滅びし世界への鎮魂曲 (パタ13号)
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序章:4つの始まりの鐘 栄転と言うけれど

「はぁはぁ……はっはっはっ……!」

 

少年は走り続ける。後ろを振り返る事無く(・・・・・・・・・・)

 

「はぁはぁ……はっはっはっ!」

 

ほんのちょっと、魔が差しただけなのだ。ダメと言われれば、行きたくなる。ルールを破る事で、満たされる背徳心。”何時ばれるか”という不安とスリル。何が起こるかとワクワクする好奇心と冒険心。彼等(・・)は只、それを味わいたいだけだった。それだけだったのに。

 

「はぁはぁ……あっ!」

 

少年は木の根っこに足を取られ、転んでしまう。そして、後ろにいたモンスターと相対する事となる。

 

「……!」

 

声は出ない。’助けを呼ばないと!’と、’声を上げろ!’と、心が、本能が叫ぶが、体は硬直したままだ。モンスターはゆっくりと近付いてくる。軈て、モンスターの姿がはっきりと見える様になる。潰れた左目。傷付いた身体。破れた翼。異様な姿だ。だが、その姿は少年を震え上がらせ、縮み込ませるには十分だった。

 

「……!!」

 

甘かった。皆がダメと言うのには、理由があったのだ。その理由が目の前にいる(・・・・・・・・・・・)

少年の頭の中を、今日の自分達の行いが走馬灯の様に浮かぶ。

 

 

======

 

 

「森に行こうぜ!」

 

「えっ?」

 

少年の元にやって来たのは、友人の”猫人”である”ポン”。彼は、他にも、数人誘っていたらしく、後ろに引き連れていた。

 

「森か……良いね!でもさ、どうやって、兵隊さんの目を誤魔化すのさ?」

 

「それなら、良い手があるんだ!それはな──」

 

ポンは胸を張りながら、自慢するように、その”妙案”を語り出す。

 

「……成る程!それは良い!じゃあ行こう!善は急げだ!」

 

「そうだな!」

 

子供達は、大人の目を誤魔化しながら、”壁”まで到達する。ポンは周りの大人がいない事を確認した後、大きな岩を叩く。

 

「コレが、俺達の秘密通路だ!この岩の下は、トンネルになっていて、”外”に通じている!オメェら、準備は良いか~!」

 

「アイアイ、キャプテン!」

 

「聞こえないぞ!」

 

「アイアイ、キャプテン!」

 

子供達はすっかり、”冒険者”気分になっていた。この地域は、他の地域に比べ、大きなモンスターが現れる事は少なく──と言うより、ほぼゼロ──、小さな、群れで行動するようなモンスターしか生息していなかった。故に子供達は、守備兵や冒険者が狩ってきた小型モンスターしか見るがなかった。だからこそ、モンスターの恐ろしさを知らなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「……でも、大丈夫かな?最近、大人達が騒がしいよ?」

 

「大丈夫だって!この辺りは小型モンスターしかいねぇんだぜ!?」

 

「……そうだね」

 

臆病なリンが不安を口にするが、ポンや少年達が励まし、リンもそれに納得してしまう。とうとう、子供達はトンネルを潜り、日ごろ大人達から耳にタコが出きるほど注意され、禁止されていた”無断外出”をしてしまった。

 

「うぉ~!スゲェ!」

 

”壁”の向こう側は、森と草原が広がっていた。毎日、街の高い所から何処か別の遠い所の様に感じていた、”外の世界”だ。

子供達ははしゃぎながら、森へと入っていく。この時、森ではなく、草原を目指していたなら、あの悲劇も起こらなかったに違いないのに。

 

 

======

 

 

「……ぁ」

 

少年が見上げると、モンスターの爪が目の前に迫っていた。最早、少年に出来る事と言えば、知れていた。この後、自身の身に起こるに違いない惨劇を見ないために、目を閉じる事だ。

少年は、死んでも目を開けなくてすむように、固く、固く、目を閉じる。

 

「……?」

 

だが、何時まで経っても、来る筈の衝撃と痛みが来ないばかりか、モンスターの唸り声が聞こえたかと思うと、数分ぶりに聞く、”ヒト”の声。

 

 

