SAO≪ソードアート・オンライン≫ 神速の剣士 (ソウルメイジ)
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プロローグ
多くのゲーマー達の夢、それはゲームを自分という体を使ってプレイすることも一つに含まれるのではないだろうか。
好みのアバターで、現実なんかよりも華麗に、強く、そしてかっこよく。
しかし、そんなものは理想に過ぎないはずだった、あのゲームが発売されるまでは……
そのゲームは2022年に発売された。
その名もナーヴギア。
形は頭にかぶせるヘルメットのようなもので、脳の信号を遮断し、それをゲームの中だけに反映させるという単純そうに見えて、かなり難しい技術を搭載した次世代ゲーム機。
このゲーム機によって人類は完全仮想空間を実現した。
そして、このゲーム機の第一弾となるゲームが、ソードアートオンラインであった。
☆
今日、俺、時雨(しぐれ) 七緒(なお)は世間のゲーマーにうらやましがられる人間の一人となったことだろう。
今、注目を集めているゲーム≪ソードアート・オンライン≫
日本の一億といる人間のたった一万の人間に与えられるゲームを俺は手にしたのだ。
ベータテストというソードアート・オンラインの試運転に希望し、1000人のみができるそれに当選した者には無条件でソードアート・オンラインを手にする権利が与えられる。それに見事に当選した友人が、あれはクリアできる気がしないから、お前に譲ってやると言ってくれたのだ。
まぁ、もともと飽き性な奴でもあったから、あれだけどっぷりとつかってしまったから時間が空いて興ざめしたというのも理由にあると俺は思っている。
『その変わり一回女装して家に来てくれ』というのが本当の理由だとは思いたくない。
あまり、自分でも好ましくないと思っているが、俺の顔や体つきは中性的のようで、よく女に間違われる。男だと主張しても、一向に受け入れてもらえないところなんかは悲しいところである。
しかし、その友人は俺に親切で操作のコツまで教えてくれたのだから感謝するべきだろう。
さて、いったい向こうの、完全仮想空間ではどのような世界が広がっているのか。
レベリングの時のステータスはやはり、いつも通り俊敏性から上げるべきであろうか。
いや、とりあえずアバターだ、現実とはまるで違う、かなりかっこいいイケメンで行こう。
男らしい感じを盛大に出した感じの奴。それこそイタイレベルのかっこよさで……
あー、早く入りたい、その世界へ。
ダイブできる時間になるまでのあと数分という時間をを今の俺はとてつもなく長く感じていた。
そして、ついに、その時はきた。
俺は、ナーヴギアの起動ワードを口にする
≪リンク・スタート≫
☆
ダイブすると、すでにそこにはかなりの人が出現していた。
おおー!!!これがフルダイブ!!!
あまりの喜ばしさに心が躍る。
自分で作ったアバターを見回したり、飛び跳ねたり体全てでその喜びを表現する。
俺のキャラの名前は≪Sion≫にしておいた。最初と最後の名前を取って[しお]に[ん]をつけただけの単純なものだが、いつでもそうしているので、ここでもそうしておいた。
そして、少しして、喜びが収まったところで俺は自分のステータスを確認した。
そこで、自分の数字を見た瞬間、思わず思考が停止した。
もう一度目をこすってそれを見た。
一回ウィンドウを閉じて、もう一度見た。
しかし、数字は変わらなかった。
これは、バグだな。多分次入ったときには修正されてるパターンか、数字だけがそうなっていて、実はそんなに強くありません、とかそういうパターンだな。
実際はこのステータスが本当で、自分が最強とかいう考えを捨て去ることができないが、それでも淡い希望を抱かない方がいいと悪い方向に頑張って考えて冷静に言葉上は否定する。
結局、そんなことをしていてもらちが明かないと思い、とりあえず友人が教えてくれた通、武器屋へと向かうことにした。
街中を歩いていると、すでにかなり仲良くなっている人が多い。
知人から、このゲームで初めてであった人まで、たぶん、ゲームを手に入れた苦労話などですぐに打ち解けられたのであろう。
結局、このゲームに盛り上がっていたこともあって、考えは否定しきれず、武器を調達したあと、すぐに俺はフィールドに向かった。
そして、そこで、これは本当に自分のステータスだと知った。
☆
狩りは人のいないところで行うことにした。
どのゲームでもそうだが、やはり圧倒的に強い人間はせこいだの、オタク特有の陰険な考え方で、全否定してくる。
努力して強くなったものならまだしも、今の俺みたいに何も知らないのに強い人間ならなおさらだ。
スキル発動の練習をひと段落終えて、街に近いフィールドに戻っていると一人の女の子に声をかけられた。
「君、もしかしてベータテスタかな?」
アバターの通りここでは男らしい口調で行くべきだろう。
「いいや、今回が初めてだが、何か困っているのか?」
「えへへ、ちょっとね。スキルの使い方とかがよくわかんなくて。レクチャーお願いできないかな?」
「そこまで力になれるかわからないが、俺でよかったら。」
「ありがとっ♪」
その女の子のアバターは実際かなり可愛い風に作られていた。相当時間をかけただろう。
現実での姿がどんなのかは知らないが、言動とかを見ている限り、多分これが素の女の子でかなりかわいい子なのだろうなと思った。
と、そこにちょうどスキル練習にうってつけな≪フレンジー・ボア≫という青いイノシシ型の敵が出現する。あれは、かなり弱いので練習にはうってつけの敵だった。
「よし、あれで練習しよう」
そういうと、女の子は敵に剣を構えて突っ込んでいく。
女の子は一生懸命剣をふるうが中々上手くいかない。挙句の果てには≪フレンジー・ボア≫に一撃を食らわされてしりもちをついていた。
「痛っタ―――、やったわね、イノシシめ!」
しかし、彼女は負けずに、食らいついていく。そんな姿がけなげで可愛かったり。
実際、この世界では痛みというのは存在しないのだが、そこは雰囲気だろう。
「スキルっていうのは、少し溜めが必要なんだ。こう、なんて言ったらいいのかな、技をチャージするように、ちょっと構えた状態でストップして」
俺は、剣を抜いて構えを取ってみる。
