちゃったんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴がいなくなった鎮守府はとても静かだった。

 

 

紫の髪色をした少女が瑞鶴の小屋の前にいた。ぬいぐるみを両手で抱きしめながら、その子は小屋を見つめていた。

 

「あら、こんな所にいたのね。ユニコーン」

 

「イラストリアス姉ちゃん…」

 

 

ユニコーンと呼ばれたその少女はイラストリアスの下に駆け寄ると、不安そうな目付きで見つめた。

 

「イラストリアス姉ちゃん…、瑞鶴姉ちゃんはどこに行ったの…?なんで居なくなっちゃったの?」

 

「………」

 

イラストリアスは彼女の質問に答えられなかった。

ユニコーンにとって、瑞鶴はもう1人の姉の様な存在。突然居なくなって不安に思うのは仕方のないことだった。

なぜ瑞鶴が姿を消したのかはユニコーンは知らない。そしてその理由を、まだ精神の幼い彼女に教える訳にはいかなかった。

 

「(この子には人間を恨んで欲しくないわ。間違っているかもしれないけど、今はまだ…)」

 

イラストリアスは空を見つめた。

 

自分たちにとって、瑞鶴が如何に自分たちの中心であったか。そして、如何に大切な存在であったか…。

 

「(どうか瑞鶴さんに、聖なる光の御加護があらんことを…)」

 

無事を祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく貴方とゆっくり話せるわ」

 

歓迎会とは名ばかりのただの立食パーティーだった。

 

 

 

「指揮官に立食partyを提案し、私と二人きりでtalkする機会を狙っていたんデスネ?さすがはビスマルクさんデース」

 

 

ビスマルクとツルスキー(瑞鶴)はパーティー会場から少し外れたバルコニーにいた。

 

 

「ツルスキー…。貴方は信用できる。貴方には話すわ、本当の事…。

 

 

 

 

 

 

 

私、本当はアズールレーン派なの」

 

 

「……」

 

ビスマルクは話した。

アズールレーン派である自分がなぜ、レッドアクシズに着いたのか。

リーダー格たる彼女がレッドアクシズに居ればほとんどの鉄血艦船少女がついてくる。それを知っていながら彼女はアズールレーンを裏切った。

 

 

 

「こうするしか無かったの。セイレーンと正面から戦い続けても、奴らは衰えない。むしろ勢力が上がり始めている。私達の戦いは終わらない。だからこそ、一度奴らの側に行く必要があったの。例えそれが仲間を裏切る事になっても…。そのせいでティルピッツを悲しませてしまったわ。姉失格ね…」

 

彼女の本音を聞いたツルスキー(瑞鶴)

 

「ビスマルクさん、貴方は間違っていないデス。

貴方の気持ちはよく解りました。ティルピッツさんも貴方の事を憎んでいないはずデスヨ」

 

―だって、ティルにとって貴方はたった一人の家族だからね―

 

 

「ビスマルクさんは本当に良い()デスネ。いつか、貴方の苦労が報われますヨ!

 

 

でも、赤城は違う…」

 

 

 

「ええ、あの人は違う。本当にセイレーンの力を我が物にしようとしている…。

 

力に取り憑かれた哀れな艦よ…」

 

 

 

 

「私、いつか必ず止めてみせマス、赤城の事。貴方の想いを決して無駄にはさせまセン!」

 

「フフッ、早く戻りましょ。せっかくの料理が食べ尽くされてしまうわ」

 

 

 

ビスマルクは微笑みながら会場にの方に歩き、そしてこっちを向いて…。

 

「ありがとう、ツルスキー。

 

 

 

 

 

 

 

 

いえ、瑞鶴」

 

 

 

「バレちゃったか、さすがはビスマルクさんですね♪」

 

 




最近思ったこと。

挿絵ほしぃぃ~!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 9 ―次の方針と幽閉された兵器―

お久しぶりの照り焼き


就職とかでめちゃんこミジンコ忙しかった…。



そー言えば第6話で島流しにされたドイッチュラントはどうなったんでしょうね?

第9話です。


艦船少女にはスキルというものが存在する。スキルはその船に纏わる歴史や経歴・艦歴によって多種多様に存在する

 

 

しかし、試作型艦船少女の5人はスキルを用いてもセイレーンに対抗するには弱すぎた。

 

そこで、我々はスキルを人工的に生み出し、彼女らに与えた。

 

 

艦船の経歴や艦歴に関係なく自由に構想したスキルを開発した。

 

おかけでセイレーンに対して十分過ぎるほどにその力を発揮した。

 

だが、不思議な事に最後に創られた試作型艦船少女5号機には最初からそれが存在した。

 

でもそれを研究したお陰で人工スキルが開発できた。

 

そんな5号機のスキルを調べてみたが、その能力は艦船という概念を逸脱したものだった。異常だ。

 

まるで大量破壊兵器の様なスキルだった。

 

そしてそのスキルの発動条件が…。

 

 

 

 

 

 

 

 

憎悪だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試作型艦船少女稼働試験経過報告より抜粋。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、貴方が彼女(ツルスキー)の正体を既に見破っていたなんてね」

 

ある日、ツルスキー否、瑞鶴とプリンツ・オイゲンは執務室にてビスマルクに呼び出されていた。

 

 

ふと瑞鶴の中に疑問が出てきた。

 

「て言うか、艦隊を指揮しているのってビスマルク?ここの指揮官は?」

 

「いる事にはいるのだけど、皆私に対して忠実だから実際の指揮は私が適任だと上層部が言ってね。私に丸投げにされたんだ。まぁお陰でセイレーンの事を探り易くなったけど」

 

鉄血の艦隊の指揮はほぼビスマルクが勤めており、指揮官は祭典等の時にだけ来る所謂ただのお飾りである。

 

 

「で、私達を呼んだのはそんな事を言うためじゃないんでしょ?ビスマルク」

 

プリンツ・オイゲンはビスマルクに言う。

彼女が二人を執務室に呼んだのにはそれなりの理由がある。

 

「貴方達に頼みたい事があるの」

 

「何?頼みたい事って」

 

ビスマルクは一呼吸つくと、口を開きある事を言った。

 

 

「重桜に、行ってほしいの」

 

それは二人に、特に瑞鶴にとって非常に驚愕に近い事だった。

 

Ist es das wirklich!?(マジで!?)重桜ですって!?」

 

「…ッ」

 

 

 

 

なぜ重桜に行って欲しいのか。ビスマルクは二人に説明した。

ビスマルク曰く、かつて鉄血にてある特別計画艦の艦船を1人造り上げた。

 

特別計画艦とは何か。

 

艦船少女は世代ごとに別れており、現在いる艦船少女は第二世代型艦船少女『動力学的人工海上作戦機構・自立行動型伝承接続端子KAN-SEN』といわれるもので、コアを中心とした純100%メンタルエネルギーで構成されている。

 

そしてそれらの試作型である第一世代は『海上起動型思念兵器 艦船少女』である。第一世代は艦船少女の生みの親である女性科学者、山科明日香が創造したものでたった五人しか造られていない。

そして、当時の技術ではメンタルエネルギーだけで艦船少女1人を造ることは不可能だった。

 

ならばどうしたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

人間の死体に艦の思念体を宿らせていたのだ。

 

 

 

 

少々話がそれてしまったが要するに今、世界中ではさらに次世代の艦船少女を造ろうと躍起になっている。

その試作品として特別計画艦、いわば2.5世代を造ったということである。

 

そんな特別計画艦のひとつが鉄血で造られた。

名前は『ローン』重巡らしく、戦力としては非常に優秀だった。

しかし、彼女にはひとつ"欠陥"があった。

 

彼女は精神面に問題があり、気に入らない者を徹底的に排除するといった行動を何度もしてきた。時には武力で捩じ伏せ他の艦船に大怪我を追わせたことも少なくない。

故に、上層部は彼女を"危険兵器"と見なし、幽閉されていた。

 

だが1年前、何者かが牢を破壊、ローンは脱走した。

 

その後ローンは重桜にいることがわかった。

確認が取れた上層部は自分達にとって厄介だった兵器の面倒を見なくても済むと思い、そのまま重桜に押し付けたらしい。

 

しかし、ビスマルクは今の重桜を信用できない。

なぜなら今の重桜は赤城が実質的支配をしており、そこでローンが何をされているかわからないのだ。

 

それがどうしても不安になり、この二人にローンを鉄血へ連れ戻して欲しいことが今回の相談らしい。

 

「例えあの子が危険兵器と言われても…、私達にとってローンは大切な家族だから」

 

「どうするの?瑞鶴」

 

瑞鶴は考えた。ビスマルクの気持ちはわかる。しかし、今重桜に行くにはまだ危険すぎる。それに今の自分が行けばそこで自分が何を仕出かすかわからない。

恐らくは後者の方が本音であろう。

 

だが、ビスマルクの次の発言でその心境は大きく変わることになる。

 

 

 

「それに、彼処には貴方の仲間が囚われているわ。反レッドアクシズ派『鶴部隊』の仲間が…」

 

「…!?」

 

『鶴部隊』それはアズールレーンを脱退する事に反発した瑞鶴を中心に創られたレジスタンス。

レッドアクシズに反対する重桜や鉄血の艦船達を主な構成員としており、レッドアクシズの反逆が起こる前から重桜はこの『鶴部隊』と勢力内での内戦状態となっていた。

 

あの1年前の事件の時、重桜海軍と鶴部隊は最終戦争に陥っていた。太平洋国際鎮守府への奇襲作戦を聞きつけた瑞鶴達は重桜を待ち伏せすることでこの勢力内戦に終止符を打とうとした。

しかし、既に待ち伏せを予見していた重桜は予想ポイントに偽の奇襲部隊を行かせ、本部隊は別ルートで向かっていた。

 

自分達の作戦が敵に見破られていた事に気づいた瑞鶴だが時既に遅く、本部隊の奇襲を許してしまった。

 

