【短編】死柄木弔と姉(義理) (うたたね。)
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おそらくプロローグ
第一話 朝の攻防
なんか書きたいな、と思った矢先に弔に姉がいたら面白くね?みたいな感じで書いた。
この世界の弔は、まだまだ子供だけど、原作よりは大人だったりする(多分)
不安なのは弔の口調だ。
「……うるせえ」
ジリリリリリ!とけたたましく鳴るアラームの音で
カーテン越しから射し込む光が眩しく鬱陶しいが、朧げな意識を覚醒させるにはちょうどいい──とは思わない。イラつくだけだ。
ゆっくりとした動作で上体を起こして、今もなお鳴り響くアラームの音源を探す。場所はすぐに見つかった。何せ、自分のすぐ側に置いてあったからだ。
チッ、と苛立たしげに舌打ちをして、弔は自分の眠りを妨げた目覚まし時計に手を伸ばした。
その細い五指が時計に触れた瞬間、
「……余計な真似しやがって」
苛だたしげに弔はポツリと呟く。
本当にイライラする。
この目覚まし時計は、弔がセットしたものではない。そもそも、目覚まし時計なんて持っていない。
起きた場所だってそうだ。昨日は夜遅くまでテレビゲームをしていて寝落ちした。だから、本来なら床で寝ていたはずで、ベッドの上で眼が覚めるなんてことはあり得ない。
原因──犯人は分かっている。きっと、『あいつ』なのだろう。
昔からそうだ。頼んでもいないのに、今日みたいに余計なことをしてくる。
目覚まし時計に関しては、『いつものアレ』だろうが。
要するに。
弔のいう『彼女』はお節介焼きなのだ。
そんな『あいつ』が弔は
いつも癪に障ることばかりしてくるし、いつも癪に障ることばかり言ってくるから。
大体、夜遅くまでゲームをしてることを知っているのだから、
壁に掛けてある時計を見ると、長針は1と2の間を、短針は7を指している──つまり、まだ7時ちょっと過ぎだ。今日は特に何もすることがないのだから、こんなに早く起きる必要は全くない。
更にイライラしてきたのか、首元をガシガシと掻き始める。
それは、弔の癖だ。イライラすること、気に入らないことが起こると、すぐに動きとして出てしまう。
弔はもう青年と言っても良い年だが、精神の方はまだ体に、年齢に追いついていなかった。
そんな時だった。
ピタリと、弔が掻き毟るのを辞めた。
眠気が全く抜けきっていない双眸は、自室のドアへと向けられていた。
「……来やがったか」
はぁ、とため息を吐く。
うるさいやつがやって来る。
これから起こる事態を想像すると、ため息の一つや二つ吐いてしまうのも無理はない。
タッタッタッ、と軽快なリズムを刻みながら何かが近づいて来る。それは、弔の部屋のドアの前で止まった。
そして次の瞬間、勢いよくドアが開かれた。
「おはよう弔!! 今日も良い朝だね!」
「…………
ドアの前でニコニコと可愛らしい笑みを浮かべる少女を、死柄木は忌々しげに睥睨する。
彼女の名は、
死柄木弔の、姉のような存在である。
☆
「ああ……! いい加減離せクソ姉貴!」
「ダメ。だって離すと、弔はすぐに逃げるじゃない。
それと、わたしのことは『お姉ちゃん』か『姉さん』と呼ぶように」
「誰が呼ぶか! 死ね!」
弔の首根っこを掴み、ギャーギャーと放たれる文句を無視しながら、わたし──向回逸姫は、バーへと向かっていた。
弔をこうして無理矢理引きずって行くのは、毎日の習慣のようなものだ。夜遅くまで起きて、昼過ぎに起きるという早寝早起きならぬ遅寝遅起きを繰り返す弔は、わたしと黒霧さんが作った朝ごはんを「眠いからいい」とか「お腹が空いてない」やら何やら理由をつけて食べないことが多々あるのだ。
ご飯を残すのは許せる。けど、食べてくれないのは作る側としてはムカつく。黒霧さんも、口や態度には出さないけど、きっとストレスが溜まってる。
だからわたしはこうして毎日、弔を引きずってでも朝食の場に連れて行く。
弔は、ついさっきまでぶつくさ文句を言っていたが、諦めたのか何も抵抗しなくなった。最初からそうすれば良いのに。困った子である。
──と、そう思っていたわたしが甘かった。
一瞬、ほんの一瞬だけだけど、わたしの力が弱まった瞬間、弔はするりと抜け出して、逃走を開始した。
「あ、待て!」
「うるさい! 飯なら勝手に食ってろ!!」
カッチーン!