次の瞬間、何かを切り裂く音と、モンスターの発した苦しむ声が聞こえてきた。少年は、ゆっくりと目を開く。するとそこには、先程まで自身を追いかけていたモンスターと、両手剣を構えた女騎士がいた。

 

「はぁ!」

 

女騎士が叫んだかと思うと、モンスターの質量を生かした体当たりを避ける。そして、避けたと同時に、モンスターの首を背中側から突き刺す。大動脈を切断されたモンスターは大量出血で死亡する。それを確認した女騎士は、少年の元へと歩いて来る。

 

「大丈夫か?少年」

 

「……ぁ……あぁ!」

 

声にならない声で、泣き出す少年。女騎士はそんな少年を抱き締め、’もう大丈夫だ’と優しく声をかける。そんな少年と女騎士の元に一人の騎士がやって来る。

 

「あぁ!ガーネットさん、此処に居たんですか!探しましたよ!」

 

「ルベライトか……捜索願いの出ていた少年は保護した。そちらは?」

 

「こっちも、全員保護しましたよ。その子で最後です。」

 

”ガーネット”と呼ばれた女騎士は”ルベライト”先導の元、少年と共に街へと戻っていくのだった。

 

 

======

 

 

少年達を無事に街まで送り届け、怒涛の如く押し寄せてきた大人達から、心配され、怒られ、安心され、少しばかり混乱している子供達が、無事に自分達の家族の元に、家に帰れたのを見届けた私達(騎士団)は、街の守備隊の駐屯地に移動した。

 

「……しかし、良かったですね~!子供達、全員無事で」

 

「あぁ。だが、あんな抜け道を作っていたとは……子供の好奇心も中々侮れないわ」

 

私達(騎士団)と子供達の帰還後、子供達の作った抜け道は冒険者と守備隊によって完全に埋められた。また、抜け道のあった”壁”の修復も後日、行われる予定だそうだ。

 

「この辺りは、小型モンスターしかいなかったのに……何故、大型モンスターであり、強力なドラゴン種の”バラウール”が現れたんだ?しかも、手負いだった」

 

「今、調査隊が調べてる。だけど、やっぱり、あれ(・・)のせいじゃあないか?」

 

あれ(・・)、か……」

 

”ジェード”の言葉に耳を貸しながら、1枚の写真を手に取る。その写真には、巨大な樹が写っていた(・・・・・・・・・・)

 

「世界樹……一体、何なんだ?この樹は?」

 

今だ謎多き樹に向かって疑問を投げる私の元に、ルベライトがやって来る。

 

「大変だ!ガーネット!」

 

「どうした?」

 

「お前の異動が決定した!」

 

「なっ……!?」

 

私、ガーネットが現在所属しているのは、”ダイフォード王国 近衛騎士団 第2中隊”。騎士団の精鋭が集められた精鋭部隊”近衛騎士団”の中でも、より精鋭が集められた部隊が第1~第3中隊であり、王国最強の部隊でもある。普段は首都圏防衛及び王室防衛を担っている第1~第3中隊の隊員の異動は異例中の異例だった。

 

「……異動先は?」

 

「近い内に発足予定の小隊で……”国際連盟 平和維持軍”内の”第7師団〔独立調査部隊〕”の新たな部隊、”第7小隊〔特殊作戦隊〕”だそうだ」

 

「そうか……」

 

私は、送られて来た書類に目を通す。

 

 

~~~~~~

 

 

国際連盟 平和維持軍

 

第7師団〔独立調査部隊〕

 

第7小隊〔特殊作戦隊〕

 

 

……(中略)現状、第7小隊の主目的は、他の第7師団隷下部隊と同様に、世界樹の迷宮の踏破及び、世界樹の謎の究明である。しかし、第7小隊は〔特殊作戦隊〕として、様々な作戦や依頼を遂行して貰いたい。(中略)このように、他の部隊と比べ、特異な性格の部隊の為、構成隊員は此方が召集した4名の隊員の他に、現地にて、有望な人材を隊員やスタッフとして勧誘・雇う事で、兵力の増強する事を認める。尚、その際、第7師団に報告する事を義務付ける(中略)……

 

 

~~~~~~

 

「……訳が分からない。上は何をしたいんだ?」

 

「まぁまぁ、そう愚痴るなよ。栄転じゃあないか!それに、気になっていたんだろ?世界樹の事」

 

