ラブライブの世界に転生したものの…男っているの? (アルピ交通事務局)
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夏休みデビューと夏休みデブ~

ある日、二度寝してやろうかなと怠けに怠けていると、ふと頭が痛くなる。

眠い時に稀にある頭痛かと思ったけど、違った。自分がなんなのかを思い出した。

痛々しい中二病とかじゃない普通に自分が転生者なのを思い出した。賽の河原で転生者になるべく特訓しまくった…けど、それがどうしたって感じ。マジでそう言うのはどうでも良い。転生したからなんだって話だよ。

まぁ、東京に生まれた事に関してはマジで嬉しいかな。前世、名古屋とか神戸とかの有名な地方じゃない糞マイナーな地方だったし…田舎者臭いかな。

 

「う~ん…」

 

転生したからって、劇的な変化は起きる訳じゃない。

死ぬ前と同じ事をただただ延々と繰り返す、結局のところコレが一番なんだと分かる。

 

「あ~暑い…もう9月中旬だってのに…」

 

目を覚まし、顔を洗い意識を叩き起こしてジャージに着替えて酸素を薄くするマスクをつけて家を出る。

けども、暑い。もう9月中旬だってのに暑くてジャージの長袖は本当にキツい。通気性抜群とかそう言う問題じゃない。

 

「魔法が使えればなぁ…」

 

こういう時にこそ、魔法が欲しい。

バトル物の地球が舞台のファンタジー世界に転生できたら、こういう暑いのを防げる。

けど、地球が舞台のファンタジー系って高確率で糞だったり、面倒臭いって言ってたな…授業でも物凄く我慢しないといけない世界だって言ってたし…結局のところ、何処が良いんだろ?

 

「あ~もうなんで創立記念日に学校があるんだよ…」

 

家を出てから遠回りをして神田明神に辿り着いたけど、余りにも暑いのでイライラする。

今日が創立記念日なのに、マイナーでどうでも良い団体で地方ラジオに出てるパーソナリティーが講演会に来る事を思い出して、更にイライラする。

有名な芸能人とか漫画家とかなら良いんだけど、糞マイナーな業界で有名な人とかどうでも良いんだよ、質問タイムになった際に誰も手を上げないから空気気まずいし。

今時の一般人がテレビならまだしもラジオを聞いてると思うなよ。

 

「ジム使いたい…」

 

朝、この神田明神付近で階段ダッシュやランニングをするのは日課だ。

正確には朝だけ、糞暑いってのに外とか変なところで練習するなんて馬鹿らしいからジム行ってるけど、朝は閉まってる。学校があるからいけない。

ジムがある学校なら良いんだけど、うちの中学は受験しないと入学できない学校で勉強の方に力を入れてるから、そっち系の器具は無いんだよね…まぁ、有ったら有ったで滅茶苦茶なことを押し付けられるから嫌なんだけど。

 

「ふ…ふ…ふ…」

 

イライラするけど、体を動かしていると落ち着く。

一番は引きこもってぐでーとしてながらゲームしてる時だけど、これも落ち着く。

変に朝早くにオーバーワークじゃなく、自分に合わせてやっているからだね、うん。

 

「穂乃果、ことり、遅いですよ!!」

 

自分に合わせたメニューを軽くこなしていると、下の方で芋ジャーを着た綺麗系の女の子が叫んでいた。

朝っぱらから元気だね、あの子。けど、部活動をしている人じゃなさそう…神田明神での階段ダッシュとか自主連をしている人、稀に見るけど見ない顔だし。

 

「海未ちゃん、ねむ~い…zzz」

 

「海未ちゃん、暑いよぉ~」

 

「貴女達は!!」

 

可愛い系の女の子とゆるふわ系の女の子が遅れてやってくるけど、眠そうで辛そう。

軽くその事を訴えると二人にチョップを叩き込む綺麗系の女の子。無理矢理付き合わされてる?

 

「そうやってダラダラと夏休みを過ごしたから7キロも太って、お腹が出るんです!!」

 

あ、逆っぽい。

夏休みの間に怠惰な生活を送ったから太った夏休みデビューならぬ夏休みデブ~か

 

「でも、海未ちゃんも二キロほど」

 

「私、太っちゃったけど海未ちゃんほどお腹は」

 

「なにか言いましたか?」

 

親友と言えば親友だけどパワーバランスがよく分かる関係性だね。

けど、大変だね女の子は。女の子の数キロ太るは男の太るとは次元が違うって、言ってた。

こういう時、TSしなくてよかったって常々思うよ。頑張れ、女子達よ。顔面偏差値高くて、性格は良さそうだから多少ムチっててもモテるよ。

でも、二次元って顔面偏差値高い娘多いからね~極端じゃなくて程好いブスって居ないのかな?

 

「さぁ、先ずは階段ダッシュ50回!!」

 

「海未ちゃん、死んじゃうよぉ!!」

 

「なにを言っているのですか、夏休みの間はこれの倍をこなして…こなして…」

 

頑張れ、夏休みデブ~しちゃった三人。

俺は食べても太らないどころか、スポーツしてるんだからもっと食えと言われる別世界の住人だから、気持ちが分からないんだよ。

 

「…筋肉が欲しいな…」

 

「ひぃっ!?」

 

自分の腕を見たけど、やっぱり筋肉が足りない。

世の中、大抵の事は筋肉で解決するって偉い人も言ってたしもうちょい欲しいよ。

 

「…なに見てんの?」

 

「え、あ、その…」

 

ダイエットするぞと意気込んでいた綺麗系の女の子は俺の事に気付くとチラチラ見てくる。

俺が腕の筋肉を確認すると、なんだか怯えた感じになっている。ちょっと声をかけると後退りしちゃう…ああ、うん、そうだよね。

 

「あんま変な目で見ないでよ、視線とかは別に良いけどストレートに言われると流石に傷つくんだからさ…二メートル越えの日本人なんて早々に見ないけど」

 

街を歩けば色々と視線を浴びたり、待ち合わせ場所にされたりと色々と面倒だったりする。

髪の毛の色は紫だけど…まぁ、二次元だから当たり前だよね。

背丈は小さいが、技術が一級品の日本人でも、滅多に見ない208㎝はインパクト強いよね

 

「あ、いえ、そう言う意味で怯えてたのでは」

 

「別にそんな訂正いれなくて良いし、取り見繕う方が見苦しいよ…て言うか、サボってて良いの?」

 

他の二人は必死になりながらも階段を往復している。

俺にビビってるのは良いけど、バレて怒られたりしてもしんないからね。

 

「し、失礼します!!」

 

「うん…大きさよりも異性になれてない感じだな~」

 

良いところのお嬢様と言うよりは、箱入り娘、丁寧に育てられたって感じだったな。

友達らしい友達とかいるから、赤ちんみたいに色々とぶっ壊れてなんかふっ切れる事はなさそうだ…それはそれで見てみたかったけど。

 

「にしても…お腹周りを気にしてるなら、ストレッチとかすれば良いのに。

ダイエットとなったら走って腹筋腕立てスクワットって、流石にダメすぎっしょ…1日数分、毎日やっとけば良いやつとかあるのに」

 

ダイエット企画に出てくる手遅れなデブとか、それを売りにしているデブ芸人ならまだしも、三人とも手遅れじゃない。腹式呼吸ダイエットとか色々とあるし、大変だよね。

 

「え…」

 

あ、ゆるふわ系の女の子に聞かれてた。

けどまぁ、いいか。聞かれてたなら、タメになる事を知れたんだからさ。

 

「あ~眠い…受験するんじゃなかった…」

 

朝にやる分は終わったから帰る…そして学校に行く。

お受験しなきゃいけない中学だから、サボれない。こういう本当にどうでも良い行事はサボりたいよ。

 

「ま、待って、今のって本当!?」

 

「なにが?」

 

「1日数分で痩せれるって!!」

 

「言ってねーし、そんなの」

 

「でも、似たようなの言ってたよね!!どうやるの!?」

 

「……自分でググれ、アホガール」

 

俺が教える義理はないし、教えても絶対にデブるしそれがあるって油断しちゃうよ。

ゆるふわ系の女の子を無視し、階段を降りると全力疾走の最短ルートで家へと向かった。

 

「…」

 

軽くシャワーを浴びたあと、制服に着替えながら俺は色々と思い出す。

前世の自分でも今の自分でもない、転生者になるべく色々と日本の地獄で学んだ。

遊戯王をやったり、色々とやった。濃厚な殺気を放ったり、主夫スキルを覚えさせらりとなんか色々とやらされた…けど

 

「なーんで、ラブライブなんだろうな~」

 

俺が転生したのは、俺達が転生したのはラブライブの世界だ。

原作とか知らないけれども映画の興業収入とかラブライバーを敵に回すとダメとかなるのはよく知っている。

それと同時に、日本の地獄の俺を含めて複数の早死にした子供に転生者になるべく色々と教えていた教官が言ってた。ラブライブはハズレの世界だと。

なんでハズレなのかはイマイチ分からないけど、ハズレなのはなんとなくだけど分かる。

激しい後悔とかそう言うのはない。愉しく話せる同業者の友人もいるし…けど、けど

 

「シンデレラガールズがよかったな…」

 

この世界じゃ、絶対に言っちゃいけない事を呟いて俺は家を出て学校に向かった。

予想通り、講演会に呼ばれたマイナーな人への質問タイムは誰も手を上げずに教師が質問なんでも良いよと言ったけど誰も手を上げず、黄瀬ちんが「皆、早く終われって思ってるんスよ、中途半端な有名人じゃテンション上がんないっス」って、結構どころかかなり酷い一言を言って、呼び出されてた…残念無念、また来週。



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コピーキャラ最強は仁王雅治だと思う

「おはようございま~す」

 

「ああ、うん、おはよう」

 

ググれアホガールと言ってから二日後、次の日じゃなくて二日後に女の子達はいた。

言い過ぎたかなと思ったけど、普通にいるどころか挨拶をしてくれた。直接言ったゆるふわ系の女の子が挨拶をしてくれた。

 

「この前はありがとう!」

 

この前はなにかとは聞かない。

ダイエットについて言ってくれた事に感謝をしているんだろうけど、どうでも良い。

問題はそれを知って、次をどうするかだと思うんだ。

 

「あ、あの、あ、あ、あぁ、ありがとうございます」

 

「…いちいちお礼を言わないで欲しいよ」

 

綺麗系の女の子は恥ずかしながらも、お礼を言う。

けども、恥ずかしいならやめて欲しい。なんか此方まで恥ずかしいし、無理矢理言わせてる感じがあるから。

 

「そ、そのすみません…」

 

「謝らなくても良いよ、この程度の事で感謝されるのが嫌なだけだから」

 

今時の若者は直ぐにネットに頼るとか言われようが、先ずはネットをググれば良いんだ。

インターネットを見れば、ある程度はどうにでもなるんだ。出来る努力を怠ってただけだよ。

 

「でも、本当に助かったよ!!

コレさえあれば、夏休み怠けても太ることは無いんだから!!」

 

「いや、太る奴は太るし…アホなの?」

 

「穂乃果、アホじゃないもん!!」

 

「いいえ、貴女はア穂乃果です!!

あくまでもアレは怠惰な生活をしなかった場合であり、貴女の様に毎日毎日食って寝て、更には宿題をサボっていてはまたブクブクと太り、今回の様に」

 

「海未ちゃん、落ち着いて!!」

 

な~んか、トリオ漫才始めてる。俺、そっちのけにしてるし。

けどまぁ、本人達が嬉しそうならそれで良いんだよね…俺に迷惑かかってないし。

 

「…っは、すみません!!」

 

「だから、謝らないでよ…」

 

なんか俺が悪者見たいになるから、やめて欲しいよ。

取り敢えずは何時も通りの朝練でもしておこう…関わんないで欲しいな…一人でゆったりとしたい。

 

「そう言えば、君もダイエットしてるの?」

 

「んなわけないじゃん、何処見てるの?栄養素全部背丈と筋肉に回ってるよ」

 

「そうだよ穂乃果ちゃん…大きい…」

 

「こんな大きい人、うちの中学には居ないよね!海未ちゃん」

 

「え、まぁ…確かにいませんが」

 

「……そんなお腹の大きな女子はうちの中学にはいないよ」

 

「「「うっ…」」」

 

褒めてるのは分かるんだけど、小バカにされてる感じがスンゲー腹立つので言い返す。

自分のお腹を少しだけ摘まむ三人……

 

「太ったかなと思った時点で、そいつはもう手遅れ、デブってる」

 

「グフォオア!?」

 

「穂乃果!?」

 

「太ったかなと気にしたりするの良いけど、見せる相手とか居るわけ?

恥ずかしいとか思ってるかもしんないけど、単純に服着れなくなって困っただけじゃないの?」

 

「ぐふ…」

 

「ことり!?」

 

ちっ、一人仕留めそこなったか。

可愛い系の女の子とゆるふわ系の女の子にダメージを与えて、白眼を向ける事が出来たけど三人目が倒せない。

このままだとよくも二人をと言う目でみられる。太った二人が悪い…あ、そうだ。

 

「…腹筋、割れないように気をつけなよ」

 

「ごこお…」

 

「海未ちゃん!!」

 

「ダメ、ダメだよぉ!!それを言っちゃったら!!」

 

「そうだよ!海未ちゃん、弓道の為に握力を鍛えて過ぎてて裏でゴリラって言われてるの知って、三日ぐらい猿とかに反応しちゃったり、脱いだら別の意味で凄いとか言われて大変だったんだよ!」

 

可愛い系もとい穂乃果はア穂乃果だね。

誉めてるんだか貶してるんだか全くわかんないし…大変だよね。

 

「頑張った自分に御褒美とかで太っちゃダメだよ、じゃあね~」

 

これ以上は関わりたくないから、バイバイ。

とっくに朝練が終わっている俺は物凄くテンションを落としている三人を気にせずに家に帰って、学校に登校して何気ない日々を過ごすけども、ここ最近そうは言ってられない。

何だかんだで夏休みはもう終わり、もう直ぐ10月に入る…そうなるとアレを、受験をしないといけない。

恵まれた体格と才能と当たり前の努力で勝ち取った全中三連覇と中学総合体育大会三連覇は伊達じゃなく、ゾロゾロとスカウトがやって来る。けども、断る。東京から出るのは嫌だ、地方民とかもうごめんだよ。

 

「よし、全員揃ったな」

 

今日も今日とて断り続けた放課後、生徒会室に集まる俺を含めて今年引退した面々。

ここにいるのは全員が全員、転生者。俺以外にもこの世界には転生者がいる…男で、色々なミラクルを、キセキを起こしている。と言うかキセキの世代だよ、マジで。

 

「赤ちん、もう会長じゃないのにわざわざ生徒会室使うって」

 

「別に良いじゃないか、生徒会室を私物として使うのは実に漫画らしい」

 

俺を含めて転生者は7人いる。

その中でもリーダー格と言うか、誰も文句言わずにリーダーをしている赤い髪の男、赤司征十朗。

容姿は言うまでもなく、赤司征十郎であり…まぁ、リーダーシップとかそう言うのを持ってて、逆らうと面倒な人。死因は急性アルコール中毒とか酒系のやつ。

親が厳しすぎたり、頭おかしかったりしてグレて、親に嫌がらせをしまくり死んでやった奴…この世界でも名家のボンボンだったけど、両親は相変わらず厳しすぎて一瞬でグレて好き勝手やってる。

 

「赤司、頼むからフィクションとそう言うのの境界線は何処かで守ってくれよ」

 

二人目は青峰大樹。

この人と赤ちんと黛さんは転生者の中でも物凄い転生者、一度目の転生先でなんか凄いことをするともう一度、転生することが出来て、そこでも凄いことをすれば無限に転生することが出来る。

峰ちんは無限に転生することが出来る転生者で、最初はテイルズオブゼスティリア、次に魔法科高校の劣等生の世界でお兄様のお兄様やってたらしい…そんで精神的に色々と苦労してる。

残りは緑色の駄眼鏡と、仁王雅治には絶対勝てないコピーしか取り柄のなかった黄色いの、最近だと強奪も出来るようになったけども、コピー出来る時点でそこまでのものだ。

 

「…紫原、お前は今なにか失礼な事を考えてはいなかったか?」

 

「ん~…ミドちんは、バスケしか出来ない人かなって」

 

「それはどういう意味なのだ?」

 

「そのまんまだろ…お前の才能、基本的にバスケしか使えないだろ」

 

「そうっすよ、敏捷性、天帝の眼、シンプルにデカい、模倣、どれも他所様で似たようなのあるけど緑間っちのは完全にバスケでしか使えないっす」

 

うんうんと俺の意見に頷く峰ちんと黄瀬ちんこと黄瀬諒太。

緑色の駄眼鏡こと緑間真太楼はバスケしか出来ない…て言うか、赤ちんの下位互換だと思う。

学年二位で副部長で生徒会副会長で…うん、本当に下位互換だ。下克上頑張れ。

 

「そう言うお前は、仁王雅治の下位互換だろう!!」

 

「っちょ、酷いッス!!

引退してから必死になって声を自由自在に変えれるように頑張ってるんスよ!」

 

「お前、アホか?

努力なんてどいつもこいつもやってるもんで、それを評価してくださいって言ってどうするんだよ?そう言うのを許されるのはガキまで、コレからは結果がすべてなんだぞ。一人の特例も認めねえよ、むしろ逆に見てみてえよ。努力とかそう言うのを全然しねえやつを」

 

「本当、黄瀬ちんって直ぐに甘えるよね」

 

「うっ…そうッスよね…え、いや、そうじゃないような」

 

「全員、そろそろ話をして良いか?」

 

グダグダとやっているとちょっと重い感じの空気を醸し出す赤ちん。

バトル物の漫画を一度でも経験したことある人は本当にこう言うの得意だよね、はじめて殺気を向けられた時は本当にチビりそうだった。

けどまぁ、慣れちゃえば怖くないよ。

 

「集まって貰ったのは他でもない、今後のことだ」

 

学校紹介のパンフレットを沢山取り出す赤ちん。

だけど、静岡と東京の学校しかない。なんでこの二つなんだろう?

 

「先ずはこれを見て欲しい」

 

音ノ木坂学院のパンフレットを見せる赤ちん。

 

「あれ、此処って女子校じゃ無かったっけ?」

 

「……」

 

「どしたの?」

 

「いや、そう言えば原作を知っているのは僕と黛さんと緑間だけだったのを思い出してね…」

 

ああ、そう言うことね。

赤ちんが取り出したパンフレットは主人公達が通う学校で、なんかおかしな事があるって事だよね。

 

「少子化だかなんだかで、今回から共学化みたいっスね。

あれ、ラブライブって基本的に親族以外の男はモブで女オンリーじゃないんスか?」

 

「ああ、そうだ。基本的に親族以外の男はモブでしかない。

賽の川原で習っただろう、転生者は原作に関わりやすくなっていると。これはその為の事だ」

 

あ~そう言えば、そんな事を言ってたね。

けど、こんなの出してくるって事はまさかとは思うけど…ここ、俺ん家から一番遠いじゃん。

 

「赤司、まさかとは思うが俺達に音ノ木坂に入れと?

俺は原作を知っているが、ハッキリと言って音ノ木坂に一分の魅力を感じない…知名度を上げただけで、廃校が免れるとは思えん。人事を尽くしていないのだよ」

 

「つーか、黛さん含めて誰一人ラブライバーじゃねえぞ」

 

て言うか、あの人は三次元よりも二次元だって堂々と言ってるしね。

にしても他の人達が転生すればよかったのに…いや、他の人達も人達で問題か。

散々ハーレムを作るなって、日本は一夫一妻制度って言われてるのに孕ませたとかそう言うの大変だったよね。

 

「むしろそっちの方が良い。

僕は此処に進学しようなんて言うつもりはない、むしろこんな所に進学はするなと言いたい。

原作に関わるなと言っても無駄なのは僕は知っている…取り敢えず、全員此処に進学しよう」

 

「え、全員ッスか?」

 

「なにを驚いている?

確かに僕達は色々な意味でミラクルを起こし、奇跡を起こし、キセキの世代と言われている。

だからって本家みたいに変に仲が悪かったり、亀裂があるわけでもないし、疎ましいとも思っていないじゃないか」

 

「しかし…それで良いのか?

全員が全員、同じ進学先になるとその…つまらないと言うか」

 

「逆だ、むしろ楽しいんだ。

もし仮に推薦で何処かの高校に入ってみろ、毎日毎日バスケバスケと楽しいには楽しいが一切の花がなく、ブラック部活動をしなければならない。それはごめんだ。

僕達がバラけたら、年に2、3回しか本気で出来ないんだぞ。そっちの方が圧倒的につまらないし、何よりも誰かが東京を出ていかなければならない」

 

「「「「っ!?」」」」

 

東京を出ていかなければならない、この言葉に俺達は悪寒を走らせる。

東京は物価が高くて、柄の悪い奴とかヤバい奴とかは多いけど美味しいものとか遊べる場所とかいっぱいある。

神戸とか名古屋とかの有名な地方ならまだ遊べるけど、マジでそんなに有名じゃない土地だったら死ねる。

 

「紫原、油断すんなよ。

神戸とかならまだ色々とましとか思ってんだろうが、ちょっと上の方に行ったら糞ド田舎で車持ってなきゃ住めない場所だ。都心の方はちょっと出れば風俗街だしよ」

 

「詳しいね、峰ちん」

 

「まぁ、元々関西方面の出身だからな…っと、そうじゃねえ」

 

全員が全員、東京の何処かの高校に入る…は出来なさそうだね。

誰か一人でも外に出るとなると苦痛、人間は甘い汁を一度でも吸えば、それを再び吸いたくなる。

 

「赤ちんさ~…なんでわざわざそんな事をすんの?

別に一緒の学校でもオレは良いし、赤ちんがオレTUEEEEEしたいならバスケ最強の高校に行けば良いじゃないの?」

 

なんか回りくどい事をしてる気がする赤ちん。

どうも裏がある、なんだろう…まぁ、面白そうな事をしそうだよね。

 

「やれやれ、紫原はその辺は鋭いな…わざわざこんな事をするのには訳があるよ。

時代の立役者かもしれないが老害でしかない愚者や、お前の事を期待しているから人より厳しくしてるとか言う馬鹿とかを僕は本気で消したい…だから本気で調子こいてやろうかと思うんだ」

 

…いいね、それ。

 

「体裁を保つための笑顔とかそう言うの無しで、圧倒的なまでの強さで色々な業界を蹂躙したいんだよ、取り敢えず高校生クイズは三連覇するぞ、緑間」

 

「そこはバスケじゃないのか…まぁ、良い。お前とならば高校生クイズ三連覇出来そうなのだよ」

 

「そもそも俺達実年齢的に高校生じゃないからね~」

 

そこは言っちゃいけないことだけど、言っておかないとね。

俺達は進路を決めた。バスケの推薦を全て蹴って、黄瀬ちんが入れるレベルに合わせて学校を選んだ。

峰ちん、魔法科高校の劣等生の世界で魔法師やってたせいか、無駄に頭良いんだよね…なんか腹立つ。

 

「因みに、そこには黛さんもいるぞ」

 

あ、そうなんだ。あの人、何処の高校に進学したか教えてくんなかったんだよね…推薦とか来なかったし。

ラブライブ、なんか原作放置してても大丈夫そうだよね~

 

「取り敢えず、生け贄は紫原にするか…」

 

え?



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何事も自分のペースで行くのが一番、オーバワークはダメアルよ

俺達転生者は原作に関わりやすくなっている。

例えばお隣さんが原作キャラとか、そんな感じだけども正直な所、ラブライブに転生者は居てもいなくてもどっちでも良い。ラブライブ行きてえとか叫んでたけども、此処はハズレの世界だと思うよ、バトル物を夢見る人達。

 

「いらっしゃいま…せ~」

 

休日の日は美味しいものを食べてグータラしてるけど、今日は違う。

進学先を決めたのは良いけども、両親に結構なレベルで怒られちった。

スポーツ推薦とか全部蹴ったのはやっぱりまずかったけども、俺一人だけ別の高校とかやだし、流石に四人全員相手とか無理っしょ。かといってバラバラになると凄い退屈になる。

勉強的な意味でもう1ランク上の高校を目指せるけども、黛さん居るし此処にするってなったんだけど、なんか一人暮らししないといけなくなった。

本当になんでって言いたくなって言ったけど、口答えするなとか言う理不尽な事を言われた。

まぁ、自炊とか転生する前に地獄で覚えさせられたから出来ない訳じゃないけど、めんどいな。

 

「えっと…栗餡につぶ餡にこし餡を三つずつね。

あ、それとモナカも三つずつお願い。店内で食べるよ」

 

「あ、はい」

 

「しっかりしてるね~」

 

「ありがとう、ございま、す」

 

…あ、威圧しちゃってるな、うん。

家にいると寝そうなので和菓子屋に来たんだけど、店番をしているどう見ても小学生っぽい女の子は挙動不審。やっぱり俺のガタイは引いちゃうし、声も鈴村だから仕方ないっちゃ仕方ないか。

 

「にしても、赤ちん…ミドちん達に貸すぐらいなら俺にも貸して欲しいのに」

 

推薦とか蹴って怒られたのは、俺だけじゃない。

日頃糞真面眼鏡なミドちんは驚かれたけど、友達と一緒のところだからと判明したらあっさりなんだけど、峰ちんと黄瀬ちんは別、普通に拳骨一発くらった。

赤ちんが個人で高級マンションを持ってるらしく、全員そこに引っ越すらしいけど俺だけ生け贄を理由にハブられる。大学生になったら来いってさ。

て言うか家賃1000000とかのマンションって、住むのは芸人ぐらいだよね…あほくさ

 

「ただいま~!!」

 

そう思っているとなんかアホな声が店内に響く。

なんか聞いたことのある声だなと反応して、入口を向く。

 

「もう、お姉ちゃん、また店番を押し付けて!!」

 

「ごめんね、雪穂…海未ちゃんに借りてた参考書を返すの忘れちゃって…全然使った形跡とか全く無くてテスト勉強してないのが分かると怒られちゃって」

 

「自業自得だよ」

 

神田明神でダイエット頑張ってた女の子が、しっかりものの小学生の妹に怒られてる。

妹の方、ぷっつんしなければ良いんだけどな…仕方無いって妥協して、親も仕方無いって姉を諦めて、妹に色々とやらせてるみたいだし。

 

「すんませ~ん、お茶のおかわりください」

 

「あ、は~いっと…お姉ちゃん、早く着替えて交代してよ」

 

「あ、うん。待ってて」

 

はじめてくるけど、ここの饅頭結構美味しいね。

この時期はケーキ屋とかアイス屋とかに行っちゃうから、食べないけどもやっぱり和菓子は良い…けど、煎餅とか売ってる店って中々無いんだよな。

 

「ど、どうぞ」

 

「あんがと…あ、栗あん三つ追加出来る?」

 

「あ、はい……円です」

 

「五千円からで」

 

うん、うん…美味しい、美味しい。

 

「……」

 

「お姉ちゃん、遅いよ」

 

「ちょ、ちょっと今話しかけないで欲しいかな…うん…」

 

店の奥から出てきたけども、ゆっくりとしか歩けない女の子。

そう言えば、お腹回りが大変な事になっててダイエットしてるんだったよね…久々に店番の時に着る制服を着たら、デブってたとかそんな感じだね。

 

「取り敢えず、彼処の人に栗あんのを」

 

「う、うん…って、あれ?」

 

「栗あん、プリーズ」

 

「えっと…何時も神田明神で走ってた、人だよね?」

 

「今頃気付いたの?」

 

幾ら外人とかしっちゃかめっちゃかの東京で、髪の色が赤とか青とか紫とか黄色とか緑色とかが当たり前の世界でも2メートルごえの奴なんて早々にいないよ。

俺の事に気付いたア穂乃ちんはなんか嬉しそうな顔をしているけども、早く栗あんをちょうだい。

 

「良いの、饅頭だけどスイーツだよ!カロリー、滅茶苦茶あるよ!糖質とかスゴいよ!」

 

「自分の店の商品をそこまで否定的なの、はじめて見たよ…」

 

お菓子になにか恨みがあるんじゃないかと思えるぐらいに否定的な女の子。

ダイエットの食事制限とかで辛いんだろうね。だからって、俺に当たらないで欲しい。チートデイとかして、その日を楽しみにして生きれば良いと思うよ。

 

「俺は食べても太らない体質と言うかむしろ食べないと駄目なの…ダイエットどころか、デブエットしなきゃ駄目な感じ」

 

「デブ…エッ、ト…」

 

「ああ、俺の栗饅頭!?」

 

デブエットの事を知ると栗饅頭を持っていた皿を落としたア穂乃ちん。

皿は見事に割れて、破片は栗饅頭に刺さり、刺さった栗饅頭はコロコロと転がっていく。

 

「お姉ちゃんなんの音って、ああ!?」

 

「ゆき、ほ…」

 

「お皿を割っちゃって…お姉ちゃん?」

 

「ねぇ、雪穂…ダイエットって分かるよね?」

 

「え、あ、うん…それが」

 

「デブエットって、なんなの!!

穂乃果、おかわりとか我慢してお菓子も我慢して、苦いお茶にして必死になってるのに…あれかな、背かな、いや女の子だからおっぱいなのかな?海未ちゃんみたいになんも無いわけでもないし、ことりちゃんみたいに大きいわけでもない中途半端だから」

 

「お姉ちゃん、痛い、肩、痛いよ!!」

 

デブエットの事を知り、つい妹に当たってしまい肩を物凄い力で掴んでしまう。

目がなんかハイライトで光が無い感じで、殺意は無いけど憎悪ありありのオーラを纏ってる。

日頃の不摂生な生活がデブの原因なのに、当たるのはよくないよ。うん。

 

「ねぇ~俺の栗饅頭は?」

 

取り敢えず、妹の方を助けるべくア穂乃果ちんの脇を掴み持ち上げる。

女の子を持ち上げるのははじめてだけども、軽い…いや、違う。

 

「別にキツいとかそういうんじゃないけどちょこっと重い…」

 

決してキツいとかそういうんじゃない。

これぐらいならバーベルあげの方が重いんだけども、ちょこっとだけ重い。

 

「男性の平均体重…より上?」

 

「ぐふぉう…」

 

俺の言葉に、白目を向いて真っ白になるア穂乃果ちん。

 

「やめてください、お姉ちゃんのライフはもう0なんです!!お腹のライフはパンパンですけど!」

 

「大丈夫、大丈夫…ライフ0になっても残り二回を勝利すれば勝ちだから」

 

アニメとかじゃ一回勝負だけど、現実だと基本的にマッチ戦だからね。

て言うか、いい加減にライフ8000でスタートしないかな、シナリオ構成作家さん、8000じゃ出来ないとか甘えてるよね。ガチ過ぎたら面白くないとか、駄目だって。

 

「それよりも、新しい栗饅頭を…あ、追加でモナカ二つね」

 

「まだ食べるの!?」

 

「食べないとやってらんないよ~」

 

そう言い、ア穂乃果ちんを降ろしてソファー席で眠らせると椅子に座りお茶を飲む。

饅頭もそうだけど、良いお茶使ってるよね。東京だから一級品はなんでも揃うから、手を抜いてない証拠だね。

 

「うぅ…太らないとか反則だよ…」

 

「まぁこれも生まれ持った才能ってやつだよ、大丈夫、大丈夫。

君は、ううん、君達姉妹には別の良いところとか才能とかあるからね…多分だけど」

 

「多分って…」

 

「てか、俺を相手にしてて良いの?」

 

「ああ、大丈夫、大丈夫…今の時期はお店がものすごーく、暇だから」

 

店番をしないといけないけど、全く店番らしいことをしていないア穂乃果ちん。

よくよく周りを見れば店には俺しかいない。この時期じゃこれは当たり前だと呆れている…まぁ、物凄く暇だから小学生に店番をさせてるんだよね。

 

「代わりにお母さん、配達とかに行ってる。

この時期は直接購入よりも配達の方で、忙しくて」

 

「ふ~ん…」

 

店で直接購入客は少ないけど、配達とかの受注は滅茶苦茶ある。

潰れない布団屋とか同じ理論…いや、客足はあるっぽいから、波が激しい店かぁ~

 

「ねぇねぇ」

 

「なに、今そこそこ忙しいんだけど?」

 

「ごめんね…でも、名前を聞いておきたいかな~って…よくよく考えたら、名前を聞いてなかったからさ」

 

「ん~紫原睦だよ…」

 

「私は高坂穂乃果よろしくね、むっくん!」

 

むっくん、か…よくよく考えれば、黒と桃色はこの世界には居ないんだよね…代わりに、別なのはいるけど。



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お中元は王道でも酒でもなく、奇をてらったものでいくのが一番

「おはよ~」

 

「ん、おはよ」

 

饅頭屋でア穂乃果ちんと出会い、約一ヶ月ぐらいかな?

日々の積み重ねのお陰か全員ウエストが引き締まって、なんとか元に戻ったみたい。

停滞期が来ないように、一日だけ好きなだけ食べる日を用意した方が良いって言って正解だったね、うん。

けど、ダイエットならぬデブエットしないといけない身なのを知ると完全に俺を目の敵にしたから困るよ。俺、悪くねえし、むしろ食費かかるって親から小言が来るんだし。

 

「あれ、何時もの二人は?」

 

何時も通り、神田明神まで走ってきた。

この一ヶ月間はダイエットの為にと必死になって頑張っていた三人だけども、珍しく一人だけ。ゆるふわ系の女の子だけしかいない。

 

「海未ちゃんも穂乃果ちゃんも痩せたから、もう大丈夫だって。

朝と夕方走ってばっかで、二学期の中間で点数がちょこっと下がっちゃって勉強の方を」

 

あ~そうなの。

そう言えば、饅頭屋で勉強してないどうのこうの言ってたね。

俺、勉強しなくても授業聞いとけばどうにでもなるから、よくわかんないけども勉強+ダイエットって精神的に苦痛だね。

 

「昨日、その一口がデブになるって言葉をお母さんから言われちゃって…」

 

「なら、その考え方が何れ出っ腹になるって言い返しなよ。

大人になれば新陳代謝とかそう言うのが弄くってない限りは弱くなるんだから…最悪、あ、白髪って一言が年食う人に最も効く言葉なんだから」

 

寄る年波には誰も勝てない。

赤ちん達は実年齢、スゴいクソジジイだけども、赤ちん達だから未だにヒャッハー出来てる。ああ言うのって、スゴいよね。

 

「あはははは…言ったら、お小遣い無しにされそう

それでね、ことりは成績が下がったりしなかったからこのまま続けようかな~なんて」

 

「ふ~ん…良いんじゃないの?

油断して、またトリオ漫才繰り広げて笑われるのもどうかと思うし」

 

「っむ、トリオ漫才なんてしてないよ!!」

 

アレをトリオ漫才と言わないならなんて言うんだろう…尊いとか女神だなとか?

まぁ、ダイエットなんて割とデリケートな部分な所に触れようとする俺が悪かったね、うん。

 

「でもまぁ、大変だよ?

ただただ、走ったりお腹ヘコませたりするだけの、くっそ地味な事は…主に暇で退屈なのが」

 

こういう時に携帯の音楽って、便利だよね。

音楽聞きながら勉強するなとか言うのはダメだよ、集中できないし。

うちの学校もそうだけど、何処の学校の英語も受動的で能動的じゃないから成績優秀の後藤くん、英語の勉強できるけど、実戦じゃ糞の役にもたたないし。

 

「大丈夫だよ!」

 

ダイエットが苦痛じゃないのか、ニコニコ顔の女の子。

まぁ、本人が苦痛じゃないのは良いんだけども日々の積み重ねのせいで腹筋バッキバキになったら…いや、逆に面白そうだな~こんなゆるふわ系の女の子が筋肉バッキバキとかむしろ見てみたい。

 

「どうかしたの?」

 

「ん~…思いっきり運動できる場所が無いかなって…まぁ、なにやっても誰が相手でも捻り潰せちゃうから」

 

もう既に引退しちゃったから、仕方ないけどそれなりに長い間試合をしてない。

暇だから他の部活の大会に参加して優勝したりするけども、こんなんじゃ室●広治越え出来ない。腕の力だけで150キロ代を出せる漢にならないと。ぜってー越えてやる、室伏。

高校進学してもこんな感じだろうな、今まで潰した相手をもう一回、潰すだけの作業ゲー

 

「そ、そうなんだー…そう言えば、名前を聞いてなかったね」

 

「紫原睦だよ…あれ、て言うか自己紹介してなかったっけ?」

 

俺の言葉に若干引いているけど、話題を変えるゆるふわガール。

一ヶ月間、毎日とは言わないけども週に4回以上は顔を合わせてるのに名前を聞いてなかった事に今気づく。

 

「一回もしてないよ。

…何時の間にか穂乃果ちゃんと仲良くなってて、あだ名で読んでるだけだよ、あっくん」

 

「…あっくん?」

 

(あつし)だから、あっくんだよ、あっくん!」

 

あっくんか…そう言えば、下の名前で呼ばれるのって中々無いね。

降ちんには一回、マジで下の名前を忘れられかけた事もあるし、赤ちん達と居るから戦隊ものとか言われたりするし…紫の戦隊って片手で数えるぐらいしかいないし。

まぁ、とにかく改めて自己紹介をして親睦を深める俺達。受験勉強シーズンだけど、こんなんしてて大丈夫かって?大丈夫、大丈夫…基本的に成績は4以上だから。

 

「そろそろ時間かなぁ…」

 

柔軟を手伝ったり、手伝って貰ったりして時間を潰しているとアラームが鳴った。

お昼御飯のアラームじゃなくて、時間が来たと言う知らせのアラーム。もうこんな時間か、やっぱり一人よりも二人だと、早く感じる。

 

「ことりちん、そろそろ時間みたい…」

 

「もう帰っちゃうの?」

 

「うん…引っ越さないといけないからね…」

 

「え!?」

 

「…引っ越しの為に色々とやらないといけないことがあるんだよ…」

 

「引っ越しって、何処に」

 

「別にそんなに遠くない距離だよ。

入る高校決めたら、一人暮らししろとか五月蝿くてさ…本当になんでだろ?」

 

赤ちん達も一人暮らししないといけない状況になったのも謎だし、本当になんでだろう。

確かに学校は家から結構な距離があるけど、チャリを使えば…ああ、でも朝練とかもあるし、引っ越すのもありかも。

 

「一人暮らしか~憧れちゃうな~」

 

「そうやって憧れる人ほど怠惰な生活を送ったり、一人で生活できるか怪しかったりするんだと大人目線から言っておくよ…んじゃあね~」

 

「ばいばーい……」

 

ん~なんか嫌な感じがするけども気のせいだよね

 

「何時も帰るときと来る時も右側から来てる。

けど、今日は左側から帰ってる…引っ越し先は左側の方だから、私達の家が近い…いけるかな…ううん、頑張らないと…ことりのおやつにしちゃわないと…穂乃果ちゃんが言うには美味しいものならなんでも食べるらしいから…うん、頑張らなきゃ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんなこんなでなんか良い感じの事故物件、見つけることが出来た。

学生の一人暮らし向けの物件で、元から色々と揃ってる感じの奴でルームシェアじゃない。

マンションの最上階の一番端で、都会の波に飲み込まれて薬で自殺した部屋。

 

「紫原、分かってっと思うけどもエロ本は電子書籍にしておけ。

大阪ならそこら中に自販機置いてあっけど、此処は天下の東京様だからな」

 

「青峰、お前はなにを言っているのだよ!!」

 

「ミドちんは、そう言うのとは縁遠いよね…糞真面目すぎてふられそう」

 

「あ~勉強もスポーツもなんでも出来るから逆に引くって引かれたみたいっすよ。

てか、さっきからなんか滅茶苦茶重いんスけど!!絶対誰か跳び箱を運ぶ時に運ぶふりしてる奴いるッスよね!!」

 

学生の一人暮らし向けの物件の確保は死闘だった。

何せ此処は天下の東京、地方から上京して良い大学に入ろうとする生徒は五万といる。

あのT大をはじめとし、色んな学校があり俺達全員、引っ越しをしている。

 

「いや、流石に疲れたし~、自分の分ぐらい誰かに屋って欲しいよ」

 

「オレ達はまだピンピンしてっけど、あの人は筋肉痛で死にかけていたな。

まぁ、成績は悪くねえみたいだし1日、2日休んだぐらいでどうってことねえよ…多分だけど」

 

赤ちん達が住むところ同じだから、そっちを先に作業してた。

赤ちんのは持ちマンションだから家具が揃ってるとかそんなのは無くてIKEAで色々と揃えたりして、作んの凄い時間かかった。

 

「まぁ、大体こんなもんか」

 

全ての荷物を入れて、服とかタンスに叩き込み終えて一息つく峰ちん。

いや~やっと~終わったね~…夕飯は赤ちんの奢りの焼肉。元は取るぐらい食べないと。

 

「紫原っち、お菓子持ってないッスか?」

 

「茶請けの饅頭ならあるよ」

 

ア穂乃果ちんの店で貰ったやつ。

デブエット云々とダイエットに付き合った事とかのお礼とかどうとかで、貰った。

 

「お茶無しのあんこっすか…キッツいスけどください」

 

「オレにも一つくれ」

 

「おい、待て。

お前、それはお隣に引っ越ししてきたと挨拶するようではないのか?」

 

饅頭の包装をビリビリと破くと出てくるお饅頭の詰め合わせ。

相変わらず旨そうな饅頭で、ミドちんにも渡そうとするとこの饅頭が食べて良いものかを聞いてきた。

 

「馬鹿だな~ミドちんは、このご時世食べ物系はまずいよ。

アレルギー持ちとかいたら、俺責任取れないんだから…饅頭系のアレもちとかダメでしょ」

 

「饅頭アレルギーなんてあるんスか?」

 

「馬鹿、お前、蕎麦か小麦粉アレルギーとかだろ。

けどまぁ、食べ物とかはな…夏の、お中元の素麺大処理会がな…」

 

苦虫を噛み潰したかのような顔の峰ちん、それに続くかの様に皆嫌な顔をする。

うちの中学は文武両道、全国区の部活がいくつかあってバスケ部は言うまでもないけどもとにもかくにも食べ盛りの連中が多い。

俺達が今年引退で今までお疲れ様でしたと、他の部活も合わせて全戦全勝常勝無敗の引退式をしたけども素麺ばっか、確実にお中元の素麺処理大会になった。

 

「大家族でもないのに11人前の素麺×2をお中元で送ってこられても困るわマジで。一人っ子だぞ、オレ」

 

「ふん、食えるものだけまだましなのだよ。

俺の所はビールを送ってくる、妹と俺は当然のこと、まともに飲めるのが父なのを知っていて、しかも酒が抜けるのが遅いのを知っていて送ってくる、完全なる嫌がらせなのだよ。」

 

どこもかしこも大変なんだね。

うちはハムとかだから、本当によかったよ…ストレートにお中元いらない、手紙もいらない。

もう大人同士で会って、酒でも飲んでこいって感じだよ。

 

「そう言うな、送ってくれる相手がいるだけだ良いことじゃないか」

 

「赤ちん、遅かったねー」

 

藤原佐為の格好をした赤ちんが奥の部屋から出てきた。

俺の部屋は事故物件で、ただの事故物件じゃなくて悪霊も出てくる事故物件。

引っ越しの荷ほどきとかを俺達がやってる間に、赤ちんがこう、破っ!をやってた。

 

「予想以上に手こずってしまった。

やはりラブライブの世界では何億倍も弱体化しているみたいだ」

 

「いや、此処はバトルものじゃないッスからね…」

 

それ以前に俺達、肉体的なスペックはくっそ高いけど。

取り敢えずは隣に引っ越ししてきたって言う引っ越し祝いの温泉セットを渡さないと。

 

「え~此方は1LDKの部屋で、東大をはじめ有名な学校の生徒も住んでいた部屋です」

 

赤ちんが着替えている間に大家さんとお隣さんの分の温泉セットを手に、部屋を出ると大家さんと不動産の人と…綺麗で胸が大きな女の子とその子の親がいた。

 

「どうも~…大家さん、これ引っ越しの挨拶です…」

 

「あぁ、どうも…温泉セットですか、これから物凄く冷えるので助かります」

 

大家さんに後で連絡するのが面倒だから、今渡す。

温泉セットだと分かると嬉しそうな顔をする大家さん。

洗剤にしようかと思ったけども、愛用メーカーと違ってたら困るから温泉セットにしてよかった。

 

「えっと…」

 

「ああ、此方は紫原さん。

君と同じで、春から高校生になる子で隣の部屋の住人だよ」

 

「…あっれ、隣の部屋って住んでないの?」

 

安くて手頃な事故物件を探し求めてたから、その辺は知らない。

少なくとも、結構良い物件…高級マンションの味を知っていなければだけども。それでも良い物件。

 

「あ、うん…て言うか、この階と下の階は」

 

あ~事故物件の隣と真下は物凄く嫌だよね。

いや、事故物件っていう時点で家賃安いんだよね、うん。

 

「…紫原睦です…よろしくね…」

 

胸が大きな綺麗な女の子とその母親に挨拶をする。

 

「あら、よかったじゃない。

お隣さんも来年から高校生で、男の子でこんなに大きくて…大きい」

 

隣も男子で同年代でよかったって娘に安心感を与えようとするけども、出来てないね、うん。

目付き悪くて、図体がデカいから大きいなと圧巻されてる。

 

「紫原、なにをしている。

青峰達がそろそろ終わらないかと下で待っている、ぞ…」

 

動くに動けない状況で、空気を変える存在が赤ちんがやって来た。

んだけども、親娘の顔を見て少しだけ固まり直ぐになにかを考えている。

この時の赤ちんはろくでもない事しか考えてない、俺達に牙は基本的に向かないし手遅れな負傷とかは無いけど、なんか嫌な予感しかしない。

 

「えっと…この部屋に住むの?」

 

その前にどうにかしようと女の子の方に声をかける。

女の子は一歩だけ後ずさるけれども、直ぐに口を開いた。

 

「う、うん…」

 

「よろしくね~、なんか困った事があったら言ってね…雑用とか普通にやるからね」

 

「やれやれ、美人を相手に鼻の下を伸ばすとは…紫原を思う存分にパシリにして構わないよ」

 

「伸ばしてねーし、赤ちん適当な事を言うなし。女性に優しくするのは普通じゃん」

 

そう言うのには敏感なのに、なんか今日は厳しいな赤ちんは。

浮いた話が無いからか…それとも、この女の子がさっきからずっと悲しそうな顔をしているのが原因に気付き、怒ってるのか…う~ん…まぁ、いいか。

 

「気が早いかもしれないけど、引っ越しの挨拶、温泉セットです」

 

「え、普通は逆じゃないん!?」

 

温泉セットを渡すと慌てる女の子。

ああ、確かにそうだね。俺は既に引っ越してて、この子はまだ引っ越していない。

母親の方はもう此処にする気満々みたいだから引っ越すのは確かみたい。

 

「じゃあ、仲良くしようって言う挨拶ってことで…あ、名前を聞いてなかったね」

 

ことりちんみたいに、一ヶ月ぐらい名前を聞かないパターンはダメだ。

同じ鉄を二度踏まない為にも聞くと、クスリと笑う女の子。

 

「希、東條希や」

 

「短いようで長い付き合いになるからよろしく~」

 

「よかったな、紫原、お隣さんが絶世の美女で」

 

「そんな綺麗だなんて」

 

「因みに僕は赤司征十朗

時折紫原の部屋に入ったりするが、気にしないでくれ…後、駄眼鏡とチャラ男とガングロ卵も」

 

「赤ちん、もう行こう。

流石に朝から色々とやってたせいで、お腹吸いたよ…店の経営を捻り潰すぐらい食べたい~」

 

「ああ、行こうか」

 

そんなこんなで温泉セットも処理し終えて、焼肉に向かった俺達五人。

お隣さんが美女だったことを峰ちんに言うと、なんか呆れられていた。黄瀬ちんはめっちゃ羨ましがってたよ。

 

「やはり原作と引き合わせる運命力は強いな。

引っ越した筈なのにお隣さんが出来るなんて、しかも一瞬にして好意的で紫原も紫原で色々と見抜いていた…まぁ、僕はそこまで深く関わらないし紫原もそんなに興味なさげだから問題ないか…しかし、これでもう顔合わせパターンは紫原に向かい、僕は時折出てくるけどもそこまでなポジに…ふぅ…紫原を生け贄にして正解だった」



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人気者の下の名前や本名が浮かばない時ほど哀れむ時なし。

引っ越しの打ち上げの焼肉は盛大で楽しかったけども、出入り禁止をくらった。

ムカついたので本社に軽く苦情を入れると出入り禁止は解除され、御詫びの品が届いた。

食べ放題で赤字でるから出禁とかマジ意味分かんないし、食べ盛りの学生舐めんなし。

 

「お、おはようございます!!」

 

「おはようございま~す!」

 

何時も通りに神田明神に向かうと、ことりちんと友達の…綺麗系の女の子がいた。

 

「……紫原睦だよ~」

 

「え、あ、はい…」

 

「もう、海未ちゃん、自己紹介」

 

「…そう言えば、していませんでしたね。園田海未です」

 

自己紹介をしていなかった事に気付くと、ペコリと頭を下げる海未ちん。

一礼の姿勢だけで良い育ちをしているのがよく分かる。

 

「よろしくね~海未ちん」

 

「海未ちん!?」

 

「……よろしくね、園田さん」

 

下の名前で呼ぶと驚き慌てふためく園田さん。

箱入り娘なのか、男性との触れあいとかそう言うのが無いのか顔を真っ赤にしている。

なんか悪いことをした罪悪感みたいなのが出てきたので、呼び直す。

 

「…改めてよろしくお願いします…紫原、さん」

 

「呼び捨てで良いよ、なんか背筋がぞわっとする。呼びにくかったら、睦で良いよ」

 

さんを付けられると背筋がなんかぞわっとしてケツの穴がキュッとする。

日頃から名字とかで呼ばれてる人が、急に下の名前で呼ばれて感じる違和感と同じだね、うん。

 

「下の名前だなんて、そんな…破廉恥です」

 

乙女とかの騒ぎじゃないよ。

 

「ごめんね、あっくん。海未ちゃん、男の子が苦手で…」

 

「あっくん!?」

 

「ことりちん、見たら分かるよ…」

 

「ことりちん!?

ことり、何時の間にそんな関係に…そう言えば穂乃果も何時の間にかむっくんとあだ名で…まさか…いえ…私だけ…一人…」

 

あだ名で呼びあう関係だと知り、破廉恥ですと叫び出すかと思ったけど違った。

なんだか悲しそうな顔をしてぶつぶつと呟いており、おいてけぼりをくらった感じ。

けどまぁ、本人の口から海未ちんで良いよと言うまで絶対に変えない。なんかそっちの方が面白そうだし。

 

「園田さん、なんで今日来たの?」

 

これ以上は掘り下げるのはまずそうだから、話題を変えよう。

 

「っ!?」

 

それと同時にまたなんか驚く。

俺の大きさに驚くんじゃなくて、ことりちんに驚いてる…なんかおかしな事を言ったかな…なんも言ってない、うん。

 

「海未ちゃん、勉強しなくて良いの?もうすぐテストだよ?」

 

ことりちんもなんで来てるのかが分からず、聞く。

また油断してデブったとかそんなんじゃないよね。

 

「…い、息抜きを、ええ、そうです。

息抜きをしようとしていたんですよ、暖房を効かせた部屋でぬくぬくと勉強していたら体が鈍ってしまいますので…」

 

ことりちんが聞くと更に挙動不審になった海未ちん。

それと同時になにかに気付いたことりちんは笑顔のまま海未ちんに一歩だけ詰め寄る。

 

「海未ちゃん、息抜きしてて大丈夫なのかな~?

前に穂乃果ちゃんと一緒に点数結構下がってたよね?」

 

「…」

 

目線どころか顔を合わせようとしない海未ちん。

…あ~うん。

 

「園田さん、なんか変な事を考えてない?」

 

気まずそうな顔の海未ちん。

テストの点数の事を指摘されたから気まずそうな顔じゃない、この場に居て良いのかと言う顔。

ことりちんは海未ちんを完全に邪魔者扱いをしており、さっきまでの情緒不安定な感じも海未ちんが勘違いをし、ことりちんはそれに気付いて余計な事をしている。

 

「ただただ、走ってる場所が一緒なだけ。

別にそれだけの関係で、知人程度、顔見知り程度の関係だよ?」

 

「「…」」

 

間違いを指摘すると、なんか冷ややかな目で俺を見る園田さんとことりちん。

女性に冷ややかな目で見られると言うのは中々に無くて、容姿が良い二人にそんな目で見られると滅茶苦茶怖い。俺は逃げる。

二段飛ばしとかで全力で駆け抜け、境内に入った。

 

「…顔見知り程度…」

 

「まぁ、実際、此処でしか会いませんし…まさか面と向かって堂々と言われるとは思っていませんでしたが」

 

「うぅ…何とかして近付かないと…こういう時に穂乃果ちゃんが居てくれたらな……」

 

「ダメです、穂乃果は雪穂の監視の元でテスト勉強中です…このままだと補習漬けになりかねません!!」

 

「穂乃果ちゃん、一人で勉強出来るのかな?去年もそれで最終的には海未ちゃんが頑張ったような…」

 

とまぁ、なんか色々と怖かったり重かったりする会話をしている中、俺は駆け抜けていき賽銭箱付近についた、そしてミドちんが目に入る。

 

「あれ、ミドちん…なんでこんな所にいんの?」

 

「…紫原か。

俺が何故此処にいるのかだと?決まっている、合格祈願だ」

 

「…神田明神はどっちかと言えば勝負事とか縁結びとかで、そう言うのは湯島天神でするでしょ…てか早すぎでしょ」

 

まだ12月にすら入ってないのに、余りにも早い。

それ以前に神田明神は学問系の神社じゃない。その事を指摘すると呆れてため息を吐いて眼鏡をクイっとさせるミドちん。

 

「紫原、お前は地獄でなにを学んだ?

日本人は宗教感覚は世界一緩いとされ、八百万の神は巫女をバイトとして雇わないといけない現代に呆れているが八百万の神は祈られてなんぼの存在で、祈り深い者からご利益を与える。

故に今から試験当日まで毎日毎日祈り、境内の清掃のボランティアに参加をしある程度の媚を売っておくのだよ」

 

「…いや、それだったら湯島天神じゃん」

 

「話を最後まで聞くのだよ。

俺達はスポーツだけではない、文字通り文武両道の学生だ。

赤司が学費の事なども気にし、私立ではなく公立を選んでおり少しランクが落ちている…合格するのは当然なのだ、問題は1位になるかならないかだ!赤司を追い越し、1位になり挨拶をする!!その為には、さらばだ!」

 

財布から二千円札を取り出し、賽銭箱に投げ込むミドちん。

修学旅行で手に入れた二千円札投げ込むとか、気合い入ってる…

 

「そこは諭吉じゃないの?」

 

「馬鹿め、神様にばかり頼っていてどうする?

最後は自力でどうにかしなければならないのだよ。あくまでもこれはバトルフィールドを整える為だ!赤司にも俺にも不利なものが来たらフェアではない、ガチンコ対決で勝利するためだ、千円は赤司に普通なのを、もう千円は俺に普通な問題を出すようにと言う意味だ」

 

「…一周回って馬鹿だね」

 

「なっ!?誰が、馬鹿だ!」

 

ミドちん、黄瀬ちんとか峰ちんとかも絶対に馬鹿だと言うよ。

バカとテストと召喚獣みたいにテストの点数の上限が無いんだったら良いけども、百点満点のテストと面接だよ?

点数被ったら、生徒会長でバスケ部主将と副会長とバスケ部副将だったら何処もかしこも赤ちん選ぶよ。

 

「ところでさー」

 

「話をずらす……いや、なんだ?」

 

「原作って、何時始まるの?」

 

何時もは気にしないんだけど、今日は何故か気になった。

ことりちんと園田さんのせいだと思う。

原作が何時始まるのか気になったので聞いてみると、また眼鏡をクイっとさせるミドちん。

 

「どういう風の吹き回しだ?」

 

「ん~なんとなく?」

 

「…知ってはいるが、赤司が教えないと言うのならば教える義理は無い。

少なくとも、放置していても問題無く人知れずお前の元にやって来る…生け贄とはそういう意味なのだよ」

 

「別に赤ちんに生け贄にされたことは気にしてないよ。

むしろミドちんとかが行ったら確実に殴りあいになりそうだよ」

 

「おい、それはどういう意味だ?俺だと失敗すると?

失敗しそうなのは俺よりも赤司や青峰だ、赤司は生涯独身で女は風俗で良いとストレートに言い、青峰は過去に地雷を踏み抜いて恋愛はひっそりと静かにとしている」

 

「じゃあ良いじゃん。

女性のグループに男子入れて変な亀裂を入れるよりましじゃん…あ、黄瀬ちんは」

 

「あれは、勝手にラブコメを繰り広げているか三枚目に収まる」

 

まぁ、黄瀬ちんはその辺で収まるよね。

彼女よりも友達を優先するタイプで、女の子に顔が良いだけって一回言われたもんね。

女の子にわーきゃー言われるのは正直面倒だって言ってるし。

 

「待ってぇ、あっくん!!」

 

「…俺はもう帰らせてもらう。

入試で1位になる前に期末テストで1位になってみせる!!」

 

「ん~今年最後のテストだし、俺もちょっと勉強しよっかな?」

 

授業出とけばちゃんと80点取れるけども、中学生活最後の二学期末のテストだし本気出そう。

神田明神の社を背に、必死になって階段をかけ上がってきたことりちんと海未ちんにもう帰る事を伝えると、少し固まって怖い顔をした。

 

「自分で自分の首を絞めていたとは…いや、そこはどうでもいいか。

何時の間にか好意的になっているな。痛々しい中二病的な過去は一切なく、短い時だが善人でコロッと…女性ばかりで男耐性0なのか?」

 

ミドちん、うっさい。



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Q 仕事と家族、どっちが大事なの! A 仕事

「…ん~」

 

一人暮らし用のマンションに色々と運び込んだけども、まだまだだ。

そもそもの話で志望校合格をしなければならない。期末テストで学年8位を取ったので、進路関係の教師とか担任に問題なくいけるって言われた。

赤ちんやミドちんはバスケが滅茶苦茶強いところは勿論だけど、国立とかの頭良い感じの勉強系の学校からも勉強枠かなんかで推薦を受けてた。

黄瀬ちんは相変わらず普通、だけどもまぁ、受かるっちゃ受かるかな。

 

「うるっさ…」

 

休む時はとにかく休まなければならない。

どっかの偉い人は、一日サボれば自分が、二日サボれば批評家に、三日サボれば素人にヘタクソになっていることがバレるとかどうとか言った。

そのせいかどうかは知らないけど、一日サボれば、取り戻すのに三日掛かるとか言うけども、何事も程好くしないと駄目だね。

プロならば、毎日練習漬け出来るけど俺達は学生で背丈的な意味で成長段階を迎えており、ハードすぎる特訓はしても良いが、毎日は体に毒であり、むしろ絶対に休まないといけない日がいる。後、ブラック部活対策でも休まないといけない。

 

「さっきからなんなんだよ…」

 

そんな休まないといけない時に俺は休めなかった。

この前、そこそこの値段の耳栓を壊してしまい100均の耳栓をつけて寝てたけどもなんか五月蝿くて眠れない。

イライラしながらもゆっくりとキングサイズのウォーターベッドから降りて、一先ずは顔を洗う。

 

「下じゃなくて隣から…………?」

 

下や近所の子供が五月蝿く騒いでいたり、何処かで祭りでもしているのかと思ったけどそうじゃない。

隣の部屋だと顔を素早く洗い、身嗜みを整えて外に出ると引っ越し業者とノゾちんがいた。

 

「…ん~…んん?……?……」

 

「あ、えっと……」

 

ふと頭にあることが浮かんだけど、直ぐに頭から消えた。

ノゾちんが俺に気付いて、なにかを言おうとしている…いや、そうじゃないのかな?

 

「紫原睦だよ」

 

「そう、むっくんやんな!!」

 

完全に俺の名前を忘れてたよね。

けどまぁ、仕方ないよね。紫原って、1000人にも満たない名字だし名前よりも俺の背丈の方がインパクトあるよね。

 

「一応、引っ越ししてきたって挨拶をしようとインターホン鳴らしたんやけど…」

 

「寝ようと耳栓してたから聞いてないよ、ごめんね。

それよりも、なんか手伝うこと無い?力仕事とか手伝うよ?」

 

「大丈夫やで、最近の引っ越し業者は荷ほどきもしてくれるから」

 

「あ~そうなの?」

 

その辺は父さんが勝手に決めてたし、最終的に金出したの親だから知らないや。

………う~ん………

 

「どうしたん?」

 

「……なんでもない」

 

「なんでもないはずないやん。

さっきからなんか言いたそうな顔してるし…あ、むっくんもしかして手伝いや言うて、うちの部屋に入りたかったの?むっつりやな」

 

「…ノゾちん、ノゾちんが美女なのは認めるよ。

出るとこ出てるし、性格も問題無いけど……無いわ」

 

俺はこんなんだけどモテるんだよ。

赤ちんは生涯独身で風俗に行くと堂々と言ってるし、ミドちんは一回フラれてるし。

顔そこそこで成績優秀で、スポーツは世界レベルとかモテるんだよ。元いた世界じゃ怪しいけども。

一番は顔は誰にも負けない黄瀬ちんだけど、黄瀬ちんはその辺はどうでもよさげ。

よくあるイケメンキャラがブサイクの気持ちも知らずに顔ではなく内面を見てほしいとほざかない、単純に性欲よりも青春が強い感じで、ワーストは峰ちん。

 

「むぅ…全然ノって来ないねんな」

 

顔を真っ赤にするか、慌てるかの反応を見せるかと思っていたノゾちん。

だけど、そう言う反応を一切見せないどころか言い返されて若干焦っており、まずかったなと思う。

 

「俺にそう言うの求めても無駄無駄…こ~んな、マイペースだから」

 

今も昔も変わらずに自分ペース、だから紫原なのかもしれない。

赤ちん達はそれがお前の個性だって言うけど、熱くなったり出来ないのってやる気無いって見られるんだよね。

 

「……」

 

「どうしたん?」

 

「え~っとね……う~ん…」

 

「もう、男らしくはっきり言ってーなぁ」

 

どうしても腑に落ちないと言うか、頭に残っている事がありついつい考えちゃう。

ノゾちんはそんな俺を見透かしている…けど、なにを考えているかは分かってないみたい。

適当な事を言っても、どうせ見抜かれるだろうしこの際だからハッキリと言ってやろう。

 

「ノゾちん、大丈夫?辛くないの?」

 

「…」

 

パリピみたいにヘラヘラとは笑ってはいない、だけど何処か余裕がある感じのノゾちん。

だけど、どう考えても余裕がない。赤ちんは頭良いし、そう言うのに敏感だから直ぐに良い対応をするんだけど、俺は赤ちんじゃないから、ストレートに言うしかない。

 

「大丈夫って、なに言うて」

 

「幾らなんでも早すぎるよ、ノゾちん」

 

12月に入ったものの、まだ年明けしていない。

今時高校生が上京したりして、一人暮らしするのは当たり前だ。だけど、早すぎる。

受験した高校の合格が決まったら、部屋争いになる筈だから入試すら始まってないのに引っ越しなんて早いしおかしい。

ノゾちんが物凄く頭よくても、推薦が決まったぞとこの時期で暴れて推薦が取り消しになる馬鹿どもは沢山いる。

 

「…転勤族?」

 

色々と考えて、辿り着いた答えを出すと

 

「…フン…グスッ…」

 

「え、あ…ごめん…」

 

泣き出したノゾちん。

やっぱり触れちゃいけない事だったようだった。

義務教育の小中は基本的に地区で通うけど、高校は違う。高校は遠くを選んでも良い。

だから、灘高校みたいな滅茶苦茶頭の良い高校とかには遠くから受験する奴もいる。合格してから、引っ越すから…うん、聞いちゃったら駄目だったな。

 

「取り敢えず、こっちに」

 

ドライモンスターとか言われるけど、涙を流している女の子を見捨てるほどじゃない。

ノゾちんの腕を引っ張り、自分の部屋に入れてソファーに座らせる。

 

「こういう時は峰ちん…いや、やめとこ」

 

女性の扱いが何故か上手い峰ちんにSOSを頼もうかと考えるが、峰ちんも俺と同じで興味ない奴には冷たい。

他に頼んでも無駄だろうし、此処は自分の力でどうにかしないといけない。

 

「ハーブティーなんて洒落たもの無いから、ごめんね」

 

練りながら入れたココアをノゾちんの前に差し出す。

これは誰でも出来ること、問題は次。俺、格好いい事は言いたくないし言えないんだよね。

 

「…ありがと、な…」

 

気付けば泣き止み、目元が腫れているノゾちん。

入れたココアをゆっくりと飲み落ち着き、ホッと一息いれる。

 

「ごめんなさい」

 

なにに対して謝っているのか、俺はよくわかんない。

けど、ノゾちんが泣いたのは俺が原因なのは確かなので俺は頭を下げる。

 

「むっくんはなんも悪くない、急に泣き出したうちが悪いねん…けど、まさかむっくんがそんな事を言うなんて、思ってなかったわ」

 

「…その言い方だと、俺悪人なんだけど」

 

俺は悪くねえと大きく主張するつもりはないけど、何処かトゲがあるノゾちん。

傷口を抉ったのはやっぱりまずかったかと考えていると、ごめんごめんと謝る。

 

「…うちな」

 

「はい、ストップ。そう言うのは良いから」

 

「え!?」

 

自分の昔の事を語ろうとするノゾちんだけど、俺は止める。

大体、なにを語るかは分かる。転勤ばっかして友達とか居ないとかそういう感じのアレだよね。

 

「転勤族の苦しみとか、あんまり興味無いから…聞いても、同情とか一切しないと思うし…ただ、ノゾちんが大丈夫なのか気になったから聞いただけだし…後、大体予想できるし」

 

痛々しい過去とかそう言うのはどうだって良い。

じゃなきゃ生きてられない、一番賢くて強い赤ちんも、糞真面眼鏡なミドちんもその辺の切り替えをしてる。

 

「問題は今だよ。

今、ノゾちんが出来る事をしとけば良い…一人暮らしで、もう動かないんでしょ?」

 

「うん…」

 

俺が聞かないのを見て、諦めたノゾちん。

問題は今なのを頭に叩き込ませると、気持ちを切り替えてココアを口にする。

 

「じゃあ、そこで友達作れば良いと思うよ。

軽々しく口にしないでとか思ってるかもしれないけど、高校からの友達の方が重要だよ。

中学までは義務教育で、お受験出来る人以外は中学は地区で、高校からは学力や運動能力で別れる…大人になって付き合いのある友人は多くて、5、6人で良いって言うからとにかく本当に信頼出来て、大人になっても酒飲んで愚痴れる友達作った方がいいと思う…はぁ」

 

「な、なんでため息をするん!?」

 

「俺、こう言うの向いてないの…なんか勢いに任せていっただけだからハズい…」

 

主人公みたいに格好いい事は言えない。励ます事なんて出来ない。

赤ちん達も同じだけど、俺はその中でも一番の口下手だと思う。王動的な馬鹿主人公なら、良いことを言えたんだろうな。でもまぁ、そう言う奴ほどこの世界には向いてないけど。

 

「まぁ、とにかく頑張って高校デビューしなよ。ノゾちんは綺麗だから、モテると思うし」

 

「…うち、入るの女子校やで?」

 

「え、マジで?」

 

「あ、少子化がどうのこうので共学化するとか…でも、入らんやろうな…」

 

…それってもしかして音ノ木坂?…どうでもいいか。

俺が入るのは音ノ木坂じゃないし、ノゾちんにはノゾちんの人生があるんだし。

 

「女子校なら、女子校で便利だよ…同性同士だから友達とか作り…やすいのかな?

まぁ、とにかくズッ友って呼べる感じの友達を作りなよ…レズッ友とかオホモ逹とかは駄目だけど」

 

「むっくん、なに言うてるの!?」

 

毒を吐いてるだけだよ。

 

「て言うか、むっくんは友達じゃないねんな…」

 

「その辺はさぁ…男と女の境界線的なのがあるから仕方ないよ」

 

何処まで行っても、おネエになろうが男と女の大きな境界線的なのは存在する。

同性だからこそ分かる苦しみとかあるし、男と女じゃ好みとかも大きく異なってしまう。

 

「男同士のズッ友と男と女のズッ友は全然違うからさ…」

 

「あ……せ、せやね!!」

 

俺の言っている意味がなんとなく理解したノゾちんは顔を真っ赤にする。

男と女だからね…そう言う関係とかなるのは本当に駄目だよ…うん。本当、怒られるし。

 

「まぁ、とにかくまだ高校生にすらなってないから頑張らないとね…引っ越し祝いになにか奢るよ」

 

「ええの?」

 

「お金だけはある…」

 

男性用のブランド物の財布を取り出して、諭吉の塊を取り出す。

赤ちんがお年玉とか言って毎年くれる金。一応は同年代でどうかと思うけど、税金対策とか言ってるし、貰える物は貰わないといけない。

 

「って、宝くじ当てたんか…」

 

「ああ、これ違うよ」

 

財布の中にある宝くじを見て、宝くじで手に入れた大金だと勘違いをするノゾちん。

俺はパチンコとか株とかそう言うのは一切しない。

 

「赤ちんが軍資金だって言ってくれたものだよ」

 

赤ちんは黄金律A持ちらしいから、絶対に宝くじは高額当選する。

お年玉だと結構な金額を貰っていて更に貰えるのは嬉しいんだけど、軍資金の意味が分かんない。スポーツ用品を買う金にしては額がデカすぎる…そう言えば、この前、バスケットスタジアム建てるとか言ってたな…プロに引き抜きされるの嫌だから自らでチーム作るとか半端ない。

 

「赤ちんって、赤司さん?」

 

…一応、同年代だけどさんか、老け顔じゃなくて威圧感満載だからさん付けだね。

ノゾちんの質問に頷くと財布をしまい、空になったココアを入れていたマグカップを水に付けて外に出る準備をする。

 

「すみません、サインをお願いします」

 

引っ越し業者の事、忘れてた。

この後、サインをした後にノゾちんが焼肉を食べたいと言ったので食べ放題じゃない注文形式の焼肉に行き、それはもう結構な金額を使い、満足した。

ノゾちんは結構食べてたけど、俺は余裕でその数倍は食った…スポーツマンの胃袋は女子のスイーツ別腹をも越えるものだ。



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注射よりもインフルエンザを調べるときに鼻の粘膜を採取するやつの方が絶対に痛い

赤司の無茶振りにより、急遽高級マンションに引っ越した俺達。

地下にはスポーツジム、プール、果ては酸素カプセルまであると言う金持ち感満載のマンションに引っ越しさせられたが、志望校にはまだ受かっていない。

俺と赤司は部活動に特化した高校からも、勉強に特化したから国立からも色々と話が来ていたものの、蹴ったのが原因だろうが、目的の高校は公立で引き抜き等は来ない。いや、高校も来るとは思っていない。

しかしその程度の事はどうでも良い。首席の挨拶の役を赤司から奪うべく俺は試験で一位を取るのが今の目標だ。

そして赤司が持つマンションで、俺専用の部屋だと貰った一室での学習よりも家での学習が一番なのがよく分かった。

 

「ふぅ、一息をいれるか…」

 

受験及びその先の勉強も程よく区切りがついたので、二時間ほど向かい合っていた机から離れ一階にあるキッチンに向かった。

 

「…む…!」

 

疲れた時には甘いものだと冷蔵庫を開け、おしるこを始めとする食べ物でもあり飲み物でもある缶ジュースシリーズを手に取ろうとするのだが気付く。数がおかしいと。

おしるこ→冷たいコーンスープ→チ○ルチョコのジュース→飲むシュークリーム→ミルキー、ととにかくローテーションで俺は飲んでいる。

好みの物を集中して食べる、嫌な物を集中して食べる、好きな物を最後まで取っておかず均等に飲んでいる俺が飲み間違えるなど有り得ない。

 

「ゴミは無い、となると!!」

 

ゴミ箱を確認し飲む予定の飲むカントリ○マアムが無いとすれば犯人は決まっている。

再び二階に戻り、俺の部屋の向かい側の部屋のドアを開く。

 

「また、お前かぁ!!」

 

「ひゃ、はい!?」

 

「…お前は…誰なのだよ?」

 

飲み物を盗んだ犯人こと妹の部屋を開き、今日と言う今日こそはとドアを開き怒声を浴びせるのだが、そこには見知らぬ女子がいた。

 

「こ、高坂雪穂です!!え、えっと!」

 

「…成る程、大体わかった」

 

女子の名前を聞いた後、大体の事情が分かった。

女子が何者なのかも直ぐに判明し、少しだけどうしたものかと困る。

赤司が紫原に押し付けているのだが、それでも少しずつだが俺達にもラブライブの原作と関わる機会が、チャンスがやって来る。俺達転生者はそう言う風になっている。

 

「その、早苗ちゃんは」

 

「問題ない…そこに隠れているのは分かっているのだよ。気配でバレバレなのだよ」

 

雪穂が馬鹿妹こと緑間早苗が居る場所を言おうとするが、言わなくても良い。

曲がり角で怯えながら隠れている早苗に向かって殺気を放った。

 

「ひぅ!?」

 

「ひぃ!?」

 

「…しまった…」

 

俺達転生者は転生者になるべく鍛えられる。

バトル物の世界に転生して、殴りあいをしても問題ない様に精神を鍛え上げたり色々として殺気を放ち、相手を威圧することも容易いこと。

他にも武装色の覇気や見聞色の覇気、Gガンダム、シャア専用のザク、ユニコーンガンダム、レバーとかではなくボールの様なもので操作するガンダムの操縦、なんでも可能だ。

しかし此処はラブライブの為にそう言った事はほぼ出来ない。

 

「すまない、怖がらせるつもりはなかった」

 

ほぼ出来ないだけであり、全て出来ない訳ではない。

見聞色の覇気は出来ないが、その過程で得た気配の読み取りで俺はある程度の人の気配を感じることは可能になった。

青峰は完全に氣を読むことが可能で誰が何処に居るのかわかり、正確だ。

早苗の部屋に入り、頭を下げた。

 

「…俺は変人だが、妹は、早苗は関係無い…仲良くして欲しい」

 

「あ…は、はい…」

 

「それと、喉が乾いたら好きなだけ早苗に言ってくれ。俺の缶ジュースを飲んで構わないのだよ」

 

怒りは納まった、と言うよりは納めたのが正しいのだが一先ずは騒動が納まる。

原因こそ早苗(バカ)だが俺が招いた事態、彼女に謝りそれ相応の事をするのが道理、これであの馬鹿(早苗)になにかがあっては示しがつかない。

 

「い、いえ、そんな」

 

「早苗、一通り持っていけ…」

 

そこまでしなくても良いと怯えながらも言う雪穂。

これはまずい。非常にまずいと早苗を動かす。

 

「う、うん…」

 

「それと飲むなら飲むと言うのだよ…一先ずは後日、お年玉から二千円取り上げるのだよ」

 

「ええっ、そんなぁ!?」

 

もう無理なのだと分かれば直ぐに何時も通りにする。

早苗はショックを受けるのだが、元を正せば全て早苗が悪い。

俺も鬼ではない、一言声さえ掛ければある程度は妥協してやるのだよ。

 

「あら、真太楼ちょうどよかったわ。今、暇でしょ?」

 

一階に降り、飲む白い恋人を飲み一息ついていると葉書を持った母さんがいた。

 

「母さん、受験勉強中で忙しい身なのだよ」

 

暇かどうか聞いてくる母さんは面倒な事を押し付けるとき。

10㌔の米に油にと、重い物を買ってこいや何処かの神社のマニアックな物を買ってこいだの色々と面倒な事を押し付ける。

 

「つまり暇なのね?」

 

「暇ではないのだよ、受験勉強中なのだよ!!」

 

「予防接種に行ってきてね~」

 

「む…」

 

母さんは俺の承諾を一切聞かずに葉書を渡すと、ソファーに座りテレビを見る。

紫原ほどとは言わないがマイペースで、どうも調子を崩してしまう。まぁ、しかし予防接種は行かなければならない。

油断をすればポンポンと流行るインフルエンザ、受験勉強中に掛かってしまったでは笑い話にすらならないのだよ。

バカとテストと召喚獣の姫路の様にはならん。テスト当日に体調不良など、日頃の体調管理を懸念していなかった愚行だ。

 

「行ってくるのだよ」

 

「いってらっしゃいなのだよ」

 

外に出る服に着替え、俺は今日のラッキーアイテムの青い薔薇を道中の花屋で購入して病院へと向かい、予防接種の葉書を出して手続き等を済ます。

 

「…しまったのだよ」

 

手続き等を済まし、待合室で待とうとするのだが周りはゴホゴホと風邪の患者ばかり。

マスクをしようと鞄を開くのだが、マスクを忘れた事に気付く。

 

「此処はそれなりに大きな病院、売店や自販機はある…」

 

予防接種をしに来た筈なのに、病原菌を貰いに来たなど笑い話にすらならない。

この中に爆弾(インフルエンザ)を抱えた物がいるかもしれないとなれば尚更だ。

何時もは常備していると言うのに、俺らしくないミス。不幸の前触れかもしれない。

 

「行くべきか…」

 

マスクの自販機と売店の位置は知っているのだが、問題は場所だ。

今いる場所からかなり遠い。今から向かって、戻るまでに呼び出される可能性がある。

無視して飛ばされては困るが、アルコールで手の消毒だけでは病原菌はどうにもならん…どうするべきか

 

「うぅ…」

 

「むっくん、男は何時かは腹括らんとあかんよ?」

 

「ぜってー今じゃないし、俺が腹括るの此処じゃねえし、天皇杯辺りだし…帰りたい~マジだるい…あ、ミドちん」

 

やはり行くべきかとソファーから立ち上がるのだが、紫原と紫原の隣に住む主要キャラの東條希がマスクをつけて仲良く入ってきたのを見て体を止めてソファーに座り直すと紫原は俺に気付き、歩み寄る。

 

「やっほ~ミドちん」

 

「ミドちんと呼ぶな」

 

「じゃあ、ぱっつぁん」

 

「おい、何故そうなる!眼鏡か?眼鏡なのか?」

 

東條希が受付で二人分の葉書を出し、手続きをしている最中紫原は歩み寄る。

ミドちんと人前で堂々と呼んだことにイラッとくる。そしてその上でぱっつぁん呼びとは、いずれミニゲームの際に泣かす。いや、5ファールで退場させてやるのだよ。

 

「むっくん、終わったよ……えっと、東條希です」

 

「緑間真太楼なのだよ…決して、真ちゃんやミドちんなどと変な愛称で呼ぶな。

フリではない、絶対だ。勿論、駄眼鏡やDT眼鏡掛け機などと言った罵倒もやめるのだよ…」

 

「あ、こんな事を言ってるけど変人と言う名の紳士だから大丈夫だよ」

 

「紫原、いい加減にしろ…ところで……オホン…」

 

紫原達がマスクをつけているのを見て、もしかすると余分にマスクを持っているのかもしれない。そう考えてしまい、マスクを一つ譲ってもらおうと思ったのだが直ぐにその煩悩を振り払う。普段から生真面目にやっているのに、のほほんとマイペースな紫原に借りを作るのは嫌だ。そもそもの話で俺の凡ミスで招いた事態だ。

 

「ミドちん、予防接種を代わってよ」

 

「戯け、なにを言っているのだよお前は。

俺は予防接種を受けに、病院まで足を運んだのだ。

仮に代わったところで、お前が予防接種を受ける未来は変わらない…」

 

「ちぇ…て言うか、予防接種受けに来たんだ」

 

「急になにを言い出すのかと言えば…大事な進級テスト当日に体調不良を起こすヒロインの二の舞にはならないのだよ、俺は…人事は尽くす」

 

「…人は所詮人で天帝には勝てないけどね」

 

ああ言えばこう言う紫原に苛立ちながらも、なんとか上手い具合に紫原からマスクを貰う展開が起きないかと考えるのだが、良い案が浮かばない。頭を下げるしか無いのかと考えていると紫原が東條を横目になにかを考えて口を開いた。

 

「Что означает «деньги»?」

 

「…」

 

東條希に聞かれたくない話なのだろう。

わざわざロシア語にしてまで聞いてくるとは…しかし、お金とはどういう意味ですか?だと?

紫原が哲学的な事を考えるなど、赤司がチャラ男になるぐらい、それこそ天文学的数値並みに有り得ないのだよ。

 

「あ~宝くじ当たんないかな~」

 

「なにを言い出すのかと思えば…」

 

急におかしな事を言い出す紫原。

お金と宝くじと言うことは…高額当選したのか…いや、違うな。

紫原は食事に金を使うが限度を知っている。宝くじなどと言う夢に挑むよりも、大食いに挑んだ方が良いと知っているのだよ。

となれば…赤司の入れ知恵かもしくは赤司に宝くじを渡された…当たりを何故か渡された…

 

「Uneori ar trebui să cheltuiți bani pe haine」

 

「いや、ミドちんも大差変わんないじゃん」

 

「お前ほど、店には困っていない…来たか」

 

自身の番号が呼び出されたので、俺は予防接種を受けに部屋に向かう。

 

「…あ、どうも」

 

「ああ…」

 

その際に西木野真姫に出会うが、軽く挨拶をするだけだ。

親が同業者で職場も一緒でなにかと顔を会わせる機会があった、それだけの関係なのだよ。

 

「…ふぅ、なにかと厄日なのだよ…」

 

ラブライブの原作と関わらせる運命力が、俺を邪魔するのだよ。

別に原作は放置しても問題ないのだよ。勝手にハッピーエンドを迎えるのだから、俺達転生者はむしろ邪魔な存在、賽の河原でも似たような事を言っていた。

 

「あんの、薮医め…四回も注射しやがって…」

 

「まぁまぁ、むっくんは…その、ウィングスパン?が物凄いやん…な」

 

「…ノゾちん、ミドちんは190センチ以上あるんだよ…位置が違うからってプスプス刺しやがって…俺の図体デカイからって毎度毎度注射ミスりやがって…」

 

とにかく、これで病気の可能性は限りなく無くなったのだよ。



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歳を重ねる毎に時間の流れは、早かったり遅かったりする。

「うぅ、寒い…」

 

ラブライブの世界では東日本大震災や台風○○号の被災地とかそんなのはない。

これは良いことだが、少子化とか地球温暖化は相変わらず。都会は寒いと冷たいと言うけど、物理的に冷たい。

赤ちん達は床暖房とか当たり前だけど俺は格安の上京してきた人向けの所に住んでるから床暖房なんてない。

けどまぁ、お隣さんが美人JKなだけましなのかな?最上階は野郎だけで、有名企業の偉いさんばっかで、浮気現場に使ってるとかどうとか、上流階級の家は本当に冷えきっててざまぁ。

あ、でも目の保養だけであり決してそういうのじゃない…うん、それはない。

オレはモテるにはモテるけど、こんな図体でマイペースだからね…顔だけかギャップ萌えでときめくだけときめいて理想像を押し付けられるのは嫌かな。

 

「黄瀬ちんパシらせるか、黛さん辺りが見に行ってくんないかな」

 

今日は全国かどうかは知らないけど、高校の入試の合格発表。

普通の中学三年生は全員休み、受験しないと入れない中学は学校自体が休み、高校も休み。

皆が皆、心臓をバクバク言わせながら今日と言う日を待っていた…んだと思うけども、俺はそんなに、合格してると思う。

赤ちんがまさかの入試を丸暗記して、入試を丸々作ると言う流石のチートっぷりを見せつけて、色々と心に来る入試第二ラウンドが開幕、平均91点だったから多分問題ない。

100点じゃなかったミドちんがこの時点で既に敗けが確定してて落ち込んでたけど知らない。黄瀬ちんは…まぁ、どうにかなるんじゃないかと思う。

ミドちんは本気で抜こうとしてるけど、俺達は勉強では赤ちんが首席になんの分かってるから、合格すりゃ良いって感じだし。

 

「全く、こう言う日ぐらいは制服じゃなくても良いのに」

 

ぶつくさと文句を言いながらカイロを振りまくり温め、外に出る。

うぅ、やっぱり寒い。春とかそんなん関係無く物凄く寒い…

 

「あ、むっくんおはよう!」

 

「早いね~、ノゾちん」

 

外に出るとノゾちんがいた。

ノゾちんも今日は音ノ木坂の合格発表がある。まぁ、定員割れだなんだので不合格でも入れると思う。

UTXとか言う無駄にオシャレな高校が秋葉原にあって、そっちの方にいってるし…この世界、やけにドーナツ化が激しい。少子化以前にそっちの方が気になる。やっぱあれかな?東京五輪かな?俺本気で日本代表として金メダル取るつもりなんだけど…ボランティアはしたくない。

 

「んじゃ」

 

「え、っちょ、むっくん!」

 

「なに?」

 

挨拶もしたので、とっとと自分の高校に向かおうとすると何故か止めてくるノゾちん。

遅刻すると赤ちん達になにを言われるか分かったもんじゃないから、とっとといかないといけない。いや、本当に拳骨とかくらいたくない。

 

「その、一緒に来てくれへん?」

 

「いや、音ノ木坂めっちゃ定員割れしてるじゃん。合格するでしょうに」

 

入試が終わった時に滅茶苦茶少なかったとやるだけやったと肩から力を抜いていたノゾちん。

定員割れする人数か一応聞いたし、するって自分の口からも言っていたよね…

 

「それでもな、な!」

 

「…ちょっと待ってて」

 

涙目で頼まれたら断れないよ。

赤ちん達にちょっと遅れる事をL○○Eで連絡をする、勿論理由もつけて。

それでも来いとか言ってくるかな、合格発表の大事な日だからなぁ…

 

天帝 【女を泣かせるのはいただけないぞ、僕の自己採点ではお前は充分に合格ラインを達している。終わったら早く来い…それで、出来てるのか?】

 

「…」

 

許可は貰えた…んだけども、赤ちんが勘違いをしている。

 

破壊紳【NOTLOVE LIKE OK?】

 

決してそういう関係じゃない事だけは言っておかないと。仲良いけど、そんなんじゃない。

一先ずは赤ちんの許可を貰えた。許可を貰えた事を言い、俺はノゾちんに付き合い音ノ木坂に向かったのだが

 

「あっぶね…」

 

受けなくてよかったと再認識させられる。

音ノ木坂は元女子校、少子化やドーナツ化現象を理由に今年から共学化したけども男子いない。合格発表に来ている男子いない。保護者のおっさん連中が来てるだけで、男子学生一人もいない。こんな中、俺だけ入学とかそんなのになったら胃に穴が開くわ。

ミドちん達も絶対に胃に穴が開くね、うん。

 

「むっくん、受かってた!!」

 

「…おめでとう?」

 

「なんで疑問系なん?」

 

「いやだってほら…少ないじゃん」

 

学生服着てる男が俺だけだから、めっちゃ目立つけども周りが少ない。

中学の入試の合格発表の際には物凄く来てた記憶はある。これ、少人数での3クラスあるか無いかの人数だね。此処って国立って言ってるけど、国がやってる学校が近くにないから私立でもあり国立でもあるって感じだよね…大丈夫なのかな?

