東方信奪郷 (子アオ)
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プロローグ『始まり』

「───ウオオオオオ!!!」

 

「───ハァァァァァッ!!!」

 

飛び交う銃声、響く爆音。溢れかえるのは雄叫び、怒号、悲鳴。

 

そう。今、ここはまさに戦場。

それも国同士──などという話ではない。

 

世界と世界の戦争だ。

 

かたや空を駆ける赤き竜の軍勢。

かたや筋骨隆々たる獣人達。

 

どちらが押すともなく、戦況はまさに互角の一言であった。

 

「───ハァッ!!」

 

その戦場の1箇所で、1人の男が矢を放つ。 その矢は獣人の五十にも渡ろうかという軍勢を一撃で吹き飛ばした。

 

「………ちっ。まだ立つか。」

 

先程の一撃で起こった砂煙の中から、獣人達が数人、再び立ち上がる。

男は今度は四方八方に向けて矢を放ち、辺りを吹き飛ばす。

 

「クソッ……”デルポ=ナイラック”の両側から攻めてくるとは予想外だ……確かアルテミスの方はイシスの軍とぶつかっている……。」

 

味方の援護に行きたいのは山々といった様子だが、彼はこの赤き竜達の総大将。自分が此処を抜けて皆の士気を下げるわけにはいかない。

 

「とりあえずここは粗方片付いた……次は中心の戦場を押さえる……!!」

 

男は単身、戦場の中心へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──クソッ、数が多すぎる!!」

 

「──段々と包囲されているぞ!!一点突破で抜け穴を作れ!!」

 

中心の戦場では、竜達が獣人達に押されていた。

竜達は"星竜"という種族のスピリットだ。

 

「──押し潰せ!!力で我々に勝るものなど居ない!!」

 

「───敵方は所詮スピリット!!我らアルティメットの力を思い知らせてやれ!!」

 

かたや獣人達は"獣頭"という種族のアルティメット。

アルティメットは、基本的にはスピリットの上位存在であるが故に、地力で星竜達が押されていた。

 

この地点を取り仕切っていると思われる一体の竜が叫ぶ。

 

「持ちこたえろ!!もうじきアポローン神が来る!!それまでは何と替えてもこの場を落とされてはならん!!」

 

名を『ヘリオスフィア・ドラゴン』。

彼らの神よりこの戦場の中心を任された将の一体。

中心を突破されるということは、本陣への最短ルートを作られてしまうということである。

それゆえ、此処はお互いにとって絶対に負けられない戦場であった。

 

「ハハハハハ!!我らの勢いを押しとどめるなど不可能!!大人しく砂海の藻屑となるがいい!!」

 

高笑いする獣人は『ラムセトス二世』といい、ヘリオスフィアと同じく、この中心での指揮を任された者である。

二体は対峙し、攻撃をぶつけ合う。

しかし、先程言ったように、存在はアルティメットの方が上。ヘリオスフィアは少しずつ圧されていた。

 

ヘリオスフィア「ぐっ……!?」

 

ラムセトス「ハハハハハハ!!これで!終わ───

 

 

 

 

 

 

 

ラムセトスが弓をつがえたその瞬間──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を含み、その場にいた獣頭達が、爆撃によってほとんど吹き飛んだ。

 

ヘリオスフィア「!?」

 

「随分と待たせた……よく持ちこたえてくれた!!」

空からヘリオスフィアより一回り大きい赤い竜が降りてくる。

 

ヘリオスフィアに労いの一言を投げると、次の瞬間には赤いビームを掃射し、獣頭達を薙ぎ払った──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───はずだったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおい………初っ端から化神でのご登場たァ……随分やる気じゃねぇの。」

 

掃射によって発生した煙の中から1人の男が歩いてくる。

 

それを見た赤い竜が指を鳴らすと、自身が炎に包まれた。

 

「へぇ……一旦解くのか。」

 

炎の中から出てきたのは、先程別の戦場で獣頭達を圧倒していたあの男。

 

「俺達が戦う際はそうときまっているだろう。セト。」

 

セトと呼ばれた鎧の男は、ニヤリと笑うと、戦闘の構えに入る。

セト「そういやそんなんだったっけか?まぁんなこたどぉーでもいい。テメェとやり合うのを今か今かと心待ちにしてたところだ。アポローン。」

 

アポローン「お前に構っている時間はない。こっちをさっさと終わらせてアルテミスの援護に向かう。」

 

アポローン。そう呼ばれた男は弓をセトに突き出すと、戦場全体に轟くかのような大声で名乗りを上げる。

 

 

 

 

アポローン「我が名は創界神アポローン!!!

太陽と星の竜達を統べる神である!!!!」

 

セトはそれを聞き届けると、勝るとも劣らない声で同じように名乗りを上げた。

 

セト「我は創界神セト!!!

砂海、そして獣の勇士達の頂点に座する神なり!!!」

 

 

 

セト・アポローン「「いざ尋常に勝負───出でよ、我が化神!!!」」

 

 

2人がそう叫ぶとアポローンは先程の赤い竜に、セトは半人半馬の鎧の戦士に姿を変える。

 

両者の一撃がぶつかり合い、戦場を揺らした。

 

 

 

 

創界神、文字通り世界を作る神。

彼らは最低でも1つの種族の者達の信仰を集め、自らが作った世界を管理する者である。

 

 

 

セト「こんなものか!!アポローン!!」

 

 

アポローン「バカを言うなセト!!まだまだァ!!」

 

 

両者の一騎打ちは得物を打ち合うだけで戦場を抉る。

 

創界神は、自らが神である証の存在、化神を保有する。

先程、両者が変身したのがそれである。

 

 

得物がぶつかり合う音が戦場に響き渡る。

その間だけは、周囲で戦っていた両軍の者達全てが、神と神の一騎打ちに魅入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───はぁ、今日はこんなもんかしら。」

 

場所も時間も変わり、ここはとある神社。

『博麗神社』と言えばお分かりだろう。

 

そして、博麗神社という事は、今掃除をしているのは当代博麗の巫女、”博麗霊夢”その人である。

 

 

霊夢「暇ったらありゃしないわ……バトスピが広まってから異変のひとつも起こらない。

皆が退屈せずに平和してる証拠だけど、それはそれでなーんか暇よね……。」

 

などと愚痴のようなものをこぼす彼女。

1年ほど前、この幻想郷に”バトルスピリッツ”というものが流れて以来、幻想郷の一大ブームとなった。

 

霊力も何も持たなくてもカードとコアさえあればできることから、それまで行われていた弾幕ごっこに台頭して揉め事などの解決にもバトスピを用いるほど。

 

霊夢「魔理沙は昨日来たから今日は来ないだろうし……来るとしてもレミリアが勝負ふっかけに来るくらいかしらね……。」

 

独り言を呟きながら、神社の境内の裏にある物置小屋に箒を戻しに行く。

 

神社の角を曲がった物置小屋が見える。

そのまま小屋に向かおうとすると───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラ!!ガッシャァァァァン!!

 

いきなり物音が。それもかなり大きい。

 

霊夢「……。」

 

霊夢の表情が一気に変わる。指を鳴らしながら物置小屋に歩いていき、小屋の戸に手をかける。

 

霊夢(またチルノ……アイツ今回は洒落ならないくらいいたぶってやろうかしら……。)

 

心を決めた霊夢は戸を一気に開け放ち、怒鳴り声をあげる。

 

 

霊夢「──チルノォッ!!!アンッタ今日という今日は許さ……な……。」

 

霊夢「……え?」

 

霊夢の言葉が段々と消えていくのも無理はない───なにせ誰もいないのだから。

 

霊夢「え……ちょ………なんで……?」

 

散らかった物をかき分け、誰か埋もれていないか探してみるが、見当たらない。

幽霊かと思い除霊をしてみたが、何かが消えたような気配も感じない。

 

霊夢が首を傾げていると、足元から聞いたことのない声が聞こえてくる。

 

「──おーい、そこのアンタ。もしかしてこの小屋みたいな建物の持ち主か?」

 

 

 

 

霊夢「───は?」

 

霊夢は質問に答えることもなく、ただ目の前の現象をいまいち理解出来ずにいた。

 

 

霊夢は、声がした足元を見た。そこにあったのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───宙に浮いたカードだったのだ。



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第1話『違和感』

 

霊夢「……はぁ。」

 

神社の縁側にて、霊夢はため息をつく。それに対して反応する声がひとつ。

 

「どうした?人間の世界ではため息をつくと幸運が逃げるんだろう?」

 

霊夢「そのため息はアンタのせいなんだけど……。」

 

「俺か。」

 

霊夢「アンタよ。えっと……なんだっけ?」

 

「『アポローン』だ。創界神アポローン。娯楽としてスピリット達の存在が知れ渡っている世界の住人なら、聞いたことくらいはあるだろう?」

 

霊夢「全く。」

 

アポローン「む……そうか。」

 

アポローンは先程本人が言ったように人ではなく、神である。

しかし、その五体は神社のどこにもなく、カードから声が聞こえてくるのみだ。

 

霊夢「……とりあえず洗いざらい話してもらおうじゃないの。何が何だかわかりゃしないわ。」

 

アポローン「そうだな……ならまずは俺達の存在から話そう。」

 

霊夢「えー……創界神、だっけ?」

 

霊夢の問にアポローンは少し考えた後、口を開く。

 

アポローン「創界神というのは、文字通り世界を創る神。俺以外にも何人か存在していて、それぞれの創界神が自分の世界と、とある種族達からの信仰を持っている。」

 

霊夢「へぇ。規模が違うだけで、在り方は普通の神様と大差ないのね。」

 

アポローン「まぁな。そして、俺達創界神はそれぞれ『化神』という切り札がある。」

 

霊夢「化神?」

 

アポローン「そう。例えば──」

 

アポローンはそう言うと、光に包まれながらくるりと一回転する。

 

すると、アポローンは赤いドラゴン(のカード)に姿を変えていた。

 

霊夢「ふぅん……。」

 

アポローン「これは俺の化神、『太陽神星龍アポロヴルム』だ。本当は実物を見せられればいいんだが、生憎このザマだ。」

 

霊夢「なるほどね……アンタがどういう存在なのかは概ね把握したわ。じゃ、もう1つ質問。」

 

アポローン「あぁ、構わないぞ。」

 

霊夢「その創界神サマがなんで私の神社の物置小屋にいたのよ。」

 

アポローン「あぁ、それなんだが───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───俺もさっぱり分からん。」

 

霊夢「は?」

 

アポローン「ここに来る前は戦場で別の創界神やその軍勢と、自分の軍を率いて戦っていたんだがな……相手の創界神と1対1の勝負をしている際に、突然戦場、というかその空間が急に崩れはじめた。」

 

そして気がついたらここに居た、とアポローンは説明を終える。

 

霊夢はそれを聞き終えると、首を傾げたまま黙り込んだ。

 

アポローン「……どうした?お嬢さん?」

 

霊夢「……おかしいのよ。」

 

アポローン「おかしい?」

 

霊夢「仮にアンタがここにその"事故"で入ってきたとすると、私が気づかないのはおかしいの。」

 

アポローン「何故だ?」

 

霊夢「これでも私、この世界の管理に当たってる1人でね。神様レベルの存在がいきなりこの幻想郷に入れば、流石に結界に異常が出る。それを見落とす私じゃないのよ。」

 

アポローン「……俺が事故でここに来たのは嘘、と?」

 

アポローンの声が少し険しくなる。が、霊夢は動じずに話を続ける。

 

霊夢「可能性としては無くはないけど……人為的に入ったならそんな動きづらい体にならないでしょうし、そっちの可能性は今は外しとくわ。」

 

アポローン「そうか……ところでお嬢さん。」

 

霊夢「私の名前は霊夢よ。あとダメね。」

 

アポローン「そうか、じゃあ霊夢……って、何がダメなんだ?」

 

霊夢「どうせ居候のお願いでしょ?面倒なことになりそうだから嫌よ。」

 

アポローン「む、神の思考を先読みとは……霊夢、お前巫女か何かに向いているんじゃないか?」

 

