ソードアートオンライン~二刀流使いの少年~ (黑(不定期))
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プロローグ

初投稿です


「せやぁっ!!」

赤い光を纏った右手の剣がジェットエンジンのような音を響かせながら、敵<ブラック・ウルフ>を貫いた。単発重攻撃技<<ヴォーパル・ストライク>>を食らった<ブラック・ウルフ>は、ガラスが砕けちるような音をたてて霧散した

 

「疲れちゃった、帰ろうかなぁ…」

と言いつつも、二年間で染み付いた癖で周囲の索敵をすると、知り合いの名前とモンスターの反応があったので援護に向かうことにした

 

「必要ないかもしれないけど……一応様子だけみておいた方がいいよね…」

と言いつつもその方向に歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、キーリートー」と軽く手を振りながら見てみるが返事がない。絶賛戦闘中のキリトに答える余裕はない

 

「……」

もしもの時に備え、右手を剣にかけておく。しかし、モンスター<リザードマンロード>が放った単発重攻撃技<<フェル・クレセント>>をギリギリで避けたキリトは、反撃のソードスキル:水平四連撃ソードスキル<<ホリゾンタル・スクエア>>で<リザードマンロード>のHPを0にした

 

 

「おーい、キーリートー」

戦闘が終わったので、安堵の息を吐くキリトに話しかけた

 

「よう、ユウ。奇遇だな」

キリトはユウの呼び掛けに答え、手をあげながら言った

 

「それは同感だよ。帰るとこ?帰るとこだよね。帰るとこなら飯でも、おごってよ。前の貸しの分あるしさ」

 

「帰るとこだけど、貸しの分そんなのでいいのか?」

 

「いいんだよ。お腹すいたんだもん」

 

「…まぁ、それならいいかな」

 

「いやったぁ!キリトのおっごり、キリトのおっごり!」

 

「そんな高いのは駄目だからな!?」

 

「ぶーぶー」

 

そう言いつつ二人は第74層の主住区に向かって歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ……」

 

「どうしたの、キリト?」

 

「いや…二年前、全てが終わって全てが始まった、あの瞬間を思い出してたのさ」

とキリトは自嘲気味に笑った

 

「あの時ね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年前、βテスターに選ばれた僕は、運がいいと思っていた。完全ダイブという新世代のゲーム環境下でのVRMMOである<ソードアート・オンライン>を他の人よりも一足早く体験できたのだから…いや、今、デスゲームと化したのをみると運が悪かったのだろう

親によって束縛され、素直に従っていたあの頃の僕は<ソードアート・オンライン>によってもたらされる解放感に酔っていた。正式サービス開始の2022年11月6日、日曜日。一秒も遅れずログインした。そして、武器や防具をそろえレベル上げをしていたところで、五時半すぎ世界はその有りようを、永久に変えた

 

突然、鐘のような音が鳴り響き俺の体を、鮮やかなブルーの光の柱が包んだ。そして、気が付くとゲームのスタート地点である<<はじまりの街>>の中央広場にいた。そして、同じようにテレポートしてきたのであろう一万人程のプレイヤーの群れがいた。

 

「…どうなっているんだ?」と僕は考えていた。メニューを開くと驚くことにログアウトの文字が消えていた

 

「なるほど…この事の説明か、何かかな…」

と一人合点し運営アナウンスを待った。そして、「あっ……上を見ろ!!」という声が聞こえたので視線を上に上げると100メートル上空、第ニ層の底を、真紅の文字[Warning]と[System Announcement]が浮かび上がり、その後身長二十メートルはあろうかという、真紅のフード付きローブを纏った巨大な人の姿が現れた

 

不意に巨大なローブの右袖が動いた。続いて左袖もゆるゆると掲げられた。直後、低く落ち着いた、よく通る男の声が、遥かな高みから降り注いだ

 

「プレイヤーの諸君、私の世界へよるこそ。私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない。繰り返す。これは不具合ではなく<<ソードアート・オンライン>>本来の仕様である」

 

「なっ……」

予想の斜め上をいく言葉に流石のユウも絶句した

 

「諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない。……また、外部の人間の手による、ナーヴィギアの停止あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合……ナーヴィギアの信号粒子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる。より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴィギア本体のロック解除または分解または破壊の試み…以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴィギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果……残念ながら、すでに二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している」

親が海外にいて良かったと思った。もし親がいたのなら間違いなく外そうとしていたからな、と場違いにも安堵していた

 

「諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴィギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴィギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい。しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、<<ソードアート・オンライン>>は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に…諸君らの脳は、ナーヴィギアによって破壊される。諸君らがこのゲームから解放される条件は、だった一つ。先に述べたとおり、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう。それでは、最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実であるという証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え」

それを聞き僕を含む全てのプレイヤーはメニューを開いていた。そして入っていたアイテムは<<手鏡>>…頭の上にハテナマークを浮かべていると、突然全てのプレイヤーを白い光が包み込みそして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時は本当に驚いたよね」

 

「あの時っていつだよ」

 

「<<手鏡>>を見た瞬間だよ。鏡をみたら現実の顔だよ?」

 

「あー…あの時か…いきなり隣にいたクラインの顔が不細工になってびっくりしたよ」

 

「確かにいきなりあの顔はね」

 

「ひでーな」

 

「そうかな?」

 

何気なく周囲を索敵するとモンスターがひっかかったので警戒をした

 

「あそこだ…」

 

「<ラグー・ラビット>だ……」

 

「<ラグー・ラビットの肉>…」

最高級の<ラグー・ラビット>から取れる最高級の美味に設定されている<ラグー・ラビットの肉>の味を想像しヨダレがでているキリト

 

「キリト……ヨダレたれてるよ?」

 

「おっと……さて、どうやって倒そうか?」

ヨダレを拭いながら言った

 

「飛び道具は使える、キリト?」

<ラグー・ラビット>は逃げ足がとても速いため飛び道具による不意討ちを考えたが自分は飛び道具のスキルをスロットに入れてないため倒せないと判断し、キリトに希望をかける

 

「ああ…投剣スキルがある…だがスキル練度が低いけどな」

といいつつも腰のベルトから投てき用の細いピックを抜き出した。そして投剣スキルの基本技<<シングルシュート>>のモーションをおこし、投げた。ピックの行く末を見守っているとポリゴンの砕ける音が響き、キリトは思わず左手をぐっと握る。そして、キリトはメニューを開き、アイテム欄をみるとキリトの目に<<ラグー・ラビットの肉>>の文字が飛び込んできた

 

「ドロップした?」

期待を込めた目でキリトを見ると

 

「あった……」

満面の笑みでグーサインしつつキリトが答えた

 

「どうする?僕らで食べる?それとも、売って装備にする?」

と表面上は冷静に(手が震えていて、満面の笑みだが)キリトに尋ねた

 

「そうだなぁ……ユウはどうしたい?」

 

「食いたい…けど、僕は料理スキルの練度が足りないし、今の時間から頼みにいくのもなぁ…だから、売る?」

 

「そうだな。よし、エギルんとこ行こうぜ」

とキリトは転移クリスタルを手に取った

 

「よし、じゃあ転移!アルゲート!」

体が青い光の包まれ周囲の景色が消滅していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この街、猥雑で好かないんだよなぁ……」

と顔をしかめてユウは言う

 

「そうか?俺はこんなかんじ結構好きだぜ?」

かつてよく遊びに行っていた電気街に似ているからだろうなと呟くキリト

 

「じゃあ、行こうよ。ついでに冷やかしかなぁ……」

 

「おーい、心の声が出てるぞ?」

苦笑まじりにキリトが突っ込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「毎度!!また頼むよ兄ちゃん!」

と商談が終わったみたいなのでエギルの店に入って行った

 

「うっす。相変わらず阿漕な商売してるな」

 

「……エギルなんて、いつか壁に埋め込まれちゃえ」

相変わらず毒をはくユウ

 

「よぉ、キリトとユウか。安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね。それとユウ…毎度のことだか酷くねぇか?」

悪びれる様子もなくうそぶく

 

「それが僕だよ」

 

「安く提供するって部分が疑わしいけどなぁ……まぁいいや、俺たちのも買取を頼む」

 

「キリトとユウはお得意様だしな、あくどい真似はしませんよっ、と……」

言いながらエギルは猪首をのばし、俺の提示したトレードウインドウを覗き込んだ

 

「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。<<ラグー・ラビットの肉>>か、俺も現物を見るのは初めてだぜ……。キリト、ユウ、おめえら別に金には困ってねえんだろ?自分で食おうとはおもわんのか?」

 

「思ったが、練度が足りないんでな」

 

「同じく思ったんだけど……こんなアイテムを扱えるほど料理スキルを上げてる人なんてそうそう……」

 

「キリト君、ユウ君」

とそこで後ろからキリトは女の声で話しかけられた。キリトは左肩に触れたままの相手の手を素早く掴むと、振り向きざまに「シェフ捕獲」と言った

 

「やぁ、アスナ。久しぶりだね」

と軽く手を上げて挨拶をする「貴様!!」とかいう言葉が後ろから聞こえるが気にしないでおこう。うんそうしよう

 

「久しぶりね、ユウ君」

 

「珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」

 

「だね、スキンヘッドのいかついオッサン一人の店によくきたよね。……キリトにあうためだけにボソッ」

 

二人がかりで毒を吐かれエギルの顔がピクピクと引きつる。がエギルはアスナに声をかけられると顔をだらしなく緩ませる……現金なやつだなぁ

 

「えっとシェフがどうこうって何?」

 

「あ、そうだった。お前いま、料理スキルの熟練度どのへん?」

 

「聞いて驚きなさい、先週に<<完全習得>>したわ」

 

「なぬっ!」

 

「ほんとに?!」 

 

キリトと僕が同時に驚く。……顔から察するにキリトは(アホか?)とでも思ってるんだろな……

 

「ふふっ、ユウ君が驚くところ初めてみたな」

 

…しまった。僕のポーカーフェイスが崩れていたみたいだ

 

「……その腕を見込んで頼みがある」

キリトがアスナを手招きしている。アスナが覗き込んでしばらくすると目を丸くして

「うわっ!!こ……これ、S級食材!?」

 

「取引だ。こいつを料理してくれたら一口食わせてやる」

言い終わらないうちにアスナはキリトの胸ぐらを掴み、そのまま顔を数センチの距離までぐいと寄せると

 

「は・ん・ぶ・ん」

 

「……僕も食うんだからねアスナ」

存在を消されていたようなので言うと

 

「じゃあ3分の1ね……いい?」

アスナの方が身長が低いため自然と上目遣いになる。上目遣いをアスナのような美少女がやると……

 

「わ……わかった」

 

「あ……ああ」

破壊力満点ですね。OKするいがいの選択肢がない

 

「悪いな、そんな訳で取引は中止だ」

と振り向き、エギルに言った

 

「いや、それはいいけどよ……。なあ、俺達ダチだよな?な?俺にも味見くらい……」

 

「感想文を八百字以内で書いてきてやるよ」

とキリト

 

「壁に食わせる高級料理があると思う?いや、ないよね」

と僕。いや、別に慎重が高いから嫉妬してるわけではないよ。断じてちがうよ!………誰に言い訳してるんだろ?

 

「そ、そりゃあないだろ!!」

 

この世の終わりか、といった情けない声を出すエギル……どうでもいいかな

 

そのエギルを一瞥しアスナが

「でも、料理はいいけど、どこでするつもりなのよ?」

 

「うっ……」

 

「僕の部屋でもいいが、ちょっと汚いかな」

自分の部屋を思い浮かべる

 

「今回だけ、食材に免じてわたしの部屋を提供してあげなくもないけど」

…とんでもないことをさらりと言ったよね今

 

「今日はここから直接<<セルムブルグ>>まで転移するから、護衛はもういいです。お疲れ様」

 

「ア……アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れぬ奴らをご自宅に伴うなどと、と、とんでもない事です!」

 

(うっわー…<様>付けだよ…)と思いキリトを見ると案の定僕と同じ事を思ったらしく顔をしかめている。この場はアスナが収めたが後々大変なことになるのだが、今は知るよしもなかった




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ラグーラビットとチーム結成

第2話です


セルムブルグは、六十一層にある美しい城塞都市だ。そんな都市の転移門に到着した時にはすっかり陽もくれかかっていた

 

「うーん、広いし人は少ないし、開放感あるなぁ」

 

「同感だよ。なんか気分が落ち着くんだよね」

 

「なら君たちも引っ越せば?」

 

「金が足りません」「お金がないよ」

とまたしてもはもる僕達

 

「仲いいね」

 

「「まあね、一応親友だからな」ね」

 

その完璧にシンクロした答えにふふっと笑うアスナ

 

「……そりゃそうと、本当に大丈夫なのか?さっきの……」

 

「……わたし一人の時に何度か嫌な出来事があったのは確かだけど、護衛なんて行き過ぎだわ。要らないって言ったんだけど……ギルドの方針だから、って参謀職たちに押し切られちゃって……」

 

「まあ、アスナは可愛いからね。そういうこともあるよね」

 

「ふふっ、ありがとうユウ君」

 

「まぁ、何だろ。悩みとか困ったことがあった何でも言ってよ?必ず力になるからさ」

と真剣な表情でアスナにいう

 

「うん……ユウ君は優しいね」

 

「惚れた?」

さっきとは一転意地悪な顔になる

 

「な……なわけないでしょ!」

顔を赤らめてあわてて言う

 

「ざんねんだなぁ。まぁでも、アスナはキリトのことが好きなんだしなぁ」

とアスナにしか聞こえないように言う

 

「な……何で知ってるの!?」

 

もう、湯気が出そうなほど顔を赤らめてアスナはささやき返した

 

「僕はそういうのを見破るのが得意なのさ。まあ、さっきも言ったように何でも相談にのるからさ。応援してるよ?」

 

「ぁ…ありがと」

 

「おい、アスナ、ユウ、何をこそこそ話してるんだ?」

 

「なっ、何でもない!ほら、早く行かないと日が暮れちゃうわ」

キリトが首を傾げている……この鈍感野郎…アスナが可哀想だよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お……お邪魔します」」

 

「どうぞ」

 

女子の部屋に入るのは、初めてではないが、緊張するものは緊張する。初めて入ったのはしーちゃんの部屋だったか……大丈夫かな、しーちゃん。対人恐怖症で僕以外とはあまり話そうとしなかったし

 

「着替えてくるからそのへん適当に座ってて」

とアスナは着替えに行った

 

考え事をしてるとキリトが話しかけてきた

「なあ……これ、いくらぐらいかかってると思う?」

 

「四千kは下らないをじゃないかな?」

というとキリトは苦笑した

 

「どうしたの?」

 

「いや、俺もそんくらいは稼いでると思うんだが、無駄遣いをついしちゃってな。それを自省してたのさ」

 

「ふーん……」

そんな会話をしていると簡素な白いチュニックと膝上丈のスカートに着替えたアスナが奥の部屋から現れた。そしてアスナは僕達に視線を投げ掛け

「君たちはいつまでそんな格好をしてるのよ」

 

……忘れてたよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナはわずか5分で豪華な食卓を整え僕、アスナ、キリトで食卓を囲んだ。ちなみに<<ラグー・ラビットの肉>>は文字どおり煮込み(ラグー)料理のシチューになった

そして僕達は食の誘惑に勝てず、いただきますを言うのももどかしくスプーンを使ってそれを頬張った

僕はうまいものは人を無口にするという言葉を完全に理解した気がする。僕達三人は一言もしゃべらずシチューを完食した

 

「ああ……いままでがんばって生き残っててよかった……」

僕も同感だった。キリトも満足したって顔をしている

 

「不思議ね……。なんだか、この世界で生まれて今までずっとくらしてきたみたいな、そんな気がする」

 

「……俺も最近、あっちの世界のことをまるで思い出さない日がある。俺だけじゃないな……この頃は、クリアだ脱出だって血眼になる奴が少なくなった」

 

「攻略のペース自体おちてるわ。今最前線で戦ってるプレイヤーなんて、五百人もいないでしょう。危険度のせいだけじゃない……みんな、馴染んできてる。この世界に……」

 

「僕は元から帰りたいとは思ってないよ。僕は現実世界よりもこのバーチャルの世界の方が居心地がいいんだ。現実世界とバーチャルの違いなんて多少の誤差しかないと思うんだよ。現にこうやって食事したり、匂いをかいだり、足で外を歩いたり……現実逃避って言われるかもしれない。でも、僕は総合的に考えてこっちの、バーチャルの世界の方で生活していきたいと思っているよ」

 

「俺もほとんどユウと同じ考えだ。バーチャルとリアルの違いは、情報量の多寡だけ……」

 

「わたしは帰りたい」

アスナは僕達に微笑みを見せると続けて言った

 

「だって、あっちでやり残したこと、いっぱいあるから」

その言葉に僕たちは素直に頷いていた。

 

「しーちゃん救ってやりたいからな……」

その言葉は空に消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、君たちはギルドに入る気はないの?」

 

「「え……」」

 

「ベータ出身者が集団に馴染まないのは解ってる。でもね、七十層を越えたあたりから、モンスターのアルゴリズムにイレギュラー性が増してきてるような気がするんだ」

それは、僕も感じていたけど、しかしなぁ……

 

「ソロだと、想定外の事態に対処できないことがあるわ。いつでも緊急脱出できるわけじゃないのよ。パーティーを組んでいれば安全性がずいぶん違う」

 

「安全マージンは十分取ってるよ。忠告は有り難く頂いておけけど……ギルドはちょっとな」

 

「同感だね。ギルドみたいに上からわーわー言われたりバカらしい命令を絶対に聞かないといけないなんてイヤだしね」

 

「…なら、しばらくわたしと組みなさい。ボス攻略パーティーの編集責任者として、君たちが噂ほど強い人なのか確かめたいと思ってたとこだし。今週のラッキーカラー黒だし」

 

「な、なんだそりゃ!」

 

「だが、断る!」

 

「お前…ギルドはどうするんだよ」

 

「うちは別にレベル上げノルマとかないし」

 

「じゃ、じゃああの護衛の二人は」

 

「置いてくるし」

 

「なるほどね……キリトとの仲をっ!?」

 

「それ以上は言わないで」

そこには目のハイライトが消えた阿修羅がいた

 

「……はい」

僕はそう答えるしかなかった

 

「じゃあ、明日朝9時、七十四層のゲートの前で待ってるわ」

 

「「了解……」」

 

一人暮らしの女性の部屋にいつまでも居座るといろいろ(主に倫理的な問題で)まずいので食事を終えるとすぐに暇を告げた

 

「……今のこの状態、この世界が、本当に茅場晶彦の作りたかったものなのかな……」

 

僕達三人はそれに答えることはできなかった

 



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デュエルと、冒険の始まり

280人もみててびっくりの作者です。
では第三話どうぞ。


次の日の朝9時、僕達は七十四層のゲート前にいた

 

「やぁ、キリト。いい朝だよね」※ちなみに天気は薄曇り

 

「どこがだよ。嫌な天気じゃねえか」

とキリトが不機嫌そうに言った

 

「どうしたの?眠いの?」

 

「その通りだよ!ったく眠いっていうのにアスナはすぐこないし…」

 

「確かにね……」

と時計を見ると9時10分になっていた。10分遅刻している。とその時何度目かの青いテレポート光が発生し……

 

「きゃああああ!よ、避けてっ!」

 

「うわああああ!?」

とキリトが押し倒された。押し倒した人をよくみるとアスナだった。なんてギャルゲ?って思ったけど、とりあえずアスナを起こしてあげようと手を伸ばしたが……

 

「い、いやぁーー!!」

といきなり悲鳴が上がったので手を引っ込める

そしてアスナはキリトを殴り後ろにペタリと座り込んだ。顔は最大級の感情エフェクトで耳まで真っ赤に染まり、両腕は胸の前でかたく交差され……

ここまで考えて僕は状況を把握した

 

「……キリト、変態?」

と冷ややかな目でキリトを見る

 

「ごっ、誤解だ!事故だ、事故!」

あたふたしながら弁解する。……ギャルゲはエロゲにランクアップしたみたいだ

 

「や……やあ、おはようアスナ」

右手を閉じたり開いたりしながら…って、やっぱり変態だね、キリト。

 

とそう思ったその時、再びゲートが青く光、アスナがはっとしたようにキリトの後ろに隠れた

 

光が消えると見覚えのある顔の男がいた。彼の名前は……たしか、クラディールだったっけ?

 

ゲートから出たクラディールは、僕、キリト、アスナをみたあと、神経質そうに口を開いた

 

「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!」

ヒステリック気味に甲高い声を上げた。なんか怖いよ……

 

「さあ、アスナ様、ギルド本部まで戻りましょう」

 

「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ!……だいたい、アンタなんで朝から家の前に張り込んでるのよ!?」

 

「ふふ、どうせかんなこともあろうかと思いまして、私1ヶ月前からずっとセルムブルグで早朝より監視の任務についておりました」

 

「ストーカーだよ。そして、変態だよ。しかも粘着質でしつこく、もっとも質の悪いタイプだよ。キリトを越えちゃったよ。……でも、そうかクラディール。君はアスナの事が好きなんだね。だが残念だね。アスナはキリ…「言わないで!」…ごほん。好きな人がいるみたいだから早々に諦めた方がいいよ?諦めが悪いのは流行らないからね」

 

アスナが途中で顔を真っ赤にして遮った。……かわいい

 

「貴様ァ……言わせて置けばぁ!!」

こちらもアスナに負けず劣らず顔が真っ赤である。理由は正反対けど

 

 

「はいはい。悪いな、お前さんのトコの副団長は、今日は貸切りなんだ。アスナの安全は俺らが責任を持つよ。別に今日ボス戦をやろうって訳じゃない。本部にはあんた一人で行ってくれ」

 

「ふ……ふざけるな!!貴様らのような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務まるかぁ!!わ……私は栄光ある…「御託はいいよ。雑魚ほどよく吠えるって言うしね。いいかげんにしときなよ?」くっ!」

 

「そうだな。それに、あんたよりはマトモに務まるよ」

 

「ガキィ……そ、そこまででかい口を叩くからには、それを証明する覚悟があるんだろうな……」

クラディールは、震える右手でウインドウを呼び出し素早く操作した。そして、キリトが僕とアスナに目配せをしてきた…おそらくデュエルを申し込まれたかな

 

「……いいのか?ギルドで問題にならないか……?」

とキリトはアスナに尋ねると

「大丈夫。団長にはわたしから報告する」

と許可がでる

 

「短気だなぁ……」

 

「う……うるさい!!このガキを倒したら次はお前だ!!覚悟をしておけよ……」

 

「人を切る覚悟?そんなもの、このゲームが始まったときから覚悟してるよ」

 

「ガキィ……」

顔面蒼白なり睨んできた……挑発にのるとは……この人、かなり弱いね

 

「早く始めないのか?」

デュエルを受諾したらしいキリトがクラディールに言った

 

「くっ、先ずは貴様から後悔させてやる」

僕に口喧嘩で勝てないとさとったのかキリトの方に意識を集中させるクラディール

 

「ご覧くださいアスナ様!私以外に護衛が務まる者など居ないことを証明しますぞ!」

叫びつつ腰から華麗な装飾が施してある両手剣を引き抜く。対してキリトも背から片手剣を抜く。そしてデュエルは始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず動いたのはキリト。下段の受身気配を見せていたが予想に反し上段の片手剣突進技<<ソニックリープ>>で仕掛けた。対してクラディールはキリトとは一瞬遅く両手用大剣の上段ダッシュ技、<<アバランシュ>>を放とうとした。だか放たれる一瞬前にキリトの剣がクラディールの大剣に衝突した。そして……

 

クラディールの大剣は折れ、半分が空中ですれ違い着地したキリトとクラディールの中間の石畳につきたった。そして、ポリゴンとなって砕け散った

すげえ、いまの狙ったのか、などの声が聞こえる。これがキリトの得意とするシステム外スキル<<アームズブレイク>>だ。まさに神技である

 

「武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど……もういいんじゃないかな」

とキリトが言うとクラディールは「アイ・リザイン」と言った。なんで日本語で言わなかったのだろうか?負けたってのに相変わらずプライドの高いやつだ。そしてギャラリーに向かって

 

「見世物じゃねえぞ!散れ!散れ!」

 

「貴様……殺す……絶対に殺すぞ……」

その言葉に僕はキレた

 

