変わらない日常は普通の女の子によって (mintear)
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やりたいことまだ見つからず

ついに1話ができました‼つたない文章ですし短いですが
皆様に楽しんでいただけるように頑張っていこうと
思います。ではどうぞ‼


 高校に入って何かしたいとずっと考えていた。

部活なりバイトがあるんだろうが、どうもピンと来ない。

なんでもいい何か打ち込めることを見つけたい。

なんて考えるのはもう何回目なんだろう。

今日も今日とて夏の暑さが照りつける朝日の中で

幼馴染と通学路歩きながらいつもの

悩みを思いふけるのだった。

 

「といっても中々みつかるものじゃないんだよな」

 

 

「それは晴君が細かく考えるからじゃないのかな」

 

「いやいや、何を言ってるんだ彩。俺は今後の人生を有意義なもの

 にするため色々考えてだな…」

 

「はいはい、晴君は考えてるんだねぇ。」

 

彩は茶化すように俺に言ってきた。

ピンクのツインテールで世間一般では、かわいい部類に入る俺の幼馴染こと

丸山彩は現在、pastel*palletes通称パスパレの

ボーカル兼バンドリーダーを務めている。

数か月前まではリタイア一歩寸前だった彼女だが、今は充実してるからだろうか

笑顔がより輝いていると思う。彩なりに頑張った結果だろう。

 

「適当に返しやがって…だがピンとくるものがないのは事実なんだ。」

 

「晴君の趣味と言ってもいいもので珈琲があるよ?それを生かせばいいのに。」

 

「あれは趣味ではなく日常生活の一部だよ。彩も自撮りが日常にかかせないものだろ?」

 

「あれは日常生活の一部じゃなくて研究だもん‼…そういえば放課後はどうするの」

 

「今日はずー兄さんがバイト代やるから19時まで手伝ってほしいって言われてる。」

 

「ずーくんか。最近バンド始めてからすごい会うことが多いんだよね。なんでだろ…」

 

「……さあな」

 

他愛のない雑談をしているうちに羽丘女子学園改め羽丘学園と花咲川女子学園を隔てる

分岐点までやってきた。彩と話してるとすぐに目的地までつくから不思議だ。

 

「夜ごはん遅くはなるが今日は食ってくんだろ?食材はたいていはあるから何がいい?」

 

「じゃあオムライス!!」

 

「…本当にオムライス好きだなお前」

 

「晴君のオムライスは美味しいからだよ‼じゃあ私行くからまた夜にね‼」

 

「おう、またな」

 

彩のオムライス好きには困ったものだが、ああ言われたら悪い気はしない。

いっちょやってやりますかね。

俺は彩の向かった方とは逆のほうに足を伸ばし、

羽丘学園への道を向かい、今日も変わらない

日常を変えるきっかけ探しをはじめるのだった。

 

羽丘学園、2年前に生徒数の減少から共学に

鞍替えし、生徒数が若干増えた元女子校である。

 

さて…彩に朝早く起こされたからだろう。

時刻は7時45分、横に見えるグラウンドに部活動に

励む生徒が点々と見えるくらいだ。全く朝から

ご苦労様なものだ。

 

「ん?ギターの音?」

 

ふいに聞こえたその音は、屋上から聞こえたように

みえる。軽音部は、この学校にはないと聞くから、

弾いてるやつは、知ってる情報を整理すれば

何人か思い当たる。

 

「ちょっと見物してみるかな」

 

俺は屋上がある5階まで続く階段へ歩みを進めた。

4階辺りから、ギターの音が何を引いてるのかを

わかるようになってきた。

 

この如何にも、聞き手を笑顔にさせるような

気持ちを出してくる、曲はあのバンド以外

考えられない。

以上のことから、ギターとこの曲からして

演奏してる奴はあいつしかいない。

答え合わせをすべく、階段を上りきった

俺は目の前のドアを開けた。

 

ドアを開けると、風が俺の体に吹き付けてくる。

階段をのぼり多少疲れた身からすれば、

この涼しい風が心地よい。

気持ちいい気分を

味わった俺は、屋上の周囲を見渡した。

すると右側のベンチに

見知った顔の友人が、ギターを持って座っていた。

 