霊夢「私自身その巫女よ。第一ここ神社じゃないの。」

 

アポローン「そうか……だが、神の気配が感じられない神社というのはどうなんだ……?」

 

アポローンの問に黙る霊夢。彼女自身、巫女になってから1度もここの神様のことなど聞いた経験がないので、なんとも言えないといった様子。

 

アポローン「よし、なら俺がここの神になろう。それならここにいる理由があるだろう?」

 

霊夢「………。」

 

霊夢はジト目でアポローンを見る。

 

アポローン「それに霊夢、これは俺の予測だが、お前は星竜達に少なからず関わりがあると見た。」

 

霊夢「…まぁ、一応星竜使いだけど。」

 

アポローン「なら丁度いい。お前のデッキ?とやらの戦力になろうじゃないか。化神共々、な。

これならお互いに利益があるんじゃないか?」

 

霊夢「………全く、なんでそうもこだわるのかしら。他に場所もあるでしょうに。」

 

アポローン「新天地では最初に会った者と縁を結んでおけば何かと利があるからな。それで、返事はどうだ?」

 

霊夢は十数秒ほど黙っていたが、やがて諦めたかのようにため息をついた。

 

霊夢「……はぁ。しばらくの間だけよ。」

 

アポローン「話がわかるな。では、よろしく頼む。」

 

霊夢「えぇ、まぁそれなりにね。」

 

星竜の創界神、アポローン。

博麗の巫女、博麗霊夢。

 

異変の中心となる者達のうち一組が、ここに誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アポローンが居候をはじめて数日後の昼頃。霊夢は鼻歌を歌いながら賽銭箱の中を確認していた。

 

霊夢「あら、今日も結構入ってるわね!!おっけーおっけー!」

 

霊夢は中身を取り出すと、縁側から居間に上がってお茶を入れ始める。

 

アポローン「上機嫌だな……。」

 

霊夢「も~!!アンタこういう力あるなら先に言いなさいよ~!おかげでお賽銭ガッポリだわ!!」

 

博麗神社というのは立地条件のせいか、お賽銭が極端に少ない。しかし、ここ最近は毎日一日半ほどの生活ができるくらいの量が入ってきているのだ。

 

霊夢「やっぱり持つべきは神様よね!」

 

お花畑気分とでも言うかのようなテンションでお茶を啜る霊夢。

アポローンは”ここまでゲンキンな巫女初めて見た”と思いつつも口には出さない。言わぬが花である。

 

霊夢「さて……と。アポローン、出かけるわよ。」

 

いきなりテンションを戻して立ち上がり、外出の支度をする霊夢。

 

アポローン「でかける?どこにだ?」

 

アポローンが問いかけると、霊夢は依然準備を進めながら答えた。

 

霊夢「人里。今朝見たら食材切らしてたのよ。その買い出し。」

 

アポローン「そういうことか。分かった、俺も同行しよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢とアポローンは人里に到着する。アポローンは霊夢の懐のデッキの中にいる。

 

霊夢「……?」

 

アポローン『どうした?』

 

アポローンが念話で話しかけてくる。霊夢は少し驚きながらも、口に出して答えた。

 

霊夢「……周りの視線に違和感がある。」

 

アポローン『違和感?』

 

霊夢「えぇ。人里には何度も来てるから顔は広い自覚あるんだけど……なんか妙なのよね。」

 

アポローン『もう少し具体的に話せないか?妙と言われても俺もわからん。』

 

霊夢「そうね……敵意の視線が半分、尊敬や羨望の視線が半分、ってとこかしら。」

 

霊夢「後者は子供達からたまに向けられることはあったけど、今は大人達からも多少感じる。前者は初だわ。」

 

アポローン『なるほどな……とりあえず早めに用事を済ませるべきだ。普段とは違う環境なら、トラブルに会う前に帰って、何故こうなっているか考えた方がいい。』

 

霊夢「そうね……。」

 

霊夢はよく野菜を買いに行く店に行く。

そこは親子で経営しており、買い物ついでに話などをすることも時々あった。

 

霊夢「久しぶりね、お婆ちゃん。野菜買いに来たわよ。今朝見たら切らしてたのよねー。」

 

霊夢が高齢の女性に話しかけると、女性は一瞬驚いたような顔をした後で、言葉を返した。

 

「何言ってるんだい。巫女様からお金なんて取れないよ。要るだけ持ってって頂戴。」

 

霊夢「ちょ、どうしたのよいきなり。この前まで名前で呼んでたじゃない。それに、今までだってお金払ってきたでしょ?」

 

霊夢がそう言うと女性がまた言葉を返す。

霊夢はその言葉に目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──変なこと言わないでください。昔っからアポローン様に仕えて、妖怪退治して。そんな巫女様からお金を取るなんて、出来るわけないですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「───!」

 

アポローン『霊夢、どこに向かってるんだ?』

 

霊夢は人里のすぐ上を普段より速めに飛びながら、ある場所を目指していた。

 

霊夢「知り合いのとこ!ソイツに聞けば何か分かるかもって!」

 

アポローン「さっきの人は俺の名前を口に出したが、この幻想郷じゃ俺の事は知られてないんじゃなかったか?」

 

霊夢「そのはずなのよね………居た!」

 

霊夢は地面に着地し、すぐ先に居た女性に話しかける。

 

霊夢「慧音!」

 

上白沢慧音。人里の寺子屋教師の半人半妖。

彼女は霊夢に気づくと、駆け寄ってきた。

 

慧音「霊夢か!ちょうど良かった!」

 

霊夢「?」

 

慧音「最近人里がおかしくてな。聞いたこともない者達の名前を、いきなり皆言い出すようになってるんだ。しかもそれについて話していたら争いに発展した者達も居るんだ……。」

 

霊夢「………その聞いたことないやつらの1人に、『アポローン』って奴が入ってるでしょ?」

 

慧音「なっ、知ってるのか!?」

 

霊夢「この前そう名乗るカードに会ったのよ。今はデッキの中だけど「さて、慧音、と言ったかな?」ちょっ!?」

 

いきなり霊夢の服の中からアポローンが飛び出してきて、慧音に問いかける。

 

慧音「貴方がアポローンか。」

 

アポローン「その通り。なんでここでは知られてない俺が、ここまで有名になっているんだ?」

 

慧音「分からない。ただ、突然貴方達を崇めるかのような風潮が出来てな……。」

 

霊夢「達?」

 

慧音「あぁ、名前を聞くようになったのはもう3人居るんだ。いずれも皆信仰に近い態度を取り始めていて……訳がわからん。」

 

アポローン「その名前は?」

 

慧音「名前か……あなた以外では確か………『オシリス』、『セト』、『ヘルメス』。この3人だ。」

 

アポローン「!!」

 

霊夢「ちょっと、勝手に進めるんじゃないわよ。で、アポローン。その反応からしてソイツらも創界神なの?」

 

アポローン「霊夢は察しがいいな……。ヘルメスは味方の創界神だが、セトとオシリスとは敵対している。」

 

慧音「一部の者達の間で争いが起こっていたのはそのせいか……。」

 

アポローン「……とりあえず情報を整理したい。どこか落ち着いて話せる場所はあるか?」

 

慧音「それなら私の家にしよう。お互いに情報交換といこうじゃ「あら、こんなところで星竜の創界神に会えるとは、光栄ね。」

 

慧音と霊夢、アポローンは、突然聞こえた声に振り返る。

そこには銀髪にメイド服を着た少女が。

 

慧音「咲夜……?」

 

十六夜咲夜。紅魔館という場所で働くメイドだ。

咲夜は慧音を一瞥すると、すぐにアポローンと霊夢に目を向ける。

 

咲夜「お嬢様から命令を受けて、とりあえずはここにと来てみれば……ドンピシャね。」

 

霊夢「命令?なんの命令よ?」

 

霊夢の問に昨夜は笑って答える。

 

咲夜「あら、分からないかしら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───創界神と接触したのは貴方だけじゃない。私達紅魔館も、今現在創界神を擁しているのよ。」



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第2話『太陽神星龍アポロヴルム』

霊夢「………アンタ達も?」

 

咲夜「そうよ。」

 

紅魔館も創界神を擁している。その言葉に霊夢は眉を顰める。

 

霊夢「てことは、この騒ぎ起こしてるのはアンタ達かしら?」

 

咲夜「いいえ、それは違うわ。私達も、まさかこんな事態になっているとは思わなかったわよ。」

 

霊夢「ふぅん……。」

 

慧音「……ところで咲夜。君は一体何の用で人里に?」

 

咲夜「あぁ、そうだったわ。危うく忘れてしまうところだったわね………ターゲット。」

 

咲夜は霊夢を指さす。すると、霊夢と咲夜のデッキが光を放つ。

 

霊夢「!!」

 

咲夜「まさか、断るなんて言わないわよね?創界神を持つ者が、この人だかりの中で。」

 

気がつけば、3人の周りには人だかりができていた。

 

アポローン「……どうする?霊夢。」

 

霊夢「どうもこうも……。」

 

霊夢はため息をつくと、すぐさまデッキを構えた。

 

霊夢「ああも煽られて尻尾巻くわけないでしょ。それに、ここで退くのはアンタにとっても良くないだろうしね。力貸しなさい、アポローン。」

 

アポローン「……分かった。俺の力、存分に使うがいい!!」

 

咲夜「腹は決まったようね。なら、行くわよ。」

 

霊夢「上等!!」

 

 

 

咲夜・霊夢「「ゲートオープン!界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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咲夜「先攻後攻、選んでちょうだい。」

 

霊夢「なら先攻で行くわ。私のターン。」

 

霊夢「『ゴッドシーカー・アルファレジオン』を召喚。召喚時効果でデッキを3枚オープン!!」

 

 

ライジングフレイム

煌星竜スピキュールドラゴン

創界神アポローン

 

 

霊夢「創界神アポローンを手札に加えて残りはデッキの下に。ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:3 H:5 D:34

 

アルファレジオン:【1】Lv1

 

 

咲夜「早速創界神を引いてくるとは、流石ね。私のターン。」

 

咲夜「ドローステップに手札の『ピラミッドボア』を破棄することで、ドロー枚数を1枚増やす。」

 

咲夜「メインステップ。『偽りの地下帝国』を配置。さらに『旅団の摩天楼』を配置。配置時効果で1枚ドロー。」

 

咲夜「バーストをセットしてターンエンドよ。」

 

 

咲夜

R:0 T:【5】H:4 D:33

 

旅団の摩天楼:0 Lv1

偽りの地下帝国:0 Lv1

 

 

霊夢「初動は相変わらずね。私のターン。」

 

霊夢「じゃあ行きましょうか!来なさい、『創界神アポローン』!!」

 

空からアポローンがフィールドに降りてくる。

アポローンは自らの拳と掌をぶつけて自身を鼓舞する。

 

アポローン「やっぱり普通の体が1番だ。さて、俺が出てきた時、デッキを上から3枚トラッシュに置ける!!その中の系統:星竜/界渡/化神を持つコスト3以上のスピリットカードの数だけ、俺自身にコアを追加する!!」

 

霊夢「アポローンの効果を使用。破棄したのは『彗星竜サングレーザードラゴン』、『電岩竜ダイナモドラゴン』、『ライジングフレイム』。

対象は2枚。つまりアポローンにコアを2個追加するわ。」

 

霊夢「アンタ便利ね……出すだけでコアブースト出来るなんて。」

 

アポローン「む?言っておくが霊夢、俺のコアは勝手には使えないぞ?」

 

霊夢「え?」

 

アポローンが唐突に言った言葉に霊夢はきょとんとする。

 

霊夢「え、じゃあなんのためにアンタにコア乗っけるのよ?」

 

アポローン「カードにある効果を見れば分かるだろうが、口で説明する方がわかりやすいだろう。その時になったら説明する。」

 

霊夢「……『電岩竜ダイナモドラゴン』の【アクセル】。デッキから1枚ドロー。そしてアルファレジオンをLv2に上げてターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:2 H:5 D:29

 

アルファレジオン:【3】Lv2

アポローン:2 Lv1

 

 

咲夜「(流石にまだ扱いには慣れていないようね……。)私のターン。」

 

咲夜「『風切りヘビ』を召喚。召喚時効果で相手のスピリットのコアを1つ、相手が選択してリザーブに置き、自分のネクサスがあれば1枚ドロー。」

 

霊夢「……スピリットはアルファレジオンだけ。ソウルコアをリザーブに送るわ。」

 

咲夜「続けて『ボーン・バード』を召喚。召喚時効果でデッキを3枚破棄して1枚ドロー。」

 

 

白蛇帝アルデウス・ヴァイパー

暗極天イブリース

バットナイト

 

 

咲夜「ターンエンド。」

 

 

咲夜

R:0 T:3 H:5 D:27

 

風切りヘビ:【2】Lv1

ボーンバード:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

偽りの地下帝国:0 Lv1

 

 

霊夢「……私のターン。『彗星竜サングレーザードラゴン』を召喚。」

 

アポローン「コスト3以上の星竜を召喚したか。なら俺の【神託(コアチャージ)】が発揮だ。俺にコアを1つ追加。」

 

霊夢「またコア増やして……星竜を召喚したことによって、『太陽皇ヘリオスフィア・ドラゴン』を4コストとして召喚!!」

 

アポローン「ヘリオスフィアも対象のスピリットだ。これで4つだな。」

 

霊夢「まだ動くわよ!『スターリードロー』を使用して、デッキを3枚オープン!」

 

 

超弩級星艦シュバルツシルト・ドラゴン

リミテッドバリア

シャーマニックドロー

 

 

霊夢「シュバルツシルトドラゴンを手札に加えて残りは破棄。」

 

霊夢「バーストをセットしてアタックステップ!