「……少しな。あれ(世界樹)に挑戦してみたいと、知りたいとは思っていたけど」

 

私の発した言葉に、にやついていたルベライトの脇腹に拳を叩き付ける。脇腹を押さえながら立ち上がるルベライトを尻目に、女騎士が駆け込んでくる。

 

「ガーネットお姉様!」

 

「……スピネル、暑い……」

 

「ちっ、レズビアンが来やがった……ブヘッ!?」

 

復活したルベライトに、今度はスピネルが踵落としを喰らわせる。ルベライトは痙攣を起こしながら、床に倒れていた。

 

「ガーネットお姉様!異動しちゃ嫌です!」

 

「スピネル、我々は軍人だ。上からの命令に逆らう訳には「しかも、異動先の部隊は、トレジャーハンターや賞金稼ぎ、魔女に魔術師がいるというではありませんか!」……えっ?」

 

「スピネルの言う通りだ、ガーネット。貴官の異動先の第7小隊は、実力派が多い。職業はバラバラだが、皆、その分野の一流クラスの技量を持っているそうだ。トレジャーハンターと賞金稼ぎは、聞いた事のある奴等だ。魔女と魔術師については……お前も少なからず知っているだろう」

 

私は自分に抱きついていたスピネルを引き剥がし、隊長であるペリドットから渡された書類に目を通す。

 

「……トレジャーハンターのリベル、賞金稼ぎのオーウェン、魔女の真央、魔術師の蒼志……」

 

一連の書類に目を通した感想は、とんでもなくぶっ飛んだ部隊、又はイカれた部隊。どちらにせよ、”国際連盟”は世界樹の謎を真面目に解決する気があるのか疑わしい。”ダンフォード王国”と仲の悪い”南東通商連合”のトレジャーハンターに、”日の本皇国”の皇室関係者に、天皇陛下直下の機関関係者まで入れるとは。兎に角、他の第7師団の隷下部隊と性格が違いすぎる。まるで傭兵やPMCのようね。

 

「2週間後に国際連盟本部にて集まれ、か……」

 

「此処からだと、空港のある”アステラ”に車で行った後、”飛行船”を使うと良いだろう。それでも、国際連盟本部まで5日は掛かる。出発するなら、明日の早朝が良い」

 

思わず、溜息を溢してしまう。今だ離れようとしないスピネルを引き剥がした後、渋々荷物を纏め、出発の準備を始める事にする。

 

「向こうでも、頑張れよ~!」

 

「栄転おめでとう!」

 

「ガーネットお姉様ぁ!イヤァァ!」

 

「おい、スピネル!耐えろ!行こうとするな!」

 

そして、翌日の早朝、私は同僚達に見送られながら、”カレイド”を発ち、アステラへと向かうのだった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても、これは栄転では無く左遷だと思うのは、私がひねくれているだけなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 



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新天地への片道切符

「……ダメだぁ!」

 

「煩いぞ!ソウシ!」

 

ここ最近イラついていた先輩に注意される。先輩は確か……数年間研究していた分野を、別の魔術師に先を越されて全部水の泡になったんだっけ……

 

「……はぁ」

 

調べ物も行き詰まったので、外の空気を吸いに行くことにする。そう言えばここ数ヵ月、ずっと研究室にカンズメで、外に出ていなかったな……ちょうど良かったのかもしれない。

 

「ん?あれは……?」

 

研究所の掲示板に人だかりが?また、誰かが所長の温室に忍び込んでいたのがバレて、見せしめにでもされているのか?

 

「どうしたんだ?」

 

「おっ、ソウシ!見てみろよ、あの貼り紙!」

 

ポンが指差す貼り紙を見てみる。どうやら、それがこの騒動の原因らしい。なんなのだろうか?

 

 

その貼り紙には、こう書かれていた。

 

 

『日の本皇国 魔力研究所 魔法陣研究室所属 大橋 蒼志研究員は、本日12:00に所長室に出頭を命ずる』

 

 

「へっ?」

 

「……ソウシ、お前の事は忘れねぇぜ!」

 

「気をしっかり持てよ!」

 

「GOOD LUCK!!」

 

嘘だろ……僕が何をした?……てか、この”本日”って言うのは、今日の事だよな!?何だ……何なんだ?何が起きている?どうしたら良いんだ?