「よお瀬田、今日も早いじゃないか。」

 

「やあ晴。君も珍しく、早いじゃないか。1年のころは遅刻常習犯だったのに」

 

「朝早く目が覚めた、小うるさい幼馴染のおかげだよ。で、なにしてるんだ例のギターか」

 

「ああ。少しでも練習しとかないと、上達しないからね。」

 

「ようやりますなぁ」

 

俺がそういうと瀬田は急に立ち上がり、俺を指さした

 

「かのシェイクスピアはこう言った。楽しんでやる苦労は苦痛を癒すものであると」

 

…相変わらず何を言ってるのかわかんないやつだ。

しかし変な奴ではあるが、瀬田は演技が控えめに言ってもプロ級といってもいい実力者だ。

加えて宝塚並みのイケメン顔の女、同じ性別の奴らからも熱烈な人気を誇ってる

男子顔負けの存在だ。

 

「どういう意味なんだ…」

 

「そういうことさ」

 

「……」

 

もうわからん、ここは戦略的撤退だ。

 

「じゃあ俺は行くから。じゃあな」

 

「待ちたまえ」

 

瀬田が俺を呼び止めてきた。振り返ると真面目な顔になっており

俺も足を止めた。

 

 

「君が前言ってたやりたいこと、見つけることはできたかい?」

 

答えは決まっている

 

「相変わらず何にもピンとこないよ。だから現在進行で模索中だ。」

 

すると瀬田は微笑み、言った

 

「そうか。だが最近の君は様々な人と関わるようになった。やりたいことが

見つかるのも、時間の問題だと私は思うよ。」

 

「そうかい。じゃあその言葉を信じてもうちょっと模索してみるよ。」

 

俺は反対側の階段に向かって歩き出し、瀬田に手を振ってこの場を去った。

やりたいことが見つかるのも時間の問題か。

じゃあ今日も頑張らないとな。

 

 

 

 

 




改めてはじめましてmintear(ミンティア)と申します。
この度、ハーメルン様でSSの執筆をすることになりました。
さっそくですが、バンドリいい作品ですよね。
私が始めたのが5月末なのですが今ではハマってしまいロゼリアが
大好きなバンドリーマーです。
ゲームを進めるうちにキャラのお話を脳内で構想するようになりました。
加えて拍車をかけたのが、コミックマーケットでサークル主さんとお話をして
自分もみんなと共有するものが作れたらと思い至った次第です。

さて一話ですが短い短編になってしまいました。
次回から徐々に長いお話になっていくとは思います。
たまたまこのお話をみてくださった方々、よければ今後もお付き合いいただければ
幸いです。バンドリの世界にいるやりたいことを探す男の子と努力という大きな才能を
もった女の子の物語見届けていただければ幸いです。


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光を掴んだもの、掴めずにいる者

ここから月島君の学校生活のストーリーが
進んでいきます。やりたいこと探しを続ける主人公の物語
その2です。ではどうぞ!!


+キャラ紹介

月島 晴 (16)  生年月日 4月19日
好きなもの やりたいことを探す  嫌いなもの 納豆
家族構成 父 母  姉 月島まりな
概要
 羽丘学園高等部二年生。3年前のある出来事をきっかけに自分のやりたいこと探しを
始めるようになる。最近は見つからないからか、悩みが肥大化して家族からは心配の声が上がってる。
それ以外に関しては普通の学生である。
スポーツは大抵できるし、勉強は成績一桁台を維持する学力。
人付き合いも良好なので現状の生活自体に問題はなく、模範的な学生なのではないだろうか。


教師の声がBGMとなり、生徒がノートに走らせているペンの

カリカリと鳴っている音が真面目に授業を受けている印象を与える。

そんな中で俺は、真面目とは相反したことにペンを走らせていた。

 

やりたいこと候補

 運動……大抵の種目が中の上だが、それ以上は上がらない。×

 バイト…ただのコンビニバイトやスーパーの店員ってのも

     味気がない、何か夢中になれるものがあればいいんだが △

 恋愛…出会いがない。うまくいっても友人止まり。ゲームオーバー ×

 