 

 

「ノゾちん、もうちょい上の高校目指せるんじゃないの?」

 

「カードが、ここを目指せって告げるんや!」

 

ノゾちんはタロットカードを見せ、ドヤ顔になる。

ミドちんなら嘲笑うな~うん、ミドちん、タロットカードだけに頼るなって言うし。何処ぞの超高校生級の占い師の占い的中率の二乗の割合で占いが当たるし。恐ろしいよ。

 

「…それにな、コロコロと転勤するから授業が追い付かなかったり変になってて…その、ね…」

 

「……?……勉強なんて、教科書と過去問あれば余裕でしょ?」

 

むしろ赤点とか引くわ

 

「むっくん…嫌味?」

 

ノゾちんはもしかするとお馬鹿なのかもしれない。

意外な事実が分かったので、来たかいはあったんじゃないかと思う。テスト前に勉強教えてと言われたくない。

 

「ノゾちん、取り敢えず早いところ手続きをした方が良いよ」

 

「あ…遅れた」

 

少ないとはいえ、五十人以上はいる音ノ木坂合格者。

受付の方は既に列が出来ており、入学までに揃えるものとか選択科目の授業選びとか色々とやらないといけない。

 

「んじゃ、俺は行くね」

 

「え、待ってくれへんの?」

 

「うん、待たない…俺の方もなにかと忙しいからさ」

 

「そ、そうだよね…むっくん、制服の採寸とか大変そうだから」

 

「ノゾちん、似非関西弁じゃなくなってるよ。じゃあね~」

 

バイバ~イと俺は列に並ぶノゾちんに手を振って別れを告げる。

ノゾちんは悲しそうな顔をしてるけど、仕方ないよ。俺にだって色々と用事があるんだから。

 

「…もっと一緒に居たかったな…むっくん…違うな、うん…」

 

「今のって、あんたの彼氏なの?」

 

「か、彼氏って違うよ!!ただの、お隣さん!!そう、同世代やから」

 

「へぇ…じゃあ、鈍感ってわけね…」

 

俺と分かれた後、ノゾちんが背丈がちっこい女の子と一悶着あったけどどうでも良い。

俺が受験した高校はとっくに合格発表はされている。何時もならしないけど、音ノ木坂とは真逆にあるので全力で走り、学校に向かった。

 

「…オレの敗けだ」

 

「正確には俺達の負けっす…」

 

高校に向かうと、峰ちんと黄瀬ちんだけがいた。

赤ちんとミドちんが遅刻したのかとなるけど、四人は同じマンションに住んでるから遅刻はありえない。

 

「大納言小豆とチョコチップクッキーと抹茶、チョコミントとマスクメロンとチョップドチョコレートね、両方ともワッフルコーンで」

 

「へ~へ~わーったよ…大穴に賭けすぎたか」

 

取り敢えずは俺は賭けに買ったことが分かった。

誰が首席合格するかになり、俺は赤ちんを賭けて、黄瀬ちんはミドちんを、峰ちんは第三者と言う大穴中の大穴を賭けて俺の大勝利。試合した後に、アイスを奢って貰う。いえーぃ

 

「紫原さっさと採寸とか済ませてこい。

お前、ただでさえ図体がデカいんだから…ここ数ヵ月で2メートル10センチになって、本家越しただろ」

 

それは言わないお約束だよ、峰ちん。

遅れてやって来た俺は受験番号が張られている紙を気にせず、校内に入る。

それと同時に視線を感じる。シンプルに図体がデカいから目立つのもあるけど、俺の事を知っている人からの視線だ。

 

「お~い」

 

今更そんな視線を気にするほど俺は小心者じゃない。

まだまだ背丈は伸びる事を言うと、採寸していた業者の人が困った顔をしていたけど俺は知らない。

選択授業の科目も選んだので帰ろうとすると、聞いたことのある声が聞こえたので後ろを振り向いた。

 

「虹村さんじゃん…え?…え?」

 

二回目の転生をしている俺やミドちんの先輩こと虹村修蔵がいた。

俺はその事に驚愕した。驚くことしか出来なかった。

 

「んだよ、赤司から聞いてねえのか?」

 

「聞いてないよ…て言うか、合格できたんだ…」

 

この人は一般五教科の成績が凄く悪い。

転生者は転生者になるべく勉強したりして、黄瀬ちんですら英会話は出来る(文法とかは無理)にこの人は出来ない。

公立とはいえ四捨五入すれば偏差値70はあり、高校生クイズにも出る学校なのに…

 

「黄瀬といい、緑間といい同じ反応すんじゃねえ…偏差値普通の普通科には入学できるぐらい頭はあるわ!!

テストの時だけ確実に60点取るテスト勉強する方法を知ってるんだよ、ちょっと応用して80点確実な方法と…赤司に手伝って貰って山はった」

 

「…流石、メ○サの会員、悪知恵だけは働くね」

 

「おい、いい加減にしねえとシバくぞ。

俺はお前よりも先輩で年上で強いんだぞ、一応の敬意は持て…この人みたいになりたいのか?」

 

「た、タスケロ…」

 

入学していないのに、新入生を恐喝する虹村さん。

右手にはギャグ漫画でしか見ないたんこぶを作り上げた、恐らくこの世界にいる転生者の中で一番の大ベテランの黛千裕がいた。確実に一回、ボコられたなこの人は。

 

「お、オレが一番の先輩なことを忘れるな…そして一番の雑魚であることを…ぐふ…」

 

虹村さんから解放された黛さんは胸を張って言う。

 

「虹村さん、暴力は駄目っしょ」

 

「いや、この人がワンピースとかのネタバレをするから…昔、副船長だったから」

 

「黛さん、最低だね」

 

それは人としてやっちゃいけない事だよ。

一応、この世界にもワンピースあるんだよ。実際に生きた人が言うのはやめてほしい。

 

「悪かったな、最低で……と言うよりは、今日はオレが居なくても問題ない筈だろう」

 

「いやいやいや、黛さんはいるっしょ…オレが休むために」

 

「|C(センター)は交代しねえよ…と言うかだ、なんでお前遅刻なんだ?今日大事な日だってのに…寝坊か?」

 

額に青筋を浮かべる虹村さん。

そう言えばL○○E赤ちんだけに送ったから、虹村さん達に伝わってなかった。

峰ちん達は一切聞いてくることなかったから、素で説明することを忘れてた。てか、気付いてそう。峰ちん女心に敏感だ。

 

「ちょっとお隣さんの合格発表を見に」

 

「お隣さん…ああ、そう言えば一人暮らし始めたんだっけ……ん?」

 

「なに?」

 

「合格発表見に行ったって…隣、来年からJKなのか?」

 

ワナワナと震えながらもなにかを察した虹村さん。

お隣さんが美女で仲良いって知ったらしばかれる…うん、しばかれるね!だってこの人、行き遅れみたいだし。良い人だけど、良い人だけで止まってて、好きな異性じゃない事が多いし、残念なイケメンだし。

 

「そうだけど…決してそう言うあれじゃないよ。

俺は健全とかそう言うレベルじゃない話…なんも思ってない」

 

ノゾちんはイイ人だけど、そこで止まってるよ。

 

「お隣さんでJK……紫原」

 

「なに?」

 

そう言う一線を引いてることを説明すると、なにかに気付いた黛さん。

多分だけどラブライブ関係だと思う…ラブライブなんてどうでも良い、野郎が出てこなくてハッピーエンドを迎える、放置してても問題ない。

 

「騙されるんじゃねえぞ、それは人が良いとか距離感が近いとかだ。

年頃の娘をこの時期に男子と向かわせるんだ…異性に対するATフィールドがおかしい、そのJKは愛想が良く人が良い、ただそれだけ、そうそれだけだ…たまたまお前が近くにいるだけだ…オレの時もそうだったのに、なんであんなことに」

 

黛さんが言っている通りだ。ノゾちん達は愛想が良いとかそんな感じだと思う。

後、なんか黛さんのトラウマスイッチ入ったりしてるけど大丈夫なの?

 

「虹村さん、黛さん、お待たせしました…紫原も一緒だったか」

 

トラウマスイッチ入った黛さんを無視し、ここ最近の近況を報告をしているとやって来た赤ちん。

首席合格者としてやることとか話し合っていたのか、それとも…

 

「虹村さん、バスケ部に話を通してくれてありがとうございます」

 

バスケ部を乗っとる準備をしていたのかな?

 

「これぐらい構わねえよ。

なにせ、キセキの世代が入るんだからな…俺達もなんでかキセキの世代なんだよな…」

 

何処か遠い目をしながらも、虹村さんはバレー部の退部届とバスケ部の入部届の二つを取り出して、体育館に向かう。

 

「すいませ~ん…バスケ部の主将の座を賭けて試合をしてくれませんか?」

 

そして練習中のバスケ部に虹村さんは核弾頭をぶちこみ、俺達は持ってきたバッシュを履いた。



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人には人の乳酸菌ならぬ人には人の幸福と不幸がある。

真の普通や不幸は、自らが不幸や普通だと感じない事である。

つまり何が言いたいかと言えば、日常系アニメの世界では少しでもおかしな属性、例えるならば財閥のお嬢とか帰国子女とか学園1のイケメン、なんかの部活の部長、生徒会長は高確率で原作キャラだと思えばいい。後、聞いたことの無い財閥やメーカー、土地名もだ。

俺を含め、転生予定の子供十数名を担当していた教官はそんな事を教えてくれた。

 

「スクールアイドルねぇ…」

 

高校生活が始まり、約一ヶ月がたった。

流石赤ちんと言うべきか、バスケ部に入ると同時に熱血漢の顧問から、やる気無さそうな素人顧問に変更。あくまでも書類にサインが欲しいだけで、他は適当で良いと、むしろ変に熱血な顧問が中途半端な指導をして身体を壊す事をしたら洒落になら無い。

うち、公立とはいえ偏差値高い高校なのにブラック部活だったからマジで引いたわ。頼むから、他の部活動で体罰問題を起こさないで欲しい。

 

「まぁ、アイドル事務所なら駄々被りだし、そうなるよね」

 

今年のゴールデンウィークは休日終わりからの祝日で連休が多く続いた。

それを逃すほど、俺達は馬鹿ではなく三泊四日の合宿を行った。金は言うまでもなく赤ちん持ち、と言うか場所も赤ちん持ちじゃないだろうか?

4日目の今日は意識を叩き起こす為に軽くランニングした程度の運動で終わり、虹村さんの「解散!」で終わり帰る途中にグルメ雑誌を買うべく本屋に寄ったんだけど奇妙な物を見つけた。スクールアイドル特集とか言うわけの分からない特集をしている週刊誌でしており、スクールアイドルなんて初めて聞いた。

スクールアイドルは学校の綺麗所を集めて、インターネットにライブとかをうpすると言う一見ユーチューバーの方が効率いいんじゃないかと思うんだけど、ノゾちんとかことりちんとかもそうだけど、この世界やたらめったら美女多いんだよね。男はモブがおが多いけど。

取り敢えず、主人公達はなんかの理由でスクールアイドルを知って、やってみようとなるとかそんな感じなんだろうね…なんかミドちんがキレそうな案件、ミドちんがラブライブ面倒とか人事を尽くしてないとか言うのなんかわかる気が…しないか。

 

「むっくん?」

 

重い足取りと重い荷物のせいで遅れたけども、なんとかマンションには帰れた。

だけど本当にあちこちが痛くて、16になったら即行で原付の免許をとろうと考えながら鞄に週刊誌を戻しているとノゾちんと鉢合わせする。

高校に入ってから朝のゴミだしぐらいでしか顔を見ず、こうした感じなのはそこそこの久々だと思う。

 

「ノゾちん、持とうか?」

 

買い物帰りのノゾちん。

食材以外にも色々とあり、普通に二リットルのジュースとかもあるので重そう。

 

「あ、ありがとう…お米持ってくれる?ちょっと、重いけど」

 

「大丈夫、大丈夫…今、身につけてる重りより軽いよ?」

 

五キロのお米の袋を渡してくるノゾちん。

両足に2,5キロずつ、手に1キロずつ重りをつけており今更五キロ程度は重さを感じない。

片手で軽く持ちながら階段を進むんだけど、やっぱり体が痛い。いや、もう本当に体が痛い。

 

「一緒に歩くのも久々やんね」

 

「いや、久々以前にここマンション」

 

「…せ、せやね…」

 

久々に一緒だからノゾちんは距離感と言うのを掴めない。

余計かもしれないただの親切で俺は運んでいるだけであり、そう言うのは無い…本当に無い。

 

「でもまぁ、顔を会わせたり話したりしないよね。

ノゾちんは…大丈夫なの?音ノ木坂、入学希望者少なかったし…こう、なんか友達が行くから私も一緒に的な感じの生徒が」

 

「あ、うん…そういう生徒、多かったよ。

でも直ぐに馴染む事が出来て、新しい友達が出来て…」

 

そりゃあよかった。

ノゾちんはどっちかと言うと我慢しそうな性格で、自分を出そうとしなさそうだから本当に付き合える友人が出来て良かった。ぼっちは卒業できたね。

 

「むっくん、失礼なこと考えてへん?」

 

「さ~…んじゃ」

 

「あ、待って!!」

 

階段を上りきり、ノゾちんの部屋の玄関前まで行くと米が入った袋を置いた。

これで終わりだと思いながら、重い足取りで部屋に向かおうとするとノゾちんに腕を掴まれる。

 

「もう、玄関前だよ」

 

「お茶ぐらい入れさせてよ」

 

「そんな、お茶を頂くなんてことしてないよ…なんで泣きそうな顔をするの?」

 

「だって…むっくん、冷たい…なんか高校に入ってから冷たい…」

 

「泣くのはズルいよ…」

 

気付けば今にでも泣きそうな顔をしているノゾちん。

そんな顔をされると、俺は折れるしか無いとノゾちんの部屋を上がることになる…やっぱ年頃の一人暮らしのJKの部屋に上がり込むのは駄目だよね。降ちんとか呪ってきそう…うぉおう。

 

「ふぅ…ふん…すぅ…」

 

「…なにしてるん?」

 

冷たいミルクティーとクッキーを盆に乗せて持ってきたノゾちんは変な目で俺を見る。

今の俺は重りを外しており、必死になって立ち上がろうと頑張っているのだけど一歩が出ない。

 

「室内に入って重りを外したから、もう終わりなんだなって疲れとか筋肉痛がドッと来た…やっヴぁい、やばい、あ~これマジやばい…あ、赤ちん達も同じ感じだ…」

 

「ふ~ん…つん!」

 

「っ!?…ノゾちん、マジでやめて…動けない事はないから、目覚めてはいけない殺意の波動に目覚めて捻り潰したくなるから」

 

「え、あ…ごめんなさい…」

 

徐々に徐々に現れてく疲労と筋肉痛。

赤ちんが酸素カプセルに入ってくるとLIN○で写真を送ってきたのを見て、少しだけイラッとするけども、鏡に写った足が生まれたての子馬の様に震えていた。

プルプルと小刻みに震動している俺を見て、ノゾちんはニヤリと笑み見せてつついてくるけども、動けない訳じゃない。頼むからこう言うときは大人の優しさを見せて、マジで死ぬ。そして殺意の波動に目覚めそう。と言うか若干目覚めたっぽい、ノゾちんが怯えてる。

 

「余計な事をしなければいいよ…はっ…いや~きつい」

 

「そこまでキツいって、合宿でなにしとったん?」

 

「三時間ぶっ通しで山んなかでケイドロ…」

 

「え、ケイドロ…むっくん、なんの部活やっけ?」

 

「ケイドロしてるのは、ファルトレクって言う…まぁ、変な場所で走って持久力とかボディバランスとか全体を鍛えたりするトレーニングだよ。

最初に500mlサイズのキンキンに冷えた歩狩(ポカリ)一つと塩キャンディを三つ配られて、ケイドロ開始して、好きな時に歩狩と塩キャンディを飲んだり食べたりしていい。

そんで警察(ポリ)が泥捕まえたら、その時点で所有してる歩狩と塩キャンディを取り上げて、捕まえた警察(ポリ)の所有物になる。

んで、警察(ポリ)に捕まった奴を解放したら捕まった奴と解放した泥棒が所定位置にいる顧問に歩狩と塩キャンディを貰う…全滅したら、もう一回やり直しで、泥棒側に渡す歩狩が粉を通常の三倍薄めたのに変わる…あ、取り上げる際には警察側が新しくて冷たい歩狩貰えるから。んで、一度でも全滅させられなかった場合は警察側がその後の練習中に飲む歩狩が三倍薄めた奴に…因みにウォーミングアップでこれね」

 

「…地獄やん」

 

「全寮制じゃないだけまし」

 

ノゾちんになんの部活をしているかを説明はしたくないので、合宿中にやったことを説明するけど、この程度はまだ序の口中の序の口だ。

問題はその後の練習と軽いミニゲームなんだけども、マジで死ねる。

思い出すだけで、疲労がゾッと来る。黛さんなんか、何度もマーライオン(嘔吐)してたし。

 

「ノゾちんは、部活とかしないの?」

 

その後の練習内容とか余り思い出したくないので、それ以上は話題を掘り下げずにノゾちんの事に話題を変える。

 

「音ノ木坂、生徒少ないし部活自体が少ないからちょっと良いのが無いねん…」

 

「まぁ、強い奴は強いところに行くからね…基本的に」

 

「うち転勤ばっかやから、大会規定かなんかでちゃんと出場出来ひんし…」

 

うん、話題をミスった。

ノゾちんは余り思い出したくない事を思い出してしまい、少しだけ落ち込む。

もう少し良い感じの話題を選べば良かったよ。

 

「なんかごめん」

 

「今はもう一ヶ所に居れるしちゃんと友達も出来たからもうええんよ」

 

果たしてその友達とは俺の事なのだろうか?

それを聞く勇気を俺は持ち合わせてはおらず、ノゾちんはジッと俺を見つめる。

 

「俺はそろそろ戻る…あ~くそ、体が痛い」

 

「別にお隣さんやから、1日ぐらいいててもええねんで」

 

「いや、今から色々としないといけないから。

服を洗濯機に叩き込んで、その間に風呂掃除と冷蔵庫の中身確認して…うわぁ、やること多っ……年頃の女の子の部屋に何時までも入り浸るわけにはいかないよ」

 

これからの事を考えると少しだるくなる。

しかし、我が儘は言っている暇はない。もうすぐIHの予選が始まるんだから、試合で疲れた重い身体を動かして色々としないといけない…峰ちんも似たことしてるし、なんか俺だけ言い訳になるのイラつく。

 

「じゃーねー」

 

荷物を背負い、自分の部屋へ俺は戻った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「…また、行っちゃったな…」

 

一人になって部屋が広くなり、心の中にぽっかりと穴が開いた感じがして思わず呟く。

さっきまでむっくんが…紫原くんが座っていた所に座ったけど温もりは無くなっていた。匂いは残っている。

 

「…きっと悪気は無いんだよね…」

 

エセ関西弁じゃなくて、素の口調で呟きながら紫原くんについて考える。

友達を作っても直ぐに転勤で引っ越してしまい、気付けば無意識に友達を作ろうとしなかったうちは高校生になるのを気に一人暮らしを始めた。ううん、正確にはすることになった。

無意識に友達を作ろうとしなかったからか、両親が心配をしてしまいそうなった。今まで苦労を掛けたとなり、何時でも来れると言う事で今の場所に住むことに…けど、怖かった。

引っ越すことはないけれど、今まで以上に本当に一人になるんだと思ってしまい、怖くて怖くて、でもそれを表に出すことを出来なかった。

 

「はぁ、どうすれば良いんやろ…」

 

気持ちを落ち着かせ、大きなため息を吐き口調を戻す。

頭の中には隣人であるトトロよりも大きなうちと同じ歳のむっくんの事だけがある。

今の部屋に住む際に不動産から紹介された時に出会ったむっくん、あん時は滅茶苦茶驚いた。今まで色んな所に行ったけど、むっくんより大きな男の子なんて見たこと無かった。

他にも色々と物件を見て回ったけど、むっくんのインパクトが余りにも強すぎて此処にした…けど、不安で不安で怖かった。一からのスタートやけど、家に帰れば誰も居ない状況…怖かった。そして引っ越してきて早々にむっくんに心配をされた。

転勤族だなんて一言も言ってないのに、むっくんはそれに気づいて頑張れと言ってくれた。

怖くて仕方なかった気持ちが少しだけ、軽くなった。高校に入るまでの暫くの間、なにかとむっくんと一緒だったけど、高校生活が始まってからは、関わる機会が少なくなった。

うちの事が嫌いだからとかそんなんじゃなくて、単純に時間が合わなかったりもするし、男と女だからと気を利かせようとむっくんは距離を置いている…けど、けどなぁ…

 

「もっと、仲良くしたいなぁ…どうなるかも分からんねんな」

 

鞄にいれていたタロットカードを鳥だし、シャッフルをして一枚引く。

むっくんとどうすれば仲良く出来るかと思いを込めて引いたら、愚者の正位置が出た。

占い師や本によって言うこと書くことは変わるけど、大抵愚者の正位置は自由や未知なるものや未確定なんかの、不確定要素的なのを意味するものが多い。

うちがどう行動しても、むっくんに対してどう言った影響があるか一切分からない、正確な未来があったりなかったりする感じやね。

けど、こんなことで諦めれない。頑張れ、うち




NG集

「ノゾちん、持とうか?」

買い物帰りのノゾちん。
食材以外にも色々とあり、普通に二リットルのジュースとかもあるので重そう。

「あ、ありがとう…お米、持ってくれる?ちょっと、重いけど」

「大丈夫、だいじょ…って、え、米俵!?」

今身に付けている重りよりも重そうな米俵をノゾちんは渡してきた。
普通ここは米袋じゃないの!?


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下積み生活、行き着く先は謎のバイト

中学で部を引退した後、身体を鈍らせない為にと意識を叩き起こす為にと神田明神で軽く走ったりしていたけど、今じゃ立派な練習メニューの一つ…主に虹村さんが原因で。

 

「あ~くそ、バレーボールするんじゃなかった」

 

神田明神に続く長い階段前で大きなため息を吐いた虹村さん。

本日は体育館の使用が不可能。バレー部が使用しており、原因は虹村さんだ。

この人は、コロコロと部活を変えては最優秀選手になったりする人で、去年バレー部を全国制覇に導いたせいで、バレー部が優先的に体育館が使えるようになっている。

これともう一個、原因があり、体育館が使えない

 

「あの、オレと高尾しか居ないんですけど」

 

「あ、他の奴等は辞めた」

 

俺達を除いた部員の殆どが退部届けを出して辞めたのだから。

原因は多分、色々ある。本当に強い奴は強い高校に行ったり引き抜かれたりする、そう言った所は私立で設備が充実しており、部員はなぁなぁじゃない。楽しければそれで良い感じじゃない。

うちはなぁなぁな感じで、うちに通ってる奴等も大抵は勉強できるけど金がない奴とかが多い、部活動は本気と言うよりは同好会に近く、全国に行ったとか聞くには聞くけど文化系だ。

ハードになった練習からの合宿が堪えたのか、皆やめていった。初心者歓迎なのに、体力作りとか向いてるのに、やめた…根性なしか、それとも勉強できなくなったかは誰も知らない。

ブラック部活対策で、週5でその内の1日は赤ちんのマンションの地下のジムを使うし、日曜日は完全に休み…土曜日は朝から地獄だけど。

 

「じゃ、じゃあオレ達だけなんですか!?」

 

「まぁ、中学でブイブイ言わせた奴等一人も居ないっすからね…」

 

俺達以外で唯一残った降ちん(降旗)高ちん(高尾)、赤ちんと同じPG。

転生者かと思いきや、転生者じゃない。けどもまぁ、峰ちんや赤ちんが言うには他作品の人がちょくちょくいる。此処はラブライブの世界に限りなく似たり似てなかったりする世界だから、居るらしい。

 

「という事で喜べ、お前達はベンチ入りだ…つっても、このままじゃ駄目だけどな」

 

「それは…そうですけど…」

 

チラリと俺を見る降ちん。

高ちんは中学では弱小バスケ部だったけど、降ちんは文字通り初心者、スタメンなんて一生縁が無いだろうと思っている。

いや、俺達が居なくても無理とか思ってるけど、案外そうでもないんだよね。

 

「虹村さんさ~もう早くしてよ…てか、なんで俺なの?」

 

「お前が一番図体でかくて分かりやすいだろ」

 

グダグダとやってるのを見て、面倒臭くなったので話に入る。

手っ取り早く言えば、この二人だけ特別メニュー。スペックが低かったりするから、基礎を一年間賭けて向上させる事で…何故か俺だけが神田明神にいる。

 

「分かりやすいって、なんかするんですか?」

 

「まーな」

 

ビデオカメラを取り出した虹村さん。

クイっと首を捻って、階段を歩けとジェスチャーをしてカメラを俺に向けた。

 

「巫女さんの所まで許可取ってこい」

 

「いや、許可を取ってなかったの?」

 

「そう言うのは赤司の仕事だよ、ほらとっとと歩け」

 

息を吐くかのように色々と酷かったりする虹村さん。

まぁ、特に気にすることでもないと右手と右足、左手と左足を同時に出して歩く特殊な歩法階段を昇る。虹村さんはそれを撮影し、降ちん達と一緒に後を追う。

スポーツ選手兼トレーナー希望の虹村さんは、二人に特殊な歩法や呼吸法とかを教えるつもりだ。

数式や文法には法則性やパターンとか存在してるけど、スポーツは違う。教科書通りに出来ている=最強、正しいとかじゃない。人間の体には色々と個性があり、その個性を生かすにはスポーツの基礎が書かれた本通りだとダメ…なのが、虹村さんのモットーとかどうとか。

7割ぐらいは教科書通りで3割は教科書に載ってない、もしくはダメとか書かれている物を使うと、教科書通りの動きよりもスゴくなるみたい…実感が沸かないけど。

 

「はぁ、こう言うのは赤ちんの仕事なんだけどなぁ」

 

マイペースな俺には向いていない、赤ちんみたいに頭がキレる人がすべきだ。

文句を言いながらも境内に向かって俺は巫女さんを探し見つけるのだが

 

「むっくん?」

 

「あれ、ノゾちんじゃん」

 

その巫女さんがノゾちんだった。

運が良いのか、それとも悪いのかは分からないけど分かることはただ一つ。

 

「ノゾちん…バイトなの?」

 

引っ越して東京にきたノゾちんは巫女さんとして働いてるんじゃなくて、バイトの巫女だと言う事だ。

てか、神田明神でも巫女のバイトを雇わないといけないんだ…正月シーズンとか受験シーズンにバイト募集とかはよく見るけども、ゴールデンウィーク過ぎたこんな時期に面接して受かるとか、なんかすごい。

 

「うん…けど、この前、受かったばっかやねん…」

 

「…またマニアックなのを選んだね」

 

他人のアルバイトを余りディスるのはよくないのは分かっている。

だけど、正月とかなんでもないシーズンに巫女のバイトを受けるのは何気に凄い。

その事について呟くとドヤ顔になって、タロットカードを取り出した。あ、恋人のカードだ。

 

「巫女さんをしてるとスピリチュアルパワーが強くなるんや!」

 

「…ああ、そう」

 

タロットカードはどっちかと言うとエジプトとかの物で、此処は神社である。

スピリチュアルパワーと言うのがどんなものかは知っているけれども、その辺の統一とか調整とかしておかないと、中途半端に宗教ごった煮だから失敗する。

転生者になるべく、鍛えられた際に教えられた上に日本人は宗教意識がくっそ薄いから占いを容易く覆せるらしい。と言うか一度でも未来を細かく見たら、その未来には二度と辿り着かなくて、限りなくそれに近い未来しか辿り着かないから占いは運気上昇させたり、厄払いするぐらいにしとけって教わったな。

 

「ノゾちん、ちょっと神田明神に続く無駄に長いあの階段を使うんだけど…」

 

「あ、階段ダッシュに使うん?別にええよ、それぐらいなら許可とか取らんくても」

 

「それもあるにはあるけど、ビデオカメラ使っても大丈夫?

万が一って事もあるから、ノゾちん間違えて写しちゃったら面倒だから」

 

「構わんで…まだ巫女さんはじめて数日やけど、外国人観光客とかに一枚写真良いですかって聞かれるし。

あ、でもむっくん達以外にも色々な学校の部活動がこの辺の坂道とかにおるから気ぃつけてね」

 

「ん~、ノゾちんもナンパされない様に気を付けてね。なんかあったら、叫んだりして呼んでね、じゃあね」

 

許可を取ることは出来た。

ノゾちんが外国人観光客とかにとか言っていたから、変な奴等も居るみたいで少し心配だけど、俺は軽く手を振って別れるとビデオカメラの映像を見ている虹村さん達の元に向かう。

 

「許可もらえたけど、他校の生徒とかも使うから注意しとけだって、後、観光客とか」

 

「お~そうか…じゃあ、次は階段ダッシュで頼むわ」

 

俺が向こうでノゾちんに許可を取りに行っていた最中、降ちん達に録画したビデオを見せていた虹村さん。既に説明するべきとこを終えており、次の指示が下る。

 

「え~虹村さんがやってよ」

 

「主将命令だ、行ってこい…つーか、お前にカメラ持たせると、絶対に変な事になるだろ」

 

「え、紫原って機会音痴なんですか?」

 

あ、こら降ちん

 

「いんや、手のサイズとかデカすぎて変なところに触れて誤作動したり、指を入れる持ち手の部分に入らなかったりするんだよ、まぁ、なんとかスマホは使いこなせるようになったけど、まぁ、面白いぞ。一時期、携帯辞めてタブレットで誤魔化そうとしてたし」

 

「ぶっ、なんすかそれ!?じゃ、じゃあ、タブレットを持って携帯がわり…っ…っ…やっべ、おもしれ」

 

虹村さんが余計な事を言うとお腹を抑えて笑う高ちん。

人がそれなりに気にしていることをサラッとばらしていったので捻り潰してやろうかと思ったけど、後日バスケで叩き潰す。

 

「よ~し、階段ダッシュを…おはざぁいまーす」

 

「あ、ちわーす!」

 

「ほら、お前達も」

 

階段を降り、階段ダッシュの準備をしていると他校の生徒が来たので挨拶をする虹村さん。

こう言うところでの挨拶は大事だと、俺達にも挨拶するように強く言うと俺達はペコリと一礼する。

 

「どっかのJ…Cだな、ありゃあ…目の保養になるぞぉ」

 

階段を走る女子生徒の集団をJCと見抜き、癒される虹村さん。

この人は健康的だと言う意味で癒されている。

 

「そうっすね…」

 

バスケ部に入っててよかったと言う満足げな顔をする降ちん。

もしかして、16で熟女、18でBBAという側の住人なのか思わず疑う。

と言うか、降ちんはなんでも良いから全国一位になったら付き合ってと言う死亡フラグを建ててたような…

 

「あ、虹村さん、まだ来ますよ!」

 

「お、流石は鷹の目(ホークアイ)だ」

 

「いや、使ってませんって!」

 

「ね~もう走って良い?」

 

「次、来る奴等が終わってからな」

 

周りに迷惑をかけるとなに言われるか分からない。

最悪、出禁食らうかもしれないので虹村さんの言う通りにし、先程の集団と同じ学校のジャージを着ている三人組を待つ。ニヤニヤ顔は一切しない、変質者に思われる。

 

「はぁはぁ、待って…」

 

走る準備をしていると遅れてやってきたJCが階段に向かうが、死にかけている。

と言うよりは…穂乃果ちんとことりちんと園田さんだった。

 

「待ちません!」

 

「いや、待ってあげなよ…大丈夫?ことりちん、穂乃果ちん」

 

「ひっ!?」

 

息が荒く死にかけの二人に追い討ちをかけるかのように厳しく行く園田さん。

これはまずいと出るのだけど、俺達の存在に全く気づいておらず園田さんは怯えて素早くバックステップを取って構える…こう言うの、黛さんの仕事なんですけどぉおおお!!

 

「あ!あっくんだ!!」

 

「おひさ~…1ヶ月ぶりだね?」

 

ことりちんとはこの神田明神でしか会わない。

朝練はしないし、学校の設備と赤ちんのジムで大体どうにでもなるのでここ最近、全くといって神田明神に来ていなかった。なので、そこそこ久々のことりちん達。

 

「…」

 

久しぶりと軽く挨拶をしているんだけど、苦虫…いや、梅干しを噛んだかの様な表情の虹村さん。

何時もなら、冷やかすんだけどなにも言わない。それどころか、むしろ言うなと言うオーラを出している。

 

「あっくん、どうしてここ最近来なかったの?私ずっと、ずっと来ていたのに…なんでなの?」

 

虹村さんの事を気にしていると、前に出てきたことりちん。

さっきまで死にそうだったのが嘘の様に元気で、目をクワっと開いている。

 

「俺、元々この辺を走ってないから…学校が入ってからは体育館とかジムとかで済ませてるから…」

 

「なぁ、おいアレって」

 

「そうだよな?」

 

「気にすんな、紫原は年中あんな感じだ」

 

聞こえてるよ、そこ三人。

俺の説明を聞くと、ことりちんはホッと一息ついた。

 

「ことり、そろそろ」

 

「え~もう少し、あっくんとお話ししたいよ」

 

「穂乃果も!」

 

「ダメです!!

そもそも、貴女達が弓道部がどんな物なのかを知りたいと言ったのに怠けるのは言語道断です」

 

「だって…海未ちゃん、弓道部の部長になってから忙しくて一緒になれないから」

 

「穂乃果…」

 

あ、これチョロいんだ。

穂乃果ちんが園田さんにとって、最も効果は抜群な一言を言い胸をときめかせていた。

ときめいている園田さんはさっきまでの怒りを忘れていた…あ、さっきのJCが降りてきた。

 

「あの、部長…」

 

胸をキュンとときめかせている園田さんをみて、若干だが白い目で見ているJC達。

一部は羨ましそうな顔で見ており、そっちのけがある感じの女子が向けている。

 

「そ、それではこれで…いきますよ」

 

そんな視線を受けて、元に戻った園田さん。

JC弓道部員達は嵐の様に去っていき、俺達は練習を再会することになった。

 

「紫原…いや、まさかそんな……え、マジで?」

 

そして虹村さんは呆れていた。



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ラブコメは物語の核心に迫る話以外は基本的にグダグダ進行

「あ~疲れた」

 

テスト期間に入り、部活動が禁止となった。

虹村さんは念のためにと練習メニューだけをくれてるから、勉強の合間に出来るけども、赤点を取るのは本当に洒落にならないのでしない。

 

「早く原付乗りたいな…」

 

何時も利用しているスーパーが創業祭かなにかで特売だった。

LLサイズの玉子170円は見逃せないと朝一番に俺はママチャリを飛ばし、買いに行ったんだけども、他にも良い品が多過ぎてついつい色々と買ってしまった。

10キロの米とかも買ったんだけど、帰りの坂道とか若干きつい。自転車を漕ぐのがキツいんじゃなくて、バランスが取りにくく、自転車のチェーンがミシミシと悲鳴をあげており、過去に一度、キレた。後、単純に籠が小さい。

ただでさえ図体がデカくて乗りずらいったらありゃしないのに、今回みたいな事があると本当に原付が欲しくなる。

 

「っと、チラシは…来てないか」

 

マンションについたので気持ちを切り替え、この後の特にない予定をどうするか考える。

一先ずは一階の郵便受けを開けるけど、特にこれと言ったものは存在しない。チラシは0で公共料金の請求書も0だ。

 

「あ、ノゾちん…おはよう、なのかな?昨日は五月蝿くしてごめん…ね…」

 

見るものも見たし、さっさと部屋に行こうとすると同じく帰宅してきたノゾちん。

時刻は既に10時過ぎなのでおはようなのかどうか悩んでしまうのだが

 

「あぁ、むっくん…おはぃ、ゴホ」

 

「ノゾちん…」

 

直ぐにそんな悩みは吹き飛んでしまう。

フラフラと安定せず歩く千鳥足のノゾちん、よくみるとマスクをしており顔が赤く目が半分閉じかけておりボーッとしている。

 

「…歩ける?」

 

大丈夫?の一言は俺は言わない。

既にノゾちんは大丈夫じゃない、買い物帰りと言うよりは完全に病院帰りの姿だ。

近くに土曜日でも午後までやっている病院があるし、多分そこに行ってたと思う。

ちゃんと歩けるかどうかを確認すると頷くノゾちん。

 

「むっくん?」

 

「ゆっくり行くよ」

 

此処でノゾちんを見捨てるほど、俺は冷徹な人間ではない。

ノゾちんの前に出て手を差し伸べて、手を握りゆっくりと歩きだす。

このマンションにはエレベーターが存在しないから、今のノゾちんにとっては地獄である。

 

「むっくんの手、大きぃなぁ…ケホ」

 

「はいはい…無理っぽいね…」

 

俺の手の大きさにほんわかしているノゾちんだったが、少しずつ咳をしてしまう。

階段を上がる度に咳の回数が増えており、これはまずいと立ち止まって、握っていたノゾちんの手を手すりに掴ませて三つ下の段に降りて中腰の体制を取る。

 

「お、重くない?」

 

俺が何を求めてるのか直ぐに分かったノゾちんは、俺の背に乗りおんぶされる。

一階の郵便受けの所でノゾちんが階段を上がれないと判断しておけばよかった、中途半端な所で歩けなくなるのは当然なのに…はぁ、やっぱこういうのダメだな。

 

「大丈夫、大丈夫…俺、200キロのバーベルまでよゆ…ノゾちん、効かないよ?」

 

おんぶさせてくれたのは良いけども、女子特有の体重を気にする的な事をしていたノゾちん。

軽いとは言わず、余裕で持ち上げれる重さを言うとノゾちんは力が出ない手で首を絞めて来ようとした。

 

「むっくん、デリカシー、持ってえな…」

 

そんなもんは、地獄の三途の川付近にある賽の川原の転生者養成所に置いてきた。

なんてことは言えない俺である。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

油断してもうた…はじめての一人での生活は馴れない事がいっぱいや。

高校に入るまではそこまでやったけど、入ってからは色々とやらなあかん事が多くて風邪をひいちゃった…けど、怪我の巧妙ならぬ病気の巧妙が起きてくれた。

むっくんが歩くのが限界だと分かると、むっくんの大きな背中におんぶしてもらった。

 

「ゴホっ、ゴホ…大きかったなぁ…」

 

元々買い物に出掛けていたむっくんはうちを運んだ後、自分の部屋に戻った。

大きな手をもう少し握っていたかったけど、むっくんにはむっくんの用事があるから仕方ない。

 

「…これ、食後の薬やん…」

 

汗だくの服から着替えて、薬を飲もうとすると薬が食後に飲むタイプの薬だと気付く。

今日、何時も行っているスーパーが特売やったからそれ様に冷蔵庫の中身を調整してたから、冷蔵庫には軽くて手間の掛からないご飯の材料が…無いねぇ…どないしよ…頭がボーッとしてきた…

 

「ノゾち~んっと、まだ起きてるね」

 

「むっくん…むっくん!?、あ、ゲホッ,ゴホッ!!」

 

ボーッとしていたら、何時の間に入ってきたむっくん。

思わず驚き、大声を出してしまい咳き込むけど、直ぐに咳は止み、手に持っているエコバックに目が行く。

 

「喉から来る風邪なら、大声出さない方が良いよ?」

 

「だ、誰のせいやと思ってるん」

 

「自業自得だよ」

 

いや、確かに驚いて大声を出そうとしたのはウチやけど…なんか違う気がする。

 

「なんで、ウチの部屋に」

 

「いや、流石にこの状態のノゾちん見捨てるほど鬼じゃねえし。

なんか病院行って来ただけっぽいし、こう言うのとか買ってなさそうだったし歩くのも結構キツそうだったから、なんか手伝おうかなって…まぁ、迷惑なら戻るけども」

 

スポーツドリンクの粉やビタミン剤のサプリメントをエコバックから取り出して気まずそうな顔をするむっくん。

何時もはなんか酸素を薄くする変なマスクをつけてるけど、今は立体型のマスクをつけている…心配してくれてるんやね。

 

「ありがとう…ちょっと、買い物に行き忘れてて、ゴホ、ゴッホ!!薬、飲むにも食後の薬で、冷蔵庫にあるのケホ」

 

「喉から来る風邪なんだから、あんまり喋っちゃダメだって…声がガラガラだし、ちょっと待ってね」

 

一旦、玄関から上がりキッチンにエコバックを置くと自分の部屋に戻るむっくん。

直ぐに戻ってきたと思えば、背もたれがついた角度を変えることが出来る座椅子とその座椅子にぴったしの程好い大きさの机を持ってきた。

 

「えっと…あ、同じか」

 

「あ、ちょ」

 

なんの躊躇いもなく寝室を足で開いたむっくん。

ウチの寝室で色々とあるのに、一切興味を示さずに座椅子と机をセットする…少しぐらいは、興味を持ってえな、折り畳んでる着替えとかそう言うのに興味を持ってほしい…むっくん、枯れてるん?

 

「ノゾちん、喉からの風邪だから無理に声を出さなくて良いから…」

 

座椅子に座ると手を握ってくれるむっくん

すーはー、と小さく深呼吸をしておりその手は震えておりマスクで分かりづらいけど、焦っており、次にどうすると色々と考えている。

 

「ん~と…食後の薬って言ってたから、今からなんか作るね。

おかゆが良いなら親指を、うどんが良いなら中指を、普通にご飯が食べれるなら小指を動かしてね」

 

色々と考えた末に、ご飯の事を聞いてきた。

ウチはおかゆよりも、おうどんの方が好きやから中指を動かした。

 

「了解…え~っと…あ、あれだ。

ノゾちん、今風邪を引いてることを親に言ってる?」

 

「……」

 

言っているなら何処かの指を動かして、とむっくんは一言も言わない。

親の事を言われてウチは思わずビクっと反応してしまい、むっくんは反応した意味を直ぐに理解した。

 

「えーとねぇ…迷惑をかける、そう思って言ってないならそれはそれで構わない、俺はその辺はどうだって良い。

俺は明日、朝から用事があるから明日はなにがあっても出掛けないといけない。

内容は大方、抗生物質だと思うけど市販薬じゃなくて病院の薬だから、飲んで休めば一日で風邪は治ると思うけど…万が一があるから…居ないなら、まぁ、此方で呼ぶけども、明日暇で看護出来そうな、同性の友達とかに連絡が出来るならしといて…」

 

理解したけど、相変わらずやった。

全くと言って興味を示さないむっくんは立ち上がり、キッチンに向かった。

…いや、言いたいか言いたくないかで言えば…あんまり言いたくないけど、むっくんには聞いてほしい…けど、むっくんはどうでも良いと思うんやろうな…

 

「…絵里ちに連絡だけ、しておこう」

 

感覚的には一日で治るけど、むっくんが言うように万が一があるからね。

頼れそうな友人の、絢瀬絵里こと絵里ちにメッセージだけを送ってみるけど、既読はつかへん。

 

「はい、リンゴジュース。

スポドリ、完成品じゃなくて粉を水で薄める奴だから冷やすの待ってて…」

 

体に力が入らないのを考慮してか、紙パックのリンゴジュース(900ml)と蓋つきのコップを持って戻ってきたむっくん。さっきから、本当に馴れた手付きで無駄なく行動してる。

 

「蓋つきで、飲み口あるし、ステンレスタンプラーだから常温にならないから無理して全部飲まなくて良いからね」

 

「うん、ありが………ん?」

 

「どうしたの?」

 

なんか余り聞きなれないコップにリンゴジュースを注いでもらい、受けとると少しだけ思考を停止する。

決して、むっくんからコップを受けとるときにコップが意外に大きいと、むっくんの手の大きさのせいで小さくみえてたとかそんなんやない。

 

「…これって、むっくんのコップ?」

 

マグカップとかガラスのコップとかはあるけど、ステンレスタンプラーなんてものはない。

さっきむっくんは色々とエコバックに入れて持ってきてた…と言うことはこれはむっくんの私物。つまり、つまりこれはむっくんが普段から使っている物。

 

「…そう言うのは良いから」

 

呆れた顔をしたむっくんはそう言うとキッチンに戻っていった。

あ、うん、せやね。こうやって地の分的な事を、一人語りをやってるけど体は結構キツいんよ。間接キスとか、そう言う甘酸っぱい展開よりも少しでも病気を治すのが優先や。

 

「……美味しい」

 

けど、それでもこう言うのは大事やん。

私はゆっくりと蓋の飲み口からリンゴジュースを飲んだ。何処にでもあるリンゴジュース、だけど何時もより甘酸っぱ

 

「あ、因みに俺は飲む時はステンレス製のストロー使ってるからそう言うの無いから。

万が一、病気移るとかそういう感じの心配しなくても良いよ。後で、念のために熱湯で消毒しとくし」

 

訂正、しょっぱかった。

むっくんは、なんやろう…ことごとく、もうそれは狙ってるんちゃうの?って言いたくなるぐらいに、甘酸っぱい展開を台無しにした。

 

「市販の麺だと、少しだけ長いけど時間短縮だからごめんね」

 

けど、それとは別にするべき事はちゃんとしてくれた。

何故か関西風のおうどんやったけど、一口サイズの牛肉が入ってる肉うどんやった。

その気になれば、自分でうどんを作れるみたいでむっくんは短めの麺じゃない事を申し訳なさそうにしていた。

 

「野菜たっぷりにしても、腹に入りづらいから、ニンジンのシャーベット」

 

うどんを食べた後には、デザートにニンジンのシャーベットが出てきた。

此処に引っ越してきてから買い物に付き合ったり、付き合ってもらったりしたけども、むっくん女子力高くない?

 

「起きる頃にはスポドリ冷えてるから、コップは直しておくね…おやすみ」

 

「うん…」

 

食後の薬も飲み終えたけど、即座に効果があるわけやない。

まだ頭がボーッとしてて、このまま眠れそうだとむっくんに布団に入れて貰いウチは瞼を閉じる…おやすみ、むっくん…………

 

 

「めっちゃ、うどん啜る音が聞こえる…」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「え~っと…病院で測った時の体温は?」

 

「38,3℃」

 

流石にフラフラのノゾちんを見捨てるほど、鬼じゃない。

拒絶されるか少し心配だったけど、御好意に甘えてくれたノゾちんの看病をした…んだけどなぁ…下心とか一切無いのに、割とどうでも良いラブコメが迫る。な~んでだろう。

 

「37℃ジャスト、顔も赤くないし食欲は?」

 

「もう大丈夫や、ゲッホ…大丈夫やで」

 

「あ~…調子に乗るな?」

 

ノゾちんが目覚めると、顔色がよくなっていた。

意識が朦朧としているなどもなく、薬がちゃんと効いたみたいで試しに体温を計ってみたら下がっていた…けども、まだ治っていない。

もう一回、薬飲んで休めばどうにかなると言った感じだった。

いや、本当によかった、明日は予選一回戦だから絶対に出ないと行けないので、ノゾちんが明日もバタンキューなら…余り頼みたくないけど、頼まなきゃいけない。

ノゾちん、誰かに連絡したとか一切言ってくれない…ノゾちんの事だから、迷惑をかけるのは嫌だとかで自分を押し殺してるんだろう…まぁ、もう治りかけてるからどっちでも良いけど。

 

「取り敢えず、寝汗が酷いから着替えなよ」

 

体温計を戻し、チラリとノゾちんを見る。

寝汗で背中のところがビショビショで、寝間着が水分を吸って若干だが色が濃くなってる。

 

「むっくん…その、汗を拭いてくれへん?」

 

モジモジとしながらそう語るノゾちんからは妖艶さが出ている。

 

「タオル何処?」

 

まぁ、それはそれ、これはこれだけどね。

ノゾちんが共学に通ってたら、学年1の美女とか言われるだろうけどもまぁ…なんだろう?

言葉は出ないけど、ラブライバーに知られるとしばき倒されそうな展開が巻き起こるが俺は、相も変わらずマイペースのままタオルの場所を聞いた。

 

「…やぁん…」

 

タオルの場所を聞いて、部屋に戻ると掛け布団で前を隠して背中を向けていたノゾちん。

念のためにと半分に折り畳んだ状態で背中を拭いていると喘ぎ声をだすのだが、なんか嫌な予感しかしない。俺、この後、ノゾちんに殴られるんだろうな…殴り返しちゃダメかな?

 

「ノゾちん、ちょっとブラが邪魔だけど」

 

「え…えぇ!?」

 

唯一見えている下着ことブラジャーが付けられてる部分以外の背は大体終わった。

後はブラ付けられてるところを拭けば終わるんだけども、どうすれば良いのか分かんない

 

「…っ…っ……」

 

顔を真っ赤にして、悶絶するノゾちん。

これはくしゃみをして、TKBが見えてしまい顔を真っ赤にして殴られる感じの展開かな?

今更ながら、赤ちんが三年間は此処に住めと言ったのと生け贄になれと言った意味がよーくわかったよ…俺、出○○朗や○○○○倶楽部みたいに肉体芸は専門外なんだけどなぁ。

 

「返事無いから勝手にするよ」

 

このまま殴られるのも、なんか癪なのでやれることはやっておく。

ブラのホック部分を引っ張ると外れそうなので、そこは持たずに伸縮出来るゴムっぽい所を引っ張り、汗を拭く。

 

「ちょ、ちょっとむっくん!」

 

「ちょっともなにも、ノゾちんがやってって言ったでしょう」

 

何を今更、慌てるの?恥ずかしがるの?

一度、どうにかしてとも言ったんだし、これぐらいは良いでしょ別に。

 

「取り敢えず、続けるよ」

 

やれと言ったのは、ノゾちんだ。

甘酸っぱい展開にはそう易々とならず、再開をしようとするのだが

 

「希、だいじょ」

 

寝室のドアが、ノゾちんに負けず劣らずの絶世の金髪美女に開けられた。

 

「え、絵里ち…」

 

はい、今の状況を書いてね。そこテストに出るからね。

ノゾちんの呼び方からして、万が一の為に呼べる人だと思うけどももう遅い。

 

「希に、なにをしているの!!」

 

デリカシー無く、ブラを引っ張ったから恥ずかしがり若干だが涙目のノゾちん。

そしてブラを引っ張っている俺を見て、彼女は飛び蹴りを俺にくらわせた…ああ、そうだった。

主人公が俺みたいに変な男なら、物語の核心に迫る話以外は基本的にグダグダ進行で最後俺がしばかれるよね。

 

「いったぁあああああ!!」

 

ぶっちゃけ避ける事が出来たし、関節技を決めれたけどノゾちんが後ろに居るので避けなかった。あ、パンツ見えた。




NG集


「希、だいじょ」

寝室のドアが、ノゾちんに負けず劣らずの絶世の金髪美女に開けられた。

「え、絵里ち…」

はい、今の状況を書いてね。そこテストに出るからね。
ノゾちんの呼び方からして、万が一の為に呼べる人だと思うけどももう遅い。

「希に、なにをしているのよ!!」

デリカシー無く、ブラを引っ張ったから恥ずかしがり若干だが涙目のノゾちん。
そしてブラを引っ張っている俺を見て、彼女は飛び蹴りをしてきた。

「それは残像だ」

しかしその程度の蹴りはくらわない。
転生者になるべく、戦闘訓練も受けている俺は体をそらして避け

「きゃおぅ!?」

「あ」

「あ、やべ」

俺が避けたことによりノゾちんに蹴りが命中した。


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女子力とはもはや哲学である。

高校に入って最初のテスト期間が終わり、肩の力が少しだけ抜けて後は結果を待つだけ、そう思っていたら高校に入って出来た一人暮らしの友人からSOS、風邪を引いちゃって大ピンチとのメッセージが来た。

運悪く、ちょっと遠くまで買い物に行っていたけど、急いで戻り友達が住むマンションに向かった。希に早く、元気になって貰おうと看病に来たのに

 

「絵里ち、大丈夫?」

 

なんで私が希に看病されているのかしら…

 

「捻挫をしたとかそんな感じじゃないわ…」

 

思い出せ、思い出すのよ私。

希にL○○EでOKと送ったけど、既読が付かなかった。

きっと寝ているのだと思い、希がすんでいるマンションに向かうとドアには鍵が掛かっていなくて、私を待っていたのだと思った。

鍵は開けっ放しにしてるから勝手に入ってって、連絡もあったから入った。

キッチンには誰もおらず、寝室の扉が閉まっていたから、きっとまだ寝ているのだと扉を開くと、顔を真っ赤にした希のブラを大男が引っ張っていた。

この時、私は察したの。

 

看病にかこつけて変なことをしようとしていたのね、エロ本の様に!!エロ本の様に!!

 

…そこで、すかさず跳び蹴りくらわせたのに

 

「まさか、跳び蹴りを入れた絵里ちの方が怪我をするやなんて…」

 

どうして私が怪我をしているのかしら。

跳び蹴りなんて生まれて数回ぐらいしかしてないけど、運動神経には自信があるわ。

助走とかしていなかったけど、確かにクリーンヒットしていた。なのに、何故か私が足を痛めた。

 

「私も結構、良い感じに決まったと思ったのに」

 

「悪口ならともかく、そう言う会話を本人を前にして言う、普通?」

 

風邪薬とかは持っているけど、捻挫に使う湿布を持っていなかった希。

だけど、この大きな男は持っており隣の自分の部屋からコールドスプレー等の一式を持ってきた。

 

「ごめんなさい、私が勘違いをしたせいで」

 

私が勘違いをしたせいで、彼に蹴りを入れてしまった。

どう考えても、私が悪いのだけれど何故かしら…足を怪我したせいで、そこまで罪悪感が無いわ。私が悪いのに。

 

「むっくん、大丈夫なん?」

 

「あんな体重もなんも乗ってない蹴りで痛めないよ。

まぁ、当たりどころも良かったからね…明日、試合でスタメンで怪我でもしたら、本当に怒られる」

 

「うっ…」

 

怪我は無いよと蹴った場所を見せてくるむっくん(仮)

蹴った場所は腫れておらず、内出血もしていなかったけど私の中の罪悪感が腫れてきた。

 

「まぁまぁ、むっくん」

 

「後、ノゾちん…狙ってたよね?」

 

「うっ…」

 

「これ以上は終わったことをグチグチ言わないけども俺に非がなかったら、躊躇いなく焼いた甘栗を顔面に押し付けてたよ」

 

そう言うと彼は立ち上がった。

え、嘘よね?焼いた甘栗を顔に押し付けるなんて、そんな拷問みたいな真似はしないわよね?

 

「ノゾちん、お腹具合はどう?」

 

「お腹具合は…うん、大丈、夫…かな?」

 

あ、冗談みたいね、よかったわ。

立ち上がった彼は前屈みになり、希のお腹具合を聞くと、ちょっと困った顔をする希。

寝起きなのもあるけど、まだ少しだけ風邪は残っているから、何時もの食事は無理だけどおかゆの様な軽い物も軽すぎて無理な中間な感じね。

 

「じゃあ、スパゲティにするよ。

大皿に乗せて、小分けする感じで食べれば余っても俺が食えるから…時間も時間だし、食べてくでしょ?」

 

「ええ、ありがたくいただくわ」

 

「んじゃ、ちょっと待ってて」

 

「あ、私も手伝うわよ」

 

寝室を出ていこうとする彼。

さっきの事もあるし、元々は希の看病に来たのだからなにかをしないと。

 

「いや、後は麺茹でて、絡ませれば良いだけだから…ノゾちん、着替えさせて、運んできて」

 

彼はそう言うと寝室を出ていくと、キッチンから水が流れる音が聞こえた。

 

「むっくん、寝る前と違って、ウチはもう動けるのに…」

 

「希…彼、なんなの?」

 

やれやれと呆れている希に、私は此処ぞとばかりにむっくん(仮)について聞く。

 

「なにって、お隣さんやで?」

 

「そうじゃなくて、もっとこう…何者なの?」

 

言葉にするのは凄く難しいけど、本当に彼について気になった。

今まで出会った人のなかでも一番大きいし、体が頑丈だし、普通に料理できるし…希のお隣さんが同年代と聞いてるだけで、まさかあんな変わった人だなんて思ってもみなかった。

 

「明日が試合だって、言ってたけどなんの部活をしているの?」

 

「…さぁ?」

 

「知らないの?」

 

「…よくよく考えれば、一回も聞いたこと無いわ…」

 

引っ越してきて、そんなにこのマンションには住んでいないけど引っ越し当初からお隣さんの彼、色々と仲良くしていると聞いていたけれども、それすらも知らないとなると少しだけ心配になる。

 

「ところで、なんのスパゲティを作っているの?」

 

希に着替えてもらい、キッチンに座らせると私も手伝う。

と言っても、皿やフォークの用意だけで調理は一切させてもらわない。と言うよりは本当に麺を茹でてるだけで、包丁なんかは出していなかった。

そして凄くどうでも良いことなんだけれど、体が大きいからエプロンのサイズが全然合ってないわ。

 

「ミートボールスパゲティ。

今日、元々作る予定だったからノゾちんが寝てる間に作ってたから後は暖めるだけで良い。

体調良くなっても、寝起きだしそこまでだと思って元から用意してたんだ」

 

麺を茹でる鍋とは別の、中ぐらいの鍋を傾け、中身を見せる彼。

中にはトマトで煮込まれたミートボールが入っており、見るからに美味しそうだった。

 

「ノゾちん、ストップって言ってね」

 

「むっくん、狙って作った?」

 

「いやぁ、金曜ロードショー見てたら作りたくなって…」

 

物凄く大きな大皿にかなりの量があるミートボールスパゲティ。

ふとあるものを連想してしまい、希も連想した。やっぱりこれ、狙ったのね。

 

「美味しい…」

 

希の後に私も取り分けて貰い、一口食べるととても美味しかった。

 

「どーいたひまひて」

 

モグモグとリスの様に頬張りながら礼を言う彼は特に気にせず口と手を進める。

何となくだけど、分かってきたわ…なんも考えていないと言うか、マイペースな感じなのね。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

そして始まった気まずい空間。

蟹を食べているわけでもないのに、会話が発生しない。

どうすれば良いのかしら、中間テストの出来具合は無理。彼も含めて会話をしないと…

 

「そう言えば、明日は試合らしいけどなんの部活なの?」

 

彼とも出来る会話があったと、少しだけ気になっていた事を聞いてみる。

ミートボールが入った鍋を見た際に、彼の側に寄ったけれど私と50㎝ぐらいの身長さがあった。確実に二メートルはあり、バレーなんかじゃ大活躍間違いなしだわ。

 

「ん~…左手は添えるだけ?」

 

「…バスケね」

 

私の質問に雑な答え方をするが、バスケと聞いて有ることが頭に過る。

 

「けどまぁ、俺の所の高校はバスケ部に力を入れてるとかそんなんじゃないからね。

普通の公立高校で全国から強豪スカウトして、学費免除の特待生扱い出来る私立と違って、学校単位で力入れられないから設備はボールとコートだけだし、バレー部と体育館共用したりとかが多くて、バレー部だけしか使っちゃいけない日もあるよ」

 

けれど、それは直ぐに消える。

会話が続いたと、少しだけ安堵してしまった。

 

「そう、それじゃあ明日の試合は頑張らないとね…もし二回戦に進んだら、見に行こうかしら?」

 

「あ、それエエな!お弁当はカツサンドにして」

 

「邪魔だから来ないで、そんな感じで来られたら迷惑だから」

 

会話が弾み、勢いがつこうとしたその時だった。

一瞬にして空気は凍りつき、のほほんとしていた彼は真面目な表情になり、ハッキリと邪魔と言った。

 

「むっくん、そんな」

 

「邪魔だから見に来ないでよ。

一回戦、二回戦で勝ったからって良かったとか、おめでとうとか言われたり次も頑張って、応援してるって言われると腹立つ。全国優勝以外になんの価値も無いよ…」

 

彼は虎視眈々と私達を邪魔者扱いをする。

希は泣きそうな顔になるけれど

 

「ごめんなさい」

 

私は直ぐに謝った。

 

「大会に出るからには、本気でやってるからには優勝以外に意味は無いわよね」

 

プロになれば、負けても次がある、勝ったり負けたりが多い。色々な大会がある。

だけど学生の大会は違う。都の予選で負ければその時点で終わりで選抜もなにもない。

一回戦勝てたからおめでとうや、次も頑張っては馬鹿にしている。一番になってはじめて意味があると、物凄く勝利に貪欲だった。

会話を弾ませようとして言ったので、浮わついた気持ちで私は言ってしまったと反省する。

 

「別に良いよ…けどまぁ、本当に見に来ないでね、あんま試合を見られたくないし。

一回戦の相手、野球に力を入れてる私立だから勝てて当然レベルの相手で勝ってドヤ顔とか恥ずかしいし」

 

ただ、もしかするとあがり症なのかもしれないわね。

見た目に反して、料理上手であがり症で意外に可愛い所が多いわ。

 

「あ、そうだ」

 

その後はバスケや部活動の話題をせずに、趣味などの話題で会話を弾ませ食事を終える。

皿洗い等も済ませ、お昼に作ったニンジンのシャーベットを頂き体を少し休ませるとなにかを思い出した彼は外に出ていくとチョコタルトを持って戻って来た。

 

「昨日、五月蝿くした際に迷惑料としてノゾちんの分を作ったの忘れてたわ」

 

「そう言えば、昨日、ミキサーの音が響いとったね…にしても、チョコタルトまで作れるんや…」

 

「チョコバナナタルトね。

砕いたアーモンドとか入れてるから…まぁ、不味かったら遠慮なく捨てて良いよ…タルトははじめてだから…明日、二人で食べてね」

 

何処か自信がなさそうな彼は、タルトを冷蔵庫に入れると帰ろうとする。

チラリと時計を見ると、もうすぐ9時30分を過ぎそうな時刻だった。

 

「俺は、明日早いからもう戻るね」

 

「あ、うん…ありがとうな、むっくん」

 

「別に、こういう時はお互い様?だと思うよ、んじゃ」

 

「待って」

 

「なに?」

 

自分の部屋に戻るべく玄関の扉を開き、外に出ようとする彼を止める。

最後にどうしても聞いておかなければならない事が一つだけあった。

 

「名前、まだ聞いてなかったわ」

 

「あ~そういや、言ってなかったね…紫原睦だよ」

 

「紫原睦ね…私は絢瀬絵里よ…これからもよろしくね」

 

「ん~よろしくね、絵里ちん」

 

「…っ、ええ」

 

まさかいきなりのあだ名呼びで、思わずビクッとしてしまった。

大丈夫かしら、変な反応をしていないわよね?

 

「…希、私もそろそろ帰るわね。

一応、明日も念のために来るから再発させちゃダメよ?」

 

「大丈夫やって…それよりも、絵里ちも気を付けてな。

まだ若干やけど、ウチ、風邪っぽいから、もしかしたら移ってるかも…」

 

「大丈夫よ。それよりも、心配するなら私よりも睦の方じゃないの?」

 

「ん~…まぁ、むっくんなら大丈夫やと思うで。それよりも、試合に勝てるかどうかが心配や」

 

特に睦の風邪は気にしない希。

風邪を引いている姿を想像しようにも、余り浮かばない。

 

「そっちの方はね……」

 

「バスケ部って、聞いた時に少し間があったけど…なにかあるん?」

 

バスケの試合の事となると、少しだけ会話に間があいてしまう。

私自身、そこまで意識をしていなかったけど、どうやら少しおかしかったみたいで希は聞いてくる。そう言えば希は中学三年の三学期から此処に引っ越してきたのよね…聞いたこと無いわよね。

 

「…私が通っていた中学、急に男子のバスケ部が廃部になったのよ」

 

「廃部?」

 

「人数が少ないとか、暴力問題を起こしたとかそんなのじゃないの。

それどころか学校で一番の身長が大きい人が入部してたのだけれど…ある日、突然全員が退部届を出したのよ」

 

今でもハッキリと覚えている。

毎日毎日遅くまで練習していた男子バスケ部が急に廃部になって、学校中の話題になったのを。

生徒の大半が気になって、色々と聞いて一つの事が分かった。

 

「男子バスケ部の皆、バスケが怖くなっていたの。

インターハイ予選で物凄く強い中学に当たって、ボロ負けして…」

 

「たった一回の負けって、そんなのあるん?」

 

「たった一回の敗北で退部した。

それを聞いて根性なしと言う人が多くて、私は行かなかったけど、男子バスケの大会を、うちの中学の部員を退部に追い込んだ学校の試合を見に行く様に言われて、見に行って…バスケが嫌いになるって言っていたわ」

 

翌年、新入生だけでバスケ部が再起したから今は持ち直していると思うけれど…

 

「中学生でありながら、既に超高校生級の実力を有していた生徒が五人。

しかも全員が別のポジションでスタメンで…なによりも同じ学校で同じ年に現れたの…奇跡の世代と呼ばれているらしいわ…まぁ、睦には関係無いわよね」

 

奇跡の世代なんて呼ばれるぐらいに強い選手は、バスケ部に力を入れている私立に引き抜かれて特待生枠とかで入部している。

一回戦の対戦相手は野球に力を入れている高校だから、そんなよね。

 

「じゃあね、また明日」

 

「うん、また明日」

 

奇跡の世代の事を話していると、思いの外、長くなったわ。

早いところ、帰らないと…足は、普通に動くわね。

 

「…むっくんも絵里ち、帰ってもうたな…う~ん…布団、もう一つ購入しようかな…」




世界史(雑学)

Q ハンス・クリスチャン・アンデルセンの書いた童話を述べよ。
この問題は解答が被っていなければいないほど、点数が高くなります。

絢瀬絵里の解答

裸の王様

XXからのコメント

面白味もなんもねえな、ちょっとぐらいボケろや。

東條希の解答

某夢の国の住人と雪の女王

XXからのコメント

おい、やめろ。夢の国は本当に洒落にならない。リメイクしてるから×な

紫原睦の解答

火打ち箱

XXからのコメント

また、マニアックなの来たな。

黛千裕の解答

貴方のための物語(メルヒェン・マイネスレーベンス)

XXからのコメント

当て字が痛い。


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遠くの薔薇よりも近くの蒲公英

ノゾちんが風邪を引いてからは、特にこれと言ったなにかが発生しなかった。

馴れない一人暮らしで風邪を引いたから、もしかしたらと少しだけ気にかけてたけど、そんな心配は絵里ちんがノゾちんの部屋に入るのを見て直ぐに気にかけなくて良いと思った。

やっぱ、同性の方がなにかと楽なことが分かる。

 

「良いんすかね、原作放置してこんなグダグダとやってて。

こう、原作開始前に起きていた悲劇を回避する的なのを、イケメン的な事をしておかなくて」

 

「良いんじゃないの?そもそもの話で俺達の中に誰一人ラブライバー居ないんだしさぁ…居たら居たで、迷惑だけど」

 

趣味のお菓子作りで作ったケーキとかアイスとかをお裾分けするぐらい、買い物(荷物持ち)に行くぐらいのレベルだ。

夏休みはインターハイ…だけと思えば、なんか三名の参加者が必要らしく強制的に高校生クイズに参加。+地獄の合宿

クリスマスは普通にWC(ウィンターカップ)があり、三が日は普通に家に帰り、色々と挨拶回り。三が日が開ければ、天皇杯に向けての練習と何だかんだと忙しい。

バレンタインは特に無かった。浮わついた気持ちをグダグダと進行させるラブコメの主人公じゃないので、貰わなくてよかった。チョコが無いのは、それはそれでよかった。

 

「にしても、菓子折り、必要なの?もう適当に食って行っちゃダメなの?」

 

そんなこんなで一年過ぎ、黛さんは卒業して電子専門学校に進学、虹村さんは降ちんを部長に任命して退部し、今度は陸上部に入部。そしてバスケ部にも新一年生が入ってきた。

まぁ、私立でもバスケに力を入れている高校でもないので大抵は普通の子達だけ。

俺達に憧れて受験、なんてのは高確率で無理。シンプルに偏差値が高くて、入試が激ムズ。そもそもで、本当に勉強できる奴が通う高校である

 

「ダメっすよ、赤司っちの命令なの忘れたんスか?」

 

「黄瀬ちん的には?」

 

「…いやー…相変わらず、外道だなと…輪廻転生から外れてるんで外道なんすけど。

けどまぁ、俺も今回の事に関しては色々と思うところもあるし…それ相応の事をしとかないとダメっスね」

 

「それ相応の事=八つ当たりだけどね~…」

 

本日秋葉原の大きなビルの中に学校がある私立のUTX学園(共学だけど女子の割合が多く、芸能人が通いやすい学校)との練習試合…なのだが、俺達だけ別行動。

決して試合をサボっている訳ではない。ある意味サボりは赤ちん達だ。

 

「いらっしゃいませ~…あ、どうも!」

 

むしろ朝早くに和菓子屋こと穂むらに行かなければならない。

穂むらの入口を開けると、穂乃果ちん…の妹で、本当に妹かと思うぐらい真面目な雪ちん(雪穂)が店番をしていた。

 

「偉いっスねぇ、休みの日の朝早くに店番なんて」

 

「此処来るとき、結構な確率で雪ちんだよ」

 

「ははは…お姉ちゃんに任せると稀に大変な事になりますから」

 

しっかりものの妹と、色々とうっかりな姉…に見えるけどもそれはまやかしである。

雪ちん、何だかんだで仕方ないなと穂乃果ちんを甘やかしてる部分がある。可哀想な次女で、妥協してるとかじゃない。

 

「あ、それとこの前はありがとうございます」

 

「あれぐらいなら礼なんて要らないよ」

 

「何かあったんスか?」

 

「和菓子食いたいけど、日本語全然喋れない外国人観光客With翻訳アプリなんて存在しねえ」

 

「ああ…大変ですね」

 

ざっくり言うと大変だったなと哀れむ黄瀬ちん。

街の和菓子さん感はあるけども、なんだかんだ人気の穂むら。

和菓子を食べてみたい外国人観光客来たけど、雪ちんも穂乃果ちんもお手上げで、たまたま食ってた俺がフォローした、それだけだ。

おかしな翻訳でも良いから、一応の翻訳アプリをダウンロードしてきてほしい。

 

「え~と」

 

「あ、どうも。

俺、黄瀬諒太です…紫原っちの友人で部活仲間ッス」

 

「部活…だから、ジャージなんですね」

 

普通のではなく、学校名がアルファベットで書かれたジャージをまじまじと見る雪ちん。

何時もはお昼過ぎぐらいにしか来ないから、朝早くに来たので疑問に思ってるっぽいね。

 

「雪穂ちゃん、独り暮らしの独身男性教師向けって、どれかな?」

 

「後、謝罪用の良い感じなのない?包装も出来たらしてほしいんだけど」

 

「え~っと……ちょ、ちょっと待っててください、お母さ~ん!」

 

穂むらに来た理由は菓子折りを買いに来た。

なんの菓子折りかと聞かれれば、やらかした時の菓子折り。

後、顧問を引き受けてくれている甘いものが好きな先生へのお礼の品。何だかんだで、形だけで付き添うだけの顧問になってくれたのは本当に感謝している。

 

「えーと、これとこれですね」

 

「じゃ、カードでお願いしますね、後、領収書ちょうだい。名前は赤色の赤に、司るの司で赤司で」

 

「ブラック、カード…」

 

裏の厨房から戻ってくると、謝罪用と一人用を紹介したので買う。

支払いは赤ちんのクレジットカードで、雪ちんはブラックカードを見て手が震えている。

会計を済ませると、黄瀬ちんが領収書を、俺が商品を受け取った。

 

「そう言えば、穂乃果ちんは?」

 

「お姉ちゃんは、裏で注文された結婚式の引き出物の饅頭の手伝いをしてます」

 

「へ~、引き出物の饅頭すか。

大手の店じゃないのに、そう言うのも扱ってるんスね…何故か潰れない街の和菓子屋的な、イタイ、イタイっス!!」

 

「黄瀬ちん、色々と余計なの多すぎ…じゃあね~」

 

「ありがとうございました……あの人も大きかったなぁ…けど、あの人、どっかで見たような?」

 

余計な一言を言う黄瀬ちんの後頭部を鷲掴みにし、アイアンクロー(極)を決めながらも腕の力だけで、初代ピッコロ大魔王が天津飯の頭だけ掴んで持ち上げた時の様な事をして店を出ていき、UTXを目指す。

 

「雪穂、さっきなにを聞いてたの?」

 

「謝罪用と一人用の饅頭を聞かれて…紫原さんだったよ、お姉ちゃん」

 

「むっくん、来てたの!?」

 

「うん…友達と来てたけど…その人も滅茶苦茶、大きかったよ…首痛い」

 

黄瀬諒太、身長193cm

紫原睦、身長213㎝

言うまでもなくデカァあああい

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「…ふう~ん!!」

 

UTXに着き、先生に渡す用の菓子折りを渡してUTXに入る。

入校証があり、それで出席確認をしているらしく大分ハイテクな高校だった。

けどまぁ、授業はうちの学校と同じで、タブレット端末使ってたりする普通な感じだった。

いや、普通なのかな?

 

「ふっ…うっ…ふ~スッキリした」

 

学校見学に来たのではなく、練習試合に来た俺たち。

直ぐにこの学校の体育館の案内して貰うと、凄かった。公式が使うスコアボードとか、最高級のバスケットボールとか色々と常備してた。金ある高校は格が違うのを思い知らされた…が、それはそれ、試合は試合。

相手には身長193㎝が売りの男子がいたが、その程度の身長を売り文句として調子こいてる奴に負けるほど、落ちぶれちゃいない。

誰が相手だろうと獅子が兎を全力で狩るが如く死力を尽くして必ず勝つ、尽魂必勝…ではなく、獅子が兎を全力で狩るがの様に全力を尽くすも、勝って当然と言う、勝つのは呼吸と同じで勝って当然の姿勢をとる百戦錬磨の尽魂常勝無敗が俺達の流儀だ。まぁ、苦渋の決断をしてるってゃしてるけども。

 

「……黄瀬ちん、何処?」

 

己の敵は己の内にあり。

敵は己の中にありと言うよく聞く言葉を少し捩った言葉だが、正にその通りだ。

己の内側にある異物を追い出す戦いを終え、全てを洗い流したんだけど、外で待ってる筈の黄瀬ちんが居なくなっている。あ、試合は俺がゴールをぶっ壊したから、強制的に終わった。第2Qの時点で十倍差があったから俺達の勝ちだ。

 

「…通知は無しか」

 

携帯に通知が無いかを確認するけど、一切無し。

油断も隙も無いとはこの事だ、黄瀬ちんが迷子になっちゃったよ。

 

「……出ない…はぁ~、なんで同じところに五分以上居ないんだろ」

 

電話をするも、出ない黄瀬ちん。

完全に迷子状態になっているのが分かったので、俺は大きなため息を吐いて歩き出す。

やっぱ、菓子折りは俺が持っておいた方がよかった。

 

「にしても、何処に居るんだろ?」

 

校舎が学校の校舎らしい校舎ではなく、ビルのUTXでは常識が通用しない。

適当に歩いていると電光掲示板があったので、目を通してみると何処の部活が今なにをしているとか練習試合しているとか、一回戦突破とかそんなのが出ていた。

 

「う~ん…芸能課かな?」

 

本家と同じく読モをやっている黄瀬ちん。

本人は金払いの良いのと何れはメディアに出るのでと軽い気持ちでやっているが、本業はバスケである事を忘れていない(学生です)。

そんな黄瀬ちんが、芸能課なんてコースがある高校に突っ立っているとなると…

 

「はぁ、面倒だけど探すか」

 

芸能課があるフロアに重い足取りで向かう。

40分フルに試合に出る予定があったのに、第2Qで中止になったせいか中途半端に体がダルい。柔軟とかストレッチとかしたけど、ダルい。

 

「はい、ストップ!!今、全員が遅れてテンポがずれたわよ!!」

 

「あ、此処じゃなかった…すみませんでした」

 

適当に詮索していると、間違えてダンススタジオのドアを開けてしまった。

レッスンど真ん中でドアを開けてしまい、ダンスレッスン中の芸能課の生徒と思わしき三人は「え、誰?」となり、ダンスのリズムを乱す。

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

これは申し訳ない事をしたと謝り、出ていこうとするとトレーナーらしき人に止められた。

 

「貴方、見たところ他校の生徒だけど…なんで此処に?」

 

「ちょっと迷子になった友人を探してるの。

連絡つかないし、芸能科の方に居るんじゃないかって手当たり次第に探してるけど中々に見付かんなくて」

 

「はぁ…芸能科は普通科とは違います。

一部は企業秘密な部分もありますので、本校の生徒でも無闇に来ないようにと」

 

「その辺、一切言われてないよ。

おばさんは教師じゃなくて、専門の人でしょ…今、普通科は色々と大変な事になってるよ。

うちの顧問の先生、先にお前達だけで帰っとけって言わなきゃいけないぐらいに…」

 

「おば…と、とにかく無闇に歩かないでください」

 

「あ、じゃあ校内放送かけてくんない?

先に帰ってるって事は絶対にないから、呼び出せば確実に来ると思うし」

 

「…っ…っ…っ…ええ、分かったわ。

取り敢えず、貴方は此処に居なさい。貴女達、休憩にはちょっと良い頃合いだから休みなさい!!君も、絶対に出歩いちゃダメよ!此処で待機してなさい!」

 

眉とか笑窪とかをひくひくさせながら怒りを抑えて、ダンススタジオを出ていくおばさん。

よかった。これで黄瀬ちんを早急に見つけることが出来る…けども、おばさんに連れが誰とか言ってないけど大丈夫かな?

 

「ごめんねぇ、なんか練習の邪魔をしちゃって」

 

取り敢えずは、謝っておこう。

 

「あ、いや、後、数回ぐらいで休憩に入る予定っぽかったから…そんなに頭下げなくて良いわよ」

 

「あ、そうなの?

……あ、ごめんね。隅っこに寄っておくから…ほんと、ごめんね」

 

謝りっぱなしだけど、悪いのは俺である。

三対一とは言え、男が居るんだから気まずい空間になるのは当然だろう。

俺は気にしないけども。

 

「そんなに畏まらなくて良いわよ。

男一人で、ああだこうだ言っているとスクールアイドルなんてできないわ」

 

三人のリーダーらしき女子は全く気にしていない。

その言葉に甘えるべく、俺はゆっくりと肩の力を抜いて座り込み肩掛け鞄からレモンの蜂蜜漬けを取り出す。

 

「食べる?」

 

モグモグと食べていると羨ましそうな視線を向けてくる。

屋内でのダンスレッスンなので空調設備等は大丈夫だが、それでもハードであり汗をかいており疲れているのが分かる。レモンの蜂蜜漬けが入ったタッパーを差し出す。

 

「ありがとう…そう言えば、名前を聞いてなかったわね」

 

「紫原睦だよ」

 

「紫原、睦ね…私は綺羅、綺羅ツバサよ」

 

三人組のリーダーっぽい人もとい綺羅ツバサは、レモンの蜂蜜漬けをタッパーごと持ってった。



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蒲公英は春を過ぎれば消えてしまうが故に消える前に摘み取る

「ふぅ、ありがとう」

 

レモン五つ分のレモンの蜂蜜漬け、練習試合中に部員全員で食べた分を合計しても一個半しか食べていないと言うのに、根刮ぎ食われた。

スクールアイドルはTVに余り出ない、出れないので歌やダンスがメインとなり、その分動いているせいか、食欲も多い。

 

「タッパー返してね、家で蜂蜜水を作るから」

 

レモンが無くなり、蜂蜜だけになったタッパーを返してもらう。

これにお湯を突っ込めばホットドリンクになるし、炭酸水を入れればジュースにもなる。

これがまた旨いんだなとタッパーを鞄に入れる。

 

「あ、お気になさらず」

 

今度はタブレット端末を取り出す。

UTX、Wi-Fiも完備だから、黄瀬ちんが来るまでの間に動画でも見ておこうとするのだが視線を向けられる…はぁ、物珍しい存在だから向けてくるんだろうな。

 

「なにを見ているのかしら?」

 

「特にまだ決めてないよ」

 

第3次ゲーム機大戦の動画を見ようかな?

そう思っていると、タブレットをツバサちんに奪い取られて何かを入力する。

 

「それならこれはどうかしら?」

 

「えーと?」

 

タブレットを返すとスクールアイドルのユニット名らしきものが検索されていた。

今目の前にいる三人の動画がずらりと並んでおり、ユニット名は英語だ。なんて読むんだろ?

 

「A―RISE…私達の名よ」

 

ドヤっとドヤ顔になるツバサちん。

後ろにいるゆるふわ系を醸し出し、スタイルの良い優木あんじゅと真面目女子感を醸し出し、スタイルが残念な統堂英玲奈もドヤる。

 

「あ、うん…今度見とくよ」

 

取り敢えず、ゲーム機大戦辺りを見よう。

海外からやって来ては、沈没する大破する復活するを繰り返すX箱は笑える。

ドヤる三人を無視し、俺はゲーム機大戦と検索をするのだが冷たい視線を受ける。

動画を見てもらい、スゴいとかの一言が欲しかったのだろうか?なんかそれ、キモチワルイ。

 

「興味無いよ…」

 

こう言うことは中途半端にせず、ハッキリと言った方が良い。

マイナーだけど、ちょっとしたきっかけでブームになったから好きになったは、余り良くないと思う。スクールアイドルがああだこうだとなっているが、余り興味無いのだ。

なので堂々と言うと泣きそうになる三人、少し言い過ぎたかと思うので少しだけご機嫌取りをする。

 

「だって、目の前に本物がいるでしょ?

それとも…何百も同じ事を繰り返してやっと出来た1しか見せることの出来ないスクールアイドルなの?」

 

あ、少しだけ言い過ぎた。

なんか良い感じのフォローは無いのだろうかと考えていると笑みを浮かべる三人。

 

「そうね…そうよね」

 

「最高の1を作り出すんじゃない、最高を常に作り出す…」

 

優木あんじゅと統堂英玲奈もなんか燃えている。

ツバサちんは特に二人となにか打ち合わせをするわけでもなく、俺から少し距離を取りCDプレイヤーにCDをセットする。

 

「さっきはごめんなさい…本物が居るのだから、本物を見せないとね」

 

あんじゅがそう言うと、曲が流れる。

俺が間違えて入ってきた時とは異なる曲、既に出している曲と思う。

なんの迷いもなく流れる様に舞い踊り、歌う彼女達。

そこには彼女達の本気の気持ちと笑顔が籠っており、そんな彼女達の姿に俺は、魅了

 

「すごいねー」

 

されるなんて事は無かった。

いや本当に、スゴいんだろうけどもね…元々、こう言うのに興味無いんだよ。

決して三人がA―RISEが悪いんじゃないんだ、どっちかと言うと俺が悪いんだよ。

興味の無い事以外の感受性は薄い。多分、七人の中じゃ一番だ。黛さんは無表情が多いけど、感受性は普通だ。

誉めてるんだけども、言葉に全く心が籠っていない事が分かると落ち込む三人。

 

「これでも、最近はモデルとかの御仕事もやり始めたのに…」

 

「まさか、アッーなんじゃ無いの?」

 

あんじゅと英玲奈はどっかで見たことあるファッション雑誌を取り出し、載っている自分を見て落ち込む。

最近、売れてきて自信らしい自信がついた頃の俺は、結構なダメージになるよ。全く興味を示さないんだから。バスケでも調子こいてる奴を叩き潰すの好きだし。

 

「まぁ、アレだよ。

俺は遠くの薔薇よりも近くの蒲公英で、花より団子な人間だから…基本的に心が踊ることはさ」

 

んでもって、蒲公英は春を過ぎれば消えてしまう。

冬から春の間に摘み取っておかないといけない、後、色気よりも食い気だ。

 

「じゃあ、逆になにで心が踊るのかしら?」

 

「これ」

 

俺の心が踊るものと言えばこれしかない。

鞄からバスケットボールを取り出す…前世の時からやっていたバスケ、ずっとマイペースな俺だけど、ハッキリと好きと言える。

 

「バスケね…」

 

バスケットボールを受け取り、俺を見るツバサちん。

俺の図体だったらダンクとかが楽だろうとか、エースになれるだろうと考えているかもしれない…けど、世の中はそんなに甘くないのである。ベテランの峰ちんは強い。

 

「上を目指して、頑張るのは良いけども緩急は大事だよ…三人だし、やってみたら?」

 

アイドルのダンスレッスンは、割とハードである。

いや、ハードなのは良いがそこでは終わらない。きっと、食事管理とかもある。

毎日、毎日同じ事を続けていると精神的に参ってしまうだろう。取り敢えずは息抜きとか気分を変えたりするのにバスケをと進めてみると少しだけ興味を持つ三人。

 

「確か、左手は添えるだけ…だったかしら?」

 

シュートのフォームっぽいのをとるツバサちん。

多分、そのフォームで打つと確実に失敗する。足腰に力が入ってない。

 

「それは人それぞれだよ。

左利きの人なら右手を添えないといけないし、もっと言えば変なフォームでシュートする奴もいるし」

 

主に黛さんとか。

あの人、体格はそれなりにあるのに器用に幻影の(ファントム)シュートを打つから苦手だ。

原理は分かってるけど、あのフォームで普通のシュートにするときがあるからボールを落とせない。

人には人のフォームがあると言うと、軽くドリブルをするツバサちん。

ドリブルのフォームは悪く、ボールが変な所に飛んでいってしまうのだが、わざと悪いフォームでドリブルをしていた。

 

「なにをしているの、そんなのじゃないでしょ?」

 

「バスケをどうにかしてパフォーマンスに生かせないかなって…無理そうね」

 

あんじゅの質問に答えるツバサちん。

こんな時でも仕事熱心と言えばいいのか、気持ちの切り替えが出来ていないと言うのかは分からないけどもまぁ

 

「ちょっと貸して」

 

そう言う前向きの気持ちは良いと思う。

向かってくる奴を叩き潰すのは好きだけど、それでも挑んでくる奴は面白い。

ボールを借りる?と俺は先ず軽く右手でボールを地面に叩きつけて、ドリブルをする。

 

「あんまり、こう言うのは得意じゃないんだけど…まぁ、見てて」

 

ただボールを右手で強く打ち付ける動きから、左右交互にドリブルを始める。

それぐらいなら出来ると言う顔をする三人だが、本番は此処からである。

そこに股を通してボールを背後に回し、別の手でドリブルをする所謂レッグスルーを加える。

 

「な、なんなのこの動き!?」

 

さっきまではまだ出来ると言う顔をしていたツバサちん。

少しだけギアを上げ、小刻みに左右に揺れて相手を抜くフリをするとそんな余裕は無くなった。

外の試合だと相手が弱すぎるので使う機会が全くと言って無い、部内の軽いミニゲームでしか見せない技術を見せつけると、ゴクリと息を飲み込む三人。

 

「!」

 

それに真っ先に気付いたのは英玲奈だった。

小刻みに左右に揺れつつも、レッグスルー等を繰り返し、視線はてんやわんやと揺れ動いていたがそれが終わった…俺が両手を大きく広げたから。英玲奈は真っ先にそれに気付いた。

遅れてツバサちんとあんじゅも気付くのだが、それと同時にボールは何処に行ったかを探してしまう。

 

「ボールは、此処だよ」

 

俺はそう言うと、体をひねり背後にあるボールを肘で打ち

 

「それ、試合でやったら審判によっちゃバイオレーションくらうっスよ」

 

何時の間にか入ってきた黄瀬ちんがボールを掴んだ…

 

「えっと、確か…黄瀬諒太?」

 

「お、知ってるんスか…って、そっちの方スか」

 

英玲奈は自分達が載っているファッション雑誌を取り出し、別のページを開くと黄瀬ちんが載っていた。

何処かで見たことある雑誌だと思ったら、黄瀬ちんが小遣い稼ぎでやってるモデルの雑誌だわ…モデル雑誌で黄瀬ちんを知っていることを喜ばない黄瀬ちん…そんなに興味は無いのか。

 

「黄瀬ち~ん…なーに、勝手にうろうろしてんの?」

 

「ちょ、痛い、痛いッス!」

 

一先ずは、両頬を引っ張る。

何時の間にか菓子折りも無くなっており、その辺の事も問い合わせてみる。

 

「いや、ちょっと…外で待ってると、ティンと来たってスカウトっぽい人が迫ってきて…もしかしたらって、もしかしたらって思ったんスよ!」

 

「…え、待って、もしかして素顔みたの?」

 

「見たっス…意外と渋かった」

 

ティンと来たと言った人に心当たりがあるんだけど、素顔が全く浮かばない。

恐らくミドちん達も知っているけども顔を知らない人だが、黄瀬ちんが見ちゃったのか…良いな、羨ましい。

 

「けど、もしかしたらはもしかしたらっすね…」

 

「そりゃあね」

 

心当たりがある人もとい765社長っぽい人がいるからと言って、765とか346はいない。あくまでも此処はラブライブの世界であり、シャニマスでもデレマスでもない…本当に糞である。ラブライブ、めんどい。

 

「貴方達、なにをしたのよ…」

 

「あ、トレーナーのおばさん、お帰り」

 

黄瀬ちんが部屋に入って数分もしない内に顔が引きつってるトレーナーのおばさんが帰って来た。

黄瀬ちんの事を一切教えてないのに、連れてくるとはスゴい優秀な人なんだね、おばさんは。

 

「あ、もう先に生徒会長さんに渡しといたッスよ」

 

「予算会議…金ある高校だから、荒れないか」

 

菓子折りを持っていない理由を聞き、少しだけ不満に思いながらも生徒会長の困り果てた顔を想像し、笑みを浮かべる。この為に菓子折りを買ったのだから…見てみたかったな、生徒会長の慌て様。

 

「あの、なにをしたの?」

 

俺達だけで会話をしているので、理解しておらず聞いてくるツバサちん。

トレーナーのおばさんも状況をイマイチ理解していない部分もあるので、言うべきかと少しだけ考えていると黄瀬ちんが先に口を開く。

 

「紫原っち、ゴールぶっ壊したんスよ。

んで、それをどうするかでちょっと職員室が荒れて…んで、顧問の先生は向こうの先生と口喧嘩…まぁ、銀八先生なら口喧嘩で負けないスから請求はされないと思う」

 

「ゴールを壊したって…うちのバスケのゴールは確か、体育館に備え付けの物じゃなくてポールみたいに持ち運びが出来るやつ…よね?」

 

「あ~そんな感じだよ。

んで、紫原っちが全力でダンクしてゴール壊して…まさか、日本人で比較的に新しいモデルのバスケのゴールをぶっ壊すなんて、夢にも思ってなかった感じだし」

 

「ほんと、学校も悪いけど業者も悪いよねぇ…もうちょっと頑丈なの作れっつーの」

 

「…この前、日本で撮影されたバスケのゴールが壊れる面白動画を見たような…」

 

外国のプロリーグでも壊れることあるんだから、もう少し頑丈に作ってほしいよ。後、ツバサちんが想像しているゴールは若干間違ってる。

取り敢えずは顧問の先生が此方に来るまで待機をしておけとなり、ツバサちん達A―RISEのダンスレッスンを見学しておくことに。

 

「いや~卵とはいえ、こんな所に通えるエリートは違うッスね…俺達なんて眼中に無い感半端ねえ」

 

俺達二人だけで色々と変な会話をして気になっていたが、レッスンに入ると顔が変わる三人。ダンスレッスンに本腰を入れて、俺達なんて眼中にはない。まぁ、あったらあったでダンスに集中していないで物凄く怒られるけど。

 

「え~と…こうすかね?」

 

「なにやってんの?」

 

「ちょっと真似してるんスよ」

 

少し距離があるとはいえ、真正面から見ていると立ち上がり踊る黄瀬ちん。

その踊りは今まさに三人が踊っているダンスと同じ動きであり

 

「え…」

 

三人どころか、教えているトレーナーのおばさんの動きをも凌駕していた。

キレも素早さ、なにもかもが上で、更には時折営業スマイルを加えておりアイドルっぽかった。

 

「いやぁ、これ今年の学園祭のパフォーマンスに使えそうッスね」

 

「去年はミドちんと高ちんが一位だったっけ?」

 

空中装填式3P(スカイダイレクトシュート)をパフォーマンスにしてきたときは、負けた感半端なかった…けど、今年は俺が一位になるっスよ」

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

学園祭のパフォーマンス一位の生徒は10000円分の食券が貰えるから、羨ましい。

そう考えていると間に入ってきたトレーナーのおばさん、黄瀬ちんに対して話し掛けてきた。

 

「なんすか?」

 

「貴方、何処でダンスをしていたの?

