地獄ノ星ノ使者 (地獄星バロー)
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ソノ一・夜の公園

怖い話。又の名を怪談とも言う。このネタに関しては誰もが一度は遭遇するし、友達とはっちゃけてる時に自らネタを披露するときはあるだろう。もっと詳しく行けば、経験する、なんてこともあるもんだ。何?俺が今からそういうのを全否定して馬鹿にしようとしたかって?勘違いするなって、それに恥じることはない。俺だってそういう経験がいくつかある。中には取り返しのつかない結果になってしまったものもある。だがどういうわけか今現在そういう類いには一切襲われてないのでまだ生きてるうちにかつその思い出を忘れる前にここに書き記そうと思う。まぁ暇潰し程度に見てくれ。中にはしょうもない経験もあるからなぁ。


まず何を話そうか…そうだな、この話にしよう。かつて俺がガキだった頃、放課後にいつもT公園に行って友達と遊んでたんだよ。あそこにはとっても多くの思い出が詰まってる場所なんだぜ。怖い思い出がな。(ガキ大将とその一味に目をつけられて水をぶっかけらけまくったこととか沢山の羽が散り、カラスに負けた鳩の無残な死骸を見てしまったとかなっ……。)

 

まずは、俺がダチから聞いた、いやここで遊ぶ連中全員に流れていた噂だったな、その都市伝説とも呼べる話を一つ。

T公園には幽霊が存在する。果たして何故いるのか分からない。だがソイツは明らかに出会った人々に恐怖を間違いなく与えるだろう。

ある晩、パトロールも兼ねて交番の警官がたまたまT公園を見回っていたのだ。

真っ暗な夜に一人、警官は若干の恐怖と引き替えに狭いようで広い、まるで森のような公園を彼は歩き続けた。静寂な荒野、と言ってもいいだろう。深夜の公園には誰一人いない……いない____いない、いない,いない,いない,いない,いない,いない,いない,いない,いないっ………。

警官はただひたすらこの恐怖の空間の見回りを終わらせようと唱文を解くかのように心に唱え続けた。一歩、また一歩、出口のゴールに近づく度、何かがここにいるかのように感じた。怖いと思えば例え木の揺れも背後霊の足音に聞こえるかのように感じた。よくあることだろう、そういう時に限って敏感になる。だが、偶にそういう勘違いだけじゃない者が混じることもある。

ポンッポンッポンッポンッ……。

「!?」

何かが飛んだり跳んだりしてるような音がした。あわてて後ろ振り返る。いや、こっちからはしてないな…奥の遊具があるところが……。怖いけど…万一のこともある。行ってみなければ。

ポンッポンッポンッポンッ……。

ゆっくりと近づく度、その音は徐々に大きくなっていった。まぁ当然か。

遊具のところに着いた。多々ある遊具のど真ん中に10歳少年がいた。暗くてよく分からないが、ナニかを蹴っているようだ。ボールか?一人で自主練とは律儀なことだな。だが流石に親も心配するだろう。やはり俺の勘は当たっていたようだ、とりあえず話を聞いて、早く家に帰ってもらわなければ。トランシーバーを手に取って少年に声をかけようとした。しかしその判断は甘すぎた。

「ねぇ、君。夜遅くまでリフティングとは偉いな!」

 

「本当?ありがとう!僕、いつも練習してるんだけど…上手く出来なくて、それに家、貧乏だし…」

 

「それで夜中に、か」

 

「うん!そうなんだ!お巡りさんもやる?」

 

こんな良い少年もいるもんなんだな。

 

「確かにお巡りさんもやってみたいけど…もう遅いだろ?だから早く帰りぃ……!?」

彼は驚愕した。暗闇にも慣れてだんだん見えるようになってきた。彼の顔を見る。あるはずのモノがない。もう一度見る。やっぱりだ、なにかおかしい。

その時、彼の蹴っていたボールが警官の体に当たった。生暖かい。嘘、だろ……。

握っていたトランシーバーを離し、目の前に落ちたボールに向けてライトをつけた。

人の顔だ。しかも男の子の。おいおい、やけにリアルじゃないか……。

震えながらライトを少年の頭に向けた。

ない。首の上が…その先が…

 

「うぅっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

追うはずの警察が逃げるのもおかしくない。

真夜中に自分の生首でリフティングの練習をする少年に出会ったら。

 

二つ目だ。これは噂じゃなく、半分事実らしいから気をつけて読んでくれ。つっても一つ目程長い話じゃないがな。

ここのT公園に生首リフティング野郎がでた、という噂が広まったのは俺が小2の頃。クソガキな俺、小学校最初の親友である信頼できるOくん、無駄にうるさいSくん、それに引っ込み思案ながらゲーム好きなNくんの良くありそうな三馬鹿と共にこのT公園について調べていた。

それで結局、驚くべき発見が……ある筈もなく、結果的にショボいおもちゃぐらいしか見つからなかった。まぁ当然ながらなことで、それで普通は冷めるもんだけど…

 

なんか調べてるときって、なんとなくググってみたくなるよな。まぁ、この時代にググるやつがまだ無かった様な記憶があるが……。まぁそんなことはどうでもいい。

【T公園 歴史.検索】っと。

正直、安易に調べてはいけないものだなと学んだよ。

そこには、幽霊が出てきた証拠があった。かつて、ここ、T公園は昔、刑務所だったのだ。しかも、そこでそのまま一生を過ごした犯罪者もいるらしい。深い未練を持って。これがリフティング少年と何か関係があるかは当時の俺の脳では理解出来なかった。だが今でも、前者の噂より、後者の記録の方が恐怖を覚えるのは確かだ。供養されているとは言え、公園のすぐ近くには墓場もあるし。

だからそれ以降、俺は定期的にT公園で張り込んだ時に限って怨念のようなものを背後に感じたことが多々あった。嘘じゃないぜ?門限という怨念がな。




いかがだっただろうか。俺の少年時代の名スポット、T公園に伝わる噂と、とある事実は。
ぶっちゃけ、言うほどでは無かったな。
だが、こういうところも含めて俺はこのT公園はい良い思い出ばっかだ。悪くない。
まっ、本当に洒落にならないことが起こったのは、もう少し先の話だがな。
その件についてはまた今度話そうと思う。

また今度、久しぶりにT公園に行ってみようかな。
おっと、失敬失敬。では、次のお話でまたお会いしましょう。


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ソノ二・呪われた女の住む神社

俺のT公園の近くにはご覧の通り怖いことが起きていたのはもう知ってるよな?実はその近くには墓場があってな。マジ気味が悪い場所だったぜ。そのせいかここには供養の為なのかはたまた崇拝のためなのか小さな神社が建てられていたんだ。そうだな、奈々似神社とでも呼ぼうか。ところがどっこいここはさそがし不気味な神社だったんだ。狛犬みたいなのが妖狐でそいつが檻に閉じ込められているというなんとも不謹慎な神社がな。不思議に思ったオレ達は軽いノリで勝手に中に入って調査をしたんだが…どうやらオレ達は入ってはいけないところに入ってしまってたんだ。



俺達が小四ぐらいのことである。T公園で遊ぶ者々には、今、とある噂が囁かれ始めていた。俺がその噂を聞いたのは、小一の頃に海外から日本へ帰ってきた、帰国子女のMくんからだ。この時点で誓って言えることは、コイツは確かに帰国子女だけどそれが何か本筋に関わることは絶対に無いということぐらいだ。

 

「え?奈々似神社?」

 

「あぁ、そうだ。お前も知ってるT公園の近くのちゃっちい神社だ、あそこ、不思議なことが起きるんだってよ」

 

不思議ねぇ……あの神社は小一の頃にその存在を知ったが、確かに不可思議な神社だったな。例えば冒頭にも書いたが、狛犬のような奴が檻に閉じ込められているところとか、お賽銭箱が無く、お参りする際は神社の裏に適当に金を投げるという粗末なものだったり、そして無論神主らしき人の影すらない。もはや管理すらされていないのだ。

 

「それで、一体どんなことが?」

 

「奈々似神社には正体不明のナニカが、厳重に封印されている、そしてそのナニカは長い時日、隙を見て今でも抜け出そうとしている。そのまさに抜け出そうとする時に、奈々似神社から謎のうめき声が聞こえるってことさ」

 

ナニカ……俺は一年前のトイレの件があったので、これ以上変なものに関わりたくないし、そのナニカを見たくなかった。とはいえ、少なからずは興味本意というものがあり、本当にそのナニカが存在するのか、俺は最近出来た新しい友達、Kくん、Yくん、そして前回も登場した友達、Sくんと共に調査を続けることにした。

 

しかし、これもやっぱりなにかヒントが見つかることもなく、唯一こっそりと中に潜入して得たものは、縁の下の奥深くに謎の壺があることぐらいだった。そう、よくよく考えれば、Mくんが言っていた不思議なことが起きるってのも単なる嘘っぱちではないかと疑うぐらいに何にも聞こえなかった。まぁ夜の時間帯は危険なので調査はしていなかったのだが。

 

 

 

 

そうこうして数ヶ月。今は神社の不思議より、T公園で落とし穴を作るのが男子の流行りと化していた。だが、たまたまKくんとSくんが掘っていた穴から謎の箱が出てきた。

 

