Fate/Grand Order ~Guardian of History~ (沖田侑士)
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登場人物紹介
パートナーとなるサーヴァントは随時追加予定
【守護者】オキ
本作主人公のアークス。化け物揃いで一癖も二癖もあるメンバーを束ねる『
(周りにいるメンバーと比べて)比較的温厚な性格だが口が悪くなる時がある。繋げた縁を大事にする傾向があり『女性に優しく、野郎に厳しく、自分に甘く』をモットーで身内には甘いが、敵対する相手には(女性以外)容赦しない。強者との戦いを楽しむ傾向があり、戦闘凶の気がある。自在槍、両剣、槍の使い手。守護輝士の中では数少ない純粋なオラクル出身のアークス。シンキにより『天の鎖』を授けられている。
パートナー鯖:ステンノ
【異常生存体】ハヤマ
オキ同様周囲メンバー内で純粋なオラクル出身の数少ない一人。周りのボケにいつも振り回されている真面目な性格。ツッコミ担当。『異常生存体』と呼ばれている運の持ち主でクジをひけば必ず当たり、命が危なければ必ず助かる。ただし必ずしもそれが本人の幸運につながっているわけではないうえ、意図せず発動するので一番本人が困っている。オキとはアークスなり立てよりの腐れ縁でお互いに背中を守りあってきた仲。
カタナ使いのカタナ好きでカタナ馬鹿。戦闘能力はオキと同等クラスで特に攻撃面を担当している。地球の騒動直後より、一人でこっそりと何かしらの鍛錬を行ってるらしい。
更に同じ時より愛刀アギトをできるだけ使用せずに戦っている。
同じくカタナ使いのアインスとは特に気が合う為、よくお互いの腕を競い合っている。
パートナー鯖:
【燻り続ける灰】コマチ
オラクル出身ではないアークスの一人。几帳面で気になった事は行動しなければ落ち着かない、いつも何かを求めて行動しており、諦める事を知らない。そのためチームシップの倉庫は彼が集めてきた素材や武具等で溢れさせた結果、資金源調達担当を任された。
オラクルに来る前の記憶がうっすらとしか覚えておらず、自分が何者であったかを覚えていない。覚えているのは火の消えかけている光景だけらしい。
深遠なる闇討伐時期より前からファータ・グランデ宙域で起きている騒動に巻き込まれそちらの解決に尽力しており、ここ最近ではオラクルにいることが少ない。その代り当宙域で手に入れた武器や素材が倉庫に入れられ更にあふれる要因にもなっている。
地球の騒動後より時々虚空を眺めては意味不明な言葉をつぶやいている姿が目撃されている。
パートナー鯖:
【野良猫】ミケ
出生不明、年齢性別不明、性格予測不可な破天荒というトンデモアークス。惑星ナベリウスの原生種達を理不尽極まりない行動で束ねており『ナベリウスの頂点』とも呼ばれ恐れられている。逆にこの行動がダーカー達から原生種達を守っている事につながっているのは事実である。普段から猫耳の飛び出た大きなフードをかぶっており、三日月形に笑っている口元以外顔は殆ど見えていない。偶にミニトロスーツに着替えており野良猫のように自由奔放の毎日を送っている。いつも何か食べているかねだってくる。短剣使い。戦闘能力は未知数。運命を司る破神の剣、別名『所持者を勝利に導く短剣』の所持者。地球騒動時に連れてきた孤児院の子供たちにミニトロスーツを配布している姿が目撃されている。
パートナー鯖:
【魔神】シンキ
容姿端麗、妖艶にして異性同姓関係なしに魅了してしまう女性アークス。周囲には出生不明として扱われているがその正体はアルゴルの大英雄、アリサとルツの身体と記憶を受け継いだクローン体。光と闇の集合意思を一度体に宿したことにより『全知全能』と同等の存在として生きている。見たもの全ての解を得る『全知なるや全能の星』という目の保有者で現在は『観測者』としてこの時空の行く末を見守る。その為に自らも混ざりオキ達と共に歩んでいる。『魔神』と呼ばれるほどの力を持ち、『
オラクル宇宙の運命はオラクル宇宙の人々が作るべきことだと思っているので極力手は出さず、寂しくなったら一緒に戦うちょっとお茶目なお姉さん。
パートナー鯖:
【鬼の隊長】アインス
ラグオルから時空転移で飛ばされてきた元ハンターズのアークス。通称『隊長』。超時空エネミーニャウによって強制転移で飛んできたところをオキ達により助けられ、共にダーカーと戦う事を選んだ。ラグオルでも強力なダークファルスと戦っており、それを救った英雄。
数多くの宇宙の伝説で語られているカタナ『オロチアギト』を手に、どんな困難があろうとも、立ち止らず切り進み続ける固い信念の持ち主で幾度もオキ達の窮地を救ってきた。
指揮に長け、自らも強者との戦いを楽しむ傾向がある一方、昆虫が好きという普段の硬派な一面とは違った面も持っている。尚、【深淵なる闇】浄化作戦時に相棒オロチアギトを破損させてしまった為、現在はジグに修理を頼んでいる最中。
パートナー鯖:
【時の天使】クロノス
時の女神の命を受け、大きな時空変動を起こしていたオラクルに調査に来た天使。アークスに混ざって調査していたところ、その原因がオキの行っていた原初の星シオンの依頼『マターボード』である事を知る。
オラクルの歴史を一歩先へ歩ませるため奮闘していたオキに協力を申し出て共に歩むことになった。普段はクールで物静かな少女。服装はかわいさよりカッコよさを求める方。少しツンデレ。背中にある白銀の羽と頭上にある輪は天使の証であり、自由に相手の認識を操作することで見せなくすることも可能。時の女神の天使である事から運命を視たり、時の操作をしたりと特殊な力を持つ。好きな食べ物はメロンパン。嫌いなものはトマト。
パートナー鯖:
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プロローグ 「深淵なる闇からオメガ世界へ」
オラクル船団。それは宇宙を漂い数多の星々を調査し長い長い旅を続ける大宇宙船団。その中にアークスはいた。
アークスとは『全てを喰らうモノ』であるダーカーと戦い、浄化する所謂戦士である。そしてそのダーカーを生み出している親玉、ダークファルス。その親玉を作りだし闇そのモノの元凶【深遠なる闇】。
これはアークスと【深遠なる闇】との戦い、全宇宙の歴史、光と闇の幾千年の戦いの最中に起きた無限にも広がる内の一つの可能性の物語である。
【深遠なる闇】浄化戦。アークスの最後の決戦として全勢力を投入した大決戦となった。
また、アークスだけではなく、惑星スレア、惑星地球、ファータ・グランデ宙域等多くの宇宙の者達が手を取り合い、宇宙滅亡の危機を救おうと奮闘した。
「あとはコイツで切ればいいんだな?」
アークス、オキ。オラクル船団の救世主と呼ばれる一人にして主戦力が一つ『守護輝士』のリーダー。数多くの試練、事件を乗り越え解決し、宇宙の闇、全てを喰らい尽くすモノ【深遠なる闇】浄化に欠かせない一人。
多数の絆を築き、幾千年にも及ぶ全宇宙の光と闇の一つの歴史の終止符を打つべくようやくここまでたどり着いた。
アークスの誇る技術で作られた決戦用移動要塞『フォートレス・ドラゴン』の背中にある決戦用フィールドに巨体の一部を横たわらせ、頭部をさらけ出しているは【深遠なる闇】のコアとも思える部分。そこに一人の黒き人物が融合し姿を見せていた。
ダークファルス【仮面】。過去と未来を歩んでいた別時間軸のオキ本人で、一つの結果として【深遠なる闇】から生まれたダークファルスの一つだ。
「眠らせてあげることが、できるんだよね? シャオ君?」
オキと共に刀を握る白き少女、マトイ。原初の星【シオン】が作り上げた全てを喰らう闇【ダーカー】殲滅用兵器として生み出された一つの人格『二代目クラリスクレイス』が本人。オキやその仲間たちが奮闘しなければ深遠なる闇は彼女が生る歴史だった。それを助けるべく何度も過去をさかのぼり、その結果を一人で成そうとした過去のオキは助けられぬ絶望からダークファルス【仮面】へと変貌した。そして仲間と共に歩んだ今の『オキ』はマトイを助けることに成功した。【仮面】である自分自身の自己犠牲と原初の星【シオン】の手助けによって。
「ああ、ヒツギの具現武装『天叢雲剣』に宿った浄化の力。それを丸々コピー、改良して作り上げたのがその刀だ。負の力を浄化する力がある。君たちの力が合わされば、【深遠なる闇】の浄化も可能なはずだ。」
原初の星【シオン】。宇宙の最初の星にして全てを知る意志ある【全知全能】。そのコピーとしてシオン自身に生み出されたシャオは彼女無き今、オラクル船団の中枢を担う。数か月前に起きたアークス襲撃事件。アークスを作ったフォトナーと呼ばれるモノたちが怠惰の果てに作り上げた人口のシオンのコピーを失敗作として異空間に破棄、別の宇宙空間にたどり着いたソレはマザーを名乗り惑星地球を作りあげ果てに、捨てた事への復讐としてアークスを襲った。
その際にオキと知り合いになったヒツギという少女が手にした力、フォトンに似て非なるエーテルから作られた具現武装。
その刀の力で闇の力、負の力を浄化しようと計画をたて、今に至る。
「全てを終わらせるぞ。」
「うん。やろう。」
オキとマトイは刀を二人で一緒に握りしめ、静かに、そしてできる限りのフォトンを込めた。
「「ああああああ!!!」」
眼を見開き、同時に【深遠なる闇】に融合する【仮面】へと刀を突き立てる。直後、甲高い音が鳴り響いた後にその力のぶつかり合いは周囲に衝撃波を飛ばした。
力のぶつかり合いはオキとマトイの持つ刀を弾き飛ばそうと抵抗する。二人は飛ばされまいと必死に抵抗した。
その時、ふっと力の感覚がオキの手からなくなった。いままで目の前にある壁に力を込めて手を押し付けていた感覚が急に壁が無くなったように抵抗が無くなったのだ。押し付けていた力を弱めることもできず、更に自分の身体を何かが引っ張るように吸い込んでくる。
「な、なんだ!?」
「オキ!?」
マトイは逆に弾かれるようにオキの反対側へと飛ばされる。二人の手は離れ、オキは【深遠なる闇】に吸い込まれるようにその身体を引っ張られながら意識を失った。
「いでっ!? ここは…?」
気が付けば多くの男女が並ぶ列の前に転がったオキ。さらにその真正面には一人の銀髪の少女が驚いた顔で立っていた。
「ななな…なんなの貴方は!?」
顔を真っ赤にしてこちらに歩いてくる少女。ざわめく周囲。
「えと、いや…ここどこ。」
全くもってわからない。なにかの施設だと思われる場所の広いホールのようだ。ホールの先、前側に巨大な星のモニュメントが光り輝いている。ホールの中心に立つと先ほどの少女がオキの前に立ち、ヒステリックに頭を抱えながら何かを叫んでいる。しかしオキはそんな声より、大きな衝撃を感じ取った。
その衝撃とほぼ同時に紫色の髪の少女が近寄ってこようとする。その少女にオキは目を向けた直後だった。
真下から来る衝撃。たった一瞬の出来事。アークスの感覚だからこそ分かる危機感。逃げるのは簡単だが、オキは目の前にくる紫髪の少女と先ほどから叫び続けている銀髪の少女を捕まえ、覆いかぶさりその衝撃を受けた。
ドォォォン!