ヘリオスフィア・ドラゴンの効果で、トラッシュのコアを全てヘリオスフィア・ドラゴンに戻す。この効果で1個以上コアを戻した時、BP10000以下の相手スピリットを破壊!!風切りヘビよ!!」

 

ヘリオスフィア・ドラゴンが炎を放って風切りヘビを焼く。風切りヘビはあっけなく破壊された。

 

霊夢「ヘリオスフィア・ドラゴンでアタック!アタック時効果で自身のBP以下のボーン・バードを破壊!!」

 

 

ヘリオスフィア・ドラゴンがもう一度炎を放ち、次はボーン・バードが破壊される。

咲夜に向かってヘリオスフィアが突っ込んでいく───が。

 

 

咲夜「ただではやらせないわ。フラッシュタイミング、『マーク・オブ・ゾロ』!!

コスト5以下の相手のスピリット全てからコアを1つずつリザーブに。横の2体には消えてもらうわ。」

 

霊夢「ぐっ……やるわね……!」

 

Z型の斬撃が2体を切り裂き、消滅させる。

それでもヘリオスフィア・ドラゴンは咲夜に突進していく。

 

咲夜「アタックはライフで受けましょう。」

 

 

咲夜:ライフ5→4

 

 

霊夢「ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:2 T:0 H:3 D:25

 

ヘリオスフィア:4 Lv2

アポローン:4 Lv1

 

 

咲夜「私のターン。『冥侯爵フォカロール』を召喚。召喚時効果で手札のバットナイトを破棄して2枚ドロー。」

 

咲夜「さらに召喚──冥府より厄災をもたらす悪魔!!『アルティメット・デスペラード』!!」

 

 

アルティメット・デスペラード Lv3 BP11000

 

 

霊夢「来たわね、デスペラード……!!」

 

アポローン「アルティメットか……これは少々厳しいぞ……。」

 

咲夜「アタックステップ。行きなさい、デスペラード。アルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

霊夢「ぐっ……コスト4、『砲竜バルガンナー』…!」

 

咲夜「ヒット!デスペラードのヒット効果は、ヒットしたコストの数だけ相手のスピリットからコアを取り除く!ヘリオスフィアのコアを全てリザーブに!!」

 

デスペラードが剣を地面に突き刺すと、そこから紫の煙が吹き出し、霊夢のフィールドに広がる。

煙を浴びたヘリオスフィアはその場で崩れ落ち、消滅した。

 

霊夢「アタックはライフで受ける!!」

 

 

霊夢:ライフ5→4

 

 

咲夜「ターンエンド。」

 

 

咲夜

R:0 T:6 H:4 D:24

 

Uデスペラード:【1】Lv3

フォカロール:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

偽りの地下帝国:0 Lv1

 

 

霊夢「私のターン…!」

 

アポローン「あのアルティメット、対処できるか?」

 

霊夢「……今は無理ね。決めきることも難しい以上、今は守れるように動くしかないわ。」

 

霊夢「『煌星竜スピキュールドラゴン』を召喚。召喚時効果でトラッシュのヘリオスフィア・ドラゴンを手札に戻すわ。」

 

アポローン「スピキュー「スピキュールドラゴンの召喚によってアポローンの【神託(コアチャージ)】。これで5つよ。」

 

アポローン「フッ……神託についてはもう問題なさそうだな。」

 

霊夢「……ターンエンド。」

 

 

霊夢

R:0 T:3 H:4 D:24

 

スピキュールドラゴン:【5】Lv2

アポローン:5 Lv2

 

 

咲夜「私のターン……もうここで決めきってしまいましょうか。」

 

霊夢「!!」

 

咲夜「──来たれ。生命を吸い、死を吐き出す悪魔よ!『アルティメット・­­ベルゼビート』!!召喚!!」

 

 

アルティメット・ベルゼビート Lv3 BP13000

 

 

霊夢「ベルゼビート……!!」

 

咲夜「デスペラードを消滅させ、フォカロールをLv2に……アタックステップ。」

 

咲夜「デスペラードでアタック!!アルティメットトリガー、ロックオン!!」

 

霊夢「コストは………3、『ゴッドシーカー・アルファレジオン』!!」

 

咲夜「クリティカルヒットよ。ヒット効果でトラッシュの紫のスピリットを一体召喚するのだけれど……。」

 

霊夢「フォカロールの効果で2体呼べる、でしょ?」

 

咲夜「その通り。『白蛇帝アルデウスヴァイパー』と『ピラミッドボア』を召喚するわ。」

 

咲夜が指を鳴らすと、次の瞬間、ベルゼビートが地面を足で叩く。

 

すると、ベルゼビートの両脇の地面に穴が開き、その穴からアルデウス・ヴァイパーとピラミッドボアが這い出てきた。

 

 

アポローン(ん?だが、それだけなら霊夢のセットした絶甲氷盾で……)

 

咲夜「さらにクリティカルヒットの効果。スピキュールのコアを全てトラッシュに。」

 

ベルゼビートはすぐさま駆け出し、スピキュールドラゴンを切り裂く。

切り裂かれたスピキュールドラゴンは、枯れるように消滅していった。

 

アポローン「何ッ!?」

 

咲夜「バーストが絶甲氷盾だとしてもフラッシュ効果は使えない。終わりね。」

 

霊夢「ッ……ライフで受ける!!」

 

 

霊夢:ライフ4→3

 

 

霊夢「ライフ減少によりバースト発動!『絶甲氷盾』!ライフを1回復するわ!」

 

咲夜「同じ事ね。ピラミッドボア、行きなさい。」

 

ピラミッドボアが霊夢に突っ込んでくる。

ブロッカーもいないため、そのまま攻撃が通る。

 

 

霊夢:ライフ4→3

 

 

咲夜「フォカロール。行きなさい。」

 

咲夜の指示でフォカロールが駆け出す。ブロッカーも居らず、フォカロールの攻撃が通──

 

 

霊夢「ッ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────アポローンッ!!」

 

 

 

 

──通る前に、霊夢がアポローンの名を呼ぶ。

アポローンはそれを聞くと、矢を二本つがえた。

 

アポローン「任せろ───【神技(グランスキル)】ッ!!」

 

アポローンはそう叫ぶと、矢を放つ。

矢はフォカロールに命中し、破壊した。

 

咲夜「!?」

 

霊夢「なるほど、こういうことね……。」

 

霊夢「アポローンの効果の1つ、【神技(グランスキル)】。フラッシュタイミングにアポローンのコアを2個ボイドに送ることで、相手のBP6000以下のスピリットを一体破壊して1枚ドローできるらしいわ。」

 

咲夜「なるほど……それがアポローンの【神技(グランスキル)】ね……。」

 

咲夜「ターンエンド。」

 

 

咲夜

R:1 T:5 H:4 D:23

 

Uベルゼビート:【1】Lv3

アルデウス:1 Lv1

ピラミッドボア:1 Lv1

旅団の摩天楼:0 Lv1

偽りの地下帝国:0 Lv1

 

 

霊夢「私のターン。……!!」

 

アポローン「……丁度いいタイミングだ!霊夢、行くぞ!!」

 

霊夢「上等よ!まずは『電岩竜ダイナモドラゴン』を手元から召喚!!」

 

ダイナモドラゴンが召喚される。ダイナモドラゴンも【神託(コアチャージ)】の対象なので、アポローンのコアは4つとなる。

 

咲夜(……来るわね。『化神』が。)

 

霊夢「さらに【煌臨】発揮!!」

 

霊夢がそう宣言すると、アポローンはダイナモドラゴンの背中に乗る。

突如、アポローンとダイナモドラゴンを炎が包んだ。

 

霊夢「自分のターン中のフラッシュで、コスト3以上の星竜に煌臨!!」

 

炎が弾き飛ばされる。

その中から出てきたのは、大型の赤い竜。

 

アポローン「これこそが俺の化神!!『太陽神星龍アポロヴルム』だ!!!」

 

 

アポローンヴルム Lv3 BP15000

 

 

霊夢「アポローンは対象のスピリットの煌臨でも【神託(コアチャージ)】が発揮される。よってコアは5つ。

さらに『輝きの聖剣シャイニングソード』をアポロヴルムに合体ブレイヴして召喚!!」

 

霊夢「アタックステップ、アポローンの【神域(グランフィールド)】が発揮!!」

 

アポローン、もといアポロヴルムの輝きがさらに強まり、赤いオーラを纏った。

 

霊夢「自分のアタックステップに星竜の効果で相手のスピリット/アルティメットを破壊した時、相手のライフを1つ破壊できる!!」

 

霊夢「行きなさい、アポロヴルム!!」

 

アポローン「任せろ!!アポロヴルムのアタック時効果、BPの最も高い相手のスピリット/アルティメットを破壊!ベルゼビート、お前だァッ!!」

 

アポロヴルムが両脇の輪から矢の雨を放ち、ベルゼビートを焼き払う。

 

アポローン「アポロヴルムの効果で相手のアルティメットを破壊した!!よってお前のライフを1つ貰うぞ!!」

 

続けざまに咲夜に矢を放ち、咲夜のライフを奪う。

 

 

咲夜:ライフ4→3

 

 

霊夢「アポロヴルムの効果はこれだけじゃないわ!!【界放】発揮!!」

 

咲夜「!!」

 

霊夢「トラッシュのコアを2つアポロヴルムに戻すことで、アポロヴルムは回復!!」

 

咲夜「くっ……アルデウス・ヴァイパーでブロック!!」

 

アルデウスヴァイパーが迎撃に向かうが、アポロヴルムにあっけなく両断され、爆散した。

 

霊夢「アポロヴルムでもう一度アタック!!効果でピラミッドボアを破壊し、アポローンの【神域(グランフィールド)】でライフを破壊!!」

 

 

咲夜:ライフ3→2

 

 

咲夜「ッ………!!」

 

 

アポロヴルムはブロッカーの居ないフィールドを突っ切って、咲夜に切りかかる。

そして、最後のライフを奪った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

 

咲夜「……流石、赤の創界神は伊達ではないわね。」

 

霊夢「……で、結局なんなのよこれ。1から10まで話してもらうわよ。」

 

咲夜「……。」

 

咲夜は霊夢の要求に答えない。

霊夢がもう一度声をかけようとするが──

 

咲夜「残念ながら私達もまだ全てを把握している訳では無いわ。」

 

霊夢「はぁ?ならなんでいきなりバトル仕掛けてきたのよ……。」

 