一目見ただけで、この子達に教えているダンスを踊れるようになって…相当な努力を」

 

「あぁ、ダンスなんてしてないっスよ。

俺は、ただ単に見たまんまを模倣(コピー)した、ただそれだけで…特にそう言うのは。

しいて言うなら、日頃からバスケをしてるんで運動能力は高すぎるぐらい高いっすよ」

 

トレーナーのおばさんもティンと来たのだが、黄瀬ちんの模倣(コピー)は努力じゃない才能だ。使いこなす基盤を努力で手にしたけども、ダンスなんてゲーセンのやつでしかしない。

 

「なん、ですって…」

 

有り得ないと言いたげなおばさん。

しかし、ありえないなんてことはありえないのが世の常である。

 

「黄瀬ちん、目の前で必死になって努力してる人達が居るのに完コピはダメだって…試合ならまだしも」

 

トレーナーのおばさんよりも驚いている…いや、下手すればダメージを受けている三人。

努力を一瞬にして無駄にしたのだから仕方ない。

 

「えっと…あ、アレだ。

俺の模倣は百の努力を無駄にする一つの才能だよ。

けど、千の努力なら!万の努力なら!億の努力なら、努力は才能を凌駕するッス!

形は様々っすけど、ダンスが何百年以上も前から存在しているのは努力で才能を凌駕しているからッス…三人とも、綺麗で才能もあるから、1の努力で7の成長があるッスよ!」

 

やっちゃいけない事をやったので、なんとかフォローに入る黄瀬ちん。

1の努力で10じゃなくて、7なのがなんとも言えないところだ。いやでも、才能あるよ、三人とも。

 

「正しい場所で正しい努力して、道を分かって、一歩ずつ早歩きしているから問題ないよ」

 

俺達はサムズアップをして三人を励ますが何とも言えない顔だ。

もしかして黄瀬ちんがケンイチのハーミットの台詞を模倣(パク)ってるのに気付いちゃったのかな?

 

「お~い、終わったから帰るぞ」

 

またまた何とも言えない空気の中、顧問の銀八先生がやって来た。

結局、生徒会長には会ってニヤニヤしながらお菓子を渡すことは出来なかったなぁ。

 

「なんかお騒がせしてすみませんでした、失礼します」

 

ペコリと一礼をして俺は先に出た。

 

「すいません、失礼しましたぁ」

 

「貴方、何者なの?」

 

「俺すか……俺は黄瀬諒太。

今日試合に来てたバスケ部のスタメンで、ポジションはSF(スモールフォワード)

奇跡の世代の一人…【八咫鏡(やたのかがみ)】黄瀬諒太っす!」

 

俺達(約一名(赤いの)を除く)が嫌う異名を名乗ると遅れてやって来た黄瀬ちん。

なんであんなことを言っちゃったんだろうと帰り道、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

 

「あ、ボール忘れた」

 

そして俺はボールを忘れた事に気付く。

ボールを忘れた連絡とか来なかったので次の日、UTX問い合わせてみると宅配(発払い)で送ったらしく、後日バスケットボールが届いたんだけど

 

「…俺のじゃない…」

 

A―RISEの直筆サイン入りの新品のボールが送られてきた。

御丁寧に俺の名前を書いてくれており、手紙も入っている。万だろうが億だろうが努力して一番になると言う内容だった。

 

「はぁ、こう言うの…本当に迷惑なんだけど…」

 

家にあるボールは、忘れていった一個だけだ。あのボールは俺が購入したボールだ。

学校には沢山のボールがあり学校での練習では使えるけど、ストリートなんかの学校外では使うことが出来ない。持ち出し禁止のボールで、家とか外での練習は完全に自腹切って買ったボールじゃないとダメだ。

ボロボロになっているが、まだまだ現役だったのに、新品のしかもサイン入りのボールと来た。いや、嬉しいよ。嬉しいけども、ボールにされると困るんだよ。送るなら色紙で送ってよ、お願いだから、300円あげるから…

 

「使うしかないか…」

 

新しいボールを購入すると言う選択はせず、俺は翌日からこのボールを使う。

体育館だけでなく、砂場やストリートなど様々な所で使うので言うまでもなくサインは剥げた。




NG集

「あんまり、こう言うのは得意じゃないんだけど…まぁ、見てて」 

ただボールを右手で強く打ち付ける動きから、左右交互にドリブルを始める。
それぐらいなら出来ると言う顔をする三人だが、本番は此処からである。
そこに股を通してボールを背後に回し、別の手でドリブルをする所謂レッグスルーを加える。 

「な、なんなのこの動き!?」 

さっきまではまだ出来ると言う顔をしていたツバサちん。
少しだけギアを上げ、小刻みに左右に揺れて相手を抜くフリをするとそんな余裕は無くなった。
外の試合だと相手が弱すぎるので使う機会が全くと言って無い、部内の軽いミニゲームでしか見せない技術を見せつけると、ゴクリと息を飲み込む三人。 

「!」

それに真っ先に気付いたのは英玲奈だった。
小刻みに左右に揺れつつも、レッグスルー等を繰り返し、視線はてんやわんやと揺れ動いていたがそれが終わった…俺が両手を大きく広げたから。英玲奈は真っ先にそれに気付いた。
遅れてツバサちんとあんじゅも気付くのだが、それと同時にボールは何処に行ったかを探してしまう。

「ボールは、此処だよ」

そんな探す三人に俺はボールの在処を教える。
そう、ボールは文字通り俺の頭の上に置いてあった。

「なんで!?」

「それ、試合でやったら赤司っちに怒られるッスよ」

驚くツバサちんを節目に、黄瀬ちんが入ってきた。


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恋と性の目覚めは突然変異でやってくる

【赤司征十朗 帝光中学出身、闇澤皇(あんざわすめらぎ)高校三年

身長 173cm 体重 62kg 誕生日 12月21日 射手座 血液型 AB型

背番号10番(帝光中学時代は4番) ポジション PG(ポイントガード) 生徒会長

好きな食べ物 すき焼きやしゃぶしゃぶ等の鍋料理(辛いのは無理) 焼肉 串カツ

嫌いな食べ物 キムチ 納豆、主に辛いものと匂いのキツいもの

趣味 競馬 インターネットの○ちゃんねるで不幸話を見ること eスポーツ

オフの日の過ごし方 遠出しなくても出来る面白そうな事を探してみてやってみる

得意科目 苦手はないが、得意なのも特にこれと言って無し

バスケ以外で得意なこと チェスや将棋などのボードゲーム 柔術

苦手もしくは嫌いなこと(もの) 家族 男女関係 10年に一人の逸材扱いされること

好きな女性のタイプ 後腐れの無い風俗嬢で良いです

家族構成 父 義母 義妹 親の仕事 国家公務員(文部科学省)

ステータス(10段階評価)

スピード9 パワー9 テクニック12 スタミナ10 メンタル11 跳躍力11】

 

【青峰大樹 帝光中学出身、闇澤皇高校三年

身長 196cm 体重 87kg 誕生日 6月4日 双子座 血液型 O型

背番号 5番(帝光中学時代は6番だった) ポジション PF(パワーフォワード)

好きな食べ物 牛カツ 大根と人参の味噌汁 海苔つきの煎餅

嫌いな食べ物 寿司(刺身と酢飯両方がダメ) マヨネーズやドレッシング

趣味 競艇 eスポーツ

オフの日の過ごし方 彼女とのデート 家電量販店に行く

得意科目 理科

バスケ以外で得意なこと 料理 ベースとバイオリン テニス 古武術

苦手もしくは嫌いなこと(もの) 若い逸材を見て面白いとか言う老害 10年に一人の逸材扱いされること

好きな女性のタイプ モテるだけでもありがたいので無し

家族構成 父 母のみ 親の仕事 警察

ステータス(10段階評価)

スピード12 パワー10 テクニック11 スタミナ8 メンタル9 跳躍力10】

 

【黄瀬諒太 帝光中学出身 闇澤皇高校三年

身長 195cm 体重 78kg 誕生日 8月8日 獅子座 血液型 B型

背番号7番(帝光中時代8番だった) ポジション SF(スモールフォワード)

好きな食べ物 ローストビーフ ミネラルウォーター カレーパン

嫌いな食べ物 グラタン ドリア お粥 雑炊 リゾット

趣味 eスポーツ ビリヤード カラオケ ボーリング ダーツ

オフの日の過ごし方 ネットカフェでゆっくりと怠惰に過ごすかモデルの仕事

得意科目 英語

バスケ以外で得意なこと 声帯模写 ダンス

苦手もしくは嫌いなこと(もの) アイドル関係のスカウト 10年に一人の逸材扱いされること

好きな女性のタイプ 俺を理想の王子様とかそんな風に見てこないフランクな子

家族構成 父 母 姉一人 親の仕事 電車の車掌

ステータス(10段階評価)

スピード9 パワー9 テクニック10(14) スタミナ9 メンタル9 跳躍力9】

 

【緑間真太楼 帝光中学出身 闇澤皇高校三年

身長 199cm 体重 81kg 誕生日 7月7日 蟹座 血液型 A型

背番号6(帝光中学時代は7番だった) ポジションSG(シューティングガード)

好きな食べ物 お汁粉やカントリーマ○ムの様な変わった缶ジュース 肉まん

嫌いな食べ物 漬物(臭いがダメ) 甘辛いもの(回鍋肉みたいなの)

趣味 プラモデル カードゲーム eスポーツ

オフの日の過ごし方 カードショップ巡り ゲームのプレイ動画観賞

得意科目 副教科以外は大体得意

バスケ以外で得意なこと 将棋(段位持ち) キーボード オリジナルの占い 中国拳法

苦手もしくは嫌いなこと(もの) 10年に一人の逸材扱いされること 蝉

好きな女性のタイプ 自身の趣味をちゃんと理解し、受け入れてくれる人

家族構成 父 母 妹 親の仕事 医者

ステータス(10段階評価)

スピード8 パワー10 テクニック13(10) スタミナ9 メンタル11 跳躍力11】

 

【紫原睦 帝光中学出身 闇澤皇高校三年

身長 215cm 体重 99kg 誕生日 4月2日 牡羊座 A型

背番号8番(帝光中学時代は5番だった) ポジション (センター)

好きな食べ物 肉系の揚げ物 鯖味噌

嫌いな食べ物 日本人向けに作られていない料理 メシマズのアレンジ料理

趣味 eスポーツ 食べ歩き 射的

オフの日の過ごし方 ぶらりとゲーム系の店を歩いた後、話題の店や個人経営の飲食店に行く。家で凝った料理やお菓子を作る

得意科目 国語 現代文

バスケ以外で得意なこと 料理 大食い ドラム ムエタイ 射的

苦手もしくは嫌いなこと 服の話題 10年に一人の逸材扱いされること

好きな女性のタイプ モテるだけでもありがたいので特に無し(大きい人が好き)

家族構成 父 母 姉 兄 姉 姉 親の仕事 会計士

ステータス(10段階評価)

スピード11 パワー13 テクニック9 スタミナ12 メンタル10 跳躍力11】

 

【虹村修蔵 帝光中学出身 闇澤皇高校OB

身長 193cm 体重 83kg 誕生日 9月1日 乙女座 B型

背番号4または11番(中学時代は4または10番) ポジション PF(パワーフォワード)SF(スモールフォワード)

好きな食べ物 中華料理(特に炒飯) UF○ ラーメン

嫌いな食べ物 カスタードクリーム チョコレート

趣味 eスポーツ クレーンゲーム

オフの日の過ごし方 近所のミニバスチームのコーチ ゲーセン巡り

得意科目 体育

バスケ以外で得意なこと 料理 サッカー ギター 空手

苦手もしくは嫌いなこと 面白いから流行ってるのではなく、流行ってるから面白いもの

好きな女性のタイプ 料理上手なヤンデレ(妄想独占型)

家族構成 父(バツイチ) 親の仕事 コンサルタント

ステータス(10段階評価)

スピード11 パワー10 テクニック10 スタミナ10 メンタル7 跳躍力13】

 

【黛千裕 帝光中学出身 闇澤皇高校OB

身長 175cm 体重60kg 誕生日 5月5日 牡牛座 AB型

背番号9番(帝光中学時代も9番) ポジション ?

好きな食べ物 カレー くさや 鮒寿司 キュウリ

嫌いな食べ物 なすび オレンジジュース

趣味 eスポーツ プラモデル 読書(ラノベ) 自作のラノベの投稿

オフの日の過ごし方 赤色の頼み事を聞く(主に動画作成) デート(アニメイトとか)

得意科目 世界史 日本史

バスケ以外で得意なこと 凝った料理 手品 電子工学 絵を描くこと(アニメ絵)

苦手もしくは嫌いなこと(もの) 人付き合い 王道的な展開

好きな女性のタイプ 二次元

家族構成 父 母のみ 親の仕事 漫画雑誌の編集者

ステータス(10段階評価)

スピード4 パワー4 テクニック4(13) スタミナ3 メンタル15 ジャンプ力4】

 

「…まぁ、こんなものか」

 

自身の部屋にある最新のパソコンにオレ達7人の軽いプロフィールを打ち込み、オレこと黛千裕は一息をつく。

パソコンは打ちなれているので、この程度の量ならば余裕で疲れは全くと言って無い…今はだ。

 

μ"s(ミューズ)は9人だから、残り二人分をプラスしないといけませんよ」

 

「おい、ノックしろと言ってるだろう」

 

ペットボトルの水を飲み、この後どうするか考えていると部屋に入ってきた電子専門学校に入学してから借りている最高級マンションのオーナーこと赤司。

視線はオレではなく、パソコンに向いており、オレ達の簡単なプロフィールを見る。

 

「分かっているんですね、自身の立場(ポジション)を」

 

「伊達にお前よりは長生きをしていない…後、立場と書いてポジションの宛字つけんな」

 

転生者は基本的に原作に関わりやすいポジにいて、高確率で原作に巻き込まれる様になっている。原作の主要キャラを殺すぐらいの事をしなければ、原作を完全に回避できないが、ラブライブの世界ではそこは特に気にする必要はない。

 

「と言うよりは、そうなるように仕向けているだろう。

紫原と言うオリ主が原作に深く関わり、オレ達はちょくちょく出てくる色々なポジの人間だろう」

 

オレは主人公にはなれないし、なりたくない。

転生先の中でも最大級の地獄とされるFGOの世界で良く分かった。

フィクションはフィクションだからこそ面白いと言うのが分かっているから、オレが黒子テツヤでなく黛千尋なんだろう。オレとしては悪くない…影は影で面白いし、心地好い。

 

「紫原がどうするかは僕にも分かりませんよ」

 

ちょくちょく出てくる変なポジの人間であることは否定しない赤司。

程好い距離からニヤニヤと見守って酒のつまみにしたいのがよく分かる…が、しかし実際のところ、どうなるかが不明だ。彼奴、本当になにするか分からん。

 

「既に色々とやってるみたいですし」

 

「AーRISEがバスケやってるの、紫原が原因だからな…」

 

現時点でトップと言って過言ではないスクールアイドル、A―RISE

練習の合間合間にバスケをしているらしく、凄いプレイを見せてくれた人がいて、自分達もやってみたいと思ったからやったとのコメントがあり、その凄いプレイをしたのが紫原だった。

まぁ、誤差程度のレベルなので気にする事はないのだが、問題は紫原の方だ。

A―RISEが使っているバスケットボールは紫原の使っていたボールで、UTXとの練習試合の日に忘れた物らしく、後日新品のボールが送られてきた。

自分のではなくA―RISEの直筆サイン入りのバスケットボールだったが、かなりキレてた。仮に試合だったら全力で捻り潰すレベルでだ。まぁ、直筆サイン入りのボールなんて使い辛いな。堂々と使って、ボロボロにしたが。

新品を購入して、後日料金を請求してやろうかと考えたレベルでの迷惑らしい。

 

「この世界のラブライバーに刺されないか…」

 

オタクを敵に回すのは、危険すぎる。

 

「大丈夫ですよ…それをしたら、世間はA―RISEや過激なアイドルファンを攻めるだけ、刺された紫原は被害者だ…未遂でも面白いことになる」

 

オレの心配に対して、そこそこのマジレスと狂気で返す赤司。

そうなれば益々、日本でのオタク文化に文句が言われる。穏便派な奴は紳士が多いのに。

ファンなら、原作に関わらずに応援だけをしようとする姿勢を見せてほしいものだ。

 

「まぁ、紫原ならばよくあるオリ男主ラブライブみたいな展開にはならない…多分、プラスになる」

 

「なんだそれは…まぁ、どっちだっていいか、一番危険そうな転生者のラブライバーは居ないし、なるようになるしかないな」

 

「黛さん…敵は、ラブライバーだけじゃないですよ…敵は内部に居たりしますよ」

 

「やめろ、聞きたくない」

 

内部の意味が直ぐに分かり、少しだけ冷や汗を垂らす。

耳を防ごうとするが、ダメだと腕を掴まれてしまい聞かされる。

 

「既にフラグは建っている、建設中のものがある…しかも数名だ」

 

既に原作キャラに異性として見られていたりすることに。

…言うまでもないことだが、此処は現代の地球の日本の東京が舞台である。

スクールアイドルがあったり、細かな出来事が違っていたりするけど、オレ達が生まれた世界と大体同じ世界である…つまり、一妻一夫であり、ハーレム、ダメ、絶対…マジでダメである。

過去に別の作品の世界でハーレムを作ったバカがいて、最終的に死後、遺産相続とかで犬神家レベルに揉めたらしい。

 

「引っ越してきて数ヶ月で気になる異性に、看病を受けてから好きな人に昇格!な東條希

最初はカッコいい人と、徐々にかっこよくて優しく一緒に居るのが好きな人に!な南ことり

紫原の圧に驚き、怯えていたがそこそこ顔を合わせて関わればなんてことはなかった。

べ、別に名字じゃなくて名前でも良いですよと、名字呼びに何故か物足りない感を感じて一歩ずつ近づいちゃってる園田海未

お買い物をしていたら嫌らしい目でナンパされ「男って…」と言う異性に対する負の感情が少しだけ出来たけど、紫原に対しては負の感情を一切向けてない絢瀬絵里

のほほんとした大食いな方かと思えばカッコいい人だと判明し、意識がゆっくりと変わりつつある、高坂穂乃果、高坂雪穂

果たして誰が勝ち残り、誰が敗北するのか…それとも全勝するのか…面白そうな事になりそうだ」

 

「いや、お前を含めて既に全員が全敗してる気がするんだが…」

 

と言うよりは、相変わらず運命力が半端ないな。

紫原は普段通りに過ごしていると言うのに、着実とフラグ(死亡)を建てていっている。

因みにどうやってその情報を手に入れたかは一切聞かない。こいつなら、持っててもおかしくないから。転生特典でも無いのに、素で天帝の眼を持っているこいつはマジで怖い。

 

「敗北か…文字通り、一度地獄に落ちた僕は完全に敗北者かもしれない」

 

「いや、日本人はどちらにせよ裁判受けるために一度地獄に落ちるからな…はぁ」

 

話の通じない赤司と会話しても無駄だと諦め大きくため息を吐く。

結局、どうなるのかは誰にも分からない。

緑、青、黄色の三色はもうどうでも良いと適当にする気満々だ。

虹村に関してはラブライブそっちのけで色々とやっているし、八人目の奴に関してはそう言うレベルの問題じゃないし…

 

「かーなーしーみー…いや、紫原なら問題ないか」

 

かーなーしーみー的な事になるかと思ったが、直ぐに問題ないと頭から消した。

ヤンデレが来ても撃退できるぐらいに喧嘩強いわあいつ。

原作の事も、紫原が持ってこなければ特になにも考えないでおこうとする。

なにせオレは

 

 

 

 

 

 

機械関連に強い、動画編集等を手伝ってくれるお兄さん

 

 

 

 

 

の、ポジに居るんだから。プロフィールの練習はしておかないとな。

赤司に色々と歌の動画を作らされていて、なにする気かは知らないが、このポジだけは誰にも出来ない…多分



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言うまでもなく、放置してても何とかなる(完璧とは程遠いが、改善の余地が無ければ更なる先が見えない)

「あ~、弁当も良いスけどやっぱ此処の食堂も最高っス」

 

「いや、作ってんのお前じゃなくてオレだからな」

 

なんやかんやで高校三年となった。

虹村さんは高校を卒業し、体育系の大学に入学してトレーナーを目指す。

日夜各部活動やサークルからのスカウトの日々に苦しんでいるけれども、今年一年はなにもしない方針だ。

オレ達は三年生となったけどもまぁ、特にこれと言って変わった事は無い。今もこうして五人集まり食堂で飯を食っている。

うちの学食、旨いんだよね。歳とか大手のチェーン店が近所にできて経営難で閉めた定食屋の親父を雇ってるから、味がもう最高。量も考えてくれてる。

お陰で朝は家、昼は食堂、夕方は持ってきた弁当、夜は家で食う一日4食に分けれる。

スポーツ選手は食うのも大事だから、此処の食堂は安くて美味しい。後、ご飯お代わりし放題。

 

「お代わりしてくるけど、水とってくる?」

 

水はピッチャー式でなくウォーターサーバー式なので常に冷たい。

ご飯をお代わりするから立ち上がり、ついでに水がいるか一応聞くとBランチ(メンチカツ、ハンバーグ、肉団子の甘酢あんかけのミンチ尽くし)を食べている赤ちんがコップを差し出す。

他にコップを差し出さないので俺は自分の分と赤ちんの分を含め米と水を入れる。

 

「ミドちん、そんだけで良いの?」

 

席に戻ると、左隣のミドちんのオムカツカレーの残りが4分の1になっていた。

甘い物はガンガン食うくせに、普段の食事が少ないミドちん。だから、体重増えないんだよ。

 

「言っておくが、これは大盛りなのだよ。

お前達が食い過ぎだ…既に山盛りの四杯、充分すぎるほど食っている…力士と違い、俺達は太った状態を維持ではなく太って少し萎ませてガッシリしないといけないのだよ」

 

「緑間、確かにお前の意見も最もだ。

しかし、お前の少食も少しばかり問題だ。未だに入部試験擬きを突破できないのはお前だけだ」

 

「っく…ケーキバイキングならば、突破できていた…」

 

女子かと思われる会話をしつつも、楽しく食事をする俺達。

Aランチ(チキンカツ、唐揚げ、とり天の鳥尽くし)を食べ終え、食後の一服と熱いお茶を飲んでいると、放送が入る。

 

『「3-Z、赤司、青峰、黄瀬、緑間、紫原!3-Z、赤司、青峰、黄瀬、緑間、紫原、直ちに校長室まで来てください!

繰り返します!3-Z、赤司、青峰、黄瀬、緑間、紫原!3-Z、赤司、青峰、黄瀬、緑間、紫原!直ちに校長室まで来てください!」』

 

「…一応、聞いておこう、何かしたかい?」

 

俺達五人、ピンポイントに呼び出され、ざわめく食堂。

赤ちんは呼び出しの理由に心当たりがあるみたいだけど、念のためと俺達に心当たりがあるかどうか聞いてくる。

 

「大学とかプロの引き抜き…は、無いっスね。

そう言うのは今年の全国終わらせてからだし…モデル、も無さそうっスね」

 

「ん~オレが陸上とSASUKEで活躍しまくった?」

 

「いや、俺だってSASUKEで頑張ったし」

 

「それを言うなら、俺もっスよ!三人で完全制覇したじゃないっスか!」

 

「おい、今はSASUKE完全制覇は関係無いだろう!一先ずは行くぞ…全く」

 

峰ちんと黄瀬ちんとSASUKE完全制覇が原因で呼び出されたのかと思ったが、違うっぽい。ミドちんに怒られると、食堂を出て校長室に向かうのだが余り良い顔をしないミドちんと赤ちん。

これはロクでもない事を、テレビに出演してくれとかそんな事を言ってくるんじゃ無いんだろうか?取材は基本的にNGなんだよ。

 

「校長先生、わざわざ僕達を呼び出すなんて…バスケ連盟とかになにか言われたんですか?」

 

「NBA行くか、強化委員として何処かの高校に派遣してくんないとか言われてるけどそうではないぞ」

 

サラッとアレスの天秤的な事を語る校長。

赤ちんはポケットに入れているであろう携帯で会話を録音を始める。

 

「実はのぅ、国立の音ノ木坂に生徒として行ってくれんか?」

 

「「「「「え、嫌です」」」」」」

 

「即答だな、おい。

彼処、うちと違って入学者数くっそ少ねえんだよ。つーか、偏差値も低いよ。

国立っつってるけど、この近隣に国立がねえから、仕方無しに名乗ってくれってなってる感じで…ちょ、おい、何処に行くんだよ!」

 

校長からの頼みをあっさりと断り、帰ろうとする俺達。

音ノ木坂と言うとノゾちん達が通っている高校だけどもまぁ、割とどうでも良い事である。

 

「僕達に音ノ木坂に行って、何をしろと?」

 

「こう、なんとかして廃校にならないように」

 

「校長先生、そう言うのは俺達の仕事ではありません。大人の仕事です」

 

「つーか、俺達は今年で卒業なんスから、意味無いじゃないスか。憧れのあの先輩居ないすよ。」

 

全くと言って、興味を示さない俺達。

グヌヌとなっている校長はならばとブランドものの財布を取り出し、札束をちらつかせる。

 

「ポケットマネーから、部費を増大!」

 

「金ならある!試合相手もコネを使わずとも大学チームがいる!」

 

校長の金をちらつかせて釣る作戦失敗。

赤ちんがブラックカードを見せて黙らせる…てか、天皇杯の優勝賞金残ってる。

 

「おめーら、我が儘言うんじゃねえ!

音ノ木坂つったら、共学化失敗してなんやかんやで女子校状態の学校だぞ!

JKだぞ、JK!!おめーら、顔が良くて金持ってるんだから漁り放題だぞ!!音ノ木坂に行って、パコってDT捨てて帰って来いよ!向こうの生徒会長と副会長、美人で巨乳だぞ!バスケのパートナーも良いけど、人生のパートナーも捕まえてこいよ!」

 

おい、教頭!

 

「教頭、既にオレは人生のパートナー持ってる!!後、非DTだ!」

 

「俺、女を漁るほど困ってないっス…彼女出来ないじゃなくて彼女作らない側の住人っス」

 

「僕は二十歳になったら、飛田新地に行くので」

 

「死ねよ、クソガキ!!あ、違った。リア充、爆発しろ!」

 

俺達が全くと言って首を縦に降らず、痺れを切らし黙っていた教頭先生はキレる。

でも、そこまで女にも金にも困ってないので俺達は冷静に対処した…とりあえず、校長と教頭の弱味をゲットしたか。

 

「用件はそれだけでしょうか?

僕達は音ノ木坂に行くつもりはありません…では」

 

「「「「失礼しやしたぁ」」」」

 

ペコリと一礼をし、俺達は出ていき教室へと向かおうとするのだが無言は続く。

音ノ木坂、廃校、スクールアイドル…此処から考えられることは大体予想できる。

 

「…赤ちん、俺は、行かないからね」

 

音ノ木坂に行ってなんかしてくんないと言う校長からの頼み。

普通ならば行くのだろうが、わざわざランク低い所に行く理由もないし…シンプルに男一人とか気まずい。それを考慮してか、五人全員指名したのだと思うけども、絶対に行かない。

 

「いや、行かなくて構わないよ。

と言うよりはだ、わざわざ超高校球児である僕達を音ノ木坂に派遣するだなんて、校長は随分と頭が高いようだ」

 

「高校球児って…バスケだからな…」

 

「それに校長が頭が高いのは当たり前なのだよ。だから、校長だ」

 

赤ちんの発言に呆れる峰ちんとミドちん。

音ノ木坂に行かなくても良いどころかむしろ行くなと言ってくれたので、俺は心の何処かで少しだけホッとしたのだが

 

「だがまぁ、紫原…お前がメイン(生け贄)なのは変わりない。

余程のアホなことでもしない限りは問題ないが、もし僕の逆鱗に触れると言うのならば例え親でも閻魔大王であろうとも…殺すぞ」

 

「いや、閻魔大王は日本初の死人だからね」

 

息つく暇を与えてはくれなかった。

この世界にしか無いであろうスクールアイドル、音ノ木坂が廃校しそう、原作があるとなればまぁ、言うまでもなくスクールアイドルで学校の知名度を上げて、廃校を阻止しようとなる。

それについてはまぁ、頑張ってくれと、音ノ木坂になんか思い出あるんだろうとなるけども

 

「俺は、何をすれば良いんだろうな…」

 

放置しておいてもハッピーエンドを迎えることの出来る日常系の世界。

ましてはけいおんの様に女子ばかりつーか、女子しか出ないような作品で俺の様な異物に存在価値はあるのだろうか?て言うか、何をしろと言うんだろう?

作詞作曲なんてのは無理だ。と言うか、そう言うことが出来るキャラがいるだろう。

 

「赤ちんなら、答えを…ダメだよなぁ」

 

俺に出来ることが何なのか、赤ちんなら知っているだろうけども答えを聞くのは駄目だろう。

多分だが、これだけはするなとか言うヒントだけをくれるだけで正確な答えは出さない。実は正確な答えが無く、複数の答えがあるではなく、正確な一つの答えは存在している…随分前に軍資金を提供されたけど、アレって…まぁ、そう言うことになるか。

 

「赤ちん達は、全くと言って手伝ってくれないの?」

 

授業が終わり、部活の時間になった。

新入生に合わせるべく軽めのロードとなり、校外に出て先頭を走る赤ちんに一つだけ確かめたい事を聞いた。全くと言って手伝わないとなれば、キツい。

 

「ある程度は手伝う…ある程度はだが…なに、僕はお前が正しい選択をすることを信じている」

 

遠回しに、失敗だけは許さないことを伝える赤ちん。

ある程度の範囲内が一切分からない。ミドちんにでも聞いてみようかと思ったけど、やめる。

とにもかくにも、どうすれば良いかは分からないが練習で手を抜くのはいけないことなので真面目にやる。勿論、低酸素のトレーニングマスクをつけてだ。

頭の中に、俺は何をすればよかったのだろうかと言う不安感とかは特にはない。

一回目の転生といえども、ちゃんと訓練するべき所で訓練された転生者だ。その辺は問題ない。しいて、問題があると言うならば感受性がくっそ薄いことだ。

A-RISE、トップレベルのスクールアイドルなのに曲を聞いても「お、おぅ」程度のレベルである…ほんと、どうにもならない。稀に新作よとCD送られるけども、一切聞いてない。

コピペしたのを少しだけいじくったりした返事を書いてる。

 

「あら、睦」

 

新入生に合わせたメニュー+個人の練習メニューを終え、重りとマスクを着けたまま階段を上っていると絵里ちんに鉢合わせする。

最初、マスクを着けた時は不審者を見るかの様な目で見てきたけども使用用途をしれば段々と変わり、今では気にせずに挨拶をしてくれる。

 

「ノゾちんの所にいたの?」

 

「学校の書類と出された課題を一気にしていたのよ」

 

「ふ~ん…そう言えば、生徒会長だっけ?」

 

「ええ、希は副会長よ…睦は…」

 

「俺はただの平部員だよ」

 

絵里ちんとありふれた会話をするが、何とも言えない感じの絵里ちん。

俺が平部員なのに疑問を持ってるのか、それともなにか別な事を考えているのか…どっちでも良いか。

 

「平部員…」

 

「まぁ、部長=強いとかじゃないからね。

カリスマ性とか、単純に事務の手続きとかが出来るとか…リーダーにも色々と方向性があるの」

 

赤ちんは絶対的なリーダー、虹村さんは頼りになる兄貴的な、降ちんは心配だから支えないといけない友人。

三人とも方向性が違えども、しっかりとすることはしており、ちゃんとした自分を持っている。俺、リーダーとかには向いてないからその辺はなぁ…うん。

 

「そもそも、部長(キャプテン)の奴は去年と同じ人だし」

 

「二年連続…と言うことは睦と同年代?上には上がいるものね…睦も頑張らないとね…今年最後だし」

 

「つっても、全国記録伸ばすぐらいしか出来ないけど。

去年は開催地枠で全国行ったし…今年はちゃんと実力で全国に行きたいよ」

 

「そうね、じゃあ頑張ってね、エースさん」

 

若干会話にズレはあるけども会話は終わる。

エースは俺じゃない。俺は巨大な大木であり、根をはやす存在。

絶対的なエースには程遠く、それは黄瀬ちん、峰ちん、虹村さんの三人の誰かだ。

 

「あ、そう言えば音ノ木坂廃校するっぽいよ」

 

階段を降りて、帰ろうとする絵里ちんに一つだけ伝えておく。

さー、腹減った。ハンバーグの肉種は用意しているから、風呂洗ってから焼いて、その間に味噌汁と里芋のにっころがしを暖めとこう。卵余ってるから、目玉焼きもつけよう。

ケチャップととんかつソースとカラシを混ぜたソースでいこう。

 

「ちょっと、待ちなさい!あ、っちょ、ちょっと!」

 

「なに?俺、今結構腹減ってんだけど?」

 

音ノ木坂の廃校を伝えると、全速力でかけ上がって来た絵里ちん。

俺の体がデカいので首根っこは掴めず、尚且つ階段と言う事もあったので二つ下の階段から俺のズボンを掴むのだが、俺は気にせずに進む。

昔、なんかやってたけども貧弱な絵里ちんが強靭な筋肉を持つ俺に勝てるわけもなく、絵里ちんは引っ張られる。

 

「待ちなさい…待って、待ってください!!」

 

「え~」

 

このままだと紐が緩くなるので、止まり嫌そうな表情で絵里ちんを見る。

態度を改めたので、少しだけ見たけども引っ張る手は止まらない。ノゾちんの部屋に迎えと体で表現をしている。

因みにだが、現在の格好は無地の紫色のシャツと薄いジャージ。

うちの学校は制服だけども、バスケ部は結果を残しているから部活が終わったら、制服に着替えずにそのまま帰って良い。

 

「なんか校長がもうすぐ音ノ木坂廃校だって言ってたの…まぁ、絵里ちんの学年でも人数少ないんでしょ?」

 

「と、取り敢えず、取り敢えず、希も含めてその事について話し合いましょう!!なんでその事について知ってるかも教えて!」

 

「…ちょっと待って…話すから、一回、離して。荷物おろしたい。」

 

声から必死さも伝わり、仕方なく俺は折れた。

一度部屋に帰り荷物を置く許可を貰い、部屋に戻った。

そして割り箸、ハンバーグの肉種、牛脂、ティファール(小)に入れた芋煮、ティファール(小)に入れた味噌汁、タッパーに入れている胡瓜、トマト、レタスのサラダ、重箱に入れた炊飯器の米(お茶碗四杯分)を手にして戻る。

 

「ノゾちんには悪いけども、フライパンと味噌汁の容器だけ借りよう」

 

「貴方ね…」

 

「廃校よりも、飯の方が大事なんだよ!!!」

 

俺の持ってきたものに呆れる絵里ちんだが、なによりも飯が大事である。

ぶっちゃけると音ノ木坂の方でも報告があるんだから伝えなくても良いんだよ。

ちょっとだけキレ気味に言ったのだが、そこに後悔は無い。しかし、ビクッとしちゃう絵里ちんだが、反省はしない。

 

「希、ごめん、ちょっと大変な事を聞いたわ」

 

ガチャっとドアを開く絵里ちん。

鍵を閉めてないとは、ノゾちんは不用心だなと思っているが俺の直感が此処で働く。

一先ずは玄関を上がると直ぐに持っている物を置いた。置いておかないと危険だと俺の野生の直感が語る。

 

「ちょ、エリチ、うち、今からお風呂やね」

 

そしてその直感は確かに当たった…が、なんとかなったと思う。

荷物を置くと同時に眼を瞑っており、俺はなにも見ていない…が、音と声でなんとなく予想できる。お風呂に入ろうとして、脱いだのは良かったけどもシャンプーかなんかの新しいのか詰め替えの奴を出してないことに気付いた。

一人暮らしだから良いかと言う心の贅肉に負けたノゾちんは全裸で取りに行ってた…そんな感じだと思う。

 

「き、きゃあああああああ!!」

 

そして、安定の持ってた物を投げる展開に入る。

 

「ごふぅ!」

 

物を投げられボコられ変態と叫ぶのか、それともボコった後に勝手に入ってくるのが悪いとか言ってくるのか、それは俺には分からないけども痛いのは嫌だし、ドアを勝手に開いたのは絵里ちんだし、俺は悪くないし、責任を取るとかそんなの無理だ。後、痛いのやだ。

前にいる筈の絵里ちんを掴むことに成功し、なんの躊躇いもなく盾にした…いやぁ、危なかった。大会前に怪我するとかあってはならないことだ。結構、良い音がしたよ。



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勝てばブームに、負ければ世間は無反応

「…もう、大丈夫よ」

 

やはりと言うべきか、裸だったノゾちん。

シャンプーのボトル、詰め替えではなくボトルを投げたようで絵里ちんの鼻に命中。

鼻血を出したので、鼻にティッシュを詰めていたが今やっと納まった。

 

「エリチ…うちとエリチの仲でも、むっくんとの仲でも一回、チャイム鳴らしてや」

 

顔を真っ赤にさせながら全くもう!とプンプン怒るノゾちん。

時折俺をチラリと見るのだが、ずっと眼を閉じているので一切ノゾちんの裸は見ていない。

まぁ、見たところでのレベルだがそれを言えば、確実に殴られるので言わない。

 

「文句は絵里ちんに言ってよね」

 

「…睦、確かに私が悪いんだけど…此方を見てくれないかしら?」

 

「ハンバーグ、焦げるからやだ」

 

やっと一息ついたので、俺はフライパンを借りてハンバーグを焼く。

油断すると焦がしたりするので、フライパンをずっと見ておく。その間に煮物と味噌汁も暖める。

 

「別に会話は出来るんだから、この距離で良いでしょ…飯を邪魔するなら、マジで怒るよ?」

 

「そう怒らんといてえな…それで、エリチ、家に帰る筈なのに出てって数分で帰ってくるって…なにがあったの?」

 

「それは、睦が教えてくれるわ」

 

「音ノ木坂がこのままだと廃校」

 

自分の口で言えば良いのに、わざわざ遠回りな事をするなぁ。

まぁ、別に苦でもなんでもないので俺はもう一度、音ノ木坂が廃校をすること伝える。

すると、どうだろうか。肉が焼ける音だけがハッキリと聞こえる。

 

「…今年の新入生、一クラス分やもんな…二年生も、少ないし」

 

ハンバーグをひっくり返すと、肉が焼ける音よりもノゾちんの声がよく聞こえる。

それは悲しいけども仕方ないと受け入れてしまう声…一クラス分だけだと、仕方ないと思ってしまうだろうなぁ。

 

「そんなの…嫌よ!」

 

「絵里ちん…五月蝿い」

 

隣の住人(俺)が隣の部屋に居ないけれども、近所迷惑。

 

「音ノ木坂はお婆様が」

 

「感傷や思出話に浸る暇があるなら、どうにかすれば良いじゃん」

 

「……でも、廃校は」

 

「確定じゃなくて、しそうなだけ。

まぁ、オープンハイスクールで願書全然だったらとかの感じだと思うよ…」

 

だから、思い出とか回想シーンは一切要らない。

と言うよりは、それがあったからなに?である。

世の中、上には上が、下には下がいて、それでも前に向かって運ばれているのだから、立ち上がらなければならない。

 

「色々とやってるみたいだけど、コケてるから頑張んないといけないよ。

いや、本当にこのご時世に女子校から共学になるって、絶対に嫌でしょう。女子高と男子校の需要とかあるのに…絵里ちん、嫌でしょうに今更男と授業受けるとかそう言うの」

 

「…う~ん、別に…仮に睦が隣の席に居ても、気にしないわよ?」

 

「せやね、むっくんに勉強教えるの面白そうやし…あ、でも、席が前だったら、むっくん大きいから黒板の文字見えへんね」

 

やめて、ノゾちん。

今年度、全員同じクラスで、俺、席が一番前で「先生、紫原くんがデカすぎて前が見えないので、紫原くんを最後尾にしてください」って言われたんだよ。黄瀬ちんも言われたし、赤ちんに至っては峰ちんに舌打ちして「縮め」とドスの聞いた声で言ったのマジ怖い。

 

「いや、俺、二人より頭良いからね」

 

勉強教えるの面白そうと言う発言に少しだけイラッとする。

言い方は悪いけれども、音ノ木坂よりも偏差値高い高校に入ってるんだよ。高校生クイズに出るほど、頭良いところだよ。

 

「その話は何れよ。

今はなんとか廃校を阻止しないと…で?」

 

「…?」

 

絵里ちんの視線が俺に向いている。

けれども、なにを求めているのかが俺には分からない。

 

「だから、その…どうすれば良いの?」

 

「いや、その辺は自分で考えなよ。

俺、音ノ木坂の生徒じゃないんだからどういう学校か一切知らないんだし…」

 

「エリチ、もしかして全部むっくんに任せようとしてへん?」

 

「そ、そんなわけ無いじゃない…」

 

声が若干途切れている絵里ちん。

困ったらなんでもかんでもしてもらえると思ったら、大間違いだ…あ、そろそろ頃合いだ。

 

「ノゾちん達が出来ることは、こんな学校に来たいと言う知名度とかインパクトを与えたりすることだよ…ところで、音ノ木坂の特色ってなに?」

 

「音ノ木坂の特色…れ、歴史がある?」

 

「なんの?」

 

「えっと…学校として?」

 

あ、ダメだこりゃ。

音ノ木坂の特色を聞いてもうまく答えられない絵里ちん。

いや、答えられないと言うよりは答えが無いと言った所だろう…廃校になって当然か。

 

「制服が可愛いとかあるやん」

 

「いや、私服ありの高校多いよ?」

 

何だかんだで首都の東京である。

工業、普通、国際、商業、情報、農業、高校だけで色々とある。

ノゾちんが頑張ってフォローしているのは悪いけれど、制服が可愛いとかそんなのでは余りにも魅力は無い。

 

「じゃあ、逆に聞くけどなにがあるの?」

 

「いただきまーす……」

 

目玉焼き乗せハンバーグ×2が完成したので、夜ご飯にやっとありつける。

大きく口を開けて、ハンバーグの一つを4分の1を食べて米を一気にかっ食らう。

後、今噛んでるから、少し待ってと絵里ちんに待って貰う。

 

「ぶっちゃければ、絵里ちん達が特色どうのこうのを言ってもそんなに意味はないよ」

 

「…じゃあ、さっきまでの会話はなに?」

 

「意味はあるにはあるよ。

ただまぁ、絵里ちん達は学生だからね…出来ることは既に決まってるよ…超高校生級と言う称号、異名を手に入れること、ただそれだけだよ」

 

「超高校生級…それは、奇跡の世代の事かしら?」

 

「…」

 

絵里ちんから出るとは思っていなかった言葉に俺は箸を少し止める。

一度でも自分が奇跡の世代どころか、試合を俺は見せたこと無い…ノゾちんも走ってる時に会う位である…基本的に取材NGだけど、ネット当たり前のこのご時世、俺の名前を検索すれば出てくる…やっぱ、知られてるのかな…あの痛々しい二つ名を。

 

「そう睨まないで。

あくまでも、存在だけ知っているけど詳しいことは知らないのよ…睦の方が詳しいでしょ?

去年、開催地枠とはいえインターハイに行ったらしいじゃない…」

 

「まぁ、知ってるよ…でも、今は関係無いよ」

 

そして絵里ちんはなにも知らないのである。

いや、本当によかった。アレとか知られてたら、本当に恥ずかしい。

 

「全国制覇を為し遂げる。

ただそれだけで人は寄ってくる…あ、クソマイナーなのと金掛かるやつは例外ね。

絵里ちんやノゾちんが出来そうなのはそれぐらい…あ、後は高校生クイズに出るって言う一番ベタだけども出るだけで知名度あげれるのある…んだけども、これはオススメ出来ない」

 

「テレビで放送するん、9月やからね…そん時やったら廃校確定しとる…」

 

「それ以前に、音ノ木坂ってそう言う高校じゃないわ…」

 

それ以前に予選が難しい。

天下の東京、偏差値70台の高校は沢山あり予選突破は難しい。

横の知識も必要となるし、絵里ちんもノゾちんも確実に落ちるだろう。

 

「まぁ、とにもかくにも超高校生級の称号や異名は大事だよ、学校の知名度を上げるのに手っ取り早い…まぁ、二人には無理だと思うけど」

 

上げたり落としたりするのは、申し訳無いけどもその辺はストレートに言う。

日頃からなにかをしている訳でもなければ今こうしてぐだぐだとしている二人じゃ無理…感じないんだよね、この二人からは。

 

「うちは普段からなにかスポーツやってない。

出来ひんじゃなくて、やってない…から一年以内じゃ無理や…けど、エリチなら」

 

「ちょ、ちょっと希!」

 

なにか心当たりがあるのか、絵里ちんに期待の眼差しを向けるノゾちん。

アレか、スクールアイドルか?なら、ノゾちんも充分すぎるほど向いているぞ。

 

「エリチな、昔はバレエやっててスゴかってん…」

 

「…ああ、そう」

 

色々と聞き捨てならないことを意気揚々と語りだすノゾちん。

何時も通り無関心な返事をしたので、論より証拠と言わんばかりに携帯を取り出す。

そこには幼いけども、絵里ちんだと分かる女の子が踊っている映像だったのだが

 

「この映像、何処で入手したの?」

 

躍りよりも映像の入手経路が気になった。

絵里ちんはロシア人の血が4分の1流れているクォーター、幼い頃はロシアにいたとかどうとかで…なんでこんなものを持っているのかが謎である。

その辺について問い質そうとするも、映像の方を見てくれと、絵里ちんは天才だったと言うノゾちんだが

 

「で?」

 

で?

 

である。

言うまでもなく、俺の感受性が悪いんだろうが…それとは別の感情が混ざっている。

それはなんとなくなんてレベルじゃなく、ハッキリと言えることだ。

 

「そんなんでいけるって、本気で思ってるわけ?」

 

「…それは、どういう意味かしら?」

 

俺の発言にムッと来た絵里ちん。

ムッと来たと言うことは、この自分に誇りを持っているんだろうけども

 

「色々と自慢げになってるけども、絵里ちん、負け犬でしょ?」

 

負けているのである。

バスケしかしてないので、他の競技の日本と世界とのレベル差は知らない。

だが、絵里ちんが負けているのは確かであった。ノゾちんはその辺を特に気にせずに語っていた。

 

「ちょ、むっくん、いくらなんでも言い過ぎやで!!」

 

「なに言ってんの事実じゃん。

絵里ちんは完全に折れた負け犬だよ…だって、今はもうバレエしてないんでしょ?」

 

腐っても、此処は天下の東京様だ。

ウィンタースポーツやマリンスポーツの様な環境が重要なスポーツならば、まだしもバレエは探せばあるし、ダンスもある。

それでもロシアから此方に来て以降にやってないとなれば、考えられることは一つ

 

負けて、心が折れてしまった。

 

「敗北しても次があるって言葉は大嫌いだけど、次があるのは事実だ。

敗けから得られるものもあるって言葉も大嫌いだけど、事実っちゃ事実だよ…けど、絵里ちんはその次の一歩を踏み出せていない。

バレエがダメでもダンスだってある、俺が知らないだけで探せば似たようなのだってある。

絵里ちん自身はスタイルも良いし、頭もキレる…体格(フィジカル)勝負の競技じゃなければ輝ける…けど、な~んにもしてない」

 

昔はバレエをやってて、つまり今はなにもしていない。昔とった杵柄状態だ。

 

「むっ、くん…」

 

ありえない、そう言いたげな顔のノゾちん。

こうした真面目な話をする機会は今まで一度も無かった。そう言う関係じゃないから、当然と言えば当然だ…うん、俺はこう言う人間だ。

 

「ノゾちんも、あんまり天才だなんだ言っちゃダメだよ。

世間は負けに厳しい、勝たなければならない。勝って勝って勝ちまくらないと。

勝つから世間は天才だと騒ぐ、ブームになる。そしてカリスマが引っ張ってくれる…けど、絵里ちんはそこに行くことすら出来なかった。

十年に一人だ天才だなんて世間様が馬鹿でも分かりやすい様に言っているだけで…本当に十年に一人じゃないんだから」

 

こう言う事をストレートに言うから、俺は紫原なんだと常々思う。

ハッキリとストレートに言うと俯いたままなにも言わない絵里ちんとなんでそんな酷いことを言えるのかと言いたげな顔のノゾちん。

言い過ぎた感は全くと言って無い。

 

「才能を持って尚且つ慢心せずに滅茶苦茶努力してとか思ってたなら、あめーよ。

俺はずーっとバスケしたけど、ただの一人も見たこと無いよ。慢心を持って努力せずにグータラして、それでも何だかんだで勝っちゃう、本当に天才な奴等を…ごっそさん」

 

ああだこうだ言いつつも、食事を終える。

何時もならば五分ぐらいはぐてーとしているけども、此処はノゾちんの部屋なので即座に借りた食器を洗う。

 

「希、帰るわね…」

 

俺に対してビンタ一発来るかなと思っていたが、なにも言わなかった絵里ちんは帰ろうとする。

心の何処かで折れている自覚があったのか、だからバレエの事を言うノゾちんを止めようとしたのかもしれないが実際のところは分からない。

 

「ノゾちんも絵里ちんも、勘違いしてるかもしれないけど俺はこう言う人間だよ。

体育会系の人間は屑の集まりなんて言う奴が居るけど、俺は多分その屑だよ…でも、このスタンスは変えないし、変えたくない」

 

「そう…」

 

「それと、廃校にならないように頑張ってよ。

少なくともバレエを除いても、絵里ちんが出来ることは沢山あるんだから…先ずは、なんで音ノ木坂に入学しようとしたかのアンケートから頑張ってね。そこから色々と出来るから」

 

「ええ…」

 

最後まで絵里ちんは俺の事を見なかった。

けど、なにかを言える立場ではないし嫌われたら嫌われたでそこで終わりだと思う。

 

「…」

 

絵里ちんが出ていくと無言で睨んでくるノゾちん。

このまま帰ると確実に拳が飛んできそうなので、どうすれば良いのか考える…うん、これしかないな。

 

「スポーツ選手に大事なのは心…って、言われたらなにを思い浮かべる?

スポーツ選手は常人よりパワーがあるから暴力をふるわない冷静な心?TPOを弁えたりしないといけない、気品とか品格?それも大事だども、一番は折れない心だよ」

 

「その心を折ろうとしてたやん…」

 

「俺に折られるぐらいなら、ダメだよ。

それに折れたって、もう一回立ち上がってくれば良いだけだよ…絵里ちんも俺も、体格はともかく元気に走り回れる体があるんだ。言いたかないけど、チャンスはまだまだある。

新しく来るもの拒まず、諦めて去る者追わず…そして諦めて出てったのに帰って来た者に対しては尋常じゃ無いほど厳しく」

 

どんな世界も楽しむだけならば俺はなんにも言わないよ。

ただ生半可な気持ちで本気な奴と本気で挑んだりして、立ち上がって来れない奴は軽蔑する。

 

「そうじゃないと、奇跡の世代なんてやってられないよ」

 

「……え?」

 

なんか去年の黄瀬ちんっぽい。

けどまぁ、今なら言っても恥ずかしくないよね。ノゾちんも驚いてるし。

 

「むっくん、今なんて…」

 

「圧倒的な強さで、ヌルい根性や信念を捻り潰す【破壊心(はかいしん)

帝光中の7人の奇跡の世代の一人で【破壊心】と呼ばれるのは、この俺、紫原睦だよ」

 

割とマジで恥ずかしいので黙っていた俺の異名。

それを教えると同時に洗い終えた食器を拭き終えたので俺が此処に居る理由はもう無い。

これでノゾちん達との縁が切れただろうが後悔はしておらず、何時までも俺と居るのはダメだと思っていた部分もあるのでこれでよかったかもしれない。

俺はノゾちんの部屋を出て、自室に戻った。

 

「お、おはよう…」

 

そして次の日、ノゾちんは気まずそうだったけども声をかけてきた。

ある意味、ノゾちんは折れない心を持っているのかもしれない。



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堂々とNOと言える日本人

俺達が行かなかったので他の誰かを音ノ木坂に派遣するかと思ったら、誰も派遣しなかった。

アレ以降は、絵里ちんはノゾちんの家によく来るようになってた。明らかに焦っているけど、知らね。音ノ木坂が廃校になることを正式に伝えられたんだろう。

あんのバカ校長は俺達をそんなに厄介払いしたいのか、一年の時の学園祭でカツラを剥ぎ取った事を未だに根に持っているのかもしれない。犯人、黛さんだよ、アレ。

 

「グー出しときゃよかった」

 

神田明神で一人で待つ俺。

仮入部期間だけど練習がハードなので、最初の二、三日後には本気でバスケをしようとする奴等しか残らない。全国最強だけど素人歓迎で入部テストも無いので、体力なかったりする初心者が居る。俺はそんな素人の子達が来るのを待っている。

何時もは軽めのロードだが、今日からは本気のロードになりスタミナが少ないし奴はロードだけで、バテてしまう。

俺以外の三年全員と二人しかいない二年生の内の一人である朝日奈だけであり、素人で入部した夜木くんは新入生が逃げないように付き添いながら走っている…ので暇である。

まだ序盤の体を軽く暖めるだけのロードで、此処から四股踏んで基礎練習したり、最後に後片付けを押し付けるミニゲームしたり色々とあるので変なことはできない。

 

「はぁ、軽く柔軟でも…あ」

 

「お久しぶりです、紫原くん」

 

まだかまだかと待っていると、園田さんがやって来た。

弓道部のロードかと思いきや、そうでなく学校指定のジャージじゃないジャージを着ている。

自主的な練習かなと思っているとかなり大きめのため息を吐いた…

 

「そのため息、穂乃果ちん関係?」

 

「え、へ?」

 

大きめのため息を吐いているときは困っているけど、仕方ないですねとなっている時が多い。

そしてそんな仕方ないですねとなる原因を作っているのは大体穂乃果ちんであり、今も待っているのは穂乃果ちんとことりちんだろう。

 

「…そ、そうです」

 

「?」

 

何故か顔を真っ赤にする園田さん。

絶対に自分の頭の中で変な妄想をして、ハレンチとか言っているんだろうな。そう言う性格だろうし。

これ以上、掘り下げるのも面倒なので無言を貫こうとするのだが時折チラリと此方に視線を向けてくる園田さん…聞いてこいと言うことだろうが絶対に聞かない。

 

「海未ちゃん、遅れてごめんね。ちょっと色々と作ってて」

 

「やっほー」

 

聞かないまま待っていると、今度はことりちんがやって来た。

…ったく夜木達、おせえな。何時ものロード(10km)でこの時間で走るとか遅いだろう。

此方の身にもなってほしいよ。特になにも言わずにことりちんが横にきたよ。

 

「あっくん、此処で海未ちゃんと何しているの?」

 

「いや、別に園田さんとなんもしてないよ。

遅れている一年生達を待ってるの…今部活動中なんだけど、遅いんだよ…はぁ」

 

後、3キロほど残っているのに、なにをやっているんだろう。

新入りを鍛えるにはどうあがいても半年以上掛かってしまうから、本当にこの時期は面倒だ。

 

「そんなに大きなため息を吐いてたら、幸せが逃げちゃうよ。甘いものでも食べて、気分を変えよう」

 

大きなため息を吐いたらことりちんは心配をしてくれた。

腰掛けの鞄に入っていた檸檬の蜂蜜漬けをくれるのだが、頂くわけにはいかない。

 

「まだ、体を暖めるだけのロードだから食べないよ」

 

「ことり、まだなにもしていないので食べてはダメですよ」

 

軽く断ると、まだ食べるなと檸檬の蜂蜜漬けをことりちんから取り上げる園田さん。

自分の鞄に入れながらも荷物の確認をしている…

 

「何時もはそんなの用意してないよね?」

 

部活動のロードで軽めの挨拶、個人で走っている時に一緒に走る。

まぁ、そんな感じでありスポドリを用意したり檸檬の蜂蜜漬けを用意してるなんてのはない。

俺が食ってるのを分けたりしているのだが、今回は…いや、今日からは訳が違うようだね。

 

「海未ちゃん、ことりちゃん、ごめーん!!」

 

「穂乃果!!

言い出した貴女が遅刻してどうするんです!」

 

「ごめんごめん、色々と準備をしてて…あ、むっくん!」

 

パンパンに膨れた腰掛けの鞄をつけてやって来た穂乃果ちん。

最後にやって来た事に怒る…太ったってわけじゃなさそうだね。

 

「…なんか、何時もと違うね」

 

「うん…穂乃果達ね、スクールアイドルを始めるんだ…」

 

あぁ、やっぱりか。

 

「音ノ木坂が廃校になるから?」

 

「うん…なんで知っているの?」

 

音ノ木坂が廃校になり、知名度を上げるべくスクールアイドルになる。

そんな感じで穂乃果ちゃん達がスクールアイドルを始めたんだろうな。

 

「まぁ、色々と噂は耳にするんだよ。

うちの学校、来年から新しい科を設立するからその辺の話題には敏感なんだ」

 

音ノ木坂に行けと言われたけど、面倒だから行かなかったと言えば怒られる。

事実と嘘を8:2の割合で混ぜる。実際、来年から新しい科が出来る。

 

「やはり、音ノ木坂の廃校は噂に…因みに、新しい科は何科ですか?」

 

「eスポーツ科、まぁ、電子関係の科の派生みたいなの…」

 

「…そ、そんなのあるんですか…」

 

尚、入試は糞難しい。

一般教養及びゲームに関連する知識とか、黛さんは満点だったけど赤ちん達は80点ぐらいだった。ゲーム関連の知識、めっちゃ難しい。

 

「三人には音ノ木坂に思い入れがあるようだし、頑張れ」

 

おれにやれることはかのじょたちのせなかをあとおしすることだろう。

見たくない現実を見ないように言った方が良いことを言わないようにしようとするのだが

 

「あっくんも一緒に走ろう♪」

 

ことりちんが腕をくいっとして笑顔で言う…仕方ないなぁ。

 

「走るだけなの?」

 

「え?」

 

仕方ないなぁとなると思っていたのか、キョトンとすることりちん。

何時もならばイエスと言うけど、今日は違う。出来るんだったら、真面目にやってみようと思う。

 

「練習、階段ダッシュとかじゃダメだよ。

俺もそこまでの知識無いけど…少なくとも、アイドルは普通のスポーツ選手のトレーニングとは大きく異なる。

食って太って動いて脂肪を燃やして強靭でしなやかな筋肉つけて、動く際にテクニックを覚える。大半のスポーツはこれの繰り返し。

重量で階級分けしてあるスポーツは食って太っては無いけども、アイドルも無いんだ。友達でモデルやってる人が居るけども鍛えすぎも出来ればやめてほしいと言われてるぐらい」

 

「じゃあ、何をすれば良いの?」

 

「と言うよりは、具体的に何をするの?なにを鍛えるの?

基礎を作るために足腰を鍛えるのは良いけど、なんの為の足腰なの?

ただ走って一位になるだけの短距離走と長距離走でも、有酸素運動とか無酸素運動とかあるんだよ?あ、今、自分は○○の為に○○を鍛えているんだなって納得出来てるの?」

 

プロみたいに練習こそ仕事ならまだしも、俺達は学生だ。

一日の大半を卒業後、専門職以外では大抵使わないで一般教養を学ぶべく潰れている。

一分一秒の時間も無駄に出来ないので、効率の良いトレーニングをしなければならない。量より質である。

 

「海未ちゃん…」

 

練習メニューを作っているのは園田さんなのか、SOSを求める穂乃果ちん。

だけど、どう答えれば良いのか分からないと言うよりは答えを持っていない。困っている園田さん。

 

「俺、どっちかつーと脳筋な方だよ。

だけど、考えない訳じゃないんだ…今やっている練習が正しいのか?他と一緒で良いのか?

そう言う疑う類の疑問を持ってた方が良いよ…少なくとも、東京にはスクールアイドルの顔とも言うべきA-RISEがいる。知名度を上げるには、A-RISE越えは頭に入れないと。

UTXはアイドルの卵とかがいて専門で教えたりしている…今から普通に頑張ろうなんてやってもそれだけじゃ絶対に足りないよ…足りない時間や量を補うには、効率を突き詰めたり…色々とやらないとダメだね」

 

そしてそれ以前の問題がある。

まぁ、どーせ御都合主義でどうにかなるんだから気にしなくて良いか。

言うべきことも言ったし、頑張れ三人。筋肉は嘘をつかないよ。

 

「す、スゴい!スゴいよ!」

 

ピョンピョンと跳び跳ねながら褒める穂乃果ちん。

だが、これ以上なにか言われたとして俺はなにも出さない。

 

「そうですね…ただ走り強靭な足腰や柔軟をすれば良いわけではありません。

歌い踊るだけじゃなく、他にもなにかを…具体的にはなにを鍛えれば良いんですか?」

 

「さぁ、俺は専門家じゃないから知らないよ。

180度に開脚することが出来る様に柔軟を…四股とか踏めば良いよ」

 

「四股…力士の四股?」

 

「その四股で間違いないよ。

四股は内ももとか腰とかお尻とかの筋肉が鍛えれて尚且つ体感トレーニングにもなる。

力士は、相撲はバランスを崩したら負けで重量で階級分けしていない無差別級の競技。

100kg以上の体重が速さをつけて激突するんだ…それに耐える強靭な足腰やバランス、柔軟性は変なスポーツの選手より…紙とペン無い?もう説明すんのめんどい」

 

いちいち説明すんのが面倒になってきた。

ランナーポーチには歩狩(ポカリ)が入った水筒と身分証明書しかないので、書くものは無い。

園田さんが持っていたので貸してもらうと、何処を鍛えるのには何をすれば良いのかと言う細かな事を書く。

 

「風呂上がりの柔軟と一緒に無理矢理の股先ね。

流石に一気にやるとまずいから段階踏んで…才能あるやつなら一ヶ月で180度になるから」

 

「ありがとうございます…今まで色々と穂乃果の思い付きをやったのですが、今回の様な事ははじめてで」

 

「まぁ、誰だってはじめてだよ…」

 

俺の役目はもう終えただろう。

後は頑張ってくれと応援をしようと思っているのだが

 

「でもこれって、ダンスの事だけだよね?」

 

穂乃果ちんがRPG(兵器)をぶちこんできた。

穂乃果ちんの当たり前の一言に確かに!となる園田さんとことりちん。

他のなにかを期待するかの様な顔で見て居るのだが、他は特に無い。黄瀬ちんならダンスを完コピしたり強奪したり出来るんだけど、俺にはそう言うのは…あ、そうだ。

 

「斜め77度の並びで泣く泣く嘶くナナハン7台難なく並べて長眺め…はい」

 

「え…な、斜め77度の並びで泣く泣くななあな…む~あっくん、急すぎるよ」

 

「発声練習、色んな音程の声が出せるようになるのも良いけど早口で言えるようにもなっといた方が良いよ…にゃにゃめにゃにゃじゅうにゃにゃどのにゃらびでにゃくにゃくいにゃにゃくにゃにゃはんにゃにゃだいにゃんにゃくにゃらべてにゃがにゃがめ…的な猫語でも言えるようにさ」

 

声関係も黄瀬ちんが出来るね。

やっぱ…俺じゃなくて黄瀬ちんを生け贄にすれば良かったような…いやまぁ、良いんだけどさ。

 

「ねぇ、穂乃果ちゃん…あっくんにお願いしない?」

 

「…そうだね!海未ちゃん、良いよね」

 

「…まぁ、紫原くんなら…だ、大丈夫です」

 

普通はコソコソと話をするのに堂々と言う三人。

覚悟を決めた様で三人とも顔を見合せてコクりと頷き俺を見る

 

「むっくん!」

 

「あっくん!」

 

「紫原くん!」

 

穂乃果ちんが、ことりちんが、海未ちんが綺麗に頭を下げる。

こんなマジな空気を醸し出している時でもあだ名呼びと言うのは少しだけ気になるけども、そこを気にしている暇はない。彼女達が俺になにをお願いするのかわかる。

 

「「「お願いします、私達のマネージャーになってください!!」」」

 

「嫌です」



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タダより恐ろしいモノは無く、高すぎると買えず、安すぎれば逆に疑う

「え…」

 

中学二年の夏休み。

色々と楽しいことがあり、遊びすぎた結果太ってしまった私とことりちゃん。

海未ちゃんに連れられ神田明神を走っていると物凄く大きな人、むっくんと出会った。

それから色々とあり、音ノ木坂が廃校になると知り、スクールアイドルの事を知り、いざこれから頑張ろうって時にむっくんと久々に出会った。

 

「いや、だから嫌だって言ったの」

 

なにをどうすれば良いのか、具体的な事を教えてくれたむっくん。

なにも知らない穂乃果達には今まさに必要としている人で、むっくんならと男の人が苦手な海未ちゃんも承諾してくれた…なのに

 

「な、なんで?」

 

そのむっくんが断った。

しかも、結構嫌そうな顔をしている…

 

「穂乃果達の事、応援してくれるんじゃ…頑張れって…」

 

頑張れって背中を後押ししてくれるのに、なんで?

なんでそんな嫌そうな顔をするの?穂乃果、なにかしたの?

 

「お願いします、紫原くん!

私達だけでスクールアイドルをしているのを見て、無謀だと思うのは分かります!でも」

 

「いや、そう言うのは良いから」

 

「っ…」

 

海未ちゃんの声にも耳を貸そうとしないむっくん。

もう嫌そうな顔を通り越して、呆れた顔をしており小指で右耳をほじくっていた。

 

「ことりちゃん…」

 

海未ちゃんでもダメなら、もうことりちゃんしか無い!

海未ちゃんを落としたことりちゃんならイケる

 

「おねがぁい!」

 

「だから嫌だって言ってるでしょう…」

 

無理だった…

 

「そんな、海未ちゃんを落としたことりちゃんのお願いも効かないだなんて…」

 

「え、可愛い子が可愛い声を出してお願いと言ってきたからスクールアイドルをするの園田さん承諾したの…ひくわ~」

 

あ、ヤバい。

うっかり余計な一言を言ってしまった様で少しだけ、軽蔑する視線を私達に向けるむっくん。

ことりちゃんと海未ちゃんはその視線に耐えられなくて俯いてしまう。

 

「なんで…なんで、断るの?

穂乃果達に頑張れって、背中を後押ししてくれるのに…嘘だったの!?」

 

「穂乃果…」

 

「穂乃果ちゃん…」

 

生徒会長みたいに強く言ってこないだけで、本当は無謀だダメだとバカにしてるの?

それならそうと正直に言ってほしい…本当は聞きたくないけど、でも、嘘を言われるよりはマシだよ。

 

「いや、あのね三人とも…嫌と言っているけども、色々と理由あるんだよ?

応援するって気持ちも本当だし、頑張れって思ってるよ?思ってるんだけども、俺にも限度が」

 

「限度ってなに?」

 

「…え~…え~…はぁ」

 

嫌がり呆れ、最後にため息を吐いたむっくん。

此処まで来たのなら、最後まで聞いてやるとむっくんが口を開くのを待つ。

 

「穂乃果ちゃん達、学校内で俺を見たことある?」

 

「…あっ!」

 

呆れながらも一つの事を聞いてきたむっくん。

海未ちゃんは直ぐになにかに気付いたみたいで、納得した顔をする。

学校内でむっくんを見たことがある?変な質問をするんだね。

 

「むっくんを学校内で見たことなんて無いよ。ねぇ、ことりちゃん」

 

「そうだよ、基本的に此処か、穂乃果ちゃんの家でしか会わないよ」

 

基本的にむっくんと会うのは神田明神か私の家のお饅頭屋さんだけ。

学校内でむっくんを見掛けたことなんて無いし、本当になんでこんな質問をしてくるのか分かんない。

 

「穂乃果ちん…スクールアイドル、するんだよね?」

 

「さっきから、そのためにむっくんにマネージャーになってほしいと頼んでるんだよ?」

 

ハッキリと言ってこないむっくん。

少しだけ皮肉を飛ばすけど効かない。

 

「あっ!」

 

それと同時にことりちゃんもなにかに気付いた。

 

「え、え、なに?なんなの?」

 

「え~っとね、穂乃果ちゃん。

あっくんにマネージャーになって貰うのは、あんまりよくないよ…多分、御互いに」

 

「もう!!正直にハッキリと言ってよ!!」

 

ことりちゃんも気付いたけど、一切理由をハッキリと教えてくれない。

もう怒るしかないと大声で叫ぶとむっくんは仕方ないと諦めた表情になった。

 

「スクールアイドルって言うのはさ…大雑把に言えば、学校の綺麗な生徒や可愛い生徒を集めて、アイドル活動擬きをするんだよ」

 

「知ってるよ、それぐらい!」

 

「…学校の綺麗な生徒や可愛い生徒だよ?」

 

「…穂乃果達、可愛く無いの…」

 

「穂乃果、そこじゃありません」

 

遠回しにブスと呼ばれた気がしたけど、海未ちゃんが否定してくれた。

 

「穂乃果ちんは可愛い子だし、園田さんは綺麗だし、ことりちんは綺麗でも可愛いでもイケるから問題はそこじゃない…俺、他所の学校の生徒、音ノ木坂の生徒じゃない」

 

「可愛いだなんてそんな…え~っと」

 

むっくんにハッキリと言われたけど、意味が分からない。

どう言うこと?ってなったまんま。

 

「俺は他所の学校の生徒。

穂乃果ちゃん達は今から音ノ木坂のスクールアイドルになる。

俺、他所の学校の生徒、協力してるのがバレるとかなり問題になる」

 

「…え、そうなの?」

 

問題になるかがイマイチ分からない。

海未ちゃんに聞いてみると気まずそうな顔で答えてくれる

 

「まぁ、合同練習の名目にならある程度は問題無いと思いますが…マネージャーとなれば、確実にバレたら終わりで…常識的に考えれば、他所の学校の生徒が他校の部活動に勝手に協力した時点で、大問題処の騒ぎじゃないです」

 

むっくんがずっと嫌だと断り続けていた理由が分かり、ポカンとしてしまう穂乃果。

ま、まぁ、確かにそうだよね。むっくん、他所の学校の生徒だし、当然っちゃ当然…あ!

 

「音ノ木坂って確か」

 

「いや、この大事な時期に転校なんてしないからね」

 

「むー!」

 

考えてたことを先に読まれ、断るむっくん。

良い案だと思ったのに、嫌だって…でもなぁ…

 

「むっくんが居てくれれば、変わると思うんだ…」

 

「そう言うことを言ってくれるのは嬉しいけど、先手は打つ。

俺がマネージャーを断った理由は第一に他校の生徒だからと言ったけども、穂乃果ちゃん達が極力俺と言う存在を隠せば良いから実際そこまで問題じゃない、理由は大きく分けて三つあるの」

 

「まだあるの?」

 

「一つ目は俺が他校の生徒だから。

二つ目は俺が二十歳未満だってこと…なにかあった時に責任を取れる人じゃないとダメ。

俺の友達が言ってたよ。

15から20(はたち)までの間は都合の良い時だけ大人に、都合の良い時だけ子供にされる年齢だ、って。

保護者の人達も二十歳未満の子供、しかも一つだけ歳が上の奴がマネージャーとかだったら疑問持つし、大丈夫かってなる。

大人がいれば、遠いところ…例えばウィンタースポーツをテーマにしてなにか動画を撮るとかになったら、スキー場の用意とかそう言うのが出来る…まぁ、車の運転免許持ってるから、足代わりにはなれるよ…穂乃果ちん達は俺に作曲家紹介してくれじゃなくて、引率とかなにかと手伝ってくれるマネージャーになってほしいんでしょ?大雑把に言うけど書類手続きの関係上とかで詰むし…う~ん」

 

「まぁ、そう、だよね…」

 

普段はのほほんと言うか覇気が無いむっくんに此処までハッキリと言われると少しどころかかなり落ち込む。

音ノ木坂の生徒じゃなくて、二十歳未満の学生だと言われればそれは大丈夫なの?って言う疑問を持つ。

私のお母さんやお父さんなら大丈夫だけど、海未ちゃんの所や学校側がどう言うかが分かんない。

 

「まぁでも、この辺も割とどうにでもなるよ。

スクールアイドル活動をやると言っているのに、現時点で顧問らしき人が居ないからね」

 

「うっ…」

 

「…聞かないでおく」

 

ちょっと変な顔をしちゃった。

さっき海未ちゃんが無謀だと言っていたし、変な風に考えちゃったのかな…

 

「割とどうにでもなるんだったら、あっくんお願い!マネージャーになって!お願い!」

 

「あ、そうだよ!

私達、むっくんの事を黙るよ!カメラにも撮さないし、提供のテロップとかにも出さないから」

 

二つともそこまで問題じゃない、どうにでもなる。

そう言っているんだったら、むっくんがマネージャー仁なることが出来る筈だよ!

 

「二人とも、最後まで聞いてよ」

 

「そうですよ…三つ目の問題がある事を忘れてはいけません」

 

「…う、うん…正直、三つ目の事は、言いたく無いし、聞くとそれなりの後悔とかあるよ?」

 

三つ目の理由を教えるのを渋るむっくん。

私達に聞かれたくないと言う雰囲気が出ているけど、それでもむっくんに手伝って欲しい。

口にしなかったけど雰囲気で察したのか、仕方ないと諦めたむっくんは三つ目を教えてくれる。

 

「…俺に、()が無い」

 

「…実?」

 

「そう、()

 

どういう意味かさっぱりの穂乃果達。

海未ちゃんもことりちゃんもどういう意味なのか分からず、首を傾げる。

 

「穂乃果ちんは…いや、三人はスクールアイドルに前々から憧れてじゃない。

学校の知名度を上げるべく、スクールアイドル活動をする…成功失敗はともかく、学校の為にやることは良いことだよ。

成功したら、音ノ木坂は存続で雪穂ちんが通えたりするようになり、失敗しても思い出が残り、どう転んでも三人も万々歳。OBで思い入れがある方も成功さえすれば万々歳…なんだけども、俺に得は無いよね?」

 

「…え?」

 

「…俺は、どっちかつーと、損得勘定で生きてる部分があるよ?

そりゃぁ、座席が無くて困ってる人とかに席を譲る優しさや情はあるけど、マネージャーとか引率のお兄さんとかになると、ちょっとは損得勘定になるよ?思い出では心は満たせるけど、体は一切満たされない!!俺は完全裏方だから目立つと言う行為は絶対にダメだからね」

 

「……」

 

「ほらぁ、固まるじゃん。

俺、固まるから言いたくなかったんだ…正当な働きには正当な報酬が必要だよ。

例えそれが赤ん坊だろうが関係無い…まぁ、つまるところは、(これ)とかになる。

音ノ木坂が残っても 【ああ、おめでとう】だけ…隣の芝は青く見えるけども、何処まで行っても隣の芝なので自分の芝とは関係無い…」

 

右手の人差し指と親指で輪を作るむっくん。

三つ目の理由を聞いた私達はポカンと固まってしまい、どうすれば良いのかがよくわかんなかった。

 

「…そ、それが一番の理由ですかぁ!!」

 

「…いや、だから言いたくないんだよ。

園田さん、先に言っておくけども俺はバスケ部で基本的に月火水木日の週五日は部活動で、去年は開催地枠だけど全国に行ったし、今年も全国に行くし、8月上旬は確実に何もできないし、基本的にいないよ?

後、まさかとは思うけど、タダ同然で裏方をやってくれと?…言っておくけどね、俺が言っている事は比較的にマトモなんだよ」

 

「マトモって何処がなんですか!?」

 

実が無いことを知るとそんな理由で!となる海未ちゃん。

むっくんはやっぱりと言う顔になっており、ちゃんとした理由を語る。

 

「だから、言ったじゃん。

正当な働きには正当な報酬が必要だって。

仮に俺がマネージャーをするとしたら、色々とする。

練習メニューの考案、精神と体調の管理、成績が落ちない様に勉強のサポート、保護者の皆様に万が一がありますとの注意喚起、作詞作曲は無理でも、料理を作ったりする日常的な動画撮影や提案、機材用意、場所取り、グッズ管理や公式サイト管理なんかのその他色々な雑用、色々と出来る限りの事をやるよ…近年、ブラック部活ってあるよね?

インターハイ出れないから夏休み全部返上で練習、新年に向けて正月は1日だけ休みとか言うアレ。一応、文部科学省だかなんだかが最大で週五日とかにしてるのに無視して毎日部活動をしてるアレ。アレって、教師側もそれなりに大変なんだよ。

サービス残業だし、教師の大半は椅子に座らせて勉強を教える先生ばかりで、元運動系の部活動出身ならともかく、文化系でそのスポーツ未経験の教師が顧問になったりして、トレーナーとしての知識もなんもないのにトレーニングとか教えるんだよ。しかも居残りで。

1円ももらえない、尚且つ全くと言ってやったことの無いスポーツを教えてくれと頼まれる…俺、今まさにそんな状態…なのかな?…まぁ、とにかくタダはダメだよ。

…流石に無いと思うけどさ、俺が御人好しに見えてたからタダで良いだろうってふざけた考えを持って無いよね?流石にそれだったら本気で怒るよ?あ、後、教師もタダなんだからお前もタダで良いだろうなんてほざいたら割と洒落にならないほどにキレるから。

そもそもの話で、素人にお願いするのはダメだよ。多少、財布が痛むのを覚悟で金を溝に捨てるのを覚悟で、それなりのは受けないと…教師、死んじゃうよ」

 

「むっくん、話が脱線してるよ…」

 

でも、むっくんが言いたいことはなんとなくだけどわかった気がする。

タダより恐ろしいモノは無いって言うし、なによりも何も無しでむっくんにお願いするのはダメだって言うのを今になってわかる…むっくんがプロでもなんでもないからお金を出さないってなると、なんか違う気がするのは穂乃果でもわかる。

 

「どうしよう…むっくんが言っている事は、正しいよ」

 

完全にとは言えないけども、むっくんにはむっくんなりの報酬が必要となる。

これから先、むっくんがマネージャーをしてくれたら今言った事をしてくれるみたいだし、それはきっとかなり大変な事だと思う。

パソコンの知識に、栄養管理の知識に、お金とかの知識も必要だよ。

 

「バスケ部の顧問の先生にも、俺達なりの感謝の気持ちを込めて毎月饅頭とかケーキとか送ってるんだよ…顧問の先生、練習とかは手伝えないけど引率とか事務処理とかはなにかとしてくれるから」

 

「あ、だから毎月、家のお饅頭を数箱纏めて買いに来てるんだ…」

 

「穂乃果、納得しているんじゃありません……」

 

「…で、分かってくれた?三つの理由」

 

他校の生徒だから、二十歳未満のド素人だから、自分には利益が無いから。

どれを取っても断る理由としてちゃんとしており、間違っていなかった…

 

「…やはり、紫原くんにマネージャーをして貰うのは」

 

「ダメ…それだけはダメだよ!」

 

多分、ううん絶対だよ。

根拠はないけど、私はなんとなくだけど分かっていた。

むっくんを此処でどうにかして説得しないといけない。今ここを逃せば、次なんて永遠にやってこなく、終わってしまう事に。

 

「むっくん…これじゃ、ダメかな?」

 

鞄からタッパーを取り出し、むっくんに渡す。

 

「…饅頭?」

 

「うん…ほら、甘い物って大事だよ」

 

タッパーを開けて、中の饅頭を見てなんでとなるむっくん。

本当は、ケーキとかにしたかったけど家はお饅頭屋さんだからそんなものはない。

疲れた時は甘い物が一番だって昔から言うし、家にあるのはお饅頭の材料ぐらいだからってつい作ってきた…一番最後に来たのはその為。スクールアイドルをしようと言い出したのは私なんだし、こう言う所でなにかしないと。ファイトだよ。

 

「穂乃果の手作り饅頭を毎日むっくんにあげます!!お金が無いから、これで!」

 

「却下、飯に困ってないよ、俺は!」

 

「だよね……あ!」

 

「もういいよ、穂乃果ちゃん」

 

それなら、穂乃果と雪穂のあ~ん付きで行こうかとすると間に入ることりちゃん。

さっきからずっと黙っていたけど、首を縦に振らないむっくんを縦に振らせる案を考えてたのかな?

 

「…ことりのこと、好きにして良いよ…むっくんだって、男の子だよね…ことりのこと、好きなだけ滅茶苦茶にして…」

 

三人の中でも一番大きな胸を強調させ、顔を真っ赤にさせてモジモジしながら言うことりちゃん。

 

「ダ、ダメだよ!!

ことりちゃんは、穂乃果達の衣装を製作しないといけないから…滅茶苦茶にするなら、穂乃果にして!!」

 

「な、な、な、なにを、なにを、言っているんですか二人とも!!破廉恥です!!

紫原くん、今すぐに忘れてください!!穂乃果もことりも言っている意味を理解していないんです、だからするなら私が」

 

「海未ちゃん…その割には少しだけ嬉しそうだよね?

て言うか、海未ちゃんは作曲しないといけないんだから、此処はことりに任せて」

 

「ちょ、待て…と言うか、いい加減にしろ」

 

「あ、いた!?」

 

全員にチョップを叩き込む、むっくん。

本人からしたらかなり軽めのレベルなのかもしれないけど、滅茶苦茶痛い。

思わず涙が出てきちゃうぐらい。

 

「…ねぇ、なんで色々とある中でも一番最後に出てきそうな(答え)なの?

別に俺は今すぐに現生を此処に用意しろなんて一言も言ってないし、ことりちんとそう言う関係になりたいなんて言ってないよね?なんでいきなりのくっ殺なわけ?」

 

ちょっとなにいってるのか分かんないです。

 

明らかにむっくんは苛立っているが、そこは歳上か冷静を保っている…あれ?

 

「むっくん、マネージャーは嫌じゃないの?」

 

なんだかマネージャーになる風に話が進んでいってる。

さっきから嫌だって言っているのに、気付けば進んでるよ。

 

「マネージャーは嫌と言うか、手続き上何処かで無理になるけど、スポンサーなら良いよ」

 

「スポン、サー?」

 

「要はお金を出してくれてる人の事だよ。

アイドルの衣装ってかなりかかるだろうし、それ以外の動画の場所とか道具の用意したりする人ならばやってやるよ」

 

「…それって、マネージャーとどう違うの?」

 

結局のところは、それはマネージャーと同じじゃないの?

さっき言ってくれた事をしてくれるみたいだし、それじゃあマネージャーじゃないのかな?

 

「マネージャーと違って、ちゃんとしたリターンを得る事だよ」

 

「リターンって…そんなものは、返せるものなんて今の私達には…」

 

「体で払うしか出来ないよ、あっくん!」

 

「だから、枕に繋げないで…投資だよ」

 

近付いてくることりちゃんの顔を掴み動けなくして距離を開ける…凄い、むっくん片手でことりちゃんの顔を完全に掴んでる。前から大きい手だって思ってたけど、凄く大きいよ。

 

「投資…私達に、ですか?」

 

「そうだよ…まさかだとは思うけど、A-RISE、知らない訳じゃないよね?」

 

「…知ってるよ…ううん、違う。

それを知って、穂乃果はスクールアイドルだってなったんだ…」

 

「そう…穂乃果ちん、分かってるよね?

音ノ木坂をスクールアイドルでどうにかするには生半可な事じゃダメだ…UTXのA-RISEと同格かそれ以上のスクールアイドルにならないと、どうにもならないって」

 

「うん」

 

「…ふ~ん」

 

むっくんの質問に穂乃果は迷いなく頷いた。

スクールアイドルを見てこれしかないと決めて、海未ちゃんとことりちゃんに手伝って貰って…やるしかないと、A-RISE並みにキラキラと輝かないといけないって言うのは分かってる。

私の頷いた時の顔を見て、少しだけ笑みを浮かべてる…と思うむっくん。

酸素を薄くするマスクをつけてるから表情は目だけしか読み取れないけども、確実に笑みを浮かべてる…と思う。

 

「じゃあ、4割、4割だよ。

俺はスポンサーとして出資して色々と手伝ったり、紹介したりする。

その代わりに穂乃果ちん達がスクールアイドルとしての売上の全体の4割を俺が貰う。

グッズにCD、その他色々の売上の…全体の4割を頂くのが絶対の条件…残りの6割をどう使おうが勝手で、それとは別途で作詞作曲で出た印税は制作者の人に行く…これ飲めないなら、俺はこれ以上は此処で不毛な会話をしないよ」

 

親指以外を立てて四を表すむっくんの右手。

私達はむっくんにマネージャーを頼んだ時の様に顔を見合わせるとなにも言わずにコクりと頷いて、三人同時にむっくんを見る。

 

「それで構いません…私達はお金目当てでスクールアイドルをするわけじゃありません!」

 

「頑張ったあっくんが好きに使うなら、ことり達もなにも言わないよ!」

 

「だから、むっくん!」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

「あ、いや、そうやって意気込むのは良いけどまだしないよ?

