キサラギカンナは■■■■である (佐藤ネジ)
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終わる世界と始まる物語
2018年、戦争は終わった、第三次世界大戦と呼ばれるであろうそれは、世界を、全てを、終わらせた。
はじまりはどこだったのか、今思うととても些細なことだった気がする、いや、戦争なんてそんなものか、きっかけが何であれ、始まってしまえば、人々の憎悪は膨れ上がり、憎しみが人を殺し、また憎しみが生まれる、その繰り返し。
戦場は拡大し、大量の新兵器が毎日投下された、もはや誰も止めるものはおらず、世界中が戦場になった、恐ろしいほどまでに殺しの進化は極限にまで進み続けた。
誰かが言っていた《第三次世界大戦がどのように行われるかはわからない。だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は石とこん棒だろう》と。
実際にはそんなことはなく、第四次世界大戦など起こるはずもなかった、なぜなら。
人類はもう滅びの道しか進めないのだから…
「はあ…はあ…っ」
たいして歩いてもいないのに息が苦しい…。
もうすでに肺呼吸など必要のないこの体が息苦しさを感じる異常事態が、今では普通になっていた。
つい数年前までいた普通の人類はほとんど死んだ、今生きているのはなんらかの技術で簡単には死なない、死ねなくなった生き物と呼べるのかすらわからないヒト達である。
もうすでに彼らですらこの地球上で生き残れる地域はごくわずかであった、空気中には戦争で使われた化学兵器が幾重にも化学反応を起こし、全ての有機物はおろか無機物すら溶かし侵食している。
ワタシもこの全ての瓦礫が溶け合い混ざり合った地獄のような場所に数時間もいればたちまち活動は停止し、周りと同じく瓦礫と混ざり合い溶け落ちていくのだろう。
「はあ……ふう………ついた」
ワタシは比較的侵食が少ない建物の前に立った、ドアの横についているスイッチを押すといやな悲鳴を軋ませながらもドアは開いた、このドアももういつ使い物にならなくなってもおかしくないな、などと思いつつ建物の中に入り、階段を使い下へ降りて行く。
「…これで…ここも最後か…」
ワタシはこの建物の中で行われている計画で期待の星となっている、もはや残った者たちの最後の希望といっても過言ではないらしい、そのためワタシの《ジャンプ》は最後に回されていた。
できるだけワタシの成功率を上げるため150人ほどがわたしより先に《ジャンプ》を行なった。
この計画が始動したのは戦後すぐだった、いや、もうすでにこの世界で生き残ろる方法はないと見切りをつけていた者たちによって終戦前から考えられていたことではあったのだろう。
計画は最優先で行われて残ったヒト達で有能はものは全てこの計画に参加した、そのおかげで人類の滅亡よりも早くワタシの番がこれたのだろう。
「あ、来たわね」
階段を降りきり部屋に入ると、数人のヒトその中にいつのも彼女がいた、ヨレヨレの白衣にはたくさんの茶色いシミがある、それが血のシミだということをわたしは知ってる。
「どうですか?状況は」
とわたしが尋ねると彼女は
「彼が終われば次はあなたよ」
と部屋の奥をしゃくった、奥には台座と、それを囲むようにご大層にデカくメカメカしい機械が置いてある、その中心には屈強な面構えの成人男性、隣の白衣の男から最後のレクチャーを受けているようだ。
「あなたはもう準備はできてるの?」
「大丈夫、済ますことは全て済まして来ました」
そのために
「…そう、じゃあっちで最終検査、受けて来て、あと一応体洗っときなさい、外に居たんだし」
ま、あなたのその体ならそんな心配いらないでしょうけど、と付け加えると彼女は奥の台座の方へと向かっていったので、わたしも最終検査へと向かった、
「どうだった?外は?」
「…変わらないですね」
「…そうか……浄化部隊の痕跡は?」
「ありませんでした、おそらくもう…」
「外はもうどうしようもない、か……」
そんなやりとりをワタシの体を検査している男としていると突然
ドォォォォォォォォォォォン!!!!