部下達に促される形で瑞鶴一人で鎮守府に戻り、そしてあの事件へと至った。

 

 

「瑞鶴、これは貴方にしか頼めない…。お願い、ローンを…。私達の仲間を助けて…」

 

しばらく沈黙が続いたが瑞鶴は決意した。

そして、ビスマルクの頼みに応えた。

 

「わかったわ。貴方の仲間を助ける。でも今の鉄血に仲間を返す訳にはいかないわ。しばらくの間はロイヤルに預けることになるけど、それでも良いのなら引き受けるわ」

 

「ありがとう瑞鶴。ええ、良いわ。あの子達のこと、お願い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず陸地には上がれないわね」

 

「強い結界が張ってあって近づくことすらできないわ」

 

海の底深く、二体のセイレーンが話し合ってた。

 

「いつまで私達の邪魔をするつもりかしら…、パシフィストセイレーン(平和主義者)『オブサーバー零』」

 

「でもこっちにも切り札はあるのよ。ねぇコードG」

 

テスターαコードGと呼ばれる存在に話し掛けた。

それは黒いロングコートに飛行甲板を見に着けていた。

その姿はまるで…。

 

「いつから私は貴様らの仲間と言った。私は人類を滅ぼすつもりは無いと何度も言っているだろう。ただ、私は復讐がしたいだけ、そして本物に成りたいだけだ…」

 

「そんなこと言ってる割には私達に頼ってるじゃない。セイレーンの加護があったお陰で今こうして生きてるのよ。憎いんでしょ?あんたをゴミのように捨てたあの人間と反逆者と見なして処刑しようとした()()()()()()のことが。こう思わない?そもそも人間なんていなければこんな目に会うことは無かったと」

 

コードGは黙ってそっぽを向く。

とその時だった。突然、タコ足のセイレーンオブサーバーが明後日の方を向いた。

 

「どうしたのオブサーバー?」

 

「時間軸第2364番が消滅…。また現れたみたいね…あの()()()…」

 

「ちっ、奴を消し去ることはできないの?オブサーバー」

 

苛立ちながらテスターαはオブサーバーに問いた。

 

「オブサーバー零の加護が邪魔しているせいでどうすることもできないわ」

 

「もういい!行くわよコードG」

 

 

コードGは黙ってテスターαについて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時にさっさと消し去るべきだったわ。あの"特異点"」

 

オブサーバーの呟きは、海底をただ静かに響かせた。




瑞鶴サイドの第2章はこれで終わりです。


次回で第2章は終了です。次回はエンタープライズサイドでお送りします。


プリンツ・オイゲンのドイツ語あってるかな~?


感想お待ちしてまーす。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 10 ―灰霊の決意―

さぁ~皆集まって~!ちびまるkゲフンゲフン…アズールレーン炎ノ翼 第10話がはっじまっるよ~!

もりのどうぶつたち「わーい!」



~BGM おどるポンポコリン~








OP「Be The One」瑞鶴(CV種田梨沙)


「ん?珍しいお客さんが来たわね」

 

夕方。鎮守府は夕日に包まれていた。そんな中、『クナイペ鉄血』に1人の客がきた。

 

「すまない。少しの間、居てても良いだろうか…」

 

それはエンタープライズであった。

彼女はそう言うと、静かにカウンターの席に座った。奇しくもそこは、瑞鶴がいつも座っている席だった。

 

エンタープライズはずっと黙っている。

今の時間帯の店には彼女以外客がおらず、沈黙の空気がしばらく店の中に流れた。

 

 

「…ずいぶん、思い詰めてるみたいね」

不意にティルピッツが話しかけた。

それにエンタープライズは答える。

「……そう見えるのか…」

 

「バレバレよ、明らかに悲しみの感情が染みだしてるわ。お願いだから他のお客さんがいる時だけは止めてくれない?

勿論気持ちはわかるわ。私だって辛いのよ。あの子とはどれだけ長い付き合いだと思ってるのよ…」

 

エンタープライズはポツリポツリと話始めた。

「約束したんだ。瑞鶴は私が守るって。でもその約束を果たせなかった…。何がグレイゴーストだ。何が世界最強の空母だ…。大切な親友一人守れない私なんかっ…!私なんかっ!」

彼女は泣きながら自身を責めた。

 

ふと、ティルピッツはエンタープライズにあることを聞いた。

「…貴方自身はどうしたいの?」

 

「え…?」

エンタープライズは訳がわからないという顔をした。

 

 

「貴方は何もしないまま悔しく見てるだけ?仲間を半場人質に捕られたからって何の行動も起こさないまま?」

 

その言葉にエンタープライズは少し頭に来た。

「…私だって!何とかしたいと思ってる!!あぁ、そうだよ!本当は今すぐにもここから飛び出して瑞鶴を探したいさ!…でもどうすればいいかわからないんだ」

 

その時だった。

「…フフフ。やっと本音を言ってくれたわね」

ティルピッツが不意に笑いだした。

突然のことで戸惑うエンタープライズ。

「な、何がおかしい」

 

「だって、貴方いつも自分の事を後回しにして他人を優先するんだから。まぁその事に関してはあの子も同じだけど」

確かにエンタープライズはあまり自分の事を優先することが無い。常に回りに気にかけており、特に瑞鶴に関しては"守らなきゃ"という気持ちがあるため、やや自身の事を疎かにしまいがちである。

ティルピッツ曰くはその点に関しては瑞鶴も同じらしいが。

 

「ま、とりあえず今回の件に関しては私も介入しようと思う。昔の『コネ』を頼れば何とか瑞鶴を見つけ出すことができるかも知れない」

 

「コネ?」

 

()()()()()()は時として役に立つということよ」

 

 

 

 

 

 

「『艦船の呼び出しをする。エンタープライズ、ただちに執務室へ来るように』」

 

突然、呼び出しの放送がかかった。

声からして指揮官のマークなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、君たちに集まってもらった理由だが」

あの後、エンタープライズは執務室へ向かった。そこには彼女の他にもクリーブランドや、彼女の姉のヨークタウン、妹のホーネット、イラストリアスなどの主力艦隊のメンバーが揃っていた。

 

「いや、そこから先は僕が説明するよ」

急に扉が開き、執務室に入ってきたのは軍服を着た好青年の男性だった。

 

「久しぶりだね、マーク指揮官」

 

「えぇ、5年ぶりですねフォードさん」

 

二人は知り合いらしく、お互い軽い挨拶が交わされた。

そしてフォードが艦船たちの方に向き頭を下げた。

「先日は僕の父が申し訳ない事をした。謝らせてくれ」

 

「?!あ、頭をあげてくれよ!」

思わずクリーブランドが叫ぶ。

と、ここでホーネットの頭に疑問が浮かんだ。

「ん?父?」

その言葉に指揮官以外の一同も疑問に思う。

 

「あぁ、言い忘れてたね。僕の名前はフォード・モルドレン。エルドワ・モルドレンは僕の父だ」

 

一同は驚愕した。なぜなら彼は瑞鶴を追放したあの男の息子だったのだから。

 

「父は親の七光りで生きてきたようなもの。評判の悪さはよく聞いてるよ。本当に酷い事をしたよ。

だから父の代わりに謝らせてくれ。本当にすまなかった」

 

「フォードさん、貴方は悪くない。どうか頭を―」

 

それでもフォードは謝る事を止めなかった。

 

 

 

 

しばらくして、フォードは今回集まった理由を改めて話始めた。

 

「今回は謝罪だけが目的じゃないんだ。実は今、重桜で不穏な動きがあるんだ」

 

それは重桜に関する情報だった。

エンタープライズ達は集中して彼の話を聞いた。

 

「それが何なのかは現時点では不明だ。…それで、ここから先は君たちには非常に言いにくいんだか」

フォードは突如顔をしかめた。

 

 

「重桜に対し、事が大きくなる前に武力による完全制圧が先の会議で決まった…」

 

言葉が出なかった。それは何を意味するか。

重桜との本格的な全面戦争を仕掛けるということだ。

 

「…僕はその会議には出席していなかったから、どのような感じでまとまったかは分からないが、間違いなくこれは父の差し金だ」

 

「…あの卑怯者め!」

クリーブランドは怒りを顕にしながら呟く。

 

「今回僕が来たのはその命令を伝えに来たということだ」

 

ここでずっと黙っていたエンタープライズが動きだした。

 

「フォード氏、貴方なら何とかできなかったのか?

仮にも貴方はあの男の息子なのだろう?なら反対することができたはず!」

 

「すまない、エンタープライズ。父にとっては僕も一介の道具の様なものなんだ。彼が本当に溺愛しているのは自身の身だけなんだ。本当に、彼はモルドレン家の恥だよ。僕たちモルドレン家は"あの艦船少女"がいてくれたからこそ今も存続しているっというのに…

 

 

 

エンタープライズはどうしても納得できなかった。

もしも重桜と全面戦争をしようものなら、今度こそ瑞鶴の居場所が無くなってしまうような気がしていたからだ。今はここにいない彼女の居場所が。

 

「フォード氏、もしも本当に重桜との戦争が決行したら、私はユニオンから退軍します」

 

「ね、姉ちゃん?」

 

エンタープライズの突然の発言に戸惑うホーネット。

 

 

と、その時だった。フォードが突如明後日の方を向き、口を開いた。

「すまない。もう決定事項なんだ。

 

 

 

 

 

と、言いたいところだが、僕としたことが珍しくウッカリをしてしまってね。指令書を"紛失"してしまったんだ。

あれが無いと正式な命令にはならなくてね、例え僕の口から直接命令を言い渡したところでその指令書が無いと意味は成さないんだ。

だから、仮に君たちが命令とは違う行動をしたりしても咎める事はできないんだ。

まぁでも、賢明な君たちなら心配無いと思うけどね。

 

それはさておき、ここのところ徹夜続きでね。今にも眠たいんだ。すまないが、少し仮眠をとっても良いだろうか?

