オーバーロードともふもふしっぽ (kaenn)
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始まりと言う名のプロローグ

最近の癒やしになっているオーバーロードでもふもふ分が足りないと、書いた作品です。

ペロロンチーノに愛の手を?を副題にしようかと思っています?


ユグドラシル……それはゲームとしては当時斬新なものだった。

 

課金が必要だとは言えプレイヤーの分身たるアバターを"自由"に作れるという画期的な物だった。

 

ユグドラシルがサービスを開始していくつかの季節が過ぎた頃

 

"彼女"はそのゲームを始めた。

 

 

 

「コレが叔父様の言っていたユグドラシルと言うゲームですね。」

 

蒼く輝く眼をコンピューターの画面に向けて少女は呟いた

遺伝子操作されたのか黒髪黒目の両親からは到底生まれないであろう白銀の長い髪は画面の光を反射して輝いていた。

 

 彼女は恵まれた環境と才能に育まれ、何不自由しない生活を送っていた、ただ退屈だったのだ。

自分ではどうにもならない事というものを体験した事が無かっただけで……

 

 

 

 

「やぁ、我が姪よ!相変わらず覇気が無いなぁ!そんなに退屈か?」

 

 彼女にとって唯一の救いだったのは時折訪れては未知の世界の話をしてくれる、父親の兄…

大学教授をしている伯父の存在だった。

 

 伯父の話は楽しかった…曰く、冒険の最中に骸骨を拾って仲間にした奴が居る、とか

大自然?とか言う昔の景色が好き過ぎてゲーム内で再現した奴が居る、とか

 

仲間が倒されたから倒した連中をギルメン全員で泣いて謝るまで倒し続けた、とか

 

最後のは若干引いたけど……それでもこの退屈な日常生活を送る彼女にとってはその世界の話は楽しかったのだ。

 

 伯父の話を聞いて少ししてから、彼女は今まで一度として言ったことのなかったワガママを両親に言った。

習い事などは続けるから「ゲームをさせて貰えませんか?」と、

母親は反対したが、伯父と意外にも父親が賛成してくれた為、

案外簡単に彼女はゲームを始めた。

 

 最初に始めたのは叔父から話を聞いていた、古代中国の三国時代のゲームで、所謂無双系と言われるゲームだった。

それからも彼女は唯一の趣味としてゲームだけは続けていたが、ある日ふと気づく

伯父のやっているゲームは何というゲームだっただろうか?

そう考えた時、ゲームの名前自体伯父の口から聞いた事がないという事に気づいた彼女は、最近疎遠になっていた叔父に自ら連絡を取った。

 

「ん?久しぶりだな、我が姪よ!………そうだな、そんな事もあったなぁ…ん?ゲームの名前?言ってなかったか?ユグドラシルって言うオンラインゲームだよ。」

 

「ユグドラシル………それが伯父様のやって"いた"ゲームの名前……。」

 

電話口で懐かしそうにそう呟く伯父の言葉に今はやって居ないのだろうと思った彼女はそう返すと叔父は嬉しそうにこう続けた。

 

「そうだな……モモンガ君にも悪いし良い機会だ、もしお前がユグドラシルを始めるのなら私が一緒にやって手解きをしてあげよう。」

 

……その日の夜、彼女は今まで一度としてプレイした事のなかったオンラインゲームを始めた。

 

……それが異世界への片道切符になるとも知らずに…………。




主人公の容姿は某無双ゲームの夏侯の姫様を少し成長させて銀髪に青目をイメージしております。

教えた事は直ぐに覚えて実践、発展が出来るような能力を持っている、という設定です。


5月30日ご指摘により一部修正しました


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叔父様は異形種……実は私も…

まだまだ長いプロローグですがどうかお付き合いください。


 始まりの街とも言われる初期のプレイヤーが集まる街に長い銀髪に大きく少し垂れた青眼のまるで人形のような少女が降り立った。

その少女は頭上から生えている、髪と同じ色の毛に覆われた少し長めな耳をぴくぴくと動かし、

同じ色のもふもふとした触り心地の良さそうなしっぽを振ると左腰から前に動かして嬉しそうにもふり始めた。

 

「…ヤバくない?あの子超かわいいんだけど……」

 

「何アレ!どれだけデータクリスタルつぎ込めばあんなアバター作れんの?」

 

「わー〜、あのしっぽもふもふしたい!」

 

と、一部の好奇心旺盛なプレイヤーが少女に近づこうとした時に、

 

「おぉ、もう着いて居たか……ってお前その姿、リアルのままじゃないか?」

 

ちょっとヤンチャな感じの老魔法使いがその少女に話し掛けた。

 

「あら伯父様、どうでしょうか?あまり外見を変えると伯父様が分からなくなると思って、しっぽと耳を追加しただけなのですが?……ふふ、どうでしょうかこのしっぽ、もふもふしていて気持ちいいです。」

 

キョトンとした顔で小首を傾げた少女はしっぽを触りながら誰もが見惚れるような笑顔を浮かべた。

老魔法使いはその少女の手を引っ張り足早に街から立ち去って行った。

少女を見た人々はハッと気がつくと急いでこの情報をネットに上げ始めた。

 

 

 

「お前なぁ…何のために私のプレイヤーネームを教えたと思って居るんだ?

 

外見で分からなくてもプレイヤーネームで分かるようにだろう?」

と、言うと

 

「ですが伯父様?説明はゲームが始まったら……というお話しではなかったですか?」

 

 そう言えばそんなこと言ったかと、伯父様こと死獣天朱雀(しじゅうてんすざく)は人化の指輪をはめた右手でぽりぽりと白髪混じりの髪をかいた。

 

「あー、まぁすぐに見つかったんだし良いか?……それでは行くとしようか…玉藻?」

 

「では、お願いしますね、死獣天朱雀様。」

 

 まぁ、こんな美少女が現実的にいるとは思われないか、と考えた死獣天朱雀は思い出したように両手を合わせ、パンッと鳴らし玉藻にあるアイテムを渡した。

 

「…おっと、そうだった!えっと……おぅ、コレコレ…ほら玉藻受け取れ!」

 

 玉藻は未だ自らのしっぽをもふもふしていたが、視界に映るウィンドウに、

死獣天朱雀さんからアイテムが届いています、受け取りますか?

と言う表示が出たので、はい、を押す。

 

「状態異常無効の指輪と使い捨ての転移の指輪、伯父様、コレを装備すれば良いのですか?」

 

ウィンドウに表示されているコマンドを選択して装備を選ぶと、右手の人差し指のと中指に2つの指輪が装備された。

 

 玉藻は急に装備された事に驚き、銀色の毛に覆われた耳としっぽをビクッとさせるが、右手の薬指に嵌った指輪を見つめてふと思った。

アレッ?右手の薬指に指輪ってどういう意味だったかしら?……まぁ後で調べればいいか。

 

「おぉ、装備したな?では行こうか……私と仲間達で作り上げた…ナザリック大墳墓へ。」

 

死獣天朱雀は、姪の姿をした狐の獣人に"見える"プレイヤーの手を取り共に転移した。




ストックが無くなり次第週一又は週二投稿したい作者です。

因みにストックはほぼないですが…………

5月30日ご指摘により一部修正


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リアルパラメーター…………運極(測定不能)

某バンドゲームに手を出した作者です。

リズムの取り方を覚えるのにはうってつけですが……エキスパート?アレはダメだ……


 死獣天朱雀と玉藻が転移した場所は暗く薄気味悪いジメジメした場所で紫色の煙が立ち込めている

 

「伯父様、此処は何処でしょうか?先程の街とは全く違う景色なのですが?」

 

あまりの不気味さに袖に縋り付きながら質問すると

 

「…ん?おおっ、忘れておった!私もこのままでは毒のダメージを受けてしまうな、では人間種の勢力圏から離れたしこれを外すとするかな。」

 

と、言うと徐にいくつか付けている指輪の1つを外した。

すると……

 

「あの…………どちら様でしょうか?……確かその場所には叔父様が居たと思ったのですが……」

 

 先程までは学者然とした魔法使いの様な姿の伯父のアバターが消え何と言えばいいのか…鳥と獣と人を混ぜ合わせた様な異形種のアバターが立って居た。

玉藻は恐る恐る異形種のアバターに問い掛けると、異形種のアバターさんは、ぽんっ、と手を叩き笑い出す。

その動きが伯父のよくする仕草であり、声も先程と変わらなかった為に、漸く玉藻は目の前の人が叔父だと気づいた。

 

「はっはっは、そう言えば私が異形種でプレイしているとも言っていなかったな、悪かった。」

 

などと言いながらひと回り大きくなった身体の赤い羽のようなものに覆われた右手で玉藻の頭を撫でてきた。

幼い頃からよくこうやって撫でてもらっていたので懐かしく感じされるがままにしていると……。

 

「ん?もう気づいたか?流石我が同胞……」

 

ふと、伯父が撫でる手を止めて空を見上げる、その視線を追うと遠くの方から派手な色をした何かが此方へ飛んでくる。

 

「おい!いくら異形種だからって、こんな可愛い子ちゃんに不埒な真似しようとするなんて羨ま……異形種の風上にも置けない奴め!……この、愛と正義の使者ペロロンチーノ様が相手になってやるぞ!」

 

玉藻は、勘違いされてる、誤解を解かなきゃ!と考えていると、伯父が含み笑いをしながら派手な色の鳥みたいな人に話し掛けた。

 

「おいおい、愛と正義の使者はたっちさんだろう?お前さんはどちらかというと……変態という名の紳士じゃないか……第一にお前さん狙撃手なのに敵の正面に現れるとか馬鹿なのか?」

 

「何ィー!……って朱雀さんじゃんか!久しぶり!元気だった?」

 

伯父の姿を見て知り合いとわかると肩を組み仲の良さそうな感じが見てとるようにわかる、2人とも嬉しそうだ。

 

「で?朱雀さん?其方の可愛い女の子はどちら様でしょうか?」

 

 ペペロンチーノ?さんが私の方をちらちら見て伯父に耳打ちをしている、私何かしたのでしょうか?…あっ、頭を叩かれた…何を言ったんだろう?

 

「ふむ、茶釜さんに報告して置こうかな?」

 

「ま、まぁ…それはそれとしてさ!この娘、朱雀さんの姪っ子なんでしょ?可愛いね!君今いくつ?」

 

「え、えぇと…17歳です。オンラインゲームは初めてで…叔父様がやり方を教えてくださると言って下さいましたので初体験です。」

 

矢継ぎ早に質問されて応えていると、

 

「!?……ゴメン、さっきなんて言ったか聴き取れなかったからもう一回言ってもらってもいいかな?」

 

と、ペペロンチーノ?さんに言われたので

 

「17歳でオンラインゲームは初めてで伯父様がやり方を教えて下さると言ってくださいましたので初体験です。」

 

と、繰り返すと

 

「あぁ…ペロロンチーノ…茶釜さんに今の件とさっきの発言送っといたから覚悟しとくと良いぞ?」

 

「げっ!…………ぁ〜〜姉ちゃんからのメッセージが…………。」

 

 伯父様が茶釜さんという方にペペロンチーノ?さんの行動を報告をしたと言うと、ペペロンチーノ?さんは地面に両手を付けて燃え尽きていた。

 

 

 

「ま!まぁいいや!取り敢えず歓迎するよ……タマモちゃん?でいいのかな?」

 

五分程すると立ち直ったペペロンチーノ?さんが右手を差し出してくる。

 

「俺はペロロンチーノ!バードマンでナザリック1の狙撃手だ!よろしくね。」

 

「私は玉藻です……えぇと、"白面金毛九尾"で初心者ですがよろしくお願い致します。」

 

と、バードマンというのは確か種族だったはずなので私も右手を差し出して握手をしながら種族名を言うとペペロンチーノ?改めペロロンチーノ様と伯父様がぽかんとしたアイコンを出して固まる。

 

「えっと?俺の聞き違いかな?なんか怖ろしい種族名を聞いた気がするんだけど聞き違いだよね?」

 

伯父より早く復帰したペロロンチーノが間違いだろうと質問すると、

 

「?いいえ狐さんになりたかったので異形種の化け狐を選んだんです、その後に新規プレイヤー応援10連ガチャ、というものを引いたら最上位種族変更というのを引きまして、それで化け狐から金毛白面九尾に変わりました。」

 

と、なんでもないかの様に話す。

 

「…………そう言えば、お前は昔から異常な程運が良かったな…10連で他には何が当たったのだ?」

 

死獣天朱雀はまさかと思いながらも聞いてみると、

 

「他ですか?……えっと、百劈刀…赤兎馬…拠点NPC上限レベル500解放権…絶・無双方天戟…覡の巫女装束…種族追加・母なる大鬼…星に願いをという指輪が2つ…後は七色鉱(熱素石10個分)…っていうのぐらいですが?」

 

「ヤバいよ…今のって今回の大型コラボ装備やスキルやジョブの大当りばっかじゃね?なんか聞いたこともないヤツも混じってるし……朱雀さん?今のが本当なら建御雷さん辺りがPKしてでも欲しそうな物が3つ混じっていた様な気が………。」

 

「建御雷さんだけじゃない、モモンガ君も星に願いを、が2つの時点で何かしらのアクションを起こしてくるだろうな…私だって欲しいくらいだからな。」

 

と、ペロロンチーノと死獣天朱雀が顔を寄せ合って会話をしていると玉藻がふと、こう言った。

 

「伯父様が欲しいというのはどちらでしょうか?今回のお礼に差し上げますが?」

 

疑問顔のアイコンを出して神器級アイテムを渡す。…と……

 

「お嬢さんそれはいけない、そいつは簡単に譲渡しちゃいけない物なんだ…例えばこのゲームでその装備を異形種が嫌いと言っている奴に渡ったらお嬢さんだけじゃなく俺たちや朱雀さんだけじゃなく他の全ての異形種に迷惑が掛かる………そんな代物なんだ、そう簡単に渡さない方がいい。」

 

「そうだな、確かに…大いなる力には大いなる責任が伴う、とも言うしな。」

 

何処かで聞いた台詞を言って満足そうにしている伯父にどうしようと訊ねると意外にも

 

「もし、お前が本当にあげてもいいと思うなら譲渡すれば良い……ただし、渡す相手は慎重に選ぶんだぞ?」

 

という答えがすぐさま返ってきて、また頭を撫でられた。

撫でている手が銀髪の上にちょこんとある狐耳にあたりくすぐったくなる。

 

「そういや玉藻ちゃんって17歳って言ってたけど学生さんなのかな?こんな時間にログインしてるからもしかしたらもう働いてるのかと思ったんだけどさ。」

 

 話題を変えるようにペロロンチーノがこんなに夜遅くにゲームをしているってことは学生か?と聞いてきた。

それを聞いた私は違う、と顔のアイコンを変えた

 

「去年までは通っていましたが…余りに退屈でしたので辞めて、今はピアニストの真似事をさせて頂いております。」

 

「と、言うことは社会人だ!朱雀さんと玉藻ちゃんが良ければ一度ナザリック行かない?積もる話もあるし朱雀さんだって玉藻ちゃんつれてこようとしてたからこんな場所に居たんでしょ!」

 

 私の回答に嬉しそうな反応をするペロロンチーノさんの様な人は、今まで私の周りには居ないタイプの人だったので、いつのまにかこんな人がお兄さんだったら楽しいだろうなぁ……などと考えていた。

 

 




最終ステータス暫定的ですが作ってみました。

character
玉藻 異形種

ナザリックの申し子・ナザリックの良心・一騎当千

役職ーーーナザリック地下大墳墓至高の42人目

住居ーーー第六階層"古の緑都"

属性ーーー善[カルマ値:200]

種族レベルー"金毛白面九尾"ーーーー15lv
母なる大鬼ーーーーー1lv(ユニーク種族により1レベルでMAX)
など
職業レベルー 武神ーーーーーーーー10lv
音楽家ーーーーーーー5lv
コックーーーーーーー3lv
符術士ーーーーーーー7lv
陰陽師ーーーーーーー10lv
一騎当千ーーーーーー10lv
など


種族レベル➕職業レベル=計100lv
30 70

改定9月4日
友人より熱素石100は多くね?という発言により熱素石の数量を変更しました。

5月30日後期の設定と合わせて種族レベルを修正しました


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ピンク色のナニカ=可愛い?

今回も短いですがそれはそれとしてどうぞよろしくお願いします。

リズムゲーム楽し…フルコンボ余裕だぜ!……エキスパート?なにそれ?


ガチャで当てた物についてはまた後で話をしようということになり、現在は伯父様と目の前で飛び回りながらこちらを楽しませてくれるペロロンチーノさんと一緒にナザリック大墳墓という伯父様達が作り上げた拠点に向かっている。

 

「でも玉藻ちゃんって本当にアバター殆ど弄ってないの?はっきり言ってそこいらの芸能人よりよっぽど可愛いんだけど?」

 

目の前でアクロバット飛行をした後、器用に後ろを向きながらホバリング飛行でわたしと伯父の歩く速度に合わせて飛ぶペロロンチーノさんは唐突にそんなことを言ってきた。

 

「そうですね…強いて言えば耳とこのしっぽを追加したぐらいですかね?……ふふ、もふもふです。」

 

ペロロンチーノさんの質問に答えながらもしっぽをもふもふし続けていると伯父様が止まり目の前の大きな遺跡の様な場所の入り口を見上げげ、

 

「……ナザリック…ただいま……。」

 

此処がナザリック大墳墓なのだろう、伯父様は感慨深そうに呟いた。

 

「モモンガさんにはメッセ送っといたから、暇な連中連れてくるかもよ?…!?ってーーー…ー」

 

ペロロンチーノさんが私たちに向かってそう言っていると墳墓の入り口から飛んで来た、ピンク色のナニカに突き飛ばされてしまった。

 

「コラ!愚弟!警戒行って連絡無いとは何事だ!!」

 

突き飛ばしたのはこのピンク色のナニカなのだろう、結構可愛いかも?と思っていると、びっくり顔のアイコンを出しながらこちらに近付いて来た。

 

「あらー?朱雀さん、久し振り!元気してた?」

 

と、此方も伯父様の知り合いだったのだろう、スライム?さんは右手?を大きく振りながら近づいて目の前で止まった。

 

「あれれ?コッチの可愛い娘はどなた?よかったらお姉さんと良いことしない?」

 

ピンク色のスライム?さんは伯父への挨拶もそこそこに私のアバターの周りをクルクル回ってそんな事を言っている。

 

どう返事をしようか悩んでいると、伯父様が苦笑しながら助け船を出してくれる。

 

「茶釜さん久しぶりだね?その娘は私の姪でね、あまりソッチ方面には耐性がないからそれぐらいにしてくれると助かるかな。」

 

そうなんだ、ヤバいヤバい!いつもの癖で凝視しちゃった!テヘッ!

と、言いながら舌を出している顔のアイコンを出すピンク色のスライム?もとい茶釜さんは凄く可愛く見えた。

 

「私はぶくぶく茶釜!可愛い娘は大歓迎だよー!さっきはごめんね?あんまりにも可愛いアバターだったから思わずね?」

 

めんごめんご!と、言いながらピンク色のスライム?改め茶釜さんは私の手を引いて歩き出す。

 

歩いていると遠くの空から派手な色の装備を着た人が飛んでくる。

 

「ちょっと姉ちゃん!いきなり吹っ飛ばすのはやめてくれよ!フレンドリーファイアがないとはいえびっくりすんだろ!」

 

と若干怒り気味のペロロンチーノさんが茶釜さんに文句を言っている。

…ご姉弟なのかな?…と思っていると茶釜さんが恐ろしく低い声でペロロンチーノさんに何かを言っていた。

……何を言ったのだろう…今まで元気だったペロロンチーノさんがみるみるしおれて行く様な気がする。

あっ…茶釜さんが離れた。

 

「さぁ!みんなも待ってる事だし円卓の間に行こうか!あっ、たまちゃん、これ着けて」

 

茶釜さんが指輪を差し出してきたのでそれを装備すると伯父とペロロンチーノさんが横に寄り添う様に立ち、4人で円卓の間の間へと転移した。




熱素石多過ぎ!って言う指摘があったので数が減っています。


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ようこそナザリック……うぇるかむ!トゥ!なざりっく!!

ストックがなくなり毎日更新は不可能になりましたので不定期連載にさせていただきます。

某リズムゲームで元ネタの娘にガチャを引いて貰ったら10連で2枚星4・更に星3を1枚、の強引きを見せて貰いました……ただ……出来れば全員同じキャラはやめて下さい。

双子の妹ばかりだと!!


転移をした先は凄く豪華な通路だった。

紅い絨毯が敷き詰められた先が見えない程長い長い廊下を少し歩くとこの廊下に相応しい他でも言うべき荘厳な雰囲気の扉が現れた。

 

「此処ここ!さぁ、入って入って、みんな待ってるから!」

 

と、ぶくぶく茶釜さんが扉をあけて中に入るように促される。

促されるまま部屋の中に入った私は、目の前の光景を見て絶句した。

何故なら…………

 

「やぁ、君が朱雀さんの姪御さんだね?私がギルド、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長で、モモンガと言います、宜しくお願いします。」

 

今、喋っている骸骨改めモモンガ様とその他にも忍者、黒い塊、蟹さん?、騎士様、などなど多種多様な方々が部屋の円卓に座っていた。

あれ?私場違いじゃ無いですか?…初心者が居てはいけない場所のような気がします。

などと考えていると、横から伯父様が全員が見える場所まで進み出て、

 

「皆、久し振り、恥ずかしながら帰って来てしまったが……まだ私の席は残っているだろうか?」

 

と、心から申し訳なさそうに言うとモモンガ様が席を立ち私たちの方へ歩いて来る。

ゆっくりと歩いて来るモモンガ様を見ていると何処かのファンタジー映画の最終ボスに見えてくる。

叔父様の前まで来るとモモンガ様は骨しか無い手を叔父様の肩に置くと一言

 

「何言っているんですか朱雀さん、席なら残してあるに決まっているじゃ無いですか、そんな悲しい事は言わないで下さい。」

 

私達は仲間じゃ無いですか、と言う、モモンガ様の顔のアイコンは笑顔で、他の円卓に座る方々も次々に笑顔のアイコンを浮かべた。

 

「……うん、……みんな…ありがとう。」

 

ゲームなので表情は見えなかったが恐らく伯父様は泣いていたのだろう、私はなんとなくそう感じた。

 

 

 

 

「……では、気を取り直して本日の緊急議題を…ペロロンチーノさん、お願いします。」

 

「応よ!皆んな突然だけど今日来た朱雀さんの姪っ子ちゃんの玉藻ちゃんをギルドに入れたいんだけどどうかな?」

 

あれから伯父様を中心に雑談をしていると、少し離れたところで話していたモモンガ様とペロロンチーノさんが他の皆さんに円卓に座るようお願いした。

他の方々が疑問のアイコンを出しつつも席に座ると唐突にモモンガ様かとペロロンチーノさんからとんでも無いことが提案された。

 

「えっ?……あの?……。」

 

「なんだか急な話だけど議題にあげるくらいだから何か理由が、と言うか此方側に何かしらのメリットがあるんですね?」

 

私が混乱していると確か…ぷにっと萌え様が私がギルドに加入した場合の良い所を確認する。

 

「まずその話を始める前に本人に一度確認をしたいのですが…玉藻さん朱雀さんやペロロンチーノさんに言っていたアイテムを譲渡してもいいと言うのは本当ですか?…例えそれがユグドラシルで凄い価値があるとしても躊躇せず渡せるのでしょうか?。」

 

モモンガ様の問いに迷わず、

 

「価値が有るか無いか、ではなく、その物を本当に欲している方が居れば…それはその方に差し上げた方がきっとそれは幸せな事だと思います…現状では私に価値が分からないとしても叔父様の御友人に悪い方など居ないと私は断言出来ます…なので私は迷わず渡せると申し上げます。」

 

と、モモンガ様の目を真っ直ぐに見て告げると、緊迫していた空気が一変して和やかな雰囲気に変わった。

 

「だから言ったじゃんモモンガさん!玉藻ちゃん良い娘だから絶対大丈夫だって!」

 

「ふむ、それではメリット、という点ですが…まずは一つ目としてのメリットは彼女の種族が初心者なのに"金毛白面九尾"だという点」

 

私の返事をある程度予想していたのかペロロンチーノさんがモモンガ様の肩をバシバシと叩きながら笑顔のアイコンを浮かべる。

それを気にせずメリットをあげる。

 

「それって、お隣さんのサブマスターと同じ種族だよな?どういう事だ?確かに本当ならかなりすげぇけど…」

 

「ほう、あの種族はユニーク種族だと思っていたが違ったのか、どんな条件なんだ?」

 

「まあ…他の利点にも絡んで来るが、私の姪はリアルでも運が天元突破していてね、ビギナー応援10連ガチャで当てたんだよ。」

 

山羊の頭をした…ウルベルト様と、昔に映画で見た忍者?の様な弐式炎雷様が疑問を述べると、即座に伯父様が回答する。

 

「次に拠点NPCの上限レベル計500解放権を持っています、コレの利点は理由は…言わなくても大丈夫そうですね。」

 

「拠点NPCの上限解放?まじか!」

 

「てか500って!それガチャの都市伝説じゃなかったのか……」

 

「あと150レベルあれば皆の理想のNPCが作れると思っていたけど……500…この間のNPC案件会議の内容が吹っ飛ぶ様な話だよなぁ…」

 

モモンガ様から告げられる更なる利点に、ざわざわと騒ぎ始める仲間を他所にモモンガ様は更なる利点をあげる。

 

「最後に、熱素石10個……我々が泣く泣く使用したアレが10個有り、それもギルドに加入する場合はギルド預かりにして頂けるそうです。」

 

その発言を最後に円卓の間は余りの騒ぎに会議の程をなさなくなった。

 

かくして会議が多数で可決され、新人さん歓迎会に突入して2時間ほど経った頃

玉藻は女性陣にしっぽをもふもふされていた。

女性同士でしっぽをもふもふするだけなら運営も見逃してくれる様だった。

 

「わー!凄い!凄いよこのしっぽ!NPCのペット達なんか目じゃないよ〜〜〜……僕ハマりそう。」

 

「ほんとほんと、さっきまでもふってたけどこんなに手触りの良い感触始めてだよね………うーん……?!そうだ!お持ち帰りぃーーー!」

 

「お隣さんのもふもふは男だし、気難しいので有名だからしっぽもふらせて!って言ったら狐火がバシバシ飛んで来そうですもんねー。」

 

女性メンバーは和気藹々の雰囲気を醸し出して玉藻の9本のしっぽをもふもふし続け、玉藻も擽ったいだけなので甘んじて受け入れてる光景を他所に、男達は部屋の隅っこに集まり、額を寄せ合ってギルド預かりになったアイテムの相談をしていた。

 

「まずは、NPC案件の会議をもう一度設けたいのですが…その時玉藻さんにどれくらいのNPCレベルを割り振れば良いと思いますか?」

 

「うむ…おそらく…あの娘が作りたいNPCは多くて2人、まぁ200レベルが妥当なところじゃないかな?」

 

「200レベルを割り振ったとしてもまだ300レベルもあるんですよ!もし、それを課金で補おうとしたらいったいいくらかかるのか…………想像するだけで恐ろしい。」

 

「プレアデスのレベルもうちょい上げたいですね!戦闘メイドって言うくらいだから、メイド全員に取らせましょうよ!!」

 

「熱素石でもう一つ攻城戦用のゴーレム作っていい☆?もちろん玉藻ちゃんの意見を聞いて作るからさ♡!」

 

「ナーベラルにくノ一取らせようかな、あっ…もちろんレベルが余ったら貰えれば良いなぁくらいだからさ?」

 

「一般メイドにもメイドを数レベル割り振りたいですね……3から5位の範囲で…しかしそうすると各自に割り振るレベルが…………。」

 

取り敢えず各自の希望を取り後日改めて会議を開催した結果、満場一致で玉藻に200レベルが与えられ.

その他のレベルについても、プレアデスを含むメイド全員にメイド職業レベル(1から3レベル)の付与

ガルガンチュアに続く巨大ロボ……もといゴーレムの作成

が、暫定的に、ではあったが決定した。

 

 




タイトルは円卓の間にかけてあった垂れ幕の字を表しています。

ではまた次回に

9月25日
メイドのレベルを少し変更しました


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新しい世界の扉……開く時……

某リズムゲームでエキスパートがクリアできない人です。

みなさん上手いですね、やったばかりの初心者にはあの指の動きは難しいです…………

それはそれとして友人からFGOのデスクトップアーミーを貰いました。

ジャンヌさん可愛いですね。


「ねぇねぇ!玉藻ちゃん♪玉藻ちゃんはロボットアニメとか興味ない?」

 

ギルド"アインズ・ウール・ゴウン"に入ることになった私は、リアルでのコンサートのリハーサルが早く終わった為、ユグドラシルにログインして誰か来ないか待っていた。

するとギルドメンバーのログイン状態を現す白抜き文字で表記されたのは、るし★ふぁー様だった。

メッセージの魔法で居場所を聞かれた私は、昨日ログアウト前にブループラネットさんに紹介された第6階層の光景を満喫しつつ散歩をしている所だと答えると、

 

「ちょっと話があるんだけど時間いいかな?」

 

と、誘われて断る理由も無かったので闘技場で待ち合わせをして闘技場内の談話施設で話をすることにした。

そして、会って早々最初の言葉に戻る。

 

ロボットアニメ?ロボットとアニメというのは同じジャンルだったであろうか?

などと考えていると返事を待たずにるし★ふぁー様が言葉を続ける。

 

「見たこと無いなら今から大図書館行ってスクロール観ない?版権切れた良作ガーネットさん達と集めてあるんだ♪」

 

楽しそうな様子のるし★ふぁー様について大図書館に行った私は、初めて観るロボットアニメに感激した。

私が最初にハマった無双ゲームの世界に通じる様な熱さ、そして変形・合体する巨大なロボットのロマン、更には複雑な人間ドラマという観るものを引きつける要素しか無い夢の世界が広がっていたのだから……。

 

5時間後

同大図書館

 

「玉〜〜藻ちゃん!あそびましょー!…って……………えっ、………。」

 

と、大図書館で大好きな中国史の所謂三国志を読んでいることも多い玉藻を迎えに、ペロロンチーノが驚かそうと騒がしくも扉を開けるとそこには……

 

「しかしながら、るし★ふぁー博士、その変形には実際のところ質量保存の原則から外れてしまい変形時に余分な部品又は必要な部品が発生してしまうので無理が生じるかと存じます。」

 

「うむ、玉藻君の意見も分かる…………しかしこれは月田エネルギーを用いた機体なので現状の質量保存の法則どころか量子力学でも証明出来ない超理論が適応されるとしたらどうだい?」

 

「確かに先程見たマシン皇帝も神死力エネルギーを使い神をも凌駕する力を発揮していましたね……だとすれば現在のエネルギー力学とは全く違う法則が成り立つことも視野に入れなければいけないですね!」

 

うむ、さすが我が助手だ♪、などと言い大声で笑う、るし★ふぁーと、その通りです博士!と、これまたノリノリの玉藻を見たペロロンチーノは目の前の光景に絶句した。

なぜかと言えば図書館のプロジェクターに映っているのは100年位前に人気を博した某有名ロボットアニメであり、白衣を着てそれを観ている2人は誰がどう観ても異常だった……何故かと問われれば足下や図書館のテーブルの上には古今東西のロボットアニメや現実のロボットの資料や3D立体データが散乱していたのだから……

 

「あっ?あれ?俺って入る扉間違えたかな?なんか……るし★ふぁーさんと玉藻ちゃんが意気投合している様に見えるんだけど?!」

 

ペロロンチーノは目に見える信じられない光景に呆然としていると、いつのまにか眼と鼻の先に来ていた玉藻に笑顔で両手を前に組んで潤んだ瞳…所謂願いのポーズをされて、

 

「ペロロンチーノさん!マプラブとデーモンペイン詳しいのですよね?博士から伺いました!!宜しければ私にご教授願えますか?」

 

と、言われたペロロンチーノに断る理由は存在しなかった。

 

「ゴーレムクラフターも良いですね!職業レベル多めに取ってしまいましょうか……しかしながら無双ゲームの再現という夢が遠ざかってしまうし………うーん………。」

 

ロボットアニメを満喫(ペロロンチーノは疲労困憊)し、るし★ふぁーと玉藻はキャラクタービルドに関して話し合っていると玉藻がゴーレムクラフターを取ろうか悩み出す。

 

頭を抱えて耳がぺたんと折れ、しっぽは忙しなくゆらゆら揺れているところを見るとかなり真剣に考えている事が分かる。

それを見たペロロンチーノはこう思った…………

 

「ヤベェ…このままじゃ腐れゴーレムクラフターが2人になって巨大ロボ量産するイメージしか湧かない、しかも熱素石のメインの使用権持ってるの玉藻ちゃんだからタチが悪りぃ……モモンガさんに怒られる………何より朱雀さんにどう言えば良いんだろう…………御宅の姪っ子さんは立派なロボットアニメオタクになりましたよ!…………って言えねぇよ!!」

 

と、いつもはナザリックの迷惑かける担当だと思っていたバードマンは、大図書館で熱く語る2人のロボットアニメオタクを頭を抱えながら見ていた。

 

 

後日、ペロロンチーノは死獣天朱雀には苦笑いされただけで済んだが、案の定モモンガには「1日で何故あんな事になったんだ!」とブチ切れられ、更には偶々一緒に居た、姉のぶくぶく茶釜に泣きが入るまで延々とPVPをさせられるのだった。

 

更に後日、白衣を着た玉藻と奇声をあげながらギターを掻き鳴らす同じく白衣を着た人間種に見えないこともないサイボーグがガルガンチュアを湖から出していじくりまわして居た。

気になったあるギルドメンバーが何をしているのか聞くと2人の背後からるし★ふぁーが現れる、嫌な予感のしたそのギルドメンバーは急ぎモモンガにメッセージを送ると、すぐさまゲートで現れた。

 

「あなた達はいったいここで何をやっているんですか?わざわざガルガンチュアを外に出して………ん?ってコレ!ガルガンチュアのマスターデータじゃないですか!アンタ達入って間もない新人巻き込んで何やったんですか!!」

 

骸骨が怒りを露わにするが、るし★ふぁー・ガーネットの両名は悪びれもせずそっぽを向いて下手な口笛を吹く

ワガママな子供か!、と更に怒ろうとするがもう1人の狐耳を生やした女性が良い笑顔を浮かべ一言

 

「建造許可を頂いていた攻城戦及び拠点防衛戦用ゴーレムを博士とDr.と作成する事に致しました、このガルガンチュアさん凄いですね!マスターデータ拝見した限り何処にも穴が見つかりませんでした、強いて言えば個人的には外装デザインはもう少しメカメカしい方が好みですがナザリックの第4層階層守護者としてはガルガンチュアさんは最高だと思います。」

 

最初に会った時とはかなり違いハキハキと喋る玉藻の笑顔に謎の迫力を感じ若干後ずさるモモンガ、しかしナザリックメンバーで作り上げたガルガンチュアと第4階層を褒められて悪い気はしなかった為辛うじて、

 

「そ、そうですか…ですがその大切な階層守護者のマスターデータのコピーを取ってあなた達はいったい何をするつもりなのでしょうか?」

 

と、本来ここに来た理由の確認をする事に成功する。

 

「それはぁーーー!!簡単な事である!!この天才!Dr.ァーーガーネットがぁーーー!!博士とぉ〜!助手のぉ〜!!協力でぇ〜〜!!第2の巨大ロボを造るぅ〜〜〜!!計画なのであーーる〜〜〜〜〜〜!!!」

 

ギターで雑音を響かせながらそう叫ぶガーネットを見てモモンガは、また何かのアニメに感化されたのだろうギターを持てている事からまた新しい職業レベルでも取ったのだろう、と考えた。

そんな2人の異常者を見て「あらあら、博士もDr.もはしゃいでしまって、まぁ………私もあの"こ"が再現できるなら助力は惜しみませんが。」

 

と、微笑んでいた。

 




まだ異世界には行けませんでした…

新たな世界に目覚めた玉藻さんの明日はどっちでしょう……

ではまた次回に。


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その名は………………

ユグドラシルに聳える鉄の城!

降臨!!!!


ナザリックロボット同盟はモモンガの悲痛な叫びを聞きつけ、立ちはだかる強敵に立ち向かう為に新たなる力を解き放つ!

 

「博士!モモンガ様からのSOSです!"アレ"の使用許可を!!」

 

中国風の着物の上から白衣をまとった玉藻が、るし★ふぁー博士にナザリック研究所に隠された大いなる力を秘めた巨人の解放を願う。

しかし、るし★ふぁー博士は首を横に振るだけで、無理だ…と一言だけ漏らす。

 

「どうしてですか!このままではモモンガ様が…………。」

 

「…………Dr.が造っていた制御装置が必要だったのだが……先程の超位魔法で彼の研究室が破壊されてしまった…このまま発進させてもアレがモモンガさんの助けになることは無い。」

 

なおも食い下がる玉藻に、るし★ふぁー博士は、研究所のライバルと言われていたDr.ガーネットの研究室があった場所のモニターを指差し肩を落として諦めたように言葉を紡ぐ。

誰もが絶望感を感じ諦めようとした時、Dr.の研究室跡を写しているモニターから強烈な光が迸る。

 

「なに?あの光は……」

 

「…あ…あぁ……まさか、やってくれたな!あの野郎!!」

 

玉藻は輝くモニターに釘付けになっていると、るし★ふぁー博士は嬉しそうな顔で悪態を吐く。

 

「はぁ〜〜〜ッハッハァ〜〜〜!!この天才ィ〜〜〜Dr.ァ〜〜〜!!ガーネットォがぁ〜〜〜!!あれしきの超位魔法でヤレると思うなんてっ……アリさんが某アニメの超機動要塞に刃向かう様なものなのであ〜〜〜〜〜〜る!!!!」

 

「でもDr.……私が居なかったら危なかった。」

 

「シィーズゥゥ〜〜〜!!!余計な事は言わないで良いのであ〜〜〜る!さぁ!!モモンガさん!!受け取るのであ〜〜〜る!!!!」

 

モニターには高笑いを上げながらギターを弾くDr.ガーネットと巨大な黒い棺桶を担いだプレアデスのシズが写っており、Dr.が手に持つスイッチのセーフティーを解除して、ポチッとな?と言いながら押す。

するとDr.の背後から小型の戦闘機?が現れ、翔び去る。

数秒後モモンガ様の映るモニターに先程の小型の戦闘機が現れるとモモンガ様は躊躇なく乗り込み飛翔した。

 

「よし、アレがあれば大丈夫だ!助手よ!今こそガルガンチュアアーマーを出すんだ!!」

 

その言葉を待っていた私はこの研究所に封印されていた大いなる力を解き放つ……

現れた巨人の威容を誰もが見上げていると、モモンガ様の乗った小型戦闘機がガルガンチュアアーマーの頭部に接近する。

ガルガンチュアアーマーの頭部から誘導レーザーが現れ、小型戦闘機とドッキングすると色が黒光りする装甲に変化した。

 

「「「ドッキング完了!モモンガー(Z)ゼェ〜〜〜〜〜〜ットォ!!!」」」

 

今ここに鉄の魔王が誕生した……果たして、この鉄の魔王は神か悪魔か…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………はっ!今何時でしょう……あぁ良かった、待ち合わせの時間には間に合いますね。」

 

何やら楽しい夢を見た気がしたが、どんな夢だったか忘れてしまった私は装備を整えて、約束していたギルドメンバーとの待ち合わせ場所に急ぐ事にした。

 

「そうだ!まだ時間もある事ですし、あの"コ"に乗って行きましょう。」

 

時計を見るとまだまだ時間があった為、応援ガチャで引き当てたあの"コ"に乗ろうと思い、ギルドの自室のクローゼットからガチャのカプセルを取り出し、インフィニティハザックに入れて足取りも軽く歩き出した。

 

 

「おっ?ナザリックの建御雷さん、お疲れ様です。」

 

「"武神"に最も近い男、建御雷!後何個で15個揃うの?」

 

「今日はたっちさん居ないんですね?いやぁ…あの人見るまでワールドチャンピオン舐めてましたが、ありゃあヤヴァイこっちの攻撃全てスルーの上カウンターとか何の冗談かと思いましたよ。」

 

「たっちさん居ないなら今日は5から6体くらいが限界ですかね?」

 

「皆んなお疲れ様、後7個でたっちさんはリアルで用事があるから今日は来れないそうだよ。」

 

と、ナザリックの建御雷が荒野の人が集まる場所に顔を出すと如何にも武人!と、行った風態の男達から歓迎を受けていた。

たっちさんが来ない事を告げると何人かが、残念…と、顔のアイコンを出した。

 

「まぁ……たっちさんも残念そうにして居たよ………そう言えば皆んな、今日はウチに新しく入ったギルドメンバーがこの集まりにどうしても参加したい、と、言っていたのでこの後ここに来る事になっているんだが…構わないよな?」

 

この言葉に周りは、ナザリックに新人?どんな奴だ!とかこの集まりに参加ってどんな武人ロールしてる奴?とか得物は何だ?槍か?剣か?などの質問が飛び交う。

歓迎ムードなので大丈夫かと、建御雷が思い時計を見ると待ち合わせの時間まで15分程となっていた。

そろそろかな?と辺りを見回すと遠くの方から砂塵が舞い上がり、その砂塵が少しづつこちらに近づいてきていた。

この荒野に出る"目当てでない方"のモンスターかと思い全員が戦闘の準備をしていると、砂塵の中から玉藻の反応があった為に建御雷は皆に警戒を解くように伝える。

 

ドドドッドドッドドッ…ダン!!

 

皆が集まる数メートル手前で砂塵が止まり少しづつ晴れていく。

そしてその先にあった物に対して各武人は歓声を上げる事になった。

そこには紅い…ただただ立派と言うしかない巨体に艶やかな毛並みをした、今から闘う予定のモンスターの元になった歴史上の人物が搭乗したガチャ限定のスーパーホース"赤兎馬"が立っていたのだから…………

皆が赤兎馬を見た瞬間に驚きに目を見開き、それが赤兎馬と気付くと……排出率0.00000002%という当てさせる気ないのか!クソ運営!!!という叫びを上げたという超超超低排出率の憧れの存在を目の当たりにしたのだから。

 

当然赤兎馬の印象で玉藻のインパクトは低く、美少女だ!とか、この子無双の姫にそっくり?などの感想にとどまった。

 

「初めまして皆様、玉藻と申します。この度は無理を言って集まりに参加させて頂きありがとうございます。」

 

よろしくお願いします、と頭を下げ挨拶をすると概ね好意的な反応を受けた。

どうしてこんなムサイおっさんばっかりの集まりに参加したかったんだ?という質問が多かった為に、玉藻はおずおずと恥ずかしそうに

 

「三國志が好きで…青龍偃月刀を持った方や南海覇王が似合う孫性の方がいらっしゃると聞いて……。」

 

恥ずかしそうに言うと周りは感激して

 

「ヤヴァイ!この子ほんとにナザリックの新人?可愛い過ぎる!!」

 

「三國志好きとはなかなか良い趣味をしていますね、私は呉が好きなのですが、玉藻さんはその姿を見る限りでは蜀ですか?」

 

「赤兎馬触らせて!ボーナスつぎ込んだのに当たらなかったんだ!!」

 

などと質問責めにする。

アバターの容姿に関しては、リアル準拠です。と申告すると何故だか拝まれた。

 

 

「さてと…歓迎もそこまでにしないと奴を狩りに行く時間が無くなるぞ、そろそろ行こうか?」

 

と、建御雷が声を掛けると皆が静かにして装備を確認し始める。

各自が装備を確認している中、玉藻はぷにっと萌えから、今回の集まりに参加するならばガチャで当てた百劈刀を建御雷に渡す(若しくは貸す)事を勧められていた事を思い出し、建御雷に話し掛けた。

 

「建御雷様?少し宜しいでしょうか?」

 

「ん?玉藻ちゃんどうしたんだい?取り敢えず今日はさっき渡したアイテムで後方支援してくれれば大丈夫だよ?」

 

「いえ……ぷにっと萌え様から今日こちらに伺う際に此方を建御雷様にお渡しすればお役に立てるとお聞きしたものですから……」

 

玉藻の様子見て、今日の役割で分からないところがあったのかな?と、考えた建御雷は再度アイテム使用のタイミングなどを確認しようとしたが、ぷにっと萌えの名が出て玉藻から差し出された武器を見た瞬間に驚きのあまり大声を上げた。

 

「こっ!!!これ!百劈刀じゃないか!?然も、1番ダメージボーナス高いヤツ!?」

 

百劈刀?まさか……と先程まで少し離れたところで装備を確認していたプレイヤーが建御雷と玉藻の周りに集まってくる。

赤兎馬に続き百劈刀を見た周りの反応は様々だった。

 

 

いつもはたっち・みーがいて30分に一体、居なければ45分に一体のペースで狩ることのできる、レイドボス戦鬼呂布を今回はまさかの百劈刀の力で25分程で倒せてしまった。

目的のレアドロップ職業解放アイテム"武神の魂"を集める為、皆で協力していたのだが…このアイテムレアドロップでしかも15個揃うまで効果を発揮せず、且つ受け渡しができない鬼畜仕様になっており、未だ揃えた猛者が居ない……半ば都市伝説になっていた。

建御雷が残り7個で1番武神に近い男、と呼ばれていたのはその為だった……しかし今日は……

 

「建御雷さん……俺夢見てるのかな?……武神の魂2個アルンダケド……」

 

「ヤヴァイ!俺も1個出た!まだ1体目だよ!!」

 

「俺3つ…………ん?後4個で武神になれる?馬鹿な!!たっちさんとフルマラソンした時だって2個だったんだけど?」

 

レアドロップの筈の武神の魂がほぼ1人に1つ以上出る異常事態が発生し良い感じに現場は混乱していた。

いつもと何が違うんだろう?疑問に思った彼らは周りを見渡した。

皆が1つの人物に視点が合うと、下段の人物である玉藻はきょとんとした顔で立っていた。

 

「……?あの?どうかなさ」

 

「天運だ………天運の玉藻!!」

 

「ヤヴァイよ!幸運の女神様が降臨してる!有り難や有り難や……」

 

結局騒ぎすぎて4体しか狩らなかったが各自一体につき1つ以上のレアドロップが出た為、帰りはホクホク顔だったそうだ。

 

 

 

 

おまけ

 

「あの?建御雷様?武神の魂は幾つで解放でしたっけ?」

 

ギルドに帰った玉藻は先程から疑問に思っていた質問を建御雷にぶつける。

 

「15個だが、もし揃えたいならまた来るかい?皆も喜ぶと思うよ。」

と、笑顔のアイコン付きで返事をすると申し訳なさそうに返事が返ってきた。

 

「…………でしたら15個揃ったのですが…… 。」

 

玉藻のラックは化け物か……と、思わずにはいられない建御雷だった。

 




夢オチでした。

玉藻の三國無双ビルドはこうやって進みます。

ロボ方面は博士とDr.におまかせ!です。

ではまた次回


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ペロロンチーノと2人でお出掛け?

ストックなくなり更新が遅れてしまい申し訳ないです。

原作開始までに玉藻ちゃんの戦力が恐ろしくなりそうですが、まぁこの娘はカルマ値500確定なのでそんなに悪いことにはならない気がしますが……。


「風が気持ち良いのでしょうね、本当にこんな景色の場所に行けたら……」

 

海辺の断崖絶壁の上で、自らのしっぽをもふもふしながら女性はそう呟いた。

何故こんな断崖絶壁の上に居るのかは分かっているのだがどうしようもない、実はこの場所……と言うか島は玉藻の意思で来た場所ではなかったからだ。

 

本来ならばフライの魔法やアイテム使用などで飛んで帰れば良かったのだが、生憎その手のアイテムは使用不可に設定されておりどれもが効果を発揮することは無かった。

 

先日、ギルドメンバーの武人建御雷と一緒にプレイして獲得した"武神"の職業レベルを上げる為に1人でフィールドに出ようとするが、背後から誰かに呼び止められられた気がして狐耳をピクッ、とさせ振り向くとペロロンチーノが立っていた。

 

「この間はゴメンね!リアルで姉ちゃんに用事頼まれちゃってさ!今日は何時まででも何処でも付き合うよ!」

 

バードマン特有の右手を上げると、何処に行こうか?と、元気に聞いて来るペロロンチーノに、玉藻は素直にレベル上げがしたいと話す。

すると、最近解禁されたエリアがなかなか良い狩場になっている、との情報を得ていたペロロンチーノに案内され上位ランカーがよく使うレベルの狩場へと来ていた。

 

「ちらほらとプレイヤーがいるけど気にするほどじゃないし、レベル上げ始めようか?」

 

「はい、では今日はコレで行きます。」

 

そうペロロンチーノに言うと玉藻は装備のセットを変更した。

赤と白で構成された巫女服風の術衣から緑色の中華風の着物の様な装備に変わる。

装備を変更した際に隠れていたしっぽが、ファサ…と現れるとペロロンチーノは

 

「んー……いつ見ても気持ちよさそうなしっぽだよねー、ただ…俺が触ったら流石にハラスメント警告か垢BANされそうだよなぁ…。」

 

と、呟くと、しっぽと触りたいと言う単語だけ聞き取れた玉藻は嬉しそうにしっぽの生えている部分をペロロンチーノの方へと突き出しながら振り返り笑顔で、

 

「しっぽ……触りたいのでしたらどうぞ?やまいこ様や茶釜様は良くもふもふしたい!と、言って撫でてくれますが……そう言えば他の皆様は遠目で見る事はあっても触りに来る方は居ませんでしたし……どうぞ?」

 

さぁ…どうぞ?と突き出している臀部でしっぽがゆらゆらと期待する様に揺れているのを見てペロロンチーノは自分の中の悪魔と悪魔と悪魔と天使と格闘していた。

 

『ほら!触っちまえよ!良いじゃねぇか本人がいいって言ってんだから!』

 

『いやいや、しっぽ触るだけだぜ?もし他の所に手が当たっちまってもしっぽに隠れて見えないだろうからあわよくば中まで触ろうとか思ってないぜ?』

 

『良いじゃないか、据え膳食わぬは男の恥って昔から言うだろ?さぁやっちまえ!』

 

『おい!良いのか?姉ちゃんにバレたら殴られるじゃ済まないぞ!』

 

…………訂正、悪魔だけだったが……それでもなんとかペロロンチーノの理性が玉藻のもふもふしっぽへ伸びる手を引かせた。

撫でてくれないんですか……気持ち良いのに…、と言いながら不満そうな顔のアイコンを出しつつ正対して向き直ると耳としっぽをピンッ!と立て歩き出した。

その様子を見た周りの反応は、

 

おい、通報事案じゃないか?

