フランになりました。 (天道詩音)
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フランになりました。

□□□視点です。


 

 目を覚ますと真っ暗な部屋の中だった。背中に柔らかな感触があるからベッドの上?

 

「ここは何処? 私は誰?」

 

 自分の声なのに聞き覚えが無い。こんなに高い声だっけ?

 私は何で真っ暗なこんなところに居るんだろう?だんだん目が慣れて来たから辺りを見渡すと、バラバラに壊れている木でできた何か、砕けた鉄のお盆、私が乗っかっているベッド、後は石で出来た壁と、頑丈そうな厚みのある扉がある。

 ほとんど何も無い部屋だなぁ。

 

「それに、なんで全部壊れているんだろう?」

 ベッドの上にある枕も大きな穴が空いている。

 枕を持ち上げた手を見て、私の手はこんなに小さかったかな?

それに、肌の色も病的なくらい真っ白に見える。

「暗闇の中なのに、なんでこんなに見えるんだろう?」

 私の姿を見てみたい。どんな姿なのかな?

 鏡の代わりになりそうな割れた鉄のお盆を取り、覗いてみる。そこに写ったのは金色の髪を横で留め、ナイトキャップを被っている紅い目をした見知らぬ少女の顔。

 

「これが私なの?」

 服は赤い色の半袖のシャツとミニスカートで背中には一対の枝に七色の宝石が垂れ下がっている翼のような物が生えていた。背中の翼らしき物を触ってみると触られた感触があった事から、飾りでは無く生えているとわかった。もう一度お盆を覗いても、女の子が首を傾げたり、首を振ったりしてる様子しか写らない。

 

「これが私なんだ」

 他に私が誰かを知る手掛かりがないか探してみる。床に落ちている物は全部壊れていて、それが何だったのかがなんとか分かる程度で、手掛かりにはなりそうな物は無かった。

 扉を開けてみようとしたけど、鍵が掛かっているのか開けられなかった。

 次はベッドを詳しく見てみても、穴の開いた枕とボロボロの布団、黒い木で作られたベッドで名前か何かが書かれている形跡も見当たらなかった。

 

「私の名前は何だろう? うーん」

 ベッドに横になってゴロゴロと考えてみても思い出せない。考えていたら眠くなってきたので、寝ることにした。

 

「寝て起きたら思い出してるかも?おやすみなさい」

 

 

 コツコツと歩く音で目を覚ます。音は扉の方から聞こえていて、少しずつ近づいて来て扉の前で音が止まった。誰か来たのかな?

 

「フランドール様、食事を持って参りました」

 男の声が聞こえ、扉の下の方にある小窓が開き、料理の載ったお盆が入って来た。

 

「それでは失礼します」

「ま、待って!」

「はい?」

 止められると思っていなかったのか若干戸惑ったような声だったけど、離れていった気配は無い。色々聞かせてほしい!どうしてって思うことがたくさんありすぎるから。

 

「私ってフランドールって名前なの?」

「名前を忘れるほど狂気に飲まれてしまいましたか。あなたの名前はフランドール・スカーレット様でございます」

 狂気に飲まれたってどういう事?

 それより私はフランドールって名前なんだ。

 

「ここから出たいから扉を開けてくれないかな?」

「申し訳ありませんが、旦那様の許可無ければフランドール様を出すことはできません」

「なっ、なら!」

「言葉を遮ってすみませんが、ここにフランドール様を閉じ込めたのは旦那様です。扉を開ける許可は出ないでしょう」

 

「なんで私は閉じ込められたの?」

「それも忘れてしまいましたか。フランドール様は狂気に飲まれ、メイドや執事を大勢殺してしまい、最後には旦那様までも殺そうしたので幽閉されたのです」

 

 私が殺したの?大勢のメイド達を?

 何も思い出せない。

 それなら私はどうしたら出られるの?

 ずっとここに居ないといけないの?

 

「それでは、失礼致します」

 コツコツと音が遠ざかって行くが、動く事が出来ない。私は狂気に飲まれて、沢山殺したから閉じ込められたらしい。なら狂気を無くせば出れるのかな?

 でも、外に出ても何をすればいいんだろう?

 外に行きたい所も会いたい人が居るかも覚えてないし、また誰かを殺しちゃうなら私は此処に居ればいいや。

 

 取りあえずご飯を食べようかな。なにがあるかなー?えーと、スープとパンだけみたいだけど美味しいのかな?うん、どっちも冷たかったけど美味しかった!

 これからはご飯を食べるのを楽しみに生きていこうか!他には、何をしようかな?

 うーん、思いつかないからそれを考えるのも目標にしていこうかな。取りあえず寝ながら考えよう。

 

「おやすみなさい」

 

 

 ベッドでごろごろしていたらカツカツと音が聞こえて、誰かが扉の前に来た。食事の時間かな?

 女性の冷たい声で食事の時間ですと聞こえた。今日は別の人が持ってきたんだ。

 

「ありがとう。昨日とは違う人なんだね」

「……昨日食事を持ってきた執事長はあなたの事を旦那様に報告し、それによって反感をくらい殺されました」

「……えっ?」

 

 なんでなの、私が話し掛けたから?

 

「以降、私に話し掛けないで下さい。失礼します」

 カツカツと音は遠ざかっていった。

 

「………ご飯を食べよう」

 冷たいパンとスープが今日は美味しく無かった。




フランドール?
今作の主人公で、過去の記憶が全く無い状態。
狂気によって大勢殺し、閉じ込められたらしい。


小説を書く練習中なのでコメントを頂けると助かります!
誤字や変な表現など見苦しい点があると思いますが、ご指導や感想などあればよろしくお願いします!


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暗闇に届いた光。

フラン視点です。


 

 寝て起きて、食事をして、暇を潰しての繰り返しをもうどれくらい続いたのかも分からないほど時間が経ち、今は暇を潰している時間で、積み木をしている。

 正しくは、妖気で四角い物体を作り出してそれを積み重ねて遊んでいた。

 

 暇を潰していた時に、木の欠片を壊して遊んでいたら光る球体が手のひらから出てきて、それをぶつけたら木の欠片は粉々になってしまった。面白い物を見つけたと思って、また光る球を出そうと試行錯誤していくと、光る球は簡単に出せてさらに形を変えることもできて、これを出して遊ぶのが楽しみになった。

 光る球は自分の力を丸めた物で、これを扉に当てて遊んでいたら、料理の運んできた人に妖気を扉にぶつけるのは止めてくださいと言われたので、ごめんなさいを言いつつ、この力は妖気と呼ばれていると分かった。

 妖気を丸めたり、伸ばしたり、色を変えたり、浮かせたり、飛ばしたりと自分が考えた通りに使うことができるので、色々考えて試すだけで楽しかった。

 

「お腹減ってきちゃった。最近、料理を運んでこないのは何でだろう?」

 正確には分からないけど、一週間くらいは来てないと思う。今までは多分毎日来ていたけど、何かあったのかな? まあ、食べなくてもお腹が空くだけだから別にいいか。遊んでいればいつか来るよね?

 

 

 

 妖気とは別に、もう一つの力があることが分かった。木の欠片、割れた皿、ベッド、壁、扉、どれを見ても黒い点があることに気づいて、それを自分の手のひらに移す事ができた。

 それを握ってみたら木の欠片は粉々になった。全ての物にある壊れやすい点が黒い点として見えているんだとなんとなく思った。

 これが、私の能力で全てを壊しちゃう力なのかな?たぶんこれを扉に使えば外には出られると思うけど、使わなくていいや。妖気で遊んでいるだけで楽しいからね!

 覚えていないけど、誰かを殺しちゃったのはこの能力だよね。できればもう使いたくは無いかな。

 

 

 料理が運ばれなくなってからかなりの年月が経った頃、遊び疲れて寝ていたところに、ドガッ、ドゴッと天井の方から鳴り続ける音で目が覚める。

 

「上が騒がしいけどどうしたんだろう?」

 爆発するような音が鳴り響いている。妖気を飛ばして遊んでいるのかな?一緒に遊びたいけど、外には出ないから止めておくねー。

 私は私で妖気で遊んじゃおうか!

 妖気を剣みたいに伸ばして、炎に変換、さらに熱量を高めて拡散、壁に向かって剣を振り下ろす。

 

「いけー! レーヴァテイン!」

 炎剣を振り下ろすと壁一面が赤く燃え上がり、熱気が伝わってくる。この炎剣を作る技を思いついた時に、レーヴァテインって名前が頭に浮かんだので、レーヴァテインと名付けて使って遊ぶお気に入りの技になっていた。炎を消して、ベッドが燃えないように気を付ける。冷たい地面で寝るのは嫌だからね。

「炎ってきれいだねー。あれ? 上から鳴ってた音が止まった?」

 激しく遊んだから疲れたのかな?私も、妖気をすごい使うと疲れちゃうからねー。

 次は何をしようかなーとベッドの上でごろごろと転がりながら考えていると、ドタバタと走ってこの部屋に近づいてくる音がする。

 

「ひさびさにご飯かな? 最後にいつ食べたかなんて覚えて無いけど。でもすごい久しぶりだしちょっと楽しみかも?」

 羽をパタパタさせながら待っていると、扉に何かがぶつかったような音がしたので、誰かが来たみたいだ。

 

「……ラン! フラン! フランお願い返事をして!」

 誰かの声がする。

 

「……だれ?」

「ふ、フラン生きていてくれたの! あぁ、よかった…。今扉を開けるから待っていて!」

 誰だろう?

 何で扉を開けるのかな?

 私はここから出てもいいの?

 

 ガギンと何かが壊れる音と共に扉が開き、まぶしい光が目の前に広がった。

 まぶしくて何も見えない中で、ふわりと柔らかい何かに抱きしめられた。温かい?これはなんだろう?

 

「フランごめんね! 遅くなってごめんなさい! ほんとうに生きててくれてよかった…」

 私を抱きしめて泣いているこの人は誰なんだろう?

 覚えていないけど、私の名前を知っているから会ったことがあるのかな?

 

「どこか痛いところは無い? 大丈夫?」

「う、うん……大丈夫だよ。あなたは血が付いているけど痛く無いの?」

 服はボロボロで、身体のいたるところが傷だらけで血が滲んでいて見るからに痛そうだ。また痛そうな顔をして涙を流している。

 

「だ、だいじょうぶよ。あ、あのね、フラン?」

「……なに?」

「わ…私が誰か分かるよね?」

 誰だろう?

 もう声も覚えて無いけど、ずっと前に料理を運んでくれてた人かな?

 

「料理を運んでくれてた人?」

「ああ…違うの、私は…ッ!」

 強く抱きしめられた後、真っ直ぐ目を見つめられる。

 

「私はレミリア。あなたのお姉ちゃんよ」

「……お姉ちゃん?」

レミリアは私のお姉ちゃん?

だめ、何も思い出せない。

 

「これからはずっと一緒よ!もう離さないから…!」

 強く抱きしめられる感触と温かさがすごく心地よかった。

 

「お姉ちゃん。私のお姉ちゃん……!」

「ええ!フランのお姉ちゃんよ!」

 

 初めて見た私以外の誰かは、泣きながらも優しく笑っていた。




レミフラはいいですよー!

次回はレミリア視点を予定しています。
上で何があったのか、フランに料理が届かなくなった訳とか書きたいです。予定ですけどね。

人物紹介

フラン
積み木で遊んだり、ボールを投げたり、火の剣で遊んでいた幼女。かわいい。
きゅっとしてどかーんもできます。

レミリア
詳しくは次回。
フランのお姉ちゃん。
遊びで怪我をした?
お姉さまと呼ばれる日は来るのでしょうか?


以下、読まなくても大丈夫です。
一つ思ったのが、レミリアや他の妖怪に対して人って使っていいのですかね?
者とか方とか彼女くらいしか思いつかなかったので、人を使いましたが何か良い言葉ってあります?

あとレーヴァテインを閉鎖空間で使うと空気が無くなって死んでしまうかもと思いましたが吸血鬼なので大丈夫でしょう!そもそもレーヴァテインを使う必要があったのかと……?


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レミリアの記憶。フランの知らない物語。上

レミリア視点になります。


 

 一番大切なものが何かと聞かれたら、たった一人の大切な妹、フランだと答えるわ。

 

 私は大きな屋敷に吸血鬼の一人娘として生まれて、年の近いメイド見習いはいても、一緒に遊んでくれるような存在はいなかったから、お母様から来年にはあなたに妹ができますと言われた時は、私と遊んでくれる子が産まれると思い、本当に嬉しかった。

 真冬の寒い時期にフランは産まれた。お母様に抱かれている小さくて弱々しそうなフランを見た時に、お姉ちゃんの私が守ってあげないといけないってその時に思った。

 お母様に抱いてみますかと聞かれたから、優しく持ち上げてみると思ったより重たくてびっくりしたのを覚えている。

 この頃にお父様が亡くなってしまった。お姉ちゃんがお父様の分も二人を守ってあげないとね!

 フランはすぐに大きくなって、半年も経つ頃にはしゃべるようになった。最初にしゃべった言葉が『おねーちゃ』で、それを聞いた時はすぐさまお母様の所に連れて行った。お母様もその言葉を聞いて、フランにとっての一番はレミリアなのかも知れませんねと私を撫でながら笑っていた。その後にお母様が、あなたのママですよーと何度も繰り返して、ママと呼ばせようと頑張っていたのを観ながら、家族って良いなーって考えていた。

 

 一年経つとフランは一人で歩けるようになり、私の後ろをずっとくっついて来るようになった。とてとてとついてくるフランが転ばないか心配で何度も後ろを振り返りながら歩いていた。

 最後には一人で歩かせるのが心配になって手を繋いで仲良く歩いたのも楽しい思い出だった。この頃からフランは私の事を『おねーさま』と呼ぶようになった。かわいらしい声でそう呼ばれると嬉しくて、もっとフランの事を好きになっていった。

 

 二年過ぎればフランは言葉をちゃんと分かるようになり、ことあるごとに話しかけてくるようになった。

「おねーさまあそぼ」

「おねーさまこれよんで」

「おねーさまいっしょにねよ…」

 天使のようにかわいらしい甘い声でお願いされたら何も断れなくて、どんなお願いも聞いてしまった。私たちは悪魔だけれど。

 

 三年後のある日の思い出。妖気の制御をフランに教え始めて、二人で妖気を使って遊ぶようになった。教えるのは私だけど、お母様も傍で優しく見守っていた。

「必殺技を考えたの」

「ひっさつわざ…?」

「そう、相手を一撃で倒す凄い技なのよ!」

「おねーさますごい!」

 目をキラキラさせ、ぴょんぴょんしながらすごいと全身で表現していた。本当に可愛くて私も嬉しくなる。

「フランの必殺技も考えたのよ!」

「わたしのも?おしえて!おしえてー!」

「私の必殺技はグングニル!絶対必中の凄い槍なのよ!フランの必殺技はレーヴァテインで炎の剣で全部焼き尽くしちゃうの!」

「ほのお!かっこいいー!」

「ふふ、そうでしょう!よし、一緒に練習しましょう」

「うん、がんばる!」

 フランにまずは炎の出し方から教えようとしたところでお母様が近づいて来た。

「炎は火傷しちゃうかも知れませんからお母さんもそばに居ますよ。気をつけてくださいね」

「分かったわ!」

「はーい!」

 お母様は私たちの傍ですぐに消火の魔法を使えるように控えてくれて、私たちは怪我も無く必殺技の練習ができた。フランも怪我をしないで必殺技を使えるようになって、いつか私だけでは倒せない敵が現れたら、フランと一緒に必殺技を使って倒そうって約束をしたのは、忘れられない思い出になった。

 

 四年経ったある日、お母様が倒れた。

 元々身体の弱かったお母様は、体調を崩して横になっていることが多かった。それでも突然倒れたのは初めてで、私たちは驚いてお母様に寄り添って泣いている所に執事長が現れて、お母様をすぐさま寝室に運び、妖怪の医師を呼んで診察を始めてくれた。

 診察した結果、原因は不明だけど生まれつき妖気を身体に留めることが出来なかったお母様に、妖気の生成が出来なくなる症状が現れていることが分かった。

 私たち妖怪は妖気が無くなると身体を維持することが出来なくなり死んでしまう。お母様の妖気は減り続けていく一方でこのままでは死んでしまうと言われて、治す方法は無いのかと聞くと、

 

「妖気を留めるか生成出来るようになれば可能性はあります。ただ時間が足りません。出来るだけ時間を作るためには母君と似た妖気を持つお嬢様方の協力が必要になります」

 

 と言われ、何でもすると伝えるとお母様に妖気を送り続けてくださいと言われた。お母様の手を握って泣いていたフランにお母様を一緒に助けましょうと伝えて、一緒に妖気を送り続ける。

 

 一時間、二時間と必死に妖気を送り続ける。医師も必死に原因を突き止めようとしているが見つからない。

 四時間を超えてもまだ見つけることが出来ない。お母様は倒れてから未だに目を覚まさない。

 

 六時間経って遂に原因を突き止めたが、フランは妖気が底を尽きそうになってきたので妖気を送る事を止められた。私たちも妖気が無くなれば死ぬことは同じで、これ以上、妖気が減ればフランも危険だった。止めなさいと言っても妖気を止めなかったフランは限界を迎えたのか気絶してしまった。気絶しただけで大事には至らなかったフランの分も私は妖気を送り続けた。

 

 八時間経過して私の妖気も尽きそうなところでお母様が目を覚ます。目は虚ろながらも私とフランを視界に入れた。

「お母様! すぐに治るからもう少しがんばって! 私もがんばるから…!」

「レミリア…フラン…ごめんなさい…」

「なんで謝るの? まだ治せるのよ! お願い死なないでお母様!」

 私の妖気も底を尽きそうになってきたけど、命を燃やすように妖気を生成し送り続けた。必死で妖気を送る私の頭をお母様が弱々しく撫でた。

「ありがとう…もういいのよ。本当は二人が立派に育つまで一緒に居たかったのだけれど…お母さんはもう十分生きました」

「まだだよ…! まだ私もフランもお母様と一緒に居たいの…!」

「レミリア…フランをよろしくお願いします。あなたの妹はお姉さんに似たのかしっかり者に育ちましたけど、まだ甘えたい盛りなんです。楽しい時も…悲しい時も…二人でなら乗り越えられるとお母さんは信じています……」

「いやっ…! お母様も居ないと駄目なの!」

「どんな時も…二人で一緒に…生きてくださいね……」

 頭を撫でていた手がするりと落ちていった。お母様は優しく微笑みながら二度と目を覚ますことは無かった…。

 

 

「おかあさまねちゃったの?」

 お母様の傍で泣き崩れていると気絶から醒めたフランが心配そうに話し掛けてきたので、フランを抱きしめるとまた涙が出てくる。

「フラン…ごめんなさい…」

「おねーさま…おかあさまは?」

「ごめんなさい…」

「おねーさま…?」

「お母様は亡くなってしまったの…もう目を覚まさないの…」

「なんで…いやだよ…おかあさまおきて…おきてよ!」

 私を突き飛ばしフランはお母様を強く揺すって起こそうとしている。

「ごめんね…フラン…ごめんね」

 私はもう一度フランを抱きしめて泣いた。

「いや…いや!いやあああああああ!っあ……」

 絶叫を上げたフランが突然意識を失って私に寄りかかってきた。

「えっ……? フラン!?」

 倒れたフランは控えていた医師にすぐさまベッドに運ばれ寝かされた。ショックで意識を失ったらしく、私もフランの横に行きベッドに倒れる。私も限界だった。倒れるとすぐに意識を失ってしまった。

 

 お母様の葬儀は小さいながらも行われた。私もフランも最後のお別れをして、私は泣いてしまったがフランは泣いていなかった。

強い子だとその時は思ったけど違った。予兆だったのかも知れない。

 

 お母様が亡くなってからフランが少しずつおかしくなっていった。




イチャイチャが書きたくて書き始めたのですが、中々重たくなってしまいました。
ただフランの過去話まで書いた場合は話が重くなるのは仕方なかったのかも知れません。
次もレミリア視点です。