少なくとも、見込み0の奴に労力と金を使うのは勿体無いんだ…ファーストライブ、やるの?」

 

「するよ!」

 

今度の部活動説明会の最後に穂乃果達はファーストライブをする。

 

「そう…じゃあ、俺はそれが終わるまではなにもしないよ。

いや、それが終わるまでの間に俺は俺なりに知識蓄えたりやれることを探してみたり、色々とやってみる…あ、やっと来た…都合よくやっと来た…」

 

大体の話が纏まると背を向けるむっくん。

むっくんの視線の先にはむっくんが着ているジャージと似ているジャージを着ている子達が数名ほど必死になって走ってきた。

 

「す、すみませ~ん!!」

 

「遅いよ、夜木くん…後、お前達も」

 

「信号全部に捕まったりして…すみません、先輩!」

 

「謝るの夜木くんじゃなくて、一年な。

言っとくけど、これ週4でする体を暖める為の軽いロードだからね…日曜日はこれに+6キロで、俺達には更に+10キロ(重り)なんだからね…じゃあ、行くぞ」

 

そう言えば、むっくんは部活動の途中だった。

遅れてやって来た部員達を引き連れ、むっくんは神田明神を去っていった…むっくんは、いや、むっくんだけがだった。

 

「はぁはぁ…」

 

「えっと、大丈夫?」

 

「だ、だぁ、大丈夫です」

 

うん、全然大丈夫じゃないね。

遅れてやって来た部員の中で、唯一むっくんと同じ酸素を薄くするマスクをつけてる夜木くん。

とても苦しそうだった…一年生っぽい子達も苦しそうだけど、多分、この中じゃ一番苦しそう。

 

「むっくん、待ってあげるか休憩させたら良いのに」

 

「なに言ってるんですか!

あの人、と言うかあの人達、十分以上前から此処に居るんですよ…信号に引っ掛かったとはいえ、まだまだなんです…なんだったら、とっくに学校に帰って四股を踏んでるぐらいに…失礼します…はぁ、はぁ…」

 

目を輝かせた夜木くん、汗だくで息が荒れている一年生達はむっくんを追い掛ける。

だけど、等のむっくんは見えないぐらいに進んでおり、多分、追いつけなさそう。

 

「青春ですね……さぁ、私達も走りますよ!紫原くんが何処を鍛えるにはどうすれば良いかの練習メニューもくれましたし、10往復の後に全部試してみましょう」

 

「ええっ…ぜ、全部は無理だと思うから二回とか明日に分けて」

 

「今日頑張った人に明日が来るんですよ!!」

 

さっきの夜木くんに感化され、熱くなる海未ちゃん。

穂乃果達は走り出す…けど、ことりちゃんは少しだけ、遠くを見ていた

 

「あーあ、残念だったなぁ…でもまぁ、いっか。

これから先、あっくんがことりの事、いーっぱい知ってくれるし、ことりの身も心もケアしてくれるし…頑張らないと…あっくん、ことりの事好きにして良いのに手が出なかったし…」

 

「ことりちゃ~ん、走るよ!」

 

「あ、うん!今行くね!」

 

遅れてと言うか、神田明神に来てからそれなりの時間がたってる…あれ?

 

「そう言えば、さっきの子…十分以上前からむっくん居るって言ってた…むっくんって、何時から此処に居たんだろ?」

 

学校が終わって直ぐに穂乃果達は此処に来た。

海未ちゃんが一番乗りだけど、その時には既にむっくんが居た…てことは

 

「穂乃果、ボーッとしていると転けますよ」

 

「あ、うん!」

 

後日、むっくんは重りをつけたまま7キロを20分で走っていたのを穂乃果達は知る。




NG集

「むっくん…これじゃ、ダメかな?」

鞄からタッパーを取り出し、むっくんに渡す。

「…え、なにこれ?」

「…ほら、甘い物って大事だよ…」

タッパーを開けたむっくんは固まった。
穂乃果が一番遅れた理由、昔から疲れた時は甘い物が大事だと言う。
疲れた時こそ甘い物だと穂乃果は作っておいたんだよ。

「いや、だからこれなに?」

「檸檬の蜂蜜漬けだよ?」

「…いや、俺のとかことりちんのと大分違う…て言うか、切って!!」

タッパーの中に入っている檸檬の蜂蜜漬け(穂乃果作)はレモン丸々二個を使ってる!
檸檬の蜂蜜漬け、こう食べた感じが少ないのと作る時間が掛かるから檸檬を軽く洗ってから、そのまま蜂蜜につけるだけ!

「大丈夫だよ、むっくん…皮は洗ってるし、そもそもこれって皮ごと食べるよね?」

イケる。うん、イケるよ…多分。

「穂乃果の手作り檸檬の蜂蜜漬けを毎日あげます!お金が無いから、これで!」

「いや、一種の罰ゲームだよ!」

酷い!!


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カネモーチの奥義・札束ビンタ(諭吉)

「ふぁ、あぁあああ…ねむ…」

 

朝練は基本的にしない。

理由は色々とあり、学校保護者と多方面で迷惑をかけるのでしたとしても軽いランニングだけだと全員に釘を刺している。

普段はのんびりと飯を食っている時間帯だが、今日は…いや、今日からは違う。

 

「あれ、むっくん…なんでおるん?」

 

朝早くから神田明神に行かなければならない。

本当にダルいなと神田明神をぶらついていると、巫女姿のノゾちんがいた。

 

「色々と事情がある…あ、他言無用にしといて…バレれば多方面で問題になる」

 

「?」

 

なんの事だと言いたげなノゾちん。

ハッキリと言った方が良いだろうが、俺と言う異物が居るせいで物語がどう転ぶのかが分からないので、細心の注意を払わなければならない。

 

「…あれ、あっくん?」

 

「おはようございます」

 

早く来いと思っていると、やって来てくれたことりちん。

平日の朝早くに神田明神に居ることは今まで無かったので、なんでと言った顔をしている。

 

「一応、見とかなきゃいけない事とかもあるんだ。

努力とか根性とか頑張ろうとか言って、無駄に張り切って無駄なことして無茶させる糞野郎嫌いだし…折れて立ち直るかどうか見とかないといけないし…まぁ、分かりやすく言えば、無茶しすぎたり、サボって気が緩む奴には1円も出さないし、一回も頭を下げないってこと」

 

「…大丈夫だよ、ことり達は頑張るから」

 

「そう、頑張ってね…俺は基本的に見てるだけだから」

 

「うん」

 

俺が居る理由を説明すると、軽くアップを始めることりちん。

他の二人もとっとと来いと思っていると、ノゾちんから強い眼差しを向けられる。

 

「なに?」

 

「…応援、してるん?あの子等がスクールアイドルをするのを」

 

「う~ん、少し違うよ。

出資者、スポンサーに近いよ…まぁ、それでも裏でカメラ持ったり企画書用意したりするけどね」

 

「それじゃあマネージャーやん」

 

「違うよ、最終的に利益を貰える話になってる…タダじゃこんなこと、やってられねえし」

 

ハ慈善事業は御断りだし、そう言った関係ならば揉めた際に金を貸してる関係だと言えば、いざというときは俺と言う存在をバッサリと切れる。

ハッキリとその辺の区切りはあることを言っておくのだが、不満げな顔をするノゾちん。

 

「絵里ちには散々やのに、穂乃果ちゃん達には力を貸すんやな?」

 

「まさか…と言うか、ノゾちんはどうなの?

顧問の先生すら居ないと言う状況からして、思い付きか衝動的なのでやってみようとなる。

大方、絵里ちんが思い付きですんなとか言ってるんでしょ…ノゾちん的にはどうなの?スクールアイドルは?」

 

絵里ちんの事について会話をするのは面倒なので焦点を変える。

ノゾちん目線でどう思ってるのかを聞くと何故かタロットカードを取り出すノゾちん。

 

「大丈夫や、穂乃果ちゃん達なら…」

 

「なんでそう言いきれるの?」

 

「カードがそう告げるんや…」

 

……はぁ

 

「ノゾちんって、本気になった事ってあるの?」

 

「え、どういう意味?」

 

「運命でどうにかなるとか分かってるから、なにもしないのはどうかと思うよ…俺が言えた義理じゃないけど」

 

放置していても原作はハッピーエンドを迎える。

そう思っているので、本当に言える義理じゃない…が、俺にとっては現実な問題である。

周りから見れば痛い二次小説かもしれないが、此処は現実だ。

 

「マジで占いが出来るミドちん曰く

【占いで決してしてはいけないのは未来を見ることだ。

何故ならば、未来を知ってしまえば、その未来を変に意識したり、無意識に知らなかった筈の未来に辿り着こうと本来ならばしない行動を起こすからなのだよ。まぁ、代わりにその未来と結果が同じ未来が一つ生まれる…が、その未来に向かうのは至難の技なのだよ】とのこと。

ノゾちん、未来を占ったからって、その未来に行けるとは限らないんだよ…未来は平和だと胡座をかいて、それっぽい良い感じの雰囲気になったから自分も穂乃果ちんと一緒にスクールアイドルに参加なんて糞みたいな事をしたら俺、即座にスポンサー止めるから…やっぱ人間、本気でしないと。俺にとっては結構、他人事だけども穂乃果ちんは思い出深い学校なんだから…本気には本気で答えてあげないと…まぁ、その前に立ち上がって来ないなんて事にならなきゃ良いけど」

 

「……」

 

やるならやるで、その辺の妥協は許さない。

ストイックすぎるかもしれないが、チームの優勝とか言うレベルじゃない事を穂乃果ちんはしようとしているんだ。変な感じで入ってこられたりするのは、一番の迷惑だ。

 

「よく映画とかで未来はまだ決まってないって言うけど、プラス思考にばかり偏りがち。

前向きにって言うけども、時にはマイナス思考を持って…石橋を叩いて渡る気持ちを持っておかないと…俺はま~だ、なんもしてないけどね…」

 

「むっくん、その辺は厳しいんやね…」

 

「俺が厳しいんじゃなくて、周りが甘いんだよ…そう言えば、絵里ちんは何をしてるの?」

 

ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

アレから全く顔を会わせていないので、何をしているかが分からない。

会っても気まずかったりするのだが、穂乃果ちんが活動をするのに障害になるのならば色々としなきゃならないこともある…けどまぁ、自らで墓穴を掘りそう。

 

「エリチも…必死になって、廃校をどうにかしようとしてる。

けど、それは生徒会長やからとかそう言う使命感でやっててエリチ本人じゃない感じが」

 

「ああ、そう」

 

割と普通の答えが返って来た、割と普通ならばどうでも良い。

相も変わらず興味無さげな反応に泣きそうになるノゾちんだが、んな事は気にしていられない。

階段を降りていったことりちんが遅いので、少し気になる。ことりちん、足動かすの躊躇ってる部分があるから、足関係でなにかあったと思う。怪我が無ければ良い。

 

「…あ、そうだ」

 

「なに?」

 

「俺は、あくまでスクールアイドル活動を手伝う背が大きいお兄さんです…」

 

ヒントと言う事に気付くかどうかは分からないけれども、ノゾちんにヒントを与える。

これをどう捉えるのかはノゾちん次第。ミドちん達なら答えを直ぐに教えそうだけど、それじゃあ意味無いし…気付かなくても、マイナスにはなりはしない…いや、本当にノゾちんに偉そうな事を言える義理じゃないな、俺。

 

「ことりちん、私語を慎めとか言わないけどもサボるのダメだよ?」

 

「紫原くん?」

 

「むっくん…あれ、なにもしないんじゃ?」

 

階段を降りた先には、園田さんと穂乃果ちんがいた。

二人と出会って仲良く談笑して帰ってこなかったのが分かるとホッと一息つきたいが、説明が先だ。

 

「練習にどうのこうの言ったり、差し入れしなかったりだよ。

そもそもの話で今日は平日で、俺も三人もこの後に学校があるんだから…頭下げる以前に、学生として頑張らないと…あ、因みに今日いるのはサボりとか遅刻癖無いとか、無茶しないかの監視…眠い…」

 

ダラーっとしてるのが朝だから本当にキツい。

大きなあくびをしていると、穂乃果ちんは首を傾げる。

 

「あれ、でもむっくんって部活してるよね…朝練は?」

 

「そんなもんは夏休みだろうが大会前だろうが存在しません…だから、眠い」

 

「それは、大丈夫、何ですか?

私達の一つ上に奇跡の世代と呼ばれる超高校級の選手達が居ると前に聞いたことが」

 

…まーた、出たよ。

そこまで悪名が轟いているのか、奇跡の世代は…悪いのは、峰ちんだからね。

峰ちん、本当にメディア受けが悪いんだよね。

 

「強豪校に勝つには、少しでも多くの練習を」

 

「ダメダメ、そう言う努力を多くこなせば良いとかの理論はダメ。

まぁ、此処ぞと言う時は良いことなんだけども、俺達はプロみたいにそれだけを集中的にやって言い訳じゃないんだ…まぁ、分かりやすく言えば、学業に支障をきたすからダメなの。

全寮制の学校なら、朝飯用意しれくれたりするけど、うちの学校はそうじゃない普通科全日制の高校で学校全体でブラック部活動対策とかで朝練は確かな結果を叩き出して無い限りは禁止されてる…けどまぁ、それで良いよ…全寮制だと上下関係に託つけて人間の屑が大量発生しそうだし、脳筋理論してきそうで嫌だし」

 

まぁ、うちの場合はそもそもでしないのが絶対だけど。

本当にスカウトで進学を決めなくてよかったって思うときが多いよ。

 

「で、基礎練しなくて良いの?

あ、俺は見ての通り制服姿なので汗臭い事は出来ません…と言うか、見るだけだからね」

 

尚、闇澤皇の制服は帝光と真逆で黒色のブレザーである。

 

「……本気でやらないとアカンか…むっくんの本気っていったい…」

 

ノゾちん、聞こえてる…と言うよりは、良い感じの雰囲気になったから自分もスクールアイドルになろうとか言う考えを持っていたんだね。

その後は普通に体力作りなんかをする三人、時々俺を混ぜようとするが絶対にしないとの意思表示を徹底しておいた。

 

「…先ずは誰にどう説明するべきか…その前に銀行に行こうっと」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「実況プレイしてる奴と当たらねえかな…ポケモンなら相手の手の内、見放題なんだが…」

 

電子専門学校での授業を終え、家に帰ると据え置き機のゲームと3DSでレートに潜りオンライン対戦をする。

何百年も生きているがゲームは楽しい。落ちゲーとかは特に良い。エンドレスで出来るのが良いし、完全実力だ。FPS?あれはジャンルが違うし、いちいち操作を覚え直すのが辛い。

 

「足と手、両方使ってゲームとか器用だわ、黛さん」

 

「この人は、履歴書に書けない特技とか多い」

 

…こいつら(赤と紫)が居なければ、最高なんだけどな。

至福の時間を気にせずに壊し、茶を啜る二人。コンビニで売っている柿の種を摘まみながら、あることをしている。

 

「おい、オレに用件があるのか?それとも、赤司に用件があるのか?」

 

「両方だよ」

 

「じゃあ、赤司の所でやれ」

 

赤司が住んでいる部屋は隣で、なんならエレベーター出てすぐの部屋が赤司の部屋だ。

来年から住む予定で、トロフィーとか飾ったりするのに貰った部屋を使っているが紫原は此処に住んでいないのだから、赤司の部屋に行けよ。そしてオレを呼べば良いだけの話だ。

 

「黛さん、稀に全力で逃げるからさ…内申点なんか知らないって、マラソン大会休むでしょ?」

 

「当たり前だ。

なにが悲しくて真冬に走らなきゃならん…言っておくが、小学生は半袖で真冬にマラソンだぞ?もう、運動以前に一種の虐待だからな」

 

「相変わらず無表情だね」

 

「年中マイペースのお前には言われたくない」

 

こんなのの何処が良いんやらと思うことがあるが、世の中はなにがウケるか分からない。

 

「まぁ、良いじゃないですか。

僕の部屋にはパソコンとテレビと本棚しか無い寂しい部屋なので、ゲームバー並みに充実している此処がちょうど良いんですよ」

 

申し訳なさそうな感じは無い赤司は閉まっているコントローラーを取り出し、電源を入れる。

こう言う変な共同生活も悪くないちゃ悪くないか…プライベートが無いことが多いがな。

 

「それで、オレ達になんの様だ?」

 

内容はなんとなく予想出来るが、万が一がある。

少なくとも、今生きている時間はオレ達には正真正銘の現実であり…なんか変な紫原がなにするかが分からない。

 

「ん~とね、この前のやつでの引き出物さ、饅頭じゃん。

その饅頭を売ってる店の娘さんがスクールアイドルをする事になったから手伝ってって言われたんだ」

 

予想通りかと、マネージャーになってくださいフラグが紫原に来た事にホッとする。

オレに来たら嫌だし、紫原がちゃんとやることはやってくれている。安堵しようとするのだが、赤司の表情が良くない。

 

「紫原、まさかとは思うがその話を受けたのか?

受けたのならば今すぐに無かった事にしてくるんだ…スクールアイドルはあくまでも学校の綺麗な生徒達で構成されており、OBでも親族でもない者達がでしゃばってみろ…アンチに叩かれる。と言うか、他校の生徒が他校の部活動に積極的に協力は普通に問題だ。」

 

「大丈夫、大丈夫。

マネージャー断って、衣装製作費用を捻出したりするスポンサーにならなれるって言っておいたから…折れたり、糞みたいな事をしたら即効で辞めるってのも言ってる」

 

「ならば、大丈夫だな」

 

「…まぁ、そうだよな」

 

マネージャーは問題にしかならない。

その辺の事はちゃんと意識している…普段は緩いが、大事な事だからと真面目になるな、紫原は。

 

「まぁ、それでも折れないと思うよ。

向こうがちゃんとするなら、俺も俺なりの誠意を見せてちゃんとするよ…邪魔者だって捻り潰す…痛々しい中二的過去なんざどうだって良い…でしょ、赤ちん?」

 

「ああ、そうだね」

 

「まぁ、その辺に関してはオレも賛成だな…不幸自慢をするために転生をしているんじゃない…で、本題は?」

 

話題が徐々に徐々におかしな方向へと向かってきているので、補正する。

紫原が此処でどう出るのか、オレ達に求めているものがなんなのかによって大きくこれからが変わる。余りにもおかしすぎれば、赤司も変化を加えたりなにかをするだろう。

 

「黛さん、パソコン関係得意だよね?」

 

「得意で尚且つ専門学生だ…」

 

「じゃあ、パソコン関係をお願いして良い?

具体的には映像とか公式サイトとかを弄くったりするのを。

スポンサーとか言ってるけど、実際の所はマネージャーに近いんだ…けどまぁ、専門的な事は下手な素人よりも、出来る素人の方が頼りになる…」

 

「そうか、分かった。だが、タダでとは」

 

「金ならある!!」

 

「あべし!?」

 

出来る素人とは言え、オレも慈善事業をしている暇などは無い。

貰うべき所は貰っておかなければならないとその辺の話をしようとすると紫原が万札で札束ビンタをしてきた。

 

「やっべ、これサイコーじゃん」

 

「お、おい…普通は、札束の厚さじゃねえだろ。

お札の絵柄、福沢諭吉が書かれている方でビンタするだろ。なんで、重ねた際に出来る分厚さでビンタ?」

 

「いやぁ…威力重視した方が良いかなって」

 

「お前、オレ達の中でぶっちぎりの怪力なんだぞ…あ~いて」

 

「と言いつつ、懐に持っていく黛さん…僕はそこに痺れもしませんし憧れもしませんよ」

 

「うるせえぞ、生活環境は最高水準のボンボンが…金があるならやる」

 

紫原から金を受け取り、オレの方の用件は終わった。

金を貰い、簡単な仕事をするだけでオレ自身が深く関与しなくても、勝手にハッピーエンドを迎えるっぽいのでこれ以上ああだこうだ言う必要はない。

だが、問題は赤司だ。赤司に何を頼もうと言うのだろうか

 

「赤ちん…マンションを貸して。

具体的には地下のVIP専用のトレーニングルームとか」

 

「おや、タダで貸せと言うのかい?」

 

「…」

 

このマンションの地下は色々とある。

スポーツジム並みの設備に、温水プール、カラオケルーム、ビームピストルの射的場。

殆どが赤司達の趣味であり、体力と体作りをやる以上はジムに行くことはマイナスじゃない。

むしろ地球温暖化がどうのこうので灼熱地獄と化したコンクリートジャングルを走らせないんだから、プラス…が、首を縦に振らない赤司。

オレ達ならば金を出せば終わるのだが、そうじゃない。

 

「金は出すべき所で出すよ…」

 

「それなら、此処じゃない何処かで出せば良いじゃないか。

少なくとも、黛さんに渡した諭吉があれば最高級ジムに一年以上通えるはずだ…僕が過去に軍資金として渡した一等賞の宝くじ、アレはキャリーオーバーで相当な額になっていて、最高級ジムに一年間通い詰めても、痛くも痒くもない」

 

金には困っていない赤司。

自身にとってのメリットを教えろとストレートに言ってこないのを見る限りは、なにかの答えを求めている。

さっき、安易にマネージャーになるんじゃないと言ったように、赤司が考える正しい答えを紫原に答えて欲しいんだろうな…回りくどい事をするもんだ。

だがまぁ、その答えが出せなければ今後に関わってくる可能性があるんだろうな。

 

「赤ちん、もう一度言うね…マンション、貸して。

地下の設備だけじゃない、中庭とかそう言うのを全部引っくるめて…払う時が来れば、俺は金は払うよ」

 

「……そうか、それならば貸そう…」

 

「…」

 

なにが言いたいのかがイマイチ分からないが、少なくともこの二人は分かっている。

赤司は納得がいった様で承諾した…と思う。払うべき時が来ればと言う意味が分からない。

 

「じゃあ、俺は帰るね。

明日も、朝一で神田明神でスタンバっとかないと行けないから……他にもやることあるし、眠い」

 

眠そうな紫原は大きなあくびしながら、帰っていった。

 

「案外、考えているんだな…」

 

マネージャーでなくスポンサーになったり、専門の人に頼んだり、場所を用意したり。

事務的な雑用をするマネージャーと言うよりは、人と人を繋ぐ中継役になっている。

 

「まぁ、かわいそうだ助けてあげようと言う善意や優しさは素晴らしい。

だが、安易にそう言った事をしてはいけない。責任が取れたり考えたり、下げるべき時に頭を下げれるる人間じゃないといけないと人助けなんてやってはいけないと転生者になる際にキツく言われましたからね…」

 

「オレはハーレムだけは絶対に作るなとしつこく言われたな」

 

元より風俗で良いじゃんと言う考えをもっているので、ハーレムなんぞ興味無い。

更に言えば二次元こそが至高であり、しょうもない欠点の無い娘が最高である。

 

「…一応、聞いておくが今の行いはプラスなのか?」

 

紫原メインで原作に関われるようにしておいた。

オレ達はちょいちょい出てくる脇役であり、それは特に気にしていないのだが…紫原していることは原作に無かったことであり、プラスになっているのかが不明だ。

 

「今のところはプラスですよ。

安易にマネージャーを引き受けるのではなく、スポンサーと言う事になっているので。

…黛さん、転生者になった者は転生先で面白いことをやらかせば二度目の転生の権利を得られる事を知っていますよね?」

 

「なにを言い出したかと思えば…オレ、青峰、赤司はその二度目の転生先で面白いことをして永遠に転生出来る権利を得た…そう言った奴はMVPになって、転生者養成所でこう言う人達はスゴいのですと…ちょっと待て、おい、まさか」

 

今更過ぎる会話と説明を今更させると言う事は、つまりそう言う事なのか?

 

「地獄の転生者養成所で僕は見たんですよ。

此処とは違う世界線のラブライブの世界で、安易にマネージャーを引き受けた人の良い男を。

どうもその男がラブライブの世界に一番最初に転生したみたいで、今の紫原と同じく音ノ木坂の学生じゃない親族でもない、友人程度のレベルだが御人好し。

真面目に頑張ったり素直に褒めたりしていて一歩間違えればヤンデレになるぐらいに全員の好感度を上げたんですが…まぁ、世の中はそんなに甘くないと、彼の存在がバレてアンチが全力で締め上げたらしいですよ…案外、この世界って厳しいんです」

 

「光があれば常に影がある。

強すぎる光の裏には必ず濃い影がある、か…まぁ、100人中100人がプラスだと、世の中は動かないから当然と言えば当然か…FGOの世界よりましだが」

 

「まぁ、そもそもの話で僕達が音ノ木坂に行っとけば良かっただけの話ですからね」

 

「それをすれば廃校なくなるぞ。単純にバスケの強い高校になって入学志望の生徒が増えて…帝光中と同じことになる…糞理事長め…」

 

「無表情ですよ、黛さん」

 

昔の嫌な記憶が甦り、苛立つが表情は変化しない。

最初に転生した世界がFGOで、感情を殺しまくったが故に出来た後遺症だな。

 

「そろそろ飯時か…」

 

話すべき事を話終え、時計を確認するとちょうど夕飯時。

ゲームを一旦中断してオレは重い腰を上げて体を伸ばす。

 

「では、僕もそろそろ…青峰が夕飯を作り終えている頃なので」

 

「ほんっと、お前達は青峰に飯を押し付けるよな」

 

「僕と黄瀬と緑間は、料理が出来るけども料理をする人じゃないので」

 

分かっているのならば、料理をすれば良いのに。

しかしそれを言うとまたややこしくなるし、赤司は忙しいときは忙しいのでなにも言わない。

 

「今日の夕飯は…匂いからして、豚の角煮か…くさや、出ねえかな…」



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チョロとポンコツの境界線

「…え~っと」

 

本日は金曜日、バスケ部は休みだが俺は休日を返上し放課後に穂乃果ちん達を見に来ている。

放課後、学校で練習しようにも部活動として認められておらず、毎日は無理だけども定期的なら使用許可がおりるらしいが、今日は無理なので神田明神で基礎的なトレーニング。

と言うかはじめてまだ数日なので基礎的なものが圧倒的に足りない。たった数日で身に付けたと言うならば俺は泣く。何年も必死になって手に入れた圧倒的フィジカルを一瞬で越されたら泣く。

 

「ことりちん」

 

「なに、あっくん?」

 

「一応、念のために聞いておくけども保護者にスクールアイドルするって言ってるよね?」

 

「うん、言ってるよ…どうかしたの?」

 

「保護者のサインも一応いるよね、うん…気にしないで、続けて」

 

穂乃果ちん達が頑張っている横で、俺も俺なりの努力をしている。

黛さんに動画編集なんかを頼んだのだが、書類を作ってくれとかそう言うのは一切言っていない。

全体の売り上げの4割を頂く代わりにスポンサーとして資金援助等をすると言う書類を作っているのだが、ふと保護者にスクールアイドルやると言っているのかと気になったので聞いたが…相変わらずと言うべきか、危機感が薄いねぇ、三人は。御都合主義、ありありだからか…

 

「スーツ、クリーニングに出さないとなぁ…痛い出費だなぁ…」

 

一回はちゃんと保護者の方々に挨拶に出向き、頭を下げれなければならない。

押入に仕舞ってある無駄にデカいデブが着るスーツをクリーニングしないといけない…俺、ネクタイ結ぶの出来ないから、パッチンとネクタイ止めるやつを使ってるけど、それでいったら失礼だよなぁ…

 

「むっくん、凄い速度で打てんねんな…」

 

「この御時世、こう言うの出来ないとまずいからね」

 

今年の誕生日に赤ちんから貰ったキーボードとタブレットがセットになったやつを使い、キーボードを一切見ずに打ち込んでいると有り得ないかの様に見てくる御仕事中のノゾちん。

最初はキーボードの小ささに苦戦したけども、数をこなせば嫌でも馴れる…まぁ、出来ない奴は出来ないけども。

 

「…それよりも、ノゾちんは高見の見物なの?」

 

「……」

 

良い感じになってから加わろうとするつもりだったのであろうノゾちん。

それやったらスポンサー降りると釘を刺したけども、ノゾちんが何かするかと思ったがなにもしていない。

 

「…まだ、ウチはなんも出来ひんよ…それに、ウチはむっくんほどつよないよ」

 

「…それに関しては、強い弱いは関係無い。

人ってのは歩いていると同時にレールの上にいるんだよ…するか、しないかだよ。

俺が強いなんて思ってたら大間違いだ…俺は弱いよ」

 

俺達転生者は、生んでくれた両親が死ぬ前に何らかの理由で死んでしまった者達だ。

賽の川原の新システムで訓練された後に転生しているだけだ…弱いから、ダメだったから、油断してたから死んだんだよ…世の中は理不尽である。

なんて事はノゾちんに言えない。また微妙な空気になったが、他にも仕事があるのか何処かに行ってくれた。よかったよ…けどまぁ、ノゾちんが本当になにもしなかったり良い感じになってから加わったらマジでスポンサーを降りてやろう。赤ちんに怒られても知ったこっちゃない。

 

「ぜぇぜぇ…む、むっくん」

 

「ん~どうしたの?」

 

階段を往復して息切れの穂乃果ちん。

三人の中じゃ、一番スタミナ無いね。定期的に一緒に走ってることりちんと、運動部の園田さんと比べるのは失礼だけども…これ、間に合うのだろうか?

 

「むっくんも、走らない?ほら、今日は制服じゃないし」

 

制服姿だとなにかと面倒なので、家帰って即効で働いたら負けと書かれたシャツに休日使っている薄くて長いジャージと言うラフな姿に着替えている。

制服姿じゃないからか、しんどいのを分かって貰おうか、どちらかは分からないが練習に誘ってくれる穂乃果ちん。

 

「パスパス、流石に休日に別メニュー入れたりして、書類作ったりとか無理」

 

「その割には、指が動いていませんね」

 

遅れて階段を掛け上がってきた園田さん。

先程の会話を聞いていたのか、にっこりと微笑んでいる。

 

「どうですか、紫原くん。

折角の晴天で、室内でも無いのに機械を弄くるのは体に毒です。一緒に走りましょう」

 

どうですかと微笑む園田さん。

笑顔に裏があるのが丸わかりだが、それと同時に純粋さがある。悪意が3、純粋さが7で出来ているね。

 

「走るつっても、二段飛ばしで階段50往復しても多分問題ないよ。

園田さん達はまだ、本当に基礎的な部分を鍛えないといけないけども…俺は俺自身の個性を伸ばす練習しないといけないから…まぁ、それ+基礎だけども」

 

まだまだ俺からすれば軽いメニューなので、俺はするならば別メニューだろう。

 

「どういう意味?」

 

「走るのですか、走らないんですか?」

 

「走らない…園田さん、他人に練習をしようと誘う前に手本になれるぐらいに鍛えないと」

 

「…私が鍛練を怠っていると?」

 

「…挨拶って、大事だよね…来たよ」

 

一言多かった気もしないけども、事実っちゃ事実だと思う。

ちょっと圧が増したけども気にする程のものじゃないと、園田さんに怯える事なく穂乃果ちん達と同じように神田明神の階段で足腰を鍛えようとしている小学生の集団と…

 

「こんちわーーっす!!」

 

「っ、こ、こんにちわ」

 

「「「「「こんにちわ!!」」」」」

 

それを引き連れ先頭を歩く虹村さんがいた…そう言えば、この人、バイトかなんかでつい最近出来たミニバスでバスケ教えてるとか言ってたな。

 

「こんにちわ!」

 

「お前等、二人一組になって、階段を6往復してこい。

一人が一回下まで走って降りてから、次に上って、もう一人にタッチして1往復…はい、スタート」

 

穂乃果ちんは元気よく挨拶を返すけども、園田さんはビクッとなっている。

人見知りが激しいと言うよりは虹村さんの圧が強い。この人は、色々とインパクト強いんだよね。

 

「老若男女、なにを相手にするか分かんないんだよ。

あの、近所の不良の元締めとも言われている虹村さんに愛想笑いの一つも返さないとダメだよ」

 

「おいこら待て、紫芋」

 

「せめて、種子島ゴールドと呼んでよ」

 

「結果的に紫芋じゃねえか…誰がこの辺り一体の不良の元締めだ?あ?」

 

「いや、事実じゃん」

 

糞生意気とかイキッテるとか考えている普段から真面目にやらずに好き勝手やってる規律とか守れないDQNどもの逆鱗的なのに触れて、喧嘩してたのを知らない訳がない。

 

「俺は、どっちかつーと被害者だからな…いや、本当ですよ。

そりゃあ確かに喧嘩を売られたりしますけども、向こうが手を出してきたので、正当防衛なんです」

 

必死になって弁明をしているが、結果的に締めた事を認めている虹村さん。

え、この人大丈夫なのと園田さんと穂乃果ちんが俺の側により、俺の腕を掴む。

 

「あらら、残念」

 

怖い人だと思われちゃったみたい。

 

「え~っと…虹村修蔵です。

近所のミニバスでコーチをやってる、体育系の大学生でスポーツトレーナー志望です。

一応、こいつの先輩で、バスケ部の元主将だ…」

 

このままではまずいと感じたのか、俺を怒らずに二人に自己紹介をする虹村さん。

女子相手なのか萎縮してしまっているのは笑い物だが、それよりも穂乃果ちんと園田さんだ。

虹村さんがスポーツトレーナー志望だと分かれば、顔を合わせる二人。

 

「虹村さんはスポーツトレーナー志望なんですか?」

 

「まーな」

 

「あの…私達の練習メニューを作ってくれませんか!」

 

勇気を振り絞り虹村さんにお願いをする園田さん…う~ん…無理っぽいな

 

「おぉ、良いぞ」

 

「やった!!ありがとうございます!」

 

「穂乃果ちん…多分、無理だよ」

 

アッサリと承諾した虹村さん。

穂乃果ちんは喜ぶけども、それはぬか喜びに過ぎない…と思う。

 

「別に三人分の個々の練習メニューを組むぐらい苦じゃねえよ。

紫原は三人のデータを用意しとけ、来週取りに来るからそれでメニューを作る」

 

「個々の練習メニュー、ですが?」

 

「ん…まぁ、学生の部活となるとんなもんしないか。

人には色々と個性がある、100人中100人が同じ事をして同じ成果は出ねえ。出たら、面白味もなにもねえ。

基礎的な部分は全員同じ事をさせるが、その次を、お前達の長所を伸ばす個々の練習メニューをさせる。短所を無くし、長所を極限まで光らせる…ざっくりわかりやすく言えば最終的にこんな感じに成長したりする」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「…なんか、凄い事になってる…」

 

二個目のレーダーチャートのパラメーターを見てキョトンとする穂乃果ちん。

これ、確実に黛さんだがこう言うのは見ておいて損は無い。

 

「こう言う風にレーダーチャートのパラメーターを見るのは良いことだ…つー事で、紫原、データの取り方を…所で、お前達なんの活動してるんだ?」

 

「スクールアイドル活動です!」

 

元気一杯に答える穂乃果ちん…あ~言っちゃったね。

 

「あ、悪い。スポーツ選手じゃないなら無理だわ…」

 

運動系の部活動じゃないと分かると、即座に無理だと手を振る虹村さん。

 

「な、なんで!?」

 

「大半のスポーツは食って太って動いて筋肉つける。

スクールアイドルは背はともかく、ウエストとか体重は常に現状維持だろ?

そっち系はどっちかっつーと専門外、重量で階級決まる系の競技とかは専門外だ…球技系は色々と教えれるんだけどなぁ…特にバスケ、今こうしてミニバスのコーチしてるし」

 

なんだかんだ言ってトレーナーとしては卵な虹村さん。

ダンスとかアイドルとかそう言うのの知識は専門外であり…多分、覚えないだろう。

 

「柔軟とかの基礎的な部分は紫原も知ってるから、そっちに聞いてくれ…」

 

申し訳なさそうな顔の虹村さん。

穂乃果ちん達は残念そうだが、諦めるしか無かった…が、まぁ、仕方ないのである。

 

「それよりも基礎練しておけよ。見たとこ、三人とも基礎が全然足りない」

 

「あ、そうだった。

むっくんも一緒に練習しようよ!」

 

基礎練の事に話を戻すと思い出したかの様に俺を見て、腕を引っ張る穂乃果ちん。

しかし、俺の方が遥かに大きく力強いので動くことは無い……

 

「よいしょっと」

 

「うわっ!?」

 

面白そうだと穂乃果ちんが引っ張る方の腕を持ち上げる。

咄嗟にか無意識か、穂乃果ちんは俺の腕にしがみつき、結果的に俺は穂乃果ちんを片手で持ち上げた…

 

「軽いねぇ…園田さんもどう?」

 

思ったより軽い穂乃果ちん。

後、数人持ち上げても大丈夫っぽいのでもう片方の手を園田さんに向ける。

 

「えっと…」

 

「海未ちゃん、これ結構楽しいよ!」

 

プラーンプラーンと揺れる穂乃果ちん。

腕に掛かる負荷がおかしくなるけども、穂乃果ちんがそこまで重くないから大丈夫。

 

「で、ではお言葉に甘えて」

 

「ん」

 

園田さんが手を握ると、俺はもう片方の腕を上げる。

持ち上げている方もだけと、手を掴んでいる園田さんや穂乃果ちんにも負荷が掛かっているので、程好い運動になっている。

 

「穂乃果ちゃんと海未ちゃんだけずるいよ!!ことりも!!」

 

「はいはい」

 

階段を掛け上がってきたことりちんも遅れて参戦。

二人ですでに両手が塞がっているので、ことりちんは俺の背中にしがみつく。

 

「あっくんの背中…大きくてあったかい…」

 

耳元で呟くことりちんは体を揺すり、胸を押し付ける…うん。

取り敢えず、俺に一番負荷が掛かっているのは気にしちゃいけないよね。

 

「この状態で境内ぶらついて見ようっと」

 

「…またパワー上がったな?」

 

「ベンチプレス265キロになったからね」

 

我が筋肉は魅せる為のものにあらず、使う為の筋肉なり。

変な視線を向けられながらも境内をぶらりと一周した…園田さんは途中、自分に向けられている視線を感じておろして欲しがっていたが、恥じらいを捨てるのもまたスクールアイドルへの第一歩…だと思う。

 

「はいじゃあ、基礎練ね…」

 

一周し終えたので三人をおろし、もう一回基礎を再開させる。

腕が疲れたのか、穂乃果ちんは基礎練習に誘って来なかった。

 

「…さてと」

 

「さっきから覗いてる奴、さっさと出てこい」

 

穂乃果ちん達が走り出したのを見て、俺は…いや、俺と虹村さんは先程から穂乃果ちん達に視線を向けている奴が居る場所に顔を向ける。

どうも此処最近あの三人に視線を向けている奴がいる。絵里ちんがガチで邪魔しに来ているのかと思ったが違う。視線の雰囲気が見知らぬ感じだ

 

「…出てこないつもりか…あぁ?」

 

出て来てくれないので、いきなり強行手段を取った虹村さん。

バトルものの世界じゃないのに、バトルものの世界の達人にしか出せなさそうな圧を放ち

 

「ひっ!?」

 

赤ちんと同じ真っ赤な髪の音ノ木坂の制服を着た女子が出てくる

 

「虹村さん、それダメだって言われてるでしょうに」

 

「あ、やべ」

 

出てきた女の子は完全に怯えている。

生まれたての小鹿を思わせるかのように足がプルプルと震え、俺を全然見ていない。

視界には虹村さんしか入っておらず、涙目である。

 

「大丈夫?」

 

「すまん…」

 

虹村さんが出てくると確実にややこしくなるので俺が前に出る。

怯えている女の子にゆっくりと近付くけども、女の子も一歩ずつ下がる。

 

「目線を合わせたまま、ゆっくりと後退…」

 

「俺は熊じゃないよ」

 

図体のデカさが此処に来て、祟った。

女の子は俺も虹村さんと同類だと思っているようだ…

 

「…ごめんね、本当にごめんね。

この人、稀にと言うか結構体育会系のノリで行く人だから…怪我は無い?」

 

「っ…は、はい……」

 

なんとか歩み寄ろうと姿勢を低くし、緩い声で言うと俺に対しての怯えは消えた。

ゆっくりと隣に行くと、腕を掴む涙目の女の子。

 

「俺は紫原睦、睦で良いよ」

 

「わ、私は西木野真姫よ…です…」

 

「敬語はいらないよ、真姫ちん…」

 

西木野…この辺で西木野って言ったら、ミドちんのお父さんが勤めてる病院の院長さんぐらいで…娘さんなのかな?

 

「音ノ木坂の生徒?」

 

「…ええ、そうだけど?」

 

気持ちを落ち着かせたのか、あっさりと敬語をやめる真姫ちん。

虹村さんには怯えているけども、俺には歩み寄って来てくれているんだね。

 

「そうか…」

 

「な、なによ…別に、たまたま此処に来ただけで」

 

髪の毛をくるくると捻り回し、プイッとそっぽを向く真姫ちん。

あ、はい。そうですか。と何時もの反応をするのは怖いのでせずにいる。

 

「…あの子達がスクールアイドルをしようとしているのを、知っている?」

 

「ええ、知っているわよ」

 

そう、それなら話が早いや。

 

「もしよかったら、最後まで見守っててくれないかな?」

 

「え?」

 

「偶然にこんな所で見かけた三人を無視せずに見てくれたんでしょ?

今回だけで良い、その後は気が向かないんだったら見なくて良い…けど、今回だけ、最後まで三人を見てくれないかな?ファン第一号として、音ノ木坂の生徒として」

 

きっとファーストライブは悲惨な事になるだろう。

一応、それを教えているがなんとかなるとか思っている…折れて立ち上がれなくなると困るので一人でもライブに来て欲しいと頼む。

 

「別に…それぐらいなら良いわ…やること無いし…」

 

「なら、お前もスクールアイドルすれば良いんじゃね?

世の中、競争相手無しの一強の時代だと停滞して何れは廃れちまうんだから」

 

「っ!」

 

「あ~もう、虹村さんったら…」

 

スクールアイドルをすることは賛成だけども、今勧めるんじゃ無いよ。

虹村さんが声を出した事により、ビクッとなって俺の腕を掴む力がより一層強くなった。

少し爪がめり込み痛いので、離そうかなと手に触れるんだけど

 

「いや…」

 

ちょっとの気の緩みで涙腺が崩壊し、大泣きしそうな真姫ちんを見て止めた。

スポーツ選手とかもそうだけど、日頃鍛えた肉体の力の扱い方を間違えてはいけないと言うのは今の真姫ちんを見てよく分かる。

 

「ん~……俺にはこう言う事しか出来ないよ」

 

カッコいい事を言えるほど、中二病じゃない。

かといって、慰めれるほどイケメソじゃないので俺に出来ることはこれぐらいだと真姫ちんの手を握る。

 

「あ…」

 

「おまっ…チョロインだな……いや、て言うか」

 

手を握ると少しだけボーッとする真姫ちんを見て、色々と察する虹村さん。

いやいや、流石にこの程度でフラグが出来るなんて有り得ないじゃないですかやだなぁ。

 

「無い無い…取り敢えずさ、真姫ちん…」

 

「なにかしら?」

 

「制服姿で彷徨く各方面で多大なる迷惑を被るので、一度家に帰って着替えた方が良いよ」

 

「…」

 

今それを言うのかと冷たい視線を送る真姫ちん。

しかし、制服姿の綺麗な美女がぶらりと歩いているとこの東京でなにが起こるか分かったもんじゃない。現に絵里ちんがちょっと寄り道しただけで、めっさナンパされてた。

 

「それもそうね…じゃあ、またね…」

 

「うん…」

 

呆れつつも、一応の納得をしてくれた真姫ちん。

俺の手を自らで離し、階段を降りて帰っていった……

 

「偶然に来たのにまたね、ね」

 

「ツンデレっぽい娘にそう言うの言うと拳骨飛んでくるらしいから、やめとけ」

 

触れてはいけない部分に触れようとしたので、俺は止められた。

 

「むっくん、私達のファーストライブの曲が出来たよ!」

 

後、次の日に穂乃果ちん達の曲が出来た。

作ったのは多分真姫ちんとの事で、あの子は作曲担当だと言うのがそれで気付いた。



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家に帰るまでが遠足と言うが、帰って次の日の楽しかったの思い出話も遠足だ

音ノ木坂の廃校を知ってスクールアイドル活動をしようと考えた一つ下の穂乃果ちゃん達。

実は既にアイドル部があるとか言ってない事を知られれば、多分と言うかむっくんは確実に怒るんやろうな…にこっちか穂乃果ちゃん、どっちかは分からんけど。

けど…きっとそれは音ノ木坂を救う行動として一番の行動や…と思うねんけど、むっくんが加わってから、占いが徐々にハズレてる…未来を見たら、アカンって言うてたから、その代償やとウチは思う。

 

「…」

 

穂乃果ちゃん達、μ"sの初ライブのお客はたった一人だった。

けど、その一人が自分達の第一歩だと穂乃果ちゃん達は言って、一人の観客…小泉花陽ちゃんの為に歌い、エリチがまだやるかと問い掛け、まだやる決心をした…

 

「な~んも、分からへんなぁ…」

 

決心をした、それはつまりこれからもスクールアイドル活動をするという事。

穂乃果ちゃんは前々から顔を知ってたむっくんにマネージャーを頼み込み、最終的にはスポンサーと言う形で引き受けた…けど、むっくんがなにをするか予想できひん。

常にマイペースで、エリチに躊躇いなく負け犬と酷い事を言える…それと同時に、自身は周りを黙らせる圧倒的な強さを証明してきた…に加えて、自分が酷いと自覚してる。

穂乃果ちゃん達に躊躇いなく酷い事を言うかもしれないと心配になったのと、むっくんの事を知りたいと今月号の月刊バスケを買って、読んでるけど月刊バスケに載っているのは中学生やプロ、高校の女バスの事ばかり。

男子の高校の事は載ってるけど、奇跡の世代についてはなんも載っていなかった。

 

「よくよく考えたら、見たことあらへん…」

 

「なにが見たこと無いのかしら?」

 

「エリチ…むっくんが試合をしてるところ、一回も見てへんね」

 

「…別に、見ないといけないわけじゃないじゃない。

第一、睦は音ノ木坂とは違う生徒なんだからむしろ敵よ」

 

月刊バスケを見ていると、エリチが話しかけてきたのでむっくんの事を言うと少しだけ表情を変えた。むっくんが奇跡の世代だと知ったけど、ウチはそれをエリチには言うてない。

言ったら、確実にエリチの心は粉々になってしまうのが目に見えている。

 

「ちょっとそれ貸して」

 

「あ、ちょ」

 

「…ふ~ん」

 

ウチが持っていた月刊バスケを取り上げ、パラパラと内容を確認せず雑に読むエリチ。

なんで持っているのかを聞かず、ちゃんと1から読もうとしないのを見て分かる。むっくんの情報が無いかを探している。

 

「それ、むっくん載ってへんで?」

 

「…別に、睦なんて探してないわよ。

…うちの女子バスケ部が戦わないといけない強豪校とかを見てたのよ」

 

その割には男子の高校バスケの所のページを開いているエリチ。

むっくんが居ないことが分かると直ぐに返してくれ、何処かに行ったので、やっぱむっくんを探そうとしてたんやね。

 

「…貴方も、勝てなかった側じゃない…」

 

教室を出ていったエリチはなにかを呟いた。

呟いた内容を考えようとしたその時…むっくんから電話が掛かってきた。

ノゾちんが会いたくなったら、隣なんだから会いに来ても良いんだよ…暇な時、限定だけど。

って、むっくんが言ってくれたので電話をする機会が無く、されるなんて事も無かったので少しだけウチは身を引き締め、教室を出て人気の無い所に行く。

 

「もしもし」

 

『「もしも~し、ノゾちん…取り敢えず、ごめんねぇ。

急に予告無しで電話して驚いたと思うよ…穂乃果ちんの電話番号、知らないからさ…いや、ごめんね」』

 

「……」

 

むっくんからの電話で真っ先に出たのはごめんねと穂乃果ちゃん…っつ…ウチじゃない。

いや、むっくんとはお隣さんやから会いたければ会えるんやけども…痛いなぁ…ウチだけを、見てくれへんかな…

 

「…穂乃果ちゃん達に用なんやね?」

 

『「う~ん、それもそうなんだけどさ…ノゾちんも来てよ」』

 

「…」

 

『「裏でコソコソするならば、それはそれで構わないよ。

自分が楽だからとかで影に徹する、とんでもないメンタルの持ち主が世の中には居るんだから…けど、表に出るつもりなら、無理矢理にでも引っ張るから」』

 

むっくんはなんでもお見通しやねんな…

 

『「まぁ、とにもかくにも穂乃果ちん達と…え~っと、確か一年生に西木野真姫って娘が居る筈だから、その娘も呼んでてくれないかな?曲を提供してくれているし、色々と話があるし…ノゾちんにも色々と見てもらいたいし、何はともあれ一先ずは見てほしい…本気には本気で答えるよ…土曜日に行けるかどうかをちょっと聞いてて、じゃあね」』

 

「あ、っちょ!」

 

一方的に切ったむっくん。

もう一度、かけ直すけどむっくんは出ようとしなかった。

 

「…まぁ、別に無理ちゃうからええねんけど…」

 

一先ずは、むっくんに言われた通りに穂乃果ちゃん達にむっくんから話があると伝え、土曜日が大丈夫かと確認を取って大丈夫だと分かり、その事を連絡したら、土曜日に此処に来てと通知が来た…そして、当日。

住所を知っているのはウチだけなので、神田明神で待ち合わせをした後に来てくれと言われた場所に向かうんやけど

 

「え、あの…」

 

「おっきい家がいっぱいあるね…」

 

「…せ、せやね!」

 

そこは普段は来ない様な住宅地…富裕層のみが自然と集う住宅地。

大手のスポーツジムが近くにあるとかそんな事はない、富裕層が住みやすい色々な場所に近い住宅地…

 

「睦、この辺に住んでるのね…」

 

「違うよ、真姫ちゃん…あっくんは此方に住んでないよ」

 

出会って間もない真姫ちゃんはむっくんがこの辺の住人だと勘違いをするけど…なんでことりちゃんは知ってるん?

 

「あっくんは帰る時、ことり達と真逆の方向に帰るんだ。

だから、ことり達が帰る方向にあるこの辺にはあっくんは住んでないよ」

 

…ことりちゃんは本当にむっくんの事を見てるねんなぁ。

…スクールアイドルとかそう言うの関係なく、むっくんに関しては頑張らんとな…

 

「住所的に…このマンションやね…」

 

「ま、待ってください!!」

 

来いと送られてきた住所に辿り着くと、そこは物凄く大きなマンションだった。

そのマンションを知っているのか、大声をあげる海未ちゃん。

 

「こ、このマンションは確かこの近隣で一番家賃が高いマンションの筈です…なにかの間違いじゃ無いのですか!?」

 

「う~ん、間違ってへんで?」

 

高級マンションを見て慌てる気持ちは分からなくもない。

けど、携帯に送られてきた住所にはこのマンションが載っているから…こう言う大事な時にむっくんが嘘つく筈はあらへん。

 

「海未ちゃん、家賃が高いって…いくら位なの?」

 

「…少なくとも一番安い部屋でも数十万は軽く越すと聞いています」

 

…あらへん、あらへん…あらへんやんな。

 

「あ、見て!お相撲さんが出てきてるよ!」

 

マンションから出てくる力士に気付くことりちゃん。

その力士はバラエティ番組なんかにも度々出演した事があり、とても大きな力士…ほ、ほんまに大丈夫やろうか?

心臓がバクバクと言っているのを感じながらも、ウチ等はマンションに入る。

 

「遅いよ。時間指定したんだけど…ナンパとか、そう言うのされなかった?

この辺って、富裕層多くて富裕層って金を惜しまずに結構変なことするから気をつけてね…西木野さん、来てくれてありがとうございます」

 

するとエントランスでヘアゴムで髪を纏めたスーツ姿で、ウチ等を待ってた。

 

「むっくん、その格好は…」

 

何時もの様なラフな格好で居ると思っていたので戸惑ってしまう。

口調とかは何時も通りだけどこう、なんか真面目な顔をしてて顔もなんかシュっとしてる。

何時もは目がボーッとした感じだけど、今は目にハッキリと力強さが宿っている。

 

「別に…高坂さん達が全力でやっている。

それならば、此方も全力の返答を見せるのが筋ってもんでしょ…俺がヘアゴムで髪を結ぶんでるのは、こうしたら気持ちが引き締まって全力を出そうって時に出せんの…あんま、ジロジロと見ないで」

 

ウチの質問に答えてくれて納得はいったけども、むっくんの姿をウチ等はジッと見つめる。

普段はよく分からん変な服ばっかりで、髪の毛も常に一定の長さを保ってて冒険していない分、新鮮味があってカッコ良かった。

 

「え~そんな恥ずかしがらなくても良いよ。

あっくんは元々カッコいいんだからさ…あ、動いちゃダメだよ!」

 

ことりちゃんはそんなむっくんを撮ろうとするんやけど、動いて撮れないようにする…

 

「甘いで、むっくん!!」

 

「最近の携帯には連写機能があるんだよ!」

 

如何に小刻みに震えようが、今時の携帯のカメラには様々な機能があるんや。

遅れてカメラを取り出したウチと穂乃果ちゃんは連写機能を使い、むっくんを撮ろうとしたんやけど

 

「それ以上はマジでやめて…俺、基本的にカメラ向けられるの好きじゃないから…」

 

「え…」

 

むっくんはウチ等の腕を掴んだ…別に掴んだ事自体は驚く事やなかった。

けど、むっくんとウチ等の間には撮影の都合上、少しだけ距離があり、大股でも2、3歩は絶対に歩かないとアカン…なのに、むっくんは一瞬にして間合いを詰めてウチ等の腕を掴んだ。

 

「む~!」

 

「そんな頬を膨らましてもダメだよ、高坂さん…取り敢えずは、挨拶に行くよ。

身嗜みは…基本的なことだから、わざわざ俺がああだこうだ言わなくても良いよね…答えは聞いてない」

 

そんな事を特に気にしない穂乃果ちゃん達。

一瞬にして間合いを詰めた事は凄いことやけど、別に特別に気にする必要も無いことやと歩き出すむっくんについていく…けど、それでも今の間合いを詰めるのは…流石は奇跡の世代…なんやろうか?

 

「紫原くん、言われた通りに来ましたが…」

 

「ああ、はいはい。言いたいことは大体わかるよ。

取り敢えず、今からこのマンションのオーナーに挨拶しに行くから…詳しい説明はその後ね」

 

海未ちゃんが呼び出した理由を聞くけど、詳しくは教えてくれないむっくん。

鍵を取り出すとオートロックの鍵穴に挿し込み、オートロックを解除して中へと入る…って、中から開けて貰うんやのうて、自分で開けた!?

 

「あ、先に言っとくけども見たことのある人が居ても知らんぷりしてね。

此処、分譲賃貸の高級マンションで普段から住んでるか住んでないんだか分かんない人達が多いけども、有名人だったり専属契約してる凄腕の人とか居るらしいから」

 

念入りにと忠告を受け、中庭を抜けてエレベーターを待つ

 

「あ、どうも」

 

「ええ」

 

エレベーターが降りてくると中からウチよりも胸が大きくとても綺麗な大学生っぽい女性が出てきて、むっくんは一礼をした。

 

「…あっくん、今の誰?」

 

「…う~ん…知り合いと言えば、知り合い?

友人かと言われれば、そこまでの関係じゃないけどもまぁ、なにかとある人…の筈」

 

エレベーター内に入り、最上階のボタンを押した後にことりちゃんは先程の女性について問い質す…けどまぁ、むっくんに限ってそれはない。

去年、ウチやエリチが原因でTOLOVEるな展開になっても無表情で、また蹴ろうとしたエリチを蹴り返そうとする人やからそれだけはない…けど、なんか微妙な感じ。

 

「ことり、何を想像しているんですか?

紫原くんに限って、そう言うのはありえませんよ…第一、あの人は既婚者でしたよ?」

 

「え…あ…」

 

「もう、ことりちゃんったら……そうだよね、うん」

 

気まずい空気は特に無く、あっという間に一番上の階に

 

「ちょっと、何処に行くの?」

 

着いたので、エレベーターを出て歩き出すんやけども最後に出たむっくんはエレベーター前から動こうとしない。

 

「此処が最上階じゃないんですか?」

 

「まだ上あるよ…ほら」

 

1階から来た時は二つしか無かったエレベーター、だけどこの階には三つのエレベーターがあった。

またなんか変なのがと思っていると、カードを取り出して、この階にある三つ目エレベーターの右隣の上に行くボタンの下にある挿し込み口にカードを挿し込むと三つ目のエレベーターが動きだした。

 

「なんか防犯対策がどうのこうので、直接最上階に行けない仕様なの」

 

上に行くボタンを押すとあっさりと来たので、もう一度のるともう一度最上階を押して、最上階に辿り着いた。

 

「ねぇ、紫原…なんでここのオーナーと知り合いなの?」

 

「西木野さん、此処のオーナーの事を知っているの?」

 

「いえ、知らないけど…だけど、こんなところのオーナーなんてとんでもない人じゃ」

 

「まぁ、とんでもないっちゃとんでもないけどまぁ…友達の関係だよ」

 

真姫ちゃんが聞いたけども、誰かと正確に答えてくれないむっくん。

オーナーの部屋に辿り着いた様で、チャイムを鳴らすのかと思い気やいきなりドアを開けて中に入ろうとするんやけども、直ぐに戻った。

 

「むっくん?」

 

「…靴、無いから多分地下だわ」

 

「地下!?地下もあるん!?」

 

「うん」

 

来た道を戻り、エレベーターで八階に戻り、そこから下に向かうエレベーターに戻ると地下行きのボタンは確かにあった。

 

「どうせ通るんだから、先に言っておくね。

西木野さんと東條さんを呼んだのは別の用件で、それについては後で説明をする。

俺は、高坂さん達のお手伝い…一応はスポンサーと言う事になって色々と提供する…要は場所と人だね」

 

チーンと昔ながらのベルの音が鳴り、地下につきエレベーターのドアが開くとそこはスポーツジムを思わせるかの様なトレーニング器具が沢山あり、プールまであった。

 

「凄い…私達、こんな所でトレーニング出来るんだ」

 

「あ、違う違う。

此処は基本的に一階から八階の人達が使う所で、穂乃果ちゃん達はVIPルームだよ」

 

見るからに凄い施設に感動する穂乃果ちゃんだけど、むっくんは止まらない。

穂乃果ちゃんの全力には全力で返すだけだと言ったのを比喩でもなんでもなく、本当の事だと証明するかのように奥のドアを開けた。

 

「家に帰ってただいまと言うまでが遠足なんて言うよねぇ。

それだったら、身体を休めて超回復するまでがトレーニングだよ…」

 

VIPルームと呼ばれるところを開けて入ると、そこは一般用のトレーニングルームよりも広いけど、トレーニングの機材なんかは殆ど同じだった。

 

「此処のVIPルームがあれば雨の日とかの基礎練に使えるよ…」

 

「此処まで全力でサポートをしていただけるなんて…」

 

「…まだまだ序の口だよ…こっちか?」

 

VIPルームに感動する海未ちゃんだけど、特に気にせずにむっくんは入口とは違う扉を開いた。

 

「おー、誰かと思ったらお前達か」

 

「あ、虹村さん!おはようございます!」

 

「おー、おはよう。高坂、元気あるな」

 

奥の部屋には一目で物凄く高いと分かるような機器が沢山置いてあり、その中の一つ、煙を出している筒の様な機械の中からむっくんの先輩の虹村さんが顔を出していた。

真姫ちゃんは虹村さんが居るのが分かるとビクッと怯えてむっくんの後ろに隠れる。

 

「えっと…なにしてるん?」

 

「アイシング?…だな、うん。

液体窒素を気化させ、満たした機械に入って患部及び全身を冷却。

血管を収縮拡張させ、血流を促進して新陳代謝とかを一気に上げて全身の疲れや、抗炎症とか鎮痛作用とかを飛躍的にアップするだけでなく美容にも良く」

 

「虹村さん、長い」

 

「…昨日、試合に出てくれって言うから出たんだ。

試合はトリプルスコア…三倍差で勝ったのは良いんだけど、相手が勝てないからって、ラフプレーとかに走り出して…相手側の監督、潰せとか普通に言ってて…跳んだ際の着地時に足踏まれた…分かってた事だけど、体育会系は屑多いわ、やっぱ」

 

サラッととんでもない事を語る虹村さん。

それって、かなりの問題やんね?謝罪会見とか記者会見とか開かないといけないぐらいの

 

「あ、今のはSNSで呟くなよ。

証拠揃えて一気に叩き上げるつもりだから…」

 

「特待生枠じゃなくて、一般入試で入って良かったね虹村さん」

 

「全くだ…あ、彼奴は奥で寝てるぞ」

 

「あーそうなの」

 

かなり重めの話題をしているのに、あっさりと話題を切り替えるむっくんと虹村さん。

マンションのオーナーの位置が分かると、オーナーが居る奥の方へと歩き出す。

 

「あの人も、此処に住んでるのね…」

 

「まぁ、此処に住んでたらジム契約とかしなくて良いし都心になにかと近くて交通網に便利だからね」

 

虹村さんが居ると分かってからずっとむっくんの服の裾を掴みながら後ろを歩く真姫ちゃん。

むっくんが特に気にしてへんから言わへんけども…ズルい…

 

「あ、多分アレだ…」

 

「アレは…酸素カプセル、ですか?」

 

「そうだよ」

 

どういう風に使うかが分からない機械が周りにあるなか、唯一分かる機械が奥にあった。

海未ちゃんがそれが酸素カプセルかどうかを聞くと頷いた…酸素カプセル、高濃度の酸素を満たしたカプセルで、カプセル内で少しだけ眠れば、何時も以上に疲れを取る事が出来る医療器具…の筈。

 

「園田さん達も、体に違和感を感じたり疲れが溜まっている時は入った方が…」

 

皆に酸素カプセルの説明をしているその時だった。

ウィーンと機械音が鳴りだし、奥にあった酸素カプセルがスライドされて開いた。

 

「え…」

 

「……」

 

オーナーと思える…そう、確かむっくんが引っ越しの際にいた…赤い人。

名前を教えて貰ったけど、なんやったか忘れてもうた…とにかく、赤い人がグラサンを掛けたまま出てきた。

 

「I'll be back.」

 

そしてまた酸素カプセルに戻っていった…え?

 

「赤ちん、苦手なのにギャグなんてするから…笑ってんの高坂さんだけだよ」

 

「っ…っ…」




化学

Q 知育菓子に使われている化学式を一つ答えよ。


絢瀬絵里の答え


知育菓子って何かしら?


XXのコメント

え、なに?お前、食ったこと無いの?自分で作るあれだよ?

紫原睦の答え

C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ Na₃(C₃H₅O(COO)₃+3H₂O+3CO₂(CaCO₃+H₂O→Ca(OH)₂+CO₂
答えが正しいのか証明したいので、実験させてください。

XXのコメント

ねるね○ねるねを学校に持ってきて、授業中に食べるんじゃねえ。
お前の図体だとどう頑張っても早弁出来ねえよ。

高坂穂乃果の答え

ホットケーキミックス・・・一袋(150g)
卵・・・一個(50g)
牛乳・・・140ml
お好みで、バター、チョコ、生クリーム、カスタード、アイス、蜂蜜を。


XXからのコメント

それ、ホットケーキミックスのパッケージの裏側についているレシピだろうが。


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時に従い、時にボコられ、時に逆らう…ア○コと勝○の関係性

「…やっべ、アレルギー反応聞いてなかった」

 

あっくんの呼び出しを受け、やって来た最高級マンション。

マンションのオーナーさんに挨拶をしようとしたけど、部屋には居なかった。

地下のトレーニングジムのVIPルームに居て、あっくんが私達の事を紹介するからともう一度、オーナーの部屋に戻り、私達はソファーに座って向かい合う…んだけど、冷蔵庫を開けたまま困った顔をしているあっくん。

 

「…牛乳とか小麦粉のアレルギー、持ってないよね?

あるんだったら、ちょっと今からひとっ走りしてくるけど…」

 

「大丈夫だよ、あっくん」

 

冷蔵庫近くにあるコンロでお湯を沸かしているのを見ると、お茶菓子を出すつもりなんだね。

他の二人については知らないけど、海未ちゃんと穂乃果ちゃん、それと私は牛乳も小麦粉も大丈夫だと伝えると、真姫ちゃん達も大丈夫だとあっくんに伝えた。

 

「あぁ、なら良いんだけど…赤ちん、先にやっといて」

 

「形式上はお前がスポンサーだが…まぁ、良いか

はじめましての方ははじめまして、こんにちわの方はこんにちわだ…僕がこのマンションのオーナーの赤司征十朗だ」

 

「高坂穂乃果です!よろしくお願いしまぁす!」

 

「園田海未です、よ、よろしくお願いしましゅ…」

 

「南ことりです、よろしくお願いします」

 

「そんなに身を引き締めなくても構わない、軽くで良いよ」

 

なんと言うか…凄い。

言葉で表現するのはとっても難しい、だけど、なんか凄いと言う感じが凄く伝わる赤司さん。

歳上だけどマイペースなむっくんとは違い、絶対に逆らっちゃいけないって感じが伝わっちゃう。穂乃果ちゃん達もなんとか普通に挨拶をしているけど、身が固まっている。

 

「いや、赤ちん相手に気持ちを軽くは無理っしょ。

刃向かう奴ならまだしも、フレンドリーに接する奴は早々にいないよ」

 

「そうか…僕的にはフレンドリーに接しようと頑張っているんだがな…あぁ、コーヒーと紅茶、好きなのを言ってくれ。コーヒーはマンデリン、紅茶はアールグレイだからお好みで」

 

そんな赤司さんを何時も通りの風貌で接しながらコーヒー豆を挽いているあっくん。

香ばしい匂いがする。その隣にあるお菓子が手作りとだと思う物で、ことりの大好きなチーズケーキ。あれはカマンベールチーズケーキで、トマトのグラサージュしていて上の部分は真っ赤だった。

 

「紫原と僕は友達で同じ学校のクラスメートで、バスケ部でも互いにスタメンのチームメイトで…」

 

あっくんとの関係を語ってくれる赤司さん。

風貌や覇気で威圧されちゃったけど、背丈もあっくんと比較すると大きくもない。

赤司さんもフレンドリーにって言っていたし、見た目で損をしている人と同じ…

 

「時にア○コと勝○の関係だ」

 

じゃないよね!うん。

アッ○と○俣の様な関係だと分かると、少しだけ大丈夫だと思って緩くなった心がみっちりと締め付けられ、気が引き締まる。

 

「因みにだけど、勝俣ポジは後、数人いる…虹村さんは違うよ」

 

「あの人は出川じゃないかな…っと、話がズレたね。

僕が酸素カプセルに居たから、色々と過程を飛ばしたから聞いたと思うが君達には地下のトレーニングルーム等を貸そう。

彼処には様々なトレーニングマシーンもあり、別の部屋には柔軟やヨガが出来る簡単なダンストレーニングルームもある」

 

「それについてはありがとうございます…あの、穂乃果達、お金はそんなに」

 

「ああ、大丈夫だよ…無償で引き受けるよ。

紫原から大体の事情は聞いている、僕自身がカメラに写るとややこしいが顔を隠したり裏方をしたりするのは手伝うよ…音ノ木坂が廃校にならない為に、頑張るんだ」

 

あっくんの事もあるから、お金の話題になるかもと思ったけどそうならず背中を押してくれる赤司さん。

地下のトレーニングジムは本当に凄かった。

衣装、ダンス、曲は揃えることが出来たけど、トレーニングをする場所は用意できなかった。

神田明神もいいけど、あそこは時期によって人が沢山いるし、何時かは邪魔になるから本当に良かった…けど、なんでだろう?赤司さんからの応援がなんでか分からないけど、おかしかった。違和感を感じた…なんでだろう?

 

「難しい話の前に、一旦頭をリフレッシュしなよ」

 

その違和感に疑問を感じたけど、きっと気のせいだと思う。

切り分けたケーキと空のコーヒーカップを私達が座るソファーの前のテーブルに置いていく。

 

「まぁ、口に合えば良いんだけど…」

 

「これあっくんの手作りなんだ…」

 

見るからに美味しそうなトマトのグラサージュのカマンベールチーズケーキ。

あっくんの手作りだと分かると更に嬉しくなる。あっくんの手作りつまり、私達の為に用意してくれた。しかも大好きなチーズケーキ…大事に食べないと

 

「紅茶とコーヒー、どっちだ?砂糖とミルクは?」

 

「あ、こう…ピヨォ!?」

 

「ぴよ?」

 

なにか話す前に食べてくれと出されたチーズケーキを頂こうとフォークを手にした途端、紅茶とコーヒー、どっちかと聞かれた。

紅茶が欲しいから、紅茶と答えたけれどもことりは…ううん、私達は気付く。

 

「「「「「だ、誰!?」」」」」

 

全く知らない人が何時の間にか私達の背後にいたのを。

私達は直ぐに座っていたソファーから立ってあっくんの背後に隠れた。

 

「あ、貴方はいったい誰なんですか!!」

 

「…はぁ…喧しい」

 

海未ちゃんが大声で叫ぶと目と表情が死んだその人は大きなため息を吐いた。

質問に答えようとはせず、カップにコーヒーと紅茶を三つずつ入れて、その内のコーヒーを飲んだ。

 

「紫原…これ、フルーツトマトじゃないな、酸味がキツいぞ」

 

「流石に買う時間は無いよ…一応、近所の八百屋で一番のトマトだよ?」

 

私達五人が誰も座っていない赤司さんの隣に座ると、ケーキを食べる目が死んだ人。

あっくんに味のダメ出しをしながらも、ゆっくりと食べる…

 

「え~と、君は」

 

「君じゃない、貴方はだ。

オレは紫原や赤司よりも歳上だ…他の奴等は基本的にタメ口はTPOを弁えていたらOKかもしれないが、オレには常に敬語でいろ」

 

副会長が会話をしようとするが、遮られる。

 

「黛さん、何時からいたの?」

 

「お前が赤司に会うために入ってきた時だ…ちゃんと靴はあった筈だ」

 

「え、マジで…南さん、ちょっとごめんね」

 

裾を掴んでいる私の手を引き剥がすあっくん。

凄く言いたいんだけど、なんで今日はことりちんって呼んでくれないのかな?

そう言った大事な場なのは分かっているけど、赤司さんの事を赤ちんって呼んでるんだから、別に私の事を何時も通りに呼んでも良いんじゃないのかな?

 

「はぁ…誰か一人ぐらい気付いていると思ったが、そう易々と気付くものじゃないか。

まぁ、簡単に見抜かれたらそれはそれで困る…消えて影となるのがオレの仕事だが、この先が危ういな…」

 

「いや~黛さん、靴も地味とか呪いでも掛かってんの?」

 

「赤司の靴がブランド物で目立つからだ」

 

玄関から戻ってきたあっくん。

ケーキとカップを一つずつ追加した後に私達に座ってくれと赤司さんが座るように促するので座った。

 

「黛千裕だ、近くの電子専門学校に通っている」

 

「電子専門、学校…ってことは」

 

「作詞作曲ならまだしも、アカウント等の管理や動画編集、企画提案、撮影、その辺までするとなると手が足らなくなるのは目に見えている…何よりも、正攻法が無いからな…」

 

パソコンで動画編集は出来ないわけじゃない。

けど、専門的な知識があるかと言えば無いし、何よりもそれを誰かがすれば誰かの練習の時間が減っちゃうからとっても助かる。けど、なんで意味深な発言をしているのかな…中2?

 

「取り敢えず、一先ずの自己紹介は終えたね。

じゃあ次を…本題に入ろう…君達三人にはこれをね」

 

大きなA4サイズを、穂乃果ちゃん、私、海未ちゃんに渡す赤司さん。

渡して開けるなと言ってこいないから中身を確認して欲しいと感じ、私達は中身を確認するとそこにはかなりの枚数の書類が入っていた。

 

「紫原はあくまでもスポンサー、僕達はあくまでもスポンサーのコネで君達と顔合わせをしている。

スポンサーは出資者だ、プロデューサーじゃない…だから、君達に色々と与えるだけであり、選択を強要するつもりは基本的にないんだ」

 

「どういう意味ですか?」

 

「あくまでも、何がしたいかと言う意思なんかは君達が示さなければならない。

こう言った事をしたいと言う意思を示さない限りは僕達自身からは基本的に…いや、この場合は僕自身は動かない、か?とにかく、僕達は受動的な存在なんだ…真剣に考えてくれ」

 

「今なら此処でオレ達となにも無かった事に踏み留まる事が出来る。

これから設備一式を見て、その後にこの契約をちゃんとすると言う自分で決断、その後に保護者からのサインを貰え…動画投稿サイトに専用アカ作って動画上げるんだから、金関係も絡んでくる…オレ達を…この紫原(バカ)を信頼しているのは良いが、最後まで見てから選択出来る権利はちゃんと存在している…」

 

穏やか雰囲気は一変し、真剣な顔になる赤司さんと無表情な黛さん。

ことり達がスクールアイドルをすると言う覚悟はとっくに出来ている…けど、それは勘違いなのかもしれない。この人達は、私達がマネージャーを頼んだ時、断ったあっくんと同じ様に、ことり達じゃ考えもつかない事を分かっている…だから、入念に聞いてくるんだよね…

 

「黛さん、赤ちん、どうせそう言うのは後から来るよ。

それよりも一先ずは施設の案内をした方が良いよ……全員がこれで良いと納得出来る物だから」

 

「そうだね…じゃあ、行こうか」

 

腰を上げ、外へと出ていく赤司さん。

ついていかないといけないとゆっくりと味わいたかった、あっくんのケーキを一口で食べる。

緊張の糸が途切れなくて、美味しいかなんて分からないよ。

 

「まぁ、大体こんな所だね」

 

マンションの施設を一通り見て回った私達…凄かった。

カラオケルームにプール、ビームピストルの射撃場、ビリヤードに卓球台、料理が出来る調理場、他にも色々な所を紹介してくれて、これを思う存分使うことが出来る…

 

「大丈夫かな、此処まで用意してくれて…なにも出来なかったら」

 

これだけの設備をどうすれば良いのか分からない。

あっくん達はあくまでもことり達に様々な選択が出来る権利を与えてくれた。

それを放棄するのも今ならまだ間に合うからか、私は弱気になる。きっと見えない所で、あっくんもかなりのお金を使っている、失敗したらどうしよう…ことりが身体で払わないといけないよね。うん、大丈夫だよね。

 

「大丈夫だよ!!

ことりちゃん、今から諦めるなんてダメだよ…ファイトだよ!!」

 

「…うん!!」

 

弱気になった私の背中を、穂乃果ちゃんは後押ししてくれた。

頑張らないといけないよね。

 

「三人は一度帰って保護者の人達と書類を見て、サインを貰って来て。

スクールアイドルなんて住んでる地域をバラしているも当然だからね、その辺の事とか書類に色々と入っているから、俺の顔を出せとか言ってくるなら早急に、出来る限り早くサインを終貰ってから持ってきて…あぁ、西木野さんと東條さんは残ってね…西木野さん、曲の事に関して色々とあります…東條さんも色々とあるから…あ、後これを御家族に渡してね」

 

「ねぇ、むっくん」

 

「なに、高坂さん?」

 

「…名字じゃなくて、名前で呼んでよ!何時もみたいに穂乃果ちんで良いから!」

 

「嫌だよ」

 

私達はあっくんと契約をすることを決めたけど、やっぱり保護者のサインが必要だよね。

最後にトマトのグラサージュのカマンベールチーズケーキとは違う手作りのケーキを貰い、ことり達は帰って保護者のサインを貰うべく、今日あった出来事なんかを説明した。

 

「その、私も、スクールアイドルに入れてくれません、か?」

 

「ウチも、仲間に入れてくれへん?」

 

そして次の日、副会長達がμ"sに入りたいと申し出た。



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自分が気持ち良くなければ、自分が好きでなければやっていられない

「さてと…君は僕と別の部屋だ」

 

穂乃果ちん達を見送り終え、再び赤ちんの部屋に戻ってきた。

この後何をするのか察した赤ちんはノゾちんに隣の部屋に来る様に言う。

 

「え、でも」

 

「今から起きることは、余り見るべきものじゃない。

僕もさせるのは好きだが、するのを見ていると心が痛む」

 

「嘘こけ」

 

「む、むっくん…」

 

赤ちんと一対一は精神的に無理だとSOSの視線を送るノゾちん。

 

「…流石に見られるのは嫌だよ…見て良いものじゃないし…まぁ、東條さんもその内、見ると思うけど」

 

「そう言う事だ…どうしても、と言うのならば僕はなにも言うまい。

だがしかし、分かっているんだろうね?ソレを見ると言う事は君にとって」

 

「行きます、喜んで行かせて頂きます!」

 

「そうか…聞き分けの良い狸は大好きだよ、僕は」

 

「…狸!?」

 

脅しと本音をポロっと漏らしながらも、ノゾちんを連れていく赤ちん。

…ノゾちんの事は赤ちんに任せたから、俺は真姫ちんをどうにかしないといけない。

穂乃果ちん達のスクールアイドルのグループ名のμ"sとは、ざっくり言えば九人ぐらいの音楽の女神であり…系列的に言えば、あのギリシャである。

人類多いから減らそうぜ!のギリシャである。

男性器の泡から出来た女神がいるギリシャである。

妹の彼氏に嫉妬して、妹にその彼氏を殺させるギリシャである。

怪物退治をした後に王女を神様に売ったギリシャである。

自身より美しいからって、髪の毛を蛇にする女神がいるギリシャである。

とにもかくにも、半端ない屑が多いギリシャである…まぁ、神様だから綺麗であるべきと言う考えは俺達人間の勝手な考えと地獄で教わったけど、それでも屑が多いギリシャの女神である。

歌プリとかで素晴らしいとか言っているが、良い側面しか見てないの本当にダメだよね、うん。

 

「さてと…西木野さん」

 

「待った、いえ、待って…黛、さんは?」

 

「あ、お構い無く」

 

これから大事な場だと言うのに空気を壊す真姫ちん。

寝転びながらノートパソコン(私物)で色々としている黛さんが気になっているけども、この人の事は基本的に気にしなくて良い。

 

「この人は黒子みたいなもので、影だから気にしなくて良いよ」

 

「上手いこと言っているつもりだが、オレ達しかわかんねえから上手く無いぞ…」

 

狙って言ったつもりじゃねえし、なに言ってくれてんだよ黛さん。

真姫ちんは頭に?を浮かべるけど、その?の疑問を解消することは出来ない。

 

「…そう言えば、西木野さんは赤ちんを見て、驚いてたよね?なんで?」

 

今すぐに本題に入りたいけど変な事を言ってしまったし、真姫ちんの緊張の糸をどうにかしないといけない。

穂乃果ちんのファイトだよと言う言葉は、園田さんとことりちんにしか効いていない。

酸素カプセルから赤ちんが出てきた時に穂乃果ちんは笑い、園田さんは怯え、ことりちんとノゾちんはポカーンとしていた…そして、真姫ちんは意外そうな顔をしていた。

ケーキを切り分けている時もチラリと見てたし、なんかあるんだろう…俺の引っ越し先がノゾちんのお隣の様に、赤ちんも何らかの形で真姫ちんと関わっている。

 

「ひいひいおじ…曾曾祖父辺りの代で枝分かれした、親戚…だった筈よ。

枝分かれした親戚で一番出世してて、政治家とか大手の会社の重役とか省庁の偉い人とかばっか出してる家だって聞いてて、昔、親戚の集まりで何回か会ったぐらいで…」

 

「…それ以上は言わなくて良いよ」

 

親戚の集いで会った後の事を言い辛いみたいで、瞼が4分の3閉じており視線が俯いている。

会話の内容的に真姫ちんが知っている赤ちんは、中学よりも前の赤ちんだと分かったので聞かない。と言うか、聞くのめんどいし語るのもめんどい。

空気が重くなったけど、大事な話をするにはちょうど良い雰囲気を作ることが出来た。

 

「西木野さん、この度は作曲及び提供をして頂き有難うございます」

 

何時もは死んだ目をしているけど、今日は真面目モードだ。

鈍い鈴村さんボイスを捨て、真面目な鈴村さんボイスを取り…土下座をした。

 

「ちょ、ちょっとなにしてんの!?イミワカンナイ!!」

 

「慌てるのは構わない、怯えるのは構わない…」

 

頭を下げているので、顔は見えないが慌てているのは声だけで分かる。

人に、しかも格下に土下座なんて本当はしたくない…けど、穂乃果ちん達は全力でやっているんだ。それなら、俺も全力じゃないといけない…下げるべき所で頭を下げる。

きっとここなんじゃないかなと俺は思う。

 

「だが、逃げるな」

 

黛さんが此方に居てくれて、良かった。

慌てる真姫ちんを落ち着かせる言葉を放ち、落ち着かせた。

 

「…頭を上げなさいよ。

別に、お礼なんて言われることをしてないわよ…私を呼んだのって、この為だけなの?」

 

「いえ、違います。

西木野さん、提供をして頂いた曲を使ってもいいですか?

作詞は園田さんらしいですが、作曲は貴女です…少なくとも、俺はやれることは手当たり次第にやってみる方向で行きたいと思っているんです」

 

「…どういう意味?」

 

「バスケや野球は、ちゃんと試合をする場所や機会が与えられます。

与えられた場所や機会で勝ちさえすれば、問題ありませんがスクールアイドルは違います。

どうすれば一番になれるのか、勝ち続ければ良いと言う答えはない…百戦錬磨の尽魂常勝無敗なんて事が言えませんので、手当たり次第にやってみようと、先ずは園田さん達が最初の曲を個人で歌っている、音声だけの動画を出そうかなと考えており、その過程で作曲者である西木野さんの名前は絶対に使わなければなりません…その辺はなにかとややこしいんです。

西木野さんは御存知かも知れませんが、高坂さん達は音ノ木坂の知名度を上げるべくスクールアイドルをしております。その為には出来る限りの事をしたいんです…」

 

「あ、頭を…頭を上げなさいよ、別にそれぐらい構わないわ…」

 

…あぁ、やっぱりそうだよね。

分かっていた事だが、その辺の認識が甘い…まぁ、そう言う話じゃないからだと思う…はぁ、めんどい。

 

「ところで、西木野さんはスクールアイドルをしないの?」

 

「なんで急にそんな話題になるわけ!?」

 

「いやだって、作曲したって事は…興味あるよね?」

 

「…作曲したのは高坂先輩が何度も言うから、仕方なくよ…別にスクールアイドルなんて」

 

「ま~た、つまんない嘘をつくんだね」

 

色々と別の書類もあるので、渡さなかった真姫ちんの封筒。

俺はそれを取り出したが、真姫ちんにはまだ渡さない。此処で真姫ちんを口説いとかないと、クソみたいな人間ドラマが始まる。俺、ああいうドラマは大嫌いだ。

頑張れば報われるなんて思わせるようで嫌いだ。なんか割とどうでも良いアクシデントでコケたりするのも嫌いだよ……御都合主義は2Dで充分だ。現実は時には残酷で糞な事だらけだって、教えないといけない。夢は何時かは覚めて無くなるからこそ、夢なんだ。

此処はもう、黛さん達が知っているラブライブなんてものはないんだ。

 

「嫌だからとか、仕方なくなんて言っている割には西木野さんなんだかんだとついて来てるよね?御断りしますと言ってきても、別に良いんだよ?無理なら無理で、別のプランとか一応はあるんだし、色々とやれるんだから」

 

「…」

 

「…俺はさ、小学生の頃からずっとバスケしてる。

…色々と見てて思うよ、皆、方向性は違えども好きとか気持ち良いからやってるんだって。

作曲なんてくっそかったるいこと、 自分が気持ちよくなけりゃやる意味はない…好きか気持ち良いかなんて、俺には分かんないよ、だけどこんな事をするって事は」

 

「貴方に…貴方になにが」

 

「知るか、ボケぇ!!!」

 

「…え?」

 

よくある自分の気持ちの何が分かるとかそう言う事を言ってこようとしたので、先手は打つ。

 

「だから、知らないよ西木野さんの事なんて。

ぶっちゃけ、東條さんと高坂さんぐらいしか家知らないレベルだからね?

いや、もっと言えばあの神田明神でそこそこに出会うぐらいの関係性なんだから知るわけないじゃん…バカじゃないの?

西木野さん、自分の何が分かるとか言うつもりでしょ?家庭の事とか、辛い過去とかあるのかもしれないけど…そんなもん、知らないよ、俺は。

俺はやりたいかやりたくないかの事を聞いてるだけで、その辺はどうだって良いんだよ…家庭の事か辛い過去があるとか、むしろ関係あるの?

ぶっちゃけ聞いたところで、やりたいのかやりたくないのか聞くだけのループが続くだけだからね…やりたいのか、やりたくないのか考えなよ、正直に。

どんなに辛くても、苦しくても、死ぬまで人は永遠と前に進んでいく…いや、これじゃないな…覆水盆に返らず…いや、これも違うな」

 

主人公みたいにカッコいい台詞を言おうと考えるが、良い感じの台詞が浮かばない。

黛さんがコレを言えと、ノーパソの液晶にカンペを写すがそれを言いたいとは思わない。

辛い過去とかあるのかもしれないし、厳しい家庭なのかもしれないけども個人の意思は尊重しないとダメだ。

しかしまぁ、実際の所、辛い過去とかあってもそれがとしか言いようがない…辛い過去と言う事は、今があるんだ。辛いで終わっていない、死ねば終わりなんだけども真姫ちんは五体満足で何でも出来る…いや、なんでもは無理っぽいな。

 

「紫原は、あくまでも選択肢を増やしただけだ。

それを選択しなければならないと言う義務も無ければ義理も無い…だが、選択肢と道が増えたと言う現実を見る義務はある。彼女達に曲を与えた君はその義務を果たさなければならない。

その義務を果たす為のアドバイスはたった一つ、固定概念を捨てるんだ」

 

「…おかえり、赤ちん…それに、ノゾちん」

 

カッコいい事をサラッと言いながら別の部屋から戻ってきた赤ちんとノゾちん。

東條さんと呼ぶべきだが、そうは言えない…物凄く冷や汗をかいており、汗びっしょりだ。

 

「赤司、さん…」

 

「僕はあくまでもスポンサーの御手伝いさんだ。

君をあれこれ世話をする義理はない、僕達は糸を垂らしただけだ。

それを登ろうと言う意思を示すか示さないかは、君次第…なに、少なくとも彼女達なら君を受け入れるだろう、その辺の最終的な決定権は紫原には無いからね…さて、そろそろ御開きだね」

 

俺達がやれることはやった…と思う。

何が正しいかなんてのは結果だけが教えてくれる…その結果が何時来るかは分からない。

 

「あ~疲れた…髪、傷んでなければいいけど…」

 

「…」

 

ノゾちんにも封筒を渡し、帰路につき、真姫ちんと分かれ道で分かれた。

帰り道を歩いているその間、真姫ちんは特に一言も発しない…真剣に悩んでおり、書類が入った封筒を見ていた…周りを見ていなかったから、事故らなければいいけど。

 

「…ノゾちんさ、赤ちんにズガタカオヤコロでも言われたの?」

 

「…それっぽい事は言われたよ…あの人、出会った時からそうやけども滅茶苦茶怖いよ…」

 

怖いわじゃなくて、怖いよと言う辺り本気で怯えているノゾちん。

真姫ちんは虹村さんに怯え、ノゾちんは赤ちんに怯えている…今後、大丈夫だろうか?

