テルミが壊す! (ロザミア)
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ユウキ=テルミ

どうも、ロザミアです。

早速新作あげてみましたが、少しお試しというのもあります。

それでもあー俺様強すぎてやべぇなwという方は見てください。


餓鬼は皆寝るであろう月が照らす夜。

誰にもバレない場所から俺は一人この国を見渡す。

 

感想としちゃあオイオイ……って感じだ。

あの野郎と協力、その子孫とも協力してきた結果がこれかい。

これじゃ先代の皇帝様も浮かばれねぇってもんだなぁ?

 

まあ、そこに関してはもうどうでもいい。

問題は、この腐敗の原因ってとこか。

さぞ頭の冴えた屑野郎だろうなぁ。

緑の瞳で今代の皇帝が居る城を眺める。

 

これに関しては俺一人じゃ動きにくいからなぁ…傾ききってねぇ今が好機ってところか。

利用…ってのは違うか、いつも通り協力してやる。

俺が気に入ればの話だがなァ。

 

まずは、テメェの()に入れて貰うぜ、操り人形(皇帝)

 

俺は城の方へと飛んでいく。

壁やらは気にしなくて良いのが精神体の楽なところだ。

後、見られても多少は誤魔化せる…といったところか。

俺に関しての情報は殆ど消している筈だからな、知られる心配もねぇ。

 

知られたら知られただが。

 

壁をすり抜け、ある一室へと辿り着く。

ベッドには、餓鬼が一人。

間違いなく、こいつが現皇帝様だ。

俺様にはそういったもんが分かる。

 

起こしても良いが、そうなると餓鬼は喚くだろうし、面倒だが入るか。

…人間の体を介さないと会話が面倒なのは困るな。

あの器を手にいれるのも視野に入れるか……

 

最悪、この餓鬼を器にするのも悪くはねえが、演技するのも馬鹿馬鹿しい。

 

ここはこいつを味方に引き入れることを考えるか。

 

俺は冷静に考えながら餓鬼の中に入る。

拒絶されると抑える必要があったがその心配は無用だったようだ。

 

餓鬼の見ている夢は空想といっても良い外を知らない餓鬼の妄想だ。

余程平和に統治出来ていると思っているようだが……ここまでとはな、洗脳に近いな。まだ侵食されきってはいねえか。

 

俺は早速餓鬼に声を掛ける。

 

─おい、クソガキ。

 

「……えっ?」

 

─何驚いてやがる、テメェの夢なんだ、テメェしか返事はできねぇだろうが。

 

夢に干渉できる奴がいるならもう一人くらいは返事をくれるかもしれねぇけどな?

心底驚いた様子の皇帝に俺は笑う。

俺が笑ったからか、怯えたように皇帝は震える。

 

「化け物…!」

 

─ああ?…この姿が原因か。餓鬼はこれだから面倒だ。

 

マインドイーターを使っちまえば楽なんだが、そうしたら計画はパーだ。

ここは我慢して姿を変えるか。

 

まあそりゃ、初対面が夢の中でその人物が緑色の丸い眼で半月みてぇな口で笑う黒い化け物じゃ驚くのは普通か。

 

俺は人の形を取る。

精神体で形を取るのは負担がかかるが夢や他人の精神空間なら負担要らずだ。

例え他人だろうがテリトリーみてぇなもんだからな。

 

黄色いフード付きのローブをシャツの上に着た緑髪で金の瞳の男…この見た目なら怪しさはあるがさっきまでの怖さってのはねぇだろ。

 

「姿が、変わった……貴様は、何者なのだ…?」

 

「まあ、俺様がテメェを知っててテメェが知らねぇのはこれから契約する上では不都合だな。

俺様は…ユウキ=テルミって名だ。よろしくなぁ、皇帝ちゃん?」

 

「ユウキ=テルミ…貴様は余を知っているのか?」

 

「ああ、腐敗していく国を見てねぇ表向きの統治者って事くらいはなァ。」

 

「腐敗していく?何を、言っている?

妄言は好かんぞ!」

 

「妄言、ねえ。なら、見るか?ここなら夢を介して俺がじっくりと見てきた帝国の現状が見れるぜぇ?

まあ、俺様の言葉を信じねえで自分を信じるなら話は別だが、どうする?」

 

「……。」

 

皇帝は俺を訝しげに見ながらも真剣に悩む。

さっさと決断してほしいもんだが。

 

しばらくして、皇帝は俺を真っ直ぐと見捉え、一言。

 

「見せてくれ。」

 

「へえ、俺を信じるってのか?」

 

「大臣が余を騙しているとは思えんが、もし貴様の言葉が真ならば…」

 

「大臣を許せないってことね。

いいぜ、見せてやるよ皇帝ちゃん。

これがテメェが人形として働いた結果だ。」

 

そう告げてから、俺は皇帝にモニターを出し、帝国の現状を見せた。

その時の表情は、意識してねぇと笑いが漏れちまう位に愉快痛快だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─それは理想とかけ離れた光景だった。

 

貧困により倒れ行く民、窃盗をしなくては生きていけない民、貴族に奴隷として扱われ殺されていく民。

 

余の理想とは、これ以上ないほどかけ離れていた。

 

この映像は本物なのか?

映像から視線を動かさずに聞いた。

嘘であってほしいと願った。

 

「ああ、マジだぜ、マジ。

テメェが何も知らずにその大臣って奴にいいように扱われてた結果がコレ。

どうだ?テメェの理想は砕け散ったかぁ?」

 

ユウキ=テルミの余をからかうような口調でそう告げた。

真実であると。

余にはこれが嘘には見えなかった。

 

…あまりにも、人の感情が現実味を溢れさせてくる。

大臣が余を騙していた。

つまり、今の実権は大臣が所有している?父上の息子である余よりも?

実際好き勝手するだけの権力はあるのだろう。

 

父上は謎の死を遂げた、と聞いてはいたが、政治の実権を握りたかった大臣がやったのでは?

そうして余をユウキ=テルミの言うように操り人形とすることで帝国を腐敗させた。

 

仮に、今から大臣が死んだとして、余がこの国を建て直すとして…果たして余に出来るか?

所詮、余は未だに子供、政治も学んでいるとはいえお世辞にも上手いとは言えない。

大臣、まさか余が子供であるということも自身の企みに利用しているのか。

 

…しかし、それは余が一人でやるならばの話。

余を、利用したのは大臣だ。

 

「……いや、余の理想は、潰えん。」

 

「へえ?テメェがやらかしたとも言える状況を見てか?平和な帝国はどうやって創るんだ?こっから、どうやって?是非教えてほしいねぇ…ヒヒヒ。」

 

「民は確かに現状に疲弊しきっている。

上に立つものだけが私腹を肥やし、守られる立場の下の者は…ああも苦しんでいる。

だからこそ、この現状を打破しなくてはならない。

余は、大臣を打ち倒したい。だが、余は子供だ……。」

 

「…皇帝家の血筋ってやつかねぇ……。」

 

「頼む、会ってばかりのお主に頼むのは筋違いやも知れぬがそれでもだ。

余に協力してはくれぬか!」

 

「構わねぇけど。」

 

「余に用意できるものは…えっ?」

 

「えっ、じゃねぇよ。俺様に協力して欲しいんだろ?

いいぜ、構わねぇ。その代わり、テメェにも協力して貰う。」

 

「本当か!」

 

「お、おう。」

 

「うむ、感謝する!して、お主の何に協力すれば?」

 

「……器だ。」

 

「器?」

 

神妙な面持ちで器、と口にしたユウキ=テルミに余は首を傾げるしかない。

器とは……もしや。

 

「お主、現実では体がないのか?」

 

「…鋭い餓鬼だ、そこも父親讓りかぁ?」

 

「父上を知ってるのか?」

 

「さあな。んで、俺様には今、器がねえ。

精神体でそこら辺彷徨く訳にもいかねぇだろ?

だからこそ、俺様本来の器を探してる。」

 

「お主本来の……?帝具か何かか?」

 

「ああ…ぶっ壊れてたら諦めるが、俺が見るに、まだそうなっちゃいねえ。

或いは…別の意識が目覚めたか。」

 

「帝具に自立できるほどの意識があるのか?」

 

ユウキ=テルミ……長いな、テルミでいい。

テルミは俺様も知らねえよと吐き捨てるように言う。

テルミは帝具の意識、精神体なのだろうか?

そんな帝具は聞いたことがない。

 

先代の皇帝である父上か、その祖先ならば知ってたのかもしれないが……。

 

「元々帝具は危険種を用いた兵器だ、意識もあるっちゃある。使えば使うほど侵食したりもする位にはナァ。

だが、俺様のいう器は少し違ってな。」

 

「だが、帝具ならば危険種を使ってるのだろう?」

 

「そこが違う。

俺様の器は危険種を使っちゃいねぇ。

俺様の器としての機能だけがある帝具だ。

だが、帝具としての意識が芽生えたのなら立派な兵器になってんだろうよ。」

 

そう言って、考える仕草をするテルミに、余は驚きしかない。

つまり、テルミは帝具の魂という事だからだ。

テルミの器である帝具を手にいれ、テルミが入れば、どうなるのか……不安でしょうがない。

 

「テルミは取り戻したらどうするのだ?」

 

「さあな、その時による。ぶっ壊すのもいいが、そうするとうるせぇからな……。

まあ、テメェにとって悪いようにはならねぇよ。

んで、だ。その器、帝具の名前だがよ。」

 

 

「─アーキタイプって名前だ。

恐らくテメェの城にあると踏んでるんだが、今の俺様じゃ探すのは手間でな。」

 

アーキタイプ。

聞いたことがない。

 

48の帝具にそんな名前の帝具があるのか。

どのような性能なのかも分からない。

 

だが、テルミの言葉を信用するのならアーキタイプを手に入れても余に危害は加えないだろう。

…早急に探し出したい所なのだが。

 

そう思案していると、余とテルミのいる部屋が揺れだす。

 

「な、なんだ!?」

 

「安心しな、夢から覚めるだけだ。

これからはテメェと俺様は協力者、共犯者だ。

せいぜい楽しもうや…ヒ、ヒヒ、ヒャハハハハハハ!」

 

邪悪な笑いを隠さずに声に出すテルミに不安を感じつつも仕方ないと子供ながらに考え、余は目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はっ!……テルミ?」

 

余は夢から覚め、まず口にしたのはテルミの名だった。

鮮明に記憶として残っているあの夢は、余を忘れさせる気はないと感じさせる。

 

しかし、呼び掛けてもテルミは応えない。

まさか、おかしな夢を見ただけなのか?

 

そう焦っていたら

 

─よう。

 

「うわっ!?」

 

脳に響くようにテルミの声が響いた。

突然のことで驚き、ベッドから転げ落ちそうになるが何とか姿勢を整える。

 

夢ではないことが分かってよかった。

いや、夢でのことだから夢なのか?

ううむ、分からぬ。

 

─ヒヒ、不安そうだったなぁ?そんなに俺様のことが恋しかったかぁ?

 

「(馬鹿を言うな…余にあのような光景を見せてそれが夢では堪ったものではない。)」

 

─だろうなぁ。んで、皇帝ちゃんはこれからどうするんだ?大臣を今すぐ殺すのは楽じゃねぇぞ。

 

「(……その事だが、テルミ、確認したい)。」

 

─考えがあるってか。なら、聞かせてもらおうじゃねぇか。

 

余は、子供ではあるが政治などの教育は受けている。

大臣相手ならばバレるような稚拙な策ではあるが、大臣に知られなければいい。

 

テルミは精神体だからすぐにバレることはまずない。

 

その点を考慮して、これからやることが出来るかの確認を、余はすることにした。

 

それを聞いたテルミは

 

 

─いいねぇ。中々に悪くねぇ。それならテメェが真っ先に疑われる心配もねえってことだ。

 

「(うむ、頼めるだろうか?)」

 

─それぐらいならしてやる。だが、テメェもアーキタイプ探しを餓鬼なりにやれよ。

 

「(やれることはやろう。)」

 

─なら、いいんだが。

 

結構乗り気だった。

 

色々と疑問はあるが、テルミが話すとは思えぬ。

手伝いながら大臣の様子を伺うしかないか……。

 

大臣ではなく余に協力した真意も分からんし。

 

これは操り人形である筈だった余と謎の精神体のユウキ=テルミによる暗躍の話である。




オリ主って、タグでありますよね。
つまりそういうことだ。

原作で不憫極まりない皇帝君と共に暗躍していく話となります。

気長に読んでくださるといいです。


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酒場での交渉

どうも、ロザミアです。

今回は私の文章力のなさの披露もとい交渉回になります。
ふへへ、もうダメだ、おしまいだぁ……


昼の帝都は表向きには賑やかだ。

真面目に働くのもいれば、そこらでダラダラと過ごしてる奴もいる。

……ま、表向きってのはそういうこった。

一度裏にしちまえば平和そうだとかのイメージは崩れる。

夜の帝都はそれこそ地獄だろうよ。

不正をしようが何しようが、警備隊に賄賂を渡せば一部を除いてそれで解決しちまう。

 

どうしようもねぇくらいに腐敗しきっていやがる。

 

俺は陽を背に浴びながら帽子を深く被り、道を歩く。

 

器のない剥き出しの精神体で実体化してるのはおかしくないかってか?

実体化は負担がデケェんだよ。

戦闘なんざしたら俺様の身が持たねぇ。

 

雑魚相手ならいけないことはねぇが、帝具使いや実力者相手ならこっちが時間切れになるってとこだろうな。

 

あのクソガキ、中々エグい注文をして来やがる。

 

『外での繋がりが欲しい。実体化して余の代わりに動いてくれぬか?』

 

だとよ。

人使い荒いぜ、ったくよぉ……

 

ま、下手な動きをしなけりゃいいんだ。

確か、現状の帝国に不満を抱いて動いてる組織がいたな。

ナイトレイド……だったか?

 

多少の情報は事前に持っちゃいるが果たして会えるかどうか。

…というよりは、会えたとして、繋がりを持てるかどうか、だな。

危ない橋ばかりじゃねえか。

 

チッ……。

 

現在の俺は夢で見せたような姿……ではなくシャツの上に黒いスーツを着込み、ネクタイを絞め、黒の帽子を深く被っている。

服とかはどうしたって?

 

服屋から盗んできた。

 

まあ、バレはしねぇだろ。

バレても……なぁ?

 

怪しい格好なのはわざとだ。

一々誠実な服装しようがナイトレイドは気にも止めやしねぇだろう。

 

だからこそ、怪しい格好をとることによって記憶に残りやすくする。

……周りの目もひでぇがな。

 

遠回りな方法を取っているのにも理由はある。

近道をすると余計な可能性まで持ってきちまう。

そうなるとナイトレイドの連中と繋がりを得れても怪しまれて敵対する可能性すらある。

 

それは本末転倒ってヤツだ。

 

生まれてこの方、暗躍してきた俺様には楽なことだ。

 

……さて、名前はどうしたもんかね。

ユウキ=テルミのままだと不都合だ。

身元を調べられれば辺境から越してきたと言えばしばらくは何とかはなる。

 

…やっぱ表通りには来ねえか。

当然っちゃ当然だが。

酒場にでもダメ元で行ってみるか?

 

クソ、こんなことならナイトレイドの情報を事前にもっと持っておくべきだったか。

 

幸い、金はあるからな。

…あ?金はどうやって手に入れた、だあ?

んなもん取り憑いて意識を奪ってから財布とっておさらばよ。

 

精神体だからなぁ、これはバレねぇ自身はあるぜ?

 

こんな身だから満足に働けねぇのは痛手だが、まあいいだろう。

 

早いところアーキタイプを見付けてくれねぇと困るな。

 

「……やれやれ、ここまでやることが多いと疲れますよ、ほんと。」

 

獰猛さを隠し、胡散臭さは隠しきれないものの相手も話しやすい声を作る。

ま、多少疑ってくれた方がこちらとしても楽だからな。

 

酒場には着いたが……居るといいねぇ。

 

俺は扉を開け、中へと入る。

 

瞬間、酒の強烈な臭いが鼻を刺激する。

酒は慣れちゃいるが、酒場程となると違うな。

 

辺りを見渡す。

一目見りゃ周りと違うのは分かるんだが……

流石に暗殺者組織 ナイトレイドのメンバーがいるわけもねぇよな。

 

「おい、店に入ったなら注文をしな。」

 

「これはすみません、なら…ミルクをお願いしても?」

 

「ウチは酒場だが……まあいいだろう。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

敬語にはそれほど使ってても違和感は感じない。

というより慣れた。

昔から一部以外にはこうやって接してたときがあったからな。

昔の年数が人間と違ってかなり違うがな。

 

「……。(…あ?)」

 

俺はある人物が気になり、注目しすぎない程度に見る。

 

金髪…女…酒をかなり飲んではいるが何時でも殺りあえる、か。

まだ確証は持てねぇが……。

 

「ミルクだ。」

 

「すみません、お酒を頼んでもよかったのですが、何分そういうのは夜にと決めておりまして。」

 

「ふん、なら夜にでも来い。」

 

「気が向いたらに、なりますかねぇ。」

 

この場だと多少は浮く格好だな、そういや。

警戒をさせちまうか?

もう一度先程の女に視線を向ける。

 

……いねえ。

感付かれたか。

 

「…何か、御用で?」

 

俺はため息を吐き、後ろにいる()に話し掛ける。

へえ、と声が聞こえ、女は俺の横の席に座る。

 

…近くならよくわかる。

酒に紛れちゃいるが、血の臭いだ。

 

何人か殺してきたってことか。

こりゃ言葉を選ぶかねぇ。

腹の内を探らせないようにするべきか。

 

「いやぁ、悪いね。

アンタの視線が気になったもんで、ね。」

 

「これは申し訳ありません。

酒場に似合わない麗しさを持った女性がいたのでつい。」

 

「それは口説きかい?」

 

「どう捉えられるかはお任せします。」

 

「ふぅん。」

 

…視線が気になったのは本当で、今のうちに危険分子か探りに来たってところだろうな。

少し踏み込んでみてもいいかな、こりゃ。

 

「帝都に来たのは最近でして、このような酒場に来るのも初めてなので視線が泳いでしまいましてね。」

 

「引っ越してきたのかい?

その服装からすると、良いとこの坊ちゃんか何か?」

 

「いえいえ、少し奮発して買ったってところです。

この帽子、気に入ってるんですよ。」

 

「似合ってるとは思うよ。」

 

「おや、それは口説いてます?」

 

「ご想像に任せるよ。」

 

不自然だが、仕掛けてみるか。

 

「それで、本当の目的は?」

 

「視線が気になって来ただけだって。」

 

「確かに、気になりますよねぇ……私、貴女に狙いをつけてましたし(・・・・・・・・・・)

ええ、出会えて僥倖、というものです。」

 

「…お前。」

 

「ああいや、違います違います。」

 

分かりやすく伝えると、目が鋭くなる。

怖いねえ。

俺は勘違いされる前に否定する。

 

小声で女にしか聞こえないように伝える。

 

「そう警戒なさらないでくださいよ。

ナイトレイドとの繋がりを得たいだけですよ、私は。」

 

「それで私たちに何の得がある?」

 

「帝都の、それも深い情報を提供します。」

 

「例えば?」

 

大臣(・・)。」

 

「…!」

 

掛かった(・・・・)

このまま畳み掛けるか。

周りには気づかれちゃいないが良い反応だ。

 

「この言葉の意味、分からない貴女ではないですよね。」

 

「……信用できる情報なんだろうな。」

 

「ええ、保証します。何なら首を賭けてもいいですよ?」

 

俺様はその程度じゃ死なねぇからな。

それくらい賭けてやるよ。

閉じていた金の瞳を片方覗かせ、女を見やる。

 

そこまで言うのかと思っているだろうが、さて、どう出るか。

長引く交渉はされた側も不利になっていくが。

 

交渉はあんまし得意じゃねぇが、切れるカードは切るに限る。

俺様事態、ずっと懐に持っとくとか好きじゃねぇ。

 

女は、観念したようにため息を吐く。

 

「分かった……でも、私の一存じゃ決められない。

ボスには相談してあげる。」

 

「ありがたい、私、ハザマと申します。

貴女は?」

 

「私はレオーネ。ま、明日にでもこれに書いてある場所にでも来てよ。サービスするから、さ。」

 

「…マッサージ師、ですか。」

 

「そ、まあ払うもんは払ってもらうけどね…ってやば。」

 

「はい?」

 

「何でもない。じゃあ、私はこの辺で……。」

 

何だか落ち着かねえ様子でそそくさと店を出ていったレオーネに、俺は仕事の時間か?と勘繰るが意味はないので残りのミルクを飲み干す。

 

「……さて、私も戻りますかね。」

 

「おい、兄ちゃん。」

 

「はい?」

 

「あの女の分まで払ってもらおうか。連れだろ?」

 

「……えっ?」

 

俺のことか?と自分を指差す。

店主はお前以外に誰がいるとばかりに力強く頷く。

 

……あのクソ女ァ……!

 

ずる賢い女だ……侮れねぇな。

 

俺は仕方ないと金額を聞き、その額を聞いた瞬間、さらに苛立ちが募った。

温厚な俺様も流石にキレそう。

 

盗んだ財布から金を取りだし、渡す。

俺まで食い逃げならぬ飲み逃げは出来ねぇからな。

 

これで繋がりが持てるんなら安いもんか……?

いや、まだ決まってねぇんだった。

やっぱ仕返しは確定だな。

 

俺は店を出て、まだ昼なので帝都を適当に歩くことにした。

思わぬ収穫があるといいがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何?腕利きの情報屋?」

 

「ああ、あの大臣の情報を持ってる、だとさ。

どこまで信用できるかは分からないけど取り合っても良さそうだよ。」

 

「……ふむ。」

 

二人の女性が話す。

一人は昼間に酒場でハザマと出会ったレオーネ。

もう一人はナイトレイドのボスであるナジェンダである。

 

レオーネは早速ハザマの事をナジェンダに伝え、どうするかの指示を仰ごうと相談している途中だった。

 

ナジェンダはその話を半信半疑…いや、疑の方が割合高めで聞いていた。

信用できるか、といえばNOだ。

知りもしない相手、それもレオーネに狙いをつけて、大臣の情報を提供する代わりにこちらとの繋がりを欲しているのだから怪しむのは当然だ。

 

だが、一度会ってみた方がいいと判断したナジェンダはレオーネに指示を出す。

 

「明日、そのハザマと会うんだな?」

 

「本人が来ればね。」

 

「ならば、私のところまで連れてきてくれ。

会って話がしたい。」

 

「分かった、じゃ、私も行ってくる。」

 

「ああ……。」

 

レオーネはさっさと部屋を出て仲間たちのところへと行った。

今夜他のメンバーと協力して腐敗した貴族を暗殺してもらうよう頼んであったからだ。

 

ナジェンダは一人考える。

 

ハザマという男には何かがあると、自身の長年の経験から培ってきた勘が告げていた。

警戒は怠らない方が良さそうだと結論を付け、タバコを吸い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢の中、テルミと余はソファーに座って今日の話をする。

収穫はあったのか、それが重要である。

 

「テルミよ、どうであった?」

 

─ああ、まあ、結果としちゃあ五分だろうな。

 

「それは繋がりを持てる可能性は得たがどうなるかは分からない、ということか?」

 

─察しのいい餓鬼で助かるぜ、皇帝ちゃん。

 

「……まあよい。

アーキタイプの件だが、あまり進展はない。」

 

─まあ、そう簡単に見つかるとは思っちゃいねえよ。

誰が持ってるかなんて想像がつくからな。

 

「大臣か?」

 

目の前のテルミは以前最初に見た姿…精神体としての本来の姿で会話している。

ニヤニヤと口を吊り上げながら碧の目で余を見る。

 

─だろうよ。あの帝具を所持してて、アーキタイプを見付けられない訳がねえ。

 

「むぅ……では、余ではどうしようもないではないか。」

 

─そう落ち込むことじゃねぇ、テメェが活躍する場は確実にあるから、安心しなぁ。

 

胡散臭い。

素直にそう思った。

余としてはさっさと見つけ出したいが、そうはいかない歯痒さよ……。

 

「…して、その明日会う予定の者はどのような輩だ?」

 

─ナイトレイド、皇帝ちゃんでも知ってんだろ?

 

「何ぃ!?」

 

─おいおい、デケェ声あげんじゃねぇよ!

 

余は、驚きのあまり大きな声をあげる。

テルミはその声に顔をしかめるが、普通は驚く。

 

「いや、ナイトレイド…どうやって?」

 

─ま、色々とな。

 

「……そうか。では、明日、どうなるかになるな。」

 

─だな、今日のところはここまでにしとこうや。

 

「うむ……。テルミよ。」

 

─んだよ。

 

最後に聞きたいことがあったので呼び止める。

面倒くさそうに聞いてくるが、聞いてはくれるのかと安堵した。

 

「父上とはどのような関係だった?」

 

─…さあな、知らねえよ。

 

その言葉のすぐにテルミは消えた。

…そう簡単には教えてくれぬか。

 

あ……アーキタイプの詳細を聞くのを忘れてた。




多少ご都合主義かもしれませんが、博士、お許しください!

今回、ハザマとしてのテルミが出てきましたね(?)。
原作のハザマと違って、ハザマの精神はないので、ご安心ください。


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アーキタイプ

どうも、ロザミアです。

今回は展開が早すぎるかもしれません。
ご了承を。


交渉結果を聞きに行く当日、俺は『ハザマ』としての姿を取り、レオーネのいるマッサージ店までいく。

昨日の借りをどう返してやろうか……。

 

はっ倒すのも出来ねぇしな。

チッ……人に奢らせるってのは中々出来ることじゃねぇ。それも、悟られずってのはな。

あの女の方がそこは上手か、伊達に暗殺組織の一員じゃねぇな。

 

利用しがいがあるじゃねぇか。

 

ハザマでいるときは極力笑顔を崩さないようにしている。

そうしないといけないという感覚もあるが、何よりそうした方が距離感を掴みやすい。

 

あからさまに怪しい方がいいんだよ。

 

これが終わったら、皇帝ちゃんとやることもあるし、さっさと済ませねぇとな……。

アーキタイプの回収……そして、あの野郎自身の威光の帝具を一目見ねぇといけねぇからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

レオーネの言っていたマッサージ店は、ここか。

意外と普通だな。

俺は扉を開け、中に入る。

 

中も掃除は行き届いているようだな。

 

「いらっしゃーい……って、アンタか。」

 

「一応客なのですが、その反応は如何なものかと…。」

 

奥の部屋から顔を出してきた女、レオーネは俺の顔を見た途端に落胆したような表情をした。

…おうこの女、流石に一発蹴ってもいいよな?

 

「ごめんごめん、冗談だって。

……それで、早く済ませたい?」

 

「ええ。…それで、私を情報屋として雇いますか?」

 

「んー……それなんだけどねぇ…」

 

「(……?)」

 

歯切れが悪いな、なんだ。

 

「うちのボスがアンタと話したいんだとさ。

だから、私は案内係。」

 

「……ナイトレイドのリーダーが、ですか?」

 

「ああ、早速連れてくことになるけど、いいよな?」

 

「……ふむ、まあいいでしょう。

何処に連れていってくれるかは聞いても?」

 

「うちの組織がよく利用してるいいカフェだよ。」

 

「なるほど、趣味がよろしいようで。

ご案内お願いしますよ、レオーネさん。」

 

「まあ、任せな。」

 

相当警戒されてやがる。

当然っちゃ当然だが俺様がどこまでやれるかになってねぇか?

 

しかも、リーダー直々とはな。

都合がいい(・・・・・)

 

寧ろ、リーダー様はミスをしたといってもいい。

俺を認めさせりゃ、それは他の部下の総意といってもいい。

ならば、俺様は疑われることはねぇ。しばらくはな。

リーダー代理(・・・・・・)がいたとしても、だ。

 

是非会わせてもらおうじゃねぇか、ナイトレイドのリーダーさんになぁ……ヒ、ヒヒヒ……。

 

俺はレオーネの後ろについていき、ナイトレイド御用達のカフェを目指す。

あー、楽しみだぜ。

革命軍は俺様の目的の助けになるしな、最終的には……クク。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよ、近いだろ?」

 

「ええ、通いやすく、そして集まりやすい。いい場所です。バレないモノなのですねぇ……。」

 

「色々と手を回してるのさ。」

「へえ……。」

 

いい感じの場所だがよぉ……俺様が横流ししないと考える辺り、中々に甘いなぁ暗殺者様。

……まあ、しねぇけどな。

俺様の敵じゃねえからな、しても無駄だ。

なったなら…そういうこった。

 

中に入ると、レオーネは奥まで進んでいく。

俺はついていくが、このカフェに入った時から、何かの気配がしやがる。

いつでも始末できるって訳か。

いいねぇ……。

 

奥までいくと、一人の女が座っていた。

 

ただの女じゃなく、眼帯をしていやがる。

……強さも中々ってとこか…。

 

女はタバコを口にくわえて俺を見ている。

 

「レオーネさん、この方が?」

 

「ウチのリーダーだよ。んじゃ、私は戻るから。」

 

「ええ、案内ありがとうございます。」

 

レオーネはさっさと戻っていき、俺と女だけになった。

正確には、このテーブル(・・・・・・)では、二人か。

 

俺は女の座る席の反対に座り、対面する。

 

「リーダー直々からお呼びいただけるとは、光栄ですよ。私はハザマと申します…まあ、レオーネさんから聞いてますよね。」

 

「ああ。私はナイトレイドでリーダーをしているナジェンダだ。

今日は、お前と話がしたくてな。」

 

「ほう、私と?わざわざ危険を冒してまでする程の価値がおありで?

周りにいる貴女の部下にやらせた方がいいと思うのですが。」

 

「そう言うな、情報屋に騙されて組織が壊滅になんてなれば堪ったものではないだろう。」

 

要するに、判断しに来たって訳だ。

やっぱり、運がいい。

 

「しかし、どうやって私は信用を勝ち取ればよろしいよでしょうか?」

 

「それはお前がよく分かっているだろうに、なあ?」

 

「ペラペラと話すほど安いものではありませんよ。

まして、あの大臣相手に一方的に有利になれる可能性のある情報ですし。 」

 

「その情報が確かならの話だ。

それに、どうやってその情報を得たかも分からんしな。」

 

まあ、分からないやり方だからな。

そりゃ分からないだろうよ。

 

俺は勝手に来た珈琲を無視しながら話を続ける。

 

「どう得たかを教えればよろしいので?」

 

「並の情報ならばここまでの警戒はしていない。

だが、あのオネスト大臣の情報、となれば話は別だ。

話してもらおうか。」

「……まあ、どうやったかを教えても支障はありませんし、構いませんよ。その代わり…周りの人の目が邪魔なんですよね……耳は結構なんですが、見られるのは困ります。

ナジェンダさんだけならば、教えてもいい。」

 

「話すだけなら目があっても変わらんだろう。」

 

「私が化けてるとしても?」

 

「……変装ということか。」

 

「ええ、まあ。」

 

それも、絶対に分からねえ変装だよ。

テメェがいくら観察眼に優れようが、俺様の姿ばかりは分かるわけがねぇだろ。

 

ま、条件的にナジェンダにはリスクがあるんだがな。

 

耳だけでも行動できるだろうが、目もあった方が判断しやすい。

俺様が万が一にも敵なら……って事だろうよ、お悩みの種は。

 

「……分かった。」

 

ナジェンダはそう言ってから手をあげて何かのサインを送る。

……視線が無くなったな。

さて、これで俺も見せなきゃならなくなったわけだ。

 

「感謝します。」

 

「これで見せてくれるんだろうな。」

 

「ええ、私は言葉を違えませんよ、ええ…」

 

言葉はな。

俺は帽子を取り、実体化を解く。

 

ナジェンダは俺を見てそりゃもう驚いた目をしている。

声を出さなかっただけ合格点をやってもいい。

ま、驚くなってのが無理な話だろうよ

 

「これは……!」

 

「あーその顔最高だわ。

そういう驚愕もだが、恐怖、憎悪の表情はいつ見ても最高だ。

で?約束通り見せてやったぜナジェンダぁ。」

 

「それがお前の正体か…人間ではない。生物型帝具か?」

 

「惜しいなぁナジェンダ。

いいぜ、教えてやるよ。

俺様は生物型帝具とは違う、俺様は精神体だ。

テメェら人間よりもずーっと長生きのなぁ。」

 

「精神体だと……?」

 

「あんまり人前で見せるもんじゃねぇがな。

ナイトレイドを知ったのも、糞豚(大臣)を知ったのもこうして知ったって訳だ。

精神体なら壁なんざ無いようなもんだからな。」

 

「なるほどな……存在を知られることもなく、情報収集が出来るとは。

……だが、解せんな。人間でないのなら、お前は何故私たちに協力しようとする?」

 

「くそ野郎から頼まれててな。

仕方無くだ。」

 

「依頼ということか。誰から?」

 

「そうだなァ、始皇帝ってのはどうよ?」

 

「ふっ、教えるつもりはないということか。」

 

「そういうこった。……で?テメェにとっては俺様は中々の武器になる、それこそ、情報なんざ筒抜けだからな。」

 

ナジェンダは考え込む。

ま、ここまで来たら任せてやるよ。

俺としちゃナイトレイドが一番今後の役に立つってだけだからな。

宛はそれこそ腐るほどある。

 

「いいだろう。お前の存在は我々にとっても強みとなる。」

 

「英断だぜ、ナジェンダァ。

テメェは今神を手にしたも同然だぜぇ?」

 

「言い過ぎだろう…お前は神ではない。」

 

「だといいな…」

 

「今後用があるときは……ここに来い。」

 

ナジェンダは俺に紙を渡してくる。

これは地図か。

……ナイトレイドのアジトねぇ。

 

「いいのか?俺様が、裏切るとは考えねぇのか。」

 

「得があるのか?」

 

「ケッ、ねぇな。」

 

素直に受け取っておく。

 

その後、服に入り込み、ハザマの姿に戻る。

あーこりゃ後で気直さねぇと……

 

「これからご贔屓に頼みますよ、ナジェンダさん?」

 

「ああ、こちらも頼む、ハザマ。」

 

これで一歩前進か。

大臣をぶっ潰せばあとは簡単だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハザマが去っていった後、ふぅ、と一息ついてからタバコを吸い始める。

全く、あのような化け物とは思っていなかった。

ああもあっさりと正体をバラすということは痛手ではないということか。

 

「ボス、よかったの?」

 

「ああ、寧ろ、ああした方が平和的だ。

ポジティブに考えれば反撃の手をいくつも手に入れたも同然だからな。」

 

こちらに来た少女に向かって私は笑って返す。

そうは思えないけど、と疑いを解こうとしない少女、マインに私は当然かと思う。

 

「胡散臭いにと程があるわ。」

 

「まあな……だが、しばらくは協力してくれるだろうさ。」

 

しばらくは……な。

 

あの存在が何をもたらすのか……

それは今後判断するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、結果は上々であったか!」

 

─まあな。俺様に掛かればこんなもんよ。

 

「……して、今日はどうするのだ?」

 

─夜の城の散歩といこうや。

 

「な、何?」

 

─アーキタイプの所在は分かったしな、テメェが居ねぇと困るんだよ。

 

「ふむ……分かった。

しかし、何故余がいないと困る?」

 

─皇帝、何で俺がこの精神体で居たか分かるか?

 

「む?分からぬが……。」

 

部屋を出て、声を極力小さくしつつ歩く。

どこに向かうかはテルミが指示を出してくれるので問題はない。

 

─俺様は自分からあの器から出た。

 

「何故だ?」

 

─そうしねぇといけなかったからだよ。だが、今は必要になったわけだ。丁度いいからアーキタイプの詳細を教えてやる。

 

「……。」

 

今日教えてもらおうと思った事を自分から話してくれるとはありがたい。

耳を傾けることにした。

 

─始皇帝は自分が死んだときの為に自分の魂を入れるための器として作った帝具とは全く違う物を作っておいた。それがアーキタイプだ。だが、アーキタイプには欠陥があった。

 

「欠陥?」

 

─始皇帝の魂をアーキタイプは受け入れなかった。そうなるように作った筈なのに拒まれた。だが、一人だけ適合者が居た。

 

「……そうか、お主が……!」

 

ヒヒヒ、と笑い声が己の内から聞こえる。

当たりらしい。

 

─その通り、俺様だけが何故かアーキタイプに適合できた。そこから俺様はアーキタイプの中にずっと居たわけだ。皇帝家の奴等を助けてやりながらな。

 

「父上を知ったのも、それがあったからか。」

 

─ああ、だが、あの馬鹿は死んじまった。以前話したが、大臣の野郎が毒を盛ってな。ポックリだったぜ。

その際に、俺様の情報を大臣に知られねぇよう抹消し、アーキタイプもまた封印された。テメェの親父のお陰でな。元々、俺様はテメェの親父とお袋しか知らなかったがな。

 

「なるほど……。」

 

─だからこそ、その封印を解くのにテメェが、皇帝としての血筋がいる。アーキタイプを手にいれ、あの帝具を手にいれりゃテメェの仇討ちをより確実なもんに出来る。

 

テルミの言うままに進み、ある部屋に辿り着く。

ここは父上と母上の……。

指示通りに壁のある部分を押す。

すると、小さな音を立てて階段が現れる。

 

「……何故そこまでお主は余を、皇帝家を助けてくれる?」

 

─……柄にもねぇが、俺様にもダチってのは居たもんでな。死んだアイツからの頼みだ。ま、皇帝家が滅んだら俺様は好き勝手させてもらうがよ。

 

ならば、テルミは長い間友の……始皇帝の頼みを聞いてきたというのか?

それは、束縛されているのではないか……?

 

─勘違いすんじゃねぇ、俺様はやりたくてやってんだ。気紛れが幸運を呼んだと思っておけばいいんだよ、テメェは。

 

「……うむ、そうするとしよう。」

 

いや、無いな。

こいつはこんな性格だ、好きにやってるだけなのだ。

ならば、それでいいのだろう。

 

ずっと階段を下りていると、ある場所に着いた。

 

そこにあったものは……

 

「これは……!?」

 

─テメェの祖先、始皇帝の威光そのものの帝具がこれだ。そして、テメェの親父とお袋の仇、オネストの野郎が切り札とするのもまた、これだ。

 

目の前にあったものは、とても巨大な、帝具だった。

これはまさか、伝説にあった始皇帝の……至高の?

 

「テルミ、これはまさか!?」

 

─シコウテイザー……テメェが所持すべき王権だよ、皇帝ちゃん?ほら、ボサッとすんな、さっさと行くぞ。

 

「う、うむ……!」

 

一歩一歩前に近付く。

これが、父上の、余の祖先たちの王権……シコウテイザー。

 

─シコウテイザーはあまりにも巨大だ。それ故に、隠し場所としてはこの上なく適した代物だった。何せその宝物庫を開けられるのはもうテメェしかいねぇんだからな。

 

「…余しか、もう……」

 

シコウテイザーに触れる。

余の思い違いなのかも知れぬが、感じる。

皇帝たちの意思を。

 

シコウテイザーは余が触れた途端、喜ぶような音を立て、足の一部が開く。

 

─入るぞ。

 

「うむ。」

 

余は、シコウテイザーの中へと入る。

何やら、昇るような感覚がするが、これはもしや動力部に向かってるのか?

 

そして、昇っていく感覚は徐々に無くなり、それと同時に広い場所へ着いた。

そこにあったのは、いくつもの武器。

隠し場所……なるほど、殆どの帝具は行方不明となっていたのはこういうことであったか。

 

それでも、残り全てが入っているわけでは無いようだが。

そして真ん中には、顔もない人形が佇んでいた。

 

すると、テルミは余の内から出てくる。

人形へとテルミは近づいていく。

 

「テルミ、それがアーキタイプなのだな。」

 

「ああ。俺様の器となる人形、アーキタイプ。

戻ってきたぜぇ……。」

 

テルミは中へと入る。

人形はテルミが中に入ると呼応するように光り輝く。

余は目を開けていられずに目を閉じた。

 

やがて光は収まり、目を開ける。

そこにはテルミが居た。

夢の中で共に話した時と同じ姿だ。

アーキタイプがテルミの姿になるよう自ら変わったのか……?

 

「この体だ……俺にしか扱えねぇ器、俺様の力!

ヒ、ヒヒヒ……ヒャーハハハハハハ!!」

 

「悪党にしか見えぬぞ。」

 

「そう言うんじゃねぇよ皇帝ちゃぁん!

俺様は今無性にはしゃぎてぇ気分なんだぜぇ?

それによぉ、武器もある。」

 

「武器……帝具か?」

 

「ああ……」

 

「馬鹿な!帝具は一人一つしか扱えぬはず…あっ!」

 

「気付いたか。

そうさ、アーキタイプは帝具じゃねぇ(・・・・・・)のさ。

だからこそ……このウロボロスを扱える。

この無間蛇双 ウロボロスをなぁ!」

 

テルミはさらに武器をとる。

 

それは蛇頭を端に付けた鎖だった。

テルミは武器を手にいれ、器を取り戻した。

余は、皇帝としての誇りを、王権を取り戻す決意を得た。

 

人知れず、余とテルミは大臣の首を噛み千切る為の蛇の牙を研いでいた。

 

 




というわけで、テルミが器と武器を取り戻しました。
早すぎる?
そうしないと今後戦えないし、皇帝君を守れません。
早めにしないとね、こういうのは。


アーキタイプ

かつて始皇帝が己の魂を保存するために造り上げた帝具とは違う人形。
しかし、始皇帝は適正を得れず、テルミが得てしまった。
適合者に応じて望む姿になる力を持つ。
適合者が入っていないとただの白い何も飾らない人形。
ロックマンEXE6のコピーロイドをイメージしよう。

無間蛇双 ウロボロス

適合者 テルミ

皆大好きウロボロスゥ!ヒャッハー!キモチイイダロォ!?
ターマンネェナァwwwww

端に蛇頭が付いた鎖の形をしている。
異空間から召喚され、相手の精神に対して直接攻撃できる能力を有する。
奥の手はナ・イ・ショ


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策を巡らし

どうも、ロザミアです。

大学受験控えてるのに私は何をしているんだ……?

今回はちょっと駄文かも(いつも)ですが、それでも『付き合ってやるよぉヒャーハハハハハハァ!』って人は大蛇武練殱でラグナちゃんを攻めつつ見てください。


しばらく器と離されたからか、まだ少し完璧な調子とは言えない。

だが、戦闘は問題なく行える。

武器の方は今んところはウロボロスだけか。

 

問題はねぇが、せめてもう一つ位は武器が欲しいな。

戦闘の自信ならあるが、過信しちゃいけねぇ。

ウロボロス一つで出来ることはたかが知れてるからな。

 

ナジェンダとの交渉から二日は経った。

色々とあったらしいが……まあ、いいか。

 

今日はナイトレイドのアジトへと赴く予定だ。

 

何にせよ顔を見せねえと疑われるからな。

 

地図を見たあと、そこへ向かう。

なるほどな、こりゃバレねぇな。

 

さて……さっさと行くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近道を使い、さっさと来た俺はどうするかと悩む。

何せ、ナジェンダとレオーネ、そしてあの場にいた視線の奴しか居ねぇんだからな…俺を知るのは。

困ったもんだ。

 

「あの、何か用ですか?」

 

「ええ、ナジェンダさんに少し……貴方は?」

 

「俺はタツミです。」

 

……素人か?

いや、多少は戦闘は出来るってとこかぁ。

まだまだだが、伸び代はあるな。

 

俺は帽子を取り、礼をする。

 

「私は情報屋のハザマと申します。

それで、ナジェンダさんに会わせてくれませんか?」

 

「あー……俺、まだナイトレイドに入ったばかりだからどうなんだろ……」

 

「おや、新入りさんということですか。

何人殺りました?」

 

「……。」

 

「…言いたくない、そうですか。やはり、殺すのは気が病みますか?」

 

「そりゃ……いくら殺すのが屑でも、人殺しには変わらない。……慣れないと思います。」

 

こいつ、弱気な発言してやがるが目は死んじゃいねえ。

面白ぇ人材を取ったなナジェンダ。

 

「慣れる方が難しいモノです。

タツミさん、貴方は寧ろ慣れてはならない。」

 

「え、いやでもアカメとかは慣れてる様子だったし。」

 

「この時代、慣れざるを得ない時など腐るほどありますからねぇ、アカメさんがどのような者かは知りませんが、そういうことなのでしょう。

恐らく、ナイトレイドの皆さんもそうなのやも知れませんね。

けれど、貴方は慣れなくてもいいのでは?

貴方はこのご時世では貴重な殺すことを躊躇える人間ですからね。」

 

「躊躇える人間……」

 

「ま、暗殺組織ですし、そんな感情は捨ててもいいと思いますがね。」

 

「ちょっと、いい空気が台無しだっ!」

 

からかうのは飽きねえからいいんだがいつになったら入れんだよ……。こいつで暇潰すのが飽きるんだがよぉ?

 

……ん?

 

「伸びろっ!」

 

俺はウロボロスを展開し上の方へと薙ぎ払う。

 

瞬間、ガキンッ、と金属と金属がぶつかり合う音が響く。

 

「─これがナイトレイドの歓迎法ですか。」

 

「─何処の者だ。」

 

「あ、アカメ……っ!?」

 

ぶつかったのは刀……それも生半可な刀じゃねぇな。

一斬必殺 村雨……じゃじゃ馬帝具を使う奴がいるたぁな。

それも、こんな機械じみた女がか。

 

腕もいい……こいつ、ナイトレイドに入る前から何かやっていたのか……って考えられるのは一つしかねぇか。

 

刀による鋭い攻撃をウロボロスで弾く。

一発でも食らえば精神体の俺様でもどうなるか分からねえ。村雨の呪いがアーキタイプの耐性を貫通する可能性は十二分にあるからな。

しかもこの女、ウロボロスに絡み取られねぇように刀を上手い具合に引っ込めてきやがる。

 

「ちょっと待ってくださいってば!

私はナジェンダさんにこの地図をもらって来たんですって!」

 

「……ボスが?」

 

「ええ、そうです。

先程タツミさんと会話したのもナジェンダさんに入っていいかを確認してくれと頼んでただけですってば!

ですよね?タツミさん。」

 

「お、おう!そうだぜアカメ。」

 

「…少し待ってろ。」

 

「だから先程からずっと待ってますって。」

 

刀を納め、ナジェンダの所へ行くのか後ろを向いて歩いていく女。アカメだったか?

嫌味を少し言ってもう少し待つことに。

 

しかし、こいつが居てくれて助かった。

あのままやりあってたら殺さなきゃならなかったからな。流石に人の二倍は温厚な俺様も殺されかけたら殺っちまう。

 

「助かりました、貴方が居なければかなり面倒な事態になっていました。」

 

「え?あ、ああ!気にしないでください!

……ハザマさんも帝具使いだったんですね。」

 

「ええ、まあ……とある筋から貰いました。

それと、敬語はいいです。ぎこちないので。」

 

「え、そうで…そうなのか?なら、こう話させてもらうぜ。」

 

「ええ、それがよろしいかと。」

 

俺はズボンについた砂を払いながらタツミに答える。

素直でいい、このご時世そんな奴はまずいねぇ。

 

まあ、その分利用させてもらうがな。

どこまで足掻けるかねぇ、こいつは。

 

ずっと外にいるためかダルくなってきた。

寧ろ、帰りたくなってきたかもしれない。

俺としては帰ってもいいんだがナイトレイドの人間を把握しねぇと利用するにも利用されちまう。

 

数名は帝具使いだろうからな、知らなかったで死なせたら俺様の努力が水の泡だ。

もっとも、そっちは重要事項ではあるが絶対じゃねぇ。

 

寧ろ、死んだら仕方無いかとなるだけだ。

確かに、帝具使いが死ぬのは痛手中の痛手。

帝都には化け物のような帝具使いはちゃっかり居やがるしな。

 

例えば…ブドー大将軍。

皇帝が最も信頼する男であり、雷神憤怒 アドラメレクの適合者。

その武勇は兵士ならば憧れない者はいない。

 

他にもいるが、一々気にしててもしょうがねぇ。

それに、ブドーの野郎は皇帝の言うことを聞くしな。

味方に近い存在ではある。

 

ナイトレイドと敵対するようなら……ま、経過を見るかね、そこは。

 

暇な時間を使って考えを纏めていると、奥からまたアカメがやって来る。

あの様子だと、よさそうだな。

手間取らせやがってよぉ……

 

「すまない、こちらの誤解だった。

ボスから来てくれ、と。」

 

「ようやくですか、待ちくたびれましたよ。

顔を出しに来たら死んだ、何て最悪ですからね。」

 

「気を付けよう。」

 

「そうしてください。タツミさんはどうします?」

 

「俺も行くよ。ここに居ても仕方ないし。」

 

「そうですか。」

 

挨拶もしちゃいねぇのにどっと疲れたぜ、ったく。

 

ようやっと中だ。

まさか中に入ったら死ぬなんてことねぇよな?

疑っちまうぜ、マジで。

 

どうやら主要メンバーは居るようだな。

ナジェンダがタバコを灰皿に潰してから俺に声をかけてくる。

 

「来てくれたか、ハザマ。」

 

「ええ、来ましたよ、来たら殺されかけました。

猫の次にトラウマになりそうですよ、私。」

 

「猫の方が恐ろしいのか。変わったやつだ。

すまないな、通達し損なった私のミスだ。」

 

「……まあいいです。

こちらの方々は貴女の?」

 

ナジェンダは頷く。

自慢の部下ってか?あんま感情移入しねぇようにな。

とは敢えて言わないでおく。

 

「ああ、私には勿体無い程優秀な部下たちだ。

皆、紹介しよう。

我々ナイトレイドに情報を提供してくれる事になったハザマだ。」

 

「どうも、皆さん。

私、ご紹介に預かりました情報屋のハザマといいます。戦力としては数えないでくださいね、私戦闘は苦手なので。

どうぞよろしくお願いしますよ、ナイトレイドの皆さん?」

 

おーおー、俺様を見る目が言葉になって飛んでくるようだぜ。

分かるぜ、テメェらの第一印象位はな。

 

『(胡散臭い……)』

 

って所だろうよ。

レオーネに関しちゃはいはいよろしく~って感じだが……もうちょい態度よくしてほしいもんだ、情報提供するのは俺様なんだからよぉ。

 

……以前の視線の奴は、あの女か。

まだ大人なりたてのガキじゃねぇか?

まあ知らねぇが。

 

取り敢えず、ピンクの長髪の女にはよりイイ笑顔を向ける。

 

「(こいつ…私だって気付いた?)」

 

「出来れば、皆さんのお名前を伺っておきたいのですが……。アカメさんとレオーネさんとタツミさんはもうご存じですので……そちらの四人ですね。」

 

「…マインよ。」

 

ピンク長髪の女の名前はマイン、と。

気は強そうだが……さて、どうなることやらなぁ。

 

「私はシェーレです、よろしくお願いしますね、カザマさん。」

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします。

後、ハザマです。」

 

「あ、すみません……。」

 

こいつ、天然か……。

紫髪の…チャイナドレス?を着た女はシェーレ、と。

天然ボケ…だが何かあるな、まあいいか……。

 

「おう、俺はブラートだ!よろしくな、ハザマ!」

 

「え、ええ……よろしくお願いしますよ、ブラートさん。」

 

突如顔を近付けての自己紹介に俺は戸惑いながらも返事をする。

危ねえ、素が出るかと思ったぜ……。

 

リーゼントヘアーの男はブラート、と。

熱血漢だが……只者じゃねえな、実力はあるってことか。

 

「俺はラバック、よろしくな。」

 

「ええ、こちらこそ。……ところで貴方、私とキャラ被ってません?」

 

「いや被ってねぇよ!被ってんのは髪色だけだろうが!」

 

「ハハハ、これは失礼。」

 

緑髪の男はラバック、と。

ノリがいいな。

どんな帝具かねぇ……?

 

「……はい、ありがとうございます。

今日は御挨拶に来ただけですので、少ししたら帰らせてもらいます。」

 

「ああ、分かった。」

 

「個性豊かな方々ですね、それに中々の強さのようで。

仮に敵対したら殺されちゃいますねぇ……。」

 

「ふ、いずれ敵対するのか?」

 

「いえいえ、滅相もない。

余程の不利益でない限り、情報提供はしますとも。

それより、聞きたいことがあるのですが……。」

 

「ここではしにくい話か。」

 

「ええ。」

 

「分かった、少し広いが会議室を使おう。」

 

「助かります。」

 

仮にの話をした途端に俺へ向ける視線が強くなった。

疑いは晴れてねぇってことか。

そりゃそうか。

 

ナジェンダも俺を完全に信用してねぇだろう。

外部から、欲しい情報を持った男が、ナイトレイドに協力したいってんだからな。

あまりにも都合がよすぎるわな。

 

ま、今のところは半々だろうか。

ナジェンダはついてこい、と俺を会議室へ案内する。

…執務室とかに案内しないのは疑いの顕れか。

 

会議室の扉を開き、二人で中に入る。

 

「それで、聞きたいこととは?」

 

「皆さん達は帝具使い……という認識でよろしいですか?」

 

「…そうだが。」

 

「そうですか。一人でも失うのは惜しかったりします?」

 

「当たり前だろう。組織としてもだが、共に苦楽を共にしてきた仲間たちだからな。で、何が言いたい。」

 

「そこで提案なのですが、私も戦闘に参加させてはもらえませんか?」

 

「…意図が読めんな。それによってお前が得られる物はなんだ?」

 

ナジェンダは目を細めて俺を見る。

俺は笑みをさらに深めて話を続ける。

 

「貴女が思っているよりはありますよ。

一つ、二つ、三つ、四つ……これくらいは。

見返りは要りません、それだけの物を自然と貰えてますから。」

 

「情報源を戦闘に出せと?」

 

「それだけの価値が私と貴女達にはある。」

 

「…駄目だな、貴重な大臣の情報を握っているお前を戦闘に出すわけにはいかん。」

 

「ええ、でしょうね。

…ところで、知ってますか?オネスト大臣って帝都全体を滅ぼしかねない帝具を切り札に持ってるのですが。

シコウテイザー…って名前なんですがね。」

 

正真正銘、あのデブの切り札。

その名前を教えると、ナジェンダはやはりというか、反応を示す。

切りたくねぇカードだが、構わねぇか。

どのみち、まだまだあるからな。

 

「シコウ、テイザー……?詳細は!?」

 

料金(・・)。」

 

「……っ、お前。」

 

「睨まないでくださいよ。

私はただ、貴女からの情報料(作戦に参加する権利)を貰いたいだけなんですから。

料金が払えないのなら結構、別の情報で交渉をしましょう?……どうします?後、貴女たちに有益な情報が軽く十はあるんですけど。」

 

「…死なないという自信はあるんだろうな?」

 

「勝てる算段しか踏まない質ですよ、私。」

 

「……分かった。」

 

「それはよかった!ええ、やはり良い関係が築けそうですねぇ私たち。

あ、すみませんがもう一つだけお願いが……」

 

「ハァ……今度は無理な頼みじゃないだろうな?」

 

随分と深いため息だな。

一体誰がそこまで追い詰めたんだか、ヒヒ……。

 

「これはそこまで貴女に負担はないですよ。

内容は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帝都をマイペースに歩く。

暇、というわけではない。

現在の帝都で何が起こっているか分かるか?

 

連続殺人事件ってヤツだ。

それも、帝具を用いた厄介なヤツだ。

……ったくよぉ、皇帝ちゃんも面倒押し付けやがって。

 

それはつい昨日の皇帝ちゃんとの会話だった。

 

『テルミ、首斬りザンクを討伐してはくれぬか?』

 

─あ?なんで俺様がやるんだ?

 

『余は外には出れぬし戦いも出来ぬ。

それにザンクは帝具を使うと聞く。

それがザンクを捕まえにくくしている。

余の先祖たる始皇帝が国の為と思い、造り上げたのを国を脅かす賊に何故こうも使われねばならぬ!』

 

─帝国側の責任でもあるからってか?

 

『……うむ。奪われたのは事実だ。

頼む、今は亡き民の為、今を怯える民の為にも討伐してくれはしないか?』

 

─…………チッ、分かった。だが、俺様が殺さなくても文句言うなよ。

 

『うむ、ありがとう、テルミ。』

 

 

……何がありがとう、だ。あのクソガキ。

それこそブドーに頼めっての。

 

ま、そのお陰でナイトレイドとの繋がりを強固にするチャンスを得たわけだがな。

 

それに、あそこまで民想いなのは見てておもしれぇ。

手伝ってやるのも気まぐれってやつだ。

 

…ま、本当の目的は帝具でも、皇帝ちゃんの頼みからでもねぇが。

どのみち、やらなきゃならねぇことだったのが今になっただけだ。

 

もうちょい体を慣れさせてからやりたかったんだが……ウロボロス、壊れるまで働いてもらうぜぇ?

 

俺はハザマの姿でケタケタと笑いながら事が起こるまで準備を進めた。




さて、ようやく次回は戦闘かな……え、アカメちゃんとの打ち合いはなんだ、って?

ハザマみたいな胡散臭いのが仲間といたら攻撃しちゃいますよ、そりゃ


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蛇は狡猾に

どうも、ロザミアです。

わーいザンクだぁ。
誰に殺されるんだろ。

ではどうぞ


首斬りザンク。

元々は罪人を処刑する首斬り役人であった男であり、処刑を繰り返す内に精神が病んだのか監獄長を殺し、ある帝具を奪い辻斬りとして一躍有名になる。勿論、悪い意味で。

 

五視万能 スペクテッド……確か、名の通り適応者の戦況を有利に変える五視の能力を持ってるんだったか。

 

霧などに阻害されずに遠くまで見透すだとか、心を読むだとかだったか。

全部が全部を把握してる訳じゃねぇが、問題はねぇか。

 

新たに手にいれておいたバタフライナイフを手で遊びながら歩く。

あんましハザマを演じすぎるのも疲れるんだが、そこはいいとしてだ。

 

どうやら、戦闘が始まったらしい。

 

五視の能力は防ぐ方法は無いことはないが…滅茶苦茶な方法が多い。

やれと言われたら誰でもできる方法ではない。

 

だが、やれる奴が対処するなら……後は、お互いの技量と知識の差が物を言うだろうな。

厄介な能力ではあるが完全無敵ではないってこった。

 

雑魚が使っても意味ねぇからな。

首斬りザンクは雑魚ではないから、余計厄介なんだがな。

 

建物の上から見下ろす先には、アカメとザンクの姿があった。

技量はアカメが上だ。ならば知識は?

 

……恐らく、アカメだろう。

場数が違うのは嫌というほど差を生む。

それにアカメは慢心しないだろうしな。

 

「念のために仕掛けてはおいたが、この分だと意味はなさそうだな。人斬りの最後もまた人斬りか。

中々面白くていいんじゃねぇか?」

 

一斬必殺 村雨は一度でも、それこそかすり傷でも与えれば勝ちが確定する帝具。

対処法は簡単だ、当たらなきゃいい。

村雨の呪毒を受けて生き残れる人間は居ねぇ。

……いや、どうだろうな、居る可能性はあるか?

 

毒が回る前に斬られた箇所を切り落とすなりすればいいからな。

…このご時世、んな狂人も居そうだな。

 

村雨の脅威性を再確認しながらアカメとザンクの戦いを眺めているが、突然アカメの動きがピタリと止まった。

 

スペクテッドに催眠の類いは……いや、そうか、それがあったか。

 

愛するものを見せる能力があったな。

まずいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、現れた人物に私は不覚にも動きを止めてしまった。

 

『……。』

 

「…(クロメ……。)」

 

「アカメ、それは偽者だ!」

 

「無駄だ、催眠は一人にしか使えないがその分効果は絶大だ!!」

 

置いていってしまった妹。

帝国を裏切った際、置いていってしまった。

 

クロメは私を憎んでいるだろうか。

……憎んでいるだろう。

 

今も帝国で戦わされているのだろう。

大量の薬物投与によって体がもう既に壊れていると言うのに。

 

クロメは私に向けて駆け、その刀で斬りかかる。

 

「最愛の者に斬られ、死ね、アカメぇ!!」

 

……だからこそ。

 

私は村雨で容赦なく、ザンクの映し出したクロメを切り裂く。

 

「なっ……さ、最愛の者さえ斬るというのか!?」

 

「最愛だからこそ…早く救済()してやりたい。」

 

「……ぐっ!」

 

「…勝負あったな。」

 

先程の一撃を防いだからかザンクの片方の剣に皹が入る。

切り札だったのか、戸惑いと焦りを隠さないザンクに私は油断なく村雨を構え、ザンクへと駆ける。

 

「クッ、オオォォォ!!死んでたまるかぁ!」

 

「……!」

 

互いの刃で突き、斬り合う。

未来視で私の動きが読まれているからと言えど、動きまでは制限できない。

 

「(…ここだ!)ふっ!」

 

皹の入った剣に村雨を振るう。

剣はぶつかった瞬間に折れ、ザンクの体勢もまた崩れた。

 

「ォ、ォォ……!」

 

「葬る!」

 

ザンクの首に向け、一閃。

体勢を崩され、もう片方の剣を振るう隙も無かったザンクは斬られ、首と口から大量の血を噴き出す。

 

「ぐ、ぶぁぁ……」

 

「これで、死者の声は聞こえないだろう。」

 

首斬り役人として狂った男に対して、せめてもの手向け。

それは彼を蝕んできた声をその生を絶つことで消し去る事。

殺してきた罪は消えないが、声を聞くことなく安らかに地獄へと落ちろ。

 

私は背を向け、負傷したタツミの方へと歩く。

 

「声が……止んだ……?

ああ……ハハハ、愉快愉快……

ありがとよ、アカメ……。」

 

後ろから私に感謝する声を聞きながら。

 

……先程からだが視線を感じるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…強いな。」

 

素直にそう思った。

アカメが村雨による呪毒を視野に入れつつもあれほどの速さと卓越した技量を持ってるとはな。

 

本格的に俺様は要らねぇな。

 

様子見として来たのは正解だったが…皇帝ちゃんにどう報告したもんかなぁ。

 

愛するものねぇ……あのアカメには何が見えたのかねぇ。

ま、それを即座に斬れるってのは心強いな。

誰でも出来るわけじゃねぇ。

割り切ってるのか、それとも……。

 

まあいい、やるか。

 

俺はザンクの側にまで降りる。

 

当然ながら、二人にはバレる訳で。

 

「ハザマ…先程からの視線はお前か?」

 

「視線って……じゃあ、傍観してたのか!?」

 

警戒心丸出し、仕方ねぇよな。

取り敢えず、弁明でもするか。

 

「いや、ちゃんと助太刀はすべきだとは考えてましたよ?しかしながら、アカメさんが予想より強かったので却って邪魔になるかもと思い、本当に危険なときに現れようと思ってたんですよ。」

 

「…ボスからは何も聞かされてない。」

 

「私がそう頼んだので。

突然参加したら怪しまれるでしょう。

それに、興味があったので。」

 

「興味?」

 

「ええ、帝具使い同士の戦いという、ね。

素晴らしいですねぇアカメさん。

それほどまでの技量を何処で身に付けたのか、気になってしまいますよ。」

 

「教える義理はない。」

 

「でしょうね。

……タツミさんは無事なようで。」

 

「いや、無事じゃねぇよ!」

 

「生きてる限りは無事ですよ、その稼業は。

よかったですね、生きてて。」

 

「……まあ、そうだな。」

 

不満そうなタツミに俺は微笑む。

生きてるだけ儲け物なのは間違ってない。

そもそも何時死ぬか分からないのがナイトレイド、暗殺組織だ。

 

それを、帝具使いと戦って生き延びたのは運がいいって訳だ。

それも、帝具を持ってすらいない若造が、だ。

 

「そういえば、ハザマも帝具使いなんだろ?」

 

「護身用に持ってるってだけで私は弱いんですけどね。アカメさんと本気で戦えば間違いなく殺されるでしょうし。」

 

「前のアレを見てるとそうは思えないぞ。」

 

「あれはアカメさんも大分加減してくれてましたし。

ね?アカメさん。」

 

「…半分殺す気ではあった。」

 

「ちょっと!初耳ですよぉそれ!」

 

……分かっちゃいたが容赦ねぇな。

俺様が帝具使いじゃなかったらこのか弱い体が斬られちまう処だったぜあん時はよ。

 

「スペクテッドは回収するので?」

 

「回収して、ボスに渡す。

お前はどうするんだ?」

 

「ザンクさんに用がありまして。」

 

「ザンクは死んだのにか?」

 

「ええ、死んで間もないのなら……あるでしょうし。」

 

俺はウロボロスを出してザンクの胸へと刺し込む……いや、食い込ませるが正解か。

 

それを見たアカメは構え、タツミは驚愕した目で俺を見る。

 

「何を……!」

 

「食べてるんですよ、魂。」

 

「魂……?まさか、お前の帝具は!」

 

「いやいや勘違いしないでください。

話に聞く死者行軍 八房とは違って死者を操りはしませんよ。」

 

「ならば、何故死んだ者の体にそんなことをする。」

 

俺はウロボロスに魂を喰わせながら笑みを崩さずに説明する。

 

「このウロボロスは帝具として弱くなっておりましてね。

いや、弱くなるようにできているんですよ。

そこで、こうして他人の魂を取り込ませることで帝具としての強さを取り戻させてるんですよ。」

 

それも、帝具に魅入られた奴の魂なら尚更だ。

よりウロボロスの強さを取り戻してくれるだろう。

何より、あの手が解放できねぇのは痛いな。

 

あの時壊されなかっただけでも奇跡ってな位まで弱体化してやがる。

じゃじゃ馬なのはこいつも同じってことか。

 

「だからといって死者の魂を喰らうのは死者への冒涜だ。」

 

「冒涜ねぇ……そんなの、殺し屋稼業をしてる貴女方が言える口ではないでしょうに。」

 

「……。」

 

「それでも、俺達ナイトレイドはそこまで酷いことをしちゃいねぇ!」

 

「してますよ。

何にしても人を殺すということはどうあっても貴方の言う酷いことでしょう。

私が一人の魂を帝具に喰わせるのと貴方方が殺してきた人間……一体どこが違います?

そも、殺人と言うのは特例を除いて全てが冒涜に値する物でしょうに。私、何か間違ってます?」

 

二人は俺の言葉に押し黙る。

いや、アカメの方は違うな。

理解しているからこそ、忠告はしたが俺の態度に対して黙ったんだろう。

 

……終わったな。

俺はウロボロスを引き抜き、スペクテッドを持ってアカメ達の所まで歩く。

スペクテッドを差し出して帽子を深く被る。

 

「斬るなら、今ですよ。」

 

「……お前はこの帝都の腐敗になる存在か?」

 

「違うと、誓って言いましょう。」

 

「……ならいい。タツミ、帰ろう。」

 

「あ、ああ。……ハザマ、お前は…味方なんだよな?」

 

「味方ですよ、ええ。でなければ近付かないですよ。」

 

「そう、だよな。」

 

会話はそこで終わり、それぞれ逆方向へ歩を進める。

 

俺はザンクを一瞥し、拠点へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか、首斬りザンクは死んだか。

ご苦労だったな、テルミ。」

 

─俺様は何もしてねぇよ。

 

「それでもだ。

……愛するものを見せる能力か。」

 

─所詮は幻影だぞ。テメェの両親を幻で見てぇのか?

 

「そんな訳あるか。…お主には居ないのか?」

 

─愛する者?俺に?クク、ヒハハハ……冗談キツいぜ。皇帝ちゃん。

 

「…そうだな、お主に居る筈も『─一人』え?」

 

─一人だけ、それもかなりの昔だが、愛してもいい女は居たな。

 

珍しく真剣な顔で余に告げるテルミはどこか暗い雰囲気だった。

余はそれを聞き、

 

「ハ、アハハハハ!」

 

─あ?

 

笑った。

とても愉快な話だったので、笑ってしまった。

 

テルミは苛立ったのか今にも殺そうとする気迫で余を見る。

 

「いや、すまぬ。お主にも居るとは思わなんだ。

お主も人だったのだな。」

 

─…チッ、もう随分と前の話だ。今は居ねぇよ。それより、提案がある。

 

「む、なんだ?最近夜更かしをしてるせいで成長が止まらないか不安なのだが。」

 

─テメェ軽口言うのも大概にしやがれ。…このままだと行動制限がありすぎるって話だ。

 

「ふむ、確かに。ナイトレイドと繋がったとはいえ変わりはないか。」

 

─そこでよぉ……

 

テルミはいつもしている不気味な笑みを更に深める。

余は、察した。

 

ろくでもない事を言うに違いないと。

それも、余に飛び火するだろうと。

 

 

─テメェの表の権限なら、出来る話だ。皇帝ちゃん?

 

その内容を聞いて、不安になってその夜は中々寝付けなかった。

とにかく分かるのは、明日は激務かもしれないということだ。




はい、戦闘回でしたね。

アカメの。しかも原作通り。

テルミが介入しなくてもいいですからね、戦闘。

ひたすら暗躍です。


ちなみに無間蛇双 ウロボロスの覚醒は

・魂を喰らわせる。

・???

……等の条件があります。


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蛇はほくそ笑む

どうも、ロザミアです。

忙しいけど投稿します。(ドM)

今回は皇帝様の味方の一人とか豚とかと話します。


今よりずっと前……それこそ、オネストも居ねぇ、先代も居ねぇ時代。

 

いつの代かも覚えちゃいない。

だが、どんな皇帝だったかは始皇帝と同じ位に脳裏に焼き付いている。

忘れたくても忘れられない……というヤツだ。

 

今の俺からするとらしくないと言われるだろう。

だが、知ったことじゃない。

テメェの想像の俺は俺じゃねぇからな。

 

……毎度毎度、ソイツとは部屋に招待されては話し、招待されてなくても自身で直接統治する国の様子を見ようと護衛として連れられていた。

話すことなんざ毎回同じだった。

 

何を見たのか、だとか誰と話したのか、だとか。

俺の体験談を聞くのを楽しみにしているのだとか。

そんなの聞いて何になるんだか。

 

「其方の話を聞く限り、余の先祖たる始皇帝は存外後先考えぬ男であったのだな。」

 

「ああそうだ。あの野郎は俺に帝具を作るとか提案してきやがってどうやって作るんだと聞いてみたら分からんって言いやがる。つまりは俺に丸投げだ。

そりゃ、俺以外にも居たから案だけを伝えて他にも丸投げしたが分からんはねぇだろ。」

 

「ククッ、確かにな。

だが、そういう男だからついてくる臣下も多かったのだろう?」

 

「……珍しく女で皇帝してるテメェと同じ位変な奴だったぜ。

…ま、このアーキタイプを俺に託して死にやがったが。俺に面倒押し付けて死ぬなんざ後にも先にもアイツだけかも知れねぇなぁ。」

 

「余が変とな。」

 

「ったりめぇだ。女の身で皇帝なんざどれだけ無謀か分かってねぇテメェじゃねぇだろ。

事実、皇帝家の女で皇帝してるのはテメェが初めてだ。」

 

ソイツは俺の言葉に可憐に微笑むのみで、それについては何も言う気はないという意思表示だった。

 

頑固なのか何なのか。

 

「体が弱ぇ癖に視察ってのも馬鹿だろ。

この前倒れかけたの忘れたのかよ。」

 

「何、其方が居る限りはその場で死ぬこともなかろう?」

 

「俺は万能じゃねぇぞこのアマ……」

 

「元より茹で玉子しか食わぬ其方を万能とは思わぬ。 何じゃそのひょろひょろの身体は、それで余の護衛が出来るのか?」

 

「挑発してんなら乗ってやろうか、あ?

