クロとシロの仮面ライダー (狂犬狂気)
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仮面ライダー

オリジナルライダー好きのオリジナルライダー好きによるオリジナルライダー好きの為の作品です。

現時点では一部のライダーの参加しか決まってませんが希望等あればコメントお願いします

原作を見ながら出来るだけ追加していきます。

またオリジナルライダーも募集してます。


敵……"仮面ライダー"がベルトに手を掛ける。

 

「変身ッ!!」

 

赤い鎧を身に付けた仮面ライダーが決めゼリフを吐き、剣を構えた。

 

僕はベルトにメモリーを差し込む。

 

"オメガ"

 

「……僕に力を。」

 

黒と白の拳銃を構え、そのまま乱射する。

 

仮面ライダーはそれを剣で切り落とし、そのまま距離を詰めてくる。

 

「無計画に距離を詰めてッ!!」

 

僕は拳銃で仮面ライダーのベルトに向かって射撃する。

 

乾いた発砲音、叫ばれる悲鳴、解除されるフォルム。

 

僕……"仮面ライダークロ"はここで死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファーストメモリー"∑"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……はこの公式で…………」

 

「……」

 

「……小野妹子は…………」

 

「……」

 

「……」

 

気が付けば終わっていた授業。

 

僕はカバンを手に取り、みんなと同じように部室へ向かう。

 

陰気な雰囲気が漂う人気ランキング最下位の部活"オカルト研究部"

 

僕はその部活で一年にして部長だった。

 

特にやることなんてない。

 

オカルト好きな幽霊部員達は今日も研究(サボり)に熱中、顧問の高橋先生も趣味の更衣室盗撮に精を出してる頃だろう。

 

僕は一人で部室に入り、カバンの中身を広げる。

 

今日までの新聞、ネット記事、ニュース、可能な限り全てのメディアから集めたコピー用紙を広げ、気になる項目に目印をつける。

 

どの記事も"仮面ライダー"の話しでもちきりだった。

 

メモリーと呼ばれる媒体を用いた薬物が流行し始めた頃、同じくメモリーを使って悪を裁く仮面ライダーが姿を現した。

 

複数の仮面ライダー達はそれぞれのグループで活動を続け、メモリーを使った薬物密売人達と戦っているらしい。

 

政府は仮面ライダーを"犯罪撲滅の協力者"と褒め讃えながらも"その行使は一般人の関与する範囲を超えている"として仮面ライダー自体を指名手配している。

 

しかしその指名手配も言わば形だけのもの。

 

既に3人の仮面ライダーが逮捕されたがいずれも素顔を公開させることなく無実として釈放されている。

 

しかも仮面ライダーを名乗る者達へ武器類の所持を認める為何度も招集を掛け、現れた者達へ専用の免許証を配布しているという。

 

それがライダーカード。

 

それが……

 

「なんで僕の手元にあるんだか。」

 

僕は深いため息をついた。

 

朝郵便受けに入っていたカード。

 

僕も実物を見たのは初めてで、見つけてすぐは興奮を隠しきれずにいた。

 

しかし、仮面ライダーであることを認められないと発行されないこのカード。

 

ましてや仮面ライダーでもない僕の元へどうして届いたのだろうか。

 

何か問題事に巻き込まれたのか、もしかすると僕の両親の物だという可能性もある。

 

だけど、

 

だけど……

 

僕はそのカードを手にしたままだった。

 

不安なら両親に聞けばいい

 

警察へ届けて事を説明したらいい

 

それが出来ないのは……

 

「夢のせいなんだよ……きっと。」

 

僕は静かに呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはりこの数日間に起こっている事件にはいくつか関連性があった。

 

少女連続殺人事件。

 

遺体はどれも四肢がバラバラの状態で発見されていて中には噛み付いたような跡が残っているものもあったという。

 

そして全てにおける関連性はどの事件の死亡予想日も満月だったということ。

 

「……満月じゃないとダメ?……それともまぐれ?」

 

ふと月の満ち欠けの周期を計算する。

 

「今日も満月か。」

 

僕は机の上のプリントを片付け、あてもなく部室を出た。

 

ただ目的地も無く人気の少ない路地を歩く。

 

こんな所でタイミングよく出くわすことなんてありえないのに。

 

出くわしても僕に出来ることなんて何も無いのに。

 

僕は連続殺人事件の犯人を探していた。

 

まさか見つかるとも知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散乱した教科書

 

鼻を刺すような、赤い液体

 

聞こえてくる鼻息

 

路地の行き止まりで女の子が倒れていた。

 

その目の前には包丁を手に持った男が立ち、何かブツブツと呟いている。

 

僕はどうしたらいい

 

一度警察を呼ぶ為に逃げる?

