blank page (瀧音静)
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プロローグ 追う者(チェイサー)

ハーメルンでは初投稿です。
ノゲノラが好きすぎて妄想が爆発したので突発的に書きました。

原作が難しい事もあり、マイペースでの投稿となるかと思いますが、温かい目で見守ってくれるとありがたいです。


 ――『都市伝説』。

それは一種の願望。世の中がこうあれば面白いという人々の願い。

 

 しかし、ネットワーク社会として様々な映像や画像、噂がリアルタイムで飛び交うようになったこの世の中において、古い、昔からある様な都市伝説は淘汰(とうた)され、新たな都市伝説もまた、産まれてくることは難しくなっていた。

 

 そんな世の中に突如として現れた……いや、産まれ出て来たというべきか。

新しい都市伝説は、聞いた人の心を躍らせるようなものだった。

 

 『  (くうはく)』と呼ばれる多くのゲームの頂点に立つ無敗のゲーマーの存在。

しかし、残念な事にと言うべきか。調べて出てくるのはとあるライトノベル小説のみ。

 

 数多(あまた)の都市伝説の答えは全て、つまらないものと言われているが、この都市伝説の出所もまた、二次元の話というつまらないものであった。

 

 それでもこのライトノベル小説を読み、影響を受けたものは少なくないらしく、あらゆるゲームやアプリのプレイヤー名に『  (くうはく)』を使用する者は激増した。

激増はしたがやはり二次元キャラのようにはいかず、黒星がいくつも付いているプレイヤーが当たり前となっていた。

 

■■■

 

「また負けた……。段々不毛な気がしてきたなぁ」

 

 真っ暗な、スマフォの明かりだけが光る部屋の中で布団にくるまったまま何やらアプリを続ける女性が1人。

ついこの間まで大学生だった彼女は、卒業後も定職に就かず適当なバイトをこなしながらダラダラとした生活を送っていたのだが……。

 

 暇つぶし、と友人に進められたライトノベル小説にどっぷりとハマり、果てには推しキャラまで作り、しかもその作品に影響されて今までやっていたアプリのアカウントを消し、無敗のまま頂上に登り詰めるという狂気としか思えない事を現在進行形で行っている。

 

 全ては、そのドはまりした作品の中の設定にある異世界へ渡る方法を達成するため。

もちろん二次元の話であるし、それがこの現実世界において起こるとは思えない。

だが、一度目標を決めた彼女は誰が何と言おうと耳を貸さずに、一心不乱に注力した。

 

 無課金で、無敗で、ランキングのトップに立つ。

すなわち『  (くうはく)』と同じくゲームを極め、それを見せつける事で。

いるかどうかすら定かではない遊技の神様に見つけて貰い、異世界へと渡る為に。

 

 そんな決心から幾星霜(いくせいそう)、人間の精神力というか、思いというか、それは不可能を可能にする事すら出来るものであり、もはや何度アカウントを消したかすら分からぬ程の挑戦を経て、彼女は成し遂げた。――成し遂げてしまった。

 

 スマフォの画面に表示されるのは、文字通り無敗の戦績でランキングトップに立つ彼女の操るアカウントで、『blank(くうはく)』と名付けたプレイヤー名だった。

 

「はー――、長かったー。けど達成感凄いー。何事も諦めないってのは本当に大事なのねー。……なんだっけ? 挫けぬ限り、そこに敗北はあり得ない♪」

 

 ランキングトップをかけた最後の戦いが酷く長引いた、されども名勝負だった、という事もあり、彼女の頭を巡るエンドルフィンがもたらす幸福感に浸っている時であった。

 

 ヴー、ヴー、ヴー

と、手に持つスマフォが振動し、メールが来た事を示す。

 

 もう何年もの間使用していなかったメール機能。LINEやDiscord、果てはTwitter等々、メールが廃れる理由は多々あり、彼女もまたそういったアプリを活用していたからだ。

しかし、今更になってのメール機能。

 

 震える手を操って、ずり落ちた眼鏡を指で押し上げながらメールアイコンに触れ、今しがた来たばかりのメール内容を確認すれば――。

 

 【件名:『blank』へ】

 【本文:そこまでして僕の世界に来たいのかい?】

 

 そしてそのメールに添付されていた1つのURL。

 

 紛れも無く、自分が夢見たそのメールは遊技の神に認められた証。

 

「しゃぁっ! 第一関門突破ぁっ!」

 

 思わずガッツポーズを決めた彼女はしかし、URLに触れることなく一度深呼吸し自分を落ち着かせる。

そして、メールの送り主に()()()()

 

【本文:()()()()()】 と。

 

 即座に返って来たメールの内容は彼女にすら容易に想像できるものだった。

 

【本文:どこでそれを知ったのかな? いいよ。何で勝負するんだい?】

 

 一瞬の戸惑いと、遊技の神として、また盟約を制定したものとして、先ほどのメールの内容を挑発と判断した神は、真正面からねじ伏せる事を選んだ。

 

 それから彼女が提案したゲームを遊技の神が認め、また新しくURL付きのメールが届く。

しかし、()()()()()U()R()L()()()()()()()()()()

 

 今度のメールの内容もまた、遊技の神への挑発。

 

【本文:私が勝ったら、願いを叶えて欲しい。【盟約に誓って(アッシェンテ)】】

【構わないよ。じゃあ僕は、今回のこのゲームを今後も僕が使う許可を貰うとしよう。【盟約に誓って(アッシェンテ)】】

 

 メールで交わされた盟約に誓った賭け。

それを確認し、彼女はようやくURLに触れる。

スマフォの画面に出てきたのは何の変哲も無いチェス盤で、相手が黒、こちらが白。

遊技の神を自覚しているが故の後手であり、先手のミスがあって初めて引き分ける事の出来る黒は相手の自信の程を表していた。が、それは通常のチェスに限った話。今回の()()()()()()においてはその限りではない。

 

 初手で中央のポーンを進めた彼女の手から、神との遊技が始まった。




ご愛読ありがとうございました。

今後もゆったりペースで更新していけたらなーと思います。


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渡航者(トラベラー)

これ以降しばらくはゲームは出ないと思われます。

ゲームを考えるの難しいっす。


 最初は何の変哲も無いチェスで。

お互い何の滞りも無く進めていた盤上は、やはり、と言うべきか。遊技の神の有利によって展開は進んでいく。

 

 かつて、チェスのコンピュータプログラムを相手に20連勝をした『  (くうはく)』の白ですら、彼の引っ掛けや戦術といったプレイングに絡めとられたように。

彼女程の頭脳ですら、相棒の空を必要としたように。それほどまでに遊技の神は圧倒的だった。

 

 そんな圧倒的な存在の一手は、散々逃げ回ったナイトを打ち取る為に進めたポーンは、()()()()()()()()()()()()()

 

 そんな展開を予め分かっていた『blank(くうはく)』は、間髪入れずに次の手を指す。

今度はビショップを動かす為の布石となる一手。

相手へ手番を移しても、これまで通りのノータイムというわけにはいかず、しばらく考えて――ようやく次の一手を指すが……。急に攻め気を無くし、守りの為の布石としたその一手を見て、『blank(くうはく)』はほくそ笑む。

 

 まだ、遊技の神はルールを把握しきれていない様だ。少なくとも、()()()()()()()()()()()をすべて把握するには至っていない様で。

 

 今の内に荒せるだけ荒そう、と敵陣のど真ん中にナイトを動かす。

先程と同じく遊技の神はポーンで打ち取ろうとする。が、結果は変わらず、逆にナイトに打ち取られる始末。

 

 彼女と同じ盤面を見ている遊技の神、その二人の画面の上にアナウンスが表示される。

 

{黄金の鉄の塊で出来た騎士(ナイト)が、皮装備の歩兵(ポーン)に遅れを取るはずがない}

 

 と。

 

 一瞬ずっこけそうになった遊技の神は、一瞬で落ち着きを取り戻し理解する。

ナイトは、ポーンでは打ち取れぬ。と。

一度だけ返り討ちにする特殊能力かと思い2度、ポーンで取ろうとしたが、どうやら読み違えたようだ。

 

 彼女の設定した能力を、まるで見ずに魔法を編んで設定したこのチェスは、遊技の神にしては珍しい初見のゲームであり――、同時に心躍るゲームであった。

 

 知らないゲームを、ゲーム中に理解し、そのゲームに精通した者を打ち倒す瞬間は何物にも勝る瞬間だと彼は考える。と、同時に他の駒の能力にも思考を巡らせる。

 

 ナイト、つまり騎士があの能力ならば――、僧正(ビショップ)は? (ルーク)は? 女王(クイーン)は? そして――歩兵(ポーン)の能力は……。

 

 想像を巡らせながら遊技の神は、先程の守りの一手を自ら崩す。完全な攻めの一手へ転じ、相手の出方を、そして駒の能力を伺う為の大胆な一手。ビショップのただ捨て、である。

 

「――っ!?」

 

 思わず爪を噛み、やられた。と思う『blank(くうはく)』であったがこのビショップを取らないわけにもいかず、相手の思惑の中と知ってもなお、取るしかない一手を指した。

ここから、再度遊技の神に盤上は支配される事となる。元々ポーンでナイトが取れないという普段と違う展開のせいで狂った歯車なだけに、別段駒の動きに変化が無くなれば元に戻るのは道理であった。

 

 じりじりと押され始めた展開からすでに20数手、盤面の有利は明らかに相手、ここからひっくり返すのは中々に至難の業のはずなのだが……。『blank(くうはく)』はゆっくりビショップをタップして――、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 瞬間、ビショップの移動可能範囲を塞いでいた遊技の神のポーンとナイトは、()()()()()()()()()()()

 

{この素晴らしい盤面に爆炎を☆}

 

 画面上に現れたアナウンス、そして相手は駒を動かしていないのにこちらに手番が回って来た事を踏まえて。そして同じくビショップを元居たマスに置き直しても同じことが発動しなかったことで遊技の神はビショップの能力を把握する。

 

 すなわち、一定の手数動かさない事で行動可能のマス上に居る相手の駒を打ち取れる能力。

この為に彼女は最初から中々ビショップを動かさなかったわけだ。

と一人感心して頷く遊技の神は、ならば、ともう一方の動かしてないビショップの行動可能マスに入らないよう注意を払いながら進めていく。

 

 未だに盤面は遊技の神有利ではあるが、情報優位性(アドバンテージ)はどう考えても『blank(くうはく)』にあった。

その情報アドを発揮させないよう、一気に勝負を決めようと王手(チェック)をかけた。……かけた筈だった。

 

{俺は悪くねぇっ! だって! ヴァン先生がっ!!}

 

 キングに隣接したルークの能力として映し出されたアナウンスは……ルークはルークでも違う赤毛(ルーク)のセリフであった。

思わず眉を(ひそ)めた遊技の神は、王手(チェック)のかかっていない今の状況を静かに、冷静に分析する。

 

 つまりは城。ルークに隣接したキングは籠城(ろうじょう)している、と捉えるべきか。

先に城を退かすか、あるいはルークとの隣接から解除しなければ王手(チェック)すらかけられない。

中々に厄介だね。と思わず小さく(こぼ)した遊技の神は心底楽しそうに微笑んだ。

 

 そこからは異様とも言えるような展開だった。

キングをルークに守らせ、王手(チェック)がかからない事をいい事に、相手の駒を次々取っていく『blank(くうはく)』と、何としても王を守る城を落とそうと、多少の犠牲覚悟で攻め込んでくる遊技の神と。

 

 ようやく両の城を落とした遊技の神は、今度こそ、と王手(チェック)をかける。キングに逃げ場は無く、周りにあるのはたった一つのポーンのみ。『blank(くうはく)』に残された駒は遠く離れたクイーンしか無く、事実上の詰み(チェックメイト)。しかし、これで終わるとは遊技の神は全く思っていなかった。

 

 そして、それは大当たりであった。

 

{私が死んでも、代わりは居るもの}

 

 ()()()()()()()()()キングへの王手(チェック)を防ぎ、今度は遊技の神が逆に追い詰められる。

元々無茶気味の攻めであり、これまで2桁回数は王手(チェック)(かわ)されたが故に、すでに盤面はボロボロな無残な状態で。

 

 それでも遊技の神は攻め手を休めない。最早最後まで、詰み(チェックメイト)まで読み切っているからで、それは『blank(くうはく)』も同じ事。

最後まで読み切ったが故に指す手に躊躇いは無く、二人の思考はここだけ重なる。

 

(勝った)

 

と。

 

 最早何度目か分からない今度こそ、それこそうんざりする一歩手前まで行きついた王手(チェック)、そして詰み(チェックメイト)へと続く手は。今度こそキングを確実に打ち取った。

思わず天を見上げて、ようやく終わった、と()()()をした遊技の神の目には、画面上部に映るアナウンスの文字が飛び込んできた。

 

{今日から私の国は女王(クイーン)を中心とした国家へ生まれ変わります}

 

 それは、遊技の神の敗北を決定付けるアナウンス。

 

 絶対に勝ちを確信した、紙一重の勝利を手繰り寄せた遊技の神は、最後の最後、クイーンの能力によって紙一重ですら、ましてや勝利ですら無くなった。

 

 すでに遊技の神のクイーンは打ち取られ、ルークも、ポーンもキングの隣接マスに無く、詰み(チェックメイト)を突き付けられた遊技の神は、思い切り歯噛みしながら。

 

【You are Winner】

 

 の一文を『blank(くうはく)』へと送り付けるのだった。

 

―――――――………………

 

【まさか本当に負けるとは思わなかったよ。でも楽しかった。それじゃあ君の願いを聞こうかな】

【私の願いは、『  (くうはく)』達の近くに飛ばして欲しい。これだけ】

【おや、謙虚と言うかなんというか。もっとトンデモナイ事を言われるかと思ったよ】

【私がディスボードへ行きたい理由は一つだから】

【ふーん。ま、楽しく見物させて貰うとするよ。……名前を聞いてもいいかな?】

皆夢(かいむ)。あんまり好きじゃないからカイ、とでも呼んでくれるかしら】

【カイ、ね。君がどんな物語を作り出すか、あの二人と共に楽しませて貰うよ。もう知ってると思うけど、僕はテト。ディスボードの唯一神、テトだよ】

星杯(スーニアスター)を手に入れた、全知全能の存在】

【そこまで知ってるんだ。ふふ、いいねぇ、いいねぇ。それじゃあカイ、君の望みが叶うよう、応援しているよ?】

【私も、あなたの望みが叶うよう、あの二人が、あなたの希望の通りに動くよう、願っているわ】

【それじゃあ】

 

「ようこそ! 盤上の世界、ディスボードへ!!」

 

■■■

 

 その日、一人のゲームプレイヤーがひっそりと姿を消した。

無課金で、無敗で、とあるアプリで頂点を取ったその存在は、やっぱり、プレイヤーアカウント名はくうはく、であったという。




連日投稿とかかましましたけど、以後話の展開を考えながらなので気長にお待ちください。


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1章 ゲーマー少女は欲望の為に進むそうです 報告者(リポーター)

 エルキア王国、首都エルキア――中央区画一番地。

つまり、エルキア王城。その王の寝室でカーテンを閉め切り、窓の外の景色をまるで気にせずに二人で一台のゲームを仲良くプレイする二人。

 

 空。――十八歳・童貞・非モテ・コミュニケーション障害・ゲーム廃人。そしてエルキア国王。

 白。――十一歳・友達無し・いじめられっ子・対人恐怖症・ゲーム廃人。けれどもエルキア女王。

 

 普通の兄弟とはどう見ても思えない対照的な髪の色。そしてお互いに整った顔立ちではあるのだが、それを台無しにするほどの濃いクマ。そして身なりをまったく気にしていないボサボサの髪。

 

 普通の人が見ればこんな二人が国王と女王ならば国の終わりと嘆く事だろう。

だが、ここは盤上の世界、ディスボード。この世界におけるこの二人は人類種(イマニティ)の希望。

 

 そんな二人の元へ空間を繋いで、虚空を出現させて、ひょっこり顔を出す『天使』のような存在。

頭上には、幾何学的な模様を描き廻る光輪と。人を浮かせるには小さすぎる、淡く輝く羽を腰から生やした少女。

天翼種(フリューゲル)の『最終番個体(クローズド・ナンバー)』ジブリール。

  (くうはく)』達に忠誠を誓う位階序列第六位のデタラメの一体、そんな彼女が『  (くうはく)』の所へ現れたのはとある報告をする為で。

 それは『  (くうはく)』達の興味を引く内容であり、

 

「マスター。空から女の子が!」

「「五秒で受け止めろ!!」」

 

 もの凄くネタにされた形で報告された。

 

■■■

 

 ジブリールが普段過ごしているエルキア王国図書館。

その中央に置いてあるテーブルの上に、その女性は寝かされていた。

 

 無造作に腰辺りまで伸ばされた髪・整えられていない眉・うっすらと頬に散りばめられたそばかす・そして、視力が悪いことを強調するような分厚いレンズの眼鏡。

 

 ディスボードの世界で様々な美少女や美女と顔を会わせてきた『  (くうはく)』達にとって、初めてとも言える美人過ぎないその女性は、何やらむにゃむにゃと、寝言を言う。

 

「絶対に…………逃がさない」

「いや、発言怖ぇわ。寝言で言うことか?」

「兄……気を……つけて」

「妹よ、何に気をつけろと? どう見ても人間だろ?」

「噛む……かも? ステフ……みたい……に」

「マスター達の中のドラさんの扱いが少し不憫に感じますが、私からも警戒する事を勧めいたします」

「なんかあんのか?」

「いえ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()精霊回廊を感じる事が出来ませんでした」

 

 一定の距離を保ちつつ会話をする3人。

この中で、特に横たわる女性を警戒しているジブリールがそう告げた時である。

 

「ジブリール、精霊回廊を調べたっつー事は、だ。あれの性感帯を触ったって解釈でいいのか?」

「はい。その通りでございますが、それが何か?」

「ジブリール! 今すぐ性感帯を触った時の感触、反応、手触り、柔らかさ、その他諸々お前が表現可能な限界にまで挑戦してレポートを提出するように!!」

「兄……18禁……ダメ……絶対」

「よく考えろ妹よ。ジブリールは俺らの所有物だ! その所有物からの報告を受けとるのは所有者の義務! そして報告という点において言わせて貰えば病院のカルテ等ともはや同義!! なればそこに18禁なる縛りなぞは無いのが必然だ!!」

 

 独自の発想を飛躍させ、何とかこの世界に(とぼ)しい夜のお供を手にせんとする残念な童貞は、声高々に拳を突き上げながら力説する。

 

 しかし、そんな熱く力説する兄の空を冷ややかな目で見ながら白は、

 

「ジブリール……報告は……『  (くうはく)』名義に……する。これで……白だけの……確認でも……構わ……ない」

 

 と兄の力説をまるで無視する命令をジブリールへと下した。

 

「無慈悲過ぎるだろマイシスター!? つか『  (くうはく)』名義なら二人で一人なんだから白だけの確認だと半人分の勘定になるからダメだ」

 

 それでも諦めきれず、屁理屈を持ってオカズを手に入れようとした空であったが――

 

「0.5人なら……四捨五入……で……一人。ふふ……論破」

 

 同じく屁理屈で返されて、この夜のオカズが空の手に渡る機会は金輪際(こんりんざい)失われることとなった。



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提案者(プロポーネント)

「ふふ、さてーー彼らとは出会ったけど、ここからどうなるのかな? 楽しみだね。ーーそうだ、暇潰しにエルキアに行ってみるのもいいかもしれないね」

 

 ディスボードにそびえ立つチェスの駒を()した塔。その上に座り地上を見つめながら、唯一神テトはそれまで(つづ)っていた物語とは別の物語を記す為、筆ペンを走らせる。

 

 まっさらな(b)(l)(a)(n)(k)( )(p)(a)(g)(e)、そこにどんな展開が記されることになるのか、とテトは一人心を踊らせる。

 

 この後、人類種(イマニティ)の姿となり、エルキアに(おもむ)いたテトが、力尽きて初瀬いづなに発見されるのは、もうしばらく後の話である。

 

 

「ん。えぇと……?」

 

 『  (くうはく)』達がそんなやり取りを行っていると――ようやくテーブルの上に横たわった女性が上体を起こす。

 

 一気に警戒を強める三人をよそに、その女性は辺りを見回してーー

 

「あ、ここジブリールのところか」

 

 と一人納得したーー瞬間である。

音も無く、風すら発生させず、目にもとまらぬ速度でその女性へ接近したジブリールは、かつての大戦以来となる出番を虚空より取り出した鎌に与えた。

 

 脅しの為に、どうせ盟約により殺傷行為が出来無い故に、かなりの勢いで彼女の首へと鎌を沿わせる。

 

 しかしーージブリールの予想を裏切り、手に伝わるのは首の皮を切り裂く僅かな感触で。慌てて鎌を引けばうっすらと刃に赤い色が広がっていく。

 

 首の皮を切り裂かれ、血を流しながらもまるで動じない女性へ向けて空が声を掛ける。

 

「大丈夫か? 悪いね、うちの従者が傷付けちゃって」

 

 悪気が有るならもう少し慌てるのであろうが、そもそも血を流しているということは一度受け入れた、ということで。

あのまま殺されることすら構わなかったと覚悟を決めた証であり、

 

(何者だよ、こいつ)

 

 それらを踏まえて空の思考の中で、かなりの要注意人物へと位置付けられた。

 

「ジブリール……止血……する……の」

 

 怪我をさせた相手そっちのけで思考に意識を落とす兄に代わり、白がジブリールに手当てを命じて、

 

「かしこまりました」

 

 恐る恐る女性の首筋に指を()わせ、傷を塞いでいくと。

 

「んぅ……」

 

 と何やら(つや)のある吐息が漏れて、

 

「そういえば、先程触らせていただきました時は首筋の反応がよろしゅうございましたね」

 

 とのジブリールの言葉を聞いて、空は思考を放り出して女性を凝視する。

 

「兄……その反応……童貞臭い……」

「そりゃ童貞だからな! つか女性のあんな声聞いたら童貞だろうが非童貞だろうが男なら反応するわ!!」

「きゃー、の◯たさんのエッチー」

「んな棒読みで言われても……。ーーんで? あんた誰?」

「私? 皆夢って言うの。カイって呼んで、空と白」

 

 何気無い、ただ知っているから呼んだ二人の名前。

しかし、自己紹介どころか面識すら正真正銘今日が初めての顔合わせ。

当然警戒は更に強まる訳でーー。

 

「さっきからさ、俺らの事知ってるみたいだが? どこで知ったよ? そら俺らは全権代理者で有名だろうがーーこの図書館がジブリールのものってのはどこ情報だ?」

「ついでに……ドラ◯もんネタ……、本当に……異世界人……?」

 

 兄妹二人からの質問に、カイは、んー。と唇に人差し指を押し付け首を傾げてーー

 

「ゲームをしよう。って言ったら……怒る?」

「内容によるな。後は賭けるものにもよる」

「だよねー。私が勝ったらーー私の説明を信頼を持って信じて欲しい」

 

 今ここで仮に自分の状況を説明したとして、この『  (くうはく)』は自分の事を他国のスパイだと疑っているに違いない。

それを解くには、盟約に頼るのが一番だ、とカイは判断した。

 

「んならこっちが勝ったら、俺らの質問に答えてくれ」

 

 あっさりカイの要求を飲んだ空が相手に突きつけた要求。

それは、

 

「空得意の含みすぎた要求ね。質問の数、質問する場所や時間、果ては内容全てに触れずに質問に答えろ、か」

 

 今まで散々使ってきた空の常套手段であった。

それを踏まえて、

 

「了解、お互いの要求はそれでいいわ」

 

とカイは了承した。

 

 (本気で何考えてんだこいつーー、敗け無い自信の現れか? それとも……)

 

 既に勝負は始まっている、と思考を巡らせる空の代わりに、白がカイへと質問する。

 

「勝負内容……決めて……無い。……何で……勝負する?」

「内容はこっちが決めていい? ……ですか?」

「何で急に敬語になるよ?」

「そういえば二人は国王と女王だったのを思いだしまして……ご無礼をお許しください」

「いいよタメ語で。つか俺らより年上っしょ? 俺らは身分が高い。カイは年齢が上、お互いタメ語の無礼講って事で」

「うん、知ってた。そんな反応してくれるって」

「知られてる、ってのは滅茶苦茶やりにくいな……。ま、いいか」

 

 少しニヤケながら頭を掻く空。

 

「好きな勝負ぶつけて来いよ。知ってるだろうが『  (くうはく)』に敗北の二文字はねーぜ?」

「ねー……ぜ」

 

 そして、空と並んで仲良く親指を立てて手を突きだした白。

その二人を微笑ましく思い、こちらも思わずニヤケたカイは、

 

「変則ブラックジャック、なんていかが?」

 

 と、イカサマを仕込んでなおそのイカサマを利用されてステフが負けたゲームを。

特殊なルールに変えて提案したのだった。



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blank(チャレンジャー)

・ディーラーは存在せず親がトランプをシャッフルし裏向きのまま上から2枚を場に置く。

 

・親が先に4~20までの数字を1つ宣言する。その後、子が4~21までの数字を1つ宣言する。

 

・お互いにポイント初期値は50とする。

 

・両者宣言を終えた後、伏せられたトランプを表向きにし2枚のトランプの数字の合計と宣言した数字の差分、お互いにポイントを失う。

 

・数字の数え方はブラックジャックと同じとする。ただし、Aに関しては11固定とする。(10~13に関しては全て10とする)

 

・親は一回毎に交代する。

 

・全ての処理は親から行うものとする。

 

・場に出たカードの合計が21であり、かつ子が21を宣言していた場合、親は数字の差分とは別に、その時の子が、それまでに失ったポイント分をさらに失う。

 

・ポイントを全て失った場合、敗北とする。また、トランプを全て使いきった場合、その時の残ポイントの多い方を勝ちとする。

 

 以上がカイの提案した変則ブラックジャックなるゲームのルールだった。

 

 1つ1つをタブレットにメモしながら空が尋ねる。

 

「これトランプ何組使うの? ベガスとかと同じ4組?」

「そんなに使うとシャッフルが大変でしょ? 1組だよ」

「1組? ……シャッフルのやり方は?」

「決めてないからお好きにどうぞ。リフル・ヒンズー・ディールお好きなのを使うといいよ」

「ーーこれ引き分け多発しね? お互いに同じ数字言い合えば引き分けっしょ?」

 

 ルールを読みながら最初に浮かんだ疑問。しかし自己解決済みの事をあえて問うてみる空。

 

「分かってるくせに。全ての処理を親から行い、ポイントが無くなった時点で敗け。つまり、その時親の方が敗け。そんな博打に持っていきたいならどうぞ」

「その言い方だとこのゲームは博打じゃないとでも言いたげだな」

「あなた達が博打に()()()()無いじゃない。『  (くうはく)』が運ゲーなんてする?」

「ほんとに……よく、知られて……る」

「マスター、トランプが3組しか見当たりませんでしたが足りますでしょうか?」

 

 空が自分の思考が間違いでは無いことを確認し終えたところで、丁度よく城にトランプを取りに行っていたジブリールが戻ってきた。

 

「サンキュー、ジブリール」

「褒めて……つかわす」

「あぁ、勿体なきお言葉」

 

 ジブリールが抱いて持ってきたトランプを1組、適当に抜き出した空はそれをカイへと放り投げる。

 

「知ってるよな? 俺と白は2人で1人の『  (くうはく)』なんだわ。当然白もこの変則ブラックジャックに参加するぞ?」

「あったり前じゃーん。もとよりそのつもり」

 

 放り投げられたトランプを受け取り、何を今更。との反応を示すカイに、

 

「舐め……られてる?」

「さぁな? ただ、面白そうじゃん」

 

 一瞬不機嫌になる白を抱き抱え、椅子に座った空は、白を膝の上に座らせて待機。

トランプを受け取ったカイはそれをテーブルの上にぶちまけて、ぐちゃぐちゃに混ぜ始める。

 

 

「親はカイに譲ろうか。『  (くうはく)』に勝負を挑むっつー勇気に免じて」

「えっ!? てっきりコイントスでもするかと思ったのに」

「おいおい、忘れてねーか? 『  (くうはく)』に敗北の2文字は無い」

「親くらい……くれてやる……の」

 

 まだ若干不機嫌な白が空の言葉を引き継いで、面白く無さそうに言う。

 

「んじゃーールールの確認、賭けの内容が決まったところで」

「そういやまだだったね」

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 盟約に誓った勝負となった変則ブラックジャックなるゲーム。

その戦いがようやく始まった。

 

 混ぜていたトランプを揃えたカイは、()()()()()()()()にし、テーブルの上に扇状に綺麗に広げた。

手品師が、トランプ自体に不正が無いことを示すように、全ての数字とマークが確認できるように。

 

「ほー、見事なもんだ。なに? 手品師にでもなりたかったの?」

「忘年会や新年会なんかでね、よく余興を頼まれたのさ。その時に身につけた」

 

 本来シャッフルする為に必要な手順ではないそれは、目的は明白。

カードの並びを覚えること。

しかし、当然空の膝の上の白もそれを行えるのであり、カイが再びトランプを裏返す頃には白は大きく頷いた。

 

 その後特にカイの動きに不自然な所はなく、ごく一般的なシャッフルを丁寧に行って、上から2枚、裏向きでテーブルに置き、

 

「15」

 

 と口にした。

対して空も、

 

「15」

 

 と宣言し、表にすれば当然15。スペードの9とダイヤの6であった。

 

(さっきの並びと変わって無い? あんだけシャッフルしたのにか? ーーなるほど、つまり入れ換えないシャッフルなのか)

(なーんて、流石に気付かれてるよねー)

 

 早々に相手の用いた手を看破した空と、看破された事を悟ったカイ。

 

 空へとトランプの山を渡し、空がどんな行動を取るかをやや期待したカイであったが。

 ごく普通にシャッフルし、ごく普通にトランプを伏せ、ごく普通に

 

「5」

 

と宣言した。

 

(ん? 動き無し? それは意外なんだけど……)

 

 僅かに戸惑うも、別に親に合わせない理由は無いカイも、

 

「5」

 

 と宣言。

結果はハートの2とダイヤの3で、当然の如く二人ともポイント消失無し。

 

 それからはしばらくお互いに数字を当て続け、ポイントの変動が無いままトランプを消費していく。

変化が起きたのは、空が親の時。

 

「18」

 

 との宣言を聞いたカイは、僅かに動揺し、息を飲む。

 

(あれ? ここは13のはずじゃあ? ーーってそんなの()()()()()に決まってんじゃん! しかもそれに反応しちゃったし……バレた……よねぇ?)

 

 コールドリーディングが得意と言っていた空が、今の自分の反応を見逃したとは思えない。また、自分の記憶していた数字から離れた今回の数字の事を踏まえて、自分が敗北に向けて走り始めていることをこの時点でカイは理解した。そう、理解しながらも、

 

(だからって、諦める訳にはいかんでしょうよ!)

 

 と、目の前に居る2次元故に許されていた最強のゲーマー相手に、悪あがきと知りながらも最後までやれることをやる。と強く心に誓うのだった。



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  (ウィナー)

 カイの行っていた記憶法、それはトランプの並びを1つの物語に変換し記憶するもので。

例えば、先程のスペードの9とダイヤの6、これら2つを塩コショウ。

ハートの2とダイヤの3をトマトと頭の中で変換する。

 

 これら4枚だけで、塩コショウをトマトにかけた。というストーリーとなりーー、これをトランプ52枚分、2枚1組で26組で作り上げたストーリーを数秒で記憶する。

それ故にーー

 

(ちょっとでもズレが出ると組み換え難しいんだよね……)

 

 心の中だけで苦笑しながら空に合わせ15を宣言。

確認すればクローバーのJ(11)とダイヤの4で、カイの頭の中のストーリーにはそんな組み合わせはやはり記憶されていない。

 

(白ちゃんの指示かなー? いくつズラすってのは。本当にこの『  (ふたり)』は……)

 

 空からトランプを受け取りながら、どうしたもんか。とカイは思案する。

 

(また表にして記憶する? いや、そんなの今やったら自分の記憶が曖昧だと公言してるようなもんじゃん。…………まだ多少しかズラされて無いはずだし、そのズレを見極めるしかないか)

 

 先程までのシャッフルと同じ、まるで順番を変えないシャッフルをし二枚を伏せて。

 

 一度目を閉じ、頭の中のストーリーを一度数字に分解。

クローバーの11とダイヤの4の場所を確認し、今まで消化した札を消して…………

 

(修正完了。これで違ったらお手上げさー)

 

「6」

 

 その宣言を受けて空は、思わず笑みをこぼす。心の底から勝負を楽しむように。膝の上で兄と同じくご機嫌になった白と共に。

 

「「6」」

 

 と声を揃えて宣言する。

 

 結果はスペードの3とクローバーの3であり、カイは見事に修正に成功していた。ーーがここで少しでも気を緩めれば、その空気を空に読まれれば、また状況が苦しくなる。

 

 故に一時足りとも気が抜けないカイの頬に、暑さのせいではない汗が流れる。

 

 しかし、それも無駄になっていることをカイは分かっていなかった。

 

 空に渡したトランプ。それに緊張のせいで張り付いたこれまでと違う汗の量を、空は当然見逃さない。

 

(緊張してたって事か。なら今の宣言は確信が持てなかった訳だ。カードの並びだけを記憶して、並びが変わるとそれに対応出来なくなる可能性があるって事だろ? んじゃ、仕掛けるとしようか。俺の思う完全勝利に向かって、さ)

 

 トランプに付いた汗。その量だけでそこまで把握した空は、膝を僅かに動かし、その上の自分の片割れに意思を伝える。

 

 ーー動くぞ。と。

 

「18だ」

「18」

 

 親の空の宣言に当然合わせたカイは、開かれたダイヤのQ(12)とクローバーの7に思わず目を見開いた。

 

(嘘!? 白ちゃんがミス? ーーなんて、楽観出来るわけ無いでしょ! 確実にわざとーーしかもまたズラされた! うー、強い~)

 

 あの白がミスをするとは当然思えず、つまりこれはある種の宣告なのだとカイは理解する。

 

 すなわち、「親と同じ宣言しかしないなら勝てないよ?」と。

「私たちは好きに順番を変えられるよ?」と。

 

 半ばいじけながら現状を把握し、この時点でカイは勝ちが無くなった事をうっすら悟る。

 

(もう少し、追いすがれると思ったんだけどなー)

 

 が、しかし。ゲームで一番つまらないのは相手がやる気を無くし、適当にプレイされる事。ならばやはり、最後まで足掻くしか他は無いのだ。

 

 空からトランプを受け取り、やっぱり順番を変えないシャッフルをし、そこから先程より深くに思考を落とす。

 

 残りも少なくなってきたトランプをどう動かされたか、それをした意図を、せめて思考だけでも追い付こうと頭をフル回転させる。

 

(『  (くうはく)』は完全勝利を目指すはず。けど、目指した完全勝利はノーダメプレイじゃなかった。ーー()()()()()()()()()()?)

