私が克服するお話。 (83/hachimitsu)
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私が眠るお話。

主要登場人物
・主人公:弦巻早希
・姉の大親友:結月ゆかり


 蝉の音が響いていた。閉めきった窓なんかでは防音なんて出来るわけ無いだろうと嘲笑う様に部屋の中にまでけたたましく響いていた。おでこから汗が一粒滴ってベットに染みを作った。私はかけていた毛布を取り払ってぐっと背伸びをする。涼しくない空気を全身で感じながら私はエアコンのスイッチをいれる。エアコンの駆動音を聞きながら私はお風呂場に向かった。朝シャン派では無いけれど流石に汗で気持ち悪い。蛇口をひねって水を出す。予想を遥かに上回る冷たさにビックリして少しシャワーからどく。心を落ち着けて爪先から順に水を体にかけていく。全身に水をかけてほんの1分もせずに私はお風呂場から出た。腰まである髪をタオルで拭きながら部屋に戻る。エアコンはまだ効いてなかったが冷えた体にはむしろ丁度良く感じた。朝ごはんにトーストを一枚食べる。そして服を着替え仕事に行く準備をしたところで私は気づいた。いや、思い出した。

「仕事……やめたんだっけ。」

 

 

 事の始まりはもう半年も前になる。私は普通にOLをしていた。珍しくもない会社で珍しくもないデスクワークをしていた。そんなある日の休憩時間。私は上司に呼び出された。何かしてしまったのだろうか、と不安でいっぱいになった。結果から言うと上司の要件は仕事の失敗を咎める事ではなかった。だけどそれよりも酷い事だった。あまりのショックで細かいことは覚えてない。だけれど確か本気で危ないセクハラをされるとこだったという事は覚えている。その時私は、ついその上司に手をあげて、もとい拳を腹部に結構なスピードで叩きつけてしまった。それから私の仕事が倍に増えた。毎日残業し、休みを返上してようやく納期に間に合う。そんな量になった。1ヶ月もそれが続けば、流石に疑問に思った。忙しい時期が随分と長いな、と。皆は割りと余裕ありそうだな、と。だから休憩時間、暇そうにしていた上司に質問に行った。すると小さな声で耳打ちするようにこう答えられた。

「俺を殴るからそうなるんだよ、弦巻(つるまき)ちゃん。」

と。私は少し意味がわからなかった。どういう事ですか?と聞くと上司はこう言った。

「俺がお前に殴られたと親父に言えばお前は職を失う。なんたって親父はこの会社の取締役なんだからな。だからお前は俺に従うしかないんだ。」

全くもって答えになっていないがなんとなく言いたい事はわかった。俺はお前の弱みを握っていると言いたかったのだろうと。その日から細かなセクハラもされるようになった。これはただただ嫌だった。鼻の下を伸ばして体を触ってくる上司を心底嫌った。相談できる同僚も友人もいない。家族には迷惑をかけたくない。そんな考えがちらつき誰にも言わなかった。幸い給料はきちんと払われているから私が我慢すれば良いや、と思っていた。ある日、私は給与明細を見て目を見開いた。残業代が振り込まれていなかった。そしてまた上司から呼び出された。今回は明確な脅しだった。残業代を振り込んでほしかったらこの時間にここへ来いとだけ言われた。指定された場所はラブホテルだった。私は退職届を出した。

 

 

 それが昨日の事だ。ため息をつきながら床に座り込む。バックを放り出して少し考える。これからどうしよう、と。

「仕事……探さないとなぁ。」

そう呟いたときチャイムがなった。

「はーい!」

こんなTHE・通勤ラッシュの時間に誰だろう、と玄関にかける。ガチャリと扉を開けようとして思い出す。もしあの上司が目の前にいたらどうしよう。怖くなって覗き窓を覗く。すると見慣れた顔が満面の笑みをしていた。

「お久しぶり。元気だった?」

「お久しぶりです。ゆかりさん。」

彼女は結月(ゆづき)ゆかりさん。私の姉の大親友だ。紫色の綺麗な髪に透き通る声。100人が見たら100人が美人と言うルックス。その声とそのルックスでデビュー2年目にして今や人気声優だ。

「突然こんな時間にどうしたんですか?」

「ちょっと顔を見たくなったの。」

「お母さんですか……。お仕事はどうしたんです?」

「今日は休みよ。」

「なら、あがっていきますか?お茶くらいなら出しますよ?」

「じゃあ、あがらせてもらうわね。」

そう言って入ってくるゆかりさん。ゆかりさんを部屋まで通して、私は麦茶を出す。氷が動いて涼しげな音をたてる。

「今年は暑いわね。ちゃんとお水飲んでる?」

「飲んでますよ。少なくともゆかりさんよりは健康に気を使ってるつもりですから。」

他愛の無い会話をする。なんだか親しい人と会話するのが久々に感じた。麦茶を飲んで一息ついたゆかりさんがふと真剣な顔になる。

「ねぇ、早希(さき)ちゃん。最近大丈夫?」

「何がですか?」

「お仕事、辞めたんだってね。セイカさんから聞いたわ。」

セイカさん。本名、京町(きょうまち)セイカさん。昨日まで働いていた会社の先輩だ。ゆかりさんと知り合いだったのか、と驚く。

「はい。上司と上手くいかないで……。情けないですよね。就職して一年もたたずに辞めるなんて。」

「ううん。情けなくないわ。むしろ誇らしい。」

「?変なことを言いますね。」

「だってきちんと逃げれたんだもの。職を失うって怖さを突っぱねてね。あんな上司がいる会社なんて辞めて正解だ、て思うよ。」

「それって京町先輩をけなしてませんか?」

我ながら意地悪な返答だ。

「そんなわけじゃないけど。」

「でも、実際どうしましょう。私仕事無くなっちゃいましたし。幸か不幸か、お金を使う暇が無かったので、ある程度の持ち合わせがありはしますけど。」

「あるわよ、仕事。」

「へ?」

「けど、紹介するのは今じゃない。ねぇ、早希ちゃん。今から暇よね。」

「え、あぁ、まぁそうですけど。」

「ちょっと私とお出かけしない?」

嫌な予感がした。いや、これは予感じゃない。経験則だ。今ゆかりさんは少し不機嫌だ。そんなゆかりさんがお出かけを提案する時は何かを本人に知らしめる時だ。断らないといけない。そう、私の本能が言っていた。

「えと、その今日は遠慮しとこうか」

「最後まで私に付き合いきれたら、お仕事を紹介してあげるわ。」

「わかりました。今すぐ準備します。」

私は本能を無視した。

 

 

 私はゆかりさんに連れられ洋服を買いに来ていた。しかし呉服屋に着くとゆかりさんに引っ張られすぐに試着室に連れられた。ゆかりさんが人を着せ替え人形にするのはいつもの事なのでぼぅと待っていた。しばらくしてゆかりさんはやはり服を持ってきた。しかしただの服では無かった。いつもゆかりさんが選んでくるカジュアルな服出はなかった。黒を基調そこかしこに白いフリルのあしらわれた服を持ってきたのだ。

「ど、どこにあっったんですか?そんなの……。」

と苦笑いしながら聞く。

「奥の方にあったわ。もしかして元から興味あった?」

「いえ、全く興味は無かったんですけど。じゃなくて!それを着るんですか!?」

「今日はこれを着て私に付き合って貰うわ。」

その圧倒的ゴスロリ買うと。しかもそれを私が着て町を散策するといい放ったのだ。

「いや、それはちょっと……」

「じゃあ、お仕事は大丈夫?」

「むぐぅ……。」

押し黙る私。これはきつい。かなりきつい。なんのイベントでも無いのにそれを着て町をまわるのはきつい。私ももう23だ。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。しかしこれは乗り越えなければならない壁だ。これを乗り越えなければ仕事は紹介してもらえない。ならば私のとる行動は一つだった。