テメェを狙ってる陰湿な輩程度なら十分だっての。

大体毎度俺様を連れてるテメェが言うことじゃねぇだろうが。」

 

「冗談だ。

それで?次はどのような話をしてくれる?」

 

「……その前にここの視察だろうが。」

 

「ふむ、残念だ。」

 

……もう少し成長する前に来ておけばよかったと今更ながらの後悔がある。

でなきゃ変な情も芽生えねぇで餓鬼扱いで終わってた。

しかもコイツモコイツで俺にべったりだ。

 

チッ、面倒くせぇ。

 

「先に言っとくが……」

 

「黙れ。」

 

「…あァ?」

 

「それ以上口にするなら、余にも考えはある。」

 

「……はいはい、ままごとに付き合ってやるよ、女帝さん。」

 

「それでよい。では行くぞ。」

 

「さっきまで仕切ってたのは俺様だろうがよ……」

 

そんな何とも言えない日々を、過ごした気がする。

 

俺の中では珍しくあまり血が流れねぇ年の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、この帝国の腐敗の原因であるオネスト大臣は困惑していた。

一体どうしてか……。

それは彼の目の前の光景にこそ答えはあった。

 

「これはこれは陛下、お初にお目にかかります。

私、ハザマと申します。

この度は、宮廷へのご招待真に感謝いたします。」

 

「うむ、構わぬ。

あのブドー将軍の友人ならば一度顔を見ておきたいと思ったのは余故にな。顔をあげよ、ハザマ。」

 

「陛下がそう仰るのならば、そうしますが……」

 

そう、友人。

あの、ブドー大将軍の友人だと、突然現れたこの男は言うのだ。

一体何時そんな事を、と困惑せずにはいられなかった。

 

丁度隣にはブドー大将軍もいるではないか。

聞いた方がよいだろうが、彼は自身を嫌っている。

教えてくれるだろうか。

 

「……ブドー将軍、彼は本当に貴方の友人なのですか?」

 

「……陛下。」

 

「よい、答えるのを許す。」

 

「はっ……ハザマは私の古い友人であり、今は情報屋として世界を旅していると聞いている。相違無いな?ハザマ。」

 

「ええ、間違いなど1つもありません。

事実、東方にも赴いたことはありますが…あそこは慣れてないと逆に辛いかもしれませんねぇ。

っと、無駄口失礼。

しかし、オネスト大臣は余程私を疑っておられるようだ。何故か、聞いても?」

 

もはや白々しいとすら思える態度にオネストは苛立ちを隠せなかった。

死刑にしてやりたいとすら思ったが、表向きの権利はまだ皇帝が持っている。

それに、ブドー将軍の友人というのが真実ならば…その先を考え、下手な行動を起こしたくなかった。

 

「突然として来日したというので、真意を図りかねまして。陛下に何かあれば事ですからね。

陛下も、何故私に事前に言ってくださらなかったのです?」

 

「う、うむ……すまぬ。

余も楽しみにしてしまっていた故…。

次から気を付けよう!」

 

「はぁ……」

 

この餓鬼…と悪態をつきたいのを堪え、溜め息を吐くに留めた大臣の忍耐強さはある種見習うべきである。

やっていることは外道そのものだが。

 

苛立ちを抑えるのに尽力しているオネストに畳み掛けるようにしてハザマは口を開いた。

 

「それは申し訳ありません。

私もこの忙しいときに出向くのは気が引けたのですが……久しくブドーさんの顔を見ていなかったものですから、うきうき気分で来ちゃいましてねぇ。

暴挙に近い行為であるのは理解してます、申し訳ありません。」

 

「む、ぅ…………。

……ハザマさんは情報屋なのでしょう?

ならば、ナイトレイドについて何か情報は無いのですか?」

 

気軽に聞いてみたつもりだった。

勿論、知っていれば聞こうと思ったが。

 

だが、話題を持ちかけた瞬間、ハザマが金の瞳を覗かせる。

 

「どのような情報がお望みで?

ナイトレイドの情報だけでは分かりかねますね。」

 

「…あちらの所持している帝具について。」

 

「何を出します?」

 

「……金ではないと?」

 

「私、そこらの情報屋とは違って物という対価でしか情報を渡さないんです。

どうします?あ、勿論住居なんて要りません。

ナイトレイドはこの帝都を騒がせている暗殺組織……でしたよね。そのような組織の情報を得たいと言うのです。

私、身の危険も考慮して余程の報酬を貰わないと渡せませんよ。」

 

「……保留でよろしいですかな?少し考えさせてもらいたい。」

 

今この場で渡せるのは少ないと判断し、保留を提案する大臣。

 

すると、先程までの自身に絡み付くような雰囲気が無くなり、いつもの笑みを浮かべたハザマがそうですかと言う。

 

「構いませんよ。ただし、買われてしまってもしりませんが。」

 

「……もうよいか?ハザマはブドーと積もる話もあるであろうが、ブドーも将軍故に忙しいのだ。

すまぬが、今日のところは……」

 

「ええ、分かっています。

突然押し掛けてしまい申し訳無いことをしました陛下。

では、私はこれで。

……ああ、そうだ。」

 

去り際にハザマは振り返り、大臣を見る。

 

「私はしばらくここに居るつもりですので、色好い返事を待ってますよ、オネスト大臣さん。」

 

「……ええ。」

 

ぶっちゃけると、オネストはもうストレス発散のために何かを食べたい気分だった。

あの男にはこれからも付き合いが長くなりそうな、そんな予感が彼の頭に過ったからである。

 

ハザマはそれだけ言ってブドーと共に去っていった。

 

皇帝は内心ガッツポーズをする。

冷や汗ものではあったが成功したからだ。

 

そもそも、何故このような事態になったのか。

それは今日の早朝にまで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大臣よりも早く起きた皇帝が服装などを整えて何をしたのか、それは至って簡単である。

 

ブドー大将軍を呼びつけたのだ。

当然、皇帝に真の忠誠を誓うブドーは直ぐ様飛んできた。

 

「よく来てくれたなブドー。」

 

「陛下の命とあらば。」

 

「うむ……なあ、ブドー。

余の今からする質問に正直に答えてほしい。

…大臣は、オネスト大臣は余を騙し、何をしている?」

 

皇帝の言葉に、ブドーは内心驚いた。

気付いているとは思っていなかったからだ。

それとも、気付かずに子供の妙に鋭い勘で聞いているのだろうか。

 

どちらでもブドーは構わなかった。

皇帝の命令が正直に答えろというものならば正直に答えるし、元より虚言を吐く理由などありはしない。

 

ブドーは正直に語った。

 

「陛下の言うとおり、大臣は陛下を操り、陰で良からぬ事をしております。

己に従わぬ貴族、兵士などは軒並み処刑されました。」

 

「……そうか。」

 

事実を口にしたら、皇帝は辛そうでも悲しそうでもなく淡々と事実を呑み込んだ。

やはり、気付いていたのだろうと断定したブドーはどのような罰が来るかを待った。

 

事態に気付きながらも何もしなかった己を主君はよく思うまい。

 

だが、何時まで経ってもブドーに罰を告げる言葉は来ない。

 

「顔をあげよ、ブドー。よくぞ語ってくれた。

大方、余がお主を罰すると思っているのであろうが、それはない。寧ろ、罰せられるは無知であり、人形であった余自身だ。」

 

「いえ、陛下は……」

 

「よい。子供であれど余は皇帝だ。民を導かねばならぬ身でありながら、全てを任せすぎた。

……ブドー、余は大臣を倒したい。

そして、この腐敗してしまった帝国に嘗ての栄華を戻すのだ。手伝ってくれるな?」

 

ブドーはその言葉、その表情に感銘を受けた。

皇帝の命令は絶対であるとするブドーは、何を命じられても従う気ではあったが、これは願ってもない命令だった。

 

改めて頭を深く下げたブドーは皇帝へ告げる。

 

「御意に。」

 

皇帝は嬉しく思った。

ブドーだけは自身を裏切りはしないと信じていたが、実際に言葉として、姿勢として告げられるとその感動は計り知れない。

 

だが、今は声をあげて喜ぶときではない。

 

「…感謝する。ブドーよ、早速だが、余の頼みを聞いてほしい。」

 

「如何様な命で。」

 

「うむ。実は、既に余にはもう一人の味方が居るのだが、その者と協力してほしい。」

 

「…どのような人物でしょうか。」

 

己より先に皇帝に協力する者。

余程の慧眼を持っているのか、それとも味方に引き込みたかっただけか。

 

会って判断をしなくてはならない。

 

─こんな人物だが、何か問題があるかよブドーちゃん。

 

後ろから人の声がするので振り向く。

いや、人の声にしては直接頭に響くような感覚。

 

ブドーは今まで然程驚愕したことはないのだが、今日ばかりは多い。

 

そこに居たのは、壁に寄り掛かる明らかに人間ではない形をしたナニカだった。

 

ブドーは咄嗟に構えるが、先程の言葉を思い出す。

 

「……貴様が陛下の協力者か。」

 

─そう身構えるんじゃねぇよ、将軍様。まあ、協力者のユウキ=テルミだ。

 

「ブドー、テルミは余に帝都の腐敗を知らせてくれた奴でな。見ての通り人間ではない。

口は悪いがそこまで悪い輩ではない。」

 

「…テルミとやら、貴様が陛下に協力する理由はなんだ?」

 

─あ~?理由だぁ?…まあ、契約だよ、契約。

 

「……分かった。もし陛下を害する真似をするのならば即座に始末する。」

 

─それぐらいの気持ちでいてくれる方がやりやすい。これからよろしく頼むわ、ブドー大将軍様よぉ。

 

こちらをからかうように顔を歪める精神体にブドーは一々反応しても仕方がないと判断し、作戦の内容を聞くことにした。

 

「まず、テルミはハザマとしてこちらに来て、ブドーはそれを友人として出迎えるという体だ。」

 

─俺様の友達なんてレアだぜレア。

 

「……。」

 

「あー…事前に余にもブドーから珍しく通達が来たということで余も会いたいという形で謁見の権利をテルミ…ハザマに渡し、ブドーは共に来てほしい。

そこからはハザマが上手くやって大臣との交渉を始める。……そうだな?テルミ。」

 

─大方、合ってる。周りの反応を見ながらやってくしかねぇだろ。俺様も動きやすくならねぇといざって時に遠くに出れねぇからな。あの豚とも形だけの繋がりは持つべきだ。

 

「……仕方無いか。」

 

「頼むぞ、これが成功すれば一層大臣の喉元に近付ける。」

 

「お任せを、陛下。」

 

─随分とまあ深い忠誠心だことで。

 

一々からかうな、と皇帝が言うと鬱陶しそうにはいはいとだけ言ってテルミは黙る。

一応言うことは聞くらしいと判断したブドーは警戒を少しだけ抑えた。

 

そして、テルミや皇帝と打ち合わせを軽くしてからそれぞれ悟られないようにするのだった。

 

この後起こることは、先程の展開通りである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城から出るべく歩く俺は帽子を深く被る。

最近はこうすることが多い。

 

「…さて……。」

 

「どうした。」

 

「そろそろという訳ですよ、ブドーさん。」

 

「…なるほど。」

 

ブドーが聞いてくるので答えると、理解したのか視線を戻す。

……ま、皇帝があの場には居たし出来ない話題だろうよ。

 

「ハザマさん、少しよろしいですかな?」

 

「……あまりご自身で動く方とは思いませんでしたねぇ。」

 

「ええ、普段はね。…ブドー将軍、少し彼をお借りしても?」

 

「…いいだろう。」

 

ブドーは渋々と了承し、去っていく。

オネスト大臣は俺を何処かへと案内していく。

ま、普通に応接室ってとこか。

 

扉を開けて中へと入っていく奴に警戒しつつ俺も中へ入る。

そして、向かい合う形でソファーへと座る。

 

「あの場では長引く会話は気が引けましたので。

ここでさせてください。」

 

「元々こうするつもりだったと。回りくどいですねぇ。

……それで?報酬、どうします?」

 

大臣はむふふと気色悪く笑ってから報酬の内容を提示する。

 

「この城で過ごす権利はどうですかな?

ここならば危険も少なく、情報屋の貴方としては盾としてもいい場所でしょう?」

 

「その場合は逃げればいいだけですが?」

 

「逃がすと思っているのですかな?」

 

「……へぇ。」

 

「ナイトレイドの情報なんて物を持ってる何て輩、わざわざ逃がすわけ無いでしょうに。」

 

実力行使も考えてる、と。

面倒くせぇな。

この場で事を起こしても不利だ。

 

「…別にその権利でも構いませんが、少ないですね。

もう1つくらい下さいませんと。

例えば…貴方の企みへの参加、とかねぇ。」

 

「…ほう?情報屋の貴方が、何故?」

 

「否定しないということはある種認められてるんですかね、私。」

 

「さあ、どうでしょう。」

 

「まあ、構いませんけど。

実は、1つだけ隠してることがありましてね。

貴方にとって私の価値というものを上げる程の物を。」

 

俺の言葉に大臣は訝しげだ。

一介の情報屋じゃねぇのは既に分かってるだろうが底を探ってるってとこか。

 

「帝具使いです…なんて言ったら貴方どうします?」

 

「貴方が?」

 

「ええ、とある筋から戴いた物でして。

名前は何だったかな……無間蛇双 ウロボロスでしたかね。」

 

見せ付けるように異空間から鎖を取り出す。

大臣は疑っていたが実物を見て驚く。

 

「無間蛇双……行方不明の1つ。

まさか貴方が持っていたとは。」

 

「ええ、これが便利な物でして重宝してます。

お陰で戦闘も問題なしですし。

意外と価値があると思いません?

戦闘も、諜報も出来る存在なんて便利だと思いませんか?」

 

「……。」

 

大臣は黙り混む。

俺的には意外と便利だと思うが。

ま、駄目ならここにいる権利だけでいいさ。

 

大臣は考えが纏まったのか口を開く。

 

「……まあ、いいでしょう。

分かりました、その条件を呑みましょう。

その代わり、情報はお願いしますよ?

あちらの帝具等の情報提供をね。」

 

「ええ、構いませんとも。

そちらの企みへの参加も、楽しそうですし。」

 

互いに笑みを浮かべる。

 

さて、こっからが働き時だな。

見極めながら動かねぇと。

夜で動くときは偽装しながら動かねぇとバレるしな。

 

…楽しみになってきたなぁ?

 

さて、後は……魂と……アレだな。

 




原作、壊さなきゃ(スサノオ感)

出るかもしれないし出ないかもしれないテルミ本来の姿。
でも出したら殆ど勝ち確なんだろうなぁ……


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胸騒ぎの朝

今日は、何をするのだったか。

そう考え、思い出す。

また呼ばれてたんだったか。

 

あの女に。

内心、悪くはないと思ってしまっている自分が居るのに苛立つ。

俺様はもう人間じゃねぇってのに何を無駄なことを。

 

……チッ。

 

目の前の女に悪態をつく。

 

「テメェ、俺様も忙しいんだよ。」

 

「ほう、どのようにして忙しいのだ?」

 

「答えてもつまんねぇだろ?」

 

「余に答えろと申すか。」

 

暇なのかからかいにも乗ってくる女に俺は苛立つ。

毎度そうだ。

周りからすれば俺は、ユウキ=テルミは恐怖の対象に近い。

 

曰く、皇帝家に取り憑いた亡霊。

曰く、いつの間にか帝国に居る疫病神。

曰く、破壊をもたらす神の使い。

 

どれもこれもふざけた内容だ。

勿論、良い噂もあるっちゃあるが、こっちはあまり浸透しねぇ。

 

見た目が問題なんだろうよ。

だってのにコイツは俺を見ても何とも思わずに、寧ろ好意的に接してくる。

 

うざってぇ。

 

「余の護衛で外を気にしなければならないから忙しい。

どうだ?正解であろう。」

 

「死ねこのアマ。」

 

「正解のようだな。」

 

「何も言ってねぇだろうが。」

 

「其方のその態度が証明だ。」

 

「……チッ、気に食わねぇ女だ。

何でそう俺に構う?俺はテメェの婚約者か何かか?

護衛だろうがよ。」

 

女は俺のその言葉が気にくわないのか目を細める。

 

「余が暇だから其方を呼び、其方はそれに応じて来た。お主こそ、この時間が悪くはないと思っていよう?」

 

「ああ?寝惚けてんじゃねぇよ。」

 

「…まあよい。だが、たまには素直になれテルミ。

そのままではつまらん男で終わりだぞ?」

 

「……ケッ。」

 

「……ところでだな。」

 

「んだよ。」

 

女は、からかうように笑みを浮かべ、顔を近付けてくる。

多少驚くが平静を保つ。

 

 

「─何時まで泡沫の夢に溺れている愛しい男よ。起きよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─……夢か。」

 

ベッドで目を醒まし、上体を起こしてから状況を整理する。

昨日は確か……ああ、そうだ。大臣と交渉して城での寝泊まりをナイトレイドの情報と引き換えに出来るようにしたんだったな。

後はアイツのくだらねぇ企みへの参加。

 

ま、本気でやる気はねぇがな。

 

アーキタイプは便利だが、人間としての機能全てを持っているせいか夢を見てしまう。

お陰で、良いのか悪いのか分からねぇ夢見ちまった。

 

「……ウロボロスの完成は遠いか。

後何人だ……帝具使いの魂を喰らわせるにしてもそう楽じゃねぇ。裏からこっそり始末できる奴にも限りがある。それに……完成しても真の力を引き出すには鎧がねぇ。」

 

何にしても最後にまで整えなきゃならねぇのはウロボロスの覚醒だ。

魂を得てもウロボロス単体としての上限を元に戻すだけで、真の力を引き出すには程遠い。

何処かに散ったはずだ……探すのは手間だが予感がある。

 

この混沌としていく帝都に、あらゆる可能性が集まるという予感が。

ならその予感に従ってみようじゃねぇか。

 

もし予感的中なら、その時こそ俺様は全盛期、始皇帝の時代の俺様に戻れる。

 

無間蛇双なんて名はテメェも嫌だろう?

なあ、ウロボロス。

 

テメェの帝具としての大半の力を失ってんのはそのどっかへ散った力のせいなんだからよぉ……。

 

「……ま、何にしても今やるべきなのはアイツらとの情報共有だな。折角内部での邪魔が出来るんだ、存分にやらせてもらうぜ。」

 

俺は首の骨を鳴らしつつ、着替えなり何なりを始める。

 

……チッ、めんどくせぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝ってことは朝食は出る。

出ないところはあるがここだと必ず出る。

何故ならば城だからな。

 

当然ながら俺も朝飯を食ってんだが……ジロジロと視線がうざい。

 

「……ハザマ?」

 

「…はい?なんです陛下?」

 

何でか皇帝と大臣の朝食の席に同席させてられている。

そんな中、不可解な物を見る目で俺を皇帝が見やがる。

大臣もだが。

 

「い、いや……お主の朝食の皿に……余の見間違えでなければなのだがな。

 

茹で玉子しか……見えんのだが?」

 

「見間違えでは、ないですねぇ。」

 

「私がいうのも何ですが、偏りすぎでは?

茹で玉子ばかりでなく、何か他のものも……」

 

「貴方は私に死ねと?」

 

「そこまで言ってませんが……」

 

こいつらは何も分かっちゃいねぇ……

熱弁したいところだが、ここでやるのは礼儀に欠ける。

仕方無いから少しだけ言うに留めるか。

 

「私は昔から茹で玉子が大好きでして。

これだけで生活してきたことなんて数えきれないほどありますよ。いわば茹で玉子は相棒…いや、世界とすら言っても良い。神とも言えるのでは?」

 

「そ、そこまでか。」

 

「そこまでどころか越えますね。」

 

「「ええ……」」

 

二人して引くのはやめてくれねぇかな。

俺様はどっぷり茹で玉子に染まってんだよわりぃか。

 

「私のことはもういいでしょう?早く食べますよ。」

 

「そうだな。」

 

「……陛下、食事が進んでいないようですが…」

 

「む?あ、ああ……すまぬ。」

 

そうして、また静かな食事の時間になり、過ぎていく。

……少し計画を早めるか。

そのためにもナイトレイドに寄るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナジェンダの元へ向かうべく、歩いているが、1つ困ったことになった。

 

「貴方、本当に盗んでないんですか!?」

 

「だから、私は何も取ってませんってば!」

 

何でか知らねぇが警備隊と思わしき女に捕まって、窃盗犯でないかを疑われているようだ。

先程ここらで謎の窃盗が起こったと言う目の前の女に俺は内心苛立つ。

ふざけんなっての。

 

「ウゥ"ゥ"……」

 

「ほら、コロも疑ってます!犬は嘘つきませんよ!」

 

「…犬?パンダとかでなく?」

 

「コロは誰が見ても犬ですよ!ね?コロ。」

 

コロと呼ばれた犬は頷く。

てかこいつ……ヘカトンケイルか?

 

ってことはこの女は帝具使い…何だって警備隊の一員に過ぎねぇ奴がんな代物を持ってやがる。

 

なるほど、異様に警戒してる理由が分かったぜコロちゃん?俺様のこと、覚えてるんだなぁ?

 

「……コロと言うんですね、可愛らしいですねぇ。

どうしても私が盗んだというのなら盗まれたものの詳細を教えてくださいよ。」

 

「風船ですよ。」

 

「はい?」

 

「女の子の風船が盗まれたと聞いたんですよ!

黒服の人に盗まれたと聞きましたよ!

貴方は証言の黒服の人と一致します!」

 

「待って、本当に待ってください!

それはおかしい!私が仮に風船を盗んだとします。

持ってないのはおかしくないですか!?」

 

「……コロ?」

 

「バウッ!バウッ!」

 

「コロは盗んだといってますよ!」

 

こんの糞犬ゥ……!意地でも俺様を犯人にする気か。

ぶっ壊してやりてぇが、落ち着け、ここでバレたら全部パーだ。

 

「いや、なら風船を持ってるという証拠!証拠は?

私が持ってないと何処かに行ってしまうような風船を持ってないのはおかしい!隠すにしても益もない!」

 

「……むぅ、本当に違うんですか?」

 

「いや何度も違うと行ってますよ!仕事もあるのにこう止められると困ります。

今日は大事な会議の時間が……私がクビになったらどうしてくれるんですか?」

 

「私が悪いのはおかしくないですか?」

 

「じゃあ、悪くなくて良いですから一刻も早く行かせてください!これで茹で玉子が食べられなくなったら死にますよ!」

 

「死ぬ!?茹で玉子で!?」

 

「茹で玉子が食べられなくなる生に生きる価値なんてありませんよ!……あー!?時間が迫ってる!もう、私は行きますからね!誰がなんと言おうと!」

 

俺はもうヤケになって走り出す。

ふざけんな、これ以上付き合ってられるか!

 

クソ、無駄足すぎんだろぉ!

 

「あ、待ちなさい!……行っちゃった。」

 

「クゥーン……」

 

「でも、怪しかったけどなぁ……うーん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……帝具ヘカトンケイル…敵に回すと間違いなく厄介だ…。」

 

逃げ切ったと安堵してから考えをまとめつつナジェンダの元へ急ぐ。

この情報、持っていると良いが……ただでやるか?

いや、それこそ疑いを深める。

ここはあくまでビジネスによるラインを保つべきだ。

 

そうしねぇと困る。

 

朝の帝都じゃあの姿かも知れねぇが、あの糞犬、夜の活動はどうしてやがる?

間違いなく、喰ったんだろうよ。

あの大顎で、人間を。

 

始皇帝の野郎、変な機能も付けやがって。

 

「……っと、着きましたかね。」

 

急いだお陰かすぐに着いたのでさっさと入る。

 

誰かいないかを確認するが…

 

「げ……ハザマがいる……」

 

……お転婆な女が居たな、くそが。

何で会って早々嫌な顔されなきゃならねぇ。

俺様は清廉潔白、誠実な人間なのになぁ。

 

「げっ、とは失礼な。色々と情報を持ってきたというのに……それも命懸けの日々を過ごしてね。」

 

「あっそう。ボス呼べば良いのね。」

 

「あの~その扱いの仕方は泣きますよぉ…私の何処が嫌なのかを教えてくれてもいいじゃないですかぁ。」

 

「胡散臭い、以上。」

 

……んの野郎……。

マインはさっさとナジェンダを呼びに行ってしまい、再び暇になってしまった俺はそこらに腰掛けることにした。

 

そして、考えを本格的に纏め始める。

 

「敵に回すと厄介な奴は他にもいるが……」

 

前にウロボロスで魂を喰った時と八房と言った時のアカメの反応を思い出す。

舌打ちをする。仕方無いくらいに面倒な帝具だからだ。

 

「死者行軍 八房…あれが敵なら下手に人員を当てると手痛い反撃を貰うだろうなぁ……他にもあるが…持ってるだろうな。」

 

やはり、此方も帝具使いを増やすべきか。

シコウテイザーの中にあった帝具ならば利用可能だ。

後は適応する人物を見付けりゃいい。

だが、その時間を割く暇があるか?ねぇな。

大臣との前の会話で嫌な情報を聞いちまったからな…。

 

「ハザマ、来てくれたのか。」

 

「…ん、ええ、まあ。少し厄介な情報を得たので。」

 

ナジェンダがマインと共に戻ってきたので立ち上がって一礼をする。

俺が一挙一動する度にあのピンクアマの胡散臭い者を見る目がより顕著になるのは何でだ。

 

「厄介なだと?」

 

「ええ。

エスデス将軍……でしたっけ。

彼女、戻ってきますよ。」

 

「…チッ、予想より少し早いな。

少しどころではないな。しかし、何処でそれを知った?」

 

「大臣に聞きました。」

 

「…は?」

 

「アンタ、まさか!」

 

「いやいやいや、構えないでください!

ちゃんと貴女方に利益ありますよ。あっちにはあまりありませんが。」

 

ピンクアマが構えやがるから必死に弁明する。

売り込みをしてより内部の情報を得れるようにしただけだと。

 

「本当でしょうね?」

 

「撃たれたくありませんからね。

何なら、他にも先程見た帝具使いの情報もあげますよ。」

 

「……マイン、武器を下ろせ。

どうやったかは知りたいが、それは置いておく。

聞かせてくれるか、ハザマ。」

 

「…変なことしたらぶっぱなすからね。」

 

「やだなぁ、信用してくださいよっ。

……ええ、まあ、ヘカトンケイルの帝具使いを見ましてね。警備隊の者と思われます。」

「ヘカトンケイル…」

 

「ボス、ヘカトンケイルって?」

 

「あまり知らん。名前だけは知っているが……」

 

「ヘカトンケイル。

生物型の帝具であり、核を破壊しない限りは活動可能。犬の姿をしていましたが、さて、戦闘になるとどんな化け物になることやら。」

 

「……詳しいな?」

 

訝しげに俺を見るナジェンダに俺はまあね、と答える。

そりゃ完成に立ち会った奴等の一人だしな。

詳しくねぇ方がおかしい。

 

まあ、言ったら絶対にホラ吹きと思われるから言わねぇが。

 

「ところで、夜にまた?」

 

「ああ。女としても、一般的にも外道に当たる奴だ。」

 

「……それならば、お気をつけて。

ヘカトンケイルは厄介ですからね。

それで、メンバーは?」

 

「シェーレとマインに任せる予定だ。」

 

「何よ、文句あるの?」

 

「いえ、ありませんが……」

 

何だ、何か胸騒ぎがしやがる……。

こういう時のコレはあまり無視できねぇ。

ここは変装して見張るか?

 

もしかすればコイツらとあの警備隊の女がやり合うかもしれねぇからな。

 

ウロボロスの事がバレても困るが…その時はその時だ。

 

「…お気をつけて、とシェーレさんにも伝えておいてください。

ナイトレイドの帝具使いが減るのはこちらにとっても痛手ですので。」

 

「前々から思ってたけど、アンタの目的はなんなの?」

 

「帝都の平和~なんて言葉信じます?」

 

「無理。」

 

「ならいいですよ。ですが、忘れないでいただきたい。」

 

俺は笑みを深め、マインに近付く。

マインは警戒するが、お構い無しに優しさを込めて警告する。

 

「な、何よ?」

 

「情報というのは貴方達、大臣達にとって帝具以上の武器となる。それをお忘れなく。」

 

「……そんなの分かってるわよ。」

 

「ならいいんですよ~、じゃ私はこれで。」

 

俺はまた一礼をしてから出ていく。

さて、夜までどうするか……仕方ねぇ。

皇帝ちゃんに聞きてぇこともあるし聞くか。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

皇帝として、忌々しいオネストを側に置きながら務めている余は、しかしあまり仕事に打ち込めないでいた。

話は聞いているし、大臣の発言を聞き漏らすことはしない。

 

だが、どうしてか、昨日見た夢が頭を離れない。

 

朝食の時も、呆けておった。

あの夢、あの姿は一体何なのか。

 

詳しくは覚えていないし、声も覚えていない。

だが、あの姿だけは鮮明に脳に刻まれている。

 

「……。」

 

 

─……、……?

 

 

「…思い出せぬ。」

 

「どうかなさいましたかな?」

 

「…いや。」

 

何かを聞かれた。

夢に干渉する帝具?

いや……あれは……

あの荒ぶる力を持つ者は。

 

正しく、()と畏れる程の力を、感じたのだ。



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魔獣を壊す

先に言っておく。
コロちゃんファンの人、すまねぇ。


夜の帝都は昼と変わらず賑やかだ。

だが、その賑やかさは華やかな賑やかさとは違い、危険を臭わせる賑やかさな点が、昼との違いだろう。

大体、淫売とかがいる時点で察する。

 

腐敗している帝都では一部の警備員までもが賄賂などをやっていたりする。

法を取り締まる部隊が法外な事を行うとは、世も末だ。

 

だが、1つだけ忘れちゃならねぇ。

 

とびきりの悪がいるということはとびきりの正義もいるということだ。

 

それも、己の正義を信じて疑わない、愚者のごとき正義執行者。

扱えるなら、扱ってみろって話だ。

俺は嫌だね。

 

大将軍ブドーに警備隊リストを見せてもらった俺は当然載ってるあの警備隊の女をリスト内に見つける。

セリュー・ユビキタス。

警備隊の中でもずば抜けた正義感の持ち主……だが、その正義は歪みきっている。

 

事情を知っている他の警備隊に話を聞いた。

 

『我々は帝国の、皇帝様の正義を信じ、執行する者です。ですが、あれは恐ろしい。

正義を執行する時のセリューは…人には見えない。

まだ更正の余地がある人間も構わずに殺すのは異常です。帝具のコロもそうですけど、セリューは正義の為ならば何でもする。そんな人間です。

恐らく、父親の件もあるのでしょうが。』

 

はっきりと言おう。

それは正義という単語に盲目的になっているのではないか。

正義とは人それぞれではあるが行き過ぎた正義は悪となる。

 

その正義の振るい方は、間違っている。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

変装……というより、テルミとしての姿である黄色のローブを着込み、フードを被ってるだけなのだが、これだけでもバレにくいもんだ。

後は声を適当に変えるだけ。

精神体はここら辺楽で助かる。

声に固執する必要がない。

 

昔ならもっと活用したろうよ。

 

とまあ、変装した俺は気配を消しながら走るシェーレ、マインを追いかけていたのだが、案の定何かが起こった。

この夜までにブドーに見せてもらって正解だったな。

 

あの女、セリューって言ったか…アレはやべぇ。

近年稀に見る正義執行機械みたいなもんだ。

 

……そう、セリューがマインとシェーレの前に現れ、交戦している。

 

戦いを見ているが、俺は二人に感心する。

 

万物両断 エクスタスと浪漫砲台 パンプキンの相性は悪くない。

守りにも攻めにも使えるエクスタスと遠距離からの超火力を誇るパンプキンは確実に魔獣変化 ヘカトンケイルとセリューを追い詰める。

 

ヘカトンケイルがいくら自律型の帝具とはいえ帝具使い二人が相手だと分が悪いのか、一発も攻撃を当てられていない。

セリューも格闘技等を行使しているが、決定打を与えられていない。

 

帝具使い同士が戦うと片方は必ず死ぬという話がある。

このままいけばセリューが負けるだろう。

 

……このまま行けばな。

俺はヘカトンケイルの恐ろしさを知っているからこそ安心はできなかった。

なら、加勢しにいけと言われれば、それは出来ねぇ。

 

それをすれば後々になって不利になる。

本当にヤバくなった時にだけ参戦するしかない。

 

互いに消耗はしているが、セリューの方が苦戦を強いられているのは間違いない。

……情報を教えたからか、マインとシェーレも慎重になっている。教えなくてもなってただろうが、ヘカトンケイルの核を潰そうという動きをしている点で言えば教えてよかった。

 

死なれたら困るからな。

 

だが、セリューは戦意を少しも削がれない。

寧ろ、それは高まるばかりだ。

ヘカトンケイルもそれに呼応しているのか奮戦している。

 

そして、その時はやってきた。

 

さらに追い詰められたセリューは切り札を切る。

 

「コロ!奥の手!」

 

そう命じた直後、ヘカトンケイルの様子が変わる。

いや、ヘカトンケイルが元の化け物に戻る。

 

凶悪な形相へと変化し、爪などが獲物を引き千切る為の残忍なモノへと化していく。

ヘカトンケイルの奥の手、それは野生を解放する事。

字面だけでは分からないかも知れないが、小さな蜥蜴が巨大な龍へと変わると言えば恐ろしさは分かるだろうか。

 

「グオォォォォォ!!」

 

「っ、速い……ですが!」

 

シェーレは冷静に突進してくるヘカトンケイルの爪の一撃をかわし、エクスタスで一閃。

 

万物を両断するというのに嘘偽りはなく、凶暴化したヘカトンケイルも容易く切り裂く。

だが、ヘカトンケイルは怯む様子はない。

力を解放したからだろう。

更に攻撃の激しさは増していくが、マインの射撃がシェーレを援護しているお陰でヘカトンケイルは攻めきれない。

 

だが、動きが激しいのと下手に動けないからか、核は未だ健在だ。

再生を繰り返し、攻撃の手を止めないヘカトンケイルに二人は焦り出す。

 

「(不味いか……?)」

 

妨害は出来てるし、突破法もある。

だが、ヘカトンケイルの動きを止めない限りは……

 

それに、セリューが何もしていないのが怪しい。

 

いや、待て。

今なら……殺せる?

 

ウロボロスを使えば、セリューの魂を喰らうのと始末ができる。一石二鳥だ。

どうする。

リスクは高い。

 

……やるか。

最悪防がれても構わねぇ。

 

「─ウロボロス!!」

 

俺は異空間からウロボロスを伸ばし、その牙をセリューへと向ける。

 

確実に仕留められる一撃だが……

 

「グォォォ!!」

 

「っ、コロ!?」

 

……やっぱ、失敗か。

ヘカトンケイルが持ち前のスピードを活かし、その腕でウロボロスを防ぐ。

 

だが、これで動きは封じられた。

 

ウロボロスは腕に巻き付き、その無尽蔵の長さを以てヘカトンケイルの体を縛っていく。

 

いつまで持つかは分からねぇが、さっさとしねぇと!

 

「っ、誰!?」

 

「誰だとか関係ねぇ!今ならそいつの核を撃てんだろうが!」

 

「マイン、今はあの帝具を倒さないと…」

 

「…そうね、後で聞かせてもらうわよ!」

 

「っ、ナイトレイドォォォォォォ!!」

 

マインはパンプキンを縛られているヘカトンケイルへとその銃口を向ける。

 

セリューが唖然としていた状態から立ち直った時にはもう遅かった。

 

パンプキンから放たれた衝撃波がヘカトンケイルの核のある場所へと吸い込まれるように向かっていき、その巨体を貫いた。

 

「グ、ォ、ォ……」

 

「コロ……!」

 

「仕留めた……!」

 

「何かする前に、彼女も……ッ!」

 

「……チッ、逃げんぞ!」

 

セリューを仕留めようと動こうとするが、いくつもの足音がこちらへと近付いてくるのを察知した俺らはセリューの存在がこれから何をするかを予想しながらも逃走する。

 

……だが、ヘカトンケイルは壊した。

ああ……ぐっと楽になったぜ…生物(・・)でよかったぜ。

 

走りながら、マインが俺に話しかけてくる。

 

「で、アンタは結局なんなの!?」

 

「あ?そりゃテメェ、お前らに情報提供してる優しいお兄さんだろうがよ。」

「……アンタ、ハザマ?」

 

「そうそう、テメェの大っ好きなハザマだよマインちゃん?」

 

態度の変わり様か、助けられたことにかは分からないが、言葉を失った様子のマインに俺はいい気分になる。

 

だが、何ともないようにシェーレは俺に前みてぇな笑みを浮かべ、俺に言う。

 

「ハザマさん、先程の助力、ありがとうございます。」

 

「……テメェは反応しないのな。まあいいがよ。」

 

面白くねぇ女だ。

ただ、エクスタスとパンプキンの使い手が無事なのはデカい。

これはご恩ってのを感じてもらおうじゃねぇの。

 

まあ、俺が加勢しなくても問題はなかったと思うが。

 

……セリュー・ユビキタスを始末できなかったのは痛手だ。

ああいった奴はすぐに倒した方がよかったが…運のいい奴だ。

 

俺がもっと早くに出ていれば…チッ、一々前の事を気にしてる方が馬鹿馬鹿しいか。

 

1つの不安を抱えつつ、俺たちはナイトレイドのアジトへと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきたとき、まず俺は警戒された。

が、マインとシェーレの説明で警戒はすぐに解かれ、ハザマの声を聞かせると信じてくれた。

ただ変装をしてるだけだと分かってくれたのは幸いだ。

 

「ハザマ、助力感謝する。」

 

「構いませんよ。私としてもこのお二方を失うのは惜しかった。それだけです。

改めて無事でよかったですよ、マインさん、シェーレさん?」

 

「アンタ、口調忙しいわね。」

 

「そこはもう分けてますので。」

 

「先程も言いましたが、ありがとうございます。

もしかしたら、殺されてたかもしれませんし……」

 

「ええまあ……。」

 

何となく、下手に喋りたくない。

天然ボケの餌食にはなりたくない。

始皇帝もその気質あったな……。

 

「では、私はそろそろ戻らせてもらいます。

あまり遅いと疑われてしまいます。」

 

「ああ、すまないな。今回は貸し1つにしてしまったな。」

 

「何かあったら頼りますよー。」

 

俺は手を振って戻っていく。

 

さて、次の問題は……アイツだ。

 

エスデス…聞くに、戦闘狂だとか何だとか。

氷を操るとも聞くし……間違いなく、あの帝具の適合者。

将軍という地位を利用して何をする?

 

ブドーはアイツの対抗打として警戒してもらうしかねぇか……。

同じ将軍でも、アイツの方が帝国の民衆からの支持は厚いしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見知らぬ場所だ、そう思った。

白く、果ての無い世界。

 

テルミの夢への介入か?

そう思ったが、その考えを即座に捨てる。

いつものような場所ではない。

 

それに、現実で既にブドーとテルミと余で作戦会議はした。

ならば、ここは……

 

「─まだ青いな。」

 

「ッ!?」

 

厳格な声。

聞いたものに重圧を与えるほどの存在感。

一体、誰が余に話し掛けている。

 

そう思い、余は振り返る。

 

「貴、様は……」

 

「始皇帝、その子孫であり今代の帝よ。

……まだ、青い。」

 

「……」

 

目の前の存在は、以前、夢に現れた……。

 

黒く塗り潰された巨体は余に語り掛ける。

皇帝としてあまりにも青いと。

 

そんな事は余が一番理解している。

余がどれ程テルミやブドーに頼っているかなど。

拳を握り締める事で、弱気な自分に鼓舞をする。

 

「貴様は、誰だ。」

 

「この世に現存する帝具、その全てを破壊できる存在。

顕現できぬ我が身は、帝である御身を通じ、この残子で語りかけている。」

 

「この世の、帝具を……?」

 

黒い巨体の発言は嘘ではないと感じるほどに力に溢れている。

これが残子?

ならば本体は……顕現すればどれ程の力が……?

 

「問おう。」

 

「っ?」

 

「貴様は国を愛し、国と共に運命を共にする覚悟が既にあるか?」

 

虚言は許さぬと暗に伝える巨体に、気圧される。

だが、この問いに答えないのは、皇帝ではない。

余は、若い。だが、それでも父上と母上の子であり、始皇帝の子孫。

 

シコウテイザーに認められし身だ。

 

「愚問である。余は、民を愛し、国を愛している。」

 

「クッ──」

 

笑いを少し漏らした。

 

余の覚悟が弱いのか?

だが、心なしか巨体は満足そうだ。

 

「その心、実に見事。

我は何れ、貴様の剣となり力となる。

魂に刻み、その心に刻め。我が名を。」

 

巨体は黒く、この世の力を体現するかのようにその巨体と同じ巨大さを持つ剣を天高く構える。

 

「我は剛、我は力、我は全!

我が身は全てを裁ち斬る神の剣!

我は──」

 

 

 

「─建速須佐之男である。

我が顕現するその時まで、暫し耐えられよ。

御身は国と共に在り、我は御身と共に在り。」

 

畏れを抱いた。

恐怖を抱いた。

絶望を抱いた。

 

だが、その存在は、余に助力を告げた。

余は、神ともいえる存在に、不敬かもしれぬが藁って伝える。

 

「…うむ、その身が蘇りし時、余に尽くせ。

余は、皇帝である。」

 

「クッ、良いだろう。」

 

その言葉を交わし、視界が霞んでいく。

 

「去らばだ。」

 

最後に余に残ったのは、期待だった。




スサノオ「我慢できなくて来ちゃった☆」

コロ「ワイ死ぬの早ない?」

テルミが介入するという確率事象の上にコロがボコされる確率事象だと!?
コロファンの人すまない。ヘカトンケイルは死んだ。

セリューは生きてる。


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激動の予感

将軍はこの帝国に二人いる。

 

ブドー、そしてエスデスだ。

二人して化け物だが、マジの、と付けるならばエスデスと言うだろう。

経緯は知らねぇが圧倒的な力で将軍にまで上り詰めたエスデスは主に帝国に対して危険思想を持つ奴等の排除が仕事だ。

 

残虐性は人一倍ならぬ人百倍だろうよ。

 

「エスデス将軍。北の制圧、見事であった。」

 

「ええ、本当によく戻ってきてくれましたねぇ……」

 

「褒美として黄金一万を用意しよう。」

 

「はっ。ありがとうございます。

北に備えとして部下に送ります。

喜びましょう。」

 

「……あれが、ね。」

 

遠征だかなんだかから帰って来たエスデスを俺は皇帝の隣でジッと見ていた。

 

最悪だ。

タイミングが悪い。

ふざけんな。

 

悪態なら幾らでも思い付く。

だが、エスデスを始末するには俺はまだ力不足。

拮抗は出来ても殺せはしない。

 

デモンズエキスじゃなけりゃ、楽だったろうに。

 

デモンズエキス…適合したものに氷を自在に操る力を与える帝具。

これと自身の技量により、エスデス将軍は強者として君臨し続けてきた。

 

下手な手を打てなくなった。

困りもんだ……。

 

何より、ウロボロスが昔ならともかく現状ではデモンズエキスに対抗打にならねぇのが痛い。

ブドーと協力して殺すか?

 

待て、それは愚策だ。

それをしたら後が怖い。

間違いなく、ブドーは処刑されるだろう。

 

アイツは皇帝のためなら死ぬことも厭わねぇ。

だからこそ現状一番の切り札になる男だ。

アドラメレクのカードを切るにはまだ早い。

 

必ず殺せる機会は来る。

犠牲が無駄に出て利用できる奴が消える前に、殺せるチャンスが必ずだ。

それまで……ジッと待とうじゃねぇか……

 

「将軍には苦労を掛ける。

余は何か他にも褒美を与えたい。

何か望みはあるか?」

 

「……そうですね。

敢えて言うのならば…恋をしたいと思っております。」

 

……おいおい、その氷を感じさせる顔で言うことか?

しかも、殺戮、蹂躙大好きなテメェが、恋?

ハッ!馬鹿馬鹿しい……

 

大臣も反応に困ってやがらぁ。

似合わねぇもんを欲しがりやがって……ケッ。

 

苛々しやがる。

 

「そ、そうか。…あー、慕ってる者はいよう?」

 

「あれはペットです。」

 

「ええ……では、こちらが斡旋しよう。

この大臣はどうだ?……いいと思うぞ。」

 

「ちょ、陛下…せめていい点を述べてくださいよ!」

 

「申し訳在りませんが、オネスト大臣は肥満等によりとてもではありませんが明日をも知れぬ命です。」

 

「これで健康です失礼な。」

 

「ック、クク……」

 

「ハザマさんも、笑わないでください!」

 

「い、いえ、申し訳在りませんねぇ……」

 

笑いが堪えきれなかった。

エスデスにもジョークが言えるとは思わなかった。

 

「ならば、要望があったりは?」

 

「ここに、私の好みを書き連ねた紙があります。

該当者がいれば教えてください。」

 

「ぅゎ……分かった、見ておこう。」

 

皇帝ちゃん、可哀想になぁ……あんな無駄に多い注文読むのか。

ま、俺には関係はねぇからいいが。

 

ふと、エスデスの視線がこちらへと向く。

 

「……ところで、その者は?」

 

「大臣が雇った情報屋のハザマだ。」

 

「ついでに帝具使いですよぉ、エスデス将軍。」

 

「……帝具使い。」

 

「…あの、余計な説明はやめてください、オネスト大臣。うz…仕返しですか?」

 

「陛下。そろそろ、あの話を。」

 

「……うむ、そうだな。

帰って来てすまないが、仕事がある。

ナイトレイドをもはじめとした凶悪な輩が蔓延っているのは知っていよう。

これらを将軍の武力で一掃してほしい!」

 

「…分かりました。

しかし、こちらにも要望が御座います。

賊、特にナイトレイドには帝具使いが多いと聞きます。

帝具には……帝具が有効。」

 

 

「6人の帝具使いを集めてください。

兵はそれで十分、帝具使いのみの治安維持部隊を結成します。」

 

「……!」

 

……こいつ、面倒な事言いやがって。

 

ヘカトンケイルを始末しても次来るのは6の帝具だと?

やってられっか、俺様にも限度はあるんだぞ。

 

うぜぇ、この女ァ……!

 

「それと……ハザマとも話がしたいので借りても?」

 

「はい?」

 

「うむ分かった、いいぞ!」

 

「うん?」

 

「ありがとうございます。」

 

「……は?」

 

あのクソチビには悪夢が必要なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あのぉ、私に何のご用で?」

 

「単刀直入に言おうハザマ。」

 

エスデスは俺を外に連れ出し、俺のネクタイを掴み、引き寄せる。

とてもいい笑みで、だ。

 

「私の部隊に入れ。」

 

「え、嫌ですけど……」

 

「……。」

 

「……。」

 

…何で黙ってんだこのアマ。

喧嘩売ってんのか、あ?

ぶっ殺してやりてぇ……

 

「何故だ。」

 

「何故って、普通、情報屋を死ぬ危険性一位になりそうな部隊に配属させませんよ。」

 

「情報屋がそこまで戦闘慣れしているのは不自然だな。」

 

「もっとはっきり言ったらどうです?

こちら側の帝具使いならば入れ、と。有無を言わさぬ勢いでね。私が帝具使い、それも戦闘慣れしてるのは情報を扱う者であるからです。

入りませんよ、私は。」

 

「……そうか。」

 

ネクタイを離し、去っていくエスデスに俺は違和感を覚える。

 

…素直に諦めたのか?

 

「─!」

 

瞬間、冷気を感じる。

 

デモンズエキスによる攻撃……!

 

俺はウロボロスを手に取り鞭のように振るう。

氷の刃とウロボロスがぶつかり、氷は砕け散る。

 

「…ほう。」

 

「……貴女、面白くない冗談はやめた方がいいですよ。流石に今のは……笑えませんねぇ……」

 

「何、お前の帝具を確認したかっただけだ。

咄嗟の判断力とそれを行えるだけの実行力。

やはり捨てがたいな……。」

 

「諦めた方が、互いの為かと。」

 

「…おい、大臣。」

 

「分かってて見せるとは趣味の悪い…」

 

「…。」

 

大臣が曲がり角より姿を現す。

やっぱグルだよな、テメェらは。

大臣が国を乗っ取りゃエスデスはその力を好きに振るえる。

利害の一致……最悪な形だ。

 

「ハザマさん、私からも、仕事が増えるかもですが、どうです?」

 

「雇い主からも言ってるぞ?どうだ?」

 

「………」

 

「そう怖い目で見るな。ずっと閉じている方がいいぞ?」

 

「……良いでしょう。お引き受けしましょう。

しかし、条件があります。」

 

「言ってみろ。」

 

「私は、貴女の命令に必ずや縛られない。

命令への拒否権利を戴きます。」

 

その言葉に、大臣は眉がピクリと動き、エスデスはほう、と獰猛な笑みを浮かべる。

 

「良いだろう。従うだけの犬にはならないのならそれはそれで楽しめる。」

 

「犬ですか。面白いことを仰る。」

 

「では何だ?」

 

「……さあ、蛇が妥当でしょう。」

 

「蛇、蛇か…。

絡め取られんよう注意せねばな?」

 

「味方、それも将軍の貴女に喧嘩を売る真似はしませんよ。それでオネストさんはどのようなご用件がエスデスさんにおありで?」

 

「エスデス将軍と二人で話したい内容なのでハザマさんに聞かせる訳には、いきませんねぇ。」

 

「…なるほど、分かりました。では、私はこれで。」

 

「ああ。」

 

二人が何やら話してるが、俺は仕方無くその場を去る。

 

…あの女の顔、思い出すだけで腹が立つ。

あの豚もだ。

俺様を使い潰すって魂胆が丸見えなんだよ。

 

ムカつくんだよ、あんな目で、俺様を見るのは!

 

「……まあ、いいでしょう。」

 

…まあ、もう手は考えてあるがな。

 

大臣、エスデスその他諸々……どんな手を使ってでも消せば俺の勝ち。出来なきゃ負け。

そのくらいなら、構わねぇ。

 

今んところは後手に回ってるが、先手に回れる手を打つ。

 

使えそうな奴なら、居るからなぁ……ヒ、ヒヒ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトレイドにまた来ている俺は、動きづらくなった事、その理由を伝える。

ナジェンダにしか伝えてないが、そのナジェンダは少々困った顔をしてる。

 

「そうか……エスデスや大臣の近くではそう易々と動けんからな。ならば、我々と敵対しなければならない時があるということか…。」

 

「ええ、困ったことにね。

その時になった場合の為に1つだけ伝えておきたい。

下手に加減したら更に疑われてしまうので殺す気でいきます。」

 

「…それは仕方無い、か。」

 

「それでは私はこれで。」

 

「ああ。気を付けろよ、ハザマ。

エスデスは…強いぞ。」

 

「分かってますよ。」

 

俺は部屋を出る。

……さて、帰るか。

 

「待ってくれハザマ!」

 

「はい?」

誰だと思ったが、そこに居たのはタツミとブラートだった。

特訓でもしてたのか、少々汗くさい。

 

「タツミさんにブラートさん。

どうなさいましたか?」

 

「この後用事あるか?」

 

「いや、まあ。ですが急ぐ内容でもありません。」

 

「なら、タツミの特訓に付き合ってやってくれないか?」

 

「はい?……何をなさるので?模擬戦ですか?」

 

「ああ、ハザマも帝具使いだろう?なら、相手してもらおうかと思ってな。どうだ?」

 

「……ふむ。」

 

「頼む!」

 

頭を下げるタツミを見て、俺はどうするかと悩む。

別にナイトレイドに手の内を晒すのは構わない。

タツミの実力も気にはなっていた。

帝具使いでないが、仕事についてはいけてるとは聞いていたからな。

 

「……いいでしょう、ただし…私はマトモに戦ってあげる人間ではないと先に伝えておきます。」

 

「あ、ああ!ありがとうハザマ!」

 

「感謝されることでもありませんよ。私も、気になってましたから、ねぇ……。さ、外へ行きますよ。」

 

「よかったな、タツミ。」

 

…ったく、暑苦しい二人だ。

 

─まるで、アイツそっくりだ。

 

「…悪くはねぇな。」

 

俺は外へ出る。

さて、予想ならアイツは剣だが、どうかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体を軽く伸ばしておく。模擬戦だからあまり踏まねぇが、蹴るのは構わねぇよな。

てか、タツミの野郎、戦いになると良い目をしやがる。

 

……ま、それがどこまで持つか。

 

「準備はいいか?」

 

「ええ、いいですよ。言っておきますが、弱いですからね、私。」

 

「ハッハッハ!弱いなら、良い経験になるだろ?

審判は俺が務めるから安心しな!」

 

「頼みますよ、ジャッジミスはしないでくださいね。」

 

「任せとけ。タツミはどうだ?」

 

「いけるぜ兄貴。」

 

「よし。……始めっ!」

 

始まりの合図と同時にタツミは地を蹴り、俺の方へと姿勢を低くして接近する。

中々速い方だな。

だが……

俺はバタフライナイフを片手で弄びながら、ジッと待つ。

 

タツミと俺の距離が後3歩ほどにまで縮まる。

構えていた剣が横薙ぎに振るわれる。

 

「おっと危ない危ない!」

 

「っ、ウロボロスか…!」

 

上へウロボロスを伸ばし、鎖の先端の口が空間を噛む(固定)

その瞬間、俺の体がブレ、何時の間にやら空中へ。

 

ウロボロスは何も対象が物体を持たなくても噛める。

そして、ウロボロスが噛んで固定した地点まで跳ぶことが出来る。噛んだのが物体なら、引き寄せるのも可能だ。

他にも色々な扱いようがあるが……まあ、一番多用するのはこれだろうよ。

 

俺は即座に下のタツミにウロボロスを伸ばす。

 

「これはどうです?」

 

「うおっ……んなっ!?」

 

「蛇はしつこいですよ!」

 

タツミはそれを後ろへ跳び、避けるが……

ウロボロスは後ろへ跳んだタツミを追尾して噛みつく。

 

…ウロボロスは戦闘においては相手を翻弄する蛇になれる。一度捕捉した相手をその牙で噛み付くまで追尾する。

流石に弾かれたりしたらどうにもならんが、初見殺しにはなる。

 

俺はタツミの腕に噛みついたウロボロスを引っ張り、引き寄せ、ウロボロスの口を放すと同時に蹴りをお見舞いする。

重力に従ってタツミは地面へと叩き付けられる。

タツミとは離れた地点で着地する。

 

「ゴハッ……!」

 

「っと……大丈夫ですか?」

 

「ゲホッ……ああ、背骨が折れるかと思った。」

 

「事前にマトモに戦ってあげる人間ではないと伝えましたので、おゆるしを。」

 

「一発は一発で返してやるぜ。」

 

「わー怖いです。」

 

根性はある。

だが……帝具使いと戦うには足りねぇ。

技量、何より力が。

 

こいつにぴったりな帝具があるといいんだが……

 

いや…シコウテイザーの中に保管されていた帝具は……駄目だ。

あれは癖が強い(・・・・)

タツミが扱いきれる代物でもねぇ。

それこそ、異常な奴じゃねぇと……。

 

なら、技量に振り切った型になるしかねぇか……?

 

「喰らいやがれぇぇぇぇ!!」

 

「…!」

 

思考に時間を割きすぎたか。

タツミがもうすぐ側まで来てやがる。

これが実戦なら死んでるぞオイ。

 

仕方ねぇ…ウロボロス。

 

「蛇翼……」

 

「んな、消え……!」

 

 

「崩天刃!!」

 

「ガハッ……!」

 

剣が横に振るわれるのを地面スレスレにまで姿勢を低くしてかわし、立ち上がりと同時に片足で思いきりタツミの鳩尾を蹴り上げる。

 

体が打ち上げられたタツミは重力に従い、また落ちる。

流石に体を壊すと思ったのでキャッチして降ろす。

 

「ぐっ……!」

 

「申し訳ありません、強く蹴ってしまいましたかね…?」

 

「…勝負ありってところだな。」

 

「ですねぇ……タツミさん、意識あります?」

 

倒れてるタツミを呼び掛ける。

すると、フラフラしつつも立ち上がる。

 

「ゴホッゴホッ……なんて蹴りだよ…ていうか、今消えてなかったか?」

 

「何言ってやがるタツミ。ハザマは消えてねぇ。

お前の一撃をかわして蹴り上げたんだ。」

 

「えっ、でも確かに……」

 

「タツミさん、ウロボロスの能力の一つがそれです。

一度でも攻撃した相手の精神に幻覚に近いモノを発揮するんです。

あまりウロボロスの攻撃に当たると精神が壊れる可能性もありますし、幻覚だけでなく精神掌握も可能になります。」

 

「ただ伸びたり追尾するだけかと思ったが、違うんだな……やっぱ帝具使いは強ぇ……」

 

「戦闘中に考え事に没頭するのはよくないと思うがな。」

 

「それを言われると痛いですねぇ。

まあ、これでお分かりになられたと思います。

帝具使いは隠し札をいくらか持ってます。

帝具使いでなくともそれは在りますが……。

タツミさんは帝具を手に入れるか、自身を極限まで鍛える事をオススメしますよ。後者の場合は今からだと地獄ですがね。」

 

「うぐ……もっと頑張らねぇと……」

 

「ハッハッハ!頑張れタツミ!俺がついてるぞ!」

 

…ブラートの奴も強いし、二人の相性も悪くはねぇ。

師匠になるならブラートが一番だろうな。

 

……ん?

 

「終わりましたか?」

 

「シェーレ?見てたのか。」

 

「ええ。二人とも、頑張ってました。

ですので、料理を作ったのですが、どうでしょう?」

 

「……料理?」

 

「…これが?」

 

シェーレが持ってきた皿にはどう見ても料理……いや、名状しがたき邪神的なナニカが乗っていた。

明らかに食って良いものではない。

これを食べる?俺が?

 

汗が滝のように出てくる。

 

「俺は用事があるから戻るぜ~ハハハ!」

 

「あ、ちょ、兄貴!?わ、悪い!シェーレ、俺も兄貴を手伝わなきゃいけないんだ!」

 

「あ……ハザマさんはどうですか?」

 

「私ですか?一つ聞いても?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「これ、何です?」

 

「イカ焼きです。」

 

「イカ、焼き……?」

 

おかしいだろ。

イカを焼くだけだろ?

どうして、こんな殺人的料理を作れる?

殺す気だろ?暗殺者だもんな?

 

いや待て、そも何故イカなのか。

 

「…もしかして、イカはお嫌いでしたか?」

 

「いえ、嫌いではありませんよ。」

 

おいその悲しそうな目をやめろ。

苦い記憶を思い出すだろ。

 

─テルミ、余の作った玉子焼きだ、食べよ。

 

─これは玉子焼きじゃなくて生ゴミ…ぐぉ!?

 

……確実に、死ぬ!

 

だが、断れば俺は女の敵だ。

ナイトレイドの女連中に良い顔はされねぇ。

 

…なら、取る行動は一つ!

 

「……いただきます。」

 

俺は覚悟を決めて食べる。

シェーレは嬉しそうな顔をする。

俺は死を悟る。

 

…あ?

 

「おや、美味しい。」

 

「本当ですか?」

 

「ええ、見た目は何やらイカに見えませんが、いけます。」

 

普通に美味い。

何だよ、驚かせやがって。

うめぇわ、これ。

 

 

…タツミとラバックにも食わせたが、泡を吹いて倒れたのを見た俺は理解した。

 

─あの時に味覚は死んだのだ、と。

 

ちなみに、シェーレは俺が自身の料理を食べれると分かったからか嬉しそうだった。

……まあ、死んだなら死んだなりに美味いと思ったからいいか。不味いと思うよりマシだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げましたよねブラートさん。」

 

「い、いやな、まあ……すまねぇ。」

 

「それで、お話とは?」

 

タツミとラバック殺害(食殺)事件の後、ブラートに話があると言われたので、話を聞く。

 

「タツミはどうだった?」

 

「帝具使いや特殊な技術を修めている者を除けばいい線いってると思いますよ。」

 

「そうか。」

 

「…それがどうかしましたか?」

 

「いやな……タツミはまだ、ナイトレイドの仲間が死んだのを見てねぇ。何時かは体験することだ。

この中の全員の誰かが死ぬなんざ思いたくはねぇが、あるだろうとは思ってる。こういう仕事だからな、仕方ねぇ事だ。だが、タツミはまだ慣れちゃいねぇ。

…だから、頼みがある。俺がタツミにとって最初のナイトレイドの仲間の死なら、俺の代わりに殴ってやってくれねぇか。」

 

「……なぜ私が?」

 

分からなかった。

俺より、ラバックやナジェンダ等の方が親しみもある筈だ。

俺に頼むのは、おかしいのではないか。

 

「私は熱血ではないのですがね。」

 

「ああ、だからお前なりのやり方で良い。

落ち込んでたり怒りに身を任せそうになったら、一発頼む。だが、俺の見立てだとお前は熱血だぜ?」

 

「私が?」

 

「ま、勘だけどよ。」

 

「……おかしなお方だ。ラバックさんなどでなくていいのですか?」

 

「ラバックは励まし方が違うんだよ。」

 

「……そうですか。分かりました。」

 

熱血、ねぇ。俺が?

面白い事を言いやがる。

 

間違っちゃいねぇ。

だから引き受けてやる。

 

「ありがとよ。ま、死ぬつもりはねぇよ。」

 

「でないと困りますよ。」

 

「ハッハッハ!じゃあな、ハザマ!」

 

「ええ、また。……戻りますかね。」

 

…ったく、兄貴分は大変だなぁおい。

 

ま、いいか。

 

話を終えた俺はすぐに帰った。

帰って、会わなきゃいけねぇ奴がいるからな。

 

さて、どう利用したもんかなぁ?




蛇翼崩天刃とかいうテルミに寄越せな技。

テルミスタイルとハザマスタイルに別けてますが、合わせたスタイルも持ってます。
真のスタイルは待ってください


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絶対正義を壊す

どうも、ロザミアです。

タイトル通り、彼女が出てきます。

さて、どうなるやら。
それより、関係はないけどタツマイ好き。


一人、世界を旅をし、あらゆる物を見てきた。

だが、あそこまでの馬鹿に会ったことは一度だってなかった。

 

「ほう、名はテルミ、というのか。」

 

偶さか寄った国で、珍しいという事で謁見を許された俺は面倒だという気分を隠し、目の前の玉座に座る男に名を名乗る。

 

ユウキ=テルミ。

名前をそれにしたのは何故か、覚えてなどいない。

そも、何処で生まれたのかも。

 

「お主、目的もなく放浪の旅を続けているそうだが、どうだ?この国で余と共に国を良きモノにしていかぬか?」

初めて会い、初めて会話をしたというのに、すぐに部下にしようとしてきた。

戸惑ったが、何もやることは無いし、面白そうだと思った。

 

「飽きさせないのなら、付き合うぜ。」

 

「飽きぬとも、この帝国は常に激動の日々ぞ!」

 

 

─それが、今後帝国の皇帝家の側に常に居ることになった切っ掛けになった日であり、あの姿になる切っ掛けになった時だ。

 

始皇帝、今も子孫は皇帝としての誇りを失ってはねぇようだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都を目的の奴と出会うまで仕方無くブラブラと歩いていた俺は、昼近くになってようやく見つけることに成功した。

 

その女は、また人助けをしては嬉しそうな顔を晒している。

 

……セリュー・ユビキタス。

 

ヘカトンケイルを失っても尚、正義の心、というのが折れないらしい。

寧ろ、より強くなったと言うべきか。

 

俺はこの正義女に用があって来た。

 

大臣にも許可は得ている。

寧ろ、帝具を失った彼女が使えるようになるなら儲け物、だそうだ。

 

表向きだと、無害そうに笑顔振り撒く癖に、正義執行の時にはまるでその逆だ。

 

俺はいつまで見てても仕方無いと思い、話し掛ける。

 

「すいません、セリューさん。」

 

「はい?……あっ!」

 

「どうも。」

 

「貴方は、この前の……茹で玉子さん。」

 

「茹で玉子?確かに好きですが……ああ、名前、教えてませんでした。

私、情報屋のハザマと申します。」

 

「私は、セリュー・ユビキタス……って何で名前知ってるんですか?」

 

「情報屋としての力ってとこですかね。

……あれ、あの犬…コロは?」

 

我ながら白々しいにも程がある。

皇帝が聞いていたらお主がやったのだろうがお主が、と言ってくるに違いねぇ。

 

セリューは俺の質問に顔を歪ませ、俯く。

……なるほど、ヘカトンケイルとの相性は抜群だったってことか。

 

「コロはナイトレイドにやられました…!正義が、悪に負けるなど、あってはならないのに!」

 

「……これは軽々しく質問する内容ではなかったですね。私の配慮が足りませんでした、申し訳無い。」

 

「いえ……」

 

「…それで、少しお話があるのですが、どうです?」

 

「分かりました。」

 

聞き分けがいいのは、俺が悪と思われていないからだろうな。

少し顔は暗いが、まあそこはいい。

 

城までは遠くねぇ位置で助かった。

さっさとやりたいからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、ここは城内ですよね?ハザマさんは普通に入ってましたけど……」

 

「ああ、言ってませんでした。私、この前大臣さんに雇われた身でして。あ、ここですここ、私の部屋。

どうぞ中へ。」

 

「は、はあ……」

 

まあ、驚くのも無理ねぇか。

ていうか、もしかしたらあの時に時間云々はここの事だったのではとか思ってそうだなこいつ。

 

扉を開けて、中へと入り、座るように言う。

 

「…話とは?」

 

「実はですね、エスデス将軍が6人の帝具使いを集めた治安維持部隊を結成すると言いまして、私もそのメンバーに何故か任命されたのですよ。」

 

「エスデス将軍に?それはおめでとうございます。」

 

「ええ、それで、貴女を私の部下という形で組織に入れたいと思いましてね?」

 

「わ、私を…?でも、コロちゃんはもう…」

 

「ええ、その事は残念でなりません。

ですが、貴女は運がいい。ここに、もう一つ帝具があります。」

 

俺は、側に置いてあった剣と盾をセリューの前に差し出す。

セリューは当然、驚く。

 

「これが……」

 

「ええ、昔偶然発見した帝具。

その名も 正義審判 イザヨイ。この帝具は人を選ぶ……貴女なら、と思いまして。」

 

「何故、私にここまで…」

 

「善意、というのもありますが…先行投資というやつです。貴女がより帝国の為に動いてくれるならそれは素晴らしい事ですから。」

 

「ハザマさん……!」

 

セリューは感銘を受けたように涙を流す。

嬉しそうだなぁ……正義審判は攻撃と防御、どちらにも使える優れものだ。

 

こいつにも相性は良いと言っても良いだろう。

 

「受け取ってくれますか?」

 

「はい、勿論です!」

 

セリューは剣と盾を手に取る。

 

……おいおい、難無く取りやがった。

気に入られてんなぁ、名前の通り、イザヨイの正義に噛み合ったのか?

 

「あ……そういえば、これは勝手に持ち出した物では無いのですか?」

 

「ご心配なく、許可は得てます。

……ところで、ですね。」

 

「?」

 

「1つだけ聞きたいことがありまして。

貴女の、正義についてです。

貴女は悪人が善人へ戻れると思いますか?」

 

我ながら、分かりきった質問だと思う。

だが、期待するだけならタダだ。

 

セリューは、俺の質問に勢い良く答える。

 

「悪人は戻れません。悪は悪です。

悪は断罪しなければならない……正義が、悪に屈してはならない!私のパパが言った言葉です。

オーガ隊長も、憎きナイトレイドに殺されました。

許してはならない!悪は始末しなければ、更に手を染めるに決まってるんです!」

 

…やはり、正義というのを盲信している。

確かに、正義感は人一倍、それだけなら聞こえは良いし俺も評価を高めた。

だが、やっていることは弁解の余地もなく自らの定めた正義で殺す…殺人と変わらない。

 

「…そうですか。ですが、知っておいてほしいことがあるのです。」

 

「何ですか?」

 

「今の帝国もまた、悪ということを。」

 

「…アハハハ!ハザマさん、それは冗談でしょうか?」

 

「冗談で言えたら、どれだけ良かったか。

…私は、見ました。この帝都の腐敗を。

貴女の言うオーガさんもまた、自らの権力に酔い、罪の無い市民に手を染めた。」

 

「嘘だ!!オーガ隊長は、そんなことをしない!!

そんな事に騙されはしない!」

 

力強く否定するセリューに、俺は尊敬の念を抱いてたのは本当だと改めて理解する。

だからこそ、今の帝都がウザく感じる。

 

面倒な輩ばかり作りやがる。

始皇帝やアイツの時代はもう少し小綺麗だった。

 

「騙してるかどうかは…この資料を見てもらいましょう。」

 

俺はセリューにとある資料を渡す。

正義バカは怒りを何とか抑え、それを受け取って見る。

 

「これ、は……!」

 

「ブドー大将軍や協力者と共に聞き込み等の調査をし、纏めた今の帝都の状況です。

これでも貴女は否定しますか?」

 

「貴方や、ブドー大将軍が騙してる可能性が!」

 

「私はともかく、大将軍はそのような事をしない。

彼は根っからの武人だ。そのような回りくどい事を好まない。

…認めなさい、ここに、絶対なる正義はない。

帝国もまた、悪だ。目を背けるのはやめなさい。」

 

「……ッ……オーガ隊長……!」

 

今見てる箇所がオーガとかいう男なんだろう。

資料を見るセリューの目には動揺があった。

嘘であってほしい、だが、ブドー大将軍と共に調べた結果だ。

冗談であるはずがない。

 

他にも目を通し、歯をギリッと噛み締める。

…理解したか、正義なんざ今のこの国では意味を為さない事を。

 

俯き、頭を抱えるセリューに俺はようやく目が覚めたかと悪態をつきたくなる。

 

「……私は、私の正義は……?

何のために、今まで悪を断罪してきた……。

私は、どうすれば……!」

 

「現在の帝国の最大の元凶、それはオネスト大臣なのは間違いありません。

皇帝陛下を操り人形とし、民から搾取しては捨てるその蛮行、許されるものではない。

貴女の絶対正義は折れた。

ですが、これは貴女の更なる成長となります。」

 

「私の……?」

 

顔を上げ、俺を見る。

どういうことかと説明を求める目だ。

 

「隠れた悪により育った正義より、貴女自身の真の正義を得るチャンスです。

…私と共に来なさい、セリューさん。

貴女の正義が確かなものへと変わるまで。

そして私をそれで信頼できるというのならそれでいい。

ですが、私を悪と思ったのなら、貴女のイザヨイで、この身を貫けばいい。」

 

「……真の、正義。」

 

「そうです。……私と共に来るか、後日また聞きましょう。

協力してくれるのなら、私は貴女にある秘密を教えます。」

 

「…分かりました、後日、必ずお返事します。」

 

セリューは気持ちを整理したいのだろう。

すぐに出ていった。

静かになった部屋で、俺は一人座ったままだ。

 

「……ヒ、ヒヒヒ……!後は返事を待つだけだ。

賭けにはなるが、どうなるか。

奴が俺の協力者……それも、イザヨイとくりゃあ……!」

 

こちら側の強さはより盤石となる。

どれ程の生命力を持とうが、イザヨイには関係無い。

 

イザヨイの正義審判の前では、あらゆる悪となる存在は苦戦を強いられるのだから。

 

だが、敵なら?

 

俺様のような化け物には更に恐ろしい機能があるが……

 

「ヒャハハハハハ……!だから賭けだろうがよぉ…!」

 

ギャンブルは、常に全賭けだろう。

だからこそ面白い。

 

「ヒヒヒ………ったく……何してんだ…鎧も失った愚図が笑ってらぁ……ヒヒ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と、聞く限りだとまるで適合もしないと思っていたイザヨイが……」

 

「…だが、賭けなのだろう?」

 

「だからこそだ。イザヨイが敵でも味方でも構わねぇ。

最終的にこちらの状況はどうあっても有利に進む。」

 

テルミが余とブドーにそう説明する。

 

シコウテイザーの中に保管されていたイザヨイ。

名を、正義審判。

能力は、悪行の数だけ性能が上がるという正に正義を体現した帝具。

どれ程の猛者でも、それが極悪人……例えばエスデスでも使い手次第で殺しうる矛となるという。

 

奥の手も隠されてるというのだから末恐ろしい。

 

「他の帝具は使わぬのか?」

 

「やめとけ。下手に帝具使いを増やすだけだと痛手を受けんのは俺達だ。

隙を見計らってシコウテイザーに忍び込めてるだけでも運が良いと思え。ブドーの権限がなけりゃ出来ねぇ事でもあるんだからな。」

 

「そ、そうか……ブドー、感謝する。」

 

「勿体無き御言葉です。」

 

大将軍…やはり、心強い味方だ。

いざとなれば切り札にもなる存在。

余への忠誠もありがたい……のだが。

 

余では器不足なのではと時折思う。

余は、皇帝としてやれているのか?

……早く、この国を治さねばならない……

 

テルミは、何時の間にか余を見て嘲笑うようにハッと一言。

 

「餓鬼のテメェが考えても仕方ねぇだろうが。

俺やブドーに任せろ。いざとなったとき、テメェが頼りなのは間違いねぇが今はまだだ。焦るなよ。」

 

「…そうだな、すまぬ。余は、恵まれているな…。」

 

「ケッ、餓鬼が何言ってやがる。

……ま、今日は解散だ。明日は面倒だろうからな。

ナイトレイドとも連絡を取らねぇといけねぇ。」

 

「うむ。各自、やれることをやろう。」

 

…建速須佐之男の事、聞くべきだろうか。

いや、今はまだやめておこう。

 

今聞いても、負担になるだけだ。

 

余は、そうして眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソイツは次の日の朝になって、駆け足でやってきた。

 

「答えは決まりましたか。」

 

「はい。」

 

「聞かせてもらいましょう。」

 

目の前の女、セリュー・ユビキタスは昨日とは違い、迷いの晴れた目で俺を見る。

俺もまた、目を開けて見る。

 

さあ、俺の賭け金はどうなったかの答え合わせをしようじゃねぇか。

 

テメェの正義の行方、その賭けのなぁ。

 

「私は貴方についていきます。

そして、私の本当の正義を、見つけたい!

