「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」 (べれしーと)
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お嫁さんの森久保 前編

森久保……好きだ……好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ…n(n→∞)


「ただいまー。」

 

玄関扉を開き家に入る。愛しき我が家。ピカピカの新築だ。うーん。いい気分。

 

(一生懸命仕事したんだしこれくらいはあっても良いよな。)

 

と、聞き慣れたふにゃふにゃボイスが家の奥からする。次第にその声は見慣れた姿と共に近付いてきて俺を迎え入れてくれた。

 

「お、おかえりなさい、プロデュ……じゃなくて、あ、あなた……」

 

旧姓は森久保乃々さん。新妻である。

 

(え?じゃあ今の姓は、だって?んふふ。秘密。)

 

「うん。ただいま。」

 

「うぅ……はずかしい……やっぱり、今まで通りプロデューサーさんじゃだめですか……?」

 

昨晩にお願いしておいたあなた呼びは乃々からすればとても恥ずかしいらしく、頬を赤らめ小声で呟かれる。別にそんな事で許可を求めなくても「変わらずプロデューサーさんって呼びます……いいですよね?」とか言えばそれでいいのにわざわざ訊いてくる乃々がホントに可愛い。

 

そんな可愛いお嫁さんになんて答えるべきか、勿論ファンの皆さんならお分かりですよね?

 

「だめ。」

 

確定的否定である。

 

「そんなぁ……」

 

俺の返答に乃々がしょんぼりしている。可愛い。

 

「あなたって呼ぶのそんなに嫌?」

 

逆にこっちからも訊いてみる。嫌なのか、と。すると乃々は、

 

「………………い、嫌って訳じゃ、ないです、けど。」

 

俺から目を逸らしてもにょもにょと発言した。可愛い。

 

「恥ずかしくて言いにくい?」

 

諭すように迫る。

 

「はい。」

 

はっきりと断言された。

 

(構わないさ。この様になるだろうとは思っていたからね。恥ずかしくてむぅーりぃー……云々言うんだろうなと。予想範囲内です。)

 

故に、なんと言えば彼女が俺を『あなた』って呼んでくれるのかも予想がついている。

 

(残念そうに食い下がりながら君が必要だと訴える……プロデューサー時代に育まれたこの()()()()()()()()1()0()0()()の中の1つを使うのだ!いくぜ!)

 

「じゃあ、今まで通りプロデューサーさんでも良いよ。」

 

そう言うと彼女がホッとしたのが分かった。もう。恥ずかしがり屋さん。結婚したんだからそんなにもじもじしなくてもいいのにさ。

 

(では、説得タァイム!)

 

「あーあ。乃々は特別だからあなたって呼んでほしかったのになー。」

 

残念さを滲み出させて呟く。

 

「ぁ……」チラッ

 

「世界で一番愛してる乃々からあなたって聞けたら最高に幸せなのになー。」

 

世界で一番愛してる、この言葉が重要なファクターだ。最も感情を込めて力強く発言。

 

「う、うぅ……」チラチラ

 

「でもしょうがないかー。乃々がだめだと言っているんだからなー。強制するのは良くないもんなー。」

 

わざとらしさを醸し出してこの台詞を言うのもポイント。わざとらしさのおかげで乃々はいい感じに動揺し、葛藤してくれる。ガチっぽく言うと深く考えちゃって自分を責めだす傾向が彼女にはある。それは望まぬ結果だ。別に落ち込んでるのを見たい訳じゃない。そうだろ?

 

「……あ、あな……うぅ……」ジーッ

 

視線を右往左往させてる乃々。落ち着きがない。可愛い。

 

「んー?どうした乃々ー?」ニコニコ

 

「い、いぢわるなんですけどぉ……」

 

そりゃ好きな子にはいぢわるするに決まってるだろ!いい加減にしろ!男なんて幾つになってもそんなもんよ!

 

その……困り顔見たさにちょっかいかけるのも一粒の愛情として捉えてくれませんか……?(恐る恐る)

 

「誰がー???」ニコニコ

 

「…………あ、あなたが……///」

 

「ォ…………(死亡&再生)」

 

 

 

 

 

新妻の『はにかみながらあなた呼び』で俺は死んだ。

 

(まあ、比喩的な意味だけどね。まだ生きてるよ。今は一緒にご飯食べてる。俺のためだけに乃々が作ってくれた夕飯をね。羨ましい?あ、羨ましくはない?そう……)

 

「美味しい?」

 

何かを期待する瞳で俺に質問をする乃々。可愛い。

 

「美味しい。特にこのキノコソテー。」

 

そう答えると乃々は嬉しそうに笑った。可愛い。

 

「良かった……えへ……」

 

は?好き。結婚した(完了形)

 

「乃々の料理の上達には目を見張るものがあるよ。凄いな。」

 

「その……」

 

「うん?」

 

「あ、あなたのためだから……頑張れました…………」ボソボソ

 

「ォ…………(二回目の死亡&再生)」

 

 

 

 

 

新妻の『顔を真っ赤に染めながら告白』にまた俺は死んだ。そして復活した。乃々のためなら何度でも生き返れます。そりゃ夫ですから。

 

(あの台詞を言われてから更に飯が旨くなった。そして愛情は素晴らしいスパイスであることを漸く俺は実感した。高級店の見栄えが良い料理なんかよりも乃々が俺のために頑張って作ってくれた庶民的、一般的な料理の方が数億倍旨い。それに気づかされた。気づくの遅すぎない俺?)

 

風呂に入りながら先程起きた事を思い出す。

 

「……つーかまじで可愛いがすぎる。なんなんあれ。」

 

知り合って約十年の月日が経ち、二十四歳になった彼女。身長は伸び、楓さんの様なモデル体型にさえなった。背中までストレートに髪を伸ばしている姿は清楚そのもの。つまり、美人……っ!

 

「……何で俺みたいな冴えないおっさんが乃々と結婚できたんだ。」

 

別に格好よくはない。性格もいい訳じゃない。安定した収入がある訳でもない。面白い訳でもない。

 

「僥倖ってこういう事を言うんだろうな……」

 

 

 

 

 

俺が風呂を出た後は乃々が入浴。それが完了し、次に俺達は就寝準備をする。

 

……パジャマ姿の乃々はまだ慣れない。いや、可愛すぎんだよ。また俺が死んじゃったじゃん。生き返るけどさあ。そろそろ森久保Pはアンデッドって呼ばれてもいいと思います。

 

なーんて脳内でぶつぶつ一人言を放っている間に就寝準備も完了していた。ベッドで夫婦二人仲良く寝そべっている。

 

(隣にいらっしゃる俺の乃々から甘い香りが……)

 

なんか俺ドキドキしてるわこの状況に。頭真っ白になりかけててヤバい。

 

(まあ、待て。夫婦なんだから何回も一緒に寝てるだろとかそんなのでドキドキするってお前中高生かよとか言いたい人がいるかもしれない。)

 

俺はそういう奴らにふざけるなと言いたいね。だって乃々だぜ?世界で最も可愛い生物が隣にいて冷静でいられる奴はホモくらいしかいねえだろ。何回一緒に寝ても可愛いものは可愛いんだよ!そんな可愛くて愛しい人が寝言で好きとか言いながらニコニコしてんだぞ!ドキドキするに決まってるだろ!いい加減にしろやァ!

 

(それにその……夫婦の営み的なアレは、まだなんで、あの、えっと、緊張する。うん。緊張してる。毎日。心臓の負担が凄い事になってる。)

 

まだ結婚して一年も経ってないのにそんな事は出来ない。もし嫌われたらどうすればいいんだよ。自殺するぞマジで。っておい。ヘタレとか言った奴は誰だ。

 

なんて弁論を心の奥底でまくし立てていると乃々が急に抱きついてきた。

 

(ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

 

「乃々?ど、どうした?」

 

(ァッ!!!!甘い香り!!!!仄かに伝わる心音!!!!静かな息遣い!!!!暗くてもよく見える真っ赤な頬!!!!主張する双丘!!!!スベスベの太腿!!!!高い体温!!!!潤んだ瞳!!!!)

 

頭真っ白。死ぬ。心臓止まる。

 

「いえ……今日はこうやって、眠ろうかなって……だ、だめ、ですか……?」

 

「いいよ。うん。そうだね。いいよ。おっけ。りょうかい。まかせて。だいじょうぶ。どうぞ。さあ。よし。ふう。うん。おやすみ。だいじょうぶ。おっけ。おやすみ。」

 

「だ、大丈夫じゃなさそうですけど……」

 

「だ、だだだだだだいじょうぶ。」

 

「そ、そうですか?」

 

訝しむ乃々。こちらをじーっと見つめてくる。今だけはそれが辛い。その、男の本能というものが……ゥッ!!

 

「さ、寒いなら、こうすれば暖かいですよっ!」ギュッ

 

更に強く抱き締めてくる乃々。勇気を振り絞ったその行動は称賛に値するよ。でもね。

 

「(昇天)」

 

俺は『相手を心配し、なら自分の身体でその相手を暖めて安定を図ろうという無意識の誘惑』に当然死んだ。生き返るのは次の日の朝だろう。そう思いながら意識を手放した(白目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……プロデューサーさん寝ちゃいましたね。」

 

「また……また何もせずですか……なんで…………もしかすると、魅力無いのかな……私……」

 

「いえ、そんなことはないはず。うん。だってプロデューサーさんも顔真っ赤にしてましたし。うん。大事にされている。そういう事なんですよ。理解するのだ乃々ー……なーんて……はあ。」

 

「男気だせー……こっちはいつでもいいんだぞー……むぅーりぃーじゃないんだぞー……」ギューッ

 

「……虚しい。」

 

「寝ますか……はあ。」

 

 

 

 

 

「おやすみなさい……」




口調の変化は意図的。なんていうか、乃々って20越えだしたら口調変わりそうじゃない?こう、清楚っぽく……って、え?変わらない?……こまけぇこたぁいいんだよォ!(逆ギレ)


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お嫁さんの森久保 後編

なんだこれは(驚愕)
下ネタがあるではないか(注意喚起)
しかも内容が稚拙ではないか(確認)
つーか何で森久保とイチャイチャしてんだよふざけんな●すぞ(二重人格)


「……何を怒っているのでしょうか乃々さん?」

 

夜の十一時半、自宅にて。俺は正座させられていた。

 

急だ。マジで急にだ。

 

いつもどおり仕事を終えて帰宅、愛しき乃々と一緒にご飯食べたり話したり一人ずつ風呂に入ったり……

 

さて睡眠だ!と思えば乃々に止められ、

 

「ちょっと座って下さい。」

 

と言われた。座った。

 

怒られた。

 

何故。

 

「何を怒ってるか、ですか。分かりません?」

 

「は、はい。ごめんなさい分かりません。」

 

話挟むけど乃々って怒った顔も可愛いな。特に目が良い。じとっ、と見つめる目が良い。

 

「……私たちって結婚して一年と二ヶ月ですよね。」

 

「うん。」

 

夫婦円満に過ごしたその年月、国宝に値する程のモノだと俺は思う。ほんとに乃々可愛いし、優しいし、ユニークだし、可愛いし…………これは大天使ノノエルだわ。疑いようのない事実。

 

しかしその大天使に俺は何回殺されたんだろうか。自分の予想では多分千回くらい逝ってる。天界の民と顔見知りになっちゃってもおかしくないレベルで逝ってると思う。

 

「……そ、その…………えと……」

 

突然顔を真っ赤にさせてモジモジしだした乃々。可愛い。つーかいつの間にか乃々まで正座してるし。真面目か。相手だけじゃなくて自分も座らなきゃ失礼だって思ったんだろうな真面目か。

 

「どうした。」

 

「あの……ちょ、ちょっと待って下さい……」

 

「え?う、うん。」

 

「すぅー…………はぁー…………すぅー…………」

 

……なにこのただ乃々が可愛いだけの時間。俺にしか得がないんだけど。

 

胸に手を当てて深呼吸している乃々がいじらしくてやはり可愛い。好き。結婚は……既にした!

 

と、乃々が此方を真剣に見る。キリッとした表情も相まって、シリアスムードが全開である中彼女はこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、一体何時になったらセック」

 

「ストップだもりくぼォ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くんだ森久保。いいな?な?」

 

「お、落ち着いてますけど?シラフですけど?」

 

あの森久保からこんな言葉が出るなんて。俺は驚嘆した。

 

いや意味不明だよ。そんな唐突にせ、せ、せっ……夫婦の営み的なアレをぶちこんでくるなんてさ。

 

驚嘆しすぎて叫んじゃったジャマイカ(錯乱)

 

「な、なら何でそんな、卑猥な事を!?」

 

「ひ、卑猥じゃないです!!別に、夫婦なら致す事ですよね!?」

 

「そうだけど!!そうだけどさ!!」

 

「わ、私魅力ないんですか!?据え膳を食べないなんてそうとしか」

 

「ちっっっっげぇよ!!!!襲いてえよ!!俺だってしてえよ!!」

 

「へ!?!?そ、そうですか!!!!へえー!!!!」

 

「ああ!!そうだよ!!今からでもしてえよ!!」

 

「し、しますか!?!?」

 

「しねえよたわけェ!!!!!!!!!!!」

 

「どうして!!」

 

「大事だからだよォ!!!!!!!!!」

 

「大事なら私の言うこと聞いて下さいよ。」

 

これまでのハイテンションが嘘のように小さく呟かれる。

 

正座状態を止め、立ち上がって口論してたのにまた彼女に正座された。地面をポンポンと乃々が叩く。座れって言いたいらしい。

 

「いや急にテンション下げないでくれません?素面だとこんな話恥ずかしくて出来ないし。」

 

再び正座してそう伝える。

 

「プロデューサーさんの照れ顔が見れるんだったら喜んで下げます。それと下ネタも言ってあげます。」ドヤァ

 

「キャラ崩壊が著しい。」

 

それとその謎のどやくぼ止めろ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「真面目に、その、心配なんです。自分に女性としての魅力がないのかなって。」

 

目を伏せ、しかも声も震えさせながら乃々はそう言った。

 

(うわやべぇ。これ今夜そういう事しなきゃ乃々がガチってしまう。)

 

乃々はアイドル時代から性格があまり変わっていない。

 

臆病で心配性、自己評価が低い、そして責任感が強い。

 

自分のせいだとか自分には代わりがいるだとかいう思考に陥りやすい子だ。

 

何かしらの事件が起こる度に乃々は「ごめんなさい……自分が不甲斐ないばかりに皆さんに迷惑をかけてしまって。」と言っていた。

 

そんな、必要のない責任を感じてしまうのが乃々なのだ。

 

これを俺は『ガチる』と呼んでいる。

 

このガチりの対処は難しい。何故なら。

 

「魅力は充分にあるよ。乃々にしかない女性らしさに俺は惚れたんだから。」

 

「そんな嘘に騙されませんけど……」プクー

 

(こうやって直ぐ不貞腐れるから……!)

 

「頬を膨らませないで。全くもう。可愛いなあ。」

 

肯定的に寄り添う。乃々との会話で否定から入るなんて言語道断だからな。

 

「何も可愛くなんてありませんよ。今までのあなたの態度がその証明です。ふんっ。」

 

「いいや。乃々の事をずっと見てきた俺が言うんだから間違いない。可愛い。」

 

ここで最も重要な言葉は『乃々の事をずっと見てきた俺』である。この言葉が乃々のちょっとした独占欲を満たすのだ。そこに後押しとして誉める言葉を入れ、完璧となる。

 

「……」

 

「それにさ、大好きだからこそ軽々しく手を出したくないっていう気持ちが俺にあるのも分かってほしいな。」

 

君が大事だということを伝える。乃々とのコミュニケーションに於いて、君が大事と君が必要という文章は最早定型句として覚えてもらっても構わない程に重要なものだ。乃々学三級で頻出だからねここ!

 

「……まあ、分かりますけど。」

 

よし、今回はあっさりと引き下がってくれた。このまま有耶無耶にして終わらせよう(童●並感)

 

「だろ?つーわけで、夜も遅いし今日はもう寝よう!まだそういうのは無しで寝」

 

「それとこれは別では?」

 

冷たく放たれる。あれ?いつもなら言いくるめれるのにな……(焦り)

 

「あー……」

 

何にも言えない。ド正論ぶちかまされるとは思ってなかったし。

 

「一年以上も経って軽々しくって……それは」

 

おいやめろ。やめてくれ。頼む。やめてくれ(懇願)

 

「い、いや軽々しい。滅茶苦茶軽々しいよ。そんなの、駄目だと思いましゅ!……ます!」

 

噛んでしまった。動揺してんのバレバレじゃん。と、

 

「同僚Pさんの事覚えてます?」

 

脈絡もなく、乃々が訊いてくる。

 

その問いに俺は不思議さを感じながらも答えた。

 

「…………渋谷さんと結婚したあいつか佐久間さんと結婚したあいつかどっち……?」

 

「どちらも、結婚して、一ヶ月以内です。」

 

「………………は?」

 

マジ?早すぎない?俺が臆病すぎなだけ?

 

「一ヶ月以内です。」

 

「……嘘だろ?」

 

嘘って言って……っ

 

「幸せそうでした。」

 

嘘って言えよぉぉぉぉぉおおおおお!!!!

 

「……えっと、その、」

 

何を言えばいいのかもう分からない。これ逃げれなくない?もうするしかなくね?

 

「はい。」

 

…………いや駄目だ。彼女を傷つけたくはない。自分の欲望や彼女の早とちりで行為に及んではいけない!

 

そうだ!彼女のため!別に俺が逃げてる訳じゃないんだから!

 

「や、やっぱそういうのはダメだ!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の日の朝。目覚めは、普通。

 

いや……うん。その。そういうこと。

 

逆とか現実で起こるんすね。つーか乃々さん肉食系なんすね。ってのが感想っす。はい。

 

隣を見れば、世界一可愛い乃々が満面の笑みで眠っている。

 

……勿論裸で。

 

(…………まあ、乃々が幸せそうだしいいか。)

 

あーだこーだ言い訳してたけど別に俺は不全じゃないし健全な成人男性なので欲望もあります。やられて後悔とかは無くて寧ろハマりそうな自分に嫌悪感抱いてます……俺気持ちわる……

 

なんて思いながら、眠っている乃々の頭を撫でる。サラサラの髪はとても手触りが良くて、香り立つシャンプーは俺を穏やかな気持ちにさせてくれる。

 

(結婚って、難しいね…………)

 

乃々の寝言を耳に入れながらそう思った。

 

 

 

「んふふ……あいらびゅー…………♪」

 

 

 




こんなひでぇ結末は俺も初めて見たぜ……


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病んでる森久保 前編

ヤンデレとは言ってないです。


コンコン。休憩室の扉を叩く。もしかしたら彼女が寝ているかもしれないので、弱くそっとを心がけて。

 

「はい……げほっ。」

 

「俺だ。今入って大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です。どう……ゴホッゴホッ。」

 

小さく失礼しますと言い部屋に入る。そこには、仮眠用のシングルベッドに横たわる俺の担当アイドル、森久保乃々がいた。

 

「体調はどんな感じだ?多少でも良くはなったか?」

 

「そうですね。多少だけ……げほっ。」

 

「咳、止まらない?」

 

「そろそろ落ち着いて来たので、止まると思います……」

 

「そうか……吸入ステロイドは?」

 

「もうやりました。」

 

「わかった。」

 

乃々は慢性的な咳喘息患者。ここ最近は症状が軽くなり、そこそこの運動も多少なら出来る様になってきた。

それでもやはり来るときは来てしまうもので、その結果がこれだ。自分の管理ミスで彼女を苦しめてしまうなんて、申し訳無くて心が痛くなる。

 

「ごめんな。俺の管理ミスだ。俺のせいで苦しい思いさせちまって本当にごめんな。」

 

「……気にしないで下さい。別にプロデューサーさんのせいじゃないんですから。」

 

「でも、過度な運動は禁物なのに、ライブがどうとか、そんな理由で乃々を苦しめてしまったと考えると、」

 

「違います。プロデューサーさんは悪くありません。誰も悪くありません。悪いのはこの病気です。」

 

「……けど、」

 

「トレーナーさんは症状が出た時適切な処置を施してくれました。輝子ちゃんはプロデューサーさんを呼びに行ってくれました。美玲ちゃんは私を落ち着かせようとさっきまでずっと側に居てくれました。プロデューサーさんはもりくぼをここまで運んで、こうやって心配して見に来てくれました。」

 

「……」

 

「皆優しくて、誰一人として悪くなんてないんですから。そんなに自分を責めないで下さい。」

 

「……わかったよ。乃々がそう言うなら。」

 

彼女はとても優しい。自分が一番辛いはずなのに俺を励ましてくれるんだ。

 

(乃々のためなら、俺は何だってやれるかもしれない。そう思ってしまった。)

 

 

 

 

 

「…………ふう。大分収まりました。」

 

「本当か?」

 

「はい。元通りです。」

 

もう動ける状態まで回復したらしい。でもまた同じ事を繰り返すつもりはない。不安だし、もう少し休んでいてもらおう。ライブよりも乃々の身体の方が大切だ。

 

「まだ休んでろ。直ぐに動いてぶりかえしたら本末転倒だ。」

 

「……ふふっ。心配性ですね。」

 

「当たり前だ。乃々は大事な俺の担当なんだし。心配しすぎるなんて事は無いよ。」

 

「……そうですか。」

 

「ああ。」

 

「ここは、窓から見える景色が綺麗なので好きです。」

 

「ああ。」

 

「…………」

 

「…………」

 

それっきり二人の間に会話は無くなった。乃々は外を見つめ、俺は乃々を見つめる。静寂。寂しさを感じさせない暖かい静寂。

 

小鳥の囀りは季節の彩りを二人に伝えてようとしていた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ふと浅い息遣いが聴こえ、そちらに注意を向けると。

 

(……プロデューサーさん、寝ちゃったみたいですね。)

 

温い春の日射しと弱い春風にあてられ熟睡中の彼。どうやら心身の疲れが溜まっていたようで。

 

「お疲れ様です。」

 

私は身体を起こし、彼の頬にかかる髪を指で上げながらそう言いました。

 

「……徒労、とも云えるんですかね。」

 

 

 

 

 

『耳に付けられたイヤホンから流れ出る情報に集中。

 

「プロデューサー、ねえ、答えて?」

 

なんで、彼以外の声が?