 

違う……逃げるんじゃない。

 

呼びに行くだけだ。

 

そうだ、僕は逃げるんじゃない。

 

僕は踵を返し、元来た道を引き返そうとする。

 

"∑"

 

頭の中で何かが呟く。

 

「……あ?」

 

男が振り向く、僕と目が合う。

 

ば……バレた……

 

その絶望的な状況判断と同時に、僕は腰にかかる違和感を感じ取った。

 

「……ベルト??」

 

見覚えのない、おもちゃみたいなベルトが僕の腰に巻かれていた。

 

そして足元には∑の文字が描かれた"メモリー"が落ちている。

 

…………メモリーとベルト。

 

これが何を意味してるかなんて、僕が分からないわけが無い。

 

念願の仮面ライダーになれるんだ。

 

僕はメモリーを手に取り、ベルトに挿す。

 

「仮面ライダーかァ??」

 

呂律が回っていない男が覚束無い足取りでこちらに詰めてくる。

 

「…………変身ッ!!」

 

眩い光が僕を包み込む。

 

白いフード付きのロングジャケットを纏い、両脇には拳銃のホルダーが巻かれる。

 

そこに刺さる得物は黒と白の拳銃。

 

「不幸だァ……全く。」

 

男もベルトを腰に巻き、青いメモリーを挿し込む。

 

「……行くぜェ、ベオウルフッ!!」

 

体の皮膚から大量の毛が溢れ出す。

 

口からは大きな牙が剥き出しになる。

 

体中の筋肉が拡大され、姿も徐々に巨大になる。

 

 

まるで狼男。

 

満月じゃなければならないというのはあながち間違いでは無いのかもしれない。

 

僕は脇の拳銃を抜こうとして思いとどまる。

 

相手は仮面ライダーに変身していると言っても元は普通の人間。

 

それに対して僕は拳銃を握ろうとしている。

 

殺してしまうのか。

 

いくら相手が犯罪者でも……殺す?

 

思考に邪魔され、僕の反応が少し遅れる。

 

相手……ベオウルフはそれを見逃さなかった。

 

「クソ素人がァッ!!」

 

大きな巨体から繰り出されたタックルで僕は吹き飛ばされる。

 

壁に叩きつけられ、肺から息が吐き出される。

 

手加減してる場合じゃない……僕が殺される。

 

恐怖で震える足に鞭を打つ。

 

壁にもたれ掛かるようにして立ち上がり、白い拳銃を脇から抜く。

 

殺す気でやらないと。

 

僕は拳銃を両手で構え、ベオウルフの頭に向かって引き金を引く。

 

乾いた発砲音のあとに焦げ臭い匂いがする。

 

放たれた弾丸はベオウルフの頭に直撃し、そのまま弾かれる。

 

跳弾した弾丸が女の子のすぐ真横に着弾した。

 

……考えもしなかった。まさか弾かれるなんて。

 

こんな狭い所で撃っていれば女の子に当たっていたかもしれない。

 

それじゃあ……どうやって殺すのか。

 

ふと視界の端、月明かりに光る何かが目に入った。

 

剣のような黒い何か。

 

幸いベオウルフは気付いていないようだ。

 

もう一度銃を構え、ベオウルフに向かって走り出す。

 

「何度でも一緒だァッ!!」

 

両手を広げるベオウルフの足に向かって銃を投げる。

 

そのまま屈んで両手をかいくぐり、剣を手に取る。

 

予想だにしない攻撃にベオウルフは混乱しながらも僕へとタックルを仕掛ける。

 

「はっ!!」

 

剣を上から振り下ろす。

 

「ッ!!」

 

ベオウルフは両足で踏みとどまり、そのまま大きく後ろに下がった。

 

この剣……重みはあるけど振れないほどではない。

 

僕は改めて剣を構える。

 

「……その剣はオメガブレード。」

 

不意に女の子の声が路地に響く。

 

声のした方向に振り返ると、声の主は襲われていた女の子だった。

 

「え?……」

 

僕は呆気に取られたまま固まる。

 

「その剣は君がホワイトフォルムである限りは人を殺せない。」

 

「ホワイトフォルム……?殺す……?」

 

「メモリーをもう一度挿し直して、変身する時に強い殺意を持って。」

 

女の子は肩で大きな呼吸をしながら言う。

 

殺すしかない?