「なんだこれ……?」

 

みんなが揃ってから試しに開けてみると、なんと中から奈々似神社の書物が出てきたのだ。

世の中困ったら掘ってみるものである。

 

そして、俺達は遂に新しい情報を得ることか出来た。

 

明治時代辺りに書かれたと思われる文字でとても読みにくく、断片的に覚えていることだが…まぁいい、そこに書かれていたものは

 

『一つ、強大な悪霊●●●を奈々似神社に二段封印をしけり。

二つ、これを決して解いては。ならない。

三つ、封印の鍵は二つ、●●の壺と古代の硬貨にあり。

四つ、封印を解いた者、●●●に生涯呪われ続けるだろう』

 

とまぁ、こんな感じだったかな。これは俺達自力で解読した結果だから正確には違うかもしれないし、断片的に覚えているものだからよくわかんねぇや。●ははっきりとは覚えてないんだ、大事なとこだがね。

何しろ、これを学校に持って行ってみんなでこっそり職員室に入ってこの書物とパソコンで類似点があるものを探す為に調べようとした矢先に教師に捕まって永遠に没収されたからな。まぁ当然だ。

多分今はゴミ処理場のチリになってるだろうよ。

 

 

そうこうして手がかりを見つけた俺たちだったが、ツボのやつは俺達では取れないところにあるから、放課後にT公園に集まってその硬貨とやらをみつけよう派と、呪われたら嫌だから流石にこれ以上の調査はやめるべき派に別れてしまった。

 

KくんとSくんは前者派で、俺とYくんは後者派に分裂してしまった。

結局のところ仲直りはするんだけれどね。

とはいえ、こうなってしまったから、俺たちが反対しても、二人はどうせ神社で硬貨を捜しに行くだろう。それだけはさせないがために、Yくんは、SくんとKくんを自分の家に呼んで夜まで遊んでもらうことにした。

 

俺も遊びたかったが、万一の為に、神社で一人見張りをすることになった。

 

しかし、これは大きな誤算となってしまったのだ。

 

 

結果としては、二人とも寄り道せずにYくんの家に来て事無きを得たが二人はなんと学校でガキ大将やらその他面々に「奈々似神社の裏に沢山の金がある、そして中には昔の金もある」という情報を流出しまくり、なんと神社には、沢山のガキ達の輩が群がって我先にと金を探し集めていたのだ。

 

これはまずい。もしこれで古い硬貨が見つかりでもすれば壺に封印されているだろうとはいえ、多分封印の一つが解ける、ナニカが目覚める。そして、そこにある金はお賽銭代わりなんだから、そんなことでもしたら犯罪だ。

 

だから俺が、絶対にさせない。

 

俺は金の誘惑に負けて奈々似神社を荒らす悪ガキ達を一人一人止めにかかった。

 

「おい!これ以上はやめろ !!最悪な事態になるまえに!!!」

 

「うるせぇ!!なんだ、お前かよ。お前に指図される筋合いはねんだよ!!!!」

 

そう言われて殴られる始末。あれは本当に痛かった。他の金を捜してる奴等にも同じような呼びかけたが、結果は変わらず殴られる蹴られる吹っ飛ばされるだった。

これ以上なんとも嫌なループを経験した日はないだろうな。

 

 

そしてまた吹っ飛ばされたこの時、倒れて目を開けた際、見つけさえしなければ……。

 

 

「いってぇ………あいつらぁってヤツは…ん?なんだ……コレ。」

 

頭がボーッとしながら立ち上がり、コレを拾った。

丸いな、お金みたいだ……それも昔の。

………昔!?

 

一回、頰をつねる。だがたしかに俺の手の中にあった。

俺は気付かぬ内に例の硬貨を拾ってしまったのだ。

 

 

……………ヤバイ。どうすれば。

 

そうだ、思いっきり遠くに投げよう。

 

そう思った矢先、不幸なことと幸運なことが同時に起こった。

 

 

「'ゴ''ラ''ア''ア''ア''ア''ア''ア''!''お前達、神社という場所で何を漁ってるんじゃああああ!!!今すぐ戻しなさい!!!!!!!!」

「ご、ごめんなさい……」

 

 

偶然通りかかったジジイが、悪ガキ共に説教。これのおかげで俺の悪ガキを止める目的はクリアしたが、同時に俺まで共犯扱いされそうになったため、封印を解く硬貨を手を離す機会が自然と無くなり、気が付いたら自分がその硬貨を所持したまま、神社を後にすることになってしまったのだ。

 

 

翌日、俺は三人に昨日のことを伝え、もしかしたら封印を一つ解いてしまったかもしれないと伝え、今日の放課後に念の為みんなで見に行こうと言った。Yくんは青ざめたが、他の二人の目は輝いていた。俺はと言うと、半分恐怖、半分興味という不思議な気分だった。

 

 

そして、放課後。

肝試しの様なノリで奈々似神社に来た我ら。

だがやはり物音一つ聞こえない。

 

良かった……やはり封印は解けてなかった…。

 

 

 

 

 

そう油断していたその時である。

 

奈々似神社の横の蔵のガラス越しから、俺は確かにナニカがいるのを感じた。

はっと蔵の方を振り返る。

そこにはなんと、死装束を身に纏う血だらけの女がガラスをドンドン叩いていたのだ。

 

震える体を横に動かして友達を確認する。

だが他の三人は女に気付いていない用にボーッとしている。もしかして見えてるのは俺だけか?

やはりあの硬貨を手に入れてしまったから?

 

ヤバイ

このままじゃ……

 

 

 

 

 

 

俺は友達を連れて全速力であの場から逃げてきた。突然の俺の行動で戸惑う三人に事情を説明した。やはり女は他の三人には見えていなかったらしい。

 

それを意味することは、俺は封印を一つ解いてしまったということ。

そうすればあの女が俺にだけ見えるようになり、蔵の中に閉じ込められていたのも説明がつく。

 

 

後日、これ以降、俺達は奈々似神社に行くことは無かった。

俺はせめてとばかり、SくんとKくんが掘っていた例の書物が見つかった穴に硬貨を埋めた。

これで封印が出来たかどうかは分からない。

今、この瞬間も俺は呪われ続けているのかもしれない。

 

 

 

分かることは、迷信って奴は本当に存在するってことだ。

 

 

 

 

今もあの場へ行こうとすると甚大なる拒否反応と頭痛がする。

 

 

この事件はまだ解決していないという証拠だ。

だが俺はこの先を知りたくない。

 

 

 

 

君は、迷信を信じるかい?

そして、全てを知る覚悟はあるかい?

 




どうだったか?
これが前回言った本当に洒落にならないことってやつだ。
この事件は、俺の生涯の中でもかなりのトラウマものだ。それに未解決。

本当に気味が悪いぜ。

こんなの、夢であって欲しいもんだ……。

でも、悪夢になるのも嫌だしなぁ…あの時のように。
おっと、これはまたの機会に。


ではまた、お会いしましょう。


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ソノ三・炎の夢

夢ってやつは残酷なものだ。時にいい夢を見れば、時に悪い夢も見る。俺も怖い夢を見たことはあるが、何よりも冷えっとしたのがある。正夢だ。まぁ、なんとかほぼ夢通りには行かなくて本当に良かったけど、それでも俺にとってみりゃあ怖かったもんよ。夢ってやつは残酷なものだ。時にいい夢を見れば、時に悪い夢も見る。俺も怖い夢を見たことはあるが、何よりも冷えっとしたのがある。正夢だ。まぁ、なんとかほぼ夢通りには行かなくて本当に良かったけど、それでも俺にとってみりゃあ怖かったもんよ。ぶっちゃけノンレム睡眠だかレム睡眠だかがその日の印象深い出来事や昔の記憶を引っ張りだして整理してるのが混ざるのが夢の真実らしいけどな。


いつだろう。うんと昔のことだからな。おぼろげな記憶だが、恐らく奈々似神社の後に見た記憶がある。

気が付いたら俺はあのT公園にいた。とりあえず前に一歩進んでみる。

しかし体が動かない。

 

このトリックは簡単なことで、夢を見ているということなのだが、この時はご覧の通りフィクションを信じる小学生な俺なので、残念ながら夢だと気付けなかった。

 

もしここで夢だと気付ければ事態はなんとかなったかもしれないだろうよ……

 

 

T公園の様子は、これはまぁ溜息がつくほどいつもの連中が遊んでいて、当然ながら俺の友達も遊んでいたよ。

しかしその数分後、何事も無かったかのように思われていたT公園から、いつの間にかここは燃え盛る火の森林と化してしまっていたのだ…。

 

ヤバイ…死ぬ…俺は一目散に逃げた。逃げに逃げ、やっとのことさで公園の外に出た。ふぅと一安心…出来るわけがなかった。俺の周りにも逃げ切った人が安心しながら様子を見ているが、そこには俺の二人の友達だけはいなかった。

 

 

自分だけ一人逃げた罪悪感から、俺は逃げた道を戻り、その二人、前回も登場したK君と小学校に入学した時、一番最初に親友となった心の優しいO君を助ける為にがむしゃらに走った。

 

 

しかし、それこそが最大の罪悪だったのだ。

 

 

二人を助けに来て見た光景…それは、なんと心優しいはずのO君が、K君を盾にして炎から逃れ、一人公園から逃げ切っていたのだ。

 

 

 

 

Oが友達を犠牲に…?

