問題児たちと元殺し屋が異世界からやってくるそうですよ? (unworld)
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プロローグ
『プロローグ』


アットノベルスから来ましたunworldです。
ぜひ楽しんでくれると感謝です。



あたりを見つめると砂、砂、砂。

いわゆる、砂漠に青年はいる。

今は隠れているのだが…

その時、

ダン!

銃声が街に木霊した。

だが、この世界は、そんなことで驚くほど安く作られてはいない。

 

ダダン!

ダダン!

連続して発砲音が木霊する。

 

そんな時に動かないのは鉄則。

関わりあいたくもないのだろう。人っ子一人いない。

 

だが、狙われている当人としては面白くはないだろう、

 

「全く…」

 

青年はそこらに落ちている薬莢を拾いあげ、自分へと狙いを定めている人物に投げた。

無造作に投げられた薬莢はただの鉄の薬莢だ。

しかし、その薬莢はナイフへとと姿を変え頭に突き刺さる。

 

周りには叫び声が聞こえ、何かを叫んでいた。

 

捕まえろ?殺せ?何を無理なことを…

 

と青年は内心飽きれる。

 

この青年は達皆上 百合人(たちみなかみ ゆりと)生粋の人間

しかし、この青年は元殺し屋。殺人鬼でもある。

 

だが、それも今は昔の話。

別段、もうそういう仕事をこなしているわけではないのだ。

しかし、自分がやった罪も償えるわけもなく。

 

などと弁を垂れていると、

携帯に電話がかかる。

 

「なんだよ…全く…げっ…」

 

青年は発信番号を見てぞっとして、恐る恐る電話に出る。

 

「こちら達皆上ぃ…「こらぁぁぁ!!!!達皆上ぃぃぃ!!

お前陽動作戦はどうしたんだぁ!!」

 

この世界では、ほぼ全ての学校が銃の系統や武装をしている。

つまり武装学園。

特殊部隊や、傭兵などを育成する学校だ。この世界では15歳以上の青年にこの学校へ行くことが義務付けられた。

それはこの達皆上百合人も例外ではない。

百合人は電話を無造作に切ってため息をつく。

 

「あのくそ教官め…俺の方が戦績いいからって妬みおって」

 

百合人にとってこの世界は不快だ。

そう思って百合人が壁に背中を着いたとき、

 

けたたましく警報が鳴り響いた。

 

「幻獣だと…こんなところにかよ…」

 

そういえば、このために陽動作戦をしていたのだと思い出す。

しかし、予想よりはるかに違う場所に出たようだ。

 

彼が生まれた時からこの世界には化け物がいた。

RPGの化け物とは比較にならない。リアルな化け物は気色悪く、見つめたくもない。

 

「しょうがねぇ!行くか!」

 

百合人が隠れている場所から跳躍し、建物へと移る。

遠くを見据えどこに敵がいるか見つける。

 

見つけた!

 

百合人は化け物を見つけ、動こうとしてやめた。

 

「嘘…だろ…」

 

ダンゴムシのような体躯をした化け物が群れになって迫ってきている。

その時仲間からの通信が入った。

 

「おい、ユーリ!どうなってる!?」

「おいおい、ふざけてやがるぜ?

ダンゴムシが20、いや30はいるかな?」

「そっちに部隊を送った。

お前もそちらに合流しろ。」

「いやいや、無理無理。

あんなのに突っ込んでったらいくら長生きの俺だって死ぬぜ?」

 

この達皆上百合人は、普通じゃない能力を持っていた。

触れたものを見たことのあるモノに変換する能力。

こんな能力は普通に他の奴らも持ってはいるのだが、

 

この世界が死んだのは、500年前。

達皆上百合人はまだ生まれていない時である、

 

この世界をみてきて思った。

不条理だ。

こんな世界を創った神がいるなら俺はこの手で殺したいと…

 

百合人はそう思った。

しかし、現場は現場。

右手を強く強く握りしめる。

 

やることはただ一つ。

あの群れを援軍が来るまで引き止めること。

 

それだけだ。

 

百合人は道へと降り立ち、全力でかけていく。

 

そして、ついに捉えた。

 

 

群れまでは先ほどの場所まで軽く数十キロはあっただろうか。

時間にして約一分半。

百合人はこれでもこの世界では早い方である。

しかし、早い奴は早い。

わずか数十秒で行く奴もいるのだ。

まさにチート。

 

「とりあえず!ぶっこわれとけ!」

 

百合人がとった行動はまさに異質。

明らかに硬そうな甲殻を持つ敵を殴りつけた。

しかし、百合人の拳は硬い甲殻をいともたやすく砕いてみせた。

 

「もういっちょ!」

 

そう言って敵の甲殻を砕いていく。

 

そして、百合人の腕が剣に変化し敵を切り裂いていく。

彼は自分の腕さえも剣に変えられる。

そうみたことあるものなら。

 

「終わったか…」

 

百合人は安堵し腕の変身を解く。

すると、空中から手紙が降ってきた。

百合人はそれをとる。

 

「ん?俺あて?」

 

そこには

『達皆上百合人様へ』

と書いてあった。

不思議に思いつつも、百合人はその手紙を開く。

すると、

 

「うおあっ!」

 

百合人の視界は光に包まれた。

 

そして、気づいた時には空中にいるのだった。




どうもunworldです!
今回は『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』
の二次創作『問題児たちと元殺し屋が異世界から来るそうですよ?』を書かせていただきます。
みなさんを楽しませることが出来るよう頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします
コメント等々受け付けています。よろしくです!


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『プロローグ2 目が覚めたら森の中で変な奴に襲われました』

第二話です。

書くことなくなったなぁ…


視界が暗い。

ここはどこだ?

百合人は目をうっすらと開けると、百合人の目に光が差し込んでくる。

明順応していなかったために再度、目を閉じる。

 

しかし、次の瞬間には

 

「…っぁ!どこだここ?」

 

周りを見渡せば見えるのは木と鳥の鳴き声だけだ。

視界は上空へと向いており、今は仰向けの状態でいるということ緑色の葉を通り抜けてくる光が淡く心地よい。

覚えているのは、かなり高い上空から投げ出されたこと。

そして、今は木に引っかかっているということだ。

しかし、流石に経験だけは豊富だ。

百合人は起き上がり状況整理を試みる。

 

俺は砂漠にいた。

 

敵を倒した

 

手紙が降ってきた

 

開いてみた。

 

ここにいた。

 

「うん、わかんねぇ…」

 

がっくりとうなだれ落ち込む百合人。

しかし、

 

「さてさて、とりあえず街やなにやらを探そう。」

 

一転。

ここか何処かわからないのに当てもなく歩こうと言うのだ。

 

「とりあえず木から降りるか…」

 

百合人がいるのは木のかなり上部。

体を恐る恐るおこし、一気に飛び降りる。

時々木に捕まり、衝撃を和らげながらだが…

 

「よっと…」

 

上手く足を捻らず着地が出来て内心グッとほくそ笑む百合人。

 

しかし、百合人はおちゃらけてはいても殺し屋つまりプロだ。

しっかり四方にいる気配は感じている。

 

「さてと…出て来いよ…」

 

四方の木から出てきたのは猿だった。

しかし、その多さと猟奇的な目の血走りかたは半端ではない。

 

「仕方ねぇ…」

 

百合人はつぶやくとそこらへんの葉を2.3枚ちぎる。

それは強く握られ瞬時にナイフへと変化を遂げる。

 

「かかってこいよ…殺してやる」

 

ナイフを両手に構え、瞬時に臨戦体制にはいる。

 

次の瞬間、猿たちは一斉に百合人に襲いかかる。

しかし、百合人は慌てることなく一体一体さばいていく。

 

「ふっ!」

 

百合人は目がいい。

 

猿の攻撃を見極め、自分の攻撃の隙を狙い敵を斬る。

 

めんどくせぇ!

 

既に切り倒した数は二桁を超える。

だが、まだまだ数が減った様子がない。

 

「どんだけいんだよ!」

 

百合人は数が減らない猿にイラつき始めたのだが、戦場において焦りを持っても死ぬだけ、と自分に言い聞かせ再度、ナイフを構える。

 

だが、猿たちの動きが微妙に変化した。

百合人が気合いを入れたからじゃない、まるで王を通すかのように脇にそれて行く。

 

そして、ズシンズシンという地鳴りの音と共に現れたのは…

 

「GYAaaaaaaa!!!!」

「ゴリラかよ!」

 

腕が八本のゴリラだった。

百合人は圧しようと咆哮をあげドラミングをする。

 

しかし百合人は驚きはしたが、百合人は歴戦の殺し屋いや、殺戮鬼。

この程度では気圧されない。

 

逆に百合人は奮い立った。

 

「お前は強そうだなぁ!!!」

 

百合人の世界は変わっていた。

人を殺すのが当たりまえ、殺されるのも然り。

仲間が死んでも惜しまれることはない。

逆に人を殺せば褒められ称えられる。

異常だった。

 

百合人は幾度と無く褒められてきた。

もう何人殺したかわからない…

軽く万…いや、十万を超えるかもしれない…

などと考察し、止める。

 

自分が何度死にかけたかわからない。

そのたびに傷を負い、

ある時は体をぶった切られ。

ある時は右手を失い、新たな義手をつけられた。

 

そして、百合人が右手を失って新たな義手をつけられた時…

その義手は一人でに動いた。

呪われた。

 

ちがう、百合人の義手は呪われていたのだ。

今でもその義手は百合人の右腕に残っている。

 

考察を止め、ゴリラと対峙する。

傍目からみてもゴリラは弱くない。

むしろ、強い部類だ。

 

だが、相手が悪かった。

このゴリラに敗因があるとすれば、

 

圧倒的に運が悪かっただけだ。

 

 

「殺してやるよ!」

 

ゴリラに百合人の腕を剣に変えた凶刃が迫り

 

その肉を斬り、首を落としゴリラを殺した。

しかし、百合人の受難はこれだけではなかった。

 

百合人の後ろにそびえ立っている山から岩が雪崩れてきて百合人に覆いかぶさらんとする。

 

百合人はそれをよけて山を見上げる。

 

地震でもないのに岩雪崩れはおかしい!

 

百合人の考察は当たっていた。

山の中腹あたりに人がいた。

たった一人の男だ。

 

だが、その形相は憤怒。

 

「こいつぁ…やべぇ…」

 

その男の名前はシーシュポス。

神話では不条理の英雄として描かれる。

神へ逆らい、山の頂上に巨大な岩を運ぶ役割を命じられるが、出来ない様子が描かれているらしい。

 

シーシュポスは何かに憤り、百合人を見下ろした。

 

「やるしかねぇ!」

 

シーシュポスと百合人との終わりが見えない戦いが切って落とされた。

 

 

 

 

 

…一年後

 

「さてと…もうすぐで着くかな…」

 

目深にフードをかぶった青年はとある街に来ていた。

そこにはかつて魔王に蹂躙されたコミュニティーがあるらしい。

 

だが、青年の目的は他にあった。

昔にお世話になった恩人に呼ばれているのだ。

 

「もぅ、白夜叉様は…俺の扱いが荒いなぁ」

 

とぼやきながらも、歩を進めた。

 

青年は

 

コミュニティー サウザンドアイズ所属

達皆上 百合人(たちみなかみ ゆりと)

ギフトネーム

【万物変換】

【不条理】

 

この青年を中心に物語は回り出す。

………

 

 




どうもunworldです。
プロローグ2はどうだったでしょうか。
次回から原作です。
一巻のペルセウス編からスタートです!
これからよろしくお願いします


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ペルセウス編的な
『元殺し屋は東の街に来たそうですよ?あぁ…白夜叉様に呼ばれたんだが…』


名前 達皆上 百合人(たちみなかみ ゆりと)
年齢 見た目18だが、実際は500歳越えらしい…
髪色 紫

恩恵(ギフト)

万物変換

百合人が幼いころから発現してギフトで、あらゆるモノをあらゆるモノに変えるギフト
例えば葉っぱをナイフに
弾丸をナイフに変えられる。
しかし、条件があり、
○○を××に変える時は
百合人自身が○○に触れていること
百合人自身が××を見たことがあるということが条件。

不条理

シーシュポスとのギフトゲームに勝利し手にしたギフト。
不条理と分かっているだけで他は何一つ不明なギフト

所属 サウザンドアイズ(形式)

一年前に箱庭の世界に呼び出された青年で、今は、サウザンドアイズに形式的なものだが所属している。白夜叉を慕っていて基本白夜叉のいうことなら聞く。

万物変換のギフトは白夜叉でさえも警戒している。
なぜかといえば、白夜叉曰く「ただの小石をギフトに変換することも可能」らしい

呪われた右腕を持っていて元は龍の純血種の腕といううわさが…

こんなところです。
チャンネルはそのままで続きをどーぞ


東の街に夕日が傾き始めた時、

七桁の外門に百合人は来た。

 

「ぬぅーーー疲れたぁ…」

 

百合人は道のベンチを座って伸びをする。

かなりの距離を歩いてきた百合人の体はボロボロだった。

 

「全く…白夜叉様は人使いが荒いなぁ…」

 

先ほどまで4桁の外門から歩いてきたのだ。

足は棒のようになってしまった。

 

しかし、この街は静かだ…

 

百合人はそう考え、はぁ~と大きく息を吐く。

この前までいた4桁の外門は治安が悪かった。

上面だけ作ろうと、どんなに力があっても虐げられている者がいる。

 

それもこれも全部!

 

魔王のせいだ…と言おうとしてやめた。

別に言っても何かが起こるわけでもない。

それに自分が慕っている白夜叉様も元、魔王じゃないか…

と考え直す。

百合人はベンチから立ち上がり再度伸びをする。

目的地まではそう遠くない。

日が暮れないうちに行ってしまおう。

 

「さて、行くかな…」

 

百合人はサウザンドアイズに向かって歩き出した。

 

…………

 

 

その頃七桁の外門東側のサウザンドアイズでは、

 

コミュニティペルセウスのリーダー

ルイオスと

コミュニティーサウザンドアイズの白夜叉との対面が行われていた。

 

しかし、その空気は一触即発。

今にも白夜叉はキレてしまいそうだった。

 

「キサマ!それでもペルセウスのリーダーであろう!恥をしれ!」

「いやいや、あの吸血鬼をここにつれてきたのはあなたでしょう?

怒られるのは心外ですねぇ」

「なっ!何を白々しい!

レティシアを隷属させて何が楽しい!」

 

白夜叉の機嫌は噴火寸前。

ルイオスの言動は火に油を注ぐようなものだ。

しかし、ルイオスはそんなことを気にしている様子もない。

 

「なぁ、白夜叉様?

取引をしましょうよ?」

「なんじゃと?」

「確かに、俺はレティシアを手放す気は無い。

だが、箱庭の貴族と呼ばれるウサギなら交換してもいい、と言ってもそれも突き返されるんじゃこちらとしても困るんですよ。」

「何が言いたい」

「でも、俺たちはもう一つ欲しい人材がいるとしたら?」

「なんじゃと!?」

「そいつの名は 黒き覇王。

黒い鎧に身をつつんだ両刃斧(ラブリュス)の使い手。

その偉業は数知れず。

半年前に突如姿を表し、その頭角を示した戦士だ。

4桁以上のコミュを潰したこともあるといううわさもあるくらいだ。

だが、その黒色覇王のいるコミュがわからない。しかし!

そのコミュは偶然見つかった。

それがここ、サウザンドアイズそうだろ?」

「な、何を証拠に…」

「証拠ならあるさ!

ここ半年でたった一人でコミュに入る奴はなかなかいない!

で、調べた結果

 

サウザンドアイズには一人で入った奴がいる。

それが

達皆上百合人だろ?

そいつが黒き覇王と呼ばれているのは明白!

こいつが証拠だよ!」

「ぐっ…」

 

この時、白夜叉は焦っていた。

すべてが図星。返す言葉も見当たらなかった。

 

この状況下でこの情報をさらされるのは痛い!痛すぎる!

 

もう魂胆は見え見えだった。

ルイオスはレティシアも黒ウサギも諦める。だが、代わりに達皆上百合人をよこせと言っているのだ。

 

百合人は強い。

ギフトもさながら、百合人自身が強いのだ。

その斧を操る姿はまさに圧巻。

4桁のコミュニティを立った一人で潰したのも事実だ。

 

「言わなくても分かるよな?白夜叉様?」

「キサマっ…」

 

その時だった。

 

「ただいまでーす」

 

と声が聞こえ百合人がサウザンドアイズに帰ってきたのは…

 

 

………sideoff

 

 

 

「あれ?」

 

百合人がサウザンドアイズに着く頃にはもう日は傾いていた。

 

呼んでも誰も来ない…

いままでこんなことはなかったとおもうんだが…

 

むぅ…と百合人は思考する。

 

「入るか…」

 

サウザンドアイズ内に入るといつもの風景だが変わっているのは、白夜叉の自室だけ。

 

こいつは…とドアに触れる。

和風テイストのこの店はどれも和式に統一している。

しかし、こいつぁ…

 

一見普通だが、何かがちがう。

 

そして、百合人の思考はある一つの答えを出す。

 

封鎖か!

 

封鎖とは人がその空間から出れなくしたり出来る空間のことをいう。

 

だが、百合人のやることは一つ。

 

「チェストぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

百合人は全力とは行かないものの、半分くらいの力を出して扉を吹き飛ばす。

 

そのせいで封鎖は意味もなく瓦解し、溶けていく。

 

「ちょっと荒い入室失礼します。

白夜叉様帰りました。」

 

百合人はドアを破り入ってきた割には白夜叉に礼儀を尽くした。

まぁ、遠くから帰ってきたのだ。それくらいはするだろう。

 

「おお、良くぞ戻ってくれたな。

早速だが…」

「へぇ、お前がうわさの…」

 

百合人は明らかに白夜叉からではない声に、驚きつつもその声の主に視線をやる。

 

「お前が達皆上百合人だな?」

「ええ、そうですが…

人に名を尋ねるときはまず自分からという言葉をご存じでいらっしゃいますか?」

「これは失礼。

俺はペルセウスのリーダールイオスだ。

よろしく」

「…どーも」

 

百合人がこの男から感じとった情報はたった一つ

 

弱いな

 

それだけだった。

いや、百合人にとってはそれだけで十分だった。

百合人にとってこいつは弱者だ。

タダの弱者に従う義理など百合人にはない。

 

「まぁ、お話は聞かなくても理解出来ますよ。

ペルセウスのリーダーさん」

「じゃあ、もちろん…」

 

ルイオスは余裕の笑みを見せ、百合人に言った。

対して百合人は満面の笑みをルイオスに向けて言った。

 

「もちろん…

却下ですよ。」

 

時が止まった。

百合人が放った一言によって世界が停止した。

ルイオスはそんな世界からブレ、怒りを爆発させた。

 

「な、な!てめぇ!お前を引き抜くためにわざわざ下層まで来てやったってのに!」

「そうですか…わざわざどうもご足労様でした。

しかし、自分自身ペルセウスには興味をそそられません。

ここのところは自分の顔に免じておかえり下さい。

 

それを拒否されると言うのでしたら…」

 

ルイオスは反論の言葉を発しようとしてやめた。

いや、やめざるをえなかった。

 

「実力行使も自分は辞さないですが?いかがいたしましょう?」

 

ルイオスは満面の笑みから発せられるプレッシャーに鳥肌をたてた。

 

ふざけるな…

こんな…こんな…

 

化け物がいてたまるものか!!

 

ルイオスはこの時、この瞬間

自分が弱者であることを悟った。

 

………そして

 

「今日は帰らせてもらう。また来るさ」

「またのご来店心よりお待ちしております。」

 

その言葉を聞いてルイオスは内心思った。

 

ここは…バケモノの巣窟か。

 

…と………




どうもunworldです。
本編一話どうだったでしょうか?
黒き覇王。
つまりいうところの黒い覇王ですね。そして、厨二ですね。
分かってます。

では、第二話予告
百合人は白夜叉からレティシアがペルセウスのリーダールイオスに隷属させられていてしかもそれが賞品として出されることを聞いた。

そして、ノーネームは黒ウサギが集めた情報によりペルセウ討伐に行こうとする。
物語は変革的に変わらない。

ですね。
それでは第二話でお会いしましょう


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『最近のコミュニティーはバケモノが多いそうですよ? おう、俺もバケモノだ。』

くっ…眠い


ルイオスが去ったあと、白夜叉と百合人は静かに茶をすすっていた。

 

「全く…百合人は帰ってくるタイミングが本当に悪い。」

「いやーたまたまですから、許して下さいよ。」

「そして…レティシアの件は知っているな?」

「ええ、耳には挟んでますよ?

まぁ、最悪の場合ペルセウス自体を潰しますからいいですよ?」

 

白夜叉はこの発現に冷や汗を流した。

白夜叉はその気になればペルセウスなど潰すことが可能だ。

 

しかし、白夜叉は神格を持っておりその力で倒すことが出来るという話だ。

だが、百合人の場合は根本的に違う。

 

百合人はギフトを使わずともペルセウスを潰せる実力を持っている。

 

それもギフトを使えば、跡形も痕跡も残さずすべてを消し去ることが出来るのだ。

 

百合人が持つギフトは二つ。

一つはあらゆるモノをあらゆるモノをに変えるギフト

【万物変換】(イコール)

そして、どんな不条理も可能にするギフト

【不条理】

この二つだ、

しかし、この二つのギフトの強さは圧倒的だ。

 

【万物変換】通称イコールはあらゆるモノをあらゆるモノに変えるギフトだ。

小石を武器に変えることも可能。

 

だが、それだけではない。

 

タダの小石をギフトに変えることも可能なギフトなのである。

だが、このギフトには発動するには条件が必要なのである。

それは、変換するモノを触る。変換するモノを見たことがあるということだ。

 

例えば

小石を武器に変える時

変換する小石を触っている。

小石から変換される武器を見たことがある。

それが条件なのである。

 

そして、このオールには最大にして最強の理由がある。

何かをギフトに変換する時。

そのギフトはレプリカとして…精製されない。

完全なオリジナルとして精製されるのだ。

 

そして、【不条理】だが…

これはもはや言うことはない。

ありとあらゆる不条理を体現し可能にするギフト。

 

そして、どんな不条理も打ち砕く力を持つと言われている。

 

 

この男、達皆上百合人の二つ名は

『黒色の覇王』

『リアルナイトメア』

の二つ

人々に多く知られているのは

『黒き覇王』

だが、殺すという意味で名を馳せているのは

『リアルナイトメア』だ。

どちらも人々には同一人物としては見られていない。

 

 

「白夜叉様。で、話は変わりますが…『ノーネーム』って強いんですか?」

 

本当に話が変わったななどと苦笑しつつ白夜叉は口を開く。

 

「そうだな…今は強いよ。

新しいメンバーを加えたおかげでかなりの戦力がある。」

「…なるほど」

 

百合人は魔王では無いにせよ。覇王とまで言われる存在。

強者との出会いは心踊るものがあった。

 

「興味があるか?」

「そりゃあまぁ、覇王ですから」

「そうかそうか、では、多分明日にでも合うだろう。」

「いんや、俺はちょっと用があるのですよ。」

「ん?どうした?」

「覇王の次の狙いはどこだと思います?白夜叉様。」

 

白夜叉は察したように笑みを浮かべるが、扇子で覆いかくしてしまったために確認は出来ない。

 

「ほぅ面白い。」

「……俺を助けてもらった恩人の一人であるレティシアを隷属させた、あの野郎のコミュニティ。

『ペルセウス』でしたっけ?