「……わかりました。着ます。着ますよ。着てやりますとも。そして仕事を紹介してもらいます!」

そう言って私はゆかりさんから服をひったくった。

 

 

 

 次に入ったお店は喫茶店だった。周りの人の視線が突き刺さる中、私は店員さんに案内された席に座った。

「ここは私が奢りますよ。」

そう、ゆかりさんが言った。

「いえ、良いですよ。さっき買ったこの服、かなり高かったじゃ無いですか。それにここまで出して貰うのはちょっと気が引けます。」

「大丈夫よ。私、こう見えても稼いでるし。お金なら心配しなくていいわ。」

「それは知ってますけど……。というかそんなに稼げるですか?」

「うーん。一つ一つのギャラはあまり高く無いかな。まだ私新人だし。だけど数をこなして稼いでる感じ。あ、私これにしよ。」

そう言ってパスタとコーヒーのセットを指差した。つられて私もメニューを見る。

「じゃあ私はこれにします。」

そう言って私はサンドイッチと紅茶のセットを指差した。ゆかりさんが店員さんに注文を伝える。私は窓の外を見ていた。

「それにしても……早希ちゃんがその服を着てるとお人形みたいね。」

「これを選んだのはゆかりさんですよ。」

「いや、どちらかと言うとアニメのロリキャラ?」

「はっ倒しますよ。」

私は背が低い。小学生の頃はそうでも無かった筈だが中学生でくるはずの成長期に殆ど背が伸びずそのまま止まってしまったのだ。その身長138cm。おかげでジェットコースターは乗れないものがあるレベルだ。

「それにしても何でこの服を選んだんですか?」

「そんなの決まってるじゃない。似合うと思ったからよ。」

「屈辱ですね。」

「まぁ、別の理由もあるんだけどね。」

「?何か言いました?」

「ううん。気にしないで。」

「そうですか。」

それから料理が運ばれてきた。それぞれ頼んだものを食べながら駄弁る。結構長い間駄弁っていたと思う。本当に他愛の無い会話をしていた。なんだか久々に感じるゆったりとした時間を私は堪能していた。しばらくして私達は喫茶店を出た。結局お金は出させてもらえなかった。

 

 

 「これからどこに行くんですか?」

私はゆかりさんに尋ねた。ゆかりさんは少し考えて

「どこ行きたい所ある?」

と私に聞いてきた。全くのノープランだったらしい。私が行きたい場所、か。考える。最近まで遊びに行っていなかった私だ。行きたい場所もあまり思い付かなかった。

「私は思い付きません。ゆかりさんの行きたい所で良いですよ。」

そう言うとゆかりさんは少し考えて

「ゲーセンに行きましょう。」

と言った。ゲーセンなんていつぶりだろう。就活で忙しかった時も行けなかったから、ざっと1年ぶりになるんじゃないだろうか。

「そう言えば、ゆかりさんってゲーム得意でしたよね。ゲーセンのゲームも上手いんですか?」

「そうでもないわね。音ゲーなんかはわかってても体がついていかない時もあるし。クレーンゲームは普通に苦手ね。そういえば、早希ちゃんはどうなの?スポーツ得意だったでしょう?」

「多分下手です。ゆかりさんと逆で体は動くけど頭が追い付かないってオチだと思います。あと、クレーンゲームは苦手です。」

「でも、音ゲーなら大丈夫じゃない?」

「目が追い付きませんよ、あんなの。」

談笑しながら歩いていると目的地に着いた。

 そこは、この町唯一のゲームセンターだ。まだお昼過ぎという時間帯という事もあって人は比較的に少ない。しかし2時間もたてば高校生や大学生の一部は放課後になる。人はどっと増えるだろう。何をしようと物色しているとゆかりさんが

「トイレに行ってくるからここで待ってて。」

といってトイレに行った。たまたま近くにあったクレーンゲームを暇潰しやっていると突然

「君、こんな所で何をしているんだい?」

と声をかけられた。声のした方を向くと目測40代位の男性警官が立っていた。私はなんとなくどういう状況か察した。

「君、そんな格好をして……中学生かい?学校はどうしたんだい?」

案の定の質問だった。私はバックから財布を、車の免許証を取り出し警官に見せながら言った。

「私は来年で24になります。そしてこの格好は友人の趣味です。私の趣味ではありません。」

そうすると警官は慌てたようにした。

「こりゃあ、すみません。中学生に見えてしまって。」

「かまいませんよ。慣れていますから。」

「いやぁ、それにしてもこの時間からゲームセンターですか。あまり関心できませんな。大学院生かい?」

「社会人ですよ。仕事は昨日辞めましたけど。所で警官さん、よくお節介だと言われませんか?」

「お節介をやくのも仕事の一貫ですよ。まぁでも次の仕事は頑張ってね、お嬢さん。」

そう言って、私の肩を軽く叩いたら警官さん。その時だった。私は突然足に力が入らなくなり地面にへたれこんだ。全身が震えてきて、動悸が激しくなる。

「っ!?どうしたんだい!?」

警官さんが手を差しのべてくる。私は何故かそれが凄く恐ろしい物に見えた。

「ひっ!」

小さく声が漏れる。体の震えがいっそう激しくなる。ふと頭にあの上司の姿が思い浮かんだ。

「大丈夫かい!深呼吸できるかい?」

優しく言う警官さん。警官さんの言うとおりに深呼吸をしようとするが浅い呼吸を繰り返してしまう。出来ないことを伝えようと私は警官さんの方を見た。

 

 そこに見えたのは下卑た顔をしたあの上司だった。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 気がつくと私はベットに寝ていた。妙に気だるい体を起こして周りを見ると病院のようだった。すぅと扉が開いてお医者さんらしき女性とゆかりさんが入ってきた。

