ハイスクールD×D 漆黒の意志 (ケンシロー)
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プロローグ
「……こっちは終わったよ」
神父は微笑む
「そうか……分かったよ」
吸血鬼はたたずむ
「チッ、新しいスーツが台無しだ」
殺人鬼は後悔する
「俺はこの世界でも絶頂で在り続ける……どの世界でもだ!」
ボスは吠える
「たかが下級生物ごときが……図に乗りおって……」
究極生命体は見下す
「我が故郷……我が国の繁栄のため……待っていろ……すぐにでも戻る!」
大統領は目指す
男たちの足元に転がるのは死体。
男たちに付く液体は血液。
男たちにあるのは願望。
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼はギリシアの彫刻のように美しさを基本形としていた。
だが死んだ。
地球から追い出された。
人間には負けていない。
地球に見限られた。
そんな
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼は魅力、知能、巧みな話術で人々を引きつけ、世界が変わるまで影響を及ぼした。
だが死んだ。
最後に太陽に殺された。
人間には負けてはいない。
運命に裏切られた。
そんな吸血鬼
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼は静かに暮らしていた、顔まで変えた、全て捨てた、静かな暮らしのために。
だが死んだ。
最後に町に殺された。
人間には負けていない。
町が彼を裁いた。
そんな殺人鬼
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼は麻薬をイタリア全土にばら撒き莫大な利益を得て、外部に自分の情報を漏らさなかった。
だが死んだ。
最後に麻薬に殺された。
人間には負けていない。
麻薬が彼を裁いた。
そんなギャングのボス
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼は親友の意志を継ぎ、運命を操作する方法、人類が幸福になることが出来る方法を探した。
だが死んだ。
最後に空気に体を奪われ、殺された。
人間には負けていない。
運命が彼を殺した。
そんな神父
☆ ☆ ☆
男が居た、彼は死んだ。
だが彼は国のため、国民が平和と栄光を手に入れるため、聖人の遺体を集めた。
だが死んだ。
最後に爪と銃弾の決闘となり、わずかに及ばず頭部に爪を受けて死亡した。
最後に自分の正義は間違いはないと主張した。
人間には負けていない。
ほんの小さな余裕が彼を殺した。
そんな大統領。
☆ ☆ ☆
究極を目指す
無駄な時間はいらない
静かに暮らしたい
絶頂のままでいたい
天国へ向かう
アメリカを世界の中心に
願望は叶ったが失った物も多かった。
「ここは?」
誰かが口走った。
誰が言ったかは分からない。
その場にいた全員が思ったことだろう。
だから誰が言おうと同じだった。
「異世界……どこにも位置しない世界です」
『ッ!?』
その声を聞きその声の主を全員が見る。
男は何もせずに感情のこもっていない瞳でその場にいる全員を視界に収めていた。
「どういう意味だ?」
また誰かが口走る。
その言葉に対して男は口を動かし始めた。
「ここはあなた方の居た世界とは全然違う世界です、
その場に居る者は皆その男に不信感を抱きながら話を聞いていく。
「あなた方はある一族に敗れました、『ジョースター』という言葉に心当たりのある人は数人ほどいるでしょう」
実際にその場にいた者たちにはジョースター一族と関わりがあった。
「ジョースター一族に敗れたあなた方をわたしが連れてきました」
「連れて来た?肉体はどうなった?元の世界ではこの体は砕け散ったはずだ」
「わたしが同じように作り直しそこに魂を吹き込みました。その行為のおかげであなた方は生きております」
「そうか」
誰かが納得する。
「あなた方が元の世界に帰る方法はあります」
『!?』
その場にいた者たちは全員驚愕した。
まだ自分は帰る場所が残っている。
「ですが、条件があります」
そんな簡単に事が運ぶとは思ってはいなかった。
「わたしに協力してほしい」
男の条件はそれだけだった。
その場に居た者たちは内容も聞かずに返答する。
―――――Yes
皆、元の世界に帰りたいのだ。
動物は皆、帰巣本能がある。
人間であろうと吸血鬼であろうと……。
そして男と6人は手を組んだ。
深い理由は無い。
元の世界に帰り、頂点を……。
元の世界へ帰り、復讐を……。
元の世界に帰り、平穏を……。
元の世界に帰り、絶頂を……。
元の世界へ帰り、天国を……。
元の世界に帰り、国家を……。
『求める物』は違えども、『求める事』は同じだった。
1人と異世界の6人は協力関係を結んだ。
さて悪は6人とは限らんよ。
バリバリ裂けるクレバスや最低なゲスだって……奴らも漆黒の意志は持ってるんじゃないの?
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Dirty deeds done dirt cheap
「カーズって死んでなくね?」
A、そうですね、でも何も食わずに一年行動可能ということは1年何も食わなかったら初登場時みたいに石になってるはずなので仮死状態でしょう。
「ジョニィも漆黒の意志持ってますけど」
A、ンなこと言ったらジョルノだって承太郎だって持ってるでしょうよ。小説のOVER HEAVENであったように10:0が正義だとしたら0:10が邪悪なんでしょうね。この小説では0:10の人物だけを連れてきて三勢力と敵対させます。
「スタンド能力は使わないでください、……いえ、正確に言うなら今はわたしを殺さないでください。ある場所に着いたら皆さまの聞きたいことを全てお答えしますからついて来てください」
男の言葉にその場に居た5人が驚く。
『スタンド』という単語を知らない露出の多い男は未知の言葉に眉をしかめる。男は自分に着いて来いと言うと部屋のドアを開けて外へ出ていく。
6人は息を着く暇も無く舌打ちをして男に着いていく。男は外へ出るとすぐに目的地へ向かっていく。外は暗く夜だということがすぐに分かった。電灯の光によって目視できる範囲を歩きいていく。
(こやつら……人間か……吸血鬼が一匹混ざっているが他はクズだな……だが!こいつらには何か普通の人間とは違う何かを感じる!いったい何だというのだ!このカーズとは違う何かとは……!)
露出の多い男は堂々と前へ進みながら殺気をバラまいて歩いていく。
「わたしは死んだはずだ……だがなぜ生きている……?しかもなんなんだ?アイツは……、まるでわたしの全てを知っているみたいな感じじゃあないか……クソッ、何だっていうんだ……」
スーツを着た男は自身の手の爪をガリガリと噛みながら呟き歩いていく。
「どこだ……今度はどこから襲ってくる……?」
網のような服を着て髪に不思議な模様をつけた男は周りに警戒しながら歩いていく。
(あれからアメリカはどうなった?それに……ここはどこだというのだ?わたしの居たアメリカよりも遥かに技術面で優れているとしか言いようがない……)
金髪の髪をクルリと巻いた『ザ・大統領』と言った雰囲気を持った男は歩いていく。その姿を追いかけながら神父服を着た男が黄金色の髪と灼眼の瞳が特徴の男に話しかける。
「DIO……聞きたいことが山ほどあるんだが、聞いてもいいかい?」
DIOと呼ばれた男は神父に目線を送ると6人の目の前を歩いている男に目線を送る。
「プッチ……君が……いや君もどうしてここに居るか理解できていない、それが一つ入っているんだろう?」
プッチと呼ばれた男は顔を曇らせながら小さな声で答える。
「それもあるよ、だけど奴は何を考えているんだ?こいつらもスタンドを知っているらしいが……」
プッチは目線を目の前の男たちに向ける。DIOは目を細めて男たちを見る。一人一人固有のモノが見えてくる。
「あのほぼ裸の男以外は全員『スタンド使い』だ……だが奴もスタンドと同じような力を持っている……」
DIOは目線を夜空へ逸らすとそこからは何も言わずに着いていく。
プッチもそこからは何も聞かずに無言で歩いて行った。
☆ ☆ ☆
男は少し大きめの家の前で止まると家の中に土足で入って行く。
家の表札には汚れきった『荒木』という文字が書いておりつい最近まで誰かが住んでいたようだった。
DIOはその家の匂いに鼻を曲げると顔をしかめた。
玄関から中に入ってリビングにつくと男は椅子に座った。部屋には椅子が9席用意してありそれぞれバラバラな方角を向いていた。
「どうぞ、お好きな席にお座りください」
男が座って椅子を指示しながら言うとDIOたちは男に警戒しながらも他の男たちにも気を払いながら椅子に座る。いつでも戦えるように……。
「それでは、お好きなことを聞いていただいて構いません、どうぞ」
男が周りを見渡し質問の許可を出すとすぐに口を開いたものがいた。