「殺すって言葉を簡単に使うんじゃないよ!!……人を殺すってのはね……例えゲームの中だとしてもね、軽いもんじゃないんだよ!あの子だって、罪悪感で押しつぶされそうになってんだよ!?!殺すっていうのはね!相手の残りの人生を全て背負うぐらいの覚悟を持って言いなよ!!」

 

「ユウ……」

 

「……」

クラディールは何も言わず憎悪の目で僕とキリトを睨んだ

 

「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を以て護衛役を解任。別命あるまでギルド本部にて待機。以上」

 

「………なん……なんだと……この……」

かろうじてそれだけが聞こえた。そしてマントの内側から転移結晶を掴み出し、それを掲げ「転移……グランサム」と言った消えて言った

 

「……ごめんなさい、嫌なことに巻き込んじゃって」

 

「いや……俺はいいけど……」

 

「僕もかまわないよ。それより攻略に行くんじゃないの?」

 

「そうなんだけど……ユウ…さっきの言葉って……」

 

「気にしないで。知り合いのことだよ」

 

「……いつか話してもらうよ」

 

「了解」

と苦笑する

 

「じゃあ、行こうか。前衛よろしく」

 

「「いや、ちょっと、前衛は普通交代制だろう!」だよね!?」

 

「二人いるんだから交代でできるじゃない」

 

「「アスナもやれよ」やってよ」

文句を言いながらも、アスナを追いかけた



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青い悪魔

前に書いてたやつだからストックはあるけど、なかなか難しいなぁ……
ユウ「作者さんの才能がないだけだよね」
グハァッ……。ユ、ユウさん?僕作者なのにひどくない?
ユ「だって所詮有象無象にすぎない作者さんだもん。それぐらいでいいんじゃないかな」

き、気を取り直して第四話どうぞ……


それにしても君たち、いっつも同じ格好だねえ」

 

「い、いいんだよ。服にかける金があったら、少しでも旨い物をだなぁ……」

 

「僕は単純に黒が好きだしさ。それに隠蔽能力も高いしねぇ。……っ!?」

索敵を使うとプレイヤーの反応があった

 

「どうしたの?」

 

「アスナ……」

キリトがマップを出し、可視モードにしてアスナに見せる

 

「多い……」

十二個のプレイヤーを示す緑の光を見てアスナは呟いた

 

「それにこの並び方……おそらく<<軍>>だよ」

 

「一応確認しよう。そのへんに隠れてやり過ごそう」

 

「あ……」

うん、その服装はいかにも隠密行動に向かないよね

 

「どうしよ、わたし着替え持ってないよ」

 

「ちょっと失敬」

キリトが自分のレザーコートの前を開くと、右隣にうずくまるアスナの体を包み込んだ。というか

 

「仲いいね、君ら……」

 

「「っ!?」」

顔を真っ赤にする二人

 

「そっ、それより来るよ!」とアスナはささやいて指を唇の前に立てた。顔を赤らめながら

 

姿を現したのは予想通り<<軍>>のメンバーだった。前衛に片手剣持ちが六人。後衛に巨大な斧槍持ちが六人

 

「……あの噂、本当だったんだ……」

 

「噂?」

 

「うん、ギルドの例会で聞いたんだけど、<<軍>>が方針変更して上層エリアに出てくるらしいって。もともとはあそこもクリアを目指す集団だったのよね。でもニ十五層攻略の時大きな被害が出てから、クリアよりも組織強化って感じになって、前線に来なくなったじゃない。それで、最近内部に不満が出てるらしいの。……で、前みたいに大人数で迷宮に入って混乱するよりも、少数精鋭部隊を送って、その戦果でクリアの意志を示すっていう方針になったみたい。その第一陣がそろそろ現れるだろうって報告だった」

成る程。それで最近見なかった<<軍>>がねぇ……だけど

 

「実質プロバガンダなんだね。でも、だからっていきなり未踏破層に来て大丈夫なのかな……?レベルはそこそこありそうだったけど……」

 

「俺は大丈夫じゃないと思う。最前線ってのは、数値的パラメーターの他に経験とそれなりの度胸がいる。<<軍>>みたいに大人数で安全な狩場にしか行かないような奴らが、いきなり最前線で安全も何もかもが不透明な場所で満足に戦えるとは思えない」

 

「そうだね……まあ、あの人たちも危なくなったら脱出するだろしね。僕たちも急ごうよ。中でかち合わなきゃいいんだけど」

僕は立ち上がり言った

 

「もうすぐ冬だねえ……。わたしも上着買おっかな。」

その時にはもう<<軍>>の連中の姿は見えなかった。俺は背中の剣にそっと触れ、その存在を確かめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、今絶賛戦闘中の僕たちです。正直僕いらないと思うんです。敵は<<デモニッシュ・サーバント>>。骸骨である。アスナは放たれた<<バーチカル・スクエア>>を全て避けると八連続攻撃<<スター・スプラッシュ>>で反撃した。そして、アスナがブレイクポイントを作るとキリトが斬り掛かった。キリトが放ったのは先程<<デモニッシュ・サーバント>>も使っていた<<バーチカル・スクエア>>だ。敵の反撃を剣で弾いたキリトは<<メテオブレイク>>を放った。その七連撃を終えると骸骨は乾いた音を立てて崩れ落ちた。…僕?何もしてないよ。主人公なのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四回モンスターと遭遇したのだけど……僕が戦ったのは一回だけだった。何故ならアスナとキリトのバトルマニア組が近くにいるからだ。敵が出てくると二人で突っ込んでいき、あっという間に倒してしたうからだ。閑話休題

 

しばらく歩いていくと徐々にだがオブジェクトが重くなってきている。それにマップデータの空白もあとわずか。そろそろボスのお出ましだろう。とうとうついた回廊のつきあたりには、灰青色の巨大な二枚扉が待ち受けていた

 

「……これって、やっぱり……」

 

「多分そうだろうな……ボスの部屋だ」

アスナがギュッとキリトのコートの袖を掴んだ。……胸焼けがする。……コーヒーないかな

 

「どうする……?覗くだけ覗いてみる?」

 

「……ボスモンスターはその守護する部屋からは絶対にでない。ドアを開けるだけなら多分……だ、大丈夫……じゃないかな……」

 

「言い切ろうよ……まあ転移アイテムを使えば大丈夫だろうけどね」

 

「了解。アスナも」

 

「うん」

 

「いいな……開けるぞ……」

かなりのスピードで扉は開いた。中に目を向けると完全な暗闇。そこにいるものに死をイメージさせるような冷たく濃密な闇がそこにはあった

 

次の瞬間、二つの炎が灯りそれは部屋の中央まで真っ直ぐ向かい最後に大きな火柱が吹き上がった。アスナがキリトの右腕にしがみついているが、それをネタに弄る余裕は僕にはない。なぜなら火柱の後ろから筋骨隆々で体色は青くねじれた太い角、それに山羊の顔。数々のRPGでお馴染みの姿。すなわち悪魔である。実際この目で見ると心の底から恐怖が沸き起こってくる。<<The Gleameyes>>、輝く目それがそいつの名前だった。そいつは右手に持った巨大な剣をかざして、こっちに向かって地響きを立てつつ猛烈なスピードで突進してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やー、逃げた逃げた」

 

ここは安全エリアに指定されている広い部屋。向かってきた悪魔を見て僕たちはここまで逃げてきたのだ

 

「こんなに一生懸命走ったのすっごい久しぶりだよ。まあ、わたしよりキリト君の方が凄かったけどね!」

 

「……ユ、ユウの方が」

 

「索敵してたの僕だけだったよね?」

 

「ぐう……」

キリトは何も言えなくなりアスナはそんなキリトを見てくすくす笑っている。そして急に真顔になり

 

「……あれは苦労しそうだね……」

 

「そうだな。パッと見、武装は大型剣ひとつだけど特殊攻撃アリだろうな」

 

「あの姿から察するに、物理攻撃力が高そうだね。特殊攻撃っていっても動きを少し止めるとか、補助的なものかな。一応人形だから死角からの攻撃に弱いはずだけど……。まぁ、だから……」

 

「前衛に堅い人を集めてどんどんスイッチして行くしかないね」

僕の言葉を引き継ぐアスナ

 

「盾装備の奴が十人は欲しいな……。まあ当面は少しずつちょっかい出して傾向と対策って奴を練るしかなさそうだ」

馬鹿……盾ってフレーズなんて出したりしたら

 

「盾装備、ねえ」

ほら、言わんこっちゃない

 

「な、なんだよ」

 

「君たち、なんか隠してるでしょ」

 

「いきなり何を……」

 

「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾持てることじゃない。でも、キリト君とユウ君が盾持ってるとこみたことない。わたしの場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たないって人もいるけど、君たちの場合はどっちでもないよね。……あやしいなぁ」

キリトが冷や汗をかいている。僕?なるべく秘密にしておきたいけど、アスナにならかまわないから普通です。まぁここは助け船を出してやりますか

 

「アスナ、そのへんにしておきなよ。それにスキルの詮索はマナー違反だ。誰にでも秘密はあるものだよ」

 

「秘密の塊のような人が……まあ、いいわ」

 

秘密の塊とはなにさ。ミステリアスと言ってくれよ

 

「わ、もう三時だ。遅くなっちゃったけど、お昼にしましょうか」

 

「なにっ。て、手作りですか」

キリト、うるさい

 

「愛妻弁当だねぇ……よかったねキリト。僕は向こうに行ってるから二人で仲良く食べてるといいよ」

 

「あっ、愛妻!?まだ、結婚してないよ」

とアスナ……自爆したな

 

「まだって?」

 

「……」

あっ、顔を真っ赤にしてしゃべらなくなった。ついでにキリトも真っ赤になりながらフリーズしてるし

 

「そっ、それより早く食わせてくれ、アスナ」

……逃げたな

 

アスナはバスケットから大きな紙包みを三つ取出し、一つを僕にくれた。大口を開けてかぶりつくとなんとも懐かしいってまてまて、これはマク○ナルドのハンバーガー!?

 

「おまえ、この味、どうやって……」

 

「僕も知りたいかな」

 

「一年の修行と研鑽の成果よ。アインクラッドで手に入る約百種類の調味料が味覚再生エンジンに与えるパラメーターをぜ〜〜んぶ解析して、これを作ったの」

 

「アスナ……少しでいい。分けてくれないかな?」

 

「うん、いいよ」

 

「やったぁ!」

やったぁ。料理のレパートリーが広がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな食事も終わり……デザート(キリトの肩にアスナが自分の肩を触れさせ、寄り添っている光景)をいただいていると不意にプレイヤーの一団がやってきた。あ……デザートタイムが終了した

 

「おお、キリト、ユウ!しばらくだな」

話しかけてきたのはクライン。弄りやすく、面白いやつだよ。命の恩人でもあるが僕が助けたことも多々あるから立場は五分五分である。そして、アスナを見て固まり、自己紹介を始めた。しかも二十四歳独身とか言いだしやがったよ。クラインに向けて笑顔を見せてあげると、ビクッとした。……失礼だな。弄るネタができたから笑ってあげたのに……

 

等という心温まる?コミュニケーションをとっていると

 

「キリト君、<<軍>>よ!」

 

<<軍>>は僕たちとは反対側の端で座りこむと唯一座り込まなかったリーダーらしき人物がこっちに近づいてきた

 

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

 

…中佐とかない

 

「キリト、ソロだ」

僕たちを代表してキリトが答える

 

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」

 

「……ああ。ボス部屋の手前まではマッピングしてある」

 

「うむ、ではそのマップデータを提供して貰いたい」

 

……この人はよほどめでたいやつみたいだね

 

「な……て……提供しろだと!?てめえェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか!?」

 

クラインの言葉はここにいる全員の言葉を代弁したものだった

 

「我々は君ら一般プレイヤーの解放の為に戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」

 

……斬ろうかな?と剣を抜きかけていた俺をキリトが止めた

 

「どうせ街に戻ったら公開しようと思っていたデータだ、構わないさ」

 

「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト」

 

「そうだよ、キリト。こんな仲間の体調もまともにみてないクズみたいな人に渡すデータなんてないよ」

 

クズみたいな人の部分で片方の眉がぴくりと動くが、襲い掛かって来なかった。もし、襲い掛かってきたのなら正当な理由で戦闘不能にできたのだけど…

 

コーバッツはキリトの送信を受けると部下を連れて迷宮に入っていった

 

「……大丈夫なのかよあの連中……」

 

「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」

 

「……一応様子だけでも見に行くか……?」

 

その時、僕は嫌な予感を感じていた。だからキリトの問いにすぐ首肯していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安全エリアを出て三十分。僕たちはボス部屋に続く長い回廊を進んでいた

 

「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねえ?」

 

「あり得ないよ。あのクズの体現者がそんなすぐに帰るとは思えないし……だとすると……」

 

その不安は現実となった。微かに聞こえるそれはまさに悲鳴だった。それを聞いた次の瞬間僕たちは全力で走りだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!大丈夫か!」

キリトが半身を扉の中にいれ叫ぶ

 

僕は中にいる人数を数える……二人足りない

 

「二人いない!」

 

「なにっ」

 

とその時一人が斬馬刀の横腹で薙ぎ払われ、HPを赤い危険域に落としつつ床に激しく転がった

 

「何をしている!早く転移アイテムを使え!!」

とキリトが叫ぶが男は絶望したような顔で

 

「だめだ……!く……クリスタルが使えない!!」

 

「なっ……」

 

離脱ができない今、姿が見えないということは

 

「何を言うか……ッ!!我々解放軍に撤退のニ文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」

 

「馬鹿野郎……!!」

人が二人も死んでるというのにあの人はっ!

 

「おい、どうなってるんだ!!」

追い付いたクラインたちに簡単に事態を伝える

 

「な……何とかできないのかよ……」

 

「無理だ……離脱ができないこの空間でこの人数で飛び込むのは自殺行為だ……」

僕は強く手を握りしめる。現実ならば血がでてるだろう。僕は……無力だ……

 

そうしているうちに体制を立て直したらしいコーバッツ達が

 

「全員……突撃……」

 

二人はHPを限界まで減らして床に倒れている。残る八人を横列に並べコーバッツが剣をかざして突進を始めた

 

「やめろ……っ!!」

 

八人同時攻撃なんて常識はずれにも程がある行為。そうこうしてるうちに白い息を吹きかけられ動きが鈍ったところを悪魔の巨大な剣にコーバッツがすくい上げられ、HPが全損し、アバターを四散させた

 

「だめ……だめよ……もう……」

キリトはアスナの腕に手を伸ばすが、アスナは掴まれるより早く飛び出した

 

「だめーーッ!!」

 

「アスナッ!」

キリトも飛び出し、僕も続こうとしたがクラインに止められた

 

「なぜ、止めるの!」

 

「このままだと、全滅しちまう。おまえだけでも生きろ!」

 

「……親友を見捨てるぐらいなら死んだ方がマシだよ。それに……」

そこで僕は言葉を切り、メニューを操作する

 

「僕たちは死なない。生き残るために行くんだ!」

 

新たな重みが腰に加わったのを感じ、駆け出す

 

「全く、どいつもお人好しだな……」

僕に追随しつつクラインが言う

 

「何だかんだ言いながらクラインもついてきてるじゃないか」

 

「まあな。親友を見捨てるほど僕は腐っちゃいないってことさ」

 

「じゃあ、行こう。生き残るためにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリトっ!スイッチ!」

一撃を受け黄色域に落ちていたキリトに叫び。キリトの前に滑りこみ僕は二本の剣を腰から抜いた

 

「はぁぁぁぁ!」

僕は気合いをあげ悪魔の剣を右手の剣で弾き左手の剣で切った

 

「グォォォォ!」

悪魔が反撃の一撃を放ってきたが僕は剣をクロスし受けとめる……が、僕は敏捷重視の剣士だ。筋力はあまり高くない。結果

 

「くそっ、重すぎる……かなっ!!」

受け止めきれず徐々に剣が下がってくる。コースは直撃つまりクリティカル。このまま食らえばHPが0になるのは必至だ。だがあきらめない。降りてきた剣があと数ミリになったところでクラインの刀が悪魔の剣を弾きかえした

 

「次はこの俺様だ!!」

クラインはそう叫んで悪魔と対峙する

 

僕は回復ポーションを飲みながら後ろを振り向く。そこには二本の剣を背中に背負ったキリトがいた。アイコンタクトをとる。キリトが頷いた

 

「行くぞっ!」

クラインをはじめとする<<風林火山>>の面々とアスナが必死に支えているフィールドに僕とキリトは飛び込んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト!弱点は脇腹だ!キリトは右、僕は左だ!」

 

「わかった!!」

 

「「スイッチ!!」」

俺たちは悪魔の前に飛びだし、そして懐に潜りこんだ。悪魔の剣の縦振りをキリトが剣をクロスし弾き返し、バランスを崩させた

 

「「うおおおおあああ!!」」

僕たちの隠し玉。エクストラスキル<<二刀流>>だ。その上位剣技<<スターバースト・ストリーム>>全十六回攻撃をキリトが放った。僕は、左手の剣で四連続剣技<<バーチカル・スクエア>>を放った。最後の四つ目の斬撃が放たれる瞬間意識から左手の剣を外し、右手の剣に意識を集中させる。そして右手で五連続剣技<<クレセント・スラッシュ>>さらに最後の切り上げをまた意識を外し、左手に集中。七連続剣技の大技<<イービル・ソウル>>悪魔の魂の名をもつ技を悪魔に打ち込む。皮肉な物だと口の端をあげつつ右手に意識を集中させる。ここまでの攻防で、僕、キリト、悪魔共に、赤い危険域に落ちていた。悪魔は剣を横に振り薙払おうとしている。キリトも<<スターバースト・ストリーム>>の最後の攻撃を放とうとしている。最後の攻撃単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>を放った

 

「「はああああぁぁぁぁ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪魔は硬直し次の瞬間砕けちった。僕もキリトもそれを喜ぶ気力もなかった。HPは僅か数ドットを残しそこで止まった。僕もキリトもどちらともなく崩れ落ち座り込んだ。僕は残った力を使い<<ハイ・ポーション>>を飲んだ

 

「キリト君!キリト君ってば!!」

アスナがキリトに呼び掛けているが返事がない。屍のよ(ry。あっ、起きた。そしてアスナに抱きつかれた

 

「バカッ……!二人とも無茶して……!」

……返す言葉もございません

 

「まあ、生きてたんだからよしとしたらいいんじゃない?」

と言ったら睨まれた……さっきのボスより怖い……管理局の白い悪魔のごとく

 

「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ……」

 

「……そうか。ボス攻略で犠牲者が出たのは、六十七層以来だな……」

 

「こんなの攻略なんて言わない。ただの自殺だよ。一人でならまだ許せるけどこんだけの人数を巻き込んで……」

と吐き捨てる

 

「そりゃあそうと、オメエラ何だったんだよさっきのは!?」

 

「「エクストラスキルだよ<<二刀流>>」」

キリトは多少躊躇したようだが僕が目で合図すると観念したように僕と同時に言った。おお……というざわめきが聞こえた

 

「僕のは邪道だがな」

 

「あれは何だったんだ?」

とキリト

 

「システム外スキル<<スキルコネクト>>だよ」

 

「方法は?」

 

「すまん……また今度。とりあえず僕は休みたい」

 

「まあ、そうだろうな。だが水臭ぇなキリト、ユウ。そんなすげえウラワザ黙ってるなんてよう」

 

「スキルの出し方がわかってれば隠したりしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ」

 

クラインはユウの方を見てくるが俺も同じと頷く

 

「……こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……いろいろあるだろう、その……」

 

クラインは頷く

 

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレは人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうな」

いろいろ突っ込みたいけど今日はもう疲れた

 

「それに……」

とキリトとアスナが抱き合っているのをみて続ける

 

「……まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」

 

「勝手なことを……」

 

クラインが軍の方へ行っている間僕はキリトたちに話しかけた

「キリト……僕は抜ける。ピンチになったら駆け付けるからね」

 

「ユウ君、これからどうするの?」

 

「前線を離れてのんびりするよ。<<二刀流>>のこともばれたし、前線にいるとうるさそうだしね。七十五層のボス攻略のときは行くからその時かピンチのときにまた」

 

「うん、わかった。死なないでね」

 

「前線でもないのに死なないよ。……じゃあね」

クラインにも一言かけ僕はその場を立ち去った




ど、どうでしたかね……
ユ「文の構成へただね、作者さん」
やめてぇ、僕のライフはゼロよぉ!
ユ「じゃあ、しんじゃえば?」ニコニコ
チーーン
ユ「感想おまちしてまーす」


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素材集め、そして二人の少女

文字打つのめんどくさいなぁ
ユ「それくらい10分でやりなよ、駄作者さん。まぁでも、駄作者さんだからしょうがないよね」
グハァッ………相も変わらずユウさんひどくないかな?一応作者だよ?僕
ユ「いや、別に」
チーーン
ユ「では、本編第5話、どうぞ」


七十四層での死闘のあと迷宮区を抜けるとき、運悪く<<ゴブリンロード>>と鉢合わせしてしまった。こいつの持っている武器は毎回違うので対処の方法も変わってくるのだが、今回の<<ゴブリンロード>>が持っているのはダガー。一発の威力はそう大したことはないが連続で素早く連撃に適した武器だ。僕はここでミスをおかした。ボス戦のあとで頭がうまく働いていなかったため相手の武器の情報を一つ見逃していたのだ。ダガーの背にギザギザがついていてそのダガーは<<ブレイク・ダガー>>と呼ばれていることに

 

先制攻撃は僕だった。六連撃<<クレセント・スラッシュ>>を放つ、が三発目の左上からの切り下げを<<ゴブリンロード>>はダガーの背で受け止め、そのままひねった。すると甲高い金属音をたて僕の剣が砕けちった

 

「えっ!?」

驚きつつも下がり、メニューを呼び出し新たな剣を装備。そして、<<ヴォーパル・ストライク>>を放ち<<ゴブリンロード>>を葬った

 

「ちぇっ……」

<<ブレイク・ダガー>>の特殊能力を忘れていた自分に舌打ちをした。<<ブレイク・ダガー>>は一定値まで耐久値が下がった武器を一割の確率で破壊する能力がある。先程のボス戦で耐久値が減っていたようだ

 

「はぁ……転移クリスタルをケチったのがまずかったのかなぁ……」

今さら後悔しても遅い。新しい武器を調達しなくては

 

「アスナが言ってた武器屋に行ってみよ……」

そういってユウは転移をした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナから以前聞いていた四十八層主住区<<リンダース>>にある鍛冶屋、<<リズベット武具店>>。その扉をくぐると「いらっしゃいませ!」という元気な声が聞こえた。本当に武器屋かなぁ?と思えるほど童顔。ピンクの髪にダークブルーの大きめな瞳、小作りな鼻と口……もう一度思う。本当に武器屋かなぁ?

 

「あの……」

 

「ん?」

 

「キリトですか?」

 

「そんなに似てます?キリトと」

 

「何となく……顔が見えなかったので……ごめんなさいっ」

 

「いや……いいですよ。よく間違われるしさ。………どうせ僕なんて、キリトの二番煎じですしね…」

 

「ご、ごめんなさい!?だから落ち込まないで?!」

 

「別にいいですよ…………グスッ」

黒い装備に盾無しの片手剣……よく<<黒の剣士>>キリトと間違えて決闘を挑まれるしなぁ……いっそ、装備変えようかなぁ………

 

「あー、えっと、武器をお探しでしたか?」

 

無かったことにしたね……まあ、いいけど

 

「まぁ、はい。片手剣を」

 

「片手剣はこちらの棚ですね」

 

既成武器の見本が陳列されているケースを示された

 

「オーダーメイドをお願いしたいんですけど」

 

「オーダーメイドになりますと多少お高くなってしまうんですけど……」

 

「予算とかは気にしなくていいので、今作れる最高の剣を作って欲しいんだよ」

仮にも攻略組だからな

 

「……ぷっ……あははは」

とリズベットはいきなり笑い出した

 

「え、えっと?」

 

「ごめんなさい。あまりにもセリフがキリトと全く同じで」

 

「キリトとって……それより武器をお願いします。リズベットさん」

 

「あたしはリズでいいよ」

 

「わかりましたリズさん」

 

「……固いなあ」

 

「癖なんですよ。気にしないでください」

 

苦笑混じりに言う

 

「わかりました。あたしは軽くいきますんで。友達の友達は友達ってね」

 

「これからもよろしくお願いします、リズさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どんなのがいいの?」

 

「スピードタイプの片手剣ですかね」

 

「ふーん……あんたぐらいのレベルのはないわ……素材取りしないと」

 

「えっと、言われれば取りにいきますよ?」

僕の剣だ。妥協はしたくない

 

「……よし、じゃあ行きましょうか」

 

「へ?リズさん。どこへ?」

予想外の答えに唖然とする僕。一緒に行くって言ってるみたいだけど……

 

「素材取りよ。素材取り。一緒に行くわよ」

……やっぱり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十ニ層、ここは、洞窟が多い階層。トラップが多少多いが、サブダンジョンが多く中層プレイヤーに人気の場所である

 

「リズさん、レベルはどれくらいですか?」

 

「五十五ってところかな」

 

「……大丈夫なんですか?」

 

階の数字が適正レベルであるが、デスゲームと化したアインクラッドでは、安全マージンは階の数字+10が常識である。つまりこの場合の適正レベルは六十二。五十五では足りないのだ

 

「ユウが守ってくれるんでしょ」

ウインクをしながら言った……悪女かな?