「起きられましたか。体調は大丈夫ですか、弦巻さん。」

「え、あ、はい。ちょっと気だるい位で大丈夫です。」

「そうですか。では」

お医者さんの言葉を遮ってゆかりさんが口開く。

月読(つくよみ)先生。リハビリの件については私から伝えます。」

リハビリ。ゆかりさんは確かにそう言った。私は少し不安になった。何故そんな単語が出てきたか理解できなかったからだ。

「そうですか。なら、お二人だけの方が話しやすいでしょう。私は廊下にいるので終わったら病室の扉を開けてください。」

「はい。お気遣い有難うございます。」

そう言って月読先生と呼ばれたお医者さんは病室から出ていった。ゆかりさんが私の方を向いた。私は少し緊張して姿勢を正した。ゆかりさんはゆっくりと口を開き

「今日1日付き合いきれなかったからお仕事はお預けね。」

と明るく言った。私は明るく返せなかった。

「あの、ゆかりさん。リハビリってどういう事ですか?私のどこか病気何ですか?」

声を大きくしてゆかりさんに尋ねる。するとゆかりさんは真剣な顔になって言った。

「病気ね。勿論私じゃなくて早希ちゃんが。」

「私どこも悪い所なんてありませんよ?」

「それは体だけでしょう?」

「どういう事ですか?」

「早希ちゃん。貴女はね、平たく言うと重度の男性恐怖症になってるの。」

私には信じられなかった。ゆかりさんの言葉でも信じたくなかった。

「男性恐怖症……?それはありえないですよ。だって私、ゆかりさんがトイレに行ってる時、ちゃんと警官さんと話して」

「何で病院に運ばれたのか覚えてる?」

私の言葉を遮って話すゆかりさん。

「いや、覚えて……無いです。」

そう言うとゆかりさんは私の目をしっかりと見て言った。

「早希ちゃんは早希ちゃんの言う警官さんと話している途中に倒れたのよ。いえ、正確には警官さんに肩を軽く叩かれてからね。」

「…………。」

私は絶句していた。まだ信じられないというのもある。しかしそれ以上に私はその時の記憶が飛んでいる事に驚いていた。

「早希ちゃんの症状は多分、男の人に触れられる事がトリガーになってる。月読先生はそう言ってたわ。」

「そう……何ですか……。」

私は完全に打ちのめされていた。男性恐怖症だなんてそれは生活にすら悪影響を及ぼすだろう。そう考えるとこれからどうしよう、という大きな不安が襲った。

「早希ちゃん。それでちょっと相談があるんだ。」

ゆかりさんは優しく微笑んで私に言った。

「なん、ですか?」

「私の家で暮らさない?」

私の中に渦巻いていた不安が吹き飛んだ。勿論、安堵からではなく呆気にとられてだけど。

「え、えっと……何故ですか?」

「嫌?」

「いえ、別に嫌というわけでは無いんですけど。理由が知りたいんです。その、今までの会話から何でそう繋がったのかって。」

「それは簡単よ。大親友の妹が、ううん。大事な友達の力になりたいからよ。少なくとも一人でいるよりは安心できるでしょう?」

「まぁ、そうですけど。でも私。稼ぎがありませんよ。多分、ううん。絶対就職先も困るだろうし。」

「じゃあ早希ちゃんは仕事が無いのに、稼ぎが無いのにどうやって暮らすの?」

「それは……。」

私は返答出来なかった。

「大丈夫。私、もう一人養える位は稼いでるつもりだから。」

そう自信満々にゆかりさんは言った。

「あ、でも代わりに家事はして貰うわよ?私どうしても料理は得意じゃなくて。」

「でも、やっぱり」

迷惑じゃないかな、そう私は繋げようとして、ゆかりさんは私の言葉を遮った。

「こんな時くらい!……周りを頼りなさい。私やマキさん、ずん子にセイカさんだって力になるわ。」

そう叱咤された。私の視界が急にぼやけた。目を擦ると手のひらには涙がついていた。

「……決まりね。明日荷物をまとめといてね。迎えにくるから。」

そう言うとゆかりさんは病室から出ていった。私は少しの間だけ静かに泣いた。

 

 

 それから色々な症状について月読先生から言われた。それに加えて最近変わったことがあったかも聞かれた。多分症状がでた原因を探っていたんだと思う。私は嘘偽りなく言った。そうすると月読先生は

「無茶苦茶分かりやすいわね。遠回しに聞く必要ないじゃない。」

なんて言っていた。一通りの診察も終わる頃には夜になっていた。ゆかりさんに家まで送ってもらった私は軽く身支度をして床に着いた。ベットの中で今日の事を振り返る。家に帰ってお風呂に入った私は姉や両親に今までの事を伝えた。両親は電話越しでも分かるほど心配した声で、そうかとだけ言っていた。姉はゆかりさんから少し聞いていたみたいで

「何ですぐに言わなかったの!!」

と怒って、すぐに

「大丈夫なの?」

と心配してくれた。少し涙ぐんでしまったのは内緒だ。ゆっくりと目を閉じる。ゆかりさんがくるのは明日の10時に来ると言っていた。物は多くないからすぐに運び終わるだろう。それまでに大家さんに事情を説明したりしないと。朝の事が嘘のようにやることがいっぱいになった。不安がないわけではない。だけど朝に比べればかなりマシになっていた。 少し楽しみにしている自分がいる事が少し面白くて小さく笑ってしまった。眠気が大きくなっていく。私はさんざん我慢したそれに抗う事なくゆっくりと眠った。




ご読了ありがとうございました!
これ……あらすじに出したキャラ、全部出せるまで続けるるか不安だなぁ。
あ、主人公の設定が全部書けそうにないのでここに書いときます。

弦巻 早希

23歳 女性 無職

身長:138cm 体重:31kg

特技:料理、歌うこと
好きなもの:油揚げ、和菓子、甘いもの
「体型?気にしてません。」

姉、弦巻マキとは違い髪は銀色。腰まで伸ばしている。
背の低さがコンプレックス。しかしきちんと胸はある。姉曰く、
「背が高かったら私よりもスタイル良かったかもねー」
勿論、そんなことはない。

分かりづらい方はFate/EXTRAのナーサリー・ライムをご想像ください。


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私が出会うお話。

主要登場人物
・主人公:弦巻早希
・姉:弦巻マキ(弦巻真希)
・友人:結月ゆかり
・赤い学生声優:琴葉茜
・青い学生声優:琴葉葵


 「すみません。ご迷惑をかけます。」

「事情が事情だし、いいのよ。貴女はなんにも悪くないしね。だからきちんと、養生なさい。」

「はい、ありがとうございます。」

私は大家さんに頭を下げていた。現在の時刻は朝9時半。このくらいの時間なら大丈夫かな?と大家さんのもとを訪れていた。大家さんに事情を話すと大家さんは了承してくれた。心の中に感謝と罪悪感を感じながら部屋に戻ろうとすると聞きなれた声で声をかけられた。

「早希ちゃん。」

透き通った声が響く。

「あ、ゆかりさん。もう、いらしたんですね。」

そう言いながら振り向くとそこには肌色があった。

「さぁぁぁぁぁきぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁん!」

「うわっぷ!」

がしっと抱きつかれる。こんな事する知り合い私には一人しか思い付かなかった。

真希(まき)ねぇ!苦しいから、放して!」

「もう、心配したんだからね!悩んでるなら何で相談してくれなかったの!」

「ゆ、ゆかりさん……。助けて。」

「まぁ、良いじゃない。一年くらい会ってなかったんでしょ?マキさんも積もる物があるんじゃないんですか?」

「う゛……苦しい。本当苦しい。ちょ、ほんと助けてください。」

「……しょうがないですね。マキさん。早希ちゃん苦しそうですから少し手加減してあげなさい。」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!気づいてあげられなくてごめんねぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「あ、駄目ね、これ。耐えて、早希ちゃん。」

「そ、そんな……殺生な。」

結局、真希ねぇが放してくれるのは5分後の事だった。死んだお母さんを見そうになったのは誰にも言わない様にしよう。

 

 