スーツを身に纏い、骸骨のネクタイをしたおとなしそうな男、吉良吉影だった。
「まずは君のことから聞かせてもらおうか、それからでなければ話が進みそうにない」
「分かりました、お話ししましょう」
吉良の言葉を男は聞くと男はうっすらと笑みを浮かべて己のことを話し始めた。
男たちは眉を下げて言葉を聞く。
「まず、私の名前はサクラと申します、日本に咲いている桃色の綺麗な色をした桜のサクラです。あなたたちを生き返らせてこの世界に連れて来たのは私です」
サクラと名乗った男の言葉を聞くと今度はDIOがすぐに次の質問をする。
「生き返らせ、この世界に連れて来たとはどういうことだ?細かく説明しろ」
サクラは少し驚いたように目を開くと話し始めた。
「カーズ様、DIO様、吉良吉影様、ディアボロ様、エンリコ・プッチ様、ファニー・ヴァレンタイン様、あなた方は自分が『ジョースター』の血筋に敗れたことはご存知ですか?」
その言葉を聞くと吉良とディアボロと呼ばれた男はそんな言葉聞いたこともないと言わんばかりに顔にしわを寄せる。
サクラの言葉を聞き、『ジョースター』という単語を知っている者と知らぬ者がいることを見極めたサクラは根本から話を進めていく。
「失礼しました、ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、東方仗助、ジョルノ・ジョバァーナ、空条除倫、ジョニィ・ジョースター……これらの人物の名前を皆様は一人は必ずご存知のはずです」
サクラの言う通りこの場に居る者たちはサクラの並べた人物に心当たりがあった。
「あなた方は彼ら、ジョースターの血筋を持つ人物たちに最終的に敗れました。そして肉体から離れてしまった『魂』、それを私が回収してあなた方にふさわしい肉体に植え込み、蘇生させました」
「蘇生だと?そんなことが出来るわけが……」
「ない……と、おっしゃるのでしょう?確かに、本来なら蘇生など不可能に近いです。あなた方の世界ならば……」
『…………』
サクラの言葉にカーズ達は言葉を詰まらせる。
サクラはカーズ達の様子を見ると話を続けていく。
「先ほども申しましたがあなた方の暮らしていた世界とこの世界は別世界にあります。そしてこの世界には人間の他に悪魔、天使、堕天使、吸血鬼、ドラゴン、神、妖精などのファンタジー……空想の世界に存在する人外が存在しています」
「ほぅ……」
誰かが感心の声を漏らす。サクラは漏れた声を聞くと話を続けていく。
「幻想の世界ならば様々な出来事があります、英雄ヘラクレスの12の試練、騎士王と呼ばれたアーサー王たちがその例でしょう、その幻想の力で皆様を蘇生させました」
サクラは話を続けていく。その眼には黒い炎が宿っているようにも見える。
「そして悪魔、天使、堕天使は太古から続く敵対関係にあります、そして力も強大なため上位の三大勢力です。私はその三勢力が嫌いです、なのであなた方に三勢力の殲滅のお手伝いをお願いしたいのです」
サクラの言葉を聞くとDIOが口を開ける。
「サクラ……と言ったかな、君の考えは間違ってはいないかね?君に何があったかは我々は知らないが君の考えていることは己の力で成し遂げることではないのかね?わたしは他人の力で手に入れた勝利など全てにおいて劣ると思うがね……」
サクラはDIOの言葉を聞くと頷きながら答える。
「ええ、私はとても間違っております、そのことは自分でも理解しております、ですが皆様もこの状態でよろしいのですか?」
サクラの言葉に全員が耳を傾ける。
「皆様はジョースターの血筋に敗れました、それは明白な事実です。そのことを変えられるとしたら?」
「それはどういうことだ?」
今まで口を開くことの無かった網のような服を着た男、ディアボロが疑問を口にする。
「私は別世界の死者の魂を自由に操ることができます、この世界に呼び寄せることも、送り返すことも……時列系を気にせずに……」
『!?』
男たちは気づいたようだ。
「そうです、皆様が私に協力の意を見せ、私の復讐が叶ったとき、あなた方を元の世界に戻すことができます、『ジョースターの血筋』に敗北する前に……」
運命とは固定されている。だが生物の死は固定されてはいない。
「良いだろう、協力しようじゃあないか、サクラ……このDIOに戯言を聞かせ、納得させるとは……おもしろい、貴様の言葉を真に受けてやろう」
「DIOが決めたことだ、神の言葉と信じて僕も信じよう……」
DIOとプッチは賛成の意を見せた。
「本当に、あのJOJOに復讐できるんだろうな?」
「ええ、私の復讐が完了したのなら、カーズ様、あなたをジョセフ・ジョースターに敗れる前に送り返します」
「フフフ……ハーッハッハッハッハ!おもしろい!協力してやろう!」
カーズもサクラの言葉を聞くと協力の意を見せる。
「もし、戻れるのだとしたら、私も協力しよう」
ファニー・ヴァレンタイン大統領もサクラに協力する。
「平穏な暮らしを目指すんだ、私は幸せに元の世界で暮らしてみせる」
「もう、死は訪れない……ジョルノ・ジョバァーナ……貴様に必ず復讐してやるぞっ!」
吉良もディアボロもサクラに協力した。
「ありがとうございます、皆様、詳しい話は後ほどします、ですので今日はゆっくりとお休みください。二階の部屋で自由におくつろぎください。あと、掛札のある部屋は先着がいますのでご了承ください」
サクラはそう言い残すと地面に高速で魔法円を書いてどこかへ消えていった。
残された者たちは不満の声を漏らしながら二階へ上がって行き、自分の部屋を確保していくのだった。二階には部屋が十数部屋あり家の外見と中の広さが一致していなかった。大方サクラが幻想の術か何かを使ったのだろうと思いながら残された者たちは自分の部屋を確保していく。
多数ある部屋にはいくつか掛札がかかっており『ディエゴ』『チョコラータ』『ンドゥール』『吉廣』と書いた掛札が見えたが男たちはその文字を詳しく見ることはなく一日を終えた。
☆ ☆ ☆
粗末なベッドで目を覚ました大統領は衣服の乱れを直すと部屋から出て昨夜サクラと会合したリビングへ向かう。そこにはすでにDIO、プッチ、吉良、ディアボロ、それに見知らぬ人間が3人、そして前世で会合を終えていた『ディエゴ・ブランドー』が居た。
ディエゴは大統領を見るや座っていた椅子を倒しながら警戒の意を見せる。ディエゴの頬は少しずつ皮膚が剥がれフローリングの床に落ちていく。
「貴様!?大統領!」
「ディエゴ・ブランドー……生きて……いや、君もサクラに蘇生術でも受けていたのか……」
「……大統領、お前もサクラに蘇生を受けていやがったのか……」
「見たところ、『スケアリー・モンスターズ』のスタンド能力のようだな」
二人の行動を見ていた、DIOが喋り出す。
「ディエゴ、少し静かにできないか、今、私は旧友と話をしているんだ、大事な旧友の声が聞こえなかったら失礼だろう?」
「ハッ!ディオ!テメェの事情なんか知ったことかよ!俺はこの大統領と話をしているんだ!」
DIOはディエゴの言動を見聞きすると舌打ちをして窓から離れた場所で旧友との話を続ける。
「すまないね、ンドゥール……あの馬鹿がやかましくて……」
DIOに『ンドゥール』と呼ばれた男は目を閉じたまま答える。
「いえ、DIO様のお言葉は私の耳に届いております……」
「そうか……なら、馬鹿共は放っておいて自己紹介の続きでもするとしようか」
その傍らで吉良……いや吉影は老人と話をしていた。
「吉影……吉影……お前もサクラに蘇生を受けたのか……吉影……」
「親父…!本当に、親父なんだな…!!」
「……吉影…そうじゃ、わしじゃ…わしじゃよ…!」
老人、吉良吉廣は涙ぐみながら答えた。吉影の前に立つ彼の顔は涙が滝のように溢れている。歓びが彼の皺だらけ顔をさらにしわくちゃにしている。
吉良吉影と吉良吉廣……彼らは親子関係にある。ある事情で別れることとなったがこの世界で出会えたことはサクラのおかげであろう。
二人が感動していると階段から誰かが降りてくる。
「ンン~♪やはり太陽を克服したというのはすがすがしいなぁ~♪」
カーズだ、彼は鼻歌を歌いながら階段を下りてくる。その反面で髪にコケのような模様の入ったディアボロとカビのような形の緑色の髪をした男が話をしている。
「チョコラータ……スタンド能力は使うんじゃあないぞ……貴様の能力は……」
「そんなことは分かってんだよ、ボス……使ったとしてもすぐにあそこにいる盲目野郎にスタンドで攻撃されるだけだからな……だが医者の仕事は辞められねえぜェェェッ」
チョコラータと呼ばれた男はゲスのような顔をしながら笑顔で答える。話からするとチョコラータは医者の職についているらしい。
全員そろって椅子に着いたところでサクラが玄関から入ってくる。
「皆様、おはようございます、それではテーブルに椅子をお近づけください」
サクラの指示に従って全員椅子をテーブルに近づけて座る。椅子に楽に座る者も居れば姿勢を良く座る者もいた。
「それでは、カーズ様、DIO様、吉良吉影様、ディアボロ様、エンリコ・プッチ様、ファニー・ヴァレンタイン様、こちらを受け取りください」
「これは?」
