魔法科高校の劣等生 妖精に魅入られし愛し仔 (アトコー)
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第1話 プロローグ

書き起きしていたものをそのまま投稿してます。



私は、人の子として扱われなかった。

人には見えない何かが見える子

この世界では、そのような人は、人では無いと扱われる。

物に似た存在として

私を産んだ親が事故で死んでから親戚となのる人たちに盥回しにされ、遂に来た場所で古来から続く生け贄の儀式の材料として、贄とならされた。

 

逃げることも出来ず、私は、高い橋から深い滝壺へと突き落とされた。

 

深い滝壺に突き落とされた私は浮くことが出来ないように重石を付けられていた。

水中で取り込む空気が無く、溜め込んでいた空気を吐き出して、身体に冷たい水が浸み込んでくる。

もがき苦しんだのも束の間、いつの間にか苦しさも寒さもなかった。

 

すごく透明で、朝日が差し込んでくる滝壺を見ながら私は瞳を閉じた。

最後に見た光景が、こんなにも美しかったなんてと思いながら

 

 

 

 

 

 

私が飛び込んだ数日後、その町に災厄が降り立った。

日本で今までに起きなかった異常気象であった。その町を中心に突如として発生した超巨大積乱雲が激しい雨を引き起こした。

丁度中部地方を完全に覆い尽くすほどの積乱雲の真下は豪雨と霰と雹、ハリケーン並の暴風に雨のように降る雷、突如出現し急発達したスーパーセルを止められる者は、例え魔法師でさえ不可能だった。

 

どうすることも出来ない。ただ嵐が過ぎるのを待つしか人間には出来なかった。

その嵐の中、深い滝壺のある滝で巨大な水柱が数時間にわたって立っていたという。

 

 

 

 

 

そして、今回の天災の原因となった祀は無条件で禁止になり、滝壺に沈んだという少女の引き上げ捜索が行われたが、滝から先の河川全ての捜索が、警察・消防・軍・ボランティアを含めて5000人態勢で行われたが見つかる事はなかった。

滝壺から水柱が立ったという目撃情報や、その水柱から少女が何者かによって連れ去られたという情報もあったが、それ以外にこれと言った有力な情報もなく、少女の姿は完全に掻き消えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある明階の者がその町で祀が行われた後に言った。

「その贄に捧げられた少女、海神の加護を受けし海神に愛された者。

その者を贄に捧げられた事、大変お怒りだ。

彼の者、他国の神より祝福されし者、その怒り買いし者は全て天災を受けることだろう。

そうなった時、未曾有の大災害を齎すだろう。」

 

と、その明階の者は嵐が起きる直前に、衰弱死した。

 

 

 

 

 

 

 

 

表と裏の境界 

 

「まったく、なっとらんわ。」

 

「我らが御巫女を贄とは・・・」

 

「まだ、眼、覚めないね。」

 

「人の身だ。そう簡単には覚まさないだろう。」

 

「だが、良かったのか?これでは・・・」

 

「元々、クォーターだよ。この子は、しかも先祖返りの」

 

「多くの血筋を受け継いでいるな。少なくとも、皇家の血も、御三家の血も、」

 

「それはよく有る話しだ。が、本当に人間は変だ。」

 

「はぁ、その話は何時まで行っても平行線ですよ。」

 

「それもそうだ。だが、今この国に置いておくのは危険すぎる。狙う組織などゴマンといる。」

 

「なら、イギリスにいるあ奴はどうだ?」

 

「確かに、あやつなら問題無いが・・・大丈夫か?」

 

「ほとぼりが覚めるまで、ゆっくり暮らしていた方が良い。」

 

「奴には誰から話を通す?」

 

「私が行くわ。ずっと見て来たし。彼女の行く末、まだ見てみたいし。監察者として、傍観者として、彼女と距離を置きすぎた私にも責任はある。」

 

「それは・・・」

 

「分かっておる。だから、せめて戻って来るその時までワシらがあの屋敷を管理し続ける。彼女が進む道を見届けることが儂らに出来る贖罪じゃ。」

 

「そうだな、それが俺達に出来ることだな。屋敷周囲に結界張って来る。」

 

「私は、畑の様子を見て来るわ。最近はあれこれ妖精たちも来ているみたいだし。大分多国籍化しているし。」

 

「じゃあ、天候の操作の方見てこよう。」

 

神々が動く。たった1人の少女の為に

 

半神も動く。祝福を受けた者としていつか出迎える為にも

 

人でありながら人ならざる者も動く。少女を守る者として

 

タマヨリヒメが少女を抱き抱えて姿を消した。

境に誰も居なくなった時、その境は消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリスの最北西に位置する森を超えた先に佇む1件の家

そこに、1人の来訪者が現れた。

家のチャイムが鳴り、一人の少女が家から顔見せる。

 

「はい、どちら様でしょう?」

 

「エアリスはいるかい?」

 

「タマヨリ」

 

「知り合いですか?」

 

「ああ、智世の出身地日本の海神の娘だ。」

 

「えっ?」

 

「中に入れて貰ってもいいか?」

 

「・・・智世、居間に案内してやりなさい」

 

「はい。」

 

智世と呼ばれた少女が、タマヨリを居間へと案内する。

 

「それで、今回はどのような案件で?」

 

「なにも、依頼するわけじゃないよ。まあ、依頼になるのだけど。」

 

「?」

 

「この子の療養っと言ったところかしら。」

 

毛布でくるまれた丸太のようなものから出て来たのは智世とは違った髪色をした日本人だった。

 

「この子は?」

 

エリアスが聞いて来る

 

「生け贄として捧げられた神々の祝福を受けた哀しき少女よ。」

 

「えっ。」

 

智世は唖然とした表情をし、エアリスは表情が読めないものの呆れて何も言えない様子

 

「もしかしてだけど日本で起きた大災害、君らの仕業?」

 

タマヨリヒメが少女を膝に乗せて

 

「そうね。この子は海の神は基より水に関する全ての神から祝福を受けているわ。それ故に、皆キレたわ。神と言っても普段は人間界に身を潜め観察している傍観者だけど、流石に怒らないわけには行かないのよね。今回の場合」

 

「だから、暫く家に居させてくれと?」

 

「智世にとってもいいんじゃないかしら?」

 

「智世に?」

 

エアリスは、ふと見た時タマヨリヒメの膝の上にいたはずの少女が智世の膝の上に移動しており、智世自身、その少女を見ながら身体を温めていた。

 

「エアリス、この子。冷たい」

 

智世に言われ、その少女に手を当てると非常に冷たくなっていた少女。

まるで生きている事すら不思議なぐらいだった。

 

「ミカハヤヒノカミが温めた時はもっと冷たかったわ。この子は滝壺に突き落とされ、這い上がる事が出来ぬように重石を付けられ、底に沈んでいたのだから。」

 

「死んだのか?」

 

タマヨリヒメが手を顎に置きながら

 

「そうね、生と死の境を彷徨っているというべきかしら。彼女の魂が三途の川に来た時、偶々そこをうろついていたハデスとワルキューレが連れて来たのよ。丁度、傍観者として彼女の行方を見失った頃にね。」

 

「それじゃ・・・」

 

「ええ、生きながら死んでいるという状態かな。けど、意志は生きたいって思っているみたい。」

 

そんなことが、と智世が漏らしながらも眠っている状態の少女を見ている

 

「時折、君たちは此処を安息地と思ってないかい?」

 

「そう?私から・・・いいえ、私たちからすれば其処の日本人を、人間を、手元に置いておこうとする貴方に興味があるのだけど。」

 

「はぁ、それでどうする気だ?」

 

「今現在、神や精霊の祝福を受けた者は何かしらの加護の元守られなければならない。

智世の場合、貴方という存在がいるから問題無いけど。

今回の事案は、神々で大きく話し合われる事よ。少なくとも、日本ではいつか戻る日の為の準備が始まっているわ。」

 

「そんなに動く事かい?」

 

「世界で複数の神々から祝福を受けた人は、ほんの一握り。10人いるかいないかというもんよ。それを世界は狙うわ。スレイ・ベガを持つ智世と同じくね。」

 

「それは・・・。まあいい。この子は此方で預かるよ。」

 

「話が早くて助かるわ。年齢的には智世と同年代かな。」

 

「なら、こっちの事も手伝ってもらうとしようか。」

 

「構わないわ。元よりそのつもりで来たし。

ああ、そうそう。智世さん。この子をベッドか何処かに寝かせる時これを額に貼って下さいね。」

 

そう言うと、1枚の呪符を渡した。

 

「これは・・・呪符?」

 

「そう、現代日本では漸く魔法が根付き始めた。それにより、陰陽道も進化して、神道も進化した。この呪符は、対象の体温を平熱温度まで上げる為の呪符。ただそれをするには、ベッドとかソファーとか下が柔らかくて温かくなれるものを被せないといけない。この子は碌に服も無い。だからこのローブで身を包んでいるのさ。

ささ、お願いするよ。」

 

そう言って、少女を智世に託した。

智世はエアリスに視線を送るも、任せるっと言った状態だ。

仕方なく、シルキーに引っ張られて空いている部屋に入り、その少女をベッドの上に寝かせ、言われた通り額に呪符を貼った。

 

智世は少女の顔を見ながら、よしよしヾ(・ω・`)と頭を撫でつつ部屋を出た。

少女の顔が心なしかリラックスしていた。

 

 

 

 



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第2話 エリアスの家で

智世side

 

どうも、羽鳥智世です。

あの少女が家に来て5日が経った今もまだ目を覚まさない。

日に日に顔色が良くなり、体温も上がっている。

この呪符のおかげ?

時折、手を握ってあげると、軽く握り返してくる。

無意識だろうけど、

 

タマヨリヒメという日本の神の一人が現在の近況を教えてくれた。

イギリスで魔法使い・魔術師の存在が表に出てから魔法使いと魔術師を掛け合わせた存在である魔法師が世に台頭しつつあるのだと。

問題はそこじゃないのだけどと一言添えられた。

 

「まさか、こんなところに羽鳥家の者がいるなんて思わなかったよ。」

 

この人、私を知っているの?

 

「え、私を知っているのですか?」

 

タマヨリヒメがリビングに座って教えてくれた。エアリスも一緒に

 

「羽鳥家自体が元々特殊な家系なのよ。」

 

「特殊な・・・家系ですか?」

 

「貴女は・・・何も知らされてないわね。本来祝福を受けた者や加護を持つ者は誰かしらの庇護下に入る。

羽鳥家の先祖は、江戸時代まで遡るわ。」

 

「江戸時代・・・」

 

「はっきりしたことを言えば、智世、貴女はあの子と違って正統な血筋を受け継いでいるわ。日本皇家のね。」

 

「・・・・・はい?」

 

どういうことか分からなかった。私が皇家の血筋持ち?

なんの間違いかと思って再度聞こうとするとタマヨリヒメは言葉を繋いだ。

 

「あの子は古い昔に人間と駆け落ちした神の血を、

貴女は、日本皇家から駆け落ちした皇家の血を、

どちらも正統よ。だけど、あの子に皇家の血は薄い。代わりに先祖返りと言わんばかり神の血が色濃く受け継がれているの。」

 

「私が!・・・・皇家の血筋を!」

 

「・・・ねえ、皇家の血筋って何?」

 

「そうねえ、智世はイギリスで言うなら王族の血筋を持っているということになるわ。」

 

「・・・それって凄いこと?」

 

「エアリス。はぁ、貴方はそういうところがニブチンね。まあ、そう言うことだから、

貴女はスレイ・ベガ(夜の愛し仔)なのはそう言う関係で生まれながら持っているの。」

 

「・・・そう、ですか。」

 

「貴女は、・・・恐らく私が言葉にし難いくらい苦しい思いをしてきたのだと思う。その果てで自らを身売りなどと・・・」

 

「いえ、いいんです。それは、私がやったことですし。」

 

「日ノ本の神々を代表して謝罪する。すまなかった。」

 

タマヨリヒメは、頭を下げて謝罪した。謝罪されて私はあたふたした。

そんなことは無いというのに、というより、神々を代表してって神様に謝られても・・・。

 

「・・・・・、それであの子はどのような能力があると言うのさ。」

 

「エアリス、・・・・・あの子には07-ghostがある。発現してないけど」

 

「死神?危険じゃないか?神の血を持つ者が・・・」

 

「冥界の神、ハデス。戦場の死の神、ワルキューレ。黄泉の主宰神、イザナミ。」

 

「そちら側ということかい?」

 

「影の者ということよ。」

 

エアリスとタマヨリヒメがなんか難しい話しをしている。

2人が話し込んでいる間に私はまだ眠っているはずの彼女の元に向かった。

彼女は未だに目を覚まさない。けど、どうして。

 

「海の愛し仔であり、ゴーストを遣わす・・・か。」

 

不思議と親近感が湧く。この子と私は・・・似ている?

 

「気になるのかい?」

 

「あ、はい。・・・・・え?」

 

私の後ろにいつの間にか居た人。何故に司教服?

 

「この子は、まだ寝たままだよ。死の淵にいるからね。」

 

「どうして、死の淵にいるのですか?」

 

「彼女自身、まだ折り合いが付けられていないのだよ。大丈夫、そろそろ彼女は這い上がるよ。」

 

そう言って彼はスッと姿を消した。

と同時に部屋のドアが開いた。

 

「此処にいたか。」

 

「エアリス。タマヨリヒメさんまで」

 

「うん?・・・この花は・・・」

 

「それは、エデンの花ですね。」

 

「そう、ということは。智世さん、誰かいましたか?」

 

「はい、長身で薄紫髪の人が」

 

「あー、やっぱり。既に発現してたかぁ。」

 

「その人が、そろそろ起きるって。」

 

「じゃあ、起きた時に備えて準備しないとね。キッチン借りるよ」

 

「ええ、ですが。何故それを信じられるのですか?」

 

「エアリス、智世が見た人はプロフェ(預魂)と呼ばれる者よ。彼の能力は未来予知だからよ。」

 

 

 

それから数日後、彼女は目を覚ました。

 

Sideout

 

 

彼女の部屋には、目を覚ましたばかりの彼女と智世、御粥を持ったタマヨリヒメ、読書をするエアリスが居た。

 

「起きた?」

 

「ようね、どう?気分は」

 

「・・・・・、夢を・・・・夢を見ていた」

 

「・・・・・・」

 

「あの日、滝壺に落ちて最後に見たあの輝きは・・・、

けど、あの時誰かが助けてくれた気がする。」

 

「貴女、名前分かる?」

 

「・・・輝夜、三千院輝夜」

 

「!?・・・・え。」

 

「智世、知っているのか?」

 

「輝夜?」

 

智世が輝夜の顔を見て、輝夜は驚きながらも嬉しそうにしていた。

 

「智世、・・・久しぶり。漸く、・・・・見つけられた。」

 

「輝夜!」

 

智世は、輝夜に飛び付いた。

 

「温かい。智世は、ずっと・・・近くにいたんだ。」

 

「ごめんなさい、貴女に何も言わずに姿を消して・・・」

 

「ううん。・・・いいの、・・・・貴女があの町から姿を消したことで、私は祀の贄になったのだから。結果的に貴女にまた逢えた。」

 

「でも、でも私は・・・」

 

「それに、私たちは友達で・・・家族でしょ?」

 

智世の脳裏にまだ小学生頃巡り合ったばかりの輝夜を思い出していた。

誰からも寄り付かれず、気味悪がられていた智世にいつも寄り添っていた輝夜が言った言葉を

 

「あれ・・は、言葉・・・遊びじゃ・・・」

 

「・・・だって、同類同士だもの。1人は・・・寂しい、でしょ?」

 

智世の眼から涙が溢れてくる。忘れかけていた輝夜の存在、忘れ去られていたと思っていたのに、彼女は、輝夜は覚えてくれていた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

エアリスは、2人が抱き合って泣いているのを見ながらタマヨリヒメを見た。

2人の姿を見て微笑ましく思っているみたいだった。

そんな時、キュルルゥ~と音が鳴った。

智世は、周りを見回して違うと言おうとして、輝夜を見た。

 

「智、智世ぇ。安心してお腹、空いちゃった。」

 

にこやかに笑う輝夜は少し痩せこけて見えた。

 

「はいはい、大丈夫?輝夜ちゃん?」

 

「タマさん」

 

「御粥作っておいたから、起きれる?」

 

「ちょっと無理ですね。身体の感覚がまだ・・・。」

 

「少し、いいですか?」

 

「・・・誰だ?」

 

また新たに誰かが現れた。

司教服を着た青年。しかし、先ほどの青年といい、この人といい、何処の協会の司教服だよと思わせるものがあった。

 

 

輝夜side

 

「カストルさん。」

 

「輝夜?」

 

「大丈夫、」

 

「やはり、神経系統が途切れてますね。ラブラドール」

 

「うん、これぐらい造作もないよ。」

 

あの、セブンゴーストの皆さん?さりげなく現れないでくださいね。心臓に悪いのでと思う私。

ラブラドールは、そんな私を見ながら

 

「じゃあ、そのまま横になって、眼を瞑って、」

 

私は、言われた通りに横になって目を閉じた。

 

「何をしている?」

 

「エインズワースさん、でしたね。人間はどうやって魔法を使えると思いますか?」

 

「魔力を持っているからか?」

 

「確かに、魔力を持っていれば魔法は使えます。しかし、それだけでは魔法を己のモノとすることは出来ないよ。しっかり制御するための器、それが人間の身体なんだ。

輝夜は、多くの枷を身体に付けていた。それは、自分自身が付けたものではなく、両親が輝夜を想って付けたモノ。その枷が一斉に外れて、まともに動けると思う?」

 

「・・・・・無理だな。壊れてしまう。」

 

「そう、だけど輝夜は違う。いや、そちらの子もかな。生まれつき力を持ち、拒まれたスレイ・ベガ・・・か。」

 

「おい。」

 

エアリスはキレていた。しかし、ラブラドールは言葉を繋ぐ

 

「スレイ・ベガは短命だと・・・誰が言ったのかな?」

 

「何が言いたい?」

 

「その子も、輝夜と同じだと言ったよ。うん、一人一人だと面倒だから2人同時にやろう。」

 

「だから、何を!」

 

「古くからの魔法を使える人間には精霊回廊と呼ばれるものが備わっている。この回廊は、全身に張り巡らされていて、これがあることで魔法を行使することが出来る。輝夜の場合は、病み上がりというのと、精霊回廊と神経が繋がってないだけ。

智世ちゃんは、身体にある精霊回廊が半分しか使えていない。いや、使えるはずの回廊が途切れているからというだけ。」

 

「精霊回廊?そんなものが?」

 

「そちら側には恐らくないだろうね。それに精霊回廊という概念を知っているのは東方の国だけ。西洋に渡っていると思っていたけど途切れているみたいだね。

さ、智世ちゃん。輝夜の隣に寝てもらって目を閉じていて。少しこそばゆいかもしれないけど我慢してね。」

 

そう言って、ラブラドールが智世が横になって目を閉じるのを見届けると、手のひらから光り輝く糸のようなモノが出て来て、2人の身体に纏わりついた。

両手から数十、数百、数千もの光の糸が2人の身体に伸びて、

2人の身体から浮き出る光り輝く幾重の筋。

心臓を中心に頭、両腕、両手、胴、両足にまで延びたその筋こそ精霊回廊と呼ばれるものだった。初めてそれを見たエアリスは驚嘆としていた。

こんな方法で治せるものなのかと

 

「ラブラドールはこれでも治癒に関しては1級魔法医師でもあるし、大概の怪我や病気は治せるし、今回のような精霊回廊を持つ人間に限って何かしらの能力を持っているからラブラドールを頼るのさ。司教と言ってもそれぞれ役職があるものでね。」

 

「ま、イギリスとは違う魔法に当たるからな。尤も、分類上は同じ古代魔法だがな。」

 

「勝手に出て行かれては困りますよ。我々は表にはあまり出ないようにしているのですから。」

 

「ですが、これからはそうは行かなくなりますよ。フェアトラーク」

 

エリアスは、カストルと会話していたはずなのに一気に部屋に人が増えたことに驚く。

部屋自体は大きくないが、流石に大の大人が5人も集まれば狭いだろう。

 

「あれ、ランドカルテのとエアはどうしましたか?」

 

「ランドカルテはエアの手伝い。仲が良いからな。エアは魂の管理をしているよ。」

 

「そうですか、さて、改めまして輝夜の守護を任されましたフェアトラークです。」

 

全員司教服の彼等だが、皆死神である。

07-GHOSTと呼ばれる彼らは別の神より召喚され、輝夜の守護に当てられたのだ。

正確には、神の召喚というより、その神の娘によるものだが・・・

その娘と交友関係にある(させられた)ため、守護者として派遣されている。

その娘自身婚約者がいるのだが、婚約者自身も危機とあれば向かう所存だと伝えている。

そういうわけで、それぞれが特殊魔法を持ち、守護者として影ながら護衛する予定でいたが、輝夜の体調管理にラブラドールことプロフェが動いているため出ざるを得なかったらしい。

 

 

「君らは死神なんだね。ということは、智世も輝夜も死ぬのかな?」

 

「確かに、死期が近い人には死神が見えると諸説ありますが、2人はこのまま何の供を付けずにいるなら遠からず・・・」

 

「ですが、我々の内誰か一人と共にいる。若しくはエリアスさんと共に居ることでその可能性は限りなく低くなるよ。僕の特殊能力は未来予知だしね。」

 

「確かに、ラブラドールの予言はいつも当たるよな。」

 

「そういうなら、フラウ。エロ本の収拾癖なんとかしないとまたジオ様に焼かれるよ。」

 

「おいっ!そういうこと言うとマジになるから止めろ!」

 

そう言いながら、姿を消すフラウ

 

「何時もの事だしね。2人はもう大丈夫だよ。少なくとも智世が自分の魔力に殺されることは無くなった。後は・・・2人の戸籍かな?」

 

「智世の分は既に申請してあるよ。」

 

「ちょっと待って、それなら・・・」

 

タマヨリヒメがタブレット端末を開いて、何かを探している。

 

「あったあった。2人共、日本とイギリス両方で国籍になってるよ。」

 

「2重国籍は問題になりませんか?」

 

「日本だとね。20歳までに決めろなんて決まってるけど・・・今後を考えたらイギリスの方がいいでしょ。イギリス王室は古くから魔法大家だし、皇家、神家の血筋持ちなら待遇も国賓級になるし。」

 

「智世はそれに該当するの?」

 

「ええ、今イギリスが鎖国状態にあるのは、単純。

世界に先駆けて亜人などと共生しているからね。どの国も狙うでしょうね。」

 

「じゃあ、僕がこのままの姿で市街地に出ても問題無いんだね。」

 

「そういうことだね。」

 

現在、イギリスはイギリス連合王国と名乗り、

 

人間種(ニンゲン)・妖精種(フェアリー)・精霊種(エレメンタル)・天翼種(セレスティア)・森精種(エルフ)・獣人種(フェルパー)・竜人種(バハムーン)・冥人種(ディアボロス)・精霊人種(ノーム)地精種(ドワーフ)・海凄種(セイレーン)・機凱種(エクスマキナ)等々、20種類以上の種族が共存している。

共存しているが故、保有している軍事力をそれぞれ特性を生かせる場所に配属されている。

人間種・・・つまり人間に関しては陸海空に所有する軍事力を際限なく生かし、その上で他種族の障害にならないように改良されているため、セイレーンを音波で苦しめるなどという事例は無い。

イギリス王室は、国内に居るスレイ・ベガ(夜の愛し仔)とスレイ・スピカ(海の愛し仔)の存在を非常に大事に思っており、またスレイ・スピカに関しては日本で既に死んだ者として扱われていることに政府を通して激しい怒りを上げたとか。

国賓として扱われることになる2人だが、今まででは考えられないことだろう。

どちらも人から拒まれた存在であったが故、日本では無かったことをイギリスは堂々と行う。レインボーと呼ばれる特殊部隊がイギリスにあるが、これを警護に当てるというのだから最早どうしようもない((笑))

 

因みに、これを聞いた日本政府の重役たちはイギリスに先越されたと癇癪を起していたらしいが、既に2人の戸籍は抹消。新たに出来た戸籍はイギリスで作られ、2人共本籍はイギリスということになっている。

2人を狙う勢力は、イギリスという最強とも云うべき後ろ盾を得た2人に手を出しづらくなった。大亜連合は狙うだろうが、ロシアがそうはさせないだろう。

 

此処で、2093年現在の世界状況を見ておこう。

 

ヨーロッパは、イギリス連合王国が鎖国状態

欧州では北欧連合と西欧連合、南欧連邦の3勢力に分かれている。

 

ロシア連邦は、分裂。

魔法共存のロシア連邦と魔法至高主義の新ソビエト連邦に分かれているが、ロシア連邦の方が圧倒的に領土を持ち、軍事力があるため、抑圧的な新ソ連よりも経済的に安地

ロシア連邦、イギリス連合王国と軍事貿易同盟

アメリカ合衆国、メキシコ、カナダ連邦を含んでUSNAに

魔法師主力としているため、特殊部隊が丸ごと姿を消している

確認されているだけで、シールズ、デルタフォース、FBISWATなど

日本、特に無し。十師族が中心的存在、しかし天皇が国家元首をしている為あまり大きく行動出来ない。

 

 

 

 




かなり前に別の小説サイトでも07-GHOSTの小説は書いていたんですけど、結局の所最終話まで持ち込む文才が無くて断念してました。

けど、漫画とかでラブラドールさんが出てくるとまったり(*´ω`)として、良い感じになるのでこちらでもぶっこみました。

ああ、止めて。男の癖に男を好きになるなんて何事!?なんて言わないでぇ!!


以上


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第3話 

駄文編成


私と智世がエリアスの家で世話になって1週間が経とうとしていた。

智世が妖精に惑わされたり、エリアスの友人に顔見せに行って、エリアスを吹き飛ばしたり、

魔法使いと魔術師、魔法師の違いを話したり、智世が魔法を初めて使ってみたり、

神父と名乗る胡散臭いおっさん(サイモン)に会ったり

智世がドラゴンに浚われたり←今此処

 

「はぁ、智世はドラゴンの国に連れていかれて、エインズワースは後を追ったって・・・全く、」

 

私は口笛であの子を呼んだ。

蒼天の大空から舞い降りたのは体長20mもある大鷲

ファンタジーの世界でしか存在しえない存在だが、この世にはこのような存在はゴマンといるわけで

 

「友のところまでお願い出来る?」

 

「クエッ!!」

 

雛の時から拾い育てて来たこの大鷲がここまで大きくなっていたことを嬉しく思いながらも背中に乗った。

大空へと羽ばたく大鷲(名称ガルーダ)は直ぐに加速した。

その速さは戦闘機よりも早い、なのに私は風圧をさほど受けなかった。

ガルーダの羽毛がそれを防いでいたからだった。

直ぐに竜の国は見えた。エリアスが言っていた果ての地にある竜の国は確かに多数の竜種が存在した。高高度からエリアスと智世を見つけると、ガルーダは一気に降下した。

 

「周囲に気を付けて」

 

ガルーダは、一直線に降下して2人の真上に降り立った。

 

 

 

 

智世side

それは突然だった。

突然、空が暗くなったように思えると空から黒い物体が降りて来た。

翼のあるそれは私たちの後ろに降り立った。

 

「大鷲じゃと!?何故此処に!」

 

「この鷲・・・私を知っている?」

 

私の前に来た大鷲は、じっと見てから頭を垂れた。

羽毛の中から誰かが降りて来る。

 

「まったく、後を追うのはいいけど私を連れて行かないなんて、本当に智世にゾッコンなのね。エリアス」

 

「輝夜!?」

 

降りて来た人が友達であることにビックリいていると、

リンデルさんが鷲の方に近づいてきた。

 

「お主がカグヤか。」

 

「ええ、私が三千院輝夜ですよ。それよりも、覚えてる?智世は」

 

「じゃあ、やっぱり・・・あの時の雛が?」

 

「そう、まさかこんなにも大きくなるとは思ってもなかったけど」

 

「2人は知っておるのか?」

 

「ええ、私が雛の時に拾ってから育ててきたから。」

 

「こやつは、鷲の王だぞ。」

 

「ガルーダなら有り得るわ。元から凄かったし、成長速度も速かったし、」

 

「それが有りえんと言っとるのじゃ。その種族が人と馴れ合ったなら王にすら成れぬはずじゃ。」

 

「それは、私がスレイ・スピカで1/4皇族の血を持っているからじゃない?

智世も似たようなものだし。」

 

「どういうことなんじゃ?そんなことあるわけ・・・」

 

頭を抱えてしゃがみ込むリンデルに智世が

 

「あの、世の中、全てルールで縛られているわけじゃないですし、イレギュラーもあると思いますよ?」

 

「そういうもの・・・なのか?」

 

その後、ガルーダとネヴィンが実は種族同士で交流があったらしく、近況について話したり、

それでまたリンデルを驚かせたり、

魔力を貸した智世と私にネヴィンが空飛ぶ夢を見せ、最後に菩提樹と成る様を見せた。

ガルーダはその姿をしかと見届け、大空に向けて咆哮を飛ばしていた。

帰り際、ガルーダは自身の羽をリンデルに渡し、私と輝夜、エリアスを乗せて帰った。

 

智世sideout

 

 

 

 

 

その後、

智世が魔術師に浚われたり、猫の王モリィと事件解決に尽力したりと、どうも智世ばかり狙われているらしい。

その上で、魔術師側に勧誘されて、拒否したらしたらでなんかいざこざが起きるし、淀みかなんかしらんものに取り込まれるし、けど智世はモリィと協力して撃破して倒れるし。

そのまま寝ると、2週間も起きないし、エリアスは森の中で療養させてるし

その間に妖精王とか来るし、。

どんだけ智世を狙うんだか・・・

何れ、私は此処から日本に戻らないといけないというのに。

しかし、日本では日本で、私の身柄要求と来たか。

魔法師至高主義の巣窟だと考えることは違うらしい。

イギリス王家の配慮もあって、本籍をイギリスとして登録してあるからいいけど。

智世を狙う集団もいるみたいだし。なにかしら手は打たないといけなさそうね。

智世が起きる前にこちらが戻る手筈も整えておきたいし。

 

幸いにも軍との協力は取れた。

親が居ないこともあって、そろそろ退役するイギリス軍元帥が義父になるそうだ。それだけでも驚きなんだけど。

その義父となる人がねぇ・・・・・・イギリス軍最強剣士なんて言われている方。

 

砲弾斬る化け物

近づく前に死んでいる

一人軍団

つかあのおっさん戦略魔法くらってピンピンしてんすけどぉ!!