こんなことばかり、書いてて成績は大丈夫なのかと

よく言われるが、勉強は得意なので心配はいらないと思っている。

やりたいこと探しをしているうちに、聞きなれたチャイムの音が学校中へ

響き渡る。ようやく昼休みが始まるのかと開放感に包まれる。

 

「今日の授業はここまでです。さっき言った通り、ここはテスト必ず

出すから、よーく勉強してくださいね。

後、月島君今から私のとこまで来てね。」

 

「マジかよ」

 

授業中に内職したことがバレたのか?一物の不安を抱き、教科書などを

バッグに仕舞った後、俺は先生のもとへ向かった。 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

先生が「ちょっと場所かえようか」と言って、やってきたのは

社会科準備室だ。目の前にいる教師、秋野里香が根城にしている部屋でもある。

秋野先生は無言で指を指した。その先には丸椅子が置いてある。おれは座れという意味なのかと

思い、椅子に腰かける。俺が座ったのを確認したところで、秋野先生も向かいにある事務椅子に腰かけた。

 

「さて、月島君?私の授業を板書するより、ノートに違うこと書くのが

大事なのかな?」

 

「待ってくれ里香姉、俺は今後の未来を考えるという使命がな…」

 

「ここ学校‼先生と呼びなさいよ‼…本当に調子狂うんだから」

 

目の前にいる秋野里香は、まりな姉ちゃんの幼馴染だ。

家族ぐるみの付き合いであることから小さい頃から、よく遊んでもらっていた。

一時期はまりな姉ちゃんとバンドを組んでいたこともあった。

だが俺が12の時にバンドは解散した。四年が経って今年からうちの高校で新任の社会科教師を務めることになったのだ。

 

「だって、ここ他に誰もいないし…里香姉が教師やってるの違和感でしか…」

 

「なんか言った?月島君?」

 

「…なんでもありません秋野先生」

 

満面の笑顔な筈なのに目が笑ってないし、この北側で陽の光が当たらない部屋だ。

カーテンも半分閉まってるので暗く、ホラー要素を含んでいるから怖さが倍増している。

ここは教師と生徒の構図で話を進めていくしかない。

 

「失礼しました。先生、俺が授業中に他のことにうつつを抜かしてたのは事実です。」

 

「最初から素直に謝ればいいのよ。大方、やりたいこと探しの候補まとめでも

やってたんでしょ?まりなが心配するわけよ。「あの子はいつまでたっても

やりたいこと見つからなくて悩んでるんだよ。なんか手助けできないのかな」って」

 

「姉ちゃんがそんなことを…。」

 

秋野先生は、さっきの怖い形相から、俺の良く知る優しい里香姉の表情になり

 

「ねえ晴。あんたあの日から、そのことをずっと探し続けてるわよね。

私はいつでも相談に乗るわよ?あまり抱え込まないこと。良いわね?」

 

「里香姉…うんわかったよ」

 

「それでも、授業中は真面目に取り組むように。次やったら、あんただけ

課題5倍にするから」

 

「それはきついですよ。以後、気を付けます。」

 

「もう話は終わりよ。さあ昼休みなんだし、行ってきなさい。」

 

 

里香姉はそう言って、出口を指さした。

俺は礼をして、そのまま部屋を出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

準備室のドアを閉め、振り返るとさっきまで暗かったからだろう、窓の光が

強烈にまぶしくて、俺の視界を奪った。

それで立ち止まってしまったからだろう。横から来る人影に気づかずに

ぶつかってしまった。相手側はそのまま尻もちを突く形になってしまっていた。

 

「痛てて…すいません、横を見ていなかったもので大丈夫ですか?」

 

目の前にいる子は黒いブレザーで、中等部の制服を着た女の子だった。

顔は見えないが淡い紫の特徴ある巻き髪が知り合いの一人に該当した。

 

「こっちもすいません…前見てなかったのが悪いですから。って晴先輩じゃん」

 

「おー、あこじゃないか。高等部のフロアで会うとは思わなかったぞ。」

 

