魔法先生ネギま~とある嘱託魔導師の学園生活~ (デザイア)
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プロローグ

拙い文章ですがどうか暖かい目でご観賞下さい


 

 

 

 

 

 

 

 

私は真っ直ぐ続く廊下を、案内役のしずな先生と共に歩いている。

 

 

時期は10月半ば。転入生が入ってくるにしては微妙な時期だ。

 

 

何故私がこの季節に転入してきたのか。それは私の仕事の為のものだ。

 

 

何を隠そう、私はこの世界の人間ではない。

 

 

私の正体は第一管理世界ミッドチルダにおいて設立された次元管理局の嘱託魔導師である。

 

 

私がこの世界に来た理由は、本来魔法文明の存在しないはずである第97管理外世界でその存在が確認された未知の魔法の調査分析だ。

 

 

その為に私はこの世界の現地協力員の伝手でその未知の魔法の痕跡が多く残るこの学園都市で女子中学生として転入する事となった。

 

 

そう。女子中学生として転入する事になったのだ。

 

 

別に今更学生として転入しなくてはならない事に問題がある訳じゃない。

 

 

というか私の年齢ではこの世界、現地国名【日本】ではまだ義務教育期間なので学生として転入する事に対しては問題ない。

 

 

なら何が問題なのかと…「着きましたよ」…あ。

 

 

いつの間にか私が転入する筈の教室まで着いてしまっていた。

 

 

教室の入り口上部には【2-A】という札が付けられていた。

 

 

私は教室の戸に嵌め込まれたガラス窓から中を伺う。

 

 

当たり前だが、教室内には学年相応と思われる女生徒達ばかりがワイワイガヤガヤと騒いでいた。

 

 

いや、一部学年相応に見えない人もいるが…。

 

 

「あら、緊張しているのかしら?大丈夫よ、皆明るくて良い子達ばかりだから」

 

 

教室内を伺っていた私を、しずな先生は少々的外れ気味に励ます。

 

 

しずな先生は私の顔を窺ってから私の肩に手を当てて、促す様に押しながら教室の戸を開けた。

 

 

しずな先生が教室に入った事に対して中の女生徒達は慌てながら席に着く。

 

 

勿論その時、先生と共に入ってきた見知らぬ存在である私に対して見入る様な視線を送る事は忘れずに。

 

 

「皆さん、転入生を紹介します。では、自己紹介を」

 

 

しずな先生は私にそう話を振り、耳元で私しか聞こえないであろう程度の小声で「頑張って」と言った。

 

 

シンッとする教室内。そして私へと集まる視線。

 

 

私は小さく静かに深呼吸をし、意を決して口を開いた。

 

 

「は、はじめまして。ルクレール・八神です。歳の近い人達にはルークと呼ばれています……よ、宜しくお願いします」

 

 

そう言って私は深くお辞儀をする。

 

 

何も反応が無かった。ちょっと声が上擦ってしまったし自分としても思っていたより声が出ていなかった様に思える。

 

 

もう一回言わなきゃ駄目かな?そうだったら嫌だな。実際、こんな大勢の人の前で自己紹介をするなんてあまり例が無い。

 

 

正直、少し気恥ずか「か…」―――え?

 

 

「「「可愛ーーーいぃ!!!!」」」

 

 

へっ?

 

 

教室に響き渡り、尚且つ窓ガラスが僅かに振動を起こす程の声量で彼女達は口を揃えたかのようにそう叫んだ。

 

 

「何処から来たのー?」

 

 

「八神って事はもしかしてハーフ?」

 

 

女生徒達は席を立ち、呆気に取られる私を取り囲むようにして口々に疑問をぶつけてきた。

 

 

「お止めなさい皆さん!八神さんが困っているでしょう!」

 

 

「えー?いいじゃんいいんちょー」

 

 

【いいんちょー】と呼ばれた人がクラスの皆を諌める。

 

 

諌められた当人たちもある程度不満は残る様だが口答えしつつも私の周りから引いていった。

 

 

何となくだけど友好的ではあると見ていいのだろうか。

 

 

まあ、唯一の問題さえ露見しなければ話だが。

 

 

こうやって女生徒達と学園生活を送るに当たってこの問題だけはどうしても彼女たちには知られる訳にはいかない。

 

 

もし知られるような事があれば、それは即ち調査が失敗に終わる事は元より私個人に対して甚大なる被害があるだろう。

 

 

そうなれば私は破滅だ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その問題とは私が・・・いや・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が実は男だという事を。

 

 

 



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第一話 現地調査任務とそれに伴う問題について

亀更新&拙い文章ですが、どうか温かい目で見ていてください。


 

 

 

 

 

 

 

事は半年前に遡る・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「別世界で確認された未知の魔法に対する現地調査任務・・・?」

 

「別世界って言っても場所は第97管理外世界、まあうちらの出身世界なんやけどな」

 

 

この日僕は管理局内のはやてさんのオフィスで調査任務の話を持ち掛けられた。

 

 

「調査期間は1年間から。もしええ成果があったら調査エリア、人員を増やして長期間になるんやけど・・・どうや?」

 

 

本来ならこの手の調査は管理局の専門の調査員の仕事であり、民間協力者である嘱託魔導師に委託する様な任務ではないらしい。

 

でもはやてさんの話によると、今は別の案件に対して人員を割っており、別世界に長期滞在してまで調査を行う様な人員が不足しているそうだ。

 

今まで僕は何度か別世界での任務に携わってきた。だから話を聞いた時は今回も承諾しようと考えていた。

 

だけど一年間からという長期間に関して少々尻込みしていた。

 

 

「一応言うとくけどな、別に一年間ずっと向こうに居っ放しって事や無いで?ちゃんと自分のペースにあった休暇を取って帰ってくればええんよ。まあ、休みっ放しはさすがにあかんけどなぁ」

 

 

浮かない顔で考え込んでいた僕に、はやてさんは笑いながらアドバイスをくれた。

 

だけどその微笑には微かに疲れの色が見えていた。

 

 

「あの、一つ質問宜しいですか?」

 

「ん?何でも聞いてくれてかまへんよ」

 

「もし僕が断ったらどうするんですか?」

 