全力で跡形もなく、徹底的に叩き潰したいですねぇ?」

 

百合人は口を歪ませ、黒い笑みを浮かべた。

その顔は…紛れもなく強者の…覇王と呼ばれるもの笑みであった。

 




どうもunworldです。
今回は少し短かめ。だって説明回なんですもの。
はい、すいません。おふざけしましたごめんなさい。

次はペルセウスとの戦いです。
さて、最後に。

百合人チート過ぎる…


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『覇王様がペルセウスに乗り込むらしいですよ? ん?圧倒的な予感だ。』

疲れって変なテンション生み出すよね。


百合人はサウザンドアイズの支店から身支度を整え、出立する。

こなしたいクエがあるなどと言って出てきたわけだが…

 

「とりあえずグライアイ クラーケンでもぶっ倒しに行きますかな…」

 

今、下層に出されているペルセウスの挑戦権をかけたギフトゲーム。

名前は知らない。

 

百合人はこの日中にギフトゲームをクリアしペルセウスにゲームを挑むと決めていた。

しかし、百合人の目的は白夜叉にはああいう風に言ったがコミュニティを潰すつもりはない。

 

むしろ残しておきたいのだ。

サウザンドアイズの精鋭でもあるペルセウスは錬金や武器製造に大きく関わることが出来る。

特に、ペルセウスのリーダールイオスだ。

ルイオスには鍛治神の権能というより加護がある。

それを使えば、神のギフトのレプリカを製造することが可能だ。

 

サウザンドアイズが資金的にも多方面に顔が効いているもの、この影響が少しはあるのだろう。

 

あくまでも百合人の立場はサウザンドアイズ内部での争いを防ぐという立場だ。

レティシアは魔王連盟から買い付けたものらしいから、糾弾せずとも無理やりにでも奪い返せる。

 

百合人は紫のギフトカードから大きな両刃斧を取り出す。

その大きさは圧巻。

 

150cmを超える丈

刃の大きさも凄まじいものだ。50cmはあるだろう。

そして重量。

その重さも伊達ではなく、軽く100kg以上はあるだろう。

 

百合人はそれを背中に背負い歩きだす。

 

百合人のその重量を何の苦もなく背負う姿はまるで勇者のようだったが…

狩られる側の人間だ。

 

そして、時は少し過ぎ去り、百合人とグライアイ クラーケンのギフトゲームが始まっていた。

しかし、状況はグライアイクラーケンの劣勢で…

まさに圧巻の一言

 

幾重にも交差して襲いかかるタコの触手を両刃斧で切り倒し、

グライアイが放つ弾を全てかわし、あまつさえ反撃さえ、さも余裕だと言わんばかりの勢いでしてくる。

 

そして、

 

百合人が両刃斧を振るいクラーケンが真っ二つに切り開かれる。

グライアイは焦ったような顔をして攻撃を溜めている。

察するに自分の全力の一撃を叩き込むつもりであろう。

グライアイは伝承で語り継がれる化け物だ。

それゆえ、その霊格も強い。

その全力の一撃が百合人へと放たれた。

だが…

 

「なっ…」

 

相手が悪過ぎた。

百合人が行ったことは単純。

斧を無造作に振るい、グライアイの一撃を打ち消したのだ。

 

「はぁ…さてと…終わりにするかな…」

 

百合人の声音はまるで退屈だと言わんばかりに低かった。

グライアイはその瞬間最低限の防御を…とろうとした。

 

しかし、百合人の両刃斧の刃がグライアイが防御をとるより速く、身体を両断していた。

 

…………

 

ギフトゲームの戦利品を手に入れた百合人はいつものごとくベンチに腰掛けた。

 

百合人自身さして疲れていなかったが、大きくため息をついた。

 

これから百合人はペルセウスに行かなければいけない。

面倒ごとは先にすませておくほうが楽だ。

 

しかし、百合人はサウザンドアイズの使者として行くのだ。

それ以上でもそれ以下でもない。

 

なぜ、百合人がペルセウスへ使者として行くのか。

それは、百合人が白夜叉に可愛がられているというのも理由の一端ではあるが、真相は違う。

 

それは百合人の待遇だ。

百合人はこの箱庭においてとても微妙な立場にいる。

百合人は異世界から召喚された人。

規格外ともいえる『あらゆるものをあらゆるものに変えられるギフト』を持った人間である。

 

しかし、問題なのはそこではない。

問題は召喚した人。召喚したコミュニティが不明という事だ。

 

今回問題を起こしたのは『ノーネーム』と『ペルセウス』。

ほとんどの場合、コミュニティ同士の争いなのでコミュニティ内で解決するのがルールだ。

 

しかし、今回の場合は特殊だ。

サウザンドアイズの中でペルセウスの行為は問題視されていたため、近々対処をとることになっていた。

そこにノーネームがペルセウスと問題を起こした。

 

サウザンドアイズ側としては「自分達が対処しようとしてたのに勝手に割り込んでくんじゃねぇ」

とも主張出来なくも無い。

 

だが、そんなことをしては問題視されるのは自分達だ。

そんなことは百合人も百も承知である。

 

しかし、挑戦権を奪取したのは百合人だ。

 

問題視されるからなんだ

 

だったら個人で挑戦すれば問題をないんだよ!

 

などと横暴極まりない事を考えていた百合人ではあったがそれはとてつもやくつまらない、

楽しくないのだ。

 

「さてと…じゃあ…行きますかな!」

 

ベンチから勢いよく立ち上がり、ある本拠へと向かっていった。

 




どうもでございます。unworldでございます。
ありがたいことにお気に入り件数が40を超えました。
まだ、五話くらいなはずなんですがね。

いやはや、ありがたい話です。
これからもよろしくお願いします。


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『やりすぎには注意すべきでございますよ?だから、なんだ?』

てへっ、やり過ぎちゃった。


ノーネーム本拠では

逆廻十六夜

春日部耀

久遠飛鳥

黒ウサギ

ジン=ラッセル

の会合が行われていた。

もちろん題材はペルセウスに囚われたレティシアの救出の件だ、

 

しかし、逆廻十六夜は実際のところ歯噛みをしていた。

…自分がもう少し早く気付いて行っていれば!…

などと思っていた。

理由はペルセウスに決闘を断られた以上、挑戦権を獲得すればいいということを思いついた十六夜が向かったギフトゲームがグライアイとクラーケンのギフトゲームなのだが…

 

何者かによってクリアされていたのだ。

 

さすがの十六夜もこれは予想外で何も成果をあげられずにいた。

 

「くっそ!すまねぇ…俺がもうちょっと早く行ってれば」

「十六夜君の所為じゃないわ。

だけど…手詰まりね」

「うん…どうしようか…」

 

逆廻十六夜

久遠飛鳥

春日部耀は小さくうなりつつ頭をひねった。

しかし、妙案は思いつかない。

 

黒ウサギはほとほと困り果てたようにため息をついた。

ペルセウスへの挑戦権を失ったとなるとレティシアを諦めるしか方法は無くなる。

しかし、レティシアを諦めるなどできるはずもなかった。

だが、行く手は八方塞がり。

 

「どうにかしたいものなのですが…黒ウサギも頭がいたいのでございます…」

「黒ウサギ…大丈夫?」

「ええ…ジン坊ちゃん、大丈夫なのでございますよ。

せめて、ゲームの勝者が見つかればいいのですが…」

「見つけてどうすんだよ。黒ウサギ」

 

十六夜はさも不服そうに黒ウサギに言った。

自分の手柄を横取りされたも同然だ。黒ウサギにはイラつく気持ちもわからなくもなかった。

 

「ここの蔵にある武具と交換してもらいます。

それがダメだったら、お金と交換でもいたしましょう」

「却下ね」

「右に同じく」

 

黒ウサギの言い分をきっぱりと両断する飛鳥。

それに便乗するように言った燿。

これにはさすがの黒ウサギもこれには怒らざる負えなかった

 

「いいですか!飛鳥さん燿さん!

しょうがないのですよ!

ペルセウスへの挑戦権を失った以上そうするしか手は残っていないのです!」

「でも、それでも!私は納得いかないわ!」

 

果ては言い合いになってしまう。

まぁ、しょうがないことだろう。

二人ともここのところの心労が酷いのだ。

 

しかし、見かねた十六夜が声をあげようとしたその時。

 

「おいおい、ケンカすんなよ。ノーネームの皆さん。

それともケンカするほど仲が良いってか?」

「「「「!?」」」」

 

十六夜でない声がドアの向こうから発せられる。

しかし、ノーネーム側はそれどころではなかった。

敵か味方かわからないこの状況。

皆が席を立ち臨戦態勢に入る。

しかし、その声の人物は、カラカラと笑いドアを開けた。

 

「おっと。夜分に失礼」

 

それはフードを目深に被った百合人であった。

 

……………

 

黒ウサギは新たな侵入者に臨戦態勢をとり警戒する。

しかし、らちもあかないので質問をすることにした。

 

「誰…ですか?」

 

百合人は黒ウサギも達の臨戦態勢を見て手を上にあげひらひらとふった。

 

「はいはい。俺に敵対する意思はございやせんよ。

だけど、そっちが攻撃してくるなら話は別だが…無いんだろ?」

 

敵を見定めようという百合人の目が黒ウサギ達ノーネームのメンバーに注がれる。

黒ウサギはその視線を送っている目の奥を見て、自分との実力差を悟った。

そして、唾を飲み込みつつこう言った。

 

「そ、それは質問には答えていませんね。

黒ウサギは貴方は誰ですか?と言ったのでございますよ。

質問にはちゃんと答えていただかないと困ります」

 

黒ウサギの緊張は臨界点をとうに越していた。

明らかに青年は自分より遥かに高みにいる。そんな存在に自分は喧嘩をうったも当然だった。

 

百合人はそんな心中を察したのか苦笑しつつ答えた。

 

「俺は…サウザンドアイズ所属 達皆上 百合人だ。

以後よろしく」

「では、信用の証としてフードをとっていただけませんか?」

「ちっ…めんどくせぇな…

別にいいけどよ…俺の顔見ていいことなんてまるでねぇぞ?」

 

百合人は文句をブツブツと垂れつつ目深に被っていたフードをとった。

そのフードの奥に隠された顔をみて

 

女性陣の頬はすこし赤くなった。

 

そのフードの奥に隠された顔は、見事にキリリとして随分と凛々しい顔であった。

それは大人の魅力を漂わせ、同時に幼さを秘めた顔であった。十六夜とは少し違う印象をもつイケメンという奴である。

 

人は時にルックスで人を判断しない。そういうがそのケースは稀だ。

人間は

視覚

聴覚

嗅覚

味覚

などを使って何かを判断するのだ。

その中でかなり多く使われるのは視覚。

つまり、ストライクゾーンど真中の男を見るとついつい目で判断してしまう場合が多い。

性格や何やらを無視して、勝手に目が追ってしまう。らしい…

 

今回の場合、

昭和育ちの箱入り娘 久遠 飛鳥は箱入り娘というだけあってあまり男を知らない。

だが、しかし、そんな少女の前に颯爽とルックス抜群の男性が出てきたのだ。

どう思うだろう。

確実に悪くはない印象だ。

 

次に春日部燿だが

燿は元々体がそこまで強くなかったため。寝ている生活が続いたそうだ。

それゆえに男に触れない。

繰り返すようだが、そんな純粋な少女にルックス抜群の男がやってきたのだ。

…もはや、予想がついてしまうが、悪くはない印象だ。

 

さて最後に黒ウサギだが…

別にいいだろう。

自慢が200年守ってきた貞操だ。

以下略だ。

 

 

まぁ、細かいことはおいておこう。

 

百合人はフードをとり、顔を表す。

 

「これで満足か?」

「///えっ…ええ!大丈夫なのでございますよ。

それで達皆上様はなぜここに?」

「…悪いが…出来れば百合人と呼んでくれ。

その苗字はそこまで好きじゃない」

「あ、す、すみません!」

「別に謝ることじゃあない。

先に無礼を働いたのは俺の方だ。説明不足でごめんな?」

「あ、はい」

 

黒ウサギは心の中でやりづらいなぁ…などと思っていたわけだが。

 

「んで、俺がきた目的?だっけ?

一つはもちろんサウザンドアイズの使者として」

「それは…どういう?」

「ん?わかってんだろ?お前らペルセウスと問題起こしたろ?」

「それがなんだってんだよ?」

 

十六夜は苛立ち気に言った。

それはそうだろう。

いろいろ気に食わないところがあるのだ。

 

「いや、別に問題起こすなとは言えねぇよ?

だがよ?

お前らの自己満足でコミュニティ一つ潰されるのはめんどくさい。

だから今回のギフトゲームは俺が干渉させてもらうぜ?」

 

百合人がそう言うと、飛鳥は自分の座っていた椅子を倒し立ち上がり怒号と共に叫んだ。

 

「なっ!ふざけないで!!

あんなコミュニティをのさばらせておく方がめんどうだと言うことよ!」

 

百合人は怒られていると言うのに意にも介さず言葉を続けた。

 

「そう怒んなよ。

説明不足だったな。

お前らの目的はレティシアの救出なんだろう?

それは好きにさせてやる。

だが、ペルセウスの処遇は俺らでカタをつけさせてもらうぜ?」

 

百合人は単刀直入にそういった。

別に隠してどうということはない。

それだけだったのだ。

 

「『ふざけるな』」

 

しかし、十六夜は納得がいかなかったようだ。

椅子から立ち上がり拳を握る。

 

「ふざけるな。冗談じゃねぇ!!

これは俺らの問題だろうが!

関係のないやつらは関わるn「だまれ小僧」!?」

 

百合人の表情が一変し凄まじい毒を吐いた。

 

「たった…十数年しか生きてねぇ小僧が。

わかったような口を聞くんじゃねぇ。ぶち殺されてぇのか」

「やってみろやコラァ!!!」

 

十六夜は人間らしからぬスピードで百合人へと肉薄する。

しかし、十六夜の体は次の瞬間宙をまっていた。

 

「はっ?」

 

十六夜はワケもわからず素っ頓狂な声を上げた。

そのまま床へと落下し背中を強く打つ。

 

「ぐっ…あっ!」

 

百合人は嘆息し、こう言った。

 

「これは正当防衛だ。

俺は悪くねぇ。

この小僧が悪りぃんだ。

それよか、お前ら取引しねぇか?

俺はお前らのレティシアを取り戻すのは何も言わん。協力してやってもいい。だが、ペルセウスとの交渉だけは俺に委ねてもらいたい。

お前らにも利はあるだろ?」

 

黒ウサギは顎に手を当て思案するような顔を見せるが次の瞬間

 

「…わかりました。箱庭の貴族の誇りにかけて約束はお守りいたしましょう」

「よろしくな。

さてと、もう遅いしここに泊めてくれ。

とりあえず眠い」

「あ、はい。

こちらへどうぞ」

「サンキュー」

 

百合人は黒ウサギとこんなやり取りをすると、大きく欠伸をする。

黒ウサギは不思議そうに百合人を見る。

 

百合人が借りる寝室へ向かう途中。

 

「百合人さん。あの…すいませんでした!」

「ん?どした?」

 

黒ウサギは突然百合人に向かって頭を下げる。

百合人は驚いたように黒ウサギを見る。

黒ウサギはしどろもどろになりながら説明した。

 

「あの…正直言ってしまうと、黒ウサギは百合人さんがサウザンドアイズ所属というのを信じていません。

黒ウサギはサウザンドアイズに出入りしておりますが、百合人さんの顔を一度も見たことが無いのです。」

「ま、そりゃあそうだわな。

俺が参加しているのはかなり上位のギフトゲームであまり向こうには帰らないんでな…しっかし…」

 

百合人は黒ウサギへと近づきその綺麗な容姿を見る。

 

「こんな可愛いウサギさんがいるんなら帰るべきだったかな?」

「///…な、何をおっしゃるんですか!」

「おおっ…すまんすまん冗談だ。

ごめんな」

 

百合人は子供をあやすように黒ウサギの頭を撫でる。

黒ウサギはむすっ…としつつ除けようとはしない。

 

「…行きますよ!百合人さん!」

 

黒ウサギは赤面しつつも部屋へと案内する。

 

百合人はその背中を追うように歩き出した…

 

 




やりすぎた。
後悔ばかり、反省はしてない。
ほんとにすいません
誤字など訂正がございましたら、どうぞお気軽に連絡ください。


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『ペルセウスとの決闘なのでございますよ?…結果オーライだろ』

どうも、疲れています。



 

 

まだ朝日が昇る前の少し薄暗い朝。

そんな早い時間から剣を振り下ろすようなブンッという音がなっていた。

 

「11505…11506…11507」

 

ブンッという音と共にその巨大な両刃斧が振るわれる。

その見るからに巨大な斧を振るっているのは…Yシャツのようなものを着た百合人であった。

 

百合人は毎日欠かさずこれを続けていた。

ずっとこの400年ほど一日も欠かすことは無かった。

 

「14997…14998…14999…15000!」

 

最初は少ししか振れなかったが、今はここまで数を伸ばした。

百合人は努力派だ。

努力し力を手に入れる。

 

百合人は斧を乾いた地面に突き立てる。

そして、百合人自身もその乾いた地面に寝そべった。

服に張り付く汗が心地よい。まだ夜は明けきっておらず、すこしヒヤリとする風が服の隙間から百合人の体を冷やす。

今はちょうどいいが風邪などをひいてしまったら元も子もないのだ。

 

百合人は地面から起き上がる。

しかし、その土に違和感を感じた。

 

「…土が死んでやがる…こりゃあひでぇ…」

 

百合人はこういう系統の土をいく度となく見てきた。

ただの水はけの悪い地面かと思っていた百合人にとってこれは衝撃的であった。

 

百合人は土の塊を拾い上げる。

しかし、その途中で土の塊は崩れ砂となって百合人の手から滑りおちた。

 

「こいつは…まだ救えるかな…

いや、すこしキツイか…もし地精の力を手に入れたとしてもこれはかなり難易度が高いな…

…きっかけは作っておいてやるかな…」

 

百合人は紫色のギフトカードからある小瓶を取り出しその中身の液を一滴、地面へと垂らした。

 

するとみるみるうちに枯渇していた大地は少しずつ潤いを取り戻していく。

これで少しはここの役にたてただろう。

 

「良かった…なんとかなるな…」

 

先ほど百合人が垂らした液は

『再生の蓬莱液』

という超高価なこの箱庭に2.3個しかないとてつもなく希少な薬だ。

 

効果は傷や病気などはもちろん大地や水などの自然にいたるまで、たちまちに再生する究極の万能薬。

なぜこのような便利グッズを百合人が所持しているかというと、

 

とある大富豪の一人娘を助けたとき、そのお礼にということでその家の家主にもらったのだ。

 

ついでに娘ももらってくれと言われたが丁重に断ったのは余談だ。

 

これも百合人の日々の行いが良いため…なのだろうか…

 

「さてと…汗ヤバイな…風呂でも掃除して入るか…」

 

意外や意外。

百合人は生粋の風呂好きだったりする。

百合人が前いた世界では、綺麗な水がとてつもなく希少で、風呂と言うものを知る由もなかった。

しかし、箱庭世界にきて風呂というものを知り、風呂好きになったのだ。

 

それはさておいて、百合人はノーネームの屋敷に戻り、

風呂を探そうとする。

 

「そういやぁ俺。ここの構造しらねぇんだよなぁ…」

 

まぁ、しかし、百合人の捜索能力は割かし長けていて、風呂場はすぐに見つかった。

 

だが…

 

「うわっ…マジかよ…」

 

意外にも広かった。

しかし、ところどころ少しだが、汚れているところがあった。百合人的にはだが…

 

「むむぅ…妥協はしたくないし…仕方ない。」

 

百合人はそこらにあった毛をブラシに変えて掃除を始める。

 

百合人のギフトは超がつくほどの便利な能力であるはずだ。

しかし、百合人はそれをこういう戦闘系以外の方にしか活用しないため。

百合人の欲によって生まれたとされるギフト『万物変換』に感情があったとしたのなら、そこはかとなく微妙な顔をしているであろう。

 

百合人が掃除を終え、ギフトカードから水樹を取り出し浴槽に水をはった。

しかし、これだけでは冷たい水だ。

だが、百合人は水に手を触れそれを一瞬にしてお湯に変えて見せた。

 

「おっし!出来た!」

 

百合人が風呂の支度をしようと更衣室のドアを開けた瞬間…

 

そこには…

 

タオル片手に一糸まとわぬ黒ウサギがいたのであった…

 

…………………

 

朝日が地平線から顔をあげるかという刻。

黒ウサギは布団から飛び起きた。

 

「やめ…て…やめて!……あれ?

ここは…なんだ…夢でございますか…」

 

悪夢。

黒ウサギが見たのはそれだった。

 

黒ウサギの故郷が戦火に包まれていく様子。

黒ウサギは知らず知らずにうちに涙を流していた。

そして、服は冷や汗のせいで体に張り付き、それはそれは男がみれば妖艶な姿ではあるが、当の本人にとっては不快極まりなかった。

 

「シャワーでも…浴びてきましょう…」

 

布団から出て風呂場に行くまでの黒ウサギの足取りはとても重かった。

あえて、言うなら寂しいであろうか…

 

こんな自分を支えて欲しかった。

思わず黒ウサギは自分の肩を抱き寄せる。

 

元来ウサギは集団行動をする生き物だ。

黒ウサギも例外ではなかろう。

しかも、こんな気分が落ち込んだ時は尚更だ。

 

黒ウサギはそんな自分に自嘲しつつ生まれた時の姿になり更衣室の扉をあける。

しかし、そこで黒ウサギの思考はそこで止まってしまった。

 

なぜなら

 

誰もいないはずの浴室から百合人が出てきたのだから…

 

………………

 

「「えっ?」」

 

黒ウサギと百合人の視線は重なり、素っ頓狂な声を同時に上げた。

そして、沈黙…

 

しかし、黒ウサギの変化はとてつもなく早いものだった。

顔を真っ赤にして煙を吐き出すと

 

「うきゃぁぁぁぁぁ!!!!」

 

奇声をあげ、まだボーとしていた百合人の顔面に拳を入れる。

流石に死線をくぐり抜けてきた百合人とはいえ、この状況には反応できず吹っ飛ぶ。

 

さすが黒ウサギ。

200年守ってきた貞操はこのようにして守られたのか…ずいぶん手荒だが。

 

黒ウサギはそのまま立ち去ろうとするが…足元のタオルに滑って転び、頭を強打した。

 

「痛い!痛いのです!!