など、逸話の多い人。

リチャード・K・ブラッドレイ

息子と妻に先立たれているかなりのおっさんだが、実力は折り紙付き。

そんな人が義父になるって・・・気が気でなくなりそうなのですけど。

まあ、普段どういうわけかアロハシャツで国民にも慕われているようだけど。

取り敢えず、そんなこんなでロンドンから家に戻ると智世が起きていた。

感涙極まっての大ジャンプ&サバ折りを智世にしてしまうが、後悔はしていない。

智世も喜んでたし。最近、エリアスも私に向ける感情が智世に似てきている気がする。

 

エリアスに何処に何しに行ったのか聞かれたから

 

「日本への下準備」

 

「えっ、イギリスから出るのかい?」

 

「ええ、あっちでやり残したこともあるし、・・・・・・

ケジメを付けないといけないから。」

 

「でも、危ないんじゃない?」

 

「ええ、今の日本はかなり危ないほうでしょう。・・・ですが、今はイギリス国籍を持ちとなりバックがあるのでおいそれと手出しはしないでしょうが・・・強硬策に出る可能性も考えられますから・・・」

 

「・・・それって、死に行くもんだよ。」

 

「私が日本で死ねば、日英戦争になりますよ。特に愛し仔となれば世界で100人未満ですから尚更ですし。私や智世の扱いは王族と同じ若しくはそれに準じた扱いとなりますし・・・」

 

「え、そんなに!?」

 

「智世は、知らないんだっけ?ちょっと前に朝鮮連合に来朝したある愛し仔が、軍に誘拐されてバラバラになってロシアで遺体で発見された事件。」

 

「それなら、僕も知ってるよ。大分騒がれたことだしね。こっちでは」

 

「そう。そして、その愛し仔が所属していた国家はロシアだったから

かなり怒ったみたいだよ。戦略爆撃機を何十機も持ち出してあそこの基地、ほぼ全部集中爆撃していったって云うから。」

 

当時の大統領がその事実を知った時、ロシア連邦空軍と陸軍に攻撃命令を出し、基地を含め都市機能を壊滅に至らしたという。

3カ月の間昼夜問わず、飛来する爆撃機を迎撃する術を失っていた朝鮮連合軍は成す統べなく壊滅し、残存戦力が全体の1割未満という壊滅的打撃を受けた。

更に、空港機能を地中貫通爆弾によって半年は修復不可能な事態になっただけでなく、その後も残った数多くの不発弾に悩まされることになったのであった。

しかし、この事件には裏があり、ロシアと共に爆撃機・戦闘機を派遣して攻撃していた国家があった。

北欧連合とイギリス連合王国だった。

その為、日本にとってイギリスは怒らせてはならない国家であったが、日本の政府(十師族側の)が求めている少女がイギリスで戸籍を取得し、国籍もイギリスとした為、手を出すに出せないのだ。

その為、外交面で「不当に奪われたわが国民を返せ」など大使館を通じて言っているが、イギリス側は完全に無視していた。

しかし、その内の三千院輝夜が日本とのケジメを付けると云う事態に議会が荒れた。

 

個人の意見を尊重する意見  と  断固として危険だから反対する意見

 

1週間以上に及ぶ議論の末、輝夜に対する護衛を軍から選抜し、日本で生活する間、安全が保障出来る場所に住む事が決定された。

其処に声を上げたのが退役間近のイギリス陸軍元帥だった。

日本に別荘を持ち、万が一の時半年は立て籠もることが出来るという豪邸。

何故そんなもの立てた?と聞きたいところだが、イギリスにおいて最も信の置ける者からの進言だけに護衛の部隊の選抜は簡単に終わった。

議会では、反対派の意見が多くあったが、ケジメを付けることで今後日本からの抗議も消えることだろうという楽観視と、日本への最後通告を合わせていた。

魔法師を作るために人体実験をしているのは何も日本だけではない。

しかし、まだ日本には淡い希望として通告していた。

国際魔法人権法に反する行為を続ける日本に即時停止か脱退かを問いただすチャンスだと言う議員も居り、輝夜の申請はなんとか通ったのだ。

更に言えば、その別荘をフェイクに使い、エリアスの自宅から転移登校も出来るため丁度いいだろうと考えていた。

 

 

「日本の魔法師の状況を知るということもあって、魔法科高校に行くのよ。」

 

「魔法科高校かぁ・・・でも、・・・。」

 

智世はエリアスを見る。

一連の話を聞いていたエリアスもまだ不安そうだ。それに日本に行くと成ればそれこそ問題が多くあるだろう。

 

「エリアスはどう思ってる?」

 

「反対だよ。・・・何より智世が有象無象に触られるだけで反吐が出る。」

 

「・・・・・・じゃあ。」

 

「けど、いくら買ったと言っても智世には人間らしく暮らして欲しいと思ってる。」

 

表情が読めないけど、困った感じになってるエリアスを見ながらも

 

「行くのは来年の4月に合わせて行くから、まだ時間はあるよ。行くか行かないか。それまでに決めると良いよ。」

 

「そう・・・だね。けど、輝夜は行くのでしょう?」

 

「行かなきゃ、ならない理由がある。全てを断ち切る為の理由が、・・・」

 

私は、あいつらをやらなきゃならない。じゃないと、私は・・・

 

決心が付いたように遠い日本に向けて睨み付けていると、視界が真っ暗になった。

誰かが背後から抱き締めてくれている。

 

「君が日本に行きたい理由が分かった気がするよ。

けど終わった後、君はどうするの?」

 

「・・・・・こんな田舎でひっそりと暮らしますよ。・・・一度散った命、また落としたら怒られちゃいますし。」

 

エリアスの顔を見ると、まったくと云った顔をして頭を撫でる。

 

「君と云い、智世と云い、似た者同士だね。」

 

「人間、一人では過ごせないですから。似た者を見つけると徒を組みたくなるのですよ。」

 

「それが、分からないのだけどね。」

 

「サイモンさんに聞いてみては?知らないより知っている方が知識として得るモノもあるかもしれないですし。」

 

「そうだね、・・・・・人間を知るには、色々必要だね」

 

 

 

そんな時、家のドアが唐突に開く。

 

「失礼するよ。」

 

アロハシャツにアロハパンツを履いたおじさん・・・・・あれ?

 

「リチャード卿!?・・・どうして此処に?」

 

「何、世話になっているエインズワース君を一目見ようと思ってね。

あ、これはエインズワース君への土産だ。スイカは嫌いかね?」

 

「まったく、貴方は御変わりないようで。」

 

エリアスと握手するスイカを持ったアロハシャツを着た男こそ、

日本に渡る際の義父となるリチャード・K・ブラッドレイだった。

 

 

 

 

 




キング・ブラッドレイだと、ちょっと問題なのです。イギリス王国なのです。
王(キング)がいるんです。
なので、皇族の親類という設定です。
なので、イギリスの獅子王から名前を拝借しました。



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第4話 慟哭

駄文にもなるし、ご都合展開にもなる。
07-GHOSTのキャラは、ウィキなどで確認してみてください。


あまり描写が上手くないですが、どうぞ。


 

 

リチャード卿の乱入で、少し騒いだものの、シルキーは知っていたようで、頭を撫でられて嬉しそうにしていた。

エリアスよりも懐いているんじゃないかって具合に

 

エリアスは、何処か嬉しそうだ。

聞くに、昔暴走したエリアスをリチャード卿が軍刀のみで抑えつけたらしい。

それ以来、仲が良いとか。

 

確かに、リチャード卿。弾丸砲弾は斬るわ、戦車は手榴弾で撃破するわ、人間を辞めている節がいくつもあるけど根は優しいおじさんだし。

あ、智世を見て撫でてる。

 

1週間ほどいるらしい。いつもロンドンに来て、金銭面を負担させているのも忍びないのだとか。ということで、リチャード卿を通してテレビ電話で話しをすることに。

 

今回は、智世とエリアスを含めて

 

 

「さて、今回の話だが、少々問題が発生している。」

 

「なにかあったのですか?」

 

「うむ、お二人がイギリスに来てから情報局が両親について調べていたのだが、羽鳥さんに関して母は自殺、父は行方知れず。三千院さんに関して両親共に事故死と痛ましいことは分かっている。しかし、問題は此処からだ。三千院さん、両親の御遺体は・・・拝見なされましたか?」

 

「いえ、両親死亡後から親戚と名乗る人達にたらい回しにされましたので・・・。」

 

「やはり、ですか。・・・日本の警察に確認を取ったのですが、ご両親の遺体は回収されていないとのこと。

それともう一つ、警察が回収する前に遺体を何者かが持って行っていた事。

恐らく、事故を起こした犯人もどういうわけか、捜査中止が上層部から出されていたことが分かっています。それから推察されるのが、」

 

「十師族か。」

 

「はい、奴らの関与が濃厚であると。それと、羽鳥さんの母親も警察が預かっていたのですが、親族と名乗る者達によって運びだされています。追跡した結果、百家関係若しくは十師族関係者と思われます。」

 

「それは此方も把握している。日本に向かう目的もそれが大半であると言っても過言ではない。」

 

「輝夜、少し抑えなさい。」

 

リチャード卿が手を私の頭に置く。怒りで熱くなっていた身体が自然と冷える

 

「すみません。」

 

「何、自分の両親をぞんざいに扱われて怒らん遺族は居らぬよ。しかし、相手が十師族と来たか。」

 

「イギリス極東派遣軍は、ロシア連邦、北欧連合、オセアニア連邦と共闘、現在分散して有事に対応出来るよう待機指示を出しています。」

 

「そっちはやる気か。」

 

「ええ、セレスティアとエクスマキナの両種族が全力出撃態勢を取っていますし、既に日本への妨害も始まっています。セイレーンは、彼等には見えないので精霊を使った魔法BS魔法と誤認するでしょうが、シーレーンへの国防海軍のみへの妨害攻撃は行われています。」

 

「国防海軍だけか?」

 

「ええ、瑞穂海軍は近衛艦隊でもあり、日本の天皇は此方よりです。」

 

「成る程、後は国内での安全確保というわけか。」

 

「車での移動が一番安全かと思われます。無論警護車両を付けた上ですが。」

 

「前後の3台をセルシオにすればいいんじゃないか?」

 

「だが、・・・まて、どういうことだ?」

 

「変に外車にすれば勘繰られる。それこそ悪目立ちしかねんからな。」

 

テレビの先で国家公安委員長や警察庁長官、近衛軍関係者や軍関係者らが話し合いを続けている。大分事が大きくなりそうなので

 

「いえ、それには及ばないかと」

 

一言添えた。

 

「どういうことかね?」

 

「彼等魔法師は、魔法使いと魔術師を足して2で割ったような存在。魔法レベルも我々より低いものと考えています。根本的なところが」

 

「確かに、戦闘力では確かに高いところがあるが基本を疎かにしている点がありますな」

 

「この前、近衛の方に寄らせてもらった際に拝見した純鉱物のアンティナイト。彼らにとって天敵とも言える存在の用ですよ」

 

「ほう。それは良い事を聞きましたな。」

 

「確か、ベラルーシでも取れると聞きましたが・・・」

 

「あそこは大亜連合が抑えているが、アンティナイトと云うには弱いものだ。そんなもので無力化出来るなら純鉱物である更に錬成されたアンティナイトを食らえばただじゃ済まんだろう。」

 

「おいおい、話しが逸れているぞ。日常生活でいつもそちらに転移するわけにも行かんだろう。それに碌に良い学生生活も送れてないんだ。あちらの政府が保護する可能性は極めて低いだろう。」

 

「その件ならすでにエクスマキナから日常生活の護衛を回すそうだ。彼らの種族からならまだ問題は無いじゃろう。」

 

「だが、油断も出来ん。・・・ところで、羽鳥殿はどうなされるのかな?」

 

「・・・・・え?」

 

「此方の学院か、輝夜殿と同じ高校か、・・・まだ決まってないか。」

 

「そう急くでない。羽鳥殿も行くことを想定して練り直そう。また連絡をするよ。羽鳥殿もゆっくり考えると良い。3年間通う学校生活だ。しっかりと話し合うのじゃな、自分自身と」

 

そう言って、テレビ電話はプツリと切れた。

エリアスも、考え込んでいる。

 

「・・・・・・・・、輝夜。」

 

「・・・今は、今はそっとしておいて。」

 

私は、向こうから届いた詳細文書に目を通し、怒りに震えた。

腸が煮え繰り返ってるのが分かる。私は、智世に声を掛けられたけど、それを無視するかのように外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱさりと落ちた紙文書、それをリチャードが読み、エリアスもリチャードから渡されて読んでいた。

「輝夜には、酷としか言いようが無いな。あれでは復讐に駆られた修羅同然だ。」

 

「・・・リチャード、これどういうこと?」

 

「そのまんまだ。イギリス政府や軍、警察、そして各種族が本気で怒っとる。

下手をすれば、日本が崩壊しかねないほどにな。」

 

「それって・・・」

 

智世が何か言おうとして、

突然外から悲鳴にも似た悲痛な叫び声が辺りに響いた。

叫び声に驚いた3人が外に出ると、大雨が降っていた。

大粒の雨が降る中に輝夜がいた。

 

膝を地に着け、顔を天に向け、叫んでいた。

 

両親の凄惨な死後の状況。

輝夜の両親は、十師族側の魔法師による事故によって死に、その後遺体は連れて行かれ、身体の隅々まで調べられ、終いには解剖、遺体を残さない為に苛性ソーダを使って肉を溶かし、骨は砕かれバラバラに埋められたのだ。

 

その事実を知った輝夜は怒った。冷めぬ怒りは身体を熱くさせ、魔法力の暴走を招きかねなかった。だから、自ら雨降る外に出て、冷やそうとするも次第に帯びて来るのは怒りから哀しみだった。

 

輝夜の慟哭は精霊を通じて、各種族や主要機関、エリアスの友人知人達の元まで響いたという。

 

慟哭が止んだ時、輝夜の身体は力なく崩れ落ちた。

まるで、抱えていたナニカを出し切ったような、それでいて儚く消えそうな輝夜を智世は抱き締めた。

大粒の雨が2人を濡らす。

リチャードもエリアスも、目の当たりにした輝夜の慟哭に、胸に秘めていた怒りが哀れみに変わっていた。

雨に打たれる2人をエリアスが回収すると、シルキーがタオルを抱えて心配そうに駆け付けてくれていた。

 

「ありがとう、シルキー」

 

智世は、シルキーからタオルを貰い、濡れた身体と髪を拭きながら、輝夜の身体を拭いていた。

そんな時に来訪者が居た。

ドアが開いたと同時に輝夜を見つけると、その男は輝夜に触れようとして、外に叩きだされた。

 

「智世くん、輝夜を頼んだよ。」

 

リチャードがそう言うと、外に叩きだした男と対峙していた。

 

「何者かね?」

 

「ふん、貴様に用は無い。しかし、目的のモノが此処にあったんだ。座標として固定しないとな。」

 

黒服男がそう言うが、退くより先に他の者がいた。

 

「なあんだ、異物が紛れ込んでいるじゃん。智世を狙ったのかな?それとも輝夜?」

 

「はぁ、まったく貴方は。どちらにしても、生きて返すわけにいかないでしょうに。」

 

「あの慟哭はこの国全員に聞かれておるからな。さて、死んでもらおうか。日本の魔法師とやら」

 

「ふん、老害も妖精もこの魔法を前には無意味よぉ!!」

 

黒服男が白い腕輪で何か操作する。

 

が、それよりも前にリチャード・K・ブラッドレイは軍刀を抜いて手首を斬り落としていた。

 

「ふむ、弱いな。私の友人達ならこれぐらい反応して見せるというものを」

 

リチャードは、そう言いながら落とした手首に付いている腕輪を見る

 

「グギャァァァ」

 

「成る程、これがCADか。魔法師はこんなものがないと魔法を使えないのかね?」

 

「こ、この、野郎。」

 

「私は聞いているのだよ。それとも、もう片方も飛ばしてみるかね?」

 

エリアスの家の庭には、森の常若の国の妖精王オベロンや女王ティターニア、

各種族の者達が集まっていたが、誰一人として動けずにいた。

輝夜の命を狙ったとされる男に向ける眼光は厳しかろうと、目の前の壮年の男の眼光は彼等よりも鋭く、そして強烈な怒りが感じられたからだ。

 

 

「・・・、それがなんだという?当たり前のことだ。CADなくば発動もせん。」

 

「ほう、なら見せよう。魔法というものを、料金は貴様の命だがな。」

 

そう言って、リチャードは両手から稲妻を出した。

 

「な、なんだ!?・・・それは!?」

 

「ワシ等からすれば智世も輝夜も可愛い孫同然じゃ。その命を狙わんとした貴様らは万死に値する!」

 

両手の稲妻を一つに圧縮し、

 

「ドラゴンライトニング」

 

稲妻がドラゴンを模して、男を飲み込む。

男は1千万ボルトの電撃を全身に食らい、肉すら残さず灰となって消えた。

 

「ふん、弱いものだな。」

 

「それは貴方が強すぎるからですよ。」

 

「エインズワース君、・・・どうやら来客者が多くいるようだぞ。」

 

いや、彼らは慟哭を聞いてきたわけであって来客のつもりはないのだが、開かれた扉が閉じる気配がなく、皆家に入っていった。

 

一同が家に入ると異質な存在が其処にあった。

 

家の中で宙に浮く水球体

その中に輝夜が眠ったまま其処にいたのだ。

その水球を作ったのが、水の精霊ウンディーネ達だった。

 

「今は、此れで保護しておく。身体だけじゃない、精神の方を守らないと」

 

エリアスにとっても思っていた以上に溜め込まれていた輝夜の十師族に対する恨み憎しみ、憎悪は、今回の文書が決定的となったのだ。

一歩間違えれば精神的に崩壊していてもおかしくないまでに疲弊した彼女をしっかりと休ませる為に、ウンディーネ達が水で出来た球体ベットを作り、輝夜を其処に寝かせたのだ。

 

「呼吸は当然ながら、寝ている間の栄養供給もこちらで行えます。

というより、暫く寝かせたままの方がいいでしょう。」

 

「生命維持は大丈夫なのかの?それでは・・・」

 

「妖精の国でも治すことは不可能に近い。何故なら、精神つまり心の問題ですから。

その点については・・・リチャードさん。貴方に一任するしかありません。」

 

ウンディーネ達は、そう言ってリチャード・K・ブラッドレイを見る。

他の妖精や精霊、種族の者達が考えるが外傷は治せても心を治すことは出来ないと判断した。

人間と精霊、妖精とは違う。似たような種族でも

 

「残念なことにそれをするわけには往かぬのだよ。情緒不安定となれば精神病院行きとなる。あそこよりかは、自然の中で休ませる方がまだマシかろう。それに・・・」

 

リチャードが話を続けているなか、現れた男性。彼とリチャードは知り合いのようだった。

 

「どうした?エア、君がココ(現世)に来るのは久しぶりになるのではないか?」

 

「ブラッドレイ、今はその話をするわけにいかない。此処でもそうだが、魂を管理するものとして今後、輝夜の警護に付くであろう者達に忠告がある。」

 

「忠告?・・・オモシロい話しね。妖精に対して人の身・・・いえ、死神が警告だなんて」

 

「日本で回収出来ていない。若しくは回収が難しい個体が存在している。原因は、人間たちが繰り返し行ってきた魔法師体を作るために行って来た人体実験によるものだ。

ヒトだったモノがヒトの形をせずに彷徨い続けている浮遊霊や、一定の土地に縛られ動かずに様々な悪戯を働く地縛霊はまだ問題無いほうだ。

問題なのは、死霊と呼ばれる個体だ。」

 

「死霊?」

 

ティターニアは、それは知らないと言わんばかりにエアの次の言葉を待つ。

 

「ああ、死霊は云わば怨念の塊のようなものだ。人を死に追い遣ったり、引きずり込んだり、あるいは人に取り付いて苦しめたりと害しかない存在だ。こいつの存在は日本では最先端だろうが、数が多すぎて間に合ってないのだろうな。さっきの男に取り付いていた大量の死霊を処理するのに07-GHOST総出で作業していたよ。中にはこの地に住み着こうとしていたものだから排除と黄泉送りは尚更骨が折れるものだったよ。」

 

エアが、そう言いながらも話しを続ける。

輝夜の為に妖精や種族が何が出来るか、それぞれ役割分担してやっていく為の会議がエリアスの庭で行われようとしている時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜はというと、

 

 

 

 

 

精神世界にいた。

辺り一面が蒼天に包まれた世界で、輝夜は一人飛んでいた。いや、浮かんでいたというべきか。

 

「な~にやってるの。」

 

何処か心配そうに訊ねて来たのは、イヴ。

07-GHOSTの長、フェアローレンの嫁にして、フェアローレンを含む07-GHOSTを統括する立場にいて、私の数少ない友人の一人。

 

「一人で黄昏ちゃって。どうしたの?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「もう、まったく。あの時も言ったよね。溜め込まないで周りに頼りなさいって。」

 

「・・・・・知ってた?」

 

「当然よ、ずっと見てたから。貴女がコワれたりしないようにって。けど、これは貴女の性でもないし、どうすることも出来なかったのも事実。心で割り切ることも必要よ。」

 

「けど、あいつらは・・・・」

 

「あの糞共については一度忘れなさい。恨みを持ったまま学校生活を送っても楽しくないでしょう?」

 

「それは、そうだけど・・・けど。・・・!?」

 

「もう、こういう時は頭硬いわね。」

 

イヴは、そういう輝夜の額をデコピンする。

デコピンされた私は、額に来た痛みに蹲っていた。

 

「ほら、こっちに来て、其処に寝て。」

 

イヴに連れられて、私はいつの間にか何処かの部屋のベッドに寝かされた。

 

「リラックスして、ゆっくりと休んで。・・・ああ、今着ている服は要らないから」

 

そう言って、抵抗する間もなく、脱がされ着せられた。

マッサージ店とかで施術する時のバスローブを着せられてうつ伏せに寝かされた。

 

「身体、解したりしてないでしょう?」

 

「・・・・・・、最近忙しかったから。」

 

「でしょうね。ほら、力抜いて~、肩からマッサージしていくよ~。」

 

イヴはそう言いながら、私の両肩をモミモミと揉みし抱く。時折撫でたり、擦ったり、圧したり、リズムカルに叩いたり・・・

 

「ねえ、」

 

「なに?何処か痛い?」

 

「此処でこんなことしても現実の方には・・・」

 

「反映されるよ。精神内だろうと、身体を解したりするのは実体と同じようにしているから問題ないわよ。それよりも・・・硬いわね。痛いでしょ?」

 

「痛いです。」

 

「肩だけでこんなんじゃ、背中も腰も足も相当ね。ほら、身体は私が施術して解しておくから眠たくなったら寝てもいいのよ。」

 

そう言って、アイマスクを渡して寝させる気満々のイヴ

ふと、マッサージをし続けるイヴに素朴な疑問をぶつけてみる。

 

「どうして、そんなに私を気に掛けるの?」

 

イヴの手が一瞬止まる。直ぐに動き出すが、明らかに動揺した感じだった。

 

「・・・貴女は、昔の私にそっくりなのよ。自分で出来ると何もかも背負い込んで、終いには周りの心配を気に掛けないで、そして潰れて・・・・・・。

フェアローレンにはいつも怒られてたかな?それが昔の私だった。そして、私の目の前に昔の私と同じ境遇の子が居て、気に掛けないとでも思う?

皆、貴女のことを心配しているのよ。スレイ・スピカ、海の愛し仔、大洋の守護者?とか色々言われているけど、その分、各種族は気に掛けてるの。今回は、貴女の精神的危機といえる状況に皆集まったわ。

奇しくも、貴女を狙う者を引き付けてしまったようだけど、ブラッドレイさんが鎧袖一触したようだし。」

 

「・・・・・私は、生かされているの?」

 

「そうねぇ、貴女は確かに生かされているわ。けど、それは無意味なことじゃない。なんだって、貴女は人であり、モノではないのだから。」

 

「私は、」

 

ガバッと起きた私は、イヴを見つめる。

 

「私は、生き続けていいの?」

 

イヴがそっと私を抱き締めながら、

 

「貴女の代わりはいないの。貴女は貴女、他は他、まったく異なるのだから。

けど、復讐に身を飲み込まれては駄目よ。だから、私に頼りなさい。

私は、貴女を護るわ。」

 

「あ・・・あり・・ありが・ありがとう。」

 

そう言ったイヴに私は流れ落ちる涙を抑えることが出来なかった。

心の何処かで何か焦っていたのだと思う。

そして、今後に備えての準備に復讐と、その他色々とあれこれ抱え込みすぎていたのかもしれない。其処に両親の死の真相を知って私は、楽になりたいと思っていたのかもしれない。

収まらない怒りと憎しみ、それが全てを覆った時私は機械のように強制的に意識がブラックアウトしていた。

私を幼少期から見守ってきてくれていたイヴが助けてくれたのだと後になって理解した。

イヴと精神世界で再会して、私は、抱え込んで来た事を全て吐き出さそうとするも、イヴは知ってると返した。

 

抱え込みすぎたそれは要らぬ重石だな。

 

他の誰かの声がしてその方をみると

 

「あら、フェアローレン。来ていたの?」

 

「ふん、思考状態が同じじゃ考えも似るものだ。07-GHOSTばかりじゃ

手に負えんだろう。私も手を貸そう。何かあれば私の名を言えばいい。」

 

「ふん、もう素直じゃないんだから。」

 

「そうか?私からすればイヴに妹が出来たように思えるが?」

 

「まあ、否定はしないわ。姉妹であり家族なのだから。

それよりも、もう胸の内は決まった?」

 

「はい、イヴとフェアローレンのおかげで」

 

「ふむ、此処に来たよりも気配も変わったな。それなら問題ないだろう。征け、人の子、スレイ・スピカよ。」

 

私は、2人に背中を押され元の世界へと戻って行った。

 

 

「いいの?」

 

「ああ、エアとランドカルテが嘆いていてな。日本は問題が重ね重ねになっている。流石に奴らだけでは足りないだろうからな。」

 

フェアローレンは来た道を戻る。仕事を、輝夜に出来る支援をするために

 

「なら、私もしないとね。あの子は目が離せない妹分だからね。」

 

2人も進む。それぞれの仕事を成す為に・・・

 

 

 

 

 

 




原作のフェアローレン・・・じゃない気がしてならない。

原作のフェアローレンが黒だとすると、今作品では白・・・なのかな?