「こ、こうかな?」
同じような構えを女の子も取り、そして、二人のスキルの発動ができるようになる。
「今だ!」
そう言って叫んだ時に二人は同時に≪フレンジー・ボア≫へ初期スキル≪バーチカル≫をさく裂させ、そして、コンマ一秒後、≪フレンジー・ボア≫はライトエフェクトとなって散っていった。
このスキルについても、俺は一応上位スキルのある程度が使えるようになっていた。
しかし、全部が全部完全に使えるわけではないようで、何というか、中途半端に強くなるバグだな、とすこし苦笑していた。
しばらく、練習に付き合っているといつの間にか日もくれだしていた。
「もう、この辺にしておこうか。もう日も暮れてきたことだし」
「そうだね。付き合ってくれてありがとう。ダイブ、強くなった気がするよ」
そう言って、女の子はスキルで空を切る。
「最初の頃よりは、かなり強くなったと思うよ。よく頑張ってたと思うしね」
「えへへ、ありがとー。よかったらフレンド登録しない?あ、嫌ならいいよ?」
「せっかくだしな、しておこうか」
「よく考えたらお互いの名前も知らないしね」
「そうだな」
二人は、お互いに苦笑し合う。
そうしている間に俺の画面に≪Nagisa≫からのフレンド登録のメッセージが届く。
それにOKボタンを押して、フレンド登録を完了させる
「シオンっていうんだね」
「まぁ、本名じゃないけどな」
「それは、お互いさまよ。それじゃあ、落ちるね。晩御飯の準備もあるし」
「お疲れさま」
そう言ってログアウトしようとする彼女に疑問符が浮かぶ。
「あれ?ログアウトってどうやってするんだったっけ?」
「普通に、メインメニューボタン一番下にログアウトボタンがあるはずだぞ?」
「無いんだよ、それが」
また、バグか……。
そう思いながら、俺もメインメニューを開く。
しかし、俺のところにもログアウトボタンもなかった。
一瞬、頭の中に嫌な考えが走った。
とそこに、鐘の音が鳴り響く。
そして、二人の体は光に包まれた。
感想など、ございましたらゼヒお寄せください。
ミスなどの指摘もバンバンよろしくお願いしますね。
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デスゲームの始まり
文字数が大量で読みづらいかと思います。
申し訳ありません。
光から解放された時、俺とナギサは始まりの町へと転送されていた。
そのことで少し安堵の息を俺は心の中でついていた。
俺の中をよぎった嫌な考えというのは、このままずっとログアウトができないというものだったのだ。
ナーヴギアは、完全に脳と体を切り離している。もし、そんな状態でログアウトボタンがなくなってしまえば、当然ゲームからの脱出ができなくなってしまう。
しかし、このように強制的に何かをされるということは当然なにかをやるということ。それにこのログアウトボタンの説明も含まれるであるだろうとふんだのだ。
「ねぇ、これから何が始まるのかな?」
ナギサが不安そうに顔を曇らせ俺の裾をギュッと握る。
「多分、ログアウトボタンの説明、もしくは、オープニングセレモニーかなにかだろう。そんな不安がらなくても大丈夫だ。」
「本当に?」
「ああ、大丈夫だ」
俺は、ポンとナギサの頭に手を置いた。
すると、安心したのか、すこし顔色が良くなった気がした。
「おい、あれ、ゲームマスターじゃねぇか?」
周りの誰かから不意に聞こえた声。
それにしたがって、俺とナギサはその指差す方を見た。
そこに映っていたのは真紅のフード付きローブを纏った姿
まさにゲームマスターの姿があった。
しかし、そのゲームマスターにはどういうわけか顔は無く、異常なまでに大きかった。
『プレイヤーの諸君。ようこそ、私の世界へ』
両手をゆったりと広げ、ゲームマスターは低く広がる声で言葉を続ける。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ。』
かやば…あきひこ………!!!!!
思い出した。
茅場晶彦、このナーヴギアを完成させた天才科学者。
しかし、なぜ彼がここに?
『プレイヤー諸君はすでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかし、これはゲームの不具合ではない。』
一体、茅場晶彦は俺たちに何が言いたいんだ?
『繰り返す、不具合ではなくソードアート・オンライン本来の仕様である。諸君は自発的にログアウトすることができない。また、外部の人間によるナーヴギアの停止、あるいは解除もあり得ない。もしそれが試みられた場合は、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君の脳を破壊し生命活動を停止させる。』
なん……だと!?
隣の裾を握る力が一層強くなるのを感じ、そちらの方を少し見やると、今にも泣きそうな顔をし震えながらながら黙っていた。
俺は、そっとこちらに体を抱き寄せた。
「大丈夫、大丈夫だから」
まるで、母親が子供に言い聞かせるように優しく穏やかな口調で、俺は彼女に安心感を与えようと努める。
が、やはり震えはやまずその表情も変わらなかった。
周りは、あまりの突飛的な話に現実を受け入れられず、ばかばかしいと口々につぶやいて、どこかへ出ていこうとしている。
が、そこから出ることはできない。
なにか、目に見えない特殊な壁が、彼らの進行を阻止する。
確かに、ばかばかしいと思う。しかし、俺はどうしてもその言葉を偽りとは思えなかった。
多分、ナギサもどこか直感的な部分でそう思ったのだろう。
『残念ながら、現時点でプレイヤーの家族、友人などが警告を無視しナーヴギアを強制的に解除しようと試みた例が少なからずあり……
その結果213名のプレイヤーがアインクラッドおよび現実世界からも永久退場している』
胸に衝撃が走った。
もう、何も考えることができなくなるほどに強く、茅場から放たれた事実は俺の胸を突いた。
213人もの人間がこのゲームをしたがために死んでしまったのか……そんなのおかしい。おかしすぎる!
と、そこで俺の裾を引く力がなくなった。
隣を見ると、ナギサが倒れていた。
「おい!しっかりしろ!ナギサ!」
嫌な考えだけが、俺の頭を支配した。
死ぬな!死なないでくれ!