その間に、君たちで"作戦会議"をしても良いから」

 

そう言うと、フォードは執務室のソファーに座るや否や目を瞑って動かなくなった。

 

 

皆は顔を合わせると、さっそく"作戦会議" を始めた。

 

 

 

 

 

1週間後、執務室に居たメンバーで編成が組まれ、鎮守府を後にした。

 

重桜を潰すのではなく、止める為に。

 

 

 

 

 

 

そしてその先で、エンタープライズは思いがけない再会を果たすのだった。

 

 

 

「(さて、僕も僕で今回の会議の結果を撤回させないと…。まずは父より上の者に掛け合ってみるとしよう。

絶対に全面戦争だけは食い止めないと。でなきゃ貴方に申し訳が立たないから。

 

 

 

 

瑞鶴…)」

 

 

 

 

 

 

To be continued…




本当に、ほんっ!とうに!御待たせいたしまして、申し訳ございやせんでしたぁぁ!!

マジで仕事関係でちょっと色々ありましてね?それどころじゃなかったんですよ!(←嘘つけ、暇な時間結構あっただろうが。つーか、この間シンフォギアの奴投稿してたよなぁ?)


ですが!いよいよアズールレーンTVアニメも近づいた参りましたし、これからも頑張って行きます!応援と感想よろしくぅ!(←どの口が言ってんだか…。別にこんな奴ほっといて良いから。
あー、あとコイツこの間スマホぶっ壊れてアズレンのデータ消えたみたいだぜwwwマジ、ダッせwwワロタwおいおまいらも笑ってやろうぜwww)

後、Twitter裏垢始めました!皆フォローしてね!
桐生瑞鶴で検索ぅ!(←止めとけ呪われるぞ)


あと、挿絵欲しいぃぃぃ!!





次回、第3章―枯レユク桜 編―

その鶴は何を思い、何処へ羽ばたくか…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

KAN-SEN(旧名 艦船少女)データベース

第3章の前にちょっとしたキャラクター紹介でーす。


クリーブランド

所属 ユニオン アズールレーン

編成艦隊 第一艦隊

よく兄貴等と言われている。本人はこの事を気にしており、言われるたびに否定している。だがそれほど実力と人望を持っている証でもある。

瑞鶴とは盆栽仲間。

 

 

 

ヨークタウン

所属 ユニオン アズールレーン

編成艦隊 第一艦隊

エンタープライズの姉にてユニオン艦船の代表。優しく、時には厳しく。その人柄は正しく『姉』たるものだろう。

一年前に重桜の襲撃から助けてくれた瑞鶴にはとても感謝している。

 

 

ホーネット

所属 ユニオン アズールレーン

編成艦隊 第一艦隊

ヨークタウンとエンタープライズの妹。とても明るい性格をしており、誰とでも友達になる。

ヨークタウンと同じく、瑞鶴には感謝してもしきれない程の恩を感じている。

最近は帽子集めにはまっているらしい。

 

 

 

ベルファスト

所属 ロイヤル アズールレーン

編成艦隊 第一艦隊

『完璧』を心掛けているメイド。メイドとしての能力は勿論、戦闘面でも心強い存在でもある。

ロドニー同様、敵に対して情けはかけない。

しかし本人曰くは、瑞鶴の方が敵に情け容赦無いらしい。

 

 

 

 

エンタープライズ

所属 ユニオン アズールレーン

編成艦隊 第一艦隊

ヨークタウンの妹でホーネットの姉。ユニオンのエース。アズールレーンで1番の実力を持っており、数々の異名と勲章を持っている。しかし、その強さ故に他の艦船からは時に恐ろしい存在に見られる事があり、特に重桜からは憎しみの目で見られている。

だか、唯一瑞鶴だけはそんな事を気にしておらず、自称良きライバルとして何度も接触されていく内にエンタープライズにとって彼女が光の様な存在になっていく。

 

そして、一年前の出来事から瑞鶴の事は何があろうとも必ず守ると心に誓っている。

 

 

 

 

 

 

 

瑞鶴

所属 無所属

編成艦隊 元第一艦隊

嘗ては明るい性格の持ち主で、エンタープライズの異名にも臆することなく自称良きライバルとして何度も絡んだ。しかし、一年前の重桜の裏切りが切っ掛けで自身を卑下するような性格になってしまう。

重桜とユニオンから目の敵にされており、とうとうユニオンから追放されてしまうが、旅先で出会ったプリンツ・オイゲンと共に現在は重桜に向けて移動している。

こう見えて頭が良く、自身の艤装を改造するなど何処かの自称天才物理学者並みの事をやってのける。

そして彼女hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh♀#′°°>℃@◇°&℃≦<°″¥◆@℃″″≦¥∴$@◇◇▽ゐヵΖΗΒゐゑ♪≫∂∧∋∈∩⊥¬⊥⌒∂ゎゎмЭЯби●&*°%♀♀≦≧@◇※◆□□□◆□□□◇≧″#%@§$¥$

Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z Z

 

 

 

 

 

わT視h堕レ。わT視No菜マEハ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8733513332

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既存のデータはありません。

 

 

 




皆さん、秋葉原のアズールレーン2nd anniversaryのイベントは行きましたか?
私はイラスト展のメッセージボードに思っきり爪痕を残してやりました!
瑞鶴×エンタープライズのカップリング推しを少しでも広めるためならどんな努力も惜しまない!

これからもエン瑞が広まりますように!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章 ―枯レユク桜 編―
Episode 11 ―重桜へ―


ウンポコ ウンポコ シャンシャン♪
ウンポコ ウンポコ シャンシャン♪
チャーチャーチャーチャーチャチャーチャー♪
(トー○スのテーマ)

「アズールレーン ―炎ノ翼―」

「第11話、"重桜へ"というお話」

チャーチャーチャチャッチャチャ♪






「これより艦船少女艤装適性実験を開始する」

 

とある研究所にて、女性科学者の山科明日香と数人の研究者が艤装の実験を行っていた。

 

 

「山科主任、本気ですか?!」

 

「ええ、もちろんよ。艦船少女の体は人間の死体を使っている。それは即ち人間が艤装を纏えなければ意味が無いわ」

 

助手の一人は心配そうに、そしてできれば止めるように促す。

「ですが、何が起こるかわからないんですよ!?もし貴方の身に何があったら…。」

 

しかし明日香はそれでも実験を止めようとはしなかった。

「仕方がないでしょ。コアを中心とした100%メンタルエネルギーによる構成、私の"山科理論"がまだ確立されて無いんだから。だからやるしかないのよ。

実験開始、艤装は0号機が使用する予定だった物を使う」

 

そして明日香は指をパチンッと一回鳴らし、

 

「抜錨」

 

そう呟くと、艤装が独りでに明日香の体に装着された。

 

「装着経過は順調。問題は無し。ようやっと人間の体で纏える様に調整できたわ」

 

 

 

 

 

 

 

海底資源開発 不明物質及び海上起動兵器研究報告書

2022/7/16 ミッドウェー諸島 海上兵器開発研究所。

 

Log117

 

0号機の一件から問題は人間の体と艤装の適性が合わないのが原因では無いかと考えた。そこで、私は艤装を人間でも纏える様に調整した。もちろん、簡単に成功した訳じゃなかった。3人ほど実験で纏わせたがどうしても適性が合わず、艤装のバックファイアによって3人とも死んでしまった。まぁこの死体は有効に活用させて貰うわ。今のご時世、死体なんて前より手に入りにくくなったし。

まぁ"また誘拐して殺してしまう"という入手方法も良いのだがね。既に私は悪魔に魂を売ったようなもの。もう後戻りは出来ない。

でもそのせいでどれだけ批判され、否定され、恨まれようがそれでも私は止まらない。止まるわけにはいかない。世界を救う為なら喜んで汚れ役になるつもりよ。

 

 

 

だから貴方達(実験体)も、"平和の為の犠牲となれ"。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンタープライズ達が重桜へと向かっている一方、瑞鶴とプリンツ・オイゲンも東煌から重桜へ向かっていた。鉄血から出発してユーラシア大陸を列車等の陸路で横断、東煌からは航路で重桜に向かうのだが。

 

 

「なんで艦である私達が、"船"に乗らなきゃ行けないのよ…」

プリンツ・オイゲンが不満そうに呟く。

そう彼女達は今、『船』に乗っていた。

 

下手に艤装で渡れば重桜海軍に見つかる可能性があり、かと言ってアズールレーン所属の東煌からレッドアクシズの重桜へ"正規の船"が通ってるかと言われると、答えは"否"。

なのでこうして、マフィアといった裏社会の人達が使う船に乗せて貰っているのだ。

思えば陸路の方も鉄血御用達のマフィアが用意した貨物列車に乗ってここまで来ている。

 

 

 

「し、しかたが、無い、でしょ…」

 

「瑞鶴…しっかりしなさい!こんなところで倒れてる場合じゃないでしょ!?」

 

「フフッ…これが、私の…最後、なのかもね…」

 

瑞鶴の意識は徐々に薄れてゆき…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうか…、そもそも空母のアンタが "船酔い"ってどういう事よ!

 

今にも死に行きそうだった瑞鶴の意識が無理矢理、覚醒させられる。

 

 

「だって船なんて乗ったこと無いもん!!

そもそもなんで艦が船に乗らなきゃならんのよー!」

 

「それはこっちのセリフよ!」

 

などと言い争っているが、実質海の上に立つのと船に乗るとでは全く感覚が違うらしく、彼女が船酔いするのもある意味正しいのだろう。

 

「逆になんでアンタは平気なのよ!普通酔うでしょ!」

 

「私としては酔う方のアンタが不思議よ」

 

なにをと言い返そうとしたその時だった。

「そもそもプリンツは、ウプッ!