 

「……無理だ。」

 

「なんで?」

 

それはもりくぼの台詞なんですけど。

 

「俺らの関係を考えれば分かる事だろう?」

 

「分かんないよプロデューサー。分かんない。」

 

……ああ、耳障り。

 

「そんなの関係無い。」

 

彼を困らせないで。

 

「アイドルとプロデューサーである前に、私達は男と女。」

 

これ以上、その穢らわしい声を彼に聞かせないで。

 

「男として、こたえて?」

 

彼が可哀想じゃないですか。

 

「私は__」

 

……早く、もりくぼが助けてあげないと。』

 

 

 

 

 

プロデューサーが起きてる時後ろ手に隠していた吸入器をベッドの近くのゴミ箱に捨てます。

 

(症状なんて出てないのに吸う訳ないんですけど。治っちゃったら、彼が悲しんじゃいます。弱いもりくぼが好きな彼を悲しませるなんて万死に値します。)

 

「にしても人って簡単に騙せるんですね。」ボソッ

 

 

 

 

 

『「だ、大丈夫ですか乃々ちゃん!?えっと、こういう時は……」

 

「ボ、ボノノちゃん?あっと、えっと、ぜ、喘息……プ、プロデューサーを呼んでくる!」

 

「ノノっ!お、落ち着けよ。呼吸を、意識して、するんだ。大丈夫だからな!」』

 

 

 

 

 

「演技も大変ですね。」

 

私は彼の頬をそっと撫でます。大事に、大切に、慎重に。

 

(でも、その大変さに見合うモノは貰えますから良いとしましょうか。)

 

そして私は自分の顔を彼の顔に近づけて。

 

「……愛してます。プロデューサーさん。」

 

唇が___




ヤンデレじゃないとも言ってないです。


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病んでる森久保 後編

クッソ短いけど許して。


朝照りも強く、健やかな快晴のとある一日のこと。

 

仕事やレッスンも無く、椅子に座った事で地面から浮いた足をブラブラと揺らしていた森久保にプロデューサーさんが言いました。

 

「今日の体調はどうだ?大丈夫か?」

 

彼からです。

 

彼の方から話しかけてくれました。

 

たったそれだけの、こんな些細な事が嬉しくて。

 

ああ、どうしよう。森久保だけを心配しているプロデューサーさん。今、この時、この瞬間は。

 

(あなたを独り占めできるかもしれない……)

 

早朝の事務所には人気なぞ存在していません。

 

その幸福の計りし得ない重要さ、森久保以外に理解できるなんて有り得ないんですけど。

 

なんでもいい。

 

小さな事でいいからもっと近づきたい。

 

こうするしかありません。

 

「……ちょっとだけ、辛いんですけど。」

 

常套手段。

 

嘘。

 

全くの偽り。

 

でも許して下さい。

 

素直になれない愛でごめんなさい。

 

森久保の全部があなたを求めてるんです。

 

仕方ありませんよね。

 

このチャンスを無駄にはしたくないのですから。

 

「なので、いいですか?」

 

「ああ……まあ、二回目だけど、いいぞ。ほら。」

 

そう言ってプロデューサーさんはおおらかな態度で膝を明け渡します。勿論、私だけの為に。

 

それだけで私は幸せでした。

 

しかし周りに他の誰もいないという事実も相まって、彼のその行動に、森久保は更に、痺れる程の快楽を感じました。

 

(森久保を気遣って、膝枕。)

 

私だけの特別。オンリーワン。

 

嘯いてでも欲しくて、何を犠牲にしても欲しくて、どれほどを無為にしても欲しくて……堪らない。我慢すらきかない。

 

その一つが手に入ったんです。

 

(好きです……大好きですプロデューサーさん。えへ、えへへ。)

 

にやついている顔がバレないように手で隠す。恥ずかしいですし……

 

なんとか表情筋を元に戻して、自分の頭を彼の太腿にそっとのせました。けれども、ふわりと香った柔軟剤に森久保はまた敗北するのです。

 

目を瞑り、密かに静かに深呼吸。

 

心が落ち着いて、そしてざわつきます。愛しくて愛しくておかしくなりそうだと。

 

凄く気持ちいい。麻薬のようです。思考が蕩けてままなりません。このまま、身を捧げてしまいたいと衝動的に思ってしまうくらいに。

 

夢想してしまう。プロデューサーさんとの衝動性を。

 

(そうなったら、森久保はたぶん……)

 

 

 

……ふと、柔らかい感触が髪を通り抜けていきました。

 

頂からするすると下降していくその感触。撫でられていたのだと気付くのに時間はあまりかかりません。

 

お母さんに髪を鋤かれる感覚にも似ていて、うつらうつらと、段階的に眠気が襲ってきました。

 

いつの間にか熱くなっていた身体が特にそれを誘引していたようです。

 

いいかもしれません。

 

(この熱が、浮いた熱が……あなたへの慕情。)

 

そう解釈してみると、またやはり、脳が麻薬に犯されていくのです。

 

ならばと思い、その感情の赴くまま、森久保は多幸感とプロデューサーさんに包まれて。

 

(おやすみなさい、森久保だけのプロデューサーさん。)

 

大好きな…………




法律の定むるところによると、森久保は女神らしいです(意味不明)


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女子大生の森久保 01

男の娘シリーズとは別世界です。男の娘のヤツもきちんと出すから怒らないで。


俺の担当アイドルは、昔とは大分変わった。

 

「梅ちゃん、そこ違うよ。そこはね……」

 

「え?……あ、ほんとだね。ありがとう乃々ちゃん。」

 

知り合って五年経ち、彼女は19歳、大学生になった。

 

「さっちー、大学はどんな感じ?」

 

「楽しいですよ。乃々さんは?」

 

「とっても楽しいですね。」

 

人見知りやどもりはいつの間にか無くなって、とても明るい少女に彼女はなっていた。

 

「凛さーん!」ギュッー

 

「わっ!?の、乃々……しょうがないなもう……」ギュー

 

「んふー♪」

 

「甘えん坊さんが~」ワシワシワシ

 

「わひゃー!」

 

(…………いやもう誰だよあんた。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おかしい。おかしいぞ。人はこんなに変わるものなのか。無茶苦茶明るくなってまるで未央さんみたいになってますよ。困る。非常に困る。何故かって?未央さんみたいって言ってんだから察しろやアホ。)

 

「プロデューサーさん、顔真っ赤ですよー?」ギュー

 

「……森久保、スキャンダルだから離れて。」

 

「ノーノー、なんちゃってー。」ギュー

 

「お前自分の人気分かってんの?昔で言う高垣さんレベルなんだぞ?」

 

「何言いたいのか分かんないです。」ギュー

 

「ファンに殺されるから退いてって言ってんの。」グイーッ

 

「無理久保なんですけど……」ギュー

 

「君のそれ都合良すぎない?」

 

「何とでも言うがいい!」ギュー

 

「お前ほんと頭良いのか悪いのか分かんねえな。」

 

「んー?」ギュー

 

(これでこいつが事務所でも屈指の頭脳派アイドルとか信じたくないです。)

 

「離れるつもりはないの森久保さん?」

 

「まだダメです……♪」ギュー

 

 

 

 

 

(五年前の慎ましやかな可愛さを返して神様。切望。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

いつからこんな事になった……?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

真面目な話を一つ、しておきましょう。え?どんな話か、ですか。……まあまあそう急がず。ちゃんと話しますから。

 

……私は、この事務所でアイドルを始めて五年経ちます。この事務所に来たばかりの14歳の頃、私は酷く世間に対して臆病でした。信用出来ないとか、恐怖しているとか、そういうことではなくて、ただただ臆していました。

 

(も、ももも、もりくぼには無理なんですけど。他に適任な人がいますから。ほ、ほっといて下さい……)

 

ずっと、狭くて暗い、もりくぼにお似合いのみすぼらしい場所で縮こまっていました。

 

 

 

 

 

『前と同じ様に』感じた人の気配に顔を上げます。

 

 

 

 

 

「……見つけたよ。乃々。」

 

そういえば貴方は、いつもいつも、執拗に私を追いかけ回していましたね。諦めず、本当にいつも。今ではそれも良い思い出です。

 

___

 

「何でもりくぼなんですか。他にもりくぼ以上にやれる人がいるじゃないですか。か。」

 

(そう私が言った後、貴方は少しの間黙ってしまった。失望させてしまっただろうか。でも、もりくぼは今日じゃなくてもいつか必ず貴方を失望させてしまう。なら、早く私なんて見限った方が貴方にとってはいいんです。そう考えていました。)

 

でも、口を開いた貴方は、

 

「違うよ。乃々じゃなきゃ、駄目なんだ。乃々が、必要なんだ。」

 

なんて、言ってくれました。

 

___

 

『……そうか。君がそう思うならそうするよ。君もやりたくない仕事をやるのは苦痛だろうからね。』

 

___

 

『またそれか。お前はいつもそれだな森久保。もういい。期待外れだ。失望したよお前には。』

 

___

 

『確かにそうだな。乃々じゃなくても良いか。やる気のある奴に仕事は回すべきだもんな乃々。君とは違ってさ。』

 

(……嘘だと思った。そんな甘い言葉を信じてはいけないと思った。けど。)

 

___

 

「期待してくれてるんですか?……って、当たり前だろ。滅茶苦茶期待してる。失望しない?しねえよ。もりくぼでいいの?そうだ。いや、そうじゃなきゃ駄目だ。それ以外は有り得ない。」

 

__

 

「まさか、アイドル『楽しんでる』ヤツの手助けをしない訳ないだろ。」

 

『アイドル、楽しくなかった?』

 

「プロデューサーってのは、いつだって担当を『見ている』もんだ。」

 

『そもそもお前の姿は見えない事ばかりだったしな。サボってたんだろ?』

 

「『やる気満々』で、隠れて『努力』してんの知ってるんだぜ?」

 

『やる気ねえ奴がアイドルすんのはさ、頑張ってる人に失礼だろ?』

 

「何処に隠れていたって、執拗に追いかけ回して見つけだすよ。だって、俺には君が必要なんだからな。」

 

……心の奥底が、じんわりと暖かくなって、その暖かさが体中に広がって。

 

_

 

「失敗して失望されるのに臆してる私でも、本当に良いんですか……いいぞ。乃々が何度失敗しても、俺はずっと側にいる。魔法使いは何があってもシンデレラを見捨てない。」

 

 

 

 

 

「…………少し。少しだけ頑張ってみようと思います、プロデューサーさん。失敗し続けても、アイドルを。」

 

 

 

 

 

この日、私は少しだけ、臆病な性格から一歩前へ進みました。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(今考えるとこの頃から既にもりくぼはプロデューサーさんの事が、まあ、その、す、す、す……好き、だったんでしょう。)

 

さて。真面目なお話の後は箸休めが必要ですよね。その箸休めとしてこんなお話も一つ。

 

もりくぼが本格的に変わりだしたのは、17歳。プロデューサーのある一言がきっかけでした。

 

いつも通りの仕事終わり、事務所の扉に手をかけた時聞こえた会話。

 

「恋バナって、ちひろさん今仕事中ですよ。」

 

なんだと、恋バナ?

 

そう思った私は扉をミリ開けて盗み聞きしました。

 

「私は終わってるのでセーフ。」

 

「貴様俺は終わってないぞ。」

 

「そんな事知らないです。」

 

「は?きれそう。」

 

「いいですから。はやく。」

 

「嫌ですよ。」

 

「なんでっ!」

 

「いや、理由なんて無いですけど……」

 

「理由もねえのに断るとは先輩に対していい度胸だなぁ?」

 

「ええ……はあ。しょうがありませんね。周りには誰もいませんか?」キョロキョロ

 

「(やった。)いま…………!」キョロキョロ

 

ちひろさんにバレました。が、あの人なら恐らくは。

 

(ちひろさん、もりくぼが隠れて聞いている事、プロデューサーさんには内密にお願いします。)

 

(……面白そうだしのります、乃々ちゃん。了解。)

 

「……せんね!ほら!いないんだから早く!」

 

やりました。

 

「わ、分かりましたよ。テンション高いなあ。」

 

「フンスフンス」

 

「恋バナっすかー……んー……」

 

「フンスフンス」

 

「……」

 

「フンスフンス」

 

「……すんません。思いあたんねえっす。」

 

「は?」

 

「い、いや、その、実はまだ恋をした事がなくて……」

 

「23歳にもなって経験ゼロとか終わってんな。」ボソッ

 

「別に俺は難聴系主人公じゃないんで全部聞こえてます死刑。」

 

「弁護士によって無効化。」

 

「ぐあーっ!!」

 

「本当ですかプロデューサーさん。」

 

「はい。」

 

「えー……つまんねー……」チラー

 

(もりくぼ個人的にはちょっと嬉しかったりなんて。)

 

「じゃー、好きなタイプは?教えてくれませんか?」

 

なんですと!?

 

「え?まあ、いいっすけど。」

 

なんですと!?

 

(全神経を右耳に集中させて……!)

 

森久保乃々って言って……いえ、言わなくてもいいんですけどね!べ、別にこれはそういうのでもないんですし!

 

「えっと……その……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未央さん……みたいな人が、好きです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(うっわ、乃々ちゃんが聞いてる中でそれを言うなんて。)」チラッ

 

(シロメ)

 

「(これやべ。)」

 

「乃、乃々ちゃんとかは!?どう思ってるんです!?」

 

「(タイプって言え×∞)」

 

(ドキドキ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いややっぱ未央さんですよ。」キッパリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(あ、こいつアホだわ。)」

 

 

 

 

 

この日、私こと森久保乃々は決心したのです。怒りに燃え、嫉妬に燃え、臆病を消しました。恋する少女は強い。14歳の頃中々湧かなかった一歩前進する勇気がいとも簡単に湧いてきたのです。(急な決意表明)

 

 

 

 

 

(……未央さんを越えなければならないようです。)

 

今日から貴方は天敵。

 

(振り向かせてみせる……プロデューサーさん……!)

 

……恋する少女は盲目でもある事に、彼女は勿論気付いていない。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

彼女は努力した。沢山努力した。その努力は彼女をアイドルとしても女性としても人間としてもステップアップさせた。しかし。

 

プロデューサーはとことんアホである。

 

(中学生の頃のいじらしくもある可愛さを返して。)

 

恋心が分からない彼は、これからも彼女に振り回され続ける。

 

そして、気付かない。

 

(好意に気付いてーっ!好き好き大好きなんですっ!貴方の為にこんなに変わったんですよ!)ギュー

 

恋に盲目な彼女と。

 

(ねえ、甘い香りがする~。や~め~て~。好きになっちゃう~。勘違いしちゃう~。未央さんみたいな事しないで~。)グイーッ

 

好意に盲目な彼は。

 

((この人昔と比べて変わりすぎだよ……!))

 

『「ここにいたのか森久保ォ!」ガシッ

 

「あうっ。」

 

「さあレッスン行くぞォ!」グイーッ

 

「ひぃー……」ギュッ

 

「ちまっと服の袖を掴むな可愛いだろ森久保ォ!」』

 

 

 

 

 

案外、彼らの関係が変わっていないことに。




森久保愛しい……好き……未央が好きなんて一言も言ってないのに勘違いして頑張っちゃう茶目っ気も好き……


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女子大生の森久保 02

森久保の女子大生ネタって発祥どこなんだろう。


「プロデューサーさーん、暇でーす。構って下さーい。」

 

「乃々さーん、私は忙しいでーす。構えないでーす。」

 

このやり取りももう何回目だろう。乃々が甘え声で俺に頼み事をして普通に断る。数えきれない。乃々が可愛いからいいんだけどさ。

 

「つーか机の下から出ろよ。狭いでしょ?」

 

「……バレました?」

 

「いや俺椅子に座ってるんだからそりゃバレるでしょ何言ってんだお前。」

 

「辛辣!」

 

170近い身長の女の子がデスクの下で俺を見上げているのだ。分かるでしょ。

 

(にしても背徳的である……ごくり。)

 

とそんな事を思ってからすぐ、乃々が言った。

 

「……あれー?プロデューサーさん、邪な事考えてませんか?」

 

「は!?」

 

ニヤニヤしている彼女。うぜえ。でも確かに邪な事は考えました。だ、だってこんなのフェ(検閲が入りました)

 

「何処を見てるんですか?」

 

上目遣いで顔を赤くしながらこちらにしなだれかかってくる乃々。ちょ、まって、おとこの本能が。

 

「……ふふ。」

 

細い指で俺の脚を触る彼女。すっ、とその指を上に上げていく。ふくらはぎから太腿へ。

 

「や、やめ!」

 

「やーです。」

 

「嫌とかじゃなくて!俺社会的に死んじゃう!」

 

「むぅーりぃー」

 

「だからほんとにそれ都合良すぎね!!」

 

太腿からそのまま、そのまま……

 

「どうですプロデューサーさん。ゾクゾク、しますか……?」

 

蠱惑的な声が二人だけの空間に響く。あ、これむり。まちがえる。ごめん。もう俺いっちまいます!

 

と、

 

「おはようございまーす。」ガチャ

 

「「ブホッ」」

 

突然の乱入に二人して吹き出してしまう。おま、ここで来るとかご都合主義が過ぎません!?

 

「の、乃々、絶対喋んなよ。社会的に死にたくなかったらな。」ヒソヒソ

 

「わ、分かってますよ!!上手く誤魔化して下さいね!!」ヒソヒソ

 

くそっ、なんなんだこの超展開は!!エロくぼが机の下でご奉仕♥️かと思ったら誰かが来やがった!!(悔しがるクソ男の図)

 

「え、どうしたのそんな苦虫を噛み潰した様な顔をして。」

 

「ん!?いや!?なんでもねえよ!?」

 

「そう?」

 

「そうだよ凛!!」

 

渋谷は苦手なんですけど……(タイムリーネタ)

 

「なんか今日のプロデューサー変じゃない?」

 

事務所に帰って来て早々、凛が小馬鹿にするように俺へ発言した。

 

「いつも変だろ。」

 

「確かにそうだね。」

 

「は?」

 

「ええ……理不尽。」

 

俺を馬鹿にしていいのは俺だけだ。小馬鹿までなら許す。

 

「凛にしかこんな理不尽にならねえよ。」

 

「何が言いたいのかよく分からない。」

 

「凛は俺の特別ってことさ……」

 

「病院紹介しようか?」

 

「ひでえ。」

 

なんて感じに俺と凛はいつも通りの会話をしていたが。

 

「……なんか座り方おかしいけど足怪我した?」

 

凛が問う。目敏い野郎……じゃなくて女だぜ。

 

「お、男ってのは格好いい座り方を毎日模索してるもんだからな。座り方が違うのは怪我のせいではない。」

 

「ふーん。」

 

「訊いておいて反応うっす。」

 

「テレテレ」

 

「は?」

 

「ええ……理不尽。」

 

いや今のは理不尽じゃないでしょう。突然ボケられたらこんな反応になりますって凛さん。

 

(……なーんかプロデューサーさん、もりくぼと話す時よりも楽しそう。妬けますね。)

 

「理不尽ではありません。当然の結果です。」

 

「また同僚Pの真似?」

 

「あいつ面白いし良い奴だよ。あと渋い。」

 

ガタイも良いよね。惚れ惚れする。

 

「そんな恍惚とした表情で語られると少しひく。」

 

「ひでえ。」

 

(上手く誤魔化して下さいね……)

 

 

 

「っ!」ビクッ

 

 

 

「身体浮かせて何してんの?また格好よさ追い求めてるの?」

 

くすぐったい感覚に体が反射を起こしてしまった。机の下を見ればその感覚の正体が乃々のちょっかいであると判明した。森久保ォ!

 

「そ、そうそうそう!せやで!」

 

凛の質問に応対しながらキレる。

 

(なにすんだ森久保ォ!殺しにきてんじゃねぇぞォ!)

 

(だって凛さんと話してる時凄く楽しそうなんですもん……)

 

(嫉妬ォ!?)

 

(そうですよいけませんか!?)

 

(逆ギレはおかしくね。後足裏こしょこしょすんの止めて。)

 

(むぅーりぃー♪)

 

(てめぇ……)

 

森久保との交戦中、再度、凛に質問される。

 

「下向いて何してるのプロデューサー。虫?」

 

それに俺は答える。相応しい答えをな。

 

「ああ。虫だ。鬱陶しい虫だ。」ニヤニヤ

 

すると俺がそう答えたせいか、乃々が暴挙に出やがった。

 

(へー。そんな事言うんですねー。ならこちらもやってやりますよ。)ブチッ

 

「り、凛さん……助けてぇ……」

 

(ふぁ!?!?!?森久保ォ!?!?!?)

 

「……乃々?何処?」

 

通常時と比べて幾分か低い声が凛から聞こえた。

 

「ここです……」ヒョコッ

 

しかし乃々が机の下から出てきた途端、声色は元に戻り、

 

「え……そんなとこで何してたの……な、ナニをしてたの……?」ヒキッ

 

彼女の暴走が始まった。

 

「ひ、ひかないで下さい!そうじゃないんです!」

 

「で、でもどう考えてもその状況はフェ」

 

「それ以上はいけないぞ凛。」

 

「凛さん、本当にそういうのじゃないんです。」

 

「……まあ、信じておくよ。うん。」

 

(凛と距離が出来てしまった……森久保ォ!貴様ァ!)

 

「求められたんです!プロデューサーさんに!」

 

!?

 

「え!?」

 

「あ、そうなの?無理矢理じゃなくて乃々も了承して、ってこと?」

 

「そうですそうです。」

 

「ならオッケーだね。」

 

「オッケーじゃねえよ!?は!?凛までそんなこと言うの!?」

 

「え……だって二人共そういう事したいなら意見の一致で」

 

「いや駄目でしょう!?アイドルとプロデューサーだからね!?」

 

「でも前に言ってたじゃん。好き合ってるならしょうがないって。」

 

「好き合ってるなら相手を机の下に押し込んでもいいとか末法の世かよ。」

 

「は?」

 

「ええ……理不尽。」

 

この女達、二人共々おかしいだろ……

 

「付き合ってるなら大丈夫だよ二人共!」グッ

 

凛が右親指を上に向けながら微笑んでそう言った。

 

「えへへ……」

 

「いや付き合ってねえよ。森久保も何で照れてんだ。」

 

「結婚おめでとう。祝福するね。」

 

「えへへ……」

 

調子にのった悪のり渋谷と壊れた機械の恋愛脳森久保……うん。

 

「帰るわ。」

 

「ごめん。ふざけた。待って帰らないで。」ガシッ

 

「許して下さい。もうしません。」グイッ

 

「なんやねんお前ら……」

 

「面白そうだったしのっちゃった。てへ。」

 

凛が赤面しながら発言した。よし。

 

「可愛いから許す。」

 

「やった。」

 

「面白そうだったしのっちゃった。てへ……」

 

森久保が赤面しながら発言した。よし。

 

「可愛いけど許さん。」

 

「なんでですか!?」

 

昔とは段違いの大きな声で叫ばれる。

 

「森久保さん、今までの俺に対する行動を振り返ってみて?どう?」

 

「適切では。」

 

「不適切だバカ。」ペシッ

 

頭を軽く叩く。

 

「あうっ。」

 

「お前無防備すぎ。大学でもこんなんか?」

 

俺の注意に彼女はごにょごにょと返答する。

 

「そ、そんなわけないですよ。」

 

「じゃあなんで俺だけ。」

 

「……気付けアホ。」ボソッ

 

「は?なに?」

 

「何でもないですー。」

 

「おい。なんか罵倒された気がするぞ。何言ったコラ。」

 

「俺社会的に死んじゃう!(声真似)」

 

「お前覚悟しろよ。」ガシッ

 

「ぐえっ。」

 

と、乃々とじゃれあってたら、

 

「……ねえ、イチャイチャして楽しい?」

 

近くにいた凛にそう問われた。とても冷たい声で。

 

「イ、イチャイチャなんてしてねえよ!?」

 

「はあー……無理あるよそれは。」グイッ

 

「ふぁ!?!?!?」ビクッ

 

乃々には分からないように小さく体を引っ張り寄せられて、俺は凛に少しだけもたれる体制となった。

 

(え。どうしたんですか凛さん。)

 

そして俺の耳元に口を近づけ、呼吸とリップノイズが聞こえる程に近づけ、そして。

 

「……嫉妬しちゃうよ。ね?」ボソッ

 

優しく囁かれた。

 

「っ!」ボッ

 

(え?何でプロデューサーさん顔を赤くしてるんですか。えっと、え?)

 

「おっ、おまっ、凛おまっ!」

 

彼女はすっと俺から離れて、今度は乃々へ近づく。

 

「乃々、頑張ってね。この男鈍すぎるから。」コショコショ

 

「あ……は、はい。」

 

それも終わると凛は来たばかりなのに外へ戻ろうと足を向けた。

 

「ちょ、何処行くねん!」

 

「奈緒のとこー。」ガチャ

 

 

 

 

 

「なんなんだよあいつ……くそっ……」ドギマギ

 

(…………最後にやってくれましたね。凛さん。)

 

「はー……乃々、離れて。」

 

「えー。」

 

「お願い。」

 

「はーい……」

 

「…………なあ、乃々。」

 

「?」

 

「明日の夜って暇?」

 

「はい。」

 

「飯食いに行かね?」

 

「いきます!!!!!!!!」

 

「(その声量をテレビで出してほしい。)よかった。予定が合って。」

 

(やっぱもりくぼは大事にされてる……?)

 

「えへへ……」ニコニコ

 

(急にニコニコし出すとか怖えな。)

 

「それじゃあ、明日の夜はそういう事で。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

___続く




ちょっかいのかけ方が男子小学生みたいな女子大生森久保乃々可愛い。嫉妬が隠せなかった渋谷凛可愛い。


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女子大生の森久保 03

前置きとしてこの話はスキャンダルの無い平和な世界です。


「…………は?」

 

もりくぼは今大激怒してます。凄くイライラしてます。火山のマグマよりも熱く、ドロドロとキレてます。

 

「プロデューサー、箸取って。」

 

「ほい。」

 

「ありがと。」

 

「はんばーぐおいひぃー♪」モグモグ

 

「口に詰め込みすぎだぞ加蓮……」

 

「ん……ごくっ……はい、奈緒?あーん?」

 

「やらないからな。」

 

「あーん。」

 

「やらないって。」

 

「あーん。」

 

「……」

 

「あーん。」

 

「あ、あーん。」

 

「なんてね!」モグッ

 

「え」

 

「んー♪」

 

「……」

 

「あーんする時の恥ずかしそうな表情もいいスパイスになったよ。ありがと。」

 

「っ……」

 

「まーた赤くなったー。」

 

「あ、赤くない。」

 

「かわいーなー。」

 

「か、可愛くなんてない!」

 

「「「いや奈緒は可愛いよ。」」」

 

「は、はっ!?」///

 

……なんですかこれ。プロデューサーさんとイチャイチャ食事するんじゃなかったんですか。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

乃々を夜ご飯に誘った次の日。早速約束のままに外へ食べに行く事にした。

 

トライアドの三人も連れて。

 

そしてファミレス。

 

…………まあ、なんだ。

 

「は?」

 

「怒らないで。」

 

「詐欺ですよねこれ。」

 

「違います。」

 

「二人きりかと思ったらまさかの五人きりですかそうですか。」

 

「ごめん。」

 

「女の子侍らせて楽しいですか?」

 

「トゲ。」

 

「それにファミレス……まあこれはいいんですけど。」

 

「あ、そうなの?」

 

「気楽ですし、何より雰囲気が好きなんです。暖かくて。」

 

(言動と思考が可愛い。)

 

「凛さんも加蓮さんも奈緒さんも、五人で食事って聞いてました?」

 

「聞いてました、って言われても……」

 

「アタシ達が誘ったんだよ。」

 

「乃々も連れて来てって言ってね。」

 

「そういうこと。だからキレないで。怖い。」

 

「別にキレてはないんですけど……」ブツブツ

 

「じゃあ何でそんなに刺々しいの。」

 

「自分の頭で考えて下さい。」

 

「ええ……」

 

「ふんっ……」

 

(見せつけられてるんですが。でも可愛い。)

 

(乃々チャンかわいー。)

 

(子供らしい妬みだね。可愛い。)

 

「な、何がおかしいんですか皆さん。」

 

「なんでもない、なんでもない。」ニコニコ

 

「そうそう。なんにもおかしくないよ?」ニコニコ

 

「微笑ましいなんて誰一人思ってないから。」ニコニコ

 

「お、思ってるんじゃないですか!!」///

 

(((可愛いっ……!)))