イチャイチャが書けるまで書き続けるのでこれからもよろしくお願いします。

あと話は変わりますが、文の始まりに半角スペース二回で一文字分空けていたのですが、反映されていないことに気づきました。
全角スペースに訂正しておきました。多少見やすくなったかもです。


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レミリアの記憶。フランの知らない物語。中

引き続きレミリア視点になります。


 

 私たちが住んでいる屋敷はお父様の弟である叔父の屋敷で、お父様はフランが産まれる前に避けられない戦いがあり、そこで亡くなってしまった。

 身体の弱いお母様が私とフランを一人で守れる訳もなく、お父様が亡くなった後に叔父を頼りこの屋敷に引っ越した。初めて会った叔父は、弱者共はどうでもいいが兄の家族だったので仕方なく迎えてやるのだと言っていた。

 弱肉強食の妖怪の世界では仕方ないことなのかも知れないけど、ボロボロになりながらも屋敷に辿り着いた私たちにあんまりじゃないかと怒ろうとしたらお母様に遮られ、本当にありがとうございますと頭を下げているお母様を見て一緒に頭を下げたのがこの屋敷での最初の記憶だった。

 

 お母様が亡くなってからフランは私の傍を離れなくなった。何処に行ってもフランは着いてきて私の手を離さなかった。一度フランが寝ている時に月を観に行こうとベランダに出たら、フランが起きてしまったのか、お姉様どこ?行かないでと泣き出してしまった。すぐにフランの傍に戻って抱きしめて、ごめんなさいと言いながら優しく背中を撫でて寝かしつけた。

 

 私は魔法の勉強をするために魔道書を読んでいると、フランの話し声が聞こえた。メイドの誰かと話しているのかと思い、気にせず魔道書を読み進めていたけど、しばらく聞いていてももう一人の声が聞こえない。思わずフランの方を見ると壁へ向かって喋っている。

 

「フラン誰と話しているの?」

「おかあさまがいたの。たくさんはなしたの」

「えっ…?」

 フランはお母様と楽しい話をたくさんしたと嬉しそうに話していた。お母様はもう亡くなっているとは言えなかった。

 

 

 フランが妖気を暴走させてメイドに大怪我を負わせてしまった。叔父に外に集まってきた人間共を殺してこいと言われて、フランにごめんなさい待っていてねと言ってメイドにお守りを任せて、私は外にいる人間達を急いで狩ってくると、私の部屋にメイドや執事が大勢集まってきていた。

 部屋に入るとフランが泣いていて、ベッドにはお守りを任せていたメイドが血まみれで倒れていた。聞けばフランが妖気を爆発させてメイドが巻き込まれてしまったらしい。

 幸いメイドは命に別状は無かったけど、メイド達はフランが怖いので世話をしたくないと言って、フランの傍には来なくなってしまった。フランの世話はほとんど私がして、私が出来ない時は執事長が行ってくれた。

 

 フランが5歳になって少し経った頃、フランは地下室に閉じ込められてしまった。

 

 私はこの時に、叔父に村が反乱を起こそうとしているので滅ぼしてこいと言われて長い間、外に出なければいけなかった。

 

 この日フランは能力に目覚めた。ありとあらゆるものを破壊する程度の能力に。

 

 切っ掛けはフランが怪我を負わせたメイドの父親が、その事件でフランの事をを殺したいほど恨み、フランを殺そうとしたらしく、フランが自分を守るために、能力を使ってメイドの父親を殺したらしく、その現場を目撃した執事や兵士がフランを取り押さえようと集まってきて、その全員を能力で殺害し、最後には叔父が現れて、腕一本と引き換えにフランを拘束して地下室に閉じ込めたらしい。

 

 私が帰った時には全て終わった後だった。叔父にフランは何処か聞くと地下に閉じ込めたと言われ、外に出してと言うとふざけるなと怒鳴り、妖気を束ねたレーザーを撃たれて、壁まで吹っ飛ばされて止められた。

 それでも諦めきれず叔父を倒してでも出そうとしたけど、勝てなかった。最強の吸血鬼と呼ばれていた叔父は片腕を無くしても強く、その時の私は一撃で意識を飛ばされてしまった。負けた私はしばらく自室に幽閉された。もっと強くなって叔父を倒し、フランを必ず外に出すとこの時に誓った。

 

 数年後に部屋を出れるようになった。それまで私は妖気の扱い方をもっと上手くなろうと力の使い方を必死で学んでいた。フランに会いたかったけど地下へ行くことは禁じられていた。会いに行けばフランを殺すと言われていたので行けなかった。

 

 数十年後、妖気の扱い方を極めたと思った。思い描いた通りに扱うことができるようになったから、次は能力を使えるようになろうと、自分の内側を必死に探り、能力を見つけようとしていた。

 

 フランは元気ではあると食事を毎日運んでいる執事長が言っていた。お姉さまに会いたいと毎日言われているとも。私もフランに会いたい。

 

 更に数十年後、執事長が叔父に殺されたと執事長の娘でメイドをしているシーラに言われた。フランが記憶を失ったような言動をしていて、様子がおかしいので外に出して医師に診てもらったほうがいいのではと訴えると、叔父は激怒して妖気の剣で執事長を刺した。それでも訴えた続けた執事長は首を切られ、殺されてしまった。

 なんでそこまでしてくれたのと聞くと、

 

「父はお嬢様方の母君を助けられなかった事を悔いて居ました。あの時、医師やお嬢様方が必死で助けようとしていたのに、傍で立っているだけで何も出来なかった自分が許せないと言っていました」

「執事長は倒れたお母様を直ぐに運んで、医師も呼んでくれてたわ!その後も医師を手伝ってくれてたと思うの。執事長はよくやっていたと思うわ…」

「ありがとうございます。そう思って頂けていたのであれば、父も浮かばれます。私はお嬢様と会う事を旦那様に禁じられてしまったので、最後になりますが父は母君の仰っていたレミリア様とフランドール様が一緒に居て欲しいと願っていたのを叶えてあげたいと言っていました。私も父の願いを叶えたいと誓ったので、出来ることは全てやっていきますが、どうかレミリア様もよろしくお願い致します」

「ええ!どれだけ掛かっても必ずフランを助けると約束するわ!」

「ありがとうございます……それでは失礼致します」

 

 頭を下げてシーラは去って行った。フランが記憶を失っている?今すぐ会って確かめたいけど、まだ会えない。早く強くならないと!

 

 また数十年が経ち、フランが閉じ込められてから百年が過ぎた。私は運命を操る程度の能力を使えるようになった。

 運命とは、未来において定められた事象。私の能力は未来に干渉し、ある程度の改変が出来る能力だと理解した。改変出来るか出来ないかは試してみると分かったから、フランを救う為に試行錯誤してみる。

ーー直ぐにフランを救えるか?不可

ーー直ぐに叔父を倒せるか?不可

ーー明日の天気を晴れにする。不可

ーー1カ月後の天気を晴れにする。可能

 直近の未来の改変は難しく、遠い未来の出来事なら改変しやすいのだと解った。それなら、

ーーいつかフランを救えるか?可能

ーーいつか叔父を倒せるか?可能

ーーいつかフランと一緒に居られるの?可能

 

 希望が見えた。私は能力を行使する。

 

 「いつかフランと共に過ごせる日々を私はたぐり寄せる!」

 能力の行使は一つの事象に対してしか使えない。それでも、どれだけ掛かっても私はこの未来をたぐり寄せる為だけに使い続ける!

 




レミリア視点は2話で終わる予定が予定より長くなってしまったので、3話で終わらせます。
オリキャラが名前付きで登場しました。この子の視点も閑話として一話使うか、後書きに載せるかは考え中です。

イチャイチャは近づいています!たぶん!


運命を操る程度の能力。
これは原作で使われて無かったと思うので、未来の改変を行える能力としました。それだけだと強すぎるので、一度に一つしか改変出来なくて、近い未来の改変は難しく、遠くなる程改変しやすくなるとしました。
フランを救う未来はどれだけ遠いのでしょうか?


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レミリアの記憶。フランの知らない物語。下

レミリア視点のラストです。


 

 研鑽を積む日々、妖気の扱いを更に極め、妖気を紅い霧に変え、周囲を紅く染め、日の光さえ私には届かなくなった。

 武術を学んだ。殴る、蹴るだけではなく、戦う技術を覚えた。たとえ妖気が使えなくても大抵の妖怪なら倒せる程に強くなった。

 屋敷にあった魔道書の魔法は全て使えるようになり、火も風も水も土も思いのままに操れるようになった。

 

 フランを救うために強くなる事に必死で、気づけば100年経っていた。

 叔父には領地の鎮圧を任されていて、叔父は屋敷を襲撃してくる妖怪達との戦い以外は私に任せていた。人間達は銃と呼ばれる銀の弾を飛ばす武器を使っていた。かなりの速さで飛んでくるけど、それ以上に速く動ける私には届かない。

 叔父にはまだ能力が使えないのかと言われ続けている。私が能力を使える事は誰にも教えていない。能力も使えない未熟者と言われ続けても、叔父を倒すその時まで言わないと誓った。

 

 そして今日、門の前で中華服の妖怪と戦っていた叔父が腹に大きな傷を負って帰ってきたので、皮肉を言ってあげる。

 

「叔父さんお帰りなさい。ついに負けて戻ってきたのですか?」

「俺が負けるなんてあり得ないだろう。奴は中々強かったが、俺には及ばなかった」

 恐らく、腹の傷は大きな穴になっていたのだろうけど、吸血鬼としても異常な程の回復力を持っているので、殆ど塞がってきているのだと思う。それでも戦い疲れたのか、多少の疲弊が見て取れた。

 

「なら私が負かしてあげるわ」

「ほう……遂に俺に挑むのか?」

 

 叔父は妖気で剣を作り臨戦態勢に入った。

 

「フランが待っているの。今日で幽閉は終わりよ」

「能力も使えない半端者が……無駄に威勢がいいな。それが無駄なことだと気付かずに戦うとは……哀れだな」

「何を言っているの?まあいいわ……死になさい!」

 

 私は妖気を圧縮して槍を形成し、投擲する。

 

「今日は気分が良い。遊んでやろう」

 槍は叔父の胸に刺さる直前に剣で裂かれて、消え失せた。

 

 それを合図に戦いが始まる。次は槍を十本形成し、同時に射出する。半分は切り裂かれ、半分は避けられた。

 なら追尾するように変更。威力は減らし、更に数を増やす。百の槍を一斉掃射する。全てが叔父へ向かい三割は消されたが残りは全て命中し爆発を起こした。

 

 煙の中から剣が飛んできて、何とか横に飛び、回避する。煙が晴れて、現れた叔父を見ると槍での傷は殆ど無かった。

 

「小手先の技は俺には効かん。本気で来い」

「……っ! ならこれでも喰らいなさい!」

 爆炎の魔法と突風の魔法を組み合わせ、灼熱の熱波で前面を焼き尽くす。叔父は私へ一直線に突進してきて熱波を最小限で躱し、剣を振り下ろす。

 

 直ぐさま槍を造って受け止めるが、押し負けて吹っ飛ばされ、壁に激突して止まった。衝撃で血を吐き、壁の破片が刺さって血だらけになった。

 

「つまらん……貴様本当に吸血鬼か? もういい、妹と同じく死ぬが良い」

「妹と同じく……? なに……言っているの?」

 フランが死んでいる?何をあり得ない事を?私の能力はいつかフランと共に過ごせるとなっていた。それに能力はまだ発動している。フランが亡くなっていれば、能力は解除されるはずだから大丈夫だ。でも本当に?運命なんてあやふやな物を操る私の能力は本当に使えているの?

 

「俺の命令を無視して貴様の妹に食事を運んでいたメイドは殺した。百年も前にな」

「……は?」

「百年間何も食わずに生きれると思うのか? とうの昔に死んでいるだろう」

 殺したメイドって誰?シーラの事?フランが百年間何も口にしていない?もう死んでいる?ふざけるな!

 

「ふざけるな! ふざけるな!! 巫山戯るな!!! 殺してやる!」

「ハッ……やってみろ!」

 妖気を圧縮させ収束し真紅の槍を創造。能力を応用し、必中必殺の運命を付与、更にほぼ全ての妖気を槍に流し込み、運命を確定させる一撃を作製。

 

「なんだその力は?能力を使ったのか?面白い!」

「百年前から今日の為に能力を使い続けてきた…! お前を殺してフランと生きる! ……死ね!」

「隠していたか!やって見せろ!」

 叔父は妖気を最大まで解放し剣を構えて迎え撃とうとしている。

 

「喰らえ! グングニル!!」

 

 今までの恨みも怒りもフランへの想いも全てをこの槍に込め、全力で投擲する!槍は音速を超え、更に速度を上げて叔父へ向かう。

 

 その槍は剣を振り下ろし切り裂かれる。

 

 だけど、終わらない。

 

 必中必殺の槍は切り裂かれた程度では止まらない。二分割された槍はどちらも叔父へ突き刺さり、全てを破壊するかの如く大爆発を引き起こした。

 

 爆煙が晴れる。叔父は身体の大部分を失い、瀕死となっていた。

「俺を殺せるとはな……これで漸く死ねる」

「何を言っているの?」

「……教えるつもりは無い。さっさと終わらせろ」

「言われなくても殺すわ……さようなら」

 残った妖気で真紅を槍を形成し、叔父に突き刺した。霧と化して消えていって、完全に消滅したようだ。

 

 叔父は死んだ。早くフランの元へ行かないと!どうか生きていて……お願い!

 フランの居る地下室へ向かい全速力で移動し、フランの元へ繋がる階段へたどり着く。

 転がるように石段を降りていき、扉にぶつかって止まった。

 

「フラン! ……フラン! お願い……返事をして!」

 祈るように呼びかけると小さく声が聞こえた。

「……だれ?」

 間違えるはずが無い。フランの声だ……!

 

「ふ、フラン生きていてくれたの! あぁ、よかった……。今扉を開けるから待っていて!」

 扉に手を当てると結界が音を立てて崩れていったので扉を開ける。そこには、あの頃よりも少し大きくなったフランの姿があった。光でまぶしそうに目を瞑っているフランにもう離さないと強く抱きしめた。

 

「フランごめんね! 遅くなってごめんなさい! ほんとうに生きててくれてよかった……」

 フランが目を開けてこちらを見る。顔を見る限り元気そうに見えるけど、100年間飲まず食わずだとしたらどこかに不調があるかも知れないし、心配だ……。

 

「どこか痛いところは無い? 大丈夫?」

「う、うん……大丈夫だよ。あなたは血が付いているけど痛く無いの?」

 『あなた』……その言葉で忘れていたかった記憶。フランが記憶喪失なのではと言われていた事を思い出す。間違いであって欲しいけど、お願い……覚えていて!

 

「だ、だいじょうぶよ。あ、あのね、フラン?」

「……なに?」

「わ……私が誰か分かるよね?」

 いやだ……怖い……聞きたくない……。お姉ちゃんのことは覚えているよね……?

 

「……料理を運んでくれてた人?」

「ああ……違うの、私は……ッ!」

 

 忘れられていた。思わず、強く強く抱きしめて、フランの目を真っ直ぐ目を見つめる。

 

「私はレミリア。あなたのお姉ちゃんよ」

「……お姉ちゃん?」

 忘れていてもいい。フランが生きてさえいればそれで…。これからまた私とフランで一緒に生きていけるのだから……!

 

「これからはずっと一緒よ! もう離さないから……!」

 亡くなったお母様に誓う。これから二人で一緒に生き続けると…!

 

 改めて運命を操る程度の能力で『フランと共に生きていく』と願う。どうかずっと一緒に居られますように……!

 

「お姉ちゃん。私のお姉ちゃん…!」

「ええ!フランのお姉ちゃんよ!」

 

 私の一番大切な妹が優しく笑ってくれた。




レミリア編はこれでお終いです。
レミリアから見て、フランに何があったのかが少し分かりました。
・フランは200年閉じ込められていた。
・後半100年間は食事を与えられていなかった。
・記憶を失っている?
まだ分かっていないところは後の展開で回収していきたいですね。
・フランの正体は?
・叔父が死にたい理由。

フランの正体が何なのか分かるキーになりそうなのはこの方々です!
パチュリー:魔法で解決!パチェフラありですね!
アリス:魔法で解決!金髪×金髪の美しさ!ありですね!
ゆかりん:ちょちょっと境界をいじって解決!ゆかフラもいいかも!
さとり:想起で解決!こいし・さとり・フランの戯れを見てみたい!

レミリア編の文章を調整しました。ちょっと固いかなと思いました。

人物紹介
レミリア
妹を第一に生きていたお姉ちゃん。
やっと妹に会えました。
会えた妹は記憶を失っていましたが、
今後はずっと妹と一緒ですよ!たぶん!

運命を操る程度の能力。
能力が及ぶ範囲において望んだ未来を掴み取る能力。一つの対象にしか使えない。
レミリアが望んだのは、
『フランと共に生きていく』
つまり能力を使い続ける限り、フランと共に生きる為の障害を排除する場合にしか使えないが、その障害に対しては強い効力がある。
例えば、障害になった叔父を倒す際には必中必殺の効果を付与できたのと、そもそもフランが死んでしまっては共に生きることは出来ないので、食事を取らなくても生きられたのはこの能力のお陰。
近い未来の改変は難しく、遠くなる程改変しやすいが、食事を貰えなくて直ぐ死ぬ未来のフランを助けられたのは、吸血鬼が元々数年程度なら何も食べなくても生きていける生き物で、その数年で飲食無しで生きられるようレミリアの能力が補助して適合出来たから。

レミリアは死ぬまでフランと共に生きると願うので、ある意味、レミリアの能力は『フランと共に生きる程度の能力』かもですね。


フラン
閉じ込められていたヒロイン?
主人公のレミリアに救い出してももらった。
その正体は何でしょう?