というと音と、何かが潰れるような
グチャっ!
という、とても聞き慣れた、しかしとても嫌な音がした。
「また失敗か…」
目の前の男は落胆したようにそういった、ワタシが音のした方を見ると、台座を中心に、ヒトの残骸が撒き散らされていた、誰の残骸なのかは言わずもがな、台座の近くでコントロールパネルを操作していた彼女の白衣には新しい血のシミができていた。
「「「………」」」
誰も何も言わず、機械的にヒトだったものを掃除してゆく、この部屋ではこれが当たり前だった、初めの頃はとても怯えていたワタシの目の前の男ももう今では《ジャンプ》が失敗した落胆の表情しか見せなくなった。
「キミが最後だ…よろしく頼んだよ…」
彼はそういうと、検査モニターの電源を切った、やはり問題はなかったようで、ワタシはシャワールームに向かった。
ーーーーーー
「いい?あなたに付属できる装備、機能は全て取り付けてあります、向こうではもちろん支援物資などはありません、あなたが使える
「了解」
「向こうの時代の歴史は?」
「全て
「よろしい、本作戦の最終目標は“第三次世界大戦”の回避、そのためにあらゆる手段を尽くしなさい、これにはこの世界の存亡がかかっています、失敗は許されません」
「了解」
「……あなたが最後の希望よ、よろしくね…」
「…了解」
それだけ言うと、彼女は背を向け台座から降りる、ワタシは一度深呼吸をした、肺呼吸は必要ないが、呼吸の動作をしなければ向こうの人間に怪しまれる、久しぶりに呼吸を無意識に行うと言う動作をするときには苦戦したが、今では自然にできるようになった。
「では…………作戦開始!」
コントロールパネルの前に立った彼女がそう言うと、わたしの周りにあった機械が低い重低音で唸りを上げた、それに伴い、ワタシの周りの空間が歪み始める。
「動作安定!照射出力50%…60%……70%………80%ーーー」
だんだんと歪みがひどくなる、ワタシの意識が現実感をなくしていく、さっきミンチになったあの屈強な男の顔と、その後の残骸がチラッと意識を掠めたが、その後すぐに、ワタシの意識は歪みの中に溶けていったーーーー
《ジャンプ》した女の子
本作の主人公、無口、まだ謎が多い
白衣の女の人
多分いい人、戦争のせいで感性がイかれてるけど、まあいい人、今後出るのか不明
《ジャンプ》に失敗した男
かわいそう
まったくゆゆゆ要素がない一話、大丈夫かな…
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行き着く先での思考、そして出会い
二話です、やっと勇者出てきます
『コレが?流石にこわれすぎてはないかね?』
『いや、ここまでになってしかしもう五日も生きている、その生命力なら《
『なるほどな、試して見る価値はある…か』
横たえられたワタシの上で二つの声が交互に響く。
夢だ、ワタシは夢を見ている。
これは過去の夢だ、ワタシが知るはずのない、いつの間にか変わってしまっていた体が変わる時の夢。
『全く、並の精神では耐えられないのに、適合するパルス信号を出せるのが子供だけとは…』
『だが、一度適合すれば全てを蹂躙できる、しかも普通は使い物にならないガキが戦闘に参加できる、なに、精神の方はクスリ漬けにでもすればいいさ、そっちの方が従順な“兵器”になるしな』
これは妄想にすぎない、なぜならワタシは全てを焼かれ意識がなくなり、戻ったときにはもう…。
『では処置を始めるとするか』
『そうだな、早くあの忌々しい敵どもに報復を与えねば、奴らの顔が恐怖に染まるときが楽しみだ』
ワタシはこうやって、人々の勝手な都合でワタシの全てを書き換えられたと、悲観したいのだろうか、ワタシがあのままだと確実に死んでいたと知ってるのに。
ワタシはやはりこの世界が………。
ーーーーーー
「……………ん…」
どれだけ気絶していたのか、ワタシは目を覚ました。
「《ジャンプ》は成功…した…?」