巨大な爆発。最初の衝撃の直後に更なる爆発が数回。周囲にいた呆然と立ち尽くしていた男女は吹き飛び、銀髪の彼女が先ほどまで立っていた場所は特に大きな爆発で大きく吹き飛んだ。
爆音とともにオキの背中に受ける熱波と衝撃波。生身の人間であるならバラバラになっていただろう。
アークスの身体だからこそ受けきれた。いや、ここにもフォトンがあるからだろう。アークスの力の源でもあるフォトン。その元素は今となってもわかってはいないものの、【深遠なる闇】から生み出されたダークファルスやダーカーの持つ闇の力を中和する事の出来る唯一の力にして万能のエネルギー。自然に漂うエネルギーで機械的にとりいれた製品はオラクル船団の一般生活に普及している。だが、戦闘的かつ主導的に「製品・規格化されていないフォトン」を扱う才能に関しては持っていない者も少なからずいるため、「誰でも扱える」という訳でもない。まして強大なダーカーを相手に出来るほどの優れた才能の持ち主ともなればやはりかなり限られてしまう。その限られた持ち主こそがアークスである。自分の何十倍、何百倍もの大きさの化け物と戦うアークスはフォトンのお陰で戦えている。フォトンを扱える最大量が多ければ多い程その力は増す。
短時間なら、灼熱の溶岩につかろうが「熱い」程度であり、極寒の地を歩めば「寒い」程度。一、二発程度の爆発は特に問題ない。オキの扱えるフォトン量は平均的なアークスに比べて頭1つどころか3つ4つ飛びぬけている為よけいである。
「っぶねぇ…。一体なんだよ! 変な場所に飛ばされたと思ったらいきなり爆破! ったくアークスの身体じゃなかったら死んでたぞ。おい、大丈夫か!?」
紫色に光る短い髪は黒く薄汚れ、服は煤で黒ずんでいた。銀髪の少女も気を失いぐったりしている。
周囲に炎が回り、先ほどまでの綺麗だった室内が一瞬で廃墟と化した。
「っち。連絡もつかねぇ。ここどこだよほんと。」
シャオとも連絡がつかない。さっきまで一緒にいたマトイもいない。目の前には2人、気を失っている少女達に周囲には守れなかった男女が大勢吹き飛んで転がっている。頭上では線でぶら下がっているスピーカーから警報が鳴り響いている。
「ああもうくそったれが! 落ち着け、こんなのいつもの事じゃねぇか。まずはっと…。」
悪態をつきながらも、とにかく安全な場所へと銀髪の少女と薄紫髪の眼鏡少女を火の届かない壁際へ運び、他の息をしていそうな人たちも移動し始めた直後、ホールの大扉が勢いよく開いた。
「…!?」
「…生存者は!?」
オレンジ色のショートヘアの少女が惨状を目の当たりにし、駆け寄ってきた。
服装は周囲に転がっている人物たちと同じ制服を着ている。ここの関係者だろう。
それともうひとり、白衣を着た男性も一緒だった。
「あんたらここの人か!? すまないが手伝ってくれ! 俺一人じゃ運びきれん!」
二人は驚いた顔をしつつも、すぐに冷静となった彼女と男性はすぐに状況を察し手伝いを開始した。
だが、間が悪かった。開始したすぐ後に大きな瓦礫がオレンジ髪の彼女の上に落ちてくる。
オキは助けようと音と同時に走るが間に合わない。オレンジ色の髪の少女は瓦礫の下に重れた、とオキは思った。
「う…。」
「立香君!?」
うめき声をあげる薄紫色の髪をした少女は上から落ちてきた大きな瓦礫に埋もれていた。
脚を潰されているようで血が床に流れ始めている。先ほどまで気を失っていたこの少女は、気が付いた直後に今まさに瓦礫が上から落ちてこようとオレンジ色の少女を助けようとして押し出したはいいものの、彼女が埋もれてしまった。幸い体全てではなかったが、足が挟まれている状態はよろしくない。
「くっそ…重いなこれ…!」
何とか持ち上げようと頑張るオキ。思った以上にデカイし重い。だが、何とかなりそうだ。持ち上げた直後にオレンジ色の髪の少女が駆け寄ってきて、薄紫髪の眼鏡少女を引きずって引っ張り出す。足は潰れ、血が大量に流れている。このままでは命が危ない。
「先…輩。無事…だったん…ですね。よかった…。」
「救急箱があっちにあったはずだ! とってくる!」
白衣の男性は走り、向こうにあるという救急箱を取りに向かった。
自分よりもオレンジの少女を心配する薄桃色の彼女はニコリとほほ笑んだ。この状況で他人を心配するとは。なんとしても助け出さねばと力を入れ、回復テクニック、レスタをかける準備をしたオキ。
その時だ。
『システム レイシフト最終段階に移行します。
座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木
ラプラスによる転移保護 成立
特異点への因子追加枠 確保。
アンサモンプログラム セット
マスターは最終調整に入ってください。』
一体何の話だ? 先程まで青かった星の球が真っ黒になっておりなにかがおかしい。
どう考えても不穏な空気しか漂っていない。
そして、みるみる真っ赤になっていく。まるで惑星アムドゥスキアの溶岩のように真っ赤だ。
『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。
シバによる近未来観測データを書き換えます。
近未来百年までの地球において人類の痕跡は発見できません。
人類の未来は 保証 できません。』
地球? あの地球のことか? ここは地球なのか? だがエーテルの存在が感じられない。地球であるならエーテルがあるはずだ。だがそれを感じ取ることができない。
「一体どういうことだ?」
『中央隔壁 封鎖します。館内洗浄開始まで あと 180秒です。』
背後にあった扉が壁によって封鎖される。
「壁が! こんにゃろ!」
エルデトロスを具現化させ、壁を切る。だがそれははじかれ、壁には小さな切り傷だけが残された。ものすごく硬い。並大抵の壁ではない。
『コフィン内のマスターのバイタル 基準値に達していません。 レイシフト定員に達していません。該当マスターを検索中…発見しました。
適応番号48 藤丸立香 更に適応者発見…該当名無し。新たなるマスター適正を確認。再設定。マスターとして設定します。アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します。レイシフト開始まで3 2 1』
全工程 完了 ファーストオーダー 実証を開始します。
ファーストオーダー。ソレは確かにそういった。カウントダウンの直後に目の前が真っ白に光り輝く。
オキはそのまま意識が遠のいていった。
「っは!?」
気が付けばそこはいつもの艦橋の風景が広がっていた。管理者シャオに守護輝士専属オペレーターのシエラが驚いた顔でこっちを見ている。その前方にはマトイ、そして惑星スレアから連れてきた少女ユウキ、オキのサポートパートナーのアオイまでそろっていた事からそこがアークスシップだという事を認識した。
「オキ! よかった!」
マトイが、そしてユウキがオキに両方から抱き着く。近くにいたアオイもよかったと胸をなでおろしていた。
「ここは…。アークスシップか。」
「その通りだよ。一体君はどこにいってたんだ? ほんと唐突にどこかへ来ててはひょっこり現れるね。」
シャオが心配そうな顔で覗き込んだ直後、頭上から別の声が聞こえてきた。
「それは私が答えるよー。」
「誰だ!」
室内の空中に浮遊する一人の女性が一人。長く金色に輝く髪の毛に目が行く綺麗な女性。この艦橋には基本的に許可した者以外は入ってくれない仕組になっている。少なくとも知っている相手ではない。このような綺麗な女性をオキは知らない。
それなのにここにいるという事はシャオかシエラの知り合いか。いや、二人とも驚いた顔をしている。つまりは誰も知らない者という事だ。
「どうしたのオキ? 誰かそこにいるの?」
「私のセンサーには反応はございません。しかし、フォトンの量が普段と違う傾向を見せている部分がございますね。」
ユウキ、アオイは見えていないのか? ここまであからさまに怪しい者に対し、オキは構えを見せる。
「ああ、別に怪しい者じゃないよ。私はアルマ。初代クラリスクレイスと言えば、スパッとわかるかな?」
その言葉にオキが目を丸くする。オキの隣でマトイも驚いている。わからないはずもない。マトイは二代目クラリスクレイスだった者だ。その名を持ち初代と名乗る目の前で浮いているフワフワした女性が先代という事になる。
クラリスクレイスは元々、三大英雄の中の一つの称号のようなモノだと以前その名について調べていた時に同じく三大英雄、六芒均衡の1にしてオキ達、守護輝士を除いた最大戦力のトップ、レギアスに聞いたことがあった。
そしてその本当の名が『アルマ』という女性だったことも話していた。
「アルマ…そうだ思い出した。レギアスの旦那が言ってた初代クラリスクレイスの名前じゃねーか。でも、確か40年前にルーサーにアークスを盾に脅されて…。」
レギアスは言っていた。アルマ、彼女はフォトンを扱う事に長けており、テクニックマスターとも言われたほどの使い手だった。そしてその後の調査で分かった事が、その力に興味を持ったルーサーがアークスを盾に脅しをかけ、彼女アルマは自らを犠牲にその身をルーサーへと渡し、過酷な人体実験の果てに彼女は死亡した。しかし、その実験のデータによりアークスの第二世代が生み出され、40年前の【巨躯】襲撃により力を失いかけていたアークスは立ち直り、急成長を遂げたという皮肉さもあった。
「うん。私はすでに死んでいる。故人って奴だね。この姿もフォトンで作り上げているだけなんだ。ギー君、懐かしい名前。リーちゃんもスー君も元気かなぁ?」
ふんわりとした言葉はどこかマトイを連想する。
「えっと…ギー君、ああレギアスの旦那の事か。ってことはリー…リ、マリアの姐さん? じゃあスはカスラの旦那? いや、今のカスラの旦那は確か初代の…。」
クローンだと言おうとしてオキは首を横に振った。同じく六芒均衡の2にしてレギアスの腐れ縁ともいえる女性キャストのアークス、マリア。そして同じく三大英雄の一人六芒均衡の3、カスラ。現在オラクル船団にいるカスラは初代カスラのクローンであり、ルーサーがいずれ乗っ取る計画だったことを聞いたことがある。
「初代カスラは既に…。あんたがアルマっていうのが本当なら、あんたが生きてた時代の人は生きてんのはレギアスの旦那とマリアの姐さんだけだと思う。ああ、ジグのとっつぁんも40年前の話はしてたから知ってそうかな?」
「そう。みんな元気なんだね。よかったぁ。」
パンと手を叩いて笑顔になるアルマはオキ達の上をふよふよと浮いたままゆっくりと同じ目線に降りてきた。
「オキと、マトイ。だよね。シオンの中で君たちの事を見ていたよ。」
オキとマトイは驚いた。シオンの他にも『あの中』にいたのか。いやいてもおかしくはない。原初の星シオン。彼女の中にはたくさんのフォトナーの意識の融合体がいたのだから。
そして彼女は話を続けた。
「私はね、シオンつまりアカシックレコードの精霊だと思ってほしい。ルーサーの実験で死んじゃったけど、アカシックレコードへと導かれ精霊になったの。」
そして彼女は言った。宇宙に、危機が訪れていると。
アルマの話を伝えるべく、オキは守護輝士である皆を集め、作戦会議を艦橋で行った。
アルマ曰く、エーテルとフォトンが干渉した影響がオラクル側の宇宙にも表れ、シオン=アカシックレコードの記録情報が具現化。さらにそこへ【深遠なる闇】が融合を果たし『オメガ』となったため、その危機を知らせるべくオキたちの前に駆けつけた。
『オメガ』とは。アルマが付けた仮称である。そして今現在の状況も踏まえて付け加えた。
現在オラクル船団は宇宙の中心部、かつて原初の星シオンがあった場所。そこに逃げ込みブラックホール化した【深遠なる闇】を観測している。そのブラックホールの肥大化は異常であっという間に全宇宙を飲み込んでしまうという。
アルマの力でソレをなんとか止めていると説明した。モニターには【深遠なる闇】であったブラックホールが大きな口を開くように真っ黒な姿を映している。
どうにか出来るのはアルマを認識出来る=シオンと繋がりのあるシャオ・シエラ・マトイ、そしてオキだけ…だというのだが。
「え? この浮いてる人?」
「どうも、アインスです。」
「ジー…。っち、なにも持って無さそうなのだ。」
「時間を止めたって…そんな簡単に…。」
『何かと思ったら(トリガー来たぞ!)(ファランクス!)そんなことかよ! ああー! めんどくせえトリガー引いちまった! (相手の動きが早まったぞ!)(足が速い! 加速する!)こっちは忙しいんだ! 見えるか見えねぇか? あぁ、見えるようになったじゃねぇか。(隣人よ。忙しい所悪いが、すまぬ外した)あぁ!? ちっくしょう氷牢はずし(プツン』
ハヤマ、アインス、ミケ、は彼女を認識できているようで、コマチは通信のモニター越しでも見えているそうだ。というかなんかむっちゃ忙しそう。そりゃそうか古戦場最終日だもんな。通信の後ろでは多数の人たちの騒がしい声が聞こえていた。なんか突っ込みを入れたい言葉で返してきたが、通信が切れてしまった上、彼の事だから考えるのをやめよう。
予想通りクロノスとシンキも認識できている。
「こんな感じかな。」
オキは事情を話し終え、これからいく場所の事を説明した。
これから行くはオメガ世界。アルマ曰く中でどのような事が起きているか分からないという。しいて言うならブラックホール、【深遠なる闇】、つまりはアカシックレコード=シオンが見ている『夢』だと言った。あの中で起きていることは今までアカシックレコードが見ている歴史の整理。宇宙全てに存在する『なにか』があの中で今ごっちゃまぜになっている。あの時聞いた『地球』という言葉は間違いではないが、違う場所である。
シエラに調べてもらった結果、地球は無事に顕在している。
こちらでの騒動でむこうの宇宙も認識したのだろうか。
とにかく『夢』とは記憶を整理するための行為。つまり歴史である。アルマ曰くあのブラックホールは歴史を食べ、無にしようとしていると説明した。
外に影響している事は中に影響する。つまり何もかもを無くそうとしている事が『オメガ世界』の中で起きようとしているし、逆にそれを止めれば外での影響もなくなるという事。そのために何が起きているか分からないその世界の中に飛び込んで原因を掴み取り、解決する必要がある。
「ふーん。なんか面白そうね。」
シンキ。オキと知り合って一緒にいるアークスの一人。そして間違いなくオラクル船団の最強にして最大の戦力を持つ個人。
容姿端麗、妖艶にして異性だろうが同姓だろうが姿、その性格に魅了する。出生不明の人物。
分かっているのはアークスとはまた別の力を持っている事。数多の武具、品物を保有している『王の財宝』と呼ばれる異次元の空間を保持している事。彼女がどこから来て、何ものなのかを時折酔った勢いでオキ達に話し、夢に見せてくれる程度で、その断片はあまりにも膨大で悠久の時を生きているという『観測者』である事。よって彼女に付いた名前が『魔神』である。
「どこにでもついていくさ。何か問題にぶち当たれば叩き切って進むまでだ。」
アインス。時空エネミーと呼んでいる『ニャウ』という異次元を行き来している不思議な生物によって別宇宙から呼び出された男。元はラグオルという場所から来た『ハンターズ』だという。アークスとして共に歩み続けオキやその仲間のハヤマと仲良くなり、今現在ではお互いに無くてはならない親友である。カタナ一本で、どんな難題であろうと切り進むその性格と強さは硬く、曲がらない。『隊長』と呼ばれるに相応しく、指揮から戦闘まで仲間を信じて突き進む男だ。
「オキ、そろそろステラの眼が治りそうなのだー。」
全く関係ない話をしているのはミケ。惑星ナベリウスの生態系の頂点に上り詰めた謎のアークス。アークスであるのに謎とは、と思うかもしれないが正直よくわかっていない。悪い人物でもないのでオキはそのまま一緒に行動している。実際ミケに助けられたことは結構あったりする。年齢性別不明、性格予測不可と謎の多い人物であり、普段からその小さな体に長いコートとフードをかぶり、時にはアークスのミニトロスーツを着込んで、笑っているのか、微笑しているのか、ほくそ笑んでいるのかがよくわからない。先述したようにナベリウスの生態系の頂点に立っており、ナベリウスに関係する生物はミケに頭が上がらない。理不尽な行動とその地獄のような行いからナベリウスの生物たちはミケを恐れている。だが、この行動は事実上ダーカーからナベリウス原生種を守る事につながっており、強く言えないのもまた事実である。ちなみによく被害にあっているのは『キマリ号』と呼ばれるファング・バンサである。このように意味不明な行動をとっているミケだが、子供たちには優しい姿も見せる。