エアは基本世界全土の死者を閻魔帳に記入するなど仕事をしています。
しかし、1日で死ぬ人間の数は多く、第三次戦争後溜まった死者を探し出して魂の管理をしている。

ランドカルテは、エアと仲が良い。エアの膨大な仕事を手伝っている。最近、10徹しているエアを気に掛けてフェアローレンや他のGHOSTたちに応援要請したりしている。
時には瞬間移動して、輝夜や智世の元に行く。

イヴは、輝夜をかなり気に掛けている。というのも、輝夜とイヴは容姿がとても似ている為、フェアローレンですら勘違いしたりしている。そんな輝夜を妹のように気に掛け、輝夜の人格が二分しないように護っている。


以上、簡単なGHOSTたちの説明でした。


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第5話 いざ、日本へ・・・海の航行

ああ、言い忘れてましたが、批判的な感想は一切受け入れません。
前に一度有って、書く気が一気に失せたのですが、設定があいまいだの、原作ならどうだの等、そう言う事についての質問も受け入れませんのでご理解下さい。

暗い話しになりましたが、どうぞ


雨の日の慟哭から3日後、私は目を覚ました。

余程心配されていたのか、眼が覚めた時ウンディーネ達によって純水による球体状の結界が張られてその中に服を着たまま寝かされていた。

眼が覚めてから結界から抜け出した私は先にお風呂に通された。

智世には大分心配させたから、表情も暗いままだった。

けど、お湯を浴び、風呂に入って身体を温め、私は今となっては何時もの面子しかいないリビングに通された。

エリアスも心配してくれていた。

リチャードさんも、智世も、シルキーはご飯も持って来てて。

昼食を食べながら、私は打ち出した。これから行っていくことを。

今まで慟哭するまで抱え込んで来た事を吐き出した私にリチャードが

 

「もっと頼るのだ。君も智世くんもまだ子供なのだから。一人で成そうとしても必ず挫折するのだから。」

 

「ええ、そうします。」

 

「智世くん、君もだよ。」

 

「え、私も!?」

 

「君の思考パターンは、輝夜くんと同じく自己犠牲に走りがちになるようだからな。悩みがあるなら、周りに頼るといい。わしやエインズワース、輝夜が力となる。無論、逆も言えるのだがね。そして、エインズワース君。君は人間の心理が分かりにくいだろう。智世くんを買ってなにをするつもりなのかは知らぬが、あまり手の内におこうとすると逃げられてしまうかもしれんぞ。」

 

「・・・要らぬお世話だ。」

 

「そう?エリアスは智世が好きなのかもしれないね。」

 

「・・・僕が?信じられないな。」

 

「まあ、智世も智世でエリアス対して特別な感情があるのかもしれないけど。」

 

「それよりも、変わらないんだね。君は」

 

「ええ、明確な目標も出来たし、協力してくれるところにはこちらから打診したし。

その道が茨道でも突き進むよ。」

 

「君は・・君たちは・・・本当に馬鹿なんだね。」

 

「知らないと思うけど人は、一人じゃ何もできないの。私が輝夜に頼って、頼られてそうして初めて人になれるの。」

 

「全てを熟すことは出来なくとも役割分担すれば出来ない事も出来るようになる。」

 

智世と私がエリアスを見る。

エリアスは、そんな2人を交互に見ながらリチャードを見て言った。

 

「これが、人間なの?」

 

「基本的な部分だからな。そこから先は人によって違う。わしと輝夜は同じように見えるか?輝夜と智世は同じように見えるか?人の本質は計り知れぬのだよ。」

 

「・・・・・難しいな。」

 

「これから知ればいい。わしが協力するわ。」

 

なんか、リチャードさんが父でエリアスが息子に見えるこの構図が凄くマッチしてる。

後から聞かされたのだけど、エリアスから魔法を教わりながらだけど私と一緒に日本に行くことを決めたそうだ。ネヴィンの樹の枝で作った杖で何度かネヴィンに精神世界で会って、過去の智世の母についての事を思い出し、最後にやる事があるということで一緒に日本に渡航することとなった。実際はエリアスが通う学院からの留学生という扱いで・・・

それから、というもの。智世に降り掛かる災厄にエリアスや私が本気で怒ったり、ドラゴンの世界から密漁で連れて行かれた雛の奪還で智世がエリアスと協力せずに一人走ったりしていたが、竜人族、バハムーンの人達が暴走したドラゴンを抑える智世の手助けをしたり、

暴走しているドラゴンの雛に取り付く邪悪な闇魔法を取り除くのに、セレスティアの人達を呼んだり、ドラゴンの雛を助けたはいいが智世の腕がドラゴンと同化現象を引き起こしかけていたため、一時バハムーンの世界に治療の為、向かったり、その時にエリアスがガンにして頭を縦に振らないせいで智世を怒らしたり、

エリアスが自分の殻に入りそうになったり、

ヨセフことカルタフィルスがまた性懲りも無く智世を狙ってリチャードに半殺しに会って、這い這いで逃げ帰った先にイギリス正協会の方々が出待ちしててドナドナされて、どこぞの魔術師に付けられた不死の魔法を何とか解呪するために色々試されて、

最期はフェアローレンの御出迎えでこの世を去った。

 

悪い人では無かったと思う。けど、何十何百と生かされ続け死ねないのは、その人の本質すら大きく変えたことを智世はカルタフィルスの過去を見て感じ取っていた。

 

 

 

私たちが、そのようなことをしている間、

 

イギリス政府では、

日本側に三千院輝夜と羽鳥智世が留学生として日本に渡航することを伝えていた。

だが、単に伝えるだけでなく、日本国での生活の保障として護衛付きとなる旨を含めてだ。

無論日本側からの反発は必至だった。

 

しかし、

 

「しかしだな、ミスターカワモリ。これは我が国の最大の譲歩なのだよ。2人は我が国の魔法学校となる学院からの留学生扱い。

重要人物指定は必須条件下で護衛は日本に任せるわけには居かないというのが議会の総意だよ。」

 

「そんなことは知らないな。我が国の国民をそちらの国民としておいているのは貴国だろう。」

 

「だが、2人の所在不明時国籍を抹消しているのはそちらの判断によるものだと思うが?

三千院輝夜・羽鳥智世両名は無国籍後に自由国籍を取得している。

それにだ。あまり、そちらがそう言う態度を取るのなら、我々もそれ相応の対応をせねばならなくなる。私とて、ビジネスパートナーである貴国を失いたくはないのだよ。

だが、切れるカードが此方にいくらでもあるということを教えておこうか。君宛てに送った封筒があるだろう。此処に持って来てくれた封筒の中身を見てみるといい。データだと何処から漏れるか分かったモノじゃないしな。」

 

そう言われて、彼は渡されていた封筒の中身を見る

 

「こ、これは・・・!?」

 

「貴国の大臣や官僚の脱税や賄賂など黒い情報だよ。隠しているつもりなのかもしれないが、これを全世界に公表することも出来るのだよ。

そうそう、十師族・・・だったかな、彼らにとっても不利な情報も載っていることだろうな。」

 

「貴方方は、我が国を崩壊させるつもりですか!?」

 

「それもいいだろうと議会では話しているよ。尤も、貴方にとっても軍部の暴走はを抱えさせるものだろうがな。」

 

「・・・・・確かに、最近は政府の言い分を聞かずに独自行動している節があります。しかし、文民統制はまだ生きていると思っております。」

 

「そうか?旧自衛隊、今は瑞穂軍だったか。彼等と比べたら相当目劣りしているように思えるのだがね。まあいいさ。この二人については、来年の3月に

来日予定の我が国の女王陛下、王子殿下と共に向かうこととなっているよ。」

 

「・・・分かりました。では政府としては、お二人に関して関知しないものとします。同時に軍部が勝手に行動を起こしても政府の指示でないと分かって頂ければ」

 

「構わんよ。2人の警護にはRAINBOWが着くことになっている。襲撃してくれば当然ながら弾丸の雨が吹き荒れるだろうが、問題なかろう?」

 

「ええ。軍部の暴走で片が付きます。」

 

「それともう一つ。『天皇陛下と話をしてみると良い。』と我が国の女王よりミスターカワモリに宛てた伝言だ。確かに伝えたぞ」

 

「では、陛下の御来航を心待ちにしています。」

 

 

イギリス議会では護衛戦力を全てイギリス軍にするのではなく、日本に駐留する戦力にRAINBOWお抱えの機動部隊をほぼ全戦力を投入することに決定した。

旧アメリカ合衆国を含む多国籍の特殊部隊を中心とした陸上部隊

旧アメリカ・旧ロシアを中心とした空母機動艦隊と護衛艦隊

艦載戦力も米英仏露独混成戦力。

どれも、第3次世界大戦の序盤で活躍して一方的な行政的除隊をさせられた兵士達。

祖国に裏切られ路頭に迷う彼らを引き込んだのがRAINBOWというイギリスを中心とした特殊作戦師団だった。

日本への来日に備えてグリーンランドで編成を整えつつある彼等RAINBOWが戦闘状態に巻き込まれた時、彼らの実力が発揮されるだろう。

 

集まった特殊部隊の元所属

旧アメリカ

・デルタフォース ・グリーンベレー ・シールズ ・ナイトストーカーズ 

・MARSOC ・FBI SWAT 

 

旧ロシア

・スぺツナズ

 

日本

・SFGp ・SBU ・SAT

 

イギリス

・SAS

 

旧カナダ

・JTF-2

 

旧フランス

・GIGN

 

旧ドイツ

・GSG-9

 

など18の特殊部隊で構成されている地上部隊の装備に戦車は含まれていない。

戦車の代わりとなるのが、旧アメリカで廃棄処分される予定だったストライカー装甲車両ファミリーだった。これが主要的な装備となり、地上部隊の必需品ともなってくるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

それから月日が経って、智世と私は、エリアスやリチャード、学院から簡易的に魔法を教わり、ある程度の自己防衛魔法を習得した頃遂に時はやって来た。

エリアスも骨の顔ではなく、人の顔に変わって、ロンドン市内に行き、宮殿で私と智世はウインザー朝のエリザベスⅫ世との会談?というよりお話?的なものに参加して、

ウインザー朝を支える五大貴族の当主達にお会いして、男性当主からは撫でられ、女性当主からは抱き付けられ、・・・・・なんであんなに自由人なの!?と思ってしまうくらいだったけど。それと、リチャード・K・ブラッドレイさんって五大貴族リチャード家の前当主だったのね。私は、リチャード家の庇護を、智世は女性当主アリサ・G・ウォルコット家の庇護を受けることに。

これで、イギリスからの完全な庇護を受けることとなる。

今までが非正式だったが、これから日本で暮らしている間は、それぞれが庇護するとのこと。

喧嘩が売られたなら積極的に買っていくという五大貴族(武闘派の皆さん)

出来れば、静かに過ごしたいものです。なんて呟いたら智世も笑ってた。

 

ブレスト港から、近衛艦隊の王家専用艦に乗り込み日本に向けてアフリカを南下喜望峰を通過した頃にRAINBOWの機動艦隊と合流した。

近衛艦隊8隻にRAINBOWの機動艦隊34隻からなる艦隊は、

一路、日本を目指し航行を続けた。

嵐も無く平然と航行が出来るのは、セイレーンによる護衛もあったからだ。

彼等が、艦隊に不用意に近づく艦船を自然現象に見せかけて迷わせたり沈めたり、通り道だけ雨を降らしたり、降らさなかったりと天候干渉をも行って日本へと艦隊を進めていた。

 

 

 

 

日本東京港まで300カイリ

 

原子力航空母艦3隻と強襲揚陸艦8隻、

潜水艦4隻、ミサイル駆逐艦10隻、ミサイル巡洋艦9隻

が大海を越えて日本に近づきつつあった。

5日間という速度でイギリスから日本まで来ていた。

航空母艦以外通常動力にも関わらず異常な速度が出せるのは、前大戦で得た新型ガスタービンと蒸気タービンによるものだった。

全艦速力50ktという高速艦隊は、目立った妨害もなく、無事に日本近海まで到着していた。

その時、RAINBOWの機動艦隊の警戒駆逐艦から

 

「前方!11時、国防海軍駆逐艦接近!」

 

「無視しろ。話は既に付いている。妨害するなら撃沈許可も出ている。」

 

「了解!」

 

通達が来ていないのか、それとも意図的なのか、国防海軍の駆逐艦が艦隊進路上に侵入しようとした時、駆逐艦前方500mに1発の砲弾が着弾した。

駆逐艦は直ぐ様、艦隊からの攻撃だと砲門を向けた。

いや、向けてしまった。

 

 

「2時方向、艦隊接近!これは・・・瑞穂海軍第3護衛艦隊です!」

 

護衛艦12隻、空母1隻からなる護衛艦隊がこちらに接近しつつ、砲門は国防海軍の駆逐艦に向けられていた。

 

「どういう状況だ?これは」

 

「日本の近衛艦隊の到着ですよ。艦隊司令」

 

「!?・・・何故こちらに?三千院輝夜様。」

 

艦隊旗艦プリンス・オブ・ウェールズのCICに転移魔法で飛んできた輝夜

 

「あの国防海軍の駆逐艦は?」

 

「針路をあくまで塞ぐようです。しかし、何故こちらに?」

 

「瑞穂海軍の目的は、同乗しているエリザベスⅫ世女王陛下を含めた王家の方々と2人の重要人物の確認。及びそれの護衛ですよ。」

 

「成る程、なら合点いくわけだ。瑞穂海軍に回線を開け」

 

話しが済んでいただけに簡単な確認で話しは終わった。

全員がいる確認が終わり、回線が切れる直前に

 

「此方は、瑞穂海軍第3護衛艦隊司令楠木雷郷海将です。我が艦隊が日本入港まで剣となり楯となります。」

 

「ありがとう。私は、三千院輝夜。前大戦時、旧自衛隊残存戦力を率いて戦い戦死した祖父三千院龍治の孫娘です。」

 

「!?・・・では、貴女があの軍神の・・・日本政府並びに国防軍部及び十師族によって起きた凶行。代わって深くお詫びすると共に両親の御冥福をお祈りします。」

 

「ありがとうございます。それで、目の前の駆逐艦がかなり目障りになってきたのですが、」

 

「ご心配なく後は我々にお任せを。」

 

瑞穂海軍第3護衛艦隊は、RAINBOWの機動艦隊の針路を塞ぐ国防海軍の駆逐艦に警告射撃を行った。通信による海域離脱を命じたが聞かず、遂には、護衛艦4隻による全兵装攻撃が成された。

主砲、ミサイル、CIWS、魚雷を使い、容赦なく放たれた攻撃に対し、瑞穂海軍よりも練度も質も弱い国防海軍の駆逐艦に成す統べはなかった。

瑞穂海軍と同じく貧弱な装甲は、4方から来る攻撃に耐えれるはずなく、一瞬のうちに海の藻屑と変わった。同じ日本国民なのにこうも容赦が無いと、果たして彼らに何があったのかと勘繰るが、彼等は駆逐艦を沈めた後、何かを駆逐艦の周囲に撒いていた。

 

その後、国防海軍の妨害はなく、藻屑と消えた駆逐艦の捜索に来た国防海軍の艦艇と航空機が海面に浮かぶ残骸だけを見つけた。

生存者の姿が無いことに、違和感を覚えた艦長以下士官が実際に海面を見てみると多数の遺体があるものの、近づくことは出来なかった。多数の鱶が居た為であった。

その鱶が食ったのだろう、千切れた人間だったものが海を赤く染め、更に鱶をおびき寄せていたのだった。

 

 

 

 

東京港に入港した艦隊は、海上と陸上の戦力に2分し、

陸上部隊は、車列護衛に加わり、上空警戒をUH-60LAPブラックホークが4機着いていた。

王家の関係者に当たる私たちも持ってきたリムジンに乗り、6台のアーマードランドクルーザーと8台のアーマードベンツ、12台のライトアーマ―レクサスから構成されるイギリス版シークレットサービスに警護され、更に皇宮警察の先導の元、江戸城へと目指した。

日本の天皇が住む、江戸城跡地にある皇居までの道のりを内閣の指示を受けた警視庁による交通整理で恙なく事は進み、車列が皇居桜田門前まで近づいてきた頃、4台のライトアーマーレクサスが桜田門前の左側の車道を横一線に塞ぐように配置した。

其処に、護衛走行していたRAINBOWのストライカー装甲車ICVが2台停車して壁を作った。

どの方位から襲撃は無いと思われていたが、そうでもなかった。

全車列が皇居内に入ろうとした時、軍用トラックが警視庁の警戒線を突破して車列に突っ込もうと速度を上げた。

 

しかし、警戒線に置かれていたバスと車止めを強引に突破したせいか速度が上がらず、車体下に何かの部品を巻き込み途中で停車した。

その間、ICVからRAINBOWの部隊3チームが車体を楯に攻撃準備を済ましていた。

そして、小銃を持った国防陸軍兵士がトラックを楯にして銃口を構えて始めたが時既に遅し。

空からの狙撃と3チームによる制圧射撃でものの2,3分で鎮圧された。

容赦のかけらも無い攻撃だったが、効果はあった。後続からやって来た軍用トラックは逃げ出し、警視庁交通機動隊に追い回され御用となっていたからだ。

そんな騒動も銃撃戦もあったにも関わらず、一切マスコミに報道されなかったのは、完全規制を張り、違反した新聞社やテレビ局には以後一切の報道の打ち切りという、報道の自由は何処行った?的な状態になっていたが、それも今まで自由という名目で好き勝手な報道で国民を惑わしたり、迷惑かけたりしたという数々の問題に遂に政府が重い腰を上げたというところか。

特に、三千院家に関して非国民的な報道を繰り返し行った大手新聞社とテレビ局が、政府の決定で一切の報道・取材を禁じ、経営権の剥奪、両社長は扇動罪で逮捕され、敷地を国地として強制退去させ、新聞社・テレビ局のあった本社、分社、各出張所は取り潰された。

容赦のない政府の対応に当然批判の声が上がったが、三千院家と関わりの合った国々から国交断絶一歩手前になったり株価が大幅下落したり、景気が悪くなった責任を全て2社に擦り付けたのだ。元はと言えば2社が蒔いた種。このような形で帰って来るとは思ってもいなかっただろう。

反三千院家側の会社が、海外との取引を突然打ち切られ倒産していく中、親三千院家側の会社は、ライバル社が倒産したことにより高い業績と収益を得たのだった。

その後、報道されていた三千院家に関する情報が誤った情報であったとして修正された情報を1カ月も他の社は強いられることとなるのだが・・・。

 

 

 

 

日本での会談は、表向き

実際は私たち二人を日本に届けるという名目の元、行われた今回の作戦は無事に完遂されたと見て良いと思う。

リチャードさんが運転するアーマードレクサスに私と智世、エリアスは乗り込み皇居を出て、東京の府中市の別荘に来た。

此処がこれから寝泊りして使う家となるのを見ながら私たちは家へと入った。

家は地下1階を含む3階建ての物件広さ的に10LDKの部屋

これを3人で使うには広すぎるような気がするのだが、リチャードさん曰く、これから使うであろうCADの専用調整士が必要だろう?とのこと。

警備の人達はそれぞれ専用の部屋が地下にあるようで、地上部が共同利用場所になっているとか。

これからの、学校生活に少し楽しみにしながらも私は引っ越しの手伝いに行った。

 

 

 



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第6話 入学式へ

駄文必至

どうもキャラクターの口調が定まらない。

時折補足説明を後書きに加えるかも・・・


2095年4月3日

 

いよいよ、待ちに待った学生生活

魔法大学第1高校の制服も届き、袖を通した私と智世の右胸には八枚ではなく十枚花弁のエンブレムが施されており、イギリスの学院(カレッジ)からの留学生ということで見分けが付くように施された。

本来CADを必要とせずに魔法行使出来るため、大分渋ったものの、国からの要請もあって受け入れた。智世はあまりCADを使い熟せないが、其処はアンジェリカさんによって改造が施され、使えるようにしてくれた。

その為、従来型よりも非常にスムーズに魔法が行使しやすくなっている。

府中の家を出て、RAINBOWの護衛車に乗ってからその後は公共交通機関を使う。

個型電車(キャビネット)に乗り、立川まで行くのだが、智世がすっごくそわそわしている。

 

「智世、そんなにエリアスと離れるのが辛い?」

 

「え、い、いや、そうじゃないんだよ。ただ、大丈夫かなぁって。」

 

「エリアスが?」

 

「うん。」

 

「もう、二人して相互依存関係なんだから。家に帰ればまた一緒に寝れるでしょうに」

 

「(〃ノωノ)・・・知ってた?」

 

「いつもエリアスと寝ているのリチャードさんも知ってるよ。リチャードさんはエリアスを見ながら成長したな~みたいな感じで見てるし」

 

「(* >ω<)=3 最近のリチャードさんの顔ってそんな顔してたんだ。」

 

智世と私が乗るキャビネットが目的地に到着して、降りるとまだ朝早いためか、人はまばらで上級生たちが入学式の準備をしているくらいだった。

 

「あまりいい思い出もないのだけど。」

 

「それは・・・水に流してさ。行こう?」

 

私は、渋る智世に手を出す。

智世も、差し出された手を握り一緒に登校した。

第1高校は、魔法を学ぶだけに特化しているわけではない。その辺は学院に似ているが、学院は日本で云う小中高大が全て揃っているわけで、高校の3年間だけを日本で過ごすつもりだ。

門を潜り、私たち2人は真っ直ぐ向かう場所があった。

校長室と書かれた部屋の前まで来た私たちは扉をノックした。

近代化された校舎なのにこういうところはアナログだ。

 

「どうぞ。」

 

許可が下り、部屋に入るとそこには目当ての人がいた。

他にも人がいたが、眼中にすら止めずに

 

「おはようございます。そしてお久しぶりです。百山校長」

 

「おはようございます。よく来てくれましたね、三千院さん。羽鳥さん。」

 

「お、おはようございます。」

 

「正直なところ、反対している教員を押し切ってのことなのでやれることは少ないでしょうが、」

 

「いえ、こちらこそ。無理言って申し訳なく思いますが、此方で3年間と短いですがご教授頂ければ幸いです。」

 

「そう言ってくださるのなら、これ以上の謝罪は必要なさそうですね。ではそろそろ入学式が、始まりますよ。会場の方に。羽鳥さん」

 

「はい」

 

「あまりお話する機会はありませんが、何か困ったことがあればなんでも仰ってください。力になりますから。」

 

「あ、ありがとうございます。これほどの事は実はあまり無かったので少し緊張していますけど。」

 

「大丈夫、今日は入学式だけだから。終わったら、カフェにでも寄って帰ろう?」

 

「うん、そうだね。エリアスにもお土産買っていかないと」

 

私が智世の手を引いて部屋を出て行った。

部屋にいる、2人の眼中にすら置かれなかった男がいた。

 

「さて、分かって頂けたと思うが?」

 

「ええ、そのようで。イギリスからの留学生と聞いていましたが・・・日本人のようですが?」

 

「生まれは日本だよ。だが、訳あってイギリスに帰化したそうだ。」

 

「成る程。」

 

「言っておくが、彼女達への手出しは認めんよ。やれば学校は一切味方しないのですから。」

 

「・・・・・分かっている。」

 

「では、君も行くといい。十文字克人君」

 

 

 

校長室から移動した私たちは、会場へと歩を進めた。

入学式が行われる会場は、見事に二分されていた。一科と二科の隔たりについて聞かされていたが、ここまでとは思っていなかった。

目立つ行為をしたくなかったので、仕方なく前列席の空いている席に移動した。

恙なく式は進み、新入生総代の言葉を受け流しながら聞いていた。一科生にしては、随分と隔たりの無い平等を謳ったものだと思ったが、その目線が何故か二科生のいる後方に向いていたことから、想い人でもいるのかと感じた。

入学式が終わり、学生証を受け取った私たちが別々のクラスになることは無かった。

その辺り校長から手を回しているようだった。

 

「智世?どうしたの?」

 

「・・・・・・、あの総代。お兄さんが二科生みたい。」

 

「ああ、そのようだね。風向きが悪くなるだろうに。尤もその火の粉がこっちに降り掛かりそうで怖いけど。どうする?カフェに行く?」

 

「行く!」

 

最寄りのカフェに入ったら智世は、スイーツを見て眼を輝かしていた。

子供か!?って言いたいけど、その気持ちは同感だから何もいわない。

取り敢えず、ケーキを買って舌鼓を打ち、帰りにホールケーキを買って家に帰った。

家に帰ると、玄関先にエリアスが立っており、智世を見てすぐに抱き締めに行ってた。

倒れそうになる智世を支えながらもしょうがないと思いつつ、

 

「エリアス、さっきカフェでケーキ買ってきたのだけど要らない?」

 

「そうなのかい?」

 

「はい、一緒に食べましょう。」

 

智世がエリアスに笑顔で言うと、魔法で先に実家に戻っていった。

 

「はぁ、2人で先に帰らないでよね。」

 

「おや、帰ったのかね?エインズワース君は・・・」

 

「実家に智世を抱えて行きました。ケーキ買ってきたことを言ったら」

 

「はぁ、彼は智世にゾッコンだな。まったく、こちらの扉から実家に行けるというのに」

 

ガチャと開けた扉から先は実家にある最近作った扉に続いていた。

そして、丁度開けた先にいた智世がエリアスにアーンをしている真っ最中だった。

 

「ほう、これはこれは。」

 

「(○゚∀゚・;’ゴフッ)」

 

見られたくなかったであろう場面をリチャードに見られたエリアスが噴き出していた。

 

「うーむ、エインズワース君も成長したなぁ。わしは嬉しいかぎりだぞ。」

 

「な、なんで此処に。転移じゃなくて」

 

「エリアス、智世と一緒にケーキを食べれるって嬉しかったのだろうけど、此処の扉で実家に行き来出来るって今朝・・・・言ってたよね?」

 

「ガクガクブルブル((;゚Д゚))」

 

エリアスが震え上がる。そう、今朝リチャードがそう説明したばかりなのだ。

 

「それなのに、どうしてかなぁ?」

 

「智世、これは・・・」

 

「ごめん、私でも擁護出来ない。」

 

「さて、微笑ましい一面を見れたところでエリアスくん。久しぶりに模擬戦と逝こうか」

 

「ちょっと待ってくれ!字が違う!」

 

「なに、心配するな。死にはせんよ。」

 

リチャードさんの眼がキュピーンと赤く光ったように見えた。

後ずさりするエリアスの後ろでシルキーが玄関の扉を開けた。

 

「さて、シルキーくん。少しエリアスくんと殺し(あそび)に行ってくる。夕食時までには戻るからその間頼むよ」

 

シルキーが頷くとリチャードさんはいつものようにシルキーの頭を撫で外に行った。

 

「さて、私はこっちの家に戻るよ。留守にすると怪しまれるしね。」

 

「そう、分かった。じゃあ、私も・・・」

 

私も行くと言おうとして、遮られた。

目の前のモコモコの生き物

 

「綿蟲・・・ああ、ダメ。我慢できない!」

 

「え、ちょ、輝夜ぁ!?」

 

「ああ、この肌触り溜まらないぃっ!!!」

 

「あーも、輝夜も綿蟲と遊ぶの止めてって。」

 

「フィ~」

 

「あ、」

 

輝夜が抱き締める綿蟲と同じ綿蟲が智世の胸に飛び込んで来た。

智世は一度引き剥がすが、綿蟲の何とも言えない心地よい肌触りと足をジタバタさせている光景がなんとも言い難い母性を働かせ、再度胸の上に置くと、綿蟲も安心したのかフィ~と気の抜けた鳴き声を発しながら落ち着く。

結局のところ、リチャードさんとエリアスが帰ってくるまで綿蟲と戯れていた。

 

 

 

 

その頃、府中にある家に訪問者が来ていた。

 

「此処に入ったのを確認済みなのだ。さっさと連れて来い。そうすればこちらも退くと言っているのだ!」

 

「随分と勝手な言い分ですね。人の敷地に入りこんで、十師族の関係者はそんなに偉い身分なのですかねぇ?法律にも憲法にも記されてないというのに。」

 

「貴様、さっきから言いたい放題に言いおって。」

 

「それに、此方が穏便に済ませようとしているわけですからね。何時でもあなた方の命は奪えると言っているのですよ。」

 

「何を・・・」

 

家の敷地に侵入した男達。出迎えたのは、サラリーマン風のスーツを着たカストルが対応していた。

そして、遂に男達の一人がCADを構えようとして気付いた。

屋根の上、三階窓、二階窓から覗く銃口。

更に、カストルの側に重く、身の丈はある大楯を持った装甲服で身を包んだ重装歩兵の姿

 

「ちっ、今日はこのぐらいにしてやる。」

 

「いいえ、逃がすわけないでしょうに。」

 

カストル自家製の御人形たちの腕が侵入者の足を掴み離さない。

 

「ご苦労様です。後は我々が。」

 

「ええ、お願いします。」

 

府中市に銃声が轟いた。しかし、警察は来ず、周辺住民も気付かない。

結界を敷いたことにより、彼らは助けを呼ぶことも出来ず、全員死亡した。

肉体的に死亡した彼等だが、カストルの能力によって魂だけ抜かれ、生き殺し状態に

その後、とある公園の石像群に魂が入れられ、一生動けぬまま過ごすこととなるのだった。

彼等は死にたいと思っても死ねないのでそのうち彼らは考えるのを止めた。

しかし、その石像公園は次第に増えていくことを誰も知らず、またその石像の中に魂が入って居ることなど知る由もなかった。

 

 

 

 

 

因みに言うと、エリアスと智世は夫婦であり、イギリスで簡単な結婚式のようなものを上げただけで、正式というわけではない。

ただ、年齢的にまだ満たないのでこちらではカップルのような状態だ。

ただエリアスより智世の方が積極的で、2人でいる時間はあるのだが、何かアクションがある時誰かに見られているという現実がある。大抵リチャードさんがそうなのだが。

 

 

 

次の日からオリエンテーションを含んだ履修登録を行うために学校に行く。

と、同時にクラスメイトとなる生徒たちと会うのだが、まあ目立つわけだ。

赤毛の子と淡藤毛の子であれば、染めていると思われるだろう。

しかし地毛であり、留学生扱いであるため、髪色についてそこまで指摘することも出来ないのだ。

1-Aクラスには総代の答辞をした女子生徒もいたが、私は特に気の留めず指定された席に座った。

HRが始まり履修登録をしていくのだが、私と智世は揃ってアナログ型。

周りがただこれとこれっていう感じにクリックしていく中、カタカタとタイピングしていくと自然と目立つものだ。しかし、両者そんな視線に異を介さず、さっさと終わらせた。

その後、クラスメイト全員と一緒に魔法見学となったが、見ている限り魔術師が使う魔法に酷似していた。

魔法使いというより魔術師

超能力とも言い難い。CADを使わないと魔法を使えない辺り魔道具を使う魔術師と似ている気がした。

その後移動していき、第1高校生徒会長七草真由美が競演しているのに誰もががっついて見ている中

私は・・・

 

「・・・・・・」

 

「輝夜」

 

「はっ、あ、またか。」

 

「ちょっと早いけどご飯に行かない?」

 

「いいけど、智世はいいの?」

 

「うん、あまり良い気がしない。此処は」

 

「・・・・・そう、だね。」

 

「それに、輝夜は笑っていた方がいいよ。」

 

「あ、んもう。それは智世にも言えることでしょう?(〃・ω・〃)ノ」

 

そう言いながら、集団から離れ食堂に行く。

2人が抜けたことに気付く者おらず。

それから、見学時間が終わったのかぞろぞろと食堂に生徒たちがやってくる。

食堂で先に昼食を取っていると騒がしい声が聞こえてきた。

どうやら、一科と二科の席の取り合いのようだ。

先に座っていた二科生に籍を譲れと図々しく言う一科生男子。

よく見れば殆どがクラスメイト?というより1-Aのメンバーだった。

 

「(ああ、醜い。)」

 

「(同じ人間とは思えないなぁ。)」

 

「どうする?(一言添える?)」

 

「無視したいけどなぁ(逆に火の粉がこっちに来る。)」

 

「だよねぇ。(それは避けたいところ。)」

 

「終わったことだし、校内散策する?(さっさと離脱しよう?)」

 

「そうね。(賛成)」

 

以上、念話と口での会話終了。

食器とトレーを片づけて食堂を出る時、先ほどの二科生達とすれ違った。

一人の男子生徒がこちらを見ていたが何事もなく通り過ぎていった。

 

 

 

 

 

その二科生はというと

 

「どうしたの?達也君」

 

「いや、さっきの女子生徒。花弁の数多くなかったか?」

 

「え?そうでしたか?」

 

「ああ、一科生の場合8枚花弁だが、さっきのは10枚だった。あの二人」

 

「そういや、イギリスから留学生が来ているって聞いたな。」

 

「そうなのか?」

 

「だけど、どう見ても日本人だったね。」

 

「気のせいかな。行こうか」

 

といった感じだった。

 

 

 

 

そして、時は過ぎ放課後

昇降口と校門の中間のところで一科生と二科生が対峙していた。

どうやら、答辞をした女子生徒目当てのようだったが、その本人は二科生の兄と帰ると証言しており、それに駄々を捏ねているようだった。

 

「はぁ、まったくを以って醜い。」

 

口にせず、心に留めている予定だった言葉が自然と出ていた。

 

「なんだとぉ!」

 

それに反応して、一科生達と二科生達が此方を見る。

 

「彼等二科生側が正論を言っているのに駄々を捏ねているガキの集まりか?」

 

智世は気付く。いつもと口調が違うと、そしてこの時の口調はキレていることを知っていた。

因みに智世も怒ると穏やかだが、エリアスも直ぐ様謝罪するようになるほど怖いのだとか。

 

「お前らは、其処のウィードの味方をするのか!同じブルームだというのに!」

 

「同じ・・・ね。なら見せようか?貴方達ブルームとやらと私たちの次元の違いってものを。」

 

私の隣にいた智世が二科生たちの前に自分の使い魔を召喚した。

 

「オウカ」

 

その名と共に、智世の影から現れたのは、人。いや竜人種の者。

ロンドン上空でドラゴンを助けた後、可愛がられた智世だったがその者が使い魔になるという一言から始まり、種族内で説得が成されたが頑固に聞かない彼女に匙を投げ、死ぬまで智世を護るという命役を自分に課して晴れて使い魔となった。

竜人種は、半分人間であり、半分竜。

それ故、時と場合によって竜へと変貌することがある。

今回は場所が場所なだけに、彼女オウカは人として姿を現している。

自分が定めた主を護る為に己の鱗や甲殻などから作り上げた防具を纏って。

 

「なっ!?なんだそれは!!」

 

一科生達が驚く中、私も静かに魔法で作り上げた蜂を召喚した。

 

「ホーネット」

 

すると、何も無いところから、オオスズメバチを模した蜂が私を包むように表れ、臨戦態勢を取った。

裏世界のオオスズメバチはそこまで集団行動を取る事が多い。何故なら個々の能力値が低いから・・・ではない、中心となる女王蜂が少ないのだ。

そして、女王蜂となる者が現れると、我先と集まり、その者を守らんと行動するのだ。

現在の蜂達は正にその状態だった。

 

「だからなんだぁ!!」

 

同じ1-Aの森崎とか言う男子生徒が拳銃型CADを私に向けて魔法を行使した。

それを見て、二科生の女子生徒が飛び出そうとして智世に止められた。

 

「ちょっと、友達なんでしょ!なんで止めるの!」

 

「ええ、だってあの程度じゃ。輝夜に傷一つ付かないのを知ってるから。ねえ、オウカ。」

 

「はい。それになにかあればガルーダも飛んで来ましょう。」

 

輝夜と智世、2人の間には他の追従を許さないまでに圧倒的な信頼関係があった。

 

絶対に無いという自信は何処から来るのか?