 

「ちょっと?瑞鶴、アンタまさか?!」

急激に顔色を悪くした瑞鶴は急いで立ち上がり。

 

「ご、ごめん!ちょっと"セイレーンにエサ撒いてくる"!」

甲板まで走り、そして海に向かって。

 

オエェェェェェェ~

 

 

 

 

それはそれは美しい"天の川"が彼女の口から海に向かって流れていったのだった。

 

 

 

 

 

「(それにしても赤城は一体何を考えてるのかしら…)」

 

ふと、プリンツ・オイゲンは赤城の目的が気になった。

アズールレーンを裏切ってまで何がしたいのか…。

鉄血の様にセイレーンテクノロジーを兵器に組み込んでいる訳でもない。しかし、メンタルキューブの量は鉄血以上に保有している。

 

「(何が目的なのかしら…。メンタルキューブに何があるというのかしら)ねぇ瑞鶴、アンタは赤城の目的についてどう思う?」

 

「オロロロロロロロロロロロ~」

 

「まだ吐いてた!?」

 

 

 

 

 

とその時だった。船が突然揺れ始めた。

 

「な、何?!」

 

「やめて~、これ以上揺らsオエッ

 

 

すると船員達が慌てた様子で二人に近づいて来た。

 

「大変だ!セイレーンが出たぞ!」

 

そう、この船は今セイレーンから襲撃を受けていたのだ。

 

 

「もしかして、私が"エサ撒いた"せい…?」

 

「本当にそうならしばらくアンタを恨むわよ」

 

 

現れたセイレーンはタイプ スカベンジャーとタイプ チェイサーが数体という編成で襲ってきた。

二人は直ぐに対処を始めた。が、何分数が多い為かなり苦戦を強いられている。

それでも何とか船を安全な所まで逃がす事には成功はした。

 

 

「ちっ、キリが無い」

 

舌打ちして文句を言いながら砲撃するプリンツ・オイゲン。

すると突然、瑞鶴がある"提案"をしてきた。

 

「そうだ!この現状を打開できる良い"作戦"を思いついた!」

その"作戦"とは何か。プリンツが聞くと、彼女は自慢気に答えた。

 

「その作戦の要は私達のスクリューよ!」

 

もうこの時点で嫌な予感しかしないプリンツ・オイゲン。

 

 

「そう…、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃ぃげるんだよォォォォー!プリンツ~!

 

 

 

「やっぱりそうだとは思っていたわよぉ!」

 

 

「退けぇ~!セイレーン(野次馬)共ぉ!」

邪魔するセイレーンを無理矢理かき分けて逃走を図る瑞鶴一行。しかしそれでも執拗に追跡してくるセイレーン。

「ッ!?瑞鶴!このままじゃ追い付かれるわ!」

 

 

 

「仕方ない。こうなったらちょっと奥の手を使うか…」

 

すると、瑞鶴の艤装のスクリュー部分から何やら駆動音が鳴り始めた。よく見ると海面の下でスクリュー部分が微妙に変形を始めていた。

 

「…、アンタ今度は何をやらかすつもり?」

 

「まぁ見てなさいって」

 

そして瑞鶴がプリンツ・オイゲンの腕を掴むや否やとんでもない速度で走り出したのだ。

そのスピードは一介の空母の艦船が出して良い様な速度じゃなかった。

 

「………ッ!?」

 

 

 

 

「ちっしつこいわね!」

たが未だに追跡を止めないセイレーン。

 

「あぁもう最っ悪よ…。もう一個奥の手を使うことになるなんて…」

今度は飛行甲板を後ろで追って来ているセイレーンに向けた。

内心もうどうでもいいとプリンツは一瞬思っていた。只でさえ異常すぎるスピードで走っているのだからもう驚く事は無いだろうと思っていたが、次の瞬間そんな自分を殴りたくなった。

 

それもそのはず飛行甲板の両弦の側面がガバッと開いたと思ったら、何とそこから小型魚雷が二発も投下されたのだ。

確かに艦載機から魚雷を投下する事はあるが、空母そのものから魚雷を投下するなんて聞いたことが無い。

少なくとも、正規空母瑞鶴にはそんな機能なんてある訳が無い。

 

そんなことを考えている内に投下された二発の魚雷はそのまま後ろのセイレーンに突っ込み爆発した。それもかなりの威力だったらしく、巨大な水柱が形成されていた。

 

 

猛スピードで走る瑞鶴。目の前には浜辺が見えてきた。しかし、考えてもみよう。今瑞鶴はとてつもない速度で走っている。ここが陸の道路ならまだブレーキが掛けられるから少しはマシだろう。

だがここは海の上、ブレーキ代わりにスクリューを逆回転なんてしたらアンバランスな人型故に転倒する恐れがある。

そんな事になれば魚雷で撃退しきれていないセイレーンに襲われるかも知れない。

 

結果、このまま突っ込むしか無いのだ。

 

 

 

 

「「ドワッフ!」」

 

そのまま顔面から砂浜に突っ込んだ瑞鶴とプリンツ・オイゲン。

何とかセイレーンからは逃げ切れたみたいだ。

 

「ふぃ~、なんとか撒けたわね」

 

するとプリンツがゆっくりと起き上がる。

「瑞鶴、色々と聞きたいことはあるけどまず1つだけ聞いていい?

 

 

アンタの艤装、一体全体どうなってんのよッ!

 

普段、冷静沈着な彼女がここまで感情を露にするのはかなり珍しい事だ。

 

 

「どーよ!私の改・造・品!!」

それを何処吹く風で自慢する瑞鶴。

 

 

プリンツ・オイゲンは考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、エンタープライズ達は重桜列島付近の諸島まで来ていた。その日は諸島の内の一つの島にある使い捨てられた泊地で休んでいた。

 

エンタープライズはどうしても眠れなかった。

 

夜空を見上げれば美しい星々に天の川が空を埋め尽くしていた。

 

「(瑞鶴、君は一体どこにいるんだ…)」

彼女の事を思い出すだけでも胸が締め付けられるような感覚。

 

―瑞鶴に会いたい…―

 

その気持ちが日に日に募って行く。

 

「(会いたい…。君に、会いたいよっ…。瑞鶴…)」

 

ポタポタと涙を流しながらその胸の痛みに耐えていた。

 

 

 

時を同じくして、瑞鶴達も例の浜辺の近くにあった宿で休んでいた。

色んな意味で消耗しまくったプリンツは早速寝てしまい、最早起きる様子は無かった。

 

瑞鶴は部屋の窓からエンタープライズと同じように夜空を見上げていた。

 

「(グレイゴースト…。何で彼女(アンタ)の事を考えると胸が痛いんだろう…)」

 

少しでも気を緩めたら泣いてしまいそうな感情が、彼女の心を占めた。

 

 

とその時だった。

 

「…ッ!?ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!」

 

突然咳き込む瑞鶴。胸が痛い。今度は比喩では無く、本当に痛みを感じる。

心臓が張り裂けそうに痛い。肺の中が焼ける様に痛い。

 

口元を押さえた手のひらを見てみる。

 

 

 

 

 

 

そこは血で真っ赤に染まっていた。

 

 

「………フフッ。そろそろ私自身のタイムリミットが近いって訳ね…」

 

血で汚れた手を握り締めながら、瑞鶴はもう一度夜空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な空間。

 

そこに二つの存在が対照していた。

 

その内の1つは黒いマントを羽織った艦船。コードGだ。だがその姿はボロボロだった。

 

 

そして、もう1つの存在。"黒い何か(F@AC)"

時々ノイズの様なものが全身に走る。

 

 

「くっ…」

最早立つのが精一杯のコードG。

 

『22111199999…』

 

黒い何か(F@AC)は理解不能な言語を呟きながらコードGに止めを刺すべく、黒い炎を纏った刀を振り上げた。

 

刹那、何処からか砲撃を喰らう黒い何か(F@AC)

 

『…!?』

 

 

砲撃を受けた方へ向くとそこにはテスターαとオブサーバーがいた。

 

黒い何か(F@AC)は二人を見た瞬間、問答無用で弓矢を放った。

 

放たれた矢は二人のいる場所に突き刺さると、そのまま大爆発を起こした。

 

 

 

「ちっ、ここまでの威力。せっかく何とか近づけたっていうのに…!」

 

何とか耐えきることができたセイレーン二人。だがかなりギリギリだったようだ。

 

 

「仕方ない…。コードG!ここは一旦引くわよ!」

 

「言われなくともそうする…。貴様に命令される筋合いは無い…!」

 

 

『1111171111GH77777、@izm22223344448999…!』

 

黒い何か(F@AC)は、撤退するセイレーンに向かって"何か"を言い放った。

 

 

それに対し、オブサーバーが言い返した。

 

「『tzy777775555559844444444447799999…!(やれるものならやってみろ…!)6211338888!(破壊者!)』」

 

 

 

 

 

最後にコードGが静かに呟いた。

 

「"Z"の成れの果てが…」




チャーチャーチャーチャーチャチャーチャー♪

「このお話の出演は、"瑞鶴"、"プリンツ・オイゲン"、"エンタープライズ"、"セイレーン"、"コードG"、"黒い何か"でした」


チャーチャーチャチャッチャチャ♪


良い子の皆!またみてね!

似顔絵待ってるよ!


来週も見てくださいね~♪

じゃん♪けん♪ポン♪

ウフフフフ~(←ヤベーやつだ…)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 12 ―枯れた桜―

ブンブン、ハローユー○ューブ。

遂にアズレンアニメが放送されましたね!(今更感)

二話でさっそく瑞鶴とエンタープライズ!