 

 けれども、どれだけ考えても『  (くうはく)』の思考に辿り着けない彼女は、ここからゆっくりポイントを減らし始める事となった。

 

 

 現在、カイの残ポイントは22。対して『  (くうはく)』の残ポイントは29。そして、残りのトランプは4枚。

 

 カイは数字の見当がつかないなかで、実際に空すら驚くほどにポイントを保っていた。空がわざと違う数字を宣言し、失ったポイントと。

それに引っ張られて失ったポイントを差し引いてもわずかに7ポイント。いくら記憶していたとはいえ、中々に驚異的な勘の()えだと『  (くうはく)』は舌を巻いた。

 

 そして、カイもまた、ようやく『  (くうはく)』の思い描く完全勝利を理解した。

 

(なるほど、それが2人の中の完全勝利かーーそう来るか……)

 

 たった4枚のトランプを混ぜもせず、そのまま裏向きに置いたカイは、悔しそうに宣言する。

 

「20」

「だろうね。もう俺らの考え理解してるよな?」

「……にじゅう……いち」

 

 楽しめた、と両腕を広げる空と、カイに向かってVサインを送る白。

 

 表にしたトランプはハートのK(キング)とスペードのAで、

 

「「ブラックジャックだ!」」

 

 と声を揃えて言った『  (くうはく)』に頷いたカイは。

 

「子が21を宣言していて実際に21だった場合は、それまでに子が失ったポイントも同時に差分と合わせて失う。ーーわざわざ21ポイント減らして、差分とあわせて22ポイント。ぴったりジャストキルって訳かー」

 

 ルールに書いてあることを起こさずに何が完全勝利だ? と、言わんばかりに誘導されたこの局面に感心しきりだった。

 

 しかし、そこで生じる1つの疑問。残った1組のカード、その中身。何故、そのカードを残して完全勝利なのか? という疑問。

 

 それをカイが『  (くうはく)』に質問する前に、本人達から説明された。

 

「カウンティングはしてるか? してなくても流石に残った2枚は分かるよな?」

「残った……2枚は、……ハートのQ(クイーン)……と」

「スペードのK(キング)。ま、そんなガラじゃないが? 一応王様と女王様な訳だし? ()()()()()()()()()()()、つまり勝者であると自分等から主張させて貰うぜ?」

 

 満足感から、また、心から楽しんだという充実感から、饒舌(じょうぜつ)に語る空と。

 

 カードの並びを全て記憶し、どれだけ並びをズラすかを指示し、兄の完全勝利のシナリオを汲み取り、そのシナリオに向けて全力で思考を巡らせ、兄を導いた頼れる小さな存在は。

 

 言うだけ言って、兄の腕に抱かれ、頭を撫でられながら、体に見合った小さな寝息を静かにたて始めた。 



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質問開始(リスタート)

 ひざの上で静かに眠る自らの片割れを起こさぬ様に、やや声のトーンを落としながら。

空は盟約によって手に入れたカイへの質問を行い始める。

 

「んじゃまずはさしあたって――、どーして俺らの事を知り得たのかなー?」

「『  (くうはく)』の事なんて有名よ? それこそ都市伝説になるくらいには」

「へぇー。そうかい。んで? 何で()()()()()()()()  (くうはく)』と理解したよ? 容姿の話はおろか日本在住以外の情報は無かった筈だ」

「それに、マスターが指摘いたしました。この図書館を私の場所だと言われた事も聞いておきませんと」

 

 横から口を挟んだジブリールだったが、その質問の内容は空が後で聞く予定だったもの。

特に(とが)めず、回答を待つように4つの目がカイを見据えるが――。

 

「そんなの、読んだから。あ、でも訂正させて? この図書館、どころかジブリールの全ては『  (くうはく)』のものになってる筈だから、この図書館も二人のものよね?」

 

 まるで軽口でも叩くように、暇そうに爪を弄りながら言うカイは、ため息を小さくついた。

 

「そんな質問じゃなくてさ。もっと直球名質問にすればいいんじゃない? 例えば……そうね。どこの種族のスパイだ? とか?」

 

 ため息をついて続けた言葉の真意が分からず、思考をフル回転させる空は。

たとえ誘導だろうが、どんな目論見があろうがその質問をせざるを得ないと分かり、

 

「んじゃ、お望み通りといこうか。あんた、いったいどこの間者よ?」

 

 と聞いた。

 

「それに対しての回答は、空や白ちゃん。『  (くうはく)』と一緒。と答えるわ」

「なーるほど♪ んじゃ、具体的に聞きたい事として――()()()ってのはどういう意味だ」

「そのまんまの意味。えぇと、次元が違うって言えばいい?」

 

 この回答を聞いたとき、空とジブリール。両者の反応はまるで違った。

両手で目を覆い、頭を振り回す空と。カイから発せられる言葉を聞き漏らさずにメモしようと涎を垂らしながら羽ペンを持つジブリール。

 

 両者共に、同じ思考に辿り着いたゆえのこの反応は。

 

「え? 何? 俺らってもしかして、カイの世界だと2次元なわけ? りありぃー?」

「ライトノベル小説、及び漫画とアニメ。あ、映画にもなってるよ?」

「マジかよ冗談だろああけど納得いったわだからみんな女の子が超絶美少女で属性もりもりで被りキャラがいないんですねそうですねて言うか何カイは2次元来れたの何それ羨ましいから俺も2次元行きたいってそうかここがすでに2次元かてことは俺はオタクの長年の夢である2次元に生きるを達成してるのかわーい」

 

 一息でそこまで噛まずにペラペラ捲くし立てた空は大きく息継ぎをして、

 

「んなわけあるかっ!!! だったら、だったら何でっ!! 俺のハーレムルートに突入しない!?」

「にぃ……そんなの、決まってる。……白達、主人公じゃ……無い……から」

「じゃあ他に誰がいやがる!! 俺らを差し置いて主人公しやがってるやつは!?」

「……唯一神(テト)様……とか?」

 

 兄のハーレムルートなる発言に目を覚ました『  (くうはく)』の小さな片割れは、嘆く兄を慰めるどころか追い討ちを仕掛け。

血の涙を流す空に対し、しかしカイは。

 

「ん? 主人公は『  (くうはく)』だったよ? それにハーレムルート? それもうはいt

「カイ、……シャラ……ップ」

 

 何かを言いかけて白にその口を押さえつけられる。

兄の膝の上に居たはずの、さっきまで頭を回転させていたはずの小さな存在は、しかし。

兄が押さえつけることすらかなわず、カイが避ける事すら適わぬ速度でそれを行った。

 

「えーっと――、白さん? 何で誰にも反応出来ない速度でそんな事してまして?」

 

 ジブリールさえもが驚愕し、目を丸くする中、白はカイにこう耳打ちする。

 

「にぃを……狙って……る?」

 

 と。心底怯えるように。自分らが2次元の存在なら、この自分の、兄、空への想いも知られているであろう存在へと問う。

 

 すなわちライバル(とも)か? 仲間(とも)か? と。

これに対し、カイもまた、耳打ちで返す。盟約により従わざるを得ない質問への回答を。

 

「安心して、白ちゃん。私の狙いは別のキャラだから♪」

 

 白に自分は味方だと認識させる言葉を、カイはさらに続ける。

 

「そして、よく聞いて。近い将来、あらゆる問題を解決して空に既成事実を迫るチャンスが来るから、絶対に逃さないで。ジブリールの妨害が必ずあるから、この場面か? と思い当たったら、とりあえずジブリールに待機命令を出しなさい」

 

 全てを聞いて、目を輝かせて満面の笑みでカイを味方だと認識し、握手を求めた白。

そんな妹の姿を見てショックを一人受ける空は、

 

「いや、待てよ。あんな対人恐怖症の白が!? ほんの一言、二言聞いただけでそんな懐くか!? 何吹き込みやがったっ!?」

「にぃの……、貞操……の……事。……にぃには……関係……無い、の」

「大有りだろうがっ! むしろ当事者だぞマイシスター! おら、カイ! 妹に何吹き込みやがったっつってんだよ! 質問に答えやがれ!!」

 

 何故か自分の事なのに除け者にされた悲しき男(そら)は、白に囁いたカイの言葉を探ろうとするが――、

 

「2人にとって大事な話♪ 焦り過ぎかなー、空。具体的内容まで指定しないとこうやって回避されちゃうよー?」

 

 どう答えても盟約違反にならない様な質問に、笑顔と適当な答えを空に送って、『blank(くうはく)』は。

瞳の奥に怪しい光を宿して、次の質問を待ちわびるのだった。



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2章 ゲーマー少女は捕まえるそうです 勝ち方(まかしかた)

 空が次の質問を決めあぐねている時である。

不意に、小さな空気の移動する音が辺りに響いた。

 

「お腹……すいた」

「む? 確かにそうだな。一旦城に戻ってステフに飯作って貰うか。ジブリール、送ってくれ」

「かしこまりました。――マスター? この方もご一緒でよろしいので?」

「ああ。大事なお客さんだ。一緒に城に頼むわ」

 

 了解しました。とジブリールは言って、空間を跳躍する準備に入り。

カイは、初めての体験となる空間跳躍に胸を躍らせながら、白を抱えて空の元へと歩み寄った。

 

 

 エルキア王国、エルキア王城。

山のように積まれた書類とそれを捌いていく2人の姿。

1人は『人類種(イマニティ)』、ステファニー・ドーラ。

空達が投げ出した王政を恐るべき手腕でこなす――、こなす事を強要されている悲しき存在。

 

 もう一人は『獣人種(ワービースト)』、初瀬いの。

彼らの全権代理者である巫女から、「エルキアの(まつりごと)を手伝ってきたり」と言われ、ステフに手を貸している存在。

 

 手だけは機敏に動いてはいるが、表情や後ろ姿は悲しいかな(すす)けていて。

それだけ気が滅入るくらいには仕事を続けているらしかった。

 

 隣に居るのに会話すらなく。もはや修行や苦行の類に近いソレをこなしている時に。不意に。

 

「お~す。ステフやってっか~?」

「お腹……すいたから……ご飯、作って」

 

 2人をこの地獄へと叩き落した人類最強のゲーマーが二人の背後に現れた。

 

「てめぇ! このハゲザル!! のこのこ手伝いもせずにどこかに行きくさりやがって!! 戻ってきて開口一番腹減っただぁっ!? 飢え死にでもしときやがれぇ!!」

 

 先に怒鳴ったのはいのの方。

獣人種(ワービースト)』の五感により精霊の流れを察知、自分らの背後の空間に跳躍してきた者達に振り向き、怒鳴りつけた。

 

 が。いのの予想とは裏腹に、彼の目に入ったのは見知らぬ女性。

 

「じーさん。初対面の女性にハゲザルだの飢え死にしとけだの。男としてどうかと思うぞ?」

「口……悪いの……自業……自得」

 

 その女性の背後から、笑いを堪え、声を僅かに震わせながら、いのを煽る『  (くうはく)』。

 

「いのさん初めましてー。カイって呼んでくださーい。どうせこの二人が内政しないから苦労してるんでしょ? 私は気にしないから頑張ってくださいねー」

「おぉ、本当に申し訳ありませんな。あのハゲザル共と同じ扱いにしようとしてしまいそうになった事、心から謝罪致しますぞ」

「ちょ、空!? いきなりどこかに行ったと思ったらどなたですのこの方?」

 

 遅れながらステフが振り向いてカイを確認し、当然の疑問を空にぶつける。

 

「図書館に落ちて来たカイだ。どうせテトの仕業だろ? 俺らがゲームに勝って、質問権は得てる。何か聞きたい事あれば聞くぞ?」

「というわけで紹介に預かりましたカイでーす。一応テトは倒したけど、不意打ちも甚だしい勝ちだったから次は絶対に勝てないと断言しときまーす」

「さらりとおっしゃられておりますが、唯一神を下している時点で只者ではありませんな。外交官としてここは一つ、身体検査を要求しますぞ」

「じいさん寝てない身体で大変だろ? 俺も手伝うぞ」

 

 ゆらりと立ち上がってカイに寄って行くいの。

しかし、

 

「じぃじ、何しようとしてやがる。です」

 

 可愛い孫娘の声を聞いて、その動きが止まる。

 

「いづな。――どうしましたかな?」

「腹減ったから城うろついてたら、空達の匂いした、です。だから来たらじぃじが女ににじり寄ってた、です」

 

 プンスカと頬を膨らませ、いのの前に立ち塞がるいづな。

そのいづなを神速の速さで空達はもふっているのだが……当のいづなは顔だけを破顔させて体勢は変えずに続けて言う。

 

「オーシェンドの時、じぃじ、大変な目にあった、です。その女癖、いい加減改めろや、です」

 

 先の件でいの身を誰よりも案じたいづなだからこそ、いのにそう告げた。

もっと節度をもって行動しろ、と。

 

「とりあえずステフ、飯。マジで飯。俺ら空腹過ぎて風で飛ばされそうだわ」

「40秒で……支度、しな」

「随分と身勝手ですわね! 何様ですの!? って王様でしたわね!」

 

 分かりましたわよ! と空に怒鳴り声を浴びせ、厨房へと向かうステフを見送った一同は、ご飯が出来上がるまで、しばし待機することになった。

 

 

「ふぃ~美味かった。ごっそさん」

「美味し……かった。ステフ……褒めて……つかわす」

「お粗末さまでしたわ。それで? このカイさんは一体何しに来られたんですの?」

「ステ公、いづなのメシはまだ終了してねー、です」

「あ、はいおかわりですわね。……まさかテト様がまた『人類種(イマニティ)』に助力を?」

「それは無いかなー。私そこまで強くないし」

 

 そうカイが行った時、ふとステフの頭にある考えがよぎる。

 

「ではカイさん? わたくしと勝負していただけません?」

「そっちの要求は内政を手伝えって所かな? いいよ『盟約に誓って(アッシェンテ)』」

 

 口にしてすぐ、ステフの意図を呼んだカイはあっさりと盟約に誓った。

 

「勝負方法はBJ(ブラックジャック)。ディーラーは空に頼もうか。チップが無くなった方が負けでいいよね?」

「構いませんわ。『盟約に誓って(アッシェンテ)』」

 

 ステフも盟約に誓い、いざ! と言う時に空がため息をついた。

 

「なぁ、ステフ。お前いつになったら人を疑う事を覚えんの?」

「にぃ、今のは……カイの……運び方が……上手かった」

「な、何の事ですの?」

「お前さ、自分の要求だけしか宣言されてないのに言われなきゃ気付けないの?」

「ステフは……腐っても……ステフ」

「腐っていませんわよ失礼ですわね! って、そう言えば相手からの要求を聞いてない……」

 

 ステフ本人とカイ以外の全員がため息をついて、悲しそうな目でステフを見る。

 

「ち、違いますわ!こ、これは――そ、そう! 寝てない事と内政の疲労で注意力が散漫になっただけで――」

「んなら次から貴族たちはこんな風にお前が弱ったタイミングで勝負を挑む事だろうよ」

「まぁまぁ、あんまりステフちゃんをイジメないでよ。期待の表われなのは分かるけどさ」

「そ、それで!? 貴方の要求は何ですの!?」

「私が勝ったらー、『人類種(イマニティ)』語の()()()()()()()()?」



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嵌め方(さそいかた)

「な、なんだ。そんな事ならお安い御用ですわよ」

 

 空としたじゃんけんの時のように、突拍子も無い要求をされる事を覚悟していたステフは、ホっと胸を撫で下ろす。

 

「さぁ、それでは勝負ですわ。――空? どうして肩を震わせていますの?」

「だってwステフがww気が付いてないんだものwww」

「ステフ……マジ……お疲れ? この後……すぐ……寝る?」

 

 何とか笑いをこらえようとする空と、本気でステフの体の心配をする白の考えが分からないステフは、そのモヤモヤをカイへとぶつける。

 

「あなた!? まさか何か罠を張っていますわね!?」

「罠? んー、まぁ罠っちゃ罠だけど」

「そんなの不正行為ですわ! 盟約その8、ゲーム中の不正発覚は敗北ですわよ! 知らないとは言わせませんわ!」

「ドーラ公、お気を確かに。ゲームはまだ始まっておりませぬ。それに、恐らくはカイ殿の言う罠とは彼女の要求の事ですぞ」

「へ? 要求……?」

 

 キョトン。といのからなだめられ、一度落ち着いたステフはカイの要求を頭の中で2度3度復唱するが――。

 

「どこに罠がございますの? ただ読み書きを教えて欲しいと言っているだけでは……」

「んじゃステフ。お前の要求は?」

「働かない王様と女王様のせいで、死ぬ気で捌いてる内政のお仕事をこなす人手が欲しいからと、お仕事のお手伝いですわ」

「そ。んじゃそのお手伝いってさ。()()()()()()()()()()可能なのか?」

「へ?」

「カイの……要求。つまり……今は……読み書き……出来ない事を……表す」

「そんな状態のカイが手伝える仕事ってなんだ?」

「あ、あれ?」

 

 ようやく頭の中が整理出来たのか困惑し始めるステフをよそに、『  (くうはく)』は内心舌を巻きながらカイの仕掛けた罠の解説を続ける。

 

「そんな足手まといにしかならないやつまで仕事を手伝わせるか? どう考えても無駄だよなぁ?」

「そして……もし……ステフが……勝っても、カイは……読み書き教わるの……拒む」

「自分の勝利した報酬に定めてんだ。負けたのに報酬を受け取るなんざ、俺等からしたら屈辱さ」

「その報酬を……相手に負けて貰う……材料に……する。……カイ、にぃに似て……少し……ウザイ」

「ウザイは酷いなー。弱者が勝つ為に知恵は、思考は必須。例え何をどう悪用しようが、十の盟約の範囲内だから勘弁して欲しいかなー」

「その通りだ妹よ。決められたルールの範疇(はんちゅう)であるならば、卑怯、汚いは敗者の戯言(たわごと)だ。ま、それに気付かせない様動くんだから、俺としちゃあ卑怯汚いはむしろ歓迎するが」

 

 口を尖らせながら言うカイと、何を言うか。とカイに乗っかり白へと言う空。

この場に居た『人類種(イマニティ)』を除いたいのといづな、そしてジブリールはこのやり取りにそれぞれ思い思いの思考を飛ばす。

この世界、ディスボードの大前提。十の盟約すらも「悪用」すると言ってのけた序列最下位の種族の全権代理者達。何故彼らが今まで負けて来なかったか、僅かに理解した気がしたのだ。

 

「にしても、なるほどな。要求で相手の勝ちを縛るのか。鮮やかに決まるのを見ると大したもんだ。どうやって思いついた?」

「自然に? コン〇イ語とか習得してるとその辺強くなるんだよねー」

「あれ理不尽過ぎる難解言語だぞ!? しかもその都度その都度公式が意見変えやがるし! あれ習得してるとかどんだけやべーんだよ!」

「空、コ〇マイ語ってなんだ、です」

人類種(イマニティ)語によく似た、似て非なる言語だ。習得難易度Sの完全に理解している人間なぞこの世に居ないレベルのな」

 

 すでに終わった勝負に興味を無くした空は、今度はカイの思考を掘り下げる方に力を入れる。

ほとんど皆が興味を無くした中で、負けるしかないステフはひっそり涙を流しながら、最初のゲームで全BETし、21を超えるまでヒットを繰り返し、清々しいまでの八百長で敗北した。

 

*

 

「つまりこの文字からこの文字までを先に読んで、その後ここに戻ってくるんですわ」

「なるほど。……こっちの文字は?」

「それは数字ですわ。数字の場合は――」

 

 ステフの部屋。

そこでマンツーマンでカイに人類種(イマニティ)語を教えながら、ステフはふととある考えに行きつく。

 

「もしかして、これわたくしの休憩も兼ねてますの?」

「ん? あー、そう思っちゃう?」

「あれ? 違いました?」

「まー、こんを詰め過ぎないように。というか息抜きしないとまずいんじゃないかなーと思ったりはしたねー」

「主に空達のせいですけどね」

 

 軽口を叩きながら、2人ほんわかとした空気を醸し出しつつカイは『  (くうはく)』達程では無いにせよ、もの凄い速度で読み書きを理解していった。

 

 本一冊を使った読みの勉強と、ステフに手を握って動かして貰い、宙に文字を書いていく書きの勉強。

およそ二時間をかけ、これだけ読み書き出来れば大丈夫ですわ。と太鼓判を貰ったカイは大きく背伸びをする。

そんなカイに、ステフは

 

「ところで、カイさんのこの世界に来た目的ってなんですの?」

 

 とずっと気になっていた疑問をぶつけるのだった。



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出会い方(かなえかた)

 すでに陽も落ち、窓の外から入ってくるのは淡い星明り。

勉強中のこの部屋こそジブリールの魔法で明るくして貰ってはいるが部屋の外は既に夜が広がりつつある。

 

 質問をぶつけられたカイは体ごとステフに向き直り、じっと目を見つめて真剣な眼差しで語る。

 

「私ね、好きな子が居るの」

「は、はい?」

 

 突然の告白。いきなり目を見つめられ言われたステフは自分の顔の体温が急上昇するのを感じ、急いで目を逸らす。

 

「その子に会いたい一心でゲームを極めて、テトちゃんに見つけて貰って、この世界に来たの」

「え、えぇ」

 

 目を逸らされても構わずステフを見つめ続けるカイに、ステフはどう反応すればいいか分からずただただ戸惑っており、返事が雑になってくるのだが、カイはそれを気にもしない。

 

「私が何しに来たか。という質問にはこう答えるわ。その子とイチャイチャしに来たの!」

 

 ガッツポーズをかまし、これが全て! とばかりに主張するカイに困惑するステフであったが、

 

「それで!? そのあなたの想い人は一体誰なんですの!?」

 

 未だにはっきりと明言されないその存在は誰か。と尋ねれば。

 

「名前言っちゃうと逃げられるかも? とか思っちゃって口に出さないようにしてたんだよねー」

 

 と言いながらジリジリとステフににじり寄るカイ。

生唾を飲み下し、瞼を閉じて若干震えながらも覚悟を決めたステフの耳に――、

 

「みぎゃぁぁっ!? ぼ、僕ですぅ!?」

 

 少年の悲鳴と焦った声が届いて。

目を開けてみれば何やら虚空に抱きついているカイが視界に飛び込んできた。

 

「ちょ!? プラムさん? いつからそこに居ましたの!?」

「何事だ!? ステフ!?」

「女性の居る部屋からの悲鳴とあらば助けに行かぬわけには参りませんなぁ!!」

 

 ステフが驚きの声をあげたタイミングで、どう考えても扉のすぐ近くに居たとしか思えない速度で突入してくる『  (くうはく)』といの。

 

「えぇと、……見つかっちゃいましたぁ」

 

 遅れて部屋に入って来たジブリールの姿を見て観念したのか、カイに抱きつかれたままの吸血種(ダンピール)の王子様は、困り顔で頬を掻きながら。「どうすればいいですぅ?」と空へ目線だけで助けを求めた。

 

 

 流石にいかにステフと言えど、女の子の部屋にいる居心地の悪さに耐えかねた空の提案で、一度王の寝室へと舞台を移したそれぞれ各々は、思い思いの場所に腰を下ろす。

 

「どうしたステフ? 立ちっぱじゃ辛くなる程長話になるかもしれんぞ?」

「いえ、どうせお茶の用意だったりもありますし、わたくしの事は気になされなくて結構ですわ」

「皆さんが当たり前のようにツッコんでくれなくて僕は優しさに涙が流れそうなのですがぁ、僕、どうして膝に抱かれているんですぅ?」

「絶対に、離さないから」

 

 たった1つの存在だけは自分の思いを無視された箇所に座らされていた。

プラムだけは、カイの膝の上に抱きしめられ、逃げられない様に。

 

「それがカイがこの世界に来た望みだ。男なら黙って女性の夢叶えてやれよ」

「空様がそれ言いますぅ? 女性経験皆無のはずですのにぃ」

「先日……どこかの……頭悪い人魚……堕とした。にぃは……皆無じゃ……無い」

「そもそもどうしてカイ殿はプラム殿の居場所が分かったのですかな? およそ人類種(イマニティ)に感知出来たとは思えませぬが」

「? そんなに不思議? 情報知ってれば簡単だったよ?」

「割とショックなんですけどねぇ。僕、人類種(イマニティ)に見つけられたのなんて初体験ですぅ」

 

 頭を撫でられ、うなじの匂いを嗅がれながら、げんなりした顔でふてくされたプラムは、今の所カイにやられたい放題であった。

 

「情報、ですか」

「そ。古今東西最強で、最も優れた武器。それが情報。だからプラムきゅんは、私に張り付いて『  (くうはく)』の情報を探ろうとしてたんだよね?」

「き、気付いてたんですぅ?」

「まさかー。気付けるわけないじゃない。魔法も感知できない人類種(イマニティ)だよ? けど、そう動いてるんだろうなーとは予想してた」

「だからステフと二人きりで勉強なんて言い出したんだろ? こんな広い空間じゃなく、ステフの部屋っつー限られた空間。しかも勉強するのに大きな声は出さないだろうから声を聞くためには近づく必要がある」

「条件を……限定していって……最後は、盟約を利用……居場所を……特定」

「あらゆる殺傷行為の禁止、でございますね。何もない空間に攻撃を行おうとして、行動がキャンセルされればそこに”何かいる”という事でしょうか」

 

 好きだからこそ、どこまでも妄想した。好きだからこそ、いかなる状況でも居場所を探れるように考えた。

カイがこの世界に来て、いつも考えていた愛しの子(プラム・ストーカー)を抱きしめるまでの過程。

その全てがうまくいったからこその今の状況。

 

「どうやって僕の事をそんなに知り得たんですぅ? この世界に来て一日すら経っていない筈ですのにぃ」

「プラム、残念だがカイは」

「私達の事……上の次元から読んでる。……この先のストーリー……も」

「はい?」

「どういう事ですかな?」

「メンドクサイから大雑把に説明すっぞ? カイと俺等は居た世界ってのは同じだ。だが俺らは2次元でカイは3次元から来た。カイの世界だと俺らは本の中。……これで理解できるか?」

「つまりこの世界で表すなら干渉が出来ず、傍観に努めているテト殿。それがカイ殿と言う解釈でよろしいですかな?」

「俺等の心理描写すら本には書いてあるから、何を、どんな時、どんな風に思ったか。すらカイには筒抜け」

「それでどうして僕の情報が知られてるんですぅ?」

「だから俺らの物語が本なの。俺らがこの世界に来る物語」

「あー、理解しましたぁ。――カイ様ぁ♪ 僕、個人的に聞きたい事があるので二人っきりでお話しませんかぁ?」

「いいよー。行こ行こー」

 

 理解した途端に自らの立場を利用し、カイを(たぶらか)かして情報を引き出そうと企てたプラムと。

あっさりその誘惑に乗るカイを説得し思いとどまらせるまでに、ステフとジブリール、いのが疲れ切るのを尻目に、空と白は爆笑しているのであった。



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正攻法(じゃどう)

「あ~、笑ったわ。ほんと、カイ最高だわ」

「愉悦……だった」

「少し待て妹よ。悪趣味だからな? それ」

 

 目尻の涙を指で拭ってようやく笑う事を止めた空と。

同じく指で涙を拭って親指を立て、右手を突き出す白。

 

「はぁ……はぁ……。空は何で……そんなに余裕……ですの?」

「? 何か問題なのか?」

「だって! 空達の弱みや弱点が知られたら……」

「何を話すんだ? 俺は知っての通りただの一般人だぞ? それに弱点? んなもん()()()()()()だろ?」

「白達より……弱いの……居ない」

 

 何を当たり前のことを、ときょとんとした顔で不思議そうにステフを見る空と白。

それはそうか。と納得するステフの代わりに、今度はジブリールが言葉を発する。

 

「しかしマスター。この方がどこまで先の展開を知っているのか分からない以上、口封じは必要なのでは?」

 

 いかに『  (くうはく)』と言えど撃つ手を事前に知られ、対策を施されていればどうしようもない。

白に囁いた、既成事実を作るチャンス。

近い将来とは言ったがどこまで先の話かを明言しなかったカイに対して白の考えはこうだ。

 

「ネタバレ……は許されない。……ヒントや曖昧な……助言なら……許す」

「これもゲーマーの(さが)だよな~。つか異世界人(おれら)の事を分かって無さ過ぎ。こんな時は必ず史実っつーの? 元ある物語の通りに進めるために余計な事はしないのが当たり前なのよ」

「でも助言やヒントはいただけるんですよねぇ? それだけでも十分価値がありますぅ」

「もちろん、タダではあげないけどね♪」

 

 ゲーマー同士通じる考えを確認し、それでも些細な情報から少しでも周りを出し抜こうとプラムが考えるのは必然で。

情報の価値など、使い方で決まる。それを当然重々承知している若き吸血種(ダンピール)の王子様は、悪用可能な情報を求めてカイに勝負を挑むのも当然。

 

「カイ様ぁ♪ 僕と勝負してくれませんかぁ? 僕が勝ったらぁ、この先の僕に対するカイ様の助言を前借させていただきますぅ」

 

 どんな場面を想定しての助言なのか。その助言を行う事でカイは、自分をどう動かそうとするのか。

それらを予めイメージし、前もって対策を立てる事がどれほど旨味の有る事か。

 

 その場にいるカイを除いた全員が思わず顔を引きつらせる要求に、しかし、カイは。

 

「オッケー♪ んじゃあ私が勝ったら、私が満足するまで私の抱き枕として一緒に寝てね♪」

 

 満面の笑みで快く受け入れて。

そして欲望全開の要求をプラムへとした。

 

「わっかりましたぁ。ではでは~、ルールとしてぇ僕らの1対1である事を提案させていただきますぅ」

「そのつもりー。何?私が空や白ちゃんから手を貸して貰うとでも思っちゃった?」

「もーしわけないですぅ。すこーしだけ思っちゃいましたぁ」

「素直でかわいいから許す。んじゃ私からは『勝負中のプラムきゅんの発言禁止』を提案したいな~」

「僕の……ですかぁ?」

「元々魔法の使えない人類種(イマニティ)吸血種(ダンピール)と戦うならせめてこれくらいのハンデは欲しいかな」

「ふむぅ」

 

 別に発言しなくても魔法は使える。勝負の際にブラフや誘導として発言出来ないのは痛いが、それも魔法さえ使えれば問題ない。

そこまで考えたプラムは肝心の事に気が付く。

(どうして魔法を禁止しないんですかねぇ。……ひょっとして僕の魔法を悪用しようとしていますぅ? 情報を持っているからと、流石に舐め過ぎですぅ。いつまでも人類種(イマニティ)()()にいい様にされる僕ではないと思い知らせてあげますぅ)

 

「分かりましたぁ。その条件で構いません。あ、でもでもぉ、すこーしだけ待って貰っていいですぅ?」

 

 と告げてあっさりカイの手から逃れたプラムは一旦姿を霧散させて。

直ぐに大きな水瓶を抱えて戻ってくる。

その水瓶の中には当然

 

「は~あ~い! プラムちゃんからダーリンが呼んでるって聞いて~、文字通り()()()()来たの~☆」

()()()()()()()()()よぅ……」

 

 底抜けに元気で馬鹿みたいに明るい実際脳みそ海綿体(スポンジ)と空に言われた海棲種(セーレーン)の女王様。ステフをも凌ぐ残念筆頭のライラ・ローレライが入っていて。

何故今連れて来たのか、など明白も明白。

 

「ちょ、空!? いかにカイが情報を知っていようと、魔法が使える吸血種(ダンピール)相手に勝てると思えませんわよ!?」

 

 ステフが慌てて空に詰め寄る通り、存分にプラムが魔法を発するために呼ばれたライラは、

 

「ちょっと~、私のダーリンに近寄らないでよ~! あ、でもこれって放置プレイって事? つまりダーリンの愛情の裏返し!? あ~ん☆ダーリンのいけずぅ~!」

 

 手首をプラムに差し出しながら、妄想を爆発させ身をくねらせていた。

 

 *

 

「勝負の内容は手札交換無しのポーカー一回勝負ね。ディーラーはいのさんにお願いしようかな」

「私ですかな。……ふむ、あまり細かい動きは得意ではありませんが」

「普通にシャッフルして普通に配って大丈夫ですよー」

「では、ディーラーの件承りましたぞ。いやはや、思えばディーラーとはあまり経験がありませぬゆえ、何とも新鮮な気持ちですなぁ」

 

 勝負の内容は決まり、賭ける内容も決めてある。お互いに課したルールもあって、残すは宣言のみ。

 

 たっぷり血を吸って。

魂の減退を、少なくとも人類種(イマニティ)如きには魔法を使っても問題ない所まで回復させて。

プラムはその宣言を

 

「ではカイ様ぁ、ご唱和くださいぃ」

 

カイも合わせてしっかりハモって、

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 ご機嫌に言い放ち、盟約に誓った勝負が始まった。

 

「カイ、……一つ()()

 

 勝負が始まり、プラムが発言出来ない状況になった事を確認し、白がカイへと言う。

 

「な~に? 白ちゃん♪」

()()()……()?」

 

 特に今の状況でカイが必勝と思えない故の正直な質問を。

 

()()()()()()()()()()()。何? 白ちゃん私の事過大評価しちゃってる系?」

 

 それに対するカイの返答は、白の考えが間違いである事を否定した。

が、しかし、

 

「妹よ、質問の内容がちーっと違う」

 

と空は何かに辿り着いているようで

 

「じゃあ……正解を……どうぞ」

「正解は、このままでちゃんと相手に負けてもらえるのか? だ」

「このままじゃ無理☆ だからねー、これから小細工するの♪」

 

 と、怪訝な顔でカイを見るプラムといのに背を向けたカイは。

ま、だろうな。とこれでもかとニヤつく空と、意味が分からず首を捻るステフに向けて一瞬笑顔を向けて。

 相も変わらずいつもの彼女独特の空気の中で、

 

「――私と勝負しない?」

 

 唐突にとある人物へ勝負を挑むのだった。



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模倣(リスペクト)

「えー、ライラちゃんと勝負? 別にいいけどどんな勝負する気~?」

「簡単簡単、私とプラムきゅんの勝負、どちらが勝つかに賭けるの」

 

 カイが勝負を挑んだのはプラムが補給用に連れてきた海棲種(セーレーン)の全権代理者で。

勝負の内容は今から始まる勝敗の予想を提案したカイに対するライラの反応は、

 

「そんなの吸血種(ダンピール)人類種(イマニティ)が勝てるわけないじゃん☆」

「じゃあライラ様はプラムきゅんの勝ちに賭けたって事で。勝った時の要求は何か希望あります?」

「ダーリン♡からもっと踏んで欲しーの」

「そ、それは私じゃどうしようもないかなー。……今義務化してるプラムきゅんへの血の提供を私に移すっていうのは?」

 

 周りが息をのむ提案をする中、提案されたライラと、自分の勝負そっちのけでそんな勝負を始めようとされているプラムは飛び上がる。

ライラは予想外の提案で、プラムはその要求を飲まれると負けが確定される事に気が付いて。

 

()()()()でいいの~? 正直いちいち血を飲ませるの面倒だし、ライラちゃんはそれでいいけどー、あなたは何を要求するの~?」

「私からの要求はそうだなー。……私が誰かと勝負するときに一緒に戦ってくれな……ません?」

「それもそんなのでいいの~? おやすい御用なの~☆」

 

 別に疑うでもなく、特に意見をするわけでもなく、当然のように挑まれた側なのに提案されたゲームを受け入れて。

あまつさえ自分の勝った場合の報酬を相手に決めさせるという先ほどのステフのミスのさらに何歩も先に行ってしまった海綿体(スポンジ)脳の残念女王は――。

盟約によって発声を禁じられ、ライラの周りを飛び跳ねる事でしか感情を表現できないプラムに、

 

「も~、邪魔なの~」

 

 と言い放ってトドメを刺す。

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 カイと仲良く手を挙げて、盟約に誓ったライラの残念な頭と、その残念な頭に振り回され続けるプラムに対し、その場に居た当事者以外は揃ってため息をついた。

 

 無論、空と白はプラムを指差して爆笑していたわけであるが。

 

「プラムww憐れ過ぎるww戦う事無く敗北決定とかwww」

「カイ……本当に……みんなの……事、知り過ぎ。あと、にぃは……人の不幸……笑いすぎ。ぶふぉww」

「堪えきれてねぇじゃないかマイシスター。他人の不幸は蜜の味。そんなもん味わったら笑うっきゃねーだろ?ww」

 

 腹いてぇwと笑い転げる空に対し、今一つピンとこないステフが疑問を口にする。

 

「これでプラムさんが必敗ですの? ライラさんから血が飲めなくてもカイが受け継ぐのなら問題ないじゃありませんの?」

「ドラちゃんは本当にお疲れのようにございますね。本日はお休みになる事をオススメしますが?」

「人間が海棲種(セーレーン)より長生きな訳ないだろ、です。じゃあカイが死んだら誰から血を吸うんだ、です」

「ステファニー殿、いづなですら分かる事ですぞ? 最近は忙しかった故致し方ない事とは思いますが、本当にお休みになられた方がいいと思いますぞ」

 

 口にした途端皆から本当に心配され、いづなの口にした当たり前の事実を思い出して戦慄する。

もし勝ってしまったら、盟約によって守られているライラの義務はカイに移動し、カイが血を与える事となる。

では、もしカイが死んでしまったら? そもそも吸血行為自体が殺傷に当たってしまう悲しい種族の吸血種(ダンピール)は当然血を飲めなくなり、先に待つのは滅びである。

故に、カイに血を吸わせる義務が移る事はプラムは避けなければならない。

ならないのだが、思い当たる一つの疑問。

 

「一種族でも滅んだら空のいう攻略法が実行できないのではありませんの!?」

「んだよ、俺ってそんなに信用されてねーの?」

「白以外に……信用される……要素……皆無」

「マスター、私も信用しております」

「いづなは空と白の事、信用してるぞ、です。二人からは嫌な匂いしねー、です」

「空殿の悪知恵を持ってすれば可能でしょうな。一筋縄ではいかぬと思いますが」

「爺さんが俺褒めるとかキメェ。明日は槍でも降るのか?」

「皆さん何を信じてるというのですの!?」

 

 口に出した途端、今度は「お前は違うのか?」というニュアンスの言葉をぶつけられ続けるステフに説明するのは一番新しいこのお城への入場者で。

 

「私が死ぬ前に空と白が唯一神(テト)君を破るって事だけど? ステフちゃんは信じて無いのかなー?」

 

 いたずらっぽく笑いながらステフにそう言ったカイは、満面の笑みでいのの方を向き、勝負を始める。

 

「じゃあディーラーのいのさん。勝ちの確定したポーカーの始まりとしてくださーい」

「了解しましたぞ。いやはや、自分もそこのハゲザルにやられた身ではありますが、下克上というのは(はた)からみると愉快なものですな」

「つーか今回も綺麗にハメて勝利もぎ取ったな。いや、もぎ取ったっつーか差し出させたんだけどさ」

「ため息……出るほど、鮮やか。……にぃと同じ……くらい?」

 

 説明を勝手に終えられて、勝ち確の2つのゲームをようやく開始したカイをぼーっと見ていたステフは、

 

(空を……。私、まだどこか心の端で、空を信じ切れていなかったのですの?)