霊夢の疑問に咲夜は少し考えてから、口を開く。

 

咲夜「全てを知っている訳では無いけれど……この異変は、スピリット達の世界で行われていた創界神同士の戦争、その続きのようなもの、らしいわ。」

 

霊夢「戦争の続き……?」

 

咲夜「そう。"オリン"の創界神と"エジット"の創界神との戦争。

私達が今擁している創界神はエジットの創界神だから、オリンの創界神であるアポローンと組んでいる貴方と私達は、必然的に敵になるわね。」

 

霊夢「……。」

 

咲夜「私が話せるのはここまで……そうね。オリンの創界神の1人は守矢神社に居るから、まだ分からないことはそっちに行きなさい。」

 

霊夢「レミリアは……アンタ達は、この異変で何かしでかそうっての?」

 

咲夜「……そうね。

あのお2人は─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───幻想郷と創界神、双方の頂点を狙う。そう言っていたわ。」



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第3話『2人目』

慧音「なるほど……アポローンが霊夢の下に来てまだ1週間も経っていないのか……ちょうど皆が彼らを信仰するようになった時期と概ね重なるな。」

 

霊夢「そゆこと。当のアポローン本人は何も知らないっぽいし。ねぇ?」

 

アポローン「あぁ、悪いが俺はここに来た原因も犯人も知らん。幻想郷、などという言葉も初めて聞いたからな。」

 

霊夢「だそうよ。」

 

慧音「ふむ……。」

 

現在、慧音の家にて最近の状況を確認する3人。と言っても、まだ情報が少なすぎるせいでこれといった進展はないようだ。

 

霊夢「というか、慧音はこの影響受けてないのね。なんでかしら?」

 

慧音「そういえばそうだな……これでも半妖だし、それが原因じゃないか?妖怪が神を信仰するなんて妙だしな。」

 

霊夢「アンタ以外にまだ妖怪と会ってないからなんとも言えないけど……まぁ、それは置いときましょうか。」

 

アポローン「だな。となると次はあの咲夜という女が言っていた事だが……。」

 

霊夢「『エジットとオリンの戦争の続き』だっけ?」

 

アポローン「あぁ。事実として俺達創界神はオリン、エジットの2つの勢力に分かれて戦争をしていた。」

 

慧音「世界を創る神々の戦争など、想像もつかないな……。」

 

アポローン「あとは……そうだな。ここ最近『ウル』という勢力も浮上してきたが……これは俺達オリンと共闘しているし、勢力も小さいから今は置いておこう。」

 

アポローン「さて、次に俺達が戦争している理由だ。」

 

霊夢「……信仰と土地。そうでしょ?」

 

アポローン「察しがいいな、霊夢。神である以上信仰に力を依存する節はある。戦に勝つことで信仰を集めること、そして敵の創界神の世界を奪うこと。」

 

アポローン「創界神が戦争を起こす理由は概ねこんなところだ。」

 

慧音「略奪はあまり快く思えないが……こちらとそちらの価値観の違いも分からない。下手なことは言えないな。」

 

アポローン「今回の戦争はウルの創界神、『ロロ』がとある理由で創界神の禁忌に触れたのをいいことにエジットがウルに侵攻してきたのが発端だ。俺達はそれに対して、エジットからオリンとウルの世界を守る目的でウルに助力した。」

 

霊夢「ふぅん………とりあえず、アンタ達の向こうでのことは概ね把握したわ。」

 

アポローン「ならここからが本題だ。俺の予測では───この世界は俺達の神世界と融合、もしくはそれに近い状態になっていると予想する。」

 

慧音「融合……?」

 

アポローンの意見に対して頭に疑問符を浮かべる慧音。

かたや霊夢はすぐさま聞き返す。

 

霊夢「なんで融合なのよ。」

 

アポローン「この人里を見る限り、大抵の者がオリンかエジット、どちらかを信仰しているのは予想がつく。」

 

慧音「だから、世界同士が融合して信仰が染みのように広がっている、ということか?」

 

アポローン「そうなるな。」

 

霊夢「……その考えに自信はある?」

 

アポローン「3割ほどだが。」

 

霊夢「情報が少ない今じゃそんなもんか……とりあえず、咲夜が言ってた守矢神社に行きましょうか。」

 

慧音「え、今からか?」

 

霊夢「もちろん。動くなら早い方がいいでしょ。」

 

慧音「そうか……分かった。私の方でもできる限り調べてみるよ。何か分かったらまたここか博麗神社で情報共有としよう。」

 

霊夢「了解。じゃあアポローン、早速行くわよ。」

 

アポローン「分かった。慧音、世話になったな。」

 

2人はそう言うと、慧音の家を出て、守矢神社の方に飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天狗達が住まう、幻想郷で最も高い山。妖怪の山。

守矢神社はその山頂にある。

 

その守矢神社の風祝、私こと東風谷早苗は日課となっている神社の境内の掃除をしている。

 

早苗「……ふぅ。今日はこのくらいでいいでしょう。」

 

今日は昨日よりも落ち葉などが少なかったので手早く終わった。結構広いのでこういう日はありがたい。

 

境内をもう一度見回した後、神社に戻ろうと振り返────

 

 

 

 

 

 

 

────ろうとした矢先、後ろから頭をべチッと軽く叩かれた。

 

早苗「あぅっ。」

 

痛くはないが突然のことなので一瞬怯む。

今度こそ振り返ると、頭上に1枚のカードが浮かんでいた。

 

「わりぃわりぃ。勢い余ってぶつかっちまったぜ。」

 

早苗「目で負えない速度に針を縫うような正確さで森の中を飛んで回る人がよく言いますね……。」

 

じとーっと睨むと、そのカードは笑いながら謝る。

 

「ははっ、わりぃわりぃ。まぁ気にすんなって。」

 

早苗「貴方が言う台詞じゃありませんよね、ヘルくん。」

 

ヘルくん。私が彼をそう呼ぶと、彼は少し不機嫌そうに返した。

 

ヘル?「なぁ早苗……その呼び方どうにか出来ないか?ヘルとかそれ地獄じゃん。オレは『ヘルメス』だってぇの。」

 

早苗「私、頭を叩いてくるような人の名前は覚えづらいんですよねー。」

 

ヘルメス「むむ……ん?」

 

ヘルメスが急に高度を少し上げる。

それを見て私も後ろの空を見た。

 

霊夢「……どうやら咲夜の言ったのはホントだったっぽいわね。」

 

「だな。あの緑のお嬢さんと居るのは……ヘルメスか。」

 

霊夢さんがふよふよ浮かぶカードと一緒に降りてくる。

ヘルくんと同じような感じがするので彼もひょっとして……?

 

そんなことを考えていると

 

 

ヘルメス「アポローンじゃねぇかーーーーッ!!」

 

ヘルくんがいきなり霊夢のカードに突進、突進されたカードは、吹き飛ばされることなく受け止めた。

 

アポローン「ええいっ、出会い頭にいきなり突進してくるなヘルメス!!危なっかしい!!」

 

どうやらお知り合いのようで。

私がきょとんとしていると、霊夢さんが寄ってくる。

 

霊夢「咲夜に聞いたのよ。アンタのとこに創界神がいるって。」

 

早苗「!!…ってことはあのカードは……。」

 

霊夢「アポローン、オリンの創界神らしいわ。あの緑のヤツは?」

 

早苗「ヘルメスって言います。彼もオリンの人らしいですね。」

 

早苗「……って、いやいやいや!?なにサラッと紹介してるんですか!!霊夢さんも創界神と一緒に居たんですか!?」

 

霊夢「まぁね。知ってるでしょうけど、人里の様子がおかしくなってるから、ここに来たのはそれの捜査よ。」

 

早苗「な、なるほど……。」

 

アポローン「俺達を置いて話を進めないでもらおうか……。」

 

ヘルメス「そーそー!!オレら居ないと始まんないだろ?」

 

アポローン「脱線させたのはお前だろう。」

 

ヘルメス「えー。」

 

霊夢「……で、ヘルメスだっけ?」

 

ヘルメス「おう、そうだぜ。あんたは?」

 

霊夢「博麗霊夢よ。とりあえず今はアポローンと一緒に居るわ。

アポローン、この緑のは早苗。まぁ私と同じ巫女みたいなもんよ。」

 

いきなり私の紹介を始めて驚いたが、まずは自分で名乗らねばなるまい。

 

早苗「東風谷早苗です。ヘルメスさんのお世話をしてます。」

 

ヘルメス「あれ、そこは普通『世話になってる』じゃ」

 

アポローン「そうか、この能天気の世話は大変だろう。」

 

早苗「まぁ、それなりに……ところで、やはり人里の件ですか?」

 

アポローン「あぁ。咲夜という者からここに創界神が1人いると聞いてな。これで孤立無援の心配はなくなった訳だ。」

 

早苗「ホントですよ……ヘルくんの仲間が居て良かったです……。」

 

霊夢「まぁそういう確認も含めて、情報交換しに来たのよ。諏訪子と神奈子は?」

 

ヘルメス「2人なら寝てたぜ。」

 

霊夢「なら放置でいいわね。じゃあまず私たちの方だけど───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──小一時間ほどか。四人は互いの近況を報告しあったものの、出てきたの情報は似たようなものばかりでこちらも特に進展があったとは言えないだろう。

 

霊夢「ここまで何も無いとだるくなってくるわね……。」

 

アポローン「こればかりは根気強くいくしかあるまい。何も早く解決せねばどうというものでもないしな。」

 

ヘルメス「ま、気楽にだな。で、どうする?まだ話すことあるか?」

 

早苗「流石にあるとは思えないですね……。」

 

霊夢「なら今日はもう帰ろうかしらね……何かあったらまた共有しましょ。あと慧音も私達に協力してくれるらしいから、アイツのとこにも顔出しときさいよ。」

 

早苗「わかりました。道中お気をつけて。」

 

早苗の言葉に霊夢は背を向けたまま手を振ると、アポローンと共に博麗神社に向けて飛び立っていった。

 

早苗「……ふぅ。」

 

ヘルメス「どした?」

 

早苗「いや、霊夢さんが敵じゃなくて良かったなぁ、と。」

 

ヘルメス「そんな強いのか?アイツ。」

 

早苗「それもそうですけど、何かと頼りになる人なんですよ。霊夢さんは。」

 

ヘルメス「へぇ……じゃ、オレらもアイツらの足引っ張らないように、気合入れてこうぜ。」

 

早苗「はいっ!!」

 

 

巫女二人。神二人。

この先何を見ることになるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲夜「───ただいま戻りました。」

 

「おかえりなさい、咲夜。そしてお疲れ様。」

 

霊夢が早苗達と会うのとほぼ同刻、咲夜は紅魔館に戻っていた。

咲夜は書斎の椅子に腰掛ける吸血鬼、そして自らの主である少女──レミリア・スカーレットと向き合う。

 

レミリア「どうだったかしら咲夜。あの二人は。」

 

咲夜「……率直に申しますと、大変強力です。霊夢は、創界神を初めて使うにも関わらず、十分に使いこなしていました。」

 

レミリア「ふぅん……流石は霊夢と言ったところかしら。まぁ───

 

 

 

 

 

 

 

 

──私達の敵ではないわ。」

 

不敵に笑う吸血鬼。その風格はまさしく支配者のそれである。長年共にいる咲夜ですら、その笑みの前には鳥肌が立つ。

 

「──それはどうかな。相手の力を侮ったものに勝利はないぞ」

 

もうひとつ聞こえる声、今度は男の声だ。

気づけば、レミリアの横に1枚のカードが浮かんでいた。

 

レミリア「……それは、私たちが負けるということ?」

 

「油断をするなということだ。オリンの神は強力無比。我らがいくら強いとしても、最大限の敬意と警戒をもって相手をしなければ、喰われるのはこちらになるぞ。」

 

レミリア「なに、そのような事は百も承知よ。相手の実力を問わず、吸血鬼は容赦というものを知らないわ。」

 

「──フン。であればよいのだ。我と共に戦う以上、無様な敗北だけは許さぬぞ。」

 

レミリア「言われなくても……さて、咲夜。」

 