ミケの言っていたステラとは、この間起きた地球騒動の際にどこからともなく助けてきた少女達の一人で、眼に鉛を入れられていた盲目の少女であった。オラクルの技術でも完全に眼を復活させることはできないものの、異物を完全に取り除き、疑似的ではあるが人口の眼をフォトンで作り上げ、体に慣らすことで目が見えるようにはできると医療担当のフィリアから聞いたことがある。
そのおかげもあってようやく眼が見えるようになりそうだ。嬉しそうなミケを見てオキもうれしくなる。ちなみにミケも一緒に行くそうだ。散々子供たちの話をした後についでにとぬかしやがった。
「マスターだけじゃ不安だからね。ついていく。僕もこの状況を間近で確認しておきたいし。」
クロノス。通称クロ。彼女もまたアークスであってオラクル出身ではない。時間の女神クロノスの加護を得た使いのひとり。まさに神に仕える天使。背中から生えている翼は本物で、空間認識を操作することで不可視化することもできる。
オラクルに現れた理由として時間を大きく変えている存在がその次元、宙域にいると判明し、別の次元、宙域から送り込まれるような形でオラクルへ来ることになった。その時間を大きく変えている中心人物がオキだ。
シオンの依頼。マターボードと呼ばれるモノを使って行っていた過去改変。これにより【深遠なる闇】となるはずだったマトイを救出し、オラクル船団だけでなく宇宙の滅亡となるはずだった歴史を改変し、現在に至った。
ある時に自分の正体をオキに話をしたとき『天使だろうと魔神だろうと、それが何であれ仲間にはかわりねーだろ。』と言われ、ぞれ以来ずっと彼らを慕っている。好物はメロンパン。嫌いなものはトマト。
『通信途切れちまったすまん。状況は理解した。(…曼荼羅!)(…タル・キャノン!)古戦場終わったらそっちに向かう…(ウンター…)(…ス・ネイル!)。もう少しで終わるからよ。(隣人よ、動きを止めたぞ。褒めよ。)あぁはいはい。よくやっ(ブツン』
通信の先から相変わらず忙しなく多くの声が入ってるのはコマチ。彼も出生不明なところがある若干中年の域に足を入れ込んでいる男性。シンキとはオキが出会う前からお互いを知っていたようだが、彼の過去は殆ど話を聞いたことが無いのでシンキ以上に不明である。どうやらアークスになる以前の記憶をぼんやりとしか思い出せないそうだ。オキのどんな相手だろうと一緒に戦った仲になった人物は仲間であるという懐を評価し、個人での行動が多かった彼は、オキを囲む仲間たちの輪に(強引に)入れられた。
現在はファータ・グランデと呼ばれる宙域で活動しており、絶えない騒動をオキ達と変わらぬその力で抑え込み、現在解決に奮闘中である。時折、唐突にかえって来てはオキ達の援護を行っている。
最近、地球での騒動時に戦ったデウスエスカを見てから彼の様子が時々おかしい。時折虚空を視てはぶつぶつと意味の分からない言葉をつぶやいている姿を見ている。本人曰く内側から何かが出て来そうな感覚だといい、どうやら記憶が戻りつつある可能性がある。少なくともその状態でも戦闘自体に支障はなく、危険ではないことが実験でわかったので(この時オキが試しに殴りに行ったら無意識に殴られた)とりあえずは放置している。
「任せるよ。リーダー。」
ハヤマ。前述した仲間たちと出会う前、マトイとも出会う前、アークスとなって初めてチームを組んだ腐れ縁。
どんなことであろうとお互いに助け合い、認め合い、背中を預けられる存在。オキの仲間たちの中で唯一のオラクル出身のアークス。オキ同様、フォトンを扱う技量が高く、その戦力はオキと同格レベル。特にカタナの扱いに長け、同じくカタナを扱うアインスとは気が合う。一般的なアークスかと思いきや、彼にも変な力がある。『異常生存体』と呼ばれるその不思議な体は異様なまでに幸運に恵まれているのだ。基本的には表に出てこないが、唐突に、ピンチの時、自らに起きている事象を都合のいい方向へ切り替わる。自分自身では否定しているものの、一緒に行動していればそれは嫌でも目についてくる。尚、ハヤマ自身制御できていない様子。
各々がそれぞれの思いをオキに伝え、オキは向かうメンバーをアルマへ紹介し、号令をかけた。
「向かうは【深遠なる闇】の中。何が起きるかわからないから、各自臨機応変に対応するように。尚、シンキはできるだけ力を抑える事。」
「えー、なんでー?」
文句言ってくるがダメなものは駄目だ。彼女の力は強力ではあるが、逆に強力すぎる。どのような事が起きるかわからない以上、彼女の力は押さえておくべきだと判断した。
「わかったわよー。」
ぶーぶーと非難するが、彼女の中でもそれは分かっているはず。オキはそれ以上を口出ししなかった。
「オッケー? じゃあ、始めるね?」
アルマの力により再び地面がうねる感覚を覚えつつ、かの地へと飛んだ。【深遠なる闇】の内部。その夢の中へ。
皆さまごきげんよう。
はじめましての方は初めまして。前作からの方はまたよろしくお願いします。
ようやく書き始めれましたFGO! 書きたかったんです!
既に読んでくれた方はわかると覆いますが多数の作品ネタが出てきます。
お見苦しいところが多々あると思いますが、これから宜しくお願いします。
できるだけ毎週土曜日に更新します。
では、次回にまたお会いしましょう。
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序章 特異点F「炎上汚染都市 冬木」
第1節 「燃える街」
ギリシャ神話に名高い三姉妹。元々はオリュンポスの神々より古い土着の神で、大地に関係の深い神性。地母神。
三姉妹はもともと同じ存在であり、コピー、クローンと言ってよい。しかし、末妹のみがコピーミスとして誕生し、本来「完成した女神」として生れ落ちるはずが、「成長」してしまう。個性を得た末妹の影響で、姉達もまたある程度の個性を獲得してしまう。
ただし、姉の二人の繋がりは未だ深く、以心伝心を通り越した共同体という状態。多少の差はあれ、基本的な性格・感性は一緒であり、上の姉は自分自身を「私」と呼ぶのと同様、下の姉のことも「私」と呼ぶ。
女神アテナの不興を買って「形なき島」に追放された末妹に付き合い、姉妹だけで島で暮らすようになる。
『私』は満足していた。
追放された妹と共に暮らした島。静かで、小さくて、3人で暮らすにはちょうど良い孤島。
女神として『愛されるだけ』だった私を、私たちを求めてやってくる勇者たち。
時々そういうのが訪れては駄妹が石にする。
そんな時々は煩い場所だったけど、過ごすにはちょうどいい場所だった。
でも…永くは続かなかった。
それでも後悔はしなかった。一つになるなら。『私』も同じ考え。
ばらばらになった今では、願い事はただ一つ。
『再び一緒に…。』
いいえ、叶う筈もない。だから願いなんて一つもない。
そう、思ってる。
『本当にそれでいいのか?』
…誰?
『さぁな。俺もあんたが誰だか知らねぇ。でもちょっと声が聞こえたもんで。お邪魔したかな?』
…いいえ。ここは私しかいないから。声が聞こえた事で少し、びっくりしたの。普通はありえなくてよ?
『そうなのか? 俺は通りすがりの者だ。つっても、気が付いたらここにいたし、すぐに行かなくちゃならねぇ場所がある。とはいえ、なんか寂しい声がきこえたからよ。可愛らしい声がさ。つい声かけちまった。』
そう。なら、そちらに行くといいわ。大事な用事があるのでしょう?
『まぁな。…さっき言ってた話、叶うといいな。時間があれば、俺も手伝ってやったんだが…如何せん時間が無くて難しそうだ。』
…あなたは、あなたのやるべきことをやりなさい。それが、貴方の使命でしょう? ここはあなたのいるべき場所ではないわ。
『使命、か。別に、使命でもなんでも、俺はやりたいことをやってるだけなんだがな。ま、機会があったらあんたの探している人、一緒にさがしてやるよ。っと、向こうに光が見える。あっちが出口か。そんじゃぁね。姿の見えない可愛らしい声の方。』
…なんだったのかしら。ここに何かの意思が入ってこれるとは思えないのだけど。
…何かしら。この感覚。懐かしい…そんな、なにか…。
…光? 先ほどのなにかの通った後のようだけど。今ので道が開いたのかしら。
ふふ、どんな愚か者で哀れな人か、見てみるのも一興かしらね。
それが、私とマスターの出会いだった。本人は気づいてないようだけど、私は気づいている。
あの時に声をかけた人は間違いなくあなた。
「お? アサシンか。ん? でもこれ女神って見えるぞ?」
ぱっとしない、良くも悪くもない顔。そう、それがあなたの顔なのね。
そして、あなたこの世界の人じゃないの。アークス? 宇宙の…世界の守り人かしら。
ただの人ではなさそうね。すこし、興味が湧いたわ。
「ふふ、女神を顕現させるなんて。愚かで面白い人ね。あなた、お名前は?」
それが、あの人と私の出会い。それが、始まり。
叶う筈の無い願いであると知っていた私の考えを覆したあの人を知った始まり。
「どうした? オキ君。」
アインスがふらりとしたオキを心配そうに見た。近くにいるオレンジ髪の少女藤丸立香も心配そうに顔を覗きこんでくる。
「ああ、大丈夫だ。少し、頭に痛みが走っただけだ。今は特に支障はない。」
「オキさん、ご無理はなさらないように。何かがあれば私がお守りしますから。」
白衣姿だった少女は鎧を身に着け、大きな盾を武器として立夏を守る紫髪の少女マシュも気にかけてくれる。
「異世界の戦士だからって無理は禁物なのはどこでもいっしょのはずよ。あまり前に出ない。」
銀髪の少女オルガマリーも厳しい言葉使いではあるが気にはかけてくれているようだ。
オキ達、アークス達はオメガ世界に入った直後、オキが助けたという藤丸立香というオレンジ髪の少女、紫髪の少女マシュ、そして銀髪の少女オルガマリーと出会った。
初めは警戒されていたものの、一番初め、オキが初めてオメガ世界に入った場所『人理継続保障機関フィニス・カルデア』内部で起きた事の事実と、実際に助けたという事。更に、いつの間にかオキを含むハヤマ、ミケ、クロノス、シンキ、アインスの6人が『マスター』としてカルデア側に登録されていた
人類の未来を語る資料館。時計塔の天体科を牛耳る魔術師の貴族である、オルガマリーの父、マリスビリー・アニムスフィアが創立した未来を保障するための機関。
アニムスフィア家が管理しており、アニムスフィアの使命、一族をかけて成しえる命題、冠位指定グランドオーダー“この惑星の人類史の保障”を成しえる組織。
魔術だけでは見えず、科学だけでは計れない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐ為の各国共同で成立された特務機関。それが『人理継続保障機関フィニス・カルデア』である。
謎の爆発で壊滅的被害を受けたカルデア内ではわずかな生存者で何とか復旧を急いでいる。
そんな中で、レイシフトが行われてしまった。
「人類の歴史が途絶える未来が見えた。」
レイシフト。難しい構造までは話を聞いただけでは理解できなかったオキだが、シンキが教えてくれた。
「簡単に言えばタイムスリップに近いモノよ。厳密には違うけど。」
時間に関して詳しいクロノスも補足に加わる。
「歴史は枝分かれしている。マスターは知っているよね。その枝分かれっていうのは、一度別れてしまうとその先の未来で何があっても過去の時間が分かれることはない。一度決まった過去は変わる事はない。でもここはその枝分かれが、起きてしまった。その為未来が無かったことになってしまう。そういう枝分かれしてしまうIfの直前に時間跳躍(タイムトラベル)と並行世界移動のミックスを行って簡単な時間旅行をするってこと。」
未来の歴史が途絶えている。ソレを観測したカルデアは『特異点』と呼ばれる歴史の途絶え、人類の滅亡に関連する歴史が改変されてしまった場所を特定。レイシフトを行いタイムスリップして原因を究明、解決する事を行う筈だった。
オキが到達した直後に起きてしまった爆発が無ければ。
本来なら適性ある人物しかできない特殊な儀式のようなモノ。だが、それを聞くと適性があってもおかしくはない。
「それなら適性抜群ですね! 何度もマターボードで繰り返し過去へさかのぼったのがこの方ですから!」
オキの胸から飛び出した小さな存在、妖精姿となってオキについてきたハイ・キャスト シエラ。
守護輝士の専属オペレーターのシエラはこの『オメガ世界』の内部に入ってからもオラクル側からの連絡ができる様に自分の分身を作成、オキに忍ばせておいたそうだ。
オメガ世界到着直後に信じようとしないオルガマリーの目の前に飛び出してオキ達の行ってきた【深遠なる闇】浄化にどれだけの苦労とどれだけの彼らの活躍があったかを力説した結果、オルガマリーは折れたのである。
「…♪」
かわいい!と目を輝かせながら近寄る立香。
「フォウ!」
「フォウさんも気になってしょうがないみたいですね。」
白いモフモフの小さな4足動物。名前をフォウと呼ぶらしくカルデアの内部にてペットとして生きているそうだ。
「妖精連れてるし、本当に異世界の住人なのかしら…。でもマスター登録はされてるっていうし…。ってことはサーヴァントじゃない。でも、さっきの化け物相手でも怖気ずに戦ってるし…。ああ、レフ。あなたがいれば…。Dr.ロマニ、準備はできてるの?」
異世界からの到来者、アークス、守護輝士だと素直に話した。隠しても仕方がない上、最初から信じてくれるとは元より思っていない。相変わらずオルガマリーは警戒しているものの、爆発から身を挺してかばってくれた事はどうやら記憶にあるらしく、少なくとも感謝だけはあるようだ。
化け物。人の骨の形をしていて、それでいて竜の頭のような頭部を持った動く骸骨。
立香やマシュと再会した際にその骨どもから救った際の戦いっぷりを見ていたからだろう。
デミ・サーヴァントとなったマシュ。サーヴァントと人の融合体となった彼女の身体能力でもかなり苦戦は強いられる相手だという。
サーヴァントとは。ここからが大事だ。オキが今目の前にしているのはマシュが融合し命を取り留めたという『サーヴァント』つまり使い魔の召喚サークルだ。このレイシフトで本来ならばマスターはサーヴァントを召喚し、使役、運用して化け物どもが出てくれば戦い、敵対勢力があればそれを攻略し、何が何でも歴史を元の戻す事を行う筈だった。
だが現在ではそのマスターも立香。そして異世界から来たのにもかかわらず、なぜか登録されているオキ達アークスの6名。
爆発直前にマスター登録されたのが立香君以外に7名いる。Dr.ロマニがそう言った。
現在の壊滅的な被害を受けたカルデアにいる数少ない生存者であり一番上の階級者。所長という立場であるオルガマリーは何故かレイシフトしている為カルデア内部の指揮は取れない。よって彼が代わりに指揮を行っている。
「さぁ、はじめなさい。マスター適性があるなら、できるはずよ。」
霊脈。その土地の力が一番溜まっている場所。アークス流に例えるならばフォトンが一番溜まっている場所という事になる。
確かに普段よりフォトンの量が多いとシエラも観測している。
そしてここで行おうとしているのが『サーヴァント』の召喚である。
7人のマスターが7騎のサーヴァントを召喚しこの燃えている崩壊した日本の都市『冬木』で事件の究明を行う筈だった。
『セイバー』『ランサー』『アーチャー』『キャスター』『アサシン』『ライダー』『バーサーカー』。
Aチームに所属する7人のマスターがそれぞれを担当するはずだった。
しかし今ではそれもできない。立香と、オキ達6人。そしてもう一人登録されているというまだ見ぬマスターの計8名で進む必要がある。
「…。」
立香は魔術師としても素人であり戦いなんてもってのほかという事もあり、オキ達が代わりに召喚することになった。
オルガマリーから受け取った虹色の刺々しい石を握りしめ、マシュの持っていた盾に召喚システムが組み込まれているというそのサークルに石を投げいれた。
「なんだ…? 頭に、何かが…。」
オキの頭の中に新たな知識が入り込んでくる。痛みはない。違和感もない。すんなりと、まるで元からあったかのようにオキ自身の知識として記憶に入り込んできたソレは『アサシン』を示していた。
「お? アサシンか。ん? でもこれ女神って見えるぞ?」
見える、いや分かる名前は女神を示している。彼女がどのような存在か。その知識が入ってくる。
そして薄い紫の長いツインテール、白い綺麗な薄いドレスを着た少女は優しく微笑んだ。
「ふふ、女神を顕現させるなんて。愚かで面白い人ね。あなた、お名前は?」
女神ステンノ。オキのサーヴァントとして顕現す。
ドーモ、みなさん。ごきげんよう。
本編が始まりました。これから宜しくお願い致します。
いろいろ設定が雁字搦めのおかげで前作より改変するのが難しいFGOですが、まぁ困ったときのフォトン万能説で押し通しますので、ご承知おきを。
さて、早速サーヴァントの召喚でアサシン、ステンノを召喚です。
彼女が主人公オキのメインサーヴァントとしてグランドオーダーを達成することになります。何故ステンノを選んだかって? 一番好きだからだ!