サクラは7人に封筒を渡す。中には福沢諭吉の書かれた紙が5枚入っていた。ディアボロが疑問を口にする。
「この国の紙幣です。『円』といいます。一応皆様にはここで生活をしてもらうわけですからマネーは必要でしょう、皆様の現在持っているお金も一応日本の紙幣に変わっているはずですが……」
サクラがそう言うと男たちは自分の財布を確認する。元々あった財布の中の『ドル』や『ポンド』といった硬貨も100円玉などになっていた。
「いきなりこの国に慣れろとは言いませんから、ゆっくりとこの国に慣れていただけると嬉しいです。あと、DIO様は日光にお気をつけて行動してください、それにカーズ様、念のため外出の際はこのターバンを巻いていただけると嬉しいのですが……」
「人間ごときがこのカーズに指図するんじゃあない」
「左様ですか……それでは最低限、人間は殺さないようにしておいてください」
「善処してやろう」
「ありがとうございます」
サクラはそう言うと台所に向かっていく。その姿を見ると吉廣は吉影に話をする。
「吉影、サクラは意外と馬鹿じゃが食事は美味いぞ!一流とまではいかんがとにかく美味い!」
「それは期待したいところだ……」
☆ ☆ ☆
食事を終えると全員はバラバラに行動していく。
ディエゴとチョコラータは仕事へ行き、DIO、プッチ、ンドゥールは家でゆっくり過ごす。吉良親子とディアボロ、大統領は馴れるために家の周りなどを散策するのだった。(サクラは食器洗いなど家事)
大統領が荒木家から出て家の周りを探索していると公園を通ろうとした時、空の色が変わる。
「うん?これは変だな……空が紫?日本では空は青から紫になるのか?」
空は禍々しい紫の色となっていた。アメリカではブルーからオレンジ、そして夜空のブラックになっていたため少し考える。
すると女の話し声と男の叫び声のようなモノが聞こえたため木に隠れながら様子を見る。
「チラリ」
男の腹にはポッカリと大きな穴が開いており血が湧水のように流れ出ている。女はボンテージのような衣装を身に纏いほくそ笑んでいた。
「あら?人間?なぜここに?まぁ、別に問題ないかしら」
大統領はため息を吐きながら言葉を出していく。
「この国の治安はここまで悪いのか……ノリスケ・ヒガシカタも大変だったろうに……私の国なら平和で国民が安心して暮らせる国家を作っていたがね……」
大統領の言葉を聞くと女は顔をしかめる。
「あなたバカなの?これは救いようがないわね……証拠隠滅よ……死になさい!」
女は手元に光を収束して作った槍を出すと手に持ち大統領に投擲する。大統領は身動きせずに光でできた槍を弾く。大統領は腕の一本も動かしてはいない。
「!?……
「何を言っている?君はスタンドを……いや、なるほど……サクラの言っていたことが今分かった……君は、見たところ天使ではないな……天使はもっと純白の羽を持っているはずだ……なら……悪魔か堕天使だろう、ドラゴンとはかけ離れていて、妖精のような可憐さも持っていない……」
大統領の推理を聞くと女は怒りを露わにする。
「下賤な悪魔なんかと一緒にしないでちょうだい!わたしは高貴な堕天使よ!」
「堕天使が高貴か……神の加護すら受けられなくなったクセによく言うモノだな……」
大統領の挑発を受けると女の堕天使は歯を軋ませる。
「人間ごときがほざくなぁあ゛あ゛あぁああああ!」
女の堕天使は先ほどと同じように光を収束させて光の槍を作る。その光の槍は先ほどとは違い光の密度が数倍は違った。そして投擲する。
「………」
大統領は探索のときに買った新聞を手に取ると呑気に新聞を広げていく。そして槍は大統領に直撃する。
はずだった。
大統領の腕が揺れると飛んできた光の槍を新聞紙で挟んだ。そして新聞紙をもう一度広げる。
「ドジャアア~~ン!!」
新聞紙の間には光の槍など存在していなかった。
「そんなッ!?」
「堕天使なのに光は使えるのか……妙だな」
大統領は手に持った新聞紙を空に投げる。バサバサと鳥の羽ばたくような音と共に大統領に一枚の新聞紙がかかる。その新聞紙がコンクリートの地面に落ちると大統領は消えていた。
「!?」
女の堕天使は大統領の消えた新聞紙に光の槍を放つが槍が新聞紙を貫通するだけで何もない。
「チッ、逃がしたか……証拠隠滅に時間がかかるじゃないの!しかも神器持ち……」
女の堕天使は黒いカラスのような羽で空へ飛ぶと腹に穴を開け血まみれの少年と新聞紙だらけの公園を後にした。
「まさか、本当に堕天使がいるとはな………驚いた」
生きている人間はいない公園に声が響く。すると一枚の新聞紙から金髪の男、ファニー・ヴァレンタイン大統領が出てくる。
「サクラに聞くことが増えたな……」
大統領が公園を後にしようとすると背後から声がかかる。
「これはどういうことなのかしらね……」
「…………」
大統領は無言で振り向く。そこには紅の眼に紅の髪をした女性が立っていた。
「………あなた、何者?」
女性の声は大統領の顔を変えることはなかった。
別にワムウとエシディシいらんでしょ?あの二人連れてくるだけでもう三勢力が大変ッス。
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Killer Queen
A出せます
「ヴァニラ・アイスは出せる?」
A出ることは確定済みです。
次回からが本編です。
本格アンチが入ります。
「………」
女性に警戒の意を見せられている大統領は何も言わずに女性と向き合う。女性は学生服を着ておりおそらく成人はしていないだろう。特徴的な灼眼を細くして大統領を睨む。
「…………君は人を呼ばないのかね?それともこの国でこのような殺人は日常茶飯事だったりするわけか?」
大統領は自分の身分などを明かそうとはせずに、女学生に質問をする。大統領は現在も腹部から血を流している男子学生を尻目に女学生を見つめる。女学生は警戒を解かずに返答する。
「いいえ……この国では殺人は立派な犯罪よ……」
「そうか……ならなぜ人を呼ばない?この状況からしたらどう見ても私が犯人に見えるはずだが……?」
大統領は動揺も何も見せずに言葉を並べていく。
「なら、人を呼ぼうかしら……?」
「好きにするがいい……」
お互いに相手の腹を探り合っている。相手が自分に攻撃をしないという保証がない以上迂闊な行動は危険だからだ。お互いに証明が欲しい……。ましてや大統領はこの世界に来て約2日目だ……。今自分の身分を明かすのは実にまずい。
「お話にならないな……」
根比べで先に値をあげたのは大統領だった。
「自己紹介だけさせてもらおう……私の名前はファニー・ヴァレンタイン……わけ合ってこの国に滞在させてもらっている。それ以外は話す気はない……」
「…………」
大統領は自分の名前を明かすがそれだけでは証明にはならないため女学生は警戒を解かない。大統領が地面に散らばった新聞紙を拾おうと動くと女学生の体が目を見開き、ビクリと縦に揺れるがすぐに元に戻り警戒態勢になる。
「まぁ、驚くな……私はこの新聞が拾いたいだけだ。君に被害は与えない……約束しよう……」
「………」
大統領はそれだけ言うと散らばった新聞を数枚拾うと女学生の瞳を見つめる。彼女の目には『妙な動きをしようものなら殺す』といった心が現れていた。
「……なぁ、私も名前を名乗ったんだ、君も名前を名乗るべきなんじゃあないか?それとも君の育った国ではそういう風に育てられなかったのか?」
『育った国』と聞いたのは彼女の髪の色で判断したからだ。大統領はこの国のことを知るために少し外を出歩いていた。この国の人間の髪の色は基本を黒とした者ばかりだった。居たとしても茶髪か金髪だけだった。前世でも自分の暮らしていた国民の髪色が赤というのは見なかった。
女学生はゆっくりと自己紹介を始めていく。
「……リアス・グレモリーよ……駒王学園に通っているわ……」
「駒王学園………ン、あの馬鹿にでかい建物のことか……」
大統領は脳裏に昼間に見かけた巨大な建物を思い浮かべながら話を続ける。
「それなら……グレモリー……そこの少年はどうするつもりだ?」
「ッ!?」
率直な質問だった。リアスは大統領と対面する前にまずあの血まみれの男子学生が目に入ったはずなのだ。だが彼女は通常の女性の反応はしなかった。一言も悲鳴や嗚咽の声も漏らさなかった。これは実におかしい。このような光景を『見慣れても』いなければ、絶対に悲鳴や嗚咽は口から漏れ出るはずなのだ。
「答えられないということは……先ほどの堕天使の仲間と解釈し、正当防衛と称して君を地に叩きつけるが……」
「………」
リアスは口ごもっている。本来なら弁論していたのだが大統領を見ており反応が遅れたのだ。大統領には普通の人間とは違う一際輝く何かがあった。
大統領はリアスの姿を見ると新聞紙を持った手を動かす。その動きにリアスは反射的に魔力を放ってしまった。大統領はそれよりも早く体を包んで消えた。
「………ッハァ……ハァ……」
大統領の姿が消えるとリアスは今まで溜めていた未知の恐怖を口から吐き出す。そして足りなくなった安心感を吸い込む。
恐怖心が消えたリアスは男子学生に治療を施し、戦闘の痕跡を消すと男子学生を連れ公園から出ていった。