その種は簡単だった。奇跡と呼ぶ魔法だが、それをオリジナルにアレンジして、魔法師に近い魔法を作り上げ行使してみたところ、純粋な魔法に対し機械を媒介した魔法が一切効かなかったのだ。そして、魔法師の作り上げる障壁をいとも簡単に破壊突破できると分かっていたのだ。だから、2人の間に問題は無かったのだ。

行使された空気圧縮弾が輝夜を襲うが、全て蜂によって相殺された。

 

「そんな・・・」

 

「なんなの。なんなのよ!」

 

「おい、ちょっと待て。あの女子の花弁おかしくないか?」

 

「え、なんで?なんで10枚あるの?」

 

一科生達は騒めくが、2人は見向きもしない。

輝夜はしっかりと森崎を含めた数人の生徒を見据え、智世が障壁を展開すると

オウカが楯を出し、智世の前に立った。

あまりに異常な光景だった。2人はいつでも攻撃出来るようにしていたが、輝夜が警戒をいきなり解いたことで、智世も障壁を消し、オウカを影へと下がらせた。

そして、そこに

 

「止めなさい!自衛目的以外での魔法攻撃は、校則違反以前に犯ざ・・・あれ?」

 

騒ぎを聞きつけやって来た生徒会長は誰一人として魔法を使っていないことに気付いた

後から来た風紀委員長も唖然とするが、直ぐ様気を取り直して

 

「風紀委員長の渡辺摩利だ。1-Aと1-Eだな。話を聞く。ついて来てもらうぞ。」

 

風紀委員長の眼光に肩を落とす一科生達だったが、

更なる介入者によって事態は変わる。

 

「それには及びませんよ。渡辺君」

 

「こ、校長先生!?どうしてこちらに。」

 

「なに、イギリスからの留学生にちょっかいを出している一科生がいると風のうわさで聞いてね。警告しに此処にきたわけだよ。」

 

「留学生?ですか。」

 

「其処に居る、花弁が10枚の子がいるだろう。彼女達は英国学院からの留学生だ。3年間の間日本に滞在するのでね。魔法先進国のイギリスからよろしくと頼まれているのだよ。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・。」

 

校長の衝撃の言葉に2人以外何も話せないというより唖然としている。

 

「校長、入学式の時にすれば・・・」

 

「そうなのだがね、色々大人の事情があるのだよ。だが、君らについては生徒会を通して伝えるように言っていたのだがね。」

 

「真由美ぃ~?」

 

生徒会長と風紀委員長が問答している間に校長は、森崎達一科生達の前に来ていた。

 

「さて、彼らをウィードと蔑んでいたそうじゃないか?誰が決め、誰が言っていいと言った?」

 

そう、校長は入学式の際、一科生と二科生にある隔たりについて言及しており、発言した学生に対し厳正に処分すると明言したのだ。その矢先にこれなのだ。

尤も、校長先生の話の後で答辞だったから薄れていたのかもしれないが

 

「さて、君らはまだ入学式仕立ての新入生だ。これが2年3年なら、停学又は2科に繰り下げという処分が下るわけだが、今回は警告で済まそう。以後次が無いように。

君らの顔は覚えた。何か悪い事をすれば風が噂をするから気を付けるようにな。」

 

そう言って、校長は校舎へと戻っていった。

風紀委員長も今回は校長に免じて次が無いように釘を刺した。

 

帰り道、案の定彼等二科生達と1-Aの司波深雪さんと光井ほのかさん、北山雫さんと一緒に帰ることとなった。

 

「だから、10枚花弁だったのですね。」

 

司波さんがそう言うが、制服自体は特注で作られているとは言えない。

 

「それもあるけど、魔法自体がちょっと違うのだよねぇ。」

 

「俺から一つ聞いてもいいか?」

 

「何かしら?」

 

「何故、日本人なのにイギリスからの留学生なんだ?」

 

「ああ、私と智世は日本人だった。過去形だよ。

今はイギリス国籍を取得しているから留学生というふうに出来るの。」

 

「なら、尚更分かんないなぁ。どうしてなんだ?」

 

「日本が信じられないから、というのがあるかな。母国であり祖国だった。けど今はそんなに思い入れも愛国心も無い。だって、一度私は死んだことにされているから。」

 

「死んだって・・・どういうこと?」

 

「その言葉のままよ。碌な捜査も行われずさっさと戸籍は抹消。三千院家は元から無かったことにされたわけ。尤も、それが罷り通るわけないのだけどね。

日本政府に三千院家のことが上がった頃にはイギリスで戸籍と国籍を取得してたから。まあ、色々あるのよ。」

 

「すまない、何か聞いてはいけない事を聞いた。」

 

「問題無いわ。何れは聞かれる事でしょうし。けど、魔法については答えることは出来ないわ。」

 

「ああ、分かった。」

 

「智世、今日は乗らないよ。」

 

「あれ?そうだっけ。」

 

「ほら、あそこ。」

 

第一高校前駅の駅前に止められた3台のレクサス

今日は、いつものように帰るのではなく、皇居へ用事があるためだった。

 

「あれって、SPのと同じじゃない?」

 

「それじゃ、私たちはこれで。千葉さん、私たちの詮索は止した方がいいですよ。」

 

「え?どういうこと。」

 

「智世の言う通り。あまり調べようとしない方がいい。目を付けられるよ。うちの情報部にね。それじゃ。」

 

3台のうちの真ん中の車に来ると、助手席からSWATの隊員が出てきてドアを開ける。

両サイドからもSWAT隊員が出て周囲の警戒をしている。

私たちが乗り込むと、彼等も乗り込み車列は発進した。

3台のレクサスが発進すると他の場所で待機していたランドクルーザー4台、メルセデスベンツ2台が合流した。全て黒塗りであり、乗るまで魔法で誰にも見られていないので誰が乗り込んだか全く知らない。さっきの1年生集団以外はだが。

9台の車列が町中を通ると、警察は通達通り車列が動きやすいように交通整理をしながら、高速まで警護していき、そこから別の管轄らしく入れ替わりの警察車両が入る。

 

「皇居までそう時間は掛からないかと。」

 

「そうですか。」

 

「輝夜、ちょっと寝てもいい?」

 

「いいよ。ほらおいで。」

 

ポンポンと太腿に手を置き、智世はゆっくり私の股を枕に眠りに入った。

智世が眠りに入ったのを見た後、私は皇居までの空を見ていた。

その時、ふと後ろを見て

私は、座席にあったヘッドセットを付けて

 

「ねえ、なんか後ろ」

 

車列全体が一気に行動を開始した。

異常接近していた乗用車に向けてランドクルーザーから身を乗り出したSWAT隊員が銃口を向けて威嚇する。

その乗用車は、威嚇に臆さずスピードを上げ、車列の中に入り込んできた。

ノートの乗用車の中にCADを構えた人がいて、それを私たちが乗るレクサスに照準を向けたが、その時には、周りの護衛車から攻撃が行われていた。

一般的な乗用車には装甲が無いといっていい。

其処に対装甲車用の弾丸を撃てばどうなるか。

対人に向けていいものでは無いが、敵である以上そんなものは無い。

更に言えば、彼らは過去の国籍のまま。つまり国際法に則る必要がないというのが言い分だ。

容赦なく放たれたアサルトライフルの弾丸が車体を貫き、乗用車の中で弾丸が跳ね捲る。

どうやら障壁魔法を慌てて使用し、車内に障壁を張ってしまったようだ。

結果、車内で弾丸が跳弾し見事に運転手を含む全員が死亡した。

車両は、後で取り調べられることとなった。後日知りえたことは十師族からの刺客ということ。

派手に事故った車両を無視して車列は進む。

高速道路上での銃撃戦で智世が起きたかというとそれは無い。

寝ている智世を起こさない為に、風の精シルフに頼み智世の周りを一時的に防音空間にしてもらったのだ。

その為、智世は何が起きたのか知らないが、知らなくていいと私は思う。

その後の皇居までの道のりに何も問題は無かった。

 

 

 

そう問題は

 

 

皇居についてから、私はさっさと帰りたい衝動に駆られた。

いつもはこんなんじゃないのに

「輝夜?」

 

「ごめん智世。なんかヤバい気がする。」

 

「じゃあ、私に凭れ掛かってもいいから行こ?」

 

「そうする。」

 

智世に凭れながら案内されたところに行くと、其処には何故か義父リチャードと名も知らない老人が居た。

 

「おお、来たか。輝夜、そう嫌そうな顔をしなくていい。何かすればこいつの首が物理的に飛ぶだけだ。」

 

「それならいいですけど。」

 

用意されていた椅子に座り、冷たい日本茶が注がれる。

智世も私を見ながら、注がれたグラスを持ち、匂いを嗅ぐ。

 

「慎重だな、特に問題無いと言うのに。」

 

「慎重にもなるわ、馬鹿者。貴様らのせいだぞ。」

 

「しかしだな、スレイ・ベガもスレイ・スピカも実に興味深いことは、リチャードも分かっているじゃろ。」

 

「それとこれは違う。なんだ?貴様らは珍しいものを見つけたらなんでも解体するというのか!?」

 

「そうは言っておらん。」

 

「そうとしか思えんのだがな、九島。」

 

「今回は、彼女達に用があって来たわけだよ。」

 

「だから?魔法を使って連れ去ろうなど魂胆は丸見えだ。」

 

「ちっとも信用しとらんというのか?」

 

「ええ、少なくとも貴方方十師族には一度滅んでいただく必要がありますし。」

 

「!?」

 

九島は驚愕した。まさかそのような言葉が出て来るとは思ってもいなかったからだ。

 

「容赦はしません。私も大事な母を貴方方によって奪われたのですから。」

 

「・・・・・、リチャード。」

 

「それが回答だ。もういいだろう。わしも抑える事は出来る。だが、敵が目の前にいて抑えられない奴も居なくなくてな。そうだろう?エインズワースくん」

 

智世の影から出て来たエリアスは、いつもの骨の顔で九道という老人と対面した。

エリアスは出てから直ぐに輝夜の背面に立ち、目と口を覆い隠した。

 

「輝夜、それ以上は駄目だ。怒り任せに魔法を使ってはいけない。」

 

輝夜の周囲に具現化していた剣や槍が霧と消える。

輝夜は必中の攻撃を九島にしようとしていた。

九島は、動くことは出来なかった。何故ならリチャードが逃がさんばかりに睨み付けていたからだ。さながら彼は心臓を握られているような状況だっただろう。

 

「智世、輝夜を頼めるか?」

 

「はい。輝夜、大丈夫?」

 

私は、恐らく顔色を悪くしているだろう。今までに使っていなかった能力を使ったからか、全身に血液が巡っているのがよく分かる。それも通常よりも早く。

智世が優しく抱き締めてくれたおかげで大分息も整ってきた。

 

「ありがとう。智世、エリアス。」

 

「エリアス、私は輝夜と先に帰ります。」

 

「ああ。輝夜、前に言っていた綿蟲のベッド、アンジェリカが納品してくれてたから部屋に置いといたよ。そこで休むといいよ。智世も」

 

「うん、それじゃあまたあとで。」

 

智世が転移魔法を使い、私と一緒に3人の目の前から消える。

九島は、その光景を見て驚愕するがそうも言ってはいられなかった。

 

「何やら騒がしいのぅ。」

 

「へ、陛下!?」

 

2人が転移した直後、部屋に入って来たのは、日本国天皇陛下(皇后)だった。

 

「おや、エインズワースとブラッドレイじゃないか。息災か?」

 

「ええ。最近は緊急特例で養子を取りまして」

 

「そうか、そうか、して誰なんじゃ?」

 

「輝夜にございます。」

 

「!!・・・・・・そうか、輝夜がリチャードの庇護に・・・なら安心じゃな。それで九道、お主ら何を考えとる?」

 

「・・・・・・・」

 

「どうせ、人間のすることだ。智世と輝夜を連れ去って研究するつもりだったのだろうよ。そして、最後には解体か?」

 

「解体ぃ~?どういうことじゃ、しっかり説明せい。事の次第によっては容赦せんぞ!!」

 

天皇陛下は、九島を問い詰め、過去にあったことの大半を吐かせた。そして、天皇は大事な重臣を失ったと悔やみ、十師族に当てていた特例事項を全て撤廃すると宣言したのだった。

 

「どうかご再考を。」

 

「くどい!!お主ら十師族連帯責任じゃ。文句は遣った奴らに言え!」

 

「そういうことだ。さて、輝夜の様子も気になる。わしらは此処でお暇頂くとしよう。」

 

「なんじゃ、もう帰るのかえ?ブラッドレイ、エインズワース。家にはシルキーがおるじゃろうし。いざという時にオウカとガルーダがおるじゃろう。付き合え。」

 

そう言って、連行されていくリチャードとエリアス。Orzになっている九島をおいて

 

その後、ベロンベロンに酔った2人が帰ってきたとか。

その間、ガルーダとオウカがシルキーの手伝いをしながら炊事洗濯をしていた。

 

 

 

 




九島がどうしても九道になっていますがご容赦を。
出来る限り確認してますけど、人名誤変換はご容赦ください。(十師族だからえっか)


百山校長と輝夜は面識ないです。
百山校長と父方が友人という関係で知り合っている程度です。




ところで、綿蟲可愛いです。
非常に癒されます。
ストレス解消出来る最高の生物だと私は思います(作者の感想じゃねぇか!!)


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第7話 風紀委員

少々スランプ気味・・・・・でも不定期投稿していく


早朝、登校した時に達也と深雪に合流した。偶々乗っていたキャビネットが同じだったのだけど。達也が、昨日私の事に付いて調べたらしい。

それで、確かに死んだことになっていること。捜査以前に祀りで死亡後に祀りの関係者が全員落雷で即死または氾濫した川の水に流され死亡しているそうだ。

それはさておき、登校中に遭遇した七草会長に達也と私が生徒会主催の昼食会に誘われた。

これはどう考えても此処にいる4人を呼んでいるようにも思えた。

昨日のことがあって、私たちは警戒していた。

まさか学内では無いだろうと考えていたが、手段を選ばない十師族の考えに警戒するに越した事は無かった。

生徒会主催の昼食会に呼ばれて行ったのだが、目的は司波深雪さんの生徒会勧誘が主目的のようでついでと言わんばかりに達也を風紀委員会に勧誘していた。

そして、

 

「ええと、最後になってしまったのだけど、三千院さんと羽鳥さんも生徒会に入ってみませんか?」

 

「結構です。」

 

「お断りします。」

 

案の定、分かりきっていたであろう即答に何故か会長と委員はびっくりしていた。

 

「ええと、理由を聞いてもいい?」

 

「生徒会は名誉職なのかもしれませんが、こっちはこっちで放課後は調べ事に費やしますし趣味もあります。そちらを優先するので生徒会はおろか風紀委員会にも参加しません。」

 

「それに、十師族自体が険悪の対象ということもあるので。」

 

「そ、それはどういうこと?」

 

「それはご自身でお調べすればいいのでは?貴女の親御さんはよく知っているでしょうね。

ああ、今ごろ十師族に与えられていた権限が全面撤回されて大変なのかな?」

 

「何故それを!?」

 

「さぁ、言えば答えてくれるなど甘えですよ。先輩」

 

「それではこれで。失礼します。昼休みももう終わりそうですしね。」

 

席を立ち、会室から出ると、上げた腰を下ろす会長。

それを見ながら、司波兄妹も時間だからと会室を出て行き、他のメンバーも教室に向かい一人になった七草会長は一人呟いた。

 

 

「どうして・・・彼女達があのことを?」

 

 

 

 

 

放課後、帰ろうとした2人を風紀委員長の渡辺摩利が呼び止める。

曰く、風紀ならどうなんだと。

一人一人バラバラがいやなら2人纏めて風紀という手もあるとのことだった。

智世と顔を見合わせ、どうするか悩んだ。

対人戦闘能力は私はあっても智世は皆無に等しい。

なのに、風紀に勧誘してくるこの女性の真意が分からなかった。

だから聞くことにした。

 

「私はいいとして、何故智世を?」

 

「基本的に風紀は全員が出払ってしまうのだがね。実の事をいうと、肉体派の集まりなんだよ。」

 

「成る程、脳筋しかおらず、委員長も同じだと。事務処理を任せられそうな部下がいてくれれば助かるなぁというのが本音ですか。」

 

見れば、渡辺委員長は図星だったのかグサッと真実を言われ、肩が震えていた。

 

「それなら別にいいですけど。」

 

智世の事務処理能力?かなり凄いレベルに入りますよ。

積み上がった書類の山を2時間足らずで仕分けして処理していくのだから。

曰く、押し付けられて色んな事務処理してたら身に付いたとか

しかし、かなりドストレートなことを言われてしかも下級生というのに拍車が掛かって挫折した人みたいな感じになってた。

取り敢えず、私の実力が見たいということなので室内演習場に移動した。

其処には、何故か達也と深雪、生徒会の面々と達也を睨み付ける男子生徒がいた。

 

「それでは、これより2-B服部刑部と1-E司波達也による模擬戦を開始する。」

 

始まった模擬戦の勝負は一瞬だった。開始の合図から10秒足らずで服部先輩は地に伏していた。

 

僅かな交差、私は達也が何をしたのかをしっかりと見ていた。

魔法を使わずに一瞬で服部先輩の後ろに回り、サイオン波による多重攻撃で倒した。

一部始終を見れたからこそ、達也の戦闘能力を瞬時に計れた。

学生であるにかかわらず、信じられない身体能力と戦闘能力に思わず息をのむ。

 

「・・・しょ、勝者司波達也・・・」

 

倒してから数秒経って我に返ったのかそう委員長は言った。

 

「ちょっと待て、今のは自己加速術式魔法なのか?」

 

「いえ、身体的な技術ですよ。」

 

「だがそれは・・・」

 

「私も証言します。あれは兄の身体的な技術です。お兄様は九重八雲先生の弟子なのですよ。」

 

「忍術使い九重八雲か!身体技能のみで魔法並の動き・・・さすがは古流・・・」

 

渡辺先輩が納得しているようだったが、会長は納得していないようだった。

 

「それじゃあ、はんぞー君が倒れたのも忍術なの?」

 

「いえ、あれはただのサイオン波です。」

 

「でも、それだけじゃはんぞー君が倒れている理由がわからないのだけど。」

 

そう、先のサイオン波は単一系統振動魔法であったが、それだけである。つまりそれだけでは倒れる要因がさっぱりなのだ。

 

「波の合成ですね。」

 

「リンちゃん?」

 

市原先輩が自分の推論を淡々と説明していき、達也を苦笑いさせた。

 

「お見事です、市原先輩。」

 

「ですが、あれだけの短時間で三回の振動魔法を発動・・・

その処理速度で実技の評価が低いのはおかしいですね。」

 

「それ、達也のCADのおかげじゃない?」

 

「え?」

 

「あの~、これってひょっとしてシルバーホーンじゃないですか?」

 

「シルバーホーン?シルバーってループキャストを開発したあのシルバー?」

 

市原先輩の疑問に智世が達也の持つCADに疑問が行き、その疑問が中条先輩によって解消された。

シルバーが手掛けたCADは、画期的なものだったという。

ある妖精がそのCADをかっぱらってきたという時は大変だったらしい。

アンジェリカさんを含む魔法機構の技師たちによって解析されそれを上回るCADとして私たちに渡されたなど知る由も無かったが。

 

「でもおかしいですね。

ループキャストは全く同じ魔法を連続発動するためのシステムで、波の合成には必要となる振動数の異なる複数の波動は作れないはずですし・・・・・もし振動数を変数化するなら、座標・強度・魔法の持続時間に加えて4つも変数化するとなると・・・・・・

まさか、その全てを実行していたのですか!?」

 

独り言のように話す市原先輩だったが、その内容に演習室にいたほぼ全員が息を呑んだ。

それをやってのけた?二科生なのに?

そんな疑問は苦笑いしながら達也が淡々と答えた。

 

「学校では評価されない項目ですからね。」

 

「なるほど、司波さんの言っていた事はこう言う事だったか・・・・・」

 

倒れ伏していた服部先輩が起き上がった。

 

「大丈夫ですか、はんぞー君?」

 

「大丈夫です!」

 

シャキっとする服部先輩だが、直ぐに深雪さんに謝罪の言葉を述べていた。

 

「さて、達也くんが風紀委員会に入るにあたっての障害はなくなったわけだし。次は君の番かな?」

 

「輝夜さん?」

 

「はぁ、相手は渡辺先輩ですか?」

 

「そうだな、服部君にやってもらおうかと思ったがそうもいかないようだし。真由美、審判頼む。」

 

「ええ、気を付けて。」

 

「先にいいますけど、本気でいらしてください。じゃないと模擬戦にもならないので」

 

「ほう?それはどうかな?」

 

渡辺先輩が警棒のようなものをスカート下から取り出し構えた。

 

「いいのか?素手で」

 

「丁度良いハンデでは?」

 

生徒会の面々は唖然とした。彼女がどれだけ強かろうと渡辺委員長の実力を知っているからだ。恐らくそう時間かからず彼女が負けるそう思っていた。

 

「じゃあ、いい?始め!」

 

合図と同時に自己加速術式で私に迫る渡辺委員長

それに対し、私はしゃがみ、手を床に付けて

 

「アクアシャーク」

 

なにもない演習室にいきなり背鰭が立つ。

その背鰭が迫る渡辺委員長に向かっていき、その背鰭に気付いた先輩がバックステップを踏む。

しかし、止まることなく先輩に迫り、先輩を丸呑みにするかのようにその鮫は先輩を水で包んだ。

ずぶ濡れとなった渡辺委員長に更に追撃が飛ぶ。

その場を動こうとして、動けないことに気付いた先輩は自分の足を見て驚く。

足に纏わりついた水が、地面にくっついて離れないのだ。

 

「そういえば、先輩。剣術でも嗜んでいたようですが、私を前にしてご自慢の剣術が無意味だと教えてあげますよ。」

 

また、何も無いところから軍刀を取り出して構える。

ただの軍刀ではない、純度0.00%の不純物を含まない超純水の軍刀。形状をその時時で変化させる特殊な軍刀だ。

 

「いきますよ。」

 

私は走り出すと同時に瞬道で渡辺先輩の真後ろまで移動した。

軍刀を振って

 

「・・・・・・何を?」

 

「陰陽術と掛け合わせてみたのですよ。謳え、言水」

 

すると、突如先輩の身体から水分がブワッと溢れ出し、暴れ出す。

 

「捕縛向きの魔法です。尤も、当てないといけないのが難点ですが、こっちでも出来るのでいいでしょうね。」

 

そういって、私の頭上に出て来た多数の魔法術式

それは、七草の十八番魔弾の射手を連想させるものだった。それも追尾性を持った質の悪い代物

渡辺先輩が完全にダウンしたことで、白星が付いたのだった。

 

「普通、先輩に本気だすか?」

 

「これでも、弱い方ですよ。本気だしたら、先輩消し飛んじゃうもの。それより、びしょぬれになってお色気満載の渡辺先輩」

 

「誰の所為だ!誰の!」

 

「すみませんがじっとしていてくださいね。(サラマンドラ、お願いよ)」

 

お隣さんのサラマンダーにお願いして、一瞬で乾燥機から出した衣服のようにホカホカになる先輩と制服。

何が起きたのか、私と智世以外は理解出来ていなかった。

 

「な、なにが起きたの?」

 

「いや、わからない。魔法の発動もなにもなくていきなり。」

 

「輝夜、あまりそれ使わない方がいいんじゃない?それに此処に約1名、見えているように見える人もいるみたいだし。」

 

「えっ!?」

 

智世に言われ、見えているとされている人・・・達也を見ると、私の肩にいるサラマンドラ

を凝視していた。

 

「達也?見えてる?」

 

「ん?あ、ああ。何もないところから現れたものだからつい、な。」

 

まさか達也が見えるなんて思ってもいなかった。

 

「かなり問題なんですけど。」

 

「そうなのか?」

 

自分がどういう立ち位置にいるのか把握していない様子。

この様じゃ、自分の能力も分かってないかも?

 

「後で、家に来てもらえる?」

 

まさかの妖精見えてます、が此処にいて智世もびっくり

斯く云う私も驚きを隠せない。

取り敢えず、その後私と智世、達也の風紀委員会入りが決まった。

 

「ところで、輝夜は誰に師事してもらっているんだ?」

 

「へっ?リチャード叔父さんだよ。」

 

「リチャードさん?・・・・どんな人なの?」

 

「リチャード・・・・・リチャード・・・・・・・。」

 

会長や委員長、副会長らが黙り考え込む。

まあ誰なのか言わないと知るよしもないか

 

 

「リチャード・K・ブラッドレイ。元イギリス陸軍元帥だよ。」

 

さらっと、師事している人のことを言ったら、一同目を真ん丸にさせていた。

 

「その人!世界最強剣士の一人!!」

 

「うん、らしいね。」

 

「らしいねって・・・」

 

あきれ顔になる渡辺先輩だが、

 

「最近、老いてきたなんて言っているけど、氷山を真っ二つにしてどこが老いているのだか?」

 

呆れたように言うわたしに黙ってしまったようだ。

本当、伊達に一人旅団なんて言えるほどだもんね。最近陸軍最高顧問として抜擢されて、いざという時に、RAINBOW部隊を率いて展開できるようにしたなんて、もう少し別の事に向けて欲しいな。

 

 

智世はというと、事務能力が高いこともあり、達也と風紀委員会室の片づけと書類整理をしていた。黙々と作業していき、委員長の机にどっさりと書類が置かれる。

 

「これ、先輩の配分です。早速ですがお願いしますね。」

 

無情の宣告に事務能力皆無の渡辺先輩はガックリと肩を落としていた。

淡々としているけど、智世は気付いているかな?達也に向ける感情が私の時のように仲間を見つけたって感じなのを

まあ、笑顔で居る智世はいいのだけど。

 

 

 

「ハヨースッ!本日の巡回終わりやした。」

 

「・・・あれ、此処本部だよな。」

 

其処に来訪者、威勢のいい声と共に入ってきた。

どちらも男子だ。

 

「ところで、この部屋は姐さんが掃除したんですか?」

 

渡辺先輩が、何を思ったのか冊子を筒状にして

 

バシンッ!!