 

「今、失礼なこと考えたでしょ」

 

「イイエ、ソンナコトハゴザイマセンヨ」

 

「片言になってるよ……」僕は笑って誤魔化す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五十二層のゲートを通った僕たちは、とりあえず金属素材採集のクエストフラグを立てに行った

 

「ここに来るのも久しぶりだなぁ……」

 

「来たことあるんだ」

 

「一応攻略組だからね」

 

「へー。キリトとアスナは元気ですか?」

 

「元気だよ。二人ともうぶだからね……ふふっ」

 

おっとにやけが止まらない

 

「むっ……」

リズが少しむっとした顔をしている

 

「もしかして、リズもキリトのことが好きなの?」

 

「うん……」

顔を真っ赤にしてうつむいたよ。素直に認めちゃったし

 

「アスナとキリトはもうすぐゴールインすると思うけど頑張って!」

 

「当たり前。略奪愛なんてのもそそるし」

 

……完璧悪女だ。ふふふとか笑ってるし……………こわい

 

「ごほん。日が暮れる前に行こうか。フラグ立てに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、何でここにいるの?シリカ。」

僕の前には肩に小さな竜ピナをのせたダガー使いのシリカがいる

 

「それはこっちのセリフですよ、ユウさん」

 

「僕は金属素材目当てだね。剣が折れたんだよ」

 

「それは大変でしたね……隣にいるのは誰ですか?もしかして……コレですか?」

 

小指を立てるシリカ

 

「違うよ。シリカのライバルだよ」

 

「ちょ、ちょっとユウ!」

何も聞こえませんっと

 

「ふーん……まあ、よろしくね。私はダガー使いでビーストテイマーのシリカ。でこの子はピナ」

きゅーとピナが鳴く

 

「えっと、鍛冶屋でメイス使いのリズベットです。はじめまして」

 

「じゃあ、シリカ僕たちは行くから」

その場を去ろうとするとシリカに腕を掴まれた

 

「私も行きます」

 

「……わかったよ」

両手に花ではない。キリトに惚れている女子二人を引き連れ僕は迷宮区に向けて歩みを進めた

 




ユ「ホント、もうちょっとましな文章作りなよ、駄作者」
グハァッ…………、、、やっ、やめっ、ユウさん?その剣の振り上げた手はなんでしょうか?
ユ「駄作者さんなんて、しんじゃえ!」
ぎゃぁーーー!チーーン
ユ「感想よろしくねー」


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エスペランサ・グラーチス

遅くなり、すいません
ユ「なにしてたのかな?」
友達と自転車で隣町までショッピングにいっておりました
ユ「うん、有罪だね。《エンドリボルバー》」
ぎゃああぁぁあぁ!?

チーーン


ユ「では、本編どうぞ」


迷宮区に入るといきなりモンスターたちの熱烈な歓迎を受けた。大きなコウモリは<<キラーバット>>。素早さ以外の能力は低いが群れる上に吸血によるHP回復とかなりやっかいなモンスターだ。飛行タイプのためリズベットのメイスはあまり効果を発揮しないため自然と僕とシリカが頑張ることになる

 

「せやぁっ!」

 

「やあっ!」

 

僕とシリカの気合いが洞窟に響き渡る。僕のレベルや、武器の威力によりソードスキルに頼らずとも僕は倒せる。シリカは発動スピードが速く剣のスピードも速いダガー系三連続剣技<<ソニック・ティアー>>を連発し、一匹ずつしとめている。時折ピナが泡をはき噛み付こうとした<<キラーバット>>をひるませる。そこにリズベットがメイスを振り下ろし、しとめている

 

程なくして<<キラーバット>>の群れは全滅した。軽くハイタッチを交わす。その後もモンスターと出会うが何の問題もなく倒す

 

「えっと、この先みたいですよ」

 

「……簡単すぎないかな?このレベルなら金属素材は山ほど手に入るよ?」

 

「何でもクイズ形式みたいですよ。レベルが高すぎて誰も答えられなかったみたいです」

 

「ふうん……まあ、行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入るとかなり広かった。そしてその部屋の奥には人間の頭、獅子の体。ギリシア神話に登場し、古代エジプトでは支配者の象徴とされた伝説上の生き物、その名は……

 

「スフィンクス……」

 

「汝、我がなぞ掛けに挑戦するのか?」

 

「当たり前だよ。そのために来たんだからね」

 

「では、第一問だ」

 

「あるものは恐怖し、あるものは自ら得ようとする。だが皆に平等にすぐに訪れる。さてこれはなんだ?」

 

「……"死"かな?」

とシリカは顔色を青くしてつぶやいた

 

「すぐ来たら嫌だよ」

とリズベット

 

「答えは"未来"だね」

 

「……ふむ、正解だ」

 

「そっか、確かに"未来"ならすぐ来るもんね」

 

「では、次の問いだ」

 

「最も欲深い生物はなんだと思う?」

 

「「「人間」」」

 

だってね、人は下らないことで争ったり奪いあったりする。だが……

 

「では、次の問いだ」

 

「汝にとって正義とはなんだ?」

 

「決まってるよ。自分が正しいと信じることを貫くことだね」

 

「それが例え犯罪だとしてもか?」

 

「悪いことだけど事情があったとしたら、百パーセント悪だと言えるのかな?逆に百パーセント善だという行動があるのかな?自分が正しいと信じれば、それは自分にとっての正義になるんだよ。正義っていうのは、個人の考えによって簡単に作れる曖昧なものなんだ」

 

「ふむ、合格だ。先に進むといい」

スフィンクスは脇に退くとそこに座り込んだ

 

「じゃあ、行こう。シリカ、リズ」

 

「うん」

 

「よし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スフィンクスの部屋の奥には階段があり、それを登りきると、祭壇がありその上に真っ黒な金属素材があった

「これが……」

 

「スピード系最高級のインゴット……」

 

そのインゴットは全体に鈍い光沢があり重量感を示している

 

「じゃあ、帰ろう」

と僕たちは踵を返しその場を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、作るね」

そのインゴットを炉で熱し何度も叩く。規定の回数叩くだけだがその表情は真剣だ。しばらくするとそのインゴットは光を放ち姿を剣へと変えた

 

刃の色は漆黒。全てを吸い込んでしまいそうなほど深い黒。とても美しい剣だった

 

リズはその剣を両手で持ち、指を伸ばしてクリックした

 

「えーと、名前は<<エスペランサ・グラーチス>>、意味はポルトガル語で、《自由の希望》ね。あたしが初耳ってことは、今のところ情報屋名鑑に載ってない剣だと思うわ……どうぞ試してみて」

 

「うん……」

二三振ってみる

 

「振りやすくて、ほどよい軽さだね……いい剣だよ。」

自由を名に含む剣だった。この世界に来て両親からの束縛から解放され、自由を手に入れたその自由を象徴しているような気がした

 

「ユウさん」

その時、シリカが話しかけてきた

 

「ユウさんがさっき使っていた剣もこの剣も同じぐらいの性能だと思うんですけど、何で二本もいるんですか?」

 

「それは僕が<<二刀流>>持ちだからだよ」

 

「そ、それって!?」

 

「うん、ユニークスキルだよ」

あ、目が点になってる

 

「キリトと同じね」

キリトのことも知ってたんだね

 

「キ、キリトさんもですか!?」

シリカ……弄るネタをありがとう

 

「っと」

なんて考えていると視界の端が点滅しているのに気が付いた。どうやらメールが来たようだ

 

「ごめん……ちょっと用事ができたよ」

なんだか嫌な予感がする

 

「何かあったんですか?」

硬直から解放されたシリカが聞いてきた

 

「ごめん……一刻の猶予もないんだ」

僕は転移クリスタルを取り出しながら言った

 

「じゃあ、また……転移<<ラフ・タウン>>!」

と俺は五十五層の主住区に転移した。嫌な予感を肌で感じながら

 

ちなみにさっきのメールはアスナからで「キリト君が隊の訓練で五十五層に行くみたいなの。チームメンバーにクラディールがいるの。私は副隊長だから行けないし……何か嫌な予感がするから急いで来てくれないかな」

と書いてあった

 




ど、どうでしたかね。
ユ「バーカバーカ」
ひ、ひどくないかな?やっぱり僕には当たりきついよね
ユ「いいんじゃない?所詮作者だし」
…………か、感想お願い致します


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狂気

ユ「なんで、こんな真夜中に?」
い、いえ、じかんがあっ
ユ「これで罪滅ぼしになったとか思ってないよね。ね?」
すいません思ってました。
ユ「しーちゃん、この駄作者殺しちゃっていいよ?」
し「え、いいのかな。まぁでも、ユウがいうならいいんだよね」
え、あの、しーちゃんさん?そのデザートイーグルはどこから?
し「さあね。まあ、バイバイ。さ・く・しゃ・さん♪」
ババババババババ

チーーン


五十五層の主住区<<フラナム・タウン>>に転移した。そこにはアスナが座っていた

 

 

 

「ユウ君……お願い。嫌な予感がするの」

 

 

 

「僕もだよ。じゃあ行ってくるね。アスナも一応準備しといて」

 

といいつつ索敵スキルの上位派生追跡スキルを使いキリトたちを追って全力で走りだした

 

 

 

植物の少ない乾いた荒野を僕は全力で走る。すると<<ファイア・リザード>>が現れた。名前の通り炎を使うトカゲのようなモンスターで、攻撃を受けると火傷のペナルティを負うやっかいなモンスターだ。それが三匹

 

 

 

「くうっ……邪魔だよっ、どいてっ!!」

 

かわすのは不可能と判断し、すぐに右手の剣で<<ヴォーパル・ストライク>>を放ち一匹倒す。ソードスキルなしでも倒せるが時間がない。ニ匹目の突進攻撃を硬直がとけた右手の剣で、その勢いのまま突き刺す。続く三匹目の爪による切り裂きは、右手の剣でニ匹目を突いていた関係で腕を伸ばし切っており弾くことができない。やむおえず、体をひねってかわそうとするがかわし切れず左手を引っ掻かれた。火傷によって与えられる鈍い痛みを堪えつつ引き戻した右手の剣で再び<<ヴォーパル・ストライク>>を放ち倒す。火傷はしばらくすれば治るが今は待ってられない。そのまま走りだす

 

 

 

その後も、運が悪いのか数多くのモンスターとエンカウントしてしまった

 

 

 

「時間をかなり食っちゃったなぁ……」

 

 

 

その時後ろからアスナが凄い勢いで走ってきた

 

 

 

「ユウ君!!」

 

 

 

「アスナ、どうして……」

 

アスナに並走しつつ俺は尋ねる

 

 

 

「ゴドフリーさんが……キリト君と一緒のパーティーだった人の反応が消えたの!だから……」

 

なるほどね。聞けばアスナはずっとマップをモニターしていたらしい。反応が消失したということは

 

 

 

「クラディールかな……」

 

野生のモンスターか、犯罪者の仕業かもと思うかもしれないがこんな最前線でもないようなところでキリトや血盟騎士団員三人が遅れをとるとは思えない。クラディールはキリトに恨みを持ってるし、一番可能性が高いだろうしね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕とアスナが到着したときはキリトの体に鈍い色の剣が振り下ろされたところだった。キリトはその剣の刃を握り必死であらがっているが、その刃は無情にもしっかりと着実にキリトの体に迫っている。このままでは間に合わない。アスナは既に全力であろう。ならば……アスナより速い僕が何とかする。何とかしてみせる!

 

 

 

「やぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

僕は次の一歩のときおもいっきり地面を蹴った。その結果……ソードアート・オンラインでおそらく最速の僕の全力の走り。音すらも振り切った気がした。そして、剣を出す暇がなかった僕はそのまま、クラディールの剣とキリトの体の間に左手を滑り込ませることに成功した

 

 

 

「なっ、なんだぁ」

 

クラディールは驚きの声を上げるが、僕は左手に刺さった剣ごとクラディールの体を吹き飛ばした。そして、少し遅れて到着したアスナがさらに空高くクラディールを吹き飛ばした

 

 

 

「……間に合った……間に合ったよ……神様……間に合った……」

 

そう言ってアスナは崩れおちるようにひざまずいてキリトに尋ねた

 

 

 

「生きてる……生きてるよねキリト君……」

 

 

 

「……ああ……生きてるよ……」

 

 

 

「ギリギリだね……危ないよ」

 

と僕はキリトの口にハイポーションを突っ込む

 

 

 

「……ユウ君……ここは……私にやらせて……」

 

 

 

「ごめん、できないね。親友が殺されかけたんだよ?我慢できるわけないじゃないか」

 

 

 

「……わかった……。キリト君、待っててね。すぐ終わらせるから」

 

アスナはすっくと立ち上がると、腰から細剣を抜きクラディールの方へ歩き出す。僕もアスナの横に並び歩きだす。もちろん刺された左手ではなく右手に剣をしっかり握って

 

 

 

「あ、アスナ様……ど、どうしてここに……。い、いや、これは、訓練、そう、訓練でちょっと事故が……」

 

 

 

言い切れなかった。いや、最後まで言わせなかった。もはや言い訳もできない状況にまだ、言い訳を言う見苦しさに我慢できなかった。剣閃は二本。僕と全く同じタイミングでアスナも剣を振ったのだ

 

 

 

「ぶぁっ!!」

 

クラディールが当たった場所、口を片手で押さえて仰け反る。奇跡的に当たった場所も一緒だ

 

 

 

「このアマどもぉ……調子に乗りやがって……。ケッ、ちょうどいいや、どうせオメエラもすぐに殺ってやろうと……」

 

 

 

そのクラディールの台詞も中断を余儀なくされた。アスナと僕が剣を構えるや攻撃を開始したからだ。クラディールも必死に応戦するが、アインクラッド最強クラス二人による連携攻撃だ。敵に対して一人づつ攻撃するのがセオリーではあるが、アスナと僕の剣は一人がニ本の剣を扱ってるかのようにクラディールを切り裂いた

 

 

 

「わ、解った!!わかったよ!!俺が悪かった!!」

 

とHPが黄色から赤い危険域に突入するとクラディールは剣を投げ出しこう喚いた

 

 

 

「も、もうギルドは辞める!あんたらの前にも二度と現われねぇよ!!だから……」

 

 

 

「それで済むと思っているのかい?二人の命を奪い僕の親友に殺すと言ったお前を俺は許すことができないんだけど?」

 

アスナも同じことを思ったようで右腕の剣が振り上げられクラディールを殺そうとした

 

「ひぃぃぃっ!死に、死にたくねえーーーっ!!」

アスナの剣の切っ先が停まった。アスナの体がぶるぶると激しく震えている。おそらくアスナはこの世界でプレイヤーを殺していない。それは幸せなことだが、反面致命的な弱点でもある。まずいと思ったときは遅かった。怒りのあまり停止していた思考を取り戻した時にはすでに全てが終わっていた。はっ、と気付くとアスナの手からレイピアが弾かれ、キリトが右手でアスナを庇っていた。そしてクラディールの第三撃が放たれようとした

 

「いい加減にしろぉぉぉ!!」

 

動いたのは僕。クラディールが放った大剣を左手で受け、痛みがはしるのにも構わず、右手の剣を突き出した。その一撃はクラディールのHPの残り全てをくらい尽くした

 

「この……人殺し野郎が」

くくっ、とわらい。クラディールは無数のポリゴンとなって砕け散った

 

人殺しでも構わないさ。殺したものは背負わないといけない……だけど、大切な人を守れるなら……僕は……

 

「……ごめんね……わたしの……わたしのせいだね……」

悲痛な表情で、震える声をアスナは絞りだしていた。そうか……似てるんだ……しーちゃんとアスナは……何でも自分一人で抱え込んだりする性格とかが。気がつくと僕はアスナの頬をたたいていた

 

「アスナの馬鹿……」

アスナは頬に手をやりながらビクッてなった。キリトは成り行きを見守ってくれている

 

「アスナのせいじゃない。誰のせいでもないよ。アスナ、きみのために、僕らは動いたんじゃないよ。自惚れないで。僕らはね……自分のために戦ってるんだよ。理由はいろいろある。キリトは知らないけど僕は親友を守るためっていう理由がな。だからそう自分を責ないで。アスナ」

 

僕はアスナの頬を撫でると「殴って悪かったよ。ごめんなさい」

 

「ううん、ありがとう……」

 

「さて……僕は消えるな。後は二人で……話つけてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに立ち去ろうと歩いていたが、しばらくしてから振り返るとキリトとアスナがキスをしていたね。いきなりで僕は驚いて剣を落としてしまって、落ちた剣が音をたて、弾かれるようにキリトとアスナが離れて、その二人の顔が真っ赤だったのはいい思い出だね

 

さて……とりあえずあの二人に報告かな?ついでに剣も研いでもらおう。そんなことを考えながら二人のもとから本当に去って行くのだった。



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報告

ユ「おぉ、今日は早かったね」
昨日ユウさんにおこられましたから
ユ「頑張ったね、えらいえらい(棒)」

なんか悲しいな…………


本編第八話、どうぞ


キリト、アスナとわかれた僕はシリカとリズベットのもとに行った。あらかじめ、メッセージを送っておいたので二人は四十八層主住区<<リンダース>>にある鍛冶屋、<<リズベット武具店>>で待っていた

 

「んで?何があったの?」

 

僕は今回の事件について簡単に説明した

 

「なるほど……クラディールとかいうやつ、いやな奴ね」

 

「大変だったんですね」

 

「感想は何でもいいんだけどね。リズ、研いでくれないかな?」

 

「了解。百コルね」

 

僕が百コル銀貨を渡すと仕事場にリズベットは引っ込んだ

 

「ユウさん」

 

「ん?」

 

「キリトさんとアスナさんって……」

 

「今頃結婚してんじゃないかな?」

 

「ぶっ」

乙女にあるまじき音をたて吹き出すシリカ

 

「ま、あいつらはお似合いだったからね。シリカとリズには悪いけど応援してたからね」

 

「うう〜……」

涙目。小動物みたいで何か癒される。こういう人を見ていると僕はよく自己嫌悪にかられる。僕みたいな殺人者が普通の生活を送っていてもいいのかと。殺したことは後悔していない。殺さなければ自分ないしは大切な人が殺されていた。罪深いことだけどね

 

「ユウさん……顔が怖いです……」

 

おっと顔に出ていたかな

 

「終わったよ」

タイミングよくリズが出てくる

 

「何を話してたの?」

 

「キリトさんとアスナさんが結婚するって」

爆弾発言をどうもありがとう。たぶんが抜けてるし

 

「ななななななななななな」

 

リズ……壊れたの?"な"しか言えなくなって……あとシリカをブンブン前後に振ってあげないで……何か口から出そうになってるよ?

 

その後、また説明するはめになり自分のプレイヤーホームに帰ったのは明け方だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、キリトからメールが届いた。リズの鍛冶屋に来て欲しいんだと……本当に結婚したみたいだな。たぶん

 

そこに着くとアスナとリズは談笑しており、キリトはその横で苦笑いをしている。僕の姿を見るとキリトが駆け寄ってきた

 

「よう、ユウ。こんな朝早くすまないな」

 

「どうせ結婚報告だよね?行かないわけにはいかないじゃないか」

 

「はっ……」

凄く驚いている……図星だね

 

「な、何で知ってるんだ」

 

「勘だよ?」

 

「……やられた」

かまかけたら素直に吐いたね……。そういう会話をしているとアスナがこっちに来た

 

「ユウ君、こんにちは」

 

「やぁ、アスナ。結婚おめでとう」

 

「えっ……」

顔を真っ赤にして固まるアスナ。デジャブを感じる

 

「アスナ……もうばれてる」

 

「あはは……やっぱりユウ君は出し抜けないな。えっと写真とろ?みんなで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面変わってリズベット鍛冶屋の中。写真を撮ったあと、話をしている

 

「アスナ……」

 

「ん、何?」

 

「実はな……」

僕はアスナにしか聞こえないようにシリカとリズのことを耳打ちした

 

「……というわけでライバル多いね」

 

「大丈夫だよ……たぶん」

 

「何が大丈夫だって?」

いつの間にかキリトが後ろに回っていた

 

「むう……」

アスナがキリトにじと目をしている

 

「なっ、何だよ」

焦るキリト……鈍感野郎には一生わからないだろうな

 

「そういえばユウ。クラディールに女の子と間違えられてたな」

 

「そんなに僕って女の子っぽいかな?」

 

「「「うん」」」

 

「そうなのかぁ………。なんか泣けてきた」

 

「だ、大丈夫だって」

 

「そういえばキリトとユウの出会いってどういうのだったんですか?」

 

「一層の最初の森だったよね?」

 

「そうだな。俺がMPKにひっかかって死にかけたところでこいつが来てな。助けてもらったんだよ」

 

「あの時から、キリトとの腐れ縁が始まったんだよ」

 

「「ふーん……MPKね」」

 

……二人とも顔が怖いよ?

 

「「そのプレイヤーの名前は?」」

 

……今は死せるコペルさん。ご冥福を祈ります。魔王二人に追いかけられても頑張ってください

 

「もう死んでるからね」

 

「そう……残念」

 

殺る気でしたよね?

 

「違う。十分の九殺し」

 

「心を読まないでください。あと十分の九殺しってほぼ死んでるよね!?」

 

「まあ、いいや……で、新居に二十ニ層のログハウスを買ったんだけど……今から行かない?」

 

「僕はパス。また今度ね。じゃあね」

 

僕はそう言って店を出た




ユ「感想、お願いします」
僕のセリフとらないで?!