我がカルデアのステンノはLv100宝具5スキルマです。
(フォウマは先にマシュに行いました)
もちろん他のメンバーも召喚します。誰が誰を召喚するかは次回にわかりますので、もしよろしければ誰が誰を召喚するかを予想してみてください。
それでは次回またお会い致しましょう。
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第2節 「召喚されるサーヴァント」
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
3ずつ渡された虹色の石をそれぞれアークス達が投げ入れた後にオルガマリーの言う通りに手を翳し、召喚の義を行った。
召喚サークルが光だし、知っていないはずの詠唱呪文が頭脳に流れ込み、無意識に口にする。
オキ、ハヤマ、クロノスの詠唱とは別にシンキ、アインス、ミケが少しだけ違った。
「我は常世総ての悪を敷く者。されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」
一節だけ増えている3人の詠唱呪文。オキは何か間違えただろうかと思ったが、元より知らない言葉が勝手に口から出ている事を踏まえて何も気にすることないと判断した。
「本来はいらないんだけど…まぁいいわ。」
ボソリと誰も聞こえない声でつぶやくオルガマリー。
カルデアの召喚システムは聖杯戦争を経験したオルガマリーの父によって作られた召喚式。英霊とマスターの双方の合意が合って初めて召喚できるものだ。つまり、オキ達の事を知って合意した英霊が召喚されることになる。
そして、詠唱呪文は全てマシュの盾を触媒にカルデアにある『守護英霊召喚システム・フェイト』により、詠唱呪文は省くことが可能だ。
とはいえオキ達はそのことを知らない。よって頭に流れてきた言葉を口ずさんでいる。
光は強くなり、オキ達それぞれの前に人影が生れ、召喚サークルの光が強く回転を始める。
「お? アサシンか。ん? でもこれ女神って見えるぞ?」
まず初めにオキの前に一つの人影がより強く表れる。
召喚された英霊と思われる少女の姿を見て、その少女がどのような英霊なのかが強制的に名前が浮かんできた。
「ふふ、女神を顕現させるなんて。愚かで面白い人ね。あなた、お名前は?」
紫髪を長いツインテールに結び、白きドレスを羽織った優しい笑みを浮かべた小さな少女がオキの前に立つ。
「女神…女神ステンノ、でいいのか?」
「ええ。ただ、名を聞く前にあなたの名前を教えてほしいわ。」
しまったと眉を歪め、オキは女神の名をもつ少女に手を出した。
「オキ。アークスが一人。守護輝士のリーダー。オキだ。これからよろしく頼む。」
ステンノはオキの出された手をじっと見つめ、そしてオキの顔を覗きこみ微笑みながらオキの手を取った。
「ええ、女神である私が来たからには、ただ召喚しただけじゃ済ませないわ。楽しませなさい。」
「まかせろ。少なくとも退屈はさせねぇし、するメンバーじゃねぇ。っと、ハヤマん達も召喚が終わりそうだな…って隊長とハヤマんの光むっちゃ虹色に光ってんだけど、大丈夫か?」
ミケ、クロノス、そしてシンキの召喚が終わって尚、光り輝くアインスとハヤマの召喚の光は虹色に強く光っている。
「…?」
立香が心配そうに大丈夫なの?とオルガマリーに質問したが、オルガマリーは目を見開き驚いたまま固まっている。
「い、いま女神…ステンノって…え?」
光り輝くアインスの召喚サークルが先に落ち着いてきた。それと同時に二つの影が現れる。
「新撰組一番隊隊長、沖田総司推参! あなたが私のマスターですか?」
薄い桜色の肩まであるショートへアで同じ桜色の袴を身にまとった刀を持った少女が凛とした顔立ちでアインスに問いを投げる。
新撰組。アインスはその言葉を聞いてある一人を思い浮かべる。惑星スレアで起きた事件。その際に巻き込まれたオキ達と共に戦ってくれた、その惑星の住人、ゲームのプレイヤー達。仲間となってくれたメンバー。その一人に沖田の名を持つ人物がいた。
彼は元気だろうか…。そう思いつつ目の前に立ち問の答えを待っている少女に答えた。
「ああ、私がマスターだ。共にいこう。今後とも、よろしく頼む。そちらは…。」
沖田総司と一緒にもう一人、黒いマントを羽織った大きな男性が召喚された。
アインスは目を見開いた。跪き状態で召喚された男性がゆっくりと立ち上がる。
その顔をみて、その英霊の情報が脳裏に入り込んできた瞬間、アインスは衝撃を受けた。
アインスは、かつての惑星スレアでの戦いで、唯一の心残りだったものがある。
『生きていた時代で、会ってみたかったものだ。』
そう、あれは降下するエレベーターの奥に眠る剣士に匹敵する戦いだった。今でも思い返している、あの手触り、あの感覚、忘れようがない。容姿はあの時と違えど、間違いない。
目の前の剣士…いや、霊気がセイバー…ではないな。
だが、その黒いコート、鋭い眼光、そして…その名。
「新撰組副長、土方歳三だ」
生きていた時代で…
「クラス? そんなことはどうでもいい」
会ってみたかったものだ…。
「俺がある限り、ここが-----新選組だ!」
その願い…叶ったぞ!
迷いのない言葉で高らかに宣言する誠の一文字
「お前がマスター、俺がサーヴァント。それはいい。だが、新撰組ある限り----俺は俺だ。」
眼を見開いていたアインスは手の甲をゆっくりと…見せた。
惑星スレア。あの星で知り、ヴァーチャル世界ではあったとはいえ、この身で戦い、その生涯を知り、何度も思い返したその男の存在。新撰組、副長。『鬼の副長』土方歳三に、アインスは宣言した。
「ああ、だからこそここに、この右手に宿りし三画に誓おう。俺は…私は…諦めない。だから共に来い、我が狂戦士よ。」
彼は静かに笑った。ああ、自分が呼びだした者がそう言う事は当然だ、とでも言わんばかりだ。
「上等だ。」
にやりと笑う土方にアインスも口を歪ませる。
そんなやり取りをした直後、横から沖田総司が土方の前にひょこっと顔を出した。
「あれー? 土方さんも一緒ですかー! わーい! お久しぶりです!」
「沖田か。…おい、沖田ぁ。お前ぇ羽織はどうした?」
ギロリと沖田を睨み付ける土方は羽織について質問していた。その時である。
「だーーー!?」
「何事!?」
「おう…爆発したぜ。大将、ありゃ大丈夫か?」
「…。」
「あれ大丈夫? 爆発が起きたようだけど?」
クロノス、シンキ、そしてミケの召喚したと思われる英霊たちがハヤマの行っていた召喚がサークルの光が頂点に達した直後、巨大な轟音と共に起きた爆発に驚きの声を上げた。正確にはミケの超巨大な英霊だけがずっとミケを見たまま固まっており、その肩に乗る、長い銀髪の少女がミケに対し驚いた素振りも見せず質問していた。
「ちょっとあなた大丈夫!?」
「ハヤマさん、大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」
「いつつ…あ、ああ。オルガマリーさん、マシュさん、大丈夫。よかった、盾は無事見たい。壊したら怒られそうだ。」
あははと笑うハヤマの前に3つの影が歩み寄った。
「サーヴァント・セイバー。ネロ・クラウディウス、呼び声に応じ推参した。うむ、よくぞ余を選んだ!」
「ご用とあらば即参上! 貴方の頼れる巫女狐、キャスター玉藻の前、降臨ッ!です!」
「魔人アーチャーこと第六天魔王織田信長じゃ! うむ、そなたがわしのマスターじゃな? よい、マスターになる事を許そう。」
一人は真っ赤なドレスを着こんだ、綺麗な金髪の少女。
一人は桃色の髪にぴょこんと飛び出た狐耳と腰に見える巨大な尻尾が特徴で露出の高い蒼い着物を羽織った女性。
最後に現れたるは燃える火の如く真っ赤なマントを羽織り、軍人の服装を身に、金色の装飾を帽子につけた少女。
計3名の英霊が同時に現れた。
「3…3!? う、嘘でしょ!? いくら魔術の結晶とはいえ3つで一騎召喚できればいい方なのに3!? いえ、2でもおかしいわ…。なんで…どうして!? Dr.ロマニ!?」
「こ、こっちでも観測していますが、急に魔力が跳ね上がりまして…いくら結晶での触媒を用いているからとはいえ、あの上がり方は…。」
「…!」
「はい。すごいです。ここまで英霊の方々が同時に召喚されるなんて。」
カルデア側のメンバーは驚き戸惑っている。彼らに渡した虹色の魔術結晶はそう簡単に手はいらない代物とはいえ、サーヴァントの召喚に使用した場合、その魔力は3つでも1人召喚できればぎりぎり足りる程度である。
ましてやフェイトにより召喚が行いやすい状態になっているとはいえ、同時に2人、ましてや3人の召喚などあるはずがないのだ。
「あら、あなたのご友人? お仲間は3人も召喚しているのね。」
「あちゃー…相変わらずの豪運だなハヤマン。」
ハヤマは正直言って化け物揃いのオキの仲間たちの中では平均的なアークスである。努力の結果もあって現状ついて行けている状態であるがたった一つ、この化け物揃いに匹敵するほどの能力がある。それが『超運』。本人は意識して使えないものの、ここぞというときに発揮する豪運である。その幸運はあまりにも強力で常識的範囲を軽く逸脱する。
「ん? んな!? 貴様キャス弧!? 貴様がなぜここにいる!」
「おや、皇帝さん。あなたこそなぜここに? 私は、私をお呼びになったマスターの声に応えて召喚に応じたのです。全て私に任せて、あなたは座に戻られたらどうです?」
「なにおぅ!? 余こそマスターの声に応えたのだ。余一人おればよい! 貴様こそ座に戻ってもよいのだぞ?」
「げぇ! 人斬り! 貴様! またわしの邪魔しにきおったのか!? あれか! ワープか!? またワープしたのか!?」
「アーチャー、また貴方ですか…。人の事をどこかに現れた某将軍みたいに言わないでください。相変わらずどこにでも出ますねぇ。今回はそんなこと言ってる場合じゃないんです。貴方にかまってる暇はありません!」
ハヤマの英霊うち2名は既に内輪もめを始めている。更に3人目の織田信長を名乗る英霊はアインスの英霊沖田に驚いていた。
「あーもうグダグダだよ!」
「あっはっはっは!」
「頭痛いわ…。なんなのこの人達…。女神は召喚するし、一人につき一騎が限度のはずなのに2騎だけじゃなく3騎も…。」
クロノスは白目を向いてるし、シンキはソレを見て笑っている。オルガマリーは頭を抱えてとうとう伏せこんでしまった。正直気持ちは分かるぞとオキは思いつつ、数ある英霊達に目をキラキラ輝かせている立香の肩をポンと叩いて前に出た。
「あーそれぞれ言い分はあると思うが、こちらと急ぎでな。悪いが自己紹介を済ませた後に現状を伝えたい。どうだろうか?」
オキの言葉にようやく騒がしかった周囲が、燃え盛る街の音だけとなって静まり返った。
「んじゃ改めて。それぞれのお名前をお聞きしてもよろしいですか? いいよな? オルガマリー。それぞれの名前を知らないでこれから戦うのは効率が悪いと思うが。」
オキ達は周囲に危険が無い事を警戒しつつ、召喚した英霊を後ろに、大きく円を囲った状態になっていた。
「え、ええ。」
驚きと困惑でもうあきらめた目をしているオルガマリー。先ほど軽く聞いたがサーヴァントは本来真名を隠す必要があるという。名前を知れば、その逸話から弱点を割り出されて不利になる可能性が大いにあるからだ。
だがこれは聖杯戦争ではない。相手がどういう相手で、何をしてくるかが分からない以上、こちらの状態を万全にしておく必要がある。そのためにはお互いのサーヴァントの事を知っておき、弱点を補い合い戦えば、少なくとも詰む事は無くなるわけだ。
「そんなら俺から行こうかな。えっと、俺が召喚して答えてくれたのは…。アサシンの…。」
「ステンノよ。ふふふ、楽しめるかどうかと思ってたけど、最初から笑わせてくれるなんて。いいわ、マスターとして合格よ。」
「ステンノ…。女神ステンノ。ギリシャ神話のゴルゴーン三姉妹が長女! 女神さまが召喚されるなんてあり得るんですか?」
マシュの質問にオルガマリーは理論上不可能ではないという。だが、それでもかなりの確率。一般常識で考えるならばありえないと言った方が早いらしい。
「女神様が味方ならどんなことがあっても安心だな。」
「あら、マスター。私は女神だけど、戦う力は無くってよ? いつもは妹に戦ってもらっていたから私は戦いなんて、ふふふ。それとも、私を戦いにだそうだなんて、お思い?」
微笑みに見せる大きな優しさと包容力のある声で囁くがオキに向ける眼だけは違った。まるで本気の際のシンキのように瞳孔は縦に広がり、それは例えるならば蛇の眼そのモノ。優しさの奥には『神』が健在しているようなのは間違いないだろう。
ゾクリと背筋の凍る感覚。戦える力は無いと言うが、本当だろうか。
「状況次第だね。他の英霊の事も知ってから考える。」
だが、そんな眼をみてもケロリとするオキ。
「…。」
眼を見開くステンノは何かに驚いている様子だった。なにか不思議な事を言っただろうか。
「あなた…。まさか…。いいえ…。そこのあなた。」
ステンノが立香を呼ぶと、立香は一瞬だけふらりとした直後にステンノの前に跪き、手をとる。呼ばれただけの立香の行動に戸惑うマシュ。
「マスター? どうなさったのですか?」