『御覧の通り、多数の死者が出たことを含め、この状況をあらゆるメディアが繰り返し報道している。よってすでにナーヴギアが強制的に解除される危険は低くなっていると言ってよかろう。諸君らは安心してゲーム攻略に励んでほしい。』
自分の周りに多数のニュースパネルを表示させ、死亡の事故が現実で起きていることを淡々と説明する。
これだけ、長時間立って消えないということはただ単に気絶しただけか……
とりあえず、ホッと一安心し、次に人の死を何とも思わない茅場を強く睨み付けた。
『しかし、充分に留意してもらいた。今後ゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。HPが0になった瞬間諸君らのアバターは永久に消滅し、諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される。』
ゲームでの死は現実での死、か……
ここまで来ると、どっちが現実かわからなくなってくるな。
いや、こう考える方がいいのか。このゲームがもう一つの現実だと。
『諸君らが解放される条件はただ一つ、このゲームをクリアすればよい。現在君たちがいるのは、アインクラッドの最下層の第一層で、各フロアの迷宮区を攻略し、フロアボスを倒し、上の層へ上り第百層にいるボスを倒せばクリアだ。』
ここで、俺はもう考えるのを辞めた。
これ以上は考えても疲れるだけだ。驚くのも、怒るのも、不安がるのも、結局は意味のない行為だ。
こうしてある現実を受け止める以外に方法は無い。
それにしても、百層か……気の遠くなるような話だな。
『それでは、最後に諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ』
言われるがままにアイテムストレージを確認する。
あるはずのないアイテムストレージに一つ、アイテムがあった。
手鏡。オブジェクト化してみたが何の変哲もないただの手鏡だった。すると、次の瞬間、俺たちをここへ強制転送したときと同じ光が俺の体を包んだ。
そして、次に目を開けた瞬間鏡の中に写っていたのは
「俺、なのか……?」
間違いなく、現実のそれと寸分たがわぬ時雨 七緒の姿だった。
声から、身長まで、ご丁寧に再現されていた。
もう、この際なぜとは問わない。
逆に冷静になっていた俺は、他のことを考えるような余裕まで手にしており、結果、ナギサの素顔が気になった。
光に包まれたことで手から離れたナギサを探すとすぐ隣に
、アバターとあまり変わり映えしないかわいらしい、そして活発的な雰囲気を持った女の子が倒れていた。
他のところではお前男だったの!?、などといろいろ声が上がっている。
多分、大幅にこのゲームの男女比も変わっただろうと思う。
『諸君は今、なぜと思っているだろう。なぜ、ソードアート・オンラインおよびナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんなことをしたのかと。』
思っていない。興味ないな。と心の中で一応突っ込んでおく。
『私の目的はすでに達成せられている。この世界を作り出し観賞することためにのみ、私はソードアートオンラインを作った。そして今、すべては達成せしめられた。以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の検討を祈る。』
そして、巨人は姿を消した。
周りが一斉に騒ぎ出す。
俺は、その中をナギサを抱えて颯爽と宿屋へ向かった。
とりあえず、この空気から逃げたかった。
俺は、彼女にどう伝えたらいい。
大丈夫と言ってしまった俺は、どうしたらいいんだ?
そんなことを考えながら宿屋へ向かった。
感想、ご指摘、なんでもカモンです。
感想は作者の力となりますので、
「まぁ、そこそこかな」みたいな一言だけでもいいのでいただけたらと思います。
よろしくお願いします。
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一人のソロプレイヤー
カメ更新の私には考えられないことですね、はいw
その分短いとか、そんなこと言うのは無しですよ?
宿屋につき、ナギサをベットにおろすと、俺のところに妙なメッセージが飛んできた。
差出人は……茅場晶彦!!!
俺はあわててメッセージを見た。
そのメッセージにはこう書いてあった。
『君は実に幸運だ。自分のステータスは確認したことだと思う。これは私のミスだ。第一層からこれでは平等ではない。だが、私はもう≪茅場晶彦≫としてこの世界に干渉する気は一切ない。そこでだ、そのステータスは君にプレゼントしよう。その代わりに、一つ頼みたいことがある。
このゲームをクリアできる人材を一人だけ選んでほしい。もちろん、君が自分でクリアするというのならそれでもかまわない。
期間は第5層攻略まで。答えを楽しみに待っている。』
なるほど、向こうもこっちのこの異常なステータスには気づいたってわけか。
にしても、何か引っかかる物言いだな。≪茅場晶彦≫としてこの世界に干渉する気はない、か。
つまり、別の≪何か≫として干渉する気はある、ということだ。
まぁ、どう干渉するにしても多分、さして大きなことはしないだろう。大きなことをしたいなら≪茅場晶彦≫として干渉したほうがいいに決まっているのだから。
あとは、このゲームをクリアできる人材探しか……
まぁ、簡単にいえば、この状況を一番早くに理解し行動した奴が
その人材である可能性が高いだろう。
幸いにして、レベル1でありながらも茅場晶彦お墨付きの高レベルステータスを所持している俺にとって第一層は多分、どこであろうと敵なしであることは間違いない。
冷静に判断した奴は、もうレベル上げに入っているに違いない。
しかし、そう考える奴はこのゲームの所持者なら何人もいることに思う。
なぜなら、このゲームはたった一万本しか生産されなかった超レアなゲームだ。相当なコアゲーマーの集まりだと言っても過言ではない。とすれば、単なるレベル上げではダメだ。もっと頭のいい強くなり方をできる奴。
もし、オレがこのゲームでより強くなろうと思ったらどうする?
このステータスだ、人が集まる始まりの町周辺の雑魚が何度もリポップするのを待っては狩るなんていう非効率的なまねはしない。
もっと先の街に一気に進んで、そこで一人で何十と出てきてくれるやつらをなぎ倒すだろう。
この、俺の条件に近しいもの、そして俺と同じような考えもしくはさらに一歩先を行ける人間がいるのだとしたら、そいつが間違いなくクリアできる人材だ。
もちろん、グループ戦法で行くのもクリアできる人材として悪くはないが、あいにくと選べるのは一人だけだ。
とすると、一人で勝ち抜く力を持っている人を選ばなくてはならない。
だが、いるのか?俺のようなステータスが無くても俺のような考えのできる奴が、俺もこのステータスがなければこんなことは思いもしない。死ぬのは嫌だ。だから時間がかかっても始まりの町周辺で狩りをするだろう。
…………いた!