頭をうったのでございますよ!」

「大丈夫か?黒ウサギさんよ」

 

そこへ頬を押さえた百合人が歩いてくる。

黒ウサギは咄嗟に持っていたタオルで身を隠す。

しかし、その行為は黒ウサギの肢体をエロくみせる相乗効果を起こしてしまっていた。

 

百合人の歩みは黒ウサギの体をみるなり停止し先ほど殴られた頬を押さえつつ、少し顔を赤くして明後日の方向を向いた。

そして、百合人は黒ウサギへと手を伸ばした。

 

「とりあえず起きろよ。黒ウサギさん」

 

黒ウサギは百合人より顔を真っ赤にしながら手をとった。

 

「あ、ありがとうございます。

百合人さま。」

「…あ、まぁ、『さま』なんてよしてくれ。ガラじゃない。

それに、俺にはさまなんて呼ばれる資格はねぇよ。

せめて、呼ぶなら『さん』にしてくれ。黒ウサギさん」

「では、百合人さんは黒ウサギのことを黒ウサギさんと呼ぶのをやめる、という条件でなら飲みますよ?」

「そっか…じゃあ、よろしく黒ウサギ」

「はい、よろしくなのです。百合人さん」

 

黒ウサギと百合人は硬く握手を交わす。

その光景は喜ばしい雰囲気なのだが、いかんせん場所が場所だ。

 

黒ウサギはくしゅんと可愛いくしゃみをする。

百合人は苦笑しつつ

 

「風呂は湧いてるから入りなよ。

俺はまたあとで入るからさ。」

「そうですか。

では、お言葉に甘えて…っ!」

 

黒ウサギが一歩踏み出した瞬間黒ウサギの足が滑りこけてしまう。

しかも、滑り続け、そのまま湯船にボチャンだ。

 

しかし、黒ウサギは咄嗟に百合人の服を掴んだために、百合人もそれに巻き込まれる。

 

「ぷはっ!大丈夫ですか!百合人さん!」

「おお…まぁ別に体は問題ねぇよ?ただ、服が…ビリビリでビチョビチョだ。」

 

百合人の服はボタンが弾け、服も黒ウサギが掴んだおかげか、裾から腰にかけて縫い目にそうように破れていた。

 

「も、申し訳ありません!」

 

黒ウサギが思い切り謝罪すると、百合人は笑いつつ黒ウサギの頭に手を置きなでた。

 

「気にするな。どーせ、一瞬で直せる。

ま、今は諦めて風呂に入ってしまおう。」

「そ、そうなのですか?」

「そーなの、俺のギフトだ。

まぁ、深くは追求するな。長くなるし説明しづらい。」

「わ、わかりました。」

 

黒ウサギはそこで言葉を止める。

そして、百合人を見やった。

 

百合人の体は全体的に筋肉質

腹筋、胸筋、背筋、上腕二頭筋など目に見える部分だけでも相当な訓練と努力を積んできたことは素人目にもわかることであった。

しかし、気になるのは包帯でぐるぐる巻にされた右腕であったが黒ウサギにとっては些細なことであった。

鼻は高く。引き締まった頬。

目も大空を思わせる澄んだ水色をし、そして、紫色の髪が水を滴らせ濡れていた。

 

黒ウサギの胸の鼓動は高まった。

ドクンドクンと百合人を見ているといつもの自分では感じないような鼓動を感じ取ることが出来た。

そう思えば思うほど、鼓動は早くなり大きくなり、平静を保っていられなくなった。

 

「お、おしゃきに!失礼します!」

「お、おう。」

 

黒ウサギの動揺しきった行動に百合人は唖然としつつ黒ウサギの行動を見守った。

 

 

 

黒ウサギは脱衣所へ飛び込むと自分の真っ赤になった頬を押さえた。

髪もいつの間にか淡いピンクに染め上げられていた。

 

なぜ

なぜ

なぜ?

 

黒ウサギは考えたが答えは「わからない」

 

…もう考えるのはよそう。

それにそろそろリリ達が起きてくる時間だ…

 

黒ウサギはそう心の中で思い着替え脱衣所を出る。

しかし、その足取りは行きよりははるかに軽いものであったのは間違いなかった。

 




どうもunworldです!

あるぇ?
おかしいなぁ…バトル回にしようと思ったら出来てない…
解せぬ。

そんなことはさておき…
更新遅れてごめんなさい。
次はもうちょっと早くできるように努力します。
それでは、次のお話でお会いしましょう。



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『今度こそ!ペルセウスとの決闘なのでございますよ!…俺は悪くないわけない』

ぐわぁああああああ!!!!!!!疲れてますうううううううううう!!!!!!!


百合人は黒ウサギのフラグを建設しつつ、風呂からあがりリビングルームと呼ばれるところにきた。

 

「お、そろってんな」

 

すると、

十六夜と飛鳥、耀がきちんと席に座っていた。

 

明らかに敵意むき出しなわけだが…

 

「おお、お前ら早起きなんだな。

早起きは三文の徳とも言うしな、して悪いことなんてねぇよ?って、そんな敵意出すなよ。

お前らには何もしねぇって。」

「本当だろうな。」

「本当だってんだよ。

いい加減、お兄さんのことを信じなさいよ。

俺は素直な奴は好きだが、疑り深い奴は好かんのでな。」

 

百合人はそう言うと席に座る。

そして、虚空から契約書類【ギアスロール】を取り出した。

 

そして、十六夜達にもみえるように広げた。

 

『ギフトゲーム名

 

“FAIRYTALE in PERSEUS”

プレイヤー一覧

逆廻 十六夜

久遠 飛鳥

春日部 耀

黒ウサギ

“ノーネーム”ゲームマスター

ジン=ラッセル

“ペルセウス”ゲームマスター

ルイオス=ペルセウス

“サウザンドアイズ”

達皆上 百合人

 

クリア条件

・ホスト側のゲームマスターを打倒

・レティシア=ドラクレアの奪取

敗北条件

プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

ホスト側のゲームマスターによる降伏

プレイヤー側のゲームマスターの失格

プレイヤー側が上記の勝利条件を見たせなくなった場合

 

舞台詳細・ルール

*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスター除く)人間に姿を見られてはいけない。

*姿を見られてプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへと挑戦資格を失う。

*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行することはできる。

*なお、プレイヤー側 達皆上百合人はギフトの使用回数を一桁数までと制限する。

*また、ルールを破りし者には相応の制裁が加えられる。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下“ノーネーム”及び“サウザンドアイズ”達皆上百合人はギフトゲームに参加します。』

 

ギアスロールにはこのような事がかかれていたのである。

別に百合人が設定したわけではないのだが…やはり箱庭側は百合人のギフトを制限してきた。

制限される方はたまったものではないが…箱庭側もさすがだというところだろう。

しかし、このギフトの使用回数の少なさ…

さすがの黒ウサギも苦笑ものだった。

 

「制限されてしまうギフトというのは…しかも、数回なんて…

百合人さんのギフトはどのようなものなのでございますか?」

「んー…簡潔に説明するとしたら…

意味不明なほど不条理なギフトだな

。」

「といいますと?」

 

黒ウサギは不思議そうに聞いてくる。

自然と顔が近くなるが、百合人は気にせず続けた。

 

「そーだな…まぁ、いつか敵になるかもしれんやつらにあんまし情報はやれんなぁ…まぁ、でもヒントくらいはやるかな…」

 

百合人は机のうえにおいてある。

キャンドルスタンドを無造作に掴む。

そして…

 

「よっと」

 

キャンドルスタンドを違う形に変えて見せた。

しかも、そのキャンドルスタンドにはしっかりとキャンドルが設置されており、火がこうこうと燃えていた。

 

百合人が手をかざして火を消し終わると…

 

「ど、どういうことなのですかぁ!!???」

 

黒ウサギが奇声をあげながら頭を抱える。

むぅ…と百合人は呻くとため息をついた。

 

「どーした。黒ウサちゃんよ。

まぁ、俺のギフト見せたんだからもういいだろ?話進めようぜ?」

「く、黒ウサちゃん!?

ど、どーいうあだ名のつけ方をしているのですか!」

「えーだって、そっちの方がかわいいだろ?」

「えーじゃありません!」

 

「とりあえず話を進めようか?黒ウサちゃん。」

「……了解なのでございますよ。」

 

およよ…と黒ウサギはうさ耳を垂らしながら嘆く。

 

まぁ、その動作はかわいいものであるのだが…

 

「んー。よし、お前ら聞けよ?

今回のギフトゲームは俺が参加することになってる。

黒ウサちゃんも同様だ。

 

だから部隊を作って攻撃しようと思う。

異論はあるか?」

 

皆が首を横にふる。

十六夜は不服そうに百合人を睨みながらも話を聞いている。

 

「んじゃあ…

今回は三つの班に分けるぞ。

まずは

えーと 久遠飛鳥だっけ?と春日部 耀な。」

「ちょっといいかしら?」

「どーぞ。」

「私たちがチームを組んで戦ったとして、私たちは何をすればいいの?」

 

飛鳥は百合人の言葉を遮るように発言した。

その顔には明らかに疑問の表情が伺えた。

百合人は手で制しつつ、こう続けた。

 

「まぁ、まて。話は最後まで聞きなさいな。

戦うねぇ…そうだな。

確かに、お前らのギフトは強いし、使える。

だがな?

お前らまさか『自分たちが戦力として数えられてる』とでも思ってたのかよ?」

「な、なんですって!!」

「むっ…」

 

百合人の言葉を聞くと飛鳥は椅子を倒して立ち上がり、燿も不服そうに目を細めた。

百合人はそんな二人など意に介さず言葉を続けた。

 

「おいおい、感情的になるなよ。

確かに俺はお前らを『戦力として』は見てないが『囮として』なら見てる。

そもそも、お前らのギフトはこのゲームにおいて、あまり意味をなさないんだよ。

久遠、お前のギフト『威光』は詳しくは教えられないがとても強力なギフトだ、が…今のお前じゃあ、それを全く活かせていない。

宝の持ち腐れもいいとこだ。

それを初めての実戦に使ってみろ。

ただの足手まといだ。」

「な、なんて失礼なの!『非礼を詫びなさい』!!」

 

飛鳥は『威光』を使い、命令した。

しかし、百合人の口が一瞬閉じるがそれまでだった。

 

「…ふむ、なかなかの威力だ。

だが…

『喧嘩売る相手間違えてねぇか?小娘?』」

 

別に百合人は『威光』を使ったわけではない。

百合人が行ったのは明確な殺意をぶつける。ただ、それだけであった。

 

しかし、その行為は比較的平和と呼べる世界で過ごしてきた飛鳥を心のそこから恐怖させるには十分過ぎた。

 

「…っ!…」

 

飛鳥は小さく呻くとその場に膝をつく。

 

「…!?飛鳥!?」

「飛鳥さん!?大丈夫なので御座いますか!?」

 

素早く耀と黒ウサギが駆け寄りのその体に触れる。

しかし、その手は驚きによってすぐに離されることになる。

 

飛鳥の体は冷や汗で濡れていた。

それも凄まじい発汗量だ。

…一体何が…

耀は少し考えを巡らせるが思い当たることは一つしかない

 

しかし…その考えは飛鳥が意識を取り戻したように立ち上がったことで頭の隅におかれた。

 

「飛鳥!大丈夫!?」

「飛鳥さん!?」

「っつ!大丈夫よ。心配をかけたわね。春日部さんも黒ウサギも話しに戻っていいわよ…」

「そんなわけにはまいりません!

さぁ、お部屋へ…」

 

黒ウサギと燿が飛鳥を労わるように部屋へと付き添って行く。

百合人は呆れるように嘆息すると、

 

「しょうがねぇなぁ…作戦は明日に立てるか…」

 

百合人が部屋の扉を開け出て行こうとすると、

 

「待てよ」

 

今まで沈黙を保っていた十六夜がゆらりと立ち上がり言葉を放った。

百合人は不思議そうに動作を止めた。

 

「お、どうした?少年。」

「…おい、お前よ。

まさか自分が強いとか思ってあんなことを言ったんじゃねぇだろうな?」

 

十六夜はいままでに無いほどに激昂していた。

心の奥底から湧き上がってくる怒り。

 

しかし、百合人はとぼけたように言った。

 

「んー…どーだろうな…

実際俺は少なくともお前よりかは強いし、現に久遠があの状態なら足手まといも事実だろう?

そんくらい理解しろよ」

「あぁ?お嬢様が足手まといだぁ?

んなことは、あっちに行ってから決めればいい。

お前にとやかく言われる筋合いなんかねぇんだよ!!」

「…はぁ……呆れたよ。

まさか、感情論でしか言葉しゃべれねぇのかよ。

向こうで決める?

はっ!小せぇ頭ひねって考え出したのがそれかよ。

くだらねぇ!実にくだらねぇよ!!

バカなのかよ!

頭腐ってんじゃねぇのかよ!!!

 

ケンカ売んのもいい加減にしろよ?

クソガキが!」

 

百合人は大声をあげてそう言った。

さらに言葉は続いた。

 

「わざわざお前らの復讐を果たすために俺は挑戦権を獲得してきてやったんだろう?

なのに、文句なんか垂れてんじゃねぇよ!

おい、ガキ。

てめぇ、まさかとは思うが、

自分が強いとか慢心してんじゃねぇだろうな?

そんだったら期待外れもいいとこだな!」

「はっ!だったら期待外れかどうかは試してみるかよ!!」

 

こうして十六夜と百合人の実にくだらない争いが始まったのである。

 

 




どうもunworldでございます。
あれ?
どうしてもペルセウス戦に移行できないんだけど…
困ったなぁ…

さてと、百合人の行動にはちゃんとした理由も原理もあります。
それは次回で語るといたしましょう。

百合人のキャラが嫌いな方はごめんなさい。
もともと、争いの世界の中にいた設定なので口調も行動も荒くなるのですよ!
許してください!


痛いです!殴らんといてください


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『自重というのは大切なのでございますよ?…善処はしよう。だが、やめようとは思わない。』

テストがぁあああああああ

近くない


朝だというのに、ノーネーム本拠には不協和音が響いていた。

主に百合人のせいなのだが…

 

しかし、当事者の百合人はノーネームの大きな敷地の中で十六夜と対峙していた。

理由は十六夜にケンカを売られたからだ。

それ以外になかった。

 

百合人は今更こんな決闘的なことをやめるわけもないのだが、その割には目を瞑り、両手をズボンのポッケに入れていた。

十六夜は自信ありげな目で拳をうち当てた。

 

「なぁ、めんどいんでまた今度にしねぇ?」

「あ?そんなこと知るかよ!」

「…めっさダリィ…」

 

百合人はやる気を出そうとはしなかったが、やがて諦めたようにポケットから一つのコインを取り出した。

 

「いいか?このコインが地面に落ちたらゲーム開始だ。

行くぞ」

 

百合人はコインを親指で弾く。

銀色のコインは物理法則や何やらを無視せず軌跡を描き…

 

…カツン…

 

やがて地面に落下した。

刹那、十六夜は百合人の懐に人間の認知を軽く置いて行く速度で飛び込んでくる。

 

百合人はバックステップで下がる。

しかし、十六夜は体重をかけた拳を振るう。

それは空を切るが、放った場所から爆風が吹き荒れ、砂埃を巻き上げる。

 

「おっ?」

 

百合人は目をずっと瞑っているが、砂埃が巻き起こされたことはわかったらしい。

そして、百合人の真後ろから十六夜が飛び出しその体重をのせた拳が振り下ろされた。

 

…………

 

十六夜は百合人に拳を入れた瞬間。

 

…決まった!…

 

と思った。

これで百合人の鼻っ柱を折れると思っていた十六夜は自分を褒めた。

 

十六夜は見事策略で百合人を倒した…はずであった。

 

「…ってーな。

加減しろっつーの。」

 

十六夜は拳を瞬時にどけ後ろに跳躍する。

砂埃が晴れ、そこにいたのは…

 

足を突き出した百合人であった。

 

…嘘だろ…

 

十六夜の全力の拳を百合人の足は正確無比に捉えピタリと止めたのだ。

十六夜はこれを瞬時に気づき、圧倒的な差を実感した。

百合人が目を開いていたならまだ、納得出来ただろう。

しかし、百合人がしたのは目を瞑り手をポケットに突っ込んだ状態のまま蹴りを放ったのだ。

そして、十六夜の拳は全力であった。速度も威力も正確さも。

十六夜が思う中でも群を抜いて全力であった。

 

しかし、百合人の足は健全。

そして、何事も無かったかのように嘆息する姿は十六夜との差を実感させるには十分すぎた。

 

「くっそ!」

 

十六夜は再度百合人に突っ込む。

そして拳を振るうが…百合人の足が拳の進行を許さなかった。

 

「なんで焦ってんだ?

拳に感情が乗ってるぞ。

そんなんじゃ1000年修行しようが俺には勝てんよ。

甘いわ。」

「うっせぇんだよぉ!!!」

 

十六夜が拳を振るうと

 

ブオン!!

 

という音がなり、大地は抉られその威力が伺える。

そして、また同じことの繰り返し。

 

百合人は大きくあくびをし、つまらないと言わんばかりにこういった。

 

「もう…終わりにしようかな…」

 

十六夜は百合人の懐に入ろうと再度突入をしかけるが、

途中でなにかが振るわれそれが何処かに直撃。

十六夜は地面に顔をつけることと相成った。

 

「弱っ…」

 

百合人がやったことは簡単である。

十六夜が突撃してくる直前、拳の速度を超える踵落としを首もとに振り下ろすだけでいい。

 

なんていったって脚力は腕力の2.3倍あると言われている。

十六夜はそんなものを一瞬で受けたのだ。

しかも、十六夜は頭に血がのぼっていて動きは単調。

死線を幾度となくくぐり抜けてきた百合人にとっては比喩でもなんでもなく朝飯前だった。

 

…………

 

十六夜を退かせることに成功した百合人は一旦サウザンドアイズに帰ろうとしていた。

街中を歩いている時、急に街中から色彩が無くなり、影が街を覆いつくした。

 

「ほぅ…出て来いよ?『影法師』」

「流石は『黒百合』…」

 

街中を覆いつくした影が一点に集中し形を成した。

その形は人。しかし、全身真っ黒だ。

そして、その顔は笠に包まれみることは出来ない。

百合人は少し怒りを表しつつこう言った。

 

「これはお前の仕業か?白夜叉様に手ぇだそうてんなら…『影法師』。相手がお前だろうと…殺すぞ」

「いやいや、あんな化け物に手を出すほど私は腐ってはおりません。

それに、貴方にも。

ふふっ…正直貴方にかかれば私などすぐに殺されてしまうのでしょうね。」

 

影から聞こえる美しい女性の声。

そのため、性別は女性と判断がつく。

 

『影法師』と呼ばれた女性は凛とした声で百合人にいった。

 

「『黒百合』…貴方はサウザンドアイズにはふさわしくありません。

貴方の力はサウザンドアイズの手に負えるものではない。

私達が貴方にふさわしい舞台を用意しましょう。

私達『魔王連盟』は貴方を歓迎しますよ?」

「勧誘ならお断りだ。

俺は白夜叉様に大きな恩がある。

それを、俺は返すためにサウザンドアイズにいるんだ。

お前らには恩もねぇし俺が行く意味もない。

他人から作ってもらった舞台で踊るほど俺は安くねぇぞ?」

「残念です…でも、いつでも待っておりますので。

そうそう…今度私たちの一端…魔王が近々ギフトゲームを行う模様です。

その時は…『全力で殺し合いましょう?』」

 

こういうと『影法師』はその影を引かせる。

すると、街に色彩と活気が戻り、会話と喧騒が戻ってくる。

 

百合人は掠れたような声で独り言つ。

 

「『黒百合』の花は呪いの花だ。

その呪いに取り憑かれんように気を付けな。」

 

そして、ペルセウスのギフトゲームでも波乱は予想されるのであった…

 

ToBecontinu…




お疲れたああああああ!!!!!