ああ、もう怒った。ホントに子供みたいだ、わたしの義弟は。あの
わたしは『個性』を発動して、逃走した弔を追いかける。
弔は病的なまでにほっそりとしているが、その実、身体能力や戦闘能力は非常に高い。それこそ、そこらのヒーローなら一方的に嬲ることが出来るほどに。
けど、弔にとって、わたしは天敵である。
『個性』を発動して速度を上げ、弔に追いついたわたしは、にこやかな笑顔を浮かべて追い詰める。
弔はそんなわたしを苛立たしげに睨みつけながら、臨戦態勢に入る。
ふふふ……わたしには勝てないと分かっているだろうに。そこは男の子の意地というヤツなのだろうか。しらないけど。
ともかく、弔にとってわたしは相性最悪の相手だ。触れなければ発動しない弔の『個性』では、触れることを拒否出来る『個性』を持つわたしには通用しないのだから!
……まぁ、弔にとってわたしの『個性』の相性が最悪だからこそわたしは弔に優位に立つことが出来るわけで、『個性』無しだと弔には勝てないのだけど。
「弔、今なら許してあげるから。お姉ちゃん、怒らないから」
「嘘つくなよ。怒る気満々だろお前」
「そりゃそうでしょ」
逃げておいて許されるとでも思っているのだろうか。世界はそんなに甘くない。
「だったら尚更逃げるに決まってんだろ」
「!」
そう言うと、弔はわたしに向かって──正確にはわたしの顔に向かって手を伸ばした。その一連の動作は速く、鋭い。まだまだムラはあるけれど、洗練された一撃だ。
うーん、やっぱり攻撃のセンスはズバ抜けてるなぁ。
ホント──『個性』がなかったら簡単にやられてる自信しかない。
弔の伸ばした手に重なるようにわたしも手を伸ばす。弔の掌とわたしの指先が触れる直前に、
そうして出来た隙に、わたしは弔の首根っこを思い切り掴んだ。「ぐえ」と潰された蛙のような悲鳴をあげたが、そんなことは無視だ。
「はい。リビングに行こうね弔」
「チッ……ホントウザいなあ、おまえの『個性』は……!」
「ふふん、『先生』のお墨付きだもの!」
とりあえず、逃亡犯死柄木弔は呆気なく捕まった。わたしは弔を先ほどと同じように引きずりながら、バーへと再び向かう。
二度手間だ。女の子の力で人一人を引きずるのって結構疲れるのだから、勘弁してほしい。
「で、なんか罰はあるのかよ?」
「ん? 別に。今回はわたしの油断もあったしね」
そう言うと、弔はチッ、と舌を打って、今度こそ大人しくなった。
抵抗する気がないなら歩け。
しかし、わたしもだいぶ弔には甘いみたいだ。
まぁ可愛い弟分だし、甘くなってしまうのは無理もない。それに、さっきの一撃もかなり手加減されてたみたいだしね。本気の弔は
「ありがとね、弔」
「…………フン」
照れくさかったのか、弔はそれ以上何も言わなかった。
そんな弔を見て、わたしは小さく笑った。
「まぁ、ないとは言ってないんだけどね。今日から三日間はゲームは没収で」
「クソ姉貴ィ!!」
ご飯を食べてもらいたい義姉と寝不足で寝たい義弟。
義姉は弔のことを子供大人とか言ってるけど、割と義姉も子供っぽかったりするイメージ。
次は多分黒霧との会話。あと、オール・フォー・ワンも出したい。
義姉の『個性』はすぐに分かると思います。防御に関しては最強の『個性』です。
義姉の見た目は、まだ決めてない。多分、綺麗系ではなくて可愛い系。多分。
ではでは!
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