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さまよいの少女

ユ「お、続けて投稿かな?」
はい、午後から少し用事があるので………
ユ「なんかあったっけ?」
いや、インテグラルファクターを………
ユ「それ有罪だね」
し「それ有罪だわ」
チュドーン
 
チーーン


それより何日か後……え?何やってたかって?レベル上げだよ?描写は書いてもつまらないと思うよ?しいて言うなら、<<デス・ピエロ>>に囲まれてました。攻撃と敏捷は高いけど防御とHPが低いモンスターをずっとほふってました

 

というわけで今は二十ニ層のキリトとアスナの家に向かってます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

到着するとちょうどキリトがアスナを肩車したところだった

 

「……お邪魔しました」

 

「ち、ちょっと」

言葉をかけてきたがしらない。あいつらといると砂糖を口からはきかねないよ

 

「ユ、ユウ君」

キリトから降りたらしいアスナが肩を掴んできた

 

「ナンデス?」

 

「何で片言なのかな?それより今から一緒に森に行かない?」

 

「僕は馬に蹴られる趣味はないんだけど……」

 

「いやー。今から行くところでな、幽霊を見たって話があってさ。確かめに行くんだよ。ユウも行かないか?」

 

「へぇ……興味深いね」

この世界はプログラムでできている。よって幽霊なんて非科学的なものは出る余地はないんだけど……まあ見間違いってこともあるけど

 

「よし、行こうか」

 

「じゃあ、出発!」

アスナはまたキリトの上に乗っていた。キリトは苦笑している

 

「やめて。こっちは恥ずかしいし、砂糖を吐きそうになるから」

と言うといかにもしぶしぶといったかんじでアスナは降りてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十数分歩いたあとアスナがこんなことを言い出した

「大きい木だねえー。ねえ、この木、のぼれるのかなあ?」

 

「うーん……どうだろ」

 

「システム的には不可能じゃない気がするけどなぁ……。試してみる?」

 

「ううん、それはまた今度の遊びテーマにしよっか。……登ると言えばさあ」

 

「外周にあちこち、支柱みたいになって上層まで続いてるとこがあるじゃない。あれ……登ったらどうなるんだろうね」

 

「あ、俺やったことあるよ」

 

「ええー!?」

体を傾けキリトの顔を覗きこむっていうか、ピンク色の空気が厚くて会話に参加できない……

 

「なんで誘ってくれなかったのよ」

 

「まだそんなに仲良くなってなかった頃だってば」

 

「なによ、キリト君が避けてたんじゃない」

 

「ストップ!これ以上ピンク色の空気を出さないで!息苦しくてかなわんから!」

あ、顔真っ赤

 

「そういえばキリト。あの時は、僕、見てたよ?」

 

「えっ?」

 

「手足をバタバタさせながら落ちていくのは傑作だったけど……命は大切にしようね……?」

 

「はい……」

 

そんな会話を交わしていると森はどんどん深くなっていった

 

「ね、その……うわさの場所って」

 

「ええと……そろそろだよ。もうあと何分かで着く」

 

「さっきの話。具体的にはどんななの?」

 

「ええと、一週間くらい前、木工職人プレイヤーがこのへんに丸太を拾いに来たんだそうだ。この森で採取できる木材はけっこう質がいいらしくて、夢中で集めているうちに暗くなっちゃって……慌てて帰ろうと歩き始めたところで、ちょっと離れた木の陰に……ちらりと、白いものが」

 

アスナの顔色が……でも僕はキリトに先を促した

 

「モンスターかと思って慌てたけど、どうやらそうじゃない。人間、小さい女の子に見えたって言うんだな。長い、黒い髪に、白い服。ゆっくり、木立の向こうを歩いていく。モンスターでなきゃプレイヤーだ、そう思って視線を合わせたら……カーソルが、出ない」

 

「ひっ……」

 

「へぇ……」

面白いじゃないか

 

「そんな訳はない。そう思いながら、よしゃあいいのに近づいた。そのうえ声をかけた。そしたら女の子がぴたりと立ち止まって……こっちをゆっくり振り向こうと……」

 

「も、も、もう、や、やふっ……」

最後のは僕がアスナの口を押さえたから出た音だ。続きが聞きたいからね

 

「そこでその男は気がついた。女の子の、白い服が月明かりに照らされて、その向こう側の木が透けて見える」

 

「ーー!!」

叫ぼうとしたが僕の押さえられてて声が出せない……何か犯罪っぽいね。言っとくけど同意の上だよ。キリトと

 

「女の子が完全に振り向いたら終わりだ、そう思って男はそりゃあ走ったそうだ。ようやく遠くに村の明かりが見えてきて、ここまでくれば大丈夫、と立ち止まって……ひょいっと後ろを振り返ったら……」

 

「ーーーっ!?」

 

「誰もいなかったとさ。めでたしめでたし」

ここでアスナを解放してやる。すると今まで叫べなかった分とばかりに拳を振り上げ……そこで静止した

 

「き……キリト君、ゆ……ユウ君、あそこ」

僕とキリトの視線がアスナの見ているものを捉える

 

「う、嘘だろおい……」

 

「へぇ……」

さっきからこれしか言ってない気がするけど……とりあえず女の子をじっとみるがカーソルがでない。というわけで近づこうとしたその時、ふらりと少女の体が地面に崩れ落ちた。どさり、という音が耳に届いてくる。おう……質量もあるんだね、と感心したがそれどころではないと気付いた

 

「あれは……」

目を細めるキリト

 

「幽霊なんかじゃないぞ!!」

と叫んで走り出したので僕もあとに続く

 

「ちょ、ちょっとキリト君、ユウ君!」

幽霊が嫌いなアスナは出遅れたが「もう!!」と言って着いてきた

 

倒れている少女をキリトが抱き起こしたので僕は少女を観察し始めた

 

「だ、大丈夫そうなの?」

 

「「うーん……」」

僕とキリトは首を傾げる。SAO内では人間の生理的活動はほとんど省略されているため呼吸を感じたり、バイタルをみたりはできない

 

「でもまあ、消滅してない……ってことは生きてる、ってことだよな。しかしこれは……相当妙だぞ……」

 

「妙って?」

 

アスナは気付いてないみたいなので僕から言った

「カーソルがでないんだよ」

 

「あ……」

 

……まず確認しようよ

 

「何かの、バグ、かな?」

 

「さもなくば、本当に幽霊とかかな?」

 

「ひっ……」

かなり少女に顔を近付けていたアスナは僕の言葉を受けて後ろに飛び退いた。そして尻餅をついた

 

「冗談だよ。そんなのあり得ないから安心して」

 

「うう〜……」

涙目のアスナ……癒されるよ

 

「とりあえず、放ってはおけないわ。目を覚ませばいろいろ判ると思う。うちまで連れて帰ろう。……もちろん、ユウ君もね」

 

立ち上がってアスナは建設的なことを言った。そして、僕まで巻き込みやがった……。さて明日までに何回砂糖を吐くことになるのやらね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスナのベッドに少女を横にし、毛布をかけておいてキリトとアスナは向かいのベッドに。僕は椅子を持ってきてそこに座った

 

「まず一つだけ確かなのは、こうしてウチまで移動させられたからにはNPCじゃないよな」

 

「そう……だね」

 

NPCは存在座標を一定範囲内に固定されているためプレイヤーの意志で移動させることはできないのだ

 

「それに、何らかのクエストの開始イベントでもない。それなら、接触した時点でクエストログ窓が更新されるはずだしな。……てことは、この子はプレイヤーで、あそこで道に迷っていた……というのが一番あり得ると思う」

 

「まだ幽霊って可能性も……うん……わかったからその剣を下ろして、アスナ」

幽霊説を唱えた瞬間アスナが剣を出し首もとにあててきた。……正直剣が見えなかったよ……

 

「続けるぞ?クリスタルを持っていない、あるいは転移の方法を知らないとしたら、ログインしてから今までずっとフィールドに出ないで、<<はじまりの街>>にいたと思うんだ。なんでこんな所まで来たのかは判らないけど、はじまりの街にならこの子のことを知ってるプレイヤーが……ひょっとしたら親とか、保護者がいるんじゃないかな」

 

「うん。わたしもそう思う。こんな小さい子が一人でログインするなんて考えられないもん。家族が誰か一緒に来てるはず……無事だと、いいけど」

 

僕は、そうは思わない。一番可能性があるのはこの子の親がモンスターと相討ちになり死んでしまった場合。二十ニ層は比較的安全とはいえ森にはモンスターがでる。二つ目は親とここまで来てはぐれた場合。この二つ目はまずない。最初に目撃されたのはかなり前だ。それなのに探しに来ているプレイヤーと出会わなかったのは不自然だ。とここまで考えて不思議に思った。今は確証が持てないが少女がプログラムという可能性だ。それならば全て説明がつくがそれはあまりにも突拍子もない考えだろう

 

「ね、意識、戻るよね」

 

「ああ。まだ消えてないってことは、ナーヴギアとの間に信号のやり取りはあるんだ。睡眠状態に近いと思う。だから、きっとそのうち、目を覚ます……はずだよ」

キリトの言葉には願望の色があった

 

「十歳はいってないよな……。八歳くらいかな」

 

「そのくらいだね……。わたしが見た中ではダントツで最年少プレイヤーだよ」

 

「そうだね。前にビーストテイマーの女の子と知り合ったけど、それでも十三歳くらいだったからなぁ」

 

「ふうん、そんな可愛いお友達がいたんだ」

 

「小動物みたいで可愛いよ?アスナ、聞いてよキリトのやつ……」

 

「勘違いされるから言うな!たまにメールのやり取りを……それだけで、何もないぞ!」

 

「どうだか。キリト君鈍いから」

顔を逸らすアスナ。苦笑いの僕

 

そうして時間は過ぎていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから何種類かの新聞?っぽいものに目を通したが、少女を探している人は見つからなかった

 

「んじゃ、僕は帰るな」

といい立ち上がろうとしたが

 

「泊まっていけよ」

 

「泊まっていってね」

 

……アスナとキリトに呼び止められた

 

「いや……寝るところないし」

ベッドは二つ。一つは少女が寝ているアスナのベッド。もう一つはキリトのベッド。どこに寝ろと?

 

「俺のベッドで寝ればいいだろが」

 

「僕……そんな趣味はないよ?」

 

「ええっ!?キリト君、実は……」

 

「なわけないだろ!!俺は椅子で寝るから俺のベッドを使えってことだよ」

 

「冗談だよ。いいよ、僕が椅子で寝るから。幸いこの世界じゃ、椅子で寝ても体が痛くならないからね」

 

「わかった……じゃあ寝ようか」

居間の明かりを消しキリトとアスナは同じベッドに入っていった……えっとブラックコーヒーないかな?目をつむってしばらくして人が動く気配がして目をあけるとアスナが少女を抱きしめ「おやすみ。明日は、目が覚めるといいね……」と言っていた。俺は微笑むと本格的に眠りに落ちた




か、感想お願いします
ユ「さて、終わったね。行こうね」
い、嫌だー死にたくないー



ギャー,ヤーメーテー




ウワアァァァ


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少女の目覚め

ユ「最近、僕のキャラ崩れてきてるよね」
な、なんのコとでしょうか?
ユ「な、ん、で、僕の見た目女の子設定な訳?」
それは、あなたの見た目がしーちゃんさんににてるからですよ
ユ「え、そうなの?」

うん


ユ「えっと……、と、とりあえず本編どうぞ!」



次の日目が覚めると何やらハミングが聞こえた。不思議に思って目をあけると、少女が目を閉じたまま歌っていた

とりあえず少女に抱きついているアスナを起こそうとしたがどうやらもう起きているようだ。アスナはその顔に驚きの表情を張りつけキリトをたたき起こした

 

「……おはよう。どうかした?」

 

「早く、こっち来て!」

 

「歌ってる……!?」

 

アスナは軽く少女を揺すりながら呼び掛けた

 

「ね、起きて……。目を覚まして」

 

すると少女のまぶたが持ち上がり「あ……う……」と声を出した

 

「……よかった、目が覚めたのね。自分がどうなったか、解る?」

少女は少し考え、首を横に振った

 

「そう……。お名前は?言える?」

 

「……な……まえ……。わた……しの……なまえ……」

 

少女は首を傾げながら

 

「ゆ……い。ゆい。それが……なまえ……」

と名乗った

 

「ユイか。いい名だな……なんだよ」

僕がユイに微笑みながら言うとキリトとアスナが驚いたような顔をした……

 

「ユウ君……意外と子供好き?」

 

好きで悪いかな?小さい子は純粋で可愛いからね……画面の前の人たちの中で、ロリコンとか思った人………こっちおいで?この剣の錆びにもならないように刻んであげるよ

 

「まあ、いいや。わたしはアスナ。この人はキリト。で、あの人はユウよ」

 

「あ……うな。き……と。ゆ……う?」

 

……やった、僕は普通に呼んでもらえた!

 

「ね、ユイちゃん。どうして二十ニ層にいたの?どこかに、お父さんかお母さんはいないの?」

ユイはしばらく黙り込んだあと、首を左右に振った

 

「わかん……ない……。なん……にも、わかんない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユイにミルクを与えると僕たちは部屋の隅に移動すると意見交換を始めた

 

「ね、キリト君。どう思う……?」

 

「記憶は……ないようだな。でも、それより……あの様子だと、精神に、ダメージが……」

 

……あり得ない。症状的には言語障害だろうけど…。言語障害とは言語にかかわる機能の運動性または感覚性の障害により、言語による意思の疎通が妨げられた状態をさす。確かにストレスからの感覚麻痺ってことはあり得るけど、ここはバーチャル世界。そんなことがあり得るわけがないし……。おそらく、データの欠損。それに対し何の訴えもしてこなかったことから考えるに、やっぱりユイは……

 

「どうしたの?ユウ君?」

 

「いや、何でもないよ」

今は言わない方がいいよね。害を与えるようなことも無さそうだし、しばらく様子見ってとこかな……っとさっきまで抱き合っていたキリトとアスナがユイの方に移動し始めたから僕も行くか。この時僕は知らなかった。あんなことになるなんて。今はユイの側によらなければよかったと……(笑

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、ユイちゃん。……ユイって、呼んでいい?」

 

カップから顔を上げて頷く

 

「そうか。じゃあ、ユイも俺のこと、キリトって呼んでくれ」

 

「き……と」

 

「キリト、だよ。き、り、と」

 

「……」

 

「……きいと」

生糸……

 

「ちょっと難しかったかな。何でも、言いやすい呼び方でいいよ」

再びユイは考え始めた。やがてユイは顔をゆっくりあげると

 

「……パパ」

 

次いでアスナを見上げて、言う

 

「あうなは……ママ」

 

アスナは微笑みとともに頷く

 

「ママ!」

 

アスナはユイを抱いたまま涙をながし始めた。ユウは微笑みながらそれを見ていたが次のユイの言葉で凍り付くことになった

 

「ゆうは……ねえ!」

…何ですと。ねえって姉さんのことだよね?すると何かい?僕は女の子でアスナとキリトの……え?同年代の親なんかまっぴらごめんだよ。……いや、現実世界の両親よりはずっとマシだけどさ……だあ!何考えてるんだよ僕は!?……そもそも女の子じゃないし!

 

 

ちなみに5分くらい固まっていると、ユイの止めの一撃が

 

「ダメ……なの……?」

 

……想像して欲しい。純粋な十歳児それも美少女の部類に入る少女の涙目プラス上目遣い。……あなたは断れますか?

 

「いいよ。ユイ、でもせめて、にいにしてほしいかな」

 

「ねえ、じゃ、だめ………なの?」

 

「わかったよ」

 

無理でしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホットミルクを飲み、小さな丸パンを食べると、ユイは再び眠り始めた

 

「わたし……わたし……」

 

「ごめんね、わたし、どうしていいのか判んないよ」

 

「……この子が記憶を取り戻すまで、ずっとここで面倒みたいと思ってるんだろ?気持ちは……解るよ。俺もそうしたい。でもな……ジレンマだよな……。そうしたら当分攻略には戻れないし、そのぶんこの子が解放されるのも遅れる……」

 

「うん……それは、そうだね……」

 

「とりあえず、できることはしよう」

 

……無駄だね。もう僕はユイの正体について確信している

 

「まず、はじまりの街にこの子の親とか兄弟とかがいないか探しにいくんだ。これだけ目立つプレイヤーなら、少なくとも知ってる人間がいると思うし……」

 

「……」

 

「……?どうしたの?」

 

「な、なんでもないよ!!」

 

「どうせ、ユイと別れたくないとか思ってるんでしょ?自分とキリトの子供のように思ってるんだよね。もう既に」

 

アスナは吹き出した

 

「……そうだけど……」

耳まで赤くなって言った

 

「そういえばユウはユイの姉貴だったよな?ってことは……」

 

こんどは僕が吹き出す番だった

 

「同年代の親なんか認めないよ!現実世界の両親よりはずっとマシだけど……」

ゴニョゴニョ言う僕は不意にアスナに引き寄せられ抱きしめられた

 

「何か……急にユウ君がもっと可愛く見えるようになってきた……」

 

アインクラッドで五本の指に入るほどの美人に抱きつかれてるとは嬉しいけど……何か嫌だよ!キリトに目で助けを求めると苦笑いして目を逸らされた。「パパ助けて」というとキリトは頭を抱えてゴロゴロし始めた。曰くとてもかわいかったらしい。まあ当たり前かな……って、あれ?何で自分のこと可愛いなんて思ったのよ………///

 

 

 

 

ついでに言うとアスナはママと呼ぶまで放してくれませんでした。たまに呼んでねとか言ってました……嬉しいのか、甚だ疑問だよ。精神的にキツい1日だった

 




し「ユーウー!」
ユ「し、しーちゃん!ど、どうでしたの?」
し「私とおんなじ見た目だと嫌なのね」
ユ「ど、どこからその……………駄作者かぁ!いや、そんなことはないんだよ?しーちゃん」
痴話喧嘩はよそでやってくれません?
「「駄作者は、だまってて!」」
………はい


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始まりの町と軍

昨日はあげられず、すいませんでした
ユ「何か言い訳は?」
………ないです。
ユ「じゃあ、ギルティだね。しーちゃん、やっちゃっていいよ」
し「わかったわ」
ジャキッ!ズパンッ!!
ギャーーー
チーーン


 

次の日の昼食ごろ、目を覚ましたユイ。辛いもの好きだということを発見した日の午後。僕たちははじまりの街に行くことにした

 

なおユイのメニューの仕様は僕の推測を裏付けるものになったとだけ言っておこう

 

「わあー」

 

ユイが顔を輝かせ、両手を広げて自分の体……より正確に言えば、淡いピンクのセーターを見ていた。すっかり装いを変えたユイは満面の笑みでセーターの生地に頬をこすりつけたりスカートのすそを引っ張ったりしている……うん、可愛いな

 

「さ、じゃあお出かけしようね」

 

「うん。パパ、だっこ」

 

「うん。パパ、おんぶ……冗談だから、頭を壁に打ち付けるのはやめてキリト……」

 

上はユイ、下は僕だ。キリトをパパと呼ぶとキリトが悶えるから面白い。(可愛くて悶えている)キリトはユイの体を横だきに抱えあげた

 

「後で、ねえも」

……勘弁して……

 

「アスナ、ユウ、一応、すぐ武装できるように準備しといてくれ。街からは出ないつもりだけど……あそこは<<軍>>のテリトリーだからな……」

 

「ん……。気を抜かないほうがいいね」

 

「当たり前だよ」

アスナも僕も気を引き締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層<<はじまりの街>>はアインクラッド最大の都市だ。冒険に必要な機能は他のどの街よりも充実しているが、ここにはハイレベルプレイヤーは知りうる限りいない。理由としては<<軍>>の専横や、あの日のことを思い出すからだろう。全てが終わり、そして始まったあの日を……正直僕はその状況を喜んでいた。これで解放された。僕は自由だ、と。確かに自由にはなれた。でも、気付いた。気づいてしまったんだ。それでは逃げているだけだと。向き合わなければ本当には解放されないんだと。教えてくれたのは隣にいる男なのだが……しばらくのその男、キリトを見ていると首を傾げられた。何でもないといいながら誤魔化すために答えのわかっている質問をユイにした

 

「ユイ、見覚えのある建物とか、ある?」

 

「うー……」

とユイは難しい顔でしばらく街並みを眺めていたが、やがて首を振った

 

「わかんない……」

 

「まあ、はじまりの街はおそろしく広いからな」

 

キリトはユイの頭を撫でながら言った。……こうしてみると本当の親子みたいだな

 

「あちこち歩いてればそのうち何か思い出すかもしれないさ。とりあえず、中央広場に行ってみようぜ」

 

「そうだね」

と僕たちは歩きだした

 

「ねえ、キリト君とユウ君」

 

広場を歩いていると唐突にアスナが話しかけてきた

 

「「ん?」」

 

「ここって今何人くらいいるんだっけ?」

 

「ヒッキーさんプラス<<軍>>合わせるとニ千ぐらいじゃないかな?」

 

「ヒッキーさんって……」

苦笑いのアスナ

 

「人影があまりないこと気になってるのか?」

 

「うん」

 

「そう言われると……。マーケットのほうに集まってるのかな?」

 

「じゃあ、行ってみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、広場から大通りに入って市場エリアにさしかかっても木の下に座り込んだ男とNPC商人しか見えなかった。その唯一のプレイヤーにアスナが話し掛けた

 

「あの、すみません」

 

「なんだよ」

 

「あの……この近くで、訊ね人の窓口になってるような場所、ありません?」

 

むっ……アスナを見る目がいやらしいなぁ……

 

「なんだ、あんたよそ者か」

 

「え、ええ。あの……この子の保護者を探してるんですけど……」

 

今はホント、僕の腕の中に移ってまどろんでいるユイを指し示すアスナ。すると銀さんに似た死んだ魚のような目をした男は多少目を丸くした

 

「……迷子かよ。珍しいな。……東七区の川辺リの教会に、ガキのプレイヤーがいっぱい集まって住んでるから、行ってみな」

 

「あ、ありがとう」

 

というわけでとりあえず教会に行ってみることにしたがキリトが街路樹になっている黄色い果実を狙っていたが、俺は首根っこをつかんで引きずった「あ、ああ……うまそうなのに……」……知らないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東七区について川沿いに歩くと道の右手に広がる一際高い尖塔を見つけた。だからそこに向かって歩きだそうとするのだが

 

「ち、ちょっと待って」

 

「ん?どうしたの?」

 

「あ、ううん……。その……もし、あそこでユイちゃんの保護者が見つかったら、ユイちゃんを……置いてくるんだよね……?」

 

「……」

 

ためらうのも無理はない。アスナは本当の子供のように考えていたのだろう

 

「別れたくないのは俺らも一緒さ」

なっ?とばかりにこっちを見てくるので僕は頷く。例え僕の予想通りだとしても、本当の家族のように思っているから……

 

「会えなくなるわけじゃない。ユイが記憶を取り戻したら、きっとまた訪ねてきてくれるさ」

 

「ん……。そうだね」

アスナは小さくうなずくと、ユイに頬をすりよせ歩きだした。僕らもそれに続き歩きだした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー、どなたかいらっしゃいませんかー?」

アスナの声が誰もいない教会の一室に響きわたるが、誰も出てくる様子はない

 

「誰もいないのかな……?」

 

「いや、人がいるよ。右の部屋に三人、左に四人……」

 

「二階にも何人かね」

 

「……索敵スキルって、壁の向こうの人数まで解るの?」

 

「熟練度九百八十からだけどな。便利だからアスナも上げろよ」

 

「いやよ、修行が地味すぎて発狂しちゃうわよ」

 

「不意討ちを防ぐためにすごく役立つんだがな……」

 

「それはわかってるんだけどね。……それはそうと、何で隠れてるのかな……」

 

とアスナは入り口で止めていた足を内部にまで進めた

 

「あの、すみません、人を探してるんですが!」

 

「……<<軍>>の人じゃ、ないんですか?」

右手のドアがわずかに開き、おそるおそるといった感じで言った

 

「違いますよ。上の層から来たんです」

 

やがてドアが開くと黒縁の大きな眼鏡をかけ簡素な濃紺のプレーンドレスを身にまとい小さな短剣を持った女性プレイヤーが姿を現した

 

「ほんとに……軍の徴税隊じゃないんですね……?」

 

アスナは微笑むとうなずいて

 

「ええ、私たちは人を探していて、今日上から来たばかりなんです。軍とは何の関係もないですよ」

 

「上から!?ってことは本物の剣士なのかよ!?」

 

甲高い声とともにわらわらと数人の少年少女たちがでてきた

 

「こら、あんたたち、部屋に隠れてなさいって言ったじゃない」

 

しかし、誰も従わない

 

「なんだよ、剣の一本も持ってないじゃん。ねえあんた、上から来たんだろ?武器くらい持ってないのかよ?」

 

「い、いや、ないことはないけど」

 

キリトはいきなりの言葉で焦っている。その隙に僕は本題に入るとしよう

 

「あの……」

……何て呼べばいいのかわからない……。その考えを読み取ったのか女性は口を開いた

 

「あっ、すみません、名前も言わずに。私はサーシャです」

 

「僕はユウ。こっちのやつがキリト。彼女はアスナだ」

 

「で、この子が、ユイです」

とアスナが割り込んできた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果としてユイの親はわからなかった。僕としては当然だと思っていた。アスナはどこかほっとしたような表情をしていた。話題は、サーシャのことに移り、軍のことに移ろうとした。そしてタイミングよくといったら変になるが数人の子供たちが勢いよく入ってきた

 

「先生!サーシャ先生!大変だ!!」

 

「こら、お客様に失礼じゃないの!」

 

「それどころじゃないよ!!ギン兄ィたちが、軍のやつらに捕まっちゃったよ!!」

 

「場所は!?」

 

「東五区の道具屋裏の空き地。軍が十人くらいで通路をブロックしてる。コッタだけが逃げられたんだ」

 

「わかった、すぐ行くわ。……すみませんが……」

僕らのほうに向き直り軽く頭を下げようとした。が僕はそれを止めると

 

「僕も行くよ」

 

「ですが……」

 

僕はキリトたちに目配せをするとキリトとアスナは大きくうなずいた

 