 

そう僕が言うとはやてさんはこめかみ辺りを押さえながら考え込み、

 

「どうにかして人員を搾り出すしかないかなぁ。もしくは出身者であるウチやなのはちゃんとかが短期間で何度も繰り返し調査するとか・・・」

 

とまで言って言葉を濁らせた。

 

なのはさんの出身世界も第97管理外世界だ。きっと僕が行くよりも早く世界に馴染め、多くの成果を持ち帰る事が出来るだろう。

 

でも、それには多くの問題がある。

 

なのはさんは航空武装隊の戦技教導官だ。戦時は勿論の事平時も装備や戦闘技術のテストや研究、演習での仮想敵役や技能訓練とやらねばならぬ事の多い大変な仕事を為さっている。

 

それに加えて娘さんのヴィヴィオが学校から帰る頃には帰宅し、母親としての家事をも為さっている。

 

そんな方にこれ以上の負担をかける訳にはいかないだろう。

 

勿論、それははやてさんにも言える事だ。

 

時空管理局海上司令という大変な役職に就かれている。僕などでは計り知れない苦労もしているはずだ。

 

だから・・・。

 

 

「はやてさん。僕にやらせて下さい」

 

「ほんまにええんか!!」

 

 

僕がそう言うと、お疲れモードのはやてさんはパァッと表情を明るくして席から立たんばかりの勢いで声を上げた。

 

 

「は、はい。いつも管理局の皆さんにはお世話になっていますし、そういった恩に報いる一環として嘱託魔導師になった訳でもあります」

 

 

はやてさんの変わり様に気圧され気味になりながらも、僕は自分の考えを述べた。

 

 

「そんな恩返しなんてええのに。ま、手伝ってくれるんなら喜んで手伝ってもらおうか!」

 

「はい!僕に出来る事であれば何でもします!徹底的に扱き使ってやって下さい!」

 

 

その後、現地での滞在場所やカモフラージュの為の身分等が決まり次第連絡をするという話を進めて僕は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその数日後、突然の呼び出し連絡を貰って再びはやてさんのオフィスを訪ねる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オフィスのドアの前で立ち止まり、僕はインターフォンを押した。

 

 

「ルクレール・八神です」

 

『おー、来たかー。入って入ってー。皆待っとったんよー』

 

 

そうとだけ言って応対用スピーカーからの音声が途切れる。

 

というか皆って一体だれなのだろうか?

 

考えていてもしょうがないと思い、僕は室内へと足を踏み入れた。

 

 

「失礼しま・・・・・・ぁ」

 

 

部屋の中は妙な組み合わせのメンバーが揃っていた。

 

 

はやてさん、リイン曹長、なのはさん、シグナム師匠、ヴィータさん、シャマル先生、ユーノ司書長。

 

 

「さて当人も来た事やし、あの話と例の問題を進めよか」

 

 

あの話。僕がいる時点で話の内容は例の現地調査任務の話であろうと推測できる。

 

でもその話に何故このメンバーが関係するのかが分からなかった。

 

それに例の問題とは?

 

とりあえず僕は、はやてさん達の話を聞く事にした。

 

 

「まずは現地調査の場所が決まったで。場所は日本の麻帆良市、麻帆良学園や」

 

 

麻帆良学園。という事は教育施設なのだろうか。そこと魔法が何の関係があるのだろうか。

 

 

「次にカモフラージュの身分として、ルクレールには麻帆良学園中等部に通って貰うで」

 

 

中等部。僕の今の年齢は13歳。確か日本の義務教育年齢でいう所の中等部に相当する筈だ。ここまでは問題無い。

 

 

「で、ここからが少々問題が発生しとる。簡単に言えば現地協力員との連絡ミスや」

 

 

連絡ミス?一体何が・・・?

 

そう考えていた僕の耳に、とんでもない言葉が飛び込んできた。

 

 

「調査員が転入するのは女子中等部や。尚、向こうの学校は全寮制やから現地滞在時の住居も女子寮になるみたいや」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぇ。

 

 

 

 

「あ、あの・・・はやてさん・・・?」

 

 

僕は油切れのロボットの様に首をギギギと回し、ついさっき耳に入った情報について質問する。

 

 

「女子中等部と聞こえたんですけど、僕の耳がおかしかったんですよね?」

 

「いやいや。ルクレールの聴覚は正常やろ。今年の初めに計測したデータによると常人よりよっぽど良いで?」

 

 

耳にした言葉は本当だった。寧ろ人より優れているとまで言われてしまった。

 

なら間違っているのは・・・・・・。

 

 

「あのはやてさん、僕の性別は男なんですけど・・・」

 

「当たり前やん、誰がどっから見たって男の子って分か・・・いや、分からへんからこんな問題が起きたんやったな」

 

 

話を聞いたところ、現地の協力員が僕の容姿を見て女の子と間違えただけという小さなミスだとはやてさん達は笑っていた。

 

けど僕としては笑えない。全く持って笑えなかった。

 

 

「という訳でルクレールには女の子として学校に通いながら現地の魔法を調査してもらう事になったからな。で、これからの予定なんやけど・・・」

 

「ちょっと待って下さい!無理でしょ!?女の子として何て無理でしょう!?」

 

 

僕ははやてさんの言葉を遮って、自分の主張をする。

 

さすがに不可能だ。少なくても1年間を女の子として過ごすなんて無茶すぎる。終始一人行動ならまだしも、女子校に通って尚且つ女子寮に住むとかばれるに決まってる。もし滞在中に男だってばれて見ろ、変態さん扱いは必至だ。いや、変質者として向こうの司法機関に突き出され兼ねない。

 

 

「ルクレール、何事も無理やら無茶やら言っとったら何も出来へんで?大丈夫や、女の子になる方法はちゃんとあるから」

 

「女装しろって事でしょう!?四六時中大勢の女の子と一緒ですよ?絶対ばれますから!!」

 

「何言うとん?女装なんてそんな不確かな事なんかさせんよ」

 

「じゃあどうやって・・・」

 

 

そう疑問に首を傾げる僕に、はやてさんは当たり前の事の様にサラッととんでもない事を言った。

 

 