 

トライアドの三人が弄りの臨戦体制に入った。面白そうだ。観賞しよう。

 

お、丁度良い所にポテトがある。つまみながらもいいかもな。

 

ふむ……顔を真っ赤にして……あざとい。流石乃々あざとい。そして可愛い。ほんとにクールなのかしらん。

 

て、ちょ、なんだ、おい、机の下に行くな、奇異な視線がきちゃうから、おい。

 

あ、あ、あ、あ、そ、そこは、ら、らめぇ!

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《森久保乃々の場合 1》

 

「いたい。」ヒリヒリ

 

涙を溜める森久保。べ、別に嗜虐心なんてそそられてないよ!

 

「社会的に殺そうとしないでくんない?」

 

「道連れの精神。」

 

「そんなもんは捨てろ。」

 

「興奮した癖に……」

 

図星じゃないです。決して図星じゃないです。

 

「してないわアホ。」

 

「……も、もりく」

 

「それ以上言うな変態。」

 

女子大生の森久保、ただのヤバい奴説。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《北条加蓮の場合》

 

「!?」

 

「どうした加蓮そんな今にも死にそうな顔になって。」

 

「ポテトきえてるなんでどうしてそんなうそだちがうこれはちがうげんじつじゃないゆめだそうだこれはゆめだだってそうじゃなきゃおかしいよ」

 

「すまん。食った。」

 

「親の敵。」

 

「言い過ぎ!」

 

「ひどいよ……とっておいたのに食べちゃったとか……アタシのこと嫌いなの……?」

 

「キミはポテトに命を救われたのか。」

 

「イエス。」

 

「ええ……」

 

「追加注文おけー?」

 

「オッケー。」

 

「ヤターー!!!」

 

(21にもなって元気だなコイツ。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《神谷奈緒の場合》

 

「奈緒、ハンバーグ少しくれない?代わりにパスタと少しの愛情をあげるから。」

 

「いいけど最後のやつはいらない。」

 

「そうかすまん。愛情足りないか。分かった。いっぱいあげるよ。」

 

「そうじゃないだろ!?」

 

「パスタ巻いたぞ。ほれ。あーん。」

 

「またこの下りか!」

 

「あー、悪いあれ忘れてたわ。美味しくなーれ、萌え萌えきゅーん。」

 

「それあんたがやるやつなのか!?」

 

「え、奈緒がやってくれるのか!?やった!!お願いしまーす!!」

 

「え、ええ!?」

 

「ハンバーグ一切れに愛情と萌えを添えてあーんで。」

 

「や、や、やんないぞ!?やんないからな!!」

 

「…………奈緒の可愛くて優しいとこ見たい。」キリッ

 

「あっそ。ふーん。」アセアセ

 

「一回だけ。一回だけだから。直ぐ終わるから。一回だけ。ね?」

 

「………………」

 

「奈緒?」

 

「…………」

 

「なーお。」

 

「う、うぅ……」

 

「奈緒。」

 

「……あーー!!!もう!わーったよ!!ほ、ほら!!あーん!!」

 

「もえもえは?」

 

「く、くっ……おい、しくなーれ、もえ、もえ、きゅーん……//////」

 

「あーん。」

 

「あーん…………///」

 

「……美味すぎて、泣ける。」ホロリ

 

「あっそ……なら良かったよ……はは……またなんか失った気がする……」ズーン

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《渋谷凛の場合》

 

「ドリンクバーは良いぞ。」ズザーーー

 

「また一人言?」

 

「おう。コーヒーって待ち時間出来るから暇なんだよ。」

 

「ふーん。」

 

「そんで凛は?」

 

「同じくコーヒーを。」

 

「そうか。」

 

「……ねえ。」

 

「ん?」

 

「私さ、プロデューサーに妬けるって言ったじゃん。覚えてる?」

 

「……お、おう(何故今その話を)」

 

「じゃあ意味分かってるよね?」ズイッ

 

「ひっ。」ビクッ

 

「私、独占欲は強い方だと思うんだ。」ボソボソ

 

「ヒェッ」

 

「放っておいたら、何をするんだろう?ふふっ。」

 

「(白目)」

 

「…………プロデューサー、もうコーヒー入り終わってるよ。取らないの?」

 

「(白目)」

 

「取らないなら、貰うね。」

 

「(白目)」

 

「……そんなに怖がらなくても良くないかな。コーヒー、入れておくよ?」カチッ

 

「(白目)」

 

「……間接キス、げっと。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

《森久保乃々の場合 2》

 

「ふんっ。」

 

「頼む。そろそろ許して。」

 

「二人きりの泊まり旅行。」

 

「え?」

 

「無理ですか?」

 

「無理ですね。」

 

「ふんっ。」

 

「頼む。そろそろ許して。」

 

「二人きりの日帰り旅行。」

 

「え?」

 

「無理ですか?」

 

「無理ですね。」

 

「ふんっ。」

 

「頼む。そろそろ許して。」

 

「二人きりの遊園地。」

 

「え?」

 

「無理ですか?」

 

「大丈夫です。」

 

「ふんっ。…………ふえ?」

 

「大丈夫です。」

 

「ほんとに?」

 

「それくらいならなんとか。」

 

「や、やった!」ニパーッ

 

(は?可愛い。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「それじゃあ、もう夜遅いし今日は解散しよっか?」

 

凛のその一声で夜の9:00、飯を食べに来て二時間と少しで、五人の集まりは解散となった。

 

トライアドの押せ押せにより、俺と乃々の二人で(実質俺が乃々を送る形で)帰る事となった。

 

乃々の目はそれによって今日初めてキラキラしだしたが、俺は逆だ。

 

(めんどくせぇー!!!)

 

これに尽きた。

 

加えて乃々が、その……こうふんしてる。

 

どういう意味でかは、想像にお任せするが。

 

運転中危ないかもしれない。

 

てか、誘惑とかあったら耐えれる自信ない。

 

こんなにめんどいめんどい言ってるけど相手は19の美少女なんやで?

 

色仕掛けやられたら速攻堕ちるわ。

 

(何かがあったとしても心を強く持つのだ、俺!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何も起きずに終わりました。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「ほら。あの二人まだ付き合ってなかったでしょ?」

 

「確かにそうだったね。」

 

「うん。」

 

(これはまだアタシにも)

 

(チャンスがあるって事で)

 

(いいんだよね……?)

 

__彼の知らない所で今日も火花が散らされる。




あー!お客様困ります!公然とイチャつかれるのはお止めくださ、あー!お客様!困ります!お客様!あー!

なおかわを享受しろ(もりくぼを忘れるクソ作者)


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女子大生の森久保 04

とあるssに影響受けてます。


平日。

 

私にはこの日の行動選択肢が普通の場合よりも多い。

 

何故ならアイドルであるからです。

 

しかしアイドルの森久保乃々がいるということはつまり、アイドルじゃない森久保乃々がいるということの証左でもあり。

 

今の私は大学内で講義を受けています。

 

 

 

 

 

講義が終わり一段落。

 

(長い……慣れない……)

 

二年生になっても講義の長さにはうんざりします。

 

こう、不真面目な訳じゃないんですよ?

 

仕事の疲れが抜けてないってだけで……(社畜)

 

本当にプロデューサーさんは酷い。

 

いたいけな少女にこの仕打ち。体は既にプロデューサーさんの言いなりぃ……ぐへへ。

 

(……寝不足でおかしくなってますね。)

 

丁度いい感じの時間ですし適当に暇を潰して事務所に向かいますか。

 

(髪の毛が邪魔……とりゃあー。)

 

すい、と、耳にかかる髪を上げる。

 

(眠久保……すぅ……)

 

おっと眠っちゃいけません。

 

立ち上がって講義室から出ます。

 

(頭の中がぐわんぐわんしてて正常を保てない。)

 

もりくぼ、ピンチ。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

大学生1(おい、森久保さんのこと見てたかお前ら。あの流し目。セクシーだったよな。)

 

大学生2(絶対俺のこと見てた。)

 

大学生3(は?)

 

大学生4(あれは眠かっただけじゃ……)

 

2(俺を見てたんだよアホ。その後、髪をかきあげてキレイな所作で歩いていった彼女……俺を誘ってるな?)

 

3(は?)

 

1(アイドルだからキレイなのは当たり前だろォ!?)

 

4(髪の毛が邪魔だったんだろ。)

 

2(お前、そんな事ばっかり言ってっから彼女出来ないんだぞ。)

 

4(三人に告白して全部フラれてるお前にだけは言われたくないわ。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

階下にある休憩所はそこそこ設備が整っています。

 

付随しているガーデンテラスにはいつも優雅な女性達が屯していて……眩しすぎるんですけど……

 

もりくぼは室内の小テーブルで充分です。

 

さっき買った缶珈琲を机の上に置いて、もりくぼも椅子に座りました。

 

椅子は机を囲むように東西南北四つ設置してあり、南側に座ったもりくぼは荷物を東側に置いて一休み。

 

鞄の中からレジュメを取り出して読み進めます。

 

窓硝子から射入してくるポカポカ陽気が眠気を誘ってきました。

 

いけない。缶珈琲のプルタブを開け、ぐいっと喉に流し込む。

 

ブラックが染み渡ります。冴えていく感覚がまだ新鮮。

 

もりくぼがようやくまともにブラックを飲めるようになったのが三ヶ月前で、自主的に買うようになったのが二ヶ月前です。

 

子供舌とでもなんとでもどうぞ。ふん。

 

と、いつもガヤガヤと聴こえる姦しい談笑が今日はないことに気づいた私はレジュメから目を離し、缶を机に戻してからテラスの方面を見やりました。

 

そこにいたのは、珍しく、一人で佇む麗しい女性。

 

遠目からでも分かる美しさと緑に囲まれながら本を読むその清楚な印象に圧倒されます。

 

右目を隠すほどに長い前髪でありながら肩にもかからない短さの金髪。

 

黒を基調として振るわれている服装に平均より少し高めの身長。

 

白い肌が儚さを産み出し、黒と金が麗しさを産み出す。

 

アイドルみたいです。

 

というか白坂小梅(梅ちゃん)ですねあれ。アイドルでした。

 

視線に何故か敏感な梅ちゃんはもりくぼのこれにも直ぐ反応します。

 

嬉しそうに微笑み、少しだけ袖をだぼらせた手を振ってくれました。

 

私がそれに返すと梅ちゃんは本を閉まってからとてとてとこちらへ歩いてきました。

 

 

 

 

 

「乃々ちゃんも暇潰してるの……?」

 

私の前の椅子に腰を下ろした梅ちゃんが空いた椅子の上に鞄を置いてそう問います。

 

「うん。レジュメ読んでた。」

 

そう答えると梅ちゃんは驚いた表情になりました。

 

「乃々ちゃんがプロデューサーさんの事考えてないなんて珍しい……!」

 

「うぇ!?!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

1(おい!森久保さんが美しくレジュメを読んでるぞ!やっべぇな!)

 

2(あ、珈琲飲んだ…………ありゃ途中で俺の事考えちゃってそれを振り払うために飲んだんだな間違いない。)

 

3(は?)

 

4(だから眠いだけだろ。珈琲だし。)

 

2(うるせえぞ童貞。)

 

3(は?)

 

2(お前ちゃうねん。)

 

1(あ!森久保さんがテラスを眺めてる!……ふ、ふつくしい。)

 

2(俺を情景に思い描いてるんだな。全く乃々は乙女だなあ。)

 

4(あの女子見てるだけだろ。)

 

2(二人の女性が急に同じ机に座って笑い合う……ほーん。そうかそうか。女の争いっつーのは、醜いな……)

 

4(頭ハッピーセットは現実を見ろ。ポテトが正義。)

 

2(おい待てや。神谷奈緒さんを馬鹿にすんなよ。)

 

4(北条加蓮こそ正義。異論反論は認めん。)

 

2vs4(なんだァ、てめェ……?)

 

1(……森久保さんが顔を赤く染め上げてらっしゃる。てぇてぇ。)

 

2(確かにてぇてぇな。なおかれも良いぞ。仲直りしよ。)

 

4(てぇてぇ許す。なおかれ良いね。仲直りする。)

 

2and4(あははははっ。)

 

3(あれ?小梅今日は仕事だよって電話で言ってなかったっけ?大学来るんならそう言ってくれよ……)

 

1,2and4(は?)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

珈琲を飲み干してから私は断言します。

 

「プ、プロデューサーさん以外の事だって考えますけど!」

 

ニヤニヤと笑われながら問われます。

 

「へー……例えば?」

 

「レジュメ!」

 

鞄の中をあさって、それを取り出して見せます。

 

「……プロデューサーさんとのツーショットだよ?」

 

「へっ?」

 

梅ちゃんにそう言われ、落ち着いて見てみると机にはレジュメが。

 

(そういえばしまってなかった……)

 

思いながら、手に持つファイルをこちらに向けます。

 

透けてる中身には私と彼の写った写真。

 

しかもこれは、よりにもよって、十四歳の時の……っ!

 

「あ、あうう……」

 

私はわなわなと震えて。

 

「乃々、ちゃん……?」

 

梅ちゃんの声も聞こえず。

 

「む、む、む、」

 

珈琲の苦味じゃ消えなかった焦燥と恥ずかしさのままにもりくぼは叫びました。

 

 

 

 

 

「むぅーりぃー!!!!!!!!!うわーっ!!!!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

この日以降、乃々と小梅はもっと仲良くなったとか。

 

それにより小梅の嗜虐的微笑と乃々の赤面も増えました(白目)

 

大学生徒四人組は知らん。

 

3は死刑。




同じ大学の学生である小梅と乃々の組み合わせ最高尊い。でもレジュメは嫌い。やだ。レポートもいや。何が論理だ俺はロンリーじゃボケェ!!


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女子大生の森久保 05

ssの書き方を忘れてしまったアホ作者とは私のことだ。


「バレンタインのお返しですか……?」

 

物寂しく蛍光灯が事務所の廊下を照らす。夜も深まってきていて、なんだか肌寒く感じてしまう。

 

刺々しい風は弱く窓をついて、カタカタと音を鳴らす。そんな孤独を臭わせる雰囲気に、しかしながら反逆する二人の男女。

 

今日は三月十四日。ホワイトデー。

 

男性が女性に愛を渡す日。

 

それに倣い、事務所にて。

 

花粉症に顔を少し歪ませながらもプロデューサーさんはその手に持つ包装されたキャンディを私にプレゼントしてくれました。

 

「ハ、ハッピーホワイトデー?」

 

それを受け取った私はどんな顔をしていたのでしょう。

 

多分、顔をぐちゃぐちゃにしてにやけていたんだと思います。恥ずかしながら。

 

でもしょうがないですよね。好きなんだから。

 

「そんな大層なもんでもないんだが……」

 

そう彼に言われます。

 

……いやいやすっごい大層なものですよ。よく味わって、噛み締めて、食べさせていただきます。ええ。

 

(嬉しい……)

 

 

 

 

 

帰ってから食べたキャンディはとても甘くて、甘くて、その味を私は忘れる事ができません。

 

それは、一つだけの檸檬でした。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「ホワイトデーのお返しを何卒この森久保乃々に(意味不明)」

 

(……え、突然これ?)

 

頬をひくつかせながら俺は思った。

 

(待って待って?昨日の夜にあんな淑女感出してたくせに次の日の朝はもうこれになるの?)

 

事務所の扉開けたら地に跪いて意味不明な構文を羅列させてるこの女子大学生がトップアイドルってマジ?

 

「プロデューサーさんの幸福はもりくぼの幸福……な、なんかそれって夫婦みたい……へへ……」

 

ニヨニヨした真っ赤な顔を下に向ける乃々。勝手に自爆しないで。可愛いからいいけど。

 

「あ!そういえばキャンディ!美味しかったです!ありがとうございましたっ!」

 

昔の彼女からは想像もつかねぇエクスクラメーションの多さ。茜か貴様は。

 

「ああ、そう……」ヒキッ

 

「…………なんで後ろに下がるんですか?」ズイッ

 

「いや、なんとなくですけど、」ヒキッ

 

「お返しさせてくださいよー。」ズイズイッ

 

「近い近い近い。」

 

あたってる。なにがとは言わないけど。柔らかい(昇天)

 

「んふふ……そんな強張らないで……」

 

「そういうの良くない。非常に良くない。」

 

「むぅーりぃー……」

 

「都合良すぎなんだよそれ!」

 

女性にしては長身な乃々。その魅惑的な表情と声は俺の顔前にまで迫っていた。

 

(やっべぇ……頭クラクラする……シャンプーの殺傷力高すぎだろ……)

 

と、

 

「ふー。」

 

「ひゃ!?」

 

いきなり耳に息を吹き掛けられる。変な声が出てしまった。

 

(貴様……許さんぞ……)

 

所々の行動に腹が立った俺はすかさず反撃しようとする。森久保がその気ならやってやろうじゃねぇかァ!五年前に培われた能力を見せてやらァ!

 

(……実際、そろそろ欲求がバグりそうだしなんとかしないと刑務所の冷たい床を俺の汚い涙で錆びさせるはめになる。それは防がなくては。)

 

「かわいい。」

 

さっきの変な声に言及する乃々へ……

 

「乃々の方が可愛いよ。」

 

さあ、反撃開始だ。

 

「っ……///」

 

(って、おい☆マジか☆)

 

可愛いの一言で照れた乃々が下を向いた。勝利確定までが早すぎる。チョロ久保ォ!

 

「可愛いって言われて黙っちゃうところも可愛い。」

 

追撃すると乃々にジト目で睨まれた。怖さが全く無くてこれはこれで恐い。底無しの可愛さが恐い。

 

「それずるくないですか……」

 

「甘え方を覚えやがった乃々も充分狡い。おあいこさま。だからどいて。人来たら俺クビになっちゃう。」

 

「胸があたって鼻の下のばしてるくせに。」

 

「お、男だからそれは許して。それと離れて。まだ社会的に死にたくない。」

 

「ヤです。」

 

「ええ……」

 

「寒いのでもう少しこのまま……えへ……」ギュッ

 

「うーんこの頑固さとストレート。五年前の乃々なら卒倒しそう。」

 

抱き締められて頬擦りされる。

 

(出社から五分も経ってないのにこの濃度かあ。先が思いやられるなあ。)

 

ふと時計を見ると針は朝の七時を差していた。誰も来ないで……(神頼み)

 

「おはようございます!カワイイボクが来てあげましたよ!」ガチャッ!

 

神は死んだ(ニーチェ)

 

「おはよう幸子(ローテンション)」

 

「おはよ、さっちー!(ハイテンション)」ギューッ

 

不本意ながらも二人で挨拶する。重……くはないけど心臓の音が煩いんで早く退いてほしい。どちらの音かは言わないけど。

 

「はあ……そういうのは家でやってくれません?」

 

この光景にはもう慣れたと言わんばかりの呆れ声で呟かれる。なんか勘違いしてませんか幸子はん?

 

「家でもやんねぇよ。恋人じゃねぇんだから。」

 

「!?」

 

「驚きに満ちた表情をされてもこれは事実だ。分かったら抱き締めるのを止めろ、乃々。」

 

「抱擁の権利!愛情の権利!」

 

「そんなものは存在しない。」

 

「むー……」

 

「幸子の目線が痛いからマジで離れて下さい。」

 

そう俺が言うと乃々は渋々腕を解いてくれた。代わりに膨れっ面が誇示される。幸子のニヤケ顔も目に入った。フフーンを添えて。どちらもうざカワイイ。

 

ほんのりと残った体温と今更湧いてきた恥ずかしさを忘却する為に腕を組みながら俺は愚痴る。

 

「乃々さん?あなた最近はしゃぎすぎじゃありません?」

 

「…………?」

 

「そんな惚け面しても許さないからな。可愛いだけだぞ。」

 

「可愛い……えへへ……」

 

「は?好き。許す。」

 

「やった。」

 

嘘ついた。やっぱ無理だわ。俺、乃々には勝てない。強すぎる。父さん母さんごめんなさい。僕は乃々に無力でした。どうにもこの愛らしさには隷属する他ないようです。人の性とは末恐ろしい。逆らえません。好き。ののすき(脳死)

 

「大丈夫ですかプロデューサーさん。」

 

「だいじょうぶだいじょうぶ。しんぱいむようだよさちこ。ののすき。」

 

「そういう演技染みた方法でボクを欺こうとしても無駄ですよ。二人の日常はよく知ってるんですからね。」

 

「ちっ。」

 

騙されやすい幸子はもういないのか……五年前の幸子だったらいとも容易く騙せていたのに……っ

 

「別に照れなくてもいいんですよプロデューサーさん?ボクと同じくらい乃々さんはカワイイんです。そういう態度も許容します。」

 

余裕そうにそう言われる。は、はいぃ?

 

「そ、そういう態度って何ぞや?(焦り)」

 

「本当は乃々さんが恋愛的に大好きなん」

 

「わー!わー!幸子に仕事あるやでーェ!北極!北極にいくんや!」

 

「は!?そ、それはいくらなんでもアイドルのすることじゃ、」

 

「るせぇぞ輿水!アイドルは世界も救える存在だ!北極くらい軽いだろォ!」

 

彼女の手を掴み、頑張って外まで引っ張っていく。事実を有耶無耶にしなければならないという義務感。ここで果たそうではないか(混乱)

 

「あの……」

 

「さすがに北極は!」

 

「宇宙もあるぞ!生身でだ!」

 

「もりくぼは無視ですか。そうですか。」

 

「殺すつもりですか!?」

 

「アイドルは不死身だ!構わず来い!」ガチャッ

 

「……」バタンッ

 

 

 

 

 

静かになった部屋で私はひとりごちる。

 

「……やりすぎましたかね。はは。」

 

「はは……はぁ。」

 

「途中、幸子ちゃんをプロデューサーさんが遮った……なんか、仲良さげに……もりくぼよりも仲良さげに……」

 

「嫉妬……」

 

「……あ。」

 

「明後日、プロデューサーさんと遊園地だ……」




可愛さ、可愛さってなんだ?


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男の娘の森久保 01

結構短い感じで進んでいくよ。多少口調に違和感あるかも。感じたらごめんね。


(こんにちは。森久保乃々です。突然ですがピンチです。)

 

ここは私の所属するプロダクションの更衣室。レッスンをこの後に控えているので着替え中なんですが……

 

「私達で一つの曲を歌えるなんてな……今でも信じられない……」ゴソゴソ

 

「現実感はありませんが、現実なんですねぇ……」ゴソゴソ

 

(現実感無くていいのはこの空間ですけど……っ!)

 

何で男性と女性が同じ更衣室で着替えてるんですか……!

 

(いえ、これはしょうがない事なんですけど……全然慣れません。)

 

私、森久保乃々は『男』です。女の振りをする『男』です。

 

(とある訳があって性別を偽り、アイドルしてます。が、そんな訳があるのは勿論もりくぼただ一人。だから逆紅一点状態です。男女比率が働いてない。)

 

そうなると困る事。それが今。

 

(……そりゃアイドル成り立ての頃は、その、らっきーなんて思ったりも、しましたけど。)

 

ラッキーなんてもう思いません。普通に考えれば分かる事をもりくぼは分かっていなかったんです。

 

(それは。)

 

「……乃々ちゃん、着替えないの?遅れちゃいますよ?」

 

男女同室の着替えです。こんなのむりです。もりくぼの心労が絶えません。心臓が爆発します。

 

「えっと、その、き、着替えますよ?はい、着替えます。安心して下さい。きちんと着替えますから。」アセアセ

 

「そうですか……(何をそんなに焦っているんでしょうか。)」

 

 

 

 

 

(衣擦れの音とまゆさんと輝子さんの談笑の声が重なり合ってまるでもりくぼイケナイ事をしてる気分に……)

 

 

 

 

 

皆さんお気付きでしょうか。実は大きな問題が一つあるんです。普通、着替えの時に体を見られたらバレますよね。男だって。この回避方法、これが大きな問題です。何がバレるのって、それは、ナニですよ……

 

(二人が出ていくまで下の着替えは待ちます。上をゆっくりと脱いでゆっくりと着る。約数分をかける。遅いけれどでもしょうがない。)

 

因みにもりくぼは男ですがブラはしてます。胸なんてものはありませんがしてないとおかしいですからね。

 

「あれ?まゆさんまた大きくなったんじゃないか?」

 

「その……まあ、成長期ですから。」テレ

 

「!?!?」

 

突然の情報に狼狽えます。大きくなった。何が。いや言わないで。もりくぼには分かります。絶対アレです。柔らかい脂肪の塊です。男の希望です。

 

(み、見たい……でも見てはいけない!何故ならもりくぼは男!異性!見たら犯罪なんですけど!絶対に見ません!見るなんて友達しっ)

 

「ボノノちゃんもそう思わないか?」

 

「そうですね……完全に成長してます。」クルッ

 

「うぅ……は、早く着替えてレッスン行きましょう!」アセアセ

 

欲望には勝てませんね(白目)。怒らないでプロデューサーさん。だって直ぐ近くにたわわな果実がぁ!!中学生にこの周辺美少女だらけのパラダイスはヤバくぼなんですけどぉ!!