ぶつかってしまった相手は、中等部3年の宇田川 あこだった。

俺が中等部3年の頃だったか、移動教室の場所が分からず、3年の教室に来てしまった

のが、当時新入生のあこだった。上級生に囲まれた空間で怯えていた彼女に

話しかけ、道案内をしたのだ。それ以来、後輩の中ではよく話す部類の付き合いになった。

 

「いやー、ちょっと二年生の教室に用があってね」

 

「2年って高等部の2年だよな。誰に用だったんだ?」

 

「友希那先輩に用があったんだ」

 

友希那…どこかで聞いたことがあるな。

湊友希那のことかもしれない。クラスであまり

目立たない印象だが、容姿端麗な美女だからだろう、何人の男子に告白を受けてるが一刀両断

してる噂は有名だ。しかしそんな彼女にもある世界は有名人らしい。

確かバイトの時、ズーピザの事務室で休憩中にずーさんが言っていた。

 

『君と同じ学校で同学年の湊友希那。circleで有名なソロの歌姫がバンドを組んだんだよ‼

あのハイレベルを貫く姿勢の彼女がだよ⁉

マジパないから‼台車で町内100週できるくらいやばいよ‼

まあ、俺はアフグロのひまりちゃんが(自主規制)…』

 

台車などはともかく、すごい推してきたのを覚えてる。

 

「その友希那先輩に何の用だったんだ?まさかバンドを組んだとかじゃないよな」

 

「うんそうだよ?」

 

「え?マジかよ」

 

 

あこがあの湊友希那と同じバンドに入った。その事実に俺は、驚きを隠せなかった。

こいつにもやりたいことのきっかけを掴めたってことだ。

他人に嫉妬するわけではないが、羨ましいと思ってしまった。

 

「あこ、今のバンドすごい楽しいんだ。なんか心の奥からバーンってすごい来るんだ。」

 

「そっか…良かったな。夢中になれるものが出来たってことだ。頑張れよ応援してる。」

 

「うん‼」

 

満面の笑みであこは頷いていた。

俺もいつかこいつみたいに笑顔でやりたいことができるようになるのかな。

その時は…予想がつかないな…

 

「晴先輩?どしたのぼーっとして」

 

あこに声を掛けられ、俺はハッとなった。つい考えてしまってボーっとするのは

悪い癖だ。

俺は気分を戻すべく、スマホを取り出し時間を確認した。

時刻は12時45分、昼休みの終わりは、中等部も高等部も共通の13時半だったな。

 

「あこ、これから昼食だろ?いつも学食だったよな。バンド加入記念で奢るぞ」

 

「本当に‼じゃあ今すぐに行こうよ。席今ならギリギリ取れるはずだよ。」

 

あこに腕を掴まれ、引っ張られる。本当に無邪気な奴だなと思い、

俺は一緒に食堂に向かうのだった。

 

 

 

 

 




だいぶ話を突っ込んでしまいましたが、如何だったでしょう?

僕は高校3年の時に、まわりがドンドン推薦や試験で、進路が決まっていく
様子をみて焦っているときがありました。
それとは違う状況ですが、晴君も周りの人たちがドンドンやりたいこと、
夢中になれるものが見つかっていく。そんな中で特に
この事柄に関しては、特にプレッシャーを感じやすい主人公なわけです。
まだ、例の彼女と出会うのは先になりますが、次回に続きます


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始まりのプリクエル

本当に期間空いてすいませんでした!!
まず、この前書きを見てくれている方がいるのか…
小説執筆中にメインヒロインのつぐみちゃんが所属している
アフターグロウの第二章が始まり、構成練り直す事態に
その最中に右腕を骨折し、入院してしまいました。
気づいたらハロハピ二章まで…あのイベントはベットの上で
回しまくり377位無事取れました。(小説書けよって話ですよね…)
無事にリハビリも終わったので今日から再スタートです。
まだまだ長い旅路にどうぞお付き合いください。


あことの昼食を終えた俺は、昼休み後の授業を受けていた。

昼食後だからなんだろうが、何人かが机に突っ伏して昼寝をしている。

俺は、授業を聞くふりをしながら、昼休みのことを思い出していた。

 

『すごく楽しいんだ!!』

 