「だからいったやん。女の子になればええんよ。肉体的にな」

 

 

 



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第二話 問題解決。但し失った物はあまりにも大きかった

深夜のテンションで書いたのでちょっと日本語が怪しい所がありますが、どうか気にしないで下さい。


 

 

 

 

 

 

「なぁ!?」

 

 

突然のとんでもない発言に、僕は驚愕の声を漏らした。

 

 

「そうです。女の子の格好ではばれてしまう。ならば身体ごと女の子になってしまえばいいのです!」

 

 

驚き過ぎてそれ以上声が出ない僕を尻目に、突然リイン曹長は部屋中に響き渡らせる様に宣言する。

 

そしてそれに次いでユーノ司書長が口を開いた。

 

 

「先日、無限書庫のベルカ方面未整理区画を探索中に古代ベルカの特殊魔法についての記録書を発見しました。そのデータがこれです」

 

 

それと同時に複数の空間モニターが開き、術式データが展開された。

 

 

「ミッド式にもある変身制御等の魔法があります。そして此度見つかったこの魔法はそれに比べて更に強固に作用し、外面的、身体機能的に完璧な性転換を可能にしています」

 

「この魔法に掛かったある被験者の生体スキャンですが、ここの部分を見てください」

 

 

今度はシャマル先生がそう言いながら誰かのスキャンデータを写し出した。

 

 

「言わずとも話の流れでご理解されているとは思いますが、被験者は男性です。ですがこのスキャン結果には男性に有り得ない器官が備わっており、尚且つ本来あるべき器官が消失しているのが確認されました」

 

 

皆が示された箇所を確認して、驚きの声を出す。

 

そしてそれと同時に、僕は冷や汗が止まらなかった。

 

 

「じょ、冗談ですよね?このスキャン結果は元々女性の物なんですよね?いやだなぁ司書長、こんな手の込んだ冗談なんて用意してくるなんて・・・」

 

 

冗談であって欲しい。僕は心からそう思った。

 

だけどユーノ司書長の口から出た言葉は、僕の望みを粉々に打ち砕く答えだった。

 

 

「事実だよ・・・だって、このスキャンデータの人物は魔法に掛かった僕なんだから」

 

「――――――」

 

 

ユーノ司書長はポツリポツリと喋り出した。

 

ずっと忙しかった。休み間もないから集中力は勿論、注意力は散漫する。普段なら怪しい魔法書はちゃんとトラップの有無をチェックしている。今回起きた事は不幸な事故だったんだ・・・と。

 

 

「まあちゃんと元に戻れたからいいんだけど、もう女体化状態の間はなのはもはやても本当に色々と・・・いや、やめておこうか・・・」

 

 

何?一体なのはさんやはやてさんに色々と何されたんですか。というかまさか・・・。

 

 

「これで女の子の問題は一先ずクリアや。じゃあシャマル、リイン。ちゃちゃっとこの魔法についてルクレールにレクチャーしてやってくれるか?」

 

「はい!マイスターはやて(はやてちゃん)!」

 

 

――――――無理。

 

 

「ちょっと待って下さい!それは無理ですって!というか絶対嫌ですよ!!」

 

「大丈夫よルクレールくん、痛くしないから」

 

「最初の方はちょっと違和感があるらしいですけど直ぐに慣れますです!」

 

「そうじゃなくて!!」

 

 

僕の意思とは関係無く僕を女の子にしようとする二人を制止する。

 

するとそこで、今まで口を噤むんでいたシグナム師匠とヴィータさんがスッと僕の傍らに立った。

 

 

「いい加減にしろ、ルクレール。自分の意思で手伝うと言っておきながら何だその態度は。男なら自分の発言に責任を持て」

 

「お前、先日はやてに言ったんだろ。【何でもします、徹底的に扱き使って下さい】って。ならしっかり従えよ」

 

「ぁぅ・・・」

 

「あーここで断られるとまた仕事が増えるわー。そうなるとウチら大変やわー」

 

「ルクレールくん、あんまり聞き分けがないのはね・・・ちょっとお話、する?」

 

「ルクレール、諦めて・・・」

 

 

退路は、無い。

 

 

「・・・・・・はい・・・分かり、ました」

 

 

断れる訳無い。

 

というかはやてさん、僕がこの面々に対して絶対断れないのを見越して呼び集めてますよね。

 

 

 

 

この後、僕は直ぐにリイン曹長とシャマル先生と共に別室にて性転換魔法の使用に関するレクチャーを受け、実践した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今・・・戻りました・・・」

 

 

僕は男で無くなった体ではやてさんのオフィスに戻る。

 

室内にいた面々はユーノ司書長を除いて一斉に僕へと視線を向け、ジロジロと頭から爪先まで舐める様な視線で観察する。

 

そんな時、はやてさんが立ち上がって僕の前にきた。

 

「ルクレール、気をつけ」

 

「はい・・・」

 

 

僕ははやてさんの指示通りに両腕を体の側面に付け、直立姿勢を取った。

 

 

「ふむ・・・」

 

 

ふいにはやてさんの手が僕へと伸びる。

 

そして、むんずという表現が良く合う動作で僕の胸を掴んだ。

 

 

「おーおーおーー。ええ乳やわーー、これこそ女の子やなーうんうん」

 

「ぁ゙・・・っ」

 

 

はやてさんの突然の行動に僕は硬直し、助けを求める為に視線で回りに訴えかけた。

 

 

「あー近頃本っ当に忙しくてこうしてセクハラも出来へんかったからなーー。あー癒されるわーー」

 

「はやてちゃん・・・うれしそう・・・」

 

「あたしが不甲斐無いばかりにはやてを満足させてやれなかったからな・・・はやて、今だけは思う存分楽しんでくれ」

 

「主はやて・・・幸せそうで何よりです」

 

「ごめん、ごめんよルクレール・・・僕だって通った道なんだ・・・今は、耐えて・・・」

 

 

駄目だ・・・誰一人として助けてくれそうに無い。

 

 

 

 

 

セクハラ開始から半刻程過ぎた頃、僕の胸ははやてさんの手からやっと開放された。

 

全身から力が抜けて僕は床にへたり込む。

 