叔父
最強の吸血鬼らしい。
レミリアを自身を殺せるかも知れない存在と評価していた。
フランに食事を与えないで死なせる事で、レミリアが怒りで更に強くなるのではと行動に移した。
詳細はメイド視点で書くかもですね。


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走馬灯の祈り。

メイドの視点になります。


 私は多くの妖怪が住む大きな屋敷でメイドをしています。屋敷の主はブラド・スカーレット様で私含めメイド達は旦那様と呼んでいます。

 旦那様は最強の吸血鬼と呼ばれていて、誰にも負けた事が無く、この屋敷が恐れられている原因の殆どは旦那様で、過去に辺り一帯の妖怪達の殆どを討伐し、人間達はその強さに畏怖を覚えて恭順を誓いました。

 残りの原因は、数年前に屋敷へ訪れたレミリアお嬢様で、一部の人間達が屋敷へ襲撃する時があり、それらを息する間もなく排除した姿が恐れられているようです。

 私から見れば、レミリアお嬢様は大変お強いですが、見た目は可愛らしい女の子で私達メイドにも笑顔で挨拶してくれるので、メイド達からの評判が凄く高いです。私ももう一人の主だと思っています。

 私の主はブラド様とレミリア様とフランドール様がいます。後者二人はまだ自称私の主ですけどね。

 

 フランドール様はまだ幼く、レミリア様にずっとついて回っている姿がとても微笑ましく思います。今日はフランドール様の母君と遊んでいたようですが、レミリア様の所に行きたくなったらしく、甘い声でおねーさまはどこ?と言われた時は全霊を掛けてお連れしますと誓った程でした。レミリア様の元へ着いたらありがと-!と嬉しそうに言われた時は至福の思いでした。

 

 この幸せな日々はお嬢様方の母君が亡くなってしまった事で終わりを迎えてしまいました。

 母君が亡くなられた時の事を父が悔いていました。私の父は執事長としてブラド様が小さな頃から勤めていて、この屋敷で一番の年長者です。父は母君やレミリア様の付き人としてお世話をしていたので、あの日もっと出来ることがあったのでは?知識を持つ者をもっと呼べば、何とかなったのでは?人間の医者を呼べば違う観点から観れたのでは?と救えたかも知れない可能性を考え続けて、その度に後悔してと、繰り返していたと言っていました。

 そこにレミリア様が訪れ、母君が亡くなって一番悲しいのに、元気を出してと言われたそうです。レミリア様に悲しく無いのですかとつい聞いてしまったそうですが、私が悲しんで泣いたら、フランも泣いてしまうから。お姉ちゃんだもの、フランを泣かせる訳にはいかないわ。と言われて、母君が仰っていた、レミリアとフランで二人一緒に生きてと言う言葉を思い出したそうです。

 そこから父はレミリア様とフランドール様が二人で過ごせる日々を送れるように、レミリア様の手伝いをしたり、フランドール様を元気づけたりと、悔いていた頃とは別人のように快活に働くようになりました。私も元気になった父を見て嬉しく思い、改めてお嬢様方に感謝と忠誠を誓いました。

 

 そんな中、フランドール様が旦那様によって地下室に閉じ込められました。

 父はフランドール様から事情を聞き、他のメイドが見つけた遺書によってその時に何があったのかが解りました。

 

 フランドール様だけが悪い訳では無いと父が報告に行きましたが、肩を切られて血を流し、帰ってきました。幽閉を止められませんでした。

 フランドール様をかなり憎んでいる様子だったので、刺激しない方がいいと釘を刺されました。

 レミリア様はひどく悲しんでいました。寝る時も一緒に居たフランドール様が居ないことで眠れなくなってしまいました。私は夜通しレミリア様の手を握っていました。何日か経てば、眠れるようになっていましたが、悲しそうな表情は晴れませんでした。何かできる事が無いかと考えて、フランドール様を模した人形を作ってレミリア様に渡したら大変喜んで頂けました。久々にレミリア様の笑顔を見れて嬉しく思いました。

 

 レミリア様が強くなって旦那様を倒して、フランを救い出してみせると言っていました。父からはフランドール様がお姉さまに会いたいとずっと言っていると聞いてるので、どうかその二つの願いが叶うようにと祈らずにはいられませんでした。

 

 祈り続ける日々は父が亡くなった事で終わりを告げました。父はフランドール様の部屋から戻り、珍しく私の元へ来ました。フランドール様の様子がおかしく、記憶を無くしてしまったかも知れない。今から出して治療すれば元に戻る可能性がある。それかレミリア様と引き合わせれば治るかもしれないと言い、それを旦那様に伝えに行くと言われました。

 フランドール様を憎んでいる旦那様にそんな事を言ってしまえば殺されますと言いいましたが、父の意思は固く、レミリア様とフランドール様の事をよろしくお願いしますといい、行ってしまいました。父を次に見たのは亡くなった後でした。

 

 私は旦那様の部屋に呼ばれて、扉を開けると首の無い誰かが倒れていた。壁の下を見ると父の首がありました…。

ー執事長は俺に指図をしたから殺してやった。

ーお前は逆らわないよな?

 言葉と共に巨大な妖気が放たれて、恐怖で身体が震える。父が殺されたのに…お嬢様方が共に居られる日々を願ったのに頷いてしまった。

 

ー次があいつに運ぶ最後の食事だ。

ー渡すときにお前のせいで執事長が殺されたと言え。

ー監視を付ける。言わなければお前を殺す。

 食事を運ぶ時に、その通りに言ってしまった。自分の命よりも大切な願いがあったのに…自分の命を優先してしまいました。

 

 監視が消えて、部屋に帰ると涙が止まりませんでした。泣きながら思うのは、父の願い。レミリアとの誓い。フランドール様との思い出。私の祈り。

 私はたった二人の主に誓います。この命が終わるまで、レミリア様とフランドール様が共に居られる幸せな日々を願い。そのためだけに私は生きると…私は決意しました。

 

 数十年、ブラドに悟られないようにフランドール様に料理を届けました。少しでも悟られる可能性を潰すため、フランドール様には一切話しかけませんでした。料理も私に与えられた料理を届け、私はそこから僅かばかりを食べて生きました。

 レミリア様は更に強くなったと友人たちから聞きました。きっと昔よりももっと凛々しく、かっこ良くなっているのでしょう。友人たちから聞くレミリア様の話が私の支えになりました。

 フランドール様も元気が余っているのか、妖気を使って遊んでいました。ただ、扉に妖気をぶつけて大きな音を出すのは不味いです。話しかけないと誓っていましたが、フランドール様に扉にぶつけないでくださいと注意してしまいました。ごめんなさいと誤った声は、昔と変わらずにとても可愛らしい声でした。

 

 

 …………血が止まらない。ブラドが扉の結界を強化して、戻るところに鉢合わせして、料理を届けていた事がばれてしまった。剣で刺されて料理を落とし、倒れ込む。

傷口を押さえても、血は流れていく一方で薄れゆく意識の中思うのは、私のたった二人の主の事……。

 申し訳ありません…レミリア様…フランドール様…どうかお二人が幸せにに…一緒に居て笑い合っていた日々を送れますように…祈っていま……す…………。




オリキャラは出すつもりは無かったのですが、プロット無しで始めた結果、色々補完しないといけない事が増えて、メイド視点を追加してしまいました。
レミリア視点で全部補完できればよかったのですが、話の展開を変えれずに一話追加する事になりました。

これで他人の視点は終わりです。
次からはイチャイチャ編スタートですよね!たぶん!

人物紹介
メイド(シーラ)
今回の視点の人。
ブラドと執事長の掘り下げと、料理を運ばなくなった訳を書く為に登場してもらいました。
シーラが食事を運んでいなかったらフランドールは亡くなっていました。
ifの話ですが、もし生きていたら咲夜さんの立ち位置になっていました。

執事長
先代から執事長を勤めていました。
レミリア達の世話役をしていたのですが、母君とフランを救えなかった事を後悔していた。
レミリアの優しさと主としてのカリスマを見て、最後はレミリアを主と仰いでいました。

ブラド
ーー在りし日にあった会話。
どうしてそんなにフランドール様を恨んでいるのですか?
……俺の能力は知っているか?
申し訳ありませんが存じ上げません。
俺の能力は再生する程度の能力だ。大抵の傷は直ぐに治るが、あいつに破壊された部分は治らない。分かるか?治らない傷を修復させようと能力は発動し続ける。その時の激痛が。剣を突き立てられ、掻き回される様な痛みを絶え間なく受けている苦痛を。故にあいつにも同じような苦しみを与えてやる。飢えて苦しみながら死んでいけ。

再生する程度の能力で全ての怪我を瞬時に治すはずが、フランの能力で破壊された腕と胸の傷が治せずに、永遠の苦痛を受けていた。
痛みはあっても戦いの中で死にたかったブラドは、レミリアに殺された時、やっとその苦痛が終わるので、これで漸く死ねると言っていた。

↑を作中内に入れることができなかったので、こちらで補完させて貰いました。


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吸血鬼の夜。

久々のフラン視点です。

あらすじ
色々あって地下に閉じ込められたフラン。
二百年掛けてレミリアが救出しました。


 お姉ちゃんに手を引かれて部屋から出る。扉の先には上に続く階段があった。やっと出れた…でも出ていいのかな…?

 暗い気持ちが溢れてきて俯くと、頭にポンと手が乗っかった。

「外は怖い…?でも大丈夫よ。何があってもお姉ちゃんが守るわ!行きましょう」

「う、うん!」

 お姉ちゃんと一緒に階段を上がって行き、登りきった先には、すごく広い部屋に繋がっていて、大勢の人たちが居た。全員が私達を見ている。ちょっとこわい。お姉ちゃんの後ろに隠れると、お姉ちゃんが強く手を握ってくれた。

 

「詳細は後で話すわ。皆は大広間に集合しなさい。ここに居ない者も全て集めるように。それでは移動しなさい」

 お姉ちゃんが手をパンパンと叩くと、集まっていた人たちが部屋から出ていった。全員出ていったのを確認して、お姉ちゃんが私の方を振り向いた。

 

「もう大丈夫よ。とりあえず私の部屋に行きましょうか」

 頷いた私はまたお姉ちゃんについて行く。部屋を出て階段を登り、長い廊下を歩いた先にある扉を開けて中に入った。

「ここが私の部屋よ。少しの間ここで待っていてくれるかしら?屋敷の住人達に説明をしないといけないの。大丈夫?」

「うん。でも早く戻ってきてね……」

 一人で居るのは得意だけど、お姉ちゃんともっと話をしたいから。

「ええ、すぐに戻ってくるわ!」

 お姉ちゃんは飛ぶような速さで部屋を出ていった。

 お姉ちゃんの部屋のベッドに座って、部屋をきょろきょろと見渡して、時間を潰す。

 お姉ちゃんはなんの説明をしているのかな?怪我はもう治っていたけど痛く無いかな?早くお話ししたいな。

 

 部屋の中央にはベッドがあって、すごいふかふかだった。右を見ると棚があって、棚の上には金髪で赤い服を着たサイドテールに髪を留めている女の子のお人形があった。

「なんか私に似てるかも…?」

 棚の横にある鏡の前に立って、改めて私の姿を見てみるとお人形と同じような特徴を持った女の子が立っていた。この子が私なんだよね?久しぶりに見たけど実感がわかないな…。目の前の女の子が悲しそうな表情をしている。

 

「フラン?なにしているの?」

 気付けばお姉ちゃんが近くに来ていた。

「お帰りなさい……お、お姉ちゃん」

 長い間誰とも話していなかったので、喋ることに慣れていないのでどもってしまう。それでもお姉ちゃんは柔らかく笑ってくれて頭を撫でてくれた。また手を引かれ、二人でベッドに座った。

 

「鏡を見ていたのね。知っているかしら?人間達には吸血鬼って鏡に映らないって言われているのよ。私たちは吸血鬼なのに普通に映っているわよね」

「私って吸血鬼なの…?だから羽が生えていたんだ…」

 衝撃の事実!私は吸血鬼だったみたい。

「そこも忘れているのね…ならお姉ちゃんがフランの小さな頃の話をしてあげるわ!」

「知りたいな。私の事もお姉ちゃんの事も……」

「もちろん教えるわよ!でも時間が掛かると思うから今日は寝れないわね!」

「うん、がんばって起きてるよ!」

 寝ないようにがんばらなきゃ!こんなふかふかのベッドで寝ないように我慢するのは大変かもだけど。

「ふふっ、そんな頑張らなくてもいいのよ。これからはずっと一緒に居るのだから、今日寝てしまってもまた話してあげるわ」

 また優しく撫でてくれる。お姉ちゃんに撫でられるとすごくうれしい!これからはずっと一緒に居れるんだよね。本当にうれしいな。

 

「では話すわね?最初はフランが生まれた時の話よ!」

 お姉ちゃんは私が生まれた時から閉じ込められるまでの話をしてくれた。私が閉じ込められた後でお姉ちゃんが何をしていて、どうやって私を地下室から出したのかを、全部教えてくれた。

 結局、最初の日は寝ちゃったけど。何日か掛けてちゃんと教えてくれた。過去を思い出す事はできなかったけど、知ることができてよかった。お姉ちゃんの事をお姉さまと呼んでいたと聞いた時は、呼び直した方がいいのかと聞いたら、今のフランが呼びやすい方でいいと言われたので、お姉ちゃんと呼ぶことにした。

 結局、私が記憶を失った原因は分からなかった。私は私だよね?フランドール・スカーレットだよね?記憶が無い事が改めて怖いと思った。

 

 それからはお姉ちゃんの部屋で暮らしている。お姉ちゃんが屋敷の主としての仕事をしている時以外は部屋に居てくれた。今お姉ちゃんはお仕事をしているので部屋には私一人で、クマの大きなぬいぐるみを抱きしめて、帰りを待っている。

「お姉ちゃんまだかなー」

 何かあれば部屋の外に控えているメイドに声を掛けてと言われているけど、寂しいってだけで声を掛けたらダメだよねー。

 暇なのでぬいぐるみを置いて、ベランダに行く。外には大きなお月さまとキラキラ光るお星さまが空で輝いている。

 

 地下室から出て初めてお姉ちゃんと見たお月さまはすごくきれいだった。

 真っ黒の夜空に大きく光る星があった。私がきれいとつぶやくと、あれはお月さまだとお姉ちゃんが教えてくれた。お月さまは見上げる私達を優しく照らしてくれた。こんなにも外の世界がキレイなんて地下室に居たら気づけなかったから、あらためてお姉ちゃんに私を出してくれてありがとうって伝えた。優しく笑ってくれてお月さまに照らされたお姉ちゃんがキレイだと思った。

 

「また月を観ていたのね」

 お月さまを観ていたらお姉ちゃんが戻ってきた。

「うん…やっぱりキレイ!」

「そうね。私も好きよ」

 お姉ちゃんに後ろからぎゅっと抱きしめられ、少しの肌寒さは温かさに変わった。お姉ちゃんと一緒に月を眺めていたら、お姉ちゃんにフランと呼ばれた。

「ねえ、私に何かしてほしい事は無いかしら?」

「お姉ちゃんにしてほしいこと?うーん…一緒に居てほしいな…」

 一緒に居てくれたらそれで十分かな?他にしてほしい事は思いつかないなー。

「もちろんお姉ちゃんはずっと一緒に居るわよ!」

「うん!」

「なら、欲しいものは無いかしら?」

「ほしいもの…なんだろう…?」

 何が欲しいかな?ぬいぐるみはもらったし、美味しいご飯も出てくる。ふかふかのベッドでも寝れるからなー…。なんだろう?お姉ちゃんが居ないときは一人で遊んでいるけど…あ、そうだ!

 

「お友達がほしいな……」

「お友達?」

「私と遊んでくれるお友達……」

「お友達ね……いいわよ!私がフランのお友達をたくさん増やしてあげるわ!」

「う、うん!ありがとうお姉ちゃん!」

 お友達たのしみだなぁー。仲良くなれたらいいなー。たくさん遊びたいな-!

 

「楽しみにしていてね。そろそろ寒くなってきたらお部屋に戻りましょう」

「うん!」

 部屋に戻り、二人でベッドに潜り込む。今日もお姉ちゃんが一緒に寝てくれる。お姉ちゃんに抱きついて今日も寝よう!

 

「お姉ちゃんおやすみなさい!」

「ええ、おやすみなさい」




イチャイチャが始まってきましたよ?
フランのお友達をレミリアが増やしていってくれるので、紅魔館メンバーが増える度に自動的に色々な子とイチャイチャできるようになりますね!
叔父が居なくなってレミリアが屋敷の主になりました。
こちらの屋敷では普通のメイドもたくさん居ますよ!
レミリアが屋敷の住人にどう説明したのかはまた後日書くかもですね!

今さら思ったのですが、このフランって見た目も中身も子供ですよね?
イチャイチャも子供がする程度の事にしかならないような気が…
自分から押していくタイプでもないので、
イチャイチャしてくる相手をお待ちください!

人物紹介
フラン
お姉ちゃんと地下室から出ました。
お姉ちゃんの部屋に住み、一緒に寝てますよ!
クマのぬいぐるみでよく遊んでいます。

レミリア
フランが一番!
フランの友達を増やそうと計画中。
最初の友達は誰かなー。
一瞬登場させたキャラにしようと考えていますが。


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初めてのお友達。

 地下室から出てから一ヶ月が経った頃、相変わらずお姉ちゃんと一緒に遊んでいて、今日はチェスをしている。チェスのルールをお姉ちゃんから教わって何度か対局しているけど、ぜんぜん勝てない。今回も負けちゃった。

「お姉ちゃんすごい強いね!」

 クイーンとルークを2枚駒落ちして貰って勝負してもぜんぜん勝てなかったよ。

「ふふっ、次は全落ちでやってあげるわよ!」

お姉ちゃんはクイーン、ルーク二枚、ナイト、ビショップを抜いていった。

「もうポーンとキングしか残ってないよ-!それなら私でも勝てるよ!」

「ふふ、やってみましょうか?私も本気で指さないといけないわね」

 今までが本気じゃなかったの!?

「ま、負けないもん!」

 

………結果は、負けました…。

「お姉ちゃん強すぎだよー…私才能無いのかな…?」

「ふ、フランごめんなさい!まだあなたは始めたばかりでしょう?私は200年くらいチェスで遊んでいるのだから仕方ないのよ!」

「そうだけど…ね…」

「これから強くなっていきましょう!お姉ちゃんがもっと教えてあげるから!」

「うん、がんばるね!」

 お姉ちゃんは私が落ち込んだのかもってあたふたしていたけど、そんなお姉ちゃんがちょっと可愛くて笑ってしまった。

「ん?フランどうしたの?」

「なんでもないよー。たくさん教えてね!」

 それからチェスをして遊んでいたら、メイドさんが扉をノックして入ってきた。

「失礼致します。お嬢様、少々よろしいでしょうか?」

「いいわよ。フラン、ちょっと待っていてね」

 私が頷くと、お姉ちゃんはメイドさんと一緒に部屋の外へ出て行った。

「屋敷…主…再戦……ですが…」

「わかっ…行く………しく……ね」

 しばらく何か話していたみたいだけどよく聞き取れなかった。

「ちょっと用事ができたから行ってくるわね。フランはゆっくりしててね」

「うん。行ってらっしゃい!」

 さらりと私の頭を撫でて、お姉ちゃんは出て行った。何の用事かなー。またチェスを教えてほしいなーと考えながら、ベッドの上でごろごろする。右に転がってベッドの端で止まる。左に転がってまたベッドの端で止まるのを長い間繰り返してたら、お姉ちゃんが帰ってきた。

 

「フランただいまー」

「あっお姉ちゃんおかえりー!何していたの?」

 息が切れてる?ちょっと疲れているみたいだけど何をしていたんだろう?

「ちょっと面接をしていたのよ。この屋敷の住人に相応しいか判断しないといけないのよね」

「そうなんだー。面接って大変なんだね?」

「結構疲れたからちょっと休むわね」

「あ、じゃあ私も休むよ!」

 お姉ちゃんがベッドに横になったので、一緒に寝ようとお姉ちゃんに抱きつく。ちょっと汗をかいているみたいだけど血の匂いとかはしなかったので安心した。

「そう?なら今日はもう寝ましょうか?」

「うん!おやすみなさい!」

「ええ、おやすみなさい」

 今日もいい夢が見れそう!お姉ちゃんおやすみ。

 

 それから一ヶ月くらいは、今までと変わらずにお姉ちゃんと遊んだり、一人でぬいぐるみと遊んだりしていたけど今日はお姉ちゃんが会わせたい人が居るって言って、今から呼んでくるらしい。どんな人だろう?怖そうな人じゃなければいいなー。

 

「入るわよー」

「失礼しまーす」

 ノックの後、お姉ちゃんと赤い髪で身長の高い、見たことの無い服装の女の人が入ってきた。誰だろう?

 

「初めまして妹様。私は紅美鈴と言います。門番の仕事を任されています。よろしくお願いします」

「よ、よろしくね!」

「私の事は美鈴とお呼びください。お嬢様から話を聞いて、妹様とお話をしたいと思ったのですがいいですか?」

「うん!なんでも聞いてね!」

 めーりんって言うんだね。もしかしてお友達になってくれるのかな?ならがんばって答えなきゃね!キリッとした目でめーりんを見つめていたら何故か笑われちゃった。なんでなの?思わず、椅子に座ってこっちを見ているお姉ちゃんを見る。お姉ちゃんも何故か笑っていた。何かしちゃったのかな?

 

「そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。難しい質問はしないですし、妹様の事をもっと知りたいなと思っただけなので」

「が、がんばるよ!」

「ふふっ分かりました。それではまずはあなたのお名前を教えてくれますか?」

「うん!私の名前はフランドール・スカーレット。お姉ちゃんの妹なの!」

「ありがとうございます。お姉ちゃんがお好きなんですね?」

「うん!大好きだよ!」

 思わず反射的に答えちゃった…お姉ちゃんの方を見たらちょっと顔を赤らめていた。私もちょっと恥ずかしくなっちゃった。でも好きなことに変わりはないけどね!

 

「本当に好きなんですね。うらやましいですよお嬢様?」

「か、家族なのだから当然よ!私も好きよフラン!」

「あ…ありがと…つぎ!次の質問はなにかな!」

 もー!恥ずかしいよー!うれしいけど!