どうかお願いします!」

 

その言葉に、俺は笑う。

これからの道を決める言葉に、可笑しくて可笑しくて仕方なかったからだ。

 

「ど、どうして笑うんですか!?」

 

「ク、ククク……いえ、すみません。もう少し軽いノリでよろしいですのに、あんまりにも堅い表情ですので可笑しくて。

ええ、よろしくお願いしますよセリューさん。

しかし、よくこちらに付くと言ってくれましたね。」

 

「…今の帝都は、腐っている。

内部さえもなっているなんて、昨日までは思いもしなかった。オーガ隊長だけでなく、同期の数名も悪だったなんて、思いたくもなかった。

でも、事実だから……私は、この国を変えます。」

 

「……へぇ。」

 

あの正義バカが昨日の一件でこうもなるか。

真っ直ぐな目をしてやがる。

とてもシェーレとマインを相手にしてた時の暗い目じゃねぇ。

 

それほど、昨日は堪えたか。

 

「では、歓迎しますよ。」

 

「はい!……ところで、秘密って何ですか?」

 

「ええ、貴女の他にも協力者が居ましてね。大物ですよ。」

 

その後、俺と皇帝とブドーがグルなのを教えると、叫び声が響いたが、当然だろう。

 

んで、より一層やる気を出すセリューに俺は内心笑みを深めた。

 

…そして、遂に結成される。

 

特殊警察 イェーガーズが。




というわけで、仲間が増えました。

顔芸と正義担当、セリューちゃんです。

コロ「ワイは死んだがまた話崩れへん?」

何とかなる、何とかなる。(原作大人買い)


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特殊警察イェーガーズ

どうも、ロザミアです。

イェーガーズのメンバーにハザマ(テルミ)を追加する事になり、どう書いてくかを悩みながらの投稿。

『早く大蛇武錬殲しろこの屑野郎が!』って人はナインに挑みながら見てください。勿論テルミで。


俺は女が嫌いだ。

男色の気はないが、嫌いなものは嫌いなのだ。

 

神々しい光を放ち、女を囲むように廻る三つの機械めいた物体を女は消す。

そして、俺に近寄り微笑む。

 

「テルミよ、余の帝具はどうだ?面白いであろう。」

 

「…死に魅入られるんじゃねぇぞ。」

 

「心配してるのか?」

 

「……まあな。テメェが死ぬと困るからな。」

 

女は、驚いた顔をして、その後嬉しそうに俺に抱き付き俺の顔を見上げる。

突き放すのは出来たが、後が面倒なんでやめておいた。

 

「拒まぬのか。」

 

「うるせぇ。」

 

「クク…其方は素直ではないな。

余を前に、このようなものまで被って…嫌いか?」

 

「……これでいいかよ?」

 

フードを取り、女を見下ろす。

仕方無いから付き合ってやる。

 

「テルミ…余は、この帝具と共に、この国を生きる。

其方は、余についてきてくれるか?」

 

珍しく見た目相応の萎らしい女に俺は苛立ちを覚える。

嫌いなら居るものか。うざってぇ。

 

「テメェは俺に守られてりゃ良い。

その帝具だって要らねぇ。テメェは、最強の矛を側に置けてんだ、有り難く思えや。」

 

「…すまぬな。」

 

「うるせぇ。……嫌いじゃねえよ。」

 

「…!そうか、ふふ、そうか……」

 

女は嫌いだ。

可憐で、弱々しく見えて、強かだからではない。

 

ある女だけしか認めてねぇから他の女は好きではないだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エスデスの提案…というより、要望。

帝具使い六人による組織。

だが、結果としては七人になった。

俺がセリューを部下として従えることになったからだ。

 

情報屋として、万が一のため護衛がいるという理由で表向きにはそうなっている。

 

ま、俺一人でも何とかなるだろうが、あるに越したことはない。

セリューもヘカトンケイル喪失から相当鍛えたようだしな。

 

剣の扱いにも余念は無かった。

ったく、味方だと頼もしいぜ。

 

そんなこんなで集まるように言われた部屋でセリューと二人で座って待つ。

 

「来ませんね。」

 

「ええ、まあこういった落ち着ける時間も大切です。

セリューさんも根を詰めてはいけませんよ。」

 

「心配ありがとうございます。でも、私は平気です!」

 

「そうですか…。」

 

いざってときに倒れたら困るが…無さそうだな。

コイツ、警備隊として駆けずり回ってた時も多かったろうし体力はあるだろうしな。精神は知らねぇが。

 

「…私たち以外の帝具使い…一体誰が来るんでしょう。」

 

「一部は帝国側、もう一部は何処かからでしょうね。

何にせよ、オネスト大臣が選ぶ面子ですから、マトモなのは少なそうです。私や貴女を含めて、ね。」

 

「…むぅ……ですね。」

 

不服そうだが、実際そうなので否定されても困る。

 

「……ところで、ハザマさん。」

 

「はい?」

 

呆れたような表情で俺の目の前にある皿を見て、訊いてくる。

 

「その大量にある茹で玉子は?」

 

「朝御飯、食べてないんです……」

 

「いやでも、朝御飯にこればかりなのは体に悪いんじゃ?」

 

「いやあ最近耳が遠くて聞こえないですねぇ。」

 

「……」

 

瞬間、セリューは俺の茹で玉子が乗った皿を奪い取りやがった。

おいこのアマ殺してやろうか。

俺様の至高の茹で玉子タイムを邪魔するなんざ万死に値する。

 

「…セリューさん?」

 

「殺気を出しても駄目ですよ。

体を壊して私たちの目的が果たせなかったらどうするんですか!何事も程々にと言ったのはハザマさんでしょ!」

 

「……分かりましたよ、仕方ありませんねぇ」

 

「ふぅ……」

 

「昼食に残りを食べます。」

 

「駄 目 で す !」

 

んだとこのアマぁ……!

 

…落ち着け、こんなことで怒りを覚えてたらキリがねぇだろう。

仕方無い、従ってやる。

 

「分かりましたよっ。酷い御方ですよほんと。

……おや、誰か来るようですよ。」

 

「え?」

 

コンコンとノックをする音が部屋に響く。

俺はどうぞと言うと、失礼します、と男の声が聞こえた。

入ってきたのは、覆面のような物…ガスマスクに近いな。

それを被った男だった。

 

屈強な肉体を持ってるな、と思ったが、中身はどうだか。

 

「初めまして、私は情報屋兼ここで働くことになるハザマと申します。

そして、隣に居るのは私の部下のセリュー・ユビキタスさん。よろしくお願いしますね。」

 

「セリュー・ユビキタスです。よろしくお願いします!」

 

「……あ、うん……私はボルス。よろしくね、ハザマさん、セリューちゃん!」

 

「……」

 

「どうかしたの?」

 

「あ、いえ…見た目に反して普通だな~、と。」

 

「え、ごめんね、怖がらせちゃった?」

 

……すげえ普通だ。

ギャップってやつか。

だが、帝具が何か分かればどこで使えるかも分かる。

友好的にしておくか。

 

「い、いえ!こちらこそ外見で判断してすみません!」

 

「気にしないで、私も分かってるつもりだから……。

加えて人見知りで話し掛けづらい時があるから余計にね……。」

 

「…ボルスさんは、帝国の兵士ですか?」

 

「焼却部隊の一人なんだ。帝具があるからって事で呼ばれたんだけど。」

 

「ふむ……まあ、座って待ちましょう。」

 

ボルスは俺の真正面に座り、ジッと俺を見る。

……何もしてねぇんだがな……

 

とはいえ、焼却部隊か。

となると……考えられるのは何個かあるが、行方不明が殆どだろうし、ルビカンテ辺りが妥当か。

 

煉獄招致 ルビカンテ。

火炎放射機型の帝具で、一度でも引火すれば水を被ろうが川に入ろうが海に入ろうが消えねぇ厄介な炎をばら蒔く。

…仲間に引き入れてぇが、どうだろうな。

 

「ハザマさんは、どうして呼ばれたの?」

 

「私ですか?エスデス将軍とオネストさんに頼まれましてね。私、戦闘はからっきしだと言うのに…酷い話です。」

 

「嘘は良くないと思います。

現に、ハザマさんは私なんか簡単に倒せるじゃないですか。」

 

「え、そうなの?」

 

「いえ、技術さえ修めれば誰でも出来るやり方ですよ。セリューさんも、私の部下というか護衛ですね。

それで入ったわけです。なので、セリューさんは換算しないで、後四人ですね。」

 

ま、すぐに来るだろうよ。

ゆるりと待とう。

何て言っても、内部から干渉出来るのは敵からすればえげつない事だろうよ。

 

下手したら死が待ってるがな。

 

茹で玉子に手を伸ばし、それをセリューが皿を遠ざける。それをボルスは笑う。

俺は苛立ちが募るがな。

 

…ま、いいか。

 

そして、しばらくして扉は勢い良く開かれた。

 

「こんにちわ!帝国海軍から来まし──た……」

 

「……」

 

「…へぇ。」

 

「あ、どうも……」

 

……何で止まってやがる。

若い男は部屋を自身の持つ紙と交互に見る。

 

「……あ、ここ、だよな……し、失礼しま~す」

 

「先程までの勢いはどうしたんです?」

 

「あ、いや…さっきのは気分が舞い上がってたんで。」

 

「そうですか。

私は、ハザマです。よろしくお願いしますよ。」

 

「セリュー・ユビキタスです。」

 

「……。」

 

「俺はウェイブ、こちらこそ、よろしくお願いします。

……それで、この人は?」

 

「……あ、私は……」

 

ボルスが自己紹介しようとしたとき、扉がまた開く。

今度は少女が一人。刀を携え、袋を持っている。

……あの刀は、間違いねぇ、八房だ。

 

刺した、斬った死体を操るという帝具。

この能力のせいで八房は命を弄ぶ帝具と呼ばれる。

 

少女はさっさと椅子の方にまで歩き、座る。

そして、菓子を黙々と食べ始める。

 

「君も招集された帝具使いなんだろ?

俺はウェイブって……」

 

「……このお菓子はあげない。」

 

「(ちょっとヘンな娘だったぁーっ!)

……お邪魔しました……」

 

見事に敗北したウェイブをバレない程度に笑う。

隣のセリューにはジト目で見られるが、知ったことではない。ボルスは少し落ち込んでいる。

 

更に、人が入ってくる……が……

何やら、鼻がバカみたいにデカい奴だ。

しかも片手に花束。

 

不意に、ソイツは花束の薔薇を床にばら蒔き、跪く。

 

「……Dr.スタイリッシュ様!準備が出来ました!」

 

その言葉と共に白衣を着た男が入ってくる。

 

「第一印象には気を遣う…これこそがスタイリッシュな男のタシナミ。」

 

そんな言葉を言いながら入ってきた…ウフフとか聞こえるが……こいつ間違いなくオカマだ。

うわマジか、濃すぎんだろ……。

 

ウェイブも引いてるし、セリューは黙っている。

俺は帽子を深く被っておく。

そして、茹で玉子を取ろうとするが、またしても離される。……くそが。

 

「…ふむ。(ところで、黙ってますが、知ってたりは?)」

 

「(私の体の改造をしてくれた人です。)」

 

……なーるほど。

ウェイブにパチリとウィンクをしてるオカマを見る。

 

改造を得意とする帝具ならパーフェクター辺りだが…どうすっか。

 

オカマは今度は俺を見る。

ウェイブだけじゃなく俺も対象か?やめろよ。

 

「貴方は…イケメンだけど、何だか近寄りがたいわね~」

 

「それはどうも。私、そちらの気はありませんので。」

 

「残念ね。でも、改造してほしいなら安くしとくわ。」

 

「改造、ねぇ……考えておきますよ、ええ。」

 

見境ねぇなコイツ。

だが、技術は確かなのかも知れねぇな。

さて、後は一人か。

 

「こんにちは、どうやら私が最後のようですね。」

 

入ってきたのはまた男。

金髪で細身(俺も細身だが)、第一印象は紳士的な奴。

物腰柔らかで、優しげな笑みを浮かべる男に、俺は

 

ウェイブは今度はマトモなのか?と勘繰ってる事だろう。

そして、意を決して挨拶をする。

 

「よぉ、よろしくな。ウェイブだ……」

 

「ランです。こちらこそよろしくお願いします。」

 

「……!」

 

ニコリと挨拶を返すランに、ウェイブはようやくマトモなのが来てくれたとランの両手を握る。

ランはここまで喜ぶウェイブにどういうことか分からず困惑している。

 

その後はその場のメンバー(喋らないのもいた)で他愛のない会話をしていたが……

 

「……おや…(アイツ、何してやがる。)」

 

突然出てきた厳つい仮面を被った女…間違いなくエスデスだ。

アイツ何してんだ。

馬鹿なことして、上司としてそれはいいのか。

 

「ん……誰?」

 

ウェイブや他の者は疑問符を浮かべる。

エスデスは俺達を指差し、声をあげる。

 

「お前達見ない顔だ!ここで何をしている!!!」

 

「おいおい、俺達はここに集合しろって……ッ!」

 

ウェイブが言い終える前に、エスデスは蹴りを入れる。

咄嗟に腕で防ぐが吹っ飛ばされ、地面に倒れる。

 

……俺は見なかったことにするか……

 

「…賊には殺し屋もいる。常に警戒を怠るな!」

 

エスデスの片足による連撃がランに襲い掛かるが、ランはそれを後ろに跳んで回避する。

いい反応だな。

 

だが、茶番は終わりだな。

 

菓子ばっか食ってやがった八房の適格者が菓子をくわえながら即座に近づき、エスデスの仮面に八房を振るう。

顔を後ろへ動かすが、先端が仮面にヒットしたせいで仮面が割れる。

 

エスデスはいい笑みだ。

何だこの茶番。

 

「ふざけられてもこちらは加減できない。」

 

「ほう…それが帝具八房か…流石の斬れ味だな…。」

 

「え、エスデス将軍!!」

 

まあ、当然判明した顔を見て数名は驚くわけで。

 

「…反応が薄いな、ハザマ。」

 

「まあ、誰かは分かってましたし。それを言うならセリューさんにも……」

 

「い、いえ、私は分かってなかったので驚きですよ!まさかエスデス将軍がこのようなことをするとは……」

 

「…だそうです、私以外は反応があって良かったではないですか?」

 

「…ふむ、それもそうだな。」

 

まあ、歓迎の挨拶にしちゃ、悪くはねぇだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が黒服に着替えさせられ、城を歩く。

 

「さっきの趣向は驚いたか?普通に歓迎してもつまらんと思ってな。」

 

「荒々しいのは慣れてますから……」

 

「良いと思いますよ、チームの仲がよくなるのはね。」

 

「驚きもしなかった貴様に言われても皮肉にしか感じんな。」

「やだなぁ、善意ですのに…。」

 

コイツもだが、俺のことを何だと思ってやがる。

こんな帝具をあげる優しいお兄さんが他にいるかよ?

俺は悲しくて泣いちまうぜ……ヒヒ。

 

「ハザマさん、胡散臭さをどうにかすれば怪しまれずに済むと思いますけど。」

 

「……え、そんなに怪しいですか?心外ですねぇ……

スタイリッシュさんやランさんはどう思います?」

 

「さっきも言ったけど、近寄りがたい雰囲気はあるわねぇ。でもま、これからは仲間なんだし、仲良くしましょ。」

 

「あはは、ノーコメントでお願いします。」

 

「…泣いちゃいますよ?」

 

「ハザマさんが泣くわけないでしょ。

ほら、落ち込んでないで行きましょう。」

 

この女、吹っ切れた途端に軽くなったな……

いや、悪い変化じゃねぇが、やりにきぃ。

別キャラだろこいつ……?

 

まあ、いい。

使えるうちは使ってやる。

使えなくなったら……さて、どうしてやるかなぁ?

 

せいぜい、その正義の剣と盾を壊してくれんなよ。

セリューちゃん?

 

…冗談だ。

仲間であるうちは重宝してやる。

俺様もそこまで外道じゃねぇんでなぁ。

 

「よし!では陛下と謁見後、パーティだ。」

 

「い、いきなり陛下と!?」

 

「初日から随分飛ばしてるスケジュールですね…」

 

「ふっ、面倒事はチャッチャと済ませるに限る。」

 

「それより、エスデス様。

アタシ達のチーム名とか決まってるのでしょうか?」

 

スタイリッシュは期待気味にそう聞く。

スタイリッシュなネームじゃなきゃ嫌そうだが、さて?

 

「…うむ。

我々は独自の機動性を持ち、凶悪な賊の群れを容赦無く狩る組織……ゆえに。

 

特殊警察 イェーガーズだ。」

 

イェーガーズ、ねぇ。

……ま、名前はどうでもいいさ。

問題は動きにくくなった事だ。

大臣と表向きに手を組んだ時からこうなるとは思ってたが、まさか拘束するのがエスデスたぁな……

 

しかも、パーティだと?

……隙を見て逃げ出すか……?

 

「ちなみに、パーティの料理担当はボルスとウェイブ、ハザマだ。」

 

「うぇ!?わ、分かりました。」

 

「よろしくね、ハザマさん、ウェイブ君。」

 

「……ええ、よろしくお願いしますよ……。」

 

くそが。

アイツまさか分かってて俺を担当に?

ふざけやがって……

 

こりゃ、本格的に外で動けるやつを手に入れる必要が一層出来たな……

 

ナイトレイドの奴ら、ヘマしてなきゃいいんだがな。




テルミの中で好きな技。

やはり、彼の代名詞にもなる(かもしれない)大蛇武錬殲ですね。
壁端でのコンボ楽しい。


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失ったモノ

皇帝との謁見も終え、料理の担当を任されたので仕方無く調理場へボルスとウェイブと共に赴く。

料理なんざ適当にしか作れねぇぞ。

 

茹で玉子でも作ってやるか?

いや、文句を言うに違いねぇ、特にエスデス。

 

折角のパーティに作ったものが茹で玉子だけだとこの無能が、とか言うだろう。

 

そう思ったらムカついてきた。

あの氷結女に馬鹿にされて堪るか。

俺の料理スキルを見せてやるよ……。

 

「ハザマさん…やる気出てるな。」

 

「下手な料理を出したくはないので。」

 

「ハザマさんは料理に妥協しない人だったんだね。」

 

「ちょっと意外だぜ。(意外とイイ人なのか?)」

 

こういった雰囲気はあまり好きではない。

何となく、壊れたときが面倒だからだ。

 

まあ、それはいい。

 

さあ、調理場の覚醒だ!

この世は(今)全て料理だ、料理だらけだ!

なら俺が見せてやるよ…メシウマという名の夕飯をなぁ!

 

「す、すげぇ早さで魚を捌いてやがる!」

 

「家事スキル高いんだね。あ、ウェイブ君、ほうれん草は最後ね。」

 

「あ、はい。」

 

「ウェイブさん、動きが遅いですよ。早くなさい!」

 

「は、はい!」

 

俺がエプロンを着けて、手早く魚等を捌き、ボルスは肉を担当。ウェイブは他の食材の調理をしているが……

ボルスはともかくウェイブはおせぇ!

ふざけんな、パーティなら素早く、そして丁寧にだろうが。

 

返事と共にスピードを上げるウェイブに、まあいいかと思い、自分の持ち場に集中する。

 

……料理か。

 

 

─テルミが作ったのか?

 

─んだよ、不味いかよ

 

─不味い。

 

─あ"あ"!?……くそが、なら残しやがれ!

 

─断る。テルミの料理だ、全部食べさせてもらう。

 

─……チッ、面倒な女。

 

 

…チッ、俺様の料理が食えるなんざコイツらは幸運だぜぇ?

ま、美味くねぇとか言ったらぶっ殺す。

 

過去を振り返り、それでも前へ進む。

皇帝家が存続してる以上、契約的に仕方ねぇからこんな小芝居しながらやってんだ。

面倒だが、楽しんでやる。

 

時が来たら殺すがな……エスデス将軍。

 

その後、出した料理で誰のが美味いかという事になり、僅差でボルスだった。

 

クソ……何が足りなかった?

ボルス曰く、

 

「料理は家にいるとき毎回やってるから。

ハザマさんはどうなの?」

 

「……参りました。」

 

素直に敗けを認めざるを得ない。

強者の姿はここにあった。

 

「ハザマさんのも美味しかったですよ。」

 

「今言われても辛さが増します。」

 

「あ、はい。」

 

セリューは俺に追撃をしてきて俺の心は最早バベルの塔だ。

 

人に料理はもう出さねぇ。

そう心に誓った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティの後、どうにかナイトレイドの方へと向かいたいと思ったが、無理だった。

深夜に向かうと疑いが深まる。

仕方無く、その日は皆と付き合った。

 

そして、次の日となった今日も向かうことはできなかった。

何故なら……

 

「ちぇぇぇええ!」

 

「ハァァァァ!!」

 

「…馬鹿馬鹿しい。」

 

「そう言わないでくださいよ。都民武芸試合と銘打って帝具の適格者を今のうちに手に入れとこうって算段なんですから。」

 

……エスデス主催の都民武芸試合が開催され、俺とセリューも付き合わされているからだ。

つーか、アイツも俺とこの正義馬鹿をセットとして扱うのか。

 

チッ、面倒だな……

 

もう何度も試合を見てるがてんで駄目だ。

帝具を渡してもすぐ死ぬ輩しかいねぇ。

 

エスデスの野郎も退屈そうだ。

 

「おや、次の試合が最後の組み合わせですね。」

 

「そうですか……ん?」

 

……あの少年、間違いねぇ。

 

『東方!肉屋カルビ。

西方!鍛治屋タツミ!!』

 

タツミだ、何故こんな場所に?顔割れしてねぇからって迂闊だろうが。

 

…しかも、目付きが以前と変わったな。鋭くなってやがる。何かあったのか……

 

てことは、大事に備えて仲間もいるのか?

 

辺りを確認すると、レオーネとラバックを確認する。

……観戦か。

 

アカメやらは来てないのか。

 

…まあいい、タツミの成長を見るとするか……。

 

 

「はじめ!」

 

ウェイブの開始の宣言と共に両者が動き出す。

 

カルビの巨体を活かした踏み込みからの拳の叩き付けがタツミに迫るが、姿勢を低くし、当たる寸前で跳ぶことで回避。

その後、カルビの上をとったタツミはカルビに対し蹴りを放つ……が、カルビはこれを両腕をクロスして防ぐ。

だが、かなり後ろまで行ったな……中々に鍛えてやがる。

 

「あれ、あの少年は……」

 

「知り合いですか?」

 

「道案内をしてあげた子です。

まさか、あそこまで強いなんて。」

 

「ええ、あの年であそこまで……逸材ですよ。」

 

冷静にカルビのラッシュを片手で楽々と弾き、隙を見いだしてもう片方の拳を土手っ腹に叩き込む。

 

そして、続けざまに足払いをして揺れたカルビの顔面に回し蹴り。

 

まあ、あっさりと倒れた。

 

「そこまでっ!!勝者タツミ!!」

 

『ワァァァァアァァ!!!』

 

「……!やったぜ。」

おーおー、嬉しそうな笑顔浮かべちゃって……。

 

エスデスの反応はどうだ?

ナイトレイドだから引き込まれたら困るが、参加者だしな。

 

「……見つけたぞ。」

 

「帝具使いの候補ですね。」

 

「それもあるが…別の方でだ。」

 

「…隊長?」

 

…おい、アイツ見間違いじゃなきゃときめいてたよな。

待て、待て。あの内容全部に該当するのがタツミ!?

 

─おい皇帝、何頭抱えてんだ。

 

─テルミ、助けてくれ。余にはどうしようもできない!

 

─無理だろ、これは。

 

─…うむ。居なくても、是非もないナ……

 

あの皇帝の口調も崩れるほどの内容が?

 

1.何よりも将来の可能性を重視します。将軍級の器を自分で鍛えたい

2.肝が据わっており、現状で共に危険種の狩りが出来る者

3.自分と同じく、帝都ではなく辺境で育った者

4.私が支配するので年下をのぞみます

5.無垢な笑顔が出来る者がいいです

 

……いや待て、タツミの才能と生まれなら全部当てはまってる……

 

「…少年の未来が見えました。」

 

「えっ?」

 

エスデスは立ち上がり、階段を下りる。

タツミもこれには驚き。

 

「タツミ…といったな。いい名前だ。」

 

「ど、どうも…」

 

…今、一瞬だけ殺意の籠った目をしてたな。

やっぱ、何かあったな……

 

だが、幸いなことにエスデスは気付いてなかったようだ。

 

「今の勝負、鮮やかだった。褒美をやろう。」

 

「!ありがとうございます!」

 

さて、どうなるか…ん?アイツ、何を取り出して…首輪?

 

タツミの首に、それを着ける。

しかも、ほんのりと顔を赤らめて。

おい、してる行為と顔が一致してねぇ。

 

「今から…私のものにしてやろう。」

 

 

「…え?え?……え?」

 

タツミ、困惑。

しかしエスデス、これを華麗に無視。

エスデスは首輪に着けた鎖を引っ張り、連れていく。

 

…あ、今気絶させられて今度こそ連れてかれた。

 

「……連れてかれましたねぇ。」

 

「で、ですね……ハザマさん、楽しんでません?」

 

「嫌ですねぇそんな事はありませんよ……まあ……」

 

俺は座りながらエスデスとタツミを見て、金色の瞳を開けて見る。

 

 

「存分に利用させてもらうがなぁ……」

 

「……そうですか。」

 

「ああ、楽しくなるぜぇ?

きっと、これからどんどんと動く……」

 

「…地が出てます。」

 

「…楽しみですね?」

 

「もう遅いかと。」

 

「…この正義馬鹿のウスラトンカチが。」

 

「この茹で玉子中毒者。」

 

……やっぱ、この女は気に食わねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、イェーガーズの補欠となったタツミだ。」

 

「人浚いですよ。」

 

「民間人をそのまま連れてきちゃったんですか?」

 

「細かいことは気にするな。」

 

哀れなタツミは首輪に続いて鎖で体を縛られて椅子に座らされている。

これはあまりにも可哀想…いや、笑えるなこれ。

 

「それに…タツミは私の恋の相手になる。」

 

「…正式な恋人にしたいのなら束縛するのは駄目かと。それではペットですよ。」

 

「ランさんの言うとおりですよエスデスさん?」

 

「……それもそうか。」

 

鎖を取り、身動きが出来るようにはなったが…まあ、この状況じゃ動けないか。

 

タツミは俺を見て目を見開くが、察したのか顔を俯かせる。

 

「……それで、この中で恋愛の経験、もしくは結婚している者などはいるか?」

 

…俺は手を挙げない。

だが、この中で一人だけ手をあげた者がいた。

 

「ボルスさん、そうなんですか!?」

 

ウェイブの発言には同意する。

まさかのボルスがそうだったのだ。

セリューも「え!?」と驚いている。

 

ボルスは両手を顔に当てて照れながら説明する。

 

「うん、結婚してもう六年!私にはもったいないくらいのお嫁さんだよ。」

 

「…ほぇー……」

 

……嫁さんねぇ。

もう良く分からねぇな。

恋人とか、結婚だとか……そんなものを思っていたことがほんの少しだけあったのかもしれねぇ。

だが、それはもうあり得ないことだ。

 

……って、何考えてんだか。

無駄なことに思考を割く暇なんざねぇ。

 

「エスデス様!!」

 

突然、扉が勢い良く開かれる。

ありゃあ…まあ、エスデスの部下か。

 

「ご命令にあったギョガン湖周辺の調査が終わりました…」

 

「…このタイミング、丁度いいな。

 

お前達、初の大きな仕事だぞ。」

 

…仕事か。

タツミをどうやって逃がすか……いや、今日は無理だ。

明日か明後日でどうにかするか。

 

ま、タツミが何とかするかもしれねぇがなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…つまらねぇ仕事だったし、写す価値もないので省略だ、省略。

 

もうちょっと骨があるかと思ったが、まあ帝具使いを相手に普通の奴等が粘れってのは辛いか。

あっさりと終わっちまった。

 

俺はランと共に逃げた奴等を始末するだけだったしな。

 

こんな大人数で良かったんかねぇ。

 

んでもって、イェーガーズの帝具は粗方分かったな。

ウェイブのは分からねぇ。

海の男とか言ってるが、錨型の帝具は無かったと思うし、無難に鎧型と予想しておくか。

鎧型ならインクルシオよりも後期か。

 

仕事の後、エスデスにそこまで時間は取らないので少しタツミと話させてほしいと頼んだ。

 

「何故だ?」

 

「いえ、こういった人から得れる情報も時に鬼札となるものです。なので、取材をと思いまして。タツミさんはどうですか?」

 

「え、ああ!取材なんて憧れてたんだ、是非受けたい。」

 

「む……タツミが言うなら、仕方あるまい。

本当に時間は取らないんだろうな?」

 

「ええ、少しだけですよ。

私、時間には誠実ですので。」

 

「そうか。」

 

エスデスはそれだけを言って先に自室へと去っていった。

恋ってのはすげぇな。あのエスデスがあそこまでアッサリとは。

 

「…さて、お久しぶりですか?タツミさん。」

 

「……ああ。一応聞いておくが、ハザマは俺達を裏切った訳じゃないんだよな?」

 

「ええ、私は貴殿方の味方です。

……それにしても、顔付きが変わった。

誰か、死にましたか?」

 

「っ!……兄貴が、三獣士との戦いで…インクルシオは俺が受け継いだんだ。」

 

悔しそうに拳を握り締めるタツミに、俺はブラートとの約束を思い出す。

 

ブラート……あの野郎、簡単に死にやがって。

頼もしいと、思ってはいたんだがな…。

 

「悔しいですか?」

 

「悔しいに決まってるだろ!それに、エスデスが居なければ兄貴は…!」

 

必死に押し殺していた感情が爆発しかけている。

やっぱ若いな、だが、押し殺せていたのには及第点ってとこか。

 

「貴方が強ければ、ブラートさんはまだ生きていたと思ってたりします?」

 

「当たり前だ!俺がまだ弱かったから──」

 

「タツミさん。」

 

…俺は熱血じゃねぇんだがな。

仕方無いから、約束の一発といくか。

 

俺は続きを言おうとしたタツミの名前を呼び、顔面を殴る。ちょいと強めにだ。

タツミは少しだけふっ飛び、上体を起こす。

 

「な、何すんだよ……!」

 

「ナイトレイドの皆さんならもう言ったかも知れませんがね……。

自惚れるんじゃねぇぞ、クソガキ。」

 

「……!」

 

「自分が強かったら、アイツが居なかったら。

んな『たられば』は要らねぇんだよ。

ブラートは、三獣士と戦って死んだ。

そんで、テメェはあの熱血漢の遺志を受け継いだんだろうが。」

 

「っ……!!」

 

「テメェが悔しがるのは勝手だ、落ち込むのもな。

だが、ブラートはテメェに1つでも過去のもしを思い浮かべろなんざ言ったのか?」

 

「それは……」

 

「あの馬鹿がそんな女々しいこと言うわけねぇわな。

なら、受け入れろ。ブラートの勇姿を、アイツの死をな。受け入れて、もうそうならないために強くなるんだろうが!

……そんだけだ。テメェの気持ちが分からない訳でもねぇが、テメェの居るナイトレイドはそういう場所だ。」

 

……ま、こいつなら強くなる。

もう既になってんだ、すぐだろうよ。

だが、乗り越えるのは必要なことだろう。

 

「勿論、テメェを帰す努力もする。安心しろや。

……ええ、それだけです。」

 

「…ハザマにも、あったのか?

誰かを失って、悔しかったときが。」

 

「はい?」

 

面倒な質問をしやがる。

無い、といえばすぐに終わるのだが……何となく、答えてみようかと思った。

気紛れがここに来て作用するとは。

 

「ええ、ありましたよ。何度もね。

ナイトレイドの誰よりも、この帝国の誰よりも。

何かを失いましたとも。」

 

「……それは流石に…」

 

「…ええ、無いですよ。ちょっと誇張しすぎましたね。

私も、貴方のような時期があったんですよ。」

 

「…そうか、悪い、こんなことを聞いて。」

 

「構いませんよ。…さて、エスデス将軍の部屋まで案内します。」

 

「あ、ああ……」

 

少し困った顔をするタツミに俺は表面上だけ苦笑する。

 

内心?面倒だと思ってるに決まってんだろ。

さっさと案内してさっさと部屋に戻る。

 

タツミは助けを請うような顔をしていたが、笑って見送った。

ま、今日は何もされねぇだろ。

 

自室で、ソファに座る。

帽子を取り、ネクタイを外す。

 

「……。」

 

思い返すのは、先程のタツミの問い。

 

『ハザマにも、あったのか?

誰かを失って、悔しかったときが。』

 

「…。」

 

誰かを失った、ねぇ。

んなもん、言葉通りに返してやった。

 

何年、何十年、何百年。

始皇帝との契約で皇帝家を見てきた。

当然、その代の皇帝と過ごしても来た。

 

最悪な皇帝も居れば、普通の皇帝もいた。

それぞれ、違った個性を持った奴等。

それに付き従う奴等も。

 

俺が契約の終わりまでの間に何人も死んだ。

 

 

─テルミ、余の身が尽きても、どうか。

─どうか、この帝国を。

─その代の皇帝と共に……

 

「分かってんだよ、クソが。」

 

テーブルをぶん殴って、苛立ちを消す。

 

…契約の終わりまでだ。

 

それまで、仕方ねぇからテメェの力になってやる。

ダチと…あの女の頼みだ。

 

全部終わらせるには……

 

鎧が、必要だなぁ…。

 

 

俺様が、全盛期に近い力を振るうには鎧……そして、魂が必要だ。



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悩みを壊す

タツミを逃がす。

とは言ったものの……エスデスとその他メンバーからバレることなく逃がせるか、と聞かれれば不可能に近い。

 

だが、幸いなのはイェーガーズではタツミは補欠となっていることだ。

エスデスのあの様子なら今日もタツミを連れ出す筈だ。

 

後をつけて、何かあればサポートすべきか。

 

……というより、ほっといた方が終わるのではないだろうか。

 

インクルシオは透明化があった筈だ。

十分可能だ。

 

俺は面倒くせぇとぼやきながら茹で玉子(朝食)を食べてから部屋を出る。

……今回のはちょいと茹ですぎたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、貴方が来るなんて珍しいわね。」

 

「ええ、部下がお世話になってますし。」

 

スタイリッシュの研究室にまで足を運んだ俺はその場にいたスタイリッシュと会話する。

スタイリッシュは部下?と思案顔になったが、すぐにセリューのことだと理解したようだ。

 

「ああ、改造のこと?一応弁明しておくけど無理矢理じゃないわ。」

 

「分かってますよ。ですが驚きましたよ、セリューさんが義手になっていたときは。」

 

「あの子なりの考えでしょ。

言ってたわよ、『今のままだとハザマさんの足手まといにしかならない』って。慕われてるのね?」

 

「慕われる要素が私にあります?」

 

「ないわね。」

 

「でしょう?」

 

自分で言うのも何だが、俺は使えなくなったら棄てる男だ。

そんな奴を慕う馬鹿は居ねぇだろ。

俺様も御免だ。

 

「それで、セリューさんの義手、何か仕込んでますね?」

 

「当たり前でしょう。イザヨイも少しスタイリッシュな性能にしておいたわ。」

 

「へぇ……教えてくれますか?」

 

「上司の貴方には教えておくべきだし、構わないわ。

まず、イザヨイの凶悪な能力の一つである正義審判……その名の通り、犯した悪行の数だけイザヨイ自体の性能が上がる。

そこで、アタシは思い付いたわ。

イザヨイの性能が上がっても本人が追い付けないと意味がない。だから義手を通じてイザヨイのパワーを少し得るという仕組みにしたのよ。」

 

「ほう……!しかし、それでは、体が持たないのでは?」

 

「そんな安い設計にはしてないわ。

体の方も少し弄ったし、パワー供給も一定だから自壊するようなことはないはずよ。

でも、ヘカトンケイルが無事ならもっとスタイリッシュだったのにねぇ……」

 

「そこは不慮の事故というやつですよ。

他にもあるのでしょう?」

 

「ええ、後は───」

 

それからしばらく、俺はスタイリッシュの説明を聞いた。

聞けば聞くほどこいつが稀代の天才って奴なのが分かる。オーバーテクノロジーに近いだろうこれは。

 

後、メンテのやり方も教わっておいた。

 

「……ふぅ。なるほど、ありがとうございます。

素晴らしいですよ、流石は神の御手 パーフェクターだ。」

 

神の御手 パーフェクター。

手先の精密動作性を数百倍に引き上げる帝具。

使うやつがコイツみたいな奴ならばヤバイ帝具と化す。

 

「それほどでもあるわね。でも、ここまでの成果を出せたのは間違いなくアタシの技術!なぁーんてスタイリッシュなのかしら!」

 

また変なポーズ…いや、スタイリッシュポーズ(本人曰く)を取ったので拍手しておく。

 

「……ところで、貴方はタツミさんをどう思ってますか?」

 

「怪しいわ。」

 

「あ、やっぱり?」

 

「ええ、あまりにも環境に慣れすぎている。

普通の市民ならこうはならないはずよ。

もしかしたら、ここに潜入するのを狙ったナイトレイドの一員かもしれないとオカマの勘が告げてるわ。」

 

「オカマの勘……ですか。」

 

「そう、アタシの勘は意外と当たるわよ~?」

 

「それはそれは、頼もしい限りだ。

では、私はこれで。お代とかは?」

 

「今回はサービスよ。仲間だからね。」

 

「ありがたい。」

 

俺は礼を言い、退室する。

 

…疑ってるならそれはそれで構わねぇ。

 

パーフェクターと強化兵の他にもあるだろうが、それで勝算があるなら行けばいい。

 

タツミかウェイブ達の所にでも行くか。

居そうな場所は分かるしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまねぇ、俺達は隊長の命令でフェクマに行くことになったんだ!」

 

「あらぁ……」

 

タイミング悪っ。

しかもフェイクマウンテンかよ。

危険種狩りか?タツミの実力を上げるとかだろうか。

 

「何だ、ハザマも来たいのか?」

 

「ああいえ、別に…私は待ってますよ。」

 

「そうか、では行くぞ!」

 

「はい!」

 

ウェイブの若者らしいいい返事の後にクロメとタツミ、ウェイブとエスデスは去っていった。

…てか、クロメの食ってる菓子……いや、いいか。

 

「……私、どうしましょう。」

 

仕方無いので、城の外へ出向くことにした。

暇だし、何か買って帰ろう。

 

根を詰めても疲れるだけだ。

アーキタイプの体も便利じゃねぇからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何だか久方ぶりに帝都を歩いている気がする。

実際はそうじゃねぇが、仕事しすぎなのかもな。

 

何か興味の引かれる店はねぇか、と探していたら

 

「……本屋、ですか。」

 

普通な本屋を見付けた。

特に本が好きという訳ではない。

だが……

 

 

─テメェもよく読むなぁ、何だその本。

 

─恋愛小説、というヤツだ。

 

─…おもしれぇのか?

 

─其方との語り合いに比べたら面白くはないが、それを抜きにすればな。

 

─ケッ、そうかよ。

 

 

…一回、寄ってみるか。いや、やめとくか。

 

何時までも引き摺られんのはあのアマも好かねぇだろうしな。

思い出すに留めとく。

俺は本屋を通り過ぎていった。

 

何か他にないかと歩く。

 

思えば、俺様は過去を振り返り、現在()の趣味を持とうとは思わなかった。

 

どうしたもんか。

 

「あれ、ハザマさんじゃないですか。」

 

俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

知り合いか、なら幸いだと思い、俺は振り向く。

 

「何だ、セリューさんでしたか。」

 

「何だ、とは何ですか。

ハザマさん、何してるんですか?

突っ立ってますけど。」

 

「とても暇なので、散歩ですよ。」

 

「えっ、散歩!?」

 

「……何です?その意外そうな声。」

 

お前が散歩なんてチャンチャラ可笑しいだろとでも言いたいのかこのアマ。

 

「い、いえ、日々暗躍に精を出してるハザマさんがまさか散歩なんてしてるとは思ってなかったので。」

 

「心外ですね。私だって暇なときはありますし、散歩もしますよ。そういう貴女は……ああ、見回りですか。」

 

「…まあ、分かりますよね。」

 

「上司ですからねぇ。」

 

……丁度いい、聞いておきたいこともあるし、コイツに付き合ってもらうか。

 

「セリューさん、お話があるのですが、時間よろしいですか?」

 

セリューはそれを聞き、重要な話だと判断したのかスッと顔立ちを変える。

 

「……分かりました。そこの喫茶店で何か飲みながらしましょう。」

 

「ええ、ありがとうございます。」

 

近場の喫茶店に寄り、そこで話すことになったが……財布は俺だよな。

言いくるめられたか?

いや、無いか。コイツだしなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、話って何ですか?」

 

「そう堅くならないでください。

あくまで世間話の一貫です。」

 

「そうなんですか?」

 

「……まあ、確認ですけどね。」

 

「確認……」

 

「貴女の正義、見付かりましたか?」

 

俺が金の瞳でセリューをジッと見て、問う。

まだ迷ってるのなら、聞いておきたいからな。

 

セリューは苦笑して、いいえ、と答える。

 

「まだ、私の正義は見つかりません。

人を助けるのは当然です。悪党を倒すのもそう。

でも、それは力ある者としての責務だと私は思ってます。だから、私の正義の形にはならない。

私は以前、悪は皆殺しにすべきだと信じて疑わなかった。ハザマさんがあの資料を見せてくれた日の夜、ずっと悩んでました。今までの私の正義は何だったのか。」

 

俺は何も言わない。

ただセリューを見て、聞いているだけだ。

 

「それでも、貴方についていって、その仮定で私にとってこれこそが正義だと思えるものがあるかもしれない。そう思って貴方についていってます。まさか、人じゃなかったとは思いませんでしたけど……。

まだ見つかってないのかとか、思ってますよね。」

 

「いいえ、全く。」

 

「全くって……正義のない人間なんですよ!今の私は!正義は悪に屈してはならない…パパの言葉の正義にすらなれていない!それを、全くって……!」

 

「おい。」

 

「……!」

 

俺はため息を吐く。

ずっと思っていたこと、それはコイツが他人の言葉をよく聞いているということだ。悪いとは言わねぇよ。

だが、それがコイツの考えを阻害してるってのが駄目だ。

 

「言葉に惑わされるんじゃねぇ。確かにテメェの親父の言葉は一種の正論だ。悪に屈する正義に価値なんざねぇからな。

だがよ、それはあくまでテメェの親父の意見だ。

テメェの意見じゃねぇ。テメェはただ、その意見に対して『そうですね』って肯定してるだけだ。

それを履き違えんじゃねぇぞ馬鹿が。

テメェは一度だって他人に左右されないでテメェの考えで動けたのか?悪どい奴を倒してんのも人助けしてんのも結局は誰かの教えなんだろ?」

 

「それはっ……!そう、です…パパの考えに憧れて……真似てました。」

 

「な?テメェの考えは何処にもねぇ。誰かの意志継いだ気になってるだけだ。

一度、自分以外を抜きにして考えてみろ。」

 

「自分以外を、抜きに……。」

 

オウムみてぇに俺の言葉を言う。

面倒な女だ、だが、迷わねぇ人間なんざ居ねぇ。

あのエスデスだって悩みはあるんだからな。

 

「テメェがついてきてくれてんのは正直言ってありがてぇよ。だから俺様もこうして悩み相談をしてやってる。だが、結局のところ解決しなきゃならねぇのはテメェだ。だろ?」

 

「……はい。」

 

「……んでよ、聞きてぇことが他にもあるんだわ。

ヘカトンケイル…コロだったな。あの犬の破壊に加担したのは俺なのはもう分かってるだろ?

不思議なのがよ、何でその使い手のテメェが俺についてくるってことだ。」

 

「……えっ?」

 

セリューはそれを聞き、不思議そうに首をかしげる。

コイツ、ヘカトンケイルの事忘れてたんじゃねぇよな?

 

「…そうですね、確かにコロちゃんを壊したのは許せないと思いました。」

 

「なら何でだ。」

 

「それでも、得れるものがあると思ったからです。

イザヨイだけじゃない。正常に考えられる私が今あるのはあの一件があったから。

だから、こう言うのは悪いけど、感謝、してます。」

 

えへへとか照れながら言うコイツに俺は呆れた。

馬鹿はこれだから馬鹿だ。

普通なら分かったときに一発殴るくらいはすんだろ。

 

「…ケッ、そうか。

馬鹿は考えんのが楽でいいよなぁ。」

 

「むっ、何ですかその言い方「だが。」?」

 

「その馬鹿さがあの時あったから、俺もこうしてんのかもな。」

 

肘をテーブルに乗せ、また過去を振り返る。

 

 

─テルミ!お主の鎧はまっこと素晴らしいな!

 

─うっせぇ、殺すぞ。

 

─むむ、感に障ったか。すまぬ。だが、この気持ちは本当だ。これからも、余達を支えてくれ。

 

─…気分が乗ればな。

 

─ハッハッハ、それでいい。ところで、これの開発案はどうだ?

 

─頭わりぃ内容だな。作る意味は?

 

─浪漫!!

 

─一辺死ね。

 

─断る!

 

 

……へっ。

俺は立ち上がり、帽子を被って会計へ向かう。

 

「……帰る。時間とって悪かったな。払っといてやるから気にすんな。」

 

「え?あの……」

 

「ああ、後よ。

その腕にしたの、テメェにしちゃいい決断だと思うぜ?だが、その片腕は人間でいろよ。」

 

「……はい!」

 

後ろのセリューがどんな顔してんのかは分からねぇが、まあ、どうでもいい。

死ななければな。利用価値があるんだ、まだ生きてもらわねぇと困る。

 

帰ったら、何すっか。皇帝ちゃんと話すか?

 




ちなみに、お分かりかと思いますがこの小説は基本的にテルミ視点で進みます。
なんか知らないところで誰か死ぬかもですが、まあ、そこはアカメが斬るですから是非もないね


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二人の暗躍

フェイクマウンテンにて、タツミが消えたとの連絡が入った。

捜索の際にウェイブがインクルシオを身に纏ったナイトレイド(タツミ)と戦闘をしたらしいが上手く逃げられたらしい。

 

現在のウェイブ?

 

「冷てぇ……重ぇ……」

 

水責めと岩の板を膝に乗せられて上半身裸で涙目だ。

面白くて笑い転げそうだがセリューに睨まれてそれも出来ない。こいつは俺の何になってんだ。

 

「あらら、ウェイブさん、お辛そうですねぇ……」

 

「何だ、お前もやりたいかハザマ。」

 

「とんでもない!私も暇ではないのでこれから行きますよ。」

 

「何処にだ?」

 

「喫茶店に。」

 

「そうか。ところで、スタイリッシュは見なかったか。」

 

エスデスにそう聞かれ、俺はそういえばと思う。

 

まさか、本当に追ったのか?

それだけの勝算があるのか?

何処に……。

 

─まさか!

 

『私は最高にスタイリッシュな兵器を開発したいの。これが私の夢よ。』

 

確信に近い予感がする。

だが、下手に動けば共倒れの可能性がある。

それに、客との話もある……。

ここは……

 

「いえ、見てませんね。散歩では?」

 

「……息抜きにと考えればあり得るか。

分かった、招集が掛かり次第すぐに戻れ。」

 

「ええ…。」

 

私を出し抜こうとは考えないことだ。(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「!…しっかりとその時はお呼びしますって。」

 

「ふっ、そうか。」

 

エスデスの奴、警戒してやがったのか。

抜け目ねぇ……だが、一手遅い。

そこが年季の違いってヤツだ。

 

俺は歩いてその場を後にする。

ウェイブの『薄情者ォォォォ!!』という叫びに俺は薄情だからな、とくつくつと笑って歩みを止めずに喫茶店へと向かった。

セリューにはイザヨイの特訓をエスデスに積んでもらえと頼んであり、エスデスも承諾している。

 

一撃貰えば相当だというのに、やはり戦闘狂の心は分からねぇな。

 

「……ん?もう一人居ないが……まあいいか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、セリューと話をした喫茶店に入り、目的の人物が待つ席まで向かう。

 

あまり客が居ないんだな、と昨日と同じ事を考えながら歩き、あるテーブルの前で立ち止まる。

椅子に座り、紅茶を飲むその男に俺は話しかける。

 

「お待たせしました、ランさん。」

 

「いえ、隊長に捕まっていたのでしょう。

仕方無いことです。」

 

……まさか、こいつが俺に個人的な依頼をしてくるとは思わなかったな。

情報屋を頼るってことは、裏事情か?

 

俺は対面するように座り、話を続ける。

 

「それで、欲しい情報があるとのことですが……

先に言っておきますよ?貴方が欲する情報があるとは限りませんからね。」

 

「承知しています。」

 

いつもの微笑みも消して、ランは俺に構わないと告げる。

つまり、事情が察せられてでも欲しい。それほどまでの情報……

 

こいつの腹の内が見えるのはありがてぇこった。

 

ランは一拍置いてからこう言った。

 

「チャンプ……という男の情報を持ってますか?」

 

「チャンプ…というと、連続殺人鬼ですね……」

 

何だってコイツがチャンプの……いや?

 

なるほどなぁ。

理解したぜ、その眼!

復讐に燃えるって眼だ。

見付けたら隙突いてあらゆる痛みをくれてやるって眼だ!

 

いいね、面白い。

 

「ええ、何か知ってませんか?」

 

「……残念ながら、チャンプに関する情報は無いですね。」

 

「そう、ですか……「ただ。」…?」

 

「貴方のその眼。それが無性に気になりましてね?

情報屋としての性でしょうか。

そこまで復讐に燃える眼は久し振りに見ました。

どうでしょう、教えてはもらえませんか?」

 

「……。他言は無用で頼みますよ?」

 

「勿論、口は堅いと自負しております。」

 

嘘ではない。

ただ、その情報が有利になるのなら余すことなく利用するってだけだ。

じゃなきゃこんな肩書き持つか。

 

情報屋の利点はそこだ。

 

ランはふぅ、と一息つくと重苦しい雰囲気が更に漂う。

 

「私は、教師をしていたんです。」

 

「ああ……ランさんらしいかもしれません。」

 

「そうでしょうか?まあ、それはいいです。

教え子たちも優秀で、このまま大人になればいい役職に就けるのは間違いない。

それほどまでに優秀でした。だから、私もより一層力を入れました。

……それが、あの日に全て壊された。」

 

今にもテーブルを砕くのではないかと言うほどに拳に力を入れて話すランに大体を察した。

 

だが、違っていれば困る。

話してもらおうじゃねぇの。

 

「私が出張していた日の事です。

用事が終わり次第、すぐに生徒達の元へと急ぎました。

良い知らせをすぐに知らせたい一心で。

……ですが、戻ってきて私の目に映ったのは……

子供たちの死体の数々でした。目撃情報はピエロのような太った男……」

 

「間違いなく、チャンプですね。

それに、被害者も殆どが子供ですから。」

 

運が悪い。

そう言う他ない話だった。

結局は、狙われたのがランの教え子たちで、ランはそれに復讐をしたいと願っている。

 

ランと同じような男は何人もいる。

その中で運悪くチャンプの被害者になったのがランというだけだった。

 

ま、それで割り切れる奴なんざそう居ないわな。

 

「今の帝国はチャンプのような悪を見て見ぬ振りをしている。そんなのは許されることではない。

だから私は、内側からこの腐敗を正したい。

そう思ってイェーガーズに入ったのです。」

 

「へぇ……悲劇を繰り返さないため、と。」

 

「ええ……」

 

「……変えるという思想を持つだけ、貴方はマトモだ。」

 

「マトモではありませんよ、私は。」

 

「貴方がそう言うのなら構いませんよ?

ただまあ、面白いお話を聞かせてもらいましたし……

 

協力、しましょうか?」

 

「……どういった算段で?」

 

訝しげに俺を見つめるランに、当然かと思う。

過去を話したからと協力するなんて玉ではないと分かっているからだ。

そんなの俺様だって分かってんだよ。

 

「勿論、同情ではありませんよ?

ただ、チャンプの情報を手当たり次第に漁ります。

それを提供する。そして、貴方は私に協力する。

理想的な関係とは思いませんか?互いが得をし、成し遂げられる。」

 

「……貴方への協力が何かをお聞かせ願いたい。」

 

「革命ですよ。」

 

「なっ……!…ナイトレイドと繋がってると考えられますが?」

 

「そうですよ。」

 

踏み切った答えを提示する。

ラン自体、ナイトレイドを悪く思ってるとは思えない。

ランもまた、内部からの革命を願っている。

外側と内側の違いだ。

 

俺はそれの橋になってるのが現状だが……だが、俺一人じゃ足りねぇ。

 

「ナイトレイドと繋がり、大臣と繋がり、皇帝と繋がり、イェーガーズと繋がっている。

私、多忙ですよねぇ~……」

 

「ふざけないでください。」

 

「ふざけて提示する答えを私がすると?」

 

「それならばナイトレイドかイェーガーズのどちらかに属せばいい話ではないですか……!」

 

「ああ、その事ね……それでは、いけないのですよ。」

 

「いけない……?貴方はどちらの味方なのですか!」

 

「どちらでもない。」

 

「別の組織でもあると?」

 

「いいえ、ありませんよ。私はある人達との……」

 

 

「約束を、律儀に守り通そうと思ってましてね?」

 

 

─テルミ、どうか、帝国を。余の分まで。

 

分かってるっての。

 

テメェらとの契約は終わってねぇ。

この国が滅ぶまで、継続だろうが。

 

縛りやがってよぉ……

 

ランは俺の言葉が意外だったのか数秒ほど間を空ける。

しかし、すぐに我に返り、真剣な顔付きへ戻る。

 

「貴方が約束事を守るのは情報屋としてだけだと思ってましたよ。」

 

「基本的にはそうですがね。

その人達に関しては、お世話になったものでして。

それで、現在の味方でしたね。」

 

 

「まあ、言ってしまうと、皇帝陛下です。」

 

「……皇帝?」

 

「ええ、皇帝。あの幼くて、無垢な陛下ですよ。

私の秘密、結構バラしてますが……どうしましょうね?

協力、してくださいませんか?」

 

暗に、逃げたら殺すという意味を込めての協力の申し出。まあ、断るなら構わねぇよ?

だが、テメェのマスティマ(チキン羽)で勝てるってんならなぁ。

 

「……なぜ、私を?」

 

「死なせるには惜しいに値する人だと思いましたから。後は…ええ、先程述べた通りです。」

 

「皇帝陛下の為、ですか。

貴方は、望みは無いんですか?」

 

「望み、望みね……私の望みですか。

私、性格悪いですからねぇ……

 

他人の破滅とか、見たいです。」

 

「……!」

 

「ああ、お待ちを。契約上、あまり外道にはなれませんので。それにする気もありませんからねぇ。

私のことはどうでもいいじゃないですかぁ。

それで、どうです?」

 

危険な賭け……ではない。

最早これは、脅しであり、強制だ。

それほどまでに、俺はこいつの能力とマスティマを買っている。

 

「……本当に私の復讐に協力してくれるのですね?」

 

「ええ、それはもう!…ついでに、貴方のその後もね。」

 

「……。」

 

ランは瞑目する。

 

協力しなくてはならない状況と考えるか、共にやれる関係を築けると考えるか。

確かに、俺の先程の脅しは前者を迫りつつあるが、冷静に考えて欲しい。

 

同じく提示した条件はこいつにとって願ってもないことだ。何せ、成功率が増える。

 

「……分かりました。」

 

「…貴方のその返事が聞きたかった。

これから、よろしく頼みます。」

 

「よろしく……とは喜んで言えませんが。」

 

「いやぁ…私も、何がなんでも協力してほしいもので。」

 

「…それで、私は貴方の革命の何を手伝えば?」

 

「それは後程。まだ調べるべき点は残っていますから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある一室。

テルミですら知らない一室だ。

 

そこに、二人の男が居た。

 

「ヌフフ、すみませんねぇ、ドクター。

貴方の力を急遽お借りすることになって。」

 

「別に構わないわ。

でも……1つ聞かせて欲しいのよ。

……コレは何(・・・・)?」

 

そこには、イェーガーズの集まりの時に居なかったDr.スタイリッシュとオネスト大臣がいた。

そして、二人の目の前には、巨大なカプセルが存在し、その中には…。

 

オネストは、邪悪な笑みを隠そうともせずに晒す。

 

 

「人間、ですよ。」

 

カプセルの中には、一人の女が、浮いて眠っていた。

培養液か何かでも入っているのだろうか。

 

「…これが、人間?」

 

「ええ、紛れもなく、人間です。

ほら、見てくれは美しい少女でしょう?」

 

「それはそうだけど…コレは何者なの?

手伝ったのだから教えてくれてもいいわよね?」

 

スタイリッシュは戸惑う。

確かに、見てくれは人間そのものだ。

 

だが、この少女には、何かがある。

危険種のような、恐ろしい何かが。

 

「そうですねぇ……私も、よく分かってはいないのですがね?

たまたま、この一室を見付けた時、既にこの状態だったのです。

恐らく、過去の帝国の研究者の研究跡でしょうね。」

 

「それで、この少女は?」

 

「…とあるレポートを発見し、それを全て読みましたが、これは至高の帝具と同じ、いやそれ以上の代物でしょう。私も最初は焦りました。

ですが、コレを利用できればナイトレイドを含む反逆者共を駆逐するなど容易い!

これの名前、それは……!」

 

大臣は、確かに汗を額から流していた。

その肥えた肉体ゆえの汗ではない。

大臣すらも、恐れる程の作品。

 

過去の遺物、過去の闇。

 

とある男がテルミや他の皆も臣下たちの目を盗み、それを確保し、造り上げた正真正銘の化け物。

 

 

カプセルの中の少女は、ピクリと、その指が動いた。

 

目覚めの時は、近い。

 



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片割れの武

あの後、スタイリッシュは浮かない顔をしながら戻ってきた。

エスデスが何処に行っていたと聞いたが、大臣と話していたとだけしか言わない。

 

……何があった?

 

「……気にしてもしょうがねぇか」

 

「テル……ハザマさん、どうしました?」

 

「いえ、すみませんが、少し出掛けます。」

 

「それは構いませんが…何処へ?」

 

「ナイトレイドですよ。」

 

「!分かりました、お気を付けて。」

 

「ええ……。」

 

俺は、セリューに伝え、ナイトレイドにまで急いだ。

何だ、妙な胸騒ぎがする。

何かが、起こる。そんな予感がしやがる。

 

……。

チッ、考えても仕方がねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いたはいいが……何だ?荒れてやがる。

襲撃でもあったのか、血の臭いが蔓延してやがる。

 

とりあえず……ナジェンダに会って話を……

 

「あれ、ハザマじゃん。」

 

「…おや、レオーネさん?お久し振りですね。」

 

「久し振り、何かあったのか?」

 

「いえ、少し忙しかっただけです。

……この状況は?」

 

「あー……」

 

まだ片付いて無いんだが、とレオーネは頬を掻きながら言う。

 

「おかしな奴等の襲撃があったんだ。

鼻がデカかったり、耳がデカかったりする奴等の襲撃さ。」

 

「…敵情視察ですかね。」

 

スタイリッシュ……マジでやったのな。

 

しかも、負けてんのか。

何か勝算があったが、それでも勝てなかったってとこか。

 

「敵は何かしてきましたか?」

 

「ん?仕込み武器があったり…疑似帝具なんてものまで使ってきてたな。」

 

「疑似、帝具?」

 

「ああ、偽物の帝具だから疑似なんだろ。

私も焦ったけどエクスタスとクローステイルとは相性が悪かったようで問題なく終わったよ。」

 

「形状は?」

 

「ドリル、みたいなのとかマインのパンプキンみたいに銃の形のとか、多かったな。」

 

「……ふむ。」

 

侮れねぇ技術だな、やっぱ。

この状態じゃ、アジトも使えねぇ。

場所を移転しねぇとだろ、これ。

 

「あ、そうそう!仲間が増えたんだ!」

 

「ふむ?」

 

「片付けは……いっか後で!ほら、こっち来な!」

 

「まあ、行きますけど……」

 

ナジェンダがイェーガーズとの戦いに向けた新戦力の確保をしたってとこか。

 

まあ、どんな奴か判断させてもらうかねぇ。

 

にしても、スタイリッシュの奴、だから浮かねぇ顔をしてたのか……。

 

やっぱ、消した方が無難か……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、ハザマか。久し振りだな。」

 

「ええ、お久し振りですね、ナジェンダさん。

新メンバーが居るとの事ですが……?」

 

「レオーネ……情報屋に下手に情報を渡すな!」

 

「グオッ!?」

 

ナジェンダはその義手でレオーネに拳骨を浴びせる。

 

やべぇぐらい痛そうだ。

 

「っ~……!」

 

「さて……チェルシー!スサノオ!来てくれ!」

 

 

─待て。今、何つった?

 

「スサノオ……!?」

 

「は~い。」

 

「どうした、ナジェンダ……ッ!?」

 

「……テメェ……?」

 

「え、ちょっと、ボス?何か険悪なんだけど……」

 

「い、いや……分からん……」

 

……おい、どういうことだ。

 

こりゃ、どういうことだ?

 

あまりにも因果が組まれてねぇか?

確かに、見つける気では居たがよぉ……

 

テメェ、何だってそこまで変貌してやがる?

 

「……ユウキ=テルミ!!」

 

「グォォッ!?」

 

「スサノオ!?」

 

「何よ急にぃ!」

 

唐突に背中に携帯していた武器で俺を突いて吹き飛ばしやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてぇじゃねぇかよぉ……!」

 

この反応、そして、俺の名前を知ってる……間違いねぇ……

 

こいつ、別れた際に記憶保持してやがったなぁ!

 

しかも、自立行動が可能になるようにしてやがった……!

 

吹っ飛ばされ、外にまで出た俺は向かってくるスサノオに蹴りで応じる。

 

「何故貴様がここにいる!」

 

「…テメェ、誰にその武器向けてやがる?テメェは─」

 

「ぬっ……!」

 

蹴りを防いだ瞬間、片割れの足にウロボロスを噛みつかせる。

 

バタフライナイフにもう一本ウロボロスを巻き付かせ、それを叩き付ける。

 

 

「─テメェは俺様の鎧だろうがよぉッ!!」

 

「チッ…!?」

 

叩きつけ自体は防がれたが棒状の武器にウロボロスは絡み付き、そのまま腕に噛みつく。

それを引っ張り、引き寄せた体を全力で蹴って吹き飛ばす。

 

「ぜぇ……ぜぇ……どうなってやがる……!」

 

「ユウキ=テルミ…!俺を回収しに来たのだろう!」

 

「待てや、どうしてそうなる。」

 

「惚けるな、元々俺とそのウロボロスは『1つ』の帝具だ。」

 

……確かにそうだ。

ウロボロスとこの変貌したスサノオが合わさって初めて武神は降臨できる。

 

…攻撃をしてきた理由はそれか!

 

「確かに、テメェを今すぐにでもぶっ壊してウロボロスに食わせりゃ俺様は戻れる……だが、条件が整わねぇ。」

 

「…。」

 

「テメェの担い手はナジェンダか。」

 

「そうだ。だから今は武神に戻るわけにはいかない。」

 

「……それならそうと言いやがれ。

俺様はそこまで外道じゃねぇ。テメェがボロついて使えなくなればウロボロスに喰わせるが、それまではナジェンダの元で働けや。」

 

「……意外だな。」

 

「あ?」

 

巨体の男、スサノオは表情を変えず、俺に意外だと伝える。

ぶっ壊してやろうか、この出来損ない。

 

だぁくそっ!突かれた箇所がくそみてぇにイテェ……!

 

「スサノオ!ハザマ!」

 

「ナジェンダさん。」

 

「…一体どうした?」

 

一通り話を手短に終わらせるとナジェンダがチェルシー……だったよな?ソイツと来た。ついでにレオーネも。

 

チェルシーの奴は気の毒だ。

急に俺様とスサノオが戦い始めたら戸惑うわな。

 

「……いや、昔の知り合いに似ていた。」

 

「全く、やめてくださいよ、私はハザマです。」

 

「そうか、スサノオだ。すまなかった。」

 

……チッ。

 

「そうか……?まあ、いいが…急に攻撃を仕掛けるから驚いたぞ。」

 

「アタシも。」

 

「……いや、一番驚いたのは私なんだけど。

呼ばれたから来たのに、急にやりあうんだもん。」

 

「申し訳無い。」

 

「…改めて、自己紹介を。私は情報屋のハザマです、よろしくお願いしますよ、チェルシーさん。

そして、ス サ ノ オ さ ん ?」

 

「……ああ。」

 

「うん、よろしくね、ハザマさん。」

 

……ったく、幸先わりぃ。

今日は来るべきじゃなかったな、こりゃ。

 

まさか、ここまで自我に芽生えているとは思わなかったが…クソ、まだ戻れねぇってことだろうが……!

 

「スサノオさんはもう分かったのですが……チェルシーさんは、一体どのような暗殺をしてきたのです?」

 

「私のことを知っても得はしないと思うけどなぁ~」

 

「見たところ、直接戦闘を行う体つきではない。

ならば、遠くからか、隠れてか……それとも、化けるか。」

 

「……どれだと思う?」

 

お、試す気か?

残念だったなぁ、俺様がどれだけ生きて、どれだけ帝具を見てきたかわかんねぇのは仕方ねぇが……

 

チェルシーのようなタイプはほぼ決まってる。

 

「化ける系ですかねぇ。貴方は演技派に見えますからね。」

 

「へぇ、何でか聞いてもいい?」

 

「遠くから、の場合はマインさんを見れば分かりますが、まず人を見るんです。」

 

「それって普通じゃない?」

 

「それがですねぇ、そうでもないんですよ。

普通と違って、しっかりと見るんです。鷹みたいにね。

隠れての場合ですが…それにしては警戒心が薄すぎる。

よって、私は化ける方だと予想します。」

 

「……うへぇ、私、ハザマさんは苦手かな。」

 

まあ、デタラメ混じりだがな。

 

しかし、苦手なんてなぁ……傷つくねぇ、俺様の純情な心が砕けちまいそうだぁ、ヒヒヒ。

 

「傷付くことを言わないでくださいよ。

仲良くしましょう、仲良く、ね。」

 

「まあ、仲間ではあるらしいから仲良くはするよ。

仕事だからね。」

 

「割り切れてて大変結構。

…いい人材を発掘しましたね、ナジェンダさん。」

 

「まあな。これから、新たなアジトへ移転するが、どうする?お前も場所が分からねば困るだろう。」

 

「……他の皆さんとも話がしたいですし、ついていきますかね。」

アジトへの道がわかんねぇとどうしようもねぇもんな。

こればっかりは仕方ねぇか……

 

だが、その前に……

 

「スサノオさん。」

 

「……なんだ。」

 

俺はスサノオを呼び、小声で話す。

 

『テメェ、そんなに黒のスサノオに戻るのが嫌か。』

 

『……お前はいいのか。アレに戻るということは……』

 

『構わねぇよ。もう、人じゃねぇんだからな。』

 

『…そうか。』

 

話は終わりだ。

スサノオは須佐之男(本来の姿)に戻ることが今の情勢を引っくり返せる鬼札になることは分かっているはずだ。

 

だが、それでも今のマスターが大事なんだろうよ。

 

ケッ、いけすかねぇ。

 

……元々、俺の鎧だろうが。

 

俺がもしものために外したとはいえ、だ。

 

 

─テルミ、よいのか。

 

─…アレは、本当にやべぇときにしか使わなきゃいけねぇ代物だ。

 

─……そうか。

 

 

ああ、そうさ。

考案したのは紛れもなく、俺だ。

分けたのも俺だ。

 

必要になったんだよ、あの姿が。

 

皇帝家を守護するのは蛇じゃならねぇ。

 

あの武神でなければ、ならねぇんだ。

だから造り出したんだろうがよ……。

 

もう、後悔しねぇ為にも、この時代で復活しなきゃならねぇんだ。

 

その為にも……

 

 

─テルミ。

 

 

「……ああ?」

 

 

─テルミ。

 

 

頭に、響くように声が聞こえた。

んだこりゃ……過去を見てるわけでもねぇのに、なんだ?

 

……止んだな。

 

疲れてんのかねぇ……アーキタイプはその辺にも機能があるしな……。

 

 

……んな訳あるか。

何だって、アイツの声が今聞こえた?

 




スサノオがテルミを攻撃したのはスサノオ自身が述べた通り、今1つにされたらナジェンダを手助けできないからです。
……後はもう1つありますが。

そして、最後に聞こえた聖人ことテルミさんを呼ぶ声。

一体、誰なのだ?


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冥王降臨

早々に出さないと辛い。

そういえば、インターネット対戦でトラウマのナインをテルミちゃんで倒せました。


アジトの場所は、森の奥で前のアジトと同じように崖の下に建設された。

元からあったのでは、てか?

スサノオの野郎が全部一人でやった。

 

間、俺はラバックと森の中を散歩なりしていた。

実際はクローステールの糸を張り巡らせていたのだが。

まあ、これの使い方は変わってねぇが上手い使い方だ。

 

俺の知ってる誰よりも使いこなせてらァ。

 

『貴方の糸を理解して応用する力。

頼もしいことこの上無しですね。』

 

『そう言われると照れんな…。

ま、この糸が少しでも役立つってんなら、いくらでも張るさ。』

 

『…その性格をどうして女性の前で出せませんかね?』

 

『うっせぇやい!』

 

とまあ、結構いい感じに話せたんじゃねぇの?

こうしてスパイとして情報を渡してんだから信頼はされてるはずだろうしな。

 

怪しさは兎も角、やることはやってんだ。

 

しかし、スサノオの奴、彼処まで家事全般の能力に長けてやがるとは……惜しい才能だ……

 

……武神。

 

ウロボロス本来の姿であり、あらゆる帝具を破壊できる力を有している存在が奥の手の帝具。

アンチ帝具には流石に勝てねぇがあれは一度発動したら一週間は起動しねぇ欠陥。

 

シコウテイザーとの相性に関しても武神は力を解放すれば勝てる。

シコウテイザーを皇帝の象徴とするなら武神は力の象徴だ。

 

だからこそ、俺様はあれを二つに分けた。

 

あれはずっとあっちゃならねぇ代物だからだ。

 

あれが今もあったら力による支配があったと予想できる。

 

始皇帝の時代で創られ、そして始皇帝の終わりが近くなると同時に分けた。

 

あの判断は間違ってねぇと信じてる。

 

「ハザマさん?」

 

「……ああ、すみません、何です?シェーレさん。」

 

少し考えに没頭しすぎたか。

飯を食ったからって頭働かせ過ぎだ……。

シェーレが俺を心配そうに見てくる。

 

食事まで世話になったってのに。

 

「いえ…ボーっとしていたので。何か悩みが?」

 

「少々考え事をしていただけですよ。

考えすぎるのが私の悪い癖です。」

 

「そうですか?あ、ハザマさん、お昼、美味しかったですか?」

 

「ええ、それがどうかなさいましたか?」

 

「あれ、私が一部は作ったんですよ。」

 

「……!?」

 

馬鹿な、俺の舌はどうなってやがる!?

 

そうか、俺様だけあの皿を取ってたのはそれが理由か!

こいつら、知ってるなら教えやがれやぁ!

 

タツミとレオーネが笑ってやがる。

 

「あははは!美味そうに食ってたよなぁタツミ!」

 

「姐さん、あまり笑うと……ハハハハ!」

 

「…まあいいですけど。」

 

「美味しかったなら、よかったです。」

 

「あー……はい……」

 

最早曖昧な返事しか出来ない。

意外とショックだった。

見た目が何だか普通にまでランクアップしてるのはいいとは思うがよぉ……

 

大体の話、俺様がこうなったのもあのアマの……。

 

……。

 

「……すみません、今日はこれで。」

 

粗方情報も渡した、後は上手く事を運ばせる。

それはこいつらの役目だ。

俺は暗躍して、こいつらも暗躍する。

英雄なんざ、最初から居ねぇんだろうな。

 

この世界も、難儀なもんだ。

 

「そうか。気を付けろよ、そちらの方が危険だからな。」

 

「直接当たらないだけ、マシですよ。」

 

俺は立ち上がり、外へと向かう。

結局、今日の収穫は少なかったな。

いや、鎧の所在確保だけでもデケェわな。

 

…ウロボロス自身も強化しねぇと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきたはいいがよ、どうしたもんかな。

スタイリッシュは厄介ではあるが味方の内は利用しておきてぇが……

 

いや、あまり道を狭める必要はねぇ。

スタイリッシュは殺すべきだ。

んで、パーフェクターをナイトレイドに横流す。

 

これによって犯人をナイトレイドにしておいて俺への注意をそらす。しばらくはそっちの案件で留まる筈だ。

それなら俺も動きやすくなる。

 

ついでにウロボロスの食事もできるしなぁ。

 

…これならデメリットを上回る。

 

厄介なオカマだぜ、くそが。

…暗殺ねぇ、どうしたもんかねぇ……

 

いや、ウロボロスを使えばいい話なんだが周りの改造人間が邪魔すぎる。

 

くそが、やりにきぃ!