それでは、ここらでさくっと今までのあらすじを紹介。


はるか未来の世界、地球上の海は謎の人型深海生物「セイレーン」により支配されていた。

しかし、セイレーンとメンタルキューブの力をめぐってアズールレーンとレッドアクシズの二つに分裂し、混沌の世界になりつつあった。


正規空母瑞鶴は、アズールレーン唯一の重桜空母。
しかし上層の者と対立し、遂にはアズールレーンを追放されてしまう。

そんな中、鉄血のプリンツ・オイゲンと出会い、二人は鉄血へ行くことに。

瑞鶴はそこでビスマルクの心意を聞く。そして彼女からローンを重桜から連れ戻して欲しいと頼まれる。

ビスマルクの依頼を受け持った瑞鶴は道中、船酔いしながらも重桜へと向かった。

時を同じくして、エンタープライズ達も重桜へと向かったのだった。



プリンツ「なんか最近、私の扱いが酷い様な気が…」

瑞鶴「気のせいだって♪」



さぁ!どうなる第12話!


深い海の中を漂ってる気分だ…。

 

一体、私に何が起こったのだろう…。

 

『ティルピッツ!ティルピッツ!』

 

 

 

 

あぁ…、そうだった…。

 

 

『い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 

 

さっき、私はヴィクトリアスを庇って…。

 

 

 

 

 

 

気がつけば、私は医務室にいた。

 

どうやら私も相当悪運が強いみたいね…。

 

『ティル…』

 

 

医務室の扉が開いた。入ってきたのは瑞鶴だった。

 

『ヴィクトリアスは?』

 

『既にロイヤル寮へ戻ってるわ』

 

そうか…。あの子は無事だったのね。

 

 

 

今の瑞鶴の姿はいつもの羽織では無くオペ服を来ていた。

なるほど、さっきまで私の応急処置をしてくれていたみたいだ。

 

『あの後貴方の船体(からだ)を調べさせてもらった…。それでティルにはどうしても言っておかなきゃいけない事があるわ…』

 

瑞鶴は顔を俯けている。あぁ、解るよ。貴方がそんな顔をする時は、必ずと言って良いほど深刻でとても悲しいことだって。

 

故に、私は既に覚悟していた。

()()()()()()()()()()()()と一緒に…。

 

『ヴィクトリアスを庇って敵の砲撃を受けた事で、左足を失った…。その影響で…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティル、貴方はもう艤装を纏えない…』

 

 

 

 

 

 

 

 

「…随分懐かしい夢を見たわ」

私が戦えなくなってから3年が経った。当然、いつかはこうなる事は予想していた。

瑞鶴曰く次に私が艤装を纏えば最後、確実に私は()()()()()

 

あれから今まで瑞鶴は私がまた艤装を纏えるように試行錯誤で艤装を改造してくれていた。

 

それでも結局叶わず、あの子はここから追放された。

 

 

 

ひどい冷や汗が全身から吹き出している。今もこうして稀に当時の事を夢で見る。もう慣れたことなのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンタープライズ達は遂に重桜に到着した。

桜ノ入江(旧東京湾)の真ん中に存在する重桜大本営基地の付近まで来たが、余程基地が攻められない頑丈なものだと思っているのかこうして重桜の海域に堂々と入っても一切反応が無い。

これではどうぞ領海を侵してくださいと言っている様なものだ。

だが、エンタープライズ達はその理由に納得していた。

彼女達から見ればそれは"山"。それもそこら辺のじゃない。とても巨大な山、この国にある有名な"富士山"の様な大きさ。そんな風に見えた。

山の様に巨大な鉄の城。それは基地というよりも巨大要塞そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方で瑞鶴も要塞の近くまで来ており、現在はどう潜入するかを考えていた。

 

「さて、どうやって"訪問"しよっかな」

要塞を見て侵入しやすい場所を探す瑞鶴。

 

「噂には聞いていたけど、本当に大きいわね」

 

エンタープライズ達とは違い内陸側から来た為、本土と要塞を結ぶとてつもなく長い橋を渡っている二人。

瑞鶴達が要塞の側まで来た時だった。

突如サイレンが鳴り始めた。

 

「あ、やべ。これ侵入者探知のサイレンだ」

 

「……はぁ!?」

 

「流石に気づかれるか。こんな近くまで来たら」

などと、悠長に構えてる瑞鶴。

 

「言ってる場合じゃないでしょ?!どうするのよ!」

すると瑞鶴がプリンツ・オイゲンの事を見つめ始めた。

この瞬間から既に嫌な予感を感じている彼女だった。

 

「とゆー訳で、敵さんの誘導よろしく!プリンツ」

無慈悲な言葉をかけるや否や、橋の下に飛び降りた。

(艤装はずっと装着したままだった為、そのまま海の上に立てた)

 

 

「…え、ちょ、え?」

 

すると正面の門が開き、そこから無人の自動操縦戦車が10機も現れ、プリンツ・オイゲンに標準を向ける。

 

「…たった一人の侵入者相手に過剰すぎるでしょ…」

ぼそっと呟いた後、一目散にもと来た道へ逃げるプリンツ・オイゲンだった。

 

 

「ふぅ~。どうしたものか、無人量産型の艦まで出てくるとはね」

瑞鶴は橋の下、要塞の根元に身を隠しながら様子を伺っていた。

 

「何処かに入れ込める場所ってあったかなー?」

 

重桜出身とはいえ、所属が太平洋の人工島だった為、この要塞に足を運んだのはあまり多くない。

 

侵入口を探す瑞鶴。すると彼女の脳裏にあるものが浮かんだ。

 

「…そうだ、ダクトだ!ベタだけど侵入するにはダクトが一番良いんだよね。ええとダクトはどこかな?」

 

閃いても肝心のダクトが無ければ意味が無い。

必死に探していくと、一つだけ見つけることができた。

 

侵入する為の突破口は見つけた。中に侵入した後の計画も出来ている。

 

覚悟も出来ている。

 

それら全てが揃っているのを確認し終えた瑞鶴はダクトを見ながら自分のスイッチを入れる言葉を呟いた。

 

「さぁ、"任務"を始めようか」

 

 

そしてダクトの中に入った瑞鶴。全ての準備は整った。ローンと囚われている自分の仲間や部下の海兵たちの救出。

 

大丈夫、必ず成功する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?!無人量産型だ!流石に気づかれたみたいだ!」

 

戦慄するクリーブランド。

 

エンタープライズ達の前には沢山の無人量産型が現れ、行く手を阻んでいた。

 

「くっ、数が多すぎる!」

 

必死に応戦するが、敵の多さに苦戦する。

 

「仕方ない、一度ここを引いて体制を立て直そう」

そう判断したエンタープライズは、敵の攻撃を掻い潜りながらこの海域からの脱出を試みる。

 

しかし、その時だった。

エンタープライズは見てしまった。瑞鶴が要塞の壁を登ってダクトの中に入っていた瞬間を。

 

 

 

 

 

 

「なんとか海域から脱出できたぞ!こりゃあ中々近づけないなぁ」

 

「ク、クリーブランド!大変だ!姉ちゃんがいない!」

 

「「「「!?」」」」

慌てふためくホーネット。一同は皆、驚愕した。

 

 

 

 

 

 

 

「(瑞鶴だ…。見間違うものか!あれは確かに瑞鶴だった!待っていてくれ、今君のところへ行く!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

要塞の頂上。そこには巨大な桜の木があった。

 

名を『重桜』。この国の名でもある。

 

 

「(長門姉…)」

 

そんな巨大な木の幹に、1人少女が封印されていた。

そしてその側で見守るもう1人の少女がいた。

 

 

 

 

その桜の木は、枯れていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ、もう少しで例の計画が発動するわ」

 

暗い空間の中、赤城は呟いた。

 

「本当に上手く行きますかね。先輩?」

 

「あら?何が言いたいのかしら?翔鶴」

 

暗闇から現れた翔鶴はふと赤城に話しかけた。

 

「だって、今まで私達が行おうとしていた作戦は尽く瑞鶴に邪魔されてたじゃないですか。一年前の奇襲だって、結局瑞鶴の"暴走"でダメになっちゃって。きっと今回も先輩がドジ踏んじゃって瑞鶴にめちゃくちゃにされちゃうんじゃないかなぁ~て♪フフフ♪」

 

「……少しは"黙る"ということを学んだらどうかしら?」

若干、怒気をはらんだ声で返す赤城。だが、翔鶴の煽りは止まる事を知らない。

 

「まっ、精々頑張ってくださいね?赤城先輩♪」

 

 

 

「フフフ、この計画は全ての救済になる。私達の創造主が残したもの。"山科理論"、メンタルエネルギーの真価はそこにある」

 

赤城の手には、とある計画書が握られていた。

その計画書にはこう書かれていた。

 

―重桜計画―

 

 




そういえば、人物紹介の時にベルファスト紹介したけど、考えてみたらまだ1度も彼女を出してねぇ!

あ、やめて!榴弾撃たないで!