 

けど早くしないとこの女の子が死んでしまう。

 

僕が殺されてしまう。

 

まだ仮面ライダーになれたばかりなのに。

 

それでも……

 

「殺したくない。」

 

僕はオメガブレードを構える。

 

「ブチ殺してやんよォッ!!」

 

ベオウルフがメモリーの空いているスロットにもう一本のメモリーを挿す。

 

「行くぜェ!!ブラックフォルムゥー!!」

 

ベオウルフの頭をすっぽりと隠すようにしてマスクが現れる。

 

黒い装甲がベオウルフの体を覆う。

 

黒くて大きな剣がベオウルフの両手に握られる。

 

「死ねッ」

 

ベオウルフがそのまま飛び出す。

 

弾丸のように飛び出したベオウルフが僕に肉薄する。

 

殺さなくても答えはあるはず。

 

ベルトさえ壊せば……

 

僕はオメガブレードでベオウルフを受け止める。

 

爆音が鳴り響き、僕の足元が少し陥没する。

 

物凄い質量が僕を押しつぶそうとのしかかる。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!」

 

オメガブレードで押し返し、体勢を崩したベオウルフに切りかかる。

 

狙いはベルト……せめてどちらかのメモリーを破壊出来たら……!!

 

「クソがッ!!」

 

ベオウルフは弾かれた剣を手放し、オメガブレードに向けて手を伸ばす。

 

勢い良く前に乗り出したオメガブレードをそのまま押し込む。

 

「このままベルトまでっ!!」

 

剣先がベルトに触れな距離まで近づく。

 

「オラよっ!!」

 

ベオウルフの手が僕の顎を捉える。

 

何かが潰れたような音が頭の中に響いた。

 

まるで火花が頭の中で散るように視界がフラッシュする。

 

恐らく吹き飛ばされたのであろう。

 

しかし叩きつけられたはずの背中には何の感覚もない。

 

意識が朦朧とする。

 

息が出来ない。

 

死ぬのか。

 

死んでしまうのか。

 

あっけない、やっと仮面ライダーになれたのに。

 

守るべきものを見つけたのに。

 

そんなの

 

そんなの……

 

楽しくない。

 

僕の心を何かが蝕む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキのベルトは特殊な形をしていた。

 

本来はダブルドライバーに2つのメモリーを挿して使うはず。

 

だがガキのドライバーに差し込み口は1つしか無かった。

 

メモリーも1本だけ差し込み、マスクを被らない変身をしていた。

 

ロストフォルム。

 

黒でも白でもない状態は通常、そう呼ばれる。

 

俺は曖昧なのが嫌いだ、だからロストフォルムももちろん嫌いだ。

 

だから

 

だからこそ。

 

「面白いじゃねェか……糞ガキッ!!」

 

メモリー1本で黒に変身したガキが気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傍から見ればどちらが悪役か分からない、それが最初の感想だろう。

 

黒いロングコートを着た仮面ライダーはひたすら剣を振るう。

 

黒い鎧の隅々から青色の毛がはみ出る仮面ライダーは永遠と防御に徹していた。

 

その両腕は血だらけで

 

粉砕していてもおかしくないほどの斬撃を受けて

 

黒いロングコートの仮面ライダーは高笑いを上げながらひたすらに斬り続ける。

 

かつての力が戻ったかのように。

 

「……遅かったか。」

 

路地裏の影で男が呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜後日談〜

 

僕は気が付けば家の自室に居た。

 

ベットで寝ていた。

 

「夢……か。」

 

仮面ライダーになれたのも

 

青い化け物に襲われたのも

 

確かにそれが正解かもしれない。

 

あの時の僕は何か大事な物を失っていた気がするから。

 

 

 

 

ノロノロと準備を進め、家から出ようと玄関の扉を開ける。

 

「やっと起きたのか少年。」

 

玄関先に居たのは夢の中で襲われていた女の子だった。

 

「……人違いじゃないですか?」

 

僕は思わず素で追い払おうとする。

 

「……マジか、なんか、その……すまなかったな。」

 

女の子はぺこりと頭を下げて去っていく。

 

もう一度確認するように僕の顔をマジマジと見つめる。

 

「やっぱ少年じゃないか!!」

 

女の子は怒る。

 

「あの後君を連れて帰ったのは僕なんだぞ、間違える訳が無いだろ。」

 

「……連れて帰る……?アレは夢じゃー」

 

「なわけがあるか。」

 

女の子は静かに、それでいて低く呟いた。

 

「やっと見つけたんだ、未来の救世主を、僕の王子を、仮面ライダーを……」

 

「な……なにを言って……」

 

「詳しい事はまだいい、それよりも早く学校へ行こうじゃないか。遅刻したら面倒だろう?」

 

そう言いながら女の子は僕と同じ高校のカバンを掲げてみせる。

 

「同じ学校だったんだ?」

 

「"したんだよ"君と同じ学校に。」

 

僕には分からない。

 

この女の子がなにを言ってるのか。

 

アレは夢ではなくて

 

結局なんとか勝てたってことなのか。

 

女の子も生きてて

 

僕の目の前で笑顔を見せてるだけってことなのか。

 

悪党は滅び、今はエンドロール。

 

その悪党(ベオウルフ)はどうなったのか。

 

 

 

誰も教えてくれない。




はい!

今回は完全にオリジナルライダー回になりました。

ではまた!!


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