 

「そう言えば、皇国軍の将校が来ていたぜ」

 

「あと、国際連盟の役人も」

 

「皇国軍!?」

 

待ってくれ……何で皇国軍と国連が出てくるんだ……意味が分からん……

 

「おぉ、ソウシくん」

 

「イェルハルド室長……これは一体?」

 

「まぁ、行けば分かるよ」

 

「えぇ……」

 

イェルハルド室長に連れられて、所長室へ向かう。あの所長、苦手なんだよな……

 

 

~~~~~~

 

 

「……と言うことだ」

 

「いやいやいや!『ということだ』と言われましても……状況が飲み込めないのですが」

 

「詰まる所、君には国際連盟 平和維持軍 第7師団に新たに発足される”第7小隊”の隊員になって貰いたいのだ」

 

国際連盟 平和維持軍の将校──少将らしい──に、簡潔に説明してもらう。うん、訳が分からない。

 

「世界樹の調査の為に魔術師が必要なのは分かりますが、何故……何故、僕なのでしょうか?”平和維持軍”という事、”世界樹の調査”を行うという事は、少なからず戦闘があるという事……しかし、自分は戦闘には長けていません。部隊の足を引っ張る結果になると思いますが……」

 

「自分を過小評価するものでもない。君は、アウルム公国のエスメロード侯爵家の御息女をバラウールから守った事があるそうではないか」

 

「あれはただ……一緒に逃げていただけですよ。それに……」

 

後の言葉を上手く見つけられないでいる僕を見て、皇国軍の将校──此方は中将──が後の言葉を代わりに話す。

 

自分のせいで、部隊を壊滅させた(・・・・・・・・・・・・・・・)、か?」

 

「……っ!」

 

「それなら、安心すると良い。我々もそれを考慮した上での判断だ。()軍人だった君なら、戦闘でも足を引っ張らない様にするには、どうすれば良いか、分かるだろう?それに、君の魔術師としての資質は大した物だよ。ランクは確か……」

 

皇国軍の将校が、必死に僕の履歴書を探していたので、代わりに言うか。

 

「Sランクですよ。一応」

 

「おお、そうだった。Sランクの魔術師は皇国内に30人といない。しかも、その中で()軍人は君を除いて、ゼロだ。他にも、君は魔術師であるのに、鉱物学と生物学、博物学にも精通しているというではないか」

 

「素人に毛が生えた程度ですよ……」

 

皇国軍の将校の話を聞きながら、所長の方を覗く様に見る。所長は、薄く笑っていた。成る程、厄介払いか。

 

「……と言うわけだ。どうだね?やるかね?」

 

まるで、”やる”と”やらない”の2つの選択肢があるように見えるが、それは誤解だ。この質問においての選択肢が

は、たった1つ。”是非、やらして貰います!”だ。断れる訳ない。そもそも、国際連盟と天皇からの命令のようだし。

 

「……はい、やらせて頂きます」

 

「そうか、そうか!ハハハ!では、すぐにでも準備をしたまえ!1週間後に国際連盟本部に来られよ」

 

1週間後って……急な話だな……嫌な予感がする……

 

 

 

 

 

こうして、僕は国際連盟 平和維持軍 第7師団 第7小隊に入隊する羽目になりました。最も、世界樹については調べていましたし、その中に存在する特異な生態系や生物、資源などには興味をそそられるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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とある魔女の憂鬱

 

 

「第7小隊?それに入れって言うの?」

 

「まぁ、そういう事だな!」

 

「そういう事って……はぁ」

 

溜息が出る。いきなり皇居に呼び出されたと思ったら、これだ。全く……この人(今上天皇)は自由奔放過ぎる。幾ら、議会を導入して仕事が減ったといっても……いや、分かっている。この人に”真面目”や”威厳”を求めるのが間違っているのだ。世間では何故か、”フレンドリーな天皇陛下”としてウケているせいで、更に拍車が掛かって……ん?ウケている?ウケるものなの?天皇って。

 

「で、真央ちゃん。受けてくれる?」

 

この国(日の本皇国)の頂点に立っているお方の命令に背く訳にはいかないでしょう?」

 

「うぉ!?真央ちゃんの皮肉だ~!いいね、いいね!」

 

フレンドリーとか、そんな次元じゃあないと思う。先帝陛下は、自分のご子息がこうなる事を予測して、議会を導入したのかも知れない。

 

「……真面目に話して下さい」

 