Twitterフォローよろしく!
(TwitterのURLは桐生瑞鶴のホームに載ってるよ!)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 13 ―希望―

瑞鶴「今回は特別に、私達があらすじを紹介しちゃいますよー♪」

プリンツ「私達がやると、ややこしくなってわからないんじゃないの?」

瑞鶴「ダイジョーブ、ダイジョーブ♪それでは早速…」

マーク「はるか未来の世界、地球上の海は謎の人型深海生物『セイレーン』により支配されていた。しかし、セイレーンとメンタルキューブの力をめぐってアズールレーンとレッドアクシズの二つに分裂し、混沌の世界になりつつあった。」

瑞鶴「なんで指揮官が出てるのよ…」

プリンツ「茶々を入れてるんじゃないわよ瑞鶴。黙って聴きなさい」

マーク「正規空母瑞鶴は、アズールレーン唯一の重桜空母。しかし上層の者と対立し、遂にはアズールレーンを追放されてしまう 」

ティルピッツ「そんな中、鉄血の重巡プリンツ・オイゲンと出会い二人は鉄血へ。そしてビスマルクの依頼で瑞鶴達は重桜へ向かった」

マーク「重桜に到着した瑞鶴達はそれぞれで行動し、要塞に潜入するのだった」

瑞鶴「しれっとティルまで出てるんじゃないよ!」

プリンツ「さぁ、どうなる?第13話♪」

瑞鶴「なにこれぇ…。全部言われちゃったよ…。主人公なのにぃぃ!!」


―幻覚でも見ているのか―

 

 

最初はそう思った。だが、私の勘が告げていた。幻覚なんかじゃない、間違いなく本物の瑞鶴だと。

 

そして気づいた時には、体が勝手に動いていた。

 

 

敵の数の多さに一度撤退して体制を立て直すべきと判断した矢先に、瑞鶴を見た瞬間に私は彼女を追いかけていた。

 

あぁ、やっぱり私は彼女(瑞鶴)が居ないとダメなんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、侵入したの良いけど…。まず皆が捕らえられている所は何処か…。こんだけデカイ要塞なんだ、こりゃ骨が折れるわね」

 

ダクトを伝い、要塞に侵入した瑞鶴。しかし、いかんせん規模が規模だけに一体何処に幽閉されているのか分からない。

止まっていても仕方がない無いのでとりあえず、奥へと進む。

 

その時だった。突如音が聞こえた。砲撃音等といった戦っている音が聞こえたのだ。

音の正体を探る為、瑞鶴はその方向へと進む。

 

 

 

 

 

 

時は遡り、重桜大本営基地要塞地下…。

 

 

 

そこには何人もの艦船達が奴隷のように働かされていた。

そう、この艦船達こそ瑞鶴率いる反レッドアクシズ派レジスタンス『鶴部隊』なのだ。

 

 

「…ゲホッ!ゲホッ!」

そんな中、一人の艦船が突然咳き込みながら血を吐いた。

「…!?ミカサ!大丈夫か」

 

「…あぁ、大丈夫だ…グラーフ…」

 

ミカサと呼ばれる艦船、彼女こそ重桜の艦船にて軍神の異名を持つ戦艦三笠なのだ。

そして、そんな彼女に駆け寄ったのが鉄血の空母、グラーフ・ツェッペリン。

 

「…なに、大したことは無い。我は大丈夫だ…。」

 

 

 

 

 

荷物を台車に乗せ、引いて運んでいる艦船。重桜の駆逐艦、綾波。

彼女は懐から一枚の写真を取り出し、眺め始めた。

そこに写っていたのは、ジャベリン、ラフィー、Z23、そして綾波本人。

「(ジャベリン、ラフィー、……皆にまた逢いたい、です……)」

この四人は各陣営に関係なくまるで幼なじみの如く仲良しで、いつも四人で過ごしていた。そう、あの時までは…。

「(ニーミ…。なんで……)」

 

 

 

Z23が裏切った。

 

 

一年前、自分達のリーダーである瑞鶴を先に行かし、綾波達は偽の奇襲部隊と交戦した。その時に、綾波はZ23と戦った。

 

そして、負けた。

 

その後瑞鶴以外の重桜の仲間達は全員捕らえられ、この地下に閉じ込められてしまった。(鉄血は少数)

人間の海兵たちは全員が拷問にかけられ、殺された。

 

 

それでも、ここに囚われた艦船達は決して絶望しなかった。自分達にはまだ、希望の鶴がいてくれている。それを信じて。

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!」

 

ふと横を見ると、かの軍神三笠が苦しんでいる。

 

「(……このまま何もしないのは、もう嫌です…)暁、相談がある、です」

 

綾波は隣で作業をしている駆逐艦の暁に話しかけた。

 

 

 

 

「綾波殿!正気でござるか?!」

「綾波は正気です。今の三笠さんを助けるには()()()使()()()を飲ませないとダメ、です。それを取りに行くです」

 

三笠を救う為に地下から脱走して薬を手に入れてくると進言する綾波。だが、それにはそれ相応のリスクがある。しかも彼女達の艤装は没収されており、いざ戦闘になると自分達が圧倒的不利になるのは火を見るより明らか。

そんな危険な事を綾波はやろうとしているのだ。当然ながらそんな事をさせる訳にはいかず、止めようとする暁。

「そんな危険な事、させる訳にはいかないでござる!」

もうこのまま何もしないのは嫌なんです!だから行くんです…。暁、わかって欲しいです…」

「綾波殿…」

綾波の固い決意を目の当たりにしてたじろく暁。リスクは承知の上、今の綾波にはそれほどの覚悟があった。

 

 

「……それに、瑞鶴さんならきっと諦めない、です」

 

「……ッ!瑞鶴さん…」

 

 

綾波は三笠の方に顔を向ける。今こうしている間にも三笠は苦しんでいる。

 

「……だからこそ…、綾波も何か行動を起こさないといけない…そんな、気がするのです」

「…でも、本当に一人で行くつもりでごさるか?」

 

その時だった。

 

「私も行くよ。アヤナミ」

 

鉄血の重巡、アドミラル・グラーフ・シュペーが手を挙げた。

「シュペー殿も行くでごさるか!?」

「二人ならきっと大丈夫。だからお願い…行かせて」

「シュペー…」

二人は必死に懇願する。その甲斐があってか、ついに暁が折れた。

「…わかった。ここまでお願いされて断ったら忍者の風上にも置けないでござる。三笠さんの事は、それがしに任せるでござる。だから…二人とも、無事に帰ってくるでごさる!」

綾波とシュペーは監視をしている海兵の目を盗んで駆逐艦1人分の大きさの通気孔から脱走する。

 

 

 

何処までも真っ暗で先が見えない通気孔、まるで今の自分達を表しているようだ…。

失敗すれば、何もかもが終わる。

それでも、必ずや三笠を助けるという想いを胸に…、二人は"決意"を抱いた。

 

 

 

 

通気孔を通じて、なんとか地上へと出れた二人。しかし、物事というものはそう上手くはいかないものだった。

「オマエ…こんなとこで、なにをやってるんだぁ!」

「ゆ、夕立…」

 

"ソロモンの悪夢"、夕立に見つかってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきあっちで爆発音が聞こえたけど…」

爆発がした方へとダクトの中を突き進む瑞鶴。今はそんなことをしている場合ではないのに、なぜか行かなくてはならないという自分の勘が訴えていた。

 

 

 

迫り来る砲撃から必死で逃げる綾波とシュペー。艤装は砲撃だけでなく、基本身体能力を大幅に向上されることができる。つまり、生身の二人が追い詰められるのは時間の問題だった。

夕立の他にも時雨に雪風までもが現れ、徐々に綾波達を追い詰めて行く。

「もう終わりだ!さっさと観念しろ!」

「ホンット、しぶといったらありゃしないわ!」

「……」

とうとう、逃げる事が不可能になった。最早ここまでか。夕立が綾波に飛び掛かった。

 

刹那、綾波は近くに落ちてあった鉄パイプで応戦した。しかし、ものの数秒で減し曲げられ使い物にならなくなった。

 

「悪あがきはやめろよなぁ!」

夕立は手を鳴らしながらゆっくり近づいていく。

 

「…あ……(やっぱり、綾波には無理だった、です…。三笠さん…ごめんなさい…)」

これが自分の最後になるのか。綾波とシュペーは目を瞑った。

「これで、終わりだぁぁ!

夕立は追い詰めた二人にトドメを刺そうと砲を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

やめるのだぁぁぁ!!

 

その声に、二人は恐る恐る目を開けた。そこには、両腕を広げ自分達を庇う雪風の姿だった。

「雪…風……?」

 

「ちょっと!雪風どういうつもり!?」

「そうだ!敵を庇うのか!?」

夕立と時雨から責め立てられる雪風。その目は涙ぐみながらも相当な覚悟が宿っていた。

 

「もう、やめるのだ…。こんなの良くないのだ…。皆、仲良くするのだ…!」

怯えながらも必死に訴えかける雪風。そんな彼女を二人はさらに非難する。

 

「はぁ?何言ってんだ?オマエ」

「そうよ!あんたおかしいわよ!」

 

「綾波は…雪風様の大切な友達なのだ!敵同士になってしまっても…それは変わらないのだ!綾波を傷つける奴は例え夕立でも、許さないのだぁ!

 

「(雪風…ありがとう…です)」

 

 

「だったら、オマエから沈めてやるぅ!」

夕立と時雨から集中攻撃を受け始めた。それでも綾波達を守らんと決して倒れる事なく立ち続けた。

全身ボロボロの大破状態だった。

「いい加減、しつこいぞぉ!」

そして次の砲撃で、とうとう倒れてしまった。

 

「雪風…!」

綾波は倒れた雪風に声をかける。雪風は弱々しい声で応えた。

 

「綾波…。ごめん、なのだ…。本当は綾波と一緒に居たかった。けど、怖くて、逆らえなくて、雪風様と綾波は友達なのに…本当に、ごめんなのだ…」

「もういい…。もういいんです…。」

 

シュペーも雪風に応えた。

 

「ありがとう、ユキカゼ。私達を守ってくれて…」

 

そんな三人に向けて夕立はトドメを刺そうとしていた。

 

 

「これで終わりだ!ソロモンの藻屑になれぇぇ!