 

(い、今のは犯罪じゃありません。不可抗力。そう。不可抗力です。この状況に置かれて見ずにいけるなんていう男性だけがもりくぼに石を投げていいですよ。)

 

まゆさんが先にレッスンルームに行ってしまいました。プンスカしながら。凄く可愛いです。

 

 

 

 

 

「私も、あれくらいはいけるよな。うん。いける。だって成長期。何故なら成長期。うん。大丈夫。」

 

自己暗示をかけるように呟き続ける輝子さん。ちらと表情を伺い見てみると、暗い。僅かな希望を信じるしかないという暗い表情。輝子さんはその表情のまま更衣室から出ていきます。

 

(女性は胸の大きさで魅力が決まる訳じゃないですよと教えてあげたい……けど女性からすればそういうの関係なく小さいのがコンプレックスな人は多い……つまりもりくぼからは輝子さんに何も言えない……)

 

「輝子さんは既に充分魅力的なんですけどね。」

 

さて、私も素早く着替えてレッスンルームに行きましょう。

 

(にしても心臓の鼓動がやけくぼなんですけど。BPM120なんですけど。あんなん見せられたらふっとーするんですけど。)

 

本当に、中学生男子は、辛いです……っ!

 

「みなさん、かわいすぎなんですけどォォォォオオオ!!」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常はまだ始まったばかりです。




需要と供給を同時に満たす変態は私です。


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男の娘の森久保 02

森久保が可愛くて生きるのがノーノー……までではないが辛い。


こんにちは。プロデューサーさんの机の下からお送りしてますもりくぼです。先程のレッスンが終わって、なんやかんやもりくぼはここに戻ってきました。彼の机はとても落ち着きますね……♪

 

(このプロダクション唯一の男性プロデューサーである彼が私の担当をしてくれています。とても嬉しい。自然体でいられますからね。)

 

と、彼が口を開きました。

 

「あぁー……俺は羨ましく思うぞ乃々。マジで。そんなラッキースケベ展開を体験出来るなんてさ。」

 

「もりくぼからすれば申し訳なさで心臓バクバクなんですけどね……」

 

この会話からも分かる通り、彼はもりくぼが男である事を知っています。

 

「おいおい。嘘を申すな森久保乃々。」

 

「なんですか急に。嘘なんて、別に……」

 

「そのドキドキバクバクは女性への関心の現れさ!」

 

「そ、それは違います!友達をそんな目で見ては」

 

「乃々はまゆの見てどう思った?」

 

「大きい柔らかそう包まれたい…………はっ!!」

 

「ほらな?お前もこちら側だ。」ニコニコ

 

「プ、プロデューサーさんみたいな変態と一緒にしないでほしいんですけど!!」

 

「は、は!?俺は変態じゃねぇからな!?」

 

「小梅さんと幸子さんを厭らしい目で見てるの知ってますよロリコン。」

 

「何で知っ……てねぇから!ちげぇから!」

 

「いえ、合ってます。違いません。男子中学生の観察眼を嘗めないで下さい。思春期くぼに敵なし。」キリッ

 

「それ言ってて悲しくなんない?」

 

「とても悲しい。」

 

いつも通りの男子トークが続きます。

……プロデューサーさんは大人だから男子ではない、という野暮なツッコミは無しの方でお願いします。

 

「だよなー……友達だから厭らしい目で見たくない。けど男の本能がそれを邪魔する。そんな卑しい自分が気持ち悪くさえ思えてくる。そうだよな……?」

 

「はい……そうです……理解してくれてありがとうございます……(涙目)」

 

「俺もそうだからだよ。信頼しあえる仲間としてやっていきたいのにふとした瞬間のあどけない女らしさに屈服しそうになる。一回りも下の少女を性的な目で見たくなどない……!ふざけるな男性本能……!」

 

「分かります……分かります……特に性的な目で見たくないという部分分かります……(涙目)」

 

「…………なあ、森久保。」ガシッ

 

彼は急に椅子から立ち上がり、もりくぼの前で屈みました。そしてもりくぼの手を掴んで、真っ直ぐな視線をこちらに向けてきます。目は、逸らさず、私も同じように、見つめ返し。

 

「俺ら男二人だけ。あまりにも崖っぷちで危なくて酷い道だ。周りが全員異性で、自分が自分に惑わされる。心が揺さぶられる。自己嫌悪に陥る。男であることに嫌気がさしてくる筈だ。けれどもそんな時はこうやって話し合おう。思いの丈をぶちまけあって、発散させよう。惑いを耐え抜くため、揺さぶりに動じなくなるため、自己嫌悪をしないため、弱い自分をここで曝け出すんだ。仲間がいると心強いからな。互いに慰めあって、労って、背中を押して、頑張ろう。俺ら男二人だけ。だからこその固くてほどけない厚い友情だ。この惑いの道を、一緒に協力して攻略しよう!」

 

「…………」ポカーン

 

「……悪い、不適切だったかもしれん。」

 

「熱い……」ボソッ

 

「え?今何か言っ」

 

「熱いです!プロデューサーさん!」ガシィッ

 

「あえ?」

 

「そうですよ!私達二人で乗り越えれば良いんです!この悩みは確かにそれで解決していきますね!流石プロデューサーさんです!協力もするに決まってます!はい!」ブンブン

 

「おうおうキャラ崩壊と腕振りを止めろ~嬉しさを抑えろ~」

 

「ごめんなさい!」フンスフンス

 

「興奮冷めやらぬ……あの……マジで落ち着いて……?」

 

「あ……ご、ごめんなさい……落ち着きます、はい。」

 

「うん落ち着いたね。よし。オッケー。」

 

「おけくぼですけど。」

 

「……取り敢えず、これからは協力体制で行くぞ。何か女性関係の事情で困ったり自分が嫌になったりとそういう事があったら二人で話す。これも大丈夫か?」

 

「…………はい。」

 

渾身の○○くぼネタをかわされました。訴訟ですねこれは。

 

「……頑張ろうな。一緒に。アイドルも、誘惑にも。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(『固くてほどけない厚い友情だ』ですか。)

 

「えへへ。嬉しいです。」

 

初めて出来た男友達。一生大事にしなければいけません。

 

「あれれ?乃々ちゃん嬉しそうですねー?何か良い事ありましたか?」

 

彼が仕事でこの部屋を出て、代わりに入ってきたまゆさんがもりくぼにそう問いました。顔に出ちゃってますか。

 

(どうしよう。初めて男友達が出来たからとっても嬉しくて幸せなんて言えないし……)

 

「えっと……その…………ひ、秘密、です。しーなのさー……なんて。」///

 

秘密です、と言う時プロデューサーさんの言葉を思い出してしまいまた嬉しさで顔が赤くなります。しょうがないんですこれは。き、気持ち悪くなんてありません……

 

「…………プロデューサーさんですね?」

 

「な、何で分かるんですか!?」

 

一言も彼の事を話していないのに……

 

「ああ、やっぱりですかあ……ごめんなさい。まゆ、ちょっと用事を思い出しちゃいました。少しの間空けますねぇ。」

 

「え?あ、はい。」

 

彼女はそそくさと部屋から出ていきました。

 

(仄かにまゆさんの目が暗くなっていたような……気のせいですかね?)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常はまだ続いていくのです。




この世界では、小梅と幸子が人気アイドルでアンデスの三人が新人のアイドルって感じです。


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男の娘の森久保 03

アイドルはおトイレなんて行かない!という人は読まない方が良いと思われます(論理的思考)


こんにちは。姓は森久保、名は乃々でお馴染みの森久保乃々です。いきなりですがクイズ。私は今プロダクションの何処にいるでしょうか。

 

 

……

 

………

 

…………

 

(正解は、)

 

「もりくぼは男だから男子トイレに……でも女の子としてアイドルをしているんだから女子トイレに……あうぅ……」ウロウロ

 

(トイレの前でした。)

 

もう何百回以上悩んだこの問題。トイレはどちらに行けば良いのかというぷろぶれむ。

 

「正解がないなんてまるで哲学なんですけど……」

 

(も、漏れる……どうしよう……えっと……)アセアセ

 

女子トイレに、入りましょう……!

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(この気持ちになんて名前をつければ良いのでしょうか。怒り、戸惑い、罪悪感、敗北感。全部合ってる様で、全部違う気がします。)

 

個室トイレで用を足し、そこで佇むもりくぼ。

 

(男なのに……男なのに……)

 

これ軽犯罪なんですよ……!何で女子トイレに入ってるんですか……!馬鹿なんですか!変態なんですか!うあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!

 

(なんてのももう何百回目なんでしょうかね。)

 

「してないです……興奮なんて、してないです……うう……もりくぼは土に埋まるべき……(涙」

 

バレるかもしれないスリルとか、自分の知らない皆さんを知れるかもしれない汚れた独占欲とか、そんなの全然ないです……本当です……信じて……

 

(はあ……誰もいない内に出ますか……)

 

そう思ったもりくぼは個室のドアノブに手を掛け、

 

(!!音!!誰かが入ってきた音!!)

 

手を離します。

 

(だ、誰……)

 

ドアを開き、閉め、鍵をかける音も続けてしました。

 

(…………い、今出るべき。)

 

そう。今出るべきなんです。

 

(なのに、足が、動かない。)

 

どうして。

 

(早く、早く出ないと。)

 

じゃないと、もりくぼは。

 

(大切ななにかを、失ってしまいます……!)

 

足が動かない。

 

(な、何で!早く!動いて!)

 

いやだ。

 

(聴いてしまったら、終わる。)

 

いやだ。

 

(出なきゃ。)

 

いやだ。

 

(なのに)

 

いやだ。

 

(どうして)

 

いやだ。

 

(こんなに)

 

……

 

(ドキドキしてるの……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(手を洗って、っと。)

 

「…………凛さん、でしたか。」

 

「あれ?どうしたの乃々。そんな暗い顔して。嫌な事でもあったの?」

 

「…………」ズーン

 

「……ねえ大丈夫、乃々?私はどんな時でも乃々の味方だから、嫌な事があったのなら相談していいんだよ?」

 

「……あ、あの。」ボソッ

 

「うん。どうしたの?」

 

「もりくぼを殺して下さい……!」

 

「え?」

 

「も、もりくぼは!もりくぼはァ!最低ですゥ!」

 

「な、何があったの?え?」オロオロ

 

「失ったんです!もりくぼは!大切ななにかを!」

 

「??(混乱」

 

「聴いてしまった……!傾聴してしまった……!」

 

「そ、そんな縮こまないで……」アセアセ

 

「逆なんですけどォ!大きくなったんですけどォ!(ブチギレ」

 

「????(理解不能」

 

「早く……早くもりくぼを殺して土に埋めてください……お願いです……」

 

「あ、あうう……」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

結局、この小さい騒動はもりくぼが冷静になって何故か森久保化した凛さんを逆に宥めて収まりました。

 

(ごめんなさい凛さん。色々と。)

 

これから、目を合わせるのが困難になりそう……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

次の日。私はまたトイレの前に立っています。

 

(前回の様になってはいけない。被害者を増やしてしまう。)

 

迷わず男子トイレに直行する女装男子の図。

 

と、そこには、

 

「人がっ……てなんだプロデューサーさん……ほっ。」

 

「うおっ!?こ、ここは男子トイレですよ!……って乃々か……よう。」

 

手を洗うプロデューサーさんがいました。

 

「え、えっと、」

 

「今は人いねぇから。いいよ。ほら。」

 

「か、感謝……!」ダッ

 

「…………誰も入らない様に監視でもしてるか。」

 

 

 

 

 

危なかった。漏れる所でした。ギリギリセーフ。

 

「ごめんなさい。ありがとうございます。」

 

「いや、いいけど……スカートで来られるとびっくりするわ。」

 

「ロングだからオッケー理論は通じますか?」

 

「通じません。」

 

「しょぼん。」

 

軽口を叩き合いながらもりくぼは手を洗い、そして一緒にトイレを出ます。

 

(この男友達感……良い……♪)ニコニコ

 

学校でも事務所でも味わえないこの新鮮さが嬉しくてつい顔が綻んでしまいます。えへ。

 

「どうしたニコニコして。間に合ったのがそんなに嬉しいのか?」

 

「まあ…………そうですね。はい。」ニコニコ

 

プロデューサーさんがいる時間に間に合いましたから、なんて。

 

「ったく、今回は別にもういいけどこれからはちゃんと女子トイレに行くんだぞ。バレちまう。」

 

「ごめんなさい……」

 

「すまないが、そうしてもらわなきゃこっちが困るからな……」

 

「分かってます。そう、します……」

 

「ああ、くそ、そんな顔すんなって……終末世界を見た様な顔すんなって……ごめん……」

 

「男が女子トイレに入るとどうなるか、分かりますよね。プロデューサーさんなら。」

 

「……本能と理性の葛藤が始まり、ギリギリで本能が勝ってしまう、だろ?」

 

「そうですよ……勝ってしまったんです本能が……悦びを覚えてしまったんです……」

 

「聴きたくないのに聴いてしまう。そうだな?」

 

「そうです。聴いてしまったら、友達を性的なモノとして捉えてしまう。そんなの嫌なのに。本能はそれを意ともしない。」

 

「辛いよな……とても、辛いよな森久保……解るぞ……っ!」ギュッ

 

彼は私を抱き締めます。

 

「はい……辛いです……悲しいです……」ギュッ

 

私も彼を抱き締め返します。

 

「男は、辛いよな…………」

 

「うぅ…………プロデューサーさん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、何してるの二人とも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!!」」バッ

 

手を離して、声の方に向き直ります。

 

「り、凛!?その、違う。違うんだ。」

 

「ふーん。そういうこと。乃々の悩みって、これだったんだ。」テクテク

 

「え?ど、どういう事?」

 

「り、凛さん!その、そうじゃな」

 

「安心して、乃々。貴女は私が守るから。」テクテク

 

「よく分からんけど、違う。違うぞ。凛は勘違いしてる。なあ、聞いてくれよ。なあ。」

 

「トイレ前の廊下で女子中学生を抱き締める成人男性。これが勘違い?」テク

 

「あ……あのですね、」

 

「弁明?どうぞ、ほら?」ガシッ

 

「…………乃々からとても優しい良い香りがしました。恐らく金木犀を使ったオーデコロンですね。素晴らっ」パキッ

 

プロデューサーさんが白目を剥いて倒れました……

 

「……変態。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「優しい良い香り……べ、別に嬉しくなんか……ないんですけど……」

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常はまだ終わらないのです。




優渋谷補助凛好き。厳渋谷怒凛嫌い。

一応言っとくけどホモはねえからな(急な語勢強化兄貴)


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男の娘の森久保 04

欲望の投影が著しい。

これは男の娘モノです。『男要素』を念頭に置いておいてください。


今回の話は、まあ、もりくぼにとって一番嫌な話になります。嫌悪しているとかじゃないんですが兎に角嫌な話です。苦手と表したほうがもしかしたら近いかもしれません。

 

「おはようございます。」

 

プロジェクトルームの扉を開けて入室しようとします。

 

(見ると、この部屋に先客がいるみたい。……あ、この二人ですか。嫌だなあ。)

 

嫌いという訳ではありませんが。

 

「おっはよー乃々ちゃーん♪早速だけどもう我慢出来ないし、いいよね!登らせろー!」ガバーッ

 

「ひぃ!?」ガシッ

 

彼女は棟方愛海さん。同じアイドル仲間の方です。そして、もりくぼがちょっと苦手な人第一です。

 

(何故苦手なの、って、そんなの、決まってるじゃないですか。)

 

「んん……この平坦な感じが新鮮で良い……やはり大きさじゃないんだと感ぜられるね……100点……」

 

「……あの。」

 

「なにかね……?」

 

「男の胸なんて価値ないと思いますけど。」キッパリ

 

「そうじゃないんだよ!!」バン!

 

「ええ……」

 

「お山とは、複雑なんだ……ただ大きく盛り上がっているとか小さく膨れているとかそんなものは関係ない……一流の登山家は山の大きさで区別しないの。」

 

「は、はあ。」

 

「乃々ちゃんは所謂女装男子、でしょ?これはね、あたしにとって貴重なんだ。希少なお山なんだ。」

 

「へえ。」

 

「果たして、平坦な野原をイメージや観念だけで山だと定義できるのか。無から何かを感じとれるのか。」

 

「……」テクテク

 

「流石に一流だと自負しているあたしでも判断、評価は難しかった。そのお山、平坦につき……っておーい?」

 

(男のもりくぼからもお山を感じるという支離滅裂な思考、発言を繰り返すからですよ。)

 

逃げたい。でもここでプロデューサーさんを待たなければならない。逃げられない。

 

「すんすん……およ?乃々ちゃんきてる?」ガバッ

 

睡眠中だった先客のもう一人の方が目覚めました。出来ればそのまま寝てて欲しかったんですけど。

 

「お、おはようございます……」

 

「んー。おはよー。やっぱ乃々ちゃんの匂いだったんだねえ。」

 

彼女は一ノ瀬志希さん。先輩アイドルです。そして、もりくぼがちょっと苦手な人第二です。

 

「もー、そんな遠くで怯えてないで。こっちにちこうよれ?」クイクイ

 

「う、うう……」テク,テクテク

 

「よーしよしよしよし。従順だねー。お利口さん。」ギュー

 

「(うわー!!当たってます、当たってますけど!!お山と登山家はブルジョワジーマルクシズム!!(意味不明))」

 

「すんすん……うん……不思議。男の子と女の子の両方の匂いがする。少しだけ刺激のある汗の香り、ふんわりとした刺激の弱い汗の香り、力強い香り、淑やかな香り。癖になりそ。」ギュー

 

「(ええ……変態なんですけど……)」

 

「……ふふっ。あー……まあ、しょうがないかー。」ニヤニヤ

 

「?」

 

「あのね、乃々ちゃん。残ってるよ。」

 

「?何がですか?」

 

 

 

 

 

「__の匂い。」コショコショ

 

 

 

 

 

「……!!!!!!」カアァッ

 

「んふっ……いやー、男の子だねー?」ニヤニヤ

 

「あの!!え、えっと!!その違くて!!違います!!も、もりくぼは!!」アワアワ

 

「アイドルの誰かで?」

 

「…………ち、ちが」

 

「そっかー。凛ちゃんとか?」

 

「だから違いますってば!!そ、そもそもそんな事してないです!!」

 

「別に人間なんだし良いと思うよ!恥ずかしがらないで!それにアタシがギリギリ分かるレベルだし気にしなくてもバレないよ!大丈夫!」

 

「あ……う……うぅ……///」

 

「まゆちゃん?輝子ちゃん?ねえねえ、誰?」

 

「や、止めてぇ……あうぅ……」

 

「あはは。もしかしてまさかのアタシとか?それなら確かに言えないよねー!」

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 

 

「……ありー?そっかー。これは、まあ、困らせてしまったねー……ごめん。」

 

「違います……違います……何かの間違いなんです……」ボソボソ

 

「んー……」ギュッ

 

「っ……」

 

「ハスハス……乃々ちゃん緊張してるね。ドキドキ。」

 

「こ、こういうのは」

 

「駄目?今更?」

 

「っ。」

 

「……てゆーかさ、『女の子』同士なんだしいいじゃん。それとも、なに?本当に間違いでも犯しそう?」

 

「ちゅ、中学生にこれはヤバい。特にふにふにのおっ」

 

「本音出てるよキミ。」

 

「……中学生にこれは厳しいんですけど。」

 

「どんなシチュエーションを想像して慰めてたのかにゃ?」

 

「え?」

 

「アタシに攻められて成すがまま?それとも逆に攻めて思いのまま?ラブラブ?嫌々?サディスティックに?マゾヒスティックに?」ギュー

 

「ちょ、」

 

「これまでやりたい放題やっちゃったからね。今日は、キミのしたい事をしよっか。ほら。何でも言って?」

 

これは危険です。掌で転がされてます。でも、

 

「…………じゃあ、言いますけど。」

 

やられっぱなしじゃ、男のプライドが廃る!

 

「うん。」ギュー

 

 

 

 

 

「顔真っ赤ですよ。」

 

 

 

 

 

「……バレたか。」カアァッ

 

「物凄く可愛いです志希さん。めっちゃタイプです。好き。」

 

「止めてぇ……くうぅ……立場が逆に……」

 

「(なんかチャンスですし今までの腹いせでもしますか。)志希さん。もりくぼのやりたい事聞いてくれるんですよね?」

 

「いいよ……何でもかかってこい……もうアタシは負けな」

 

「プロデューサーさんにラブラブ恋人の如く甘えてきましょうか。(乙女モードの今なら恐らく……)」

 

「ウソダー」シロメ

 

「(勝った。)早速行きましょう。ほら。立って。」

 

「ハナセェ!!イヤダァ!!シニタクナイ!!」ジタバタ

 

「触ってないんですが。」

 

「はい。」

 

(……よし。上手く誤魔化せました。このまま有耶無耶に)

 

「そういえば乃々ちゃん。グラビアの写真集頼まれた通り持ってきたけどどうすれ」

 

「うわー!!」

 

「!?」

 

(出来なかったァ!しかも悪化してるゥ!愛海さん間が悪すぎですゥ!)

 

「え?誰の?」ニヤニヤ

 

また逆転してしまった……!くそぅ……!

 

「い、言わなくてもいいですから!」

 

「先輩だよ?言うことは聞いておいた方がいいんじゃない?」ニヤニヤ

 

「こんな人は敬わなくていいですから。その事は言わずに、ね?」

 

「ひっでぇ。」

 

 

 

 

 

「志希さんのやつです。」ニヤニヤ

 

 

 

 

 

「う、裏切りましたね……?」

 

「ごめん。面白そうだったから。んふっ。」

 

「もう志希さんのお山の話止めます。」

 

「ああっ、それは止めてェ。」

 

「やだ。」

 

「幸子さんのお山で、どうか。どうか御慈悲をば。」

 

「……吝かでもありません。」

 

「やった。」

 

「素晴らしいほどのゲスだね君達。」ヒキッ

 

「「そんな誉めないで下さい……///」」

 

「そこは照れるところじゃなくない?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常は緩やかに続いていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、勝手に終わらせないで?あたしのグラビアでなにするつもりだったの?ねえねえ?ナニするつもりだったの?」

 

「」




補足事項…この話に出てきた三人は仲が良いです。特に乃々と愛海は『話が通じる者』同士、ほぼ親友と言って相違ないレベル。毎日お山を語らっています。しかし乃々からすると自分のお山も狙ってくる愛海が少し苦手だと思っている……なんて勝手にレッテルを貼っている状態。心の奥底では結構それも楽しんでます。


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男の娘の森久保 05

学校篇です。前回が微妙にエロス気味だったので今回はコメディ。オリキャラ注意。


お仕事が休みでも、もりくぼは学生です。その日が平日であれば出校しなくてはなりません。今日はその平日で、今はお昼、自分が所属している204クラスにいます。

 

(解りますよ。皆さんの懸念事項が幾つかある事はきちんと把握してますよ。)

 

先ず一つめに、アイドルやってるってバレてないの?という事ですよね。

 

(バレてないです。)

 

まだまだ知名度が低いのでバレてません。関係して、性別を偽ってる事も知られていません。

 

二つめに、見た目とか声とか完全に女じゃん。なんか言われんの?という事。

 

(言われます……女扱いされます……結構傷付きます……)

 

見た目はアイドルの時と差別化させていて、ピアスはつけておらず(耳に挟むタイプのものなので穴は開いてません。心配は無用です)、髪型はストレートにして(肩にかかりますが先生方には何も言われていないのでセーフです)、勿論女性専用の装飾は施さず(例えば化粧とかブラとか)、男用の制服に身を通しているのでどう考えても男に見える筈なんですが……おかしいですよね。

 

この前なんて学校の劇で女役やらされましたし……それが上手くいってしまったせいで今度の学校イベントで女装する事になってしまいましたし……メイドカフェなんてむぅーりぃー……

 

というかそもそも中学校でメイドカフェやるって、どういうことなの……?