 

いや、アレ女の子の方から突き出してなかったか?

 

じゃあ痴女か?やべっ、ユグドラシルで初めて見た、追っかけてみようか?

 

辞めとけって美人局とかだったら目も当てられないぞ?

 

ん?アレってナザリックの爆撃機じゃね?

 

「やばい、バレる前に移動しよう、待って〜玉藻ちゃ〜〜ん!」

不穏な空気を感じたペロロンチーノは急いで玉藻を追いかけた。

 

 

「…………ふう、これで武神が8レベルになりました、ありがとうございますペロロンチーノ様」

 

普通の女性なら嫌がるような昆虫型のモンスターが徘徊するこのフィールドでラッキースケベを狙っていたペロロンチーノは何故こうなったのかを考えていた。

前提条件として女性は昆虫が苦手であるという先入観でいたペロロンチーノは玉藻が「可愛いけど仕方ないですよね?」と言いながらおぞましい姿の昆虫型モンスターを絶・無双方天戟で振り回し、叩き潰し、切り裂いて行った。

……そう言えばエントマの虫形態を可愛いと言って撫でているのを見た事を思い出した。

 

第2に、ゲームを始めてそう時間が経っていない玉藻が、このフィールドの狩りが上手く出来るとは思わなかった。

しかし、現実は方天戟と盾剣を巧みに使い分け、敵からの魔法を方天戟で弾く、攻撃にカウンターを決めて1人でトドメまで刺すこともしばしばあり、アレ?俺…いらない子状態になってしまった。

それでも玉藻の援護を、と奮闘していると何度か感謝をされる。

それと……さっきから敵から出るドロップアイテムが殆どレアな気がするのは気のせいだろうか?レアリティ高いアイテムしか見てない気がするんだが…………。

などと考えていたペロロンチーノは、玉藻が目の前で「ペロロンチーノ様?」と、不安そうな声で小首を傾げながら掛けてきた声で我に返った。

取り敢えず目標に達したと言う事なのでナザリックへの帰路につくことにした2人は出口の方へ歩き出す。

 

 

 

「……でね?モモンガさんがそこで…………!?玉藻ちゃん伏せて!」

ペロロンチーノからギルドメンバーのエピソードを聞いていた玉藻は楽しく聞いていたが、急にペロロンチーノが玉藻の頭を下げて伏せるように言う。

 

「どうしたのですか?」

 

伏せながら玉藻がペロロンチーノに聞くと、敵だ…と一言。

確かに、"気配を読むと"フィールドのストラクチャーに隠れて十数人の人間種プレイヤーに囲まれているようだった。

明らかに友好的ではない雰囲気にペロロンチーノが「誰だ!」と声を上げる。

 

「ちっ…狐のお嬢ちゃんだけじゃなかったのか……まぁいい、概ね計画通りだ。」

 

大きな木の影から出てきたのは、冒険者!と言うよりは黒いスーツの方が似合いそうなガタイの良い男だった。

その男は、バードマンの方はテメェらで押さえとけ、と周りのメンバーに命令すると大きな地図を懐から取り出した、その地図は綺麗な海と真ん中に大きな島が描かれた不思議な地図だった。

 

「さぁ!招待してやるぜ、狐の嬢ちゃん……歓迎が激しすぎて泣きわめくかもしれねぇがな?」

 

男は地図をこちらに向けるとニヤッとしながら玉藻に向かって言う。

それを聞いた玉藻は、

 

「えっ?招待ですか?お断りしま「イエ」す?」

 

自分が話している時に男の仲間が何か大声で叫ぶ、どうしたんだろう、と考える間も無く私のアバターは地図の中に吸い込まれた。

 

そして現在は何故か飛べず、転移できず、マップも機能しない四方を海に囲まれた島で、先程の人達を相手に戦闘していた。

ここに来る前のレベル上げやここに来てからの何度かの戦闘により方天戟も盾剣も予備の武器も殆ど耐久値が無くなってしまいどうしようか困っていると、遠くから大きな声で私をこの場所に連れてきた男が叫ぶ。

 

「残念ながら此処は!俺たちのギルドのワールドアイテム"ロストアイランド"の中だから逃げ場はないぞ!大人しく俺たちの生贄になれ!」

 

叫んでいる方の言葉を解釈していくうちに、此処がワールドアイテムの中で、このアイテムの中に閉じ込めるられるとリスポーン地点もこの島の中になり、延々と倒し続けて私の持っているアイテムを根こそぎ奪って自分達のものにする、という事だ。

 

逃げ場も味方も居なくなってしまい、本当にどうしようかとイベントリを見たり、符術の項目を確認していると、ふと見慣れない召喚術が増えていることに気がついた。

その術の名称を見てみると"戦鬼神"呂布…と、書いてあり説明を見てみると……

戦の鬼となった荒ぶる呂布を鎮めた証を持つもののみが召喚できる、召喚資格者との幾多の闘いにより戦鬼から戦神に昇華した存在。

と、書かれていた。

 

私は一縷の望みを託して"戦鬼神"呂布を召喚する為に装備を巫女服風の物に変え、魔法攻撃・防御を物理攻撃・防御と入れ替えるアクセサリーを外した。

装備変更時のエフェクトで居場所がバレてしまったようで包囲網がどんどん狭まって来る。

 

「急がなくちゃ…発動……後30秒……25秒……20秒……18…16…13秒……」

 

「やぁ〜〜っと見つけたぜ!お嬢ちゃん!アイテム差し出すのが嫌なら、俺らの持ってるちょっと布面積の少ない装備着たスクショ撮らしてくれたら見逃してやっても…って何してんだ小娘ぇ!!」

 

男はやっと私が何をしているか気づいたようだがもう遅い、どれだけ強いかは判らないが少なくとも今よりは状況が良くなるはずだ。

 

「…。3…2…1…今!顕れよ!」

発動がなんとか上手く行って召喚陣が私のアバターの前に刻まれる。

すると……急に暗雲が立ち込めてきて、暗雲の中では雷鳴が轟き稲光も見える。

どうやって出て来るのかなぁと思っていると目の前の召喚陣が輝きだしそこに稲妻が落ちる。

盛大な土埃を巻き起こし、土埃が晴れると其処には…………

 

何故か赤兎馬に乗った、イベントボス戦鬼呂布を更に強化した様な偉丈夫が顕現していた。

戦鬼呂布と何度も戦った私はそんなに気にならないが男達には強烈なインパクトだったようで、何人か腰を抜かしている人が見えていた。

 

「…な…なっ、何だこいつ!?こんな召喚術見た事ねぇぞぉ!!!!」

 

「リーダー……こいつ知ってる…呂布……戦鬼呂布だぁ〜〜〜〜!!」

 

「戦鬼ってあの荒野に出るバグ野郎じゃねぇか!何でこんなところにぃ!!」

 

後で知ったのだが、実は戦鬼呂布は攻撃を一撃でも食らったら瀕死確定で、繰り出される攻撃は避けるか弾かなければ防御していても防御ごとHPを持っていかれるという、パリィという技術がほぼ必ず成功するような最上位ランカークラスでなければ太刀打ち出来ない化け物だったのだ。

それを知らない玉藻は、建御雷の見よう見まねでパリィを成功させて周りの武人たちを驚かせていた。

それはともかく、そんな戦鬼呂布を更に強化し、更に赤兎馬に搭乗した状態で召喚された為、威圧感が物凄かった。

 

「えーと、取り敢えず宜しくお願いします。」

と、いうが早いか、戦鬼神となった呂布は周りにいた敵勢力をなぎ倒していった。

 

 

 

 

2時間くらい過ぎた頃、また何人かこの島に転移して来た反応があった。

敵の増援が来たのかと思った私が警戒を強めていると、空から見慣れた豪華な軽鎧を来たバードマンが降りてきた。

 

「玉藻ちゃん大丈夫だった?怪我してない?なんかやな事されなかった?」

 

ペロロンチーノ様は凄く心配してくれていたのだろう、降りてきた直後に今まで見たこともないくらい心配そうな様子で話し掛けてくれた、不謹慎だろうが私は少し嬉しかった。

 

「モモンガさん達も連れてきたからもう安心!……ってこいつ何者?!?!」

 

私の頭を撫でながらやっと私の横に仁王立ちしている戦鬼神に気がついたのだろうペロロンチーノ様に事情を説明すると、

 

「えっ?玉藻ちゃん建御雷さんとどっかいったと思ったら呂布と戦いにいったの?……やべー…呂布とかマジ鬼畜…………。」

 

そうこうしているうちに、モモンガ様達が男達を鎖で繋いで私とペロロンチーノ様の前に現れた。

 

「………………確かにユグドラシルはPK推奨のゲームだ……私と仲間達もその点においては何も言うことはない。」

 

モモンガ様の言葉をビクビクしながら聞いていた男達はもしかしたら助かるかも?と考え始めているとモモンガは唐突に絶望のオーラを出し始めて言い放つ。

 

「だが………俺たちの仲間に手を出してタダで帰れると思うなよ!!!」

 

その言葉を皮切りにアインズ・ウール・ゴウンが鎖で繋がれて囚われている男達に攻撃を加えていった。

結局男達はリスポーンキルを繰り返されて、装備もアイテムも殆どなくなった頃に解放されたが、ほぼ放心状態になっていたようだ。

 

「それで結局このアイテムどうする?なんか……ワールドアイテムらしいんだけど?」

 

ペロロンチーノの手には、男達から奪った中でも唯一のワールドアイテムがあり、どうしようかギルドのメンバーに相談しているところだった。

 

「それなんですが、玉藻さんにもらって頂いてはいかがでしょうか?我々は奴らからの戦利品があるし、熱素石や拠点NPCの御礼をまだしていないですし…玉藻さん、この間赤兎馬達の遊び場を欲しがっていたでしょう?ここならちょうど良いんじゃないんですか?」

 

皆も納得しているようで、貰っちゃいなよ。と言ってくれたので有り難くいただくことにした。

その後、このアイテムの出入り口が第6階層の森の中にトラップとして配置され、入った瞬間に戦鬼神呂布の目の前という恐ろしい状況を作り出すことも、3000人のプレイヤーがナザリックに攻めてきた時に500人程が餌食になる事も誰も知らなかった。

 

 




呂布は玉藻の持つ最高戦力でたっち・みーさんにも一対一では負けない破格の性能を持ち、玉藻から赤兎馬を借り受ければナザリック上位3人位なら抑えられる化け物戦力です。

ナザリックへのプレイヤー侵攻の際は多大なる貢献を果たす事になるでしょう。


追記
ワールドアイテムの効果が解りずらかった為、説明と名称を追加しました。


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第二のチート?

皆様お疲れ様です。

何とか1話書けたので投稿しました。

某バンドリズムゲームのイベントで回線不安定な方と3連続で当たりまさかのポイント0……くっ…。


玉藻ガチャ……ギルメン全員課金の時以外に月に一度だけ課金して10連ガチャを回す事をアインズ・ウール・ゴウンではそう呼ばれていた…………それは何故か?、理由は玉藻の異常とも言えるほどの運と引きの強さにあった。

 

「新人10連でそんだけ当たるなら次のイベントガチャの時にでもガチャ引いてみなよ!」

 

と、玉藻が気持ちよさそうな声を出しながら、やまいこ、ぶくぶく茶釜と、いつのまにか恒例となったナザリック女子しっぽもふもふ会を開催中に、いつのまにか来ていたペロロンチーノが「きっと良いの当たるって!」と、笑顔のアイコンと共に発言した。

その発言に対してぶくぶく茶釜が玉藻のしっぽの1つをもふもふしている手を止めて一言

 

「そうだね、玉ちゃんほど運良ければ何かしら当たるかもしれないし…要らないのでたらギルメンとアイテム交換すればいいよ!」

 

「うん、ぼくも興味あるな、だって前回ハズレなしどころか全て大当りだったでしょ?もし玉藻ちゃんが欲しいアイテムあればぼくも交換してあげる。」

 

そこに同じく玉藻のしっぽを5本ほど纏めてもふるやまいこものっかると、玉藻は少し考えながら

 

「……そうですね、それで皆様の助力になるのなら一回くらい引いてみましょうか…そうだ!ユグドラシルって楽器のアイテムも相当な数が有るのですよね?出来れば演奏できるアイテムがあればそれが欲しいです!リアルでも役に立ちますので!」

 

欲しいアイテム?と考えていると、叔父から聞いた演奏系(主にバフ、デバフ用他にもネタアイテムなど)アイテムの事を思い出し、それが当たらなくても交換してくれるという事で、来週から始まるコラボガチャにて早速初回10連ガチャを引く事を宣言した。

 

翌日、ナザリックにてようやく完成した第9階層でビリヤード大会を開催していた。

ビリヤード初体験のメンバーも多く最初の方はビリヤード講習の様になっていたが、ウルベルトやたっち・みーなどが上手く大会として参加したのは6人ほどだった。

そこには先程まで初体験の講習を受けていた玉藻も混ざっていた、それは何故か?

それは2時間前に遡る…………

 

「取り敢えず、この手球ってのをこのキューって言う棒で、突いて弾いて四隅の穴に入れるゲームなんだ!」

 

経験者のペロロンチーノが初体験のメンバーに良く見えるよう台に立って説明する。

ひと通り講習が終わると未経験者は一つの台で遊びながらやる事にして、経験者は勝負形式で遊ぶ事になった為、何か景品を出す事にして第一回ナザリックビリヤード大会の開催となった訳だ。

 

「じゃあ、俺の曲打ち見せてやるぜ!」

 

と、ペロロンチーノが手球を上に飛ばす打ち方を披露すれば、

 

「では私は……こう!」

 

負けじとたっち・みーがほぼ直角に曲がる様な打ち方で球を落としていく。

 

勝負はこの2人のどちらかが優勝か?と思っていると未経験者台の方で歓声が上がり経験者台のメンバーが視線を向けると、玉藻が先程ペロロンチーノがやっていた飛ばす打ち方をやろうとしている様で皆が盛り上がっていた。

 

「玉藻さん、さっきの"曲がる球"も凄かったですが、それも出来るんですか?」

 

あるギルメンが玉藻に向かってそう言っているのを聞いたたっち・みーは、あれ?初心者じゃ?と思いながら玉藻の動きを見ていると、明らかに上級者しかやらない曲打ちの体勢に入っていた。

 

「……ええ、先程ペロロンチーノ様が打っているのを見て"覚えました"多分大丈夫…ですっ!」

カッ!とキューを突くと球は綺麗に浮かび上がり目当ての球はそのまま穴に入っていった。

 

「あー……あれ?、玉藻ちゃん初めてじゃなかったっけ?」

 

と、ペロロンチーノが発言すると人型をとったぷにっと萌えが顎に手をあてながら考察を開始した。

 

「…………そういえば玉藻ちゃんは武器の扱いもいつのまにか出来るようになっていたと………魔法の使い方もいつのまにか上級者の様になっていたし……もしかして…………いや、まさか……でもそれならば納得できるが………良し!ちょっと良いだろうか?」

 

考察が終わったぷにっと萌えは、初心者台に声を掛けると、玉藻とペロロンチーノ、たっち・みーで勝負してみないか?と提案する。

玉藻は遠慮していたが玉藻と勝負をしてみたくなったたっち・みーは二つ返事で了承して、ペロロンチーノは特に断る理由もなく同じく了承した。

 

結果としては1つ差で辛くもペロロンチーノが優勝したが、玉藻のあまりの上手さに2人は試合中リアルならば手に汗握る経験が出来たと思うほどだった。

 

「玉藻さん、カードマジックを披露しても宜しいですか?まだ練習している段階なのですが…"見て"見ませんか?」

 

ぷにっと萌えが人型のままカードを取り出すと玉藻をはじめとしたギルメンの前で唐突にトランプマジックをやり始めた。

マジックなどテレビでやっているのを観た事があるだけだった玉藻は期待しながら"見て"いた。

 

「………………と…はい、ありがとうございました。」

ぷにっと萌えのトランプマジックはなかなか本格的なものでカードの柄が一瞬で変わるものなどで練習中と言っても一朝一夕でできる様なレベルではなかった。

見ていたメンバーが驚きの声を上げているとぷにっと萌えは玉藻にカードを差し出して、

 

「じゃあ次、玉藻さんやってみませんか?」

 

と、トランプを玉藻に渡した。

やまいこがまさか玉藻が出来ると思っていなかった為、驚きと期待を込めて

 

「えっ?玉藻ちゃん出来るの?凄ーい!」

 

と、言うと玉藻はぷにっと萌えからトランプを受け取りながら、

 

「いいえ?やった事は有りませんが、今"見ましたから"恐らく大丈夫かと思います。」

 

と、自信なさげに言いながらも見事な手つきでカードをきり出す。

 

「へっ?」と、やまいこが言うが早いか玉藻が先程ぷにっと萌えのやったカードの図柄を一瞬で変えるマジックを成功させた。

それを見たぷにっと萌えは「やはりこれは…」と言って玉藻のマジックの続きを見ていた。

 

「……こんな感じで宜しかったでしょうか?」

 

と、言いながら玉藻はカードをぷにっと萌えに返すと、ぷにっと萌えは、

 

「そう言えば玉藻さん?一昨日ギターを弾きたいと言っていましたが、弾ける様になりましたか?」

 

と、言う。

楽器を演奏できるギルメンが、2日で弾ける様になるか!と、考えていると、玉藻が嬉しそうに笑顔のアイコンを出しながら言った言葉に驚いた。

 

「ええ!博士とDr.に見せて頂いたロボットアニメの曲は友人のギタリストに弾いて"見せて"もらったのでひと通り弾ける様になりました!

今までピアノ以外興味ありませんでしたが他の楽器も楽しいですね!」

 

自らの発言の異常さに気付いていない玉藻は周りでシーンと、静まりかえるギルメンに?と、疑問の顔アイコンを浮かべている。

 

そこに沈黙を破るようにぷにっと萌えが発言する。

 

「玉藻さん?貴女はもしかしたら今まで出来なかった事ってあんまり無いんじゃないですか?……例えば、最初は出来なかったとしても動きを直接"見た"後は出来るようになったんじゃないでしょうか?」

 

「え?当たり前じゃないですか?だって…直接"見て"いるんですよ?」

 

ぷにっと萌えの発言に何を当たり前の事を?と、考えて返事を返すと山羊の頭をしたウルベルトが思い出すように、

 

「おい?それって確かだいぶ前のアニメの主人公の能力じゃなかったっけか?……名前は確か……ラー、ラー…なんだっけか?」

 

「そう、ラーニング……多分ウルベルトさんの言っているアニメの主人公は攻撃を受けるとその技が使えるようになる、だった筈ですが玉藻さんは話を聞く限り"直接見る"だけで技…と言うよりは技術そのものを習得出来るのではないかと考えました。」

 

ウルベルトが言い淀んでいるとぷにっと萌えが説明の補足をする。

 

「まさか……そんな能力、現実にある訳が……」

 

どよめきが起こる中、ペロロンチーノが玉藻の前に立ち、

 

「スゲェじゃん!確かに玉藻ちゃん!もっと強くなりたいって言ってたし丁度良いじゃない!」

 

両手を握り上下に動かしながら我が事のように喜ぶ

 

「…よっと!愚弟邪魔!よーし、玉ちゃんがもっと強くなれるようにお姉さんも協力してあげよう!取り敢えず防御系は私が教える!」

 

「プレイヤーの技術によって左右されるスキル覚えて貰って最強のプレイヤーになって貰おうぜ!」

 

「強者が増える事はいい事だ、俺自身の強化にも繋がるからな!」

 

ペロロンチーノの一言で変わった空気の中でぶくぶく茶釜や建御雷など、玉藻と縁のあるギルメンが盛り上がる中、玉藻は戸惑いながら自らのしっぽをもふもふしていた。

何故皆様こんなに楽しそうになったのでしょう?などと考えながら……。

 

 




遂にベールを脱いだ第2のチート、ワールドチャンピオンとサシで勝負出来るくらいの戦力にしようかと考えていましたが、呂布に二体の高レベルNPC…その他にも……まだいる予定なのですが、戦力過多かな?


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起動要塞ナザリックロボ?

お疲れ様です、皆様は元気にしているでしょうか?私は久し振りに風邪をひいてしまい投稿が遅れてしまいました。

風邪には気をつけましょう。

取り敢えずロボ回です。登場するのはあまり馴染みのないロボですが友人からのプレゼントで作者的には結構お気に入りです。


ギルドであるアインズ・ウール・ゴウンは合議制の多数決で物事が決まる。

今日も、あるギルメンから提案された事案をログインしているメンバーが円卓の間で話し合っていた。

 

「「「「「それでは、決定ですね(だな・だ!!・であーる!)。」」」」」

 

会議が始まる前からモモンガは嫌な予感がしていた…

何故なら、今日はログインしているメンバーが非常に少なく、多数決をとる日だとギルドの全員に通知を出していた日だったからだ、目の前にはぶくぶく茶釜さんやペロロンチーノ、へろへろさんなど計20名しか居ない…普段なら30名以上は集まるのだが……

嫌な予感の大元は恐らく緋袴を基調とした服装の上から"白衣を着た"玉藻さんだろう…そしてその周りにいるメンバーだ。

 

「熱素石の1つを使用したいです。」

 

会議が始まると、あまのまひとつさんが席を立ち一言

どうぞ?と、続きを促すと円卓の中央にある2種類の3Dホログラムが現れる。

1つは言わずと知れた我がギルドの攻城戦専用NPCでもあるガルガンチュアだが横に並び立つメカメカしいロボットは見たことがない…………ん?ロボット?!

 

「此処からは我輩が説明するのであーる!……ポチッとな。」

 

あまのまひとつさんが着席すると同時に最近の問題児三連星と呼ばれ始めたガーネットさんがもはや定着し始めた口調で話を始め何やらボタンを押す動作をした。

ボタンが押されるとそこにはナザリック拠点"防衛用"及び輸送用NPC作成案!!!!

と、デカデカと書かれたテキストウィンドウが現れた。

 

「皆は知っているはずであるが、ガルガンチュアはあくまで拠点攻撃又は防衛を主眼に置いた超巨大ゴーレムであるが、他のギルドにもその様な存在は必ずある、そして!他の拠点持ちのギルドにあって我輩たちのギルドに無いもの…………それは移動手段なのである!そう!そこそこ!それしかないのであーる!。」

 

そう雄弁に語るガーネットの背中に、雷のエフェクトが見えた気がしたモモンガは疲れてるのかな?と、あるはずのない頭痛を緩和させるため眉間に指を当てた。

 

「確かに大手のギルドって代名詞になる様な乗り物持ってるけど……あれってなんか意味あるの?ゲートの魔法あるからそこまで必要じゃないんじゃないかな?」

 

「確かに、かぜっちの言う通りだと思うなぁ、だって代名詞になってるって言ってもボクGvG以外じゃそんな乗り物見たことないよ?」

 

ぶくぶく茶釜とやまいこが難色を示すと、

 

「いや!必要だと思うんだ、だって俺たちもう上位ギルドの1つなんだから象徴というか紋章以外にもコレこそナザリック!!って言うのはいいんじゃない?」

 

「そうだ♪そうだ♪必要だ♪♪」

 

と派手な軽鎧を着たペロロンチーノが珍しくぶくぶく茶釜に反論をすると、るし★ふぁーが賛同する。

再度、モモンガは嫌な予感を感じた……ペロロンチーノがリアルで姉であるぶくぶく茶釜さんに真っ向から反する事は殆ど無かった、何故なら普段からぶくぶく茶釜はペロロンチーノが羽目を外しすぎたりすると声色が変化して怒る、側から見ればそれはぶくぶく茶釜さんの姉としての優しさだと知っているからだ、それ故に否定することは滅多に無く、そんな時は何かがあったと容易に想像できる。

 

「…………で…るし★ふぁーさん、姉ちゃんに真っ向から反対までしたんだから例の物は……」

 

「あぁ…勿論君のものさ♪……会議の後に部屋で渡すよ。」

 

ひそひそと話している、るし★ふぁーとペロロンチーノを見る限りやはり何か取引があった様だがそれに気がついた者は居なかった。

 

会議が進む中、ただ1人沈黙を保つ玉藻を不審に思いながらも、モモンガは乗り物なんて不要!の方へ意見を持って行こうとしていた。

不要派が過半数に到達する寸前に今まで沈黙を保ち続けていた玉藻が狐耳をピン!と立て挙手をして意見を述べた。

 

「貴重な熱素石、私がギルドに寄付した物…確かに、おいそれと簡単に使ってはいけません………しかしながら…コレを見て皆様はどうお考えになりますか?」

 

と、立ち上がって9本のしっぽを揺ら揺らと揺らしながら右手に握っている光り輝く石を見せると円卓の間が騒然となる。

何故なら玉藻の手には間違いなく全て宝物殿に入れてあるはずの熱素石があったからだ。

 

「我輩と博士、助手の3人でとあるクエストを行なっていた際にユニークボスを発見、そして」

 

「運良くハメ技を発見♪そして3人の総火力with呂布で2時間かけてなんとか討伐、結果熱素石もゲットしたって訳さ♪」

 

「ハメ技?そんなのあったんだ……玉藻さんが居て更に元ボスまで召喚して2時間って……ちなみにどんなボスだったんですか?」

 

現在ギルドの戦力ランキングトップ5に入る玉藻と呂布をしてハメ技を使用しなければ勝てない化け物に興味がわいたモモンガはガーネットとるし★ふぁー、玉藻にどんなボスか聞くと玉藻がメカメカしいロボットの3D映像を円卓の間中央に映し出す。

 

「ヴァルキュリアの失墜で更新されたフィールドで基地の跡地の様なものを発見し、ガレージの様なところを捜索していた時、急に起動したこの超大型機動兵器は、何の前触れもなく襲いかかってきたのです。」

 

あ、サイズ比較としてガルガンチュア出しますね?

と、言って玉藻はしっぽを嬉しそうに振りながらメカメカしいロボットの横にガルガンチュアの映像を投影する。

映し出されたガルガンチュアとロボットはほぼ同じくらいの大きさで皆驚いている。

 

「倒した後に熱素石が出た♪そして"古ノ叡智ソノ鼓動ヲ受ケ継ギシ者"って称号貰った♪そしたらフレーバーテキストに、機械の神をも創造する古の技術を手にした者の証…神にも悪魔にもなれる知識の怪物ってヤバそうなことが書いてあったんだ♪」

 

そして召喚ではなく創造という謎スキルが登場、3人が同時に創造をしようとすると1番下に倒したボスの名前があり、それを作るために熱素石が2つ必要で、1つはドロップしたからギルドに寄付した熱素石を1つ使わせてもらえないか?という事だったらしい。

 

「うーん、ボク思うんだけど……このロボならガルガンチュアと同じ拠点攻防用NPCになるんじゃないの?」

 

「確かに!玉ちゃんの提案は移動用の大型の乗り物だよね?確かにこれじゃ……用途が限られる」

 

女性陣から否定的な意見が上がったのを確認した玉藻は立ちあがり白衣の襟を立てて

 

「その通りです、やまいこ様、茶釜様……しかし!この子は!車両としてもかなり優秀なんです!!ちょっとだけ待ってくださいね?………………あ、あった!……では!こちらをご覧ください!!」

 

円卓の間中央に投影されている3D映像が形を変えていく、みるみるうちに巨大ロボは巨大車両に変形した。

 

「此れこそが!我輩達with呂布が倒した隠しボス、その名もライジングソニッ○であーる!!我輩達が最初に遭遇した時は車両形態だったがなんとなんとなんとぉ!!HPが減るごとに合体、変形していきぃ!!最終的な形が人型巨体ロボというぅ!!我輩達のロマンと夢と愛!…後ちょっぴりの性癖が融合したナザリックの隠しキャラと成るのダァ!!!」

 

興奮からギターをかき鳴らしているガーネットを尻目に

 

「合体…」

 

「変形?」

 

「分離かぁ。」

 

合体・変形・分離という単語を聞いた何人かのギルメンが賛成派に傾いたのがわかったモモンガは、どうにかしようと周りを見渡し、ぶくぶく茶釜と目が合うがピンク色のアバターはふるふると首?を振る仕草を見せてから横に座っているネフィリムを見るようにまで促す

何だ?と、思いモモンガがぶくぶく茶釜の横に座っているやまいこを見ると、

 

「カッコいい!ねぇモモンガさん?ボク、アレ作るんだったら全力で賛成するよ?難しい事は考えずにとりあえず造ってから考えればいいよね!」

 

やまいこの弾む声を聞いた瞬間、モモンガは悟った……あっ、コレオワタ…と

 

その後も、会議が進むに連れ1人…また1人と陥落していき、多数決を取る頃には約8割(モモンガとぶくぶく茶釜他2人)が賛成派になっておりこれにてこの巨大ロボを作る事がほぼ確定してしまった。

 

「そう言えばこの子の名前はどうしようか?そのままライジン○ソニックじゃ味気ないし、折角だからナザリックかアインズ・ウール・ゴウンのどちらかの文字を入れたくない?」

 

やまいこが発言したのを皮切りに、ナザリックブレイカーとかは?…ナザリックホーク1号と2号とか!…ナザリックロボ…モモンガーZ!!これしかない!などいろいろな意見が上がったが最終的に分離形態をそれぞれナザリックアロー、ナザリックガードとして、合体後はナザリックガーディアンと呼ぶことになった。…………多数決で決め、後一歩でモモンガーZになりそうだったのにモモンガの必死の抵抗によりそれだけは避けられた。

 

 




今回のロボはトミ○の合体ロボですが中々の大きさで1/100サイズのガンプラと比べてもこちらの方が圧倒的に大きい……物差しで測ると全高約38cm
アストレイゴールドフレーム天が約20cm
約倍ですね。

うちにいるロボの中でも結構お気に入りです。

9月25日
ご指摘があり叔父を伯父に変更致しました。


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鬼娘誕生日?

玉藻ちゃんの娘が出来ました。(笑)

玉藻ちゃん勢力だけで中規模ギルドなら潰せそうな気が……




「………………わ〜〜…凄い…完成です……本当…2人ともゲームのまま…ふぁ〜………」

 

拠点NPCを作ろう!!と、言われ私が真っ先に思い浮かんだのが某無双ゲームの登場人物達で、鬼では私の作りたいNPCが出来ないんじゃないでしょうか?と聞いてみると外見は課金すれば自由に変えられるよ?と、返事が返ってきた。

ぷにっと萌え様やモモンガ様に私の特殊な種族"母なる大鬼"を活かす為に種族は鬼にしておいて、レベルは一体につき100レベルで2人まで作っていいと言われた。

 

もう私が作りたいNPCは決まっている。

鬼の字が入れやすいし男性キャラでは私が緊張してしまうという事もあり、どうせなら女性キャラで玉藻ちゃんの娘という事にしてしまおう!と、タブラ・スラマグディナ様やペロロンチーノ様達が盛り上がって設定をしてくれた。

 

まず最初は課金して外見を変える作業から行なった、ヘロヘロ様やるし★ふぁー博士達から教わったモデリング能力を駆使し、手伝いもあったので、1日で外見だけならもうすでに完成していた。

 

職業等はどうしようか悩んでいると、建御雷様が大図書館から参考になればどうぞ?と、三国無双の本を借りてきてくれた

読み込んでいる本ではあったが今一度読み返して私の理想を再現できるよう頑張ろう!と改めて決意した。

 

私が作ったNPCの1人目が王元鬼

ゲームでは秦の国の王妃であり言わずと知れた某無双ゲームの良妻賢母にてツンデレ?

鏢という投げナイフの様な武器を使用する女傑

欧州の貴族令嬢の様な外見をしている綺麗と可愛いに分かれる某ゲームの中で綺麗系に属する。

種族は真祖にして魔法をメインとして強化、近接戦闘は鏢と体術にした。

玉藻が直々に生み出した娘で双子の姉

 

2人目が呂玲鬼

某ゲームでは無敵の存在と化している呂布の娘をモデルにした北欧系の美女でクーデレ?

裏表がなく、言いたい事はズバッと言う歯に絹着せぬタイプ

武器は盾と剣、方天戟、居合刀でビルド的にはコキュートスを参考にしている為かなり強い

種族は最上位鬼(アークオーガロード)で筋力と体力がナザリックでもトップクラス

反面魔法耐性がほぼ無く装備や支援魔法で補わなければ第五位階の魔法でもダメージを負う

玉藻が直々に生み出した娘で双子の妹

 

1ヶ月ほぼ毎日ログインして夢の設定を実現する為アイテムを集め回った。

ログインしたギルドの皆様が手伝ってくれたおかげで予定より早く完成させることが出来た。

……何故か一緒に行けないことを悔やむ方が何人かいたようですが……(一緒に行くと必ずレアドロップが出るが時間が合わず泣く泣く断念した為)

 

「お?遂に完成したか!じゃあ俺のコキュートスと勝負しよう!そうしよう!」

 

設定魔?のタブラ様が最後の設定を終わらせて概要を口頭で説明してくれた。

聞く限り私が理想とする2人だ、あまりに嬉しくて声を掛けるがNPC故に返事がない事に気がつき少し恥ずかしくなってしまった。

それでも嬉しくてしっぽをぶんぶん振りながら彼女達の周りをぐるぐる回っていると、ログインした建御雷様が玉座の間の扉を開けた瞬間に大声で言った。

 

「面白いですね最近クエストばかりでしたし、じゃあ第六階層の闘技場でやりましょうか?」

 

「おっ?良いじゃん!俺やタブラさん、るし★ふぁーさん、建御雷さんが協力した呂玲鬼の実力見せてもらおうぜ!」

 

「私達女子組とぷにっと萌えさんが協力した王元鬼も一緒にやろう!相手はだれがいいかな?」

 

意外にもモモンガ様とペロロンチーノ様、ぶくぶく茶釜様が賛成の意見を示しトントン拍子に話は進み、闘技場にはいつのまにかほぼ全てのギルメンが揃い、目の前には建御雷様が作られたNPCのコキュートス様と私の作ったNPC呂玲鬼が相対していた。

 

「行けー!コキュートス!!新人にナザリックの洗礼を与えてやれ!」

 

と声高く応援する建御雷様

 

「ん?アレ神斬刀皇?建御雷さん何やってんの?」

 

「っていうかコキュートス最初からクライマックスじゃないか?フル装備じゃねぇか……。」

 

「しかし、武人であれ!と設定したのならば戦場に立った瞬間から女子供関係ない、善戦を期待する!」

 

他のメンバーから様々な意見が出るがそのまま試合を始める事となった。

 

戦闘は剣尖が響く良い勝負に見えたが呂玲鬼の魔法耐性の低さが仇となり、コキュートスの冷気の影響で徐々に体力が減っていき最終的にはコキュートスのHPが4割、呂玲鬼が1割という結果に終わった。

 

「…魔法耐性の低さが仇になりましたね、しかしそれを除けばコキュートスとも互角に渡り合える中々に強力なNPCじゃないですか?」

 

「おい……ラピッドスイッチ組み込んだのお前か?俺まだ再現してないぞ?」

 

「…………いや……あれ俺じゃねぇ、玉藻ちゃんが打ち込んでたプログラムの内の一つだと思う…今度教えてもらおう……」

 

「ナーベラルに職業クノイチ取らせたからアレ教えてもらおう!NPCの武器が瞬間に変わるとか面白すぎる!!」

 

モモンガ様が腕を組みながら呟くように言うと

未だ自分が再現できていない技術を目の当たりにした博士とDr.

続けて玉藻のお陰で自分のNPCがクノイチになれた事を喜ぶ弐式炎雷

 

次は王元姫の番だったのだが、久し振りにナザリックに侵入者が団体で到着した為、お流れになった。

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅ……良いタイミングで来てくれた。わざわざ偽情報をリークした甲斐があったようだ。」

 

襲撃者達を撃退したギルドの面々がログアウトしていくと最後に残ったタブラ・スラマグラディナが呟く

そして徐に王元鬼と呂玲鬼に近づくと設定を呼び出した。

 

そこには……

 

王元姫鬼

ゲームでは秦の国の王妃であり言わずと知れた某無双ゲームの良妻賢母にてツンデレ?

鏢という投げナイフの様な武器を使用す………………しかしユリ・アルファ、アルベド、セバスの3人と創造主である玉藻の前では甘えん坊になる。……………………母親である玉藻大好き

 

呂玲鬼

某ゲームでは無敵の存在と化している呂布の娘をモデルにした北欧系の美女でクーデレ?

裏表がなく、言いたい事はズバッと言う歯に絹着せぬタイプ

武器は盾と剣、方天戟、……………………実は昆虫フェチでエントマを見ると猫可愛がりする、恐怖公を心から尊敬し、コキュートスを見ると何処かが湿っぽくなる……………母親である玉藻大好き

 

「まったく、ペロロンチーノめ!賭けの負けをこんな形で精算させるとは…すまない玉藻ちゃん呂玲鬼はシャルティアの同類になってしまった。……まぁ、茶釜さんの甘えん坊設定もどちらもギャップを感じるから好きではあるのだが……」

 

仕方ない、気づかれたら謝ろう…そう言いながらタブラ・スラマグディナも仕事がある為、ログアウトしていった。

 

 

 




ギャップ萌えさんがとんでもないものを置いていきました。

それは呂玲鬼の性癖です……

気づかなければ呂玲鬼さんの転移後は確実に危険な感じになりそうですがどうなる事か…


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別れと出会いそして……

おつかれ様です

今回は玉藻ちゃんの少しダークな感じを出す為の布石?

になるかもしれない話になります、暗い感じになりますので嫌いな方は次回の投稿をお待ちください

それでもいい!という方はどうぞ


人は死ぬ……そう…人は死ぬのだ。

 

今日、両親がアーコロジー内のビルでテロに巻き込まれて亡くなった……

犯行声明も出ていたそうで犯人もすぐに捕まったそうだ。

 

警察署の霊安室でアインズ・ウール・ゴウンのたっち・みー様と伯父様、伯父様の生徒だったペロロンチーノ様とぶくぶく茶釜様が付き添ってくれた。

伯父様は沈痛な面持ちでお父様のほぼ原型の無い顔を見ており、私は美容に気を使って毎日顔にパックを塗っていた母親の顔…があった場所を見て言葉が出ず佇んでいた。

……爆弾テロだったようで……服装と、辛うじて残っていた身分証から身元が判明したそうだ。

 

 

 

…………気がつくとぶくぶく茶釜様に肩を抱かれて、アニメキャラクターの人形やポスターが貼ってある見たことのない部屋に居た。

 

「ココハドデショウ?オ父様ト…オ母様ハドコ?」

 

と、虚ろな瞳で私が質問をすると、ぶくぶく茶釜様は何も言わずに抱きつく力を強くするだけで言葉を返してはくれなかったが、その行為に人の温もりを感じた私は、「あぁ……"この人は"生きているんだ…」と、当たり前の事を考えていた。

そこで気がつく、"この人は"…………では誰が死んだ……お父様とお母様……そうだ……2人とはもう2度と会えないのだ…………。

そう自覚した時、瞳に光が戻り大声を上げて泣いた…それこそ涙が枯れるまで…………。

 

 

「………………はっ!………此処は?…」

 

いつのまにか泣き疲れて寝てしまったのだろう、寝ぼけて見知らぬ部屋で目が覚めた私は辺りを見渡す。

ガチャ、と扉が開いてぶくぶく茶釜様が入ってくる。

2人分の食事を置いていることから一緒に食事を食べようとしてくれているようだ。

 

「良かった、目が覚めたのね?昨日此処に来た時は目が虚ろになっていたから心配したのよ?」

取り敢えず食べなさい!と、笑顔とともに出されたのは、家ではあまり見ることのない確か……サンドウィッチという、パンに天然の食材を挟んだものだったはずだ、黄色とピンク色が見えることからハムとチーズみたいに見える。

戸惑っていると一口サイズに切り分けられたサンドウィッチが口に押し込まれる。

もぐもぐと咀嚼していると、ぶくぶく茶釜様が徐に語り出す。

 

「実は去年、家もテロで家族を亡くしてね?ほら、1週間ぐらいログインしなかった…って、玉藻ちゃんはまだ居なかったっけ?」

 

なんでもない事のように言うが、やはり辛いのか顔は哀しそうに見える………

 

「私も最初は塞ぎ込んで、一歩も外に出ないで部屋で泣いてたんだけど……ウチの弟が…ペロロンチーノが入って来てね?私にこう言ったの。」

 

『姉ちゃんいつまで悲劇のヒロイン演じてんだよ!明後日親父達の葬式やるから必ず来いよ!……このまま姉ちゃんまで居なくなったら俺も死ぬからな!』

 

って、そう言った後、綺麗にクリーニングされた私の礼服投げつけて来たから葬式の前にシメてやったけど!と、握りこぶしを作り、殴る動作を笑顔で繰り返すぶくぶく茶釜様

 

「それにさ?もしこのまま玉藻ちゃんが死んじゃったら今度は朱雀さんが後追っちゃうかもよ?」

少し冷静になれば分かる事だが伯父様も弟を失って私以外に血縁関係がある人間は居なくなったのだ…私も悲しんでばかり居られない。

奮起した私は、ぶくぶく茶釜様が用意してくれたサンドウィッチを食べ伯父様の所に行こうと部屋を出ようとした所をぶくぶく茶釜様に手を掴まれ止められた。

どうして?と、目で訴えると

 

「あーー……玉藻ちゃん?言いにくいんだけどさ?……シャワーは浴びた方が…いいかな?」

 

そう言われてぶくぶく茶釜様の部屋にある大きな姿見で自分の姿を見ると、髪はボサボサで服装もしわしわできちんと着られていないペロロンチーノ様の部屋で見つけた本の女性の様になっていた……すぐに取り上げられて中身は見ていないが……

恥ずかしくて顔を真っ赤に染めた私は、おずおずとぶくぶく茶釜様とお風呂に入って身支度をした。

…………着替えがない為、ぶくぶく茶釜様の服を貸して貰った…サイズはほぼ同じだったが胸のところだけがキツいと言ったら何故か頭を叩かれた。

 

「……ん?玉藻?良かった、少しは元気になった様だね?……ぶくぶく茶釜君に任せて良かったようだね……」

 

身支度を済ませて伯父様の家に行くと、伯父様は安楽椅子に座りパイプを吸いながら私を見てそう言った

まだ1日2日しか経っていないが少しやつれた伯父様を見てやはり伯父様も辛いのだと理解して先ほどまでの自分を恥じる

 

「伯父様は大丈夫ですか?少しお痩せになったみたいですがちゃんと食べていますか?」

 

心配しながら伯父様に聞くと奥の台所がある扉が開いて若い男性がトレーにハンバーガーをのせて現れた。

 

「朱雀さん、そろそろなんか食べないと玉藻ちゃん来た時怒られるぜ?……って玉藻ちゃんだよね!いや…マジでユグドラシルのまんまなのな?俺のことわかる?」

 

若い男性の方から歩み寄り、ハンバーガーののったトレーを伯父様の前の机に置いて私の手を取り興奮気味に上下に振る。

それを見た隣のぶくぶく茶釜様は恐ろしく低い声で両手を握り締めながら

 

「おい、弟……貴様は、空気を、読め…潰すぞ?」

 

と、言うと男性は怯えて股間を抑えながら後退り

 

「ご、ごめんなさい…お願いだからやめてください……もうあの痛みは耐えられないです。」

 

と、行って土下座した。

その光景を見て私はこの男性がペロロンチーノ様だと気がついた。

 

「いやぁ面目無い、やはり実の弟が死んでしまうのは流石に堪える、ぶくぶく茶釜君とペロロンチーノ君面倒をかけた…玉藻も悪かったね辛かっただろうに…私がもっとしっかりしないといけなかったんだがな。」

 

まだ疲れているのに無理やり笑顔にした様な顔で笑う伯父様にぶくぶく茶釜様もペロロンチーノ様も気にしないで、と笑顔で応じている

 

私は自分の中でもうけじめをつける事が出来た様で冷静に考える事ができた。

薄情と言われればその通りかもしれないが、泣いていても解決しない問題である為、今後は伯父様と暮らしたいという想いを伝えると伯父様は二つ返事で了承してくれた。

 

両親の葬儀も終わり、今まで父親が手配してくれていた私のリアルの仕事であるピアニストとしての活動は、ぶくぶく茶釜様の会社に所属して不定期にコンサートやアニメの楽曲の作成、編曲をする事で継続させる事になった。

仕事の話もまとまり、部屋に私とぶくぶく茶釜様、マネージャーとして支えてくれる事になったペロロンチーノ様の3人になった時ぶくぶく茶釜様が真剣な表情で

 

「私じゃ頼りないかもしれないけど……私は玉藻ちゃんの事妹の様に想ってる、だから玉藻ちゃん?私をお姉ちゃんと思って甘えてくれても良いんだよ?」

 

「あっ!…姉ちゃん狡い、俺だって玉藻ちゃんが妹みたいに思ってるんだから俺だってお兄ちゃんと思って甘えてくれても良いんだぜ!………………ん?玉藻ちゃんみたいな美人さんな義妹……ヤベッ、エロゲみた……カハッ……」

 

言うと続けてペロロンチーノ様も同じことを言ってくれた…嬉しくて泣いてぶくぶく茶釜様……いや、お姉ちゃんの胸に飛び込んだ私は悪くない筈だ。

ペロロンチーノ様改めお兄ちゃんに義妹と言われた時には少しだけ胸が痛くなった気がするが……嬉しくて心臓の鼓動が早くなったのだろうと思い、気にしない事にした。

 

2週間後、私はナザリックの玉藻としてまたユグドラシルにログインしていた

 

だが、今までと違い何かが確実に変わったのは気付いたが、それが何かは分からなかった。

 

それがナニカ理解できたのは、その後に起きたとある事件の時だったのだが……

 

その時の私は、また帰ってこれたナザリックで自分のしっぽをもふもふする事に夢中で考えもしなかった。




このままだとただの善人になってしまうのでちょっとだけオーバーロードらしさ?