あんな満面の笑みを浮かべる程だ。本当に楽しいんだろう。

そんな後輩が素直に羨ましい。俺も早く…

俺は睡魔に襲われて、そのまま机に伏せてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…さん……ください…月島さん…起きるっす。」

誰かに体を揺さぶられている。寝てしまったのは記憶にあるが、

どの位寝ていたんだろうか。俺は上体を起こし、体を揺すっていた当人を見た。

 

「ん…麻弥か?今何時だ?」

 

目の前にいたのは、大和麻弥。俺のクラスメイトかつ彩と同じパスパレのメンバーでもある。

彩の紹介で最近は、よく喋るようになった。

 

「もう五時間目終わって、今日は六時間目ないんで放課後ですよ。」

 

「マジかよ…悪いな、起こしてもらって。確か今日は麻弥、パスパレの練習日だよな。」

 

「いえいえ気にしないでくださいよ。練習はありますけど、集合は16時前ですから、まだ14時半なんで

そこまで急ぐ必要はないんですよ。」

 

「そっか。そいやさ彩は最近どうよ。あいつのアドリブ力が本当に心配でさ」

 

「彩さんっすか?相変わらずのアドリブ力ですよ。本人は、凄い練習してるらしいですけど、あれが

彩さんらしいというかそう思っちゃうんですよ。」

 

そのすごい練習に付き合ってる、一人が俺なわけだが実は、結んでいないようだった。

 

「やっぱり、そう簡単にはいかないか。まあ彩のこと頼んだよ。」

 

「ええ、それは勿論ですよ。にしても、彩さんのこと本当に心配なんですね。」

麻弥はニヤニヤしながら聞いてきた。

 

「まあ幼いころからの仲だしな。それにほっとけないんだよなあいつ。」

 

「その気持ちはわかるっす。」

 

「やっぱ俺以外もそう思ってるんだなぁ」

 

俺はつい苦笑した。

ふと、黒板の上にある掛け時計を見た。

時刻は2時45分、そろそろずーさんのところに顔を出さないとな。

 

「俺、そろそろ用事あるから行くわ。彩のこと頼んだ。」

 

「はい。お任せください‼」

 

 

俺は、バッグを背負いそのまま教室を後にした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

学校から10分歩いたところにある、商店街通りに目的地であるずーピザがある。

近くには食べ物系のお店が並んでおり、いい匂いが充満してるので、

学生の財布の紐が緩んでしまう通りでもある。

その通りの中の一つでいかにも洒落た木造建築のピザ屋がズーという店である。

俺はここで毎週1,2回ほどお手伝い、基バイトをしている。

基本接客を行い、16時から20時までの間を手伝っているのだ。

今日は、平日ということもあり客は少なく、20時前には店内は

客が3人程で落ち着いていた。

 

「いやー、今日も助かったよ。ちょっと話があるんだけどいいかな。」

 

後ろから話しかけてきたのは、この店の主であるずーさんだった。

175後半程の身長に整った顔つき、客観的に見てもイケメンとは

このことを言うのだと思う。

俺は、途中だったテーブル拭きを切り上げ、ずーさんの方へ振り向く。

 

「お疲れ様です。なんすか、また有咲さん可愛いトークでもするんです?」

 

「それは、あとでじっくりするとして…まあお願いというかさ。」

 

ずーさんは困ったような顔しつつ苦笑いを浮かべる。

この人のお願いは珍しいので、俺も真面目に対応することにした。

 

「まあ、話をまず聞かないとですね。」

 

「うん。じゃあ厨房の中でしようかな。」

 

おれはもう一人のバイトの人に離れることを告げて、ずーさんと

厨房の中に入った。

ずーさんは、真面目な顔になって、僕に話を始める。

 

簡潔にまとめると、この商店街にある、羽沢喫茶店というところの

店長基マスターが体を悪くし、暫く入院をしなくてはいけないということ。

家族経営らしく、その奥さんと娘さんがなんとかカバーしようとしている。

しかしマスターのコーヒーは、それなりの熟練者じゃないと淹れるのが難しい。

あのコーヒーの味を求めてくるお客も多い。

家族にも生活があるので、店を閉めるのはなるべく避けたいらしい。

そこで同じ商店街で店をやってる、ずーさんに相談をしたらしく、

『ああ…うちの知り合いにコーヒー淹れるのとか、お菓子作るのめっちゃうまいやついるんすよ。

ちょっと聞いてみましょうか?』

そして今に至るらしい。

 