 

なんて考えに辿り着いてしまい、そんな筈はないと目を閉じ考えを払拭(ふっしょく)する。

 

 人類種(イマニティ)の全権代理者で。

 

「事前情報有りとはいえ、嵌め手搦め手はいい勝負出来そうだなー」

 

その嵌め手搦め手ハッタリで位階序列7位の森精種(エルフ)の助力を受けたクラミーを負かし。

 

「白達と……同じく、……二種族同時……クリア」

 

複数の種族を相手取っても一切気圧(けお)される事も無く。

 

「俺等はその時天翼種(フリューゲル)も一緒に手に入れたがな」

「流石に本家本元の『  (くうはく)』には敵わないってー」

 

デタラメとしか思えない、誰も勝てると思ってなかった存在に、相手の提案してきたゲームで二度も勝った文字通り人類種(イマニティ)の救世主のような存在を認めてないわけが無い。と。

 

*

 

 どんな役でさえ下手すると勝ってしまう事を懸念したプラムは、盟約で縛られたのが発声であることの意味を悔しくも痛感し。

カイの裏向きのままの手札をロイヤルストレートフラッシュに偽造して。

万が一、いや六十五万が一にも自分の手札がロイヤルストレートフラッシュじゃ無くするためにも偽造して。

 

海産物(ライラ)を連れて来たのは痛恨のミスですぅ。あっちで吸っておさらばしとくべきでしたぁ。……本当に異世界人と来たら、どいつもこいつも厄介な人達ばかりですぅ)

 

 声を出せない故に、空になる舌打ちをしつつ、負けを受け入れたプラムは、

 

(抱き枕になってる間、汗くらいは舐めさせていただきますぅ)

 

 とまぁ普通に考えるとド変態な事を頭の中で思い描き言われる前にカイの膝の上に収まるのだった。



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答案(アンサー)

 膝の上に座ったプラムを抱き締め、それはもう愛おしく抱き締めながらカイはご機嫌にライラに言う。

 

「ライラ様、というわけで私の勝ちって事で♪」

「も~、なんであなたは負けちゃうのよ~☆ 私まで負けちゃったじゃな~い」

「ど~~考えても僕勝てませんでしたよねぇ!? 勝ったら種の存亡に関わっちゃってましたよねぇ!?」

「そ~なの? ライラちゃんよくわっかんな~い♫」

 

 大きなため息をついて、明らかに疲れた様子を見せるプラムをカイは、優しく頭を撫でて。

 

「大変だね、本当に」

 

 と耳元で囁けば、

 

「それ、本気で言ってますぅ? 綺麗にその大変と言われた状況を利用して僕の事を必敗にしましたのにぃ」

「可哀想だなーと思ってるよ? だからはい♪ 血、舐めていいよ♪」

 

 皮肉たっぷりに言い返して来たプラムの目の前で、手の甲に自らの爪を立て、一気に引っ掻いた。

薄い皮膚を傷つけたことでうっすら滲んだ赤い色を、

 

「キャッホ~♪ カイ様大好きです愛してますぅ♪」

 

 まさしく目にも止まらぬ速さででカイの手の甲へ吸い付いたプラムは、

 

「ふぉォぉッ!? これこれこれこれですよぉ! 濃厚で芳醇な魂の旨味!! 空様から頂いた血に負けずとも劣らないクリ~~ミィなまろやかさ!! 空様の血は海ガメの卵と表現しましたが、カイ様のはさながら夜明けに輝く花から滴る甘露(かんろ)ですぅ!!♡」

 

 と相も変わらず独特な美食レビューを声高々に宣伝する。

 

「なぁカイ。そっちの勝負終わったみたいだし、ちょっと()()させてくれ」

「ご自由に?」

 

 血を舐めさせ、満足げな顔をしているカイに向かって声を掛けた空は、

 

「カイさ、俺等に挑んだ勝負に()()()()()()()()?」

 

 と確信を得た質問をカイにぶつける。

 その質問をした瞬間にそんな馬鹿な、とその場に居た『  (くうはく)』以外は『blank(くうはく)』の方へ視線を向けるが――。

 

「んー。まぁ()()()()()()よね~?」

 

 カイが返したのはまさしくその馬鹿な答えで。

 

「けどなんでこのタイミングで確信を得ちゃったの? もっと前に気付いてたんでしょう?」

「いやさ、ドヤ顔かましたのに違いました。なんてかっこわりぃじゃん?」

「確信無き……ドヤ顔……ダメ……絶対」

 

 膝の上のプラムごと空達の方へ体を向けて、しっかりと真っ直ぐに見据えるカイに向けて投げかけられたのは『  (くうはく)』からではなくその従者(ジブリール)から。

 

「つまりアナタは、マスターへ悪ふざけで挑まれたと?」

「それ冗談で言ってる? 勝負を悪ふざけなんて言って欲しく無いんだけど?」

 

 挑発的とも取れるジブリールの発言に対し、あからさまに噛みついていくカイ。

 

「勝つ気が無いのに挑まれるという事の、どこが悪ふざけで無いのでございましょう?」

「物事をちゃんと捉えてくれた空と白ちゃんとは違って、ジブリールは辿り着けてないだけでしょ?」

 

 いつの間にかカイの目前へと移動したジブリールは、視線で火花を飛ばし始め、

 

「ジブリー……ル。ステイ」

 

 白に言われるまでカイへ視線で喧嘩を吹っ掛け続けていた。

 

「とりあえず続けっぞ? 一つ、そもそもあの勝負だけカイの戦い方が違った」

 

 事前に読み込んだ作品から各キャラの性格、行動、弱点。あらゆる事を理解し、計算し、先読みし。

勝負を受けた時点で相手が敗北しなければならないように仕向けた先の二戦と違って。

真っ向から『  (くうはく)』へと挑んだあの勝負に違和感は当然あった。

 

「二つ、要求した内容がさっきまでの二戦とまるで違った」

 

 カイの戦い方の根幹は勝つ事ではない。相手に負けて貰う事にある。

それを達成する為に、あえて自分の要求に旨味が少ないながらも、相手にとって利益になる要求を提案していたし、逆に負けなければ不利益になる提案も行っていた。

が、あの勝負の時の要求にその考えは折り込まれていなかった。

 

「三つ、そもそも勝負内容。あれで『  (くうはく)』に勝てると思って無かったんだろ?」

「トランプ……一組で……イカサマ……前提? 白の……独壇……場」

 

 そもそもカイの知っている作中において、無敗を誇っていた『  (くうはく)』であり、単純な勝負の、しかもイカサマ前提の勝負において、頭脳担当の白に(かな)う等とまさか思っていないだろう。

 

「これらを踏まえての俺の考えはさっき言った通り、はなから負けるつもりだったって事だ」

 

 そう言い切った空の言葉を聞いて、やはり、と一歩踏み出したジブリールは、

 

「けど」

 

 そう続く空の言葉に動きを止めた。

 

「ぶっちゃけそこんとこはどーでもいいんだわ。普通に楽しめたし」

「最初から……負ける……つもりで……勝負……投げなかった……し?」

「だからこそここまで考えた訳だが――」

「負ける……目的……何?」

 

 不思議そうに首を傾ける白の肩に手を置いて、空が答える。

 

「答えは簡単。目的なんて無かった。違うか?」

「本当に空はなー。踏み込み過ぎってのは知ってたけど、本当に奥まで踏み込んでくるよね」

「知ってるんだろ? 昔からなんだわ」

 

 笑顔を向けたカイに対して、苦笑を返す空。

 

「つまり負けるのが目的なんじゃない。もっと前、勝負を挑む事が目的だったって訳だ」

「そう……考える……と……、要求も……変じゃ……ない」

 

 勝った時は、カイの説明を信頼を持って信じてもらえて。

負けた時は、空の質問に答える。

この二つの要求は、とある前提を足す事で全く同じ要求となってしまう。

つまり、

 

()()()()()()()()()()()()。だからこそ勝負を仕掛けるのが目的だった。だろ?」

「空、本当に好き♪ 大正解、その通りだよ」

 

 満足そうにプラムの後頭部に顔を埋めながら、笑顔を空に送る。

一瞬だけムッとした顔を白がするが、空に頭を撫でられた事でいつもの表情に戻る。

 

「んじゃ、踏み込んだついでにもう一つ質問だ。どうしてそこまで()()()()()?」



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3章 ゲーマー少女は裏切る事を考えるそうです 許容者(パーミッション)

「そんな風に育っちゃったから。――かなぁ。不器用な人間だったからねー」

「不器用な人間があんな綺麗にトランプ並べたり出来んのかよ。若者の人間離れってか?」

「私より若いし人間離れしてるの空達の方でしょ。不器用だよ? 頼まれても断れないんだから。何度もやってればそりゃあ手慣れてくるよ」

 

 空の質問に対し、ふざける風でも、かと言ってシリアスにするわけでも無く、まさしく受け入れた様に解答するカイは、ポツリポツリと自分の事を話し始めた。

 

「昔々と言う程には遠くない程度に昔。一人の女の子が居ました」

 

 そんな語り出しで始まったのは割とよくあるような話。

 

 親から、人の役に立つ事をしなさい。と教えられて育ったその女の子は、小学生の時に委員長に立候補した。

そんなになりたいと思っていなかったし、勉強も出来る部類には入らない、至って平凡な成績であったが、誰もやりたがらない委員長という()に自分を入れ込めば、みなの為になると考えたからだ。

 

 それは、小学生の間中続く事となった。一度やったから、経験者だからと周りに推薦され、それがみんなの為になるなら。と半ば押しつけに近かったが、女の子は受け入れた。

各クラスから一人、生徒会のメンバーの立候補を立てなければならない場面でも当然のように彼女になったし、そんな彼女を見て、先生たちすら彼女をそういう存在であると認識していた。

 

 中学に上がっても変わらない。委員長で生徒会役員、これにいくつかの部活の掛け持ちが加わった。

高校に上がると部活の掛け持ちは無くなったが、あらゆる行事で仕事の有る役員を任されたし、彼女も当然のように受け入れた。

 

 大学に入ってからは忙しさに拍車がかかった。

まず合コンの幹事を任され続ける事になったし、何より彼女に合コンがしたい。と声を掛ければ日程から面子から勝手に用意してくれるという便利さで、彼女はとても人気だった。

 

 とある男子が無茶振りで、余興をしてくれ。と言ったのに対し、寝る間を惜しんで手品を二つほど覚えた彼女はしかし、その事で褒められることは無かった。

 

 親に言われて育った中で、褒められたいという一心はいつの間にか、自分はどうでもよく周りの人が全て。という思考に切り替わった。

 

 箱に入る事で周りに報いようとした彼女は、いつの間にか自分が箱になっていて。

責任が、期待が、仕事が、彼女と言う箱に次々に納められ続け。

納まらなくなった時には積み上げる事に変わって行って。

それでも、不器用な彼女はその生き方以外を思いつかなくて、そして知らなくて。

――とうとう。壊れた。

 

「以上、山無し、落ち無し、意味無し、のやおい話でございましたとさ」

「今の話がカイ様なんですぅ?」

 

 話を静かに聞いていたプラムは、膝の上に座っている体勢からカイの顔を覗き込む。

そんなプラムの顔に、少しだけしょっぱい水滴が落ちて来て。

思わず本能で口に含み、一瞬声をあげようとしたが、視界に入ったカイの顔に。

プラムは自分の肩へとそっとカイの顔を優しく押し付けた。

 

「にぃ……泣かせた」

「いや、悪い。……踏み込み過ぎた」

「――お茶ですわ」

 

 しんみりとした空気になるが、それを壊すほど空気の読めない存在はここにはいない。

ステフの差し出したお茶を受け取り、一気に飲み干したカイは、

 

「プラムきゅん。……お散歩しない?」

 

 とくぐもった声で言うのだった。

 

*

 

「大丈夫ですぅ? ……その、さっきの事」

「んー? もう平気だよー。ありがとねー心配してくれて」

 

 恋人よろしく手を繋いで、城の外周を散歩している二つの影。

出かける前に空から、

 

「何としてもフォローしてくれ」

 

等と頼まれてしまったプラムだったが、元よりそのつもり。

彼女が落ち込んでいては聞くものも聞けない。もっと言えば口を滑らせることに期待できない為、プラムは惚れられている事を全力で利用し、カイを元気づけようとしていた。

 

 手を繋いだのもプラムからであるし、飛べる彼がカイに合わせて歩いている今の状況だってそう。

散歩という他にもやりたい事があるプラムからしてみればただの時間泥棒に付き合ったのすらそう。

 

 しかし、そう考えて無いのがもちろんカイで。

そもそもこの散歩の提案はプラムの為であり、

 

「ねープラムきゅん。ちょっと恥ずかしいお話したいから、二人以外に声が聞こえないように出来る?」

「お安い御用ですぅ。どーせご存じなのでしょうが夜の王(ノスフェラトゥ)何て呼ばれたりしてますしぃ、朝飯前ですぅ」

 

 紫の瞳に不規則な模様を浮かび上がらせ、えいっ☆ と可愛く呟いて、

 

「お待たせいたしましたぁ。今は誰にも盗聴されずにお話が出来ますぅ」

 

 いつでもどうぞ、とカイと向かい合うように位置取ったプラムの頭を撫で、指を頬に這わせながら。

 

「次の勝負の日程、森精種(エルフ)……というかクラミー達に情報流すんでしょ? それとなく」

 

 プラムが固まってしまうような事を口にした。

 

「それも知ってたんですぅ? いや、そうじゃなきゃカイ様が知り得ませんよねぇ」

「当然。というか今まで隠密行動してたんでしょ? 人間の私が気付ける筈ないもんねー」

 

 プラムを抱きしめ撫でくり回しながら、カイはプラムの思惑を次々と暴いていく。

 

「城にいる森精種(エルフ)の間者にはもう当たりをつけてるんでしょ? 後はその間者にどうやって神霊種(オールドデウス)との勝負の日程を伝えるか。かな?」

「僕も隠し事は暴くのが好きなのですけどぉ、カイ様も相当ですよねぇ」

「大好きだからね、プラムきゅんの事」

「……その事を今言うって事はぁ、何か案があるんですぅ?」

 

 カイを抱きしめ返し、何か自分に有利な情報でも出て来ないかと期待したプラムに届いたのは、

 

「わざわざ間者に伝えずに、直接クラミー達に教えに行こ? 伝言ゲームなんて思った通りに伝わらないのが当たり前だよ?」

「えぇと、僕が直接教えに行くと、どうあがいても警戒されちゃうと思うんですけどぉ?」

「だから、タダでは教えないの♪ ゲームをして、その上で勝って、相手に都合のいい記憶を植え付けちゃお?」

 

 段々とカイの息が荒くなってきたのは興奮してきたからであろうか。

何に。や、どうして。と言った質問はこの場では厳禁。地雷でしかないと判断したプラムは確信を得てカイへと問う。

 

「位階序列第七位、森精種(エルフ)とその従者相手にどんなゲームを挑む気ですぅ?」

 

 カイは、すでに必勝のゲームを思いついている事に。

 

「やっぱりクラミー達と言えば、オセロでしょ」

 

 何がやっぱりなのか、プラムには分からなかったが、カイが言うのならばそうなのだろう。

と、ことゲームに関しては『  (くうはく)』と同じくらいに信用したカイへ、

プラムはそのオセロのルールを静かに聞くのだった。



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誘導(インダクション)

1 基本は一般的なリバーシのルールに準拠し、盤面が全て埋め尽くされた時、盤上の石の総数の多い方の勝ちとする。

 

2 このゲームはルールに則った魔法しか使用出来ない事とする。

 

3 プレイヤーは必ず二人で一組とし、お互いが交互に打つ事を義務とする。

 

4 お互いに裏切りの魔法のみ、このゲームに使用できる事とし、先手は2つ、後手は3つの裏切りを使用するものとする。

 

5 最後の一手を打った瞬間に、残っている裏切りは強制で発動するものとする。

 

以下 裏切りについての説明をする。

 

 ・裏切りの魔法を付与した石は、裏返された場合に強制で発動し再度反転するように設定する。

(例 黒→白(裏切り)→黒)

 このように反転する魔法を総じてこのゲームでは「裏切り」と呼ぶ事とする。

 

 ・裏切りは既に場に置かれた石には付与出来ず、また、初期配置の石にも付与出来ない事とする。

 

 ・裏切りが発動し、反転した事で挟み込みが発生した場合は、ルールに則り挟んだ石を反転させる。

 

 ・ルール5にあるように、裏返されないまま残った裏切りは、ゲーム終了直前に強制で裏返る事とする。

 

 ・裏切りの魔法は必ず使い切る義務がある。

 

 ルールを書いた紙を眼前の2人に提示したカイは、相手からの質問を待つ。

 

 目の前に居るのは位階序列7位の森精種(エルフ)、フィール・ニルヴァレン。

エルフと聞けば皆が想像する通り、長い耳の見た目麗しい美少女。

何より特筆すべきは些細な動きですら主張してくるその豊満な胸であろう。

 

 その隣で、顔をフィールに近づけ、紙に書かれたルールを覗き込む人類種(イマニティ)の少女。

クラミー・ツェル。一応フィールの奴隷という位置づけになるが、当のフィールはただの友達として接しており、奴隷と聞けば想像するような傷などはどこにも見当たらない。

紫の髪にややきつい目つきの少女。

そして何より特筆すべきはどんなに動いても、何なら服を押し付けても一切主張する事の無い断崖絶壁であろう。

 

「このルールでの勝負を提案するのね?」

「じゃないとわざわざルールを見せる?」

 

 森精種(エルフ)がエルキアへと潜ませた間者。

その間者がエルヴン・ガルドへの報告をする前に、横からその情報をかっさらっていたフィール達。

間者に盟約を誓った賭けで行わせている定時報告に来たのはしかし、フィール曰く「うるさい羽虫」呼ばわりの吸血種(ダンピール)と、最近空たちの元へ来たという人類種(イマニティ)の女性。

 

(何か引っ掛かるところある? フィー)

(妙な言い回しで書かれたルールなのですよぉ~。でもぉ~、このルールにはあの蚊の魔法はかけられては無いのですよぉ~)

「『そう、ならやっぱりこのルールの中に仕掛けがあるわけね』……あのぉ? 僕の前で内緒話が出来ると思っているんですぅ?」

 

 途中から魔法を使ったやり取りの内容をプラムに洗いざらい喋られ、驚愕するクラミーとフィールに向けてプラムは続ける。

 

「蚊呼ばわりされた僕はぁ、その寛大な心で許しましょう。でもぉ、そんなに気が長い方では無いのでさっさと決めて頂けますぅ?」

 

 コツン。と(かかと)を鳴らして地面を蹴れば。

それまで居た森の中から一転、エルヴン・ガルドの上空へと景色が変わる。

 

「――ッ!?」

 

 思わず浮遊の魔法をクラミーと自身にかけるフィールであったが、それをあざ笑うかのようにプラムは指を鳴らして。

 

 今度はエルキア城の屋上に、いつの間にか4人とも正座をしている状態になっていて。

 

「エルヴン・ガルドにお二人の行動をタレこんでも構いませんしぃ、間者が誰なのかを政務に追われている可哀想な方に教えてあげてもいいですぅ。どう動いたところであなた方の妨害にしかならないと、ハッキリ宣言いたしましょー」

 

 さぞ楽しそうに、生き生きと。

そうご機嫌にまくし立てたプラムを後ろからそっと抱いて、

 

「私の可愛いプラムきゅんが変な気を起こす前に、その勝負受けてくれないかなー」

 

 とカイがクラミーとフィールに告げる。

 

「受けるしかないのですよぉ~。しかもぉ~、こちらの要求はぁ~、『今日の出来事、及びにエルフの間者に関する記憶の消去』しかないのですよぉ~」

「それだとそっちに旨味無いじゃない? だからさ、勝負を受けてくれるならそっちの要求は問答無用で適用するってのはどう? あ、もちろん記憶の消去はやだから口外禁止って事で」

「はぁ!? あんた何言ってんの!? だったら私らが勝つ必要無くなるじゃない」

 

 口を出したクラミーが、大丈夫かこいつ。と言った、実に空に似た口調でカイに言うが……。

 

「うん、だから勝った方はお互いに相手の記憶を一つ、誤認させる事が出来るって事にしたいの」

「記憶の誤認?」

「そ。例えば、そっちなら……今回私達が使った間者、そいつを別の奴に誤認させる。とか?」

「……フィー、どう思う?」

「あまり旨味が無いのですよぉ~。別に間者が割れた所でぇ~、もう使う予定も無いのですよぉ~。……でもぉ~、そこのちょぉっとだけ厄介な羽虫さんの記憶を一部誤認させられるというのは、すこーしだけ使い道があるのですよぉ~」

「いい加減寛大な僕もキレますよぉ? あとぉ、大事なお話の最中に魔法を編むのはマナー違反ですぅ」

 

 勝負さえ受けてしまえば、記憶は無くならないまでも口外は出来なくなる。

しかも勝てばその事を利用しようと必ずするであろうプラムも封じる事が出来る。

そんな条件を示してきた相手の真意を探ろうと、悟られないよう魔法を編んでいたフィールの背後が。

突如としてガラスが砕けたような音が響き、次いでパラパラと床に降り注ぐ音が響く。

 

「本当に厄介な蚊なのですよぉ~。大人しく干からびて死んでくれてればよかったのですよぉ~」

 

 笑顔を崩さず、いつの間にか自分たちが小屋の中に居た事になっている事にも驚かず、その小屋に4つある椅子の一つに座りながら言うフィールと。

そのフィールと一緒に椅子に座るクラミーに対し、カイは、

 

「私達が勝った時には、あなた達に、空達が神霊種(オールドデウス)()()()()()()()()に関する情報を誤認して貰うよ?」

 

と、さらなる餌を垂らすのだった。

 

「はぁ!? そんな情報こっちは手に入れて無いわよ!?」

 

 感情に任せ叫んだクラミーは、言った直後にしまった。と奥歯を噛む。

あまりにも突然に、そして、何よりも欲しい情報であるその餌を見せられて、思わず平静さを欠いた。

記憶の中にある空ならば、絶対に一切動じずに「んなもんもう持ってる。他のにしてくれ」とでも言ったであろう。

 

 そんな一人で悔しがってるクラミーに代わり、

 

「そんな事を言うって事はぁ~、その情報を持っているって事なのですよぉ~。だったらぁ~、こちらの要求を~、『神霊種(オールドデウス)の勝負の情報を教えたうえで、その記憶をなくす』にしたいのですよぉ~」

 

 フィールが即座に提案する。

 

「もちろんどうぞ。勝てれば、だけど」

「もしかしてぇ~、魔法が無ければ私達は弱いとでも思われてるのですよぉ~?」

「あまり、舐めてると痛い目見るわよ?」

「んー? クラミーちゃんは空の記憶持ってるのに、そんな警戒させるように煽っちゃっていいの? あ、それを利用したブラフでも考えてる?」

 

 挑発に、割とあっさり乗って来たクラミーとフィールに対してカイがそう言った時。

明らかに二人の表情が変わる。

 

「そう。どうやら本当に()()()()()()()みたいね?」

「何でもは知らないわよ。知っている事だけ」

「おふざけはいいのですよぉ~。厄介なのは蚊の方だと思ってましたけどぉ~、こっちも十二分に厄介みたいなのですよぉ~」

「んじゃあ他にはない? 無いなら合わせて欲しいんだけど?」

 

 ゆっくりと手を上げ、盟約に誓う事を周りに促したカイに続くように、それぞれが手を上げて。

 

「一応勝負中も質問なんかは受け付けるから、分かんない事あったら聞いてね? それじゃあ」

「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」

 

 裏切りオセロの勝負の幕が、切って落とされた。



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仕込み(シークレットプラン)

「先手後手はどうやって決めるのかしら?」

「好きな方選んでいいよ? 空の知識あるなら分かるでしょ? オセロには明確な『完全手(ひっしょうほう)』があるよ?」

「だから後手の方が裏切りの使用可能回数が多いんでしょ? ……フィー、どうする?」

「クラミーに任せるのですよ~。ソラさんの記憶を持っているのはクラミーですしぃ、たとえそれが無くとも私はぁ、クラミーを信じるのですよ~」

 

 周りを気にせずにクラミーにまとわりついてくるフィールに、僅かに笑みを向けて。

 

「先手は貰うわ。構わないわね?」

「はぁい、お好きにどうぞぉ。どうせ計算通りですぅ」

 

 クラミーの先手取りの宣言に、プラムはそうとだけ言ってカイと顔を合わせて笑う。

その行動に思わず「読み切られていたか?」と内心で動揺するクラミーへ、

 

「気にしなくていいのですよ~。どうせ小賢しい蚊の虚言(ブラフ)なのですよ~。裏切り含めて読み切るなんて~、いかにオセロと言えども~、まず不可能なのですよ~」

 

 頼りになるフィールが落ち着くようにと(たしな)める。

 

「勝負前から気弱になるとこだったわ。ありがとう、フィー」

「クラミーはぁ、その弱い所がかわいいのですよ~。この勝負はぁ、二人で戦う物なのですよ~。補助はぁ、任せるのですよ~」

「これ見よがしにイチャついてくるね。プラムきゅん、私達もイチャつく?」

「そこに対抗意識を燃やされる理由が分からないですぅ。それにぃ、膝の上に座らされているこの状況はぁ、イチャついてる部類に入らないんですぅ?」

 

 もはや定位置となりつつあるカイの膝の上。そこに大人しく収まっているプラムが少しだけ不機嫌そうに呟く。

 

「先手は貰うわね。じゃあ、正々堂々、裏切りましょう」

 

 フフン。と鼻を鳴らして、そう宣言して黒石を盤上に置くクラミーに。

 

「クラミー? その決めセリフっぽいのは擁護不能なのですよ~」

 

 とパートナーであるフィールからツッコミが飛ぶ。

 

「な、……き、気にしないで!!」

 

 顔を真っ赤にしながらそう叫ぶしかないクラミーから、羞恥の波を引かせたのはカイの一打。

別段不思議でも無い平凡な手。

 

(オセロの完全手は証明されていると知ってる筈よね? じゃあ、どこで変化をつけてくるのかしら?)

 

 そんな思考の中で、ふと、思い当たった疑問。何故、ゲーム開始前に質問しなかったかを悔やむべき内容のソレを、仕方なく確認する為にクラミーは口を開く。

 

「ねぇ。この裏切りの魔法って、()()()()()()()()()()?」

「? どうやってって、普通に魔法で?」

「ふざけないで! 私達人類種(イマニティ)が魔法を使えるわけ無いじゃない!」

「だから、『二人一組』ってわざわざルールに組み込んでるじゃん。フィールさんが魔法使えるでしょ?」

「なっ!?」

 

 問いかけに返って来た答えはクラミーの考えと同じもの。

しかし、限りなく手が限定されるもので。

クラミー、及びカイの手番では裏切りが仕込めないという回答で。

裏切りの魔法以外の使用が出来ないというルール上、隠蔽した会話(まほう)すら使えない。

 

 結果、クラミーが何らかのアクションを起こしフィールに裏切りの使用を求めたとして。

相手には筒抜けとなってしまう。

 

(これ、向こうが(あらかじ)めどう動くかを決めてたら、本当にあの吸血鬼が言った通りになりかねないじゃない!)

 

 オセロ、という”あの二人”にいい様にやられた勝負内容で警戒はしていた筈だ。

であるのに、少なくとも空の知識を持っている筈なのに、何故自分は。と思わず自己嫌悪するクラミーに、

 

「大丈夫なのですよ~。クラミーの事でぇ、分からない事は無いのですよ~」

 

 と優しく響くのはフィールの声。

クラミーと入れ替わり、石を打つ彼女は。

 

「だからぁ、クラミーはもっと信じるのですよ~。私の事も~、自分の事も~」

 

 あのオセロで、あの二人が行った立証不可能の不正。

すなわち、互いへの異常とも言える信頼。

それを、やってしまえばいい。と、フィールは静かに宣言したのだ。

 

「やってやろうじゃない。……こんな所で負けてられないのよ!」

 

 プラムの打った石すら平凡な手。それを確認し、クラミーは確信する。

この勝負、相手が裏切りを仕込むのは石だけではない。と。

 

(大体、ルールに明言されてないじゃない。裏切りを付与出来るのは石()()なんて)

 

 二人で交互に打つ。というルール上、普通のオセロとは違い考える事が一つ増える。

相手の考え、そして相方の考え。それに裏切りの事も合わせて3つ。

その並行思考をさせる事で注意を逸らそうとした。そう考えたクラミーは、

 

「あなた、すでに裏切りを仕込んでるわね?」

 

例え下手くそな三味線(ゆさぶり)でも、間を取る為に躊躇い無く発した。

 

「どうだろねー。あなたはどう思うの?」

 

 当たり障りも無く、特に動揺も何も感じられないその返答を聞いて、クラミーはため息をつく。

石で盤をコツコツと小さく叩いて思考する()()をして。

後ろにいる信頼しているパートナーへ、意思よ伝われ、と心の中で願う。

 

(なるほどなのですよ~。相手さんはぁ、盤上を反転させるつもりなのですよ~。それならば~、そこに裏切りを仕込んでおくのですよ~)

 

 自分から焚きつけておいて、伝わりませんでした。じゃ話にならない。と、思考していたフィールは。

しっかりとクラミーの思いを受け取っていて。先手番が使える2回の内の1回目の裏切りを、盤そのものへと仕込んだ。

 

 盤上有利を続けているクラミー側は、別段定石外しをする必要ない。と、完全手のままに進めていく。

そのまま特に動きがあるわけでも無く、盤上は既に半分までが互いの石で埋まって行った。



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決着(ターンオーバー)

 何かがおかしい。

そう感じたのはフィール。

ルール上、序盤に裏切りを仕込んでも旨味が無いというのは分かる。

 

 が、しかし。盤上の石はすでに折り返しを迎えていて。

ここまで動きが無いというのは想定外。

 

(何を企んでいるのですよぉ~? クラミーが教えてくれた~、盤自体に仕込んだ裏切りと~。――後の2つはどこに仕込んだのですよ~?)