「私たちにもお手伝いさせてください。少しでも人数が多いほうがいいはずです」

 

「ありがとう、お気持ちに甘えさせていただきます。それじゃ、すみませんけど走ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走ると細い路地を塞ぐ灰緑と黒鉄色のプレイヤーの一団がいた。躊躇せずに走り込んだサーシャをみてにやりと笑った

 

「おっ、保母さんの登場だぜ」

 

「……子供たちを返してください」

 

「人聞きの悪いこと言うなって。すぐに返してやるよ、ちょっと社会常識ってもんを教えてやったらな」

 

「そうそう。市民には納税の義務があるからな」

わははは、と男たちが甲高い笑い声をあげる。

 

「ギン!ケイン!ミナ!!そこにいるの!?」

 

「先生!先生……助けて!」

 

「納税の義務……とか言ったかな?」

今まで見守っていたが我慢できなくなったので僕は口を出した

 

「ん?おうそうだよ。市民の義務だよなぁ」

 

「じゃあ、その金はちゃんと僕たち市民のために使われてるんだよね?」

 

「も、もちろん。当たり前だろ?ちゃんと攻略のために使ってるに決まってんだろ」

 

「ふーん……じゃあ、市民の権利を使わせてもらおうかな……知る権利に基づいてその使用明細の開示をお願いしようかな」

 

相手は対応を考えている。その隙に僕はキリトとアスナに口をあまり動かさず言った

 

「合図したら跳べ」

 

「「了解」」

 

「そ、そうだなぁ……そういうことは本部に……」

 

「今!」

僕が合図をするとキリトとアスナが地面を蹴って跳躍した。トップクラスの筋力と敏捷力により軽々軍を飛び越えた。軍の連中は僕に意識を集中していたため反応ができなかった

 

「て……てめぇ……何だお前は!!<<軍>>の任務を妨害すんのか!!」

 

「弱いやつから搾取するのが<<軍>>の任務かい?落ちたものだね」

 

「てめえ……許さねえ……」

と僕に近い軍のメンバー五人ほどが剣を抜いた。全く使われていない剣の全く重みのない輝き

 

「君たちは全く戦闘を経験してないよね」

 

「……そんなわけないだろ」

 

間があったな……

 

「剣に全く重みがなよ。それに足が甘い。……しょうがないね。少し稽古をつけてあげるよ」

 

といいつつ僕は腰から剣を二本抜き出す

 

「サーシャさん、ちょっと下がっててもらえますか?」

 

「はっ、はい」

 

二振りの剣を見て呆然としていたサーシャさんを下がらせる。そして同じく固まっていた軍のメンバーの方に向き直り

 

「ついてきなよ?」

 

剣を突き出した。双剣突撃技<<ダブルサーキュラー>>だ。もちろんここは街の中であり犯罪防止コード圏内なのでプレイヤー自身にダメージはない。だがソードスキルによるノックバックとコード発動時のシステムカラーの発光と衝撃は発生する。つまり……

 

「ぐあっ……やめっ」

二つの剣閃が煌めき一番近くにいた男性プレイヤーに直撃した瞬間、男はしりもちをつき恐怖に顔を引きつらせることになった

 

「双剣……ユニークスキル……ひっ」

後ろに控えていたプレイヤーからも悲鳴じみた声が漏れる……ってか有名になったもんだね……

 

「なっ、何ビビってんだ!相手は一人。こっちは五人だぞ!数で押せばユニークスキル使いだって……」

 

「そっ、そうだ!何ビビってんだか……よ、よし行くぞお前ら」

 

……面倒くさいなぁ……

 

「せっかく人がチャンスを上げたのに……教訓一、引き際を考えないと……」

 

僕は一番最初に声を上げたプレイヤーの前に移動し

 

「痛い目を見ますよ?」

 

剣を振り下ろし、攻撃を開始した。初撃は四連続ソードスキル<<バーチカル・スクエア>>。四つとも見事に直撃した。倒れ戦闘不能になったので次のプレイヤーに向かった

 

「教訓ニ、一対多の場合は隣の人を常に視界にいれ、カバーし合うこと。あなたたちはバラバラになりすぎ。全くフォーメーションが組めていません」

 

次のプレイヤーを単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>を当てる。近くにいた別のプレイヤーを巻き込み吹き飛ぶ。最後のプレイヤーはガタガタ震えて命乞いをしていたがかまわず剣をつきだした

 

「教訓三、どんなに弱くても、どんなに自分が優位であっても……」

 

最後の一撃、片手剣で最も早い技<<ムーン・ソルト>>

 

「決して油断しないこと」

 

下から上に走る剣閃が最後のプレイヤーを吹き飛ばした




しーちゃん、こわい((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
し「なにか?」
ヴェッ、マリモ!
し「死ね」
チーーン


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シンカー救出作戦会議

ユ「何でこんな遅れたのかな?理由があるなら、いってもいいよ?」
い、いえ、あのですね、他の方の小説を読んでいたところはまってしまって………、はい、言い訳ですね、すいませんでしたガクブル
ユ「有罪ですね。しーちゃん、撃っていいよ」
し「わかったわ」
ジャキッ←ボルトを引く音
ズパンッ←銃を撃った音
チーーン


数分後。軍の連中が逃げ去ったあと、僕はあたりを見回した。すると子供たちに抱きつかれているアスナとにやにや笑っているキリトがいた。その時

 

「みんなの……みんなの、こころが……」

 

みんなの……こころ?

 

「みんなのこころ……が……」

 

虚空に視線を向け、右手を伸ばしていた。明らかに普段とは様子がおかしい

 

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

キリトが叫ぶがユイはきょとんとしている

 

「ユイちゃん……何か、思い出したの!?」

アスナもあわてて駆け寄る

 

「……あたし……あたし……あたし、ここには……いなかった……。ずっと、ひとりで、くらいとこにいた……」

 

ユイが顔をしかめた次の瞬間

 

「うあ……あ……あああ!!」

ユイの体が激しく揺れる

 

「ねえ……ママ……!!」

こっちに向かって手を伸ばしてくるが僕はその手をつかもうとした。がつかめなかった。所詮システム。そう頭をよぎったからだ。その直後、アスナがユイを抱き上げ胸に抱き締めた

 

「なぜつかんであげなかったの?」

 

アスナは視線をこちらに向けて言ってきたが秘密にしていること……しかもユイについてのことなので答えることも視線を受けとめることができず、目を反らすことしかできなかった……しばらくするとその現象も収まりユイの体から力が抜けた

 

「何だよ……今の……」

 

キリトの呟きは、おそらく正しいであろう答えをもつ僕が言ってしまって、ユイとキリト、アスナの関係がギクシャクしたものにならないか心配で答えることができなかった

次の日キリトはサーシャに尋ねた

 

「サーシャさん……」

 

「はい?」

 

「……軍のことなんですが。僕が知ってる限りだと、あの人たちは専横が過ぎることはあっても治安維持には熱心だったはずだよね。でも昨日見た人たちはまるで犯罪者だった……。いつから、ああなんですか?」

 

「方針が変更された感じがしだしたのは、半年くらい前ですね……。徴税と称して恐喝まがいの行為を始めた人と、それを逆に取り締まる人たちもいて。軍のメンバー同士で対立してる場面も何度も見ました。噂じゃ、上のほうで権利争いか何かあったみたいで……」

 

「内部分裂を起こしたのかな……まあ、あの人数ならしょうがないかもしれないけど」

 

「でも昨日みたいなことが日常的に行われてるんだったら、放置はできないよな……」

キリトは僕の台詞を引き継いで言った。とその時、キリトは不意に顔をあげ入り口に目を向けた。僕は反射的に索敵スキルで扉の外をサーチする。すると

 

「誰か来るね。一人……」

 

「え……。またお客様かしら……」

次の瞬間、館内にノックの音が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腰に短剣を吊したサーシャと付いていったキリトが連れてきたのは、<<軍>>のユニフォームに身を包んだ長身の女性プレイヤーだった。一瞬、剣に手をかけるが、キリトが隣にいるということで、僕は剣から手を離した。子供たちとアスナは一斉に黙るが「みんな、この方は大丈夫よ。食事を続けなさい」という鶴の一声でまた騒がしくなった

 

「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺たちに話があるらしい」

ユリエールは僕とアスナに視線を向け頭を下げて挨拶をした

 

「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属してます」

 

……ALF?いつの間に軍は名前を変えたんだ?と思ったが<<軍>>は俗称であったと思い出した。

 

「はじめまして。わたしはギルド血盟騎士団の……あ、いえ、今は一時脱退中なんですが、アスナと言います。この人はソロのユウ。この子はユイ」

紹介されたので立って一礼。ユイは顔を上げるとユリエールを見つめる。首をかしげるが、ニコリと笑い再びフルーツジュースに視線を戻す

 

「KoB……。なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」

 

「……つまり、昨日の件で抗議に来た、ってことですか?」

 

「いやいや、とんでもない。その逆です、よくやってくれたとお礼を言いたいくらい」

 

「……」

 

事情が読めないアスナとキリトは沈黙するが、僕は口を開く

 

「ユリエールさんは恐喝連中とは別の派閥に所属していると考えていいんですよね?最近、恐喝が多くなっていることから考えると、おそらく勢力が弱くなってきた派閥に」

 

ユリエールは空色の瞳を大きく開き口を開いた

 

「……ご明察の通りです。実はそのことであなた方にお願いがあって来たのです」

 

「お、お願い……?」

頷くとユリエールは続けた

 

「はい。最初から、説明します。軍というのは、昔からそんな名前だったわけじゃないんです……。軍ことALFが今の名前になったのは、かつてのサブリーダーで現在の実質的支配者、キバオウという男が実権を握ってからのことです。最初はギルドMTDという名前で……、聞いたこと、ありませんか?」

 

「<<MMOトゥデイ>>の略ですよね。SAO開始当時の、日本最大のネットゲーム総合情報サイトだった。ギルドを結成したのは、そこの管理者だったはずでしたね。たしか、名前は……」

 

「シンカー」

ユリエールが割り込み僕の言葉を受け継いだ

 

「彼は……決して今のような、独善的な組織を作ろうとしたわけじゃないんです。ただ、情報とか、食料とかの資源をなるべく多くのプレイヤーで均等に分かち合おうとしただけで……」

 

MMORPGの本質はプレイヤー同士競いあうものだ。ましてや、このSAOにとらわれた人の大半は熱狂的なプレイヤーだろう。それなのに分かち合おうなんて無理だろう

 

「そこに台頭してきたのがキバオウという男です。彼は、シンカーが放任主義なのをいいことに、同調する幹部プレイヤーたちと体制の強化を打ち出して、ギルドの名前をアインクラッド解放軍に変更させました。更に公認の方針として犯罪者狩りと効率のいいフィールドの独占を推進したのです。それまで、一応は他のギルドとの友好も考え狩場のマナーは守ってきたのですが、数の力で長時間の独占を続けることでギルドの収入は激増し、キバオウ一派の権力はどんどん強力になっていきました。最近ではシンカーはほとんど飾り物状態で……。キバオウ派のプレイヤーたちは調子に乗って、街区圏内でも<<徴税>>と称して恐喝まがいの行為すら始めたのです。昨日、あなた方が痛い目に遭わせたのはそんな連中の急先鋒だった奴等です。でも、キバオウ派にも弱みはありました。それは、資材の蓄積だけにうつつを抜かして、ゲーム攻略をないがしろにし続けたことです。本末転倒だろう、という声が末端のプレイヤーの間で大きくなって……。その不満を抑えるため、最近キバオウは無茶な博打に出ました。配下の中で、最もハイレベルのプレイヤー十数人による攻略パーティーを組んで、最前線のボス攻略に送り出したんです」

 

コーバッツたちかな?

 

「いかにハイレベルと言っても、もともと我々は攻略組の皆さんに比べれば力不足は否めません。……結果、パーティーは敗退、隊長は死亡という最悪な結果になり、キバオウはその無謀さを強く糾弾されたのです。もう少しで彼を追放できるところまで行ったのですが……」

 

ユリエールはそこで一旦きると唇を噛んだ

 

「三日前、追い詰められたキバオウは、シンカーを罠に掛けるという強硬策にでました。出口をダンジョンの奥深くに設定してある回廊結晶を使って、逆にシンカーを放逐してしまったのです。その時シンカーは、キバオウの「丸腰で話し合おう」という言葉を信じたせいで非武装で、とても一人っダンジョン再奥部のモンスター郡を突破して戻るのは不可能な状態でした。転移結晶も持っていなかったようで……」

 

「お人好しだね。そんな男だとわかっていたはずなのに口車に乗せられちゃった訳ね……」

 

「……お人好しがすぎたんですシンカーは……」

 

「要するに、軍でこの町に攻略組の僕たちがいるという噂を聞きつけ助けて欲しいと言いにきたってわけですね」

 

ユリエールは唇を噛んでから言った

 

「お会いしたばかりで厚顔きわまるとお思いでしょうが、どうか、私と一緒にシンカーを救出に行ってくださいませんか」

 

ユリエール深々と頭を下げた

 

「心証としては力を貸してあげたいのは山々だが……」

 

「無理なお願いだってことは、私にも解っています……。でも、黒鉄宮<<生命の碑>>のシンカーの名前に、いつ横線が刻まれるかと思うとおかしくなりそうで……」

 

……これはPKの手段としてはメジャーな方法に酷似している。一人が街でプレイヤーを誘い、圏外で囲み殺す。よくある手だ。これに乗るのはよほどのお人好ししか……

 

「大丈夫だよ、ママ。その人、うそついてないよ」

 

「ユ……ユイちゃん、そをなこと、判るの……?」

 

「うん。うまく……言えないけど、わかる……」

 

キリトはユイの頭を撫でたそしてニヤリとわらい僕たちに言う

 

「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっと何とかなるさ」

 

「相変わらずのんきな人ねえ」

アスナもユイの髪に手を伸ばした

 

「ごめんね、ユイちゃん。お友達探し、1日遅れちゃうけど許してね」

 

僕は呆れていう

 

「君らはなんてお人好しだよ……」

 

「と言いつつもユウもくるんだろ?」

 

「……まあね……」

 

「ありがとう……ありがとうございます……」

 

「それは、シンカーさんを救出してからにしましょう」

 

アスナはユリエールに笑いかける。僕は軽く苦笑いしながら心の痛みを隠そうとする。システムと人間の違いについて考えながら

 

 




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死神と炎の少女《ユイ》

ユ「で、言い訳は?」
いえ、あのですね、昨日テストだったわけでですね、テストに向けて勉強してた訳なんですよ
ユ「で本音は?」
勉強して、眠たかったのでいつもね落ちしてました
ユ「しーちゃん、やっちゃっていいよ!」
し「ええ、わかったわ」
ジャキッ←ボトルを引く音
ズパンッ!!!←銃を撃つ音
チーーン







最近、毎回死んでるような………、あ、本編どうぞ!



 

目的のダンジョンはなんとここ一層にあるという。行くメンバーは僕、アスナ、ユリエール、ユイ、ユイを背負ったキリトの計五人。ユイは行くといって聞かなかったので転移結晶を握らせてある。……目的の洞窟にシステム的なものがなにかあるのかな?ダンジョンにはもうすでにキバオウを始めとする軍のメンバーが入ったらしいが、散々追い回されて命からがら転移脱出するためになったそうだ……ざまあみろだよ。その話を聞いて、キリトが笑いだす。僕はもちろんポーカーフェイス

 

「ユウ君。顔がにやけてるよ」

 

えっ……

 

ユリエールはすぐに表情を暗くして行った

 

「今は、そのことがシンカーの救出を難しくしています。キバオウが使った回廊結晶はモンスターから逃げ回りながら相当奥まで入り込んだところでマークしたものらしくて……シンカーがいるのはそのマーク地点の先なのです。レベル的には、一対一なら私でもどうにか倒せなくもないモンスターなんですが、連戦はとても無理です。……失礼ですが、お三方は……」

 

聞けば六十層ぐらいの強さらしい。僕のレベルは95。キリトもアスナも90前後だろうね。安全マージンは階層プラス十なのでレベル70ほど……つまり

 

「問題ないと思うよ」

 

「ああ、まあ、六十層くらいなら……」

 

「何とかなると思います」

 

「……それと、もう一つだけ気がかりなことがあるんです。先遣隊に参加していたプレイヤーから聞き出したんですが、ダンジョンの奥で……巨大なモンスター、ボス級の奴を見たと……」

 

「……ボスも六十層くらいのやつなのかしら……。あそこのボスってどんなのだったっけ?」

 

「えーと、確か……石でできた鎧武者みたいな奴だろう」

 

「……弱すぎたのか記憶にないよ」

 

「あー、アレかぁ。……あんまり苦労はしなかったよね……」

 

「まあ、それも、なんとかなるでしょう」

 

「そうですか、良かった!」

 

「そうかぁ……。お三方は、ずっとボス戦を経験してらしてるんですね……。すみません、貴重な時間を割いていただいて……」

 

「いえ、今は休暇中ですから」

 

「ソロだから関係ないですよ」

 

そんな話をしながら地下水道を歩く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬぉぉぉぉぉ!りゃぁぁぁぁ!」

 

などと叫びながらキリトは敵集団に突っ込み叩き潰すというバーサクモードになっているため僕たちは暇である。アスナと僕は「やれやれ」といった表情でユリエールは目と口を丸くしてキリトを眺めているそしてユイは「パパーがんばれー」と気の抜けた声援を送っているため緊張感は皆無である。

 

「な……なんだか、すみません、任せっぱなしで……」

 

「いえ、あれはもう病気ですからね……。やらせときゃいいんですよ」

 

「猪突猛進馬鹿ですからね、キリトって」

 

「なんだよ、ひどいなぁ」

 

蹴散らして帰ってきたキリトが文句を言うが

 

「じゃあ、わたしと代わる?」

 

「そろそろ肩慣らしがしたいし変わる?」

 

「……も、もうちょっと」

 

その場が笑いに包まれたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョンに入ってしばらくすると水中生物型だったモンスターたちはオバケ系統に変化した。アスナがオバケが苦手なことを知っている僕はアスナをからかいながらキリトがモンスターを蹴散らしたあとの通路を進んだ。しばらくすると暖かな光の洩れる通路が目に入った

 

「あっ、安全地帯よ!」

 

「奥にプレイヤーが一人いる。グリーンだ」

 

「シンカー!」

ユリエールは一声叫び走りだした。僕はユリエールに続きつつも索敵スキルで辺りを走査していた。すると安全地帯の少し前にある十字路。その左端に不気味にオレンジに光る点を見つけた。その点は少しの間静止していたが、ユリエールが十字路に近づくにしたがって右に動き始めた。このままではユリエールと衝突する。この時僕はちょっと前にユリエールから聞いたことを思い出していた。そう、ボス級のモンスターを見たという軍の話を……

 

「ユリエーーール!!」

 

男が大声で叫んだ

 

「シンカーーー!!」

 

ユリエールもそれに応えて叫ぶがそれにかぶせるようにシンカーが叫んだ

 

「来ちゃだめだーーーっ!!その通路は……っ!!」

 

シンカーの絶叫。つまりこれが意味するのは……

 

「止まれ!ユリエール!!」

 

僕は叫ぶが、ユリエールはシンカーしか見えていない。このままでは……

 

「チッ」

 

僕は舌打ちをして足に力を込めた。キリトも同じ動作をしており、キリトのほうが早く弾丸のように飛び出した。僕もそれにつづく。背後から右手をユリエール体の前にまわし、左手の剣を壁に突き刺すキリト。僕は左手をキリトの体の前にまわし、右手の剣を突き刺す。こうして十字路ギリギリのところで止まった僕たちの目と鼻の先を死の弾丸が通り過ぎた。黄色いカーソルは十メートルほどいって止まった。またこちらに突進しようとしたので僕たちはその車線から退避して、そいつの姿を見た。死神としか言い様のない姿だった。武器は巨大な鎌。鎌というのは中距離の武器で、相手の盾に先を引っかけ、体制を崩す事ができる。ただし懐に潜り込まれたら終わりだし((今回の死神のように生身でも高い攻撃力を誇るものは体当たりで突き飛ばせばいいのだが))遠距離攻撃にも鎌の重さでかわせないし、ガードもできないので弱い。常に相手との間合いを考える必要がある。……何現実逃避しているんだ僕は……。識別スキルでデータが見えなかった。つまりこいつは間違いなく今まで会ったモンスターの中で最強!!

 

「アスナ、ユウ、今すぐ安全エリアの三人を連れて、クリスタルで脱出しろ」

キリトも識別スキルで確認したらしく擦れた声で言った

 

「え……?」

 

「こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータが見えない。強さ的には多分九十層クラスだ……」

 

「それですめばいいけど……裏ボス的なやつだろうさ……」

僕も声が擦れるのを抑えることができない。体は強ばり原始的な恐怖が僕の体を貫いている。濃厚な死の気配。まさに死神。そいつの名前は<<The Fatal-scythe>>意味は運命の鎌。その運命は果たして死か、生か……

 

「……!?」

アスナも息を呑んで体を強ばらせる。そうしたやりとりの間にも死神が少しずつ近づいてきた。まさに死が忍び寄るかのように

 

「僕が時間を稼ぐから、早く逃げろ!!」

 

キリトは叫ぶ。だが、その体は震えている

 

「アスナ……さっさと逃げろ」

キリトの隣に並び、僕は言う。震えて、今にも剣を捨て、座り込みたかったが僕には守りたい人、親友がいる。だから、座り込むわけにはいかない

 

「ユウ……」

 

「キリト……たまには僕にもかっこつけさせてよ!」

 

「ははっ……わかったよ。だが、死ぬなよ。約束だぜ」

 

「キリトこそ」

 

憎まれ口の応酬。やがて死神は急にスピードを上げてキリトの方に突進してきた。僕はいつでもサポートできるようにキリトの後ろに立つ。キリトは二本の剣をクロスし迎撃体制に。するといきなり横から白い閃光、アスナが走り込み剣を合わせた。そこに死神の鎌が振り下ろされた。サポートをする暇もなかった。二人は吹き飛ばされ僕のちょっと横に叩き付けられた。これによりキリトとアスナのHPが半分を割り込んだ。さらに死神の追撃。狙いはキリトとアスナ!!僕はキリト&アスナと死神の間に割り込む。両手の剣を合わせ死神ね鎌の軌道にほぼ平行になるように合わせた。ちょっとでも軌道がずれると三人とも仲良くあの世いきだった。賭けには成功し、鎌の軌道をずらすことに成功。僕たちのわずか右の地面に突き刺さった。余波で僕たちは飛ばされた。HPを確認するとアスナとキリトはレッドゾーン。僕はまだ残っている。僕は前にでる。思惑は成功し、死神の狙いは僕一人にしぼられた。再び高威力の鎌が横なぎに振られた。僕は懐に潜り込みかわす。そして単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>を放った。だが、まるで石でもたたいたような衝撃を受けて僕の体は硬直し剣を落としてしまった。死神が少し下がり、僕に向かって鎌を振り上げた。僕は硬直。キリトとアスナは動けない。これは死んだな……

 

「ごめん……アスナ、キリト、約束は守れないかな……」

 

僕は鎌を見つめた。後ろでキリトとアスナが叫んでるのが聞こえる。だが聞こえない。全てがスローモーションに見える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのスローモーションは視界一杯に広がった黒いものが登場して突然終わった。その直後、大音響とともに音がよみがえった。同時に目の前に【Immortal Object】の文字が浮かび上がった。復活した頭で考える。そして、すぐに一つの答えを導きだす

 

「ユイ……お前……やっぱり……なの?」

 

ユイは僕の言葉には答えず悲しそうに眉をひそめた。その直後突然、ユイの掌に炎が生まれ、凝縮し、一振りの大剣となった。服が焼け落ち最初に見たときに着ていたワンピース姿になる。そして、その大剣を死神に向かって振り下ろした。死神は鎌で受けるが、熱により鎌が徐々に溶け、最後には死神ごと叩き斬られた。その一撃により死神は爆散。その後に残ったのは痛いぐらいの沈黙だった

 

「ユイ……ちゃん……」

 

沈黙を破ったのはアスナ。細剣を支えにアスナはゆっくり立ち上がり、キリトとともにこちらに向かって数歩歩み寄った。ユイは微笑んではいたが、その瞳は涙で一杯だった

 

「パパ……ママ……ねえ……。ぜんぶ、思い出したよ……」

 