 荷物を運びを終わった私達はゆかりさんが持ってきたワゴン車(真希ねぇ運転)に乗りゆかりさんの家に向かっていた。

「そういえば、ゆかりさん。何で真希ねぇと一緒だったんですか?」

「荷物を運ぶのを手伝ってもらおうと思って呼んだのよ。」

確かに私とゆかりさんだけでは運ぶのが難しいものもある。しかし高身長かつ力の強い真希ねぇがいればそういった物をやすやすと運んでくれるのだ。

「まぁ、私の出るまくはあんまり無かったけどね。」

「確かに。早希ちゃん荷物少なかったし、大きくて重い荷物もちゃぶ台がMAXだったわね。」

「まぁ、ベットは引っ越し業者に任せましたしそんなものだと思いますけど?」

「それに服とかも小さいから、かさばらないしねー。」

「真希ねぇ、うるさい。」

話ながらも車はぐんぐんと進んでいく。都心ともあって景色はあまり変わらずコンクリートジャングルが広がっている。

「あっ!」

突然ゆかりさんが声を出した。

「どうしたんですか?」

「どったの、ゆかりん?」

私と真希ねぇが尋ねる。するとゆかりさんは珍しく冷や汗をたらしながら私の方を向いた。

「早希ちゃんに(あかね)ちゃんと(あおい)ちゃんの事、話すの忘れてた。」

誰の事だろう、と私は首を傾げる。

「誰ですか?その、茜さんと葵さんは。」

「ゆかりんの従姉妹だよ。琴葉(ことのは)茜ちゃん、葵ちゃん。今年で高校2年生。二人とも学生兼声優なの。」

真希ねぇが答えた。それに付け加えるようにゆかりさんが続ける。

「お仕事の関係上こっちに住んでいた方が都合がいいので、二人とも私の家に住んでるんです。あの子達には、明日から家族が増えるよ、と言ってあるんですが早希ちゃんに伝えるのを忘れちゃって。」

「えっ、何ですか。その意味深な言い方。」

「なにか問題あったかしら?」

私は絶句した。私はすっかり忘れていた。結月ゆかりがどんな人物かを。彼女は確かに頼りがいのある人だ。基本的には何でも出来るし人柄も良い。しかしどこか抜けているのだ。良く言えば天然。可愛く言えばうっかりさんなのだ。

「あー……ゆかりん。」

真希ねぇは言いづらそうに言う。それ対しゆかりさんはきょとんとした表情だ。

「何ですか?マキさん。」

「その言い方だとゆかりんが結婚したと思われるかもよ?」

「いや、流石に無いでしょう。だって家族が増える、としか言っていませんよ?」

「20代後半に差し掛かりそうな女性に突然、家族が増える、なんて言われて真っ先に思い付くのは結婚だと思います。」

そう私が言うとゆかりさんは笑いながら言った。

「それはそれで面白いことになりそうわね。」

これからの生活が少し不安になった。

 

 

 ゆかりさんの家らしき所に着いたらしく真希ねぇが車を止めた。外を見ると結構立派な一軒家が建っていた。

「こ、これがゆかりさんの家何ですか?」

「えぇ。」

「大きいですね。」

まさかこんな家を建てれるほどだったとは、と内心驚く。ゆかりさんから肩を叩かれる。

「荷物運ぶわよ。マキさんは茜ちゃんと葵ちゃんを呼んできてください。」

「はい。」

「おっけー。」

私はワゴン車に、真希ねぇは玄関に走った。

「ゆかりさん、どこに運べば良いですか?」

「ちょっときついけど2階の一番奥の部屋に運んで。そこが今日から貴女の部屋になるから。」

「あ、ありがとうございます。」

住人が増えても部屋を簡単にあげれるほどの豪華なのか、とうろたえる。荷物を抱えてワゴン車を降りると玄関から真希ねぇと見慣れない二人の女の子が出てきた。一人は長く伸ばした赤い髪を左側で結っている活発そうな女の子。もう一人は同じく長く伸ばした青い髪を右側で結っている落ち着いた風の女の子だ。それよりも驚くのは雰囲気は全く違っても顔と体格が瓜二つのところだ。ゆかりさんが名字を2つ言わないから姉妹か姉弟なのかなとは思っていたけれど。まさか双子だとは思わなかった。真希ねぇが私を指さす。多分私を紹介してるんだと思う。双子ちゃんが私の方を見た。私は何だかちょっと緊張してしまうが大人の余裕を見せなければと感じ、会釈する。持っていた段ボールを落としそうになり、抱えなおす。再び玄関に向かって歩き始めると双子ちゃんがこっちに向かって走ってきていた。彼女達は私の前で止まると、青い髪の子が私の持っていた段ボールを、赤い髪の子が私を抱えあげて叫んだ。

「うちの妹が増えたー!」

「私に妹ができたー!」

私は困惑した。赤い髪の子に抱きつかれる。少し理解が出来なかった。視界の奥にそれは楽しそうに笑う真希ねぇの姿があった。状況が見えた気がした。

「真希ねぇ!何を言ったの!」

「いやー、茜ちゃんと葵ちゃんが喜んでくれて嬉しいなー。」

真希ねぇが説明する気皆無な事はわかった。

「待って二人とも。ちょっとおろして。」

そう言うと赤い方は放してくれた。真希ねぇと違って話し合いが出来る事に感動している自分がいて少し悲しくなった。

「真希ねぇに何吹き込まれたか知らないけど、まず1つ。私は貴女達よりは年上だから!」

そう言うと二人は少し固まって

「「そういう設定?」」

と言った。

「事実だぁぁぁぁぁぁぁ!」

私は叫ばずにいられなかった。

 

 

 荷物を運び終わった私達はゆかりさんの提案で自己紹介をしていた。リビングのテーブルに向かい合って座る私と琴葉姉妹。そして私の隣で微笑む真希ねぇ。琴葉姉妹の隣で微笑むゆかりさん。妙な緊張感ではりつめる空気。少しお腹が痛くなってきた。

「じゃあ、先ずは早希ちゃんからね。」

ゆかりさんが私に促す。トップバッター私か!と少し狼狽える。しかしここで大人という事を示さないと後々面倒な事になるだろう。私は平静を装いながら自己紹介を始めた。

「私は弦巻早希、23歳です。好きなものは油揚げ、特技……というか趣味は料理です。今後ともよろしくお願いしましゅ。」

「噛んだな。」

「噛んだねー。」

「噛みましたね。」

「噛んだわね。」

顔から火が出そうな程恥ずかしかった。

「というか、ほんまに成人やったんか。私達より年下にしか見ぃひんな。」

「お姉ちゃん、流石に失礼だと思うよ。」

「なんや、葵かて叫んどったやん。妹ができたー、て。」

「あれはマキさんが12歳って言うから。」

「真希ねぇ、後で話があります。」

やはり元凶は真希ねぇだったようだ。

「あっはい。」

真希ねぇは結構イタズラ好きだ。学生時代もよく困らされたものだった。

「じゃあ次はうちがするで。」

赤い方が言う。

「うちは琴葉茜!呼び方はなんでもええよ。年は16!好きなもんはエビフライ!家事はちーっとだけ出来るから、戦力になれるで!」

「家事(洗濯のみ)。」

葵ちゃんが煽る様に言う。

「う、うるさいなぁ!次は葵やで!」

そういって少し顔の赤い茜ちゃんは葵ちゃんに自己紹介するよう促す。葵ちゃんは少し緊張した面持ちで始めた。

「あ、えと。茜の双子の妹の琴葉葵です。できれば名前で読んでほしいです。好きな食べ物はチョコミントアイスです。家事は出来ませんが色々手伝うのでよろしくお願いします。」