「……サクラに訊きたいことが増えたな」
大統領は地に落ちた新聞紙と地面の『隙間』から現れると疑念を口にする。
大統領は本当なら隙あらばリアス・グレモリーを殺していた。だが殺さなかったのにはわけがある。
サクラに迷惑が掛かるやもしれないからだ。今の大統領はサクラに手綱を握られている身であり派手に動くことは危険である。サクラの簡潔な説明では堕天使や悪魔は組織を形成しているはずだ。組織とサクラのパーティでは差があるはずだ。自分が居るとしても相手の戦力が分からない以上は迂闊に動くのだけは避けたかった。
大統領は公園に散らばった新聞紙を放置し、サクラたちと共に暮らす『荒木邸』へ戻るのだった。公園に残ったのは男子生徒の少々の血液と散らばった新聞紙だけだった。
☆ ☆ ☆
荒木邸に戻りリビングへ向かうとサクラが出迎える。
「おや……?ファニー様、意外とお早いですね……わたしはもう少しかかるかと思いました」
「……サクラ、君に訊きたいことがあってね……」
サクラは大統領の言葉を聞くと「夕食の際にお話しします」と言い、台所に入って行った。
リビングにはDIOとプッチ、吉影、ディアボロ、カーズがトランプをしていた。するとカーズがトランプをテーブルの中央に投げる。
「このような下等なゲームでこのカーズが負けるだと……」
「その下等なゲームに負けた貴様は下等生物というわけだな」
「リベンジだ!今度こそは徹底的に叩きのめしてやる!」
カーズがトランプに負け苦渋を飲んでいるときにディアボロが挑発を入れる。するとカーズが逆上しリベンジを申し込む。カーズのIQ400という面目が立たない。
「ババ抜きは運が勝敗を分けると思うんだが……」
「プッチ……運も実力の内と言うだろう……」
「……なるほど」
DIOとプッチは何かを話している。
サクラはその光景を尻目にうっすらと笑みを浮かべて台所の収納棚から包丁を取り出して、料理を作り出すのだった。
☆ ☆ ☆
全員が帰宅するとサクラの作った料理を囲んでサクラの説明会が始まった。
「さて……今日はファニー様が質問があるそうですから……どうぞ、ファニー様」
「では、訊かせてもらおう、昨夜、君は堕天使に天使、悪魔が敵対関係にあると言ったな」
「はい、申し上げました」
「今日、私は堕天使が人間を殺害するところを目撃した……」
「……ッ」
サクラは苦虫を噛んだような顔をする
「そして、攻撃を受けた……この世界では三勢力と人間はどのような関係にあるんだ?」
大統領の質問にサクラはいつも通りのニコニコとした顔に戻すと返答しだす。
「それでは堕天使からお教えしましょう。まずこの世界の堕天使は人間の持つ
「
聞き覚えの無い単語に全員が疑問を持つ。
「
「…………」
ディアボロが少し眉を下げるがサクラは話を続けていく。
「次は悪魔です、悪魔は己の力が欲しいために人間を自分の奴隷にしています。そしてその奴隷を『レーティングゲーム』と呼ばれるもので戦わせて娯楽に勤しんでいる……と言ったところです」
サクラは生き生きとした表情で説明していく。その姿には悪感すら覚える。
「最後に天使です、天使は人間には攻撃的ではありませんが協力関係にもありません、ただ人間の信者を集めて自分たちの幸せと安全を確保しておこうとするだけの生物です、人間の信者たちは『無き空想』に祈りを捧げています。……三勢力の簡単な説明はこれだけでしょう」
サクラの夕食の入っていた皿はもう半分ほどしか夕食が入っていなかった。話がもう少しできると踏んだサクラはどんどん話を進めていく。
「ファニー様の件はわたしのミスでした。数日後、一応ですが皆様に認識阻害の魔術をかけたいと思います」
サクラは頭を下げると手に持ったフォークを手の上で一回転させると目を全員に一回り向けると口を緩める。
「今日はこの家に住んでおられる皆様に『己の命』について教えたいと思います。まず皆様は一度死んでおられます、それは分かっておられますでしょうか?」
「そのことは昨夜聞いた」
「なら、詳しくお話します。この世界に連れて来た際、皆様の命には魂があっても肉体がありませんでしたからこちらが適当に肉体を用意し、魂を埋め込む形になりました。結果、皆様の体は完成してはおりません。皆様の体は少しですがもとの世界よりも劣化していると考えてください」
『身体の劣化』という言葉に身覚えのあるプッチとDIOが眉を一瞬動かす。他の面子はそのような感覚が無かったらしく自分の腕などを見ている。
「詳しいことが訊きたいのでしたらわたしの部屋に来てください。その時にお話しします。まだ時間は残されております少しずつ……少しずつ皆様で交流を深め、協力関係を結んでくださることを願っております」
サクラはそれだけ言うと食器を台所の流し台へ持っていき戻ってくる。そして一礼すると二階の自室へ戻って行った。残された者たちは少しの疑問を感じながら流し台に食べ終わった料理の食べカスの付いた食器を置いて各自自由行動に移るのだった。
☆ ☆ ☆
あっという間に数日が過ぎていた。結局のところ未だにテロリストらしい活動は行っていなかった。
ただ変わったことと言えば吉良吉影は仕事を得たということだろう。サクラの話だと前世と生き方が変わる可能性もあり得るため前世と同じような仕事に着いて普段どおりに生きてストレスを最小限にしてほしいとのこと。
サクラのその言葉は吉影にとっては吉報だった。前世でストレスを最大まで溜め続けることとなった吉影にとってはその言葉は救いの手だった。
サクラの手配によって前世と同じような会社に新入社員として入社した。最初の内は騒がしかったが目立つような行動は一切せずに数日が過ぎるとあっという間に吉影も社員の一員だった。雑務ばかりを受け責任を受ける仕事は一切受けない。
今日も書類を隣町に届けるという仕事を受けていた。そして少し気晴らしに公園で懐の冷たい温もりを感じながら歩いていると青年とぶつかってしまった。懐に隠していた『女の手』が一瞬だが表に出た。すぐに吉影は手を隠した。吉影は青年を見るが青年は「すいません」と謝るだけで何も見ていないようだった。そして何か不安などの感情が見えた。
「君、一人かい?」
「……そうですけど」
「悩みでも抱えてるんじゃあないか?顔がつらそうだぞ?私で良ければ聞いてやるぞ」
「………聞いてもらえますか?」
吉影からしてみれば『なんとなく』聞いてやりたい気分だった。青年からしてみれば自分のこの『ムカムカ』とした気分を誰かに話して少しでも自分の苦悩を和らげたかったのだ。
吉影と青年は近くにあったベンチに座って話をしていく。
少し省略するが青年の話だと悪党の手伝いをさせられている女の子がいるとのこと。
「俺、昨日知り合いの女の子のこと守れなかったんです。俺は……ッ」
「ようするに君はその女の子を守りたかったんだろう?」
「……はい」
「なぜだ?」
吉影の鋭い質問が青年の心に刺さる。
「え?」
「そんなことをしてナンになる?自分の身を挺してまで赤の他人を助ける必要なんてないだろう?」
「でも!彼女は嫌がっていたんです!」
確かに彼女は嫌がっていた。彼女は聖女と言っても良いほど善人だった。悪人にはなれない女といっても良かった。
「それでもだ……その子は自ら悪と付き合う道を選んだんだ。それはタダのワガママに過ぎない。自分の選んだ道を自分で放り出すなど、それはただの傲慢だ。シスターとしては失格だ。シスターは神に忠誠を誓い神の言葉のみを信じる。自分の考えと神の教えを平行させてはならない」
「………そんなの人の生き方じゃありませんよ!」
吉影の言葉に青年がベンチから立ち上がって反論する。彼女は間違っていないと言わんばかりに。
「だから、神を信じたんだろうな。まだそのシスターは壊れていないんだろう?悪に染まっていないのだったら君が救ってやればいい……できないのなら――――――」
吉影は書類を持ち立ち上がり、青年の横を通り過ぎていく。
「―――――捨てて、壊れて、新しい自分を見つければいいさ」
吉影はそのまま隣町に書類を届けて仕事場に戻るのだった。残された青年がどうなったかは知らない。
サクラの話だとシスターと再会したらしいがそれ以上のことは知らないとのこと。
アーシアってイッセーと会わなかったら壊れてたと思います。
本当に人殺しも何も思わない悪になってたでしょうね。
「君は『引力』を信じるか?」
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Scary Monsters
A優遇して出したりはしませんが1人~3人くらまでなら出るかもしれません
Qプッチのスタンドはどうなってるんだろう?弱体化してるっていってたし白蛇かな?
A白蛇です。ちなみにDIO様は5秒まで時止め可です。
Q個人的にはエンヤ婆、リゾット、ブラックモアあたりに出て来て欲しい
Aエンヤとブラックモアは出せますがリゾットはボスと喧嘩しちゃうので難しいです。
Qそういえば白蛇で技術者(アザゼルとか)の記憶ぶっこ抜いて、IQ400のカーズ様に叩きこめば簡単に技術面で簡単に自軍強化とかできるんでしょうか?