何というか、男として大事なものを失った気がする。

 

 

「完全回復完了や!ルクレール、また揉ましてな?」

 

「断固拒否します!!」

 

 

全く悪気を感じさせない恍惚な笑顔を浮かべるはやてさんに対して、僕は目に涙を滲ませながら腕で胸を隠しながら叫んだ。

 

 

「ははは、軽い冗談やん。男なんやさかい胸ぐらいどんと揉ませてくれてもええやん」

 

「今は女の子です!心行くまで確認したところでしょうが!?」

 

 

女性職員に対してセクハラ常習犯だという噂を聞いて来たが、まさか元男相手にもするとは思わなかった。

 

その後はやてさんは周りの面々に軽ーーく窘められた。

 

 

「まずは問題第一関門突破や。で、次が重要なんやけど……」

 

 

先ほどとは打って変わって真剣な顔つきで話を進めるはやてさん。

 

 

「現地で過ごす為の知識を学ぶ必要がある。ここん所は出身者であるウチとなのはちゃんがみっちり仕込んだる。それと……」

 

 

短期間ならまだしも、長期間の現地滞在だ。向こう側の世界の一般常識や知識は必要なのは当然の事だろう。

 

 

「女の子として過ごす為の知識も仕込んだる。女の子としての仕草は勿論、衣服、化粧、諸々全部や」

 

「とりあえず転入する学校の制服はあるからね。あ、それと下着も後で…」

 

「ごめん、ごめんよルクレール・・・・・・僕が余計なものを見つけた所為で・・・・・・本当にごめん、ごめんなさい」

 

 

ハハハ、女の子としての常識も必要なんですか、そうですか。

 

これから忙しくなるでーーと腕まくりをするはやてさん。

 

制服の一部と思われるスカートを手にするなのはさん。

 

楽しそうに化粧台やらアクセサリーやらを用意するシャマル先生たち。

 

皆からちょっと離れた場所で僕に謝り続けるユーノ司書長。

 

ああ、何てカオス。

 

 

「もう・・・・・・好きにして下さい・・・・・・」

 

 

どう足掻いても絶望しかない。

 

そう思った僕は全てを諦め、嬉々としているはやてさん達に身を委ねた。

 

そして半年後、こうして僕は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――私は、麻帆良学園女子中等部2-Aに転入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回からルクレールの女子中学生生活、始まります。


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第三話 転入初日 前編

 

 

 

 

 

 

 

色々な障害もあったが、私は無事に麻帆良学園女子中等部2-Aに普通の女子学生として転入を果たした。

 

私は今まで教育機関等へ通った事が無いため学生としての勝手が分からない。

 

とりあえずははやてさんやなのはさんのアドバイスにそって、学生生活に馴染む努力をしようと思う。

 

欲を言えば、男子学生として馴染みたかったが。

 

 

私の紹介が済んだ後皆さんから色々聞かれたのだが、一時限目のチャイムがなってしまって授業担当の先生がやってきた。

 

先生が教室内に入ってくると同時に皆はバタバタと自分の席へと戻った。

 

一時限目は数学。新田という先生が担当だった。

 

こちらにくるに当たってこの年代で習うであろう学習内容は予め予習はしてきている。

 

それにこの世界の数学はミッドでのそれと殆ど変わりない。いや、少々遅れていると言っても過言ではないだろう。

 

この授業は問題無かった。

 

そしてその後に続く座学系授業。

 

ええ、全く問題ありません。無数に増やせるマルチタスクでガッツリと予習を済ませています。

 

こと勉学に対して私に隙も死角もありません。

 

ええ、そう思っていましたよ。三時限目まではね。

 

 

 

 

 

 

「んがっ・・・・・・!?」

 

 

突如目の前で繰り広げられた光景に、開いた口が塞がらなかった。

 

三時限目が終わり休み時間が半ば過ぎた頃、私はクラスメイトの近衛 木乃香に次の授業の準備をしなくてはいけないと言われ、2-Aの教室ではない別の部屋へと案内された。

 

そしてその部屋へと入った瞬間、目に飛び込んできたのは――――――

 

 

 

 

 

――――――着替え中のクラスメイト達だった。

 

 

「な、な、な・・・・・・!!?」

 

 

人間、驚き過ぎると声が出なくなるというのを聞いた事があるがまさか自分が体験するとは思わなかった。

 

 

「ルークちゃん、早く着替えないと遅れるで?」

 

 

近衛さんは私が目を点にして驚いているのを見て首を傾げる。

 

そして彼女自身もそう言いながら私の前で服を脱ぎだした。

 

 

「なあーーーーーーーーーっ!!?」

 

「わっ!?なんなん!?どしたん!?」

 

「い、イキナリ何やってるんですか!?」

 

「何って着替えるんよ?次は体育やん。ルークちゃんも早よ着替えんと遅刻してまうで?」

 

 

そっか体育ですか。そういえば事前に渡された時間割表にそう書いてありました。

 

体育と聞くとはやてさん達主催の特別授業を思い出す。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「ほいルクレール。これが体育の授業で使う運動着や」

 

「って、何ですかこれ!?この紺色の下着みたいなのは!?」

 

「これが日本の学校の女子の正式かつ伝統的な運動着で、ブルマって言うんだよ」

 

「嘘だ!!はやてさんもなのはさんも嘘ついてるでしょ!!」

 

「嘘じゃないよ。本当だよ」

 

「なーなーはやてーあたし今度はこれ着させたい」

 

「待てヴィータ。今度は私が決める番だぞ」

 

「ちょっと二人ともさっき着させたでしょ。次は私が・・・」

 

「はいはい、喧嘩は駄目やでー。まずはブルマ、その後に三人の希望の巫女服、浴衣、テニスウェアと順番に行こうなー」

 

「ちょっと待って!!その服装はおかしいでしょ!!絶対着用する事ないでしょ!!」

 

「いやいや、何があるかわからへんからな。一応何でも着こなしてみるべきや」

 

「あ、そういえばユーノくんに着させたメイド服もあったんだっけ」

 

「おーじゃあ後でそれ着させてから家事も仕込むかー」

 

「うわーーーん!!」

 

「あ、逃げた――――――レイジングハート、お願い」

 