凄く丁寧な言い方で葵ちゃんは自己紹介を終えた。

「うん、よろしく。茜ちゃん、葵ちゃん。」

「ところで早希さん?ちゃん?ゆかりさんとはどんな関係なん?」

茜ちゃんが聞いてくる。

「あ、それ気になってました。ゆかりさんが家族が増えるって言った時は遂に彼氏が出来たかと思ったんですけど」

ゆかりさんが戸惑った様な表情をする。私はゆかりさんに、だから言ったじゃないですかと目線を配らせて答える。

「ゆかりさんは友人ですよ。そういう浮わついた関係は真希ねぇです。」

「「そうなんですか!?」」

そうやって驚く二人。

「な、何を言ってるの早希ちゃん!」

そう言って顔を赤らめるゆかりさん。真希ねぇは意外にもなんの反応もなかった。真希ねぇへの仕返しのつもりだったが効果は薄いようだ。

「なーんだ。じゃあ、ゆかりさんにはまだ浮わついた話は無いんか。」

「ゆかりん、婚期逃しちゃうかもねー。」

「よ、余計なお世話よ!」

顔を赤らめるゆかりさん。罪悪感が湧いてきた。そしてゆかりさんも婚期を気にしてるんだなぁと少し意外だと思った。そうやって話していると突然ぐぅっとお腹がなった音がした。音のした方を見ると真希ねぇが顔を真っ赤にしてお腹を押さえていた。どうやら勝手に自滅したらしい。少し微笑んで私は

「いい時間ですしお昼にしますか。キッチン使いますね。」

と言って席を離れた。

 

 

 「「「「ご馳走さまでした!」」」」

「お粗末様でした。これ、コーヒーです。茜ちゃん達もコーヒーでいい?」

「ええよ。」

「大丈夫です。」

私達はお昼ご飯を食べ終わり一息ついていた。ちなみにお昼は簡単にパスタにした。ソースも作らず簡単にそれっぽいもので和えただけのものだ。

「いやー、美味しかったわー。正直意外やったな。料理出来るなんて。」

と茜ちゃんが言う。

「私も一人暮らししてたから多少の家事はね。」

「十分美味しいですよ。」

「せやなー。このクオリティが毎日食べられるんは嬉しいわー。」

こんな簡単な物でそう言われると今までどんなご飯だったのか不安になる。ゆかりさんは……私の知ってる限りなら、卵焼き紫色だったり水色だったりと、あまり良いとは言えないけれど。

「まぁ、ゆかりんのご飯は基本変な色してるしねぇ。」

「せやなー。」

「あ、治ってないんですね。ゆかりさんの冒険癖。」

「り、料理は苦手なんです。でも、料理意外なら出来てる自信があるわ!」

「でも洗濯はお姉ちゃんが、片付けは私がやってますよね?」

「う、うむぅ。」

葵ちゃんに言われて言いどもるゆかりさん。私はそれを聞いて良い意味で助け合ってたんだなぁと感じていた。それと同時に家事は私に任せてもらおう、と強く思った。

 

 

 夕方になり、真希ねぇは家に帰っていった。なんでも少しだけ仕事をしないといけないらしい。

「じゃあ、また会おうね!」

と元気に手を振って車で去っていく真希ねぇを見てほんの少しだけ名残惜しかった。真希ねぇの去っていった方を少しだけ眺めて私の新しい家になったゆかりさんの家の玄関の方を向く。するとそこにはニヤニヤしている茜ちゃんがいた。

「な、なに?茜ちゃん。」

「いんやぁ。寂しそうだなーって。」

「そ、そう見えた?」

「なんならうちの事、お姉ちゃんって呼んでもええで?」

「あんまり大人をからかうもんじゃないよ。ほら、茜ちゃんは唯一戦力になりそうなんだから少し手伝ってもらうよ。」

「ええで。何しとけばええ?」

「じゃあ私はご飯作るから、茜ちゃんはお風呂を掃除してもらっても良い?」

「まかせといて!」

そういって茜ちゃんは玄関に駆けていった。本当に元気な子だなぁと心から思った。

 

 

 キッチンに立った私は夕飯を頭の中で組み立てていた。基本的な調味料はあったから多分「あれがない!」 と困る事は無い。それに豚肉と野菜が数種類そして大量の枝豆があった。

「何故、枝豆だけこんなに……。」

つい呟く。それそうになった思考を戻して献立を考える。

「うん、冷しゃぶに冷奴にお味噌汁でいっか。」

と思い立ち私は手を動かし始めた。まずはお味噌汁だ。短冊切りにした長芋と皮を剥いた枝豆を茹でていき程よく火が通ったらお味噌をといていく。お味噌をとき終わったら最後に油揚げを投入する。次は冷しゃぶだ。冷しゃぶは一枚一枚丁寧した方が美味しいからあえてお味噌汁と同時進行で作らない。まずは鍋にお水、塩、砂糖、お酒をいれて煮る。その間にレタスをざく切りにし、もやしと一緒にお皿に盛り付けておく。お湯が沸騰したら氷水を用意してから豚肉を一枚一枚鍋に入れていく。火が通ったと確認したら氷水に浸けてすぐにざるできる。そしてその豚肉をもやしとレタスの上にのせていく。あとはごまドレをかけて冷しゃぶの完成だ。そのタイミングで炊飯器がピーッと鳴る。丁度良いタイミングでご飯も炊けたようだ。お豆腐を食べやすい大きさにパパッと切ってお皿に盛り付ける。そして炊飯器を開けてご飯をかき混ぜて少し冷えたお味噌汁を温めなおす。

「葵ちゃん。配膳手伝ってくれない?」

「わかりましたー!」

葵ちゃんがキッチンに来るとものの見事に目を丸くした。

「うわっ!すごっ!こんな豪勢なんですか!?」

「まぁ、初日位は私も手間をかけますよ。といっても簡単な物ばっかりですけど。あ、冷しゃぶ運んでください。」

「わかりました。」

そう言って葵ちゃんは冷しゃぶをテーブルに運ぶ。冷しゃぶを見たであろう茜ちゃんが

「うわっ!すごっ!こーんな豪勢なんか!」

と言った。言っている事が葵ちゃんと全く同じで少し笑いそうになった。程なくして葵ちゃんは茜ちゃんも連れてキッチンに戻ってきた。

「お味噌汁も美味しそうやね!」

「ありがとう。熱いから気を付けてね。」

そう言ってお味噌汁を茜ちゃんに託す。茜ちゃんはお盆にお味噌汁を乗せてトテトテとリビングへ歩いていった。葵ちゃんは冷奴を持ってリビング歩いていった。私はご飯をよそってリビングに持っていく。

「あれ、ゆかりさんは?」

「ゆかりさんは自分の部屋におるで。」

「多分台本読んでるんじゃないかな。」

「じゃあ呼んできますね。葵ちゃん達は食べてて良いから。」

そう言って私はゆかりさんを呼びに行く。階段を上ってすぐの部屋がゆかりさんの部屋だ。ゆかりさんの部屋の扉をノックする。コンコンッと軽快な音が廊下にも響く。

「はーい。」

「ゆかりさん。夕飯が出来たので食べませんか?」

「食べるわ。ちょっと待ってて。」

扉の前で少し待つ。部屋から物音が聞こえる。もしかして台本を読みながら演技でもいていたのかもしれない。

「お待たせ。」

扉を開けてゆかりさんが出てくる。

「何をしていたんですか?」

「台本を読んでいたら熱が入っちゃって。」

そう言って照れたような表情をする。美人なだけ些細な表情も絵になるな、なんて思う。階段を下りると琴葉姉妹はご飯を食べていなかった。

「食べいて良かったんですよ?」

「ううん。皆が休みの日のご飯は一緒に食べるってルールだから。」

「そうなんですか?」

ゆかりさんに聞くとうん、と頷いた。

「じゃあ食べましょうか。」

ゆかりさんが言う。

「「「「いただきます!」」」」

私達はご飯を食べ始めた。

 

 