を出してみたかったのと玉藻ちゃんとぶくぶく茶釜さんとペロロンチーノさんを転移?に巻き込むには何とか一緒に居る理由を付ける為最初期から構想していた話になります

此処から数話を挟んでようやく原作開始となる予定です。


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目覚めた敵意

おつかれ様です

ストック連投します。

玉藻ちゃん覚醒?回ですあくまで一次的なもので悪堕ちとかではありません しかしトラウマを刺激されると出やすくなるようです。


両親の死から5日程してユグドラシルに復帰した私は、お姉ちゃんとお兄ちゃんと3人で動く事が多くなった。

はじめこそ急にお兄ちゃん呼びされたペロロンチーノ様改めお兄ちゃんは、ギルドのとある同盟からキツく絞られ、茶釜様改めお姉ちゃんはやまいこ様や餡ころもっちもち様に質問攻めにされていたが、2人と伯父様、後は纏め役であるギルド長のモモンガ様しか事情を知らない為上手く誤魔化してくれた様だ…私も気を遣われるのは嫌だったが、せっかく出来た新しい兄姉を様付けで呼びたくなかった為押し通した。

今日もアップデートがあり何処かで新しいクエストが発生したとの通知が運営さんからスマートフォンに届いた為、リアルでマネージャーをしてくれているお兄ちゃんと現在同じ仕事(一般向けアニメの声優業)場で働いているお姉ちゃんと一緒に帰宅した。

 

明日は3人ともオフの為、一日中ユグドラシルをやる予定だった私たちは、仕事があるという伯父様と待ち合わせをして私の作ったご飯を4人で食べて談笑していた。

 

「そう言えば、今日玉藻と茶釜君の出ているアニメを見ていたら学生達がちょうど入ってきて「教授もアニメ見るんですね?」なんて言ってきてね?ヒロインとサブヒロインが可愛いと言っていて嬉しくなって…彼女達は君達の先輩と私の姪だよ、と教えてやったら鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていたよ。」

 

あぁ、楽しかった、と笑う伯父様はお父様とお母様が亡くなる前の伯父様に戻った様だった。

その後は現在の仕事の話や最近のユグドラシルの話で盛り上がっていたが伯父様が、そろそろ戻って論文の内容を確認しなければならない、という事でお開きになった。

 

「伯父様?最近お忙しいようですがお身体は大丈夫ですか?」

 

心配して両手を前に組んで伯父様の顔を見上げると、伯父様は私の頭を大きな手で昔のように撫で大丈夫、と笑って帰って行った。

 

伯父様の乗った車が見えなくなるまで見送ると、お姉ちゃんが

 

「じゃあそろそろ始めよっか?」

 

と、言うと

 

「おうよ!最新クエスト見つけてやろうぜ!」

 

お兄ちゃんも笑顔で続いた。

 

 

…………しかしこの日の出来事が私の"変わってしまった部分"を炙り出す為に誂えたような出来事だったのは、私の幸運がある意味で良い様に働いたのかもしれなかった。

 

 

 

ユグドラシルにログインした私は第9階層に新設された部屋でスタートすると私のNPCである王元鬼と呂玲鬼に声を掛ける。

内容は日によって変えている、反応しない彼女達に挨拶するのはお人形遊びの延長と言われるかもしれないが、この娘達も私の大事な家族なのだから何らおかしいことはない。

 

「王元鬼、今日は外寒かったから風邪引かないようにね?」

 

と、言いながら伝説級装備のマフラーを装備してあげたり

 

「呂玲鬼?また今度建御雷様の所のコキュートス様と試合させてあげますからね、楽しみにしていてね?」

 

と、装備を調整しながら、戦闘狂?という動くのが大好きな性格に設定してもらった娘に、また試合させてあげますよーと伝える。

 

一通り話した後広間に行くとお兄ちゃんとお姉ちゃん、更に今日はモモンガ様がいらっしゃった。

 

「やぁ、玉藻さんお疲れ様、今日は運営から届いたメールのクエストやるんですよね?良かったら私も参加して良いだろうか?」

 

モモンガ様が挨拶のアイコンと共にそう言ってきたので、了承の意味を伝える為の笑顔アイコンを出しながら

 

「こちらこそよろしくお願いします、モモンガ様が一緒だと戦闘がスムーズに進むので助かります。」

 

と嬉しそうに言うと、モモンガ様が黙ってしまう。

どうしたのだろうと思い、頭の上の狐耳をぴょこぴょこ動かすと

 

「おい!このヘタレ骸骨!俺の義妹に欲情してんじゃねぇぞ!」

 

「なんだと?この変態バードマン!焼き鳥にしてやろうか?」

 

上等だ!PvPで決着をつけてやる!!と、意気込んでいる2人の間にいつのまにか立っていたお姉ちゃんが、突き出された2人の拳をピンク色の両手?で掴むと私に聞こえない音量で何かを言った。

 

「あー、そう言えば!新しいクエストなに系なんだろうな〜楽しみだな〜、なっ?ペロロンチーノさん?」

 

「そ、そうだなモモンガさん、俺ちょっと装備取りに部屋戻ってくるわ!ちょっと待ってて!!」

 

喧嘩をやめてくれた2人に安堵してお姉ちゃんの方を見るとピンク色の手?でgoodのハンドサインを作っていた。

 

 

「今回の新規クエアルフヘイムか……人間種の勢力圏だからあんまし行きたくないんだけどなぁ……」

 

「大丈夫ですよお兄ちゃん!私アルフヘイムの妖精様達と一緒に戦いましたから!」

 

異業種PKが未だに多いアルフヘイムに行くのを戻ってきたペロロンチーノが渋ると、玉藻は建御雷達と戦った戦士の大半がアルフヘイムの妖精達だったので大丈夫だと嬉しそうに伝える

 

「そういや玉藻ちゃん?今何レベル?俺ってば最近あんまりログイン出来てなかったから60レベルぐらいまでしか覚えてないんだけど?」

 

「えぇと…この間源次郎様とクエストに行った時に陰陽師を取って…その次にぷにっと萌え様と仙人を取ったので……今ちょうど90レベルです。」

 

「おお!もう90レベル台まで行ったんだ!じゃあ今度私の知ってるもふもふクエスト行こうか?羊の毛刈りクエなんだけど?」

 

談笑していると、

 

「そう言えば玉藻さん、この間ぷにっと萌えさんから玉藻さんに渡すように頼まれていたアクセサリー装備です。」

 

と、モモンガ様が1つの腕輪を渡してくれた。私はそれを受け取ると服装備を緑色の着物から巫女服に変えて受け取ったばかりのアクセサリーを着ける。

 

そしてステータスを確認しておく。

 

「うん、これであのコ達も呼べますね!」

 

満足そうに言う私を見てモモンガ様は疑問の顔アイコンを出していた。

 

アルフヘイムに移動した私達4人は特に何事も無くクエスト開始場所まで到着した。

そこで受けたクエストはスローター系クエストと言われる…言わば皆殺し系のクエストだった。

以前ならその"皆殺し"と言う単語に反応していた私がすんなりと受け入れたのをお姉ちゃんとお兄ちゃんは不思議そうに見ていたが慣れたのかな?と、考えてあえて聞かなかった。

 

クエストが進むに連れて出てくるモンスターが強くなってくるが、モモンガ様の的確な指示とお姉ちゃんのヘイト管理と防御、更にはお兄ちゃんの援護射撃に加えて私の符術と仙術に敵うはずもなく残りが少なくなってきた。

私は開始直後から、ある術を詠唱しながら戦っていたが必要ないかな?と考えており、

敵の数が後20匹ぐらいになった時事件は起きた。

 

ードッカッ〜〜ン!!!!ー

 

私が符術のクールタイムの為、一旦下がっているとモモンガ様、お姉ちゃん、お兄ちゃんの居たフィールドが突如として大爆発する。

私は爆発した瞬間に両親の事が思い浮かび頭が真っ白になって立ちすくんでしまった。

 

大きな白煙が上がって視界が悪く何も見えない…………白煙が晴れてきた頃、反対側の出入り口から人間種と思われる6人組が入ってきた。

 

「おーおー、異形種の皆さんごくろー様!お陰で楽できたぜ!」

 

感謝するゼェとか異業種がアルフヘイムなんかきてんじゃねぇよ!とか言っている。

先頭の人が何かを足蹴にしている…アレはナンダ?……アレハ…………

 

「高かったんだぜ?この"高性能爆薬ぅ、ヴァルキュリアの失墜様様だな!課金で一撃必殺のこんな良いアイテム買えるんだからよ!!」

 

お姉ちゃんを足蹴にして男が高笑いをあげる。

 

…………やめて…………

 

「うう、まさかこんなトラップ有るなんて……」

 

お姉ちゃんが悔しそうに呻く、そこに男が、

 

「おい?このピンク色スッゲェ可愛い声してんぞ?おい!異形種!殺されたくなかったらもっと良い声で鳴きな!そしたらお前だけは見逃してやるよ!」

 

お姉ちゃんを足蹴にしたまま男が更に酷いことを続ける。

 

……………………やめテ…………………

 

「……っておい?こいつらナザリックのモモンガとペロロンチーノじゃねぇか?やっば!俺ら英雄じゃねぇか?あの"爆弾"良い仕事してんなぁ、まぁ発動に時間かかるからこういった対戦型のスロータークエでしか使えねぇけどな?」

 

モモンガ様とお兄ちゃんも蹴られて転がっている。

 

……………………………………やメテ………………………………

 

「よっしゃ!そしたら拘束してもう一度爆破してやろうぜ?動画撮って投稿してやろうじゃねぇか!題名は…………アインズ・ウールゴウン爆破テロ(爆笑)でいいだろ!」

 

…………………………………………………………ヤメロ!!!!!!………………………………………………

 

いつのまにか準備が整っていたのか私は叫びながら超位魔法を発動させる。

私のユニーク種族"母なる大鬼"のパッシブスキルの1つで今までに倒した、若しくは仲間にした鬼属性を持つNPCや召喚獣を発動時間は掛かるが同時に呼び出す事が可能(時間は掛かるが一体につきMP消費は10)

を始めて使用し鬼の軍勢を喚び出した。

 

召喚したもの達の先頭に立つのは、いつのまにかアイテムボックスから飛び出した赤兎馬に跨った戦鬼神呂布、私の大事な娘の王元鬼と呂玲鬼、その他にも建御雷様と共に倒した酒呑童子や茨木童子、閻魔大王、更にはヴラド公やコラボボスのアルクェイドなどのレイドボスやフィールドボスをMPの尽きるまで召喚した。

 

このスロータークエストは実はバグが残っていて討伐対象モンスターが一体でも残っているとリスポーンポイントが死亡地点に設定されてしまうようになっていた…………それが意味するところは………………

 

「おい!運営にメール送れ…………つ……」

 

「駄目だ!メール打つ間に……カハッ…………」

 

「もう勘弁してくれ!レベル無くなっちま……う……」

 

討伐対象モンスターはモブであり基本的にボスがいるエリアには近づかないように設定されている。

そして広場には玉藻の召喚したボス群…男達のリスポーン地点は同じく広場…ようは無限地獄であった。

 

だが男達にはレベルがあり、どれだけ範囲攻撃を行ってもフレンドリーファイアが無いユグドラシルではモモンガ達に当たることはあり得ない、故に敵対する者達にとっては地獄だった。

最後の敵対者が命乞いをするように玉藻の顔を見ると、玉藻は目のハイライトを消して凄惨な笑みを浮かべ、しっぽをゆったりと振りながら方天戟を大きく振りかぶる

 

「やめ……化け…物……」

 

最後の敵対者が玉藻の一撃で首を跳ね飛ばされ消滅するとその余波で討伐対象モンスターが死んだのかクエストクリアと画面が現れた。

クエストが終わると召喚された者達は次々と消えていった。

その光景を見ていたのは玉藻と爆弾の影響で動けないモモンガ達3人…………後は男達が置いていったカメラだった。

 

後日その動画がアップされると玉藻の評価は賛否両論だった。

曰く敵対者には容赦しないドSプレイヤーだ、とか

アイツら人間種にも悪さするギルドだったからいい気味だ!、とか

仲間の危機に全力をもって立ち向かう仲間思いのプレイヤーだ、とか

 

 

スレッドの最後に一言だけコメントが載っている……

あの目は狂ってる…いくらゲームでも人の首を躊躇なく断ち切れる奴がそんなにいるか?

…だが玉藻の笑い顔を見たプレイヤーはその1人だけであり、その後恐怖が現実の身体を蝕むようになり、ユグドラシルどころか人生のログアウトをしてしまうことは誰にも分からなかった。

 




最後の敵対者を切るシーンはラナー王女の笑い顔を某無双ゲームの姫様で思い浮かべていただくとイメージしやすいかと思います。

そろそろ転移したいなぁ?


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エピローグからのプロローグ

ストック連投

最後少しだけ微妙な表現があるので注意です。

台風の影響が大きいようで土嚢積みを手伝わされました作者です

皆さんのところは大丈夫でしょうか、くれぐれも気をつけてください。


急げ急げ急げ急げ!

 

私とお姉ちゃん、お兄ちゃんの3人は事務所の車で自宅に向けて急いでいた。

何故なら私とお姉ちゃんの全国コンサートツアーの最終日とユグドラシル最終日が重なったからだった。

 

ホテルにユグドラシルの簡体を持ち込むことが出来なかったのと練習の為、3ヶ月ほどログインしていなかったのだ

故に、後2時間、家まで30分くらい掛かる距離をお兄ちゃんは事務所の車を半ば強引に借り、約10分に短縮した。

家に着くや各自素早く自室のヘッドギアを起動してユグドラシルにログインする。

 

ユグドラシルにログインした私はロイヤルスイートの自室に到着していた。

ログインしているメンバーを見ると私の他にはモモンガ様とお姉ちゃん、お兄ちゃん、伯父様もいらっしゃる…後ヘロヘロ様も……あっ、今ログアウトしてしまった……

白抜き文字で表示されていたヘロヘロの名前が黒くなったのを見て最後にご挨拶したかったのですが……と思いながら、モモンガ様と伯父様の反応がある円卓の間に急ぐ

 

「すいません遅れました!!」

 

勢いよく扉を開けると、伯父様は専用の安楽椅子に座り、モモンガ様はスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取り感慨深げに眺めていた。

続いてお姉ちゃんが飛び込んできて、お兄ちゃんは普通に歩いて来た。

 

「乙!モモンガさん、早速で悪いが俺ちょっとシャルティアに会ってくるから離れるぜ?」

 

後30分くらいになったら玉座の間に集合して写真撮ろうぜ?と、言って手を振りながら歩いて行った、

 

「じゃあ私も大図書館に行ってティトゥスにでもあいさつしてくるかな?」

 

「じゃ、じゃあ私は"古の緑都"行って皆んなに会って来ますね?」

 

私と伯父様もモモンガ様とお姉ちゃんを2人きりにさせる為にそそくさとその場を退散する

円卓の間を離れた私はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い第6階層の闘技場の反対側にある岩山の裂け目に入る

そこを通り抜けると私の目の前には、広大な大地と豊かな自然に囲まれ緑色を基調とした古代中国風の都市が見えた。

 

「さてと…みんな元気でしょうか?」

 

久し振りに訪れる自分の城にただいま!と大きな声で言いながら入って行った。

私の領域と化しているこの城にはロボット生産工場があり、鉱石さえあればなんでも作れる。

あまのまひとつ様が引退する時に、譲り受けた第2工房もこの生産工場に組み込んであるため武器製造も可能だ

 

「懐かしいですね…恐怖公の乗り物を博士やDr.と決める時もめたんですよね……結局アークとディレルの2機になったんだっけ?」

 

うろ覚えの記憶を思い出しながら進むと、住居部分の住処が見えてくる、そこに門番として立ちはだかるのは、特殊な召喚魔法を用いて顕現させている戦戦鬼呂布だ。

 

「いつもありがとうございます、もう逢えなくなると思うと寂しいですね…これから……が有るのかはわからないですがお元気で…」

 

と、今までの労をねぎらい、宮殿の中に入って行く

宮殿の中では私とるし★ふぁー博士、Dr.ガーネットが得たスキルの創造で文字通り創造した昆虫型二足歩行ロボット達が各所に点在していた。

思えばこの子達も最初は恐怖公様の乗り物兼遊び相手として作成した、あの2機が始まりだ…あの2機はまた喧嘩しているのだろうか?

最後にもう一度会いによっても良かったかもしれないが生憎と時間が無い、足早に歩いて行くと目当ての宮殿最奥深部にある豪華な扉を開ける。

 

其処には、私の娘として作成したこの古の緑都の領域守護者でもある2人が完全装備で立っていた。

ぷにっと萌え様曰く、わたしと娘達3人それに呂布が居れば上位プレイヤー10人以上同時に相手出来るコンビネーションが取れるのだという事だったが、それが発揮できたのはナザリック大規模襲撃事件の一回だけだった……。

 

物思いに耽っていると思いの外時間が経っていたことに気付いた私は2人に近付き声を掛ける。

 

「王元鬼、不甲斐無いお母さんで御免なさい、今日でお別れになってしまうのよ…………私にもっと力があれば……貴方達だけでも生きられる場所を確保してあげられたのに本当に御免なさい、そしてありがとう……こんな私の娘として生まれてくれて……もし貴方がこのまま何処か別の場所で生きられるのなら、私はこの命を賭けて貴方達を守ってみせます。」

 

そう言いながら王元鬼の頭を撫で呂玲鬼の方へと向き直る。

 

「呂玲鬼…最後にもう一度コキュートス様と試合させてあげたかったけどもう時間が無いですね……残念でしょうけどもし、また逢えたら今度は思う存分楽しませてあげますから……次、あれば良いですね?ううん、きっとユグドラシルが無くなっても貴方なら大丈夫!きっと何処かでまたコキュートス様と一緒に試合出来るわ…………そう言えば…貴方の為に魔法耐性強化の指輪買ったんだった!どうせ最後だし着けてあげるわね?」

 

と、言いながら呂玲鬼のイベントリを開いてユグドラシル閉鎖記念として売られていたいくつかのアイテムを装備させていく

王元鬼にもいくつか買っていたのを思い出し、装備させ一歩下がり2人を見る。

 

「…………ふふっ、よく似合ってますね……それじゃあ2人とも今までありがとう、これからもずっと姉妹仲良く元気でね?」

 

玉座の間への待ち合わせ時間になった為、2人に最後の挨拶と一礼して玉藻はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使用した。

 

玉座の間の前に転移すると扉の前にお兄ちゃんと伯父様が居て、扉の隙間から玉座の間を覗いていた。

 

「良し!行け!姉ちゃん…………あぁ、ダメか…………。」

 

「茶釜君もこういうところは乙女だね?…ん?やあ玉藻、残念だがそろそろ時間だ、この続きは明後日やる予定のオフ会でやろう。」

 

覗き魔2人を軽くたしなめてから玉座の間の扉を開けるとお姉ちゃんはびっくりしたように飛び上がった。

 

玉座の間にはアルベドさんとプレアデス達…それにセバスさん?だったかな?NPCが並んでいた。

最後になるのだから彼等も一緒に居させてあげたい、と言われて断る理由もない為了承した。

 

「それにしても玉藻ちゃんのしっぽって気持ち良さそうだよな?前からずっと触ってみたかったんだけど……もう最後だからさ?垢BANされても問題無いし一回だけ触らせてくれない?」

 

モモンガ様とお姉ちゃんが話し込んでいる横で、お兄ちゃんは私のしっぽを指差して触って良いか確認する。

何故かお姉ちゃんとやまいこ様、餡ころもっちもち様以外のギルドの方は皆んな触ってくれなかったが元から色んな人にこのもふもふを味わって欲しかった玉藻は嬉しそうにどうぞ?とペロロンチーノの方へしっぽの生えた臀部を突き出す。

 

「おーい、そろそろ時間だから写真撮るぞ!」

 

伯父様がスクリーンショットを撮るというとお姉ちゃんとお兄ちゃんは同じように焦り

 

……50……

 

……51……

 

……52……

 

「モモンガさん!実は私!」

 

……53……

 

……54……

 

「やっべ!触る前に終わっちまう!」

 

……55……

 

「チーズ!」

 

……56……

 

……57.……

 

お兄ちゃんは写真を撮る瞬間に私のしっぽに手を伸ばし…………

 

……58……

 

……59……

 

手が触れ…………

 

……00……

 

……01……

 

た。

 

「……ひっ!……きゃ…ぁ…キ……モチ…イィ…………お兄ちゃん……ちょっと強すぎるかも……あふっ…………ひんっ!」

 

触るというか握り締められて揉みしだかれているしっぽから今までに無い感覚が湧き上がってくる。

 

「ご、ごめん!……って?!玉藻ちゃん?スゲェエロい顔してる??えっ?表情動いてね?」

 

取り敢えずペロロンチーノは垢BANはされなかったが、ぶくぶく茶釜と死獣天朱雀とモモンガの3人から鉄拳制裁をくらい床に突っ伏した。

 




急な原作開始……

ギルメンエピソードなどは番外編として書く予定になりますので

取り敢えず原作開始です。


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動き出す世界、溢れ出る……何か?

おつかれ様です

皆様の所は台風の影響凄いですか?

私の家の方ではトンネル?が水没して車が立ち往生しているようです。

くれぐれも気をつけてください。


「…………はぁっ、……はっ…はっ……ぁ……ぅ…んっ……」

 

玉座の間にペロロンチーノが今まで観てきたどんなエロゲや本より艶めかしい顔で浅い呼吸を繰り返す玉藻

その声は玉座の間に響き、なんとも言えない空気を漂わせていた。

 

「…………あー、あの玉ちゃん?大丈…夫?」

 

そのシチュエーションに慣れていたぶくぶく茶釜が、いち早く正気に戻り玉藻の状態を確認する為、玉藻に声をかけ、右肩に手?をかけた。

 

「……はぅ!…………はぁ……はぁ…ぁ…ぁ…………」

 

玉藻はぶくぶく茶釜の手?が触れた瞬間にビクッ!と身体を震わせるとしっぽと耳をくたっとして、浅い呼吸のまま気を失ってしまった。

さすがにここまでくるとぶくぶく茶釜も焦ってしまいどうしようかモモンガに確認しようとすると

 

「だ、大丈夫でございますか?玉藻様!?」

 

と、聞き慣れないが何処かしっくりくる女性の声が聞こえた。

 

「「「「?!??」」」」

 

自分達以外のプレイヤーは居なかった筈で、背後から聞こえる声に驚いて振り向くと其処には

 

「も、申し訳ありません!至高の御方々の会話を妨げてしまいました!このアルベド、どのような処分でもお受けいたします!!」

 

と、モモンガ達が振り向いた先には、ナザリック大墳墓の守護者統括者アルベドが絶望したような表情で土下座していた。

 

「えっ?…アルベドが動いてる?」

 

「と、言うか……愚弟が玉ちゃんのしっぽを揉みしだいたのに垢BANされてないじゃないか!…………あれ?」

 

「いや、そういう問題ですか?これ明らかにおかしいですよ?……な、GMコールも効かない!?」

 

死獣天朱雀がアルベドが動いてる事に驚き、ぶくぶく茶釜はペロロンチーノが運営に垢BANされていないことに腹を立て、運営に通報しようと、コンソールが開かない事に気がつき疑問を浮かべ、モモンガはGMコールを試すが一向に繋がらない…モモンガは其処で異常を確信する。

 

「モモンガ様……申し訳ございません…わたくしは、じーえむこーるなる言葉は存じません、差し支えなければ教えていただきたいのですが?」

 

アルベドは心の底から困ったような顔でモモンガに質問をする。

 

「……むっ…構わんが……それよりも…セバス!お前はプレアデスから1人を連れてナザリックの外がどうなっているか?後はこの世界の生物で交渉可能な者が居るかを確認して来るのだ!範囲はナザリック大墳墓の現在地から半径10キロ以内とする!行け!!」

 

アルベドへの返事もそこそこにモモンガは、支配者ロールで感覚的に指示を出す。

するとセバスは、「畏まりましたモモンガ様、では…私めが調査をしてまいりますので、皆様は暫しお待ち下さいませ。」

と、言いながら優雅に一礼して探知に長けていて且つ戦闘もそれなりに出来るルプスレギナを連れて玉座の間を出て行った。

 

その他のプレアデスに第9階層の警戒指示を出し玉座の間にはモモンガ、ぶくぶく茶釜、ペロロンチーノ、死獣天朱雀、玉藻、アルベドのみになると何を思いついたか、モモンガはアルベドを自分の前まで来させて一言二言会話すると急に胸を揉んだ。

 

「…はぅ!…あぁモモンガ様ぁ……どうぞ…お好きにしてくださいまし……」

 

と、満面の笑みと期待に満ちた潤んだ瞳を向けてくるアルベド

 

「………………おい…そこの変態骸骨、オモテ行こうか?」

 

と、表情は判らないが声と雰囲気……後は身体の周りから発生しているピンク色のオーラで怒っていると思われるぶくぶく茶釜、対照的な2人にモモンガは詰め寄られていた。

 

その後、何とかぶくぶく茶釜を宥めてアルベドを他の階層守護者を呼びに行かせた頃、床から死獣天朱雀の手でリビングアイテムのソファーに移動させられていた玉藻の耳がぴくっ!と動き、ゆっくりとした動作で玉藻が体を起こす。

 

「………………あれ…?私……寝て?……あっ!お姉ちゃん、まだ時間あるんですか?」

 

少しばかり寝ぼけていた玉藻は何処か遠くを見つめていた、だんだんと意識がハッキリしてきたのかキョロキョロと辺りを見回してぶくぶく茶釜を見つけると時間はまだ大丈夫?と、質問する。

先程の行為は憶えていないようだ。

 

「時間は……どうなんだろう?……たぶんまだまだ大丈夫だと思うんだけど?」

 

ぶくぶく茶釜もまだ現状を把握しきれていないため、曖昧な返事を返すと玉藻は、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンのついた手を出して、

 

「それではちょっとだけあの子達に会ってきますね?」

 

と、言って転移して行ってしまった。

 

どうしようか焦っているとモモンガが、リアルラックがカンストしている玉藻なら悪い事にはならないだろう…と言い、取り敢えず集合場所に指定した第6階層の闘技場へと転移して行った。

 

………………気絶するペロロンチーノを残して…………

 

 

 

古の緑都…………先程来たばかりだが何故だろう?花の匂い?風が金色の髪としっぽを撫でていく……あれ?こんなに五感が再現されていたっけ?疑問に思いながらも異変が起きたと気付いていない玉藻は意気揚々と宮殿目指して歩いて行く。

 

「……おかえりなさいませ…プロフェッサー玉藻。」

 

其処には、恐怖公に贈ったコのプロトタイプであるアークビートルが恭しく一礼してくれた。

あまりにも玉藻の想像通りだったので、玉藻は脳内補完して声が聞こえたのと勘違いして、

 

「…プロフェッサー?……良い響きですね!それでは今度からはプロフェッサー玉藻と名乗りましょうか、ありがとうアーク。」

 

アークビートルに礼を言うと、返事を聞く前に娘達が待っているだろう部屋へと歩を進める玉藻……その背後には無数の昆虫型ロボットがアークビートルの後ろに整列して最敬礼を贈っていた。

 

「さっきは時間がなくてあまり触れ合えませんでしたし、最後だから3人で写真でもとっておきましょう。」

 

部屋の扉の前に到着した玉藻はそんな事を呟き、しっぽを左右に振りながら扉を開ける。

 

「おがぁさまーー!私達ぼぉずでないでーー!!」

 

扉を開けた瞬間、玉藻は誰かに抱きつかれ、そこそこのボリュームを誇る自身の胸に誰かが飛び込んで来た。

 

「えっ?…えぇ…?」

 

混乱していると飛び込んで来た人物が顔を上げ、玉藻と目が合う……其処には、綺麗な顔を涙と鼻から溢れ出す悲しみで濡らした娘の1人王元鬼が居た。

どういう事?何で動いてるの?と、思っていると王元鬼は涙声で言葉にならない言葉をひたすらに繰り返している。

 

「ん?母上様、最後では無かったのか?……あぁ、もしや最後だからコキュートス殿とエニシを結ぶ許可を頂けるのか?それならば今すぐにでも参りますぞ?」

 

泣き続ける王元鬼を他所に背後からひょっこりと顔を出した次女は真顔で玉藻にそう告げると、玉藻の腕を取って「さぁ行きましょう!直ぐにでも、さぁさぁ!…………あ…想像しただけで下着が……」などと言う、後半は聞こえなかったが……

 

泣き続ける王元鬼を宥めているとモモンガ様からメッセージが来た、何やらNPCが動き出していて自分達もアバターの姿になってしまったらしい…………ゲンキとレイキが目の前で動いて喋っている光景を現在進行形で体験している事を伝えると2人も闘技場に連れてくるように言われた。

 

「あ、あのっ!ゲンキ?レイキ?モモンガ様が闘技場にお呼びなのだけど一緒に行く?」

 

そう聞くと

 

「いぐっ!」

 

「おお…そこまで手筈を整えて頂いているとは……流石母上様、もちろん参ります。」

 

泣きながら元気に返事をする王元鬼と、いつのまにかメイン武器の1つである方天戟を取り出して素振りをしながら微笑む呂玲鬼を連れて行くため、

 

「…じゃあゲンキ?お願いして良い?」

 

と、聞くとコクッとうなづき、王元鬼はゲートの魔法を唱え闘技場へと続く道を開いた。

そしてやる気満々の呂玲鬼、玉藻、最後に泣き腫らした王元鬼の順番でゲートに入って行った。

 




王元鬼と呂玲鬼からは忠誠心以外のものも溢れ出た様です?

そしてしれっとメダルロボット達を追加


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あの人は今?

お疲れ様です、台風の影響で近所の木が倒れて一日中外に出れなかった作者です。

某リズムゲームはストーリー解放しましたが翌日の仕事が……


王元鬼が開いたゲートをくぐると其処にはモモンガ様とお姉ちゃんが並んでアウラとマーレをあやして?いるところで、伯父様は自身の作成したNPCで司書のジャンヌさんと本を片手に語り合っていた。

私が転移して来た事に気がついたモモンガ様が近づいてくる

 

「玉藻さん!大丈夫かなとは思いましたが心配していたんですよ?2人がいるって事は古の緑都に行っていたのでしょうが、まだ何が起こったか分からないのであまり別行動をしないで下さい。」

 

「申し訳ありません、勝手な行動をしてしまって……」

 

モモンガ様の言葉に、私は異常事態に気が付かず勝手な行動をした事に対して謝罪を口にすると、

 

「いや、私達にも何が何だか分からないのが現状ですし、今後同じことが無ければ大丈夫ですよ?」

 

優しい口調でモモンガ様に言われたのでホッとして、緊張でピンッ!と伸びていたしっぽから緊張が抜けて垂れる。

落ち着くと、皆の視線が私の右手に縋り付いて嗚咽を漏らしている王元鬼に集中する。

視線に気づいた王元鬼が慌てて佇まいを直そうとした時、闘技場の入り口に新たなゲートが開いて中からはお兄ちゃんが作成したNPCで守護者最強との呼び声も高いシャルティア・ブラッドフォールンが日傘片手に現れた。

 

「あら?妾が一番乗りでありんすか?……?!ぶくぶく茶釜様?!死獣天朱雀様も?!……玉藻母様まで!!!」

 

アウラとマーレに気が付いたシャルティアは他の守護者か来てない様だったので勝ち誇ったように言うと、視界の端にマーレを飲み込むピンク色のナニカ?=ぶくぶく茶釜様を発見して驚いていると少し離れた柱の陰に大図書館の司書を務める娘……確かジャンヌ?が居た…珍しいなぁ…などと思いながらジャンヌの相手の方へ視線を移すと其処には、ナザリック最年長で見識の高さNo. 1と言われている死獣天朱雀様もいらっしゃるではないか?!

…………ペロロンチーノ様は居ないのか…と肩を落として振り返ると全ての鬼族の母である玉藻母様が、私と同じ真祖の王元鬼に縋り付かれながら頭を撫でていらっしゃる。

 

はしたなくも、大声を出してしまった私に気がついた玉藻母様が手招きしている。

振り返るが誰も居らず、私を呼んでいるのだと気がついて、アウラに見栄を張るためだけに着けてきた胸パットがズレるのも気にせず全力で、未だに笑顔でしっぽを振りながら手招きをしてくれている玉藻母様の下へと走る。

 

「………はぁっ……はぁ……た、玉藻母様で……ありんす……か?……ほ、本に…んで……しょうか……」

 

意外と遠かったのか、全力疾走した私は息が切れて辿々しく玉藻母様に本人かどうか聞くと、母様は首を小さく右に傾けて「ん?母様?まぁ良いか……はーいシャルティアちゃん、玉藻ですよー。」と言いながら私の脇に両手を差し入れて抱き上げてくれた。

 

……抱き上げられて感動していると左側から恐ろしいまでの殺気を感じて視線を少しだけ移すと泣き腫らして血走った目で睨む王元鬼の姿が見えた気がしたが、見なかった事にして玉藻母様に抱き上げられた幸せに身を委ねていた。

少し寒くなってきた気がした時、闘技場の入り口から蒼白い甲殻に覆われた鎧武者の様な姿が見えた。

 

「ナンダ?御方ノ前デ騒ガシイ…………死獣天朱雀サマ!?ブクブク茶釜サマ!?……ナント!!玉藻サママデイラッシャルトハ……オオ!今日ハ素晴ラシイ日ダ……。」

 

と、鎧武者改めコキュートスは、モモンガ以外のギルメンが居ることに感動していると、

 

「……コキュートス、母上様から許可を頂いたら付き合ってくれるのだろう?建御雷様からは「コキュートスに嫁?…アッハッハ!良いじゃないか!玉藻ちゃんが許可したらつがいにして良いぜ!」と、御許可は頂いて居るのだから……」

 

当たり前の様に呂玲鬼がコキュートスの隣に陣取り、そのままでは届かないのか、慣れた動きでコキュートスの右の2番目の手を伝ってコキュートスに耳打ちをしていた。

 

玉藻は何を話しているのか気になって聞いてみようとシャルティアを抱き抱えたまま2人に近づく、心なしかコキュートスが焦っているように見える玉藻は緊張をほぐす目的で

 

「コキュートスさんもいらっしゃい?」

 

と、歓迎する為に笑顔で話しかけた。

 

『マ、不味イ……玉藻サマハオ怒リナノカ?守護者最強ノシャルティアガアソコマデ、グッタリサセラレルトハ……』

コキュートスは呂玲鬼の件で玉藻がお怒りだと思いシャルティアの次は自分だ!と、考えて先手必勝!とばかりに土下座を敢行した。

と同時に自分の入って来た入り口の1つ右隣の入り口からデミウルゴスとアルベドが入ってくる。

 

「……おお!これは素晴らしい!至高の御方々に戻って来ていただけたとは…このデミウルゴス、これに勝る喜びはありません。………………それでコキュートス?君は何をしているのかな?」

 

知恵者の悪魔も、友人でもある蟲の王が土下座をする理由までは思いつかなかった。

 

 

 

各守護者から忠誠の儀を受けたモモンガ達は闘技場から円卓の間に転移して、各守護者からのあまりの高評価……いや、崇拝や信仰を受けて混乱していた。

 

「やばい……あいつらガチだ…何だよ端倪すべからざるって……聞いたことないよ……」

 

「流石の私も世界一の見識者とは思ってないのだが……あの期待値の高さは新鮮だったな……うん、いっそ目指してみるか?」

 

モモンガは頭を抱えて先程まで守護者各位に言われていた言葉に悶え、死獣天朱雀はいい事を思いついた!、とばかりに両手をぽんっと叩いている。

 

「いや〜〜まさかの展開!私、神をも従わせる美声!敵味方全ての視線を集める歌姫にして要塞!……そう言えば…これだけ聞いたら超時空的な要塞私1人で出来るじゃない!私最強!」

 

「…………そうか!母なる大鬼だからシャルティアちゃんが私の事を母様って呼んだのか…じゃあ父様はお兄ちゃん?…………そう言えば、お姉ちゃん?」

 

評価の高さに喜びを隠せないぶくぶく茶釜を尻目に考え込む玉藻は自分の種族を思い出し成る程!と、死獣天朱雀と同じ様に両手をぽんっと叩きある事に気付きぶくぶく茶釜に聞く

 

「そう言えば……お兄ちゃんは何処に居るんですか?」

 

頭を抱えていたモモンガ、何やら物思いにふけっていた死獣天朱雀、浮かれるぶくぶく茶釜はその一言で忘れていた人物を思い出す。

 

「「「ペロロンチーノ(弟)忘れてた!!」」」

 

円卓の間にその様な叫びが聞こえた時、

 

「……………………あっ、なんか今…イベント逃した気が…………。」

 

玉座の間で1人のバードマンが死獣天朱雀による耐性無視の麻痺で未だに横たわっていた。

 

 

 

 




ペロロンチーノがナザリックに認識されるのはいつの日か……

くふーっ!さんはモモンガ様に夢中でペロロンチーノの存在は忘れていた模様です。


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黒棺の阿吽

おつかれ様です

おかげさまでUA30000までもう少し……

原作見ている人がこんなの出ててもいいなぁ、なんて思って頂ければ嬉しいです。


ペロロンチーノを回収する為に急いで玉座の間の入り口に転移した4人は急いで扉を開けた。

 

「たーすーけーてーー……俺が悪かったよう…『多分』もうしないから麻痺といてよー……」

 

扉を開けると玉藻にセクハラ?同意していたのでスキンシップ?して3人から殴られた後のうつ伏せ状態で呻くように助けを求めるペロロンチーノの姿があった…多分という心の声は聞こえなかったが……

その姿を見た玉藻がペロロンチーノに駆け寄ると、虚空に手を差し入れてアイテムボックスから1枚の符を取り出す。

 

「我が声に応えよ…彼の者に聖なる癒しを………」

 

符術士の魔法を発動させてペロロンチーノの状態異常を解くと、ペロロンチーノはすくっと立ち上がり玉藻の手を握って感謝を述べる。

 

「ありがとう玉藻ちゃん!やっぱり君は天使の様だ!……ずっとあのまま放置されるのかと思って怖かったよ…」

 

「ごめんなさいお兄ちゃん、麻痺してるとは思わず、更には居ないことに気がつかなかった私を許してくれますか?」

 

いいよ、許すよ!と、笑顔で応じるペロロンチーノに玉藻は少し顔を赤らめながら、

 

「それより…お兄ちゃん…私…あの時何があったかよく覚えて居ないのですが……確かお兄ちゃんが私のしっぽを触ろうとしていましたよね?」

 

こうなった原因を覚えていない玉藻が恥ずかしそうにペロロンチーノへ質問する。

 

「え?…いや、俺が玉藻ちゃんのしっぽを触ったら玉藻ちゃんなんかスイッチ入ったみたいな感じになってさ?俺も調子に乗って触り過ぎたみたいで気を失って倒れちゃったんだよ?」

 

ねえ?……あはは、などと言ってモモンガ達に同意を求める。

 

「………そう…ですか…………それでしたらお兄ちゃんは満足行くまでしっぽを堪能していない訳ですよね?でしたら…今度は心行くまでもふもふしてみませんか?……あまり覚えていないのですが凄く気持ち良かったと思うんです、あれからしっぽを触ると…何だか身体が熱くなってきてナニカが身体の奥から湧き出してくる様な……何か不思議な感覚に捉われるんです。」

 

そう言いながら昨夜の巻き戻しの様にしっぽの生えた臀部をこちらに向けてくる玉藻…しかも今回は前回と違い、熱に浮かされて艶やかで煽情的な表情をして、現実と同じ蒼い瞳を潤ませこちらを煽る様に臀部と金色に輝くしっぽを振る。

 

「あ……………良いのかい?……」

 

「…………ど…どうぞ……」

 

ペロロンチーノは我慢できずに玉藻のしっぽへ手を伸ばす。もう少しでしっぽへ手が届く所で

 

「アウトーーー!!愚弟!!アウトー!」

 

「ペロロンチーノォ!!貴様という奴ぁ!!」

 

いつのまにか武器を装備したぶくぶく茶釜とギルド武器を装備したモモンガに壁の反対側に叩きつけられる程の勢いで殴られた。

 

「あっ…………もう少しで…………」

 

「そんなにもふもふして欲しいなら私がしてあげよう!……ほーれぇ!!もふもふもふもふ!」

 

「きゃあ?!お姉ちゃん?や、辞めて…擽ったい…ふふ………ぅん………あぅ…」

 

玉藻がペロロンチーノに触ってもらえず残念そうにしていると、ペロロンチーノを殴り飛ばしたぶくぶく茶釜がピンク色の触手?を伸ばして玉藻のしっぽをもふもふし始めた。

 

ぶくぶく茶釜は玉藻のしっぽをもふもふしていると声の質が変わってきたことに気づき手を離す。

すると、気持ち良くなってきたきた所で辞められた玉藻は、潤んだ瞳でぶくぶく茶釜を下から覗き込んで無意識に

 

「…………もっと……もっと……触って……」

 

と、呟いたが…ペロロンチーノに制裁を追加しに行ったぶくぶく茶釜には聞こえなかった。

 

 

「おほんっ!気を取り直して今後の方針を明らかにしたいんですが…誰か意見はある方はいらっしゃいますか?居ましたら挙手をお願いします。」

 

制裁が済んだお兄ちゃんを含めて円卓の間に場所を移した私達はモモンガ様の意見で今後の方針を決めることにした。

そこで、ユグドラシルと同じく先ずは情報を集めようということになり、各員が意見を出していた。

 

お兄ちゃんは空から近隣の探索を願い出て、シャルティアと一緒にする事で許可され、伯父様はシャドウデーモンを使いこの世界のありとあらゆる知識を集める事を提案した。

お姉ちゃんは特に考えつかなかったのかモモンガ様と遠見の鏡の操作法を模索することになった。

 

そして私は……

 

「ねぇ玉ちゃん?ホントに行くの?一緒に行ってあげたいけど"あそこ"は……"あそこ"だけは絶対ムリ!!なんならしもべに伝言頼めば良いんじゃないの?」

 

お姉ちゃんが壮絶な拒否感を示し、ついて行きたいけど無理!と青い顔?で言う。

 

「大丈夫ですよお姉ちゃん、"あそこ"には私の造った子達もいますから。」

 

と、返事をして頼み事をする為に、第2階層のある領域に私は足を運ぶのだった。

 

 

 

「…恐怖公の"アレ"ちゃんと機能するでしょうか?…それにしても、相変わらず暗くて足下が……」

 

薄暗い廊下を歩きながら目当ての場所へ進んで行く、途中ある人物?の眷属が現れて矢印を作ってくれたので迷いはしていないはずだ、ユグドラシルの時にも訪れては迷っていたので眷属達の道案内は有難い

薄暗い廊下を先に進むと広間に出る、その更に先に扉があるのだが扉の両脇にカブト虫とクワガタ虫の石像がある

歩を進めて石像の近くまで来ると石像に強力なライトが当たり照らされる。

石像がガラガラと音を立てて崩れると石像の中から青と赤の虫型ロボットが現れた。

 

「おうおうおう!お前さんはココがナザリック大墳墓1の紳士!恐怖公の居城と知っての狼藉か!!」

 

「アークダッシュ…もう少し丁寧な対応をしませんか?公にも創造主にも恥を………ハッ!…プロフェッサー玉藻様!?お出迎えをせず失礼致しました、このディレル…どの様な処分もお受けします。」

 

紅い装甲に遠距離重視であるアークダッシュの侵入者に対する言動を窘めていた蒼い装甲に近接格闘重視の構成をしているディレルビートルは侵入したのが創造主の玉藻だと気がつき膝をつきながら平身低頭する。

アークダッシュもその言葉で気がついたのか頭の突起が地面に刺さるのも気にせず土下座をして謝った。

 

「ディレルもダッシュも構いませんよ、顔を上げてください…恐怖公に用があるのでちょっとだけ通してもらえませんか?」

 

玉藻はアークダッシュの突起部を優しく地面から引き抜き続けてディレルビートルの手を取り立たせる。

 

「そんな!無礼を働いた我等に手など差し伸べ無くて頂かなくとも!」

 

「そうだぜプロフェッサー、解体されてもおかしくねぇ失態だ…」

 

自らの犯した失態を悔やむ二体に玉藻は微笑を浮かべて

 

「貴方達は恐怖公の守護をせよ、という私のお願いを聞き入れてくれただけなのだから…御礼を申し上げることはあったとしても処分するなんて…そんな事は、もしモモンガ様が仰ったとしても聞き入れません!……2人ともご苦労様。」

 

二体はバイザー部から「「おおっ、冷却液が……」」と言って目にあたる部分を拭うと扉を開き黒棺への道を開いた。

 

 

 




玉藻ちゃんのスイッチがもう1つ追加されました

黒棺の門番は某鳥人間曰く、なんだよあの反則的な火力?!連携も速いし!合体・分離するし!

だそうです。

能力等は後日追加します、


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そして今日も怒られる……

おつかれ様です

本日も無事に投稿できました。

おかげさまで週間ランキングに載ってました!

ちょっとだけ嬉しかったですね。

楽しみにしている方が居ると考えて続ける励みになります


玉藻が扉を開けるとそこは一面の暗闇だった…………ん?ガサガサ……?

 

私に続いてアークダッシュとディレルビートルが入室すると黒一色で統一されていた部屋の壁面と天井そして床の黒が音を立てて、部屋の中央に移動して行く。

 

「……アークダッシュさんにディレルビートルさん…どうしました?侵入者が来た…という話でしたが………!?た、玉藻様!?おおっ!これはこれは、この様な場所までご足労いただくとは、誠にありがとうございます。」

 

して、何か要件ですかな?、と眷属の殆どを下がらせ、先程とは一変して一面の白い部屋と化した黒棺の領域守護者である恐怖公は、突然現れた玉藻に対して驚きながらも気を取り直して恭しく礼をした。

 

「えぇ…察しが良くて助かります。…実はナザリック大墳墓に異変が発生しておりまして、是非恐怖公のお力を借りたいと思い来てしまいました。……本来なら事前に連絡をするべきだったのでしょうが……恐怖公もダッシュもディレルもごめんなさい。」

 

「な、なんと!玉藻様!お顔を上げて下さい!我々領域守護者は言わば玉藻様の僕、何なりとお申し付けくださいませ。」

 

事前に確認してから来ればこんな迷惑にはならなかったかもしれない、と思った玉藻は、恐怖公とダッシュ、ディレルの3人?に頭を下げると3人?は驚いた様に顔を上げて下さい!と、急いで玉藻の手を取り立ち上がらせる。

 

恐怖公に偵察の為、眷属達を貸してくれるように頼むと「至高の御方々の役に立つのであれば喜んで御協力させて頂きます。」と快諾してくれた為、その後も結構な時間雑談をしてしまったので、準備の邪魔をしては悪いと考え、「そろそろお暇します」と告げる。

 

「……おおっ、それでは玉藻様折角ですので造って戴いた"彼"に乗って帰られてはいかがでしょう?"彼"でしたら他の至高の御方々にも受け入れていただけると思いますので……彼もそう望んでいるはずですのでよろしければ…ですが?」

 

恐怖公の提案された博士、Dr.、私の力作であるあの子に乗れる喜びに玉藻はしっぽをちぎれんばかりにぶんぶん振ると恐怖公は苦笑を漏らし、

 

「ふふっ、そこまで至高の御方…しかも創造主に喜んでもらえれば彼も本望でしょう、今喚びますので少々お待ちを……」

 

と、言うと恐怖公の足もとに金色に輝く魔法陣が描き出される。

魔法陣が完成すると一際強い輝きを放って中から身体の殆どを金色と黒に染められた4足の脚を持つ機械が現れる。

 

「彼こそが!そう、彼こそが!…3博士の御力で強化されたシルバーコックローチ(通称SC)改め、GG(ゴブキリーゴールド)フレームです!」

 

其処には……前脚は鉤爪のような金色で鋼鉄の爪を生やし、後脚は人間で言う爪先部分が鋭く尖り、巨大な一対の羽は獲物逃さぬとも言いたげに大きく開いている……全体的に大きく、5メートルはあろうかという巨体が……GGフレームが現れた。

 

るし★ふぁー博士が造りし秘密のロボシリーズ第8弾だったか?100年以上前のロボットアニメを元に四足歩行形態を作ったと、言っていた気がするが……GGフレームを見た瞬間から私の心はわくわくドキドキが止まらなかった……あれ?いつの間に白衣を着たのだろう?…まぁいいや、取り敢えずこの子に乗って第9階層まで観光しながら帰ろう、モモンガ様とお姉ちゃんの邪魔はしたくないしね?

などと言い訳を自分の中でしながら、夢にまで見た……自分が乗れる程大きなロボットに興奮を隠しきれず、頬は興奮でほんのり薄紅色に染まりしっぽはこの子の話を聞いた時から自分からは見えないがうっとおしくなるほど振られているのを感じる。

 

「それでは良い旅を玉藻様。」

 

恐怖公とアークダッシュ、ディレルビートル、それと恐怖公の夥しい数の眷属に見送られて四足歩行の機獣に乗って黒棺を後にする。

あっ、人?文字…………またのお越しをお待ちしております!……

 

「うんっ!また来ますね!」

 

白衣に袖を通し、GGフレームに乗った私は見送りをしてくれている人?達に、いつもより少しだけテンション高く別れの挨拶をした。

 

 

第4階層を飛んでいるとガルガンチュアさんの沈んでいる地底湖、その先にある岩山に偽装した格納庫内のナザリックガーディアンの様子を外から見て目立った損傷は無かったので中には入らずに立ち去った。

 

途中にあった岩山に、博士やDr.のエンブレムが薄っすらと描かれていたような気がしたが、この時はそこまで気にしなかった。

 

 

第5階層に入るとすぐにコキュートスと雪女郎達……後は何故か呂玲鬼が待っておりGGフレームに指示を出して地面に降りる。

 

「オオ、玉藻サマ恐怖公カラ連絡ヲ頂キオ出迎エニ参リマシタ。」

 

恐怖公から連絡を受けて来てくれたらしいコキュートスに礼を言うと畏まられた。

 

「それで母上?彼はいったい?」

 

何故か居る呂玲鬼の質問に、恐怖公の所に配備されている、るし★ふぁー博士の力作です!と、自慢げに答えると

 

「…恐怖公の?…どことなく昆虫に近い気がするが……いや、やはり濡れないから別物か…………」

 

それを聞いた呂玲鬼は、何か考え込む表情で顎に手を当てて何やら呟いていた。

 

「それでコキュートスさん?何か急ぎの用事でしょうか?」

 

呂玲鬼と雪女郎達相手にGGフレームの良さを力説していた玉藻はふと、コキュートスがわざわざ入り口で出迎えてくれた事に疑問を持ち少し離れた場所で此方を伺うように見ている、蒼白に輝く外骨格の偉丈夫に問い掛ける。

すると本気のお兄ちゃんも真っ青な速度で私の前に走って来たコキュートスは

 

「ア、アノデスネ?……エ…エエト……ソノ……呂玲鬼殿ト…ワ、ワタシノ……」

 

「ん?レイキとコキュートスさんと……どうしたのですか?」

 

いつもの自信に満ち溢れた男らしいコキュートスの態度とは打って変わって、しどろもどろ…辿々しいコキュートスの言葉を聴き返すと

 

「イツモ手合セヲサセテ頂キ……誠ニアリガトウゴサイマス…………。」

 

「?いいえ、此方こそレイキがご迷惑をお掛けしてごめんなさい…迷惑だったら言ってくださいね?」

 

さすが建御雷様の作ったNPC……戦うのが好きなんだな…わざわざ御礼を言って来るなんて…と、感心していると

 

「「ああ…」」

 

「…………ちっ!……ヘタレがっ…………」

 

と、後ろの方で雪女郎達と呂玲鬼が何かを小声で言っていた。

 

 

その後何故か呂玲鬼と雪女郎達に怒られている?コキュートスにそろそろ戻らないとモモンガ様達にご迷惑がかかるので…と言ってGGフレームに跨る……呂玲鬼はどうするのか聞くと、

 

「母上、すまないがこの後……少しだけ……本当に少しだけ…コキュートス殿とO・HA・NA・SI…があるのでもう少ししたら緑都に戻って居るよ。…………さぁコキュートス殿?行こうか……」

 

「マ、待テ、レイキ……玉藻サマヲ御見送リシナイノハ不敬ニ辺ル「少し黙ろうか?」………ハイ……」

 

と、コキュートスさんとまた試合でもしたいのか外見では分からない鬼の怪力でコキュートスさんの首?を掴んで引きずって行く、途中コキュートスさんが何かを言おうとしたが笑顔で振り向いた呂玲鬼に何かを言われると大人しくなりそのまま雪原に消えて行った。

 

雪女郎達に、お土産としてカキ氷とアイスクリームを貰ったので無限の背負い袋に入れてGGフレームに指示を出すと急上昇して第9階層まで行ってもらった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃………………大白球にて

 

「ヘタレ、ヘタレヘタレヘタレヘタレ…………」

 

「ス、スマン……玉藻サマヲ前ニスルトドウシテモ緊張シテ……」

 

「私の初めてを奪っておいてそのヘタレ具合はナンダ?……アッ?」

 

「……イ、イヤ…アレハ…レイキガオレノ寝テイル所ヲイキナリ襲ッテ…………」

 

「その後で責任取るって言ったな?後は母上の許可だけなんだが?そこの所理解しているのかな?カナ?カナ?」

 

全てが氷で出来た大白球の奥、コキュートスの部屋にて完全に目の座った鬼の女性が数少ない氷以外で出来た椅子に座って、立派な体躯に反して土下座しながら弱々しく言い訳を続ける蟲の王が居た。

 

その部屋の扉の外では雪女郎達が……またやってる…と、思ったかは定かではない。

 

 




コキュートス……もう手を出していた模様……

呂玲鬼…ぱないの!