 

 つい癖で魔法の痕跡を探そうとしたが、裏切り以外の魔法は封じられている。

その事を思い出し、わずかにイラつきながらクラミーと二人で打った過去のオセロを思い出す。

同じタイミングで、やはり”あの二人”と打ったオセロを思い出していたクラミーは。

 

(ここまで動かないなんて。本当に何を考えているのかしら。……あいつ(そら)に負けた時はこちらの手を誘導された。その後たった3手で負けた。――向こうが使える裏切りの数が3つって言うのは、考え過ぎかしらね)

 

 完全手を理解していないフィーでも、クラミーという完全手のガイドに沿えば、その手は自然と寄って行く。

依然として優位はクラミー側。それは、カイ達が何かアクションを起こすまで当然続くわけで。

 

 四角のひとつを取る為にフィールが辺へ打った石は。

僅かな数のカイ側の石を裏返して。――()()()()()()()

 

 それは当然カイ側が仕込んだ裏切りが発動したという事で。

初めて明確にカイ側が動いたという事で。

何よりその石を打ったのはカイだったという事実にクラミーとフィールは息を飲む。

 

 プラムが打った石が周りに無いから、とフィールもその一打を打ったのだ。

それが、当たり前のように裏切り付与された石だった。

つまり……

 

(向こうは予め、裏切り付与するタイミングを示す合図を決めていた。と言う事かしら)

 

やはり相手の準備は万端だった、という事か。

内心唇を噛みながらクラミーは思案する。

 

 間者をだしに挑まされた勝負。どうせこちらが不利だと理解はしていたが。

あの東部連合に『  (くうはく)』が勝ったように。

自分も覆して見せる。と実は意気込んでいたクラミーだったが、読めない相手の手にはただただ困惑するばかり。

 

(落ち着きなさい。盤に裏切りを仕込んでいるのは読んだじゃない。今ので裏切り二つ目。あと一つはどこに仕込むのかしら……)

 

 そう考えて。一つの気付き。

 

(? わざわざ石の数を優位にしてきた? 裏切りで最後に盤上を裏返すのに? ……いや、勝つ姿勢を見せないと企みがばれるからよね?)

 

 過去の自身ならそう考えるであろう思考を、この時のクラミーは振り払う。

 

(何て甘い考え、()()()()に通じるわけ無いわよね。ましてや、私達の事どころかこの世界を知り尽くしているこのカイとかってやつ相手にはなおさら)

 

 そこに至るまでの長考を経て、クラミーの出した結論は。

 

「へぇ。なるほどなるほど」

 

 思わずカイが感心する一手で。

 

「随分と思い切った一打ですぅ。……そんなに怖いですぅ?」

 

 プラムが煽る一手で。

 

 言ってしまえば悪手も悪手。相手に角を譲る一手。

しかしそれは、クラミーの打った読み切る為の布石。

角を取れば相手が盤上勝ちを拾うという意思表示になり、逆に取らなければ相手は盤上負けでなければならない、という確認。

そんな状況まで進行したオセロでこの大悪手はもちろん痛い。が、それをしなければ読み切ることは不可能とクラミーは判断した。

 

 それを受けてプラムは、

 

「わざわざ差し出してくれるというのはありがたいですぅ。こんなの、ノータイムで角取りですぅ」

 

 とカイへ目配せすらせず、角を取った事でクラミーは思考の方向を定めた。

つまりは、盤上勝ちでそのまま勝てる様に仕込んでるという事で。

 

(じゃあ、やる事は一つじゃない。フィー……気付いて!)

 

 石を打つ前に、僅かに盤に触れさせて打つ事で、相手の裏切りを打ち消す裏切りを仕込んだ盤へ、さらに裏切りを仕込む事を相棒(フィール)へと伝える。

 

(? また盤に裏切り? ……つまり相手は盤に仕込んでいないという事か。 とと、思わず熱くなってしまったのですよ~。クラミーがすーぐ熱くなる分、私は冷静でないとダメなのですよ~)

 

 と考えつつも、相棒(クラミー)の思考に追い付こうと頭を回す。

悪手を打った意味を。その後の角取りを見てまた盤に裏切りを仕込む意味を。

 

 そして、この後どう動けば勝てるのかを、巡らせて。

そこから、最後の一打になるまではいつも通りのオセロとなる。

 

 もちろん最終盤。お互いが打つ度にお互いの石が目まぐるしく反転していく。

その中に裏切りによって反転する石は無く、最後の一打、プラムの手を残すのみ。

盤上は現状カイ側が不利。

が、この一打でそれも逆転する。

 

 そして、打つ瞬間に盤上に仕掛けられた()()()()()()()()()裏切りが発動し、石の数は逆転。クラミー側の勝ち。

それがクラミー達の出した結論で、決着の予想。

 

 クラミーとフィールが盤上を凝視する中、二人に気付かれないように笑ったカイは。

勝利を確信し、プラムの一打を見守る。

 

 パチン。と石を打つ音。

そしてその直前に聞こえた一斉に石が反転する音。

が、()()。そしてさらにいくつかの石が反転する音が聞こえて。

 

 クラミー達の敗北が決定した。



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等速進撃(ステイタリィ)

「なっ!? どういう事よ!?」

「どうって……見たまんまだよ? 私達の勝ち」

「ふざけないで! 盤上の石は私達の方が多いじゃない!」

 

 声を上げたクラミーの言う通り、盤上が示す勝者はクラミー側である。

がしかし、カイは自らの勝利を宣言した。

そして、

 

「クラミー? 裏切りが発動して石が裏返った音は()()しか鳴ってないのですよ~。つまり~、どこかが反転している筈なのですよ~」

 

 とフィールが気が付いた通り、最後に発動した裏切りは3つ。カイ側の裏切り1つにクラミー側が盤に付与した裏切りが2つ。

つまり、残り一つのカイ達の裏切りは()()クラミー達の目には映っていない。

いや、映ってはいるのだが裏切りが発動してからはクラミー達は確認していない。

 

 そう、つまりは。

 

「フィー! ルールが書かれた紙! あれを確認して!」

 

 クラミーが気付き、フィールが確認した通り。

 

1 基本は一般的なリバーシのルールに準拠し、盤面が全て埋め尽くされた時、盤上の石の総数の多い方の勝ちとする。

 

の一文が、

 

1 基本は一般的なリバーシのルールに準拠し、盤面が全て埋め尽くされた時、盤上の石の総数の多い方の()()とする。

 

 と反転した紙だった。

 

「だから言ったじゃないですかぁ。計算通りですぅ」

 

 腹が立つほど輝く笑顔で、それこそこぼれんばかりの笑みでクラミー達を煽るプラム。

 

「でも! わざわざ負ける為に()()()()()()仕込む!?」

「勝つ為に必要な経費じゃないの? そもそも、()()()()()()()? ローリスクハイリターンなら迷う必要ないよね?」

「な゛っ!?」

 

 読み切っていたと宣言されたクラミーと、そのクラミーを信じていたフィールが揃って驚いた。

 

「だって、空の知識有りきの思考でしょ? だったら、()()()()()()()()()()()()()()()でしょ? 忘れた? 私、先の方まで()()()()()()()? みんなの心理描写も含めてね?」

 

 そうだった、と。歯を食いしばり、けれどもそれだけでは説明できない部分をクラミー問いただす。

 

「けど、なんで! どうしてルールに仕込んだのよ! そんなの!」

「反則って言いたいの? そうだよね。だって空は、()()()()()()()()()()()()()もんね」

 

 その問いに何が問題か? と不思議そうに答えながら。

 

「でも、だからこそ仕込むんですぅ。だってぇ、僕たちは()()ですぅ。弱者は知恵を磨く者ですぅ。それを忘れた憐れな強者様はぁ、こうして喉元を食いちぎられるんですぅ」

 

 自らを弱者と謳った位階序列十二位の吸血鬼(ダンピール)の王子は。

強者と(さげす)んだ位階序列七位の森精種(エルフ)を尻目に、心底上機嫌に続ける。

 

「大体ですねぇ、よくもまぁそこまで他人の記憶でドヤれるのですぅ。理解に苦しみますぅ。あ、だからこそ負けたのは理解してますぅ?」

「アナタねッ!!」

 

 言い返そうにも、本当にその通りだったクラミーはぐうの音も出ず。

空の知識に頼りきりだった自身を今更ながら呪う。

 

 何故、石だけに裏切りを仕込むわけではないと読んだ時に。

盤に仕込むと読んだ時に。その思考を先に延ばさなかったのか。と。

 

「あ、あと言っておくけど、私、完全手なんて知らないからね?」

「はぁっ!?」

「完全手があるのは知ってたけど、どんな動きが完全手なのかっていうのは知らないよ? その時点からクラミーは読み違えてたんだよ?」

 

 そしてカイの口から明かされる根本的なクラミー達の思考の(つまづ)きは。

クラミーとフィールを絶句させるのに十分だった。

 

 読み切る前提として考えていたその条件を、そもそも満たしていない相手など読み切れるはずも無く。

そして、それゆえに届かせることが叶わなかった思考、すなわち「盤上で勝たない」という結末を。

自ら負ける為に動いてしまったというその事実を突きつけられて、クラミーは一人衣服を握りしめる。

 

 負けた。完膚なきまでに。

読まれて。誘導されて。見せつけられた。

情報の、圧倒的なアドバンテージで、殴り負けた。

 

 勝負中、目線の動き。手の動かし方。なんなら呼吸まで。どこに意識を向けているのか。

それらを、やはり空の知識頼りに探っていたクラミーだったが。

この時にようやく、それが罠だった。と理解した。

 

「本当に、完敗ね。フィー、ごめん。勝てなかったわ」

「絶対勝てると踏んだ勝負だったし、気にしなくていいよ? そもそも私はイレギュラー。ちょーっと楽しませて貰ってるだけなんだから」

「勝者がそれを言うのは~、すこーしウザったいのですよ~」

「勝ったのにドヤって何が悪いんですぅ? 勝ってないのにドヤってたどこぞの誰かよりはマシだと思いますぅ」

 

 うっすら瞳を潤ませて、相棒(フィール)へ謝罪するクラミーへかけられたのは、対戦相手であるカイからのフォローにならない慰めで。

それに突っかかってくれたフィールに返答したのは。

ウザイest(ウザさ最上級)の顔で煽り続けるプラム。

 

「んじゃ盟約に誓った通り。記憶の改ざんをさせて貰うよ? 要求は、神霊種(オールドデウス)の勝負の日程――を()()()()()()()()()()

「は?」

「そっちの要求は聞く約束だったから、間者に関する記憶の消去を受け入れて……んじゃあプラムきゅん。お二人に対神霊種(オールドデウス)戦の日時を教えてあげて~」

「は~い。ではでは~、優秀な森精種(エルフ)の間者からの情報としてぇ、忘れないよう記憶願いますぅ」

 

 こうして、神霊種(オールドデウス)戦が繰り広げられているその裏で。

同じく繰り広げられた幽体ムキムキマッチョと、本気を出した夜の王(プラム・ストーカー)の共闘の為の布石を無事に打ち終えたカイは。

 

 ご機嫌に、満足しながらプラムを抱いて。

ゆっくり、ステフに用意して貰ったベッドの上で、眠りの世界に落ちていくのだった。



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4章 ゲーマー少女は仕掛けを始めるそうです 計算者(ジョーカー)

 初瀬いのの朝は早い。

城の誰よりも早く起き、身体を動かして目を覚まし、今日の分の内政を終わらせようと移動する。

執務室の扉を開ければ、彼より先に来てすでに書類と格闘をしているステフの姿が。

 

「おはようございますドーラ公。……つかぬ事を尋ねますがお眠りになられたのですかな?」

「あ、おはようございますいのさん。えぇ、寝ましたわ。気を失うように10分程」

「……寝た方がよろしいのでは?」

「えぇ、この書類が片付いたらそうさせていただきますわ」

 

 時たまどこと分からず遠い所を見たり、若干左右に揺れているステフを見ながら、心の底からの思いを伝えたいのは。

ステフの隣へと座って、内政に取り掛かる。

 

 それからしばらくして、生理現象の為に一度部屋から出たいのは、もの凄く気になる音を聞いた。

獣人種(ワービースト)特有の優れた五感だからこそ拾えたそのわずかな音は、小さな湿った音で。

もっと具体的に言うなら何かをしゃぶっているような音で。

あまつさえ聞こえている音源がカイの寝室ともなれば気になってしまうのも仕方のない事だろう。

 

 ましてや、吸血種(ダンピール)を抱き枕にして寝るという行為をしているとなれば、彼女の身の安否が気になってしまうわけで。

ゆっくり扉に近づいて聞き耳を立てると、悩まし気な吐息とぴちゃぴちゃと響く水音。

そしてたまに聞こえてくるプラムが絶品だと早口で捲し立てる食レポを聞いた辺りで、いのの理性は飛んだ。

 

 カイの安全を確保する為という名目で扉を突き破り、カイの居る部屋へと侵入したいのの目に映ったのは。

プラムを愛おしそうに抱き締めているカイで。

 

「……何か御用で?」

 

 飛び込んで来たいのを、()()()()()叫び声さえ挙げなかったカイに対していのは。

ただただ土下座するしかなかった。

 

*

 

「んで? じーさん。弁明があるなら聞こうか?」

「いやぁ、……早とちり、ですかなぁ」

 

 開いている扉からこれまた生理現象を収めようと通りがかった空に見られ、そのまま王室にて取り調べをされているいのであったが。

突き詰めると結局いのの早とちり以外の何物でも無く、結果弁明などは出来るはずも無かった。

 

「一応聞いとくけど、カイはプラムに何吸わせてたんだ?」

「にぃ……血に……決まってる」

「そうそう。血を吸わせてたよ? 濾過した血液をね?」

「濾過? んな装置なんざこの世界に…………!? 待て、まてまてまてまて、え? 何? カイって出来てたの? ていうか出るの? え? 誰の子? やっぱプラム? 待って? 分かんない分かんない分かんない」

 

 ぶっこんだ発言をしたカイの発した「濾過した血液」の意味を理解した空は露骨に困惑する。

そんな兄にツッコミを入れる事を忘れ、ただただ驚いていた白は。

 

「カイ……出る……の?」

 

 胸の前に手を持っていき、まるでナニかを絞る様な動作をしながらカイへと質問する。

 

()()出ないよ? でも、プラムきゅんの魔法で私から母乳が出る様に誤解させればほら。赤ちゃん居なくても授乳出来るじゃん?」

 

 あっけらかん。と。特に恥じらいなくそう答えたカイは、相変わらず膝の上に乗っているプラムの頭を撫でる。

そう、いのに見られた時にはプラムに授乳させていた場面であった。

 

 思わず赤面するいのだったが、それを逃さず見つけた空は言及する。

 

「じーさん何赤くなってんだよ。普通にアウトだからな? しっかり罪の重さを数えろ」

「女性の……敵は……許さない」

「というかぁ、許可なく吸うなんて行為、出来るわけないんですぅ。ですのでぇ、そもそも部屋に入って来た意味が分かんないんですぅ。あ、もしかしてぇ、ただ女体が見たかっただけですぅ?」

 

 と煽るプラムに対し、額に青筋を浮かべながらも土下座をするいのを無視して空は。

 

「んで? じーさんが聞いたっつー食レポってどんな内容だったの?」

 

 大胆にセクハラを試みる。願わくばオカズが手に入らん事を願って。

 

「にぃ、18禁」

 

 当然来る妹からの停止命令。しかし、読めていた。と。

理論武装は完璧だ。と空は白へと反論する。

 

「ちょっと待ってくれマイシスター? カイは客人で俺は国王、そして今回のこの騒動はこの城で起きた事だ。俺にはこの騒動の詳細を聞く権利があり、そこから二度と起きないように対策する義務がある。この城で起きた問題は全て知る必要があるのだ!」

「ではもう少し、城内だけではなく()()の問題にも目を向けていただけませんの!?」

 

 ステフの涙の訴えを黙殺し、白からの反論も無い事を確認し、視線をカイへと向ける。

正式に質問として、先ほどの問いをカイへ投げかける為に。

そして、それを受けたカイは。

 

「何て言ってたっけ? まろやかなでクリーミィなコク。滑らかな舌触りと芳醇な香り。血とはまた違う濃厚さと口当たり。とても美味しいです。……だったかな? 何? 空も飲みたい?」

 

 などとまたまた爆弾発言というか、爆弾質問を投下した。

当然反応しない筈がない童貞(そら)はしかし、その反応は白にかき消される。

かき消されると言っても、空の首を白の方へと向けただけなのだが。

強引に、なんなら骨が軋む音をあげる程の勢いだった事が果たして「だけ」なのかは甚だ疑問ではあるが。

 

 うめき声を上げながら首をさする空を見ながら、カイは。

今の所思い通りに物事を動かせている事に満足しつつ、プラムのうなじに顔を埋めるのだった。



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静かに、確実に(ホーミングトラップ)

「ねー、いのさん」

「何用ですかな?」

「私に勝負を挑んで欲しいなー、なんて」

 

 プラムの頭に顎を乗せつつ、笑顔でいのに贖罪(しょくざい)を求めるカイ。

当然いのが拒むはずも無く、

 

「いやはやカイ殿も人が悪い。もしや、ここまで計算尽くですかな?」

 

 もはや勝負の話をされれば、警戒を強めるのは当然で。

それこそカイがこの状況を作り出す為にあのシーンを見せた可能性すらある。と、いのは思考する。

 

 空とは違う。わざと心拍数などを確認させて逆に反応を見るような真似では無く。

そもそもそれらをも()()()()()上で勝ち筋に使ってくるこのカイという存在は、今までいのが相手したどの人類種(イマニティ)とも違っていた。

 

「まっさかー。流石に私は自分の体を餌に出来るなんて自惚れて無いよ? 実際貧相な体つきだし、ステフちゃんに比べたら雲泥の差。月とスッポン」

 

 そんないのの問いにカイは、自分の胸の前で山を作り、ジェスチャーを交えて具体的にどこが貧相なのかを説明した。

 

 思わず男共の視線がステフのごく一部へと注がれ、一人赤面するステフをよそに、カイが続ける。

 

「それで? いのさんは私の言う事、聞いてくれるの?」

「聞くしかないでしょうな。元より、女性の望みは全て叶えるのが男の義務ですぞ。拒む理由はありませんな」

 

 分かったかクソザル。と空に吐き捨て、これ以上この件で追及するな。という釘を刺したいのは、

 

「不肖、初瀬いの。カイ殿に盟約に誓った勝負を挑みますぞ」

 

 と、声高々に、カイへと勝負を挑んだのであった。

 

*

 

 東部連合、とある家、とある部屋。

ガサゴソと押入れを漁るいのと、それを見守るカイ。

 

「おー、あったあった、ありましたぞ」

 

 探し物が見つかったらしく、若干埃被っていたゲームを持って押入れから出てくるいの。

 

「落ちもの系のゲームとはこのような物の事でよろしいのですかな?」

 

 そういってカイに差し出したゲームは「ちぎってつないで」なるゲームで。

獣人種(ワービースト)語で書かれたそれがどのようなゲームか分からないカイは。

 

「とりあえずやってみません?」

 

そういのに提案した。

 

*

 

 ゲーム開始からものの数分。

いのから操作方法や遊び方を聞きながらプレイしていたカイは、

 

(あ、なんだこれぷ〇ぷよじゃん)

 

と、ゲームの内容を理解した。

 

 3~5色の種類がある、よく分からないスライムのような何かは同じ色を4つ繋げると消える。

落ちものゲームというだけあり、上からそのスライムらしきものが降ってくるのだが、色や組み合わせにより落ちる速度が異なる。

 

 そして、これはカイの知るぷよ〇よと違う仕様で、お互いに降ってくるスライムの色と組み合わせが完全にランダムであるらしい。

 

 いのと対戦形式で遊び方を学びながらプレイしているが、当然のようにいのには勝てず、敗北だけが積みあがる。

が、事前に取り決めた勝負のルールは、「カイが勝負を開始する旨を伝えるまでは練習とする」という条件を付けたため、まだそもそも盟約に誓ってすらいない。

 

 カイが勝負を宣言し、そして、試合中にお互いの要求を言い合い、盟約に誓った瞬間にプレイしていた時点でこのカイ対いのの勝負が幕を開ける様にカイは要求した。

 

「しかしカイ殿はこのゲームの上達が早いですなー。もしや、元の世界に似たようなゲームがございましたかな?」

「どうだろー、私こういうのあまりやって来てないからねー」

「という事は他のゲームはやって来られたのですかな? いやはや、どの様なゲームがあるのか気になりますな」

 

 ゲーム中であろうと、少しでも『  (くうはく)』のいた世界のゲームの情報を集めようとするいのをいなしながら、カイは少しづついのの癖やどう勝つかの道筋を編んでいく。

 

 獣人種(ワービースト)の五感により、何かを企んでいる事など丸わかりであろう。

が、それでもカイは祈りながら。願いながら。自身の決めている勝ち筋に乗るように、いのへの罠を思案する。

 

「――ところで、わざわざ二人きりになる必要、あったのですかな?」

「仮にこのゲームを空達が知らなかったら? 初見殺し可能かもしれないゲームを見せたくないだろうなーと思って「ゲームに関する事は勝負者以外知る事が出来ない」って条件付けたんだけど?」

 

 やや飽きてきたのか、二桁程カイに勝利したいのは、プレイを少し雑にしながら聞いて来たのだが、

カイから逆に質問され、思わずほんの少しだけ、プレイする手が止まってしまった。

 

(……あの場でゲームすれば味方となる者など多数いたであろうに。……それらを遠ざけた理由が我ら人獣種(ワービースト)の為だというのか。……舐めた真似を)

 

 あからさまな挑発より、人類種(イマニティ)如きに心配される。という行為に密かに怒りを燃やすいのであったが、当然その炎は鎮火される。

 

 目の前で見て来たではないか。下克上を。ジャイアントキリングを。

そして、そうされた者達はみな一様に、人類種(イマニティ)を舐めていたではないか。

 

 そう思考し、コントローラーを握る手に、いのが僅かに力を込めた時。

 

「ん、オッケー。じゃあいのさん。勝負を始めましょ」

 

 と、カイが勝負開始の宣言を行った。



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大胆に、知らぬ間に(スパイダーウェブ)

お待たせしました(小声)




「勝負を始めるのは構いませんが、内容などは未だ決めておりませんぞ? 一体どうされるおつもりでありますかな?」

「それも含めての勝負だよー」

 

 あっさりといのが現在進行中のゲームに勝利し、再度ゲームを始めようとしたのを制止したカイは、これからのゲームに関するルールの決め方を口にする。

 

「とりあえずもう1ゲームやって、そのゲーム中に交互にルールを言い合って。そのゲームが終わった時に私といのさんがそれまで言ってたゲームの条件でルールを確定。その後、お互いに賭けるもの要求して盟約に誓うっていう流れで」

「この()()()()()()()というのは1つだけですかな?」

「そうだったらこんな説明すると思う? 当然、そのゲームが終わるまで条件は言いあうよ」

「では、条件を言うまでの制限時間を設けませんと。先に宣言する側が勝利や敗北寸前まで保留すれば一方的に条件を決める事が出来るということになるのでは?」

 

 いのが口にしたのは当然の懸念。というか、私ならばそうする。と真っ先に思い浮かんだ、しかしカイは取らないであろう手。

それを受けてのカイの返答は、いのがやはりと思えるものだった。

 

「そこは流石に時間決めるって。5秒以内に条件を言えなきゃパスとみなしちゃおう。これでどう?」

「それならば……しかし5秒というのはいささか短すぎるのでは?」

「さっきまで散々私を瞬殺してたのにそんな事言っちゃう? 10秒とかにしたら下手すると私、何も言えずに負けちゃうじゃん?」

 

 物は試し、と言ってはみたが、あっさり拒否された。まさにしようとしていた事を口にされるも、いのに動揺の色は無い。

考えていて当然なのだ。この人類種(イマニティ)という連中は。

 

「では5秒という事で。どちらが先に条件を言えるのですかな?」

「いのさんからでいいよー?」

 

 今度は流石に、いのは動揺を数瞬隠す事が出来なかった。

明らかに先に条件を言えた方が有利になるというのに、この小娘は――。

あろう事か私に先に条件を掲示させる……だとっ!? 一体――何を……。

 

 思わず血が湧きそうになるのを堪え、冷静に努める。

万に一つも見落とさないように。自らの勝利の道から踏み外さぬように。

 

 ここで、本当に慢心していなければ。すでに勝ちの道のりに居ると、自覚していなければ。

今までが余裕でカイに勝てていたばかりに、ほんの僅かに、彼の緊張が緩んでしまった。

つまり――まともなぷ〇ぷよならば、カイに勝てる。と思ってしまっていた。

 

 ゆえに、ルールを決めるゲームが始まった時に真っ先に口にした条件は。

 

「では、この「ちぎってつないで」というゲームのルール。それらを何か一つでも、些細な事でも変化させない事。を条件に致しますぞ」

 

 まともな勝負以外を否定するモノになるのは必然。

そして、条件を口にしたいのは、手を抜いていた先ほどとは比べ物にならない速度で連鎖を組んでいく。

カイがどんな条件を言おうと、次の自分の言う条件でゲームを終わらせる事が出来る様に。そして、僅かでもプレッシャーになるように。

 

 が、カイにとってはそんな条件などもはやどうでもよかった。

ぶっちゃけた話、読めていたからで。正々堂々の勝負で勝ち目など無い事は百も承知だったからで。

 

「んじゃ私からの条件」

 

 プレッシャーなどさらさら感じていないカイは、淡々とピースを埋める。

もちろん、()()()()()()()()

 

「決まったルールは全てお互いの脳内に表示されるようにしよう」

 

 これで、ほぼ全てのピースが揃った。後は――、鬼が出るか蛇が出るか。

まるで操作すらしておらず。どころかただただ真っ直ぐに高く積み上げていたカイは、自分が条件を言うと同時にあっさりと敗北した。

 

「んなっ!?」

 

 思わず声を上げてしまったいのを責める相手はここには居らず。仮にギャラリーが居たとしても、そのギャラリー皆がいのと同じ反応をしていた筈だ。

 

「その……本当によろしいのですかな?」

「? 何が?」

「いや――。その、条件がたった2つでよろしいのかと……」

 

 対戦相手の身を思わず心配してしまったいのに対し、カイが向けたのは明らかな怒りの表情で。

 

「いのさんさぁ、私の事、ちゃんと敵だって認識してないでしょー?」

「い、いえ。その様な事は――」

「嘘。じゃないとあんな発言出来ないでしょ? 私が勝つ事前提の質問なんて、さ。あ、それともただ舐められてるだけ?」

 

 にやけた表情はうすら寒く。穏やかな視線は徐々に鋭く。いのが散々辛酸(しんさん)を舐めさせられた顔によく似た表情になっていくカイは。

 

「んじゃあちょーっとだけ怒ったから、いのさんを挑発しちゃおーっと」

 

 堂々挑発と宣言し、ドヤ顔でとある言葉をいのに突きつける。

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、いのの記憶に新しい、あのムカツクハゲザルと、全く同じセリフだった。



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鮮やかに、踏み台に(スプリングボード)

前回が難産だっただけに今回はさっくり出てきました。
楽しんでいただければ幸いです。

今回ぷよぷ〇用語が多数出てきます為、後書きにてざっくりした解説を乗せておきまするる。


 奥歯に僅かにだけ力を入れ、その挑発を受けたからこそ。

ようやく。それこそカイに言わせてみれば、やっとか。と呆れられても仕方がない。と思えるほどに遅く。彼女の事を敵だと、脅威だと腹に落とし込んだいのは。

 

「ふむ。――気を使わせてしまいましたかな。いやはやお恥ずかしい限りで」

 

 照れくさそうに頭を掻きながら。

 

「では要求を言わせていただいてもよろしいですかな?」

 

 と、先程までとはまるで違う、冷たさを感じられるほどの声で問う。

 

「構わないよ。と言ってもいのさんの要求って、私の知ってる情報全てを教えろ。でしょ?」

「その通りですが私の口から言わせていただきますぞ。どんな所で上げ足を取られるか分かりませんでな。――要求は、「この世界に関する知っている全情報の開示」ですぞ」

 

 いのの変化を望んだ。煽った本人は、煽った結果冷静になったいのに心の中で謝りつつ自分に向けられるだろう要求を口にするが。

しっかり警戒し、自らの口で要求するいのによって雑に入れた罠は回避された。

 

 けど、()()()()んだよねぇ。……なんて言ってたっけ?

 

「チェックメイト。って、将棋で言う王手とは違う。討ち取ったという報告だ。だっけ?」

 

 思わず口に出てしまったその言葉に一瞬いのが鬼のような形相を向けるが、本当に一瞬ですぐに元の表情に戻る。

 

 やっぱり、空に煽られると憤死寸前まで行っちゃうのかなー。――さてと。

 

「じゃあいのさん。私からの要求は――」

 

 実はチェックメイトなんて言ったけどそこまで見えてるだけだったんだよね。言わば詰めろ。の状態。

そして、この一手で完全に詰み。だから、()()()ね? 私はズルいから、布石打ち終わった後で煽って、それに気付いて貰うしか無かったんだ。

 

 『  (くうはく)』ならば、もっとうまく誘導していたに違いない。あの空と白(ふたり)ならば、確信を持って手を進めた筈だ。それが出来なかった私は……弱い。

 

「私が勝ったら、「巫女さんが、私に勝負を挑むように手引き」する事。これが私の要求」

 

 カイの要求を聞いたいのは、脳をフル回転させて考える。

何故、そのような要求をしたのか。そして、その要求の先に何を見るのか。

最初の問いの答えは簡単だ。巫女様を倒す。と宣言しているに等しいではないか。

では、巫女様を倒して何を得ようとするのか。……それが――ついぞ分からなかった。

 

人間種(イマニティ)獣人種(ワービースト)に勝った報酬がその程度では、いやはや考えが分かりませんなぁ」

 

 だから、多少何か情報でも(こぼ)さないかと口には出したが。

 

「それはもちろん、負けてからのお楽しみだよ?」

 

 当然受け流される。

 

「それじゃあ、いのさん。このか弱き人間であるカイは、あなたが負けてくれる事を信じています」

「何をおっしゃるかと思えば、よく分かりませんなぁ」

 

 お互いに視線を交差させ、鏡合わせの様に両者それぞれ違う左右の腕をゆっくりと持ち上げ――。

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 高らかに声を合わせてそう宣言した。

 

 ――その直後。

 

「なっ!? 何だこれはっ!!?」

 

 ゲームが開始され、カイの出した条件。「このゲームのルールは全て脳内に表示される」に定められた通り脳内に浮かんで来た()()のルールに。思わずいのは声を上げた。

 

 ・決まったルールは全てお互いの脳内に表示される。

 ・このゲーム部分のルールは一切を変化させない。

 

 お互いが言った条件が逆順で脳内に現れそして――。

 

 ・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 という二人しかここに居ない理由。カイがこの状況を作り出した。その条件までもが反映されている事にいのは叫んだのだ。

 

 しかし、それで何が変わる。結局このまま勝てばいいのだ。わざわざ負ける理由など……。

 

 ゲームなど半ば上の空で、思案に意志を傾けていたいのの画面に、カイからの催促が飛んで来た。

僅か3連鎖の妨害。それでもまともに受ければ不利になるのは当然で。

仕方なく作っていた本線を崩し、その催促に対応する。

 

 思考に意志を割かせてゲームを疎かにでもしようという案でしたかな?

ですが、我らの五感を侮りましたかな?

 

 その程度ではいのを敗北に導くには当然足りない。そもそもカイの描いた勝ち方でも、負けて貰う道筋ですら無い。

 

 最初の攻防から今度は大連鎖をお互いに組み始め、どちらが先に本線発火をさせるかという場面になり、カイが、ゆっくりと口を開いた。

 

「いのさん。私に勝ったとして。聞き出した情報ってどうするの?」

 

 その一言の後、間髪入れずに本線発火したカイに対して、痺れを切らした。とほくそ笑んだいのは。

一瞬顔を(ほころ)ばせ、そして、引き攣らせた。

 

 慌てて対応しようとした操作を無理矢理変更し、結局、カイの大連鎖に一切抵抗せずに、負けを受け入れたのだった。

 

 (よもや……勝っても巫女様に情報を伝える事が叶わぬとは。――いつから、いや、どんな考えでここまでの展開を作り上げたというのだ)

 

 そう、自ら負けを認めたいのは。勝っても何ら旨味が無い。どころか差し引きでマイナスになる事を理解したのだ。

 

 カイが散々に言葉を選んで巧みにルールに組み込んだ条件。「ゲームに関する事は勝負者以外知る事が出来ない」により、いのは勝って情報を得たとしても、誰にも伝える事が出来ない。

明らかに自分より有効活用するであろう獣人種(ワービースト)の全権代理者にすら。である。

 

 そして、いのに伝える事でこの世界でカイの知っている情報は全てこのゲームと関連付いてしまい。

巫女がカイから情報を得ようと盟約に誓った勝負を仕掛けようと、カイは先の盟約に抵触するため勝負を受ける事すら敵わないだろう。

 

「挑発は私を冷静にさせるため。ですかな」

「わざわざ差し込んだ条件の意味に気付いてもらえずに負ける。何て、無いとは思ったけど、ちょっと保険をね?」

「脳内に浮かばせるというのもさ、勿論(もちろん)意識させる為ですな?」

「せーかい。にしてもうまくいって良かったー」

 

 簡単な答え合わせを済ませ、万歳をしそのまま後ろに倒れるカイ。

そして、その直後にいのの画面から、

 

「ばたんきゅ~」

 

と響き、画面が真っ暗になった。




催促→ぷよぷよは基本的に先に大連鎖を撃った側が不利(相手が連鎖中にこちらの連鎖を伸ばせるため)なので相手に大連鎖を撃って貰う為のけん制。
(3~5連鎖で無視できないおじゃまを降らせるけどお前はどうする?的な感じ)

本線→最初から狙って組んでいた連鎖の事。当然ながら大連鎖を狙って組むため基本的に大きな連鎖になる。

対応→相手からの連鎖に対して同じ程度、又は少し上回る量の連鎖を当てて相手におじゃまを返す事。

本線発火→大連鎖を始める事。文字通り本線に発火し爆発させるという意味。

ばたんきゅ~→ぷよ〇よのとあるキャラの敗北時のセリフ。

以上、ざっくりとした解説終わり!