『Restrict Lock』

 

「嫌だーーー!誰か、誰か助けてーーー!!」

 

「人聞きの悪い事言ったらあかんでー?私らはただルクレールの為だけを思ってやっとるんや。別に私らの娯楽の為なんてこれっぽっちもないんやからな」

 

「はやてー早くー」

 

「主はやて、巫女服と浴衣は下着を着けないのが正装の様です」

 

「アンダースコートも忘れずにね」

 

「メイドカチューシャもちゃんと揃ってるからね」

 

「勘弁して下さーーーーーーい!!!!」

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

悪夢だった。

 

目の前にあるロッカーには私の名前が書いてある。きっとこの中にもブルマが入っていると思うとため息を通り越して涙が溢れそうになる。

 

体調不良を理由に休むか?いや、もう遅いか・・・・・・。

 

私は意を決し、恐る恐るロッカーを開けた。

 

 

「――――――あれ?ブルマは?」

 

 

ロッカーに入っていたのは何の変哲もない半袖ハーフパンツだが入っていた。

 

おかしい。ブルマは日本全国の女子学生の正式かつ伝統的な運動着だと言っていたのに。

 

もしかしたら何かの間違えで男子生徒用の物が紛れた可能性も否めない。

 

私としてはこのままこれを着る事が出来れば御の字なのだが。

 

 

「あの、近衛さん。この運動着、間違ってませんか?女子の運動着はブルマと決まっているのでは?」

 

 

私は直ぐ近くで着替えを終えた近衛さんに運動着の間違えを訴える。

 

だが、彼女の返答は驚くべき答えだった。

 

 

「ブルマ?麻帆良女子中学の運動着はこのハーフパンツやで?それに昔ならともかく、今はブルマの学校って年々減っていってるで。陸上部とかは使っとるみたいやけど」

 

 

はやてさん。言ってる事が違うんですけど。

 

あ、そうか。はやてさん達は年を重ねた昔の人だから最近の学校事情が分かっていない可能性がありますよね。

 

――――――昔の人だから。

 

はやてさん達が年増な為情報が多少古かった事による間違いとして、この問題は私の中で処理する。

 

良かった。ブルマの着用は無いんだ。

 

そこはかとなくホッとした顔を浮かべる私に近衛さんは首を傾げた。

 

 

「大丈夫です。ちょっとした行き違いがあっただけです。問題ありませんよ」

 

「そうなん。――――――あ、ウチの事は木乃香でええよ。ウチもルークって呼んどるし」

 

「分かりました。では、木乃香さんと」

 

 

話しながらもチャッチャと着替える。

 

普通のハーフパンツだとしても肉体的には女の子だとしても、精神的にはしっかり13歳の男です。さすがに異性の前で下着姿になるのは抵抗があります。

 

着替え終えて私は木乃香さんと共に授業が行われる運動場へと急ぎました。

 

 

 




近いうちに主人公プロフィール出します。


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第四話 転校初日 後編

ちょっと間が開いてしまってすいませんでした。




 

 

 

 

 

 

四時限目の体育の授業が終わり、昼休みとなる。

 

他の生徒がそうである様に、私ルクレールもそろそろ空腹を覚えてくる時間です。

 

という訳で私は木乃香さんの案内で、食堂棟とやらに連れて行ってもらいました。

 

どういった訳か、木乃香さんは私の事で色々と面倒を見てくれる。

 

こういった行為は学生経験の無い私にとってとても有難い事である。

 

いつか、この恩を返さなければなりませんね。

 

 

「ここが食堂棟や。地下から屋上まで全部飲食店で埋まってるんやでー」

 

「へぇ・・・・・・」

 

 

ある意味凄かった。ミッドチルダ都市部でもこの様な施設はあまり無い。

 

そんなものが学校の一施設として存在する事に驚きを隠せなかった。

 

 

「ルーク何にする?和洋中印仏伊、何でもあるで」

 

 

そう言って木乃香さんは食堂棟のガイドマップを見せてくれる。

 

地下から屋上までぎっしり飲食店が入っているのは誇張では無いらしく、マップ全体にぎっしりと料理ジャンルや店名が書き記されていた。

 

 

「そうですね・・・悩みます」

 

「昼休みの時間は限られ取るからな、あんまり悩んどったら食べる時間なくなってまうで?」

 

 

それは正直困る。実は結構お腹が減っている。

 

 

「では勝手が分かりませんので、今日は木乃香さんのお勧めをお願いしても宜しいでしょうか?」

 

「ええよ。まかしとき。――――――ウチ一押しのお店教えたるわ」

 

 

木乃香さんは私の手を引いて目当ての店へと目指していった。

 

そこの料理は木乃香さんが一押しと言うだけあって、とても美味しかった。

 

これで午後からの英気を養えた。

 

さあ、午後の授業も頑張って行きましょうか。

 

 

 

 

 

午後の授業も問題なく終わり、本日の授業は終わりを迎えた。

 

放課後、それぞれの生徒は個々の目的の為に帰宅するものや部活動とやらに勤しむ者等に分かれた。

 

私は前者の方だ。転入初日で何かの部に入っていないし、これからも入る気は無い。

 

大人しく帰ってこの世界での任務の為の体力を温存するべきだろう。

 

荷物を持って教室を、校舎から出る。が――――――。

 

私の帰るべき場所は一体何処なのでしょうか?

 

朝に会った、あの人間離れした構造の頭部を持った学園長は一体何と言っていただろうか。

 

あれは確か――――――。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「ふぉっふぉっふぉ。初めましてルクレールちゃん。ワシがこの麻帆良学園学園長、近衛 近右衛門じゃ」

 

「初めまして近衛学園長。ルクレール・八神です。この度は急な転入許可、真に感謝致します」

 

「ふぉっふぉっふぉ。そんなに畏まらんでも良いぞい。雪広、そして雪広と親交深いバニングスと月村からの懇願と聞いておる。雪広財閥には色々と借りがあるからのう。断る理由はあるまい」

 

「学園内で過ごす為の準備は整っておるから何も心配する事は無いぞい。他に何か困った事があれば言うといい」

 

「そういえばこの学校は全寮制とお聞きしたのですが、私は一体何処の寮に住めば宜しいのでしょうか?」

 

「おお、それなんじゃがまだ決まっておらんのよ」

 

「はぁ?じゃあそれまで私はどうすれば・・・」

 

「大丈夫じゃ。当てはちゃんとあるからのう。決まり次第同室になる者に知らせておくからの」

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

そうだった。私の住居はまだ決まっていないのでした。

 

それにしてももう放課後です。部活の無い一般の生徒は寮に帰る時間です。

 

まさか忘れているのではないのでしょうか。

 

野宿は勘弁願います。こうなったら駅前のホテルにでも・・・・・・。

 

 

「ルークーーー!おーーーい!」

 

 

ん?木乃香さん?