咲夜「はい。お嬢様。」

 

レミリア「今日はもう休んでいいわよ。本当にご苦労さま。」

 

咲夜「……承知しました。では、私はこれにて。」

 

咲夜はそう言うと、次の瞬間にはその場所から消えていた。

 

「十八番の時止めか。人の身で面白い異能を持つ。」

 

レミリア「自慢の従者よ……さて、此度の異変、果たして月は紅いのかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「………あー……。」

 

アポローン「ん?どうした?」

 

場所は変わり博麗神社に向かう階段。

それを登っている最中、霊夢は突然声を上げた。

 

霊夢「……買い出し結局やってない……。」

 

アポローン「……あぁ、なるほどな。」

 

霊夢「仕方ない……今日はご飯とお味噌汁だけね……。」

 

ため息をつきながら階段を上がる。

霊夢はそこで、ここ最近賽銭箱の貯まりがいいことを思い出し、少し気分が上向いた。

 

霊夢とアポローンは階段を登り切る。(ただしアポローンは浮いているが。)

鳥居の下で霊夢が伸びをした。

 

 

霊夢「さーて、まずは賽銭箱の中身をチェッ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、霊夢。やはり探さずにここで待っていて正解でしたね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ん?あ、アンタ………。」

 

霊夢は驚いて目を見開く。

目の前の人物は、笑顔で霊夢に挨拶を送った。

 

 

 

 

 

「────お久しぶりですね。霊夢。」



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第4話『彼女の目的─その1─』

 

場所は博麗神社の母屋の中。

この中には4つの声が聞こえていた。

 

さらに言うと、そのうち2つは人ではなくカードから聞こえるものだ。

 

アポローン「もしやとは思ったがお前までこちらの世界に来ているとはな……『アルテミス』。」

 

アポローンは向かい合って浮かんでいるカードをそう呼んだ。

アルテミスと呼ばれたカードはクルクルと回りながら答える。

 

アルテミス「ホンットにびっくりしたわよ……戦場でいきなり空間が割れ始めて気づいたらこっちなんだもの。どうなってんのかしらこれ。」

 

アポローン「それに関してはこちらも原因究明中でな……そうだ。後はヘルメスの奴も来ているぞ。」

 

アルテミス「へー……アイツがいるとこは大変そうねぇ。」

 

アポローン(どの口が言うのやら……。)

 

アルテミス「何?」

 

アポローン「いや、何も。」

 

そう話しているのを横で見ながら、2人の少女がお茶を飲んでいる。

 

霊夢「……アンタも貧乏くじ引いたものねぇ……。」

 

「あ、あはは……でももう慣れたので大丈夫ですよ。」

同情するような言葉を投げる霊夢。そしてそれに苦笑いをする、長い髪を後ろで結んだ少女。

 

霊夢「慣れていいのかしらそれ……ところで、こっちにはどんなようで来たのよ?『依姫』。」

 

依姫と呼ばれた少女は、霊夢にここに来た目的を聞かれると、急に俯き始めた。

 

霊夢「……?どうしたのよ。言っとくけどアレを引き取れってのは勘弁よ。」

 

霊夢はアルテミスを指さしながら釘を刺す。

依姫は数秒間目を伏せて俯いたままで、その後顔を上げて口を開いた。

 

依姫「……ここに来た理由を話す前に、霊夢に話しておきたいことがあります。」

 

霊夢「……その話が目的と関係ある感じかしら。」

 

依姫「えぇ。むしろ、霊夢ならばこの話をするだけで目的を察してもらえるかと。」

 

霊夢「何よその自信……いいわよ。話してみて。」

 

霊夢が促すと依姫は頷き、同時にアルテミスが2人のもとに寄ってきた。

 

アルテミス「よっちゃん、私も手伝うわよ。補足しなきゃ行けないこともあるかもだし。」

 

依姫「………あの、そろそろ普通に『依姫』と読んでもらえませんか?その呼び方、少しむず痒いものが……。」

 

アルテミス「こっちの方が可愛げあっていいじゃない。それより話をしましょ。話。」

 

依姫「はぁ……わかりました。では、まずは今から約1ヶ月ほど前まで遡ります────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

時を遡り、1ヶ月前の夜。

依姫は体を伸ばしながら自室へと向かっていた。

 

依姫「ふあぁ……疲れた……。」

 

この日、彼女はとんでもなく疲れていた。

それと言うのも

 

依姫「お姉様もいい加減月の技術で遊ばないで欲しいですよ………。」

 

彼女の姉である『綿月豊姫』が技術部に作らせた防衛ロボが暴走して市街地で暴れ回ったため、それの討伐だの後処理だので1日の大半を使ったからである。

 

依姫は自室にたどり着き、ドアを開ける。

その瞬間、視界が少し歪んだ。

 

依姫「ッ……!!」

 

なんとか踏みとどまる。これは疲れているな、と思いつつ、着替えもせずにベッドにダイブした。

 

依姫「………もう寝「おーい。」ん?」

 

声が聞こえ、なんとか体を起こして辺りを見回すも、人影は皆無。幻聴かと思ってまた寝ようとしたが

 

「おーい!!上!上よー!!」

 

依姫「……?」

 

依姫は声の通りに上を見上げると、カードが浮いていた。

 

 

カードが浮いていた。

 

 

依姫「……は?」

 

「うっわぁ、初対面で『は?』って言われちゃったわ……ショック……。」

 

わざとらしい口調の声が聞こえる。

カードの方から。

 

 

カードの方から。

 

 

依姫「………え、ちょっ………えっ?」

 

「何よ、カードが話してるのがそんなにおかしい?」

 

依姫「おかしいも何もどう考えたって普通じゃありませんよ?」

 

カードはふぅん……などと言いつつ、依姫の目線の高さまで降りてくる。

 

「ま、私もホントの姿はあなたと同じ人型なんだけどね。訳あってこんなんになってるのよ。」

 

依姫「は、はぁ……。」

 

よく見るとどことなく神力を感じるので言っていることは本当なのだろう。

 

「私の名前は『アルテミス』。機獣達の創界神よ。」

 

依姫「……そう、かい、しん?」

 

アルテミス「そ。簡単に言うと世界の創造主サマよ。少し前までは自分の世界の住民引き連れてドンパチしてたんだけど、気がついたらここに居たのよねー。」

 

適当な世間話をするかのように自分の身の上を話すアルテミス。

 

依姫「えーと……アルテミス、さん?」

 

アルテミス「何?」

 

依姫「私、今現在の状況がよく分からないんですが……。」

 

アルテミス「簡単に言うと別世界から飛ばされたのよ。というわけで帰れる目処が立つまでここに居るから。」

 

依姫「は、はぁ…ってはぁ!?」

 

アルテミス「えっ?」

 

依姫「えっ?じゃないですよ!いきなり『ここに居る』なんて言われても……」

 

アルテミス「だって他に宛もなさそうだし。その様子だとこの世界に『創界神』って言葉は馴染みがなさそうだしね。」

 

依姫「まぁ、聞いたこともないですけど……。」

 

アルテミス「ってわけで、ポニテ仲間としてここはひとつ!ねっ?」

 

依姫「え、えぇ……。」

 

アルテミス「別にこんな体だからご飯も寝る場所もいらないし、人にバレて面倒ならカードのフリすればいいだけじゃない。ほら、デメリットは別にないでしょ?」

 

依姫「そ、それはそうですけど……。」

 

依姫はだんだんと頭痛がしてきた気がした。

その間にもアルテミスは必死に頼み込んでくる。

 

依姫「……はぁ、わかりました。ここに居ていいですから、変なことしないでくださいよ?」

 

アルテミス「やったー!!」

 

ピョンピョンして喜ぶアルテミスに深いため息をつく依姫。

すると突然、アルテミスはなにかに気づいたように依姫の方を向く。

 

アルテミス「そう言えば名前聞いてなかったわね。改めて、私は『創界神アルテミス』。呼ぶ時は呼び捨てで呼んで頂戴。」

 

依姫「……私は『綿月豊姫』。ここ、月の都の……まぁ、多少は"お偉いさん"という立場になるのでしょうね。これからよろしくお願いします。アルテミス。」

 

アルテミス「えぇ!よろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

依姫「……これが、私たちが初めてあった時のことです。」

 

霊夢「創界神って図々しい奴しかいないの?」

 

アルテミス「何その評価!?酷いわよれーむ!!」

 

アポローン「コイツはこういう性格だからな。依姫、心中察するぞ。」

 

依姫「あはは……とりあえず、続けますね。」

 

霊夢「ん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

翌日。

 

依姫「んっ………ふあぁぁ………。」

 

アルテミス「あらおはよう。早いのね。」

 

依姫「おはようございます…今日も今日で仕事がありますから……。」

 

アルテミス「ふぅん……ついていってもいい?」

 

依姫「……服のポケットの中でじっとしていてくださいね?」

 

アルテミス「はーい。」

 

依姫は手早く準備を進める。

そんな中、自室の戸が叩かれた。

 

依姫「……?どうぞ。」

 

依姫がそう言うと、1人の兎が入ってきた。

 

依姫「どうしました?レイセン。」

 

レイセンと呼ばれた兎は苦笑いをしながら答える。

 

レイセン「いえ、昨日すごくお疲れのようでしたから……もしかしたら寝ていらっしゃるかな、と……。」

 

余談だが、依姫は昨日のように突然忙しくなって体力を使い切った翌日は寝坊する事が稀にあるのだ。

 

依姫「ふふっ、大丈夫ですよ。」

 

レイセン「あはは、ならよかったです。アルテミス様はまだご就寝中ですか?」

 

依姫「いえ、彼女ならもう………え、レイセン、今なんと?」

 

依姫は驚きのあまり聞き返す。アルテミスも驚いた様子であるように見える。

 

レイセン「え?ですから、アルテミス様はまだご就寝中かと……。」

 

依姫・アルテミス「「……………えっ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

霊夢「……なるほどね。そっちもか……。」

 

依姫「ということは、霊夢も?」

 

霊夢「ええ。なんでか分からないけどアポローンが人里の方に認知されてたわ。お賽銭が増えるようになったのはいい事だけどね。」

 

アポローン「月の方でも、となると、俺の予想は合っていると見ていいだろうな……。」

 

アルテミス「世界同士の自然融合なんて、そうそう起こることじゃないんだけどね……。」

 

依姫「なるほど……では、ここからが本題です。」

 

霊夢「……目的に直接関わる部分って事ね。」

 

アルテミス「……よっちゃん、やっぱり私が話すわよ?」

 

依姫「いいえ、これは私の口から話すべきです。……大丈夫ですよ。アルテミス。」

 

アルテミス「……そう。分かったわ。」

 

依姫「では、続けますね────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

アルテミスと出会ってから約2週間。

依姫は兎達の訓練の指導をしていた。

 

この2週間で分かったことがいくつかあった。

 

まず、アルテミスが月の都の皆に知らぬ間に認知されていたこと。

 

次に、アルテミスが神として、昔よりこの月の都から信仰を受けている事になっていたこと。

 

最後に、アルテミスと共にいる依姫の持つ権限が強くなっていたこと。

 

全て、アルテミスと会ったあの夜から、次の日依姫が目覚めるまでの間に変わっていたことだ。

 

依姫(仕事の合間を縫って原因を探しては見たものの、ほとんど収穫なしのままはや二週間……。)

 

依姫「アルテミスの様子を見る限り彼女の仕業とは思えませんし……。」

 

「どうしたの?そんな難しい顔して。」

 

依姫が声の方に振り向くと、彼女の姉である豊姫が立っていた。

 

依姫「いえ、その……アルテミスのことで。」

 

豊姫「なるほどね……確かに、私もいきなり周りが変わっていたのは驚いたわ……。」

 

豊姫は、依姫とアルテミスの周りで唯一この変化の影響を受けなかった者である。

よって、依姫は豊姫にだけはこの事を打ち明けていた。

 

豊姫「彼女自身が原因ってのは……あ、ないんだっけ。」

 

依姫「はい。嘘をついているようには思いませんし、先日神を降ろした状態で脅しをかけてみても知らないの一点張りだったので。」

 

豊姫「聞き出し方が物騒過ぎない?」

 

依姫「……コホン。お姉様はどう思いますか?」

 

豊姫「うーん……なにせ情報がねぇ……。」

 

依姫「はい……。」

 

豊姫「……っと、私これから用事だから、そろそろ行くわ。」

 

依姫「はい。また。」

 

豊姫が去っていくのを見届けると、依姫は訓練をしている兎たちの方に向き直った。

 

依姫(……とりあえず、今は目の前のことに集中ね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、訓練は終了し、依姫は自室に戻っていた。

 

アルテミス「あら、お疲れ。」

 

自室に入ると、くるくると回っていたアルテミスが居た。

 

依姫「はい。ありがとうございます。」

 

アルテミス「……で、なにか分かった?」

 

依姫「……いいえ、何も。」

 

アルテミス「そうよね……てことはまた明日も───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────瞬間、警報が鳴り響いた。

 

 

依姫「!?」

 

アルテミス「なにこれ!?」

 

依姫「この警報音は……敵襲です!!行きましょう!!」

 

アルテミス「りょーかいっ!!」

 

2人は窓から外に出る。

周囲を見回すと、街の中で大きい建物が何軒か、燃えていた。

 

全速力で向かうこと十数分。

建物のうちの1つの前に着地する。

 

「依姫様!」

 

依姫「遅れてすみません!!状況はどうなっていますか!?」

 

「あ、相手は1人で、目の前の建物の中に居ます!顔は仮面で隠され、人物の特定は出来ていません!!」

 

依姫「わかりました。ひとまず警戒態勢のまま待機を。」

 

依姫(それにしても、なぜ自分で燃やしたであろう建物の中に……?)