っていう感じですかね?


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初めての……

おつかれ様です

書けるときに書く!

コレですね?と、いった境地に達した作者です。

某バンドリズムゲームのハードは難しいですよ……

ん?エキスパート?そんなの知らん!


GGフレームに乗って第6、7、8階層を駆け抜けて、モモンガ様とお姉ちゃんが実験している部屋へと向かう途中にナザリックの副料理長であるピッキーに出会った。

 

「これは玉藻様お疲れ様です、ご帰還後に御挨拶が遅れて申し訳ございません。」

 

と、キノコ頭を下げてそう言ってきたピッキーに玉藻は

 

「いえいえ、此方こそ…以前はあれだけ厨房をお借りしていたのに……良かったらまた後日使ってもいいでしょうか?あのアイテムの効果がまだ残っているか確かめたいので……」

 

「おお…なんと畏れ多い…そんな許可など取らなくともナザリックの全てが至高の御方々の物、ご自由にお使いください……後…出来れば新しい料理を教えていただけますか?玉藻様の御料理は私の未熟な腕では理解出来ないかもしれませんが、ナザリックの為、是非ご教授願いたいですので……」

 

ユグドラシル時代にバフ料理研究の為、ナザリックの厨房に篭もって何時間もひたすらに料理を作っていた記憶があり、私の持っている非戦闘向けの神話級アイテム"美食神 海原夕斬の前掛け"の効果がこの世界でも機能するかを確かめたいと思っていた私は厨房の使用許可を求めるとピッキーは自由に使っていいと言ってくれた。

畏まっているピッキーに、それでは時間が出来たら伺いますね?と、言い

 

「そうだ!もし効果がそのままだったらみんなで一緒にお食事会をしましょう!私が作りますから…えぇと、ピッキーさん達NPCもご飯は食べられるのですよね?」

 

良いことを思いついた!と、提案すると

 

「おお…………まさか至高の御方が御手から作って頂いた料理を頂けるとは……このピッキー……感無量で言葉が出ません……」

 

急に涙ぐむピッキーに驚きながら「効果がちゃんと発揮した場合の話ですよ?」と念を押すと

 

「いいえ玉藻様、我ら僕にはそのお気持ちだけでも十分な褒美となります。」

 

などという会話をしてピッキーと別れた玉藻は、とりあえずモモンガとぶくぶく茶釜が居るであろう部屋に入ると部屋の空気が張り詰めていた。

 

「助けには行かない…この世界の騎士達がどれほどの強さかもわからない現状ではわざわざ助けるメリットがない……故に見捨てる。」

 

「そうですね…もしこの騎士とかが150レベルで私達よりも強いとかだったらヤバイですもんね?」

 

モモンガ様とお姉ちゃんは私が部屋に入った事に気付かず遠見の鏡を見ながら会話している。

2人の後ろにいるセバスが苦しそうな顔をしているような気がして私は近づいて話し掛ける。

 

「セバスさん?どうしましたか…何処か具合でも悪いのですか?」

 

「…!?玉藻様…お帰りに気が付かず申し訳ありません…ですが体調などは問題ありません、御心配をお掛け致しました。」

 

セバスは一瞬驚くと佇まいと表情を整えてなんでもないかのように振る舞う。

セバスの視線の先はモモンガ様とお姉ちゃんの前にある遠見の鏡に向けられている様なので、未だに私に気がつかない2人の間に割って入り鏡を覗く、すると其処には祭りが映っていた……楽しい祭りではなく……阿鼻叫喚の血祭りが……あれ?……なんで私……目の前で人が殺される光景を見ているのに……"こんなに心が安らぐのだろう"……

 

ぼーっと、その光景を見ているとお姉ちゃんに「お帰り玉ちゃん、大丈夫だった?」と、聞かれる。

お姉ちゃんもこの光景を見て何も感じない様だ…普通に話しかけてきた

 

「えぇ、恐怖公は快諾してくれたので明日にも出発出来るそうです……それでこれは?」

 

私も普通に返事をして鏡を指差して質問する

 

「うむ…使用方法が分かって色々見ていたのだが……先程この村が襲われているのを見つけてな?観察していたところだ。」

 

モモンガ様が答えてくれるが、モモンガ様もとくに何も感じていない様だった。

言い様のない微妙な空気が流れる中、モモンガ様がセバスさんの方を見て……「なっ…たっちさん……」

と呟く、そして鏡の鏡面に映し出される映像が変わり幼い姉妹が騎士に斬り殺されようとしている様だった…姉妹が引き剥がされ姉の方は服の前側を掴まれ破り捨てられた……妹だろう小さい方も身体を触られている様だ……流石に不快感を感じていると

 

「……茶釜さん…もしもの時の為、ナザリックをお願いします…セバス!アルベドに完全武装で私の下に来るように伝えろ!」

と、モモンガ様はセバスさんに指示を出し、「私は先に行く」と、行ってゲートを開いて転移していった。

私とお姉ちゃんがあっけにとられていると先に正気に戻った私は、

 

「私のスキルなら1日8回まで致死ダメージを受けても大丈夫です!私も行きます!」

 

と、お姉ちゃんに告げて消えかけているゲートに飛び込んだ。

 

⦅心臓掌握⦆

ゲートを通過した瞬間に、モモンガ様が得意な死霊系魔法が唱えられると

襲われていた姉妹の姉の方に跨っていた騎士は、上半身裸で下も鎧は脱いだ姿のまま剣だけを取って距離を置く

しかし、モモンガ様の魔法を受けて呆気なく崩れ落ちる……どうやら死んでしまったようだ……

その直後モモンガ様の背後にいた騎士が斬りかかろうとするのを、私が取り出した方天戟で弾こうとする

すると私の振るった方天戟は、熱したナイフがバターを切るようにスッと剣を切り裂き、そのまま鎧ごと騎士を真っ二つにしてしまった……私はこの時初めて人を殺したのに嫌悪感を感じなかった…………むしろ……今迄がオカシカッタノダ、と思えるくらい心が震えて私の意識外で、もふもふのしっぽが嬉しそうにはためいていた。

 

その後モモンガ様が騎士の死体からデスナイトを作成し、私は援護として召喚用の符を1枚取り出し、2メートルくらいで人型の50レベルNPCオーガロードを召喚した。

ユグドラシルの時は符を使うと目の前にポンッと現れたがこの世界では違うらしく、五芒星が描かれるとその中から浅黒い肌をした何処かの映画俳優の様な筋骨隆々な男性が立っていた……角は2本生えていたが……

このオーガロードは「主人よどう致しますか?」と、聞いてくれたので

 

「デスナイトと一緒に村を襲っている騎士を殺して……そうだ…何人か残しといて下さい…情報が欲しいので。」

 

と、言うとオーガロードは「畏まりました。」と言って走って行った。

 

後ろで声が聞こえたので振り向くと、いつのまにかアルベドが到着していた様だ……見た目が黒い重騎士なので姉妹には先程の騎士より怖そうだが……

アルベドは怯える姉妹を他所にモモンガ様と話をしている。

私は姉妹の姉の方の服がぼろぼろなのに気が付きアイテムボックスから伝説級のちょっと綺麗な服を取り出し姉の方に差し出す。

 

 

 

 

「……えっ?えぇと、これを着ていいって言う事です……か?」

 

エンリは混乱していた、何故ならこのまま辱められてから殺されると諦めていたところを、豪華なローブを身に纏ったアンデットが助けて?くれ、その後に現れた綺麗な……この世で1番美しいと言われても疑えない容姿と綺麗な毛並みの狐耳としっぽを持った、自分とそう歳の変わらなそうな女性が現れて、女性の2倍はありそうな斧の様なものを振ると騎士を真っ二つに斬り殺した。

助かったのか?と思った私に身も凍る様な寒気が襲う……あぁ、これで終わりか……と諦めようとした、その時に私の方に振り返った女性が「どうぞ?」と言いながら綺麗な服を差し出してきた…先程まで感じていた寒気が無くなり安堵した私はぼろぼろにされた服を脱いで差し出された服を着る……何故か身体の奥が暖かい……

 

 

 

幸いにも大きな怪我をしていなかった姉妹……エンリとネムと言うそうだ、から話を聞いて状況を整理する。

どうやら襲われる理由は分からないそうだが金目当てでも無さそうだし……なにかがおかしい気がする……

考えていても仕方ないと思った私達はエンリ達に防御魔法とアイテムを施して村に向かった。

 

 

 

 

その頃…………とある城塞都市上空

 

「……ん?!」

 

「どうしたんでありんすか?ペロロンチーノ様?」

 

偵察を行っていたペロロンチーノが何かに気付いた様に言葉を漏らすのを同行していたシャルティアが聞き、どうしたのか聞くと

 

「……何か…………そう、何かまた重要なイベントを逃した気がする…………例えば少女の聖水の薫りを嗅ぐ機会とか……脱衣イベントとか…………」

 

…………ペロロンチーノは今日も自分好みのイベントにスルーされるのであった。

 




転移後初の対人戦を経験した玉藻ちゃん

異形種なのと九尾狐さんの特性で快感を感じる様です。

友好的に接した相手には優しい様ですが……


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村の救援、そして…………狂気再臨

おつかれ様です

ストック連投中です、いつのまにか日間ランキング40位台に載っていました!

これも読んでいただいた皆様のおかげです。

後書きに前回感想でいただいたカルマ値のみですが、掲載しておきますので興味がある方はご覧下さい


村に向かう途中、所々に村人らしい死体が横たわっているのを散見するが道にゴミが落ちている様な感じしかしない……どうやら本格的に人間を辞めてしまったらしい…………

話しながら歩いていると私の召喚したオーガロードからメッセージが飛んでくる。

……どうやら5人ほどの騎士を残して他は全滅させた様でデスナイトはどうしたか聞くと、騎士を皆殺しにしようとしたから現在進行形で取り押さえているそうだ。

モモンガ様に伝えるとデスナイトにメッセージを送ったのか直ぐに大人しくなったそうだ。

 

「お待ちしておりました女将様、ご要望通り数名生かしてありますがいかが致しますか?」

 

オーガロードと私達の事を遠巻きに眺める村人達の表情には助かった安堵よりも先程の騎士より得体の知れない者達に今度は何をされるのだろうという未知の恐怖が浮かんでいた。

 

「ありがとうオーガロードさん…どうぞ、モモンガ様……」

 

右から順にオーガロード、私、モモンガ様、アルベド、デスナイトの順に並ぶと小声でモモンガ様を促して挨拶してもらう

 

「…………初めまして………私は、…………私はアインズ・ウール・ゴウン諸君の主人に伝えるがいい、この辺りで騒ぎを起こすな、同じ事が起きれば今度は貴様らの国で同じ事が起こるぞ?……と」

 

「……行け」と、モモンガ様が言い放つと蜘蛛の子を散らすように一目散に同じ方向に逃げる騎士達を眺めながら横にいるアルベドさんにお願いをする。

 

「……アルベドさん、少し良いでしょうか?」

 

「はい、何でしょうか玉藻様?」

 

「……恐らくですが騎士達が逃げた方向に彼らの本隊があると思うのですが…偵察に向かえる方はいらっしゃいますか?」

 

「勿論でございます、エイトエッジアサシンをこの村の周りに配置しておりますので3体ほど向かわせます。」

 

「お願いします……そうだ、オーガロードさんの話だと、1人だけ虐殺に参加していなかった騎士さんがいらしたそうなのでその人は生かしてあげてください、ちょっとだけお話をしてみたいので……」

 

「……畏まりました、エイトエッジアサシン達にそう伝えておきます。」

 

「よろしくお願いしますね。」

 

そう小声で話をしているとアルベドさんから質問される

 

「恐れながら玉藻様?モモンガ様はいつからアインズ・ウール・ゴウン様と改名されたのでしょうか?私共僕には伝えるまでもない……という事なのでしょうか?それともモモンガ様の本名を名乗る事が何かの不利益に繋がるのでしょうか?私のような無知な僕では到底理解仕切れないのですが……同じ至高の存在の玉藻様ならば理由をご存知かと……」

 

不安そうに、何か至らない点が……それとも知らずに不敬な真似を…それとも何かお考えが……と思案を巡らすアルベドを不憫に思った玉藻は村長を呼んできます、と立ち去った村人を見送るモモンガにメッセージを送る。

 

「モモンガ様…いえ、アインズ様とお呼びすれば良いのですか?アルベドさんが困惑していますので宜しければギルド名を名乗った理由を教えていただけませんか?」

 

「あぁ…すいません、もしもこの世界に他のギルメンが居た時に分かりやすいかな?程度の感覚だったんですが……いきなり神様の名前が変わればそれは混乱しますよね……軽率でした…反省してます。」

 

「いいえ、そんな理由があるとは気づきませんでした…すると今後はアインズ様とお呼びすれば宜しいでしょうか?」

 

「対外的な時はアインズでお願いします、ギルメンだけの時はモモンガで結構ですよ?」

 

村長らしき男性が来たのでメッセージを切ると、絶賛困惑中のアルベドにアインズ様の理由を説明する「くふーっ!かっけぇ!アインズ様さすが…かっけぇ!」と黒い重そうな鎧を物ともせずに飛び跳ねるアルベドさん

 

飛び跳ねるアルベドさんを微笑ましく見ていると、騎士の内3人が敵本隊に戻った事がエイトエッジアサシンからのメッセージで伝わった。

敵本隊は50人程で先ほどの騎士とは違う鎧を着ているそうだ…………何かの偽装工作か…………と、考えているとエイトエッジアサシンから追加報告があるとの事でそのまま聞く。

 

「先ほどご所望の人間ですが……名を呼ばれていたものが2名いた為両方捕らえております、いかが致しますか?」

 

取り敢えず会ってみれば分かるだろうと思い、私はアルベドさんに一言告げてその場を離れる

村から森の外れに到着すると2人の騎士が木に蜘蛛糸で絡め取られていた。

 

「御機嫌よう…騎士様……私は玉藻、ただの狐です。」

 

私がゆったりと挨拶をすると2人の内1人は「お金!お金あげましゅから!たしゅけて!たしゅけてくだしゃい!!」と、涙をはじめとした顔から出る液体が全て出ているのではないか?というような醜い顔で懇願して来たので

 

「……貴方ではありませんね?第一に職業騎士じゃなくて商人…………しかも悪徳商人じゃないですか…」

 

「さようなら…」と言うと同時に斧で首を跳ね飛ばし黙らせる。

返り血で少し汚れた薄緑色の着物の少し乱れた裾を直し、気を取り直して目当ての人物に話し掛ける。

 

「貴方はあの村で1人だけ虐殺行為に参加しなかった……理由を教えていただけますか?」

 

顔に付いた返り血を笑顔でぺろっと舐めながら未だ口を開かない騎士様に問い掛けると

 

「……殺してくれ…………俺には……俺にはもう生きている価値が無い……貴方の手で葬って頂きたい。」

 

泣きそうな顔で殺してくれ、と言う騎士様に興味が湧いた私は続けて理由を聞く

何度か同じ問答を続けると、諦めたかのように騎士様が話し出す。

 

「……初めは神の為だと……法国の民の為になるのだと言い聞かせて殺していたが…1つ前の村で……俺が斬り殺した男が居た……その後に少女が飛び出して来てその男に縋って泣き叫んだ……そのただ泣き叫ぶ少女を俺の仲間は斬り殺した……そいつの顔は悪意に満ち満ちていたがふと水溜りに映る自分の顔を見た時に気がついてしまった…………俺も同じ顔をしている……と…それからは……今貴女が殺したベリュース隊長に罵られながらも誰も殺せなかった……」

 

心の底から後悔しているのだろう、私に懺悔をするように語ると再度殺してくれと言われた…………

正直に言って……そんな話を聞いても何の共感も同情もできない自分は"もう完全に異形種になってしまった"んだなぁ……と考えながらこの真面目な騎士様の処遇を考える。

 

「…………そうだ!本隊を止めてくれ!アイツらは王国の勇者ガゼフ・ストロノーフを確実に殺す為に陽光聖典のアークエンジェルフレイムの魔法による攻撃と砲撃と火薬による"爆撃"をしようとしているんだ!!頼む!貴女程のっ……ーザシュッ!ー………………」

 

名も知らぬ騎士様が言った言葉を理解した瞬間……私の中のスイッチが…………

 

……………………カチッ………………と、入り………………いつの間に取り出したのだろう無双方天戟を振り抜き何かを言おうとしていた騎士様の首ごと、括り付けられていた1メートルはあろうかと思われる大木を両断した。

 

「……………………フ……フフフ……フハハハハハァッ!!…………いいですねぇ?……私の前でェ…"敵対者"がァァ?…………"爆弾"ォ?…………ハハハハハハハハハハ!!…………ありがとう騎士様……イイコトを教えてくれた御礼に…………貴方のお仲間はぁ…………皆殺しにしてあげますよぉ!!!!」

 

少しの間無双方天戟を振り抜いたまま俯き黙り込むと、肩を震わせて急に気が触れたように笑い出す。

言葉では表せない高揚感とどうやって殺してやろうかと考える暗い思考に私の意識は飲み込まれた……

そうだ……後悔させてやらなければいけない…………そう………私の前で…………私の両親を殺した様な……殺し方をしようと思い立った者達に…………一生消えることのない絶望を与え……二度と味わえないだろうが……最大限の恐怖を与えなくては…………

 

「さぁ……そうと決まれば準備をしましょう…………場所は……緑都の外れの島にしましょう……フフフ…………アハ……ハハ…………」

 

そう小声で呟きながら歩く私のしっぽは、それぞれが意識があるかの様に自由に動き私の目からは光が消えてどこまでも深い闇のような色を写していて唇は三日月のように弧を描いていた。




最終ステータス暫定的ですが作ってみました。

character
玉藻 異形種

ナザリックの申し子・ナザリックの良心・一騎当千

役職ーーーナザリック地下大墳墓至高の42人目

住居ーーー第六階層"古の緑都"

属性ーーー善[カルマ値:300]

種族レベルー"金毛白面九尾"ーーーー15lv
母なる大鬼ーーーーー∞lv(ガチャ限定1名のユニーク種族の為)1Lv扱い

職業レベルー 武神ーーーーーーーー10lv
音楽家ーーーーーーー5lv
符術士ーーーーーーー7lv
陰陽師ーーーーーーー10lv
一騎当千ーーーーーー10lv
など

New
スキル

狂気の目覚め

効果
九尾の狐にある真の力を目覚めさせる鍵になるスキル
其の者が人間を怨む理由になった物や出来事と対峙すると自動的に発動する
発動すると能力が2倍になるが狂気と破壊衝動に侵される為バーサーク状態に近くなる上に気分が常に最高状態になる為言動まで変わる。
スキルの効果時間は1戦闘が終わるまでの短い時間だったが転移後は対象の殲滅までに延長されている…
(金毛白面九尾の固有スキル)


種族レベル➕職業レベル=計100lv
30 70
参考値

カルマ値のみ
モモンガ⦅−500⦆
ペロロンチーノ⦅−500⦆
ぶくぶく茶釜⦅−350⦆
死獣天朱雀⦅−300⦆
王元鬼⦅+100⦆
呂玲鬼⦅±0⦆


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玉藻・ザ・ダークウォーリアー?

お疲れ様です

自分が聞いた体験談を元に書いていますのであまり怖くはないかもしれないですが

グロいのが苦手な方は是非Uターンをして下さい。


ー…………フフ……アハ……アぁ……そうだ…………ー

 

薄暗い森の中から気が触れたような笑い声が響いていた……少し間が空いてから、笑い声が止み鈴の音が鳴るような透明感のある声で……巻き添えに合わせないように……お姉ちゃんとモモンガ様とアルベドにさんに………

 

辛うじて取り戻した意識で"家族"に連絡をとる。

 

「あ…アルベドさんですか?……申し訳ありませんが少しだけわがままを聞いて頂けませんか?」

 

「玉藻様?……わがままなど…モモンガ様と最後まで残っていただいた玉藻様でしたら是非仰ってくださいませ!」

 

アルベドさんはどうやら私のわがままを聞いてくれるようで、嬉しそうな声で返事をしてくれた。

私が黙っていると

 

「それで玉藻様?わがまま、とはどの様な事になりますか?」

 

私のわがままが気になったのかアルベドさんが質問して来た。

 

「……あのね、さっきその村を襲っていた騎士様達からお話を聞いたら、主力が其方に向かって…確か…ガゼフ?さんって人を殺しに行くって言っていたんですよ、でも…他にも本隊が50人位いて、その人達が村の人々を見せしめに殺そうとしているんだって……」

 

「畏まりました、そのゴミどもを!私が殺して!首を!玉藻様に御献上いたします!」

 

私の話を聞いたアルベドさんは、どうやら勘違いをしたようで興奮気味に言っている。

 

「……あーー違うの、アルベドさん達にはガゼフ?って人の所に行って欲しいの……私のわがままって言うのは…今から少しだけ本気で戦闘するから"誰も…本当に誰も近づかないで"っていう事」

 

「?!……しかしながら玉藻様……流石にそれは…………」

 

未知の相手……しかも集団に1人で向かわせるのが嫌なのだろう……内容を言った瞬間に難色を示される。

 

「私の特殊スキル知ってるでしょ?……それに呂布さんも呼びますので、御心配は要りませんよ?」

 

「しかし…………」

 

「……はい!決定!私は今から緑都の外れにある島に本隊を連れて行きますので後はよろしくお願いしますね!」

 

…えぇ………玉藻様…と、言っていたアルベドのメッセージを強制遮断してから……また、暗い感情が湧き上がる。

 

「ああそうだ!折角の機会なのだから……歓迎の準備をしましょう……先ずは…装備を変えて………っと……こんな所でしょうか…………イイエ、マダマダ……アッ……コレモ…………」

金色の毛並みに覆われた狐耳をパタパタと倒したり起こしたりしながら装備確認をして、緑色の着物風鎧をアイテムボックスに仕舞い、代わりに術士用の緋袴と白い和服を着て、召喚の準備に入る

 

誰にも邪魔をされなかったので詠唱が無事に終わる……先ほど来たお姉ちゃんからのメッセージでモモンガ様とアルベドさんが主力部隊の方と交戦に入った事を教えられる……どうやらアルベドさんはモモンガ様に私の事をうまく誤魔化してくれたようだ…………

 

符の束が五芒星の形に配置され、1枚1枚が強力な光で輝き出す…………薄暗い森の奥が一瞬だけ真昼のように明るくなり、直ぐに元の薄暗い森に戻る…………其処には、夥しい数の鬼……上位種ばかり……元レイドボスなども点在していた。

 

「呂布さん、お疲れさまです…早速ですが"コレ"を預かって頂けますか?」

 

召喚・百鬼夜行…………詠唱時間を犠牲にして100体にも及ぶ強力な鬼の軍団を召喚するという、種族"母なる大鬼"の壊れスキル……

ユグドラシル時代とは違い、戦闘が開始される前から詠唱可能なので、今回のように戦闘前から詠唱しておけば良かった

本来ならばMPを相当使用するが、種族特性がある為この召喚ですらMP100しか使わないのだ

そうして召喚された中でも、やはり一際異彩放っている戦鬼神呂布に、私の持っているワールドアイテムにして古の緑都の入り口である"地図"⦅LOST WORLD⦆を渡してアイテムボックスから出した赤兎馬も渡す

 

「む?……確かに受け取った……が、母上殿……邪な気配が漂っているが大丈夫か?」

 

呂布に地図を渡すと私の身体から漏れ出す赤黒いオーラを見て心配になったのか、呂布がそう聞いてくる

 

「フフ……ガラじゃないですよ呂布さん?…………まぁ…とりあえず……オーガロードさん!先程逃げた兵士は!」

 

「こちらに……」

 

と言って、大きく太い右腕を伸ばして逆さ吊りになった男を差し出す。

 

「……な、な……なんでこんな事を……さっきのマジックキャスターは行け、と言った筈だ……それなのに何故!?」

 

逆さ吊りになった騎士の男は1度は逃がしてくれたのに何故、と喚き散らす

普段と感じ方が違うのか……凄く…イライラスル………………

 

「やめてくれ……俺には国に残して来た家ぞ…っくうぅ………………」

 

イライラし過ぎていたのカ…いつのまにか変わっていた近接武器の無双方天戟でオーガロードの右腕で逆さ吊りされている男の右手首を斬り落とす

 

「オ前達は……そう………オ前タチは命乞いをして来タ人達ヲドウシタ?」

 

手首を切られた事に気付いた男が泣き出した顔を、下から覗き込みそう聞くと男は「ひっ!」と短く声を出し気絶してしまった

 

気絶している最中にも斬った傷口から血液が流れ出している…………このままじゃ失血死してしまう……と、考えた私は、9本あるしっぽのうちの1つの先に狐火を発生させて男の傷口を焼く

 

「ぎゃあーーーーー!!!」

 

あ……起きた…回復させるのも面倒なのでそのまま同じ質問をする……返事が無い……左手首を斬る……焼く……叫ぶ…………質問する…………返事が無い……右足首を斬る…………焼く……叫ぶ…………斬る…………焼く……斬る……焼く……斬る…焼く………………

何度か繰り返しているうちに、オーガロードの掴んでいる左脚、後は身体と頭以外の部位が無くなった男は虫の息だった…………これでは⦅LOST WORLD⦆に連れて行けないと考えて体力のみ回復する薬を男の口に捩じ込む……男は噎せながらも口に薬を含むと恐怖に怯えきった目を開き、青を通り越して白くなった顔で玉藻を見る

 

「……フフ……ソンナに期待しなくてモ……私ノお願イヲ聞いテくれレバ……トドメを刺シテ……アゲマスヨ?」

 

男が意識を取り戻したのを確認した玉藻は、にっこりと場に不釣り合いな笑みを浮かべながら小首を傾げて男に告げた

それを聞いた男の目からは完全に光が消えた

 

 

「……はぁっ…はぁ……おい!オッサンどこ行った?」

 

「気にすんな!とりあえずは本隊と合流して奴らを吹っ飛ばすんだ!」

 

生き残りのうち比較的若い2人は先程の異形種に復讐する事だけを考えていた。

漸く森の木々が少なくなり本隊が見えた時、異変は起こった

 

「……貴方達ハ……スレイン法国ノ方デスネ?……ヨロシケレバ私ノ所二…ゴ招待致シマス」

 

「…………はい………………そのとおりです…………こしょうたい、みなでうけさせていただきます……」

 

綺麗だが機械的な声と抑揚もなく完全な棒読みの中年男性の声が響き渡る

すると周りの景色が変わって木の生えた草原から、何処かの海に面した丘になった

男達は混乱したが、もっと混乱したのは本隊の騎士達だった

 

「……何だ?……何が起きたと言うのだ……?…………先程の声が?…………いや、しかしこの人数を転移など…………」

 

固まっていたはずの50名にも及ぶ精鋭部隊が散り散りになり、自分の周囲には8人ほどしか居なくなり且つ地形が先程までとまるで違う……為、指揮官の男は思わずそんな声を漏らす……

 

「……ヨウコソ……我ガ領域ヘ…………歓迎…致シマスネ?」

 

景色が変わる前に聴こえた声が隊長の耳に届く……するとかなり遠くの平野から1人の髪の長い女性?が歩いてこちらにむかっているのが見える……まさかあんな遠くから声がする訳無い……と、考えていた隊長は周りに残った騎士達に指示を出し、周囲を警戒させることにした

 

「♪〜〜 〜〜〜♩〜♪♪〜〜…………」

 

隊長の男は思わず目を……耳を疑った…先程はかなり遠くに見えた筈の女性が顔が目視できる所まで来ており、聴いたことのない歌が美しい声で紡がれる歌が聞こえた…すると…瞬きした一瞬で、女性は自分の目の前に立っていたのだから…………

 

「イラッシャイマセ♪御客サマ、歓迎致シマスワ?」

 

獣人のようだが引き込まれるような美しさに見惚れていると、女性は左手に掴んでいたモノを「ソウ言エバ……コレハモウ要ラナイデスネ…」と、言って細いすらっとした腕を上げて持ち上げる

……そのモノを見た騎士達は絶句した……持ち上げられたモノは、左脚以外の四肢を根元から無くし、傷口は焼かれ、おおよそ生きてるとは思えない表情でぶつぶつと意味の無い言葉を並べている先行部隊の男性だったからだ……

 

ハッ、と言って女性が手に持った男を頭上に投げると、身の丈の2倍はありそうな得物を軽々と振り、男を斬った様に見えた……が、落ちてきた男は先程のまま痛々しい格好のままだった……助けようと隊長が近付いて助け起こそうと手を取った時……男性の身体にいくつもの紅い筋が浮かび上がり…バラバラになり崩れていった…………

それを見てしまった1人が逃げる為に駆け出すと、またいつの間にか消えた女性が、逃げようとした騎士の首を掴み…ゴキッ…と、嫌な音をさせて首をへし折る………それを見て一目散に駆け出していく男達を見て玉藻は嗤っていた。

 

「…フフ……………ウフフ……ハハ……ハハハハハ………………」

 

…それからの行動は良く覚えていない……目の前には原型をとどめていない紅い物体がいくつも転がっている、水面に映る自分の姿は髪も装備も武器も返り血で真っ赤に染まっていて私はただひたすらに嗤っていた…………博士が居れば…空気を変えてくれるような感じで、「おっ?助手よ、今度は3倍速か?」などと言ってくれそうな姿だった…………が、そのように言ってくれる人は今は誰も居らず……私は王元鬼と呂玲鬼が迎えに来るまで……ただ1人で嗤っていたそうだ

 

 

 

 

 

 

 




玉藻ちゃんモモンガ様より早くダークウォーリアー化(笑)

基本的に善人ですが異形種なので人間を殺すだけなら然程罪悪感はない模様です

今回はトラウマ発動した為ここまで暴走していますが死獣天朱雀、ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜、呂玲鬼、王元鬼の必死の呼びかけがあれば解除可能なようです


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王元鬼の策略?

お疲れ様です

前回がダークサイドだったので通常モードにてお送りします

サブタイトルは読んで頂ければ分かるかと……


……ピチャッ…ポタ…ポタ…………ピチャッ…………

 

私が惨劇を繰り広げた島から、王元鬼に手を引かれて自分の拠点である緑都に戻ってきた。

最初は可愛い娘が血で汚れるのは嫌だったので差し出された手をとることを拒否していると、王元鬼は返り血塗れの私に無言で抱き着いてきた。

その後ろから呂玲鬼も抱きついてきて、完全に落ち着くまでそのまま3人で固まっていたが、少しして冷静になると…返り血塗れの私…その私に抱きついてしまった娘2人……確か血は固まるとガチガチになり肌や髪に悪影響がありそうだなぁ……と考えてとりあえずはこの返り血を流すために緑都に戻って来たのだった。

 

今は緑都の中にある大浴場に向けて歩いているのだが、髪や装備から血が滴り落ちて廊下に赤い足跡と血飛沫を残してしまっている。

汚れるのは嫌だなぁ、と思いながら歩いていると背後から物音がする…………振り返ると、私の作った血溜まりはアークビートルが掃除用具を器用に装備して綺麗にしており背後にはホコリ1つ落ちていなかった……せっせと掃除をするアークビートルにお礼を言って、私達は足早に大浴場に向かった

 

「お母様、御召し物をこちらに…」

 

大浴場に着くと呂玲鬼は、すぽぽーん!と、擬音が付くくらいの速さで装備と服を脱ぎ散らかして先に浴場内に入っていった

それを見た王元鬼は「はぁ……あの子は……」と、ぼやきながら呂玲鬼が脱ぎ散らかした衣服を手に持った洗濯カゴに纏めて片付けた。

カゴを置いた王元鬼が、真っ赤に染まった…最早元の色が緑とは分からないほどに染まりきった装備を受けるべく私に手を伸ばす。

 

「いいよ、ゲンキあなたも脱いで入ったらどうですか?」

 

と、聞くと王元鬼は思案顔で「いいえ、お母様こそ早く血と汗を流された方が…………遅いですね……」と、呟いた……後半は聞こえなかったが……

それからもチラチラと入り口を見ながら、頑なに私の服を受け取ろうとして譲らないので、仕方なく着物状の軽鎧を脱ぎ始める……王元鬼は帯を渡すと綺麗に畳みながらしまっていく…そして、私は着物を脱ぎ…下着をつけていなかったので完全に裸になった、すると脱衣所の入り口が騒がしくなり……ん?どうしたのだろう?と、私は意識をそちらに向ける

 

ーバンッ!ー

 

大きな音で脱衣所の引き戸が開かれると、見慣れた豪華な装備を着たバードマンが血相を変え、息も絶え絶えでゼイゼイ言いながら現れた。

 

「玉藻ちゃん!大丈夫…………うん…………大丈夫そうだね…………ぐはっ…………」

 

完全に無警戒だった私は、無防備な姿を晒しながらぽかーんという表現しかできないような表情で目を丸くしていると…バードマン改めお兄ちゃんであるペロロンチーノ様は、一言呟くと鼻から大量の血を出して倒れてしまった

 

「えっ?えぇ!お兄ちゃん大丈夫ですか!」

 

突然現れ、突然倒れたお兄ちゃんに驚いた私は、生まれたままの姿なのも忘れてお兄ちゃんを抱き起こした

 

「……ご、ごめ…………ん?…………!?!?&/xg@/?々〒$!!!……………」

 

気がついたお兄ちゃんは何かを呟くと今度は口から血を吐きと気絶してしまった

 

「えっ?お兄ちゃん、お兄ちゃ〜〜ん!」

 

口から血が出たことに驚きながらも、お兄ちゃんを介抱するため私は、浴場内の休憩所に抱き抱えたまま連れて行く

 

「…………ふふ、作戦成功です……」

 

その光景を見ていた王元鬼は、玉藻に見えない角度でニヤッと笑いながら呟くと自分も風呂に入る為服を脱ぎ出した。

 

 

大浴場内に造られた休憩室でお兄ちゃんを寝かせてとりあえず状態異常回復の符を取り出して仙術を発動させる

 

取り出した符に魔力を込めるとお兄ちゃんの身体を淡い緑色の光が包み込み……気がついたようだ

 

 

 

……あれ?……そういえばここはどこだろう?確か…………玉藻ちゃんの作ったNPCの王元鬼からメッセージもらって…玉藻ちゃんを元気づけに来て…………あれ?……どうしたんだっけ?

寝起きで意識がハッキリと覚醒していないペロロンチーノは曖昧な記憶を思い出そうとする……すると急に気分がスッキリした…………横たわっていたようだ…身体を起こすと…ーポヨンッ!ーと、何か柔らかいモノに当たる…………ポヨン?

恐る恐る目を開けると、そこには…………美しくそびえ立つ二つの山があった……思わず手を伸ばし…………ふにふにと揉んでしまった…………「きゃっ!……」と、目の前で顔を真っ赤に染めた玉藻ちゃんから短い悲鳴と共に強烈な張り手を喰らい、ペロロンチーノの意識は再び闇に落ちた

 

 

 

急にお兄ちゃんが目の前で倒れて驚いてしまい気にしなかったが、私は一糸纏わずにお兄ちゃんに抱き着き…更には今……揉まれた……嫌な感じはしなかったが…恥ずかしさで顔から火が出ていないか心配になり鏡を見る……其処には…期待にしっぽを振って、目は潤み…何かを求める一匹の雌が写っていた……その姿を見てしまった私は羞恥心が爆発してこの場には居られないとばかりに休憩所を飛び出した。

 

「…………チッ……ペロロンチーノ様のヘタレ具合……コキュートス並みか……」

 

「レイキ、お母様の美貌を前にしたら仕方のないことです……だいたい、天然、無防備、無自覚の三拍子揃ったお母様をたった一回で堕とせるとはとは思っていませんから大丈夫です」

 

「…………むぅ…………しかし良いのか?姉者は母上をペロロンチーノ様に取られても?」

 

「えぇ、私がお母様に捧げている愛は家族愛ですから…それに分かり辛いとはいえお母様はペロロンチーノ様を御慕いしています、勿論兄弟ではなく異性として……ですよ?」

 

「よく分かるな?私にはさっぱりだ……」

 

「当たり前です、だって私はお母様を1番理解していますから!」

 

休憩所の扉から覗き見ていた鬼の姉妹はそんな会話をして、1人はどうだ!とばかりに踏ん反り返り、もう1人は呆れた顔で踏ん反り返る姉を見ていた。

 

「そう言えば……母上はまだ風呂に入っていなかったよな?」

 

「えぇ、脱衣所から直接此方に来ているはずですから……何故ですか?」

 

何故かお母様が風呂に入っていたか確認する呂玲鬼の質問に答えを返すと

 

「……ふむ……それでは私達の足下の水滴は何処から落ちたのだろう?」

 

…………それを聞きそれが"ナニ"か気が付いた王元鬼は何処からか取り出した試験管に足下の雫を集めて入れていた

 

 

「ペロロンチーノ様…申し訳ございません……」

 

姉妹が立ち去った後に放置されていたペロロンチーノは緑都の執事的な立ち位置にいるアークビートルから毛布をかけられてそのまま深い眠りについた……翌朝自室で目が覚めた時にペロロンチーノは何が起きたか全て忘れていた

 

 

「どうしましょう…………恥ずかしくてお兄ちゃんの顔をマトモに見れません……」

 

ペロロンチーノの記憶が飛んでいる事など知らない玉藻は、今日ギルドメンバー達と摂ることになっている朝食会をどうしようか恥ずかしさで顔を真っ赤にして悩んでいた…………しかし玉藻のしっぽは言葉とは裏腹に嬉しそうにぱたぱたと全力で振られていた。




ロボ成分が少なくなって玉藻ちゃんが白衣を準備し始めたようです。


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変形合体!!Gフレーム!?

おつかれ様です

…………言い訳を言わせてください……

風邪とバーゼがいけない……間違いない……

バーゼはヤバい……気づくとバーゼを触っている……


ナザリック大墳墓に激震が走った。

今まで欠かさずに行われていた朝食会(モモンガとぶくぶく茶釜は人化の指輪装備)に玉藻が現れなかったからだ

メイドに理由を聞くと「お兄ちゃんに……はしたない姿を見られて……血が……熱くて…恥ずかしい…」と、玉藻の言葉が良く聞き取れなかったが、聞き取れた単語だけを羅列していき、トドメには……真っ赤な顔で白い液体を身体中に浴びて服を変える途中だった…………と言われた…………それを聞いたモモンガがまず行ったのは、正面に何食わぬ顔で座り朝食を待つ変態バードマンに対して

 

「ペロロンチーノォォッ!……貴様ァァッ、いったい玉藻さんに何をしたァ!!」

 

と、人化により精神の鎮静化が発動しなかった為、転移後初…怒りを露わにして

 

ペロロンチーノの実姉のぶくぶく茶釜は、人化により玉藻レベルの美女になったピンク色の長い髪を後ろに流しながら、笑顔と青筋を浮かべながら…無言でペロロンチーノの顔を見続けていた。

 

玉藻の伯父にあたる死獣天朱雀は、出されているお茶を啜りながら遠い目をして

 

「…………そうか……玉藻も遂にそんな歳か…………ペロロンチーノ………本気ならいいが……もし……もしもだぞ?」

 

と、呟きながらペロロンチーノの隣に歩いて行き、肩を叩き顔を近づけて……

 

「…………遊びで玉藻に手を出したのなら…………命はないと思えよ?」

 

と、目が笑っていない笑顔で、最後の部分を強調して言った

 

 

そこから先のペロロンチーノの動きは早かった…………ぶくぶく茶釜の「……愚弟……とりあえず正座……」の言葉に即座に反応し、ジャンピング土下座……そこから地獄も生温いと言わんばかりの質問タイムが始まった……しかし、昨日の事を覚えていないペロロンチーノには正に寝耳に水の出来事であった

 

その頃……玉藻は…………ベッドの上で昨日の出来事を思い出し、赤面して身悶えしていた。

 

「あぁ……せっかくゲンキが持ってきてくれた甘酒が…………さっきのメイドさんには悪い事をしてしまいました…………まさかお兄ちゃんの事を考えただけであんなに混乱するなんて…………」

 

そう……玉藻はメイドが迎えに来てペロロンチーノとの出来事を思い出して断片的な言葉を紡いでいたが、焦って王元鬼が持ってきてくれた甘酒を零して服と髪を汚してしまったのだ

混乱してメイドに何を言ったか憶えていないが、今日は食事には行かないという意思はしっかり伝えたので一息つく

そこで思い出した…そう言えば恐怖公の眷属が報告に来て、この間の襲撃があった辺りでちょうどいい建物が"空いた"との報告を受けていたのだった。

 

「ちょうど良いですね…ちょっとだけお出掛けしましょうか…………でも…何も言わずにいくのも……」

 

そこで初めてぶくぶく茶釜にメッセージを送った玉藻は、専用の食堂でペロロンチーノが受けている地獄も生温い様な質問責めを知り、誤解を解くために一度その場まで向かう事になった。

 

 

「…………という訳で、お風呂で倒れたお兄ちゃんを私が介抱しただけです……心配して来てくれたので覗きに来た訳でもないですし…」

 

食堂に入ると、お姉ちゃんが凄い形相でお兄ちゃんを問い詰めていて、伯父様もお兄ちゃんの両肩を掴みながら「ペロロンチーノ君……吐けば楽になるよ?真実を教えてくれないかな?かな?」と、焦点が合っていない遠くを見るような目でお兄ちゃんの顔を下から覗き込んでいた。

 

モモンガ様が私が部屋に入った事に気付き、

 

「玉藻さん!身体は大丈夫ですか?大丈夫、この変態は焼き鳥にでも……」

 

と、イイ笑顔?で私にサムズアップしながら言ってきた。

お風呂で胸を揉まれた事がこんなに大事になっているとは思わなかった私は理由を問い掛けるとお兄ちゃん以外の3人は頭上に?と浮かびそうな顔をして「「「えっ?ペロロンチーノ(愚弟・君)に襲われたんじゃ?」」」と、ぽかんとした顔で私を見ていた。

 

「……ふぅ…やっと解放された…ありがとう玉藻ちゃん!」

 

誤解が解け、正座から解放されたペロロンチーノは背伸びをしながら玉藻に礼を言う

誤解を解く最中にペロロンチーノが昨日の記憶をなくしている事に気がついた玉藻は、この好都合な状況を利用して昨日起きた事を完全に無かった事にした。

途中、ぶくぶく茶釜の引っ掛けに引っかかりそうになったがなんとか誤魔化せたようだ。

そして、まだペロロンチーノの顔を直視出来ない玉藻はモモンガに外出許可をもらうために来た事を告げる、階層守護者クラスを連れていく事で許可すると言われたので探索が得意な恐怖公を連れていく事を伝えるとモモンガから「うーむ…」と顎に手を当てて悩むような声が聞こえた

 

「……玉藻さん…もう少し人間に近い者では駄目ですか?この世界に恐怖公の様な種族がいたとしても人間種に受け入れられるかどうか……」

 

「それでしたら私が持っている人化の指輪をはめて貰えば解決ですね!それでは行ってまいります!」

 

モモンガ様から人間に外見が近い者…との意見を聞いた私は恐怖公に渡せば解決ですね!と笑顔で返しながら部屋を出た

……………………背後でモモンガ様が何か呟いた気がしたがおそらく気のせいだろう……呼び止められなかったから…………

という事なので、私の持っている人化の指輪を渡す為、恐怖公を緑都に呼び出した。

 

 

 

「お母様……本当に恐怖公がいらっしゃるのでしょう………か?」

 

恐怖公を迎える為、私と王元鬼それと呂玲鬼とアークビートルの4人?で緑都と黒棺を繋ぐトラップの前で待っていると、王元鬼が若干引き攣った顔で私達に問い掛ける

 

「母上?私に何処かおかしい所は無いか?せっかく恐怖公御自らいらっしゃるというのに何か粗相があっては申し訳ないからな……そうか、姉者もそれを心配しているのだな?…………しかし公は出来たお方だからそこまで心配しなくても大丈夫だぞ?」

 

それを見た呂玲鬼は、姉の気持ちを勘違いして肩を叩きながら「な?」と、言っているが王元鬼はひくひくと引き攣った笑顔のまま「ソ、ソウデスネ」と、言ったきり銅像の様に固まってしまった。

 

玉藻はそんな2人のやり取りを微笑ましく見ていると傍のアークビートルが空に浮かぶトラップの入り口を指して

 

「……おぉ、どうやら恐怖公が御出でになる様です…」

 

その言葉と同時にトラップが作動して空が歪む

そこから金と黒の装甲に覆われた機獣が現れ、その上には恐怖公が乗りこちらに手を振っていた……恐怖公に手を振り返していた私は気がつかなかったが……王元鬼の顔は引き攣ったまま、青を通り越して白くなり…どう見ても血の気が引いていた

 

「玉藻様、皆様、ご足労頂き言葉も御座いません」

 

機獣であるGGフレームから降りた恐怖公は、見惚れるほど綺麗な礼をして首を垂れる

 

「恐怖公!緑都でお会い出来るとは夢のようです!」

 

私より早く呂玲鬼が足早に恐怖公に近づき、手?を取り感動している

 

「公、よくおいでになりました…弟達はご迷惑をおかけしておりませんでしょうか?」

 

「いやいや、良く働いてくれて助かって降ります…本当なら連れてきたかったのですが…いかんせん私達3人共が黒棺を離れると眷属達の抑えがいなくなってしまいますからな…」

 

アークビートルと恐怖公が世間話をしている背後でカタカタと震えながら次は自分の番か?と、怯えている王元鬼…それに気がついた恐怖公は……

 

「おぉ!私としたことが…レディを怯えさせてしまうとは……玉藻様、僭越ながら"アレ"を試しても宜しいでしょうか?」

 

「そうですね!"アレ"ならゲンキも大丈夫でしょうし…お願いします」

 

何かを試そうとして玉藻に許可を取るとGGフレームに近づき

 

「では…………GGフレーム!モードチェンジ!モード……天!!」

 

恐怖公がGGフレームに手を触れながら一言叫ぶと四つ脚のGGフレームが変形していき胴体部が開いていく……恐怖公が開いた胴体部分に吸い込まれるように消えていくと開いていた胴体部分が閉まり、人型に変形していく。

 

「…………変形合体!!恐怖公!ゴールドフレームモードォォ!!」

 

変形が完了した先にはコキュートスと同程度の大きさを持った金と黒の装甲に身を包んだ人型ロボットが現れた。

 

「お嬢様…怖がらせてしまい申し訳ありませんでした、もし良ければコチラを……」

 

と、言って優雅な仕草で、引き攣った顔をア然とした顔に変えた王元鬼に一輪のバラを差し出す。

 

「…あ、ありがとうこざいます…」

 

それを複雑そうな表情で受け取る王元鬼…………恐怖公の姿が変わってしまって面白くない呂玲鬼は「せっかく公のセクシーな身体が見放題だったの

に……」と、心底残念そうな顔で呟いた。

 

「それで恐怖公?以前にお願いしていた探索に同行していただきたいのですが…宜しいですか?」

 

「おぉ…なんともったいないお言葉…私はいつでも玉藻様の命に従う準備は万端で御座います…どうぞお命じください」

 

「ありがとうこざいます……それで、恐怖公にこれを付けて頂けないかと……」

 

探索について来てくれるとの事なので、恐怖公に人化の指輪を渡して装備してもらう

パァ!と一瞬光り輝く…光が徐々に回復して人化した恐怖公の姿が見えてくる

 

「……おぉ、これが人化の指輪の能力です……ふむ、悪くないですな」

 

光が晴れて来た其処には、黒いハットとマントその下には黒いタキシード?を着て、腰に金の剣とステッキを指した老紳士が立っていた

 

「良いですね!それでは公は今より……ジオ…ジオさんなんて如何でしょうか?」

 

「ジオ……で御座いますね?……ふむ、では……このジオ!!如何なる時も玉藻様の剣であり!矛であり!盾にもなろう!!」

 

と清々しい顔で言いきった

 

その口上を聞いた玉藻は、外に遊びに行けるのが楽しみで、しっぽをブンブン音が鳴るくらい振っていた。

 

 

 

 

 

幕間…………

 

「そう言えば恐怖公。1つ聞いてもいいだろうか?」

 

「ん?…なんですかな呂玲鬼さん?」

 

一度合体を解除して元の姿に戻っていた恐怖公は呂玲鬼の質問を聞く

 

「フレームモードでは老紳士だったが……そのお姿から人化すると如何なるのでしょうか?」

 

呂玲鬼の質問は確かに気になった為、恐怖公に元の姿のまま指輪を装備してもらう

先程と同じく強く光り、収まると其処には…………

 

「……えっ、……えぇ〜!!き、恐怖公で御座いますか?…………」

 

「えぇ、私ですが……王元鬼さん?如何致しました?」

 

先程までは常に距離を置いていた王元鬼が、目の前で片膝をつきながら恐怖公に目線を合わせて驚いている

王元鬼は鼻息も荒く、呼吸も浅いのか…はぁはぁ…と、言いながら恐怖公の手を握りしめ……

 

「恐怖公……少し……はぁはぁ……少しだけ私の部屋に行きませんか?……大丈夫………はぁはぁ……大丈夫ですよ……気持ち……いいだけですから……さぁ…逝きま……」

 

危ない顔で危ない事を言っていると蔑んだ目をした呂玲鬼に頭を思いっきり叩かれる

 

「な、何をするんですかレイキ!」

 

「ナニをしようとしているのは姉者だろう?恐怖公、ウチの愚姉が失礼いたしました」

 

叩かれた王元鬼は、たんこぶの出来た頭をさすりながら妹の呂玲鬼に文句を言う

呂玲鬼は王元鬼の文句を聞き流して恐怖公に謝罪をする

 

「いえいえ、しかし先程までとは対応が違い…少し戸惑ってしまいましたが……いったい?」

 

「恐らくですが……現在の公のお姿がこの愚姉の琴線に触れたのかと……」

 

恐怖公が驚いて呂玲鬼に説明を求めると呂玲鬼は人化した"今"の恐怖公の姿が王元鬼の暴走を招いた事を伝える

 

…………そう、恐怖公が元の姿のまま人化すると…………

 

「……待ってレイキィィ!!そんな美少年!!滅多に居ないんだからぁ!!お願い!!先っぽだけ……先っぽだけでいいからぁ!!!!!!」

 

そう…………ショタ属性を付けられた王元鬼の性癖にどストライクな美少年になっていたのだ。

 

「………………さぁ、恐怖公此方へどうぞ、お茶の準備が出来ております故…」

 

「待ってえぇ!!!レイキィ!!!恐怖公ォォォ!!!!カムバァァァァックーーーー!!!…………」

 

叫ぶ王元鬼を無視して呂玲鬼は、玉藻とアークビートルが待つ応接間に恐怖公を案内するのだった




まさかの恐怖公三段階変形?