「超強力な魅了…。もし立香が男だったらその魅了は死を意味するほどの効力…。あれが、女神の力…。」
オルガマリーの言葉にステンノは説明は不要だといい、立香にかけた魅了をといた。ぶんぶんと首を振る立香は首を傾げ、なぜ跪いたか不思議そうに自分の手を眺めていた。
「あなた、私の魅了が効いてないわね。どういう事かしら。アークス…異世界の住人みたいだけど。こんなことがあるのね。ふふ、面白いわ。ふふ、ふふふ。」
微笑みを崩さずにステンノはオキの後ろに再び戻った。どうやら魅了をかけられたらしい。なんともなかったが。アークスには聞かないのだろうか。まぁそれくらいでいてはダークファルス、ましてや深遠なる闇相手なんかできなかっただろうが。
「あー、次は隊長のところ、よろしく。」
「ああ、俺の所は運が良かったのか二人だ。」
アインスが二人を前に誘導する。沖田総司に土方歳三。オキも惑星スレアで教えてもらっている為知っている。
新撰組、近代化がおきる前のニホン。幕末と呼ばれた時代に生きていた有名な剣士の名前だ。
「新選組副長、土方歳三さんと、同じく新撰組が一番隊隊長沖田総司君だ。」
「よろしくお願いします。」
「おめえらが新しい入隊候補か?」
「土方さん、ここは新撰組じゃありませんよ。空気読んでください。」
「うるせぇ沖田。俺がいる場所が新選組だ。」
「あーもう。すみません。この人いつもこうなんで…聞き流してください。」
土方の言葉に周りに頭を下げる沖田。相変わらず厳しい言葉を投げる土方。アインスは苦笑気味だが、どこか嬉しそうだ。
「土方さんはバーサーカー。沖田君はセイバーで召喚されている。」
狂戦士。たしかに間違ってはいないのだろうか。少なくとも問答無用でこちらに危害を加えてくる人ではないので安心できるだろう。
それにかつての逸話を知っている限り、二人の腕は確かなのは間違いない。
「じゃあ次は私ね。クラスはそっちと同じバーサーカー。」
「俺の名は坂田金時。よろしくな。悪いが暫く世話になる。俺の事は、ゴールデンと呼んでくれ。」
同じバーサーカーと言う坂田金時、いやゴールデンは金髪のおかっぱに長身の筋肉隆々の身体。手に持つ巨大な斧のような武器が特徴的だ。
「坂田金時…童話、金太郎のモデルにもなった有名な方ですね! 私も読んだことがあります。鉞担いだ金太郎♪」
マシュの歌声にゴールデンも微笑む。
「俺の事、知ってるなら話が早いじゃん。俺の大将はこの人だが、聞けばあんたが総大将だっていうじゃねぇか。よろしくな、総大将。」
ものすごい爽やかで且つ熱い気迫の青年のゴールデンはオキに握手を求めてきた。オキもよろしくゴールデンと笑いながら握手を交わした。
「はっはっは。…ところでうちの大将…ゴールデンなのは間違いねぇんだが、ちょっとその…服がデンジャラスすぎじゃん? 総大将からも、もう少し言ってほしいんだが…。」
肩を叩きながら笑っていたゴールデンがオキにしか聞こえない小声で話しかけてきた。どうやらシンキの服装についてらしい。
まぁ、確かにシンキの服装は露出度が高い。ほぼ水着に近い薄さだと言ってもいいだろうその姿はどこかの国の踊り子をイメージする。
「あ、あはは…善処します…。」
「おう…あんたも苦労してんだな…。分かるぜその気持ち。」
泳ぐオキの眼にゴールデンは察してくれたらしく、どうやら同情できるらしい。
「つ、次!」
続いてハヤマの陣営。その豪運により3名の英霊が召喚された。
「えっと、セイバーのネロ・クラウディウス、キャスターの玉藻の前、そしてアーチャーの…。」
「魔・人! アーチャーじゃ。」
言い直すように強くハヤマに伝える魔人アーチャー、第六天魔王織田信長。
「しっかしよく燃えとる街じゃのう。これあれか? わしのせいか? 流石わし! どこでも炎上するのがわしの力よ。」
はっはっはと笑う信長の頭にすぱーんといい音の鳴る手が鳴り響いた。
「そんなことありません。まったく、アーチャーもわかってるはずです。ここが今どういう状況なのか。」
「いっっったいのうセイバー! 冗談じゃ。魔王じょうくと言う奴じゃ。そんなことわしらサーヴァントはわかっとるわい。…おぬしらが異世界からの武士じゃということもな。」
コントのようなやり取りから一転。急に声色が変化する信長。
『織田信長と言えば、惑星スレア、および地球でも超有名な武将の一人です。なんでも、魔王の如く力を発揮し、圭子さんやヒツギさんの国の天下を築いたとか…。』
オキの胸ポケットにいるシエラがデータベースからその情報を引っ張り出してきたようだ。
ネロ・クラウディウス。帝政ローマの第5代皇帝。悪名高き「暴君」とまで言われた。
玉藻の前。嘗ては九尾の狐と呼ばれた大妖狐。日本の平安時代末期に、鳥羽上皇に仕えたと言われる絶世の美女であり、白面金毛九尾の狐が化けたものであるとも言われた。日本三大化生の一角。惑星スレア、及び惑星地球の双方にその名は残っているという。
また、先の坂田金時を初め、土方歳三、沖田総司、そしてステンノもそれぞれに名が残る歴史があるという。
『なるほど。宇宙の記憶とは、そういうことか。』
アルマは言っていた。この世界は宇宙の歴史そのものだと。数多くの宇宙の歴史に名高き英雄達が同時に存在していてもおかしくはない。
「ネロに、玉藻さん、と…」
「あ、アーチャーはノッブと呼んであげてください。」
「了解沖田さん。ノッブっと…。ほい次。んじゃぁミケ。」
「なんか失礼な略し方されたのじゃが!? じゃが!?」
ハヤマの首をもってぶんぶんと振り回すノッブ。だがその顔は満更でもなさそうだ。
「じゃあ次はミケなのだー!」
「■■■■■■■■■■■ーーー!!」
巨大な咆哮と共に前に出て来るはミケと銀髪の少女を両肩にのせた土方、ましてやゴールデンよりもでかい巨体。
「oh…ビースト。」
ゴールデンの言葉通り、ビースト。まるで怪物とまで言えるその姿を見るだけで強者と分かる。
黒い巨体、巨木のような太い腕と脚。鬼のような顔。それとは裏腹に一緒に連れている少女は可憐であり、例えるならば雪の様。
銀色に輝くロングの髪が濃い紫色のコートによく映える。それでいて凛とした顔つきに紅く大きな目が綺麗に感じる。
「初めに言っとくわ。私のバーサーカーは世界で一番強いの。そこんとこ、よろしくね。」
オキの見たそのニコリと微笑む笑顔は天使よりも悪魔を初めに連想した。
「ヘラクレスというそうなのだー。こっちの子はイリヤというらいいのだー。」
「■■■■■ーッ!!!」
ミケの紹介に合わせて再び叫ぶヘラクレス。どうやら挨拶代わりらしい。その大声に耳を塞ぐオルガマリーや立香、若干おびえの見せるマシュと対してオキ達は笑みを浮かべる。
強い。この英霊はこの中でも一番の強さを持ってそうな…気が…。
「あれ? 強さを感じた…はずなんだが。」
ミケのサーヴァント、ヘラクレスに何かが足りない。それにこの少女。姿形はそこに見えるのに実際に実体がないようだ。
「どうやら強い繋がりのある二人のようなのだー。ヘラクレスは自分の影さんを忘れたようなのだー。おっちょこちょいさんなのかー!」
ヘラクレス。ギリシャ神話に登場する大英雄。大神ゼウスの子にして様々な冒険の物語を持つという。
ヘラクレスの足元を見ると、確かに影がない。足りないと思ったのはこれだった。
そのため、ヘラクレスは本来の力を発揮できずにいるという。
イリヤと名乗る少女についてはシエラがいくら探しても出てこなかったようだ。つまり英霊ではない。イリヤは言った。
「私はサーヴァントじゃないわ。そうね、分かり易く言うなら、バーサーカーについた概念かしら。なぜ一緒に出て来ちゃったのかは私も分からないわ。でも、別にいいでしょう?」
特になにか問題があるわけではない。ミケ曰く、イリヤの事は必ず守るとヘラクレスは言っているという。
「え? なにミケ、ヘラクレスの考えわかんの?」
「わかるのだー。」
「■■■■■…。」
言葉をしゃべらない、まるで獣の咆哮のような言葉使い。強い狂化スキルを所持するヘラクレスは本来ならば意志疎通はできるはずがないとオルガマリーは説明したが…まぁミケだし。
「次はボクのサーヴァントだね。」
「こんにちはっ!私はクロエ。クラスはアーチャー。よろしくね。」
元気な褐色の少女だ。どこか、先のイリヤとよく似ている気がする。
「私は本当ならサーヴァントの座には居ないのだけれど…。なーんでかここに召喚されちゃったのよねー。」
クロエはチラリとヘラクレスの方を見る。彼の肩に乗るイリヤは微笑んだまま知らんぷりだ。
「まぁ荒事には慣れてるし、聖杯戦争…とまではいかないけど、そっち方面には嫌と言う程縁があるのよね。呼ばれたからには仕事はするわ。だから、マスターにはきっちり魔力供給、お願いするわね。」
ウィンクして小悪魔の如く微笑むクロエにクロノスは少したじろいでいる。
後にクロノスから聞いた話だ。
『彼女、クロエはどうやら別世界に飛んだ友人を探していたらしい。そこにボクや他の要因で引っ張られた可能性がある…。とはいえ魂が分かれるって珍しいにも程があるよ。気をつけた方がいいとおもう。』
彼女、クロエは魂が別れた状態でこちらに来ているため、本来の世界には本来の彼女がいるらしい。ここにいるサーヴァントとして召喚された彼女は、彼女であって別の彼女であるという事らしいが…正直こんがらがってきたのでオキは考えるのをやめた。
以上、各マスターについたサーヴァント達だ。
次の動きをオルガマリーに確認し、次の目標地点へとゾロゾロと団体が動き始めた。
「へぇ。おもしれぇ奴らが居るもんだ。」
遠く離れた崩れた大橋の上。燃え盛る街を一望しながらひとりの男がその団体を見つめていた。フードを被り、大きな杖を持った男はその団体が向かった港方面へとジャンプした。
みなさまごきげんよう。
早速各メンバーがサーヴァントを召喚し、メイントなるパートナーたちと手を組みました。
正直、冬木でメンバー入りするサーヴァントとしては破格でしょう。
近中遠のバランスもかなりいい感じに別れました。
さて、これから彼女ら彼らと共に旅をしていくことになります。
いろいろ裏設定がありますので、それについては今後物語の中で説明していきたいと思います。
それでは次回にまたお会いしましょう。
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第3節 「燻り続ける薪」
この人は一体何を考えてるのかしら。
マスターとして契約をし、サーヴァントとして女神である私を顕現させた彼の事を知るためにずっと観察をしていた。
異世界の住人だと、契約した時にその情報が入ってきたから、異質な存在だというのは理解していた。それにあのとき…。
次の目的地へと向かう為、マスターの仲間たちである他のマスターのサーヴァント達が警戒する中、移動を開始。燃える街、冬木の中を移動している最中感じたのは『ある懐かしい魔力』。そう、あの子がいるのね。だから私はちょっと驚かそうと、気配遮断をした。
本来ならば保有していないけど、サーヴァントとして召喚された時に付与されたスキル。まぁ私や私なら、そんなもの無くってもあの子の隙をつくのは簡単だけれど…。
案の定、あの子はいた。まったく…。私に気づかないなんて、いくら離れ離れになった期間が長いからって気づかないのは寂しいわ。
それに、あの子ったらいつのまにこんな骨の兵士を従えるようになったのかしら。私の許可なしに誰かから借りたのか、奪ったのか…。お仕置きが必要ね。
とか思ってた時に、あの人が動いた。あの子が攻撃の気配を出した途端、自ら攻撃を仕掛けに行った。
普通ならそんなことは考えない。サーヴァントがいるなら、サーヴァント相手はサーヴァントがするもの。
でも、彼はそんなことお構いなし。攻撃は受けきれている…。あの子の攻撃はどんなに勇猛な戦士であっても、どんなに屈強な勇者であっても受けきれるものはいなかった。それを受けきっている。でも、駄目ね。彼の攻撃は…通っていない。
魔力の形態が違うのね。仕方ない事だわ。受けきれるだけでも、すごい事だわ。ええ。
仕方ないわね。私が出るしかないかしら。ふふふ。さぁ
港部に到着した一行は異様な光景を目の当たりにした。石像の数々が並ぶ海沿い。数はゆうに50を超えているだろう。
ナニカから逃げ惑うように恐怖の表情をしたまま固まっているソレはまるで生きているかのよう。
「生きているかのよう、ではなくまだ生きていますよ。」
とある一つの石像の横に一人の長身の女性が降り立つ。フードをかぶっていても分かる長い髪。眼帯をして両目を塞いだ長身の女性。
サーヴァント達が一斉に円陣を組み、マスターたちを取り囲み防衛陣を組んだ。
「おやおや。これはまたかなりの御一行様ですね。…なるほど。あなた方はこの聖杯戦争外の方々のようで。」
クスリとほほ笑んだ眼帯の女性は横にあった石造の一つに手をかける。
「あなたはこの聖杯戦争の参加サーヴァントね? できれば話を聞かせてほしいのだけれど。マスターはいるかしら?」
オルガマリーの言葉の言葉にくすくすと笑い不気味な雰囲気を出している長身の女性は手をかけていた石造の頭を横に向けた。
「ええ。いましたよ。たったいま死にましたが。」
ゴキリと石の砕ける音と共に折れた頭は地面に落ち、砕け散った。
「敵対する気満々じゃのう。」