「ユイ……辛かったら僕が……」

 

僕の言葉にユイは左右に首を振る

 

「私が言わないと……いけないから……」

 

僕に微笑むユイはとても痛々しかった




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し「気持ちわるいわね」


チーーン


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カーディナル

遅くなってすみません
ユ「しーちゃん、やっちゃっていいよ」
え、なにも聞かす有罪確定なんですか?
し「さよなら」
エ,ヤメテウタナイテ "パンッ" グハァッ!
チーーン
ユ「では、本編どうぞ!」


 

安全エリアには黒い石机が設置してあった。そこにユイは座り僕、キリト、アスナがそれを囲んでいる状態だった。なお、ユリエールとシンカーは先に脱出してもらったのでもうここにはいない

 

ユイはしばらくためらっていたがアスナが訊ねたことによって重い口を開いた

 

「はい……。全部、説明します……キリトさん、アスナさん、ユウさん。もっともユウさんはある程度推測できているとは思いますが……」

ユウさんとよばれたことで何だか喪失感を感じる。何でだろうなぁ……システムだっていうのに……知っていたのにさ……心が痛いなぁ

 

「<<ソードアート・オンライン>>という名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています。システムの名前は<<カーディナル>>、それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群によって世界の全てを調整する……。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナル指揮下のプログラム群に操作されています。……しかし、ひとつだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。プレイヤーの精神性に由来するトラブル、それだけは同じ人間でないと解決できない……そのために、数十人規模のスタッフが用意される、はずでした」

 

「GM……ユイ、つまり君はゲームマスターなのか……?アーガスのスタッフ……?」

 

「馬鹿かな?キリト。ユイは"はずでした"と言ってるじゃないか。それにこんな歳のアーガスのスタッフが存在しているわけがないよ。残った選択肢はただひとつ」

 

ユイはひとつ頷くとまた口を開いた

 

「カーディナルの開発者たちは、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです。ナーヴギアの特性を利用してプレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーのもとを訪れて話を聞く……。<<メンタルヘルス・カウンセリングプログラム>>、MHCP試作一号、コードネーム<<Yui>>。それがわたしです」

 

「プログラム……?AIだっていうの……?」

 

ユイは悲しそう笑顔のまま頷いた

 

「プレイヤーに違和感を与えないように、わたしには感情模倣機能が与えられています。……偽物なんです、全部……この涙も……。ごめんなさい、アスナさん……」

 

アスナはユイを抱きしめようとしたが、ユイはそれを拒否するように一歩下がった。アスナは、抱きしめるのをやめ、さらに言葉を重ねる

 

「でも……でも、記憶がなかったのは……?AIにそんなこと起きるの……?」

 

「……二年前……。正式サービスが始まった日……何が起きたのかはわたしにも詳しくは解らないのですが、カーディナルが予定にない命令をわたしに下したのです。プレイヤーに対する一切の干渉禁止……。具体的な接触が許されない状況で、わたしはやむなくプレイヤーのメンタル状態のモニタリングだけを続けました。状態は……最悪と言っていいものでした……。ほとんど全てのプレイヤーは恐怖、絶望、怒りといった負の感情に常時支配され、時として狂気に陥る人すらいました。わたしはそんな人たちの心をずっと見続けてきました。本来であればすぐにでもそのプレイヤーのもとに赴き、話を聞き、問題を解決しなくてはならない……しかしプレイヤーにこちらから接触することはできない……。義務だけがあり権利のない矛盾した状況のなか、わたしは徐々にエラーを蓄積させ、崩壊していきました……」

 

僕たちは何も言えない中ユイの独白が続く

 

「ある日、いつものようにモニターしていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメーターを持つ三人のプレイヤーに気付きました。喜び……安らぎ……でもそれだけじゃない……。この感情はなんだろう、そう思ってわたしはその三人のモニターを続けました。会話や行動に触れるたび、わたしの中に不思議な欲求が生まれました。そんなルーチンはなかったはずなのですが……。あの三人のそばに行きたい……直接、わたしと話をしてほしい……。すこしでも近くにいたくて、わたしは毎日、三人のうち二人の暮らすプレイヤーホームから一番近いシステムコンソールで実体化し、彷徨いました。その頃にはもうわたしはかなり壊れてしまっていたのだと思います」

 

「それが、あの二十ニ層の森なの……?」

 

「はい。キリトさん、アスナさん、ユウさん……わたし、ずっと、お三方に……会いたかった……。森の中で、お三方の姿を見た時……すごく、嬉しかった……。おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに……。わたし、ただの、プログラムなのに……」

 

「システムだ、人間だなんて関係ない……」

僕は口を開く、過去の後悔と反省を考えながら

 

「そうやって自分で考えて、行動できるならシステムだろうが関係ないよ。ユイは僕の立派な妹だよ」

 

「そうだよ。ユイちゃん。ユイちゃんは……わたしたちは家族でしょ?」

 

「そうだぞ、ユイ」

 

僕たち三人の言葉でユイは目を丸くしていたが、しばらくすると嬉しそうに微笑んだが、それにはどこか寂しさが混じっていた

 

「ユウさん……キリトさん……アスナさん……ありがとうございます……家族なんて言ってもらって……すごく嬉しいです」

 

僕たちはユイにつられて微笑むが次の言葉で困惑したような顔に変わる

 

「でも……もう……遅いんです」

 

「なんでだよ……遅いって……」

 

「わたしが記憶を取り戻したのは……あの石に接触したせいなんです」

 

ユイは部屋の中央にある黒い立方体を指差した

 

「さっきアスナさんがわたしをこの安全地帯に退避させてくれた時、わたしは偶然あの石に触れ、そして知りました。あれは、ただの装飾的オブジェクトじゃないんです……GMがシステムに緊急アクセスするために設置されたコンソールなんです」

 

ユイが言ったとたん黒い石の表面に青白いホロキーボードが浮かび上がった

 

「さっきのボスモンスターは、ここにプレイヤーを近付けないようにカーディナルの手によって配置されたものだと思います。わたしはこのコンソールからシステムにアクセスし、<<オブジェクトイレイサー>>を呼び出してモンスターを消去しました。その時にカーディナルのエラー訂正能力によって、破損した言語機能を復元できたのですが……それは同時に、今まで放置されていたわたしにプログラムが走査しています。すぐに異物という結論が出され、わたしは消去されてしまうでしょう。もう……あまり時間がありません……」

 

「そんな……そんなの……」

 

「ユイ……一つ聞きたいんだ。ユイはどうしたい?可能性とかはどうでもいいからさ……ユイはユイ自身はどう思っているの?」

 

「わ……わたしは……」

 

「ユイちゃん!?」

 

消えそうに薄くなっていくユイに近づこうとするアスナを止めながらユイに先を促す

 

「わたしは……ねえやパパやママと……一緒にいたい!!」

 

「わかった……助けるさ……いつだって……それが兄弟としての努めなんだから!!」

 

ユイは光に包まれ完全に消える。次の瞬間、僕はキリトを抱えシステムコンソールに飛び付いた

 

「なっ、なんだ!?」

 

「今ならまだこのコンソールは使えるでしょ。ユイのシステムをカーディナルから切り離すことができれば!!手伝って、キリト!!」

 

あまり僕はコンピュータが使えない。だからキリトに協力を仰ぐ。僕の意図を汲み取ったキリトは凄まじい勢いでキーボードを叩きだした。そして……

 

破裂するような効果音とともに僕とキリトはコンソールから弾き飛ばされる

 

そしてキリトの手と僕の手にはしっかりと握られたクリスタルがあった。驚いて駆け寄ってきたアスナに向かって僕たちは笑みを浮かべてクリスタルを差し出した

 

「こ、これは……?」

 

「……ユイが起動した管理者権限が切れる前に、ユイのプログラム本体をどうにかシステムから切り離して、オブジェクト化したんだ……。ユイの心だよ、その中にある……全く、ユウが気付いてくれてよかったよ……」

 

「ユイちゃん……そこに、いるんだね……。わたしの……ユイちゃん……」

 

アスナはそれだけ言うと泣き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、キリト君とユウ君」

 

「ん?」「なに?」

 

「もしゲームがクリアされて、この世界がなくなったら、ユイちゃんはどうなるの?」

 

「ああ……。容量的にはギリギリだけどな。クライアントプログラムの環境データの一部として、俺のナーヴギアのローカルメモリに保存されるようになっている。向こうで、ユイとして展開させるのはちょっと大変だろうけど……きっとなんとかなるさ」

 

「そっか」

 

アスナはキリトに抱きつく

 

「じゃあ、向こうでまたユイちゃんに会えるんだね。わたしたちの、初めての子供に」

 

「ああ。きっと……まあ、少しでか過ぎるが子供が今いるけどな」

 

「そうだね」

 

アスナは僕を抱きしめてくる。俺は抵抗しようとしたがやめた。アスナの目に光るものがあったからだ。しばらくして泣き止んだアスナは顔をあげると

 

「ユウちゃん……」

 

「ユウちゃんはやめて」

 

キリトの爆笑とアスナの涙と僕の苦笑いがとてもカオスだった

 




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ユ「最近調子乗ってない?」
ソ,ソンナコトナイヨー


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中層のレッドプレイヤー

ユ「ねえ、今まで何してたの?」
い、いえ、あのですね。がっk
ユ「言い訳はいいからさ?本当は?」
………なにも思い付かなくて、20話分くらい書留をしてました。
ユ「あれ、めずらしくまとも。"あ、じゃあいいでs"でもさ、それって投稿できたよね?」
え、あっ
ユ「しーちゃん、どうするべきか決めて?」
し「ギルティでしょ。やっちゃいましょ」
ユ「じゃあ、しーちゃん殺っちゃって!」
え、またですk
ジャキッ←銃のボルトを引く音
ちょ、ちょっとm
ズパンッ!←銃が火を噴いた音
ギャァァ!

チーン

ユ・し「「じゃあ、本編どうぞ!」」


あの後、キリトとアスナの家に招かれ夜遅くまでユイの話をした

 

実は僕がキリトとアスナの家に行ったのはついだった。予想外の事件に時間を取られけど、本来の目的は最前線で出会ったある人の依頼である。

ここにプレイヤーホームがある木工職人プレイヤーなんだけど、ある日、木を採っていると複数のオレンジプレイヤーが一人のプレイヤーを囲んでいたらしい。そうして見ているとそのプレイヤーは殺されてしまい、さらに震えながら見ていると近くに洞穴の中に入って行ったというはなしだ。このままでは安心して木を拾いに行けない。助けて欲しい、という依頼で来たのだった。

僕がその依頼を受けたのは単純にキリトとアスナの生活を守りたいと思ったからなんだよね……うん、親孝行者だと思ったひと、君たちとはどうやら拳で語り合わないとダメみたいだね!まあ、そんなわけで僕はキリトとアスナに別れをつげて、森の中に分け入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩くと例の木工職人プレイヤーの言っていた洞窟が見えた。とりあえず近くの草むらに隠れて様子を見ることにした。ちなみにだけど、僕の隠密スキルはコンプリートしているのでよほどのことがなければばれることは無いだろうね。索敵スキルを発動し、マップをみると二つ向こうの草むらに五人組のパーティーが隠れているのがわかった。色は全員グリーン。男三人で女二人。十中八九僕と同じ依頼を受けた人たちだ。ちなみに僕があの男を見かけたのは五十層だった。装備のグレードから察するに実力は中の中ってところだろう。中層プレイヤーのボリュームゾーンのプレイヤーだね。考えていると洞窟の前に、オレンジプレイヤーが五人ほど集まってきた。だが索敵スキルによると洞窟のすぐ中に五人。あっち側の左の草むらに三人、右の草むらに二人、計十五人。どうやら僕の近くにいるパーティーはばれてるらしくそっちに向けてちらちらとオレンジプレイヤーが視線を向けている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し間を置いてあのパーティーは作戦を決めたらしく……全員で突っ込んだ……ちょっと、作戦はなしなんですか……まあ、不意討ちの時点で作戦なんだけど。先頭は男、武器は大剣。そのうしろ二人も男。片手剣と曲刀。そのうしろに女二人が続く。武器は二人とも両手槍。バランスがいいね。が、レベル差と戦略の差があったらしく囲まれて徐々にHPを減らしていく。必死に守っているがやはりピンチだろう。僕は囲まれた時点で救うべく片手剣を一本出して走りだした

 

「さて……双方武器を納めてもらえますか?」

 

突然の乱入者に驚いたのように動きを止めた

 

「誰だ?」

 

どうやら首領格のようで防具のグレードが僕のについで高い。なおグレードは、僕>>>>>>>>>>首領>部下>パーティーです。僕のは真っ黒なコートだけなんだけど

 

「まあ、通りすがりの冒険者ですね」

 

「馬鹿言え、ここは通るようなところじゃねぇ」

 

「こいつは俺が釣ってきた獲物っすよ」

 

洞窟から出てきた見覚えのあるグリーンが一人

 

「え?何でここにいるんですか?」

 

パーティーのうちの女の一人が疑問の声を上げる

 

「馬鹿か、獲物を釣る餌役だよ。こいつは」

 

「なっ……」

 

驚いて目を丸くする女性

 

「で、お前何者だ?俺の索敵スキルで隠密を破れなかったんだが」

 

「獲物を選ぶときはしっかり戦力を見定めてからした方がいいですよ?」

 

僕はパーティーのメンバー全員を放り投げ、僕はジャンプで囲みを脱出する。するとメンバーのうち男は全員一目散に逃げ出した。女は僕を心配してか、残っていた

 

「ねぇ……さっさと逃げようよ」

 

「それが……得策」

 

「僕は心配いらないよ。お二人さんはさっさと逃げて。正直、邪魔だから」

 

「足手まといって……」

 

「ごめんね、君らのレベルは見たところあいつらよりも低いよ。だから逃げろって言ってるんだ」

 

「低いって……あなたの装備、金属のない黒い布製じゃない!片手剣なのに盾持ってないし……」

 

「おいおい、こっちを無視してんじゃねぇよ!」

 

「あ〜、ごめん忘れてたよ。興味ないしさ」

 

「てっ、てめぇ……」

 

「まあ、気にすることないよ。それより君ら全員牢獄に飛んでくれませんか?あ、それとも放り込まれたいですか?」

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

 

一人の犯罪者プレイヤーが剣を振りかぶって向かってくる。得物は大剣。もちろん勢いのついた大剣は片手剣では受けとめることはできない。現実ならば……

 

 

「なっ、なにい!?」

 

その声は僕が片手剣で大剣を受けとめたことによる驚きの声だ

 

「筋力補正に差がありすぎたね。さて実力の差がわかってもらえたところで牢獄に飛んでくれませんか?」

 

「だが……全員でかかれば……」

 

「戦闘時回復の回復をうわまることができれば、ね。ちなみに僕のレベルは90を越えてるよ?」

 

「なっ……」

 

「えっ……」

 

「こっ、攻略組だと!?」

 

「黒い服に盾無しの片手剣……双剣使い<<黒の剣士>>だと!?」

 

また間違えられたよ……………もう泣いていいかな

 

「双剣使いはあってるけど、僕はキリトじゃないから<<黒の剣士>>ではないね」

 

「くっ……」

 

「まあ、飛んでもらおうかな…コリドーオープン!」

 

手に持っていたクリスタルは砕けちり光の渦が現れる

 

「この世界で犯罪を犯して何が悪い!所詮ゲームだろ?VRMMOだろ?だったら権利の奪い合いじゃねぇか!その過程で殺しても別にいいじゃねぇか!」

 

「お前はこの世界をバーチャルワールドだと思ってるのか?いいや、そんなわけわないよね。バーチャルワールドだと思ってるならここまで生き残ってないからね……それでも殺す。それはただの殺人だ。犯罪者となんらかわらないよ」

 

「それの何が悪い。お前らグリーンと俺たちレッドは何が違うんだよ!お前らは生き残るためにモンスターを狩る、殺す。俺たちはプレイヤーを狩る、殺す。対象が違うだけじゃねぇか!!」

 

「確かにそうだね……だけど、お前らは殺人を楽しんでいる。ただの遊びとして人を殺している。そんなことが許されると思っているの?」

 

「ぐっ……」

 

「わかったなら……さっさと行け」

 

「ち……ちくしょう。何で攻略組が俺の依頼を受けたんだ……」

 

「この近くに親友の家があるんだよ。そいつらも攻略組だけど、安心して生活させてやりたいからね」

 

「運が悪かったわけだ……」

 

犯罪者たちは観念したかのように光の渦に入っていく。そして全員がいなくなり光の渦は消えた

 

「さて……何でまだ残ってるのかな?逃げろって言ったよね?」

 

「心配で……まあ、する必要はなかったんですけどね」

 

「えっと、ありがとう……」

 

「どういたしまして。それじゃ、僕はこれで」

 

僕は踵を返す

 

「あの……お名前は?」

 

「ユウだよ」

 

「ユウさんですね?わたしは……」

 

「いや……言わなくていいよ」

 

「え?」

 

「現実で会えたら聞くよ。だから、生き残ってね?」

 

「「はい!」」

 

こんどこそ僕はその場を去る

 

 

 

 




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魚釣り、最後の休暇

最近投稿間隔ものすごくあいてしまい、申し訳ないです。こんな小説を読んでくれるあなたが大好きだよ!

ユ「ごまかしだね?」

いや、これはホントに思ってることだよ!まあとりあえず、本編どうぞ!!


 二人と別れ僕は来た道を戻っていた。途中にあった湖で三十人ほどがわいわい騒いでいたので行ってみることにした

 

 

「こんにちは」

 

「おう、こんにちは」

 

わ、は、は、はと豪快に笑う爺さん……元気だねぇ

 

「えっと、ここでは何をやっているんですか?」

 

「見ての通り釣りじゃよ。それで大会を開いておったんじゃ」

 

「へえ……おもしろそうですね……おっと、申し遅れました。僕はユウです」

 

「こりゃ丁寧にどうも。わたしはニシダというもんですわ」

 

 

わ、は、は、はとまた豪快に笑う……とその時、向こうからキリトと……生活に疲れたような人が来た。まあ、アスナだろう…人気者はつらいんだね。キリトたちは僕がいることに驚いたようだった

 

「なっ、何でいるんだ!?」

 

「たまたま、通りかかっただけだよ。昨日ぶり、キリトとその奥さん?」

 

まあ、気をつかってアスナの名前は出さなかった

 

「助かる」

 

キリトが囁いてくる

 

「ねぇ……何でわかったの?」

 

アスナも囁いてくる

 

「キリトのそばにいる可能性のある女性でその身長はアスナだけだよ……あとはもっと小さいし」

 

囁き返す僕……アスナがキリトに詰問してる…………おもしろ

 

「おや、お知り合いですかな?」

 

「ええ……まあ」

 

言葉を濁すアスナ

 

 

「まあ、腐れ縁というやつですね」

 

お茶を濁す僕

 

「まあ、いいです。それより晴れてよかったですなぁ!」

 

「こんにちはニシダさん」

 

その後、全員に挨拶する。幸いというか、アスナの正体はばれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え〜、それではいよいよ本日のメイン・イベントを決行します!」

 

 

 

周囲の連中が大いに沸いた。……何をするんだ?ニシダの手には長い竿と、太い糸それにぶらさがっている巨大なトカゲを見ながら思った

 

「何をするんだい?」

 

小声でキリトに尋ねる

 

「ヌシを釣るために竿のスイッチをするんだと。俺とニシダさんが」

 

「そうか……」

 

キリトの筋力パラメーターで釣れないわけがないが……オーバーすぎじゃない?口には出さないがそんなことを思っていると、釣りを見たこともやったこともない僕にでもわかるような見事なフォームで竿を振ると巨大なトカゲは飛んでいき、湖に沈んだ。しばらくするとピクピクと動く

 

「き、来ましたよニシダさん!!」

 

「何の、まだまだ!!」

 

ニシダがいつもよりもさらに爛々と輝かせ、竿の先をにらんでいる。その竿の先がいっそう深く沈み込んだ瞬間

 

「いまだっ!!」

 

ニシダが体を反らせ竿を引く。次の瞬間、キリトに手渡す

 

「掛かりました!!あとはお任せしますよ!!」

 

「うわっ!こ、これ、力一杯引いても大丈夫ですか?」

 

「最高級品です!思い切ってやってください!」

 

その言葉を聞いたキリトは全力をだした。竿が中程から逆Uの字に大きくしなっている。

こんなときになんだが、僕、アスナ、キリトの力関係を説明するとレベルは僕>キリト>アスナで筋力はキリト>僕=アスナ。敏捷力は僕>アスナ>キリトである。技の好みはキリトは力での押しを得意とするが僕はどちらかというと絡め手の技を得意とする。アスナは技術で勝負するタイプ。僕はアスナに近いがキリトとも似たところがある。つまり中間なんだよ、二人の。そんなことを考えているとアスナが身を乗り出し、水中を指差した

 

「あっ!見えたよ!!」

 

僕は無駄な思考を停止し、湖面を注視する。キリトが一際強く竿をあげると、何やら巨大な魚のようなものが湖から外に飛び出した

 

「……ふむ……」

 

シーラカンスに似た六本足のやつが立っている。キリトの前に。僕は剣を出す。次の瞬間キリトの姿が後ろに消えた。そして、後ろでキリトが何やら抗議をしているが、その間に巨大魚?はこちらに走ってくる。僕は知的好奇心を掻き立てられながら後ろ向きに後退した

 

「主婦さんや」

 

「何〜?」

 

「倒してもいいのか?」

 

一応確認をとる

 

「いいけどわたしも行く」

 

すぐにいつもの姿に戻ったアスナが来た。手にはいつもの細剣

 

「もう、いいの?ばらして」

 

「あっ……」

 

天然すぎるよアスナ!!なんだよこの可愛い生物は!