 

男子生徒の頭を小突いた。

 

「姐さんは止せと言っているだろうが、鋼太郎!お前の頭は飾りなのか!?」

 

「何回もポンポン叩かないでくださいよ委員長」

 

鋼太郎と呼ばれた男子生徒は、渡辺先輩から視線を逸らし、事務仕事を続ける達也をジロジロ見て来た。

 

「新入りですか?紋無しのようですが・・・」

 

「辰巳先輩!その表現では禁止用語に抵触する恐れがあるかと。この場合は二科生と言うべきかと」

 

「お前らな、そんなんじゃ足元すくわれるぞ。此処だけの話だがな、さっき服部がすくわれたばかりだしな。」

 

「ほう。」

 

「それはそれは。」

 

驚いたように言う男子生徒2人

 

「は?」

 

「一科生と二科生でやれブルームだやれウィードだ、そんなのはっきり気にしてないんだ。実力があるならそいつは逸材だからな。」

 

「そういうことだ。二科生の君にしては意外だと思うだろうがな。」

 

達也も、私も意外に思った。この2人もそういう風潮に感化されていないんだな。というのがよく分かったからだ。

大概の一科生はそんな馬鹿な風潮に感化されている。それを、現生徒会や風紀委員会、部活連は良く思っていないらしい。その風潮を壊す為に動いているのだとか。

 

「3年の辰巳鋼太郎だ。」

 

「2年の沢木碧です。」

 

「1年の司波達也です。よろしくお願いします。」

 

「ああ、宜しくな。それで、委員長。そっちの2人も・・・ですか?」

 

「ああ、三千院輝夜と羽鳥智世だ。どちらも逸材でな。羽鳥には事務処理を任しているんだが、早速仕事が来ていてだな。」

 

「辰巳先輩と沢木先輩ですね。1年の留学生、羽鳥智世です。こちらが御二方の処理する書類ですので、今日中に仕上げてください。」

 

「え!?今日中!?」

 

「そうですよ、達也も輝夜も私も仕事は終えたので後は委員長の確認だけです。」

 

「「「・・・・・・・・・・」」」

 

開いた口が塞がらないというのは、正にこういうことをいうのだろう。

2人とも手渡された書類(厚さ20cmの本並)を見て、後輩が既に終わらせているのに帰るわけにも行かなくなったのだろう。与えられた席に着いて仕事を始めた。

 

「さて智世、達也。仕事も終わったし、深雪さんを拾って行く?」

 

「そうだな。智世さんはいいのか?」

 

「うん、一応専門家がいるから見てもらうに越した事は無いし。だけど、他言無用だからね。」

 

「分かった。じゃあ、正門で待っていてくれ。」

 

そう言った達也は生徒会室に向かって歩き、私と智世は正門に向かって歩いた。

 

「?・・・どうしたの?」

 

「いや、嬉しそうだねって思って。」

 

「え?そんな顔をしてた?」

 

「してた。」

 

嬉しそうにしている智世の顔を見ながら撫でると気恥ずかしそうに縮こまる智世

そんな智世を抱き抱え、いつものようにしようとしたが、一目があるので止めた。

正門前に出ると、何故か何時ものレクサスが3台止まっていた。いつもなら立川駅で乗り込む予定だったのにっと考え込むと智世が

 

「私が事前に呼んどいたの。達也のこともあったから。」

 

「そっか。けど、そういうことなら先に教えてほしいなぁ。」

 

智世のほっぺたを引っ張りながら言うと

 

「ゴペンナサイ。」

 

そうこうしていると、達也が深雪さんと一緒に来た。

 

「悪いな、会長に絡まれてな。」

 

「いいよ。別に、ささ乗って乗って」

 

「これ・・にか?」

 

「うちの送迎だから問題無いよ。」

 

「そうなのですか!?」

 

「護衛は全員元特殊部隊だから無問題。護衛には学友と伝えてあるから大丈夫だよ。」

 

4人はレクサスでは乗れないのでランドクルーザーに乗り込み、実家へと車は走り出した。

4人が下校した頃学校では

 

 

「どうだ?あの2人とは」

 

「駄目ね、かなり警戒されているわ。」

 

「初対面のはずじゃなかったのか?」

 

「いいえ、どちらかというと十師族そのものに嫌悪感を出しているわ。それに、『あのこと』も知っていたわ。」

 

「どういうことだ?」

 

「『あのこと』に関わっているのは間違いないわ。けど、政府じゃどうにもならないレベルからのお達しじゃ私たちがどう足掻いても無理だわ。

十文字君、あの2人に関して何か分かった?」

 

「その様子だと、七草もか。」

 

「ええ。完全に記録が抹消されていたわ。イギリスの方にあるデータを調べようとしてみたけど、かなり上位の人じゃないと見れないようになっていたわ。」

 

「今は、保留とするしかないな。相手が何者か分かったものではないからな。」

 

「そうね、今日分かったことだけど、三千院さん、リチャード卿の手解きを受けていたみたい。状況から見て庇護下にあると見ているわ。そうすると、恐らく羽鳥さんも」

 

「だろうな。羽鳥家に関してはごく普通と思っていたがそうでもないな。」

 

「ええ、十師族に匹敵していてもおかしくないわ。けど、それも消されていたわ。まるで意図的に消されているかのようだわ。」

 

「それなんだが、どうも親父達にきな臭い動きがある。恐らくその関係だろうとみている。」

 

「今は、静観している方が良さそうね。」

 

第1高校で、十師族の2人が話し合いを続ける。しかし、2人は気付かない。

機器を通して2人の会話を聞く者を

まさか、第3者に会話内容を聞かれているとは思ってもいないだろう。

 

 

第一高校の通信機器を介した盗聴により、全ての会話を聞かれていることも知らずに2人は去って行った。

それを盗聴していた勢力は・・・

 

「成る程、情報通りだな。スレイ・スピカの警備は厳重だ。スレイ・ベガを狙う。」

 

「どちらも厳しそうだが?」

 

「ふん、スレイ・ベガの警備は、スピカほどじゃない。やれば一瞬だ。」

 

「何時にする?」

 

「計画の日にどさくさに紛れて行おう。引っ張って来て俺に会わせれば後は問題無い。」

 

 

裏で進行する計画。

手出しする相手がいかに強大か理解していないキャットはジャッカルによって消されるのだ。

 

 

 

 

 

 

達也と深雪を家に招待して、家には義父のリチャードと本家(エリアスの家)のシルキーが出迎えてくれた。

リチャードには既に事を伝えてあるため、専門家(エリアスとティターニア、オベロン)が先に家を訪問していた。

 

「へぇ、君が話に聞いていた子かぁ。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

達也も深雪もびっくりしていた。恐らく、見えるだけあって、妖精王の姿に唖然としているのだろう。

現代では有り得ない姿をしているのだから。

 

「エリアスも大分成長したものね。これもチセとカグヤの御蔭かしら?」

 

「そうでもないですよ。エリアスも暴走することが少なくなりましたし。少なからず、2人で進展もありましたから。」

 

「か、輝夜。」

 

「へぇ~、で、子供はいつになりそう?」

 

「妖精王オベロン、気が早すぎます。最低5年は待ちませんと、智世の身体が持ちませんよ。」

 

「おい、それはどういうことだ?」

 

「エリアスのことだからイチモツも大きいのでしょう?」

 

輝夜が指摘し、ティターニアが問うと、2人は顔を真っ赤にさせた。

客人がいるのに、いつもと変わらない他愛のない会話を続けていたが

 

「これこれ、客人の手前だ。そこらへんにしないか?」

 

「それもそうね。智世の可愛らしい顔が見れたから良しとしますか。」

 

「ごめんなさいね。いつものことだから」

 

「あ、ああ、いや、気にしなくていい。」

 

「さて、話を始めるとしますか。」

 

皆がソファーに着いて、いざ始めると言う時、深雪が気付いた。

 

「あの、そこの鳥は一体?」

 

「ああ、今回急だったから来てもらう予定の人は現地(学院)にいるんだ。アドルフさん。」

 

「ああ、漸くかな。そして初めまして、こんな形で申し訳ないけど、アドルフ・ストラウドだ。君が達也君で、そちらが深雪さんかな?」

 

「はい、自分が司波達也です。こっちは妹の」

 

「司波深雪です。」

 

「よろしく。2人に申し訳ないけど、そちらの状況はそこにいる鳥の視覚を通して見ているから安心してね。じゃあ、始めようか。」

 

「そうだね。司波達也だったねぇ。ところで聞くけど人の子がなんでそんなに感情が無いんだい?」

 

オベロンの指摘は的確だった。いや的確過ぎた。指摘を受けた達也は、驚きながらも

 

「それは・・・」

 

「人の子成らざる者でもある程度の感情はあるものなんだけどねえ。これは・・・無いというより封印しているのかな?」

 

「それは、どういう・・・何故そんなことが」

 

「妖精王オベロンは、そういうところは鋭いからね。私も気になってた。どうして、そこまでポーカーフェイスを保てるのか?って、」

 

「うーん、どうやら人間も愚かさを増してきたみたいねぇ。」

 

「どういうことだい?ティターニア」

 

何かわかったのか、ティターニアに問うオベロン

 

「ねぇ、達也くん。貴方、人体魔法実験を受けていたわね。」

 

「「「「!?!?!?!?」」」」

 

「それは?どういう意味ですか?」

 

「そのままの意味よ。」

 

「なるほどねぇ、ちょっと調べさせてもらったよ。」

 

オベロンが一瞬魔法を使ったと思うとそこから何か情報を得ていた。

 

「人工魔法演算領域・・・ねぇ。やったのが誰なのかは分からないけど。私たちが見える原因はそこかしら?」

 

「だが、それなら深雪嬢も受けたことになるだろう。そのような形跡は他の者達(妖精達)から無いと聞いているが。」

 

「スレイ・ベガと似た能力はあることが分かっている。こちら側の人間にも居るし、大概の魔術師は見えるからね。達也君も深雪さんもその才があると見てもいいんじゃないか?」

 

「まぁ、人の子がすることはタカが知れているけど、今回の場合人為的か若しくは後天性のナニカと見るべきだろうね。」

 

「あの、スレイ・ベガってなんですか?」

 

深雪さんがスレイ・ベガについて聞いて来る

 

「・・・話しても大丈夫?それ、」

 

「・・・他言無用であるなら、」

 

「それほどのことなのですか?」

 

「そうね、国家レベルに相当するけど・・・そこに居る智世がそうだし。」

 

「え・・・智世が!?」

 

当人である智世は、シルキーに寄り掛かって寝ていたけど

 

「魔力の生産と吸収に極めて長けた存在・・・なんだけど、常に生産と吸収を無尽蔵に行う所為で、短命なのよ。」

 

「・・・なんとかならないのか?」

 

「智世は既に問題無い。けど、短命である反面、無尽蔵に魔法を生産して魅了されるから妖精さんたちから『愛し仔』と呼ばれているわ。」

 

「それは貴女も同じでしょうに。」

 

部屋に第三者の声がした。すると智世が、

 

「エアリエル」

 

窓から風と共にやって来た風の妖精、智世の隣人エアリエル

 

「貴女だって、スレイ・スピカじゃないの。ねぇ海の愛し仔さん。」

 

「私の場合、智世よりあれこれ呼び名があるでしょう?智世は夜の愛し仔、私は、海の愛し仔、ヘーミテオス、ラインオブレインボー・・・だっけ?あれこれ付けられて一々覚えちゃいないのよ。」

 

「その分狙われているしね。」

 

「そうね、けど、達也ことがバレないかしら?」

 

「バレるって何が?」

 

「魔法師で、妖精とかこちら側の住民の姿が見える人は殆ど居ないの。けど、居るとなればその人間を狙うわ。酷いときは、スレイ・ベガが捕まった時と同じく、酷使され使い潰されてしまうでしょうね。死ぬまで」

 

「だが、そんな組織は・・・」

 

「国主導の場合もあるから絶対はないと思った方がいいよ。」

 

「・・・そうか。」

 

「取り敢えず、此処でのことは他言無用で皆さんお願いしますね。」

 

「そうだな。かなり問題視されることだが、その時が来るまで静かに見ているとしよう。」

 

それでお開きとなった。既に夜となり、時間が時間だったため、シルキーお手製の夕食を達也と深雪も交えて食べて行った。

達也は相変わらずのポーカーフェイスを保っていたが、深雪が舌鼓を打ち、シルキーに料理を教わりにいくほど美味しかったらしい。

食後、家まで義父リチャードが車を出して送っていった。

 

 

 

帰り際にリチャード叔父の強さに惚れたのかどうかは知らないけど稽古を頼みこむ達也を見て隠笑いしていたのは秘密だけど。

 

 

 

 

 

 




はい、
達也と深雪はコチラ側へと引き込みました。
段々外堀を埋められていく対三千院派の十師族

達也は、リチャードと組手をしていつも相手してくれている八雲さんより強かったんご。
勢いでお願いしたらOKがでたそうで。時間が空いたら来ると良いと返事を貰い、静かに拳を握ってヨシとしていたのを隣人達が観ていたんですね。

達也もそのうちイギリスから目を付けられます。(←軽いネタバレ)


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第8話 十文字と四葉と三千院

取り敢えず、何時投稿出来るか分からないから連続投稿したね。


 

 

風紀委員会に入って最初の仕事、

新入生歓迎を含めた部活の新入生争奪戦

最初の3日間は、あまり出れなかったけど。

どこからか、伝わった成績表から私たち2人が執拗に狙われ、智世が争奪戦の火中に引きずり込まれ、一時護衛のSWATの人達を呼びだして緊急避難させる騒ぎが起きた。

物静かで気弱そうだと思ったのだろう。智世に群がる馬鹿共の数は多く、風紀委員会に所属しているにも関わらず引き抜こうと考える部活が多く、魔法を行使してまで智世を捕獲しようとした部活員を言水で、身体中の水分を暴れさせ、地上で溺れさせて捕縛することとなり、多数の逮捕者が出た。

また、1日目に1科生の違反者を捕らえたことによって目立ってしまった達也を攻撃やいあやがらせをする生徒が後を絶たず、十数人が逮捕され、何人かが懲罰委員会へと送られていた。

 

 

それから、クラブ勧誘合戦とも新入生争奪戦とも云う期間が終わり、

普通の日常が戻りつつあった。

智世は相変わらず、図書館に足を運び、現代魔法に関する本を借りては読み、返しては読みを繰り返していた。物静かではあるが、一部の風紀委員からは不評らしい。尤も、仕事はしっかりとこなしているので、あれこれ直接文句は言えないようだけど。

非番の時は、尚更図書館に入り浸り、いつしか本の虫だとか、歩く辞書だとか言われるようになっていた。

智世の行動をオウカに護衛を任せ、私は一人RAINBOWを動かしてある組織の調査を行っていた。

巡回中に見つけたトリコバンドをした学生が何処に所属しているのか、場合によっては排除しなくてはならないからだ。

 

『ミス三千院、分かったぞ。』

 

「何処の組織?」

 

『エガリテという組織だが、これは下部組織だ。その上にブランシュがある。』

 

「それって、前に言ってた・・・」

 

『ああ、反魔法国際政治組織だ。日本にその支部がある。しかもかなり近いところにな。』

 

「問題ね。」

 

『ああ、どうする?』

 

「今はまだ泳がせておきましょう。何かすれば、SWATとSATを投入して片づけます。」

 

『了解、日本各地にある支部はどうする?

 

「把握しているの?」

 

『ああ、後2か所あるが・・・どうする?どちらも山の中の廃鉱山に基地を構えているが、』

 

「爆撃航空隊に連絡、グラインドバスターの使用許可。2か所は此方の強襲と同時に攻撃する。」

 

『了解したよ。準備する、ところで最近はどうだ?』

 

「エコー、これ以上は怪しまれる。どうかと言われたなら順調だとしか言えないよ。智世にはオウカが付き添うようにしている。殆どの人には見えないようにしているし、自ら姿を現さない限り問題ないわ。」

 

『オウカが?いつも暑苦しい鎧を纏ってか?』

 

「流石にそうではないよ。ラフな格好でいるから安心して。じゃあ、帰りにね。」

 

『了解。』

 

エコーとの念話を終え、木陰から出て行き本来の巡回に戻った。

期間中、言水を用いた捕縛を行ったためか、前科持ちの生徒たちは私を見るだけでそそくさと逃げていく。それは1科生に限らず2科生もだが。

学校内は、広い。

そんな巡回中に、出会いたくない人を見つけてしまった。

 

「三千院か。」

 

「十文字克人」

 

幸い、木々に2人が隠され周りに見えないようになっていた。

溢れ出ようとする殺意を抑えつつ

 

「なにか?」

 

「此処には・・・慣れたか?」

 

「本題を先に言え。私は貴様如きに構っている暇は無い。」

 

「・・・・・、お前は何故戻ってきた?」

 

「ケジメと付けるためだ。日本にやり残したことがあったからな。」

 

「ほう、それが十師族との対立とどうつながる?」

 

「それは、貴様が調べ上げろ。貴様の爺共は良く知っているだろうからな。」

 

「なに?」

 

「貴様らは、爺共の火消しを押し付けられたに過ぎんだろうな。我々が今後日本で何をしようが、貴様ら十師族は止めることが出来ない。いや、止めさせない。」

 

「・・・・・・」

 

十文字が反論する前に私はさっさとその場を去った。

 

風紀委員会室に戻ってきた私を待っていたのは心配そうに見て来る智世だった。

 

「大丈夫?・・・輝夜が怒っているのが分かったから・・・って、輝夜、手・・・」

 

どうやら、私は知らずの間に握りすぎて血を流してたらしい。

智世に言われるまで気付かなかった。

 

「あ、あ~、ちょっとね。」

 

「ちょっとじゃないって、其処座って、見せて」

 

智世に促されるまま、椅子に座り手を智世に見せるとそのまま治療系の魔法を私の手に掛けた。

流れ出た血は消え、傷口も無かったかのように掻き消えた。

 

「ありがとう。」

 

「輝夜は抱え込みすぎなんだよ。もう少し私にも頼っていいんだから。」

 

「ええ、けどこればかりは智世には・・・」

 

「こっちに戻ってきた以上覚悟してるよ。・・・それなりに」

 

「分かった。じゃあ、先に言っておくと、近々この高校で事が起きる。」

 

「事が?どんな?」

 

「1科と2科の差別については知っているでしょう。2科の一部生徒が汚染されているの。詳しい話は家でするよ。」

 

「分かった。そろそろ切り上げるね。」

 

先に上がりますと置手紙を置き、私は智世と校門に向かった。

最近は達也とか深雪の友人達に会わないけどどうしたんだろうか?

そう思いながら、校門に向かった矢先、ばったりとさっき考えていた友人達が居た。

 

「あ、ヤッホー。」

 

「エリカ」

 

「ねえねえ、あそこにいるのってSWATだよね。」

 

「良く知っているね。今は無い組織なのに。」

 

「昔のアメリカの警察の特殊部隊でしょう。なんでこんなところにいるのかなぁって」

 

「レオも同じ?」

 

「ん?ああ、さっき止まってからずっとこっちを見ていたからな。」

 

「まあ、そんなこともあるよ。アッシュ、お疲れ様」

 

「うぇ!?」

 

さりげなーく友人と話しながら、護衛の一人に声を掛けた。

あ、智世が笑ってる。ん?レオを見て?

 

「プファッ」

 

スゴイ、びっくりした顔になってる。鳩がブリーチング弾を食らった時の顔みたい。

 

「輝夜、鳩がブリーチング弾を食らったら死んでしまうよ。」

 

「おいおい、其処は豆鉄砲だろう。」

 

「それよりも三千院嬢、羽鳥嬢、お迎えに来ましたよ。」

 

「いつもご苦労様です。ではお願いします。」

 

 

私たちが車に乗り込んで去った後、

嵐が去った後のようになったところに司波兄妹が現れた。

彼等は司波兄妹に2人について話すと、既に知っていると聞かされ驚いていたそうな。

そして、最も驚いているのが千葉エリカだった。

 

エリカは家に帰ると、道場に居た兄に問い詰めた。

最初なにを言っているのか分からなかった寿和だったが、FBISWATの単語が飛び出して眉をひそめた。

 

「エリカ、FBISWATは当の昔になくなった特殊部隊だぞ。あるわけないだろう。」

 

「イギリスからの留学生の護衛にFBISWATとSATがいたのだけど。」

 

「んなまさか。居たら居たでかなり問題になっているはずだが、ちょっと待て。調べてみる」

 

そう言って調べに言った寿和は案外早く戻ってきた。

 

「エリカ、恐らく彼らはRAINBOWだ。」

 

「RAINBOW?」

 

「第3次世界大戦後、各国が特殊部隊を切り捨てた時にイギリス主導で作られた特殊部隊のみで構成された組織。それがRAINBOWだ。

彼等の実力は、対魔法師戦には弱いとされていたけど・・・・・」

 

「そうは見えなかったよ。だって、全員完全装備だったし。隙が一切なかったし。」

 

「・・・・・・ああ、2年前にUSNAの軍の特殊部隊から脱走者が出て、イギリス大使館で立て籠もる事件があったんだ。」

 

「それって。」

 

「ああ、魔法至高主義を粉々にした事件だ。

投入されたRAINBOWの部隊によって立て籠もった魔法師8人が全員射殺という結果で終わった。立て籠もった魔法師が特殊部隊内で1、2を争うような存在の集まりだったにも関わらずな。しかも皮肉なことに、鎮圧に当たったRAINBOWの部隊。

デルタフォース、ネイビーシールズのみで構成されていた事と、脱走兵の所属先が元は同じだったことだ。」

 

2人が話していると襖が開いた。

 

「なんだ、2年前の事か。」

 

「親父」

 

入って来たのは千葉家当主千葉丈一郎だった。

 

「RAINBOWに関して、何もするな。」

 

「どういうこと?」

 

「あいつらは・・・別格だ。少なくとも、魔法があるから勝てるなどと生易しい相手じゃない。」

 

「親父、戦ったことがあるのか?」

 

「いや、戦闘をみたことがある。」

 

思い深ける丈一郎だが、目付きは鋭い

 

「だが、どこからそんな話になったんだ?」

 

「エリカがSWATを見たのだとさ。しかも友人の護衛として」

 

「護衛?そんなわけないだろう。あいつらが今此処にいる理由が分からんな。」

 

「友人がイギリスからの留学生なんだとよ。その護衛にRAINBOWが関わっているのだとよ。」

 

丈一郎は、その言葉を聞いてエリカに聞いてきた。

 

「その留学生とやらは誰だ?」

 

「え!?確か三千院輝夜と羽鳥智世だけど。」

 

「どちらも日本人じゃないか!?」

 

「いや、・・・そうか。分かった。エリカ、2人に接触して出来る限り情報を引き抜け」

 

「なんで私がそんなスパイ紛いなことをしないといけないのよ!

あたしよりも余るほど手下がいるでしょうが!」

 

「エリカ!」

 

「交友関係を崩したくないの、勝手にやって。」

 

エリカは、席を立って自室に向かう。

丈一郎は、追う事もせずそんなエリカを見続けていた。

 

 

 

所変わって

 

 

 

司波家の家にて

 

「こんな夜に突然すいません、叔母様」

 

テレビ電話で画面に映る黒いドレスを着た女性

 

「あら、入学祝いの日以来ね。深雪さん、達也さん」

 

「叔母さま、三千院の方を知っていらっしゃいますか?」

 

「深雪さん、何故それを知っているのか教えてもらえないかしら?」

 

「実は・・・」

 

達也と深雪は、事の経緯を話すと叔母と呼ばれた女性から

 

「そう、生きていたのね。」

 

「知り合い・・・ですか?」

 

「ええ、昔よく喧嘩したものよ。いつも私が負けてたけど」

 

達也と深雪は愕然とした。

まさか、極東の魔王などと称される叔母に勝つ人がいたなどと。

 

「羽鳥さんとはそんなに仲が良かったわけじゃないけど、同日に3人とも死んでいるなんて思いもしなかったわ。せめて遺体だけでも回収して丁重に葬ってあげたかったけど、誰かが関わっているのは確かね。」

 

「出来なかったのですか?」

 

「ええ、回収に向かわせた時にはどちらもね。

達也、深雪、恐らく2人はケジメを付けに日本に戻ってきた可能性があるわ。断言できる。」

 

「ケジメを・・・ですか?」

 

「ええ、彼女三千院輝夜にRAINBOWが付いていることは知っているでしょう?

日本近海の島に拠点をおいて動いているものと考えられるからね。

十師族に与えられた裏の権限の全面撤廃は彼女も関わっているものだと考えているわ。」

 

「輝夜さんも?」

 

「達也、三千院家と親しいのは何か知っていますね?」

 

「・・・・・皇家。」

 

「そう、私の詠みでは皇家も一枚関わっているものと考えています。」

 

「それって、・・・」

 

「ええ。ですから四葉の方針を貴方達にも伝えておきます。

四葉家は、羽鳥・三千院家に味方するものとします。」

 

2度目の驚愕が2人を襲った。

まさか、四葉家そのものがあの2人に関わるなど思ってもいなかったからだ。

 

「今は、普段通りでいいわ。そのうち分かる事でしょうし。」

 

「叔母様、それでは四葉家が・・・」

 

「ええ、孤立しかねないでしょうね。達也のことも見抜かれているわけですし。

十師族として、三千院家と戦ったところで勝てる自信は無いものね。」

 

「そんなことはありませんっ!」

 

「深雪」

 

深雪は叫んだ。いつもに増して弱気な発言をする当主に対して叫んだのだ。達也も、深雪が言おうとしていることが分かりながらもどちらの味方をすればいいか迷っていた。

 

「深雪さん、いい?三千院家のバックにいるリチャード家、英国魔術師協会、イギリス連合王国を相手に例え十師族が挑んでもかてるものじゃないの。それに、これは私個人の復讐でもあるのだから。」

 

「復讐・・・ですか?」

 

「達也さんに深雪さん、親しい人が同じ十師族に殺されて黙り続ける私じゃないの。

例え相手がなんであろうと、私個人のみでやろうとしていたことよ。

けどね、分家の人達は後に続くって言いだしているの。

巻き込みたくないのだけど、少なからず三千院由香梨と三千院雷造は影響があった。

仇を取りたいという思いは一緒なのよ。」

 

「・・・、分かりました。ならその時は私も呼んでください。」

 

「自分も、少なからず今は輝夜の世話にもなったりしましたから。」

 

テレビ越しではあるが、2人の子供の決意表明を耳にし、目にして、

 

「分かりました。その時はお願いしますね。達也、深雪。」

 

 

 

 

更に変わって、イギリス本国

王国陸軍中央会議室

 

 

 

「それで、日本の近況は?」

 

「今のところ、政府の目ぼしい動きはありません。しかし、反魔法国際政治団体ブランシュに動きがあると警戒を強めているとのことです。」

 

「あの屑共か。」

 

「この前、テロを起こしかけた奴らだったな。だが彼等も運が悪い、マスタング大将が居合わせたのだからな。」

 

「偶々ですよ。それで、どうするんだ?」

 

「此処からはまだ動かん。それぐらいRAINBOWだけで対処できる。それに、動く前に何かやりそうだからな。」

 

「なら、その時の為に戦力を増強しますか。」

 

「ブリッグズ軍を回す。それで問題ないだろう。」

 

「北方軍をか?だが・・・」

 

「最近はきな臭い動きが日本軍にもあるからな。」

 

「そういえば、夏に九校戦という魔法大会をするらしいですぞ。」

 

「羽鳥殿はともかく、血の気盛んな三千院殿は出る可能性がありますな。」

 

「一度視察に赴くか?」

 

「そうだな。現地視察を兼ねて、準備するように。

マスタング、ホークアイ、グラン、3人は日本行きだ。準備しとけよ。以上だ!!」

 

日本行きを指定された3人の簡単な紹介。

ロイマスタング大将、王国陸軍西方方面軍司令官

リザ・ホークアイ大佐、王国陸軍西方方面軍司令官補佐

ベスページ・グラマン大将、王国陸軍東方方面軍司令官

 

指名された3人は、了解しましたと返答するとそれぞれ行動を開始した。

準備と言っても時間はあるため、そんなに焦る必要はない。しかし、一時的に離れる為、部下へと引き継ぎに時間を要する。その為、さっさと車に乗り込み各方面軍司令部に向かったのだった。

 

 

 

 

 








四葉家、三千院家派に回る。

これだけでも、十師族は大きな痛手だと思うのですけどね。七草にまだきな臭いものがありますからね。

ではまた


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第9話 RAINBOW出撃

久々投稿ですが、
このネタはゲームをしている人若しくは動画を見た人しか知らないかな


 

 

RAINBOWの日常

リチャード卿の別荘兼RAINBOW前線基地

地下2階 ブリーフィングルーム

 

「随分とまあ大所帯になったもんだな。RAINBOWは」

 

「そうだな。最初はSASとデルタフォースだろ。」

 

「ああ、そこからあれこれやって来たからな。古巣を抜け出し、故郷を捨てて皆やって来た。」

 

「そうだな。」

 

「どうした?イェーガー、スレッジ。」

 

「エコーか、いや昔に比べ大きくなったなと思ってな。」

 

「そうらしいな。」

 

エコーは珍しくため息を吐く。

 

「?・・・エコー、何かあったか?」

 

「あ、いや弟がな。」

 

「へぇ、エコーにも弟がいたんだ。」

 

「カイベラ。」

 

「それで、弟がなにか手を出した?」

 

「なんでそう考える?・・・いや、手を出していないとは考えていないわけじゃない。

日本国防軍の情報部にいるのだがな、どうもきな臭い動きが軍にあるらしい。」

 

「それ、漏らしたらヤバい奴じゃないか?」

 

「ああ、だから直接手紙を送ってきた。」

 

見せられた手紙を見て、エコーは言う。

 

「軍の一部の連中が羽鳥を研究所に送ろうという計画がある。だが、いつ、どこでなのかも分からないだけじゃない。弟はもう少し調べると言っていたが・・・」

 

「外に出る機会がありそうだな。」

 

「ジャッカル。」

 

「弟に関する情報を寄越せ。追跡して状況を確認する。」

 

「だが、・・・」

 

「RAINBOWに正式な任務は無い。だが、任務と家族。任務を優先するのは分かる。だが、唯一の肉親だろう?」

 

「モンターニュ。ああ、そうさ。行ってやりたいさ。」

 

「よし、準備しよう。」

 

「時間が無いぞ!」

 

「ブラッカー、ナイトストーカーを出して上空から都内偵察を任す。」

 

「了解。海軍からリーパーを出動させる。」

 

救出すると決まれば彼らの動きは速かった。

それぞれのスキルを生かし、エコーの弟の位置と国防軍の動向を探った。

 

「誰が救出に動く?エコーは決まっているとしてだ。」

 

問題なのは部隊としてではなく、個々の戦力で動くということ。

つまりRAINBOWに属するSAT部隊をではなく、SATのエコーがという個人ということだ。

 

「エコー、弟は何処に向かった?」

 

「昨日は東京に居たが、どうもさっきから連絡が出来ない。一度あいつの家に行く必要がある。」

 

「なら、俺も行こう。もしもに備えても単独行動は駄目だ。」

 

「そうだな。ツーマンセルで行動しよう。」

 

「車を用意しておく。乗っていけ。」

 

結果、エコーの弟の家にブリッツ、リージョン、エコーの3人が向かった。

残りは、バックアップの為、自家用ヘリを用意して上空援護と後方支援に回った。

弟の家に着くまで、エコーは何も話さなかった。

エコーの弟の家に到着すると、感の冴えるリージョンが待ったを掛けた。

 

「エコー、待て。」

 

「どうした?」

 

「ブリッツ、外で待っていてくれ」

 

「ああ、直ぐに出せるようにしとく。」

 

リージョンが玄関の扉をわずかながら開けると其処から家の中を覗いた。

 

「ふん、どうやら一足遅かったらしい。対人地雷だ。」

 

「何っ!?」

 

「舐めているのか、それともこれが国防軍なのか。どちらにせよ、雑すぎだ。」

 

特殊工具で導線を切断し家に入ると、其処は既に荒らされていた。

 

「・・・・・・遅かったか。」

 

「エコー、中を調べよう。何か残っているかもしれない。」

 

「ああ、そうするよ。」

 

家に仕掛けられていた爆弾は地雷以外なかった。たった一つしかないあたり、犯行がとても疎か過ぎた。

エコーは、弟の部屋に入り、唯一無事だったファックス付き電話機の録音を再生した。

 

『・・・・・優兄さんか、俺だ大輔だ。

不味いことになった。兄さんに手紙を送ったことがどういうわけかバレタ。

俺は、USBで〈アレ〉に関するデータだけをコピーして引き抜いた。

今持ってる。けど、追手がもうすぐ来る。

時間が無い。携帯も捨てておく。

 

 

 

 

 

うわぁ!?な、もう来たってーのか!