王元鬼のターゲットがマーレと恐怖公(ショタver)にロックオンされました



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下準備と新しい風

おつかれ様です

今回は準備期間でオバロ組は恐怖公しか出ません

最後にちょこっとだけ彼が出ますがね……


玉藻は、老紳士の姿をとった恐怖公と王元鬼と呂玲鬼を連れてカルネ村と城塞都市エ・ランテルのちょうど真ん中くらいにある洋館にやってきていた。

 

「う〜ん、広さは問題なさそうですね?ここは本当に自由に使って大丈夫何ですか……なんか廃墟のわりに立派な造りなんですが…………」

 

目の前にある廃墟は、入り口と一階の正面に当たる部分だけが破壊されているが、一階のその他と二階は綺麗な洋館だったので、玉藻はこの建物を見つけて来た恐怖公に確認をとる

 

「えぇ、勿論でございます……何せこの物件はニグン殿達の陽光聖典…でしたかな?その方達が泊まって居た宿泊施設だったそうですが、ベリュースさんと仰る方が、「宿の人間が俺に無礼を働いた!」と言って宿の従業員を皆殺しにしてしまったそうでして……まぁ……都市と村の中間地点とはいえそこまで日数がかかる道のりでもありませんし……開業後初のお客様が彼等という不運に重ねて宿の従業員も近隣に知り合いはいない様ですからね。」

 

と、言って黒いコートのポケットから『リ・エスティーゼ王国発行営業許可証』と書かれた書類を取り出して、恐怖公は玉藻にその書類を渡す

受け取った玉藻は、幼い頃からの夢の1つ"お店屋さんごっこ"をやるための拠点が確保できた事で嬉しそうにしっぽをゆらゆらさせていた

………………ごっこ遊びではなく…普通の店を開くのだが、玉藻はテンションが天元突破していて気がつかなかった

 

 

「…………それにしても……異様に綺麗ですね……もっと荒れていると思ったのですが……」

 

荒らされて木片や残骸が広がる正面入り口から中に入り、奥にあった扉を1つ入ると異様な程片付けられている内装を見て王元鬼がポツリと呟くと、恐怖公が思い出したように、ぽんっ…と手を叩き……

 

「おぉ!私としたことが…発見した際に眷属を使い清掃したのを失念しておりました、アークダッシュさんとディレルビートルさんにも手伝って頂きましたので……できれば彼等にも労いの言葉をかけて頂ければ幸いです。」

 

「け、眷属達ですか………………いや、しかし幼い恐怖公が多数で片付けたと思えば……じゅる……」

 

恐怖公の眷属と聞いた王元鬼は顔を引きつらせながら器用に笑みを浮かべながら返事をするといったん目を閉じて今朝見た恐怖公の少年状態を思い出し…眷属達も同じ姿に妄想してみた…………結果口の端からナニカが溢れ、恍惚とした顔に変わった

 

「母上、母上の言う"お店屋さんごっこ"とはいったいどういうものなのですか?」

 

姉と憧れの存在がそんな会話をしているのを聞き流して呂玲鬼は玉藻にここで何をするのか説明を求める

玉藻はただのお遊びとして販売業をしてみたかっただけなのだが、モモンガからの"上位者たれ'という言葉を思い出し少し考えてから……

 

「……人間達に私達の不要物を販売するの…とは言えこの世界の人間達には凄いものだからそれを売ってナザリックの運営費に充てようって作戦ですよ」

 

と、真実(建て前)だけを告げ、真実(本音)は隠した

それを聞いた呂玲鬼は

 

「さすが母上、私では考えつかない…至高の存在でもある母上の物を……不要物だろうが人間共に売ってしまうなど」

 

と、感心したような…納得いかないような微妙な表情で腕を組みながら返事をした

 

「………………ん?…お母様!人間の気配がします!…………上ですね、レイキ!」

 

「承知!」

 

王元鬼が恍惚とした表情を一変させ気配を感じた先を呂玲鬼に伝えると、呂玲鬼は素早く反応して短い剣と盾を構えながら上の階へ走って行った

 

「……おかしいですなぁ?この建物は隅々まで掃除した際に動体反応は何もなかったのですが……申し訳ございません、私の確認不足で御座います……処分は如何様にも……」

 

恐怖公が疑問に感じながら玉藻に謝罪するが玉藻は首を振り

 

「いいえ、偶々賊が入っているだけかもしれませんし……お一人のようですから何処かから逃げて来られたのかも知れないじゃないですか?……私は公を処分する気はありませんよ」

 

気配感知を使用した玉藻が、こんな事で処分する気はありません、と言うとその言葉を聞いた恐怖公と王元鬼は、玉藻の寛大な心に更なる忠誠心を抱くことになるのだった

 

 

 

………………バン!!!!

 

「母上の拠点に忍び込むとは愚か者め!この呂玲鬼が引導を渡してやる!!」

 

「……ひっ!ど、どなたですか?」

 

「………………む?なんだ貴様は?賊ではなさそうだが…………」

 

人の気配のする部屋へ王元鬼のメッセージで誘導された呂玲鬼がその部屋の扉を蹴破ると、其処には黒髪で少し幼い顔立ちをした少女が、メイド服姿で怯えた目を呂玲鬼に向けていた

あまりにも弱そうで怯える少女にどうしようか悩んでいると背後から玉藻達が追いついてきた

 

「…………れじゃあ貴女が最後に来るはずだった娘ね?ごめんなさいね……賊が入って正面入り口を壊されてしまったから、一度王都まで戻って補修材料を買いに行っていたんですよ」

 

怯える少女に話を聞くと、どうやらこの宿の従業員として雇われたが、前の奉公先の貴族に監禁されていたらしい……なんとか逃げ出して迷惑をかけると思ったが他に行く当てもないので、勤める予定だったこの宿まで逃げてきた……しかし誰も居らず入り口は破壊されていて怖かったがここで暮らしていたと言う

面接などはして居らず冒険者ギルドの仲介で決まったらしい彼女は身寄りもなく、"本来の宿の主人"に会ったこともない事を聞いた王元鬼は玉藻にこう提案をする

 

「お母様?この娘を雇ってはいかがでしょう?……私達は恐怖公のお陰で情報には事欠かないですが、現地の人間の感覚と言うものは分かりません…しかしこの娘ならば貴族の下で勤めていただけはあって…話を聞く限りなかなか知識を持っているようですし……如何でしょうか?」

 

王元鬼の提案に賛成すると玉藻は少女に近づき腰を落として目線を合わせる

 

「あっ…あの、私……此処を出されたら行き場がなくて……何でもします!どうか雇って下さい!!」

 

追い出されると思った少女が何でもすると必死になる

玉藻は自分よりも小柄な少女の頭を撫でながら

 

「追い出したりはしませんよ?これからよろしくお願いしますね」

 

と、言うと少女は涙をぼろぼろ零しながら大声で泣いた

 

 

 

「そう言えば貴女のお名前はなんと言うのでしょう?」

 

泣き止んで大人しくなった少女に玉藻が話しかけると少女は泣き腫らした赤い眼を開け笑顔で

 

「星彩です……空の星に色どりの彩で星彩と言います!ご主人様どうぞよろしくお願いします!」

 

と、言った

 

 

 

その頃ペロロンチーノは…………

 

「…………ハッ!何やらまた幼女イベントが通り過ぎた気が……」

 

「……………………おい……愚弟?……私と一緒に作業するのがそんなに嫌か?……私だってお前よりモモンガさんと一緒に出掛けたかったんだが?…………アァ?!」

 

「…………ごめんなさい……」




風邪を引きました……バカじゃないって証明してやったぞ!!

熱で誤字多かったらごめんなさい……

体調良かったらストック連投するかも…………しれません


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萬屋"玉屋"営業中

お疲れ様です

風邪悪化して気管支炎?というものになりました………

やっと治り始めたので投稿再開します

待っている人がいたらお待たせしました

そうで無い人もどうぞよろしくお願いします


「モモンさん、ナーベちゃん!この先に新しく店ができたらしいんだけど行ってみない?」

 

モモンガこと漆黒のモモンとナーベラルこと美姫ナーベとして冒険者を始めた矢先に出逢った"漆黒の剣"と言うパーティーのルクルットが陽気に話し掛ける。

 

「黙れゲジゲジ、モモンさ……ん先を急ぐのでしょう?早くカルネ村に参りましょう。」

 

「……待てナーベ、ルクルットさん?その新しく出来た店というのは此処からそんなに遠くないのですか?」

 

ルクルットとナーベはもはやお馴染みとなったやり取りを繰り返していたが、ふと、モモンが興味を惹かれてルクルットに質問する

 

「おっ?モモンさんが乗ってくれた!そうなんだよ、最短ルートから少しだけ外れるから帰りに寄ろうかと思っていたんだけどね?行けるなら行っときたいな〜〜とか思って言ってみたんだけど……どうです?」

 

「うーむ、しかし我々はンフィーレアさんの護衛を請け負った身なので私の判断では……どうしますかンフィーレアさん?」

 

新しい物好きのルクルットは早目に行ってみたい…

モモンは未知のマジックアイテムが有れば欲しい…

 

しかし依頼を受けた冒険者として依頼主にお伺いをたてる

 

「急ぎではないですし構いませんよ、僕も新しく出来た店なら興味がありますし」

 

「……ではルクルットさん道案内をお願いします」

 

「任して下さいモモンさん!こっちの街道を右に曲がって少し歩けば見えてくるらしいんだよ!」

 

言うや否や、ルクルットは先頭を走って行き、遠くから「早く行こーぜ!」と、メンバーを急かしていた

 

 

10分ほど歩くと道の先に大きな洋館の様な建物が見えてきた、それを見たルクルットは

 

「おおっ!噂に違わぬ立派な店構え……どれどれ…もう1つの噂は…」

 

と、先行して店の中に入って行った。

 

「全く、すいませんモモンさん、ナーベさん、ンフィーレアさんルクルットの奴はああなると止められなくて…」

 

ルクルットの暴走を"漆黒の剣"リーダーのペテルが謝罪する

 

「いえいえ、私も興味があるので続いて入ってきますよ」

 

「モモンさ……んが入るのであれば私も入ります」

 

「じゃあ俺たちも」

 

「であるな!」

 

順番に両開きの扉を開けて店の中に入って行く

 

 

「わぁ〜〜〜〜…凄い……」

 

店の中に入った漆黒の剣の魔法詠唱者ニニャは店の照明や棚に並んでいる剣や鎧に眼を奪われていた

 

「きゃっ………ご、ごめんなさい!お、おケガはありませんか、お客様!」

 

各自が店の中を散策しているとニニャは黒髪のメイド服を着た小さな女の子にぶつかった。

 

「こちらこそ前を見ていなかったのですいません……えっと、この店の方ですか?」

 

ニニャが女の子に質問すると女の子は服と髪の乱れを直して優雅な礼をすると

 

「萬屋"玉屋"使用人の星彩と申します、以後お見知り置きを」

 

ニニャは、星彩と名乗った少女の立ち振る舞いを見て……こいつはもしかして貴族か?と思い警戒を強くした

 

 

「うーむ…これは見たことある…コレも…こっちもか…………」

 

「モモンさ……んどうかなさいましたか?何やらお悩みの様でしたが……」

 

星彩とニニャが出会った頃、モモンは棚に並ぶ剣や槍そして鎧を手に取り難しい顔をしていた、それを見たナーベが未だぎこちない呼び方で声を掛ける

 

「……いや、此処にあるアイテムは…ほぼ全てユグドラシルの物なのだ…まぁほぼ全てゴミの様な性能のものばかりなのだが……」

 

「?!まさか!そんな事が?!」

 

「うむ………ガチャの外れアイテムばかりだが偶に良いものが紛れている……コレなんかは……」

 

「おっ?モモンさんカッコイイ御守り持ってるじゃん!それ買うの?」

 

モモンがそうナーベに伝えるとナーベは目を見開いて驚いていた

そしてモモンが1つの御守りの様なアイテムを持ち上げたところで、ルクルットがモモンの持つアイテムに興味を引かれたのか声を掛ける

 

「いえ…変わったアイテムばかりで…………この御守りなんかは私が居た地方でよく見られた御守りによく似ていて……効果は確か…瀕死の一撃を肩代わりしてくれる…とかでしたかね?」

 

「へぇ〜〜〜、南方の御守りかぁ〜……瀕死を……モモンさん、コレ譲ってくれないかな?」

 

モモンはユグドラシルの知識を思い浮かべ、30レベル以下のプレイヤーが瀕死の攻撃を受けた時自動的に回復する……だったはずのアイテムの効果を伝えると、ルクルットは急に真面目な顔になりモモンに自分にこのアイテムを譲ってくれる様に頼む

 

「…………構いませんよ、私は同じ物を持っていますし……そうだ、このアイテムは所持している事を相手に気付かれない場所に持っていると効果が高いと言われていた様な気がします」

 

モモンはユグドラシルのアイテムを渡すべきか一瞬だけ迷い、このくらいなら大丈夫か?と、考えルクルットにアイテムを渡す

何故ならこのアイテムは初心者プレイヤーが悪質なPKに対処できる様に無料配布されたアイテムだったからだ

 

「サンキューモモンさん!じゃ、俺はこれとこれ買ってくる!」

 

 

「申し訳ありません…下等生物が近づいているのに気付きませんでした…………このお詫びは腹を切って…」

 

「待て待てナーベ!待て!!それくらいの事で腹を切るんじゃない!失敗したと思うのなら功績を挙げろ!!」

 

ナーベが至高の存在を危険に晒した事対して不敬を働いた、と腹を切ろうとするとモモンに全力で止められる

 

 

「すいません!これ下さい?…………惚れました!結婚して下さい!!私はルクルット…ルクルットボルブと申します…美しいお嬢さん貴女のお名前はなんとおっしゃるのですか?」

 

モモンからアイテムを譲ってもらったルクルットが会計の為支払所に行くと、黒い長い髪をストレートに流しながら微笑みで迎えてくれる天使がいた……

 

「えっと……私は"夏侯姫"と申します…初対面ですし……私にはまだ結婚は早いんじゃないかと思うんですよ?……なので…ごめんなさい!」

 

「じゃあお友達から……お願いします!!」

 

断った直後に友達になりましょうと言われた"夏侯姫"は「それなら……」と、同意してしまう

 

「よっしゃ〜〜!!」

 

「あの……このアイテム4つとそちらの弓で銀貨17枚頂きますね?」

 

「…おっと?そうだった………じゃあこれで…と」

 

"夏侯姫"が値段を言うとルクルットは自分のバックから銀貨を取り出し支払う

 

「…………14…16、17枚!確かにいただきました…ありがとうございます」

 

ルクルットが「また来るね!」と言って別れると、入れ替わりにやって来たモモンは驚きで目を見開いた

 

「玉藻さん?!……そうか此処が…」

 

「……お客様?何方と勘違いされているかは分かりませんが私は"夏侯姫"と申します…どうぞよろしくお願いします」

 

モモンは、最近ナザリックで、玉藻が店を出すと言っていた事を思い出した

冒険者として外に出られる事に浮かれて忘れていたが…………

 

「………………あー…ゴホンッ…失礼しました、知人に良く似ていたので……」

 

「いいえ…お気になさらず……出来ればまたいらして下さい」

 

何事もなかったかの様に話しをしているとモモンの頭の中に

 

『モモンガ様?来ると事前におっしゃって頂ければ色々準備してお待ちしておりましたのに……』

 

と、若干拗ねた感じの声が聞こえた

 

『いや、一緒にカルネ村に行く事になった冒険者達がここに来たいと言ったので……』

 

「ありがとうございました…またのお越しをお待ちしております」

 

メッセージで玉藻に弁明しようとしていたモモンガは星彩による眩しい笑顔で見送られる

 

「あら星彩?ありがとう……でもこちらの方はまだいらしたばかりなので…こういう時は、いらっしゃいませ…の方が正しいのですよ?…………そういえば先程カルネ村とおっしゃいましたか?」

 

「え?えぇ彼方のンフィーレアさんの護衛として雇われているので……」

 

「もし良ければなのですが……現在カルネ村に滞在中の冒険者の方からコチラの武具をお預かりしていたのですが此方をお願いしてもよろしいですか?」

 

夏侯姫は星彩に礼を言い、思い出したかの様に振る舞いモモンを呼び止めてからカウンターの奥から大きな西洋の斧槍……俗に言うハルバードの様な物を取り出しモモンに手渡す

 

『カルネ村に伯父様がいらっしゃいますのでそちらを渡して下さい…受けて頂ければ………私の持っている機龍を1匹差し上げても…『やる!やらせていただきます!!』……アッ、ハイ…』

 

メッセージの魔法を送ると話の途中でモモンは元気に返事をする

それを聞いた夏侯姫は……そんなに欲しいんだ……機龍…と、思いながら

 

「………では申し訳ありませんがよろしくお願い致します」

 

「かしこまりました、それでカルネ村の冒険者と言いましたが……お名前はなんと?」

 

「"四従天"のシュドナイ殿…とおっしゃる壮年の男性です……そうだ!ジオさん、一緒にカルネ村に行ってきてもらえませんか?」

 

漆黒のモモンと夏侯姫として周りに会話を聞かせながら話をしていると夏侯姫はカウンター奥の従業員スペースに声を掛ける

漆黒の剣のメンバーとンフィーレア、引き攣った顔のナーベがそちらを振り向く…すると奥から老年期に入ったばかりくらいの男性が現れた

 

「おお、姫様何かご用ですかな?」

 

ジオと呼ばれた男性は、口に生えた髭を触りながら返事をする

 

「ええ、ジオさんにお使いをお願いしたいのですが宜しいですか?」

 

夏侯姫は、モモンの前からカウンターの中に歩いて行き、奥から顔を出したジオに聞く

いくらなんでも老人を一緒には連れていけないと思った漆黒の剣のメンバーが抗議の声を上げようと声を出す

 

「いや!いくらなんでも御老人を護りながらというのは正式な依頼でもなければ受けられませんよ!」

 

漆黒の剣リーダーのペテル・モークがそう言うとルクルット・ボルブが

 

「そうだぜ夏侯姫ちゃん?いくら俺様達でも護衛対象が増えちゃあ大変なんだぜ?」

 

と、続く

それを聞いたジオは穏やかな笑みを浮かべながら

 

「…………ふむ、私の歳を考えての意見、誠にありがたい…ですが我が主人からの頼み事故にこちらも引き下がるわけにはッ!…………行きませんな?」

 

「「!!!?」」

 

言葉の途中でジオが消えたかと思ったペテルとルクルットは首筋に当たる冷たい感触に驚く

 

「…………っ!いつのまに?少しも見えなかったのである……」

 

ダイン・ウッドワンダーがいつのまにか2人に剣を突きつけているジオを見て、冷や汗をかきつつそう呟くと

 

「ジオさん?あまりおいたしてはいけませんよ?」

 

夏侯姫がにっこりと微笑みながらペテルとルクルットに剣を突きつけるジオを嗜めると

 

「申し訳ありません姫様…ですがこれで私の実力はご理解いただけた筈でございますな……道中貴方方に先達として指導しても宜しいですが如何ですか?」

 

ジオは2刀の剣を腰の鞘に納めながらペテルに言うと

 

「……す……凄い!凄いですよジオさん!是非お願いします!」

 

こんな凄い剣士……しかもモモンと違い使っているのが通常のロングソード……自分とほぼ変わらない武器を持つ強者に初めて会ったペテルは先程まで剣を突きつけられていた事を忘れて興奮気味にジオの手を取り上下に振りながら歓迎していた

 

 

 

「……………いやぁ〜モモンさんとナーベちゃんだけでも過剰戦力なのにそこに謎の剣士ジオさんとか…どっかの砦でも攻略するのかって話だよなぁーーー…………」

 

ルクルットが警戒しながら進んでいるとナーベの横まで来てそんな事を言っているのが聞こえる

 

「それにしてもジオ殿は凄い御仁であるな?肉眼で捉えらぬなど今までのであるが……正に神速であるな!」

 

「いえいえダインさん、私などが神速などと名乗るのは心苦しいですな…なにせ私より速くて強い人間は沢山"居たのですから"…………」

 

ダインの言葉にジオは右手を軽く振り苦笑いしながら否定する

ジオの沢山"居た"と言う言葉を聞いたペテルが

 

「すいません!冒険者同士過去の詮索はしないのが常識ですよね…」

 

と悲壮な顔でジオに謝るとジオは面白そうに笑いながら構わないと言い、遠くを見ながら

 

「良いんですよ………またいつか逢えるでしょうし…………」

 

と、言った

 

モモンはその話を横で聞いて感傷に浸っているとジオからメッセージが飛んできた

 

『モモンガ様……私風情で申し訳ありませんが旅の間この身を御自由にお使いくださいませ』

 

『うむ…恐怖公頼りにしているぞ………そう言えば…恐怖公は玉藻さんが来てから強化された組だったな?恐怖公はいったいどんな職業を取得したんだ?』

 

『私は玉藻様から頂いたレベル割り振り分で取った職業は"騎士王"・"エボリューダー"の2種類でございます…そのうち騎士王のお陰で眷属が暴走する事はほぼ無くなりました』

 

恐怖公とモモンガとして会話をしていると、恐怖公はなんでも無いかのように未知の職業を言ってきた、驚いたモモンガは思わず

 

「エッ!!」

 

と、声を出して驚いてしまった。

それに漆黒の剣のメンバーが反応して警戒を始める

 

「敵襲か?俺が気づかねぇとは……」

 

「何処だ!……ニニャ!詠唱を!ンフィーレアさんは馬車の中に!」

 

「は、はい!お願いします」

 

「……………………」(ニニャ詠唱中)

 

あー、不味いどう誤魔化そう…………

その光景を見た漆黒の剣士モモンはどうやってこの状況を切りぬけようか考え始めていた

 

 

 

 




カルネ村に居るのは何朱雀なんだ……


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えっ?俺王都で倍以上出して馬買ったんだけど……(クラル何とかのリーダー)

おつかれ様です

だいぶ空きましたが投稿です

風邪拗らすと肺炎まで行くんですねようやく治りました……

ロボ成分は少なめですがどうぞ


恐怖公ことジオとモモン達をカルネ村に送り出してから、玉藻は星彩とナザリックから借りたメイド2名ともう1人と共に萬屋玉屋の営業をして居た

開店から数日しか経っていないが、珍しいマジックアイテムや異国の料理…更には美人店主に使用人も皆綺麗だと評判になり昼食どきという時間も相まって店内は大変混雑していた

 

「星彩ちゃんこれを3番テーブルのお客様に、あっ!ジャンヌさんはカウンターでお会計をお願いします!」

 

「はい!かしこまりました!3番様ですね?」

 

ガチャっと音をさせて料理の乗ったトレーを両手に一つずつ持った星彩は、メイド服の裾をはためかせて軽快な足取りで料理を運んで行く

最初に会った時の印象からあまり接客業に向いていないかと思った玉藻だったが、予想に反して星彩は機敏に動き返事もはっきりしていて店内の雰囲気を明るくする役割を果たしてくれていた……働く事が決まってから星彩のスキルや職業を見せてもらったのだが意外に高レベルで盾戦士や侍…更に乱神の巫女などの職業を取得しておりレベルは合計すると30レベルである事が判明した

このレベルはモモンガが遭遇したリ・エスティーゼ王国最強の戦士とほぼ同じ強さでありこの世界ではかなりの強者である事が同時に判明……何故奉公先の貴族に監禁されていたのかを星彩に聞くと

 

「……この国では貴族の方に恩を受けたら一生その方にご奉仕しなければならない……と行き倒れていた私に食事を与えてくださった貴族の方に教わったのですが……元気になって…外にお使いに出た時に仲良くなった冒険者のお姉さんが、それは嘘だと教えてくれたので……」

 

と、恥ずかしそうに俯きながら答えた

 

現地の高レベルを味方に引き込む事ができた事でレベルアップのテストも行う事ができ、この世界の情報(かなり断片的で南国の方だけだが)を入手できた事でかなり助かった

 

「はい、そちらのアイテムは騎獣を召喚できる腕輪ですね……え…っと…金貨17枚になりますね?」

 

カウンターに向かってもらった叔父様のNPCのジャンヌさんは恐怖公の眷属が集めた情報と星彩の金銭感覚をもとに設定した金額を丁寧に整えられた豊かな顎髭の冒険者に提示している

 

「……うーん…金貨17枚か……因みにどんな騎獣なんだ?」

 

冒険者の首から下がるプレートは銀色に輝いていることからこの冒険者がシルバーのランクであり、それなりに稼いでいるだろうがそれでも高価なマジックアイテムな為中身を確認してきた

 

「この腕輪に封じられているのは……グリフォンですね」

 

「……そうか…グリフォンか…………はぁ?!グリフォンだと?!レッサーかなんかだろ?金貨17枚じゃそれぐらいが妥当だもんな?………………それでも安いが…………」

 

ジャンヌにアイテムに封じられているのはグリフォンだと聞くと、成体のグリフォンではなく幼生体か下等種だろう?と質問してくる冒険者にジャンヌは続けて

 

「いいえ?成体のグリフォンですが?」

 

と、言うと

 

「えっ?マジかよ!買うっ!買うぞ!…………えっと…持ち合わせが足りないんだが…取って置いてもらうことは可能だろうか?」

 

冒険者の男は金貨の入った袋を逆さにしてカウンターに開けると金貨を数えだす、結果金貨17枚に少し足りずジャンヌに取り置きをお願いする

 

「本日中でしたら大丈夫ですよ、今日は日没まで営業していますのでそれまでにいらしてください」

 

と、ジャンヌが笑顔で答えると冒険者の男は

 

「分かった!直ぐに下ろしてくる!日没までだな?必ず来るから取っといてくれよ!」

 

と、行って店の外に駆け出した

 

「なぁ姉さん?グリフォンの腕輪ってまだあるのか?」

 

「こっちの金貨50枚ってのには何が入ってるの!」

 

「この剣第2位階の魔法が1日5回打てるって書いてあるけどこれって何回まで?」

 

「この見たこともない美しい像は幾らだ?」

 

相場では金貨50枚はするグリフォンが、出し入れ自由で金貨17枚と聞いた店内に居る価値のわかる者たちは目をギラつかせながらカウンターのジャンヌに詰め寄った…………最後に喋った貴族の持ってきた像のみが、ガーネットが昔に作ったAGPなシュヴァルツな美少女フィギュアだったが……

 

 

「ありがとうございましたー…………ふぇぇ〜〜、疲れたぁ〜〜……」

 

最後のお客さんを見送った星彩が服がシワになるのも気にせずに女の子座りで床に座り込む

 

「星彩?服が汚れてしまうからこちらに座りなさい?」

 

「……はい……ありがとうございま……す……ぅー……」

 

そこに奥で帳簿をつけていた王元鬼が店の椅子を引き座るように言う、すると星彩はゆるゆると立ち上がり幽鬼のような動きで椅子に座りテーブルにぐでっ、となる

 

「む?なんだ星彩、あれしきで疲労困憊か?……体力が足りてないな……よし!私と模擬戦をしようではないか!ちょうど店の前は拓けているし、この時間では旅人や冒険者も通らないだろう、よし行くぞ!」

 

同じく奥の倉庫で商品の準備などを担当していた呂玲鬼がテーブルに突っ伏した星彩を見て首根っこを掴んで顔を覗き込み

星彩は、「……あー」、とか、「うー…」などと呻いているが、呂玲鬼は御構い無しとそのまま外に連れ出す

外に出た2人はそれぞれ星彩は唯一の所持品だった刀、呂玲鬼は店で売っているミスリルのロングソードを構え相対する

 

「……うー、……やるからには今日こそ一矢報いて見せます!」

 

「ふむ、良い心がけだ……母上からも鍛えるように言われているからな…来い!」

 

星彩は刀を腰だめに構えて居合い斬りの構えをとる…それに反して呂玲鬼はロングソードをダラっとさせたままスタスタ歩き星彩に近づいて行く

 

「………今日こそは…………!はぁ!!……………………駄目ですか……」

 

構えもとらずただただ歩いて来る呂玲鬼に集中して、領域に入った瞬間に刀を振るう星彩だったが呂玲鬼は刀が当たる瞬間に体捌きで避ける、そこにカウンターでロングソードを星彩の首筋に突きつける

ロングソードを突きつけられた星彩は一言「今日もか……」と、呟くと諦めて刀を鞘に納めて溜息を吐く

 

「うむ、会った時より速くなっているが…相変わらず真っ直ぐで太刀筋が読みやすい…虚実を混ぜんと私のようにその速さに対応できる相手と戦った時に同じ様に負けてしまうだろう」

 

最後の力を出しきり膝から崩れ落ちた星彩を、片手で抱き抱えながら評価をして行く呂玲鬼

その言葉を真剣に聞く星彩……最近追加された日常の一コマ

 

「レイキ〜〜、星彩ちゃん〜、ご飯できたから食べますよ〜〜」

 

黒と藍色をベースにした豪華な装飾を施された前掛けを着た夏侯姫が店の裏口から顔を出してそう声を掛けると、

 

「む…もうそんな時間か?……行くぞ星彩、母上の夕餉が待っている!」

 

「はい師匠!御主人様の美味しい料理を食べてお腹いっぱいになったら…………また特訓ですね!」

 

夏侯姫の夕御飯の支度が終わったから戻って来なさいコールを聞いた呂玲鬼は右田を握りしめガッツポーズをとると星彩に振向く

星彩もここ数日で呂玲鬼の動きをいつもトレースしていたので同じ動きをした

 

夏侯姫の背後から、こちらへ駆けてくる2人を見た王元鬼は『……妹が増えたみたい…』と考えて、苦笑する

合流した4人は夕食が準備されている食卓へ入ると

 

「…まっ!まだです!……………じゅる…………はっ!まっ!まだ………………」

 

其処には……昼間は聖母の如く爽やかな笑顔を振りまいていた女性が、美味しそうに湯気を立てている料理の数々を前に必死に理性と本能を戦わせていた……

 

「…………ジャンヌさん………」

 

これが無ければ聖女っぽいんだけどなぁ、と夏侯姫は考え

 

「………………」

 

相変わらず食欲魔人だなーと呆れながら無言で眺める王元鬼

 

「相変わらずの25歳児…だな………」

 

冷静に観察しながらボソッと一言だけ呟く呂玲鬼

 

「私もお腹が空いています!早く食べましょう!」

 

子供特有の純粋さと鈍感さで空気を読まずジャンヌの横の席に座った星彩が

 

「……ハッ!…お、お帰りなさい…じゃあ、いただきましょう?」

 

横に星彩が座った事により正気に戻ったジャンヌが恥ずかしそうにしながらそう言うと

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

5人で仲良く食べ始めた

 

 

 

 

 

 

 

その頃ナザリック…………

 

「皆済まないね、忙しい中わざわざ来ていただいて…実は玉藻様からの御提案である物を作ったので教えておきたかったのだよ!」

 

デミウルゴスに手の空いている守護者や上位者は全員集合する様に言われて、第6階層の闘技場近くにある広場に100名ほどのNPCが集まっていた

 

「なんなんでありんすか?妾はペロロンチーノ様の護衛に行く途中なんでありんすが……」

 

「何よシャルティア?手の空いている守護者って言ってなかったっけ?ペロロンチーノ様の護衛ほっぽり出して大丈夫なの?」

 

「あーらドチビ居たの?小さ過ぎてわかりんしたわ……」

 

シャルティアとアウラが先頭に近いところで口論していると急に寒気が襲ってきた

 

「ソノ辺リデ止メテオケ、デミウルゴスガ説明ヲ始ル様ダ……」

 

コキュートスが諌めるとそれを確認したデミウルゴスが話を再開する

 

「この度玉藻様がナザリック外で、人間種相手の商売をする事になった」

 

ステージに立つデミウルゴスのその言葉に多くのしもべが驚きの声を上げる

 

「静まりなさい!モモンガ様が許可なさった事ですので反論は許しません!……それに伴いナザリックに存在するアイテムのうち低位のアイテムを人間種相手に売り渡す事が決定しました」

 

アルベドがデミウルゴスに続いてそう宣言すると、先程よりも大きな騒めきが上がる

騒ぎが大きくなる中デミウルゴスが「しかしながら…」と続けると騒ぎが治まる

 

「しかしながら玉藻様から御提案を頂き……高位のアイテムや至高の御方々の持っていたアイテムは……この…ナザリック御褒美ガチャに入れて頂き、我々に至高の御方々のアイテムを直接手に入れる事を許可して頂いたのです!!」

 

最初にデミウルゴスが興奮気味に何を言っているのか理解出来なかったしもべ達だったが、その言葉の意味を理解した途端先程までの騒めきがささやき声に聞こえるほどの大歓声が上がった

 

 

 

ガチャの説明はこうだ

・しもべが功績を挙げた場合は功績に応じてナザリック御褒美ガチャが引けるコインを頂ける

・人間種に売るアイテムは第3位階までだが此方には第4から第8位階及び相当のアイテムが入っている

・手に入れたアイテムはその人?の物、奪ったりしては絶対駄目

・交換は可能、双方の合意が有ればランク違いもOK

 

サプライズでカルネ村に初めて行った時、アインズに同行したアルベドがガチャコインを1枚渡された

喜びを隠しきれないアルベドは表情筋をピクピクとしながらコインを受け取りガチャに入れ、回す

 

ーガチャ…ガチャガチャ……コロンー

 

心なしか羽も揺れている様に見えるアルベドはガチャで出たカプセルを開けて中の目録を確認する

 

ーやまいこ作モモンガ様人形ー

 

 

その日、第6階層での最大音量はたった1人の喜びの声だった……




第6階層に「くふー!!!!!」が響き渡る時……

第4階層に眠るアノ巨人が…………動きません!


またちょこちょこ投稿していきますのでどうぞよろしくお願いします


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此処は……何処……えっ?〇〇ですが?

お疲れ様です

長らく期間が空きましたが続きを投稿します

オーバーロード成分が殆どありませんがロボ多めにはなっているかと……

話の途中で、最強勇者ロボ軍〇を聴きながら読んだりすると少しだけ幸せな気分になれるかも?


萬屋玉屋閉店後、星彩は昨日王元鬼に帳簿のつけ方を教わり、今日の売り上げを計算し終わったので王元鬼に渡しに行こうと2階に登っていた

 

ーコンコンー

 

星彩は王元鬼の部屋を教えてもらった"ノック"(扉を軽く叩いて来客を知らせる行為)をして今入って良いかを確認するが返事が無い、何故だろうと扉を良く見ると貼り紙がしてある

 

ー急用により外出中……用事があれば奥の部屋に居るおか…夏侯姫様にお願いしますー

 

「急用?……何でしょう……それでは夏侯姫様に帳簿を確認していただかないと!」

 

王元鬼の急用というのが気になったが、星彩は気を取り直してメイド服がまくれあがらない程度に急ぎ足で最上階にある夏侯姫の部屋に向かっていった

 

ー……………!♪!♪!♪♪♪♪〜♪♪♪♪〜♪!♪!♪!……ん?……星彩ちゃんですか?どうぞ ー

 

星彩が夏侯姫の部屋に近づくとテンポの早い歌が聞こえてきた…勇者の王様が降臨しそうな歌が……部屋の前まで来ると夏侯姫が星彩の気配に気がつき、部屋の中に入るように促す

何故わかったのか驚きながら夏侯姫の部屋に入った星彩は目の前の光景に眼を見開いた……

 

船のように見えるが自分と同じくらい大きい模型の他にも店に置いてあるような模型が所狭しと並べられており、星彩はあまりに幻想的な模型の数々に惚けていた

 

「…………はぁ〜〜〜〜すごい……です…コレなんか動き出しそうな……」

 

「星彩ちゃんもコレ好きなの?私もこの子は大のお気に入りでね、あまりに気に入ったから模型"も"作ってしまったの」

 

「!?!はっ!…………申し訳ございません!!ご挨拶もせずに失礼いたしました!!」

 

星彩は赤と青の2色で左右がチグハグな色をして居るのだがカッコいいゴーレムの模型に魅入られ惚けていると、背後から夏侯姫が声をかける…御主人様に挨拶もせずに御主人様の部屋の調度品に魅入られていた星彩は、ズザザァッ!と音が出るくらいの速度で土下座をしながら夏侯姫に謝った過ぎ最後の最後まで

 

「…あら?良いのよ星彩ちゃん、貴女がこの子達を気に入ってくれたのなら私はそれだけで嬉しいですから…それで、何かありましたか?」

 

「は、はい…本日のお店の売り上げを記帳したのでご確認して頂こうかと思いまして………」

 

夏侯姫は星彩がロボ好きならば嬉しいなぁ、と思っていたので、予想以上の反応をした星彩に笑顔を向けながらここに来た用事を聞く

そして星彩から帳簿を受け取りパラパラとページをめくり確認して全て読んだ後、とあるページを開いて星彩に見せながら

 

「星彩ちゃん?ここの所何ですけど…たぶんグリフォンの召喚石が1つ少ないですかね?最後の数字的には合っているのでこのページの召喚石の数を書き直せば大丈夫ですよ……すごいですね、初めて1人でやってここまでできるなら安心して任せられますね」

 

と、星彩の頭を撫でて褒めていると星彩もまんざらでは無いのか嬉しそうに目を細めて素直に髪を撫でられている

五分程撫でていただろうか、夏侯姫は徐に手を引き、先程まで星彩が魅入っていた赤と青の彫像を手に取ると机の上に置き直し、こっちまで来るように手招きする

何だろうと思いながら星彩は夏侯姫の前まで行くと夏侯姫は机の1番下の引き出しを開けて何かの部品を取り出した

 

「ちょっと待っててくださいね?」

 

と、言うと夏侯姫は彫像を2つに壊してしまった

 

「えッ!?」

 

夏侯姫は驚く星彩をよそに手早く作業を続ける……すると其処には先程の赤と青の彫像より少し小さい赤と青の2つの彫像が出来上がった

 

「わぁ!すごいです!さっきまでのもかっこよかったですけど…こっちもいいですね!」

 

机の周りをぐるぐる回って彫像の全身を、目をキラキラさせながら眺める星彩に苦笑し、

 

「星彩ちゃん良かったらこの子達いりますか?まだお部屋に物も少ないみたいですし飾り位にはなると思いますよ」

 

と、言うと「良いんですか!?…………でも……コレ、今日貴族の方に売った物より精巧な作りをしています…高いのではないでしょうか?」と嬉しそうに顔を輝かせてから不安そうに聞いてくる

 

「良いんですよ!星彩ちゃんがロボ好きになってくれる第一歩です!この子達大切にしてあげてください」

 

そう言い差し出すと、おずおずと受け取り嬉しそうになる星彩

 

「その子達の名前は青い子が氷竜、赤い子が炎竜で合体した最初の姿が超竜神と言うので覚えてあげてくださいね」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

炎竜と氷竜の説明書と共に超竜神合体パーツをあげて変形したビークルモードも見せてあげると歳相応な反応を見せる星彩、それを微笑ましく見ていたが、思ったより時間が経っていたのか外が真っ暗になっていた

急ぎ夕食を作り、作り終わったあたりで、王元鬼・呂玲鬼・ジャンヌの3人がちょうど帰って来たので皆で揃って夕食を済ませる

 

片付けを王元鬼に任せて部屋に戻ると直ぐにベッドに横になる

 

「………………そう言えば…………"あの子"はちゃんと此方に来ているのでしょうか"あまりに大きい"から……此方にちゃんと来ていれば良いのですけど…………明日にでも…行って…確に………すぅ〜…くぅ〜…………」

 

夏侯姫こと玉藻が寝る前に…少し物音がした気がしたが気のせいだろうと思い意識を手放す

明日、緑都に戻ってある事を確認する為に

 

 

「……で、どうしたんですか玉藻さん?みんなを緑都に集めて?」

 

翌日の朝玉藻はメッセージを送り、手が空いていれば緑都に来てくれないか確認した所、モモンガ様をはじめ伯父様お姉ちゃんたお兄ちゃんも来てくれた

「玉ちゃん成分が不足した!」と、言って玉藻の豊かな胸に突っ込んで行ったぶくぶく茶釜をスルーしながら今日集まった趣旨をモモンガが聞く

 

「少し確認したいことがありまして…行けることは確認してあるので取り敢えず参りましょうか」

 

玉藻に先導されて転送ポート風に改造されたゲートをくぐって転送されると、何処かの格納庫の様な場所に出た

 

「ここは…………何処?秘密基地的な?」

 

「なんだか防衛軍の基地みたいな場所だな……たっちさんが喜びそうだ」

 

「おー…もしかしてやまちゃん達と歌姫ごっこした所?」

 

「そうですよお姉ちゃん、懐かしいですね……またやりたいですね…」

 

ペロロンチーノがキョロキョロと周りを見渡し、死獣天朱雀はギルドのワールドチャンピオンがこういうの好きだったなぁ…と思いを馳せていた

するとぶくぶく茶釜がこの場所に心当たりがあったのか玉藻に聞いてみる、すると正解だったようで玉藻はもう一度やりたいと嬉しそうに言うが……

 

「いやいや玉ちゃん!アレは女子会のノリ的な奴で…今やったら黒歴史まっしぐらだかんね!…………NPCにも示しがつかないし…何よりアレを愚弟の前でやるのは…………」

 

「えっ?何々?歌姫ごっことかすごい気になる単語が聞こえた気がしたんだけど?」

 

人化の指輪で某偽りの歌姫の茶髪版な姿になっていたぶくぶく茶釜が頭を抱えて悶えているとペロロンチーノが空気を読まず、面白そうな単語だけ拾い姉を弄るネタを見つけた!と喜び勇んで聞きに行くと

 

「……愚弟?…………ニューロニストに預けられるのと…黒棺に1泊するのどっちが良い?この話を続けるのならどちらかを選びなさい……」

 

冷徹な目を向け、感情のこもらない声できわめて静かに、ペロロンチーノに質問を投げかけた

それを聞いてペロロンチーノがどうしたかは火を見るより明らかだった

 

 

「この基地みたいな場所で確認したい事とは何だろう……………ん?」

 

モモンガがぶくぶく茶釜とペロロンチーノのいつも通りを横目で見ながら、玉藻に聞こうとすると大きな足音が聞こえた気がして後ろを振り向く

 

「「プロフェッサー!皆様!ようこそGTR機動部隊へ!」」

 

赤と青の巨大なスーパーロボが出迎えてくれた……モモンガは『エッ?…………いつこんなの作ったの?』と思ったが驚いて声が出なかった

 

「炎竜です!」「氷竜と申します」

 

「「以後宜しくお願い致します!」」

 

炎竜と氷竜は至高の存在達を前に緊張していたが、玉藻のお願いでビークルモードに変形した所、モモンガとペロロンチーノ…更には死獣天朱雀が大変喜んでくれてホッとしていた

 

「玉ちゃんいつこんなステキロボ達造ったの?変形機構とかGGフレームの時も思ったけどロマンだよなぁ……うわぁ……たっちさんに見せてぇ…………すっごく好きそう……」

 

「うむ、たっちさんああ見えて戦隊モノとか変形合体ロボ好きだったもんなぁ〜」

 

ペロロンチーノと死獣天朱雀が過去の光景を思い浮かべていると、玉藻は白衣をバサァ!と、たなびかせて

 

「ふっ、ふっふ……そんな事もあろうかと!…………氷竜!炎竜!シンメトリカルドッキング発動承認!!」

 

と、大声で宣言すると…氷竜と炎竜の目が一段と輝き、格納庫から何かのメロディーが流れてくる

 

「「至高の方々が「私の!」「僕の! 」合体を求めている!いくぞっ!シンメトリカルッ!ドッキングッ!!!」」

 

ビークルモードに変形していた氷竜と炎竜は空に飛び上がると各部を変形させて合体していく……目の前で急に展開される合体ショーに男連中が固唾を飲んで見守っていると合体が終了して1体の巨大なロボットが誕生する………

 

「超ッ!!竜!!神ーーン!!!!」

 

男達はその光景を見てただひたすら拍手を送り、その表情は少年の様に輝いていた

 

 

超竜神をひたすら賞賛したモモンガ達が落ち着いた頃、玉藻の案内で格納庫から外に出て街を歩き、レストランのようなところに入る

 

「…………格納庫に続いてこんな場所まで……緑都にこんなところ有ったか?」

 

モモンガが疑問を口にすると玉藻はなんでもないかのように

 

「此処は地上では無く宇宙に居る……私達の最高?傑作マクロス・クォーターですよ?緑都にこの子が居たら地形が変わってしまいますし……ね?」

 

と、ふさふさのしっぽを振りながら小首を傾げ可愛らしく言った

 

それを聞いて事態の大きさが分かったモモンガ・ペロロンチーノ・死獣天朱雀は唖然として、最初から知っていたぶくぶく茶釜は、あーー…そうなるよねー…とでも言いたげな微妙な表情をしてながらドリンクバーから取ってきた抹茶コーラを飲んでいた




星彩ちゃん強化フラグ・時空要塞降臨

でお送りしました

次回は少し原作に戻ると思います

それではまた次回に

やっと時間が空いて見直し……おぉ誤字だらけ……直しました



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星彩のお留守番(襲撃者有り)

長らくお待たせ致しました

待ってない方も今見始めた方も良ければ本編をどうぞ

久し振りなので少しアレ?と思うかもしれませんがブランクという事でご容赦を


「それじゃ星彩ちゃんよろしくね?」

 

「はいっ!お任せください!」

 

「星彩、何かあったらこの2人も頼りなさい?」

 

そう言って夏侯姫は王元鬼とジャンヌを伴い出掛けて行き

どうやらこの近くの都市であるエ・ランテルまで商談に行くのだそうだ

呂玲鬼は別件で王都の方へ行くそうで店にはいない

 

「それじゃ開店準備しましょうか2人共?」

 

「了解しました星彩、では私はアイテムショップの方を……」

 

「じゃあ僕は料理屋の方かな!星彩!手伝って!」

 

新しく御主人様が連れて来た2人のメイド

青いセミロングのさらさらした髪を右側に束ねたサイドテールの氷華さん

数字が得意で王元鬼様の下でアイテムショップの手伝いをしている

もう1人が赤いセミロングの髪を左側に束ねたサイドテールの炎那さん

元気で料理が上手くてジャンヌ様の下で料理屋を手伝っている

 

がそれぞれ準備の為に動き出す

 

「炎那人参終わったよ、次は何する?」

 

「ん?んーー、後は大丈夫!今日はメニュー少なくしてあるし……氷華の方手伝ってあげて!」

 

炎那と星彩は手際良く次々と下拵えを終える

すると炎那からアイテムショップの方行ってあげて?と言われて、分かった!と返事をしてから手を洗いそちらへ向かう

 

「…………ん?星彩、彼方は大丈夫何ですか?随分と早いようですが……」

 

氷華は王元鬼に貰った伊達眼鏡というアイテムを装備して今日の販売商品の目録と確認を行っていた

手伝う事を伝えると目録の五分の一を確認して欲しいと言われて作業をこなす

順調に開店準備が整い開店予定時間より1時間くらい早く終わってしまったので3人でお茶にする事にした

 

「はい!僕の作ったシフォンケーキだよ!」

 