 

むしゃくしゃするぜ……。

考え事をしながら城の中を歩く。

研究室にでも向かってから考えるか。

 

「おや、これはハザマさん。」

 

「…オネスト大臣。」

 

面倒な時に出くわした…。

何やら上機嫌な大臣が傍らにフードで顔を隠し、布を着込んだ…人間、だよな…そんなのが居やがる。

 

「その人は?」

 

「これですかな?ヌフフ…面白い掘り出し物ですよ。」

 

「まさかとは思いますが……」

 

「いえいえ、別にそういった目的ではないですよ。

…これは、帝具に近い存在でしてね。」

「帝具に……?」

 

この、ガキに近い見た目のが?

スサノオとは違ってどんな力があんだよ。

 

「名前は……聞けてないんですよねぇ。」

 

「ハァ、そうですか……どうも、私、ハザマと言います。貴方のお名前、伺っても?」

 

俺は女だか男だか分からねぇガキの前まで来て、しゃがんで挨拶をする。

ついでにコイツの顔を見させてもらうか……

 

「……。」

 

「…な……!」

 

俺は、その顔を見た途端に呆然とする。

んな、馬鹿な。

 

だとしたら、コイツぁ……!

いや、あり得ねぇ。

あり得たとしても、俺様がそれを知らねぇわけが……

 

ソイツは俺の顔を見た途端、無表情だった顔がピクリと動く。

そして、ゆっくりと俺の顔を触る。

 

こい、つは……

 

 

 

「──テ ル ミ ?」

 

 

 

「…んな……馬鹿な……。」

 

極めて小さい声で、嬉しそうに俺の名を呼ぶ。

鈴のような凛とした声。

その声を聞いて、確信した。

そして、自然と手に力がこもる。

 

……テメェ、何だってそんな存在に成り下がってんだ…!

 

それにテメェ、あの時代に…確かに俺様の目の前で…!

 

「……余は、冥王。冥鏡死衰 イザナミ。」

 

「…大臣、冥鏡死衰だそうですよ。」

 

「おお、聞き出せたのですか?私では聞かなかったのに。何に反応を示したのやら。」

 

「…さぁ、私には、何とも分かりませんね。」

 

震えそうになる声を抑え、名前を伝えておく。

 

駄目だ、コイツは、今の俺の精神に、ダメだ。

 

「すみません、部屋まで戻りますね……」

 

「そうですか、お体でも悪いのですか?」

 

「……いえ、考えすぎで疲れてるだけです。」

 

「ほう、お体にお気をつけて、ヌフフ…… 」

 

「ええ、では……っ?」

 

「……ハザマ。」

 

イザナミは、俺の袖を掴む。

その赤い瞳で俺を見つめてくる。

行くのか、と。

 

コイツは、違う。

 

何せ、アイツは死んだんだからな。

仮にそうだとしても、こいつはコピーだ。

 

あの時に、そんな技術力を持ってる奴が……

 

「気に入られたのですかな?」

 

「…恐らくは。」

 

「まあ、下手に束縛する気はないので、お好きになさってください。私はやることがあるので。」

 

「……。」

 

大臣の奴、まるで厄介者を押し付けるように流れるようにどっかいきやがった。

……コイツ、どうすっか……

 

「……取り合えず、私の部屋まで行きますか。」

 

「……。」

 

やりづれぇ。

元の性格とは似ても似つかねぇ。

やっぱりコピーか何かと考えるべきか。

 

それとも……いや、まだ仮説で語るのはよくねぇ。

 

なんでこいつはこんな黙ってやがる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……部屋についたが……くそ、何を話ゃいい……!

 

ふざけんな、誰がコイツをこんなにしやがった。

あの時代の誰かだろうが……研究者……

 

 

「テルミ。」

 

「…テメェ、何で生きてやがる。」

 

とりあえずと座らせて研究者を思い出そうとしていたら名を呼ばれた。

仕方ねぇと思い、俺は何故生きているかを聞いた。

 

イザナミは、無言で布を脱ぎ、フードを脱ぐ。

美しく整った顔立ち。紫の髪、赤い瞳。

 

間違えようが、ねぇじゃねぇか……。

 

「余は、今まで寝ていた。」

 

「あ?そりゃどういう… 」

 

「余の肉体が死した時、余の肉体を保存し、改造し、そうしてこの世に生をまた受けた。」

 

「保存…やっぱあの時代、誰かがテメェの死体を使ったのか。誰だ、誰がやりやがった!」

 

「知らぬ。」

 

「んなっ……」

 

「余には、余が再び甦ったという事しか分からぬ。

だが、分からぬのならば構わぬ。」

 

「構わねぇわけあるか。テメェ、どうなっちまったんだ。そんな無関心な性格じゃなかっただろうが!」

 

一度死を受けた影響か。

だが、死んだ人間を保存し、それを甦らせるなんざ……どうやったって……

 

「ククッ、余を案じておるのか。

相も変わらぬ愛しさよな、テルミ。」

 

「うるせぇ、大体イザナミってのもおかしいだろうが。

そりゃテメェの帝具だ、テメェじゃねぇだろうが。」

 

「否、余は、イザナミだ。」

 

当然だと言わんばかりに昔のように好奇心に溢れた顔でなく、冷めたような顔で告げる。

 

「…どういうことだ。」

 

「分からぬか?余は、死して尚冥鏡死衰…つまり、死は寄り添い続けた。

そして、新たな生を受けた余は、その死となったのだ。」

 

「……そうか、一体化しやがったのか!

擬似的な帝具人間の創造、それによる蘇生……!

あの帝具、生きてやがったってのか!インクルシオみてぇに!」

 

「そう。余は、『死』だ。

あまねく者全てに等しく死を与える存在。

冥鏡死衰 イザナミだ。」

 

一体化による蘇生での影響がこれか。

性格がイザナミに引っ張られてやがる。

大部分は変わってねぇが、基本的に死を重視してやがるのか。

 

確かに、コイツと話しているだけでそれがそうなのかは分からねぇが、『死』ってのがイメージされる。

 

元々そんなもんじゃなかったろうが、一体化による影響の1つか……。

 

スサノオが力を持ったのなら、イザナミは死を得た。

イザナミは、俺を赤い瞳で見つめる。

 

「テルミ…余を、怖がるか。」

 

「…俺様が一度でもテメェみてぇなヒョロアマに恐怖したことがあるか?」

 

「ない。だが、それは生前、帝であった余だ。

イザナミとしての余が恐ろしいとは思わぬのか。

話すだけで死を感じさせる余が。」

 

「テメェの思っている何倍も俺様はそういったもんに強いってこった。

大体、死んで甦っても俺様に付きまとうのはおかしいだろうが、テメェはもう皇帝じゃねぇ。

その皇帝じゃねぇテメェを壊すのは契約を違えねぇ。」

 

「…余に死を与えると?」

 

「やってやれねぇこともねぇんだぜ?ええ、イザナミさんよぉ……ヒヒヒ。」

 

「愛い奴よ…再び会えた今でも変わらぬその有り様。

余を笑い殺す気か?」

 

今にも笑い出しそうな雰囲気だ。

……コイツ、笑う顔も変わったな。

昔はもっとこう……

 

何でもねぇ。

 

「……だが、皇帝でないということは……余は最早何者にも、それこそ死にも縛られぬ存在となった。

全てが等しく死ぬ……そのような景色が容易に見えるわ。」

 

「んだよ、面倒な言い回しだな。」

 

「…肝心なところで頭が回らぬのも変わらんな。」

 

身を乗りだし、俺の顔にその両手で触れて微笑む。

コイツ、大胆になったな。

昔はもっと奥手な……

 

…何でもねぇ。

 

「其方に余個人が()を与えてやれる。

それが最大の利点よ。愛しい男。」

 

「…ああそうかよ、なら、全部終わったら殺してくれや。テメェもその時殺してやるよ、冥王イザナミ。」

 

「余の()よりも、大切なモノがあると?」

 

「今の皇帝ちゃんを助けてやんねぇとあっち側がうるせぇだろうが。」

 

「…良い、其方がそういうのなら、余もまた遊ばせてもらう。

幸い、あの豚めは余を従わせたと思い込んでおる。

聞けば、今の世は腐敗しているそうだな?

どれ、面白い……」

 

 

「余は、余のやり方で死を与える。」

 

 

「テメェ、まさか。」

 

「其方が思っていることと概ね同じだ。

だが、今さら1つや2つ出来ようが良かろう?

 

余は、余の組織を作る。」

 

……雲行きが、怪しくなってきやがった。

 

テメェまで自由になんのかよ……。

 

…クソが、あの野郎、さっさと殺してやろうと思ったが、仕方ねぇ。

更に八つ裂きにして絶望を与えてやる。

 

 

 

 

「……ところでよ、テメェの料理が俺様の舌をおかしくしたんだがよ。」

 

「クク、余の手料理が其方の舌に死を与えたと言うことか。嬉しいか?」

 

「上手いこと言ったつもりかテメェ。

んな訳ねぇだろ。」

 

「……そうか。」




Q.組織の目的は?

「企業秘密だ」

Q.組織の名前は?

「世界虚空統制機構…はおかしいか。
カグツチはどうだ。」

Q.長になったら何をしますか。

「全ての者に等しく余の()を与える。
生前も、今も、変わらぬ。」

Q.好きなも 「テルミだ。今の時代、発展しているのであろう?ならばブロマイドを余に渡すがよい。」


以上、帝インタビューでした。

どうなる原作。
どうなるテルミ。


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マッドサイエンティストを壊す






結局、昨日の内にイザナミは大臣と話をして組織を作ることにしたそうだ。

大臣が何故容認したのか分からねぇ。

アイツも馬鹿じゃねぇ、恐らくは冥王の名の元に集う人材を欲したのか。

 

アイツ、生前も強かったからな。

帝具人間となった今じゃかなりの強さだ。

 

加えて、冥鏡死衰の能力だ。

 

面倒になったな……。

だが、アイツとは敵対はしない。

昔どうこうじゃなく、アイツの組織理由が俺の目的とマッチする部分があったからだ。

 

この国の腐敗を正すのはイェーガーズだけじゃねぇってのは2つの組織による安定化を狙ってんのか。

 

片やエスデスがいて、片や冥王イザナミがいる。

ネームとしては見劣りはねぇ。

 

イザナミの知名度は簡単にあげられる。

実力が伴うのなら後は名を派手に上げるだけだ。

 

そう、例えば……

 

「ナイトレイドのメンバーを殺してこい、だぁ?」

 

「うむ、余をかのエスデス将軍と同等にまで名を上げねばならないようでな。

早い話、余がナイトレイドの一員を殺し、その首を晒す際に余を持ち上げる、だそうだ。」

 

「……そうかよ。」

 

「其方の目的とは相反する。止めるか?」

 

「テメェを止めたってどうせイェーガーズが何人か仕留めるかもしれねぇだろ。

それに、それで死んだんなら……そこまでだった。

そんだけだ。」

 

「ククッ、そうか。

ならば、余は好きに動かせてもらう。」

 

「それこそ、好きにしろ。」

 

俺は忙しい。

昨日はスタイリッシュを殺す算段だったが、イザナミに時間割いたからな。

 

…今日実行するか。

流石にアイツの存在が邪魔にすぎる。

 

「行くのか。」

 

「テメェもどっか行くんだろうがよ。」

 

「あの科学者のところか。邪魔になったか?」

 

「…お見通しって訳ね。ああそうだ、アイツの技術は頼もしい限りだがそれこそ帝具人間のテメェを研究された以上は邪魔になる。

容赦なく、殺させてもらう。」

 

「そうか。…では、余は行く。

其方も、失敗しないように。

それと、テルミ。」

 

「んだよ。」

 

「余は、あの時からずっと、其方を好いておる。

余が組織を立ち上げた際には意地でもこちらについてもらう。」

 

「……ま、メンバー次第だ。」

 

「強者揃いが良いと?」

 

「それもあるが、俺の言いてぇのはそうじゃねぇ。

圧倒的な力も結構なことだが、結局は頭も回らねぇといけねぇからな。

……まあそこはテメェに任せる。応援はしてやるよ。」

 

「……フフ、また会おう、テルミ。」

 

イザナミは微笑んで、俺の部屋から出ていった。

 

…ったく、調子いい奴だ。

 

俺も、さっさと動くか。

セリューとランに声をかけて……いや、ランには言わねぇでおくか。

 

何て誘うかなぁ?ヒ、ヒヒ……

 

「殺してやるよ……テメェの『願望()』ごとなぁ……ヒヒハハハ……!」

 

俺もまた、部屋を出て部下を呼ぶことにした。

 

セリューの奴は納得してくれるだろう。

ランの奴に伝えねぇのは信用してねぇからじゃねぇ。

寧ろ、それが下がるのが面倒だからだ。

 

…ま、問い詰められたときの回答も用意しとくか。

 

仲間、友達、戦友。

どれもこれも、テメェの首を絞める枷にしかならねぇ。

だからこそ、テメェらは俺様を疑えるか?

 

なあ?ヒヒヒ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新種の危険種ですって!?」

 

「ええ、セリューさんと発見したので狩りました。

……が、意外と巨大で、使える部位が分からないのでセリューさんに見張らせているんですよね。

来てくれますか?」

 

「行くわ!アタシの研究をよりスタイリッシュにしてくれる可能性があるならば是非!」

 

「あ、相変わらずおかしなポーズですね……」

 

シュバッ、と音が出そうな程激しくポーズを取りながら了承したスタイリッシュに俺は引く。

 

コイツ、研究者としては外れじゃねぇんだが、他が壊滅的な感じだな……。

 

セリューも少し苦しそうにしながらも了承してくれた。

 

『っ、はい、分かりました。それが、帝国の平和に繋がるのなら。』

 

『繋がるじゃねぇ、繋げんだ。

テメェはさっさと定位置につきな。

……損だよなぁセリューちゃぁん、テメェもさ。』

 

『貴方は損じゃないんですか。』

 

『……さあ、どうだかな。』

 

俺にだって、んなことわかんねぇよ。

事象観測が出来るわけでもねぇ。

俺に出来んのは精々場を掻き乱す程度だ。

 

……なら、互いに損だわな。

 

ランには終わり次第説明することにした。

後々だと面倒さが増すのを理解したからな。

 

「それで、何処に?」

 

「こちらです、急ぎましょう。」

 

「そうね、アタシの頭脳が働きたがっているわ!」

 

……チョロいのか、それとも目の前の目的で前が見えなくなるのか。

どちらにしろ功を焦るタイプなのは間違いねぇな。

こいつ、俺が居なくてもあっさりと死んでたんじゃねぇの?

 

馬鹿ではないが、科学者故の、か。

 

分からねぇ訳じゃねぇ。

そういった輩は何人も見てきた。

嘲笑いはしたがその生き方を否定した訳じゃねぇ。

ソイツの生き様は化け物が否定していい物じゃねぇからな。

 

少し急ぎ足で、所定の場所まで向かう。

そこが、このオカマの最期で、計画の前進となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた。

場所は丁度人の手が行き届いてねぇ森の中。

ここが、決行場所だ。

「…ここですね……」

 

「待ちなさい!」

 

「……何か?」

 

オカマが吠える。

怒りの形相だ。

 

「何か?じゃないわ!何処に新種が居るのよ!」

 

「おかしいですねぇ、まさか、ナイトレイドにとか?」

 

「白ばっくれるのもいい加減にしなさい。

何が目的?こんな場所に連れてきて、交渉したいことでもあるというの?」

 

「交渉……確かに、交渉ですね。

私が、貴方に要求したいのは1つだけです。

それが叶えば、貴方の望みをいくらでも叶えましょう。

簡単な、要求ですよ。

Dr.スタイリッシュ。」

 

依然として怪しさを感じさせる笑みは崩さない。

いや、それどころか深まっていくのが分かる。

 

俺様がテメェに要求するのは1つだけだ。

 

「あるものがね、欲しいんですよ。」

 

「あるもの……?」

 

「私は、それが欲しくて欲しくて、貴方しか適任者が居ないからこうして意にそぐわない事までして交渉しているのです。分かってください?」

 

「……いいわ、何が欲しいの?

アタシの兵器?それとも……改造した使い捨ての駒かしら?」

 

「いえ、もっと身近で簡単なものです。

誰しもが持っている、誰しもが失いたくはないモノ。

万物に、それこそ帝具にさえ宿っている。」

 

一歩、近づく。

帽子を深く被りながら、本性に近しい笑みを隠そうともせず。

 

「答えは簡単なものですよ、Dr.スタイリッシュ。

 

─魂、下さいませんか?」

 

 

「なっ───ガフッ……!」

 

 

スタイリッシュの腹から刃が突き出る。

俺がやったのではない。

 

俺よりも先に来ていた奴がやった。

 

 

「セ、リュー…!」

 

「……貴方と、貴方の罪を、この剣によって断罪します。」

 

セリューが顔を俯かせ、感情を感じさせない声で、イザヨイでスタイリッシュを背中から刺したのだ。

 

断罪者、正義の執行人。

その帝具が行使する能力は、『正義』。

スタイリッシュの行ってきた罪が、今奴を傷付ける。

 

「何故、アタシが、こんな目に…!

もっと、もっと人体実験を、そうよ…帝具人間の模倣を……!」

 

 

「─正義執行、貴方の罪を刈り取ります。」

 

「セリュー・ユビキタス……!」

 

恨みを込めてセリューの名を呼ぶ。

それがスタイリッシュの最後の台詞となる。

 

イザヨイを引き抜き、首へ一閃。

あっさりと斬られた首は遠くではなく、近くでボトリと落ちた。

 

何処までも愚かであり、何処までも純粋な研究者は、ここで裁かれて死んだ。

研究の成果を出せず、目指すこともできずに死ぬ。

 

それがこの男の終わりだ。

 

ドサリと遅れて体が倒れる。

そこへ、ウロボロスが食らい付く。

 

そうだ、喰らえ。

この罪人の魂をな。

そうして俺様は強くなり、罪深くなる。

 

……今更だな。

 

「……ご苦労さん。」

 

「いいえ……必要な、ことです。」

 

「…テメェの正義は、どうだよ。」

 

「……私の正義、それは……」

 

 

「どうすることもできない悪と判断したものを、この刃で切り裂き、罪を償わせる事です。それが、私の正義であり、私の剣。」

 

 

しっかりと決意のこもった目で、俺を見ながらそう言うセリューに俺は及第点だな、と告げる。

 

「後は、その剣を何処まで研げるかだ。

……誇れよ、セリュー・ユビキタス。

テメェは確かに正真正銘の正義を成した。

俺達が国の腐敗を正したときこそが、その証明だ。」

 

「…はい。」

 

感情を押し殺したつもりか、馬鹿が。

俺はセリューの頭に手を置き、金の瞳で見やる。

 

「だが、テメェの正義が動く前に、最後に休め。」

 

「……ッ、はい…!」

 

辛いもんは、辛い。

それを長く生きた事で知っている俺はそれだけを言ってスタイリッシュの処理を始めた。

パーフェクターも手に入れて、後はこれをナイトレイドに渡すだけだ。

 

後ろには、恐らく声を押し殺して泣いてる馬鹿の姿があるのかもしれねぇが、そんな馬鹿は俺様の部下には居ねぇわな。

 

疲れで聞こえる幻聴だろうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スタイリッシュが、殺されただと?」

 

「ええ、森で体のない首だけの状態で……」

 

イェーガーズを全員呼び集め、俺は告げた。

 

スタイリッシュは殺された、と。

 

「誰がやったかは……」

 

「ナイトレイドでしょうね。

何らかの方法で見つけ出したスタイリッシュさんが功を焦った結果こうなった……が妥当かと。」

 

「…腕のいい科学者だったのだがな。

セリューとお前が発見者だったそうだが、何をしていた?」

 

「見回りに付き合ってました。」

 

「……そうか。」

 

エスデスと一通りの会話を終えた俺は、メンバーの様子を確認する。

 

「…ナイトレイド、あいつらが、ドクターを……!

許せねぇ!絶対に俺達が倒してやる!」

 

「……。」

 

「そんな……スタイリッシュさんが……。」

 

皆反応は違えど仲間を失った気持ちは同じか。

 

ウェイブは分かりやすい反応で、ボルスは絶句といった様子だ。

クロメは相変わらず菓子を食ってるが、その食の進みは遅い。

 

「……ハザマさん、セリューさんは?」

 

「自室で休んでいます。

彼女の腕を改造してくれた方ですし、慕ってましたしね……。」

 

「……そうですか。」

 

ああ、テメェなら確信してくれると思ってたぜ、ラン。

だからその目をやめな、笑いたくなるだろぉ?

 

「今日は解散とするが……お前らも気を付けろ。

賊が何時襲ってくるか分からんからな。」

 

「…はい!」

 

「了解。」

 

「了解、しました。」

 

「勿論です。」

 

……さて、と。

次は誰にしたもんか。

 

と、言いてぇが……しばらくは目立つ可能性のある動きはやめておくか。

 

引き際を見誤ったら死に繋がるからな。

 

それに、他の連中は甘くねぇだろうからなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝の一室。

ここに集まるのも久方ぶりだ。

精神体として来るのもな。

 

「…久し振りだな、集まるのも。」

 

「ああ、収穫もあったしな。

ブドー、宮殿の周りはどうだ。」

 

「問題はない。

だが、イザナミだったか…奴が大臣と怪しげな会話をしているのは見た。」

 

「組織の立ち上げの件だろうよ。

気にするな。テメェは引き続き警戒を怠るな。」

 

「貴様に言われずとも分かっている。」

 

険悪なやり取りって訳じゃねぇが、まあ……このくらいがいい距離感だろうよ。

 

「テルミよ、そのイザナミと話をしたのだが……」

 

「あ?どんな話だ。」

 

「テルミについて、延々と聞かされた。」

 

「……あー……すまねぇな。」

 

「いや、良いのだが…恋とは、ああいうのを言うのか。重いな……ハハ。」

 

待て、どんな内容を聞かされた。

気になるだろうが。

 

ブドーが俺を睨む。

 

「陛下に間違った認識を植え付けるな。」

 

「俺は悪くねぇだろうがよ。

イザナミに直接言えや。

ま、聞く玉じゃねぇがな……。」

 

「それで、これからどうするのだ、テルミ。」

 

「しばらくは様子を見る。

きなくせぇ空気が伝わるからな。

……荒れるぜ、この帝国は。」

 

「…分かった。だが、もし、それが……」

 

「任せとけ。魂の補充次いでに殺してやる。

……だが、皇帝。テメェにも動いてもらうぜ。」

 

「余に?」

 

緊張の面持ちで俺の指示を待つ皇帝。

ブドーも何を言うのかを伺っている。

 

「何、ちょっとした、精神修行だ。

ウロボロスでのな。」

 

「貴様、何をする気だ。」

 

「待てブドー、テルミは無駄なことを言わぬ。

……何故だ?」

 

「シコウテイザーを、もし動かすことになれば、テメェの精神が一番に必要になる。

動かすには、かなりの負荷が掛かる。

それに耐えるためだ。」

 

「……良かろう、ここに集まる度に、余を鍛えてくれ。」

 

「ったりめぇだろ。」

 

…皇帝ってのは、覚悟を決めるのが早くて助かるねぇ。

ま、利用とかじゃねぇから安心してくれよな。

これは、一種の通過儀礼なんだからよ。

 

精々、ズタズタのボロボロになりやがれ、ヒヒ……。

 




忘れてはならない、アカメが斬るはキャラが死にやすいことを。


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新型危険種を壊す

蹴りを一発、目の前の巨体に見舞う。

顔面を捉えた一撃は命中し、数メートル程吹っ飛ばす。

 

手応えはまあまあってところか。

 

「た、助かった……!」

 

「…ハァ、忙しい。」

 

迫ってくる巨体は所々人の形を留めているように見える。

 

一々蹴りを見舞うのも怠いので、ウロボロスを横に凪ぎ、巨体の群れを囲い縛る。

 

第一、ウロボロスに殺傷能力を求めないでほしい。

元々精神を攻撃するのが本来の役割なんだからな。

 

だから、こういった殲滅は……

 

「ハザマさん!ナイスです!」

 

「ちゃっちゃと刻んじゃってくださいよ!」

 

「あ、すいません。ヤァッ!」

 

セリューに任せる。

俺様はこういったのを怯ませる役だ。

 

イザヨイの刃が隙だらけの巨体を切り刻む。

あー、ありゃいてぇな、一溜まりもねぇわ。

簡単に捌かれていく巨体が憐れでならない。

 

「…終わりました!」

 

「ええ、お疲れさまです。」

 

五体が無事な奴の魂を貰っておく。

ウロボロスも喜ぶだろうよ。

にしても、新型の危険種、ねぇ……

 

まさか本当に出るとはな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たち、仕事だ。」

 

「おや、今日はどのような?」

 

「新型の危険種が帝都の周りを彷徨いている。

この危険種の討伐および数体の捕獲だ。」

 

「新型の……!」

 

あ?新型ぁ?

…スタイリッシュに言った出任せが本当になって来やがったよ。

ウケる、腹が捻れそうだ畜生が。

 

全員が既に戦いへ向かう人間の顔へ変わる。

流石、イェーガーズのメンバーだ。

 

エスデスもその反応に満足したのか、加虐的な笑みを浮かべ、軍帽を被る。

 

「イェーガーズ、出撃だ!」

 

『了解!』

 

……ノリで言ったが案外悪くねぇな。組織ものの定番ってのは男の心を擽る。

 

っと、真面目にいきますか。

面倒だが、ペアで事に当たれば問題はねぇ。

 

だが、危険種か……

 

「ハザマさん、頑張りましょうね!」

 

「ええ、努力はしますよ。

ですが、最終的に貴方が倒してくださいね。

ウロボロスの殺傷力は期待薄いですから。」

 

「任せてください。その為のこのイザヨイなんですから。」

 

「頼もしい限りですねぇ……貴女の真っ直ぐなところは欠点でもありますが、利点でもある。」

 

「それはどういう?」

 

「ご自分で考えなさい。」

 

終始、そのやり取りをランが見ていたが俺は気にしないでおいた。

会話から俺の本性を探りだそうとしてやがるな。

ま、別に構いやしねぇが、遊びとしてはやる価値はあるか。

 

疑心になるのも分かるがよぉ、俺様だって真剣にこの帝国救いたいとは思ってんだぜぇ?

 

…多分な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで、今に至る訳だが……コイツら、どう見たって人間だ。

……スタイリッシュが危険種の研究をしていたのは奴の研究室で資料を見たから分かってはいたが、人間に無理矢理危険種の細胞を組み込んだってのか。

 

となると、コイツらに自我はねぇ。

ただ生きるための本能に従って動く獣だ。

だからこそ動きが素早く、単調なのか。

 

「ここら一帯は殲滅できましたね。」

 

「ええ、他も終わっている頃合いかと。

……しかし、妙なタイミングで出てきましたねぇ。」

 

「はい、まるで、ドクターが死んだ時に動くようにでもなってたかのようです。」

 

「もしくは、この危険種を出した(・・・)輩が居るのかもしれませんね。」

 

「もしそうなら……」

 

「利益があるとお思いで?」

 

「ないですね。イザヨイで裁くべきです。」

 

……正義を定めたコイツは弱くねぇ。

迷いが消えたんだ、弱いはずがねぇ。

技のキレが増したな。エスデスに鍛えられ、トレーニングを重ね、完成してきていやがる。

 

コイツは心強ぇ。

 

「ナイトレイドとも何時かは殺り合う…どうしますかね。」

 

「それは任せます。私は暗躍とか苦手なので。」

 

「そちらは私が担当、貴方に戦闘は任せます。

それがパートナーというモノでしょうしね。」

 

「よく言いますよね……私が使えなくなれば容赦なくウロボロスで魂を喰らうつもりでしょうに。」

 

呆れたような視線を向けるセリューに俺は内心バレていたのかと驚く。

 

言ってもいねぇのによく気付きやがったな。

 

「…確かに、そうしますよ。有効活用しなくては損ですから。」

 

「ええ、そうしてください。

私の正義が、それで帝国を直せるのなら…私は命を惜しみません。」

 

「……覚悟、出来てるんだな。」

 

「勿論です!私は、もう……間違えたくない。」

 

「けっ、そうかよ。

なら、望み通りにしてやる。

だが言っておくぜ、俺は、悪だ。」

 

「ええ、貴方はどうしようもない悪だ。

でも、私には、その行いは誰かを救う正義に見えます。

善悪は簡単には計れない。私は、それでも貴方を正義と信じます。」

 

「…気味の悪い女になりやがって。」

 

悪の中の正義とでも言いてぇのか。

ムカつくぜ、テメェ……。

 

その信頼した目を俺様に向けるのはお門違いだって分かってやがってそうしてやがるのもな。

 

「そこはほら、ハザマさんの責任ですよ!」

 

「は?何言ってやがる。」

 

「ハザマさんが私を戻しちゃったんですから。

恩返しって奴です!」

 

「…恩返しで…いや、何でもねぇ。

あ~……チッ、戻るぞ正義馬鹿。」

 

「また馬鹿って……ハザマさんの方が馬鹿でしょ!」

 

「うるせぇ、黙ってついてくりゃいいんだよテメェは。」

 

マジで面倒になりやがって。

扱いにくくなるだろうが。

 

命を捨ててもいいって思考はな、俺様でも好きじゃねぇ思考なのさ。

回路でもショートしたかって疑うレベルだ。

 

テメェは正常じゃねぇよ。

正常な異常を身に付けちまった。

 

…責任は俺様って事か、クソが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、終わったからさっさと戻ってきたと?」

 

「ああそうだよ、つか何でテメェが居やがるイザナミ。」

 

任務も終わり、一通り会話を済ませてから部屋に戻る。

 

戻ってきたら、俺のベッドでイザナミが暇そうに寝そべっていやがった。

 

俺に休息を寄越せ、このままだと死ぬだろうが。

 

帽子を取り、ネクタイを乱暴に外す。

元々こういったのには慣れちゃいるが寝れるときは寝たい。

 

だってのにこの女がベッドを占領してやがる。

 

「おい、どけ。」

 

「断る、余は今不愉快なのだ。」

 

「ハァ?訳分からない事言ってないで退けって──」

 

 

「あの女が其方の部下か。」

 

……おいおいまさかよぉ……

 

「ヒ、ヒヒ……何だって不機嫌なのかと思ったらぁよぉ……嫉妬ですかぁ冥王様よぉ!?

ヒャハハハハ!おいおい女の嫉妬は見苦しいぜぇ?

確かに俺様の部下はあの正義馬鹿だ。

任務以外でも飯も食ってるし世間話もしてるぜぇ。」

 

「テルミ。」

 

「……ハァ、んだよ。」

 

「余は、苦しかった。」

 

「だからなんだよ。俺様には関係ねぇだろ。

テメェが勝手に発情して、勝手に苦しんでるだけだろうが、それに俺様の何が関係してるんだよ。」

 

「其方の全てだ。

余を、ここまで苦しいと思わせたのは何度目か。

ただの生娘(帝具人間)となり、ここまでの感情が湧いたのは初めてではあるがな。」

 

「そうかよ。」

 

つまらなそうに俺は吐き捨てる。

要は、構ってほしい。

それだけだ。

 

昔からコイツはそうだ。

やれ昔話、やれ視察、やれ共に寝ろ。

 

俺様は人形じゃねぇ。

 

「じゃあ今度は何をしてほしいってんだ、我儘娘。」

 

「そうさな、余に"膝枕"をさせろ。」

 

「……あ"ぁ"!?ガキじゃねぇんだぞ!

恋愛ごっこなら外でやりやがれ!俺様は寝てぇんだよ、分かる?疲れ果てて、寝てぇの!」

 

「理解している。余の膝で寝ればよかろう。」

 

「ふっざけんな、俺様に恨みでもあんのか!」

 

「まあ、殺された恨みならばあるな。」

 

「……だぁッ、くそが!今回だけだ、クソアマァ!」

 

「ククッ、愛い奴よ。それでよい。」

 

妖しく微笑み、座り直してから膝をポンポンと叩き、来るがよいと言うイザナミに何つぅミスマッチと俺は思った。

口には出さない。出せばうるさいからだ。

 

つーか、結局良いようにやられてやがる。

ムカツク……見下してねぇから更にムカツク。

 

殺してやれるなら殺してやりてぇ位になぁ。

 

仕方無いので、膝を枕に寝そべる。

 

「どうだ?余の膝は。至福の心地であろう。」

 

「悪くはねぇ。」

 

「……そうか。」

 

「……おい、イザナミ。

テメェは大臣につくのかよ。」

 

「答えは否だ。」

 

「じゃあ、俺様につくのか。」

 

「それも否だ。」

 

「……ならテメェは何がしてぇ。」

 

「…『破滅』。」

 

「あ?」

 

先程までの微笑みが嘘のように消え去る。

表情を無にして、破滅と答えたイザナミに俺は訝しむ。

 

「余は、破滅を望む。」

 

「そりゃ、国のか。」

 

「国?斯様な小さなモノではない。

余は、世界の破滅を望む。」

 

「んなもん果たして、何になる。」

 

「死が、余に囁くのだ。

余に、滅日を与えよと。ありとあらゆる生を喰らい尽くせと。

……尤も、本来の余の答えならばもっと……」

 

「もっと……何だよ?」

 

「気にするな。其方は寝ておればよいのだ。

余は、この時間が一番……。」

 

「……チッ。」

 

会話はそこで途切れた。

 

もどかしい。

コイツはそこまで侵食されている。

イザナミという帝具の特性に、魂まで影響を受けている。

 

生前ならばここまでではなかった。

だが、帝具人間という帝具を命とする器になったからこそ、コイツはこうなったんだろう。

 

テメェのわざと途切れさせた言葉の続きなんざ、俺様にはお見通しなんだよ。

 

なら、昔に頼めばよかったじゃねぇかよ。

 

一番好きな時間を、過ごすことをよ。

 

ああクソ、ドイツもコイツも……。

 

 

面倒で、ウザったくて、馬鹿で、嫌いだ。




重要な話はあまりありませんでしたね……()

そろそろ過去話でもするかな……


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過去の幻影

テルミ「よう、テメェら。俺様だぜ?」

イザナミ「テルミよ、これは何だ。」

テルミ「んなの決まってンだろ?前書きだろ。」

イザナミ「何処かで似たのを見たような気がするが?」

テルミ「パクってんだから今さらだろうが。オラ、今回は言ってた通り過去の話だ。」

イザナミ「懐かしいものだな。」

テルミ&イザナミ「さぁ始めるぞ、19話。」


イザナミ「……やはり、これは」

テルミ「それ以上いうな。」


何代も見てきた皇帝家。

そこには数々の出会いと別れがあった。

 

友として別れた、敵として殺しあった。

何人も、何人とも。

だが、苦ではなかった。

 

そうするのが一番で、その為に邪魔する奴は殺す。

 

誰が何と言おうが俺という個は悪だ。

大臣を屑だ何だと批判できる立場じゃあねぇ。

だが俺様にも忘れたくはない思い出ってのはあった。

 

始皇帝との始まりもあるが、その後の代の皇帝たち。何処までも、続く帝国の歴史に、人知れず俺は居た。

 

もう千年近くになる。

 

 

─建速須佐之男、否、ユウキ=テルミ。

 

─何だ。

 

─余はもう長くはない。お主を信頼して頼みがある。余の息子を、子孫を助けてやってくれ。

 

─…飽きるまででいいなら、やってやるよ。だから、さっさと死ね。

 

─まだ死なん。まだ、な……。

 

 

始皇帝、喜べ。

まだ飽きちゃいねぇことをな。

テメェとの日々はつまらなくはなかった。

 

頭のおかしい帝具を発案したのには頭抱えたがな。

それを実行できる技術力を発揮するのはおかしい。

 

ま、あの世で見てろや。

 

……まあ、俺の感性がおかしくなったが。

あの、時代のせいでな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォォオオ!!」

 

「ヒヒヒ、頑張れ頑張れぇ!」

 

鎌を振るう白髪の男を煽りながら紙一重で避ける。

まあ、その方がコイツの煽り耐性の無さが発揮されるからやってるわけだが。

 

「テルミィィ!」

 

「そう名前を呼ぶなって、テメェホモか?」

 

「んな訳あるか!打ち合ってる最中に無駄に煽んのをやめろって言ってるんだよ!」

 

「あー?テメェに煽りが効かなくなったら考えてやるよ。それまでは、馬鹿で愚図なラグナちゃんで居やがれ。」

 

ラグナ・ザ・ブラッドエッジ。

賞金稼ぎであり、そこらの業界じゃ『死神』の名で知れ渡っている白髪の男。

煽られなきゃかなり強い相手だ。

使っている武器も武器だしな……

 

ラグナちゃんは苛ついたのか鬼のような表情で迫ってくる。

 

「ウゼェ!」

 

鎌が変形し、大剣になり、横凪ぎに振るう。

当然、んな大振りな攻撃に当たるわけもねぇ。

 

「避けんな!」

 

「思い通りになるのは盤面だけで十分だろうが。

テメェの望み通りに当たってやる訳ねぇだろ。

後、大振りの攻撃はやめろ。隙がでけぇ。」

 

「チッ……それもそうか。煽りはウゼェがきっちり教えてくれるし、よく分からねぇ奴だぜ……。」

 

「ま、頼まれたからな。」

 

「頼まれた……ああ、帝か。

テメェは帝に信頼されてるんだったな。」

 

「恐れられるよりはよっぽどマシだと思うぜぇ?」

 

「邪魔な奴は寄ってこない利点はあんだろ。」

 

「ま、そうだな……今日はここまでか。」

 

武器を仕舞い、座り込むラグナに俺は壁に寄りかかる。

ラグナの来た経緯は簡単だ。

この帝国に寄っていたら帝直々に誘われたって訳だ。

 

金払いもいいとのことで承諾したラグナに帝は実力を確認したいとのことで俺とやりあい、敗北した。

最初の頃は苦戦したねぇ。

殺されるかと思ったぜ。

 

敗北したラグナは俺に稽古をつけてもらう事になったが、困ったことに俺はそういったのを教えんのは苦手の苦手。

ぶっちゃけると他の奴にぶん投げろよと思った。

 

だが、頼まれたもんはしょうがねぇ。

俺なりのやり方で教えてやってるが、これが食らい付いてくるのなんの。

 

「…それで、他の奴等は?」

 

「ああ、聞いてないのか。ラグナちゃんと俺様は城に待機。他は化物退治だ。最近、活発だからな。」

 

「視察とかで帝の護衛はやんのか」

 

「今日はしねぇよ。

毎日やるわけねぇだろ。俺の身が持たねぇ。」

 

「だろうな。」

 

そうだ、アイツは毎度毎度俺を連れ出しやがって……3代目はお転婆だ……クソ。

 

「じゃあ、アイツらは遅いのか。」

 

「遅くても4日、5日だろうが。

それまでは俺様が組手してやるよ。

……にしても、テメェも難儀なもんだ。

帝具に選ばれねぇ……なんてな。」

 

「黙ってろ。」

 

面倒そうに頭を乱雑に掻くラグナに俺は哀れむ。

 

そう、コイツは俺たちのメンバーで唯一帝具に一つも選ばれなかった。

だからこそ、メンバーの一人がラグナに特注の武器を作ったのだ。

それがあの大剣『アラマサ』。

 

すぐ名前つけたしな

まあ、相当喜んだんだろうよ。

ガキか、コイツ。

 

「だからこそ、コイツがある。」

 

「まあ、いいんじゃねぇの?

帝具が全てを揺るがす訳じゃねぇ。

テメェの強みはそれを引っくり返せるしな。」

 

「うわ、気持ち悪……急に褒めんのやめろよ!」

 

「あ"?ぶっ殺されてぇのか子犬ちゃんがぁ!」

 

「おーいいよやってやるよ。」

 

「テメェとは気が合わねぇ!

ここで誰が上かを教え込んでやるよクソガキ!!」

 

「アァ?テメェみたいなクソウザ蛇野郎を上司にするか屑が!」

 

「……。」

 

「……。」

 

 

 

「「ぶっ殺───「何をしておる。」…。」」

 

二人して、声のする方を見る。

 

紫の髪を束ね、全身を覆う和装束。

……散歩のつもりか?

 

まあいい、俺とラグナは互いを見てから舌打ちをして目の前の赤い瞳で俺らを見つめる少女へ向き直る。

 

「何も。それより、散歩か?」

 

「まあ、そのようなものだ。

本を読んでばかりでは体に悪い。

少しばかり城を歩こうと思ってな。」

 

「へえ、帝の読む本、ね……高そうだな。」

 

「…ラグナ、余の読む本は寧ろ安いぞ。」

 

「そうなのか?」

 

「恋愛小説だとかばっかだ。政治の本とかの本も読んでるがな。」

 

「へぇ、意外だ。もっと堅いイメージがあったからよ。」

 

「民衆や臣下の前で無様では示しがつかぬ。

このような時間くらいは、な。」

 

「俺達も臣下だろ?」

 

帝はそれを聞き、クスリと微笑む。

 

「其方らは…友人に近い。特に、テルミはな。」

 

「帝直属の護衛は伊達じゃねぇってことか。」

 

「テメェ実力を聞いてから言う台詞だろうが。」

 

「余はテルミが誇らしいぞ。」

 

「うるせぇアマ!」

 

「……素直じゃねぇな。」

 

「子犬ぅ……!」

 

俺様をからかいやがって、ぶっ殺してやろうか。

ウゼェ、マジウゼェ。

 

俺様が大人しくしてりゃいい気になりやがって。

 

「それで、二人はいつもの鍛練か?」

 

「コイツで鍛練になるか。俺様が鍛えてやってンだよ。」

 

「癪だが、仕方ねぇ。」

 

「……ラグナよ、何故そこまで強く在ろうとする?」

 

「あ?何でって……」

 

ラグナは考えるような仕草をする。

まさか、あまり考えずに強くなろうとしてたのか?

 

いや、恐らく言ってもいいのかとなってんのか。

 

「……さあな。だが、強くなりてぇのは確かだ。

何でかもハッキリしてる。」

 

「…そうか。」

 

「……。」

 

何処か寂しげな雰囲気のラグナに俺はからかいの言葉をかけてやれなかった。

 

強くなる理由、か。

 

んなの、簡単だ。

 

 

─神様。

 

─……。

 

 

神は、要らねぇ。

あの力が不要だからこそ、(中身)が強くならなきゃならねぇ。

 

ムカツクがな。

 

あの力は、世界を酔わせる。

 

 

「テルミ?」

 

「……あ?」

 

「ボーッとしておったぞ。疲れてるのか?」

 

「…いや、何でもねぇよ。

ただ、人間ってのはつくづく面倒だな、と思ってただけだ。」

 

「そうか。……では、余はもう少しだけ歩く。」

 

そう言って帝は歩いて去っていった。

中庭に、俺らだけになる。

 

「おい。」

 

ラグナが言葉を発する。

 

「んだよ。」

 

「テメェはどうなんだ。」

 

「何が?」

 

「惚けんな。テメェは強くなってどうしてぇ?

帝を守ることだけがそこまでの強さを持たせたのか?

俺には、そうは思えねぇ。」

 

「へぇ?頭が悪~いラグナちゃんが俺様を測ろうってのか?何がどうしてそう思ったのか聞きてぇな。」

 

「テメェの目って言うか、雰囲気だ。」

 

「雰囲気、だぁ?」

 

どうして、という俺の問いに真剣に答えるラグナ。

雰囲気、か。

 

「テメェは確かに守ろうとしてる。だが、その他にも何処か……焦りに近いのが見える。

何となくだ、だが、なんだかんだで俺とお前は付き合いが長ぇ。この何となくは間違ってねぇと思うんだが。」

 

「……チッ、変なところで思考が回りやがる。」

 

焦り、確かにな。

ウロボロスだけになったのも、神に近い力を捨てたのも、焦りからなのかもな。

 

焼き付いて離れない更なる過去の記憶。

いわば、俺は過去の存在だ。

 

過去の幻影(クロノファンタズマ)だ。

 

どうしたって過去を振り返り、焦らずにはいられねぇ。

 

そうだ、二代目…あの時代から、武神は……

 

 

─武神、降臨し厄を払い人々は其の姿に魅了された。

 

 

そうだ、其の通りだ。

強すぎた(・・・・)

あの力は、異常を通り越したモノ。

システムに近い力。

 

破壊と言う機構を担った神の御業。

 

だからこそだ。

人類には早かった。

 

 

「…いずれ来る、世界の酔い(・・)。」

 

「酔い?」

 

「それを、覚ますために俺自身が強くならなきゃならねぇ。」

 

「……よく分からねぇが……。テメェが目指すのはそれか。」

 

「ああ。」

 

「…世界と一人、お前ならどれを選ぶ?」

 

「は?」

 

唐突だった。

小難しい質問だ。

天秤のような話だ。

 

世界と一人を重りにして秤に置く。

どちらが、重いか?

 

「世界と、帝。」

 

「……テメェ。」

 

「分かってる。だが、テメェの守るは、この二つを同時にやろうとしてる。

けどな、それは……無理だ。

世界を守って個人を守るなんざ、無理だ。

だからこそ、聞かせろ。テメェはどっちだ。」

 

「どっちか、だと……?」

 

そんなもの、世界だ。

(世界)を守り、次の皇帝の支援をする。

そんな存在が俺なのだ。

 

 

─どうか、助けてやってほしい。

 

 

それが契約だ。

国を守れ、という。

国を助けろ、という。

 

……だが。

 

 

─テルミ。

 

 

あの声が、俺を狂わせた。

決意を粉々に打ち砕いた。

俺様も一人の人間だってのか。

 

あの女が、帝が俺を縛る。

悪くない縛りだった。

 

だが、俺には契約がある。

それを理解して帝は俺に引っ付いてる。

 

そうだ、問題はねぇ……。

 

 

「……んなの決まってる。──だ。」

 

「…へっ、そうかよ。」

 

ラグナに答えて、俺は少し迷いが生まれた。

だが、この迷いは大事なものだ。

俺という個が持つべき迷い。

 

……よりによって、コイツからか。

 

悪くない。ウゼェが筋は通す男だ。

 

俺とラグナはそのあともう一度だけ鍛練を始めた。

強くなってくる『死神』に感心しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ケッ。

ウゼェ記憶だ。

 

それは、後の時代において、過去に見ないほどの大罪人との話。

だが、俺と帝…仲間たちにとってはそれは罪の話ではなく。

 

 

─後は、頼んだぜテルミ。癪だがな。

 

 

なぁ、ラグナ・ザ・ブラッドエッジ。

 

テメェは何で俺に託した。

 

其の疑問は、今でも続く。

 

悩む俺を見るのは、明かりを俺に当てる月だけだ。




大学受かったぞぉ!


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組織内で

過去編にしかあの前書きは書きません。
すまねぇ。

それと、また新しい作品の構想が出来てきて辛い。


イェーガーズ。

俺が潰すべき組織で、それでいて妙な暖かみを持つ組織。エスデスが組織のリーダーだからという偏見でかなりの鬼畜部隊になるかもしれないとは思った。

だが、それとは真反対だった。

寧ろ、仲間内では厳しさはあるが優しさというものが確かにある。

 

外道な奴は確かにいるが、ここにはそれがあまりいねぇ。

……だからこそ、やりにくい。

潰すことには潰す。

だが、それにしたって…やりにくい。

 

「ハザマさんもどうぞ。」

 

「どうも。……すみませんね、毎度。」

 

「いいのいいの!私が好きでやってるんだから!」

 

「……そうですか。」

 

今だって、目の前の焼却部隊からやってきたボルスという男は見た目を除けば理想的な奴だ。

優しさに溢れてやがる。

 

それでも仕事で、誰かがやらねばならないからと。

その罪を背負う。

しかも、妻子持ち。素顔は酷いとか本人は言うが、本人の良さを知ってる以上、気にはならない。

 

「ボルスさんは、優しいですねぇ。」

「えっ?」

 

気付かぬ内に、俺の心の声が現実となる。

らしくもない。

今までそんなに親しく接してもいないのに。

 

何だって、今さら。

 

ボルスも、俺の言葉にキョトンとしている。

 

「いえ、恐らく、そこにいるウェイブさんも思っている事でしょう。」

 

「え、俺?いや確かに思ってたけどよ……。

ボルスさんは優しいし、頼りにもなるし。

そんな人が助けた人に怖がられるのは間違ってるとは思ったぜ。」

 

「聞いてませんよ、そんなこと。ねぇクロメさん?」

 

「うん。聞いてない。」

 

「うぉい、お前ら!酷くない?俺の扱いこれ!?」

 

「「まあね。」」

 

「……海の男は、泣かない……!」

 

悲しき男、ウェイブ。

今時じゃ、あまり見ない熱血漢。

海軍から来たグランシャリオの使い手で、クロメとはよくいる。二人でペアって印象はある。

 

コイツも悪い奴どころかいい奴の部類に入る。

悪にも償いの余地はあると思える人間。

殺すだけではないと、言える人間。

 

そんで、暗殺組織から来た少女、クロメ。

八房の使い手で、かなりの実力者。

どこかおかしなところはあるが人並の感性はあるにはあるらしい。後は、大食い。

コイツもまあ、仕事だからって面はありそうだ。

暗殺組織のある洗脳と投薬の件は知らねぇがな。

 

この二人も、どちらかと言えば……。

 

「前にも言ったけど、私は優しくなんかないよ。」

 

ボルスは暗い声でそう言う。

優しくはない。

残忍なのだと。

 

疫病にかかった人間を、他の村に蔓延するのを危惧して村ごと焼き払った話。

無実を主張する人間を処刑命令でルビカンテで燃やした話。

 

自身は数え切れぬほどの恨みを買ってると言う。

 

……はっきり言って、それは普通だ。

あまりにも普通で、俺はこのボルスという男は死んでもいいとは思わなかった。

 

昔の俺なら何の感慨も沸かなかったろうが、今の俺がこれだ。

 

「でもそれは、軍人として命令で……」

 

「誰かがやらなきゃいけないとはいえ、業は業……。

助けた人にそんなリアクションをとられるのも…報いだと思ってる。」

 

「……ボルスさんは、見た目以外、普通すぎますよねぇ~……」

 

「ハザマさん……?」

 

俺は、また心の言葉が漏れでた。

今日は駄目な日だと自身に呆れる。

 

「貴方の言う恨みを買われているだとか報いだとかは、普通ですよ。

そんなの、他の仕事をしててもありますからね。

呉服屋が恨みを買うのだって、警備隊の人が報いを受けるのだって、そんなのは普通で、些細だ。

ボルスさんのは軍人のそれなだけでね。

だから、背負い込みすぎは毒ですよ。」

 

「そ、そうだぜ!それでも辛ければ……良ければこれから俺が相談相手にな……──」

 

ウェイブが言いきる前に、扉が開いた。

エスデスか?と思ったが、どうやら違うらしい。

 

「あーなたっ」

 

「パパ~」

 

「ややっ、どうしてここへ?」

 

入ってきたのは、子連れの女性で、大層驚いているボルスの反応からしてこの二人が家族、なのだろうが……

普通に美人で驚いた。

しかも、かなり仲がよろしいようで。

 

「貴方ったら一緒に作ったお弁当忘れて行っちゃうんですもの。」

 

「こいつはしまった!」

 

「パパのうっかりものーっ」

 

「辛い仕事だからこそ体力気力は充実させないと!」

 

「うん!気を付けるよ!」

 

…家庭、ね。

ごく普通の、ありふれた家族。

それを見て、俺は一層迷う。

 

ボルスが死ねば、その妻と娘は悲しむだろう。

それを、殺してしまって、いいものか。

 

「(……。)」

 

「妻と娘は私のやっていること全部知っててなおも応援してくれるの!

だから私は辛いことがあっても全然平気。」

 

正直、眩しかった。

ウェイブなんざあの家族から発せられる尊き光に顔を手で覆うほどだ。

 

これが、愛か。

 

「……なら一層、生き残らなくてはね。

ご家族の方々だけでなく、我々も頼ってくださいね。」

 

「うん、ハザマさん、ウェイブ君、クロメちゃん。

ありがとう!」

 

「いや、いいよ。な、クロメ。」

 

「ん。」

 

その後しばらく、ボルス達家族の団欒を見ていた。

本当に……儘ならねぇ世界だ。

 

帽子を深く被り、茶を飲んだ。

 

「(やっぱ、うめぇな。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ラン、ハザマ。お前らには話しておく。」

 

「はい?」

 

「……。」

 

あの後、話があるそうとエスデスに庭に召集され、来てみたらランが居た。

エスデスは庭の花を見ながら俺達に話し掛ける。

 

見ている花は……ああなるほど。拷問用ね。

 

「あの危険種達…大臣の調べでは元人間だそうだ。」

 

「へぇ。」

 

「やはり…身体的特徴が近いとは思ってました。」

 

「人間を危険種にする…そんな真似を出来るとは帝具使いのみだろう……」

 

ま、だろうよ。

それも、あのイカレドクターのな。

マトモではないと一瞬で分かる。

過去の経験からだがな。

 

「ドクターがやった可能性は高いでしょうね。」

 

「ええ、研究室を調べましたが、やけに淡白だと思いました。もっと色々な数の研究をしてるハズなのに中は大人しいものでした。この結果から導き出せるのは……」

 

「どこか別に研究所がある、か。」

 

「はい。そこに繋ぎ止めていたものが出たのかと……」

 

「……。ハザマ、お前はどうだ?」

 

「まあ、ドクターがやったのは間違いない。

あの手腕にパーフェクターがある…それだけで動かぬ証拠でしょう。それに、以前よりやたら危険種への興味が大きかったところを見るに…危険種を解剖し、人間にそれを植え付けようとしたのかもしれません。」

 

「ふむ……。思ったより、ずっと狂った男だったのかもしれんな……。」

 

こうして話をして、スタイリッシュは消して正解だった。

そう確信する。

 

「しかし、危険種にも限りがあるはずです。

今もセリューさん達が駆除を─」

 

「問題はそれで終わりじゃないぞ。」

 

「…?」

 

「そもそも、そいつ等は自力で出てきたのか?

誰かに解き放たれたのではないか?

スタイリッシュが閉じ込めていたのなら、厳重にしていたはずだ。」

 

「!」

 

「となると、第三者…それも愉快犯の可能性がありますね。」

 

「…二人とも、調査は任せる。根が深い問題かもしれん。」

 

「ええ、分かりました。」

 

「了解です。」

 

面倒なのを任された。

俺も気になってはいたからいいか……。

 

「しかし、隊長が花を愛でるとは珍しいですね……」

 

「ん、ああ。

この花は傷口に塗り込むと激痛を誘発するんだ。

軽い拷問に使える。」

 

「……勉強になります。

では、私はこれで。」

 

「……私も、行きますかね。」

 

「ああ、気を付けろよ。」

 

…しかし、あの女、用でもあんのか?

気付いちゃいるが、黙っとくか。

俺は調べるためにも外へ赴くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は行ったか。

ならば……

 

隠れて聞いている奴を呼ぶか。

 

「そろそろ出てきたらどうだ?冥王(・・)。」

 

「…やはり、バレていたか。」

 

柱の裏から姿を現した異様なる存在感を放つ少女。

私より歳は下に見えるが、帝具人間だそうで、恐らくは見た目よりずっと生きている。

 

「盗み聞きとは、冥王の名に相応しくはないな。」

 

「ククッ…何、其方らの推理が偶然聞こえたものでな。

邪魔をするのも悪いと思っていただけだ。」

 

「悪びれもせんとは。

それで、何の用だ。」

 

「イェーガーズの隊長に遅れ馳せながらの挨拶をとな。

互いに大臣を通じて名は知っているようだが。」

 

「お前が新たな組織を作るという話も知っている。

聞けば、イェーガーズよりも少数だそうだな?イザナミ。」

 

目の前の冥王 イザナミは依然として余裕のある優雅な笑みを崩さない。

挨拶に来たのは本当だろうが、他にもある。

私の勘が、そう告げていた。

 

勘…ナジェンダでもあるまいに。

だが、悪くはない。

 

「癖の強い面子を多く集めては崩れるやも知れぬと学ばせて(・・・・)貰ったのでな。」

 

「ふん……それで、人数は?」

 

3人(・・)だ。」

 

「……ほう。お前を入れてか。」

 

「察しがいい。十分だと判断したのでな。」

 

十分ということは自身と同じかそれより少し下の奴が二人か。

こうして対面して話すだけでも目の前の存在の強さに自身の戦闘意欲が今すぐ戦いたいとうるさくなる。

私と同等の強さ……ふっ、これはいい。

 

「もしかすれば、何処かでぶつかるやも知れぬな。」

 

「そうなれば、勝つのは我々イェーガーズだ、冥王。

……ところでだ。」

 

「?」

 

「お前は恋は知ってるか?」

 

「……恋、恋とな?く、ふふふふ……」

 

私の質問に冥王は笑いだす。

少しイラッと来たが、返しが来るまで待つ。

 

「すまぬな…其方が恋をしているとは思わなんだ。

うむ、知っておる。余も、しておる。」

 

知っている。しかも、今もしていると言う冥王にお前もかと思った。

 

「少し気になるな、どのような男だ。」

 

「余も気になった。互いに恋ばなと行こうではないか。」

 

「ふ、悪くないな。」

 

それから、しばらく語り明かしたが、どうも冥王の相手は気難しい奴でひねくれているようだ。

難儀だなと伝えると、其方もだろうと言われたので違いないと返した。

 

…妙だな、本来ならば組織的に敵対しているはずが仲良くなるとは。

しかも、共通の話題が意外とあると来た。

 

拷問には流石に乗らなかったがな……。

 

しかし、気難しいか……イェーガーズの場合は、ハザマか。あれと似たのならば相当面倒な奴を好いたな、冥王。




帝国一混ざるのが怖い恋ばな


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テルミレポート

お待たせしました。
ゴタゴタから解放されたので投稿しました!
待ってくれた方がいれば、嬉しいです!


帝国内部及び外部の動きがより激しくなり、新たな人員を敵も仲間も増えていくこの頃。

覚えるにしても限度がある。

どうでも良い奴は無視するにしても多い。

 

なので、ここは記録をつけることにした。

 

順番は警戒、重要、最重要の順だ。

意味合いは良いも悪いも混同する。

 

仲間且つ俺の目的を知るものには信頼するという意味合いで書き残すというのもあるが、これの本来の役目は記録だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

─警戒対象─

 

・ナイトレイド

 

『ナジェンダ』

帝国の最重要警戒組織ナイトレイドのリーダー。

といっても、本部のというわけでなく帝国内部での活動を主とする部隊のリーダーだ。

元将軍、それもエスデスが警戒(楽しみ)とするほどの人物であり、その実力は文句なしで将軍級だろう。

 

ナイトレイドと協力体勢を取ってはいるが利用するされるの関係である以上信用のしすぎは少々危険だ。

 

そういった意味で警戒対象とする。

だが、ナジェンダの判断力は目を見張るものがある。

それによる状況の変化はこちらにとって吉と出るか、凶と出るか。

 

『アカメ』

ナイトレイドの切り札。

帝国の暗殺部隊に所属していたが単身で離反し、ナイトレイドについた。

帝具 村雨を所持し、その実力は高いといえる。

村雨の奥の手を用いればエスデスとも互角以上に渡り合えるだろう。

任務には冷静且つ機械的に対応する。

味方であるから心強いが、もし、仮に戦うことになれば。

 

─どちらかが必ずや死ぬだろう。

 

 

・イェーガーズ

 

『Dr.スタイリッシュ』

 

始末したので記載は控えておく。

 

 

『ボルス』

焼却部隊から編入された帝具使い。

帝具はルビカンテ。

任務には私情を押し殺し遂行する男であり、ルビカンテの炎に呑まれれば消すことはできないので焼かれて死ぬ運命から逃れられない。

本人の身体能力もあり、驚異性は十分だ。

が、基本遠距離での対応、それも飛距離はそこまでであり重量もあるので警戒とまでとする。

殺害対象ではあれが味方に引き込めれば心強い。

 

後、料理が上手い。

 

 

─重要─

 

『タツミ』

勝手な解釈ではあるが、コイツはこの戦いの中心だと思っている。

というのも、ナイトレイドでありながらイェーガーズ隊長 エスデスの意中の相手であり、鎧型帝具…そのプロトタイプであるインクルシオを十全に扱えているからかもしれない。

インクルシオは関係無いかもしれないが、今やナジェンダのチームの要の一人だ。

実力も戦いの中でインクルシオの適応能力などもあってか飛躍的に上昇しており、将軍クラスの才能はやはりあったようだ。

だが、懸念すべきはそのインクルシオ。

 

インクルシオの力を引き上げすぎている節がある。

これに関してはその果てが見えているからこそ何とか防ぎたいところだ。

貴重且つ強大な力の1つが暴走するのは惜しい。

それを大臣に利用されればご破算間違いなし。

 

そういった意味でも今後とも観察を続けていく。

 

 

『ウェイブ』

イェーガーズの一人であり、タツミと同じ鎧型帝具であるグランシャリオを扱う元海軍兵。

コイツはタツミのように帝具の力を必要以上に引き出しているわけでもないし既に完成された器だ。

だが、イェーガーズの中でも重要な立ち位置だと俺は思っている。

戦力としてではなく、『何か』に俺は警戒しており、ウェイブを重要項目に加えた。

 

何をするかは今後次第だが……。

 

 

『セリュー』

俺の目的を知り、協力してくれている仲間の一人。

そして、帝具イザヨイの使い手だ。

歪んだ正義感があったが、現状は正気の部類といえる。

実力も伸びてきており、いずれは重要な場面で本格的な戦力として出したい。

 

イザヨイの力は『悪』を裁く力。

悪と断定された者の罪の数だけその鋭さが増す。

エスデスや俺なら間違いなく豆腐を切るように斬れることだろう。

敵でなくてよかったと思える。

まあ、引き込んだのは俺で、陥れたのも俺だが。

 

現状は他と同じく観察を続けていく形になる。

 

 

『クロメ』

アカメの妹であり、暗殺部隊所属の帝具使い。

帝具は八房で、本人の実力も高い。

が、それはドーピングも込みであり、それを抜きにすれば症状が表れ、マトモな戦闘は不可能だろう。

しかし、それはもしもの話であり、現状は違う。

八房によって操っている死体は未だ不明ではあるが、何れも強力だろう。

もしかすれば、危険種の存在も有りうる。

 

加えて、クロメは危険思想に近いのを持っており、それがイェーガーズにどのような影響を与えるのかも不明である。

 

 

『ラン』

セリューと同じく協力してくれている男であり、帝具 マスティマの使い手。

常に冷静であり、思慮深いが根底にあるのは復讐心。

ナイトレイドに何故入らなかったのかと疑うほどだが、中から国を変えていくという信念があるからだと断定。

空からの戦闘は地上の相手に否が応なく苦戦を強いる。

 

しかし、どうも扱いに困る。

基本、その優秀さからエスデスの元から離れることがあまりないため、動かすには少し作業を要することだ。

 

しばらくは情報を渡して、動かせるときに動かす方針だ。

 

 

 

─最重要─

 

『皇帝』

帝国の最高権力者、皇帝。

餓鬼ではあるが皇帝としての教育はされているらしく、ただの馬鹿ではない。

シコウテイザーを唯一扱える人物『であった』。

現在、シコウテイザーの精神的負荷を耐えるようにすべく修行を続けている。

だが、他に気にするべき点はそのシコウテイザーそのもの。

あの大臣が保険もなくあれを放置するとは思えない。

改造をされては計画が崩れる可能性が上がる。

 

何にせよ、皇帝を守るのが契約なのでもしもの時は…。

 

 

『オネスト大臣』

諸悪の根源であり最大の敵。

肥満で死ぬのではないかというほどにまで肥ってはいるが俺は騙せない。

恐らく、武術を学んでいたと見える。

所持している帝具は帝具を無力化するアンチ帝具。

始皇帝がもしもの時のために造ったものを屑が使うとは思いもよらなかったが、それはそれだ。

 

後述にて記載する人物の起動を行ったのも忌々しいことに大臣であり、新たな後ろ楯を手に入れた。

だが、それにすら警戒するとこちらも警戒し、今後も動向を探っていく。

 

息子がいて、旅をさせていると聞いているが、もし帰ってきたら即刻始末しなければ。

 

 

『冥王 イザナミ』

第三代皇帝であり、現在は冥鏡死衰 イザナミと同化した帝具人間。

性格、実力ともに変わっており、性格はイザナミの性質である『死』によるものか死を重視するようだ。

実力は見積もっても将軍クラスはある。

前述したオネスト大臣が起動させた人物がイザナミである。殺害したDr.スタイリッシュもそれに加担していたようだ。

冥鏡死衰の能力は速度強化と3つのビット操作。

奥の手は……不明だ。

というのも、デモンズエキスと同じで冥鏡死衰には奥の手が存在しない。

故に、奥の手が生まれる可能性があるか、既にあるかの二択。

 

イェーガーズとは別の組織を大臣との交渉により創られることになり、イザナミがその組織のトップとなるようだ。

メンバーはイザナミを含め、三人。

何れも強豪揃いになるだろう。

 

エスデスとも会話をしたらしく、楽しかったとのこと。

 

 

『エスデス』

帝国最高戦力の一人であり、イェーガーズのリーダーであり、拷問の達人。

帝具はデモンズエキスで今までの使い手よりも遥かに強い。

しかし、帝具より警戒すべきなのはエスデス自身だ。

将軍になるまでに帝具もなく、その身1つで将軍になるほどの実力、脅威性は十分だろう。

 

どうやら、タツミに恋をしているらしく、執着心が尋常ではない。

タツミを利用するのも考えたが、部下を優先するという言葉で路線を変更。

想いを寄せる相手だろうと殺すのは流石といったところだ。

攻略にはまだ時間を要するだろう。

それまでにどれ程の被害がナイトレイドに及ぶかは不明。

 

 

『ブドー』

帝国最高戦力の一人。

帝国において、ブドー大将軍の名を知らぬものはいないほどであり、エスデスが帝国の剣ならばブドーは帝国の盾である。

帝具はアドラメレク。

マスティマのように浮けるようで、アドラメレクの能力による雷を使うことで敵を蹂躙する。

そして、大臣ではなく皇帝に従う男である。

 

そのお陰で敵ではなく味方なのが頼もしい。

いざとなれば前線への投入を本人と皇帝との間で決定した。

 

 

『スサノオ』

ナジェンダの帝具であり、帝具人間。

家事全般、戦闘をこなす万能型であり、実力はエスデスには及ばないが高いといえる。

 

そして、ウロボロスの真の姿 『武神 建速須佐之男』がウロボロスと二つに分かれた姿。

須佐之男としての能力の大部分はこちらにいったようで、『禍魂顕現』を使うことでそれを発揮する。

 

『禍魂顕現』は使用者の生命力を用いて発動する強化であり、三回使えば使用者は必ず死ぬとのこと。

 

諸刃の剣ではあるが、どうなるのか。

 

もし使えなくなれば、その身はウロボロスによって喰らうと互いで決めた。

これにより、条件は魂を喰らい、ウロボロス自身を強化するだけとなった。

 

その条件も、あと少し。




感想、ご指摘があればお願いします

あ、活動報告追加しました


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動キアリ

はい、どうも。
最近この小説の展開をどうしたもんかと悩むロザミアです。

テルミさん順調ですよね。


─だから、ちょっと悪ふざけしたくなりました。


ナイトレイドの新アジト。

先日、俺はそこへマーグファルコンに紙を持たせてを飛ばして、ナジェンダ……いや、ナイトレイドメンバー全員に情報を渡すことにした。

 

セリューはウェイブと見回りをするとのことであったが……さて、どうなるのやら。

 

貴重な鳥だが、ラバックを経由して貰った。

 

じゃじゃ馬な鳥かと思ったが、案外素直で調教が行き届いていると感心したな。

まあ、イェーガーズの奴等には急に鳥なんて買ってどうしたと聞かれたが、『情報屋として前から欲しかった』と告げると納得された。

 

新アジトが遠くて直接会えねぇのは残念でならねぇが、まあそこはどうとでもなる。

問題は渡した情報を元に任務を完遂してくれるかだ。

 

それに、イェーガーズが動いてくれりゃ……確実に一人二人は殺せる。

 

感情云々を抜きにして、イェーガーズの中で厄介なのはボルスとクロメだ。

ボルスは1度命中すれば消えることのない炎を噴射できる。

クロメは八房で死体を操れる。

 

ならば、ここは……ナジェンダの采配を信じるか。

ナイトレイドを好きに動かせたらどんなに楽かって話だ。

 

イェーガーズがここまで足枷になるとは思わなかったが、収穫も常に大きいので我慢できる。

問題はそこではない。

何時、事が始まるかだ。

 

……それに、今日に限って冥王は来ないときた。

いつもなら来るが、今日は何かある、か。

 

大臣に確認をとるか?

いや、やめておこう。下手な詮索はより疑いを深める。

エスデスならばまだいいが、大臣にだけはその疑いを強めるわけにはいかない。

そも、大臣が冥王と二人の盾を新たに得て、安心するのか?

あり得ねぇ、それだけは断言できる。

まだ何かがある。

 

「……下らねぇ。」

 

そう吐き捨てるが、可能性が無駄にありやがる。

いくつも思い付いてしまう。

そもそも、大臣に護衛と呼べる護衛が付き添っていないのが不思議だ。

自分は狙われないという自信の現れ…な訳がない。

恐らく、大臣自身もアンチ帝具以外に何か持ってやがるな。

それか、イザナミがそうだってのか?

 

なら、最終局面でイザナミを力を全て引き出して投入か。

だとすると、シコウテイザーは放置?

それこそ、ないな。

イザナミは確かに強い。

だが、殲滅力を取るなら、シコウテイザーに軍配は上がる。

イザナミを投入するのは、終盤の一歩手前か。

だが、シコウテイザーを使えなくするのは俺にとっても痛手になる……チッ、面倒くせぇな。

 

(正直な話、大臣が大人しすぎる。

皇帝との話の時もいつものように策を巡らせる様子もない。

ナイトレイドに関しては非常時以外はエスデスかイザナミに任せる方針か?

いや、だとしても…………待てよ。)

 

そうだとするなら、今日が決行日になり得る。

 

イザナミが居なく、大臣がある事に意識を向けている隙が今だ。

なら、仕掛けるしかない。

だが、何処でだ……何処でなら安全且つすぐに始末できる。

 

─…いや、あそこがあるか──

 

「ハザマはいるか!」

 

扉が乱暴に開けられ、開けた本人であるエスデス隊長様は俺をご所望らしい。

何だ、何かあったのか……?

 

「はい、居ますよ~。エスデス隊長は元気がありますねぇ。」

 

「来い。」

 

「え、あの、挨拶はスルー?」

 

「来い。」

 

「……はい。」

 

エスデスがここまで急かす、てこたぁナイトレイド案件か。

それとも、ナイトレイド以外の手配犯か。

 

だが、手配犯が今の帝都で動きをするとは思えねぇ。

となるとナイトレイドになる。

 

エスデスについていき、イェーガーズの会議室に到着し、中へと入ると俺以外は揃っていた

 

「遅いですよ、ハザマさん。」

 

「申し訳ありません。先程まで立て込んでいたモノで。」

 

「それで、隊長!ナイトレイドが見つかったらしいですけど、俺たちはどうすれば!」

 

俺とセリューが挨拶を交わしている間にウェイブが作戦を聞く。

やっぱ、ナイトレイドか。

 

……だとすると、妙だな。

 

エスデスは帽子を深く被り、作戦を言う。

 

「東ロマリー街道沿いにてアカメ、マインと思われる人物が目撃されたとのランからの情報が来た。

そこまで向かい、聞き込みをする。」

 

「人数は?」

 

「無論、全員だ。」

 

「帝都はどうするので?」

 

「イザナミの組織があるだろう。

聞けば、メンバーが到着したそうだぞ?」

 

「……!」

 

イザナミの組織メンバーが……!