 

 

 

クソっ、此処まで来たってのに

 

 

現在地は・・・座間、クソッ垂れ。よりによって一番来ちゃいけないところに来ちまったのかよ。

 

 

もうこれまでか。

 

 

USBを近くの祠に投げた。

 

後は、・・・頼んだ。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

この後、何分かもみ合いになっている音が響き、ぶつっと音声は途切れた。

 

「座間か。結構面倒だな。」

 

「USBを回収して大輔さんのとこに行こうか。」

 

「ああ。」

 

3人が車に移動し基地に帰る頃、

別働で動いている部隊があった。

 

 

元陸上自衛隊特殊作戦群SFGp

 

国防軍創立と共に消え、瑞穂軍に入らずRAINBOWに加入した彼等は、殆どのRAINBOWがイギリスにいる中、日本に残り数々の工作活動を行っていた。

そして、今回この事を聞き、彼らは立ち上がった。

卑劣な国防軍を壊滅せんと、囮を買って出たのだ。

 

30人の特殊作戦群が、国防陸軍座間駐屯地に攻撃を仕掛けた。

駐屯地内部に潜入し、RAINBOWの救出部隊が到着する前に通信施設を強襲し、C10爆弾を設置。

更にレーダー施設、対空兵器にも爆弾を仕掛けていき、警報も先に破壊した。

 

そして、

 

『アーチャーよりRAINBOW、アーチャーよりRAINBOW、応答を』

 

「こちらエコーだ。アーチャー!何処にいる!?」

 

『座間駐屯地だ。救出対象は基地施設内部にいることが確認されている。だが、内部警備が厳しい。こちらが囮になる。』

 

「馬鹿を言うな、一人で何が出来る!」

 

『特戦群30名で今工作が終わった。そちらの準備ができ次第、陽動を開始する。

制限時間はおよそ30分。行けるか?』

 

「陽動成功後はどうする?」

 

『こちらで脱出ルートは確保済みだ。』

 

「・・・・・・・・・・分かった。10分後に到着する。到着後、無線で合図を出す。」

 

『了解した。』

 

特戦群は、基地内の弾薬庫で弾薬を持てるだけ持ち、その弾薬庫にクレイモア地雷を仕掛け

本拠点から離れた建物の一つに立て籠もり、合図を待った。

 

RAINBOW本隊からの救出部隊は、

エコー、ブラックビアード、カベイラ、スレッジ、サッチャー、グラズ、ブリッツ、イェーガー、フューズ、モンターニュの10人

全員が最精鋭のエキスパート

到着と同時に光信号を送ると、それを確認した特戦群が一斉に起爆した。

暗闇の座間駐屯地が弾薬庫の爆発によって明るく照らされる。

全員がイギリスから取り寄せた純正のアンティナイトを装備しているため、魔法師を即戦闘不能に追い込み、救出の妨げとなる壁は簡単にスレッジによって物理的に破壊される。

特戦の誘導で施設入り口に入り、中を偵察して特戦が見つけ出した対象がいる部屋以外にフューズがクラスターチャージを設置して中にいる敵を一掃する。

モンターニュが楯と成り前進していき、ブリッツも共に並走して、目の前に現れる敵に装備しているタクティカルライトシールドを使い、フラッシュで一時的に視力を奪い敵を倒していく。

グレネードランチャーを装備している敵に対してイェーガーが、アクティブディフェンスシステム『マグパイ』を設置して降り掛かるグレネードを全て無力化していく。

誰もが不可能と言っていた、戦車向きだと言われたマグパイが実戦で使われてもなお、信じる者はRAINBOW以外に居ない。

エコー、ブラックビアード、グラズが壁越し銃撃を敵に浴びせ、容赦なく殲滅していき司令部に雪崩れ込む。

国防軍もまさか司令部まで来ると思っていなかったらしく武装した兵士が殆ど居なかった。

いや、居たがカベイラのナイフ技術を前に瞬殺されていった。残ったのは通信要因と小太った駐屯地司令官のみ

 

「き、貴様ら!こんなことをしてただで済むと思うなゔぁ!?」

 

「黙ってろ、権力に溺れた惨めな敗者が」

 

エコーが駐屯地司令を射殺し、投降した通信要員は一か所に集められ、気絶させられた。

 

「おい、殺すんじゃなかったのか?」

 

「心配するなブリッツ、カプカンが来てる。大丈夫だ。」

 

「あ、・・・それは、国防軍もご愁傷様だな。」

 

カプカンを呼んだグラズの一言に同情を隠せずに言うブラックビアード

他の者も同情を隠せなかったらしい。

それだけ、カプカンのトラップがえげつないことを知っている。

救出対象を見つけた一行は、周囲を警戒しカプカンのトラップ設置を待つ。

時は最初に戻って、起爆と同時に銃撃戦を始めた特戦群に、駐屯地の大半の兵士が其処に人員を割かれた。

たった30人の特戦群にまともな訓練しかしていない200人を超える兵士たちは次々に犠牲者を出した。

格も練度もあまりに違っていた。

捕らえようとする国防軍に殲滅する特戦群。

軍配がどちらに上がるかは簡単だった。

最終的に、モンターニュとブリッツを先頭に次々に敵を薙ぎ倒していき、アンティナイトによって、国防軍魔法師が全員床に伏せ倒れこんでうめき声を上げているが、彼らは容赦なく頭部を撃ち貫いた。

駐屯地内部通信もサッチャーのEMPグレネードで悉く破壊され、

駐屯地司令以下士官全員が射殺された。

容赦なく、情けも無く、救出対象を発見後闇夜に紛れてやって来たRAINBOWの航空兵器

低飛行強襲型兵員輸送艇により、RAINBOWと特戦群の全要員が座間駐屯地から離脱した。

僅か15分程度のことだった。

 

襲撃から20分後、騒ぎを聞きつけた国防軍の部隊が各所から集まり出した。

駐屯地施設内に入らず外周警戒をし、被害の確認をしていく国防軍兵士達。

一般兵も魔法師もどちらも平等に射殺されている光景に彼らは目を疑ったが、疑うのはこれからの方だった。駐屯地司令室に向かう為、小隊ごとに部隊分けされ、中に入っていったのだが、彼らはまんまとカプカンの罠に引っかかった。

 

ドアや部屋の机の脚に仕掛けられた感知型地雷によって施設内部各所で爆発音が鳴り響く。

指揮を執っていた大尉は愕然とする。

突入した各部隊から負傷者が多発し、基地内に残っていた生存者も救出に当たろうとした小隊員が部屋に侵入したことによって全滅したのだ。

エグイ話、カプカンは弾丸が跳弾する部屋を敢えて選び鋼鉄で出来た牢屋部屋に通信要員達を放り込み、各所敷き詰められたクレイモア地雷が通信要員達によって起動しない辺りに仕掛け、中に人が入ることによって、侵入した人間諸共クレイモア地雷から射出された500発以上のパチンコ玉が襲い掛かるという仕組み。

念には念を、というカプカンの行動によって30個ものクレイモア地雷が仕掛けられ、小隊員が救出に入った瞬間に起動した15000発のパチンコ玉が襲い掛かり牢屋部屋で跳弾しまくって通信要員達は穴だらけになり死亡。

唯一の出入り口から跳弾したパチンコ玉が外にいる小隊員を襲い、少なからずの犠牲者と負傷者を出した。

 

夜が明けると、事件の全容が明らかになってきた。

襲撃者達は既に離脱。

基地要員はその殆どが全滅。軍用語の全滅ではなく、文字通りの全滅だった。

どうしようもない状況下に唖然とする大尉だが、この事が明るみに出る事は容易く予想出来た。

無論、全国紙で一面に『国防軍座間駐屯地、壊滅。襲撃か!?』の見出しで世間を騒がすことになった。

 

 

 

 

 

 

座間駐屯地を離脱したRAINBOWの部隊は、RAINBOW地下基地に有った。

彼等は離脱し、基地まで追撃無く離脱を果たし、エコーの弟が負傷していたので治療に当て、エコーの弟が入手したUSBメモリを特戦群が回収していた為、解析に乗り出した。

そして、国防軍がスレイ・ベガについて軍事研究していることを知り、より一層警戒を強めるのだった。そんな時、特戦群のランサーの携帯が鳴った。

差出人が知っている人間なだけにそのままに出来ず、ランサ-は電話に出る。

 

「俺だ。」

 

『ランサーか?久しぶりだな。』

 

「東條か?」

 

『ああ、そうだ。』

 

「なんのようだ?」

 

『昨晩のあれ、お前らだろ?』

 

「例えそうだとして、どうなんだ?」

 

『いや、目的が知りたくてな。』

 

「お前が瑞穂軍にいるとしても、言えないな。」

 

『そこをなんとかできないか?』

 

「・・・・・・・・事実は言えないが、結果的にイギリスを怒らせる内容とだけ言っておこう。」

 

『ほう?なるほどな。いや、分かった。これで国防軍を陥れることが出来る。』

 

「気にするな、本当のことを言っていないだけだ。」

 

『そうか?なら、伝えておいてくれないか?そちらの姫さん達に』

 

「何をだ?」

 

『そちらの身に危機有れば、瑞穂軍は力を貸すと。』

 

「おいおい、それ個人でじゃないだろうな?」

 

『俺が電話しているのは瑞穂軍作戦司令部だ。なんなら変わろうか?』

 

「そうだな。こちらも変わろう。」

 

そう言って、作戦基地に来ていたリチャード卿と変わるランサー

 

『瑞穂軍統合幕僚長の高城介六郎だ。』

 

「RAINBOW部隊総指揮官のリチャード・K・ブラッドレイだ。」

 

相手の顔色が一瞬で引き締まった。

 

『かの剣王自らですか。』

 

「なに、少しおいたをする輩には、躾が必要だと思ってね。」

 

『そうでしたか。・・・我が軍の最高指揮官は天皇陛下でありますが、かの陛下より、羽鳥、三千院に害為す存在を撃滅し、防衛せよとの通達を承っております。』

 

「そうか、ではその時は頼むよ。それと、事が起きた時、機甲部隊を中心とした部隊が市街に展開するだろうが・・・」

 

『ご心配なく、国防軍の相手はお任せを』

 

「なら、後顧の憂いはなくなったな。その時は任せる」

 

 

RAINBOWと瑞穂軍との間に結ばれた密約が、国防軍をより苦しめるとはこの時分かっているのはリチャード卿しかいなかった。

 

 

 

裏でそんなことが起きているなど知る由もなく、学生生活を謳歌する私と智世。

達也と共に風紀委員として、校内巡回を終え、山のように積み重なった委員長のデスクを見ながら、委員長を見捨てて帰り支度をし、達也に助けを求める渡辺委員長。

しかし、達也もそこまで優しくなく、入学当初にあの手この手で風紀に勧誘した事を突き出した上で、手伝いませんからという非情な言葉と共に渡辺委員長は崩れ落ちた。

その後、白くなった友人を見慌てる七草生徒会長の姿はあったとか。

 

妹と帰宅した達也は、夕食後ゆっくりとした時間を過ごしていたが、自分の上司から通信が入った為、そちらに目を向けた。

 

『久しぶりだな、特尉。元気そうでなによりだ。』

 

「お久しぶりです、風間少佐。」

 

『早速だが、君は国防軍座間駐屯地襲撃事件を知っているか?』

 

「ええ、新聞の見出しにもニュースでも行っていましたから」

 

『そうか、・・・気を付けろよ達也』

 

「・・・少佐?」

 

『今回の事件、襲撃者はかなりの実力を持っていたと考えられる。座間駐屯地に居た50人の魔法師が全員死亡していた。』

 

「それは・・・」

 

『全員、決して弱いわけではない。魔法師部隊烏の3割が一瞬で全滅したことが問題なのだ。』

 

「あの烏の者が・・・ですか?」

 

『そうだ。達也も気を付けた方がいい。』

 

「分かりました。(恐らく輝夜たちの部隊だろうな。)」

 

通信はそこで切れるが一番勘違いしているのは、基地要員の大半を殲滅したのは突入した10人程度のRAINBOW部隊ではなく、特戦群だという事を。

そして、国防軍魔法師特殊部隊「烏」の2割半を撃滅したのが、特戦群の兵士だということをこの時国防軍は完全に勘違いしていた。

国防軍は襲撃犯の捜索に移ったが、監視カメラは全部丁寧にEMPグレネードで無力化

監視ビデオも、配線からショートしており、データも破壊されている為、誰がやったのか正確に判断出来ない状態だった。故に、捜索は早々に打ち切られた。

各地の国防軍基地の警戒レベルが一時的に上がり、数カ月警戒態勢に移られるが再度の襲撃が無く、杞憂に終わった為警戒態勢が通常態勢に移行するのもそう掛からなかったという。

 

 

 

 

RAINBOWによる国防軍基地攻撃は、国防軍はおろか政府に知られる事なく、襲撃の意図も国防軍に分からないまま時は過ぎ去ったのだった。

 

 

 

 

その頃、三千院と羽鳥は・・・・図書館に居た。

 

「おかしい。この魔法は、・・・」

 

「どうかしたの?」

 

「ねえ、智世。この魔法記述を見てみて。おかしいと思わない?」

 

山のように積み重なった本は全て魔法に関する図鑑や専門書なのだが、

2人はそれを読み漁っていた。そんな中、見つけた本に書かれていた内容に輝夜は驚いた。

それを智世も見て、「これって・・・!」という感じで驚いていた。

 

「SB魔法、イギリスの魔法法なら禁則事項に当たることをしているよね。」

 

そう、精霊を支配下において魔法を発動する。

これは、コチラ側(イギリス)では双方の同意の上で使用できる魔法であり、別名精霊魔法とも魔術師達から言われている。(エリアスが持ってきた本にもそう書かれていた。)

 

対し、こっち側(現代魔法)では、精霊を無理矢理使役して魔法を使う場合が多く、唯一例外なのが日本の式神など古式魔法分野。

あれは原理自体似たようなものだが、精霊と対話することが出来、扱い上イギリスが定めた魔法法に違反していないのだ。

 

今回、見つけた魔法についての文書は精霊を使役して発動する魔法についてだった。

 

「これ、かなりマズくない?」

 

「ええ、けど、日本はどんなに違反していても国際魔法協定に批准していない。あれは、イギリスを筆頭としたヨーロッパ諸国が結んでいるだけ。

日本はアメリカなどが結んでいる国連魔法条約を結んでいるから。」

 

「国際魔法協定と国連魔法条約の違いって何?」

 

「国際魔法協定って言っているけど実際上は、異人種民族を含めたもの。その人達の人権を保障した上で魔法協定が組まれているの。だから、欧州での精霊や妖精さんは皆お隣さん。」

 

「エアリエルと同じってこと?」

 

「そう、対しこっちの条約は、精霊や妖精は魔法体だからそもそも人権など無いということ。だから、欧州ではタブーなことも、こっちでは平然と出来るって奴。」

 

「まったく、酷いったらありやしないのね!」

 

「エアリエル!?」

 

「智世」

 

「あ、ごめん。」

 

お隣さん(エアリエル)は常人には見えない。だから智世の行動は少し危ない。

けど、エアリエルの行動も危ない。取り敢えず念話で話すことにした。

 

「(エアリエル、大丈夫なの?こっちだと見える人もいるんだから)」

 

「大丈夫よ。一っ跳びしてきたけどだーれも見向きしなかったわ。それにしても色々見てるわね。2人共」

 

「(だけど、これってあんまりじゃない?)」

 

「(そうなんだけどね、これがコチラ側のやり方だとしても、こっちはそれに従う必要はない。それに、例え奴らがやってきても、返り討ちにしてやればいい。そうじゃない?智世)」

 

「(そうね。いつまでもエリアスに守ってもらうわけにもいかないし。)」

 

「(うわぁ、2人が黒いこと考えてるよ。)お二人とも、そろそろ時間だよ。」

 

「はいよ~。」

 

「じゃあ、ちょっとお願いするよ。」

 

私と智世が、積み上がった本に触りながら

 

「「リブダス」」

 

本の精霊に頼んで、元あった場所に本を返しておくと、2人は図書館から出た。

どうやら、最後の2人だったらしく、ひとりでに戻って行く本を見た者はいなかった。

 

魔法の名前がおかしいって?本人達は本気です。

 

 

下校中の車内で、輝夜はうたた寝していると

 

「あ、輝夜。此処使っていいよ?」

 

「ん?・・ああ、ありがと・・・。 」

 

智世に促されて、太腿に頭を預けそのまま眠りについた輝夜。

 

「いつもありがとう。」

 

智世は、輝夜が自分の近辺警護をしていることを知っていた。

 

「・・・・んむぅ。・・・・・」

 

智世の気遣いを知ってか知らずか、ご丁寧に腰に手を回して抱き枕の如く身を寄せていた。

そんな輝夜に智世も、抱き返している。

そんな百合百合な現場に車の運転手と助手席の警護官は、後ろを直視せずただ意識から後ろの存在を外さざるをえなくなっていた。

(次から女性隊員に任せよう。)そう、彼ら2人が共通して思っていた

 

家に帰った後、車の中で2人はキスが出来るくらい唇がくっつくぐらいの距離に顔があったため、起きた後2人共暫く顔を紅くしていた。

 

 

 

 




ええ、ゴーストリコンワイルドランズとレインボーシックスのコラボミッションをそれっぽくしてみました。
ここは違うんじゃない?
とか
ここはこうだろう!
とか、
そういうのは、あまり受け付けません。
分からない人は、YouTubeで
ゴーストリコンワイルドランズ レインボーシックスシージコラボミッションを見てみてください。それではまた


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第10話 対ブランシュ戦1

お久しぶりですね。
レポートに追われながら作成しているもので、少しスランプに入りかけていましたが、
なんとか投稿出来ました。では、どうぞ。


 

 

第1高校のある昼休み。丁度食後の休憩頃に、突如として響いた校内放送があった。

 

『皆さん!!』

 

ボリュームをミスったのか、耳障りなほどの校内放送に私と智世は顔を見合わせた。

 

『失礼しました。

皆さん!僕たちは二科生に対する差別撤廃を目的とする有志同盟です!!』

 

「どうやら、放送室を不法使用して行っているみたいね。」

 

「どうするの?」

 

「一応風紀委員だし。要請が来るでしょうけど先に行きましょうか。」

 

先に来たつもりだけど、既に渡辺委員長、七草会長、十文字会頭他、何人か風紀委員も来ていた。

 

「おや、今通達を出したところだったが、来るのが早いな。」

 

「先輩こそ、私たちが先だと思ったのですけどね。」

 

その後、達也が深雪と一緒に来て、風紀委員は全員そろった。

達也が来るまでには放送が止まっていた。恐らく電源をダウンさせられたからだろう。

放送室は閉ざされており、突入した形跡も無い。

突入した有志同盟の連中とやらは、鍵のマスターキーごと持って行ったらしい。

魔法高校なのに。どういうわけか、こういうところはアナログなんだなぁとふと思う。

 

「明らかに犯罪だな。」

 

「そうです、だから相手を刺激しない為にも此方は慎重に行くべきでしょう。」

 

「聞く耳を持っている連中とは思えんな。多少強引でも短時間での解決を図るべきだ。」

 

生徒会会計の市原先輩が慎重にというのに対して渡辺委員長は強行にと意見が分かれている。そんな2人の間を取る十文字の意見を達也が聞いた。

 

「十文字会頭はどのようにお考えですか?」

 

達也に促され、全員の視線が十文字に向く。

 

「俺は交渉に応じても良いと考えている。が、学校施設を破壊してまで早急にすべきかは悩みどころだと思う。」

 

「なるほど。」

 

「会頭、この扉のピッキングが出来る人はいますか?」

 

十文字は、まさか己を嫌う三千院から意見が出たことに一瞬驚くが

 

「いや、どのみち魔法でこじ開ける結果になりそうだ。それに、この手の扉を開けれるスキルを持った者は教員でも居らん。」

 

「だってよ、智世。」

 

「そうですか、なら開けますか?」

 

その発言に誰もが驚いた。魔法を使わずに扉の開錠が出来るというのだ。当然、先輩方に冷たい視線が智世に降り注ぐ。

 

「出来ると言うのか?」

 

「ええ、ちょっと失礼します。」

 

そう言って、智世は放送室の鍵の形状を見る。

智世の透視によって鍵の構造が鮮明に映し出される。

 

「成る程、これは古い。それでいて、開けやすいタイプです。」

 

「開けやすい?」

 

「ええ、ディスクシリンダー錠と呼ばれる形状の鍵を用いるのですが、構造上ピッキングしやすくなっています。今となってはしにくいに分類されていますけどね。」

 

はったりだと思う先輩も居たが、風紀委員全員が突入準備をしていた。

 

「ふむ、中のリーダーとは俺が話そう。他を任せた」

 

「「「はい!」」」

 

風紀委員の何人かが頷き、返事をした。

そして、智世の手によって開錠されると、扉は鍵で開けたように普通に開き、風紀委員は取り押さえる為に突入した。

まさか、マスターキー無しなのに開錠して入って来るなんて中の連中は思いもしなかっただろう。開いたと同時に風紀委員達が雪崩れ込み、違反者達を捕縛していった。その中には、昨日達也達の方で話題に上がっていた壬生先輩もいた。

結局、さあ連行というところで集まってから後を市原先輩に任せて何処かへ行った会長が現れて、違反者を連れていった。交渉に応じるという形で。

因みに、学校側に鍵のことで十文字会頭が聞いたところアナログの鍵の開錠方法を知る人はほぼ居ないし大丈夫だろうとのこと。

羽鳥が開錠しましたよと言った時には、教頭は卒倒ものだったらしい。

その後、智世のアドバイスもあって、ディスクシリンダー錠からディンプルシリンダー錠に変えたそうです。

 

 

 

後日、討論会が開かれることになったのだが・・・・・・

 

「どうかしたの?アッシュ。」

 

運転手と警護官があの日から変わって、運転手の火花と警護官のアッシュが走行する車の中で話しかけて来た。

 

「輝夜、智世。今回の討論会だが、気を付けておいた方がいい。」

 

「つまり用心しておいてほしいの。」

 

「なにかあった?」

 

「討論会が決まった日の夜に、監視していた廃工場にトラックが2台、ボックスカー3台が入って行ったのを偵察班が確認したわ。」

 

「十中八九、襲撃を計画している見て間違いない。銃火器も運び込まれたのをトゥイッチがドローンで確認した。」

 

「狙いは討論会でしょうけど・・・。ねえ、確か私たちが有事に巻き込まれた際の規定があったよね。」

 

「ええ、武装勢力に襲われた際独自の戦力で鎮圧することを許可する。って政府にも確認は取らせてある。」

 

「なら、やっちゃう?」

 

「いいのかしら?というより、輝夜ってそんなに好戦的だった?」

 

「輝夜、昨日しつこいまでにエガリテの人に付き纏われたんだよ。うちの有志同盟に入らないかって。」

 

「あ~、なら仕方ないわね。」

 

「智世、ちょっと無線使うね。」

 

「オッケー。」

 

鞄に入れていたRAINBOW用のトランシーバーを取り出すと、指示を出した。

 

「輝夜より、護送車全車へ。今日起きる討論会に対し襲撃の可能性あり。武装し、事が起きた際は鎮圧せよ。

次に、各対ブランシュ偵察班に連絡。東京のブランシュ基地以外への攻撃を準備されたし。

東京のブランシュに関しては、GIGN、SAT合同にて鎮圧に当たります。以上」

 

RAINBOWに警護されている身とはいえ、身の脅威に対してRAINBOW部隊を動かす権限を与えられている輝夜は、迅速にかつ最適な戦力を抽出し、送り出した。

日本における本基地では、無線通信を聞いて空母より、無人戦闘機X-47ユニコーンが発進。

国内にある基地に向けて出撃し、また周囲の敵兵を殲滅するために、デルタフォースとスぺツナズが派遣されている。

恐らく、夕方から今夜に掛けて、空に赤い炎が浮かぶことだろう。

 

第1高校前駅で車が止まると、私たちは降りて、高校へと向かった。

矢は解き放たれた。後は当たる的が来るのを待つのみ。

 

 

 

午前中の授業が終わり昼食の後、

討論会が始まろうとしていた。

智世の配置は風紀委員会室のビデオカメラ室(予算で別室を改装)

映像には、事前に設置した校門と裏門、校舎外1階からと2階から屋上から映し出された昇降口から校門までも道のりの間の映像や運動部が練習で使ったりする林を映しだした映像など12のカメラが稼働して、それを智世が確認していた。

私は屋上に上がり、学校一帯を見回していたが、やはりというか案の定というか、

授業が始まり、討論会が始まった事によって、人通りが一切なくなった正面道路から2台のトラックと4台のワンボックスカーが校内に侵入。

中から出て来た清掃員紛いの服装の男達がロケットランチャーを手にし、実技棟に向けて放った。

本来なら防御出来るのだが、先制攻撃したという口実が欲しかったので敢えて見ていることにした。

智世も気付いていたらしく、行動を開始していた。

そして、技術棟への攻撃を皮切りに侵入者たちは各々武器を取って学校に攻撃を始めていた。

 

爆発音は駅まで轟いており、護送車に居た誰もが気付いた。

 

「テルミット」

 

「ああ、行動開始だ!」

 

駅付近で待機していた5台の護送車が高校前へと近づき、高校正面の左右の道を車で塞いだ上で攻撃を開始した。

FBISWATとSATによるブランシュ侵入者鎮圧が始まったのだ。

計24人の警察機構の特殊部隊が高校に入ったのに、気付けたのは正門に居た退路確保組だけだった。

 

「こいつら、MINIMIも持ち込んでやがるぞ!」

 

「撃たせるな。破壊しろ!」

 

「了解。気を付けろ!グレネードだ!」

 

FBISWATの隊員が手榴弾を投げたが、MINIMIより少し離れたところに落ちそうだった。

そこを、火花がライフルで跳弾させて、手榴弾はMINIMIの弾倉の中に吸い込まれるように落ちた。

そして、手榴弾が起爆しMINIMIとMINIMIに繋がれた弾倉ごと爆発を引き起こし、爆風と破片と弾丸がブランシュ側に降り注いだ。

FBISWATとSATチームにも降り注いだが壁を楯にしていた為、被害はなかった。

 

「始めたね。智世?」

 

「うん、じゃあ行こうか?」

 

何時に増してやる気満々の智世に私は力強く答えた。

 

「ええ、行きましょう。」

 

屋上からふわりと降りると、智世は風を起こし、私は鉄扇を取り出し、水を発生させた。

 

「金生水の流星」

 

風によって飛沫となった金生水の花が流星の如く、校舎内に入ろうとするブランシュメンバーに降り注ぐ。

水を浴びただけだと思っていたのか、何ともないと思った矢先、彼等の身体中から水蒸気のようなものが噴き出した。

彼等の悲鳴と共に

 

「容赦ないねぇ。」

 

「智世だって、あれ、ただの風じゃなかったでしょうに」

 

そう、ただの強風ではなく、カマイタチが混ざった強風なのだ。その為、彼らの恰好は所々に切り傷が出来ており、場所によっては致命傷なのだが・・・

 

「私の金生水は、人生最高の傑作でね。飛沫となって対象を水分で覆いつくし、出血を外に出さず溶かしていく。皮膚も肉体も血液すらもね。」

 

実際、カマイタチによって首を深く抉られた者に至っては本来なら夥しいまでの血飛沫が舞うはずだが、金生水の飛沫によって傷口を覆われ、血飛沫は金生水に触れた瞬間に溶け消えていた。そして、血液を得ることで、覆う液体の量は増え、男達は悲鳴すら上げられず、声帯を先に溶かされ、生きながらに死んでいくのだった。

 

 

 

尤も、その前に殺されるだろうが

 

私と智世が、無力化し、2人一組に分かれたFBISWATとSATが止めを刺していく。

そして、私と智世は討論会が行われている会場に急いだ。

 

 

実技棟の爆発と同時に先攻して校内に入ったエコーとキャッスルが討論会が行われている会場に向かう防護マスクをした一団を見つけた。

 

「キャッスル!」

 