 

嘘だろ…?

 

おい、K!

 

大丈夫か!!

 

早く立って逃げっ……

 

 

その時間帯は突然消失し、気がつくと俺は何事も無く、小学校に登校している最中だった。

夢ってのは、直ぐに忘れるものだ、俺はさっきまでの事をすっかり忘れていた。

 

 

学校に着く。今日もまた友達と会って一杯遊ぼう。靴を上履きに履き替え、校舎をダッシュで駆け抜け教室に着く。

 

俺のいつもの座席。横のフックにランドセルをかける。隣の席を見るが、なにかおかしい。そこにはあるはずの親友・K君の机が無かった。

 

「おい、なんでKの机が無いんだよ!」

 

すると一人が児童の答える。

 

「忘れたの?昨日の火事のこと。Kは火事に逃げ遅れて亡くなったんだよ。」

 

 

 

 

Kが死んだ…?

 

記憶を必死に辿る。そんなわけ…そんなわけ…しかし、あの時のO君の行動が無情にも脳裡をよぎる。そう、だったな…。T公園、燃えたんだっけ……………

 

 

 

 

目を開ける。暗いな。しかも横になっている。寝てるのか?俺も火事の犠牲に?いや、ここは病院じゃねぇ、家の寝室か?そうか、ここは俺の家。ってあれは夢かぁ!?

 

翌日、夢で安心したような、しかしなんかモヤモヤしながらいつも通り、朝御飯を食べる。そして今日の新聞を確認したが、やはりというか当然というか、公園が火事になったという記事らしい記事は何一つ無かった。

 

 

 

安心しながら登校をし、いつも通り、学校に着く。今日もまた友達と会って一杯遊ぼう。靴を上履きに履き替え、校舎をダッシュで駆け抜け教室に着く。

 

 

俺のいつもの座席。横のフックにランドセルをかける。隣の席を見るが、なにかおかしい。そこにはいつも俺より先に登校しているはずの親友・K君の姿は無かった。

 

「おい…、なんでKがまだ来てねんだよ…」

 

すると一人が児童の答える。

 

「あー今日K君休みだって。隣のクラスの子が連絡しに来てた。急に高熱に侵されてるんだってさ」

 

 

高熱………?熱い……?火……?炎………?火事………?

 

心のもやが理解できた。これ、50%は正夢じゃんかよ……。

 

 

 

その日の放課後の出来事である。T公園で、ガキ大将気取りのお調子者、Rが新聞や木の枝を地面にばら撒き、親からパクったライターを使って、燃やしまくった為に、ある意味公園は火事になった。小さな火事だったが。すぐに大人が駆けつけて消火してくれて本当に良かったもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3年以上後のこと。小学校の連中全員が揃いに揃って近くの中学校に入学した。

 

その日から心優しいO君の性格は他人を盾にして自分だけがいい思いをするような、自己中心的な人間へと変貌していた。

 

Oは入学してすぐさま俺やK君らとは縁を切り、ずっと仲直りする事が叶わぬまま、俺達は大人へとなってしまった。

 

 

 




たった一つの夢で、後戻りすることが出来なくなる事態へと発展してしまった。そこには善意も悪意も無い。では、一体どうすれば良かったんだろう?今からどうすれば良いのだろう?もう今ではあまり笑えない思い出となっている。そこで聞きたい、そうお前だよ。

夢を見るって良いことか?

俺にはそんなもん見て現実逃避する暇会ったらさっさと寝て脳を休めてやれって話だと思うが、今の読者には共感出来るだろうね。

それではまた次のお話でお会いしましょう。



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ソノ四・花子さんの逆鱗

世の中にはやってはいけないことがある。
犯罪を犯すこと、約束を破ること、子供の笑顔を壊すこと…そして、安易に迷信を実行することだ。
俺はその結果、色んな意味で取り返しのつかないことになってしまったのだ。
みんな、学校のトイレが幾ら不気味でも絶対やるなよ?
『はーなこさん、遊びましょ!』



この事件の時系列は、2話と3話の間だったような、今となってみればどうでもいい話だが。

この時期、学校では奇妙な噂が流行っていた。

それは、学校の三階の男子トイレの三番目の個室に花子さんがいるという噂。C君というお調子者が起こしたブームだ。しっかし、冷静に考えればめっちゃ汚い男子トイレに少女の霊がいるはずもないのだが…。

 

そんなもんがいるわけがないと侮りきった俺と知り合いのH君にとっては今となっては大きな過ちとなってしまうのだ。

 

「なぁーなぁー花子さん知ってるー?」

 

「あぁ、あれ有名だよね!ウチらの学校にもいるのかな」

 

「さぁね、でも、花子さんは色んな手口で現れるらしいから、あり得るかもよー」

 

「あぁ、そうだなぁ…でも、試す気にもなれねぇし…」

 

これはまぁ、なんて幼稚な会話なんだ。そんな意味ワカンねぇ輩がいるわけねぇってのに。

 

「あぁ、俺もそう思う」

 

そう答えたのがH君。

 

「おぉ、そっか!だよなぁ!あれさ、いるわけねぇもんなっ」

 

俺とH君は迷信を信じないことに意気投合した。

俺達の話は変な方向に盛り上がり、調子に乗った俺は付近にいる迷信厨な奴が持っていた花子さんの伝説がなんたらかんたらの本をひったくって、適当に選んだページを見せた。

話の話題になっていた本を突然ひったくられたので、迷信厨達は不思議そうにこっちに目を向ける。丁度いい、こいつ等にも証明させてやるよ、迷信なんてねぇってな。俺はつい、こんなことを言ってしまった。

 

「じゃあよっ、この本に書いてあるコレ。休み時間に試してみようぜ!」

 

「ああいいぜ!えっっと、花子さんがいるトイレの下の階のトイレから『はーなっこさん!遊びーましょ!!』と叫ぶ。すると花子さんがいる個室の丁度下、つまりその階のトイレの天井からどこからともなく大量の水が降ってくる、か。三階の下の階、即ち二階のトイレでいいな」

 

「おう!えっーと他には万一多量の水が降ってきた際、仮に少量であっても、その日の夜に、家のトイレが花子さんに取り憑かれるだろう。そうなると、夢の世界で目を覚ますまで追いかけ回されるか、深夜の家のトイレにトントントントン…と本人が心から反省するまで叩き続けるだろう。その為、やる際には一切の注意を払ってやるように、っか」

 

「楽勝だな」

 

「ああ」

 

その休み時間。俺とH君は二階のトイレで本に書いてあった通り、『はーなっこさん!遊びーましょ!!』と叫んだ。するとどうだろう。トイレの天井からどこからともなく大量の水が降って…は来なかったが、代わりにチョロッと一粒、下水が落ちただけだった。

 

「うっわぁっw花子さん呼んじゃったよwww」

 

「くっっっっそwwwwwそれなwwマジヤベェwwww」

 

やっぱり嘘だったなと俺達はふざけていた。ふざけていられたのはここまでだった。

 

ちょっと戻って思い出して欲しい。

 

 

 

 

『…………仮に少量であっても、その日の夜に家のトイレが花子さんに取り憑かれるだろう。』

 

 

 

 

 

「なぁなぁ、どうせだし上の階に行って花子さんがどんな面してるか見に行こうぜw」

 

「あぁ、まだ時間はあるしな、花子さんを拝ませてもらうよw」

 

俺達はそのまま上の階、即ち三階のトイレへと向かった。

 

「時間ねぇしさっさと終わらせようぜ」

 

「おう、ん?誰か一人個室にこもってんな」

 

「おっ、この中に花子いるんじゃねwww」

 

「だなww覗いてみようぜw」

 

世の子供達、これは学校内だから許されるけど社会人になってからやれば警察沙汰になるので決して真似しないように。

 

俺達は鍵が掛かっている三番目の個室の隙間を除いた。

当然のようにそこには大便している児童が…いなかった。

あれ?と思って下から覗く。足が見えない。じゃあなんで鍵閉まってんだよ。

 

もう一度隙間から俺達は覗いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには恨めしく白い手を伸ばしながら白睨んでいる少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。」

 

「うっ…嘘だろ…」

 

「うわああああああああああああああ!!!!!!!!!!!?」

 

「やっ…逃げろぉっっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は教室に逃げ帰って、このことを見なかったことにした。あんなのは嘘だ。俺達はそんなもん見ていない。ここには来てなかったことにしよう…と。

 

 

 

 

しかし、相手は幽霊。そんな甘い曖昧な回避が通用するはずが無かった。

 

 

 

 

その日の夜。俺はどう言うわけか、深夜四時くらいに目が覚めてしまった。いっつもそんな時間帯には起きてはいない俺にとってそれはとてつもない違和感を感じた。

 

なんでこんな時間に起きてんだ、俺。

 

すると、電気も付いてないのに、寝室の隣のトイレから、音が聞こえた。

父さんか母さんが入ってるのかな。

 

 

しかし、両親はちゃんと寝室で寝ている。

 

じゃあ、なんだよこれ。

 

そう怯え始めた時、遂に聞こえてしまった。

 

 

 

 

 

 

トントントントントントントントントントントントン

 

 

いないはずのトイレからドアを叩く音。それは時間が経つに連れどんどん大きくなっていく。

 

俺はこの空間にいることが怖くなった。

 

早く音よ止まれ…

 

 

 

止まれ!