次回、blank page。巫女さんと勝負する!デュエルスタンバイ!!


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賑やかに、華やかに(トゥレイト)

巫女さんと勝負すると言ったな。あれは嘘だ。

すいませんごめんなさい石投げないでください。

か、可能な限り次話を早く投稿しますので何卒、何卒。


 獣人種(ワービースト)の国――東部連合。首都、『巫鴈(かんながり)』。

そこにそびえ立つ(やしろ)のその中で、一人。月見酒ならぬ月見煙を楽しむ存在は。

 

 東部連合――獣人種(ワービースト)の全権代理者――『巫女』。

狐を思わせる獣耳に長い髪、同じく黄金の二つ尾を有する、束ねる者。

本名すらも忘れるほどに。文字通り全てを賭して、連合へと纏め上げたその者は、月明かりに照らされ、その身をより黄金色に近づいていた。

 

 何を思って吐いた煙か。長く長く、尾を引くように繋がる煙の元にはどのような憂いが、後悔が繋がっているのか。

 

 感傷に一人浸る『巫女』であったが、彼女の狐耳が僅かに揺れて。

優雅に振り返り、そこに居た人物へと口を開く。

 

「いの? どないしたん? うちに何か用け?」

「突然申し訳ありません。……ですが、急を要する報告と判断いたしまして……」

 

 他種族国家を構想する空と白(かれら)の元へ、(まつりごと)を手伝わせに向かわせていた初瀬いのがその場に跪いていた。

 

「急を要する? なんや穏やかやあらへんなぁ」

「最近この世界に来た「カイ」という少女をご存知でしょうか?」

「そらチェックくらいはしとる。んで? その「カイ」っちゅう子がどうかしたん?」

 

 盟約に誓った以上、要求は絶対。しかし、先の戦いの条件に「ゲームプレイヤー以外への情報の口外禁止」が織り込まれていた為、いのは頭を悩ませた。

 

 何しろゲームに何を賭けたか。も、何故ゲームをする事になったか。も口に出せないのだ。

――ゲームをするきっかけについてはいの自身は墓場まで持って行く気であろうが……。

 

「先程城にてすれ違った折に、何やら鼻歌混じりに気になる事を申しておりまして……」

「えろう勿体ぶるんやなぁ。サッサと言いや?」

「はは。失礼いたしました。彼女は、「巫女さんが必勝と思い込んじゃってるゲームはまだかなー」と言っておりまして――」

「――そん子。……今どこにおるん?」

 

 遠回りをするいのに一瞬だけ膨らんだ『巫女』の怒気は。

いのの言う急を要する報告を聞いた途端に爆発的に大きくなった。

 

「エ、エルキア王城に居りますかと……」

 

 『巫女』の気に圧倒されながらも答えたいの。そしてその答えを聞いた瞬間に血壊を発動し、一瞬で姿をくらます『巫女』。

 

 残ったいのは空に浮かぶ月を見上げ、

 

「言われた通りにしましたぞ。カイ殿」

 

 と呟くのだった。

 

*

 

 エルキア王城。現在進行形で多数の種族による国家の建設という馬鹿げた構想を大真面目に考えているその中心的立ち位置の場所。

その中にある客室の一室。カイに()てられた部屋の中に――だが。

 

 カイの姿は見受けられず、『巫女』は城を駆け巡って捜索する。がしかし、カイどころか空や白。いづなに果ては仕事に追われている筈のステフの姿まで見えず。

何か城内であったのか。と考えたが、一つの可能性に辿り着いた。

そして耳に届いたカッポーンという音で可能性は確信へ。

 

(あぁ……。あっこけ)

 

 それまで城内を捜索していた速度のままで大浴場へ突撃し。

もうもうと湯気の立つその場所へしっかりと服を脱いでから入って行く。

 

「お、カイの言う通りだったわ。巫女さんいらっしゃ~い」

 

 浴場の入り口のすぐ脇に衝立(ついたて)を設置し、片割れと離れない位置に陣取る空。

その口から出て来た言葉に思わず『巫女』は眉をひそめた。

 

「言う通りっちゅうのんはどないな意味や?」

 

 言葉通りの意味ならカイがこの場に巫女を誘い出した。という事になるのだが……。

 

「カイがここに来たからいつも通り裸の付き合いをしようとしてさ。じゃあ巫女さんも呼ぼうってなったんだが」

「カイが……その内……来る。て」

 

 いつの間にか巫女の背後に移動していた白が兄の言葉を受け継ぎ、巫女の尻尾をモフりながら応える。

 

「おや、本当にあの方の予想通りの動きにございますか。やはり獣は獣。単細胞なのでございましょうね」

獣人種(ワービースト)より先に空様達に負けた貴方がそれ、言いますぅ? しりとりで負けた天翼種(フリューゲル)なんて、僕聞いた事も無いですぅ」

「干からびる寸前だった吸血種(ダンピール)が何ドヤってやがる、です。結局全員空と白に負けてんだろ、です」

 

 他種族を別の種族が煽りあう、煽りあい小宇宙(コスモ)と化しかけた大浴場も、いづなのぐうの音も出ない正論をもって落ち着きを取り戻した。

 

「ほんで、そのカイっちゅう子はどこ居るんや? まだ挨拶もしてへん」

「ここに居ますよぉ」

 

 湯気が邪魔する視界の中、女体化したプラムを抱き抱えて身動きしない人間が一人。

こいつか。と巫女はその者の眼前へと移動するが。

 

「カイ様は今睡眠中ですぅ。質問などあるのでしたらぁ、今しばらくお待ちくださいぃ」

 

 とカイに抱かれているプラムが答えた通りに。

目を閉じ、胸を規則正しく上下させて眠っているらしいカイは。

プラムだけは離さない。とがっちりプラムを両手で捕縛していた。

 

「――なぁ……。これってツッコむ所なん?」

「触れないでいただけると助かりますぅ」

「盟約。寝ている……時の、抱き枕……化。プラム……カイに、負けてる」

「あ、ほうなん? ……人類種(イマニティ)に連敗て、なんや心配なってくるな」

「滅茶苦茶鮮やかだった、です。カイも空と白ぐれー面倒、です」

「にぃと、一緒に……しないで」

「妹よ。最近兄ちゃんに対して冷たくないかね? そろそろガチで凹むぞ!?」

 

 ワイワイガヤガヤ、騒ぐ声はあれど敵対する声などもちろん無く、結局カイが起きるまで巫女は待つ事にしたのだが……。

 

 それから、白にモフられながら体を洗い。ステフと隣り合って湯舟に浸かり、彼女の頑張りを褒めて。

いづなに近寄り、耳打ちで空と白、ステフにカイから学べる所を盗めと言って。

 

 なお起きぬカイに、怒りや苛立ちではなく純粋に心配になって来た。

 

「念の為やけど、死んだりしてへんよね? 寝るにしても限度があるやろ? のぼせてまうえ?」

 

 カイは大丈夫なのだが、彼女に抱きしめられ、身動きできないプラムはだいぶ限界が近いのが見て取れる。

 

「空様ぁ! カイ様を起こすにはどうすればいいですぅ!?」

「眠れる女性を起こす為の方法なんざ一つだ!」

「ギャルゲ……でも、エロゲ……でも。キス……鉄板」

「どの口がエロゲーなんて言っちゃってるのマイシスター!? お兄ちゃん許しませんからねっ!」

 

 『  (くうはく)』からのありがたい助言に従い、静かに唇を重ねたプラムは――。

唇が触れた瞬間に覚醒したカイに頭を押さえつけられ、それはもう熱烈なフレンチ・キスを数分にわたりカイから押し付けられて。のぼせる。とは違う原因でぐったりするのだった。




すっかり忘れていた裸の付き合い回になります。

あとプラムきゅんうわぁぁぁあぁん! スーハースーハー(ry


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多造構築(プルペッシー)

巫女さんと勝負すると言ったなあれh(ry

おっかしーなー。バトルに入れると思ったんだけどなー。

この流れで流石に次回もバトルしません。
なんて事にはならないと思いますので、気長にお待ちくだされば……。




 風呂上り。ベッドに腰を掛け、髪を櫛で()かしているカイ。

当然の事ながら自分の髪では無く、膝の上に座らせた、未だ女体化実行中のプラムの髪を。であるが。

 

 そんなカイの前には、呆れ顔で二人を見下ろす巫女が居て。

いつ声を掛けようかと考えあぐねていると。

 

「ところで巫女さん? 私に何か用があるんじゃない?」

「用も無いのにここまで来んよ。そないに暇やあらへんし」

「じゃあさっさと要件を言いやがればいいんですぅ。待て。なんて誰も言ってない事ですしぃ」

「この状況を普通に受け入れとるあんたにちぃと困惑しとったんや」

 

 ため息すら出ない。と首を横に振る巫女に、カイは隠す事無くド直球な質問を投げる。

 

「いのさんが伝えて来た事に関する裏取り。でしょ? 聞きたい事って」

「何ですぅ? そのすっごく気になってしまう内容はぁ。――カイ様ぁ♪ 僕、ずっと傍にいてもいいですぅ?」

「普通に邪魔なんやけどな。ま、ええわ。単刀直入に聞くで? どこから手に入れたん?」

 

 カイの胸に後頭部を擦りつけ、あからさまに甘えるプラムを無視し、巫女もカイに習い単刀直入に問う。

 

「手に入れるも何も、知ってた。ただそれだけ」

「よう分からんな。人間種(イマニティ)と違うん? 未来視の魔法なんて使えると思えへんのやけど」

 

 困惑したように首を傾げて見せて。苦笑いを浮かべる巫女は、その表情とは裏腹に自分の持てる最高速で脳を回転させていた。知ってた。という単語から、未来視の魔法の可能性に辿り着き、カマをかける意味も込めてその可能性を口にする。

 

 反応さえ見ればどのような返答をしようが絞り込める。そう踏んだ巫女は――しかし。

 

「未来視じゃなくて、確定事項? なんて言うんだろ。別の次元の観測者……的な?」

「えぇと、一応フォローを入れときますけどぉ。カイ様はぁ、ある程度先までは全て把握しているみたいですぅ。どこまでなのか、どのくらい先までなのかは教えてくれませんけどぉ」

「んん~? ……ほんまに人間種(イマニティ)なん? 納得出来へんのやけど」

 

 カイとプラム。両名の心音等は特に変化無く。嘘偽り無い言葉だという事が巫女を混乱せしめていた。

 

「空や白と一緒で異世界人。この説明忘れてた――テヘペロ☆」

「……うちを馬鹿にしとるん? そない大事な事、はよ言いや。なんや無駄に考えてもうたわ」

「そもそも未来視の魔法なんて有る筈無いですぅ。そんなの使えるんでしたらぁ、とっくに種のコマを独占されてますぅ」

「せやね。んで、あんたが知ってるんは納得いったわ。……何企んどるん?」

「何だと思う? 聞きたいなら――いや。言いふらされたくなかったら私にゲーム吹っ掛けるしか無いね」

 

 これ以上に無いほど瞳を輝かせ、顔の前で手を合わせて上目遣いでカイを見上げるプラムと。

内心拳を握りしめる巫女。だが、彼女の手札は一枚のみ。

 

「はいはい。思い通りにしたるわ。盟約に誓ったゲームを申し込むわ。……これでええやろ?」

「どうも、巫女さん。じゃあ勝負内容は陬雀(すうじゃん)で――」

「はいぃっ!? ちょ、カイ様ぁ? 僕そのゲーム、ルールすら知らないんですけどぉ。……大丈夫なんですぅ?」

 

 カイが巫女からの挑戦を受けて指定したゲームは、まさかの東部連合の伝統遊技であり。

触れる機会が無いゲームの為、ルールすら知らぬ。ときっぱり言い切り慌てるプラムに、カイは満面の笑みを向けて。

 

「大丈夫! 私も知らないから!」

 

 と元気に右手をサムズアップし笑顔を向けるカイ。

全く大丈夫では無いのだが、それでもプラムはそれだけで落ち着いて。

 

「ま、まぁ。――勝てるんなら別にいいですけどぉ」

 

 巫女が思わず顔をしかめるような事を呟き、こめかみ部分を指で掻いた。

 

「もちろんルールとかは少しいじくるけどね?」

「ほんならうちもルールに口挟ませてもらうえ?」

「どうぞどうぞ。大体予想は出来るけどね」

「ほうけ。んならルールは後回しに、先にお互いの要求だけ言わへん? ルール決めに時間掛かりそうやし」

「時間掛けさせたい。が正解でしょ? 日の出まであとどれくらいだろうね?」

 

 プラムがまともに活動出来なくなる日中に勝負をしたい巫女だが。あっさりとカイに看破されて。

しっかりと警戒したうえで、要求を口にする。

 

「うちからの要求は、あんたが知っとる情報の提供。ほんで、うち以外へのその情報の伝達の禁止や」

「おーけーおーけー。じゃあ私からは、東部連合のとある場所への立ち入り許可。並びにその場所への魔法設置の許可。で」

 

 巫女の要求に、知ってた。と言わんばかりに反応したカイと。

カイの要求に冷や汗を垂らした巫女とは何が違うのか。

 

 いや、カイの要求を聞いて反応してしまった存在がもう一人。

 

「その要求ってぇ、思いっきり間者のソレなんですけどぉ……実は森精種(エルフ)の息がかかってました。なんて言いませんよねぇ?」

「? 何で? そう聞こえた?」

「いや、考えてもみぃや。東部連合(ねろ)とる種族で魔法言うたら、そこしかあらへんで?」

「別に深い意味は無いんだけどなぁ。完全に私の娯楽の為だし」

「娯楽の為とこの世界での情報アドを取る為の要求がぁ、対等であるとは思えないんですけどぉ」

 

 そこまで変な事を言ったのか? という態度のカイに、プラムと巫女は双方違った反応を示した。

片方は勿体無い。そして片方は疑わしい。である。

 

「うちはまぁ、その要求でかまへんけど。あんたはうちの要求でええのん? ……あ、ほんまに娯楽目的でのみ受け付けるんやで?」

「オールオッケー。要求に異議なーし。んじゃルールを詰めていきますか」

 

 保険までかけて要求を認めた巫女に対し、カイはあっけらかんと要求を呑む。

 

 げんなりした顔で腕の中でぐったりするプラムを尻目に、カイと巫女はこれから戦う為のルールを練るのだった。




さぁて、皆様をお待たせしない為に巫女さんに勝つ勝負方法考えなきゃ←

……頑張ります。(いの戦の難産を思い出しながら)


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閉鎖条件(スケープゴート)

「さてと、んじゃあルールなんだけど、陬雀(すうじゃん)にいくつか付け足したいのがあるんだよね」

「ま、せやろなぁ。何加えるん?」

「まずは二人組の対抗戦ってのが絶対条件かな。後は麻雀(マージャン)の上がり役も陬雀に適用したいかなー」

 

 獣人種(ワービースト)を相手に、人間単体でどうにかなるわけでも無く。

これだけは譲れない。と、当然の条件を巫女に提案したカイ。

 

「どうせ4人で卓を囲む事になるんやし、二人組の対抗戦っちゅうんは歓迎や。せやけど、麻雀の役を適用なんて、何が目的なん?」

「私が分かりやすい。陬雀なんてやった事無いゲームするんだし、多少はこっちに配慮して?」

「別にええけど。――それやったら、初めから麻雀で良かったんと違う?」

「だって『  (くうはく)』は初見の陬雀で巫女さんに勝ったんでしょ? 真似したいじゃん♪」

 

 膝の上で、カイの指を(もてあそ)ぶプラムを互いに無視し、双方は続ける。

 

「随分と舐められたもんやね。そない簡単な事に思えるん?」

「まっさかー。私勝負ごとに弱いし。なんなら、ステフちゃんより弱い自覚あるよ?」

「流石にダウトですぅ。鮮やかな嵌め手搦め手でステフ様どころか僕すら負かしてるじゃないですかぁ。そんなカイ様が弱いなんて、僕らの立つ瀬が無いじゃ無いですかぁ」

 

 ようやく会話に参加できたプラムは、力一杯(ちからいっぱい)にカイの発現を否定する。

唇を尖らせ、不満を露わにしながら。

しかし、カイは。

 

「だって考えてみてよ。二度と使えないような嵌め手であり、搦め手だよ? 再戦挑まれたら、勝ち目あると思う?」

「――それ、誘い受けの常套句(じょうとうく)じゃないですぅ?」

「てか話逸れとるで? ルールはそれだけでええのん?」

「あ、まだまだ。対抗戦ってぐらいだから、お互いの手牌の合計役で競うってのと」

 

 ルールの追加を締めようとした巫女に、カイは待ったをかけて。

 

「この勝負に使う牌。それぞれの精霊によって偏りが出る様にして欲しいんだよね」

「? どないな意味や?」

 

 新たに追加されようとしているルールの意図が分からず、思わず聞き返す。

 

「んーと、みんな体内に精霊を保有してるんでしょ? その精霊の量に応じて、例えばいい手が入りやすくなるとか」

 

 それは公然とイカサマをもルールに組み込む。と言った趣旨の提案で。

 

「対抗戦だし、同じ二人組同士なら手牌の情報を共有出来る事にもして欲しいなぁ」

 

 獣人種(ワービースト)の五感を持ってすれば容易く行えるイカサマで。

 

「どうせやるだろうし、(あらかじ)めルールに組み込んでおかない?」

 

 この世界の事を。この先の事を知っているという彼女が言う事にこそ意味があったそのルールの提案は。

 

「ほんま、知られとるっちゅうんは、やりにくいんやなぁ」

 

 巫女からすれば呑むしかない要求だった。

そもそも、カイに勝負を仕掛ける様に仕組まれた為に、巫女の脳内では必敗のゲームすら受けさせられる覚悟をしていた。

 

 しかし蓋を開けてみると、陬雀というこちらに経験というアドバンテージのあるゲームを提案され、通し(イカサマ)をルールとされただけ。

まだまだこちらに分がある勝負にしか思えない。……だからこそ、警戒する。

 

「そっちの提案呑むとして、そのゲーム、どうやって作るん? 精霊を基準にするルールがある以上、電脳空間では出来へんし。……誰やあてがあるんか?」

「あ、僕がしますぅ。カイ様から散々血を貰っているのでぇ、まっかせてくださいぃ」

「却下や」

 

 どうせそうなるだろうと思いながらも口にした懸念は、やはり巫女の思った通りで。

どうしてカイと組むプラムに、このゲームの根幹とも言えるシステムを作らせようか。

 

「えぇ……僕、絶対に不正の出るようなルールにしないと誓いますよぉ?」

「信じれると思うん? あんたがうちら嵌めようとした事、忘れてへんで?」

「じゃあさ。プラム君は盟約に誓ったゲームを巫女さんに吹っ掛けて。わざと負けて今回のゲームのシステムを作る際に、イカサマが出ないように縛って貰うってのは?」

 

 火花バチバチで互いに言い合う巫女とプラムに、満面の笑みでそんな事を提案したカイ。

 

(その笑顔がすこぶる怖いんですよねぇ。……もうなるようになれって感じですけどぉ)

(そこまで自信を持てる材料があるっちゅうんか? ……ルールとか、洗い直した方がええか?)

 

 そんなカイの態度に思う想いは二人それぞれ。

けれどもそれ以外に選択肢など無く、八百長でプラムを縛り、ゲームのシステムを編ませたところで。

 

「そう言えば巫女さん? 巫女さんの相方は誰にするの?」

「あ、せやなぁ。別に誰でもええんやけど。――いづなに頼みたいんやけどなぁ」

 

 話している途中に何か思いついたのか。寸前の言葉を否定するように、含みを持たせた口調で締める。

 

「あれ? いづなちゃんってもう寝ちゃったんじゃ――あ、そういう事か」

 

 その含みの意味に気が付いたカイは納得したように言葉を続ける。

 

「じゃあ明日、いづなちゃんが起きて、ご飯を食べて、万全な状態になってから勝負をするって事でいい?」

「かまへんよ。他に追加ルール無いんやったら、ここで盟約に誓っとこか」

「? 別にいいけど……なんで?」

「うちもそんなに暇やないからね。明日いづなの準備が出来次第ゲームをやりたいんや。あの子、いつ準備が済むか分からんからな」

 

 実際はそうではなく、これ以上ルールの追加を防ぐため。そしてこのルールで固定するための巫女の一手。

巫社(みやしろ)に戻り、ゲーム開始までの空いた時間で、ルールの抜け道が無いかを探す為に、必要な一手。

 

「そういう事なら」

 

 あっさりと了承したカイは右手を。巫女もまた右手を上げて。

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)」」

 

 綺麗にハモり、明日、いつ始まるか分からないゲームの締結を完了させた。

 

「えっとぉ、日中でやるゲームってぇ……僕が吸血種(ダンピール)だって事完全に忘れられてますよねぇ?」

 

 一人だけ、明日の勝負に絶望した人物も居るが。――何故だか誰からのツッコミもフォローも無かった。



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誘導結果(トライアンファル)

お待たせ致しました。
麻雀用語の解説……要りますかね?
咲とか流行ってましたし…………要らないですよね?(達観)


『東部連合』首都・巫鴈(かんながり)

エルキアの王城に当たる、獣人種(ワービースト)の全権代理者が住まう『巫社(みやしろ)』。

その中央塔、日本庭園を思わせる中庭に4人の姿があった。

 

 ……一人は木箱にその身を隠し、サンサンと降り注ぐ太陽光から出来うる限り離れようとしているが。

それ以外の三人、カイに巫女にいづなは、中庭に置かれた陬雀(すうじゃん)をする為にすでにスタンバイしていた。

 

「そっちは陬雀のルール、分かってんか?」

「もうバッチリ。巫女さんは今さら聞きたいこととか無いよね?」

「当然やわ。……いづなもええな?」

「任せろ、です。いつでもやれるぞ、です」

 

 フンス、と鼻息を吐いて答えたいづなに、巫女は笑顔を向ける。

 

 

「こっちは準備完了や。そっちもええの?」

 

 この真っ昼間という環境下では吸血種(ダンピール)のプラムは当然まともに動く事など出来ないだろう。

ただでさえ、こうして木箱に隠れていても、日光を捻じ曲げるための魔法を編み、展開し続けている訳であるし。

 

 このままではそもそも勝負にならないのだ。

人間が一対二の勝負を、しかも相手は獣人種(ワービースト)

おまけに勝負のルールは精霊量が多い方が有利というおまけ付き。

位階序列十六位(魔法適正無し)人間種(イマニティ)にはもはやこのままでは無理ゲーである。

 

 それでもカイは自信たっぷりに。

 

「ん、オッケー。じゃあプラムきゅん。魔法で陬雀に決めてたルールを盛り込んでくれる?」

 

 いづなの片手を借り――いや、爪を借り、傷つけて血を滲ませた指先を木箱の前に差し出す。

すると木箱は小さな窓が開き、そこにカイの指先を引きずり込んで……。

 

「キャッホー☆ 元気出ましたぁ! うぅいやぁッ!!」

 

 妙な掛け声と共に同時に出て来た幾何学模様の魔法陣。

それが陬雀(すうじゃん)をする卓を取り囲み、徐々に狭まって――やがて卓に溶け込んでいく。

 

「はぁ……はぁ……。これでルールとして設定した、精霊量に比例した優位性、パートナー同士の手牌の共有、そして和了(あが)った時の上がり役の合計の自動算出も完璧ですぅ」

 

 息を荒げてそう言った木箱は、どうやってかズルズルと動いて、カイの膝の脇へと移動する。

その木箱を優しい手つきで撫でながら、

 

「じゃあ巫女さん。始めましょうか」

「連れがそんな調子で、ほんまにええの?」

「手加減しねーぞ、です」

「どうぞどうぞ。では、お願いします」

 

 カイはペコリ。とお辞儀して、すぐに真剣な面持ちで卓上を見据えた。

自動卓により牌は混ざり、各々の手牌がせり上がって。

 

 精霊量に比例した配牌ゆえに、自身の手牌はまるで和了(あがり)とは程遠いが、それでもカイは心の中でほくそ笑む。

()()()()()()、と。

 

「最初の親はそこの蝙蝠(こうもり)なんやけど、牌とか切れるん?」

「あ、ご心配無く。私の相方はあの人なんで」

 

 巫女の問いかけにあっけらかんとそんな事を言ってのけたカイが指差した先にあるのは……庭園内の池。

その先に、

 

「ハ~ァイ☆ 呼ばれて飛び出てライラちゃ~ん♪ めんどくさかったけど盟約に誓った賭けに従ってこんな所まで来てあげたわよ~」

 

 元気にその姿をアピールする海棲種(セーレーン)の女王が居て。

巫女といづな、獣人種(ワービースト)の二人は絶句するしかなかった。

 

「お前、どうやってここに来やがった、です」

 

 先に口を開いたのはいづな。あからさまに威嚇しながらライラに言うが。

 

「あ、僕が運んで来ましたぁ。もちろん、今までお二人の五感ですら分からなかったのは僕の魔法のせいですぅ。お二人が気に病む必要はございません! 僕が優秀だっただけですぅ。ごめんなさい」

 

 代わりに説明したのは木箱の中のプラムで、ついでに今まで誰もライラの存在に気が付かなかった理由も合わせて説明した。

 

「ほんなら、元からカイとそこの海棲種(セーレーン)がタッグを組むつもりやったって事か」

「私、一度たりともプラムきゅんと一緒に戦う。なんて言った覚え無いよ? ルール決めや擦り合わせの場に一緒に居ただけだもん」

「なるほどなぁ。……してやられたっちゅう訳か」

 

 思わずため息をつき、肩の力を抜いた巫女は――だが。

それでも、だからどうした。と気持ちを入れ替える。

あの脳みそ海綿体(スポンジ)に陬雀を、麻雀を。ましてやその二つを合わせた今回のゲームなど、ろくに理解出来やしないと高を括った。……括ってしまった。

 

自摸(ツモ)

 

 唐突に響く、カイの声。

未だにライラの手番で、和了(あが)る事すらどう考えても無理なその発言の意味する事は一つ。

 

 手を伸ばし、対面の()()()()()()を全て表に向けて、

 

天和(てんほう)、国士無双十三面待ち。トリプル役満」

 

 カードゲームで言う所の、先攻第一ターン目キル。通称ワンキルと呼ばれるそれと、まるで変わらない、駆け引きという勝負の醍醐味全てをあざ笑うその言葉を、言い放った。




まぁ念のため説明しておくと、

自摸→和了牌を引いたぞ。

天和→死ぬがよい

国士無双十三面待ち→死ぬがよい

トリプル役満→オーバーキル

以上です。

では、次回もお楽しみに……。
頑張ります。


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馬耳東風(ウイニングラン)

お待たせいたしました。

頑張ったので巫女さんの尻尾モフらせてください。



「ま、そうなるやろなぁ」

「そんなの納得出来るか! です。どう考えてもズルだろ、です」

 

 カラカラと笑う巫女と、納得出来ないと声を荒げるいづな。

が、そんないづなを巫女が(たしな)める。

 

「いづな、勝手な事言うたらあかんよ? カイはちゃんとうちらをハメただけや」

「そもそも戦うのはカイと蝙蝠のはずだろ、です。何であいつが戦ってやがる、です」

「それはね、巫女さんの勘違いだよ? 私は誰と組むと一言も言ってないよ?」

「せやなぁ。条件からルールから決めた場所に、ただ偶然居ただけやんなぁ、そこの蝙蝠」

 

 煙管(キセル)を吹かして内心に覚えるやり場の無い怒りを吐き出すように。

 ゆっくりゆっくり煙を吐いて。

 

「もっと考えとくべきやったなぁ。わざわざお互いの手牌を確認できるようにした意味を。麻雀の役を適用した意味を。な」

「互いに当たり牌を重ねて同時(ダブ)ロン狙う為じゃねーです? 麻雀はカイが分かりやすく覚える為の手段じゃねーんです?」

 

 巫女は至った思考に追い付けなかったいづなは、素直な、つい先ほどまで()()()()()()()()()()理由を口にする。

 

「ま、そう考えてまうよな。ほんにうまいわ。()め手(からめ)め手ちゅうんは、こうして使うんが正解なんやなぁと思ってもうたわ」

「何でなんだ、です。カイ、教えろ、です」

 

 尻尾の毛を逆立たせ、威嚇をしながらカイを見つめたいづなに正解を教えたのは、他ならぬ巫女だった。

 

「いづな、よう考えてみんか。あの魚の女王に陬雀の、妥協して麻雀のルールが理解できると思うん?」

「ぜってー無理、です」

「ほんなら、あの魚をパートナーにするならあいつの代わりに自分が打てるようなルールにせなあかんな?」

「それがお互いの手を確認出来る様にした理由、です?」

「その通りー。どう考えてもあの人はルール理解出来ないよねーと」

 

 ライラの耳には届かぬように、少し声を細くして笑いながら言うカイ。

 その言葉に思わず頷いてしまった巫女は、さらに答えを続けていく。

 

「麻雀に絡めたのはそもそも簡略化する為やろ? 陬雀の定石なんざ一夜漬けでどうにかなる訳あらへんし」

「ルール聞いたけど、あの二人みたいに理解出来る訳がやっぱり無かったし? あのルールは付けてて正解だったね」

 

 実の所、巫女も手を打ってはいた。

 血壊を配牌の瞬間にだけ、いづな共々発動して手牌を良くしようとしていたり、ではあったが。

 残念ながらそのことごとくは失敗していた。

 

「まさか水にさえ入っていれば、全精霊を引き付けるなんちゅう規格外(デタラメ)を持って来られるとはなぁ」

 

 発動しようにも、体内の精霊はすべからくライラに引き付けられ、血壊自体が不発。

 

「ほんで極めつけはこの卓に掛けられた、あの蝙蝠の魔法や。各々にの精霊によって手が良くなる、っては言うとったが、具体的にはどんな魔法やなんてあいつしか知らへん」

 

 やれやれと首を振った巫女はしかし。

 

「と思っとったのがそもそもの間違いやんなぁ」

「そ、そーなのか、です」

「考えてもみいや。そんな不確定な要素をカイがあてにすると思うん?」

「……やんねー、です」

「何か段々いづなちゃんに嫌われていってる気がする……。巫女さん、フォローしてよ」

「堂々とうちらまとめて嵌めといて何言うとるんや。んで? 実際の所どうなん? 蝙蝠に前もってかける魔法を指定しとったんやろ?」

 

 答え方によってはイカサマと取られる誘導尋問じみた問いを投げた。

 あわよくば引っ掛からないかと。多少自嘲気味な笑みをその顔に張り付けて。

 

「まっさかー。そんな事したら巫女さんとプラムきゅんの八百長勝負の盟約に反するでしょ? しっかり予想したよ?」

 

 案の定、引っ掛からなかった。――どころか全部を見透かしていたカイは、プラムの掛けた魔法を暴いていく。

 

「精霊に反応して偏る。口で言うと簡単だけど、魔法にするとメンドクサイんだろうなーと考えて、じゃあどうしたら面倒じゃないかと考えたの。そしたらさ、高い役を作れる牌が体内の精霊に引き寄せられるようにしておくのが簡単じゃないかなーと思ったの」

 

 膝元にある木箱を撫でながらカイは続ける。

 

「でも牌自体に意志も無ければ動く事も無い。じゃあ、()()()()()()()()と偽装して、その精霊が牌以外の精霊に引き寄せられるようにするんじゃないかって考えた」

 

 自分が一番愛しているから、想っているから、考えているから。

 プラムなら、そうするだろうと。愛という根拠にならない根拠に全幅の信頼を寄せたカイの予想は。

 その思いの強さを示す様に、寸分狂わず合致していた。

 

「その前提を確定事項としとったからこそ、あの魚をパートナーにして、あらゆる精霊を引き付けたっちゅう事なんやろ」

「その通り。そして結果は見ての通り、問答無用のトリプル役満」

「……っ!? あの時の賭けはこの時の為だった、です!?」

「賭け? カイは魚と戦っとったんか?」

 

 気が付いたいづなの言葉に、首を捻る巫女。

 

「てっきり、なんや空にお願いするとか甘い事言うて連れて来たんや思うとったんやけど」

「蝙蝠共々カイに負けてる、です。その時の賭けの内容が、「私と一緒に戦って欲しい」だった、です」

「蝙蝠呼ばわりはもう構いませんけどぉ、ライラ様のせいで負けたんですぅ。僕だけの勝負だったら絶対に負けてないですぅ」

「いのから何も聞いてへんのやけど……そうか、そないな事があったんか……」

 

 横から口を挟んだプラムは無視され、神妙な顔つきになる巫女。

 その巫女へ、カイはいののフォローをする。

 

「いのさんについては私が盟約で縛ってるから、ほとんどの事を言えないと思うよ?」

「じぃじ、カイに負けやがったです!?」

「それも初耳――なるほどな。それらも盟約の中っちゅう事か。ん? でもいのから、カイが情報持っとるって報告あったで?」

 

 驚愕するいづなと、納得した巫女。そして巫女に思い当たる節は当然。

 

「その報告は私の盟約の賭けの内容なので。どんな内容だったかはご想像にお任せします」

「けしかけさせられた。なるほどなぁ、ほんに、手のひらの上やったわけや」

 

 密かにいのへの処罰を考えていた巫女だが、考えを改める。

 結局同じなのだ。

 自分も、いのも。いづなさえも。

 獣人種(ワービースト)の筆頭とも言える3人が同じ相手に敗北した、ただそれだけの事なのだ。

 

「ついでにもう一個教えてんか? 魚が親になったんも蝙蝠の仕業やろ?」

「それすらも精霊に惹かれる様に設定してくれたみたい。後で一杯血をあげるからね」

 

 喜ぶように木箱がゴソリと大きく震えて、すりすりとカイにすり寄っていく。

 

「ほんで、うちらの負けなんやけど、カイの要求は立ち入り許可と魔法設置許可やったな。何処に入りたいんや?」

 

 煙管の灰を捨て、(たもと)に片付けながら巫女は、ぼかされたままのカイの要求の詳細を求めた。

 それを受けてカイは。

 

「東部連合首都・巫雁(かんながり)の一角。鎮海探題府(ちんかいたんだいふ)の応接室。流石に地下には入れて貰えないだろうし、そこで我慢する」

 

 と愛する者が活躍する、挿絵でのみでしか確認出来ていない、惚れた直接的な場面を見る為に。

 