 

 

 

 

 

「なあ……吉木、あれ見ろ。ほら。あれ。乃々だよ。」

 

「うん……外を物憂げに見る姿……いつも通り美しいな……そういうことだろ吉川?」

 

「そういうことだ。まるで男装女子だぜ。」

 

「分かる。ストレートのあの髪型とか良いよな。先生達も絶対可愛いって思ってるから何も言わないんだろうよ。」

 

「実際そうらしいぞ。」

 

「それどこ情報なん?」

 

「生徒指導の城ヶ崎先生本人。」

 

「ええ……(困惑)」

 

声は別に中学生ですから声変わりを理由になんとかなります。もうすぐ低くなりますよ、とか。男とはいってもまだ14歳ですし、とか。

 

 

 

 

 

「…………そういえばさ、みーやん。」

 

「ん?どしたの曰比谷さん?あとみーやん止めて。せめて成宮って呼んで。」

 

「のーちゃんの性別って女だったりする?委員長だし、そういうの分かるよね?」

 

「のーちゃん?ああ森久保さんの事。男よ。れっきとしたね。なんで?」

 

「これ聴いてみ。声楽のテストのやつ。」ピッ

 

「ん。」

 

『~♪』

 

「……まあ、言いたい事は分かるわ曰比谷さん。」

 

「これ、ソプラノだよ?テナーじゃないよ?」

 

「へ、変声期前だし。あり得るんじゃない?」

 

「課題曲じゃなくて、+評価を狙った挑戦曲なんだよねこれ。のーちゃん、家の事情かなんかで学校休みがちだからこういうところで点数稼がないといけないし。」

 

「それで?」

 

「最高音域知ってる?hihiAだよ?しかもすっごいキレイに出してくるし。……あ、今のこれ。この部分。」

 

「うっわ……すっげ……」

 

「委員長、口調口調。」

 

「ごほんっ……マジレスいい?」

 

「うん。」

 

「男でも出せる人は出せる。」

 

「分かるけどさあ……四分間続けて高音、加えてhihi域をキレイに出されると女である自分がもしかして男なのではと疑問に思えてくるようになってしまってな。」

 

三つめに、友達はいるの?ねえねえ?いるの?ということ。……なんですかこの質問者。聞き方がウザいですね。

 

(…………いません。)

 

自分から誰かに話しかける勇気がないもりくぼを赦して。

 

(それに誰かから話しかけられることもないですし。はい。いいえ?別に、ひねくれてなんかないんですけど?)

 

 

 

 

 

「ねえ、よっしー。今日も話しかけないの?」

 

「無理だ……高嶺の花すぎる……俺には無理だ……」

 

「吉川は?」

 

「ムリムリ。可愛過ぎて過呼吸になるわ。ってか何で俺だけあだ名無し?」

 

「みーやんが最後の希望です!」

 

「いやいいよ。遠くから眺めてるのが一番良い。」

 

「無視しないでくれよ。」

 

「ていうか曰比谷さん知ってるでしょ。森久保さんに彼女がいること。」

 

「「は?((憤怒))」」

 

「うっわ、みーやん委員長パネェっすね。」

 

「え?なにが」

 

「おい成宮ァ!教えろそいつの事ォ!」

 

「その男にだらしの無いヴァカ女を俺らでぶっとばしにいくぞォ!」

 

「ホモなの君達!?」

 

「「ホモではない。ただの害虫駆除だ。」」

 

「ええ……(困惑)」

 

「こいつらのーちゃんの事崇拝してっからね。彼女とか言ったら般若化するんよ。教えとくべきだったね。」

 

「ええ……(困惑)」

 

「そりゃー、ねー?」

 

「男の娘とか、最高やん。ねー?」

 

「全然分からん。」

 

「そんなんいいからワイらにその彼女とやらの事をとっとと教えろや。」

 

「えー……っと。」チラッ

 

「はあ……分かったよ。二人とも、帰り校門前で待ってて。」

 

「どういうことだ曰比谷?」

 

「詳しく教えないと焼き討ちにするぞ?」

 

「覚えたばっかの単語で遊ぶなテメェら。下の爪楊枝へし折るぞ?」

 

「「すいませんっした姉貴!!」」

 

「兎に角帰りに全部説明するから待ってろ。OK?」

 

「「OK!」」ズドンッ

 

「ふった私も悪いけどコマンドーネタはみーやんが反応出来ないから止めたげて。」

 

「「さーせんした!」」

 

「???」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

16:30、校門前。一人の少年をこっそりとつけ回す四人の少年少女ら。彼らのつけ回し方はさながら変態だ。顔付きが凄い。男二人はニヤニヤしすぎで顔がとろけそうだし、女二人はその様子を見て引いている。

 

道行く人達はこう思ったであろう。

 

(なんやこの厨パァ!?)

 

『もー、こう』いうのは見たくない、なーんて。ふふっ。

 

帰りますよ楓さん。

 

残念ね。瑞樹よ。

 

分かるわけないわ。帰りますよ。

 

駄洒落を言ったのは私ですけどね。

 

やっぱり楓さんじゃないか!!じゃあ瑞樹さんは何を……

 

なんやこの厨パァ!?

 

そこかよ!!

 

 

 

「ねえ、今なにか聞こえなかった?」

 

「さあ?凄い美人二人とそこそこイケメンの男性なら隣歩いていったけど。みーやん幻聴?」

 

「ひでぇこと(発言)しやがる……」

 

「みーやんプレデターネタは知ってんのね……」

 

「うるさい黙れェ!!」

 

「黙れェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!」

 

「てめえらはシュワルツェネッガーの面汚しだよ。静かにのーちゃん見てろ。」

 

「いや、その……ねえ?」

 

「無許可のストーカーは犯罪だぞ!もしばれたりしたら……」

 

「いつも平気でやってる事だろうが!今更御託を並べるな!」

 

「「で、でも」」

 

「やるんだ。」

 

「「うっす。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おい、あそこ!乃々が女の人と会ってる!うっわ、すっげぇ美人だな。」

 

「…………(唖然)」

 

「よ、吉木?どうした?」

 

「おー、あれしぶりんじゃん。」

 

「え誰?」

 

「吉川と委員長は知らないんだ。もしかしてアイドル事情とか疎い方?」

 

「「うん。」」

 

「オーイェイェイェイェふざけんなこんなのありかよ、マジで契約違反だ。」

 

「落ち着けよっしー。えっとね、今……うおおまじか。えっと、まあ、抱き合ってる、じゃん。あの人が渋谷凛っていうアイドルなの。」

 

「え?皆のアイドルと俺らのアイドルが抱き合ってるってこと?」

 

「別に私達のじゃないけど、そういうことになるのかなあ。」

 

「へー……」

 

「そんで、って、のーちゃん頭撫でられてる……嬉しそうに微笑んで……まあ彼女がしぶりんならそうなるのも無理ないか。いや、そうじゃなくて。」

 

「しぶりんはテレビにもよく出てるすげぇ人なんだわ。アイドルランクってのがあってな、一番上からS,A,B…ってなってんだけどしぶりんはA。」

 

「それ凄くない?」

 

「ああ。すげえよ。もっと言うとそんなすげえ人と抱き合ってる乃々もすげえよ。羨ましい。二人とも。」

 

「欲望を抑えろ、よっしー。な?」

 

「ああ……いいなあ乃々……しぶりんのアレに包まれちゃってよぉ……一体どこまでいってんだあいつら……」

 

「おい、ド下ネタ止めろ。」

 

「いやだって!!」

 

「だってじゃねえよ。」

 

「しぶりんのおっぱいが!!」

 

「おいここ公共の場だぞ。そんなでかい声出したらだ」

 

 

 

 

 

「…………聞こえてるんだけど?」

 

 

 

 

 

(あーあ。顔を真っ赤に染めたしぶりん?さんが睨んでるよ……こっち来たし……ったく吉木の奴は。そりゃ怒られるわ。あんな事大声で)ガシッ

 

「え?俺?」

 

「アンタ、そんな堂々と色々言ってくれるのは嬉しいけど、流石に弁えようか?」グリグリ

 

(……あれ?何で皆さんがここに?)

 

「いててててて!!!!!!!!!!お!!俺じゃねえ!!!!!!!やめ、止めろォ!!!!!止めるんだゴリラァ!!!!!!!!!!!」バタバタ

 

「……ゴリラって言った?」ブチッ

 

「ああ!!言ったさ!!顔が可愛いだけのゴリラがってなァ!!!!」

 

「っ…………乃々、下がって。こいつヤバいよ。私が何とかするから。」

 

「あ、あの凛さん。か、彼らはその、」アタフタ

 

「やってやるよォ!このクソ女ァ!Aランクアイドルなぞ知ったことかァ!」

 

「お、おい。吉川。止めろって。事務所から何か言われたらど」

 

「心配すんなァ!このゴリラのせいで俺らが責められる事はねえよォ!だってゴリラだからなァ!人間ではない。」

 

「決めた。アンタボコる。」パキッポキッ

 

「男に勝てると思ってんのかァ!ハハハァ!」バキッボキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」チーン

 

「R.I.P.吉川……アホだけど良い奴だった。」

 

「し、死んでねえよ……ゴホッ……」

 

「どさくさに紛れて胸触ってきたからお返しに私も胸触ってあげたけど、どうだった?」ニコニコ

 

「胸骨にヒビ入ってたら殺すぞ……」ビキィ

 

「そこは加減してあるよ。安心して。」ニコニコ

 

「くっそこいつ……っ」

 

「き、吉川さん、大丈夫ですか……?」

 

「の、乃々……こいつ危険だ……早く別れろ……代わりに俺が付き合うから……」

 

「いえ結構ですけど。」バッサリ

 

「グハッ」

 

「吉川……」

 

「成宮さん、別れろって何の事ですか?……というより四人とも何でここに?」

 

「知ってる人なの乃々?」

 

「えっと、中学校のクラスメイトです……はっ。」

 

(これ女のフリをしてアイドルやってる事がバレてしまうのでは。)

 

「……」ダラダラ

 

「へー、クラスメイト……って乃々?汗凄いよ?」

 

「あの、えっと、」

 

(そ、それに凛さんにもりくぼが男だという事がバレたら死ぬ!死んでしまいます!社会的に!ヤバくぼ!)

 

「おいゴリラァ!てめえも理解しろォ!別れろォ!」

 

「ふう……あのさぁ、そこらへんよく分かんないんだけど。別れろって何?それにコソコソしてたアレも。バレバレだったよ?」

 

「バレてたかぁ。まあそれはどうでもいいとして。」

 

「言葉通りの意味だよ……まだいてえ……あんた凛だっけ?俺らは乃々と凛が付き合ってるって聴いて心配だったからこっそりと付いていったんだよ。」

 

「???」

 

「(しぶりんの困惑顔が可愛過ぎて吉木昇天しそう。した。)」チーン

 

「よっしーまで……」

 

「その付き合ってるってのがよく分かんないんだけど。」

 

「男と女のアレですよアレ♪あ、因みに私曰比谷って言います。眼鏡の彼女が成宮さんで、背の高い彼が吉木くん。ボコしたのは吉川くんです。乃々くんと仲良くさせて頂いてます。どうぞ、宜しくお願いします。」

 

「うん。宜しく。私は渋谷凛です。一つ年上になるのかな?乃々と仲良くしてあげてね吉川以外。」

 

「いけすかねえ女だなおめぇよォ!」

 

「……というか、男と女?乃々くん?どういうこと?」

 

「え?」

 

「(ウワアァ!止めなきゃァ!)」

 

「ああ、ゴリラには分かんねえか。目が節穴だもんな。」

 

「あ?胸骨折るよ?」

 

「ひっ……ご、ごほん!乃々はなァ!この見た目で『男』なんだよォ!それも知らねえとかやっぱ付き合ってるってのは嘘だったみたいだなァ!(良かった……乃々が本当に誰かと付き合ってたら不登校児になってた……)」

 

「……?」ポカーン

 

「(帰ろ。うん。帰ろ。もりくぼ式下校術っ!)」

 

「待って乃々。」ガシッ

 

「あぅっ!」ガクン

 

「もし四人で私と乃々をからかってるなら怒るんだけど。」

 

「本当ですよ。これ見ますか?」

 

「これは何?」

 

「吉川とのーちゃんの会話です。」

 

「いつの間に撮った曰比谷ァ!?」

 

「猥談ですんで、気を付けて下せぇしぶりん姉貴。」

 

「「!?」」

 

「うわ乃々と吉川真っ青になってら。どうした?思い当たる節でもあるのか?」プププ

 

「いや、よっしーもいるよこれ?」

 

「!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「の、乃々?なに、これ?私の、その、そういう話なのは分かるけど、え?」カアアッ

 

「ごめんなさいぃ……騙しててごめんなさいぃ……」

 

「そもそも乃々の制服見て性別分からんとかヤバいだろゴリラ。」

 

「うるさい変態…………足フェチ……」

 

「ええ……(困惑)」

 

「しぶりん可愛い!」

 

「君も静かにして……てゆーか君が胸の話してたんだね……ごめん吉川くん……」

 

「いや、それは別に気にしなくていいんですが。(柔らかき女子高生のアレを堪能出来ましたし。)」

 

「乃々が男だったなんて……嘘でしょ……あれ……私結構恥ずかしい事乃々にしてきてない……?う、うわぁぁぁ……///」

 

「「「「「可愛い。」」」」」

 

「可愛くない!」

 

「可愛いよ!」

 

「美人だね!」

 

「カッコいいです!」

 

「溌剌していて健康的!」

 

「エロい!」

 

「吉川ァ!」

 

「エロい!」

 

「いやちょ」

 

「エロい!特に足!好き!」

 

「あ、あの」

 

「てか滅茶苦茶可愛い!それにカッコいい!愛らしい!」

 

「う、あぅ。」

 

「その辺にしておけ吉川。」

 

「やったぜ。」

 

「(なんかこのまま自分がアイドルしてることは有耶無耶にできそうですね。)」

 

「り、凛さん。立ち直って下さい。そろそろ時間ですよ。」ボソボソ

 

「ふぇ……あ、ほんとだ……」

 

「(ふぇ、って……凛さん凄い可愛いんですけど。加虐心が擽られます。)」

 

「あれ?しぶりんさん用事ですか?」

 

「これから事務所に用事があるの。そろそろ時間になるから行こうかなって。」

 

「あ、すみません。もしかして迷惑かけちゃいましたか?」

 

「ううん。そんなことないよ。乃々が学校でも楽しそうに生活出来てる事知れて良かったし。……不本意なカタチだったけど。」チラ

 

「す、すみません……」ビクビク

 

「ごめんなさい。」

 

「男だからしょうがねえ!許せ!」

 

「……」ギロッ

 

「さ、さーせんした!」

 

「はあ……まあ、その、なんて言えばいいのかな。これからも乃々と仲良くしてあげてね。」

 

「……勿論。」

 

「仲良くさせて貰いますよ!」

 

「友達だしな!」

 

「任せて下さいよ!」

 

と、友達……

 

(向こうはもりくぼのこと友達って、思ってくれているんですね。)

 

嬉しい、です。えへへ。一方通行なんじゃないかって思ってました。

 

「……ふふっ。ありがと。」ニコッ

 

「っ。」ドキッ

 

「……?どしたん吉川……あー。これは。」

 

「そろそろ行かなきゃ。ごめんね。」

 

「あ、はい!それじゃ!」

 

「さようなら!」

 

「レ、レッスン頑張って下さい!」

 

「……」

 

「うん。じゃ。行こうか、乃々。……色々話もしたいしね?」

 

「……了解です。」ズーン

 

 

 

 

 

「行ってしまった……可愛かったな……しぶりん……」

 

「吉木くんずっとそれ言ってるね。上の空?」

 

「そうでしょ。もう一人も。」

 

「……」

 

「おーい。きっかー?聞いてるー?」

 

「……」

 

「やっぱこの人も上の空です。」

 

「だらしない男達だなあ……」

 

「本当だよ。凛さんに魅了されるのは解るけどこれは魅了されすぎでしょ。」

 

「彼女アイドルなんでしょ?そうなるのも無理ないんじゃない?私にはよく分かんないけど。」

 

「クソ真面目だもんね。」

 

「言っていい事と悪い事の判断は大事だよ。死にたくないならこの言葉、きちんと覚えておこうね。」

 

「すみませんでした殺さないで死にたくない。」

 

「よろしい。」

 

「よかった。」

 

「てか曰比谷さんはどうなの?凛さんがアイドルって知ってたのに貴女はあんまり変化ないけど。」

 

「私は慣れてるからね。理由は聴かないで?」

 

「おけおけ。」

 

 

 

「…………あれ?」

 

 

 

「どうしたの?」

 

「いや、のーちゃんが普通にしぶりんと一緒に事務所行ってる事を気付いただけ。」

 

「はあ。」

 

「…………のーちゃんって男だよね?」

 

「……お、男だよ。」

 

「女性アイドルしか受け付けない事務所なのに何でのーちゃんはそこへ向かうんすかね。」

 

「それ以上はいけない。いいね?」

 

「アッハイ。」

 

「取り敢えず男共の片付けを済まさせよう?」

 

「そうっすね。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常は温かく続いていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで乃々?今まで女の子のフリして私の身体を堪能してた感想は?」

 

「言い方が悪意満載なんですけどォ!」




ネタが尽きる事を知らない。それと散りばめられたシュワちゃんネタが濃すぎる。すまん。


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男の娘の森久保 06

私はこの小説を何処に向かわせたいのだろうか(自問自答)


紅茶を嗜みながら休憩していた俺の元へ何人かのアイドルがやってきた。

 

一人目。

 

「どしたの森久保。そんな世界の終わりみたいな顔して。」

 

「何か女性関係の事情で困ったら俺に話せ……そう言ってましたよね?」

 

「え、うん。」

 

「そういうことです。」

 

森久保乃々。男。しかし可愛い。

 

二人目。

 

「そして後ろにいる凛は何でそんな怖い顔をしてらっしゃれるの……?」

 

「この前堂々と廊下で抱き締めあってた二人なら分かるんじゃない?」

 

「まだそれ言います!?」

 

渋谷凛。女。かっこよくて、可愛い。

 

……三人目。

 

「愛海は凛の後ろに立って何をお狙いでございますか?」

 

「え!?あ、愛海!?やられる!?」サッ

 

「いや、その対応は酷いと思います凛さん。」ワキワキ

 

「その手さえなければこんな対応しないんだけどね。」

 

「猟奇的。」

 

棟方愛海。女。あざとくて、可愛い。

 

四人目。

 

「にしても三人共良い所に来てくれた。俺を助けろ。こいつをどうにかしてくれ。」グイーッ

 

「あぁ~^良い匂い~^クンカクンカ!!」ギューッ

 

「な、何してるんですか志希さん!?」

 

「志希……懲りずにまたプロデューサーに抱きついて匂い嗅いでるの?それ飽きない?」

 

「凛ちゃんだってたまにやってるじゃーん。」

 

「「「え」」」

 

「ファッ!?そんなこと、そんなことしてない!!してないよ!?」

 

「「「…………」」」ジーッ

 

「してないってば!!風評被害ィ!!」

 

「……まあそれは追々訊くとして先ずお前は離れろ。野性解放しちゃいそうだから。」

 

「どーぞ解放してください。」

 

「誘うなアホ。」ベリッ

 

「うぇ。」

 

一ノ瀬志希。女。色気が凄い。しかも可愛い。

 

さて、俺を含めて五人の人間がプロジェクトルームに集まった。俺が召集をかけた訳でもないし雰囲気からして乃々が一枚噛んでいるのだろう。一体何が始まるんだ。

 

「プロデューサーさん。話があります。」

 

森久保が俺にそう言った。なんの話だろう。流れからして凛の事なんだろうが……

 

「なあ森久保。その前にさ、こんなに人いて大丈夫なのか?」

 

乃々に問う。だって、ねえ?

 

森久保が男、凛と共に来る、女性関係の話、そしてビビり久保と怒凛……

 

バレてんじゃんこれ。アレがさ。

 

周りに沢山の人がいるこの状況で話していいのかなって思うのは人として普通だよね?二人とも乃々が男だって知らない筈だし。

 

「バレてるんでいいです。」

 

「え!?」

 

ごめん知ってたみたい。

 

「ねえ。二人しか分からない会話止めて。」

 

愛海の方を見る。

 

「うん?ああ、うん。知ってる。」

 

「ま、まじかよ。知らなかった。」

 

「おーい。」

 

驚愕を隠せない。まさか俺以外にこの事実を知っている奴がいたなんて。ちょっとだけ独占欲的なものが傷ついた。ホモではないです。

 

引き剥がした志希の方を見る。

 

「臭いで分かるよーそりゃー。」

 

「……まあ、お前は予想してたしいいけど。」

 

「なんかアタシの扱い酷くないかな?」

 

「私の扱いも結構酷いと思うんだけど?イジメ?これイジメ?」

 

そうか……バレてるのか。

 

「他には?」

 

俺が森久保に質問するといいえという答えが帰ってきた。

 

つまり森久保が男だと知っているのはここにいる四人か。

 

「そろそろ心が痛いよ。ねえ。」

 

考えてみると半年くらいこの事務所にいてこれだけの人にしか森久保の正体がバレていないって逆に奇跡なのでは。

 

180人近くの内の四人だぜ?森久保も頑張ってるよな。その下半身のテン……ゴホンゴホンッ!

 

「それで。話って?」

 

話を戻す。寄り道してしまっていたからな。

 

「凛さん、もりくぼの事が気になるらしくて。」

 

「へえ。そうなのか凛。」

 

「やっと反応してくれた……」ナミダメ

 

なんか凛が涙目で可愛い件について(ラノベタイトル風)

 

「良い機会ですし、皆さんにもりくぼの事を話そうかなって。」

 

乃々がそう言った。

 

「…………いいのか?」

 

「いいです。もりくぼが''男''だってバレてしまえばこれを話す事はそんなに怖くな」ガタガタッ

 

 

 

 

 

「「「「「ん?」」」」」

 

 

 

 

 

五人の声が揃う。突然隣の部屋から発せられた物音に反応したのだ。

 

因みにこの事務所はよく統率がとれている。その為、

 

「話は後。乃々、志希、入り口押さえて。愛海は私と一緒に右横口から強行。プロデューサーは左横口。……準備は?……分かった……ゴー。」

 

瞬間の行動を可能にする。軍隊かここは(セルフツッコミ)

 

「……愛海。左お願い。私は右。」

 

「はーい。」ワキワキ

 

「それは禁止。止めようか。」

 

「は?」ピタッ

 

「そこでキレるの!?」

 

隣の部屋は物置である。小さな空間に様々な小物等が無造作に置かれているのだ。

 

そこから音がした。

 

考えられる可能性は幾つかある。

 

一つは幽霊とかの超常現象。一つは小物の落下音。一つは老朽化や隙間風による自然音。

 

そして一つは、人による作為音。

 

横口から物置に入った俺は原因を直ぐに見つけることができた。

 

今回は、どうやら。

 

「何してるんだ?まゆ。」

 

人だったらしい。

 

「の、ののののの、乃々ちゃんが、男……???」コンラン

 

「まゆ?まゆ!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「あ、あの、まゆさん、大丈夫ですか?」

 

「は、はい!大丈夫ですよぉ!!ドキドキなんてしてませんよぉ!!」

 

「???」

 

状況は混乱である。

 

物置から壊れた時計の様な佐久間まゆが出てきたのだ。

 

俺も凛も愛海も志希も勿論乃々も、混乱している。

 

「ねえまゆ。あんな所で何してたの?盗み聞きとかじゃないだろうし。」

 

「へ!?そ、そうですよね!!盗み聞きなんて悪趣味ですよね!!あはは!!」アセアセ

 

「まゆ…………(疑惑)」

 

「違いますよ!?別に、まゆの知らないプロデューサーさんを知りたかったとかじゃないですよ!?」

 

「まゆ…………(落胆)」

 

これはたまげた。ヤンデレかな?

 

「プ、プロデューサーさんが心配で……ゴニョゴニョ」

 

これはたまげた。天使だわ。

 

「というよりも!!乃々ちゃんが男って……男っていうのは!!本当なんですか!?」

 

顔を真っ赤っかに染め上げて発言するまゆ。何で照れてるんだろう(すっとぼけ)

 

「本当ですけど……その……色々ごめんなさい……」

 

顔を下に向ける森久保。

 

「あ、あわわわわわわ。」

 

「まゆさんどしたの。私が落ち着かせてあげましょうか?」スッ

 

「愛海ちゃんは動かなくていいんですよぉ?」ゴゴゴ

 

「アッハイ。ゴメンナサイ。」

 

「……乃々ちゃん、まゆの裸見たことありますよねぇ?」

 

「…………あ。」

 

は?まじ?羨ま……じゃなくて羨ましい。ん?変わってないね。

 

「あれって不可抗力とかでもなかったですし、それってつまり、」

 

意図的ですよねぇ?

 

「……私も便乗して言わせてもらうよ、乃々。女子トイレ使ってたじゃん。あれって完全に、」

 

そういう意味だよね?

 

「これはアタシも言うべきかな?言うべきだね!うーん……えっと……あ、あった!アタシを慰み者にする妄想は、」

 

楽しかったかにゃ?