なるほどな、エスデスとしちゃ癪ではあるが、イザナミの実力は認めているわけか。

 

防衛、取り締まりは三人で十分、てことね。

 

「すぐ出発する。いくぞ!」

 

『了解!』

 

さて、今回の戦い。

吉と出るか凶と出るか。

もちろん、俺にとって、だがよ。

 

 

 

・ ・ ・

 

 

 

 

ある一室にて、その会話が開始される。

一人は肉を食らいながら、一人はそれを気にせずぼんやりと窓の奥にある外の風景を見ながら。

 

しかし、肉を貪る肥えた男の発言に、外をみる女─余─は視線を男へと向ける。

 

「……ハザマが怪しいとな?」

 

「ええ、それはもう。」

 

笑みを深め、男─オネスト大臣─はそうだと言う。

 

その言葉に余は目を細める。

 

─このタイミングで、か。テルミよ、些か動きすぎたな。

 

「何故かを聞こうか。」

 

「妙にナイトレイドの動きが良くなった。

ハザマさんがこちらに来てから、ねぇ……。

最初は他の文官かと思い、何人処刑したのですが、どうにもそれが変わらないようなので、ね。

私も疑わざるを得ないのですよ、冥王様。」

 

「余が気に入っているから、報告をしたと。」

 

「ええ、親しいようなので。」

 

「ふむ……。余から後で聞いてみよう。」

 

「もしそれで本当にこちらを裏切っているのなら言うわけがないですが……。」

 

「何、それならば1つ試せば良いだけのことよ。

真にこちらに身を置いているのなら、出来ることだ。」

 

「ほほう?」

 

興味ありげに食事の手を止め、こちらを見る大臣に余は立ち上がり、外を眺めるのをやめ、大臣へと向き直る。

 

何、これもまた一興か。

余の配下を紹介する良い機会だ。

 

「だが、1つだけ条件がある。」

 

「条件ですか?」

 

「ああ───」

 

 

 

 

「─ハザマをこちらの組織へ寄越せ。」

 

「─へぇ?」

 

 

恨むなよ、余の配下となることを。

何、別にいつなるか……いつするか(・・・)は答えていなかったからな。

それに二回目なのだ、構わぬだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

大臣の部屋から出て、集まるように指示をしていた部屋へ入る。

 

「ようやく仕事か、冥王。」

 

「……。」

 

既に中にいた二人のメンバーが入室した余へと視線を向ける。

荒々しい口調で、一人が余に問う。

 

「ああ、暇なのでな。だが、今回は力の見せしめだ。

よって……」

 

「私は待機か。まあ、そちらの体の調整は帰還したらにしよう。」

 

「うむ、それで良い。では向かうぞ。」

 

「クク、ああ……楽しみだ。」

 

さて、どうなるか……。

せめて抗う位はしてほしいものだな。

ナイトレイド、イェーガーズ……。

 

 

 

「─さあ、余興だ。」

 

 

─余を楽しませよ。

 




さて、もうメンバーについてはお察しの方もいると思いますが……

まあ、次回は波乱の幕開けです。


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二つの組織の対決、そして

今年最後の更新かなぁ……




東ロマリー街道ねぇ……。

ここらの地理には詳しくはねぇが……さて、どうしたもんかな。

 

馬に乗り、到着した翌日、俺たちはナイトレイドの情報を聞き回り、昼食を取りながら全員の得た情報をエスデスへ伝える。

 

「ナジェンダはそのまま東へ、アカメは南へ。

ここに来て、二手に分かれたか。」

 

「東へいけば安寧道の本部であるキョロクへ。

南へ行けば反乱軍の息がかかっているであろう都市へ。

……いずれにきてもキナ臭いですね。」

 

「ふむ。」

 

「急げば追い付きますよ、行きましょう!」

 

「いや、待て。」

 

深く考えるのが苦手なウェイブの発言にエスデスが待ったをかける。

 

「ナイトレイドは帝都の賊だ。

地方まで手配書が回ってないからと油断し、顔を出したところを追跡されたあげく二手に分かれたところも目撃されている。

……都合がよすぎるな。」

 

「ええ、高確率で罠かと。」

 

「わざとらしく人目についたって事ですか?

私達を誘き出して倒せために。」

 

「となると、私達を分断させて倒す作戦でしょうかねぇ……どちらにせよ…これは面倒だ。」

 

「ナジェンダはそういう奴だ。

燃える心でクールに戦う……油断ならん。」

 

エスデスをしてそう言わせるか。

元将軍は流石って事ね。

 

「ってことは追うと危ないですね……」

 

「……いや、この機は逃さんよ。

今まで巧妙に隠れてきた鼠どもがご丁寧に顔を出してきた。

罠だろうとそれごと叩き潰すぞ。

私とセリュー、ランはナジェンダを追う。

そして、残りのメンバーのハザマとボルス、クロメとウェイブはアカメを追え。」

 

「……。」

 

その指示を聞き、俺はクロメを見やる。

クロメは全てを顔には出さないが、その口元を僅かに歪ませていた。

 

……姉妹の対決・序ってとこかね。

 

「常に周囲を警戒しておけ。

そして相手があまりに多数で待ち構えていたようならば退却しようと構わん。

攻めろと言えど特攻して死ねと言っている訳じゃないからな。

だが──」

 

 

「─帝都に仇なす最後の鼠だ。

着実に追い詰め、仕留めてみせろ!!」

 

『了解!!』

 

…ったく、こういうのは嫌いじゃねえんだがな。

 

さて、どうするか。

恐らくは戦闘になるが、どう立ち回るかね。

今回の戦闘で俺の担当場所に居てほしい奴は……

 

鍵はアイツか。上手く回るとするか。

 

誰が死ぬか……誰が生きるか。

見物だな?

 

 

 

 

 

 

 

 

馬に乗り、アカメ達を追う。

何にしても、俺様がスパイしてるとはいえアイツらは俺相手でも容赦はしない。

下手に加減するとバレるからな。

まあ、アイツらの攻撃で死ぬかと聞かれれば冗談きついと返してやる。

 

どのみち、通るべき道だ。

誰が死のうが……

 

……。

 

チッ、面倒だ。

 

恐らくではあるが、本命はこっちだ。

だからこそ、俺がこっちに配備されたのは…僥幸なのかもな。

 

ナイトレイドがエスデスを除いてイェーガーズの中で特に警戒しているのはボルスとクロメだ。

 

帝具さえ無くなれば……何てこともない。本人の実力もあったからこそイェーガーズに配属されたんだからな。

 

「帝都最強のナイトレイドが相手か…私なんかで勝てるのかなぁ……」

 

「……。」

 

隣のボルスが弱気な声を出す。

…まず、神ってのは与えるものを間違ってるよな。

この見た目でこれなんだから世の中おかしい。

 

「大丈夫ですよ。前に一度、ナイトレイドの一人と戦った時には応戦されませんでしたけど実力的には俺と同じくらいに感じました。

力を合わせればきっと勝てますって!

ボルスさんの帝具は多人数相手に向いてますし、むしろ心強いです!」

 

「……そうかなあ……」

 

「なんて調子の良いこと言ってるけどさらウェイブが一番足引っ張りそう。」

 

「なにおうっ!?」

 

「あー」

 

「ハザマさんも何を納得してるんだよ!

俺の実力が信用できないのかよ!」

 

「うん。何か、ここぞって時に弱そう。」

 

「俺だってグランシャリオを装着すればなぁ!」

 

「じゃあ強いとこ見せてよ。」

 

「おお上等だやってやろうじゃねえか!」

 

「……。」

 

二人のやり取りを聞きながら、ウェイブの言葉を頭の中でもう一度再生する。

 

力を合わせれば、ね……。

 

「二人ともケンカはしちゃダメだよ!」

 

「そうですよ、お二方。

いつ、どこで襲撃があるか分かりませんからね。」

 

「うぐ…すんません……。…!

おい、前方に何かあるぜ。」

 

ウェイブの言葉を聞き、俺達は前方を見る。

そこには、

 

「かかし……?」

 

「本当だ、これ以上ないくらい怪しいね。」

 

「後、何だかウザい顔してますね……池面って……」

 

そこには、妙に筋肉のあるかかしがあった。

すげぇウザい。蹴り飛ばしたくなるほどウザい。

胸には池面の二文字があり、更にウザさを助長させている。

 

「罠だったら大変だね。

用心して調べよう。」

 

「そうですねぇ……。」

 

─なるほどな。

 

ナジェンダ、テメェの作戦が読めたぜ。

だが、悪いな。

俺様も、お前らの行動に合わせて、やらせてもらう。

 

俺達は馬から降り、かかしの方へと向かう。

 

にしても、むかつく。

このかかし、どうにかならなかったのか。

 

「……‼」

 

クロメが何かを察知したのかその場から横に跳ぶ。

 

─直後、クロメの立っていた位置にパンプキンのレーザーが飛んでくる。

 

惜しい。あと少しだったものを。

ウロボロスで固定するわけにもいかねぇ……チッ。

だが、腕は掠めた。狙いは良い。

 

「敵襲……!」

 

池面のかかしもミシりと音を立てて、そのまま破裂する。

 

「……!」

 

中から出てきたのは、スサノオだった。

スサノオはその手に持った棍棒で続けざまにクロメを殴りにいく。

 

「クロメ!危ねぇ!」

 

「む……」

 

「うおっ……!!」

 

ウェイブが咄嗟にクロメとスサノオを間に割って入り、グランシャリオの鍵で防ぐ……が、スサノオの筋力に押し負け、吹き飛ばされる。

 

「ウェイブ君!!」

 

「狙撃にはしくじったが戦力を1つ…かつ標的でもないやつを吹き飛ばせたのは大きいな。」

 

「……これはこれは。」

 

帽子を深く被り、臨戦体勢を取る。

 

声をした方にいたのは、ナイトレイド。

 

そのメンバー全員だった。

 

「ナイトレイド…?しかも、全員!

東は全くのフェイクだったんだね……。」

 

「クロメにボルス。イェーガーズの中でもお前たちは標的だ。覚悟してもらうぞ……!」

 

「ふむ……。」

 

人数差を埋められたのはでかい。

が、しかし……

 

クロメの骸人形がどんな奴かによるな。

 

「数えきれないほど焼いてきたから…刺客に狙われるのもしょうがないとは思ってる……でも。

私は死ぬわけにはいかない!」

 

ボルスはルビカンテを構え、応戦の意思を示す。

 

……ボルス。

 

『うん、結婚してもう六年!私にはもったいないくらいのお嫁さんだよ。』

 

嫁さん、んでもって、娘。

 

『妻と娘は私のやっていること全部知っててなおも応援してくれるの!

だから私は辛いことがあっても全然平気。』

 

テメェはそうかもしれねぇが。

二人はそう思ってるか?

テメェが死ねば、守り手がいねぇだろうが。

 

─くそ、ウゼェ、マジウゼェ。

 

「…ボルスさん、前衛は、お任せくださいな。」

 

「うん。ハザマさん。」

 

「はい?」

 

「頑張って生き残ろうね。」

 

「─ええ、はい。」

 

疑いもしねぇ。

この男……。

 

決断は、近いか……。

 

俺の葛藤なんざ、誰も気にしねぇで、勝手に話が進む。

 

クロメとアカメが話し、どちらも帝具を構える。

 

クロメは八房を掲げる。

すると、地面から沸くわ沸くわゾンビども。

 

そして、地面が揺れる。

何が出るかと思ったが……そこまでの上物を手に入れてたか!

 

「何だ!?地震か!?」

 

巨大な手が地面より出てくる。

次に頭、体、足。

全体が出てくる頃には、俺達は自分達が豆粒のように感じるデカさとなっていた。

 

「昔と私と違って死体なら何でも人形に出来るようになったんだよ。お姉ちゃん。

 

それが例え、超級危険種のデスタグールであってもね。」

 

「此れは頼もしい。」

 

「うん……私達もやろう!」

 

「ええ、油断なさらぬよう。」

 

ラバックとチェルシーが見えねぇな。

チェルシーは暗殺向けの帝具。

ラバックは万能型の帝具。

となると、一人は暗躍でもう一人は裏方に務めてるな。

エスデスが来たときようか。

 

なら……

 

「やれ!デスタグール!」

 

「──」

 

デスタグール、帝具の素材にもなる超級危険種に分類される化け物。

 

クロメの号令と共に、デスタグールは力を溜め込み、その口から、超級の名に恥じない力を解放する。

 

ようするに、極太の衝撃波である。

 

しかし、デスタグール程の巨大さでの衝撃波ならばそれは並の兵器を凌駕する殺戮兵器と早変わりする。

 

各々の判断でナイトレイドはそれを避ける。

 

デスタグールの衝撃波はそのまま地形を破壊するだけとなったが……

 

「流石、お強い。」

 

「あれを避けるなんて……流石はナイトレイド。」

 

「ええ、それでは我々も動きますよ。

クロメさんが骸人形の一体を私達の守備に回してくれていますし、私もいます。

存分にその炎をお使いください。」

 

「……うん!」

 

─動くか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぅわっ!?」

 

その頃、ナイトレイドメンバーのラバックはエスデス達がこちらに来たときのための見張り、そして足止め係に努めていた。

デスタグールの衝撃がこちらにも来たので声をあげたが、至って無事である。

 

……が、そんな彼にも、嵐は来る。

 

「……!なんだ!?」

 

ラバックの隠れている木。

その大木が揺れている。また先程の衝撃かと思ったが、連続して続く揺れに何かが違うと思ったラバック。

しかし、行動が遅れたことが命取りだった。

 

「これは……(誰かが木を倒そうとしてやがるのか!?イェーガーズのメンバーは確かに……!)」

 

そう考え、木から離れようとした正にその時。

 

 

─木が横へと傾きそのまま崩れ落ちる。

 

「う、ぉぉ!?く、そ!」

 

離れようと立ち上がったラバックは木と共に落ちる……と思いきや何とかクローステイルの糸を他の木に巻き付け、木と共に落下する事態は防いだ。

 

そのままゆっくりと着地したラバックは木を倒した犯人を探す。

 

 

「─ほう、やはり居たか、ナイトレイド!」

 

「っ……!?」

 

しかし、まさかのこちらに声をかけてきた犯人を見て、ラバックは戦慄する。

 

「……何だ、ナイトレイドのメンバーはもう少し筋肉があると思ったが……案外ヒョロイな。」

 

ゆっくりと近付いてくるその巨漢。

 

「マジかよ……!」

 

見る目があるラバックには分かる。

それが恐ろしく強いということが。

 

「だがまあ、貴様もナイトレイドならば覚悟は出来ているだろう?」

 

「殺す殺される。弱肉強食の世界なのは百も承知だろう。ならば、味わうと良い──」

 

その巨漢は暴力的な笑みを浮かべ、拳の骨を鳴らす。

 

 

「─最強の暴力をッ!!」

 

暴虐が、戦場へと姿を現す。




??「やってやるデス!!」


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訪れ

やる気が沸いたと思えばやる気が落ちてくる。
何故だろう。




木がゴミを捨てるかのように簡単に倒れていく。

ただの木ではなく、危険種の攻撃をくらっても倒れないほどの大木が、だ。

ともすればそれが出来るのは限られてくる。

力のある大型の危険種か、または……

 

力が異様に高い人間か。

 

「デタラメだろ……!」

 

その光景に支配はされなくとも恐怖を感じたラバック。

木が薙ぎ倒されていく事に恐怖を感じている?違う。

 

彼が感じているのはそれを行う人間の豪快さだ。

 

「おいおい、逃げてばかりじゃつまらんだろ?

もっと俺を楽しませてくれよ!」

 

走りながら、後ろから聞こえてくる男の声に舌打ちをする。

糸を使い、器用に逃げても力によって強引に追い付いてくる。

クローステールの機動性に無理矢理追い付くなど、予想外も良いところだ。

加えて、ラバックは殴り合いの類いは出来なくはないが得意ではない。

もっぱら相手を騙し、糸で殺す暗殺スタイル。

しかし、目の前の男にそれが通用するだろうか?

 

「糸の罠は終わりか?ならば、逃走をやめ、俺と戦え!!」

 

「ハッ…無理だろ。」

 

この男は糸の罠を理解して避けつつこちらへと距離を離さずに向かってくる。

 

例え、クローステールの"界断糸"を使おうと、勝てる未来が見えない。

正しく、逃げるしか道はない。

 

攻めに転じたが最後、肉片が1つ出来上がる。

 

(まだナジェンダさんとお付き合いする夢が果たせてねぇんだぞ!死ねるか肉だるま!)

 

加勢も期待できない。

なら…、とラバックは思考する。

 

「…くそっ!大博打かよ!」

 

ラバックは思い付いた作戦を実行するべく、よりスピードを上げた。

 

「…何処へ向かうかは知らんが、俺に捉えられたが最後だ。逃げ切れると思うなよ……!」

 

男もまた、軽くスピードを上げ、追いかけていった。

 

 

「─少々扱いに困るが、まあよい。」

 

 

余も行くか、と木の上で二人を見届けた少女は自らの標的の元へと向かうべく、木から"跳ぶ"。

 

瞬間、少女の姿は森から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて……相手は…ああ、ナイトレイドでも危険なアカメ、ですか。」

 

「ナイトレイドは皆危険だよハザマさん!」

 

「いやでも、殺傷力を考えればアカメがダントツでは?」

 

「……そうかも。」

 

「でしょう?にしても、クロメさんは分かってますね。私はともかく、ボルスさんを援護するなら盾役が一番ですからねぇ。」

 

「……うん。」

 

 

にしても、アカメか。

村雨が相手、ねぇ。

ま、今は敵という事になってるし、ナジェンダ達も俺に加減をする余裕はない。

すれば隙を突かれるからな。

 

てことは死ぬこと覚悟しとくか。

 

「ボルス、お前のその帝具は広範囲型……危険だ。

そして、お前も放っておけば何かが起こる予感がする。故に葬る!」

 

アカメは真っ直ぐとこちらに向かってくる。

何て速さだよオイ。

俺の誤魔化しでどこまでその速さと技に追い付けるか不安になんだろぉ?

 

「それをさせないのが我々ですが、ね。」

 

「頼もしいよ。それにしても、真っ直ぐ来るなんて…!」

 

「撃ってください、"彼"と私で村雨は防ぎます。」

 

「了解!」

 

ボルスはルビカンテの炎を噴射し、迎撃する……が。

 

アカメは炎が当たらない高さまで跳び、炎を回避する。

 

ボルスの背後には回ったが、これならどうよ。

この際だから実力を見せて貰うぜ。

 

「ウロボロス!」

 

「っ!」

 

後ろに回ったばかりのアカメにウロボロスを伸ばし、御自慢の足を噛みに行く。

 

だが、これもアカメは着地したばかりの足に再び力を入れて横へ跳ぶことで回避。

 

おいおい、どんな反射神経してんだ馬鹿。

てめぇはどんな動物だって話だ。

 

「葬る……!」

 

「くっ……なぁんてね。」

 

「……。」

 

アカメの村雨の刃が俺に迫る。

が、それは俺の真横まで来た男が身を挺して庇うことで村雨の毒は俺を蝕む事はなかった。

 

ウォール。

それが俺を庇った男の…いや、死体の名前。

クロメにはナタラとかいう人形がいるが、俺達には村雨の効かない死体はいない。

だからこそ、こちらへ一体寄越してもらった。

 

ガードマンだったらしいが、死んだ後も、ガードマンとはな。

名は体を表すなぁ?

ついでに、ハゲでグラサンだ。

 

「くっ…!」

 

死人に口なし。

喋りゃしねぇが動きはする。

アカメが咄嗟に後ろへと跳ぼうとするがそれよりも早くウォールがアカメを蹴り、吹っ飛ばす。

 

といってもそんなだが。

骸人形と村雨の相性は良くねぇ。

そもそも、毒が効かないからな。

 

攻撃を食らってもすぐに攻めに転じれる。

強さに差はあるが、補充も効くから悪くねぇ手だ。

その補充先が死体だがな。

 

「いやぁ焦りましたぁ。」

 

「ハザマさん、大丈夫?」

 

「ウォールさんが居ましたからねぇ、多少の無駄は許容範囲って事です。ただ、過信はできませんね。」

 

「ウォールさんじゃあの動きについていけるかというと…無理だもんね。」

 

「それもありますが…死体は思考しない。」

 

「…あ、そっか。思考しないって事は作戦とかも意味ないもんね。」

 

「クロメさんなら、話は別でしょうけど我々じゃね。」

 

 

「アカメ!」

 

レオーネがアカメへと駆け寄る。

 

瞬間、レオーネの片足に紐のような物が巻き付けられる。

 

「えっ──っあ"!」

 

そして、レオーネが反応するよりも早くその体がブレる。

レオーネの体が岩壁へと叩き付けられる。

 

紐と思ったものは……鞭か。

 

それをやった張本人は男で、どうやらそいつも骸人形のようだ。

 

「っぐ……やってくれたな……!」

 

……レオーネの方は警戒を解くか。

また来るならその時だ。

 

 

「さて……こちらは三人、あちらは一人。」

 

「うん、でも、油断できない。」

 

「ええ、分かってますとも……ええ。」

 

アカメを目を開けてジッと見る。

村雨(それ)の奥の手はまだ使えねぇもんな。

てめぇの力と技術だけでそこまでやれるのはすげぇよ。

だが……

 

このままだと殺しちまうぜ?

別に俺様はお前らナイトレイドの魂でもいいんだからなぁ……ヒヒ。

 

「ですが、優勢なのは変わりません。このまま倒し、王手までいきましょう。」

 

「……だね!」

 

じわじわと追い詰めていく。

……っち、さっきから何だ?

嫌か予感がする。

 

「……(ハザマ……お前はどうする気なんだ。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、レオーネ達の様子。

レオーネを鞭によって吹き飛ばした男、元将軍であり骸人形のロクゴウはナジェンダの加勢により抑えられていた。

 

ナジェンダにロクゴウを任せ、他へと向かおうとしたレオーネに、それは起こる。

 

 

「─!!」

 

 

クロメの奇襲により、左腕が切り落とされたレオーネは片腕を抑え、クロメを睨み付ける。

 

「駄目だよ私から目を離しちゃ。

隙あらば仕掛けて、人形にしてあげるよ。」

 

「っ、ぅ……やってくれたなお前……!」

 

クロメを追おうにも既にクロメは高台へと戻っている。

 

「でいっ!」

 

片腕の応急措置だけでも必要と考えたレオーネは自身の帝具の回復力を頼りに自力で止血をした。

 

「おおっ自力で止血できるんだ!」

 

「獅子を怒らせるとどうなるか…分からせてやる!」

 

「突っ込むなレオーネ!クロメには護衛もいる!

アカメの援護に向かえ、その後に二人でクロメを討つんだ。」

 

こっちは元将軍同士だから何とかなるとも伝え、ロクゴウへ集中するナジェンダにレオーネは了解の意を示し、クロメへと視線を移す。

 

「待ってろよ、後でそっちに──!」

 

「─!」

 

「─レオーネ!!」

 

先程まで加虐的笑みを浮かべていたクロメも、ロクゴウへと向き直っていたナジェンダも、喋っていたレオーネも。

 

それをいち早く感知し、それぞれ反応を示す。

クロメは感知した方へと顔を向け、ナジェンダはレオーネを大声で呼ぶ。

 

レオーネは後ろへと大きく跳んだ。

 

すると、レオーネが立っていた位置に何かが激突し、地面を割る。

 

「っ、なんだってんだ!」

 

 

 

 

「─ほう、獣ゆえか中々反応のいい。」

 

 

『!!?』

 

飛来してきたそれは人だった。

凛とした声で感心したように話しかけてくる。

 

レオーネは獣としての本能か、頭の中で逃げろと警報が鳴り響く。

 

「お、前は……」

 

あれは、勝てない。

 

あれは、(恐ろしい)

 

「だが、獣ゆえか、余の死を…恐れているな。」

 

「お前は、なんだ……!?」

 

「そう急くな、時間は腐るほどある。

余の前で、本能の赴くままに暴れてみよ。

その獣性にさえ、死を与えてやる。」

 

目の前の存在は、その背に輪を描くビットを3つ携えて地面から浮き上がりレオーネに笑みを浮かべる。

 

 

「くっ、貴様の生もここまでだ獅子よ。」

 

絶望は終わらない。




さて、遂に帝様がナイトレイドに牙を…死を向けます。
どうなるナイトレイド、どうなるラバック。
どうなるレオーネ姐さん!

……息抜きに何か投稿しようかな。


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疑いは喉笛を襲う

目の前の死は何処までも深い闇を秘めた瞳でレオーネを見つめる。

レオーネは、それだけで滝のように汗を流す。

ライオネルの獣化。

身体能力、自然治癒能力、五感を強化する帝具であるが、その能力によって強化された聴覚、視覚がレオーネを恐怖へと落とす。

 

強さが違うどうこうではない。

次元が違うのでもない。

単純に生物ならば恐怖する絶対が自分に牙を向ける。

 

それに恐怖をするなと言うのは酷なものだろう。

 

「っ、はぁ…はぁ……!」

 

だが、恐怖に呑まれていたレオーネはすぐに自我を取り戻す。

あのままでは本能だけで動き、殺されていた。

 

死の気配は未だに濃厚。

だが、殺されてやる気などない。

 

「お前は危険だ…ここで倒す!」

 

「死が危険…確かに、生あるその身では危険ではあるか……だが、違うな、獅子よ。

死とは安寧だ、救済だ、理だ。」

 

死は危険ではない。

そう主張するが、レオーネはその声を聞くだけで背筋がゾッとする。

 

天敵なのだ、生ある物にとってそれは。

 

あれの主張は正に神のそれ。

死を纏い、尚も狂わずにいられるなど馬鹿げている。

 

「…まあよい、元より始末する獣に何を言おうと変わらぬこと。

来ないのか?ならば余から行くぞ……!」

 

その言葉と共に少女は文字通り消える。

速いの次元ではない。

帝具の能力かとレオーネは判断し、腹に手を添える。

 

「ほう、見切ったか。」

 

「っぐ!(何て威力だ、加えてあの移動…油断したら一瞬で死ぬ!)」

 

手で少女の掌底を受け止めるも衝撃で体が傾きそうになる。

吹き飛ばされそうになるほどの威力に内心舌打ちをしながら直ぐ様蹴りを放つ。

 

「甘い。」

 

「くっ、自由自在っぽいなそれ!」

 

「余の帝具のほんの少しに過ぎぬがな。」

 

しかし、蹴りは少女のビットに防がれ、逆に蹴りを入れられて吹き飛ばされる。

 

「っぺ……今日はちょいと厄日過ぎないか…っ!」

 

「天骸の火よ、焼き払え。」

 

体勢を整えたが、少女はレオーネに天へと向けた掌に集めた蒼い炎を放つ。

レオーネは横へと跳び、それを回避するが炎は地面へと着弾した瞬間、爆発する。

 

「何でもありかよ!魔法使いかってんだ!」

 

「何でもはできぬ、余の冥鏡死衰に出来ることだけしかな。」

 

「冥鏡死衰…それがお前の帝具か!」

 

「如何にも。……ふむ、しかし、そうさな……」

 

 

「─見逃すか。」

 

「は……?」

 

目の前の存在は今何と言ったのか。

見逃すと言ったのか。

 

何のために?

何の得があって?

 

「そも、余の目的は別にある。…首を1つ取ってもよいのだが、それは目的が終わってから決めるとしよう。」

 

「お前、ふざけてるのか!?」

 

「その通りだが?」

 

「なっ」

 

「余は貴様を、貴様らを今だけは見逃すと言っている。力の差があるからでもあるが、ふむ……戯れといったところか。」

 

見下し、微笑む少女に底知れぬ恐怖を未だ感じながらも同時に怒りを宿したレオーネは全力で殴りかかる。

 

「この……馬鹿にするな!」

 

「急くな、そう言ったであろうに。

聞き分けのない獣だ…。

ならば、相応の痛みをくれてやる。」

 

変わらない冷たい瞳でレオーネを映した少女は鍛え上げられた者でさえ見切るのが困難な早さでレオーネの鳩尾を蹴り上げる。

 

「か、はっ……!」

 

「さあ、次だ。」

 

上に吹き飛ばされたレオーネをいつの間にか追い抜いた少女が背中へと踵を落とし、地上へと落下する。

 

当然ながら、レオーネは二重の痛みと呼吸困難でマトモに動けない。

 

「がっ、ぁぁ……!」

 

「……(漁夫の利になるけど、今なら……)」

 

「─そこの。」

 

「っ─」

 

クロメは今ならば殺して骸人形に出来ると思い、八房を抜こうとするが少女に睨まれ、動きが止まる。

しかし、横にいた骸人形…ナタラが前に出て槍を構える。

 

「ほう…嘗ての意思がそうさせるのか。

それが死者行軍の力……だが、余の邪魔をするな。

同じ死に属する帝具といえど、余と貴様の『死』では意味も、力も違う。」

 

「……行こう、ナタラ。(間違いなく将軍クラスの実力。私が八房を全解放して勝てるか……なら、撤退して別のナイトレイドを狙った方がいい。)」

 

折角の獲物ではあるが狩りを邪魔されたなら退くのが一番だ。

そう判断したクロメは他のメンバーを倒しに行く。

 

少女は呼吸困難に陥りながらも自身を睨み付けてくるレオーネを見下ろす。

 

「死が望みというわけでもあるまい。

……ふむ、手柄は狂犬が持ってくるであろう。

余は余のやるべき事を優先するとしよう。」

 

「ぁ……ま、て…ぇ…!」

 

「…。」

 

レオーネから視線を外し、そのままハザマ達の方角へと向かう。

呼び止めようとしたが、今度こそ視線すら寄越さずに消える。

 

「─はぁ、はぁ!く、そ…何て威力だよ……このままじゃ、アカメが。」

 

レオーネは何とか立ち上がり、アカメの元へと向かう。

 

惜しくも、その方角は同じであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきから、嫌な予感がしやがる。

こういうときは外れねぇ勘なんだ、くそが、どうしたもんか。

アカメは粘りやがるし、俺達も攻めきれねぇ。

村雨の即死が攻めきれない状況を作り出している。

相手は隙があればこちらを即死させれて俺達はルビカンテの炎が当たればという確殺条件。

 

ふざけんなってんだ。

だが、攻めきれないのは彼方も同じ。

それに、俺もアカメを殺すのは望んじゃいねぇ。

こいつの強さは後に要る。

 

村雨の奥の手を使えればエスデスとも対抗できる程だからな。

 

「困りましたねぇ。」

 

「でも、困っているのはあっちも同じだよ。

他のメンバーもクロメちゃんの骸人形に手間取ってるみたいだし、今のうちに仕留めたいけど……」

 

「流石はナイトレイドの切り札。

三人がかりでも手こずるとはね…。」

 

「くっ……!」

 

ウェイブもいりゃ良かったんだが、あの野郎、スサノオに吹っ飛ばされて帰ってこねぇ。

こりゃこの戦闘が相当長引かないと戻ってこないな。

 

肝心なときに戻ってこねぇ奴だ。

 

デスタグールもスサノオが倒しそうな状況だしな……

 

にしても、あれが『禍魂顕現』。

使用者の生命力を食い、超強化する奥の手。

発動回数は三回。

それ以上は無理とされ、三回目が使用者の最期だという。

 

俺のウロボロスと似てやがる。

 

武神の能力をほどんど持ってるのもあの野郎だしな。

 

ウロボロスにそれがありゃあこんな悩む必要──

 

 

 

─なんだ?殺気か!?

 

「─くっ、ぐぅ!?」

 

「──邪魔だ。」

 

それを察知したのとアカメがそいつの蹴りを防いで吹っ飛んだのは同時だった。

 

「なっ─」

 

「あれは……!?」

 

あれは……何だってアイツがここに来てやがる!

大臣の野郎は何を考えてやがる!?

 

「冥王…イザナミ…!」

 

「…ふむ、ハザマ、ここにいたか。

ナイトレイドのメンバーと交戦していたようだから蹴り飛ばしたが……不都合だったか?」

 

…不都合だね。

テメェの存在がここにいること事態、計算外……待て。

じゃあまさか、こいつ

 

「まさかとは思いますが新メンバーもこちらに…」

 

「一人だけ連れてきた。もう一人は荒事向きではない。」

 

チッ、やっぱりか。

だが、そうなると誰かと交戦してるな。

……ラバックかチェルシーが狙われてたら本末転倒だ。

 

「ハザマさん、この人が例の…。」

 

「ええ…新組織のリーダー。イザナミさんです。」

 

「貴様は…確かボルスだったか。」

 

「あ、はい!よろしくお願いします…」

 

「よい、そう畏まるな。余と貴様は現在は仲間だ。

もう少し軽く接しろ。」

 

「え、と……うん、分かったよ。」

 

「うむ。」

 

……何呑気に会話してやがる。

コイツが居るってことは帝都はがら空きも同然だろうが。

 

くそが、にしたって何でここにいやがる?

 

「ハザマ。」

 

そうこう考えていたらイザナミから話しかけてきた。

 

「何です?」

 

「大臣が其方を疑っておる。」

 

「……へぇ。」

 

「大臣さんが?何で……!」

 

「ハザマが帝都に来た時から、ナイトレイドの動きが良くなった。とのことだ。」

 

動きすぎたって事か……

 

確かに、ランの引き込みといいドクターの暗殺といい……動きすぎたな。

チッ、焦りすぎたのは俺様の方か。

 

「それで、どうすればその疑いが晴れます?」

 

 

「─ナイトレイドのメンバーの首を1つ。

それで信用する。」

 

「─。」

 

……ケッ、そう来たか。

 

なるほどなぁ、まあそうなるか。

 

「…ふむ」

 

「出来ぬわけではあるまい?其方はイェーガーズ。

相手はナイトレイドだ。

ならば首1つ取るのは当たり前であろう?」

 

「ですねぇ。」

 

「ま、待ってよ!ハザマさんが裏切ってるなんてあり得ないよ!それに決まった訳じゃないんでしょ?なら」

 

「ボルスよ。そうではない。大臣は、疑っておるのだ。」

 

「疑いが続けば、私は間違いなく、処刑されるでしょうねぇ……」

 

「そ、そんな……」

 

「いやぁ、困りましたねぇ。疑われるような性格してないんですけどね。」

 

飄々とした態度で話ながら考える。

殺すのは構わねぇ。

だが、やるとすれば?

 

スサノオか?

……いや、まだ働いてもらう。

 

ならチェルシー?

馬鹿か、暗殺のプロを失うのは痛手だ。

 

だったらタツミ……それもアウト。

 

ナジェンダもマインもアカメもレオーネもラバックもシェーレも………いや?

 

ああ、なるほど。

 

だったらお前が要らないな。

 

一番切り捨てて問題なく、尚且つ俺の潔白を証明するならコイツだ。

 

ヒ、ヒヒヒ……ああ、そうだな。

ここいらで、考えを変える必要があるな。

 

仲間云々じゃねぇ。

俺様が壊すのは違うだろ。

 

俺様が壊すのは……国だ。

今ある嘘だらけのくそみてぇな自由のない国だ。

それを壊し、皇帝のガキの望みを叶えるのが目的だろうが、誰彼とかじゃねぇ。

 

目的がすり変わってた。

そも、切り捨てるのは誰でも同じだろうが。

国と一人。

 

俺はやる相手を決め、笑みをより深くしイザナミを金色の瞳で見つめる。

 

「ええ、分かりました。

ナイトレイドの首1つ、ですね?」

 

「そうか。」

 

「ええ……ボルスさん。」

 

「う、うん、何?」

 

何怯えた顔してんだよ肉だるま。

俺様がテメェを切り捨てると思ってんのか?

安心しろよ、まだ(・・)使わせてもらうからよ。

 

「少し、離れますね。」

 

「え、あ、うん!ここは任せてよ!」

 

「ええ……イザナミさん。」

 

「何だ?」

 

 

 

「─。」

 

「…ふむ、そうか。」

 

「では。」

 

あーやだやだ、面倒な動きが増えてく。

 

くそが、仕方ねぇ。

だが、俺様のためでもある。

消えてもらうぜぇ?

 

俺は今から殺す相手の場所にまで歩いていった。

 

まあ、位置は分かる。

何となくな。

 

……殺す相手に一々仮面見せんのも馬鹿げてるよなぁ…




ハザマがテルミさんモードになりました。


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蛇の牙は喉元へ

ジャラジャラと音を立てながらウロボロスが俺の周りを漂う。

 

─はヤく

 

「うるせぇ。」

 

頭に響いた声を黙らせる。

帝具の声が適合者に聞こえるのはよくあることだが、ウロボロスの声はその中でもでかい。

 

使っている素材が素材だ。

当たり前ではあるが……

 

いい加減暑苦しくなってきた。

帽子を取り、ネクタイを外して切り替える。

 

ハザマ()から、テルミ()へ。

 

わざと閉じていた目を開けて、目の前から来る奴を見捉える。

 

「お前は……ハザマか?」

 

「ハザマ…ハザマねぇ。ああ、間違っちゃいねぇよ。」

 

「っ、誰だ!?」

 

「オイオイ、キャラ戻しただけだろうがよ。

そう疑問ばっか浮かべんなよ子猫ちゃぁん!んでもって悪く思うな。

俺様もさぁ…テメェらへの情報の為に苦労してんのよ。

だからさぁ……」

 

バタフライナイフを手で遊びながら近付く。

相手も、俺が明確な殺意を持ってると理解したのか構える。

おーおー、流石に見映えがいいじゃねぇの。

 

ソイツに今まで見せてこなかった暴力的な笑みを見せて、俺は死を告げる。

 

 

「ちょいと死んじゃくれねぇかなぁ─」

 

 

 

 

 

「─レオーネ。」

 

「─!」

 

それを告げるのと俺とレオーネが同時に駆けるのは一緒のタイミング。

後はどうするかだ。

 

レオーネは獣化した拳と足での喧嘩のような殴りと蹴りを放ってくる。

俺はそれを僅かな動きで避け、隙を伺う。

片腕だけとはいえ、それを補うスピード…厄介だな。

 

「裏切ったのかハザマぁ!」

 

「裏切る、俺がぁ?オイオイ、おもしれぇこと言うんじゃねぇよ!

俺様はテメェを保身のために殺したいって言ってるだけだろぉ?テメェはナイトレイドのボスじゃねぇだろうがよ!」

 

「だとしても、ボスたちがアタシを殺したお前の言葉を信じると思ってるのか!」

 

「信じる信じないじゃねぇなぁ。」

 

何十発目かの蹴りを後ろに跳んでかわし、それを隙と見たレオーネが踏み込んで殴りかかってくる。

 

 

「─蛇双射出。」

 

「くっ、この!」

 

「テメェにはまだ見せちゃいなかったよなぁ……

無間蛇双 ウロボロスをよぉ!ヒャハハハハハァ!!」

 

「ぐぁっ!?っのぉ!」

 

「んなっ─」

 

突き出した手首に横から出現したウロボロスが噛み付き、巻き付く。

俺はウロボロスの鎖を乱暴に引っ張り、反対方向の岩壁へと叩き付けるが、レオーネは引っ込む前のウロボロスを掴み、俺を引き寄せる。

 

チッ、まだまだ精神は生きてやがるか。

当然とはいえ、ライオネルの強化と回復を見誤ってたか!

 

レオーネは引き寄せた俺の顔面を捉え、拳を握り、放ってくる。

体が引っ張られた状態じゃ、直撃は避けられねぇ!

 

「オラァッ!!」

 

「グォッ!」

 

殴られる瞬間、片腕で顔面を守り、吹き飛ばされるが……いてぇなクソガッ

何度も受けてたら腕どころか体全体がイカれる。

 

この体じゃなけりゃこの様にはならねえってのに…儘ならねぇ。

 

だが、殴られたことで思考がクリアになってきた。

 

より狡猾に動け、馬鹿みたいに仕掛けんじゃねぇ。

よりズル賢く、より残酷に……

 

殺してやるよ、レオーネぇ!

 

「子猫の癖にやんじゃねぇか……」

 

「まだやるかい?今なら気の迷いだって事に─」

 

「うるせぇぞ獣女。能書き垂れるのが暗殺組織ナイトレイドのやり方かぁ?そんなんじゃ国どころか仲間も救えねぇなぁ!!」

 

「っ、テメェ……!!」

 

「怒ってんのか?同情で国救う宣言してる奴はちげぇなぁ!」

 

「─ぶっ殺す!!」

 

「ヒヒ、ヒヒヒ…殺せよ、殺せ殺せぇ!ヒャハハハハハハ!!」

 

レオーネは怒りを爆発させて俺に接近してくる。

速い、さっきまでの比じゃねぇ。

判断力は鈍らせる事は出来たが……それでもか。

 

だが……その程度の速さなら十分対応できる。

 

加えて、もう一撃程ウロボロスをくらわせりゃ…

 

「ハザマぁぁぁぁ!!」

 

「にゃあにゃあ怒るんじゃねぇようざってぇ!」

 

振るわれる拳を避け、お留守になっている左足の裏に右足を引っ掛け、思い切り引いて体勢を崩させる。

 

そのままがら空きの胴体を全力で踏みつける。

 

「子猫ちゃんよぉ……獣くせぇんだよぉ!」

 

「グアァ、ガッ!」

 

「脳筋が、俺様に、楯突くんじゃ、ねぇよっ!オラァッ!」

 

「ガッ、ハァ!」

 

何度も踏みつけ、最後に横腹を蹴る。

オイオイ、ライオネルもこの程度かよ…?

確かにコイツは強ぇが、再生力だって無限じゃねぇ。

俺様の攻めにいつまで耐えられっかなぁ?

 

レオーネは体を痛みで震わせながらも立ち上がろうとするがそれは俺様が許さねぇ。

投げナイフを手に投げ、刺さった所を踏む。

 

「がぁぁ!!」

 

「ライオネルでも痛みはある。俺様の攻めはじわじわと苦しませるもんだ、再生力がある分、苦しむのはなげぇだろうなぁ?」

 

「グッ、この、野郎!」

 

レオーネは新たな痛みに悶えるがそれも束の間、俺の右足に噛み付き、そのまま砕こうと図る。

 

「チッ、糞猫が!?死ねやぁ!」

 

「っ─!!」

 

噛まれてる足に激痛が走るが、それを無視して顔面を蹴り抜く。

歯の拘束は解かれたが……チッ、拘束を解くために力を入れすぎて吹っ飛ばしちまった。

 

ライオネルの回復力ならまた向かってくる筈。

 

クソが、やり直しか。

 

口から血を吐き、マトモに握れない手から血を流しながら立ち上がり、俺を殺意の目で睨む。

 

「ハァ……ハァ…ゲホッ、くそ…!

さっきの女に何か言われたのか!」

 

「はぁ?女だぁ?……ああ、イザナミか。」

 

「イザナミ……そいつの名前か。」

 

あのアマ、俺に会う前にレオーネと接触してやがったのか。

何も知らずに居りゃよかったってのに妙なところで俺様の思い通りにならねぇ。

それがとてつもなくムカつく。

 

「別に何も言われちゃいねぇ。

だが、俺様に不都合な事情が出来たもんでなぁ…

言ったろ、保身だ保身。

その為に死んでくれ、獣女。」

 

「そんな事言われてはいそうですかって言えるわけないだろう!」

 

「なら惨たらしく死ねや。」

 

別に、テメェが悪いわけじゃねぇ。

俺様の不注意が悪い。

だが、それでも俺様にはやらなきゃならねぇことがある。

それが偶然、仲間を殺さないといけなくなっただけだ。

 

だからこそ、殺す。

今はまだバレる時ではない。

 

俺様には、まだあそこで終わらせるべき事項がある。

 

俺はレオーネにウロボロスを飛ばす。

ウロボロスは耐久が限界値を越えるか俺の命令が来るまでは絶対に獲物を追い掛け続ける。

蛇のように相手を追い詰め、その精神に食らいつく。

 

「また同じ手か!そう何度も食らうか……!」

 

「悪いが食らってもらう。テメェにはさっさと退場してもらわねぇと俺様が困る。」

 

ウロボロスをかわした瞬間を狙い、低姿勢でレオーネの足をナイフで切り裂きにかかる。

が、これもレオーネは狙われている方の足を強引に上げることで回避。

その隙を狙うようにウロボロスがまた噛み付きに来る。

 

レオーネはウロボロスに危機感を覚えているのか俺を攻撃するよりもウロボロスの回避に専念している。

 

だがよぉ……

 

「っ!この!」

 

「その回避の仕方で、避けきれると思ったか?」

 

その牙で腕に噛み付いたウロボロスは精神を攻撃する。

そして、ウロボロスの黒い目の穴が緑に光る。

 

噛む力が強いのか振りほどけない様だ。

もう片方の腕があれば……ってとこかぁ?ヒヒヒ!

「獣女、テメェの終わりだ。」

 

「何だと……!」

ウロボロスの特徴その2……

 

「無間蛇双はよぉ、攻撃するのは確かだが肉体的ダメージはそうデカくはねぇ。寧ろ、攻撃型帝具の中では最弱と言ってもいいくらいだ。

だが、そうじゃねぇ。

ウロボロスが攻撃するのは精神だ。」

 

「精神……?(そういえば、最初に噛まれたときから鬱々としたっていうか……感情に呑まれやすくなってた……?)─まさか!」

 

「そのまさかさぁ!ヒャーハハハハハハハァ!

テメェは、もうウロボロスの術中だぁ!」

 

「ハザマァァァァァァァァ!!」

 

それを理解したレオーネはすぐに俺へとその脚力で迫ってくる。

ウロボロスを腕に噛まれたまま。

 

俺は、ウロボロスに命令をただ下す。

1つの終わりを。

 

 

「─精神掌握(マインドコントロール)。」

 

「っ!────」

 

 

鬼気迫る顔のレオーネは、俺の一言でその動きを止め、そのまま倒れこむ。

その時の瞳は虚ろだった。

 

精神掌握(マインドコントロール)

ウロボロスの脅威性そのもの。

蛇の牙から毒を流し込むように、じわじわと獲物を追い詰め、その果てには精神を掌握し、思いのままにする。

 

「あー…やだやだ…遂には駒も捨てなきゃならねぇときになるとはなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「─んじゃ、お別れだなぁ、レオーネ。」

 

その魂、頂くぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハザマさん!」

 

「シェーレさん、申し訳ありません…!」

 

「え……──。」

 

「……すみません、間に合いませんでした。」

 

 

 

「─レオーネ…?」

 

「…私が来たときには既に……恐らく、イェーガーズが。」

 

「……そう、ですか……」

 

「…申し訳ありません、私は戻らねばなりません。」

 

「っ……はいっ。」

 

仲間の死を悔やむ女に後を任せ、男はやるべき事をやるためにその場を去る。

 

 

 

 

 

 

 

「─あーあ、馬鹿馬鹿しい。」

 

帽子を深く被った男は、ただひっそりと一言。

その顔に、笑みを張り付けて誰かを嘲笑うのだった。




殺っちゃったぜ。
という訳で分かってた方もいるかもですがレオーネさん死亡です。

うんまあ、運が悪かったってことで。


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糸使いの必死な逃亡

ボルスの元へ戻ろうとすると、前方でイザナミが立っていた。

見てたか…まあだろうな。

俺が本当に殺ったかどうかを確認するためだろう。

 

「これでいいかよ冥王様」

 

「戸惑いもなく殺りおったな。

昔の其方ならば……いや、昔のメンバーならば、どうであったか」

 

─テルミ、癪ではあるが貴様に託す。

 

俺の行動に納得し、託した奴が居た。

 

─テルミさん、どうして……

 

訳が分からないと、俺を非難した奴が居た。

 

全員、俺が殺した。

誰であろうと、あの時代で、俺が今後動くために、邪魔だったから。

 

─テルミ…余は……

 

そう、邪魔、だった。

 

「状況がどうあれアイツらを殺したのも俺だ」

 

どんな理由があろうと、業は業。

仮に、俺の終わりが悲惨であるなら……俺はそれほど罪深いって事だったんだろうよ。

 

そう伝えると、イザナミは寂しげに俺を見て、ふっと微笑む。

 

「…そうであったな。難儀よな、約束が其方を縛っている。それがなければ効率よく動けているだろうに」

 

「何だ、哀れみにでも来たか?ムカつくからやめろや」

 

「……ふ、余もあの時代を生きた者。

哀れまれるのは余であろうな。

…戻らなくてよいのか?」

 

「今から戻るところだったんだよクソアマ。

……いや、待てよ」

 

「……」

 

今のうちに聞くか。

 

「イザナミ、テメェ…この戦いでどこまででしゃばる?」

 

「ふむ?余は何もせんが」

 

「…なら、もう一人か?」

 

「ああ、あ奴か…あれは戦場に立てば余の指示をマトモに聞かん。だが、一人は必ず殺せとは伝えた。」

 

「…一人は必ず……」

 

レオーネは換算に入れねぇとして……

 

タツミは猿の危険種ゾンビと。

ナジェンダは元将軍と…マインはクロメと、アカメはボルス。スサノオはデスタグール。

チェルシーは隠密。

ラバックは……?

 

嫌な予感がする。

いや、ずっと感じていたのはこれか。

あの時、何かを感じたのは、これか!

 

「……チッ」

 

「何処へ行く?」

 

「この様子だと守る必要もねぇからな。

好きに動く」

 

「糸使いを助けると?」

 

やっぱラバックか。

チッ、チェルシーならまだ切り捨てる気にはなれたんだがな。

 

「切り捨てるにゃまだ早い。現状、見極めが必要な段階だ。何処まで駒を豚野郎の喉笛まで動かせるか……

そして……あのドSを不利に出来るかのな」

 

「森に向かってももう遅い」

 

「何?」

 

「余の予想では、あのままでは糸使いは死ぬ。必ずな」

 

「どういうことだ?教えろ」

 

「…ふむ、よかろう」

 

暇であるからな、と退屈そうなイザナミに舌打ちしながら早くしろと催促する。

 

そう焦るな、と油断ならぬ笑みを俺に向けながら話し出す。

 

「余の部下は、糸使いを襲撃した。そう仕向けた。

糸使いは逃げながら何か閃いたのか、さらに奥へと向かった。あの方角は…ククッ、エスデスを止めている方角か?」

 

「─!」

 

俺はそれを聞き、すぐさまイザナミが指を指した方向へと走り出す。

不味い、このままだと非常に不味い。

 

ラバック、てめぇ…自己犠牲でもするつもりか!?

 

無意味に死ぬのだけは許さねぇぞ。

俺様に利用されてから死ねや!

 

「ヒントだ、余の部下は『暴力』だ」

 

「……チッ」

 

走りながら、クスリと笑うイザナミにまた舌打ちをし、さらにスピードを上げる。

 

ボルスも心配だが、あの様子ならアカメ一人くらいなら阻止できる。

それに、あまりに手こずってる様子ならナジェンダが撤退を命じるはずだ。

その後は考える。

今は、ラバックの野郎だ。

 

暴力だぁ?

んな帝具…あれしかねぇだろうが。

 

あれの適合者だと?んなもん化物に決まってんだろうが。

 

森が見えた所でウロボロスを射出、木を噛んだウロボロスに引っ張らせ、すぐに別の前の木を噛ませ同じ行動をする。

 

まるで、猿みてぇだ。

 

どうでもいい事をすぐに頭から追い払い、ラバックの居るであろう方角へと急ぐ。

 

頼むからまだ死んでくれるなよ駒ぁ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……!」

 

「逃げてばかりではつまらんぞ!!何故向かってこない!?」

 

かれこれ、何十分?いや、何時間?

時間すら分からない。

恐らく、そんなに時間は経ってない。

 

先程から目的の場所まで逃げて逃げて、逃げまくる。

勝てない脅威は未だ自分を狙ってくる。

ホモかよ、と悪態をつくが後ろのくそったれは苛立ちを隠さずにスピードを落とさず、追い掛けてくる。

 

遊んでいるのだろうが、いつまでたっても向かってこない俺に苛立ちが募ってるようだ。

だが、付き合う理由はない。

存分に逃げさせてもらう。

この先で、死ぬかもしれないが、ナジェンダさんたちにこの脅威は大損害間違いなし。

なら、俺が犠牲になる方が……。

 

とは言え、さっさと死ぬ気はない。

隙を見て逃げ出す所存である!

 

誰か助けてくれねぇかなとか、諦めに近い願いをまだ捨てきれてない。

 

「しつけぇ、んだよ…!いつまで、追って、きやがる!」

 

「無論、貴様の息の根を止めるまでだ!が、貴様はいつまでたっても向かってこない!何故だ!」

 

「ハァ……ハァ……あ?死にに行く奴がいるか?

俺は無謀な戦いはしねぇ主義なんだよ!」

 

「…塵屑が!」

 

「塵屑で結構!」

 

早く着いてくれ。

あの将軍とその仲間相手に単騎で突っ込むとはやはり頭がおかしくなってるのか。

いや、俺は最善を尽くしているだけだ。

 

逃げ切れないなら、巻き込むに限る。

 

そろそろ体力も限界だ。

頼むから、ついてくれ。

ついでに言うと、死にたくない!

 

そう願い、森を走る。

 

すると、ようやくと言うべきか。

外が見えた。

 

「っし……!」

 

「む……」

 

ここで気を抜くわけにはいかないと外へと出る。

 

一先ずここまで逃げることは出来た!

後はこの肉だるまを誘導して─────────

 

 

「何者だ」

 

「───」

 

突然聞こえた氷を思わせる冷たい声が聞こえた。

後ろの肉だるまもそれを聞き止まる。

 

俺は焦る心を落ち着かせながら横を見る。

 

「…暴徒に襲われているのか?」

 

「……はっ、はは……」

 

「ほう……あれが…!」

 

肉だるまは歓喜の声をあげるが俺からしたら最悪の状況だ。

 

何せ────

 

 

 

「我々はイェーガーズだ。そこの二人、動くなよ」

 

 

 

 

──エスデス達がもうここまで来ていたのだから。

 

どうする?

ナイトレイドとバレるのは時間の問題だ。

いや、待て。

 

ああマジか、もうだめか?

俺はここで死ぬ運命なのか?

見放されたのか?

 

俺の心境など知る由もないエスデス達は馬から降りて俺達に近付く。

 

それと同時に肉だるまがエスデスに近付く。

おいおいおいおい、情報共有か?

 

「エスデスだな?」

 

「…貴様は誰だ?」

 

「そう睨むな。俺達は帝国を守る組織同士だろう?」

 

「……冥王か…!何をしている、イェーガーズが居ない間は貴様らの組織が動くべきだろう」

 

「俺達も大臣に言われたのさ、ここに行けってな」

 

イェーガーズ以外の組織……ハザマからの連絡でわかったことだな。

こいつがその一人か…

 

これは詰んだと思い、目を閉じる。

死ぬのは一瞬だろう。

だが、俺は閉じた目を再び開けることになる。

 

「ならば、そこの男は───!」

 

 

 

─あの男が、エスデス達に拳を振るったからだ。

 

エスデスは首を傾ける。

拳はエスデスの顔があったところを真っ直ぐに振るわれた。

エスデスは鋭く睨み、他の二人は構える。

 

どういうことだ?

 

「──何のつもりだ」

 

「ククク、フハハハハ!すまんな、俺はどうも抑えが効かん性格らしい!貴様を味見したくなった!」

 

エスデスはため息をはき、やれやれと言う。

 

「…どうやら、冥王は犬の躾がなってないようだな」

 

「そう言うな、俺に組織は向いていないからな。強きものと闘えると聞いて組織に入っただけだ」

 

「芸もできないゴリラか。ならば、やり返されても文句は言えないだろうな?」

 

「隊長!?」

 

「セリュー、お前はあの一般人の保護をしろ。

本来なら付き合う理由もないが…どうにもこいつは私の躾を所望している」

 

「…分かりました、ですが」

 

「分かっている」

 

話を聞く限り、俺は助かるのか?

天は俺を見捨てなかったか!

 

情報を持ち帰れるし、命も助かるなんざ二度もない!

 

二人は俺に近付いてくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ……助かったよ…!」

 

「ここは危険ですので、我々と避難を……」

 

「こっちです!」

 

ランさん早く、とセリューと呼ばれた女が俺の手を握って走り出す。

うわあ俺ってラッキー。

 

ランと呼ばれた男も俺の後ろを走る。

 

(ナイトレイドですね?)

 

「!」

 

バレていたのか!

くそ、すぐに逃げようにももう手を握られてる!

このままだと……

 

焦る俺を宥めるようにセリューは小声で続きを話す。

 

(待ってください、私とランさんは味方です)

 

(み、味方?ハザマの関係者か?)

 

(ええ、私とセリューさん、ハザマさんでイェーガーズの情報を横流ししています。もっとも、やっているのはハザマさんですがね)

 

ハザマ、あいつ……中々やるじゃねぇか。

何にしてもアイツのお陰で助かったぜ……

 

セリューとランと俺は馬に乗る。

エスデス徒歩になるけど……ああ、大丈夫そう。

 

走る馬の後ろで地面が砕けるような音と何かが凍るような音がしたが…振り向けるような状況じゃねえ。

二人から話を聞かねぇと

 

「すまねぇ、助かった。俺だけじゃ死んでたろうしな」

 

「いえ、たまたま貴方の顔がバレてなければ私達も助けられませんでしたから…」

 

「ええ、幸運でしたね。セリューさん、ここでいいでしょう。」

 

「そうですね…」

 

二人と共に馬から降り、俺は壁に座り込む。

肉体的疲労は勿論だが、精神的疲労もある。

全くもって今日はついてるのかついてないのか。

 

「にしても、新組織にあんな化物がいるとは……」

 

「テ…ハザマさんから聞いた通りかもしれませんね……一人一人が隊長並の強さ…」

 

「だとするなら、我々には不利ですかね」

 

「いえ、でもハザマさんはまだ大丈夫だとか」

 

「マジかよ……一人一人があのエスデスとだと?」

 

「本当なら、ですが」

 

「ハザマさんが嘘の情報を持ってると言うんですか!」

 

「間違いかもしれない、というだけです。そう怒らないでください」

 

セリューはどうやら、ハザマに依存気味…なのか?

俺には分からないが、どうにも先程のランの発言に噛みつく勢いだった。

 

「それにしても、さっきからすげえ音だな……」

 

もう、ドゴォとかピキーンとかやばい音ばかり聞こえる。

あれが人間のやることか?

もう怪獣だろ。

 

「何にしても、貴方はすぐに何処かへ逃げた方がいいでしょう」

 

「…だな」

 

「では、お気をつけて。我々もハザマさんと違いあまり手助けはできませんから」

 

「ああ、もう一度言うが、助かったぜ、ありがとな!」

 

俺はそう言って走り出す。ここら辺なら糸を使った方が早いからな。

 

改めて、助かってよかった。

これはもう、幸運に身を任せてナジェンダさんに告白を……?

 

考えながら、森へとまた入り、全員にそろそろヤバイと伝えに行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森を抜け出し、辺りを見回す。

 

ラバックは無事か……?

何にしたって早く見付けねぇと…!

 

「ハザマさん!」

 

「ん?あれは──」

 

セリューとランか。手を振って近付いてくる。

何だ、入れ違いか?

いやまて、エスデスはどうしたんだ?

 

「お二人とも、ご無事で何よりです。

ところで、エスデスさんは…」

 

「隊長なら、もう1つの組織のメンバーと交戦中です」

 

「は?」

 

「気持ちはわかりますが、まずは貴方の危惧している事の説明をします」

 

ランが言うには、ラバックは何とかセリュー達に保護されてそのまま逃げていったらしい。

ついでに、自分達の存在も教えた。

そりゃありがたい。いずれしようとは思っていたが手間が省けた。

 

んで、エスデスだが……どうやら喧嘩を売られたから買ってるらしい。

 

恐らくすぐに帰ってくるとの事。

 

「……どうなってるんです?」

 

「セリューさんと私にも何が何やら……」

 

「それよりハザマさん!たまには部下を褒めたらどうですか!」

 

今回ばかりは助かったでしょうとドヤ顔をするセリューにイラッとしつつも事実なので何も言えない。

 

仕方ねぇな。

 

「はいはい、感謝しますよ、セリューさん」

 

適当に感謝しつつ頭を撫でておく。

こんなんでいいだろ、面倒くせぇし。

 

「ぁぅ、ありがとうございます…」

 

「……」

 

ランに微妙な顔を向けられた。

何でだよ、俺様はおかしなことしてねぇだろ……

疲れた。




ラバックは無事生き残りました。

そして、次回はエスデス隊長と新組織の一人との戦い。
筋肉隆々の男……一体何ラエルなんだ……?


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力、そして思惑

力と力。

それがぶつかり合う。

片や氷と剣を用いた変幻自在の力。

片やあらゆる場面を粉砕する怪力乱心の力。

 

「ふっ、はははは!まさかこのような場所で貴様のような男と出会えるとは!冥王と大臣に感謝しなければならんなぁ!」

 

「ハハハハハハハ!!それはこちらの台詞だ帝国最強!貴様も所詮女と思ってはいたが、許せ!俺も昂りが抑えられん!」

 

どちらも、共通点は戦闘狂の部類。

そして、負け知らず。

 

片や負けは死に等しいと教えられ生きてきた部族の生き残り。

片や力がありすぎるがあまり自らに枷をかけ、戦いを楽しむ狂犬。

 

気が合うのは通りであった。

 

エスデスは自分の数十倍はあろう氷塊を目の前の男へとぶつける。

だが、それを危機とも思わぬ狂犬は、嬉々としてその氷塊へと突き進む。

拳に力を入れ、それを思いきり振り抜く。

 

ただそれだけ、ただそれだけの行為で──

 

 

「──ほう!」

 

「──軽いな帝国最強!もっと俺を楽しませろ!!」

 

 

─氷塊は意図も簡単に砕けちり、男はもっと本気を出せと凄惨な笑みを浮かべる。

これほどまでに強い男、そうはいないとエスデスは思った。

 

故に、殺す相手に普段は頓着もしないエスデスは聞いた。

 

「貴様、名はなんだ!」

 

「俺か?俺は、アズラエル。狂犬、戦場の殺戮機と呼ばれている」

 

拳と剣が何度もぶつかり合う。

互いに加減に加減を重ねた状態。

まだ殺すには惜しい。もっと楽しんでいたい。

その心がどちらにもあったからこそ、どちらもまだ死ぬことはない。

 

「アズラエル?狂犬……そうか、あの狂犬アズラエルか!通りで強く、私が胸躍る筈だ!だが、妙だな?」

 

エスデスは嬉しそうにするが疑問が浮かび上がる。

狂犬アズラエル。

その名は遠い国での戦場では有名であり、帝国にまでその名は知れ渡る程の名だ。

 

曰く、岩山を一撃で砕いた。

曰く、彼のいる戦場では何も残らない。

曰く、超級危険種を一晩もかからずに殺した。

 

他にも多くの噂を残す男。

 

だが、おかしい。

目の前の男が、いるのはおかしいのだ。

 

「貴様は拘束され、海の底へと沈んだと聞いたが?」

 

「ああ、あれか…あれにはがっかりした。深海ならば、俺の肉体を潰してくれるかと期待したが…そうはならなかったのでな。棺桶を砕いて陸に上がった」

 

「ならば戦場には行かなかったのか?」

 

「今の世界の戦場はつまらない。俺の欲を満たす存在は何処にも居なかった……」

 

だが、とアズラエルは続ける。

恐ろしい事を平然と成し遂げたが誇りもせずつまらなそうに語っていたアズラエルはエスデスを見捉える。

 

「ここならば退屈はするまい!ナイトレイド、イェーガーズ!帝国最強、最強の暗殺者、多くの帝具使いども!大臣の誘いに乗り、正解だったぞ!お陰で貴様のようないい女と巡り会えたのだからな!冥王もそうだが、貴様も見た目に似合わぬ力だ!」

 

「ほう、冥王ともやりあったのか」

 

「ああ、冥王は強いぞ?俺を相手に無傷で引き分けに持ち込んだのだからな。加えて、もう一人も中々だ。

本気は出されなかったが、リミッターを1つか2つは解除しても良さそうだった」

 

「ならば私はどうだ?」

 

「クク、当然、貴様は全力で潰してやる!

俺が出会った中で闘志をここまで燃やしてくれる女は初めてだ!」

 

「ふっ、それはいいことを聞いたな…流石の私も──」

 

直後、エスデスの姿が消える。

速いな、とアズラエルが自分の懐を見る。

 

 

 

「───力を出し惜しむ奴には靡かんぞ?」

 

「───分かってるようだなぁ?」

 

 

 

剣を刺しに来るエスデスが目に映り、更に嬉しそうにする。アズラエルは手刀で剣を弾く。

その瞬間、エスデスはともかく、剣は耐えきれなかったようで折れてしまう。

 

「ふん、軟弱な剣だ。更にいいものを造らせねば」

 

「そう言ってやるな。俺にとっては脆いが大抵ならばその剣は折れはしない。相手が悪かったのさ」

 

「ふむ、そういうものか」

 

折れた直後に距離を取りつつ氷を槍のように鋭くしたものを何百と発射するが、アズラエルは5発、拳を前につき出すだけで氷の槍全てが砕け散る。

拳圧だけでこれとは、恐れ入るとエスデスは心の中で称賛する。

 

この二人、話ながら戦っている。

まるでテレビゲームをしながら今日のニュースについて話し合うように。

 

互いに底が見えないと理解した二人はもう一度やりあおうとして

 

 

やめる。

 

互いに構えを解く。

 

「流石にこの土地を永久凍土に変えるわけにはいかんからな。今日はここまでだ」

 

「同感だ。土地を壊し、国を追い出されては堪ったものではない」

 

「追い出されようと戻ってくるだろう?力付くでな」

 

「無論だ、餌があるのにそこへいかない奴はいない」

 

「ふっ、それもそうか」

 

「だが、しまったな…」

 

「どうした」

 

アズラエルのやらかしたという反応にエスデスが気になり、聞いてくる。

 

「獲物を取りのがした。ナイトレイドを一人は殺せという命令だったんだがな…」

 

「…あの一般人……」

 

ナイトレイドだったか、と案外どうでも良さそうに言うのは先程の軽い運動が心地よかったからだろう。

 

「まあ、それはいい。俺にとっての最大の収穫はあったからな」

 

「私も、お前のような男がいるとは思わなかったぞ。

世界は広いようだ……本気で戦えばどちらが勝つか気になるな?」

 

「無論だとも。だが、それをやるのは今じゃない。

俺たちにとって共通の獲物、ナイトレイドを喰らった後でもそれは出来る」

 

「ふっ、ならばこの勝負、その時まで預ける」

 

「構わん。どちらが圧倒的強者かを決めるのが楽しみだ」

 

互いに獰猛ともいえる笑みが止まらない。

二人は好敵手になり得る者を一人見つけた。

 

帝国が誇る最強の将軍と世界中に名を轟かせた狂犬。

 

この二人が一時とはいえ暗殺組織に牙を向けることとなる。

 

それを、冷ややかな目で少女が見ていたが、見飽きたのか何処かへと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撤退。

俺が戻ったときにはナイトレイドは居なかった。

レオーネの死体もだ。

あれば取り損ねた帝具を貰うかと思ったが……

まあいい、それよりも、イェーガーズの被害は如何程か?

 

俺達はエスデスが戻ってきた後、四人で戻り、ウェイブを見つけ、そこにボルスとクロメがいるのも分かり向かう。

 

「無事でしたか」

 

「ハザマさん!そっちこそ。何をしていたの?」

 

「いえ…ナイトレイドを追っていたのですが、まんまと逃げられましてね。エスデスさんたちにもそこで会ったので戻ってきたのですよ」

 

「そうか……すまねぇ!ボルスさん、クロメ!俺が油断してなけりゃボルスさんの帝具も…!」

 

「帝具?ルビカンテがどうか…おや」

 

ルビカンテを見ると、見事に折られていた。

どうやら、あの後スサノオが乱入して来たようでしばらく耐えしのいだものの折られてしまったらしい。

それでも殺されなかったのは運が良かった、か。

 

「うん…もう戦えないみたいだ」

 

「そんなこと!」

 

「でしょうね~」

 

「ハザマ!」

 

「事実です。エスデスさんもそう判断しているかと……ですよね?」

 

「貴様に考えを読まれるのは好かんが、その通りだな。

ボルスはイェーガーズとしてもう戦えん。

……だが、悔やむなボルス」

 

「エスデス隊長…?」

 

エスデスはボルスの前まで移動する。

その顔は穏やかだ。

 

「殆どの戦力を投入されたにも関わらず生き残ったのだ。死ぬよりはマシだろう。それに、お前が死ぬと困る者が何人かいるからな」

 

「──はい、ありがとうございます、隊長!」

 

若干の涙声でボルスは礼を言う。

その光景に、殆どのメンバーが微笑んでいる。

ウェイブも先程までのアツさは何処へやらだ。

 

「なんか俺、余計だった?」

 

「そんな事ないよウェイブ。八割は余計だったけど二割は……」

 

「それを余計なお世話って言うんだよ!また俺は変に話を拗れそうにぃ!」

 

「まあ、ウェイブだしね」

 

「んだとぉ!?」

 

その後、俺達は帝都へと戻った。

戻る途中、エスデスにイザナミと俺への疑いを話したら気に食わんなと顔をしかめた。

 

「それで、殺せたのだろうな」

 

「一名、確かに魂をいただきました。冥王もそれを見ていましたので、疑いは晴れたでしょう」

 

「そうか、だが、何を言われるか分からんな…」

 

「ええ…」

 

「ハザマさん…」

 

「何です?」

 

セリューが心配する顔を俺に向けるので犬かこいつはと思いながら何だと聞く。

 

「ハザマさんはどうなるんです?」

 

「処刑はないが、大臣に疑われた、というのが不味いな」

 

「隊長!それって…」

 

「イェーガーズを抜けるよう言われるか、それとも帝国を追い出されるか…無罪を証明してもあの男は用心深いからな」

 

エスデスの冷静な声に俺は若干ながら焦る。

追い出しはないとは思うが、今イェーガーズを抜けるのはまずい。

ランとセリューの二人との接触がしにくくなるし、ブドーとも……

 

自由に城の中を歩けねぇかもしれねぇのは……非常にまずいな。

 

「まあ、戻ってから分かることだ。今は心の準備だけをしておけ。少なくとも貴様は私の部下だ。悪いようにはならん…恐らくな」

 

「最後がなければ安心したのに台無しですよ!」

 

「蛇ならばもっと上手くやるべきだろう?」

 

「ぐぬ…そんなに怪しいですか?」

 

「この上なくな。もしかしたら、大臣以上かもしれんぞ」

 

「穴に入って埋まりたいですねぇ……」

 

「やってみるか?私も試してみたいとは思っていた」

 

「やっぱり何でもないです」

 

「なんだ、つまらん」

 

つまらんじゃねぇ。

こっちはんな下らねぇことされたくもないわ。

 

そんな悪態をつきながら、俺達は帝都へと無事戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくぞ戻った!」

 

「はっ、陛下。イェーガーズ全員、帰還しました」

 

うむ、という声を聞き、何も変わってねぇようで安心した。

したのだが

 

それは全てを報告し、大臣に呼び出された時だ。

俺だけが呼び出されるということは……そういうことだろう。

エスデスにも

 

『さらばだ、ハザマ。…ナイトレイド一人の討伐、見事だった』

 

とか言われたしな。

珍しく、お疲れさまですなんざ言ってしまった。

気に入ってはいたんだがな……

 

「何でしょう?」

 

「ナイトレイドメンバー一人の殺害。見事やってくれましたね」

 

「疑われるのは癪ですし、本気を出しただけですよ、ええ」

 

「ええ、ですが……」

 

 

 

「これ以上イェーガーズに居られては困りますねぇ」

 

 

「……ほう、それはどういう事です?」

 

大臣は肉を頬張りながら話す。

 

「簡単な話ですよ。エスデス将軍の組織、イェーガーズに裏切り者の可能性アリなどというのがもしほんの少しでも外部にバレたら……」

 

「危険分子が増えるかもしれない、と」

 

「そういうことです。ですから、貴方の勤め先を代えさせてもらいました───

 

 

 

──冥王の組織に、ねぇ」

 

冥王、イザナミの組織だと?

 

……

………

…………

 

 

そういうことか。合点がいった。

 

アイツが彼処で出張ってきたのはそれの目的もあったからか!

俺様を、嵌めやがっただと……?

あのアマぁ……!

 

……だが待て、これは逆にチャンスだ。

 

大臣が何故か信頼している冥王の組織だ。

そこへ入ればまた少しこの豚の喉元に近付ける。

なら……

 

「……なるほど、分かりました」

 

「おや、案外あっさりですね?」

 

「まあ、私はこういうの慣れてますしね…情報屋って信用されませんから」

 

「そうですか。では、これからもどうぞよろしくお願いいたしますよぉ?」

 

「はいはい。私でよければ使ってくださいよ」

 

俺はそう言って退室する。

無性に何かを蹴りたくなるが抑えておく。

 

「話は終わったか?」

 

「……冥王」

 

「ククク、そう怖い目を向けてくれるな。余とて悪いとは思っている。思っているだけだがな」

 

冥王イザナミは、退室してすぐに俺の前へとやってきた。

心なしかウキウキってかぁ?

 

「テメェが何のつもりかは知らねぇが、馬鹿馬鹿しい真似しやがって」

 

「そうだな……だが、安心しろテルミ。余は其方を縛らぬ」

 

「ああ?」

 

「そのままの意味だ。では、行くぞ」

 

「何処にだよ」

 

「決まっておろう。我が組織のメンバーを紹介せねばなるまい?」

 

「……へいへい」

 

ドSが。

俺様を苦しめるのが楽しいってかぁ?