「……。……古来より、私達(天皇)君達(魔女)は、この国を守護する為に存在してきた。他の全てを擲って、この国の平和と繁栄、国民の幸せの為に。しかし、その掟が定められてから、幾星霜。最早、この掟は時代にそぐわぬ。掟もルールも憲法も、時代に合わせて変化していく必要がある。今が、その時だ」

 

「ごめんなさい。分かりやすく説明してくれる?」

 

この人(今上天皇)は普段通りでいて貰わないと、凄く話がややこしくなる。なんなの一体。

 

「しょうがないな~。簡単に言うと、此処で真央ちゃんを送り出す事で、我が国の外交上の……」

 

「……」

 

「……」

 

「……なんだっけ?」

 

その場の全員がずっこける。”なんだっけ?”はダメでしょう。1国の長として。まぁ……

 

「……まぁ、言いたい事は分かりました」

 

「そうか!そう言う事だ!蒼志!」

 

あの人(今上天皇)がその名を呼ぶと、後ろから声が聞こえてくる。

 

「みたいですね。よかったです。断られたら、どうしようと思ってましたよ」

 

「なっ!蒼志!?」

 

何で蒼志が……ハッ!全ての元凶は蒼志!?いや、それはないか。

 

「それでですね……陛下、1つ、お願いがあるのですが……」

 

「?」

 

蒼志の唐突な発言に、その場の全員が、首を傾げる。蒼志は、真剣な眼差しで、あの人(今上天皇)に向き合う。先程まで蒼志の発していたフワフワした雰囲気は掻き消え、重い空気が漂いだす。

 

「地下の……”地下図書室”への入室許可を頂けないでしょうか?」

 

「なっ!?なにをバカな事を!彼処は皇室関係者でも立ち入りを制限されている場所だぞ!良いわけが!」

 

蒼志の発言に、周りにいた人達はざわついている。そりゃそうね。皇室関係者以外で”地下図書室”への入室許可が出たなんて聞いた事ない。前代未聞。

 

「……。何故、彼処に行きたいんだ?」

 

あの人(今上天皇)でさえ、慎重になっている。彼処は”禁域”。簡単に開けて良い場所ではない。

 

「……彼処は”古代人”が残した物が保管されている、と聞きます。自分が調べた結果、”世界樹”には、”古代人”が少なからず絡んでいると思われます。ならば、”古代人”の”遺物”で溢れている”地下図書室”に、”世界樹の謎”解明の鍵があっても可笑しくはないと思うのです」

 

「それが”地下図書室”に行きたい理由?」

 

「はい」

 

蒼志が”地下図書室”に行きたい理由を聞いたあの人(今上天皇)は目を瞑り、唸っている。あの人(今上天皇)がここまで悩むなんて。確かに、”地下図書室”は天皇の数少ない(・・・・)私有物とされているけど……

 

「……そうか。だったら、行って良いぞ」

 

あの人(今上天皇)の発言に周りにいた人達は、青ざめ、慌て、反論する。だけど、あの人(今上天皇)が一喝し、皆が押し黙る。

 

「最早、猶予がない事は、皆分かっている筈。今は可能性のあるもの、全て試す必要がある。蒼志、真央。付いてこい。他の者は、各々の仕事に従事してくれ」

 

 

======

 

 

「あぁ~。天皇って、疲れる~」

 

「大広間と大違いですね……」

 

自分の願いを聞き入れた後と今のギャップの差に、蒼志が驚いている。そんな事など、気にもせず、あの人(今上天皇)は、ある大きな扉(・・・・・・)の前で立ち止まる。

 

「此処が、”地下図書室”……」

 

「そうだ。此処、”地下図書室”の扉は特殊な術がかけられ、天皇以外の人間には開けられないようになっている。それじゃあ、少し下がっていてくれ」

 

そう言われて、私と蒼志は一歩後ろへ下がる。それを確認した後、あの人(今上天皇)は、両手を掲げ、呪文を唱え出す。それに反応してか、扉に描かれた陣が輝き始める。呪文は恐らく、上代日本語。発音は詳しくは知らないけど、単語は上代日本語に近い。

 

「キャ!?」

 

輝いていた陣は時計回りに回り始め、輝きが一層強くなる。最早、直視できない程に。軈て、光が落ち着きを取り戻すと、回り続ける陣は2つに分裂して、左右に固定される。その後、扉はゆっくりと、引き戸の様に左右に別れ、地下図書室への道を開ける。

 

「良し、行くぞ」

 

そして、私達は地下図書室へと足を踏み入れたのだった──

 

 

 

 

 



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新たなお宝を求めて

 

「……でさ。って聞いてるか?リベル」

 

「ごめん、ごめん。飯に夢中で聞いてなかった」

 

「おい!折角、人が親切に”アムール迷宮”の情報を話してやってんのによ!」

 

「だって、失敗談じゃん」

 

俺の言葉に、相手の冒険者──クリス──が怒りを露にする。

 

「クソッ!そうだよ!それでもな!初めてB5階層まで到達したのは俺だぞ!?俺!」

 