ワタシは倒れていた体を起こし周りを見渡す、さっきまでとは違う場所、あの台座も機械も最後まで気丈な顔をしていた彼女の姿も見当たらない。
今居るのは廃墟、と言うのが正しいか、乱雑に散らばった書類ーーー日本語のようだ、あちこちに放り投げられたように倒れたデスクや棚、とあるオフィスの一室、であったろう空間。
その隅にワタシは倒れていたようだ、ワタシが倒れていたところだけ壁と床が丸く落ち窪んだようにえぐれている、《ジャンプ》が正常に行われた証拠だ。
「………」
しかし、ワタシの気は晴れない、ワタシが望んでいた光景はこうではない、ワタシが望んでいたのは、このオフィスが掻き回される前の、人が普通に働いている、大戦が始まる前ーーー2015年7月30日以前の光景だった。
(《ジャンプ》自体は成功、しかし目的の時間にはたどり着けなかった、か)
ワタシは起き上がると、体についた埃を払う、確かに目標の時間軸にはたどり着けなかったかもしれない。
しかし諦めるのは早い、数十分前にいた外の空気とはまるで違う、澄んだ空気、肺呼吸ができたのなら美味しいと感じるのだろうか。
装甲にもあの地獄で感じたひりつくような感じはない、窓の外を見ると青空が見えた、ワタシがいたあの世界では当分見ていなかった光景だった、つまり少なくともここは化学兵器投下による世界中の末期的な汚染がされる前の時間ということだ。
それならまだ、間に合う可能性はある、世界が取り返しのつかない攻撃を始めるあの惨劇までに戦争を終わらすことができるのなら。
「……よし」
心に気合いを入れ直す、わかっている、戦争が始まる前ですらそれを阻止するというのは難しいことなのに、始まってしまったものを終わらせるなど絶望的だということを。
1人でも人が死ねば、そこから際限なく憎しみが生まれ、それは一生消えることはない、その憎しみから報復心がうまれ、それが人を殺す、そうしてまた新しい憎しみが生まれる。
この連鎖を断ち切ることは容易ではない、ましてやそれが国家レベルで行われるのだ、はっきり言って不可能だろう。
「それでも」
ワタシに与えられた任務は“第三次世界大戦”の回避、できることは全てやる、それがワタシの使命だから、この身が滅びるまではどこまでも足掻こう。
そう、
思っていたワタシの覚悟は、
数時間後には無駄なことになると、
この時のワタシは知る由も無くーーー。
ーーーーーー
瓦礫だらけの道と廃墟、その廃墟の影を縫うように一つの影が動いていく。
「………」
(ここは…どこの街だろうか…)
決意を固め直したワタシはこの時代の現状を把握しようと朽ちたビルの間を隠れるように移動していた…。
(さっき見た書類は日本語だらけだった、たまに見える看板も漢字、カタカナ、ひらがなが多い…ここが日本というのは間違いなさそう……それでいてこれだけ大きいビルがたくさんある都市、東京か…大阪あたりか…?)
東京や横浜ならある程度町を見ていけばわかる、戦争が始まり崩壊する前にも何度か行っていたから、しかし他の…大阪や神戸、名古屋などはやはりランドマークや道路標識などがないと…この崩壊加減だと判別に困る…。
(さっきから運が悪いのか…標識が一つも見当たらない…地名が書かれた看板も…)
そう思いながら私の隠れながら、しかし足早にビルの間を走っていると。
「…!」
(コレは…)
大戦が始まる前の日常、その時よくテレビで見ていた光景、その変わり果てた姿が少しの面影を残して私の前に現れた。
無数の看板ーーーあちこち剥がれているが、手前は川であったと思われる大きな溝が、そして一番印象的な目印。
(グリコ……ここは道頓堀…か)
大阪、そこが私が《ジャンプ》によってたどり着いた場所らしい、自分が今立っている場所を知り、少し安堵する。
だがもう一つの疑念、ここがいつの時間なのか、それが払拭できていないことで私の感情はすぐに曇った。
さらに、ここまでたどり着いた中で気づいた大きな疑問がさらに私の心を不安にさせた。
(さっきから、全くもって人の気配がない…?)