 

「ではご趣味は何かありますか?」

「趣味?うーん…お姉ちゃんとチェスしたり、ぬいぐるみで遊ぶのが趣味なのかな?あと妖気で色々作って遊ぶのも趣味?」

「結構あるのですね。私は鍛錬と花を育てるのが趣味ですね。武術を磨いてさらに強くなりたいと思ってまして、毎日鍛えているんですよ。花を育てるのは単純に癒されるからですけど」

「お花を育てているんだ!キレイなお花かな?見てみたいな!」

「まだ、育て始めたばかりなので花は咲いていないのですが、咲いたらお見せしますね」

「たのしみー!」

 早く咲いてほしいなー。私もお花を育ててみたいかも。私にできるかな?水をあげるだけでいいのかな?

 

 それから、私も質問したり、めーりんが質問したり、お姉ちゃんも私たちに混ざって質問したりと繰り返してたら、いつの間にかすごい時間話していた。楽しい時間はあっという間に過ぎていくってお姉ちゃんが言っていたけど、本当にあっという間だった。

 

「たくさんお話ができて楽しかったです。次が最後の質問ですが、いいですか?」

「うん!私も楽しかったよ!」

「それでは最後の質問ですが、お友達がほしいと聞いたのですが、私はどうでしょう?」

 ニコリと笑いながら最後の質問をされた。答えはもちろん決まっている。

「よろしくね!めーりん!」




ついにレミリア以外の紅魔館メンバーが追加されましたね!

イケめーりんことめーりんです!
今後も紅魔館メンバーが順次加入していくでしょう!
次回もおそらくめーりん回かと!

あと、今まで投稿した分の変な箇所を直していきました。
ストーリーに関わる変更はしていません。
言葉づかいが変だなって思ったところは直ったと思います!
これからもイチャイチャ目指してがんばっていくので、よろしくお願いします!

登場人物
フラン
お友達ができました!
チェスは下手。負けすぎて涙目でした。
この子いつも寝てますね。鍵っ子です。

レミリア
チェスも強いお姉さま。
フランに勝ちすぎて涙目にさせてしまい焦りました。
裏では結構がんばっていました。
疲れて寝るくらいの面接とは?

めーりん
紅美鈴さん。イケめーりん。
色々あって紅魔館の門番なりました。
舞台裏はどこかで書きたいですね。
フランとお友達になりました。


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夜に咲く花。

美鈴回です。


 美鈴とお友達になってから一週間くらい経って、今日も美鈴と遊んでいる。今まではめーりんと呼んでいたけど、正しくは美鈴って言うみたい。

 美鈴は昼は門番をしていて、夜は私と遊んでくれている。夜に寝なくて大丈夫なのって聞いたら門番しながら寝ているから大丈夫って言われたけど……だいじょうぶなのかな?門を通ろうとしたら気配で分かるから問題ないらしいけど、とりあえずクビにならないでねと言ったら笑われちゃった。

 

 今は美鈴にベランダでお花の育て方を教わっている。簡単にまとめると、栄養のたくさんある土に種を植えて、水と日光をしっかりあげるとキレイなお花が咲くみたい!

「では実際に育ててみましょうか?」

「うん!やってみたい!」

 美鈴が土の入った鉢と種を持ってきてくれた。種は月光花と呼ばれてる花の種で、月の光を浴びて育つ珍しい花らしい。吸血鬼は日光を浴びると火傷しちゃうから、昼に外に出れない私のためにお姉ちゃんが取り寄せてくれたらしい。お姉ちゃんに後でありがとうって言わないと!

 

「それでは鉢の真ん中辺りに人差し指の半分くらい刺して、穴をあけてください」

 言われたとおりに人差し指を土に刺したら小さく穴があいた。土を触ったのは初めてかも!ちょっと冷たいんだね。

 

「良い感じですよ。次はそこに種を入れましょう」

 パラパラと種を穴の中に降らしていく。種って黒い石にしか見えないのに本当に花が咲くのかな-?

 

「では穴に土を被せてください。あ、そんなに強く土を押したら芽が出てこなくなってしまうので、ちょっとほぐしてあげてください」

 土を被せたところを手でペタペタと押したらダメだったみたい。押したところをちょっとほぐして、土を柔らかくした。

 

「はい、それで大丈夫ですよ。次はこのじょうろで水をあげてみましょう。与えすぎると枯れてしまうので気をつけてください」

「そうなの?たくさんあげた方がいいかなって思ったけど」

「妹様もご飯を食べ過ぎたらお腹が痛くなっちゃいますよね?お花も同じなんですよ」

「そーなんだ!気をつけて水をあげるね。じゃあこれくらいでどうかな?」

 多すぎないように水をあげる。お花のお腹が痛くならないように気をつけてあげないとね!

 

「ちょうど良いですね。上手いですよ!これから毎日起きたら同じ量の水をあげてください」

「うん、わかったー!」

「そして、鉢を月の光が当たる所に置いておけばキレイなお花が咲いてくれます」

「ほんとに!?たのしみー!」

 これでお花が咲くんだ!ちゃんとお水を毎日あげて、お世話してあげないとね。

 今は鉢に土が入っているだけにしか見えないけど、これの上に芽が出て、そして花が咲くんだよね。早く育たないかなー?

 

「美鈴ありがとう!ちゃんとお世話するからね!」

「いえいえ、花の育て方を教えるのはお友達との約束でしたからね。花のことで質問があればいつでも聞いてください」

「うん、ありがとー!」

 その後は、美鈴がどんな花を育てたことがあるのかだったり、どんなキレイな花があるのかをたくさん教えて貰った。ずっと話していたら、お姉ちゃんが戻ってきて、もう夜が明けるから寝ましょうって言われたので今日はお開きになった。

 お姉ちゃんの横に潜り込んでから、お姉ちゃんにお花を取り寄せてくれてありがとうって言ったら、優しく撫でてくれた。

「お花が咲いたら一緒に見ようね。おやすみなさい」

 

 それから毎日、起きたら最初に水をあげていった。何日か経っても芽が出てこないから、水を与えすぎちゃったかもって美鈴に言ったら、一週間くらいで芽が出てくると思うのであと三日くらいお待ちくださいと言われた。

 

 その三日後に鉢を見ると、ほんとうに小さな緑の芽が生えていた。生えてきてる!やったー!

 芽が生えたことをお姉ちゃんと美鈴に言うとすごいってほめてくれた。この調子で育ってくれたらうれしいなー。

 

 さらに一週間経つと芽はどんどん成長していって、私の膝くらいまで大きくなった。こんなに早く大きくなっていくんだ……このままいけば私より大きくなっちゃうかも。

 

 起きてお姉ちゃんにおはようを言ってから水をあげにいくのが日課になった。育ててから三週間で芽は私と同じくらいの高さになって、茎の一番上に葉っぱじゃない塊ができた。これが何かを美鈴に聞くと、花が咲く前にできる蕾だと教えてくれた。この感じだと明後日には咲くって言われたので、あと少し水をあげるのをがんばろう!

 

 そして次の日、水をいつも通りにあげる。その後に美鈴とお話をしていて、花が咲いたらお花見をしましょうって言われた。お花見って言うのは、花を観ながらお酒を飲んだり、ご飯を食べたり、お話したりして楽しむことらしい。私はお酒が苦くて好きじゃないからどうしようって聞いたら食べて話すだけでもいいって言われて安心した。

 明日、花が咲いたらお姉ちゃんと美鈴と私で花見ができるって考えたら、楽しみすぎてその日はぜんぜん眠れなかった。お姉ちゃんにぴたっとくっついて、明日のことを考えていたら気づいたら寝ていたけど。

 

 目を覚ましたら、お姉ちゃんに挨拶をするのも忘れてベランダに行く。ベランダ前のカーテンを開くと、月の光を受けて、優しく光る真っ白なお花が咲いていた。花は大きくて、真ん中が満月のような円になっていて、花びらが円を囲むように生えていた。

 

「きれい……」

 お月さまが私の目の前に来たみたい。私が育てたんだよね……すごいうれしいな。

 

「んぅ……フランどうしたの?」

 しばらく花を眺めていたらお姉ちゃんが目を覚ましたみたい。起きたお姉ちゃんの手をひっぱってベランダまで行って花を見せる。

 

「こんな綺麗なお花を咲かせるなんてすごいじゃない!がんばったわねフラン!」

 その言葉がうれしくてお姉ちゃんに抱きついたら、優しく抱きとめてくれた。そのまま二人で花を観ていたら、花見の準備をしないといけないわねって言われた。それに美鈴にも早く教えたいと伝え、美鈴の元に急いで向かう。

 

「美鈴花が咲いたの!きれいな大きなお花!」

 美鈴を見つけたので抱きついて、花が咲いたと伝えるとたくさん頭を撫でられて褒めてくれた。

 

「おめでとうございます!妹様がちゃんと毎日お世話したので咲いたのですよ。早く私も観たいですね!」

 そう言うと、美鈴は私の背中と膝裏に手を回して持ち上げて、走りだした。なんか美鈴の顔が私の顔のすぐ近くにあるからちょっと恥ずかしいかな……。美鈴のまつげが長いなーって眺めていたら、いつの間にか部屋に着いていた。

 

「め、美鈴!なんでフランをお姫様だっこしてるのよ!」

「すみません。急いでいたもので」

 お姫様だっこ?この持ち方のことかな?それとも私がお姫様だったり?ちがうよねー。そんなことを考えていたら、ベッドに降ろされた。

 

「ありがとうね美鈴!」

「いえいえ、私も役得でしたので」

「めいりん……?」

「冗談ですよお嬢様?」

 なんかお姉ちゃんが美鈴を睨んでいる。何でだろう?

 

「それより美鈴!花がきれいだね!」

「確かに綺麗ですね。立派に育ちましたね」

「うん!すごい大きい!」

「フラン、美鈴、花見を始めましょう。メイドたちに料理と飲み物は用意させてるわ」

 

 花見が始まった。私はお姉ちゃんと美鈴の真ん中に座って、花の前に料理やジュースを置いて、三人で食べたり飲んだり喋ったりした。花がきれいだと褒められているのを聞いて、私も褒められているように聞こえた。料理を持ってくるメイドさんもきれいだと言ってくれたので、嬉しかった。

 

「美鈴とお姉ちゃん!本当にありがとうね!」

 そう言ったら、隣の二人に頭をたくさん撫でられた。本当は私がお花を育てられるか心配で、枯らしちゃうかなって思ってた。また壊しちゃうんじゃないかって怖かった。

 

 でもきれいに咲いてくれたから。育て方を教えてくれた美鈴。咲かせる機会を作ってくれたお姉ちゃん。咲いてくれたお花。本当にありがとうね!

 

 花見が終わった後は三人で眠った。お姉ちゃんと美鈴の真ん中で眠ると、いつもより温かくて幸せでよく眠れた。




ハッピーエンドで終われましたね。
次回もありますけど!
美鈴にお姫様だっこさせたい回でした。
タイトルで咲夜が連想できますが、一切出ませんでしたね。
タイトル詐欺すみません!

月光花
月の光で咲くお花。
ひまわりの月バージョン的なお花です。
東方ならあるかもですよね!
月の魔力的な何かで育つのでしょう。

登場人物紹介
フラン
美鈴の横顔を眺めていた子。
お花のお世話を毎日できるえらい子。
よく抱きつく子。
川の字で最後は寝ました。
過去の出来事から何か、誰かを壊さないか恐れているみたいですが、花を育てたことで少し薄れたとは思います。

レミリア
フランのために月光花の種を用意させた。
お姫様だっこした美鈴に思わず、文句を言った。
嫉妬ですか?もちろんです。
相変わらずの妹ラブでしたね。

美鈴
イケめーりん。
フランをお姫様だっこしました。
フランのことはライクです。
レミリアもフランも好きなので、仕えながら二人とも可愛がっています。
レミリアはフランを交えてからかうと可愛いと学びました。


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魔法使いの夜。上

パチュリー視点です。


 紅茶とスコーンの用意を始める。今日は久しぶりにレミィが家に来る日だ。紅茶にはうるさいらしいけど、毎回美味しいと言われているから、私の紅茶は美味しいのかしら?魔法使いとして生を受けた私は食事を摂る必要が無いので、美味しいかどうかなんて余り興味が無いのだけれど、決められた温度と決められた時間で紅茶を入れれば同じ味になるのだから、そういった事は魔法の研究で同じような事をやっているから得意なのよね。

 さて、そろそろ着く時間だけどレミィは来るのかしら?レミィの種族は吸血鬼でこの周辺の街や村を全て支配している。私の住む村もレミィに税を納めているらしいけど、詳しくは知らないわ。魔道書を集める為に、魔法薬や試薬を売ってお金を稼いでいるけど、そこから少し引かれているって聞いたような?まあ、どうでもいいわね。

「パチェ-?居るかしら?遊びに来たわ」

「……今開けるわ」

 時間通りに来たわね。扉に開錠の魔法を使って扉を開けた。扉が開いてレミィが入ってきたけど、この小さな女の子がこの一帯の支配者だなんて誰も思わないわよね。

 

「パチェ久しぶり!半年ぶりね!」

「半年なんてあっという間よ?魔法の研究をしていたら気付いたらそれくらい経っているもの」

 私もレミィも何千年も生きられるのだから、時間なんて気にしないわよね。

「確かに魔法の勉強をしていた時はあっという間だったわね。でも今はフランと一緒に居れて毎日が楽しいの!一日一日を記憶に残したいって思ったら半年って結構長いものなのよ!」

 レミィの妹のフランドール。会ったことはないけどレミィが毎回その子の話をするから、親しくなった気さえしてきたわよ。

「そうなのね。取りあえず紅茶の用意は出来てるから、淹れるわね」

「ええ、ありがとう!パチェの紅茶は好きなのよ」

「……そう」

 こういった事を素面で言えるのが、レミィのずるいところね。ティーカップに紅茶を注ぎ、レミィの前に置いた。

 レミィが紅茶を美味しそうに飲むのを観ながら、私も飲むことにする。そんなに美味しい物かしら?まあ、レミィが美味しく飲んでいるならいいわ。

 

「やっぱり美味しいわ!ありがとう。そう言えば今日はパチェに頼み事があるのよ」

「頼み事なんて珍しいわね?面倒なのはいやよ?」

 久々の頼み事ね。前の頼み事はフランドールの記憶についてだったから、今回もフランドール絡みかしら?

 

「パチェの魔法の腕なら面倒じゃないと思うわよ?私があの屋敷の主になったのは少し前の事だけれど、せっかく主になったのだから屋敷に名前を付けたのよ!紅魔館と名付けたのだけれど、いいと思わない?」

「紅魔館ね……スカーレットでデビルなレミィの屋敷なのだから良いんじゃないかしら?」

 レミィのネーミングセンスが残念なのは最近気づいたのだけど、今回はまともだと思えた。誰かと考えたのかしら?

 

「そうよね!フランと考えたのだけれど、良いセンスよね!それで紅魔館って名付けたのだし、せっかくだから屋敷の全面を真っ赤に染めようと思うの!」

「……え?」

 全面真っ赤?目が痛くなりそうな屋敷ね。レミィのセンスはやはり絶望的よ。

 

「パチェの魔法で指定した場所に水を発生させる魔法が有ったわよね。その魔法を応用したら、赤色の塗料を混ぜた水を屋敷全面に塗って、真っ赤に出来ると思ったのだけどどうかしら?」

「出来るとは思うけど……赤で染めていいの?」

「当然よ!これで、お姉ちゃんのセンスをフランが褒めてくれるわね!」

 まだ会った事の無いフランドールに言いたいわ。姉を甘やかせすぎじゃないかしら?住んでいる家が真っ赤になるのよ?止めるべきじゃない?

 

「まあ……いいわ。それで対価には何を用意しているのかしら?何事も等価交換が原則よ」

「分かっているわ。パチェには紅魔館に引っ越して貰おうと思うのよ」

「……それが対価かしら?」

  魔法使いにとっては等価交換は絶対な物。いくらレミィでもそこは譲れないわ。まあ、まだ用意があるわよね。それだけでも私には十分過ぎる対価なのだけれどね。

 

「確か大きな部屋に引っ越したいって言っていたわよね?それと紅魔館の屋敷の魔道書は全て閲覧してもらって構わないわ」

「対価としては多くないかしら?他にも何かあるの?」

 魔法で屋敷を染めるだけで、屋敷の魔道書を全て閲覧できるのはちょっと多いわね。他にも頼みごとがありそうね。

 

「ええ、フランとお話してもらいたいの!パチェならフランと仲良くなっても安心できるわ!」

「姉バカね……私もフランドールとは一度話してみたいとは思っていたの。とりあえずこの家をレミィの屋敷に転移させるわ。この家には転移の魔法を組んでいるからレミィの屋敷に魔法陣を書けば転移できるわ」

 またフランドールね。フランドールについてはレミィの家に引っ越してから考えましょうか。レミィから話を聞くとかなり可愛いらしいけど、実際はどうなのかと興味は多少あるわね。

 

「準備がいいわね。では早速行きましょう!」

 飛行魔法を使ってレミィについて行く。最後に住んでいた村を一瞥した。生まれてからずっと魔法の研究だけをやっていて、誰ともちゃんとした交流をしてこなかった色の無い日々はあの日レミィが訪れた時に終わった。レミィに会ってから誰かと会話する楽しみを知って、レミィが来る日が楽しみになって、レミィと喋ると嬉しくて世界に色が付いたようだった。こんな恥ずかしい想いはレミィに直接伝えるなんてできないけど、本当に感謝しているのよ。

 

「パチェ、名残惜しいかしら?」

「別にどうでも良いわ。それよりも新しい魔道書を読みたいの」

 相変わらずの魔法バカねなんて笑いながらレミィは紅魔館に向かって飛んでいった。これからレミィの屋敷に住むなんて楽しみね。空高くまで飛ぶと、下には小さな火の灯りがぽつぽつと灯っている。前方に一際大きな灯りが見えた。あれが紅魔館ね。

 

「お嬢様、お帰りなさい。それと御友人でしょうか?」

 大きな門の前に着くと赤髪の長身の女性に迎えられた。

「パチェは今日から紅魔館の住人よ。パチェ、この子は美鈴。門番を任せているの」

「よろしく。パチュリー・ノーレッジよ」

「パチュリー様よろしくお願いします。お綺麗な方が屋敷に増えて嬉しいです。何かあれば気軽に声を掛けてくださいね」

「ええ、ありがとう」

「美鈴!あなたは口説かないと会話ができないのかしら!」

「口説いていませんよ?綺麗な女性を褒めるのは当然の事ですので」

「そう言うところよ!最近フランも美鈴の話ばかりしてくるのよ!従者としては自重しないといけないんじゃないかしら!」

 身長差から美鈴をレミィが下から覗き込むように怒っている。まあ、小さな子がじゃれているようにしか見えないわね。レミィを撫でて宥めている美鈴と目が合った。笑った後に、可愛いですよねと口を動かしたのが見てとれたので頷いておいた。

 

「レミィそろそろ案内して貰えないかしら?」

「はあ……行きましょうか?美鈴、また今度続き話しましょうね」

「お嬢様と話すのはいつも楽しみにしています。お待ちしていますよ」

「はいはい、では行きましょう」

 手をひらひらと振ってから背を向けたレミィについて行く。美鈴とは話が合いそうね。私も今度話に行こうかしら。

 

 長い廊下を歩いて進むと、掃除をしているメイドをよく見かける。こちらに気づく度に礼をされ、レミィがご苦労さまと言っての繰り返しを10回くらいしたところで目的地に着いたようだ。

 レミィが扉を開けて、一緒に入っていくと私の家が余裕で入るくらいの広い部屋に着いた。ここを更に拡張すれば大図書館が造れるわね。悪くないわ。

 

「良い広さね。それにホコリもなくて過ごしやすそう。ここの空間を弄って更に広げてもいいわよね?」

「ここはパチェの部屋なのだから好きにしていいわ!」

「ありがとう。なら早速だけど転移の魔法陣を書いていくわ。しばらく時間が掛かるわよ」

「あ、それならフランを呼んでくるわ!早くパチェのことを紹介してあげないと!行ってくるわねー」

 あっという間に行ってしまったわね。まあ魔法陣を書きましょう。白い線を引ける石を取り出して、床に大きく円を書いて、そこに文字を書き込んでいく。転移。対象。座標。距離。空間。

 必要な情報を正しく書かないと転移魔法は発動しないから、丁寧に書き続けていく。全ての情報が書き込めたので次の工程に入る。

 家の魔法陣とリンク完了。魔力を流し込んで空間と空間を繋げる。転移魔法を発動させる。魔法陣が光ると同時に見覚えのある家が目の前に現れた。成功ね。

 家の中に入って、紛失物が無いかを確認していく。何も無くなってなさそうね。

 一息つこうと椅子に座って、先ほど淹れた紅茶を飲む。冷めると美味しく無いわね。次は家具と魔道書を全部外に出さないと。魔法で浮かせて全て外に出していく。最後に座っている椅子も浮かせて座りながら外に出た。

 あとはもう一度家を転移させて、元に戻せば引っ越しはとりあえず終わりね。転移魔法を発動させて家を送り返した。二度手間だけど、家具一つ一つに転移魔法を組んでいくよりは家ごと転移させたほうが効率的よね。

 さて、次は空間の拡張を始めましょうか。これで思い描いていた大図書館を造れそうだわ。次の魔法陣を書き込んでいきましょう。

 

「戻ったわよー!もう転移は終わらせたのね。残念ね、転移魔法を観てみたかったのよ」

「……お、おじゃまします……」

 レミィの影に隠れて、半分だけ顔を出している女の子が見える。さらりと流れるような金色の髪も、不安そうに此方を覗く紅い目も、宝石が垂れ下がっている綺麗な羽も、構成さしている全てが可愛らしく見える。

 これだけ庇護欲を誘う子が妹だとレミィが溺愛するのも分かるわね。でもそれだけよ。

 

 私はレミィが好きなの。

 

 つまりフランドールとは敵のようなものね。簡単に仲良くなれるとは思わない事ね。

 ともかく、挨拶をしましょうか。

「パチュリー・ノーレッジよ。よろしく」

「ふ、フランドールです!よろしくね!」

 さあ、フランドールとの戦いを始めましょうか?私は手強いわよ。




キマシタワー!
パチェさんはレミィが好きなご様子です。
フランドールは果たしてパチェさんと仲良くなれるのでしょうか。
今まで紅魔館って名称は無く、色も普通の屋敷だった件。
レミィなら屋敷を紅に染めちゃいますよね!
長くなってしまったので、話を上下に分けます。すみません!
記念すべき10話目ですね!毎日投稿できるほどの時間は無いので隔日投稿になっていますが、これからも投稿していくのでよろしくお願いします!