 

依姫が思考を巡らせていると、突然──

 

 

 

 

 

 

───燃えていた建物が全て吹き飛んだ。

 

 

依姫「───ッ!?」

 

爆風がこちらにくる。さらに、破片が近隣の建物に飛び、何軒かに燃え移り始めた。

 

依姫「まずい!!」

 

アルテミス「全員消火に向かってちょうだい!!相手は私たち2人で抑えるから!!」

 

「「「はい!!!」」」

 

アルテミスが指示を出すと、兎達はそれぞれ燃え移った建物の消火に向かった。

 

アルテミス「これでいいでしょ?」

 

依姫「ありがとうございます、アルテミス。」

 

アルテミス「まさか信仰されてるのがここで役に立つとはね……さて、お相手さん出てくるわよ。」

 

依姫「……!!」

 

依姫は建物があった場所──今はただ炎と煙が立ち込めているだけだが──を見据えて構える。

そしてさほどの間もなく1つの影が見えた。

 

依姫「これをやったのは貴方か!!都でこのような企てを起こすのがどういうことか、分かっ……て………。」

 

依姫の言葉は最後まで続かなかった。

アルテミスも、炎の中から出てきた人物を見て絶句した。

 

なぜなら、その人物は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───嫌ねぇ。話す時は最後までハッキリと話しなさいと、八意様にそう教わったじゃないの。ねぇ、依姫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────依姫の姉、豊姫だったのだから。



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第5話『彼女の目的─その2─』

 

依姫「え………なん……で……?」

 

豊姫「やけに驚くわね。あなたのそんな顔を見るのはいつぶりかしら。」

 

アルテミス「豊姫、アンタどういうつもりよ!!」

 

豊姫「それは何に対してかしら?この状況?それとも動機?」

 

アルテミス「全部に決まってるじゃない!!」

 

豊姫「……そうねぇ。」

 

豊姫はもったいぶるかのような笑みを浮かべる。

依姫はそれを不安げな表情で見つめる。

 

豊姫「簡潔に言うと、貴方よ。アルテミス。」

 

アルテミス「……私?」

 

豊姫「オリンとウルの連合軍対エジット軍の世界単位での戦争。貴方はその中でイシスと交戦中に突然こちらに飛ばされた。そうでしょう?」

 

アルテミス「……!!」

 

依姫「……なぜお姉様がそれを?彼女が来た原因については私は何も話さなかったはずです。」

 

豊姫「そうね。まぁ、なんで知ってるかは今は置いとくとして……ターゲット。」

 

依姫「!!」

 

豊姫「さっきも言った通り私の目的はアルテミス。つまり彼女と一緒にいる貴方とも戦うことになる。」

 

依姫「……どうしても、ですか。」

 

豊姫「えぇ。そうね。」

 

アルテミス「……依姫「わかりました。」!?」

 

アルテミスが声をかけるが、依姫は豊姫を見据えて勝負を受諾。

 

依姫「いくらなんでも此度の事は目に余ります。少しきつく灸を据える必要があるでしょう。」

 

豊姫「……決まりね。」

 

依姫「私が勝てば全部吐いてもらいます。アルテミス!!」

 

アルテミス「りょーかい!!」

 

依姫がデッキを取り出すと、アルテミスがその中に入る。

 

豊姫もデッキを構え、バトルの体制に入った。

 

 

豊姫「普段の私と同じと思わない事ね。」

 

依姫「それはこちらも同じこと!!」

 

 

依姫・豊姫「「ゲートオープン!!界放!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

依姫「先攻後攻、お好きなように。」

 

豊姫「……なら先攻で。私のターン。」

 

豊姫「『百識の谷』を配置。ターンエンド。」

 

 

豊姫

R:0 T:【4】H:4 D:35

 

百識の谷:0 Lv1

 

 

依姫「……私のターン。『スプレッド・トータス』を召喚し、召喚時にコアブースト。」

 

依姫「そして増えたコアで彼女を呼びます!!『創界神(グランウォーカー)アルテミス』、お願いします!!」

 

依姫がアルテミスを呼ぶと、バトルフィールドにアルテミスが元の姿で降りてきた。

 

アルテミス「どう?実際に見ると結構可愛いでしょ?」

 

依姫「自分で言いますかそれ……否定はしませんが。」

 

依姫「……コホン。アルテミスが登場した時の効果。デッキを上から3枚トラッシュに置きます。」

 

 

ゴッドシーカー・ネガズボック

機械戦隊マンモガイザー

ダーク・ガドファント

→トラッシュ

 

 

依姫「この中にコスト3以上の機獣スピリットは2体。よってアルテミスにコアを2つ追加。」

 

依姫「ターンエンドです。」

 

 

依姫

R:0 T:5 H:3 D:32

 

スプレッド・トータス:【1】Lv1

アルテミス:2 Lv1

 

 

豊姫「私のターン。ドローステップ。百識の谷の効果でドロー枚数を1増やし、その後手札を1枚破棄。『赤の探索者エドウィック』を破棄するわ。」

 

 

赤の探索者エドウィック

→トラッシュ

 

 

豊姫「メインステップ。『魔界竜鬼ダークヴルム』を召喚。」

 

豊姫「召喚時効果発揮。ライフを1つトラッシュに送り、2枚ドロー。」

 

 

豊姫:ライフ5→4

 

 

豊姫「バーストをセットしてターンエンド。」

 

 

豊姫

R:0 T:4 H:6 D:31

 

ダークヴルム:【2】Lv1

百識の谷:0 Lv1

 

 

依姫「私のターン。」

 

依姫(自分でライフを削ってのドロー……向こうがこちらの射程に入るまでは守るのが得策か……。)

 

依姫「『リーディング・オリックス』をLv2で召喚。コスト3以上の機獣スピリットの召喚によりアルテミスにコアを追加。」

 

依姫「続けて『ポラーナイト・ガルム』を召喚し、アルテミスにコアを追加。アタックステップに入ります。」

 

依姫「このターンはアタックせずにステップを終了。アタックステップ終了時にオリックスの効果発揮。自分のフィールドが白一色ならばドローステップを実行。」

 

依姫「ターンエンド。」

 

 

依姫

R:0 T:3 H:3 D:30

 

スプレッド・トータス:2 Lv2

ポラーナイト・ガルム:【2】Lv2

ネガズボック:1 Lv1

アルテミス:4 Lv1

 

 

豊姫「やけに慎重ね。」

 

依姫「……。」

 

豊姫「あら?無視かしら?お姉様悲しいわ。」

 

依姫「私も悲しいですよ。お姉様ともあろうものがこんな事を。」

 

豊姫「……そう言われちゃ、何も言えないわね。私のターン。百識の谷の効果でドローステップに2枚ドローし、手札の『スターリードロー』を破棄。」

 

豊姫「メインステップ。『魔界竜鬼ダークヴルム』をもう一度召喚し、召喚時効果でライフを削って2枚ドロー。」

 

 

豊姫:ライフ4→3

 

 

豊姫「さらに『双翼乱舞』を使用して2枚ドロー。バーストをセットしてターンエンド。」

 

 

豊姫

R:0 T:6 H:7 D:26

 

ダークヴルム:1 Lv1

ダークヴルム:【1】Lv1

百識の谷:0 Lv1

 

 

依姫「私のターン……よし。」

 

アルテミス「……依姫。」

 

依姫「えぇ。一気に行きましょう。」

 

依姫「まずは『機獣魔神』を召喚。そして──」

 

アルテミス「準備完了!!それじゃあ行きましょう!!」

 

アルテミスが爪先で空を叩くと、そこに魔法陣が出現する。

するとその魔法陣から光が放たれ、アルテミスを覆っていく。

 

アルテミス「これが私の化神!!『月天神獣ファナテック・エルク』よ!!」

 

 

光を払って現れたのは、大きな白銀の鹿だった。

 

 

ファナテック・エルク Lv1 BP9000

 

 

豊姫「……化神、ね。直に見るのは初めてだわ。」

 

 

依姫「ファナティックエルクの召喚によりアルテミスにコアを追加。これでアルテミスはLv2に。」

 

依姫「さらにファナテックエルクの召喚時効果!!ダークヴルム2体をデッキの下に!!」

 

ファナテックエルクが、二筋の光線を放つ。

その光線はダークヴルム達を見事に射抜いて、フィールドから消し去った。

 

依姫「機獣魔神の右にファナテックエルクを、左にはポラーナイトガルムを合体(ブレイヴ)

……では参ります。お姉様、お覚悟を!!」

 

豊姫「……。」

 

依姫「アタックステップ開始。ここでアルテミスの効果が発揮します!ファナテックエルクに白のシンボルを一つ追加し、このターン中はブロックされなくなる!!」

 

アルテミス「いっくわよォーーー!!!」

 

ファナテックエルクが飛ぶ。狙うは豊姫のライフ。

 

依姫「ブロッカーもコアもない!!終わりです!!」

 

豊姫「………馬鹿ね。」

 

依姫「!?」

 

豊姫「バーストがあるじゃない。」

 

豊姫が指を鳴らすと、伏せていたバーストが開いた。

 

豊姫「相手のスピリットのアタック後に『煌星銃ヴルムシューター』を発動。1ドローして召喚。」

 

豊姫は人間サイズで出現したヴルムシューターを持ち、デッキからカードを引く。

 

依姫「たとえブレイヴを召喚したとしても、ブロックされない以上防ぐことは「ヴルムシューターの効果発動。【装填(リロード)】」!?」

 

豊姫「私が【煌臨】を使う時、条件が合っていればヴルムシューターを煌臨元として選択できる。来なさい。」

 

豊姫は後ろにヴルムシューターを投げ捨てる。すると、

ヴルムシューターが落ちるはずの地面からマグマが吹き出した。

 

アルテミス「何あれ!?」

 

 

 

豊姫「──世界を救う希望の光。敵を滅ぼす絶望の炎。『超神星龍ジークヴルム・ノヴァ』、煌臨。」

 

 

マグマの中から現れたのは赤と白の龍。

地面に降りた龍が1度吼えると、大地のあちこちに亀裂が走った。

 

 

ジークヴルム・ノヴァ Lv1 BP12000

 

 

依姫「ジークヴルムノヴァ!?」

 

豊姫「この子の煌臨時効果を発揮するわ。トラッシュのコアを全てノヴァに戻した後、『ヴルム』に煌臨しているため、自分のライフを全回復。」

 

依姫「なっ……!?」

 