エコーが先に見つけ、キャッスルはその足を速める

 

「ああ、急ぐぞ。」

 

 

 

 

 

討論会は、轟いてきた爆発音と共に終わりを告げた。

爆発音を合図に会場に来ていた有志同盟の生徒が立ち上がり動き出した。

渡辺風紀委員長が叫ぶ

 

「会場にいる全風紀委員はマークしている対象を取り押さえろ!」

 

達也を含めた風紀委員達が、有志同盟の生徒を全員確保したかと思うと、中央の出入り口に走る1人の有志同盟の生徒を達也が見つけた。

側に誰も風紀委員が居ない為、CADを使って彼を捕縛しようとして止めた。

 

「司波くん!?」

 

「大丈夫ですよ。なにしろ、あそこは・・・」

 

逃げようとしていた生徒を担いで歩いてきた人影

 

「三千院さんが来ていますから」

 

「これで全部のようね。」

 

「ああ、だが会室から此処まで結構な距離があったと思うが?」

 

「秘密よ。」

 

渡辺委員長の疑問を受け流し、担いでいた生徒を落とす。

グエッと生徒は蛙が潰れたような声を出し、胸を押さえ突っ伏していた。

 

「流石だな。三千院」

 

「いいえ、智世よ。」

 

「へ?」

 

辰巳先輩が労いに来てくれたが、彼をこうしたのが智世だと言うと気が抜けた声を出していた。

 

「走ってきたので、すれ違い様にこうガンって」

 

すれ違い様にひじ打ちしたと言う智世に後からきた沢木先輩も顔を青くしていた。

普段温厚に見える羽鳥智世が本気を出したらどうなるかとでも考えたんでしょうね。

 

「皆、気を付けて!窓から何かが!」

 

七草会長が講堂の窓に向かって叫ぶ。

叫んだと同時にガス弾らしきものが撃ち込まれ、窓を破って入ってくる。

それも1発でなく、3発もだ。

1発は服部先輩が咄嗟の判断で外へ収束魔法で出し、他2発は会場に居た部活連の部員によって場外へと出された。

更に立て続けに、防護マスクで身を包んだ武装集団がズカズカと講堂内に入っていく。

 

「させるか!」

 

渡辺委員長が、マスク内の酸素を奪った。

 

 

はずだった。

確かに魔法は使われた。しかし、彼らはアンティナイトを装備していた為、魔法が発動しなかったのだ。

他の風紀委員達も魔法を使うが、無効化され、襲撃者の一人が渡辺委員長に銃口を向ける。

誰もがやられると思った。2人を除いて

 

「キャッスル」

 

「オーケィ」

 

私が、キャッスルを呼ぶと襲撃者が銃口をこっちに一斉に向けた。だが、彼らは気付かない。入って来た入り口にいるキャッスルとエコーの姿を

 

「周りに被害が及ばないように」

 

「ラジャー!」

 

ダァーン  ガシャコ

 

彼等の背後でショットガンの銃声が響き、後ろにいた襲撃者数人が吹き飛ばされた。

更に、

 

バンッバンッ

 

コルトオートガバメント片手にエコーが数人の襲撃者の足を撃ち貫いた。

射殺は生徒が大勢いる手前、あまり刺激的すぎるのは見せられないということで、肩や足を撃つことになっていた。

ショットガンの場合はいつも通りになるのだが、

いきなり入って来て、襲撃者を後ろから襲った2人の男の出現に襲撃者達は浮足立った。

計画に無い奴らが乱入してきたと、そう思ったからだ。

しかし、彼らが再び銃を構えようとして、一人がショットガンで吹き飛んだ。

多少の血が飛び散っているが、致し方ないことだった。

 

「銃を捨てろ。今すぐだ!」

 

エコーが警告する。

銃を持った襲撃者達は、突入時10人居た。

しかし、今となっては4人。

6人がたった2人によって戦闘不能になっていたのだ。

得体の知れないナニカと戦っている。そう感じた彼らは、そのナニカを撃って、仇を取る為に構えようとして、キャッスルのショットガンの銃床によって2人が沈黙。もう二人はエコーの旧式一本背負いによって一人が投げ出されもう一人にドミノのように当たり斃れ敢無く敗れた。

そんな2人に風紀委員達が警戒の色を強めるが、

 

「これで全部か?エコー」

 

「いや、そんなはずない。恐らく此処の生徒を楯に立て籠もる予定だったのだろうな。」

 

「後は・・・・・・何処だ?」

 

「実技棟と図書館だろうな。どちらも重要だからな。」

 

「だが、俺達の仕事はまだ終わってないわけだ。」

 

「そういうことだ。」

 

エコーは壇上に向き直り、壇上にいる女子生徒に声を掛けた。

 

「あんたが生徒会長かい?」

 

「え、ええ。そうよ。貴方達は?」

 

七草会長は、突然声を掛けられたことに驚いたものの、直ぐに立て直して何者かを聞いた。

 

「彼らは、私の護衛メンバーですよ。七草会長」

 

「三千院さん!?・・・彼らが?」

 

「エコー、現在の学校の状況。教えてもらえる?」

 

「ええ、現在第1高校には2台のトラック、4台のワンボックスカーで侵入した武装勢力に攻撃されており、実技棟はナパーム弾と思しき弾頭で炎上中。教員方が消火作業中です。また、侵入した武装勢力は凡そ50人程度。

現在、図書館前にて生徒と混戦になっております。

尚、部活動中の生徒に襲い掛かる侵入者も居ましたが、そちらは生徒側によって鎮圧済みです。以上が現在の概要となっておりますが、裏門より侵入が確認されている為、SWAT、SATと武装勢力で銃撃戦が行われている状態です。」

 

「他の生徒に流れ弾が行かないように気を付けて」

 

「ええ、そこは全員防弾楯で対処しています。」

 

智世が、チョンチョンと肩をつつく

 

「ねぇ、いいの?皆に知られちゃうと思うのだけど。」

 

「此処での会話は彼らに聞かれないように防音障壁張っているから問題ないよ。」

 

「そっか、ならよかった。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「委員長、自分は報告にあった図書館の方に向かいます。」

 

「お兄様、お供します!」

 

「智世、此処を頼む。」

 

「分かった、任せて。」

 

「気を付けろよ!」

 

達也の後を追って、私も講堂を出て行く。

講堂に残ったエコーとキャッスルは、負傷した侵入者を取り押さえ、持っている物を物色した。

 

「さて、こいつらを締め上げた後、物色しますか。」

 

「ですかねぇ、どうやらアンティナイトを装備しているみたいですし。」

 

「とは言っても、どうせベラルーシの方で取れた質の悪い奴だろ。」

 

「まあ、だとしても、此処の生徒達には脅威だ。」

 

もぞもぞと弄って、装備していた指輪型のアンティナイトや、無線機に内蔵されたアンティナイトを引き抜き、回収用の袋に入れた。

キャッスルがM1014を持ち直し、エコーがMP5SDを持ち、2か所ある出入り口にそれぞれ向かい警戒した。

そんな2人を生徒会長や風紀委員長は、見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

講堂が襲撃される少し前、

 

一人の男子生徒と一人の女子生徒が激闘を繰り広げていた。

いや、激闘とは程遠い戦いだった。

双方の言い分は違った。男子生徒は、女子生徒を正そうと魔法を使わず、己の剣技で挑み、女子生徒は遂行する任務の障害を取り除く為に魔法を使って戦いを挑んでいた。

しかし実力差は、魔法の有無以前に歴然だった。男子生徒が魔法を使わずにいる所為で押され気味だが、一つも攻撃を受けずに凌いでいる。男子生徒が女子生徒の名を叫ぶ。

 

こんなはずじゃなかったはずだ   と

 

女子生徒も叫ぶ

 

貴方には関係無い    と

 

それでも、男子生徒に力が籠る。オリエンテーションの時のような無様な姿を見せない為にも、心は熱くなりながらも落ち着かせていた。

そして、遂に魔法を使っていない男子生徒の剣術が女子生徒の持つ竹刀を吹き飛ばす。

激情任せに告白に似た言葉を乗せて。

その言葉に女子生徒は顔を紅潮させ、男子生徒も自分が言った言葉に顔を紅くする。

 

「桐原くん。」

 

「いや、・・・なんつーか、さっき言った事は嘘じゃない。俺は・・・」

 

桐原は、言葉を繋ぐことを止め、壬生を抱き寄せる。

 

「うぇ!? ちょっと桐原君!?」

 

壬生は突然身体を密着されたことに驚き、慌てふためくがそれよりも

桐原は、眼前に現れた男達に目をやっていた。

手に持つナイフが壬生を殺そうとしていたという事実を物語っていた。

 

「おい、てめえら。わかってんだろうな」

 

底冷えした声が桐原から漏れる。

しかし、彼が魔法を発動し男達を斬ることはなかった。

彼の背後から飛び出した影が男達を撃ち貫いたのだ。

 

「ふん、女を命がけで守ろうとするその心、見事だな。だが、実力が伴わなければ無意味となる。」

 

背中にFBIと書かれた防弾チョッキを着た男がそう言い、M45ハンドガンを素早く撃ち貫く。

手足を撃ち貫かれ、動けなくなったところを捕縛ネットによって纏めて捉えていた。

そこに更にやってくる人影

 

「桐原先輩!」

 

「よう、司波兄。」

 

「・・・壬生先輩は、」

 

「ああ、マインドコントロールを受けた形跡がある。じゃなきゃ、機密情報を盗み出して差別撤廃に繋がる、などの話を信じるか?」

 

「成る程、全く繋がっていないですね。」

 

「パルス、助かったわ。」

 

「いえ偶々、青春を繰り広げている男女2人がいたもので、いい感じになっている2人に無粋な邪魔者が現れたんでついでに確保しといたんですよ。」

 

パルスから齎された情報に、達也、深雪、エリカ、レオンハルトが呆れ顔になりながら2人を凝視する。

 

「いや~、いいものですね。さて、ここは私が引き受けます。2人も校舎の方まで案内するので、ボス、図書館の方頼みます。」

 

「そうね、白兵戦の中に銃器は危険ね。任されるわ。」

 

「桐原先輩、壬生先輩をお願いしてもいいですか?」

 

「ああ、今の壬生は放っておけないからな。」

 

「彼が校舎まで護衛するわ、桐原先輩」

 

「あ、ああ。ところで、お前は・・・何者なんだ?」

 

「今は、言えないわ。後で教えてあげる。」

 

そう言い、私は達也達と図書館の方へと向かって走って行った。

 

 

「さて、そちらのお嬢さんを連れて校舎に行くとしようか。」

 

「あ、ああ。パルス・・・でいいんだよな?」

 

「ああ、コードネームで呼び合っているからな。取り敢えず、校舎まで行こう。道中、侵入してきたブランシュ奴らが多い。」

 

「どれくらい来たと?」

 

「分からん?正門と裏門から侵入されているらしい。正門は既にこっちがやったが、裏門は守りが厚いそうだ。ま、俺達からすればどうしてあんなにブランシュが火器を用意出来たか?というところがあるがな。」

 

「そうですか。」

 

「あの、」

 

「壬生?」

 

「その火器は、大陸から取り寄せたと、確か言っていました。」

 

「・・・成程な」

 

パルスは、考えるそぶりを見せたが直ぐに切り替えて2人を校舎まで護衛していった。

 

 

 

 

 

 

図書館前は、苛烈を極めていた。

講堂外に配置されていた風紀委員達が此処に集結しブランシュ構成員と交戦していた。

しかし、其処にSATとFBISWATが合流して包囲陣を形成する。裏門に居た敵も、後からきた十文字会頭の後押しもあって、制圧された。

更に、ブランシュ構成員達が後退を始め、正門に集結し始めていたが、其処には講堂に居たはずの風紀委員長を筆頭とした風紀委員達がSATと共におり、構成員らは成す統べなく取り押さえられて行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

第1高校 保健室

 

壬生紗耶香が保健室に連れて行かれ、取り敢えずマインドコントロールを受けているということで、簡易的な治療が施された。

保健室には、桐原先輩、壬生先輩、七草会長、渡辺委員長、十文字会頭、司波達也ら一行と智世と私がいた。

彼女のマインドコントロールの発端が渡辺委員長で、それも勘違いによるものだったことに彼女は衝撃を受けていたが、達也、桐原先輩の指摘を受け、今までの努力が決して無駄では無かったと悟られた。

そして、

 

「それじゃあ、申し訳ないのだけど壬生さん。貴女の身柄は警察に任せる事になると思うわ」

 

「そんな!壬生先輩はただ操られていただけじゃないですか、無論やってきたこと全てに意志があるにせよ無いにせよ・・・」

 

智世が嘆く。そう、同情できる一面もあるのだ。だが、

 

「だが、だからといって壬生が高校襲撃を幇助した事は消えん。」

 

十文字は、そうも言えないらしい。そこに達也が

 

「だったら、背後組織を叩けばいい。」

 

「駄目よ!危険すぎるわそんなの!」

 

「私も反対だ。一高校生に大きすぎる。」

 

「なら、壬生先輩を家裁送りにしますか?これだけの襲撃ですし、学園にも少なからず責任はあると思いますよ」

 

七草会長と渡辺委員長が、身の危惧を示唆するが達也の的確な指摘にそうもいっていられなくなる。

確かに学園にも責任があるが、学内にエガリテを蔓延させ放置していた生徒会、風紀委員会にも責任が来るからだ。それ故か、2人は押し黙る。

 

「確かに・・・警察の介入は好ましくないな。だがな、司波。テロリスト相手に命を懸けろとは言わん」

 

「ええ、分かってます。始めから学校側の力を借りようとは思ってません。」

 

「・・・一人でいくつもりか?」

 

「そうしたいのは山々ですが、友人達も参加するでしょうね。」

 

「当たり前よ、こんな楽しいのに一人だなんて言わせないわよ」

 

「おうよ、俺も行くぜ」

 

「お兄様、お供します。」

 

エリカ、レオンハルト、深雪がそう言い、達也の視線が私に向く。

私は、達也に頷き、無線機を取り出し

 

「コード99。」

 

「ん?」

 

「三千院?」

 

すると、保健室のドアが開き、入って来たのは、FBISWATのアッシュ

 

「始めますか?」

 

「ええ、東京にあるブランシュ支部を攻撃します。彼等も行くので車の用意をお願いします。」

 

「了解。」

 

「三千院?気になっていたが、そいつらとどのような関係だ?」

 

「彼らは私たちの護衛兼戦闘部隊ですよ。その名は・・・RAINBOW」

 

「RAINBOW・・・?」

 

「十数年前に、世界の殆どの国が特殊部隊を行政的除隊とし、魔法師を中心とした特殊部隊を作り上げた。無論、日本も例外じゃない。国防軍の前身となる陸上自衛隊の特殊作戦群や警視庁特殊強襲部隊SATも大半が魔法を有していないという理由で除隊に追い込まれた。

彼等の受け皿となったのがRAINBOW。今回の鎮圧に携わったFBISWATとSATはどちらもRAINBOWよ。」

 

「それが、お前とどう関係する?」

 

「気付きませんか?護衛と言いましたよ。」

 

「・・・!?そこまでするか?」

 

渡辺委員長と十文字会頭は気付いた。そして驚愕した。イギリスからの護衛部隊が、かつて世界各国で活躍した精鋭部隊であるということ。

 

「達也、今回は規模が大きい。禍根を無くす為にそれ相応の戦力をつぎ込んでいるわ。」

 

「因みにだけど、どれくらい?」

 

「北と西にあるブランシュ支部を灼熱で包み込むくらい」

 

聞いたエリカは、聞かない方が良かったぁと心底思っただろう。恐らく私の黒い笑みを見て尚更だろう。

 

「ふむ、時間がないな。俺も行こう。いくらお前らだけを行かすとなれば学園からの追及も免れんだろう。」

 

十文字が表に車を用意すると言って部屋を出ると、渡辺委員長と七草会長も出ようとしたが、残党狩りがあるので校内待機。

FBISWATも銃器を持った構成員と対処するため、武装したまま待機することとなった。

 

 

 

 

 




金生水の花は、ぬらりひょんの孫の陰陽師が使っていた術です。
あの2人組、カッコイイって思っても表に出さないのが私です。(←公表してんじゃないか!)


次回投稿は、12月末前に出したいところですが、気長に待ってください。
では、また。


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第11話 ブランシュ支部強襲

今年最後の投稿、遅くなりました。
もう一話投稿出来るかな?


 

 

 

高校前の道路はFBISWATによって交通規制され、校内にもFBISWATの車両が何台か止まっていた。

其処に、5台のランドクルーザー、3台のベンツが現れる。全車黒塗りだ。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

高機動車に乗って、司波達が来るのを待つ十文字と飛び入り参加した桐原先輩は唖然としていた。

まさか、本腰入れていると言って特殊部隊のうちでSATが来ていたとは聞いていた其処にGIGNが投入されていた。驚愕に唖然とする2人を他所に高機に千葉と西城が乗り込み、ベンツの方に智世と輝夜、司波兄妹が乗り込んでいた。

 

 

「高機が先に行きます。全車、後に続いてください。」

 

十文字会頭が運転する高機の後に黒塗りの8台の車両が続き、

廃棄された工場に来るまでに邪魔が入って来ることはなかった。

高機が、工場の門を硬化魔法を纏ってブチ破るとその後に8台が続いた。

十文字会頭らが降りると、コチラも車両から降りた。

GIGN所属の隊員たちがモンターニュ、トゥイッチ、ドク、ルークの前に立ち、4人が私の後ろに立つ。

私は、ルークから戦闘服を受け取り、車両の後ろで着替えるとGIGN隊員から火器を受け取り、達也たちに合流した。

 

「それで、どう動くの?」

 

「ああ、会頭は桐原先輩と裏から回ってもらい俺達は正面から行く。

エリカとレオは此処で退路の確保だ。」

 

「分かったわ。ドク、この場で待機。ルーク、私と来て。モンターニュ、会頭と一緒に行ってあげて。トゥイッチ、中の敵の索敵お願い、その後2人に合流。各班それぞれ状況開始行くわよ!」

 

「『『了解!!』』」

 

迅速な指示の元、GIGNの隊員たちが動く。モンターニュの身の丈ほどある楯が先頭を行き、モンターニュの2/3の大きさの楯を持つ隊員たちが後に続く。

達也と深雪が突入した方向に隊員たちが雪崩れ込み、トゥイッチが索敵の為ドローンを建物内部に侵入させる。そして、あらかた索敵した後、達也たちに合流したのだった。

そして、

 

「さて、智世、準備は良い?」

 

「うん、行ける。」

 

「なーんか智世が、実は超攻撃的だとは思わなかったなぁ~。」

 

「ふふ、忘れてた?身の回りのことについては攻撃的になるだけだよ。後は大体エリアスがやってたし。」

 

「そうね、それじゃ行きますか。」

 

裏口でもなく、正面でもなく、何も無い筈の鋼鉄の壁にテルミットから拝借したヒートチャージを仕掛ける。

彼曰く、C4との併用が、最強の組み合わせなのだとか。

けど、ここは

 

「智世。」

 

「ええ、  イオグランド  」

 

焔の妖精と地の妖精の力を借りて可燃物を、ヒートチャージを終えた鋼鉄の壁にぶつける。

すると、可燃物が2000℃までに熱された壁に当たり、魔法が発動し、その壁が一瞬にして吹き飛んだ。

中に居た敵兵を10m以上吹き飛ばして

 

「突入!!」

 

ルークの号令と共に隊員たちが突入していく。

構成員らが小火器を以って抵抗するが、国家の精鋭特殊部隊を前に容赦なく頭部を撃ち貫かれ死んでいく。

 

「ムーブ!」

 

ルークが、数人の隊員を連れ、内部を捜索する。

 

「さて、達也たちはこっちか。」

 

私は、通路に潜む構成員たちに対し、一部空間だけくり抜きその空間内に高濃度の可燃性水分を充満させ、サブガンから火炎弾を撃ち出す。

火炎弾は、その空間へと突き進み狙った壁に当たると、大爆発を引き起こした。

本当は魔法でも出来るのだけど、それをすると隊員たちが巻き添えを食らうため、限定空間に留めて行っている。

爆発で建物が揺れるが、気にせず進軍した。

 

 

 

輝夜たちが進軍していく頃、

モンターニュの方はというと

 

ダダダダダダダダダダダダダッ!!

 

激しい銃撃戦に見舞われていた。時折軍用対魔法師アンチライフルが飛んでくる為、魔法障壁がガラスのように砕け散る。

十文字と桐原は攻めあぐねていた。どうやっても大怪我は免れないからだ。

しかし、モンターニュらは確実に前進していた。

アンチライフルをモノともせず、しゃがみの状態で前進しながら後ろの隊員たちがアサルトライフルで援護・牽制射撃する。

 

「どうするか?これでは・・・」

 

「心配するな。既に動いている。」

 

「どういうことだ?」

 

裏口から攻めて行き、1階を制圧した後2階に上がっているのだが、突如建物自体が揺れた。

 

「な、なんだ?」

 

何が起きたか分からないと言った感じなのは2人だけでなく、敵側も同じらしい。

しかし、その衝撃によって生じた隙を見逃す彼等では無かった。

数人の隊員が、グレネードを両手に突入し、敵がいる通路と部屋に投げ込まれ、通路の窓から飛び出た。

そして、激しい音と閃光が構成員を襲う。

眼と耳をやられた構成員らが地面に伏し、容赦なく、飛び出たはずの隊員たちが窓外からサブガンで銃撃を加える。

ドタバタと倒れる構成員らを尻目に、突き進む隊員たち。

一切の容赦のかけらも無い彼らの行動に十文字は唖然とするが、桐原は半分怒りに染まっているためか、隊員たちと共に先に続いて行く。

 

 

 

銃撃と爆発が起きる工場の外では

 

 

「こりゃ、凄まじいな。」

 

「ああ、何時にも増して・・・相当溜まっていたんでしょうね。」

 

「だろうな。だが、こんだけ爆発があると当然・・・来るよな。」

 

退路確保のGIGNの隊員たちが、入って来た出入り口を見ると、

予想していたものとは違う車両が出入り口を塞いだ。

 

「悪いドク、遅くなった。」

 

「エコー、どうした?・・・・というより、出入り口塞いじまったら・・・」

 

「ああ、これで公安も警察もこれんよ。この広さなら・・・着陸は出来そうだな。」

 

「ヘリでも着陸するのか?」

 

「ああ、イェーガーがお二人の出迎え用ヘリで今向かってる。」

 

「だが、塞いだの意味無かったようだぞ。」

 

出入り口に止めていた装甲トラックが魔法によって動かされ、出入り口に多数の機動隊員と警察魔法師が現れた。

 

「貴様ら!何者だ!」

 

「あーあ、来ちゃったよ。メンドクサイ奴らが」

 

「構うものか。ドク、そっちの隊員は動かさなくていい。」

 

「いいのか?そっちは10人程度だろ?」

 

「質の落ちた警察の練度などタカが知れている。」

 

警察組織の機動隊を前に10人のSATが立ち塞がる。

エコーを中心としたSAT隊員がMP5やTYPE-91を構える。

 

「警察機構は帰ってもらおうか。此処から先はこちらの領分だ。」

 

「ふん、武装組織に聞く耳は持たん!旧式装備で何が出来る!食らえぇ!」

 

そう言って、指揮官格の警察魔法師がCADを使って魔法を放とうと操作して、そのCADが弾き飛ばされる。そいつの指と一緒に

後からダダァーン・・・という銃声が聞こえたように感じただろう。

エコーの銃口から硝煙が立ち上っていた。

そして、その指揮官格が撃たれた手を持って叫び転ぶ

 

「指がぁ!俺の指がぁ! くっ、貴様ぁ」

 

「随分と質が落ちたな、日本の警察は。」

 

「なんだと!?」

 

「あの頃は、まだ精鋭と呼べる隊員たち居たが、今となってはそれも形も無いか。」

 

「エコー隊長、魔法が全てと考える霞が関に一発お見舞いしますか?」

 

「馬鹿言え、そんなことをすれば後々面倒だ。それに、この事態にSATやSITを派遣しないところを見ると、余程魔法が有能だと見えるが、果たしてそうなのか?」

 

機動隊員らは驚愕していた。彼等も魔法がそれなり使える方だが、指揮官格の警察魔法師はやり手に入る部類。多くの事件を解決してきたのだ。が、それは所詮銃器を相手にしていない場合であって、今回のような最精鋭だった元SAT隊員が相手となれば話が違ってくるのだ。

拳銃型CADで撃とうとして、放たれた弾丸によってCADは破断し、薬指と小指が千切れた状態。

魔法であれば直ぐであればくっ付くのだが、状況がそれを許さない

其処に機動隊員の一人がエコーたちに向けて話す。

 

「何をごちゃごちゃと!SATもSITもとっくに解散されてんだよ!」

 

SATとSITが解散されているという事実はエコーたちは知っていた。だが、敢えて言ったのは知名度が如何ほどだったかを確認する為だった。

 

「ああ、知っているよ。魔法師の体形を護る為に解散させたってな。」

 

「なぁっ!?」

 

「知っているぜ、SATの隊員と魔法師でどちらが強いか部隊を組んでやらしたそうじゃないか。結果、魔法師側が惨敗したんだったな。あれは、酷いもんだった。」

 

「何故!何故だ!あれは秘匿事項だぞ!何故知っている!」

 

「俺達がそのSATだからに決まってるだろ、バァカ。」

 

煽るエコーに笑うSAT隊員達、そして、機動隊員たちは気付く。

一時期国防軍特殊部隊に次いで最強と言われた警察組織の特殊強襲部隊SAT

その実力が魔法師部隊1個大隊に匹敵するのではと囁かれたほどだ。

それが、目の前にいる。という事実に、列は大いに乱れた。楯を捨て、CADを捨て、我先にと逃げ出す機動隊員と警察魔法師。

あまりの無様さに、エコー達は武器を下げて爆笑していた。

 

外でそんな騒ぎになっている頃

正面から突入した達也たちは、GIGNの隊員たちに雑魚を任せ、日本支部支部長司一を追って中に入っていった。

 

「側面と裏側より敵を押し込んでいるようです。」

 

「だが、予定より数が多いな。達也殿を先に行かしたとはいえ、退路確保組がどこまで持つか・・・」

 

 

「私にお任せを」

 

GIGNの隊員たちは、逃げた司一を追う為に達也だけを先に通していた。

そして、数人の隊員らが達也が通った道に敵を行かせない為に死守していたが、じり貧になっているのが目に見えて分かっていた。其処に深雪が動いた。

CADを操作して振動・減速の系統魔法としてニブルヘイムをブランシュ構成員らのみに向けて発動させた。

室内が一気に冷気で包まれ、ニブルヘイムによってブランシュ構成員らのみが氷像如く物言わぬ塊と成り果てた。

 

「流石ね、これは見事としか言いようがないわ。」

 

「トゥイッチさん。」

 

「皆、止めを射して行って。私たちはこの場で逃げて来る構成員らを待ち構えるわよ」

 

『了解です!!』

 

GIGNの隊員たちがトゥイッチの指示に従い、氷像となった構成員らに1発ずつ弾丸を正確に確実に当てていく。そして、立ったまま動かなくなったそれらを端っこに移動させるのではなく、通り道の部屋の前に置いていった。

 

「さて、こんなもんでいいでしょう。」

 

「隊長、外に公安が現れたと、ドクから」

 

「大丈夫でしょ、SATが居るし、彼らを前に今の警察機構で勝てる者なんて一握りよ。」

 

「え?エコーさんや火花さんってそんなに強かったんですか?」

 

驚く隊員に対し、トゥイッチはジト眼になりながらも続けた

 

「そうね自衛隊が解散して以降、日本の最強の部隊っていったらSATしかなかったの。それをどう考えたのか、SATを解散させて魔法師を取り込んだMSATなんてもの作り上げて10日後に元SAT部隊によって存続の危機に立たされるほど壊滅的打撃を負ったのよ。」

 

「それって、実弾でですか?」

 

「そうよ。向こうが魔法使ってこっちが模擬弾じゃ割に合わないって言ったら通ったらしくてね。後は・・・・・・ね。」

 

「じゃあ、今の日本の警察機構で有力な部隊ってのは・・・」

 

「無いに等しいわ。今慌てて元SAT隊員たちを招集しているみたいだけど、そもそも機密部隊だからSATに関する名簿は向こうが破棄しているの。だから、焦っているわけ。」

 

「それでは、今回の警察機構がやってきたのも・・・」

 

「そう、名誉挽回の為。ブランシュの構成員を捕まえて国内にそう云う組織を入れないように頑張っているみたいだけど。」

 

「ノウハウが無いと」

 

「そう言う事ね、深雪さん。」

 

 

 

達也は、逃げ込んだ司一が居る部屋をエレメンタル・サイト(精霊の眼)で見て構成員が持つ武器を部品サイズに分解した。

構成員たちは、いきなり武器が分解したことに浮き足立ち、混乱していた。

其処に達也は部屋へと飛び込んだ。

 

「終わりだ、司一」

 

拳銃型CADを片手で構え、司一を見る

 

「ふん、ならこれはどうだね!?」

 

武器が破壊されたが、彼ら構成員は指輪に嵌めていたアンティナイトを起動し、達也に浴びせた。

 

「どうだね!神聖なるアンティナイトの味はぁ!」

 

だが、達也からすれば撫でられている程度の威力しか持っていなかった。

元々、こういう耐性は付いていたが、それ以前に輝夜・智世の家に行った時にアンジェリカさんから受け取った対アンティナイト防御石が非常に高い効果を発揮していたことになる。

 

「はぁ、やはり情報通りか。ベラルーシ当たりが採掘したのを大亜連合経由で送られてきたというところか。」

 

「なぁ!?」

 

図星だったのか驚愕の顔に染まる一だが、

 

「構うな!奴は一般人と変わらん!やれ!」

 

形振り構わず、構成員らに指示を出しナイフで襲い掛かろうとするが、達也が部分分解魔法で腕や足を弾丸で撃ち貫いたかのように刳り貫いた。

彼には理解出来ないだろう。アンティナイトが発動する空間で達也がどうして魔法を使えるのか分からなかった。

達也は、脚や腕の神経が通っている箇所を正確に撃ち貫き、戦闘不能にしたところで視線を腰を抜かした司一に向ける。

 

 

「う、うわぁぁあああ!!」

 

司一は、目の前にいる達也が化け物か何かに見えただろう。逃げようとして、彼の背後の壁が突然割れた。

いや、壁から剣が生えてきて人が通れる大きさに刳り貫かれている。

慌てて、その場から離脱した一だったが、壊れた壁から出て来たのは・・

 

「よう、司波兄。」

 

「桐原先輩」

 

後ろにGIGNの隊員を伴って、桐原武明が剣を持ってやってきていた。

桐原は、達也を見てから地面に転がるブランシュ構成員を見た

 

「これ、全部司波兄がか?」

 

「ええ、そうです。」

 

「やるじゃねーか。それで、こいつは?」

 

腰を抜かして地面を這いずり回っている男をみながら桐原は達也に聞いた。

 

「それが、司一です。」

 

それ、と呼ばれた男が司一だと分かった桐原は即座に激昂した。

 

「こいつが、てめぇが司一かぁ!!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃいいい!!」

 

「壬生を誑かした野郎がぁ!!」

 

激昂した桐原の剣が司一の腕に当たる直前に

 

ドゴォォオオン

 

桐原が入ってきた壁の正面の壁、達也にとって右側の壁が爆発した。

 

「ああ!?何だこれは!!」

 

「これは・・・」

 

邪魔された桐原にとって、怒りのやり場をもう一度向けようとして止めざるを得ない状況に至った。

 

「へぇ、こいつが司一ねぇ~。」

 

「お、お前は、・・・!?」

 

爆発した壁からやって来たのは、三千院輝夜と羽鳥智世の二人

しかも、輝夜に至っては血濡れだ。

 

「散々、ストーカー紛いなことをした上に智世を浚おうだなんて考えていたみたいねぇ~。」

 

達也はこの時、どうしていいか分からなくなっていた。輝夜は味方なのだが、その輝夜から猛烈な殺気が部屋を覆っていたからだ。激昂した桐原先輩も今となっては顔を青褪めている。そこに返り血を浴びたのか真っ赤になった輝夜が刀を手にし、刀から垂れ落ちる血を払い、その刀を桐原先輩の足元に投げた。

 

「うぉっ!?あぶねぇ!つかヤべェ」

 

彼がそう言うのも無理はない。切れ味が半端なくいいのだ。高周波ブレードなど目じゃないくらいに実体剣でコンクリートの床に半分以上切れ込みを入れて埋まるなど有り得ないのだ。

 

「桐原先輩、そいつの腕削ぎ落しちゃってくださいな。」

 

「お、おう。」

 

輝夜から投げられた刀を引き抜いて桐原は感じた。

軽い、と。

そして、再び湧き立つ怒り任せに司の腕目掛けて刀を振った。

 

「?外したか?」

 

「いえ、確かに斬りましたよ。」

 

「そうか?感触がねぇんだよな。」

 

「そうですか?斬られた本人もまだ気づいてないようですよ。」

 

そう、桐原先輩と達也の問答の間、斬られた司一自身何が起きたのかよく分かっていなかった。

しかし、腕に痛みが走り出し見た時には左腕が肘から無くなっていた。

 

「ギャァァァぁアアアア!!!!!