登場人物紹介
パチェさん
始めてGLタグが機能した気がしますね。
レミィに御執心。
内面ではレミィラブですが、魔法使い特有の感情の希薄さから、外面にはそれが殆ど表れません。
レミィからはいつも冷静でクールな子だと思われている。
レミィからはフランドールの話ばかりされるので、フランドールに多少の嫉妬がありますね。

レミィ
パチェさんの内心には一切気づいてません。
結構モテます。妹の為に努力したり尽くしたりと、周りは頑張っている姿を沢山見ています。
レミィが主人公でフランはヒロインみたいな立ち位置になっている気が。。

美鈴
メイドからも人気な美鈴さん。
お気に入りはやはりレミィとフランですね。
今回も下から覗き込んで、ぷりぷりと怒っているレミィを見れてご満悦でした。
パチェさんとは気が合いそうだと思いました。

フランドール
今回の相手は厳しいですよフランちゃん!
フランは友達になれるのでしょうか?
詳細は次回ですね。


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魔法使いの夜。下

今回もパチュリー視点です。


「ほら、私の後ろに隠れてるだけじゃだめよ。パチェは怖くないわよ」

「う、うん……がんばる!」

 レミィの後ろからフランドールが出て、私の前にやってきて、下を向いてからしばらくすると顔を上げた。見上げてくるフランドールと目が合った。

 

「パチュリーさん……お友達になってください!」

 いきなり友達になってと言われるとは思わなかったわ。でも甘いわよ。私は友達を選ぶの。簡単に友達になれるとは思わない事ね。

 

「まずは少し話してみないかしら? 相手の事を知ってからの方が仲良くなれると思うわよ」

「あ、そうだね! それなら、えーっと……お姉ちゃんとはお友達なの?」

 姉が妹の話をするように、フランドールもレミィの話から入るのね。似たもの同士じゃない。姉妹だから当然かしら。

 

「ええ、レミィとは親友よ。フランドール。いえ、フランと呼んでいいかしら?」

「うん! お姉ちゃんと親友なんだ! いいなー」

 レミィと姉妹の方がうらやましいのだけれど。レミィに世話を焼かれてみたいわ。世話をする側でもありね。寝ているレミィを起こして、私好みの服に着替えさせてあげて、その後に隣り合って魔道書を読んで一日ゆっくり過ごしたいわね。

 

「パチュリーさんは好きな物とか趣味とかあるの?」

「好きな物は魔道書ね。未知の魔法を覚えて、研究していくことが趣味と言うより生きがいね」

 好きな者はレミィ。レミィと話すのが生きがいよ。なんて言えればいいのだけど、さすがに恥ずかしいわ。

 

「魔法かー。キラキラ光る魔法をお姉ちゃんが見せてくれてキレイだったなー」

「キラキラ光る魔法ね。……こんな感じかしら」

 魔法で球体を形成して、光の魔法を付与して輝き過ぎないように調整。一つ一つの球体の色を変えていく。七曜をイメージした色に変換。フランの周りに飛ばして、ゆらゆらと不規則に動かしていく。

 

「わーキレイー! おねーちゃんよりすごーい!」

「うぐっ! ふ、フラン……!?」

 レミィになんだかダメージが入っているわね。涙目になっているレミィも可愛いわ。フランは目をキラキラさせて、ぴょんぴょんしながら喜んでいる。こんなに喜んでくれるのは嬉しいわね。

 

「確かに……お姉ちゃんの魔法より凄いけど、私もがんばればこれくらいならできるのよ……お姉ちゃんよりすごい……うぅ……」

「ん?……お姉ちゃんどうしたの? それよりお姉ちゃんも見て見て!すごいキレイだよ!」

「はしゃいでいるフランが可愛いわ……! 確かに綺麗ね! それに可愛いわよ!」

「うん! キラキラしていて可愛いかも!」

 フランが喜ぶだけでレミィが幸せな表情を浮かべている……まあ、どちらも可愛いわね。もちろんレミィの方が可愛いわよ?

 

「パチュリーさんすごいね。こんなにすごい魔法があるんだね!」

「まだまだこれは初歩中の初歩よ。せっかくだからもっとすごい魔法を見せるわ。レミィ、赤い染料は用意出来てるの?」

「もちろんよ! 取ってくるわ!」

 レミィがもう居なくなってしまったわね。これでフランと一対一よ。さて、どう仕掛けてくるのかしら?

 

「パチュリーさん、私も魔法を使えるようになりたいな!」

「……魔法は簡単には使えないわよ。どうして使いたいのかしら?」

 ちゃんとした理由があれば教えてあげないこともないわ。レミィからは対価を貰っているのだから。でも、遊びたいからなんて言ったら、お友達なんてもう無理よ。魔法はもっと崇高な物なんだから。

 

 ……そんな感じでは無さそうね。フランは強い意志が見て取れる目でこっちを見ているのだから。

「私はお姉ちゃん頼ってばかりで……私のためにお姉ちゃんは何でもやってくれるけど、私はお姉ちゃんに何も返せていないから。私がお姉ちゃんに何かをしてあげたいの」

「色々な物をレミィに返していると思うわよ。レミィは私に会う度にフランの話を楽しそうにしているの。もし嫌々世話をしているのだとしたら、あんな風に楽しそうには話せないわ」

 レミィは嫉妬してしまうくらい嬉しそうに心から笑っていたのだから。

 

「それは嬉しいな……私には分からないけど、少しは返せていたのかな?でもちゃんと返したいの……魔法は沢山種類があって使える魔法と使えない魔法が皆違うって聞いたから、私にしか使えない魔法ならお姉ちゃんが出来ない事を手伝ってあげられるんじゃ無いかなって思ったから……私はお姉ちゃんの為に魔法を使いたいの……パチュリーさん! 魔法を教えてください!」

 最初は弱々しくて、儚い女の子だと思っていたけど、こんな格好いい決意の出来る女の子だったのね。見直したわ。惚れちゃうくらいにね。

 さて、本気で手伝ってあげるとしましょうか。

 

「仕方ないわね。ただし魔法は一朝一夕では身につかないけど、音を上げるなんて許さないわよ」

「ありがとう! パチュリーさん!」

「さんなんて付けなくていいわ。パチュリーと呼びなさい」

「うん! よろしくねパチュリー!」

 途端にニコニコしちゃって、可愛いじゃない。この姉妹はどうしてこんなにも私の心に響くのかしら?扉の裏で隠れて聴いていたレミィもそろそろ戻って来なさい。扉の隙間から羽が見えているわよ。

 

「取りあえず今度簡単な魔道書を読んでみましょう。いずれフランだけの魔法を見つけていきましょう」

「がんばるね! パチュリー!」

 

「も、戻ったわよー! フランは何をがんばるのかしら?」

「あっお姉ちゃんお帰り! お姉ちゃんにはまだ内緒だけど、楽しみにしていてね!」

「そう……フランが教えてくれる日を楽しみにしているわね!」

 

「レミィ、目が赤いわよ? 塗料が入ったのかしら?」

「そ、そうなのよ! ちょっと掛かってしまったの!」

「お姉ちゃんだいじょうぶ?」

「ええ! 全然大丈夫よ!」

 まあ、大丈夫でしょうね。目に何か入った訳じゃ無いのだから。

 これからこの姉妹を近くで見守って居られるなんて幸せね。これからの日々はこれまでよりも、もっと鮮やかな色の日々になりそうね。

 

 今夜、私は吸血鬼の姉妹に恋をしたのだから。




パチェさん視点はこれで終了になります。
結局、レミィもフランも好きになってしまったパチェさんでしたね。
パチェさんがチョロくなってしまったかもって所がどうなんでしょう?
守ってあげないといけないような弱々しい子に突然格好いい事を言われて、キュンとしてしまったみたいなお話でした。
フランの決意を聞いてパチェさんは好感度が100くらい上がりましたけど、裏で聞いていたレミィの好感度はどれくらい上がったのでしょうね?
あんまり関係ないですが、東方のBGMでメイガスナイトが大好きなので日本語にしてタイトルにさせてもらいました。良い曲ですよ!

登場人物紹介
パチェさん
フランにも恋をしてしまった魔法使いさん。
対人関係が少ないから、すぐに好きになるのも仕方ないのでは?
かわいいフランが格好良かったんですから!
フラン視点からはどう見られているのかは次回ですね。

レミィ
お姉ちゃんよりすごーいで大ダメージを受けた模様。
フランの決意で完全回復どころか好感度が限界突破しましたが。
お姉ちゃんはとても嬉しかったでしょう!

フラン
パチェさんとはお友達になれました?
仲良くはなれましたね。
お姉ちゃんの為に魔法を覚えようと考えていました。
まだ子供ですけど、少しずつ成長していってるかもですね。



このSSのお気に入り登録数が50を越えました。
お気に入りしてくれる方がこんなに増えてくれるとは思いませんでした。
あらためて、読んでくれてありがとうございます!
これからも隔日投稿になりますが、ちゃんと完結まで投稿していくので読んでくれたら嬉しいです!
ありがとうございました!


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吸血鬼の夜。魔女のお友達。

フラン視点です。


 

 今夜はお姉ちゃんが、お友達のところに遊びに行っているらしい。私はお姉ちゃんに見せて貰ったキラキラ光る魔法の真似をしようとがんばっている。妖気でまねしようとしても光らせるのが難しいなー。

 強く光らせると光球の妖気が無くなって消えちゃうから、光を弱めようとしたら、今度は妖気が足らなくなってまた光球が壊れちゃうからうまく作れない。お姉ちゃんは魔法でも妖気でも同じようにキラキラにできていたからすごいよね!

 私もキラキラできるようになりたいなー。よし、もうちょっと練習しよう!妖気を上手く調整できるようにがんばるぞー!

 

「フランー帰ったわよー! ただいまー!」

 あれ、もう帰って来たんだね?ちょっと前に出かけたばかりだったよね?お友達は留守だったのかな?

 

「おかえりー! お姉ちゃん早いね!」

「私のお友達を紅魔館に連れてきたのよ。フランにも会って貰いたいのだけど、いいかしら?」

「が、がんばるよ!」

「ふふ、では行きましょうか?」

 お姉ちゃんと手を繋いで一緒に歩く。お友達ってどんな人なんだろう?楽しみだけど緊張するなぁ。

 

「お友達はどんな人なの?」

「パチェはすごい魔女なのよ。私よりも魔法が上手くてね、魔法を極めることが生きがいみたいな子なの。いつもクールだけど、話すと意外と冗談も言うの。フランとも仲良くなれそうよ!」

「そうかな? でも楽しみだよ!」

「よかったわ。お姉ちゃんも見守っているから、がんばってね! ここの部屋がパチェが今後住む部屋よ」

「えー、ここに住むんだ! 仲良くなれたら、遊べるね!」

 部屋に入ると、中には長い紫色の髪にふわりとナイトキャップをかぶって、紫色のの服を着ているすごいきれいなお姉さんが居た。表情が変わらないクールな魔女さんなのかな?な、仲良くなれるかな?

 

「戻ったわよー!もう転移は終わらせたのね。残念ね、転移魔法を観てみたかったのよ」

「……お、おじゃまします……」

 お姉ちゃんの影に隠れて、魔女さんを見る。わ、すごい見られているよ-!何か変なことをしちゃったかな!?うー!ど、どうしよう。

 

「パチュリー・ノーレッジよ。よろしく」

「ふ、フランドールです!よろしくね!」

 声もきれいなパチュリーさん。大人のお姉さんみたいでかっこいいなー。よし、がんばって仲良くなるよー!

 

「ほら、私の後ろに隠れてるだけじゃだめよ。パチェは怖くないわよ」

「う、うん……がんばる!」

 お姉ちゃんの影から飛び出して、パチュリーさんの前に来ちゃった。うう、なんて言おうかな?思わず下を向いて考える。どうしよう?魔法を教えて貰う?でもいきなりだし、あ……そうだ!

 

「パチュリーさん……お友達になってください!」

 パチュリーさんを見上げて、お願いする。これから同じ屋敷で暮らすなら、お友達になって仲良くなりたいって思ったの。

 

「まずは少し話してみないかしら? 相手の事を知ってからの方が仲良くなれると思うわよ」

「あ、そうだね! それなら、えーっと……」

 趣味とか好きな物の話を聞いたら、やっぱり魔法が好きなんだって。私も魔法を上手く使えるようになりたいんだよね。

 

 そして、キラキラ光る魔法を見せて貰った。一つ一つ違う色の光る魔法の球が私の周りを飛び回っている。紫、赤、青、緑、黄、黒、白。どの色もきれいですごかったから、すごいすごいって言いながらぴょんぴょん跳んで喜んじゃった!パチュリーさんすごいよー!

 

「ん?……お姉ちゃんどうしたの? それよりお姉ちゃんも見て見て!すごいキレイだよ!」

 なんだかお姉ちゃんが胸を押さえて、下を向いている。大丈夫かな?でもきれいだから見て欲しいなって思ったら見てくれた。

 

「……! 確かに綺麗ね! それに可愛いわよ!」

「うん! キラキラしていて可愛いかも!」

 最初になんか言っていたけど聞こえなかった。でもお姉ちゃんの言うとおりに、このキラキラはちょっとかわいいね。持って帰りたいなー。ダメかな-?

 

「パチュリーさんすごいね。こんなにすごい魔法があるんだね!」

「まだまだこれは初歩中の初歩よ。せっかくだからもっとすごい魔法を見せるわ。レミィ、赤い染料は用意出来てるの?」

「もちろんよ! 取ってくるわ!」

 お姉ちゃんが部屋の外に飛び出していったから今の内に、前から考えていたことをパチュリーさんに言ってみよう!

 

「パチュリーさん、私も魔法を使えるようになりたいな!」

「……魔法は簡単には使えないわよ。どうして使いたいのかしら?」

 こんなきれいな魔法を使いたい。それだけじゃなくてお姉ちゃんのために使いたいって思っていたの。

 

「私はお姉ちゃん頼ってばかりで……私のためにお姉ちゃんは何でもやってくれるけど、私はお姉ちゃんに何も返せていないから。私がお姉ちゃんに何かをしてあげたいの」

「色々な物をレミィに返していると思うわよ。レミィは私に会う度にフランの話を楽しそうにしているの。もし嫌々世話をしているのだとしたら、あんな風に楽しそうには話せないわ」

 お姉ちゃんに私は何もしてあげれてないの。それなのにお姉ちゃんはなんでもしてくれて、このままでいいのかなって思ってた。

 

「それは嬉しいな……私には分からないけど、少しは返せていたのかな?でもちゃんと返したいの……魔法は沢山種類があって使える魔法と使えない魔法が皆違うって聞いたから、私にしか使えない魔法ならお姉ちゃんが出来ない事を手伝ってあげられるんじゃ無いかなって思ったから……私はお姉ちゃんの為に魔法を使いたいの……パチュリーさん! 魔法を教えてください!」

 私の能力はありとあらゆるものを破壊する程度の能力で、これを使えばお姉ちゃんの敵を倒せると思うけど、もう壊しちゃうのは嫌だな。いつか私の家族も友達も壊しちゃうかもしれないなんて、こわい。魔法なら壊すだけじゃなくて、何かを作ることが出来るのかなって、私にしかできない魔法が使えるなら、お姉ちゃんのお手伝いができるかなって思ったの。お願いって気持ちを込めてパチュリーさんを見る。

 

「仕方ないわね。ただし魔法は一朝一夕では身につかないけど、音を上げるなんて許さないわよ」

「ありがとう! パチュリーさん!」

「さんなんて付けなくていいわ。パチュリーと呼びなさい」

「うん! よろしくねパチュリー!」

 やった!パチュリーさん、じゃなくて、パチュリーに魔法を教えてもらえることになった!うれしいなー。パチュリーさんにも何か返せるようにちゃんとがんばるからね!

 

「取りあえず今度簡単な魔道書を読んでみましょう。いずれフランだけの魔法を見つけていきましょう」

「がんばるね! パチュリー!」

 パチュリーは優しいなぁ……表情が変わらないから最初はちょっとこわい人なのかなって思ったけど、全然ちがった!すごい優しいお姉さんだったよ。

 

「も、戻ったわよー! フランは何をがんばるのかしら?」

「あっお姉ちゃんお帰り! お姉ちゃんにはまだ内緒だけど、楽しみにしていてね!」

「そう……フランが教えてくれる日を楽しみにしているわね!」

 いつか、お姉ちゃんにもらったたくさんの幸せと同じくらい、お姉ちゃんにも返していけるようがんばるからね!

 

 待っていてね!お姉ちゃん!




魔法使いの夜のフラン視点でした。

しっかり者のお姉さんがお友達になりました。
フランからはすごいクールなお姉さんに見えていましたけど、内面は結構お茶目な感じだったって対比が書けていたらいいのですが。うーん。

次回、紅魔館が紅に染まります!
血で染まる訳じゃ無いですよ!
読んでいただきありがとうございました!

登場人物紹介
フラン
パチュリーとお友達になりました。
恩返しをしたい気持ちがずっとありました。
レミリアはフランが居ればそれで十分なことには気づけませんね。
魔法を覚える決意をしました。

パチュリー
フランから見ればクールです。
それに、優しくて魔法もすごい。パーフェクトお姉さんです。
今後はパチュリー先生の魔法レッスンがスタートしますね!