10万人という多数の応募から選ばれた1000人の俺とは違う形での強さを持っている奴らたちが
ベータテスタたちが
そいつらならば、間違いなく先の町に進んでいるはずだ。
ならば、そいつらの顔を今すぐ確認しに行った方がいいだろう。
時間がたたないうちにどれだけ早くに行動に出れたかがここでは重要になる。
「少しだけ、まっててくれ」
俺はベットに横たわっているナギサに声をかけて宿屋を出た。
☆
「どうやら、ここが次の村のようだな」
俺は、初期ではありえない敏捷性(AGI)の高さを利用して、敵をすべてかわしながら次の村であろう場所へやってきていた。
名前は≪ホルンカの村≫という。
誰も、いないな……
すこし、来るのが早すぎたのだろうか。
だが、宿屋にいた時間もそんなに短いわけではない。かなりの数の敵にも遭遇しそれなりに時間も食った。
俺のステータスが無くてもあの説明直後に出ていれば十分にここには到着できている時間なはずだ。
とすると、やはりそんな奴はいなかったってことか……
コアゲーマーと言っても所詮はゲーマー。現実において同じような判断ができるわけじゃないんだ。
まぁ、やっぱり普通はそうだよな。
と、そのとき後ろの方から足音が聞こえた。
多分距離はかなり遠いが、索敵スキルの高さゆえに気づけたのだ。
もう、人がいる!?
俺は、すぐにその方向に足を進めた。
☆
≪リトルぺネント≫の胚珠を手に入れ、キリトは元来た道を戻っていた。
途中あった惨劇のせいでHPはレッドゾーンにまで突入しており、ここで誰かに襲われでもしたらひとたまりもない状態だった。
キリトは索敵スキルに厳重に注意して、歩いていく。
かなり、村の方まで戻ってきて安心だとホッと一息ついた瞬間
キリトの体に大きな緊張が走る。
(誰かいる!)
とっさに木の陰に隠れた。
このゲームではPKが可能になっている。
目の前の奴がもし、それをする人間なのだとしたら、見つかった時点でキリトはジ・エンド。だから、こうして隠れることで相手がどんな人間かを見極めようとしたのだ。
向こうの足が止まる気配はない。
そして、向かってくる人影の姿を見つけた瞬間、キリトはその緊張を解いた。
(なんだ、女の子か……。でもすごいな、こんな早くに)
またベータテスタだろうかと思って見ていると、向こうはこちらをジーッと見つめてそしてこちらへと向かってきた。
キリトも、相手の姿を確認し、特に隠れる必要がないと判断して隠れるのをやめ顔を出した。
「やっぱり、来ていたか。お前、ベータテスタだな?」
「え?あ、ああ、そうだ。君は?」
「俺は、初心者だが。ゲームの腕には自信があるんだ」
そう言って少女は自分の腕をパンと叩いた。
俺?とすこし呼称に疑問を覚えたが、俺っ子という奴だろうと違和感がなかったのでスルーした。
「でも、大変だったんじゃないか?初心者だったら真っ向からこの村にたどり着いたってことだろ?」
「裏道かなにかがあったのか?」
「裏道ってほどじゃないけど。敵と出会わないように行く道は何か所かあるんだ。」
ほぇーと少女は関心の声を上げた。
「でも、すごいよ。女の子だっていうのに真っ先に行動に出て。
勇敢だな」
キリトは慣れた手つきで、少女の頭に手を乗せ、まるで親が子をほめるような形になる。
すると、少女は顔を真っ赤にして
「俺は男だ――――――!!!!」
と叫んだのだった。
☆
俺のことを女と間違えやがって、どいつもこいつも。
小学生までなら仕方ないかと思えたが中学に入ってまでまだこれが続くとは……
確かに、俺は身長はまだ高いと言えたものじゃない。160センチ弱しかない。
だけど、それは中学生男子には仕方のないことで、高校生になったら伸びるんだよ、きっと。
「悪い、すまなかった。まさかそんな見た目をした男がいるだなんて思わなくて」
「ケンカ売ってるのか?その体力で?」
俺は、少々ひょろっちいその男を腕を組みながら睨み付けた。
男は「いやいや、めっそうもない」と両手をふって否定。
自分だってかなり中性的な顔立ちしてるじゃないか!と心の中で憤慨しつつも、話題を打ち切る。
「まぁ、いいだろう。ココにいるのはお前だけか?」
すると、男は少々口ごもったが「あぁ、」と俺の言葉を肯定した。
「ここでは、何をしていたんだ?」
「秘薬クエだよ。片手剣を主流の武器にするなら必須のクエストがこの村にあるんだ。それを今やり終えたところなんだ。」
なるほど、それでその体力なわけか……
「にしても、随分な無茶をするな、お前。さっきのチュートリアル、聞いてたのか?」
「聞いていたさ。だから俺はここに来たんだ。お前もそうなんだろ?」
多分、レベル上げのことをこの男は言っているんだろう。
コイツ、結構頭のまわる奴かも。
俺は、あらかじめ自分用に一応と買っておいたポーションを男に投げた。そして短く飲め、とだけ言った。
「サンキュー」
男は、ポーションを飲みほしだんだん回復していき、やがて体力はマックスになった。
「よし、回復したな。なら今から俺と勝負だ。」
コイツをクリアできる人材と選ぶにはまだ早い。
大体は合格だが、肝心の戦闘力がどんなのかを最後に見ておく必要がある。
俺は腰にさしていた剣を抜いた。
「本気、なのか?」
「俺は大マジだぜ」
しばらく渋った後にキリトは大きなため息を一つつき、背中に下げた剣を抜いた。
多分、俺がこのゲーム初体験だからいきがって調子に乗っている奴だとでも思っているのだろう。
多分、殺さない程度に、なんてことを考えているかもしれない。
まぁ、なんでもいい。闘ってくれればそのうち本気を出さざるを得なくなるからな。
「かかってこいよ。先攻はやるよ」
すると、キリトは今まで俺には見せなかった強い剣幕で一気に距離を詰めてきた。
だんだん、だれてきたような気がしたりしなかったり。
どうだったでしょうか?
また、感想などございましたらよろしくお願いしますね。
何度も言いますよ、感想は作者の力になりますからね!
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コイツは強い!
三日連続の更新です!