 

「彼女達のグループに入るか、入らないか今すぐに決めろ。

僕達は勝つ道を歩ませている。それに逆らい勝手な事をするのは許さない…逆らうのならば、例え君が女神だろうと殺すって…」

 

褒めてるんだか貶しているんだが、分からない赤ちん。

だがまぁ、赤ちんらしいと言えば赤ちんらしい……

 

「穂乃果ちん達は、μ"s。

μ"sは、ギリシャの音楽の女神達の事…まぁ、女神かどうかは別として合ってるよ。

そんなかにノゾちんや真姫ちんが入ったところで違和感なんてもんは無いし」

 

「も、もうどうしたん急に…褒めてもなんもでえへんよ?」

 

とか言いつつも、俺との距離を詰めるノゾちん。

さっきまでの暗い顔が一転し、明るくなっているのが分かる…赤ちんと対峙したし、今日ぐらいは別に良いか。

 

「ノゾちん達が女神なら…赤ちんは、天帝だよ」

 

「え?」

 

褒めるだけなんて事は俺はしない。

ノゾちん達はギリシャの音楽の女神だとすれば、赤ちんは天帝だ。

 

「【天帝】赤司征十朗

奇跡の世代の一人であり、奇跡の世代を束ねし百戦錬磨の覇王…いや、天帝だよ」

 

「嘘…赤司さんも、奇跡の世代…」

 

俺が奇跡の世代だと知っているのか、有り得ないと言う顔をするノゾちん。

大抵のスポーツはデカくて重くてパワーがあれば良い、それでどうにでもなりバスケなんてデカけりゃどうにでもなるスポーツ。

奇跡の世代の名前も異名も知らないのなら、物凄い大きな選手をイメージしていたのかもしれないけど、そうじゃない。

 

「まぁ、あんま逆らわない方がいいよ。赤ちん、怒るとマジ怖いから」

 

その後、無言は続きマンションに戻り食事でもどう?と一応誘った。

けど、ノゾちんは真剣に考えたいからと断り翌日、穂乃果ちん達に仲間に入れてと言ってきた。



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兄弟が居るとこの家庭訪問でのダブルブッキング

「Sag es nochmal」

 

「…?」

 

「Say that once more please」

 

「え、えっと、どぅゆー?」

 

「高坂せんぱ…穂乃果、意味が違うわよ。紫原、ま…両親が家に一度、来いって」

 

「…ッチ」

 

真姫ちんとノゾちんが入った。

余程のブスでない限りは、文句は言わないのでその辺は気にしない。

精々、先輩後輩は面倒だからTPOが大事な場以外は基本的にタメ口にしといてと言う事を言っておいた。皆が皆、馴れるのに時間が掛かりそうだけど行けそうだ…ったんだけども、面倒な事になった。

 

「今、明らかに聞こえるレベルで舌打ちしましたよね?」

 

なので、嫌そうな反応をすると目を細めてジト目で俺を見てくる園田さん。

 

「だって、面倒だもん」

 

御両親への挨拶とか、くっそかったるい。

絶対に面倒な事になる、そんな未来が見える。俺のサイドエフェクトがそう言ってるよ。

そりゃあ確かに挨拶は大事だが…絶対、ちゃんとした原作だとそんな事してない。保護者なんて、最終回とかどうでも良い回でしか登場しない、年齢の割には若作りの上手いおばさん集団なんでしょ(偏見)

 

「あっくん…あっくんが思ってる事じゃないよ。

むしろ此処まで真剣に応援してくれてるから、会いたいって」

 

マシュマロを頬張り、黛さんを代打で送ってやろうかと考えていると顔に出ていたのかフォローに走ってくれることりちん。

俺がロクでもないことを想像しているのが分かると、他の三人も直ぐにフォローに回る。

 

「実を言うと、私の所もそうなんです。

スクールアイドルをすると言う事は応援してくれているんですが、詳しい事を知らないですし…ちゃんと応援してくれている人を知りたいと」

 

「私のところも、そんな感じよ」

 

「穂乃果のとこもそんな事を言ってたよ!」

 

穂乃果ちんとこの、おばさんは何度か顔を会わせた事はあるでしょうに。

俺の事を詳しく知りたいと言っているところを聞く限りは、書類上の不備は無いっぽい。

要するに俺の顔が拝みたいんだね…

 

「ノゾちんとこは、無いんだよね?」

 

「うん…てか、テレビ電話で顔合わしたやん」

 

面を貸せとは言ってこないノゾちん。

環境的に言えないっちゃ言えないが、そう言えばそんな事が有ったと思い出す。

そしてコレから起きる出来事に大きな溜め息を吐きながら、あずきバーの袋を開く。

 

「はぁ、他になんか言ってた?(ほふぁにふぁんかふぃっふぇふぁ)

 

「…来てくれるんですね」

 

「正直、保護者に責任取れるのか的な事を言われるの嫌だけど行くよ…」

 

あずきバーを噛み砕き、俺の嫌な意思を示すけども来てくれると分かるとホッとする四人。

 

「あ、そう言えばお母さんがスーツなんて肩苦しいから何時も通りで良いって言ってたよ」

 

最後にまた面倒な事を言って練習を始める穂乃果ちん。

果たしてこれが社交辞令なのか、本気で行っているのかが分からない。

だけど、もうヘアゴムで髪を結ぶのはめんどい。スーツ着るの嫌だ。

それ以上は練習の妨げになるのでこの話題は一度止め、帰宅後Line経由で何時ぐらいに御伺いすれば良いかとなり、GWは動画の撮り溜めとかしておかないといけないので、その前の祝日に挨拶に行かないといけない。

 

「ふぁ~」

 

なので、祝日返上だ。

俺の大嫌いな祝日返上をしないといけない。

授業じゃなくて、下手したら殴られる可能性のある親御さんへの挨拶とか言うめんどい事をしないと…

 

「穂乃果ちん→園田さん→真姫ちん→ことりちん…真姫ちんとことりちん、普通は逆じゃないのかな…」

 

出向く順番に疑問を持ちながらも、唯一知っている穂乃果ちんの家へ向かう。

穂乃果ちんが終われば、園田さんの住所を手に入れる事が出来るとか言う面倒なシステム…出来たら、園田さんスタートの方が気持ち的に楽。

あれだよ、絶対に育ちが違う。他の二人と違って、ちゃんと教育する良い感じの家だよ。

 

「あ!」

 

「ん…」

 

何時も通りの道を通っていると、雪ちんを見掛ける。

雪穂ちんも俺の事に気付き、嬉しそうに笑顔で近付いてくる。

 

「お久し振りです、ここ最近、(うち)に来てなかったですよね?」

 

「まぁ、なにかと忙しいからね。

俺、今年三年だから進路とかIH(インターハイ)とか色々とあるからね…その内、ぶっ倒れ…無いんだよな、これが」

 

部活動にスポンサーの二足わらじだが、なんて事はない。

休む時に休める環境じゃないが、そこは要領よく詰め込めば良いだけの話。

実際に赤ちんは生徒会長やマンションのオーナー、俺達の統率とか色々とやっているけども、ピンピンとしている。ありゃ、かなり年季入った人間にしか出来ない要領のよさだ。

 

「すみません…大体の事情はお姉ちゃんから聞いてます。

またお姉ちゃんがなんか思い付きでって思ったんですけど、この前、書類の束を持ち帰って、家族で見たんですけど…彼処まで必死にやってくれて…」

 

「お礼はいらないから」

 

「でも」

 

姉の事を思ってくれている、そう感じてるんだけども別になんとも思っていない。

俺に利益があるからやっている、ただそれだけだ。そうじゃなきゃ、こんな危険な橋は渡れない。俺と言う存在はバレた時点で終わりなんだから…なんかバレそうで怖いな、釘差しとこ。

 

「先に言っておくね。

穂乃果ちんがスクールアイドルとして徐々に徐々に知名度が上がれば、君に何らかの事が起きる。そうなれば俺が全力でサポートをする…んだけども、俺の存在は絶対に言っちゃいけないよ…俺は他所様の学校の生徒、俺が通っている学校の生徒がスクールアイドルをしたいなんて言い出したら、俺が手伝ってるとなると大問題…それ以前に野郎はいらないよ」

 

本当に今更ながら、野郎はいらない。

Pのポジションを得られるアイマスならまだしも、ラブライブにいらないと思う。

 

「まぁ、俺なんかが写るよりも雪ちんが写った方が何万倍も絵になるよ」

 

「そんな、絵になるだなんて…紫原さんもカッコいいんですから、自信を持った方が」

 

「雪ちんのカッコいいは、なんだろうね。俺のカッコいいと同じかな?」

 

「…」

 

敢えて距離を置く一言を混ぜつつも、穂むらを目指すのだが今の時間帯で大丈夫なのかと考える。

もうすぐ、GWで本日は、GW前の祝日の休日…混んでたらどうしよう。

 

「今日は裏口からお願いします…ちょっと、待ってて…」

 

「…重い…」

 

穂むらに辿り着くとまさかの臨時休業だった。

誠に申し訳ありませんがと貼り紙が貼られており、予約分は用意しており発送していますとか書かれている。

もっとこう、フランクな感じだと思ったのに…けどまぁ、ラフな格好で来てくれって言ったから何時も通り変な服を着て来たんだ。

スーツじゃないの的な事になっても知るか。ハッキリとスーツで来いと言え。

 

「オカアサーン」

 

裏口に連れられたが、雪ちんが先に中に入った。

完全に入口のドアが閉まっておらず、中から慌てた声が聞こえて騒音がするが直ぐに収まり穂乃果ちんが顔を出す。

 

「今日は何時もの格好なんだね」

 

「ラフな格好で良いからね…スーツ肩苦しいの。

ただでさえデブが着る用のやつで色々とゆるゆるな部分があって…ヘアゴムあれば、髪結ぶのは可能だよ」

 

「あ、じゃあ」

 

「でも、しないよ。毛根痛むし、なんか変な感じがするから」

 

自分が今つけているヘアゴムを渡そうと頭に手をかけるが、先に断る。

ヘアゴムで髪結ぶのって、そこそこ気持ちを上げたりルーティーンしたりしてからじゃないと違和感だらけで嫌なんだよね。

 

「取り敢えず、上がって!」

 

穂乃果ちんに招かれ、裏口から上がる。

和菓子の裏口に入るのは新鮮だが、胸がドキドキで緊張するなんて事はない…俺、緊張するなんて事、無いんだよな…ダルいとか面倒とか思うことはあるんだけど。

今、ウキウキ気分の穂乃果ちんとは真逆のクソダルい気分の俺はゆっくりと足を進め

 

「あ、いて」

 

部屋と部屋の間にある、ドアの天井部分に頭をぶつける。

何時も思うんだけど小さすぎるよ。もうちょい、デカい人の身にもなって作ってほしいよ。

 

「大丈夫?」

 

「稀にあることだから、馴れてるよ…」

 

案内された部屋には雪ちんに、おばさん、おじさんがいた。

家族総出だと分かるともっとダルくなった。ぶっちゃけ、雪ちん…あ~居るな、うん。

 

「そう固くならなくて良いわ」

 

穂乃果ちんのお母さんもといおばさんが身を固くしていない俺に固くしなくて良いと言う。

それではと御言葉に甘えさせて正座はせずに、胡座で座り

 

「あ、これ詰まらないものですけど」

 

一応の粗品を渡す。

おじさんは無言で受け取るのだが、ただただそれをジッと見つめている。

礼の一言とは言わないけど、なんか言えよ。おっさん、今時仕事で語る奴なんて流行んないからな。メディア受けって、大事なんだぞ。腕そこそこでもメディア受けが良ければ一流になれるんだぞ。

 

「…最高級の肉のセットだけど、おじさん、歳だから肉とか制限してるの?」

 

肉さえ出しとけば笑顔は生まれると思って用意したが寄る年波には勝てないのか。

最高級の肉のセットだと分かると、嬉しそうな顔をするおばさんだが穂乃果ちんと雪ちんは何処か残念そうな顔をしていた。

 

「…肉、ダメだっけ?」

 

まだ個人の細かいデータを取っていないので、二人が肉嫌いとか知らない。

それとも昨日、焼肉だったとかそう言うオチなんだろうか。

 

「違うのよ、またケーキと思ってて…この前、貴方から貰ったケーキ、二人から大絶賛で…この子達、アンコは飽きてて…此処数年、甘いもので美味しいなんて聞いてなくて」

 

しょうもない理由でよかった。

おじさんの小さなプライドが関係していただけで、決して肉がダメとかじゃなかった。

て言うか、数年間聞いてないんだ。ちゃんとした設備があるんだから家族用にと洋菓子を作ろうとする努力をしてないんだね。

 

「ふ~ん、で本日はどの様な御用件で?

此方が用意した、書類に不手際が御座いましたか?それとも、気になる点がありましたか?」

 

和菓子の件を特になにかこれと言って言わずに書類の話題を出す。

真剣に考え、応援してくれているから顔を見たいと言っていてそれは本当だとしても、サインを頂いた書類はちゃんと返して貰ってない。ノゾちんを除いた四人分の保護者のサインを頂いた書類を貰わないとなにも始まらない。

 

「あ、はい。これね」

 

あっさりと書類の入った封筒を渡してくれるおばさん。

本当に顔を合わせたかっただけみたいで、一応よかったと思う。なんか余計な事を聞かれたりするのは本当に面倒だ。

 

「変に着飾って来ないのを見て、安心したわ。貴方になら穂乃果を任せても大丈夫そうね」

 

「任せると言っても、基本的に俺は選択肢を増やすだけだよ。

選択肢が増えたと言う認識をする義務はあるけど、増えた選択肢を選択する義務は無い。

ところで、おばさん話が変わるんだけども雪ちんと契約とかのお話をさせてくんない?」

 

「え!?」

 

自身に話題を振られるとは思っておらず驚く雪ちん。

すると、穂乃果ちんは立ち上がった。

 

「なんで、穂乃果じゃなくて雪穂なの?」

 

首を傾げながら詰め寄る穂乃果ちん。

驚いている素振りは無さそうに見えるけども、内心バックバクなのが丸見えだ。

 

「なんかぁ、動画撮影の都合上、司会進行役が必要なの。

俺はデカすぎと言うか写った時点でNG、黛さんはカメラ向けられるの嫌いだから嫌だ。

ちょうど良い年頃で事情を大体知ってるのは雪ちんぐらいだから…」

 

よっこいしょと立ち上がり、携帯を取り出して電卓のアプリを起動して雪ちんに近付く。

 

「歩合制で、動画一本に対してこの値段ね。

で、遠出した際の食事代も1500円まで経費で落ちて服関係の動画の時に諭吉まで経費持ち。交通費も往復で600円まで経費落ち…」

 

「え、動画一本でこんなに貰えるんですか…あ、でも」

 

「大丈夫、大丈夫。

穂乃果ちんを熱々の熱湯に叩き落とす事はあっても、雪ちんが叩き落とされる事はないから。

むしろ、雪ちんは押すなよで押す側の人間になるから…」

 

具体的な額を雪ちんにしか見せず、こそこそと話す。

 

「ちょっと待って、今聞き捨てならない事が聞こえたんだけど!

雪穂の食事代が経費とか交通費支給とか、一本ごとにお給料なんてズルい!!」

 

「雪ちんは雇用しているバイトで、穂乃果ちんは…慈善事業でしょ?」

 

と言うか、熱湯に叩き落とす事は文句は無いんだ。

穂乃果ちんは恨めしそうに雪ちんを睨むのだが、止めなさいとおばさんに怒られる。

 

「穂乃果ちん、そう怒らず…今度、低カロリーのチョコケーキ作るから」

 

「チョコケーキ!!」

 

物で釣るのは良くないことだけど、穂乃果ちんは笑顔になった。

おじさんがムッとした顔になるけど知らない。

 

「はい、コレが海未ちゃんの住所だよ」

 

「それじゃあ、また」

 

園田さんの住所を穂乃果ちんから教えてもらい、俺は穂むらを出た。



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ご当地限定を通販で販売したらそれはもうそれはご当地限定ではない

園田さんの家に向かうのだが、書かれている住所を検索すると家元の家だった。

やっぱりかぁ、育ちが二人と比べたら良いわけだよと思いつつも、ご当地限定のうまい棒を加えながら歩く。

 

「シナモンアップルパイ味、ハズレだな。

今回、一番美味しかったのは牛たん風味のうまい棒が」

 

「紫原くん」

 

「海未さんどうも。

ちょっと待って、今うまい棒のレビューしてるところだから」

 

家でスタンバっているのかと思いきや、通り道で待ち構えていた園田さん。

 

「食べ歩きと同時にながらスマホはいけませ…う、海未さん!?」

 

「園田さんだと、名字一緒だからややこしいじゃん。

後、此処だからよかったけどもこの後はちゃんと紫原さんでお願いね…常々言ってるけども普段はタメ口で構わないけど、TPOを弁えるところでは弁えてよ」

 

「分かりました…紫原さん」

 

ONOFFの切り替えが早くて、よろしい。

余り美味しくなかったシナモンアップルパイ味のうまい棒の残りを一口で食べ終えると、園田さんが此方ですと案内を受けるので、俺はコーヒー牛乳のキャップを開く。

 

「此処最近、私達の練習中にも色々と食べていますが、太りますよ?」

 

「太りますよじゃなくて、太らないといけないの。

春の身体検査で体重計に乗ったら101キロから95キロまで落ちちゃってさ…も~100キロ越えてスピードとか維持するの大変なんだよ」

 

「は?」

 

園田さん達の前では極力食べていなかったのか、はたまたスポンサーなんて面倒な役割を引き受けたのが原因なのか痩せてしまった。

虹村さん曰く「お前の図体で100キロ無いのはヤバイ」との事なのだが、太る為に間食をしていることを知ると人を殺しそうな勢いで俺を睨む。

 

「太りにくい体質だから、面倒なんだよ」

 

「っ…っ…」

 

握り拳を作りながらも、必死に堪えている園田さん。

大きな和風の御屋敷に到着し、園田さんが先に中に入り二分ほど待つとどうぞお入りくださいとひきつった笑顔で招いてくれた。

 

「はじめまして」

 

そして、園田さんのお母さんとお父さんがスタンバってた。園田さんは少し端でちょこんと座っていた。

お父さんは年相応だけど、お母さんは穂乃果ちんのとこと同じで、歳の割には若い若作りが上手い人だった。

 

「はじめまして、紫原睦です。

あ、詰まんない物ですけど此方どうぞ」

 

先ずはと高級肉の詰め合わせのセットを渡す。

すると、園田さんのお父さんがそれをジッと見つめている。

穂乃果ちんみたいなことは…無いよね?おじさん、家元の人っぽいし。

じゃあ、やっぱりアレか?歳だから、食べ物系だったら胃袋が受け付けないか?

流石に、初対面の人間に食べ物なんて馬鹿かなんてことは言わないだろう。

 

「…中身は?」

 

「え、堂々と聞くの?」

 

園田さんのお父さんが堂々と中身を聞いてきた。

堂々と聞いたことに驚く俺と園田さん。園田さんのお母さんは驚かない。

と言うよりは、お肉の詰め合わせをジッと見つめている。

 

「肉の詰め合わせのセットだけど…やっぱ、歳だからに○にく卵黄とかタオルとかの方がよかった?」

 

向こうがそう言う態度を取るなら、行儀よくする必要なんて無い。

肩の力を抜いて、何時もみたいにダルそうな目になって胡座をかき、暖かい茶を飲む。

あ、これ良いところのお茶だ。

 

「…どうして、学生の君がそんなものを買える?

高坂さんの所を含め、最低でも四つは買っているんじゃないのか?」

 

黙っていたおっさんが口を開いた。

おばさんの方もそれが聞きたかったと言う顔をしている。

 

「何故スクールアイドルをするのかも、聞いている。

正直、それで正しいのかは分からないがやってみなければ分からず、本人が充実しているから特に問題は無い…高坂さんや他のところは純粋に君に会いたいみたいだが、私達は違う…」

 

「疑ってるの?ああ、そう、ありがとう」

 

堂々と言おうか悩んでいるみたいだけど、堂々と言っても構わない。

茶菓子が無いので、俺はプリッツを取り出して一本ずつ食べていく。

 

「皆、アッサリしすぎだからね。

おじさん達みたいに疑ってくれる人が居ると、気が楽だし…あ、因みに資金の出所はSASUKEとかの賞金、報償金だよ」

 

誰一人、疑わないから少しだけ困っていた。

聞いてこないのは良いことだけど、疑わないのは良くないことだよ…これで完璧って認めたら、もう次が無くなるんだから。それ以上がない停滞ほど恐ろしいものはないよねぇ。

 

「え、SASUKE?」

 

「いや、本当に…気付けば勝手に応募されてて、ビビったわアレ。

書類審査通らないと思ったら、通って面接で 君、No.3閉じれるのって本当?”って聞かれて、一発で閉じたら合格で…制覇した翌日、筋肉痛で死ぬかと思った」

 

楽しかったけど、もう二度とやりたくないよ。

資金の出所が余りにも意外すぎて目がキョトンとしているおじさんとおばさん。

疑っているみたいなので、証拠の動画でも見せようかとタブレットを取り出すのだが、峰ちんが写っているのを思い出して、やめる。峰ちんを出したらなんか言われる。

 

「他に聞きたいことは…無いっぽいね…海未さん、次の住所」

 

こういう肩苦しいのは本当にめんどいよ。

バカらしいし、愛想笑いなんてダルいし疲れるだけ

 

「あ、はい…SASUKE、完全制覇していたんですね…」

 

「反りたつ壁は楽だったよ」

 

真姫ちんの家への住所を貰いつつ、見送ってくれる園田さん。

SASUKEの感想を述べると、俺がデカいから楽だったと笑う…家での雰囲気とは大きく異なっており、これが素である。

 

「園田さん、そろそろいいよ」

 

玄関を出て、そこそこの距離を歩いた。

これ以上はもう良いと言うのだが、残念そうな顔をする。

 

「…あの、紫原くん!

これから先、園田さんだとややこしいです…海未と、呼んで」

 

「海未って露骨な反応するから嫌だ」

 

名字から名前で呼んでくれと、決意をしたけど嫌だ。

海未さんと言った際に変な反応をしたのは、ウザいよ…俺、そう言うのは興味ないし、求めていない。園田さんとのラブコメなんて興味ない。

 

「っ…どうしても、ダメですか?」

 

「アームレスリングで俺に勝ったら考えてあげる…因みに、俺はアームレスリングと槍投げも高校生王者だよ」

 

「紫原くん」

 

「なに?」

 

「バスケ部に所属しているんですよね?」

 

「…なに今更な事を言ってるの?」

 

ちょくちょく基礎練の際に暇だからバスケットボールを弄くっているのを何度も見ている。

ことりちんの次に、顔を会わせる機会が多いってのになにを言っているんだろう。

 

「俺、ちゃんとアームレスリングと槍投げ高校生王者って言ったのに…話、聞いてないのか」

 

園田さんと別れ、真姫ちんの家を目指す。

位置的に言えば、ミドちんの家に近く赤ちんのマンションと同様に富裕層が住む地域だ。

園田さんとこみたいに、金の出所を聞いてくる可能性もあるし意識を引き締めないといけない。富士山麓限定のうまい棒を取りだし、食べながら歩く。

もうすぐ、合宿で練習もハードになったり気温が上がったりしてるせいか、食える時に食っとかないとやってらんないよ。

 

「睦さんじゃないですかぁ」

 

「さっちんじゃん、久し振り~」

 

うまい棒を口に咥え、味を楽しみながら歩いているとミドちんの妹のさっちんに出会う。

さっちんはミドちんと同様にバスケをしている…が、帝光中学生じゃない。普通の中学に行っており、女子中学生じゃ全国区の実力を持っている…けどまぁ、そこまでだ。

 

「こんな、休日に私服なんて…なにかあったの?」

 

「逆じゃないんですかぁ、やだぁ!!

うちの中学も文部科学省とかに部活動は休みやれって言われて、家でゴロゴロしてたらお使いを頼まれたんです…プレミアムうまい棒無いんですね?」

 

「は、あんなのうまい棒じゃねえし。

うまい棒は10円だからこそ価値があるんだよ、一本売りじゃない袋売りの200円なんて、需要ね、ちょ、さっちん、限定品のお菓子を持ってかないで」

 

「あ、これ意外においしい」

 

ハッピ○ターンのたこ焼き味を掻っ払うさっちん。

沢山あるやつだから良いんだけど、色々と食うのはやめてほしい。

とちおとめ味のハイチュウとかもう、それなりの値段がするんだからさ。

 

「そう言えば、お兄ちゃんに用なんですか?」

 

「ミドちんじゃないよ…まぁ、なにしてるか知りたいなら、赤ちんに聞いてね」

 

「っ…は、はい」

 

さっちんは赤ちんが苦手だ。

存在感とか圧迫感が苦手であり、上の人間過ぎると感じている…ミドちんも大体似た感じじゃんと昔、言ったことあるけどその時は「お兄ちゃんは…そんなんじゃ、無いから…変人だけど」と言うブラコンを発揮していた。

ハッピーターンを食べ終えると満足したのか、お使いに行ったさっちん。

 

「ねぇ、今のって…誰なの?」

 

それと同時に真姫ちんが現れた。

さっちんについて聞いてくるので、さっきの出来事を見ていたらしい。

 

「真姫ちん、何時からいたの?」

 

「何時からだって良いじゃない、それよりもさっきの子…誰なの?

仲良く話してたみたいだし、お菓子を普通に渡してたし…貴方、この辺の住民じゃないわよね?」

 

「俺、この辺じゃないよ。

さっちんの事はどうだって良いじゃん、ただ友達の妹なんだから。

それよりも、真姫ちんわざわざ待っててくれたの?もしかして、御両親、めっちゃスタンバってる?」

 

さっちんの事を適当に説明すると、納得がいったのかそれ以上は聞かない真姫ちん。

両親の事を言うと、そちらの方に意識が向いていった。

 

「大丈夫よ、ママしか居ないから…そこまで、怖くはないわ」

 

「どちらにせよ、怖いんだけどなぁ…あ、後、真姫ちんのママさんの前では敬語お願いね。

普段はタメ口で良いけども、こういうTPOを弁えないといけない場だとね…それじゃあいこうか」

 

「ええ………っ!!」

 

真姫ちんと共に家を目指し、歩くのを再開する俺達。

しかし、真姫ちんが直ぐに何かに気付いて顔を真っ赤になり、振り向いた。

 

「…忘れなさい…」

 

「?」

 

「だから…今、言ったこと忘れなさいって言ってるのよ!!」

 

「…え、ごめん。ちょっとなに言ってるか、分かんない。そして届かない」

 

よくある顔を真っ赤にしながら、両手で肩を掴んでぐらんぐらんと揺らすアレ。

それを真姫ちんはしようとするけども、50センチ以上の身長差があるので全くと言って届かず、必死になって肩に手を伸ばす姿は笑える。

届かないと判断した真姫ちんは胸をポカポカと殴ってくる。

 

「だから、その…ママって、呼んだことよ」

 

顔を真っ赤にし、プイッと振り向く涙目の真姫ちん。

 

 

やだ、尊い…

 

 

そしてママと呼んだ事を恥ずかしがっていたのか、気づかなかった。

そんな姿は尊いが、それはそれ、これはこれだと真姫ちんの頭に手を置いた。

 

「真姫ちん…今、言ったことは忘れるよ」

 

「…ありが」

 

「でも、暴力を振るった事に関しては忘れないよ」

 

「え、っちょ、ちょっと」

 

後頭部を掴み、頭を動かせない様に固定する。

理不尽な理由で殴られたら例え女子であろうと俺はやり返す、それがツンデレだろうがヤンデレだろうがだ。

後頭部を抑えていないもう片方の手の中指を曲げ、親指で固定する…デコピンの構えを取る。

 

「何時もならアイアンクローとジェット機だけど、初犯だからデコピンね」

 

非情になり、俺は真姫ちんにデコピンを叩き込んだ。




他のラブライブの二次小説みたいな感じじゃなくて大丈夫だろうか、そんな疑問で胸ドキドキ。


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ギャグと言っとけば、ある程度は補正かかる

真姫ちんに渾身のデコピンを叩きこんだ。

その事については俺は反省もしない、悪いのは真姫ちんだ。

 

「え…と」

 

真姫ちんに連れてきて貰い、やってきた西木野家。ミドちんとこと同じぐらいの大きさ。

やはり年相応の見た目ではない、二十代前半で伝わりそうな容姿だった真姫ちんのママさん。

 

「だ、大丈夫よ…ちょっと」

 

「でも、煙をあげてるわよ?」

 

「ギャグ漫画的描写よ」

 

額を赤く晴らしながら、フシューよ白い煙をたてている真姫ちん。

ママさんは心配をしているが、ギャグ漫画的描写な為に大した怪我ではない。

 

「あ、これ良いとこのクッキーだ」

 

「あら、分かるかしら?」

 

薔薇のローズティーの茶菓子のクッキーを頂くと、良いとこのクッキーだった。

やはり見た目通り金のある家か…でも、ミドちんとこだと高確率でミドちんの変な飲み物なんだよなぁ。稀に糞不味いのがあるから、恐ろしい。

 

「それで、ママさん…書類に不備ありました?」

 

良いとこのクッキーの味を楽しみながらも、ママさんに呼び出した理由を聞く。

すると書類が入っていた封筒を取りだして渡してくれた。

 

「…記入漏れは無し、っと」

 

記入漏れがあったら困るので確認をした。

漏れは無かったからこれで最後に行けると立ち上がりたいけど、ママさんが此方を見てくる。

俺がなにかを言えば面倒なのは嫌でも分かるので、特になにも言わない。

 

「……」

 

「………」

 

「……」

 

「………」

 

無言の硬直状態が続き、お前なんか言えよ的な空気の流れになるが気にせずローズティーを飲もうとするが、ローズティーが切れている事に気付く。

 

「真姫ちん、ローズティーとって」

 

ローズティーを入れているポットは真姫ちんの近くにある。

手を伸ばせば届く距離だけど、面倒だから真姫ちんに取って貰うのだが

 

「あら、あだ名だなんて仲が良いわね」

 

「俺、殆どの人には名前の後にちんってつけてるよ?」

 

おばさんが茶々を入れてくる。

が、しかし俺は真姫ちんとは仲が良いかと聞かれればそんなに仲が良くない。

友達と聞かれても、否定する関係だ。転生者にとって友達ってのは物凄く重い物だから。

 

「でもあだ名呼びだなんて、そんなのはじめてよ」

 

「…単純に真姫ちんに友達が居ないんじゃないの?」

 

「ぶっ…ぐほっ…ぐほっ…な、なにを言っているのよ!」

 

俺との関係性を深めようとぐいぐいと来るママさんだが、真姫ちんに火の粉どころか火炎放射が飛んでくる。

気管支にローズティーを詰まらせたのか咳き込む真姫ちんだが事実じゃん。

ノゾちんは絵里ちんと一緒に居るのを見ていたし、園田さん達なんて言うまでもない。

 

「…あ…」

 

「待って、貴方、今、失礼な事を考えていない?」

 

「大丈夫だよ…もっふんにょでは宮島が爆発しないから」

 

「そう、ならいい…え、ちょっと待って、なにを考えていたの?ねぇ、もっふんにょで宮島が爆発ってどういうことなの?イミワカンナイ」

 

真姫ちんがボッチだと言えば、拳が飛んできそうなので適当な事を言う。

因みに黛さんもボッチだが、転生者以外の人付き合いするぐらいならば痔になった方がましだとボッチ道を貫こうとしている。

 

「あらあら、仲が良いわね」

 

「…別に、そんなんじゃないよ…それで、書類は真姫ちん経由でいけるのになんで呼び出したの?」

 

「貴方にお礼を言いたかったのよ。

前触れもなく急にスクールアイドルをしたいって言い出して…気付けば、色々と書類を用意していて…こんなの、はじめてで色々と聞いたら自分の気持ちに正直になったって」

 

心の底から礼を言っているおばさん。

プライドが高いのかコミュ症なのか、それとも家柄なのか分からない。

だけど、自分を押し殺して生きている部分が真姫ちんにはあったっぽいのは確かみたいでスクールアイドルをやりたいと言う一言には驚きと喜びがあったみたい。

 

「礼は言葉より成果にしてよ。

俺はあくまでも選択肢を増やしただけで、真姫ちんはその選択肢が増えたと言う事実を認識する義務が発生しただけ…だから、俺自身は8割ぐらいは関係無い…礼を言うのは、高坂さんだよ」

 

ぶっちゃけ作曲家の時点で問題なかったんだから。

あくまでもやりたいならばやれば良い、そんな感じであり…心配的な感情は無い。

それに一番、真姫ちんを動かす要因となったのは俺じゃなくて穂乃果ちんだ。

その後もママさんはグイグイと来るけれども、全くと言ってそんなに仲良くなく話題は膨らまない。

俺をつまんない男だと思っているかもしれないが、そういうもんだよ。

 

「ねぇ、睦」

 

「なに、真姫ちん?」

 

長話をしてしまったが、時間にはまだ余裕がある。

玄関の直ぐ外で見送ってくれる真姫ちんはなんか悲しそうな顔をしている。

 

「その…私と居て、楽しい?」

 

「…いや、まだそういうレベルじゃないでしょ?」

 

知り合って一ヶ月もたっていないのに、この子はなにを言ってるんだろう。

 

「…それもそうよね」

 

真姫ちんもそういうレベルじゃない短すぎる付き合いだと理解するとウンウンと頷く。

理解してくれて

 

「まだ、私達そういう関係でも無いわよね…焦りすぎたわ」

 

よかった。

真姫ちんはチラリと俺を見てくる…仕方ないな。

 

「はい」

 

「…ありがとう」

 

完熟トマトキャンディを取りだし、真姫ちんに渡す。

こういう物でのコミュニケーションは後腐れなくて楽だ…切れるときスパッと切れる。

完熟トマトキャンディを舐める真姫ちんは嬉しそうな顔をするが、ことりちんの住所を渡さないといけない事を思いだし、携帯を取り出す…んだけど

 

「…え?」

 

「どうかしたの?」

 

「…今日、無理みたいよ」

 

「…え?」

 

携帯の画面を見て固まる理由を聞くと俺も固まる。

真姫ちんは見なさいと携帯の画面を見せてくれた。

 

【ごめん!!急な仕事が入ったせいで、会えないの。

書類を渡さないといけないけど、御仕事が大変だからあっくん、明日直接音ノ木坂に来てくれないかな?お母さん、理事長なんだ】

 

「…うわぁ…」

 

かなりダルそうな事が書かれていた。

ノゾちんの合格発表を見に行くのが最初で最後だと思った音ノ木坂に行かなければならない。

 

「むしろ、連れてこいって返信しといて」

 

「いや、どちらにせよ音ノ木坂にはその内行かないとダメじゃない」

 

「え~明日かぁ…はぁ、ダルい」

 

音ノ木坂に行って理事長への挨拶は何時かはしないといけない。

それは分かっていたけれども、今すぐとは思っていなかった…穂乃果ちん達、まだスクールアイドル部ですらないんだから。

 

「真姫ちん…理事長室的な所から校門までで人に会う可能性ってある?」

 

「あるわよ。いくら生徒数が少なくても、誰かと鉢合わせしないなんて事は無いわ」

 

「…」

 

何時かは行かないといけないのは分かっていたけども、今はまずい。

音ノ木坂の生徒に顔を覚えられたり、SNSで呟かれたらその時点で終わりだ。

ことりちん、その辺の事を考えていないよね。

 

「家に一度帰って着替えるとなれば、そこそこの時間がかかる…て言うか、音ノ木坂って原付止めれるっけ?」

 

「制服姿のままで良いじゃない。

生徒の数が少ないし、部活動が盛んじゃないからそこまで……目立つわね」

 

最後まで頑張って下さい、西木野さん。

目立たないと言おうとしたけども否定してしまったのを見て、こりゃヤバイと携帯を出す。

音ノ木坂に行かなければならないとなれば、他の三人の時と同じ様にはいかない。

 

「入校許可証は直ぐに貰えると思うけれど、生徒会長が」

 

「ああ、大丈夫だよ…取り敢えず、ことりちんに返信しといて…バレないように会って、バレないように去っていくって」

 

合宿前にかなりハードな運動するとか、くっっそダルいけれどもやらないといけない。

いや、本当にダルい。

 



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百年に1人とか千年に1人と言うが、その業界が出来てまだ千年もたってない件について

GW前の休日も開け、もうGWの休みを此方に回してくれない?と言いたくなる月末。

挨拶回り及び書類の回収をすべくそれぞれの自宅に回ったけれども、ことりちんだけダメだった。次の日と言う事になり、その次の日が今日なんだけどもめんどい。

ことりちんとこのおばさんは音ノ木坂の理事長を勤めていてそれなりに多忙らしく、音ノ木坂に君が来てくれとめんどい事を言い出した。

 

「お腹、減った」

 

しかしそんな事よりも、お腹が減った。

合宿前なので胃袋を大きくしていたせいか、めっさ腹減っている。

 

「紫原っちは元から大食いなんだから、わざわざ胃袋デカくしなくても良いじゃないスか」

 

「こいつ、東京中のデカ盛り店を制覇するつもりらしいぞ…秋葉原の飯屋は七キロのご飯出てくるの知ってるのか?」

 

「俺、今は麺類の気分だよ…帰りに食ってかない?なんか替え玉が出来る塩ラーメンの店があるみたい」

 

「塩ラーメンすか…おぉ、鳥チャーシューであっさりしてそうっスね」

 

音ノ木坂に向かいながら談笑する俺、黛さん…そして黄瀬ちん。

取り敢えず本日の間食は塩ラーメンと言う事になった…替え玉をして記録更新すれば無料になる店でのラーメンは楽しみだよ。

 

「にしても、ラブライブの原作始まってるなら誘って欲しいっスよ。俺、モデルっスよ?姉ちゃん、美容師でメイクとかも」

 

「イケメソ過ぎるモデル(バイト)だろ」

 

原作が始まった事や今日まで全く誘わなかった事に不貞腐れる黄瀬ちん。

原作に関わるのはめんどいけど、俺が面白い事をしてるとわかったら手のひらを返すかの様に楽しもうとしている。

 

「ちょ、事実っすけどい運動も出来るイケメン一位っスよ!」

 

「黄瀬ちん…イケメソでしょ?」

 

イケメンなんて許されない言葉を言ったので、俺は矯正させる。

イケメソとイケメンは全く異なるんだから、サラッと使っちゃダメなんだよ。

黄瀬ちんを弄くりつつ、歩いていると段々と見えてくる音ノ木坂学院。近くに何人か音ノ木坂の学生が居るので、見つからない様に隠れる。

 

「さて…居るな」

 

校門から出てくる生徒を携帯のカメラのズーム機能を使う黛さん。

校門前にはまだかまだかと俺を待っていることりちん…と穂乃果ちんと園田さんと真姫ちんがいた。ノゾちんは多分、生徒会の仕事だと思う。

…入校許可的なのを取っておいてとことりちんにだけ言った筈なのに、迷惑な事をして…

 

「…うわ、これ俺の働く量尋常じゃないじゃん」

 

「こういう時こそ圧倒的なフィジカルの見せ所でしょうに…あの、ゆるふわっぽいサイドテールの子以外か…」

 

「頼んだぞ、黄瀬。

成功させるには全て、お前のイケメソ力が鍵を握っている…失敗したら主にお前が大恥をかくから」

 

「え、っちょ、紫原っち達の顔バレとかじゃないんすか!!」

 

そこは最悪、なんとかなると思うよ。

隠れるのをやめて、堂々と音ノ木坂に向かって歩く黄瀬ちん。

スマホを取り出して少し操作した後、穂乃果ちん達に近付き

 

「はーい、そこの可愛くて綺麗な皆さん。どうっスか、俺と遊びません?」

 

ナンパした。

 

「やべえな、演技と思えねえぐらいに似合ってる」

 

ほくそ笑みながら黄瀬ちんを眺め、嘲笑う黛さんは俺の背後に回った。

なので、俺は屈み黛さんをおんぶする…相変わらず、軽いなこの人は。

 

「あ、あの私達は待っている人がいるので」

 

チャラい人は嫌だと丁寧に断ろうとする園田さん。

しかし、黄瀬ちんは攻めの手を緩めずに携帯を見せる。

 

「そっか、待ち合わせしてるんすね。

じゃあ、IDだけでも交換しようよ、なんかこう君達を見てるとティンっと来たって言うか」

 

「やめ…テクダサイ、オトコワリシマス」

 

「あ、一瞬にして固くなった」

 

携帯の画面を見せると真姫ちんは少しだけ固くなって、言葉が片言っぽくなった。

画面には俺が黄瀬ちんにキン肉バスターを仕掛けている写真が出されており、これで俺と黄瀬ちんは知り合いだと言う事がわ直ぐに分かる。

 

「JKが恋愛の一つもない青春なんて寂しいっスよ。

俺、こう見えてもモデルをしているんスよ。黄瀬諒太って言って、SASUKEにも出たことがあるんだよ…いや~でも、こうしてみると本当に綺麗っスね。ちょっと並び方を変えてみないすか?」

 

「おい、アイツ下手なパリピよりも質悪いぞ…っと、今しかないな」

 

黄瀬ちんの雑か糞かは分からないけれども、上手くことりちんを端に追いやる事に成功した。

此処しかないと思った黛さんは合図を出したので黛さんを背負ったまま俺は走り出す。背負っている黛さんを気にすることなく全力で走りながら

 

「きゃ…って、あっくん!?」

 

端に居ることりちんをお姫様だっこで抱えて、かっさらう。

突然の出来事に驚くことりちんだが、まだ終わらない。ことりちん達とは関係の無い音ノ木坂の生徒はグラウンドにそこそこいる…が

 

「黄瀬が自慢してた物がこんな所で役立つとはな」

 

俺にしがみついている黛さんが黄瀬ちんが出ている人気ファッション雑誌と本当になんで配ったんだかわかんない、一時期ホモ疑惑すら出た黄瀬ちんの写真集を断片的にバラまき…俺達から意識をそらす…つまるところ、ミスディレクションを発動した。

 

「あ、あっくん下ろし」

 

「喋ってると舌噛むから黙ってろ」

 

突如の出来事に理解は出来ないが、お姫様だっこには気付いており暴れようとすることりちん。

悪いけど、此処からが本番だと俺はお姫様だっこをやめて脇に抱え込み

 

「ことりちん、理事長室って彼処だよね?」

 

「そ、そうだけどあっくん!」

 

「答えは聞いてないから!!」

 

校門を通ることなく、校舎の外をマリオの如くアクロバティックな動きで跳び上がっていく。

校舎の中に入れば絶対に誰かと遭遇するならば校舎に入らなければ良いだけだ。

 

「どうやらミスディレクションは効いたようだ」

 

背中から聞こえる黛さんの声を聞いて一安心。

俺と黛さんの存在はグラウンドにいた生徒達の頭の中から消え去ってくれたので作戦は成功し

 

「どうも~っす」

 

俺と黛さんは窓から理事長室に入り込む事に成功した。

 

「…え…え…え!?」

 

「うぅ…あっくん、酷いよぉ」

 

「酷いのはそっちでしょうに。

ことりちんだけで良いのに、穂乃果ちん達が芋づる式で来てるんだから…俺、目立っちゃダメだって何度言ったら分かるの?」

 

窓から入ってきた事に驚く理事長を無視し、ことりちんに少しだけ怒る。

今回はこの手が通用したけども、次はもう無い。ミスディレクションは何度も使えば効力が無くなってしまう。手品師は同じ手品を同じ人に同じ場所でしちゃいけない的な暗黙のルールがあったはず。

 

「取り敢えず作戦成功の電話(1キル)を黄瀬ちんにしてっと。

おばさん、はじめまして。ことりちんから色々と聞いてると思います、スポンサーの睦です」

 

「おば…はじめまして。

知っていると思うけれど、私はことりの母でこの音ノ木坂の理事長をつとめ、!?」

 

最初の挨拶だと頭を軽く下げ、自己紹介をする。

おばさん扱いをしたことに苛立ったのか少しだけ間が開いたが大人の冷静さを見せてくれた様で直ぐに自己紹介をしてくれるのだが、理事長室のドアがノックをされて少しだけ焦るのだがそう言った展開を予想しない程馬鹿じゃない。

俺は直ぐ様、理事長の机の上に乗って跳び天井の隙間を掴みヤモリの様に四つん這いになった。

 

「失礼します…何故、貴女が此処に?」

 

「あ、えっと…ちょっと色々と学校外の書類とかを」

 

「そう…」

 

天井に張り付く方に力を入れているので顔は見えないけど、声で分かる。

絵里ちんだ。スクールアイドルを反対している癖に代案らしい代案を出そうとしない絵里ちんだ。

 

「此方が今度のオープンキャンパスの段取り…理事長?」

 

「え、ええ…後で見させて貰うわ」

 

「…?…失礼しました。

南さん、スクールアイドル部は無いのだから、早く下校した方が良いわよ」

 

「あ、はい…」

 

絵里ちんは南親子のおかしな雰囲気に少しだけ疑問を持ちながらも気にせずに理事長室を出ていった。

 

「ふぅ、危なかった」

 

絵里ちんが完全に出ていき、理事長室に戻って来ないと分かると手を離して床に降り一息つく。

転生してからバスケの動きばかりしているので、こう言う事をするのは久々だったけども筋肉は嘘をつかないのでバレる事はなかった。

 

「あっくん…」

 

「貴方、何処かで何かの訓練を受けているの?」

 

「バスケの訓練なら週休二日で受けてるよ」

 

「そ、そう」

 

俺の行動に疲れたのか、呆れたのか頬をひくひくとさせる理事長。

応接用のソファー的な物は無いのでそのまま地べたに座った。

 

「黛さん、ジュース」

 

「ほらよ」

 

「「ぴよっ!?」」

 

あ、親子だわ。

理事長の横に普通に立っている黛さんを見て、驚く二人は親子だわ。

似ているなと俺はジュースを飲んで一息ついた。

 

「え、え~っと」

 

「カメラマン兼動画編集とか機材関係を請け負っている黛です…此方はつまらない物ですが」

 

「あ、虎屋のようかん…じゃなくて、何時の間に?」

 

「こいつが天井に張り付く前に背中から降りて…ずっと、隣で立っていたが?」

 

「お母さん…もう、あっくん達の事は置いておこうよ。黛さん、物凄く影が薄いし」

 

俺達の通常運転に疲れ果てたのかレイプ目なことりちん。

おばさんの方も諦め、机の中から書類が入った封筒を取り出して渡してくれる。

 

「…問題なしと…」

 

「ええ…睦くん、だったかしら?」

 

「…なに?」

 

「ことりは…いえ、皆はどうすれば良いと思う?」

 

真面目な表情で曖昧な質問をして来るおばさん。

 

「さーね。少なくともオンリーワンな才能を皆が持っていると思うよ。

おばさんにも言っておくけど、俺達はあくまでも選択肢を増やしているだけに過ぎない。最終的な決定権は無いんだよ」

 

本当に後これを何度言えば良いんだろうか。

ことりちん達は俺達の案を選択しているだけであり、強要は一切していないんだ…それしか道が無いと言う状況なのは俺は知らないから。

 

「そう…失敗したら、どうするつもりかしら?」

 

「…まぁ、そん時は諦めモードで良いよ。

そもそもの話で俺は頼まれただけで、音ノ木坂に特に思い入れなんて物はないし…いや、これは良いや…」

 

色々と言おうとしたけども、余計な一言が多数存在するので口を閉じる。

 

「まぁ、失敗したら俺のSASUKEの優勝賞金がパァになり良い人生経験をしたと思えば良いし」

 

「…SASUKE、完全制覇したの?」

 

「うん」

 

「ふぅ…なんだか頭が痛くなってきたわ」

 

「早めのパブロンだよ」

 

「それは風邪薬だよ、あっくん」

 

頭を抱えてあちゃーとなっているおばさん。

廃校になるかならないかの瀬戸際で重労働が重なり体調が優れないんだね。

 

「まぁ、とにかくオンリーワンな才能を持っているからなんとかなるよ」

 

「それは奇跡の世代みたいなオンリーワンかしら?」

 

「いや、スクールアイドルとバスケは全然違うから…なに言ってるの?」

 

「っ…っ…」

 

「理事長、この馬鹿相手にシリアスな駆け引きなんぞしても無駄だ」

 

奇跡の世代について話題に出すのだが、スクールアイドルと方向が違う。

その事を指摘すると墓穴を掘った自分か俺に苛立ち始め歯ぎしりをするんだけど、黛さんがフォローを入れる。

 

「そんな奇跡の世代と同じ才能を持ってたら、凄く面倒だよ。

10年に1人の逸材が2、3年に一回のペースで出てきてるってのに奇跡の世代みたいなのがポンポンポンポン出てきたらもうそれは奇跡じゃなくて必然とか当然だから…やっべ、当然の世代とかクソダセえ」

 

ただでさえクソダサい二つ名があるのに、その上に奇跡から必然とか恥だよ。

 

「と言うか、おばさん…奇跡の世代について知ってるの?」

 

「ええ…帝光中学男子バスケット部最強の5人

【天帝】【魔獣】【八咫鏡】【翔龍】【破壊心】の異名を持ち、それぞれがオンリーワンな才能を秘めていて、全中三連覇を成し遂げ中学生の世界大会でも優勝をしたのよね。音ノ木坂にそんな超高校生級の逸材が居てくれれば、ことり達に色々と考えさせなかったのだけれど」

 

「はぁ…サイン頂きありがとうございます。俺達はこれで失礼します」

 

「あ、もしかすると理事長もカメラに写ってもらわないといけないのでその時はお願いします。後、音ノ木坂のグラウンドも開いてる日に貸してください」

 

最後の最後で嫌味が飛んでくるのは予想外だったが、それなりの無礼はしたから当然か。

これ以上此処にいると面倒になるのは間違いないので俺は退散するべく黛さんを背負った。

 

「理事長、一つだけ言っておく…奇跡の世代は五人は大きな間違いだ」

 

「じゃあ、GW(ゴールデンウィーク)に…あ、俺は会えないね」

 

俺達は来た時と同じ様に窓から出ていった。

今度はことりちんを抱えなくてもいいから左手を使うことが出来て楽に降りれる。

 

「あっくん、凄いなぁ…」

 

「ええ、凄く変わった子だったわ…って、あら?」

 

【ことりちん、おばさん窓から侵入してごめんなさい。

コレは御詫びのイベリコ豚のカツサンド三大珍味乗せです。購買部に月末だけ発売の数量限定の物であり、過去にコレを巡って怪我人が出たほど…材料の割には値段が安くて美味しいですby紫原睦】

 

俺達が出ていった後、おばさんは机の上に置いていった黄瀬ちんを連れてくる為に使った交渉道具に気付く。

やっぱ月末に黄瀬ちんに頼むんじゃなかった。月末になんか頼むと、直ぐにイベリコ豚のカツサンドを報酬として貰おうとする。

 

「…紫原、睦?」

 

「お母さん、どうしたの…あ、そう言えばあっくん、フルネームで自己紹介していなかった」

 

「ことり、貴女はとんでもない子を好きになったみたいよ…にしても、本当に大きかったわね」

 

おばさんは俺の本名で俺について知った。

しかし、ことりちんを経由して特になにかを言ってくる事はなく俺達は待ち合わせ場所で黄瀬ちんと合流した。

 

「黄瀬、どうだった?」

 

「生徒数が少ないから、あっという間に長蛇の列…なんて事は無いっスよ。

けどまぁ、それでも俺のファンって子が十名ぐらい居てくれて、ツインテールの小さい子がサインをくださいって色紙を持って校舎から走って出てきたから、役得っスよ。」

 

「あれ、自分を理想の王子様的な図で見てくる奴は嫌いじゃなかったっけ?」

 

「嫌いじゃなくて、そう言う子とは付き合えないってだけっスよ」

 

「そうか、イケメソ、滅びろ」

 

「いや、そう言うあんたはリア充でしょうに…」

 

「どうでもいいから、ラーメン食べに行こうよ」

 

仲良く談笑しながら、俺達はラーメン屋に向かった。

 

「うぅ…凛の負けにゃ」

 

そしてそのラーメン屋にいた音ノ木坂のJKが自分の方がラーメンを食べれると俺より多く替え玉をしようとしたんだけど、俺より多く食べるなんて事は出来なかった。

ちょっともっこりとしたお腹を抱えて支払いをしようとするが

 

「…ひゃ、100円足りないにゃ!?」

 

金が足りなかった…

 

「あ、うん…店長、この子の分、俺が払っとくよ」

 

そんな女の子を見て、なんだかいたたまれない気持ちになり俺が代金を支払った。

 

「という事で黛さん、後はよろしく」

 

次からは合宿(仮)だよ




クリスマスも今年もやって来る…プレゼント(話)は…あるんじゃないかのう


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合宿って見えないところで手間は掛かってる。

【拝啓、女神の皆様…休日返上です(ブラック)】

 

それは突如、一通の連絡から始まった。

むっくんが用意した書類を書き終えて、やっとスクールアイドルとして活動が出来るとなった。けど、スクールアイドルとしてはまだまだ未熟な穂乃果達。

レベルアップするためには合宿だよね!という事で合宿をすることに。

 

「お姉ちゃん、本当にこっちで良いの?」

 

「うん、先ずはこっちに来いって言われたよ」

 

動画関係の事もあるから、雪穂も連れて神田明神を目指す。

基礎とか色々としないといけない事もあるから、合宿と言っても何処かの合宿所を借りるんじゃなくて、赤司さんのマンションの一室で休みの間、寝泊まりする。

この合宿は互いの事を詳しく知ったり、コミュニケーションを図るためとかどうとかで鍛える合宿じゃない…けど、鍛える合宿じゃなくて良かった。海未ちゃん、合宿って聞いた途端に富士山を登らないかって言ってたから…流石に富士山は無理だよ。

 

「なんでそっちじゃないんだろう…」

 

「むっくん達も色々と準備をしていて大変なんだよ…あ、お~い!」

 

なんで赤司さんのマンションじゃなく、神田明神なのかは分からないまま神田明神に着くと、先に来ていた海未ちゃん達に手を振って走った。

 

「穂乃果、急に走ったら転んでしまいますよ」

 

「雪穂ちゃん、おはよう」

 

「おはようございます…え~っと、高坂雪穂です、よろしくお願いします」

 

「穂乃果の妹ね…西木野真姫よ」

 

「真姫ちゃん、そうツンツンしたらアカンで。ウチは東條希、よろしくね雪穂ちゃん」

 

「はい、よろしくお願いします…」

 

ことりちゃんやはじめて会う真姫ちゃん達と自己紹介を終えたけど、ちょっと良い顔をしない雪穂。

家の事もあるから、雪穂は泊まることが出来なくて残念な気持ちが真姫ちゃん達と出会って大きくなったみたい…ごめんね、雪穂…でも、此処で頑張って音ノ木坂を廃校にならないようにするよ。ファイトだよ。

 

「ところでむっくんは?」

 

穂乃果達を集めたスポンサーのむっくんは居ない。

お菓子食べてたり、ゲームしてたりしてるけれども何だかんだで遅刻なんてしないのに今日は珍しく居ない。合宿、楽しみで眠れなくて最終的に四時に寝て、雪穂に無理矢理起こして貰って遅刻なかったのに…

 

「…もうちょっと寝てても問題なかった…」

 

「お姉ちゃん?」「穂乃果?」

 

「ひぃ、ごめんなさい!!」

 

つい口を滑らせてしまった。

頭を下げると雪穂と海未ちゃんは大きなため息を吐いて呆れ顔になった…そこまで呆れないでよ。

 

「なんで紫原くんと一緒に来なかったんですか?」

 

私の事はさておいた海未ちゃん。

隣にすんでいる(羨ましい)希ちゃんに、どうして一緒に来なかったのかを聞いた。

 

「それが、昨日からおらんねん。

学校に行く時に大きな鞄を持ってたから、多分、先にマンションに行ってると思うんやけど…う~ん、既読されてへんね…もしかして、寝てるかも。むっくん、休むときは滅茶苦茶寝てて、3時まで起きなかったことあるんや」

 

「はぁ、呼び出しておいて寝坊ですか…全く」

 

「起こしにいかないとダメだよね、お寝坊さんなあっくんを」

 

呆れてるけど、全く怒っていない海未ちゃんとことりちゃん。

何処か嬉しそうにしており、寝ているむっくんを想像すると面白かった。

 

「決まりね、紫原を起こしに行くわよ」

 

真姫ちゃんがそう言うと、雪穂以外がマンションのある方へ振り向いた。

 

「紫原は来ねえよ」

 

「「「「「「…き、きゃぁあああああ!?」」」」」」

 

「喧しいぞ」

 

振り向いたら、色が違うむっくんが何時も付けているマスクを付けているバスケットボールを持った黛さんががいた。

振り向いた途端に急に現れた黛さんを見て、驚き悲鳴をあげる私達。

 

「こんな白昼堂々と悲鳴をあげるな、勘違いされる」

 

「す、すみません…」

 

相変わらずマイペースな黛さん。

悲鳴を出したことを怒っており、海未ちゃんが頭を下げると続くように私達も頭を下げる。

 

「あ、あの…何時から居たんですか?」

 

全くと言って気配を感じなかった黛さん。

影が薄いって聞いているけど、知っているけども、マンションでの出来事があったから大丈夫かなって思っていたけど、気付けなかったよ。何時からいたか、恐る恐る聞いてみた。

 

「何時からか…西木野が、ピーマンじゃなくてトマトに挽き肉を詰めて焼くのよ、と合宿中の食事を作る際に出来る女アピールをしようかなと考えて呟いているところ辺りだな」

 

「い、一番最初からいたの!?」

 

「真姫ちゃん……合宿、楽しみだったんだね」

 

真姫ちゃんのほっこりするエピソードを聞いて、真姫ちゃん以外は優しい顔になり優しい目線で真姫ちゃんを見る。顔を真っ赤にさせる真姫ちゃんは黛さんに近付き

 

「忘れて、忘れなさい!!忘れろ!」

 

両肩を掴んでぐらんぐらんと黛さんを揺らす真姫ちゃん。

 

「…!」

 

「どうしたの、海未ちゃん?」

 

生暖かい目線で見守っていた海未ちゃんだけど、なにかに気付いた。

俯きながら黛さんに近付いた。

 

「今日は…真姫が、一番最初に来ていた…と言うことは…」

 

「…!!……黛さん、全部聞いてたの?」

 

俯きながら近付く理由に気付いたことりちゃんも近付く。

 

「…お前達、口は災いの元だぞ…妄想はノートに書くか、なろうに投稿しておけ」

 

「忘れてくださぃいいいいい!!!」

 

「聞かなかった事にして、お願いぃ!!」

 

「雪穂、なにを言ったと思う?」

 

「お姉ちゃん、そう言うのはダメだよ」

 

忘れろ忘れろと黛さんの記憶を消去しようと必死になる海未ちゃん達。

希ちゃんがやめやと止めに入ると黛さんが喧しいと海未ちゃん達の拘束を解いた。

 

「ったく、念のために持ってきたバスケットボール、ぶつけんぞ…話を聞いてるか分からないから、自己紹介させてもらう。

俺は黛千裕、カメラマンや動画編集等をメインにしている…紫原からは大体聞いている、高坂雪穂だな」

 

「はい…よろしくお願いします、千裕さん?」

 

「黛さんで頼む。知り合いにチヒロが居るからな…取り敢えず、先払いだ」

 

雪穂との挨拶を済ませると、少しだけ厚みのある小さな封筒を取り出して渡す黛さん。

受け取った雪穂は中身を開けず、太陽の光に当てて透かして中身を確認する。

 

「え、あ、あの、聞いてた以上の額が入っているんですけど!?」

 

「貴重な休みを潰した上に明日は何本か動画を試しの撮影をするからな…初回もあって、少しだけ手心を加えているし、明日撮影する動画がちょっと金がかかるからな…」

 

「で、でも数十万の大金はいただけません!!」

 

中身の額に驚き、無理だと突き返す雪穂。

 

「黛さん、雪穂は穂乃果が姉だと忘れるぐらいにしっかりとしています。

明日なんの動画を撮影するかは知りませんが、数十万の大金を中学生に渡すのはどうかと」

 

「海未ちゃん、酷い!!」

 

穂乃果だってしっかりとしてるよ!

 

「…ちゃんと中身を確認してみろ」

 

突き返された封筒をもう一度雪穂の渡す黛さん。

今度は透かして中身を確認せずに、封を開いてお札を取り出す。

 

「…一番上と一番下だけが諭吉で、間は全部野口さんだ…」

 

「…めちゃめちゃ手の込んだイタズラやん」

 

中身を確認すると当初のギャラよりも少しだけ高かっただけだった。

雪穂は貰ったギャラを鞄に入れ、やっと一段落した…筈…なのかな?むっくん、居ないよね?

 

「黛さん、むっくんは?」

 

「だから、来ねえよ…彼奴等、今合宿中なんだから」

 

「合宿中って、今から合宿を」

 

「此処じゃなくて、バスケ部の合宿だ……あの、野郎が…全部オレに押し付けやがって、虹村も手伝わねえし…はぁ…」

 

…え?

顔を歪めている黛さんの言葉に固まる私達。

 

「そ、そう言えば…むっくん、毎年、GWに合宿に行ってるってゆうてた…」

 

合宿と聞いて思い出す希ちゃん。

 

「…折角、折角、色々と用意してきたのにあっくんたら…帰ってきたら、ことりのおやつにけってーい!」

 

「ふ、ふふふ…私、ウィリアム・テルの真似事を紫原くんとしたいです」

 

「紫原、覚えておきなさいよ…」

 

「お前等、そうやって怒るのは構わない。

だが、紫原や赤司は東條と同じ年齢だ。なにかあった時にどうこう出来ないし、補導される。

補導されない年齢なのはオレと虹村だけで、年功序列でオレが上。それだけは頭に叩き込んでおけ…それと、紫原達は紫原達で地獄を見てる…今頃日高昆布でしばかれてるな、うん」

 

日高昆布でしばかれるって、どういう状況なの!?

海未ちゃん達が怖くて聞くことは出来なかったけど、物凄く気になっちゃうよ!

 

「…むっくん、死相が出とる」

 

希ちゃんがポケットに入れていたカードを一枚引くと、死神のカードだった。

…だ、大丈夫かな、むっくん、日高昆布でしばかれてるんだよね…

 

「まぁ、無駄話は此処までにしてそろそろマンションに行く…前にだ」

 

する事を大体終え、これから赤司さんのマンションに向かおうと移動しようとする私達。

だけど、黛さんはマンションがある方とは別の方向を振り向く。

 

「さっきから、覗いている奴…さっさと出てこい」

 

ボールを地面に叩きつけ、ドリブルを始める黛さん。

 

「オレはプレイスタイルの都合上、人の何倍も視線に敏感だ…取り敢えず、出てきてくれ」

 

「誰か分からないけど…出て来てください、お願いします!!」

 

黛さんやむっくんの事は関係者以外は誰にも知られてはいけない。

穂乃果達は何度もそう言われている。此処で黛さんと出会っていた事を知られて、黛さん経由でむっくんとの関係性を知られたら穂乃果達はおしまいだと大声を出して訴えかける。

 

「…黙りか…」

 

「黛さん、何処から視線を感じるんですか?私、その人に会って話を」

 

「話の前に、捕獲するのが先だ」

 

「え?」

 

どういう意味?と聞く前にドリブルを辞めてボールをトスした黛さん。

 

「赤司達には、内緒にしておけよ」

 

少しだけ腰を深く沈め、バスケじゃ見ない構えを取る黛さん。

落ちてきたボールを見ており、掌底をボールに当てると物凄い速度でボールは駆け抜けていった。

 

「バ、バスケットボールでレーザービーム、打てるんだ…」

 

「今のはわざと当てなかった。

言っておくが、威力も速度も大分抑えている…逃げるなよ?」

 

「あ、あの、黛、さん?」

 

「対話の精神は大事だが、こう言った強行手段も悪くはない…行ってこい」

 

「え、穂乃果達なの?」

 

「オレはボールの回収に行ってくる…あれ、一万ちょいで結構高いんだ」

 

じゃあ頼んだとボールを回収しに行った黛さん。

 

「バスケットボールって、かなりの値段がするんだね」

 

「穂乃果ちゃん、ボケてる場合じゃないよ…気持ちは分かるけど」

 

もう、あのレーザービームで全部ふっとんじゃったよ。

怒る気も驚く気力も果てた穂乃果達は隠れて私達の事を見ていた人の所に向かった

 

「あれ?」

 

当てなかったけど、豪速球に驚いたのか倒れて目を回していた私達を見ていた子。

大丈夫?と声をかけようとするんだけど、その前に別の言葉が出る。

 

「確か、講堂でライブを見に来てくれた子だよね?」

 

私達を見ていた子はことりちゃんと海未ちゃんとの最初の講堂でのライブをただ一人見に来てくれた一年生の子だった…え~っと

 

「名前は」

 

「小泉花陽、だったはずよ」

 

名前を知らず、どう呼べば良いか分からなかったけど真姫ちゃんが教えてくれる。

けど、教えてくれただけでそこから先はなにもない。

 

「ど、どうしよう…」

 

「どう見ても、会話できそうにないなぁ…」

 

黛さんのレーザービームのショックで気を失いかけてる小泉さん。

希ちゃんが容態を見てくれてるけど、対話することは出来ないのが見るからに分かっちゃう。

 

「うぅ……ダレカタスケテー…」

 

「お前達…よし、連れて帰るぞ」

 

一先ずは、小泉さんを連れて私達は赤司さんのマンションに向かった。




一方、その頃の奇跡達

「ふ~、中々に難しいな」

「おい、こら!!赤司!!
ケイドロばっかだとあんまりだから鬼ごっこにしたって、オレ達芸人じゃねえんだよ!!」

「青峰、文句を言っている暇はないのだよ。新しい鬼が出てきた、次は玄関マットだと!?」

「ちょ、アレってハリセンとかスリッパより痛いじゃないんスか!?って、緑間っち、紫原っち盾にしないで!」

「ちょっと待って、玄関マットだけじゃなくて虹村さんが…え、なにあれ?」

「水をたっぷり吸わせた日高昆布だ!!因みに、顧問の銀八先生はチ○コマシーンだ!」

「ざけんなぁ!!それもう体罰の一種だろう!!オレ達がなにしたってんだ!!」

合宿所の体育館でドリブルしながら罰ゲームつきの鬼ごっこをしていた。


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きのことたけのこの繁殖により村は滅ぼされました。

「…ん…ここ、何処?」

 

目を覚ますと知らない天井でした。

 

「…えっと、確か私は…」

 

此処が何処か分からない。此処に来るまでの事を私は思い出す。

通っている音ノ木坂学院に新しくスクールアイドルが出来た、ううん、出来ようとしている。

音ノ木坂学院を廃校にさせないと一歩ずつ一歩ずつ確かな成長をしてて、どんな練習をしているんだろうと気になって練習をしているらしい神田明神にこっそりと見に行った。

私はスクールアイドル活動をしようと頑張ってる先輩と違って、可愛くありませんし、ダンスも苦手…でも、スクールアイドルは好きだからとこっそりとファン第1号として練習を見に行った。

 

「その後は…そう、ボール」

 

何故かは分かりませんが、ボールが私の顔の直ぐ横にレーザービームと言いたくなる速度で飛んできました。

当たらなかったけど、急な事に驚いた私は足を滑らせて転けて…それで、意識を失って…今に至る……!

 

「なにも分かってない…ど、どうしよう?」

 

結局、此処が何処だか分からない。

もしかしたら、変なおじさんに連れ去られたのかもしれないですし、ど、どうしよう…

 

「目覚めたか」

 

「ひっ!?」

 

「…ッチ」

 

とっても怖い気持ちでいっぱいのその時、小説を読んでいる一人の男性が私に声をかけた。

急に声をかけられ、驚いた私は胸を隠すように掛け布団を掴んで引いてしまい男の人を苛立たせてしまう。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「謝るな…自分が誰で、意識を落とす前までなにをしていたか覚えているか?」

 

「はい、覚えています…」

 

「オレは黛だ」

 

「黛、さんですね。私は小泉花陽です」

 

「小泉か…お前、此処が何処だか分かるか?」

 

「え…」

 

軽く自己紹介をし終えると此処が何処だか聞いてくる黛さん。

眉一つ動かさず、小説を読んでいたからこの部屋の人かと思ったけど違っていた。

 

「黛さんの部屋じゃないんですか?」

 

「…ああ…気付けば、オレも此処に居てな…気絶する前にバスケットボールが飛んできたまでは覚えているんだが」

 

「私もです…」

 

「お前の部屋かと思ったが、違うのか……まさか、デスゲームにでも巻き込まれたのか?」

 

「デスゲーム!?」

 

「別に驚く事じゃないだろう。

オレとお前はなんの接点も無いのに、一つの部屋に閉じ込められてい」

 

「黛さん、終わったよ!」

 

謎の金持ちが、一般人を何らかの理由で閉じ込めて戦わせるデスゲーム。

勝てばどんな願いでも叶う、大金持ちになれると言うあのデスゲームと考えていると、二年の高坂先輩が部屋のドアをガチャリと開けて入ってきた。

 

「ふぇ?」

 

「おい、高坂…もう少し、遅れてこいよ。

折角、デスゲームに巻き込まれてしまった一般人(ヒロイン)とヒッキーオタだが頭の回転が早い主人公の出会いを演出していたのに」

 

「黛さん、気持ち悪いです」

 

「馬鹿を言え、オレとお前の感性が違うだけだ」

 

「西木野さん?」

 

黛さんが言っていた事が全て嘘だと分かったことよりも、そんな黛さんにドン引きの同級生の西木野さんの方に私の意識が向いた。

 

「小泉さん、で合ってるわよね?」

 

「はい…えっと、此処は何処なんですか?デスゲーム、じゃないんですよね?」

 

「黛さん、なにを教えてる…黛さん!?」

 

「あれ、何時の間にか居なくなっちゃった!?」

 

黛さんに呆れて黛さんに冷たい視線を向けようとする西木野さん。

視線の先には黛さんは居ない。何時の間にか居なくなっており、高坂先輩も驚いています。

 

「此処って何処なんですか?」

 

「え~っと……真姫ちゃん!!」

 

「ヴェエ!?ふ、振らないでよ、急に…えっと…マンションよ、マンションの一室よ」

 

「?」

 

場所を聞いたら、何故か慌てる高坂先輩と西木野さん。

私、なにかおかしなことを聞いちゃった?悪いところを考えてみるけど、なにも浮かばない。

 

「お前等、いざと言う時の答えを考えておけよ。

コレから動画を撮影するとき、コメント力とか大事だぞ…将来的にも役立つし、鍛える動画でも撮影するか?」

 

「黛さん、何時の間に!?」

 

何時の間にか部屋を出ていたらしく、高坂先輩が入ってきたドアを開いて入ってくる黛さん。

キュウリを片手に持ちモグモグと食べているけど、無表情のまま。なんか怖いです。

 

「そしてさっさとオレの影の薄さに馴れろ、赤司なんて三日で馴れたぞ」

 

「赤司さんと穂乃果じゃ、こう、せいぶつがく的に?違うと思います」

 

「逃げるな、奴もお前も同じくホモサピエンスカテゴリーだ…取り敢えず、動けるか小泉?」

 

「動けます…」

 

「じゃあ、とっとと説明するから来い」

 

赤司が誰なのか分からず、ただただ言われた通りに立ち上がり黛さんを追って部屋を出る。

高坂先輩、西木野さん、私、黛さんが居ても窮屈と感じなかった大きな部屋、その部屋を出るとそれ以上の大きなリビングキッチンに出た。

 

「あ、起きたんやね。よかった」

 

そこには副会長をしている東條先輩

 

「黛さん、近くにスーパーはあるんですか?」

 

二年の園田先輩

 

「う~ん、これだけスゴいと悩んじゃうな」

 

「話には聞いてたけど、此処までスゴいなんて…」

 

同じく二年の南先輩…つまり、μ'sの五人、それと高坂先輩に何処となく似ている子が、リビングキッチンに集まっていた。

 

「さてと…雪穂、冷蔵庫にすぎのこ村があるから出してくれ。ついでに茶も。

園田、座布団をそこに置いてくれ。残りは後ろで座って楽にしろって…なにやってんだオレは」

 

高坂先輩に似た子と園田先輩に指示を出しながら椅子に座った黛さん。

楽にしろって言ってくれたけど、空気が重いと感じてしまう。後、出来たらきのこが欲しかった…

 

「…やっぱ、お前達が言った方が良いな」

 

「?」

 

自身の後ろにいる高坂先輩達を見る黛さん。

此処が何処なのかを気になってたけど、よく考えたらこの人は誰なんだろう?と言う疑問が生まれる。

 

「今回はオレが手本を見せるから、見ておけよ…小泉、お前はコイツらの事を何処まで知っている?」

 

親指で後ろにいる高坂先輩達をさす黛さん。

高坂先輩達の事を何処まで知っているの意味を考える…

 

「高坂先輩達は通っている高校の、音ノ木坂の先輩で、スクールアイドル、μ'sです」

 

「音ノ木坂の生徒は大体そんな認し、あ、ちょっと待ってくれ」

 

私が知っている高坂先輩達の事を言うと、お茶を啜り少しだけ溜めて説明をしようとしたその時、チャイムが部屋を響かせ私と黛さん以外はビクッと反応して身を固めました。

黛さんは立ち上がると壁に付けられている玄関チャイムのモニターの前に向かい、通話ボタンを押した。

 

「はい、もしもし?」

 

『あの~すみません、此処って紫原さんの御宅で合ってますかにゃ?』

 

「り、凛ちゃん!?」

 

通話が終わるまで無言の空気が続くかと思ったら、通話の相手がまさかの私の友人の凛ちゃんだった。思わず私は大声をあげ、モニターの前まで向かった。

 

『え、かよちん?』

 

モニターに映るのはやっぱり凛ちゃんだった。

此方の姿が見えないから、そうだよと言うと驚いた顔をするかよちん。

 

『な、なんでこんな最高級なマンションにかよちんが居るにゃ!?』

 

「此処って、最高級マンションなの?」

 

今いる場所が分かり、少しだけホッとする。

けど、黛さんの舌打ちを聞くと抜けた肩の力がもう一度入ってしまう。

 

「小泉、お前の知り合いでこの見た目からして、音ノ木坂の生徒だな?」

 

「あ、はい…」

 

「取り敢えず、上がってこい。部屋番号は分かるよな?」

 

『はいにゃ!』

 

凛ちゃんと私が知り合いだと分かり、一階のエントランスのオートロックを解除する。

なんで凛ちゃんが此処に来たか分からないけど、よかった。高坂先輩達だけで、ちょっとだけ怖かった…

 

「一難去って、また一難やね」

 

「黙れ、狸。一難去る前に、一難やってきたぞ」

 

副会長にキレながらも凛ちゃんを待つ黛さん。

席に戻りまだかなと待っていると、直ぐにやって来てくれて黛さんに驚いた後、隣に凛ちゃんが座った。

 

「先にお前の方を終わらせる」

 

冷蔵庫に貼ってあるレシートを凛ちゃんに渡す黛さん。

レシートを受け取り、確認すると凛ちゃんは財布を取り出してお金を渡した。

 

「飯食う前には財布と相談しておけよ」

 

受け取ったお金を封筒に入れ、ラーメン代と書くと冷蔵庫に貼る。

 

「凛ちゃん、あのお金って」

 

「にゃ、はは…この前、ラーメンを食べ過ぎてお会計が足りなくて、ちょっと借りたにゃ」

 

「お金って、黛さんから借りたの?」

 

「ううん、紫原さんから…そう言えば、紫原さんは?」

 

「紫原さん?」

 

赤司とか紫原とか、さっきから知らない人の名前が色々と出てくる。

誰なのかと聞きたいけど、高坂先輩達は気まずそうな顔をしてて答えてくれそうになさそう。

 

「先月の月末に、ラーメン屋に行ったら隣で物凄く食べてた人にゃ!」

 

「あれ先月末って、むっくんが音ノ木坂に来た日…黛さん、ラーメン食べに行ってたの、ズルい!!穂乃果達も誘ってよ!」

 

「お前達を誘うと喧しいし、味の好みとか知らないから嫌だ。

それに、彼処はテーブル席が無い店だ。オレと黄瀬と紫原で…話、脱線してきてるから全員黙れ、オレだけが説明する」

 

高坂先輩達の関係性を説明しようとしていたら、何時の間にかラーメンの話になっていた。

これ以上はやってられないと言う表情にはなっていないけど、声でなんとなくそれが伝わり、私達は黙り黛さんが説明をしてくれた。

音ノ木坂が廃校にならない方法を探していたら、スクールアイドルを知った高坂先輩。

南先輩と園田先輩を誘ってスクールアイドルを始めようとしたけど、高坂先輩達はスクールアイドルについてなにも知らず、どうすれば良いのか分からない。

此処には居ない紫原さんに色々と教えて貰ったりして、その紫原さんが先輩達のスクールアイドル活動を手伝う事になった。黛さんは、そんな紫原さんの友人でカメラマンを勤めていて、今いるマンションは紫原さんの友人の赤司さんのマンション。

色々とあり西木野さん達も加わり、GWを潰して、高坂先輩達は合宿をしていると教えてくれました。

 

「大体そんな感じでだ…後はお前達がやってみろ」

 

「?」

 

色々と説明をしてくれた黛さんは立ち上がり、席を外す。

高坂先輩達になにを任せたのだろうとトイレの札が掛けられているドアの向こう側に行った。

 

「…小泉さん!!!凛ちゃん!!」

 

「は、はい!!」

 

黛さんがトイレに入ると、μ'sの五人は顔を見合せ頷くと私と凛ちゃんに近付き大きな声で私達の名前を叫んだ高坂先輩…達。

気付けば私達は囲まれており、逃げることが出来ない状況に追い込まれる。

 

「お願い!!黛さんやむっくんの事は誰にも言わないで!!」

 

「この事は、この事は出来るだけ内密にお願いします!!」

 

「凛ちゃん、花陽ちゃん。おねがい!!あっくんと黛さんの事を喋らないで!」

 

「その…黛さんや紫原さんの事を言わないで…お願い、します」

 

「ウチ等がスクールアイドルをするには、むっくん達が必要やねん」

 

けど、追い込まれたのは私達じゃなかった。

本当に追い込まれていたのは高坂先輩達の方で黛さんと紫原さんの事を喋らないでと必死になって頭を下げた。

 

「皆さん、頭を上げてください!カメラマンの人がどうとか言いませんし、此処で撮影とかをしていたりするとかも言いませんよ」

 

「違うねん、小泉さん!

黛さんはまだ大丈…いや、黛さんでもアカンねん。一回でも身元とか知られたら、ウチ等もむっくんもおしまいで」

 

「どういう意味にゃ?」

 

黛さんの事を秘密にする頭を下げられる程の事じゃない。

うっかりはあるかもしれないけど、それでも喋らないと言うけど、そうじゃないと首を横に振り、なにかを伝えようとするけど凛ちゃんも私も頭に?を浮かべる。

 

「あのね…紫原も黛さんも、音ノ木坂の生徒じゃないの」

 

「それは知ってるにゃ。

ラーメン食べてた時、制服姿だったけど音ノ木坂の制服じゃなかったし」

 

西木野さんの説明になにを言っているんだろうと首を傾げる凛ちゃん。

確か、音ノ木坂は二年前から共学化したけどUTXとかに生徒が取られてて男子の生徒は0だったよね?

 

「そう、あっくんと黛さんは余所の学校の生徒なんだ…」

 

「……あぁ!?」

 

黛さんと紫原さんについて黙って欲しい意味を理解したのか大声を出した凛ちゃん。

 

「で、でもそれってズルじゃないんですかにゃ!?」

 

「…もし紫原くんの通っている高校でスクールアイドルが出来れば、ズルどころの騒ぎじゃなくなります…」

 

「凛ちゃん、なにがズルなの?」

 

園田先輩が苦虫を噛み潰した表情のまま俯いた。

なにがどうだかまだ分からず、答えが分かった凛ちゃんに答えを教えて貰う

 

「かよちん…μ'sはスクールアイドル、黛さんと紫原さんはμ'sのスクールアイドル活動を手伝ってるんだよ?…スクール、アイドル、だよ?」

 

「……!」

 

凛ちゃんが言っている意味に気付いた私はハッとなった。

他校の生徒が他校のスクールアイドル活動を手伝っている。スクールアイドルは学校の名前を背負っているから、他校の生徒に手伝って貰うのは…良いの、かな?

 

「あほみねめ、ウォシュレットの水圧最大にして出ていきやがって…終わったか?」

 

必死になっている意味に気付き、どうなのと考えているとトイレから出てきた黛さん。

私は視線を高坂先輩達から黛さんに向けて、ただただなにも言わずにジッと見る。

 

「なんだまだ終わっていないのか…出来たら、次の事に移りたいんだがな」

 

黛さんはすぎのこ村をパクっと食べ、私がなにかを言うのをただただ待つ…

 

「私は、言いません…黛さんや、その紫原さんがμ'sに関わってる事を…ファンは、推しのスクールアイドルに迷惑になる事はしません…凛ちゃん、絶対に喋っちゃダメだからね」

 

「大丈夫、絶対に喋らないにゃ!」

 

ファンは迷惑をかけない。

だから絶対に喋らないと皆さんの前で凛ちゃんと共に誓った。

 

「そうか…そんなファン第一号の小泉、ついでに星空にはサービスしてやらないとな」

 

「サービス…直筆のサインですか!」

 

とっても綺麗な高坂先輩達が、私達の名前を入れた直筆のサイン。

今はまだ無名だけど、きっとμ'sはスゴいスクールアイドルになれるから一生の宝物になると少しだけウキウキする。

 

「いや、製作の裏側に関わる…まぁ、具体的に言えば今からする合宿に要所要所で参加をだな」

 

けど、サインじゃなかった。

 

「そ、そんな私が居たら邪魔になります!

運動神経悪いですし、地味な見た目で明るくありませんし…」

 

その誘いは嬉しかった。

スクールアイドルは好きで、憧れていた。

けど、私には向いていないと自分に自信が無く、断ろうとする。

 

「安心しろ、最初にするのはペーパーテストだ」

 

「え、穂乃果、テストだなんて聞いてないよ!?」

 

「今言ったからな…小泉、星空、体験入部的な感覚でやってくれれば良い。

スクールアイドルになるのに自信が無いのは、お前の中にあるスクールアイドル像や燦然と光輝くスター達のイメージが強すぎるからだ………スクールアイドルだって、うんこするんだ!!ヒロインだってゲロを吐くんだ!奇跡の世代なんて言われてるが、基本的に屑の集まりだ!!」

 

最初にやるのがペーパーテストなのと、黛さんの最後の発言で私と凛ちゃんはこの合宿の要所要所で参加をすることにしました。そして黛さんは私と凛ちゃん以外からを攻撃されました。

 

「それと、オレに可愛いとか綺麗とかの意見を求めるなよ。

この先、お前達が色々とオシャレになったりする企画は用意しているがお前達がいくら着飾ろうがオレは3D(三次元)には興味はない、一つ次元を減らした2D(二次元)がオレの帰るべき場所なんだ。はい、という事でテストスタート。雪穂は動画の企画書に目を通してくれ」

 

 



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合宿と言えばカレー?否、数千キロカロリー摂取のノルマです。

小泉さんもとい花陽ちゃんと凛ちゃんが合宿に参加すると言うハプニングがあったけど、合宿を始めることが出来た。

合宿するマンションになにがあるのかを改めて確認して、いざ合宿…の筈なのに

 

「う~なんか頭が痛くなって来たにゃ…」

 

黛さんからテストが渡された。

真面目に中学に行っていれば簡単に解ける問題だと言っていたけど、私と凛ちゃんは頭を抱える。数学が分かんないよ。

 

「これ、結構難しいわね…」

 

この前まで中学生だったんだから簡単よ!学年首席のスゴさを見せてあげるってドヤ顔で言ったのはいいけど、一年生(1クラス)と黛さんに煽られていた真姫ちゃんが苦戦をしている。

二次方程式とか分かんないよね!マイナスとマイナスをかけたらなんでプラスになるか、意味分かんないよ!

 

「中学、真面目に行けば満点とれるテストなら受験がある雪穂も受ければ良かったのに」

 

花陽ちゃんが寝ていた部屋で打合せをしている雪穂を少しだけ恨めしく思い、今頃はどんな事を話し合っているのか気になる。

曲の動画以外は穂乃果達はなにをすれば良いのかが分からないし、なにをすればヒットするかも分からない。したい事を動画にすればいいけど細かな進行や台本を書いて来いと言ってくれたけど、色々と細かすぎてどうすれば良いか分かんない。

 

「え~と、9回ある野球の試合あり、ピッチャーは最も少ない球数で終わらせました。何球投げたでしょうか?理由つきで答えなさい。尚、デッドボールによるピッチャー負傷でゲーム続行不可能やコールドゲームなどは理由になりません…3×3×9だから」

 

「穂乃果ちゃん、声に出したらダメだよ…後、答え違うよ」

 

え、違うの!?

私の呟きに返事をしたことりちゃんに答案の間違いを指摘されたので問題をもう一度確認して、考える…3×3×9じゃないの?

 

「うぅ、なんで凛達は勉強をしないといけないの?ううん、英語をしないといけないの?此処って日本だよね?日本語だけで充分だよね?」

 

「つべこべ言わずにやりなさいよ」

 

「て言うか、凛はスクールアイドルじゃないし、やる必要は」

 

「忘れてるかもしれないけど、もうすぐ最初の中間テストなんだから赤点なんて洒落にならないわよ…」

 

グサリ。

きっと幻聴なんだけど、その幻聴は私と凛ちゃんにハッキリと聞こえた。

うん、そだね。最初の中間テストで赤点なんて取ったらダメだよね。

普通に中間テストの事を忘れていたのと真姫ちゃんの痛い言葉に顔で笑い心で泣いているとドアが開き、黛さんが出てきた。

 

「お前ら、口動かす暇があるなら手を動かせよ。

小泉と星空は別として、他の奴等は学力をある程度知っとかないと最終的に紫原が怒られるんだ」

 

「むっくんが?」

 

「普通のアイドルなら、提携している学校とかがある。

そう言う学校は学業よりもアイドル活動を優先してくれるが、スクールアイドルだとそうはいかない。学業優先だって活動出来なくなる。そうなると保護者からクレームが来たりして、紫原が怒られる…早くやれ」

 

納得だけど、納得したくない理由を聞いたらペンを持っていた手に力が籠る。

穂乃果が原因でむっくんが怒られるのはよくない。無言のまま私はペンを動かしていき

 

「回収だ」

 

テスト開始から45分が過ぎたので回収される。

途中からだけど、必死になってやったお陰で全問埋める事が出来た…80は固いね。

 

「…お腹すいたなぁ」

 

回収され、ホッと一息をつくと空腹だったことに気付く。

時計を見れば11時過ぎで、今頃はお昼御飯の準備をしていると思う。

 

「そう言えば、昼はなにするん?」

 

「冷蔵庫には、飲み物とお菓子しかありませんが…」

 

希ちゃんと海未ちゃんもお腹を空かせていたのか、冷蔵庫を開く。

 

「今から買い物に行くとなると」

 

「帰ってから作るのに、結構時間が掛かるわね…」

 

「そんな時こそ、店屋物にゃ!!」

 

ことりちゃんと真姫ちゃんが悩む中、携帯を取り出す凛ちゃん。

何時の間にかこのマンションが届ける事が出来る宅配業者をピックアップしている。

 

「…黛さん、雪穂が1500円までなら穂乃果達は一人辺りいくらまで経費で落ちるの?」

 

「店屋物は嫌でもボッてるから経費で落とすとしても、極力使わん」

 

「え~」

 

「穂乃果ちゃん、我が儘言うたらアカンよ。

実際、この人数でピザとか高いの頼んだら一万円余裕手間こえるで。

此処は我慢して、スーパーに行って焼肉セットとお野菜を買うて焼肉パーティーや!お米は炊かれへんけど、お金も出前と比べたら安いし、大きい焼肉プレート一枚だけでどうにかなるで!」

 

「お前ら、オレにお昼はなにか聞いたならせめて答えさせろ。そしてオレは焼肉では白米は食べん」

 

希ちゃんの提案を却下と言わんばかりの黛さんはそう言うと部屋を出ていった。

怒らせてしまったと縮こまる私達だけど、直ぐに戻ってきた。小学校でよく見るパンを入れている容器を手に。

 

「飯はお前達が用意する事になってるが、今日の昼だけはオレがどうにかすることになっている。

夕飯や明日の朝飯なんかはお前達がこの後、スーパーに行って材料買ってこい15000円以内で昼飯は小泉と星空の分を入れておけ」

 

キッチン台に容器を置き、蓋を開く。

中には小麦粉や塩なんかの調味料やキッチンペーパーなんかが入っていた

 

「此方に材料のリスト置いてるから、無発酵のピザ生地作ってこい」

 

「ピザ!!やった!!」

 

「お米、じゃないんですね…」

 

ピザと聞くと舞い上がる穂乃果。

花陽ちゃんは落ち込むけど、ピザの宅配を頼みたかった私はテンションを上げる。

 

「誰でも良いからオレの分の生地も作っててくれ。今から暖めて温度の調整をしないとならない…雪穂も、自分の分は自分で作るんだ」

 

「温度の調整?オーブンだからいらないんじゃ」

 

「誰がオーブンでするっつった…ピザ釜で焼くんだ。

小麦粉捏ねるボウルは同じサイズのが人数分あるから、無発酵で作っとけ。じゃ」

 

黛さんは説明を終え、雪穂の疑問に答えると出ていった。

 

「ピザ釜…ピザ釜があるの?」

 

「え~っと」

 

「あったよ?」

 

施設について説明をしてくれた際に、こう言うのもあるぞとマンションの倉庫を見せてくれた際に移動式のピザ釜を見せてくれた筈だと記憶の底から思い出そうとするとことりちゃんがあると先に言ってくれた。

 

「ピザ釜のピザ…」

 

雪穂は小さく呟き、ボウルをジッと見たあと無言で私達に配る。

配ってる瞬間、穂乃果は見た。雪穂が目を輝かせているのを!ピザ、楽しみなんだね。

 

「かよちん、知ってる?ピザ釜で焼いたピザって宅配より美味しいんだにゃ!」

 

「凛ちゃん、私、お米派だけど流石に知ってるよ。でも、食べるのははじめてかな…」

 

「宅配のピザは食べたこと無いけど、ピザ釜で焼いたピザは美味しいわよ。

スライスしたトマトがズラっと並べられていて、真ん中にバジルが添えていて、生地は外がサクサク、中はしっとりで」

 

「確か、遠赤外線とかで美味しくなって、石窯の中の温度が500℃ぐらいで一気に焼いてるらしいで」

 

「家にオーブンがあるけど、そんなに温度を高くしたらブレーカー落ちちゃうな」

 

「ことり、それ以前に貴女の家にあるオーブンだと500℃に設定できませんよ」

 

「…ふふっ」

 

ピザの事を話し、話題が少しだけズレていく。

けど、その会話を聞いているだけで気持ちよくて笑顔になっちゃう。

 

「お姉ちゃん、なにがおかしいの?」

 

「おかしくなんか無いよ…ただ、やっと合宿が始まったなぁって」

 

凛ちゃん達の参加するハプニングからのペーパーテスト。

合宿らしさはなかったけど、皆でこうしてご飯の準備をしようとすると合宿らしくてとっても楽しい。

 

「…あっくんに、食べさせたかったなぁ…」

 

ことりちゃんが小さく呟いた。

すると、海未ちゃんがボウルをキッチン台の角にぶつけて響かせる。

 

「あ、あの…その紫原さんは何処に?」

 

「バスケ部の合宿をしています…今頃、日高昆布にしばかれているところですよ…」

 

「日高昆布にしばかれるって、どういう状況にゃ!?」

 

本当にどういう状況なんだろう?