 

 

 

 

止まれ!!

 

 

 

 

止まらない。

 

こんだけ大きい音なのに、両親は一向に目覚める気配がない。

 

どうすれば…どうすればいいんだよ……

 

 

 

落ち着け落ち着け俺!

 

思い出せ…あの時読んだ本には何かこの状況を打破する方法が書いてあった筈だ。この恐怖のサイクルから抜け出す切り札が。

 

 

 

 

思い出せっっ!俺!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあよっ、この本に書いてあるコレ。休み時間に試してみようぜ!」

 

 

「おう!えっーと他には万一多量の水が降ってきた際、その日の夜に家のトイレが花子さんに取り憑かれるだろう。夢の世界で目を覚ますまで追いかけ回されるか、深夜の家のトイレにトントントントン…と本人が心から反省するまで叩き続けるだろう。その為、やる際には一切の注意を払ってやるように、っか」

 

「楽勝だな」

 

「ああ」

 

 

 

心から反省するまで、か……俺のモラルに反するが……これしか………これしかねぇ!!!

 

 

 

 

 

 

 

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

 

 

 

 

 

死ぬほど心の中で言いまくった。もう泣きそうだった。

 

 

 

トントントントントントントントントントントントントント…。

 

 

 

 

 

ようやく、音が止まった。

 

良かった…良かった…

 

もう布団は汗がぐっしょりしていた。しばらくして、ふうと一息してから再び眠りについた。

もう二度とあんな真似はしないと心に誓った。

それ以降は花子さんと学校で出遭うことは無かったし、自分の家のトイレが呪われて扉を叩く音が鳴り響いたことはもうない。むしろ大人になってからは違う意味でトイレにお世話になってるしな。

 

 

その後、H君とその後のことを話す間も無く、月日が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中二の頃。久しぶりにH君と同じクラスになった。

相変わらずH君は性格も変わっておらず、今も迷信を馬鹿にしているだろうと思い、久しぶりにあの頃のトイレの話をした。

花子さんに自分ちのトイレが呪われたのは被害妄想の強い俺だけだろうと思っていたこともあるしな。

しかし驚いたことに彼にもまた、花子さんによる制裁を下されていたようだ。

彼は夢の世界で、花子さんに追いかけ回され、追い詰められて殺されるちょっと前に目が覚めたと言う。彼もまた、あれ以降迷信というものは馬鹿にしては行けないものだと語っていた。

 

誠にその通りだな、と思い、今日もいつも通りの普通の自分の家のトイレに感謝をしながら朝昼晩使う俺がいた。




いかがだったかな。
今から思い出してみれば、古くから伝わる日本の有名な幽霊の花子さんに出会えたのは現代人の俺にとってはかなり貴重な体験だったが、もう二度とあんな思いはしたくねぇなぁ…例えどんなに古い迷信でも、冗談半分でやると罰が落ちるから気をつけてくれよ。
それではまたお会いしましょう。


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ソノ五・悪いことはさせねぇよ

ピンポンダッシュというものをご存知だろうか。
世の小学生児童のいたずら業界の大目玉であり、その中の勇気ある数人がホントにやってしまう悪質ないたずらである。ゲームルールは見知らぬ一軒家のチャイムを鳴らしたら速攻逃げ、出てきた人を困惑させて時間を無駄にさせるというもの。
大人になった今に思えばタチが悪いものであるが、やはり当時の好奇心旺盛な心というものは決して理解出来ないものではない。

しかし、大小構わず、悪いことはやってはいけない。
今回は、そんなちょっと不思議な話をお見せしようじゃないか。



 

 

 

 

 

この物語に関してはそこまで鮮明に思い出すことは出来ない。

何しろ小1辺りの話だし、詳しく語れるもんじゃあねぇ。

だがしかし、忘れちゃあいないぜ。

あの戒め方は人生の中では群を抜いたもんだったからな。

 

 

時は流れ、五時間目の授業が終わって下校している最中のこと。

名前はもう覚えていないが、当時大切だった友達の2人…とりあえずAとBとするか。

その二人と共に、これまた記憶にないと言って等しい下校道を通っていた俺達3人。

 

確か…小さな森を抜けて、左右双方に一軒家が三、四つ位あってな。その内の二つ目辺りに子供でも容易に押せるほどの呼び鈴があったんだ。

 

そこで、ガキ思考で尚且つちょっとしたスリルを楽しみたい我ら3人の利害は一致し、この家のピンポンダッシュをしようという話になった。

 

 

「よぉし、じゃあじゃんけんで決めようー!」

 

「さんせーい!」

 

「いくっぞぉー、最初はグー、じゃんけん!!」

 

 

「ポン✋」

 

「ポン✊」

 

「ポン✌️」

 

 

「あいこか…、よし!あいこで!」

 

「しょ✌️!」

 

「しょ✋!」

 

「しょ✌️!」

 

 

結果的に、Aが押すことになった。

 

「くっそぉ…俺が押すのかぁ…」

 

「どんまいどんまい」

 

「押したら、すぐにあのコーナーまで猛ダッシュだぞ!」

 

「わかった。じゃあ押すぞ…あー怖い、緊張するー」

 

 

神は既に、俺達の命運の分岐点を遮断させていた。

最早俺達は抗うことは愚か、その事態に気付くことすら不可能だった。

 

 

 

 

「はやくおせよー」

 

「わかったわかった!じゃあいくぞー!」

 

「おう」

 

「……いくぞー!」

 

「はーやーくー」

 

「はいはい。ふぅー。よし、押すぞ!」

 

Aが手を伸ばそうとした矢先だった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ……これは…!?」

 

 

空気が重い。

どんよりしている。

 

 

「動き…辛ぇ……」

 

 

妙に彩度が暗い。

 

 

 

「絶対ヤバイよ!これどうしよう!!」

 

「そんなこと僕に言われても!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイ…。

 

 

 

 

 

!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ピーンポーン』

 

 

 

 

「えっ」

 

 

 

 

静寂な空間を壊した一つのチャイムが響いた。

 

 

俺はAを見つめた。

しかし、あいつは押してないどころか、この状況に驚いている。

それはB、そして俺も同じことだった。

 

 

 

 

誰も触れていないのに、呼び鈴のチャイムが鳴り響いたのだ。

 

 

 

誰が呼び鈴を鳴らした?

 

誰だ?誰がやった?

 

 

 

 

 

 

 

A、お前は本当に押してないんだよな?

 

B、お前はどうだ?

 

それとも俺か?

 

 

 

 

 

 

違う。分かり切ってることじゃねぇか。

誰も押してねえ。

 

誰も。

 

 

 

 

『ピーンポーンピーンポーン』

 

 

 

また鳴った。

 

 

 

「ちょっとなんなのよアンタ!子供の癖に何回もチャイム押して!!………あれ?3人?」

 

その家に住むおばさんがついに痺れを切らして扉を開けた。上を見ると防犯カメラが付いていた。俺達は押してないが、結果的にもうゲームオーバーだろう。だが、そのおばさんも何か引っかかっている。

 

「……さ、3人って?」

 

「ええ、映像には確かに一人しかいなかった筈なのに、おかしいわねぇ……じゃないわ!!アンタ達!ピンポンダッシュするんじゃないわっっ!!!」

 

「ご…ごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺もう、ピンポンダッシュしようなんて考えないことにするよ」

 

「そうだな…あれは絶対おばけだよ、おばけがやったに決まってる!」

 

「おばけ……悪いことはさせねぇよってか…。そうだな」

 

 

こうして俺達はあの道を後にした。

 

 




お化け、妖怪、幽霊、宇宙人………人類を絶望へ誘う謎の存在は数知れない。
だが忘れてはいけない。その存在達が決して単なる悪といい答えで片付けられないということを。あのチャイムを鳴らした存在は、きっとそいつなりの正義を持ったやり方だったのだろう。今回はかなりマイルドなやり口であっちのがせめてもの救いだ。
しかし、人類はいずれは善と悪の構図を崩さなければいけない時が来るのかもしれない。
それでは、またお会いしましょう。


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ソノ六・雪山に潜み続ける少年

さて、テコ入れ回が終わったところで、今回からは新たな物語を見てもらおう。
時は進み中学一年生の頃。俺達は●●県にて修学旅行でスキー合宿に参加したのだが……。
どうやらこのスキー場、どうやら洒落にならない曰く付きだったみたいだ。



その日、俺たちは貸切バスに乗って合宿場へと向かっていた。

 

事件は、この時点で既に始まっていた。

 

俺がいた中学のクラスはみんな体が強く、健康体そのものなクラスであり、他クラスがインフルで行けなくなっても俺達全員は平然として合宿に行けたんだ。

 

 

 

 

俺の隣の席の一名を除いて。

 

 

 

 

 

 

そいつ、Iは、俺と同じ部活で、嫌味をよく言うが、何だかんだ言って共に同行してくれる俺の親友の一人でもあった。

そんなIがまさか欠席するとは夢にでも思ったことは無かった。

なんせ前日まで学校で楽しく話してたんだぜ?そりゃあ誰だってビビるわ。

 

 

 

後から分かった話になるのだが、Iは誰からかもらってきたのか、インフルエンザにかかっていやがった。

 

 

馬鹿どもがスキーすらもまだ始まっていないのに揃いに揃ってどんちゃん騒ぎをしている中、俺は微かに嫌な空気を感じていた。隣が隣だっただけに、ちょいとばかりいやーな予感がしてたんだ。

 

まぁ結果的には行きは何も起こらずに無事に宿泊先についたのだが、問題はまだ山積みのままだった。スキーのグループ班に分かれて、専属コーチどもと共に愉快なスキーをするのだが、なにかがおかしい。

俺の知らない奴が一人いる。

確かにここで初めて出会った輩もいたが、そんなんじゃねぇ。最初はそこにいなかった筈なんだが…。

 

 

「都市伝説?」

 

「ああ、ほら、最近さー物騒な地震に放射線と寒い地方は色々あるだろ?