アルテミス「いきなり出てきてライフ回復!?」

 

突然すぎる出来事に、依姫も化神になったアルテミスも硬直する。それを他所に、豊姫は笑顔を作った。

 

豊姫「さて、依姫。フラッシュ、あるかしら?」

 

依姫「え?……い、いえ、ありませんが……。」

 

豊姫「そう……なら私の番ね。『煌星第一使徒アスガルディア』の【アクセル】。相手のBP12000以下を全て破壊し、その効果を発揮させないわ。」

 

数多くの流星が降り注ぎ、待機していた依姫のスピリット達に襲いかかる。

爆煙が収まる頃には、その場所は更地となっていた。

 

アルテミス「うげげっ!?」

 

依姫「ファナテックエルクは機獣魔神を含めてのBPが13000……ギリギリ助かりましたか……。」

 

豊姫「あら、そうなの。ならそっちは何も無さそうだし、続けて『クェーサーレイン』も使うわ。『ヴルム』がいる時、BP20000以下のスピリットを一体破壊。」

 

豊姫がマジックの使用を宣言すると、ノヴァが翼を広げ、その翼から光線を乱射する。

 

アルテミス「ちょっ……!?」

 

光線のうち何本かがファナテックエルクに直撃し、爆発。

しばらくすると、アルテミスが爆煙の中から飛び出してきた。

 

依姫「大丈夫ですか!?」

 

アルテミス「ケホッケホッ……なんとか。」

 

豊姫「さ、どうする?異魔神ブレイヴ以外は誰も居ないみたいだけど。」

 

依姫「……ターンエンドです。」

 

 

依姫

R:【4】T:5 H:2 D:29

 

機獣魔神:0 Lv1

アルテミス:5 Lv2

 

 

豊姫「私のターン。ドローステップに百識の谷の効果で捨てるのは『エクスティンクションウォール』よ。」

 

豊姫「メインステップ。手元の『煌星第一使徒アスガルディア』を召喚。バーストをセットしてアタックステップ。」

 

豊姫「ジークヴルムノヴァでアタック。」

 

ジークヴルムノヴァが吠える。すると、周囲に雷が落ち始めた。

 

豊姫「アタック時効果発揮。ゲーム中に1度だけ、お互いの手札を全て捨てられる。」

 

豊姫が手札を全て手放すと、雷が依姫の手めがけて落ちる。

雷が依姫の手に直撃し、手札のカードは全てトラッシュに落ちた。

 

依姫「ッ……アルテミス!!」

 

アルテミス「りょーかいっ!!」

 

アルテミスが依姫の前に躍り出て、弓を持った手にコアを3つ握る。

 

依姫「アルテミスの【神技(グランスキル)】!!フラッシュでアルテミスのコアを3つ消費することで、そのバトルでのアタックによるライフダメージを0にする!!」

 

ジークヴルムノヴァは2人の目の前に降りると、手を振りあげ、叩きつける。

アルテミスはノヴァの攻撃に合わせて弓で空を切る。

すると、一瞬だけだが光の壁が形成され、ノヴァの攻撃を相殺した。

 

豊姫「厄介ね……アスガルディア、行きなさい。」

 

依姫「ライフで受けます!!」

 

アスガルディアは持っていた剣で依姫を攻撃し、ライフを奪う。

 

依姫:ライフ5→3

 

依姫「くっ……!!」

 

豊姫「ターンエンド。」

 

 

豊姫

R:0 T:5 H:0 D:24

 

ジークヴルムノヴァ:【4】Lv2

アスガルディア:1 Lv1

百識の谷:0 Lv1

 

 

依姫「私のターン。ドロー!!」

 

依姫(!……これならまだ……!)

 

依姫「……ターンエンドです。」

 

 

依姫

R:【12】T:0 H:1 D:12

 

アルテミス:2 Lv1

 

 

豊姫「私のターン。百識の谷の効果で2枚ドロー。その後に手札の『百識の谷』を破棄。」

 

豊姫「メインステップ、『赤の探索者エドウィック』を召喚。召喚時効果は使わないわ。」

 

豊姫「アタックステップ、エドウィックでアタック。」

 

依姫「……ライフで受けます。」

 

 

依姫:ライフ3→2

 

豊姫「続けてアスガルディアでアタック。」

 

依姫「フラッシュタイミング、『機械戦隊シールドコング』の【アクセル】!!このバトルを即座に終了させます!!」

 

アスガルディアの前に氷の壁が形成され、行く手を阻む。

アスガルディアが後退すると、氷の壁は崩れ去った。

 

依姫(でも……。)

 

豊姫「……ジークヴルムノヴァ、アタックよ。」

 

依姫「(ダメか……。)ライフで、受けます……。」

 

 

ノヴァの一撃が、依姫の最後のライフ2つを刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

() () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () () ()

 

豊姫「随分とあっけなかったわね。」

 

依姫「ぐっ……!」

 

痛みで立てない依姫を見下ろす豊姫。

依姫は彼女を見上げるのが精一杯だった。

 

依姫(体が……ほとんど動かない……。)

 

アルテミス「ちょっと大丈夫!?依姫!?聞こえる!?」

 

聞こえはするが答える余裕はない。

依姫を見下ろした豊姫が口を開く。

 

豊姫「アルテミスはこんな所……か。彼に聞いてたほどじゃなかったわね。」

 

依姫(……彼……?)

 

豊姫「じゃあ、私はもう行くわ。そのダメージ、中々とれないから2週間近くは安静なさい。」

 

豊姫はそう言って扇子を振ると、瞬く間に消えてしまった。

 

「依姫様!!大丈夫ですか!?」

 

豊姫が消えてすぐ、後ろの方から声が聞こえてきた。

言うまでもなく兎達である。

 

依姫(皆……か……。)

 

なんとか振り返って後ろの方を見ると、兎達が駆け寄ってくるのが見える。

その後ろの建物も、もう火元は残っていないようだった。

 

依姫(火は消えたのね……よかった……。)

 

「依姫様どうされたんですか!?アルテミス様、一体何が!?」

 

アルテミス「後で説明するから、とりあえずは彼女を運んでちょうだい!!」

 

「わかりました!!」

 

依姫(やば……もう……限……か………。)

 

兎達に運ばれる中、依姫は意識を手放した。



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第6話『彼女の目的─その3─』

───豊姫が行方をくらまして2週間後。

 

都中で捜査が行われたにも関わらず、豊姫の行方は依然として不明である。

 

そんな日の朝、依姫は訓練場で1人素振りをしていた。

 

アルテミス「いたいた。こんなとこにいたのね。」

 

依姫「おはようございます、アルテミス。」

 

アルテミス「おはよ。調子どう?」

 

依姫「もうおおよそ全快ですね。特に痛みもありません。」

 

依姫は素振りをやめ、アルテミスの方に歩いてくる。

 

アルテミス「にしても、バトルで負った痛みの完治にホントに2週間もかかるなんてね……彼女はどんな細工をしたのやら……。」

 

アルテミスがため息をついて言う。

依姫は少し黙ったあと、アルテミスにある事を告げた。

 

依姫「……アルテミス。少しお話があります。」

 

アルテミス「ん?なになに?」

 

依姫「……1度、地上に降りようと思います。」

 

アルテミス「は!?」

 

アルテミスが驚くのも無理はない。

生命(けがれ)が蔓延する地上に降りるのは、月の都においては当然ながら勧められたものではなく、ましてやアルテミスと居る依姫は事実上のトップ。

トップが暗に禁じられた事をするなど、本来ならば言語道断である。

 

アルテミス「いやいやいや!?依姫がそれやるのって1番ダメなやつじゃない!!」

 

依姫「確かに、現状は貴方のパートナーということで事実上のトップです。おいそれと動くわけには行きません。」

 

アルテミス「なら「でも。」

 

依姫「私には、お姉様を放っておくことなどできませんし、仮にそうでなくても、この一件はお姉様を見つけてば何もわかりません。」

 

依姫「私達姉妹のために、貴方のために、そして月の都のためにも、地上に向かう必要があると思うのです。」

 

アルテミス「………。」

 

依姫「……。」

 

アルテミス「……はぁ。そこまで言われたら仕方ないわね。旅は道連れ、私も付き合ってやろうじゃない!!」

 

依姫「……ありがとうございます。」

 

アルテミス「……で、地上にはどうやって行くの?」

 

依姫「あぁ、それでしたらお姉様が………あ。」

 

アルテミス「……もしかして。」

 

依姫「……そうでした……お姉様が居ないと地上に行けないんでした……。」

 

あはは、と苦笑いする依姫。

アルテミスはえ、どうすんのよそれ、といった様子で依姫を見る。

 

依姫「どうしましょう……まさかこんな壁にぶつかるとは……。」

 

アルテミス「……依姫って神様の力借りれるんでしょ?移動系の能力がある奴居ないの?」

 

依姫「いやぁ……なにせ星と星を移動しますから、そこまでの距離を飛べるかどうか……。」

 

アルテミス「そっかー……じゃあダメね……軽く世界移動みたいなも……ん………あ。」

 

依姫「どうしました?」

 

アルテミス「……ねぇ、よっちゃん。」

 

依姫「なんですかその呼び方……「こっちの方が可愛いかなって」いやどういうことですか。」

 

アルテミス「まぁそれはいいとして……神の力って契約した奴のなら使えるのよね?」

 

依姫「まぁ……はい。」

 

アルテミス「なら私と契約しましょ♪」

 

依姫は一瞬アルテミスが何を言っているのか分からず、きょとんとする。

 

依姫「……唐突ですね。」

 

アルテミス「私達創界神ってのは世界を渡る能力があるのよ。それがないと他の創界神と会えないしね。」

 

依姫「それがどう……あ!なるほど!!」

 

アルテミス「そう!私の力を使って移動すればいいのよ!!今の私はカードだからできないけど、私の力を使えるよっちゃんならできそうじゃない?」

 

依姫「た、確かに……その考えは思いつきませんでした。」

 

アルテミス「じゃ、そうと決まったらレイセンに報告してさっさと行くわよ!!」

 

依姫「もうですか!?流石に気が早いですよ!?」

 

アルテミスは善は急げと言わんばかりに兎たちが普段生活している建物の方に飛んでいく。

依姫も慌てながらそれを追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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依姫「──それで、サグメ様とレイセンに私達が不在の間のことをお願いして、この地上に降りてきたのです。」

 

 

霊夢「………。」

 

霊夢は依姫の話を終始表情を変えることなく聞いていた。

依姫が話終わると、霊夢は頭をかきながら口を開いた。

 

霊夢「正直、最初はどんな面倒事かと思ったけど……。」

 

依姫「……。」

 

霊夢「そういうことなら、私も喜んで協力するわ。」

 

依姫「!……ありがとう…ございます…!」

 

霊夢「いいのいいの。それに、私も今回の異変と豊姫の行動を無関係とは思わないしね。」

 

アポローン「それにしても、そちらで依姫の姉だけが異変の影響を受けずにいた事が気になるな……まさか彼女も創界神と接触したのか?」

 

アルテミス「私がいるじゃない。」

 

アポローン「お前以外の、だ。」

 

霊夢「その可能性は有り得るわね……でも、戦った時には出てこなかったんでしょう?」

 

依姫「はい……ジークヴルムノヴァを中心とした星竜達を使ってきたのみでした……。」

 

アルテミス「星竜ならアンタだし……単独で動いてると見ていいかしら?」

 

アポローン「単独で動いているとすれば、あまりにも行動が大胆すぎる。我々でさえ情報不足でまともに方針も決まっていないんだぞ。」

 

霊夢「……答えの出ないことを議論しも仕方ないわね。それは豊姫を探し出して直接聞けばいいわ。」

 

アポローン「だが、依姫の姉を探す事だけに時間を割くわけにもいかないだろう。」

 

霊夢「あー……確かにそうね。依姫、アルテミス。悪いんだけど、豊姫を探すついでに、今回の異変解決の手伝いをお願いしてもいいかしら?今んとこ人手不足で……。」

 

依姫「もちろん協力させていただきます。」

 

アルテミス「その2つ、どこかで絶対つながるでしょうしね。」

 