「うん、さすが炎美味しいです」

 

「美味しい!炎那美味しいよこれ、しふぉんけーき…だっけ?」

 

特製のケーキを食べて感想を述べると炎那はえへへ、と笑顔になる

御主人様と呂玲鬼様の薫陶を受けている炎那の料理は、この辺りでは見たことのない物が多かったがとても美味しかった

 

「私も料理を作れれば良いけど…どうも私はゲンキ様と同じで料理は苦手です……」

 

「でもでも、氷華は凄いよ!だってあんなに複雑な計算私まだ出来ないよ…昨日だって……」

 

「そうそう!僕はどうも計算って苦手で!こうやって料理したり、体を動かしてた方が性に合ってるよ」

 

「いや炎、貴女の場合は違うと思うのですが…同じAIの筈なのにどうしてこうも違いが……育成者の違いが?…」

 

星彩と炎那の2人で氷華の仕事を褒めていたが、炎那の発言を聞いた氷華は王元鬼の様に顎に手を当てて考え込む仕草をする

それを見た炎那は「うーん!そろそろ開けようか?外に結構人いるみたいだし?」と言い、入り口の方に視線を向ける

 

「うん!それじゃ開店しようか、氷華も宜しくね?」

 

「了解です……それでは…」

 

「「「いらっしゃいませ!ようこそ萬屋玉屋へ!」」」

 

星彩は少し声を出すのが苦手な氷華に声を掛けてから、入り口の扉を開けてお客さんを迎え挨拶をした。

 

 

「ええと…そちらのポーションは銀貨2枚で……あっそれは蘇生薬なので金貨30枚です……効果ですか?……肉体が残っていて亡くなってから1時間以内でしたら……」

 

「はーい!8番さんのオムライスあがったよー!次は3番テーブルのハンバーグ作るねー!」

まだ接客が苦手な氷華が、冒険者相手に四苦八苦しながらもきちんと対応しているのを見ながら厨房で炎那が作った洋食をテーブルに運ぶ星彩、時折氷華の手伝いに回ったりしているといつのまにか閉店時間が来ていたようでポツポツとお客様が店の外に出て行く

最後のお客様をお見送りしてから入り口の鍵を閉める

 

「疲れたーーーー!!!」

 

「炎、はしたないですよ?星彩からも言ってやってください……年頃の女がそんなに大股を広げるなんて……」

 

「まあまあ、今日は御主人様も王元鬼様も呂玲鬼様も皆さんいらっしゃらない中よく頑張ったと思います、なのでこれくらいは許してあげましょう?」

 

「星彩は甘いですね……まぁ今日だけですよ、炎…」

 

「ありがと!星彩も氷華も大好…き?……」

 

閉店した直後に炎那がメイド服のまま床に大の字に寝そべる

氷華が咎めようとしたところで星彩に宥められ、溜息を吐き呆れながらも渋々認める

炎那は赤い髪や手足を広げ、床に寝そべりながら満面の笑みを浮かべているとふと外に30人くらいの気配がした

 

「……炎も気がつきましたか?………あまり良くない気配ですね、星彩どうしましょうか?」

 

「えっ?…えっ、どういう事?」

 

「んーー…簡単に言うとー…お店の周りに僕達に友好的じゃない気配がするって事かな?」

 

星彩が氷華の言葉に混乱していると炎那が簡単に説明してくれた

取り敢えず3人で話し合って、お店を荒らされても困る為外で迎え撃つことにした

 

 

「おお?可愛い嬢ちゃん達がお出迎えたぁ俺達ゃツイてるなぁ!!」

 

「アイテムだけじゃなくてこのガキ達売りゃいいカネになりそうだな?」

 

「頭あの青い髪の味見しても?」

 

「あっ!ずりーぞ!!……じゃあ俺赤いの!」

 

「お、オレ、く、黒髪の…娘、ヤル…」

 

「ばーか、テメェのじゃ壊れちまうだろ?全員遊び終わった後な?」

 

男達は取り囲むように店に近づくと、入り口の前に3人の少女を見つけた

口々に少女達に暗い妄想をしていると青い髪の少女が心底嫌そうに

 

「汚らわしい……なんて…なんて…」

 

と、呟き

 

「…味見?僕美味しくないよ?」

 

「私もですよ?それにこの歳で男の人に遊んでいただかなくても……」

 

意味を理解していない2人は揃って美味しくないよ?と話している

その横で氷華は額を抑えながら深い溜息を吐いた

 

「兎に角…友好的ではないのですからやりますよ?」

氷華は、後でこっち方面の教育が必要ですね…と呟きながら右腕に青く薄っすらと光るトンファーを取り出す

 

「え?やって良いの?じゃあ僕も!」

氷華が武器を出したのを見て嬉しそうに左腕に赤く色づくトンファーを出してぶんぶん素振りする

 

「えっ?2人とも何処から?とと、私も…いざ…参ります。」

2人が何処から武器を取り出した事に驚きながらも、星彩は腰の刀に手をかける

 

「頭〜このガキ達逆らう気ですぜ?どーしやすちょっと痛い目見せてやりましょうかー?」

 

「俺達ゃ泣く子も黙る"八本指"窃盗部門所属の三つ目狼だぞ?小娘共にコケにされたとあっちゃ……痛い目に合わせてやらなきゃいけないよなぁ?おい野朗共!心は壊して良いが身体は壊すなよ、後で奴隷部門に高値で売りつけるんだからな?」

 

その金でいい女を買うぞ!と頭が言うと周りの盗賊が興奮したように声を上げる

星彩と炎那も何となく嫌な感覚がしたようで気分を悪そうにしている

 

ーヒュッ!……キン!…グシャッ!ー

 

右方向の木の上に居る盗賊が氷華に向かってボウガンの矢を撃ち込む

氷華は其方をちらりとも見ずに右腕のトンファーで打ち落し、カウンターで第三位階魔法のアイスボールで反撃をした

すると木の上の狙撃手は氷の塊に頭を押しつぶされ残った体は地に落ちて潰れたトマトの様な光景が広がった

 

「気をつけろ!今のは第三位階の魔法だ!全員青髪のガキを抑えろ!」

 

盗賊の1人が叫ぶ、それを聞いた仲間が一斉に氷華へ殺到すると其処に成人男性を優に飲み込む程大きな火の玉が撃ち込まれた

 

「……な、何だ……」

 

盗賊の頭を含めた10人は仲間が火の玉で焼け死ぬ姿と匂いを刻み付けられ呆然と立ち尽くしていた

……簡単な仕事のはずだった……腕の立つ従業員が出払った後アイテムを盗み、その稼ぎで大酒飲んで女を買って……そんな簡単な仕事のはずだったのだ……

だが現実は……目の前には焼け焦げた地面…其処に微かな破片だけ残して焼き尽くされた仲間…結成当初からずっと一緒に馬鹿をやった最古参の狙撃手は真っ先に死んだ…そして今

 

「……貴方が親玉でしょうか?此処までやっておいてなんですが、降参いたしませんか?こちらとしては無用な殺生は家訓でしたくはないのですが?」

 

と、黒髪の一番小さいメイドの刀が首に添えられて降参を要求されている

 

「えーー!星彩!僕降参させるって聞いてないよ!ほとんどヤッちゃったよ!」

 

と無邪気な笑顔で黒髪のメイドに文句を言う赤い髪のメイドが左手に持つトンファーは元々の赤い色よりももっともっと濃い緋に染まっている

赤い髪のメイドの足下には火球の爆発から生き残っていた仲間の死体が散乱している

 

星彩と呼ばれた少女が赤髪の方から困ったような顔のまま視線をこちらに向けると

 

「……申し訳ありませんが……死人に口無し、と言う事で。」

 

少女の刀が煌めいたかと思うと視界が宙を舞う

最後に見たのは刀を振り切った姿の黒髪のメイド服の真っ白なスカートの中だった

 

「見事に血塗れですね…湯浴みを推奨しますが…どうしますか?」

 

「じゃあ氷華水お願い!僕があっためるよ!」

 

「では私は夕飯の支度を…何がいいですか?」

 

「「ハンバーグ(が良い!)をお願いします。」」

 

全てを殺し尽くした後、返り血を浴びた姿を見た氷華の提案に炎那が乗り、手の空く星彩は夕飯のメニューは何が良いか尋ねる

すると氷華は申し訳なさそうに、炎那は元気いっぱいにハンバーグ!と告げた

 

「…くすっ…じゃあ支度するね?」

 

性格は違うけど姉妹なんだなぁって思い思わず笑ってしまう

しかしながらある事に気がつき疑問を投げかける

 

「どうしよう……お店の周り血だらけ…掃除…?で良いのかな?」

 

星彩が疑問符を浮かべながら2人に問いかけると2人は

 

「あー…後は御主人様に任せれば良いよ?」

 

「そうですね、此処までやってしまうと私達では燃やし尽くすが氷漬けにするくらいしか出来ませんし……」

 

取り敢えず3人で風呂に入って夕餉を食べた後に確認に戻ると其処に先程まであった凄惨な現場は何事も無かったかのように綺麗になっていた

 

 

その頃ナザリック

 

 

ルプスレギナはカルネ村に向かう途中戦闘メイドの部屋の隅でもぞもぞ動くエントマを発見して声を掛ける

 

「?エンちゃん何食ってるっすか?」

 

「…お掃除したからオヤツを……ケプッ…恐怖公の眷属達と…」

 

エンちゃん、と呼ばれたエントマは顎の下を赤く染めながら返事をした後、可愛くゲップをした

その足下ではおこぼれに預かった黒い多数の虫が……

 

「ひっ!ヒィーーーーーー……」

 

「?」

 

黒い眷属の大群を見たルプスレギナは恐怖で走り去って行きそれを見たエントマは疑問顔のまま赤く染まるナニカを齧り続けていた。




星彩ちゃんはガゼフさんレベルの猛者でこの世界では強者です


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もふもふしっぽと神の鳥

連休につき少し早めに投稿してみました

主人公サイド及びナザリックサイドほぼ出ませんが……


ーガタガタ…ゴトッ…ー

 

ジャンヌがフードを深く被り馬車を操っている

その馬車の中で玉藻は自分のしっぽをもふもふしながら悩ましげに呟く

 

「…………もふもふ…もふもふ…んーやはり自分ではあの感覚は味わえないのでしょうか……お姉ちゃんにやってもらっても同じような感じですし………やはりお兄ちゃんに?……」

 

「…おい、母上はまだ気が付かんのか?いっそのこと教えても良いんでは無いだろうか?」

 

「レイキ、コレはお母様が御自分で気が付かれなくては意味が無いのです……例えそれが最愛のお母様が私より大切な方を作ることだとしても…私より大切な方を作ることだとしても……」

 

周りから見れば丸わかりな玉藻の様子を見てひそひそと話し合う娘2人は呆れ顔で自らの母を見ているが、自慢のしっぽをもふもふしながらも不満気な玉藻はそれに気が付かない

 

「……皆さん、そろそろエ・ランテルの外門に到着いたしますので変装をお願いいたします。」

 

そのまま1時間くらい馬車に揺られていると従者をしていたジャンヌから声が掛かる

すると玉藻は変化の指輪を起動して金髪狐っ娘巫女から瞬く間に黒髪ロングの着物姿に変化した

 

「では気を取り直して参りましょうか。」

 

「「はっ!」」

夏侯姫へと変化した玉藻は2人に声をかけると自ら気を引き締めた

 

「……次の者…通行証を御提示願います…出来ればフードを取っていただけませんか?規則ですので…」

 

外門に到着しても入り口で検問をしているのか兵士が一組一組通行証と理由を確認している

玉藻達の番が来た時、兵士は立派な馬車を見て驚きながらも職務を遂行する

 

「あぁ、失礼致しました…これでよろしいですか?」

 

「!?」

 

兵士は息を飲んだ

立派な馬車の従者だ、断られるだろうと思ったら素直に応じ、しかも輝く様な金髪の美女が自分に向けて通行証を差し出して笑顔を向けているのだから

 

「??アレ?如何されました?通行証を間違えたでしょうか?」

 

「……!!い、いいえ!大丈夫です!か、観光でしょうか?」

 

「いいえ、御主人様と従業員を連れての商談ですよ、入っても?」

 

ぼーっとジャンヌの顔を見ていた兵士は、心配そうに自分の顔を覗き込むジャンヌの姿を間近で見て狼狽えながら理由の確認をする

そして理由を告げたジャンヌに進入許可を出すとぼーっと後ろ姿を見送る

周りの人々もジャンヌの神秘的な美しさに見惚れていたのか少しの間誰も動かなかった

 

「うむ、さすがジャンヌあざといな!」

 

「アレで天然なのですから…恐ろしいですね…其処はお母様に似なくても良かったのですが……」

 

「?」

 

設定で姉妹の様に育った

とある妹の?という顔を見ながら姉2人が戦慄していると馬車が止まる

其処には冒険者組合の建物が建っており夏侯姫と王元姫は優雅な佇まいのまま中に入って行く

 

「御免下さい、すこしよろしいでしょうか?」

 

冒険者組合では珍しく丁寧に扉が開かれると、その扉から現れた女性を見た冒険者達は揃って"女神が降臨した"と仲間や冒険者に吹聴したと言われている

 

アインザックは驚愕していた。

何も目の前の美しい女性達の姿だけではない………

目の前に置かれた金貨の山に……

 

「今後こちらでお世話になると思いますので宜しければご検討ください……あっ!コレはご挨拶に持って行けとお父様からです」

 

そう笑顔で話す夏侯姫と名乗った女性はなんでもないかの様に数百枚はあろうかと思われる金貨の山を差し出してくる

何でもエ・ランテル近郊で商売を始めたが治安があまり良くないので冒険者による定期巡回をして欲しいとの事

始めは何時もの世間知らずな商家の娘が来たのかと投げやりな対応をしていたが話が進むに連れ何やらおかしな話になってきた

何でも父親は若い頃冒険者に助けられた恩を返したいから、目の前に差し出された金貨の山は寄付だ……と

 

「それでですね?えと…ゲンキ?」

 

「はい…お嬢様こちらになります」

 

「ありがとうゲンキ、アインザック様?もしこの依頼を受けていただけるのでしたら常設依頼として1日につき金貨1枚をお支払い致します」

 

夏侯姫さんが王元姫さんに何かを催促すると別の金貨袋が出て来る

それを受け取った夏侯姫さんは笑顔を崩さないままこちらに依頼をしてくる

 

「金貨1枚?それは勿論チームで……という事ですよね?」

 

「?いいえ?お一人につき金貨1枚ですよ?危険なお仕事ですしうちの店があるのは街道からすこし外れているので…宿泊場所も提供させていただきますのでできれば泊まり込みで仕事をお願いしたいのですが?」

 

アインザックは驚愕した、冒険者が危険な仕事ということを理解していない者が多い世の中で、こんなにも冒険者の身になって考えてくれる依頼主は居なかったからだ……少なくともアインザックは会ったことがない

 

「しかしながら…その条件ですと冒険者のランクがお約束出来ません…常に高ランクの者をそちらの護衛に、という訳には参りませんので…」

 

高ランクの冒険者は引く手数多だこの様な好条件の依頼があれば誰だってやりたいだろう……しかしそうすると他の高ランクの依頼が片付かずに他の問題が発生する恐れがある事から泣く泣く断ろうとすると

 

「アインザック様すこしよろしいでしょうか?」

 

今までほとんど会話に入ってこなかった王元姫さんが話しかけてきた

 

「我が商会は防衛用のゴーレムなどはあるのでそこまで高ランクの冒険者の方は必要というわけではありません……簡潔に理由を説明すると、私達の商会には現在女性しか従業員が居ないのです、そうすると下衆な…おっと、邪な考えの方々が我が商会を狙わないとも限りませんので何処かの組織の後ろ盾が欲しいのですよ」

 

その為の依頼です、と金にも銀にも見える髪をかきあげて説明してくれた王元姫さんにアインザックは

 

「するってぇと、低ランクの奴でもその依頼受けていいって事か?」

 

と、机から身を乗り出して素の口調で聞き返す

 

「ええ勿論、しかし時折高ランクの冒険者の方を回していただいてもよろしいですか?その方が対外的に都合が良いので…」

 

アインザックはその提案に飛びつきその場でサインした

 

その日から1週間後

 

冒険者組合の掲示板に奇妙な依頼書が張り出される様になった

依頼書の文字が金色なのだ、朝イチでいつも依頼を確認していた冒険者チームのリーダーはそれが気になり手に取る

その依頼書には〔商会の護衛〕ランク問わず1チームのみ、とだけ書かれていた

 

「なぁ?この依頼書昨日までは無かったよな?何なんだコレ?」

 

銀のプレートを首から下げた男が依頼書を持って受付に確認に行くと何故か組合長のアインザックが座っていた

 

アインザックはその依頼書を持ってきた冒険者の肩を叩くと

 

「おめでとう!君達が映えあるGGG任務の初隊員だ!」

 

「??どうも?」

 

三十代後半に差し掛かり冒険者を辞めようか悩んでいたリーダーはアインザックの剣幕に取り敢えず礼を言い詳しい説明を聞いた

 

 

 

 

「でもさ〜リーダー〜そんな好条件の依頼なんか裏がありそうじゃない?」

 

「そうな、だって1日泊まり込みで施設までついて更には金貨1枚だろ?美味しすぎんだろこの依頼……しかもこの道ってあの玉屋の道じゃないか?依頼者ってあの美人さんか?」

 

「まあ良いじゃない、アインザックさんお墨付きでしょ?悪い様にはならないわよ。」

 

まだ若い、緑の髪をポニーテールにした弓士の女性が胡散臭そうな目で依頼書を読み返していると中年に差し掛かる年嵩の重戦士が裏がありそうだが……と同意する

そこにサブリーダーを務めるマジックキャスターの女性が組合長オススメの依頼だという事を示す

 

「とりあえず行ってみよう…やはり此処か…」

 

リーダーが先頭を歩きながら地図を確認していると最近見慣れた町外れのアイテムショップ兼料理屋"玉屋"前に着いた

 

「あっ!いらっしゃいませ!何のご用件でしょうか?」

 

最近店番をすることがある星彩ちゃんが箒を片手に走って来る

リーダーの前まで来た星彩は要件を聞く

 

「依頼を受けてきたんだが……本当に此処で良いのか?」

 

リーダーは戸惑いながらも依頼書を出して確認する

 

「あぁ!依頼を受けて頂いた方々ですね?御主人様から先にこちらへ通しする様に仰せつかっております、どうぞこちらへ」

 

「え?は、はい…お願いします」

 

冒険者チームが星彩に案内され、離れに向かう途中に赤と青のメイドが喧嘩をしていた

 

「だから謝ったじゃないか!それに僕がクッキーちゃんと作り直しただろ!」

 

「アレは御主人様が御自ら作って頂いたクッキーです!炎の作りの甘い粗雑なモノと一緒にしないでください!」

 

「!?僕の作ったモノを馬鹿にしたな!いくら氷でも許さないぞ!」

 

「やりますか!いいでしょう!今日こそどちらが姉かハッキリさせてやりましょうか!!」

 

星彩はその光景をチラッと横目で見ると何事もなかった様にスタスタ歩いていく

 

「あの?止めなくても?」

 

「大丈夫です、いつもの事ですし……」

 

「くらえ!ファイヤーァァー…ボォーール!!」

 

「何の!アイスボール!」

 

「「「「…………」」」」

 

先程の姉妹?が魔法を…しかも第三位階の魔法を使い始めたところで冒険者達は固まった

しかし案内人の星彩はいつもの事ですからと完全に無視しながらどんどんと進んで行く

 

「だ、第三位階……私…第二位階が限界なんだけどあの娘達何なの?」

 

「行きますよー!」

 

目の前で繰り広げられる氷と炎の魔法合戦に目を取られていた冒険者達は星彩の声に導かれて着いて行く……背後から聞こえる爆音は空耳だと思う事にした。

 

 

 

 

 

「皆さま遠路はるばるありがとうございます、私はこの"玉屋"主人の夏侯姫と申しますどうぞよろしくお願いします。」

 

星彩に案内されたのは立派なログハウス風の家で星彩はこちらです、と言って中に入って行く

冒険者のリーダーはこんな立派な建物に住んでいる主人とはどんな人物なのだろう?と考えながら丸太を組んだ階段を登り、開いているドアから中に入る

入ってすぐの所に大きなテーブルと椅子が並んだ部屋があり、そこに居た艶やかな黒髪の美女が丁寧な挨拶をしてきた

畏まりながら挨拶をしていると座る様に促される

 

「……では今回は初めてという事で滞在は1週間、仕事は店の営業時間に入り口の護衛1名夜間の警戒2名、それと休暇1名という事で宜しいですか?」

 

美女改め夏侯姫さんに席に座る様に言われて全員が着席すると夏侯姫さんが手を叩き誰かを呼んだ

呼ばれて出てきたのもこれまた美女、眼鏡をかけた冷たい感じのする綺麗系の女性だった

その女性は名を王元姫と名乗ると、高そうなキレイな皮洋紙を取り出し仕事内容の説明をしてくれた

 

「あの…ちょっといいですか?営業時間中は1名の護衛との事ですがそれは……」

 

「それでしたら朝の開店時間から昼過ぎ又は当日販売分の在庫切れ迄…ということになります、夜間の巡回は陽が落ちてから朝日が昇るまでの間店舗兼住宅の外周部の警戒、休暇は文字通りこの玉屋の敷地からそこまで離れない程度…近くの川や林位まででしたら大丈夫です、流石にエ・ランテル迄行かれてしまうとこちらも困るので……後."此方は"自由に使って頂いて結構です……他に質問は?」

 

「……いや、無いかな?……それではすまないが野営の準備をしていい場所を教えてくれないか?出来れば雨風がしのげる所が有れば嬉しいんだが……」

 

依頼内容を確認したリーダーは金銭面は1日金貨1枚という破格だった事からもう少し待遇が悪いと思ったが休暇までくれるらしい

そしてチームのメンバーに目で合図を送り道具を持って野営の準備をしようと動き出す

 

「?どうして野営が必要なんです?」

 

「いや、我々もゴーレムではありませんので拠点は必要ですから」

 

王元姫さんに説明を任せていた夏侯姫さんが久しぶりに口を開くとそんな事を言ってきた

リーダーは苦笑しながら泊まる場所を確保しないと流石に困ります、と伝える

世間知らずの商会の娘を王元姫さんが教育しているんだろうなぁとか考えていると王元姫さんは無邪気な笑顔で恐ろしい事を言ってきた

 

「? ですからゲンキも言ったではありませんか…"此方を"自由に使ってください…と。」

 

「「「「は?」」」」

 

「冒険者の方々が拠点とするのにこの小屋では物足りませんでしたか?でしたら大工を呼んでもっと立派な建物を……」

 

「いやいやいやいや!充分!充分立派な建物ですよ?」

 

「え?ここ使っていいの?え?ホントに?」

 

この立派な建物に泊まっていい、そう言われた冒険者達は余りの高待遇に時が止まっていた

すると何かを勘違いした王元姫が慌てて書類を作成し始める

何とか落ち着いた王元姫さんと夏侯姫さんに礼を言って明日の朝開店時間から仕事を始めることになった

 

「…………ここまで高待遇だと笑えるな?」

 

「…調度品1つとっても王都の高級宿と比べても引けを取らないんじゃ無いか?」

 

「あーーーーっ!!」

 

リーダーと以前居たパーティーと打ち上げで高級宿に泊まった経験を持つ重戦士が談笑していると奥の部屋から弓士の少女が声を上げる

 

そこにサブリーダーも合流して駆けつけると

 

「は、ははは、リーダーコレも自由に使っていいって……」

 

腰を抜かした弓士の前に置かれた箱の中には新鮮な野菜、魚、肉が入っておりどれもみずみずしく美味しそうだった

 

 

 

6日目の夜

 

「それにしてもいい依頼だったな?」

 

重戦士が飲んだ事もない酒をチビチビと飲みながらリーダーに話し掛ける

 

「ああ、コレで帰ったら依頼金まで貰えるとか……出てくるモンスターもオーガまでだったし…良い休暇みたいな仕事だったな……」

 

仕事が始まると拍子抜けだった…金額と高待遇からどんな凶悪なモンスターがいるのだろう?と身構えていたが出てくるのはゴブリンにスケルトン強くてオーガ1体くらいなものだった

銀等級の冒険者達はそれらに苦戦することはなく次々に撃破、稀に出てくる高ランクモンスターも玉屋にアイテムを買いに来た冒険者が手伝ってくれた為ほとんど被害は出なかった

 

ーぴーーーーーーーッ!!ピーーーーー!!ー

 

「!?おい!あの音は?!」

 

「ヤバイな、急ぐぞ!」

 

 

「な、何だこいつは……」

 

急いで駆けつけたリーダーと重戦士が見たのは

 

「「スケリトルドラゴンだと!!」」

 

伝説にも語られる骨の竜だった

 

 

「有効打が俺とリーダーだけで魔法は効かない…弓矢では傷1つ付かない……と」

 

「不味いよ…アレ…この時間じゃ他の冒険者なんか来るわけないし…夏侯姫さん達に…知らせなきゃ…」

 

お近づきの印に、と夏侯姫さんから貰っていた閃光玉を投げて気を引くとスケリトルドラゴンは見るからにダメージを負った様で身体のあちこちから煙を出して叫び声をあげた

そこから反撃を試みたがリーダーの長剣で骨が僅かに削れ、重戦士の斧はクリーンヒットしたはずなのに腕の一部に傷を作るにとどまった

弓矢を射ってはみたものの傷1つ付けられなかった

絶望的な状況下で彼女達を逃して自分達も生還しようか考えているとふと空の向こうが明るくなってきた

 

「朝…?」

 

「もう夜明け?そんな馬鹿な…陽が沈んでからそんなにたってないぞ?」

 

「………………リーダー……アレなんだ……鳥?……デカイぞ!?」

 

魔法を使い過ぎて消耗しているサブリーダーが隠れている洞窟の入り口を指差して力無く呟くと

リーダーはそんなはずが無いと返答する、そこに重戦士が入り口から身を乗り出して目を凝らすと其処には光り輝く鳥の様な……スケリトルドラゴンと同じかそれ以上の大きさをしたモノが現れた

 

ー♫〜〜♩♪~〜♪……ー

 

「何だ?歌?」

 

「癒される……あれ、何だか魔力が戻った気がする」

 

「ぶつかるぞー!衝撃に備えろ!」

 

「ヒィーー!!」

 

光る鳥?がスケリトルドラゴンに衝突すると辺りは凄まじい衝撃波と光に包まれた

 

「………ん……ん?おい!みんな生きてるか!」

 

「…あ、リーダー?」

 

「お、おう、生きてる様だ」

 

「あーもう!せっかく新調した服がボロボロぉ〜…」

 

装備がぼろぼろになってはいたが何とか全員生存していた様でリーダーは一安心した

 

「まぁ!そんな事が…皆様本当にありがとうございます。」

 

光る鳥がスケリトルドラゴンを倒してくれたのか衝突現場を調べた冒険者達はバラバラになった骨のカケラと数枚の黄金に輝く羽を拾いひとまず夏侯姫達へ報告に戻った

開店の準備をしていた星彩さんに案内されて玉屋の応接室で夏侯姫さんへ報告するとまず労をねぎらわれた

 

「それで…皆様が見た輝く鳥とは此方の絵の鳥では無いでしょうか?」

 

輝く鳥の話を聞いた夏侯姫さんは古そうな一枚の絵を奥から持ってきた

そこに描かれていた鳥は間違いなく自分達を助けてくれたあの鳥に見えた

 

コレは我が家に代々伝わる守護神の絵でして……我が家の者が窮地に陥るとどこからともなく現れて敵を滅ぼす神の鳥…と、されております

冒険者達はその話の後に夏侯姫から新しい装備を貰い、数年の後にプラチナプレートの冒険者まで上り詰めた

 

 

 

 

 

「むーーー……」

 

「…姉者?母上は何故あんなに不機嫌そうなのだ?」

 

冒険者達を送り出した後、夏侯姫から玉藻に戻り、しっぽをもふりながらむくれていた

それに気がついた呂玲鬼は姉の王元鬼に耳打ちする

 

「……あー…お母様が作った"アレ"冒険者達が見たのは鳥って言っていたでしょう?」

 

「あぁ、確かに…しかし"アレ"はどう見ても鳥だぞ?」

 

「レイキ……お母様がわざわざただの機械の鳥を作ると思う?」

 

「まさか!アレも変形……」

 

玉藻が冒険者達に見せた絵には輝く鳥の横に女神が描かれていた

 

「むーーー……………次はもっと強いのを出して頂きましょう…ダークエレメンタルでも……」

 

玉藻は顎に手を当て、モモンガに頼む次の対戦相手を考えていた

 




裏設定

・冒険者リーダー
元王国騎士団隊員中隊長クラスの実力
悪徳商人に嵌められて軍を辞職する事になる
長剣使いで30代前半のちにサブリーダーと結婚
3人の子供がいる

・サブリーダー
元王国軍医務官でリーダーの秘書を務めていたマジックキャスター
リーダーが辞める際に一緒に辞めてついてきた
チームがプラチナプレートに昇格した夜にリーダーに告白、結婚
エ・ランテルに住居を構え王国が魔導国に変わってからも冒険者を続ける

・重戦士
元バハルス帝国軍人
悪徳貴族に嵌められて国外追放処分にされた有能な人物
身の丈以上の大斧を振るう
チームのメンバーだったリーダー達が結婚した後、冒険者として働く傍エ・ランテルで酒場を始める
弓士の少女が押掛け女房として居座っているが追い出さないだけ気に入っている様だ

・弓士
エルフで緑色の髪色の少女?
エルフの里の停滞的な空気に嫌気がさし王国に出てきた
弓の腕は確かでエ・ランテル限定ではあるが三本の指に入る腕前
子供っぽい言動だが一番な年長者で音楽と料理の腕は一流
重戦士の酒場でウェイトレス兼料理人をしている

GGG任務
グランゴールドガーディアン
凄い金払いのいい護衛任務の略?


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もふもふしっぽと漆黒の…………

お待たせしました。

またまた続編書き上げることが出来ました

体調崩したり仕事が急に入ったりで予定よりだいぶ遅れてしまいましたが……

とりあえず本編をどうぞ


「いやー、まさかモモンさん程の人物がカッパーとは…私達では手も足も出ない森の賢王まで従えるとは…」

 

「モモン殿もそうであるがナーベ殿もさすがなのである、アレほどの魔法の腕前国が放っておくはずがないのである」

 

「ほぅ…下等生物にしては正当な評価だな、褒めてやろう。」

 

カルネ村からの帰路、森の賢王を従えるまでのモモン達の活躍を褒め称える"漆黒の剣"のメンバー

 

「それにシュドナイさん、あんな大きな…ハルバード?でしたっけ?10メートルはあろうかと言うモンスターを一撃で吹き飛ばすあの力!今までの旅でどれだけの魔物を狩っていたのか…」

 

「なに、そんなに大したことでは無いよ。 私は"ネームドキラー"だったからね?」

 

途中で合流したシュドナイと名乗る冒険者に夏侯姫から預かったハルバードを渡すと、村に一宿一飯の恩義があるから村の脅威になるかも知れない森の賢王討伐を手伝ってくれる事になった

その力は凄まじいもので、モモンのグレートソードよりも巨大な…人が持てる限界点、とでも言うような斧を軽々と振り、道中はモモン達はおろか漆黒の剣の誰1人として武器を抜かずに済んだ程だった

 

「それにしてもシュドナイさんがモモンさんとナーベさんのお知り合いだったとは驚きでした!……やはり英雄は英雄を知る……と言うことでしょうか!」

 

英雄に憧れるペテルが興奮しながら褒め続ける

そんな中、モモン達は謙遜しながら周辺国家や一般常識をペテルやダインから聞いていた

 

「そういやシュドナイさん?俺達が預かった包みってそんなに大きくなかったし今も持ってるように見えないけど…あんな巨大なのどこにやったの?」

 

まさか置いてきた?とでも言いたそうなルクルットのドヤ顔に若干のイラつきを覚えたシュドナイは自身の持つ大型カバンの中に手を入れて身の丈の倍はある巨大なハルバードを取り出し

 

「ん?なんだルクルット、コレが見たかったんじゃ無いのか?」

 

と、とぼけた顔でルクルットの背後の壁に突き刺した

 

「……い…いやーシュドナイの旦那…悪かった……ごめん、謝るからコレしまってください」

 

「うむ、分かればよろしい……よっと…」

 

野伏としての直感から命の危険を感じたルクルットは素直にシュドナイに謝る

シュドナイは上品な貴族の様な服装の襟を直しながら片手で器用にハルバードを蔵う

大型の鞄の体積を無視してハルバードは鞄に収まる

 

「もしかして……魔法の鞄ですか?今のハルバードが入るところを見ると金貨50枚はくだらない物に見えますが……」

 

ニニャが服装から貴族かも知れないと警戒しながら聞くと

シュドナイはなんでも無いかのように白髪混じりの髪を撫でつけながら

 

「コレはとある遺跡に有った鞄でな?この防具もその遺跡から出てきたアイテムなのだよ……もっとも私はただの学者で貴族なんかとは縁も所縁も無いがね?…………まぁ貴族に勘違いされた方が得な時とかにはそう装うこともあるが……」

 

それを聞いてニニャが安心していると、ペテルがまた興奮気味にシュドナイの冒険譚を尋ねる

ダインとルクルットも苦笑しながらも自身も聞きたそうにしている

 

「あー……アレは私が仲間達と砂漠のダンジョンにアタックした時に…………」

 

 

「ところでハムスケ?」

 

「ん?なんでござるか殿?」

 

「いや、これから向かうところなんだが…ん?もう着いてしまったか……」

 

気分を良くしたシュドナイがユグドラシル時代の冒険を当たり障りのない程度にはぐらかした冒険譚を語っていると

モモンがハムスケに小声で話しかける

ハムスケが疑問顔で応じ話を続けようとすると立派な建物が見えてくる

 

「すまんなハムスケ…………頑張れよ?」

 

「え?殿、なぜ拙者から降りるのでござる…………か?」

 

建物から誰かが出て来る気配を感じたモモンはハムスケの背から飛び降りると、ナーベやニニャが魔法談議している方へと歩いていく

ハムスケが何故?と思っていると建物から砂煙が舞う

 

「………………ぁ…………ぃ……ぃ…………何コレ!!可愛い!可愛い!可愛いぃっ!!!」

 

「…なっ!?やめるでござるぅ!…………むむ!引き剝がせぬ!それがしが敵わぬ相手がまた1人ぃ〜〜〜!」

 

砂煙を巻き上げ歓喜の声を響かせながら夏侯姫がハムスケに飛びつくともふり始めた

モモンガと死獣天朱雀が見ればハムスターと戯れる美女……ハムスターが巨大だが……

しかし、この世界の人間とNPCからして見れば……

 

「なんと!森の賢王がいとも簡単に……恐ろしいのである……」

 

「モモンさんやシュドナイさんだけでなく……今日はなんていう日なんだ!」

 

「…………?あれ?今あの女性にしっぽが……ある訳ないか……」

 

「凄え!って夏侯姫ちゃん?!」

 

「さすが至高の御方…躾は初めが肝心ということでしょうか……」

 

「…玉藻の奴、こっちに来てからもふれるのが少なくて嘆いていたからな…ちょうど良かったのか?」

 

「朱雀さん…茶釜さんも参加してませんか?あれ……アッ、消えた…スクロール使ったな…補充の目処が立って無いのに……」

 

漆黒の剣は一様に驚き、ナーベラルは感心し、死獣天朱雀は嬉しそうな姪を眺め、モモンガはドサクサに紛れて参加していたピンクの塊に頭を抱えた。

 

 

 

「失礼致します…主人があの様子ですので私、王元姫がご案内いたします…どうぞこちらへ」

 

夏侯姫姿の玉藻がハムスケで戯れている中、後から出てきた王元姫がとりあえず店の中に案内するべく挨拶をする

 

「あの………夏侯姫さん?でしたっけ?あの方はあのままで……」

 

背後で繰り広げられる森の賢王対謎の美女の対決?を指差しながらニニャが王元姫に質問する

すると王元姫は手をパンパン!と叩き、

 

「ジオ殿!」

 

「ハッ!畏まりました…………姫様?御戯れもその辺りで……」

 

今の今まで存在感を消し馬車の従者をしてくれていたジオが

音も無く夏侯姫の背後に現れて声を掛けた

 

「もふもふです♪………もふもふ……もふ?あっ、ジオさんお帰りなさい……どうなさったのですか?」

 

強大な魔獣を物ともせずにもふもふしていた夏侯姫は、ジオに軽い感じで挨拶すると冷静になったのかトコトコと皆が集まっている建物の入り口方向に歩いて来る

 

「初めての方もいらっしゃいますので改めて自己紹介をさせていただきますね?私はこの萬屋玉屋の女主人、夏侯姫と申しますどうぞよろしくお願いします。」

 

美人からの丁寧な挨拶にナザリック以外のメンバーは頬を染めた

 

 

「皆さま、こちらをどうぞ」

 

そう言って王元姫と赤と青のメイドが持ってきたのは紅茶と焼き菓子

 

「こんなに高そうなもの…頂けませんよ!」

 

「私達は依頼を受けて無いとはいえコレは荷物の配達の料金としては高過ぎます!」

 

茶菓子を出されたテーブルを挟んで、漆黒の剣のニニャとペテルが声を少し荒げている

理由はというと……

 

「依頼金貰ってないとはいえ同行してもらったジオさんにウチのリーダーが剣の手ほどき受けて道中一緒にモンスター倒してもらってんだしこんなに武器や防具貰う訳にはいかねぇよな?」

 

「そうである、更には先程いただいたスクロールも第三位階の魔法を封じた物である……貰いすぎであるな。」

 

漆黒の剣のメンバーがいるテーブルには買ったら白金貨一枚では足りなそうな位の装備やアイテムが並んでおり夏侯姫はコレを全てくれると言うのだ

 

「何もタダでとは言っておりません……言うなれば宣伝と先行投資…と言ったところでしょうか?」

 

「そうですね、ジオさんからペテル様のスジが良いと伺っておりますし…何より皆様はシルバーランク、下位のカッパーでは知名度に欠けますしゴールド以上では宣伝効果はあまり無いと思います……要は"玉屋の装備で強くなった"と思ってもらいたい訳なのですよ。」

 

夏侯姫の言葉を王元姫が補足してくれるが流石に目の前にあるもの全て……というのはやはり貰いすぎだと思う

そこでふとモモン達にも分ければいいんじゃないかと考えたペテルはモモン達に意見を聞こうとする……

しかし先程まで居たはずのモモンは居らずシュドナイとナーベが紅茶を飲みながら談笑している光景しか目に入らなかった

 

「そう言えばモモンさん達は何処へ行ったんですか?」

 

ペテルは一度話題を変える為と気になったことをそのまま夏侯姫に質問する

 

「あぁ、それでしたら……私達が手に入れたアイテムがモモンさんの欲する物でしたので今星彩から受け取っているのでは無いでしょうか?」

 

モモンさんの欲してる物?英雄と呼ばれる程の力を持つ人が欲しがる物に興味があるペテルはそれは何かを聞こうとすると夏侯姫の背後の扉が開く……

 

「やあ!夏侯姫さん、やはり良いものだったよ!……ん?ペテルさん一体どうしたんですか?そんな顔して……」

 

「モモンさんが鎧脱いでる!?」

 

会ってから今まで鎧を脱いだ姿を見たことのなかったペテルをはじめとした漆黒の剣は驚いた顔でモモンを見ているがモモンは先程奥に居る呂玲鬼から人化の指輪と念願の"完全変形シルバーソルBlack ver"をもらってご満悦で気が付かなかった。

 

人化の指輪をはめたモモンは生まれて初めての焼き菓子に感動が止まらず黙々と食べ続ける

 

「モモンさん?先程こちらにある品を夏侯姫さんが譲ってくれるそうなのですが…モモンさんもいくつかもらって頂けませんか?私達だけが頂くのはなんだが不平等な気がして……」

 

「いやペテルさん、私は先程別の物を頂いたので其方は貴方方にお譲りしますよ!」

 

今までのいつよりも上機嫌なモモンにペテルは親近感を覚えた

そして結局装備一式を貰い金貨やアイテムはさすがに貰わない事で折り合いがついた

 

貰った装備は総てが黒い鎧や防具で"漆黒の剣"というよりは"漆黒の鎧"と言った感じになった

 

「凄え…凄えよこの弓!この間此処で買った弓の更に上のやつだ!確か火の精霊の力で火矢になるやつ!!」

 

「コッチも魔法の威力が……というより位階が上がってる?」

 

「なんであるか?この湧き上がる力は……今ならオーガを1人で倒せそうである!」

 

「貰って置いてこんなこと言うのは変な気がしますけど……本当に良いんですか?売ったら結構な金額になると思うのですが……」

 

メンバーが喜ぶ中ペテルが再度夏侯姫に確認をしていると王元姫が夏侯姫の横から会話に参加した

 

「それでは出世払い……と言う事では如何でしょうか?皆様がクラスを上げて支払えるだけのお金が貯まったらお支払いいただく……と言う事で?」

 

 

此方も宣伝を兼ねてますのでご遠慮なく御受け取り下さい、と言われそれならばと、受け取る

 

「あっそうだ………ええと…えーと…?……あ!あった!ペテルさんコチラはおまけです。」

 

鎧や防具とルクルットの弓を受け取り雑談をしていたが暗くなってしまう前にエ・ランテルに着いておきたい一行は名残惜しく思いながらも出発の準備を進めていた。

すると玉屋を出る直前に夏侯姫が何かを思い出したようにカウンターの引き出しを開けて中をガサゴソ探す

そして見つかったのかペテルにおまけだ、と言って黒いアクセサリーを渡してくる

 

「こんなに色々頂いたのに…ありがとうございます。因みにコレはどんな効果が?」

 

満面の笑みを浮かべてアクセサリーを差し出している夏侯姫から断る事を諦めたペテルが受け取る

受け取ってから効果が気になったペテルは夏侯姫に説明を求める

 

「コレは古代の遺跡…オーパーツ、と言われる物らしいですが命の危機に瀕した時にしか発動しないそうなのです…幸い私は護衛に恵まれて商売をさせていただいておりますのでこのアクセサリーは冒険者の方に持って行っていただいたほうがきっと役に立つと思います…どうぞお持ちください。」

 

「何から何までありがとうございます。いつかこの鎧を買い取れる冒険者になれるように頑張ります!」

 

漆黒の剣のメンバーが口々に御礼を言って去って行き姿が見えなくなった頃にモモンガからメッセージの魔法が飛んできた

 

〔「玉藻さん?ペテルに最後何か渡していたようですがアレは?」〕

 

〔「あぁ…アレは私が造った試作品で30レベルのゴーレムを召喚出来るアクセサリーですよ。」

 

〔「ゴーレム?!…………因みにどんな?」〕

 

〔「えーと……HPが10%以下の時に…コール!!ゲシュペンス◯!!…と叫ぶと……」〕

 

〔「あーー………………分かりました…あの黒い幽霊ですね…………」〕

 

〔「カッコイイですよねドイツ語!えぇと…Wenn es meines Gottes Wille(我が神の望みとあらば)でしたっけ?」〕

 

〔「……………………………………それを何処で?」〕

 

〔「お兄ちゃんと一緒にパンドラさんに会いに行った時ですかね?カッコイイですよね!」

 

モモンガはメッセージを切るとハムスケに乗ったまま微量のオーラを噴出させ「ペロロンチーノォォ!!」と心の中で叫んだ




漆黒の剣
強化フラグ達成!

ペテル
革の鎧(初期装備ダメージを3%軽減)
→ミノタウルス皮鎧(黒革の鎧レベル30相当の攻撃を軽減)

ルクルット
ロングシューター(飛距離が倍に伸びる)
→ヒートシューター(魔力を消費すると炎の矢が放てる)

ダイン
森司祭の服(魔力消費を4%抑える)
→ダークエルフの司祭服(回復及び支援魔法が1位階上昇する)

ニニャ
魔法使いのローブ(魔法攻撃力が2%上昇する)
→???使いのローブ(全ての魔法が1位階上昇する、及び???を召喚可能)

やったね!コレで死亡フラグ回避出来る?


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もふもふしっぽと漆黒の…………2

忙しさにかまけて執筆が遅れました

途中までですが続きを書くのが遅れそうなのであえて投稿します

此方は召喚士暴走モード玉藻ちゃんのイメージです
【挿絵表示】



「ニニャ、行ってしまいましたね…」

 

ニニャと仲良くなった星彩が店の掃除をしながら溜息を吐く

心ここに在らずといった様子を見た王元姫は明日の販売品のリストを作成する手を止めて星彩の目の前まで行く

目の前の王元姫に気が付かない星彩を見た従業員達は怒られる!と、思いながら見ていると

 

「星彩…名残惜しいのは分かりますが手が止まってますよ?」

 

「え?あっ!ご、ごめんなさい!すぐにやります!」

 

「構いませんよ、人との出会いは一期一会大切になさい。」

 

「「あれ?」」

 

赤と青の双子メイドが星彩に雷ではなく優しい言葉がかけられたことを不思議がっていると

 

「炎那!氷華!貴女達はぼーっとしてないで早く厨房を片付けて!」

 

「「はっ!はい!!」」

 

何故か様子を見守っていた自分達が怒られた

突然矛先を向けられた2人はワタワタしながら掃除を再開した

 

「………………しょうがないわよね……だってあんなに可愛い男の子あんまり居ないし…マーレたんと恐怖公君ぐらいかしらね?…………うふふ美少年がまた1人…………じゅる…」

 

メイド姉妹を叱ってから3人から見えない場所まで来た王元姫は千年の恋も冷めるような狂気に満ちた笑みを浮かべながら呟く

 

「姉者……さすがにその性癖は賛同できん……何故女同士でちちくり合わねばならないんだ?姉者はショタだけじゃなくロリもイケるようになったのか?」

 

王元姫の前のテーブルの上に顔だけ載せた呂玲姫が怪訝そうな顔で姉(ショタコン)を見て言い、それに続けて「やはりオスの立派なモノを入れてもらってこそ…」云々とブツブツ言っている

王元姫が妹の発言の意味にハッとなり言葉の意味を確認する

 

「ちょっと待ってレイキ、今なんて言ったの?」

 

「ん?オスの立派なモノ……ムッ!コキュートスはやらんぞ!アレは私のだ!」

 

呂玲姫は姉の質問に答え、まさかコキュートス狙いに変更か?と警戒しながら強めに言った

 

「いや、コキュートス殿は取らないわ……と言うより私では受け入れられないわ!レイキと違ってそこまで身体丈夫じゃ無いもの……そうじゃなくてもっと前!ショタコンは認めるけどロリコンでは無いわよ!」

 

「ん?しかし…先程はそう言っていたではないか…さっき来ていた奴に欲情していたのだろう?」

 

「どう言うこと?ニニャ君達の事よね?…………」

 

勘違いした呂玲姫に反論し、否定する

しかし呂玲姫はジト目のまま王元姫を問い詰めているとそこで王元姫が違和感に気づいた

 

「ま、まままま、まさか…………」

 

「そうだろう?だってニニャとやらは女だぞ?」

 

それを聞いた王元姫は膝から崩れ落ち絶望的な表情で眼から光が消えた

それを見ながら呂玲姫は「ふむ、仕方ないから部屋まで運ぶか……」と、言いながら反応しない王元姫の脚を掴むと後頭部を引きづりながら階段を上っていった。

 

 

「うーん!モモンガ様は喜んでいたようですし大成功ですね!後は漆黒の剣の方々がいつ"アレ"を使ってくれるのか楽しみでしょうがないです。」

 

その頃玉藻こと夏侯姫はモモンガにあげたシルバーソル改めブラックソルの項目に現在はモモンガの所有物、とだけ追加してから自分の所持しているロボットの稼働状況を確認する

 

「クォーターはエネルギーが必要……ゲシュペンストは起動待ち……ライディーンはバードモードのまま……恐怖王もジオーマシン(仮)が起動出来ない……氷竜と炎竜はシンパレート上がらないし…………ガーZは…………」

 

タブレット端末のようなモノを動かしながら一機一機確認して行くと部屋の外から物音がして夏侯姫は意識をドアの向こうへと向ける

 

「……全く姉者もだらしのないことで………よいしょっっ……よし!…母上も忙しいようだし夕飯でも作るか……」

 

どうやら呂玲姫が王元姫を部屋に運んだようだ…まぁ何かあればこちらに言ってくるだろうし大丈夫かな?と、タブレット端末モドキの操作を再開した

 

ービーッ!ビーッ!!ビーッ!!ー

 

再開してすぐに玉藻の持つあるアイテムからけたたましい警告音が鳴り響く

 

「部屋に防音魔法かけておいてよかったですね、と言うかもう"アレ"が必要な事態に?漆黒の剣の方々はよくよく運に恵まれているようですね………………さぁ…ペテルさん言うのです…さぁ……」

 

夏侯姫が"アレ"の起動キーとなるアイテムを渡したペテルがあの呪文を唱える光景を見るために遠視の魔法鏡を発動して眺める

期待して止まないあのセリフを……

 

 

 

 

 

時は少し遡る……

 

「いやー良かったな!俺なんか弓だけじゃなくてローブまでもらっちまったよ、なんか……1人だけ黒くないのは仲間外れみたいで嫌なので……だってよ!いやーやっぱ夏侯姫ちゃん俺に気が……ードスッ!ー……あー無いですよね……はい……」

 

エ・ランテルに近づいて居たモモン達と漆黒の剣一行が固まって歩いている

ルクルットがにやけながらそう言っていると、いつかの巻き戻しの様に死獣天朱雀ことシュドナイがハルバードをルクルットの顔面スレスレに突き刺す

ルクルットは言葉を途中で断ち切り愛想笑いと冷や汗を浮かべている

 

「あぁ、ルクルットが何度も何度も申し訳ありません!」

 

「いや、構いませんよ…シュドナイさんもそれ閉まって下さい…そろそろエ・ランテル何ですから……目立つでしょう?」

 

もはやお馴染みになったペテルとモモンの掛け合いを見ていた周りの冒険者は一様にこう思った

 

[いやいや!お前の乗ってる魔獣の方が目立つから!というか何だあの強そうな魔獣?!]