 

(三人の美少女に詰め寄られるとかなんてハーレム?なーんて俺は思ってしまうが。)

 

乃々の顔はこの世の終わりを示しているかのようだ。絶望している。

 

「……む、む、む」

 

「「「ん?」」」

 

「むぅーりぃー!!!!!!!!!!!」ダッ

 

「「「あ!逃げるな!!」」」

 

乃々が常套句を発して逃走。それを三名の御方が追跡。

 

(ラブコメか。主人公乃々の。)

 

…………何しにきたのあいつら。つーか話は?どうなったんすかね。

 

「……愛海は乃々と過ごしてて何かなかったのか?」

 

この場に唯一残っていた彼女に訊く。少し気になったからだ。

 

「初日から男だって知ってたし特に何にもないよ。」

 

「しょ、初日!?」

 

「登山家なめんなぁ?」

 

え、愛海すごくね。尊敬するんだけど。これからは師匠って呼ばさせてもらおうかしら……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

森久保のこの辛くとも幸せな日常は波乱万丈に続いていくのだろうと俺は思う。




活動報告でお話の題を募集してるんで、気が向いたりしたらどーぞおねげーします。


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男の娘の森久保 07

リクエストの一つより。


今日はアイドル合同レッスンの日。間近に控えたライブのため組まれた数あるレッスン日程のうちの一日です。

 

そのライブでもりくぼはアンダーザデスクとインディヴィジュアルズの一員として出演することが決まっています。アイドル合同レッスンは一週間あり、演者毎にレッスン日が決められていて、今日はその割り当てられた日だったという訳なんですが……

 

「乃々。後ろにいてね。」

 

「はいぃ……」

 

ヤバいです。

 

何がヤバいかというと勿論着替えの時に、つまり今、沢山の女体に囲まれているということです。

 

周りには美少女、美少女、美少女、美少女……

 

男子中学生を殺す為だけに存在している空間のようですけどォ!?(半ギレ)

 

とてもむぅーりぃーのワルツ(意味不明)なので凛さんの後ろでパピヨンみたく震えています。

 

もりくぼにもレッスンはあるので着替えないといけませんがこの状況では不可能。だってバレます。何がって、そりゃ、ナニですよ(曇りなき眼)

 

「……アンデスのときとか大変じゃない?」

 

「目を潰して鼓膜を破ればなんとか。」

 

「ええ……」

 

今日だけ異様に優しい凛さんの陰で無駄に柔らかくて快い女子の香りに包まれながら立つもりくぼ。さながらトーテムポール。

 

「早苗さーん!登らせてくださーい!」ガバッ

 

「ダメ。」ガシッ

 

「清良さん!?何故ここに!?」

 

「タイーホ。」ガシャッ

 

「早苗さんは早苗さんで何故手錠を!?」

 

……愛海さんは今日も平常運転です。

 

 

 

 

 

「凛ー?着替え遅いよー?」

 

「そう?」

 

と、着替え中の加蓮さんが近くに来ました。

 

(デ、デカいっ!てダメです!見ちゃダメですけど!)

 

半脱ぎ状態だった彼女をなるだけ見ないように目を横へそらします。

 

しかしすると、

 

「恥ずかしがらず早く着替えろー★」

 

(巨峰!葡萄!大山脈!てだからダメなんですけど!もりくぼのバカ!)

 

そらした先には美嘉さんがいました。こちらにジリジリと近付いてきてます。

 

というか何処見ても犯罪です。加蓮さんや美嘉さんや早苗さんや清良さんや…………ほんとこの事務所顔面偏差値おかしくないですか?

 

(にしても周りの方達を見ていたからか顔の熱さを感じます。)

 

やはり凛さんを見ているのが得策、というかそれしかないんですが。

 

でもなんか……

 

「わ、分かったってば!着替えるって!」

 

雲行きが……

 

「の、乃々。その……今日だけは許すから。」

 

怪しく……

 

「女同士なんだから気にせずほーら!」

 

(もりくぼは男なんですけどォ!)

 

 

 

凛さんがそっとカーディガンを脱ぎます。毛糸で編まれたそれはとても暖かそうで、もりくぼはその暖かさが今とても欲しい。心が寂しさとか孤立感でガクブルガクブル。

 

次に手をかけたのはブラウス。前掛けボタンを凛さんは一つずつ外していきます。白のそれとは対照的に赤い顔が状況に反して魅力的に映りました。

 

段々と見えてきた上の下着。どうでもいいんですが上の下着って判りづらいですね。イメージに違わず蒼い。しかし現状とは真逆です。冷静とはいえず情熱っぽい。

 

そう。はっきりいえばもりくぼの心はガクブルしながらも滾ってます。思春期嘗めんな。というか脱ぎかけの服から覗く寒色のブラと色素薄めの肌がとても扇情的です。頭が沸騰しそう。

 

「そんな舐め回す様に見ないでよ……」

 

涙を潤ませながらのジト目に弱々しい声。プラス赤面。アンド凛さんの着崩れ姿。これで落ちない男がいるならもりくぼはその人を神として崇拝できます。

 

「乃々ちゃんはなんでそんなに凛を見つめて真っ赤になってるの……?」

 

美嘉さんの問いも耳に入ってすぐ外へ通り抜けていきます。

 

何故か。

 

それは、

 

「って乃々?乃々!?」

 

気絶したからです。刺激が強すぎたみたい。テヘペロ。

 

 

 

 

 

桃源郷は、そこにありました___by 森久保乃々

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常は波瀾万丈に続くのだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ」

 

「むぅーりぃーなんですけど……」

 

「常套句だから私に通じるなんていう安易な考えじゃないよね乃々?」

 

「ごめんなさい忘れます。」




凛さんの自己犠牲心には感服致します。というか流石に下は憚られて書けなかった。てへ。


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男の娘の森久保 7.1

アグレッシブすぎた
キモい
リクからだいぶ逸れてしまった
これら三つの理由で没案になりましたこの世界をどうぞ堪能してください(ヤケクソと投げやり)


今日は総アイドル合同レッスンの日。間近に控えたライブのため組まれた数あるレッスンのうちの一日です。

 

そのライブでもりくぼはアンダーザデスクとインディヴィジュアルズの一員として出演することが決まっていて、演者毎に決められたレッスン日の今日がその割り当てられた日だったという訳なんですが……

 

「らんらんまた成長したんじゃなーい?」スリスリ

 

「ひゃっ!い、如何ような事を!」

 

(未央さんに蘭子さん。)

 

「文香さんの貸してくれた小説面白かったです。あんな世界観初めて見ました。」フンスフンス

 

「アシモフ、いいですよね……(恍惚)」

 

(加えて、ありすちゃんに文香さん、)

 

「ナナ先輩大丈夫すか?目ェ死んでますよ?」

 

「……寝起きが辛いだけです。」ズーン

 

(心さんと菜々さん、)

 

「美穂ちゃん、寝癖寝癖!」ボソボソ

 

「え!?……はっ!」ガバッ

 

(卯月さん、美穂さん……)

 

ガヤガヤワアワアキャッキャッウフフ

 

まさしく、女子。

 

(孤立なんですけどォ!)

 

紅一点とはもりくぼの事です(違います)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

待って下さい、ほんとに待って下さい。これはヤバいです緊急事態です。計アイドル30名程で着替えてますがヤバいです。

 

だってもりくぼ男ですよ!?

 

「十四歳にしてはご立派なものをお持ちで~?」

 

(未央さんも充分にすんごいもの持ってるじゃないですかァ!)

 

悪い。とても悪いどこにとってかは言いませんが。

 

「そ、そんなことないもん!……ふ、普通だもんっ!」

 

(そんなことありますぅ!スタイル良すぎですぅ!一体何人の男子をその魅惑のボディーで堕落させてきたんですかねェ!?)

 

蘭子さんを堕天させたい。どうやってかは言いませんが。

 

(それにしてももりくぼ今日死ぬんでしょうか。これはこのまま悟りを開ける勢いですよ。)

 

美少女が同じ部屋にて着替えをしながらキャッキャッウフフしてるんです。男子中学生からすればあまりに衝撃的で仏陀を幻覚しそう。

 

それに今を緊急事態と形容しているのはもう一つ理由があります。既知の通り、

 

「乃々は見ちゃ駄目。ロッカーの方向こうか。」グイグイ

 

「桃源郷がァ!」ジタバタ

 

「乃々ちゃん?」ゴゴゴ

 

「ゴメンナサイ」

 

もりくぼを男だと知っている人の存在です。今のこの場所で言えば凛さんとまゆさん。

 

というかいくらなんでもこの仕打ちは酷くありませんか!?こんな素晴らしいセカイを見届ける事が許されないなんて緊急事態にも程がありますよ!?(開き直る男子中学生の図)

 

「全く……乃々はもうちょっと理性的だと思ってたんだけどな。」

 

まるでお母さんが子を憐れむ様に言います。

 

「じょ、冗談ですよ冗談……まさか本当に覗こうだなんて思ってないですし……」

 

「ならそのままロッカーを鑑賞してて下さいねぇ。」

 

声が冷えきっています。-273.15℃です。アブソリュートゼロです。

 

「はい……」

 

彼女達二人は周りの人らの着替えが終わってからもりくぼを自由にするつもりらしいです。どうやらレッスンまでまだ三十分程は猶予があるそうで。

 

(だからといってこの拘束は一体。もりくぼの自由権は果たして何処へ。何故もりくぼにだけ日本国憲法が適用されてないんでしょうか。乃々は人に非ずとか言いたいんですかそうですか。へー。)

 

ああ、ロッカーのぽつんと佇む感じ、まるで現状のもりくぼみたい……ふふ……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

ロッカーについて論考し早数分。事件が起こります。

 

「ノノ?着替えないのか?」

 

(従ってロッカーとは即ちリベラリズム、換言して自由主義……ん?)

 

美玲ちゃんがいつまで経っても仏像の様にロッカーを見つめているもりくぼを不思議に思ったのか、そのような疑問を呈してきたのです。

 

「あ、その、着替えます。もうちょっと後で……」チラ

 

近くにはやはり凛さんとまゆさん。ちょっと二人とも圧が強すぎませんか。血の気が引きそうです。

 

それとは別にもりくぼは横目で美玲ちゃんを見ないように注意します。その……ユニットなので、ね?そういう目で見るのは、ね?

 

「マユとリンは?着替えないのか?」

 

「え?ああ、着替えるよ。ね、まゆ。」

 

「はい。」

 

ですから威圧感。二人からくるプレッシャーが。抑えて(震え声)

 

「でも後五分で集まらないと遅れるぞ?」

 

 

 

「「「え?」」」

 

 

 

ぽろっと発された、思いもよらぬ言葉に驚きます。

 

「7:30からじゃなかったっけ?」

 

凛さんが問います。

 

「7:10に変更されてただろッ?」

 

美玲ちゃんによる、簡潔な返答。

 

「「「…………」」」

 

その無慈悲な答えに押し黙るしかなかった私たちの行く末、いかに。

 

 

 

完。

 

 

 

…………なら、良かったんですけど。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

(絶対に見ないでよ乃々?分かった?ねえ?)

 

(わ、分かりました。)

 

(まゆからもお願いしますよ?)

 

(分かりましたから早く着替えましょう!?)

 

大半のアイドルが既にレッスンルームへ向かった頃。もりくぼ達は漸く着替え始めました。

 

大半とは、つまり、まだ少数の事情を知らない女性の方々がいらっしゃるという訳で。

 

その方々に気づかれないよう、部屋の角で私達は着替えます。

 

壁側にもりくぼ、その前に凛さんとまゆさんのお二方が配置されているという図です。

 

上手にもりくぼを周りの人達から見えないよう隠してくれて感謝の限りです。一応、自分が男であること、バレたくないので。というかバレたら社会的死に変わりないので。まだもりくぼ、死にたくないので。

 

と、しかしこれに問題が発生しました。

 

「……乃々さんは何故後ろを向いて着替えてるのですか?」

 

隙間からもりくぼの姿が見えていたみたいで、それがおかしく見えたのでしょう。

 

「それに凛さんとまゆさんもそんなにくっついて、しかも乃々さんを隠すように。」

 

文香さんからの鋭い指摘。これもおかしいらしいです。……まあ確かにおかしいですよね。

 

(いえ、冷静に分析するんじゃなくて。)

 

文香さんだけでなくありすさんや菜々さん、心さんらの奇異の視線を犇々と感じます。

 

ヤバい、と思い、取り敢えずジャージを巧い具合に掲げて身体を隠し、前を向きます。

 

(なんこれ。滑稽なんですけどもりくぼの姿。)

 

服を上半身の前で広げているもりくぼ。なんこれ、なんですけど。

 

しかしそんな事より滑稽、というか、大変な事が起きました。私が前を向けば当然そこには焦った凛さんとまゆさんのお顔と身体がある訳でして。

 

(普通に、見てしまっている……お二方の御姿を目に焼き付けてしまっている……)

 

凛さんは現在上半身に服を着用していません。深い蒼色のブラのみでした。胸が小ぶりという、そんな些末事は気になりません。恥ずかしさに肌を赤くしているその事実がそれを忘れさせるのです。下はまだスカートを履かれています。

 

まゆさんは既に下半身をレッスン用のズボンで覆ってます。しかし上には一切手をつけていません。つまり今から脱ぐという訳です。中身の分からない宝箱を開けるような、純粋で、子供っぽい、そんなワクワクとする感情がもりくぼを支配します。

 

(これは後で殺されますね。)

 

もりくぼは殉教を瞬時に悟りました。まあ仏陀であり仏像である私ならそれも簡単です(混乱)

 

(滅茶苦茶ドキドキしてて心臓バクバクですがそれが前向きな理由なのか後ろ向きな理由なのか判別つきません。)

 

ただ仏陀にあるまじき煩悩だらけの男子中学生に分かるのは真っ赤っかな二人が可愛いという事実だけ。

 

ふと、まゆさんが深呼吸をしました。

 

(どうやら、行動を起こす気で……?)

 

もりくぼの予想は正しく、二人は少しずつ距離を空けていき、その空いた空間からもりくぼがはっきりと見える所まで近づいて……

 

次の瞬間、まゆさんは着ていた服を大きい挙動で脱ぎました。それでその空間を阻んだのです。

 

 

 

(深紅のブラだ。)

 

 

 

宝箱の中身は無限に近い、素晴らしいものでした。まゆさんは、これ以上ないほどに顔を赤くさせながら服を脱ぎ、その山脈を顕にしました。

 

男子中学生でごめんなさい。思春期でごめんなさい。そう思いながらまじまじと二人のその麗しい御姿を目に焼き付けていると、まゆさんが、

 

(乃々ちゃん……は、早く着替えてぇ……///)ボソッ

 

そう、発言しました。……は?

 

(かわいすぎてむりくぼなんですけど。)

 

恥辱に頬を赤らめ、瞳を潤ませ、その瑞々しい口唇で懇願し、そしてその艶やかな一声はもりくぼのみに捧げられたモノ。

 

(乃々……早く……///)

 

凛さんもまゆさんに便乗して発言します。

 

屈辱に身を震わせ、目を伏せ、その強かな口唇で懇願し、そしてその弱々しい一声はもりくぼのみに捧げられたモノ。

 

(どうしましょう。男子中学生としてはこのままの状態を保持して鑑賞を続けたいんですが……)

 

レッスンに遅れたらトレーナーさんに怒られます。それはトレーナーさんとプロデューサーさんに迷惑なので避けたい。

 

そもそもこの天国をじっと視聴し続けてたら多分料金とかが発生すると思うので要望通り着替えるとしますか。

 

け、決してお二方に嫌われたくないだとか、もりくぼ自身も流石に恥ずかしくなってしまってビビったのだとか、そういうんじゃありませんけど……

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

その後のレッスンには一応間に合いました。けれども私たち三人は終始赤面だったので周りの方々に不思議な視線を向けられました。そしてあれを見ていた心さんには「女の子同士なんだしそんなに恥ずかしがらなくても」と言われました。ごめんなさい。もりくぼは男です。

 

蛇足として、凛さんとまゆさんにはこのレッスンの日から数えて二日の間だけ口をきいてもらえませんでした。世界は残酷ですね……(元凶)

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常は波瀾万丈に続くのだと思います。




if世界線はギャグに走りがち。


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男の娘の森久保 08

リクエストより。


今日は個人的なお出掛けの日です。洋服でも買いに行こうかな、なんて思いから外出を決意しました。

 

もりくぼは女子寮には住んでいません。正確には皆の住んでいる女子寮にもりくぼは住んでいないのです。

 

自分が男であることを会社の人は知っています。なので女子寮にもりくぼを住まわすのは問題がある。

 

そのため特例として個人の部屋が用意されました。

 

太っ腹すぎるんですけど346プロダクション……

 

兎に角、外出するとき、周りにはアイドル諸君がいないのでもりくぼは好きな格好が出来る訳です。

 

何度も反復しますがもりくぼは男。

 

つまり男用の服がいります。決して男装なんかじゃありません。

 

そしてここから導かれるのは、男用の服を買うための男用の服がいるということ。

 

男の格好で外を歩くということなのです。

 

(女装しすぎたせいかこれが正しい服装なのに違和感をもちます……)

 

インナーは白黒のストライプ、白のコートを羽織り、深い黒のタイトパンツとシューズで全体を締め、ベージュのキャップと誕生石であるペリドットをあしらったネックレスでお洒落に遊び心も忘れません。

 

(挑戦的な服装ですが……毎日のように女装してるのと比べればよっぽどマシです。)

 

……イヤな訳じゃないんですけどね。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

最初の買い物が終わって、お昼頃。

 

(楽しかった……♪)

 

鞄を片手にるんるんと道を歩きます。

 

(皆で買い物するのも良いんですが、やっぱり一人で落ち着いて頭を悩ませるのも良いものです。)

 

ベレー帽を買いました。にへへ~。

 

「んふー……休日とはかく有るべしー……って、あれ?」

 

ふと反対側の遊歩道が目に入ります。

 

そこには、

 

「瞳孔が開くその瞬間を見せて~♪」

 

(し、志希さんがいる……っ!!)

 

変装してますがはっきりと分かります。あれは一ノ瀬です。

 

(ヤバい。こんな格好してるのが彼女にバレたら絶対弄られる。特に志希さんには。)

 

あの人は鼻がいい。いくらここが人通りの多い東京と言ったって化け物の嗅覚からすればおちゃのこさいさい。

 

志希さんのグラビア云々で既にネタを掴まれているんです。これ以上はいけない!

 

(逃げましょう。よし。にげ)ガシッ

 

「へ?」

 

肩を掴まれた感覚のまま、後ろを見ます。

 

そこには。

 

 

 

「乃々ちゃーん?これはこれは偶然だねー?」

 

 

 

志希さんが、ニコニコしてる志希さんがそこにいました。

 

心を乱された私はとち狂い、

 

「へ、へ?ち、違いますが?(混乱)」

 

「……ふーん?」

 

「弟の……そう!弟の、えっと、い、一郎です!森久保一郎!はい!(錯乱)」

 

口から出任せ。焦ってて自分でも何言ってるか分かりません(駄目じゃん)

 

「そっかそっか!乃々ちゃんの弟さんなんだ!」

 

「は、はい!(意識朦朧)」

 

あれ?のりきれそうですかねこの感じは?

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「皆ー!紹介するねー!さっき出会った乃々ちゃんの弟で一郎くん!」

 

「へー……あ、お姉さんにはお世話になってます。」

 

「輝子ちゃんかたいかたい!もっとラフにいこ!」

 

「乃々さんに似てカワイイですね……ボクには劣りますが。本当に男性なんですか?」

 

「ねっ!一郎くんカワイイよね!乃々ちゃんそっくり!」ニヤニヤ

 

(うぉぉぉぉおおおおお!!!どうしてこうなったぁぁぁあ!?)

 

場所は変わって本女子寮。志希さんに連れられ沢山のアイドル仲間に弄られてます。

 

(お姉さんはもりくぼ自身なんですけどっ!いやお兄さん!)

 

弟であることを全く疑われない。流石ピュアの権化、アンダー16です。

 

(てか幸子ちゃん!?私のことカワイイって思ってくれてたんですか!?ありがとうございます!男ですけどね!)

 

志希さんを見やります。

 

「んー?どしたの一郎くん?」ニヤニヤ

 

な、殴りたい……っ!解りきってる目ェしてる……っ!これだからオーバー17は……っ!

 

 

 

 

 

「ねえ志希ちゃん。」

 

「うん。」

 

「その男の子誰。」

 

「男装乃々ちゃん。」

 

「「えっ?」」

 

志希さんの暇潰しはまだ終わらないみたいです。

 

あの後、志希さんがもりくぼを連れて次は周子さんと美嘉さんを自室に呼びました。

 

ええ。つまり志希さんの自室に三人の美女と弱い男子中学生……

 

「へー……乃々ちゃんカッコええやん。似合っとるよ。」

 

そう言って微笑みかけてくる周子さん。香る和菓子の甘さが頭を融かします。

 

「ホントに男の子みたい……」ペタペタ

 

感嘆しながら体に触れてくる美嘉さん。柔らかい掌がくすぐったい。

 

(玩具の気持ちになるですよ……)

 

志希さんを見やれば。

 

「くふっ……」ニヤニヤ

 

笑いを堪えきれてませんでした。

 

それを発見した私は、

 

(……頭にきました。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

夕方。一時間と少しの拘束に耐え、やっと解放されます。

 

「あー……やっぱ乃々ちゃん面白い……」

 

もりくぼの女子寮に向かう道を私と志希さんの二人で歩きます。

 

「まあ今日の色々はおいといて。乃々ちゃんのそれ、あたしから見ても似合ってるよ。男らしくて。」

 

「……本物の男ですけど、何か。」プイッ

 

「もー、不貞腐れないでよー。」

 

「もりくぼの体で一日中遊んだ癖に……」

 

「言い方。」

 

次の角を曲がれば目的地に到着する、というところで、

 

「そうだ。そのペリドットの効果みたいなのって知ってる?」

 

「知らないです。」

 

「魔除けとか浄化っていう効果があるんだよ。」

 

「へー……」

 

「また一つ賢くなったね!」

 

「そうですね!そういえば志希さん、肩!」

 

「え?」ガシッ

 

私が忠告すると彼女の右肩に手が置かれました。

 

「確かにこのペリドットには()()()効果がありそうです♪」ニコニコ

 

「ま、まさか……」

 

恐る恐るといった感じで彼女は後ろを見ます。

 

そこには。

 

「レッスンから失踪すんな、志希。」

 

鬼の形相をしたプロデューサーさんがいました。

 

「な、なんで……はっ!」

 

彼女がこちらを見てきます。

 

なので精一杯の笑顔を返します。皮肉ましまし!

 

「ま、また負けたぁぁぁあ!!」ズリズリ

 

「うるさい一ノ瀬。」ズリズリ

 

志希さんはプロデューサーさんに捕まり、引っ張られながらプロダクションへ戻っていきました。

 

「男の娘だってやる時はやるんです……!」フフン

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

もりくぼのこの辛くとも幸せな日常はこの日から変化しだすのです。




ペリドットォ!


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男の娘の森久保 09

早すぎるバレンタインデー。あとスランプ気味。すまん。


「森久保はどうなん、チョコ。」

 

プロデューサーさんの机の下で一人、膝を抱えながらぼーっとしていると彼はそんな風に話を切り出しました。

 

カタカタというキーボードを叩く音に日常を感じながらうとうととしていた夕方頃。

 

今日は二月十四日。バレンタインデーです。

 

日本では女性が男性にお菓子をあげる日で、けれども最近は性別に関係無くワイワイする日と化してきています。

 

暖房の効いた部屋でぬくぬくしていたもりくぼに人によっては凍りつくであろう質問を投げ掛けれるプロデューサーさんはコミュ強ですね……

 

そう思いながらもりくぼは言葉を返します。

 

「沢山です。ふふん。」

 

そう。もりくぼ、こう見えてモテます。何故かは知りませんがモテます。ドヤ。

 

義理も本命も友も兎に角沢山貰えます。毎年消費に困ってます。羨ましいですか?ふふ。

 

二桁を下回る事はありません。チョコ以外にもキャラメルやキャンディやラムネ等々。凄いでしょう。

 

というかこれからアンデスで集まる予定があるのでそろそろ待ち合わせ場所に行きますね。では。

 

そう言ってもりくぼは机の下から這い出ます。面倒臭そうな雰囲気を感じ取ったからです。別に冷たくはない……ですよね?

 

だって、大人の男性なら一つくらいは当然……ねぇ?(煽り)

 

と、突然右腕をプロデューサーさんに強く掴まれます。

 

驚いて声を絞る。

 

「ひぃ!?……な、何ですか……?」

 

見れば、彼の表情は、暗い。シベリアのように寒々としています。

 

……そういえば同級生にもいますね。こういう人。

 

「プロデューサーさんはどうなんですか、チョコ。」

 

察した私はそう訊いてあげます。多分今のもりくぼは慈愛に満ちた顔をしてますよ。

 

彼は掴んだ私の右腕を離して小さく言いました。

 

「……世界は…………残酷なんだ………………」

 

(うわっ、めんど。)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「今までゼロって、まゆさんや凛さんは?」

 

「担当してからまだ一年経ってないから今回が初めてのバレンタインデーだ。」

 

「……それじゃあ心配ありませんよ。」

 

「……何で?」

 

鈍感……!あの分かりやすい好意に対する鈍感……!

 

男の身からすればすごく腹の立つ、ハーレム主人公的鈍感。殴りたいです。キレ久保。

 

「そ、そもそも、そもそもですよプロデューサーさん。」

 

声が上擦る。言うんです森久保乃々!