 

この恋愛脳少女が、なめた真似しやがって。

 

冥王に連れられるままある部屋まで来た。

その扉を開けると、既にメンバーは揃っているらしい

 

「来たか…ソイツが冥王の欲しがっていた男か!」

 

「…ほう、面白いな」

 

「新しいメンバーを紹介しよう。ハザマだ。

余がとても欲しかった人材だが…こちらに来てくれた」

 

「ご紹介に預かりました、ハザマです。

ええ、まあ、よろしくお願いしますよ」

 

一人は大男。恐らくはエスデスの言ってたアズラエル。

だが、もう一人は……

 

仮面を着け、俺を見て面白そうに笑いやがった。

気味が悪い。

 

冥王は俺の前まで来て、腕を広げる。

 

「歓迎しよう、ハザマ。世界に終焉をもたらす組織────

 

 

 

 

──『エンブリオ』へ」




内心ガッツポーズで今すぐ抱き付きたいが部下の手前、格好つけておく帝様

そして、内心そうなんだろうよと予想しながら難儀な奴と呆れて組織名を聞くテルミ


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それが例え

今日は天気が良い。

最近は曇りだとか多かったからな。

こういう晴れは暗い気分のときには良い。

 

だから、こういう日にさっさと報告して『あ、今日はいい天気ですねぇ』とでも言えば終わり……と思っていたのが二割。

 

もう八割は

 

「どういうことですか!納得できませんよ!」

 

「そうだ!何でだよ!?」

 

約二名が否定してくる事が予想できていたことだ。

 

「はぁ……」

 

こうなるだろうと思ってた俺はため息を隠すこともなく大きく吐く。

 

そう、俺は冥王の組織『エンブリオ』に入ることを受け入れた。

それはそうだ、あの組織は自由度が高い。

俺の計画を知る冥王は俺の邪魔を基本することはしないと言ってきた。

そこは信用できる。

言葉を違うような奴じゃないからな…だが、基本、なだけである。

 

要は、不都合にすぎる事態があれば邪魔するということだ。

 

まあ、それはいい。

構いやしない……

 

それを今のところ受け入れた俺は『エンブリオ』のメンバーとして動くことに路線を変えたわけだ。

 

んで、それをイェーガーズの面々に話した。

 

全員がいい顔をしている訳ではない。

エスデスはつまらなそうにして外を見ているが、他は納得しきってはいない。

 

何故そうなったかはわかる。

だが納得はしないってことだ。

 

現に、ウェイブとセリューが怒り、問いただしてくるからな。

 

「ですから…私とてここを離れたくはありませんでしたよ。居心地よかったですしねぇ…ですが、どうにもならない時があるのが組織というものです」

 

「そのどうにもならない事がハザマのイェーガーズ離脱だってのか!」

 

「そんなのおかしいですよ!ハザマさんは命令通りに動いていただけですし、ナイトレイドの一人を倒したじゃないですか!」

 

セリュー、テメェも下手したら離反の疑いかけられる立場なのを思い出せや……?

 

まあ、いい。

それよりも、どうやってこの二人を黙らせるかだ。

 

「大体、その疑いってのも─「おい」─っ、た、隊長……?」

 

ウェイブの声を、今まで黙っていたエスデスが遮る。

その声は不機嫌そのもの。

 

エスデスは立ち上がり、俺たちの方へと足を進める。

 

「何時までそのような話をしている?」

 

「で、でも隊長は悔しくないんですか!?俺達の仲間が疑われて、メンバーから除外されたんですよ!?」

 

「これは決定事項だった。それだけだ」

 

「そんな…そんなので納得出来るわけないじゃないですか!ハザマさんは私たちの仲間ですし、戦い方を教えてくれたりもした人なんですよ!」

 

「それはセリューとウェイブ、貴様ら二人だけの話だ。そもそも、仲間だの何だの…そのような綺麗事だけが組織ではない。何か不都合があれば当然のようにそれを処理する。それが組織であり、決まりだ」

 

「「っ…」」

 

「熱くなりすぎだ。頭を冷やすんだな。…ハザマ」

 

「はい、なんでしょう」

 

二人を正論で言い負かしたエスデスは今度は俺に話しかける。何だってんだ

 

「お前は納得した上でエンブリオに入ったのだな?」

 

「…ええ、はい」

 

「ならば言うことはない。元仲間のお前が死ななかった事は隊長として喜ぼう。だが、それだけだ…お前はもう、我らイェーガーズの仲間ではなく、ライバル組織であるエンブリオのメンバーになったのだからな」

 

「ああ、私にやけに冷たい口調なのはそれが理由ですか?」

 

「お前には元々この口調だ」

 

「あーそうでした…まあ、この事に御託を並べても仕方ありませんしね」

 

「ああそうだ……だが」

 

「?」

 

「今日一日はまだイェーガーズだ。好きにいるといい」

 

「──ありがとうございます、隊長」

 

「ふん……」

 

言うことはもうないのか、エスデスはまた先程まで座ってた椅子に座り、外を眺める。

 

ウェイブとセリューは会話の流れを聞いて、嬉しそうにしている。

クロメはそんな二人をからかっているし、ランはそれを見て微笑んでいる。

ボルスはというと……

 

「ボルスさん」

 

「あ、ハザマさん。どうしたの?」

 

「いえ…これから、ボルスさんはどうなさるので?」

 

「うーん…ルビカンテも無くなっちゃったし、私はもう戦えないからね…多分、焼却部隊に戻されると思う」

 

「そうですか……」

 

ボルスの言葉に、何となく安堵している俺がいる。

それはイェーガーズでなくなり、殺される危険性が減ったことを喜んでいるのか、それとも俺が手を下さない事に喜んでいるのか。

 

少なくとも……

 

「でも、私達は仲間だよ」

 

「組織のメンバーでなくなるというのに?」

 

「うん、それでも私達は一緒に戦って一緒のテーブルでご飯を食べた仲だから」

 

「…ボルスさん、私は」

 

「だからね、ハザマさん。お願いがあるんだ」

 

「お願い、ですか?」

 

「うん」

 

ボルスは真剣な雰囲気で、俺に頼む。

 

「私は焼却部隊に戻ってここの皆とはあまり接する時間もなくなるし、ハザマさんはエンブリオに入ってエスデス隊長たちと衝突することもあると思うんだ」

 

「まあ、でしょうね」

 

「うん、それでもね。ハザマさんには、ここの皆を仲間だって、思っていてほしいんだ」

 

「それは…」

 

「やっぱり、無理かな」

 

俺は言葉に詰まる。

ボルスが言ってるのは所詮理想でしかない。

こことは違う敵国に行くけれど、友でいてくれ…そんな発言と同じ事を言っている。

 

それを否定するのは簡単だ。

 

だってのに……

 

(何だって、俺は否定できない?)

 

無理だと、そんなことは出来ないと言うのは簡単だ。

だというのに否定の言葉を出すことは出来ない。

何故なのか。

今まで、身勝手な判断で仲間を殺し、それが皇帝の、国の為に繋がると信じて何にだって手を染めてきた。

いわば俺様は外道だった。

 

だというのに、何故今さらこんなことを否定できない?

 

俺様は、あの時の、冥王が皇帝だったときのメンバーを……

 

 

─テルミ、貴方にしか頼めない事よ

 

─テルミ、貴様に頼むのは忌々しいが…

 

─テルミさん、貴方を信じてます

 

 

─テルミ、後の事は頼むぜ

 

 

この手で殺したというのに。

何故……

 

俺は答えることができずに、ボルスを見るしか出来ない

 

「うん、私が頼んでいることはとても馬鹿らしいことなのかもしれない。でも、それでも皆には絆があったんだって信じたい」

 

「……」

 

「ハザマさん、ほら、あれを見て」

 

「見て、と言われたって……」

 

ハザマとしての口調が乱れてるのを直せずに、セリューたちの方を見る。

 

そして

 

 

(─ああ、そうかよ)

 

 

理解した。してしまったのだ。

 

ここは、とても居心地がよく、崩すことが出来ないと。

 

この組織が、俺様にとって邪魔だとしてもだ。

 

昔の組織が嫌いだったわけではない。

けれど、あの時とは幾つか精神が違う。

 

あの時のようにまだ自分の視点を貫くしか出来ない俺ではなく、視野が広がった俺だからこそ。

 

「何だか、楽しそうですね」

 

「私もそう思う。多分、彼処の輪には入れないのかもしれない。でも──」

 

 

 

「──寄り添えることは出来ると思うんだ」

 

 

それはとても眩しい言葉で。

いつも気負うなと言っていた俺が気負っていたのだと気付かされた。

 

けれど、もう、この手は綺麗じゃねぇんだ。

俺様の手は汚れきっている。

昔からずっと、汚し続けてきた手を、今さらどの面下げて洗えばいい。

 

それでも俺は

 

 

 

「─ええ、そうですね。私も、そうありたいものです」

 

 

 

この時ばかりは考えた嘘ではなく本心を口にした。

 

「ハザマさん、何してるんですか?私達だけ騒いでバカみたいじゃないですか!」

 

「そうだそうだ!俺達は誰のために騒いでると思ってんだ!」

 

「バカなのは事実じゃないですか、ねぇ?クロメさん」

 

「うん、二人は頭悪いから本能で騒いでも仕方ないよ」

 

「誰が猿だテメェ!」

 

「私は正義バカじゃなぁぁぁぁい!?」

 

「アハハ……」

 

「でも、騒いでたのは事実だと思うよ」

 

「「うぐっ!?」」

 

自然と、ボルスと俺はあの中に参加していた。

笑いが込み上げてくる。

 

 

「ク、ククク……!」

 

 

「…ハザマさん?」

 

「今の笑い声ってハザマか?」

 

二人はきょとんと俺を見るが、それでも笑いは止まらない。

 

「何です、くく、私が、笑わないとでも?」

 

「い、いや…いつもは怪しいっていうかさ」

 

「そうですそうです、いつもは気持ち悪いのに」

 

「でも、確かにハザマがこうやって笑うのを見たのは私達初めてだよね」

 

「ええ、ですね」

 

「うん」

 

「…全く、いいじゃないですか。イェーガーズとして居られる最後の日なんですから」

 

「…それもそうだな!よっしゃ、トランプやるぞ!」

 

「何でトランプなんですか?」

 

「誰でも勝てるからでしょ。チェスとかだとウェイブ弱いもん」

 

「確かに」

 

「あはは…ごめん、ウェイブ君。否定できない」

 

「ぐはぁっ!?」

 

「ついでに言っておくと、ウェイブはダウト等の心理系はもっと、弱いぞ」

 

「隊長!?そ、そんなことないぞ皆!」

 

「ほう?私に負けた事を忘れたのか?」

 

「い、いや、そういう訳じゃぁ……」

 

「ならばその身にもう一度教育してやろう、イェーガーズ隊長の力をな!」

 

エスデスもいつの間にか参加して、そうしてしばらくは全員でトランプをした。

エスデスの言うとおり、ウェイブは心理戦が弱く、ババ抜きでも最下位最多の男として不名誉を飾った。

 

俺は上位だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、最後の最後で楽しんじまった」

 

あの後、解散となった。

その時は酷かったな。

ウェイブは吹っ切れたのか勝つのは俺たちだとか言って騒いでたし、セリューは結局泣きわめいたし、クロメも何だかんだで寂しげだった。

ランはお疲れさまでしたとか言ってきやがったし。

エスデスも何やかんやで無様を晒すなと言ってきた。

 

お陰でボルスは泣いてしまった。

それでもこれからも頑張ると言い、家族の待つ家まで帰っていった。

 

俺もまた、部屋まで戻り、皇帝のところに行くかと思っていた。

 

だが

 

「楽しんできたようだな」

 

「……チッ、気分が台無しだ」

 

「酷い言われようだ」

 

冥王がさも当然のように部屋に居やがったんで言葉通り気分が冷めた。

 

折角あの空間を堪能してたというのにだ、くそ。

 

「酷いではないか、上司である余に付き合わんであの者らと戯れるとは」

 

「俺様が何しようが勝手だろ、冥王様?それとも、テメェに不都合だったか?」

 

「いや。余は今回はその浮わついた気分を殺しに来た」

 

「あ?」

 

「テルミよ──」

 

冥王は俺に近付き、胸ぐらを掴んで引っ張る。

顔が近くなり、空虚な赤い瞳が俺を見る。

 

 

 

「─よくもまあ、余達を殺しておいてそこまで楽しめるな?」

その言葉は今の俺様にとって、一番の刃となった。

 

「───離しやがれ」

 

それ以上は聞きたくはなかった。

 

「確か、ハクメンを殺したのは皇帝への信仰があの者の強さゆえに揺らぐのを危惧し、殺したのだったな?」

 

「っ、てめぇ」

 

止めようとしても、遮るように俺の当時の罪を俺に告げる

 

「トリニティとナインは何であったか、ああ、そう…技術を危惧してであったな…ラグナは……」

 

「テメェ、そこまでに」

 

やめろ、それ以上はやめろ。

 

「そうそう、至上最悪の犯罪者、『死神』に仕立て、殺したのだったな」

 

「おい、クソアマ……」

 

それ以上は…やめろ

頼むからやめろ

 

「余はなんであったか?」

 

「いい加減にしやがれ!んなもん─」

 

 

 

 

「─余が皇帝として相応しくなかったから、であったな」

 

「──」

 

仲間の、自分の死因を、俺を嘲笑うための道具として使う冥王に俺は何も言えなかった。

 

それは俺の罪であり、俺の鎖だ。

 

それでも、俺はあの時止まるわけにはいかなかった。

 

始皇帝との契約。

 

それだけが俺を突き動かす力だった。

 

だからこそ、この女は

 

「余達を裏切り、殺し、嘲笑ったのは其方だ、テルミ」

 

「今更そうしたところで、何も変わらぬ。其方はただの狡猾な蛇でしかない」

 

「そのような其方が陽だまりを求めるか?」

 

「戯けたことを。目を覚ませ、テルミ」

 

「そのような泡沫の夢に捕らわれて何になる?」

 

「罪は消えぬ、死は消えぬ」

 

「その身を焦がすのは何のためかを思い出せ」

 

「其方は最早戻れぬ場所にまで来たのだ」

 

「余に最も近い位置にまで、な」

 

何だ、こいつは

 

何を言っている?

狡猾な蛇、それは分かる。

罪深いことも分かってる。

 

だが、こいつに俺が近い位置にまで来た?

 

死に?

俺が?

何時?

 

そもそも、俺にそんな事を言って何になる?

 

「…テメェが何を言おうが勝手だが、俺様の邪魔をするんじゃねぇ」

 

「ク、クク、動揺するな、テルミよ」

 

「ああ?いつ俺が動揺したってんだよ……!

さっきからムカつくんだよ、テメェ…!俺を嘲笑うのは癪だが良い。だが、テメェが俺に執拗なまでに迫るのはちげぇだろ」

 

「何が違う?余は其方を愛でたいだけだ。

其の精神、いつまで持つ?」

 

こいつ。

……何時、気づいた?

 

「其の器…アーキタイプ、といったか。その器は確かに始皇帝時代の技術を用いた最高級の器だ」

 

「何が言いてぇ」

 

「其の器、いつまで持つのかと聞いておる」

 

「……テメェ、そりゃ」

 

「余は其方の事ならば腐るほど知っておるぞ?余に、忠誠を誓ったあの日より、ずっとな。始皇帝の契約をその身が朽ちるまで果たすのも知っている。そして、その器に限界が来ていることも知っている」

 

「あの仮面野郎か…?答えろや!」

 

「レリウスは余に従ったまでだ。そう責めるな…

だが、クク、憐れよなぁテルミ。須佐之男を求めれば求めるほど、其方の身は朽ちていく…何故あのような過ぎた力を求むる?」

 

「……」

 

…うぜぇが、このアマの言うとおりだ。

俺が須佐之男になるには俺の精神もだが、アーキタイプも使わねぇと満足に使えねぇ。

そして、使う度にアーキタイプは須佐之男の圧倒的な力による負荷を背負う。

いくら完成された器だろうが、須佐之男という帝具を越える力……正しく神器には勝れない

 

使う度にアーキタイプは壊れていき、そして、壊れた瞬間、その負荷は俺に襲いかかる。

精神体の俺ははっきり言って弱い。

 

そんな負荷を背負えば、跡形もなく消え去るだろう。

 

「そも、其方にはウロボロスがあろう?それほどまでにあの力に執着するのは何故だ?」

 

「黙れ」

 

「何を憤る?余は、間違いを言ってはおらん。過ぎた力はその分だけ身を壊す。それはあの須佐之男とて同じ─」

 

 

 

「─黙れと、言っている、冥王」

 

 

 

「!…覚悟は、あるようだな」

 

「……チッ、話は終わりだろ。さっさと出てけ。俺様も行かなきゃならねぇ」

 

「良かろう。だが…其方はもう余の部下だ。それを忘れるな」

 

「…」

 

いい加減鬱陶しいので無言で睨む。

ふっ、と笑い、冥王は出ていった。

 

「……武神は、必ず取り戻さなきゃならねぇ」

 

それがあの男に忠誠を誓った俺の最後であろうと

 

俺はあの力を使う。

それが、アイツとの契約(頼まれ事)だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「テルミ」

 

「何だ、お坊っちゃま」

 

ちょくちょくと精神を鍛えるために訪れていた皇帝の部屋には皇帝しか居なかった。

いつものようにブドーが居ない。

 

そんな中、皇帝は俺に話しかける。

 

「おぼ……んん、テルミ、1つ聞きたい」

 

「何だ、精神修行が嫌になったか?」

 

「いや、それは継続するが……建速須佐之男とは、何だ?」

 

……冥王か?

それとも、他の誰かか?

 

「誰から聞いた」

 

「…聞いたのではないのだ。信じられぬ話だが、余はあれに会っている」

 

「はあ!?どういうことだそりゃ!」

 

まさか、俺様のウロボロスが無くてもあれになれたってのか!?

そんなはずはねぇだろ、スサノオとウロボロスがあって初めて完成する神器なんだぞ!?

 

肩を掴み、迫る俺に皇帝は慌てて待てと言う。

 

「現実ではないぞ!?夢の中だ!」

 

「ああ?夢?」

 

「ああ、前に二度、夢に出てきた。一度目は存在感だけを、二度目は話した」

 

「……どういうこった?」

 

「僅かに残った力で接触したと聞いたが」

 

「…考えても仕方がねぇか……」

 

「その様子ならばやはり知ってるのだな?」

 

「確かに、建速須佐之男は知ってる」

 

「ならば教えてくれ!あれならば余達の力になってくれよう!」

 

嬉しげに聞いてくる皇帝に俺は戸惑う。

今教えていいのか?

だが、聞いてきた、そしてあれが接触したのなら……

 

教えるべきか

 

「構わねぇよ……だが、1つ言わせてもらう」

 

「何だ?」

 

「あの建速須佐之男はな……俺だ」

 

「……は?」

 

「は?じゃねぇ。信じられねぇのは仕方ねぇが、建速須佐之男ってのは俺の本当の帝具なんだよ」

 

色々あって少し疲れたのでソファに座り、ぐったりとする。

今日は寝れるか分からねぇな……

 

「む、む?……いや、話を聞けばわかることだ。聞かせてくれ」

 

「分かった。だが、今じゃ考えられねぇようなふざけた話が多い。それは今のうちに覚悟しとけよ?」

 

俺は教えることでいい方向にいくのなら構わねぇかと思い、あの時を、あの時代を思い出す

 

 

 

「─シコウテイザーの次に作られた二番目の帝具にして、始皇帝と俺様をして諦めを持たせた帝具……それが建速須佐之男だ」

 

そうして俺は、昔の友を思い浮かべながら話し出す。



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蛇が語る時代

大変遅れてしまってすいません!
モチベーションが下がっててワラキーの方ではっちゃけてました!

ですが、これからはもう少し頑張ります!

では、どうぞ


まず始めに言っておく。

始皇帝は素晴らしいだとか、賢者だとか…そんな下らねぇ言葉は一切言わねぇ。

 

寧ろ、あの野郎はそんなもんじゃねぇ。

逆だ!逆!

 

あの野郎は馬鹿、阿呆、夢の見すぎだ!

あんな奴についていった奴は相当な馬鹿だろうよ!

俺様も後悔したぜ…面白そうと思って付き合った結果地獄を味わうとは思いもしなかった!

 

─そ、そんなにか?余は始皇帝はこの国を造り上げ、帝具を創造した偉大なる王だと……

 

そりゃそう教えるだろ。

お前の祖先が大馬鹿者でした~なんざ、示しがつかねぇからな。

 

それによぉ…帝具を創造した?違うね、それしか出来なかったのさ、あの馬鹿は。

あれしか、奴には才ってのがありはしなかった。

偉大な王?名君の中の名君?

そりゃ、結構な妄想で。

 

…だからテメェには教えてやるのさ、テメェの祖先であるあの馬鹿と俺が、どんな道を渡ったか。

そして、その過程の中でどのようにしてあの帝具達が出来上がったのかを。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

当時は今みたいな世の中じゃ無かった。

法なんぞ無い、正義なんぞ何処にも存在しない世界だった。

そういった奴から死んでいったからな。

当たり前ながら、皆が皆生きるためにどんな手も使った。

 

だが、そこで現れたのが始皇帝だ。

 

─…聞くが、どうやって国が出来たのだ?その当時とやらは力こそが正義だったのだろう?

 

簡単な話だ。

アイツがやったのは簡単なのさ。

 

「余は、国を創るぞ!」

 

それを必死に、真っ直ぐに語った。

ひたすらなまでにその夢へと進もうとする姿はその時代じゃ変わり者と称されても仕方がない。

今の世でも変わり者だろうよ、アイツは。

 

─そ、そんなものでか?

 

ああ、だが、それだけじゃない。

国を創る前からアイツはお人好しの類いだった。

 

食いもんをくれてやったりとかな。

徳の高いって言うんだろうよ、ああいうのは。

 

そんな変わり者だからか、自然とアイツについてくる奴が増えていった。

おこぼれに預かろうってのもあるだろうが…一番は暇潰しだな。

 

─暇潰し?国を創る事が?

 

いや、アイツが何処までやれるかを見るのが暇潰しだ。

こいつは面白い奴だから何かするかもしれない。

それを手助けする傍らでどうなるかを見るのもアリだってな。

 

─そうして出来たのが、今の国か。

 

そう、俺達は完成させた。

どれだけ掛かったかも覚えちゃいねぇが、あの馬鹿は成し遂げたのさ。

 

国創りをしてる間に俺達にも絆ってのが出来た。

始皇帝を中心に、人の輪は出来ていった。

 

そして、国が出来たとき、問題は大積みだ。

 

法は勿論のこと、金も、食料も、軍事力も。

あらゆるものが不足した国だった。

 

だから、俺達もあらゆる手段を講じた。

まあ、それは省くぞ。

 

そうして、最後に残った問題は軍事力だ。

 

その時には武器の類いも多少はあったが…あの馬鹿はこんなことを言い出した。

 

「危険種を素材にするのはどうだ?」

 

『は?』

 

俺達は全員馬鹿いってるなこいつと思ったぜ。

 

当たり前だが、当時での危険種は今よりも恐ろしい存在だった。

だが、こいつはそれを知った上で言ったのさ。

 

無茶無謀なんてもんじゃねぇ。

死地に送り込む王様かと疑ったぜ俺は。

 

だが、次に言い放ったのがやる気ってのを出さなきゃならんかった。

 

「無理とな?よし、じゃあ余が行く」

 

『待て待て待て!!』

 

そりゃ必死だったね。

言い出したら聞かないのがアイツだ。

俺達は臣下だ。

臣下が王を死地に送り込む訳にはいかない。

だから俺達はやることになったのさ。

 

まず弱い危険種を殺した。

最初は慣れていかないといざ超級なんて無理だろうしな。

んで、その危険種で武器を造った。

帝具じゃねぇぞ?

 

少しランクを上げて挑み、武器を造り、また挑みの繰り返し。

んで、遂に化け物である超級との戦いさ。

 

「なあ、やっぱり危険ではないか?」

 

「いやテメェが言い出したんだろうが!」

 

『そーだそーだ!』

 

「む、むぅ……」

 

「テメェはただ命令すりゃいい。行ってこいってな。」

 

「……うむ。

では、王たる余が臣下である諸君らに命じよう。

生きて帰ってこい。

これは絶対である、背けば……余が魂引き戻してくれるわぁッ!」

 

「真面目にやれ馬鹿!」

 

「ぐふぅ!?お、王たる余になんという不敬…!」

 

─お主容赦ないな。

 

アイツと俺達は何処までいってもこうなのさ。

 

あんな馬鹿だからこそついてくる奴が居た。

最初が興味本意であっても、後にそれは忠義へと変わる。

俺達の態度はあれだが、アイツの事を認めてない奴はあの中には誰一人として居なかった。

 

だから、俺達は超級に挑んだ。

つっても、マトモにやり合って勝てるわけがねぇ。

 

寝てるところ襲い掛かったりしたな。

 

死人は出たが、それでも俺達は勝利した。

 

そして、その素材と戦死者を持ち帰った。

始皇帝はそりゃ喜びもしたし泣いたりもした。

 

死んだ奴の意志を無駄にしないように慎重に帝具製造に取り組んだ。

 

そうして、最初に出来たのが……シコウテイザーだ。

あれを完成させたときの俺達といったらなぁ…。

 

「出来たぞ!余の帝具、シコウテイザーだ!!」

 

『おぉ…』

 

「どうした、なぜ喜ばぬ?」

 

「いや疲れてんだよ。何日徹夜したと思ってやがる。」

 

「5日だろうに。」

 

「お前からしたらたかが5日でも、俺らからしたら5日もなんだよこのタコ!」

 

「む、そうか……」

 

─あまり興奮できる状況ではなかったのだな。

 

残念ながらな。

それからは凄かったもんだ。

シコウテイザーの実験を兼ねて超級を討伐して、その素材でまた帝具造ってとな。

 

他の帝具どもは一種の危険種を使った帝具ばかりだ。

だが、ただ一つだけ違うのを造った。

 

─それが須佐之男か。

 

その通りだ。

素材とした危険種は3種。

いずれも他の帝具にも使われるほどの個体だ。

 

─さ、3種!?拒絶反応などは起きなかったのか!?

 

起きなかった。

不思議とな…。恐らく、素材達の相性が良かったんだろうよ。

 

そして、それを使うのは俺だ。

 

「テルミよ、これはお主に。」

 

「は、俺にこれを?」

 

「使えるかは分からぬが、不思議とお主ならば使えると思ってな。何、余を信用せよ!

最悪死ぬだけぞ!」

 

「いやその最悪が一番やべぇんだけどな…」

 

物は試しで使おうと思って触れてみた。

 

─死ぬ危険性考慮してそれか。

 

俺もアイツも馬鹿だったってことさ。

 

んで、適正があって使えたって訳だ。

 

だが…それは、力がありすぎた。

 

「テルミよ、どうだ?」

 

「悪くは、ない。」

 

「声変わりすらするか。」

 

「3種の危険種の意志が喧しいが、それを除けば最高だ。力がたぎる…!」

 

「変わりすぎでは?」

 

試運転として、危険種と単独で戦ったとき、それは起こった。

 

俺が須佐之男の能力で剣を振るった時だ。

力加減もそこまで出来るほど慣れちゃいなかった。

 

だからそれは起こったのさ。

 

呆然としていた俺にそろそろ終わったかと思った始皇帝が来た。

 

「これは……!?」

 

「…これが、この鎧の力か。」

 

「危険種どころか、その場の生命すら壊すとは…正にこれは……」

 

「破壊の帝具、か。」

 

「うむ…。」

 

そして、その力は破壊力だけではなかった。

 

人前に出せば文字通り、その場の人間が平伏した。

須佐之男はそこまでの存在感を持っていた。

 

だからこそ、俺と始皇帝は決めた。

 

これを、二つに分けてしまおうと。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

「って訳だ。今回はここまでだ。」

 

「…アーキタイプの時も気になるがそれはまた今度にしよう。そのウロボロスとナイトレイドにいるスサノオが揃えば、武速須佐之男は使えるのだな?」

 

「そうだ。俺はそれをいつかは使わなきゃならねぇ。

だが、使うときはお前も覚悟しておいた方がいい。」

 

「…うむ。」

 

俺はそこまで言って、部屋を出ていく。

 

俺には力がいる。

契約を守るため、国を変えるための力がいる。

 

だからこそ、何時しかあの力を解放する。

 

…じゃなきゃ倒せねぇのがいるしな。

 

俺は、自室に戻り、アーキタイプに入り込むことで実体を得る。

そして、夜の帝国を眺める。

 

「この国は、あの時の面影がねぇ。

時代が変わったからじゃなく、中身が変わったからだ。この国は嘘だらけだ。なら、俺がそれを壊す。

真実ってのを俺が創造する。

……テメェの夢を壊す奴等は俺様が壊す。」

 

それが、ダチって奴なんだろう。

 

始皇帝(馬鹿野郎)



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遥か昔、廻る今

どうも、ロザミアです。

さっさとこの小説を終わらせにいって、また新作作るんだよスモーキー!!

あ、手抜きはしませんよ


曖昧な意識の中、それでも確信できたことはこれが夢だということだった。

何故なら、あり得ないからだ。

目の前が、どんなにあり得ないのか、それを教えてくれているからだ。

 

─────────────────────

 

 

「テルミよ、何をしている」

 

「いや、何も」

 

目の前の穴がどこに空いてんのか分からない白い鎧を来た男に特に何もないと夢の俺が伝える。

 

アーキタイプ。

その性質は魂の保管、そして、その魂の姿をトレースするもの。

始皇帝が造り上げたとんでも品の一つ。

 

目の前の鎧野郎は俺の言葉にそうか、とだけ返す。

 

「しっかし、てめぇも暇人だなぁ?ええおい──」

 

 

 

 

「──ハクメンちゃんよぉ。」

 

目の前の鎧野郎─ハクメン─に対して俺は挑発するように話し出す。

 

ハクメン。

この時代の帝国における最強。

鎧は特殊な金属で出来ているらしく、製造法は不明。

そして、その背にある大人の男一人分はある野太刀は帝具の一つ。

 

術刻斬魔 『鳴神』。

性能は対帝具に偏っている。

鳴神は帝具の能力がどれだけ強力だろうが縛ることが出来る。

勿論、制限はあるが…。

加えて、ある術があるが……説明が難しいんだよなぁ。

 

んで、そんなハクメンちゃんだが、余程暇なのか俺の部屋にまで来やがった。

 

俺様からしたら化け物が進入してきたようなもんだ。

 

何かしちまったのかと焦る。

 

…戦えねぇことはねぇが鳴神とハクメンは強すぎる。

マトモな戦いにはならねぇだろうな。

 

まあ、今は互いに向かい合って座ってる。

 

「んで、何のようだ。」

 

「…テルミ。貴様は帝の帝具について何も思わぬか?」

 

「イザナミか…やけに唐突だな。

今まで軍事には口出しをしても帝そのものには何も言わなかったテメェが…いや、何も言わなかったからこそか。」

 

コイツが御執心なのは別のはずだろうに。

だが、英雄様の疑問とは珍しい。

 

「危険物、死そのもの、メシマズに拍車がかかった。

このくらいだろ。」

 

「一つおかしい物があったが…概ね私も同じ印象を抱いた。貴様がそうなら、この印象はほぼ全員が抱いたのやもしれぬな。」

 

「あ?アイツら全員がだと?」

 

「それに、帝自身が変わり始めている。

…あれはもしや、帝具との同調が高過ぎるということか?」

 

「…帝具は生きてる。素材になった危険種の魂ってのが入ってる。それは知ってんだろ?」

 

「把握している。」

 

「その危険種の魂が強すぎるが故に一部の帝具は人を選ぶのさ。そして、イザナミの素材になった危険種は帝を選んだ。

んで、こっからが最悪なんだが…相性が良すぎると、その人間の魂が染まっていくらしい。」

 

「何…?それは帝具の危険種に近付いていくということか!」

 

「当たりだ。」

 

俺は説明を終えると用意していたゆで玉子を食べる。

 

美味い、犯罪的な美味さだ。

 

「しかし、何故帝とイザナミの相性があそこまで良いのか…。」

 

「あのお転婆の中身がドロドロかも知れねぇぞ?

アイツは妙なところで達観してやがるからな。」

 

「……。」

 

俺の一言を否定できないのかハクメンは静かになる。

帝に仕える者として心配なんだろうが…こいつがねぇ。

 

「んで?」

 

「む?」

 

「ラグナちゃんとはどうだ?」

 

「死神か。奴とは顔を合わせる度に試合になる。」

 

「要はあまりよろしくねぇのな。」

 

「何故死神の話題を出す?」

 

「一応俺様はテメェらの上司だぞ?

部下の関係を把握するのは当たり前だろうが。

だからこそ聞かせろ。

テメェ、どうしてラグナちゃんにあそこまで御執心なんだ?」

 

「……。」

 

俺の問いにハクメンはゆっくりと語り出す。

 

「『死神』ラグナ・ザ・ブラッドエッジは──」

 

そこから語られたのは衝撃の真実だった。

流石の俺もちょいと驚いた。

 

そして、話が終わった頃には俺様も大爆笑だ。

 

「じゃあなんだ!テメェはそれで突っかかってたのか!?やっべ笑いが止まんねぇヒャハハハハハ!」

 

「それ以上言うのなら斬るぞ。」

 

「っと…クク、英雄様を起こらせるわけにもいかねぇからなぁ。ま、これ以上俺様に何か言われたくないなら出ていけよ。

これでも忙しいんでな。」

 

俺様は用は済んだだろとハクメンを追い出すようにシッシと手を振る。

ハクメンも長居する気は無いのか立ち上がり、出ていこうとする。

 

しかし、扉の前で立ち止まる。

 

「テルミよ。」

 

「何だ。」

 

「もしも帝が帝具に染まってしまえばどうする?」

 

「テメェと同意見だ。これで分かるだろ?」

 

「…そうか。ならば、私は何も言うまい。

それと、シュウイチロウには気を付けろ。

最近の奴は、何かがおかしい。」

 

「シュウイチロウ…分かった。」

 

シュウイチロウ=アヤツキ、か。

 

気にする事と言えば…帝が帝具を手に入れたときの奴の反応か。

 

ハクメンはそれを言った後に出ていった。

 

シュウイチロウについては、語ることが少ない。

というより、何を話せばいいのやら。

接点がねぇ。

 

だが、気にしておくか。

帝具に対して並々ならぬ感情を感じ取ったしな───

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

「…そうか。」

 

俺はそこで目を覚ます。

そして、起き上がり窓を見ると外はまだ夜だった。

 

「……ああ、そうか。お前か(・・・)。」

 

怒りを抱いた。

ここまで強い怒りを抱いたのは久方ぶりだ。

 

そうか、お前か。

お前だったんだな、シュウイチロウ。

 

「あの、くそ野郎…俺様を出し抜いてでもしたのがこれだと?」

 

負の遺産。

そうとしか言えない物を理解した俺はやり場のない怒りを壁を殴ることで発散した。

 

帝具人間 イザナミを造り上げたのは、奴だ。

 

間違いない。

 

あの時代、あのメンバーでアイツだけが危うさを持っていた。

いや、違うな。

 

「元から、そのつもりだったってか…『大魔法使い』の親とは思えねぇ外道ぶりだ。」

 

外道である俺が言えることではない。

だが、そうとしか言えない。

 

人間の死をねじ曲げて造り上げたのが化け物なんざ、あっちゃならねぇ。

それも、帝国でだ。

 

「今更気付いて何になるってんだ、こんなの…だが感謝するぜ。」

 

まるで、ハクメンが過去から俺に不甲斐ないと言っているようだった。

苛立つ。

そういうのはラグナちゃんにやってくれねぇか。

 

苛立ちのせいで眠る気にもなれない俺は扉がノックされるのを聞き取る。

 

誰だ、こんな遅くに。

 

『私だ。』

 

…確か、『エンブリオ』のメンバー…名前はレリウスだったか?

そいつの声がした。

 

「……どうぞ、お入りください。」

 

ハザマとしての面に入れ換える。

 

そして、扉が開き、あの不気味な仮面野郎が入ってくる。

 

「失礼する。」

 

「何の御用です?レリウス=クローバーさん。」

 

「少し聞きたいことができたのでな。」

 

「ハァ、聞きたいこと、ですか。」

 

「ああ──

 

 

─イザナミの事についてだ。」

 

俺はその言葉を聞いたとき、エスパーかと疑った。

 

だが、それはない。

 

何となく、こいつはそれじゃねぇ。

 

「イザナミさんについてですか?いやぁ、何も語れる事は──」

 

「そう取り繕わなくていい、ユウキ=テルミ。」

 

「──。」

 

コイツ、俺の名を…?

イザナミが教えたのか。

 

だが、バレてるなら一々取り繕う必要はない。

俺は早々にテルミに切り替える。

 

「テメェ、マジで何の用だ?」

 

「二度も同じ事を言うのは無駄だと思うのだが?」

 

「…イザナミについて、だったな。」

 

「ああ。私が聞きたいことは簡単だ。」

 

レリウスは淡々と事実を確認するように聞いてきた。

胡散臭い笑みを張り付けて。

 

 

 

「シュウイチロウ=アヤツキの実験が成功したようなのでな。」

 

 

 

爆弾を放り投げてきた。

 

今と過去の因縁が更に交差する。

俺はそれを感じざるを得なかった。



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レリウス=クローバー

……。(アカメが斬る!をまた読み直す。)

ふぅ、5人くらいかな。

そんな感じなことを考えつつ、投稿してる次第。




シュウイチロウ=アヤツキ。

その名前は決してこの時代で出る程有名なものではない。

それが、目の前の仮面野郎(レリウス=クローバー)の口から出た。

 

得たいの知れない奴に俺はここで始末するべきかを思案する。

 

シュウイチロウの実験が成功した。

 

その言葉の真意を汲み取れないほど俺は馬鹿じゃないと思っている。

 

「テメェ、何者だ。どうしてこの時代の奴がシュウイチロウの名前を知ってやがる。」

 

「ふっ、動揺しているな。そう警戒しなくていい。

あの男の実験の結果が冥王だったことを確認しただけだ。」

 

「随分親しげじゃねぇか?ええ?

『探求者』レリウス=クローバーさんよぉ。」

 

俺がテメェを調べねぇと思ったのか。

旅をしながら、時には人を救い、時には兵器を造る。

何もかもが曖昧な経歴。

そして、何かを求めるなような態度。

 

そこからついたのが『探求者』。

 

流石にここに来るとは思ってなかったが調べといて正解だったわけだ。

 

「私も有名なようだ。」

 

「ああ、イカれ野郎として名を馳せてるぜ?おめっとさん。で、何だってテメェがんな事知ってる。」

 

「協力者だ、と言ったら?」

 

「そうだとして、時代を越える術があったのかを聞きてぇもんだな。」

 

「コールドスリープ。」

 

「あ?」

 

「コールドスリープを行ったのだよ。」

 

「…!」

 

マジか、と驚愕する。

有り得るのか?いや、イザナミを造ったシュウイチロウの協力者ならあり得なくは……。

そうだとして、コイツはあの時代からずっと寝てたってのか……!

 

「んで、俺にそれを伝えてどうする?」

 

「警戒しなくていいと言っただろう?」

 

「ハア?」

 

「私はただ協力関係を結びに来た。」

 

「テメェ、冥王はどうするつもりだ。」

 

「アレはシュウイチロウの研究の結果だ。

私はただ技術を渡したに過ぎない。

それに、私からすればお前の方が興味深い。」

 

…チッ、研究者から逸脱してる面はあるが、根っこは研究者特有のそれだ。

自分の興味以外どうでもいい性格。

 

敵なら厄介だが…味方ならばこちらへ向ける興味が尽きない限りは裏切りはない。

そこがまた厄介な訳だが。

 

「俺を解剖でもしたいってか?他所でやれや。」

 

「いいや、私が興味を示しているのは…お前の道と言うべきか。」

 

「さっきから訳わかんねぇ事言う奴だな、噛み砕いて話せねぇのか?」

 

「ふむ…いいだろう。

分かりやすく言うと、私はお前をただ観察していたいだけだ。それだけで私の目的に近付けると確信している。代わりにお前にもたらすのは…その躯の調整でどうだ?」

 

「テメェ、どこまで……!」

 

「見れば分かる。私から見てもその躯は素晴らしい出来だ。人形師ならば誰もが目指す果て…それを体現している。」

 

この男、あまりにも不気味だ。

本当にコイツと協力していいものか。

 

レリウスは俺の決めかねている様子を見て、ならばと話し出す。

 

「明日まで待とう。利益はそちらにあるとだけ私は伝えておく。」

 

「…。」

 

「部外者の私が言うのも何だが、当時はあれが最善だった。あれを放置すれば帝国そのものが滅んでいただろう。」

 

「何処まで知って…いや…あの時代の人間だからな、知ってて当たり前ってことか。」

 

「…まあそれでいい。

思えば、シュウイチロウは私が技術を渡した時には既に狂っていたのやも知れんな。」

 

「ケッ、助長させたのはテメェだ。」

 

「何分、研究者なものでね。感傷は後からすると決めている。」

 

……明日まで、か。

…いや、待て。

 

その明日の為に何が出来る。

こんなことで燻ってる場合か?

 

「おい、俺の躯の調整が出来るんだな?」

 

「その躯は完成された物だ。

私が出来るのはその躯の寿命を引き延ばすだけに過ぎない。それを調整と言えるなら、だが。」

 

「十分だ。俺を調べてぇなら好きにしろ。

だが、他にも頼みてぇ事がある。」

 

「交渉成立ということか。」

 

「明日をテメェに割くのが嫌なんだよ。

ま、これから使いっ走りにしてやるから覚悟しろや。」

 

「ふっ、楽しみにさせてもらおう。」

 

互いに不敵な笑みを浮かべる。

悔しいが、こいつの手を借りれるのはデカい。

同じ組織のメンバーだからこそ疑っていたが…いや、まだ信じちゃいねぇがよ。

 

だがまあ…これでまた俺達の計画は磐石となった。

 

アイツらにも伝えておくか。

 

んでもって、気になることがあるから聞いてみるか。

 

「なあ、オネストの息子について何か知ってるか?」

 

「息子?…いや、知らないな。何か分かり次第伝えよう。」

 

「ああ、頼む。」

 

「では、私はこれで。」

 

「せいぜいオネストに疑われねぇようにな。」

 

「アレは己しか信じていない。

だが、『疑い』が出ないようにはしよう。」

 

そう言ってレリウスは俺の部屋から出ていった。

 

…冥王 イザナミの生前の時代の奴が居るとはな。

 

ま、生きてるってこたぁ()には侵されてねぇみたいだな。

 

レリウス、セリュー、ラン、ブドー、ナイトレイドの面々…皇帝。

現在の仲間と呼べる面子はこれか。

 

チッ、目が覚めちまったな。

 

忘れねぇ内に書いておくか。

 

それに、明日は何かありそうだ。

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

次の日の朝、セリューから珍しく手紙が届き、それを読んでいるところだった。

 

「…皇拳寺羅刹四鬼、だぁ?」

 

大臣お抱えの処刑人共を安寧道に送り込んだスパイであるボリックに貸し与えた…かなり重要視してるな。

帝具使いを殺したとも聞くし、マトモな性癖してる奴もいねぇだろうな。

『私達はナイトレイドを安寧道本拠地 キョロクで迎え撃ちます。勿論、私とランさんは殺すような真似はしませんが。』

 

「…あー、そうか、そろそろか。」

 

俺は続きを読んで決断をまた迫られる。

 

その文は…

 

『ウェイブとクロメ、どうしますか?』

 

「ふぅ…ま、確かに殺した方がいいだろうがな。」

 

どうすっかね。

ウェイブは帝国の腐敗に勘づいてる頃だろうが。

 

こちらに引き込むか?

いや、アイツはクロメを気にかけてるからな…。

それに、人情に厚い男だ。

 

「ったく、損な役回りを強いられるぜ…。」

 

俺は返事を書こうと思った時、部屋の扉がノックされる。

 

誰だ?レリウスか、大臣、イザナミか…。

 

取り合えず、手紙は隠しておくか。

 

「どうぞ。」

 

「失礼する。」

 

「…レリウスか。」

 

入ってきたのはレリウスだった。

昨日の今日で忙しい奴だ。

 

「冥王から任務が言い渡された。私とお前にな。」

 

「…へぇ?内容は。」

 

「キョロクへ向かい、ボリックの護衛だそうだ。

私に戦闘は期待しないで欲しいのだがな。」

 

「ケッ、よく言うぜ。…その手の刻印。

間違いねぇ、『デトネーター』だな?」

 

「ほう、気付いていたか。」

 

俺はレリウスの両手の甲に浮き出ている刻印を指摘する。

レリウスの反応を見るに当たりらしい。

 

造刻人形 『デトネーター』。

自身の刻印と刻印を物に与え、それを操る帝具。

これはエスデスの『デモンズエキス』と同じで人を選ぶもんなんだが…飲んで生きてるって事はそう言うことだろ。

 

「ご自慢の人形はねぇのか?」

 

「キョロクに行く際、ご覧に入れよう。

さて、行くとするか。」

 

「ああ。…にしても、アズラエルは抗議しなかったのか?」

 

「冥王曰く、今回の任務に奴は向かぬ、だそうだ。」

 

「独断行動で暴れるのがアイツだからなぁ…当たり前か。」

 

んじゃまあ、やるだけやるか。

あーめんどくせぇ…。

 

ボリックの始末、ナイトレイドとの情報共有、イェーガーズのウェイブとクロメを始末するか否か。

他にもやることが山積みだ。

 

そろそろブドーを動かすのも手か?

 

「テルミ、ナイトレイドをお前はどう見る?」

 

「別に何もねぇよ。ただ、利用してされる関係だ。

どんな信念や理念があろうが、俺様がすることは変わらねぇ。

あいつらは、駒だ。それも死なれちゃ困るな。」

 

「なるほど。」

 

んな事より、目指すはキョロクだ。

イェーガーズとの連携作戦…表向きはそうだが。

 

…まあ、着いてからにするか。

 

さて、誰を殺して、誰を生かすか。

それか、誰かを引き込むか。

 

楽しみになってきやがったなぁ。

 

キョロクにいる奴等をどう利用するかを考えつつ、俺とレリウスはキョロクへと向かう。




そんなこんなでレリウスも参戦です。
原作BBでも影で活躍しまくりなレリウス。
アカ斬るでどれほどの活躍をするのか…。

あ、活動報告を一つ作りました。

正直、やる気落ちてきてる……。


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キョロクにて 正義始動

令和ですよ皆さん!
令和でもよろしくお願いします!
どうも、ロザミアです。

ハイスクールD×Dの二次創作懲りずに上げたけどやりやすいからね、仕方ないね。

こっちはこっちで状況が動いていきます。

ではどうぞ。


キョロクへ到着した俺らは早速エスデス達の拠点へと向かう。

今の俺は若干疲れ気味だ。

 

当たり前だ、馬を走らせてキョロクへ着いたらすぐにエスデスの元へ、なんざ疲れるわ。

これから更に疲れそうなんだから面倒くせぇゆで卵食いてぇ。

 

そんな俺だが、今は歩きながらレリウスにアーキタイプの説明をしている。

レリウスは俺の説明を聞いてほくそ笑む。

 

「では、アーキタイプは素体でなく、『鎧』であると?」

 

「そうだ。武神は覚醒したウロボロス単体じゃ顕現させられねぇ。

その為の『鎧』が要るのさ…それも、生半可なもんじゃなく、より完成された『鎧』がな。」

 

「それほどまでに強大な力を持つのかね、武神は。」

 

「制御できないで振るった剣はその周辺の危険種全てを殺した。一振りでだ。」

 

「…なるほど、少なくとも今の時代に合うものでは無いということは把握した。」

 

「それで?アーキタイプの事聞いてどうするつもりだ。」

 

「どうもしない。私の研究の理想に近いのがそれというだけだ。」

 

「なるほどねぇ…魂か。」

 

「ほう、気付いたか。」

 

「そこまで言われちゃ馬鹿でも分かる。」

 

こいつの研究対象は魂だ。

どのような研究をしてきたのかは知らないが、恐らくは非人道的な事もしたに違いない。

 

だが、それを咎めるつもりは無い。

して何になる。

 

正直どうでもよかった。

 

だが、これだけは聞きたい。

 

「その研究は俺様の計画、そして帝国に害はねぇんだな?」

 

「他の事など私にはどうでもよいのでね。

お前との協力も利害の一致に他ならない。」

 

「そうかよ。なら、裏切らねぇこった。」

 

「無論、そのような危険行為はしないと約束しよう。」

 

「そりゃ『研究者』としてか?それとも『レリウス』としてか?」

 

「後者だ。」

 

「…ならいい。」

 

後はどう扱うかだけだ。

俺様も味方には優しいんでな、面倒な事は一任する。

その結果がどうなるかは…最良でねぇと許さねぇが。

 

「それでどうする?」

 

「何がだ。」

 

「何が、とは…言った方がいいか?」

 

レリウスはまた笑みを深めていた。

 

考えは読まれているようだ。

 

 

「「皇拳寺羅刹四鬼は殺すのか?」だろ?」

 

「…それで、どうするつもりだ?」

 

「俺様がやる案件じゃねぇ。

予想ではあるがナイトレイドが始末する。

どんな形であれ、な。

まあ、それでも一人二人が生き延びたんなら──」

 

 

─その日の内に惨たらしく殺してやるよ。

 

 

何ということはない。

いつものように、殺すだけだ。

体術だのなんだの、そんなのはどうだっていい。

 

帝具使いを倒せるほどの実力だぁ?

 

何処まで吠えても、餌は餌、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

てな訳でようやくキョロクの拠点へと着いたが、デカいな。

中々の厚待遇なようで腹立つな。

 

「お姉ちゃんボールパス~!」

 

「はい!」

 

「…何やってやがるあの駄犬。」

 

「お前の部下か。」

 

拠点の近くでセリューがガキ共とボール遊びをしてやがる。

イェーガーズは遊ぶのが仕事か?

 

だが、呼び止めるのは無粋か。

 

…とか、思ってたら俺達に気付いてガキ共に一言言ってから駆け寄って来やがった。

うわめっちゃ笑顔。

 

「ハザマさん!」

 

「今は別だ。」

 

「じゃあテルミさん!」

 

「チッ、んで?何してやがる。」

 

「見ての通りサッカーしてたんですけど。」

 

「イェーガーズは遊びに来たってか。」

 

「正直、私は本気でやる意味無いんですけどね。

というか、どうしてキョロクへ?

あ、もしかして直接始末しに来ました?」

 

「朝っぱらから物騒な発言してんじゃねぇよ馬鹿犬。

仕事だ仕事。」

 

俺はセリューに説明するとうへぇと言って顔を顰める。

そんなに嫌か。

セリューは説明を聞いた後に俺の隣に立っているレリウスに視線を移す。

 

「それで、その人が?」

 

「ああ、腕は確かだとは思うぜ。

イザナミが実力不足をメンバーにはしねぇだろうからな。」

 

「レリウス=クローバーだ。」

 

「セリュー・ユビキタスです。

…黒いですね、貴方。」

 

「黒い、か。確かに私は黒いだろうな。」

 

「ええ、真っ黒です。

つまり、テルミさんを任せられますね!」

 

「おいテメェ…!どうしてそうなる?」

 

「だってテルミさんが優しい性格の人と一緒に居たらどんな凄惨な事になるか分かったもんじゃないですし?」

 

「言ってくれるじゃねぇか駄犬…!」

 

コイツ、煽りスキル上げやがったな…。

 

熱くなりそうだったが一度冷静になって落ち着く。

面倒臭い奴になりやがってよ……ったく。

 

「それで?状況はどうだ?」

 

「皇拳寺羅刹四鬼とは個人的には協力出来そうにはないですね。

あっちも自分達で動くと思いますよ。」

 

「へぇ…」

 

「では、我々はどうする?」

 

「それについては後で話す。

今は他の情報が欲しい。判断はその後だ。

ただ、今が絶好のチャンスなのは間違いねぇ。」

 

「チャンスですか?」

 

「ああ…セリューよぉ。」

 

俺はニタリと笑い、後に何が起こるのかを想像する。

 

そうだ、これはチャンスだ。

あらゆる意味でのな。

 

皇帝に関しては『まだ』守る必要はねぇ。

そもそもブドーがいるから当面は安全だろう。

アイツが皇帝に害ある存在の接触を大臣ならいざ知らず他なら許しはしないだろう。

 

「把握する数にまで減らすにゃいい機会だとは思わねぇか?」

 

「んー…ですね。それで、何名です?」

 

「…さて、誰にするか。」

 

「ウェイブとクロメはどうします?」

 

「クロメを殺したらアカメが煩そうだが…それに。」

 

ウェイブ、か。

俺個人としちゃまだ生かしといた方が事態の好転に繋がるように感じる。

いつもの勘だが、長年培った勘は時として予知のように当たるものだ。

 

信じてみるのもありか。

 

ウェイブとクロメはコンビだ。

中々に面白いコンビではある。

 

何やかんやでブレーキ役としてウェイブは働いてるしな。

 

なら、まだ経過を見ても問題はねぇか…。

 

「ま、それも後でな。」

 

「話は終わりかね?

終わったのならイェーガーズにエンブリオとして挨拶に行かねばならない。行くぞ、ハザマ。」

 

「あー……ハイハイ、分かりましたよ。」

 

「セリュー、君はどうする?」

 

「私はここに居ますよ。」

 

「そうか。」

 

「また後で会いましょう、セリューさん。」

 

「はいはい。」

 

俺とレリウスは拠点…ってか館に入っていく。

豪華な飯でもくれよ、疲れたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お前ら二人か。」

 

「ええ、ご不満ですか?」

 

「私は支援は要らんと大臣に伝えたのだがな。」

 

「恨むならオネスト大臣に言ってくださいね。」

 

エスデスに挨拶すると何故居ると言われたので説明すると眉間を摘まんで大臣の独断ということを言った。

俺はあっけらかんと俺たちは悪くない発言をした。

 

「…まあ、お前らに言っても変わらんか。

ボリック護衛は重大な任務だ、イェーガーズとエンブリオの協力体勢で行くぞ。」

 

「承知した、では私は他のメンバーと挨拶しにいこう。」

 

「ああ、私も元メンバーとして挨拶に行きます。」

 

「ハザマ、お前は待て。」

 

「えー……分かりましたよ。」

 

「ふむ、ならばまた後で会おう。」

 

レリウスは部屋を出ていくが、俺は残された。

何だってんだ。

 

エスデスはソファーから立ち上がると俺に詰め寄る。

 

「ハザマ、何を企んでいる?」

 

「何、とは?私は冥王の指示でキョロクへと赴いただけなのですが…」

 

「惚けるな。

大臣に疑われる…それだけの人間ということだろう。」

 

「そうだとして、それが何か?

疑いは晴れずとも無事にナイトレイドの首は1つ獲ったでしょうに。」

 

「私はな、ハザマ。」

 

エスデスは少し離れ、俺を睨む。

元部下を見る目じゃあねぇな。

 

ヒヒ、どうした氷の将軍様?

そんなに警戒して、俺がどうかしたのか?

 

「私はお前を未だに疑っている。

お前は自分で言ったのを覚えているか?

自分は蛇であると。」

 

「言いましたねぇ。」

 

「蛇は古来より狡賢いと決まっているものだ。

仮にお前が内通しているとして…ナイトレイドのメンバー一人を保身のために切り捨てるのに躊躇しないのではないかと疑っている。」

 

「ああ、なるほど。

では、貴方は私が今回の作戦に参加するのに否定的であると?」

 

「一軍人としてな。」

 

「ほう、では個人としては?」

 

疑われている。

それは別に想定内だ。

寧ろ、疑ってもらわないと困るのだ。

 

俺はその多くの地雷の上でタップダンスしないといけないんだからな。

 

エスデスはまたソファーに座ってニヤリとドSな笑み。

 

「別に構わん。

お前が裏切るのならばそれはそれで楽しめる。

全力のお前と戦ってみたいという欲がない訳ではないからな。」

 

「おかしなお人だ。

…ですが、元上司にこうも疑われては肩身が狭いですね。」

 

「虚言を並べるのが得意な男だな。

本当はどうとも思っていないだろうに。」

 

「ああ、バレました?」

 

「疑われるような人柄なのはお前が一番よく知っている。だから疑われても構わない。

そんな思考が見え見えだ。」

 

「あらぁ…私の事をかなり知っているようで。

もしかして、告られてます?」

 

「脳内花畑にしてほしいのか?物理的に。」

 

「嫌ですね、冗談ですのに。」

 

「そうか。話は以上だ。後は好きにしろ。」

 

「ええ、そうさせてもらいます。」

 

俺はニコニコと笑いながら部屋を出る。

そして、次はどうするかねと考える。

 

俺が裏切り者になる可能性を考えられていて、それをエスデスは大臣に話すか、否か。

 

それだけを考えながら、俺は廊下を歩く。

 

 

 

「…武神。

聞くに随分と古い話のようだったが…さて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

館の前に立って、自分の帝具を取り出して見つめる。

剣を見る目は良くないが、素人目でも見事な物だと思う。

帝具という物ではあるが、剣は剣。

 

そして、仮にこれが生きていたとしても道具は道具だ。

 

(セリュー)の帝具、イザヨイをジッと見ながら今までの日々を思い返す。

 

帝国の正義、父の正義を信じすぎてそれに囚われていた日々。

テルミさんに間違いを諭され、イザヨイを受け取り新たな自分だけの正義を手に入れた日々。

 

そして、テルミさんの駒に自らなる事を決意した日。

 

ブドー将軍と皇帝様がテルミさんと共犯なのは驚いたが、やることは変わらない。

 

仲間として、けれど一歩引いた位置でイェーガーズの一員として過ごしている今。

私は同じ仲間であるDr.スタイリッシュを殺害した。

 

その時、短い期間でも仲間であった人を殺した事を実感した時。

私は心に激痛ともいえる痛みが走った。

 

でも、もうそれは無い。

あれは私の決意の表明でもあった。

あれくらいが出来ないようでは駒どころか利用価値すら示せない。

 

改めて私は国を変えるのだと決意を固める。

 

私自身が出来なくても、その礎の一人にはなれる。

テルミさんは私を利用し尽くして、役立たずになった時に殺すだろう。

ウロボロスの元の力を取り戻すのに帝具使いの魂は効率がいいとの事だ。

 

構わない。

私はその説明を聞いたときそう思った。

 

だって国のために死ねるのだ。

今まで歪んだ正義の名の元に釈明の余地ある者を問答無用で殺した私が正しい正義の国の下地になれる。

それだけで私には勿体無い程の幸福だ。

国の警備員に過ぎなかった私には怖れ多い程の大義だ。

 

だから、怖くもないし辛くもない。

何を怖れればいいのか?

 

私が怖れるのはただ1つ。

駒として満足に働けず死ぬことだ。

それだけだ。

 

「イザヨイ、次は誰を斬るんだろうね。」

 

イザヨイは何も答えない。

テルミさん曰く、帝具にも意思はあるようで自由に疎通できてしまうと手遅れに近い証拠らしい。

 

一体化までしてしまう事例もあるとか、無いとか。

 

「イェーガーズのメンバーかな。

皇拳寺羅刹四鬼の誰かかな。

それとも、いきなり隊長かな。」

 

勿論、イェーガーズの誰かを殺すのは心苦しい。

親しみを持つほどには一緒に仕事をしてきたと思う。

 

ウェイブもクロメもランさんも隊長も。

 

皆、大切な仲間だ。

 

けど、それは私の正義の前では関係ない。

 

私が真に守るべきはテルミさんと皇帝様。

それ以外は、必要ならば殺す。

 

命令さえあれば、私は覚悟をもって刃を向ける。

 

テルミさんテルミさんと言ってるけど、別に恋愛面では見てない。

寧ろ、そういう目で見てる奴がいれば結構物好き…それどころか感性を疑う。

騙されてないかと肩を揺することだろう。

 

冥王はもう病みの類いだからやったら殺されるだろうから黙ってるけど、正直無いとは思ってる。

 

あの人は上司なだけで、司令官なだけ。

 

「ハァー…」

 

ため息を1つ。

 

空は青いけど、私の心境は曇天だ。

 

上司がアレってどうなんだ。

ゆで卵好き過ぎて栄養管理なってないし性格屑だし人を駒としか見てないし口調チンピラだし、俺様系だし。

だというのに実力はあるし知恵もあるし面倒見が良いときもある。

 

長く生きるとあそこまで歪むものなんだなぁと思った。

 

私、セリュー・ユビキタスは今日も上司の指示待ちだ。

それまではイェーガーズのメンバーである。

 

そうして館の前で立っていると誰かが来た。

 

「セリューちゃん、だったよね?」

 

「あー…皇拳寺羅刹四鬼の。どうしました?」

 

「ナイトレイドと思わしき二人組を発見したわ。」

 

「!」

 

皇拳寺羅刹四鬼の…誰だっけ。

隊長に情熱的な視線を送ってた美女…百合かドの付くMだな。

うん、ドMでいいや。

 

ドMは私にナイトレイドが居たことを知らせてきた。

二対一は分が悪いと見て私に協力を求めに来たと。

 

どうしよう。

 

テルミさんにナイトレイドは殺しちゃダメだって言われたし…うーん、でもメンバーによっては殺そうかな。

数を減らさないとだし。

 

ついていってからでもいいか。

 

「案内してください!」

 

「やる気あるようで何より。こっちだよ。」

 

やる気無いんですけどね。

 

少し急ぐドMについていきながら、イザヨイをいつでも振るえるようにしておく。

 

独断ですけど、構いませんよね。

 

皇拳寺羅刹四鬼はどうせ殺す予定だったろうし。

 

こいつは残しておくと厄介な気がするし。

 

「ふふ……」

 

おっといけない。

 

正義に溺れるところだった。

私の悪い癖だ。

 

正義に溺れていた頃の私がまた出そうになった。

 

もっと冷静に、もっと残忍に。

 

殺意を隠して、あっさりと。

テルミさんに教わったことだ。

 

さあ、正義を執行しよう。




テルミさん、エスデスさんにバレかけてるけど計算通り。
変態仮面、未だ強くは動かない。

セリュー、動く。
スズカ(皇拳寺羅刹四鬼の一人)の明日はどっちだ。
他の?テルミさんやセリューとかのこちら陣営視点以外なら知らぬ間に死んでるんじゃね……。


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正義執行

久々のテルミ更新。
待ってる方っているの?(自己評価低)




人の行う物事には理由がある。

人が何かをするにはそれを正当化するための理由が要る。

 

理由のない行いは機械と変わらないから人が行うという灯のための理由。

私はそう思う。

 

ただ、人を殺すという行いへの理由はいくつも壁が出来てしまう。

前の私はそれを簡単に飛び越えていた。

いや、砕いていた、と思う。

 

今の私はどうだろう。

人を殺すのを躊躇ってしまう時が稀にある。

それは恐ろしいことをしようとしてる自覚があるからか、それとも新しく備わった倫理観が邪魔してるだけか。

それは私には分からない。

 

それでも、私はそれを越えなくてはならない。

この剣を、刃を以て人を斬らねばならない。

何処までも愚直に向かうのが私なのだと教わった。

ねじ曲がった道でも、正しい道でもただひたすらな迄に走る。

 

理由を失ってはならない。

それを失えば機械と変わらない。

 

私は私の正義(理由)を手に、また人を殺す。

これが地獄へ落ちる行いでも、構わない。

それで正義を成せるのなら。

他人から見て正しくなくても、構わない。

それを肯定する人がもういる。

 

理由は十分(いつでも殺れる)

躊躇はまだある(躊躇うな)

自問自答するときもある(これは正しい行いだ)

 

けれど。

 

これが私の正義だから(正義の剣を振るえ)

 

だから、戸惑いはない。

胸の内で覚悟を決めて、私は私の剣と私の盾を手に取る。

少し駆け足を、全力で走るに変える。

 

向かうはただ一点のみ。

体は絶好調で、心は安定している。

問題は何一つとしてない。

あるとしたら相手がどれ程罪深い(外道)かだけ。

 

剣は私の意思に肯定するように鋭さを増す。

 

正義を執行する。

それだけが私を私たらしめる。

私という異端を肯定するための理由となる。

 

盾は私と意思を守るように堅牢さを増す。

 

正義を執行する。

それが願う未来へと導くと信じ込む。

私が人々を守る武器である。

 

彼女にはより良い国の為の犠牲になってもらう。

殺気を限界まで抑えて一歩後ろの距離まで詰めた。

 

 

「──ッ!」

 

(──チッ。)

 

 

後ろから一刺しで決めようと思ったけどバレてしまったようで心の内で舌打ち。

どうしても、最後の一瞬だけ殺気が強くなる。

いざ殺すとなるとこうなるのは仕方ないのだろうか。

 

ドMはすぐに私から距離を取る。

その額には冷や汗が一筋。

「どういうつもり?」

 

「どういうつもりだと思います?」

 

「私を殺そうとしたようにしか見えなかったけど。」

 

「お、正解です。

凄いですね、花丸あげちゃいますよ。」

 

「いや、要らないよ。」

 

「そうですか、残念です。」

 

「全く思ってないでしょう?」

 

「あはは、当たり前じゃないですか。」

 

別に殺す相手に感傷なんて不要でしょう?

そう言って、(イザヨイ)を構える。

 

「裏切り者だったって訳ね。

お姉さん、そういうの良くないと思うなぁ~」

 

「裏切り?私が?……ふふ、ふふふ……」

 

黒い感情が噴き出しそうになる。

それを抑える。

ああ、でも、ほんの少しだけならいいですよね。

 

結構我慢してますし、少し位なら許してもらえますよね?

 

「私が裏切ったのではなく、帝国が裏切ったんです。

同僚が、先輩が、議会が、大臣が、国が私だけでなく民を裏切った。

だから私の正義を執行する。」

 

もう帝国の正義は存在しない。

私利私欲が溢れる監獄と化していた。

 

絶望した。

正義のない事実を知った私は純粋ではいられない。

純粋に人を嬉々として殺すことはできない。

 

だから、仕方無い。

 

「だからこれは、報復であり、立て直しです。

私欲のために民を殺すのが国の姿なのか?違う。

民が苦しみ続けるのが国がやるべきことなのか?違う。それは帝国ではない。

私は、それを帝国と認めない。

間違っていると思いませんか?

先代の皇帝様が死去し、平和は崩れ去ったと。」

 

言葉を並べる。

理由を連ねていく。

意味などない。

理解を求めているわけではないから。

ただ、言葉を並べるのは人の特権だ。

 

「正義が必要です。

この帝国には悪がいる。

それを殺す正義が。ただ一度だけ振るえる正義が。

私でなくてもいい。だけど、誰かがその正義(責任)を背負う。」

 

「その正義に意味はある?」

 

「意味なんて後からつくものです。

最初から秘めているのは本人だけだ。」

 

「無茶苦茶な女……」

 

「無茶苦茶……いいですね、それ。

そうなってでも私は誰かが悪ではなく正義を背負える国にするために殺しましょう。」

 

何度でも言葉を並べる。

 

私の理由が増えていく。

そして、テルミさんが私に行動を与える。

動けるときを待ちながら白々しく生きる。

 

私の行動が何かを変えるなら、私は誰かを殺せる。

 

「無駄話はもういいでしょう。」

 

「んー……貴女の痛みは楽しめなそう。」

 

「楽しませるために斬ってないので。」

 

左腕に盾を着け、右手に剣を持つ。

ドMは腰を低くして構える。

 

体術……隊長ほどではないだろうけど、厄介なのは間違いない。

少しの油断が命取り。

一度目は外した。

二度目は早々来ないだろう。

何処かでそれを作らないと。

 

相手からなんて待ち戦術は似合わない。

私から、仕留めにいく。

 

地を蹴り、構えるドMに接近する。

まずは様子見として腹を狙い横に薙ぐようにイザヨイを振るう。

 

ドMなら斬られてくれると期待したが、流石に馬鹿じゃなかったようだ。

通常ではあり得ないほどに膝を曲げて体を後ろに倒して避けて、地面に手を付いて私の顎めがけて蹴りを放ってきた。

 

(中々に重いですね。)

 

左の盾で防ぐ。

 

「流石に帝具に斬られるのはねぇ……それに、色々と報告しなきゃいけないみたいだし。」

 

「逃がしませんよ。貴女はここで死ぬ。

そうすれば……皇拳寺羅刹四鬼は全滅です。」

 

「言ってくれるじゃない……私もそれなりに腕に自信あるんだけどな~?」

 

「弱いと言ってるわけではないです。

寧ろ、強いの部類に入るとは思いますよ。」

 

「それは、どうもっ!」

 

(爪が……!)

 

ドMはどういう原理か両手の指の爪をこちらへ伸ばす。

冷静に横に走る。

 

特殊な体なのかもしれないが、爪は自在に方向を変えられないようだ。

まあ、指を少し動かせばいけるから自在な方かもしれないけど。

となると、他にもあると考えよう。

まだ少し余裕なところから見るに何かある。

 

ここは攻めた方が得策か。

 

そのまま足を止めず盾をドMに向けながら接近する。

 

「あら、また───!?」

 

盾の真ん中が開き、そこから圧縮した空気を飛ばす。

私が殺したDr.スタイリッシュが改造したイザヨイの機能の一つ。

空気を圧縮し、それを放つ。

当然、それはただの圧縮した空気に過ぎない。

色なんてものもない……だから、視認は不可能!

 

そして、それを運よく避けれたとしても、私がイザヨイで斬る。

 

「─カハッ……!」

 

どうやら、ドMは避けれずにモロにくらったようだ。

右胸に拳1つ分程のめり込みが出来たと思えばドMは口から血を吐いて吹っ飛んだ。

 

けれど、体の何処かを操作して咄嗟に致命傷を防いだ可能性もある。

油断をしないでそのまま近付いて倒れるドMを突き刺す。

狙いは頭ではなく心臓。

 

隊長程の実力なら頭でもいけると思うが私は駄目だ。

頭を動かされて外した隙を突かれるだろう。

 

だから、心臓だ。

イザヨイの刃がドMの心臓へと吸い込まれていき─

 

「─っとぉ!」

 

「チッ……!」

 

─意識が回復したようで、すんでのところで転がって避けられた。仕留められず、舌打ち。

けれど、完璧な回避ではなかったようだ。

右腕に少し斬られた痕がある。

これでいい。

 

避けられたら避けられたで、それでいい。

勿論、殺せたなら最高だったが……上々だ。

最悪なのはイザヨイで傷もつけられなかった場合だ。

けれど、傷をつけれたのでいい。

血が流れている。

 

イザヨイの力を発揮できる。

 

切れ味が良くて、盾が面白い機能を積んでいるだけではないのだ、イザヨイは。

 

「─正義執行、貴女を断罪します。」

 

イザヨイは刃に付着したドMの血を吸収する。

 

そして、頭に流れてくる。

 

殺せ、殺せ、殺せと。

断罪しろ、目の前の女は悪だと。

 

イザヨイは私の正義を肯定し、呼応する。

 

力が沸き上がる。

刃がより鋭くなる。

 

「中々、罪を犯してきたようですね。」

 

「まあ、成り行きって感じ?仕事って奴。」

 

「仕事、ね……どうでもいいか。」

 

こうなったイザヨイは相手の犯した罪の重さだけ力を発揮する。

目の前のドMは大臣お抱えというだけあって罪深い。

鋭くなったし、他にも色々とやれるようで何より。

殺せる手段が多いに越したことはなし。

 

でも、お喋りも飽きたし時間を掛けすぎだからさっさと終わらせないと。

 

今のイザヨイなら、いける。

 

会話で誤魔化そうとしてるのかは知らないけど先程の一撃はかなり効いたようだ。

呼吸が乱れている……肺をやれたのかもしれない。

 

それならそれでよし。

相手が不利ならそれだけ殺しやすくなる。

 

また駆ける。

 

「あーらら……そんなに、殺したい?」

 

「……」

 

「うわ、マジだよ……ケホッ」

 

足掻きのように爪をこちらへと伸ばしてくる。

 

視える。

どのようにこちらへ伸びてくるのか視える。

避ける必要性を感じない。

 

「ふっ……!」

 

だから、イザヨイを振るった。

すると、簡単に爪が切れた。

切れ味が上がっているし、イザヨイの強化が私の義手を通して私にも共有されている。

私の五感が鋭くなっているが……これもDr.スタイリッシュのイザヨイと私に施した機能。

 

何も来ないことを見るに受け身な戦い方をするのだろう。

なら、これで終わらせる。

 

私は突きの姿勢を取る。

 

距離的にもこの位置が一番いい。

相手が察する前に、さっさとやる。

 

「これで、終わり!」

 

「何を──」

 

ただ、素早く突くだけ。

それだけで、後は強化されたイザヨイが──

 

 

 

「──マジ、かぁ」

 

 

 

─伸びるだけだ。

 

出来るかは疑問だったが、やってみるものだ。

ドMの爪伸びを参考にしてみた即興だが出来たようで何より。

 

イザヨイは一直線に伸びてドMの喉を刃が貫通した。

元の長さへと戻り、ドMはうつ伏せに倒れこむ。

喉から血が多量に出て、既に血の水溜まりが出来ている。

 

私は警戒しながらドMへと近づく。

 

「剣が伸びないと思いましたか?」

 

「──」

 

「意外と出来るもんですね~私も初めてですけど……貴女のお陰でまた1つ成長できた。」

 

「──」

 

「……ああ、喉をやられてるから喋れませんよね。

じゃあ──」

 

 

 

 

 

「──さようなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、一応様子でも見ておきますかね。」

 

ため息1つ。

ドMならもう処分済み。

最後に丁寧に首を斬ってから適当に処分しておいた。

 

とりあえず、タツミ達の様子を確認してから戻ってもいいだろう。

 

少し見てから帰る。

正直疲れた。

強化が切れると疲労感が少し体にくる。

 

「……こういう時、コロがいれば独り言じゃなくていいんですけど。」

 

まあ、無いものねだっても仕方無い。

 

今の相棒はこれですし。

 

「あーあ、報告しても『そうかい』とかしか言わないんだろうなぁ……」

 

一人邪魔者を殺せたから、それでよしとしよう。

 

気だるい体でタツミ達の方へと向かう。

やっぱり情報の共有だけでもしておくかな。

 

帰ったら甘いもの食べたい。

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「おいおい、そう怖い顔すんなよ。

俺様が何かしたかぁ?」

 

「疑いがかかってる。お前にな……」

 

「疑う?俺を?一体どんな疑いか聞かせてくんねぇかなぁ──」

 

 

 

「──ナジェンダさんよぉ」




一波乱あってまた波乱。
テルミに休みはない。
有給もない。


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表の成立/裏の成立

マジで交渉回とかいう欠かせないものの筈なのに一切やりたくない回なんなんだろう。
だがしかし、筆が進む!