 

「…でも、紫原は今年が最後なのよね…全国に行ければ良いけど」

 

「せ、せやね…」

 

「むっくん、全国なら行ったことあるよ?去年、開催地枠で行ったって」

 

「開催地枠で全国に行くのと実力で都の予選を勝ち抜いて全国に行くのは違います」

 

「あ、そう言えばあっくんに凛ちゃん達が参加したこと連絡してなかった!」

 

ピザから話題はむっくんに代わり、凛ちゃん達の事を伝えなければと気付くことりちゃん。

携帯を取り出すと、L○○Eを起動させるとむっくんのトークに既読がついていた。

 

【楽しんでね(野郎一人はキツいって)】

 

「む~!」

 

最もらしいと言えばらしいけど、納得がいかないことりちゃん。

頬を大きく膨らまして怒り、私達もイラッとする。

 

「あっくんがそんな事を思うなら、そう思えないぐらい楽しく過ごしちゃう…皆、撮るよ!」

 

ことりちゃんはキッチン台から少しだけ離れ、携帯のカメラを向ける。

この楽しそうな雰囲気を見せると言う意味が直ぐに分かり、凛ちゃんと花陽ちゃん以外はピースをする。

 

「ほらほら、二人もピースをしてよ…あっくんに紹介しておかないといけないし」

 

「は~いにゃ!」

 

むっくんの事を知っている凛ちゃんは直ぐにピースを、花陽ちゃんも恥ずかしながらピースをしてくれた。

ことりちゃんは撮った写真を直ぐにむっくんに送り【お昼御飯は皆でピザ、ピザ釜で焼きまーす!】とメッセージを送り、次に花陽ちゃん達について書かれたメッセージを送った。

 

「ふふふ、あっくんにこんな事をするのは心が痛むけどあっくんが悪いんだよ…あ、既読がつい…」

 

【そんな仲良し感満載のの中に野郎が入れとか、ことりちんは俺に死ねって言うの?】

 

「む~…あっくん、手強いなぁ…え~と、【ことりのピザ、食べて欲しかったなぁ…】っと」

 

【その一口、その一言がDEBUになるんだよ】

 

ああ言えば、こう言うむっくんとことりちゃん。

気付けばピザ生地そっちのけで、むっくんとことりちゃんの対決を見ることに。

 

「【太ったむっくん、見てみたいな。もし太ったなら、一緒にダイエットが出来るよ】」

 

【太らない体質だよ、俺は…だから太らないといけない時が大変だよ。

赤ちん達が5000キロカロリーの中、俺だけ10000キロカロリーと言う力士並みの食事…てか、ことりちん、ポンポンポンポン、メッセージ送ってくるけど生地作んなくて良いの?】

 

「10000キロカロリー…むっくんは、ホンマに女の敵や」

 

「全くね…そろそろ生地を作りましょう」

 

10000キロカロリーと言う言葉が私達の中で響いた。

むっくんとことりちゃんのメッセージでの会話は終わり、真姫ちゃんの言葉を起に生地を作ろうと意識をピザ作りに戻す……

 

「ピザ生地って、どうやって作るの?」

 

けど、ピザ生地ってどうやって作るの?

穂乃果と雪穂はお饅頭なら作れるけど、ピザ生地なんて作ったこと無い。

こう、食パンにチーズとか乗せてピザ的なのを作った事はあるけど、生地からなんて無い。

 

「ことりちゃん…」

 

「えっと、ケーキとかはあるけどピザは作ったこと無いの…」

 

お菓子作りが得意なことりちゃんなら、もしかするとと希望を持ったけどダメだった。

 

「レシピ、中に入っていません」

 

花陽ちゃんは黛さんが持ってきた材料が入った容器を確認するけど、無かった。

 

「かよちん、大丈夫にゃ。

袋物のインスタントラーメンに作り方の説明が書いてるみたいに、小麦粉の方に…え、英語!?」

 

小麦粉が入ってる袋を手に取った凛ちゃん。

説明通りに作れば良いと言いたかったんだろうけど、小麦粉が入っている袋に書かれている文字は全て英語表記だった。

 

「コレは…外国産の小麦粉ですが…英語じゃないですね」

 

凛ちゃんから小麦粉を受け取り、確認する海未ちゃん。

書かれている文字が英語じゃないと分かると、今度は真姫ちゃんが袋を手に取る。

 

「イタリア産の、ピザ専用の小麦粉じゃないかしら…生地のレシピは書いてないわね」

 

「黛さん、ピザ生地の作り方を忘れてた…んや無いね…ワザと?」

 

「…あ、そっか!オリジナルのピザ生地を作れって言ってるんだ!」

 

体力向上とかじゃなくて私達の絆を深めたりするのが目的のこの合宿。

レシピが無いのは穂乃果達のオリジナルのピザ生地を作れ、女子力を見せろと言う意味。

お弁当のおかずを交換するのと同じ、生地や具がオリジナルのピザを交換しあって食べさせあって仲良くしろと言う黛さんの意図に気付く。

直ぐに黛さんの意図を他の皆に話すと成る程と納得した。

 

「となると、誰が一番美味しいピザ生地が出来るか勝負やね」

 

「ピザ生地なんてはじめてですが、腕がなります」

 

こうして始まったピザ生地作り。

皆がお湯や油、水、隠し味に入れるヨーグルトなんかをバラバラに配合していれ

 

【強力粉 塩 オリーブオイル ヨーグルト 人肌ぐらいの湯】

 

いざこねるぞという時にむっくんから無発酵生地のレシピが送られてきた。




数学 保健体育 国語表現の複合問題 (サービス問題)

9回ある野球の試合があり、ピッチャーは最も少ない球数で試合を終わらせました。何球投げたでしょうか?
デッドボールによるピッチャー負傷でゲーム続行不可能やコールドゲームなどは答えになりません。理由つきでお答えください。

高坂穂乃果の答え

3人のバッターから3球ずつボールを投げ、全てストライクを取ってスリーアウトチェンジを9回する。
3×3×9=81 81球

黛からのコメント

まぁ、普通っちゃ普通な×だな。
その理論でいくと完全試合…と言うか色々と言葉が足りない。

西木野真姫の答え

普通に投げるんじゃなくて打たせて取って、何処かの攻撃時に点を取る。
3×9=27 27球

黛からのコメント

着眼点は悪くはないが不正解だ。問題文をよく見てから答えろ。

南ことりの答え

自分が先攻、相手が後攻。
8回までは打たせて取るを繰り返して無失点のまま9回の一球目で点を取られる。
3×8+1= 25 25球

黛からのコメント

模範的な解答で○だが、実はもっと少なくする方法があります。

星空凛の答え

負けるの、嫌です

黛からのコメント

お前の気持ちなんか知らん。

黛のひねくれた答え。

打たせて取るを8回まで繰り返し、最後の9回の裏で打たれる。
3×8+1=25
どうあがいても25球投げなければならないつまりピッチャーが投げなければならない最低の球数は25球…じゃない。
野球をするのに必要な人数は9人。
一回ごとにピッチャーを変え、打たせて取るを8回まで繰り返す
3+3+3+3+3+3+3+3=24
そして最後のピッチャーに一球投げさせ、サヨナラ負けする。
25-24=1
つまり、ピッチャーが投げなければならない最低の球数はたったの1球。

赤司からのコメント

結果的に25球になっています。
それとその考えがありなら最後の回にピッチャーを交代するだけで一球になるのでは?


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※ 当初掲載しようとしたけども、面倒になってボツにしたやつ (番外編と言う名の慌てん坊のサタンクロースのプレゼント)

HONOKANO塩=エリート塩


何故かは知らないけれど、転生をしていた。

いや、本当になんでかは知らないけれど、転生をしていた。

なーんでだろうなとなった。友達とか家族に別れを告げる事が出来ず、色々と苦しんだりもした…が、頑張って乗り越えた。

悪い事ばかりを考えても意味は無いんだと、前向きになった。

なんと転生先は東京だった。田舎者臭いかも知れないけど、最高じゃんと喜んだ。

神戸や札幌みたいな ああ、あの街ね となるほど有名じゃない市に生まれた俺、言うまでもなく東京は遠くて行ったことすら無かった。

野菜とかの物価はくっそ高いものの、色々な飲食店がある。ゲーセンもあり、eスポーツの大会とかイベントとか開催される。

取り敢えず東京もしくは東京付近でイベント開催は、一時期憎たらしかったが、東京都民になると凄く便利だ…けど、便利すぎて思う。東京に密集し過ぎだと。

密集し過ぎて、物価とか土地代とか凄い事になっててドーナツ化現象起きて当然かと思う。

 

「じゃーん!!」

 

まぁ、そんなこんなで頑張りながら生きているとあることに気付く。

此処ってラブライブの世界じゃね?と。こどもの日だからと柏餅を家族と買いに行った際に穂むらと言う饅頭屋に行った時に気付いた。

ま、まぁ、異世界転生なんだからラブライブの世界に転生してもおかしくないかと自己完結した…んだけどなぁ…

 

「今日は、穂乃果特性のとんかつだよ!」

 

「…まぁ、一応聞くけど、なんで居るんですか?」

 

「…その話は後でしようよ…」

 

「いや、教えてくれないと」

 

「なんか最近、とんかつを塩で食べるのが流行ってるみたいだよ。

ソースばっかりだと飽きちゃうし、HONOKANO塩じゃなかった、穂乃果が買ってきた塩で食べてよ」

 

「今とんでもない事を言いませんでしたか?」

 

主人公こと高坂穂乃果達と仲良くなった…いや、これ仲良くなったのだろうか?

小学校からの付き合いなのだが、さも当たり前の如く家に入り込んでくる。そしてなんかやっている。

 

「はぁ、合鍵だよ…教えたんだから、ちゃんと食べてよね?とんかつ作るの、暑かったんだから」

 

「裸エプロンはプレイであって、そのまま揚げ物調理をしないですよ…しかも、エプロン、うっすら見えるやつですよね。後、鍵渡して」

 

「嫌…それをしたら、二度と此処に来れなくなる…」

 

手を出して、鍵を要求するけどエプロンの中に隠す穂乃果。

出した手を取り、此方だと引っ張るとスクール水着姿の穂乃果の妹の雪穂がいる別の部屋まで連れてきて、食べようと一緒に食事を取ろうとする…もうツッコミを入れるのはやめよ

 

「お兄さん、反応してくださいよ」

 

「無理だって…私に反応しているから」

 

無反応を貫いていると弁慶の泣き所を全力で蹴る雪穂。

穂乃果はやめなさいと雪穂を抑え、俺の股間の膨らみを見る…心では嫌がるけど、体は正直なんです…ヤンデレになったとしても、こんな美少女が裸同然の格好で迫ってきたら嬉しいじゃん

 

「…あ、美味しい」

 

逃げても無駄なので普通に食事をする。

 

「…とんかつにはやっぱ、ソースだな」

 

「…やった、私達の一部を…えへへ…」

 

とんかつを塩で食べるけど、やっぱりソースだなとなった。

隣で雪穂が満面の笑みになっているのを見て、その考えは直ぐに頭から消える。

本当になんでこうなった…必死になって俺は記憶から昔の事を呼び覚ます。

穂乃果達と仲良くなった…と言うよりは、向こうが仲良くなろうと歩み寄ってきた…けど、俺は普通に距離を置いた。それぐらいの関係性だった。なのになんでこうなるんだよと思う。

 

「お姉ちゃんは、男と女、どっちが良いの?」

 

「どっちでも良いよ、可愛いのは変わらないんだから」

 

「それもそうだね…でも、10年も待たないといけないのかぁ…早くほしいな、赤ちゃん」

 

「うん…けど、穂乃果達が育児ノイローゼにならないようにって、先ずは夫婦生活を楽しんでからじゃないとダメだって」

 

ラブライブの世界だとわかった俺はある日、ふと疑問に思った。

俺って居て良いのかと言う疑問、哲学的な疑問じゃなくこのままで良いのかと、原作に関わって良いのかと言う疑問。

放置していてもハッピーエンドを迎えるんだし、死人が出るわけでもない。

野郎がいたら邪魔だしラブライバーが怖いなと、小学校で付き合いを終わらせようと進学校に受験した。

勉強はそんな好きじゃないけど、強くてニューゲームだったし運動は諸事情で出来ないから勉強するしかなかった…あ、勿論、趣味は謳歌しているよ。

中学受験し、合格したら穂乃果達は鬼の様な形相になったかと思えば、マジ泣きした。

 

「あ、穂乃果ちゃんズルい!雪穂ちゃんと一緒に来てる!」

 

「そう言うことりも抜け駆けじゃないですか…絵里が急な用事が入ったからこれなくなったと聞いて来てみれば…はぁ」

 

物思いに回想に更けていると、南ことりと園田海未がやって来た。

穂乃果と雪穂が居ることに、怒りながらも呆れて服を脱ぎ始める二人…

 

「ことり、重い」

 

「む~、女の子に重いなんて、めっ!だよ!

罰としてことりはこの体制からな~んにもしないよ…ムラムラしても、ことりはなにもしないよ!!」

 

「はぁ、女性の扱い方を覚えてください…あ、ローションの準備終わりました」

 

食後、直ぐにキングサイズのバブルマットに連れ込まれると右腕を穂乃果に、左腕を雪穂に抑えつけられ仰向けの俺の上に乗って股がる裸のことり。

体重の事を言うと、怒ってしまってそのまま倒れこみ体を擦り付けており、海未が用意した洗面器一杯のローションを背中からかける…羨ましいだろう?だが、コレだけは言っておく。

 

 

 

 

まだ、原作開始前なんだぜ?

 

 

 

「ゴ、ゴムを…」

 

それはそうとヤンデレでも美女に迫られたらたまんないよね?

俺は理性を外しながらも、ゴムはつけた…主人公じゃないから、俺は逃げない。負けちゃう。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「あ~あ、もう気絶して…可愛い」

 

彼が気絶をして痙攣を起こしているのを見て、欲情しながらも毛布をかけることりちゃん。

ローションまみれだけど、器用に動けるその姿は穂乃果達の参考になる。

 

「いただきま~す…ん、むぅ…」

 

参考にしながら、取り込んで自分の物にする。

穂乃果は寝ている彼の耳たぶを甘噛みして堪能をする…こうしないと、この人は逃げてしまうから。

穂乃果達と彼の出会いは普通、同じ学校の同じクラス…出会いは普通だった。

こどもの日に家のお店に来てたから、あれこの人ってなって直ぐに誰なのか分かった。

けど、彼は普通じゃなかった。休み時間、皆が遊んでいるのに彼だけは遊んでいなかった。

毎日毎日教室で勉強をしてたり、絵を描いてたりしていて…変な奴だと、仲間外れにされていた。子供ってスポーツが出来る子だとヒーローだけど、スポーツが出来ないとダメな奴扱い、厳しい世界なんだよね。彼は…普通に見えるけど普通じゃなかった。

 

「…美味しいなぁ…」

 

彼は肺に疾患を抱えていた。

なんか凄く難しい名前でよくわかんないけど、肺が小さいか固いかなんかで普段の生活は出来るけど外で遊ぶことが出来ない。20秒も走ってしまうと呼吸が出来なくなってしまう。

それ以外は健康そのものらしく、アレルギーとかそんなのは一切無い…穂乃果には多分、一生分からないんだと思う。彼の苦しみを。

本当は勉強をするのは嫌いだって、聞いた。外で遊びたいけど、こんな体だから仕方無いと我慢をしていた…どれだけ苦しいのかが、分からない。

それに関して彼は泣かずに笑っている。穂乃果達に優しくしてくれた。

でもある日、邪魔になるだろうって謙虚な彼は私達と距離を置こうとした…置いた結果が…あんな事になった…その時に気付いた。彼が好きだって。だから、守らないと。大好きな彼を。

正直なところ、海未ちゃん達は邪魔でしかなかった。後から来た絵里ちゃん達も邪魔でしかなかった。雪穂も邪魔だった…彼には言っていないけど、本気で殴りあった事もある。

その時のアザ、お尻に残っているんだよね…お陰で出来た友情があるけど…

 

「…起きたら、またいっぱいシようね」

 

彼の耳たぶを堪能し終えた私は、キスをした。

けど、我慢出来なくなったからそのまま二回戦に突入!!




当初はラブライブの原作を知ってるやつが男はいらないんじゃね?となって、穂乃果達と距離置いたら、向こうがめっさ近付いてきてヤンヤンしまくるのを書こうとしたんです。地雷を踏み抜きまくるのを書こうとしたんですよ(変態)


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名前に色があるからと安易な誕生日プレゼントは不幸を招く

「ふ~っ…一応は聞いておいてやる」

 

ピザ生地が完成し、容器を持ってマンションの中庭に向かうと既に色々な準備がされてた。

ことり達人数分の椅子に、大きなテーブルにピザの材料、これ一人全部黛さんがやってくれたとなると少しだけ申し訳ない

 

「無発酵生地を作れとオレは言った。

ドライイーストや酵母は置いていってない、ヨーグルトも市販の物でビフィズス菌じゃ膨らますのは難しい…時間かかりすぎで、なんで生地の色がバラバラなんだ?」

 

眉間を右手の親指と人差し指で抑えながら、容器の中に入っている色とりどりのピザ生地を見て目を閉じ、ピザ生地の色を必死になって理解しようとするけど出来ない黛さん。

 

「え、穂乃果達のオリジナルの生地を作るんじゃないの?」

 

「誰がそんなこと言った?

無発酵の生地作れつったろ……悪い、何時もの癖だ。紫原とか赤司とかレシピ、頭の中に入ってるから…いや、それでもググるかオレに聞いてこないか?」

 

あっくんが送ってきた時点で薄々そんな感じがしたけど、やっぱり…

 

「まぁまぁ、ええやん。

ピザ生地はちゃんと作れてるし、料理で皆と仲良くなれるんやから」

 

「ふざけんな、オレは発酵食品や腐った物は食えるがゲテモノは食わん主義だ…オレの生地は誰が?」

 

「あ、私です…紫原さんが送ってきたレシピ通りに作りました」

 

黛さんの生地を作ったのは私だと雪穂ちゃんは手をあげた。

 

「そうか、助かる…流石に胃薬を飲む状況には陥りたくない」

 

「それ、どういう意味にゃ!!」

 

「ピザ生地を見ろ、猫娘が」

 

明るいオレンジ色になっている凛ちゃんの生地を指差す黛さん。

これ、食えるのか?と言う疑心暗鬼な目を向けており、凛ちゃんはムッとする。

 

「黛さん、大丈夫です。

凛ちゃん、隠し味に使うっぽいヨーグルトだけを入れようとしましたけど必死に止めました」

 

「そうか…」

 

花陽ちゃんが大丈夫と教えてくれる。

生地を作ってる最中に、止めてくれて本当に助かった。凛ちゃんが全部、使っちゃったらことり達の分が無くなっちゃうから…本当に、よかった。

 

「ただ、代わりに、冷蔵庫にあるパックの野菜ジュースを全部使っちゃって」

 

「…」

 

「かよちん、心配し過ぎだよ。

紙パックにホットケーキミックスと混ぜて焼いたら美味しいって書いてたから、ピザ生地でもいけるはず!」

 

「貴女のその謎の自信は何処から来るのよ…あ、私のピザ生地が真っ赤なのはトマトジュースを使ったからよ」

 

「あ、うん。西木野は大体予想できる…高坂はチョコ入りか…………で、なんでこんなに遅れたんだ?」

 

黛さんが遅れた理由を聞くとことり達は固まる。

誰一人、目線を合わせずなにも言わない…言ったら、怒られる…

 

「オレは無発酵生地を作れと言った。

確かに小麦粉と水でイーストは作れるが、発酵する時間やガス抜きした痕跡、膨らみ具合からして発酵させた生地じゃない…南」

 

「ピヨッ!?」

 

此処は穂乃果ちゃんか、凛ちゃんじゃないの!?

名前を呼ばれてしまい、私は声をあげてしまう。

 

「なんで、遅れた?」

 

「ええっと…」

 

「…オレの生地はこれだな」

 

答えない私を見て、理由に気付いた黛さん。

手に小麦粉を軽くつけた後、自分のピザ生地を手に持ち

 

「やった奴は正直に手を上げろ」

 

ピザ回しをはじめた。

そしてことり達は全員、手をあげた…ことり達が遅れたのは、ピザ回しをして全員、ピザ生地をダメにしたから。

全員が手をあげると聞こえるレベルの舌打ちをする黛さん。

 

「ピザって言ったらコレかなって…ごめんなさぁい!!」

 

何を考えているのか分からない、果てしなく無の視線を向けてくる黛さんに耐えられない。

私は頭を下げた。

 

「お前達もそんな感じか?」

 

「はい…すみません、出来るかなと、つい…テレビに飛んだピザ生地は直ぐに捨てました」

 

「ちょ、ちょっと水が多かったみたいで…はい、すみません。うちが悪いです」

 

続くように海未ちゃんと希ちゃんも頭を下げる。

他の皆も頭を下げると、顔を上げろと言ったので顔をあげる。

 

「あの部屋は、紫原の部屋だ。丁寧に扱えよ…」

 

「あっくんの!?…あれ、あっくんって希ちゃんの隣に住んでるんじゃ」

 

「色々とあってな…そこは聞くな。大人の女の優しさを見せろ

取り敢えず、罰としてオレの生地を作った雪穂のピザ生地以外はピザ回ししない」

 

恨みなら食べ物を粗末にした自分を恨めと死んだ目でほくそ笑む黛さん。

冗談かと思ったけど、本当に雪穂ちゃんの生地だけをピザ回しした。

 

「む~雪穂ちゃんだけズルいにゃ!!」

 

「なんか黛さん、さっきから雪穂ちゃんだけ特別扱いしてへ…」

 

「まさか!?」

 

「え、え!?」

 

なにかと雪穂ちゃんを気にかけ、特別扱いをしている黛さん。

コレはアレなのかなと思っていると、穂乃果ちゃんも同じ事を思い、雪穂ちゃんの前に出る。

 

「アホか、オレは二次元にしか興味無い。

雪穂は小泉や星空と違って派遣社員と同じ外部の存在だ。給料とか発生するし、その辺のサービスは充実している…三次元なんぞ、糞くらえだ」

 

「流石にそこまで言われると傷つきます」

 

「黛さん、頭大丈夫なの?」

 

「既に手遅れなレベルだ、気にするな」

 

それはそれで気にしちゃうよ!

黛さんのおかしさに引きながらも、ピザ作りを始める私達。

ピーマンやトマトはあったけど、チョコレートやマシュマロは無くてスイーツピザを作ることは出来なかった。

 

「ヴェエエ…焼いたらトマトの味が抜けてて変な感じ」

 

「う~ん、石窯で焼いたピザは美味い!!」

 

「穂乃果ちゃん、ことりの一枚あげるから穂乃果ちゃんのピザ、頂戴」

 

「良いよ!」

 

黛さんがピザ回しをしてくれなかったけど、ピザ作りは大成功。

ことり達はピザを交換しあって楽しむ…けど、やっぱりスイーツピザが作れなかった事が心残りになる。

 

「黛さん、今度はスイーツピザを作りたいな」

 

「ただ食べたいだけなら、準備等を全てお前達でやれ。そこまで世話をする義理はない、あくまでコレは今回限りだ」

 

それを解決するべく、その内にやりたいと冷たく突き放す黛さん。

自分のピザの最後の一切れを食べると、黙々とゴミを集めて掃除の準備をする。

 

「そう、ですよ、ね…焼いたり、準備することが出来るのは黛さんだけで、すよね…ごめんなさい」

 

「お前達のわがままになんでオレが付き合うほど、御人好しじゃない。

納得の行く理由を用意しろ、少なくとも此処は遊ぶ場所じゃない。お前達がスクールアイドル活動をするレッスン場でもあり撮影スタジオでもあるんだ」

 

「!」

 

黛さんの言葉が胸に刺さり、落ち込み俯く私。

けど、直ぐに黛さんがなにを言いたいかを教えてくれた。

皆でピザを作っていて、浮かれていたけど此処は合宿所、遊ぶ場所じゃない。つまり

 

「今度、コレを使って動画を撮影したいです」

 

動画撮影に使うなら、黛さんは手伝ってくれる。

 

「そんな曖昧な説明で、納得できるか。起承転結揃えてから、持ってこい」

 

「はーい!」

 

納得できないけど、無理とは言わなかった黛さん。

残りのピザを食べながら、私はあの石窯で料理をすると言う企画を提案すると皆、乗ってくれる。

 

「ピザもエエけど、他の物も焼いたら美味しそうやと思わへん?ウチ、ハンバーグ焼いてみたい」

 

「あ、じゃあ穂乃果はパンを焼きたい」

 

「そうなると、石窯料理と言う事になり各々で料理をすると言う料理バラエティになりますね」

 

希ちゃん達と意見を出しあい、石窯でなにをするかの具体性を作り出す。

黛さんはその事について特になにかを言ってくることはなく、片付けをしているから問題は特にないみたい。

 

「企画を練っているところ、悪いがこの後について連絡する…この後は体力測定。

それが終われば、明日の説明を入れて星空、小泉、雪穂は帰宅。お前達は夕飯の買い出し…金は買い物に行く際に渡すが、レシートじゃなくて領収書貰ってこい」

 

石窯を素早く掃除をした黛さんは今後の予定を教えてくれると、石窯を片付けに倉庫に向かった。

 

「体力測定…どうしよう、私、結構お腹いっぱいだ」

 

「大丈夫だよ、穂乃果ちゃん…ことりもお腹いっぱいなんだ」

 

体力測定→昼食→ペーパーテストにならないかな?

スケジュールのハード差が憎しみながらも、残りのピザを食べ終えた私達。

食後の休憩は与えないと言わんばかりに、とっとと着替えろと部屋に戻り持ってきたジャージに着替える私達。ゆっくりと着替えたけど、ピザはことり達の胃に重くて満腹感は残っている。

 

「はぁ、二人とも落ち込みすぎですよ。

昼休みの後に体育の授業があったと思えば良いだけで…あんなに食べたなら、それなりの運動しないとカロリー()が取れません」

 

海未ちゃんはケロっとしており、体をほぐしている。

その姿を見せられるとなにも言えず、ことり達は覚悟を決めて外に出ると黛色のジャージを着た大きなカメラを持った黛さんがいた。

 

「黛さん、そのジャージは?」

 

「普通、そこはカメラを聞いてくるんじゃないのか?」

 

黛さんは動画編集等を手伝ってくれるカメラマンさん。

だから、カメラを持っていてもなんにもおかしくない…けど、ジャージの方が気になる。

 

「その色って、黛《たい》色…漢字で表すと(まゆずみ)だよね?」

 

「黛さんだから、(まゆずみ)色のジャージ……ップ」

 

明らかに狙ってるとしか思えない、黛さんのジャージ。

指摘するとツボにハマったのか海未ちゃんは口元を抑えて笑ってしまう。

 

「コレは去年、赤司が誕生日に送ってきた特注品だ。

明らかに狙って作ってきたから、軽く殺意を抱いたが、その年の赤司からの誕生日プレゼント、他の奴等も特注品のジャージだったから直ぐに無くなった。後、自分の分も作ってた…意外と着心地が良いぞ、これ」

 

「と言うことは、むっくんは紫色のジャージ、赤司さんは赤色のジャージを持ってるんやね」

 

洒落の聞いたジャージにお腹は凹まないけど、心がほっこりとする。

赤司さん、怖い人にしか見えないけど意外とユーモアがある人なんだ。

 

「他の奴等って、事は後何名かジャージを渡した人がいるんですか?」

 

「ああ…そう言えば、小泉や星空は黄瀬に会ってないな、その内、会うことになるだろう」

 

黄瀬さんは黄色のジャージ…この調子だと、青色のジャージとか緑色のジャージとかの人もいそう。

 

「…あれ…赤司さんの知り合いにジャージを渡した、のよね?」

 

「…やはり、気付いたか…ああ、その通りだ」

 

何故かもう一度、黛さんにジャージの事を聞く真姫ちゃん。

この話はこれで終わりじゃないかと思っていると口元とお腹を抑えて、必死になって笑いを隠そうとする真姫ちゃんを見た黛さんは何時も以上に死んだ目をしていた。

 

「虹村のジャージは、なんかこうカラフルなんだが、余った材料で作ったんじゃないかと言いたくなる継ぎ接ぎだらけなチェック柄で、アイツだけ完全に罰ゲームとしか思えないんだ」

 

「「「「ぶぅ!!」」」」

 

「?」

 

真姫ちゃんが笑っていた意味が分かり、私達はツボにハマってしまいお腹を抱えた。

 

「虹村…どっかで聞いたことある名前…何処だったかにゃ?」



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百人一首とラジオ体操は一度覚えても直ぐに忘れ、忘れた頃にテストに出てくる。

『ラジオ体操、だいいちぃいいい!!』

 

「「「「「「「ぶっ!?」」」」」」」

 

虹村さんのカラフルなジャージがツボにハマったウチ達はなんとか、抜け出すことが出来た。

講堂ぐらいの広さの地下の体育館に向かい、黛さんが色々と準備をしている間にアップを済ませる事になった…んやけど

 

「ま、黛さんの声…」

 

黛さんが置いていったにプレーヤーはラジオ体操とシャトルランと書かれたCDが入っており、起動させてラジオ体操第一が流れるけど、黛さんの声で流れた。

 

「アカンって、こんなんアカンって…」

 

お腹を抑えながら、ウチはプレーヤーの再生を止める。

 

「黛さん、来たときから食事中の時ですら無を貫いたのにコレは…」

 

お腹を抑えるのをやめ、思い出しながら笑うウチ達。

ゆっくりと深呼吸をし、呼吸を整え、冷静になろうとするけど

 

「笑いすぎだ」

 

黛さん(御本人)が登場し、ふたたび笑いを体育館を包み込む。

本当に、アカン。ウチ達は、スクールアイドルやのに、さっきからバラエティー番組並みに笑っとる。

 

「じゃ、ラジオ体操からやり直せ」

 

『ラジオ体操、だいいちーーー!』

 

「今度はむっくん…何時録音したん?」

 

「忘年会の打ち上げのカラオケだ…もっと分かりやすく言えば、地下のカラオケボックスだ」

 

「カラオケボックスまであるんですか…こんなところで、皆さんはレッスンを」

 

棒読みのむっくんのラジオ体操第一に笑いながらも、ウチ等はなんとか乗り切る。

むっくんを知らない花陽ちゃんは、カラオケボックスがあることに驚いているけど、体育館の方がスゴいで。

 

「はい、じゃ各自自分の学年と名前を書いてくれ。あ、出席番号も書けよ」

 

「なんか体育の授業っぽくなってきたわね…」

 

消せるボールペンとバインダー、それと種目内容が書かれた紙を受け取る真姫ちゃん。

確かに、今のこの光景は本当に体育の授業にしか思えへん…かな?

 

「う~どうせなら私もやりたい…今から家に帰って、体操服取りに行ったらダメにゃ?」

 

「ダメだよ、凛ちゃん。

先輩達は今から、色々と計測したりして練習メニューを作ったりするんだから」

 

「…」

 

ジャージを持ってきていない緊急参加の凛ちゃん達は、参加していない。

見方によっては、体操服を忘れたから見学しているとも見えなくもない…けど、制服姿じゃないから、そうとも言えへんね。

 

「黛さん、空白の部分があるんですけど」

 

「…」

 

「黛さん?」

 

「雪穂、ちゃんと聞いている…………」

 

花陽ちゃんが凛ちゃんを止めてから、なにかを考えている黛さん。

表情も声も変わっていないのは、一種の恐ろしさを感じるけど、それを差し引いてもなにか大事な事を考えているのがわかる。

 

「…お前等…トレーナーが必要か?」

 

「トレーナー、ですか?

確かに必要かと聞かれれば、必要ですが、その…紫原くん達が居ますし、ある程度はどうにかなっています…」

 

「黛さんがトレーナーじゃないんですか?」

 

「オレは裏方で、カメラマンだ…トレーナーじゃない」

 

黛さんは花陽ちゃんの練習メニューを作ったりすると言う言葉が引っ掛かった。

今のところ作詞作曲衣装製作、ダンスの振り付け全てをμ'sの誰かがやっている…けど、有名なスクールアイドルなんかはちゃんとしたところで指導を受け取る。

ウチ達のダメな部分を指摘してくれる人が居てくれれば、大きく成長する。

ウチ達の事を知っている人、それは此処にいる面々と保護者…だけで、変に知っている人を増やせばなにがあるか分からん。だから、それは出来ない。けど、それでええ。

 

「言うまでもないが、お前達の能力はバラバラだ。

それも個性の一種だと言えば聞こえは良いが、最低のラインを越えなければならない。

忘れてはならないが、お前達の時間は足りない…個別メニューでスペックを上げないと」

 

「確かに、ことりと海未ちゃんじゃ体力とか全然違うけど…虹村さんがアイドルは練習メニューを組むのが凄く大変だって、個別にするにしても体を大きくしたりするのは…」

 

「んなのは言われなくても分かっている。

それでも出来る奴が二人…いや、一人だな。一人だけいるんだよ、研究(スカウティング)なんかの才能に特化した奴が。オレや赤司が頼めば、直ぐに手伝ってくれる…まぁ、まだいらないみたいだから、これ以上は勧めない…忘れてくれ。今話したことを…今のお前達にはまだ早いか」

 

黛さんじゃトレーナーについてハッキリと断ることが出来ないウチ達を見て、それ以上はなにも語らない。

 

「じゃあ、話題を戻すぞ。

そこの余白の部分は場所の都合上、50メートル走とかは出来ない…だから、代わりのものを自分達で考えろ」

 

「え~と、どういう意味なん?」

 

「…フリースローを10本中何本入るかとか腕立て伏せとかなんでも良いから自分で考えてろ…お前等、本当に自分で考えろよ…先ずは握力だ」

 

呆れながらも握力を測定する道具を渡した黛さん。

学校で使っている物と同じなのか、雪穂ちゃんは普通に握力を測定する…

 

「え、あの…あれしかないん?」

 

普通に測定する様子を思わずジッと見てもうた。

穂乃果ちゃんとかに握力を測定する道具を配る素振りすら見せず、本を読み出す黛さん。

 

「無いぞ」

 

握力を測定する道具とは言ってへんけど、伝わったみたいで否定する黛さん。

そうこうしている内に雪穂ちゃんの測定が終わった。

 

「右、28、左、27…これって多いの?」

 

「そう言うのは仲間内で回してみたら良い。

小泉も星空も、握力測定なら服や靴が汚れることはないからやってみろ」

 

学校で貰うプリントやったら、評価点が書かれてるけど貰ったプリントには書かれてない。

雪穂ちゃんはどうなんだろうと言う疑問を持ち、少しだけドキドキしている。

 

「よ~し、次は穂乃果の番だよ!!」

 

雪穂ちゃんから測定器を受け取り、計測をする穂乃果ちゃん。

左31、右33と言う結果に終わった……

 

「ア、アカン…なんか物凄くモヤモヤする!!」

 

「穂乃果も、モヤモヤするよ…ど、どうしよう!?」

 

雪穂ちゃんよりも上の結果を見て、モヤっとする。

これが正しいのか、良い結果なのか、悪い結果なのかが分からん…どっちやろ、カードに聞きたくても、部屋に置いてきてもうた。

 

「花陽ちゃん、スクールアイドル好きなんだよね!!スクールアイドルの握力ってどれぐらいかな!!」

 

「ええええ、そ、そんなの知らないです」

 

「穂乃果、握力で人気を掴み取っているわけじゃないんですよ…貸しなさい」

 

上手いことを言いつつ、穂乃果ちゃんから計測器を奪い握力を測定する海未ちゃん。

これでもかと言うぐらいに腕に力を入れると顔にも力が入り、力強さがよく伝わってきた。

 

「わぁ、海未ちゃんスゴいね!」

 

「弓と矢を持つには握力が必要なので、自然と鍛えられているんです」

 

海未ちゃんの結果は右57、左55。

ウチの知る限りでは、最高の記録でありことりちゃんは驚き拍手を送る。

 

「お前等、握力測定でそこまでテンションあげてるとこの後に続かないぞ…まぁ、それでも続くやつは続くけどな…忘れない内に書いてくれ。測定のやり直しは出来ないんだ」

 

満足げな空気のなか、黛さんは声を出して空気を壊す。

 

「やり直しは出来ないって言うけど…他に測定器は無いの?」

 

海未ちゃんの結果をみて、自分もやってみたいとなる真姫ちゃん。

けど、次はことりちゃんの番やから出来ず少しだけ退屈で測定器がないかを聞いた。

 

「あったが、バカどもがぶち壊した」

 

「バカどもって、紫原達のこと?」

 

「それ以外に、誰が居るんだ?」

 

「…あっ…すみません……」

 

「余計な気を使うな、とにかく紫原を筆頭に計測器は壊れた」

 

ボッチだと察した真姫ちゃんはそれ以上はなにも言わない。

代わりに黛さんが計測器が一つしか無い理由を教えてくれた。

 

「…そう言えば、むっくんってどれだけ運動が出来るんやろ…」

 

その理由を聞いて、一つだけ疑問が生まれる。

むっくんは奇跡の世代の一人で、【破壊心】の異名を持ってる。

バスケの詳しいルールは知らないけど、あの大きな体はどんなスポーツでも武器になる…けど、一度も見たことはない。

朝練はごめんだとしていない、見るのはランニングの時だけでそれ以外は一切見たことはない。試合をコッソリでも見に来ようとするならば、本気で縁を切るつもりでいるし…

 

「握力測り終わったやつだけ使ってみろ」

 

ウチの呟きが聞こえていたのか、他の皆が顔に出ていたのか黛さんはハンドグリップを計測器やメジャーが入っている箱から取り出して投げると穂乃果ちゃんの手元に綺麗に収まった。

このハンドグリップがなにを意味するのか、大体察したウチ達を直ぐに握力を計測する。

 

「全員終わりましたね…」

 

「ことりが一番のビリで、海未ちゃんが一位…何時も通りかな?

海未ちゃんが閉じれなかったら、ことり達も閉じれないから握力が弱い人順にするね」

 

全員の測定が終わると、ハンドグリップを閉じ始める。

握力が一番弱かったことりちゃんが必死になって閉じようとするけど、閉じれない…けど、動いてはいる。ビクともしないんやなくて、少しだけ閉じている。

 

「後もう少し、後もう少しにゃ!!」

 

ウチ達も閉じる事は出来ず、二番目に握力が強かった凛ちゃんに出番は回る。

凛ちゃんは顔を引き締め、手に力をいれるとハンドグリップはゆっくりと閉じていくけど、後少しが足りひん。

 

「こうなったら!!禁断の奥の手を!!」

 

痺れを切らした凛ちゃんは禁断の奥の手を取った。

ハンドグリップを握っていないもう片方の手を使い、閉じて

 

「ピピー、凛ちゃん、反則!!よって…わしわしの刑や」

 

「にゃああああ!!」

 

「…尊い…」

 

その行為は見過ごせへんで。

凛ちゃんからハンドグリップを取り上げ、今の行為の罰を凛ちゃんに与える。

 

「あ、閉じれました」

 

「え?」

 

そんな中、海未ちゃんが普通にハンドグリップを閉じた。

皆が必死になっても閉じれなかったから喜びたい反面、余りにもあっさりとした為に疑問が生まれる。これ、むっくんのハンドグリップなん?

 

「それはオレのハンドグリップだ、握力が50を越えてりゃ閉じることが出来る…コレは紫原のお古だ、やってみろ」

 

黛さんがハンドグリップを回収すると、別のハンドグリップを海未ちゃんに渡した。

なんで黛さん、最初からむっくんのお古を渡してくれへんのやろ?

 

「ふんんんん!!!………ダメです、さっきと違って、全然閉じれません」

 

「だろうな、それは100キロで閉じれるハンドグリップだ」

 

「ひゃ、100キロ!?」

 

重量挙げならば、スゴいで済ますことが出来る。

せやけど、握力となれば話は段違い。驚いたウチ達はハンドグリップに視線を向ける…これ、むっくんのお古って事は今、これより上に挑戦してるって事になるんよね?…

 

「アイツの握力は120ちょいだ。

デジタルのやつならまだしも、針で握力を示す奴だと80越えたら振り切ってぶっ壊れる…だから、ぶっ壊れた」

 

「スゴいわね…」

 

もうそれしか言えない真姫ちゃん。

むっくんの凄さが分かったので、体力測定を再開する。

 

「…う~ん、走りたいな…」

 

ウチ達が体力測定をしている横で凛ちゃんはそう呟いた。

今はまだ学校は借りれへんし黛さんの事を知られると大変やから、体力測定の種目に50メートル走は入ってない。全力で走る事が出来ないので、少しだけ物足りなさを感じる。

 

「そんなに足に自信があるの?」

 

「中学の頃は、陸上部で短距離をやってたよ!」

 

真姫ちゃんの質問に勿論と言うかの様に親指をあげ、サムズアップする凛ちゃん。

物足りなさを感じている真姫ちゃんは黛さんに視線を向けるが、黛さんの視線は小説を向いている。

 

「場所が取れないから、今は諦めろ。

と言うか、お前達が必死になって走ったとしても11秒台で喜ぶだけだろう。

奇跡の世代とかモノホンの陸上選手舐めるなよ、9秒、10秒の世界の住人なんだぞ」

 

それ、50メートルじゃなくて100メートルやん。

てか、むっくん、10秒台で走れるんや。

 

「むっ…凛、奇跡の世代、だいっきらい!!!」

 

そんな事を考えていると、思いもよらぬ子から大きな声を出された。

 

「り、凛ちゃん、落ち着いて…おにぎりを食べよう?」

 

そこは甘いものやないんやね。

怒りを露にし、顔にも出している凛ちゃんを落ち着かせようと必死になる花陽ちゃん。

それも聞かず、フシャーっと猫の様に周りに威嚇をしていると真姫ちゃんに落ち着きなさいよと言われ、少しだけ落ち着くけど、怒っている。

 

「えっと、奇跡の世代嫌いなん?」

 

「嫌いじゃない、大大大大大嫌い!!」

 

敵意剥き出しの凛ちゃん。

奇跡の世代が大嫌いと言っているんやったら、むっくんも嫌いじゃ…いや、二年間むっくんが奇跡の世代の一人だと気付かなかったし、月刊バスケにも載ってなかったから気付かんか。

 

「嫌いって、なにかしたの?

奇跡の世代の、一人…その、スゴい、スゴい変人だけど、悪い人じゃないわよ?」

 

むっくんとも赤司さんとも黄瀬くんとも言わず、奇跡の世代の一人と言う真姫ちゃん。

残りの二人の内のどちらかを知っている口振りで、それについて聞きたいけど凛ちゃんが怒っているから聞けへん…

 

「多分、それ奇跡の世代の別の人だと思います…あの人、人を何人か殺してそうな顔です」

 

「誰なのよ、それ?」

 

花陽ちゃんの説明を聞いて、別人だと分かり首を傾げる真姫ちゃん。

と言うことは、凛ちゃんが嫌ってる人と真姫ちゃんが知っている人がまだ会ったことない奇跡の世代の二人…変人と人殺してそうな顔ってどんなんやろう…

 

「人殺しとなると……ああ、アレか」

 

凛ちゃんが誰になにに対して怒っているのか理解したのか本からウチ達に視線を向ける黛さん。

 

「お前、全国大会に出たのか?」

 

「出てない…けど、別の競技の娘が全国に行くってなったから手伝いで一緒に行ったら…あんなことに…」

 

怒りを通り越したのか落ち込みだす凛ちゃん。

 

「全国大会って、奇跡の世代は超高校生級のバスケットボールプレイヤーで、凛は陸上だから会わないんじゃないの?」

 

落ち込みながらも語ってくれるけど、おかしな部分を真姫ちゃんが指摘する。

部活動の大会の開催時期とか色々と被っているし、全国大会に出るなら団体戦ならまだしも、個人戦だけの陸上は予選にでないとアカン…なんでやろ?

 

「あの、皆さんもしかして見てないんですか?」

 

「見てないって、陸上の大会は見ないわよ…」

 

「えぇ、見てないの!?

日本人でしかも高校生で、100mを9秒64を叩き出したんだよ!!」

 

「あーー…なんかそんなこと、あったわね…」

 

凛ちゃんの説明を聞いてなんとなく、なんとなくだけど思い出す真姫ちゃん。

確か、そんなことがあったようななかったような…あんまり興味なかったし、話題も一瞬にして消えたから、覚えてへん…

 

「で、でもなんでそんなスゴい人が嫌いなの?」

 

「南先輩、問題はその後なんです!!

9秒で走ったから、色々とインタビューが来てて、会場が被ってたから凛も見てたけど…酷すぎにゃ!!暇だから出たとか、陸上部じゃないとか、今回だけで陸上選手にはなりませんとか、此処で一位とか取ってもどうせ世界陸上でボロ負けする未来しかないとか…酷かった…」

 

それは酷い。

 

「あの、奇跡の世代の一人、【魔獣】青峰大樹は大嫌いにゃ!!」

 

「そうか…残りの体力測定をするぞ。とっととオリジナルの奴を書くんだ」

 

凛ちゃんの叫びを聞いても、反応を示さない黛さん。

賛同することも特になく、ただただ普通に次の種目に移っていく。

そんな黛さんに凛ちゃんはずっこけるけど、それ以上はなにもなく、体力測定は終わった。

 

「じゃあ、明日の説明をする。

明日からは動画撮影を開始で、μ's用のアカウントは既に用意してある。

そこに色々な動画をアップして、お前達の人気を稼ぐ映像無しのお前達のデビュー曲をソロで歌うのをその内にやって貰う」

 

「おぉ、やっとアイドルらしいことを……で、なにするの?」

 

「お前等、最近、オレにタメ口だぞ?」

 

「…黛さん、私たちはなにをするんですか?」

 

やっとアイドルらしいことが出来ると喜ぶ穂乃果ちゃんは怒られると敬語に戻す。

そう言えば、動画撮影をするとか言うてるけど結局なにを撮影するか教えてもらってへん。

むっくんがスポンサーやし、エッチなのは無いと思う…むっくんだけやったら、別にそこまでじゃない…見て、ほしいな…エリチより、胸なら自信あるし……ホンマに、なんでむっくんやないんやろ…

 

「商売の基本を学べ」

 

「…100円…札?」

 

黛さんはどんな動画を撮影するか教えてくれない…けど、代わりに100円札を穂乃果ちゃんに渡した。

 



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笑顔の価値はプライスレス?否、108円

「国立音ノ木坂学院二年、高坂穂乃果でーす!!」

 

「同じく、二年の南ことり、皆、応援してね!!」

 

「同じく、二年のそ、園田海未でしゅ!!」

 

「はい、カーット!!カット、カット」

 

黛さんから100円札を受け取った次の日。

動画の撮影が始まり、最初の動画の冒頭に当たる部分を撮影をしているのですが

 

「園田先輩、恥ずかしがったらダメですにゃ!」

 

「恥ずかしがるのは絵になるが、最初の挨拶だからそこではちゃんとしろ」

 

私が噛み噛みのせいで、冒頭から全くといって進まない。

カメラを向けられるとつい、視聴者の方達を想像してしまい体が固くなり台詞が上手く言えません。

 

「黛さん、此処はやっぱり

『「私達、国立音ノ木坂学院スクールアイドル」』だけを高坂先輩に言わせて、『「μ'sです!』」を皆さんで言う方式にして、テロップで名前を出すと言うのは」

 

「何れは自己PR動画を撮るから、自己紹介を此処で出来ないとダメだ」

 

もう完全に裏方になっている花陽は黛さんに意見を出す。

体験とか参加とかの話が、何時の間にか意見を出せる立場に昇格しています。

 

「…園田、自然体でいけ。

高坂みたいに素で出来るのは中々に居ないし、南みたいに営業的な意味のものはお前に向いていない」

 

私が笑顔で愛想よく喋れないと諦めたのか、方向性を変える黛さん。

もう一度大きなカメラを手にし、撮影をする。

 

「国立音ノ木坂学院、二年の高坂穂乃果だよ!!」

 

「同じく、国立音ノ木坂学院二年の南ことりでーす!!」

 

「同じく二年の園田海未です、まだまだ未熟者ですがよろしくお願いいたします」

 

「国立音ノ木坂学院、一年の西木野真姫です。皆の作曲をしています」

 

「国立音ノ木坂学院三年の東條希、趣味は占いやで」

 

再び動画撮影は再開され、自己紹介を中断することなく終わり、全員が息を大きく吸い込む。

 

「「「「「私達、国立音ノ木坂学院スクールアイドルのμ'sです!!」」」」」

 

全員の自己紹介からのグループ名を名乗り、最初の冒頭の至る冒頭を終えた。

ですが、カットの声はなくカンペを出す凛が台詞が書かれたスケッチブックを私達に向ける。

 

「皆様、この動画を御視聴頂き、ありがとうございます」

 

「この動画は穂乃果達、μ'sがスクールアイドルとして様々な事を挑戦したり体験したりして、歌って踊れるだけじゃなく皆を楽しませたり一緒に考えたりする動画だよ!」

 

「みんな、面白かったらチャンネル登録してね!!」

 

「因みに、こんな動画を撮ってくださいって言うリクエストはダメよ…ま、まぁ、意見は聞くけど」

 

「通るかどうかは、別やね。今、こうして撮影してて皆、分かると思うけどカメラマンとかいて、道具とか場所とか貸してくれるスポンサーさんも居るから…え?」

 

希が序盤の説明を終えると、凛はページを捲る。

そこにはアドリブと書かれており、台詞が一切書かれていなかった。

 

「え~と…」

 

「記念すべき第一回目の動画…だけど、ことり達はなにをするか教えて貰ってないの」

 

穂乃果が率先し、誘導しようと台詞を考えるが浮かばずフォローをことりが入れる。

急なアドリブを振ったせいか、黛さんを睨む穂乃果。

 

「黛さんを睨んだら、アカンよ…あ」

 

「安心しろ、ピー音かカメラマンさんと音声を変えておく。

オレの台詞も消してテロップで流しておく…はい、続けてなんとか雪穂を登場させろ」

 

ウッカリ黛さんの名前を出す希ですが、それを想定している黛さん。

 

「じゃあ、雪穂、出て来て」

 

「カーーーット…お前、それはないだろう」

 

なんの前振りもなく、雪穂を呼ぼうとしたのでカットが入る。

 

「お姉ちゃん、もう少し段取りを取ろうよ…」

 

「ごめんごめん…なにを言えば良いのか分からなくて、頭の中が真っ白になっちゃって」

 

ジト目の雪穂にダメ出しをされる穂乃果。

確かになにを言えば良いのかが、分かりませんね。

 

「あの、黛さん?

私達、素人だし台本を作った方が」

 

「一字一句全てを台本にしてどうする?

と言うか、この最初の動画は紫原が監修してる。文句はすべて彼奴に言え。携帯番号は知ってるだろ」

 

黛さんは真姫の意見を知らぬと無視し、紫原くんに投げる。

 

「そう、紫原ね…はぁ、再開するわよ」

 

「紫原だと分かれば手のひら返しか…お前等、他に文句は」

 

「ううん、無いよ。台詞が無いのはあっくんらしいから」

 

紫原くんが監修してると分かれば仕方ないと受け入れ、再び動画撮影を再開する。

帰ってきたら、色々と言わないといけませんね…二人きりで。

 

「ウチ等、なんも知らされてへんけど…どうするん?」

 

「え~っと…あ、その事について色々と教えてくれる人が居るわ。出て来て」

 

なんとか上手く繋ぎ、雪穂を出す真姫。

歩きながら出てくる雪穂はカメラの枠に納まるとカメラ目線になる。

 

「私はμ'sの動画のお手伝いをするバイトの雪穂です。

μ'sの動画のお手伝いをする、と言うことなのでμ'sの一員ではないのでグッズとかは発売されません。同人でも作らないでください…私のグッズに関してはスポンサーがデ○ズニー並みに厳しく取り締まるそうで、μ'sのグッズもそこそこ厳しいです」

 

「デ○ズニーか…何時か皆で行きたいよね」

 

「お姉ちゃん、ちょっと黙ってて。下手に夢の国を語ると、消されるんだから。

それじゃあ、皆さんに今回の動画の企画を教えます…一人ずつ配りますので受け取ってください」

 

お年玉が入っているポチ袋を肩掛けの小さな鞄から取り出す雪穂。

横一列に並んでいる私達に配ると、穂乃果が中身を見ようとするがことりに止められる。

 

「それが皆さんの本日のギャラです」

 

「ヴェエエエエ!?

ギャラって、小銭が数枚しか入ってないわよこれ!!」

 

冗談だと分かるが、反応を示す…あ、気付いてませんね。

本気で本日の動画のギャラだと思い、ポチ袋を揺らす真姫。チャリンチャリンと小銭の音が鳴り響く。

 

「冗談ですよ…それと、吉○より多いです」

 

「いや、雪穂ちゃん、基準にするとこおかしいよ?」

 

「下には下がいるんです…それでは中身を確認してください」

 

動画がテレビ番組の様に上手く進み出し、少しだけ安堵しながらポチ袋の中身を確認する私達。中には100円玉が1枚、1円玉が3枚、5円玉が1枚入っていました。

 

「108円…ですね…」

 

「私も、108円よ」

 

「ウチも108円やで」

 

全員の中身が一緒で、やっぱりとなる。

薄々感じていましたが、やはり出てきた100円。+税を合わせれば108円

これでいったいなにをすると言うのでしょうか

 

「ことりだけ、100円札と1円札、8枚…」

 

「ぶ!?」

 

そんな事を考えていると、笑いの仕掛けが迫ってきました。

ことりのポチ袋の中身が108円でしたが、硬貨でなく昔の紙幣だけでした。

ことり以外が俯き体を少しだけ震わせていると、黛さんにことりは顔を向ける。

 

「どういう、ことかな?」

 

「ちょっと、両替に行けなくて。

店員が困った顔をするだけで、使えないわけじゃないから」

 

「むーー…さっきからこういう変なことばっかして…あんまり酷い事をするとことりのおやつにしちゃうぞ!」

 

「雪穂、説明に入れ」

 

「あ、はい」

 

ことりの怒りを無視し、進行する黛さん。

頬をことりは膨らませるが、雪穂が巻物を取り出したので表情を戻す…って、巻物?

 

「【μ'sの皆様へ。

この度は最初の動画の撮影を祝福いたします。いや、本当におめでとう。

やっとスクールアイドルらしいことが出来るとか浮かれ気味かもしれませんが、自惚れんな。

先に言っとくけど、スクールアイドルを始めたのを音ノ木坂の廃校を防ぐためとか口にしないでよ。同情票とかそう言うのはいらないんだから。悲しい過去とか辛い過去とか削ぎ落としてよ】」

 

…え、あ、それ、言っちゃって良いんですか?

 

「【え、あ、それ、言っちゃって良いの?って思ってるだろうけど言って良いの。

だって、拙者はスポンサーなんでげすから。けど、今回きりしか言いません。実力勝負、面白いことをして皆さんを楽しませる笑顔溢れる動画にしてください。

具体的に言えば、この前、友達と外食するときに何処に食いにいくか決める際に眼鏡が本体の友人が美味しいものならなんでも構わないのだよと言う、夕飯はなんでもいいよと同じくらい迷惑な事を言い、じゃあ、眼鏡が本体の友人が勝ったら飯はうまい棒な!と謎のテンションになり、複数名でじゃんけんをした結果、ギャグ枠の眼鏡が本体の友人の一人勝ちと言うギャグ枠は最強なんだなって思わせるぐらいに楽しませ、笑顔に溢れさせてほしいと思います(小並感)】」

 

「っちょ、ハードル高なっとるで!!」

 

そこそこ面白い話を入れたせいで、段々と上がっていくハードル。

と言うよりは、どれだけ書かれているんですか?巻物の最初の部分が地面に垂れている。

 

「【話を真面目にするけど、自分は出資者で皆さんはスクールアイドルです。

互いに阿吽の呼吸をしなければならず、出資者から支援を受ける人達は必殺技を覚えて、スポンサーにかけなければなりません】」

 

「ねえ、それの何処が真面目な話なの?」

 

「【西木野さん辺りが、それ何処が真面目な話なの?となってるけど大いに真面目です。

スポンサーは派手な子や派手な漫画を求めており、派手な漫画を印象付けるのは言うまでもなく必殺技。敵キャラを倒したきゃ、毒殺や家族を狙ったりすれば良いけど、スポンサーにそういうことをしたら1円の得にもならず、あらぬ疑いや黒い噂が出てきます…必殺技は、敵ではなくスポンサーにかけて心を射止めるもの!!必殺技のシーンを流しときゃ、少年の心は掴みとれる】」

 

「言いたいことは分かるけど…なんか、話が戻るどころかずれてる…雪穂、それ本当にそう書いてるの?」

 

「と言うよりは、商業的な話をしていますね」

 

果たしてこれは紫原くんが書いた手紙なのか?

思わず、そう疑ってしまう内容であり全員が大丈夫なのかと雪穂を見つめる。

 

「【真面目な空気が出来たので、本題に入ります…皆さん、商売の基本はなんでしょうか?】…ああ、なるほど…」

 

巻物を読むのを中断し、私達を見てくる雪穂。

今言ったことの答えを私達に求めてくる…昨日、黛さんに聞かれたことと同じ事ですね…

 

「商売の基本かぁ…う~ん…あ、笑顔!

お客様には笑顔を向けて接客をしないといけないから、笑顔は基本中の基本だってお母さんが言ってたよ!」

 

穂乃果は穂乃果らしい立派な答えを出す。

笑顔、確かにそれは商売に一番大事なもの…ですが、雪穂はなにも言いません。

それが正しいと言わず、穂乃果以外に視線を向ける。

 

「違うの?」

 

「うん、違うよ…皆さんはなんだと思います?」

 

「う~ん、お客さんの笑顔やないとなると…物を売る、かな?」

 

「あ~惜しいですね」

 

希の答えを聞くと巻物の一部に顔を向ける雪穂。

惜しいとなると、それに近い答え…

 

「利益、ですか?」

 

「え~っと…これ、どう説明すれば良いんだろう?」

 

私の答えにどうすれば良いのか分からない雪穂。

色々と悩んだ末に、書いてあることを説明することに。

 

「【商売の基本は、増やすことです】」

 

「増やすこと?」

 

「【1を使って、1以上を手に入れる。2を使って、2以上を手に入れる。元以上の数字を取るのが商売です】」

 

「つまり利益、と言うことですね」

 

「笑顔じゃないんだ……」

 

私の答えが正解だと分かれば少しホッとする面々。

それと同時に私達に渡された108円の意味がなんとなく、理解する。

 

「【高坂雪穂を100円(+税)を使い、笑顔にする方法を用意しなさい】とのことです」

 

「記念すべき第一回目の動画が貴女を笑顔にする動画…う~ん、いきなり?」

 

「【え、記念すべき第一回目の動画がこんなんで良いの?って思ってると思います。

ですが、これじゃないとダメです。一応、こんなんでも出資者なので、出資した分の利益を回収しないといけません…利益を得ることが出来ないなら、出資する額を減らします。

低予算でも大量の利益を得ることが出来ない限りは皆さんにどんなにお金をかけたところで結果は同じです】…って、最初の動画なのに、絶体絶命じゃん!!」

 

最初の動画なのにそれで良いのかと言う真姫の疑問すら紫原くんは想定していた。

読み終えた雪穂は広げた巻物を器用に巻き戻して、鞄に入れると凛がカンペを見せる。

 

「ルールその1

皆が使って良いお金は渡されたお金のみで全額使用は義務付けられてません。

ルールその2

皆で協力するや、全員分のお金は合わせて一つは禁止です。

ルールその3

家に元からあったものだからと持ち込んではいけません。

ルールその4

購入した物以外で使用して良いのは料理動画なんかで使うμ'sの部屋にあるものです。

ルールその5

携帯で検索をして、欲しいものが存在しているかどうかの確認はありです。

ルールその6

お店でいらなくなったものありませんか?の0円食堂の真似事はダメです。

大まかなルールはそんな感じで、細かなルールは要所要所で説明をしこの後に買い物に行きます…え…え~私が一人ずつ五点満点の評価をします。

ですが、余りにも酷すぎる結果だと0点を出します。0点は身内目線でもアウトな点数で、それを出した場合はこの動画のサムネにはるちょっとエッチな一枚の写真を撮ります」

 

は!?

 

「はい、カーット。よくやった、お前達」

 

持っていたカメラをおろし、拍手を送る黛さん。

 

「よくやった、じゃ、ありません!!最後の、そのサムネのエッチな写真って、どういう意味ですか!!」

 

「どういう意味もそのまんまだ。

余りにも酷すぎる出来だったら、罰ゲームを受けて貰う…ただそれだけだ。

言っておくが、これで酷い出来だったら紫原はお前達に出資する価値は無いと考えを改めるぞ」

 

エッチな写真については特に触れず、真面目に語る黛さん。

出資の話をされるとエッチな写真については頭から消えてしまい、貰った108円を見てしまう。

 

「出資をしないとなれば雪穂のバイト代以外は出ない。

言っておくが、コレは非情でもなんでもない…お前達は見知らぬ誰かを笑顔にしないといけないんだぞ。身内すら笑顔に出来ないなら、どんなに出資しても無駄だ。無理なら体で払う覚悟を持て」

 

「っ…確かに、そうですが…」

 

黛さんの厳しい一言に、反論することは出来ない。

出資者(スポンサー)とスクールアイドルと言う関係性の私達は、先ずは利益を出せる力を持っていると証明するしかありません…もし無理ならば、紫原くんに体で払うしか…

 

「で、でも108円しかないのに、どうするの?」

 

「おいおい、逆だろ?

108円もあるんだ…言っとくが、赤司や紫原も同じ事をして108円以上の利益を叩き出した。無論、オレもだ」

 

最初の動画難しさに頭を抱える穂乃果を全くといって気にする素振りを黛さんは見せない。

それどころか自分でも出来るぞと鼻で笑った…

 

「雪穂ちゃんを笑顔にする方法か……あ!」

 

「え…ことりちゃん、今の あ! って…」

 

「ふふ、内緒だよ」

 

「情報の共有はアカンで…因みにウチも方法を思い付いたで!」

 

「嘘、希ちゃんも!?」

 

「穂乃果…私もよ」

 

「真姫ちゃんまで…もしかして、海未ちゃんも?」

 

「え~っと、まだです」

 

「よかったぁあああ!!穂乃果だけ、罰ゲームを受けないといけないと…」

 

「ですが、まだ時間があるので考えます…穂乃果、頑張りましょう!」

 

他の皆の答えがなにかは分かりません。

ですが、100円ショップに向かえば、なにか答えが見つかるかもしれません。

 

「はいじゃあ、次の動画を撮るぞ。

冒頭部分だけで良いから、テーマに合わせて服を揃えるのを説明しろ、お前等のファッションセンス見る企画だ…テーマは【土日月の三連休】で予算は30000円までな」

 

なんとしても108円で、108円以上の利益を叩き出さなければならない。

本日の二本目の動画の内容を聞いて、私達の気持ちは引き締まった。




「因みにだが、罰ゲームの写真は白いシーツの上に大きめの男性のカッターシャツのみを着て横たわり両手は頭の上で鎖に縛られ頬は赤く、『くっ、悔しい!』の表情の涙目の姿を撮ることだ。
カッターシャツはヘソの部分のボタンが開いてヘソが見えていて、パンツは見えないが太ももは丸見えな感じで、チャームポイントはヘソと太もも。素足ではなく、黒色のソックスを履いているところが色々とそそる仕様だ」


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千の道を導く

今年最後の投稿。
ラブコメ要素なんぞ皆無、今までにない感じのを書いたらどうしてこうなったのかと思う。
しかしコレはこれで楽しいので書き続ける。


「ついたぞ」

 

二本目の動画の冒頭部分の撮影を終えると、昼食を取り星空達と雪穂と分かれマンションから離れて都心にやって来たオレ達。

 

「とっとと降りて、とっとと行ってこい」

 

二本目は各々のファッションセンスを試す動画。

土日月の三連休、その三連休になにをしてなにを着るかを考える動画だがこの動画に関しては特にコレと言った心配はない。

なにをするか決めているμ'sの面々は車から出て行き、服屋を目指して歩きだす。

 

「黛さん…ヒント、ヒントが欲しいです!」

 

「ダメだ、教えん」

 

だが、助手席の座っている高坂は出ない。高坂はヒントが欲しいとオレに頼み込む。

他の連中は108円で出来ることを思い付いたのに、高坂と園田だけは思い付かない。

数学の様に正しい道筋を辿っていけば正しい答えに辿り着くが、108円の問題はそうはいかない。

 

「自分で考えろ、コレばっかりはダメだ」

 

オレは高坂を冷たく突き放し、自分の買い物をする。

具体的に言えば新刊を購入する。アニメイトではないから特典は付かないが、仕方ない。

出来れば家に籠って春アニメの消化をしておきたいが…約三年は我慢しなければいけない。

 

「彼奴等に近況報告でもしておくか」

 

新刊を買い終え、本屋と提携している喫茶店で高坂達の買い物が終わるのを待つ。

新刊を読んでもいいが、良いところで中断してしまうとストレスが溜まるので持ってきたノーパソを起動し、オレは合宿で地獄を見ている奴等に、近況報告とグダグダな編集を一切していない動画を送る。

 

「…間違えて高尾達が…いや、少なくとも話せば分かる奴等だから問題な…雪穂からか」

 

動画を見た反応が気になり待っていると、雪穂から電話が掛かってくる。

場所が場所だけに騒げないのでイヤホンを付けてから電話に出る。

 

「もしもし」

 

『もしもし、お姉ちゃんがヒントが欲しいって、電話をしてきました。

あ、大丈夫ですよ。ヒントを出していません…と言うよりは、私も答えを知りません』

 

「彼奴の嫌いな物は?」

 

『ピーマンなので、青椒肉絲を出せば物凄く嫌がります』

 

高坂へのお仕置きを青椒肉絲にすると決定。

しかしそれだけで終わるとは思わない。それぐらいなら、後でコッソリと教えれば良いだけだ。

 

「…………切って良いか?」

 

『ま、待ってください!』

 

向こうからアクションが無いので、切ろうとすれば制止する。

だからオレは待つ。ただただなにを聞くか待つ。

 

『本当に、酷い成果だと出資をやめるんですか?』

 

「…聞きたいのは本当にそれか?」

 

それじゃない筈だ。

出資が無くなれば、動画をあげたりすることが出来なくなる。

μ'sでないとはいえ応援する側の雪穂にとっては一大事だが…そこじゃないだろう。

本当に聞きたいのは、そこじゃなく答えの筈だ。

 

『…なにをすれば正解なんですか?』

 

「お前はただ待つだけだ。

数学と違い、正しい答えなんて無いんだ。国語の問題に近いんだ…信じておけ」

 

正直に聞いてくるが、答える義理は何処にも無い。

と言うよりは、コレは答えを知り定番化してしまえば答えが答えじゃなくなる。

サーストンの三大原則に近いな。タネも仕掛けも分かれば、面白味にかける。

 

『う~んでも、さっき100円ショップに行ったけどなんに』

 

あ、切れた。

星空の声が聞こえると電話が急に切れた。

 

「…彼奴等も、興味を持ったのか」

 

星空がいると言うことは、小泉もいるのだろう。

参加をしたいならばすれば良い…まぁ、答えが気になったから参加するのかスクールアイドルをしたいからかは分からないが、何れはスクールアイドルになる…それらしい素振りは無さそうだが、まぁ、紫原がなんかするだろう。

 

「にしても、自分からハードルを上げにいくとは」

 

100円でなにが出来るか自らで探したりしている。

それは良いことだが、雪穂は審査員の立場でなにが出来るか知ってしまえば、高坂達の用意する答えと被ったり、知ってしまったりして…低い点数になる。

こりゃ全員のサムネがエッチな写真になりますなぁと考えていると、紫原から返信が届く。

 

【こんなんで本当に大丈夫なの?(紫)】

 

「動画の企画を提案したのは、お前だろう」

 

このままやってて、ハッピーエンド以上のハッピーエンドを迎えれるか。

オレ達と言う異分子が居る以上は、それ相応の成果を叩き出さなければならない…まぁ、全員がこの世界はどうでも良いと感じているが。

 

「そろそろ迎えに行くか」

 

動画の編集を少しだけすると、買い物が終わったとメッセージが来た。

オレはノーパソを鞄にしまって待ち合わせ場所の駐車場に向かい

 

「車で来て、正解だったな」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

驚かれた。

いい加減になれてほしい。誰か一人ぐらい、鷲の眼を持っていないだろうか?

元から影は薄い方だが、黛千尋の容姿のせいで余計に影が薄い。

 

「領収書、ちゃんと取っているだろうな?

後で経費として落としとかないとややこしいから、釣り銭も返せよ」

 

「は~い!」

 

「…やけに嬉しそうだな」

 

元気よく返事をする南。

笑顔が絶えない、と言うか他の奴等も笑っている。

 

「だって、お洋服が買えたんですよ!」

 

「あ~…そうだな」

 

「作るのも楽しいけど、買ってコーディネートをするのも楽しいんです!」

 

「…次から、予算減らしてやろうか…」

 

「ピヨォ!?」

 

制作費で買う洋服はタダだと喜んでいる節がある南。

予算を30000円にしたのはまずかったのだろうか、いや、金で餌付けしておけばそれなりの信頼と信用を生むことが出来るし、何よりも服系の企画は楽で良い。

 

「帰ったら、衣装の台本書いとけ。

土日月の三連休で私はコレを着て、なにをしますと言う台本。

明日の午後に108円の方の動画を撮るから、準備をしておけ…」

 

やることを説明し終え、帰路につきマンションに帰ると領収書を貰う。

南は器用に30000円ピッタシ使っており、他は28000円辺りで終わっている。

 

「…商品名、そのまんま書いてやがるな」

 

衣装の領収書を纏め終え、今度は108円の領収書を見る。

領収書には商品名が書かれており、買った商品でなにをするのかが何となく想像がつく…が

 

「正解はしているな」

 

同じ事をしたから新鮮味にかけるものの、それは間違いなく正解だった。

しかしこれをどう評価するかは、雪穂次第だ。

 

「はい、と言うことで一日たちました。

皆さんの服装が変わっていますね、服の説明は二本目の動画を御覧ください」

 

そんなこんなで三日目の午後。

二回目で慣れたのか、普通に進行する雪穂。

 

「皆さん、準備できましたか?」

 

姉よりハイスペックだな、本当。

音ノ木坂に入ったら、スクールアイドルになることを…いや、そこまでする義理は無いか。

 

「うん、出来たよ!」

 

「雪穂ちゃんを笑顔にさせるで!」

 

「何時でも大丈夫よ」

 

南、東絛、西木野は準備万端。

高坂と園田は気まずそうな顔をしている。

 

「それじゃあ、此方を引いて順番で決めてください」

 

中身が見えないように目隠しシートで隠された箱をどうぞと高坂達に突き出す。

箱の中に順番が書かれた紙で順番を決めるタイプでなく、箱からはみ出ている棒を引き抜き、棒の先端部分に丸い紙みたいなのがついておりそこに書かれている数字で順番を決めるタイプのやつだ。

 

「あ、棒は返してください」

 

「使い回しなのね…あ、2番よ!」

 

予算削減の為に棒は使い回しである。

西木野から若い者順に棒を引き抜き、順番が決まる。

 

「はい、カーット。

お前達、本当に成長速度が速いな…うん…高坂、大丈夫か?」

 

順番が決まったので、カメラを止めオレはちゃんと撮れているかの確認をする。

早送りで見ていると、高坂が段々と死にそうな顔をしていく。と言うか、今でも死にそうな顔をしている。

 

「だ、だって、自信満々なことりちゃん達が先にやるんだよ!」

 

らしくないと言えば良いのか、自信ない高坂。

手には5と書かれている棒が握られており、最後に雪穂を笑顔にしないといけない。

 

「こう、動画編集の技術で順番を変えれませんか?」

 

「出来ないこともないが、こんなしょうもないとこでヤラセをしてなに得だ」

 

「ことり達の後は無理です!!」

 

4番目の園田も変えてくれと懇願するが却下する。

1番目が南、2番目が西木野、3番目が東絛、4番目が園田、最後に高坂…ざまぁ。

 

「四の五の言ってないで、とっとと準備をしろ」

 

高坂達を突き放し、棒の回収をする。

 

「お姉ちゃん、結局答えが出なかったのかな…」

 

「私達も、店は違いますけど100円ショップに行きましたが笑顔にさせる物なんて…ジョークグッズぐらいだけでした」

 

各々準備をはじめるので、待っているとチラチラと視線を向ける雪穂と小泉。

 

「安心しろ、μ'sの出資はちゃんとする。

領収書に書かれてある商品見て、ちゃんと答えを導き出せている」

 

「そうですか…よかったぁ、μ'sのスポンサーが居なくならなくて」

 

オレの言葉を聞いて肩の力が抜けて安心をする小泉。

スポンサーが居なくならなくてよかったか…あくまでも、オレ達はμ'sのスクールアイドル活動の選択肢を増やすだけの存在、なんだがな…

 

「100円ショップに行ったなら、お前達はなんか買ったのか?」

 

余計な事を考えるのをやめ、別の事を考える。

小泉と星空は100円ショップに行ったなら、なにか購入しているかもしれない。

何れはμ'sになるんだからと聞いてみると星空は胸をはる。無い、胸をはる。

 

「勿論ですにゃ!」

 

「じゃあ、全員の準備が出来るまで暇だからやってみろ」

 

割となにをするのかが気になる。

流石におにぎり作ったり、カップ麺作ったりするだけのオチは…無いよな?

 

「タラリラリン」

 

手品をするときに流れるBGM(オリーブの首飾り)を口ずさむ星空。

小泉は特にこれといった事をしないのは、小泉は答えを出せなかったのか。

手品でもするのかと言いそうになるが、手品をすると予告すれば雪穂が楽しめなくなるのでなにも言わず見守る

 

「雪穂ちゃんの、お手をはいしゃーく!」

 

「あ、私も参加するんだ」

 

予想していなかったか、少しだけ驚く雪穂。

星空は雪穂の両手を取り、胸に持っていき…乳を揉ませた。

 

「な、なにをしているんですか!?」

 

あるかないかイマイチ分からない乳なんだから慌てなくても良いのに慌てる雪穂。

星空は笑いながら雪穂の手で乳を揉ませる。

 

「…凛ちゃん、恥ずかしいよ…」

 

なにをするのか知っている小泉は顔を真っ赤にして俯く。

 

「雪穂ちゃん、揉み心地は?」

 

「いやあの、揉み心地以前にそう言うのはって!!」

 

感想を聞かれ、それどころじゃないと言おうとすると手に違和感を感じる雪穂。

視線を少しだけ下に下げると星空の胸が大きくなっており、無言で揉み続けた。

 

「…偽乳ですね」

 

そして揉み続けた末に、偽乳だと分かった。

すると、徐々に徐々に萎みだす星空っぱい。最終的には元の大きさに戻り、服の中から空気の抜けた風船が落ちる。

 

「…星空、それはな…男が使うものなんだ。

男が使って巨乳だよと悪ふざけする道具で、下ネタなんだ。

それは、男が使えば笑顔が絶えない。だが、女が使えば…虚しさだけが残る」

 

星空の肩に手を置き、オレは現実を突き付けた。

無いものをねだったところで、現実は変わりない。お前にはお前のよさがあるはずだ。

 

「えぐ…ひっぐ…」

 

「自滅したか」

 

虚しさだけしか残らず割と洒落にならないレベルで泣き出す星空。

このままだと撮影が出来なくなるとフォローをどうやって入れるか考えていると

 

「た、ただいま」

 

合宿のハードすぎるメニューで死にかけの何故か紫原が帰って来た。

と言うよりは玄関に続く扉を開けると同時に倒れこんだ。

 

「黛さん、誕生日おめでとう…これ、プレゼントのシャトーブリアンのハンバーグ」

 

「超高級品のお取り寄せか。

毎年、毎年、言ってるがこんなもんよりくさやとか鮒寿司をくれ」

 

シュールストレミングはいらん。

あれは味がそこまでで、美味しくない。一度食べれば満足だ。




まぁ、それはそうとしてだ。
Fate/Apocryphaの世界に転生したオリ主が一応の良識はある魔術師になり、聖杯戦争じゃどう頑張っても根源に至ったりすることはできないから、どうやって根源に至るかを考えた末に横綱になればいいと言うアホなネタを考えてしまった。
取り敢えず、とっととバヌケ回に話を持っていきたい。


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可愛いは正義、ブサイクは悪

「え~っと……おかえりって言えば良いの?」

 

「俺に聞かないでよ、あ~もう触らないで」

 

今年は大丈夫だと思っていたけど、やっぱ動けなくなるほどしごかれる合宿。

初日のドリブルしながら鬼ごっこが一番の原因で、もう身体中のあちこちが痛いよ。

穂乃果ちんが倒れている俺を心配して身体に触れるけど、それが一番痛い。

 

「あっくん、立てる?」

 

触らないでって言ってるのに、俺の肩に触れて揺することりちん。

揺れが筋肉に響くと俺は凄くゆっくりと部屋のはじっこに向かい、座る。

 

「て言うか、泣いてるけど大丈夫なの?」

 

ラーメン代を返しに来た凛ちん。

黛さんが合宿の合間合間に参加させたらしいけど、何故かガチ泣きしている。

悲しみで泣いており、穂乃果ちん達は黛さんに顔を向ける。

 

「…オレは、悪くはない。星空が自滅してしまっただけだ…そうだろ?」

 

「うん……」

 

泣きながらも返事をする凛ちん。

慰めないのは相変わらずだなと俺は見守るが、このまま動画を撮影する雰囲気にはならない。

 

「赤ちん達がお前はμ'sの方にいけって言われたから来たけど…あ~、ほんと辛い」

 

痛む身体に鞭を打ちながら立ち上がる。

ノゾちんが特になにも言わないけど、少しだけふらつく俺を心配して側に駆け寄るが、迷惑をかけたくないからしっかりとバランスを保つ。

 

「それで、なにやってたの?」

 

「私達が雪穂を笑わせる準備をし終えて、戻ってきたら…黛さん?」

 

「星空も笑わせる方法を探してきて、自滅した」

 

女性の乳だと見せつけ、ドヤ顔になるジョークグッズの画像を見せる黛さん。

そのジョークグッズは女子がやれば虚しさだけが心に残る悲劇のグッズなのに、なんで手を出したんだろう。

 

「…あ、皆は普通に撮影を再開して」

 

「出来ませんよ、そんな状況じゃ」

 

「あ、大丈夫だよ。これ、カツラだから」

 

心配する園田さんに、問題ないとアフロのカツラを取って証明をする。

黛さんに全てを押し付けたから、確実に怒られるだろうなと思って買っておいたアフロだけど、蒸れる。

 

「そういう問題じゃないのよ…その、泣かないで」

 

「ヒッグ…スッ…ン…」

 

「真姫ちん、多分、誰がなにを言っても泣くパターンだから…あ~あ~、体育座りしちゃって、余計な事を言うからだよ」

 

「な、なんで私なのよ!」

 

「いや、どう見てもお前だろう」

 

「意味わかんない!」

 

こういう時は誰か一人を弄るのがベストなんだよ。

弄ったのは良いけど、ただひたすらに泣いている凛ちん。このままだとなにも進まないと、老体にむち打ち凛ちんの元まで歩み寄り、片手で持ち上げる。

体育座りをしているから、持ち上げやすい。

 

「な、なにをするにゃ!?」

 

流石に持ち上げられると、泣くのをやめる凛ちん。

必死になって暴れようとするけど、暴れたところで知れており、殴られたりしても痛くはない。ポカポカとしている。

 

「ちょっと借りるね」

 

俺はそう言うと凛ちんと一緒に隣の部屋に入った。

 

「あ、あの人、凛ちゃんを片手で持ち上げてた…」

 

「むっくん、穂乃果達を余裕で持ち上げる事が出来るから凛ちゃん一人ぐらいなら余裕だよ」

 

「そうなんですか」

 

「納得して良いけど論点そこじゃねえだろ」

 

穂乃果ちんが漫才を繰り広げているのが喧しい。

取り敢えずは凛ちんを雑におろし、俺は座る。覗きに来そうなので、ドアの前に座り開ける事が出来ないようにする。

 

「……」

 

「……」

 

どうしよう。

連れてきたのはいいけども、なにをすれば良いのかが分かんない。

横で体育座りをしていてひたすらに無言を貫いている。

 

「ふふ…なにやっているんですかね、私」

 

凛ちんの事は知らないけど、確実にキャラ崩壊はしている。レイプ目になっており、語尾のにゃがなくなっている。

ある程度泣いたから、気持ちが納まり、自分なにやってんだろうと言う気持ちに切り替わった。

 

「…はぁ」

 

本当はこう言う事を無闇にしてはいけない。

転生者になるべく、地獄のサンズリバー転生者養成所で教わった事を思い出しながら凛ちんの頭に手を置いた。

 

「…やっべ、俺の手、デカすぎた」

 

俺が大きいのか、凛ちんの頭が小さいのかなんて議論はしなくて良い。

確実に俺の手が大きすぎるせいか、普通にバイスクローが出来る。高ちんと降ちんが確実に笑うだろうな。

 

「…」

 

一先ずは撫でてみる。

セクハラと言われれば、そこでやめるのだが特になにも言わない凛ちん。

 

「…もっと!」

 

どうでもいいと思っているかもしれないと、手を止めると凛ちんは続けろと要求する。

無責任な事をして、大丈夫なのかと俺は少しだけ怯えながらも撫で続ける。

 

「…もういいです、にゃ」

 

俯いていた凛ちんは顔をあげる。

目に精気と光が宿っており、なんとか持ち直した。

 

「はぁ…なんであんな事をしたんだろ…」

 

とか言いつつ、少しずつ俺との距離を詰めてくる凛ちん。

 

「え、待って。俺、凛ちんの回想シーンとかを聞かないといけないの?」

 

なんかこのまま行けば、普通に回想シーンに入りそうな雰囲気。

嫌だよ、夫婦でもなんでもないのに共に困難を乗り越え支えあう関係になるのなんて。

と言うか、重い。

 

「聞いてくれないの?」

 

「うん、聞きたくない」

 

やっぱり回想シーンに入ろうとしていた。

俺はダルいから、凛ちんの昔話を聞きたくないとハッキリと断る。

 

「どうせ、アレでしょ?

成長期に周りは女の子らしくなってるけど、自分はあんまりでそれを思春期真っ盛りのおっぱい星人とかに馬鹿にされて自信無い的なアレでしょ?」

 

もういいよ、そういうやつ。

二次元なんて、作者とか作画スタッフの画風のせいか基本的に美男美女ばかり。

GANTZみたいに、顔をリアルよりに寄せてるやつとかまだしも、こう言う感じの世界だったらねぇ。どうせならモノホンのブス出せよ。デブライブかブスライブしろよ。

私、自分の容姿に自信無いですとか言う美女キャラは、本当にアカンって。どうせならブス出せ。合コンでも嫌われるよ。

 

「黛さんが言ってたよ。

貧乳はステータス、巨乳だとDEXが少しだけマイナス補正が掛かるって」

 

「なんの話をしてるにゃ!!!」

 

余計な事を言い過ぎたのか、ポカポカと殴ってくる凛ちん。

けど、全くと言って痛くはない。

 

「確かに凛はかよちんと違って大きく、大きく、無いけど…」

 

「やめよう、自滅するだけだから。

凛ちんは貧乳だけど、それをフォローする可愛さがあるからさ。

可愛いは正義って言うし、ブサイクは悪とも言うじゃん」

 

「後半ははじめて聞くにゃ…凛は、可愛くなんか無いにゃ」

 

最後のが余計だったのか、落ち込む凛ちん…

 

「そこは、凛ちんが決めるの?

あ、この人可愛いとか綺麗は御本人じゃなくて、他人が決めるんじゃないの?」

 

自己分析はいいけど、それを口にするのはダメだよ。

容姿に優れてる子が合コンとかで 私そんなに容姿に自信が無くてぇ と言うやつは結構嫌われるよ。

 

「…じゃあ、紫原さんは」

 

「呼びやすい様に読んで良いよ」

 

「睦くんは、凛がμ'sみたいに綺麗だと思う?」

 

う~ん…

 

「凛ちんは、綺麗系じゃなくて可愛い系の女子じゃないの?」

 

方向性があり、凛ちんはどちらかと言えば可愛い系の女性だ。

フリフリのロングのスカートよりも、ショートのデニムとワンピースを着せて、川辺で笑いながら穂乃果ちんと水をかけあう…やっべ、凄く絵になるわ。

 

「睦くん、私って可愛い?」

 

「自信が無いなら読モでもしてみる?