霊夢「助かるわ……さて、もう日が沈んでるし、今日のところは休みましょう。明日になったらもう1人の創界神のとこに行くわよ。報告とかも兼ねてね。」

 

依姫「わかりました。」

 

アルテミス「そうね……もうねっむぃ……。」

 

霊夢「じゃ、早速準備しますか。2つ目の布団、ホコリ被ってたりしないわよね……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──ほぼ同刻、紅魔館の一室。

 

レミリア「………。」

 

窓から月を眺めながら紅茶を飲むレミリアと、その後ろに控える咲夜の姿が。

 

レミリア「……そういえば。」

 

咲夜「……どうされました?」

 

レミリア「……『あの二人』はどこにいるのかしら?」

 

咲夜「あの2人……パチュリー様と小悪魔でしょうか?それならば図書室に「そっちの方じゃないわよ。あの脳筋2人のこと。」……あぁ、あの二人ですね。」

 

レミリア「異変の間は此処を拠点にするように言ったのだけれど……どこをほっつき歩いて、いや、飛んでいるのかしら。」

 

咲夜「……私には分かりかねる事ですわ。ですが、このような時間まで戻らないとなると、確かに不審に「心配してくれんのか?嬉しいねぇ。」……お嬢様。」

 

咲夜の言葉を遮って、少女の声が空気を叩いた。

 

レミリア「えぇ。……全く、どこに行っていたのかしら。」

 

「わりぃわりぃ。2人でフライングしてたところだ。」

 

レミリア「意味合いが変わるようにも思えるけれど……まぁいいわ。今日の昼頃、相手の創界神の一人であるアポローンがこちらに来たのを確認したわ。契約者は霊夢よ。」

 

すると今度は男の声が聞こえてくる。

 

「アポローン……アイツも来たか。こりゃあ楽しみだ……!!」

 

「霊夢も創界神と……ハハッ、今回の異変乗って正解だったな。」

 

2人が反応する人物は互いに違えど、霊夢とアポローンの2人と戦うことに相当の闘志を燃やしているようだった。

 

「にしても、エジット陣営が勝ったら幻想郷を統合するってのはマジなのか?」

 

レミリア「もちろん。私と貴方とソイツと彼。4人でしっかりと決めたじゃない。」

 

「まぁ普通に暮らしてりゃこんな事はないだろうからな。信じらんねぇのも仕方ねぇ。」

 

楽しげに話す男の声。

それに対して少女も楽しげに返す。

 

「ま、そしたら私とお前で色んな強いヤツと戦えるから、それでいいぜ。今から楽しみだ。」

 

レミリア「貴方のその楽しみを実現するためにも、今回はしっかりと協力してもらう。勝手なことはしないで欲しいわ。」

 

「はははっ、分かってるよ。頼りにしてるぜ?レミリア。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──某時刻、某所にて。

月明かりに照らされた木々の中を歩く1つの影。

 

豊姫「………。」

 

豊姫は周囲を見回す。何かがいるような気配はない。

 

豊姫「………。」

 

豊姫は周囲に何もいないであろうことを確認すると、歩を進める。

 

──そして、暗い森の奥へと、姿を消した。



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第7話『気持ちのいい朝に』

 

依姫が博麗神社を訪れた翌日の朝。

依姫は1人神社の境内に座っていた。

 

依姫「霊夢はどこに行ったのでしょうか……?アポローンも居ませんし……。」

 

アルテミス「何か必要なものでも買いに行ってるのかしらね。」

 

後ろから声が聞こえたので依姫が振り返ると、アルテミスがふよふよと依姫の隣に飛んできた。

 

アルテミス「さっき台所の方を見に行ったけど、野菜とかお肉とか何も無かったし、樽多分買い出しだと思うわよ。」

 

依姫「なるほど……そういえば昨日霊夢が何か食べたのを見ていませんね……時間帯をもう少し考えるべきでした……。」

 

アルテミス「まぁ仕方ないんじゃない?」

 

依姫「まぁ、お姉様の能力と違ってこちらに着くまでに結構な時間を使ったのは予想外でしたが……。」

 

アルテミス「仕方ない仕方ない。それにれーむもそんな細かいこと気にするタイプだとは思えないし、そこまで気にしなくていいわよ。」

 

依姫「はぁ……。」

 

などと2人で話していると、神社の正面の方から霊夢の声が聞こえたので、そちらに向かう。

 

依姫「おかえりなさい、霊夢。どちらに行かれていたんですか?」

 

アポローン「昨日食材を買いそびれていたのでな。ついさっき買った来たのだ。」

 

アルテミス「ほら、でしょ?」

 

依姫「言ってもらえれば荷物持ち位はしたのに……。」

 

霊夢「だって随分と気持ちよさそうに寝てたもの。起こすのが申し訳なくなるくらいにね。」

 

依姫「う……そ、そんなに、ですか……?」

 

顔を赤くした依姫に霊夢はまぁ気にしなくていいわよ、と言い、買ってきたものを台所まで運んでいった。

 

アルテミス「でもアナタまでついて行く必要あった?どうせその姿じゃ何にもできないでしょ?」

 

アポローン「昨日里の中で1戦交えたのだ。同じことが2度あるとも限らんだろう。」

 

アルテミス「そういうことなら納得ね。」

 

霊夢「おーい!3人とも、朝ごはん作るから入って来なさーい!!」

 

霊夢が中から3人を呼ぶ。3人はそれに従い、神社の中に上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「じゃ、今日も守矢神社に行くわよ。」

 

依姫「守矢神社?幻想郷にはここ以外にも神社があるんですね。」

 

霊夢「結構前に外の世界から来た神社でね。2人の神様と1人の風祝がいる所よ。」

 

霊夢「同じオリンの創界神だっていうヘルメスがいるのもそこ。目的は、まぁ顔合わせみたいなもんよ。」

 

依姫「確かに、味方ならば一度顔を合わせて置かねばなりませんね。」

 

アポローン「ではいつ出発する?当然だが俺達も同行しよう。」

 

霊夢「今。」

 

アルテミス「急ね。」

 

霊夢「やることさっさとやった方がいいでしょ。てなわけで行くわよ、3人とも。」

 

霊夢はそう言うと1人玄関の方に歩いていく。残りの3人もそれを追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、幻想郷の上空。

現在守矢神社に向かっている最中である。

 

依姫「……ヘルメス、と言いましたか。その人はどのような創界神なのですか?」

 

霊夢「そういえばそれは私も聞いてなかったわね。」

 

アポローン「ヘルメスか……奴は剣獣の創界神で、英雄獣と呼ばれる獣達を筆頭にあらゆる剣獣を従えている。」

 

アポローン「あと足がめちゃくちゃ早いので有名ね。オリンの創界神の中では伝令役を担ってるわ。情報伝達に関しては超一流ね。」

 

依姫「創界神にもその中だ役割があるのですね……。アポローンとアルテミスはどのような役割を?」

 

アポローン「いや、俺達は特に役割は持っていない。というか創界神とは別になにかの役割を持っているのはヘルメスくらいだな。」

 

アルテミス「あと役割と言えば最高神のゼウス様くらいかしら。普段は自分の世界を見守ってて、戦争とかがあれば世界の連中を従えて戦うくらいよ。」

 

霊夢「で、その戦争中に敵軍諸共こっちに飛ばされた、と。面倒なことになる予感しかしないんだけど。」

 

アポローン「そうなる前に解決せねばな……っと。あれじゃないか?」

 

霊夢「あったあった。降りるわよ。」

 

4人は下に降りて行って着地する。その先には守矢神社があり、その前には早苗ともう1人、ちびっ子の姿が。

 

霊夢「おーい、早苗。昨日ぶりね。」

 

霊夢が呼びかけると、早苗とちびっ子は霊夢に気づき、霊夢の方に向かってくる。

 

 

早苗「おはようございます霊夢さん。」

 

霊夢「ん。おはよ。」

 

「久しぶりだねー、霊夢。昨日も来たんだって?」

 

霊夢「えぇ。アンタらは爆睡してたみたいだけど。」

 

「ぐっすりだったねー。お夕飯の時間まで寝てたよ。」

 

依姫「……えっと、霊夢。そちらの御二方は?」

 

依姫がそう問いかけると、霊夢はあぁごめんごめん、と言いながら2人の紹介を始める。

 

霊夢「この巫女が早苗、こっちのちびっ子が諏訪子よ。」

 

諏訪子「誰がちびっ子じゃい。」

 

霊夢「いや実際そうでしょ。」

 

諏訪子「ぐぬぬー!」

 

依姫「諏訪子さんに早苗さんですね。私は綿月依姫と言います。よろしくお願いします。」

 

早苗「よろしくお願いします、依姫さん。……その浮かんでるカード、もしかして依姫さんも?」

 

アルテミス「はーい♪私はアルテミス。貴方のとこのヘルメスと同じオリンの創界神よ。味方として宜しくね。」

 

早苗「はい、よろしくお願いします。ということは霊夢さん、今日来たのはお二人の紹介ってとこですかね?」

 

霊夢「そうね。」

 

諏訪子「にしてもカードが喋るなんてホント不思議だよねー。しかもヘルメス以外にもいるなんてさー。で、そっちの赤い方は?」

 

アポローン「そういえば昨日は会っていなかったな。アポローンだ、よろしく頼む。」

 

諏訪子「はーい。よろしくー。」

 

早苗「ってことは、これでこっちは3組ですね。」

 

霊夢「そうね……って、そういやアンタのとこのアイツは?」

 

早苗「さっき話しかけても反応が無かったので寝てるんじゃないかと思います。」

 

アポローン「悪いが起こしてきてくれないか?」

 

早苗「もちろんです。では少し待っ「なんか大所帯だな。またお客さんか?」……たなくても良かったですね。」

 

噂をすれば、と言わんばかりのタイミングでヘルメスが起きてきた。

早苗はヘルメスの方に振り返る。

 

ヘルメス「一体どうした?」

 

早苗「お客さんですよ。ヘルくん。」

 

ヘルメス「だぁからその呼び……ってアルテミス!?」

 

アルテミス「アナタヘルくんなんて呼ばれてるの?随分センスある呼ばれ方じゃない。」

 

ヘルメス「こちとら呼ばれたくて呼ばれてるんじゃねーっての……んで、そっちのお姉さんは誰だ?」

 

依姫「綿月依姫の依姫と言います。よろしくお願いします。」

 

ヘルメス「なるほど、アルテミスと一緒に居るのがアンタってわけだ。そいつと一緒にいるとめんどくせぇだろ?」

 

アルテミス「ちょっと」

 

依姫「いえ、そんなことありませんよ?」

 

ヘルメス「優しいねぇ。アルテミスも見習「アンタやるの?表出なさいよ。」おーこわ。」

 

諏訪子「ヘルメスも人のこと言えないよねー。」

 

早苗「ホントですよ。人が掃除してる時にぶつかってこないでください。」

 

ヘルメス「だからそれは悪かったって……。」

 

霊夢「……こんなんで大丈夫かしら、今回。不安なんだけど……。」

 

アポローン「……まぁ依姫と早苗は真面目な性格だろうし、ヘルメスとアルテミスもやる時はやる。なんとかなる……とは思うぞ。」

 

霊夢「断言しないんかい。」

 

軽口を叩きあう創界神達を見て、霊夢はため息をつくのだった───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───そんな皆を、上空から眺める者がいた。

その人物は楽しそうな顔をして何かと話している。

 

「レミリアが言ってた通りだな。でも依姫もいるのはびっくりしたぜ。」

 

「依姫ってのはあの刀持ってる方か。」

 

「あぁ、緑の長い髪の奴が早苗、紅いリボンの奴が霊夢だぜ。」

 

「やるならお前は誰とがいい?」

 

「あの霊夢とかいう奴とアポローンの2人だ。それ以外あるか?」

 

「だよなぁ、やっぱり私とお前は気が合うぜ。んじゃ、いっちょ行くか。」

 

「オーケー。ハハッ、ウズウズしてきたぜ!!」

 

霊夢達に、2人の刺客が近付こうとしていた。



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