レミリア
フランに泣いていたことはバレていなかったようです。
お姉ちゃんよりすごーいって言ったことも覚えていないみたいですね。ドンマイでした。
レミリアの溺愛っぷりが今後は更に加速するかもですね。


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ほおずきみたいに紅い屋敷。

フラン視点です。


 

「パチェー。塗料は持ってきたわ」

「ありがとう。用意するから少し待っていて」

「分かったわ! フランーお話しして待っていましょう!」

「うん! さっき目に塗料が入っちゃったのはだいしょうぶ?」

 お姉ちゃんの目が赤くなっているから、さっきはだいじょうぶって言っていたけど、ちょっと気になった。もともとお姉ちゃんも私も紅い瞳なんだけどね!

 

「だいじょうぶよ! それよりフラン? パチェと仲良くなれたかしら?」

「お友達になったよ! すごい優しかったの!」

 魔法を教えて貰うことはお姉ちゃんにはまだ内緒だね。パチュリーに早く教わりたいなー。魔法を覚えてお姉ちゃんのお手伝いをしたいからね!

 

「よかったわ。今度3人で遊びましょうね」

「あ、なら3人で本を読みたいなー。皆でまったりしたいね」

「静かに本を読むのも悪くないわね。今度やりましょう!」

 お姉ちゃんとパチュリーが居るだけでも楽しいと思うの。本を読むときに美鈴も呼べたらもっと楽しくなるかな?その時にでもお姉ちゃんに相談してみよう!

 

「レミィ、フラン準備ができたわ」

「さすが、パチェは早いわね」

「何をするの? 楽しみ-!」

 何をするのかな?さっき言っていたすごい魔法?お姉ちゃんが持ってきた赤色の塗料を使うってことは魔法で紅魔館を赤く染めるのかな?目が痛くならないといいけど、お姉ちゃんが決めたのなら、だいじょうぶだよね!

 

 紅魔館って名前はお姉ちゃんと私で付けたけど、結構かっこいい名前になったよね。お姉ちゃんは不夜城レッドって付けようとしていたけど、かっこいいのかな?私には分からないけど、お姉ちゃんにとってはかっこよかったんだよね?ならかっこいいのかな?

 でも私が考えた紅魔館って名前に決めてくれたんだよねー。スカーレットの紅、吸血鬼は悪魔の一種だから魔、合わせて紅魔の館、紅魔館って考えたの。お姉ちゃんがかっこいい名前って褒めてくれて嬉しかった!美鈴が漢字については教えてくれたから、紅魔館って名前になったけど、美鈴ってすごい物知りだったね!

 

「今から、この屋敷を紅に染めるわ。フランいいわね?」

「わたし? お姉ちゃんが決めたからいいんじゃないかな? 目に優しい感じで染めてくれるとうれしいな!」

「無理。諦めなさい。文句はレミィに言いなさい。ではやるわ」

「フラン? パチェ!? えっダメだったの? かっこいいのよ! 目も慣れてくると思うわよ? よ、よろしく頼むわ!」

 慌ててるお姉ちゃんがかわいいね。それより、パチュリーが魔法陣の真ん中に塗料入りの瓶を置いて、手をかざした。魔法陣が光って瓶の中の塗料が消えた。

 魔法陣から赤色が広がっていって、床と壁が一気に赤くなっていく。部屋一面が真っ赤になったあと、開いている扉の先もどんどん赤くなっていくのが見える。すごい……!こんな魔法もあるんだ!

 パチュリーはまだ魔法陣に手をかざしている。どれくらい広がったのかな?

 

「終わったわね。これで紅魔館の床と壁が赤色になったわよ」

「ありがとう! これで紅魔館が完成よ!」

「すごーい! パチュリーの魔法ってほんとうにすごいよ!」

 どうやったんだろう?小さな瓶に入っていた塗料で、紅魔館の床と壁を真っ赤に染めるってどうしたらできるんだろう?うーん、わからないね!

 

「窓の外から紅魔館を見てもいいかな? どうなっているか見てみたい!」

「いいわね! 行くわよ!」

「私はゆっくりしているわ。いってらっしゃい」

「いってきまーす! 行こうお姉ちゃん!」

 窓を開けて、外に飛び出す。頭の上には大きな満月。照らす先には真っ赤な紅魔館。さっきまでは黒い屋敷にだったのに、真っ赤になっていた。パチュリーすごい!

 

「お姉ちゃんすごいね! 全部真っ赤だよ!」

「そうね! 私の好きな紅色に染まっているわ! さすがパチェ!」

 お姉ちゃんと一緒に空に止まって紅魔館を眺める。赤色で染まっていると、けっこうかっこいいかもね!目には悪いかもだけど!

 

「妹様ー? 紅に染めた屋敷を見に来たんですか-?」

「あ、美鈴! 門番お疲れさま」

 私の近くに飛んで来た美鈴に抱きつく。なんか、美鈴に会う度に抱きついてる気がするけど、なんだか癖になっちゃったのかな?美鈴に抱きしめられて撫でられるのが好きなんだよねー。もっと撫でてー。

 

「ちょっと美鈴! 何してるのよ!」

「お嬢様お疲れさまです。外は寒いので温めてあげているだけですよ? お嬢様も抱きしめてあげましょうか?」

「お姉ちゃん、あったかいよー」

「あ、ああ……フランー……し、仕方ないわね! 今回だけよ美鈴!」

 お姉ちゃんが私に抱きついてきて、美鈴が私とお姉ちゃんに腕を回して、私たちを抱きしめた。もっとあったかくなったよー!お姉ちゃんと顔が近くてちょっと恥ずかしいけど!

 

「それにしても紅魔館が真っ赤になりましたね。門と塀も真っ赤ですよ。パチュリー様の魔法ですか?」

「そうだよ-! パチュリーの魔法はすごいんだから! あとパチュリーとお友達になったよ!」

「おめでとうございます! 私も自分の事のように嬉しいですよ」

「ありがとー!」

「ちょっと美鈴! フランと仲良すぎじゃない? それより、私を撫でるのは止めなさい!」

「いえいえ遠慮なさらずに、主を撫でるのも門番の仕事ですので」

「そんな仕事与えた覚えが無いわよ!」

「お姉ちゃんと美鈴も仲がいいね! みんな仲良しだね」

 仲良くないわーってお姉ちゃんが言っているけど、仲良しだよね!こうやって楽しいのも紅魔館が赤くなったおかげなのかな?パチュリーのおかげ!あれ?紅魔館の方からパチュリーが飛んできた。

 

「美鈴。楽しそうじゃない」

「パチュリー様も一緒にどうですか?」

「もちろん行くわ」

 えー!パチュリーも来るの?クールなお姉さんだと思ってたからびっくりしたよ。そういえばお姉ちゃんが結構冗談も言うって言っていたね。

 パチュリーが私とお姉ちゃんの間に入り込んできたので、抱きつくとすごい柔らかかった。それになんだか古本の良い匂いみたいなのも感じられて、抱きついていると落ち着くなー。

 

「パチュリー様もなかなかやりますね」

「それほどでもないわ」

 パチュリーと美鈴ももう仲良くなってる。

 こんな感じで4人で居られて幸せだなー。ずっとみんなと一緒に居れるように私もがんばるから、これからもよろしくね!

 

「みんな! 大好きだよ!」




パチュリー回と見せかけて美鈴回だったかもです。
紅魔館は真っ赤に染まりました。
だんだん原作に近づいてきましたね!
次回は紅魔館に誰かが加入します!一体誰でしょうか?


没シナリオ『紅に染める』
「では魔法を使うわ」
 魔法を展開。あ、まずい。咳が出ちゃう。魔法が暴走しちゃ……!
「ぐふっ!」
「パチュリー!?」
 身体の内側で魔力が暴走して、内臓にダメージ。口から血を吐いて血が床を汚していく。

「これが屋敷を紅く染める魔法よ……ぐふっ……!」
「パチュリーーーーー!?」

 最初に思いついたのはこれでしたすみません!

登場人物紹介
フラン
紅魔館の名付け親。
仲良くなると抱きつきます。
みんなだいすきですよ!

レミリア
ネーミングセンスは壊滅的。
不夜城レッドかレミリア城にするか迷っていたそうです。城じゃないです。
美鈴とフランの仲がかなり良いことに危機感を覚えました。

パチュリー
赤魔法の使い手でしたね。
吐血ネタは没シナリオで消化できて満足です!
レミィとフランは染まった紅魔館を眺めているのかしらと外を見ると。美鈴に抱きしめられている二人を見かけて、吐血しかけました。
慌てて、飛んでいき、姉妹の間に入り込んだ。好きな子二人に挟まれて、鼻から吐血するとこでしたね。

美鈴
有能お姉さん。
レミィをからかうのが楽しみ。
フランもレミリアも抱きしめて、撫でたので満足です。
パチュリーも抱きしめて、改めてこの仕事が天職だと思ってました。


一話と二話を少し読みやすくしました。
一話と二話があらすじ詐欺になっていて、だいたいそこで読むのを止めてるのかなって各話UAを見て思いました。あらすじもちゃんと書いてみるかもです!
どうせなら最後まで読んで欲しいですからね。
今回も読んでいただいてありがとうございました!


あとは関係無い話しですが、これを書いている時は、
いえろ〜ぜぶらふぃな〜れぼっくすをランダム再生で聴きながら書いています。
書くモチベーションは音楽で補給です!
雨上がり、melody!、色彩少女とか紅魔郷の曲とか流れるとテンションアップです。
まあ全曲好きですけどね!以上雑談でした!


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完全で瀟洒な従者。

フラン視点です。
※シュミーズは中世のインナー的な服の事らしいです。


 

 私専属のメイドをお姉ちゃんが連れてきた。

 

「初めまして、十六夜咲夜と申します。よろしくお願い致します」

「フランドール・スカーレットです……よろしくね?」

「よろしくお願い致します」

 きれいな礼をして、こちらを向いた。パチュリーよりも感情が読めない。全く表情が動かないけど、今は何を考えているんだろう。……怒ってはいないよね?たぶん?

 

「あ、あの咲夜って呼んでいい?……ダメ?」

「もちろん構いません。ありがとうございます」

「ありがとうね! 咲夜!私の事はフランって呼んでね!」

 咲夜の近くに寄って、咲夜をよく見てみる。私より身長が高くて、私の顔の高さが咲夜のお腹位までしかない。美鈴の方が身長はもうちょっと高いかな?

 髪は短めの銀髪でメイドのカチューシャをしていて、髪の先を緑のリボンで止めている。瞳の色はきれいな青色で、感情が無いから氷みたいな印象に思える。服は青と白の2色でできたメイド服で、膝が隠れるくらいの裾の長さ。

 

「咲夜ってすごいきれいだね。メイドじゃなくてお姫様みたい!」

「ありがとうございます」

 なんだかお人形さんみたいに思っちゃったから、手を握ってみる。温かいからちゃんと人間だね!手がすごい柔らかいなー。にぎにぎとしてみる。

 

「これからよろしくね!」

「はい。よろしくお願い致します」

 にぎにぎしていた手を握手にして、挨拶をした。咲夜とは仲良くできそうかな?他のメイドさん達もお話ししてくれるけど、この部屋にはめったに来ないから、咲夜が来てくれてうれしいなー!

 

「咲夜とは仲良くなれそうね」

「うん! 咲夜はすごい優しそうだから仲良くなれると思う!」

「よかったじゃない! フランをよろしくね咲夜?」

「かしこまりました」

 後ろで見守っていたお姉ちゃんも喜んでくれた。咲夜もお姉ちゃんも仲が良さそうでよかったなー。でも咲夜っていつから紅魔館に居たんだろう?見かけたら覚えていると思うんだけどねー。

 

「咲夜っていつから紅魔館に居たの?」

「一ヶ月くらい前に来たのよ。咲夜は昔紅魔館に使えていたメイドの子孫で、その事と咲夜の才能を買って、フランのお付きになってもらう事にしたの」

 昔使えていたメイドさんかー。閉じ込められていたから分からないよねー。会ったことあるメイドさんは食事を運んでくれていた人だけだからねー。あのメイドさんの料理はおいしかったなー。その人の子孫だったらちょっと嬉しいかな?まあ違うよね。

 

「そうなんだ! 咲夜の才能って何なの?」

「そうね……咲夜、お茶を淹れてくれるかしら」

「かしこまりました」

「えっ!」

 目の前に居た咲夜がお姉ちゃんの横で紅茶を淹れている。あれ?なんで?見えなかったけど……移動したのかな?

 

「ふふっ、次はフランに紅茶を渡してあげてくれるかしら」

「かしこまりました。フラン様どうぞ」

「ひゃっ! なんで目の前に!? 瞬間移動!?」

「時を止めただけです。紅茶をどうぞ」

「時を止めるってなに-!? すごいね咲夜! 紅茶もおいしいよ!」

「ありがとうございます」

 時を止めるって能力なのかな?すごいね!人間にしてはすごい強い能力だよ!人間だよね?

 

「咲夜は時間を操る程度の能力で時を止めたりできるのよ。私たちを待たせないで、料理や掃除ができるなんてメイドとしては最高の能力ね」

「咲夜すごーい! 時が止まっている世界ってどんな感じなの?」

「私以外何も動かない、冷たい世界ですね。全てが灰色になっています」

「そうなんだ……私も時を止めれたらいいのにね。そしたら止まった世界で一緒に遊べるからね! 二人で居れば止まった世界でもきっと楽しいよね!」

「そうですね。ありがとうございます」

「それなら私も時を止めて、三人で遊びましょう。美鈴にいたずらしてあげるわ!」

「楽しそうだね! 美鈴に後ろから抱きついて、驚かしてあげるの!」

「だ、抱きつくのね……まあ、フランが楽しそうならいいわ!」

 時間を止める魔法が無いかパチュリーに聞いてみようかな?時を止めれたらずっと遊べるね。一人だったら楽しくないけどみんなが居たら楽しいと思う!

 

 

 咲夜が私の従者になった今日は、パチュリーと会ってから、ちょうど100年目かも!パチュリーが魔法の先生になってくれて、魔法が使えるようになって、私だけの魔法も見つけられた。お姉ちゃんにその魔法でいつかお手伝いできたらいいなー。

 

 それからは咲夜とずっと一緒にいる。お姉ちゃんは幻想郷って所に転移する計画をパチュリーとしていて、他の妖怪達を連れて幻想郷に乗り込もうとしているんだって。

 人間達の文明が発展して、だんだん妖怪の存在は迷信だと思われてきて、妖怪を恐れる感情が薄れていった結果、妖怪の力が衰えていってるらしい。このままいくと、外の妖怪達は消えちゃうんだって。

 紅魔館は未だに人間達に恐怖されているから、私達の力が衰えていくことは無いけど、今の内に辺り一帯の妖怪達を集めて転移するんだって。

 私はあまり詳しくは聞いてないけど、幻想郷の妖怪達と戦うことになるかも知れないって言っていた。お姉ちゃんが怪我しないといいけど。だいじょうぶだよね?お姉ちゃんのためにできることがあったら私もがんばるからね!

 

「フラン様。お着替えを用意いたしました」

「ありがとう! 着替えるから待っていてね」

 花に水をあげていたら、手を滑らせてジョウロが落ちて水が服に掛かっちゃったから、咲夜に着替えを用意してもらった。

 

「お手伝いたします。主の着替えを手伝うのもメイドの仕事です」

「いつもありがとう! もう咲夜がいないと何もできないかも」

「こちらこそありがとうございます。ではお着替えさせていただきます」

 いつも着ている、赤色の半袖のシャツとスカートを脱いで、下に履いていたシュミーズとドロワーズだけになる。触ってみると濡れてないから、どっちも水が掛かってないみたいだね。

 

「下着もご用意したので、脱いでいただけますか? そちらは洗濯に出します」

「はーい。ちょっと待ってね……んー脱いだよ!」

 結局、シュミーズとドロワーズを脱いで、咲夜に渡した。服を着てないと恥ずかしいから早く着せて-!

 咲夜に足先から腰までドロワーズを通して履かしてもらう。ドロワーズくらい自分で履いたほうがいいよね!?でも一人で着替えてると咲夜に着替えはお任せくださいって言われちゃうからなぁ。

 両手を上にして、シュミーズを着せてもらう。咲夜は着せるのがすごいうまいから服に引っかから無いから苦しくならないんだよねー。

 そのまま半袖のシャツも着せてもらう。上着はおっけーだね!

 咲夜の前に足を伸ばしてスカートの穴に足を通す。伸ばした足を後ろに下げて三角座りになってスカートを足の付け根まで通してもらう。最後に腰を浮かせてスカートを履かせてもらった。

 

「お着替え完了だね! いつもありがとうね。でもドロワーズとシュミーズは自分で履くよ?」

「私の仕事なのでお気になさらず」

 そうじゃなくて恥ずかしいのー!咲夜は真面目だよね。まあ、私も楽できるからいいかな?恥ずかしいけど!

 

「咲夜ありがとうね! じゃあまた水をあげてくるねー」

「はい。いってらっしゃいませ」

 またベランダに戻って、お花の水やりに戻る。月光花に水をあげるのが毎日の日課になっている。

 

「さっきはごめんね! 次はちゃんとお水をあげるからねー」

 美鈴が言っていたけど、お花に話しかけるとちゃんと聞いてくれるんだって。きれいに咲いてねって言えばきれいな花が咲くって言っていたから、さっきは水をこぼしちゃって、水をちょっとしかあげられなかったけどごめんねって言えば許してくれるよね?

 きれいな水をお花にあげて、きれいな花が咲いたら、今度は咲夜とも一緒にお花見したいなー。

 

「お花が咲いたら、咲夜も一緒にお花見しようね!」

「ありがとうございます。楽しみにしています」

 月光花が咲くたびにお花見をしてるけど、何回やっても楽しいの!咲夜も喜んでくれるかな?咲夜の表情が変わったところを見たことが無いけど、咲夜が笑ってくれたら嬉しいなー!そのためには毎日水をあげないとね!

 

 

「フラン帰ったわよ。咲夜もありがとうね」

「あ、お姉ちゃんおかえりー!」

「お嬢様、お帰りなさいませ」

 今日はお姉ちゃんが戻ってくるのが早いね。今日は私が起きてすぐに帰ってきたけど、いつもはもう眠いって時に戻ってくるんだよね。何か私に用事かな?それともお仕事がお休みだったり?

 

 

「フランに聞きたいことがあるの。いいかしら?」

「うん! なんでも聞いて!」

 

「フランの記憶を直す魔法が完成したのよ。どうして記憶を失ったか、記憶を失った時に何があったかが分かるの……辛い記憶になるかも知れないけど、フランは思い出したい?」

 

 私が無くした記憶。思い出していいのかな?

 私がフランドールでいいんだよね?

 記憶が戻った時に私はここに居られるの?

 お姉ちゃんとずっと一緒に居たいよ。

 …………私はどうしたらいいんだろう?

 

 ……それでも、

 

「私は記憶を取り戻したいな。辛い記憶があったとしても、全部思い出して……私がフランドールだってちゃんと言えるようになりたいの!」




お着替え完了からのラストとの落差が……次回が咲夜視点だと日常パートでレミリア視点だとシリアス一直線になります。
次回はどちらでしょうか?

前回の話より100年進みました。今は原作190年前くらいですね。
紅魔郷まで行けるのでしょうか?フランには地霊殿までいって、こいしちゃんと仲良くなってほしいです!

シュミーズって中世の時代のインナー的な下着らしいですよ!
wikiで調べただけですけど!着る方法は合っているのかな?

東方と言えばドロワーズですよね!
フランちゃんもドロワーズでしたね!

次回も読んでくれたら嬉しいです!

登場人物紹介
フラン
水が掛かったせいで服を脱ぎました。作者の趣味では無いのです。
咲夜に全部履かせて貰いました。
お花に話しかけるフランちゃん。美鈴ナイスです。
フランの正体は何でしょうか?
分からないですが、記憶を戻したいと決意しました。

咲夜
外から見れば完全で瀟洒なメイドさん。
表情は変わらないですが、心の内はどうなっているのでしょう?
詳細は咲夜視点で!
呼び方ですが、フランのメイドなので、フラン様と呼んでいます。
レミリアの事はお嬢様呼びでこちらは原作通りですね。

レミリア編
ずっと幻想郷侵攻の計画を立てていたみたいです。
話の最後にフランに記憶を戻すか聞いています。
詳細はレミリア視点で!