 

「ま、まあ、いいか……先制よろしくね! 」

 

 僕が大技を繰り出すためアスナが先に行った方がいいのだ。後ろでニシダさんとかニシダさんとかニシダさんとかキリトとか黒の剣士とか黒い厨二病とかが騒いでるが全く気にしない。その間にもアスナが確実に巨大魚のHPを減らす。まるで舞でも舞っているかのように剣を叩きこんでいく

 

「スイッチ!」

 

アスナが叫んだとたん僕はニ刀流重突進技、<<ダブル・サーキュラー>>を放った。この一撃でHPが0になったらしく魚?はポリゴンとなって砕け散った

 

 

 

 

 

 

 

 

「スイッチいらなかったよね?」

 

どう考えても完全なるオーバーキル。僕必要ない子。 

 

 「まあ……ね。あのタイミングでスイッチするつもりだったんだけど、予想外にHPが減ってたから」

 

「…………まあいいや」 

 

アスナは苦笑いで応じる。そして、二人でキリトのもとに戻る

 

「よ、お疲れ。ユウ、途中変なこと考えてなかった?」

 

 「そんなことないと思うよ?黒の剣士とか黒い厨二病とか考えないから」

 

「やっぱりじゃねぇか!」 

 

「それより「それより……?」んん!わたしたちだけにやらせるなんてずるいよー?今度何かおごってもらうからね!」

 

「もう財布も共通データじゃないか」

 

 

 

「残念。僕は違うよ?」

 

「げ。そうだった」

 

「それってわたしのところから出ることと同じだよね?」

 

「あはは……」

 

フリーズしていた釣りメンバーのうちニシダがいち早く復活し口を開いた

 

「……いや、これは驚いた……。奥さん、ユウさん、ず、ずいぶんお強いんですな。失礼ですがレベルはいかほど……?」

 

キリトとアスナは顔を見合わせた。君らが考えていることは予想がつくがもう手遅れだと思うぞ

 

「そ、そんなことよりホラ、今のお魚さんからアイテム出ましたよ」

 

アスナが白銀に輝く一本の釣り竿が出現した

 

「お、おお、これは!?」

 

ニシダは誤魔化せると思うけど……

 

 

 

 

 

 

 

「あ……あなた、血盟騎士団のアスナさん……?」

 

一人の若いプレイヤーが前に出てくる。ほーらばれたよ

 

「そうだよ、やっぱりそうだ、俺写真持ってるもん!!」

 

「う……」

 

「か、感激だなあ!アスナさんの戦闘をこんな間近で見られるなんて……。そうだ、サ、サインお願いしていいで……」

 

キリトとアスナの間で視線を往復させて数秒

 

「け……結婚、したんすか……」

 

しょうがないから助けをしてあげる

 

「はいはい、この二人は夫婦だからアスナを狙ってた人は、諦めてねー。もし二人の中を引き裂くような真似をしたら……」

 

そこで、言葉を切りいい笑顔で(目は笑っていないが)

 

 

 

 

 

 

 

「その身を引き裂くよ?わかった?」

 

「「「「「ひいっ!?」」」」」

 

そこにいたニシダ、キリト、アスナ以外が悲鳴を上げる。笑顔に恐怖するとは失礼だね。僕はただお願いしてるだけなのに

 

「それじゃ、ニシダさん、僕だちはこれで」

 

「ああ、助かったよ!ありがとうね!」

 

キリトとアスナの腕を引いてキリトとアスナの家に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユウ君の顔、凄く恐かったよ」

 

「74層のボスより恐かった……」

 

……失礼だなぁ……恐怖を刺激するようにしただけじゃないか。

 

 

「でも、ありがとう。助かったよ」

 

「うん、じゃあ僕はこれで帰るわ」

 

「泊まっていけばいいのに……」

 

「新婚の夫婦の間に入るつもりはないよ!」

 

「ああ、じゃあおやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

僕は無言で手を振る。この時は知らなかったけど、数時間後、また会うことになる




感想くれると、嬉しいな!(インデックス風)


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休暇の終わりと会議

すみません。1年ほど更新出来てませんでした
ユ「理由は?」
いえ、あの、リアルが忙しくてですね( 。∀ ゚)
ユ「まぁ、留年したからね」
おぉい?!何故それをいう!何故それをいうんだ!
ユ「つまり大事なことなんだね!」
もうだめだぁ!おしまいだァ!
し「なら、考えなくてもいいように殺してあげるね?」
あれ?あの、あなたそんなキャラじゃないでしょ?( 。∀ ゚)
ジャキッ!カランカラン……
あの、なぜ弾を装填するんです?なぜライフルを構えるんです?
ユ×し「「吹っ飛んじゃえ!✩」」

あぁぁぁぁ……………

ユ×し「「それでは、本編どうぞ!」」


次の日、前線のヒースクリフからメールが届いた。75層のボス戦をするから参加しろ、と。もちろんキリトとアスナにも来ていたみたい。キリトはぶーぶーいっていたがアスナがなだめていた。まあ、すでに死者が出ているって言われたらね……

 

二十ニ層の転移門広場ではニシダが僕たちを待っていた。昨日ニシダだけに出発時間を知らせたからだ

 

「ちょっとお話よろしいですか?」

 

そのニシダの言葉に頷いて、広場のベンチに腰掛ける

 

「……正直、今までは、上の階層でクリアを目指して戦っておられるプレイヤーの皆さんもいるということがどこか別世界の話のように思えておりました。……内心ではもうここからの脱出を諦めていたのかもしれませんなぁ」

 

僕たちは無言でニシダの言葉を聞く

 

「ご存知でしょうが電気屋の世界も日進月歩でしてね、私も若い頃から相当いじってきたクチですから今まで何とか技術の進歩に食らいついて来ましたが、二年も現場から離れちゃもう無理ですわ。どうせ帰っても会社に戻れるか判らない、厄介払いされて惨めな思いをするくらいなら、ここでのんびり竿を振ってたほうがマシだ、と……」

 

「僕も、同じことを考えていました。ここには、抑圧してくる親も、絶対にやらなければならないものはないですからね……でも、僕は戻らないといけない。現実世界にやり残したことがあるし、何より会いたい人がいるから」

 

……まあ、キリトに気付かされたんですけどねとつぶやいてさらに言う

 

「この世界に来たことは後悔していませんよ。キリトにもアスナにも……その他大勢のプレイヤーにも……もちろんニシダさん、あなたにも出会えた。こうやって、会話もできる。この世界で生きているんです。データが作り上げた、仮初めのものだとしても、この世界で経験したり感じたことは本物だと思うんです。だから、ニシダさんもこの世界で経験したり感じたりしたことは決して無駄ではないと思います」

 

僕の勝手な自己解決ですけどと苦笑まじりにつぶやいて口をつぐむ

 

「……そうですなぁ、本当にそうだ……」

 

ニシダの眼鏡の奥で光るものがあった。キリトは涙目。アスナは盛んにうなずいて泣いている

 

「今のユウさんのお話を聞けたことだって貴重な経験です。五メートルの超大物を釣ったことも、ですな。……人生、捨てたもんじゃない。捨てたもんじゃないです」

 

ニシダは立ち上がった

 

「や、すっかり時間を取らせてしまいましたな。……私は確信しましたよ。あなたたちのような人が上で戦っている限り、そう遠くないうちにもとの世界に戻れるだろうとね。私にできることは何もありませんが、……がんばってください。がんばってください」

 

最後にニシダと握手をしてわかれる

 

「また、戻ってきますよ。その時は、釣り、付き合ってください」

 

「では、また」

 

そして僕たちは転移門の中に入り

 

「「「転移……グランザム!」」」

 

ボス戦の舞台へと転移した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偵察隊が、全滅!?」

 

場所は血盟騎士団のギルド本部の会議室。ヒースクリフからの報告を一言聞いたとたんキリトは叫んだ。キリトがそう叫ぶが無理もない。あくまで偵察なのだ。しかも偵察したのは、一握りのハイレベルプレイヤー。かく言う僕も驚きを隠せない……

 

「昨日のことだ。七十五層迷宮区のマッピング自体は、時間は掛かったがなんとか犠牲者を出さずに終了した。だがボス戦はかなりの苦戦が予想された」

 

今までのボスでもクォーターポイントごとに一つ飛び抜けた強さを誇っていたからだ

 

「……そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ」

 

二十人……破格の多さだな

 

「偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し……最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここからさきは後衛の十人の報告になる。扉は五分以上開かなかった。鍵開けスキルや直接の打撃等何をしても無駄だったらしい。ようやく扉が開いた時……」

 

一瞬ヒースクリフは口と目を閉じて、言葉を続ける

 

「部屋の中には、何も無かったそうだ。十人の姿も、ボスも消えていた。転移脱出した形跡も無かった。彼らは帰ってこなかった……。念の為、基部フロアの黒鉄宮までモニュメントの名簿を確認しに行かせたが……」

 

無言で首を振るヒースクリフ

 

「十……人も……。なんでそんなことに……」

 

「結晶無効化空間……それに開かない扉……か」

 

ヒースクリフは無言で首肯すると先を続けた

 

「そうとしか考えられない。アスナ君の報告では七十四層もそうだったということだから、おそらく今後全てのボス部屋が無効化空間と思っていいだろう」

 

「バカな……」

 

「たまたまだと信じたいけど………ね」

 

そういえば、悲観論で考え楽観論で行動しろっていうよね……どこで聞いたっけ?

 

「いよいよ本格的なデスゲームになってきたわけだ」

 

「だからと言って攻略を諦めることはできない」

 

ヒースクリフは目を閉じて、きっぱりとした口調で言った

 

「結晶による脱出が不可な上に、今回はボス出現と同時に背後の退路も絶たれてしまう構造らしい。ならば統制の取れる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。新婚の君たちを召喚するのは本意ではなかったが、了解してくれ給え」

 

「僕の任せて新婚生活をエンジョイしてくれ、って言いたいけど、絶対断るでしょ?」

 

「当たり前だろ?親友が死と隣合わせのところにいるのに楽しんでられるかよ」

 

「まあ、楽しんでいたけど、ねぇ?」

 

「うぐっ……」

 

ちょっとだけ空気が和む。ヒースクリフの纏う空気以外だが。キリトは気を取り直して言う

 

「協力はさせて貰いますよ。だが、俺にとってはアスナとリンの安全が最優先です。もし危険な状況になったら、パーティー全体よりも彼女を守ります」

 

ヒースクリフはかすかな笑みを浮かべた

 

「何かを守ろうとする人間は強いものだ。君の勇戦を期待するよ。攻略開始は三時間後。予定人数は君たちを入れて三十ニ人。七十五層コリニア市ゲートに午後一時集合だ。では解散」

 

ヒースクリフ以下配下の男たちは一斉に立ち上がり出ていった

 

「ねぇ、キリトとアスナ」

 

「「うん?」」

 

「奴の、ヒースクリフについて何か変わったことはない?」

 

「変わったことって……ねぇ?」

 

「うーん……」

 

「いや、システム的にあり得ないとか、おかしなセリフとかあったら知りたいんだ」

 

先ほどのヒースクリフの目が気になった。十人が死んだと告げたとき、目を閉じる寸前に目に浮かんだ冷ややかな光が。あれは、人の死を悲しむ目じゃない。よく表現出来ないけど、ドラマとかであるイカれた科学者モルモットとかを見る目だった、

 

 

「そういえば、この間のあいつとのデュエルで最後にあり得ない動きをしてたな……今まで見た誰よりもあの一瞬、速かった……で、これがどうかしたのか?」

 

「いや……それだけ聞ければ十分だよ」

 

証拠はないけど……

 

「そうか……」

 

「何か気になるの?」

 

ユイのときのようなことを想像しているのだろう。が奴に今戦線を抜けてもらっては困るので黙っておくかな

 

「何でもない。じゃあ、俺も行くよ。新婚のお二人さんは仲良く、装備の確認でもしておいで?」

 

「なっ……」

 

わぁー、真っ赤だねぇアスナさん。その言葉を最後におれはその場を離れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばアスナ」

 

「なに?キリト君」

 

「あいつ、自分のこと俺って言わなかったか?」

 

「うーん。………そうだった?勘違いじゃない?」

 

「そうなのかな……」




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ボス戦と魔王と

ということでこれまでのを巻き返すためにも、本日には分以上投稿致します!

ユ「あ、ようやくやる気になったんだ」
やるときはやる子なんd……
し「でも、半年以上空いてるんだよね?」
うっ………
ユ×し「「はぃ、ギルティ!」」
あれ、なんで銃を構えるの?ユウくんもなんで剣構えるの?

ユ×し「「死んで詫びなさい!」」

ぎゃぁぁぁぁ……………

ユ×し「それでは本編どうぞ!」


七十五層のコリニア市のゲート広場には、多数のプレイヤーがいた。その中にハゲた斧使いと刀を担いだ悪趣味なバンダナやろうを発見したので……バンダナの方だけ足払いをかました

 

「ぬぉぁ!?」

 

期待通りに転んでくれたので僕はハゲた斧使い、エギルに話しかけた

 

「おーい、エギルも参加するんだね」

 

「おう、ユウ。久しぶりだな」

 

その時下からバンダナが起き上がってきた

 

「てめぇ、ユウ!何しやがる!」

 

「足払いだよ?何言ってんの?」

 

「……まあ、そうか……ってそういうことじゃねぇよ!」

 

その時、再び門が光見知った顔が現れたのでバンダナの刀使い、クラインを無視してそっちに行った。クラインも諦めたらしく、僕の後ろをエギルとともに着いてきた

 

「やっほー、キリト」

 

「よう、ユウ。あれ?クラインやエギルも参加するのか」

 

「今回はえらい苦戦しそうだって言うから、商売を投げ出して加勢にきたんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」

 

「無私の精神はよーく解った。じゃあお前は戦利品の分配からは除外していいのな」

 

「いや、そ、それはだなぁ……」

 

笑いが起こる。ピンと張り詰めていた空気が少し和らいだ気がしたが、次の瞬間、ヒースクリフを筆頭とする血盟騎士団の精鋭が姿を現すと再び空気が張り詰めた。そして僕たちの前に歩みを進めると口を開いた

 

「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。……解放の日のために!」

 

おおーという声が上がる

 

「キリト君、それにユウ君、今日は頼りにしているよ。<<二刀流>>、存分にふるってくれたまえ」

 

その声には気負いも恐怖も感じられない。かなり不自然だと僕は思うけど……

 

「では、出発しよう。目標のボスモンスタールーム直前の場所までコリドーを開く」

 

周囲のプレイヤーたちから驚きの声が上がる。ヒースクリフが「コリドー・オープン」と呟くと転移門によくある揺らめく光の渦が出現した

 

「では皆、ついてきてくれたまえ」

 

ヒースクリフのあとに続き転移をした。転移するとそこはもうすでにボス部屋の前だった。重厚感溢れる門がそこに鎮座している。門の隙間からは重い冷気を含んだ風が吹いてくるような感じがして思わず身震いしてしまった

 

「……なんか……やな感じだね……」

 

「ああ……」

 

後ろでキリトとアスナが話しているが、それには僕も同感だ……っと、装備の確認でもしておこうかな

 

「死なないでね?」

 

「当たり前だろ」

 

キリトが肩を叩きそんなことを言ってきたので不敵に笑い返す。そういうやり取りをしている間に、二人のプレイヤーが扉を開けた

 

「戦闘、開始!」

 

そう高々と言ったヒースクリフを先頭に全員が中へ走りだす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が中央につくと後ろの扉が音高くしまった。しかし、数秒間痛いほどの沈黙が続く。それに耐えられないといった感じで一人のプレイヤーが「おい……」と声を上げた次の瞬間

 

「上よ!」

 

アスナが鋭く叫ぶ。それに反応して素早く顔を上げると、骸骨の顔、巨大な一対の鎌、そして長い無数の足がある胴、名前は<<The Skullreaper>>……骸骨の刈り手が天井近くに張り付いていた。が、そうこうしているうちに全ての足を広げ、僕たちの方へ落ちてきた。大半はさすがの反応速度を見せ、落下地点からすぐに離れたが、落下地点の中央にいた三人のプレイヤーの反応が遅れた

 

「こっちだ!!」

 

キリトが叫び、その言葉に我に返った三人は走りだしたが、落ちてきた骸骨百足から発生した衝撃でたたらを踏んだ三人の背中に右腕が横薙ぎに振り下ろされた。三人はぶっ飛ばしたされ、空中で無数のポリゴンとなって霧散した

 

「……あり得ないよ、こんなの……」

 

思わずつぶやいた。レベルが上がれば、HPの総量は増える。つまり、死ににくくなる。にもかかわらず、三人は一撃死した。そうこうしているうちに新たなターゲットを決めたらしく骸骨百足が一つのプレイヤーの集団。僕から見れば右手のプレイヤー群に向かっていった

 

「わぁぁぁぁ!!」

 

狙われたプレイヤーたちが恐怖の叫びを上げる。そして、そのプレイヤーたちに必殺の鎌が振り下ろされ……なかった。ヒースクリフが鎌を迎撃。弾き返した。もう一つの鎌はキリトとアスナが完全にシンクロした動きで対処している。ならば、僕たちのやるべきことは……

 

「皆、側面から攻撃だよ!」

 

僕が声を張り上げると皆が「おうっ」と応えて骸骨百足の側面にそれぞれの武器を叩きつける。僕も一対の双剣を叩きつける。まず、右手の剣で水平四連撃<<ホリゾンタル・スクエア>>を放つ。右腕を意識から外し、左腕に意識を集中させる感覚、僕の編み出したシステム外スキル<<スキルコネクト>>。左腕で放つ三連撃<<バーチカル・スクエア>>。ここで意識をさらに左腕から外し、右腕に移す。その時、骸骨百足の足がこちらに突きを放ってきたので、右腕で<<ヴォーパル・ストライク>>を放ち迎撃。反動で後ろに下がり、カウンター気味の双剣重突撃技<<ダブル・サーキュラー>>を放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは、あまり記憶になかった。無数に繰り出される足技をパリィで弾き、隙を見ては<<スキルコネクト>>で多段ソードスキルでHPを削る。他の場所からは悲鳴、気合い、怒号、そして、アバターの破裂音。それらが響き渡る戦場でひたすら剣を振るい、骸骨百足が爆散したとき、腰を下ろしてしまった。そして、お互いに背中を預け座り込んでいる、キリトとアスナが目に留まったので、ひとまず安堵し、そちらに這っていった

 

「……よかった……生きてたんだね」

 

「当たり前だろ……?死なないって行っただろ……?」

 

まさにいき絶え絶えといった感じでキリトがこたえる

 

「三人……生き残れたね……」

 

キリトの後ろでアスナが言った。僕も二人にもたれかかる。しばらくその状態で茫然としていた。すると、そばにいたクラインが訊ねてきた

 

「何人……やられた……?」

 

クラインの向こうで仰向けに寝ているエギルもこちらに目を向けてきた。キリトは手を振りマップを呼び出すとプレイヤーの光点を数えた

 

「……十四人、死んだ」

 

「……うそだろ……」

 

トッププレイヤー、三十人中十四人も死んだのだ。ダンジョンはあとニ十五層。この上はこの七十五層ほど強いとは思えないが、かなりの強さだろう。そんなんでクリアできるのだろうか?

今、このフィールドで立っているのはヒースクリフただ一人だ。その視線は血盟騎士団のメンバーに向けられている。その視線は暖かいがまるで

 

 

 

 

実験動物を見ているような視線だった。この時、疑念は確信し変わった。ヒースクリフのHPはギリギリグリーン。その時、キリトが動いた。目から読み取れた言葉は"ごめん"だった。キリトは身をひねりながらヒースクリフに向かって駆け出した。片手剣の基本突進技<<レイジスパイク>>を発動していた。ヒースクリフが驚きに目を見開いて盾を使いガードしようとするがキリトの剣は途中で鋭角に動きを変え、ヒースクリフに直撃した。ヒースクリフとキリトの間に【Immortal Object】つまり不死存在の文字が浮かんだ

 

「キリト君、何を……」

 

その文字を見て声を上げたアスナを含む全員が言葉を失った。キリトは軽く後ろに跳んでヒースクリフとの間をとった。僕とアスナは立ち上がり、キリトの横に並ぶ

 

「システム的不死……?……って……どういうことですか……団長……?」

 

「見てわかるでしょ、アスナ……システム的不死を持つことができるのはユイみたいなシステム……これはあり得ないんだ。システムがボス戦に出続けるなんてね。システムじゃないとしたら、それははGMを含むスタッフだけだ。けどスタッフはいない……ただ一人を除いてね」

 

俺の言葉を引き継ぎキリトが言い放った

 

「<<他人のやってるRPGを傍から眺めるほど詰まらないことはない>>。……そうだろう、茅場晶彦」

 

「団長……本当……なんですか……?」

 

アスナが呆然と訊ねるがヒースクリフはそれをスルーし、俺たちに向かって言葉を発した

 

「……なぜ気付いたのか参考までに教えてもらえるかな……?」

 

「……最初におかしいと思ったのは例のデュエルの時だ。最後の一瞬だけ、あんた余りにも早過ぎたよ」

 

「やはりそうか。あれは私にとっても痛恨事だった。君の動きに圧倒されてついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」

 

苦笑の色を滲ませながら、君は?とこちらに目配せをする

 

「俺が疑いを持ったのは、あんたの”目”を見たときだ」

 

「目?」

 

「そう、目は口ほど物を言うっていうだろ。目を見た瞬間怪しいと思ったよ。まあ、ただの直感なんだが、キリトの例のデュエルの話を聞いて怪しいは疑惑に変わったよ。そして、今のあんたの目。明らかに見下しているような目だったよ」

 

「君はなかなか鋭い目をしているね。まさか目で疑われるとは思わなかった」

 

そうしてヒースクリフはゆっくりとプレイヤーたちを見渡し堂々と宣言した

 

「確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば、最上層で君たちを待つはずだったこのゲームの最終ボスでもある」

 

アスナがよろめくがキリトが右手で支えた

 

「……趣味がいいとは言えないぜ。最強のプレイヤーが一転最悪のラスボスか」

 

「なかなかいいシナリオだろう?盛り上がったと思うが、まさかたかが四分の三地点で看破されてしまうとはな。……君たちはこの世界で最大の不確定因子だと思ってはいたが、ここまでとは」

 

不適な笑みを浮かべるヒースクリフ

 

「……最終的に私の前に立つのは君らだと予想していた。全十種存在するユニークスキルのうち、<<二刀流>>スキルは全てのプレイヤーの中で最大の反応速度を持つ者に与えられ、その者が魔王に対する勇者の役割を担うはずだった。……なぜ二人<<二刀流>>が現れたのかはわからないがね」

 

「一回俺は死んでるからね。あんたのクリスマスプレゼントが役に立ったよ」

 

それを聞いたヒースクリフは苦笑いを浮かべた

 

「まさか、ちょっとしたサービスのつもりが<<二刀流>>を二人生み出していたとは……まあ……想定外の展開もネットワークRPGの醍醐味と言うべきかな……」

 

「貴様……貴様が……。俺たちの忠誠……希望を……よくも……よくも……よくもーーーッ!!」

 

血盟騎士団の幹部プレイヤーが巨大な斧槍を握りしめ絶叫しながら地を蹴りヒースクリフ、茅場に振りかぶる。が、ヒースクリフは左手を振りウインドウを操作する。その途端男は空中で停止、そして地に落ちた。HPバーにグリーンの枠。つまり麻痺状態だ。茅場はそのまま、ウインドウを操作し、俺とキリト以外の全てのプレイヤーを麻痺状態にした

 

「……どうするつもりだ。この場で全員殺して隠蔽する気か……?」

 

「まさか。そんな理不尽な真似はしないさ」

 

首を左右に振ると続ける

 

「こうなってしまっては致し方ない。予定を早めて、私は最上層の<<紅玉宮>>にて君たちの訪れを待つことにするよ。九十層以上の強力なモンスター群に対抗しえる力として育ててきた血盟騎士団、そして攻略組プレイヤーの諸君を途中で放り出すのは不本意だが、何、君たちならきっと辿り着けるさ。だが……その前に……」

 

ヒースクリフは右手の剣を床に突き立てる

 

「キリト君とユウ君、君たちには私の正体を看破した報奨を与えなくてはな。チャンスをあげよう。今この場で私とニ対ニ……」

 

茅場が言い掛けたとき茅場の影がヒースクリフそっくりな形をとる

 

「……で戦うチャンスを。無論不死属性は解除する。私たちに勝てばゲームはクリアされ全プレイヤーがこの世界からログアウトできる。……ちなみに、この影の名前は<<ドッペルマン>>。本来九十九層にしかいないモンスターなのだが、他のモンスターに化け同じステータスで動くことが可能だ。私はモンスター扱いなので、今のこのモンスターは私と同じだ。私と<<ドッペルマン>>が組み、キリト君とユウ君が組む……どうかな?」

 

その言葉を聞いた途端、キリトの腕の中にいたアスナが首を振った

 

「だめよキリト君、ユウ君……!あなたたちを排除する気だわ……。今は……今は引きましょう……!」

 

確かにそれがベストだろう。だが……それでもな……。

 

「「ふざけるな……」」

 

こいつだけは許せない。育ててきただと?俺たちの命を何だと思っているんだ。俺たちが命をかけて戦ってきたのを嘲笑うかのような発言を俺は到底許すことなどできない

 

「いいだろう……」

 

「決着をつけよう……」

 

「キリト君っ、ユウ君っ……!」

 

「ごめんな。ここで逃げるわけには……いかないんだ……」

 

「うん……こいつだけは許せない」

 

アスナは涙を流していた

 

「死ぬつもりじゃ……ないんだよね……?」

 

「ああ……。必ず勝つ。勝ってこの世界を終わらせる」

 

「言ったでしょ?俺は死なないと」

 

「解った。信じてる」

 

キリトはアスナの体を床に横たえさせて立ち上がる。そして、俺の横に並ぶと両手で二本の剣を抜き放つ。俺もそれにならい、腰から二本の剣を抜く

 

「キリト!やめろ……っ!」

 

「ユウーッ!」

 

声を出したのはエギルとクライン

 

「エギル。今まで剣士クラスのサポート、サンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんど全部、中層ゾーンのプレイヤーの育成につぎこんでたこと」

 

キリトがエギルに話しかけている間に俺はクラインに話しかける

 

「クライン。あの時は、世話になったね。クラインがあの時俺を復活させてくれなかったら、俺はこの場に立っていることができなかったよ。……感謝してる」

 

クラインは両目からかなりの量の涙を出しながら叫んだ

 

「て……てめえ!ユウ!詫びいれてんじゃねえ!今詫びいれんじゃねえよ!!許さねえぞ!ちゃんと向こうで、メシのひとつもおごってからじゃねえと、絶対ゆるさねえからな!!」

 

現金なやつだねと微笑み呟きながら俺は茅場に向き直る

 

「……悪いが、一つだけ頼みがある」

 

「何かな?」

 

「簡単に負けるつもりはないが、もし俺たちが死んだら……しばらくでいい、アスナが自殺できやいように計らってほしい」

 

「ついでに、アスナが快適に生活できるようにもして欲しいかな」

 

「良かろう。彼女はセルムブルグから出られないように設定し、定期的にコルを支給しよう」

 

「キリト君、ユウ君、だめだよーっ!!そんなの、そんなのないよーーっ!!」

 

アスナの絶叫が響くが俺もキリトも、もう振り返らなかった。茅場がウインドウを操作すると、俺、キリト、茅場、モンスターのHPがレッド直前、強攻撃のクリーンヒット一発分のHPに調整された。ついでに、茅場の頭上に【changed into mortal object】…不死属性を解除したというシステムメッセージが表示される。茅場は操作を終えると長剣を抜き、十字盾の後ろに構えた。同時に<<ドッペルマン>>も茅場と同じ構えを見せた。キリトは茅場に俺は<<ドッペルマン>>。口には出していないが、目でその事を決め、それぞれ向かいあった。

「なぁ、ユウ。」

 

「なんだい?」

 

「おまえ、一人称、わざと僕にしてたのか?お前今、自分のこと俺って言ってるぞ?」

 

「 あぁ、別に隠してたわけじゃないよ。昔から、なんか気持ちが昂ったりすると俺って言っちゃうんだよ…あはは……」

 

「なるほどな。 ま、最後にそれを知れたのはなんか嬉しいかもな。ユウのこと、知らないこと結構あったから。」

 

「なら、リアルに帰れたら、また教えてあげるよ。」

 

「わかった。なら余計に帰らないとな。それにはまずは」

 

「あぁ、まずは」

 

ヒースクリフ、いや、茅場晶彦。こいつを…………

 

 

「「殺す……っ!!」」

 

俺達のその言葉とともに両者は動き始めた




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決着

2話目でーす!
ユ「でーす!」
し「でーす!」
しーちゃんかわいいn
ユ「今変なこと考えてたよね?刻むよ?」
ひぇっ((( ´ºωº `)))ガタガタ


ユ×し「「それでは本編どうぞ!」」


 

短い呼気とともに飛び出した俺は、挨拶代わりの右手からの突きを放った。<<ドッペルマン>>は左手の盾でガードすると、右手の剣で袈裟斬りを仕掛けてくる。

俺はそれを左手の剣で弾くと右手の剣を叩きつけようとした。それに反応した<<ドッペルマン>>は盾で弾こうとするが、当たる直前、右手の剣を引き二本の剣で斬りつけた。

<<ドッペルマン>>は完全にはかわせなかったようで、ダメージが入ったが本当に少しだ。お返しとばかりに<<ドッペルマン>>は猛然とラッシュを仕掛けてきた。

二本の剣で弾く。そして隙をみて反撃するが、全て弾かれる。どうやらユイのようなAIを持っているようで、先ほどのフェイントはもう効かない。

それならば茅場の記憶も持っているだろう。全てのソードスキルは読まれると見ていい……たからこそ、勝機はある!