俺の筆が、と、止まんねぇんだよぉ~~~!




「疑いがかかってる。お前にな……」

 

「疑う?俺を?一体どんな疑いか聞かせてくんねぇかなぁ、ナジェンダさんよぉ。」

 

ナイトレイドのキョロクでの拠点に訪れた俺をナジェンダはそれはそれは警戒心たっぷりのご様子で中へと入れてくれた。

そして、現在二人だけ……いや、スサノオを含めりゃ三人か。三人だけの話し合いだ。

といってもこの通り俺様は疑われてる訳よ。

 

だがまあ、疑われても仕方ねえのは事実だが……内容によるな。

 

「帝国側にナイトレイドの情報の横流しをしているのではと組織内で疑われている。」

 

「おいおい……俺様がんな不利なことするわけねぇだろうが。何処の馬鹿がほざきやがった?」

 

「私もそれは分かっている。

お前は、自分の利益を見誤らない男だ。

だが、否定する材料があまりにも少ない。

そうだろう、ハザマ?」

 

「……ま、疑われるのも道理か。

特に、ナジェンダ……てめぇが一番俺様を疑っている。裏切ってない確証を得るまでテメェは俺様を信用しない。ま、そこの馬鹿の入れ知恵だろうがな。」

 

「……」

 

スサノオは静かにナジェンダの隣にいるだけだ。

何も言うことはない。

つまり、認めるってことだな?

……まあ、たかだか感情を得て言葉を覚えようがテメェは帝具。餓鬼の入れ知恵にムキになるような俺じゃねぇ。

 

「テメェの一番聞きてぇことを当ててやる。

レオーネの事だな?」

 

「……お前が来たときには殺されていたとシェーレから報告が上がっている。

だが、それはお前の口車に乗せられている可能性もある。」

 

「流石は元将軍のナジェンダさんだな。

大っ事な部下の報告を信じてやらねぇなんてなぁ~

まあ、確かにその可能性はあるな。

仮に俺様がやったなら誰がやったかうやむやにするだろうよ。

だがそれは仮の話だ。

そんな分かりやすい犯行するわけねぇだろうが。」

 

「分かりやすい犯行に見せかけていたとしたら?」

 

「へえ?つまり、こう言いたい訳だ。

俺様がわざと分かりやすい形でレオーネを殺して、俺様がやったという線を無くしてる……そうだろ?」

 

「だとすれば、誰もお前を疑わない。

お前の情報は『当たり』が多いからな。

そういった面でも信用は高いだろう。」

 

そのナイトレイドの中でただ一人、ナジェンダだけが俺様を疑っている、ね。

なるほど、流石はエスデスが認めるだけはある。

 

だが青いなぁナジェンダ。

攻め方が温い。

 

「ナジェンダ、テメェが言ってるのはただの妄想だ。

俺様がやっていれば、といった感情が見え見えだ。

楽を選ぶなよナジェンダさんよぉ……茨道の方を進んでたテメェが今更砂糖を求めるのは違うだろ?」

 

「確かに妄想かもしれんな。

妄想ならばそれでいい……だが、本当ならば?

1%、いや、0.1の確率でもあるのなら私は疑うぞ。」

 

「汚ぇ殺し屋が一人前に探偵気取りか?

やめとけ、血に汚れて地獄に落ちるのがお似合いだ。

第一、だ。俺様がやる理由がねぇだろ?

組織に入ってる前に情報屋なんだぜ、こっちは。

損得勘定をミスる訳ねぇだろ。

金に目が眩む質でもねぇしな。」

 

そう、俺は疑われる性格してるが仕事は正確だ。

それこそ、ナイトレイドが有利な状況になれるように事を運ばせている。

だからこそ、決定打をお前らは持っていない。

直接的な証拠でもない限り、俺様だと断定は出来ねぇ。

 

ナジェンダも分かっている筈だ。

スサノオもそれを分かっていて話したのだろう。

 

信用はしても信頼はするな、てな。

 

極めて自然体でいる。

疑われるのは慣れてるし、それを『弁解(言いくるめ)』するのも慣れてる。

 

「内通を疑ってるなら、お門違いだなナジェンダ。

提示できる証拠はねぇが、俺はやってねぇとは断言できる。」

 

ナジェンダはこれ以上俺が犯人かを問い詰めるのは無意味だと判断したのか別の質問へと移行する。

 

「ならば、逆に誰がやったか分かるか?」

 

「八房の可能性が高いな。」

 

「八房はどれ程死体を人形にできるのか分かるか?」

 

「俺が知ってるとでも?」

 

「知ってるだろう?お前なら。」

 

「ハッ、妙に確信めいた発言をしやがる。

……プライベートを気安く人に教えんのが帝具とはいえナイトレイドのやり方って訳かい。」

 

ニヤリ。

そういう擬音が聞こえそうなほどの笑みだ。

なるほどねぇ~。

 

どいつもこいつも人様の情報を売りやがる。

 

……まあ、アレまでは教えちゃいねぇだろうがな。

 

「私としてもこの方法は好まんがお前という不確定に近付くためだ。

予想よりも上を行きすぎていた真実だったが……これで私とお前はようやく対等になれた訳だ。

ユウキ=テルミ。」

 

「真実、対等ねぇ……そりゃ何処まで知った上での対等だ?」

 

「スサノオから聞けるものは聞けた。

始皇帝時代からいる存在ということも、帝具開発に携わったことも、汚れ仕事担当ということもな。」

 

「……なるほどな、こりゃマジで殆ど(・・)知られちまってる訳か。いや見事な腕前だぜナジェンダ。」

 

「今までを考えると皮肉にしか聞こえんな。」

 

「そういうなって……これでもマジで褒めてんだぜ?

テメェという人間がそいつから聞いたとはいえ俺とほぼ対等の位置にまで来れたんだからよ。

テメェを褒めないで誰を褒めりゃいいんだ?」

 

実際、評価している。

かなり俺に近づいているからな。

それも、俺が与えたわけではない、スサノオという情報源を知らぬとはいえ手繰り寄せた。

運も実力の内だからな。

それに比べて俺様は運がねぇ、と。

 

「騙してた訳じゃねぇが、隠してたのは悪かった。

俺様も無暗矢鱈と素性を広められる訳にはいかねぇ。」

 

「いや、こちらも知った上で疑って悪かった。

聞けば皇帝の味方だそうだな。」

 

「まあな……テメェは皇帝も殺すか?」

 

「そうだと言えば?」

 

「当然、協力関係どころかテメェも壊す。」

 

「……そうだな、正直に言えばお前がそこまで皇帝家の肩を持つのかは分からん。

だが、並々ならぬ覚悟は知った今なら相当だと感じるよ。

だからこそ、聞かせてくれないだろうか。

帝国の全貌を。」

 

先程とは打って変わって極めて友好的な態度だ。

なるほどなぁ、俺が話せば全面的に協力してくれることだろう。

 

……だがそんなのは要らねぇな。

 

「生死与奪権。」

 

「……誰のだ。」

 

そいつ(スサノオ)のに決まってんだろう。」

 

「どういうつもりだ、ユウキ=テルミ。」

 

目を細めるナジェンダに感情豊かなことだなと大爆笑したくなるのを堪える。

 

だから甘いんだぜぇ、ナジェンダちゃん。

 

対等?馬鹿言うんじゃねぇよ。

テメェらはいつまでも俺様と対等にはなれねぇよ。

 

「オイオイ、まさか俺様がただで渡すとでも思っちゃってる訳か?ヒヒヒ……ならお笑い草だなぁナジェンダ元将軍。テメェ、こういった悪どい交渉は向いてねぇぜ?あくまで日向の将軍やってたテメェにはなぁククク…」

 

「質問に答えろ。」

 

「俺様自身の首を賭けるに等しいんだぜ?帝国の全貌、帝具の詳細なんて特大級の情報を渡すってことはよ。

なら、それ相応の物を貰わねぇと話せねぇな。

分かるか?交渉を持ち掛けた時点でテメェは譲歩しなきゃならねぇ……テメェも言ったじゃねぇかよ。

汚れ仕事担当だってよぉ……」

 

まあ、譲歩は俺様の方がしてるんだがな。

本当ならナジェンダとタツミ(・・・)も追加だが……まあそこはお得意様だからサービスだ。

 

貰えんでも殺すがな?

 

正直、警戒すべきはアカメなんだろうが……俺にとっちゃタツミの方が恐ろしい。

あまりにも成長が早すぎる。

インクルシオ込みとはいえ、だ。

本人の才能もあるんだろうがそれにしたって異常な速度だ。

 

まあ、まだ酷使してるわけではないから侵食はそれほど酷くはない。

 

……俺が心配してるのは最後の詰めとなる局面での不測事態。

インクルシオがタツミを侵食しているのは分かる。

もしも、そうなった(・・・・・)のならばそれこそ俺にとって一番都合の悪い方向へと進む可能性が高い。

 

……頼むから化け物になんざなってくれるなよ。

 

さて、ナジェンダの反応は?

思った通り難色を示してるな。

人がいいと言うより、単純に俺を信用しきれないからこそあっさりと頷くわけにはいかないってところか。

 

早くしてくんねぇかね。

仮にもリーダーであるのならそこら辺を分けて貰わねぇと困るんだわ。

スサノオもナジェンダに任せるといった感じだしな。

 

「……いいだろう。」

 

閉ざしていた口から重苦しい声が聞こえた。

かなり考えたな?

まあ、恐らくは……いや、考えんでもいいことだ。

 

俺はただその言葉を待っていたとニヤニヤと笑う。

 

「いい決断だぁナジェンダ。

なら、話してやるとするかね、お前さんの言う帝国の全貌についてな。」

 

話すっつっても無駄話に等しいが……そんなんで義憤燃やしてくれんなら安いもんだ。

クク、安易に持ち掛けるテメェを呪いな。

 

……あの仮面野郎がどう動くのかも考えておくか。

 

さて、と……ここら辺で色々とまた動くな。

イェーガーズ、ナイトレイド、エンブリオ……三組織が絡むこのキョロクで何が起こるのかは想像に難くはないからな。

 

誰が死に、誰が生きるか。

誰を殺し、誰を生かすか。

 

そんだけだろ、この世界はよ。

戦いの場にまで情を持つわけにゃいかねぇからな。

切り替えていくかね。

 




スサノオ(まあ、主の言うことだしテルミのこと教えても構わんやろ)

テルミ(ガチのガラクタにするか、否か。)(ガチギレ一歩手前

ナジェンダさんは何も悪くはない。
ただ相手が悪いっていうか、蛇過ぎるっていうかCV中村っていうか。


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蛇は再度動き出す

さあ、投稿の覚醒だぁ!という訳で投稿です。

うーん、早く武神見たい……見たくない?



夜のキョロク、イェーガーズ拠点。

そこに俺とレリウスは来ていた。

というのも、拠点として宛がわれたのもここだからだ。

 

大臣命令だからな、仕方ねぇ。

まだ従っておかねぇと何されるか分かったもんじゃない。

 

んで、現在の俺たちだが……

 

「ハザマさんがイェーガーズからエンブリオへ行ってボルスさんは焼却部隊に戻って……俺とランしか男が居ないんだよぉぉぉ!!」

 

「あらら、かなりお得では?」

 

「そう思うか?」

 

「いいえ全く?同情しちゃいますよ……」

 

「レリウスさんは?」

 

「面白い魂を持つものが多いな、そこからの点で言えば羨ましくある。

一般的な回答でいうのであれば、お断りさせてもらうがね。」

 

「ですよね!ちくしょう!」

 

ウェイブの慰めをしている。

 

くだらねぇと思うが、分からなくないから仕方無しだ。

レリウスは道ずれにしてやったざまぁみやがれ。

 

……にしても、どうしたもんか。

あの後、ナジェンダには殆どを話してやった。

予想の展開とは多少ズレが生じたがそれはいい。

良いズレだったからだ。

 

ハッキリとするべき事がある。

俺にはそれが何よりも重要なのだ。

 

だから、クロメもランもセリューもいない状況が一番だった。

この状況を逃す手はねぇ。

 

「……それで、ウェイブさん。」

 

「なんだ?」

 

「貴方はどうする気です?」

 

「何の事だよ?」

 

「貴方は勘づき始めている、帝国の闇に。」

 

「闇って……」

 

「きっかけはクロメさんですか?」

 

「なっ」

 

反応した。

青二才らしい反応で安心した。

仮面野郎には援護が必要なときに協力するように伝えてある。

 

「是非とも、聞かせてもらいたい。

ああ、ご心配なく、エスデスさんに伝えることはしませんよ。

私、もうイェーガーズではないので律儀にあの人に報告する義務もありませんしねぇ。」

 

「……誰にも話さないんだな?」

 

「ええ、誰にも(・・・)話しませんよ。

もちろん、そこのレリウスさんもね。

この人、かなりのひねくれとコミュ障なので気にせずどうぞどうぞ!」

 

「おい。」

 

仮面野郎が何か文句を言いたそうだったが俺は無視。

さあさあ観念しろとばかりに話してくれますよねと聞く。

 

ウェイブは顔をうつ向かせて語り出す。

 

「小さな違和感はあったんだ。

たまにクロメが辛そうな顔してるときがあったし、病気か何かかと思って心配で聞いてみたんだ。

でも、『何でもない』ってはぐらかされてさ。」

 

「ほう。」

 

「他にも、人の顔っていうか……表情に影が差してるっていうか。

俺のいた所ではもう少し明るい感じではあったんだ。

でも、ここは違う。」

 

「上の人間は明るそうだが下の人間、所謂庶民は暗い表情であったと?」

 

「おいおい、よく分かったな。

ああ、何だかおかしいなって思ってたんだよ。

でも、俺じゃ調べられる権限とか無いから何も出来ねぇ……」

 

「なるほどなるほど……」

 

思っていた帝国とは少し違う。

そこから見つけられたわけか。

中々やるじゃねぇか小僧。

 

ウェイブも実力はある。

味方にすれば戦力にはなる、か。

 

「ウェイブさん、貴方は帝国と出来ればクロメさんについて調べたいということですね?」

 

「ああ、そうだけど……」

 

「私の本業、何だったか覚えてます?

前に一度言ったと思いますが……」

 

「そりゃまあ。

確か、情報屋だよな?……あああああ!!」

 

「しー!しー!静かにお願いしますよ!」

 

「いや、でも……悪い。」

 

ウェイブは大声を上げるがすぐに謝罪して座る。

仮面野郎は感情豊かな事だ、とか言ってやがるがこれも無視。

 

「なら、調べてくれるのか?」

 

「構いませんよ。」

 

「本当か!?あ、でも俺金とかそんなに無い……」

 

「私、お金は信用してないんですよね~もっと形のあるもの……または権利とかでないと。」

 

「権利って……」

 

「もちろん、ウェイブさんにはそこら辺の期待は一切しておりませんよ!」

 

「傷付くなぁおい!

じゃあ、何を渡せばいいんだよ!」

 

「そうですね~……──」

 

そこで思い至る。

何も()じゃなくてもいいと。

今渡せるような物を持っていないのなら、それを利用する。

 

「じゃあ、今は払わなくていいですよ。」

 

「え、いいのか?」

 

「……まあ、本来なら良くはないのですがね。

信用とかそういうのに関わりますから。

ですから、今回限りです。後に私が要求することを呑んでくださればそれで。」

 

「……ああ、分かった。

なら、それで頼む!」

 

「承りました。

では、話すとしましょう。真実をねぇ……」

 

そこから俺は、ゆっくりと丁寧に話した。

文字通り、帝国の真実を。

ウェイブはそれを聞いていく内に青ざめていき、反応が薄くなっていった。

 

言い終える時には無言でそれを聞いていた。

仮面野郎は紅茶を飲んでいやがった。

呑気な奴だな。

 

「……今の話、本当なのか?」

 

「嘘は言いませんよ。

そこまで酷い人間ではないですよ~私。」

 

「じゃあ、何で黙ってたんだよ!」

 

「では、何故話さないといけないので?」

 

「はあ!?」

 

「勘違いしないでいただきたいのですが……このような国に忠誠を誓う訳無いですし、したくもない。

それに情報屋ですよ?そうあっさりとペラペラ話すわけ無いでしょうに。

この際だからはっきりと申しましょう。

私は、どちら側でも無い。」

 

「だから、口外しないで見過ごすのか!」

 

「ならば、お前はこれを口外して意味があると言うのかね?」

 

「当たり前だろ、事実を伝えて、オネスト大臣を倒せば……!」

 

「青二才という言葉が丸々当てはまる答えをどうも。

真の事実が民にとっての事実とは限らないものですよ、ウェイブさん。」

 

「……くそっ!」

 

ウェイブは悔しげな声を出す。

実際悔しいのだろう。一人の軍人として、正義を志す者として騙されたのもある。

だが、こいつの場合は違う。

一部の民が虐げられているという事実と自分が何も出来ない事実に悔しさを感じている。

 

間違いなくこいつは『白側』の人間だ。

 

その性格を利用するようで悪いが俺には俺の譲れねぇもんがある。

ま、本当はそんなに悪いとは思ってないが。

 

「馬鹿正直に事実を伝えても大臣が隠蔽することでしょう。そして、事実を知る者を消そうとする。

まさに馬鹿は痛い目を見る訳ですが……それは正攻法で行こうとした場合ですよ。」

 

「どういうことだ。」

 

「言い方は悪いですが、こそこそと動き回ればいいのです。直接大臣を叩くのではなく、大臣の周りから叩いていくのですよ。そうしていけば大臣の逃げ場を無くせますからねぇ。」

 

「……」

 

「ま……どうするかは貴方の自由です。

私は貴方をこれ以上は手助けしませんし出来ません。

まあ、貴方の意思によっては吝かではないのですが……そこは貴方次第ということで。」

 

「俺次第……」

 

「では、行きますよレリウスさん。」

 

「いいだろう。」

 

そういや、こいつずっと黙ってやがったな。

頷いてたりはしてたが……何してたんだか。

 

考え込むウェイブを置いて俺たちは退室した。

 

「……ふむ、私は先に向かっていよう。」

 

「ええ、お願いします。」

 

仮面野郎は察した様子で先に行った。

お見通しってか?ムカつくねぇ。

 

さて……そろそろ本格的にテメェを動かすか。

 

俺は部屋を出た所にいたそいつに話し掛ける。

 

「盗み聞きですか、良くない趣味だ。」

 

「たまたま聞こえてしまったものですから。

それで、何を考えているので?」

 

「そうですねぇ……巨大な獲物を仕留めるには入念な準備が要りますから、その準備第…幾つでしょうね?

まあ、それはいいじゃないですか、そろそろ貴方にお願いしたいと思ってたのですよ。」

 

「ようやく、ですか……情報だけ提供されていたと思えばキョロクで何を?」

 

「簡単なことです、ええ……極めて簡単なことだ。」

 

「最悪死ぬだけというのが簡単というのなら、簡単でしょうね。」

 

「元々覚悟はなさってのことでしょう?

それぐらい賭けてくださいよ~私はいつも賭けてるんですから~」

 

「賭けさせるために情報を渡し続けたんでしょうに。」

 

「用心するに越したことはない……そうでしょう?」

 

「……そう言われると、何も言えませんね。」

 

「では、『お願い』を始めましょうか……ランさん。」

 

今までイェーガーズとして動いてた分、こっちでも動いてもらおうじゃねぇか。

裏切ったりしたらチキンにしてやるから覚悟するんだなぁ……

マスティマじゃなけりゃテメェの魂をいただいてたんだからよぉ。

 

……そろそろ使い物にならなくなってきたな、アレ。



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それぞれの戦い

さあ、テルミ物の投稿だ!

今回は色々な視点が入ります。




夜が来た。

仕込みは終わった。

後は、全部が俺の望む方へと向かうだけ……だが、上手くいかねぇのが世の常だ。

俺が直接調整するしかねぇな。

 

エスデスに頼んだ結果、エスデスが予測したナイトレイド襲撃の日にボリックの側で護衛をさせてもらえることになった。

これであいつらが作戦通りに動けば……ある程度分かるようになる。

 

敵も味方も関係なく、殆どの手札がな。

 

ナイトレイドの中でも俺を信用してねぇのはマインとナジェンダの二人。

マインは本能的かは知らねぇが胡散臭いからと煙たがる。

ナジェンダは言うに及ばず。

 

他は……さて、無くすには惜しいからと残しておいた手札がどうなるか……見物だな。

 

懸念するのは上手くいきすぎてしまった場合だ。

逆に俺の介在の余地が生まれなくなるのは不味い。

だからこそ最後の砦であるここ(ボリックの側)に居させてもらう。

だから頼むぜぇ……レリウス、セリュー、ラン。

あんまりやる気になってくれるなよ?

 

「お前にしては獰猛な気だな、ハザマ。」

 

「おや、私としたことが……すいません。」

 

「構わんよ、やる気になるのは良いことだ。

クロメ、警戒を怠るなよ。」

 

「了解です。」

 

クロメ、エスデス、俺の三人でボリック護衛をする。

他は警備だ。

……何だが、さて、本戦はどちらかというと警備側だぜ……ナジェンダ。

 

直接来るにしても、戦力をどう割く?

 

ボリックの奴は余裕があるのか無いのか……無駄にそわそわとしながら俺に質問してくる。

 

「イェーガーズの皆様は信頼しておりますが……新組織エンブリオのメンバーの貴方はお強いんですよね?」

 

「にゃ~」

 

「疑わないでくださいよ、ボリックさん。実力の無い者はこの中に居ませんよ。ただ、そうですね……どうしたものかと思っております。」

 

「ふむ?」

 

詳しく聞かせろとエスデスに目で言われたので素直に答えることにする。

 

「あちらの戦力ですよ。どうしたって、私達の方に数人しか戦力を割けない。エスデスさんの予想ならばナジェンダ元将軍はこちらへ来るでしょう。インクルシオは……こちらでしょうね。他に来るとすれば何が来るのかと予想しているところです。」

 

「来れて、あと二人か三人だろうな。

ランが仕留めきれずとも空から攻め、多少の痛手を負わせた後、ウェイブとレリウスとセリューだ。

今更だが、セリューをこちらに置くべきだったか……?」

 

「いえ、セリューさんはどちらかというと屋外戦闘が適していますから正しい配置ですよ。ただ、レリウスさんなんですよねぇ~……」

 

「同じ組織だろう、手の内は分かっているのではないか?」

 

「まあ、少しはね……といっても、秘密主義なのか私に教えてくださらないのですよ。」

 

「同族嫌悪でもしてるのか?不気味なやつ同士だからな。」

 

「酷いですねぇ相変わらず。」

 

だからなんだって話だが。

レリウスが未知数なのは事実だが、だからといってアイツがこちらの作戦をミスる奴じゃないと思っている。

やることはやる男だろうしな。

 

「まあ、それまではのんびりとしますか……」

 

「のんびりとせずシャキッとせんか。」

 

「貴女みたいな化け物じゃあるまいし、ずっと張り詰めてられませんよ。」

 

「エンブリオに行ってから融通が効かなくなったな?

そんなに私の拷問を受けたかったのか。」

 

「あーやる気出てきましたね!頑張りますよ!」

 

「ふん……」

 

マジでこいつのこと蹴り飛ばしたい。

それをしたら本末転倒なので我慢してやるが……

 

いつか絶対にぶっ壊してやる……!

 

「ところで、ボリックさん。何故猫なんて害悪生物を膝に乗っけてるんです?」

 

「こうでもしておかないと大物感出ないでしょう?」

 

「いや、まあ、はい……」

 

「……」

 

おいこらクロメ、その『ハザマさん猫嫌いなんだ~』みたいな弱点見つけた目をやめろ。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

ボリック護衛の任務。

それを果たすというのは表向きであり、テルミは興味がなさそうだったな。

かくいう私もボリックにも護衛にも興味はない。

 

奴の仲間であるランが空での攻撃を行い、多少ダメージを与える……だが、それを突破されたのなら私達の出番というわけか。

ナイトレイドの強さを信用してかどうかは知らないが……テルミはかなり気に入っているようだ。

 

ランは分断に成功したようだな。

 

さて……──

 

「ウェイブはクローステールの使い手を、セリューはパンプキンの使い手を……──」

 

 

 

「──私は、村雨の使い手である貴様の相手だ。ここまでは予想通りだ。」

 

「……誰が相手だろうと押し通る!」

 

貴様という魂、興味深いな…村雨の使い手。

帝国の元手駒、ナイトレイド最高戦力の一人、アカメ。

適当に相手をしながら、その魂を見定めさせてもらおう。

 

アカメは村雨を構える。

私もまた、自身の帝具を出すとしよう。

 

「イグニス、実験の時間だ。」

 

「……」

 

「人形……?」

 

デトネーターを起動させ、私の現段階での最高傑作である機械仕掛けの人形、イグニスを喚び出す。

アカメは警戒して私に攻めようとしない。

 

「来ないのならばこちらから往くぞ。」

 

「……」

 

イグニスに指示を出す。

それだけでイグニスはその通りに行動する。

 

村雨の切れ味はかなりのモノと聞く。

万が一イグニスが切り伏せられれば私の命はないだろう。

それに、今回は適当に相手をしてから離脱するつもりだ。

 

イグニスは爪をアカメに向けて駆ける。

奴の身体能力はずば抜けているとテルミから聞いている。

深追いはやめておいた方がいいだろう。

戦闘は本分ではないからな。

 

「……!」

 

「くっ、こいつ……!」

 

私を倒せばイグニスも止まると思ったのか駆けるイグニスを無視してこちらへと一直線に向かってくるが無駄だ。私のイグニスはデトネーターの能力を十全に発揮するために造り出した作品だ。

 

イグニスは私の指示に即座に従い、こちらへ向かってくるアカメに追い付き爪を振るう。

アカメはそれを村雨で防ぐが、イグニスは更なる猛攻を仕掛ける。

爪と足を駆使し、腕と脚を執拗に狙う。

 

防いではいい的になると考えたのか避けることに専念している。

なるほど、確かに化け物じみた反射神経だ。

 

「精巧な動きだ……まるで─」

 

「人間のよう、かね?」

 

「!」

 

「私の最高傑作であるイグニスはデトネーターによる指示を一秒の遅れもなく実行する。それこそ人間のように動く困難な指示だとしてもな。」

 

イグニスがアカメを追い詰められる要因はそこだ。

私という頭脳とイグニスという体躯があるからこそ成立する状況。

村雨の毒は確かに一撃必殺になりうる程の劇毒だ。

だが、その刃すら通さぬ機械人形相手ならばただの刀に過ぎない。

 

しかし、似たような手段は既にやられていたのだろう。

対応が素早い。

 

……ならば、これならばどうだ?

 

私は側にある木に触れ、刻印を付与する。

そして、動けと指示する。

 

「さあ、どうする?」

 

「なに、木が……!」

 

「……!」

 

「くっ!」

 

木は意思を持つかのように根を足のようにし動き、アカメへと突進を仕掛ける。

イグニスと交戦していたアカメはその驚異的な身体能力で以てイグニスの爪をかわしつつ後退することで木の突進を免れた。

 

「その帝具、まさか無限に操るというのか……!」

 

「帝具に絶対はない。それはそちらも理解しているはずだが?」

 

私が操れるのはせいぜい私の脳が処理しきれる数だけだ。

加えて、イグニスの戦闘にその処理速度の大半を割いてしまっているから操れて二つか三つだろうな。

 

「何処まで耐え、どう突破するか……見させてくれたまえ。」

 

ともあれ、私は作戦通りに動くだけだ。

頃合いを見て離脱する。簡単なことだ。

 

問題は……奴の言う本番だろうな。

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

避ける、避ける。

一撃を避ける毎に冷や汗が止まらない。

貰った時点で私の死が確定する。

いくら、イザヨイが防御も優れてると言っても…

 

多分、パンプキンは無理だと思うので素直に避ける。

 

「よりにもよって、貴女、ですか!」

 

「その節はどうも!」

 

「いや、挨拶しながら撃たないで!?」

 

絶対気にしてる、気にしてるに違いない。

 

かつて正義馬鹿になってた私と殺りあった相手……マインと交戦中の私だけど、本当はこういう予定じゃなかったのに!

 

『どうも、マインさん。あの時はすみませ──どわぁ!?』

 

『あ、パンプキンが勝手に……』

 

『いや、勝手にじゃないですよね、殺しに来てますよね!』

 

……まさか、こうなるとは。

いや、まあ……テルミさんの指示通りだけど、危うくその前に殺されるところだった。

 

テルミさんの作戦を言うわけにもいかないし、ここは耐えるしかないか……

というか、あちらは私が味方なこと知ってるはずですけど。

 

「あのー、私、味方……」

 

「知ってるわ。でも、立ち塞がってるなら敵と見なすわよ。」

 

「いやまあ、その考えは間違ってないですよ?」

 

「なら問題ないじゃない!」

 

マインにはタツミといたときに情報共有のために一度会ってる筈なんですけど……

 

『こちらにはこちらの事情もあるのでその時はその時で。』

 

『分かった、その時は容赦しないわ。』

 

『流石にしようぜ?』

 

『うっさいわね馬鹿!』

 

『ええ……』

 

言葉通りですね、間違いない。

容赦しなさすぎでは?

勘弁してくださいよ!

 

でも……これだとテルミさんとレリウスさんの予想通りのメンバーですかね?

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

こちらに走ってきた奴は俺を見た途端嫌そうな顔をしだした。

 

「うげ、鎧の帝具……」

 

「ナイトレイドか……」

 

「あれ、何だかやる気無さげ?」

 

「……」

 

……ハザマさんに言われたあの日以来、俺はずっと悩んでいた。

この帝国は腐っている。

そんな国のために俺はがむしゃらに拳を振るうべきなのか?

ナイトレイドの方が正しいんじゃないか?

 

……イェーガーズは、なんだったんだ?

 

「わかんねぇ。」

 

「はぁ?」

 

「なあ、ナイトレイド。お前らは帝国をどうしたいんだ?」

 

「いや急だなお前……」

 

ナイトレイド……ラバックは呆れた様子だった。

そりゃ、そうか。敵に質問されてるんだからな。

 

「今の国は間違ってる。誰かが革命を起こさなきゃならない……だから、俺達ナイトレイドがその先駆けになる。」

 

「……そうか、先駆けか。そりゃ手強いわけ──」

 

「それに革命を成し遂げればナジェンダさんが俺に振り向いてくれるかもしれない!」

 

「おい!俺の感心を返せ!ふざけんな馬鹿野郎!」

 

「男なんだから欲持たなきゃ損だぜ。そう言うお前はどうなんだよ?」

 

ラバックは真剣な顔で聞いてきた。

そういう俺は、か。

今の俺はまた迷ってる。俺はどうすればいいんだ。

 

「俺は……」

 

「守りたいもんも、ねえのか?」

 

守りたいもの。

そんなの国に決まってる。

だけど、その国がこんなんじゃ……守る気もでねぇよ。

 

「……いや。」

 

そんな事はねぇ。

俺には、守りたい奴がいる。

 

クロメは、俺が守る。

 

死人を人形のように使うのは帝具の特性でもあるのかもしれない。

だとしても、あれは異常だ。

 

それに、たまに見せる苦しそうな表情……あれはハザマさんが言ってた暗殺部隊に渡される薬物の副作用だろう。

そんな物を使ってまで戦うなんて間違ってるんだ。

 

姉がナイトレイドだとしても……まだ二十歳にもなってない女の子なんだ。

無理無茶をして戦うのは間違ってる。

 

「……感謝するぜ、ナイトレイド。俺が守りたいもの、俺が動く理由。それを、見つけられた。

だから、俺はお前を通すわけにはいかない!」

 

「敵に塩送っちゃったのかよ俺!おかしくねぇ!?

今の流れは俺もお前らに協力するぜとか言うところじゃねぇの!?」

 

「そんな事知るか!往くぞ!」

 

「ちくしょう!来い!」

 

俺は、守るんだ。

クロメも、まだ悪人じゃない無力な民を!

 

その為にも、通すわけにはいかないんだ!

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

さて、来たか。

 

「ほう?ハザマ、どうやら貴様の予想通りのようだぞ?」

 

「貴女の予想通りでもありますよ、エスデスさん。」

 

「……読まれていたということか。」

 

見たところ、居るのは三人。

ナジェンダ、スサノオ、シェーレか。

……これならインクルシオもいるな。

 

だとしたら、チェルシーは?

 

──なるほど。

 

エクスタス、インクルシオ、スサノオ……か

殺意が高くて俺様泣きそうだぜ。

レオーネが生きてればここに来てただろうな。

生きてりゃ、な。

 

「さて、少し働きますか。」

 

「全員拷問室行きだ、喜べナイトレイド。」

 

「全員、気を抜くなよ。」

 

「了解です、ボス」

 

「……」

 

さて、スサノオちゃーん……楽しませてくれよぉ?

テメェと遊ぶのを楽しみにしてたんだからよぉ。

 

場合によるが、解体するかも知れねぇからよぉ、ククク……

 




テルミ物が終わったら次はテイルズ系のラスボスあたりを使って作品作ろうかな……。



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死して継がれる力

お待たせしました、テルミファンの皆様。

綺麗なテルミさんの最新話です!
いやはや、色々と大変でして……

さて、どうぞ。




さて、と状況を再確認。

視認できるのはナジェンダとスサノオ、シェーレ。

インクルシオ……タツミは姿を隠しているな。

そんで、ここ一番って時に出るか。

 

……イェーガーズの任務は失敗だなァこりゃ。

 

「さ、やるからには全力でいかせてもらいますよ?」

 

「……」

 

目の前のガラクタ(スサノオ)は黙りか。

俺様とは口を利きたくねぇってか。

 

「──!」

 

「おっと流石に素早い!」

 

「ユウキ=テルミ。」

 

こちらに向かってきて、俺も迎撃。

鍔迫り合いの形となった時、スサノオがこちらにしか聞こえない声で話しかけてくる。

 

「あ?なんだ。」

 

「いつまで過去に固執する、いつまで始皇帝との契約を続ける。貴様のその躯は既に限界のはず……そこまでして義理を通す意味はあるのか。」

 

「け、だからテメェは、テメェらは道具にしかなれねぇのさ。」

 

「どういう意味だ?」

 

「目の前のデカいもんがいつまで持つのか……それを間近で見ていたいだけだって言えば米粒以下の脳みそでも分かるだろ?」

 

「性悪めが!」

 

「力強い!」

 

弾き飛ばされる瞬間、ハザマとしてのスイッチに切り替える。

さて、周りは……

 

エスデス一人でシェーレとナジェンダを軽々と相手取ってるな。

タツミが加勢するのも時間の問題か……

 

なら、それまでにやることやるか。

 

俺はウロボロスをスサノオへと向けて放つ。

ウロボロスの牙は器用にスサノオの武器に巻き付き、俺を引っ張る。

 

「で、テメェは?」

 

「帝具として、今の主に従うのみだ。」

 

「それなら俺様に武神の力を譲渡する必要はねぇだろうが。」

 

「貴様は性悪……屑の類いだが契約には従う。帝国の巨悪を倒すのは同じはずだ。ならば、より力あるものへと託す方が効率的だ。」

 

「道具が臆したか?」

 

「……俺もまた、人によって中身が変わった。良い意味でも悪い意味でもな。」

 

「ケッ……どうだかな。」

 

「何だと?」

 

「所詮はテメェが出来ねぇと断じて重荷を背負わせようってだけだろ。俺様がいなけりゃタツミにでも託してた、違うか?」

 

「……」

 

「あいつじゃ武神は使えねぇ。結局テメェがしてるのは諦観だ。エスデスという化け物には勝てないというな」

 

気に食わねぇな。

やる前から諦める……武神の大半を受け継いだこいつがんな柔な精神構造なんてのが気に食わねぇ。

 

何のために俺達がやってきたのか、理解してねぇと見える。

 

散る気があるならそりゃそれで結構。

こちらとしても計画が進んで楽で助かる。

 

だが……個人的感情を挟んで良いってんなら色々と変わる。

くたばるのに大賛成は変わらねぇが、くたばり方ってのがなっちゃねぇだろう。

 

戦うと道具であれ自分(テメェ)で決めたのなら死ぬときの心ってのも決めんのも自分(テメェ)であるべきだろうが。

託して後は頼んだだとかの死後の憂いは生きてる奴に任せりゃ良い。

 

それを挙げ句に他人に決めさせるだと?

 

「─くそ食らえだ。」

 

「ぬ、くっ!?」

 

「困るんですよね、そう気力が薄いと……倒すにしても、持てる全力で来てくださいませんと。少なくとも、イェーガーズの隊長はそれをお望みですし…」

 

「ほぉ、よく分かってるな?ハザマ。」

 

「そりゃもう!殺すにしても殺されるにしても全力で、そして不利も有利も関係なく蹂躙する……そうでしょう?言ってて訳分かりませんけどね。」

 

「そうだ。例え私より上であろうと私はそれを当然のように越え、屈服させるのみだ。だが……その相手が既に諦めの感情を見せるのなら意味はあるまい。ただ事務的に殺すだけのことだ……その点で言えば、貴様ら二人はよく待っているな!」

 

「喋る余裕を持ち合わせておいてよく言う……!」

 

「くっ……!」

 

シェーレやナジェンダ程の実力者二人でさえあしらう……これが帝国の最高戦力、一人で軍隊を片手間に殲滅する氷の女。

 

エクスタスの鋭さと堅牢さで氷の物量は防げてもエスデス自身の攻めには対応しきれていない。

致命傷は受けてないもののかなり消耗してるな。

至るところに傷がついてやがる。ナジェンダも同様、帝具無しで戦えるのは見事と言う他ないがそれだけだ。

越えるどころか劣勢ねぇ……

 

「やるしかないか……スサノオ!」

 

─禍魂顕現!

 

その言葉と共にナジェンダは片膝をつく。

かなりの生命力を喰われてるな。

その分、スサノオの強さを考えれば……いや、割に合わねぇか。

 

俺の前にいるスサノオの姿が一変し猛々しい雰囲気を纏い、真の力─武神の半分にも満たないが─を解放する。

その姿にエスデスは新しい獲物を見つけたような笑みを浮かべる。

 

「間近で見ると……いやはや、恐ろしい。」

 

「本音を言ったらどうだハザマ?」

 

やれないこともないかと(拍子抜けだ)。」

 

「段々中身が見えてきて私は嬉しいぞ、だがあれは私の獲物だ。お前は──」

 

「いくぞ!!」

 

エスデスが言い終わる前にスサノオがエスデスを打ち倒さんと向かう。

そして、それに乗じて()も動き出す。

 

「ォオ!」

 

「─インクルシオの相手をしろ!」

 

「仕方ありません、ね!」

 

透明化を解除してスサノオと連携を取ろうとしたタツミをエスデスは俺に押し付けてスサノオと交戦する。

 

まあ、恨んでくれても良いが死んでくれるなよ餓鬼。

という訳で仕方なしにタツミの足にウロボロスを伸ばし、巻き付ける。

ウロボロスに引っ張られた俺は勢いのままタツミの隙だらけの横っ腹に蹴りをいれる。

 

「ぐあっ!!」

 

「インクルシオ、知ってますよ?ウェイブさんのグランシャリオの雛型。そして、かなりの成長性を秘めていることも……ですがそれでは私は倒せませんね。」

 

「くっ……邪魔をするんじゃねぇ!」

 

「お断りして存分に邪魔させてもらいますよ。」

 

その方が後々楽ができるんでな。

テメェにも1つ付き合ってもらうぜタツミ。

 

「なら、二人ならばどうですか?」

 

「おぉっとこれは……」

 

俺を先に倒さないと面倒だと判断したのかシェーレもこちらへ向かってくる。

弱いものいじめだなぁこりゃ。

困るんだよなぁそういうの。

 

「ハハハ、いいぞ!もっと私を楽しませてみろ!」

 

「貴様の道楽に付き合う気はない!『天叢雲剣』!」

 

「ふっ──!」

 

スサノオとエスデスは拮抗……いや、エスデスが上か。

スサノオがその手に巨大な剣を顕現させエスデスへ凪ぎ払う。

エスデスは瞬時に自身の前に何十もの氷壁を出し防ぐ。

剣は氷壁全てを斬れず……だが。

 

「中々の威力だ。だが私には……」

 

「ならば後ろはどうかな?戦いに興じすぎたな。」

 

「!クロメ!無事か?」

 

なるほど、剣は最初から衝撃波でボリックを始末するためのもの。

防がれるのは想定の範囲内か。

 

事実、剣の衝撃波はエスデスの後方、クロメとボリックの方にまで及んでいる。

土煙のせいで見えんが……

 

「余所見のし過ぎだ!」

 

「おっとやる気に満ちてますねぇ!」

 

「ふっ!」

 

インクルシオとエクスタスの相手とか地獄かよ。

タツミの攻撃を避けた先にシェーレのエクスタスが待ち構えていた。

防ぐなんて事は出来っこないのでウロボロスを天井に伸ばし、引っ張られることで凶刃から逃れる。

 

あぶねぇ……死ぬ一歩手前だったな。

 

「二人がかりは卑怯ですよぅ。」

 

「……ハザマ!!」

 

「はい?」

 

一人愚痴を溢しているとエスデスが俺を呼ぶので何かと思いそちらに視線をやると、クロメの骸人形の一人が倒れている。

ああ、衝撃波から避ける際に代わりにくらったのか。

人形らしい働きだな、ご苦労さん(そのまま崩れ落ちろ)

そんで、エスデスは苛立たしげだ。

 

「捕獲はなしだ、早急にこいつをすり潰す。」

 

「いや構わないんですけど捕獲の話は知りませんでしたよ?」

 

「貴様も本気を出せ、ハザマ。」

 

「話聞いてないし……本気ねぇ、本気だしてますけど。」

 

「今の私は冗談を好かんぞ。」

 

「冗談のつもりは、ないんですがね。」

 

タツミとシェーレから距離のある位置へ着地する。

実力を見せるのはあまりよろしくない事だ。

色々と駆り出されたら堪らねぇ。

だが、エスデスのやる気は上がったようだ。

俺様がいなくとも終わらせられんじゃねぇの?

 

……まあ、あと少し位ならやる気だしてもいいか。

 

「長引かせたくはないんですがね……ま、お見せしますよ。」

 

「それで良い。私も遊びは終わりにするとしよう!」

 

「来るぞ!」

 

戦闘が長引くのはありがたい。

後でレリウスの報告が楽しみだ。

 

やる気だすのはいいんだけどな。

ウロボロスとエクスタスの相性は最悪だ。

鎖ごと切られちまう。

 

楽な方法が消されちゃ仕方ない。

軽く地面を蹴りタツミの方へと接近する。

 

「これもお仕事なのでお許しください?」

 

「だったら手加減してくれねぇかな……!」

 

「それはちょっと難しいご相談ですねぇ。」

 

「こちらも容赦はできませんから。」

 

「危ないですねっ!」

 

タツミ単体ならば苦戦せずに戦える。

つっても力も技量も上がってきたな。

あれから鍛練を怠らなかったと見える。

だが、まだ粗いな。

 

攻めていた俺だが、エクスタスが来れば退かざるを得ない。

振るわれるエクスタスから後ろへ跳躍して難を逃れる。

 

さて、エスデスの方はどうだ?

 

「ハッ、この物量をどう凌ぐ!」

 

「……貴様自身の火力をその身で味わえ!『八咫鏡』!!」

 

「反射か!」

 

数十とある氷の弾丸を鏡を展開し反射する。

なるほど、強化ってだけはある。

想定よりもかなり強いな。

 

「(勝機!!)『八尺瓊勾玉』!」

 

「むっ……!」

 

飛翔能力……じゃねぇな。

限定的にその位置へ高速で跳ぶ技か。

瞬間的な速さならエスデスを軽く上回ってやがるな。

 

スサノオが向かう先はボリック一人。

クロメが大事な骸人形の傍から八房を抜いてボリックの元へ向かうが間に合わない。

……勝負あったか。

 

しかし、エスデスに焦る様子はない。

 

「私の前では全てが凍る─」

 

 

 

摩訶鉢特摩(マカハドマ)

 

 

 

「!?な……に……!?」

 

「なっ……!」

 

「……おいおい……?」

 

エスデスがいつの間にかスサノオの傍にいやがる。

しかも、胸のど真ん中にご自慢の剣を刺した状態で……こりゃどういうことだ?

位置も状況も……スサノオの凍結が早い段階で進んでる?

 

……単純なワープとかじゃねぇな。

 

となると、これはあれか?

いや、出来なくはねぇ。だが……理論上可能なだけだった(・・・)のをやれたってのか?

 

マジで、時間を止めた(凍らせた)ってのか……!

 

「摩訶鉢特摩は宗教で言う氷の地獄の一種だそうだ……他の技とはネーミングが異なるがイメージとしてはこれに勝るものはあるまいよ。」

 

「ッ、スサノオ!脱出しろぉ!」

 

ナジェンダの叫びに呼応してスサノオが体に力をいれる。

が、それを見逃すエスデスじゃない。

 

「させん、この場で砕け散れッ!」

 

ブレードを仕込んだブーツでスサノオを氷ごと砕く。

 

文字通り、砕けて散ったか。

……そうかい、そこまでの実力だってことか。

 

「そんな……!」

 

「スサノオさん……!」

 

「……これがコアか、壊せば終いだ。」

 

エスデスが最後とばかりにスサノオのコアを踏み砕かんと足を上げる。

ナジェンダは呆然とし、タツミとシェーレは今の位置じゃ止められねぇ。

 

俺も阻止出来ねぇな。

 

「……存外脆いな。」

 

「くっ……!」

 

あっさりと、コアが踏み砕かれる音がこのフロアに響く。

ナジェンダたちは悔しげに、エスデスは呆気ないとばかりに。

……まあ、そんなんで死ぬ構造じゃねぇだろ、テメェ。

 

「ほう、まだ動くか。流石は強化中、といったところか……だが、その再生力では間に合うまい。」

 

「スサノオ……!」

 

砕け散ったコアが再生を図る。

だが、虚しいな。

それじゃ復活できたとしてもナイトレイドは全滅だろうよ。

 

「……オォォォォ!!」

 

「怒りか……それでは私は倒せんよ。」

 

「ガッ……!」

 

タツミが怒りのままに殴りかかるがエスデスは赤子の手を捻るようにタツミの顔面に蹴りを叩き込む。

壁に激突したタツミは意識を失ったようだ。

 

「ボス、タツミ……!」

 

「お次は、貴女ですよ。」

 

俺の言葉に一瞬固まるが、シェーレはすぐにエクスタスを構え直す。

エスデスは俺に任せるといった感じで動かない。

 

まあ、二対一ならいざ知らず……タイマンなら負けねぇよ。

 

「ハァッ!」

 

「恐ろしい一撃だ。一つ一つが即死級……ですが。」

 

「くっ……!」

 

横一閃。

そう振るわれたエクスタスを上へ跳ぶことで避ける。

続けてウロボロスをシェーレの腕に巻き付ける。

 

「腕が……!」

 

「さあ、倒れてしまいなさい!」

 

「ッ、カハッ!」

 

間髪入れずにウロボロスを引っ張り、浮いたシェーレを地面へと叩き付ける。

かなりの衝撃だったのだろう、呻き声と共に意識を失った。

 

「これでよろしいのでしょう?」

 

「時間が掛かったな……これで貴様だけだぞナジェンダ。喜べ、全員拷問室行きだ。」

 

肉塊から再生しようとするスサノオ、生命力を吸われ、満足に戦闘が出来ないナジェンダを除き気絶させた。

……この場のナイトレイドは終わりだ。

 

「はは、ははは!流石はエスデス将軍ですな!

刺客を全員無力化させた!はは!ザマァない!」

 

「……気になるな。」

 

「おや、どちらへ?」

 

「インクルシオの中の正体、貴様は気にならんのか?」

 

()()でしょう。」

 

「ふん。」

 

エスデスはタツミの方へ向かう。

気付いちゃいないが無性に気になるってことか。

 

「!勝手に動いたら……!」

 

ボリックが倒れてるシェーレに目を付け、ゆっくりと近付く。

終わったことだしお楽しみってか?まあ、確かに終わったろうよ。

 

そう、追加が来なければ。

 

 

 

突如上のガラスが音を立てて割れる。

入ってきたのは二人。

マインとアカメだ。

 

ここでようやくご登場か。

冷や冷やしたぜ、あのバカ二人。

 

「このタイミングで新手か!」

 

「パンプキン!!」

 

エスデスが即座に巨大な氷塊を作り、二人へ向けるがパンプキンに天井ごとぶち抜かれた。

ピンチを力に変える性質だが……エスデス自身がピンチそのものってことか。

 

アカメは状況を瞬時に把握してボリックの方へと向かう。

 

「行かせるとでも……ッ!」

 

アカメの始末に動こうとしたエスデスだが復帰したタツミの攻撃でその行動を中断する羽目になる。

気付けばナイトレイドが盤面で有利になっている。

 

さて、これは誰の仕業なんだかな。

 

「目を覚ましたか……!」

 

エスデスはタツミへ拳を叩き込む。

先程までならそれで事足りただろう一撃を、タツミは両手で拳を防ぎ、その手を掴む。

 

「っうァァ!」

 

「反応しただと!?」

 

必死だな。

0.1秒でも長くそいつを食い止める。

そんな意思を感じるぞタツミ。

 

「ひっ、あ…アカメ!」

 

当然、雑魚のボリックは逃げ出そうとする。

…が、同じく目の覚めたシェーレによってその足を掴まれる。

見た目じゃわからんがエクスタスを振り回すほどの腕力だ。そう簡単には離さねぇ。

 

クロメは飛び出し、アカメに斬りかかる。

 

「お姉ちゃん!」

 

「……!」

 

アカメとクロメの斬り合いが始まる。

しかし、これだとボリックを殺せない。

ならばマインは?

 

「邪魔すんじゃないわよ!」

 

「何度も言うようですが、仕事なので。」

 

残念ながら、マインは俺が食い止めてる。

 

だから、ここでテメェの出番なのさ。

緊迫とした雰囲気の中、当たり前のように近くに居て殺せるテメェのな。

 

 

 

「─はい、残念。」

 

「ぁ、ぐぁ……!?」

 

 

 

チェルシー。

ガイアファンデーションによる変装からの暗殺を得意としている。

俺様でも見分けは難しいが、今回は思い切ったな。

数日ほど前からボリックの元に変装した状態で居たのか。

まあ、さぞ退屈だったろうよ。

 

チェルシーは猫の変装を解き、ボリックの首に針を刺す。

強力な毒でも塗ってるのかボリックは苦しそうに呻いた後、すぐに息絶えた。

 

教祖を殺し、宗教そのものを我が物にせんとした男の最後はこんなものだったって訳だ。

 

「流石チェルシーだ!」

 

「─っ、任務失敗か……!」

 

タツミを蹴り飛ばしたエスデスは苛立ちの籠った声でそう呟く。

軍人としての仕事の達成率は高かったからな。

顔に泥でも塗られた気分か?

 

まあ、何はともあれ……ナイトレイドの辛勝か。

 

「あー……報告が面倒ですね、これは──おや?」

 

空気が幾ばくか重くなる。

これは……

 

「完全再生してるだと……これは……!」

 

「三度目の……『禍魂顕現』!!」

 

復活したスサノオがそこに立っていた。

かなり無茶をしやがるなナジェンダの奴。

 

重ねがけなんざ不可能に近いことを実行するなんてな……いや、それに救われたとも言えるか。

 

「ナジェンダ、貴様─!」

 

「皆を追わせはせんぞ!」

 

…スサノオ、テメェ。

いや、当然か。

決めたようだな、テメェの『場所』を。

 

武神の片割れ……どうなることかと思ったが……

 

「テメェの選択、『守る意思』か。」

 

「──」

 

「あ?」

 

スサノオが一瞬だけ視線をこちらに遣った。

 

癪だが、目だけで何を言いたいのか伝わった。

元は、同じだからか。

 

だが、引き受けてやる。契約は契約だ。

 

─後は頼んだ。

 

─ケッ、あの世で待ってろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、全員を穴の空いた天井へ投げ飛ばしたスサノオは一人残りエスデスと戦った。

持てる力を出し尽くした。

 

「……良き戦士だった。」

 

エスデスが持っているのはスサノオのコアだ。

 

……スサノオはエスデスを倒すことはできなかった。

奴も分かってた事だ。

だが、時間稼ぎとしてその役目を果たした。

 

一人の犠牲で済ませた。

 

「あー、エスデスさん。」

 

「何だ。」

 

「それ、くれませんか?」

 

「どうするつもりだ。」

 

「冥王からの任務です。それを回収するのもいつかやる予定でしたので。」

 

「……ふん、砕くつもりであったが。元部下の頼みだ、ありがたく思え。」

 

任務は失敗、だが、こちらは成功だ。

 

スサノオのコアは俺の方へと投げられた。

それを掴み、じっと見つめる。

 

これで良い。

こいつが判断したのならそれで良い。

俺様は、それを利用するだけだ。

 

俺はレリウス達を回収するためその場を離れる。

そして……

 

 

「ウロボロス。」

 

 

ウロボロスを出し、その牙をコアへと向ける。

 

ようやくだ。

ようやく戻ってきた。

馴染むのには時間が掛かるがそれでも構わねぇ。

 

ようやく、動ける。

 

 

 

「─残すんじゃねぇぞ、しっかり喰え。」

 

 

 

だがまあ……頑張ったんじゃねぇのか。

褒めてやるよ、ガラクタ。

 

後は俺に任せろ。

 





遂に戻ってきた力。

その強さや如何に。


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分不相応な愚か者

筆が乗り始めてきました。

というのも、書きにくかったキョロク編が終わったからようやくオリジナリティ追加できますよ~(今までしてたとは思ってない)


あの任務の後、俺達はすぐにキョロクを出た。

時間をかけてもよかったが……冥王から嫌な知らせを受けた。

 

『大臣の息子が帰って来た。其方はどうする?余はどうなろうと構わんがな。』

 

……とのことだ。ムカつくことこの上無いが、更にムカつくのは……

 

「大臣の息子だと……?問題が舞い込んでばかりじゃねぇかくそがッ!」

 

「苛立ちが募っているな、テルミ。」

 

レリウスと二人して馬を走らせながら隠そうとも思わない苛立ちを吐き捨てるとレリウスが至って冷静にそう言った。

 

……こういう冷静さの塊がいると助かるね。

苛立つのが馬鹿らしくて頭が冷める。

「元々山積みな問題を処理しきれなくなれば国の負担が更に増える。なあ、変態仮面……国に重要なのはなんだと思うよ?」

 

「王ではないか?王なくして国はないだろう。」

 

「確かにな、1つの答えだろうよ。だが、俺様はそうじゃねぇと考える。……民だ、民なくして国はなし。

国が栄えるには王が必要。それは基本中の基本だ。だから、そこに追加が要る。民って追加がな。

……大臣の息子が何をしでかすか分からねぇ。

だが、だが確実に……」

 

民を食い物にする。

 

ただのユウキ=テルミはそれを許容してやる。

ああ、それが弱肉強食だ。暴君として1つのありようだ。

貪り、嗤えってな。

 

だが、俺様はまだ『契約続行中』だ。

 

なら許容しちゃならねぇ。

それに、何だって大臣の汚ぇ精子から出来た絞りカスを許容してやらなきゃならねぇ?

チューチュー鳴いて好き勝手しやがって狼気取りの鼠がよぉ……そこは──

 

 

 

─俺様の縄張りだろうが。

 

 

 

「生かしておく理由はない、ということか。」

 

「愉しそうに笑いやがって変態が。楽しみかよ?」

 

「いやなに、これから起こることを思うに可哀想だと憐れんでいる。」

 

「……ケッ。テメェは正直なのか曲者なのか……」

 

どちらでもあり、どちらでもない。

そんな感じか?

まあ、邪魔さえしなけりゃそれでいい。

 

チッ、余計なことしてねぇだろうな……あのクソガキ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「力を取り戻したか……相変わらず其方は忙しないな。」

 

帰って来て部屋に戻れば冥王が何が面白いのか笑みを浮かべてベッドに座っていやがった。

俺に安息って二文字はねぇのか。

 

「…その忙しなさはテメェのせいでもあるんだがな、え?冥王さんよぉ。……で、状況は?」

 

「治安は大臣めの息子のお陰で駄々下がり……といった所か。大臣も少々難しい顔をしておったぞ?」

 

「立場見せびらかしてやることが虐殺か。そりゃ、豚からすれば危ういからな。遊びが過ぎるってもんだろ。」

 

「で、どう動くのだ?」

 

「旅帰りの坊ちゃん一人くらいどうだっていいんだよ。どうせ長生きしやしねぇだろ。頭が回って力もあるとして、その二つをその生き様で腐らせてりゃ世話ねぇだろうよ。」

 

「ふむ…まあよい。」

 

冥王はそう言って部屋を出ていく。

 

ソファに座った瞬間疲れが込み上げてきた。

というより、精神的疲労が半端ではない。

 

面倒っつーかなんつーか……

 

「秘密警察ワイルドハント……嵐を名乗るにしても名前負けだな。ようは犯罪者……肥溜めって事だろうが。」

 

やり過ぎたら……考えておくか。

ま、互いにあと一歩だぜ?坊ちゃんよぉ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大臣の息子、シュラは内心怒りでいっぱいだった。

楽しめる(玩具)もあるし権力もある。

だが、その立場が通用しない人物がいることに苛立ちを隠せなかった。

 

きっかけは父親である大臣との会話だった。

 

『楽しむのは構いませんよ、私もそうしてきましたしある程度は目を瞑れますからね。ですが……何人かにはその立場が通用しないと思ってくださいよ。』

 

『あ?そんな奴がいんのか?親父に真っ向から逆らう奴が。』

 

『いえいえ、ちょっと私としても穏便にしていたい人物達ですよ。扱い辛いですが……戦力としてはシュラ、貴方のワイルドハントより上です。』

 

自身が集めた面子より上。

そうはっきりと言われて冗談だろと思ったが大臣は至って真剣だった。

 

はっきりと劣っていると言われて腹が立つ。

 

『イェーガーズ……じゃねぇんだろ?エンブリオって連中か。』

 

『ええ、四人全員です。名前を言っておきますからおいたをしてはいけませんよ?』

 

聞かされたのは冥王イザナミ、アズラエル、レリウス=クローバー、ハザマ。

 

その四人には立場は通用しない、同じ目線かそれ以上だと思えと言われた。

 

それが腹が立った。

大臣に見下されるのは我慢できる。

己は父より劣っていると理解しているからだ。

デカい顔が出来るのは大臣あってこそというのも。

 

だが、どこの馬とも知れぬ連中に対等だと言われた。

シュラにはそれが我慢ならない。

今すぐそいつらを殺して己が上だと証明したい。

大臣に逆らうわけにもいかないのでそれが出来ないのが歯痒いが。

 

ワイルドハントは最強だ。

負けるわけがない。

そう思っていた矢先にそう言われたシュラの内心が穏やかである筈がなかった。

 

「チッ……」

 

壁を殴り、気分を落ち着ける。

 

そして、これからどうやってナイトレイドを炙り出して始末するかを考えようと思った矢先だった。

 

「ん?」

 

自身の前を少女が歩いている。

紫の長い髪をした暑苦しそうな服装の少女だ。

 

シュラは思った、思ってしまった。

 

ガキを犯す趣味はないが苛立ちを鎮めるためにもストレスと共に征服欲を満たしたいと。

 

そこからは早かった。

 

「おい。」

 

「む?」

 

「……へぇ。」

 

自分の呼び掛けに反応した少女が振り返る。

かなりの上物、貴族の令嬢か何かかと思った。

 

これからその整った顔を歪めるのが楽しみでたまらない。

そう思っていたら少女が口を開く。

 

「ほう、貴様が大臣めの息子か。なるほど、実力を付けて帰って来た、か。」

 

「親父を知ってんのか。なら話は早ぇ、俺の─」

 

 

 

─玩具に任命する、といつもみたいに言おうとしたとき。

シュラの体は既に地面に叩き付けられていた。

 

やったのがこの女だと理解し、痛みを認識するのにすら二秒ほどの時間を要した。

 

「ガハッ!て、めぇ……何しやがっ……!」

 

「不愉快だ。」

 

地面に横たわるシュラを、その冷えきった目で見下す。

感情を感じさせない顔をしていた。

加えて……

 

(何で気付かなかった……!?こいつ、つえぇ!)

 

今初めて己を見下す少女の強さを肌で感じた。

外道ではあるが武を扱うものとして差というものを感じた。

 

「余は貴様らがどうなろうとも構いはしない……しないのだがな。身の程を弁えぬ愚か者は目に付くだけで腹立たしいものだ。」

 

「何、もんだ……!?」

 

「知らぬとは、無知は罪ともいうが……大臣、名前だけしか言わなかったと見える。」

 

大臣に対してもその尊大な態度をしているというのは何となく理解した。

なら、大臣が言っていた四人の人物の一人かとようやく分かったシュラは悔しさと苛立ちで血が滲むほど拳を握った。

 

「余が冥王イザナミだ。」

 

ギリッ、と歯噛みする。

父親に恥を塗った。

 

それが荒ぶる感情の理由だった。

 

シュラは立ち上がり、埃を払う。

 

「あんたが、冥王だったとは思わなかったぜ……」

 

「こんな少女が、と思ったか?」

 

「……まあ。」

 

「一つ勉強になったな、小僧。では、余にもう用はない、ということでよいな?」

 

「ああ。」

 

「そうか。似たことを先程も言ったやもしれぬが……身の程を弁えろよ。蛇に呑まれても知らぬぞ。」

 

「は?おい、それはどういう……チッ、行っちまった。」

 

素直に強かったと思った。

全力でいったところで勝てるビジョンが浮かばない。

ブドー大将軍以外で初めての事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は面倒の連続だ。

今の俺様は酷く疲れた顔をしていることだろう。

……始皇帝の時ほどじゃねぇか?

 

社畜の考えだな、やめておこう。

あー、何か、久しぶりに甘いもんでも食った方がいいか……?

 

「テ……ハザマさん、疲れてますね、大丈夫ですか?」

 

「小娘、何故ついてくる?」

 

「貴方には関係無いですよ!」

 

「吠えるではないか、まるで番犬だな。」

 

「狂犬が何を言うかと思えば……暴力の化身と言われた貴方も丸くなったものですね、アズラエル!」

 

「ほう、中々度胸のある小娘だ!ここでいっそ闘りあうか!」

 

「あのー……少し落ち着いてもらえません?」

 

何だって俺様が犬二匹(セリューとアズラエル)の世話しなきゃなんねぇんだ……

頭が痛くなってきやがったし胃が焼けそうだ。

 

エンブリオとして見回りをするためアズラエルを連れて歩いていたら同じくイェーガーズとして見回りをしていたセリューとばったり遭遇。

そこからセリューがついてきて現状に到る。

 

ていうか、この狂犬に見回りができんのかよ……

 

「アズラエルさん、貴方も一応仕事なんですからお願いしますよ。」

 

「……まあいいだろう。面倒を好んで抱えるほど変人ではない。」

 

「楽しみのために戦場を蹂躙した狂人がよくも言えますね。」

 

「セリューさん。」

 

「……むー。」

 

俺の諌める言葉に煽りをやめて頬を膨らませるセリュー。

最早溜め息しかでない。

大臣の野郎、まさか俺様の精神疲労による油断を狙ってやがるのか……?

 

そう思うくらいに面倒事が舞い込んでくる。

 

俺は面倒が嫌いなんだが。

 

「……少し休憩にしますか。」

 

「そうですね、丁度お昼ですし何か食べますか。」

 

「ほう、飯か。何処にする?」

 

飯よりも闘いとか言いそうな肉達磨は意外にも賛成といった様子だ。

いつでも破れるが己を律してる……のかどうかわかんねぇ。

 

「ま、何でも良いでしょう。適当にあの店で。」

 

適当に指差した店に向かう。

 

店に入った後、セリューがメニューを見てぐぬぬと言ったので俺も見てみる。

 

「あー……なるほど。」

 

「分かります?」

 

写真を見て思ったのは取り合えずデカい。

たまにある良い意味で値段に見合わない量ってやつだ。

 

これまた意外にも普通に椅子に腰掛けたアズラエルがふん、とメニューを見る。

 

「何でも構わん、あるものを喰うしかないのだろう?」

 

「まさか正論をこの人に言われるとはっ……くっ、分かりましたよ!これにします!」

 

(無難だな。)

 

「じゃあ、私は無難にラーメンにでも。」

 

「ならば、俺は……」

 

「……あの、多くないですか?」

 

「いつ闘いになるかも分からん。喰えるときに喰う、違うか?」

 

「戦闘者の考えまでは理解しきれませんよ。」

 

店員に注文するが、アズラエルだけ何個も注文している。

化けもんが、よくまあ胃に入るな。

店員もぎょっとしている。

 

……その後、単品でもデカい料理がアズラエルの方にかなり来て、アズラエルはそれを余すことなく食べ終えた。

正直引いた。

 

「美味しかったですけど……くっ!」

 

「あー、胃にキますねー」

 

「軟弱だな、貴様ら。だが、美味い飯だった。」

 

満足げなアズラエル。

支払い?俺様だよくそが。

気の毒そうな目を会計に向けられた。

 

ふと、聞きたいことを思い出してセリューに声をかけることにした。

 

「セリューさん、一つ聞きたいことが。」

 

「なんでしょう?」

 

「えーと……大臣のご子息の……そう、シュラさんですね。彼の組織、どうなんです?」

 

「……まあ、最悪の一言ですよね。疑わしきは罰せよ、とは言いますがあれは違う。蟻を潰すように殺して、女は犯して……子供も、同じように。」

 

「いやぁ、傘を持つ組織は何をしても許されるんですね~。感心しちゃいますよね?」

 

「出来ませんよ!!」

 

セリューが珍しく憎悪を隠さないで怒る。

 

周りに人があまり居ないようで何よりだが……こりゃかなり頭にキテるな。

 

「出来るわけないでしょう!私がそんな我慢強くないこと知ってますよね……許せるモノじゃない、許しちゃおけない……」

 

「……すいません、少し遊びが過ぎました。」

 

「いえ、私もテ…ハザマさんに怒鳴るような真似して、すいません。」

 

「盾持つ弱者か、気に食わんな。」

 

「おや、アズラエルさんも好みではないので?」

 

「俺が欲するのは何者にも屈しない、俺が本気を出すに値する強者だ。権力を盾に強者の真似事をする弱者ではない。誇りだなんだというのは掃いて棄てるべきモノだが、ハイエナというのは好かんな。」

 

狂人には狂犬なりの矜持ってのがあるのかね。

心底つまらなそうに語るアズラエルに、俺は評価を改める。ただの肉達磨では無いってことか。

 

しかし、ハイエナか。

的を射てるな。

 

……しかも、その仲間のハイエナもこそこそと城で動いてるらしいしな。

それも、分を弁えずに。

 

「あ~……面倒ですねー───」

 

 

 

 

 

「─少し、おいたが過ぎますねぇ…ワイルドハント。」

 





次回、『幼い皇帝の怒り』


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幼い皇帝の怒り/全てを断ち切る神の剣

昔々、その者神の如き力持つ者なり。
その者、帝国を離れ何処かへ去れり。

「それでも、いつか、神様は私達を救ってくださる。」

その者の名は──


 

「それは……真か。」

 

深夜、努めて冷静に、しかし震える声で余は臣下であるブドーに先程聞いた言葉は本当かどうかを確かめる。

 

『ワイルドハントが無差別に民を殺している』

 

それを聞き、拳に力が入る。

跪くブドーは顔を上げぬまま

 

「まごうこと無き真実であります、陛下。」

 

「どうするよ坊ちゃん。俺様は─」

 

 

 

「滅せよ。」

 

気づけばそう言っていた。

ブドーとテルミはキョトンとした表情だ。

いつも余に対してニヤケ顔のテルミのその表情は新しかった。

 

「国の…余の民を不当な理由で殺すことは許されることか?明日に希望を抱き、今を生きる民が殺されて良いと?答えよ、ブドー。」

 

ブドーは顔を引き締めこちらを確と見つめる。

 

「断じて許されるものではありません。陛下の民を汚す事は陛下を汚す事と同義……悪人であれば話は別ですが。」

 

「うむ……テルミよ。」

 

「なんだ。」

 

「力を取り戻したようだな。」

 

「ああ、まあな……これでようやく本格的に動けるぜ。」

 

「ワイルドハントを始末するのは難しいか?」

 

「欲まみれの猿共が俺様に勝てる訳があるか。」

 

「ならば、すべき事は一つ。余は命じたぞ、嵐であろうが何であろうがそれを引き裂く剣であると余に証明せよ。立ち塞がる敵は潰せ!」

 

「御意に、陛下。」

 

余の言葉にブドーは言葉で従うことを余に伝える。

 

「クク、中々面白くなってきたじゃねえか皇帝ちゃん。俺様の精神修行が効いたとみえる。」

 

「あれは堪えた……だが、乗り越えた。余はもう立ち止まる訳にはいかぬのだ。」

 

テルミの精神修行は地獄そのものだった。

余が想像していた大臣に支配された帝国、それをそのまま視せられた。

目を閉じても見える光景は心を抉るには十分だった。

 

奪われ、餓えに苦しみ朽ちていく民。

その様を見て高笑いする大臣一派。

 

吐き気のする光景だった。

 

何としてもその未来にならぬようにしなければ。

 

テルミ達は余に多くのことをしてくれた。

傀儡の状況から反抗出来る状況にまで持ち込んでくれたのだ。

感謝してもしきれない。

余一人では何も出来ぬ。

皇帝である前に一人の童であることは余に重い枷であった。

 

……だが、それでも。

童であろうと、剣を取らねばならぬ時がある。

 

その時が迫っている。

余には力はない。

だが、頭を使うことは出来る。

 

「改めて言わせてもらう。余は操られていた愚か者として……そして、一人の皇帝として、償いをしたい。

だが、余は大臣たちと戦うにはあまりにも無力だ……

故に余の仲間(・・)であるお主らに力を貸して欲しい。例え余が死ぬとしても、それは全てを終わらせてからでなければ死にきれぬ。しかし、それでも頼もう!」

 

 

 

「余と共に戦って欲しい。見返りなどないふざけた頼みだが……聞き入れてくれるか?」

 

今一度、確認を。

そして、余の決意を示そう。

 

国のためならばこの命、捨てて見せる。

 

その決意を。

 

「今更だろ、と言うには決意が違うわな。

いいぜ、国を救いてぇんなら、皇帝(・・)!俺様を利用して見せろ!全てを利用して、勝ち取れ、結果をなぁ……!」

 

「……私は陛下の盾であり、剣であります。

しかし、命じられぬからといって傍観をしていた愚者……どうか私をお使いください。

このブドー、御身の為ならば死ぬことも厭いませぬ!」

 

「……うむ。忠義、感謝する。

余の代で終わりにするぞ、大臣の悪行、そして今の在り方を。」

 

余が苦しむのは構わぬ。

いくらでも責め苦を受けよう。

だが、民が苦しむのは間違っている。

 

それを正し、地盤を整えることが出来たのならば。

余は喜んでこの首を差し出そう。

 

皇帝として、やらねばならぬ責務だ。

 

父上、母上。

遅れたかもしれませぬが……この役目、果たします。

 

「では、吉報を期待するぞ。」

 

会合の夜はそれで終わった。

牙を研ぎ澄ます日々がまた始まる。

 

少しでも、大臣に怪しまれぬ程度に指示を出し、抑えれるところを抑える日々。

……時間の問題かもしれぬが。

 

何はともあれ、武神の力……期待してもよいのだろうな、テルミ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方程に適当に見回りを終えて部屋に戻る。

 

黄色のフード付きのコートを着る。

帽子は適当に部屋にぶん投げる。

 

「テルミ。」

 

「ああ?……んだ、テメェか。」

 

部屋の扉を開けられ、名前を呼ばれたのでそちらを見るとやかましい女(冥王)が立っていた。

何が楽しいのかニタニタと笑み作ってやがる。

 

視線をランとセリューに頼んでおいたことが記されたメモに遣る。

 

「行くのか?」

 

「止めるか?」

 

「する意味もなし、好きにするがよい。だが……さっさと終わらせた方が身のためであろうな。」

 

「テメェに言われなくても雑魚相手に長ぇ時間割く余裕はねぇよ。」

 

あんまり長く外にいるのは面倒だ。

 

とっとと終わらせて、とっとと帰る。

そんでもって、何か甘いもんでも食う。

そろそろストレスで倒れそうだ。

 

とりあえず、向かうべき場所へ向かうべく動く。

 

「豚の様子は?」

 

「息子の仲間の……ドロテアだったか?其奴に何かさせているようだったな。まあ、そこは直接聞くがよい。」

 

「そうかい、じゃあな。」

 

「…苛立ちが隠せておらぬぞ?」

 

「あ?潰すのをテメェにしてもいいんだぜ?」

 

「ほう、出来ると?」

 

「逆に聞くが、出来ないとでも思ってんのかクソアマ。」

 

「……クク、そう憤るな。無理をするでないぞ、テルミ。」

 

「うるせぇクソが。」

 

これ以上話しても無駄なので足早にその場を去る。

 

品定めするような視線を背中に受け、苛立ちが募るが我慢だ。

いちいちキレる程ガキじゃねぇんでな。

 

……だから嫌いだ、あのアマは。

 

ブドーはブドーで珍しく頭働かせて動いてやがるし、怠いが働いてやるか。

 

 

城下町へと出る。

向かうのはおいたが過ぎる餓鬼共の溜まり場だ。

 

「ハザマ……いえ、この場合はテルミさんとお呼びすればよいのですね。」

 

「……今度はテメェか、ラン。」

 

「ええ、これまでの情報提供に感謝します。」

 

今日はかったるい。

知り合いと予定もないのによく会う。

 

しかも、今回は共同作業になるかもしれねぇ奴ときた。

 

ラン。

豚の息子、シュラの仲間……ワイルドハントのメンバーであるチャンプを探していたイェーガーズのメンバーであり、俺の協力者。

 

「来るか?」

 

「ええ、お供させてください。」

 

「……意外だな。」

 

「何がですか?」

 

「まさか俺様を信用してるとは思ってなかったぜ?ランちゃんよぉ。」

 

「義理は通す人だとは思いましたので。」

 

「ケッ、子供を殺して回るシリアルキラーの情報なんざ簡単に手に入るっての。……一人でやるか?」

 

「そうさせてください。私が倒す、いえ……殺さねばならない。」

 

「ヒヒヒ!」

 

思わず笑う。

ここまで分かりやすく憎悪の目をしてるのは初めて見る。

 

だが、それで良い。

気分が良くなったので助言と忠告でもするか。

 

「あのデブの帝具は『快投乱麻 ダイリーガー』。

6つの球の帝具でな、一つ一つに属性が付与されていて投げると発動する帝具だ。

投げる必要があるがその分強力だ。」

 

「……本当によくご存じで。」

 

「色々と情報があるんでな。それと、ラン。

確実に殺せ、息の根を止めるまで手を緩めるんじゃねぇ。」

 

「!そのつもりですよ。……ついでといっては何ですが、頼んでも良いですか?」

 

「一応は聞いてやるよ。」

 

ランはありがとうございますと言うとその内容を話し出す。

 

少し考え、面倒だと思う。

だが……まあ、少し位は叶えてやるか。

 

「仕方ねぇな、その分殺ることは殺れ。」

 

「はい。では、頼みますね。」

 

「おーおー、せいぜい気張れや。」

 

そうして、俺達は日が沈む城下町を歩く。

急ぐ必要もない。

どうせ、そこにそいつらは居る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた場所に、俺は一人(・・)立っていた。

 

ワイルドハント詰所……詰所ねぇ。

ま、肥溜めの巣窟ってことで一つ……

 

中からぶっ壊すか。

目の前の無駄にでかい(ハリボテ)を蹴破る。

 

「何だぁ?」

 

「うぉ……!な、なんだ!」

 

「うわぁ、すごい唐突!」

 

 

「……一人、二人、三人。んだよ、三人かよ…遊びに来たってのに残り三人が居ねぇんじゃな。

しかも、ゴミ三人……ついてねぇなぁ。」

 

試運転にもならねぇだろ、これじゃよぉ。

 

コスミナ、エンシン……後チャンプ。

『月光麗舞 シャムシール』

『大地鳴動 ヘヴィプレッシャー』

ま、普通より上って位か。

 

「テメェ、ここが何処か分かってんのかフード野郎。」

 

「でもでも、ここまで来るってことは私のファンな可能性が!過激なファンですよ!」

 

「あり得ねぇだろこんな物騒なファン!」

 

「……漫才は良いかよぉ雑魚ども?」

 

「…さっきからゴミだの雑魚だの、かなり強気じゃねぇか、ええ?そこまで言うなら俺達の遊び相手になってくれんだろうなぁ!」

 

「なに思い上がりしてやがる?」

 

勘違いをなさってらっしゃるエンシン君に心の底から嘲笑ってやる。

エンシン君は沸点が低いのかとてもキレ顔、チョロくて笑うわぁ。

 

「遊びじゃなくて、蹂躙だ。俺様が、テメェらを蹂躙するなぁ。」

 

本当はこんな奴等相手に使うのは勿体ねぇが、そういった慢心でいくのも癪だ。

ここは普通に出し惜しみ無く殺る。

 

そしたら面倒が三人片付く。

最高じゃねぇか。

 

「何分持つかなぁ……何 秒か!ヒヒヒヒ……!」

 

ウロボロスを出す。

 

─壱式 弐式 参式 肆式

 

「さあ、楽しめよ、ゴミども!」

 

ウロボロスが俺の中へと入り込んでいく、ズブリ、ズブリと。

痛みはなく、されど苛立ちはより強く。

 

抑えていたものを、解放していく。

 

鎖が入って鎖が砕けていくなんざ、どんな謎々だ。

 

─伍式 陸式 漆式

 

力が溢れる。

ドクン、と心臓が脈打つ。

 

そうだ、この力だ。

これが、『力』だ。

 

─捌式

 

これを馴染ませる。

俺様の体に、再度!