知り合いで、読モやってる奴がいるからコネとかで一先ずの紹介は出来るよ?」

 

俺の言葉をまだ疑うので、試しに読モを勧めてみる。

黄瀬ちんのコネを使えばなんとかなるし、容姿の時点で普通に合格する。

 

「い、いや、良いにゃ…」

 

口調が戻ってきた凛ちん。

にやついている顔は少し、変質者っぽいけどもこれで終わり…だと、良いんだけどね。

 

「でもまぁ、可愛くてモテまくるのはそれはそれで辛いらしいよ…アイドルじゃないんだから」

 

「アイドル…」

 

話すべき事は終わったと俺は立ち上がると、凛ちんも立ち上がり部屋を出る。

部屋を出ると扉の直ぐ側にいた穂乃果ちん達が心配そうな顔を俺達に向けるが、凛ちんが笑顔を向けると安心する。

 

「よかった、凛ちゃんが泣き止んで」

 

「ご迷惑をかけて、ごめんなさい!」

 

前に出てペコリと頭を下げ、謝罪をする凛ちん。

気にしてないと穂乃果ちん達はフォローを入れ、

 

「じゃ、動画の撮影をするぞ」

 

黛さんは全く気にせずカメラを回す。

良い感じの雰囲気を普通に壊したけど、良い感じの雰囲気より動画の撮影の方が大事である。

 

「それで、皆はどんな答えを出したの?」

 

空気をぶち壊すなよと言う絶対零度の視線を黛さんに向けたが、曲がりなりにもスクールアイドル。

動画の撮影を再開するように動き出したので、俺は黛さんに進み具合を、答えを聞いてみた。

 

「星空が酷い答えを出したが、南達なら問題ない」

 

それってつまり、誰か一人はダメだって事だよね?

園田さん辺りがダメな答えを出してそう。

 

「睦くん、なんで最初の動画をこれにしたにゃ?」

 

「俺の書き置き、聞いてないの?」

 

「聞いたけど…なんか難しすぎるし、予算出さないとか汚くて…」

 

「…108円はμ's、雪穂ちゃんはファンだよ」

 

答えを言うと、穂乃果ちん達が楽をしてしまうし本当の意味で理解できなくなる。

だから、言わなかったけど答えを用意できたなら言っちゃっても良いよね?

 

「スクールアイドルは、ファンを笑顔にしないといけない。

歌って踊れるだけのスクールアイドルなんて、これから何百と増える。

その中でトップクラスのスクールアイドルになるには、色々としないといけない…だから、108円を使って、その過程を産み出して貰うんだよ…利益云々の以前に、それが出来ないとこの先、やってけないよ」

 

「そう、だったんですか…」

 

「雪ちん、厳しく審査してね」

 

「はい、分かりました!!」

 

納得をしてくれた雪ちんに、そうだったのかと納得する凛ちん…と

 

「え~っと、確か」

 

「こ、小泉花陽です」

 

「ああ、そうだった、花ちんよろしくね」

 

一人見知らぬ女の子がいるので、誰だっけとなった。

バレたんだったなと改めて自己紹介をし終えた。

 

「睦くん、花ちんじゃなくてかよちんだよ」

 

「ああ、そうなんだ。よろしくね、かよちん」

 

「はい…」

 

「本番5秒前、4、3、2、1」

 

「はい、それでは皆さんの準備が整いました」

 

やっと再開された動画撮影。

雪ちんは慣れた感じで司会進行を勤め、一番手のことりちんを呼び寄せる。

 

「最初は、ことりさんですね。

ことりさんは、108円でなにを用意したんですか?」

 

「ことりは、108円でこれを買いました!!」

 

「折り紙?」

 

一枚の折り紙を取り出し、カメラに向けることりちん。

これがその折り紙が入っていた袋だよと折り紙の束が入っていた袋を見せる。

 

「うん、ことりは折り紙を買ったんだ…雪穂ちゃん!」

 

「ああ、すごい!!」

 

折り紙の花束を渡すことりちん。

…ただの紙ならば、そこまでの価値は無い。

けど、ことりちんが折って別の物に作り替えることによりただの紙から別の物へと昇華して価値を一気に引き上げた。

 

「これがことりの一番の傑作、折り紙で出来たペガサスだよ!!」

 

「これ、どうやって折るんだろう…あ、貰っても良いんですか!」

 

「うん、雪穂ちゃんを笑顔にさせるために一生懸命作ったんだ!」

 

あざといのか狙っているのか、上手い具合に点数を稼ぐ。

ことりちんが折り紙を全て紹介し、説明を終えると雪ちんは5と書かれた札を迷うことなくあげた。

 

「やったぁ!!」

 

「これ、一生大事にしますね!」

 

「一発目から五点満点…真姫ちゃん達のハードルが一瞬にして上がったにゃ」

 

「真姫ちゃん、大丈夫かな…」

 

出だしが順調かそうでないかは分からない。

何気に点数審査で恐ろしいのは一番目よりも二番目で、二番目の人の点数次第である。

かよちんと凛ちんは後に続く人の心配をするけど、二番目に出てきた真姫ちんは特にプレッシャーを感じることなく、出て来て100円のピアノを出して演奏をする…けど

 

「4点です!」

 

「ヴェエエエ、な、なんで?」

 

「100円のピアノだと音程がどうしても悪くて…あ、でも楽しかったです!100円の域を越えてましたよ!」

 

「っく…ちょ、ちょっと後で動画とか関係なしでピアノを弾かせてくれないかしら?

100円のピアノの音程が悪くて、中途半端な物を聞かせてしまった自分が許せないわ」

 

「それは勝手にすればいいが、家にはピアノはねえぞ」

 

妥協を許さない真姫ちん。

ことりちんの五点はそう易々と越えれるものじゃないと言うことが、分かり三番手のノゾちんに回る。

100円ショップのビニール袋を持っており、中にはなにかが入っている。

 

「ウチが108円で用意したんは、これや」

 

100円ショップで売っている、ジョークグッズのトランプ…ではなく本当に普通のトランプ。

 

「これにはタネも仕掛けもない、普通のトランプ。

視聴者の皆、本当かどうかウチが持ってるトランプを検索してくれても良いよ」

 

雪ちんにトランプを渡して確認をさせるノゾちん。

 

「はぁ…またつまんねえもんを」

 

多分、今からやるのは手品だ。

視線誘導(ミスディレクション)を覚える過程で手品を少しだけ噛った黛さん。

既に視線かなにかを誘導している事に気付いたみたいで呆れている。

 

「特になにも仕掛けられていませんね」

 

「それじゃあ、開けるよ。

トランプを開けて、ジョーカーを抜いて、こうして五つに分けます」

 

12345と、一枚ずつ五つに分けるノゾちん。

カードの束に触れない様にテーブルの上に置いてあり、一枚ずつ引いては置いていく。

 

「これでもうカードはバラバラです。

それをこうして一つに纏めて、二つにもう一度分けて、シャッフルしまーす」

 

五つに分けたカードの束を一つにし、一枚ずつ分けて二枚の束にする。

そしてその二枚の束でパーフェクトシャッフルを行い、カジノのディーラーの様にカードをアーチ状に並べる。

 

「一枚…いや、五枚引いてみて」

 

「随分と冒険に出ますね……よし…」

 

引いたカードを当てるマジックだと分かったのか目を閉じた雪ちん。

視線を誘導されまいと手探りに五枚のカードを選び抜いた。

 

「選んだね…スペードの4、ハートのQ、クラブの7、スペードの2、ダイヤのA」

 

そしてノゾちんはカードの種類を言う。

まさかと雪ちんはカードを捲ると、五枚とも全てがノゾちんの言ったカードだった。

 

「すごい…」

 

「真姫ちゃん、見えた?」

 

「全然…いったい、何処で仕掛けたのかしら?」

 

素直に称賛する雪ちんは5点を出した。

既に終わっている二人は、どうやってやったのかが気になるが答えは出ない。

 

「希ちゃん、今のどうやったの!!」

 

「手品師に手品のタネを教えてって言うたら、アカンよ」

 

カメラからフェードアウトしたノゾちんに駆け寄ることりちんと真姫ちん。

裾を探り、なにか仕掛けが無いかを真姫ちんは確認するけど、何処にも仕掛けらしい仕掛けは無い。

 

「なんやったら、トランプも確認してええで」

 

「おい、東條…お前、二個購入してないか?」

 

そこにも仕掛けはありませんとトランプも差し出すノゾちん。

タネを見抜いたのか黛さんはカメラを止めてゴミ箱に手を入れ、トランプが入っていた箱を取り出す。

 

「えぇっと……」

 

「結果的には、108円だが……さて、どうしたものか…」

 

「あの、二個購入ってどういう意味なんですか?」

 

コレ、大どんでん返しの雰囲気だ。

黛さんはノゾちんが差し出したカードを取って、表向き、詰まり数字が見える様にアーチ状に並べる。

 

「…まぁ、今回は努力に免じて見逃してやるよ」

 

なにか納得したのかトランプを戻し、ノゾちんに返す黛さん。

ノゾちんは良かったとホッと一息つき、ゆっくりと座る。

 

「黛さん、タネが分かったんですか!?」

 

「ああ…だがまぁ、動画を見続ければ誰でも分かる初歩的なもの。

先にお前達を固定概念に閉じ込め、尚且つ特に意味の無いことをして…更に努力を上乗せしたところか」

 

「ちょっとなに言っているか分かんない、イミワカンナイワ」

 

雪ちんの質問を中二臭く答えると真姫ちんに呆れた目でみられる

 

「パーフェクトシャッフルを8回した辺りで仕込みは完成してたのは分かるんだけどねぇ」

 

「むっくん、気付いてたん…」

 

「え~気付いてないと思ってたの?」

 

と言っても、仕込む過程は見抜けなかったけど。

割とマジでどうやったんだろ?ジョークグッズのトランプなら手品しやすくなってる。けど、これは本当に未開封で遊ぶためのトランプ。

 

「イカサマなんてされてないけど、何処かでしていると考えるな。

イカサマらしいイカサマは無く、元あるものを応用してトリックに使った…」

 

「あの、タネも気になりますがそろそろ次に進んでくれませんか?」

 

黛さんがタネを説明しようとすると、園田さんが間に入り込む。

タネが分かればハードルは最大値にまで上がり、園田さんと穂乃果ちんの審査はめっさ厳しくなる。既にハードルが上がりまくっているけど、大丈夫なのかな?

 

「それでは、四番手の海未さん、お願いします!」

 

「…ええっと、ですね…うぅ…」

 

説明中断し、撮影を再開するんだけど恥ずかしがる園田さん。

 

「あの、108円で購入したんですよね?」

 

ここまで来てなにも無いと言う事は無いと黛さんに視線を向ける。

領収書はちゃんと頂いたのか、黛さんは無言で頷くと視線が園田さんに向かい、耐えきれなくなった園田さんは

 

「こ、これです」

 

色紙を取り出す。

関取の手形とか何処かのスクールアイドルのサインが書かれているわけでもない、普通の色紙。

園田さんはこの部屋に置かれているペンを使い、直筆のサインを書き、更には雪ちんの名前を書き足した。

 

「どうぞ…」

 

「良いんですか…サイン、書くのなんてはじめてじゃ」

 

「はじめてです…このサインに108円の価値なんてあるかどうか分かりませんが」

 

顔を真っ赤にしながらも雪ちんにサインを渡す。

その姿は非常に尊く、今日一番の撮れ高じゃないのかと思えるぐらいに。

黛さんは無言でサムズアップをすると、それに気付いた雪ちんは点数の棒を全て掲げる。

 

「15点です!!」

 

「15点って5点満点の意味は!?」

 

「て言うか、これ賄賂じゃないの!?」

 

バランスが崩壊する点数を叩き出したので、フェードアウトしていた真姫ちんとことりちんがカメラに入ってくる。

 

「だって、一番最初のしかも名前入りなんですよ?」

 

15点は当然の事ですと言いたげな雪ちん…うん、まぁ、そうだよね。

 

「園田の一人勝ちだな。

他の奴等は2、3000円で終わりそうな利益だが、このサイン入りの色紙は値打ちが変動する、お前達はこれから先、売れないといけないから一万ぐらいの利益が出来るな」

 

「と言うことで、海未さんは15点でしたぁ!!」

 

「むぅ、まさかそんな手があったとは、盲点やったなぁ…」

 

雪ちん(司会)の言葉は絶対だと、それ以上は逆らわない二人。

ノゾちんは潔く敗けを認め、ドヤ顔の園田さんを此方だとカメラの外に招いた。

 

「ふふふ、どうですか?」

 

「どうって言われても、さぁ?としか言えないんだけど?」

 

自分がスクールアイドルだと言う事を武器にしただけだしなぁ。

俺になにかを言ってほしかったのか、物凄く落ち込む園田さん。慢心してたね。

 

「それじゃあ、最後にお姉ちゃん、お願い」

 

「私の時だけ扱いおかしくない?」

 

「だって、わざわざ私にヒント無いのって電話してきたじゃん…夕飯は青椒肉絲だよ」

 

「ピーマン尽くしは卑怯だよ!」

 

姉妹の逆転漫才を軽く挟み、場を和ませる…と言うか、素でしている。

そしてどちらも気付いていない。カメラからフェードアウトした組は気付きだしているのに…ハードル、めっさ上がってる。

 

「じゃあ、お姉ちゃん…私を笑顔にさせて」

 

「うん…雪穂、一緒に食べよう」

 

穂乃果ちんは冷凍庫に入れていたのか、冷えまくっているパ○コを二つに分けて、片方を雪ちんに渡した……

 

「…お姉ちゃん、0点だよ」

 

最後に締めるところで、穂乃果ちんは締めてくれた。俺達の期待を裏切らなかった。

 

「最後じゃなくて、最初だったら2点ぐらいはあげたんだけどなぁ…」

 

撮影終了後、雪ちんはそんな事を言っていた。

スクールアイドルと一緒にアイスを食べれる…それってなんかのガールズバー?




108円の答え合わせ

赤司

「競馬場か競艇にいるおっさんと仲良くなり、代わりに券を買って貰います。
そして万馬券を当てて、万馬券を渡す代わりにコンビニでパイシートとサラダチキンとデミグラスハンバーグを買ってきてもらい、ミートパイを作る…僕は100円しか使っていません。この課題は100円で用意するので代理で購入して貰うのはセーフなんですよ」

紫原

「色紙買って、大相撲で関脇やってる兄ちゃんにサインと手形を貰う」




「紙粘土を購入して、フィギュアを作る」


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ファンなんですと言うやつほどファンじゃない

感想がほしいよ。


「すぅう…ふぅ…」

 

鰹ベースの出汁に溶けた味噌が混ざり、程好いしょっぱさになる。

陽気な5月初旬、意識を起こすには最適なしょっぱさで、文字通り身も心も暖まる。

具は王道的な豆腐ではなく、大根と人参を短冊切りしたもので下処理を完璧にしているから変な蘞味はなく、スッキリとした味わいがある。

 

「はぁ…海未ちゃんの味噌汁、美味しい!」

 

0点を叩き出した私は罰ゲームを受けた。

冗談かと思ったけど、冗談じゃなくて結構恥ずかしい写真を撮影した。

その後はまぁ、色々と撮影をしたりして穂乃果達は三日目の夜を過ごし、最終日の四日目を迎え、朝食を頂き、海未ちゃんの味噌汁を頂く。

家が和菓子屋だからか、パンが余りでないから合宿の時ぐらいはパンが食べたいと申し出たけど、多数決とトーストを焼くのに時間が掛かるとごはんになった。

パンが食べたかったけど、その気持ちを消すほど美味しい海未ちゃんの味噌汁。

 

「毎日食べたいぐらい美味しい」

 

「ングゥ…ゲホッ、ゲホッ!!」

 

「海未ちゃん、大丈夫!?」

 

味噌汁の感想を言ったら驚いた海未ちゃん。

気管支に水が入ったのか咳き込み、顔を真っ赤にさせる。

 

「ほ、ほほ、穂乃果、貴女はなにを言っているんですか!!」

 

「?」

 

「穂乃果ちゃん、味噌汁を毎日食べたいって言うのはね、結婚してくださいって事なんだよ?」

 

どういう意味なのかなと考えていると、ことりちゃんが意味を教えてくれた。

結婚か…

 

「海未ちゃんの味噌汁を毎日飲めるなら、それも良いかなぁ」

 

「それって、味噌汁目当て?」

 

「真姫ちゃん、そこはあんまり気にしたアカンで」

 

海未ちゃんとの新婚生活を想像しながら美味しい味噌汁を啜って堪能していると、ふとむっくんが頭に浮かぶ。

 

「むっくんも、食べてくれたら良いのに…」

 

穂乃果達がいる部屋は、本当ならむっくんが使うはずだった部屋。

そこにいるのは穂乃果達μ'sだけで、むっくんはいない。隣には黛さんや赤司さんが住んでいるのに、むっくんはいない。

撮影が全て終了するとふらっと何処かに消えて、黛さんに居場所を聞いたら舌打ちをされ、その黛さんは部屋に戻った。舌打ちをしているときですら、黛さんは無表情だった。

 

「メッセージを送ってるのに、既読スルーして………」

 

「あっくん、あんまりフラフラしてことりを心配させるなら、ことりのおやつにしちゃおうかな…食べちゃえば問題ないよね?」

 

むっくんに苛立つ真姫ちゃんとことりちゃん。

ことりちゃんはむっくんをどうやって調理するか気になるけど、怖いから聞けない。

けど、こうなったのもむっくんのせいだと思う。

皆、むっくんが居ないことに苛立っている。合宿するって言うのに、肝心のむっくんがいない。その時点で皆、イライラしている。穂乃果もあんまり口にしないけど、イライラしているよ。

 

「やっほ~……って、早すぎた?」

 

イライラしていると、むっくんが両手に大荷物を持ってやって来た。

やっと今日のむっくんが見れたと穂乃果達は少しだけ荒ぶる気持ちが落ち着くけど

 

「紫原くん、何処でなにをしていたのですか?」

 

完全じゃない。

なにも言わず、既読スルーしたことは怒っている。

海未ちゃんが代表で、むっくんがなにをしていたのかを聞いた。

 

「いや、なにをしていたもなにも帰ったに決まってるじゃん。

あ~でも、正確には下の階に住んでいる兄ちゃんの部屋で寝泊まりしてたが近いか」

 

特に悪びれもなく答えるむっくん…

 

「え、下の階にむっくんのお兄ちゃん住んでるの?」

 

むっくんにお兄ちゃんが居ることを今知った。

 

「うん…けど、挨拶とかはダメだよ。

このマンションは、notコミュニケーションがモットーなマンション。

近年、保護者会禁止とかそう言う感じの意見を取り組んでいて、現に皆がピザ作ってる時にマンションの住人が一切関わってこなかったでしょ?御近所トラブルは民事不介入だから、そう言うのは仲間内でやるものだと、緊急参加とか楽しそうだから混ぜてとかNGなんだ…」

 

どんなお兄ちゃんなのか気になるけど、先に釘を打つむっくん。

 

「そっか、残念。

でも、こんな最高級マンションに住めるなんてスゴいよね。なんの仕事をしてる人なの?」

 

「…兄ちゃんの話題はもうしないよ」

 

むっくんはお兄ちゃんに関して、特に深くは語ってくれない。

これはもうダメだなと分かったから、穂乃果達はそれ以上は聞かずに食事を再開…する前にもう一度、むっくんをみた。

 

「あ、俺は兄ちゃんと一緒に食ってきたから別に良いよ」

 

「…そう、ですか」

 

海未ちゃんは一応の為に、多目に作っておいた。

けど、むっくんはやっぱり食べてきてて、海未ちゃんは落ち込む。食べてほしかったんだよね、むっくんに。

 

「折角、だし巻きを多目に作っておいたのですが…」

 

「…園田さん、その純粋な優しさだけで良いよ。

でもね、忘れちゃいけない…俺はスポンサー、皆はスクールアイドル。

なんか俺も一緒に合宿する的な雰囲気だったけど、基本的にはマンションとは言え一つの部屋に一緒に寝泊まりするのは許されない事なんだよ。これから先、皆の知名度が上がるんだから…一緒の部屋で寝泊まりして手料理を食べたのがバレたらファンに、ラブライバーに殺されるよ。いや、本当に勘弁してください」

 

海未ちゃんが差し出しただし巻き玉子をむっくんは食べてくれなかった。

……

 

「別に、大丈夫だよ?

むっくんはそんな人じゃないって、穂乃果達は知っているから」

 

あくまでもスポンサーとスクールアイドルだと、無理に一線を置いてくるむっくん。

穂乃果はちゃんと知ってるよ。むっくんはそんな人じゃないって、とっても優しい人だって。

説明が足りない時は多いけども、108円の課題やマネージャーじゃなくてスポンサーになったのは本当に穂乃果達の事を考えてるからこそだよね。

 

「穂乃果ちゃんの言うとおりだよ。

それに、ことりと一緒のお布団で寝てもあっくんなら心配しないよ!」

 

「う~ん…ことりちんと一緒の布団で寝るのは物理的に不可能だと思うよ?

今回、レンタルした布団は通常サイズのメイドインジャパンの布団だから二人入るスペース無いよ」

 

あ、確かに言われてみるとそうだよね。

穂乃果達にはちょうど良いサイズのお布団だけど、むっくんには小さすぎる。

むっくんを基準にした大きさのお布団を今度からはレンタルしないと…

 

「そう言えば、布団とかは誰がレンタルしたの?」

 

「業者とかを探すのは俺がやったけど、最終的な支払いとかはなんかあると面倒だから黛さんに任せたよ」

 

お布団についてむっくんが答えるとビクっと反応をする真姫ちゃん。

こういう時に気付けば黛さんは私達の側に居るから、何処かにいないか探してしまう。

 

「黛さんは普通に寝てると思うよ?」

 

黛さんを探してることに気付いたむっくんは黛さんが何処かを教えてくれた。

 

「起こしに行くのは、やめといた方がいいよ。

あの人、寝るときに住宅街で干したら公然猥褻で捕まりそうな抱き枕抱き締めて寝てるから」

 

ちょっとなに言ってるか、分かんないかな。

 

「て言うか、一緒のお布団で寝るのは嫌だよ。朝勃ちしてるの見られるの嫌だし」

 

「「ぶぅうううう!!!」」

 

「な、ななな、なにを言うてるんむっくん!!」

 

「そっちがそういう意識を変えようとしないんだから、下ネタを混ぜて意識と気持ちを切り替えてもらわないと…じゃないと本当に朝勃ちしてるの見られる。いや、本当に勘弁してください。それは真面目に嫌です」

 

むっくんのとんでも発言に私と海未ちゃんは味噌汁を吹き出し、希ちゃんは顔を真っ赤にさせる。

 

「だだだだ、大丈夫よ。

あれは、アレはただの生理現象なんだから、そのそういうアレじゃなくて、アレだからアレでアレでアレなのよ…意味分かんない事を言わないでよ…」

 

真姫ちゃんがなにを言いたいかが分かんないよ!

 

「そうだよ、生理現象は仕方ない事だよ」

 

なんでだろう、一番動じてないことりちゃんがカッコよくも頼もしくも見えない。

これ以上はこの話題を広げれば穂乃果達の大事ななにかが壊れてしまうとなにも言わず、無言のまま穂乃果達は朝食を終えた。

 

「はい、じゃあこれね」

 

朝食を終え、後片付けを終えて何時でも帰れる準備をすると穂乃果達は紙袋を渡される。

もしかして今日まで頑張った御褒美にケーキが!と中身を確認すると、瓶に入った

 

「サプリメント?」

 

サプリメントだった。

他の皆も中身は同じで、皆一つずつサプリメントが入った瓶を手にする。

 

「まぁ、分かってると思うけど栄養管理とか大事だからね。

スクールアイドル云々を除いても食生活とかそう言うのは気にしないといけないよ…中にノート入ってるから、毎日なにを食べたか書いて写真を撮ってね」

 

むっくんがそう言うので、中身を確認するとサプリメントが入っている瓶以外にノートとなんの栄養が足りないか分からない時用の細かなマニュアルみたいなのが入っていた。

 

「食事管理がどうのこうのとか考えたことなかったけど、栄養学学んでビビったわ。

味噌汁、塩分の塊にも程があるぐらいで数杯飲んだだけで一日の摂取量を越えるんだからさ…栄養学って学ぶよりも学んだ後に実戦するのが辛いんだよね」

 

「あ、うん…食事制限とかは?」

 

「しないって…各御家庭にまで負担を強要はしないから」

 

「それならよかった…うん」

 

なんでこれが最後なんだろう。

 

穂乃果達の思いは多分、一緒になってる。大事なのは分かるけど、なんでこれが最後なんだろう

 

「明日からまた学校だし、酸素カプセルでリフレッシュしてから解散だよ」

 

私達はむっくんの部屋を出て、地下のトレーニングルームに向かった。

 

「準備できてるから、とっとと入れ」

 

トレーニングルームには黛さんがいた。

やっと会えたと心の中でホッとすると、黛さんは誰がどの酸素カプセルに入るかを指示し

 

「酸素カプセル内部は暇だと思うから、暇潰しのDVDだ」

 

穂乃果達にアニメのDVDを渡してくる。

これって布教だよね…あ、バラエティーのDVDもある。

 

「なんか不思議な感じだな」

 

はじめての酸素カプセルに入って10分が経過し、色々な気持ちが落ち着いた。

黛さんに貸して貰ったDVDを見ようとは思えず、ボーッとしていると凛ちゃんからの電話がかかってくる。

 

「もしもし?」

 

『「あ、高坂先輩…その、御時間よろしいですかにゃ?」』

 

「どうしたの、急に?」

 

改まって話をしようとする凛ちゃん。

穂乃果達が酸素カプセルに居るから、全員と相談することは出来ないけど穂乃果で良いなら相談に乗るよと教え穂乃果は凛ちゃんからの返事を待つ。

 

『「私と、かよち…花陽ちゃんって可愛い女でしょうか?」』

 

女子でも女性とも言わない凛ちゃん。

声だけで不安になっているのが分かり、上手く喋れていない。

 

「昨日、なにがあったの?」

 

大泣きして、むっくんに慰めて貰った凛ちゃん。

慰めて貰った時に大きな変化があったと思う。

 

『「凛、あんまり女の子らしくないんです。

かよちんが、おっぱいとか大きくなってるのに凛はあんまり大きくなってなくて、好きな物がラーメンで、男の人達と一緒に行列に並んでたりしてて…髪も短くて」』

 

語尾のにゃが消え、徐々に声が弱々しくなっていく凛ちゃん。

 

『「昔、スカートを履いたら馬鹿にされて…」』

 

「泣かないで、凛ちゃん…凛ちゃんはとっても可愛いよ…花陽ちゃんも可愛いよ!」

 

『「本当に、そう思っていますか?」』

 

素直に答えると、隣にいたのか声を出した花陽ちゃん。

凛ちゃんと同じで声が弱々しくなってる。穂乃果の言葉に怯えている。

 

「そう思っている、二人とも可愛いよ」

 

『「じゃあ、じゃあもし私達をμ'sに入れてくださいと言ったら入れてくれますか?」』

 

「μ'sに入りたいの?」

 

素直に答えると、意外な返事が返ってきた。

 

『「私も凛ちゃんもスクールアイドルが好きです。

キラキラと輝いていて…けど、私も凛ちゃんもそんな風にはなれないって思ってて」』

 

『「凛は、女の子らしくないから」』

 

『「私は運動もダメダメで、引っ込み思案で」』

 

やりたいけど、自分には無理だと思っている二人。

 

『「けど、睦くんが凛の事を可愛いって言ってくれた。

読モでもやってみるって薦めてくれて、嬉しくて…スクールアイドル、やってみたいなって。

昨日、家に帰る途中にかよちんに相談をして、かよちんも本当はやりたいけどってなって…今まで向いてないって、逃げてきたけど本当はアイドルみたいに」』

 

「出来るよ」

 

声が涙声に変わった凛ちゃん。

心配することはないんだよと穂乃果は微笑みながら問題ないと言う。

 

「穂乃果達と一緒にスクールアイドル。

凛ちゃんと花陽ちゃんが加わったμ's。想像するだけで、楽しい。撮影やピザ作りの時でさえ、楽しかったんだよ。

二人が加わったμ'sなら、UTXでみたA-RISEのライブみたいにキラキラと輝ける筈だよ!」

 

『「高坂、先輩…」』

 

「花陽ちゃん、μ'sに入ったら基本的には敬語は禁止だよ。

取り敢えずはマンションに来てよ、スポンサーのむっくんに教えないといけない。

泣いてる顔を見せたら、皆心配しちゃうから笑顔になってマンションに…ファイトだよ!」

 

私はここで電話を切った。

酸素カプセルから今すぐにでも抜け出して、皆にこの事を教えたいけど我慢をする。

 

「今回の合宿は本当に大成功だなぁ…」

 

皆の知らない事を知ることが出来て、はじめての動画撮影や歌の撮影も出来て…新しいメンバーも加わった。

むっくんのお陰で大きな一歩を踏み出すことが

 

「ぶっちゃければ、二人のμ's加入は反対だけど最終的な決定権は穂乃果ちんにあるから。はい、これ書類ね。親御さんにサインを貰ってきてね。解散!!」

 

出来た筈…だよね?





NG集

「すぅう…ふぅ…」 

鰹ベースの出汁に溶けた味噌が混ざり、程好いしょっぱさになる。
陽気な5月初旬、意識を起こすには最適なしょっぱさで、文字通り身も心も暖まる。
具は王道的な豆腐ではなく、大根と人参を短冊切りしたもので下処理を完璧にしているから変な蘞味はなく、スッキリとした味わいがある。

「はぁ…海未ちゃんの味噌汁、おい、あっつ!?」

「穂乃果、なにをやっているのですか!?」

「うわああ、熱いよ!!」

「水、真姫ちゃん水を持ってきて!!」

海未ちゃんの味噌汁の感想を言おうとしたら、味噌汁のお椀を持っている指に汁が触れ、穂乃果は手を離してしまい膝に味噌汁と熱々の具材がかかってしまい

「やっほ…うっわ」

「むっくんのエッチ!」

新しい服に着替えてる時にむっくんがやって来た。


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1、2巻はコメディで、それ以降はバトルに変わる漫画は一番大事な考えとかをどっかで忘れる。

貞操概念が逆転してるか緩いやつを書こうかなと思ったが、既に色々と終わってるのを書こうと思ったが思っただけだった。
感想、ほしい。


「うう~」

 

「ほら、手が止まってるわよ」

 

睦くんが物凄く嫌な顔で凛達のμ's加入を反対した。

けど、最終的な決定権は睦くんは持ってなくて、穂乃果ちゃん達は良いよと言ってくれてμ'sに加入する書類を貰った凛達はμ'sに入る事が出来た…のに

 

「外に出て、走りたいにゃ!」

 

「ダメよ」

 

スクールアイドル活動を一切せず、高級マンションの睦くんの部屋に集まり勉強会を開いている。

理由は来週から中間テストがあるから、酷い点数を叩き出すと睦くんが皆のお父さんやお母さんに怒られる。割と洒落にならないレベルで怒られる。

凛達が原因で凛達の両親に睦くんが怒られる姿は想像するだけでも嫌だし、なにがなんでも赤点は回避しないといけない。

 

「かよちん、休憩しない?」

 

「じゃあ、穂乃果も」

 

「まだ始まって10分しかたっていませんよ!」

 

「後で睦さんが来るから、その時に休憩だよ」

 

休憩は大事だと提案するけど、海未ちゃんとかよちんに却下される。

うう、どうしよう。英語、全然分かんないにゃ…

 

「にしても、むっくんが勉強を見てくれへんとは思わんかった…」

 

希ちゃんは手を動かしながら、そう呟く。

睦くんは後からやって来るけど、凛達の勉強は一切手伝ってはくれない。

此処のマンションのオーナーの赤司さんも、黛さんも手伝ってはくれない。

 

「でも、ことり達が頑張れば良いだけだから頑張らないと」

 

正確に言えば、今回の中間テストは手伝ってはくれない。

部活動に勤しめば、成績が下がるのは必然。そう、必然。けど、それでも成績を維持したり上げたり出来る人ってたまにいる。

 

「まぁ、紫原くんの言っている事は凄く真っ当ですからね」

 

紫原くんは「成績下がる人は下がるけど、維持したり上げたり出来る人もちゃんといるんだから、そもそもの話でテストの為だけに勉強するってそれって勉強なの?て言うか、授業を真面目に受けとけば70~90は余裕でしょうに」と言う少しだけイラッと来ることを言った。

けど、真姫ちゃんとか海未ちゃんを見ていると普段から真面目にやっている人はそう言うのは必要ないのがよく分かる。

 

「でも、むっくんが頭良いのはちょっと驚きだよね」

 

「偏差値72って、意味分かんないわ」

 

テーブルの上に置かれている一枚の紙に私達の視線が集まる。

それは全国模試の結果が記されている用紙で、全国模試を受けたのは睦くん。

二十何万と言う大勢の学生が受けているなか、結果は43位と高いのか低いのかイマイチ反応がしづらい結果だけど、凛達より遥かに頭が良いのは確かだにゃ。

何処の高校に通ってるか聞けば偏差値72の進学校に通ってて、成績もトップで…カッコいいなぁ…

 

「睦くん、早く来ないかにゃ」

 

息抜きのおやつを持ってきてくれる睦くんが待ち遠しい。

 

「そう思うなら、手を進めなさい。

この勉強会だって、紫原がやっときなよって言ってくれたものなんだから」

 

「うん…」

 

「睦さんは、ちゃんと私達の事を考えてくれてるね」

 

凛達はμ'sの加入を願ったけど、睦くんは嫌そうな顔をしていた。

凛が可愛いと言ったのは社交辞令なのかって、貰った書類とにらめっこをしていると気付けば泣いていた。かよちんに会いたくなって、会いに行くとかよちんも泣いていた。

やっぱり心では可愛いなんて思っていないと、貰った書類を返しに行った。穂乃果ちゃん達はなんでと聞いてきて、ちゃんと説明をしたら睦くんを呼び出して説教をしようとした…

 

「でも、あの時のジャイアントスイングは凄かったにゃ」

 

そしたら穂乃果ちゃんはジャイアントスイングをくらった。

海未ちゃんとことりちゃんは凸ピンで沈められ、睦くんの怪力を知った。

うん…自分の学校のスクールアイドルをしている先輩がゲロを吐くところを見るなんて生まれてはじめての体験をしたにゃ。したくない体験だった。

けど、睦くんがなにを言いたかったを知ることは出来た。

 

「思い出したら、なんか気持ち悪くなってきた」

 

凛とかよちんはスクールアイドルに憧れて、μ'sに憧れて、μ'sになりたいと言った。穂乃果ちゃん達はOKを出した。だけど、睦くんは嫌な顔をした。

その事について詳しく聞いたら分かった、凛もかよちんも、穂乃果ちゃん達も色々な勘違いをしていたのを。本当は凛達を思って嫌な顔をしていた。

穂乃果ちゃん達がスクールアイドルを始めたのは、μ'sが生まれたのは音ノ木坂が廃校になるから。それまで穂乃果ちゃんはスクールアイドルのスの字も知らなかったみたい。

 

 

 

 

音ノ木坂が廃校になるから、スクールアイドルをはじめた。

 

 

 

 

スクールアイドルになって、音ノ木坂の知名度を上げたい。

 

 

 

それは純粋なまでに音ノ木坂を思う気持ちで、立派な事だと思う。

凛も言われるまでは気付かなかった、コレがなにを意味する言葉なのかを。

穂乃果ちゃん達もそれがどういう意味なのか、全くと言って理解していない。本当の意味で理解をしていたのは、睦くん達男性だけだった。

 

「ウチ等は、知らん間に天秤を傾けてたんやね…」

 

顔色を悪くした穂乃果ちゃんをみて、希ちゃんはこの前の睦くんを思い出す。

 

 

 

 

音ノ木坂が廃校にならないでほしいと願い、その為にとスクールアイドルをしている。

 

 

 

 

 

だから、μ'sは一番を目指すのが目的じゃない。

 

 

 

 

 

音ノ木坂の廃校を阻止することが何よりの目的だ。

 

 

 

 

 

スクールアイドルの一番になることは良いことで、一番になったら音ノ木坂に生徒は集まって凛達の後輩が増える。それは良いこと。でもそれはそれこれはこれ。

何時かは選択しないといけない日が来る。

もし東京で一番のスクールアイドルを決める大会と学校でライブをする日が被った場合、絶対に学校でライブをする日を優先しないといけないと睦くんは言った。

スクールアイドルをしたいからスクールアイドルをしているんじゃなくて、スクールアイドルで廃校を阻止したいからスクールアイドルをしている穂乃果ちゃん達はそれを破ってはいけない。もしそれを破るなら、睦くん達はスポンサーを降りる。一切手伝わないとまで言った。

 

「凛達は絶対に後悔しないにゃ」

 

「私達は皆みたいになりたいから、μ'sに入りたいって言ったから気にしないよ」

 

μ'sで一番を目指す事は出来るかもしれないけど、出来ないかもしれない。

音ノ木坂の廃校を阻止することがメインだから、それを私達は理解していなかった。

その辺を凛達は睦くんに説明をしてもらい、それでもと凛達はμ'sに加わった。

 

「お~い、勉強捗ってる?」

 

あの日の事を思い出していると、ヘルメットを被った睦くんがやって来た。

ケーキが入っている箱を持っていて、凛達が勉強をしているテーブルの上に置いた。

 

「差し入れ、ありがとう。

って、言いたいところだけど私達はじめたばっかなのよ」

 

「ああ…そう言えば、来週からだったね。

俺達は今日までだったから、ケーキ作る時間が沢山とれたよ」

 

真姫ちゃんはお礼を言いながらも、ケーキが入っている箱を冷蔵庫に入れる。

なんか熟練のカップルみたいな馴れた手付きで作業をしている…羨ましいにゃ。

真姫ちゃんみたいな対応が凛にもって、それは凛には無理か。真姫ちゃんは綺麗な女子、凛は可愛い女子。方向性が違うから、凛なりの方法でやらないといけない。考えることは大事だって、合宿の動画撮影の時に黛さんは言っていた。考えろと。

 

「睦くん、テストどうだったの?」

 

「どうって言われてもね…まぁ、そこそこなんじゃないの?」

 

テストの出来を聞いてみるけど、特にテストを気にしない睦くん。

授業さえ受けてればそれなりの点を取れるだけあって、なにかこれといった事はない…うん、そうだよね。

睦くんは真面目に色々と考えていて、凛達が道を踏み外そうとしたりわかっていなかったら教えてくれるけど…それだけ。

 

「……行ったみたいにゃ」

 

皆の勉強の邪魔をすると悪いからと赤司さんの所に行ったのを凛は確認すると大きなため息を吐いて勉強に戻る。

 

「あの、一つだけ聞いても良いかな?」

 

「何処が分からないの?」

 

黙々と勉強を進めているとかよちんが手を上げた。

凛よりかよちんの方が成績が良いから凛は特になにも言わず、真姫ちゃんがかよちんのノートを覗きこむ。

 

「そうじゃなくて…睦さんって、何者?」

 

「…知らないわ。

穂乃果達がスカウトしてたのは覚えているけど…貴女、疑っているの?」

 

「疑っていないけど、その、気になっちゃうの。

スポンサーとして私達の事を考えてくれるだけじゃなくて、ケーキまで持ってきてくれて…嬉しいけど、冷たい部分があるから」

 

真姫ちゃんに冷ややかな目で見られるけど、直ぐに否定するかよちん。

言われてみればと言うより、黛さんも赤司さんも何処となくドライな部分がある。

睦くんも邪魔しちゃいけないと勝手に出ていったし…

 

「もっと仲良くしたいなって…」

 

何時もみたいに引っ込みながらも、恥ずかしがりながらも自分の気持ちに正直になるかよちん。

 

「確かにそうだよね。

入ったばっかの凛でも睦くんが無理矢理一線を置いてるのが分かるにゃ…取り敢えずは、ケーキを食べるのを誘ってみないかにゃ?」

 

「それはダメだ」

 

「にゃああああああ!?」

 

「ビェエエエエエエ!?」

 

「「「「「キャアアアアアアア!!」」」」」

 

「…お前ら、疲れないか?」

 

席を立ち上がり、睦くんを誘いに行こうとすると黛さんが凛の肩に触れた。

余りにも突然の出来事のせいで、凛は吠えて、かよちんは怯え、他の皆も叫んだ。

 

「ま、黛さん!

影薄いから居るなら居るって、教えてくださいにゃ!」

 

本当に本当に本当にこの人は心臓に悪い。

赤司さんは一対一で対話をしたくない人、黛さんは心臓に悪い人…と言うか、影薄すぎるにゃ。

 

「…見つけられないお前達が悪い。

それよりも、紫原を誘いに行こうとするのはやめておけ…いや、違うな。やめろ、これはオレの命令だ」

 

「なんで私達が黛さんの命令を聞かないといけないんですか、スポンサーは紫原くんですよ」

 

「…赤司みたいには行かないか」

 

紫原くんを誘いに行くのを止める様に言ってくる黛さん。

いくらなんでも裏方の黛さんに命令させる指図される筋合いは無い。

 

「とにかく紫原とは仲良くしようと言う考えは捨てておけ。

仲良くすればするほど、お前達にとって辛い事になる。紫原は元から冷たい方だが、それでもその辺は意識している」

 

「…それは、私達と紫原くんの関係ですか?」

 

「その辺は想像にお任せする、じゃあな」

 

黛さんは紅茶の茶葉を置いて出ていった。

 

「穂乃果達と、むっくん達は…」

 

本当は睦くんは力を貸しちゃいけない、いてはならない存在。

スクールアイドルは学校のアイドル、他校の生徒の睦くんは知られたらμ'sは終わる。

 

「いざと言う時には、紫原を切り捨てないといけないのよ、ね…」

 

書類に書かれていた事を思い出す真姫ちゃん。

もし、睦くんの事がバレて大問題になった時、睦くんの事を切り捨てないといけない…けど、そうなると睦くんはどうなるか分からない。坊主頭になるだけじゃすまない。

バレて大問題になると言うのは、凛達がスクールアイドルとして物凄く人気が出ている。

かよちんが言ってた、ファンの中には過激な人とかアンチとか色々といる…もし、睦くんが刺されたら、ファンの皆を殺しちゃおう。

凛の事を可愛いからとか言って、妬むファンだったら、海の底に沈めないと…スクールアイドルになって凛を可愛いって言ってくれるのは嬉しいと思うけど、スクールアイドルになる前から可愛いって言ってくれたのは睦くんだけ。

 

「果たして、あの言葉をどう捉えるか。

これだから転生者はやめられない、他人の不幸は蜜の味だな…にしても、フラグは立ちやすいな。男性が居ない分、チョロイン度合いが…いや、あいつは余計な要素が絡まなければ真面目だからな…ヤンデレになれ、もっと病め。」




その後

「取り敢えず、ケーキを食べませんか?」

「あ、じゃあ私、紅茶入れるね」

睦くん達のことはさておき、勉強は本当に辛いので休憩をすることにした。
ことりちゃんは馴れた手付きで、紅茶に使う道具を用意しながら…

「かよちん、アレって中性の童話にしか出てこなさそうなポットにゃ!」

お湯を沸かすけど、お湯を沸かすポットがやかんとかじゃなくて紅茶用のポットだと分かるようなポットだった。
馴れた手付きで紅茶の茶葉の準備をはじめることりちゃん…

「ほら、見ていないで貴女も準備をしなさいよ」

「あ、う…んん…真姫ちゃん、なにそれ?」

「なにって、フォークじゃない」

薄いアタッシュケースみたいなのに入っているフォークとかスプーンとかのセット、初めて見た。
先の部分が三つしかなくて一番左の部分が少しだけ太いフォークを人数分取り出す真姫ちゃん

「…こ、これは」

みるみる内にケーキを食べる準備はされていく。
ただその…家でもかよちんの家でも出ないような道具とか使っていて、気品溢れる感じがしてどうしても一歩引いてしまう…あ、凛だけなにもしてない。

「り、凛が…わ、(わたくし)が此方のケーキをお切りになりますですわ!」

なにいってるんだろう。
雰囲気に飲み込まれた凛はケーキ用の包丁を手にしておかしな事を言った。

「凛ちゃん、そんなにあがらなくて良いよ。
テーブルマナーとか、そう言うのをしないといけないわけじゃないし…多分、出来ないかな」

あははと笑いながらも凛がケーキを切るのを待ってることりちゃん。
そう言えば、どんなケーキなんだろう。

「…生肉?」

ケーキが入っている箱を開けると、中から生肉が出てきた。
後は切って、焼くだけで良い感じのサーロインステーキの塊…

「あっくん、こんなのも作れるんだ!」

みたいなケーキだった…

「やっぱ、女子力って必要かな…」

ケーキ、オイシイ。


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人事を尽くして天命を待つのだよ

感想、く、れ。ほしい。


「ふぅ、終わったぁ!!」

 

「お疲れ様、穂乃果ちゃん」

 

長いようで短いテストが遂に終わった事に喜び、体を伸ばす穂乃果ちゃん。

今日までスクールアイドルとしての活動を禁止にされていて、お母さん達にも万が一と言う連絡をしてたから、コッソリとサボったりなんて事も出来ずに色々と我慢をしていたけどもう我慢しなくて良いから私達も色々と肩が軽い。

 

「穂乃果、手が真っ黒ですよ」

 

体を伸ばしている穂乃果ちゃんの右手が真っ黒な事に気付いた海未ちゃん。

皆が同じ問題をしてて、ことりも海未ちゃんも手が汚れては居るけど、穂乃果ちゃんほど酷くはない。けど、汚れているから手を洗った。

 

「でも、そんなに汚すなんて…もしかして一個ずれていたの?」

 

解答欄が一個ずれてて、書き直していたって言っても通じるぐらいに黒かった。

今回の中間テストはことり達が受けたテストと大きく異なり、酷い点数は取っちゃだめ。

全教科平均以上の点を取って、あっくんを安心させないといけない。もし誰か一人でも取ったら、ことりのおやつにしちゃうよ♪

 

「問題用紙の方にも答えを書いてて、途中で解答用紙の方の間違いとか気付いちゃってさ…」

 

「問題用紙に、ですか」

 

「うん…むっくんを安心させてあげたいから…」

 

パラリと折り畳んでいた答案用紙を開く穂乃果ちゃん。

選択問題の答えや文章の答えが沢山書かれていて、消された後も沢山ある。

 

「穂乃果ちゃん、実は私もなんだ!」

 

同じ事をしていたんだね。

ことりは問題用紙の書き込みを見せ、海未ちゃんに視線を向ける…けど、出なかった。

…よかった、一早く、あっくんに良い成績を報告できる。皆が同じことをしてたら、意味はないよね

 

「今回のテスト、難しかったよね」

 

「うん…事前に勉強をしててよかったね」

 

一週間前に詰め込んで本当によかったと思う。

酸素カプセルに入って、疲れは取れたけどGWを返上したり朝練で早起きして意識が寝惚けてたりして授業が入ってこなかったりで本当に大変だった、けど、充実してたかな。

 

「でも、それでも終盤の問題が分かんなかったからこれ使っちゃった」

 

穂乃果ちゃんは何処も削られていない1から6まで書かれた鉛筆を見せる。

 

「ことりも何問か分かんなくて、最後は運試しだよ…けど、自信はあ」

 

「ヴェエエエエ、イミワカンナイワヨ!ナンデナノ!?」

 

「…真姫?」

 

自信はあるよと言おうとしたら、真姫ちゃんの声が響く。

生徒数が少なくて、教室が近いから大声を出したら響くけど此処まで聞こえるなんて、何があったの!?

 

「な、なにがあったの!?」

 

こんなに大声で叫ぶ真姫ちゃんは早々に聞かない。

凄く気になったけど、直ぐに帰りのSHRが始まって自己採点も出来ず、帰りの挨拶を終えた。

 

「取り敢えず、下駄箱に行こう」

 

「そうだね」

 

教室だと迷惑をかけそうだと穂乃果ちゃんの意見に賛成し、下駄箱に向かう。

一年生は1クラスだけだから、一年生の下駄箱の前で待っていれば真姫ちゃん達に会える。

 

「あ…めっちゃ、響いてたね」

 

「うん…何があったんだろ…」

 

同じ事を考えていた希ちゃんは先に下駄箱にいた。

なにかを知っているかと思ったけど、なにも知らず穂乃果ちゃんもなにも知らないので、待つことにした。

 

「あ、凄い!殆ど合ってるよ!」

 

待っている間、暇だから問題用紙とノートとかを照らし合わせて答え合わせをする。

穂乃果ちゃんのテスト、選択問題のところが全部合ってる。選択以外の問題もあってて、75以上は固い…あれ、でも確かコロコロ鉛筆って、マークシート式の問題にしか使えない筈だよ、ね…

 

「…」

 

「も、もぉ、真姫ちゃん。

今回は運が良かっただけにゃ、リスニングの問題とか出たら凛はもっと酷い点になってたよ!」

 

「私は、その運に見放されたのね…人事を尽くさなかった罰かしら?天命を受けられないわよね」

 

「け、けど、真姫ちゃんは総合では凛ちゃんよりも上で一位!凄い!流石真姫ちゃん、略してさすまきだよ!」

 

「…専門職を除けば勉強なんて、中1ぐらいまでで良いのよ…英語を除いてはね。

此処は、外国人がいっぱいいる東京だから、就職するにしてもバイトするにしても英語必須で、英語は世界が決めた標準語なのよ」

 

コロコロ鉛筆の事を考えていると、レイプ眼の真姫ちゃんを真ん中に、凛ちゃんと花陽ちゃんが必死になって励ましていた。

 

「え~っと…」

 

「あぁ、高坂先輩。

テストどうでしたか?貴女が一番赤点の可能性があります」

 

「後で数学の採点をするけど…ほ、本当になにがあったの?」

 

敬語で話すなんて、真姫ちゃんらしくないよ。

あっくんがTPOを弁える場所以外ではタメ口OKと言って直ぐに敬語で話さなくなったのに…

 

「もしかして、真姫ちゃん…赤点取ったん」

 

「希、なに言ってるのよ、赤点なんて有り得ないわ…凛が苦手な英語で満点を取っているのだから、私が赤点なんて有り得ないわ」

 

「え、凛ちゃん満点なの?」

 

テストが危なく、赤点を取る可能性があったのは凛ちゃんと穂乃果ちゃん。

穂乃果ちゃんは今回はちゃんといけたよと言っていて、後は凛ちゃんだけだけど、まさかの満点だった。

 

「満点かぁ、穂乃果、絶対にミスしてるから満点じゃないんだよね」

 

「っ…」

 

「穂乃果…いえ、真姫、なにがあったのですか?廊下にまで響いていましたよ」

 

海未ちゃんが叫んだ事について聞くと俯く真姫ちゃん。

鞄から二枚の紙を…二枚の英語の問題用紙を私達に見せてくれる。

 

「睦さんに、迷惑かけたくないから私達、全部のテストの問題用紙にも答えを書いてて…凛ちゃん、合ってるかどうか不安で真姫ちゃんに聞いたら」

 

「あ、これ一問だけ間違っとるね」

 

たった一問だけ答えが違う問題用紙の解答。

凛ちゃんが満点だから、不正解がある方が真姫ちゃんになる。

 

「な、なにを落ち込んでいるんですか!

私達は去年の最初の中間テストの英語で誰一人も90点代にいってません」

 

「せ、せやで。

一年の中間テストの英語、ウチも、エリチも満点じゃないんやで。

その、真姫ちゃんは凛ちゃんの勉強を見てたし、仕方ないんよ」

 

「…そうだったら、どれだけよかったと思う?」

 

「っひ!?」

 

首を傾げ、海未ちゃんを見つめる瞳孔が開いた真姫ちゃん。

綺麗な髪が血で染まったかの様に見え、首を傾げているせいか何本か髪の毛が垂れて私きれい?と聞いてくる妖怪みたいになっており、穂乃果ちゃんは一歩引いてしまう。

ヤンデレ真姫ちゃんだ。

 

「凛ちゃん、英語、頑張って勉強したけど分からないところ多くて…鉛筆を転がして、残り全部を埋めて…全問正解だったの…」

 

「鉛筆…穂乃果も鉛筆を転がしていましたよね。

そう言えば、穂乃果は何時の間に鉛筆を用意していたんですか?」

 

私達はもう高校生。

中学生になりたてや小学生ならまだしも、高校生なら筆記用具はペンじゃないとダメ。

現にクラスの皆、ペンを使っていて穂乃果ちゃんもシャーペンを使っているのに…一本だけ、鉛筆を持ってきていた。

削られていない鉛筆、雪穂ちゃんも使う年齢じゃないし、穂乃果ちゃんの家でも使わない。

探せば一本売りもあるけど、基本的にはまとめ買いだけど…その為だけに鉛筆を購入するのは勿体ない。

 

「テスト前の最終日にマンションで黛さんが『赤点を取るのは本当にやめろ、紫原は同年代の東條もいるからある程度は保護者も多目に見てくれるが、高校卒業しているオレは許してくれない』って、穂乃果と凛ちゃんに、この湯島天神の鉛筆を貸してくれて…」

 

「鉛筆転がしに使えって、しつこく言ってきたにゃ。

筆記用具として使ったら躊躇いなく拳骨叩き落とすって言ってきて…流石に凛達も鉛筆はもう使わないにゃ」

 

鞄に入っている筆箱から鉛筆を取り出す穂乃果ちゃんと凛ちゃん。

さっきは特には気にしていなかったけど、鉛筆には湯島天神と刻まれていた。

 

「うわ…ス、スピリチュアルやん」

 

穂乃果ちゃんと凛ちゃんの持つ湯島天神の鉛筆を見せてもらう希ちゃん。

マジマジと見つめるとそう呟き、なんか渋い顔をする。

 

「もしかしてなにか見えるの?」

 

ことりの質問を答えず、穂乃果ちゃん達に鉛筆を返す希ちゃん。

 

「…そう言えば、むっくんの住んでる部屋って事故物件やった」

 

「ま、待ってください。何故今それを言うのですか!!」

 

徐々に徐々に鉛筆が恐ろしくなっていき、怯えはじめる海未ちゃん。

え、て言うかむっくんって事故物件に住んでるの?と言うか、それだと希ちゃんの部屋は事故物件の隣って…うん、やめよう。忘れよう、ちゅんちゅん。

 

「これって、カンニングに入るのかな?」

 

鉛筆を見て穂乃果ちゃんは呟く。

普通は験担ぎとか御守りとかに使う湯島天神の学業成就の鉛筆、御利益が強すぎて凛ちゃんを満点に導き、穂乃果ちゃんを高得点を与えた。

 

「カンニングじゃなくて、鉛筆コロコロ…勘だからセーフにゃ!」

 

御利益がありすぎて、穂乃果ちゃんに罪悪感が生まれたけど凛ちゃんはセーフだと言う。

そして湯島天神の学業成就の鉛筆を強く握りしめ黒い笑みを浮かべる。

 

「フフフ…これさえあれば、テストで怖いものなし。

凛の一番大嫌いな英語で満点を取らせてくれる…本当にこの前までの勉強会ってなんだろうって思うけど、期末テストでも役に立って貰うにゃ!!」

 

「ダ、ダメだよ!凛ちゃん。

それ、終わったら黛さんに返すってさっきまで言ってたよね!!」

 

私の時代が来たとドヤ顔の凛ちゃんだけど、花陽ちゃんは止める。と言うよりは、鉛筆を奪おうとするけど、凛ちゃんが返そうとしない。

 

「凛、今すぐにそれを黛さんに返しにいきますよ!

そんな物があったら、堕落する一方で貴女が成長しません!!穂乃果、貴女の鉛筆もです!」

 

「嫌にゃ!」

 

こんなものはダメだと穂乃果ちゃんから鉛筆を取ることは出来たけど、凛ちゃんから鉛筆を取れない海未ちゃん。二人の一進一退の攻防が繰り広げられ、これは大変な事になるんじゃないかなと思っていると

 

「とった!!」

 

真姫ちゃんが一瞬の隙をついて凛ちゃんと海未ちゃんから鉛筆を奪った。

 

「真姫、ナイスです。それをこちらに…真姫?」

 

鉛筆をくださいと手を出すが、渡さない真姫ちゃん。

ただじっと湯島天神の鉛筆を見つめて小さく笑う。

 

「こんなものがあるから、いけないのよ。

と言うよりは、黛さんに返したら黛さんが使うだけじゃない…こんな物はこうよ!!」

 

争いの元である湯島天神の鉛筆。

誰が持っていても得するけど、人としてダメになる鉛筆を真姫ちゃんは破壊するべく腕を大きく振りかぶり地面に叩き付けた。

 

「きゃおん!?」「にゃあ!?」

 

地面に叩き付けただけで、鉛筆は壊れるほど脆くない。

地面を弾いて、壁に激突し、弾かれ、まだ壁に激突しを繰り返し最終的には真姫ちゃんと凛ちゃんの額にぶつかり二人を倒した。

 

「…凛ちゃんに天罰が与えられましたね…」

 

「真姫ちゃんは…ありがたい物を壊そうとしたから、祟られたんやね」

 

花陽ちゃんと希ちゃんは鉛筆を回収する。

海未ちゃんと穂乃果ちゃんは祟られ、天罰がくだった二人を回収し急いでマンションに向かうけど、ことり達はテストだから早く帰れた事を忘れてた。

 

「あ、この鉛筆?

何度も何度も頼りきると効力失うんだよ、テスト前にコツコツと勉強している奴等には物凄く効力発揮して…まぁ、バカでも90点以上は余裕だな」

 

鉛筆の事について帰って来た黛さんに聞けばそんな言葉が返って来た。

そして

 

「海未ちゃんと並んでるね!」

 

「そうですね…ヨッシ!」

 

鉛筆のお陰か、物凄く良い点数を取れた穂乃果ちゃん。

ただ鉛筆を使えない問題もあり、幾つか間違えており最終的には海未ちゃんの一つ下の成績で数点差で海未ちゃんの方が上で…海未ちゃんは小さなガッツポーズをした。後、凛ちゃんは学年二位だった。

 

「音ノ木坂のレベルは…まぁ、この程度か。ノー勉で100は余裕だな」

 

因みにテストの採点は赤司さんがしてくれて、テストを見て鼻でわらっていました。ちゅんちゅん。





裏ブライブ 最強のコロコロ鉛筆



「赤司、湯島天神の鉛筆を買ってきてくれないか?」

この話の二年ぐらい前の受験シーズンのある日、黛は赤司に買い物を頼んだ。
しかし、赤司は疑問を持つ。

「黛さん、必要ですか?」

黛の進路は専門学校。
試験はあるにはあるが偏差値70を越える高校を卒業した黛にとっては余裕であり、何よりも黛はこの世界にいる点生者で一番の大ベテラン。
赤司の唯一の天敵で同期の転生者はそれなりに転生しているが未だにバカだが、黛は普通に勉強が出来るタイプの人間だ。

「験担ぎとかそう言うのも必要だし…黄瀬と虹村が赤点を取りそうで怖い」

「…ああ…」

何だかんだでこの人は心配をしているんだなと優しさを感じながらも、黄瀬と虹村を思い浮かべる赤司。彼等二人は体育科とかの学校ならば問題ない学力だが、偏差値が高い学校には合わない学力を持っており、テストで100ではなく60を取る勉強をしてなんとか頑張っているが、何時かやらかしそうで気が気で無かった。

「それならば、僕じゃなく黛さんから手渡ししてください」

「いや、オレが渡したところでたかが知れている。
…【天帝】なんざクソ痛い異名を持つお前が渡した方が御利益がありそうだ」

恥ずかしいのか、面倒なのか本気でそう思っているかは分からない。
けれど、赤司は一つだけ分かった。

「女性用の下着をを貰うのと女性用の使用済みの下着を女性から貰うのでは大きく違うということか」

「まぁ、そう言うことだ…いや、合ってるのかその例え?」

「ついでですから、お参りに行きませんか?湯島天神からの神田明神に」

「アホか、神田明神でお祈りしても意味ねーんだよ。
宗教が違うだろう、彼処は教徒(ラブライバー)が御祈りを捧げるところで…オレは異教徒(デレマス派)、捧げても効力は発揮しない…因みに押しは十時愛梨だ…」

なんて事があり、赤司は鉛筆を買いに行った。
そして学業成就の鉛筆を1ダースを購入し、元から持っている緑間以外に渡して余った鉛筆は黛が保管することになり、その年の学年末試験で黄瀬は大きく救われる。
しかし、調子に乗って何度も何度も鉛筆を使い勉強しなくて良いやとなった為に天罰がくだり、期末テストで赤点を叩きだし、全国大会(インターハイ)には出場することが出来なかった。


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カッコいい台詞はすべてが終わった後にカッコよくなる

感想、待ってる。執筆意欲がわくから、待ってる。


「改めまして、皆さんはじめまして!

俺も今回から皆さんのスクールアイドル活動を応援し、手伝うことにした黄瀬涼太っす!」

 

凛ちゃん達の紹介動画に加え、新曲のPVと続々動画を撮影。

中間テストも好成績な穂乃果達μ'sはむっくんから呼び出され、マンションに…赤司さんの部屋にやって来た。

 

「はい、拍手。

黄瀬ちんは主にダンスとかの肉体使った技術とかを向上させたりしてくれるよ」

 

「ダンス以外にも色々と出来るっスよ、声帯模写とか…ファイトだよ!」

 

「あ、穂乃果だ!」

 

赤司さんの部屋に案内されると、旅館とかにある木製の座椅子が人数分用意されていて、大きな長方形のテーブルに向かい合う様に穂乃果達は座ると黛さんがお茶とお菓子を出してくれ、結構本気の会議っぽい空気が流れ、前に穂乃果達をナンパしてきた人を紹介した。

黄瀬さん、穂乃果の声にそっくり真似できてる。凄い!

 

「あんたが私のプロデューサー…ふ~ん、ま、悪くないかな?って、痛いっす!」

 

「黄瀬、世の中にはやって良い冗談と悪い冗談がある…僕を怒らせたいのか?」

 

「『ふーん、アンタが私のプロデューサー?…まあ、悪くないかな…。』が正しい」

 

「黄瀬ちん、なに間違ってんの?顔面Pの字に変わるほどボッコボコにされたいの?」

 

穂乃果が褒めると、別の声に変える黄瀬さん。

だけど間違っちゃってむっくんに脛を蹴られ、赤司さんに睨まれ、黛さんに間違いを指摘される。

 

「…すいませんでした」

 

若干どころか結構涙目の黄瀬さん。

不敏に思えるけど、赤司さん達がかなり怒っているからなにも言えない。

 

「はい、じゃあミーティングを開始します。

皆様が動画を御覧になっているかどうかは不明ですが、動画は好調です」

 

司会進行を勤めるむっくん。

大事な話し合いの場で髪を纏めており、何時もみたいな緩い口調でなくハキハキと喋り会議を進める。

 

「動画、好調なんだ…よかった…」

 

むっくんから好調だと聞いて、花陽ちゃんはホッと一息つく。

スクールアイドルが動画投稿をしているのは極々普通で、A-RISEの様なトップともなればミリオン越えてたりするから、基準がイマイチ分からず成功しているかどうか分かんない。

 

「歌系の動画は触れると闇があるから、御自身で調査をお願いします。

企画系の動画なんですが、動画再生数も良くてgoodの評価も多い…んだけどねぇ…」

 

ノーパソを見て、眉を寄せるむっくん。

よくよく見ると片方の耳にワイヤレスイヤホンをつけている。

 

「badの評価も少ない、あるにはある。

ファンがいる分、アンチとか素直に嫌いとか言う人達も居るから気を付けてください。

現時点の割合で言えば、8:2で…あ-その内、7つのbadは俺達だからこれ9:1なのかな?」

 

「いや、そもそもで動画を見ていない人達がいる。

アンチとかファン以前に、μ'sは知名度と言う点で低すぎてそのレベルの話にはまだ早すぎる」

 

「あぁ、そっか」

 

耳につけているワイヤレスイヤホンを外したむっくん。

 

「ちょっと、どう言うこと…なんですか?」

 

「あぁ、君達は別に敬語はいらないよ。今まで通りにしてくれて構わない」

 

サラッと語られた事に驚き、声をあげる真姫ちゃん。

何時も通りに喋ろうとしたけど、赤司さんを見て言葉を直そうとする…赤司さんに変にタメ口で喋れないよね…

 

「badにしているのは、アレは君達の動画じゃないからbadにしているんだよ」

 

「穂乃果達の動画じゃない?」

 

パソコンを穂乃果達に見せる赤司さん。

パソコンには第一回目の100円(+税)の動画が流れており、badに評価されている。

 

「これは、君達が考えた企画じゃない。

企画等は君達も考えることが出来て、プレゼンが通れば撮影は可能なのは書類に書いていた筈だ」

 

「確かに、これってあっくんが考えた企画だもんね…ことり達が進行じゃなくて、あっくんが進めてる、あっくんの動画だね…」

 

司会進行役も雪穂がしていて、むっくんの指示通りに動いてる。

この動画に出ている穂乃果達は例えるならバラエティ番組の雛壇芸人。

ゲストとして出られるだけありがたいかもしれないけど、目指すのはMCで番組のタイトルに芸名が入っていたら尚良し。

 

「と言うわけだ、人数も増えたし動画の企画を考えてほしい」

 

「企画…そう言えば、ことりちゃん、石窯のやつはどうなったん?」

 

動画の企画を考える事になると、合宿の時に言っていた事を思い出す希ちゃん。

あの時に食べたピザの味は今でも覚えていて、黛さんが一枚も生地をくれなかった。雪穂のピザ生地を黛さんは回して伸ばしたから、雪穂のピザが一番美味しかったなぁ。

 

「それが…ずっと、ボツをくらっちゃってて…黛さんがとっても厳しいの」

 

「当たり前だ。ただ素人がピザ焼くだけの動画なんぞ、受けん」

 

まだ出来ないよとしょんぼりすることりちゃん。

 

「料理系の動画はまずいっすよ。

女子力アピール出来るけど、ヘタクソだとネタになるのが丸見えで…メシマズとか緑色の紙召喚案件で」

 

「そう言う黄瀬さんは、料理が出来るんですか?」

 

「料理は出来るけど、出来るだけでする方じゃないかな。

後、さんはいらないッスよ、フレンドリーで敬語なんてTPOとか必要な場所で、適材適所で」

 

海未ちゃんの質問を最後に料理系の動画の話題は終わり、別の話題を探す。

どの様な動画を取れば良いかな…黛さん、本読み出したから一緒に考えてくれないよね。

 

「…ゲーム実況?」

 

「それやったら、スクールアイドルの意味が無いでしょ…てか、アレって色々と許可とったり、ゲームチョイスしたりするんで難しいから、パス」

 

動画投稿サイトでよく見るものと言えばゲーム実況。

いけるかなと思ったけど、むっくんは即座にNGを出してパソコンで遊んでいる。

歌とダンスは出来て当然、当たり前。それは最低基準で他校のスクールアイドルも皆出来ている。問題はその先を考えないといけない…けど

 

「難しいよ…」

 

予想以上に難しい。

穂乃果はUTXでA-RISEのライブを見たとき、これならイケると音ノ木坂の廃校を阻止する事が出来ると感じて、海未ちゃんとことりちゃんを誘い、むっくんにマネージャーを頼んだ…最終的にはスポンサーになった。

歌って踊って皆を笑顔にして、音ノ木坂の廃校を阻止する…けど、その歌と躍りを禁止にされた…それ以外で皆を笑顔にしないといけないけど…雪穂を私は笑顔にすることは出来なかった。ことりちゃん達は皆、高得点を出す中で私だけ0点を出した。

もう気にしてないけど、やっぱり0点はショックだったな。

 

「う~ん、この前やった手品を本格的にやってみるんは?」

 

「構わないが、余りオススメは出来ないぞ。

動画で手品を投稿するのは同じ人が同じ手品を同じ場所で同じ観客に見せるタブーを犯してるも同じだ…二度目となれば、お前達だって仕掛けを探すだろ」

 

この前の手品を更にパワーアップさせた希ちゃんの意見もボツ。

そうなるとどうすれば良いのか分からず、皆、ついついむっくん達に顔が向く。

むっくんは気にせず、パソコンでなにかを見ておりなにも言ってくれない。

 

「紫原くん、さっきから何をしているんですか?」

 

「雑技団の動画見てるの…あ、やべ」

 

何を見ているのか気になった海未ちゃんの質問に答えると口を滑らせたと口を少し開けるむっくん。雑技団って、確か物凄く体が柔らかくてサーカスみたいなスゴいことをしてる人達だよね。

 

「睦さん、流石に雑技団みたいな動きは私達には無理だよ」

 

携帯で雑技団の動画を見る花陽ちゃん。

穂乃果も携帯を出して雑技団の動画を見るけど、流石にこれは無理。

 

「そこまで要求しないよ。

…面倒だからもう答えいっちゃって良いよね?返事は聞かないけど。

なにかをするバラエティー系の動画じゃない、シリアスとかそっち系の動画を撮れば良いんだよ」

 

もういいやとノーパソを閉じるむっくん。

穂乃果達の顔を見て、答えを教えてくれるけど

 

「シリアスとかそう言うのは、向いてないと思う」

 

「うん、俺もそう思うよ。

皆、難しい顔をするよりも笑顔の方が似合ってるから、そう言うアレな動画はとらないよ」

 

「あっくん…」

 

私達は難しい顔をしているよりも笑顔が似合う。

「可愛かったり綺麗な女子はなに着ても似合うんだから、イチイチ褒めてとか言わないでよ!」って、褒めてるんだか貶してるんだかイマイチ分からない事を言うむっくん。

珍しく褒めてくれた事に皆が照れて笑顔になった…

 

「むっくんは穂乃果達の笑顔、好き?」

 

「笑顔が好きって、そう言うのじゃないよ。

けどまぁ、俺達が関係無いことで楽しんでて満面の笑みになってたら…嬉しいっちゃ嬉しいよ、他人事だけど」

 

むぅ、やっぱりむっくんは強敵だ。

穂乃果は「皆の笑顔を見るのは好きだよ」って言って欲しかったけど、言ってくれない。

残念だと落ち込み小さくため息を吐くけど、今は動画の方に集中しないといけない…もうちょっと聞きたいな。

 

「シリアスとかそっち系の動画って、どういう動画にゃ?」

 

「う~ん…カッコいい台詞を言う動画?」

 

「カッコいい台詞…は、ラブアローシュー」

 

「穂乃果?」

 

「じょ、冗談だよ海未ちゃん」

 

海未ちゃんがライブをしている自分を妄想した時に言ったラブアローシュート。

アレを撮れば確実に人気が出ると思うんだけどなぁ、海未ちゃんが人を殺しそうな目で穂乃果を睨む。

 

「カッコいい台詞…天才とは1%のひらめきと 99%の努力である…とか?」

 

「かよちん、それフィクション。

1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄になるが正しいよ」

 

あ、そうなんだ。

カッコいい台詞と言われ、エジソンの名言を浮かべるけど違うみたい。

花陽ちゃんにエジソンの名言を言う…う~ん、なんか似合わない。

 

「パクると面倒だから、ちゃんとオリジナルのカッコいい台詞を考えてよ。

んの台詞を言うシチュエーションを用意して動画を撮る。ミニドラマ…演技力も大事だよね」

 

「ドラマ…」

 

何をするのか分かると、笑みが浮かび上がる。

ドラマ…歌って踊るだけじゃなくて、演劇の動画もあげる…その方法があったね。

 

「オリジナルのカッコいい台詞…」

 

「控え控え!この紋所が、目に入らぬかぁ!!とかやると絶対怒られるよ。まぁ、難しかったら漫画を参考にすれば良いんじゃないの?」

 

オリジナルのカッコいい台詞と言う100円のお題よりは簡単だけど、結構難しい。

 

「パンが無ければ、お菓子を食べれば良いじゃない!…違うよねぇ」

 

私だけじゃなくことりちゃんも悩む。

 

「それ、紫原が中学二年の時に女装して言ったから面白味が感じないぞ」

 

「え、あっくん女装したの!?」

 

「見たいなら明日、現像した写真をやるよ…100円な」

 

「三枚ください!」

 

悩むけどそれどころじゃない。

ちゃっかりしている黛さんに代金を先払いするので、穂乃果も鞄から財布を取り出して支払う。

 

「黛さん…俺に利益無いじゃん」

 

「μ'sの笑顔が見れると妥協しろ」

 

「ちょっと、それってどういう意味かしら?」

 

「そのままだ…口を動かす暇があるなら、手を動かせ」

 

聞き捨てならない事を言ったから睨む真姫ちゃんをあしらう黛さん。

穂乃果達に作文用紙を配り終えると小説を読み始め、穂乃果達も台詞を考える。

海未ちゃんや希ちゃんは素早く筆を進めるけど、私達は全然進まない。カッコいい台詞って、なんだろう…

 

「筆の進み具合からして、どうやら悩んでいるようだね」

 

「赤司さん…」

 

中々に進まず、停滞していると赤司さんが語りかけてくる。

なにか言われるかもしれないと怯えていると、微笑む赤司さん。

 

「そう身構えなくていい。

今回の議題は難しいからね、少しは助け船を出してあげるよ…黄瀬、お前からだ」

 

「え~大喜利並みの無茶ぶりじゃないッスか!」

 

赤司さんから出された助け船は、御手本だった。

黄瀬くんにカッコいい台詞を言えと無茶ぶりをふると、持っていたペンを置いて皆が黄瀬くんを見る。

黄瀬くんが考えるカッコいい台詞、穂乃果達が悩んでいるカッコいい台詞に繋がるなにかがあるかもしれない。

 

「…ふぅ…全く、勘弁してほしいよ」

 

真面目な目をし、何処か遠くを見る黄瀬くん。

言われたばかりなのに、もうカッコいい台詞を考える事が出来たんだ…

 

「カッケーなぁ、ホント。

誰がどんなに頑張っても勝てない、オンリーワンでナンバーワンな皆。

周りは俺の事もそんな風に扱うけど、そうじゃない。俺はオンリーワンじゃないんだ」

 

迷うことなく、噛むことなく台詞を言う黄瀬くん。

見える…穂乃果の気のせいかと聞かれればそうかもしれないけど、黄瀬くんの前に誰かが立っている。その人に向かって、台詞を言っている。

 

「オンリーワンじゃないって、思う理由は分かっている。

皆に、憧れを敬意を持っているから…だから、無意識に一番じゃないって思ってる。

…捨てるよ、俺は…皆への…あんたへの敬意を憧れを…俺はオンリーワンに…あんたを倒して、一番になる!!…はい、こんな感じね」

 

台詞を言い終えると素に戻り、急に人が見えなくなった。

けど、それまでのカッコいい台詞は凄まじく穂乃果達は拍手を送った。

 

「今のって、憧れの人と対決した際に苦戦してた主人公がパワーアップする奴だよね!!」

 

台詞がカッコよく興奮をする凛ちゃん。

今言った事を組み込むと頭のなかで、さっきの台詞がシチュエーション付きで流れる。

 

「紫原」

 

「え~俺も?」

 

黄瀬くんが座ると次はとむっくんが指名される。

めんどくさそうなむっくんは立ち上がり、冷蔵庫を開き炭酸飲料を口にする。

 

「ふぅ…ゲェエエエエエエプゥ…」

 

「睦くん、汚いにゃ!」

 

炭酸飲料を飲み終えるとこれでもかと言う大きなゲップをするむっくん。

凛ちゃんが怒るけど目にはもう凛ちゃんは写っていない。誰かを下に見ている。

 

「はぁ、どいつもこいつもふざけてんの?」

 

ゴキゴキと指を鳴らすむっくんは誰かに対して怒っている。

 

「俺の大きさじゃ、まともにやれないって逃げても無駄だっつーの」

 

指を鳴らすのをやめたむっくん。

ゆっくりとした重い声で誰かを見ている。

 

「テクニックは悪くないんじゃないの?けどま、俺には無駄だけどね。

お前達みたいな有象無象の雑魚がどんなに頑張っても無駄なんだよ…まだ分かんないの?」

 

「あっくん?」

 

どちらかと言えば、悪役が言いそうな台詞に疑問を持つことりちゃん。

すると、むっくんは腕に力を入れて筋肉を見せつける。

 

「体格だ体重だを言い訳にして、トレーニングサボってる雑魚なんて興味ないよ。

日本人は外人と比べれば体格が劣っているから、直ぐに素早さやパワーを捨てて、テクニックやチームワークに走る…違うでしょ?目には目よ、パワーにはパワーだろ。

お前達はパワーを捨てて、しょうもないテクニックを覚えたかもしれないけど俺は違う。一級品のテクニックをも遥かに凌駕するように毎日毎日、鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて鍛えて、鍛えまくり筋肉の極致に辿り着いた!!」

 

ボディビルダーがするようなマッチョなポーズを取るむっくん。

 

「筋肉は大きく分けて三つある。

一つは相撲や短距離走の様な一発勝負に向いている白色の筋肉、瞬発力はあるけど持久力は無い。

一つはサッカーや長距離走なんかの長時間の競技に向いている赤色の筋肉、持久力はあるけど瞬発力は無い。

そして三つ目、白色の筋肉と赤色の筋肉の良いところ、瞬発力と持久力を併せ持つ桃色の筋肉…俺の体の殆どは独自の筋トレで桃色の筋肉になっている!

スポーツすんのは体だ!どんなスポーツでも体を鍛えないといけない!

逃げたお前達がどんな小細工や連携をしてきても、諦めなければ、頑張ればなんて努力や根性論を出してきても、無駄だ…理不尽ってのを教えて捻り潰してやるよ…まぁ、こんな感じじゃね?ヒーローっぽいのだけが、カッコいい台詞じゃない。悪役っぽいのも良いよ」

 

むっくんも台詞を言い終えると、何時も通りに戻った。

私達は拍手を送り、悪のカッコいい台詞もありなんだと一つ学んだ。

 

「悪人を倒す台詞でも、悪人の台詞でも良い。

色々と君達は選択出来る、そして僕達は君達の選択肢を増やすことが出来る…ところで、その台詞を言う動画を撮影する場所は決まっているのか?住所がバレると面倒だから、マンションは使えないよ」

 

「いや、大丈夫っしょ。

流石にこんだけ人数いれば部活動として活動できるし、理事長も俺達の事を知ってたりするから音ノ木坂で撮影できるし…既に皆、スクールアイドルとして動画をだしてるから後戻りは後退させること出来ないし」

 

あ、そう言えば穂乃果達はスクールアイドル部じゃなかった。



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事件なくして名探偵はあらわれず、悲劇なくしてヒーローは現れず

「1、2、3、4!」

 

カッコいい台詞を言うための動画を考えてこいと言われた次の日。

今日は土曜日、学校はなく休み。私達だけでなく、紫原くんも学校が休み。

出来れば毎日会いたいですが、紫原くんはバスケ部に所属しており金曜日と土曜日にしか会えず、金曜日は学校もあるので会える時間が少なすぎます。

 

「二年生の皆の体、柔らかい…」

 

「花陽も直ぐにこれぐらい可能ですよ」

 

本日は特別メニューをするとの通達があり、マンションでなく神田明神に集まる私達。

柔軟体操をし、足を180度に開脚し上半身を前に倒す柔軟運動を花陽とペアを組んでしていると、関心をしてくる。

 

「紫原くんから貰ったメニュー通りにしておけば問題ありませんよ」

 

μ's結成の、最初の三人は紫原くんから貰ったメニューをこなしている。

勿論、花陽達もですが、それでも少しだけ差があり体が硬く、160度ほどで開脚が限界を迎える。それを見て、まだまだ練習不足だと互いに痛感する。

 

「これで良いのよね?」

 

軽い柔軟運動を終えましたが、紫原くん達は来ません。

正確な時間を指定していなかったので、連絡をして呼び出さなければなりませんが、今日だけは違います。

 

「今更、こんなの書いて意味あるにゃ?」

 

凛は一枚の紙を見て、首を傾げる。

その紙は新しい部を作る為に必要な用紙で、そこには私達の名前が書かれている。

…紫原くんは私達が本気でスクールアイドルをすると分かると私達がスクールアイドル活動の為に必要な物を用意してくれた。

動画編集をしてくれ尚且つカメラマンをしてくれる裏方。

室内での動画を取るのに最適で、雨の日でも問題なく練習できる場所。

どんな動画でも撮影可能にする膨大なまでの資金。

それだけでも充分なのに、今度の期末はちゃんとテスト勉強を手伝ってくれる。

音ノ木坂よりも遥かに偏差値が高い高校に通っているのに、本当は進路とかがある紫原くんの方が頑張らないといけないのに貴重な時間を費やしてくれる。

 

「うん、必要だよ…だって、穂乃果達は音ノ木坂のスクールアイドルだから!」

 

そのせいか…そのせいか、すっかり忘れていました。

スクールアイドル部設立を…元を正せば、それをしようとして人数が足りないと会長に言われ、部活動紹介の後にライブをして人数を増やそうとして、紫原くんと再会してスポンサーになるかならないかとなった。

 

「月曜日にこれを出して、お母さんに頼めばあっくん達の入校許可は何時でも貰えるよ!」

 

今度の動画は音ノ木坂を使わないといけない動画でその事を思い出して、人数が満たされてる事に気付いた私達は直ぐに部を創る為に必要な用紙を紫原くんが来る前に用意する。

紫原くんは私達のスポンサーをしてくれていますが、他校の生徒。どんなに頑張っても部を創ることを手伝うことは出来ず、紫原くんもそれに関しては一切触れて来ない。

遅かったかもしれませんが、これで第一歩が…

 

「希、貴女の名前がありませんよ。早いところ、書いてください」

 

「…うん、そうやね」

 

やっと第一歩が踏み出す事が出来る。

感傷に浸ろうとすると、希の名前が書かれていない事に気付き、用紙を希に渡す。

何時紫原くんが来るか分からない以上、早くやっておかないといざ撮影が出来なくなると言う事態になりかねません。

 

「…」

 

「希ちゃん、バインダーならあるよ?」

 

自分の名前を書かず、ただジッと用紙を見つめる希。

ことりが書きやすい様にとバインダーで挟んで書きやすくしてくれるが、見つめるだけ。

 

「あ~ホント、頑固なんだから」

 

「でもまぁ…事実っスよ」

 

なんで書こうとしないのかと気になり、聞こうとする前に紫原くんと黄瀬くんがやって来た。

しかし何処となく落ち込んでいたり、苛立っており此処に来る道中になにかがあった様です。

 

「本当に、同じ色のジャージを持ってるんやね」

 

ゆっくりと此方に向かって歩いてくる二人。

私服でなくジャージを着ており、前に黛さんが名前に入っている色と同じジャージを持っていると言っていました。

紫原くんは恐らく特注の紫色のジャージで黄瀬くんは…

 

「ブルース●リーにしか見えないって煽らないでくださいね」

 

「ブルース・●ー?」

 

「あ~」

 

「黄色ちん、所詮俺達もジジイだよ」

 

黄色の何故か上下がくっついているジャージ。

どちらかと言えば、全身タイツに近いその格好はなんとも言えません。

ところで、ブルース●●ーとは誰なんでしょうか?

 

「んじゃあ、今日は特別メニューをするね。

具体的に言えば、黄瀬ちんが今からする動きを真似すれば良い…じゃ、準備しようか」

 

「柔軟とかはもう終わってるよ!

それよりもあっくん…浮かない顔だけどなにかあったの?」

 

何時もと違い何処か浮かない顔の紫原くん。

 

「別に…」

 

「睦さん、別にって…なにかあったか教えてよ!」

 

ことりの質問に適当にあしらう紫原くん。

何処からどう見ても、なにかがあったのは明白で花陽が詰め寄ると黄瀬くんが間に入った。

 

「はいはい、ストップっス。

俺が説明するから、落ち着いてよ…はぁ…」

 

説明はしてくれる。

けれど、明らかに言いたくなさそうな黄瀬くん。

 

「断られたんすよ。

まだ皆が顔を会わせてない、皆の力になる人に協力をしたんですけど…」

 

「黄瀬くん達だけで充分過ぎる気がしますが」

 

総責任者の紫原くん、マンションのオーナーの赤司さん、動画編集兼カメラマンの黛さん、ダンスコーチの黄瀬くん。

それぞれがそれぞれの役目を果たしており、これ以上の人数の増加は紫原くん達の存在が露見する可能性があります。

 

「いや、アクションシーンの撮影でスタントマン代わりになってくれる人とか必要でしょ」

 

黄瀬くんの言葉に成る程と納得しました…

 

「え、じゃあそのスタントマン役の人が居ないと穂乃果達、動画撮影が出来ないの!?」

 

「そっちの方はもうとっくに協力要請承諾してるし…あんの、眼鏡掛け機が…」

 

「それとは別の人に断られたんスよ。此処に来るちょっと前に。

スクールアイドルなどと言う後にも続かんくだらん事で廃校を阻止しようと夢を見る愚か者どもに力を貸す義理など何処にもないのだよ。例え大金を積まれてもな。って…まぁ」

 

「なにそれ、そんな人に協力なんて頼まなくて良いわよ!」

 

紫原くん達の顔色が良くなかった理由を知り激怒する真姫。

私達の事を応援するどころか、愚か者と罵った人に協力なんて此方から願い下げです。

 

「けどまぁ、み」

 

「黄瀬ちん…真姫ちん達が願い下げなんだから、もうこれ以上は触れないよ」

 

「…そっすね、俺達は皆さんのスクールアイドル活動を手伝うのが仕事だし…うん…」

 

これ以上はその事について触れない。

紫原くんと黄瀬くんが断った人の話題は此処で終わり、もう一人の方の話題に移る。

 

「スタントマンの人は会ったことないけど、どんな人にゃ?」

 

「スタントマン役の人はねぇ…あんまり、皆と深く関わりたくないんだよ。

毎日来てたら彼女との時間が潰れたりするし、あんまり深く関わると色々とやな思いをするから…」

 

「まぁ、皆には皆の意思とかソンチョーとかあって、その人にもその人なりの考えがあるんスよ…でも、アクションシーンとかはちゃんと手伝ってくれるって言ってたから問題無いよ!」

 

右の親指を上げ、サムズアップで爽やかに微笑む黄瀬くん。

紫原くん達が遅れてきた理由等を知ることが出来て、一先ずはこの話題を完全に終え特別メニューに入ろうとしたその時でした

 

「ああ、申請用紙が!!」

 

強風が吹き荒れ、邪魔だからと隅っこに置いていた部の申請用紙が飛んでいってしまいました。

いざこれからと言う時だった為に強風が吹いた時点では気付かず、申請用紙が宙を舞っている時に凛が気付いた。

 

「アレって、大事な紙なんスか?」

 

「うん、アレを出してからじゃないとあっくん達から入校許可とか貰えないの!」

 

「ちょ、滅茶苦茶ヤバいやつじゃん!!」

 

ことりに言われ、用紙の重要さに気付く黄瀬くん。

私達は用紙を取り戻すべく、宙を舞っている用紙に向かって走り出し

 

「え?」

 

一番先頭に立った黄瀬くんを見て、凛が少しだけ戸惑う。

それは凛が足に自信があるから抜かされた事に驚きが…ではなかった。

この時は用紙の方に集中していた為に余り意識をしていませんでしたが、黄瀬くんが走っている筈なのに…黄瀬くんじゃない誰かが走っている様に見えた。

 

「申請用紙、とっ…どかない…」

 

黄瀬くんが先頭を突っ走り、勢いをつけて跳んだ。

その際に何故か虹村さんが見えましたが気にする暇はなく、用紙を…掴み損ねました。

 

「虹村さんなら、確実に取れてたよ」

 

「ふぅ…あの人の模倣(コピー)の再現度が低いか…」

 

取り損ね、惜しいと思っていると最後尾にいた紫原くんが呆れ、黄瀬くんに追い討ちをかける。その追い討ちは効かず、俺もまだまだだなと何故かドヤ顔の黄瀬くん。

 

「言ってる場合じゃないよ、早く用紙を探さないと!」

 

「かよちん、心配しすぎだって。

ほら、風はもうやんでるし用紙が飛んでいったのはアッチで水辺じゃないから問題ないよ」

 

のほほんとしながらも、ちゃんと見るべき物は見ていた紫原くん。

指を指した方向に全員で向かうと、申請用紙は確かにあった…

 

「にこっち…」

 

見知らぬ小柄な女子の手にあった。

希はその女子が誰か知っており、目を見開きましたが希の知り合いならば話は早いです。

 

「拾ってくれてありがとうございます、それ私達のなんです」

 

誰かに踏んづけられるより前に誰かが拾ってくれてよかったです。

穂乃果が代表でお礼を言うと前に出て、申請用紙を渡して貰おうとすると

 

「…!?」

 

小柄な女子が申請用紙を破り捨てた。

女子の行為に全員が固まっていると、人差し指を立てて私達を指し

 

「あんた達が音ノ木坂のスクールアイドルだなんて認めないわよ!!」

 

そう叫び走り去っていった。

余りにも突然すぎる出来事に、ポカンと固まってしまい動けない…μ's。

 

「はぁ、俺から逃げれると思ってんの?」

 

「そこは俺達って言って欲しかったっスね」

 

そう、μ'sは動けませんでした。

しかし、紫原くんと黄瀬くんは走り去っていった小柄な女子よりも遥かに早く走り出して、あっという間に追い付き挟み撃ちにする。

 

「すごい…」

 

こんな時に、そう呟くのは不謹慎でしかありません。

だけど、そう呟きたかった。何時もは、マイペースで皆からのアピールを特に気にしていない紫原くん。私達の歌を聞いても特にコレと言った反応もせず、本人は感受性が悪いと言い、紫原は緩いときは緩くてマイペースとまで言われている。

そんな彼が…私達に契約の書類を渡した時と同じ、いえ、それ以上の顔で小柄な女子の後ろに立ち、逃げ場を塞いでいる。

中腰になっている紫原くんはまるでバスケでディフェンスをしている時にする構えと同じだった。

 

「邪魔よ、退きなさい!」

 

「いやいや、そう言われて退く奴は居ないっスよ」

 

前門の虎、後門の龍。

黄瀬くんが前に、紫原くんが後ろに構え逃げ場の無い小柄な女子。

私達が今出ても邪魔でしかないと感じ、二人が捕まえてくれるのを見守る。

 

「っと、ちんたらしてる暇は無いっスよね」

 

小柄な女子が何をするかが分からないと少しだけ焦りを見せる黄瀬くん。

なにかをされる前にと左右に軽くステップを振り、揺さぶると小柄な女子もそれに乗って何処かに隙が無いかと模索しようとするが

 

「っつ!?」

 

見つけることが出来ずに足が縺れてしまい、尻餅をついた。

 

「はい、捕まえた」

 

尻餅をつき、大きな隙が出来たのを逃さずにいる紫原くん。

小柄な女子の脇を掴み持ち上げる。

 

「まさか、こんな所で完全無欠の模倣(これ)が役に立つなんて思わなかったっス」

 

終わったと一息つくと雰囲気が元に戻る黄瀬くん。

 

「ちょ、ちょっと、離しなさいよ!」

 

「え~今此処で離したら絶対に面倒な事になんじゃん。

そんなの嫌だし、あんたなに勝手に大事な書類を破いてんの?元の一枚に戻るまで、集めてもらうからね」

 

もう大丈夫だと紫原くんの元に近付くと、必死になって暴れる小柄な女子。

紫原くんは腕を伸ばしており、必死になって暴れる女子の足が届かない。

 

「こいつ、どんだけ腕の力あるのよ!」

 

「無駄だよ、あっくんの握力は120以上あるんだから」

 

必死になって暴れても無駄だとわかり、掴んでいる手を剥がそうとするも出来ない。

そんな事をしても、尋常じゃない握力をもつ紫原くんの手は剥がせない。

 

「120!?