この雪山にもワンチャンなんかあるかも知れねぇって、どーゆー山かググってたんだけどよぉ、コイツがヤベェもんなんだよ」

 

 

「おいマジかよ!」

 

俺はスキーのリフトで移動の最中に、同じ班で友人になったK(小学校編にいた奴ではない……筈)と都市伝説やらなんらで盛り上がっていた。最初は某モンスターコレクトゲーム、それがやがてリアリティを増してこの話題になったのだ。

 

一方、ボロけたアナウンス音からは鯉ダンスやらなんやらで話題になった奴が引っ張りだこなのか、そいつの歌が意味ワカンねぇほど流れていたが、俺らの話題には一切流れなかったって訳さ。

Kがその全貌を語り出す。

 

「少し昔の話なんだが、この雪山で遭難して行方不明になった少年がいた。そのガキを探そうとレスキュー隊と村の人々は躍起になったがその行為も虚しく結局は見つからなかった。だがしかし、行方不明になってから2年、とうとうそいつの親は病気でくたばり、人々も徐々に捜索を諦め始めて、とうとうガキが今も生存している確率は完全に死んだ。奴に好かれた人間の集団の中に混じってひっそりと元の家に辿り付こうって話だ。」

 

「いかにも、って感じだな。まっ、俺らにソレがつかねぇことを祈るばかりだな」

 

「そうだな。おっ、そろそろ降りるぞ、しくじるなよ」

 

リフトの降り場が見えてきた。小さなスキー場の為、スタッフの一手は足りんようだからな、しっかり降りなければ。

 

その時だった。

 

 

動けねぇ。

 

体が誰かに引っ張られてるみたいだ。

 

 

まさか、まさかな……足がすくんでるだけだろ。

 

 

くっそぉおおお!!

 

 

体よ動けぇぇぇえええ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛てっ!!」

 

 

 

 

「おーい……ミスんなって言ったろ……俺までズッコケタじゃねぇか……」

 

 

「悪りぃ悪りぃ……ははは」

 

 

ギリギリのところで身体が動いたことで、K共々ぶっ転びを犠牲に、なんとか帰りのリフトを乗らずに済んだ。

 

立ち上がって背後を見る。

まさか、まさかな………。

 

 

 

その後、なにかがいるような気配がしつつも、なにも起きずに本日のスキーが終了し、部屋に帰ってきた時である。

 

 

「なん………だと………」

 

 

 

俺の部屋内には8人がいたんだが、5人に減っていた。

聞けばIからもらったインフルエンザが発症しちまったようだ。。

しかも恐ろしいことに、保健部屋行きを宣告された3人は、バスで騒いでいたトップ3だ。

こいつはぁ帰りが怖いな。

 

一応他の班も確認したが、それなりに脱落者が続出しつつも、他クラスは一切インフルで激減したような様子は微塵もなく、どうやら俺らのクラスで突然インフルエンザが流行りだしたみたいだ。タイミング悪過ぎだな。

 

 

 

 

 

翌日、スキー二日目。

 

やはり奴はそこにいた。

目では見えなくても、感じる。

きっと都市伝説のガキだ。

 

奴は俺の背後にいる。都市伝説通りに元の場所に帰るために俺らを利用しようそしてるのか、はたまた俺の背後霊になりたいのか知らんが、どっちにしろ俺にとってメリットは無い。

 

だが後ろを見ては行けない気がする。

 

奴にも気付かれないようにしなければ。

 

 

 

 

 

 

このスキー場で最も高い雪山。

 

「いぇえええええい!!」

 

皆爽快に滑りながら、俺だけは背後霊のお陰で重量オーバーとなって板がスノーブーツが外れる寸前でとても楽しめているとは言えなかった。

 

これは割とやばい。

 

 

やばいって………言ってんだろうがあああああ!!!!

 

 

 

俺は後ろを見てしまった。

 

そこには、筋肉と血でも吸い取られたのかの如くガリ痩せた人とは思えないちんちくりんな物体がボヤけながら俺の板にのっかっていた。

 

「ソレ」と目が合ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!大丈夫か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとか……な」

 

 

 

 

そいつ気付かれた俺は凄い勢いで突き落とされた。

板が外れ何十回も回転しながら下落し、転びに転び、身体中に雪がまとわりつくのを体で覚えながら、舗装されてないルートのところに落ちる寸前のところで止まった。それに気付いた班員とコーチが気付いて駆けつけてくれたことにより事なきを得た。

 

これ以降、奴はもう現れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

帰り道。バス内にいたクラスのメンバーは半分以上も減っていた。

なんとそいつら全員インフルエンザにかかり、保護者と共に先に帰っていったのだ。

 

事が事だけに重い空気の中で、何故か担任が持っていたDVD「映画ドラ●もんの●太の海底鬼岩城」をバス内で見ることになった。しかしこれが割と面白く、最終的には涙あり笑いありの応援上映と化してある意味盛り上がったので良い合宿になったってことにするか。

 




いかがだったろうが。皆さんも、スキー場に行き、何か気配を感じたら、何があっても決して後ろを見ないようにしていただきたい。え、何故かって?だっせ、少年はまだ雪山に潜み続けているからな。
それではまたお会いしましょう。


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ソノ七・宿場の人形

合宿って二度と行きたくねぇもんだよな。なんつったって、嫌というものをほど運動したり勉強するし、住宅時間が全然ねぇし、飯はマズイし部屋は汚いし…でも、変な置物を置くのだけは流石にやめてくれよ…。いやな目にあっちまうからさ。


 

 

舞台はどっかの村、時系列は小学生高学年のこと。つまるところ、小5くらいの出来事かな。

 

俺は当時小学校公認のフットサルクラブに所属していて、厳しいコーチや共に戦うチームメンバー達と一緒に、ガンガンギギンにサッカーに夢中になって練習の日々を送っていた。

 

当時としては、嫌な思い出ばっかりだが、今ではあの頃が懐かしい。

 

 

そんな中、ガチで思い出したくもないって言うと少しオーバーだが、嫌な思い出があったあの日。

 

それは夏合宿の日のことだった。

 

 

 

 

 

その日はまるでサハラ砂漠に来たかの如く蒸し暑く、太陽は俺達の意識を朦朧とさせようと地球に近づいてるんじゃねぇかと疑いたくなるほどTHE・summerな天気だった。

 

それなのにも関わらず、名前も知らない山の中で、訳の分からんほどデカイコートをぐるぐる走り、意味が分からないぐらい日陰ポイントを設置してあげようとしない木の下で、俺はゼェゼェ汗を垂らしながら給水をしていた頃だった。

 

それにしても話は変わるが、給水と休憩とは、天地の差がある。

給水は水を口に放り込むだけで休ませてくれない。要は無理に生かされてるみたいなもんだ。

変わって休憩はゆっくりと体を休めることが出来る。まさに数少ない平和なひと時って訳だ。

 

そんなわけで、俺は飲みづらい水筒からスポドリを口の中に投げ込んで、晴れてる日なのに雷を落としにくるコーチ怒りのダッシュロード&楽しさの抜けたサッカーをし続けていたもんなんで、まさか夜にあんなことになるとは考える暇も無かった。

 

ちなみに俺は、サッカーは好きだがあくまでエンジョイ勢。ガチでやるのは本当に辛かったし、おまけにチームメンバーは運動系男子特有の外道衆が大半でしかも同じ同級生。

入ってしまったのを心底後悔し続けていた。

 

まっ、それでも最後まで抜けずに卒団出来たのは、本当に良いピリオドを付けられたと思う。

 

 

 

話が逸れちまったな。その後、昼のメシマズタイムを乗り越え、休憩がてらメンバー全員で強制散歩という名の山ダッシュをさせられた。小学生にそんなところ走らせて良いはずがないから今でも訴えてやろうと計画している俺だが、それもそのはず。

 

 

この合宿に行く前にお袋から嫌な話を聞いていたからだ。

数年前、この山散歩の道中で崖から落ちて亡くなった先輩がいる。

 

 

そいつの妹が俺の同級生で、そいつの兄は俺のお袋の知人であった。

 

つまり割と最近の話。

 