うわぁぁあああ!!

オレノウデガァぁぁ!!」

 

あまりの予想外ののたうち回りに、後続から到着した十文字会頭やGIGNの隊員達、輝夜に智世、桐原先輩、達也は唖然とした。

大の大人がこうも泣き喚くとは思ってもいなかったからだ。

 

「これ、削ぎ落して良い?」

 

「駄目ですよ。一応、ブランシュの幹部でもあるんですから、」

 

「酷い泣き喚き方ねぇ。」

 

「取り敢えず止血して黙らすか。」

 

「それなら俺が。」

 

十文字会頭が、魔法で切断された腕を焼いて塞ぎ止血した。

焼いたことによってか、司一は無様に泡を吹いてその場に倒れこんだ。

 

「各員、拘束。身柄は段ボール箱に入れて公安に宅配しとけ。」

 

「「「(なんで段ボール箱???)」」」」

 

達也や桐原先輩、十文字会頭の他私も智世も疑問に思ったがその場はGIGNに任せることにした。

後から合流した深雪に真っ赤になった輝夜を見て、冷静に達也が

 

「深雪、輝夜の返り血、落としてやってくれ。」

 

「彼処参りました。輝夜さん、少し動かないでくださいね。」

 

そう言って、深雪は発散系の魔法で輝夜の返り血を吹き飛ばすと、智世が

 

「輝夜、もう少し動かないでね。」

 

と言って、

 

「鎮め、鎮め、夜の森唄。

癒せ、癒せ、エドヒガンの子。

忍ぶ蹄を、お前の枝が包むように。」

 

エリアスに教えてもらった魔法を智世なりにアレンジした回復魔法を私に掛けた。

その魔法は、私の身体に出来たちょっとした切り傷を全て塞ぎ、傷そのものが無かったかのような状態にしたのだった。

 

「智世、それは・・・」

 

「これが智世の魔法。そこの十師族が喉から手が出るほど欲しがるわけだ。」

 

「な!?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「手出しすれば、家はおろか三代に渡るまでの血筋を途絶えさせ、存在そのものを消すからね。覚えておきなさい、十文字」

 

「・・・・・・・・」

 

冗談を言っているようには見えない。現に相手が十師族だというのに、GIGNの隊員は皆銃口を十文字に向けていた。

 

「・・・・・分かった。」

 

十文字がそう言うと、全員が銃口を下げた。流石の十文字とて、多方向から多数の銃口が覗けば冷や汗なんてものでは済まなかっただろう。現に彼の背中は汗でべったりと濡れていた。

工場を出ると、ヘリコプターが1機待機していた。

GIGNのメンバーは車で移動し、智世と私はイェーガーが操縦してきたヘリで帰ることになった。尤もそれは誰にも気づかれずにだが。

工場でお開きのような形となり、司波兄妹は、GIGNの隊員と途中まで送ってもらい、帰路に着いた。

他の人達は十文字が運転する高機に乗って大学まで行ったのだがその間、十文字に対する冷たい視線が絶えなかったのだとか。

 

 

同時刻

2か所のブランシュ拠点に一斉攻撃が為されていた。

デルタフォースとスぺツナズ合同部隊による夜間急襲により、ブランシュ支部の構成員らを含むほぼ全員が死亡。建物内に化学兵器が開発されていたため、最後には兵器破壊の為に空母から発艦した無人攻撃機XFA-36ゲイムから放たれたAGM-65マーベリックの集中運用で建物ごと爆破した。更にサーモバリック誘導爆弾により、両部隊撤退後、辛うじて生き残った構成員らをコレが襲った。

地下に基地を作り、車両移動用のエレベーターが基地の真ん中にあるため、エレベーター本隊が一番下にある状態で、上部隔壁が事前に破壊されている為、障害物無く、初弾の通常弾が基地に命中し、基地機能を破壊すると、後から発射されたサーモバリック誘導爆弾によって大爆発を引き起こし、化学兵器に熱衝撃で圧力を掛け破壊。更に破壊された化学兵器の衝撃波と合わさってサーモバリック爆弾の爆風衝撃波が基地内部全てを襲い酸素を燃焼により消費しつくす為、一酸化炭素中毒・酸欠・呼吸困難を引き起こし窒息死させるのだ。

この大爆発は、周囲に地震のような揺れを引き起こしたが、震度1程度の極めて弱い地震であった。後日、警察がこの場の調査に訪れた時には、基地に入る為の出入り口が熱よってひしゃげて、軍を出動させてこじ開けなくてはならない事態になった。

 

更に、基地内部に入った警察官4名が体調不良を訴え、病院に搬送された。

駆け付けた警察のレスキュー隊によると、基地内部の酸素濃度が極めて低く、外部から空気を入れるか、酸素マスクを付けて行動しなければ死に至る可能性があるという状況下であったため、基地内部へ空気を送るホースを設置して後日調査に入る事が決まった。

魔法を使いたかったが、アンティナイトが有る為か、魔法が発動しないというのが度々あった為、アナログ作業となった。

 

しかし、調査した結果窒息死した死体や銃殺された死体で溢れ、そのどれもが公安がマークしていた人間であった。化学兵器を開発していた機器があったのだが、熱で溶け使い物にならなくなっていた。化学兵器も爆発した後だったらしく中身が何なのか分からないのだとか、しかも汚染の心配が無いというもので。

 

国は、反魔法組織による暴走と位置付け、基地を襲撃した勢力も何もかも不明なまま終わった。

あの日、撤退した警察部隊の隊長らの異動が行われていたが、彼等(RAINBOW)には知る由もなかった。

 

 

 

 

 




レインボーシックスシージは未プレイなんですけどね。
youtubeとかでMADとか聞いて見ているとどれもカッコイイんですよね。


物語完全なご都合主義ですいません。


それではまた。

今回の投稿が平成最後の投稿となるか!?


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第12話 九校戦参加とイギリス動く

なんとか、年末最後の出せた。



というわけでどうぞ。






転スラのシズさん可愛いですよね~





漸く、騒乱としたブランシュ騒動が一息着き、平穏な学校生活に戻ると思っていました。

ええ、戻りませんでした。

九校戦という魔法大学附属高校、9校による全国大会が行われるそうです。

私や智世にとって、どうでもいいやという案件ですが、生徒会、風紀委員会、部活連から是非とも出て欲しいという要望に、こちらは断ってきたのですが、向こうは3連勝したいらしく、本腰を入れて本校3巨頭である七草真由美生徒会長、渡辺摩利風紀委員長、十文字克人部活連会頭がお話を所望してきたのだ。

 

はっきり言えば、メリットがそんなに無い。

デメリットの方が大きくなるのだ。国防軍管轄のホテルに入れって、完璧こっちを拉致ろうじゃないかと見られてもおかしくないわけで、さらに言えばどちらかというと智世の魔法は治癒・補助系に当たり、攻撃系魔法はあるとはいえ、どちらかというと元祖イギリス系魔術寄り。日本のCADを使った魔法とは大きく異なる上、使えば高確率で研究者やら軍部やらが集うのは目に見えているからだ。

かと言って、それを言ったところでこの人達が聞くとは思えないし

 

 

はぁ、だれか十師族の中でこっち側に付く人居ないかなぁ?

と思い耽けながら、七草会長の話を聞き流していた。

 

 

「あの、・・・ですからそれは、貴方達側の意見であり要求で有って、こちらに利を有するものが無いと言っているんです。」

 

「そうか?九校戦は、色んな会社や企業のお偉いさんも見に来ているわけだ。少し早いが高校卒業後の就職先として斡旋してくれているところもある。そういうのと、繋がりを持てる機会だと思うのだが?」

 

「渡辺委員長、お忘れかもしれませんがこちらは留学生であり、既に就職先も定まっています。国籍も移す気も無いのに、何が嬉しくてこっちの企業との伝手が欲しいだなんていうのですか?」

 

「あ、ああ。そうだったな。そうするとだが、・・・三千院、何を危惧している?」

 

渡辺委員長だけが、説得しているがその他2人は話すに話せない状況だ。

それもそうだろう。恐らく七草会長は気付いているだろう、私が危惧する内容について。

 

「ねぇ、三千院さん。貴女が危惧しているのは、企業からのオファー?それとも国防軍?」

 

「両方、と言いたいですが、恐らく有りえそうなのは国防軍の方かと。」

 

「そう・・・よね、2人は国防軍からすれば最高の研究材料と揶揄されているからだよね。それじゃあホテルを2人だけ変更するってのはどうかな?」

 

「おい、真由美。」

 

七草会長の言葉に異議を唱えようとする渡辺委員長

 

「それじゃ、2人だけ特別扱いみたいになると他の生徒がうるさくなるぞ。」

 

「でも、それしかないじゃない?別の近場のホテルか旅館に泊まってもらって、そこの警備を瑞穂陸軍に任せるのよ。それならいいんじゃない?そっちにも一応伝手はあるし・・・・・。」

 

「それなら・・・いいですね。幸い、瑞穂軍の方に友人がいるという知人(特殊作戦群)が居りますので」

 

「・・・・・・なら、その方向なら出てもいい?」

 

「問題は会場内なんだよねぇ~。・・・智世、どうしたの?」

 

やたらとスカートのポケットに視線を送る智世を見て言うと

 

「ちょっと、お電話が有るのでこの場でいいですか?」

 

「え、ええ。いいわよ。」

 

そう言って、智世が携帯を取り出すと、スピーカーをONにして電話を掛け直す

何回かのプルルル音の後、ガチャと誰かが出た。

 

「はい、こちらイギリス連合王国陸軍中央司令部です。」

 

その言葉が出て来て私も含めて4人はびっくりした。

なんでそこから電話が掛かって来る!?

自分の携帯を確かめてみたら、私にも来てた。

 

「あの、羽鳥智世です。」

 

『あ、羽鳥様ですね。今大丈夫ですか?』

 

事務方の者が此方に聞いて来るのでOKサインを智世に送ると

 

「大丈夫です。」

 

『では、回線を繋げます。』

 

2秒後に繋がった先から、暫く聞いていなかった声が聞こえた。

 

『おう、漸く繋がったか。元気にしているか?羽鳥』

 

「え、ええ。お久しぶりです。オリヴィエさん。」

 

『三千院も其処に居るか?』

 

「はい、今ちょっと話をしていたもので」

 

『・・・まあ、仕方ないか。それよりも連絡だ。

そろそろそっちで九校戦為るものが開催されるだろう?』

 

「はい、今それでちょうど話し込んでいたんです。」

 

『そうか、丁度良い。こっちの連絡はそれに該当する。

どうせ三千院の事だ。国防軍が警備するホテルなんぞ入れるかって考えていたんだろう?』

 

いきなりのオリヴィエさんの指摘に図星だった私は変な声を上げてしまう。

 

「うぇ!?(何でバレてるの~!?)」

 

『そこらへんは安心しろ。私たちが行く。国防軍が警備しているんだろうが、関係無いしな。

それに、三千院が危惧している勧誘等は、気にしなくていい。

というより、気にするな。』

 

「あの、それはどういうことですか。それにオリヴィエさんが直々にって」

 

『議会で話し合われた結果だ。』

 

イギリス連合議会の決定。

それは、3巨頭の3人を驚愕されるに十分な出来事だった。

たかが2人の為に軍を護衛に向かわせるという事がどれだけのことなのか計り知れないからだ。しかし、彼女達は更に驚くことになる。

 

「議会の決定なら・・・そうなることは分かります。けど、叔父も見に来るのですよ?」

 

『ああ、知っている。それに加えだ。既に引退為された身だが、影響力は計り知れないからなあの方は。

私を含め多少の変更があったが、マスタングとその部下、ブリッグズの連中が行く。暑苦しくて仕方ないから弟を先に向かわしたがな。』

 

「え‟!?あの筋肉ダルマが・・・ですか!?」

 

『ああ、まあ多少目立つだろうが、イギリス連合王国陸軍の主力メンバーが向かうだけだ。心配するな。』

 

「それって、国防面は・・・」

 

『二次戦力がある。私の不在の間は彼らがやってくれる。問題無い。』

 

「そうですか。」

 

『ホテルの部屋は後で知らせる。それと、輝夜。』

 

「は、はい。」

 

『お前も、イギリスにとって重要人物の一人なんだ。少し力を抜け。

率先して動くのは構わないが、ほどほどにしろ。お前は直ぐにやりすぎるのだからな。』

 

「・・・はい、気を付けます。」

 

『だが、元気そうで何よりだ。んで、話し合っているのは九校戦の選手をするか否かってことか?』

 

「・・・・・・そうですけど、何で分かったんですか?」

 

『お前が解答を渋る理由が、お前たちの利にならない状況下にあれば自ずと分かるものだ。』

 

「普通は分からないと思うのですが・・・・」

 

『フハハハ、気にするな。例え輝夜が選手になったところで問題は無い。勧誘なんかは私たちに任せて置け。例え国防軍のお偉いが来ようが氷像に変えて永遠に飾っといてやるだけだからな。ハッハッハッハッ!!

そう言う事だ。いいな?二人とも。』

 

「はい。」

 

「分かりました。」

 

『それでは、失礼する。』

 

ぷつっと切れる電話。

私と智世は安堵していたが、対面の3人は唖然としたまま固まっている。

 

「それでは、選手についての話としましょうか、七草会長。」

 

「あ、え、えっと、そ、そうね。」

 

滅茶苦茶挙動不審なんですけど。そんなにびっくりすることかな?

 

「因みに聞くが、今言っていたオリヴィエさんは何者だ?」

 

我に返った渡辺委員長。恐らくまたフリーズするだろうけど。

 

「オリヴィエ・ミラ・アームストロング陸軍元帥ですが?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

ええ、どうやら完全に思考停止したみたいです。智世も苦笑しているというより、普段見られない顔を見て笑っている感じです。あれ~?智世~、いつからそんな感じになった~?

 

はい、大半は私が原因です。けどエリアスからは、暗い感じが昔はそうだったけど、今は明るくなっていい感じだよと褒めていた。

あの、そこの夫婦さん?愛し合っているのは分かりますけど、せめて加減というのを知って下さい?特にエリアス。何朝から盛ってんのさ。叔父が居ない内になんて思っているでしょうけど全部見られているんですよ。

だから、絶好のタイミングで入ってくるんですよ。

毎回思うのですが、学習しない?

その内、オベロンやティターニアの酒の肴で言いますよ。

 

 

そんなことより、

 

「イギリス陸軍元帥が来ると言うのか?」

 

「それがナニカ?」

 

「・・・いや、何でもない。」

 

その後、選手について話しが進み、CADも特殊なのでアンジェリカに享受してもらったCADの調整や検査が出来る智世が技師として、私がアイス・ピラーズ・ブレイクとスピード・シューティングの選手として抜擢された。

新人戦で2つ熟すのは、他に司波深雪さんぐらいらしいけど。

 

決まったとなれば、早速練習とは行かず、2つの競技に合う魔法を選別したりしないといけないので、今日は一度お開きとなり、明日の代表決定の会議に参加してほしいとのことを知らされたのだった。

 

 

 

三千院輝夜と羽鳥智世が帰宅後の会議室

此処は非常に重い空気が流れていた。

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・どうするの?十文字くん」

 

「まあ九校戦については、問題はないだろう。だが、・・・・・」

 

「護衛については真由美が言い出したことだぞ。」

 

「仕方ないじゃない、2人共それだけ警戒しているのよ。何しろ国防省の方から団体で家にまで押しかけられているのよ。警戒するに決まっているわ。」

 

「そこまでするか普通!?」

 

摩利は、そこまでするのかと驚愕していた。いくら何でも家まで押しかけるのは悪質だと思わせるに十分だった。

 

「もう学生身分が入れる領分じゃないな。」

 

そう言って、摩利は席を立ち会議室から退出していった。

 

「摩利、気を使ってくれたのね。」

 

「今回の九校戦だが、恐らく師族当主が集まる可能性が高い。」

 

「そうね、うちの馬鹿親父も見に行くなんて言っているもの。普段は興味無いなんていっているのに。」

 

「だが、恐らく俺の考えだが四葉と五輪が組んでいる可能性が高い。と見ている。」

 

「あまり良い関係じゃなかったんじゃないの?」

 

「その筈だった。だが、何かあったから共闘関係を結んだと見ている。最近、五輪の方から四葉に接触しているようだが、逆もあるからな。はっきりそうだとは言えん。」

 

「そうね。(いったい、何が起きたっていうのよ。)」

 

七草と十文字が頭を抱える頃より少し前、

ブランシュ支部攻撃戦が終わって1週間経った頃まで遡る。

 

場所は、山梨県と長野県の県境にある四葉の村の四葉家邸宅にて

 

 

四葉真夜と、五輪澪が会合をしていた。

 

 

 

 

 




年末最後の投稿です。


皆さま良いお年を~


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第13話  密談

遅れながら、あけましておめでとうございます。

漸く投稿出来た。


新作を思考し始めて、更に遅れそうですけど、それでも投稿していくよん


四葉家本宅に到着した1台の車。

車椅子で行動する一人の女性は、四葉家の執事に押され、邸宅へと入っていった。

そして、目的の部屋に着き中に入ると3カ月前にテレビ電話で会った女性が目の前にいた。

 

「お久しぶりです、四葉真夜さん。」

 

「そうね、久しぶりになるわね。澪さん。

葉山さん、お茶をお願い出来る?今日は・・・そうね加賀棒茶にしますか。」

 

「かしこまりました。では、多少お時間を掛けますが?」

 

「構いませんわ。あれの香りと味は時を置かないと出ないもの。」

 

そう言ってから、葉山さんが部屋を出て準備してくる。

 

「こうして、面と向かい合って話すのは初めてかしらねぇ。」

 

「ええ、そうだと思いますよ。」

 

「では、お茶が来るまで少し世間話をしましょうか。」

 

「ええ。そうですね、私も智世ちゃんの事とか知りたいですし」

 

「2人共べったりみたいですよ。聞く話の限り。」

 

「確か2人共イギリス国籍なんでしたっけ。」

 

「ええ、あの政府の馬鹿共の所為で。」

 

「真夜さん、それを言っても仕方ないですよ。」

 

「そうね、輝夜さんに至っては一度死んでいるはずだけどもね。」

 

「そう言っても智世ちゃんは自身をオークションに出してましたよ。後で知って怒りと悲しみを覚えましたが。」

 

「そうね。2人共、不可思議なところがあるけどね。」

 

「スレイ・ベガにスレイ・スピカ、か。・・・・・どちらも精霊や妖精に愛されている存在で共存関係にあるのですからね。」

 

2人の眼には、しっかりと部屋の中を動き回る妖精の姿が見えていた。

 

「あの子たちは、もう自分の足で立って動き始めた。それを邪魔するなら、私は十三使徒の称号も師族も要らないわ。」

 

「あら、それは私も同じよ。少なくとも、四葉家そのものを敵に回したも同然なのですからね。」

 

「フフフっ、それは頼もしいこと。」

 

2人で少し盛り上がったところで、葉山が加賀棒茶を入れて持って来た。

お茶用のコップに注がれた琥珀色の棒茶を見て、香りを楽しみ、色を楽しみ、そしてお茶を口に含んだ。

加賀棒茶の独特の香りがふわっと鼻腔を刺激し、美味しい味わいを出している。

そんなお茶を飲み干した2人は、話しを再開した。

 

「それでは、私から話すわね。」

 

あれは、どれくらい前だったかしら。確か大学生を卒業した頃だったかしら?

彼女、三千院由香梨と出会ったのは。

十師族である私よりも遥かに強かったから今でも覚えているわ。

由香梨とはよく喧嘩したけど、善き相談相手だったし、数少ない友だったわ。

信じられる?あの子、魔法を使っていない古式剣術だけで私を倒せたのよ!

もう、びっくりよ。家に招いた時にやったものだから、皆彼女に挑んだわけ。

でも、彼女からしたら赤子を捻るより楽な作業だったのでしょうね。

挑んだ皆、殆どが返り討ちにあって峰撃ちなんていっているけど、ヤられた本人は溜まったもんじゃないでしょうね。

あの日から、四葉家の魔法至高が完全に打ち砕かれたのよ。研究は続けたわ、けど、今のままじゃダメだって気付かされたの。

三千院って名前に数字が付くぐらいだから三矢と縁家か何かと思ってたのよ。そしたら、全くの御門違い。平安時代から続く由緒ある守護代だと知って、勝てないわけだと思ったわ。

え?ああ、年月がってものもあるけど、何よりもその質が非常に深いのよ。

あの頃、剣術大家なんて言われてた家々の殆どが魔法を使った上でのことなの。

純粋な剣術家はごく僅かだったのに、あの由香梨さん。真正面から捻じ伏せたのよね。

 

あの千葉家も、三千院家には屈辱を味わされた剣術大家の一つだったわ。

あれ以来、魔法無しの古来からある剣術が消されることは無くなったわ。

けど、一番びっくりしたのは、由香梨が天皇補佐官でもあったことね。文武両道公私分別がしっかりとしていたから、十師族で陛下にお会いになった時は何処もびっくりしていたわ。

 

それから、私も由香梨も子供が出来た時相互に喜んだわ。

けど、あの時私には生殖能力を失っていたから姉さんに、ああ旧姓四葉の司波深夜にお願いして産んでくれたんだけどね。

あの時、酷い喧嘩をしたのよ。

達也の魔法力が小さいのを見かねた深夜が、息子を実験に掛けようとしたのよ。

私も当然ながら抵抗したわ、けどその時病を患っていた所為もあって、深夜には負けるんだけど。由香梨が宮内庁から駆け込んできてくれてね。もうそれは凄いことになったわよ。四葉の村が半壊するほどにね。深夜とその一派に1人でやるけど、結局はそれが原因で暫く会わなかったのよ。

 

最期に会ったのは、由香梨が死ぬ3日前だったわ。

あれが生涯最後の試合でもあったわね。

全力でぶつかってそれでも勝てなかったわ。後一歩まで追い詰めたつもりなんだけど、向こうも腕とレベルを上げてたから、勝てる訳がなかったのだけれども。

けど、悔いが残るような試合じゃなかったわ。四葉としての実力を正面からぶつけて跳ね返すことが出来る日ノ本最強の戦乙女(ヴァルキリー)だったわ。

 

そして、あの日が来たわ。私たちにとって突然すぎる訃報だったわ。

交通事故で亡くなったって。けどね、驚くことにね、遺体が病院に運ばれてなかったっていうの。どうしてなのか、その時は分からなかったわ。けど、事故の遭った現場に行ったら事情聴取を受ける目撃者さんが居てね。その人が言っていたのよ。

 

「まるで、事故を起こすことを予感してたかのように、黒いバンが走って来て車の中で亡くなった2人を連れ去って行った。」

って。何処のどいつだって本気で怒りを露わにしたのはあの時ぐらいよ。

葬式も遺体無き空っぽの箱に遺影だけ飾られて・・・・・

輝夜を引き取ろうとした時には親類をたらい回しにされていたのよね。

怒りに震えていたのは私だけじゃないから分家の方なんかたらい回しにした親類とやらを見つけ出して実験に使って殺したりしてたわ。

尤も、殺した理由は親類や縁者ではなく、遺産狙いの赤の他人だったから。

容赦の欠片も無いわ。

その後、由香梨さんの遺体の一部が見つかったの。遺棄されたのかわからないけど。酷い腐敗状態だったわ。頭部だけ見つからなくてね。

 

ええ、頭部と脊髄が無かったの。酷いものよ。それから調べがいって漸く分かったの。だれが主犯かって。

七草の分家だったわ。そこに弘一も一枚噛んでいる来て、私は完全に七草を信じなくなったわけよ。これが七草と我が家が対立している理由よ

 

 

 

 

 

「そんな感じよ。」

 

「やっぱり、最後の方は私の方と同じ感じですね。主犯が一条ですけど。」

 

彼女、羽鳥智花との出会いは病院だったわ。

私自身が肉体的に虚弱で、車椅子で苦労していた時に彼女と会ったの。

あの頃の私はかなり頑固者で、智花の手なんか借りないなんて思ってたのだけどね。

何度も付き合ってくれるうちに私の方が折れちゃって、智花さんの治癒魔法による治療を受けたのよ。

現行する全ての魔法に該当しない魔法だからその時から狙われていたみたい。

けど、智花は自分の身を顧みずに私の治療に専念してくれていたわ。

病院でも、有名な名医だっただけにその人気の裏にあった感情を私は計れずにいたわ。

これでも、肉体トレーニングは欠かしていないの。智花さんに言われてからずっとやって来たの。虚弱だから無理というのを言い訳にしないで、努力できたのは智花さんのおかげ。お父さんも喜んでいたし。

でも、あれは残念だったかな。智花さんを専属の医師として誘ったのだけど、それは出来ないって言われたわ。知ってる?彼女、日本で数少ないMSF所属なのよ。

MSF、国境なき医師団。世界中で活動する彼らに所属しているから出来ないって。

医師には、救うべき命がある。そこに階級も国籍も関係ない。助けを求める人あらば駆け付ける所存だからって。

けど、智花の訃報が来た時、私も泣いたわ。遺体が無いのに葬式しなくてはいけなくて、なのにそこに時々顔を見せに来てくれていた智世ちゃんの姿も無くて、静かに葬式は終わったわ。後はもう酷いもんよ。智世が行方をくらました事を良い事に遺産に寄って集る馬鹿共を排除して保管するのに五輪家と分家を総動員しないといけないくらいだったもの。

後でお父さんには怒られたけど、恩を仇で返したくなかったから。

後は、似たようなものですね。

 

 

 

「お互い、苦労したものね。」

 

「ええ、智花の遺体を持っていったのが一条だと知ってから一切の関わりを断ち切ったわ。

あんな奴に向けるモノと言ったら憎悪と殺意ぐらいだもの。」

 

「フフフ、そうだ。丁度良いかしら?」

 

「何か?」

 

「そろそろ九校戦なのだけど、2人も護衛を伴って行くそうよ。会うことは出来ないでしょうけど、同伴のところ、どうかしら?」

 

「是非ともお願いします!!」

 

「それじゃあ、決まりね。」

 

「これからよろしくお願いしますね。真夜さん。」

 

「そうね、2人の安全の為にも、澪さん。」

 

2人ががっちりと握手し合うと、残っていたお茶を飲み干した。

 

「真夜さん、今日はありがとうございました。」

 

「いいのよ、私も貴女の話が聞けたわけだし。」

 

 

四葉と五輪の密会とも取れる会合は、その日終わった。

そして、四葉と五輪が手を組んだことが周知の事実となるのは九校戦に観戦に来るという信じられない事態が起きて半信半疑にさせ、三千院家討伐の際に四葉が敵対してからだった。

 

 

 

 



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