「それでも、”エロースの黄金”は別の冒険者に取られたんだろ?」

 

「あぁ……そういえばさ、そのパーティー、全滅したらしいぜ?」

 

クリスの言葉に、興味をそそられた俺は今まで話半分に聞いていたが、真剣に耳を傾ける事にする。

 

「全滅?あのパーティーはそこそこの実力者だったろ?」

 

「そうだ。だがな、他の街へ移動中に惨殺されたようだ。警察は山賊の仕業だって言っているが、俺はそうは思わねぇ」

 

やけに自信を持って言い切るクリスに疑問をぶつける。コイツの話は怪しいのもあるが、大半は信頼できる。となれば、俺も無視できない場合もあるな。

 

「なんでそう言いきれるんだ?」

 

「俺は、偶然……偶然だぜ?本当に偶然だ」

 

「そう言われると、反って怪しい」

 

「まぁ、信じてくれ。で、その死体と現場を見たんだけどよ。あれは絶対に人には出来ない殺り方だぜ」

 

まぁ、偶然なのは信じるとして……何故言い切れるのか……絶対に人には出来ない殺り方?

 

「あれはまるで、天罰だ。上から魔法が放たれていたぜ。馬車や木も上から焼かれたり、縦に裂けていた。だが、俺達(人類)は、一部の例外を除けば、自分の手元からぐらいしか魔法や魔術を放てねぇ」

 

確かに、強力なモンスター──例えば、各階層のボスとかダンジョンの守護者など──や、魔法使い、上級魔族、一部の魔術師以外は天から魔法を放つなんて事は出来ない。そんな芸当が山賊に出来る筈が無いな。

 

「成る程。それでその話はそれだけか?」

 

「いいや、まだあるぜ。そのパーティーが全滅してからな、奇妙な事が起こっているんだ」

 

「どんな?」

 

パーティーの謎の全滅だけでも十分だが、他にもあるのか。

 

「パーティーの回収したはずの”エロースの黄金”が行方不明なんだよ。まぁ、これは誰が盗んだのだろうけど、問題なのは”アムール迷宮”のほうだ」

 

”エロースの黄金”を盗んだ所で、真っ当な所は買い取ってくれないだろうな。だけど、裏社会の方なら買い取ってくれそうだ。まっ、俺は裏社会と繋がりはねぇけど。

 

「”アムール迷宮”がどうしたんだ?まさか、地形が変わったとか言うんじゃn「なんだ、知っていたのか?」……マジか?」

 

「マジだ。”アムール迷宮”周辺の街は大慌てだ。折角、貯めた資料が全て無駄になったからな。今、冒険者を総動員して、調べ直しているらしい。報酬額も悪くねぇし、どうだ?」

 

ふ~ん。報酬額も悪くない。だけど、彼処は不気味な迷宮なんだよな……基本的にアンデッド系なんだよな~。行きたくない。

 

「止めとく。お宝がないんだったら、行く意味がなぁ~」

 

俺の言葉にクリスは溜息を付きながら、賛同し、別の話を持ちかける。

 

「そうだよな……また行って、その情報が無駄にならないとも限らねぇしな。それじゃあ、”世界樹”はどうだ?彼処には、”世界樹の秘宝”があるらしいぜ?」

 

「世界樹か……何処の世界樹の事だ?」

 

「さぁ。ただ、調査率で言うならば、”セイバの世界樹”だろう。彼処は第三階層まで調査が進んでいる。他の世界樹は第二階層止まりだ。行くなら、”セイバの世界樹”をオススメ……ん?誰だ?あんたら」

 

クリスは俺達の元に歩いてきた軍人に声をかける。ここにいるって事は……南東通商連合軍か。

 

「トレジャーハンターのリベル殿を探している。知っているか?」

 

「リベルなら……此処に居るぜ」

 

クリスが俺を指差す。軍人は俺の方に向き直って、話始める。

 

「これはたいへん失礼しました。貴方がリベル様と。早速なのですが、私と共に駐屯地まで来ていただけないでしょうか?」

 

「駐屯地に?何でだ?」

 

「此処で話す事は……兎に角、駐屯地の方まで来て頂きたいのです。そちらの冒険者の方も一緒でも構いません」

 

俺とクリスは顔を見合わせる。話の雰囲気からして、俺達を処罰しようって事では無いようだな。俺達は、訪ねてきた軍人に完全武装した上での同行を承諾して貰い、駐屯地に向かう。

 

 

======

 

 

軍の駐屯地に来た俺達は、”国際連盟”の役人の話を聞いていた。

 

「”第7小隊”?」

 

「そうです。”国際連盟 平和維持軍 第7師団 第7小隊”……そう言えば、”第7師団”の役目はご存じでしょうか?」

 

「確か……”独立調査部隊”だったな」

 

クリスの言葉に、役人は大きく頷く。

 

「その通りです。元々”第7師団”は他の師団と異なり……否、施設・災害処理を担当する第6師団の様に、戦闘以外の物に重きを置いています。各師団の任務は、その資料を参考にしてください」

 

 