 

俺は右手の剣で水平四連撃<<バーチカル・スクエア>>を放った。<<ドッペルマン>>がにやりと笑った気がした。しかし、にやりと笑い返してやった。すると<<ドッペルマン>>は戸惑ったような表情を見せた。もちろん、この間も手は止まっていない。そして、<<バーチカル・スクエア>>の最後の一撃。それから意識を外し、左手に意識を集中させる。相手も動きだす。<<バーチカル・スクエア>>後の硬直時間を狙った完璧な一撃。普通のプレイヤーならば不可避だろう。普通ならば。必殺だった一撃は俺の右手の剣にあたり、右手の剣を砕いた。だが俺は止まらない。左手の剣で単発重攻撃<<ヴォーパル・ストライク>>をソードスキルを放って硬直中だった<<ドッペルマン>>に叩きこんだ。<<ドッペルマン>>は無数のポリゴンになり爆散したときには俺はもう駆け出していた。キリトはその時二刀流最上位剣技<<ジ・イクリプス>>を放っていた。連続二十七回攻撃だが……

 

「それはダメだよ!」

 

剣技をデザインしたのは全てやつだ。ならばどこに来るのかも全て読める。読めるということは、防げるということだ。俺の言葉にキリトは、はっ、としたような表情をした。茅場は勝利の笑みを浮かべていた

 

「さらばだ……キリト君」

 

やつが放ったソードスキルは盾と剣のニ連撃、神聖剣上位剣技<<ホーリー・ティアー>>。その時キリトと茅場の間に割り込む影……アスナか……全く、僕もアスナも損な役割だよね………はぁ。

 

「アスナ、ユウ……何で……」

 

簡単に言うと茅場の放ったソードスキルを僕とアスナが体で受けた。もちろん、HPは吹っ飛び、倒れこむ

 

「約束……守れなかったよ……ごめん」

 

それを言って、僕の意識は暗転した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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再び、周囲が色づいて行く……あれ?僕は死んだはずじゃ?足元には分厚い水晶の板があった

 

「……ユウ」

 

「……ユウ君」

 

呼ばれたのでそちらを向くとキリトとアスナがいた

 

「ここはどこ?死後の世界かな?SSSに勧誘しに来たのか?それとも異世界転生でもしちゃった?」

 

滅多にしないボケをかましている時点でかなり混乱しているのはわかるとおもう

 

「アインクラッド……」

 

キリトとアスナの視線の先にあったのは巨大浮遊城だった。それを見ているとアスナが抱きついてきた。キリトに目を向けると苦笑いだった

 

「あ……」

 

城が崩れ始めていた。赤い雲海に城の全てが崩れ、落ちてい。懐かしい場所や、死にかけた場所など、といった場所も差別なく崩れ落ちていく。アスナは、僕から離れキリトと僕の腕を脇に抱え無言で崩壊する様子を見始めた

 

「なかなかに絶景だな」

 

傍らから声がしたので僕らは視線をそちらに向けると白衣姿の茅場晶彦がいた。怒りや憎しみは不思議と感じなかった。それはキリトとアスナも同じだったようで、茅場から視線を外すと再び巨城に目を向けた。やがてキリトが口を開いた

 

「あれは、どうなってるんだ?」

 

「比喩的表現……と言うべきかな。現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去作業を行っている。あと十分ほどでこの世界の何もかもが消滅するだろう」

 

「あそこにいた人たちは……どうなったの?」

 

「心配には及ばない。先程……」

 

茅場はウインドウを開き眺めて言った

 

「生き残った全プレイヤー、6147人のログアウトが完了した」

 

キリトは一度強く目をつむると、口を開いた。目には光るものがあった

 

「……死んだ連中は?一度死んだ俺たちがここにこうしているからには、今までに死んだ四千人だって元の世界に戻してやることができるんじゃないのか?」

 

「命は、そんなに軽々しく扱うべきものではないよ。彼らの意識は帰ってこない。死者が消え去るのはどこの世界でも一緒さ。君たちとは、最後に少しだけ話をしたくて、この時間を作らせてもらった」

 

それが四千人を殺した人間の台詞か?と思ったが、僕は別の質問をした

 

「なんで、こんなことをしたの?」

 

茅場は苦笑を洩らすとしばらく考えて言った

 

「なぜ……、か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時……いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創りだすことだけを欲して生きてきた。そして私は……私の世界の法則をも越えるものを見ることができた……」

 

某整合騎士さんが聞いたら、それは心意だと言いそうだ……某整合騎士さんって誰だろう?

 

「子供は次から次へといろいろな夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな……。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。年を経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、キリト君、ユウ君。まだ信じているのだよ……どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」

 

「ああ……そうだといいな」

 

アスナに続いて、僕もうなずく。あの城は僕にとっての自由の象徴。あの城は僕を変えてくれた……

 

「……言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリト君、アスナ君、ユウ君」

 

茅場は穏やかな表情で僕たちを見下ろす

 

「……さて、私はそろそろ行くよ」

 

その言葉を残し、茅場は消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お別れだな」

 

そう言ったキリトの頭をはたく。キリトは、え?って顔をしている。アスナは小さく首を振った

 

「ううん、お別れじゃないよ。私たちは一つになって消えていく。だから、いつまでも一緒」

 

「さて……僕は一人寂しく……いてっ」

 

キリトとアスナに頭をはたかれた

 

「何言ってんだ。ユウも一緒だろ?」

 

「新婚気分の夫婦の間に入る勇気はないよ……まあでも、それも悪くないかな」

 

僕たちは微笑み合う

 

「ね、最後に名前を教えて。キリト君とユウ君の、本当の名前」

 

キリトが思い出そうとしているので、それに苦笑しつつ口を開いた

 

「鈴木悠斗。それが僕の本当の名前だよ。多分今は十七だと思うよ」

 

「桐ケ谷……桐ケ谷和人。多分先月で十六歳」

 

「すずき……ゆうと君ときりがや……かずと君……」

 

口調がゆっくりになった。まるで魂にでも刻み付けているように

 

「キリト君、年下だったのかー。……わたしはね、結城……明日奈。十七歳です」

 

……結城?聞いたことあるけどどこだったかな……。そんな思考をしていると明日奈が僕とキリトに抱きついてきた

 

「わたし、幸せだった。和人君と会えて、悠斗君と会えて……ありがとう……和人君……愛してます……。悠斗君……大好きだよ……」

 

僕には明日奈に返す言葉が見つけられなかった

 

僕たちは抱き合ったまま光の粒子となり消えていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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目が覚めるとそこは病院だった。僕は死んだはずじゃ……と思ったが、次の時には、そうか、茅場は生かしてくれたか……に変わった。僕が生きているということは、キリトもアスナも生きているということだ。長い間寝たきりだった影響か、体に全く力が入らなかった。それでも、一歩を踏み出そう。新たに始める人生。全てを取り戻し、夢に向かって歩きだすために。その時、病室の扉が開き、黒髪の眼鏡の女の子が目に涙をためながら飛び込んできた




次回、しーちゃんが登場します(みんなもうわかってると思うけど)


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帰還と……

本日3話目です!
しーちゃんさんや、ようやくの登場ですな( 。∀ ゚)
ユ×し「「作者が出さなかっただけだよね」」
ご、ごめんなさい
ユ×し「「ギルティ!死に晒せー!☆」」

ぎゃぁぁぁぁlll_ _ )

なんで作者なのに毎回殺されるんだろ( 。∀ ゚)



ユ×し「「そんなことは置いといて!本編、どうぞ!」」


 

現実世界に戻って最初に見た顔、それは黒髪に眼鏡、そして目に涙を溜めた少女、朝田 詩乃だった。今は抱きつかれているが、正直寝たきりだった僕にはつらい

 

「……生きてて……よかった……」

 

「詩乃……ただいま」

 

「おかえりなさい……」

 

詩乃はそう言って放してくれた。久しぶりに見る詩乃の笑顔は可愛かった。そんなことを思っていると、突然背筋が凍ったような気がした。懐かしい感覚。アインクラッドで何度も感じた冷たい感覚……そう、殺気を

 

「……どうしたの?」

 

俺の様子を不審に思ったのか詩乃が訊ねてきた

 

「……いや、何でもないよ」

 

詩乃を心配させないように俺は笑顔を作りながら周囲をうかがった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか」

 

詩乃の話を聞くと、僕の両親は今は日本にいるらしい……そろそろ来るころかなと思ったところで扉が開き、二人の人間が入ってきた……しまった、フラグだったか。とにかく、こいつらには会いたくなかったんだけどなぁ。俺の両親が入ってきた

 

「……よくもぬけぬけと生きて帰ってきたものだな」

 

「そんな言い方はっ!!」

 

「いや、良いんだよ詩乃」

 

「でも!!」

 

俺が首を振ると詩乃は黙り込んだ。俺の父親は、詩乃を見ると呟いた

 

「ふん。殺人者が……」

 

「貴様……その台詞を撤回しろ」

 

「なぜ撤回しなければならない?事実を述べただけだろう?」

 

「貴様は、詩乃の気持ちを、考えたことがあるのか!!」

 

「そんなこと……どうでもいい。とにかく、お前はすぐにその殺人者との関係を断て。わかったな」

 

「……断る……」

 

「何?」

 

「断るって言ったんだ。詩乃は俺の支えになってくれた。貴様が奪ったもの……安らぎをくれた。だから、何と言われようとも詩乃は放さない!」

 

……後から考えると、これって告白じゃない?

 

俺のことはいいが詩乃のことを悪く言うのは、許さない。うつむく詩乃。俺の服の袖を強くつかんでいる。そしてやつは再び俺の方を向き口を開いた

 

「口のきき方に気をつけろ。……どうやら、教育が足りなかったようだな……いや、ゲームの中で忘れてしまったのか?まあいい。退院したら、自由はないと思え。私の後継者となるにふさわしい人物にしてやる」

 

そう言って父親は出て行った。そして、残ったのは母親だった

 

「生きてて、よかった……」

 

「は?」

 

……おかしい。俺の母親は俺に厳しく、縛り付けてきていたはずだ。そんな人から心配の言葉が出るなんて……

 

「あなたがゲームから出てこれなくなったとき、私はあなたにつらくあたってしまったことをとても後悔したわ……」

 

……分からない……何で今さら親の顔をしてるんだよ……!

 

「出ていけ……出ていけよ!」

 

「すぐにはわかってもらえないかもしれないけど……」

 

そう言って母親は出ていった。正直、どうしていいのかわからなかった。だから、剣呑に追い出してしまった

 

「悠斗……」

 

詩乃が心配そうにつぶやく。とりあえず落ち着かないと。

 

「大丈夫だよ。とりあえず、体を動かせるようにしないとね」

 

「うん……そうだね。とりあえず、体を拭かないと」

 

「あの……それは看護師さんにまかせればいいのでは……?」

 

「……嫌なの?」

 

「嫌ではない、むしろ嬉しいけど……」

 

「じゃあ、いいよね」

そういって詩乃は僕の体を拭き始める。まわりの目が生暖かいんだけど……。その後も詩乃は僕の世話をやりたがり……看護師たちの間で、僕と詩乃は有名になった。母親が持って来てくれたパソコンを使い、極めて不本意だが父親の会社の権限を利用し、キリトたちのリアルの住所、携帯番号などを調べあげた。まだ、連絡とかはしてないけど、まあ落ち着いたらしようと思う。今は詩乃についてもらってリハビリ中である。多少は歩けるようになったが、体力の低下はどうしようもないなぁ……。詩乃は甲斐甲斐しく世話をしてくれるが……これがまた恥ずかしい……あーん、とかやってくるんだよ?……今、リア充とか言ったやつ。今度剣で語り合う必要があるみたいだね

 

「朝田さん。今日の面会時間は終わりですよ」

 

詩乃は面会時間ギリギリまで僕の病室にいる。看護師たちともすっかり顔馴染みになり、看護師たちもこちらを見て微笑んでいる。今日は婦長さんが、若いっていいわねって言ってました。……羞恥プレイかな?

 

「はい、わかりました。じゃあ、また明日ね、悠斗」

 

「うん、また明日」

 

明日は月曜日。学校に行くらしい。……虐められてなければいいけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに、一週間後。すっかり、体は元に戻り(多少筋力は落ちたが)僕は、かなりの羞恥に対する耐性を得て退院した。母親が父親を説得し、数週間の猶予をもらったらしい。退院したとき、病院の入り口で詩乃は待ってくれていた

 

「退院おめでとう」

 

「ありがとう……詩乃のおかげだよ」

 

「どういたしまして……ねぇ」

 

顔を真っ赤にして何かを言おうとする詩乃

 

「明日さ、暇だったら遊園地に行かない?」

 

僕は鈍感ではないので、顔を真っ赤にした女の子がどこかに誘おうとする意味はわかる。つまり……詩乃は僕のことが好き?……ってことなのかな。そんな思考をしつつ、とりあえず聞いてみる

 

「それって、デートのお誘い?」

 

「……っ!!」

 

ボンと音が聞こえてきそうなほど顔を真っ赤にする詩乃……やっぱりそうなんだ……すごく嬉しい

 

「私のこと嫌い?」

「嫌いな子の側になんかいないよ。明日だよね?何時にどこ集合?」

 

頭をぽんぽんとたたく。以前は何かあるたびに、殺人者だから……って言ってたのでそのたびに一時間ほど説教してやったものだよ……懐かしいなぁ

 

「じゃあ、明日の朝10時。近くの駅前で……どう?」

 

「じゃあ、それで。今日はどうする?」

 

「えっと……今日は……って体はいいの?」

 

「おかげさまで」

 

「じゃあ、買い物に付き合ってくれる?」

 

上目遣いでチラチラ見てくる詩乃。何この可愛い生き物

 

「了解。じゃあ、一旦家に帰ってからね?場所は、駅前でいいかな?」

 

「うん!」

 

楽しそうに歩く詩乃とわかれ一人家路についた。粘つくような殺気を感じながら……




急展開過ぎて変じゃなかったですか?( 。∀ ゚)

というか作者はデートなんてしたことないから書けない!わかんない!どうしよう!?


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買い物と壁

遅くなって、すみません( 。∀ ゚)
ユ×し「取り敢えずあの世で懺悔すれば?」
ピチューン( 。ω 。)

ユ×し「ではでは、本編どうぞ!」

(恋愛なんて僕には書けなかったよ……( 。∀ ゚))


あの後、一旦家に帰り(両親はいなかった)僕は、駅前に行った。すると、しーちゃんはすでに来ていた。というわけで観察することにする。しーちゃんは持っている文庫本を読みつつ、しきりに時計に目をやる。服装は……作者が服のことは全く分からないので勘弁してくれないかな……まあ、行こう

 

「やあ、詩乃。待ったか?」

 

後ろから近づき肩を叩くと、驚いた様子で文庫本を閉じ、ついで嬉しそうに笑顔を見せ、最後に恥ずかしそうに顔を赤らめた

 

「ううん。私も今来たとこ。じゃあ、行こ」

 

しーちゃんは顔を見られたくないのか、僕の手を握ってずんずん歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

電車内では、話題がないのでどちらも沈黙していた。これではいけないと思って、とりあえず話しかけようとすると

 

「「ねぇ」」

 

……ギャルゲのイベントだろうか?見事に重なった

 

「詩乃からでいいよ」

 

「うん……」

 

気合いを入れるためか、一度うなずくとしーちゃんは口を開いた

 

「あの時……悠斗の言葉って……どういう意味?」

 

あの時……父に向かって言った言葉だよね……

 

「それについては、明日まで待ってくれないかな? 」

 

するとしーちゃんは期待と不安の入り交じった顔をした

 

「もう一つ聞きたいんだけど……」

 

しーちゃんは何かを言い掛けるがためらうような素振りを見せた

 

「SAOについてならいいよ。でも、何で?」

 

図星だったらしく、顔を俯ける

 

「あの世界で何をしてたか、悠斗のことをもっと知りたいから……」

 

「……わかったよ。まず、閉じ込められたときに思ったのは、解放感だったよ。これで、親の重圧から逃れられるってね」

 

「あんな人だからね……」

 

しーちゃんは苦笑まじりに言った

 

「しばらくは、そんな気持ちのまま戦ってたんだけど、ある日あったプレイヤーと話しててね。まあ、その時初めて現実に帰りたいと思ったよ」

 

……詩乃のことが心残りだったからね、と続けると顔を真っ赤にした

 

 

そんなことを話しているとどうやら目的の駅についたようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しーちゃんの希望で服屋へ。選んで欲しいらしいんだけど、僕は服についてはわからないからね……?

 

「これはどう?」

 

というわけでしーちゃんが選んで僕が評価するという形をとった

 

「いいんじゃないかな?」

 

どんな服かって?……まあ、似合ってたね。うん。

 

服の説明なんて俺には無理なんだよ!by作者

 

「じゃあ、これを買おうかな……」

 

レジに持っていこうとしたしーちゃんからその服を取り上げて、僕が持っていく。僕が財布を取り出すと

 

「私のだから、お金は私が……」

 

「詩乃は家計がヤバイんじゃないの?」

 

少なくとも最後に会ったときはそうだったと思う

 

「そうだけど……」

 

「看護のお礼だと思って、ね?今日、明日は僕に奢らせてよ。そうでなくても、女性に払わせるようなことはできないよ」

 

「……ありがとう」

 

赤面……可愛いなぁ……軽く変態になってないかな?僕。

 

「次はどこに行きたい?どこでもいいよ?」

 

しばらく、考え込むしーちゃん。やがてニヤニヤしながら口を開いた

 

「じゃあ、ランj……」

 

「却下だね」

 

「……どこでもいいって言ったじゃん」

 

ニ文字目で内容を察し、却下する。わかるでしょ?男子諸君。ラブコメで有りがちなあそこだよ

 

「あそこは男は入れない場所だよ。」

 

「でも悠斗なら元が可愛いから……」

 

「それさ?僕が気に来てるの知ってるよね?」

 

「……じゃあ、喫茶店でも」

 

「了解。ならいい場所があるよ」

 

ちょっとむくれているしーちゃんを馴染みの喫茶店に連れて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前小さい時、両親に反抗して家を飛び出したとき偶然見つけた喫茶店に入る。もちろん、その家出のときは入らなかったけど。中学生になってから、改めて行ってそれから常連になっただけである。カランカランと扉に付けられた鐘が鳴る

 

「いらっしゃい」

 

……あれ?マスターが変わってるし、見間違いかな……?エギルがいるように見えるんだけど……というわけで一旦外に出る

 

「どうしたの?」

 

「知り合いがいたような気がしたんだけど……」

 

「常連ならマスターとは知り合いなんじゃないの?」

 

「いや……マスターが変わってた。のにも関わらず……」

 

言い掛けたその時、扉が開いた

 

「よう、ユウ。久しぶりだなぁ」

 

ハゲの頭。巨大な体躯。SAO内となんら変わらないその顔は間違いなくエギルだった

 

「よう、エギル。久しぶりだね」

 

……笑顔でこたえる僕

 

「笑顔、引きつってるぞ」

 

「当たり前だよね?いきなり会いたくないやつに会ったんだからさ」

 

「……相変わらずだな、ユウ……」

 

ちょっと肩を落とすエギル

 

「えっと、悠斗。この人は?」

 

しーちゃんが訊ねてくるが……顔が引きつってるよ?詩乃

 

「……The 壁。つまりこれはその辺の背景と同じだから。」

 

「おいおい、俺は壁かよ!?しかもこれって!俺にはアンドリュー・ギルバート・ミルズって言うママにもらった名前が……」

 

「それ、僕に言われてもしらないよ……」

 

「おっと、そうだった。アンドリュー・ギルバート・ミルズです。以後お見知りおきを」

 

「そういえば、僕も名乗ってなかったね……鈴木 悠斗だよ。はじめまして、エギル。んで、こっちは朝田 詩乃だよ」

 

「朝田 詩乃です。よろしくお願いします」

 

はじめましてって何か変だね……リアルで会うのは初めてだからあながち間違いではないけど

 

「悠斗よ……彼女はコレか?」

 

エギルは僕の肩に腕を回すと反対側の手の小指を上げて聞いてきた

 

「友達以上、彼女未満ってところかな……」

 

「お前にも春が来たか……いや、めでたい。今日は客として来たのか?」

 

「ああ……」

 

「じゃあ、ゆっくりしていってくれや」

 

エギルはカウンターに戻る。僕らはカウンターのスツールに並んで座る

 

「エギル、僕はブラックで。詩乃はどうする?」

 

「私もブラックで」

 

「あいよ」

 

エギルがコーヒーを淹れてくれる

 

「そういや、悠斗。おまえの連絡先を教えてくれねぇか?」

 

「了解、いいよ。でも悪用したら埋め込むからね?」

 

「しねぇよ!というかだから俺は壁じゃねぇ!」

 

携帯の番号を交換する。コーヒーを飲みおわり

 

「ご馳走さま。いくら?」

 

「ここは、俺の奢りにしといてやるよ」

 

しーちゃんを見てニヤリと笑うエギル

 

「サンキュー……じゃあね」

 

「おう」

 

手を振るとしーちゃんを連れて店を出る

 

「何か……顔と言葉のギャップが……」

 

「それはわかる……」

 

外に出ると空が赤く染まっていた

 

「じゃあ、また明日ね」

 

「うん、楽しみにしてる」

 

今日はもうそろそろ帰らないと行けないので、帰ることに。……明日が楽しみだよ




感想よろしくお願いします( 。∀ ゚)( 。∀ ゚)


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