 「はぁ……お風呂、気持ち良かったなぁ」

私は新しい自分の部屋のベットに座っていた。明日はもう月曜日。ゆかりさんは仕事だし、琴葉姉妹は学校という事もあり、皆床についた。お風呂上がりの火照った体にあたる卓上扇風機の風が気持ちいい。お弁当のおかずはお風呂に入る前に作って冷凍庫に入れておいた。だから明日はお米を入れるだけだ。皆仕事や学校に行くのに、私だけ外に出ずに家事に専念するのはどこか罪悪感を感じる。

「いや、買い出しあるし外にでないわけでは無いか。」

自分が男性恐怖症だという実感はまだ無い。でもだからこそ、不安でもある。男の人とあったらどうなるのか。どうなってしまうのか。自分では本当に予想できない。買い出しで男性と会ってしまった時は必ず一人なのだ。真希ねぇもゆかりさんも周りにはいない。でも、きっとこれはゆかりさんからの試練なのだ。一人で男性と会って耐性をつける。そうやってもとの生活に戻れる心にしていくのだ。やっぱりまだ実感は無いけれど。

「とりあえず目標は仕事につける様になることかな。」

私は電気を消してベットに潜る。明日は早起きして皆を見送って洗濯をしよう。家事を全部こなしたら買い出しに出かけよう。夕飯は茜ちゃんの好きなエビフライでも良いかもしれない。ゆっくりと目を閉じる。あぁ、楽しみだな。明日を楽しみにするのは何時ぶりだろう。ちょっとの恐怖心を吹き飛ばしてしまう安心感が確かに、私の心の中にあった。その安心感に包まれてか私は何時もよりすんなりと眠りについた。




ご読了ありがとうございました。これから多分文字数が減っていきます。書き始めたは良いのですが既に詰まっていまして……。あ、このSSのゆかりさんぼ設定置いておきます。

※これはあくまでこのSSでの設定です。公式の設定とは一切関係ありませんのでこのSSを読むときにのみ、この設定を適応してください。

結月ゆかり

24歳。
身長:159cm
得意な事:暗記、感情移入
好きな物:イタズラ、美味しいご飯、洋菓子
「婚期?私なら大丈夫です……多分。」

本名:結月縁
年上、もしくは同年代の人には敬語を使うように。年下の人には女性らしい口調で話す。デビューして僅ながらもその透き通った声と圧倒的な技術で着々と仕事を増やしている。因みに専属マネージャーはマキさん。


追記:琴葉姉妹の設定を少し弄りました。その為、変に感じる部分や矛盾が生じる可能性が多大にあります。勿論、可能な限りそういう部分が発生しない様にしますが、見つけた場合はどうか「へー、そーなんだー。ふーん」 位の気持ちでスルーして欲しいです。お願いします。


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私が買うお話

遅くなり申し訳ありません。

主人公:弦巻早希
家主兼友人:結月ゆかり
緑の和風美人:東北じゅん子(東北ずん子)
やんちゃだった同級生:さとうささら
双子の学生声優:琴葉茜、琴葉葵


 私はゆかりさんを見送るため玄関にいた。琴葉姉妹は少し前に家をでていた。何でも早い時間から仕事らしい。ゆかりさんは扉に手をかけながら私が一人の時の注意点を何度も言っていた。

「買い出し以外は出来るだけ外にでない事。」

「はい。」

「絶対に無理をしない事。」

「はい。」

「宅配便は受けとら無い事。」

「わかってます。」

「じゃあ、行くわ。7時半には帰ってこれると思うから。それまで家事、頑張ってね。」

「えぇ。任せてください。いってらっしゃい。」

「いってきます。」

そう言ってゆかりさんは仕事に向かっていった。

「いってらっしゃい、か。」

私がもう一度言う側なるのはもっと後の話だと思っていた。誰もいなくなった家はひどく広く、寂しく感じた。「さてと、気持ちを入れ換えよう!」

気合いをいれる。私はゆかりさん達から家事を任されている。その期待に答えないといけない。それに、なんだか今は凄くやる気に満ち溢れている。今の私ならきっと何でも出来る、とすら思えた。

「よーし……やっるぞー!」

まずは洗濯だ。私は勢い良く脱衣場に向かった。

 

 

 

 家事を一通り終えた私はする事がなくなっていた。掃除も終わり洗濯も終わり、お昼ご飯には少し早い。しかし何をするでもなく、ぼぅっとするのもつまらない。私はテレビのスイッチをいれた。画面に映ったのは大分前に月曜9時からあっていたドラマだった。会社の中でも面白いと話題になっていたからその存在は知っていた。ハッと気がつくとスタッフロールが流れていた。見入っていたらしい。

「こんな番組だったんだ。」

しみじみと言う。私が一人暮らしを始めた時、テレビを買う事はしなかった。姉や両親は買った方が良い、と言っていたがその時の私は

『仕事に慣れて、環境に慣れて、暇が出来るくらい生活が安定したら買う。』

と言って買わなかった。

「まぁ、ものの見事に職失ってますけどね。」

ポツリと自虐的に呟く。その事実を確認する度に罪悪感と情けなさで胸がちくりと痛む。

「早く仕事につくためにも治さないとね。」

声に出す。時計を見るとお昼には丁度良い時間になっていた。私はキッチンに向かった。

 

 

 

 昼ご飯を食べた私は考え事をしていた。ゆかりさんから預けられた通帳とにらめっこをしながら夕飯の献立をたてる。

「エビフライするにしてもそれだけじゃ物足りないかな?」

女性4人とはいえ、その内二人は高校生だ。あの年頃は体重を気にしつつも案外食べるものだ。大好物や甘いものになれば高校生男子の目を丸くする程食べる人だっている。ぐっと考えて結局良い案が思い付かなかったので付け合わせはサラダにした。

「じゃあ、今日の夕飯はエビフライ、サラダ、コンポタ、お米かな。」

何を買えばいいのかを確認する為、冷蔵庫を開ける。冷蔵庫にはトマトやレタス等、いくつか夏野菜があった。今日サラダで使えば無くなってしまうくらいの量だけど。しかしその中には例外あった。それは枝豆。

「サラダは大丈夫そうかな。それにしてもこの量の枝豆、どう使おう……。」

まだ腐りそうに無いからゆっくりと消費していけば良いかな、と先送りにする。ひとまず今日はサラダに混ぜよう。買わないといけない物をメモする。

「よし、これで良いかな。」

私は財布とケータイ、買い物メモをバックに入れて玄関の扉を開けた。

 

 

 

 外はジリジリと日射しが絶え間なく地面に照りつけていた。家の鍵を閉め道路に体を出す。道路に当たって反射した光が暑さを増長させる。ピタピタと汗が頬を伝い、洋服と道路に染みを作る。暑さに耐えながら歩き、スーパーが見えてきたのは歩いて15分程の事だった。自然と私の歩くスピードが速くなる。早くスーパーに入りたい。その一心で歩みを進める。そんな時だった。

「そこの君!」

後ろから声をかけられる。男性の声だ。思わずビクッと肩が上がる。振り向くと若い警官さんがいた。

「こんな時間にどうしたんだ?学校は?」

あぁ……いつものか、と私は理解しバックから車の免許証を取り出して警官さんに見せつける。

「この通り私は成人でして、大学ならとっくに卒業しました。夕飯の買い物をしなければならないので、これで。」

申し訳なさそうにする警官さんを尻目に、歩くのを再開した。私は自分の背格好が回りからどう見られるか知っている。私自身、平日に同じ身長の方と出会ったら学校はサボりかな?と心の片隅で思うくらいだ。背の高い人からして見れば尚更そうなのだろう。とわいえ、私の服装はわりと年相応の物だと思っているのだけれど。そんな事を考えながら歩いていると私はふと気づいた。