Aまぁ、できるでしょうね。中々スゴイことになりそうで怖いですが。ハ~レルヤ!(ry
「旧魔王の血族で白龍皇である俺は忙しいんだ。敵は天使、堕天使、悪魔だけじゃない。いずれ、再び戦うことになるだろうけど、そのときはさらに激しくやろう。お互いもっと強く」
赤龍帝;
白龍皇は現孫悟空と共に闇の中に消えていった。その姿を歯を軋ませる赤龍帝を残して静粛が空間を一瞬だけ支配する。
静粛を取り払ったのは魔王のサーゼクス・ルシファーだった。サーゼクスは心配するように右腕を失った堕天使総督アザゼルの顔を覗きながら安堵の表情を見せる。息が少し荒くなっており急いでいたことが分かる。
「無事だったか。良かった。アザゼル、その腕はどうした?」
「カテレアに捕まって自爆されそうになってな。仕方なく切り落とした」
アザゼルの言葉にサーゼクスは何か償おうとしたがアザゼルは自分の不祥事が招いたことだと、自分を卑下し償いを断った。
そして天使長ミカエル、堕天使総督アザゼル、魔王サーゼクスと魔王レヴィアタンの三大勢力のトップたちは会合の場へ戻り、正式に和平協定を結ぼうと話が纏まったときだった。
『
『
『
獣の叫びとも取れる『竜の叫び』が木霊する。
『っ!?』
突然の第三者らの声に全員が驚愕し席を立ちあがった時だった。
ミシミシ、バキバキとコンクリートと木の叫び声が木霊する。
そしてもう一度ソイツらの叫び声と共に――――――叫び声は断末魔に変わった。
窓ガラス、ドア、壁。これらを突き破り恐竜の群れが会合の場、教員会議室になだれ込む。そして手当たり次第にその場に居た全員に襲い掛かる。その場に居た悪魔、堕天使、天使らは応戦するが恐竜の数が多いうえに恐竜は生物とは思えない身体能力で翻弄しながら攻撃してくるためタチが悪い。
それに恐竜は仲間だろうが敵だろうがお構いなしに飛びかかってくる。三勢力の面々はお互いに傷つけあわないように謙遜しているため思うように攻撃できず、恐竜たちへ攻撃が当たったかと思えば人間離れした動体視力などを最大限に使って三勢力サイドの攻撃を回避する。そのため三勢力は防戦一方だった。
『
『
『
「クッ――――!」
一回り小さい1m前後の恐竜がリアス・グレモリーの足を切り裂いた。ガクリと体が崩れ落ちていく。そこに恐竜の爪と牙が襲い掛かる。研磨されたソレはリアスの柔らかい肌を切り裂き、容易に肉を抉り出し、血管から鮮血を浴びることになるだろう。
『Boost!』
「うおおおおりゃあああ!」
赤龍帝の掛け声と共に拳が振り抜かれ、恐竜の膨らんだ腹に食い込む。食い込んだ拳にとても気持ち悪い――――肉をえぐる感覚が襲う。
吐き気を根性で耐え恐竜を殴った衝撃で壁に叩きつける。壁に叩きつけられた恐竜は『胃液をぶちまけながら』糸の切れた吊人形のように行動を止める。
冷たさを感じる床にぶちまけられた液体は一種の汚さを感じさせる。そしてそれは誰も触れずともポチャリポチャリと揺れる。その異変に気付く者は誰も居ない。
「部長!大丈夫ですか!」
「え、ええ!」
赤龍帝が主が無事か確かめるころには恐竜の数は減り始めていた。2~30匹ほどだった恐竜の群れは残り十数匹というところまで殲滅されていた。
残った恐竜をリアスの騎士である木場祐斗とゼノヴィアが切り捨てていくが一瞬―――――地面に吐き出された液体が光ると同時に液体がありえない軌道を描いてゼノヴィアの足を切り裂いた。
「――――ッ!?」
足を深く切り裂かれ激痛と共に支えを失い前に倒れ掛かる。そしてゼノヴィアを殺すように恐竜がゼノヴィアの背後から爪を振り降ろす。
誰かの悲鳴と共に恐竜の爪は振り降ろされる。ゼノヴィアが背後の恐竜を見て、死を覚悟した瞬間――――恐竜の横顔から反対にかけて一本の剣が突き刺さり、恐竜の頭脳を貫いていた。恐竜の体液がゼノヴィアに浴びせられナニカに恐怖すると同時に総督が叫び指示をする。
「お前ら!そこの液体から離れろ!攻撃されるぞ!」
体勢を崩し床に崩れ落ちていくと同時にもう一人の騎士である祐斗に脇に抱えられて攻撃してきた液体から距離を取る。
見ると最後の一体を総督が光の槍で突き殺していた。
『ッ!?』
休む暇すら与えずに恐怖だけが植え付けられていく。
「恐竜が――――――」
誰が呟いたのかは分からない。
倒した、殺した恐竜の死体が変化していく。まるで元がソレだったように。鉛筆が木でできているように。
「―――――――悪魔」
恐竜だった『ソレ』は床に倒れながら光の無い目で虚無を見ている。『ナニカ』に無理矢理変えられたように戻っていく。恐竜だった生物は無を見て床に転がる。
自分たちだから分かる。
彼らは悪魔だ。
彼らは天使だ。
彼らは堕天使だ。
転がっている生物は三勢力の面々だ。
「―――――なんでだよ」
赤龍帝が恐怖の声を漏らす。
なぜ自分と同じ種族が目の前に倒れて、死んでいる?
自分たちはナニと戦っているのだ?
テロリスト?
ウソだ。目の前に倒れているのはテロリストではなく魔王様の警護のためにこの学園に来た悪魔だ。それだけは確かだ。
放心する赤龍帝と目の前の死体から目を背ける仲間の姿を見ると堕天使総督のアザゼルは舌打ちをして顔を歪める。
「俺の部下も居るな……サーゼクス、セラフォルー、ミカエル―――――。……いや、いい」
アザゼルは目線をサーゼクスとセラフォルー、ミカエルに向けるがどれも顔つきは険しく思い通りに事が運んでいないことは明白だ。
「このことについては俺がどうにかする。最後に――――一応確認のために聞いておく。三勢力の和平をお前らは望むとして解釈していいんだな?」
アザゼルは急いたように和平のことを決めていく。アザゼルの顔には焦りが見え始めていた。
アザゼルの質問に対しサーゼクス、ミカエルは目を閉じて重く首を一度だけ降ろした。
「なんで分からないんですかね?和平はやめてくれって言っているんですよ。我々は」
『ッ!?』
聞き覚えのない声に条件反射で振り向く。壊れた会議室の入り口に2人の人間が立っていた。いつの間にここまで近づいていたのだろう。
「リアクションがいつもワンパターンでおもしろいですね。三勢力ってそんな感じで遊ぶのが流行ってたりします?」
軽い透き通った声で挑発するともう一人の金髪の人間が目を閉じて舌打ちをする。
挑発を無視するとアザゼルが一番に口を開いた。声には少しの怒気が籠っており怒りが見える。
「判定の余地はねぇな。お前もテロリストだろ」
「当たり前です」
「なぜ、三勢力の和平の邪魔をするかだけ聞いておいてやる。それだけ言ったら消えろ。今回だけは見逃してやる」
アザゼルの言葉に顔を強く歪めた青年はアザゼルと睨みあいを続けながら話を始めていく。
「あなた方の勝手なエゴのおかげでわたしの師匠は死にました。覚えているでしょう?――――――。この名前を……」
青年はある人物の名前を口に出すがその言葉は人間の言語ではなく、生物の言語ではなかった。ノイズのかかったよな言葉を聞くと三勢力のトップは表情を重くしていく。
「君はあの人の生き残りか……なるほど、おぼろげだが理解したよ。君は敵だ」
サーゼクスは迷いなく言い切る。サーゼクスの言葉を聞くと青年;サクラは感情の籠っていないハリボテの笑みを浮かべるととなりに居たもう一人に指示を出した。
「ディエゴ様、お願いします」
「ン?ああ、オラよ」
ディエゴと呼ばれた人物は別のことに興味を向けていたようで返事が曖昧になったがディエゴと呼ばれた人物は指を一度鳴らす。
すると駒王学園の廊下から数匹の小型恐竜が「ギーギー」と小気味悪い声をバラまきながらディエゴの元に現れ小型恐竜は軽い足取りで床に倒れた死体に咬みつき、爪で切り裂き傷をつけていく。
ディエゴがもう一度指を鳴らすと小型恐竜はカモの雛のようにディエゴの足元に戻ってくる。
「もう一度、がんばってください♪」
サクラは満面の笑みで三勢力に微笑むとディエゴと共に廊下へ戻り帰っていく。すると倒したはずの悪魔たちがガクガクと痙攣し始める。
「お前ら!離れろォオオオオオ!!!また恐竜が襲ってくるぞォオオオオオオ!」
アザゼルが叫んだ瞬間、恐竜たちが立ち上がり雄叫びをあげた。
『
『
「お前らの攻撃方法は知ってんだよ!」
赤龍帝が左手に装着された籠手で飛びかかる恐竜たちを薙ぎ払っていく。
そして恐竜の一匹に拳で殴りかかった時、赤黒い魔力が赤龍帝の体に直撃した。
「グ……ッ、ゴフッ!」
吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。ブギンと何かの壊れる音と共に喉から鉄臭い血がこみ上げ口から大量の血を床に吐き出して倒れる。誰かの悲鳴が聞こえるがどうなっているか全然見えない。ただぼやけた視界に見えるのは顔に罅の入った赤い髪の恐竜が赤黒い魔力を手に構えているということだろう。
魔王、サーゼクス・ルシファーは今も恐竜相手に防戦中。それだけで分かった。目が反射的に見開かれ喉から震えた声と叫び声が勝手に発せられる。
「ぁ…ぁぁぁ……ぁぁぁぁああああ……うわぁああああああああ!?部長ォオオオオオオオ!」
『
紅い髪の恐竜ことリアス・グレモリーは高々と咆哮した。
理性を失い、己の仲間のことすら忘れた赤い恐竜は三勢力に牙を向けた。
紅い髪の恐竜を筆頭に襲い掛かる恐竜の群れを捌いていく。一番の要注意であるのは赤髪の恐竜だ。なぜかは不明だが消滅の魔力を使う。まるで『リアス・グレモリーであるか』のように。
紅い恐竜は周りの恐竜とは行動パターンが違う。どう違うのかと訊かれれば説明に困るがとにかく違う。
『
「―――――ッ!」
紅い恐竜が小柄な少女;塔城小猫に飛びかかる。小猫は小柄な体に似合わぬ拳を紅い恐竜に振るう。対し赤い恐竜は無理をせずに小猫の腕に足を乗せて軽い身のこなしで背後に回りギラリと尖った牙を小猫に向けた。
だが小猫は重心を後ろにかけて強引に回避する。赤い恐竜の研ぎ澄まされた牙が目の前を通り小さな冷や汗をタラリと流し、負傷した兵藤一誠を肩に担ぎ回収して回復能力のあるアーシア・アルジェントの元へ連れて行く。
その行動を良しとしない恐竜たちは小猫の後ろ姿に飛びかかるが騎士、木場祐斗と雷の巫女、姫島朱乃に妨害される。
紅い恐竜が小猫に飛びかかる。それを見た朱乃が雷を紅い恐竜に飛ばす。紅い恐竜は足に掴んだナニカを宙に投げる。すると雷は宙に浮いているナニカに当たり発光する。
「そんなッ!?」
朱乃が驚愕する。紅い恐竜が宙に投げたのは荒く切断された鉄パイプだった。紅い恐竜は事前に雷の攻撃がくることを『知っていた』ように足に鉄パイプを隠し持っていたのだ。
紅い恐竜は標的を小猫から朱乃に変えると鋭い叫び声を上げて朱乃に突進していく。朱乃は紅い恐竜に反撃するように雷を放つが紅い恐竜は『また』それを知っているように尻尾に隠し持っていたもう一本の鉄パイプを朱乃との対角線上に投げる。
雷は吸い込まれるように鉄パイプへと向かい霧散する。
そして紅い恐竜が後足で朱乃の両肩を捕える。朱乃の体は紅い恐竜の体重に押され床に倒される。朱乃は肩をガッシリと固定されているため抵抗できない。
紅い恐竜は口を開け牙を見せつけながら朱乃の首もとを捉え、牙と牙を噛み合わせた。
「――――――?」
朱乃は死を覚悟して目を閉じたがいつまでも訪れない激痛に疑問を感じてうっすらと目を開けた。
目の前の紅い恐竜が口を開けて止まっていた。体と本能がリンクしていなかった。口が痙攣したようにカクカクと今にも噛みついてきそうなのにナニカがそれを止める。
「――――――。―――。――――――」
紅い恐竜は口を開けカクカクと牙を動かしているだけだ。いつでも殺せるのに。いつでも―――――――。
「うぉおおおおぉぉお!!」
紅い恐竜にフラフラとした足取りで一誠がタックルをくらわせる。一誠が朱乃の近くに転げると同時に紅い恐竜が吹き飛ばされ近くにある恐竜の死体にぶつかる。
「一誠くん!?」
驚いたような声を朱乃があげると同時に紅い恐竜が目を開け、ナニカを思い出したように襲い掛かる。
『
二度目の覚悟と同時に朱乃は一誠を庇った。紅い恐竜の足の爪が降ろされる。
そして割り込むようにゼノヴィアが大型の聖剣、デュランダルを持って紅い恐竜の爪を防御した。
「早く!イッセーを!」
ゼノヴィアの悲痛な声を聞くと朱乃は思い出したように一誠をアーシアの元へ連れて行く。ゼノヴィアの体は紅い恐竜に押されていた。
ゼノヴィアが「ダメか」と声を漏らすと横から木場が聖魔剣を紅い恐竜に振り降ろす。紅い恐竜は木場の気配に感づくとジャンプし爪を天井に突き刺しこちらを睨む。
そして床で戦闘を行う恐竜の群れに紛れて集中的に攻撃を行うのだった。
結局時間が30分ほど立つと恐竜たちは床に崩れ落ちていき恐竜軍団は沈滅されるのだった。そして床に倒れた悪魔たちの死体の中に小さな寝息を立てるリアス・グレモリーも混ざっていた。
悪魔たちが恐竜軍団と戦闘を行っている一方、サクラたちはシャンパン片手に(ディエゴ曰く安物)荒木邸でお祝いらしきモノをしていた。
「ファニー、テレビなんて点けるな、今は祝え」
「すまないね、これだけは見逃せない」
テレビの画面に映っていたのはニュースだった。ニュースの見出しにはデカデカと『アメリカ合衆国の株価が下落』と書いてあった。
それを見ると大統領は舌打ちをして愚痴をこぼし始めた。
「チッ…無能め…先人達が築き上げた合衆国を…誰が大統領をやっているのだ…!」
「所詮、餌の餌よなぁ~~ッ!」
「貧弱貧弱ゥ~!」
「かなりムカついたぞ……!始末する!」
大統領の愚痴に対してカーズとDIOが哀れむように労いの言葉をかける。
そんな感じで荒木邸のパーティーは行われていくのであった。
今の悩みは聖人様の遺体を出すかどうか……。
出すとイッセーとかがスタンド使いになりかねないから難しい。
次回はDIO様のカリスマ発揮回です。たぶん戦闘は無いと思う。
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Hell And Heven
他の小説家の皆様に期待してください。
戦闘は今回はしませんのでご了承を
「明日、引っ越しを行いますので、準備をお願いいたします」
『は?』
サクラの言葉に全員が異口同音で間の抜けた声を漏らした後、怒気を籠めて会話になる。
「サクラ――――。それはどういうことだ?聞いてないぞ」
「いま、言いました」
「だから、なぜ明日なのかと聞いているんだ」
サクラは質問を聞くと少し考えるように机に頬杖を着いた後に、説明口調で喋り始めた。
「ええと、少し前にディエゴ様とンドゥール様に三勢力に奇襲をかけたことは一応、お話ししましたよね?」
サクラの言葉に部屋に居る全員が無言で首を下に下げる。サクラは全員の反応を見ると話を続ける。
「わたしは元からあるテロ組織に所属している違う派閥のバックアップを任されていまして、その功績を称えられて本拠地の移転を許可されました」
「――――――。なぁサクラ、その派閥というのはどのくらいあるんだ?」
サクラに質問したのはDIOだった。英語かは分からないが難しい文字列の並んだ本に目を通しながら『どうでもいい』と言わんばかりに足を組んでゆっくりとページを捲って読んでいた。
サクラは「ええと……」と呟くと思いだすように頭に手を置き少し時間を空けたあと話を再開した。
「確か10~15ほどあったはずですが……他にも色々とありますので……詳しくお話しすると長くなりますので」
「そうか」
DIOは返事をするとまた読書を再開して部屋が静粛に包まれる。
「このボロ屋ともお別れで、明日からは別の拠点にて行動します」
「仕事はどうなる?」
吉影が爪を切りながら質問する。サクラは目を閉じて、ゆっくりと目を開ける。
「心配は無用です、一応空間魔術で別拠点とこの拠点をなんとか繋ぎますので仕事に支障はありません」
吉影はサクラの言葉を聞くと安堵の息を吐くとまた部屋の中は無言になり、誰かのあくびの声が漏れるとサクラは言葉を残して部屋に去っていった。
「それでは、必要最低限の物だけ準備しておいてくださいね。わたしはまだ色々と準備がありますので……」
サクラがいなくなると大統領は日課のニュースを点けて政治環境などを見たりするのだった。ちなみにニュースに小さく『行方不明者がこの数か月で数倍に増えている』と書いてあった。
大統領はそれを見て「近いな」とだけ呟いた。
☆ ☆ ☆
不思議な禍々しい空をディアボロは豪華な装飾のされた窓から眺めていた。他の面子は数名探索と称して観光気分に浸っていることだろう。
引っ越しは意外とスンナリと終わった。
サクラが用意した転移魔法円を怪しく思いながら乗ると魔法円が光りだし気が付くと煌びやかな装飾のされたどこかの城と思われる部屋に転移していた。
一面の壁に巨大な魔方陣が書いてある以外は豪華な部屋という印象を与える落ち着きのある部屋だった。