 

そうモモンは黒いフルプレートの鎧を着込み二本のグレートソードを背負い、更には森の賢王と呼ばれる大型魔獣(ハムスター)に乗っているのだから……

 

 

「それではモモンさん!先にンフィーレアさんを送って行きますので後でいらして下さい、場所は分かりますか?」

 

「あぁ、一度伺っているので大丈夫ですよ……では報酬を受け取るのはその時でよろしいですか?」

 

「そうですね、お婆ちゃんに玉屋さんで買ったアイテムを早く見せてあげたいのですいませんが先に帰らせていただきます。」

 

では後ほど、と分かれる

 

「モモンさー……んでは我々はハムスケを登録しに行くということでよろしいですか?」

 

「そうだな早めに登録しておかないと要らぬ騒ぎになるかもしれんからな……シュドナイさんはどうします?ナザリックに戻りますか?」

 

「ふむ、そうだね宿に戻ってから転移するとしようか……では少しだけ散策してから帰るとしよう…シャドウデーモンは影に居るのだろう?では先に帰っているよモモンガさん、お疲れ様」

 

モモンガは、未だに言い慣れないナーベに苦笑しながらシュドナイに今後の行動を尋ねる

するとナザリックに帰るというので護衛をつけて見送る

 

「では行くぞナーベ!冒険者組合へ!」

 

「はっ!畏まりました!モモンさー…ん。」

 

シュドナイを見送った2人はハムスケを連れて冒険者組合まで歩いて行った

 

 

 

「お婆ちゃ〜〜ん!!凄いもの手に入れたよーー!…………お婆ちゃん?居ないのー?」

 

ンフィーレアは家に着くと祖母を呼ぶが返事が無い

 

「んーー〜〜待ちくたびれちゃったよ〜ーあんまり遅いから〜君のお婆ちゃん何度か殺しそうになって大変だったんだから〜〜」

 

「お、お婆ちゃんに何をしたんだ!」

 

「どうしたんですかンフィーレアさん?って!誰ですか!」

 

部屋の奥からンフィーレアの顔を見ながらスティレットの刃を舐める女性

祖母を殺そうとした、という発言に驚きつつも真相を聞く……そこにペテルが現れて武器を抜いている女性に警戒しながらンフィーレアを自分の背後に隠す

 

「ハァー?もしかして〜〜この英雄の領域に達したこのクレマンティーヌ様と戦おうってワケェ?キャハハッ!超ウケるぅ!」

 

「何であるか?……むむ!ニニャ!ンフィーレア殿を連れてモモン殿達の元へ行くのである!」

 

「そうだぜ!お前さんには貴族に連れ去られたお姉さんを救い出すって目標があんだろ!早く行け!」

 

「……!で、でも……」

 

クレマンティーヌはンフィーレアを自分から守ろうとするペテルが可笑しくて笑っていると漆黒の剣のメンバーが異変に気付き入ってくる

しかし力量が明らかに違いすぎることを悟ったダインとルクルットはンフィーレアと共に逃げるようにニニャに言う

ニニャが戸惑っていると後ろの扉からドクロのネックレスをしたマジックキャスターが入室して来た

 

「遊び過ぎだ、あまり時間がないのだから早くやれ」

 

「はぁ〜〜い、それじゃあ〜…………死んで?」

 

クレマンティーヌがそう言った直後ルクルットとダインが胸部を一突きされて崩れ落ちる

 

「アレ〜?なんか硬かったけど?まぁいいや、次は〜〜そこの剣士くん♪」

 

「……!?くっ!?は、速い!ニニャ!……ニニャ?」

 

ペテルは一瞬のうちに2人やられて驚いたが、ジオから道中教わった剣技と心得を反芻して何とかクレマンティーヌの剣を裁くことに成功したそしてニニャを呼ぶが返事がない、チラッと横目でニニャとンフィーレアの様子を見たペテルは固まった

 

「おいおいおいおいおいおい!雑魚が!調子に!乗ってんじゃ!ねえよっ!!!」

 

一度とはいえ剣を躱されたクレマンティーヌは怒り狂いペテルに無数の突きを繰り出す

気が動転していたペテルはそれをまともに受けてしまい身体中に穴が空き血が溢れてくる

衝撃と失血で意識が朦朧とする中、夏侯姫から最後に渡されたアイテムが目の前に転がってきた

 

「雑魚の分際で!このクレマンティーヌ様の剣を!………………まぁマグレかな〜?そうだよね〜〜だってこんな雑魚に見えるわけないもんね〜〜?」

 

「…………シュ…………ト…………ール…………ゲシ……」

 

「あ〜〜?まだ生きてんのかよ?しぶといね〜ー?…………それじゃあ寂しくないように〜〜アンタも送ってあげるよ〜、お・や・す・み〜〜!」

 

何かを呟くペテルにトドメを刺そうと全力の突きを放つ

そしてクレマンティーヌの放ったスティレットがペテルにあたる直前に遠視の鏡で見ていた玉藻とペテルの言葉が被さるあの言葉が紡がれる

 

「コォール!!ゲシュペンストォ!!!」

[コール!ゲシュペンスト!]

 

ーガキィン〜〜ー

 

「は?」

 

必殺の一撃をまさか自分が外したか?と思って確認するとクレマンティーヌの目の前には瀕死の剣士では無く……

 

「うおおおおおおおおぉぉ!!!!!行くぞ!!ゲシュペンストォ!!!!」

 

黒いフルプレートメイルを装備した重戦士がおたけびをあげていた

 

 

 




ペテル装備のゲシュペンストアーマー
重力魔法のお陰で重さを感じさせず
必殺!究極!ゲシュペンストキィーークッ!!!!!


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もふもふしっぽと黄金の女神

玉藻「ライディーンじゃないんです!"REIDEEN"なんですよコレは!」

ペロロンチーノ「えっ?でも読むと……同じじゃ?」

玉藻「"REIDEEN"です!偉大なる勇者ではなくて黄金の女神の方です!お兄ちゃんは勉強不足です!」

ペロロンチーノ「そ、そうなんだ……」




クレマンティーヌは焦っていた……薬屋の男を一人拐うだけの楽な仕事だと思っていたから護衛の冒険者で遊んでいたのに……

 

「何なんだよテメェ!……まさか?テメェが噂の漆黒の…いや、確かモモンって名前だったはず…っ!……」

 

「よくも俺の仲間を!お前には俺が引導を渡してやる!」

 

いつもなら適当に仲間を殺して、激昂した愚かな冒険者の顔を相手の攻撃を適当にあしらいながら愉しみ飽きたら絶望するまでボロボロにしてトドメを刺すところだ

しかし、この目の前の鎧には少し冷静さを失っていたとはいえ、この場所で出せるほぼ全力の突きを弾かれていてどういうわけか鎧の継ぎ目も分からない

とっておきのスティレットに封じられた第三位階の魔法ー雷撃ーを試そうとするがもし効かなかった時に完全に詰みになる

クレマンティーヌはカジットに助けを求めようとするとカジットはマジックキャスターを殺してンフィーレアを担いで外に出る所だった

 

「ちょっと!ちょっとカジッちゃん!助けてくれないの!」

 

「愚か者め!だから遊ぶなと言ったではないか!幸い目的は達成した、取り敢えず撤収するぞ早く来い!」

 

カジットはクレマンティーヌが助けを求めるのを拒み逃げるように促す

 

「この英雄の領域に踏み込んだ私が……名前も知られてない冒険者を相手に逃げる?……このクレマンティーヌ様が?……チッ!覚えたかんな!漆黒の鎧のペテル!お前は必ず私が殺す!絶対にだ!」

 

クレマンティーヌは何度か鎧関節部や首筋を狙ったが効果が無く、切り札を出す場面ではないと冷静な部分は言うがとても腹立たしい……結果、眼を血走らせて憎らしい鎧を睨みながらそう言ってカジットと供に去って行った

 

ーピーー……ー

 

ペテルが逃げた2人を追おうとした時、ゲシュペンストから音が鳴り出して解除される

ーカラン…ーと、音を立てて膝をついたペテルの前に夏侯姫から受け取ったアクセサリーがころがった

 

「…………すまない……すまない皆んな……仇を討てなかった……」

 

心臓を一突きされて死んでいるルクルットとダイン、何か魔法をくらったのか一部が焦げて嫌な匂いとプスプスと音を立てて動かないニニャを見て自らの無力を嘆くペテル…力を込めようとするが全く動く気配が無い…自分もこのまま死ぬのかなぁと思って意識を手放す

 

 

 

「ヒイィー!どういう事じゃ!何でワシの店がこんなに荒らされとる!?ンフィーレア?!ンフィーレアやーい!」

 

「ペテルさん!大丈夫ですか!コレを飲んで下さい」

 

気を失っていたのか老婆の叫び声で気がつくと、誰かに抱き上げられて何かを口に流し込まれる

 

「…………がはっ!……はぁ……はぁ…ぁ…も、モモンさん…皆んなが…皆んなが…」

 

おそらくポーションを飲ませてくれただろう漆黒のフルプレートを着たモモンにペテルは、仲間が訳もわからず殺されたことを伝えようとしたが周りにも誰か居るようだ……誰だろう?ナーベさんかな?と思ってよく目を凝らすと……

 

「おいっペテル!死ぬんじゃねぇぞ!お前が死んだら誰がオレたちのリーダーやるんだよ!」

 

「そうである、ペテルまだ逝くのは早いのである。」

 

「ペテル!起きてください、私まだ貴方に恩を返してません!お願いです!返事をして!」

 

「……!?皆……んな…どうして……」

 

モモンの周りに死んだはずの仲間の姿が見えて俺も死ぬのか…と思ったがどうやら違うようだ、ポーションのおかげか意識がはっきりとしてくると仲間と生きている事を喜び合う

 

「……モモンさんが言うにはコレのおかげらしいぜ?」

 

落ち着いてからルクルットが懐から出したのはルクルットが玉屋で買って俺たちにくれた御守りだったが焼け焦げていた

ダインとニニャも取り出すが2人のものも焼けている

 

「どうやらこの護符は南方の貴重な物らしいのである、モモン殿が先程教えてくれたのである」

 

「そうなんですよ!貴重だけどまだ生産方法が残っているからモモンさんも何枚か持っているそうですが……」

 

「いや、皆さんは運が良い…この護符は私も駆け出しの頃お世話になったものです…今は効果が無いので良かったら差し上げますよ」

 

そう言いながらモモンさんが焼けた物と同じ護符を差し出してくる

 

「今は効果が無い?どういうことですか?」

 

モモンの言葉に疑問を抱いたペテルが質問すると、モモンは

 

「この護符はある程度の力量になると効果を発揮しなくなってしまうのですよ、幸か不幸か私の知り合いがコレの作成者なんですが私にはもう効果が無いから助けたい冒険者に渡してくれ…と、言われているんです。」

 

恐らくまだ皆さんなら効果があると思いますよ?と、言いながら護符を差し出すモモンさんからありがたくいただく

 

「それにしても先程の鎧はいったい…」

 

「アレは夏侯姫さんから頂いたマジックアイテムで"ヘリオス・ギムレア"という古代の遺物らしいです…ピンチの時に…とは言われましたが渡された当日に使う事になるとは思いませんでした……」

 

明らかにユグドラシル製の鎧?だった為ペテルに質問したモモンは答えを聞いて即座に玉藻にメッセージを送る

 

〔「玉藻さん!見てるんでしょう?ペテル達が危険だとなぜ教えてくれなかったんですか?」〕

 

〔「あっ…ごめんなさいモモンガ様、つい見とれてしまって……でもでも!若葉の護符渡してあったんですし……追加報酬の鎧も30レベルくらいまでの攻撃は防げる物を渡しましたし…「でもダインとルクルットは防具貫かれてますけど?」………ごめんなさい!」〕

 

ゲシュペンストが見たかった……そしてシチュエーションが完璧すぎてコレが現実だという事を忘れていた玉藻は即座に謝る

謝罪を聞いたモモンガはフルプレートの鎧姿のまま深いため息をついた

 

「モモンさんにもご心配をおかけしました……そうだ!ンフィーレアさんが!」

 

「ンフィーレアがどうかしたのか!ウチの孫はどこにいるんだい!」

 

モモンガの玉藻に対するため息を、ペテルが助かったことによる安堵と勘違いしてペテルは礼を言う

そしてンフィーレアが拐われたことを伝えようとしたがンフィーレアの名前を聞いたリィジー・バレアレに摑みかかられてしまう

 

「ンフィーレアが……ンフィーレアが拐われた?……一体どうして……」

 

「申し訳ありませんが私達では全く相手になりませんでした…少なくともミスリル級……いや、もしかしたらアダマンタイト級の冒険者じゃないと勝てないかもしれません。」

 

「何じゃと…アダマンタイト級なぞ王都に行かんと……どうすれば良いんじゃ………」

 

ペテルの言葉にがっくりと膝を落とし天を仰ぎ観るように祈るリィジー

 

「しかしながらリィジー殿、もしアダマンタイト級の冒険者が居たとしても奴等の逃走先がわからない事には救援に向かえないのである」

 

「そうですね…マジックキャスターの方はカジットと呼ばれていましたが…それだけでは…」

 

ダインとニニャが情報を出来る限り思い出すが名前以外に手掛かりは無い

 

「リィジー・バレアレ、ンフィーレアの持ち物はあるか?…」

 

「ん?勿論あるが……何をする気じゃ…………ほれ、ンフィーレアの使っているペンじゃ、コレで良いのか?」

 

「……ナーベ…」

 

「ハッ!」

 

悲壮感の漂う中モモンがリィジーにンフィーレアの持ち物を持ってくるように促す

リィジーは疑問に思いながらも藁をも掴む思いでンフィーレアが皮洋紙に書き込む羽ペンをモモンに渡す

羽ペンを渡されたモモンはそれをナーベに渡しアイテムバックからスクロールをいくつも取り出しそれもナーベに渡す

 

「……いったい何を?」

 

「ぷにっと萌えさん直伝のらくらくPK術さ、ナーベやれ。」

 

「ハッ!」

 

いくつものスクロールを消費していくナーベ

それをただ見守るモモン達

 

「見えました…映します。」

 

ナーベがそう言うと壁に鮮明な映像が映し出される……其処には、

 

「何だ?アンデット……?…………てっ!おいおいこの数なんだよ?100や200どころか……」

 

「1000以上…………いやもしかしたら10000以上あるかもしれない……ナーベさん……これはもしかして?」

 

ルクルットが夥しい数のアンデットに驚き、まさか?と思いながらペテルは場所を確認すると

 

「……このエ・ランテルの墓地ですね、まだ増え続けているようですが。」

 

「終わりじゃぁ〜この世の終わりじゃぁ〜、ンフィーレア〜……」

 

ナーベの増え続けている発言に今度こそ終わりだと諦めの空気が漂う

 

「……では行くぞ、ナーベ」

 

「はい!モモンさー…ん」

 

「なんじゃお主らどこへ行くと言うのじゃアンデットの大群が外にいるんじゃろ!?」

 

モモンとナーベが出て行こうとするのを見たリィジーがどこへ行くのか質問するとモモンは一言

 

「なんだ?ンフィーレアを助けるんじゃなかったのか?あんなアンデット如きにこのモモンが怖気付くとでも思ったか?」

 

リィジーに「報酬を用意しといてくれ」、と片手を上げて歩いていく後ろ姿は、紛れも無く誰もが憧れる英雄の姿だった。

 

「よー!モモンさん俺様参上っと、助太刀するぜ?」

 

よっと、と腰掛けていた柵の上から飛び降りた男はモモンに声を掛ける

 

「来てくれたか…友よ…では行こうか、伝説の幕開けだ。」

 

 

同時刻墓地ズーラーノーン儀式場

「ハッハッハッ!予想外の抵抗もあったがコレで漸く死の螺旋が完成した!後は負のエネルギーが場に満ちるのを待つだけだ!」

 

「……絶対殺す……絶対殺す……あのクソ鎧……滅多刺しにして殺す…死んでも殺す…」

 

墓地の奥深くでカジットが喜びの声を上げ、隣で未だに眼を血走らせながら自分をコケにしたペテルに対して怨みの呪詛を言い続けるクレマンティーヌ

それを見たカジットの弟子達は、カジット様…横の人から負のエネルギー回収すれば良いのに……と、思った

 

 

 

 

「で?モモンさん?何で俺っちを呼んだんだ?ハッキリ言ってあんな30レベル以下の雑魚モモンさんなら余裕だろ?」

 

ペテル達と別れたモモンとナーベ、そしてロリーノと名乗る大型の弓を背負った長身の男は墓地へと続く道を歩いている

ロリーノことペロロンチーノは過剰な戦力じゃね?、とモモンに尋ねる

 

「大事をとって…ですよ、そしてロリーノさん玉藻さんに良いところ見せたいでしょう?」

 

「?!モモンガさん?!それマジで?」

 

「いや、茶釜さんがですね?「愚弟と玉ちゃんもどかしい!まだ認めたわけじゃないけど!モモンガさん何とかして!」と、言っていてな?その一環というか…」

 

「おおおお…ありがてぇ!さすが姉ちゃん!モモンさんも悪いね、でも…朱雀さんには……」

 

「朱雀さんも今よりはマシになるんじゃないか?…と概ね賛成?でしたし、ここで活躍しておけば後で冒険者登録するときに実績として考慮されますよ」

 

ペロロンチーノがモモンガに感謝していると玉藻から2人にメッセージが飛んできた

 

〔「モモンガ様、お兄ちゃん…えっと、が、ががが………頑張ってください!…それでは!!」〕

 

顔が見えなくても分かるくらい動揺した玉藻からの応援メッセージを聞いたペロロンチーノは

 

「よっしゃーーーー!!!!アンデット共!兵の貯蔵は充分か!」

 

玉藻の応援に張り切るペロロンチーノを見てモモンガはただただ不安感が募った

 

 

 

「…………ん?そう言えば何でモモンガさん姉ちゃんに個人的なお願いされて…………まさかな?そんなまさか……」

 

 

 

 

 

 

「駄目だ!数が多すぎる!このままでは突破されるぞ!撤退!撤退だ!急げ!」

 

門を守る為の部隊だが万を優に超えるアンデットの群れに隊長は撤退を決意して叫ぶ

隊長に続き部隊の兵士が街の中心部へ向けて走り出す

 

其処に漆黒のフルプレートを着込んだ剣士と黒い鳥のような帽子と長いマフラーを巻いた大きな弓を背負った男更にはマジックキャスターらしき美女、極めつけは何とも巨大で精強な魔獣といった一団が現れた

 

「おい!あんた達、ここは危険だ!早く逃げろカッパーや狩人が勝てる数じゃない!」

 

「ほう……それがこのモモンに何の関係がある?」

 

隊長は一団の首からカッパーのプレートを見て一緒に逃げるように言うがフルプレートのモモンと名乗った男は威圧的にそう言うとそのまま門の方へ歩いて行ってしまう

 

「な、なんだアレは!デカイ……あんなの門で防ぎきれるわけ……」

 

「ロリーノさん…」

 

「はいよモモンさん!俺様にお任せあれ!」

 

門の大きさを優に超える巨大なアンデットが現れ隊員が叫び声を上げるが、モモン達は意に返さずロリーノと呼ばれた男が弓を番える

ロリーノが軽い口調で応じて矢を放つ

 

「燃え盛れ!ブレイズアロー!!!」

 

放たれた矢は当たる寸前に盛大に燃え上がり当たった大きなアンデットは崩れるように消えていく

 

「さすがロリーノさん……ナーベ、私たちも行くぞ!」

 

「了解ですモモンさー…ん」

 

「殿〜それがしも行くでござるよ〜」

 

「おいおい!俺も行くぜ!」

 

謎の一団が門を飛び越えていくと激しい剣尖と炎と雷が上がる

しばらくすると音が聴こえなくなった…

 

「……おい…音聞こえないよな?」

 

「やられちまったか?」

 

「スケルトンの音も聞こえないぞ?俺ちょっと見てくる…」

 

隊員の1人がスケルトンがバラバラにされて門の外に散らばっている光景を目の当たりにして呟く

 

「俺は今…伝説の1ページを見ているのかもしれない……」

 

 

 

 

「で?モモンガさん、これからどうすんの?」

 

スケルトンを弓で射りながら周りに人がいない為モモンガさんと呼ぶペロロンチーノ

モモンガは少し考えながら

 

「ちょっとだけ、玉藻さんから頂いた黒銀火竜を使いたいんですよ」

 

「え?それって玉ちゃんガチャ企画で当てたコラボ龍の希少種の亜種じゃね?と言うか何で玉ちゃんが?」

 

「いや……ちょっとだけお願いを聞いたらくれたんですよ、ホントですよ!」

 

モモンガの新しいおもちゃを使いたい子供のような発言に、もらったんじゃなくてねだったんじゃねぇの?とでも言いたそうにジト目をするペロロンチーノ

 

「だからコープスコレクターとジャックザリッパーの他にアイツまで召喚したのか…モモンガさん大人気ない!!」

 

「いや、後は玉藻さんが今使っている"アレ"の真の姿を見せつけたい!と、言っていたのでその協力ですよ……黒銀火竜は玉藻さんお得意のゴーレムなのでこの辺りの雑魚を片付けるのに使うだけですよ」

 

「あー、"アレ"ね、確かに中位アンデットじゃ役不足だよな…派手だし…」

 

「茶釜さんと朱雀さんは玉藻さんとナザリックで見てるそうですので……」

 

「マジか!ヤッベ!もっと活躍しないと、行こうぜモモンガさん!悪の組織を倒しにさ!」

 

どちらかと言えば自分達の方が悪の組織じゃないか?と思いながら張り切ってひたすらに弓弓矢でスケルトンを壊していくペロロンチーノに付いて行くモモンガと

 

「ナーベ殿〜申し訳ござらん、拙者の所為で」

 

「喋らないで、持ち難い…」

 

フライを唱えたナーベに抱え上げられているハムスケだった

 

 

 

 

 

「くっ!我々だけでは苦しいか…」

 

所変わって門から少しだけ離れた墓地で駆けつけた冒険者とエ・ランテル在駐の正規軍がアンデットの群れを相手に奮闘している

 

「ぐあっ!……」

 

「やめ……」

 

「ギャー!……」

 

先行していた冒険者がやられているようだ、よく見るとスケルトンでもゾンビでもない何者かが物凄い速さで動き回っている

 

「「「「うわーーっ!!」」」」

 

反対側からも悲鳴が上がり何人かまとめて吹き飛ばされているのが見えた

 

「一体どうなってるんだ…イグヴァルジ!そっちに行ったぞ!」

 

「どうしようもねぇな、雑魚共が……おいお前達あっちの奴らをやるぞ、着いて来い!」

 

冒険者チーム"クラルグラ"リーダーのイグヴァルジの指示でメンバーはコープスコレクターが暴れる方へと駆けていく

 

「まったくきりがねぇ……いったい後何体居るんだ?」

 

「……っ!?!おいイグヴァルジ!アレなんだ!」

 

「アレ?……どれのことだあっちの速そうなのは相性悪りぃから無理だぞ?」

 

「違う!アレだ、空を見ろ!」

 

イグヴァルジが悪態をついていると索敵に優れたメンバーが空を指差す

何言ってんだ?と、思いながらもその方向を見る

 

「…………何だありゃ……鳥?…………いや……アレは…………ドラゴンだと!」

 

「おいオメェら、あっちの少しでかいのと戦いながら後退するぞ…ありゃあ前に見たスケリトルドラゴンってぇ骨の竜だ、俺たちじゃ歯がたたねぇ」

 

イグヴァルジの発言に意を唱えるものはおらずクラルグラはコープスコレクターと戦いながら人知れず戦場から去っていった

 

「くそっ!ドラゴンまで…しかもアレは魔法に絶対耐性を持つと言われるスケリトルドラゴンじゃないか……アダマンタイトかガゼフ殿でもおらねば勝てないぞ……」

 

「王都への救援要請は出したのか!」

 

「グリフォンを持っている冒険者に頼んだが1日はかかるだろう……それまで我らが持ちこたえられるかが勝負だな……」

 

墓地で戦う人々の間に最悪の想定が浮かんでいる時スケリトルドラゴンが飛んで来たのと逆の空から何がが飛んでくるのが見えた

 

「なに……もう1体だと…くっ!総員全力を尽くせ!総力戦だ!後ろの街区には一体も通すな!」

 

「…………違う…アレは……アレは玉屋のゴーレムだ!」

 

「おおっ!俺達をミノタウルスから助けてくれた黄金の鳥だ!やったぜこれで助かった!」

 

「ギガントバジリスクを魔法一発で倒した力見せてくれ!!」

 

玉屋の護衛任務中に飛来する黄金の大鳥がこのアンデット犇く広場に現れた事で冒険者達が活気付く

しかし、「でも……魔法効かないんじゃ……」との発言が飛び出す

そんな発言が聞こえる中、黄金の大鳥は魔法でアンデットの大群を一掃していく

コープスコレクターやジャックザリッパーも巻き込まれて光の中に消え残るはスケリトルドラゴンと僅かなスケルトンソルジャーだけとなった

 

「おかげで助かった!しかしスケリトルドラゴンは魔法ではどうしようもないだろう周りのアンデットを排除してくれただけでも大助かりだ!」

 

墓地で戦っている人々に希望が戻る……スケリトルドラゴンだけなら何とかなる!……そう言い聞かせるように……

 

黄金の大鳥は空中から地上に降りて来た、魔力切れかと誰もが思った時黄金の大鳥は先程よりも眩い光を放つ

誰もがあまりの光量に驚き、直接見ないよう目を手などで覆い隠す

 

「…………歌?……」

 

「何で歌が聞こえるんだ……」

 

殆どの人が目が絡んでいてゆっくりと視界が戻ってくる

たまたま最初に黄金の大鳥の姿を見た冒険者は

 

「鳥じゃない……人?……いや女……?」

 

「きれい……おとぎ話に出てくる女神様みたい……」

 

「女神様……黄金女神様か……」

 

「そうだ!黄金の女神だ!」

 

冒険者や軍人が見守る中、黄金の女神と化した"REIDEEN"は錫杖の様な武器を構えると第七位階の《善なる極撃》(ホーリー・スマイト)を放ちスケリトルドラゴンを光で消し去った

スケリトルドラゴンを消し去ると空へと浮かび上がり大鳥へと姿を変えて来た時と同じ方角へ飛び去っていった

 

「壊れたはずの装備が直ってる?!」

 

「さっきの歌を聴いてから元気になった!」

 

「ヤベェ腰痛直った?」

 

「折れた剣が元に戻った!」

 

ドラゴンを葬り冒険者達の武器防具を直した黄金の女神はその日から伝説として語り継がれ、

冒険者モモンの話と共にエ・ランテルの定番のおとぎ話として後世に残る

 

 

 




因みに"REIDEEN"のレベルは50位だそうです。


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もふもふしっぽとドラゴン?

長らく時間がかかってしまいましたが最新話です

ロボ成分皆無のもふもふ感皆無の話ですが後々の伏線?

等もご用意しました

ではどうぞ


墓地の中心部にたどり着いたモモン、ナーベ、ロリーノ、それにハムスケはある建物に近づく

 

「カジット様……奴等です。」

 

黒色のローブを纏った集団の中の1人が不健康そうな禿頭をカジット様と呼んでいるのが聞こえた

 

「よー!お前さん達こんな良い夜にこんなとこで何やってんの?」

 

 

 

ペロロンチーノことロリーノは、この場に似つかわしくない陽気そうな声を掛け返事を待つ

1人くらい先に倒してやろうかと思ったが、相手のレベルをスキルで確認して一桁なのを確認してモモンガことモモンにー伝言(メッセージ)ーを送る

 

〔「モモンガさん?こいつらさ、奥のカジットってモモンガさんより不健康そうな禿山の奴が28レベルでさ?それ以外のレベル9〜14なんだけどやっちゃって良い?」〕

 

〔「え?…そんなに弱いんですか…どうしようせっかくブラックソルのお披露目しようかと思ったのに…………」〕

 

ペロロンチーノの伝言の魔法によりレベルを聞いたモモンガはあまりの弱さに驚愕して唖然としているとカジットが声を張り上げ

 

「なんじゃ貴様らアンデットどもはどうした!」

 

「ん?どうしただと?お前には見えないのか?この俺モモンと……」

 

「この俺様、ロリーノ様の……」

 

「「武器が!」」

 

と、カジットの質問に対してモモンは背中のグレートソードを引き抜いて構え、ロリーノは弓に矢をつがえていつでも撃てるように身構えた

 

「ま、まさか……あのアンデットの軍勢を超えてきたとでも言うのか……馬鹿な、そんな筈が……」

 

「さっき偵察に行ったらスケリトルドラゴンだって居たんだぞ?あり得ない……」

 

「ええい、静まれ!おおかた此奴らは儂らを倒して手柄を得る為に抜け駆けした愚か者であろう……時間を稼げ、儂が死の宝珠の力……見せてやるわい!!」

 

目の前の強そうな2人組に恐怖を抱いたズーラーノーンの構成員は怯えて慌てはじめる

しかし、カジットは冷静に召喚する為、死の宝珠に力を込める

 

「モモンさ……ん、ロリーノさ…ん、コイツら殺してもよろしいでしょうか?」

 

ナーベラルことナーベが、カジットの暴言を聞き、顔に怒りを隠そうともせずモモンとロリーノに確認する

小声で「至高の御方々に対して愚か者?」と呟きながら表情筋をヒクヒクさせている事から相当な怒りのようだ

しかし、

 

「良い、ナーベラル・ガンマお前の手を煩わすまでも無い…コイツらにはこれで充分だ」

 

モモンが魔法を使用しようとしたナーベラルを手で制し反対の手で一枚のスクロールを取り出す

 

〔「……ていうか、モモンガさん玉ちゃんからもらったアレ出したいだけでしょ?」〕

 

〔「だってペロロンチーノさん下位互換とは言えボーナスつぎ込んで出なかったドラゴンですよ?せっかくだから使いたいじゃないですか!」〕

 

〔「まぁ……ナーベラルよりは良い勝負になるかなぁ……確かレベル40位だった筈だし……」〕

 

モモンガとペロロンチーノがそんな事を話しているとは思うはずもなくナーベラルは至高の御方々には深いお考えがあるのだろうと深読みしていた

 

 

「《第7位階竜種召喚》(サモン・ドラゴン・7th)出でよドラゴン!」

 

モモンはスクロールをカジット達に見せつけるようにかざす

するとスクロールが燃えてモモンの足下に魔法陣が描かれそこから何かが少しづつ現れる

 

「ドラゴンだと?!馬鹿な!第七位階の魔法など不可能だ!」

 

「ひぃー!ドラゴンだと〜」

 

「くそっ、だから俺は嫌だと……ん?ドラゴン?」

 

「死にたく……って?え?」

 

カジットを先頭にドラゴンを召喚しようとするモモンを恐れていたズーラーノーンの構成員は魔法陣から現れた存在を見て驚愕した

何故なら……

 

「ん?」

 

ドラゴンはドラゴンなのだろう……黄色い小さいティラノサウルスみたいな生き物が召喚され、モモンガを見上げて不思議そうな顔をしていた

 

 

 

同時刻ナザリックシアタールーム

 

「あっ!……モモンガ様に間違えてデジモン渡してしまいました。」

 

「ぷっ、あっはっは!モモンガさんちょーウケる!「出でよドラゴン!(キリッ)までやってアグモンって〜ww」」

 

「ふむ、あのカジットとやらには勝てそうにないが大丈夫かな?」

 

 

 

ナザリックでのそんな会話を知ってか知らずかモモンガは取り敢えず攻撃するように命令するが途中から居た堪れなくなってきてコキュートスのような喋り方になりながら指令を出す

 

「ゴホン!…………さぁ我がドラゴンよ……ヤツラニチカラヲミセテヤルノダ……」

 

「ん?分かったー、いっくぞー……ベビーフレイム!!」

 

モモンガの意を受けた黄色い小さいティラノサウルスことアグモンはその口から《火球》(ファイヤーボール)を吐き出してズーラーノーンの1人を焼き尽くす

 

「なんだ今の!ファイヤーボールか?!」

 

「ほ、本物のドラゴンだー!」

 

「ふん、その程度のドラゴンでコイツに勝てるかな?出でよスケリトルドラゴン!!」

 

ズーラーノーン側が混乱する中1人冷静なカジットはモモンと対象的な動きでスクロールの代わりに死の宝珠を掲げると地面が割れてそこからスケリトルドラゴンが現れた

 

「ベビーフレイム!!」

 

ーバシュン……ー

 

「あれ?効いてない?」

 

「馬鹿め!このスケリトルドラゴンは魔法に対する絶対耐性を持つマジックキャスターの天敵なのだ!そんな幼竜ごときの炎で倒せるものか!」

 

スケリトルドラゴンに対して何度も火の玉を吐くモモンのアグモンを嘲笑うカジット…

 

「モモンガさん……そんなにモンスターバトルしたかったのかな?…あれ自分で戦った方が早いよなぁ……」

 

その光景を見てペロロンチーノは素朴な疑問をつぶやく

それを知ってか知らずかモモンガはアグモンに指示を出してスケリトルドラゴンと戦っている

 

「ハハハハハッ!そのような攻撃が通じると思ったか!やってしまえスケリトルドラゴン!」

 

「ぐわぁ〜…………くそぉ…僕にもっと力があれば……え?」

 

カジットの命令によりアグモンにとどめを刺そうとするスケリトルドラゴン

満身創痍のアグモンが踏み潰されそうになった時、モモンガから闇の波動が溢れ出しアグモンに流れ込む

 

ー…………アグモン…超進化…………スカルグレイモン……ー

 

「な…………何じゃと?!スケリトルドラゴンだとでも言うのか……ええぃっ、ハッタリだやれスケリトルドラゴン!」

 

闇の波動を吸収したアグモンは骨でできたドラゴン……スカルグレイモンに超進化した

瀕死のドラゴン?がスケリトルドラゴン?に姿を変えてカジットは驚くが気を取り直して攻撃を再開させる

 

「ウオオオオオオオオォォ!!!!」

 

しかしスケリトルドラゴンの攻撃はスカルグレイモンに傷一つ付けられず、反対に右手の薙ぎ払いを受けてカジットの目の前までスケリトルドラゴンの巨体が吹き飛ばされてきた

 

「馬鹿な……わしが長年の歳月を費やしてきた結晶とも言えるスケリトルドラゴンが……させん!させんぞ!レイオブ・ネガティヴエナジー!」

 

カジットは驚愕しながら死の宝珠を使いスケリトルドラゴンのダメージを回復させ、切り札として取っておいたもう一体のスケリトルドラゴンを召喚する

 

「何と!三体も……見よ!これが死の宝珠の力よ!これで負のエネルギーが尽きてしまったが貴様らを殺して都市に死を撒き散らせば使った分を補給してお釣りがくるであろう……さぁ!潔く死ね!冒険者!」

 

もう一体召喚したつもりが三体現れて計四体のスケリトルドラゴンが現れた事で余裕が出てきたカジットはモモン達を絶滅するべく突撃させる

 

「グオオオオオオオオォォォォ!!!!」

 

2体のスケリトルドラゴンがスカルグレイモンのブレスにより一瞬で破壊され、残りの二体も吹き飛ばされる

 

「馬鹿な!貴様は一体何者だ!そんな強力なモンスターを使役するなど…………漆黒……まさか……まさか貴様らは法国の特殊部隊か!」

 

「生憎だが私達は唯の冒険者だよ"今は"な?」

 

カジットの問い掛けに笑いながら答えるモモン

そしてカジットが周りの弟子達に援護を頼もうとするが、いつのまにか全員矢に射られて倒れている

よく見れば矢にも高度な魔法がかかっており解呪には時間がかかりそうだ

 

「しかし……そうだな…あまりにも愚かなお前に私の真の力を見せてやろう」

 

そう言うと漆黒のフルプレートに包まれた男が闇に包まれその闇の中から豪奢な装飾のローブに身を包んだアンデットが現れた

 

「…………あ、……あ……あぁ……貴方様はまさか……」

 

「貴様はスケリトルドラゴンが魔法に対する絶対耐性を持つと言ったがそれは間違いだ…冥土の土産に教えてやろう、スケリトルドラゴンの魔法耐性は第六位階までだ…と、言うことは、コレは防げないぞ?《連鎖する龍雷》(チェイン・ドラゴン・ライトニング)」

 

カジットはその姿を見た瞬間に理解した……してしまった…自分は何に…いやどのような存在に喧嘩を売ってしまったのか……

強大な力を感じるアンデットから人の身では到底到達する事が不可能な神話の領域の魔法が放たれ、残りのスケリトルドラゴンが灰になって消えていく

 

「さて……貴様はどうするカジット………え?」

 

「偉大なる死の神スルシャーナ様……愚かな私をお許しください……願わくば我が願い聞き届けていただけないでしょうか、伏してお願い申し上げます」

 

モモンガはカジットにとどめを刺そうとカジットの目の前に転移すると、先程までの態度とは一変して神に祈るように膝をおり土下座をするカジットの姿に驚いて手を止めた

 

「ふん、下等生物が……漸く偉大なる御方の力が理解できたようですね、さぁ潔く死になさい」

 

「よっ!死の神様!凄えなモモンガさん信仰の対象とかちょーウケる♪」

 

「…………!…………ゴホン!うむ、分かればよろしい…してお前の願いとは何だ?申してみよ」

 

土下座をするカジットの姿を見てナーベラルは当然のことと感心して

いつのまにかズーラーノーンの高弟を倒していたペロロンチーノはナザリックのぶくぶく茶釜と同じ反応をして

精神の沈静化が発動したモモンガは気を取り直してカジットに願いを聞く

 

結果母親蘇生の為の魔法開発がしたいと言うカジットの願いを聞き入れて最古図書館で研究させることにしたモモンガはゲートでデミウルゴスの所にカジットを送り、実験の一環として図書館のティトゥス達と共に新魔法の創造をさせるように指示をした

 

首謀者が居ないとまずいので、それなりに見える歳のいった高弟数名を殺し霊廟の中に適当に配置してンフィーレアを回収

冒険者組合に戻り報告した

 

「いや〜モモン君達のお陰で首謀者は居なくなった、そちらにもスケリトルドラゴンが出たとは驚きだがまさか君達だけで倒してしまうとは……いやはや君達はもはやカッパーのプレートで収まる器じゃないな!一応規則なので調査をしてからにはなるが、急ぎ申請を出しておくから後日都合のいい時にでも報酬を受け取りに来てくれ」

 

冒険者組合に戻るとアインザック直々に執務室に案内され上機嫌で対応してくれた

了解の意を示し、執務室を後にしたモモン達3人は外で待たしているハムスケの所へ戻ろうと組合の出入り口に手をかけた時、背後から

 

「なんで俺達の装備は直してくれねぇんだ!おかしいだろがカッパーやシルバーの奴らは新品同様に修理して俺達の装備は直さないとはどういう了見だ!」

 

エ・ランテルの冒険者組合の受付カウンターで1人の男が事務員の女性を怒鳴りつけながらまくし立てていた

 

「ですから、アレはギルドから修理費用が出たわけではなくてですね?」

 

「はっ!じゃあ何か?奴らが自腹で直したってぇのか?日々の食事にも悩むカッパーどもがか?」

 

「あの……皆様は今回の討伐に参加されていたのですよね?」

 

一方的に捲したてるイグヴァルジにおどおどしながら聞く受付嬢

その態度に優越感を味わいながらイグヴァルジは続けて

 

「あたりめぇだろうが!じゃなきゃこんなにぼろぼろになってねぇだろうが!!」

 

「ひっ!」

 

「おいイグヴァルジその辺でやめとけ……それに背後を見てみろ。」

 

受付嬢がイグヴァルジの恫喝に怯えているとすぐ横に居た冒険者からそう言われてイライラしながら背後を見る

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

新品同様の鎧を纏った冒険者達がイグヴァルジをなんとも言えない目で見ている

不思議に思っていると横の冒険者が続けて

 

「イグヴァルジ……お前さんアンデットどもとの主戦場だった場所に居た……そうだな?」

 

「あたりめぇだって言ってんだろうが!テメェもさっきから何が言いてぇんだよ!」

 

「そうか…………じゃあなぜお前の鎧は直っていない?」

 

「馬鹿かテメェは?戦闘が終わったら鎧が自動的に直るとでも言うのかよ!」

 

その発言を聞いた瞬間に周りの冒険者からの視線が更に不穏なものに変わり

 

「イグヴァルジ……悪いことは言わないから大人しく引き下が…「ふざけんな!修理代を払うまで俺は帰えらねぇぞ!」…………そうか、一つ教えてやろうお前さん主戦場にいたと言うが最後まで居なかったんだろう?だってあの戦場に最後まで残った奴は女神様の加護で武器や防具が修復されたんだからな……そして…それを踏まえてもう一度聞く…………イグヴァルジ、お前さんいったいいつまで戦場に居た?」

 

イグヴァルジは周囲にいる冒険者達の蔑むような目に耐えきれず足早に去っていった。

 

 




ナザリックシアタールーム

「あ〜面白かった♪玉ちゃんまたこういうのあったら教えて!絶対見にくるから」

「ふむ、映像として記録したから後で皆に見せるとするか……」

「思ったより弱かったようですね……メタルグレイモンではなくあちらが出るとは…しかしもう一段階…化すれば……ンドラ…ンまで進化……したはずなのですが…………残念です。」








どうやらもう一段階進化が残っていたようで玉藻は不満そうだった


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番外編いち 呂玲鬼のワーカーデビュー?

多忙につき更新速度低下中ですが続きを書き続けてはいます

もふもふ感もロボ感もほぼ皆無の回ですのでそちらを期待の方は読み飛ばしても大丈夫です

それでもいいよ!