誤字などあったらよーしくお願いします。



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『黒百合の花は呪いの花なのでございますよ?…だったら、呪ってやるよ。』

更新おくれちまいました。
眠気やばい


 

影法師と会うと、百合人は予定を変更してノーネームの本拠へと戻った。

しかし、空は黒く星がまたたいていた。

だが、その星も娯楽のために作られたものだと考えるとくだらなさが増してくる。

 

本機は静まり帰っており、皆寝ていることが伺えた。

百合人は静かにドアを開けて本拠へと入る。

そこには暗闇を照らしていたキャンドルの火が揺れていて、そこでは飛鳥が本を読んでいた。

 

百合人は気配を消して飛鳥の後ろへ回る。

飛鳥が読んでいるのは童話。

それも、グリム童話である。

 

「グリム童話ねぇ…」

「えっ?きゃぁぁ!!」

 

百合人のつぶやきに気づいたのか、飛鳥は後ろを振り向き、悲鳴をあげた。

百合人は耳を指で塞ぎ、不機嫌な顔で、うるさいと言った。

 

「大声をあげるんじゃないよ。近所迷惑も考えやがれ久遠」

「うるさいわね!仕方ないでしょう!驚いたのだから」

 

飛鳥にとって百合人はそんなに恐怖に値する存在だったのだろうか。まぁ、初対面で強大な殺意を向けられたのだ。

仕方のないことだろう。

 

「朝の事はすまなかった。

しかし、わけがあるんだなぁ。」

「えっ!?何よ、そのわけというのは」

 

飛鳥は切り替えが速い。良い意味でも悪い意味でもあるのだが。

百合人は空いていた席に腰掛けると話を始めた。

 

「俺は最初。お前らと初対面だった。

しかし、俺は何かの違和感を感じ取ったんだよ。

それがお前だ。久遠」

「私?」

 

一拍おいて百合人は続けた。

 

「そう。お前だ。

俺の知り合いに…いつか、お前らの敵となるだろう魔王がいる。

そいつに、お前はすれ違うか何かをしたはずだ。

そいつに、お前は『病』をつけられたんだ。」

「ちょっと待って。話についていけないのだけれど。」

 

飛鳥は理解出来ないと言わんばかり話を止める。

その動作に百合人は嘆息し、話を続けた。

 

「まぁ、簡単に言えばお前は敵の妨害を受けたと言っていい。続けるぞ。

 

お前が『病』を受けたのは偶然が必然かわからないが、その病はお前のギフトに憑依したんだ。

 

その病は『暴走』」

「暴…走?」

 

百合人は手でジェスチャーを加えつつ話を続けた。

 

「そうだ。暴走の病。それをつけられたお前のギフトは暴走を始めていたんだろうな。」

「どういうこと?」

「まぁ、お前の些細な言葉にギフトは意思に関係なく発動し、その霊格を付与してしまうんだ。

 

だが、俺がお前に大きな恐怖を与えたことにより、それは収まった。

はい、これでお話し終了。

もう寝ろ」

「いや、あの…」

 

その時、飛鳥の瞼は急激に重みを増し視界は黒く染まっていった。

…………

 

次の日、朝

 

黒ウサギは定刻通りに起床し、ダイニングへと姿を現す。

しかし、寝起きの黒ウサギの鼻を刺激する美味しそうな匂いがキッチンの方からしてきた。

 

「??」

 

黒ウサギは頭の中に疑問符を浮かべながら、ダイニングへと向かう。

しかし、寝起きの目は一瞬にして冷めることになる。

 

その理由は、長いテーブルの上にきちんと料理が並べられているのだ、しかも洋食を貴重とした料理である。

それも、並べられている料理は、なかなか手がかかる料理もあり、色彩も考えられていた。

 

「こ、これは」

 

黒ウサギの顔は驚愕の色で染まっている。そこへ、キッチンから声がかけられた。

 

「おお、黒ウサギ。起きたな。」

 

そこにいたのは、黒いエプロンをつけた百合人である。

百合人は凄まじいスピードで料理を作り続けている。

 

「百合人さん!?これを全て百合人さんが作られたのですか!?」

「この状況下で俺以外の誰が作ってんだよ。まぁ、味は保証出来んが食ってみろよ。」

「わ、わかりました」

 

訝しげに黒ウサギは席に座り、料理に恐る恐るに口をつける

 

「あ、美味しい…美味しいですっ!」

「お口にあってなによりだ。

さぁ、みんなを起こしてこい、朝食にしようか。」

「は、はい!」

 

黒ウサギはひょこんと耳を伸ばし、目にも止まらぬ早さでコミュニティメンバーを起こしに行く。

百合人はその姿を見て苦笑し、使ったフライパンなどを洗い始める。

どこまでも器用な男であった。

 

黒ウサギがメンバーを半ば強制的に起床させ、椅子に座らせる。

 

「こ、これは!」

「…美味しそう…ジュル…」

「どれだけ手がこんでいるんだ。」

 

新生の三人も驚愕している様子だ。まぁ、燿に至っては瞬間的に椅子に座ったのであるが…

 

百合人は手拭きで手を拭きつつ、椅子に座った。

 

「「それでは、いただきまーす!」」

 

それぞれの声がかけられ、皆が食事を始める。

しかし、一口食べると、手が止まった。

 

「お、美味しいっ!美味しいわ!」

「…………」(美味しそうな表情で食べ続ける)

「これは、かなり手がコんでるな…完璧だ」

「白夜叉様は毎日こんな料理を食べられるのでございますか…羨ましいのでございます。」

 

百合人の料理はノーネームにも大絶賛。

まぁ、百合人の世界では一人一人がこのような技術を持っていなければ生き残っていけなかったのだが…

 

全員が食べ終わると、百合人は席を立ちこう言った。

 

「腹ごしらえが終わったら、ペルセウス戦だ。

しっかり準備しとけよ」

 

百合人の言葉に誰かが唾を飲む音がした。

緊張しているのだ。

いくら、最強とも言える百合人がいるとはいえ、五桁コミュニティとのギフトゲームだ。敗北は許されない。

 

しかし、百合人はこう続けた。

 

「まぁ、余裕で勝てる相手だ。

緊張するなとは、言わん。今、緊張しとけ。現場でするなよ?動きも鈍くなるし、ミスる可能性も跳ね上がる。

だが、俺らは勝てる。なんたって」

「?」

 

百合人がそこで、言葉を切ると皆が疑問符を浮かべる。

だが、百合人は言葉を続けた。

 

「俺がいるんだからな。」

「!」

 

百合人が瞬間的に出した覇気は凄まじいものだった。

『黒き覇王』と呼ばれるにふさわしい覇王であった。

 

その瞬間、皆は悟った。特に200年を生きる黒ウサギは察した。

 

…あぁ…ダメだ。この人は次元が違う…敵に回したら…確実に

『殺される』…

 

その一時間後、ノーネーム一同は白亜の宮殿へと到着していた。

 

 

………

 

白亜の宮殿へとつき、久遠飛鳥はやっとこの舞台に立てたと高揚していた。

そこへ百合人が来た。

 

「よく眠れたか?」

「…あんまり、覚えがないわ。…そうね。多分ゆっくり眠れたんだわ」

「そっか…」

 

飛鳥は前日の夜の記憶が消えていた。それも『影法師』の仕掛けなのだろう。

百合人は嘆息し、白亜の宮殿の扉へと近づく、

 

「さて、みんなどう開ける?ドアノブついてないから引き戸か、押し戸か分からんが」

「何言ってんだ?達皆上、もちろん…わかるよな?」

「……そうだな。もちろん」

 

「「こうやって開けるに決まってんだろ!!!」」

 

二人の無慈悲な蹴りと拳が扉へと加えられ重厚な作りの扉はあっさりと、そして無残にも破砕されたのであった。

 

………

 

百合人達は二人を三分割し、それぞれの役割を果たすことにした。

まず、燿、飛鳥のチームは囮。

そして、黒ウサギ、十六夜のチームはペルセウスリーダーの打倒

最後に百合人、ジンのレティシア救出組。

 

なぜこのチームなのかは、戦力的に見て、これが妥当だとジンが判断したためであった。

しかし、当のジンは

 

「うぁぁぁぁ!!!!」

 

百合人の小脇に抱えられ、空中を飛んでいた。

このギフトゲームは見つかったらアウト。しかし、百合人は。

 

『見つからずに倒すなんて簡単だ。』と公言し、黒ウサギ達を驚愕させた。

 

しかし、百合人はやはり『強者』であった。

 

百合人はペルセウス側の分隊を罠に羽目させたり、出てくるところを爆破させるなどものの見事に見つからずに敵戦力を削っていた。

 

…しかし、

 

「さぁ、行け『天使』」

 

百合人の思わぬ方向に物語は進んで行く

 

……………

 

 

 

 




どうもunworldです。遅くなって申し訳ない。
お疲れで書いたのでかなり駄作ではございますが、楽しんでいただければ幸いですございます。


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『ペルセウスの計略はかなり巧妙でございますよ?だからなんだ。そんなもの圧倒的に不条理に俺が瓦解させてやる。』

どうもクリスマスも過ぎましたね。
サンタは来てもらった方もいると思います。
ちなみにうちのサンタはイブは夜勤でしたよ…

さぁ、新年近いですね。一気に投稿してしまいたい。


 

白亜の宮殿内はノーネームとペルセウスのギフトゲームで混迷を極めていた。

圧倒的数量で勝っているペルセウスであったが徐々にその数を減らしていた。

主な要因はノーネームの精鋭たちだ。

完全に十六夜と黒ウサギは強者。

ペルセウス側の兵士を見つからない内に避けるか倒して行っている。

 

だが、囮役として奮闘している飛鳥や燿も負けず劣らず囮としての役を真っ当していた。

 

しかし、ペルセウス側はそんなものを気にしてはいられない。

最大級の誤算が生じたのだ。

それは…

 

達皆上百合人の戦力であった。

今回のギフトゲームにおいてキーマンになる男。

 

ペルセウス側はいくらサウザンドアイズのエースだとしても50人がかりで行けばなんとかなると…思っていた。

しかし、百合人は『エース』ではない奴らは完全に見誤ったのだ。

百合人は『ジョーカー』なのだ。

 

完全無欠に切り札であった。

あり得ない力の差。

 

50人どころではない。彼には数百人用意しようと一瞬にして打ち倒すほどの力と実力がある。

ただ、それを使わないだけ。

しかも、送る兵全員が姿を見ていないという。一瞬のうちにして、吹き飛ばされ気絶させられたとそう言っていた。

 

しかし、ペルセウス側には秘策があった。

それはリスクも多い。

だが、やる価値はある。

 

そして、ペルセウス側は始めたのだ。

 

「やれ、天使達」

「…」

 

奥の間から白い羽に身を包んだ天使達が降臨する。

ペルセウスのリーダールイオスは白亜の宮殿頂上にて敵の出現を待っていた。

 

すると、

「見つけたぜ!ルイオス!」

「勝負なのです!ルイオス様!」

「いいだろう。だかな、お前らの相手をするのは僕じゃない。

 

出て来いアルゴール!!そして天使達よ!」

 

神霊アルゴールと天使達が召喚され、十六夜と黒ウサギは窮地へと追いやられる。

 

…………

 

その頃白亜の宮殿中腹付近

 

ドーンドーン

といい激しい爆発音が響く中、ペルセウスの兵達が爆風と爆発で飛んでいく。

 

「ぐぁぁぁ!!!」

「おらおらおら、止めてみろよ!!」

「達皆上さん…」

 

空を飛び交う兵士たちと、それを嘲笑するように暴れる百合人。その小脇に抱えられるジン。

 

何やらカオスである。見事に形容し難い図が出来ている。

 

百合人の攻撃方法はとてつもなく簡単。

ただ、拾った小石を投げるだけ。

 

しかし、十六夜のように投げた小石が威力を増して飛んでいくわけではない。

さすがの百合人も…出来ないわけでは無いが効率的ではないのでやらない。

 

百合人の投げた小石は真っ直ぐに敵へと飛んでいき、敵部隊の目の前に届くと突然に『爆ぜた』。

 

百合人のギフトは『あらゆるモノをあらゆるモノに変える』ギフト。その名も『イコール』

 

今回の場合はこのような方式に変換された。

百合人の投げた小石=手榴弾

 

つまり百合人によって投げられた小石は手榴弾へと変わり。爆ぜ、敵部隊を倒していた。

 

「ハァ!!味気ねぇなぁ!!」

「暴れ過ぎでしょう…」

 

百合人達は奥へと進み、大きめのドアを蹴破る。

すると、十字架に貼り付けにされたレティシアが見えた。

途端、ジンは百合人の腕から抜け、レティシアに駆け寄る。

 

「レティシアさん!レティシアさん!」

 

レティシアの拘束は硬くとても外せそうにない。

だが、しかし百合人は首を捻った。

 

…おかしい。何かがおかしい。絶対にこれだけで終わるはずが…

 

だが、百合人の思考は天井から降り注いだ光の矢のおかげで停止させられた。

 

「ジン!!そこから離れろ!!」

「えっ?」

「馬鹿野郎っ!!動くじゃねぇ!!」

 

百合人は全力でジンの元へと駆ける。

その過程で床は踏み砕かれ、風が吹き荒れる。

 

百合人はジンの元へ着くとジンを拾いあげた。

しかし、そんなところへ光の矢が降り注ぎ、百合人の肌や服を切り裂き、焼いてゆく。

 

「ぐっ!」

「達皆上さん!!」

「いいからじっとしてろ!」

 

やがて、光の矢が止むと百合人の体には十数本の矢が突き刺さり、幾つもの傷をつけていた。

 

傷つきながらも百合人はその矢を抜き、床に無造作に投げ捨てる。

 

「怪我してねぇか?ジン。」

「何、人のこと心配してるんですか!達皆上さんの方が怪我してるじゃないですか!!」

 

ジンは百合人に怒号をあげ、叱る。

しかし、百合人は苦笑しジンの頭を撫でる。

 

「気にするな。俺は大丈夫だよ。それから、俺のことは百合人でいい。達皆上なんて言うの面倒だろ?」

「…分かりました。」

 

ジンは渋々納得したという表情でそう言った。

百合人はジンの頭をポンポンとたたき立ち上がった。

 

「危険じゃないところにいろ。

お前はこの場じゃ足手まといだ。

それに

ここからは俺の仕事だ。」

 

百合人はギフトカードから巨大な両刃斧を取り出す。

それを軽々と担ぎあげると、地面に突き刺した。

 

「お前らは…何だ?ペルセウス側の奴らじゃねぇな?

だったら、規定違反だ。」

 

俺は『箱庭の貴族』今で言う黒ウサギの『審判権限』(ジャッジマスター)のなんてものは発動出来ないし、したくない。しかし、俺にはそれと似た力を発揮出来る。

『執行者権限』(アタックメントマスター)」

「聞いたことがある…執行者権限を持つものはこの大きな箱庭世界でもたった数人しかいない。

それも一人一人が一級魔王かそれ以上の力を持つ…でも、なんで百合人さんが…」

 

ジンが驚くのも無理はない。

執行者権限はあまり知られてもいないし実用化もされていない。

執行者権限を持つのは、箱庭世界でも極僅か。

 

百合人もその一人として箱庭側から手紙が届き、その任についている。

そして、百合人には執行者としての役目がある。

ゲームをきちんと執り行うために、執行者にはある権限が許可される

 

それが『執行者権限』。通称アタックメントマスター。他にはエクスキューションマスターなんて呼び名も存在する。

 

この執行者権限はゲームに介入することができ、不正をしたコミュニティの制裁執行や、ゲームの関与。

場合によっては参加をし、魔王と戦う義務がある。

その魔王とのギフトゲームでは執行者権限を持つ者はギフトゲームを勝手に抜けても問題にはならない。

 

そんな権限持つ百合人がこのギフトゲームに参加していたのだ。

不正をしたコミュニティには

 

『制裁を』

 

「さぁ、執行開始だ。」

 

百合人は執行者となり、このギフトゲームを蹂躙し始めるのであった…

 

 

 

 




あーあー

更新遅れてすいません。

イ、イソガシカッタンデスヨ。ホントデース。

明日か今日中にはもう一個投稿してしまいたいですね、


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『ペルセウスが崩壊なのでございますよ!?経験則をなめるんじゃない。殺すぞ。このやろう』

さて、と。

過激なタイトルからのスタート


 

 

百合人は怪我をしながらも執行者として活動を始める。

執行者権限が使用され百合人のギフト制限は解除というか無視される。

 

「おい!ジン!!」

「は、はい!」

「じっとしてろよ!!」

 

百合人はそういうとまるで弾丸のように飛び出す。

その間にギフトカードに斧をしまい黒く長い棍に小槌がついたギフトを取り出す。

 

「崩せ『自在崩』」

 

取り出したギフトを天使達に振るう。

その勢いは凄まじく大気を薙ぎ衝撃を伝える。

しかし、

 

「…マジかよ」

 

その鎚は天使に当たる寸前。不可視の壁に阻まれ止まった。

百合人は盛大に舌うちをすると、

 

「…めんどいなっ!!『自在崩・殴打』!」

 

再度天使に鎚を振るった。

しかし、やはり結果は同じ不可視の壁に阻まれて止まった。

 

百合人は地面を蹴り天使の目の前へと跳ぶ。

 

天使達は驚いたのかその場所から飛翔し下がろうとした。

しかし、

 

「さぁて…やってやるぜ。

壊滅しろ『自在崩・零落』!!」

 

振るわれた剛撃は凄まじい威力を持ち、天使達を襲う。

しかし、やはり不可視の壁に阻まれる。

 

そして、百合人が地面に降り立った刹那。

天使達からの光の矢が雨あられと降ってくる。

百合人はその攻撃をかわして次の攻撃を行おうとする。

 

ギフト『自在崩』は長い棍と小槌が漆黒の色をし合体した形のギフトである。

自在崩のすごいところは。

衝撃波を自在打ち出せるということだ。

一発の攻撃で三発の威力の攻撃を行うことが出来る優れものだ。

あらゆるものをその衝撃波でぶち壊す。だから自在崩。

 

このギフトは百合人の知り合いが百合人のためだけに開発し作ったギフトだ。

百合人がよく使うラブリュスもそうだ。

 

百合人はそんなギフトで天使達に挑んでいるわけだが、全く突破口が見えない。

 

「本格的にめんどいぞ…」

 

百合人は困り果てた顔をして首を捻る。

その時、何かがひらいめいたのか。ジンに

 

「ジン!!」

「は、はい!何でしょう!」

「少しだけでいい。目を瞑っていてくれないか?」

「?はい…」

 

ジンが目を瞑り、その上から手で抑える。

 

「ありがとう」

 

百合人は一言そう言うと。

右手の包帯を解いた。

 

その隙間から黒いモノが見え隠れし、ついには

漆黒の腕が露わになった。

 

「行くぜ。お前らはスクラップだ。」

 

百合人は黒い腕に力を込めるとその場所から『消えた』

 

「!!!?!」

 

さすがにこれには天使達も反応出来なかったようで驚きを隠せないでいる。

 

「潰れろ」

 

百合人の声は天使達の後ろから聞こえ天使達は驚き振り返った。

 

「ぎっ…」

 

…天使達の断末魔は小さかった。

 

百合人は凄まじいスピードで天使達の頭を掴み

 

 

握り潰した。

 

グシャァという音と共に天使達の残骸が地面へと落下した。

バラバラと崩れていく肉体。

だが、百合人が握り潰した天使達の頭は全て機械仕掛け。作り物で偽物だ。

しかし、どれだけ精巧に造ったのだろうか。百合人の手には鮮血がこびりついていた。

 

「ちっ…」

 

百合人は飛び散った鮮血を払うと、目を瞑っているジンの元へと向かう。

 

「ジン。もう大丈夫だぞ。」

「あ、はい。」

 

ジンは目を開けるとすぐにまた目を瞑る。

やはりいきなり明るいところに出ると明順応などはしないのであろう。

 

百合人は苦笑すると、レティシアの拘束を無理やり外す。

レティシアは倒れ込むように百合人の胸に収まる。

 

百合人は驚きつつ、そこらにあった小石を拾い上げそれを毛布に変えレティシアに被せた。

レティシアをお姫様だっこしつつジンに近づく。

 

「ジン。みんなの元へと向かおう。」

「あ、はい。分かりました。」

「ジン。俺の首に掴まれ。」

「え?」

「早くしろ」

 

ジンが言われた通り百合人の首に捕まる。

その瞬間。

 

百合人は駆けた。

 

誰よりも速く速く、邪魔する敵は蹴りだけで薙ぎ払い。

最上階へと上りつめようと駆ける。

その間。ジンは振り落とされまいとして全力で首にしがみついていた。

 

そして、最上階へと百合人達は辿り着く。

だが、そこで待っていた光景は

 

逆廻十六夜がギフトを打ち砕き、黒ウサギが無双している光景。

 

 

 

 

であるはずだった。

 

そして、なぜか飛鳥や燿が最上階にいて気絶して倒れていた。

黒ウサギもギリギリ立っていて、十六夜に至っては片膝をついていた。

 

百合人は上空を見上げ驚愕し呆れた。そこには先ほどの二体では比にならないほどの天使達がいた。

 

ジンは言葉も出ず立ち尽くしていた。

 

そこへ

 

「やあやあ、負け犬諸君」

 

という言葉と共にペルセウスのリーダールイオスが降りて来る。

 

「ルイオス様…どうやってこれだけの大群を…」

 

黒ウサギが息も絶え絶えルイオスに聞いた。

 

「んー?これはレプリカだよ!!レプリカ!!お前らはレプリカに負けるんだよ!!

それになぁ、達皆上ィ!!」

「…」

「俺はお前がこのギフトゲームに参加すんのを心待ちにしてたんだよ!!!

お前を心起きなく潰せ、そして、お前を倒すことが出来るんだからなぁ!!」

「…」

「あぁ、そうだ。

お前の手にいる奴隷と月のウサギを貰わなくちゃなぁ!!

はっはっ!今から胸踊るネェ!!

どうやって陵辱してやろうかなぁ!!」

 

ルイオスの言葉に黒ウサギは青ざめ同時に悔しそうな顔をした。

 

…勝てない!!…

 

黒ウサギは俯きそして、頬から一筋の雫が落ちた。

 

「まぁ、でも…力の差を教えてやらなきゃなぁ!!!!」

 

ルイオスがそう言うと天使達が一斉に弓を構え、引き絞る。

そして、天使達はその指を離し矢を放った。

 

「お前らの負けだ」

 

ルイオスは勝ち誇ったようにいい。

黒ウサギ達は某然とした。

さすがの十六夜も悔しそうな顔をするばかり。

 

しかし、

 

「なぁ黒ウサギ。レティシアを頼む」

「えっ?ちょっ…」

 

百合人がいた。

百合人は黒ウサギにレティシアを預け、ルイオスの方に踏み出す。

 

そこへ、舞台全体に矢が降り注ぎ、ノーネームの全員が諦めた。

 

 

そして、矢はノーネーム達に突き刺さる。

 

 

 




連続とーこうっ!!

さてと、もう一つもやりますわ、


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『ペルセウス編最終話なのでございますよ?これが俺の勝利の方程式だ!』

元旦ですね。2013年もあと少し。




『ペルセウス編最終話なのでございますよ?これが俺の勝利の方程式だ!』

 

ルイオスは勝ち誇ったようにステージを見つめる。

ルイオスの策は完璧。

 

「勝った!!勝ったぞ!!

俺はあの『覇王』に勝ったんだ!!」

 

ルイオスは狂ったように高笑いをして、勝ちを確信した。

生きてるにしろこの矢の中では無事ではすまない。

 

「はっはっはっ!!!」

 

ルイオスは勝ち誇り舞台を去ろうとする。

だが、

 

「…待てよ。ルイオス」

「…は?」

 

ルイオスは素っ頓狂な声をあげ、振り向いた。

声の主は…

 

倒したはずの百合人であった。

その姿は煙で見えないが、声は確実に百合人であった。

 

「はっ?はっ???

はぁぁ!!!!????」

「よぉ、ルイオスぅ…

お前は勝ったように思ってんだろうが…甘ぇなぁ…

死体を確認してから勝ちを確信しろよ。」

 

ルイオスは意味が分からないと言わんばかりに声を荒げた。

「なんで!なんでぇ!!

てめぇが無事なんだよ!!

あの矢だぞ!!!光の矢だぞ!!

 

ふざけんな!!!」

「無事?ほざけよ。

無事なわけねーし。」

 

煙がはれ、そこには。

体中に矢が刺さり、体中から血が流れている百合人がいた。

 

「な、なんだと…なんでそんなんで生きていやがる!!」

 

しかし、ルイオスは気付いた。ノーネームの連中には傷一つついておらず、ましてや、その近辺には矢が刺さっていない。

 

「…っお前!」

「うっせぇな…体中痛ぇし、もう動きたくないんだよ。

 

だけどよ。

 

お前、黒ウサギを『陵辱』するとか言いやがったな?

レティシアを『売買』しようとしやがったな?」

 

「だからなんだよ!!」

 

「はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな貴様ァァァァ!!!!!

 

ぶっ殺すぞ!!」

 

百合人は咆哮した。

その咆哮は大気を響かせ、あらゆるモノを薙ぎ払い大地を削り取り轟いた。

 

「…っっ!!」

 

ルイオスもさすがに驚いたのか、後ろに下がった

そこに、百合人はゆっくりと歩みを始めた。

 

「ルイオス、貴様は俺の地雷を踏んだな?

 

ルイオス、貴様は陵辱などと鬱つを抜かしたな?

 

ルイオス、貴様は人の権利を無視し嘲笑ったな?

 

俺はお前を潰す。

 

跡形も存在も残らず消し去ってやる。

 

許しを乞え、ルイオス。

それでも許す気はないがな」

「ふざけるなぁ!!!