「なるほど…確かに珈琲はそこらの人よりは淹れれる自信はありますけど、それは

私生活の話で店で出せるかは…というか責任重大じゃないですか。」

 

「まあ、無理なお願いとはわかってるけど、昔からの付き合いの奴だからさ。

なんとかしてやりたいんだよね…。」

 

俯いた様子のずーさんは、あまり見たことがないので心にぶっ刺さるものがある。

正式にバイトをする前から、店の手伝いをさせてくれて、いろんな相談をこの人にして

助けられたのだ。今が恩返しのチャンスの一環なのかもしれない。

それに、新しいことにチャレンジできる。俺は自然と

 

「やります。自分がどこまでできるかわからないけど、それでも頑張ってみます。」

 

それを聞いた瞬間、暗い顔はどこに行ったのか分からなくなる程、ずーさんの表情が

驚き半面無邪気な笑顔を浮かべていた。

 

「晴…お前は良いやつだよ‼そうと決まったらマスターに連絡しないとな。

いや…今日はもう遅いな…明日一緒に病院行って話に行くぞ‼」

 

「(やりますとは言ったけど…本当にできるのかな)」

 

いつもやりたいことを探す日常はこの出来事から

一歩の歩みを進める。

同時にそれはあの娘との出会いの瞬間の前日談になったのだった。




次回からつぐみちゃんと出会う話になります。
本当にご都合展開満載ですが、辻褄は合わせられるように頑張ります。
ちなみに投稿翌日は麻弥ちゃんの誕生日だとかイベントもそれに
合わせてきたんでしょうかね…w

再度、だいぶ期間が開いたことも申し訳ありません。
しかし、自分も素人ながらSS作家…完結までは頑張ります‼


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1杯の珈琲と不安と

4話はとうとうつぐみちゃんが出ます。
晴くんと初対面で100パーセント敬語のつぐみちゃん
これから関係性ができれば、アフターグローの幼馴染達へのような話し方になっていくでしょう。
僕も甘々なタメ口トーク書きたいのですw
ではどうぞ!!


ずーさんとの話から早翌日、ずーさんと俺は町近くの病院に足を運んでいた。

病院のお世話になることがあまりない俺にとっては、白い

コンクリートの建物は別世界のような印象を与える。

ずーさんが受付に話を通し、僕らは病室まで案内される。

ドアを開けて、ずーさんは奥のベットに横になっている、如何にも優しそうな雰囲気を纏った男性に話しかける。

 

「マスター久しぶりです。全く、心配したんですから」

 

「いやー悪いね。こんなとこまで足を運んでもらって。そして彼が?」

 

「初めまして、月島晴と言います。ええとなんとお呼びすれば…」

 

「まあ、店長なりマスターなり好きに呼んでくれていいよ。そして早速なんだけど、珈琲入れるのが得意みたいだね。」

 

「じゃあマスターと。確かに珈琲を入れることについては趣味の範囲としては、得意だと思います。ですが店に出すものとして大丈夫かと言われると不安です。」

 

嘘をつく訳にもいかないので僕は、正直に答えた。

するとずーさんがハッとした顔をして、マスターに

問いかけた。

 

「ひとまずさ、味を見れば判断できるんだろ?じゃあ晴の珈琲を実際飲んでみればいいんじゃないか。」

 

「…確かにな。じゃあ早速ここでという訳にも行かんからな。どうしたら良いものか。」

 

マスターは、唸った様子で策を考えているようだった。

そして案が浮かんだのか。俺に1つの提言をしたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

場所は再度変わって、商店街通り。

商店街の十字路の角にある、店の前に立っていた。

『羽沢喫茶店』とドアの頭上大きく書いてある。

俺はこうなった経緯を思い出した。

『うちの娘に味を審査して貰おう。あの娘が美味しいといえば、それは店に出せるレベルということだし。

うんそうしよう!! 娘には連絡しておくよ。』

『マスターがそういうならそれでいいんでしょう。

あ!!?いけね、店の仕込みやんなきゃ行けねえ時間だ。晴、商店街まで送ってやるから1人で行ってこい。』

 