多分、ソードアートオンラインを今まさにアニメで見ているせいでしょうね。おかげで描きたい衝動がやみませんw
という割には文字数が……なんてこと言うのは無しですよ?www
男の戦闘力は、間違いなくこのゲームをクリアに導くと確信できるほどに高かった。
闘っている最中でも、実力にまるで底が見えなかった。
まず、はじめ襲い掛かってきた際に突進技のようなスピードを出して、相手に身構えさせ、そこをついて背中に回り込んで打ち込む。
だが、そこでステータスの差が出た。
奴は完全に裏を読んだつもりだったのだろう。
確かに、完全にしてやられていた。しかし、その回り込んで切り込むまでのモーションがあまりにも遅すぎた。
だから、俺はその一瞬をついてしゃがみこみ、足払いをして奴をこかした。
だが、すぐに手の力だけで立ち上がり様にスキル≪ホリゾンタル≫を発動。
俺は、危うくもそれをジャンプすることでよけ、そしてその反動で腹丸出しの男の腹に潜り込みその腹を肘で小突いた。
しかし、威力は小突くという表現には似合わないほどの強さで、男を気に叩きつけるまでの威力になった。
そこで、俺は剣を収めた。
確信したのだ。
コイツは強い!
ステータスが同じだったらいや、ちょっと今の奴のステータスが高くなっていたら間違いなく負けていたのは自分だ。
コイツならばクリアできる人材なのかもしれない。
「お疲れさま」
そう言って俺は倒れていた男を起こしついでにポーションをやった。
「え、あ、あぁ」
キリトは何が何だかと言った感じではてなマークを頭の上に浮かべている。
「闘いは終わりだ。お前の実力は十分にわかったしな」
ニィと意地悪そうな笑顔を作ってみる。
「やっぱりお前、最初から本気で俺と闘う気なかったんだな?」
「まぁな。悪いな、変なことに付き合わせて」
「別に俺は構わないけど。お前、めちゃくちゃ強いな。闘気すら感じないからどれほどのものかと思ったが、まるで歯が立たなかった。」
「いや、そんなことはないさ。一歩間違えば俺が負けてた。」
これは謙遜でもなんでもない。ただたんなる事実だ。
「とても、そうには思えなかったけどなぁ。俺、お前に一度も剣をひかせてないし」
「それは、最初からこっちから攻撃する気がなかっただけだ。」
「お前を焦らすことができてない何よりの証拠じゃないか。恐れ入ったよ」
両手を上げて降参のポーズをとる。
「でも、やっぱりどこからどう見ても女の子なんだけどなぁ」
興味深そうに手を顎に当て俺の体を見回す。
とっさに、俺は体を手でガードする。
「ほら!その仕草とかも」
「な、なんだよ!じゃあこうしてればいいのか?」
俺は、手を横に戻す。
「まぁ、そうしてる方がまだ男の子っぽいかな?」
まだ、微妙だといった感じで男は頭をひねる。
そんなに俺って女に見えるのか?悲しいぞ。
すると、男は突然あっ!と何かを思い出したように声を上げる
「そういえば、まだ名前聞いてなかったな。俺はキリト」
「俺はシオンだ。よろしくな、キリト」
「ああ、よろしくシオン。ついでにフレンド登録もしてもらえないか?」
俺がうなずくとキリトは素早い動作で画面を開き、俺の下にフレンド申請が届く。
俺は、OKボタンを押し、すぐにキリトの画面に詰め寄る。
「ココ見ろ!ココ!性別は男ってなってるだろ?」
「ほんとに男だったのか!!」
「なんだ、その意外そうな感じは!!まだ俺が女だと思ってたのかよ!!!」
「冗談だよ。ちゃんと男だと思ってた。」
「なぁ、キリト。お前これからもソロで行くのか?」
少しの間の後キリトは少しくらい顔をして言った。
「そのつもりだ。面倒事は嫌いだしな。俺はベータテスタだ。ある程度このゲームの事情も、操作も慣れている。パーティーを組んでいると俺にとっては時間がかかるだけだ。」
まったく俺と同意見だ。
多分、キリトの場合はソロで行く理由は面倒事の方がしゅうになっているのだろうが、その辺は何でもいい。
まだ、期限には早いがこいつで確定でいいだろう。
正直、これ以上の奴が現れるとは俺には思えない。
「そうか。頑張れよ。俺は少し皆の様子を見ながらゆっくり進むことにするよ」
「実力と言い行動と言い、謎だらけだな。お前は。特に姿はどこからどう見ても女の……」
「それ以上言ったら剣を抜くぞ」
とっさに剣に手をかける。
「悪い悪い。じゃあ、俺はさきに進むよ」
「あぁ、相手をしてほしくなったらいつでも呼んでくれ。いくらでも力になってやるよ」
「頼もしいな。それじゃあな、シオンちゃん」
「俺をちゃん付けで呼ぶな!バカ!」
どこまでも人を馬鹿にしやがって!
そして、俺は始まりの街へキリトは次の町へと足を進めたのだった。
会話文が大量になりましたね。
また、感想などお待ちしております。
なんか、だんだんだれてきているとおもうのは私だけでしょうか?