ここに来てサクラが忠告したのは『先住民が居るのでこちらからは戦闘をしかけるな』ということだけだった。それに対してカーズが「むこうから仕掛けてきたら?」と質問するとサクラは、その場合は自由にして構わないとのこと。
「あなたが新しくきた人かにゃ~~?」
プッチと別れて行動していたDIOに馬鹿にしたような態度で接する女性が居た。DIOは女性を尻目にポケットから手を出した。
「………君は?」
「人の名前を聞くときは自分からって親から聞かなかった?」
「――――――!……ッ」
DIOは一瞬手で彼女を殴りそうになるが理性で押し止めて舌打ちをすると彼女を無視して進んでいく。
「………無視はどうかと思うわよ?お姉さんとしては……」
「用が無いならどいてくれないか?」
女性がDIOの前方の前方に立ち通せんぼするとDIOはうっとおしそうに適当にあしらう。
「名前くらい教えてくれてもいいんじゃないの?」
「―――――。DIOだ」
女性に押し負けたようにDIOは自分の名前を名乗る。女性は納得したように声を漏らすと確認するように名前を呼んだ。
「ディオね……」
「……違う」
「え?」
DIOは何かを思い出すように女性の言葉を否定すると少しだけ説明する。
「
「それって何かこだわりでもあったりする?」
「………深い意味は無い。ただ私の名前はDIOだ、それ以上でもそれ以下でもない」
「変な人……」
女性は呟くとDIOは仕返しをするように意図を返す。確かにDIOの姿は妙である、黄色と緑の二色を基本とした服装に頭にハートのアクセサリーを着けており足に履く靴は魔女の靴のようにトンガリ靴なのだから。
「それなら君も妙な姿だ。日本のワフクを着て頭に猫の耳が着いている。それに尻尾まで見えてるぞ」
「にゃはは~~♪それはお互い様ってことで」
女性はごまかすように手の指をチョロチョロと動かす仕草を見せると踵を返して去ろうとする。するとDIOが声をかける。
「待てよ……」
「ん~?」
女性は上機嫌に振り返ると女性の尾がユラリと揺れる。
「僕だって名乗ったんだ……君も名乗るべきなんじゃあないか?それとも親から聞かなかったのか?」
「………黒歌」
「………クロカ……日本人か」
女性は少し悩むと名前を早口で名乗った。
(そういえばサクラの部屋にあったな……はぐれ悪魔だったか?確か賞金が賭けられていたが……賞金額が高かったな……)
DIOは少し前にサクラの部屋に入っていた。そして手配書の写真を目撃していたのだ。その時の記憶が今更蘇った。
「DIOはどこかの派閥に入ってるのかにゃ?」
自分の派閥の名前はサクラから聞いていた。別に名乗っても問題はないだろう。
「――――――――
「え?それって……」
黒歌が訊いた瞬間DIOの姿が目の前から消えた。黒歌が驚愕していると背後から「また会おう」とDIOの声がし、黒歌が振り向くとDIOが曲がり角を曲がっていく姿が目に入った。
(今……何をしたの?ぜんぜん見えなかった………)
ドドドドドドドド
黒歌はDIOの行った行動が見えずに一滴の冷や汗を流す。
(
☆ ☆ ☆
一方カーズは黒いターバンを纏って廊下を歩いていた。
だがその黒いターバンには数滴の赤いシミが着いていた。サクラの忠告を無視して殺していた。否、無視したのではなく自然と殺してしまったと言ったほうが正しい。
廊下をカーズが歩いていると悪魔が二人組で廊下にて話をしながら歩いてきた。カーズの対向線から、歩いてきた。
その悪魔たちはカーズに道を譲れと図々しくも話しかけてきたがカーズはそのまま直進しその悪魔にぶつかった。そして喰らった。
悪魔の二人組は、右半身だけの悪魔と左半身だけの悪魔の『二人』になりバランスを保てずに廊下に転倒した。
その時のカーズの心境としては、殺してしまったというより、勝手に死んだという考えだった。
するとまた誰かにぶつかった。ズルリという感覚と共に皮が、肉が、骨が、カーズの栄養となり満たされていく。
違和感がカーズをとどめた。
(なんだ?この感覚は……吸血鬼よりも……重く……カロリーが高い?)
それは今までカーズが食してきた吸血鬼よりもズッシリとした感覚でまるで食べるのにも苦労している庶民が好きなだけバイキングの料理を食べまくって腹が破裂しそうというような、そんな感覚だ。
カーズが違和感に気付き背後を振り返ると一つの生物がいた。
「お前……何?」
その生物は左半身を失っているのにも関わらず恐怖も苦痛も感じずに無感情でカーズに話しかける。その生物の体はまるで自分と同じように、いやそれ以上か、左半身だけの体を再生させて断面から新たなナニカを作り出し体を作り直していく。
そして元の右半身を完全に再生させるともう一度カーズに冷淡とも言える声色で話しかけた。
「お前、何?」
カーズは髪の先からほんの一瞬だけ電気のようなモノを発生させると舌で自分の唇を舐めるとたった一言呟いた。
「世界を統べるため全てを超越した究極……太陽すらも克服した全てを欲した……。そのために仲間も犠牲にした。貴様ァ……このカーズの名を知らぬだと……?」
「カーズ……興味が湧いた。こっちへ」
その生物はそれだけ呟くと冷たい感情の無い笑みを浮かべると一つの部屋に入っていく。
その生物はその生物は幼い少女の姿形をしているが本来の姿は違う。カーズはその生物に興味を持つと何も言わずその生物の後を歩いて行った。
☆ ☆ ☆
時というものはすぐに過ぎていく。今、この時は今から過去になっている。そして今はさっきから未来に存在する。
時ほど考えておもしろいものは無いと思う。
時という概念を見つけた人物はそれほど時の流れに敏感だったのだろう。
気がつけば数日が過ぎていた。少し変わった日常も今ではいつも通りの日常に変化していた。
☆ ☆ ☆
視界の脇に、小さな山が映った。
横になっていたから分からなかったが、ベッドの側にはこれでもかとばかりに様々な物がうず高く積み上げられていた。
金銀財宝、剣に絵画に壷に本に皿に甲冑に、石像までデンと置いてあった。
「起きたか、黒歌」
「寝ちゃってた?」
「ああ、熟睡だったよ。起こしても寝言が返ってくるだけだった」
顔がほんのりとした温もりで包まれる。寝顔を見られた。
ガチャリとドアノブの引き戸が開かれる。
確かDIOの友達だった気がする。神父服を纏った姿には警戒心を抱かずにはいられないのは悪魔となってしまった自分を恨むべきなのだろう。
「なんだ、朝まで居たのか」
「ええ、少し話をしてたら……ね」
神父は手で十字架を切る。日常風景なのだろうが悪魔の自分にとっては苦でしかない。
「サクラが呼んでいたよ、朝食だ」
「そうか」
DIOは服掛けに掛けてある上着を手に取ると身に纏ってベッドから立ち上がる。190㎝はあろう体からすれば自分の体は小さいものなのだろう。DIOは自分に「また今度……」と呟くと部屋を後にしていった。
昨日DIOと話をして少し楽になった気がする。
今日の夜も話せるだろうか。
話せるのなら話がしたい。いつでもいいから、なんでもいいから。
話がしたい。
彼と話をしていると落ち着くのだ。まるで自分の両親と話すように……まるで自分の犯してきた罪に汚れた自分の心が救われるかのように思えるのだ。
なぜ、こんな気持ちになるかは分からない。
だが言える。私、黒歌はDIOに魅かれてきている。
彼のためなら命を捨てても構わないとときどき思う。
☆ ☆ ☆
「リリン殿、お久しぶりです」
「ン~?サクラちんか~。どうかしたの~こんなおじいちゃんに何か用かい?」
老人の真底からバカにした態度にサクラは一つの小瓶を取り出して机の上に置き言った。
「師匠の命を受けここにはせ参じました。リゼヴィム様、我らインフェルノ・ヘヴン。あなたの首をいつか頂戴し、師匠の墓前に供えます」
サクラの言葉を聞くと老人はクツクツと鍋の煮えるような笑いを浮かべると小指を立てて突き出した。
「指切りしようか、おじいちゃんと」
「ええ」
サクラは笑みを浮かべると小指を立てて老人と小指を絡めた。
『指切りげんまん、ウソ吐いたら、針千本飲ます、指切った』
サクラは老人と別れると机上にあったチェス盤の上の『戦車』の駒を動かした。
「3-C、チェックです」
「参った」
老人はケラケラと笑うと両手を軽く上げて降参の意を示した。
ニーベルングの指環という楽劇がありましてその登場人物の中に『ロスヴァイセ』ってオーディンの娘が居る。
原作者って元ネタとかって明かしてましたっけ?