こんなことがあり得るのだろうか、大戦中、大阪は日本でも有数の激戦区であり四六時中銃声が鳴り響いているような状態だった、そして最終的には業を煮やした敵国が新型爆弾ーーー反陽子爆弾と推測される、を投下し、大阪は地図から消滅した、と私の
(嫌な予感…がする、これはもしかすると…)
私の中で生まれた一つの仮説が、真実味を帯びてゆく、もしそうなのだとしたら…この時代…いや、この世界は…。
そう、私が思案しているとーーー。
道頓堀川の東の方から高い銃声と思われる音、そして瓦礫の崩れる音が連続して響いてきた。
(!!、この音は…!?)
すぐに瓦礫に影に身を隠し、様子を伺う、段々と音は近づいてきているようだ。
(この感じだと…一人対多数で一人が逃げながら戦ってる…みたい、多数の方は…なんだ?無人機?)
この体になり極限まで研ぎ澄まされた
一人、逃げながら応戦している方が銃を使っているようだ、ただ、マシンガンのような連続的な乱射音ではなく一つ一つ、着実に仕留めるように一、二秒毎に銃声が響いている。
不思議なのは多数の方だ、なぜか音がしない、まるで体当たりのようにビルなどを壊す音しか聞こえない、地面を歩行する音も、空中を飛ぶ浮遊音もしない。
ありえない、とワタシは思った大戦の終盤に出ていた
音はどんどん近づいてきて、ついに戦闘が肉眼で家訓できるようになるーーーと。
「あー!なんやな!ばか!あほ!こんないっぱいでか弱い乙女一人をリンチとか!マジありえへん!しつこい男は嫌われるで!」
なんだか乖離的な悪態を叫びながらも、白い機体ーーーまるで空中を泳ぐかのように動きまわる、丸く、口だけがついた生物のような謎の兵器ーーーを一体一体着実に撃ち落としていく少女の姿が見えた、その姿は黒い服に薔薇を思わせる白いラインが入った、戦場には似合わないとても目立つ、しかし美しいものだった。
「あの人……は………」
彼女の銃の腕は確かなようだ、飛び跳ねながら後退しつつも、空中を不規則に泳ぐ機体を撃ち落としていく、しかし、その表情には疲れが見て取れた、彼女はかなり長い間戦闘をしていたようだ、その疲労が、銃口にも現れている、ぶれる、銃口、打ち出される、銃弾、白い機体に当たる、
が、
当たったところが浅かった、そのまま少女に突っ込んでいく、
「しまっ…!!」
少女に迫る、機体についた口のような、いや口そのものが、彼女を食いちぎろうと大きな口を開けて。
「う……へ?」
“ガチン!”
少女を食いちぎろうとするその口は、しかし彼女を食いちぎることなく、そのまま閉じられた。
「えと…あんたは?」
「…今は戦いに集中して」
彼女を助けたのは、ワタシだった、速さには自信がある、化け物の口が閉じる前に、彼女を引っ張り、抱き寄せた、よかった、助けられた。
ワタシは彼女をそのまま抱き抱え、そのまま化け物に背を向け、走り出した。
「うぇ!?そ、そんな抱えてもらわんでも大丈夫やで!?まだ動けるし!」
「いいから、こっちの方が速い」
ワタシは彼女を片腕で抱いて、もう片方の腕を変形させる。
ワタシの腕は、義手だ、片腕だけではない、両腕、それと両足も、義手義足である、開戦後の兵器の技術革新により急激に進化したバイオニックアーム、そして16年の終わりに登場した
手の形が変形してゆき銃口の形になる、そこから打ち出された弾は、後ろの白い機体に当たる、が。
「…まるできいてない」
奴らはなかなか強度のあるマシンのようだ、銃程度ではビクともしないらしい。
ならば、と銃口をしまい今度は小型ミサイルを出す、網膜インターフェースで照準を定め、打ち出す…!