「しかしこの数を相手にしようと思っているのですか?」
ノッブと沖田の言葉の通りだ。いくら聖杯戦争に直に参加しこれほどの人数を石化する能力を持っているとはいえ、こちらも数では完全に勝っている。契約仕立てで完全に力が発揮できない状態とはいえ、多対1。普通なら勝てる要素はない。
「ええ。ですので、こちらも数で攻めさせてもらいます。」
長身の女性が指を鳴らした直後、道中もところどころで出てきた骨の兵士たちがわらわらと地面から現れた。
『急に魔力の数が増えた!? 所長! 立香! マシュ! 囲まれてる!』
ドクターが通信先で叫ぶ声が響いた。それくらい見ればわかると怒鳴るオルガマリー。数は石造よりも多い。
「まずいぞオキ君。我々の攻撃は通じないはずだ。それをこの数だ。」
「ああ。相手はやる気満々で話する気もなし。サーヴァントの数はこちらが完全に有利とはいえ、これだけの骨の兵士の数ときた…。」
アインスとオキは口で笑いながらもこの状況が圧倒的に不利であることを理解している。
周囲を囲む百はいるであろう、いやそれ以上かもしれない数の骸骨の兵士たち。この化け物相手にオキ達は既に攻撃を行っていた。
ここに辿り着く前に現れた骸骨の兵士たちが現れたるや否や、いつも通りに武器を振るって自らの身で攻撃を仕掛けていた。
だが、その攻撃はまったく通らなかった。革はあるのに中身が無い。まるで素通りしているかのような感触を感じたオキ達の攻撃は全く意味をなさなかった。
正確にはオキ達の武器から放つフォトンが全く歯が立たない状態になっているというのが正しいとシエラは解析した。
一番初め、オキ達が立香やマシュ、オルガマリーを助ける為に倒した骨の兵士たちには攻撃が効いた。しかしその後、サーヴァントと契約をしてからフォトンが効かない状態になっている。
とりあえず相手の攻撃は防御できる。星々と同じほどの巨体を持つダークファルス【巨躯】をはじめとする強力な敵と戦ってきたアークスだ。攻撃ができなくとも、防御が出来るなら負けだけは無い。
「ふふふ。さぁはじめましょうか。竜牙兵よ。やりなさい。」
竜牙兵と呼ばれる骨の兵士たちが一斉にオキ達へと攻撃を開始した。
「立香と所長とマシュを守れ! 彼女たちが要だ! ハヤマん! 援護!」
オキの指示に従いアインスやクロノスは自らが攻撃に出れないため、サーヴァントに攻撃指示を出す。
「は? あの人はもう…。ノッブ! 玉藻はリーダーの援護! あの人突っ込む気だ!」
「ワシに任せよ! 全て撃ちぬいてくれるわ!」
「マスターのリーダーは猪突猛進なんですねぇ。まぁ指示されたならしっかりやるのが良妻の務め。」
両手に火縄銃を握り、撃っては次、撃っては次と竜牙兵の頭を撃ちぬいていくノッブと火や水をその場にだし、燃やし、流しとオキの進む道を作っていく玉藻。
「ゴールデン。」
「おう、任せろや大将。」
バチバチと大きな鉞に稲妻を光らせ、薙ぎ払っていくゴールデンや素早い動きで竜牙兵を斬っていく沖田や土方。
「やあああ!」
それでも数の多さでこぼれも出てくる。サーヴァント達の横を運よくすり抜けた竜牙兵は大盾を振り回し立香やオルガマリーを守るマシュによって叩き壊されていった。
「この数をすり抜けてきますか。いいでしょう。どんなバカか知りませんが、お相手いたします。」
「っへ。攻撃が通るか…試すだけさ!」
スルリと何処にあったのか、何もない所から大きな鎌を取り出した女性のサーヴァントはオキのエルデトロスを大鎌で受けた。
「ほう…。なかなかの力。ただの人では無さそうですね。」
「まぁな…っち! 鎖鎌ときたか。」
ジャラジャラと周囲を走る鎖と大鎌は瞬く間に鎖でオキ達の周囲を囲んだ。
「…名前を聞いておこう。」
「名前、ですか。そうですね。ランサー、とだけ言っておきましょうか。」
ランサー彼女はそういった。鎖に大鎌を持ったランサーは笑みをこぼしながらオキへと攻撃を開始する。
猛攻。いろんな攻撃を受けてきたオキだが、ここまで素早く重い攻撃はなかなか受ける経験をしたことが無い。だが、受けきれないわけではない。
「…ふふ、へへへ。攻撃は通らねぇ。防御はできる。となるとサーヴァントで攻撃するしかないっか…こいつは残念だ。」
正直言って残念でしかない。サーヴァントとはここまで強いのか。受けきれないわけではないが、受けるしか手立てがない以上どうにもできない。自らの身で戦っては見たかったが、残念である。
「おかしなことをいう人ですね。少なくともあなたより、あちらの方を攻撃した方がダメージは大きそうですね。…血もおいしそうですし。」
ランサーは鎖の上を飛び跳ね、隙を突き、オキの横腹に狙いを定めて蹴りを放つ。
かろうじて反応できたオキは防御をするも、その防御ごと蹴り飛ばされランサーから離された。
「ちぃぃ…。こいつはまずいな…。」
武器をはじかれ、強力な蹴りで吹き飛ばされたオキの周りを竜牙兵が囲んだ。エルデトロスを振り回し、吹き飛ばしたが相変わらず攻撃がとおっていない為、吹き飛ばされただけでケタケタと骨同士がぶつかる音をたて笑っている。
「防御は認めましょう。私の攻撃を受け止めきれる技量や力はある。しかし、それが攻撃として通らなければ、意味がありません。」
ランサーは鎖鎌を多数だし、立香を狙う。
「マスター!」
マシュの大縦が飛んできた鎖鎌を防ぐも、そのパワーと数に押され気味だ。すぐさま盾は弾かれる。
「…!」
立香がマシュの名を叫び、彼女の身体を支えた。その隙を狙ってランサーは立香のそばまでやってくる。
「っく! 数が多すぎて…。」
「間に合わぬ!」
ハヤマやネロ達は多数の竜牙兵を相手にしている為間に合いそうにない。
「立香!! マシュ!!」
所長の叫び。オキの駆け出しも距離が遠く間に合いそうにない。ランサーの大鎌が立香とマシュに突き立てられそうになったとき。
「ふん。」
一人の男が大鎌を弾き上げ、腰に握り拳を添えた。
「急いで来たら早速やりあってんのか。」
「っ!?」
ランサーの腹部に拳が沈み込み、ランサーの腹から拳を抜き取ったコマチは突いた拳を見つめていた。
「コマッチー!」
「でたー! コマチの18番! パリィだー!」
ファータ・グランデ宙域での古戦場が終了し、リーダーの全員召集指示に従い、遅れてではあるがオラクル船団へと戻ってきた矢先だ。オメガ世界とかいう【深遠なる闇】だったアレがよくわからんごちゃまぜの世界になってしまったようで、その中にリーダーたちは向かったそうな。ニコニコと笑うアルマ。リーダーの行っていたマターボードでの歴史の分岐点での『仕事』。その際にちらちらと彼女の姿だけは見えていた。だが、リーダーたちは気づいていなかったらしい。
「あなたがコマチさんだねー。ふーん。あなたも大変だねー。」
全身を下から上へと眺めたアルマ。なんだ? 気になる部分でもあるのだろうか。
「まぁリーダーにつき従うだけさ。リーダーの下に向かわせてくれ。」
「はーい。それじゃあ頑張ってね。薪の火さん」
「あん?」
にっこりとほほ笑むアルマ。何か自分の事を知っているのだろうか。言葉と同時に目の前が真っ暗になる。
一つの火があった。それは大きくなり、そして次第に小さくなった。
その火は自分に近づき、そしてまた大きくなった。
火は次第にまた小さくなっていった。
記憶はここで途切れている。
リーダーの下に駆け付けた直後。いきなりのピンチだ。相変わらず喧嘩を売るのが早い人だ。いや、喧嘩を買うのが早い人と言うべきか。敵対しているのは、あれか。女か? 誰でもいい。敵対しているならば全てこの拳を腹に喰らわせるまでよ。
まて。なんだこの感触。女の体に自分の拳を入れたはずだ。だが感触が『ない』。まるでゴムボールに腕を突っ込んだようだ。
相手も驚いているのか拳を入れられた腹を見ている。ならば後ろからやってみよう。
「綺麗な動きで後ろに回ったー!」
「そして…。」
「「はいったー! ケツ掘り致命だー!」」
オキとハヤマの実況が周囲にこだまする。あまりの状況に周りもぽかんとこちらを見ている。
やはりおかしい。しっかりと腰から尻の付近の拳を思い切り埋め込んだはずだ。普通なら中身を引きずり出せるはずだがまったく感触が無い。一体なんだというのだ。
「っ!!」
逃げるか。そうはさせん。
「今のコマチ選手、綺麗に入りましたねぇ。どう見ますか解説のハヤマさん。」
「そうですね実況のオキさん。腹に致命からの感触を確かめてから、綺麗な動きでのバック取り。まさに流れるような動きでしたね。」
「おっと? どうやら感触がおかしいようだ。手を握っては広げを繰り返している。」
「尻を掘った直後にあの動作は、はたから見れば変態です。」
あの二人は…。しかたねーだろ。感触がおかしいんだからよ。もう一度だ。
逃げる相手の真正面から、後ろに突っ込む。
「ランサーやられまいとバックしながら逃げる!」
「しかしこれは…コマチ選手前から突っ込む気か! まさか、これは!」
真正面から突っ込み、即座にバックを取る。どこで覚えたのか、自分でも分からない。記憶が無くなっているからだ。
だが、身体が覚えている。人型相手だろうが、化け物相手だろうが、前と後ろという概念があるならどこにだって自分の拳を突き刺してやる。おら、もう一回突き刺してやる。
「「きまったー! ホモステップだーーー!」」
「これはひどい。」
「ははは。」
頭を押さえるクロノスにそのやり取りに笑うアインス。驚きを隠せない女性の敵性。とりあえず攻撃が通らないのは分かった。
仕方ない。ここからはリーダーに任せよう。
「どうすればいい。リーダー。」
気が付けばあれほどいた竜牙兵はいなくなっていた。
コマチの突拍子もない動きでランサーもオキを強襲したスピードある動きができずに地面に伏している。
攻撃は通らないにせよ、押し倒しやけりなど、表面上の接触はできるようで、コマチが蹴り倒した。
「どうすればいい。リーダー。」
何度攻撃を繰り出そうと全てはじかれ腹に拳を突き立てられ、直後に蹴り倒される。起き上がり逃げようとすれば後方に回り込まれ後ろから拳を突き刺される。そんなことを繰り返し行われればいくらサーヴァントでも冷静を保っていられないだろう。
「ぐ…く…こうなったら…!」
ランサーが眼帯に手をかける。目に何かしかけているのだろうか。コマチや周囲にいたメンバー、サーヴァント達が構える。
ひゅん…
「っきゃ!? …な、この…この痛み…。」
正に今眼帯を取ろうとランサーが手を上げようとした瞬間。何もなかった場所から一個の光弾がランサー目掛けて飛んで顔面にあたった。当たった直後、彼女はなにか恐ろしいものを見るかのように恐る恐る光弾の飛んできた方向をゆっくりと振り向いた。
「あらあら。私がここにいるのに気付かないだなんて、ダメね。ええ、ダメよ? いくら離れ離れになったのが長かったからと言って…。」
「そんな…嘘…。ですが…この感覚…この魔力…!」
光弾の主、ステンノがゆっくりとランサーに近づいた。危険と思ったオキだったが、ランサーの様子が何かおかしい。
他のサーヴァント達もそれに気づいている。ランサーが完全に怯えて固まっている。
「こんなにも、近くにいて…こんなにも分かり易い場所にずっと立っていたのよ? それなのに、気づかないなんて。ねぇ…どうしてかしら。…
「ううううう、上姉さま!?!?」
「メドゥーサ…。あのランサー、メドゥーサなのね? それなら納得がいくわ。」
クロエを初め、サーヴァント達はランサーがステンノを恐れはじめた事にようやく納得がいったらしく、他の敵性反応が無いかを警戒しながら、嬉しくて微笑みが止まらない姉とそのお仕置きに悲しく泣き声を上げる妹に生暖かい目で見守った。
「メドゥーサ。ギリシャ神話のゴルゴーン三姉妹の末女の事ですね。ゴロゴーン三姉妹の名前の由来となったゴルゴーンと言う魔物は彼女が生った事からと言われているほど有名な話のようです。ステンノさんはメドゥーサさんのお姉さんという事なります。ちなみに先ほどメドゥーサさんが眼帯を上げきった場合、魔眼を持っているそうで、その眼を見たものは忽ち石化する伝説があるため、私達も石化していたかもしれません…。」
シエラの説明に恐ろしい話が混じっていた。メドゥーサねぇ。この女性がステンノの妹さんか。
先ほどまでの凄みが一瞬にして小さくなりやがった。
「メドゥーサ!? これが?」
コマチが話を聞いて驚いている。ああ、そうか。そういえばコマチの所には…。
「メドゥーサって、これだろ? こんなスタイル抜群の姉ちゃんじゃねぇよ。俺の知ってるメドゥーサは。」
コマチがフォトンの空中映像投影をステンノと彼女の座る椅子になっているメドゥーサに見せた。
「いたね。そういえばコマッチーの所の騎空団にメドゥーサって名前の子。」
映像内では小さく気の強そうな少女がひらひらの付いたカラフルな衣装を身にまとい、歌い、踊りながら巨大な何かと戦っている姿が映し出されていた。
「あらあら。
「っひ…!」
たしか、歌って踊りながら戦える。何でもこなすのが私。とか言ってなかっただろうか。
オキ自身もコマチの所にいる多数の仲間たちとは交流があり、彼女の事も知っている。
「ほら、やってみなさい? できるのでしょう? むこうのあなたはできてるわよ?」
「あ、あの…上…姉さま…。」
顔を近づけていくステンノ。完全に怯えきっているメドゥーサ。正直かわいそうである。