天使達放てぇ!!!!」

 

ルイオスは怒り、天使達に命令した。天使達は弓を構え放った。

 

「くだらない…

 

 

打ち砕け。『空亡』」

 

百合人がそういうと大きな漆黒の球体が姿を表した。

 

「なっ…なんだこれは…」

「…百合人さん…」

 

黒ウサギとルイオスは驚愕し空を見上げた。

だが、天使達の矢が空亡へと突き刺さり空亡を潰す。

 

はずであった。

 

空亡は光の矢を吸収し、大きく膨れ上がる。

そして、

 

空亡から黒い腕が出現し天使達へと襲いかかる。

天使達は避けようとするが、無駄。

 

空亡は最強の常闇の妖怪。

あらゆる希望を打ち砕き、何もかもを喰いつくす。

闇だ。

 

例え、敵が神の使い天使であろうと空亡はそれを喰いつくす。

 

「…嘘…だろ…俺は…俺は夢でも…見てる…のか…」

 

ルイオスは膝から崩れ落ち、愕然とした。

あまりにも不条理過ぎた。

 

圧倒的に不条理で最悪過ぎた。

 

自分の策など『この化け物』にとっては塵芥も同然だったと言うのだろうか。

 

「あぁぁ…ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

空亡は天使達全てを喰いつくし、大空へと浮上した。

そして、降りて来る。

ゆっくりゆっくりと

 

「貴様は………化物かぁぁ!!!

 

鬼か!

 

悪魔か!!

 

神なのか!!!

 

お前は人間じゃない!!!

 

この『不条理』めぇぇぇ!!!!」

 

ルイオスは百合人へと罵声を浴びせる。

だが、百合人は意にも介さず告げた

 

「あぁ、その通り。

俺が不条理?

 

鬼だ?

 

悪魔だ?

 

最悪だ?

 

いいや、俺は人間だ。

 

悪いな。

 

 

褒め言葉だよ。」

「ぁぁぁぁ!!!」

 

ルイオスは絶望し、思った。

 

なぜ、俺はこんな奴を敵に回したんだ!!

 

百合人はにこりとして手を振り下ろした。

 

「さよなら。伝説の勇者の末英。

 

対したことはなかったよ」

 

ルイオスの上に空亡が落ちてきて白亜の宮殿ごと喰らいつくしたのであった。

 

 

…………

 

ノーネーム一同と百合人はノーネーム本拠でバーベキューをしていた。

百合人の横にはレティシアの姿があり、その姿はメイドそのもので、青と白のドレスに身を包んでいた。

 

黒ウサギと十六夜。飛鳥と燿。

この四人も笑顔でジュースをのんでいた。

 

百合人は設置してあった木製の長イスに腰掛けグラスを煽る。

 

「失礼するぞ。百合人」

 

レティシアが近づいてきて、百合人にそう言う。

百合人は、肩を竦め、ジェスチャーした。

 

「どうぞ。レティシア」

「ありがとう。」

 

レティシアはクスリと笑い、ドレスの両裾を軽く持ち上げ、お辞儀をした。

百合人はびっくりすると、クスクスと笑った。

 

「なんですか?そんなことしなくても良いんですよ?レティシアさん」

 

百合人は笑いながら口調を正した。

しかし、その口調に渋い顔をし、意見を述べたのはレティシアだった。

 

「む、その口調はやめてくれと最初に言ったじゃないか。

百合人。変わりないようだな。」

「そりゃあそうですよ。

達皆上百合人はそう簡単に変わらないですよ。」

 

百合人は空を見上げそう言った。

そして、百合人はペルセウス座があった場所を見上げ仰いだ。

 

ペルセウスは今回の敗北により星座から降ろされることになった。

その後のペルセウスの処遇は、あるコミュニティに任せた。

百合人がよく行くコミュニティでペルセウスのことを悪くしないだろう。

 

「なぁ、百合人。お前の膝の上に乗ってもいいだろうか…」

 

そんな声を聞き、声の主の方に向く。

そこにはレティシアがいた。

レティシアの頬はほのかに赤みを帯びていて、瞳はすこし潤んでいるようにも見える。

 

「…別にお好きにどうぞ。」

「失礼するよ。」

 

レティシアはなぜか百合人の膝にちょこんと座った。

 

うーんと百合人は頬をかきつつ、問いた。

 

「どうしたんですか?レティシアさん、貴女にしては珍しく積極的ですね。」

「酒が回っているのかもしれないな…うむ、きっとそうだ」

「…でしょうねぇ………」

 

百合人はレティシアの頭に手をおき、サラサラと撫でる。

レティシアは気持ち良さそうにしていて、抵抗しない。

 

だが、撫でている左手には包帯が巻かれており傷も浅くはないだろう。

レティシアはそれに気づいたのか、ふと、百合人の手をとって、さすり始めた。

 

「私のためなんかに…こんなになるまで戦ってくれたんだな…

心からお礼を言わなければいけないな。」

「お礼なんてよして下さい。

俺はレティシアさんを救えたならそれでいいですよ。

それに、そもそも俺はお礼を期待なんてこのギフトゲームに参加してませんから。

 

だって、俺は

レティシアさんを救いに行ってたんですから、救えただけで満足です。

それで、お礼を貰うなんて勿体無いですから。」

 

レティシアはキョトンとすると、急にクスクスと笑う。

百合人は少しムッとして、言った。

 

「ちょっと…珍しく結構真面目だったのに、笑わないで下さいよ。」

「ふふっ…すまない。

つい、な。

本当に百合人は優しいな。

 

私はそんな優しい百合人が

 

 

好きだ」

「え?…んっ…」

 

レティシアはそう言うと百合人に向き直った。

百合人は言葉を紡ごうとして止めた。

否、止めさせられた。

 

レティシアは百合人に向き直ると、

 

百合人にキスをした。

 

頬ではなく唇にだ。

 

静寂が二人を包み込み、少ししてからレティシアは唇を離し、ほぅと呟いた。

百合人の方は何故か落ち着き払っている。これも経験が成せる技なのであろう。

 

「ふふっ…どうだったかね?」

「まさかキスされるなんて思っても見ませんでしたから、

 

ま、でも。緊張くらいはしましたよ?」

「少し酒臭かったぞ?」

「それはお互い様ですよ。

レティシアさん。

 

とりあえず、ありがとうございました。」

「こちらこそ。

ではな。百合人、また明日」

「はい。おやすみなさい。」

 

レティシアは百合人の膝から下りると本拠に帰ってゆく。

いつの間にか、黒ウサギ達もいなくなっており、百合人一人だ。

 

百合人は星を見上げ、ため息をつく。

それでも、その顔は少し微笑んで見えた。

 

「さてと、明日はどんな日々になるのかな?」

 

百合人はそう言うと、本拠に帰って行く。

 

さぁ、紡いで行こう。

百合人とノーネーム達との物語は始まったばかりなのだから…

 

…………

 

 




さてさて、どうもunworldでございます。
さぁ、どうだったでしょうか、
『問題児達と元殺し屋が異世界から来るそうですよ?』
これにて終わ「何を言ってるんでございますかー!!この作者様!!」
バチコーン!!

痛いんですが、黒ウサギさん。

黒ウサギ「なに勝手に最終回的なノリにもっていってるんでございますか!!
まだ全然終わらないですよ!
終わらせないのでございますよ!!」

いや、だってね。
ちょーど良かった感じだったよね。
ほら、アレだよ。
レティシア√完結!的な?

黒ウサギ「何を言ってるんでございますか!!
本来の目的はそんなんじゃないでしょう!!
しっかりしてください!!」

うるへー。こちとら忙しんだよ。
いろいろあるんだよ。

結構忙しかったり忙しかったりするんだよ?
現代をなめちゃいけないよ?

黒ウサギ「全く関係ないですよね!?
関係性を見出せないんですが!?」

わったよー。仕方ねーな。
ってな、訳で茶番はこれくらいにして…

まぁ、連載は続けますよ。
上のはタダのネタです。
気にせずどーぞ。

さて、次回からはペスト編。
いろいろ頑張ってやってみます。

みなさんそれではよいお年を!!


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ペスト編は始まります。しかし、きっと長めの予感
『ペスト編開始なのでございますよ?なんだ?魔王襲来の予感かよ』


風邪気味ですたい。

みなさんも気をつけてください。


ペルセウスとのギフトゲームが終わり、のんびり過ごすことを決めた百合人であったが、そんな時、百合人の元にコミュニティサラマンドラの外交官が来ていた。

その内容は

 

「火龍誕生祭?」

「はい。『黒き覇王』達皆上百合人殿には是非参加していただきたく思います。

それとノーネームの皆さんにも招待状を送っておきました。」

 

百合人は眠そうに、そして割と気怠そうに応える。

そして、曖昧な答えを出したのだった。

「いやぁ…まぁわからんな…

 

サンドラ達には世話になったし行きたいのは山々なんだが、生憎俺は立場上忙しいんでなぁ…

まぁ、考えとくよ。ありがとうな」

 

百合人がそういうと外交官は、驚いたような顔をした。

 

「お礼などとんでもございません。

私達は達皆上殿には感謝してもしきれません。

私達が魔王に襲われ、コミュニティが潰れかけた時、救って下さり、そして、魔王も撃退して貰った恩は忘れる訳には行きません。

 

あのゲームの采配は見事の一言につきます。

私達では到底あのような見事な勝利は出来ませんでした。」

 

百合人は少し苦笑しながらも、うーんとつぶやいた。

その顔は僅かに気恥ずかしいそうだ。

 

「俺は別に何にもしてないさ。」

 

百合人はそう言うと、外に出る。

空は青く澄み渡っていて、雲一つない晴天だ。

百合人は空を見上げると、大きく伸びをして、

 

「なぁ、俺は空が好きなんだ」

 

突然、そう言った。

外交官は、その言葉に「はぁ…」と素っ頓狂な声を上げた。

百合人は苦笑し、地面へと座った。

 

「この箱庭の世界は良い。

人々が笑っている。

ゆっくりと寝れる場所がある。

人が人と協力しあえるコミュニティというものもある。

 

なにより、空が綺麗だ。」

 

百合人がそう言うと、ふわりとそよ風が吹き抜け、百合人の髪はそよ風に靡かれる。

外交官はその姿を見つめるだけで、何も言おうとはしない。

 

「俺の世界は、こんな素晴らしい世界じゃ無かった。

人の顔からは笑顔が消えて、

おちおちと寝てもいられなかった。

人と人とは裏切りあい、殺しあった。

 

そして、空はどす黒かったよ。

汚かった。

だから、俺はこの箱庭世界でみる空が一番好きだ。

俺はそれを守って行きたい。

魔王と戦うのはそのためだ」

 

百合人は少し苦笑しつつも、昔を思いだしながらそう言うと、立ち上がった。

そして、外交官に近づいた

 

百合人はポケットから小袋を取り出し、外交官の手に置いた。

 

「こっからサラマンドラまでは少し遠いだろう。

『境界の門』を使うといい。

このお金でなんとかしてくれ。」

「!!」

 

外交官はその中身をみて驚愕した。

確かに、境界門は使用料金が高い。

しかし、百合人が渡したお金はその金を差し引いても、余り過ぎる。

外交官は小包を百合人に返そうとした。

 

「いけません!!こんなにいただけません!!」

「いんや、それは貰ってくれよ。

俺は別にそんな金失っても、損害に入らんからな。」

 

「なっ!どれだけお稼ぎになっているんですか!」

「いや…魔王討伐とかやってると自然にね。」

「とにかくこれはお返しいたします!!」

「これを受け取ってくれないなら、俺は火龍誕生祭に行かない」

「なっ………分かりました…

お気遣い感謝いたします。」

 

そういうと踵を返し、サラマンドラへと戻って行く。

百合人はすこし伸びをし、本拠へと戻ろうとドアを開け踏み出した瞬間。

 

「…あっ…やべ。くっそ。気ィ抜いてたわ…」

 

百合人は自分の行いを後悔した。

…百合人の目の前に広がっていたのは純白で過度な装飾が施された門。

 

次の瞬間、いきなりその扉がギギギィと鈍い音を立てて開き始めた。

 

その扉の隙間から光が漏れ百合人を包み込む。

百合人は、はぁ…とため息をついてその扉へと入ってゆく。

 

「仕方ねぇな…」

 

その扉は百合人が入っていくのと同時に閉じてゆく…

まるで意識があるように。

 

百合人は箱庭世界でも貴重な『執行者権限』の持ち主。

その力はとてつもなく強大である。

ギフトゲームの中でこの権限を持つものがいるかいないかでは、大きな差がでる。

しかし、巷ではこの『執行者権限』を持つものを倒せば、倒したものに『執行者権限』がうつる。と考えられており、百合人は度々こうやって襲われたりするのである。

まぁ、それは他の『執行者権限』を持つものも同じくだが…

 

今回の敵はいつも襲って来るようなひ弱なやつではないだろう。

明らかに修羅神仏。それも並大抵のものではない強大なものであると推測できる。

 

百合人が扉の中にはいりきると、重厚な扉は閉じ、暗黒な空間が広がった。

だが、すぐにスポットライトが点滅し、百合人を照らす。

百合人はあまりの明るさに目を薄く閉じながらも、周囲を観察する。

 

そこは…

 

「っ…舞踏場?」

 

百合人が立っているのは舞台。

しかし、それを見てる人物は一人しか見当たらない。

その男は黒いタキシードに身を包み、白い手袋をした手で拍手をした。

その不可思議な人物に百合人は警戒心を最大にしつつ質問をぶつけた。

 

「お前誰だ?」

「私か?いやいや別に対した人物ではないさ。

名前などというものはないさ。

ふむ、そうだな。『男爵』とでも呼んでくれると助かるな。」

 

名無しの男。いや、男爵は百合人に笑みを送った。

 

その笑みに百合人は多少イラついた。

 

「んじゃあ、男爵ゥ…ここはなんだ?」

「舞台じゃないのかい?」

「んなこと聞いてねぇよ。

ここは、おまえの舞台なのか?」

「…」

 

男爵は応えない。

 

つまり…

 

百合人は拳を構え、力を入れた。

 

そして、床に向かって拳を振り下ろした。

百合人の拳によって、舞台は爆散する。

その行動を見て男爵は笑った。

 

「はっはっはっ!!!実に面白いよ!!

達皆上百合人君!!」

「この野郎っ!!

消し飛んどけ!!!」

 

彼は舞台の破片を足場にし、男爵に拳を浴びせようとする。

しかし、男爵も紙一重でひらりとかわし、後ろに飛んだ。

 

こうして、百合人と男爵の戦いは始まった…

 

 

 

 




えー、皆々様明けましておめでとうございます。
新年の挨拶が遅れまして申し訳ありません。

この回からペスト編開始でございます。
楽しみにされている方。少々お待ちください。

私のように風邪などかからないようお気をつけくださいませ。


では。


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『ペスト編始まるのでございますよ?悪ぃ、俺は行けねぇわ。』

二週間に一回投稿のスピードを上げたいな。


 

 

男爵と百合人の戦いは始まったのだが、男爵は自分からは攻撃をしてこない。

主に百合人が攻めるばかり。

 

「ねちねちとうぜぇな…」

「これが私の性分だからね。」

 

しかし、男爵の攻撃妨害はさすがなモノだ。

的確に百合人の攻撃や足場を崩してくる。

上手い妨害。

それが百合人のイラつきを加速させていた。

 

百合人は妨害してきたモノを妨害し返すという姑息な手に出てみたがまるで効果はない。

むしろ妨害してきたモノを妨害し返したモノを妨害するということをされたのだ。

 

百合人の思考は男爵に完全に読まれている。

あたり前に百合人にとってはとてつもなく気持ちが悪い。

 

しかし、百合人は男爵の思考が全く読めない。

 

百合人をこんなにも焦らせているのは、恐怖か直感か…

 

仮に恐怖だとしたら、何に怯え、何を恐れていると言うのだろう。

男爵の底知れぬ実力だろうか、いや、違うのだろう。

もし、仮にだ。百合人が男爵に恐怖を抱いているならきっとそれは…

 

男爵の微笑の裏に隠された怨嗟に恐怖しているのだ。

百合人は感じていた、彼が男爵が並の怨嗟を宿していない。

少なく見積もっても、大悪魔ほど神と同等の存在であることは一目瞭然であった。

 

百合人は微笑をすると、言った

 

「けっ!!面白れぇ…

 

俺の『不条理』でその微笑崩してやるよ!!

おらぁ!!こいやぁ!!」

 

男爵は素っ頓狂な顔をしたかと思うと、虚空から剣を取り出した。

その剣は禍々しくも、破壊的な印象を持てた。

 

「挑発には乗る気はあまりないですが、いいだろう。

その挑発買わせてもらいます。」

 

男爵はそう言うと

 

刹那、百合人の前に出現した。

 

「なっ…」

 

そして、男爵は振り下ろす。

優雅に可憐に荒々しく破壊的にその剣を

 

「喰らいなさい。『カラドボルク』」

「!?あぶっ!!」

 

男爵はカラドボルクを振り下ろし、軌跡の線上の物を真っ二つに斬り裂いた。

百合人の反応が少しでも遅れていたら、今頃彼の命はなかっただろう。

しかし、それでも彼の頬から血が流れた。

 

「ふむ、これは私の友人から借りているものですが、なかなか斬れ味がいいようだ。

それにしても、覇王殿はよくよけましたな。

 

確実に反応できないと思ったのですがね。」

 

百合人は頬の血を腕で拭い、言った。

 

「舐めてんじゃねぇよ。これでも、一応覇王だぞ。

 

さて、次は俺のターンと行こうかねぇ…」

 

そう言うと百合人はギフトカードを取り出す。

そして、それは淡く紫色に発光し、彼の手に集まり、形を成した。

 

「到来せよ。『ラブリュス』」

 

その形は両刃斧。

ラブリュスは天災を操る武器の原型ともされているのである。

 

例としては、雷神 トールの武器『ニョルニル』

 

その原型ともされているのが、両刃斧、ラブリュスである。

そのギフトの効力は言うまでもない。

 

【天災を操るギフト】である。

 

そんな武器が百合人の手に形を成した。

神鳴が鳴り響き、ありとあらゆるものに放電を始め。

大気は荒れ狂い暴風が吹き荒れる。

地面は揺れに揺れ、足場を崩す。

 

そして、彼は横暴に残虐に無慈悲に不条理にその武器を振り下ろした。

 

「ぶっ飛べ」

 

その一撃は男爵が咄嗟にとった防御を意味のないものにし、その暴風で男爵を吹き飛ばした。

 

男爵はその一撃に苦悶の表情を浮かべた。

しかし、その口元にはうっすらと微笑が浮かんでいた。

 

「なかなか辛い一撃ですね…しかし、まだですよ」

「何言ってんだ?一撃な訳ねーだろ」

 

百合人がそういった瞬間。

 

バチィ!

 

何処からか放電をするような音がした。その音がしたのは男爵の体からである。

 

そして、男爵の体を雷が焼いた。

 

「がっ!」

 

それは刹那の出来事であった。

男爵は反応することも出来ず、雷に焼かれた。

体からは煙が立ち込め、服も所々燃えていた。

 

しかし、百合人は男爵が死んだとは微塵も思わない。

こんなので死ぬようじゃ2.3流の魔王ということになってしまう。

だが、この男爵という魔王はきっと1流いや、超一流。

世間に名の通った魔王なのだろうということは神話などに精通していない百合人にでさえわかった。

 

「これは…なかなか効きましたよ…」

 

あたりから立ち込める煙から男爵の声がした。

百合人は嘆息し言った。

 

「そのわりには、ピンピンしてんじゃねぇか。まぁ、こんくらいで死なれちゃぁ、俺の楽しみが減るってだけだがな。」

 

百合人はラブリュスを構え直す、なぜなら、男爵の力が凄まじく跳ね上がったからだ。

 

男爵は笑っていた。心底、楽しむように、不気味に笑っている。

 

「あぁ、何年、いや、何十年、いや、もっと!何百年ぶりでしょう!!

 

こんなに心躍る戦いは、戦神と戦ったときか?

 

世界の豪傑達と手合わせをした時か!?

 

それともあやつらと『金糸雀』達と戦ったときであろうか!?

 

いやいや、まことに楽しみだ。

さぁ、人間よ名乗れ。

 

貴様の名前新たに我が記憶に残そうではないか!!」

 

男爵は笑い、百合人に問うた。

そんな男爵とは裏腹に百合人は心底不快そうな表情を浮かべた。

 

「それが、お前の本性か…

 

俺の名前は『達皆上百合人』

巷じゃあ、『黒き覇王』なんてよばれちゃあ、いるが覇王とか呼ばれる実力は無いわなぁ。

 

まぁ、でも今面白いことを聞いた。

 

なぁ、男爵。

今お前『金糸雀』とか言わなかったか?」

 

男爵は会釈する。

 

「ふむ、言うたな。

お前がいう『金糸雀』とはまた違う者かもしれぬがな。

あやつがどうかしたのか?」

 

その言葉に百合人は固まった。

 

どうかしたのか?

 

それはこちらのセリフであった。

百合人は空中に浮遊する男爵にラブリュスの刃を向け問うた

 

「お前は俺の質問にしっかり答えろ。

そしたら、俺は全力でお前と戦ってやるよ。

 

なぁ、男爵答えろ。

 

 

500年ほど前

 

俺のいた世界

 

『マザー』を

 

攻撃したのは…

 

お前らか?」

 

 

百合人は問うた。

この世界に、復讐をするために。

そして、この箱庭を殺すために…

 

 

 




「次回、ついに百合人の過去が!
えっ?説明回の間違いなのでは?そんなばかな。」
もうこれサブタイ決定。

どうもサブタイ決めても内容はまだ決めてないunworldです。
嬉しいことにこの『元殺し屋と問題児ry』
がですね。1万アクセスを超えましたー!8888
いやー13話くらいなのに1万アクセスって一つ1000アクセスも行ってないじゃないかーなんてツッコミはご遠慮ください。キットワタシキズツキマス

まぁ、そんなわけでこれからもよろしくお願いします!!



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『今回、百合人の過去が明らかに!説明回の間違いなのでは?ごめんなさい。』




えっ…私の字数少な過ぎ

更新遅れてしまいもうしわけありません!!
い、イソガシカッタンデスヨー(棒)


『今回、百合人の過去が明らかに!説明回の間違いなのでは?ごめんなさい。』

 

百合人は男爵に刃を突きつけて問うた。

 

「マザー…俺の。いや、俺たちの世界を強襲し、潰したのはお前らか?答えろよ。男爵」

 

男爵は少し思考し、ため息をついた。

 

「……マザーですか…なつかしい名前ですね。

 

ふぅ、まさか生き残りがいたなんてまだまだ倒し足りませんでしたかね?」

 

男爵はそう言って嘆息する。

百合人はその言葉を聞いて全く動じようとしない。

しかし、その言葉を聞いて明らかにその雰囲気は怒り満ちていた。

 

「そうか……そうか……

まぁ、あん時は俺も少し若かった…

 

自分の力に自惚れ、何にでも勝てるとさえも思っていたかもな…

 

まぁ、でも、残念だ。

この世に運命なんてもんがあるならそれさえもぶっ壊して進みたいわ。

 

俺の仇が、この世界だったなんてよ。

マジで不条理だ。」

 

男爵は微笑し、言った。

 

「質問はそれだけですか?それで終わるのら、続けますよ?」

 

百合人は大袈裟に首をふり、言った。

 

「はぁ?んなわけねぇだろ。

まぁ、あと一つだけだがな。

この腕についてだ。」

 

そう言うと彼は右腕の包帯をとり、突き出した。

その腕の色は漆黒。まるで、そこだけ別の生き物のような印象を持てた。

それはあまりにも禍禍しく、あまり良いものではないと推測できた。

 

男爵はそれをみると、驚愕を浮かべた。

だが、その顔は一瞬にして不気味な笑顔に変わる。

 

「……くくっ…はははははは!!!