ミサイルは確かに機体に命中して爆散するも。
「これもダメ…か!」
白い機体には傷一つつかない
「あーあかんて、あいつらには普通の武器は通じひんよ」
「…アナタのはちがうの?」
「ようわからんけどうちの武器にはこう、ブワーっとした、神力?見たいのがエンチャントされてるらしいんよ」
神力?
ワタシは聞きなれない力に頭の中に疑問符が浮かぶ、どこかの軍の新エネルギーの別名なのだろうか、大戦中のエネルギー革新は凄まじく、その競争でたくさんのエネルギーが生まれた。
ワタシもデータでも全て把握できているわけではない、戦争中に埋もれたエネルギーの一つに神力と呼ばれたエネルギーがあったのだろうか。
「ならば…!」
つまり2015年以降に生まれたエネルギーを使った兵器なら奴らに通じる可能性は高い…!
そう判断し、また腕の先の形を変形させていく、荒々しく、無骨なデザイン、それでいて近未来的、複雑に変形していく銃口には所々に青白くランプが灯る、その弾丸を飛ばすのとは全くちがう役割果たす銃口には電子の光が集まりーーー
放たれた、
白い機体に当たる、
機体の形が不確定にねじ曲がり、
機体の半分がぐちゃりと潰れ、飛び散った、
なんだか私の前に《ジャンプ》に失敗したあの男の最後のようだな、なんて場違いなことが頭をよぎった、
「おおう、なかなかグロテスクな倒し方やな…」
彼女はそう言ってゲンナリした顔をしているが、ともかく攻撃は通った、やはり、この時代以降のワタシの
「…!」
が、しかし、ワタシの武器によって半身を破壊された機体は、それでもなおワタシ達に向かってくる、これ一発で元の世界なら戦車を鉄くずに変えれていたのに…!
壊れた機体の後ろからも白い影が多数うごめいている、殲滅は簡単ではない、それよりも今はーーー
「とばすよ、下を噛まないよう注意して」
「へ?どういぅぇぇぇ!!!」
ワタシは全速力で、しかし少女を振り落とさないように、機体の群れから距離を引き離し、ビルとビルの間へと逃げ込み、そこから路地裏を縫うように走って行き、廃墟の一つに隠れた。
「あ、ありが「しっ!静かに」……」
話そうとする彼女を押しとどめ、
「……」
「……」
しばし沈黙…何も聞こえない、反応なし。
…まけたようだ。
「大丈夫みたい」
「はぁーよかったわぁ…」
彼女が安堵の表情を浮かべる、私も少し気を落ち着け、少しでも外から見えないよう、しかし外の様子が
彼女は少しおどつきながも、私の隣に座った。
「あ、改めて、ありがとうな…助かった」
「…」
「えーと…?」
私は返答しない、いや返答に窮していた、なぜ私は彼女を助けてしまったのか、その理由が自分でもわからない、いや、わかりたくないのだ、だいたいこの場所に彼女がいるはずないのだ…なのに…私はなぜ…そんな感情が渦巻いている…
「……」
「……」
しばらく無言の空間がワタシ達の周りに広がっていた。
勇者が出ると言ったが、原作勇者が出るとは言ってない、すまん、もう少しまたれよ
兵器の女の子
前の話で外見には言及してなかったけど多分髪は白い、今回使った
黒い服の女の子
関西弁、地元の子でしょうか?、元気はいっぱい、疲労もいっぱい。
ちなみに勇者服はペルソナ5のDLCペルソナであるマガツイザナギ・
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今日に絶望し、明日を夢見る
ゆゆゆい早く参戦来てーーーー!!!