そんな急展開でここまで来てしまったのだ。

大丈夫なのか、こんなトントンと話を進めてしまってもと感じながら、不安にかられる。

ひとまず、その店長の娘さんとやらに会う必要があるので店内に入ろうと思った。

しかし、店のドアを見るとCLOSEとなっている。

まあそりゃそうだわな。だがここで引き下がる訳にも

行かないし、俺はドアノブを捻り開けようとする。

だがドアは開くことがなかった。

ええー、どうしたらいいんだよ。とこれからどうするかを考えようとした時に

 

「あのー、すいません今日は臨時休業日なんです。」

 

と後ろから声を掛けられる。

振り返ると、茶色いショートの髪型、

僕が通ってる学校の制服を着た女の子が申し訳なさそうな顔をして僕にしていた。

 

「いや、今日は客としてきたんじゃないんです。ここのマスターさんの娘さんに用があって」

 

「え?私がその娘ですけど、もしかして月島 晴さんって

貴方のことですか?」

 

「え?貴方がマスターの娘さんなんですか。」

 

「はい、ひとまずここでは何ですよね。そこの鍵開けますね。」

 

娘さんは、学生バッグから鍵を取り出し、店のドアに

歩み寄って錠を外す。

 

「どうぞ中に入ってください。」

 

俺は、彼女について行き、店の中に入った。

 

 

ーーーーーーーーーー

店内は、木製のフローリングで椅子やテーブル、棚なども木で出来ており、如何にも落ち着ける空間と言える感じだった。娘さんが電気をつけると、テーブルが光を反射しており、手入れも細かくしているんだと思われる。

清潔感があり、雰囲気もいい、ゆっくり過ごすには良い空間だと思う。

 

「挨拶が遅れましたね。私、羽沢つぐみって言います。

お父さん、ここのマスターの娘でお手伝いとかやってるんです。」

 

「ああ、月島 晴です。今日はよろしくお願いします。

後その制服、羽丘のですよね。驚きました同じ学校の方だったなんて。でも今日は土曜ですよね。部活でもやってるんですか?」

 

「同じ学校の人だったんですね!!いや、生徒会に入ってて今日は、ちょっとやることがあったんです。そしたら、お父さんから急に『 今から、月島晴君っていうバリスタ候補が来るから、味を確かめてやってくれ』って電話が来たんですよ。他の人に仕事お願いして、慌てて帰ってきちゃいました。」

 

羽沢さんは苦笑しながら、僕に説明してくれた。

生徒会をやって、実家のお手伝い…そしてこの

笑顔…純粋な心の持ち主と素人が見ても

わかるレベル。

真面目な良い子だなぁと思った。

 

「生徒会なんて凄いですね…。そんな大事な時にすいません、バタバタさせてしまって。」

 

「いえいえ…大したことじゃないです。良いんですよ。むしろ、こっちはお礼を言いたい位なんです。羽沢喫茶店の救世主が現れたって思ってるんですから!!」

 

「救世主って…まだ確定してないですから。

じゃあ早速なんですけど、珈琲の味見てもらっていいですか?」

救世主という言葉にこしょばゆくなった俺は、本題に

切り替えるように話を進めた。

 

「わかりました。じゃあ、そこのカウンターの向こうに

珈琲の豆や機材は揃ってますから、早速作ってもらっちゃいましょうか。」

 

羽沢さんに誘導され、カウンターの中に入る。

中には、コーヒー豆の入った瓶を始め、ドリッパー

、サイフォンだのエスプレッソマシンそれにコーヒーに必要な機材が全部揃っていた。

自分も沢山持っている方だとは思うが、比べ物にならないレベルだった。

 

「道具は大丈夫そうですか?」

 