なんということだろう!!

 

まさかこんなところで『パーツ』と会えるとは!!

いや、しかしなかなか、運命というものは恐ろしいものだ!!

 

ははははは!!」

 

その様子をみて百合人は冷静に判断を下した。

そして、思考する。

 

(『パーツ』自分は明らかにそう呼ばれた。単純にパーツという呼び名を信じるとしたら、この腕。

この黒腕がなにか関係しているとしか思えない…しかし…)

 

百合人は昔いたコミュニティのことを思い出していた。

百合人が昔いたコミュニティ…

ユーテリシャン

 

このコミュニティは百合人が加盟するまではノーネームだったのだが、彼の加盟によって旗印を取り戻したコミュニティだ。

しかし、このコミュニティは一年ほど前に何者かによって潰されてしまった。

そのコミュニティに加盟していた組員百合人以外が殺害され、百合人が心から愛した数少ない女性の一人も殺されてしまった。

 

百合人はその愛した人にこの腕についつ聞いてみたことがある。

 

(なぁ、 、お前…この腕についてなんか知らないか?)

(んー…知ってるけど、今は言える時期じゃないって言われちゃって…)

(ヒントだけでも!)

(しょうがないなぁ…ヒントは自分の存在を自覚し突き詰めること!)

 

昔はなんだそりゃあ?とか言って笑っていたが、いまなら分かる気がする。

 

百合人はしっかり男爵を見つめ聞いた。

 

「答えろ男爵!お前は何を知ってるんだ!」

 

こいつは知っているはずだ。

俺の存在を。

俺がなんなのかを!

 

「男爵!お前は知っているはずだ。

この腕がなんなのか!」

 

男爵は目を閉じて、ため息をついた。

 

「…いいでしょう。口止めはされてはいましたが、

その腕は『パーツ』

読んで字の如くとある魔王の封印の部品なのですよ。

なぜ貴方がパーツを持つか…そのことについては本当に知りません。

 

ですが、一つ言えるのは…

 

貴方は選ばれたという事です。

 

なぜなら『パーツ』は普通の人間には耐えられない。

その魔王と同化するというようなものですから。」

 

百合人はため息をついた。

まるで話についていけない。

 

突拍子すぎる。

俺が選ばれた人間だ?意味がわからない。

いや、分かりたくない。

 

「その魔王ってのはなんなんだよ?」

「『人類最終試練』の一つ

『絶対悪』アジ=ダカーハ

 

そのアジ=ダカーハの右腕こそ。貴方の右腕ですよ。

『黒き覇王』達皆上百合人殿?

 

いえ、ここは…」

 

百合人はその言葉の続きを想像しながら冷や汗をかいた。

 

なぜ、こいつはそこまで知っている。

 

それを知っているのはごく数人だけだぞ。

しかも、知っているものは全員死んだのに!!

 

「『必要悪』達皆上百合人殿?」

 

『必要悪』それが百合人の本当の存在。

悪でありながら、仕方ないと飽きられられ、必要だったと言われる悪。

 

それが達皆上百合人の存在だ。

 

度重なる戦争、死刑、軍も全てが必要悪である。

 

彼が背負うものはあまりに強大。

 

全ての世界の必要悪を背負う。

 

しかし、必要悪と絶対悪は表裏一体。

 

必要悪≒絶対悪のようなものだ。

 

必要悪も絶対悪も悪である。

 

アジ=ダカーハと百合人は生まれながらにして悪を背負う者。

 

 

 

 

百合人が必要悪だと宣告されたのは生まれた瞬間だった。

マザーに生をうけ、それが生まれた瞬間。

 

百合人は必要悪だと宣告された。

 

誰にか…

 

わからない。

 

 

だが、あれは…俺が生まれる時だったな

 





…てなわけで今回はおわりー


でも終わらなーい。


どーしよ(汗)

なんて考えてる間にも執筆は続く

大丈夫次の更新は早めにしようと思いますよ?
タイトルktkr

何してるんだ私…

では次のお話で会いましょう!!

それでは!


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『【絶対悪】アジ=ダカーハと 【必要悪】達皆上百合人なのでございますよ?魔王として生まれてきました。』

投稿遅れてすいません!
どーもunworldです。
いやーもうxpはよくないですね。私は体感しましたよ。ええ
えー、今回はグロ注意を出しておきます。
グロ苦手な方はバックを推奨させていただきます。



『【絶対悪】アジ=ダカーハと

【必要悪】達皆上百合人なのでございますよ?魔王として生まれてきました。』

 

 

えー、今回はグロ注意を出しておきます。

グロ苦手な方はバックを推奨させていただきます。

 

 

そうあれは…あれは俺が生まれたばかりの頃

 

500年ほど前…

囲殻都市『ティンカー』

 

俺は…マザーの中枢都市の一つであるティンカーという都市で生まれた。

周りは壁に囲われ、その中では円を描くように街が築かれていた。

 

マザーは異世界と交信する術…ポータルを手に入れ、異世界人も生活していた。

そのため、技術はすすみ、マザーは平和に保たれていた。

 

そんな日常の中で俺が生まれたんだ。

 

親達は喜んでいた。

しかし、そんな喜びも長くはつづくことはなかったんだ。

 

俺が大きくなって武術を結び、学校へ行き、そんな日常を繰り返していた時だった。

 

異世界と交信する機械ポータルから…

 

 

あいつらがやってきた。

 

 

 

そいつらは、一瞬にしてティンカーの町並みを焼いた。

何を使ったのかは定かではない。

しかし、一瞬の光が視界が覆ったかととおもうとティンカーの町は地獄と化した。

 

親や、家が一瞬にして目の前で灰となり爆風が俺を襲った。

 

目を覚ますと…そこは目の前には暗い空。

目の前には『誰か』が立っていた。

 

助け…て

 

俺は叫んだ。

声は掠れ、何を言っているのかはわからないほどだろう。

それでも俺は、助かろうと声をあげた。

すると、その『誰か』は俺の手に『何か』持たせ言った。

 

…生き残りたくば、使うがいい。

しかし、使えばこの世界いや、全ての世界から、お前は弾かれる。

 

それでも、死ぬのが嫌なら使うがいい。

さぁ、選べ。

 

今死ぬか。

 

世界から殺されるか。

 

どちらがいい?…

その『誰か』はそういうと、音もなく突然消えた。

 

その『誰か』の問いは、俺を突き動かした。

そして、俺はその『何か』を使った。

いや、違う。使ってしまった。

 

死にたくなくて、俺は…それに手を出した。

 

それが今、思うと俺がこんな存在になった原因ではなかったのだろうか。

 

それを使用したことで俺は生き残れた。しかし、ティンカーで生き残ったはものは十数人。

 

残りの数十万人がたった…

 

たった一つの攻撃で

 

殺された。

 

マザー政府はこの事態を重く受け止めて、ポータルを破壊して回った。

しかし、そんなもの所詮付け焼き刃であったのだ。

 

なぜなら、そいつらは……

 

ポータルがなくてもゆっくりと空から降りてきたのだから俺らはたまったものではない。

 

そいつらはティンカーだけではない。他の都市も蹂躙して行った。

当然、俺たちマザーの住人も黙ってやられるだけではない。

 

俺たちが全員に殺されるか、逆に殺しかえすか。

それだけだった。

 

こうして、戦争が勃発したのだ。

 

長い長い戦争が。

 

俺たち子供は疎開させられた。

荷馬車に積まれ、黒い煙をあげている自分の故郷を遠目で見ながら、俺たちは遠くの街へ行かされたのだ。

 

しかし。

 

疎開先でのわずかな平穏も敵によって破壊されたのだ。

 

滅茶苦茶に

跡形もなく

 

消された。

 

敵たちは俺がいた疎開先に進行してきていた。

俺は仲間の子供も数人たちと自室で震えていた。

 

そして、

 

近くから爆発音がして悲鳴が聞こえた。

俺はドアを少し開けて外の様子を見た。

 

そこにいたのは、俺たちをかくまっていたおじさんの遺体だった。

 

いや、そのおじさんではないのかもしれない。

服は間違いなくおじさんのものだったが、首から先、つまり頭の部分はなかった。

 

血だまりが出来ていて、血が部屋に入ってきていた。

俺の足元に血が流れてきて、俺は思わず「ヒッ」と言って尻もちをついた。

そして、次の瞬間。

 

ドアの前から声がして、ドアが蹴り破られた。

そこにいたのは大人が三人。銃をもって佇んでいた。

その一人がドア近くにいた俺と部屋にいた俺の仲間をみて嘆息した。

 

「なんだぁ…子供ばっかじゃねぇか。」

「そりゃあそうだろう。まぁ、いい。持ってくぞ。」

「研究室か…」

 

そんな会話が聞こえているさなか、俺は恐怖に怯えていた。

 

しかし、一瞬にして俺の恐怖を打ち破ったのは、俺の仲間に敵の手が迫った瞬間だった。

俺の仲間の髪を無造作につかむ敵をみて、なぜか手元にあった斧をつかんだ。

 

…そいつから手を離せぇぇ!!!

 

俺をそう叫び、斧を敵に向かって振り下ろした。

しかし、

 

「遅ぇんだよガキ!!」

 

俺の一撃は軽々とよけられ、カウンターとばかりに腹に蹴りを入れられた。

 

げぇっ!!

 

俺は胃の内容物をことごとく吐き出し、床に転がった。

 

仲間が俺の名前を呼んだ。

 

「あぶねぇことしやがってよ、このくそガキ!!」

 

まだ小さい俺に大の大人が覆いかぶさり顔面を殴った。

 

痛い

痛い

痛い

 

 

口が盛大に切れ、血を吐き出した。

しかし、彼はやめようとしなかった。

他のやつも嘲笑うかのような目で俺をみていた。

 

「ふぅ…こんなもんでいいか…」

 

敵が俺の顔面を殴るのをやめたのは、俺が動けなくなってからだった。

 

最後に腹に蹴りをいれ、俺は髪を掴まれ、引きづられていった。そいつらの移動手段であったろう車に無造作に入れられ、俺たちは研究室とやらに運ばれたのだ。

 

研究室がどんなものだったかは、あまりよく覚えていない。

何しろ、目がよく見えていなかった。

とにかく俺たちは小さい部屋に運ばれた。

 

そして、次の瞬間俺たちを恐怖のどん底に叩き込んだ出来事が起こった。

 

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

グシゃぁ!!

 

盛大に悲鳴が聞こえ、その後に何か潰れるような音が聞こえた。

それは、一定の周期で聞こえてくる。

 

…嫌だ!!やめて!!それ

 

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 

ぶちっ!!ぐちゃぁ!!

 

…嫌ぁ!!お母さん!!お父さ

 

ぁぁぁぁぁ!!

 

バキバキ!!!べちゃぁ!!

 

その声は明らかに子供。

何をしているかは定かではない。

しかし…俺たちの死期が早まることは明らかだった。

 

俺たちは恐怖に震え、眠ることさえままならなかった。

 

仲間は日に日に減っていった。

帰ってきたものはいない。

 

…助けて…

 

…死にたくない

 

仲間の声が頭の中で木霊し、眠れなくなってきた。

 

そして、ついに、俺が呼ばれた。

 

手枷をつけられ、俺はドアの前にたたされる。

男たちが何かを言っているが耳に入ってこない。

そして、ドアが開くと

 

 

 

そこは…そこは、正真正銘の地獄だった。

床には血が溢れて、脇には子供たちの死体が比喩でもなんでもなく、山のように並んでいる。

 

怖い怖い怖い。

 

歯がガチガチと音を立てる。

膝は今にも崩れそうなほど、ガタガタと震えていた。

 

死体の山の中に仲間の顔が見れた。

俺は幻覚か現実か、その仲間の目がこちらを見てるように見えた。

その目の中は、絶望と悲嘆が混ざり合ったように、何も輝くモノがなく憎しみがこもっているように見えた。

 

俺はその目から目をそむけ、つい、前を向いた。

そして、俺はゾッとした。

本能的か俺の体を悪寒と寒気が駆け巡った。

 

…死ぬ!

 

俺はそう悟った。

 

俺は悟った瞬間には駆け出してした。

閉まったドアを思い切り殴りつけ、破壊しようとした。

しかし、あっけなく捕まってしまう。

 

俺は絶望に染まった。

 

監視員の小脇に抱えられ、俺は恐怖に震え、泣いていた。

 

俺が何したってんだ…

 

何もしてないからこそ、こういう目に会うんだろうか…

 

そして、俺は突如、変な浮遊感に襲われた。

目の前には監視員の姿。

 

そして、振り向くとそこには、真っ黒の壁があった。

刹那、俺は理解した。

 

自分が置かれた状況を…

 

俺は投げ入れられるのだ。

黒い禍々しいこの黒い壁に

 

そう理解した。

そして、ほんの少し願ってしまった。

 

嗚呼、まだ死にたくないねぇなぁ

 

まだ、12歳の少年はそう思った。

そして、俺はその壁に

 

飲み込まれた、

 

 

俺が目を開けると、四方八方、黒。

 

自然と痛みは無かったし、自然と死というものを理解した。

 

しかし、そんな空間に明らかに場違いな男が目の前に佇んでいた。

 

全身真っ白。

汚れのない純白の衣装。

シルクハットを目深に被り、そいつは腕を広げた。

 

…お久しぶりです。我が王

 

誰だ…

…私は貴方様の霊格の数億分の一

程の小さき悪魔でございます。

 

意味がよくわからない。悪魔とはなんだ。まず、俺の霊格ってのはなんなんだ…

 

…おや?クロの方から説明を受けておられないのですか、

後であいつはお仕置きですね。

我が王。

貴方様は私達にとって神にも等しい…いえ、原点そのものなのです。

私達、悪に使えるものとして。

貴方様。

いえ、『必要悪』である貴方様と『絶対悪』であるアジ=ダカーハ様は絶対的な神にあらせられるのです。

この二つが合わさる時、世界の終焉が訪れます。

そのような高貴で崇高な貴方様に刃を向け、呪いをかけようなどと企む

輩達は貴方様の手で殺しましょう。

さぁ、目覚めの時なのです!!

 

我が王よ!!…

 

…待て!!話を…

 

刹那、とてつもない浮遊感が俺を襲う。

俺は、必死に手を伸ばすがそれは虚空を掴むのみ。

そして、俺は堕ちていく。

真っ逆さまに堕ちていく。

 

そして、その中で俺は凄まじいものをみた。

膨大な数の霊…というのだろうか、いや、怨霊達が俺に向かって来ている。

しかし、それをみて俺は不思議と不快感は抱かなかった。

 

そして、一つの怨霊が俺の体に入ってくるのを皮切りに凄まじい数の怨霊が俺の体に入ってくる。

何億。いや、それ以上。

桁が違うかもしれない。

それは際限なく押し寄せ、俺の体を蝕んでいく。

俺はその光景を見ながら悟る。

 

あの白いやつが言っていたこと。

それを察した

『悪であるがゆえに、悪である。

それは不変の悪であり。

この世に災いをもたらす。

 

そして、かの王は悪である。

絶対なる悪であり、その存在は世界に認められる。

仕方が無かった。

悪は全ての世界で社会で人生で必ずその近くにいるものだ。

悪は栄えることはなく、深い深い奥底に人間の根源へとつながる。

 

そして、かの王の行動は全て悪へと変わりゆく。

どれだけ善であろうとしても、かの王は悪である。』

 

だから俺は悪である。

俺は目を瞑り、一つため息をついた。

そして、目を開けるとそこは…

 

研究所の中だった。

しかし、何かが違う

 

人の気配がしない。

 

職員も何もいない。

 

しかし、俺に変化は起こっていた。

俺が研究所から出ようと最初の関門であったドアへと触れた。

その瞬間。

そのドアは弾けとんだ。

比喩でもなんでもなく、

バァァン!!

と大きな音を立ててそのドアは弾けとんだ。

 

俺の口角は知らず知らずのうちに上がっていた。

そして、数時間後。

研究所を探索していると、見つかった。

見つけたのだ。

彼ら。研究員を。

 

助けてくれ!助けてくれ!

 

そう命乞いをしながら、俺に呼びかけていた。

 

どこにいたのか…それは

 

俺らが入っていた牢獄だ。

 

俺の口角はさらに上がっていった。

俺はそいつらが入っていた牢獄のドアを開けた。

 

「大丈夫ですか?怪我してませんか?

それは良かった。

死んでいけ!!」

 

俺は唐突に一人の研究員の顔を殴りつけた。

その研究員は反応する間も無く

頭がドアのように弾けとんだ。

 

血が飛び散り俺に降りかかる。

しかし、俺はそれに

 

自分の狂った行動に

 

 

笑っていた。

 

 

ケタケタケタ

 

壊れたブリキのオモチャのように笑う。

 

そして、気づいたら、俺は全てを殺していた。

 

何の罪もない研究員を

 

 

 

 

血で染め上げた。

 

俺はその後研究所に火を放ち、その場を去った。

 

 

その背後には二人の道化師が笑っていた。

 

 

 

……

 

 

そんなことがあった。

百合人にとって、『必要悪』というものはなるべくしてなったのだ。

関連性など何もない。

 

彼は言う

「なぁ…男爵。」

彼は問う

「なぜ、俺のことを知っている?」

彼は憤る

「まぁ、どうでもいいが、気に入らねぇ!」

彼は震える

「あぁ、きにいらねぇ!そうだ!

ふざけるな!!」

 

彼は叫ぶ

 

「俺は『必要悪』!

悪なのだ!!

何にとっても、全てにおいて悪である。

だから、俺はお前を潰す。

粉微塵ものこさねぇ!!

 

理由?

気に入らねぇからにきまってんだろ!!

 

昔のことなんか思い出させやがってよぉ!!

 

この一撃で沈めてやるよ!!

 

『不条理』発動!」

 

彼の拳が光をまとい、その光は爆発的に圧倒的に光りだす。

 

その一撃は一撃必殺

 

効果

 

触れたもの全ての霊格を吹き飛ばす。

 

「さぁ、覚悟しろ!

男爵!

俺がこの一撃でてめぇも冥府に送ってやるわぁ!!!」

 

 

 




どうだったでしょうか。
そんなにグロではなかったかんじですかね?
苦手なんですよ。いろんな意味で。
さってー、原作の方が新刊発売してましたね。
消費税上がる前に衝動買い。お金あんまりないけれど頑張りました。

もうすぐ上がりますね。いや、閲覧されるころにはもう上がってますかね?www

それではよき春を!


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『覚醒、必要悪の魔王 達皆上 百合人なのでございますよ。』

遅れてしまい申し訳ないです。
次からは早くしたいです。(フラグ

そして今回は長めかな…


 

 

百合人の拳が男爵に迫る頃、

 

火龍誕生祭では

 

「魔王が来たぞぉぉぉぉ!!!」

 

黒い【契約書類】ギアスロールがばらまかれ、混乱が始まっていた。

その状況に、ノーネーム一同はそれぞれ動きだした。

 

白夜叉は闘技場で捕まっており、歯噛みをしていた。

 

…もっと早く気づいて、百合人に連絡を入れていれば…

 

だが、今更悔やんでどうにかなるわけではない。

自分がリタイヤというだけの話である。

 

「ふぅ…お茶が飲みたいのぉ…」

 

飛鳥はグリムグリモワールハーメルン側に捕まってしまったが、

しかし、彼女はそう簡単にやられるわけはない。

何か反撃の一手を講じるはずである。

 

それに、白夜叉は確信していた。

百合人はこの近くにいると。

 

…正直なところをいうと、白夜叉は

 

…「彼が百合人が私のそばを離れて何処かにいって私を危険にさらすということはない」と思っていただけだ。

だが、確信は持てた。

根拠はないが。

 

白夜叉は寝転び街の上空に浮かぶ展示物を見上げる。

その大きさは、闘技場に匹敵する直径。

 

それは、火龍誕生祭の展示品の中の一つであり、

題名は【魅了の音を鳴らす鈴】

製作者は【男爵】

 

 

今頃、グリムグリモワールハーメルンとノーネーム達と会談が行われているだろう。

争点としてはどこまで期間を短く出来るか。

 

そこに絞られる。

【黒死病】ペストはネズミやノミなどを媒介として、ヨーロッパに莫大に広がり、ヨーロッパ人口の実に3分の1を殺したとされている。

恐ろしい想定だが、ペストが会場全体にばらまかれ感染が広がったとしたら、大変なことになる。

当然、サウザンドアイズや他のコミュニティのメンバーもただではすまない。

 

ペスト側としては、最低一週間。

ノーネーム側としては、すぐにでもゲームを再開したい。

 

白夜叉はひとつため息をつく。

 

「百合人や…はやく来てくれ。」

 

そう思っていると。

 

「あらご機嫌斜めねぇ…」

 

白い服の魔導師 ラッテンが現れる。

この女は、その笛の音で人々を操り、この街を襲撃した悪魔だ。

 

その悪魔がここにいる。

ということはだ。

つまり、プレイヤー側とグリムグリモワールハーメルン側との協議が終わったということだ。

 

白夜叉は考える。

ラッテンのこの余裕ぶりから考えると、ゲームの再開は少なくとも

 

一週間以上は取れたということだ。

 

一週間というのは、ペストが感染し、発症する日時は二日であるが、

様々な想定をし、この会場の力を持つものも感染するような長い日時だ。

 

それが取られたということは、もうすでに会場全体にペストは広がっていると考えていいだろう。

 

「それで、ラッテンとやら再開の日取りはどうなったのじゃ?」

「十日後よ」

「十日…じゃ…と」

 

白夜叉は戦慄した。

 

長い長すぎる。

一週間どころではなかったのだ。

感染していないものも十日もあったら感染が凄まじく広がる。

 

白夜叉の顔は余裕を醸し出しているが、背中は冷や汗で濡れていた。

 

…ジンよっ!何に!何に失敗したというのだ!

十日後という日時になったのは、明らかにジンの失敗である。

 

白夜叉はため息をついた。

彼女はあまりため息などを見せない。常に余裕をもち過ごしていたからだ。

 

しかし、グリムグリモワールハーメルンの策略にまんまと乗ってしまった。

 

白夜叉は心から願った。

彼が、【達皆上百合人】がはやく来てくれることを

 

…sideout

 

 

「うぉぉぉぉぉぁぁぁぁ!!!」

 

不条理の力を込めた百合人の拳が男爵に振り下ろされる。

その力はあらゆるものを砕き、破壊し、塵に返す。

 

男爵は本能的に悟った

 

…この攻撃に当たれば自分は死ぬ!!…

 

男爵のとった行動は、ギフトカードから盾を取り出し、後退した。

しかし、そんな行動は彼の拳の前には関係なかったのだ。

 

「吹き飛べェェェェ!!!」

 

百合人の拳が盾に触れた瞬間。

 

その盾はその一撃で木っ端微塵に吹き飛んだ。

しかも、吹き飛んだ欠片は風に飛ばされ、塵へ還った。

 

「なっ…」

 

予想を遥かに超えてきた攻撃は、男爵の体を一瞬固まらせた。

しかし、その一瞬だった。

 

そのおかげで彼は、空中に殴り飛ばされた。

男爵の体を凄まじい衝撃が襲った。

 

「がっ…」

 

そして、男爵は自分の霊格がおちているのに気付いた。

 

…これが霊格を削る力!!