「その場所に、天翼種(フリューゲル)の魔法を仕掛けさせてね?」

 

 未だに獲得していない、確認する為の術はこれから。

 必ず負かして履行させる。と、密かに信念を燃やすカイは、その場に居た誰もが息を飲む事を言ってのけた。

 

「? ね~ぇ~、ライラちゃん帰ってい~い~?」

 

 ――一人、分かって居なかった。



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5章 ゲーマー少女は最後の仕上げに入るそうです 変幻自在(ペルソナ)

 エルキア王城のとある一室。

 日本の冬には欠かせない、とある暖房器具があるその部屋で。

 腰から先をその暖房器具に突っ込み、みかんを捏ねて柔らかくしているその存在は。

 ジブリールより複雑な模様を描いて回る光輪と、肩まで伸びた翡翠色の髪からは一本の角が伸びている。

 光りを編んだような羽は綺麗に折りたたまれ、青と黄色の瞳に自らの捏ねているみかんを映しながら……。

 怠惰を貪っているのは天翼種(フリューゲル)の『十八翼議会(せいふ)』、その議長。

 全翼代理者の最終決定権保持者。

 ――ジブリールの自称お姉ちゃん。

 アズリールだった。

 

「しかし暇だにゃ~。みんなうちを置いてどっかに行っちゃうし、この城にもほとんど誰も居ないにゃ」

 

 暖房器具、コタツに全体重を預け、およそ権利者と思えない顔を誰も居ない扉へ向けながら、それこそ暇を貪っている時である。

 そんな耳に届くのは、一人の足音で。

 人間種(イマニティ)並に制限されたアズリールの耳にも届くという事は、足音を立てるのを気にしていない人物という事だろう。

 ちまちまと小さく千切れるみかんの皮を煩わしそうに剥きながら、自分の方へ向かってくる人物が部屋に入ってくるのを今か今かと待っていると。

 

「あずにゃ~~ん!! お願いがあるんだけど~!!」

 

 扉を蹴破る勢いで、……文字通り蹴って破っているのだが。

 そんな勢いのままアズリールの背中に抱きついて頬擦りをする女性。

 最近この世界にやって来たカイとか言う少女だったか。

 悉く自分も含めて敗北せしめたあの『  (くうはく)』と同じように、数々の種族を打ち破っているらしいこの人物からのお願いなど、どうせろくでも無い事であろう、と判断して。

 

「めんどくさいにゃ~。そもそもうちの今の能力は人間種(イマニティ)並にゃ。そんなうちが出来る事なんて無いにゃ」

 

 視線すら動かさずに拒否ったアズリールに、しかしカイはめげずにアズリールに言う。

 

「他の天翼種(フリューゲル)に命令するだけでいいんだって! 東部連合の中に入る許可は貰ったし、タダとは言わないから!」

 

 ピクリ、と反応したアズリールを見逃さず、カイは言葉を続けていく。

 

「気になった? そうだなー……例えば、ジブリールが『  (くうはく)』以外に負けた相手とか? 負けた勝負の内容とか?」

 

 もはや聞き流す、という事が出来ない程に、アズリールの興味をそそるもので。

 

「お前、それ本気で言ってるのかにゃ?」

 

 思わずSANチェックが入りそうな形相でカイを睨みつけたアズリールに対して。

 

「そうだよねー、知らないよねー。……何せ、ジブリールの性格じゃ自分から言わなさそうだし」

 

 ビックリするくらいに空と重なるいやらしい笑顔で煽るカイ。

 

「なるほどにゃ。それがお前の言うタダでは無い――言うなれば手土産かにゃ~?」

「それが手土産がいいならそれでもいいよ? 他にも欲しがりそうな情報はあるし」

「今すぐ教えるにゃ! ジブにゃんの事でうちが知らない事は許されないのにゃ!」

 

 人間並みの身体能力に制限されている筈であろうに、目にも止まらぬ速さでカイに詰め寄ったアズリールは、鼻息を荒くして肩を掴み大きく揺さぶった。

 

「つぁっ!? まっ!? ちょぎっ!!」

 

 変な言葉を発してしまったカイは、――まぁ揺さ振るのを辞めさせようとする抗議の言葉なのだが。 

 割と強く揺さぶられたがゆえにそのような言葉が出てしまった。

 

「なんにゃ!? もう一回言うにゃ! ほら、何て言ったにゃ!!?」

 

 思い切り身をかがめて、何とかアズリールの魔の手から逃れたカイは、数回軽く咳き込んで、アズリールへと言い放つ。

 

「情報が欲しかったら私に勝負を挑む事! もちろん盟約に誓ったしょうb」

「上等にゃ! 挑んでやるからさっさとジブにゃんの情報を渡すにゃあぁぁぁっ!!!」

「アズにゃん飛ばしてるねぇ。交渉成立って事で♪」

 

 第一関門はクリア。と上機嫌のカイは、アズリールに対して、ジブリールが勝てなかった、獣人種(ワービースト)との勝負の事を、もちろん勝負の内容には一切触れずに伝えた。

 初見殺しで、ゲームという概念を知らなければ対応不能で、得意の魔法は一切の使用を禁じられるそのゲーム内容を、である。

 当然の如くアズリールにとっては知りたい内容ではあるが、そうそう教える事など無いだろう。

 と、半分諦めかけたアズリールだったが。

 

「ゲームに勝った時の要求は、お前の知ってる全情報をうちに教える事。でいいかにゃ?」

「それ以外を要求する気だったの? 初めからそのつもりだと思ってたんだけど?」

 

 閃いた! と口にした要求は、あっけらかんとカイに承認されて。

 そもそもその要求で進めようとしていた事を明かされて、戸惑いを覚えるアズリール。

 

「それで? どんなゲームで勝負する気にゃ?」

 

 その戸惑いを振り払い、何とか心を落ち着けて聞いたアズリールに対してのカイの返答は――。

 

「秘めましたってゲームだよ?」



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千里眼(インサイト)

「秘めました? 何にゃ? それ」

「ありゃ、知ってるもんだと思ったけど、ひょっとして知らない系?」

 

 カイの提案したゲーム、『秘めました』を聞いて、アズリールは首を捻った。

 そんなゲーム知らねー、と。

 

「聞いた事も無いにゃ。どんなゲームにゃ?」

「えっと、連想ゲームの類なんだけど……まず親が答えを思い浮かべるの。そんで、その答えが何なのかを探る為に子がいくつか質問する。質問の内容は『はい』か『いいえ』で応えられるものに限られて、親は必ず質問に答える」

 

 これからするゲームの説明を始めたカイの言葉を、一字一句聞き漏らすまい、とそれまでのだらしない姿勢を正し、無意識に姿勢を良くしたアズリールは、密かに胸を高鳴らせていた。

 それは慢心でも、見下しでも無く、純粋な好奇心。

 ゲーマーの性とも言える、知らないゲームに遭遇した高揚感。

 そんな期待の眼差しを受けながら説明するカイの内心もまた、アズリールと同じように胸を高鳴らせていた。

 もうすぐだ。

 もうすぐ、プラムの活躍した場面が肉眼で見れる、と。

 

「そんで、親の思い描いた『答え』に辿り着いたら、『あなたが思い描いたのは~~ですね?』って聞く。それが当たっていれば子の勝ちで、外れていれば親の勝ち」

「一応質問にゃ。子の質問に虚偽の答えを返したらどうなるにゃ?」

 

 ルールをひとしきり聞いてから、アズリールは真っ先に頭に浮かんだことを質問する。

 つまり、親が答えを隠蔽出来やしないか? と。

 嘘の解答で、答えに辿り着けなく出来るのではないか? と。

 しかし、カイから返ってきたのは、

 

「虚偽の解答をして、原理的に勝てないゲームにならなければいいんじゃない? そうなったらイカサマに当たって、バレたら即敗北だし」

 

 という、盟約に照らし合わされたものであり。

 

「なるほどにゃ。……これ、一回試しにやってみていいかにゃ?」

 

 即座に納得し、すぐに実践を行おうとするアズリールは流石と言うべきか。

 

「いいよー。どっちが親やる?」

「交互に回して一回ずつにゃ! まずはうちが親をやるにゃ!」

 

 当然! といった感じで話を進めたアズリールは。

 

「そういえばこれ、どうやってゲームを始めるのにゃ?」

 

 と、何がゲーム開始のキーになるか分からずに固まった。

 

「そこで秘めました、だよ。『秘めました』が開始の合図であり、準備完了と同義なの」

「ふむふむ、じゃあ『秘めました』にゃ。けどこれはきっとあんたには分かんないかにゃ~?」

 

 自信満々に言い放ったアズリールは、カイからの最初の質問に――、

 

「それは、「天翼種(フリューゲル)」ですか?」

「いいえ、にゃ」

 

 最初の質問には予想通り、と背を逸らして答えたアズリールだったが。

 次の質問には戦慄した。

 

「じゃあ、『龍精種(ドラゴニア)』ですか?」

「にゃっ!!?」

 

 その事を知る者など、限られている筈で。

 そもそも、何故その繋がりに至ったかすら、目の前の人類種(イマニティ)からは読み取れない。

 

「アズにゃん? ハイ? それともイエス?」

 

 もはや確信を持っての質問だったか、そう聞いて来たカイに対して、アズリールに出来る事といえば……。

 

「う、――イエス、にゃ」

「やっぱり? だから私には分からないって言ったのかな?」

 

 思いっきり図星を突かれ、けれどもアズリールは思い返す。

 まだ、龍精種(ドラゴニア)としか特定されていない筈で、どの個体か等は――。

 

「アズにゃんが思い描いたのは、『リーヒェンゲルテ』だね?」

 

 あっさりと――、そして驚く事に正解を言われてしまい、

 

「何でにゃ!? 何で分かるにゃ!? というか何で知ってるにゃ!!」

 

 逆切れチックにそう喚くアズリールに対して。

 

「だって、アズにゃんが想う事なんて、ジブリールの事かアルトシュの事でしょ? じゃあまずは天翼種(フリューゲル)かどうか確認して、んでもって私には分からないって発言から安直な答えじゃない事が分かるから、アルトシュってのも除外」

 

 淡々と説明していくカイに、アズリールは何を思うのか。

 

「ジブリールは否定されたから、じゃあジブリール関係で何かあったっけ? って考えて。そう言えば龍精種(ドラゴニア)と戦って倒してたなーって思ったからさっきの質問で」

 

 そもそもなぜ、最近この世界に来たはずのこの人間は、大戦時のジブリールの動きを知っていたのか。

 あのジブリールが、――いや、()()ジブリールならばいざ知らず。

 今の、あの人類種(イマニティ)に主従を誓った今のジブリールが自分からそんな事を言うとは思えず。

 だからこそ、言い表せない不快感がアズリールの背中に張り付く。

 

龍精種(ドラゴニア)を思い描いてる確認が取れたから、じゃあジブリールが討伐した個体なんだろうって決め打ちでリーヒェンゲルテって解答したってわけ」

 

 前提として、そんな記録が残っている可能性など無い。

 いや、有るにはあるだろうが、それは人類種(イマニティ)が読める文献には無いはずであり、通常ならば知っている筈が無い情報なのだ。

 ましてや【王】を冠した三体でも無く、ピンポイントでその内の一体の従龍(フォロワー)を思い浮かべるというのは……。

 

「なるほどにゃ。色々知ってるみたいだにゃ」

 

 口ぶりから、説明してくれた思考から、どうやら大戦の事を知っているらしい目の前のカイに僅かに興味が出て来たアズリールは。

 

「じゃあ次はあんたが親にゃ。さぁさぁ早くするにゃ!」

 

 急かしながら、盟約により何を要求するかに思考を巡らせるのだった。




感想とか……くれてもいいのよ?
(/ω・\)チラッ


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撹拌煽動(プロボケーション)

「はい、じゃあ、『秘めました』」

「それは生き物かにゃ?」

 

 親を交代して始まった『秘めました』。

 初めての子でありながら、アズリールのした質問は、経験者のそれと同じだと、カイを感心させた。

 先ほどのカイの様に、相手の事をよく知っていて、ある程度の予想が立つのであればもっと絞り込んだ質問からでもいいのだろうが、基本、この『秘めました』という遊びは、いかに相手の虚をつく答えにするか、という駆け引きである。

 その為、最初の質問も、広い範囲をカバー出来るものにするのが定石であり、質問回数を縛られていないのであればなおさらである。

 

「はい。その通り、生き物だよ」

「なら、十六種族(イクシード)に入っているかにゃ?」

 

 食う者か、食われる物か。

 その様な意味を、暗に含んだ質問に、カイは僅かに眉を動かして――、

 

「それもYES。まぁ、当然だよね」

 

 嘘を付けるわけでも無い為にそう答えるが、それ以上の情報を表情や態度から引き出せないのは流石といったところなのだろう。

 てんでこのカイという存在を知らないアズリールは、そこからどの種族に絞るかを思案する。

 人類種(イマニティ)は安直過ぎるだろうし、かと言ってこの城に居る他の種族とも考えにくい。

 アズリールの思考は徐々に次に来るであろう『秘めました』本番の為の、カイという存在を掘り下げる方向へと移動(シフト)していく。

 その時のアズリールにはちっぽけであるはずの、本来は気にも留めない存在であったはずの彼女がどう映っていたのか。

 

「……そいつの存在は、この世界の全員が知っているかにゃ?」

 

 悩んだ末に投げかけた問いは、苦し紛れにしては中々の質問であったであろう。

 限定的な、それこそどこかの種族の一個体になれば、下手をするとアズリールには解答不能になり得るし、何より、僅かな文献にのみ、具体的にはジブリールが見せてくれない彼女の秘蔵の書にでも書かれているならばお手上げである。

 

「答えはYES。そろそろ絞れて来たかな?」

 

 その言葉を聞いて、先ほどまで部屋を動き回っていたアズリールは、足を止めて本気で思考に没入する。

 一体誰だ? と。

 けれど、思いつくのはたった一つの存在で。

 今度は、何故その存在を答えに持って来たのかを軸に、頭を回す。

 いくつかの小さな心当たりと。

 たった一つの揺るがない大きな、分かりきった、思い当たる節。

 時間にしては僅かに数瞬。

 しかし、アズリールの思考の速度は、恐ろしく早く、

 

「思い描いたのは『唯一神テト』にゃ! これでどうにゃ!」

 

 回答を口にする時には、カイがその答えにした理由も大体察していた。

 

「正解。まぁ、最後の質問が決め手だよね」

「一応聞かせるにゃ。何であいつ(テト)なのにゃ?」

 

 察してはいても、それが正しいのかは本人に聞いてみなければ分からない事である為、当然のように理由を聞くアズリールに。

 

「? だってみんな知ってるでしょ?」

 

 と、それ以外に何かあるのか? と首を傾げながら聞き返すカイ。

 思っていた通りの理由にやはり、と満足し、そして、同時に苦い思いを覚えるアズリール。

 今回のこの模擬戦とも言うべきゲームで、何一つ、カイの勝負に対する情報を手に入れる事が出来なかったからだ。

 

「そ、それだけかにゃ!? もっと他にないにゃ!?」

 

 理解はしていても、納得はしていないアズリールは、例え無駄になろうとも、ダメ元で、と言い寄るが。

 

「相手が知らない答えにして、何が楽しいの? だって、ゲームだよ?」

 

 あっけらかんと。

 当然でしょ、と。

 お互いが楽しめなければつまらないよ? と。

 勝ち負けよりも楽しむ事、ただそれだけに重きを置いたカイの選択を、アズリールはどう捉えたか。

 

「よ~っく分かったにゃ……。それで? どんな勝負で、どんなルールでやるのにゃ?」

「それよりさ、まずはお互いが何を賭けるか。それを決めない?」

「? 別に構わないにゃ。けど、なんでにゃ?」

 

 一時の思案を終えて、勝負に入ろうと提案したアズリールに返って来たのは、カイからの提案で。

 露骨なまでの話題転換にもちろん引っ掛かったアズリールだったが、ここで下手に突っ込んで勝負が立ち消えとなってしまっては、欲しい情報が手に入らない、とグッと堪える。

 

「もちろん、勝負が普通じゃ無いから。で納得してくれない? それでアズにゃんが不利になるようには絶対にしないから!」

「そ、そこまで言うならいいにゃ。……けど、その分うちが多めに要求させてもらうにゃ」

「どうぞどうぞ。と言っても情報の開示くらいしか私には出来ないけど?」

 

 取り繕うようなカイの発言に、間髪入れずに付け込んだアズリールは、言ったはいいものの、情報以外に特に要求する内容が思い浮かばなかった為に。

 

「じゃあ、情報と――ジブにゃんがうちの事をずっとお姉ちゃんと呼んでくれるように手を貸すにゃ!!」

 

 いくら何でも……、と思えるような提案をして。

 

「平常運転だなぁ、アズにゃん」

 

 と、カイを苦笑させるのだった。



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勝機煽動(コンバッション)

な、なんとか納得できるもの仕上がったかと思います(滝汗)

感想評価は本当に嬉しく、現金なもので意欲に繋がりますし、楽しんで頂けているとホッとする半面、更新の度に、誤字脱字無いよね? だったり。これで楽しんで貰えるのかな? と心臓バクバクでして……。

何か不備や分からない場所などがあれば教えてください。
もちろん普通の感想も大歓迎です。


…………次のノゲラいつ出るんですかね? 作者Vtuberデビューとかしましたけど(遠い目)


「それで? 実際はどんなゲームにするのにゃ!?」

 

 鼻息荒く、ジブリールからの永久お姉ちゃん呼び引換券にしか見えなくなったカイに捲し立てると。

 

「ちょ、アズにゃん。近い近い近いから!!」

 

 はやる気持ちが表れてカイににじり寄っていたからか、カイに大きく距離を取られてしまった。

 

「早くゲームの内容言うにゃ! ジブちゃんは待ってくれないのにゃっ!!」

 

 今のところ金輪際待つ気は無いのだろう、と思った事は口にせず、変に気を損ねるのも悪手だと考えたカイは、言われたとおりに勝負の内容を口にする。

 それは、アズリールが僅かにすらも予想出来なかった内容で。

 そもそも無謀とも言えるような内容で。

 その気になれば必敗にすらなりえる内容だった。

 

「親は私固定の一回勝負。そして、質問は無し。いきなり何を秘めたのかを当てて?」

「ふざけるんじゃ無いにゃ! そんなの当たるわけ無いにゃ!! 無効にゃ! 無効にゃ! そんな勝負受けるはず無いにゃ! 馬鹿にするなにゃ!!」

 

 ゲームの内容を聞いた途端に当然の如く憤慨(ふんがい)するアズリールを無視し、カイのゲームの内容説明はなおも続く。

 

「当てる事が出来たら私の勝ち。逆に外したら、アズにゃんの勝ちだよ?」

「に゛ゃぁっ!!?」

 

 空気が、変わった。

 先ほどまでのゲームを楽しんでいた和やかな空気。

 それら全てが、カイの説明が終わった途端に吹き飛んだのだ。

 ゲームとして成立しないような、そんなふざけたルールを設定したが為に。

 自分の、親の勝ちを、相手に、子に譲って貰わねば勝てないという馬鹿げた――本来あり得ないルール。

 

「だから要求を先に言わせたにゃ?」

「?」

 

 身を震わせて、それでも何とか平静を保ってそう聞いたアズリールにカイが返したのは、心の底から何のこと? と不思議がる表情で。

 

「とぼけるんじゃ無いにゃ!! こんなうちの勝ち確定のゲーム仕掛けて何するきにゃ!!」

 

 アズリールを怒らせるには十分すぎる効果を持っていた。

 

「つまり、うちの要求はそのまま呑むから八百長で負けろとでも言うのにゃ!!?」

 

 そう取られても仕方が無いルールに、確かにカイは設定した。

 けれども、もちろん負ける気などさらさら無く、いつも通り、カイの勝ち方を貫くが為のルールな訳で。

 

「こんな冗談みたいな勝負するだけ無駄にゃ!!」

 

 それを冗談等と言われて、何も言わないはずがなく……。

 

「本当にさぁ、天翼種(フリューゲル)って、どうしてこうも私の勝負を悪ふざけだとか冗談だとか言っちゃうんだろうね」

 

 勝てない勝負と分かっているがゆえに、『  (くうはく)』相手にどう転ぼうが結局行きつく先は同じになるように知恵を絞った「盟約に誓った」勝負をジブリールから「悪ふざけ」などと評されて。

 勝つための道のりである筈のルールは、やる前から冗談だと一蹴された。

 

「思考が及ばない旧時代から変わる事の無い骨董品の脳みそは黙って勝負受けて負けてくれない?」

 

 触れられたくない。……いや、そもそも疑われて欲しくない勝負に対する、勝つ為の気概が。

 ものの数秒聞いた程度で否定されてたまるか、と。

 普段男の娘(プラム)を抱き締め、一方的なイチャコラをし、抱き枕として一緒に寝ているような顔とは、口調とは思えないそれぞれを覗かせながら、アズリールへと言う。

 怒鳴るでも、怒るでも無く。

 淡々と、相手にしっかりと聞こえるように。

 

「あ゛!? 人類種(イマニティ)如きが何言ってるにゃ? それとも、自分で言っておいてどんなルールなのかも理解出来て無い様なアホなのかにゃ?」

 

 負けじと煽るアズリールへと、カイは一寸も動じずに返す。

 

「その人類種(イマニティ)に負けたのはどこのどなた方でしたっけ? しりとりで他種族に負ける天翼種(フリューゲル)? 空を飛ぶ追いかけっこで完全敗北かましてそのクソザコナメクジにまで落ちた全翼代理者の最終決定権保持者? 聞いた事も無いなー」

 

 煽る範囲を限定的にした事で、アズリールの額にうっすら青筋が浮かぶ。

 紛れも無い事実なだけに、言い返す言葉に僅かに詰まった瞬間を見逃さず、カイの追い打ち。

 

「するだけ無駄? やればいいじゃん。簡単に勝てるんでしょ? 私が知ってる情報取れるじゃん。簡単じゃん?」

「お前、少し黙るにゃ」

「あ、何も言えなくなっちゃったんだ。そうだよねー図星だもんねー。言い返せないもんねー」

「死ぬか黙るにゃ。……受ければいいにゃ? 上等にゃ! 速攻負かして吠え面かかせてやるにゃ!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 ゲームのルールを承諾し、さっさとしろ、とばかりに勢いよく手を挙げたアズリールと。

 未だに自主規制が必要なそうな顔でアズリールを睨みつけながら、ゆっくりと右手を上げるカイ。

 

「ルールはさっき言った通り、私が親で、質問無しの即回答。当てて貰えば私の勝ち。外せばアズリールの勝ち。異論は?」

「ある訳無いにゃ」

「お互いの要求は、私も色々あるしアズリールも要求足りないでしょ? もう、要求全てを飲むって事でどう?」

 

 いつの間にかカイのアズリールに対する呼び方が変わっている事に、アズリールは気が付いていない。

 

「構わないにゃ。むしろ要求を下げてくると思ってたにゃ」

「そんな意味分かんない事しない。んじゃ、いくよ?」

 

 牽制気味に放たれた挑発もするりと躱し、お互いの同意を確認したところで。

 

「「盟約に誓って(アッシェンテ)」」

 

 盟約に誓った勝負が開始された。

 



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敗路行進(レペント)

結構な頻度で更新してるような気がしますが、錯覚です。
また間隔が開くかも知れないので、その時は生暖かい眼で見てください。


 勝負開始の合図からしばらくして、いくら待てども『秘めました』と言わないカイに、若干の苛立ちを覚えるアズリール。

 体を前後左右に揺らしたり、髪を掻きむしったりと、落ち着いていないのが見て取れる。

 そんなアズリールの姿を確認したカイは、ようやく口を開いた。

 

「アズにゃん、私が秘めるのは大戦に関する事だよ」

 

 その口から出てきたのは『秘めました』という言葉ではなく、何を秘めるか、という宣言。

 だからどうした、と流そうとしたアズリールは、手放しかけた思考を必死にたぐり寄せる。

 リーヒェンゲルテを知っていた。

 今は大戦の事を答えにしようとしている。

 果たして、このカイという人類種(イマニティ)にしか見えない彼女は何者で。

 一体どこまでを知っているというのか。

 この世界をどれほどまでに把握しているのか。

 まるで、アズリールのその思考を読んでいるとでも言いたげに。

 

「今の十の盟約が設定される前。そのきっかけになった大戦終盤の事と、どのようにして大戦が終わったか。さらに言えば、誰が、どうして、どのようにして終戦に向かわせたか。その程度なら知ってるよ?」

 

 ここまでの情報を開示して、カイは果たして何を考えているのか。

 一層勝たなければと考えたアズリールは何を秘められても外せるように、カイの思考の外にある解答を用意しようと今の時間を使って頭を回す。

 今カイが口にしている事など、勝ってから考えればいい。

 そう考えていたアズリールに、

 

「じゃあ、しっかり考えてね? ()()()()()()()()()。『秘めました』」

 

 待ちに待った言葉、『秘めました』が言い渡されて。

 

「答えは――」

 

 適当に答えようとしたその時である。

 カイの視線が、どこも見ていない、虚空を覗いていた事に気がついた。

 

(? 何の顔にゃ? ……ん? 秘めましたの前に、こいつは何て言ってたにゃ?)

 

 答えの続きを紡ぐ前に、引っかかりを覚えた一つのフレーズ。

 

(貴方の最後の質問を? どういう事にゃ? 質問なんて向こうがルールから外したはずにゃ)

 

 このアズリールの気分次第で勝ちにも負けにもされるルールを制定したのは他ならぬカイであるし、そのカイが質問なんて言い出すのはどう考えても不自然だ。

 ましてや最後などと……。

 

(待つにゃ……あの時なんて言ってたにゃ?)

 

 フラッシュバックさせる記憶はつい先ほど。

 お互いが盟約に誓うその直前。

 

(あいつは、要求したこと全て飲むように変更したにゃ。けど、最初からそんな予定だったにゃ?)

 

 最初のカイの要求は、あの獣共の領地に入って魔法を仕掛けさせろ、というもので。

 それこそがカイの今必要な全てなのだろう。

 確かにアズリールに好きに要求出来るとなればやれることは増える。

 しかし、盟約によって人間種(イマニティ)並の能力に制限されているアズリールに頼めることなど、たかが知れている。

 ではなぜあそこで要求全てを飲むなんて文句に変えたのか。

 

(そんなの、勝つ為の布石のはずにゃ)

 

 たどり着いた結論に妙に納得できてしまい、そして――アズリールは戦慄する。

 

(――っ!!? いや、待つにゃ。そんな筈無いにゃ!)

 

 一瞬だけ浮かんだ狂気に満ちた結論。

 それを振り払うように首を振ったアズリールはしかし、その狂った結論以外では辻褄が合わない事を理解する。

 だから、あのような眼をした訳で。

 だから、最後の質問などという言葉が出てきた訳で。

 

(もうすでに口にした要求は勝ったときに問答無用で行使されるって事にゃ!? それじゃあ、こいつは()()()()()にゃ!)

 

 煽られるのが鬱陶しくなり、つい言葉に出てしまった、死ぬか黙れ、という言葉。

 その後で要求全てを飲むとされたせいで、そのどちらかをカイは負けた場合に飲まなければならない。

 つまり……。

 

(負けた直後に死ぬ気にゃっ!? だから最後なんて言い出したにゃ!!?)

 

 普段のアズリールならば、気にせずに死ねとばかりに適当な答えを言っていただろうが、この時ばかりは違った。

 『  (くうはく)』との勝負で人間種(イマニティ)の本質に気付かされて、大戦時の人間種(イマニティ)の動きに疑問を持った今ならば。

 その答えを持っている目の前の人間を、わざわざ見捨てるなどという選択肢は……無かった。

 

(最後の質問にしてしまえばうちの負けで、最後の質問にしない為に、うちに負けろ? こいつ……)

 

 内心で歯がみしながらも、思索するアズリールは徐々にカイの思考に追いついていく。

 

(うちに答えさせるために秘めたって事は、どう考えてもうちが知りたがってた事にゃ)

 

 それを踏まえて、紐解いていけば、(おの)ずと答えは絞られる。

 

(さて……どっちにゃ?)

 

 たった二つに絞られた答え。

 ずばり、アルトシュの事か、人間種(イマニティ)の事か。

 

(うちがずっと心で思ってたのはアルトシュ様の事にゃ。けど、最近強く思ってるのは人間種(イマニティ)の事にゃ……。どっちの答えを用意しているにゃ?)

 

 ここまでたどり着いたアズリールの、最後の二択。

 簡単に言ってしまえば、過去か、今か。

 

(だったら、うちが選ぶのはこっちにゃ)

 

「カイ、あんたが思い浮かべたのは『大戦中に人間種(イマニティ)はどのようにして生き延びたか』にゃ!!」

 

 ようやく辿り着いた解答を、アズリールはどや顔で言うのだった。

 ――――敗北する為に。




というわけで今回はいの戦でやったことの逆と言いますか。
相手の発言逆手に取ってのハメ技というか。
ぶっちゃけこれ出来そうなのが天翼種の二人しか居なくてですね……。

アズリールには犠牲になって貰って、敗北者になって貰うことになりました。

次がいつになるか確約出来ないのでゆーくりとお待ちください。


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無知承認(エニーデフィート)

リアフレに半ば脅されたのでこんなペースで書き続けてます。
流石に今回の話で一段落したので急かされない筈。
筈……。


 アズリールの解答を聞いたカイは、小さく、そして短く笑った。

 どんな意図があったのか、どんな考えでその行動に至ったか理解出来ないアズリールが、もしかして外してしまったか? と不安になるには十分な時間を取ったうえで、

 

「アズにゃん、ごめんね? この勝負、そもそもが根本的におかしいんだよ」

「どういう……事にゃ?」

 

 虚空を覗いていた瞳には、はっきりと光が入り、アズリールへと微笑みながら種明かしをするカイだったが、一方のアズリールは警戒心MAXだった。

 何か読み違えてしまったか? カイの思考に追いつくことは叶わなかったのか?

 そんな疑問が沸いてくるのを、顔には出さずに堪えていたアズリールに、

 

「だって、さっきまでの『秘めました』と全然違うじゃん? 色々な事が」

 

 勝敗の付け方から、テストプレイとはまるで違うこのゲームは、確かにアズリールに不安を抱かせる要因にはなっていた。

 

「それに、さ。私の秘めた内容。どう考えても相手の解釈次第な内容なわけでね?」

 

 先ほどまでの固有名詞では無く、もっと抽象的な解答をカイは設定していた。

 つまりは――、

 

「うちの捉え方でまだどちらが勝つか決まるって事にゃ?」

 

 まだ自らの勝利と敗北とを対戦相手に決めさせる、という事実にアズリールの思考はもはや止まる。

 信じられないから。

 そんな相手は、これまでに誰も居なかったから。

 

「という訳で私の思い描いていたのは――――」

 

 息を飲むアズリールへとカイが突きつけたのは――。

 

「『今の私みたいに』だよ」

 

 アズリールの目を点にする言葉だった。

 

「――――そういう……事にゃ」

 

 思いもよらない言葉を受けて、一瞬戸惑うアズリールだったが、先ほど止めた思考を再び回し、言葉の意味を考えていくにつれて、目の前のカイという人類種(イマニティ)という存在に、段々と恐怖すら覚え始める。

 Qどのように人類種(イマニティ)大戦を生き延びたか?

 A今の私みたいに。

 このやりとりで、注視すべきは「今の私」がどのような状況か、であり、それを踏まえたアズリールの解釈は――。

 

(死ぬ気で……決死の覚悟で戦いに挑んだからって事にゃ)

 

 十分に納得してしまえる結論に至った。

 

「なるほどにゃ――。うちの負けにゃ」

 

 口でそう言って、顔は笑顔をカイへと向けて、されど思考だけは未だに止まらず動き続けるアズリールに対し、カイが取った行動は予想外の事で。

 

「アズにゃ~ん、怖かったよ~」

 

 半泣きでアズリールの胸へと飛び込んだのだった。

 

「にゃっ!? ちょ、待つにゃ! こら! にゃはははは! くすぐったいにゃ!」

 

 豊満な谷へと顔を埋めて柔らかさを堪能するカイの頭を撫でながら、ふと、アズリールの思考がIfの世界を考える。

 

(もしアルトシュ様の事を聞いていたらどうなってたにゃ? 解答は変わらないはずで、うちなら――)

 

 やめておけば良かったと、結論を出した後に思ってしまったアズリールは、未だに自分の谷間から顔を上げないカイへと恐怖を抱かせた。

 

(ま、まさかにゃ。うちが人類種(イマニティ)の事を聞く確信があっただけにゃ……)

 

 そう思わなければ信じがたい現実に直面してしまう、とアズリールは少しだけ逃げてしまった。

 Qアルトシュ様はどうやって討たれたにゃ?