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咲夜の世界。

咲夜視点です。


 

 私はフランドール様とレミリア様に仕えるために生きてきました。

 

 お嬢様方が居る紅魔館から一番近い町の外れにある、小さな家に私は産まれました。

 その家は紅魔館に仕えていた私の先祖様が150年前に建てた家で、私の一族はずっとこの家で暮らしていました。

 一族には仕えるべき主が二人います。レミリア様とフランドール様、その両名に仕えるために、技能を幼い頃から学ばされ続けました。

 紅魔館には多くの妖怪が住んでいて、メイドも大半は妖怪と聞いています。

 私はただの人間なので、主の役に立つためには技能を極めていくしかありません。お母様に厳しく学ばされたおかげで、ここまで来ることが出来ました。

 

 どうして私の一族が150年も前に紅魔館に仕えていた、先祖様の主のために150年の歳月を、もう一度仕えるためだけの研鑽に費やせたのは何故かと言うと、それは先祖様が主と約束をしたからです。

 

 フランドール様とレミリア様が共に居られる日々を目指し、出来ること全てをやっていきますと、誓ったからです。

 先祖様はレミリア様方の隠れ家としてその家を建てました。幽閉されていたフランドール様を救出できた時の逃げ場として用意したそうです。

 次に孤児院から子供を引き取り、メイドとしての技能や剣術やナイフ投げの技術を教えていきました、紅魔館に仕えていた先祖との血のつながりは無いですが、私にはその技能と技術が全てを引き継がれています。先祖様と私の血のつながりは無いですが、先祖様の意思は私が引き継ぎました。

 

 あの家にレミリア様方が来られた場合、直ぐに仕えさせる為、来られなくても先祖様が誓った約束を果たすまで研鑽を続けていく事が私達の存在意義でした。

 研鑽を積む日々の中、レミリア様がフランドール様を救出したと一報が入りました。私の祖母やその家族はとても喜び、誰かを紅魔館へ仕えさせるのかと、話し合いが始まりましたが、結局仕えさせることはありませんでした。技術、技能は人としては最上位ですが、妖怪と比べると大した実力ではありませんでした。

 なので技術、技能だけではなく、人工的に能力を使えるようになるために、魔法薬の開発を始めました。魔法薬には力のある妖怪の血液が入っていて、それを少しずつ私達の血に混ぜていく事で、妖怪の血が濃くなっていき、ついに私の代で能力が発現しました。

 

 私の能力は、時を操る程度の能力です。

 時間を止めたり、遅くしたり、速めたりと操ることができます。この能力と継承された技術を全て極めた事で紅魔館に向かう事を許されました。

 

 私は今まで、家の者達に言われるがままに、レミリア様方に仕えるためにと生きてきましたが、レミリア様に会い、心から仕えたいと思いました。

 一族の者達に言われるがままに仕えるのではなく、心の底からレミリア様に仕えたいと思いました。

 

 まだフランドール様とはお会いしたことは無いですが、フランドール様の優しさと、先祖様が残したフランドール様を支えたいと思わせる話をいくつも聞き、フランドール様を支えたいと思っていました。

 

 改めてお願い申し上げます。どうかお二方に仕えさせていただけませんか?よろしくお願いいたします。

 

「あなたの気持ちは伝わったわ。これからよろしくね咲夜」

「…………ありがとうございます」

 

 こうして私はレミリア様とフランドール様に仕えることが出来ました。

 最初の一ヶ月は、紅魔館でメイドの仕事を徹底的に覚えさせられました。後はどれだけ仕事が出来るか、忠誠心がちゃんとあるのかどうかの判断をしていたのだと思います。

 一ヶ月には正式に仕えることを許されました。レミリア様には今後はフランドール様に仕えて欲しいと言われ、今からフランドール様に会いに行きます。

 フランドール様に仕えるのでレミリア様の事は別の呼び名で呼ぶようにと言われたので、お嬢様と呼ばせていただくことにしました。

 これはフランドール様に仕えていると周知させる為なので、レミリア様をお嬢様と呼ばせていただきますが、これからも、お嬢様ももう一人の主だと思い、仕えさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 

 フランドール様のお話を他のメイドの方達に聞くと、とても可愛らしく、可憐な女の子だと聞きました。毎日花に水をあげて、魔法の勉強をして、部屋でお嬢様の帰りを待つ。優しく、勉強熱心なフランドール様ですが、用事が無いときは部屋から出ないので、私を含め、メイド達はなかなか会えないのが残念だと思っています。私も一度もお会いしたことが無いので今から会える事がとても楽しみです。

 

 フランドール様の居る、お部屋に入ると噂に違わない可愛らしい女の子がベッドに座っていました。

 金でできた糸のような金色の髪に、陶器のような純白の肌、ルビーのように深い紅色の瞳、装飾品のような羽根、それらを更に引き立てる赤い服。全てが可愛らしさを引き立たせていました。

 

「フランに仕えさせるメイドが決まったの。咲夜挨拶をしてくれるかしら?」

「かしこまりました。初めまして、十六夜咲夜と申します。よろしくお願い致します」

「フランドール・スカーレットです……よろしくね?」

 極上の蜂蜜酒のような甘いお声。少し不安そうな声で話すフランドール様を支えたくなる気持ちが溢れ出てくる。

 

「あ、あの咲夜って呼んでいい?……ダメ?」

「もちろん構いません。ありがとうございます」

「ありがとうね! 咲夜! 私のことはフランって呼んでね!」

 これからはフランドール様改め、フラン様とお呼びさせていただきます。フラン様が私の傍まで寄ってきました。下から私を見上げる姿がとても可愛らしいです。私の顔を見ていますが、やはり表情が変わらないのが気になるのでしょうか?

 妖怪の血が混ざった結果、人間性が薄れて、感情も出せなくなってしまったのだと母から聞きました。ですが、従者とは感情を出さず冷静に、常に主を思って行動するべしとも言われたので、感情が出ないことも従者としては悪くないことなのかもしれません。

 ですが、フラン様を少し困った顔にしてしまう、表情の無さが治せればとも思ってしまいます。表情で伝わらないなら、行動でフラン様の事をお慕いしていると伝えられるよう努力していきましょう。

 

 それからはフラン様の柔らかな手と握手をして、これからよろしくと挨拶をして、時を止めて移動をして、驚いていた表情も可愛らしく

嗜虐心を忠誠心で押さえつけました。

 止まった世界で私と遊びたいと言われました。時間を止める度にこのまま時が止まり続けたらどうしようと考えてしまいます。私以外誰も居ない世界ですが、フラン様が共に居てくれるのであれば時が永遠に止まったとしても、悪くはありませんね。

 

 フラン様の従者になって二週間が過ぎました。お世話をするのはとても幸せな事で、毎日が充実しています。フラン様が目を覚まし、顔を洗いに行くのを手伝います。眠そうに顔をくしくし洗っているのを眺めるだけで仕えてよかったと思います。タオルを渡して顔を吹いてもらいます。目をぱっちり覚まして、おはようと言われると一日の活力が沸いてきます。

 次にフラン様はお花に水を与えにいきます。お花におはようとご挨拶をして、水を与えている姿を傍で見ることが毎日の楽しみになっています。

 

「きゃっ冷たい!」

 フラン様がジョウロを落としそうになったので、落ちる前に取ったのですが、フラン様に水が掛かってしまいました。

 

「フラン様申し訳ありません。すぐに着替えを持ってきます」

「ありがとー……服の下まで濡れちゃったよー……」

 フラン様が風邪を引く前に着替えを持って来なくてはなりません。時を止めるのは今この時の為にあるのですね。

 

 服の下まで濡れてしまった事を考えると、下着もお持ちしないといけませんね。フラン様のタンスを開けて着替えを選ばないといけません。私が作製した衣装を取り出します。今日はこの服にして貰いましょう。私が作った服をフラン様が着てくれるなんて、メイドとしてとても幸せな事です。

 

「フラン様。お着替えを用意いたしました」

「ありがとう! 着替えるから待っていてね」

 時を止めて急いでフラン様の元に戻りました。ベッドの真ん中にぺたんと座っているフラン様が服を脱いでいきます。脱いだ服はすぐに回収して、洗濯かごに入れていきます。

 

「下着もご用意したので、脱いでいただけますか? そちらは洗濯に出します」

「はーい。ちょっと待ってね……んー脱いだよ!」

 下着も回収し、洗濯かごに入れたのでフラン様のお身体をタオルで吹いていきます。絹よりも細やかでさらりとしているお身体に触れるのは恐れ多いですが、風邪を引かせないためには必要な事ですね。今とても幸せです。

 

 フラン様の服を着せていきます。優しく丁寧に着せないといけません。万が一でもフラン様のお身体をに傷をつけないように細心の注意を払って着替えを手伝いました。

 着替えが終わったので、フラン様はまた水を与えにいきました。今度は溢さないようにお気を付けください。もし溢した場合はすぐに時を止めますのでご安心ください。

 

 お花と話しながら水を与えているフラン様を見て思います。この幸せな時間が何時までも続いて欲しいと願わずにはいられません。

 

 ですが、レミリア様が戻ってきてフラン様に記憶を戻すのかと聞きました。今のフラン様が居なくなりませんよね?あの可愛らしい笑顔をこれからも見れますよね?

 

「私は記憶を取り戻したいな。辛い記憶があったとしても、全部思い出して……私がフランドールだってちゃんと言えるようになりたいの!」

 それでも、フラン様は記憶を取り戻したいと願いました。ならば私も全霊を掛けて手伝います。従者としてフラン様の願いを叶えるために私の全てをお使いください。

 

 フラン様の為に私は生きているのですから。




投稿時間が遅れてすみません。
三時間遅れになってしまいました。
次がストーリーの最終話なので、時間を掛けて書きたいので次回の更新は三日後でお願いします。
ストーリーとしては最終話ですが、エピローグや後日談などでしばらく続いていく予定です。
次回もよろしくお願いします。

咲夜視点では、
レミリアは仕えたくなるカリスマ
フランドールは支えたくなるようなカリスマ
として描写したつもりです。つもりなだけかもですが!

登場人物紹介
咲夜
フラン様に仕えました。
お嬢様にも仕えています。
従者としてフラン様をお慕いしています。
フラン様の決意に全霊を掛けて手伝うと誓いました。

フラン様
咲夜から見てとても可愛い主様です。
次回はどうなっていくのでしょうか?


咲夜の設定は独自設定増し増しです!
妖怪の血が混ざりましたが、種族としてはちゃんと人間です。

読んでいただきありがとうございました!


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フランになりました。

レミリア視点です。
ストーリーの最終話です。


 

 紅魔館は幻想郷へ侵攻する計画が進んでいく。西洋の妖怪の全てに声を掛けていき、集まった妖怪と共に侵攻して、幻想郷での紅魔館の地位を確立させる計画。

 紅魔館は未だにこの国の恐れを集めているので、力が衰えていくことは無いけど、辺りの妖怪達は力を失っていき少しずつ姿を消していっている。

 紅魔館が今後も恐れを集めることができるかが分からなくなってきた。人間達の技術の進歩が著しく、弱い妖怪達は人間達の武器によって淘汰されていっている。

 私達を人間達が淘汰する日も遠くは無いのかも知れないわね。

 

 紅魔館を幻想郷に転移させるのは急務だけど、今は紅魔館の従者達を各地へ飛ばして、共に侵攻する妖怪達を集めている最中で、旗印の私にできることは今は無く、政務も美鈴に任せた事で、完全に時間が空いたので本当に時間を使いたかった事に使うことにする。

 

 フランの記憶を戻す魔法を完成させる為に時間を使う。

 

 今までパチュリーと研究していたけど、大きな時間が取れないまま今になってしまったけど、フランの記憶を戻すためにこの時間を使おう。

 フランと会うのも寝る時だけにする。本当に、非常に残念だけど、これもフランの為なのだから仕方ないわ!

 

 朝にフランよりも早く起きて、パチュリーの元に向かう。部屋の外で控えていた咲夜にフランの事は任せる。

 咲夜はフランに仕えてからよくやっているから、安心して任せることができる。時を止める能力もフランを護るために有用な能力で、私が駆けつけるまでの時間稼ぎができるので、何かあれば私の元へ時間を止めて駆けつけるように言い付けている。まあ、戦闘力も高いので大抵の相手なら咲夜だけで済むわね。

 

「おはよう咲夜。フランの事をよろしく頼むわ」

「お嬢様おはようございます。お任せください」

 

 パチュリーの部屋に向かう途中、執務室に居る美鈴に会いに行く。執務室の扉を開けると美鈴が書類を捌いていた。美鈴もちゃんと仕事してるわね。まあ、仕事はちゃんとするけど、主の私をからかうのは大きな減点よ!それさえ無ければ文句無いんだけどねー。取りあえず挨拶をしましょうか。

 

「美鈴おはよう! ちゃんと仕事しないとだめよ!」

「お嬢様おはようございます。大切なお嬢様の為にも全力で取り組んでいきますよ」

「そう。少しくらいなら休憩してもいいわよ! がんばってね!」

「ありがとうございます。優しいお嬢様。それではお嬢様もよろしくお願いします」

「ええ! いってくるわ!」

 

 美鈴にもお願いされちゃったし、私もがんばらなきゃね。フランの為に皆が動いてくれているのだから、必ず魔法を完成させないと。

 

 パチェの部屋に入ると、魔道書を読みながら魔方陣に文字を書いているパチェの姿があった。もう研究してくれているのね。熱心に研究をしてくれるパチェには本当に感謝しているわ。

 

「パチェおはよう。今日もありがとうね」

「レミィおはよう。これも魔道を極めるためよ。気にしないでいいわ」

「それでも感謝しているの! ありがとうパチェ!」

「…………そう。それより研究をしましょう」

 

 パチェはが魔法の為だけじゃなくて、フランの為に研究してくれているのはもちろん分かっている。ありがとうね。一緒にフランの記憶を取り戻しましょう!

 

 記憶を取り戻す魔法の研究を進めていく。

 東洋に居るさとり妖怪の能力を参考にして、記憶を想起させて思い出させる魔法を作成する予定だ。

 さとり妖怪は心を読み取る能力を持っていて、心を読んで強く印象に残っている記憶を読み取ることができる。そして、その記憶を想起させてトラウマを植えつけるらしい。

 フランにトラウマを植えつけるつもりは一切無いけど、この想起を利用する方針が最適だと分かったので、これで記憶を呼び覚ます事に決まった。

 魔法の手順としてはさとり妖怪と同じように、一に心を読み取って、二で記憶を読み取り、三で記憶を想起させて、四でそれを記憶に刻み込むことで記憶を取り戻させる。

 それに合わせて、私もその記憶を追体験する事で、記憶が戻らなかった場合でも、フランに何があったのかは知ることができる保険を用意した。

 

 一つ一つ確実に手順の研究を進めていく。

 一の手順は、心を読ませる魔法薬をパチェが完成させていたので、確認のために私が薬を飲んで試してみると、考えていることが全てパチェに筒抜けになった。私が喋らなくてもパチェと会話ができる。せっかくなのでありったけの感謝をパチェに伝えたけど、相変わらずの素っ気ない感じだった。なので、パチェの心を読んでみたいから魔法薬を飲んでみてって言ったのだけど、絶対ダメと断られてしまった。なんでよー!

 

 二から先の手順は、吸血鬼の変化と変化強化の魔法薬を使って、私が擬似的にさとり妖怪となることで解消させる事にした。変化強化の魔法薬を使うことで、姿しか変えられなかった変化が、性質まで変えられるようになって、一定時間別の妖怪になれるようになった。

 

 擬似的にさとり妖怪になっても、心は読めなかったので、心を読ませる魔法薬に助けられた。

 心を読ませる状態の対象に触れる事で記憶の読み取り、想起、刻み込みができることが、パチェで試してみて分かった。パチェから読み取った記憶は私と初めて会った時の記憶だった。一番印象に残っている記憶がそれだったのは、親友として嬉しかった。

 

 フランの記憶を追体験する手段としての魔法は私が作製した。魔方陣の上にフランに寝て貰って、私がフランに触れながら一緒に眠る事で、魔法が発動する。

 

「パチェ! ついに完成したわ!」

「そうね。レミィの念願だったフランの記憶を戻すことがやっとできるわね」

「そうね………百年くらい掛かっちゃったけど、これで思い出してくれるかな?」

「私達の魔法に失敗は無いわ。必ず思い出すわよ」

「ありがとう! パチェ大好きよ!」

「………そう」

 パチェの自信ある言葉で安心させられた。パチェが親友な事に本当に感謝しているわ。ありがとうね!

 

「これからフランに記憶を戻すことができるようになった事を伝えて、フランが記憶を戻したいかどうかを聞いてくるわ。記憶を戻すかどうかはフランに決めて貰うの。フランの記憶だから、フランが決断しないといけない事だから」

「そうね。魔法の準備はしておくわ。いってらっしゃい」

「ええ、いってくるわ!」

 どんな決断をしても、フランの決めた事を尊重するからね。過去の思い出が無くても、これからいくらでも作れるのだから。待っていてね、フラン!

 

 

 フランの居る部屋に戻ると、フランはジョウロを持っているから花に水を与えていたみたい。

 

「フラン帰ったわよ。咲夜もありがとうね」

「あ、お姉ちゃんおかえりー!」

「お嬢様、お帰りなさいませ」

 フランは笑顔で出迎えてくれた。咲夜のおかげで寂しそうな感じは無いわね。

 

「フランに聞きたいことがあるの。いいかしら?」

「うん! なんでも聞いて!」

 フランの傍に行き、目をしっかり合わせて問いかける。

 

「フランの記憶を直す魔法が完成したのよ。どうして記憶を失ったか、記憶を失った時に何があったかが分かるの……辛い記憶になるかも知れないけど、フランは思い出したい?」

 フランは目を瞑って考えている。私はどちらでもいいのよ。フランが居ればそれで充分なのだから。

 フランが目を開けて、私を見つめる。聞かせてくれるかしら、フランの決断を。

 

「私は記憶を取り戻したいな。辛い記憶があったとしても、全部思い出して……私がフランドールだってちゃんと言えるようになりたいの!」

 

 ………あなたはフランドールよと簡単には言えないわね。もちろん私はフランはフランだと思っているけど、記憶が無いフランにはそう言えないのね……でも、大丈夫よ。

 

「なら、行きましょう! フランはフランだと言えるように、記憶を取り戻しに!」

「うん。行くよ! 咲夜、行ってくるね?」

「……かしこまりました。何時までもお帰りをお待ちしております」

「ありがとう! いってくるね!」

 

 フランと一緒にパチェの元へ向かう。手を繋いで、廊下を歩いて行く。思えば、フランを地下室から救出してから、百年になるのよね。たくさんの思い出ができた。

 フランと一緒に居て、フランに友達ができたのを一緒に喜んで、フランとお花見をしたり、フランとずっと一緒に居て、一緒に思い出を作ってきた。

 これからも一緒に居るために、記憶を取り戻した今日も楽しい思い出にするために、一緒に行きましょう!

 

 

「パチェ戻ったわ。フランはベッドに横になってね」

「ええ、お帰り。準備はできているわ。フランも安心しなさい。私とレミィで作った魔法に失敗は無いわ」

「……ありがとう! よろしくね!」

 ベッドで横になったフランの手を握る。フランに心を読ませる魔法薬を飲んで貰う。フランが考えていることが読めるようになった。

 

「お姉ちゃんも一緒に記憶を見るから安心してね」

 心の中で、これからどうなるんだろうって心配しているので、頭を撫でてあげる。私は変化強化の魔法薬を飲んで、さとり妖怪に変化する。姿形は変わってないけど、フランに触れると先ほどの記憶が読み取れたので、変化は成功したみたい。

 

「フラン。今からどうするか説明するわ。フランには眠って貰って、レミィの記憶を想起させる能力で、フランの無くした記憶を呼び覚まして、夢としてその記憶をもう一度経験することで、その記憶を刻み込ませるの。レミィも一緒に記憶を経験するから、フランの記憶を共有できるわ。説明は以上よ。魔法の制御は私がするから、安心して任せなさい」

「パチュリーもお姉ちゃんもありがとう。じゃあ眠るね」

 パチェが渡した睡眠薬をフランが飲んで、フランは眠りについた。

 では、フランの記憶を取り戻しに行きましょう!