俺は初めて小学生ってのが現役で死ぬなんてことがあるんだと、無性に不謹慎な感想を抱いていたが、それは単なる死ではないのではないかと少しばかり思っていたわけだ。

 

 

 

仮にその亡くなってしまった先輩をAとしてやろう。

 

Aは果たして、単純に崖から落ちて死んでしまっただけなのだろうか。

合宿場は実際怪しさ満点の安全性0なところだ。

それに、俺の周りのチームメンバーはさっきも説明した通り、まるでダメなガキンチョばかりだ。

 

周りもそれなりにギスギスしていたわけだから、Aにも何か計画的な、はたまたホラー的な何かが絡んでいたに違いない。

 

 

 

とかなんとか思いながら散歩は終わり、夜が来たわけだが、本当に最悪な深夜だった。

 

 

 

真夏だというのに夜はバカ寒く、合宿だというのにメンバーを部屋分けせずにそこら辺の汚いリビングにポイされて、狭く埃臭い布団を敷いて、全員おやすみ絶対寝ろよ的なアレをさせられたのだが。

 

 

 

 

誰一人あいわかった!遊ばずに寝まーす。なんてことはねぇんだ。

 

 

 

 

 

 

バカ1号から10号ぐらいまでが突然の乱闘を始めるわ割と早く寝た隣の人が蹴飛ばしにくるわ、突然の女子の口説き方を自慢しにくる奴がウザいわ周期的にコーチの見回りでとばっちりを喰らうわでまぁ散々なこった。

 

そして深夜3時になり、日頃のストレスでなかなか寝付けない俺と、数少ない選ばれたオール勢のバカどもがコソコソ話していた時、事件は起こった。

 

 

 

 

「なぁなぁ、あいつ朝にシメね?」

 

「いいなそれwてか今やらね?」

 

 

とかなんとか言ってる馬鹿Nと馬鹿Sの目の前に、突然どこからともなく雛人形が落ちてきた。

 

 

「うわっ!!!なんだよ……これ……」

 

 

「うっそっ………」

 

 

恐らくその時に起きていたのはチームメンバー30人の内、俺を含めて10人。

突然の人形の乱入に、辺りは静まり帰った。

 

「人形……?どうして……?」

 

「これ、呪いの人形とかじゃあないよな……」

 

「でも、どっから落ちてきたんだよ……」

 

全く見当がつかなかった。唖然としながら皆が少しずつ騒ぎ始め、何も知らずに起きてしまった者は怖話でもしてるのかと思い込んで突拍子も無くミ○キーの都市伝説をし始める始末だ。

しかし、お蔭で話が段々どうでもいい方向に進んでいった。

 

俺は一人でその落ちてきた人形を拾い上げ、まじまじと観察していた。

 

女、子供、おかっぱ、和製。いかにもなシチュエーション。

 

何か見ていると少しずつ頭がグラグラしてくる。だがそんな馬鹿なことはありえんだろう。

 

普段以上に夜を起きてるからだ。

 

しかし。

 

『ひゅるひゅるひゅる………』

 

 

「うおっ!?」

 

俺の大きな声で、皆が再び人形の下へ注目する。

 

 

なんとその人形の髪の毛が伸びたのだ。

 

 

 

「うっ………そっ………」

 

 

 

 

「うわあああああああっっっ!?!?!?!?」

 

 

 

 

それ以降、俺は布団に勢いよくダイブし、皆もそれに続いて毛布から手足一つ出そうとせずにうずくまって夜が明けるまで待っていたことを一昨日のように覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

朝。

 

確かこの日は日曜だったような。

 

 

早朝ということで再び山散歩に駆り出され、いやいや走ることになったが、昨日のこともあってみんなのテンションは激的に低かった。

 

 

 

それを裏付けるかのようにその少し前、パジャマをユニフォームに着替える最中、皆が人形を探そうとしたが、この部屋のどこにもなかった。

 

流石に一夜明ければ少しはまだ笑い話に出来るし、夢かなんか見てたんだろって解決出来たはずだったが、人形は思わぬところで見つかった。

 

 

 

 

それは散歩コースの崖崩れのところだった。

 

 

「あ………嘘だろ……」

 

 

 

そこには不法投棄されたゴミがポツポツとあり、更に小さな看板に文字が書かれていた。

 

 

その文字はというと、

 

 

『この村には古い言い伝えがあり、悪しきことを口に出すとマグンに呪われます。夜、その者を試し、朝が終わる頃には亡くなってしまいます。寛容な御心を常に持ち続けましょう』

 

 

 

 

 

 

その後、昨日人形が落ちてくる直前に会話していたNとS(磁石ではない)は崖から落ちかけたのは言うまでもないが、ついでに俺も帰り道にずっ転んでしまったのは決して人形みたいな奴に呪われていない偶然だと今でも信じ続けている。

 

 

 




いかがだったかな。人形という者は、幸せを感じさせることもあれば、恐怖を感じさせることもある。こんな少年時代を切り抜けたからこそ、ナレーターとしてはガサツな俺だが、今では一人の人間として成長出来たのかもしれない。そんな俺からの教訓だ。人形が宿にあったら、安易に観察しようとするのだけは辞めような。
それでは、またお会いしましょう。


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ソノ八・終わりなき遊び

卒業式のあと、クラスみんなではっちゃけてレストランに行って食事をして、夜まで遊びまくるのは俺の学校だけではないはずだ。だか気をつけて欲しい。そういう油断している時こそ怖い状況に出会うんだ。みんな、レストランで出されたからってなんでもホイホイ食べるなよ?


 

俺はこの春、高校を卒業した。だからって俺の現在の年齢を特定するのは早計だからな。それは置いといて、高一のある日の一件以降まともに霊感を感じなくなっていた俺からすれば、幽霊絡みの事件から救われたのか、はたまたネタ切れしてるのか、よく分からずにスランプに陥っていながらも受験勉強からようやく解放されたわけで、久しぶりに気楽な気分へとなっていたもんだ。

 

とは言え、決して自分の高校生活が嫌いだった訳じゃない俺からするとなんともまぁ色々あったなぁと感慨深いもんで、結局これで良かったのかなと納得している俺の姿がそこにはあった。

 

これから社会人でもあり、おふざけで許されることが効かなくなる。それと同時に大学生としてギリギリ子供でいられるというのは嬉しいようで悲しいもんだ。

 

俺としては自分自身の力で生きたいけれども、大人にはなりたくないというふざけたマイポリシーを持っているので、このポリシーをいつか自身で崩さなければいけないという新たなスランプと戦うことになるのだが……、傍から見ればそんなことはどうでも良い話で、今は卒業おめでとうのラッシュである。

 

 

俺のクラスはちょっと変わった特殊なクラスで、三年間一緒の生徒で海外留学とかやれやれなイベントが次々にフィーバーしてくる変な高校だったんだ。そーゆーわけでクラスとしての絆は他クラス、いや他校ごとき簡単にひねり潰せられるレベルで、俺はその中の端にいながらもクラスの体育祭お疲れパーティ☆とか、進級パーティ☆とか、担任今までありがとうございました祝い〜☆などのイベントにもしっかりと参加している人間だったので、どうせあるだろう高校卒業お別れパーティ☆とやらにも参加して、高校生活の真のピリオドでも付けようかと決めていた。

 

 

 

 

 

 

そして結果的にみんなで話し合って、お別れパーティとやらは高校から少し離れたお好み焼きレストランにこれる奴らだけ集まり、食ったり喋ったりしようってことになった。

 

そして夜。

 

特に親しい友人達と共に集合地点に集まれば男女計30人は来ていたと思う。やはり男女間の仲が良いもんだと勝手に納得しつつもこの日の為にわざわざ持ってきたゲーム機でゲームしながらお好み焼き食いまくって騒ごうとしていた俺がこの後の恐怖に気づくはずもなかった。

 

 

で、お別れパーティ中はお好み焼き屋で食うに食いまくり、ゲームするわ懐かしい思い出話するわでとにかくイェーイな日々だったんよ。正直深い内容は無いぜ。

 

 

 

問題はここからだった。そのあと帰り際に、近くのちょっとデカイ公園により、「みんなで増え鬼しようぜ!」と突然小学生染みた遊びをすることになった。

 

一度始まってしまった深夜の増える鬼ごっこは簡単には止めることなど到底出来ず、実は増え鬼が好きな俺は友人達と逃げて、茂みに隠れてやり過ごしている最中のことだった。

 

 

「やべぇ……めっちゃトイレ行きたい」

 

 

「おいおい」

 

 

突然のトイレ行きたい衝動に駆られてしまい、友人達にどうしようか相談する最中、トイレの場所を発見するのは良いものの、トイレに向かうまでは数々の死線を潜り抜けなければいけねぇと判明。しかも出そうなのは小(食事中に読もうとする奴はまさかいないと思うがこれから汚くなるので急いで戻れよ!)、変に突っ込んでも鬼に捕まるだろうし、仮に突破出来たとしてもゴール直前で間違いなく漏らす。

 

「くそっ……どうすりゃいんだ……」

 

そこに待っている選択肢はただ一つ、最悪な答えしかなかった。

 

それは、立ちションである。

 

軽犯罪法違反である立ちションを軽々しくやって卒業早々くだらない理由で警察のお世話になるわけにも行けねぇし、しかもこの鬼ごっこには女子もわんさかいる。立ちション中に捕まえようとしてやって来たら、お互い恐怖である。

 

とりあえず、端っこに有り気な完全に森みたいな感じで隠れやすく、尚且つ二人の友人を付近に配置して女子が来る前にさっさとチャック降ろしたその時だった。

 

「やべやべぇ!逃げろ〜」

 

チャラい馬鹿がこれ以上にない嬉しそうな顔で女子3人から逃げてこっちに向かってくるではないか!コイツにも見つかったら、終わりだ。

悪手ではあるが、やるしかねぇ。

 

「U、K!バラバラに別れて逃げるんだ。あいつらの注意を引いてくれ!!」

 

「でも、そんなことしたらお前……」

 

「俺も覚悟を決めなきゃいけねぇし、お前らだって女子から逃げたいんじゃねぇのか?俺のことは置いて……」

 

「お前のことは忘れない……あばよ!」

 

 

「最後まで言わしてくれよ……」

 

てなわけで、危険な賭けに出た俺は素早く事なき事を終わらせようと奮戦する!