 

「はい。」

 

「……も、もりくぼがいるじゃないですかっ。」

 

「…………はぇ????」

 

悶々と抱いていたそれをプロデューサーさんに伝えます。

 

彼はただ唖然として口を開きっぱにします。面白い顔をしている。

 

どうやら男の好意にも鈍感らしい。生粋の主人公体質に戦きを隠せない。当日にアンデスで集まると言った時点で分からないもんですかね(呆れ)

 

そうしてわざわざもりくぼは直立不動の彼に言ってあげます。

 

「ど、同性同士がこの日を楽しんじゃいけないなんて、誰も決めてませんし……感謝の気持ちを伝えるいい機会です、よね……」

 

「乃々……ああ心の友よ……」

 

「勿論恋愛的なモノじゃありませんよ。手作りですけど。」

 

手作り。そう口にした瞬間彼は何かを噛み締めるような顔になり、そして天井を見上げて両手を掲げました。

 

「見てるか高校のクラスメイトォ!俺は人生に勝利したぞォ!甘い甘い手作りチョコレイトォ!世界にたった一つ、アイドルからの贈り物ォ!最高ォ!」

 

ええ……(困惑)

 

「後で他の人からも貰えますからそんなに喜ばなくても……もりくぼのチョコなんて大した事ないですし……」

 

そう言うと彼は私があげたチョコを大事に鞄の中にしまい、大きな声で叫びました。

 

 

 

 

 

「初めて(のチョコ)が乃々だからこそ良いんだよ!それに乃々は(お菓子作り)上手いんだし気にすんな!(心配で)ビクビクしちゃって!もう!」ゴトッ

 

「「ゴトッ?」」

 

「なんか」クルッ

 

「既視感が……」クルッ

 

 

 

 

 

「乃々と初めて……上手……ビクビク……?あんた乃々とナニしてんの……?」ゴゴゴゴ

 

気づくとそこには怒髪天の凛さんとニコニコの志希さんがいました。

 

「二人とも顔赤いし。なに、バレンタインだから舞い上がったとか?は?」

 

つかつかと足音を大きくたてながら彼の元まで行き、胸ぐらを掴む凛さん。

 

(……?)

 

距離の離れているもりくぼはそれを不思議そうに見つめながら近くに寄ってきた志希さんへ質問します。

 

「状況が掴めないんですけど凛さんどうしたんですか?」ボソボソ

 

「あー……勘違い、的な。直ぐ収まるだろうし放っておいてもいいんじゃないかな。」ボソボソ

 

 

 

 

 

「ねえプロデューサー、弁解は?」グググ

 

(首が絞まって喋れねえ……っ!殺意しかねぇぞこの女!)ジタバタ

 

 

 

 

 

「ていうかマカロン渡しに来たの間違いだったかにゃー……まさかプロデューサーがいたなんて思わなかったよ。まあいいや。はい。」

 

そう呟きながら志希さんはあの二人を尻目にもりくぼへ包装の施されたマカロンを手渡してくれました。

 

赤、白、黄と多種多様の色で彩られたマカロンは一つ一つが個性的で、なんとなく、志希さんらしいなと私は思います。

 

「初心者ですが頑張りました。えっへん。」

 

可愛い。

 

「えっと、もりくぼからもささやかながら……」

 

そう言って懐から取り出したキャラメルを渡します。

 

「へー……キャラメル……へー……(震え声)」

 

部屋の暖かさに彼と私があてられたのと同じよう、彼女も顔を赤くします。

 

「受け取っておくね。ちゃんと。」

 

「は、はあ……」

 

志希さんの様子がおかしい。まるで恋する乙女みたいで……

 

 

 

 

 

「あんたにあげるつもりだったチョコやっぱりあげない。」

 

「あえ!?マジ!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

物語の終演は近い。




森久保のキャラが書けなくなってくるという異常事態。担当なのに。好き過ぎてクレイジークレイジーしちゃったかもしれない。おかしくなっちゃうよ。


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男の娘の森久保 特別枠 一ノ瀬志希の純情

コメント欄に触発されて書いた志希と愛海それぞれの過去のお話。森久保はほぼ出ない。それと展開をある程度拝借してます誰からとは言いませんが。


森久保乃々、彼女が仕事の日。そしてあたしが休みの日。

 

あたしは本女子寮から離れた乃々ちゃん専用のお部屋にやっと到着する。

 

あたしは思考する。

 

(不思議なんだ。彼女。)

 

森久保乃々とはあたしから四つ歳下のアイドルの事である。

 

彼女は一ヶ月前に突然、事務所に来た子。アイドルになるための()()()()()()()を突破して編入されたのだ。

 

別段あたしはこの事について何かしらの異論を唱えたいわけじゃない。

 

その後の待遇と彼女の香りについて異論を唱えたいのだ。

 

この事務所所属のアイドルになると専用の女子寮へ移住するかしないかを決めなければならない。

 

もし移住するとしてもお金はかからない。大きい会社の特権であろう。

 

大体の子は移住を選択し、彼女もそうした。ここまではいい。

 

さて、そうなると彼女はあたし達と一緒に過ごす事になる筈。なのに。

 

(特別個室待遇……VIPかな?)

 

本女子寮から十分程歩いた先にある346の社員が管理している小さいマンションの一室。

 

そこを彼女は住まいとして分け与えられている。

 

わざわざ、だ。

 

なんでわざわざ?

 

これを乃々ちゃんに訊いても大体逸らされる。話も目線も。悲しい。

 

そうそう、それと香りね。香り。

 

あたしは鼻が平凡な人よりきくから、こう、特殊能力?って感じの事ができるらしい。

 

あたしからしたらそれが普通なんだけどね。

 

まあその出来る事の一つに男女の類別があるの。

 

香りだけで相手が男か女か判断できるってやつ。

 

(乃々ちゃんからはどちらもする。深く濃く、する。)

 

男っぽいし女っぽい。フシギな香り。

 

魅惑的で彼女自身の存在には陰がかかってる。

 

キョーミそそられるー!

 

だから乃々ちゃんの家の鍵をあたしが持っていてもそれは合法。うん。ヌスンデナイヨ。

 

ここは新築ではない。というかはっきりいって古い。鍵はまんまキータイプ。あたしの新築借家とは違う(自慢)

 

防犯に関しては心配してないけど。

 

(管理人さんが、その、結構アレな人みたいだし。)

 

 

 

 

 

「待て。」

 

「はい?」

 

「おい、誰だあんた。」

 

「一ノ瀬志希、乃々ちゃんのオトモダチ。」

 

「え!?志希にゃん!?」

 

(うお、急に叫ばないでよびっくりした。)

 

「一ノ瀬って、志希!?」

 

「う、うん。」

 

「お、俺大ファンなんです!!マジかよ!!マンションの管理人って最高だな!!上から通達された通りにこの孤島へ異動してきてよかった!!」

 

(それ異動じゃなくて左遷じゃない……?)

 

「どうぞどうぞ!!チャン乃々のお部屋は二階の右から二つ目です!!」

 

「あ、ありがとう……」ヒキッ

 

「あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''!!か''わ''い''い''な''あ''し''き''に''ゃ''あ''あ''あ''!!」

 

(well,well,well.)

 

 

 

 

 

……うちの会社ってヤバいかもしんない。

 

(それはおいといて。とりあえず乃々ちゃんのお部屋に侵入、じゃなくてお邪魔できたし。)

 

特別待遇と香りの原因を探るよ……!(建前)

 

それと暇潰しもするよ……!(本音)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

狭い部屋を探索しているとそこそこ大きな箪笥を発見した。

 

お洒落さんだしあたしとは違って服が沢山入ってるんだろーなーなんて思いながらそれを開ける。

 

そこには予想を裏切らず多種多様の衣類が仕舞われていた。

 

そう。多種多様。

 

(どう見ても男用の服があるんですが……)

 

女性服:男性服=4:1くらいの比率。

 

(男装趣味があるからどっちの香りもするのかな。)

 

でも向こうにいた時にもそういう人いたし……香り違うし……んー?

 

男性服のスメルを堪能しながらそう思った。

 

 

 

 

 

洗濯かごを発見。中を凝視する。

 

(下着が男用多くない……?)

 

今度は1:1くらいの比率。ええ?

 

シャンプーとかも男用のものを使用しているみたい。

 

(男に憧れてる……)

 

いやもしかして、

 

(乃々ちゃんに彼氏がいる……?)

 

 

 

 

 

寝室のスメルは特に深くて濃い。男と女がない交ぜになったフシギな香りが甘ったるく鼻にかかる。

 

ベッドが大きい……

 

(あ、あわわ……)

 

ここで乃々ちゃんとその彼氏さんがまさか……(妄想中)

 

(まだ早すぎるっ。駄目駄目!)

 

まあ一線超えた感じは無いしそこはあたし、気にしてない。匂いで解る。便利。

 

乃々ちゃんに限ってそういう現実的でカレカノ的な色恋は絶対あり得ないだろう。

 

彼女のアイドルへの態勢は真摯でいて真剣そのもの。

 

恋愛にうつつを抜かしてはない筈。

 

……でもだからといって本棚に入ってるエロチックな本はあたしでも見逃せない。てか女子中学生が何をしてるのさ。

 

(完璧()()()()()()で製本されたものを乃々ちゃんが持ってる……)

 

淫乱じゃん……(七割正解)

 

たとえアイドルに真摯であったとしても家にこんなのあったらびっくりだよ。

 

顔が熱い。

 

気になって中身見だしてから顔が熱い。プレイも熱い。

 

うわそんなの入らないでしょ、って、入るの!?

 

(乃々ちゃんが更に分かんなくなっちゃったよ……だって倒錯しきってるんだもん。)

 

と、その本に夢中だったせいで何かに足をぶつけてしまった。

 

本を棚に仕舞い、そちらを見ると、ゴミ箱がゴミを散乱させて倒れていた。

 

やらかした。

 

(元に戻さなきゃ……)

 

熱い顔を冷ましながら、先程の情事を頭から追い出しながら、ゴミを箱に入れていく。

 

すると。

 

鼻をツンとさす強い男の臭いがした。

 

(……)

 

初めて嗅ぐ臭い。刺激的な臭い。本能的な臭い。

 

今掴んでるこの丸められた紙くずからそんな臭いが。

 

一ノ瀬志希は好奇心旺盛。どういうものか知りたくて、それを開いて鼻に近づけた。

 

……あ。(察し)

 

…………

 

…………

 

…………(純粋乙女、故に思考停止)

 

 

 

 

 

別にトリップしていた訳じゃないらしい(一ノ瀬志希のウワサ)

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

数分後、そのマンションを離れていく一ノ瀬志希の姿を目に焼き付けていた有能変態管理人はこう残した。

 

髪の如き赤面。

 

味を知った乙女。

 

と。

 

 

 

 

 

一ノ瀬志希が森久保乃々を男だと知った日。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

愛海「偽乳は悪。廃絶すべき悪。あるがままを受け入れ誇るべし。」

 

乃々(今日初めて会ってこれなんですけど……)

 

愛海「よって貴様は男である。」

 

乃々「!?」

 

 

 

 

 

人類の叡智であり我らが師匠、棟方愛海が森久保乃々を男だと知った日。




初心な一ノ瀬。こういう志希にゃんも可愛いよね。愛海はもう敬愛してます。


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男の娘の森久保 特別枠 海篇 01

遅くなりました。時期的にも投稿間隔的にも。色んな意味で許して。今回は海入りません。


「乃々。ちょっといいか。」

 

「はい。」

 

「あのな……その……言いにくいんだが……」

 

「……どうしたんですか?」

 

「いや、なんていうのかな。あれなんだよ。」

 

「あれ?何がです?」

 

「……すまん。頑張れ、乃々。」

 

「え?」

 

 

 

 

 

「え???」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

炎天下といっても過言ではない夏模様が深まり、はてさて人のアウトドアなる欲求が高まっていく八月の某日。誰しもが思う事として、長い間暑い場所に佇み汗をかくなんて事はまっぴら御免だ、というものがあります。これに性差はありません。しかしながら、なんと文明の発達したことか。クーラーがあればそんなものは気になりません。そう。炎天下の中の移動も、バスのクーラーがあれば気にならないんですけど…………ははっ。

 

「いくぞ!アイドル!」

 

専属のマイクを口元に近づけて発声するプロデューサーさんが今だけは親愛たりうる友人でなく、恨むべき敵に見えました。

 

(ああ……惨禍の渦なんですけど……)

 

()()()()!自然豊かに楽しめテメェら!今日だけは仕事も忘れて~!?」

 

「「「「「「「海だーー!!!」」」」」」」

 

これは世間一般で云う、慰安旅行というものでしょうかね?太っ腹にも会社が気を遣って、総勢四十何人かに、同日に!

 

まさかこんなふざけたプレゼントが施行されるなんて!!

 

(心が休まらないんですけど!?!?)

 

バスは道すがらに揺れ、ああ、その拍子にプロデューサーさんがこけたりしないかなーみたいな小さな呪いを込め続け、私は思索します。

 

クーラーは涼しくて快適ですが、同時に自分の心も冷えてきて堪りません。むーりー。

 

右後ろの席で、端に縮こまりながらビクビクと怯える森久保乃々。

 

男だとバレて訴えられたら確実に負けます。ヤです。まだ前科者にはなりたくありません。社会と仲良くしていきたいです。

 

(だからここは穏便に、荒波を立てず……でも。)

 

本当なら後部座席を左から幸子ちゃん、美玲ちゃん、輝子ちゃん、まゆさん、もりくぼの順に座している筈なんですが……

 

「乃々ちゃーん?おーい?」

 

「聞いてます、聞いてますけど……」

 

「良かった~。お仕事に疲れて眠ってるのかなって思ったよ~。」

 

「わ、分かりましたから、身体をあと数センチほど離してくれませんか唯さん……っ」

 

何故にどうしてなのか、隣には花柄をあしらった夏らしいワンピースに身を包んでいる大槻唯さんがいるのです。まゆさんがいません。あれ~?(現実逃避)

 

兎に角距離が近い。クーラーが意味を為さなくなってきてます。

 

悲しいかな、ここは女子の独壇場。姦しい雰囲気に圧倒されて女装男子は沈黙せざるを得ません。

 

そんな男の純情も露知らず、弄ぶ小悪魔は頬を膨らませます。

 

「もー、目線ゆいの方に向けてよ!」

 

そう言って彼女はもりくぼの頬に手をかけ、顔を間近に持って来させます。

 

(目と鼻の先に唇がぁぁぁああぁぁあ!えっ……げふんげふん!)

 

雰囲気を彩る薄化粧が妙に艶っぽくて、直に響く呼吸の音がもりくぼの回路を狂わしていく。

 

はっきり言って密着している。だからとても凄い。はい。なんていうか、弾力ですよね(IQ400)

 

「……顔真っ赤だけど、暑いの?ゆいの紅茶飲む?」

 

差し出してきたのは飲みかけのペットボトル。はぁー????

 

(この人は魔性すぎると思うんですけど、有識者の皆さんはどうなんですかね?同じ気持ちですよね??)

 

いやはや、飲む訳ない。本当は飲みたいけど。嘘。飲みたくないです。違いますけど。煩悩に負けてなんかないんですから。

 

だからこそ、私が掲げる∀nswerは……っ!

 

「ありがとうございます。いただきます。」

 

(煩悩ォォォォォォォォオオオオオオ!!!!)

 

やっぱりむり……勝てない……男子中学生は女子高校生の甘い誘惑に敗北するしかありません……

 

唯さんの柔らかい肌の感触に再度ドギマギしながら飲料を受け取って、口に運ぶ。

 

か、間接キス……

 

(無心……無心を貫け森久保乃々……己は女、己は女、己は女……)

 

「あれっ?これって間接キスだね!あはは!」

 

「ぶほっっ!!げほっ!ごふっ!」

 

「ぅえ!?だ、大丈夫!?」

 

(大丈夫じゃありませんが!?間接キスの指摘がヤバルカン半島からのヨーロッパの火薬庫なんですけどぉ!?)

 

無意識の誘惑によって噎せた森久保乃々は紅茶を噴き出してしまいました。彼女の翻弄具合と自分のピエロ様相が凄まじくて恥辱に頭はオーバーヒート。

 

(頼む……もう、終わって……っ。帰って……っ。)

 

「ああ、スカート濡れちゃってる。」

 

「はえ?」

 

彼女はそう言って、手にタオルを取り、私の鼠径部近くを、念入りに、念入りに拭こうとしたのです……

 

(ヤ、ヤメロォォォォォォォォオオオオオオ!!!!)

 

唯さんの手首を掴んで、触れるギリギリの所で諸動を食い止めます。危ない危ない。危うく森久保のビーチパラソルが盛況して開花するところでした(下品)

 

「自分で拭けるのでそろそろ席にお戻り下さい。」

 

「え、でも、」

 

「パラソルを開くにはまだ早いんで日焼け止めはお仕舞い下さい(意味不明)」

 

「ど、どうしたの乃々ちゃ」

 

「何も言わず、ね?」

 

「え……え?」

 

こういうのはマジで勘弁してくれ……じゃなくて、心の底から勘弁してほしいんですけど……はい…………

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「海が見えてきましたよー!」

 

「うおッ!めっちゃキレイ!」

 

「すげー!」

 

疲労困憊のままに、エンジンとエアコンの微かなハーモニーに傾倒してから一時間弱。窓を覗くとそこには文字通りの大海原が広がっていました。真っ青に透き通っているそれは、水面に照り返す線状の光で漏れなく、私達を沸き立たせたのです。

 

(圧巻ですね……言葉が出ません。)

 

はしゃぐ皆さんの様子は年齢相応。子供はこどもらしく、大人は…………大半が大人らしく……はい……

 

で、でもこれは誰でも目がしいたけになっちゃいますよ!仕方がないです!許してあげましょう!

 

(飲酒からのバス酔い、嘔吐寸前の友紀さんだけはさすがに断罪ですがね。ああ、プロデューサーさんが呆れ返ってる。)

 

「海、キレイ……うふふ……」

 

それはさておき、ふと隣を見やると、シンプルなカットソーに身を包んだまゆさんが幸せそうに微笑んでいます。何やら企んでそうに見えます。

 

あ!

 

因みに唯さんはもう戻られましたよ。ええ。勿論。手は出してませんから。それ以外も出してません。はい。それ以外って何……いやいや、それは訊かないお約束ですよ?分かってます?もう頭を突っ込まないで下さいよ?いいですね?ね?

 

「プロデューサーさんと二人きり……海で開放的になってそして……うぇへへ……」

 

(うわ、アイドルのしてはいけない顔をそんなに易々と。)

 

どうやら思想に耽っているみたいですね。

 

(それにしても、妄想に囚われた繭玉の恍惚とした表情は普通に怖い。ハイライトが消失マジックを受けてます。どうやってるんだろう。)

 

「あの、まゆさん……頬を……」

 

親切心で、伝えてみる。

 

「はい~?」

 

まゆさんの声は嬉々としていて、指摘が憚られます。嘘です。そんなもの知ったことではありません(謀叛)

 

「弛みきった顔を、どうか戻して下さい……とんでもない表情してます……」

 

「…………」

 

「ブルドッグ並みに筋肉垂れ下がってますよ。」

 

すーっと彼女の両手は移動します。どうやら顔にそれを充てたいらしいですね(すっとぼけ)

 

「……恥ずかしいんですけど。」

 

彼女が言う。

 

「真似されてしまいました……むーりぃー……」

 

いくら辱しめに耐えきれなかったとはいえ、もりくぼのネタをとるのはダメです。全くもう……語録で対抗してあげますかね(中学生の発想)

 

「むぅーりぃー。」

 

「共鳴もむーりぃー。」

 

「むぅーりぃー。」

 

「むーりぃー。」

 

「……ふふっ。」

 

「あはは。」

 

「真似しないでほしいんですけど、乃々ちゃん?」

 

「そっくりそのまま返しますけど、まゆさん?」

 

「くふっ。」

 

「んふふ。」

 

「むぅーりぃーのわるつー。」

 

「むーりっりー、むーりっりー、むーりっりー……」

 

「……なんですかこれ……ふふっ。」

 

「よくわかんないです。あはっ。」

 

いつの間にか、まゆさんは顔を覆っていた手を彼女自身の膝の上に置いていました。ちょっとだけ赤いままですが。

 

「えっと……もしかして、口に出しちゃってました?まゆの……アレ、とか。」

 

今の変な流れが照れ隠しから来る模倣行為だったという、まあまあ可愛い末路にちょっとだけグッときてしまいます。まあ本音は……

 

「ダムで喩えるなら決壊してましたね。」

 

「ぐふっ。」

 

まゆさんは日焼け止めの塗り忘れが著しいですね。海に着いてすらいないのに既に顔が真っ赤じゃないですか。

 

と、急に手を掴まれます。まゆさんに。

 

(えっ!?どうして!?)

 

「黙ってて下さい……プロデューサーさんにはバラさないで……」

 

暖かい手で包み込まれて心臓が揺れる。や、柔らか、

 

「は、はしたない女だって思われたら、まゆは!」

 

(ち、近い!息が!息があたってますから!他にもあたって!ちょ!)

 

なんで女の子ってこんなにむにむにしてるんですか?(解脱)

 

「承知しました!はな、離れてござる!」

 

口調が乱れた気もしますがそんな些末事はどうでもいいでしょう。もりくぼにとってはパラソルが文明開化してしまうかもしれないのですから(意味不明)

 

(散切り頭を叩くよりもまゆさんを離した方が良い音がしますよ。ええ。もう何言ってるのか自分でもわかんないです。)

 

そんな時、唐突に、

 

「曲がりまーす!」

 

運転手さんの声がしました。

 

(え?)

 

キィーッという音と共に、上昇気味の体温を孕んだ齢十六の豊満な肉体が森久保乃々の上へ。

 

「わっ……ごめんなさい!」

 

「ふごっ、ふごっ!」

 

女性にだけ備わる自然のエアバッグがもりくぼの衝撃を受け止めてくれました。はい。

 

はい。

 

「さようなら……」

 

「えっ!?乃々ちゃん!?乃々ちゃーん!?」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

「すまない乃々……慰安という名の誘惑地獄で。」

 

「……まあ、あいつはあれでも男子中学生な訳だし、そんなに心配する事ないのかなあ。だって、ハーレムだろぉ?」

 

「最初の時にあそこまで勿体ぶらなくて良かったかもしれないと、今になって思い始めた所存なんだが……」

 

「それに、一応を考えて愛海連れてきたし大丈夫だよな!うん!」

 

「…………」

 

(ぜってぇこの旅行やべぇー!!!)




この時点で男だと知っているのは愛海とPだけです。


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ノスフェラトゥな森久保

饒舌なのは気のせいだと思います。し、下ネタ?そんなのはないよ?(目そらし)

ハロウィン要素皆無だけど許せ。


「はっぴーはろうぃーん……」

 

そう言って付けている羽をヒラヒラと揺らす乃々。彼女にしては珍しくロングスカートではない。

 

今日はハロウィン。町中が騒ぎ、仮装等を行ってトリックオアトリート!する日だ。

 

乃々も例に漏れずお菓子を俺からせびる気満々である。

 

コスチュームはノスフェラトゥ。日本語で吸血鬼を表す語だ。らしくマントを羽織り、髪は結わずストレート、白のショートスカートとベージュのブラウスを着用してピアスと小物で装飾を施している。

 

「とりっくおあとりーと、お菓子をくれなきゃ悪戯するんですけど。」

 

ハロウィンの定型句を話し、そして。

 

鋭い、『本物』の牙を俺に見せつけた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

森久保乃々は吸血鬼である。

 

元来、夜に生きる者である。

 

しかし彼女は伝承や言い伝えにあるような吸血鬼ではなく、俗的な吸血鬼らしい。位が下だとかなんとか。

 

人とほぼほぼ同じで、日光に当たっても影響は無いし、ニンニクは普通に食べれるし、十字架も平気だし、特別な力とか不死の能力とか魅了の能力とか大きな羽も無い。

 

吸血鬼らしいなにかがあるとすれば、血を吸うというただ一点のみである。

 

「お菓子あげるって言ったらどうするんだ?」

 

「血を吸います。」

 

「悪戯でお願いしますって言ったら?」

 

「血を吸います。」

 

「ええ……」

 

彼女はハロウィン関係なく、いつもお菓子感覚で俺の血を吸ってくる。首筋に歯を立てて見た目は淑やかに実際は情熱的に吸血するのだ。血を吸われている間は頭がぼーっとして気持ち良くなる。思考が覚束なくなる。中毒性があって危険だ。因みに俺は中毒になりかけててヤバいです…………

 

「ヴァンパイアは面倒臭いなあ。」

 

そう俺が言うと、

 

「違いますノスフェラトゥですけど!」

 

こう彼女に返される。いや、同じだろ。

 

「あのさぁ、ノスフェラトゥとか言われても分かんないんだわ。ヴァンパイアでいいでしょ?」

 

「え……でもノスフェラトゥの方が格好良くないですか……?」

 

牙を光らせながら首を傾げて俺に問う。仮装姿ってのも相まってその仕草がクソ可愛い。それと妖艶。ほんとに貴女十四歳?