この辺の内容なんかこうすれば、もっと良かったとか、こうしてほしかったとか
あれば、送ってきてくださいね。
裏で書きためておいてその都度変更して最後にリメイクという形で出すかもしれませんよ?w
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旅立ちの時
私自身かなり驚いております。
この勢いがやまなければいいのですが……w
始まりの街へ戻る途中、茅場にメッセージで
「キリトがこのゲームをクリアできる唯一の人間だ」と送った後のこと、今更ながらどうして俺は茅場の頼みを聞いているのかということを考えた。
よくよく考えたら、あのメッセージを削除し、無視することもできたはずだ。
ならば、どうして俺はそんな面倒なことをわざわざやってしまったのだろう。
まぁ、たぶん答えは簡単で、俺もこのゲームがクリアされることを望んでいる人間だからなのだろう。
茅場晶彦がわざわざ俺にそんなことを頼んだ理由まではわからないが、俺自身、クリアできると思える人間がこのゲームにいることを望んでいたからだ。
だから、探してしまったのだろう。
俺は、このゲームにおいて先頭に立ってクリアにも協力する気ではいるが、やはりナギサを、このゲームを頑張っている人をできるだけ支援する方に回りたいと思っている。
おごりだ、自己満足だといわれるかもしれないが、それでも俺はできる限りのことをしたい。
そうなったときにゲーム攻略はかなりおろそかになる。
それを任せられる人間が欲しかった。
この世界での死は本当の死だ。
俺は、人が目の前で死ぬのをもう、見たくはない。
兄が、目の前からいなくなった時のようなことを二度と繰り返さないために。
かならず、守るんだ。
キリト達がクリアするまでずっと。
頼んだぜ、キリト。
俺は、少し飛ばしてナギサのいる宿屋へと向かった。
☆
人間、やはり嫌なことをするには勇気がいる。
もし、その嫌なことが自分の責任であったりすることで、イヤ度合が大きければ大きいほどに必要な勇気度合も増す。
俺は、宿屋にこそかなり早く帰ってこれたものの、そのドアを開けられずにいた。
起きたナギサに事実を告げるのが怖かったのだ。
大丈夫だと無責任な言葉を言ってしまった自分に腹が立つ。
全然、大丈夫なんかじゃない。いま、俺たちのいるこの世界はいつどこで死ぬかもわからないデスゲームだ。
罠でモンスターが大量出現し、自分たちのHPバーがなくなった時点でもう、死ぬんだ。
だけど、俺が今それを告げないといけない。
もし、彼女が一人の時にそんなことを知ってしまえば、また不安にさせてしまう。それこそもしかしたら自殺なんてこともするかもしれない。
別に実証はされてないんだ、死んだら現実世界で目が覚めましたーということになるかもと考えたくなるのは当然だ。
俺も、これは茅場晶彦による悪いイタズラだとまだ思えてならない。
だが、同時にこれだけ時間がたってもナーヴギアを誰も解除してくれないということを考えると奴の言っていることは本当だと、理解していた。
理解しているからこそ、俺は彼女を一人不安にさせるわけにはいかないんだ。
フゥ―、と一息はいてよし!と言って俺は扉を開けた。
ナギサはすでに目を覚ましていた。
「君、だれ?」
彼女からの第一声はそれだった。
「俺だよ、シオンだよ」
たっぷり5秒ほど固まったうえで俺の方を指差して「シオン?」と確認されうなずくと、えぇぇぇええええ!!!!と馬鹿でかい声を彼女は上げた。
「ウソウソ!だってシオンはもっと長身で、目つきもキリッとしてたし、なにより男だったじゃない」
「俺はれっきとした男だ!」
現実でも二人連続で間違われることなんてまれだったのに……
「自分を鏡で見てみろ。アイテムストレージに手鏡があるはずだ。」
今の状況を説明するには、それが一番手っ取り早い。
ナギサは自分の姿が本来の現実の姿に戻っているのだと確認すると
またもや、「うそ、これ私じゃん!」と大暴走するのだった。
☆
10分ほどたってようやく、ナギサが普通のテンションを取り戻し、自分が倒れていたことまでを思い出し、俺はそのまま続けて今のこの状況を説明した。
「うそ……そんな……」
「悪いが、嘘でもなんでもない。これが事実だ」
「そんなの受け入れられない!ねぇ、これは単なる冗談なのよね?悪い夢なのよね。お願い、そう言ってよ!」
懇願するように彼女は俺に掴み掛った。
「……夢じゃない。現実だ」
「そんな………私が何か悪いことしたっていうの……」
掴み掛った手をはなし、彼女は力なく地面にへたり込み涙をこぼした。
彼女の嗚咽の声がなによりも俺の精神に響いた。
こればかりはどうしてやることもできない。
自分の無力さが悲しかった。
無意識のうちにグッと手に力が入る。
「ねぇ、じゃあ私たちこれからどうすればいいの?」
まだ、涙声のナギサが手で顔を覆いながら聞いてきた。
「ゲームをクリアする以外、このゲームを抜け出す方法はない」
「でも、モンスターにやられたら私たち、死んじゃうんだよ!?」
「死ぬな、確かに死ぬ。だけど、このままここで閉じこもって何もせずに腐っていくくらいなら俺は闘うことを選ぶ。」
その言葉を聞いたナギサは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにその顔を苦笑へと変えた。
「見た目は女の子でもやっぱり心は男の子なんだね。」
「最初の一言は余計だ」
ジト目をすると彼女は笑った。
「君が私を守ってくれる?」
俺は勢い強く答えた。
「約束する。俺が必ず、守るよ。たとえどんな場面であったとしても」
俺の答えに満足したのか彼女は笑顔を浮かべた。
「でも、そのなりで言われても説得力無いなー」
「ちょ、それはひどくないか!?」
「だって、ちっちゃいし、力なさそうだし。」
次々と繰り出される彼女の言葉がどんどん俺の心臓をえぐっていく。
「でも、さっきの君ははカッコよかったかな」
最後に彼女が言った言葉は小さくて俺の耳には届かなかった。
「え?なんて?」
「ううん、何でもない。それより、よろしくね、シオン」
「ああ、改めてよろしく。ナギサ」
こうして、俺とナギサの旅が幕を開けるのだった。
今回の話は正直結構書きづらかったです。
心理描写というのが私は苦手なものでして……
矛盾点や、おかしいと思う箇所が今回はいくつも見受けられるかもしれません。
私に構うことはありません、どんどん言ってやってください。
それが、私の力となりますので。
また、普通の感想なんかもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いします。
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第一層攻略会議 上
死ぬはずだった人が死ななかったり死ななかったはずの人が死んだり
その役はキリトのはずだったんじゃ……なんてこともございますが
よろしくお願いします<(_ _)>
申し訳ありませんが究極のソードスキルはやはり削除させていただきました。
また来るべき時が来たら掲載しようと思います。
閲覧された方はすこしネタバレでしたね(^_^;)
すいません。
このデスゲームが始まって一か月。
俺はナギサの実力を大きく見誤っていたことに気付かされた。
ナギサは女の子だ。だから戦闘に関してはほとんど何もできない。
俺が補助してやりながらゆっくり弱い敵からなんて考えていたが
とんでもない。
女の子とは言え、スキルやステータスは俺を除くほかの男たちとも大した差はない。
ならば、動きのスピードだって現実の男と女のような違いも生まれない。
このゲームでの強さは順応性と精神力、そして判断の速さ。
彼女にはそれがしっかりと備わっていた。
「ふぅ、今日はこれくらいにしとこっか」
スキルの発動を終え、今日で400匹目ほどにあたるであろう敵モンスターを倒すと彼女はそういった。
「そうだな。それにしても今日はまた随分な量の敵をやったな」
俺は、このレベルだ。特にそんな頑張る必要はないと踏んでいるので、彼女の半分も倒してはいない。おかげでレベルに少し差ができてしまった。彼女はレベル14。に対して俺は12。
しかし、彼女はこういうのだ。
「当然。でないと、いつまでたってもシオンに追いつけないからね」
いつのころからか、彼女は俺を目標とするようになった。
特別な力は見せたことは無い。ナギサと同じようなスキルを使い、同じように、倒しているのだが、どうしてか彼女は俺のことを強いと思い込んでいるらしい。
曰く、戦闘にいつも余裕があるんだとか。
たしかに、まだ上のスキルがあると考えると自然、闘い方に余裕がでてくる。
それを、彼女は見抜いているのだ、いやアッパレアッパレ
「もうレベルでは負けてるじゃないか」
「違うの!なんか、こう、言葉にはできないけどシオンには何か戦闘の時でも絶対的なものを感じるの。安心できる。でも今の私にはまだそれがない。」
それは、ただ単に初めの方にずっと守り役に徹していたから頭の中に植えついた君の空想のイメージでは?と思うが口には出さない。
今現在、このゲームでは2000の人が死んでいる。
死に方は様々、自殺、モンスターにやられた、罠にかかった、そしてPK。
PKとはプレイヤーキル、つまりは殺人のことだ。
それが、ついこないだ起こってしまった。
モンスターならば今のレベルであれば多少の罠程度なら俺がなんとでもしてやれる。だがプレイヤーそうはいかない。
プレイヤーにはモンスターには無い知恵、知識がある。すれはつまり卑劣な手段が考えられるということだ。
その毒牙にかかったとき、彼女は一人で闘わなくてはならないかもしれない。
そんなことは決して起こさせるつもりはないが、やはり想定外というのは俺だって人間なのだから起こってしまう。
その時のために彼女には多少強くなっててもらう必要がある。
だから、彼女のその強くなろうという意志を邪魔するような言葉をかけたくない。
「俺はかなり高く評価されてるみたいだな。うれしいぜ。」
「でも、すぐに追いこしてやるんだから!