 

U、Kはバラバラに逃げてチャラい奴と女子の目を引いて幸せそうに逃げる!

 

行ける……行けるぞ、これなら恐怖から乗り越えられるぅ……!!

 

 

 

 

 

 

この結末はみんなの想像に任せよう。戦いが終わり、やっと遊びも終了だろうなと思ったその時……。

 

「今度はケードロしようぜ!」

 

馬鹿野郎……。終わりが見えねぇ。言った奴が誰だか知らないが、やめてくれよ……と思いながら一人で逃げれば今度はお腹が痛くなる。そうだ……俺はお好み焼きを食い過ぎた!ジュースも飲みすぎた!だからさっき小がしたくなり、今度は大をしたくなっている!!

 

しかも今度は死線を潜り抜けた友人達が警察役で、仲間がいない!!!

 

おまけちトイレはケードロの檻ゾーンが近くにあり、女子3人ぐらいが巡回してやがる!!!

 

お……終わった……。

 

 

こんなに青ざめた日はいつぶりのことか……。

 

 

それでも俺はトイレへと向かうしかない、怖い……怖すぎるぜ……。

 

 

 

 

それでも……行くしかねぇのか………。

 

 

「うおおおおおおおっっっーーー!!」

 

 

その後の結末も、読者の想像にお任せしよう。

 

そして数時間後、クラス全員の最後である集合写真を撮り、お別れパーティはようやくフィナーレ。

 

さらば友よ、成人式で会おうぞ……とばかりに流れ解散をした。

 

 

後日、クラスのメールのグループで送られてきた集合写真に知らない奴が一人混じっていたような気がするが多分気のせいだろう。

 

 

 

 




最初に謝ろう。違う意味の怖い話だったからな。それに下品な話でもあるので食事なうの人にはお侘びさせてもらう。とは言え、これを見れば分かる通り、お別れパーティでも何にしろ、食い過ぎたり飲み過ぎたりするのは霊感有る無しに関わらず本当に気を付けて欲しい。そして残す物語はあと二つ、一つは悲しい命の物語と、もう一つはこの物語のタイトルテーマを回収する衝撃の物語……とだけ予告しておこう。もうすぐお別れの時間がやってくるのは悲しいことだ、だがこれだけは言わしてくれ。
それでは、またお会いしましょう。


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ソノ九・地獄ノ星ノ使者

この物語のタイトルがなんでこんなのか、正直俺にもよく分かってない。ぶっちゃけ適当につけたからな。そして、ぶっちゃけネタ切れし始めた。だからタイトル回収してみようと思う。完全にフィクションになるけど。


誰だよ、お前。

 

 

ソイツは、俺の肩に手を置いてこう言った。

 

 

「……嫌ですねぇ。私達、ずっとずっと一緒にいたじゃないですか」

 

 

知るもんか。俺はアンタの本当の顔なんて今まで一度も見たこと無い。重ねて言うが、今まで一度もな。

 

 

「はぁ……いい加減認めたらどうです?私は18年前からずっとあなたを見てきた。そして私は、あなたのことが好きだ。それはあなたも同じでしょう?」

 

うるせぇ。お前なんかから告白されても嬉しくねぇんだよ。俺は童貞でもラノベ主人公でも日常に退屈している馬鹿でも無い、只のナウでヤングな大学生さんだ。こんなことなど求めたことすらねえぜ。

 

「相変わらずあなたは素直じゃ無いですね。これをツンデレと言うのでしたっけ。ふふっ、いい加減交じりましょうよ、1つに」

 

この物語がR-15指定だからって思い出しかのようにそっちのネタを連発するんじゃねぇ。そもそも俺は彼女もいるしお前なんかとは初めから脈無しだ。とっとと消え失せてくれ。

 

「全く……、相変わらずですね。あなたって人は。だからまた陥れたくなっちゃいますよ。コワイめに」

 

 

そこまでソイツは言って。俺のカラダを素早く奪いとり、我がものにしようと激しく襲いかかってくる。必死に抵抗するが、すぐに意識が薄れていく。くそっ。こんな奴に目をつけられたのが辛い。しかもここまでめんどくさい奴だと知ってさえいれば、あの時の俺もそんなことはしなかっただろうよ。そして何より一番辛かったのは、この犯されるような感覚にかすかな快感を覚え始めてしまったとこだ。

 

 

 

 

 

 

 

あれから何年か経った俺はシャボン玉が割れる早さの高校生活をおくり、世界で一人だけのありきたりな彼女も出来て、いよいよ社会人という階級へと昇格する。就職活動にご無沙汰しており、就活生として数ヶ月間走り回っていた。無論、俺の社蓄前夜祭ライフにも貴重な私生活にも、霊感や怪奇現象どもが焼きもちして恐怖をギフトしに来ることもなくなった。実はあれは幽霊の正体見たり枯れ尾花なんだと思うようにまであったし、そんなことよりも今は面接、夜も試験勉強、朝もバイト……、そんな感じに思考回路がまともに働かなくなるほど内定に飢えている日々を過ごしている。とは言え、流石に癒しって奴は必要だから最低でも週一は彼女さんとは会って癒されている訳だが。

 

 

最近、俺の私生活に何かおかしい。

 

 

 

例えば、俺は家に帰り明日の面接支度してフカフカベッドにダイブした七時間後。

 

 

朝起きたら、俺は椅子で寝ていた。

 

LINEで彼女や両親に訪ねてみても心当たり無し。無論彼等が入った様子は微塵もないし、扉はしっかりと鍵かけていた。

夢遊病なんかかかった覚えもないし、幽体離脱とは状況が違う。

 

にも関わらずだ、開いていたパソコンには俺が全くもって興味の無い代物を調べていたり何かを制作していたりした形跡があった。

 

 

これだけじゃ無い。

 

俺がサークル仲間達と共に飲みに帰る時だって、酔っ払ってもないのに、俺は普段とは性格が全然違うと証言しているのだ。俺は酒に強く、意識はぼやけても飛んでもいないはずだ。だから何も変わって無いと思うんだが。

 

 

 

 

 

とまぁ、何やら不思議なことになっているのだが、1つや2つぐらい分からないことがあっても良いだろ。俺はそう思って今日もマンションの扉を開けて面接に向かおうとした。

 

 

 

 

「やっと……会えましたね。この姿で会うのはあの日以来でしょうか」

 

目の前には訳の分からないことを言ってきた赤い靴を履いた少女がいた。

 

俺のことじゃないだろ。俺はソイツをスラリと避けて見なかったことにしようとした。

 

 

「酷いですね、無視するなんて。輝道(きどう)さん」

 

その瞬間、俺は膠着した。何故なら輝道とは、俺の苗字だからだ。

 

いや待て、コイツが俺の表札かポストを見ただけかもしれねぇ。

 

だが俺に何か聞きたいことがあるのは事実らしいな。

 

「ど、どうしたのお嬢ちゃん……僕に何か用かな?」

 

「輝道さん。私達、ようやくなれるんですね。私は嬉しいです」

 

「はぁ?何のことを」

 

「やっぱり忘れてるんですね。私のことを」

 

「だから、何のことを言っているのか……良いから君は早く学校に行ったほうが……!?」

 

俺はこの少女を管理人に連れてってやろうと手を繋ごうとした。

 

しかし繋げなかった。彼女は透けている。

 

 

彼女は透明だったのだ。

 

すり抜けて転びかけたことに動揺し、俺は彼女の方を振り向く。

 

「ゆっ……幽霊!?」

 

「多分違いますよ。私はずっとずっとあなたと共にいました」

 

「知らねぇよ、お前なんか……」

 

「それもそうでしょう。何故なら私はあなたの中にいるからです。それも初めて会った時からあなたの記憶を消して、ね?」

 

何を話しているんだ。訳がわからない。

 

それに……。

 

「悪いが帰ってからにしてくれ。俺は会社があるんだ」

 

「仕方ないですね……じゃあ、よろしくお願いしますよ。出ないとあなたをまた乗っ取っちゃいますからね? 輝道…央義(おうぎ)くん」

 

乗っ取った? まさかコイツが俺をおかしくした元凶か?