 

 

声がした方を向くと、木乃香さんが此方へと走って来るのが見えた。

 

一体何事かと思いながら、私は木乃香さんの方へと駆け寄った。

 

 

「どうしたんですか木乃香さん。私に何か用ですか?」

 

「あーうん、まあそんなところや。これから用事とかあるん?」

 

「いえ、特には。強いて言うなら本日の宿を探しに行こうかと・・・・・・」

 

「は?何なんそれ?まあ、ちょっと歩きながら話し聞かせてくれるか?」

 

 

因みに木乃香さんが私を追ってきた理由は、ちょっと教室に来て欲しいとの事だった。

 

そういう事で、私は木乃香さんに誘われて歩きながら朝の事情を話す。

 

 

「じゃあルークはまだ住む所が決まってへんの?」

 

「ええ。だからとりあえず今日の所はホテルか何処かに泊まろうと思っていまして・・・」

 

「もーーお爺様ってばすっかりボケとるなー」

 

「お爺様?確か木乃香さんも近衛姓でしたね・・・もしかして・・・」

 

「うん。ウチはお爺様の孫娘や。あ、アレやったらウチがお爺様に直接言うてみようか?」

 

「はい。では用事が済み次第お願いします」

 

「あー用事が済んでからやとちょっと遅くなるかもしれんわー」

 

「はい?」

 

 

教室に着く。そこで何故か木乃香さんは私を先頭にして教室に入る様に促す。

 

朝の様に私は教室の扉の前に立つ。何故か戸のガラス窓は目張りされ、中の様子を伺う事が出来なかった。

 

そして戸越しに放課後とは思えないほどの人の気配を感じた。

 

中で大人数で作業でもしているのでしょうか?もしかしてその作業に私も加わって欲しいとの事なのでしょうか。

 

とりあえず思案していても始まりません。私は特に気にする素振りを見せない様に、何気なく教室の戸を開けました。

 

突如、鳴り響く乾いた破裂音。降り注ぐ紙吹雪、そして・・・・・・。

 

 

「「「ようこそ!!ルクレールさん!!!」」」

 

 

一斉に私の名を呼ぶ2-Aの皆様方。

 

 

「え?あ、あの木乃香さん、これはどういう事なのでしょうか?」

 

 

一体全体どういう事か分からず、私は困惑してしまいました。

 

 

「何ってルークの歓迎会やで。さーさー主役は真ん中や。行った行った」

 

 

そう言って木乃香さんは私の背を押して私を皆の中心へと誘う。

 

それから私は皆さんから飲食物を進められ、朝からあまり出来なかった質問等の受け答えをしました。

 

 

「さーて、ここは新聞部員であるこの朝倉和美に仕切らせて貰うよー!」

 

 

そう言って朝倉さん率いるクラスの皆さんは録音機器とメモ帳片手に私へと質問が始まった。

 

最初は当たり障りの無い出身地や好物等の質問から始まる。

 

だけど回を重ねる毎にその質問は答え辛い方面へとズレて行った。

 

 

「好きなタイプ・・・・・・ですか?」

 

「優しい人とか寡黙な人とか色々いるでしょ?どういったタイプが好みかなって」

 

 

そうは言っても・・・困りましたね。

 

今まで特定の誰かを好きになった事はありません。

 

基本的に私は見知った人ならみんな好きですから。

 

首を傾げて考え込む私に、朝倉さんはヒントをくれた。

 

 

「ほらほら例えばジャニーズ系とか硬派系とかダンディなおじ様系とか年端もいかない男の子とかさー」

 

 

何だか色々と偏りのあるヒントですね・・・って。

 

 

「それって男の人のタイプばかりじゃないですか」

 

「当たり前じゃん。あ、ついでに彼氏の有無も聞いとこうかな~」

 

「か、彼氏ぃ!?」

 

「ほら好きな男子の恋話の一つや二つあるでしょ~」

 

 

そんなバカな事ありません。今は肉体的に女性の姿になっていますが、精神的には正常な男性です。知らないとはいえそんな私に彼氏の有無を聞いてくるとは・・・。

 

ここは一つ、今後の事も踏まえてガツンと言う必要がありますね。

 

 

「そんなものいません!!男性に対してそんな特別な好意を抱いた事なんてありません!!第一、私は普通に女の子が好きなんですからね!!」

 

 

と私は皆さんに向かって大声で言い放ちました。

 

すると何故か、皆さんは私を見つめたまま呆然としていました。

 

何故でしょうか・・・。

 

あ・・・。

 

今の私は肉体的に女性です。精神的には男性ですが。

 

そして今、この場で私が男性だと知るのは私だけ。後の方々は私を女性だとしか知らない。

 

という事は・・・・・・。

 

 

「うん、人にはそれぞれの好みがあるしね」

 

 

朝倉さんが遠い目をしてメモ帳を仕舞い、私に背を向けた。

 

 

「いや、ちょっと」

 

 

他の人へも視線を向ける。私の方へと顔を赤らめる人もいれば目を背ける人もいる。残念な視線を向ける人もいれば何故かとても良い笑顔で親指を立てている人もいた。

 

 

「ちょっと待って下さい、誤解、誤解なんですよ」

 

「大丈夫。このクラスにはそっち系はいるか分からないけどこの学園なら同じ趣味の人もきっと見つかると思うよ。うん、応援してるね」

 

 

何が大丈夫なんでしょうか。何を応援して下さるのでしょうか。

 

 