 

 

 

―SKILL ACTIVATION "ソロモンの悪夢"―

 

 

三人はお互いの手を繋ぎ、目を瞑った。今度こそ、駄目かもしれない。ここが自分達の最後…、それでも覚悟を決めた。三人一緒なら、怖くない…。

 

 

 

風を斬る、音がした…。

 

 

そして、"熱を感じた"。敵に戦慄を覚えさせる熱気を…。自分達を癒し、包み込んでくれる暖かさを…。

 

 

 

ゆっくりと目を開けた…。そこに居たのは…。

 

 

その人物を見た全員の顔は色んな表情で出来ていた。

 

夕立達は驚愕に染まった顔に―。

 

綾波達も同じく驚き、同時に安堵に包まれた顔に―。

 

 

「遅くなって、ごめんね。そして雪風、二人を守ってくれて、ありがとうね」

 

 

そこに、"希望(瑞鶴)"が舞い降りた瞬間だった。

 

 

 

 

 

周りには彼女が斬ったであろう、砲弾が転がっていた。

夕立の中は、突如として乱入してきた事への驚愕、トドメを邪魔された事による怒り、そして彼女から滲み出ている"威圧"から来る恐怖心等の色んな感情が渦巻いていた。

 

「ず、瑞…鶴……さん…」

時雨は完全に戦意を損失していた。瑞鶴から滲み出た"威圧"はあの一航戦すらも凌駕するかのような感覚だった。

 

 

「ち、ちょうど良い…!オ、オマエも…纏めてぶっ飛ばしてやる…!」

確実に恐怖を感じながらもなお虚勢を張る夕立。

 

そんな中、瑞鶴は刀を一度鞘に納めると、腰を低くし"構え"始めた。

 

「瑞鶴さん…!気をつけてくださいです…!」

 

綾波は瑞鶴の身を案じる。だがそれは杞憂に終わる。

 

瑞鶴は静かに目を瞑る。視覚からの情報を全て遮断し、その他の感覚を研ぎ澄ます。

そうしている間にも夕立は瑞鶴を倒さんと襲い掛かろうとしている。

 

「(まだ…。まだ、抜刀してはダメ…。ギリギリまで引き付ける…!)」

 

 

いよいよ夕立が瑞鶴の目の前まで迫っていたその時だった…。

 

「(今だ!)」

瞑っていた目を大きく見開いた。

"既に二回強化された刀"を抜いて、すれ違い様に一閃した。いわゆる居合いであった。

 

ハァァ!!

 

―SKILL ACTIVATION "奮進の鶴"―

 

 

 

三回強化された状態での居合いは時雨をも巻き込んで繰り出された。

しばらく辺りに静寂が流れる…。

 

その時だった。夕立と時雨の艤装が一斉にバラバラに崩れ落ち、二人も糸が切れたかのように倒れた。

 

「ず、瑞鶴さん…」

「大丈夫よ、峰で気を失わさせただけだら」

その言葉を聞いて安心する綾波。いくらなんでも殺すのは良くないと考えたのだろう。

 

「ズイカクさん、どうしてここに…」

シュペーは瑞鶴に問う。危険を犯してまで敵の陣地に来たのか。

その問いに対し、瑞鶴が答える。

「決まってるでしょ?皆を助けに来たのよ」

 

瑞鶴は今の状況を綾波から聞いた。自分達は今地下に幽閉され、奴隷の様な扱いを受けている事。三笠の命が危ない事。三笠を救うために薬を手に入れるために二人だけで脱走した事。夕立達に見つかり襲われたが、雪風が自分達を庇ってくれた事。

「なるほど。よく頑張ったね"三人共"!後は私に任せて」

「でも…、三笠さんに薬を…」

「それならこれを大先輩に渡して」

瑞鶴が渡したのはいくつかの錠剤が入った小さなケースだった。

「ど、どうして瑞鶴さんが、薬を…?!」

「色々あるのよ、それともう地下に戻る必要は無いわ」

「なんでなの…?!」

瑞鶴に疑問をぶつける二人。すると瑞鶴が右耳に手を当てた。

「聞こえてたでしょ?プリンツ。地下の皆をよろしくね♪」

 

「『全く、アンタって艦は本当に人使い荒いわね。ちゃんと見返りはあるでしょうね?』」

「ごめん、ごめん。お酒で手を打ってくれる?」

「『……高いヤツじゃなきゃダメよ』」

 

「そ、その声って、オイゲンさん?!」

シュペーは驚いた。まさか自分の元同僚で今は敵のプリンツ・オイゲンの声が、瑞鶴の右耳に着けている極小さな無線機から聞こえたのだ。

 

「色々あってね。今は貴方の味方よ。もちろん、ビスマルクさんもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、地下ねぇ…。そこでの強制労働って何かの漫画で見たことあるけど、本当にそんなのがあったなんてねぇ」

 

 

 

時は遡り…。

 

 

「ハァ…ハァ…。何で私がこんな事しなきゃいけないのよ…」

瑞鶴と別れた後、何とか敵を撒くことに成功したプリンツ・オイゲン。

そんな時、一機の艦載機がオイゲンの所へ飛んできた。何やら矢文宜しく手紙を括り着けていた。

彼女はその手紙を艦載機からほどいて読んでみた。

 

私が作った小型の無線機を渡しとくわ。タイミングを見計らってアンタも中に入ってね

 

ご丁寧にその無線機も艦載機に括り着けてあった。

「…はいはい。Okay, wie du sagst.(わかりましたよ、仰せのままに)

 

 

―現在―

 

瑞鶴の指示通りにオイゲンは要塞に侵入していた。今、彼女の目の前には地下へと繋がる大きな鉄の扉がある。周りには沢山の海兵達が倒れていた。

そして鉄の扉に向かって砲撃するオイゲン。扉は簡単に破壊され、序でに扉の内側で地下の艦船達を監視していた海兵も一緒に吹き飛ばされた。

突如扉が破壊された事から中に居た艦船達は皆、呆気にとらわれていた。

 

「そんなとこでボサッとしてないで、ほらさっさと逃げるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(無意識だったとはいえ、皆には迷惑をかけてしまったな…)」

一方で、瑞鶴を追い掛け要塞に侵入したエンタープライズ。しかし、瑞鶴が要塞のどこにいるかは皆目検討がつかなかった。今にして思えば自分の行動はかなり浅はかだったと我ながら反省した。

 

「(しかし、ここまで来たからには瑞鶴を何としてでも見つけ出す…、今度こそ彼女を守る…!)」

エンタープライズは廊下で巡回している海兵に見つからないよう要塞の中を進んでいく。

 

 

 

 

 

要塞付近の海域にて、クリーブランド達はもう一度要塞に近づくタイミングを伺っていた。

「だいぶ敵の数が減ってきたけど、近づくにはまだだな…」

双眼鏡とレーダーを組み合わせて海上の様子を見ているクリーブランド。その顔には若干の焦りが出ていた。彼女だけじゃない、他の皆も同じ状態だった。それもそのはず、エンタープライズが突然居なくなったのだ。

最初は何処に行ってしまったのかわからなかったが、彼女がいつも連れているハクトウワシの『いーぐるちゃん』 が不安な顔つきで要塞を見つめていたことから、エンタープライズはあの要塞の中にいると推測した。

「姉ちゃんあの中にいるんだよね…?もしかして、ズイっちかな…?」

「瑞鶴様でございますか?」

ホーネットの呟きに反応するように問うベルファスト。

「うん、姉ちゃんはズイっちの事になると少し周りが見えなくなっちゃうんだ。だからもしかしたらあの時彼処にズイっちが居たのかもしれないね。ズイっちの事で姉ちゃんずっと元気無かったから…」

「左様でございますか…」

「エンタープライズさんは、ご無事でしょうか…」

彼女の身を案じるベルファストとイラストリアス。

 

しばらくして海上を見張っていたクリーブランドが結論を出した。

「…私達も、行くしかないか」

 

 

 

 

 

 

 

要塞の中、瑞鶴は綾波達を先に逃がした。逃げる際、綾波は自分達と一緒に逃げた方が良いと言うが、瑞鶴はやり残した事があるとの事で自分はここに残った。

「ローンは何処に…」

そう、ローンが未だに見つかっていないのだ。オイゲンからも地下には居なかったと聞き、一体何処にいるのか探さなければならなかった。

 

「『瑞鶴、そこに居るのはそろそろ限界よ。侵入したことが気づかれたみたい』」

「プリンツ…、先に皆を安全な所に連れていって。大丈夫、ローンを見つけたら私もすぐに脱出するから」

「『……ちゃんと帰ってきなさいよ…』」

 

 

 

 

 

 

プリンツ・オイゲンは地下に幽閉されていた艦船達を連れて要塞から脱出する。没収された彼女達の艤装は要塞の倉庫から奪還、全員で海に出た。

しかし、そこには大量の無人量産艦が群がっており、こちらに向かって砲撃を開始した。

「ちっ…、あくまで私達を逃がさないつもりね…!」

 

―SKILL ACTIVATION "破られぬ盾"―

 

オイゲンは前面にシールドを展開しながら皆を守っていた。

だが敵からの凄まじい砲撃によりシールドに罅が入り始め、いつ破られるかは最早時間の問題だった。

 

「くっ…!」

とうとう全てのシールドが破壊された。同時に戦艦型の強力な砲撃が彼女を襲った。

 

その時だった。

 

 

 

「聖なる光よ、私に力を…!」

 

 

オイゲン達の周りを光の結界が彼女達を包んで砲撃から守った。

「良かった、間に合いましたね♪」

 

―SKILL ACTIVATION "装甲空母"―

 

 

「イラストリアス…」

オイゲン達を守ったのは、クリーブランド率いるユニオンとロイヤルの艦船達だった。タイミングを見計らい、何とか要塞に近づく事に成功したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ローン、一体何処にいるのよ…」

瑞鶴はローンを探してひたすら要塞の中を探索していた。そんな時だった。

「…ここは?」

彼女は妙な空間に入ってしまった。霧が立ち込め、辺りに一体が水面になっており、中心に巨大な樹木の生えた小島がポツンとあった。樹木は天高く伸びており、その先を見ることはできなかった。余談ではあるがその巨大樹木こそが、要塞の頂上で長門が封印されている桜『重桜』である。

 

「大きい…」

 

 

 

「その木こそ、この国の御神木『重桜』よ」

突然、後ろから声を掛けられた。瑞鶴は声のした方へ振り向いた。そこに居たのは…。

 

 

 

 

 

「…!?翔鶴姉…」

 

 

瑞鶴の姉にて翔鶴型一番艦、翔鶴だった。

 

 

 

 

 




何気にベルファストさん初登場…。

そして何気に最長…。

あらすじ紹介お気に召しましたでしょうか?