「あれ?私、普通に会話出来てた。」

寒気すらなく、本当に私は普通に接していた。今まで通り普通に。その事実に私は少し舞い上がってしまうくらい嬉しくなった。少し大げさだったのかな?これなら簡単に治せるかも、という期待を私は胸に抱いた。

 

 

 

 私は今、まごうごとなきピンチに陥っていた。スーパーはもう目の前。しかし今日の私は運が良くなかった。

「まぁまぁ、話だけでもさぁ。そこの喫茶店でも行こうぜ。」

私は今絡まれていた。所謂ナンパという奴だろう。こんな昼間から会うことはないと思っていたのだけどそうでもないらしい。

「すみません、私は一刻も早くスーパーに行ってエビを買わないといけないんです。」

「一刻も早くって大袈裟だなぁ、夕飯の買い物でしょ?揚げ物ならもう少し後に調理した方がお父さんもお母さんも喜ぶよ。」

そう言って男は私の進行方向に回り込む。あぁ……どうしよう。なんだかどう答えても退いてくれなさそうだ。これはもう堂々と言った方が良いだろう。そう思って口を開けた時、私とナンパ男さんの間に一人の和服を着た女性が割り込んできた。その女性は深い緑をした髪を風と体の勢いではためかせながら言った。

「流石にしつこすぎると思いますよ。そんなんじゃ女の子に嫌われますよ?」

「ん?なんだ君?俺は今その子と話してるんだけど。もしかしてあんたも一緒に来たいとか?」

それを聞いた女性はおもむろにバックからリンゴを取り出しました。何故リンゴ?そして何故入ってるの?と私が疑問に思ってるとその女性はリンゴをナンパ野郎の顔の前へ持っていき

「ふんっ!」

とその細い左手でそのリンゴを握りつぶしました。リンゴは、はぜたかのように弾けとび、欠片と果汁は道路とナンパ野郎の顔にかかった。ナンパ野郎と私は呆気にとられていた。

「き、ら、わ、れ、ま、す、よ。」

そう言って微笑む彼女の凄まじい威圧感は私とナンパ男を震え上がらせるには十分だった。

 

 

 

 「大丈夫でしたか?」

そう言って、リンゴの果汁をハンカチで拭いながらこちらを振り向く女性。微笑んだその顔はゆかりさんや真希ねぇと同じくらいの美人だった。

「は、はい。追っ払ってくださりありがとうございます。」

「良いんですよ。助け合いの精神は大切ですから。それより、学校はどうしたんですか?」

そう言ってしゃがみこむ女性。いつもの質問だ。もう慣れたものだと思っていたけれど、やはり少し切なくなってしまう。

「私、今年で23になるんです。それに学校はもう卒業してしまいました。」

私がそう言うと女性は目を丸くした。

「そうだったんですか!?妹と同じくらいの背だったのでてっきり小学生かと……。」

「よく間違われます。」

ふと彼女の手元を見ると彼女のバックの中に私が行こうとしていたスーパーの広告が入っていた。私は意を決して思い付いたことを口に出した。

「あそこのスーパーに行くんですか?」

「えぇ。あ、もしかしてあなたもスーパーに?」

「はい。えと…その、一緒に行きませんか?」

そう言うと彼女は少しだけ止まって

「良いですよ。」

と快く承諾してくれた。

「私、弦巻早希って言います。よろしくお願いします。」

そう言って私はお辞儀する。すると彼女は微笑んで自己紹介をしてくれた。

「私は東北じゅん子です。『ずん子』って呼んでください。」

「はい、じゅん子さん。」

私はじゅん子さんとスーパーに向けて歩き出した。

「弦巻さん?どうして『ずん子』って呼んでくれないんですか?」

「あ、普通に『ず』だったんですね。訛ったのかと思いました。じゃあ、改めて行きましょう。『じゅん子さん』。」

「あれー?」

 

 

 そのスーパーはなかなかの大きさだった。前に私が行っていたスーパーよりも一回り大きい。これならばあのスーパーに無かったものもあるかもしれない。

「弦巻さん。夕飯は何を作る予定なの?」

「メインはエビフライにしようと思ってます。それと名前で良いですよ。」

「ならお言葉に甘えて。早希ちゃん、ポテトサラダはどう?」

そう言ってじゃがいもを掴むじゅん子さん。

「あー、良いですね。それいただきです。」

そう言って私はじゃがいもを掴みかごに入れる。ポテトサラダなら大量にある枝豆を使っても大丈夫だろう。

「じゅん子さんは何にするんですか?夕飯。」

「う~ん……。きりたん……妹が好きなシチューかな?でも夏だし涼しげな奴の方が良いかな?」

「じゃあ、クリームパスタとかグラタンとかはどうです?」

「う~ん。パスタは良いかもね。冷たいクリームパスタなんてどうだろう。」

「そんなの作れるんですか?」

「多分ね。上手く出来たらうちのお店で出しても良いかも。」

「じゅん子さん、お店出してるんですか!?」

「うん。カフェを経営するのは学生の頃からの夢だったから。」

「じゃあ、夢を叶えたって事ですか!すごいです!尊敬します!」

「そ、そんなこと無いよ。でも、うん……ありがとう。」

そう言ってじゅん子さんは顔を背ける。緑の髪の隙間から真っ赤になった耳が見えた。私はすごい人だな、と素直に感じた。

「さ、早希ちゃんはお仕事何してるの?」

まだほんのりと顔の赤いじゅん子さんが私に尋ねる。私は少し言いどもってしまう。負い目を感じてるからだ。しかし言わない方が少し失礼かな、と思い意を決して口に出した。

「少し色々ありまして、お仕事は辞めたんです。だから今は無職です。」

「そうだったんだ。ごめんね、言いづらい事聞いちゃって。」

「いえ、私が決めた事なので気にしないでください。」

そう言って私はじゅん子さんに笑顔を向ける。じゅん子さんはそんな私を見て何故か申し訳なさそうな、悲しそうな顔をした。もしかしたらじゅん子さんは自分に厳しい人なのかも知れないと思った。

「えっと……じゅん子さん。」

「ん?なに?」

「ちょっとじゅん子さんに相談があるんですけど……。良いですか?」

「うん。私が力に慣れるなら。」

「実は今、家に沢山の枝豆があってどうやって消費しようか困ってるんです。」

私がそう言うとじゅん子さんは嬉しそうな羨ましそうな目をした後に眩しい笑顔で言った。

「それなら良い案があるの!ずんだ餅なんてどう?」

「ずんだ餅、ですか……?確か東北地方の料理でしたっけ?」

ふわっとだが聞いたことがある。枝豆をする潰して作ったずんだ餡をお餅に絡めた郷土料理だっただろうか。確かにそれなら枝豆を大量に消費できそうだ。

「でも、私ずんだ餅なんて作ったこと無いです。お餅は買うとしてもずんだ餡の細かい作り方も知らないですし。」

「じゃあ、お買い物終わったら貴女の家に行って良いかしら?私が作ってあげる。」

そう、じゅん子さんに言われて少し考える。ゆかりさんの家に上がらせて良いものだろうか。いや、ゆかりさんの許可が無い以上、駄目だろう。でも断るにしてもどう言って断れば良いのだろう。少しだけパニックになる。しかし冷静になって私は正直に断る事にした。