「すいません、ちょっとだけ私の話を聞いて下さい」

 

「さーて皆、そろそろお開きにしようかー!」

 

「ガン無視ですか!?私ちょっと泣きそうなんですけど!」

 

「大丈夫だって、人の噂も75日っていうじゃん」

 

「その理屈でいうと少なくとも私は75日間勘違いされっぱなしって事になりませんか?」

 

「ハハハハ!」

 

「笑えません!笑えませんから!!」

 

 

その後先程の失言に対する弁解の時間を与えられる事無く、私の歓迎会は終幕を迎えた。

 

この後、各々女子寮へと戻るのですが未だに私の所在に対する学園長からの連絡はありませんでした。

 

 

「ルーク、まだお爺様から連絡無いん?」

 

「はい。もしかしたら忘れているのかもしれませんね」

 

「じゃあウチの所泊まるか?アスナには言うとくし遠慮せんでええんよ?」

 

 

木乃香さんに私の今晩の寝床についての提案を受けていた、その時だった。

 

 

「あ、いたいた。八神、君の住む部屋は私達の部屋に決まったようだよ」

 

 

そう誰かに声を掛けられて、私は後ろを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





真夜中の妙なテンションで書き上げたので文体が安定していませんがご了承ください。

いやぁ、インフルエンザって久しぶりにかかりましたよ。皆さんも体調管理には気をつけてくださいね。


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第五話 ルームメイト、調査対象設定

 

 

声のした方へ振り返ると、そこには背の高い女生徒さんがいました。

 

 

「えっと貴方は・・・・・・」

 

「龍宮 真名。好きに呼ぶといいよ」

 

「あ、はい。では真名さんと」

 

 

面と向かっては言いませんが、朝廊下から教室内を見た時に結構最初から目に付いていました。

 

だって、正直中学生とは思えない位大人びて見えましたから。

 

 

「ああ、それでいいよ。というわけで近衛、八神は連れて行くよ」

 

 

私がそう名前を呼ぶと真名さんは私の背を軽く手押し、木乃香さんに了承を得ました。

 

 

「あ、うん。真名ちゃん、ルークの事お願いな。それと・・・・・・」

 

 

木乃香さんは言葉を濁らせ、そしてやや蹲ります。

 

何か言い辛い事でもあるのでしょうか。

 

 

「ん?なんだい」

 

「せっちゃんによろしゅう言うといてな。じゃ、二人ともおやすみな」

 

 

せっちゃん。木乃香さんのご友人の名前でしょうか。

 

というか別に真名さんに伝言を頼むような事をしなくても、ご自分で言葉を伝えればよろしい様な気もします。

 

もしかしたらそのせっちゃんと言う方と何かあったのでしょうか。まあ、初対面の私が気にしても仕方が無い事でしょう。

 

 

 

木乃香さんと別れて、私たちは寮へと向かいました。

 

その途中、私は真名さんにちょっとした事を聞かれました。

 

 

「八神、君は何か武道でもしているのかい?」

 

「えっ!―――えぇ、まあちょっとした護身術の様なものを嗜んでいますが・・・・・・・」

 

 

その質問自体にちょっと驚いた。一応剣術を始め、ストライクアーツや古武術を少々嗜んでいます。

 

というかどうして分かったのでしょうか。

 

 

「やはりか。君の一挙手一投足に武道をしている人間特有の動作を感じてね。多分気づいたのは私だけじゃないと思うよ」

 

「――――――」

 

 

まさか日常の動作だけで知覚されるとは思っても見ませんでした。

 

中学生とはいえ侮れません。さすがはなのはさんやはやてさんの出身世界だけはありますね。

 

 

「明日から大変かもしれないよ。この学園には結構武闘派が多いからね。今日も古菲が勝負を仕掛けようとウズウズしていたよ。さすがに初日はやめておけと窘めたがね」

 

「争いは嫌いです・・・・・・どうにかして回避できませんかね」

 

「戦略的撤退も一つの手だが、もしくは二度と向かってこない様に完膚なきまでに叩き潰すのもありかな」

 

 

命を取り合うような争いではないにしても誰かを、ましてやクラスメイトを傷つけるなんてしたくありません。

 

これは明日から戦略的撤退として走り回らなければなりませんね。

 

 

 

平穏に送る事が出来ないかもしれなくなった明日からの生活に涙しある程度の諦めもついた頃、私たちは寮の部屋に着きました。

 

 

「じゃあ、お邪魔します」

 

 

そう一言断って部屋に入ろうとしたその時、真名さんは私の肩に手を置いて言いました。

 

 

「おいおい、これからは君の帰る部屋でもあるんだぞ?」

 

「・・・・・・ただいまです」

 

「ああ、おかえり」

 

 

何だか気恥ずかしくなりますね。

 

 

室内に入ると、先に帰っていたのでしょうかもう一人のルームメイトの姿がありました。

 

 

「刹那、帰っていたのか。八神、彼女がこの部屋のもう一人の住人で桜咲 刹那だよ」

 

「ルクレール・八神です。宜しくお願いします、桜咲さん」

 

 

もう一人の先住人である桜咲さんに対して、私は畏まって挨拶をしました。

 

それに対して桜咲さんは無言で軽くお辞儀を返してくれました。

 

 

「あの、桜咲さん何かあったんでしょうか?」

 

 

私は小声で真名さんに尋ねました。

 

 

「いや、気にしなくていいよ。刹那はいつもあんな感じだからね。それと今から野暮用があってね、それに対して神経が高ぶっているんだよ」

 

「もう夜ですよ?こんな時間に桜咲さん何処に行かれるんですか?」

 

「ちょっとした学園内の見回りのバイトだよ」

 

 

学園の見回りバイト。その言葉に私はある疑問が浮かびました。

 

本来見回り等はその為に雇われた警備の者がする事だと私は思っています。

 

それを何故かこの学園では在学中の生徒を雇ってさせている。

 

本来は教育機関では生徒の安全を第一と考えるのが普通だと私の知識の中にはあります。

 

ですがこの学園ではもしかしたら何らかの危険が伴う可能性のある見回りを生徒にさせている。

 

その事が私の中で妙に引っかかります。

 