~~~~~~

 

 

国際連盟

 

 

平和維持軍

 

 

師団名               任務           主力部隊  

 

第1師団〔平和執行師団〕     治安維持         歩兵・騎兵

 

第2師団〔強制執行師団〕     治安維持         騎兵・砲兵

 

第3師団〔予防展開師団〕     紛争処理(魔物討伐)   歩兵・空挺

 

第4師団〔強制介入師団〕     紛争処理(魔物討伐)   騎兵・砲兵

 

第5師団〔防衛執行師団〕     魔物討伐         歩兵・騎兵

 

第6師団〔平和維持師団〕     施設・災害処理       工兵

 

第7師団〔独立調査師団〕     世界樹調査         ──

 

緊急即応待機旅団〔多国籍有志軍〕 即応展開          ──

 

 

~~~~~~

 

 

「んで、俺の部隊は、第7師団だと。第1、第2、第6師団は魔物や世界樹には、関与しないのか?」

 

「えぇ……本来、魔物関連に対処するのは第5師団の役目。しかし、世界樹の出現後、”魔物の異常行動”が多発。第5師団のみでは、対処出来なくなり、段階的に紛争処理担当の第3、第4師団にも頼む様になったのです」

 

「第1、第2師団は?その2個師団にも応援を頼めば……」

 

「現在、第1師団は”アルゲントゥム国”に介入、第2師団も、”グルニカ王国”に介入予定ですので……」

 

役人の話に、クリスが疑問を抱いた様で、地図と資料を取り出して、テーブルに広げる。

 

「それは可笑しくねぇか?グルニカ王国は15年前、フェッルム帝国の侵攻を受けて壊滅。国王及び王室関係者は全員、行方不明。(王室)を失った(王国)は急速に衰退。今は、紛争や過激派、武装組織の略奪やテロが頻繁に発生しており、国情は最悪。危険地域と化している筈。介入させるなら、第4師団じゃあねぇか?」

 

「まぁ、そうなんですが、第2師団は”アウルム公国”と”ピングウィス国”の国境沿いの治安維持ですから……それよりも、第7小隊に入って貰えますでしょうか?」

 

話を戻してくる役人。世界樹の秘宝……興味が湧いてきたな!部隊の隊員は、それぞれの分野の一流だと言うし、単独だったり、現地で集めた冒険者よりも良さそうだ……良し!

 

「引き受けるぜ!その依頼!」

 

こうして、俺は第7小隊に入隊する事になった。前金として、500万So貰い、国際連盟本部へと向かった──

 

 

 

 

 

 

 

 



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