そして、いつかは私がシオンを守ってあげる。」
すこし、不思議な感覚を覚えた。
俺はナギサを守ることをあたりまえだと考えてきたし、ナギサは今の俺から見ればまだまだ弱い。
だから、そんなナギサに守られている自分を想像すると、かなり変な感じがしたのだろう。
彼女が俺を強いと錯覚してるように俺ももしかしたら彼女を弱いと錯覚しているだけなのかもしれないな。
注意しておこう。
「それは、楽しみだ。じゃあ、強くなるためにも腹ごしらえは必要だよな。飯食いにいこーぜ」
そういうとすぐに俺は一番近くの街へと走り出した。
「あ、ちょっとまってよ、もう」
そんな俺に彼女は苦笑しながらもついてきてくれた。
☆
食事をした店で俺たちはある情報を手に入れた。
この一か月だれも見つけられなかった第一層のボスフロアを見つけたパーティーがあるのだという。
そこで、明日の10時からボス攻略会議が行われるらしい。
そのことを宿屋で俺とナギサは話し合っていた。
「シオン!参加しよ、ボス攻略!」
多分、彼女は同じ相手を倒すばかりで少し退屈をしていたのだろう。そう思っていた中でのボス攻略だ、今の自分の実力は試せるし、次のフロアには進めるし、これだけ好条件のそろった敵もいないだろう。
「別に俺は構わないけど……」
「けど?」
「ボスは今までの敵とはわけが違う。もしかしたら死ぬかもしれないぞ?」
すこし声のトーンを下げて言った。
それに彼女はすこし、テンションを落として真剣みを帯びた声でこう答えた。
「わかってる。でも、やりたいの!私、この一か月で強くなった。もう、大丈夫だってことシオンにも見せたい!」
そこには彼女なりの考えがあるのだろう。
俺も、次のフロアに進むのが嫌なわけじゃない。
当然早く攻略して、こんなゲームからはとっととおさらばしたい。
俺もついていくんだ、いざという時は上位スキルを使ってでも守ればいい。その分俺への風当たりが強くなるからあんまりやりたくはないけど……
俺は素直に彼女の提案をOKした。
「あはっ♪シオンならそう言ってくれると思ってたよー。」
そう言って彼女は俺に飛びついてきた。
女の子に飛びつかれるのなんて中学になってからは一度もなかった。
次第に頬が熱くなっていくのを感じる。
引き離そうとするがどこを触っていいかわからない。
「お、おい、やめろよ」
「なに~?照れてるの?かわいいなー、もう」
そう言ってもう一度くっついてくる。
その勢いが強すぎて俺は体制を崩しベットの上に倒れた。
状態としては俺の上に馬乗りになるナギサという状態になる。
「ど、どいてくれよ」
恥ずかしくて顔をそらしてから俺は言った。
「う、うん」
そう言ってゆっくりとナギサは立ち上がる。
俺も後に続いて立ち上がる。
「ちょっと風に当たってくるな」
俺は、そう言って宿屋を出た。
その後しばらくの間押し倒された時の心臓のドキドキは止まらなかった。
ちょっとした恋愛模様を描いてみました。
ありがちな感じですが、まぁ気にせんでください。
書いたことないんでアドバイスなんかをいただけるとうれしいです
感想も随時お待ちしておりますのでいつでもどうぞ
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第一層攻略会議 中
翌朝10時、俺たち二人はあらかじめ指定されていた場所へと向かった。
朝、あくびをしながら起きていくと、ナギサがいつもの調子でおっはよー!と俺に元気よく挨拶してくれた時はなんだかほっとした。
ついてみると、そこにはすでに30人近いプレイヤーが集まっていた。
皆一様にさまざまな格好をしている。
すでに第一層からここまで違いが出るということがこのゲームの難しさを物語っていた。
「はーい。みんなちゅうもーく」
一番先頭のステージのようなところに立っていた
青色の髪をしたいかにもノリのよさそうな人が話し出した。
おそらくはあの人が今回の攻略会議のリーダーなのだろう。
俺たちはテキトーなところで腰を下ろし、そいつの話に耳を傾けた。
冗談交じりの自己紹介でディアベルと名乗ったその男は、自分たちのパーティーがボスの部屋を発見したのだ、そして俺たちはボスを倒して始まりの街にいるみんなにこのゲームは永遠ではないのだということを証明する義務があるのだと熱弁した。
それに周りも賛同し、拍手や口笛が起こった。
俺も素直にそう思えるディアベルのことをすごいなと思った。
力を持ちながらもダラダラとしている俺とは大違いだ。
そのあと、彼はパーティーを組むように指示した。
「よく考えたら、俺たちパーティーは組んでないよな」
「そうだねー、なんだかずっと一緒にいるから組んでるような気分になってた。」
「とりあえずは、パーティー組んどくか」
そう言って俺はパーティー申請をナギサに送る。
ふと、周りを見回してみると、すでに俺たちと同じようにパーティーを組んでいる奴らがほとんどだ。
多分、俺たちのように仲のいい複数メンバーで来ているのだろう。
だが、しかし、そうでないやつもいるわけで……
しかもたまたまそれがすこし顔を見知ったやつであったなら、さすがに声をかけてあげなきゃ可哀想なわけで……
俺はナギサに許可を取ったあと、キョロキョロと左右を見渡し焦っているバカのもとへ歩いて行った。
「そんなキョロキョロして何をしているんだい?キリト。」