という方は本編をどうぞ


ナザリック大墳墓 円卓の間

 

「むぅ、しかし我には少し荷が重い気がするが……」

 

「大丈夫ですよコキュートス、今の君はどこからどう見ても人間の冒険者に見えますよ」

 

 デミウルゴスは銀色の髪をザンバラに刈った人間をコキュートスと呼び新たな任務に就く友人を労っていた

コキュートスは何時もの外骨格ではなく青を基調とした武者鎧の様な装備で身を包み、デミウルゴスに今回の任務の詳細を確認していた

 

「今回の任務はアインズ様をはじめとしたら冒険者チーム"漆黒"が帝国に進出する際の参考として人化したコキュートスとサポート要員として玉藻様からこの世界の冒険者達のレベルに合わせたしもべをお借りしています……2人ともどうぞ。」

 

 デミウルゴスの言葉に連動する様に円卓の間の扉が開くと1人の女性と2人の少女が入って来た

 

「おや?レイキは付き添いですか?確か今回はコキュートスとそちらの2人とうちのエンヴィーだけだったと思いますが……」

 

「いや…母上が面白そうな話をされているのを耳にしてな?私とコキュートスの仲が良いのを強調して同動させてもらえる様に頼んだ……という訳だよろしく頼むぞ"氷河"殿?」

 

 黒いチャイナ服風のふくを着た呂玲鬼はニヤリという表情を浮かべコキュートスにウインクする

 

「む、宜しく頼む……」

 

「何だコキュートス?私と出掛けるのがそんなに嬉しいのか………身体が震えているぞ?」

 

「…何でもない………ただの武者震いだ…………」

 

 いつもの何か企んでいる表情の呂玲鬼に、今度は何が起こるのか不安を増大させたコキュートスは身体を自然と震わせる、

それに気がついた呂玲鬼が指摘するとコキュートスは平然を装う

 

「あの?レイキ様、私達はどうすれば良いのですか?」

 

「レイキの姉御とコキュートスの旦那がラブラブなのは分かってんだけど出来れば俺達の自己紹介くらいはさせてもらえねぇかな?」

 

「あぁ、悪かったね。……おほん、コキュートス、レイキ少し良いかな?」

 

 呂玲鬼とコキュートスがいつもの痴話喧嘩?を始めてしまったおかげで機会を失っていた緑と黄色の2人の少女がデミウルゴスの方を見て意見を求める

その視線に気がついたデミウルゴスが痴話喧嘩?を止めると2人が自己紹介を始めようとする、それを手で制しデミウルゴスが

 

「折角ですのでうちのエンヴィーも呼びましょう、そうすれば一度で済みますしね?」

 

 少し待って下さいね?と、言ったデミウルゴスは近くに待機させていたエンヴィーに人化の指輪を装備してから円卓の間に来るようにメッセージを送る

それから2分ほど遅れて円卓の間の扉が開く

 

「「「……………………」」」」

 

「「……綺麗……」」

 

「…あの……どうか致しましたか?……あの〜〜…皆さん?」

 

 部屋に入って来た女性を見てエンヴィーを知るデミウルゴス、コキュートス、呂玲鬼の3人は固まり

緑と黄色の少女は見慣れない長い黒髪に感動していた

5対の視線に晒された黒髪の女性は居た堪れなくなり意見を求める

 

「…………いや、失礼致しました。もしかしてですが…貴女は……エンヴィーですか?」

 

「えっ?はい…デミウルゴス様がお呼びになったと思いますが……あれっ?もしかして私またやってしまいましたか?」

 

デミウルゴスが女性に確認するとエンヴィーだと名乗り急に涙目になり焦り出す

 

「デミウルゴス…女性は大事にしなければいかんぞ、なあレイキ?」

 

「そうだぞデミウルゴス殿、女性は敬わなければ……あぁ、いけすかんヤツメウナギと大口ゴリラは好きにして構わんがな?」

 

「デミウルゴス様は悪魔と聞いておりましたが…女性を出会い頭に泣かせようとするとは…風菜と雷葉も同じ目に?…正に悪魔の所業……恐ろしい……」

 

「ヤベェなぁ……なあ風菜?俺らも泣かされんのか?まだ一言二言交わしただけなのに……」

 

 コキュートスをはじめとして呂玲鬼、緑のチャイナ服の風菜、黄色のチャイナ服の雷葉と続いて

最後に誰にも聞こえない様な音量で呂玲鬼が「……コキュートスのフェミニスト化完了…っと……」と呟いていた

 

「それにしてもエンヴィーは人化するとそんな感じになるんだな…はっきり言ってもっとパンクな感じになるものだと思っていたから正直言って驚いた」

 

「ええ、烏の濡れ羽色…とでも言うのでしょうか?綺麗な黒髪ですね…私も先程は衝撃でしたからねあのエンヴィーが……」

 

「私だってこんな姿になるとは思わなかったですよ…ですが先程道中でお会いしたぶくぶく茶釜様から似合うから!絶対に似合うから!と、言われてこの様な格好に…いや、有り難いのですが……」

 

 そう言って今着ている紫色の巫女服の衿口をつまむエンヴィー…恐れ多くも至高の存在から下賜された服は気に入ってはいるが、周りの反応に戸惑っている

 

「エンヴィー様凄く似合っておりますよ!まるで御主人様と見た映画?に出てくる倭国の王族の様な……高貴な感じです!」

 

「俺もそう思う!エンヴィーの姉御が一国の姫と言われても信じると思うぜ?」

 

「いや…あのですね?」

 

 先程自己紹介したマクロスクォーター所属、風竜こと風菜、雷竜こと雷葉がエンヴィーの人化した姿を褒めちぎりエンヴィーは困惑しつつも照れるという微妙な表情で応対していた

 

「うむ…だがデミウルゴス、皆はこの格好で良いのか?何やら統一感がない様な気がするが……」

 

「いや、今のエンヴィーの姿ならばこんなカバーストーリーが出来るのだよ…………亡国の姫を護衛する武人と親衛隊のレイキ達3人がチャイナ服というのも良い、これは斯衛の服だと言い張れば異国の装備と勘違いしてくれることだろう……コキュートスは誇り高き武人で姫を守りレイキ達3人はそれを補佐する存在、そしてエンヴィーは強大な魔力を扱える姫を演じる…と言うのは?」

 

「…武人という事か……イイ…実に素晴らしい…創造主武人武御雷様の目指したものを演じる事が出来ると言うのか……」

 

 コキュートスは和風2人の中華風3人の組み合わせで違和感が無いかをデミウルゴスに聞いてみた

するとデミウルゴスはつい先ほど考えついたカバーストーリーを伝える、コキュートスは創造主の目指していた武人として行動できる事に喜びをかみしめていた

 

「…すると私はエンヴィー"姫"を守る斯衛の隊長…という事で良いのかな?」

 

「それでは私と雷葉もエンヴィー"姫様"の護衛…と、考えればよろしいのですか?」

 

「おー、じゃあ俺もエンヴィーの姉御の護衛役って事だな?」

 

 呂玲鬼がニヤニヤしながら姫を強調すると風菜がそれに気づき追撃を掛ける、雷葉は単純に護衛役を演じる事を確認する

 

「姫はやめて下さい!流石に恥ずかしすぎます!レイキ様!そのニヤニヤしながら揶揄うのをやめて下さいお願いですから!!」

 

 からかわれて顔を真っ赤にして恥ずかしがっているエンヴィーを見てそろそろ話が脱線し過ぎていますか?と、思ったデミウルゴスの助け舟が入るまでエンヴィーは呂玲鬼と風菜の2人にいじられ続けて顔がリンゴの様に真っ赤になっていた。

 

「……エンヴィーよ……すまん…無力な我を許してくれ……レイキには逆らえん……」

 

「ふむ、女性は女性同士の方が良いだろう……まぁ少し様子を見ようか」

青い武者姿をした凍河の支配者は、触らぬ呂玲鬼に祟りなし、と端の方へ行きデミウルゴスが助け舟を出すまで見ないフリをしていた。

 

 

 

 

「……というわけで、帝国までやってきたわけだが……これから如何するんだ?」

 

 場面は変わり、帝国のとある酒場……帝国では数少ない冒険者達、冒険者とは似て非なるワーカー達が集まる酒場のスイングドアを開けた呂玲鬼は周りに聴こえるように少し大きな声で言った。

 

「おいおい…なんだあの一団…すげぇいいオンナ揃ってるじゃねえか?」

 

「ヒュゥ、先頭の姉ちゃんいい身体してんな…冒険者……いやどっかの騎士か?」

 

「若造供やめとけやめとけ〜……………ありゃお前さん達の手に余る…」

 

 先頭の呂玲鬼に始まり色違いのチャイナ服を着た風菜と雷葉…そして……

 

「「「「「…………………………美しい…………」」」」」

 

 紫を基調とした巫女服を着た長い黒髪の落ち着いた雰囲気のエンヴィーを見て、呂玲鬼の健康的な美しさを見て騒がしくなっていた酒場は静寂に包まれる

 

「…………可憐だ…………」

 

「おいロバー?あの人達が気になるのはわかるが今は仕事の話中だぞ?集中してくれ…」

 

「ふーん珍しいわね…ロバーが女に目を奪われるなんて…」

 

「!?!?っ!」

 

「「「アルシェ?」」」

 

 入り口から少し離れたテーブルで食事を食べながら、カッツェ平野のアンデット退治の依頼の話をしていたワーカーチーム"フォーサイト"のメンバーも例外なく興味を惹かれて酒場に入って来た一団を見る

神官のロバーデイクが惚けたように呟くのを聞いたヘッケランとイミーナが珍しがっていると黒髪の女を見たアルシェが驚きに目を見開いて直後に椅子から倒れる

 幸い怪我もなく、店中の人間が目を奪われていたために騒ぎにはならず横に座っていたイミーナがアルシェの手を取り椅子に座らせる

 

「如何したんだいアルシェ?急に…怪我無いかい?」

 

「もし何処か痛むのであれば治療しますよ?」

 

「アルシェあの女を見たからか?…………何位階まで使える?」

 

 アルシェが椅子に座りなおした後にイミーナ、ロバーデイクがまだ少し震えているアルシェを気遣うが、アルシェの様子を見たヘッケランが真面目な顔になり質問する

 

「…………信じられない……フールーダ様と同じぐらい…もしかしたらもっと……先頭の黒い服の人も第五位階まで使える…と思う……」

 

「「「?!」」」

 

 帝国では生ける伝説と化している大魔法使いと同格もしくは格上と聞いて先程のアルシェ同様に目を見開いて驚きながら謎の美女達を見る3人……その3人の他とは違う視線に気がついた呂玲鬼は興味を引かれてフォーサイトの座るテーブルの前まで歩いて来た

 

「お前たちがそこそこ有名なワーカーチームの"フォーサイト"だったか?私達は他国で冒険者をしていた"黒の騎士団"というチームだ、良かったら違う場所で話せないか?」

 

「いや〜〜、まさかお嬢さんたちみたいな他国の人達にまで知られるとは俺たちも有名になったもんだ……………で?なんで俺達がフォーサイトだと思ったんだ?まだ一言も交わしてないのに?」

 

 急に話しかけてきた呂玲鬼を警戒しながらヘッケランが戯けた口調を交えながら質問すると

 

「俺達の知り合いがあんた達に以前仕事を依頼したらしくてな〜そこで人相を教えてもらったのさ!」

 

「私たちみたいな他国の"モノ"は搾取されやすいとのご指摘を受けまして…フォーサイトの方々は比較的善寄りだから…と」

 

 黄色い少女は男みたいな口調で緑の少女は丁寧なしかし何処か冷たい雰囲気を纏った声で答えた

 

「まぁいいじゃないの!あんた達が何者か気になるし、ちょっと話聞いてみましょう、ね?リーダー?」

 

「俺も賛成だ、ロバーは…………大丈夫…かな?……アルシェはどうする、やめとくか?」

 

「いや、私も行く……」

 

 意外にもイミーナが賛成してヘッケランも興味を優先して同調…今も黒髪の君と向き合って惚けているロバーデイクは無条件で賛成だろう、最後にアルシェがふらつきながらも参加の意を示す

 

「ふむ、では少し話が出来る場所に行きたいのだがどこか知っているか?」

 

「ちょっと待ってくれ、俺たちはまだ貴方方の名前も知らないどう呼べば良いんだ?」

 

 そして酒場を出て内緒話が出来るところに行こうと言う女性に、ヘッケランは名前を問う

 

「私はレイキ……呂玲騎という名のしがない戦士だ」

 

「私は風菜と申します、魔法使いと格闘家です以後お見知り置きを…」

 

「俺は雷葉ってんだ、盾騎士と魔法使いだ!よろしくなイミーナの姉御!」

 

「で、こっちの……"清楚で上品な美しさで酒場の視線を独り占めにした超絶美人"は円媄衣という名で召喚士だ、気軽にエンと呼んでやってくれ」

 

「レイキさん…もうそうやって私を弄るのやめて頂けませんか?……さっきからずっと恥ずかしくて顔を上げられないんですが……」

 

「さすがエン、あざ…もとい、可愛いですなぁ~、そうやって男性の保護欲を刺激するのですな?いや〜私の様な武辺者には縁の無い仕草ですなぁ〜」

 

 名を問われ、呂玲騎と名乗った女郎をを皮切りに全員の名前と役割を話すと黒髪の美女…円媄衣をニヤニヤしながら呂玲騎が弄る

恥ずかしいのか顔を真っ赤にしたまま呂玲騎の肩をぽかぽか叩く円媄衣を見て酒場はほっこりする

 

「そうだ、もう1人外に待たせてあるんだ、悪いがそちらの自己紹介はそいつも交えてで構わないか?」

 

 そう言って呂玲騎に連れられて酒場を出ると蒼鎧を着た2メートルくらいある大男が連れだと聞いて更に驚いた

 

「我は氷河と申す…………………"我が妻が"何か粗相をしなかっただろうか……」

 

 妻?と思って女性陣を振り返ると呂玲騎がドヤ顔で腕を組んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば何故レイキさんとコキュートス様の設定を夫婦にしたのですか?別にそこまでする必要はなかったのでは?」

 

「確かにセバスの言う通りなのだが…今だに踏ん切りがつかない我が友への後押し…………それと……」

 

「それと?……他に何か?」

 

「レイキと雪女郎達が入れ替わり立ち替わりに嘆願に来た……と言えば分かるかい?」

 

「成る程……それはお疲れさまでした、今日はピッキーのところにでも行きますか?」

 

「あぁそう言えば久しく行っていなかったな…じゃあご招待に預かるよ」

 

 ナザリック大墳墓第九階層では老執事と悪魔がそんな会話をしていた




玉藻「あっ!またやってしまいました!」

モモンガ「どうしたんですか玉藻さん?そんなに驚いて…」

玉藻「エンヴィーさんに渡す召喚符に無頼を入れたはずが……ここに全てあるんです……」

モモンガ「えっ!?それじゃあ何が帝国に?」

玉藻「ここに無いのが……白炎と神虎と斬月二体と……蜃気楼…ですかね!」

モモンガ「ですかね!じゃないですよ…………ていうかアンタ分かってやっただろ!絶対確信犯でしょ!」

玉藻「てへっ?」


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もふもふしっぽと超時空要塞(よんぶんのいち)

長々と書いていなかったのですが姪のポケモンプレイを見てから何故か書きたくなったので再開してみました。

当面は、仕事休みのため書いていると思いますが仕事始まると遅くなるかもしれません…しかしひと段落つくまでは書いてみようかと思いますのでまたどうぞ宜しくお願いします。


薄暗い夕暮れの空、その下に広がる大森林で蠢くものたちがいる。

 

「モモンガさん?俺のシャルティアが如何したって?」

 

「いや、今朱雀さんから同じメッセージ受けたでしょう?撤退って……ユグドラシルに無い効果のアイテム……やはりあったか…外出組にワールドアイテム持たせといて良かった…」

 

その蠢くものたちの首魁と側近が、骸骨頭と鳥頭を突き合わせてひそひそ話をしている。

 

「んで?そいつら法国って言ったっけ?俺のシャルティアひどい目に合わせたってことは……宣戦布告って事で良いんだよな?」

 

鳥頭の弓兵が自身の最強装備である"ゲイボウ"を取り出して木々の隙間から射し込む光に反射させると、口もとだけニヤッと笑う。

 

「……たぶん…もう大丈夫だと思うけどなぁ……だってシャルティアって……………………玉藻さんからも家族認定されてるでしょ?」

 

「あっ…」

 

モモンガは骸骨フェイスでよく分からないが、諦めたようなため息を吐く…直後に身体が緑色の光に包まれ精神の鎮静化が起こると玉藻の名前を出す。

それを聞いたペロロンチーノはその言葉で何かを察し、声を上げる

 

「…………大丈夫かなぁ……タマちゃん…法国滅ぼさないで我慢できるかなぁ…………たぶんひとりで"せかいせいふく"できるもん……だからなぁ……」

 

ペロロンチーノは自身の妹分にして、"真の意味で"ナザリック最キョウの玉藻を思い浮かべると…………仲間の仕返しすら全滅の玉藻が、家族認定されたシャルティアを害された怒りで国ごと滅ぼさないか心配そうに……遠くの空を見上げた。

太陽が殆ど落ちかけていて夜になる…そして…法国のとある都市には宇宙から1隻の船が、予定より少ない人数で出撃した法国の特殊部隊"漆黒"へ向けて接近していた。

 

ーーーーーーーーーーーー

少し前まで遡り……

 

「プロフェッサー、僕たちの船の起動に成功したよ!これで一回なら戦闘可能!」

 

「ふぅ……炎がエネルギーの無駄遣いをしなければもう少し早く動かせたのですが…おかげで新生"ナザリック機動部隊"の発足に間に合いませんでした。」

 

エ・ランテルの遥か上空…と言うか宇宙で1隻の戦艦が眩い光を放つ

その中で多くのメダロットや機動部隊の"ネームド"と言われる名持ちの強固体が格納庫で集まり主人の前で報告をしていた。

 

黄金の女神ライディーンは人化の指輪をして黒髪のロングヘアが似合う高校生くらいの女の子になっていて、老紳士バージョンの恐怖公、ビークルロボシリーズの雷龍こと色んなところが黄色でチャイナ服の少女…雷葉、風龍こと色んなところが緑色のチャイナ服の少女…風菜など様々な姿のモノが次々に報告する

その集団の先頭に立つのは、赤いカジノのディーラーのような服を着込み…赤いウェーブがかかった肩口まで伸びた髪を持つ人化したアークビートルが、バイザーを彷彿とさせる綺麗で透き通るような緑の眼を玉藻に向けて一礼してから報告する。

 

「それでは玉藻様、私アークビートルからご報告させて頂きます…ようやく我等の最大の"仲間"マクロスクォーターが無事起動致しましたことを此処に確認致しました…つきましては今後の体制と致しまして…………」

 

今までは皆が好き勝手に喋っていたがアークビートルが玉藻へ向けての報告をする時は静かになり、白衣を着た玉藻は腕を組み威厳を出して立っているが、9本のしっぽが引きちぎれんばかりに振られていてアークビートルの真剣な報告の合間にも……ふぁさっ!…もふもふ…ぱたぱた…と緊張感の無いしっぽの動く音が聞こえる

 

「…………以上です…玉藻様、如何でしょうか?」

 

アークビートルが今後の体制や配置の案を述べると玉藻は眼を見開き全員に聞こえるような声で、

 

「それでこそ我がナザリック機動部隊!わたしは今、歓びに打ち震えている!」

と、何処かの骸骨の真似をしながら演説した……しかし、もふもふのしっぽは依然全力で前後左右に振り乱されていたので格納庫のネームドの殆どは暖かい目で見守っていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「凄い!ユグドラシルの時は完全再現できなかった艦橋が正にクォーターに!」

 

艦内の案内をアークビートルにしてもらい、遂に艦橋に辿り着いた。

玉藻は設計図通りに改装された艦橋を見て大興奮…眼はキラキラと輝き、金色の輝きを放つもふもふしっぽも先程より早く動き回っていて目で追えず残像が発生してしっぽが3倍くらいに見える。

 

環境の設備をひとつづつ楽しそうにいじり倒す主人を見てしもべたちが癒されていると、それをぶち壊す緊急のメッセージがアルベトより届く。

 

…………シャルティアが瀕死…緊急撤退した……との報告

 

「……アルベトさん…………で、シャル…………敵は…………ホゥ、そんなアイテムが……ニグン…いや、ガンギブソンに確認を……了解です……あなた方達はその都市に近づく事は禁じます…………だって…今から私達がその都市を、"地図から消してやりますから"法国とやらが可愛いシャルティアを酷い目に合わせたのでしょう?ならば相応の報いを受けるべきです…ではアルベトさんこの事をモモンガ様達を含む全員に伝えなさい……」

 

玉藻は手を止め、満面の笑顔から無表情に豹変するとアルベトにメッセージで通信を始める。

ただ静かに、淡々と知りたい事を聞いていき、モモンガを崇拝するニグンを持ち帰って改造したサイボーグロイド"ガンギブソン"からも法国の情報を聞き出して対象の位置を艦内のレーダーを使い確認する。

段々と語気が荒くなり、よく見れば毛が逆立って赤黒いオーラまで立ち昇っている、そして一通り言うべき事を言った後、一息置いて……

 

「これは私達の戦だ!手を出すな!………… 我々は現時刻を以って兵隊から復讐者へ鞍替えする。最初の獲物はこの都市だ。行くぞーォォッ!野郎共!」

 

アイテムボックスからアークビートルが玉藻の艦長服一式を出して渡す。

それを受け取って玉藻がクイックチェンジで装備を変え、帽子を手にアルベトに宣言する。

宣言した後に帽子を深めに被り、右手を前に突き出し…左手を腰に当てて全ての乗組員に命令を下す…玉藻の右手が指し示すのはモニターに映された法国のある都市……原作とは違う漆黒が駐留している、教会の騎士団支部がある都市が映し出されていた。

玉藻の力強い号令を聞いたしもべ達は正対して敬礼をすると一目散に持ち場へ走って行った。

 

「さぁ……シャルティアの受けた痛み……倍返しだ……」

 

艦長席に腰を下ろした玉藻は両掌を組み手を合わせると、モニター内のエ・ランテルと同規模の城塞都市を、瞳孔の開き切った眼で凝視した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「モモンガさん……遅かったよ…タマちゃんまさかのクォーターで参戦だってさ……ハハ…この世界滅びないか心配……」

 

ペロロンチーノが死従点朱雀にメッセージで聞くと時すでに遅し、玉藻、宇宙より巨大戦艦で参戦予定……私も見たいから乗る(^^)

との返事が返ってきてメッセージが切れる。

ペロロンチーノは鳥頭をモモンガの方へ力なく向けると乾いた笑いを出す、シャルティアの命に別状が無いことも確認できたので安心したのも有るのだろうが……

 

「ええっ!ずるいですよ朱雀さん!俺も、俺も乗りたい!乗りたい乗りたーーーい!!」

 

憧れの動いている巨大戦艦に乗れるまたと無いチャンスにモモンガは魔王の姿のまま駄々を捏ね始める。

それを見たペロロンチーノは、乗りたいのもあるけど…タマちゃんが心配だから一緒に行こうか?とモモンガに声を掛けると大急ぎでナザリックへと転移した。

 

ーーーーーーーーーーーー




この場を借りて、感想いただいた皆様誠にありがとうございます
m(_ _)m

また再開しましたのでどうぞよろしく、次は明日の午後には上げる予定でございます。


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もふもふしっぽと猫天使

どうもお久し振りの方はお久し振りです。

続きを書いている途中でお仕事入ったため少し遅くなりました
m(_ _)m

フリーの難しいところです……

題名の猫天使、分からない方は偉大なるグーグル先生で検索すれば出て来ますよー

ではどうそ。


 第1種戦闘態勢が発令されたマクロスクォーター内では乗組員のメダロットや手のひらサイズの見たことのないかわいい人形が忙しそうに動き回っていた。

 

「何あれ!超可愛い!あれ何?私も欲しい!すっごく欲しい!」

 

 そこに、現れたピンク色の粘体が形をハートマークに、一部を矢印にしてぴょこぴょこ動き回る小さな人形を興奮した様子で指し示す。

 一緒に転移して来た死従天朱雀はそんな興奮した様子の教え子にため息を吐きながらピンク色の粘体…もとい、ぶくぶく茶釜の指し示す矢印の先を見ようと目を凝らすと、矢印の先以外にも艦内の至る所に小さな妖精のような人形が所狭しと動き回っているのが見える。

 

「何だこれは…………おぉ!コレは玉藻に私が昔プレゼントした少し前の時代の携帯端末じゃないか!……たしか…名前は………」

 

 死従天朱雀が4本ある副腕のひとつを顎に当てて思い出そうと思考にふける。

その間もぶくぶく茶釜はピンク色の身体を駆使して小さな人形を摘み上げたり、動きを観察して悶えている。

 

「やめてよー!きょじゅーくのひなんがまだだからいかないとー!」

 

「わーーい♪可愛い♪」

 

「あー、しるふぃーがつかまったー…」

 

「でもしこうのおんかただからしょーがないねー…」

 

「…………ぐぅ………………スャスヤ……」

 

 摘み上げられた"しるふぃー"と呼ばれる白とパステルグリーンカラーを基調とした小さな人形が抗議の悲鳴をあげるが、ぶくぶく茶釜は捕まえたしるふぃーをもう一本の触手を細く伸ばして突いたりして愛でる。

 それを見た他の小さな人形達も騒ぎ出すがぶくぶく茶釜の事をしっかりと認識しているのか逆らう様子がない……1人器用に立ったまま寝ているが……

 

 そんな事をしていると、艦内通路の向こうから青い軍服姿の玉藻が現れて、ピンクの粘体が小さな人形達に取り囲まれている光景を目の当たりにする。

 

「お姉ちゃん?……シルフィーがかわいそうなので離してあげてくれませんか?もし気に入ったのでしたら後で1人差し上げますから。」

 

「!?ほんと!?やった!妖精ゲット!…………って玉ちゃん?なんか普通ーー……。」

 

「ふむ、私も心配で来てみたのだが…その表情を見る限りはひとまず大丈夫……か?」

 

 玉藻は帽子を取り、しゃがんで粘体より少し低い位置から上目遣いでそう提案すると、ぶくぶく茶釜は捕まえたしるふぃーを振り乱しながら喜び、玉藻の顔を覗き込んで「……意外。」と言ってしるふぃーを解放する。

 解放されたしるふぃーは振り回されて目が回ったのかフラフラしながら歩いていく…他の小さな人形達に支えられながら…

 それを見送りながら死従天朱雀がぶくぶく茶釜と同じく玉藻の顔を覗き込むが…違和感を感じる…………この感覚も以前どこかで………思い出せずに黙っているとぶくぶく茶釜がわざとらしく、

 

「あ〜ー、先生カッコつけてるぅ〜……だってさ?さっきまでは…「なに?!マクロスが動くだと!い、行くぞ!私も見に行く!」って興奮してなかったっけ?」

 

 表情が分からないはずの粘体だが、死従天朱雀にはピンクの粘体の背後に成人して美しく育った教え子のニヤニヤした笑った顔がハッキリと見えた気がした。

 そんな事はないと取り繕おうとしたが、確かにそんな気持ちも1割…いや、2割……5割は有ったかもしれない…と、気がついて顔を上げると青い軍服姿の玉藻が優しい笑みを浮かべてこちらを見ている。

 

「大丈夫ですよおじさま……わたし、昔からおじさまがそういうのお好きなの知ってますから…………るし★ふぁーさんが時々会話の端々に入れたロボットアニメの名言にちょくちょく反応してたってお聞きしましたし……その話の後、おじさまの家にロボットアニメーションのデータが詰まった隠し本棚も見たことありますし……」

 

 家族にも…親戚にも…教え子さえも知らないはずの秘密を、よりによって玉藻に知られてしまった死従天朱雀は身体を何度も何度も発光させ、精神の安定化が何度も発生してその光を見た女性2人が更に笑みを深めているのを見てさらに発光…鎮静化が治まった時、死従天朱雀は副腕を含め6本の腕を握り締めて心に誓った……………るし★ふぁー殺す……と…

 

ーーーーーーーーー

 

「で?で?玉ちゃん!あの小さな可愛いのなに?!」

 

「アレはですね?幼い頃おじさまから頂いた携帯端末で種族名はD-Phoneと言います、小さいですがレベルは10から50くらいあるので結構強いんですよ?アプリで強化もできますから。」

 

「そうか、確かにそんな名前だったな…しかもそれは私がプレゼントした物と同じモデル……もしかしてずっと使っていたのか?」

 

 色々と絵面が酷いのでピンクの粘体から某銀河の妖精の様な女性の姿に変化したぶくぶく茶釜が、興奮気味に玉藻に質問する。

 玉藻は自分の服の胸ポケットに手を入れると狐耳の付いたピンクの髪で青紫の着物を来た同サイズの人形を取り出し、「コレは昔から人気のゲームとのコラボ商品で別モデルなのですが…」と言ってぶくぶく茶釜に渡すと玉藻と同じ様な仕草で挨拶する。

ーかーわーいーい♪ー

と、手のひらでちょこちょこ動くそれを猫可愛がりするぶくぶく茶釜をよそに、死従天朱雀が昔にプレゼントした物と同じモデルだということに気がついて質問する。

 

「えぇ、おじさまから頂いてからずっと大事にしていましたよ…どんな時もこの"玉藻"だけは本当の意味で常に一緒でしたから…それに……ユグドラシルで私がこの姿と名前にしたのはあの子が元ネタ?ですから……それに……」

 

玉藻は死従天朱雀の方を振り返ると晴れやかな笑顔でそう言い、一度言葉を切り……

 

「ちょうどユグドラシルにコンバートできる様になったばかりだったので……運営様にお願いして…能力はわたしとリンクしたので能力はわたしの半分くらいですが結構強いですよ?」

 

と、言った。

それを聞いた死従天朱雀はぶくぶく茶釜の掌で無邪気そうにはしゃいでいる小さな携帯端末を、大きな目を更に見開いて凝視し、

 

「アレが……階層守護者クラスだと?……」

 

と、条件によってはアウラとマーレすら敗北しそうな未知の小さな携帯端末?に恐怖を抱いた。




「ワタシノウタヲキケー…」
をやろうか

「野郎ども!波に乗るぞ!」
をやろうか悩み中の作者です……

明日の夕方までどちらが良いかアンケート作っておきますので
続きが読みたいっ!……という奇特な方はどうぞご参加を

ではまた次回


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もふもふしっぽと神の声

すいません!予約間違えてました!

今日気がついたので上げておきます。

待っていた方居たらごめんなさい!

ではどうぞ。


 厳戒態勢の続くマクロスクォーター艦内に新たな転移者が2人…

 

「おぉ……この間と違ってアニメの戦闘シーンに迷い込んだみたいだ!」

 

「あー…俺もいつもならモモンガさんと同じくらい興奮するんだけど……たまちゃんの方が心配だなぁ……」

 

 悪の帝王ロールを忘れ、興奮した様子で館内の様子をキョロキョロ見回す骸骨ことアインズ・ウール・ゴウンもといモモンガ

 その様子を見て呆れながら、普段なら自分もこんな感じなんだろうなぁ…と、他人事の様に考える鳥頭ことペロロンチーノ

 

 

「ん?……ちょうどよかっ……わぷ……」

 

ペロロンチーノが部屋の外へ出ようとドアに近づくと、待っていたかの様にドアが開き、青い軍服姿の玉藻が飛び込んできた。

飛び込んできた玉藻の豊満な双丘に、クチバシごと突っ込む形になったペロロンチーノは、咄嗟の出来事に何が起こったのか分からず呼吸をする。

 

「……ぁ……あぅ…………ふぁ…ぁぁ…………ひんっ!……お、おにい……ちゃん…………」

 

「すはすは……なんかいい匂い……って!違っ!……違う!違うよ姉ちゃん!こ、コレは…………すいません…」

 

玉藻の胸の中に収まった頭部をグリグリ動かしたペロロンチーノは、匂いを嗅ぎ両手で頭を挟んだそれをグニグニと揉みしだく、感情と感度が高まっていた玉藻は一層強くペロロンチーノの頭部を抱き寄せて悶えていると、背後から死従天朱雀とペロロンチーノの実の姉…ぶくぶく茶釜が歩いてきて「こんなサービス滅多にしないんだからねっ!」な人と同じ顔でにっこり笑う

 

「愚弟……今すぐそこから離れて土下座をし……自らの黒歴史を懺悔するのなら……許してやろう…」

 

某銀河の歌姫姿の姉はペロロンチーノに向かってそんな死刑宣告をした。

モモンガは玉藻の青い制服を見てトラウマ…いや、厨二病気の影がちらついたのか……部屋の隅で「……だって……あの当時はドイツ語カッコいいと思ったんだよ……あぁ俺の馬鹿……」と、呟きながら体育座りをしていた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「……ロゲーの画像をロボの画像だからと言ってたまちゃんにみせて…変な言葉を覚えさせて……誠に申し訳ございませんでした……」

 

「ご、ごめんなさい!お兄ちゃんが来たって聞いて嬉しくって…あぁ…モモンガ様とお兄ちゃんがフェイズシフトダウンして……」

 

ペロロンチーノが姉に説教をくらっている背後のすみっこに体育座りしているモモンガは陰気な雰囲気を漂わせながら……ドイツ語……軍服……怖い……でも……好き………いや!違う!違うんだ‼️……などと言い、時折緑色の光に包まれてはまた自問自答を繰り返していた。

 

 

「んー♪ふふーん♪……ん?御主人様!準備完了ですって!どうしますか?」

 

モモンガとペロロンチーノが灰色になっていくのをオロオロしながら見ていた玉藻のしっぽの上で、もふもふしながら鼻歌を歌っていた小さい"玉藻"はブリッジから作戦準備完了の報告を受けて自身のピンク色の狐耳をピーンと立てて大きい玉藻に報告する。

 

「…あら?……じゃあ、行きましょうか…可愛いシャルティアの怨み……しっかりと晴らさせて頂きましょうか…………」

 

報告を聞いた玉藻の表情から感情が抜け落ち、いつもの柔和な笑顔から冷酷な殺人鬼の様な表情に豹変する。

それを横目で見たぶくぶく茶釜と死従天朱雀は、ヤバイ!と思い、燃え尽きているモモンガとペロロンチーノを引き摺りながら玉藻の跡を追った。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「第1から第18までの戦闘部隊!いつでも出撃可能です!御命令を!」

 

ブリッジに入ると玉藻の主要なしもべが配置につき、ドアから入って来た玉藻をはじめとした至高の存在を敬礼で迎える。

艦長席の横に立っている、カジノのディーラーの様な服を着たアークビートルの人化した女性が報告すると、玉藻はそれを手で制する。

そして青い軍服の襟を直し、帽子を少し斜めにかぶると乗組員全員を見渡しながら宣言する。

 

「我々は現時刻をもって、兵隊から海賊へ鞍替えする……最初の獲物はこの街だ‼️いくぞ野郎ども❗️錨をあげろぉぉ❗️」

 

玉藻の気合の入った号令にブリッジのクルーが慌ただしく、しかし的確に動き…街1つゆうに飲み込む巨大な戦艦が徐々にその速度を上げ、眼下に迫る青い星へと吸い込まれていく

 

「総員!念の為、対ショック・対閃光防御!」

 

矢継ぎ早に玉藻の号令が掛かると、ブリッジのモニターがフィールドの様な光る膜に覆われ、眩しさがあまり感じられなくなる

 

「ウオオオオオオ!俺!今、戦艦に乗ってるーーー!!…………あっ…………だがっ!沈静化ごときでこの興奮が…………あっ…………止められると思うなよっ!」

 

「モモンガさん!分かる!分かるぜその気分!俺!こっちに来て最大に感動してるっ!」

 

「……おぉ…年甲斐もなく……心が…魂が沸き立っている…コレが…ロマンか!」

 

モモンガは興奮のあまり、精神が落ち着くが落ち着いた側からまたボルテージが上がっていき、落ちて上がってを繰り返す。

ペロロンチーノはブリッジで管制しているクルーの手際の良さに感動して歓喜の涙を流している。

死従天朱雀は静かに見ていたが、感動のあまり目には薄らと涙が浮かんでいた。

 

「……バカばっかり……」

 

玉藻の背後からそれを見たぶくぶく茶釜は、男3人に対して呆れた顔でそう呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

そんな茶番が行われているとは知らず地上ではシャルティアを襲撃した教会所属の騎士達が宴を催していた。

 

「はっ!吸血鬼なんか俺様の"雪霞狼"で1突きだったぜ!」

 

「反撃されて死にそうじゃなかったですか!……ま、まぁ…私の"第七聖典"で、事なきを得たのですから……その手に持っているカレーを私に…」

 

随分とアレな…女学生の様な服を無理やり着る筋骨隆々の男が、銀色に光る機構槍を掲げ酔っ払った赤ら顔のまま大声で喋ると、青い髪のカソック姿の女性が割り込み、男が手に持つカレーライスを奪おうと手を伸ばす。

 

「あ?俺様が痛めつけたからトドメをさせたんだろう?……最後の一皿だったんだ、やれねぇなっ!」

 

「!?あーーー!私のカレーライスがっ!?」

 

「テメェのじゃねぇ、俺様のだよ」と言って見せつける様に胃袋にカレーライスを突っ込む男を前にカソック姿の女性は、膝から崩れ落ち血涙を流しながらただ男を睨みつける。

 

教会からモンスターを討伐する際に送られてくるメンバーの中では比較的付き合いやすい人物達であったので、街に駐留する法国兵士もお祭りムードで討伐成功のお祝いをしていた。

 

「………は、……ん?…あれは…流星?」

 

カレーの怨み!と男を追い回すカソック姿の女性を見ていた兵士の1人が空を見ると、夕焼けに染まる空の彼方で光を放つモノを見た気がして、顔の前に掌をかざして空を仰ぎ見る。

遥か彼方から迫り来る巨大戦艦が到達するまで……後3分……

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「野郎どもォォ!波に乗るぞぉ!!!」

 

大気圏突入中のマクロスクォーターのブリッジで玉藻が右腕を前に突き出して号令を発すると、ブリッジクルーは「トランスフォーメーション発動開始!」と一斉に動き出す。

 

するとブリッジが動き出し、目の前の光景も徐々に変わっていく…3分もすると、戦艦モードから巨大人型兵器へと変形したマクロスクォーターが飛行甲板をサーフボードの様に使って進行方向の微調整を行う。

 

「艦長!マクロスキャノン、原因不明の故障の為、使用出来ません!」

 

管制を行っていたメイド服の赤い髪の少女…炎那が艦長席で右手を突き出したままの玉藻に悲痛な表情で呼び掛けるが、

 

「構わん!突っ込め!我々の恐ろしさを…奴らにも味合わせてやる!!」

 

そして巨大な質量のマクロスクォーターはライディングしながら街の正面に、大地震を起こしながら着陸した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ってぇ……何だったんだ?今の地震……」

 

「くっ……わたしの……カレー…」

 

「御二方!他の方はもう外の巨大な物体に向けて出られました!御二方も御早く!」

 

酒に酔っていて周りを見ていなかった男が頭を押さえながら瓦礫の中から起き上がると、男の手から離れ…地面に落ちたカレーライスを涙を流して凝視するシスター

無事だった兵士が瓦礫に埋まった宴会場で生きている2人に声を掛ける。

2人がその時に倒壊した建物から見たのは……

 

「おいおい……何だこりゃ……」

 

「凄い……総本山より……大きくて、硬くて…長そうです……」

 

大地を抉り、街の半数を瓦礫に変えた超巨大戦艦……マクロスクォーターだった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「少し出ます……アーク、指揮を…」

 

「了解です艦長!」

 

シュイン!と玉藻は一声掛けるとブリッジから出て行ってしまう。

アークビートルが了承するのを最後まで聞かず…

 

「……だいぶお怒りが収まったと思ったのですが……恐らくこの街は見せしめに全滅でしょうね…」

 

玉藻の様子を見たアークビートルがそう呟くと、ペロロンチーノとぶくぶく茶釜が顔を見合わせて玉藻の跡を追いかける。

 

「さて……どれで蹂躙してあげましょうか……」

 

ブリッジを出て格納庫に向かう玉藻の瞳孔は完全に開き、全身から赤黒いオーラを漂わせていた

それを感じ取り、足早に離れていく乗組員達、玉藻の胸ポケットに収まっている小さな"玉藻"も空気を読んで大人しくしている。

 

 

格納庫に着いた玉藻は静かにその金色に輝くボディを見上げて、

 

「着きました……さぁ……行きましょうか……"神の声"…」

 

と、言って誰にも邪魔をされずに黄金の機体と向き合った。

 




次に出るロボは……何DEEN何だ?

と、言うわけで次回こそ明日中に仕上げて投稿いたします
m(_ _)m

予約の確認ミス防ぐ為、とりあえず新規投稿しときます。

ではまた次回。


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もふもふしっぽと13世

長らく空いておりますが不定期更新しております。

軌跡がいけないのです!作者はフリーなので仕事以外でゲームを始めるとあかんのですよー!

とりあえずどうぞ


「おいっ!!こっちの奴はまだ息がある!シエル卿の所に!」

 

「あのでっかいの何だ?……全く動かないが……」

 

「うぅ……カレー……わたしの……カレーが……」

 

「シエル様!しっかりしてください!カレーなら後で山程作りますから!」

 

「カレー………………カレーが…………」

 

 法国に属する1都市は、街の正面に現れたマクロスクォーターに大騒ぎ

難を逃れた兵士達が応戦する為装備を整えながら救助活動も並行して行っている中、青髪のカソック姿の女性は涙を流しながらカレー、カレーと泣き喚く。

 その姿だけ見れば敬虔な教会のシスターそのものなのだが…彼女が憂いているのは食べられなかったカレーのみ……

 

「カレー女っ!敵襲だぞ!シャキッとしろや!」

 

 筋骨隆々の大男がパツパツの女子学生服のスカートを翻して大声で叫ぶ

周りの兵士から嗚咽が聴こえるが、死んだ仲間の為と思いたい……

 大男は銀色に光る機構槍をカシャン!と変形させて十字槍の形に変えるとマクロスクォーターを最大限警戒する

 

「チッ…ゴーレムだとでも言うのかよ…こんなデケェの番外席次でも勝てるかどうか……」

 

 恐らく法国の総本山を優に超える巨大な物体に恐怖を覚えた大男は、かつて自分を片手であしらった不気味な少女を思い浮かべ、アイツだったらどうやって戦うのだろう?とふと思った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……さぁ……黄金の女神よ……いざ、魂の〇憶を……」

 

クォーターの甲板で黄金鳥が羽根を開く…そのコクピット内で玉藻が呟くと音楽が流れ出し、金の羽が空に舞う。

 

甲板を黄金に染め、1羽の鳥が飛び立つ……眼下で法国の騎士や魔術師が矢や魔法を撃ち込むが傷一つ付けられない。

 

「……シャルティアの痛み…………何百倍にして返してあげましょうか…?」

 

黄金鳥と共に飛び出した何処かコミカルな13機のロボットが変形した黄金の女神REIDEENの周囲を円環状に囲み一斉に…

 

『『『『『『『『『『『『『マイク!行くもんね〜〜っ!…システム…チェーンジッ!……イックぜーっ!ディスクXッ!SET ON!!』』』』』』』』』』』』』

 

三等身から六等身のロボットに変形すると、黄金の女神REIDEENから歌が響き始める

 

♪〜♪♪♪♪…♪〜♪♪♪♪♪…♪♪〜♪♪♪〜♪〜♪…♪♪…♪〜♪♪♪♪…

 

『いっくぜ!プロフェッサーの援護だっぜ!』

 

ロックンロールなロボットに変形した元マスコットキャラ13機から響き渡る破壊音波が法国の都市全住民に無差別に襲い掛かる。

 

「……なんだ…歌?…………オオオオオォォッ!……」

 

「……がっ、…………キヒッ!……ヒヒヒヒヒヒヒィッ〜〜!」

 

「えっ?……な……なんで…………」

 

「やめっ……止めてっ!……ごぉっ!……かはっ!………」

 

綺麗で何処か悲しげな歌が都市に響くと、一部の住人や騎士が何故か奇声をあげながら同僚や家族に襲い掛かる、という状況が相次いで発生し大混乱…

更には建物がソリタリーウェイブの"余波"で崩れ始め逃げ惑うが、本来なら助けにまわる教会の人間は、空の敵への対処や狂った人間を対処するのに精一杯で手がまわらず……知らない人が見れば"教会の人間が混乱に乗じて住民を虐殺している"様に見える地獄絵図が完成した。

 

「ふふ…ふふふ……アハハハハァッ!……狂エ……モット苦シムガイイッ!!」

 

黄金の女神のコクピットからそれを眺める玉藻はもふもふのしっぽをぱたぱたと振り乱しながら、眼を血走らせ凄惨な笑みを浮かべた

シャルティアのオカエシはまだこんな物では済まないぞ?と、心の内で叫びながら……

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「オイッ!何がどうなっていやがるっ!なんで住民が俺たちに襲い掛かって来るんだ……よっ!……チッ、空のアイツらが最初の一撃以降動きが無いのも不気味だが………俺の槍じゃ届かねぇ!カレー女っ!」

 

「大丈夫です!いつでも撃てます!」

 

筋骨隆々のピチピチセーラー服のオッサンが同僚のシスターに声を掛けると、カソック姿の女性は何処からか大量の銃火器を取り出して空に浮かぶ14の的へ構える。

 

「…私達の戦いはこれからです!」

 

1番近くの標的に狙いを定めたシスターは手に持ったバズーカの引き金を引き、

「喰らいなさいっ!偉大なる六大神が残した聖遺物…第七聖典の威力をっ!」

と、叫びながら発射……シュバッ!と、轟音をたてマイクサウンダースの一機に当たると爆発し爆煙に包まれる。

 

「やったか?」

 

「手応えはありました、おそらく直撃したでしょう……ドラゴンさえ一撃で葬るこの第七聖典の威力…思い知りましたか!」

 

空に浮かぶ残りの13機を見上げながら教会の特殊部隊に属する2人は勝利を確信して次々と敵に向け様々な銃火器を撃ち込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「プロフェッサーッ!攻撃だっぜ!……損傷率…1%……損害軽微だぜ!」

 

「コッチはさっきから撃たれてるから3%だっぜ!」

 

「おっと!バリバリーンがちょいヤバイぜ!15%損害率上昇中だぜ!」

 

カソック姿の女性が撃ち込んでくる砲火に少なからずダメージを受けていることに玉藻が感心しているとマイク達から損害報告が入ってくる…勿論玉藻が乗る黄金の女神は擦り傷一つ無いが……

 

「なかなか……面白い物をお持ちの様で…ちょうど良いですね、あの女性……捕まえて…………シャルティアのおもちゃに………いえ、デミウルゴスの"牧場"で預かってもらいましょうか…フフ…」

 

明らかにユグドラシル製の武器による攻撃を行なってくるシスターに興味を示した玉藻が、勝機を見出した顔で撃ち続けるシスターの引取先を考えながら操縦席のスロットルを引き地上に降り始める。

 

「さぁ……貴女は…どうすれば……絶望シテクレルカナ?」

 

コクピットから、眼下で無駄な抵抗を続ける人間に向けて、どう"壊せば"1番愉しいかを考える玉藻の顔は狂気に満ちていた。




マイクサウンダース……ソリタリーウェイブ直撃だと一瞬なので余波だけ……それでもこの世界の人からすればオーバーキル

……第七聖典の特殊効果
当たれば最低1以上100未満のダメージをランダムで与える

マイクサウンダース13世ちゃんは運が悪いので15%のダメージをくらいました。



ではまた次回に……


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もふもふしっぽと魂の歌

仕事を変え、ゲームも終わった作者です。

最近更新できていなかった分を少しづつ投稿

読んでくださる方はどうぞ。


「それにしても……あの攻撃煩わしいですね…効果は予想出来ますが、"欲しい"ですね……あれ…弾薬無限とか特殊効果付いてそうですし、虐げられてるヒトに渡して王国の腐った貴族相手に嫌がらせとか出来そう……」

 

玉藻は、狂気に満ちた笑顔で舌舐めずりしながら視線を下に向け、

叫びながらミサイルやバズーカをバカスカ撃ち続けるシスターを観察する。

シャルティアを直接攻撃したのはシスターの横で、マイク達のソリタリーウェイブの余波を弾き返している筋肉セーラー服オバケだと聞いているが、アレの持っている槍は面白そうな形をしているので手に入れたい……

 

「………………そうだ♪せっかくの"らいでぃーん"ですから…歌で愉しみましょう…人々を"愉しく踊らせる"……魂に残る歌を……」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「……チッ、おいっカレー女っ!周りの雑魚には効いてるが……中央の金ピカには傷一つねぇじゃねぇかよ!ありゃぁ番外席次レベルだぞ?……せめてこの雪霞狼が届けば………ん?量産型のゴーレム共が下がっていく?金ピカだけ残って何を………………また歌?…………だと……」

 

ほぼ同時刻、弾薬を雨あられと撃ち込むシスターを敵の攻撃から守っていた筋肉セーラー服は、悠然と滞空している黄金の女神を見上げ、

自身が知る限り最強の存在と同レベルの化け物……勝ち目が無い事を悟り如何撤退すべきか考えを巡らす。

しかし、どうやっても生きて帰れるビジョンが浮かばず、悩んでいると攻撃が止み黄金の女神がゆっくりと地上に降りて来た……狂気のルフランを伴う歌と共に……

 

「ヒヒヒヒヒヒヒッ!!死ねぇ!この背信者めぇっ!」

 

「お前みたいな奴隷上がりが、が、こ、この商会で……でかい顔しやがって!ぶっ殺してやる!」

 

「……金!金だっ!金をよ、よよ、よこセェッ!!」

 

「女はイカスがァッ!男は……死ねぇっ!」

 

「……アンタが悪いんだ……浮気したのはアンタが先……ワタシはぁっ!悪くなイッ!」

 

「燃えろォッ!みんな……ミンナ燃エチマエェェェっ!!!」

 

歌が街中に響き渡ると、約半数の人が正気を失い、目を血走らせながら奇声を上げて騎士・同僚・家族・老若男女問わず、隣にいる"モノ"を攻撃する。

正気な者も居る様だが……圧倒的に狂った"モノ"が多く、一部の実力者以外は暴徒と化した"モノ"達に押し潰されていった。

 

「おいおい……嘘だろ……なんだよコレ…俺は悪夢でも見てるのか?…」

 

「こんな……こんな事って…………うっ……うぷっ!…………オエェ……」

 

実力者故に"狂えなかった"2人は、悪夢としか言えない現実離れした光景に呆然とし、もう1人はあまりにも残酷な場面を見て胃の中の物を逆流させた。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「ねぇ?これってアレよね?超有名なヒト型決戦兵器の歌……」

 

「……魂の……何でしたっけ?…あっ、この歌デバフ付いてる……うわー…バーサクと混乱状態じゃ無いですか…玉藻さんこれガチで歌ってるだけですよね?そんな歌のスキルユグドラシルには無かったですし…」

 

ぶくぶく茶釜とモモンガが、歌姫と骸骨の顔を見合わせてディスプレイに映し出された玉藻を観ながら話していると、

 

「やべー…俺ら状態異常無効だからイイけど、コレ……玉ちゃんの配下が機械種ばっかりじゃ無かったらコッチもやばかったんじゃ無い?」

 

「そうだね…しかし、あの子ならそれくらい対策はしてから使うと思うが……それにしても……私達は本当に人間を辞めてしまったんだなぁ…君達もこの光景を見て…平然としているだろう?」

 

ペロロンチーノが都市の様子を見て唖然とし、その3人の反応を見た死獣天朱雀が顎に手を当て、画面越しとは言え目の前で起きている…

"ヒトガヒトヲコロス"行為を、仲間の1人が作り出したにも関わらず平然としている事に言及すると、

 

「確かに……私も以前こんなモノ見せられたら…気分悪くなったと思いますが…今は虫が死んだ……程度にしか感じませんね…」

 

「…私も……それどころか……あの死体……美味しそうだなぁ……とか考えてる自分が、先生に言われるまで不思議に思わなかった。」

 

「ぁ〜……俺も……シャルティアを傷つけたんだからいい気味だ!……くらいにしか感じなかった……」

 

その指摘を受け、モモンガが骸骨の頭部をあらためてディスプレイに向けると深刻そうに呟き、精神抑制が働いたのか緑の光に包まれる。

続いて、ぶくぶく茶釜がピンクの粘体に戻っていた身体をうねうねさせながら自分自身の思考に困惑。

ペロロンチーノも虐殺が起きている現実を理解しているのに当然だと思っている自分を客観的に判断すれば、以前ならこんな考えは異常者の考えだとはっきり断言できる。

 

「だろう?…私はこの世界に来てから自分が"どう"なったのかずっと研究していたのだよ、ティトゥスやうちの子達に手伝ってもらいながらね?……王国の犯罪組織…八本指?だったかで実験したら……悪人とは言え人殺しを忌避感なく出来た自分が少し怖くなったがね?」

 

魂を狂気に包む歌が響く都市を見下ろしながら至高の存在達は、自分達が人間を辞めた事を実感していた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「胸糞悪りぃが、これ以上戦力を減らすわけにはいかねぇからな……っ!と…怨んでくれてイイぜ……どうせ俺は地獄行きだからオメェさん達には会わないだろうがなっ!………。」

 

狂気に取り憑かれた住民の首をはね飛ばしながら戦力になる騎士達を救出していたセーラー服の大男は、自ら死を与えた名も知らぬ住民に心の中で黙祷を捧げ、生き残りを纏め上げていた。

どういうカラクリか分からないが、狂った住民は騎士すら凌駕する怪力を見せており相応な実力者以外はどんどんやられ、数を半数以上減らしていた。

 

「このままでは…回復も間に合いませんっ!あの黄金像が地上に到達する前に撤退すべきです!」

 

効果の見えない攻撃を止め、負傷者の回復に努めていたシスターがゆっくりと降下している黄金の女神を指差しながら必死の形相で声を上げる。

その間も回復魔法の手は休めていないが、負傷者の数が多過ぎ…かつ、狂った住民が敵味方関係無く暴れ回っている為最早収拾がつかなくなっていた。

 

「バカやろうが……出来りゃぁとっくにやってるよ……」

 

黄金の女神から目を離さず、流れ落ちる冷や汗を拭いもせずに警戒するセーラー服の大男は、小声でそう呟いた。

 

そうしているうちに、黄金の女神が地上に到達

教会側で生き残った騎士達が警戒をしていると、黄金の女神の姿が徐々に小さくなっていく

光を放ちながら収束していき、その光が人型まで小さくなるとそこに"1匹のビーストマン"が現れる。

歌を歌っていたビーストマンは歌うのを止め風に煽られた金色の髪を押さえ、金色の獣耳と毛並みの良さそうな"9本の尻尾"が少し揺れる。

 

「ご機嫌様皆様、私…玉藻と申します……この中で先日ヴァンパイアを攻撃した方は名乗り出てください。その方々の命をもってこの場は手打ちと致しましょう……」

 

六大神が残した"ユグドラシルのアイテム"で魔法使いの服、メィコ服に酷似した服装のビーストマンの女性が、貴族のような振る舞いで優雅に死刑宣告をしてきた。

 

「手打ちだと!?ここまでしておいて巫山戯るなぁっ!」

 

「この任務が終わったら結婚する筈だったのにっ!彼女を返せっ!」

 

「亜人風情がいい気になりやがって!」

 

「ビーストマンにしちゃイイ見た目してやがる!大人しくしてればイイことしてやるよ!」

 

これなら勝てる!と、思ったのか騎士達が飛び出し、目の前のたった1人のビーストマンに向かっていく。

それを見たビーストマンの女性はため息を吐き、閉じていた眼を見開く。

 

「……警告は致しましたよ?……」

 

一瞬の出来事だった……玉藻と名乗ったビーストマンの姿が"ブレる"

向かって行った騎士達が空に舞い上がると細切れになり辺りに赤い雨が降り注ぐ

いつの間にか持っていた巨大な方天戟で斬り刻んだ玉藻は、それを浴びない様に結界を張って弾くと呆然とこちらを見つめる教会の騎士達を絶対零度の瞳で一瞥してから

 

「次はどなたでしょうか?……それとも全員この場で死にますか?」

 

魂の凍る様な笑顔を浮かべた玉藻は、今日の夕飯のメニューを告げる様な感じでそう問い掛けた。

問い掛けた笑顔のまま予備動作なしで手にした方天戟を投げた

すると、逃げようとしていた騎士が3人…方天戟に貫かれ壁に縫い付けられる

 

「逃げようとは思わない事です……次に逃げようとした方は死よりも辛い地獄を永遠に味わって頂くことになりますよ?」

 

絶対強者にそう告げられた騎士達に、最早逃げる意思は無くなった。




カレーさんは悪魔憑き♪

意味は次回に判明予定です。

ではまた次回。



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