 A今の私のように(決死の覚悟をした人類種(イマニティ)によって)。

 そう行き着いてしまった思考から。

 

「色々と、聞いてもいいかにゃ?」

「何でも聞いて~。あ、ゲームの事だけね」

「分かってるにゃ。なんで泣くほど怖かったのに、あんなに簡単に命を掛けられたにゃ?」

 

 答え合わせの時間。

 そう決めたアズリールはカイを自らの胸から引き離して質問する。

 

「私の夢の為だったから。その過程で命を落としたとしても後悔は無い。そう()()()()()から」

 

 どれ程の存在が、この考えに至れるのか。

 どれだけの体験をすれば、この心持ちになれるのか。

 言いようのない恐怖を感じたアズリールの事は無視してカイは続ける。

 

「この世界は全てがゲームによって決まるんでしょ? 国境線の奪い合いも。――そして命も」

 

 唯一神(テト)は言った。

 あらゆる物事が、ゲームによって決まる、と。

 それならば、あらゆる物事を賭ける事が出来ると解釈出来るだろう。

 故に、

 

「だったら自分の命の利用価値なんてたかが知れてるし? 死ななきゃ安い(しなやす)の精神で使い倒すのが安定でしょ?」

 

 という一歩どころか半歩でも間違えれば死ぬような状況すらも受け入れた。

 それが、夢の為になるなら、と。

 

「本当に、規格外だにゃ~。そんな危ない橋、うちは御免だにゃ」

 

 なまじ元から強かったせいで、そもそも危ない橋などめったに出てこず、仮に出てきたとしても回り道をすればいいアズリールに取って、そんな思考に至る道理は全く無い。

 けれども、持たざる者である他の種族、特に人類種(イマニティ)に取っては危ない橋しか無く。

 

「危なくても、橋があるだけマシ。渡れるだけマシなの。駄目だな~アズにゃんは、私たちの事がやっぱり分かってない」

 

 『  (くうはく)』の言葉を使ったカイは、アズリールへと助言を投げる。

 

「私たちはね、どうしようも無く弱いの。大戦中は逃げて隠れる程度しか出来なくて。大戦後も領土を他の種族に取られ続けて、ちょっと前まではエルキアしか残らなかった位にはね」

 

 あの二人が来る前までの、多くの種族の当たり前。

 見下され、(さげす)まれ、適当にしか扱われなかった人類種(イマニティ)

 

「でもね? だからこそ、私たちは負けを重ねるの。どんなに負けを積み上げても、気が遠くなるような年月を経ても、その負けの塔の天辺に、たった一つの勝ちを積み上げるために、ね」

 

 それが弱者の、弱者に残された、許された、たった一つの勝ち方だ、と。

 

「よく胸に、刻んでおくにゃ」

 

 不本意ながら、自分と比べて僅かしか生きていないただの人間の少女に、いいように踊らされた。

 揚げ足を取られ、誘導され、気付かされ、気が付けば敗北へと自ら進まされた。

 けれどもアズリールは一つ、これまで自分の意識には無かった新しい勝ち方に、気が付いた。

 だから、

 

「ちょっと屋上に行って他の子を呼んで来るにゃ。魔法、仕掛けるにゃ?」

 

 目尻に反射する光を零さぬように、いつも通りの笑顔を上げて、ゆっくりと、城の屋上へと歩いて行くのだった。




と言うわけで今回で対アズリール編が終了でして、この後もうカイがディスボードに来たかった理由を書いて終わる予定だったんですけど、その事を前書きでも書いたリアフレに伝えたらですね……。

友「まだ倒してない種族おるやん? そいつらももちろん倒すんやろ?」
静「え? 考えてないけど?」
友「倒すんやろ?」
静「……時間寄越せ」
友「来年になるまでは待つわ」

なんてやりとりがありまして、ネタを考える事になりました……。

ど う し て こ う な っ た 。

まぁ言ってしまったので倒すには倒すんですけど、とある一種族だけにさせてください。
ネタが思いつかないとか、そろそろ忙しい時期とか色々理由はあるんですけど。
一番の理由に「チョロ過ぎる」というどうにもならない問題がありましてですね。
簡単に勝ち方が思い浮かんでしまって使いたくないとかいうマゾ思考になってしまいまして……。

とりあえず現段階では残り一種族だけ倒す予定です。
この作者のことなので書いてるうちにネタ思い浮かんで気が付けば全種族倒しましたとかなりかねませんが……。

もうしばらくこの作者にお付き合いくださいませ。
ではでは、もうちっとだけ続くんじゃ。


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終着点(Q.E.D.)

新年明けましておめでとうございます。
予定だと年明ける前に完結してた筈なんですけどおかしいですねぇ……。




 エルキア城内、客室。

 カイに充てられたその一室に居るのは当然カイ本人。

 国王が、王女が。また、連邦内の重要ポストに就いている何名かの姿が消えたこの城に残った、元から居た従者に焼き菓子とお茶を用意して貰い、ご機嫌に鼻歌を歌いながら空中に映し出される映像を眺める。

 

「ん~! 長かったよ~~!!」

 

 伸びをしてベッドに倒れ込み、寝ながら映像に希望の場面が映し出されるのを今か今かと心待ちにする彼女は、自身の手を天井に掲げ、やり遂げた。という意思表示を行う。

 アズリールとの勝負に勝ち、見事に要求全てを飲ませたカイは、獣人種(ワービースト)の全権代理者、巫女に勝った時の賭けの内容を行使し宣言通りに天翼種(フリューゲル)に魔法を仕掛けさせた。

 東部連合首都・巫雁(かんながり)の一角。鎮海探題府(ちんかいたんだいふ)の応接室に仕掛けられた魔法はなんてことは無い遠見の魔法。

 現代で言う監視カメラと同様なもので、その映像はリアルタイムでこの部屋に映し出されている。

 現在映像に映っているのは一人の獣人種(ワービースト)

 この少し後にいのの欲情を誘い、秘書に誘われる人物で。

 どこかから連絡を受けたのかどう対応するか等を指示していた。

 しばらくしてその部屋に入ってくるのは見知った二人。

 オセロにて負かし、現在「  (くうはく)」達が行っている神霊種(オールドデウス)とのゲームの情報を()()()()()入手して、今こそ好機と攻め込んできた主従関係の二人。

 クラミー・ツェルとフィール・ニルヴァレンがその場所で待つ事しばし。

 いつの間にか先ほどまでの応接室とは違う場所になっていたが、そうなる事は予習済み。

 ベッドから跳ね起きて正座をし、心待ちにしていた場面を見るために気合いを入れたカイの目に飛び込んできたのは……。

 ――霊体化した筋肉だるまだった。

 

「しまった!! これがあるの忘れてた!!!」

 

 思わず目を汚してしまった事を悔いて頭を壁にたたき込みそうになったが、映像から聞こえる声に正気に戻る。

 

『これは……誰の描いたシナリオなのだ!!?』

 

 いのに立て続けに襲いかかる裏切りと謀略。

 それを裏で糸を引かせていたのは誰だ、という誰にも向けられていない、しかし全員へと問うたその質問に答えるのは当然。

 

『ぁはい。僕が僕の為に描いたシナリオですけどぉ?』

 

 カイの中でオンリーワンにして大好き数値ナンバーワンの夜の王(プラム・ストーカー)で。

 

「きゃ~~! プラムきゅんかっこいい~~!!」

 

 見た瞬間に枕を抱え、それに顔を埋めて悶えるカイ。

 フィーとクラミーの企みを晒し、ドヤ顔で自分の企みを語るプラムの一挙手一投足に、いちいち感嘆の言葉と感動を表す動きをするカイは、ようやくこの世界に来てやりたかった事を成し遂げられたと安堵する。

 普段はあまり連発しない魔法による錯覚と嘘と妨害と。

 魂の減退という縛りが無い今だけに許された全力の吸血種(ダンピール)の姿。

 それがこの世界に来たカイの望みであり、これまでのありとあらゆる全ての行動の先にあった答え。

 推しキャラがまだアニメ化していないなら。

 アニメ化よりも前に姿を、声を、活躍する場面を見る事が出来るというのは最高の贅沢ではないか、と自分の全てを駆使してここまでこじつけた。

 

「挿絵の時点でそれはもう何度も妄想するくらいかっこよかったけど、やっぱり動いてる本物は迫力有るし、かわいいし、何より格好いいよねぇ」

 

 うっとりとした表情で、大活躍し大暗躍していたプラムの姿を堪能していたカイだったが、映像に映る応接室からは筋肉だるまと二人の裏切り者、そしてカイの中の王子様が居なくなる。

 地下に降り、空をボコボコにするゲームを行うために移動したのであろう。

 それを見届けて、今まで手を付けなかった焼き菓子を一つ口に運び、余韻を楽しむように静かにカップを傾けたカイは、先ほどまで映し出されていた映像が消えたのを合図にゆっくりと目を閉じる。

 瞳に焼き付けた光景を瞼に焼き移すように。

 目を閉じれば鮮明に思い出す事が出来るように。

 ――その後、焼き菓子を綺麗に平らげ、カップの中身を空にしたのは、昂ぶった感情を何度か沈めた後だった。

 

 

 一同が双六勝負から戻って来たその日の夜。

 もはや定位置とも言うべきカイの膝に座るプラムは投げ出されたカイの指をチロチロと舌で遊んでいた。

 

「というかぁ、カイ様は何がしたかったんですぅ? てっきり今回の騒動に乗じて何かすると思ってたんですけどぉ」

 

 まさかお気に入り(プラム)の格好いい姿が見たい。という理由だけで、様々な種族に勝負を挑んだ等と信じられないプラムは潤った眼差しでカイを見上げる。

 

「んふふ~。秘密。これは私だけの特権なの」

 

 もちろんその表情も瞼に焼き付けたカイは、安定のプラムのうなじに顔を埋めて、

 

「格好良かったよ」

 

 ぼそりと呟いた。

 

「えぇと……どこの事を言われてるんですかねぇ」

 

 結局「  (くうはく)」のいいように動かされていたプラムは皮肉かと疑うも、カイの顔は自分のうなじに押しつけられているわけで。

 表情を見る事が出来ずに真意を汲み取れなかったプラムは諦めていつも通りカイにされるがままに身を任す。

 普段より艶が出ているカイの肌に若干の疑問を抱きつつも、今日もプラムはカイに抱きしめられたまま、カイと共に床につくのだった。




という訳でお待たせいたしました。
当初予定していた書きたかった内容はこの話しまでです。
前回の後書きにあった「もうちょっとだけ続くんじゃ」部分は次回更新からになります。

次がいつ投稿。という約束は出来ず、大変申し訳ありませんが、気長にお待ちください。



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EX ゲーマー少女は寄り道をするそうです 分岐点(エンドスタート)

お待たせしました。

もう少しだけ作者の妄想にお付き合いください


 空達が帆楼との勝負を終えて幾ばくかの日にちが経った頃。

 具体的に言うとようやくカイがプラムを見ても赤面して鼻息を荒くしなくなった頃。

 挨拶も顔合わせも、何なら互いの自己紹介も終えて皆が皆思い思いの行動を取っている時である。

 989(くうはく)Pなる存在に『  (くうはく)』が転身し行動に移す少し前というタイミングで、カイは初めて自分から帆楼へと話しかけた。

 

「ねぇ、帆楼ちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど……」

「? 帆楼にお願い? 厄介事であると仮定されるが、汝、何用であるか。自称・カイ」

「厄介では無いはずだよ? 神霊種(オールドデウス)だったら造作も無いことだと思う」

「帆楼ならば、という前提を持って造作も無いと言う時点で、厄介事であるという結論になるのは必然では無いか?」

 

 いきなりのお願いというのは流石にハードルが高すぎたか、即座に厄介事であると仮定され、その誤解を払拭するために取り繕えば、今度は確定だと判断された。

 まだ内容を一言ですら言っていないのに、である。

 城に居る他の種族――主にプラム辺りが聞いていれば飛びつきもしただろうが、全てを疑う狐疑の神故にお願いの先にある事までもを疑って、話を聞いてすらくれなかった帆楼へとカイは尚も声をかける。

 

「そんな事言わないでさ~。お願い聞いてくれたら帆楼ちゃんが知りたいこと教えてあげるからさ~」

「帆楼が知りたいこと? 何でもであるか?」

 

 この世界に居るのなら、誰しもに例外なく旨味のある情報。

 その情報を持つ唯一の源であるカイに対して解を求めると言うことは、狐疑の神に取っては当然で。

 言葉の端から感じ取れる自信の表れは、寸分狂わずに帆楼の要求に応えられることを意味していて。

 けれども、自信があると言うことはすなわち――絶対に渡さないという覚悟に満ちた必然だった。

 

「もちろん、私と勝負して勝てたらだけどね」

 

 いつの間にか、お願いする立場であったはずのカイは、情報(エサ)を持つが故に有利へと昇り。

 挑まれる側だった筈の帆楼は、情報を前にお預けを食らっている犬の立場で。

 全てを疑う『狐疑(こぎ)』の神にして、希望を請う『請希(こぎ)』の神である『誇戯(おもいかね)』の神は、自身の糧となり続ける目の前の少女からの想いと望みの重さを受け止めながら。

 

「【仮定】より【暫定】へ。汝、帆楼相手に勝てるつもりであるか?」

 

 純粋な疑問を、しかしにわかには信じられぬその前提を思わず口にした帆楼に対して、笑顔で返したカイの言葉は僅かに震えていた。

 

「それはやってみてからのお楽しみ……ってね?」

 

 たった一度、不意打ちに搦め手、嵌め手を駆使して依代(よりしろ)である巫女を打ち破った事は、内より確認していたが、今から行う勝負に対して既に帆楼の知らない部分で策を巡らされていれば、いかに相手が人類種(イマニティ)、位階序列最下位で、魔法の検知すら出来ない種族であろうと痛い目を見るのはその身をもって体験済み。

 であるが故に、帆楼は一つ、勝負に乗る前に提案をした。

 

「では勝負の内容を明確にせよ。でなければ判断出来ぬと推測するのじゃ」

 

 どんなイカサマが、(はかりごと)が、策が、そして、協力者が暗躍できるような勝負か晒せ。と。

 現在の帆楼は人類種(イマニティ)に対して、過大でも、過小でもない評価をしているだけに、カイ一人で帆楼を負かすことなど不可能であると確信している。

 つまり、勝負の内容にどこかしらの穴が、例え蟻どころか風が抜ける以外叶わぬような穴であってもあるはずなのだ。

 そうで無ければ、人類種(イマニティ)神霊種(オールドデウス)に勝つなど、およそ逆立ちをしていても無理なのだから。

 帆楼が知らない、かつて続いた(いにしえ)の大戦の終着がそうだったように。

 帆楼と同じ神霊種(オールドデウス)を一柱倒すために、多大な犠牲を払ったように。

 

「んーそうだなー。じゃあ勝負の内容だけ言うね? 要求はまだ言わないよ?」

 

 帆楼としては、ここで渋るようならば勝負を受けないつもりだったが、思いのほかあっさりと内容を公開する申し出を許諾され若干の肩透かしを食らう。

 そして、気を取り直すと同時に確信する。

 既に策は張られた後で、その策を見破られぬ自信があるからこそ、こうして帆楼の要求に応じたことに。

 

「勝負の内容はね――」

 

 そうカイが言葉を発した瞬間、それまでゲームをしていた「  (くうはく)」が。日に当たらぬように隠れていたプラムが。一心不乱にご飯を掻き込んでいたいづなが。いづなにご飯をよそっていたステフが。そして、帆楼とのやりとりに聞き耳を立てていた巫女が。

 帆楼も含めた同じ空間に居るカイ以外の全ての存在が、次にカイの口から発せられる勝負の内容に全神経を集中させていた。

 

「私は、ただ帆楼ちゃんが知らないこと、知りたいことを説明するの。それを、誰かに妨害されたら私の勝ち。逆に、誰からの妨害もさせずに最後まで私の話を聞くことが出来たら帆楼ちゃんの勝ち。……どう?」

 

 そう説明したカイの手が、僅かに力が込められ握られていて。

 あまつさえ微かに震えている事に気が付いたのは、空と巫女だけであった。




というわけで最後に戦うキャラは帆楼でした。
予想が当たった方はどれくらい居るでしょうか。

ある程度本文に沿って書いている事もあり結構数が正解してそうで怖いですが…………。

残りも少なくなってきましたが今後もよろしくお願いします。

帆楼の口調おかしくねーか?等があれば指摘していただけると幸いです。


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三歩必殺(ファーストムーブ)

少し短くなってしまいましたがキリがいいので……。
これで許してつかぁさい。


「提案意図が不明。帆楼は勝負を受けるだけで情報が手に入ると申すか?」

「私が話す内容は、ね。帆楼ちゃんが勝てばそれ以外の情報も手に入るよ?」

「……いくつもの前提が分からぬ。勝負の場所は? 環境は? 状況はどうなのじゃ?」

 

 怪訝(けげん)な顔を覗かせた帆楼は不明瞭な勝負の部分をカイへと問いただす。

 それに答えるカイは――。

 

「そこは帆楼ちゃんが決めていいよ? あ、でも、最低でも私が一時間は生きていられる場所って前提がいいかなー」

 

 へらへらと笑いながら、その長さになる内容を説明することを暗に示し、最低限の環境だけは確保しようとした。

 

「構わぬ。――なれば、この城の一室、帆楼とカイの二人のみの空間で行うものとするのじゃ」

 

 別に命を奪おうなどとは帆楼は思っておらず、勝負の場所も何の変哲も無い城の一室で行うことに決めた。

 もちろん、勝負が始まった途端に帆楼の手によって変哲有りまくりの空間に変わるだろうが。

 

「次いで一つ。汝の言う「妨害」とは何か? 明確にするのじゃ」

 

 どんな曲解で、難癖で、屁理屈で。

 勝ちを宣言されてはたまらない、とカイの勝つ手段を浮き彫りにせんと説明を求めた帆楼は……。

 

「無いとは思うが、汝の死を持って勝ち。などは認めぬ。勝者は条件を満たして自らの勝利を高らかに宣言せねば勝利とならぬ、という条件を付け加える」

 

 一方的にルールの追加をするが、カイは笑って受け入れて。

 

「じゃあ私は妨害を受けたら勝ちを宣言すればいいのね? あ、妨害って言うのは「私が説明を継続することが不可能になったら」かな。ひっくるめて言うと」

 

 日陰に歩いて向かい、おもむろにプラムの耳たぶを弄りだしたカイは、満面の笑みで続ける。

 

「私の声が出なくなる。帆楼ちゃんの耳が聞こえなくなる。私の説明の内容が間違って帆楼ちゃんに伝わる。……考えられるのはこのくらいかな?」

 

 プラムの耳を甘噛みし、僅かに震えたプラムの反応を心から楽しみ、他に何かある? と帆楼へと問いかけるカイに、帆楼は黙って首を振る。

 よもや、勝敗の付け方が、相手にイカサマされるか、そのイカサマを防止できるか、という十の盟約をあざ笑うようなこの勝負になろうとは。

 先日まで行っていた、ランダム性を有利に転がした双六ゲームの支配人は、最初からイカサマを宣言する一人の人間を、これまでとは違う感情で見ていた。

 本人が気が付いていない、先が読めない相手に覚えるワクワクするという感情。

 

「では、汝の要求は何か。明確にせよ」

 

 胸の奥の感情に帆楼が気が付かぬまま、僅かに上がった声の張りに気付くのは空のみ。

 頭の中ではどう対策するかを考えながら帆楼はカイに尋ねたが、カイの口から出てきた要求は思わず驚いてしまうもので。

 

「私が勝ったら、テトちゃんの所まで連れて行って欲しいな」

 

 その程度のことを? と思わず不審に思ってしまうものであり。

 

「そ、そのようなこと、適当に呟けば叶うであろ!!?」

 

 わざわざ神霊種(オールドデウス)に頼むようなことでは無かった。

 が、一人だけカイの思惑に気が付いた空は、まさかな。という考えを彼女の行動を観察したパズルのピースとして頭の中で組み立て始める。

 今まで勝ってきた相手を……。

 そして、これから倒す相手を。

 要求を、条件を、全てをピースとしたカイというパズルの全貌として、空が見た結論は果たして……。

 

「私の要求はそれ以外に無いの。さ、帆楼ちゃんの番だよ? 要求をどうぞ~」

「む、むう。……帆楼からの要求は可能な限り帆楼の質問に今後答える事じゃ。何でも答えると(のたま)った自称・空が中々質問に答えてくれぬのじゃ」

 

 空の思考など露知らず、いつも通りの雰囲気で帆楼とやりとりを交わしたカイは、自らの爪で自身の首の血管を僅かに傷つける。

 普段傷つける指の血管とは明らかに違う、太い太い血管であるためにいつも以上の勢いで血が出てくるが、そうした目的などもはや説明不要。

 間髪入れずに首筋に吸い付いたプラムを抱きしめ、頭を撫でながら――。

 

「じゃあ、帆楼ちゃん。移動して、盟約に誓って、勝負といこうか」

 

 名残惜しそうにプラムを離し、振り返ったカイは、ほんの少しだけ。

 いつもより弱々しく、僅かに震えた声で帆楼へと声をかけるのだった。




ツイッターでかみやちゃんせんせーが「プラムの人気が結構あってびびる」的なことを呟いてましたが、ここにこうしてプラムといちゃつく(筈だった)二次創作書いてる阿呆が居る時点でプラムきゅんは魅力で溢れている事は確定的に明らか。

もうすぐ終わりと思うと作者としても思うところがありますが、とりあえずは読者の皆様方に楽しんでいただけるように頑張って行きますのでもう少しだけお付き合いください。


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二重処断(ポッドオブデュアリティ)

お待たせしました。

蛇足第二話、書き上がりです。


 カイが帆楼を連れてまず出向いたのは、自分がそれまで寝泊まりしていた部屋。

 空や白達のようにタブレットやゲーム機等の一切を持ち込んでいないカイは、借りた部屋に置くような物は無く、しいて言うならばステフから借りた衣服くらいだろうか。

 最も、ステフほど胸部の成長は著しく無く、その部分のサイズだけが合わない為に、基本的に『ディスボード』に来た時の服装で過ごすことが多かったため、それらもほとんど無いに等しかった。

 

「ここは――自称・カイが過ごしていた部屋か?」

「そだよー。と言っても就寝する以外には特に使ってなかったから、私の持ち物とかは無いんだけどね?」

「であってもこの場所を勝負の場として使うのは却下じゃ」

 

 扉を開け、部屋の中に入らぬように中を見渡した帆楼は、そう言ってあっさりと別の部屋へ。

 例え帆楼で無くても、勝負の場所をけしかけてきた本人が過ごしてきた部屋にするのはこの世界にはもはや居ないであろう。

 カイの過ごす部屋の両隣も、どんな仕掛けがあるかは分からない。

 かといって遠くの部屋を指定すれば、それはそれで読まれてそうである。

 そう考えた帆楼が決めた勝負の場所は――。

 

「なればあそこがよい。ほれ……大浴場じゃ」

 

 およそ勝負をする場所とはほど遠い、裸の付き合いを行い親睦を深める為の場として使われていたソコに、工作の手は届いてはいない筈。

 そう考えた帆楼に従い、大浴場までやってきたカイは、最終確認、と帆楼へと声をかける。

 

「勝負の場所はここでいいんだね? 帆楼ちゃん」

「構わぬ」

 

 湯に浸かる訳では無いため、濡れないように靴下だけを脱いで浴室へと入るカイ。

 その後を、裸足の御御足(おみあし)のまま続く帆楼。

 

「勝負の内容は妨害の排除。私がこれからする説明を、最後まで聞くことが出来れば帆楼ちゃんの勝ち」

「途中で説明続行不可の状況、あるいは説明と異のある内容で帆楼に伝わることがあれば帆楼の負け」

「勝者は条件達成後に、自ら勝利宣言をしなければならない――でいいんだね?」

「左様じゃ」

 

 浴槽のすぐそばまで歩いたカイは、振り返って帆楼と向き合って。

 ゆっくりと右手を構え、帆楼に促す。

 

「じゃあ、盟約に誓って」

「うむ。盟約に誓って」

 

「「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」」

 

 二人共に納得した、盟約に誓った絶対遵守の賭け。

 帆楼にとっては種の駒を賭けていないため余興にしか過ぎず、カイにしてみればテトに会うための勝負であるが、何も帆楼に勝たずともテトに会うことなど可能な筈。

 けれどもこうして勝負として成り立つのは、やはりカイの持つ「情報」の有用性が高いためであろう。

 故に、その情報を手に入れるために、帆楼は出し惜しみせずに神霊種の力(公式チート)を振るう。

 魔法が感知出来ない人間には到底気付かれず、勝負を始めた条件である、「二人きりの空間」を維持するためのそれは、後にデタラメである筈のジブリールのプライドを砕く、空間断絶の魔法。

 ジブリールのように筒状で、前後から丸見えでは無く、箱状にこの大浴場を切り取って隔離する、文字通り周囲から断絶させる魔法。

 予備動作も、呪文も、素振りも要らず。

 人類種(イマニティ)では反応すらも出来ないような短い時間、須臾(しゅゆ)と表現される、単位にして十のマイナス十五乗という時間の内にこの行動を終えた帆楼は、そのすぐ後に口を開いたカイの言葉に、聞き漏らすまいと気を張った。

 なにせ、これから語られるのは、帆楼が知ることが出来なかった情報であるはずなのだから。

 

「これはね? ()()()()()()()()()()なの」

 

 けれども、帆楼の耳にはこれ以降の説明は入ってこなかった。

 確かに断絶はしたし、こちらの不正がばれた様子は無い。

 そもそも不正することなど向こうは容認するような条件であったし、何より勝利条件に据えた、勝利の宣言はカイの口から出てきてはいない。

 ――いや、仮に宣言していたとしてもそれは帆楼の耳に届くことは無いだろう。

 何故なら――空間断絶された筈の大浴場から、()()()()()()()消えていたのだから。

 

 

「あ、やっぱり? 思った通りだったー」

 

 姿が消えたカイが今どこにいるか。

 それはこの世界、『ディスボード』に存在するチェスの駒。

 その一つの天辺に、チェス盤を挟むようにして唯一神(テト)と向かい合っていたのだ。

 テトの手には星杯(スーニアスター)が握られており、その力を行使したことを物語っていた。

 

「君は、どういうつもりだい?」

 

 気温が下がるような威圧感を持ってそう聞いたテトは、誰がどう見ても怒っているのは明白で。

 

「どうって……。勝負に勝つために利用できるものは利用しただけだけど?」

 

 それを挑発するように、分かっている癖に、とカイは(とぼ)けた。

 もちろんそれに納得しないテトなのだが、そもそもこのカイという少女に利用された、という事実がとてつもなく悔しく。

 結果、声を荒げることも、今までの態度を崩すことも、彼女の思い通りに行動してしまったという事実を裏付けるだけだと理解して、これまで通りの態度で接する。

 

「僕が動く確証があった。と?」

「じゃないと帆楼ちゃんに勝負挑むなんてムリムリムリムリ」

「参ったね、本当に色々知られているみたいだ」

 

 困ったよ、とでも言いたげに手を広げたテトはカイに向かって一つの提案をする。

 

「僕と勝負しないかな?」

 

 と。




流石にこの展開読めてたぜヒャッハー! 何て人はいないと信じたい。
いや、居ていいんですけどそんな人は早くノゲラの二次書いて、どうぞ。

と言うことで終わりが近づいてきていますが残り少し、お付き合いくださいませ。


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一寸先闇(トリプルスコア)

こんなに間隔短く投稿したのは久しぶりな気がする……。
ま、エタるよりはいいから多少はね?


「空! 自称・空よ!」

 

 先ほどカイと共に「盟約に誓った賭け」を行うために部屋を出た帆楼は、空の名を呼びながら城の廊下を走っていた。

 勝負の最中にカイが消え、どこを探しても見つからない、とひとしきり城を駆け回った後に同じ人類種(イマニティ)ならば、と空の元へと向かったのだ。

 

「ん? どったの?」

「帆楼が……慌てて、る?」

 

 二人の勝負の行方など興味も無い、と一つのゲーム機を二人でプレイしていた『  (くうはく)』は、まず先に勝負の結果では無く帆楼が慌てている事実を指摘する。

 

「帆楼との勝負の最中にあやつが居なくなったのじゃ! 勝利条件すら達成せずに! 忽然(こつぜん)と! 心当たりは無いか!?」

 

 初めて勝負最中に放置されたという事実に、瞳を潤ませながらそう『  (くうはく)』へと問うた帆楼に返って来たのは、目の前の空と白からでは無く脇にいたステフからの返答。

 

「そもそも……誰と戦って居たのですの?」

 

 嘘でもからかいでも無い様子で首を捻る彼女に猛然と反論をしようとした時に、言いようのない感情が胸の中に蠢いて――。

 

「帆楼は……、帆楼は――()()()()()()()のじゃ!?」

 

 

 帆楼が愕然とする少し前。

 この世界の唯一神(テト)に思惑通りに呼び出されていたカイは、そのテトからの勝負を受けた。

 

「勝負の方法はただのチェス。これだけが条件」

「この前みたいに特殊なチェスじゃ無くていいのかい?」

 

 淡々と言ったカイに対して、誘うように笑いながら問いかけるテトはチェスの駒、黒のキングを(もてあそ)びながら言葉を紡ぐ。

 

「まさか、ただのチェスなら僕に勝てると?」

 

 表面はとても楽しそうに、内面は心底つまらなさそうに。

 二つの顔を均等に隠し、故に両方の表情が見て取れるテトは、普段らしからぬ態度を未だ続けるカイに不信感を抱き始めていた。

 静かすぎる――、そして何より、弱気すぎる。

 テトと勝負をする時はもちろんのこと、この世界に来てからも彼女が勝負をする場でこれほどまでに黙っていたことがあったであろうか。

 不信は疑念へ。疑念からそして――恐怖へ。

 

「テトちゃんは、さ」

 

 唐突に自分へ向けて語り出したカイの顔を反射的に見ると――。

 そこにはまるで、精一杯に取り繕って笑顔を作っているような女性が……居た。

 

「実は私のこと、ずっと警戒してたんでしょ?」

 

 今更何を言うのか。

 自身の敵となる可能性のある相手に、警戒などしない方がおかしい。

 

「けど、無害そうだから泳がせてた」

 

 例えどんなに彼女が餌としてこの世界の情報を吊しても。

 この世界で、彼女の知識を以てすれば勝てない相手などごく僅か。

 そう思って監視するだけに留めておいた存在は――しかし。

 

「けど、テトちゃんの予想に反して、私は大きな情報を無償で与えようとした」

 

 先の帆楼と呼ばれている神霊種(オールドデウス)との戦いは、確かにテトの予想の範疇(はんちゅう)を超えた。

 

「しかもそれが、テトちゃんの……引いては今のこの『ディスボード』という世界そのものに関する情報だった」

 

 誰にも語られない物語。

 テトがそう前置きして語ったのは、一人の獣人種(ワービースト)の少女に対してのみ。

 では果たして、このカイという少女が語ろうとした内容は、そもそもそれと同じ内容なのだろうか。

 テトが意図的に曲げた、伝えなかった部分を、彼女が知らないという保証は?

 それ以上に、この世界のことを「読んだ」と言った彼女は、果たして本当にこの世界に影響をもたらさない存在なのか。

 遙か空から観察し、自問自答を繰り返した唯一神は、たった今、その答えを出した。

 

「結果、私はこの世界に、やはり来るべきでは無かった存在として認識され、これから送り返される……違う?」

 

 見れば腕は震え、顔はもはや笑顔の形を保っては居ない。

 泣き顔になってない点を上げるとすれば、それは涙を流しているか否か。という部分のみだろう。

 

「この勝負は最終選択。勝てば生き残り、負ければ強制送還……でしょ?」

 

 そうなる筈だった……そう要求させるはずだった勝負は、たった今崩れ去った。

 何故ならテトは知っているからだ。

 目の前の泣き顔寸前の彼女がこうして問いかける時は、決まって何かを否定する時で。

 その否定の矛先がどう考えても彼女の要求する内容に向いている事を。

 

「そうだね。そのつもりだったよ。――じゃあ、カイ。聞かせてくれるかい? 君の要求とやらを」

 

 その一言を待っていたと言わんばかりに、大きな雫を瞳から垂らした少女は――。

 

 () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()!!」

 

 要求を口にして、盟約に誓った勝負を受けた。

 

■■■

 

 日差しは厚手のカーテンに遮られ、すでに日は高いというのに暗い部屋の中で、布団にくるまり何やらモゾモゾと動く影が一つ。

 耳元で震えるマナーモードのスマフォを布団から顔も出さずに手探りで探し、見つければすぐさま布団の中へと引き釣り込む。

 どうやら友人からの連絡だったようで、布団の中で何やら通話を始めた。

 

「すっごいネタなんだって! ……あ~、信じてないなぁ? よぅし、絶対に面白いって言わせてやるんだから!」

 

 通話故に片方の音声しか聞こえないが、どうやら何かのネタで友人を唸らせる腹づもりらしい。

 直後、布団から跳ね起きてボサボサの頭を掻きながらパソコンに向かった少女は、ふと、姿見の前で立ち止まり、着ていた寝間着を少しはだけて首筋を確認する。

 首の血管に重なるように、僅かなキスマークを確認し、鼻歌交じりにパソコンに向かう少女――「皆夢(かいむ)」は、とりあえず記録として、そのキスマークを自撮りでスマフォのデータに保存するのだった。

 




さぁ、と言うわけであからさまに終わりが近い雰囲気を醸し出していますが、残すはエピローグのみでございます。

特に自分から言うことは無く、ただただここまでお付き合い頂いた感謝以外の言葉はありません。

積もる話があるかは分かりませんが、それは次話のエピローグの後書きに取っておくことにいたしまして、この場は閉じさせて頂きます。

ここまで来たのでエピローグも近いうちに必ず投稿するので、どうか最後までお付き合い下さいませ。


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エピローグ blank page

お待たせしました。


 眼下に広がるのは盤上の世界「ディスボード」。

 先ほどまで少女の相手をしていた唯一神は、そこからの景色を眺めながら一人でため息をついた。

 最後の最後まで、その少女の思い通りになってしまった展開に感心し、ある種、満足さえしていた。

 しかし、どんなに彼が納得しようと、結果としては彼が筆ペンを走らせていた物語が、blank(まっさら)に変わってしまったのだ。

 それは、彼女のがたった一つ、この「ディスボード」に残したものであり、唯一神のみが知る、正真正銘の「誰にも語られない物語(blank page)」に他ならなかった。

 

「まさか」

 

 誰に語る訳でも無く、まるで自分の中で整理するために呟かれたその言葉は、彼以外の耳には届かない。

 

「最後の要求までも、カイは考えていたのかな?」

 

 残されたチェス盤の盤上は、本来であれば先手の負けに等しいとされる「千日(パーペチュアル)(チェック)」だが、今回のチェスのルールに引き分けに関する設定は無く、そのまま引き分けとして扱われた。

 引き分けとなった勝負の扱いは、勝負をしていた本人達による話し合いによるが、今回の勝負に関しては相談の必要すら無かった。

 何故かと聞かれれば、これまでのカイの勝ち方や要求を踏まえると見えてくる。とテトは答えるだろう。

 つまり、

 

「勝っても負けても目的が達成できるようにする……いや、相手に有利な要求をする――か」

 

 負けた方が自分の利が大きいと判断させて負けさせるような誘導をしてきた彼女は、今回も、唯一神相手にやってのけたのだ。

 敗北を受け入れて、けれどもこちらの要求も通す、そんな選択肢をテトへと投げかけたのだ。

 

「『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』か。流石に、僕はそこまで考えなかったよ」

 

 素直に負けを認め、勝っても負けてもテトの要求に等しい状況になってしまう勝負となった先のチェスの結果は、先述したとおりに引き分けであり――。

 互いの要求を「この世界の皆からカイに関する記憶を消した上で、元の世界へと強制送還」と混ぜた要求に変え……彼女は、彼女の望みであるソレを――受け入れた。

 

「この世界に来ることを望んだ彼女の最後の願いは、この世界に居なかった事にして元の世界に戻る……どんな思いで、どんな覚悟で、受け入れたのかな」

 

 純粋な興味も、それに応えうる存在は、もうこの世界には居ない。

 しばらく景色を眺めていたテトは、何やらアイドルがどうだと騒ぐ帆楼や『  (くうはく)』へ視線を向けると、いずれ神話に至る物語の続きを書き始める。

 神話には至らなかった、新たな「誰にも語られない物語」を胸に――。

 

■■■

 

「書けたぁっ!!」

 

 パソコンの前で大きく伸びをする少女。

 折角のネタを友人に煽られ、面白いと言わせる、と奮起した彼女の頬には、もう涙の後は無い。

 好きなキャラと、ようやくイチャつけたのに。

 好きな作品の世界で、ようやく居場所を作ったのに。

 好きなことを、好きなだけ出来ていたのに。

 それらを手放すことはそう容易ではなかったが、それでも彼女は()()()()()

 ――いや、許せなかった。

 一ファンとして、自分が好きな物語の渦中にいることに。

 渦中に居るせいで、自分以外がどう思っているのか、考えが、行動が、読めないのが我慢出来なかった。

 故に……戻った。元の世界へ。

 震えるほどに嫌だったし、せめて自分が「向こう」の世界へ居た証として、プラムにキスマークだって首筋に付けさせた。

 誰にも分からぬ葛藤は、それでも彼女を止めるには足りなかった。

 

「書けたよー。うん。そうそう。――あー、二次創作許してるサイトってどこがあるっけ?」

 

 書けたことをどうやら煽ってきた友人に伝えたらしい。

 そうすると返って来たのは「面白いならネットで公開して他の人の反応も見れば?」という言葉だったらしく、二次創作の投稿に緩いサイトを探すこと少し。

 どうやら見つけたらしく、彼女は嬉々として友人に伝える。

 

「うん。今投稿するー。……んとねー、『ハーメルン』ってサイトー」

 

 カチカチとマウスを操作する音や、キーボードで文字を打ち込む音が続く。

 

「作品名はねー……」

 

 そこで皆夢は少しだけ考えて――、

 

「あ、『blank page』なんてどうかな?」

 

 そう、口にした。




ここまでお付き合い頂き、本当に、本当にありがとうございます。
元々こう長くなる予定は無かったんですが、ここまで書けたのも偏に読者の皆様のおかげです。重ね重ねありがとうございました。

ノゲラの最新刊が出るまでの暇潰しに、少しでもお役に立てたのならば作者冥利に尽きると言うものです。

さて、もう特に書くことは無くなってきたので今後の予定だけ。
完全に未定です。
ひょっとするともうハーメルン様では書かないかも知れません。
が、未定ですので本当にどうなるか分かりません。

もしどこかでご縁がありましたら、その時はどうぞよろしくお願いします。

読んでてここ分からなかったぞハゲ! なんて部分有りましたら気軽に感想でもメッセージででも聞いて下さい。
活動報告なんかでまとめて答えると思います。

それでは、またどこかでお目にかかる日まで、皆様お元気で。


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IF ゲーマー少女は帰らなかったそうです 欲望(ベギーアデ)

皆様こちらではお久しぶりです。

完結させましたが活動報告にもある通り、ギミックというか、満足出来る勝負を思いついたので蛇足かも知れませんが書くことにしました。

時系列的にはEXの前、終着点の後になります。


幼女戦記の二次も書いていることや、リアルが忙しかったりで、やっぱり間隔は開くかも知れませんが、気長にお待ちください。

そうこうしている間にノゲラの新作とか出てくれませんかね?