「うちの名前は塩井ユカ、よろしくな!」
「うん…」
「いやうんやなくて、あんたの名前も教えて〜や?」
「…如月神無」
「うっわなんかかっこええ苗字やな!漢字ではどう書くん?」
「…キサラギは2月の旧暦の如月、カンナは神では無いとかいて神無」
「おーなかなかすごい名前やな!かっこいい!うちの名前なんて普通すぎるしな〜ちょっと憧れてまうかも!」
「……」
彼女…シオイユカは私が何も喋らないのにしびれを切らしたのか、私の前にしゃがみ込み勝手に自己紹介を始めた。
なかなか積極性のある子のようだ、会話のテンションも高い。
「ちなみになーうちの名前の漢字は「それよりシオイ、聞きたいことがある」
「そ、そんなこと…確かにうちのケンチな名前のケンチな漢字なんてめっちゃどうでもいいことかもしれんけど…正面から否定されると凹むで…トホホ」
なかなか感情も豊かなようだ、それはともかく。
「シオイ、この世界で第三次世界大戦は起きているか?」
「へ?何?大胆な変態大変?」
…ひどい間違え方だ、なんて感想を浮かべることもできずに、私の心は無力感に満たされる。
念のため、いやシオイの反応が何かの間違いであって欲しいと、もう一度問う。
「…この世界のこの荒れようは、なぜ起きた?」
「?、あーそういうこと、確かにさっきの感じやとあいつらのことしらんのも頷けるな」
「さっきの白い機体か…?」
「機体っていうか、バケモノ?よくわからんけど、ちょっと前にあれがいきなり空から降ってきて、それでこの有様ってわけ、さっき神無がやってだめやったように、普通の銃火器なんて全く通じひんねんあいつら」
「あれは他国からの攻撃機体ではないのか?」
「他国?よーわからんけど、あの人は天の神からの尖兵やとかバーなんとかとかそんなこと言ったはったな」
「天の…神…」
何かの集団を指す言葉…?などと考えるが、それ以上に。
私の
大阪のこの静寂具合、見たこともない機体、そして聞いたこともない組織。
ここまで私の
つまり…
ここはワタシのいた世界とは違う世界の過去なのだ。
もう、認めざる得ない、はっきり言って認めなくない、認めなくないが…。
「は、ははは…さっきまでの誓いなんて、なんの意味もなかったんだ…」
そう、ワタシの任務はもうすでに失敗していたのだ、そんなことも知らずに、息巻いていたさっきまでの自分をぶちのめしてやりたい気分だ。
…薄々感づいてはいたのだ、ここが大阪だと
わかった時から…それでも認めなくないじゃないか…こんなところまで来たことが、全くもって無意味なことだったなんて。
「だ…大丈夫?なんかすんごく落ち込んでるみたいやけど…」
「…」
私はおもむろに右腕を拳銃に変形させると銃口を自分のこめかみに当てーーー
「ちょっ!!!」
バァン!!!!という、衝撃音が当たりに響く。
銃口から吐き出された球は、私に当たる前に、シオイが咄嗟に打ち出した彼女の
「…何をする」
「それはこっちのセリフやで…何…しとんの」
「ワタシの生命意義はさっきを持って消滅した、生きる意味などない」
そう、ワタシにとって、いやあの世界のヒトビトにとって、この作戦は最後の、本当に最後の希望だったのだ。
それが今潰えた、あの世界に残ったモノ達はこの残酷な真実も知らずに偽りの希望を持って死んでいくのだろう、それなのにワタシだけのうのうと生きていくなどと、そんな選択肢は初めからワタシにはなかった。
「…本気で言っとんの?」
「シオイには関係ない事だ……いや、流石に目の前で死なれるのは嫌か…わかった、すぐここから離れよう、そしてシオイの目の留まらないところで死ぬと
「そういう事やない!!そんな簡単に命を捨てんなって事や!!!」
「…」
そんな、か、彼女はワタシの何も知らないのに、そんな簡単にと言っている、軽い、言葉が軽すぎるし、薄すぎる。
“なんのためにこんなことまでして、生きてるんだろうね…?”
“私は…もう…生きたくない…よ…!”