…って、思い出したわ!コイツ、どっかで見たことあると思ったら、希の彼氏だわ!!」

 

「…ハ?」

 

紫原くんの握力に驚き、ジッと見つめる小柄な女子。

この人は今なんと言いましたか…紫原くんが、希の彼氏…

 

「どういう意味かナァ、あっくん?」

 

「いや、俺も知らないよ?そもそもこいつ誰ってレベルだよ?」

 

「そうっスよ、紫原っち東條さんと付き合っていないっスよ」

 

余りの出来事に希以外が眼孔を開き、紫原くんを睨む。

本人は違うと否定し、小柄な女子についても心当たりもなく、黄瀬くんも否定する。

 

「でもさぁ…そう思われるような事をしているんだよね?

確か希ちゃんとむっくんってお隣さんだよね?しかも一人暮らし同士でさ…ねぇ、なんで二人は付き合ってるって言えるノカナ?」

 

だけど、そう思われる事を二人はしているはずですネ。

 

「コイツ、希の音ノ木坂の合格発表を付き添いで見に来たのよ。その時は彼氏じゃないって否定してたけど」

 

「に、にこっちそれ以上は」

 

「こいつデカいから、印象に残って音ノ木坂に入るんだって思ったけど、入学式で見掛けなくてクラスが一緒だった希に聞いたら付き添ってくれたって…どう見ても彼氏じゃない!!」

 

「は、ちげーし。俺、無理矢理付き合わされただけだし」

 

「あ~そう言えば合格発表の時、紫原っち遅刻したっスよね」

 

全力で希との関係性を否定し、裏もちゃんとある紫原くん…ズルい。

自身の合格発表もあるのに、自分の付き合ってもらってズルいです…紫原くん、一年遅く生まれてくればよかったのに…

 

「て言うか、今はそれよりもこいつの事でしょ」

 

「そうね…希、後で裏に来なさいよ」

 

「μ's結成前になにがあったか、ことりにたっぷり教えてほしいな」

 

肉体に聞かなければならない事にならなければいいんですが。

一先ずはこの話題は後回しにし、小柄な女子を睨む。

 

「用紙はまた学校から貰えば良いですけど、許せません!」

 

「許せない?それは此方の台詞よ!!」

 

「…」

 

花陽と小柄な女子は睨みあいを続ける。

少なくとも、申請用紙を破り捨てた事は許せることじゃありません。

 

「…皆、何時も頑張ってるよね。

黄瀬ちん、俺のポケットに財布が入ってるから日頃の御褒美になんか食べに連れてってあげて」

 

「…りょーかい。

ほら、皆、行こうよ。芸能人とかが並んででも食べたいお店とか、色々と知ってるっスよ」

 

「そんなの今、食べてる暇ないにゃ」

 

「…行くっつってんだろ、来いよ」

 

「…凛、行くわよ」

 

今日は特別メニューの為に神田明神に集まった。

それなのに急に何処かに食べに行くことになり、紫原くんは小柄な女子と一対一になりたいと遠回しに言ってきた。それを察した真姫は凛を引っ張り、神田明神から離れる。

 

「話が早くて助かるっスよ…じゃあ、何処に行く?」

 

「何処にって…何処にも行きませんよ」

 

「そうだよ、一対一になりたいのは穂乃果でも分かるよ!」

 

神田明神に続く階段を降り、紫原くんの財布を見せ付ける黄瀬くん。

明らかに神田明神から意識を反らそうとしていますが、そんな見え見えな罠には引っ掛からない。

 

「ですよね…も~ちょい、上手く誘導して欲しいっスよ。

まぁ、そう言うのをするのは黛さんで紫原っちの仕事はそこじゃないからなぁ…」

 

「…紫原はなにをするつもりなのよ?」

 

「……俺は言いたくない、けど、言わなきゃ見に行くんでしょ…見るよりも、言った方がましだ…あの子に土下座をしてるんだよ」

 

「はぁ、土下座!?なんでよ、意味わかんない!?」

 

「なんで分かんないすかね。

少なくとも、あの小さな女の子は東條さんと同じ音ノ木坂の三年生でしょ?」

 

「そういえば…」

 

希と同じクラスや、入学式で見かけなかった。

そんな事を小柄な女子は言っていました。その言葉が本当なら、希の知り合いで音ノ木坂の三年生になる…

 

「でも、でも、なんで土下座をする必要があるにゃ!」

 

「そうです!

音ノ木坂の三年生で、私達の先輩だとしても申請用紙を破り捨てた事は確かで土下座をさせることはあっても、する必要なんて」

 

「うんこ」

 

「え?」

 

それでも土下座をするのはおかしい。

そう考えていると物凄く嫌そうな顔で黄瀬くんは下品な事を言う。

 

「努力はうんこと同じ。

踏ん張って、見えないところでやって水に流して誰にも悟られない。

皆は此処まで上手い具合に進んでいるっすけど…世の中って、光れば光るほど影は濃くなるんスよ。μ'sが売れれば売れるほど、嫌われる。ファンと一緒にアンチが増える。

それは絶対の法則、この世に完全も完璧も無いのと同じで努力は限りなく0に近い状態を生み出す為にある…な~んて言えればカッコいいんだけどな」

 

右手を後頭部に置いて参ったなと言う顔をする黄瀬くん。

 

「つまり、あの人はことり達のアンチ?」

 

「そう言えば、あの人、私達をスクールアイドルだなんて認めないって言ってました…」

 

「堂々と紙を破る過激な人、て言うか同じ学校なんだ。

サラッととんでもない事をするのがラブライバーだし…皆は音ノ木坂の廃校を阻止する為に、スクールアイドルをしている。動機は不純かもしれないけど、それでも皆にはそれしかない。

だから、土下座をしてμ'sの邪魔をしないでくださいって頼んで…そうやって、必死になって頑張ってるんスよ」

 

言いたくなかったと大きなため息を吐いている黄瀬くん。

もう私達の目には彼は写っておらず、誰もなにも言わず顔を合わせずに同じ方向を、来た道を戻る。

 

「ちょっ、行かないでよ!

流石に友達の土下座を見るのは、心が痛むんだから」

 

「じゃあ、黄瀬は来なければ良いじゃない…私は行くわよ」

 

来た道を戻る私達を必死になって止めようとしますが、この男はもう邪魔でしかない。

余計な事をすれば誰であろうと許さないと真姫は鋭く睨んだ。

 

「だから、言いたくなかったのに…こうなったら俺も行くよ…紫原っちの邪魔しちゃダメっスよ。スポンサーをやるメリットとデメリットとか分かった上でやってるんスから…見るなら見届けるだけ、それがμ'sの仕事だ…」

 

黄瀬くんは降参してくれた。

邪魔をする人はもう誰も居ない、だからこの目で見届けます。

 

「てんめえ、それどういうこったぁ!!」

 

「いぃい、やぁあああああ!!」

 

紫原くんと小柄な女子がいた場所に戻ると、小柄な女子は紫原くんにジャイアントスイングをされていた…え?

 

「テメエ、今更なんのつもりだよ!

ちょっと正座してろ、今からアイツ等に聞いてくるから!!」

 

「む、むっくん、何してるの!?」

 

さっきまでの紫原くんとは豹変し、明らかに怒っている。

前に凛と花陽を考えなしにμ'sにいれようとした際にもジャイアントスイングをして怒った。

なんで怒っているのかが分からず、理由を聞こうと穂乃果が声を掛けると私達を強く睨む。

 

「ねぇ、穂乃果ちん…コイツのこと、知ってる?」

 

「吐き、そう…」

 

「知らない、よ?」

 

目を血走らせながら、ジャイアントスイングに酔った小柄な女子を持ち上げる紫原くん。

穂乃果に怒りの感情を向けるも、穂乃果とその人にはなんの関連性も無い。勿論、私とことりにも心当たりはありません。

 

「じゃあ、真姫ちんは?」

 

「知らないわよ、そんな人は」

 

「私も知りません」

 

「凛も知らないよ!」

 

私達に心当たりを聞いても特にはなく、今度は一年に聞きますが無い。

そもそもの話で知っていれば、今のような状況にはなっていません。

 

「…東條さんは?」

 

一年も首を横に振り、残りは希ただ一人。

 

「…知って、るよ…にこっちのこと」

 

「っ!」

 

「希、危ない!!」

 

俯きながらも、知っていたと答える希。

知っていた事が分かると、紫原くんは希に拳を振りかぶり、私は咄嗟に希にタックルを噛ましながら助け、

 

「ちょ、今の完全に当てるつもりじゃないスか!!」

 

拳を黄瀬くんがそらした。

 

「なにやってるんだよ、体罰なんてやったら暴力なんてふるったら、俺達が嫌ってる謎理論を展開する旧時代の害悪な大人と一緒じゃないか!!」

 

「……ああ、そうだよね」

 

口調が乱れながらも、紫原くんを止める黄瀬くん。

直ぐに冷静さを取り戻しましたが、紫原くんは明らかに怒っている。

 

「な、なんで希ちゃんを殴ろうとしたの!?」

 

「あっくん、どんな事があっても暴力だけはダメだよ!!」

 

「…ああ、そうだね。

そうだよね、暴力なんてやっちゃいけないよね…けどね、今俺はそれやっても罪悪感が宿らないぐらいにはキレてんだよ…黄瀬ちん、財布返して」

 

「…はいよ」

 

黄瀬くんに財布を返して貰うむっくん。

中を開け、中身を確認してから一万円札を取り出して穂乃果に渡した。

 

「俺、もうスポンサーやめるわ」

 

「!?」

 

「いきなりやめるって言っても困惑するし、迷惑なのは分かってる。

だからこれは解約金、もう少し欲しいなら+10万まで追加してやるけど…お前等の事なんてしんねえわ」

 

じゃあなと帰ろうとする紫原くん。

 

「ま、待って!!なんで、なんでスポンサーをやめるの!?」

 

突然の出来事に理解が追い付かなかった。

唯一、紫原くんがスポンサーをやめると言うことだけ。

穂乃果は帰ろうとする紫原くんの前に立ち、説明を求めた。

 

「…知りたきゃ、月曜日まで待てば良いよ。

東條、お前は今の今までなにも言わなかったんだ…今更、弁明をしても無駄だ…土下座損だよ」

 

だけど、紫原くんはなにも答えてくれない。

穂乃果を押し退け、帰っていった…

 

「なにが…なにがあったんですか?

私達が居ない間に…希、その人と紫原くんになにがあったんですか!?」

 

全てを知っているのは希だけ。

だから、答えて欲しい。いったいなんで紫原くんが怒っているのかを、なんでこうなったかを。

 

「……」

 

「希ちゃん、答えて…答えてよ!」

 

私の質問にも、穂乃果の質問にも答えない。

ただ首を横に振り、無言を貫いていた。

 

「希がダメなら、貴女が…なにがあったの?」

 

希が答えない。

紫原くんが答えるなと言っていたからか、答えてくれない。

それならばと真姫は小柄な女子に聞こうと振り向いた。

 

「……月曜日に待っているわ……」

 

小柄な女子は何処でとは言わなかった。

言わなくても、私達には分かっていた。音ノ木坂で待っていると。

彼女はそれだけを言うと去っていった。

 

「…俺はちょっと用事が出来たから、帰るわ。

紫原っちがスポンサーを降りるなら、スポンサー経由で契約をしている俺は君達を手伝う義理は無いから」

 

彼女に続く様に、黄瀬くんも帰っていった。

なんでこうなったのかは分かりません。ただ言えることは、急に紫原くんがスポンサーをやめると言ったこと…なにも分からない。

 

「雨…」

 

なにもでないまま、無の空気が続くと雨が降り始める。

それはまるで私達の今の気持ちを表すかの様で、とても冷たく悲しく…全員が涙を流した。




原作開始前からにこと知り合い系のオリ主達って、よく怒られないよなって思う。後、黙っていた希達も。感想、欲しい。


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一粒の雫が落ちる場所

その内、タグにヤンデレとか足したい。そう言う展開にしたい。


日曜日。

 

 

俺達バスケ部が、赤司のマンションのジムを使うことが出来る日。

何だかんだで五月後半に突入し、地球温暖化だかんきょー保全問題だかなんだかしんないけど、梅雨入りは早い。その内、春夏秋冬の概念が日本からなくなりそうっス。

そう言えば、昔は123月を春として扱ってたし、日本はまた変わる…いや、変わらないといけないっスよね。

 

「赤司っち、知ってるんスか…紫原っちがキレてる原因を」

 

「ああ、知っているとも」

 

雨の為にロードが出来ない俺達。

ランニングマシンがこんな時には本当に便利だと思う。

練習中は何時もつけている酸素を薄くするマスクの機能を最大値にしながら隣にいる赤司っちに聞く。内容は勿論、キレている紫原っちのキレた原因。

 

「悪いが、それを答えるつもりはないよ」

 

「なんでスか…このままじゃ後味悪いっスよ」

 

折角μ'sのダンスを模倣と強奪、両方で覚えてきたのに。

あの日、あの子が来なかったら模倣して上位互換のダンスを、強奪して皆のダンスは奪いやすいぞって、体に染み付いていない事を教えれたのに…一回見ただけで勿体ない。

 

「黄瀬……人、主人公やヒロインには辛い過去が必要なのだろうか?」

 

質問には答えてくれないけど、別のなにかを教えてくれようとする赤司っち。

 

「辛い過去っスか…物語的には美味しいけど、出来たら要らないっスね」

 

物語的には美味しい展開だけど、辛い過去なんてものは要らない。

そう言うのは本当にあっちゃいけないから。無理なのは分かるけど出来たら皆、ハッピーエンドが最高…まぁ、無理だけど。

 

「人はなにかを背負わなくても生きていけるし、背負ってても生きないとダメ。

前に進むんだじゃなくて、前に強制的にベルトコンベアで進まされる。俺達はコケたままか立ち上がるかをするだけでしょ…少なくとも、虹村さんは立ち上がったっスよ」

 

転生者は皆、親が生きている状態で死んだ子供達だ。賽の河原で石積むんじゃなくて転生する?って聞かれて、転生すると答えてそれ用の訓練を受けている。

そこにいる人達は虐待や自殺、不治の病、他にも色々な死因があるけど俺みたいなうっかりミスでの死因だってあって、第二第三の人生を謳歌するためにどんなに辛い過去があっても基本的に語らない。

私は辛いのなんて不幸自慢は笑い話に使えるもんだけにしとけと、今から強くてニューゲーム出来るんだから前向きになれと地獄で良く言われたっス。

 

「覆水盆に返らずと言う言葉を知っているかい?」

 

「勿論っスよ、一度やってしまった以上はもう後戻り出来ないって意味っスよね?」

 

「大体そんな感じだ…」

 

あ、間違ってるとか覚え方がおかしいとか思ってる顔だ。

 

「お盆に水戻せない状態なんスね…」

 

そんな諺を出すと言うなら、今まさにそんな状況なんスよね。

 

「そう言う次元じゃないさ。

水を入れるお盆も、お盆に入れる水も何もかもがおかしい…そう言えば、黄瀬の推しメンは誰だ?」

 

「いきなり話題が変わりすぎじゃないスか…俺は大和亜季ちゃん、クール系が良いっす」

 

「ラブライブは?」

 

「勘弁して欲しいっスよ…廃校の為にアイドルなんて、割と聞くだけで嫌になるよ」

 

それがしたいじゃなくて、それしかない彼女達。

廃校を阻止する筈が、何時の間にかスクールアイドルのトップを目指したり関係無い奴を仲間に加えたりとか、勘弁して欲しいよ。

そう言った重いものがあるから私達は頑張るの!って、重いものが無いと人は頑張れないんスかね。純粋に一番になりたいとか、俺が一番だって言う心だけで良いのに。

 

「どーでも良いんだけど、俺を間に挟まないでくれる?」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

月曜日

 

 

 

 

 

土曜日から降り始めた急な雨は今日も今日とて止まない。

まるで穂乃果達の今の気持ちを現すようにどしゃ降りの雨だ。

 

「…のか…穂乃果!!」

 

「海未ちゃん…」

 

「大丈夫ですか?もう授業は、終わりましたよ」

 

方針状態の穂乃果に声を描けてくれた海未ちゃん。

何時の間にか授業が終わっており、ことりちゃんが穂乃果の筆記用具等を片付けてくれて帰る用意をしてくれた。

 

「…むっくん…会いたいな…」

 

土曜日に怒って帰ったむっくんの事を思い出す。

なんで怒っていたのかが分からない、穂乃果の手には解約金が握られていた。

あの後は解散して、家に帰った。お母さん達が心配した。お金のこともむっくんの事も伝える事が出来なかった…心配した雪穂はむっくんに電話したけど、もう知らないってなってスポンサーをやめたことを知られたけど。

 

「その為には、知らなければなりません」

 

「あっくんがなんで怒ったのかを、どうして希ちゃんを殴ろうとしたのかを」

 

怒るよって言ってるけど、怒ってるのか分かんないむっくん。

あの日は、本当に怒っていた。確実に希ちゃんを怪我させる為に殴ろうとしていた。

黄瀬くんと海未ちゃんが咄嗟に動いてくれたけど、あんなことをするだなんて予想しなかった…うん、しなかった。穂乃果にジャイアントスイングをしたけど、海未ちゃんとことりちゃんに煙が出るレベルのデコピンをしたけど、希ちゃんに向けたのはそう言うのじゃなかった。

 

「ごめんね、海未ちゃん、ことりちゃん」

 

なにに対してか分からないけど、謝らないといけない。

そんな気がした穂乃果は謝って、席を立ち上がり教室を出た。

 

「待ってたわ…後は、貴女達と希だけよ」

 

教室を出ると廊下で待っててくれた真姫ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃんの一年生。

やっぱりと言うべきか希ちゃんはそこにはいない。

 

「これが、あの人に繋がるはずだよ」

 

部の創設に必要な申請用紙を花陽ちゃんから受けとる。

そこには、真姫ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃんの名前が書かれており、後は穂乃果と希ちゃんだけ…ははは…

 

「ははは…」

 

「穂乃果ちゃん?」

 

「こうやってみるとさ…むっくんって、なんなんだろうね」

 

思わず笑みが出ちゃったよ。

花陽ちゃんから受け取った申請用紙、此処にはむっくんの名前は絶対に書けない。

書類関係は全くしていない、むっくん達が用意してくれた物にサインばっかでこう言うのを久々に見るから気付かなかったよ。

 

「睦さんは…私達のスポンサーです…」

 

「…そうだね」

 

そうあって欲しい。

穂乃果は申請用紙に名前を書いた。

 

「行こうか」

 

結局、あの小柄な女子の名前を聞くことは出来なかった。

だけど、分かっていることはちゃんとある。穂乃果達をスクールアイドルとは認めないことと音ノ木坂の生徒だと言うこと。月曜日になにが分かるか分からないけど、あの人と穂乃果達はこの申請用紙で繋がることは出来る事は確かだと言うこと。

 

「失礼します」

 

生徒会室に足を運び、ドアを開く。

そこには希ちゃんはいない。居るのは、絢瀬会長だけだった。

 

「なにか用かしら?」

 

「…希ちゃんは、副会長は居ないんですか?」

 

私達を気にせず、黙々と事務仕事をする絢瀬会長。

何時もなら此処に居る筈の希ちゃんは居ない。申請用紙も出したいけど、希ちゃんの行方が気になる。

 

「私も知らないわよ…それより、貴女達はなにをしたの?

今日の希は、お昼もまともに食べなくて居眠りしているかと思ったら急に目覚めてトイレへと駆け出して、早退を進めたら嫌がって…貴女達が原因なんでしょ?」

 

希ちゃんがスクールアイドル活動をしてると知って、一度激怒した会長。

希ちゃんはただただ待っててとだけ答えたみたいで、その後はどうなったかは知らない。

 

「貴女達のお遊びになんて付き合うから、希は!」

 

「遊びなんかじゃありません!

穂乃果達は、スクールアイドルで廃校を阻止しようと思っているんです!」

 

「っ…じゃあ、じゃあどうして、どうして希はあんなに辛そうな顔をしていたの!貴女達がスクールアイドルにしたからじゃないの!?」

 

「それは…」

 

スクールアイドルに巻き込んだから、土曜日の様な出来事が起きた。

そう言われると私は否定は出来ず、持っている申請用紙を出す事が出来なかった。

 

「…違います!!

そんなわけありません、きっと…きっと、別のなにかが、別のなにかがあったんです!

そうじゃないと、睦さんが、睦さんがあんな事をしませんし希ちゃんが」

 

「睦…それって、紫原睦?」

 

必死になってスクールアイドルは関係無いと言ってくれる花陽ちゃん。

うっかりと口を滑らせ、むっくんの事を喋ってしまったけど絢瀬会長はむっくんの事を知っていた。

 

「知っているんですか…」

 

「アイツが…アイツが希をあんな顔にさせたのね…また酷い事を言って」

 

ギリッと親の敵を見るような目で穂乃果達を睨む絢瀬会長。

なにがあったのかを聞きたかった。けど、それ以上に知りたいことがあった。

 

「これ、アイドル部設立の為の申請用紙です。

前に言われた五人の規定を越えてて、顧問の先生もちゃんと居ます…」

 

これで何処に繋がるかは分からないけど、誰に繋がるかは分かる。

全てが終われば、むっくんが帰ってくるかもしれない。また会えるかもしれない。

カッコいい事を言う動画を撮るんだと穂乃果は申請用紙を絢瀬会長に渡した。

 

「悪いけど、受理出来ないわ」

 

「!?」

 

「なんでですか!!

最初、此処で断られた時には五人以上居ないとダメって言いましたよね!!

穂乃果ちゃん、海未ちゃん、私、真姫ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん…それにそこには名前が無いけど、希ちゃん。合わせて七人が居ます!!」

 

次に進むことか出来ると渡した申請用紙を返された。

なんでとなり言葉が出ず、代わりに代弁してくれることりちゃん。

 

「ええ、確かに六人居るわね。

申請用紙に不備は一切無いわ…けれど、同じ部活は二つも創れないわ」

 

「………え?」

 

この時、全部の歯車がはまって大きく回り始める感覚がした。

 

「既にアイドル部と呼べるものは音ノ木坂にあります」

 

絢瀬会長がそう言うと穂乃果は、海未ちゃんを見た。

海未ちゃんは無言で首を横に振った。信じられないと言う顔をしてた。

次にことりちゃんの顔も見た。ことりちゃんも首を横に振った。信じられないと言う顔をしてた。

その次に真姫ちゃんの顔を見た。真姫ちゃんもやっぱり首を横に振った。知らないと言う顔をしてた。

その次に花陽ちゃんの顔を見た。花陽ちゃんもやっぱり首を横に振った。知りませんと言う顔をしていた。

最後に凛ちゃんの顔を見た。当然、凛ちゃんも首を横に振った。会長が言ったことを知らなかったと言う顔をしていた。

 

「何時から、そんなのがあったの?」

 

「一年以上前からあります…用件はそれだけかしら?用がないならさっさと」

 

「何処、何処なんですか!!!」

 

私達を邪魔虫扱いをする絢瀬会長。だけど、もう邪魔なのは会長だよ。

海未ちゃんは追い出そうとする会長の肩をこれでもかと言う力で掴み揺らす。

 

「アイドル部の部室は何処なの?早く答えてよ」

 

先輩とか後輩とかもう関係無い。

ことりちゃんは瞼を限界まで開きながら、会長に詰め寄り首元を掴む。

 

「い、行ってどうするつもりなのよ!」

 

「どうするつもりなのよじゃありません」

 

「行かないといけないんです、私達は…」

 

海未ちゃんとことりちゃんの手から抜け出した会長。

さっさと教えてくれないかな、真姫ちゃんと花陽ちゃんもイライラしてるよ。

 

「良いから、とっとと教えるにゃ!!」

 

「分かったわよ」

 

会長は気迫負けしたのかと考えるけど、そんな事はどうだって良い。

場所を教えて貰うと、なにも言わずに私達は生徒会室を出ていきアイドル部の部室まで足を運ぶ。

 

「穂乃果に開けさせて」

 

凛ちゃんが部室のドアを握っていたから、そう言った。

このドアは、穂乃果が開かないといけない。この先になにが待ち構えていても、穂乃果は受け入れないといけない。

 

「…待ってたで」

 

ドアを開くと、そこには希ちゃんがいた。

穂乃果達が来ることが分かっていたかの様な口振りで、穂乃果達と顔を合わそうとはしない。

 

「……待ってたわよ」

 

「…月曜日に待ってるわって、そう言う意味なんだね」

 

勇気を振り絞る事は出来ずに部室に入ると、やっぱりいた。

それと同時に穂乃果達のなにかが壊れた、なんなのかは分からないけど

 

「はじめまして、アイドル研究部部長の…矢澤にこよ」

 

壊れた事は確かだった。




皆からの感想、どしどし応募中!つーかほしい…てか、どしどしってこう言う時にしか使わないよね。


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落ちる雫を受け止め溜めし盆

「此処に人が来るなんて久々で、大した持て成しが出来なくてごめんなさいね」

 

私達を待っててくれた希ちゃん、にこ先輩。

此処ではなんだからって部室に入るとお茶菓子と紙コップに入った緑茶をにこ先輩が出してくれる…何時もならお茶菓子を食べようとする穂乃果だけど、今日は手が出ない。

 

「……」

 

なにを言えば、良いのかか分からない。

聞きたくない。もう既に…あの日、むっくんの書類にサインをした時から後戻りは出来ないけど穂乃果達はやるんだと決意したのが全てが台無しになる。

言わなくても、分かっている。むっくんがなんで怒ってたのか、なんでむっくんが希ちゃんを殴り倒そうとしたのかを…けど、聞けない…

 

「アイドル部、もうあったんですね…」

 

「…ええ、あんた達がスクールアイドルを始める前からあるわよ」

 

「海未ちゃん」

 

沈黙を破ったのは、海未ちゃんだった。

今にでもナニかが爆発しそうで、必死になって我慢しながらにこ先輩の口から全てを聞こうとする。

 

「穂乃果ちゃん…怖いよ。

知りたくないよ…でもね、知らないといけないんだよ…私達の為にもあっくんの為にも…」

 

「…」

 

ことりちゃんも今すぐにでも泣きそうな顔をしていた。

真姫ちゃんは俯いていて、顔が見えない。凛ちゃんと花陽ちゃんは死んだ目をしている。

 

「私が言うよ」

 

進まないといけない。

もう後戻りは出来ないんだ、だから聞く…

 

「希ちゃんは知ってたの?」

 

 

 

 

 

 

アイドル研究部があることを

 

 

 

 

 

 

「…うん、知ってたよ。

一年の頃から、ずっとずっと…穂乃果ちゃんがアイドル部作るって言ってきた時も」

 

「っ……」

 

知らなかったって言わなかった。

嘘でも言って欲しかったと心の何処かで思っていたけど、希ちゃんは知っていたと頷いた。

 

「あははは、そっかぁ…」

 

「…ふざけるんじゃないわよ!!」

 

もう笑っちゃうよ、面白くもないのに不思議だよね。

大きく口を開けていて笑っていると机を叩いて立ち上がった真姫ちゃんは涙を流しながら希ちゃんを睨み付ける。

 

「ずっと、知っててなんで黙っていたのよ!!

私も、私も最初はスクールアイドルで廃校を阻止するなんて馬鹿な事だって思っていたわよ!!この人、なにを言ってるのか意味わかんなかったわよ!!

けど…紫原に最後まで見届けてくれないかって頼まれて…だから、私は最後まで見届けた…新入生歓迎会の後のライブを」

 

「真姫ちゃん、行っちゃダメ!!」

 

暴力(それ)だけは、暴力(それ)だけは絶対にしたらダメにゃ!!」

 

希ちゃんの元へ詰め寄ろうとする真姫ちゃん。

どう答えるか分からないけど、拳を握ってて、花陽ちゃん達が必死になって止める。

 

「離しなさいよ!!

紫原が貴女達にあんな事をしたのか、暴力(これ)だけはどんな理由があってもダメだって、皆、言うわ。私だってそう思う…けどね、それでも暴力(これ)に頼りたい時だってあるのよ!!

希も会長も知ってたんでしょ?ずっとずっと、アイドル研究部があるって事を?知らないとは言わないわよね、最初のライブのお客が花陽だけだって。凛は付き添いで来てたって!!二人が現れるまでの穂乃果達の顔を!!」

 

「真姫、落ち着いてください!!」

 

暴力(それ)だけは絶対にダメぇ!!」

 

凛ちゃん達の制止を振り切ろうとする真姫ちゃん。

海未ちゃんとことりちゃんも止めるのに加わり、必死になって止めに入る。

 

「皆、止めんくて良いよ…ウチはそれだけの事をしたんやから」

 

「っ!!」

 

席を立ち上がり、真姫ちゃんの前に立った希ちゃん。

真姫ちゃんを止めている皆の手を剥がし、そう言うと真姫ちゃんは希ちゃんにビンタをした。

 

「はぁ、はぁ…これは、紫原の分…なんて言わないわよ。

紫原がどう思っているのかなんて知らないけど、私は今、怒っているわ!紫原と同じ…いえ、紫原以上に!!アイツが今までなにをしてたのか、見てたもの!!」

 

「…」

 

ビンタを受けると、俯く希ちゃん。

ポトリと涙が希ちゃんから落ちる……

 

「なんで、なんで、穂乃果達に教えてくれなかったの?

あの時、アイドル研究部があるわって…どうして、教えてくれなかったの?」

 

生徒会長は私達の事がきっと嫌いだと思う。

だから、意地悪で教えてくれなかったけど希ちゃんは違う。

最初から応援をしてくれていた、講堂の使用許可についても特になにも言ってこない、それどころか講堂の使用は誰でも出来るって教えてくれた。

 

「…教えてくれたら、穂乃果はちゃんとにこ先輩に会いに行ったよ。

…今みたいにスクールアイドルで廃校を阻止するぞって気持ちがちゃんとしてないけど、それでも、それでも、お願いしますって必死になって頭を下げて」

 

「…教えてくれなかったから私達は紫原くんにスポンサーになってもらえた。

結果論だけ語ればそうなります。アイドル部なんて設立しなくても、紫原くん達がいるしと甘えていた部分もあります…私達が全くと言って調べようとしなかったのにも責任があります、でも!どうして…紫原くんの様にちゃんと向かい合って、話し合ったのに」

 

「…わ、よ」

 

「にこ先輩?」

 

「違うわよ…にこが、悪いのよ……あんた達が色々とやってるのをなにも言わなかったから…」

 

涙を流しながら、小さくごめんなさいと呟くにこ先輩。

むっくんはにこ先輩に対しても、怒っていた。ジャイアントスイングを決めていた。それはどうしてだろう。

 

「あんた達は、私の事を知らなかった。

いえ、知らなくて当然よ…アイドル研究部なんて言ってるけど、部員は私一人。

…一年の頃にスクールアイドルになるって必死になって頑張ったけど、誰一人ついてこれなくて皆、皆、やめたのよ。私だけ残して。ついていけないって…」

 

「…凛は、ううん、凛達は部活動紹介を見ました。

部活動が出来る何処の学校でもある行事、ロボット研究部とか変なのもあったけど…アイドル研究部の説明も紹介も一切されなかったにゃ!!」

 

「ええ、そうよ……私はずっと此処に居るだけなのよ」

 

ごめんなさいとにこ先輩は小さく呟いた。

ゆっくりとゆっくりと膝をつき、涙を流して何度もごめんなさいと呟く。

 

「私は…あんた達に嫉妬してたと思う!!

私は失敗したのに!!あんた達は、順調に順調に人気が出て来て!あんた達の動画を見て、面白いって思ったけど、それでも否定しようとした!!

土曜日に、あの時に私が彼処にいたのは偶然でもなんでもない!邪魔かなにかをしてやろうって、そう思ってたわ!!」

 

「順調…私達は全然順調なんかじゃないよ。

本当に大事な事も気付かずに、無責任な事を、マネージャーになってってあっくんに頼もうとしたり、本気を見せてくれって、1円の価値にもならない奴に無駄金を出したくないって。

あっくんはことり達が間違って戻れなくなる寸前で何時も腕を引っ張って、正しい道を教えてくれて…めいわく、ばっかかけてきて…」

 

「もう、喋んなくて良いわよ」

 

涙で上手くしゃべれなくなることりちゃん。

にこ先輩はもういいと、もうしゃべらなくていいと気持ちが伝わったと止める。

 

「私が全部悪いのよ。

あの時、彼奴に捕まって皆が何処かに引っ張られた後ね…土下座したのよ。

話だけでも聞いてくださいって、腕を掴んでてね…震えてたわ。当然よね、私が彼奴の存在を暴露すれば、それだけであんた達は終わりなんだから。

逃がしてくれそうにもないし、仕方なく耳を傾けたわ。なんだったら隙を伺って逃げ出してやるって、思ってたわ…」

 

にこ先輩はあの時、穂乃果達の見えない時にあった出来事を語ってくれる。

あの時は見届けないといけないって、黄瀬くんの制止と思いを無視していった…結局、なにがあったかが知りたい。

 

「そしたらね…嫌いになっても良いって言ったのよ。

μ'sのことあんた達の事を人として嫌いになっても構わないって。

アイドルにアンチはいて当然だから…だけど、邪魔だけはしないで欲しいって、あんた達がちゃんとスクールアイドル活動をして欲しいから。

…羨ましかったわよ、本当に。あんた達が来るまでに希から聞いたけど、そいつは音ノ木坂の生徒でもなんでもなく無関係なのに手伝ってるって…本当に羨ましいわよ。

お願いしますって何度も何度もマジのトーンで言ってて、彼女達が出来るのはコレだけしか無いって…なんだか邪魔するのが馬鹿らしくなって、自分が醜い嫉妬してたって気付いたのよ…本当に、私ってバカね…」

 

「そんな、ことが……」

 

努力は見えない所でしているうんこと同じだって、黄瀬くんは言っていた。

穂乃果達の為にどんな事をしているのか、既に分かっているのに…それ以上の事をしてくれていた。

 

「私も仕方ないわねって折れたわ。

でも、それはそれコレはコレってスクールアイドルしたいならアイドル研究部(ここ)に入るのが絶対って言ったのよ…そしたらね、一瞬で全てアイツは気付いたのよ。

私が今の今までなにもしていなかったのを、希がずっとずっと黙っていたのを、もしかしたら、あんた達がもっと早くアイドル研究部に入れたら、もっと人気が出たかもしれない、回りくどい手順を踏まなくても良かったって……私が、全部悪いのよ!!」

 

「違う、にこっちはなんにも悪くない!!!

悪いんはウチや…ウチは全部知ってて、それで…穂乃果ちゃん達ににこっちを任せようとした。穂乃果ちゃん達ならにこっちを助けれるって……」

 

「希、あんたコイツらに私を押し付けようとしたの!?」

 

「…違うね…元を正せば、そこじゃないよね…」

 

衝撃の事実に驚く暇も許されない。

希ちゃんはなにかを思い出しながら、カードを取り出した。

 

「音ノ木坂の廃校になるって言われて、アイドル部を創りたいって穂乃果ちゃんが言ってきた。ウチも音ノ木坂は無くなって欲しくなかった。どうすれば良いか、カードで見てん…そしたらね、カードが告げててん…μ'sが廃校を阻止するって」

 

「なにを、なにを言っているんですか!?」

 

カードが告げている。希ちゃんが占い好きなのは知っている。

けど、それだけの為に今の今までなにも言わずに…フザケナイでよ。

 

「穂乃果達の頑張りをバカにしてたの?」

 

「…むっくんにも似たこと言われたよ…ふざけてるのかって。

三人が書類を貰って帰った後に赤司さんも裏でこそこそとするなって、釘刺されたんだ…」

 

ビリビリと取り出したカードを破り捨てる。

 

「もっと、もっとウチが真剣になってたら良かった。

皆が真剣に頑張ったり、自分の気持ちに正直になったりしてるのに…傍観者を気取ってる暇は無かった…もっともっと頑張らないといけなかった」

 

「…私の知り合いにね、凄い変な人がいるのよ。

家の病院の副院長の息子で、勉強だって出来て真面目…だけど、紳士的を通り越した変人。

人事を尽くして天命を掴みとるのが座右の銘みたいで、だから運気も上げるって占いをしてて、その占いがよく当たるって、評判なのよ。

けど変人、ラッキーアイテムが菊だからって病院に菊を持ち込むほどの頭良いんだか悪いんだか常識あるんだか無いんだか分からない人なの。

その人はね、占いをするにはするけど未来だけは絶対に占わない人なのよ。

【占いで決してしてはいけないのは未来を見ることだ。

何故ならば、未来を知ってしまえば、その未来を変に意識したり、無意識に知らなかった筈の未来に辿り着こうと本来ならばしない行動を起こすからなのだよ。

アカシックレコードに記されている未来がなにも一つとは限らない、故に人事を尽くして最高の未来を掴みとらなければならない】って…映画とかで未来は決まってないって、良い感じに言っているけど、それって悪い風にも捉える事が出来るわ…」

 

「…うん…ウチが全部」

 

「違うわよ、にこが悪いのよ!」

 

「…二人とも、悪くないよ!!…悪いのは、穂乃果だよ」

 

海未ちゃんにも言われた。絢瀬会長にも言われた。

思い付きって…本当に、本当にその言葉の通りだよ。

 

「なんにも知ろうとしなかった。

スクールアイドルの事だって、UTXでA-RISEを見るまで知らなかった。

もっともっともっともっと、ちゃんと知ろうとすれば、こんなことにはならなかった。むっくんを怒らせることなんて無かった…穂乃果が、全部悪いんだ!!!だから、穂乃果は…私は」

 

バシン。

大きなビンタの音が鳴り響いた。

それと頬が痛かった、気付いたら目の前に希ちゃんがいた。

 

「それだけは、それだけは、やったらダメ!!

するんだったら私が、私が抜けて、むっくんに…紫原くんに土下座をして金輪際なにもしないって」

 

「希、あんたがやめようとしたら本末転倒じゃない!!

にこがアイドル研究部を渡す…もう、私には過ぎたものよ。逃げて、醜く嫉妬して…だから」

 

 

 

 

 

 

「もうやめてよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

私が、自分が悪いと攻め続け責任を取ろうとする私達。

もうどうすることも出来ずにいると、花陽ちゃんが叫び、静止する。

 

「誰が、悪いだなんてもういいじゃないですか…私達はどうしたいか、それを言いましょうよ…」

 

「そうにゃ…もう、後戻りは出来ない。

だけど、凛達は前に進むことは出来るんだよ!!前に進まないと!!」

 

二人の言葉で、目が覚める私達。

誰が悪いか攻めている暇なんて、何処にも無い。穂乃果達はやらないといけない事がある。

 

「むっくんに会いたい…ごめんなさいって、謝りたい」

 

見えない所で、穂乃果達に見えないように頑張ってる。

お父さん達に書類を作ったり、真剣に真剣に頑張っている…もし、にこ先輩の事を知る事が出来れば、きっとちゃんと話し合ってたんだと思う。だから謝りたい。

謝って、音ノ木坂のスクールアイドルとしてむっくんにスポンサーになってほしい。

 

「でも、どうするの?

あっくん達に電話をしても、出てくれないよ?」

 

「それは…」

 

このままマンションに向かっても、門前払いをくらう。

むっくんが総責任者(スポンサー)で、むっくんが降りるって言えば黛さんも手伝ってくれない。穂乃果達の言葉に耳を傾けてくれない。

 

「着信拒否をされているなら、私の携帯で通じる筈よ」

 

「…」

 

こんなことをするのはむっくんを騙してることなのは分かっている。

けど、コレしかないとにこ先輩から携帯を借りてむっくんの電話番号を入力する。

 

「…本当に、本当に羨ましいわね、あんた達…」

 

「ホントやったらね…にこっちも此処に加わるねん…もう、何もかもが手遅れや」

 

「…先ずは、あいつに謝るのが先よ」

 

電話番号を入力し、机の上に携帯を置いてスピーカーに変え待つ。

部活動の時間帯だけど、雨が降っている。室内にいる可能性もある…

 

『「はい、もしもし?」』

 

「!」

 

私達の携帯だと出ないむっくんも全く知らないにこ先輩の番号なら出た。

 

「むっくん…紫原さん」

 

『「はぁ、あの小さいやつの携帯でかけてきたんだ…忙しいから、手っ取り早く説明してよ」』

 

私が声を出すと、嫌そうな声で耳を傾けてくれる。

言わないと…私が言わないと。

 

「紫原さん…私達は知りました。

希ちゃんが教えてくれなかった事を、私達が知れたのに知ろうとしなかったことを」

 

『「そう…で?

まさかとは思うけど、ごめんなさいって謝りたいの?」』

 

「はい…」

 

『「先に言っておくよ。

謝れば許してもらえるとか、思うなよ。

悪いことを最初から悪いことと認識してたりしてる奴こそが真の良い人だ。

ある程度ふざけていても、越えちゃいけない一線は確かに存在している…今回はその一線を越えたんだ。スクールアイドルでもない人達のスクールアイドル活動を手伝うっておかしいし義理はありません…謝る機会すらあると思うな」』

 

「そん、な…」

 

謝ることすら穂乃果達は出来ず、電話は切れる。

もう一度、かけ直そうとするけど…着信拒否をされてしまった。

 

「…」

 

もうどうすることも出来ない穂乃果達は声を出さずにずっと涙を流した。




そう言えば理事長って、にこちゃんの存在を知っていたのだろうかね。
感想待ってます。


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盆から溢れ、流れ落ちた水の行方

ヤンデレは良い文明なんだ、もっともっと増えろヤンデレ二次小説。
具体的に言えば、原作始まる前に色々と終わりそうなラブライブのヤンデレ二次小説(書きたい)。
まぁ、それはそうとしてケモミミキャラって結局頭の上の耳で音を拾ってるのだろうか?作画スタッフが特に気にしてるかどうかは知らないけど、普通に耳あるよね。どっちなんだろ。



A ケモ耳は性感体で普通の耳ではありません




感想を待ってます。


「あ~めんどい」

 

今日も今日とてバスケ部の練習はキツかった。

除湿器を体育館に置くことを許されてるけど、それでも蒸し暑い。後、大雨だ。

幸いにも帰る頃には雨が病み、暑苦しいバイク用のカッパを着て帰らなくて済むから。

けど、それでもカッパを一度もってかえって干したりしないといけないからめんどい。

 

「待っていたわよ、睦…って、待ちなさい!」

 

けど、コレから本格的に梅雨入りするんだから文句は言えない。

車を使えずバスや電車が嫌だから俺は原付で登校しているんだから、こう言うとこはちゃんとやっとかないと、原付を兄ちゃんが買ってくれたものだし。

 

「え~っと、冷蔵庫は…一食分だから持ってけば良いか。

洗剤とかは黄瀬ちんと同じメーカーだし、布団とかも向こうに泊まる様にあるからいらないか。ああ、でもカビはえない様に乾燥剤を置いておこう」

 

「開けなさい!!私を無視するんじゃないわよ!!」

 

荷造りをするけど、何時もとは違う量だ。

学生向けのマンションに加えて至って普通の事故物件だから、油断すると部屋の湿度が高まっちゃう。そのせいで服にカビ映えるとかあるから、煎餅に入っている乾燥剤とかを入れとかないと。後、ムシューダ。

 

「希になにを言ったの!

生徒会室に戻って来たと思ったら、泣きはじめて…貴女が原因でしょ?」

 

「……大体、こんな感じか。

今日の分は峰ちんが用意してくれるけど…明日からは交代制の当番か…炊飯器足りるかな?」

 

作るのが色々と面倒な夕飯の心配よりも、俺は朝食や間食の心配をする。

マンションにこれから暫く泊まり込む。そうなると、飯が大変になる。赤ちん達、料理しようと思えば出来るけどしてない。

基本的に峰ちんが朝と間食と夕飯を作ってて、俺がマンションに住めば交代制で作らないといけない。極稀にしか作らないんだよね…料理の栄養価とかを無視した末に辿り着くのはサプリメントだからなぁ…

 

「…え、ちょっと、っ!?

や、やめて!なにをするのよ!!」

 

「…行く前にコンビニ寄って、料理の本が無いか確認しとこ」

 

「エリチ大丈、ってなにしてるん?」

 

「希……睦、出てきなさい!!」

 

「預金通帳とかも、持ったからっと」

 

割とあっさりと終わった荷造り。

誰かを呼んで遊んだりする時はマンションの方に呼んでるし、こんなもんかと思う。

お風呂とかの電源も勿体ないからOFFにしたし、そろそろマンションに向かおう。峰ちん達が待ってくれてる。

 

「やっと、やっと出てきたわね…安心しなさい、さっきのは演技って何処に行くのよ!」

 

「むっくん、まっ……なんて、言えないよね…私なんかに…」

 

俺的には早かったけど、赤ちん達は遅かったらしい。

マンションに向かい、部屋に入ると何時でも焼肉が出来る準備をしていた赤ちんに遅いと怒られた。

 

「いや、気にしてやれよ」

 

「…?」

 

そんなこんなで時間は過ぎていき、土曜日。

久々の休みだけど、不規則な生活をここ最近していなかったせいで調子が悪く早くに目覚める。たまにの休日ぐらいゆっくりしたかったんだけどなぁ。

 

「黛さん、どうやって俺の回想を見たの?」

 

「そこは気にするな、そう言うのを気にしてたらキリがない」

 

黛さんに教えていないのに、黛さんは月曜日の夜のことを突っ込む。

もしかしてこの人は転生特典がサイコメトリーなのかもしれない。影が薄いのは生まれつきとか言ってたし、やっべーよ。超能力者って、やりたい放題だよ。

 

「完全に無視とか小学生かお前は」

 

「は、ガキじゃねえし。

向こうが真面目にやらなかったんだから、もう二度と関わる必要なんて無いでしょ?」

 

月曜日の夜にやって来た絢瀬さん。

東條さんが泣いてたらしいけど、悪いのは全て東條さんだ。

殴ろうとした事については、色々と思うことはあるよ。殴ろうとした俺は悪人、屑かもしれないよ。けど、東條さんが悪いのは変わりない。

 

「まぁ、確かに言わなかった事に関してはどう頑張ってもダメだな。

オレ達が居なくても(原作でも)言わなかったし…本当にそこに関しては弁明の余地すらない」

 

東條さんに関しては本当にふざけるなとしか言えないよ。

アイマスだったらこうは行かない…ちゃんと所属してチャンスがあるから…でもまぁ、武内Pは言わなくて泣かせる人だけど。でも、熱心にしてる。蘭子語を真剣に覚えようとしてる。

 

「けどまぁ、言ってないという意味では同類だがな」

 

「なに、言えって言うの?それとも仲良くしろって言うの?」

 

東條さんが言っていない様に俺達も言っていない事がある。

だからと言って、許すつもりは最初から無い。俺は悪くない。

 

「馬鹿を言え。

ソレは言葉で教えることでも自力で答えを見つけ出させて教えることでも、かといって教えなくても良いことでもない、だが次元が余りにも違いすぎる。

放射能まみれの汚染物質、ネクロノコミン、パンドラの箱…そう言った物と同じジャンルで、赤司もソレに関しては自力で気付いて聞いてこない限りは触れてないだろ?」

 

ソレに関しては黛さんは善悪とかの次元を通り越していると無関心を貫くつもりだ。

俺もソレにだけは正直触れたくない。根底を覆すとんでもない事だから…けど、だからこそミドちんはソレを気にしている。

 

「うげ…ヨッシーのたまごをはじっこですんの、やめてよ。復帰できない」

 

「復帰がクソなリトル・マックが弱いのが悪い…少し外に出るぞ」

 

スマブラで敗北してしまい、意気消沈をする。

いや、本当に無駄に年食ってるだけに強いわこの人は…運動能力はカスなのに。

ゲームの電源を落とすとバスケットボールを持った黛さんはとっとと来いと俺を外に誘う。

 

「え~黛さんと勝負してもどうせ勝つだけじゃん」

 

「お前等と違って、此方は対人戦とか出来ないんだよ。

それにこのままラブライブがバットエンドに向かうほど、都合よく行かない…ぐだ男以上にしつこくは無いと思うがな」

 

文句を言いながらも、外へ出てマンションの中庭に向かう俺達。

何時もなら此処に赤ちんがいるけど、珍しく今日はいない。競馬だね。

 

「て言うか、FGOの世界ってどんだけ辛いの?」

 

「辛いというか…ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だっただな。

全部の鯖と仲良く出来ない奴はノンコミュニケーションで行かないといけないとやってたのがある日バレて、一部の人妻系鯖とかが此処にいる私は劣化コピー、大元とは関係無いって、気づけばパパになって戸籍が抹消されて…気を付けろよ」

 

なにに対してか、聞きたかったけど聞くのが怖い。

 

「はい、シュー!」

 

中庭に向かうと、1on1を始める。

つっても、黛さんが相手だから特に張り合いは無い。

この人の運動神経はそこそこ、本当にそこそこであり素のスペックは高いかと聞かれれば低い。潤滑油、大きな歯車と歯車の間にある小さな歯車、それがこの人である。

 

「やっぱ、普通じゃダメか」

 

黛さんと俺とじゃ、色々と違う。

フックシュートなんてせず、何処にでもある普通のシュートをいれると黛さんはボールを回収し、再開をすると手を変えてくる。

 

「マジで、やってやんよ」

 

マジの黛さんなら、こっちもマジじゃないといけない。

バスケの教科書に載ってる技術は黄瀬ちんが全て出来る、予想外の動きは峰ちんが出来る。

けど、黛さんは予想外でも教科書通りとも異なる異色の技術を使いこなせる。

 

「いくぞ」

 

黛さんはそう言うと、独特の構えを…幻影のシュートの構えを取る。

 

「その技の原理は、知ってるんだよ!!」

 

バスケってのは、デカい奴がするスポーツでデカい奴だけが使える技もある。

ダンクが良い一例だけど、幻影のシュートは小さいからこそ使える技の一つ。

細かな原理を知っている俺は重心を後ろにずらして、素早く一歩の間を開いて黛さんを見ると黛さんが飛んでない事に気付く。

 

「まだまだ甘いな」

 

黛さんは深く沈みこみ、抜ける。

基本的な背丈はあるけど、スポーツ選手基準で見れば低い黛さん。

重心を後ろにずらされた為に、戻るのに1テンポ遅れてしまい、その隙に普通のクイックシュートを打とうとする

 

「舐めんなよ!!」

 

1on1で黛さんにだけは負けたくない。

不安定な重心なんか知らないと俺は黛さんが何処に投げるかを予測して、ボールを弾く。

 

「ホント、油断できないわ、あんた…つーか、その技本当にウザいわ」

 

自分が主人公じゃないと割りきる事が出来ている。

だからこそこの人は黛千尋なんだと常々思うよ…けど、負けてやんない。

 

「ッチ…幻影のシュートフェイントは良かったが、オレのスペック本当にカスだな」

 

「え~此方の中庭ですがオーナーである赤司さんの意向によりバスケットのゴールがついています」

 

「へぇ、中々良いところじゃない…って、あら?」

 

自分の運動能力の低さに苛立ちながらも、ボールを回収しに行く黛さん。

すると、不動産会社の人が現れた。この人がこのマンションに来るときは何時だって住居を探している人を連れている。

 

「紫原!」

 

「此処であったが、百年目ぇえええええ!!」

 

連れていた人には…人達には見覚えがあった。

綺羅ツバサ、統堂英玲奈、優木あんじゅ。一年以上前に偶然に出会ったスクールアイドルのトップとも言うべきA-RISEであり

 

「俺のバスケットボール、返しやがれ!!」

 

俺のバスケットボールを盗んだ張本人だった。

気にしないでおこうと思ったけど、東條さん達の事もあり色々と溜まっている。

それを発散させるかの如く、俺はあんじゅと英玲奈に鼻フックを決めて持ち上げる。

 

「な、なにをしているの!?」

 

「やられたらやり返す、例え暴力がダメでもやり返す…倍返しだ!!」

 

久々の感動の再会?貴方のお陰で見直すことが出来た?

そんな展開は何処にも必要がない。もうラブライブとは関係無い。あるのは紫原のバスケなんだ。

 

「あの日忘れてったバスケットボールもしくはバスケットボール代を寄越せ!!」

 

「バスケットボールって、それは返し…ていないけど、新しいのを送ったじゃない!」

 

「あんなもん、当の昔に捨ててるよ!!

て言うか迷惑なんだよ。サイン付きのバスケットボールなんて!!」

 

「そ、そんな…」

 

ハッキリとこの際だから言っておかないといけない。

自分達のサインが嬉しいどころか、迷惑がられていることを知ってしまいショックなツバサ。

だけど、本当に迷惑だった。なにが一番迷惑だって?

 

「送ってきたボール、全く違うメーカーで6号サイズ(女性用)だった。

使いはじめてから、あれなんかちがくね?ってなって色々と恥かいたり、サインを汚すなとか言われたんだぞ…あ」

 

ツバサに怒るのに集中しており、あんじゅと英玲奈を見ていなかった。

油断したために鼻フックデストロイヤーから抜け出して、涙目になりながらも俺を見つめる。

余りにも予想外の行動に驚いている。不動産会社の人もポカーンとしており、黛さんは…何処行った?

 

「す、すみません…でも、貴方のお陰で」

 

「そう言うの良いから、ボール返して」

 

「それは…無理だ。あの後、ボールを使って色々とパフォーマンスの練習をして」

 

「はぁ!?人様のもんパクってボロボロにしたの?

お前等、スクールアイドルのトップだかなんだか知らないけど人としての常識を学べよ」

 

直ぐに取りに行かなかった俺も悪いかもしれないけど、勝手に使うのはダメでしょうに。

ゴミを見る目でA-RISEを見ると俯く三人、俺との感動の再会とか思ったけど甘過ぎだし。あ~本当にやになんわ。スクールアイドル。

 

「取り敢えず、後でボール代を寄越すか同じもん買ってこい。

こいつの使ってるボールは、NBAの公式のやつで五つぐらいあれば電動自転車買えるんだぞ」

 

「どうぅあ!?」

 

「だ、誰だあんた!?」

 

「何時の間に背後に!?」

 

「…最初からいたんだけどな…」

 

俺のバスケットボールについて補足してくれる黛さん。

バスケットボールの値段に驚くところを、黛さんに全てを持っていかれた。

 

「とにかく、もう帰れ。

不動産会社の人、このマンションの中庭を紹介したって事はもう此処で最後ですよね?

今日はここのオーナーはいないし、コイツはオーナーとの付き合いがある…後は言わなくても良いだろう」

 

顧客が取れれば、マンションのオーナー、不動産会社万歳。

遠回しに脅し、不動産会社の人にA-RISEの三人を引っ張っていってもらう。

 

「俺の住所とか知ってるんだから、バスケットボール、新品を寄越せよ!」

 

あれ、本当に高いんだから。

消耗品だから買い換えないといけない、俺のドリブルはパワーが強いからボロボロになるのが早いんだよ。

 

「お前、一応はあんなのでもトップのスクールアイドルだぞ?あんなのでも」

 

「トライアドプリムスとかラブライカなら敬意は払ってたよ」

 

「お前もクール系か…」

 

スクールアイドルだからって、敬意を払う必要はない。

アイドルだってウンコをする。芸能人やスポーツ選手は聖人じゃない、清らかじゃないんだ。

 

「おい、今さっき不動産会社の人走ってったぞ?

確か…あの、なんだっけ?A-RISEとか言うスクールアイドルも一緒だったぞ」

 

不動産会社の人が去っていくと、入れ替わりでやって来た虹村さん…と

 

「なんでよりによって、その三人をチョイスした」

 

「けじめだよ、けじめ…どう転んでも、責任はとらねえからな」

 

東條さん、高坂さん、雪穂、後、ちっこいの…名前なんだっけ?




ちょっとした余談

赤司→遊戯王ARC-V(アニメ)
青峰→テイルズオブゼスティリア(ゲーム寄り)
虹村→イナズマイレブン(アレスの天秤時空)
黛→Fate/Grand Order(ぐだ男時空)

それぞれが転生した一番最初の世界であり、虹村は円堂になって無双してた。
生活的に一番辛かったのは、文明が全然発達してない世界にいた青峰で、人間関係で地獄を見たのは黛(ヤンデレハーレム)、一番大儲けしたのは赤司。残りの三人は今回が最初の転生。虹村は二度目の転生。


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嵐の山で背負いし覚悟の重さ

「雪穂、洗濯物干してきてくれないかしら?」

 

「うん、分かった…」

 

土曜日、もうすぐ六月に入り梅雨入りするって言うのに清々しいぐらいに晴れた。

六月に入ればジューンブライド、結婚式が多くなり引き出物で家のお饅頭が頼まれ繁忙期に入る。

今日も今日とて家には予約が入り、忙しくなり家のことを頼まれるのは別に珍しいことでもなんでもない。

 

「…」

 

洗濯物をベランダに干しながら、清々しい外の空気を肌で感じる。

今日はきっとピクニック日和、そう言うのに相応しい。

 

「お前等、まだまだいくぞ!!」

 

「「「「「「「はい!!!」」」」」」

 

現にこの地区のミニバスチームは元気よくロードワークを行っている。

清々しい笑顔で、引率のお兄さんと思える人に引っ張られてる……

 

「お姉ちゃん…」

 

洗濯物を干し終え、籠を洗濯機の側に戻し自分の部屋に戻ろうとすると足を止める。

お姉ちゃんの部屋の前で足を止める…先週の土曜日、急に豪雨が降り注いだ。

別に急な豪雨は驚くことじゃない、強いて言うならお姉ちゃん達が傘を持っていないから大丈夫かなって、心配だった。

豪雨で練習は中止になったみたいで帰ってきたお姉ちゃんはずぶ濡れだった。

急な雨でやっぱりと思い、タオルを差し出した…すると、泣き出した。なんで泣いているのか、聞いたけど月曜日に教えてくれるって言ってその時は教えてもらえなかった。

そして月曜日、朝は教えてくれず学校から帰ったら教えてくれると思って、待ってた。

早く教えてほしいと、お母さん達も心配して帰ってきたら…お姉ちゃんは泣いた。

 

「…入るよ」

 

紫原さんがスポンサーを降りた。

自分が悪いとずっとずっと攻め続けていた、どういうことかと聞いても教えてくれない。

μ'sが結成された際に連絡網が作られたので、それで他の人達に電話をしたけどお姉ちゃんの大親友である二人は出なかった。出てくれたのは一年生の三人だけで、その三人も泣いていた。

聞けばアイドル部は前々からあって、お姉ちゃん達はそれを一切知らなかった、希さんは知ってて黙っていた、アイドル部の部長は部活動らしいことをせずに部活動紹介もしていない。

 

「雪穂…」

 

紫原さんが怒ったのは当然だと思う。

あの人は普段は物凄く抜けている人、大きいけどのろまなイメージがある。

家のお饅頭を食べに来た時も、入口に頭をぶつけていたし目もボーッとしている。

けど、本当は凄い人だって知ってる。家のお店に、外国人が来た時、英語じゃない何処かの国の言葉を喋っていた。店番をしていた私達はどうすれば良いのか分かんなくて、泣きそうになったけど、紫原さんが助けてくれた。抜けている感じはあるけど、この人は凄いんだなって思った。カッコいいって。

お姉ちゃんがスクールアイドルを始めるって言い出したかと思えば、紫原さんを巻き込んだ。

当然、紫原さんは断った。ちゃんとした理由があった、確かにと納得の行く理由で。それでもと、お姉ちゃんは頼み込んで折れた。

すると、紫原さんは本気を出した。お姉ちゃんがA4サイズの封筒に入った書類を見たときは驚いた、此処までするんだって。挨拶に来た時も、ちゃんと手土産まで用意をした。

 

「なにを、見てるの?」

 

そんな紫原さんの真剣な気持ちを…なんて言えば良いんだろう。

とにかく、怒るのは当然だと思う…お姉ちゃん達は反省した、自分達が全て悪いと思っている。けど、紫原さんは謝る機会すらくれない。

絶縁してもおかしくないぐらいのこと…だけど、紫原さんが居なくなってからお姉ちゃんから笑顔は消えた。

 

「…こうしてこれを見るとさ、むっくんってなんだろうって思うんだ」

 

お姉ちゃんは音ノ木坂の部の申請用紙を見て、薄ら笑いを浮かべる。

そこには希さんを含めたμ'sのメンバーの名前が書かれてる…けど、紫原さんの名前はない。

私もだけど、私は音ノ木坂の生徒じゃない…けど、お姉ちゃんの、高坂穂乃果の妹。

 

「此処には、此処にはむっくんの名前はない。

書けない…むっくんは穂乃果達にとってなんだろうね…穂乃果達をどう思ってたんだろ?」

 

「…」

 

「むっくんってね、バスケ部に所属してるんだ。

ブラック部活動とか嫌だって週に五日だけ活動してて、金曜日と土曜日しか休みがないんだ…貴重な休みをね、使ってくれてね」

 

「っ……お姉ちゃん、一緒に散歩しよう!!」

 

今のお姉ちゃんは見ていられない。

死んだ魚の様な目を通り越しており、何時包丁を握りしめ、かーなーしーみとBGMが流れるか分からないぐらいにボロボロになっている。

このまま薄暗い光が当たらない部屋にいても、なにも変わらない。

私はお姉ちゃんの部屋を出て、直ぐに身支度を整えるとお姉ちゃんは玄関前にいた…何時もなら髪をセットしているけど、セットしていない。服装は、ジャージ…μ'sの特訓の時に使っているジャージ。

 

「お母さん、行ってきます」

 

「雪穂…」

 

「大丈夫だよ」

 

今の状態のお姉ちゃんを連れ歩くのは危険かもしれない。

けど、私がちゃんと見ている…お母さんは、本当は私も辛いって気付いてるかもしれないけど。

 

「お姉ちゃん、何処に行く?」

 

昔みたいに、手を繋ぐ私とお姉ちゃん。

行き先は決めていないけど、歩かないといけない。

 

「え、ちょっと」

 

私の質問に答えることなく、お姉ちゃんは歩き出す。

私なんて全く気にしていない、油断すれば握っている手が離れそう。

 

「…ここって」

 

それでも離すわけにも、別の方向にも引っ張ることも出来ないまま辿り着いた。

μ'sが何時も基本的な運動能力をあげる為に来ている神田明神に…

 

「…思い出すなぁ。

むっくんと此処ではじめて出会ったんだ…穂乃果とことりちゃんがね、太っちゃってね…むっくんは特に気にしてなくてさ…」

 

階段に座り込み、昔を思い出すお姉ちゃん。

 

「私達、むっくんがどんな学校に通ってるか知らなかった。

バスケ部で一生懸命頑張ってて、全国に出てるの知ってる…けど、むっくんは見に来たら絶縁するって言ってきた…嫌われてたのかな、私は!」

 

俯き涙を流すお姉ちゃん。

私はどんな言葉をかければ良いのかが、分かんない。泣きたいけど、涙は堪える。

紫原さんはお姉ちゃん達を手伝うことになったけど、紫原さんの存在は知られてはならない。

だから、バイトとして私は雇われた…μ'sの活動が始まると、私も当然呼ばれて…楽しんだ。本当は廃校を阻止する為に頑張ってるのに、それを忘れるほどに…それぐらいに、楽しくて楽しくて仕方なかった。

 

「…私には、なにも浮かばないよ」

 

余りの額に罪悪感が生まれるほど入っていたバイト代が入っていた封筒を取り出す。

はじめて自分で稼いだお金だから、家族にご飯を奢った。けど、それでも余った。

 

「お姉ちゃんを、これで笑顔にする方法なんて」

 

100円以上の金額が封筒に入ってる。

考えることによって、100円で100円以上の利益を出して誰かを笑顔に出来る。

それがμ'sの最初の動画だけど…私にはなにも浮かばない。1000円を使おうが、10000円を使おうが今のお姉ちゃんを笑顔にする方法が浮かばない。

 

「神様…どうかお姉ちゃんを…ううん、皆を笑顔にしてください」

 

お姉ちゃん達が渡された同じ額を、108円を賽銭箱に投げ込み祈る。

 

「…なにか美味しいものでも食べに行こう」

 

お祈りを済ませ、階段に戻りお姉ちゃんの手を握る。

少しでも気を紛らわせようと、何か美味しいもので食べようと提案するけど微動だにしない。

 

「ピザ…みんなで作ったピザ…」

 

食べたい物を小さく呟く。

もう、我慢は出来ない。私も、それが食べたい。

頑張らないといけないと、必死になって耐えて耐えて耐え抜いたけどもう無理だよ。

お祈りは通用しない、神様は微笑んではくれない…

 

「ちょ、真ん中に座ってると通りづらい…隅っこに行っててくんねえか…」

 

「虹、村、さん?」

 

全てに諦めようとしたけど、希望があった。

さっき外で走っていたミニバスのチームを引き連れていた人が私達に声を掛けると、お姉ちゃんは顔をあげる。

 

「よぉ…俺、裏方として手伝ってやろうとしてるけど全く役に立ってないな…ふぅ」

 

アヒル口の男性は皮肉めいたことを言いながら、私達に笑みを浮かべる。

 

「誰、ですか?」

 

お姉ちゃんはこの人のことを知っている、けど私は知らない。

誰だろうとその人から目を離さずに見ていると、大きなため息をその人は吐いた。

 

「大体の事情は知ってる。あの馬鹿はガキだからな…」

 

「ガキじゃ、ないよむっくんは…。

穂乃果達がなにもしなかった、知ろうとしなかったから悪いんだ…」

 

「お前達はどうしたい?」

 

「…戻りたいよ…謝りたいよ…」

 

「そうか…μ'sって、今何人だ?」

 

「…7人」

 

自己紹介をせず、お姉ちゃんに問いかけるアヒル口…もとい虹村さん。

μ'sの人数を聞いてなにかを数えると、虹村さんは私を指差す。

 

「現時点のμ's×1000円とお前を含めるのに+500円、俺に飯を奢れ。今回はそれで良いや」

 

「…はぁ!?」

 

いきなり現れたと思ったら、この人はなに言ってるの!!

思わずそう言いそうになったけど、必死に堪える。その次になにかがあると感じたから。

 

「お前達に…紫原にごめんなさいって謝らせてやるよ。だから、飯を奢れ」

 

「…ホント?」

 

「ああ…正直、お前達がやったことに関しては色々と思う。だからこそ、謝らないといけない」

 

さっきまでの死んだ表情に段々と精気が宿る。

こんなことを思うのはダメだと思う。友達の緑間早苗のお兄さんが、神頼みだけはダメとか人事を尽くさないといけないってよく言ってる。

けど…

 

「願いが、通じたんだ…」

 

「ほら、早く準備しろよ」

 

赤司さん達は会ってくれないけど、希望はまだ残っていた。

それと同時に残っていたお金の使い道が分かった気がする…ここだ。

 

「あの、それじゃあ今すぐにでも」

 

「アホ、俺は今、小学生達を指導中だ。

ほっぽりだしてみろ、自治体とかそう言うのに怒られる。明日、試合があるから今日は此処で難波歩き教えて終わりなんだよ…紫原に会う前に、やることはまだある」

 

「…皆を、連れて」

 

「大勢で来るな、飲食店に迷惑だ…一時間後にまた、お前達と会う。

俺だってお前達の話を聞いて、紫原が怒ったのは当然だと思ってる…このままお前達がごめんなさいって言ってみろ、それで本当に終わるぞ?」

 

此処にはいない他の人達を呼ぼうと立ち上がると違うと抑える虹村さん。

確かに、ごめんなさいって言ったら…それで終わっちゃう。

 

「お前達はどうしたい?」

 

「…むっくんがスポンサーで、穂乃果達がスクールアイドルで、廃校を阻止したい…」

 

「廃校を阻止したい、か…とにかく、今の状態だとダメだから色々と用意してこい。

俺もそんな優しくねえ、厳しくする…一回しかチャンスはやらねえ。だが、考える時間と考えを改めるきっかけはくれてやる…はい、スタート」

 

最後のノリの軽さを見て、ああ、この人は紫原さん達と同じだと理解をする。

開始の合図が出されると立ち上がったお姉ちゃん。

 

「雪穂は海未ちゃんとことりちゃんに連絡をして!!

穂乃果は、凛ちゃん達に連絡をするから…一時間後に、また会おう!!」

 

そう言うと、家に帰っていったお姉ちゃん。

私は海未さんの家に向かって走りながら、携帯を取り出してことりさんの番号へとかける。

 

「おーおー、若いって羨ましいわ。

…謝るチャンスをやって、元の鞘に納まっても…ヤンデレ化しそうだな。

けどまぁ、本当に重要なのはそこじゃない…俺達も言ってないことも多いし…はぁ、俺も結局はガキか」

 

一時間後、私は神田明神に戻ってきた。

 

「お待たせ!!」

 

お姉ちゃんも神田明神に戻ってきた、何時でも謝ることが出来るように身嗜みを整えて。

海未さん達も来たがっていたけど、先ずは虹村さんにご飯を奢らないといけない。それならばと1000円を取り出そうとしたけど、それよりも一ヶ所に固まって欲しかった。

 

「んじゃ、いくぞ」

 

私達は気を引き締めたけど、虹村さんは気の抜けた感じになっていた。

ゆっくりと階段を降りた虹村さんに私達はついていき

 

「あ、すみません王将セットを一つ。

炒飯の方を大盛りにしてください。で、餃子を三人前と単品でラーメンと唐揚げ…あ、餃子は両面焼きで…あ~後は追加で頼みます、あ、炒飯のスープはいらん」

 

「かしこまりました…はい、そーはん」

 

餃子一日百万個で有名なあの店にやって来た。

店内に入るとテーブル席に座り、メニューを見ずにさらっととんでもない量を注文をする虹村さん。

 

「準備は出来てるだろうな?」

 

お冷やを飲むと、私達の方の確認をとる。

勿論と返事をせずに頷き、携帯を取り出すと電話を掛ける…

 

『「…」』

 

電話は1コールで通話状態になった、けど声は出さない。

電話の相手はμ'sの皆さんで、あくまでも虹村さんからの話を聞くだけでなにも言わない。

 

「はじめましての方ははじめまして、こんにちわはこんにちわだ。

俺が誰とかそう言う事は一切言わない…今は自分のことを考えろ、そんだけヤバいんだ。

俺がするのは…強いて言うなら、その先の話だな…お前達が謝って元の鞘に納まった後の話…お前達、ユルいからな」

 

このまま虹村さんにご飯を奢って、紫原さんに謝る。

そうすれば本当に終わりだと事前に伝えててよかった、賑やかな店内で電話の向こうにいる皆さんは沈黙を貫く。

 

「取り敢えず、お前達の意識改革だけしてやる…高坂って、一緒か。じゃあ、穂乃果、此処は何処だ?」

 

「…餃子○王将の神田」

 

「待て待て、誰がそんな具体的な位置を言えつった。もっと雑に言えよ」

 

なにを変えるか、分からない。

けど、紫原さんの様に自力で気付かせたいのかお姉ちゃんに質問をするけど、おかしな答えが出た…此処は何処だろう…

 

「…此処はさ、東京なんだよ。

…え~っと、確か雪穂だったっけ…茨木市って知ってるか?」

 

「…いえ、知りません…」

 

嘘でも知ってるって答えればよかったかも。

間違えた答えを出してしまったかもしれないと焦るけど、特に気にしない虹村さん。

 

「じゃあ、名古屋は知ってるか?」

 

「知ってますよ、それぐらい。

愛知県の県庁所在地で、名古屋城があって、味噌カツとかみそおでんとかが有名で…」

 

「…質問の仕方失敗したな…まぁ、良いか」

 

全く知らない市の次に小学生でも知っている市の事を聞いてきた。

この人は、私達になにを言いたいんだろう?

 

「此処は天下の東京なんだよ、地元か隣の市の住人とかじゃないと」

 

「王将セットの炒飯大盛り、スープ無しお待たせしました!

すみません、餃子の方なんですが後から参ります。少々お待ち下さい」

 

「お~来た来たっと…田舎者クセえけど、此処は天下の東京だ。

なんでも大体揃うし、私立公立国立、工業農業国際コミュニケーション看護科…とにもかくにも、いっぱいあって、お前達はそんなかからスクールアイドルを選んだ」

 

「どういう、意味…なんですか?」

 

お姉ちゃん達は確かにスクールアイドルを選んだけど、意味が分からない。

 

「お前達に出来ることは色々とあって、そん中からスクールアイドルに決まった。

それに関してああだこうだ言わねえが…お前達が選んだものは正攻法じゃないってことは確かだと言わせてほしい。まぁ、つまりアレだ。お前達はこれさえやっとけば良い的な事をやってないんだ」

 

唐揚げを二個同時食べをしながら説明をしてくれる虹村さん。

これさえやっとけば良いってことは無いって、それは当たり前じゃないの?

 

「お前達はな、嵐の中の荒野…いや、砂漠…まぁ、どっちでも良いか。

お前達は常に暗闇の嵐の中、あるんだか無いんだか分からない道を歩いている。

野球とかなら、凄い投手がいれば良い。凄いバッターがいれば良いってなるけど、スクールアイドルは正攻法はない…正直なにすれば良いかも俺も分からん。

誰も通っていない道なのかどうかも分からない、危険極まりない道をお前達はなにもなしで歩いている、誰かと同じ様にすれば良いが通じない道を。

紫原は…謂わばランタンだ。暗闇を灯して見えるようにしてくれる、あるんだか無いんだか分からない道をハッキリと見せてくれる、そう言った存在だ。赤司達はその他諸々の道具な。そんな中で更にお前達は音ノ木坂の廃校と言うものを背負っている」

 

言いたいことは分かるけど、雑だ。

炒飯を頬張りながら、虹村さんはμ'sの現状を例えで教えてもらう。

確かに…スクールアイドルって色々なことをしてて、真似さえすればいいわけじゃない。

歌って踊れては、何処のスクールアイドルも出来てる。問題はその先で、その先は誰も知らない。

 

「言わないだけで、その辺は紫原達も俺も気付いている。

上手い具合にことが進んでるから、完全な天狗になる前に鼻を叩き折らせてもらうぞ。

お前達がスクールアイドルやる以上は、上を目指さないといけない…けど、上に行けば行くほど、頼れる奴等なんていないし、道は消える。自分達で作らないといけない。

けど、お前達には俺…いや、紫原達がついている…どんなに厳しい道でも歩けるぞとなるように色々としてる。見えないところで頑張ってる。だから、道を踏み外さない。音ノ木坂の廃校を阻止するぞって道から外れなかった。けど、お前達が外しちまった。

…謝る機会はくれるが、どうするかどうなるかは俺は一切責任を持たない…あれ、なんて言えば良いんだ……」

 

「もう、良いです……むっくんがどれだけ頑張ってたのかがどれだけ穂乃果達に大切なのか、穂乃果達がうかれてたのか、分かりました」

 

「そっかー、分かっちゃったのか。

俺的には音ノ木坂の廃校を阻止したいなら気持ち切り替えろとかまだまだ言いたかったんだけどな…紫原はお前達の真剣に真剣で返してるぞ」

 

本当に口下手とかそういうレベルじゃないと言いたい。

けど、それよりもお姉ちゃん達だ…気付かないだけで、感覚が薄れていっただけで物凄く恵まれていた。失って気付く本当に大事なことが分かった…

 

「虹村さんありがとう…でも手遅れかもしれないよ」

 

「はぁ、なにいってん」

 

「ラーメンお待たせしました、以上でよろしかったでしょうか?」

 

「餃子と唐揚げ来てねえだろ。後、単品で炒飯大盛り追加な。スープはいらん…聞くから続けろ」

 

店員、ホント邪魔。

 

「むっくんは、バスケ部なんだよね?

穂乃果達…一回もさ、見たことないんだ…バスケをしているとこを。見に来ないでと言ってきて、見に来たら絶縁するって言ってるんだ…本当は、本当は穂乃果達のことが嫌いじゃ」

 

「ちげーよ………………お前、高校の男子バスケの世界が今どんだけヤバイのか知ってるのか?」

 

ラーメンを一瞬にして食べ終え、スープは飲み物かといわん勢いで飲み干した虹村さん。

さっきまでとは雰囲気が大きく異なり、私たちをただただじっと見る…高校の男子バスケがヤバい…それってもしかして…

 

「近年、ブラック部活が問題になってる。

文部科学省が色々と言ってるのに、水を飲むなとか言って飲ませなかったり疲労骨折させるほどハードな練習を毎日させてやがる。

それで成果を叩き出したら、文句は言えないが…そんな奴でも一回戦負けなんてざらだ。

辛酸を舐め、俺達の思いを託したと勝った学校に託したと思えば二回戦で負けて、三回戦に進む奴に託しても四回戦で敗北しての繰り返しでやっとの全国。

だけど、全国に行くと登場するのはバスケに金を掛けている全中やクラブで腕を鳴らした者を集めまくった高校でそいつらに現実を思い知らされ負かされる…そして決勝戦、そいつ等はどうなるか知ってるか?」

 

「…奇跡の世代…」

 

帝光中学のバスケ部に現れた天才達、全員が超高校生級のバスケ選手。

余りの強さに戦った何人もの選手が挫折し、バスケをしなくなった…化物集団。

噂だけ一人歩きしてて、正しいことは知らないし、どんな人達かも知らないけど確かに奇跡の世代は存在している。

 

「そう、奇跡の世代に10倍以上の点差で負ける。

それが今の高校男子バスケの世界で…次が奇跡の世代が居る高校だからって、バスケに金を掛けている学校が此処までよくやったって言うぐらいな…そんな状態を見に来てって言えるか?」

 

「そんなに…酷いの?」

 

「ああ、酷いぞ。

だが、そう言うことを平然と言う学校も酷いがな。

…高い地位なんかに居ると、目に見えることとか大分変わる…低い地位にいてもだ。

今、お前達は自覚しているか知らないが音ノ木坂って言う重い物を背負ってる。奇跡の世代が日本のバスケを背負ってるのと同じ様にだ。

その重みを今すぐにでも実感しろ。お前達は音ノ木坂を背負ったまま高いところにまで行かないといけない…あ、この場合だと嵐の高山だって表現しとけばよかったか」

 

「すみません、餃子五人前お待たせしました」

 

「え、王将セットと頼んだの合わせれば四人前じゃないのか?」

 

「え、あ…す、すみません」

 

「ちょっと、新人を当てんのやめてくんねえ?

まぁ、とにかくここいらで背負ってるものとか色々と感じとけ…品行方正にしろとかは求めない、ある程度は必要だが、一流ならば品行方正絶対って考えは間違ってると俺は思ってる…おいこれ、両面焼きじゃねえじゃねえか。知ってんだぞ、ここの王将は餃子両面焼きしてくれるって」

 

食事中に話す内容じゃない、と言うか虹村さん…まぁ、良いか。

この後、虹村さんは7500円分をしっかりと食べ、その間にお姉ちゃん達は考える。

ただごめんなさいをすれば、もうそこで終わる。ごめんなさいと謝り、紫原さんが戻ってくる方法を、考える。

 

「謝る代表者を決めろよ。

流石に全員を連れて行ったら人海戦術とかと思われる…紫原が怒るのは当然。

だけど、私達はこんなに謝ってるんだからケチとか思うんじゃねえぞ…割とマジで」

 

私達なりの答えを考え、謝る面々も決めた。

お姉ちゃん、希さん…それとアイドル研究部の部長の矢澤さん…後、私も。

どうなるかは分からないけど、最後まで見届けないといけない…私達は紫原さんがいる赤司さんのマンションへと向かった。




重さを、重さを増し増しにするんじゃい(病めい!)
罪悪感から生まれる依存性とか裏切られたから生まれる依存性とかって良くない?
そして言おう…これよりもっとヒド…感想ほしい


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覆水盆に返らず…去れども時は加速する。つまるところヤンデレって最高だよね。

一方その頃

「穂乃果ちゃんが謝るだけじゃ、ダメだよね…ことり達もなにかをしないと…あっくんに美味しいものを、それとあっくんが常に側にいるって感覚を忘れないように…へぇ、髪の毛って、胃液で溶けないんだ」

的なことがあったりなかったり。


「虹村さん、今日はミニバスのコーチじゃないの?」

 

雪穂ちゃんのお陰でウチ等はむっくんの元へと辿り着くことが出来た。

本当に自分達がなにをしようとしているかを、背負っている物の重みを虹村さんに教えて貰った。本当に、本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に…甘かった。

穂乃果ちゃんはなにも知ろうとしなかったって自分を攻めてたけど、もう誰が悪いかと言う話はしないと終わったけど、一番ウチが悪い。改めて実感し…重圧がかかる。

 

「お前、此処まで来て大体分かるだろう…それとも分からないガキか?」

 

「ガキって、去年のバレンタインデーで貰ったチョコを焼却した後にコンビニで雪見だいふくとアポロチョコ買って、雪見だいふくの上にアポロチョコを置いて乳首とか下ネタに走って笑ってた虹村さんの方がガキじゃん」

 

むっくんの元へとやって来たけど、むっくんの瞳に写っているのは虹村さんだけ。

分かってる、真剣な気持ちを裏切った。絶縁されるのは当然とも呼べる、見えない所で頭を下げていた…だから、ウチ等なんか見たくないよね。

 

 

けど…見ないようにしているってことは、逆にそう言う風に意識をしてくれる。

…むっくんの頭の中には私でいっぱい。私の事を思って、むっくんは行動している。むっくんは私を見ていてくれている。

 

 

ポジティブに考えないといけない。そう考えると嬉しい。

思わず笑みが溢れそうになるぐらい、でも私は笑ったらいけない。

月曜日、むっくんは完全に無視した。私の事を居ないも同然に扱った。エリチも無視した。

あの時ほど、苦しいと言う感情はなかった…距離感は分からないし、今立っているむっくんの位置も分からないけど…分かってるよ。自分の気持ちが。

 

「おまっ、それ今言うことかよ!?」

 

「人のことガキ扱いすんじゃねえよ。

つーか、明日試合なんでしょ?とっとと休みなよ」

 

「…お前、無視すんなよ。

確かにコイツらがやったことは紛れもなく悪いことだ。

特に穂乃果はお前がスポンサーになるのはどういう事かをちゃんと説明して貰ってる」

 

「はぁ?だから?

それを知ってるんだったら、余計な事をしないでくんない?どうせ俺いなくてもどうにかなるでしょ?」

 

「そんなことな」

 

「ちょ、黙れ。

今俺がしゃべってるし…お前達がすることは謝ることだ」

 

むっくんが居てくれるからこそと、大切な事に気付いたと穂乃果ちゃんは言おうとする。

けど、虹村さんは止める…それはむっくんに言うべきことじゃないと。変に同情とか反省しましたアピールはむっくんは嫌うのを知っているから。

 

「お前がそう言うタイプなのは、知ってるよ」

 

虹村さんはそう言うと、持ってきたバスケットボールを地面に叩き付ける。

 

「!?」

 

此処で声をあげたらダメ!!

思わず上げそうになる声を必死になって抑え込みながら、音に、虹村さんのドリブルに驚く。

 

「なによそれ…」

 

でも耐えきれなかったにこっちは呟く。

虹村さんはボールを地面に叩き付ける、バスケでの基本的な動作であるドリブルをしている。

なにを言おうとするかは大体検討がついており、虹村さんに希望を託すだけ…だけど

 

「見えへん…」

 

虹村さんのドリブルが凄まじい。

体育の授業でしかしたことが無くて、詳しいことは知らない。

けど、体育の先生が言ってた。ドリブルは力強くつかないといけないって。

虹村さんもその通り力強くボールをついている…けどウチ等の比じゃない。ボールをつく音がマンション全体を響かせる。ボールをつく速度が余りにも早くてボールがぶれて目が追い付けず見えない

 

「だから、一発勝負だ。

俺が勝ったら、コイツらの話に耳を傾けることをしてやれ」

 

「はぁ、なに自分が有利な方向に進めようとしてるの?

それ俺が勝ったところで何処にも得がないじゃん…交渉してるつもり?」

 

「安心しろよ、どうせ俺が勝つだけだ」

 

「はっ、あんたが俺に?

確かにあんたは強いけど…あんたはやっと扉を開くことが出来ただけでしょ?」

 

むっくんと一対一の勝負、それは余りにも無謀すぎる。

誰にも言ってないし、さっき教えて貰った男子のバスケの闇とも言える奇跡の世代。

むっくんはその内の一人。虹村さんのドリブルは凄いけれど、いざむっくんと向かい合うと

 

「…か、勝てるの?」

 

霞んで見える。雪穂ちゃんが大丈夫か心配をする。

スポーツをするのに必要不可欠で、努力でどうのこうの出来る世界じゃないものを持っている。その内の一つである大きさ…虹村さんは充分すぎる程に大きい。

ウチが巫女としてバイトしてる神田明神は外国人観光客も来るけど、ヘタしたらそれよりも大きい…けど、むっくんはそれをも越えている。

ウチとマンションではじめて会った時には既に2メートルを越えていた。

最後に身長を聞いた時には…210センチと言うふ