それではまた次回♪

Twitterにて、Episode12.5を掲載!あらすじに置いてあるURLから見てね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Episode 14 ―宿命―

大変お待たせしましたぁぁぁ!!


前回のラ○ライブ!!

はるか未来の世界、地球上の海は謎の人型深海生物「セイレーン」により支配されていた。

しかし、セイレーンとメンタルキューブの力をめぐってアズールレーンとレッドアクシズの二つに分裂し、混沌の世界になりつつあった。


正規空母瑞鶴は、アズールレーン唯一の重桜空母。
しかし上層の者と対立し、遂にはアズールレーンを追放されてしまう。


ビスマルクの依頼の下、瑞鶴とプリンツ・オイゲンは重桜へ潜入。

拉致されていた仲間たちを無事救出するものの肝心のローンが見つからず、瑞鶴は1人でローンを探す。しかし、突然妙な空間に迷いこんでしまう。そして彼女の前に立ちはだかったのは、あろうことか彼女の姉である翔鶴だった…。


プリンツ「そういえば、私に渡した小型通信機。あれいつ作ったのよ。ていうかどうやって作ったのよ」

瑞鶴「旅館でアンタが寝てる時によ。私はできる空母だからどんな材料でもミラクルな秘密道具を作れるのよ♪」

プリンツ「………(目眩がしてきたわ…)」


「翔鶴姉…」

 

 要塞の中で、瑞鶴は自身の姉である翔鶴と再会した。だが、それは穏やかなものでは無かった。

「ここへ何をしに来たの?瑞鶴」

「……捕まってる皆を助けに…」

しばらくの間、沈黙が流れる。彼女らの足元に広がる水面は波一つ立っていない。

やがて、沈黙を破る様に翔鶴が口を開く。

「瑞鶴、本当にこっち(レッドアクシズ)へ来る気は無いの…?」

「…無いよ」

翔鶴の問いに対し、瑞鶴は即答する。

思わず翔鶴は声を荒げてしまう。

「どうして!?…私達は世界を救う為に…!」

「じゃあなんで戦争なんてするの…」

「……ッ」

 瑞鶴の質問に翔鶴は答えられなかった。自分自身、本当はこれが正しいのかわからないのだ。

「で、でも…もうこの方法しか無いの…!"あの計画"なら世界を救える…。その為には瑞鶴、貴方が持つ"天性の才能"が必要になるの。大丈夫、お姉ちゃんが一緒にいる!貴方の事を守ってあげる!…だから!」

 しばしの沈黙が流れる。そして、瑞鶴が答えを出す。

「……ごめん。翔鶴姉の想いには応えられない…」

「…そんな」

「私にも、譲れない物があるの…。どうしても、これだけは…」

「そう…。それが貴方の答えなのね…」

瑞鶴の答えを聞き、絶望する翔鶴。そして彼女は"決断"する。

 

 

なら、それだけの力がある事を私に証明してみなさい!

 翔鶴の後ろ、霧の向こうから巨大な空母が現れた。そしてその空母が無数のキューブ状になり、翔鶴に纏わりつく。目映い光が止むとそこには、艤装を纏った翔鶴がいた。

「翔鶴姉…」

「私と戦いなさい。私を倒して、証明しなさい!」

手に持った横笛を吹く翔鶴。すると彼女の周りを飛び回るように紫炎の艦載機が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…」

 瑞鶴を探していたエンタープライズ。しかし、突如として霧が発生し、彼女を取り込むかの様に包み込んだ。

そして気がつけば、巨大な桜の木がある所にいた。

鳥居や祠があり、そして桜の幹に小さな少女が封印されていた。

 

「この桜、もしやこれが…」

 

 

 

「『重桜』だ」

 突然後ろから声を掛けられた。そこに居たのは小さな白い狐の艦船、"江風"だった。

 

「あ、貴方は…」

「私は江風。神子、長門様を護る者だ。そういう貴方は空母エンタープライズだな」

 自分の名前を目の前の彼女が知っている事に驚くエンタープライズ。

「何故自分の名前を知っているのかという顔をしているな」

「……顔に出ていたのか…」

「全ては長門様の予言だ」

"長門"という名前を聞き、もしやと樹の幹に封印されている少女の方を向く。

「ああ、貴方の思っている通り、そこに封印されているお方こそ長門様だ」

「彼女が…。それで、彼女の予言がどうしたと言うのだ?」

 

江風はエンタープライズに件の少女、長門の予言を言った。

 

時は一年前に遡る…。

 

 

『長門姉!自分を封印するってホントなの?!』

『うむ…。余を重桜に封印することでこの世界の魂の流れを観測する』

『長門様…』

『いずれこの重桜に、ある艦船が導かれる。その艦船の名は、"エンタープライズ"である』

『ユニオンの空母ですか…?』

『左様…、彼女こそ"この世界の鍵"かも知れぬ。彼女がここに導かれるその時まで…陸奥、江風…余と重桜を守って欲しい』

 

『畏まりました。この江風、命に変えても長門様を御守り致します』

 

 

―現在―

 

 

「私が、鍵…?」

 エンタープライズは戸惑った様子で長門の予言を江風から聞いた。"自分が世界の鍵"。それがどういう意味なのかは解らないが、その予言というものが只の憶測のような物じゃないという事だけは解った。

「要塞の頂上にあるこの場所は特殊な結界で覆われている。この重桜の樹に導かれた者でなければ、ここに来ることはできない。その重桜に、貴方は導かれた」

「私が…。でも何故…」

 その時だった。江風が突如重桜の方を向いた。

「ど、どうした…?」

「どうやら、導かれたのは貴方だけでは無いようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…、うぅ…」

 翔鶴の猛攻撃に手も足も出ない瑞鶴。激しい爆撃の雨に追い詰められ、とうとう倒れ付した。

「貴方の実力はこの程度じゃないはず!戦いなさい!」

決して手加減をしない翔鶴。笛を吹く度に飛行甲板から射出される艦載機は瑞鶴に何度も爆撃を食らわせる。

 そして遂に限界を向かえてしまい、艤装が解除される。何故か艦にならず、小さな小刀に…。

 

「(自分の艦を持っていない…。瑞鶴…、やっぱり貴方の"正体"は…)所詮はその程度だったのね…。失望したわ瑞鶴。貴方はもっと強いと思っていた…。あの時は私達を撤退に追い込むぐらいの強さと気迫があった。この一年で弱くなったのかしら?それとも、ただの偶然で勝っただけかしら?少なくとも、今の貴方では何もできない、何も変えられない。瑞鶴、貴方はどうしようもなく無力よ」

 倒れ付した瑞鶴に対し、罵詈雑言を浴びせる翔鶴。それは本心か、それとも…。

 

 

 

そんな時だった。

 

 

「……最っ悪…。ここまでコケにされるなんて初めてよ…」

 それまでずっと黙っていた瑞鶴が口を開いた。

 

「確かに、翔鶴姉の言う通り私は無力…。そんなのとうの昔に分かってる…。結局、私は戦争を止められなかった…。強力な力は必ず争いを起こす。わかっていた事だった…。それでも、私は……。」

 

 それはまるで、自分自身の懺悔の様な言葉。しかし、それでも彼女の目には闘志の炎が灯っていた。それは正にまだ諦めていないという証明でもあった。

 

「翔鶴姉の正義、分からない訳じゃない。寧ろ、他に選択肢が無い事も痛いほど分かってる。けど…、それでも!私にも譲れない正義がある!皆の明日を守る為に、その正義を胸に何度も立ち上がってきたんだ!もし、今ここでその正義を捨ててしまったら、私の…"私達"の背中を押してくれた人達を、"私達"の為に"犠牲"になった人々を裏切った事になる…」

 

 ボロボロになってもその言葉を体現するかのように立ち上がる。そして、艤装だった小刀と赤い小さな鍵を取り出し構える。

 

「だからこそ…、私は私の信じる正義の為に、翔鶴姉を倒す!

 

 

 そう宣言するや否や、小刀の柄に鍵を差し込む。するとどうだろう。瑞鶴の周りに歯車やピストン等の発動機(エンジン)が設置された小さなドックの様なものが出現した。そして鞘から小刀を抜いた。すると発動機が一斉に動きだし、飛行甲板からスクリュー等の艤装を急速に製造し始めた。

 

 艤装が完成した。後は、覚悟を決めた相言葉を叫ぶだけだ。

大きく構えを取ると、瑞鶴は大声で叫んだ。

 

 

 

抜錨ッッ!!

 

 

 

艤装が再び彼女に装着された。

 

 

翔鶴型二番艦、正規空母"瑞鶴"参る!!

 

翔鶴型一番艦、正規空母"翔鶴"来ませい!!

 

 

二羽の鶴が今…。

 

 

「「いざ、尋常に勝負!!」」

 

 

自身の信じる正義を懸けて、決闘が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 




遂に衝突する姉妹!
お互いの正義を懸けてどちらが勝つのか!!


因みに、瑞鶴の艤装装着イメージは仮面ライダービルドのスナップライドビルダーの様なイメージ。

その他の"艦船"はアニメと同じ。


さーて次回のアズレンは~?

「マ○オです。最近コロナウィルスで世間が混乱してしまい、中々気が休まりません。私とお義父さんの会社も休業中なのでずっと家にいます。お掛けで体が鈍ってしまい、体重が増えてしまいました。皆さんもコロナには気をつけてくださいね。さて、次回は。

『カツオ、部活辞めるってよ』
『波平、最後の一本が消える日』
『タラちゃん、マジパネェ』

の、三本です」

来週もまた見てくださいね~。
ジャンケンポン!ウフフ~。


またみてね!

おわり
ーーーー
NNK




次回
Episode15 ―決着―


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。