 

「まあそれも解るけどさ。」

 

理解を示す。語感はいいよねノスフェラトゥ。

 

「それは兎も角、折角はろうぃんという大義名分があるんです。吸えないだなんて、有り得ないですよね……?」

 

そう発言してじりじりと近寄ってくる乃々。赤い瞳に見竦められ身体が硬直する。

 

「……トリック・オア・トリート?」

 

下舐めずりしながら彼女はそう問うた。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

トリックでもトリートでも変わらない。少しの押し問答の末、結局は吸血に帰結した。

 

俺はソファーに座り首筋を差し出す。

 

装着していた羽や小物を外した乃々は俺の膝上にあまり遠慮もなく腰掛け、右腕を俺の左肩にのせた。向き合う体勢である。

 

彼女は左腕を使い、俺の顔をちょっぴり傾けさせる。

 

乃々が徐に口を開く。リップノイズが嫌に大人らしく聴こえた。

 

「いただきます。」

 

囁くように呟いた。直後、鋭いその牙を俺の首筋に近付けて、ゆっくりと刺した。

 

吸血が始まった。ちうちう、と音がなる。

 

蚊の吸血と違って良い所は痒くならない所である。それどころか乃々の吸血は快楽であると言っても過言でないのだ。

 

血の抜けていく感覚。少しずつ体から力も抜けていく。

 

乃々によって自由が奪われているようで、拘束されているようで興奮する。気持ち良い。

 

頭が回らなくなってくる。思考が覚束ない。

 

乃々によって知性を奪われているようで、原始に戻されているようで興奮する。気持ち良い。

 

ぼーっとしてくる。意識が朦朧とし、呼吸が深くなる。

 

乃々によって生命を握られているようで、この快楽に逆らえないようで興奮する。気持ち良い。

 

段々と乃々の吸血は激しくなってくる。

 

肩を抱く力が強くなり、身体が更に密接し、彼女は吸血でじゅるじゅると音をたて始めた。

 

んっ、という声も漏れて聴こえてくる。吸血に夢中でいつもなら出さない様なはしたない声を抑えず存分に公開する乃々。喘いでいるかの如く繰り出されるその嬌声ははっきり言って扇情的だ。

 

「ちゅっ……んっ……ちゅるじゅる…………」

 

乃々はその淫蕩な表情を包み隠さず、吸血鬼に与えられた『人の征服』という悦楽を嬉々として受け入れていた。

 

既に俺と乃々は、密着していた。

 

柔らかくてすべすべのその肌を、ひんやりとした小柄なその全身を、惜し気なく密着させていた。

 

ドクンドクン、という鼓動が俺に伝わってくる。ドキドキしているらしい。

 

彼女がとても可愛く思えてくる。いつもなら恥ずかしくて甘えられないけど吸血の時だけは思い切り甘えられる、なんて思っているだろう彼女がとても可愛く思えてくる。

 

だから、俺はそっと自分の腕を乃々の腰にまわした。独占欲だった。

 

ビクッ、と乃々の体が震えた。一瞬吸血も止まる。

 

「トリックだよ。気にすんな。」

 

なんて気取ったことを伝える。

 

すると、乃々はまた、おずおずと俺の血を吸い始めた。

 

抱き締めていて思う。『人の征服』者である割にやはり乃々は小さいな、と。これなら、俺みたいな奴でも簡単に襲えてしまえそうだな、と。

 

ほんの少し、このように乃々に対して汚ならしい欲望を抱いてしまったのは誰にも秘密の事である。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

吸血が終わり乃々と離れる。や、やばい……気持ち良かったけどフラフラする……貧血だ……

 

と、頭をかかえている俺に彼女は発言する。

 

「……あ、あの、美味しかったです。ごちそうさまでした。」

 

口の端から薄く赤い液体を少量滴らせ、まるで男を挑発する様に乃々は笑った。

 

今日はハロウィン。

 

俺と彼女が何度目かの退廃の悦びを享受した記念日である。




欲望の捌け口にしてごめん……ごめんよ乃々……俺も乃々に吸われたい(意味深)……うっ…………ふぅ。


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モバP「ソロ曲おめでとォ!」

今回は会話形式のギャグ。キャラは崩壊してる。


P「つーわけでソロ曲おめでとう皆!」

 

乃々「ど、どうも……」テレテレ

 

P「ォ!(突然の死&昇天)」

 

ほたる「えへへ……嬉しいなぁ……」ニコニコ

 

P「ゥ!(様々な感情の競り上がりによる落涙)」

 

心「やったね☆」ニッコニコ

 

P「やったな佐藤。」

 

心「雑。はぁとだけ雑。」

 

P「砂糖菓子って美味しいよね。」

 

心「どした突然。」

 

P「にしても感慨深いなあ!三人がソロデビューだなんて!」

 

乃々「も、もりくぼは望んでないんですけどねソロデビューなんて。はい。」

 

P「じゃあ乃々だけ止めるか!ソロ!」

 

乃々「え"」

 

P「よし!二人だけのデ」ガシッ

 

P「ん?」

 

乃々「見捨てないでぇ……」ウルウル

 

P「ォ!(突然の死&昇天二回目)」

 

乃々「勝ちました。」

 

心「何してんの二人は。」

 

ほたる「……兄妹のじゃれあい?」

 

心「兄妹にしては歳の差が。」ボソッ

 

P「確かに俺と佐藤は歳に差があるな。俺が下ですよね!よっ!最年長!」

 

心「その地獄耳に免じて刑務所じゃなく、地獄に送ってやるよ☆」

 

ほたる「口調のスウィーティー。」

 

心「しゅがしゅがー?」

 

第七回シンデレラガールおめでとうの人「みーん!」ダッ!

 

第七回シンデレラガールおめでとうの人「レッスンがあるのでじゃあ!」ダッ!

 

心「パイセンあざーす!」

 

P「何だ今のセブンティーン。」

 

乃々「メルヘンデビュー好きむりくぼ尊い。」

 

P「どうした乃々限界オタクになって。」

 

ほたる「17って素数ですから孤独ですよね。ええ何でもないですよ。」

 

P「ほたるってこんな子だっけ?ソロ曲貰えてバグってるのかな?」

 

乃々「ののもバグりました……頭撫でて頑張りを褒めて下さい……」

 

P「ォ!(突然の死&昇天三回目)」

 

心「何回昇天するんだよ。」

 

P「おめでたい誰かさんの年齢の分かな。」

 

乃々「14?」

 

ほたる「13?」

 

心「26?……やっぱつれぇわ。」

 

P「いや17?だよ。」

 

心「『?』が別の意味に思えるから止めろ☆」

 

 

 

 

 

ほたる「そういえば私って十三歳なんですよね……」

 

乃々「どうしました?」

 

ほたる「いえ、真面目に考えるとこの歳で自分の曲を持てるなんて幸運だなあって。」

 

乃々「確かにそうかも。私たち幸運ですね。」

 

ほたる「はい。幸運ですっ。」

 

キャッキャッ

 

 

 

 

 

P「じゃあ17!ならいいのか!?」

 

心「一体何千何億何兆年前の話になると思ってんの!?古事記より昔の話はノゥ!」

 

P「体重0kgが何か言ってるぜw」

 

心「表出ろ☆」

 

P「そんな顔真っ赤にして脅されても怖くないです。」

 

心「うう……か、書き間違えくらい誰にだってあるでしょ!?」

 

P「あれは最早書き間違えというレベルではない。」

 

心「うがー!!」

 

P「いや、唸るのとか可愛いだけなんで止めてくれません?」

 

心「っ……う、うがー?」

 

P「心とかいう名前の癖に心の込もって無い演技だ。マストレさんにしごかれろ。」

 

心「……」イラッ

 

心「うるせー『パ』ルメザンチーズのPが。」ボソッ

 

P「んだと砂糖菓子の金平糖?」ビキッ

 

心「なんだよ青カビ?」ビキビキッ

 

乃々、ほたる(目を離してた隙に喧嘩が始まってる……)

 

乃々(祝いの集まりでは……?)

 

ほたる(茄子さんが来るのを待てば大丈夫ですかね。)

 

第七回総選挙四位おめでとうの人(遅れそうです~)

 

ほたる(テレパシーは裕子さんの専売特許ではなかった……?)

 

第七回総選挙四位おめでとうの人(特許なら買いましたよ。)

 

乃々(ええ……買えるものなんですかそれ……)

 

第七回総選挙四位おめでとうの人(あ、それと。)

 

ほたる(?)

 

第七回総選挙四位おめでとうの人(プロデューサーは私が生きてる限り絶対安全です。喧嘩も発生しません。なので待たなくても勝手に止むと思いますよ。)

 

ほたる(病むと思いますよ……ヤンデレですかね。)

 

第七回総選挙四位おめでとうの人(違います。デレデレです。それではまた後で。)プツッ

 

P「青カビ旨いだろォ!?蒼に魅力感じねえのかオメェよォ!?」

 

凛「そうだよ。」

 

心「カビが旨いとか舌腐ってんのかァ!?消費期限きちんと確認しとけハゲ!!」

 

P「それは禁句。」

 

心「ごめん。」

 

P「いいよ。」

 

心「ありがと☆」

 

P「チーズの旨さがわかんねえとか子どもかァ!?雫んとこの牛から採れる牛乳より作られたチーズ食ってみろ金平糖ォ!」

 

雫「はいプロデューサーさん、あーん♪」

 

P「あむ…………旨ァい!ォ!(突然の死&昇天四回目)」

 

心「金平糖もなめんなァ!?口触り最高だかんなァ!?」

 

P「チーズの方がとろけるからこっちの勝ち。」

 

心「トロトロだから勝ちだとかふわとろオムライス好きの女子高生かっての。」

 

P「てめェ!菜々さんに喧嘩を売ったなァ!?」

 

心「失礼すぎだろ。社会人失格だよ。」

 

P「菜々さんは社会人じゃないって言ってるだろォ!?」

 

心「ソロ曲貰えて一番バグってんのプロデューサーじゃね。」

 

P「それは一理ある。」

 

心「百理の誤謬。」

 

乃々、ほたる「あの。」

 

P、心「はい。」

 

乃々「夫婦喧嘩終わりました?」

 

ほたる「そろそろ本題入りません?」

 

P、心「ごめん。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

P「改めてソロおめでとう、乃々、ほたる、心。」

 

乃々「未だに信じられません。」

 

P「信じろ。これは現実だぞ。」

 

ほたる「柄でもなくはしゃいじゃってもいいんでしょうか。」

 

P「いいぞ。皆で一緒に祝おうぜ。」

 

心「…………」

 

P「どした。まだ拗ねてるの?ごめんて。」

 

心「そーじゃなくてさ。はぁとでもここまで来れるんだなぁ、なんて沁々したり。」

 

P「そりゃそうだろ。」

 

心「なんではぁとだけそんな辛辣なんだ☆おい☆」

 

P「さて。そろそろ茄子と文香と加蓮が来る頃だな。」

 

心「無視すんな~?」

 

P「三人とも、真面目な話な。明日からソロ曲の為のボーカルレッスンが始まる。きっついというか、厳しいもんだ。逃げ出したくなるかもしれない。」

 

P「けれども三人ならそんなものは軽々と乗り越えてくれると信じてる。明日からも引き続き気を引き締めて臨んでくれ。」

 

三人「はい!」

 

P「……でも今日だけはー?」

 

三人「パーティーだー!!!!」

 

P「イェェェェェエエエエエ!!!!!!」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「やったー!」

 

P「逮捕。」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「なんもしてない。」

 

P「存在が罪。」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「ならしょうがない。」

 

乃々「生姜焼き食べたい。」

 

P「どうした乃々。」

 

ほたる「志希さんドストエフスキー読まれます?」

 

P「どうしたほたる。」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「読むよー。」

 

P「ああ。『罪と罰』か。分かりにくいわ。」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「あたしの介入で理解してほしくはなかった。」

 

P「存在が罪。」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「あたしの扱いいつもこんなんだよね(泣)」

 

心「同情するよ……」

 

第七回総選挙六位おめでとうの人「あ!スウィーティー(笑)の人だ!」

 

心「はぁとの扱いいつもこんなんだよね(怒)」

 

 

 

 

 

P(にしても何故アイドル達は俺の家の場所を知ってるんだ……?どうやってこいつら俺ん家入った……?)

 

 

 

 

 

Place_Pの自宅




俺はどうやら幸福で頭モバPになっちまったらしい。こんなのしか書けなくて本当に申し訳ない(メタルマン並感)


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女たらしな森久保

もうこれわかんねえな……あ、それと今回ほぼ会話形式です。クソSSをどうぞ。


事務所にて俺は頭を抱えていた。

 

「「そろそろ耐えきれない。」」

 

森久保乃々という少女について悩んでいた。

 

P「凛。」

 

彼女と最近仲が良い、()()の彼女、渋谷凛にも同じ悩みがあった。

 

凛「うん。プロデューサー。分かる。分かるよ。」

 

二人してソファーに座し、顔をしかめていた。

 

理由は単純明快である。

 

二人の視線の先に答えがある。

 

そこには何人かのアイドル、正確には彼の担当アイドル達が一人の子を囲むように存在していた。

 

その囲まれている一人の子、中心人物の名前は。

 

「皆さん詰め寄り過ぎなんですけど……」

 

森久保乃々。

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

P「凛……あれが何なのか、教えてくれ。」

 

凛「ごめん。それは分からない。というか分かりたくない。」

 

遠くより()()()()()()()()()()()()()()()()様子を観察しながら俺らは話し合う。

 

P「森久保ってあんな子だった?」

 

凛「プロデューサーと私以外とはあんな感じだよ。」

 

あんな感じ、とはこういうものである__

 

 

 

 

 

乃々「まゆさんの髪、キレイですね。好きですよもりくぼ。こういうの。」

 

まゆ「へぇ!?そ、そうですかぁ……?」

 

乃々「ふふっ……驚く時も可愛らしいなあ。」クイッ

 

まゆ「(あ、顎クイ!?)」

 

 

 

 

 

美玲「の、ノノ?ウチの事そんなに見つめて、どうしたんだ?」

 

乃々「……」ズイッズイッ

 

美玲「え、何何……そんな寄って来て……?」

 

乃々「……」ズイッズイッ

 

美玲「近い近い近い!え!?」

 

乃々「……」ジー

 

美玲「ひ、ひぅ……」

 

乃々「……」ジー

 

美玲「……///」ポーッ

 

 

 

 

 

こういうものである。

 

P「もしかして彼女、チャームの能力持ち?」

 

真面目に俺は凛に訊く。

 

凛「いや、ただのたらしでしょあれは。喋らないタイプの。」

 

その答えに俺は再度凛に訊く。

 

P「……やっぱり乃々って女たらしなん?」

 

凛「うん。」

 

引っ込み思案のたらしってある意味最強じゃね?

 

P「まゆ、あれ、落ちてます?」

 

凛「うん。」

 

乙女な顔してるもんね……落ちてますよね……

 

P「美玲、あれ、落ちてます?」

 

凛「寸前。」

 

純粋故に堕落しやすいのね……

 

P「うちのアイドルの総被害分かる?」

 

凛「私以外。」

 

うん?

 

P「……それマジ?」

 

凛「うん。」

 

200人近い女の子を口説き落としただって……?

 

P「あいつ男だったらただのヤリチ」

 

凛「それは言わない。」

 

P「はい。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

凛を仕事に行かせて数十分。

 

森久保をこちらに手招きして呼び寄せる。おーい。

 

乃々「何用です?」

 

……周りにはまだまゆと美玲がいた。雌の顔して。うわーだらしねえ表情。頬の筋肉溶けてますよ。

 

P「二人とも。あっち行って。」

 

まゆ、美玲「「は?」」

 

P「居て(怯え)」

 

まゆ、美玲「「はい。」」

 

ちょっと理解追い付かないのは私だけでしょうか(作者の叫び)

 

P「森久保。」

 

乃々「乃々です。」

 

P「ん?」

 

乃々「乃々って呼んで下さい。」

 

P「おう。森久保、最近のお前は目に見えておかしい。何か変なもんでも食ったか?」

 

乃々「乃々……別に拓海さんと輝子さんとほたるさんをたべただけです。」

 

P「まてや。」

 

乃々「?」

 

P「何食ってるんだよお前。そんなものは、ぺっ、しなさい。」

 

乃々「まゆさんと美玲さんもお望みなら……ね?」

 

まゆ、美玲「「キャーッ!」」

 

P「え、何これは……怖い……」

 

乃々「プロデューサーさんもどうです?」

 

P「カニバリズムなんて趣味ねぇよ。」

 

乃々「性的な方ですけど。」

 

P「ああ知ってるよ!わざとそらしたんだよ!」

 

乃々「ハマりますから……どうです?」

 

P「ヤクの密売人かお前その口調。」

 

まゆ、美玲「「乃々様を侮辱しないで!」」

 

P「俺は何からつっこめばいいんだろ。様からかな?」

 

乃々「下半身のそれでいいんじゃないですか?」

 

P「おい女子中学生。」

 

乃々「それと時子さんもグッドでしたよ。」

 

P「今だけはあの頃の引っ込み思案がマシに思える。」

 

P「つーか森久保のその妙な積極性は何。仕事の時にそれ出してよ。今は出さなくていいから。」

 

乃々「出すとか出さないとか……プロデューサーさんのえっち……///」

 

P「助けて頭痛にバファ凛。俺はもう無理だ。」

 

乃々「まさか凛さんと二人でする気……?」

 

P「お前密売人じゃなくて常用者なの?ねえ?発想の飛躍おかしくない?」

 

乃々「凛さんに手を出したら犯罪ですよ。」

 

P「お前もほたるに手出してる時点で犯罪だよ。」

 

乃々「手じゃなくて舌です。」

 

P「いらないその情報。」

 

乃々「それじゃあどんな情報が欲しいんですか?」

 

P「お前を消す方法。」

 

乃々「イルカは性欲強いんですよ。知ってました?」

 

P「よう代表例。」

 

乃々「校長には勝てません。」

 

P「おいやめろ。あのレジェンド妖怪には触れるな。禁忌だ。つーか彼はイルカじゃない。」

 

乃々「禁忌に触れるな!……蘭子ちゃんは反応が初々しくて楽しかったな……ふへへ……」

 

P「だから飛躍。」

 

乃々「でも蘭子ちゃんを落とすのには苦労しました。一ヶ月かかりました。」

 

P「はやっ。充分に早いわ。」

 

乃々「え……それって早ろ」

 

P「ちゃうぞォ!黙れ森久保ォ!」

 

まゆ、美玲「「は?」」

 

P「嘘ォ!」

 

まゆ、美玲「「許す。」」

 

P「ありがとォ!」

 

乃々「変なプロデューサーさんですね。ふふ。」

 

P「お、ブーメランか?」

 

乃々「ブーメランって元々は投手に戻ってくる造りじゃなかったんです。なのでいきっぱなしです。」

 

P「煽り方が独特。」

 

乃々「いきっぱなしとか下ネタ言わせるなんて……むぅーりー……」

 

P「リム久保していい?」

 

乃々「だめです。」

 

P「許可求めてねえよ。」

 

乃々「求める方がお好きで?変態さんだあ……」

 

P「もうやだ助けて。」

 

 

 

 

 

×

 

 

 

 

 

仕事が終わり、私は事務所に入る。

 

凛「…………ええ……」

 

そこには横たわる一人の成人男性。汚い。スーツ汚れる。

 

P「り、凛……あの女たらし、イカれてる……がくっ。」

 

遺言らしきものを残し、彼は果てた(ふりをした)。

 

 

 

 

 

凛「この事務所ヤバい人の巣窟じゃん……」




恐らく自分はM寄りのLです(突然のマックポテト&夜神月)


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ほろ酔い森久保

※このssに出ている人物は全員成人済みです。ほぼ会話形式。


夜も深い頃合い、事務所にて二人の男女が酌みを交わしていました。

 

P「森久保さん?大丈夫ですか?」

 

のの「ぷりょでゅーしゃーさん……もう一杯……」

 

P「ダメですね(諦観)」

 

乃々が酔っぱらいました。

 

 

 

×

 

 

 

のの「あれ~?コップの中が空だー?」

 

P「空っぽなのは君の頭だねぇ。」

 

違う。断じて違う。俺はこんなアイドルを見たかった訳ではない。ただ、乃々が最初に呑むなら俺と、とか言い寄ってきたから一緒に二人きりで飲酒してただけなのだ。邪な気持ちは一切無い。うわ、プロデューサーの俺、役得じゃん。もしかしたら森久保と……ふふふとか無かったから。マジで。

 

のの「お酒くーださい?」

 

P「何杯目?」

 

のの「ろく!」

 

P「僕の右手には何本の指がある?」

 

のの「ろく!」

 

P「送るよ。家帰ろう今すぐに。」

 

のの「宅飲みー!」

 

P「は?(恐怖)」

 

なるほど理解した。乃々はアルコールを与えてはいけない人種だ。

 

のの「りんりんりりんりんりんりりんりん」

 

P「水飲んで。お願い。元に戻って。」

 

のの「いっぱいの酒を飲みたーい!因みに私の胸のサイズは」

 

P「戻れーッ!モンスターボールに戻るんだーッ!」

 

のの「プロデューサーさんのポケットモンスターカワイイですね!」ジーッ

 

P「下腹部を見ながらそんな事を言うなッ!あなたアイドルなのよッ!?」

 

溜まっていたフラストレーションが酔狂に放出されていく。俺は酒に強い。高垣の姉御(畏怖)やらに育てられたし。でも乃々はマジで弱いみたいだ。回る速度が速すぎる。

 

P「服!服はだけてる!」

 

のの「なおして~」

 

P「あなたアイドル!俺プロデューサー!オーケー!?」

 

NoNo「It doesn’t make sense.」

 

P「You're an idol!I'm a producer!okay!?」

 

NoNo「Please explain in detail.」

 

P「えっ……えと……That is so nasty that……you talk about it……?」

 

乃々「itは何を指していますか?それは正当な指示代名詞ですか?」

 

P「は……へ……え……?」

 

乃々「答えられないなら黙っていて下さい。」

 

P「ご、ごめんなさい。」

 

のの「わーい!おさけー!」トポポポ

 

P「…………」

 

のの「おいしー!」ゴクゴクゴク!

 

P「…………」

 

のの「あはー!たのしー!」ワイワイ

 

P「…………」

 

のの「アンデス呼ぼー♪」

 

P「それは待てーッ!」

 

のの「?」

 

P「ダメ。ここに人を呼ぶのはダメ。しかもアンデス?俺を殺す気か?」

 

NoNo「yeah」

 

P「黙れ星条旗の奴隷が。」

 

乃々「はい。」

 

P「罪の重さ自覚して?」

 

乃々「何もしてませんけど。」

 

P「おっ、調子戻ってきたね?」

 

乃々「そのノリ、むーりー……」

 

P「鏡見た事無いんかお前。」

 

乃々「プロデューサーさんが怖いぃ……ひぃ……」

 

P「女殴る趣味はないんだけどな。」パキポキッ

 

のの「嘘つきました。」

 

P「うむ。そのまま大人しくね?」

 

のの「罪滅ぼしとして体売ります。」

 

P「あんたホントに何抱え込んで生きてんの?セラピスト呼ぶ?」

 

のの「枕ですか?」

 

P「夢枕に立つ皆々様も驚きになられるレベルの突拍子の無さ。」

 

のの「乃々だってお酒呑みたいよぉ(涙)」

 

P「著しいキャラ崩壊。」

 

乃々「プロデューサーさんとお酒呑んだ後あわよくばとか全然考えてませんから。」

 

P「そういうの暴露って言うんだよ、知ってる?」

 

のの「乃々大好きです?うれしい!」

 

P「めでてぇ耳してんなお前。」

 

のの「えへへっ。」

 

P「褒めてねぇよ頭冷やせ。」

 

のの「ごめんなさい……まゆさん呼んで叱ってもらいます。」

 

P「肝冷えるわ。止めろ。」

 

のの「さっきから注文ばっかり!するならお酒の御代わりして下さい!」

 

P「巧くねぇよ帰れよマジで。」

 

のの「…………」

 

P「え……何で黙んの……」

 

乃々「森久保の事、嫌いなんですか?」

 

P「は?」

 

乃々「辛辣だし、素っ気ないし……」

 

P「好きだから構ってんだよ。」

 

乃々「……ホント?」

 

P「うん。」

 

乃々「……分かりました。まゆさん呼びます。」

 

P「なんでッ!?なんか分かんないけどごめんなさい!」

 

乃々「車の運転、出来ますし。」

 

P「あー……なるほど。」

 

乃々「はい。」

 

P「そ、それじゃあ……」

 

乃々「またあした。」

 

P(唐突だなぁ。)

 

 

 

 

 

P「台風は去ったか……ふう……」ゴクッ

 

P「あ、ヤベ!これ乃々の酒だ!」

 

P「違う!俺は変態なんかじゃ……」

 

P「……」ゴクッゴクッ

 

P「……」

 

P「これ麦茶だ。」




多分ですが俺の方が酔ってますね(レイプ目)


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