「え?あ、ああ!シオンじゃないか!?」
「相変わらずソロでやってるみたいだな。おかげでパーティー組む相手が見つからないのか?ええ?」
にやにや笑いながら俺はキリトの痛いところを突く。
「お前だってソロだろう?」
「残念だったな、俺はもう組む相手が決まってるんだ。」
俺は後ろにいるナギサの方を指差す。
「俺のパートナーのナギサだ。」
「初めまして。ナギサって言います♪よろしく」
「俺はキリト。よろしく。ふぅーん、シオンもやるなぁ。こんなときだっていうのに、女の子をしっかりゲットして」
「なっ!そんなんじゃねーよ!」
俺は、昨日の出来事を思い出してしまった。だが、すぐに打ち消して冷静に言葉を続ける。
「俺はお前をパーティーに招待しに来たんだ。俺たちと組もうぜ、キリト。」
するとキリトはすこし顔を曇らせた。なにか思う点でもあるのだろう。
「いいのか?」
「もちろん」
「いや、お前には聞いてない。ナギサの方だ」
さらっと、酷い奴だ。
「え?私は全然オッケーだよ。」
すると、キリトは少し考えたようだったが、すぐにこちらを向いて
「それじゃあ、よろしく頼む」
と言った。
「あと……」
キリトはなにか言いにくそうに俺たちを見た。
「あと、なんだよ。早く言えよ」
「あそこにいる人も誘えないかな。多分一人だから話しかけようと思ってたところだったんだ。」
キリトが指差したのは顔をフードで隠した性別不明のプレイヤー。
というか全体的に謎なプレイヤー。
変な奴ではあるが、別に嫌ってわけでもないし、変な奴だけど。
「まぁ、特に嫌がる理由もないしな。ナギサは?」
「私は何人いてもオッケーだよ」
「じゃあ、俺が行ってくるよ。二人は待っててくれ」
そう言って俺はその謎なプレイヤーの下へ向かう。
どんなプレイヤーなのか知りたいという好奇心からこの役を買って出たのだ、どうにかして顔だけでも拝まなくては
俺は後ろからさりげなくそいつの肩をたたいた。
振り向きざまに顔を拝めるかと思ったがそれは失敗した。
「あのさ、もしよかったら俺たちと組まないか?」
するとそいつは口をパクパクさせて最後にはっきりとこういった。
「か、可愛い……」
「は?」
「あっ!ごめんなさい。それでパーティーだったかしら?」
「ああ。あそこにいるメンバーと一緒になんだけど構わないか?」
そう言ってキリト達の方に指を向ける。
すると、それに反応したようにナギサがこちら側に笑顔で手を振った。
「いいわ、組んであげる。私はアスナ」
そう言って彼女はフードを取った。
明るい茶色のロングに後ろに変わったまとめ方をした髪型。
整った顔立ちで10人がいたら10人が美しいや可愛いと判断するであろう美貌の持ち主が謎のフードプレイヤーの正体だった。
たっぷり5秒ほど見とれた後あわてて俺も自己紹介を返した。
「俺はシオン。よろしくアスナ。」
そして、キリトと、ナギサを呼び寄せて4人が並んで座った。
そして、それを見計らったように再びディアベルが話し始めた。
と、そのとき
「ちょぃ、まってんかー!」
横の方から声がした。
声の主はおそらく、すこし身長が低めの猿のような男。
髪型はツンツンと逆立っており、子悪党的な感じがする。
子悪党はせっせと階段を下りていきディアベルの前に立つ。
「ワイは、キバオウってもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。
この中に今まで死んできた2000人に謝らなアカンやつらがおるんとちゃうか?」
おそらく彼がさしている奴とはベータテスタたちのことだろう。
ベータテスタたちは別に悪くないと思うのだが、やはり他のゲーマーたちはそうは思わないようだ。
見にくい嫉妬だ。
ごちゃごちゃと話していると一人の禿げの大男が立ち上がった。
「エギルだ。キバオウさんアンタが言いたいのはつまり、今まで2000人が死んだのはベータテスタたちのせいだ。だからそれを詫びてそして賠償しろ、そういうことだな?」
さすが、子悪党。らしい感じで大男にビビっている。
だが、強がって「そうや!」と大声を上げる。
ますます、子悪党っぽい。
「このガイドブック、もらったか?」
「もらったで。それがなんや!」
「これを配布したのは、もとベータテスタたちだ!」
するとエギルという男はこちらへ振り返りガイドブックを持っている方とは別の手でたたいた。
「誰にでも情報は手に入れられたんだ。なのにたくさんのプレイヤーが死んだ。それを踏まえてこれからどうするかを論議される。
おれはそう思っていたんだがな」
分が悪いと思ったのか、キバオウは前の方にふん!と鼻を鳴らして座った。
「よし、じゃあ再開するよ。今朝、また新たなガイドブックが配布された。
第一層のボスはイルファングザコボルトロード。そしてそれの取り巻きにルインコボルトセンチネルというのがいる。
ボスの武器はオノとバックラー。そして4本あるHPバーがラストの一本になると、武器がタルワールに変わり攻撃パターンも変わるということ。
最後に、金は自動均等割り、経験値、アイテムは倒したパーティーのものとする。
出発は明日の朝十時にする。それじゃあ、解散!」
この後、俺たちは親睦を深めるために4人で一緒に食事をした。
感想、お待ちしております!
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