「…あら。」
「あ…。えと…申し訳ありません…上姉さま…。どうやら…ここまでのようです…。再び会えて、嬉しかったです。上姉さま…。」
きえた。どうしてだろうか。光の粒子となってメドゥーサが消えてしまった。
「え…っと…。霊基を失ったのよ。どうしてかは…分からないけど…。座に帰ったのね。」
困惑しているオキに気づいたからか、オルガマリーが恐る恐る近寄って説明してくれた。目線の先にはステンノがある。彼女の『お仕置き』が厳しかっただからだろうか。真相は誰にも分からない。しかしそれでも最後の最後はメドゥーサもステンノにほほ笑んでいた。消えて行った粒子をじっと見つめるステンノを見ていたオキ。
「…クス。」
ステンノの眼がメドゥーサをお仕置きしていた時の眼ではなく、本当に優しい眼をしている事にオキは気づいた。
そういえば、メドゥーサだけでなく彼女、ステンノはバラバラになっていたんだったな。
嬉しかったのだろうか。ほんの少しの時でも妹に出会えて。
「ええ、大事な、大事な。愛しい妹よ。再開して嬉しくないなんて言わないわ。だって、2度と…出会う事はないと思っていたのだから。」
ふふっとほほ笑むその横顔は無邪気に喜ぶ少女の顔。本当にうれしかったのだろう。その嬉しい表情にオキも微笑む。
『と、とりあえず敵性反応は周囲には見当たらないよ…。落ち着いて態勢を…あれ? マスター反応が一人増えてる?』
Dr.の通信で7人追加されていたマスターの一人がその場にいるという。新たに現れたのはコマチだ。そして彼の手の甲には…
「あ? ああ、これ? 新しく実装されたボディペイントかと思ってた。令呪ねぇ。へぇ…。」
コマチが新しいマスターであるならば、彼もサーヴァントを召喚できるのだろうか。オキがその事をオルガマリーに聞くと、彼女はええと言うと、新たに見つけた龍脈を使い、オキ達が行った召喚と同様に行えば召喚できると話した。
「今度はどうなるのかしら…。流石に2基も3基も同時に出すのはやめてほしいわ…。」
『あ、あはは…。』
オキ達の動向に対してすでにあきらめムードとなったオルガマリーに対し、ワクワクしているのが表情だけでわかる立香。Dr.は通信先で苦笑気味である。
「…。」
「はい! 次はどなたが召喚されるのでしょうか。私も気になります。」
マシュの大盾を龍脈に接続。巨大な魔術サークルを浮かび上がらせ、コマチがその前に立った。
「これを投げ込めばいいんだな?」
「こまっちー。もしこう、イメージとか全くなくて、誰でもいいと言うのであれば一つ、お願いしたいんだが。」
「ん?」
オキはコマチに近づき、コマチに耳打ちした。ある英霊を召喚してほしい。今のコマチならできるはずだと。
いや、やっては見るけど期待はするな。そうコマチは眉を歪めながら召喚サークルの前に再び構えた。
「俺の運は武器運に今吸われてる。1点狙いとかできるわけねーよ。やってみるけどさ!」
コマチが虹色の魔石を盾の召喚サークルに投げ入れる。コマチがオキを向いて質問した。
ちなみにこれ天井無いの? ありません。
召喚サークルは強く光り輝きだし、召喚の成功が確認された。
『霊基確認。こちらでも登録できたよ。…このサーヴァントは…。』
「どうしたのDr.ロマニ? まさかまた女神とかいうんじゃないでしょうね…。」
召喚された人物はゆっくりと顔を上げる。紫色の腰まである長い髪。長身で美しいラインを描いた体つき。眼帯をして両目を塞いでいるが、それでも美人だと分かる整った顔。
「ま、間違っちゃいねぇか。一番知ってる女神さまがここにいるよな。どうよステンノ。ご期待には添えたかい?」
「あなた…そんな…まさか…。」
「あー…やっちまったー…。これでまた暫くクジ運ねーわ…。1点集中ビッタリビンゴだ、リーダー! あークラスはライダーだと。」
オキはコマチにお願いをした。彼は別に誰が来てもいいと言った。なので、もし可能ならばあるサーヴァントをイメージして召喚に応じてほしいと彼に依頼した。
その人物は、オキのサーヴァントであるステンノの大事な、大事な妹。
「…物好きな人ですね。生贄がお望みでしたら、どうぞ自由に使ってください。」
サーヴァント、ライダーとして召喚された彼女はその直後、もう2度と聞くことのないであろう声を再び聞き、嬉しさと恐ろしさでいっぱいになったそうな。ステンノが近づいていくにつれ、その女性は立っている足に力が入らなくなる。
それもそうだろう。2度と出会わないだろうと、もし出会ったら…なんて夢にも思う事の無かった上の姉との再会。
「そう。自由に使っていいのね。ふふふ。だったら…ねぇ。私がもらってもいいかしら。女神への捧げものとして。ねぇ、
皆さまごきげんよう。今回でアークス側7名全員がサーヴァントを召喚し終えました。
今回はコマチサイドをちょっとだけ入れました。彼の正体がこれでわかった人はあなたも立派な■■■■■■の住人ですね。
今後恒例にするつもりのシエラのちょっと聞きたい英霊のコーナーがちょいちょい、その直後にコマチが合流した為、ファータグランデにいるこんな神様等、物語の中に変なのが混じってきますが気にしないでください。作者側のちょっとした遊びです。
今作のこれ以降ではアークスサイドはしばーーーらく攻撃に回らずマスターとしてサーヴァントを使役していくことになります。じゃないとサーヴァントの意味がないですからね。とはいえ、いろんな意味で無双していきます。相変わらずのアークス汚い。
では次回またお会い致しましょう。次回はみんな大好き兄貴の登場です。
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第4節 「冬木聖杯戦争の生き残り」
コマチが合流し、ライダーメドゥーサを召喚した直後。その男が顔を出した。
「よう。攻撃はしないでくれよ。敵対するつもりはねぇからよ。」
フードをかぶった男性の声が辺りに響いた。サーヴァントの反応あり。Dr.ロマニからの通信が入った直後に現れたサーヴァント。
この聖杯戦争参加サーヴァント、キャスターの枠で呼び出されたケルトの大英雄『クー・フーリン』。
「お前ら、この聖杯戦争の参加サーヴァントじゃねぇだろ? 見りゃわかるよ。できれば手を組もうじゃねぇか。もちろんこっちの情報はきっちり出すぜ。」
「いいんじゃない?」
オキ個人としては別に問題ないと判断したのでオルガマリーに進言した。正直彼一人でこのサーヴァントの軍勢相手にできるとは思えないし、万が一罠だったとしても何の利益もない戦いをするような人物でもないと思ったからだ。
『どうしてそう思うの?』
小さな声でオキの耳のすぐそばで聴き返してくるオルガマリー。息が耳にかかってくすぐったい。
正直、このサーヴァントの数を相手に喧嘩を売って得する事はほぼないに等しい。聖杯戦争についてはオルガマリーから聞いた通り聖杯という究極の願望機を巡って戦いを行う事。俺達がその願望機欲しさに横槍を入れない限り、向こうから喧嘩を売られない限り、こちら側が買う事はない。つまりこちら側に喧嘩を売ってきたサーヴァントは損しかないわけだ。
『俺なら横槍を入れれる力を持つ外部の人間と手を組み、残りのサーヴァントを蹴散らしたのちに聖杯を手に入れる。たぶんやっこさんはソレを狙ってるんだろう。立香はどう思う?』
『…。』
どうやら立香も同意見らしい。
「相談は済んだかい?」
「ええ。私達が求める情報はこの地の現在の詳細な状況。それを出せるなら手を貸してあげる。」
クー・フーリンはOKの言葉を出した。交渉は成立。今回の聖杯戦争について話をしながら、オキ達はクー・フーリンと共に元凶となる場所へと向かい始めた。
経った一晩。気づけば人間はいなくなり、サーヴァントだけになっていた。
最初に手を出してきたのはセイバーだ。この冬木の中心、心臓ともいえる大聖杯。その聖杯を自ら手にし、先にオキ達が倒したライダーを初め、参加していたサーヴァントを手駒にしていった。唯一クー・フーリンだけが残り、敵対していたという。
「聖杯から穢れた泥があふれ出た後に町は壊滅。大炎上ってわけだ。俺がキャスターじゃなく、ランサーで召喚されていたなら、もう少しまともにやりあえるんだがな。ま、あきらめるわけにもいかねぇと模索していたところにお前ぇさん達が現れたってこった。こんだけサーヴァントを使役してんだ。聖杯戦争とは別の目的でここに来たとすぐにわかったね。それで、声をかけたってこった。」
オルガマリーはソレをきいてぶつぶつと独り言を口にしつつ、現状の状況をまとめていた。
立香とマシュは今後も起きるであろう戦いに備えて未だ慣れないデミ・サーヴァントとしての身体を二人で見直していた。
「ランサーだったらもっと強いのか?」
「クー・フーリン。ケルト神話に出てくる英雄のことで、オキさんもご存じ『ゲイ・ボルグ』の使い手で有名な戦士です。スカーサハという師匠に戦い方からルーンの魔術まで教えられたと地球、スレア双方に神話として残っているようです。それぞれの違いは名前だったり、神話内での登場人物の若干の差異はありますが、ほぼ変わりがないのはステンノさんをはじめとするサーヴァントの皆さんと同じですね。」
シエラの説明にクー・フーリンが手を叩いた。
「俺の事が有名になってるってのは、聖杯とつながった時に得ることはできたが、ある程度は知ってるみたいだな。嬉しいもんだ。」
「クー・フーリン。なるほどな。光の御子か。」
「はぁ、キャスター適性もあったのですねぇ。」
「南蛮の槍使いか。」
ネロ、タマモ、ノッブを初め、サーヴァント達はクーの旦那を警戒しつつマスターとの間に入る。
ステンノは…動く気配無し。むしろメドゥーサで遊んでいる。あ、今度は竜牙兵の頭でお手玉し始めた。うまいな。
しかし、ゲイ・ボルグの使い手かあ。それに師匠の名前。オキ自身もよく知っている。一時期お世話にもなった人の名前だ。
「スカーサハ? あのスカーサハでいいのか?」
コマチが不思議そうな表情でシエラに聞き返した。そして案の定オキの予想した通り映像を出した。そこには小さな身長の銀髪の長い少女が映し出されていた。少女とは言うが、どこか高貴な感じを思い立たせる。ファータ・グランデ宙域の同名者だ。
「これだろ? 同じ名前でしってる。」
「あーこまっちー。クーの旦那が困ってるから混乱させない。えーっと何処から話したモノか…。」
オキは自分たちが異世界から来た者である事、その異世界の一部には別の場所で神話や伝説となっている人物と同名の者が多く存在している事を説明した。
「なるほどな。んじゃぁそのファータ…うんたらってところにいる師匠と同じ名前を持つ嬢ちゃんなんだな?」
まぁ嬢ちゃんと言われるほど幼くない方ではあるが、黙っておこう。
「ははは。こいつは傑作だ。まさか師匠と同じ名前のこんな可愛らしい嬢ちゃんがいるとは。外見は、うちの師匠とは大違いだな。こんな可愛いわけがねぇ。」
大笑いしながら腹を抱えるクー・フーリン。
「あまり笑っていると、貴方の師匠に刺されるわよ?」
シンキはクー・フーリンに微笑みながら忠告した。そんなバカなと言った直後、クー・フーリンは心臓を抑え、なにかに恐怖する表情に変貌した。
「…?」
「どうしました? クー・フーリンさん?」
立香とマシュが心配そうに顔を覗きこむ。
「いや…大丈夫だ。師匠め…。」
苦笑いしながら立香の頭を叩くクー・フーリン。クロノスとシンキは気づいていた。一瞬だけ、彼の身体を串刺しにした大量の紅い槍。どこからともなく現れたその気配は言葉から察するに彼の師匠とやらが放ったのだろう。次元を超えてまで気配だけとはいえ干渉するその存在はまさしく
「槍か…槍ねぇ…。槍あればそのセイバーは倒せるの?」
「ん? そうだな。槍があれば一刺しで終わらせてやるよ。とはいえ今の俺はキャスターだ。槍は持ってきて…。」
「これしかないけど貸そうか?」
オキが差し出したのはオキの持ってきていた『ゲイ・ボルク』…の武器迷彩をかぶせたゲイル・ヴィスナー。アークスシップ内で定期的に変わるスクラッチと呼ばれるクジで手に入った武器迷彩のレア品。武器迷彩は武器単体として使えず、アークスが振るう武器の上にかぶせる、いわば身体を武器と例えると服のようなモノ。
紅いシンプルな槍。惑星スレアで知ったイメージを持ち帰ったオキが開発研究部に依頼して作ってもらったやつだ。
こいつら一体何者なんだ? 異世界から来たとか言ってたが…。
こいつの出した槍…俺の槍そのまんまじゃねぇか。中身は違うと言っていたが、ここまで似ていると逆に気持ち悪いな。
「ゲイボルクか。今相場いくらだ? 最近フリマみてねぇんだけど。」
「あー。俺も最近は見てないなぁ。多分90mは超えてんじゃない? エクスカリバーが確か120mだったか。」
「俺もってる。」
っな!? こいつら『
「オキー! みるのだー! バーサーカーにミケの『斧剣』を持たせて二刀流にしてみたのだー。これならバーサーカーがもっと強くなるのだー。」
「■■■■■■■■■■■■っ!」
げぇ! バーサーカー!? なぜここに…って、そういやこいつらの召喚したバーサーカーか。つーか、なんであいつの斧剣も持ってんだよ! なんだかうれしそうだなバーサーカー! おいこっちみて親指たてるな。おめぇそんなキャラじゃねぇだろ!