 

その一撃は彼の霊格を著しく削り落とし、ダメージを当たえた。

 

男爵は重力に逆らわず、地面に落下した。

 

「ふぅー…」

 

彼は拳を構えたまま、深く息を吐いた。

そして、男爵が動かなくなったのを確認すると男爵に近づいた。

 

「おい、男爵。お前の負けだ。もうやめようぜ。」

「そうですね…私は負けました。」

「随分あっさりしてんなぁ。おい」

「ええ、なぜなら…私は…

貴方を近づかせることが目的だったんですから!」

 

男爵の行動は早かった。彼は百合人に向かって手を突き出した。

しかし、彼の手から放たれたのは砲撃ではなかった。

放たれたのは紛れもなく斬撃、

百合人の反応は数秒、コンマ何秒か遅れた。

 

そのコンマ数秒の遅れが彼に死を招いたのだった。

 

「ぐっぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

百合人の体を無数の斬撃が切り裂いた。

腕、足、手、額、頭。体中を斬撃が切り裂いた。

 

そこからは血が吹き出し、彼は倒れた。

 

男爵はふらふらと立ち上がり、深呼吸をした。

 

危なかった…本当に

 

男爵はそう心底思った。

 

彼が油断してくれなければ死んでいたのは私の方だった…

 

実は彼は、百合人を近づけるために倒れたのではない。

実際は、本当に倒れたのだ。

彼の方が実力は上だ。圧倒的に。

 

だが、運がよかったのは、男爵の方であったようだ。

彼が斬撃を思いつき、放ったのは、偶然であった。

しかし、ここまで彼を追い詰めることができるなんて男爵自体思ってはなかった。

 

そして、男爵は倒れた百合人に向かっていく。

それは、彼が百合人に近づいた目的を果たすためだった。

 

男爵が百合人に近づいた理由は単純だ。

その理由というのは、

 

彼の右腕にある。

 

百合人の右腕は【絶対悪】アジ=ダ=カーハの右腕。

 

男爵はとあるコミュニティに属しているのだが、そのコミュニティの目的の一つに

 

アジ=ダ=カーハの復活

 

というものがある。

つまり、男爵はアジ=ダ=カーハを復活させるために彼の右腕を入手しようとしていたのだ。

 

そして、その目的を果たす瞬間が来たのだ。

 

 

彼は自慢の剣を百合人の右腕に振るった。

 

その瞬間。

百合人の体は跳ねた。

右腕から鮮血が飛び散り、百合人の視界を染めた。

 

男爵は転がった右腕を拾いあげ、布に包んだ。

そして、くるりと踵を返した。

 

コツコツ

 

男爵の足音が聞こえるなか、百合人は痛みに声も上げられなかった。

 

死にたくない

 

死にたくない。

 

彼はそう思った。

死ぬ覚悟はして来たつもりであった。

しかし、それでも。

 

死にたくなかった。

 

そのときだった。

彼の視界の隅に、靴が見えた。

 

誰かいる。

 

百合人はそう思い、重たい首をあげ、その人物を見上げた。

 

その人物は彼がこの世の中で最も愛した女性。

長い黒髪を揺らし、百合人に話しかけてくる。

 

おーい…百合人ぉ…なに寝てるの?

 

「リ…ン…お前」

 

んーなにその傷、珍しいねぇ、百合人が傷負うなんてさぁ…

 

リンと呼ばれた女性は膝をおり、プニプニと彼の頬をつついた。

 

「やめろ…よ…やめてくれ」

 

なによ、もぅ…あ、そうそう。

これ百合人に手紙だよ…読んでみてね。それじゃあ!

 

「まてよ…リン!リン!」

 

リンはそう百合人に黒い手紙を手渡すと、足早に去っていった。

 

百合人は震える手でその手紙を開いた。

そこには

 

 

 

『異才を持ちし君に告ぐ。

 

覚悟をもって前へすすめ、

 

強くなりたければ、守りたいものがあるのなら、

 

覚悟をもって、魔王の領域に来られたし。』

 

その時、目の前には黒百合の花が咲いていた。

そこだけはまるで別世界で何物にも、束縛されず、一輪の黒百合は風になびいていた。

 

あと、数メートル。

 

百合人は力を振り絞った。

匍匐前進の要領で左手だけで地を這った。

 

もう限界なはずなのに、

 

彼は自分の全てをかけて、その花を目指して進んだ。

 

しかし…

 

あと数センチ。指を伸ばせば届きそうなはずなのに、彼はその花に触れられない。

 

あぁ、目の前が霞む。

 

その時、彼の脳裏には、リンの死に際が映った。

 

背中から切られ、血が彼の頬を濡らした。

黒髪は血で赤黒く汚れていた。

 

そして、彼は箱庭への復讐を決めたのだ。

 

あぁ、憎い。

リンを殺した奴らが憎い。

 

そうだ。

俺は

 

「復讐のためにここに来たんだ!」

 

彼は最後の力を振り絞り、黒百合の花の花弁に触れた。

 

そして、それは【人間】達皆上百合人の最後の行動であった。

 

…ようこそ、魔王の領域へ。

 

百合人は薄れゆく意識の中、その言葉を聞いた、

 

 

……

 

 

男爵side

男爵は百合人の死を確認した。

先ほどまで、動いていたようだが、もう、彼はピクリとも動かない。

 

息もしていなかった。

 

ただただ、静寂だけが男爵を包んだ。

 

「さて帰りますか。」

 

彼は踵を再度返した。

帽子を捨て、髪を書き上げた。

 

大きくため息を吐いた。

 

多大な疲労感がどっと彼を襲った。

 

だが…つかの間

 

箱庭に異変が訪れた。

 

ゴゴゴゴゴ

 

大きな音が上から聞こえた。

 

それもこのギフトから放たれたものではない。

このギフトの下では、ハーメルン達が暴れているはずだった。

 

しかし、そんなことではないだろう。

 

彼は外に出て、上を見上げた。

 

「…天幕が……開いた…だと?」

 

そう。

箱庭世界のなかで天幕が開かれることはざらにはない。

 

なぜなら。

 

「こんなバカなことがありえるのか…大天幕の太陽の主権…黄道12宮か、赤道十二辰の一つは必要なはずだ…なんで…」

 

彼の体は冷や汗で濡れた。

急に寒気が襲った。

 

自分のことを追ってだれかが開けたのか?

いや、それとも…

 

だが、大天幕はガシャンと音を立てて全解放された。

 

男爵が大天幕の方を見つめると、そこは…なにもなかった。

 

光も星も、月も、太陽も。

 

あったのは黒だけだった。

しかも、それは悪霊や、霊ばかりを禍禍しいものを合わせたものであった。

 

そして、それはある種の台風のように、渦を巻いて、彼の背後へと降り注いでいた。

 

ギフトの厚い壁を突き破り、死んだはずの人間に吸い込まれていった。

 

男爵の体は動かなかった。

何故かは全くもってわからない。

しかし、彼の体は鎖にでも繋がれたかのように動かなかったのだ。

 

何万、いや、何億もの魂だろうか、それを吸収してもなお、百合人の体は動かなかった。

際限なく魂を吸収しつつける百合人に、下の奴らも気づき始めていた。

 

 

……

 

十六夜side

約束の10日という日にちが経ち、死亡者は幸い出てこなかった。

しかし、生死の境をさまよっているものは幾人もいた。

 

そして、戦いに参加する主要メンバーもペストに侵され始めていた。

 

「くっそ…げっほ!」

 

ヴェーザーとの戦いのために、十六夜の体は非常に傷ついていた。

 

そんな中、彼は民家に背中をもたげ、空を見上げた。

 

そして、驚愕した。

 

空から…数多の霊が大きなギフトの中へと吸い込まれていた。

 

「なんだ?あれ」

 

十六夜が不思議に思っていると、いきなりどこからともなく…

 

『ギフトゲーム

The PIED PIPER of HAMELIN

 

の全参加者に告げます。

 

今すぐ、ゲームを中止してください。

 

その後、このゲーム盤から退避するか、ここのゲーム盤に出現するであろう、かの魔王について調査を行ってください。

 

もしも、かの魔王を討伐した場合。様々な報酬を差し上げます。

 

一時間後。

最終決定をいたしますので、退避する方は、一刻も早く退避してください。

一時間後、このゲーム盤に残っていた参加者を魔王の調査に回っていただきます。

 

繰り返します…』

 

意味がわからないアナウンスだった。

十六夜は頭をフル回転させて考える。だが、わからなかった。

 

しかし、ただ一つわかったことがある。

体が非常に楽になったという点だ。

あのアナウンスが関係していることは間違いない。

 

そして、十六夜が立ち上がると、黒ウサギの声がした。

 

どうやら十六夜を呼んでいるよんだ。

 

「黒ウサギぃ!今行くぜ!」

 

十六夜は声の元に急いだのであった

 

 

百合人side

 

俺は目の前に広がる光景に驚きを覚えた。

そこは戦場。

 

俺がいた戦場だった。

 

帰ってきたのだろうか…

 

俺は一歩また一歩と歩みを進めた。

後ろは全く振り向かず、

結局のところ、ここはどこなのだろうか。

 

さっき俺は死んだはずだ。

 

だとしたら、此処は天国か地獄か。

 

俺は歩みを止め、上空を見上げる。

 

空には星々が瞬いているし、月もある。

 

だが、俺は思った。

ここはマザーではない。

 

マザーはこれほど、星々が綺麗ではなかった。

 

俺は自分の馬鹿さに苦笑を漏らした。

 

そして、また視線を戻すと、

 

そこには、リンがいた。

 

「リン!お前…生き返って!」

 

俺は喜びを表す。

リンが生き返っているなんて至高の喜びだ。

 

だが、リンは告げた。

「ごめん。生き返ってはない。

死んだのよ。私は」

 

その言葉を聞いて俺は知っていながら、残念に思った。

 

「…知っていたよ。だけど、それでも…」

 

俺は拳を握りしめる。

俺がこの箱庭世界に来た理由は図らずも復讐のためだ。

 

「もう、いいのよ。百合人。

やめにしよう。復讐するのはさ。」

「えっ?」

 

だが、リンは俺にあり得ない言葉を投げかけた。

 

 

困惑。

 

 

俺の感情はそれで満たされた。

 

「どういうことだよ!俺はお前の復讐するために!」

「うん、それはごめん。謝るよ。

でも……もういいの。

 

私、死んで分かったの。

死んでたら、復讐なんて望んでなかった。

 

私の望みは、貴方…百合人が生きていることなの。だから

百合人は生きて。

 

私の分も

 

死んでいった仲間の分も

 

そして、自分の分も。」

 

「俺は……」

 

「いいんだよ。

 

もう、いいの。

復讐はここに置いていって、

 

生きよう。百合人」

 

俺は不思議と涙を流していた。

なぜかは自然とわかった。

 

俺はリンの死に際を見たものとして、復讐をしてそれでいいと思っていた。

 

だが、それは自己満足だった。

 

生きてていい。

 

俺の心にその言葉がとてつもなく心に響いた。

 

あぁ

 

そうか。

 

「ごめんリン。また会おう。」

「うん。またね」

 

そして、俺の世界は突如崩れた。

……

 

天幕は霊が尽きると自然にしまった。

ガシャンという音とともに、男爵の拘束は解かれた。

 

しかし、同時に。

 

彼が目を覚ました。

そして、立ち上がる。

 

瞬間。彼の身体を黒いものが纏った。

そして、

暴風が吹き荒れる。それは来るべき厄災への序章なのかと、いうほどに吹き荒れた。

 

いつの間にか彼の体には『必要悪』と後ろに書かれたマントというよりローブが纏われていた。

 

彼が一歩踏み出すと、男爵の体は自然と後ろに下がった。

 

「なぁ、男爵覚悟は決めたか?

 

俺は寝てる間に、済ませたさ!」

「なぜ…なぜ…なぜ…なぜなんだ。なぜ、生きているんだ!」

 

百合人は男爵の質問にまるであざ笑うかのように答えた。

「はっ?死んださ。【人間】の俺はな!

 

だから、俺は名乗ろうか!

 

俺は【必要悪の魔王】

達皆上百合人

 

魔王だ。」

 

ゾクリ。

男爵の肌を鳥肌が襲った。

 

違いすぎる。

圧倒的霊格の差。

 

数多の霊を吸収した彼は。

 

 

アジ=ダ=カーハにも劣らない力をもったのだ。

 

【絶対悪】と【必要悪】似て非なるものだからこそ。

 

百合人は魔王になったのだ。

復讐のためだけじゃない。

 

今度は間に合うように、

 

守れるように。

 

彼の額には、悪の一文字。

それは消えない彼の覚悟の現れだった。

だから、彼は【悪】になる。

 

 

「さぁさぁ、男爵!俺のとっておきを見せてやる。進め【悪の行軍】」

 

彼の背後から黒い空間が現れその壁からそれぞれ武装をした兵士が出てくる。

 

彼はいつの間にか設置された玉座に座り、言った。

 

「さぁ、蹂躙せよ。」

 

そして、百合人の行軍が始まった。

 

 

 




どうもみなさんこんにちは。
unworldでございます

前書きでも述べた通り遅れてしまい申し訳ありませんでした。
えー、まぁ、この言葉を書くのも実質三回目。

毎度毎度このあとがきを書いている間に勝手にシャットダウンを繰り返す。
私は悲しいです。

まぁ、そんなことは置いといて

説明タイムでございます。
まず、百合人の霊格でもある。【必要悪】について説明したいと思います。
そもそも、必要悪とは、確実な悪でありながらも、それを失った時に大きな損失を得てしまうため、世界がその存在を仕方なく必要として受け入れている悪であります。

その一例としては、警察などです。

しかし、私は絶対悪としても語られていて、必要悪としても語られる。

『戦争』に重点をおきました。
なぜかといえばこの作品に置いて、戦いというのは非常に重要な意味を持ってきます。

百合人の出身も戦いの世界。

これ以上は尺とネタバレの関係で、すいません。

えー最後までお付き合いいただきありがとうございました。
長くなりましたが、
次の投稿までお待ちください



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『【人類最終試練】ラストエンプリオ並みの魔王なのでございますよ! 倒せるもんなら倒してみやがれ。 』

いつものことながら遅れました。すいません


百合人が覚醒する少し前。

十六夜と、耀と飛鳥と黒ウサギとジンとレティシアというノーネーム。

サラ、マンドラのサラマンドラ。

 

そして、ヴェーザー、ペスト、ラッテンという先ほど倒されたはずのヴェーザーとラッテンを含んだグリムグリモワールハーメルン。

 

主に、この三勢力が新しく出現する魔王のために集められた奴らであった。

もちろん白夜叉も参加する。

 

十六夜達は最初、生き返ったヴェーザー達をみて、怪訝な表情を浮かべていた。

しかし、ヴェーザー達は言った。

 

「俺たちにもなぜ、復活したかがまるでわからないんだ。

話によりゃあ、

なんかアナウンスみたいのがあったそうじゃないか。まぁ、きっとそれが関係してるんだろうなぁ…」

 

そう聞いて十六夜は納得した。

自分と耀に関してもそうだ。

 

飛鳥自体はあまりダメージは受けていないため、回復したという自覚はないのだろうが、

十六夜と耀は違った。

明らかに、先ほどまでの自分達とは比べものにならないくらい回復した。

 

その後、かの魔王に挑戦する編成が決められた。

 

一番最初に位置するのは

ペスト組

次に

ノーネーム組

最後に

サラマンドラ、白夜叉組だ。

 

この陣形は主に、ペスト達の意見が多く取り入れられた。

 

ペスト達としては、特別なギフトというものが当たり前に気になるだろう。

 

 

しかし、それは思わぬ方向へペスト達を誘った。

 

 

 

 

 

………

 

そのころ上空では、

百合人は、玉座にすわり、手を振り下ろす。

すると、彼の背後から数多の鎧をまとった兵団が現れる。

その数は、万にも匹敵した。

 

男爵は震えた。

絶叫した。

まるで自分を奮い立たせるために、自分の意識を失わないために、

 

だが、彼の足は震えていた。

男爵は地面についた百合人の血を舐め、ニヤリと笑った。

 

「もう…覚悟は決めたさ。必要悪の魔王様ッ!!」

 

そう言い残すと、彼は壁を突き破り、街へと逃げた。

 

百合人はそれをみて、ため息をつき、言った。

 

「追え。絶対に逃がすな。」

 

すると、鎧の兵団は行進をしながら

男爵が逃げた街へと降りた。

 

ザッザッザッ

 

鎧の兵団が姿を消したあと、

彼は立ち上がり、玉座を降りた。

 

すると、玉座は光となって霧散した。

百合人はゆっくり歩きながら、男爵が突き破った壁から街へと飛び降りた。

 

だが、そこには…

 

男爵と思われる人物がローブを羽織り、百合人の頭を上を閃光のように通過していった。

 

百合人は飛翔し、その姿を追って行った。

 

しかし、街の家の影に、それを汗をかきながら、見送る影があった。

 

 

……

【男爵】

男爵は、狡知の神【ロキ】の分体の一人である悪魔だ。

ロキは様々なものになりすます力をもつ神であり、その反面。鍛冶の力をもつ神であったと言われている。

 

 

それゆえに彼がもつ能力の一つがなりすます能力

 

相手の血をすすることで、その霊格になることが出来る。

 

という能力だが、この能力には致命的な弱点がある。

 

この能力はその霊格を貰ってしまった場合。

その力が完全には消えず、自分に

多大なダメージを負ってしまうということだ。

 

しかも、それが自分の器の限界を越しているとき、そのダメージは図り知れない。

 

 

そして、自業自得ではあるが男爵は壊れた。

頭へのダメージはとうに限界をこえ、体からは血を吹き出す。

 

しかし、彼の目はまさに野獣。

紅々と光り、獲物を探していた。

 

そして。

 

男爵は獲物のまえに立ちはだかった。

 

 

………

 

ペスト達の目の前には一人の男が走ってきた。

紅々と目を獰猛に光らせ、ペスト達のまえに来たのだった。

 

ペストは心の中で

 

…こいつがかの魔王ってやつなのかしら…

 

と思った。

明らかに怪我をしている。

 

これでは勝負にならない。

ペストは感染病だ。

傷口からペスト菌が入れば、そのものは黒死病になってしまう。

 

「貴方がかの魔王?」

 

ペストは、警戒をときその男に問うた。

しかし、その男は答えず。

 

獰猛に目を光らせた。

 

ペストは興味なさげに、嘆息した。

 

「なぁーんだ。かの魔王なんていうからもっと強大な魔王なのかと思ったわ。

まぁ、でも。

死になさい!」

 

死を呼ぶ黒い風がその男に迫る。

しかし、その男はよけようとさえ、しなかった。

しかも、その男はその黒い風に突っ込んでいく。

 

勝った!

 

ペストは確信した。

だが。

 

異変は起きた。

 

黒い風はその男に当たる寸前。

まるで意思でも持ったかのように、その男を『避けた』

 

二つにサッと分裂し、彼の行動を止めもしなかった。

 

「なッ!?」

 

ペストは驚愕し、動きを止めた。

だが、ペストが思考するより、速く男爵は動いた。

 

ペストは避ける間も無く腹に拳を入れられ、吹き飛び、壁に身体を打ちつけた。

 

刹那、ラッテンとヴェーザーが己の武器を使い、男爵を殺しにかかった。

 

「よくもてめぇ!!ぶっ殺してやる!!」

「死になさい!!」

 

その各々の一撃は彼らの人生の中での最高峰の一撃。

その威力は川を割り、大地砕く。

 

 

 

しかし。

 

男爵はその号撃を意とも介さなかった。

凄まじい速度で振り下ろされた魔笛を拳で叩き折り、ヴェーザーとラッテンの頭を鷲掴みにし、ペストが倒れている壁へと投げつけた。

 

そして、畳み掛けるように自分の魔力を込めた凄まじい力の砲撃を彼らに放った。

 

ペスト達は避ける暇もなかった。

しかし、ヴェーザーとラッテンだけは自分たちの主君を守ろうとペストに覆いかぶさった。

 

爆発音が響きわたり、十六夜たちが駆けつけるとそこにはヴェーザーとラッテンの姿はなくペストだけが気を失い倒れていた。

 

そして、獰猛に赤い目を光らせた男爵の姿があった。

瞬間。

彼はなんの躊躇いも慈悲もなく、倒れているペストに向かって砲撃を放ち、ペストを消し飛ばした。

 

「ペストっ!!」

 

「ちっ!!行くしかねぇ!!」

 

十六夜達は勇敢にも男爵へと特攻を仕掛ける。

一歩出遅れて黒ウサギも続いた。

 

十六夜は自分の全力の拳を、燿は鷲獅子の力で、飛鳥はディーンで

それぞれの攻撃を男爵に振りかざした。

 

しかし。

 

男爵はそれすらも無情に砕いた。

 

十六夜の拳を軽々と避け、こちらのターンと十六夜の顔面に拳をめり込ませ、振り切った。

 

ディーンの振り下ろした拳は、男爵の拳によって、砕け散り。体は男爵の蹴りによって崩れ落ちた。

 

燿の鷲獅子の風はいとも容易く男爵によって薙ぎ払われ、男爵の一撃によって倒れた。

 

男爵は3人を倒すと、ゆっくりと黒ウサギに近づいた。

 

「よくも皆さんを!」

 

黒ウサギは髪を真紅に染め上げて、男爵に攻撃を仕掛け…ようとした瞬間。

 

男爵の砲撃が黒ウサギを包み込んだ。

 

 

………

 

 

百合人は爆発音を耳にして、その場へ向かった。

そこには、男爵と、折られた魔笛。

倒されたノーネームの四人がいた。

 

四人とも意識を失い、男爵は残った奴らを探していたのか、百合人の足音に敏感に反応した。

 

百合人は変わり果てた男爵をみてか、はたまた倒された四人をみてか、嘆息した。

 

「なんでこうなっちまうかなぁ…

俺はァ、別にこんなことのために、戦ってきたんじゃないんだぜ?

 

仲間を失ったり、傷つけられたり、自分が死んだり。

 

仲間と別れちまうことはあるだろう。

ペストだってそうだ。

俺はあいつらのこと知っていたし、てめぇが折やがった魔笛の残骸だけで想像はつくわ。

 

まぁ、仕方ねぇよ。戦いの中でそうなったんだ。

其れ相応の覚悟だってあったはず。

 

だがよぉ…やっぱり。

 

俺は青いなぁ…

 

こんなことぐらいでよ。

 

てめぇに殺意抱いちまうなんてよォ!」

 

その瞬間。百合人の握り拳から漆黒の光が漏れ出した。

 

その一撃は彼の怒りを込めた。

星を壊す一撃。

 

男爵はそれを獰猛に見つめ、凄まじい速度で彼に襲いかかった!!