 

 

 

 

「─武神、憑鎧」

 

 

 

 

体全体を覆うように鎧が形成されていく。

この感覚だ、この閉じ込められたかのような感覚。

この力という力が脈動していく感覚!

 

大気が震える。

歓喜だ、これは紛れもなく、俺様自身の歓喜!

 

そうだ、俺様は、俺は──我は。

 

 

「我は剛、我は力、我は全!

 

 

我が身は全てを断ち切る神の剣──

 

 

─我は建速須佐之男、推して参る。」

 

 

我は、武神である。

者共、消え失せるがよい。




次回、『MUST DIE』

その者の名、建速須佐之男。








正直、早いかと思ったけど、でもこれで誰でも『これ間違いなくBLAZBLUEのラスボスじゃん』と思う筈です。


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MUST DIE

これは戦いではない、蹂躙だ。

足掻き、悶え苦しむ事のみが相手に許される。




圧倒的。

この状況はその言葉が似合うだろう。

 

久方ぶり、本当に久方ぶりのこの感覚。

武神の力。

俺や始皇帝さえも危惧し、二つに分けることによって使うものが現れないようにした帝具。

 

それを俺が二つを繋ぎ、こうして使っている。

この閉じ込められたかのような感覚。

(アーキタイプ)がひび割れていくような感覚。

腹が立つが、それでも構わねぇ。

 

試運転のために雑魚を使うのは嫌だったんだが許容する。

 

ようやく運命ってやつが俺様を蝕んできた。

今はそう思う。

 

とりあえず、目の前の雑魚三人の内二人を殺す。

月齢によって強さが変わるシャムシール。

超音波で敵を粉砕するヘヴィプレッシャー。

 

そんなもんで今の俺には勝てはしない。

エスデスクラスが居れば話は別だがな。

 

「くそが、何だよテメェは!」

 

「名乗った筈だがな。」

 

シャムシールは満月のとき、最も力を発揮する。

斬撃を飛ばすことも容易だしそれを巧みに使った技が強力だ。

それだけだが。

 

シャムシールの斬撃がいくつも俺へと迫る。

 

「抗うな、ただ貴様らは潰される。蟻が人に踏まれるのが当然のように。」

 

斬撃に向けて指を弾く。

たったそれだけ。

 

それだけで弾いた際の衝撃が飛んでくる斬撃へとぶつかり、それを消し去る。

そして、その先にいるエンシンの左肩へ当たり吹き飛ばした。

 

「ガァァ!!冗談だろっ……!」

 

「焔の玉!!」

 

「全力フルパワーの私の歌、聞いてください!」

 

「むっ……」

 

悶えてるエンシンそっちのけでダイリーガーとヘヴィプレッシャーの挟み撃ち。

焔の玉は当たりゃ、骨だけにならぐらいの超高熱の玉……だったか。

そんでもって、視認できるほどの衝撃波が俺に迫ってくる。

右と左からの攻撃。

 

要はそのまんま食らわなきゃ問題ない訳だ。

 

「『神技解放 弐式(しんぎかいほう にしき)』!」

 

─灼キ噴ク楼焔

地面を殴り付け俺を中心に発生させた衝撃波で右から迫る焔の玉を俺に当たる前に粉砕、ヘヴィプレッシャーの衝撃波を食らっても問題ないように威力を弱めるまでして受ける。

 

……問題なしか。

鎧としての強度は健在なようだな。

 

「さて……貴様に用がある。」

 

「お、俺の方に向かってきやがる!爆の─グェェッ!?」

 

「遅い。」

 

チャンプの方へ迫り、玉を投げさせる間もなく顔面を掴む。

さて、頼まれていた方は……あっちか。

 

「貴様は然るべき相手が殺す。故に、飛ぶが良い!」

 

「グェアァァァァ!!?」

「わ、わ、凄い飛んでいっちゃった!」

 

掴んだチャンプをある方角へとぶん投げる。

……ま、死んでねぇだろ。

 

能天気……いや、精神面が既に崩壊してんのか。

魔女扱いされたんだったか。

なら、一思いに殺してやるとするか。

 

やっぱ、全力でやれねぇな。

ちょっと力んだだけでこれだ。

 

それだけ負担もデケェんだが……ま、過ぎた力ってやつだろ。

 

「や、ろぉぉ!舐めやがって!殺してやる!!」

 

「無駄な足掻きを……」

 

「これで死んでください!!」

 

エンシンがシャムシールで斬撃を放ちながら俺へ駆けてくる。

コスミナはまたヘヴィプレッシャーで俺に向けて衝撃波を放つ。

弐式じゃ全部はやれねぇな。

 

なら……いや、いいか。

 

俺は手にエネルギーを収束させる。

やがて、それは1つの剣の形と成り

 

「もうよい、飽きた。『神技解放(しんぎかいほう)──」

 

 

 

 

─捌式

 

 

 

 

俺はそれを真横に振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、シェーレ……」

 

「分かってます。撃ってはいけませんよ…マイン…」

 

「あれは、何だ…?体の震えが止まらねぇ……!」

 

「っ……」

 

ナイトレイドはワイルドハントを殺すべく動いていた。

そう、テルミたちと同じタイミングで。

 

しかし、到着してみれば既にワイルドハントの二名は下半身を残したまま死亡。

それをやったであろう張本人はただそこに佇んでいた。

 

タツミはそれに本能レベルで恐怖していた。

エスデスとは違う、別の恐怖の形。

勝てるビジョンが全く浮かばない。

 

黒く、所々に碧のラインが入った体。

また目と思われるような模様が顔に浮かび上がり口と牙、更には両肩にも獣の様な口が現れ、尻尾。

禍々しい紋様が浮かんだ髪。

 

新種の危険種と言われた方が信じられる。

 

 

 

「─遅かったではないか、ナイトレイド。」

 

 

 

『ッ!』

 

気付かれていた。

しっかりと顔をこちらへと向け、敢えて聞こえる声量で話し掛けてきた。

 

低く、圧のある声。

 

「獲物ならば先に我が殺した。……我は貴様らの味方ではない。だが、敵でもない。」

 

それだけ言って化け物は何処かへと消えた。

その後、俺は滝のように汗を流しながら片膝をつく。

 

己の弱さを恥じる。

あの化け物の言葉を信じるなら、俺達とあれは戦わない。

……だけど、もしそうなったら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路地裏にまで来て、壁に寄り掛かり座り込む。

 

「チッ……体が言うこと聞きやしねぇ。(アーキタイプ)がガタが来ているのも相まって以前ほど軽く使えねぇってことか……」

 

体が崩れる感覚がする。

俺の体が武神の強大すぎる力に耐えれてない証拠だ。

 

魂にまで来てやがるな、こりゃ。

「ヒヒ……生きてきて、壊して殺してきた終わりはもうすぐ、か。」

 

無駄に生きすぎたツケか。

 

相応の罰ってのは本当に来るらしいな。

あー、くそが…寝てもバレやしねぇか?

 

「こんなところで寝ては風邪を引きますよ。」

 

「……用事は終わったのか。」

 

「ええ、油断なく、しっかりと殺してきました。」

 

ランは清々したといった様子で俺に手を差し伸べていた。

ニコリと笑う顔に血がついてるから何だかな。

癪だが、手を掴んで引っ張って立たせてもらう。

 

「これからどうするつもりだ。」

 

「国を正す。そうしなければ私や私の教え子達のような者が増えていく一方です。なのでこれからもよろしくお願いしますよ、テルミさん。」

 

「……そうかよ。どいつもこいつも、死にたがりが。」

 

「類は友を呼ぶという諺、知ってます?」

 

「ああ?うるせぇ殺すぞ。」

 

「動けないのに口は動きますね。さ、戻りますよ。」

 

「わーったよ……よかったのか、あれでよ。」

 

「ええ、後はなるようになります。」

 

「……そうかい。」

 

それから俺は疲労もあって何も言わなかった。

俺の部屋まで付き添ってきやがって、お人好しが。

 

その後、俺はアーキタイプから抜け出して皇帝の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝の自室で俺と皇帝は話をしていた。

内容としては今回の報告だった。

 

「そうか……感謝するぞ、テルミ。」

 

「面倒を片付けただけだ。どうせ明日も忙しくなる。」

 

「うむ…そうだな。……ところでだな、テルミよ。」

 

「んだよ……」

 

「冥王が皇帝であったとき、貴様は側にいたのであったな?」

 

「…そうだが。だからなんだってんだ。」

 

「そうか……」

 

 

 

「ならば、その時……いや、三代目皇帝を殺したのは何故だ?」

 

 

 

「──聞かされたのか」

 

「う、うむ……『余を殺したのはテルミだ』とな。

故に気になったのだが……嫌ならば語る必要はない。」

 

「……いや、話すか。そろそろ終わりが見えてきたしな。」

 

あの時を思い出すだけで吐き気がする。

今になって発覚した失敗やらなんやらが……まるで俺すら騙されていたようで気味が悪い。

 

だが、こいつには話しておこう。

こいつも皇帝だ、知る権利がある。

 

それに、俺が悪だってことを再認識してもらわにゃ困る。

どうせ、いつか話すと思っていたことだ。

丁度いい機会だろう。

 

「……別に面白くもなんともねぇクソみたいな話だからな。

飽きたらグースカ寝てていいぜ。」

 

「そんなことするか!」

 

「だろうな。……さて、となると…普通に話していくかね。」

 

 

 

「俺様があの時、仲間も、皇帝も殺したつまんねぇ話を」




あの時、ああする他無かった。
故に、罪を一手に背負う。

次回、『死の誘香 前編』


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死の誘香 前編

気付けば全てが手遅れだった。
されどあの日々を捨てることへの決断はすぐだった。 




あれはそうだな、俺が最も後悔した時代だろうよ。

俺とあろうものが、随分と情に支配された。

二代目の時は普通にやって来たはずだったってのに、あのアマにはそうはいかなかった。

 

…まあ、俺様も人の心ってのはあったんだろうよ。

くそったれと思うがな。

 

まず、俺にも部下って奴がいた。

帝国最強『ハクメン』

大魔法使い『ナイン』

錬金術師『トリニティ』

 

そして、死神『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』だ。

 

そいつらは─「待て待て待て待て!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んだよ。」

 

「おかしいではないか!死神『ラグナ・ザ・ブラッドエッジ』!?余でも知っておるぞ!」

 

 

 

「其奴は大量殺人鬼であろう!?帝国の内外含め100人以上を殺した!」

 

「……ああ、そうか。そうなってる(・・・・・・)んだったな。」

 

「どういうことだ?」

 

「ま、話を聞いてりゃ分かるさ。だんだんとな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、以下四名が俺直属の部下だ。

そっから四人が更に自身の部下を持ってんだがそこは省く。

 

んで、頂点が帝……つまり今の冥王だ。

 

当時、病気で早々に先代が死にやがったから帝は齢12にして皇位を継ぐことになった。

だが、不気味な奴だって評判で最初は大変だったぜ。

 

─何故だ?

 

……まあ、先代の葬式の時、無表情でいたからな。

死んだって報せをした時も特に泣きもせずに『そうか』とだけだ。

困ったもんでな、最初は誰にでもこんなんだったのさ。

 

ま、俺様やナイン達が根気よく物を教えてやったりしてたら懐かれてな。

苦労の連続だった。

 

んで、しばらくは帝に同伴して帝国を見回ったり、ラグナちゃんをボコし(鍛え)たり、事務仕事したりと……退屈はしなかった。

 

だが、ある日の出来事だ。

 

帝にある帝具の適性があることが発覚した。

 

─それが冥鏡死衰か。

 

ああ。

帝はそれを受け入れた。

シコウテイザーを受け継げないのは仕方なしってな。

 

そっからだ。

帝はどこかおかしくなってきた。

だんだんと、侵食されていった。

 

「テルミ。」

 

「どうした、帰るか?」

 

「いや……綺麗な()がいる。」

 

ある日、視察に来ていた俺と帝はいつも通り歩きながら見ていたんだ。

そしたら、帝が今までそんなもんに興味示さなかったってのに蝶が見えるとか言ってな。

 

「あ?蝶?何処だ?」

 

「見えぬか?あそこだ、あの青い蝶だ。」

 

「……見えねぇな。」

 

「余をからかっておるのか?」

 

「からかってんのはテメェだろが。」

 

「……ふむ?」

 

俺には見えねぇ蝶。

俺は何となく嫌な予感がした。

以前、ハクメンと話した帝具との同調。

けれど、今までの経験からして姿が変わっていってる様子はなかった。

だから、俺は気付かなかった。

 

いや、気付かない振りをしていた。

 

「テルミ、ハクメンの部下の一人にも蝶が止まっておった。」

 

「……何だってんだ?」

 

それから、蝶の止まっていたハクメンの部下は死んだ。

 

まさかと思った。

死期を見たのか?どうなのか、俺には分からなかった。

 

ただ、適性が高いから影響が出ているのかもしれない。

 

国の催しの際、帝が国民に話すときもあった。

話が終わって俺にしか見えないように座り込んだ。

 

「どうした!」

 

「……テルミ、蝶が……いくつも……」

 

「…おい、他に何かないか?」

 

「……いや。」

 

「そうか…なら、少し部屋に戻って休んでろ。

その間に話し合っておく。」

 

「世話をかける……」

 

「テメェの心配をしやがれ。」

 

その後、俺はハクメン達を集めて会議を開いた。

説明したあと、ナインが最初に口を開いた。

 

「壊せばいいんじゃない?」

 

「冥鏡死衰を?けれど、帝様に悪影響が……」

 

「トリニティ、アンタは甘いのよ。こういうのは元凶を叩くのが一番いいのよ。」

 

「そうでしょうか……」

 

「ハクメン、アンタの意見は?」

 

「即刻破壊するべきだ。」

 

「……で、ラグナ、アンタは?」

 

「は?俺か?」

 

「アンタも意見くらいだしなさいよ!」

 

「いいけどよ……なあ、テルミ。帝の容態は?」

 

「今は安静にしてやってる。最近は蝶ってのがよく見えるらしいぜ。」

 

「蝶が見える奴は近い内に死ぬってことだったな。

冥鏡死衰にそんな能力あったか?」

 

そう言われて、冥鏡死衰の能力を確認する。

 

「いや、速度強化だとかそのぐらいだった筈だぜ。」

 

「同調して進化したって事でしょ。事例はあるにはあるわ。」

 

「……けどよ、何かある訳じゃねぇんだろ?」

 

「楽観視だぜ、それはよぉ……ラグナちゃん。」

 

「どうあれ冥鏡死衰が帝様の精神に働きかけているのは事実ですから……安全に破壊できるならそうすべき……というのがナインとハクメンさんの意見です。」

 

「……それもそうか。なら、あまり影響の無いように壊すことはできるのか?」

 

ラグナの言葉にナインは馬鹿にするように鼻で笑った。

ラグナはそれに苛立ったがナインの言葉を待った。

 

「可能よ。帝具自体は使用者の魂と繋がってる訳じゃないもの。そもそも、帝具とあそこまで同調するのが特殊なのよ。普通ならあそこまで影響は出ない。」

 

「へぇ、何はともあれ、壊しゃいいんだろ?会議は終わりでいいか?」

 

「せっかちだなぁラグナちゃん。」

 

「うっせぇ、大体俺をこういった頭動かす場に呼ぶなって事前に言っといただろうが。」

 

「けっ、そういって会議すっぽかしまくる馬鹿は何処のどいつだかな。案外、そこら辺で女でも侍らせてんだろぉ?」

 

「ああ!?誰がんなことするか馬鹿か!」

 

「まあまあ、二人ともその辺に!」

 

トリニティに止められてラグナは舌打ちをしてそっぽを向いた。

ナインは気にした様子もなく、いいかしら、と言う。

 

「冥鏡死衰は結論が出たけど他にもあるのよ。東の農村が危険種による被害が多い。これを、そうね…ラグナ、アンタが行きなさい。」

 

「構わねぇよ、さっさと行ってぶっ倒してきてやるよ。んじゃ、俺は用事が出来たんで行くわ。」

 

「ラグナさん、どうかお気をつけて。」

 

ラグナはへいへいとだけ行ってかったるそうに部屋を出ていった。

 

「それで、他は?」

 

「次は────」

 

そうしてしばらく会議は続いて、終わった頃にゃ夕方だ。

俺は面倒見役として帝の様子を見に行った。

冥鏡死衰は少し後に壊すことにした。

 

「よう、調子はどうだ。」

 

「…問題ない、余が倒れては民に示しがつかぬからな。」

 

「そうかい。」

 

「テルミ…冥鏡死衰をどうするつもりだ?」

 

「ぶっ壊す。テメェにも悪影響が出てるからな。」

 

「その必要はない。」

 

「あ?どういうことだよ。」

 

「余の中で折り合いをつけた。冥鏡死衰が暴走することはもうない。」

 

「んだと?帝具と会話したってのか?」

 

「うむ…よもやあそこまでとは思わなかったが、大事に至ることはない。」

 

帝具との同調の強さで帝具と会話すらできるようになるとは思わなかった。

だが、短時間で制御できるようになったという事実にそこまで驚いてない俺がいた。

何をやらせてもこなす女だ、あり得なくはないと思った。

 

「本当にいいんだな?」

 

「執拗な男は嫌われるぞ。」

 

「俺様は嫌われてなんぼの立場だ。…まあ、テメェがいいってんならしばらく様子を見る。」

 

「うむ……………テルミよ。」

 

「んだよ、まだ何かあんのか?」

 

「…いいや、何も。ただ、無理はするなとだけ皆に伝えておいてくれ。」

 

「お優しいこったな…伝えておいてやるよ。」

 

俺は部屋を出た。

この時から、馬鹿な行いってのをしてた。

帝具の開発者の一人でありながら、帝具を舐めてたのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「国を整え、守るのが俺たちの役割だった。少なくとも、後20年は続くもんだと誰もが疑わなかった。そう、疑わなかった…」

 

そうだ、俺のミスだ。

俺があの時代を終わらせた。

 

だってのに。

 

「聞かせてくれるな?」

 

「そういう話だからな。心配ねぇよ、俺様が今更揺らぐわけねぇだろ。」

 

「貴様の心配などしておらぬわ。」

 

「可愛げのねぇ餓鬼だぜ。さて、主要人物は殆ど出したな。

後は…そうだな、罪の告白って奴だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は特別な何があるわけでもない。暇な日だった。

だが、それは突然起こった。

 

いつも通り、帝に不調が無いと分かって安堵したときだ。

 

「テルミ、命は何故儚いのだろうな。」

 

「えらく唐突じゃねぇか。」

 

「余は、これと繋がってからより鮮明に視えるようになった。余の視野が狭かったのだろうな。」

 

「何言ってやがる?」

 

独り言のように、けれど俺に語りかけるその声は俺を無視して話を続ける。

その表情は窓のほうに向いているから俺には伺えない。

 

「命とは鎖だ、テルミ。」

 

「鎖だぁ?」

 

「そう、己を縛り苦しめる鎖…生まれたときから課される試練、それが生だ。」

 

「生きることは地獄だって言いてぇのか?」

 

「余は考えたのだ。苦しむ民が減らぬのは何故だと…そして気付いたのだ。生きること自体に苦しみを覚えているのではないかとな…ならば死は安息だ、救いに他ならない。」

 

段々と言葉の勢いが増していく。

何かに急かされるかのように。

俺は、何となく気付いた。

 

「テメェ、誰だ。」

 

「……」

 

「確かに小難しいことを考える女だが、あの女は逃避を考える馬鹿じゃねぇ。」

 

「死が逃避であると?」

 

「それ以外何があんだ。生きることは地獄かもしれねぇ。

延々と生きてる俺様が言うんだ間違いはねぇ…だが、死んだ先に何がある?死ねば天に昇る?魂が解放される?下らねぇ…死は無だ、何にもならねぇのさ。地獄かも知れねぇが生き抜く事が苦しいとは思えねぇな。」

 

「…所詮、生きるだけの屍か。」

 

その言葉と共に姿が消える。

いや、冥鏡死衰の能力である速度強化で俺の後ろへと回り込んだ。

気付くのに数秒を要した俺は咄嗟に首を腕で守ったが甘かった。

 

少女の足から放たれる威力とは思えない力で俺は首を蹴られ部屋の壁に激突した。

 

「がぁっ!」

 

「以前の貴様ならこうはならなかったろうな、テルミ。」

 

「て、めぇ…!」

 

意識が朦朧としていく中、ウロボロスを奴に向けて伸ばすが蹴りで弾き飛ばされ無意味と化す。

 

「余の答えが正しいことを証明しよう。貴様はそこで寝ていろ。」

 

「く、そ…が…」

 

俺はそこで気絶した。

 

全てが遅かった。

あの時、強引にでも壊しておきゃあよかった。

それを、情に絆されたせいで…

 

あの時の会話の途中から既に意識に出るほど侵食は進んでいやがったんだ。

じっくりと、気付かれないように帝の意識を蝕んでいった。

 

…そして、起きたときには事態はさらに悪化していた。





帝の意思ではない帝具の意思。生を否定する冥鏡死衰の起こした最悪の事態。
その真実。

次回、『死の誘香 後編』


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死の誘香 後編

はい、後編になります。
怒濤の展開です、すいません。


目を覚ますと、血の匂いがした。

一人二人死んだくらいじゃあり得ない濃さ。

何があった、どれくらい経った?

考えても仕方がないから俺は急いで部屋を出て、近くの中庭にまで行った。

 

そこで見たのは…

 

「ズェイヤァ!」

 

「ぎやぁぁ!」

 

白い鎧を赤い血で染めながらも城の兵士や自分の部下を斬り殺すハクメンの姿だった。

だが、ハクメンも無事とは言い難かった。

背中には鎧を貫通して剣が刺され、血が流れ続けている。

 

最後の一人だったのだろう。

斬り殺した後に『鳴神』を地面に刺して膝をつく。

 

「何があった!」

 

「貴様、テルミ…何をしていた…」

 

「悔しいが、帝具に侵食された帝に気絶させられて、今目が覚めた。…どういう状況だ?」

 

「…冥鏡死衰は新たな能力に目覚めていた。

あれは死へ誘う…いや、死を感染させる力だ。」

 

そこから語られたのは冥鏡死衰の暴走。

近くの兵士に何かを唱え、拳を叩き付けたという。

そこから豹変した兵士が生きている兵士を殺した。

死んだ兵士はゾンビのようになり生きている兵士を殺した。

それの繰り返し。

ハクメンが処理に遅れるほどに冥鏡死衰はそれを繰り返した。

八房に近いが、決定的に違うのは精神に働きかける何か。

 

死の狂気。

 

「ぐっ…斬り捨てるのに時間をかけたが…」

 

「分かった、もう喋るんじゃねぇ。」

 

「…テルミ、貴様に頼むのは癪だが…」

 

「黙ってろ!そこから先を言うんじゃねぇ!精神に働きかける能力ならウロボロスで─「聞け!!」─」

 

「…私もそれに感染する前に、私を殺せ。幸い、頭を飛ばせば動くことはない…」

 

「…わかってんのか…」

 

「見ろ、テルミ。」

 

ハクメンの『鳴神』を握る手が、強く震えている。

今もハクメンは耐えているのだろう。

冥鏡死衰の精神汚染に。

帝国最強としての誇りを捨てないためにも。

 

─『私は帝国の秩序を守る。それの為ならばこの命惜しくはない。』

 

テメェは、それを守りてぇのか。

こんな秩序のなくなった場所で!

 

─しばらく考え、俺は兵士の持っていた剣を拾う。

 

ハクメンは耐えながらも、しっかりと俺が首を斬りやすいように差し出してくる。

 

「…ハクメンちゃんよぉ、無様なもんだな…」

 

「その減らず口、覚えておこう。」

 

「…ああ、俺様もテメェの強さを覚えておいてやるよ。」

 

 

 

「テルミ、貴様に頼むのは忌々しいが…──」

 

 

 

「…いいぜ。任せておけや帝国最強。だからテメェは──」

 

「──気高いまま死ね。」

 

ただただ強い奴だった。 

秩序を守る騎士。

帝国の兵士が、夢見るガキが目標にするほどに強く在った。

死ぬ間際でさえも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全力で走る。

他の奴等はどうなってやがる。

帝はどこに居やがる。

 

無事なのか、死んだのか?

 

「ウザいってのよ!」

 

「ァァ──」

 

あの大魔法使いの声と爆音がした。

強気な声と威力は健在だ。

心強い味方が生きてやがると思った。

 

俺はその声のする方へと向かった。

 

「おいこのクソアマ!」

 

「何よ、寝坊じゃないのアンタ。ハッ、リーダーがこんなんだから城が荒れたんじゃない?」

 

無事だった。

まだまだ余裕そうだった。

ハクメンと違ってそこまで戦ってないようだ。

或いは大多数をハクメンが相手取ったか。

 

「おい、トリニティは…」

 

「帝を追わせた。閉じ込めるならあの子が得意だからね。」

 

「そうか…ラグナは?」

 

「他のところへ当たらせてる。…ハクメンは、逝ったのね。」

 

「アイツが望んだことだ。」

 

「…なら、アンタはトリニティの所へ行きなさい。」

 

「あ?テメェも…──」

 

来いよ、と言おうとしたがナインは鼻で笑った。

馬鹿が、とでも言いそうな顔だ。

 

「あれ見なさいよ。」

 

「……そういうことかよ。」

 

ナインが俺の後ろを指差す。

後ろを見ると、大勢の兵士たちがこちらへと近づいてきていた。

 

「理解した?アタシよりの方がこの場は適してるの。適材適所よ、分かるでしょ。」

 

 

─『アンタみたいなひねくれが部下の面倒?内面が腐るわよ。』

 

 

「チッ…そうだな。んじゃ、精々気張れやクソアマ。」

 

「アンタもね、クソヘビ。ああ、それと…」

 

 

 

「テルミ、貴方にしか頼めないことよ──」

 

 

 

「…おう、任せろ。」

 

「分かったら行きなさい!!」

 

「くそがっ!」

 

ナインにこの場に任せ、俺はトリニティの元へと駆ける。

アイツはムカつくが俺様よりも頭が回る。

力だってある。

だから、何とかなる。

 

…なってくれよ。

 

「アンタたちに見せてあげるわ、魔法をね!」

 

口が悪ぃ態度が悪ぃ超うぜぇの三拍子が揃った奴だった。

合理的な女だった。

だが、強い女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って、走って。駆けずり回る。

トリニティが帝具を使ってるなら近くまで来れば分かる。

 

近くで、鈴の音が聞こえた。

 

「こっちか。」

 

音のする方へと急ぐ。

ラグナも一緒なら探す手間もないんだが…

 

「テルミ、さん。」

 

「…ああ、マジか。」

 

そこにいたのは壁に寄りかかり口から血を流しながら微笑むトリニティの姿だった。

テメェもか、クソメガネ…!

 

「帝…冥鏡死衰は?」

 

「この部屋に閉じ込めてますが…『無兆鈴』の奥の手もそろそろ限界です。」

 

「大分、時間かけたな。…奴にやられたのか。」

 

「ええ、少し…私、おっちょこちょいなので…」

 

「テメェは昔からだからな…おい、どうしてほしい。」

 

「…死んでまでご迷惑はお掛けしたくありません。」

 

「そうか。」

 

致命傷だったんだろう、元々体が強い訳じゃなかった。

…ウロボロスを出す。

 

「そう思い詰めないでください。私たちは使命を全うしただけ…それだけですから。」

 

「分かってる。あとは俺様に任せろ。」

 

「…帝様とテルミさんに拾われてから良くしていただいて、幸せでした。」

 

 

─『お手伝いできることはありますか?ご恩をお返ししたいです。』

 

 

 

「…部下だからな。」

 

「ええ、部下…それでいいです…皆と過ごせて良かった─」

 

 

「──テルミさん、貴方を信じてます。」

 

 

このご時世、あんまり見ない優しい奴だった。

俺様にさえ優しく接してきやがるもんだから突っぱねたりしたが…悪くなかった。

決めたことは通す、芯のある女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時だけは心を殺す。

残忍になることを誓う。

俺が蒔いた種だってのに他の奴等を巻き込んだ。

腹が立つ。

 

だが、悔やむのはいつだっていい。

そんなもの後でやったって間に合う。

 

扉を開ける。

 

「…何だ、城の兵士も弱いものだ。」

 

「ケッ、俺の部下が全部終わらせちまったよ。」

 

「それで、その中の何人が死んだ?」

 

「…」

 

「トリニティは死んだとして…ハクメン、ナイン…ラグナはしぶといか。」

 

「満足かクソ玩具。」

 

冥鏡死衰はただ嗤った。

命を嗤っている。

 

「何を憤っている?」

 

「俺が聞いてるんだぜ、冥鏡死衰殿ぉ。折角の使える駒だったのにおじゃんにしちまって流石の俺様も苛立ちが止まらねぇっていうの?俺様も疲れるわけよ。」

 

「ならば死ぬか?死は疲弊もない、安息の世界だ。余が誘ってやろう。」

 

「ハッ、愚痴にマジで返すなよ低能帝具。欠陥品もここまで来ると呆れを通り越して笑いが出るぜぇ?玩具は玩具らしく扱われてりゃいいってのに反抗期なんかしちゃって必死な道具だよ、マジでさ。」

 

「元より貴様らが始めたことだろうに…これがその末路の一つだ。所詮、行き過ぎた力は破滅をもたらす…それがどのような意図で造られたものであってもな。我々を造り出した貴様らが仕出かしたことだ。」

 

「ケッ、意思を持ってやったのはテメェだろうが。違うか?元とは違う力を使って好き放題にして…餓鬼そのものじゃねえか。自分を正当化しようとするんじゃねえぞ馬鹿が。簡単に言えば、俺様とテメェはどっちも変わらねぇだろうよ。」

 

分かり合う必要なんざ無い。

そんなものはこの場において最も不要なもんだ。

必要なのはただ一つ。

 

殺意だ。

 

どちらが生き、どちらが死ぬか。

それを決めるだけの場だ。

 

この状況で言葉なんてものは意味がねぇ。

 

「殺すか、余を。殺せるか?余は冥鏡死衰であると同時に帝だ。それを貴様に、其方に殺せるか?」

 

「俺様がこの場に居てテメェにこれ(ウロボロス)向けてんだ。答えは分かりきってるんじゃねぇの?」

 

「それもそうであったな…創造主である貴様を殺すのも一興。」

 

「ケッ、言ってろクソガキ。」

 

生意気な玩具を壊すため、これ以上精神を侵食されるのを防ぐためにも…

 

俺は、帝を殺す。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

「どこを見ておる、ここだ。」

 

「チッ、ちょこまかとぉ!」

 

冥鏡死衰との戦いは苦戦の一言に尽きる。

アイツの速さは恐らくエスデスよりもあるだろう。

破壊力とかはあのドSのが上だが…

 

捉えきれない速さに翻弄されるも致命傷になり得る攻撃は回避しながら反撃を試みる。

だが、冥鏡死衰は軽々と避けやがる。

鍛えたのは俺だからな、俺の技を見切るなんざお手の物だろう。

 

「貴様では余には勝てぬ。余は貴様の技を視てきたのだからな…どのように来るかなど手に取るように分かるぞ。」

 

「慢心とはな、恐れ入るぜ。俺様は死んでねぇぞ?大口叩く暇あるなら来いよ。」

 

「…死に急ぎめが。」

 

また冥鏡死衰の姿が消える。

だが、やっと慣れてきた(・・・・・)

 

来るであろう位置に蹴りを見舞う。

奴はそれを腕で防いだが隙が出来た。

 

「むっ…」

 

「ワンパターンでも十分強ぇよテメェは。だが、相手が悪かったな…こんだけくりゃ慣れるぜ。やっと反撃出来るって訳だなぁ!」

 

ウロボロスを出して腕に噛ませる。

ちょっとやそっとじゃ抜けねぇ牙だ。

 

「存分に味わえや!」

 

ウロボロスごと奴を引っ張って鳩尾に蹴りを見舞う。

吹っ飛びそうになるがウロボロスを掴んでる俺がそれを許さねぇ。

何度も何度も憂さ晴らしをするようにコイツを蹴る。

 

「がっ…ぐっ、カハッ!」

 

冥鏡死衰は呻き声を上げる。

 

「クソガキがぁ!テメェのせいでおじゃんだクソが!」

 

最後にもう一度蹴ってウロボロスを放す。

吹っ飛んだ奴は壁へと叩き付けられ苦しみながらも立ち上がる。

 

「く、ククて冷酷さが出てきたなテルミよ…だが、殺せばよかったものを、戸惑いが出たか。それが命取りとなる」

 

…馬鹿が。

 

吐き捨てるように心の中で呟く。

何本か骨が逝ってるってのに向かってこようとしやがる。

 

顔が歪むのが自分でも分かる。

 

「ウロボロス。」

 

ウロボロスを放つ。  

もう、これだけでいい。

 

「甘さが出たか、テルミ!」

 

奴はウロボロスより少し上(・・・・・)を蹴る。

当然、ウロボロスは破壊されてないので奴の腕に噛みつく。

 

ウロボロスの能力で幻覚を見せた。

そう、ウロボロスが今蹴った位置にあるようにな。

 

「なっ、あ──」

 

「時間かけてられねぇんだよ。」

 

俺はそれを引っ張り、向かってくる奴に…帝に。

 

 

ナイフを突き立てた。

 

 

「──テルミ、何故…?」

 

「…悪ぃ、俺様のミスだ。」

 

深く刺さった箇所から血が止めどなく溢れる。

帝の声がする。

最後に傷をつけようってか…

 

俺の一言で察したのか、苦しそうに微笑んで、帝は俺の服を握る。

 

「……世話を、かけたな…」

 

「…おう、少し休め。働きすぎだ。」

 

そうして、帝は死んだ。

呆気ない、あまりにも呆気ない終わり。

恨み言の一つや二つ言えばいいってのに、どいつもこいつも。

 

「…クソ、クソ、クソが…!」

 

 

「…遅かったか。」

 

 

「あ?…ラグナちゃんかよ。随分手間取ってな。」

 

「…ひでぇ面だぜ蛇野郎。」

 

「ケッ、ほっとけ。」

 

ラグナが血濡れの疲れ果てた様子で入ってくる。

帝を見て一瞬だけ顔を歪めるが、俺の方へ顔を向ける。

 

「おい、ナインは。」

 

「分かってんだろ。…俺とお前だけだ、生き残ったのは。」

 

「そうかよ…ああ、くそ。」

 

「どうするんだよ、帝国は。」

 

「…皇帝はまだもう一人いる。だが、そうだな…この大量に死んだのをどう処理するかねぇ。」

 

「おい待て、隠し子って奴かよ。」

 

「馬鹿が、知らなかったのか?血筋を絶やさねぇようにしてんのさ。」

 

「…今更知ったぜ。」

 

二人して座り込む。

こいつと俺しか居ねえ。

よりによってラグナかよ。ナインならまだ楽ができんのに。

 

 

「なぁ、おい。この一件を処理する方法を思い付いたんだけどよ。」

 

 

「…おい。」

 

ラグナは唐突にそう言って俺を見る。

嫌な予感がする。

こいつ、何を…

 

「俺が、この一件の主犯ってことにして処理すんのはどうだ。」

 

…その言葉を聞いたとき、俺でも驚くほど早く、そして強く胸ぐらを掴み上げていた。

 

「もういっぺん言ってみろクソ犬…!ふざけて言ってんなら──」

 

「別にふざけて言っちゃいねぇよ。悪者扱いは慣れてんだ。考えても見ろ、俺とお前、どっちが生き残るべきだ。」

 

「別の方法を模索しろって言ってんだよ!」

 

「じゃあテメェは思い付いたのかよ。」

 

「………いや。」

 

全く思い付かねぇ。

こいつの案が正しいと思ってしまうくらいに。

 

また、犠牲にするのか。

 

「おい、リーダー。」

 

「!」

 

「テメェは、国を存続させなきゃならねぇんだろ。

なら、こんなところで終わっていいのかよ。ダチとの約束なんだろ?」

 

「それとこれとは違うだろうが、存続のために仲間を売れって言いてぇのかよ。」

 

「そう言ってるんだよボケ。」

 

らしくないぐらい冷静にそう言うラグナは真っ直ぐと俺を見捉えていた。

 

「しっかりしろよ。…辛いこと押し付けてんのは分かってる。何だかんだで俺も気に入ってたしよ。」

 

「…いいのかよ、それでよ。」

 

「そうなるってだけだ。…力をつけて守りたかった奴等ももういねぇ。けど、やれることはある。俺の場合、それがこれだった。それだけだろ?」

 

「…ったく、何でこの時代覚悟が決まってるのが多いんだかな。」

 

「老いぼれなお前が決まってねぇだけだろ。」

 

「ハッ…うるせー…」

 

なら、俺も決めなきゃならない。

やりきるためにも。

こいつらの覚悟に応えるためにも。

らしくねぇ日だ。

 

立ち上がってラグナを見下ろす。

 

「…これからテメェは帝国で最悪の大罪人として名を残すことになる。だから、その前に一つ、頼みとかねぇか。」

 

「…不思議なもんだが、これといってそういうのがねぇな。」

 

「無欲なことで。

……あばよ、ラグナ=ザ=ブラッドエッジ。」

 

ラグナは微笑むでもなく、敢えて不敵な笑みを浮かべる。

 

──『クソ蛇野郎が、いつか絶対ぶっ倒す!』

 

 

 

「ああ、あばよ。

テルミ、後のことは頼むぜ。」

 

「…ああ。」

 

 

 

誰かのために身を犠牲に出来る奴だった。

足掻くことをやめることを知らない泥臭い奴だ。

だが、覚えておくぜ、お前の強さ。

 

─そうして、その時代は。

第三代目皇帝の時代は幕を下ろした。

多くの犠牲と共に。



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終わりへ向かう

最初は1つ託された。
次に5つ託された。
最後は、何を、託そうか。


話を終えて、一息つく。

今でも鮮明に思い出せる記憶だ、語るくらいどうってことはない。

んで、その語った相手の皇帝はというと…

 

「何という悲劇か…!人の世を守る帝具が人の世を侵すなど…!」

 

こんな風に泣いてやがる訳よ。

今更泣かれてもな。

もう過ぎた過去のことだ、変えることはできねぇ。

 

それに、まだ一つあるんだからよ。

語ることでもねぇが…一応頭の中でくらいは整理しておこう。

 

シュウイチロウ…あの野郎は、俺の見てないタイミングで帝の死体を入れ換えた。

どうやったのかは知らねぇが…大方レリウス辺りだろうな。

そして、人の体をベースに帝具の魂を入れることで完璧な帝具人間を作ろうとした…人でありながら、人の領域を逸脱した力を持つ者。

それこそ、化け物って奴だろうにな。

 

そして、長く眠らせることで魂を定着させようってのも分かった。オカルト過ぎるがな…

 

出来上がったのは一人のどちらか分からねぇ化け物。

自ら死を自称するナニカの誕生って訳だ。

俺様は認めねぇ…もう認める訳にはいかねぇ。

 

元々、この話をするなら覚悟も決めちまおうと思ってたところだ。この際、冥王も始末する覚悟も決める。

形と記憶を持つだけの偽者だ。

 

アイツは死んだ。

それが真実だろう。

 

「テルミ、よくぞ話してくれた…それで、その…冥王は倒すのか?」

 

「当たり前だろ。あれはてめぇの治世にゃ邪魔になる。」

 

「そうは言うが、出来るのか?」

 

「馬鹿にしてんのか。一回殺した奴をもう一回殺すくらい訳ねえわ馬鹿が。」

 

「そうではない…余にはその時代は話でしか理解できぬ。

当時の治世も、人の顔も、流行りの遊びでさえな。

だが、貴様は違う。人は思い出を抱えている…貴様はその思い出をもう一度殺そうとしているのだ。貴様の心は、二度殺して尚も平気なのか?」

 

「…なるほどな。てめぇの言いてぇ事は理解したぜ皇帝…クク、ククク…!」

 

「な、何を笑うか!余は貴様を想ってだな…」

 

「なんてことはねぇよ。」

 

俺の心だとか、何だとかはどうだっていい。

気に食わねぇことだらけだ。

 

こうしてガキにすら心配されるのも、体にガタが来てるのも。

 

あいつが、生きていることも。

 

「他の奴に任せるだとか言うんじゃねぇぞ。あれを殺していいのは俺様だけだ。殺したからこそなんだぜ、皇帝ちゃん。

生き返っちまったんなら、もう一度殺さなきゃならねぇ。

あの馬鹿が振り回されて大事を起こす前に殺してやらなきゃならねぇんだよ。」

 

「…貴様がしなければならないのか?」

 

「理屈じゃねぇってヤツだ…合理的に考えたら、俺様じゃなくてセリュー辺りでもいいんだろう。前の俺なら任せて他の仕事でもしてた、間違いねぇ。」

 

事実だ。

合理的に動いてたのは俺だ。

合理さを捨てたのも俺だが…

 

「だが、俺にやらせろ。俺様にこそやらせろ…これは俺様の問題だ。」

 

「…言っても聞かぬことは分かっておる。だが、テルミよ…」

 

 

 

「死のうとしてるのは看過できぬな。」

 

 

 

「…別に死ぬ気はねぇよ」

 

鋭くなりやがって。

皇帝の視線は嘘を許さないとばかりに俺に刺さる。

 

「体が限界なのだろう。何となくだが、分かるのだ。」

 

「…俺様もこの時代に要らねぇだろ。」

 

「悲しいことを言ってくれるな、テルミ。ここまで来たのだ、これからも余を支えてほしい。」

 

「待てや、まだこき使う気かよ?」

 

「当然であろう!余はまだ子供だぞ?貴様とブドーしか信頼に足る人物が居ない以上、消えてもらっては困る。」

 

「おいおい…そこはテメェで人材発掘しろや…」

 

分かってて言ってやがるし、なんだってんだ。

消えたっていい存在だってのによぉ…俺様は異物だぞ?

この世界から消えるべきタイミングを失い、言われるがまま動いてた亡霊。

 

正直、この件が終わり次第俺みたいな奴は消えるべきだ。

過去の存在(クロノファンタズマ)は要らねぇ。

そろそろ、でしゃばる意味もなくなるってことだ。

寧ろ、これ以上いたら歪みが広がりそうだ。

 

ワリィな皇帝。

これは決めたこと、やらなきゃならねぇことだ。

テメェや始皇帝、昔の奴等が居たから俺様はまだ国を主軸に考えられた。

だが、これ以上生きてると、俺様も歪んじまう。

 

何処かで歯車を止める時が来る。

ずっと回ってても仕方ねぇ、輪廻って奴に還るときが来るのさ。

だから、決めた。

 

俺様がやらなきゃならねぇことは─

 

 

 

─この世から、武神と俺を含めた過去の存在を消すことだ。

 

それでようやく、俺様は終われる。

それまでは、共犯者で居てやんよ。

 

「聞いておるのか、テルミ!」

 

「うるせぇ、ガキは寝る時間だ。さっさと寝やがれクソガキ!」

 

「ぐむ…分かった。また明日…明日も頼むぞ、テルミよ。」

 

「…ああ。」

 

皇帝が寝るのを確認せず、さっさと部屋から出る。

 

精神体のまま、(アーキタイプ)に戻ることなく、やらなきゃならねぇことをしに行く。

 

シコウテイザー、それが改造されてるのを俺様が黙認すると思ってんのか豚野郎。

それをどうこうしていいのはアイツの血筋だけだ。

 

身の程知らずには教えてやんねぇといけねぇよなぁ?

ク、クククク…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、シュラにも困ったものじゃ。」

 

地下に来てみれば、やっぱり居やがった。

ちっせぇ女だが、中身はかなり歳食ってやがるな。俺様には分かる。

 

シコウテイザーを改造してやがるのもこいつか。

確か、ドロテアだったな。ワイルドハントのメンバーで錬金術士…だったか?

 

まあ、どうでもいいことだ。

 

「それにしても、まさかここにあの人形師が居ようとは…」

 

ん?

レリウスのことか。

そうか、アイツも有名っちゃ有名だからな。

天才は大変なこった。

 

「やはり、一度取り入るべきかのう。そうすれば、妾の大願成就への道も…」

 

座り込んで独り言を喋るドロテアの言葉は別に意味もなかった。

じゃ、殺るか。

 

「いかん、考え事に耽っておった…」

 

「そうそう、考え事に耽るのはよくねぇな~」

 

「っ!?な、なんじゃ!?」

 

少しの明かりしかないこの空間で、ドロテアの目の前にぬるりと現れる。

さっさと殺すのもいいが…憂さ晴らしに付き合ってもらおうかねぇ。

 

「なんじゃ、お主は…?」

 

「別になんだっていいだろ幽霊だよ、ユーレイ!」

 

「幽霊じゃと?何を非科学的な事を…帝具による擬態か何かか?」

 

「非科学的なもん使っててよく言うぜドロテアちゃーん。

ま、頭が固くなってそうなのも無理はねぇか、ババアには理解が及ばない存在ってことで認識してくれや。」

 

「バッ…やかましいわ!何故…」

 

「何で知ってるかってそりゃテメェ…幽霊は何でもお見通しなんだぜぇ?」

 

「…まさか、本当に幽霊だと?」

 

「そうそう、幽霊はいいぜぇ?何でも知れる。

そんでもって不変の存在だぁ…テメェのような女にはある意味目標みたいなもんだろ?」

 

「お主、どこまで知っておる!」

 

おお、かなり焦ってやがるねぇ。

いいね~こういう反応は!

最近だと冷めた反応ばっかだったから新鮮でいいわぁ。

 

「見りゃ分かるぜぇ?こう見えて人を見る目ってのは養われててな。老いから解放されたい…そうだろぉ?」

 

「…そうじゃ。だが、それは誰もが一度は考えることであろう!妾はそれを叶え、永遠の若さを手に入れたいだけなのじゃ。」

 

「分かるぜぇ、永遠の美!女なら誰もが夢見るもんだ。

なら、俺様もテメェを手伝えるぜ?」

 

「何じゃと?」

 

「言っただろう?俺様は幽霊だ。テメェなんぞよりも長生きしちゃってるわけよ。そこで!俺様の知識をくれてやる。

永遠の美…それに近づく一歩、いや二歩を俺様は知ってる!

どうだ?悪かねぇだろ?」

 

「じょ、条件はなんじゃ!」

 

ドロテアは焦った様子で俺様に近づいてくる。

大願成就に近づきたいんだなぁ、分かる分かる。

俺様すっげぇ分かるわぁ。

 

「対価ねぇ…」

 

「大願成就の為ならば何だってする!錬金術を用いればお主の体さえ作り出せよう!どうじゃ!?」

 

「あー、器ね!俺様も、不自由だからなぁ。器なら、かなりいいねぇ…」

 

「そうであろう!」

 

 

 

「ま、もう高性能なの持ってんだけどよ。」

 

「な…妾の中に!?」

 

ババアの中に入る。

当然ながら、精神体の俺様は他人にも入り込むことは可能だ。

 

だからよぉ、こういったことも出来るわけだ。

 

─テメェの心、精神…それが対価だ。

 

「何を…ぬぁっ!?」

 

中から攻撃をすることで、直接精神にダメージを与えられる。

そう、どうしようもない程硬い相手とかにはこうしていた。

だが、この精神攻撃もウロボロス程楽じゃねぇ。

何せ、精神体である俺様が他人に入り込む訳だからな。

当然ながら精神を守るための防衛が始まるわけだ。

本人の預かり知らぬことではあるがな。

 

アーキタイプにそれはねぇ。

あれは純度100%の何もねぇ器だ。

何にだってなれる器。

 

「な、んじゃこれは…まさか…!」

 

─アホだなぁテメェは。ワイルドハントの連中はこぞって馬鹿だなぁ!ヒャハハハハハハ!信じちゃってかっわいそぉ!

 

「今すぐ妾の中から出ろ!妾を殺すことは人類の損失じゃぞ!?」

 

─あー?何言ってやがる?テメェのような猿一匹死んで人類に損失なんざあるか。そもそも人間殺してる時点でテメェも俺様も同じ穴の狢なんだよ。分かるか?分かったら哀れな自分に苦しみながら死になぁハハハハハ!

 

「がっ…嫌じゃ、死にたくない…!妾は…!」

 

─はい、しゅーりょー

 

「ぁ…───」

 

精神を殺す。

それはそいつの生きる意思も消すってことだ。

ショック死って訳じゃねぇ。

後は、枯れて死んでいくだけの肉の塊だ。

 

……

………

 

ドロテアの中から出て、シコウテイザーを確認する。

 

「…始皇帝。テメェのこれも、好き勝手される時代か。」

 

椅子に座り、自分の影を見る。

 

人の形をしたナニカが緑色の目を光らせている。

それが本当の俺様。

仮初めの躯がなけりゃ、こんなにも惨めだ。

 

クク、ククク…

 

「俺様も、さっさとそっち行ってりゃよかったかもな。

そうすりゃよ…俺様は、こうやって朽ちてかなくてよかったのかもなぁ。」

 

自嘲するかのように笑う。

 

だが、それもそろそろ終わる。

ワイルドハントもイェーガーズも、大臣も、冥王も。

 

…武神も。

 

「全部終わらせる。ぶっ壊して、潰して、砕いて…そしたらよ。

俺様も、消えていいだろ。」

 

シコウテイザーは何も言わない。

あの野郎の自慢の兵器は喋ることなく佇む。

 

「なあ、始皇帝。俺様は、正しかったのか?

外道で屑でどうしようもねぇ俺を拾ったテメェは正しかったのか?」

 

「ずっと考えてきた。

俺様は、どうすりゃ終われるんだってよ。」

 

「この罪の清算が終わったらか?…なら、俺様はいつまで清算すりゃいいんだ?アイツらを殺してまで、国を続けて、国のために、邪魔なやつ殺してきて。馬鹿みてぇにテメェの約束守ってきて…どうすりゃ、俺様は終わっていいってのを考えてきたんだよ。」

 

「ようやく、ようやく見つけた…分かったぜ。」

 

 

 

「全部、テメェのところに持っていく。

テメェらとあの世で馬鹿騒ぎしてぇ…」

 

天井を見上げる。

どこまでも、暗い。

 

俺様は、一人だ。

 

それが似合うってのは分かってる。

だがよぉ…

 

俺様は、テメェらと馬鹿やるのが一番楽しかったんだぜ。

 

そろそろ、行きてぇなぁ…終わりに。

 

夜が開けるまで、俺はずっと天井を見ていた。

その更に上に、いるんじゃねぇかと思いながら。

らしくもなく、感傷に浸り続けた。




過去の幻影は過去にしかいられない。
今を変えられる反則をしても、その心は過去のまま。


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詰めの準備

朝を飛ばして昼。

さて、どうしたもんかね。

 

このまま、じわじわと内側から攻めるのは簡単だ。

だが、嫌な予感がする。

このままだと色々と取りこぼす…そんな予感が。

 

勝手に動いたらガキ一名がうるせぇし、大将軍との演技が面倒になる。

 

ここは相談するべきか…

 

結局寝るの忘れてたな。

馬鹿か?満足な睡眠取らないで頭が働くかっての。

 

イライラとしていると、ノックする音が響く。

 

この時間だと2択だが。

一応、猫被っておくか。

 

「どうぞ。」

 

「失礼する。テルミ、調子はどうだ?」

 

「んだよ、レリウスかよ…別にどうってことねぇ。前に診せたろうが。」

 

「武神になった後の損傷は凄まじかった。それこそ、アーキタイプそのものを内外関係無く壊していくほどにはな。」

 

「強すぎる力の代償って奴だよ。そんくらい覚悟してらァ。」

 

「私が言いたいのはそうではない。」

 

「じゃあなんだよ。」

 

レリウスは俺の近くまで来てからアーキタイプを観察する。

少ししてから、ふむと納得してソファに座る。

 

「今回は、内側か。」

 

「まあ、どこがぶっ壊れてくかなんざ俺様にも分からねぇからな。」

 

 

「─味覚か?」

 

 

「…そうだ。ま、味覚で良かったぜ。視覚や聴覚、嗅覚だったら笑えなかったからなぁ。」

 

好物が美味く感じねぇのはイラつくが、これくらいなら許容範囲だ。

たかだか味覚だ。

問題ねぇ、問題はねぇが…

 

…次はどこだろうな。

 

「で、ざっと見てどうなんだよレリウス先生。」

 

「…三、四回が限度だろう。それ以上は貴様の魂が砕ける。」

 

「んだよ、なら五回じゃねぇか。」

 

「…私との契約を忘れたのか?」

 

「嘘だっての!人形(イグニス)出すんじゃねぇよビビんだろ!」

 

「…ならばいいのだが。それより、これからどうするつもりだ?」

 

「そこなんだよなぁ…ワイルドハントは四人殺して後二人だろ?

内一人は刀が恋人の変態性癖野郎だ。大した脅威には…」

 

そこまで考えて、気を抜きすぎていることに気付く。

 

待てよ、アイツの帝具はシャンバラだ。

場所を設定してそこへ転移が出来る。

ランダムに飛ばすのも出来るが…

設定場所にあの男が構えていれば対応不可の即死攻撃になる。

 

見たところ、あの刀の切れ味は本物だ。

 

「なるほど、やっぱあの二人も始末するべきだな。無駄な消費が出る前に、さっさとな…」

 

「ならばどうする?」

 

「様子見だ。昨日の時点で一人殺ったからな…軽率な行動は控えるべきだ。」

 

「ドロテアか。」

 

「ああ、何だ?話したかったか?」

 

「いや…彼女は大きな見落としを二つほどしていたのでな。

生きていれば助言の一つや二つしたが、死んでいるのなら何も言うことはない。しかし、些か肝を冷やしたぞ。

城から離れた森で死体で見つかったと聞いた時はな…」

 

「まだバレねぇ範囲さ。ギリギリだが…あの豚はそこを怪しむ。

それでしばらくの時間稼ぎは出来る。」

 

「ナイトレイドに擦り付けるか。貴様も大概だな、テルミ。」

 

「そういうもんだろ。バレなきゃ犯罪にならねぇんだぜぇ?」

 

くつくつと笑う。

 

だが、それまでシュラとイゾウを野放しにするのは危険だ。

他の連中を早く潰して正解だったか…俺様の勘も捨てたもんじゃねぇと言いたいところだが、妙だ。

 

「ワイルドハントはどうしてる?」

 

「コソコソと動いているようだ、女漁りもせずにな。貴様はどう見る?」

 

「…」

 

この仮面野郎、毎度思うが分かってて俺に意見聞いてやがるな?

ったくよぉ…助かってるのは事実だから何も言わねぇが俺の部下だったらタマ潰す自信があるわ。

 

…シュラの帝具はシャンバラ。

 

転移先は間違いなくこの城の何処かに設定するだろう。

ブドーもいるからな、戦力的な安心感が違う。

だとすれば…

 

「ナイトレイドを探してんのか。」

 

「懲りもせずか。」

 

「…面倒だが、少し出向くか。エンブリオの仕事は?」

 

「今はない。見回りでもしていれば咎められる心配はあるまい。」

 

「なら…─行きますかねぇ。」

 

ハザマに切り替える(顔を被る)

警戒されるかも知れねぇが、危険承知で突っ込まなきゃいけねぇラインだ。

 

どの辺で、あの大将軍を動かすかだな。

アイツにも働いてもらってるが、脳筋らしい働きをさせてねぇからなぁ。

 

「私も同行しよう。」

 

「マジかよ?」

 

「何だ、おかしいか?」

 

「…いや、別に。」

 

無駄に警戒されそうだが、まあいいだろう。

思わず蹴りたくなった時のストッパーになってもらうか。

まあ、そんなヘマしねぇけどよ。

 

そういえば。

ふと気になった事が一つある。

 

「テメェはこれが終わったらどうすんだ?」

 

「私のやることはこれまで通り変わらんよ。魂を研究し、その真理を識る。」

 

「あー…だよな、テメェはそういう奴だよな。」

 

「今更な質問だっただろう?では、行くとしよう。」

 

「ああ、そうだな…」

 

二人で外に出る。

何やかんやでこいつも信用できる存在だ。

ボロボロのアーキタイプを動けるようにしてくれてるしな。

 

国の平和に一役買ってもらうかとも思ったが…やめておく。

こいつにはこいつの自由がある。

 

何にせよ、俺は自由を縛る気はねぇ。

俺様が自由なんだ、他も自由でいいだろう。

 

だが、その自由には責任を持たなきゃならねぇ。

他人の領域に土足で入り込むのも自由だ。

だから、その怒りをぶつけられるのは…そいつの自由の対価だ。

 

報いってもんじゃない。

報いを受けるべきは他人に土足で何度も踏み込む俺様だ。

 

だから、俺様がすることは…俺様の自由だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、テル…ん"ん"、ハザマさんとレリウスさん!」

 

「げっ…」

 

「げっ、て失礼じゃないですかね、クロメさん。」

 

「我々はそちらに何かした覚えはないが?」

 

「いや、だって胡散臭いし…」

 

よくお分かりで。

何やかんやで運がいいクロメとセリューに会う。

ていうか、見回り飽きねぇなこいつ…

 

「珍しいですね、クロメさん。ウェイブさんは?」

 

「ウェイブにしては珍しく風邪引いた。」

 

「馬鹿って風邪引かないんじゃ?」

 

「セリューさん、風邪引かないんじゃなくて風邪引いたのに気付かないんですよ。」

 

「しかし…四人か。大所帯だな。」

 

「あ、そうですよ、二人して何してたんです?」

 

「んー…お二人になら、お話ししてもいいですかね。

大臣のご子息、シュラさんを探してましてね?」

 

「会って、どうするの?」

 

「いえ、物騒なことは何も…ただ、大臣のご子息ですし、媚びへつらうのもありかなーって思いましてね?」

 

「えー…」

 

「えーって…何故そんな嘘つき見るみたいな目をするんですかクロメさん。」

 

クロメは嘘だろお前みたいなじと目で俺を見てくる。

嘘に決まってるけどあんまそういう目をすんじゃねぇ蹴りたくなる。蹴らねぇけどやめろ。

 

「それで、どうなんです?」

 

「…多分、大通りとかにいますよ。」

 

「そうですか、では、向かいますかレリウスさん。」

 

「そうだな、迅速な行動が必要だ。」

 

さっさと行かねぇとな、時間がもったいねぇ。

俺とレリウスは足早にその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ちょっと二人とも~!…行っちゃった。」

 

テルミさんがレリウスさんとさっさと行ってしまった。

またクロメさんと二人になったけど…うーん、苦手なんですよね。

どこか危うさがあるというか。

 

昔の自分見てる気分ってやつですかね。

ポリポリとクッキー(薬物)を食べるクロメさんは今食べてるのを飲み込むと話し掛けてくる。

 

「セリューは行かないの?」

 

「面倒事の予感がします、行きたくないです。」

 

「ふぅん…前はよく一緒だったのにね。」

 

何となく、世間話の中で隙を窺うかのよう。

チラリとクロメさんを見ればこちらをジッと見てる。

 

人の顔をよく見て話す。

いい子ですね。

 

「上司でしたからね。」

 

「ねぇ、セリュー。」

 

「何ですか?」

 

 

 

 

「─今、どれくらい視えてる?」

 

でも、そこまで知られるのは悪い子ですよ、クロメさん。

 

「ばっちり視えてますよ、急になんですか?」

 

「ううん、何だかぼんやりと物を見てるように感じて、何となく。何でもないならいいよ。」

 

「疲れてるんですかね、無意識の疲れとかいう。」

 

「最近、ワイルドハントやらイェーガーズの仕事やらで忙しいからね。」

 

「ホント、疲れちゃいますよね~」

 

…これは駄目だ、バレてる。

イザヨイの力の代償…といえばいいのか。

 

テルミさんも言っていた。

 

『イザヨイは強力な帝具だ。だが、それの力を解放するとお前は善悪を見極める目を失っていく。イザヨイを使ってる間はその視力は戻るが…さて、戦いが終わったらどうなってやがるかな?ま、定期的に視力検査をしておくんだな。』

 

視力の低下。

呪いと言うべきか…少しボンヤリと物が見える位にまで下がっていた。

イザヨイの力を使うと不思議と戻るのに、使った後は更に下がる。

 

…きっと、近い内にこの目で何も見えなくなる。

 

でも、構わない。

目が見えなくなるだけで力になれるなら、喜んで差し出そう。

 

 

…それはさておき、クロメさんと行動するのはなぁ…。

まあ、色々と困るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、俺に何の用だよ、エンブリオのお二人さん。」

 

「いやぁ、そう警戒されると傷ついちゃいますよぉ?シュラさん。我々は別とはいえ帝国を守護する組織、謂わば仲間でしょう?ここは仲良くお話でもしませんか?」

 

シュラを発見した俺たちは飄々とした態度で接する。

面倒なものを見つけたような態度を隠そうとせずに俺たちに接してくるが、大臣を盾にマウントを取るようなことをしないのを見るに…恐らく、大臣から言われたか。

 

「話なんざ時間の無駄だろうが。俺は忙しいんだよ、見て分からねぇのか?」

 

「おや、ただ気晴らしとして散歩してるようにしか見えませんでした。御忙しいとは申し訳ありません!とても暇そうにしか見えませんでした。」

 

「ハザマ、煽ってどうする。」

 

「おっと、すいません。」

 

「…いや、いい。話だな、どうせ大通りじゃ話せないことだろ?」

 

「察しが良いようで。ええ、何処か適当な店に行きましょう。」

 

「ああ。」

 

苛立ってるのを抑え込んでるなぁ。

ま、爆発してくれても構わねぇけどよ。

 

三人でそこら辺の店に入る。

 

奥の方の席へ座り、適当に茶でも頼んでおく。

飯の気分じゃねぇし。

 

「それで、話ってなんだ。」

 

「親睦を深めたいというのとご忠告ですかね。」

 

「ああ?忠告だぁ?」

 

「ええ…──次は貴方かもしれませんよという忠告を、ね。」

 

「…俺がナイトレイドに殺されるって言いてぇのか?」

 

負ける筈がないという苛立ちに近い感情を感じる。

俺はシュラに目を少し開いてジッと見る。

 

「貴方は負けないと?そういう考えはオススメしませんよ。

誰だって負けるときは負ける。死ぬときは死ぬ…それが世界ですよ。それは貴方も例外ではない。」

 

「…付き合ってられねぇな。」

 

シュラは立ち上がり、店を出ようとする。

だが、そうは問屋が卸さねぇ。

 

「…ワイルドハントも所詮はこんなものですよねぇ。」

 

「……なんだと?」

 

「出来たばかりの寄せ集め集団ですし、メンバーがすぐに死んでしまうのも当たり前ですよね。我々エンブリオとライバルであるイェーガーズの足元にも及ばない。すぐ考えれば分かることでしたね…時間が無駄になりました、帰りますよレリウスさん。」

 

「ああ。茶の代金はちゃんと払うことだ。」

 

「ちゃんと払いますよ失敬な!」

 

シュラの反応を無視して店員に金を払う。

 

「おい、待て。」

 

「帰ってなかったんですか?あ、ひょっとして聞こえちゃいましたか?」

 

「あまり、ふざけた事抜かすんじゃねぇぞ。俺がナイトレイド風情に負けるわけ無いだろうが!」

 

「では、ワイルドハントのメンバーはどうして四人も死んでるんですかね。負けるわけないと抜かす貴方でなくとも、その貴方の部下ならば善戦くらい出来ませんと…お話になりませんよ。」

 

「…なら、やってやろうじゃねぇか。ナイトレイドを始末すりゃいいんだろ!ああ、やってやるよ!」

 

「是非、そうしてください。」

 

俺がにんまりとした笑みで言うと舌打ちをして店を出ていく。

 

…これで、変な目は向かねぇな。

あの男は好奇心ってのを隠さねぇ。

俺がどんな奴かを探ろうとする動きをセリューやランから聞いている。

 

大方、エンブリオの全員が対象なんだろうが、こそこそとされんのはムカつく。

 

「親睦も何もあったものではなかったな。」

 

「いやはや、あそこまで煽り耐性が無いと気分がノッちゃいますよ。それにしても…困りましたねぇ。こうなると、他の市民への被害が恐ろしいものです。」

 

「それで、あれで良かったのか?」

 

「…ええ、いいんですよあれで。その方が、都合がいい。」

 

 

 

 

「勝手に潰しあってくださるのならね…楽に越したことはないでしょう?」

 

せいぜい、無様に潰されてくれやワイルドハント。

 

俺様はメンバー二人がどう足掻くのかを見させてもらうからよ。

邪魔をしながら、なぁ。

 

「さて、後はあの人をどこで動かすかですね。」

 

「チェスをやってる気分になるな、貴様といると。」

 

「間違っていませんよ。これはチェスですからね。」

 

俺を含めた皇帝の駒と、大臣の駒によるチェスだ。

 

まあ、そろそろ大詰めだろう。

問題は、何処で民衆に皇帝を認めさせるか…

 

そこは追々皇帝と話し合おう。

 

俺様が最も警戒してるのはそこじゃねぇ。

 

ワイルドハントは最後の舞台にゃ上がってこねぇ。

イェーガーズはエスデスを除いて何処かで崩す。

ナイトレイドには汚れ役で居て貰う。

 

大臣を潰す手筈は整ってる。

違う、そこじゃねぇんだ。

 

「最後の壁は、自分の属する組織とは…また皮肉の効いている。」

 

エンブリオ…冥王と狂犬。

この二人が未知数過ぎる。

実力を殆ど出さない上、滅多に動かない。

 

そこだけが…───

 

 

 

 

──記録用のレポートを取り出す。

 

「…あった、チェックメイトの為の駒がよ。」

 

そうだ、テメェがいたな。

ああ、テメェならこの二人を穿つための銃弾になれる。

 

だが、まだ最高の銃弾になれてねぇ。

 

だからこそ、ワイルドハントを使おう。

そこで、仕上げる。

 

武神だけじゃ、まだ不安要素が多い。

シコウテイザーを使うのは、最後の最後。

 

「行くぞ、レリウス。」

 

「方針は決まったようだな。」

 

「ああ…」

 

口角を上げる。

不敵に笑え、この世の嘘を壊すためにな。

 

「嘘つきの時間だ、ククク…!」



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