 

だが一番俺が驚いたのは、秘密主義を徹底し、身内と彼女と親友を除く、今まで出会ってきた殆どが知らないだろう俺の下の名前をコイツが知っていたことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。……おい、いるんだろ」

 

 

「はい、待っていました」

 

そう言うとどこからかガラスが割れる逆再生のように赤い靴の少女が目の前に現れる。

 

俺は読者達の知っての通り、沢山の怪奇現象を味わってきたおかげなのか、不思議と驚きはしなかった。

 

「……説明してもらおうか。幽霊ちゃん」

 

「一応私、幽霊では無いと言ったのですがね……私のことは、こう呼んでください、『地獄ノ星ノ使者』と」

 

「地獄ノ星ノ使者?……じゃあお前は宇宙人だってう言うのか?」

 

まずいな。急にジャンルがホラーからSFに変わりやがった。

 

「そうかもしれませんし、違うかもしれません」

 

「はぁ?」

 

「だってほらぁ、八百万の神かもしれませんし、はたまた輝道君の言う通り幽霊だったりするかもしれません。はたまとりあえず話を進めましょう。全ての出会いは、今から18年前。即ち央義くんが幼稚園児の年長さんの頃ですね」

 

てか、彼女じゃねえんだから下で呼ぶのはやめろ。

 

「私にはかつての記憶がございません。分かることは私が『地獄ノ星ノ使者』であることと、気が付いた時、とにかく命が枯れ果てそうだったこと。瀕死の重症だった私を救ってくれたのは、誰であろう央義くんです」

 

いや待て、俺にはそんな覚えは微塵も無いぜ。

 

「話は最後まで聞いてください、央義くんはその時、私を体の中に入れて、私と同化が始まったんです」

 

おいおい、昔の俺はアグレッシブだな。で、ドッキリ大成功はまだか?

 

「残念ながらドッキリではありません。記憶上、私の種族法律では、文明が発展途上の知的生命体には、その文明を遥かに凌駕するデータや物質、そして我々の存在を下手に確認させてはいけない……そういう決まりがあるんです」

 

決まり。

 

「そう、その決まりを私は守らなけれなならない。だから私は央義くんの体の中で、私との出会いの記憶を消した。だけど、それによって央義くんの体内は無自覚に私という存在との同化を拒否したのです」

 

はぁ。それで、俺がお前との出会いを覚えていないと。

 

「その結果、央義くんには悲劇が訪れてしまいました。私が体内に入ってしまった以上、私は抜け出す事も出来ませんし、私の心は助けてくれた頃からずっと央義くんに奪われたのと同じ。けれどもあなたは無自覚にそれを拒否し、悪しきウイルスを体内の白血球やらキラーT細胞やらが外に追い出そうと戦った結果、人間が高熱を出すように、私を追い出そうとした結果、不可思議な事件に次々と遭遇するようになりました」

 

 

おい……、それって。

 

忘れはしない。

 

夜の公園伝説。

 

呪われた女の住む神社。

 

炎の夢。

 

花子さんの逆鱗。

 

ピンポンダッシュ回避。

 

雪山に潜み続ける少年。

 

宿場の人形。

 

終わりなきエンドゲーム。

 

 

「それら全てがお前を受け入れなかった俺の仕業ってことなのか!?」

 

「最後のはちょっと違うと思いますが……。そういう事です。全ては繋がっていた。私を受け入れようとしなかったから。でも、私と今こうして再開することが出来た」

 

それで最近俺が知らない間におかしくなり始めてた訳か。

待てよ、もしこいつが言う通りなら、俺はコイツを受け入れたことになる。

 

そうか、高一のあの日の時のせいでか。

 

「そう、央義くんはあの悲しい命の物語を通して、怪奇現象への価値観を変えた。それは即ち私という怪異を受け入れたということ。拒否ではなく、私の同化に。あなたの細胞は、ようやく私の存在を仲間だと判断してしまった。そして、長い間、同化をし続けて、ようやく一つになった」

 

つまり……今のお前は……。

 

「これから長く、よろしくお願いしますよ? ここまで来たのは、あなたのせいなんですから」

 

おいおい、待ってくれよ。今更こんなこと言われても。

じゃあ俺は、お前と一生くっついてなきゃいけないのかよ?

 

「安心してください。私の意識があなたが寝ている時にあなたを乗っ取るぐらいしかしません。私だって地球に18年間もいました。考えはいくらでも変わります。私はこの文明でやりたいことが沢山出来たんですから。それに、私と同化してるってことは、私のウルトラミステリアスパワーも使えますよ?」

 

そういう問題じゃねぇ。俺はもうただの人間じゃ無いってことなんだろ? ふざけんな! さっさと出てけ!

 

「‪――‬嫌ですねぇ。私達、ずっとずっと一緒にいたじゃないですか」

 

 

 

こうして俺は、この日から地獄ノ星ノ使者と名乗る謎の存在に体を貸して暮らしていくことになった。

 

全ての怪奇現象の謎が解き明かされたはずなのに、何かモヤモヤするぜ。

 

でも、実はこんな変な生活は正直嫌いじゃなかった。

 

きっとこれから死ぬまでずっと、大変な生活が待ち受けているだろう。

だけど、俺は乗り越えられると信じたい。

 




いかがだっただろうか。
これが全ての真実だ。世の中、不思議なこともあるもんだな。
実質これが最終回だが、まだ一つ語っていないことがある。

俺が怪奇現象を受け入れるようになった高一のあの日。
それでは、また会いましょう。


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ソノ最期・亡き祖父の置き土産

死ぬってのは、どれだけ尊い命が無くなることか…実際に目の当たりにしないと分からんものさ。そういうのは、自分の身内や大切な人が亡くなったとき、葬式で痛い程分かるだろう。そして遺産を相続し、自分の心と一緒に深く仕舞う。だが時には深く仕舞うことが出来ない遺産を相続しなくては行けないこともある。恐ろしい、遺産を。


 

高校一年生の夏の日。

 

それは、突然起きたことだった。同時に、今まで恐怖を抱いた存在だった、幽霊やらなんやらの怪奇現象モノに一つの終止符を打ち、俺がそういう類いに対する価値観を変えることになった時のことだった。

 

「輝道、お母さんから連絡があった。君は今すぐ帰りなさい」

 

「は……?」

 

 

 

家。

 

「おい、急になんだよ……?部活早退するほど何か……!?」

 

「央義、荷物をまとめて。すぐに行けるようにしなさいよ」

 

「え?だから何が……」

 

「亡くなったの。お父さんのお爺さんが」

 

「へ……?」

 

 

 

 

 

その日、俺の祖父が死んだ。

 

サッカー部に入っていた俺は部活中。俺は親に言われるがままに東から西に移動して、式場へと向かわされた。

 

そこには確かに祖父の遺体があった。

 

特別に遺体を触らせてくれた時、あの人間とは思えない冷たさと、硬いアイスクリームを触っているようなグジョグジョした感覚を始めて味わった。

 

 

 

 

 

俺は祖父と深い関わり合いがなかった。

 

親父の祖父母が離婚していたせいだ。だから、家族であって家族じゃ無い。

 

本当は仲直りしたかったんだろう。

 

 

だから祖父の死に深い悲しみはなかった。

 

でも、いつもと違う黒い服を着て、式が始まり、誰かの涙が流れ、棺を運び、火葬し、骨になった姿を見て、俺は何か大きなものを本能的に感じた。

 

 

悲しみは無くても、死にたく無いって心から思うようになった。

 

今生きてることが、これほど素晴らしいことなんだって思い、過去に小さな嫌なことで死にたいと感じた俺を殴りたくなった。

 

 

遺書には、自分の骨は海に捨ててくれ、と縁の無いことが書かれていた。だが海に捨てるのは簡単に法律が許してはくれない。それに、祖父と俺は深い関わりがなくても、一度だけ、出会ったことがあるのは確かだ。だからこそ、残った骨を入れた物は未だに俺の家の中にある。離婚して、まともに俺の一家と出会わず、家族がいなかった祖父は、死んでから始めて俺達の家族になれた。俺の祖父はきっと救われたんだと思う。

 

そして、俺達は一つの遺産を相続した。金の虎の像を。

 

この像に触れた時、今まで怪奇現象でビビっていた俺が急にバカらしくなった。

 

何が怖いことだ。バカ言え、俺が出会ってきた幽霊どもみんな死んでたんだ。誰にも救われずに。

 

 

幽霊でもなんでも来いよ。

 

今日はその怪奇現象で祖父と出会いたいんだ。

 

 

 

祖父の死を越えてから俺は、ホラーに恐怖を抱かなくなっていた。

 

抱いてはいけないんだと思った。

 

俺は、今ある生活を受け入れることを決めた。

 

生きていれば、それでいい。

 

 

 

そしてその日から、俺はパソコンを開いて、打ちこんだ。

 

この物語を伝える為に。

 

 

 

 





最後まで読んでくれてありがとよ。
人生ってもんは嫌になることばかりだ。
だからこそ、これから何があっても絶対に投げ捨ててはいけない。

そう、例え俺のようにどんなに怖いモノに襲われても、きっとゴールはある。

だから、その日が来るまで、またお会いしましょう。

完。


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