それに一番突っ込みたい人物はこの女か…。どこかで見たような金ぴかの何かを思い立てる…おい、その背中の空間の波紋はなんだ。まてなんだその武器の数々。こっちむけんじゃねーよ! にやけ面するな! こいつら何なんだよまったく!
槍は借りるぜ!
剣戟の音、銃の音、爆発の音。様々な音が協会に響いていた。
「ったくなんなのよこれ! 倒しても倒してもキリが無い!」
「マスター! 所長! 盾の外側に出ないでください! っ!」
マシュの盾に守られるオルガマリーの叫びも響いた。仕方がないだろう。協会の敷地に入るや否や、急に現れた多数の黒い靄を体に纏わせた異様な存在。
「きひ…きひひひ…。」
「コロス…コロ…ス…。」
「こいつらはセイバーの野郎が倒したサーヴァントのなれの果てだ! 相手してても邪魔なだけだ! 一気に押しとおるぞ! アンザス!」
クー・フーリンの呪文詠唱の直後に現れた多数の火の弾はサーヴァントのシャドウ、シャドウ・サーヴァントに飛び掛かり燃やしていった。とはいえあまりにも膨大な量の敵。何かを守っているようにも見えるその量はこの先にあるという大聖杯の存在がどれだけ大きいかを物語っていた。
「土方さん! 沖田君! お願いします!」
「おおおおおお!!」
「はぁぁぁぁぁ!!」
二人の剣豪とが叫びながら道を開く。その隙を見てネロとタマモが絶妙のコンビネーションで道を維持する。
ノッブが火縄銃を乱射し、溢れてくる雑魚を処理。それでもあぶれる敵をメドゥーサとステンノが片付け、後方でマシュが大盾で攻撃を防ぎ、ヘラクレス、ゴールデン、クロエが防いでいる最中に敵を払いのける。
悪くないチームワーク。サーヴァントの使役は初心者でありはするが、戦いにおいてはプロフェッショナル。的確に指示をし、サーヴァントを使役するオキや、指示を受け的確に攻撃をしていくサーヴァント達をマシュは見ていた。
「あーやっと休める! 猿! 茶を持ってこい!」
「いない人を呼ばないでください。はい、ノッブの分の飲み物です。ネロや玉藻さんもどうぞ。」
「うむ、頂こう。」
「ありがとうございます、マスター。」
シャドウ・サーヴァントの軍団をまき、一つのビルに入り込んだオキ達は一度休憩を取っていた。
サーヴァントには必要ないが、マスターには必要である。特にほぼ一般人の立香には過酷だろう。
ビルの窓の隙間からオキとクロノスがアサルトライフルを手に周囲の警戒をしている。
「ちょっと立香、マシュが落ち込んでいるわよ。マスターなら自分の使役するサーヴァントの状態ぐらいちゃんと把握しなさい。」
「…。」
わかったと言い、マシュに大丈夫かと座り込んでオキ達からもらった飲み物を飲むマシュの隣に立香は座った。
「マスター。…はい。大丈夫、と言えば嘘になります。サーヴァントの方々はオキさんをはじめとするマスターの指示を聞き、自らの力を存分に発揮されて戦っています。私は…まだうまく戦えていません。どうやれば、皆さんのお力になれるかなって、思いまして。」
マシュの中に入り込んだサーヴァント。それはカルデアで召喚された3基のサーヴァントのうち一人。マシュの状態が状態だったために緊急で問答無用での融合。その為マシュの命は救われたが、結果的にマシュはデミ・サーヴァントとしてなってしまった。
そしてそのサーヴァントの名前が分からない。名前が分からなければ、宝具も使用できない。マシュは宝具の名前も使い方も分からないのだ。
「それは違うぜ、嬢ちゃん。サーヴァントってのはなったその時から宝具を使えるようになる。それがどんな英霊であってもだ。まぁ気力が足りてねぇんだよ。どこかで魔力が詰まってるんだ。それを吐き出せばいい。」
「吐き出す…ですか?」
クー・フーリンが笑みを浮かべながらマシュ達に近寄った。
「そうだ。聞けば、その大盾。マシュ自身のモノじゃなく、その元になった奴のモノなんだろ? ってことは守るのが得意な奴だ。宝具も間違いなくそうだろう。だったら、嬢ちゃんが守りたいものはなんだ?」
質問され、マシュはマスターである立香を見る。
「私が守りたいのは…マスターである先輩です。」
「なら、ソレを常に意識しろ。何が何でも守り抜くと。その命に代えてでも守り抜くと。そうすれば、自ずと道は開ける。」
「…はい!」
そこへオキがクロノスと共にやってきた。
「旦那、今後はどうする? ここまで来て、やっぱUターンとか言うなよ?」
「笑わせんな。この聖杯戦争を終わらせりゃ、この地獄のような状態は終わる。よってセイバーを倒さなきゃならない。」
セイバーは大聖杯の懐に陣取っている。このままセイバーの所に行ってもいいが、その前にやらなきゃならない相手がいる。
先にランサーを坊主たちがつぶした。厄介の3基の内、これで2に減った。残りの2基はアーチャーとバーサーカー。
バーサーカーは今いるこの場所から山の中に入ったデカイ城の跡地にいる。こっちが手を出さなきゃ動くことはないが、セイバーの手駒なのは一緒だ。戦ってる最中にあいつを呼び出されれば厄介所の騒ぎじゃない。
次にアーチャー。大聖杯の下に向かう洞窟の入り口を守っている。あいつはセイバーの守護騎士と言ったところか。完全にセイバーの言いなりになってやがる。ったく、あのバカ野郎は一体何を考えているのやら。
「その…そのアーチャーって、友達だったのか?」
「…いいや、腐れ縁って奴さ。」
オキの質問に少しだけ笑うクー・フーリン。
アーチャーはクー・フーリンが受け持ってくれると言う。後はバーサーカーとセイバーを叩くチーム分けをする必要がある。
「バーサーカーなら、私達だけで充分よ。ね、バーサーカー。」
「■■■■■■!」
「なので、ミケ達が行ってくるのだー。そっちは任せたのだー。」
バーサーカーが立ち上がり、ミケとイリヤを肩に乗っけ歩き始めた。
「お、おい! 場所わかってんのか?」
「行かせてやんな。あの嬢ちゃんが一番知ってるからよ。」
「え…?」
「マスター、ミケ達だけじゃ心配だって、クロエがついていきたいそうだから、ボクも行ってくる。」
クロノスとクロエに許可をだし、オキは残ったメンバーでセイバー相手にすることを決める。
目指すは大聖杯。その先に待つは天国か、地獄か。その時には誰一人として知る由もなかった。
一人を除き…。
「ふふ。面白くなってきたわね。」
「大将、楽しんでんな。そう楽しがってちゃぁ、俺も一緒にワクワクしてくるぜ。」
「そうね、ゴールデン。楽しみで仕方がないわ。ふふふ。」
観測者シンキ。彼女だけが、先の道の末を見据えていた。
皆さまごきげんよう。
ソシャゲ版とアニメ版が混じって変なことになってますね。ギャグ部のノリはカニファンノリで進めますハイ。
さて今年も来ました『チェイテピラミッド姫路城』。私の作品でも出てきますが、よりひどいことになるのでオッキーには泣いてもらいます。楽しみにしていてください。
私はと言うと去年はメカエリちゃんを手にしたので、手にしなかった方メカエリちゃん二号機を手にしました。
無事ミッションも全て完了しました。今年のハロウィンは酒呑の配布。さてどのような物語になるか楽しみですね。
新規実装鯖も楽しみです。では次回にまたお会いしましょう。
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第5節 「山の中の廃城」
炎上する都市の中心街から離れた寺院。キャスター、クー・フーリンはこの先に、この聖杯戦争の大本となる大聖杯があるという。
そしてその入り口となる洞窟があるのがこの寺院だ。すでに一部は崩れており、残っているのは外見だけ。しかしそれでも頑丈な柱が屋根を落とすまいとしっかりと建っているのが見えた。
「んで、ここにいるのが…。」
クー・フーリンが本堂の屋根の上を見る。そこには赤と黒い靄のようなどす黒い紋様を光らせる人物が立っていた。すでに弓矢を構えてこちらを狙っている。
オキはマシュに立香とオルガマリーを守るように屋根にやっている弓兵から目を離さずに右手で指示をし、盾を構えさせる。今の所見えているのは一人だけだが、横槍を入れられないようにハヤマやアインス達に周囲の警戒をお願いしている。
「キャスター。一人では敵わないと踏んで、増援を連れてきたか? 誇り高き戦士の志とやらはどうした。クー・フーリン。」
「っは。アーチャー、てめぇなんざ俺一人で充分よご当地サーヴァント。こいつらの相手はおめぇさんが大事に守っているその先にいるはずの、てめぇの主様だ。」
お互いに煽りの言葉を発するその姿をみて、やはり仲がいいのではと思ってしまうオキ。
「いけ、この先の洞窟の奥に、セイバーがいる。あいつを倒せば、このバカげた戦いは終わる。」
「了解した。負けるんじゃねぇぞ旦那。」
コツンと実際よりも大きく見える大英雄の背中を拳でつつき、オキを先頭にアーチャーを注視しながら森の中にあるという洞窟を一向は目指した。もちろん、アーチャーがそんなことを許すはずもなく弓をこちらに向けてくる。
「行かせると思うか?」
「そうはさせ…あん?」
アーチャーの攻撃を止めようと杖に魔力を回したクー・フーリンだったが、アーチャーの様子がおかしいことに気づく。
立香やオキ達を狙おうとしているアーチャーの弓は全く見当違いの場所を狙っている。そしてアーチャー本人は震えながら引いていた弓から矢を放った。
「…ああ。そういう。流石のお前も、女神の眼には勝てないか。」
ニヤニヤと笑うクー・フーリンは先に向かった立香たちの背中をみて何が起きたのかを把握した。
「ふふふ。」
「上姉さま、楽しそうですね。」
メデューサの肩に座り、微笑むステンノの眼は先ほどまで立香達を狙っていたアーチャーを映していた。ステンノの強力な魅了により、アーチャーは身体のいう事が効かなくなっていた。
「こんな奇妙で珍しい経験なんてできないでしょう? せっかくメドゥーサと同じサーヴァントとして召喚されたのだから、楽しまないと損でしょう? ねぇマスター?」
「ん? ああ、ステンノがずらしてくれたんだろ? サンキュー。ま、楽しんだもん勝ちなのは同意見だな。」
その言葉に笑みを浮かべるステンノ。それを横で見るメドゥーサは姉の見た事の無い上機嫌に不安がっていた。
難なく森を抜けた一行はクー・フーリンの言っていた洞窟を発見する。
「…。」
「そうね立香。間違いないわ。この先から異様な魔力を感じる。」
『こちらでも観測できてるよ。すごい量の魔力が下の方からあふれてきている。気を付けてください。』
入り口から少し入ったところまでを足の速い沖田とメドゥーサで調べてもらったが特に罠らしきものも無いようだ。
「オキ君、沖田君と土方さんを先頭に進もうと思うがどうだろう。」
「じゃあこっちのネロとタマモで殿務めるよ。ノッブは真ん中で援護射撃。」
「了解した。」「みこっと了解。」「うむ。ワシに任せよ」
沖田土方アインスを先頭に、ゴールデンとシンキ、マシュ立香オルガマリー、ノッブ、オキステンノ、メドゥーサコマチ、ハヤマタマモネロの順で洞窟を進んでいく。洞窟内は緩やかなカーブを描きながらの下り坂となっており、地底へと進む道があった。
炎上する冬木を背に、大きな足音を立てながら進むバーサーカー、ヘラクレス。その肩にはヘラクレスに憑く概念イリヤ、反対側にはミケがちょこんと座っていた。
その後ろ側を付いていくクロノスとアーチャー、クロエ。
市内を抜け、郊外へと出た一行は山の中へと入り、目指す目的地、郊外の城へとたどり着いた。
所々崩れてはいるが大きく、元は綺麗だとわかるほど立派な城が山の中に建っていた。
「大きいのだなー。」
「でしょう? ふふふ。」
自慢するように微笑むイリヤにクロエが質問した。
「この中に例のバーサーカーがいるってキャスターは言ってたわね。どんなサーヴァントがいるか、詳細は聞いてこなかったけど、貴方は知ってるんでしょう? そんな口ぶりだったし。」
「ええ。もちろんよ。知らないはずがないわ。だって、そうでしょう?」
眼を細くし、クロエを見て冷たく微笑むイリヤにクロエは目をそらした。
「マスター、どんな相手であろうとも、私はあなたに従うわ。指示を頂戴。」
「了解クロエ。なら上から入ろう。ミケはそのまま真正面から…いくもんね…。」
クロノスの話も聞かないままヘラクレスとイリヤ共にミケは足を進め城の中へと入っていこうとしている。クロノスはため息をつきながらクロエと共に空中へと飛び上がり、割れた窓から内部へと侵入した。
皆さまごきげんよう。今週は短めです。
なかなかこの時期は忙しいですね。FGOでもハロウィン始まりましたし。グラブルで戦う魔法少女コラボが終わったと思ったら、FGOで魔法少女が始まっていた。
相変わらずいろいろ突っ込みどころのあるストーリーですが、聖杯と酒呑配布はしっかり回収しておくとしましょう。オーロラ鋼もどこかでドロップするでしょうし。
では次回にまたお会いしましょう。
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