 

「見回りですか?夜に女の子だけでですか?危ないですよ」

 

「大丈夫だよ。こう見えても私も刹那も学園内に結構いる武闘派の一人なんだ」

 

「ですが・・・・・・」

 

「心配は無用だよ。それより、これからちょっと刹那と今日の見回りについて打ち合わせがある。良かったらその間にシャワーでも浴びたらどうだい?多分その間に準備を済ませて出て行ってると思うから、先に寝ていてくれても構わないよ」

 

「分かりました。でも、気をつけて下さいね」

 

 

これ以上の心配は逆に非礼になると思い、くれぐれもとだけ告げて私は洗面所が併設された脱衣所へと入ってドアを閉めました。

 

私が脱衣所へ入るとほぼ同時に、外の二人は話を始めます。

 

それを待っていた私は、息を殺し気配を殺してドア越しに二人の会話を盗み聞きし始めました。

 

 

「―――侵入―――西―――術師―――式―――」

 

 

ドア越しの為、殆ど聞こえませんが何やら興味深い単語が耳に入りました。

 

この世界の魔法を調査する為に来た私にとってこの事は好都合です。

 

そのまま息を殺していると、二人が部屋から出たであろう物音が聞こえ、私は脱衣所のドアを開けました。

 

案の定、二人の姿は既にありませんでした。

 

 

 

さて、こちらも調査開始と行きましょうか。

 

まずは二人の後を追う事が先決です。ですが、二人が何処に行ったのかは皆目検討もつきません

 

とりあえずは周辺の魔力反応を探ってみる事にします。

 

という訳で私は部屋から出て広範囲を見渡せる場所、寮の屋上に行く事にします。

 

 

「―――ステルス起動」

 

 

私は屋上に上がると、まずは自分の魔力反応を抑制する非索敵魔法を起動しました。

 

どういった物かはまだあまり分かっていませんが、この世界のこの周辺の魔法使いに私の存在が知られては調査任務がやり難くなるかもしれません。

 

用心に越した事は無いでしょう。

 

 

広域索敵(ワイドエリアサーチ)、開始」

 

 

二人から発せられていた気のパターンは既にデータとして得ています。後はこの索敵で見つければ・・・・・・いました。

 

学園外れの森近く。二人揃って夜道を駆けています。

 

大体の位置は掴めましたし、そろそろ私も追いかけるとしましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「斬空閃―――ッ!」

 

 

私は鬼を斬り捨てる。

 

 

「これで終わりっと」

 

 

乾いた破裂音が夜の森に鳴り響く。真名の方も片付いたようだ。

 

 

「大したこと無かったな」

 

 

真名が軽口を叩く。彼女としては仕事があればあるほど給金が増えるので今日の様な襲撃は寧ろ大歓迎といった所だろう。

 

 

「ああ、だが近頃は頻繁に襲撃モドキが起きている。此方の戦力を測っているのか、ただの挑発行為なのかは知らんが…怪しいな」

 

「刹那としては心配だもんな。大切なお嬢様が狙われているかもと気が気じゃないんだろう?」

 

「当たり前だ!私の全てはお嬢様の安全を守る事だ!」

 

「分かってるよ、すまなかった」

 

 

真名の言葉についつい熱くなってしまった。私には冷静さが掛けているようだ。精進しよう。

 

周囲に敵の気配が無いのを確認し、私達は森の外へと足を進める。

 

その途中、真名があの転校生の話を振ってきた。

 

 

「八神、お前の態度にちょっと引いてたぞ。折角同居人として挨拶してるんだ、仕事前だったとはいえもう少し愛想良く出来ないのか?」

 

「――――――」

 

 

仕事前に私たちの部屋にやってきたあの少女の姿を思い出す。

 

畏まって私に対して挨拶をしていた。

 

仕事前で神経が高ぶっていたとはいえ、あの態度は失礼にあたる。明日にでも一言謝っておこう。

 

だがそれよりもあの少女の事で少々気になる所がいくつかあった。

 

中途半端な時期に転入してきた事は勿論、動作の一つ一つに見え隠れする武道の痕跡、そして極めつけは私達と同室にされた事だ。

 

もし私達側の人間なら学園長からなんらかの通達があるはずだ。そうじゃないとしてもただの一般人ではないだろう。

 

油断は禁物だな。西からの刺客の可能性も否めない。

 

もしそうでありお嬢様を狙うのであれば容赦はしない。

 

 

「おい刹那、目を細めて一体何物騒な事考えて――――――っ!」

 

 

考え込んでいた私に声を掛けた真名が突然、視線を学園の方へと向けた。

 

 

「どうした真名、敵が残っていたのか?」

 

「いや、誰かの視線を感じたんだ」

 

「視線?学園長先生の遠見の魔法じゃないのか」

 

「いや違うな。魔力は巧妙なまで隠されていたしだったし遠見とは違う異質な魔力の流れを感じたんだ」

 

 

察知能力に長けた真名が巧妙と言うほどの魔力隠蔽能力に長けた術者は学園の魔法先生でも数えるほどは居ない。

 

そして異質な魔力の流れ。何だ、まさか西の術者が入り込んでいるのか?

 

 

「一応それは魔法先生達に報告しておいた方がいいな。とりあえず、皆に合流しよう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

そういって私と真名は再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

油断しました。まさかステルスを掛けているにも係わらず此方の魔法を察知する事が出来るなんて。

 

咄嗟に視線の先に待機させていた探査球(サーチャー)を消しましたが、透過魔法(オプティックハイド)で上空に控えていた私には気づかなかったようです。

 

それにしても、真名さんの察知能力もですが特に刹那さんの使っていた剣術には驚きましたね。

 

あの魔力生命体らしきものを切り払う効果を持った特殊な剣術。こちらも並行して調べていくことにしましょうか。

 

まだここに来て一日目なのに着々とデータが集まっていきますね。

 

これも日頃多少酷い目にあっている分、運がついて回っているのでしょうか。

 

 

 

真名さん、刹那さん。

 

すいませんが私の任務の為の調査対象になって貰いますよ。

 

さあ、私にドンドンこの世界の魔法を見せてくださいね。

 

 

 



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