「うん、大丈夫。というか凄いですね…。

全ての物の質が高いというか、驚いてます。」

瓶に入った豆も何処のものか、いつから使ってるのか、細かくラベルが貼ってあり、豆のツヤを見ても上質な物を使っているとはっきり分かる。

店内の清掃も行き届いている中、機材等も特に入念に

手入れしてる様子なので、コーヒーに余分な雑味が混ざる心配もなさそうだ。

 

「お父さんがいい珈琲を入れるには、過程に使うものは全て丁寧にするって言うのが口癖なんです。それで毎日、手が空いたらメンテナンスをしてるんです。」

 

「成程…じゃあお借りしますね。何を作ればいいですか?」

 

「今日は紙フィルターでドリップしてみてください。豆は好きなよう、ブレンドもしてもいいってお父さんから言われてますね。」

 

「わかりました。少し時間をください。」

 

僕はまず、豆の選定をすることにした。

この羽沢喫茶店では20種類の豆を使っているらしい。

多分だが、エスプレッソ用とかアメリカン、カフェオレ用などで分けて使っているのだろう。

吟味している内に一種の豆を見つけた。

…そうか…これをベースにすれば飲みやすいブレンドになるな。

設計図は完成した。後はいつも通りやるだけだ。

 

「羽沢さん。今から珈琲淹れますね。」

 

俺は、コーヒーミルで豆を砕くことから始めた。

 

ーーーーーーーーーーーー

『珈琲の味は豆で決まる。』

この世界は、有名な言葉だ。

なら誰が入れても豆次第なのか?

違う。

どんな美味しい食材も手を入れる人次第で

美味しかったり、不味かったりする。

珈琲も当然同じだ。豆が味を決めるなら

その味を極限に引き出すのが、バリスタというもの

なんだろう。僕はバリスタじゃないけど、美味しい

珈琲を毎日飲む為、淹れ方を勉強していた。

自分の為だけにやっていたことを初めて、

人に評価される。怖い…これでダメだったら

今までの僕はなんだったんだ…。

でも今の自分が何処まで出来るのかがわかる。

俺は、そんな気持ちを抱き、珈琲を入れていた。

 

ーーーーーーーー

「出来ました。」

 

羽沢さんに淹れたての珈琲を出す。

 

「いい匂いですね。見た感じ、淹れる様子はとても

手慣れてましたよね。いっぱい練習しないと、

あそこまで手際よくできないですよ。」

 

「まあ、中学の頃からやってました。

色々、図書館で調べて覚えた感じです。」

 

「そうなんですか。じゃあいただきますね」

 

羽沢さんは、コーヒーカップを手に取り、

口につけて飲んでいく。

胸がザワつく、僕の淹れたコーヒーは一体。

 

 

羽沢さんは面をくらったかのように驚いた表情で

僕を見た。あれこれやらかしたのか…。

珈琲を飲み、僕に向かって

 

「月島さん…これすごく美味しいです。

いや本当に凄いですよ。」

 

「やっぱ趣味で入れてたものですから…そりゃまず

……はい?」

 

「いや美味しいですよ!?口当たりが凄い良いんです。

酸味が少しあるけどまろやかな風味でちょうど良いんですよ。配合とかって何をメインにしたんですか?」

 

「ブラジルをベースに後はコロンビア、キリマンジャロを少々ですかね。羽沢さんの好みがわからないので飲みやすいのにしてみたんです。」

 

「成程。後、雑味が全くないんですよ。入れる時の様子を見てもきれいな淹れ方でしたし…月島さん。」

 

「は…はい」

 

「羽沢喫茶店でこの腕を貸してください。」

 

 

 

1杯の珈琲から生まれた関係。

人に評価されるというのは怖かったけど。

この子が良いと言ってくれた、

なら頑張ってみようかなと思えた。

単純かもしれないけど、少しやりたいこと

の未来に光がさした気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さていかがでしたか。
月島君のコーヒー経験は主の知識をベースにしています。本当にコーヒーって奥深いんです。趣味がふんだんに盛り込まれていますが、上手く繋げていきますw
羽沢喫茶店でお手伝いすることになる晴くんですが
つぐみちゃんと関わっていくことはアフターグローの面々とも顔を合わすようになります。様々な出会いで成長していくであろう晴くんそして頑張るつぐみちゃんが今後どうなるか…続く!!


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