「あ、えと……ごめんなさい。私実は友人の家に居候している立場なので勝手に知り合いを呼んでしまうと怒られてしまうかも知れないので……。」

「そうだったんだ。なら、しょうがないね。じゃあ作り方だけ教えるわね。」

そう言ってじゅん子さんは作り方を教えてくれる。私は心の片隅で覚えておけるか不安に思いつつ買い物を続けた。

 

 

 

 買い物を終え、じゅん子さんと別れた私は来た道の通りに帰っていた。少し重たくなったレジ袋が手の平に食い込む痛みを和らげるため手を買えながら持つ。それでも疲れと両手の痛みは積もっていくもので、途中に通る公園で一休みする事にした。

「ふぅ……。」

木陰のベンチに座り一息つく。ジリジリと照りつける日差しも木がシャットアウトしてくれている。それだけで多少暑さが軽減された様な気がした。自販機で買ったコーヒーを一口飲む。冷えたコーヒーが体に染みていく。ぼぅっと景色を眺める。時間がゆったりと流れている様な気がした。

「さーきーさん!」

「ひゃい!」

突然肩に手をおかれ変な声をあげてしまった。慌てて後ろを振り向くと悪戯な笑顔を輝かせる茜ちゃんと、あきれ顔で茜ちゃんを見ている葵ちゃんがいた。

「こんなとこでなにしてはるん?」

茜ちゃんが機嫌良さげに聞いてくる。

「疲れちゃったので少し休憩していたんです。」

そう私が言うと茜ちゃんが私の隣に置いてあるレジ袋見て納得したような表情をする。

「さよか。にしても結構買ったんやな。……せや!早希さん!うちらと一緒に帰らへん?」

眩しい笑顔で茜ちゃんが言う。

「いや、いいよ。結構重いから茜ちゃんに持たせるわけにはいけないし。」

「それなら大丈夫ですよ?」

葵ちゃんが後ろを指さす。するとそこには一台の車が停まっていた。

「僕たちもマネージャーさんに車で送ってもらってたんです。だからマネージャーさんに頼んで乗せてもらえば」

「その大荷物でも大丈夫っちゅー事や!」

茜ちゃんが葵ちゃんの言葉を横取りする。

「でも、迷惑じゃ……。」

「大丈夫ですって。行きましょ。」

そう言って、いつの間にか近づいていた葵ちゃんが私の手を引く。少し遅れて茜ちゃんが私の買い物したものが入ったレジ袋を持って車の方へ歩き出す。私は葵ちゃんのされるがままに後部座席へと座る。

「ちょっとごめんなー。」

そう言って茜ちゃんは私の隣にレジ袋を置くと助手席に座った。

「じゃあ、お願いします。」

葵ちゃんが言うと車が動き出した。私は申し訳なくなってマネージャーさんの顔を覗く。するとそこには随分と懐かしい顔があった。

「ささちゃん!?」

「「さ、ささちゃん!?」」

琴葉姉妹がシンクロしながら驚く。ミラーで反射している顔を見るにマネージャーさん……もとい、ささちゃんが目を見開く。

「その声、まさか早希!?」

そう言ってミラー越しにこちらを見るささちゃん。

「え、なに?ささらさん、早希さんと知り合いやったん?」

「うん。早希とは高校の同級生なんだ。成人式以来、会う機会が無かったんだけど……。」

信号が赤に変わったから車を停止させたささちゃんは私の顔を見る。ささちゃんは相変わらず端正な顔立ちをしていた。じっと私の顔を見るささちゃん。思わず顔を下に向ける。

「ささらさん。前、前。」

葵ちゃんの呼びかけで前を向くとアクセルを踏みながらささちゃんは言った。

「いやー、早希ってばちょっと見ないうちに身長縮んだ?」

「え、嘘。ホントに?」

本気で焦る私を見て笑いながらささちゃんは続ける。

「あっはははは。嘘だよ嘘。相変わらず面白いな、早希は。」

「ホントに焦ったじゃん。背が縮むなんて私にとっては例え1mmだろうと死活問題なんだから。」

「わかってるって。ところで少し胸大きくなった?」

「ちょ、どこ見てんの……。」

思わず自分の体を抱き締める。

「ささちゃんもそういうとこ変わんないね。息を吸うようにセクハラしてくるとことか。」

「良いじゃん。女同士だし、減るもんでもないし。」

「駄目に決まってるでしょ。それ、仕事場でやってないでしょうね?」

「相手は選んでるさ。見境無かったら只の犯罪だし。」

「やってないとは言わないのね。」

こうやってささちゃんと会話していると高校時代を思い出す。あの時は色々凄かったなぁなんて感傷に浸りながら言葉をかわす。

「早希さんが砕けた言葉を使ってる……。」

「ささらさんが笑顔で会話しとる……。」

「あかねー、聞こえてるからなー。」

「ひぃ!」

茜ちゃんとささちゃんのやり取りを見た私と葵ちゃんは笑いがこぼれた。

 

 

 

 車が私達の家の前に停まった。

「ほら、着いたぞ。明日はいつも通り13時からね。」

「あ、はい。分かりました。」

「ささちゃん、私もここで良いわ。」

「変に遠慮すんなよ、私とお前の中だろう?家まで送るよ。」

「ささらさん、ささらさん。」

「ん?なんだよ茜。明日迎えに行った方が良いか?」

「いや、そうじゃなくて。今の早希さんの家はここなんよ。」

そう言って私の家、すなわちゆかりさんと茜ちゃん達が住んでいる家を指さす。ささちゃんは目を見開いた。

「お前もゆかりさんの家で住み始めたのか!?なんでまた?」

「それには色々と事情があって……。ちょっと長くなるから後でで良い?」

「そっか。なら、ちゃんと連絡くれよ?」

「うん。分かった。」

私は買い物袋を掴んで車を出た。家の玄関の前に茜ちゃん、葵ちゃん、私が横に並びささちゃんを見送ろうとする。横に並んだ私達を見てささちゃんは笑った。微笑ましそうに。優しく。

「じゃあ、早希は空いてる日連絡してくれよ?」

「わかってる。」

「よし!それじゃあな!茜と葵は時間間違えんなよ。」

「わかっとるって。」

「ささらさん、ありがとうございました。」

「おう!じゃあな!」

そう言ってささちゃんは眩しい笑顔をして車を動かして行った。私は手を振りながら次に会う時を楽しみにしていた。

「早希さーん。はよ入ろーう。」

気づいた時には茜ちゃん達は家に入ろうとしていた。

「うん。今行く。」

私は小走りでドアに向かった。

「今日の夕飯何ですか?」

「今日はエビフライにしようと思ってます。」

「エビフライ!やった!」




ご読了ありがとうございました!
……すり鉢欲しいなぁ(ずんだ餅作りたい)。
今回はマキさんの設定です!このSSのみの設定なので公式設定とは大分ずれていると思います。



弦巻 マキ


24歳 マネージャー


身長:162cm


特技:場を盛り上げる事、ギター
好きなもの:お肉、運動、ゆかりん、早希
「体重の話は止めて!!」

本名:弦巻真希
コミュ力お化け。誰にたいしても(立場が対等であれば)砕けた口調で話す。ゆかりさん専属のマネージャーであり大親友。早希の姉で妹を大切に思っている。家事は最低限出来る程度。幼い頃に死んでしまった母の分まで頑張ってくれた父に楽してもらおうと熱心に働いている。


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