 

 眠ったフランの手を握り、私も横になって目を瞑る。

 パチェが魔法を発動させたのを確認し、私もフランの記憶を想起させる。

 

 私の意識がフランの夢の中に入ってくような感覚を感じて、目を開けると、お母様がフランを抱いて居る姿が目に入った。

 

 これがフランの始まりの記憶なのね。私は傍観者としてフランの記憶を観ていくのね。フランがお母様に撫でられているのが見える。

 

 フランは様々な事を経験していった。まだ赤ちゃんのフランは、私と一緒に遊んだり、お母様に絵本を読んで貰ったり、私とお母様とフランでお風呂に入ったりと、その時にフランは楽しいって心から思っているのが感じられてうれしく思った。

 

 記憶の中のフランが言葉を覚えたので、心の中の言葉が聞こえてくるようになった。

 

『おねーさまとあそびたいな』

『かーさまもあそぼうよ』

 まだ小さなフランは遊びたい盛りでこの頃は毎日一緒に遊んでいたなと思い出した。

 

『れーばていん! かっこいい!』

 必殺技も考えて、フランに教えていつか二人で一緒に使おうって約束したね。

 

『おかーさましなないで!』

 フランが必死にお母様を助けようとしている思いが聞こえてくる。それでも助けられなくて、お母様を失った悲しみが痛いほど伝わってきた。

 

『おねーさまはいなくならないよね? だいじょうぶだよね? おねがい……ずっといっしょにいて』

 フランは私がお母様みたいに居なくなるんじゃないかと心配して、私が見えないとずっと探していた。ごめんなさい。

 

『なんでとじこめるの? おねーさまどこ?』

 フランが地下室に閉じ込められて、開かない扉を必死に叩いて壊そうとしている。私を探して泣いている。

 

『おねーさまにあいたいよ……おねーさまなんできてくれないの?』

 閉じ込められてからフランはずっと一人で私を待っている。いつまで経っても私はやってこない。ごめんなさい。

 

『おねーさまはわたしのことをきらいになったの? だから来てくれないの? ごめんなさい……おねーさまの言うことをなんでも聞くからゆるして……』

 フランが閉じ込められてから何年も経った。それでもまだ私を待ってくれている。でも私は来ない。

 

『おねーさまはもう来ない』

『でもおねーさまに会いたいよ』

『でももう来ないなら……忘れちゃおう』

『おねーさまとの思い出も、私の今までの記憶も全部壊しちゃえばいいの』

『全部壊せば……もうさみしくないよね……もうおねーさまを待っていなくていいよね……さようなら』

『……………………』

 

 ごめんなさい。一人で寂しかったわよね。何も出来なかった私のせいでフランは記憶を壊してしまったのね。

 

 

 ああ、全部私のせいだ。

 

「ちがうよ!」

 記憶の世界から弾き出されて、目を開けるとフランが私を抱きしめていた。

 

「私が弱かったから、全部捨てちゃった私が悪いの。お姉さまが頑張っていたのは、今の私は知っているよ」

「フラン……記憶が……」

「全部思い出したから言えるよ。お姉さまは悪くないの。だからありがとうね」

「でも私は……」

「今ここに居られるのも、お姉さまのおかげだよ。だからありがとう!」

「ああ……フラン……ありがとう……」

 フランに強く抱きしめられて、泣いてしまう。フランが全部思い出してくれた。思い出してくれてありがとう。それとごめんなさい。

 

 

「そんなに泣かないでお姉さま……もう記憶が戻って、これからもずっと一緒に居られるんだから」

「ええ、ずっと一緒に居るわ!」

 もう絶対に離れないわ。何があっても一緒に居るから!

 

「それにこれで、私は私だってちゃんと言えるよ! フランドールでしたって!」

「そうね! あなたはフランドールよ!」

 

「怖かったの。本当に私はフランドールなのかって。何も覚えて無くて、私が誰かも分からなくて、それでもお姉さまに救われて、すごい幸せで、でも私が、もしフランドールじゃなかったとしたら、この幸せも無くなっちゃうのかなって思ってた。でももうだいじょうぶだよね?」

「もちろんよ!」

 そんな事を思っていたなんて、ずっと一緒に居たのに知らなかった。記憶を失った苦悩を。でももう大丈夫!

 

 

「今日から改めて、私はフランになりましたってちゃんと言えるよね! フランでしたって言えるよね!」

 

「ええ、あなたは私の大切なたった一人の妹……フランよ!」




 
 
 読んでいただきありがとうございました。

 プロット無しで始めたこのSSですが、フランの設定とこの終着点だけは決めて、書き始めました。
 記憶を失ったフランが記憶を取り戻して、自分がフランだと言えるまでの話を書こうと決めて、書いていきました。
 最初の予定では6話で終える予定でしたが、過去を掘り下げて書いていくと、思うより長くなって、出る予定の無かったメイドなども出てきて更に話が長くなっていきました。
 それでもフランと紅魔館メンバーの交流も掛けて、楽しかったです。

 原作に書かれてない部分を、独自設定で書いていったので、それはおかしいって部分もあったと思います。

 この後も、エピローグと後日談、原作開始後の話を書いていく予定ですが、今後は不定期更新になります。
 隔日投稿で書いていくと、時間が足らなくなって文章が乱雑になってしまいました。

 最後になりますが、感想や評価などいただけると、嬉しいです。
 質問や、こうしたら読みやすくなる、直した方がいいところなどがあれば教えて欲しいです。
 改めて、読んでいただきありがとうございました!

登場人物紹介
フラン
お姉さまと呼べました。
フランになりました。
レミリア
フランの記憶を戻しました。
喜びと罪悪感がごちゃ混ぜになって泣いてしまいました。
パチュリー
心を読ませる魔法薬は、自分用でした。
伝えられない気持ちを伝えるのには、心を読ませればいいと。
結局、恥ずかしくなって自分では使えませんでしたが、フランの記憶を戻すために活用できて満足です。
咲夜
レミリアからの評価も高いです。
フランの帰りを待っています。
美鈴
レミリアのツンツンした態度が可愛くて、相変わらずからかっています。
仕事はなんでもこなします。




 以下は、このSSの反省点です。今後に生かしたいです!
 一話の出来が微妙だと、先を読んでくれる方が減るって改めて思いました。次回書くなら一話で読者を引き込めるような小説を書いていきたいです。
 フランがだいたい部屋にしか居なかったので、寝たり、遊んだりと単調になっていたのが、微妙でした。もう少し、動きのある感じにできればよかったなと思いました。
 フランの内面が完全に子供なので、他の子とイチャイチャさせるにしても、子供の範疇でしか動かせなかったのが、微妙だったのではと思いました。
 戦闘シーンは初めて書きましたが、戦いを文字に起こすのが難しいなと思いました。これは他の方の作品を読んで勉強し直します!
 プロットは必要ですね。次の話を書く前に毎回、何を書くかを考えながら書いていたので、時間が掛かるときはかなりかかりました。

 こんなところでしょうか。ありがとうございました!


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巡る季節。変わらないモノ。

フラン視点です。
エピローグになります。


 

「お姉ちゃん! もうみんな待っているよ!」

「今行くわ……少し待っていてね」

「うん! 一緒に行こうね」

 紅魔館は色々あったけど無事に幻想郷に転移して、今からそのお祝いの宴会が始まるから、お姉ちゃんを呼びに来た。

 お姉ちゃんは紫ちゃんに渡す書類を書くって、さっき言っていたから、それを書いているんだろうね。

 

 私の壊しちゃった記憶は元に戻ってきた。その時はお姉さまって呼んでいたけど、やっぱりお姉ちゃんって呼ぼうかなって。お姉ちゃんはどっちで呼ばれてもうれしいって言っていたから、お姉ちゃんって呼ぶって決めたの。だって、そっちの方がなんだか仲が良さそうに思うからね!

 

「フランー書き終わったから、行きましょう!」

「うん! 今日は紅魔館のみんなとの宴会だけど、明日は紫ちゃんが幻想郷の人たちを連れてくるんだよね?」

「紫ちゃんって感じの奴じゃ無いと思うけどねぇ……まあ、明日は八雲紫の式神と天狗と博麗の巫女と後は、適当に妖怪でも連れてくるんじゃないかしら?」

「紫ちゃんって呼んでいいわよって言っていたから、紫ちゃんって呼ぶことにしたの。明日はお友達が増えたらいいなぁ」

 

 お姉ちゃんと手を繋いで、真っ赤な長い廊下を歩いていく。幻想郷侵攻では、紅魔館が半壊しちゃったけどパチュリーの魔法で、ささっと直してくれたんだよね。私も魔法陣を書いてお手伝いできたから、うれしかったなー。

 

「フランならたくさんお友達できるわよ! 私の自慢の妹なんだから!」

「ありがと-! お姉ちゃんも私の一番大好きな自慢のお姉ちゃんだよ!」

「あ、ありがと……ほ、ほら着いたわよ!」

「うん! 開けるねー」

 お姉ちゃんはちょっと照れたのかな?お姉ちゃんに好きって気持ちを伝えるのは、本当の気持ちだから恥ずかしくないからね!照れてるお姉ちゃんはかわいいし、もっと伝えてあげないと!

 

「みんなお待たせー! お姉ちゃんも来たよー」

「待たせたわね。さあ、美鈴始まりの音頭を取りなさい!」

 

 またお姉ちゃんが美鈴に無茶ぶりしてるー。二人って仲がいいよねー。私ももっと美鈴と仲良くなりたいなぁ。

 

 みんながテーブルを囲んで座って待っている。私とお姉ちゃんも席に座ると咲夜が飲み物をグラスに入れてくれた。私のはオレンジジュースで、私の好きな飲み物だ!咲夜ありがとうね!

 

「わかりました。それでは皆さん無事に幻想郷に紅魔館を移す事ができておめでとうございます。ほとんどはパチュリー様とそのお手伝いをしていたフラン様のお陰ですが、お嬢様もがんばっていたと思います」

「ちょっとー! 私、各地から手下達を呼び寄せたんだけど! それに八雲紫とも戦って来たのよ!」

 

「手下の方々を呼ぶのにお嬢様がしたことは私と咲夜さんが書いた手紙にサインをしただけでしたけどね」

「そうだけどー! 美鈴ちょっとひどくないかしら? もしかして寝かせないで働かされた事を怒ってるの?」

 

「いえいえ、怒っていませんよ。幻想郷侵攻なんて、私にはどうでもいい事でしたので。それよりも大きな、大切な事をお嬢様はしてくれました。フラン様の記憶が戻った記念で今回は宴会をしたいと思います」

「……そうね! 美鈴もたまにはいい事言うじゃない!」

「美鈴!? さっきは引っ越し祝いって言っていたじゃん! 聞いていないよぅ……」

 

「サプライズですよ。それでは皆さん。フラン様の記憶が戻られた事を祝って乾杯!」

『乾杯!』

 みんなとグラスをくっつけて、乾杯と言っていく。オレンジジュースを飲んで、後ろに控えている咲夜の手を引いて、隣の椅子に座らせる。

 

「メイドだからって立っていなくても大丈夫だよ。私たちは家族なんだから! そうだよね、お姉ちゃん!」

「ええ。家族ですもの、一緒に食べましょう」

「……ありがとうございます」

 咲夜が隣に座ってくれた。咲夜ってすごい真面目だよねー。それにすごい優しいの!そうだ、咲夜にこのローストチキンを食べさせてあげよう!いつものお礼だよー!

 

「咲夜。はい、あーんして」

「…………はい」

 咲夜が口を開けてくれたから、ナイフで一口サイズに切って、フォークで刺して、咲夜の口に運んでいく。はむっとチキンを口に含んで、食べている咲夜を眺めていると、顔を逸らされちゃった。確かに恥ずかしいかもねー。でも表情は変わらなくても、照れてくれたのかな?それならうれしいかなぁ。

 

「さ、咲夜ずるくないかしら? フランー私もそのチキンが欲しいのだけど」

「お姉ちゃんは美鈴が食べさせてくれるよー」

「お任せください。はい。あーんしてくださいね」

「いいわよ! 私はフランに食べさせてほしいの!」

「なら、美鈴私にちょうだい? あーん」

「どうぞ。おいしいでしょうか?」

「うん! すごくおいしい!」

 

 おいしかったから、自分のフォークでもう1個食べる。やっぱりおいしいね。

 

「じゃあ、お姉ちゃん。あーんしてね!」

「ええ! でもちょっと恥ずかしいわね……あーん」

 お姉ちゃんの口にチキンを運んで食べてもらう。顔が赤くなっているけどぱくっと食べてくれた。

 

 次はパチュリーだね。食べてくれるかな?パチュリーは何も食べなくても生きていける魔女だけどどうかな?

 

「おいしいからパチュリーも食べる……?」

「いたただくわ」

「はーい! じゃあ、あーん」

「……あ、あーん」

 

 正面に座っていたパチュリーの隣までお皿を持って歩いていって、フォークに刺さったチキンをパチュリーのお口へ運ぶ。パチュリーがあむっと食べてくれ、なんだか嬉しそうに食べてくれている。おいしかったのかな?

 

「ありがとう。食べれて幸せよ」

「私も食べてくれて幸せだよ!」

 

 席に戻って、他の料理も食べていく。隣の咲夜が私の食べたいって思ったものを切り分けてくれるから楽で助かる。お礼に咲夜に食べさせてあげる。

 

「咲夜の料理はほんとうにおいしいよ! ありがとうね」

「こちらこそありがとうございます」

 

 お姉ちゃんが美鈴にお酒をたくさん注がれている。それを飲んだらまたすぐに注がれた。

 

「ちょっと! もういいわよ!」

「いえいえ。今回の立役者なんですからもっと飲んでもいいですよ。お酒をたくさん飲める人ってかっこいいってフラン様が言ってましたよ」

「わかったわよ! 紅魔館の主に限界が無いって事を教えてあげるわ!」

 

 そんな事言ったかなー?そう言えばお花見してるときに美鈴に言ったことがあるかも?よく覚えていたねー。

 

 パチュリーは本を読みながら、たまにワインを飲んでいる。パチュリーはいつも通りだね。それもパチュリーの楽しみ方なんだろうね。でもちょっとお話したいなー。そうだ!

 

「パチュリーちょっと座っていい?」

「いいわよ……?」

「ありがとう! えぃっ!」

「ひゃっ! びっくりしたわ」

 パチュリーの膝の上にお尻を乗せて、私の膝でパチュリーの足を挟むように座る。パチュリーに抱きつく感じで座って、顔を見上げながら何を話そうか考える。

 

「……どうしたのかしら?」

「パチュリーと何を話そうかなーって。何の本を読んでいたの?」

「これはついさっき大図書館に追加された魔道書よ。なかなか面白いわね」

「本が自動で増えていくってすごいよね-! 面白い本が増えたら教えてね!」

「……ええ。それよりもレミィが血の涙を流しそうな表情しているから離れた方がいいわよ?」

 後ろを振り向くと、お姉ちゃんがすごい表情をしていた。妹離れしないとだめだよーお姉ちゃん!私は姉離れする日は来ないと思うけどね!

 

 パチュリーから離れて、お姉ちゃんに抱きついてみる。

「お姉ちゃんどうしたの? 飲みすぎちゃった?」

「フランー! 心配してくれてありがとうー!」

 お姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられる。酔っ払ったのかな?お姉ちゃんの顔がすごい赤くなっている。

 

「フランー! 愛してるわよ-!」

「うん。私も好きだよー。美鈴ちょっと飲ませすぎたんじゃないのー?」

「あはは。すみません。飲んでるお嬢様が可愛かったので」

「好きじゃなくて、愛してるって言ってよ〜! フラン〜」

「お姉ちゃん愛してるよー。絶対酔っ払ってるじゃん!」

「これ覚えていたら、明日が楽しみですね」

「もっと愛してるって言って〜!」

「愛してる。愛してる。アイシテル。咲夜ーお姉ちゃんを寝室に運んじゃってー」

「かしこまりました」

「ああ、フラン〜。離れていかないで〜」

「おやすみー! またあとでね!」

 

 ドクターストップで咲夜に運んでもらった。大好きなお姉ちゃんでも、酔っ払った時に相手するのは疲れるんだもん。

 

「また明日もありますし、今夜はお開きにしますか?」

「そうだね-? パチュリーも終わりでいい?」

「ええ。十分満足したわ」

「はーい! それならまた明日もよろしくね! 明日は紫ちゃんたちが来るからねー」

「そうですね。お綺麗な方が来てくれるのであれば大歓迎です」

「あなたは相変わらずね……」

「妖怪なんて簡単には変わらないものですよ」

「それもそうね……ではおやすみなさい」

「あ、おやすみー!」

 

 パチュリーが図書館に帰っていたから、食器の片付けを始める。お皿は早めにお水に漬けないと汚れが落ちないんだよー。

 

「あ、フラン様もお部屋に戻ってもいいですよ。私と咲夜さんとメイドの方々で片づけますので」

「えっ? 咲夜はまだお姉ちゃんを介抱してるんじゃない?」

 咲夜が来るまではお手伝いしてあげようかな?

 

「フラン様お呼びですか?」

「ひぁ! なんで直ぐ後ろにいるのー!」

「メイドは後ろに控えるものですよ」

「もー! 咲夜も結構お茶目だよね。そう言うところも好きだけど、びっくりするから気をつけてね!」

「かしこまりました」

 

 咲夜とずっと一緒に居るけど、意外と冗談を言ったり、こんな感じで驚かしてくる事がある。やっぱり咲夜って面白いね!

 

「じゃあ、私はお部屋に戻ってもいいかな?」

「はい。ゆっくりおやすみください」

「じゃあおやすみー! また明日もよろしくね!」

「おやすみなさい。咲夜さん私はメイドの方々に声を掛けてきますね」

「かしこまりました」

 

 咲夜と美鈴におやすみを言って部屋へ帰る。明日はどんな人たちが来るかな-?紫ちゃんみたいに優しい人だといいなー。

 

 部屋に戻るとお姉ちゃんが、もう寝ていた。

 

「もう、飲みすぎだよー。でも楽しかったよ」

 お姉ちゃんが楽しそうにしていると私もうれしいよ。これからは紅魔館のみんな以外とも仲良くなっていけるかもしれないけど、今のみんなともずっと一緒に仲良く居たいなぁ。

 

 これからずっと、いつまでも、変わらないでほしいな。みんなとこのままずっと、いつまでも一緒に居れますように!

 

 それじゃあ寝ようかな?

 

「おやすみ。お姉ちゃん」

 




これが書きたかったんです!
フランのしあわせな日常が書けて大満足です。
今後もこの紅魔館はずっと幸せが続くでしょう!

読んでいただきありがとうございました!

登場人物紹介
フラン
前よりも明るくなって、自分の心に素直になりました。
小悪魔度も増した気が……
レミリア
酔っ払うと、普段隠さない気持ちが出てあんな感じになります。
翌日目を覚まして、昨日の記憶を思い出すと……ドンマイです。
美鈴
相変わらずいけめーりんでした。
美女、美少女に囲まれて幸せな職場に満足しています。
パチュリー
あーんの順番はパチュリーが一番喜ぶ順番にしました。フランとレミィの間接キスに、内心舞い上がっていました。
咲夜
フランのあーんによって忠誠度は百倍に。とうの昔に忠誠度はカンストしてますけど。咲夜は人間なので、寿命がありますが、この咲夜さんは人間であることより、フランに仕え続けることを選ぶので、ずっと一緒に居るでしょう。妖怪の血を混ぜるのが、そのための伏線でした。

最後になりますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。
正直、最初の頃の話で大半の方は読むのを止めているのが、UAを見て分かりました。
それでも、最後まで読んでいる方も居てくれたので、後半はその方のために書いていました。

本当にありがとうございました。


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