「えぇと、……私が言えたギリじゃ無いのは分かってるんだけど、言わせて? 何してるの?」

 

 珍しく困惑したカイが問うた相手は、空の前に陣取り、空を永続的に見つめ続ける、メイド服を模した服装の、あやめ色の髪の少女――のような機械。

 機凱種(エクスマキナ)と呼ばれる種族の、旧E連結体(アエルト・イミル・)第一指揮体(クラスタ・アイン)――空により《イミルアイン》と名付けられたその少女のような機械にである。

 

「【明白】ご主人様を眺めてる……じ~~~~~~~」

 

 何を当たり前のことを、と振り返りもせずに返したイミルアインは逆にカイへと問う。

 

「【返却】貴方は何を?」

「私? プラムきゅん抱きしめて頬ずりしながら匂い嗅いでるだけだけど?」

 

 その質問、ブーメランじゃね? と。

 

「前から思ってたけど、カイって結構変態だよな?」

「にぃが……それ……言う?」

「空は変態な女の子は嫌い?」

「大好物です!!」

 

 男が空しかおらず、その空の周りに女性陣しか居ない場合、空は周りの空気が針のむしろになることを悟った。

 故に、何かと理由を付けて自室では無く、カイが頻繁に出没する城の広場にて、日常的にやらなければならないことを行うようになった。

 プラムを好き勝手にし続けるカイが居ると、少なくとも話の種に困ることは無い。

 ましてや空に自覚は無けれど、ジブリール、イミルアイン、白、そしてステフという空への“好き”を胸に秘めた者達が集まっている空間である。

 そこに、まるで空に(なび)いていないカイが加われば、周りの熱が、僅かにだが引くのだ。

 そんな訳で今まで以上にカイとついでにプラムに絡む頻度が上がった空は、居心地の悪さを感じながらも、今の所何とか平穏と呼べなくも無い日常を過ごしている。

 帆楼アイドル計画も無事に成功を収め、その結果イミルアイン達機凱種(エクスマキナ)を取り込んだことを、平穏であると言っていいのかは定かでは無いが。

 

「【推測】ご主人様は、女性の方から言い寄られるのが好き?」

「言い寄られて怖じ気づいて逃げる位に草食系だけどな」

「にぃ、ヘタレ」

「ごふっ!! 間違ってないが酷いぞマイシスター! 草食系男児は繊細なんだぞ!? 少しはオブラートに包めオブラートに!」

「【提案】オブラートより、もっとご主人様が喜びそうなもので、当機なら包める」

「あん? 何のこt――ぶっ!!?」

 

 積極性を持つイミルアインの前で、仕方が無かったとは言え秘蔵のコレクチオンを晒したのは失敗だったと言えよう。

 胸を強調するように腕で抱き、まるで何かを挟んで上下する動きを見せたイミルアインを見て、盛大に吹き出す空。

 大半の男の夢……パイ○リを暗にしてもいいと迫るイミルアインに対し、

 

「にぃ、十八禁……ダメ……絶対……」

「わ、分かってるぞ? 大体兄ちゃんは白一筋だから、白さえ居ればいいから……」

 

 膝の上に座る小さな存在を確かめるように抱きながら、その背に顔を埋めて誘惑を見ないようにする空。

 

「……ていうか空さぁ、抜いてないから誘惑に弱いんじゃ無いの?」

「女の子が抜くとか言っちゃいけません!! つか仕方無いっしょ? 俺と白は離れてちゃダメなんだから」

「でも、隠蔽や偽造が得意な可愛いプラムきゅん使えば、誰にも見られること無くいつでも抜けるんじゃ無いの?」

「……へ?」

「カイ……何言って?」

 

 思わずきょとんとする「  (くうはく)」に、カイは自分の考えを披露する。

 

「盟約に誓った勝負しなくても、プラムきゅんはいい子だから体液与えたら多分そんな個室便利空間作ってくれると思うよ? 現にこのお城にも情報収集用として多数作ってるみたいだし」

「ちょっ!? カイ様気付いて!?」

「いや、んなもん作られてるのなんざ予想してっから。それはいい。けど、個室便利空間(オナヘヤ)か……」

「にぃ、白が寝てるときに……すればいい」

「寝たふりかまして覗こうとするだろうが」

 

 もはや最初のイミルアインがただ見つめるだけだった空気はどこへやら、健全な十八歳男子たる空が、その身に現在進行系で降りかかっている我慢必須の苦痛をどう解放しようかと本気で画策しようとしたとき。

 不機嫌に立ち上がったイミルアインがカイの前へ歩いて行き……。

 

「【理解】ここ数日の言動を解析。結果、当機の邪魔をしていたと判断」

「気のせいじゃ無い? 私はプラムきゅんをhshsしながら空をイジってただけだよ?」

「【肯定】しかし、結果として当機の思惑から毎日外されている」

 

 お前のせいで空とイチャつけない。と、半ば難癖のように押しつけた。

 もちろんカイは狙っているし、そもそもイミルアインが仲間に入ればこのような空気になるというのは原作で確認済み。

 であるが故にこそ、いつかイミルアインが痺れを切らさないかと妨害よろしく空の味方をしていたのだが。

 

「【宣言】当機はカイへ、盟約に誓った勝負を申し込む」

「ん、オッケー。サクッと倒してあげませう」

 

 痺れを切らすまでの日数が思っていたよりも早かったが、それ以外は概ね予想通り。

 内心だけでほくそ笑んだカイは、あっさりと勝負を受けた。

 

「【笑止】絶対に負けない」

「それ、負けフラグだよ?♪」

 

 メラメラと炎を燃やすイミルアインに対し、飄々(ひょうひょう)としたカイ。

 クーデターが起き、空達が城を追われる事になる少し前に、ひっそりと、そんな勝負が行われていた。




まぁ活動報告と前書きにある通りなのであまり書くこと無いんですけど、今回の相手は機凱種になります。

キャラ的に美味しくて、どこかで書きたかったイミルアインを書くことが出来て満足満足。

次話がいつになってしまうか分かりませんが、なるべく早く書きますので、またこちらもよろしくお願いします~。


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決定打(スルストライク)

最近どの小説もなんですけど、書いててもの凄く楽しい。
絶好調とは少し違って、書くのは遅かったり、遅々として進まなかったりするんですが、それでも書いてる間中ニコニコしながら書けてます。

じゃあ早く更新しろよってなるかも知れませんけど、前述の通りまっっっっっっったく進まない日もあるので多めに見て下さい……。

というか特にこのノゲラ二次は消して書いての繰り返しなので本当に……。


「【確認】勝負の内容は?」

「焦らないの。まずは内容じゃ無くて、勝負する環境について決めようか?」

 

 座ったままのカイを見下ろしたイミルアインは、急かすように言う。

 

「【明白】当機対カイ。一対一」

連結(クラスタ)なんてやれるのに? 信用出来ないよ?」

「【不服】連結(クラスタ)する必要性皆無。当機だけでカイに勝てると判断」

 

 笑わせるな、と。ただの人類種(イマニティ)に何が出来る、と。

 その人類種(イマニティ)である『  (くうはく)』につい先日、特殊なルールと環境、条件だったとはいえチェスで負けた事を棚にあげ、言い放ったイミルアインに、後ろからツッコミが飛ぶ。

 

「貴機はあくまで『旧E連結体(アエルト・イミル・)第一指揮体(クラスタ・アイン)』にしか非ず。決定権は『全連結指揮体(アインツィヒ)』である本機にある」

 

 どこからか現れたイケメン燕尾服の機凱種(エクスマキナ)

 全権代理者に当たるその機体は、イミルアイン単独での勝負を当然許さない。

 何故ならば――、

 

「連結による意思の共有により『愛しき人(シュピーラー)』に関係する要求を確認した。しかしその要求は勝負に参加した機体にしか適用されぬ。よって貴機の独占となり、貴機以外の機体はこれを承認しない」

 

 (シュピーラー)の独り占めとか許すわけねぇだろ。という考えが、他の機凱種(エクスマキナ)にあるためである。

 もちろん、見た目が男であるこの『全連結指揮体(アインツィヒ)』にすらであり、

 

「だ~か~ら~、俺は俺って証明したし、誰とも愛を育まないって言っただろうが!!」

 

 どれだけ声高に空が叫んだところで、まるで意に介さないせいで……。

 

「【懇願】ご主人様が困っている。当該機、並びに連結(クラスタ)機は退いて」

 

 と、どれだけイミルアインがお願いしたところで退くはずも無い事は明白。

 ――であるならば……。

 

「別にいいよ? 私は一言も連結(クラスタ)状態での勝負を却下してないし、一対一にはならないでしょ? って聞いただけだし」

『なっ!?』

 

 その場に居た、『  (くうはく)』並びに機凱種(エクスマキナ)以外の全ての人間が、驚きの声をあげた。

 ジブリールは機凱種(エクスマキナ)の実力を知っているからで――。

 いや、ジブリールだけで無く、プラムも、ステフも、全員が、一度空が負けるのを見ているのである。

 ――正確にはチェスにおいての引き分けだが、その引き分けも負けであるとルールに組み込まれた以上負けは負け。

 『  (くうはく)』としてでは無いにしろ、空が敵わなかった相手にカイが勝てるとは、正直誰も思えなかったのである。

 

「【疑問】挑発のつもり?」

「全然? だって、負けるつもり無いもん」

「……貴女の思考が理解出来ぬがつまり、我らを束にしても絶対に勝つ自信がある、と?」

「じゃないと勝負受けなく無い? 必勝の鉄則は、勝てない勝負は受けないこと。受けた時点で勝てると思ってるからだよ?」

「【慢心】論ずるに値しない。今すぐ勝負を」

 

 苛立ちがあるのか、やや口調が強くなったイミルアインは、さっさと勝負を掲示しろとカイに迫る。

 それを受けてカイは――、

 

「証明問題って知ってる?」

 

 と、機凱種(エクスマキナ)達へと質問した。

 同時に頭を抱える空。

 当然皆の意識はそちらを向くわけで。

 

「空? どうしましたの?」

 

 ついでにステフがその行動をした理由を聞いちゃったりするわけで。

 

「まさかここに来てその言葉を聞くとはな……。なんでよりによって学校の授業でやるような問題なんだよ……」

「にぃ、勉強できない。……頭悪い、もん、ね?」

「出来のいい妹と比べないでくれ。あと、勉強が出来る=頭がいいではナッシンッ!! 勉強が出来ようがアホなんざ一杯いる。……ステフとかな」

「ちょっ! 聞き捨てなりませんわねぇ!! 私のどこがアホですのよ!!」

「自覚無い時点でアホですぅ。ま、勉強は出来るステフ様は、大人しく机に齧り付くように政務を全うするのがお似合いですぅ」

 

 強烈な不意打ちを食らったステフに追い打ちをかけるプラム。

 

「【簡単】AにおいてBはCという事が成り立ち、よってB=Cである。というように証明する問題の事」

「正解正解。勝負の内容はソレ。証明問題」

「理解不能である。勝敗は? そもそも問題はどのように提示するのか?」

 

 そんな空達をよそに、進め始めたイミルアイン達は、馬鹿にするな。と証明を簡易的に説明し、さらなる情報を求める。

 

「貴方たち機凱種(エクスマキナ)の勝利条件は、私が証明できないこと。逆に私の勝利条件は貴方たちが納得出来る証明をすること」

 

 連結されたいくつもの瞳に写されたカイが出した勝敗条件は、奇しくも先日行ったカイ対アズリールと同じように、相手に委ねるものであり。

 

「さらに理解不能である。例えその証明が正しかったとしても、我らが認めねば貴女は勝てぬでは無いか!」

「だから――だからこそ、この証明問題なんだよ?」

 

 疑問を口にした『全連結指揮体(アインツィヒ)』に応えるように、今回カイが証明する内容を宣言する。

 

「勝負の内容は貴方たちの言う『意志者(シュピーラー)』≠『空』の証明。ただし、それはもう空本人が証明しちゃってるから――」

 

 勝負の内容を聞いたときに思わず口を挟みそうになったイミルアインと『全連結指揮体(アインツィヒ)』は、その後に続く言葉を聞いて、思わず息を飲んだ。

 

「空の言った『空は空。何者かは自分が決めること』この文言及び、同じ意味の言葉の使用を禁止。これをルールに組み込むよ。だからさ、私は――空の言うクソかっけーゲーマー様が空じゃ無い証明を、貴方たちの望む形で証明する」

 

 それでその証明が正しかったら、貴方たちは否定できる? その証明を。

 そこまで言わずとも。そう顔に書いてあったとしても。

 正しくたどり着けるだろう。機凱種(エクスマキナ)ならば。

 ――何せ、その答えを求めて、彷徨い続けていたのだから。

 影を追い、独り相撲に興じてまで、探していたのだから。

 

「理解した。ならば、その内容で勝負しよう」

「【宣言】出来るはず、無い」

「納得してくれたみたいだし、盟約に誓う前にお互いの要求の確認ね。イミルアインは……いや、機凱種(エクスマキナ)は何を要求するの?」

 

 楽しそうに足をばたつかせ、プラムを抱きしめたカイの顔は、それはもう満面の笑みだった事を、対戦相手である機凱種(エクスマキナ)達は、気付くことは無かった。




まずは聞こう。
プラムとのイチャイチャどこ行った!!?
そして自答しよう。
書こうと思ったけど200%18禁になるんだよ!!


とりあえず落ち着きました。
と言うわけでカイの好きにさせるとプラムきゅんの貞操とかマッハなので、誰か健全にプラムきゅんとイチャイチャする二次創作書いて。

切実に。ヒルフェ。


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机上妄言(リーブズアフィール)

気が付けば一ヶ月とか感覚を開けてしまい申し訳ありませんでした。

幼女戦記の二次に力を注いでたとか、ゆうがくの方のリザルトに追われていたとか言い訳はあるんですが、本当にごめんなさい。




「【簡潔】ご主人様と当機が行う会話への参加、これの禁止」

「つまり誰かを会話に割り込ませてそこにチェーン組めば会話に参加出来るのね? ナイトショットと同じ裁定でOK?」

 

 睨み付けるようなイミルアインの緯線を受けながら、コンマイ語(初級)でイミルアインの要求の不備を突くカイ。

 

「【疑問】チェーン? ないとしょっと? 理解不能」

「無理矢理三人の会話にしちゃえばそんな要求無いも同然でしょって事」

 

 分かる人間にしか分からない説明なだけに、疑問符を浮かべるイミルアインだが、分かる人間である『  (くうはく)』達は腹を抱えて笑う有様。

 言うなれば自分が分からない会話を自分以外の女と楽しく会話している。と認識できてしまう状況が、イミルアインに取って面白い筈も無く――。

 

「【訂正】私とご主人様との間に、あらゆる状況で入ること。これを禁止する」

 

 今度はきっぱりと言い切られてしまう。

 すなわち、邪魔するな。と。

 

「はっきり言っていいよ? 私と空に関わるなー! って」

 

 しかし、ニヤニヤしながら過大解釈とも言えそうな要求の確認をするカイは、ソレすらも予想通りであるかのように、変わらずプラムをいじっている。

 うなじに顔を埋めての匂いを嗅ぐ、という行為から、いつの間にか頭を撫でる。だの、耳たぶをイジるだのに変わっているのだが……。

 

「貴女の認識通りで間違いは無い。『全連結指揮体(アインツィヒ)』として肯定しよう。……だが、本当にそれで構わぬと?」

「負ける気無いのに何を要求されても一緒でしょ? なんならその要求に『空の性癖と見られるシチュエーションの説明』を加えてもいいよ? どーせ画像だけじゃ全部は把握しきれてないんだろうし――」

 

 事もあろうに、さらに相手の要求を重ねるカイがそう言ったとき、高速で動いた存在が二つ。

 一つは当然イミルアイン。目を輝かせ、何なら涎すら垂らしてその情報を欲しがっていて――。

 もう一つの存在は……。

 

「……カイ、裏切る……の?」

 

 涙目で自分の兄の性癖を、自らの胸の中にのみ秘めたい白。

 

「白ちゃん、大丈夫」

 

 けれどもプラム越しに白の頭を撫でるカイは、慰めるために――そして、自分に言い聞かせるために言葉を紡ぐ。

 

「『  (くうはく)』に敗北は無い。でしょ? 私だって(かた)ってる側だけど、それでも『blank(くうはく)』。使わせて貰ってる身で負けるなんて、ゲーマーとして恥ずかしいじゃん」

 

 先ほどから繰り返す、負けない発言のその根幹。

 どんなに劣勢であろうとも、勝ちへと持っていくために動けたその原動力の一つ。

 ゲーマーとして、そして、()()()()として、本物に負けていられないとするその気持ち。

 

「だから安心して――空とイチャイtyふもが」

 

 白を安心させる材料を開示した後、白がストップを強引に掛ける言葉を口走ったカイは、案の定小さな手のひらで口を押さえられた。

 

「それ……以上、は、ダメ……っ」

「妹よ、カイに対してだけちょーっと行動早すぎない? (ないがしろ)ろにされてるみたいでにーちゃん傷つくんだが?」

 

 顔を真っ赤にしながら首を振る白と、妹に苦言を呈する空。

 高速でそれまで膝の上に抱いていた存在が離れ、しかも撫でられてなだめられている様子は、どうやら空には面白くない様子。

 

「でもさ空。こうして顔を近づけると一気にキマシタワーの展開に早変わりなんだけど……嫌い?」

「お姉……様」

 

 まるで空の指摘をあざ笑うかのように、むしろ煽る勢いで白に顔を近づけ見つめるカイに対し、ノリノリでピンクで百合色定番の言葉を吐く白。

 

「……」

 

 思わず沈黙して、脳内マイメモリーに保存するべく網膜に焼き付ける勢いで見つめる空だったが、

 

「望むなら寝室でおんなじ事してもい~よ? ……けど生殺しか」

 

 そんな素敵提案をされるもそう、白が居る限り十八禁な訳で。

 そもそも致せてないわけで。

 それはカイが言うとおりに生殺し以外の何ものでも無い。

 

個室便利空間(オナヘヤ)……検討すっかなぁ」

 

 その結論に落ち着くことは、健全な男児であるならば仕方が無い事だろう。

 

「【憤慨】当機よりご主人様とイチャついている。到底許されない」

「そりゃあ同じ人類種(イマニティ)ですもの。同じ種族じゃ無いと分からない事もあるんだよー?」

「【早急】見ていられない。即時勝負へ移行することを望む」

 

 もはや口調からもイミルアインがキレている事が分かるが、分かった上でカイはどこ吹く風。

 変わりなく煽りを織り交ぜつつイミルアインの神経を逆なでしていく。

 

「私の要求がまだだし盟約に誓っても無いからね? まぁ、私の要求は決まってるんだけども」

 

 急かされた為、渋々といった感じで自分の要求を切り出したカイ。

 その要求は……。

 

「まぁ、映像を撮影し、ソレを出力できるみたいだし? 『私とプラムきゅんの愛の情事の一部始終の撮影、及び私の望むタイミングでの再生出力』かな」

 

 カイはカイのまま。結局プラムに関するものだった。

 ――これまでのどの要求よりも中身がピンク色に染まっていることを除けば……であるが。




と言うわけでブレないカイなのでした(ちゃんちゃん♪)

今回の勝負が過去最高に長くなりそうな予感に恐怖を感じつつ、次話がなるべく早く更新出来るよう頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。



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始動(オールグリーン)

…………(目逸らし)。

ほんっとうに申し訳ありません!!
大変遅くなりました! お、お待たせしました!!


「ちょっ!? カイ様ぁ! 僕誰にも見られたく無いんですけどぉ!?」

「安心しろプラム。どう足掻いてもお前は変態キャラだ。今更何したところでそのキャラが覆ることは無いし、何をされたとしても俺は対応を変えない」

 

 何故か要求に巻き込まれる形となったプラムが抗議の声をあげると、気にするな。と爽やか笑顔でサムズアップする空。

 

「にぃ、本心……は?」

「おねショタになるだろうから是非ともやって欲しい邪魔はしない」

「カイ様ぁ! 僕絶対嫌ですからねぇ!!」

 

 欲望に忠実な十八歳の空の真意など知らぬ、と涙目ながらに訴えるプラムにカイは何を言うかというと……。

 

「でも、血でも汗でも涙でも無いものを飲ませてあげるって言ったら?」

「へ?」

 

 どう考えても謎の光さんなどでは対応できず、シーン丸々をカットせざるを得ないような絵面を想定させる言葉であり。

 

「ちょっ!? 何をおっしゃってますのー!!」

 

 話を聞いていただけのステフが、思わず赤面して叫ぶような無いようであり。

 

「……妹よ。エロスはダメだが、生き物が――例えばコウモリが液体を飲む映像を見るというのは有りか無しか」

「有り寄りの、無し。飲む器、や……飲む液体、に……よる」

 

 そのシーンを見ることは許可されるかを監督に聞く程に、誰にとは言わないが魅力的な提案だった。

 

「……それ、本当ですぅ?」

「何? 私がプラムきゅんに嘘つくとでも?」

「結構騙された気がするんですけどぉ。……でもぉ、正直どんな味かは興味がありますのでぇ――」

 

 モジモジとカイの膝の上で身体を揺らすプラムは――。

 

「一回だけならぁ、いいですぅ」

 

 未知の味を前に……折れた。

 

「と言うわけでお互いの要求が決まった訳なんだけど」

「【早急】勝負へ」

「待って待って、焦んないで。ここに居る全員に聞かせちゃっていいのかなぁ?」

「【不明】何が言いたい?」

 

 振り返ったカイに対し、即座に勝負に移ろうとするイミルアイン。

 しかし、それを遮り意味深な発言をしたカイは――。

 

「『遺志体(プライヤー)』の残した気持ち……誰にも知られたくないでしょ?」

 

 全機凱種(エクスマキナ)を凍り付かせる言葉を吐いた。

 何故その事を知っているのか。

 どこからどこまでを認識しているのか。

 そもそも、ただの人間が一体どうしてその事を口にしたのか。

 聞いた以上警戒するのは必然で。

 しかし、それでもなおこの勝負に勝つ自信があるという事実に、全連結指揮体(アインツィヒ)は静かに動揺する。

 負けるはずなど無く、勝って愛しき人(シュピーラー)である空の性癖を知り、今度こそ同意の上での機体繁殖を行う。

 たったそれだけであったはずが、彼女が口を開くにつれて、都度状況が変わっていく。

 一体この人間の女は、何を求め、何を願い、何のために行動するのか。

 それが理解出来ないほどに、目の前のカイから、色が抜けて見えたのだ。

 

「【疑問】何故その事を知っている?」

 

 爆発的な殺気をもって、カイへと凄みながらイミルアインは尋ねるが、残念ながらカイはジブリールの鎌にすら動じること無く殺されることすら厭わなかった過去があり――。

 当然の様に効果は無い。

 いつも通り、あっけらかんと、

 

「私はそういう存在だから。分かった? 私がこの世界で『  (くうはく)』以外に負けていない理由が」

 

 ひょうきんに。ふざけたように言うだけで。

 一層機凱種(エクスマキナ)達が首を捻る。

 このような人類種(イマニティ)は、過去出会ったことが無い、と。

 故に――、

 

「貴女を理解すれば、解析すれば、我らも今以上に同じ人類種(イマニティ)である愛しき人(シュピーラー)の事が分かるだろう」

 

 既に隠すこと無くイミルアインを含めた全機体との連結を完了した全連結指揮体(アインツィヒ)は、様々な証明の道筋を思案する。

 どのような道のりでも、反論して瓦解させられるように。

 証明を根底から覆すために。

 『遺志体(プライヤー)』の事を口にした、この人類種(イマニティ)に勝つために。

 

「勝負の内容は証明。私が『~~だから、こう。結果~~はーーという事』という形で持論を形成していく。貴方たちはそれに対して指摘し、私の証明を崩す。私が証明の材料を使い切るまで崩すことが出来れば貴方達の勝ち」

「逆に、崩すことが出来ずに『意志者(シュピーラー)』≠『空』を証明されれば我らの負け」

「いえすおふこ~す! さてと、んじゃあ機凱種(エクスマキナ)の皆様方、空間断絶? あるいは空間跳躍? どっちでもいいから誰からも聞き耳立てられない所に連れってってねー」

 

 緩く、軽く。それが勝負開始の合図だと言わんばかりの口ぶりで言葉を発したカイは右手を掲げる。

 意味を理解し機凱種(エクスマキナ)全員が手を掲げて――。

 

「『盟約に誓って(アッシェンテ)』」

 

 互いに宣言した直後、エルキア城内から、カイと機凱種(エクスマキナ)全員が、姿を消した。




蛇足編に入ってからカイがただの変態になってる気がするのは気のせいですかね?
あ、そうそう。この作品に評価、感想、お気に入り、しおりして下さってる皆様方、本当にありがとうございます。
ぶっちゃけた話気が付くと一言評価とか貰ってまして、寝てる場合じゃねぇ!って事でこうして書いてたりします。

皆様の応援でここまで書けておりますので、これからもよろしくお願いします。


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第一主張(ストレートアンドダブル)

しれっと更新しとけばネタに詰まってたとかバレへんやろ……。

こちらではおよそ一ヶ月ぶりの更新です。
ご無沙汰しております。

二次創作だの定期更新だのなんだので~とかいう言い訳は置いておいてですね、一つ事実確認を。
ノゲラ二次創作というか、ゲーム考えてノゲラ風にアレンジしてギミック作るって、普通に難しくないです?
いや、ネタがある内はいいんですよ。
問題は今回みたく、ラスト以外何も思いついてないぜひゃっほいみたいなネタなのでして。
いきなりラストとか面白みもクソも無いので間に何か入れようと考えて沼に肩まで浸かっておりました。

では、大変お待たせ致しました……。


「おぉ~、絶景かな絶景かな」

「随分余裕であるな」

 

 カイが飛ばされたのは、銀河とでも表現しようか。

 満点の星々に彩られた宇宙空間――のような場所。

 宇宙空間とは違い、呼吸は可能、無重力ですら無いその場所に、カイはしっかりと立っていた。

 立ってはいたが、どこを踏みしめ、何故そのような事が可能なのかは理解出来ず、そもそもそれは勝負には関係ないと、すぐに考えることを止めた。

 

「だって~、勝ち確の勝負なんだもん」

「【笑止】負けない」

「……さて、問題定義である。我らの言う『意志者(シュピーラー)』が、空ではない。この事を証明して見せよ」

 

 メラメラと炎を燃やすイミルアインと、それを制することも無く、ただ淡々と勝負の導入に入るアインツェヒ。

 不思議宇宙空間をある程度眺めていたカイは、ようやくその口を開いた。

 

「リクは大戦中に言ったよね? いくつかのルール。具体的には六つのルール」

 

 連結した記憶を辿り、確かに実在したそのルール。

 『遺志に誓って(アシエイト)』から『同意に誓って(アッシェント)』に変わった、その節目。

 

「そのルールは、どれか一つでも違反したら『負け』。それを胸に大戦の終結を願った」

 

 どの機体かが頷いたかもしれない。

 けれども、連結されているイミルアインやアインツェヒにしか確認できないはずのそれを、カイはあたかも見ているかのように続ける。

 

「じゃあ、()()()?」

 

 分かりきっていることだろう。

 そして、知っているはずだろう。

 

「勝った。以上である」

 

 口を開いたアインツェヒにしかし。

 

「ぶっぶー! 勝ててなんていませ~ん! だってー、『勝ち』にするためには大事な要素が抜けてるんだもんね~」

 

 盛大に煽る様に、茶化すように。

 腕で大きくバツを作ったカイは、根本的な部分を尋ねる。

 

「勝ったというなら教えて? 勝者は誰?」

 

 暗躍した幽霊達? しかし、誰の記憶にも、何の記録にも残らない彼らを、『勝者』とするのは無理がある。

 知られれば、負けの筈なのだから。

 生き残った人類種(イマニティ)達? 生き残った、というよりは生き残れた、という表現に近く、生き残るだけで勝ちならば、他の種族も等しく勝ち。全種族が勝ちの引き分けにしかならず、『勝者』という定義には当てはまらない。

 では、暗躍し、活躍し、かつ生き残った機凱種(エクスマキナ)? 大戦を終結させるために膨大な数の犠牲を出しておいて『勝者』? そもそも、誰も殺してはならない。とルールにある以上、違反している。

 ならば、唯一傍観を決め込んで、不戦勝を手にし、唯一神となったテトか?

 

「でも、テトちゃんは本当に望んだかな?」

 

 どこまでの思考を読まれ、どこまでを口に出すか躊躇った機凱種(エクスマキナ)は、反撃の言葉を詰まれていく。

 テトが唯一神になることを望んだのか――そんなもの、分かるはずが無い。

 けれど、実際にその座に着いている以上、望んだと考えるのが自然。

 しかし、その事がテトを勝者と呼ぶにふさわしいものか……。

 

「まぁ、その質問の答えは私も知らないし、どーでもいいんだけど」

 

 こんな素敵な世界を作ってくれたしね? と微笑んだカイは、証明問題最初の証明。

 前振りを終え、最初の主張を機凱種(エクスマキナ)にぶつけた。

 

「最後まで勝者たり得なかった『リク』が、常に無敗である『  (くうはく)』の『空』と同じとは思えない。よって、この二人は(ノットイコール)である!」

 

 指さして、高らかに。

 その事実を突きつけたカイへ、イミルアインは即座に反論する。

 

「【否定】『リク』個人に対し、『  (くうはく)』というユニット名を出すのは不適切。『空』単体で考えるのが妥当」

「そして、『空』個人であるならば、我らは一度勝利している。よって、『空』は無敗に当たらず、敗北している事実があり、我らの『意志者(シュピーラー)』と同じでは無いという否定には繋がらない」

 

 続くアインツェヒにより、最初のカイの証明は納得出来ない、と否定される。

 さらに、

 

「また、『意志者(シュピーラー)』は未勝のままではなく、一度『遺志体(プライヤー)』に勝利している。……あれを勝負と取るかは個人差があるだろうが」

「? ……あー、告白の時のか」

 

 アインツェヒの口から出てきたのは、リクがシュヴィに告白をしたとき。

 問題、と銘打ち、確率を求めた質問にシュヴィは不正解し、リクからのプロポーズを受けた。

 それを勝負と取るかは不明。しかし、勝負と取るならば確かにそこで一度勝利していたと言える。

 最初の主張を砕かれ、さらには主張の元を否定されたカイは、不思議と上機嫌に笑っていて。

 怪訝な顔でカイを見つめる二体の目に気付いたのか、笑った理由を話し始めた。

 

「いやーだってさ。独自解釈を作中キャラにぶつけられるって、私今すっごい贅沢やってんだなーって」

 

 無垢なる笑み。

 純粋な楽しさからくるその表情は、一瞬の内に影に潜み、

 

「んじゃあ、次ね」

 

 敗北を全く考えていない少女から、二つ目の主張が繰り出された。




さ~て次はいつ更新出来るかな~(白目)

まぁ、時間を作りながらゆっくり考えていきますので、頭の片隅で応援よろしくお願いします。

もし応援して下さっている方が居たら、プラムきゅんメインの二次創作を書いて、ツイッターにて叩き付けてくれると涎と血を垂らしながら喜びますので御一考の程よろしくお願いします。

感想もやる気出るのでそちらの方も是非是非(書けるとは言って無い)


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