明かしてなかったら色々と……ネ。
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DIO Is The World
みんなの大好きな白音ちゃんがメチャクチャになるといいね。
だから白音ちゃんがいぢめられるのが嫌な人はこの小説を二度と見ない方が良いよ。
そうすれば白音ちゃんは君だけのモノだよ。
ちなみに後半はほとんど18禁になりそうだからお気を付けて。
冥界の暗い空間が歪み、悪意と敵意がごちゃ混ぜになったように空間が無理矢理支配されていく。支配された空間の中で4人が警戒心を最大限まで高めて戦闘意志を表していた。
上空では猿と龍が戦闘の火花を散らして暗黒の空を赤い戦場のような夜空に変えていた。
「にゃん」
舌で乾燥した下唇を一時的に
「……姉さま。私はそちらへ行きます。だから、二人は見逃してあげてください」
恐怖に折れたようにもう一匹の白い猫又が震えきった弱い声音で戦わず敗北を悟る。
赤い髪の主がその言葉に怒りではない何か嫉妬のような感情を持って彼女を抱きしめるが彼女は折れた心を戻しはしない。
「……ダメです。姉さまの力を私が一番よく知ってます。姉さまの力は最上級悪魔に匹敵するもの。部長とイッセー先輩では……。元龍王のお力があっても幻術と仙術に長けている姉さまを捉えきれるとは思えません……」
「いえ、それでも絶対にあなたをあちら側に渡すわけにはいかないわ!あんなに泣いていた小猫を目の前の猫又は助けようともしなかった!」
白い猫又の白音が敗北を悟っても主のリアス・グレモリーはそれを許しはしない。許せるわけが無かった。眷属をあんな最低な悪魔に渡したくはなかった。
「だって、妖怪が他の妖怪を助けるわけないじゃない。ただ、今回は手駒が欲しいから白音が欲しくなっただけ。そんな紅い髪のおねえさんより私のほうが白音の力を理解してあげられるわよ?」
姉の猫又のセリフはそれだけだった。手駒が欲しい……たったそれだけだ。自分だけで行動することが不可能なことを妹に手伝ってもらう、それだけ。
「………イヤ……あんな力いらない……黒い力なんていらない……人を不幸にする力なんていらない……」
白音は小さく震え、涙を地面に落としてタダでさえ小さい体をビクビクと大きく震えさせている。
「なら白い力をくれてやろう。黒ではなくても強い力を得られるぞ」
『!?』
突然どこからか声がかかる。一誠とリアスは声の発せられた方向を見るがあるのは古ぼけた樹だけで人の気配は感じない。
黒歌へ警戒を向けると黒歌の隣に大柄な男が居た。身長は軽く180を超えているであろう巨漢。発せられるナニカは男や女の持つ色気とは違うナニカを秘めている。まるで吸い込まれるようにその人物を見つめてしまう。
「黒歌……呼んでおいてこの状況は変なんじゃあないか?私の力を貸してほしいと聞いて来てみれば……ただ妹の勧誘。そんなことで私を失望させるな」
「DIO、ごめんなさいね。でも私じゃあちょっと白音の説得は難しかったから……ね」
DIOと呼ばれた男は小さい舌打ちをすると血のたぎるような灼眼を一誠に向けた。目を向けられただけなのに心臓がドクンと鼓動を刻む。心臓の活動が活発になり血液が体内を駆け巡り呼吸が荒くなる。
男から目を逸らして地面に目を向ける。気が付くと地面に膝を着けて今にも倒れそうな体制になっていた。荒くなった呼吸を静めていくと足音が聞こえる。サクサクと気味の良い音を鳴らしながら男の足がリアスと白音に近づいていく。止めなければいけないのに足がすくんで動けない。
男への恐怖が体を包み込んでいく。吐き気と共に頭痛や呼吸困難に襲われた。
「……………」
「近寄らないで!」
クルリとつま
白いストレートのショートヘアの髪の下から小さい猫の耳が付いていて、尻からは波上のカーブをした尾が生えている。そこまでは黒歌の妹を連想させる。だが一つだけ違うところがあった。
『眼が違う』
白音の目には
「……そんなに怯えることはない。お前を仲間にしてやろうと言っているだけじゃあないか。白音、お前に
その言葉を聞いた瞬間、白音の目の集点がふっと消えた。そして糸の切れた
「小猫!」
リアスが
すると目の前に目を見開いた男の顔が至近距離に置かれていた。
「ッ!?」
「
リアスが手の魔力を解き放つ瞬間男の指がリアスの首の血管に突き刺さった。そして男の腕が上方に上げられるとその指に引き寄せられるようにリアスの体は男の指を支点として吊り下がった。
「クッ!?―――――ッ!」
「
リアスが首に突き刺さった指を引き抜こうとするが外れずに男の小さな呟きと共に血が自分の首から男に渡って行くのが分かった。
血が男の元へ送られていく
「やめろ………」
リアスの背後から声がかかった。今にも消えそうな小さい声で呟いた。
「やめろ………」
「…………」
白音を背負った黒歌が一誠に目を向ける。
震える足を地面に突け、意志の籠った眼をDIOに向けている。
「部長から離れろ!」
一誠の口から怒気の籠った声が出る。DIOは
「
一誠が独立した意識の中でボソリと呟くと左腕に赤い龍のような装飾のされ、中心にエメラルド色の球体の埋め込まれた籠手が出現していく。
『Boost!』
「うおおおおおおおおおおっ!!!」
出現した籠手から機械音が鳴り響くと同時に一誠からゆらゆらと
その姿を見ながらDIOは小さな舌打ちをした。黒歌に目配せをしてここから離れろと伝えると黒歌は苦渋の表情を浮かべて白音を連れて魔法円の中へ飛び込み本拠へ逃走した。
一誠は後ろに体重を
「―――――――――。諦めろ、無駄に命を浪費して何になる。悪魔は1万年に近い年月を生きられるそうじゃあないか。ならわたしと戦いここで命を散らしてどうしようというのだ。わたしとお前の力の差はお前も分かってるんだろう?あと1万年生きるか、ここで死ぬか。後者は愚かな選択だと思わないかね?君はあの少女を諦めるだけで『今』を生きることができるんだ。それでいいじゃあないか。もう一度言う。―――――――」
DIOは地面に膝をついて腰の立たないリアスを尻目に一誠を灼眼で見つめる。一誠の目にボンヤリとしたナニカが浮かんでいるのを見ながらDIOは残酷な現実を突きだす。
一誠の体が揺れると同時に呟いた。
「―――――諦めろ」
「…………ぁぁああああああああああああああああああ!!!!」
一誠の目の集点が消えかかると同時にそれを振り払うように一誠は叫んで左手の籠手を無意識に顔の目の前に出して叫んだ。そして返事をするように籠手から機械音が発せられた。
「
『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!』
一誠の腕に装着された赤い籠手をを中心にして一誠の体が赤い鎧に包まれていく。龍のフォルムを維持し背中にはバックパックとスラスターが装備されており一誠が体を少し動かすとカチャリと鉄と鉄が触れ合う金属音が静かに響く。
「それが君の答えか……いいだろう。来い……赤龍帝。―――――呪われし
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
DIOの言葉を聞くと一誠は覚悟を決めて背中のスラスターを最大に吹かして飛び出す。亜音速で飛び出した一誠の体にガタガタと衝撃が襲い掛かるが一誠はDIOの顔面
DIOは亜音速で飛び出した一誠に少し怯んだようだったがすぐに顔に余裕の笑みを浮かべると一誠の拳を体を
「ぶっ!?」
軽く殴っても破壊力Aのスタンドは
ツンとした感覚に一誠が気が付くと刹那、第二波のパンチが一誠の腹部を襲う。人間に本気で殴られるような感覚がまだ痛む腹を襲った。たまらず叫びそうになったが叫ぶ前に胸を殴られる。
殴られたことにより肋骨の数本が折れて肺に突き刺さり、穴の空いた肺の空気が全て口から飛び出していき頭がボンヤリとする。胸の剣を刺されたような痛みとマスク内に飛び散った
掴まれたと一誠が自覚した瞬間に一誠の体は高速で地面に叩きつけられていた。
リアスの叫び声が聞こえたが何と言っていたのかまでは聞き取れずに一誠の意識は刈り取られた。
目が覚めた白音は天井を眺めた。白く塗られた天井には一つもシミや汚れが存在せずに白一色で染められている。
眠気が払われていくなか自分は攫われたのだと実感するのは容易なことだった。
急いで上半身を起こすと頭がボンヤリとジャックされたようになる。
「………起きたのか」
なぜあの男が居るのだろう。ここはどこだと訊こうとしても喉からは震える声しかでない。
すぐに自分にかけてあった毛布を払い飛ばして自分の温もりの残ったソファからバックジャンプで距離をとるとファイテングポーズを取っていつでも戦闘ができるように構える。
「…………」
天幕の影に隠れて男の顔は隠れているがたぶん唖然としているのだろう。そう思っていると男はこちらに顔も向けずに本のページを
ますますここから逃げ出したい気持ちになった。
すると背後のドアがギギギと重たい音を立てて開かれた。急いで振り向くとまた頭が思考を停止させた。自分の
「にゃはは~~♪白音起きた~~?お姉ちゃんと遊びましょ~~」
自分の姉である黒歌は思考の停止している自分の背後に回ると抱きついてきたのだ。黒歌の豊かな胸が自分の背中に押し付けられると同時に自分の体を
「いやっ!離して!」
「白音はいじわるだにゃ~~♬」
ふざけたことを言いながら黒歌は離れようともせずに手を自分の首筋を
手の拘束がほんの一瞬だけ緩んだため腕を強く
パンと乾いた音が部屋に
「
黒歌は小さく
膝から崩れ落ちる体を黒歌が支える。そしてペロペロと動物のように
喘ぎ声のようなものが出そうになるのを咄嗟に口を閉じて防ぐ。それを見た黒歌が小さく笑みを浮かべると手を自分の陰部に当てようとしたところで邪魔をするように声がかかった。
「黒歌……数年ぶりの再会で喜ばしいのは分かるがじゃれつくなら自分の部屋でやれ、わたしの読書の邪魔をするな。お前でも………」
男の威圧を混ぜた声を聞くと黒歌はビクリと体を大きく縦に硬直させると苦笑いを浮かべて返事をした。
白音の口からは荒れた息が漏れ出ていた。自分の体が自分でなくなってしまうようだった……。
「分かったにゃ~~あなたも一緒にどう?
黒歌は柔らかな物言いでDIOを誘惑するがDIOは舌打ちをするだけで黒歌はその姿を見ると口を尖らせて白音の腕をしっかりと掴んでDIOの部屋から出ていった。
その時白音の口が
―――――――助けて、と。
誰に言ったのか分からないその悲痛な声は誰にも届くことなく白音の心の中だけに響いた。
後半18禁になりそうだね。
次回はアーシアがディオドラ君と幸せになるよ(ネタバレ)
悪いお兄さんからの質問です。
姉妹丼好き?
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