「…シオイはワタシの何を知っている?知らないのに“そんな簡単に”などと軽々しく、口にしないでくれ」
「…!」
パチン。
と乾いた音が響いた、シオイがワタシを叩いた、ようだ。
「ーーーっ、硬いな…あんた…」
そうでもない、戦車の玉一発食らうと凹む顔だ。
シオイは痛そうな右手をさすり、涙目を浮かべながらも真剣な表情でワタシに言う。
「…確かに、うちはあんたのことなんてミジンコも知らん、けどな、だからって人が死ぬところを見逃せるほど、人でなしちゃうで……あんたがどんな事におうてきたかわからんよ…わからんけどさ…自分で命を絶つのは…やめてや…それって…とっても…かなしい…こと…やから……」
………。
「…シオイは、自分が悲しみたくないからワタシに生きろ、とそう言うんだな?」
ワタシがそう言うと、シオイはとても悲壮な、今にも泣きそうな顔になり、顔を伏せた、彼女の何か、傷にでも触れたのか、少し、悪いことをしたな、とワタシが思っていると。
ふいにシオイが顔を上げた、そこには、さっきまでの泣きそうな顔はなく、真剣な表情で、私の目に正面から向き合って、言った。
「…そうやな…そうやで、うちはもう、誰も死ぬところを見たくないんや、勝手なこと言ってるとは思ってるけど……お願いします、生きてください…!何無責任なこと言ってるんやって、思うかもしれんけど、私ができることならなんでもするし…支えるから…おねがい、私のために…生きて……」
…彼女は何まだ出会って数十分も経ってないワタシにむかって、何を言っているのか…。
彼女はワタシの何も知らないのに。
ワタシも彼女の何も知らないのに。
“確かに生きてたらいいことあるなんて限らへんよ、でも【何か】はあるはずやで、それが希望か、絶望か、わからんけど、それを知りもせえへんで、死ぬなんて、癪やろ?”
…だめだ、彼女は《あの人》じゃない…《あの人》は前の世界で、もう…
“あなたがどんな辛い目にあって来たのかわからんし、多分私にはあなたの過去は一生分かることはできへんやろうけど、でも、これからのあんたのことなら、支えたり、助けたりし合って、分かり合うことが、できるかもしれへんな、あなたがそういう未来を…望んでくれるなら“
「……わかった」
「へ?」
「ワタシは今死を選ぶのをやめよう」
「ほ、ほんまに!」
ワタシへ少しだけ笑みを浮かべて、言う。
「ああ、シオイに命令されたからな、【私のために生きて】と」
「え!?確かにそうやけど!命令て!そこまできつい感じちゃうて!!」
ああ、わかってる、そうだ、これは私が選んだ選択だ、もう少しだけ、《あの人》が言ってくれたことを、信じてみよう、いや、みた
いんだ。
だから、君のその言葉を、少しだけ借りさせてくれ、シオイ。
「ワタシは兵器だ、命令には従うよ」
「あんたはまたそうやって自分を……はぁ…まあええわ、生きてくれるなら、うちはなんでもするよ、あんたに生きる命令だって、うん、してやろうやないの」
ありがとう、シオイ。
まだ、生きるということが希望になるなんて、そんな薄っぺらいことは言えない、でも、《あの人》が言ったように、ワタシの生きる果てにも【何か】があるのなら、それをみてみるのも、悪くないかも、しれない。
「シオイのことも心配だしな、せっかく助けたのに、あの調子だとすぐまた死にそうだ」
「さっきまで死のうとしてた人には言われたくないで」
「では責任をとって死を
「あほ!!」
と怒鳴り私の頭を叩くシオイ、手のひらをさすりながら痛みに耐えるシオイ、なかなか単純な子だなと思うワタシ。
そうだな、せめて彼女に平穏が訪れるまで…それまでは…生きるとしよう。
「……改めて」
「ん?」
「改めてよろしく頼む、シオイ ユカ」
こうして、私の新しい世界での。
「こちらこそよろしく頼むわ!ナっちゃん!」
新しい物語が、始まる。
「…そのあだ名は、やめろ」
先はまだ、見えず。
キサラギカンナは『兵器』である
《あの人》
神無の記憶に深く刻まれた人、彼女は一体誰でしょう
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