 

しかし、百合人は言った。

 

「いくら、てめぇが俺の血を啜って強くなったからって、いくらてめぇが俺の仲間を倒したとしても。

 

俺には勝てねぇよ。

 

なぜなら

 

 

俺が背負ってるもんよりてめぇが背負ってるもんの方が遥かに軽いからだ。」

 

砕け散れ…

 

その拳は男爵の拳をもろともせず、男爵の顔面へと吸い込まれていった。

その一撃で男爵の顔はひしゃげ、次の瞬間には頭が吹き飛んだ。

 

その一撃は頭だけでなく身体にさえも影響を与え、彼の霊格は簡単にもろく崩れ去り粒子となって風にのって消えた。

 

百合人は自分が作りあげた兵団にノーネーム四人を宿舎へと送らせた。

 

百合人の拳はその威力によって、地面は砕け散れ、周りの家も崩壊し、ひび割れていた。

 

百合人はペストの亡骸があったであろうその場所にどこからともなく出現した花束を添えた。

 

「さよなら、ペスト」

 

彼はそうつぶやくと、踵を返し、自分の家に戻っていく。

 

 

魔王としての覚悟を決めて

 

ペスト編fin

 

 




これにてペスト編終わりです。
次はアンダーウッド編です。
いやー、うん。少しバトル回が多いかもです。

それでは。


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『ペスト編最終回なのでございますよ。あぁ、お疲れ様だな。by百合人』

はい、どうもunworldでございますよ。
というわけでサブタイにもあるように、ペスト編完結。

番外みたいなその後の話ですので、短いです。
あ、いつもですね。

すいません。

一ヶ月更新とは言わず一週間更新目指そう。

それではどうぞ。


 

ペストというか、男爵との戦いが終わり、百合人は自分の家に戻る。

家と言っても、サウザンドアイズの支店なのだが…

 

「ふぅ…」

 

彼は自室にある温泉につかり、疲れを癒そうとする。

彼の体は彼の予想をはるかに超えて疲弊していた。

それも、そうである。

一夜にして、この世界の魔王になったのだから、心労共々辛いものがある。

 

しかし…だ。

彼には疑問が湧いていた。

なぜ、自分の霊格が『必要悪』なのかと言う点である。

 

この『必要悪』という霊格が、この箱庭世界の都合のために自分に埋め込まれた。つまり、これは箱庭世界の策略であることを百合人は知っている。

 

だが、彼はまだその真実を知らない。

なぜ、彼なのか。

それは全くの偶然。であるわけはない。

 

もちろん、彼は自分が故意に箱庭世界によって選定された人物であることも、

なぜそんなことになったのかも彼はしらない。

むしろ、知らない方が幸せではないのかそんな気持ちもしてくるのである。

 

そんなことを考えている間に、のぼせてきてしまった。

 

「う〜頭いてぇ。あがろ。」

 

そう言って、彼は湯船から上がる。

だが、彼は自分の背中に僅かな違和感を感じた。

痛いわけではない。

しかし、それは熱い。

 

まるで、灼熱のマグマのように、

背中に灼きついている。

 

背中に彫られたように、書かれているのは、『必要悪』の三文字。

 

それは自分が悪である証拠であり、善ではない確証でもあった。

 

 

「なんでかなぁ…はぁ…」

 

彼はそうため息をついた。

風呂から上がり、身支度を済ませ縁側で酒を用意していると、案の定。

 

「おおっ…百合人やってるのぉ」

「あっ、白夜叉様。飲みます?」

 

白夜叉が百合人の部屋に入ってきた。

まぁ、百合人はそれを予想をしていたため酒は多めに用意してある。

 

白夜叉に酌をして、二人して縁側に座る。

 

「ふぅ…やっぱり酒はうまいのぉ」

「そうですね。」

 

すると、彼の手に白夜叉の少し小さい手が重なった。

白夜叉の手は微かに震えていた。

 

「白夜叉様?」

「百合人…百合人…お願いだ…

もうさっきのような無茶なことをするのはやめてくれ…」

「…」

 

百合人が沈黙していると、白夜叉はその頬に百合人の手を寄せた。

 

「……こうしてお前の温もりを感じられている。それでいいのだ…

…私は勝利は望まない。

お願いだ…死なないでくれ…」

 

暖かい白夜叉の頬に冷たい涙が流れて、百合人の手に触れた。

その冷たさを感じながら、百合人は言った。

 

「…死にませんよ…」

 

その言葉は震えていた。

その嘘はどれだけの人を悲しませ、どれだけの仲間を信じさせることが出来るだろう。

百合人はわかっていた。

自分がかならず少なくとも近いうちには必ず『死ぬ』

そう断言出来た。

 

なぜなら、白夜叉がこのタイミングになって、死ぬなと言い始めたこと。そして、その言葉に妙に現実的なニュアンスがふくまれていることから考えると、自分が死ぬことを白夜叉が知っているように、百合人には見えたのだ。

 

そう、そうなのだ。百合人は死ぬ。

それが、断言できる理由は白夜叉が彼をこのコミュニティに入る時にある者にみてもらったからだ。

百合人の未来を。

だが、そこには

 

『魔王となる運命を背負い、高くそびえ立つ木の街で達皆上百合人は龍に殺される』

 

そう白夜叉は宣告されたのだ。

 

だからこそ、白夜叉は彼に百合人に言ったのだ。

死なないで。と

 

百合人はそれを察した。

 

だから、嘘をついてまで命をはるのだ。

百合人は白夜叉を抱きしめ、自分の震えを悟られないように、心を引き締め、言った。

 

「俺は死にません。

ずっと貴方と共にいます。だから、泣かないでください。」

 

白夜叉はその言葉を聞いて、安心したのか彼の体を抱きしめ返した。

 

「あぁ、お前を失いたくないんだ。一緒にいてくれ。」

 

その言葉には嘘はなく純粋にそう思っていたのだろう。

百合人はそれを察したからこそ、黙っていた…

 

月明かりは二人を照らし、影を作り、酒の水面に映っていた。

 

その情景を襖の奥から覗いていた女性店員は、百合人との別れを悟ると、うっすらと涙を作った。

 

月を見つめていたのは、百合人たちだけではない。

 

ノーネームの宿舎では十六夜が窓際に座り、月を見ながら物思いにふけ、三毛猫と遊ぶ燿はふと、月を見上げ、ディーンと月明かりに涼む飛鳥。

黒ウサギは机に向かい、書類と格闘していた。

 

サンドラとマンドラは生き残った人々と町の復旧作業をしながらみていたし、

 

アンダーウッドの木の上には、災いの元となる集団が月を楽しんでいた。

 

ギフトゲームの犠牲となったペスト達もこの月夜を楽しんでいることだろう。

墓場には花束が献花され、甘い匂いをさせていた。

 

こうして、ペストとのギフトゲームは終わり街は平和を取り戻したのだった…

 

 

 

次回予告。

 

土地と水を再生させ、コミュニティ再建へと乗り出すノーネーム一同。

そこへ、アンダーウッドの収穫祭の招待状が届く。

 

だが、その祭りはとある者共の襲撃によって、予想外の方向へと変化する。

 

サウザンドアイズもそれに巻き込まれ、百合人と白夜叉は離れ離れになってしまう。

 

そして、百合人の運命は!?

ノーネームはどうするのか!?

 

作者はちゃんと一ヶ月更新できるのか!?

 

様々な思いと残酷な運命と大混戦のギフトゲームが交差するアンダーウッドの収穫祭編始まります!

 

 

 





てってれー
作者「ペスト編完結!」
黒ウサギ「おめでとうございます!」
作者「いや、結構時間かかった感じがするわ。どうですかね。黒ウサギさん」
黒ウサギ「そうですね。時間かかりましたね。本当に時間かかりましたね。だって一ヶ月更新目指すとか言っといて普通に二ヶ月音沙汰ないことありましたよね?」
作者「やる気はあったんだ。」
黒ウサギ「それに……なぜ、飛鳥さんのディーンとメルンの話がなかったんですか?
ディーンとメルンが出番なかったじゃないですか、」
ディーン・メルン「解せぬ。」
作者「……そんなこと言われてもさ、ねぇ、そんなこと書いたら飛鳥が主人公ぽくなっちゃうだろぉ!?百合人の立場なくなっちゃうだろぉ!?
一応あいつが主人公なんだからさぁ!」
黒ウサギ「いや、ちゃんと書いてあげましょうよ。」

作者「えー茶番はおいておきまして、どうもです。
確かにメルンとディーンの話は書きませんでしたね。
書いてもよかったんですが、飛鳥さんには自分で邂逅して貰って、基本は百合人を軸にして話がすすみます。」

というわけで、次のアンダーウッド編では、基本に忠実に百合人を軸として話がすすみます。
十六夜さん達、ノーネーム一同の活躍を見たい方は、是非原作をお読みください。

それでは、次のお話まで。


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アンダーウッド編 それは波乱
『アンダーウッドの収穫祭始まるようでございますよ!?うむ、いかにも儂が主催者だ。by白夜叉』


一ヶ月更新出来ました。
私にしては珍しい。


ノーネーム本拠

 

ペスト達との戦いから少し時間がすぎて、ノーネームの本拠は大きく発展を遂げた。

 

主に、ディーンとメルンのお陰である。

メルンとディーンのお陰で荒廃していた土地が耕され、驚きの進化を遂げた。

 

その成果をみて、飛鳥も鼻高々である。

十六夜は水を手に入れ、飛鳥が土地を耕した。

 

しかし、燿は…

 

燿は畑のそばにあったベンチに座る。

そして、ため息をついた。

 

燿がため息をつくのは当然で、自分だけノーネーム発展について役に立っていないからだ。

黒ウサギの期待だけにその落ち込みようは半端ではない。

 

「私…役にたってないなぁ…」

「そんなことねぇよ。きっと」

「ひゃぁ!!」

 

燿はいつの間にか隣にいた百合人にびっくり仰天、ベンチから落ちた。

なお、燿を驚かせたのは、しっかりとした正装をまとった百合人の姿だった。こんな姿は珍しい

 

 

「いてて…」

「なんだよ。そんな驚かなくてもいいじゃねぇか。ていうかよ、俺が先に座ってたのに勝手に座ってきたのはお前の方だろ。」

 

そう百合人は少し怒っているような顔をした。

 

その表情から察したのか、燿はすぐに謝った。

 

「ご、ごめんなさい」

「まぁ、別にいいけどよ。

で、何、どうした。役に立ってないこと悩んでのか?」

 

百合人はそう聞いた。

つまり、燿のため息まじり出たあの言葉を全部聞かれたということだ。

 

「…別に…」

 

燿はそう明後日の方向を向いて否定した。

百合人は苦笑し、ため息をついた。

 

「仕方ねぇなぁ…これは独り言だぞ?聞くんじゃねぇぞ。」

「うん。」

「聞いてんじゃねぇか…まぁ、いいが。

言っとくが戦うもの、守られるもの双方にとって戦力ってのは多いほうがいいに決まってる。

ソロでいいってやつはいるが、それはそいつは必ず何処かで心が軋む。音を上げる。

でも、そんな時に仲間がいるだけでその心労はかなり無くなる。

まだ、こいつらがいる。

一緒に戦える。それだけで、戦うものにとってはいいもんだ。

 

それに守られるものにとっても、自分らを守ってくれる奴が強いやつで、必死で命かけて守ってくれる奴がいるだけで、どれだけが不安が拭えるかわかったもんじゃねぇ。

俺も、それでたくさんの危機を救われた。

一匹狼ってのもカッコ良くて、強いが、俺はやっぱ仲間いるほうがいいけどな。」

「…そっか…私は役に立てたかな。」

「それはわからん。でも、本当に役に立っていないなら、十六夜や飛鳥はお前のことを避けるだろう。特に十六夜ははっきり言ってくるだろうな、役立たずだってよ。

でも、お前はそんなこと言われたか?

そんなことを感じ取ったのか?

 

そんなことはないだろう。

それに、こんなことで役に立てなくても他のことで役に立てばいい。

ギフトゲームが全てじゃねぇ。

だから、気負いすぎんな。」

 

百合人の角度からは燿の表情を伺うことは出来ない。

しかし、その声は震えていた。

泣いているのかは、定かではない。

 

ただ。震えた声で言った言葉は力を持っていた。

燿は不安だったのだ。

十六夜や黒ウサギ、飛鳥に見限られることが、役立たずと言われることが怖かったのだ。

しかし、その不安は百合人の言葉で幾分にも荷がおり、どっとその不安が感情に現れたのだ。

 

「……ありがとう……達皆上…さん」

 

百合人はありがとうと言われたのは久しく、驚きながら、苦笑して言った。

 

「達皆上って言いにくいだろ。まぁ、百合人って言えよ。」

 

燿の声は震えていたが、しっかりと聞こえた。

 

「…ありがとう…ありがとう……百合人…」

「お前の荷が降りたんなら、幸いだ。」

 

百合人の手は自然と燿の頭にのり、その頭を撫でた。

 

燿はまだ鼻をグスグスやっていたが、しばらくして。

 

「……髪型崩れちゃう……」

「お、悪りぃ悪りぃ。すまんな」

 

百合人はパッと手を離し、苦笑した。

燿もまんざらそうではなく、なぜか撫でられた頭を触っていた。

 

そんな情景を影ながら見ていたものがいる。

 

「(くっそー、あの男お嬢をたぶらかしおって!お前には白夜叉や黒ウサギのネェちゃんがおるやろが!何か仕返しをしてやらねばっ!)」

 

そう燿の飼い猫。三毛猫である。

簡単にいうと、彼は燿に近づき、落ち込んでいた燿をいとも簡単に元気にさせ、三毛猫にも見せたことのないような顔をさせた百合人に嫉妬していた。

 

そして、オスの本能としてだろうか、彼に敵対心が湧いていたのあった。

 

 

だが、そんなこともつゆしらず百合人は自分が来た理由を思い出す。

 

「あ、そうだ。なぁ、春日部黒ウサギどこ?」

「えっと…書斎かな。」

「ありがとう」

 

百合人は燿に礼を言うと、書斎に向かう。

向かう足取りは重く。

燿にあんなことを言っておきながら、自分は魔王になった。

 

自分の無力さを嘆き、そして、必要悪へと昇華した。

 

そう考え事をしていると、レティシアの姿が見えた。

身の丈不相応な量の服を運んでいるのだが、今にも転んでしまいそうである。

百合人はそんなレティシアに声をかけた。

 

「手伝いましょうか?」

「…本当に百合人か?」

 

レティシアは百合人の方を見ると、何が、面白かったのか、クスクスと小さく笑った。

 

「…そんなにおかしいですか…」

 

百合人はその意味を察し、むすっとし聞いた。

 

「その格好似合ってるよ…ククッ…」

「…自分でもわかってるつもりですよ。でも、今回は遊びに来たんじゃないんです。今回は真面目なお仕事で来たんですから。

茶化さないでくださいね。」

「仕事?」

 

レティシアは笑うのをやめて、不思議そうな顔をした。

 

「ええ。今回は悪いことと、いい事を伝えにやってきました。そうだ。その服持ってあげますから、一緒に黒ウサギの場所に行きませんか?」

「わかった。ついていこう」

 

こうして、レティシアと百合人は用事を済ませると、書斎へと向かった。

そして、書斎のドアをあけた瞬間。

 

「うっきゃぁぁぁぁ!!!

ややこしすぎるのですよぉぉぉ!!!」

 

沢山の紙がバラバラとまきちらされた。

紙吹雪よろしく紙がバサバサと百合人達に降りかかる。

 

百合人は頭の上に乗っていた紙を一枚とり、その内容に目を通し、察した。

 

「なんだ、黒ウサギ。アンダーウッドの収穫祭行きたいのか…」

「えっ!?百合人さん!?

なぜ、ここに?そして、なんでそんな格好をしておられるのですか?」

 

黒ウサギはうさ耳をビッとたたせ、驚きを表現する。

そのうさ耳の表現力には、希代の画家たちもきっと脱帽することであろう。

 

ノーネームに来てからというもの、この服装を突っ込まれる百合人は小さくため息をついた。

サウンドアイズから出かける時に白夜叉から

「うむ、似合っておるぞ」

などと笑いながら言われたのはそういうことだったのか。

 

「…そんなに似合ってねぇのかよ…」

そういって落胆する。

 

しかし、仕事を忘れるわけにはいかない。

 

「おう、黒ウサギ。お前らに悪い知らせと良い知らせがあるぞ。

どっちから聞きたい?」

 

黒ウサギはその言葉を聞いて、体をしっかりと直した。

 

「レティシア様、ジン坊っちゃまを呼んでいただけますか?」

「わかった。」

 

数分後、ジンが書斎に入り、床に散らばった紙をみて、黒ウサギに心配そうな顔をしたが、百合人が話すと、椅子にすわり、言った。

その威厳はコミュニティの主そはのものだった。

 

「話してください。百合人さん。

先に聞くのは、悪い方からお願いします。」

 

百合人はその姿をみて、自分の姿勢を正した。

 

「わかりました。ノーネームの主、ジン=ラッセル殿。

あなたのコミュニティは何者に狙われてます。

 

これは。『あの人』が予言したことです。

詳細は自分にもわからない。

 

ただ、一つ言えることは。

 

『必ず死人が出る』ということです。」

 

百合人はそう言って肩をすくめた。

しかし、その瞳には悲しみがうつっていた。

戦場に生きた彼だからこそ、死人が出るということの意味とその戦いの激しさが伺えた。

 

「そうですか…」

 

ジンの目が少し曇った。

あまりいい状況とは言い難い。

 

それでも良いニュースが残っている

 

「で、いいニュースというのはですね…」

 

百合人は自分のポケットからとある手紙を取り出し、黒ウサギに投げた。

 

「これは?」

 

黒ウサギはその手紙を訝しげに見つめ、封を開いた。

 

「なっ…こ、これは…」

 

百合人はその反応ににこやかに笑い、告げた。

 

「ノーネーム一同の皆様。

我が主が主賓と招かれている

『アンダーウッドの収穫祭』に招待いたします。

ぜひ、お越しくださいませ。」

 

その瞬間。

 

黒ウサギは嬉しさに涙した。

 

その頃、アンダーウッドでは…

 

影で暗躍する者どもが動きはじめた。




どうも、私です。unworldでございます。
アンダーウッド編始まります。
原作の方では、アジ=ダ=カーハ編が終わりましたね。

アンダーウッド編もしっかりしないと…

それでは


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『アンダーウッドで大暴れなのでございますよ?すまない、正当防衛だ。』

えー。どうもで、ございます。

一週間くらい前に書き終わっていたのに、投稿してませんでした。
お待たせしてもうしわけなかったです。


ザァァァァ…

百合人がアンダーウッドに着くと、大瀑布の音がかすかに聞こえた。

 

「ここが……アンダーウッドか…」

 

実際にアンダーウッドに来たのは、百合人も初めてだった。

その大木の大きさには驚かされたものだ。

 

アンダーウッドの周りを回っていると、百合人は誰かに呼ばれていることに気づいた。

 

「百合人殿〜達皆上百合人殿はいらっしゃるかー!」

 

百合人はその声に聞き覚えがあった。

この声は

 

「サラか…」

 

百合人は自分の名前を呼んでいる者のところに急いだ。

 

「うっす。サラ。久しぶりだな。」

 

サラはふりかえり百合人を確認すると、ダッシュをしてきた。

百合人は当然のように両手を広げる。

 

サラもそれに応えるようにダッシュしながらジャンプした。

 

百合人の顔は笑顔であった。

 

 

しかし。その顔にサラの蹴りがめり込んだ。

 

「ぐへぇ!!」

 

その蹴りは、百合人を吹き飛ばし、後方にあった屋台をも粉砕した。

屋台のなかにあった小麦粉がそこらじゅうを煙まみれにしたのだった。

 

百合人の思考は一旦停止し、一拍。

 

なぜに、蹴られた。

 

そのことに絞られた。

そして、土煙のなか百合人が立ち上がった瞬間。

 

サラの竜の純血種の炎が百合人を襲った。

 

「!!マズっ!!」

 

最初に気づくべきだった。

なぜ、あんなところに屋台があったのか。

まだ、アンダーウッドの収穫祭は開催されてないし、期間もある。

 

そんなところに屋台があること自体が不自然なのだ。

そして、その中身が小麦粉ということは。

 

そう。サラはこれを狙っていたのだ。

粉塵爆発。

 

その威力は凄まじく百合人を巻き込み、街に火柱を出現させることと相成った。

 

百合人は爆発の衝撃で、虚空に投げたされた。

正直。油断はしていた。

 

五体満足で生きているのが奇跡なほどだ。

だが、体へのダメージは計り知れない。

 

百合人は重力に従い、地面に体を打ち付ける。

 

ゴッハッ!!

 

その衝撃で吐血する。

 

「ちくしょ…なんだってんだよ…」

 

なぜ、こんな街中で襲われているのか。

おふざけだったら笑える。

 

だが、もし操られてるのなら、助けてやりたい。

 

その衝動が百合人を掻き立てた。

百合人は立ち上がり、ラブリュスを構えた。

 

そして、

 

「よくもやりやがったなぁ!!!

サラァァァァ!!

 

こちとら、魔王だぞ?

てめぇ、喧嘩ふっかける相手間違ってんじゃねぇよ。

 

こっからは。俺のターンだ。」

 

そう言って、ラブリュスを振った。

その風圧は、小麦粉を吹き飛ばした。

 

しかも飛んでいった方向はサラの方。

 

そして、百合人は瞬間。

 

漆黒の炎を出現させた。

 

「やり返してやんよ。

 

吹きとべ!!」

 

その攻撃は、サラが放った竜の純血種の炎に匹敵し、この日2度目の火柱を見ることになった。

 

そして、百合人は粉の霧が晴れ、サラが立っていると確認した段階で、拳を握りしめサラに肉薄する。

 

「くっ…」

 

サラは、その拳を避けようと、バックステップで離脱を図った。

 

しかし、そこに百合人はおらず、バックステップした先で、

 

コツン。

 

何かに当たった音がした。

それは、百合人の握り拳でサラの背中に触れていた。

サラは驚き、とびのこうとしたが、

もう遅かった。

 

「もう俺の勝ちだ。」

 

サラが驚いた顔で百合人の方を振り向いた瞬間。

 

百合人の拳から漆黒の砲撃が放たれ、周辺の床や壁を抉り、その衝撃によってサラを気絶させた。

 

百合人は、体の痛みを耐えサラに近づいた

 

「死んじゃいねぇか…」

 

サラが死んでいないことを確認すると、辺りを見渡した。

先ほどまで人がいたはずなのに、いなくなっている。

 

人払いの結界か…

 

百合人は、サラを操った犯人が作ったであろう結界を眺めた。

百合人は嘆息し、自分の宿舎へと帰っていった。

 

もちろん。サラを背中に乗っけてだが。

 

 

その後ろ姿を屋根の上から見つめるものがいた。

 

長く伸ばした黒髪を揺らし、その少女は苦笑していた。

 

「あーダメでしたか…」

 

少女がそういうと、白い髪をした少年が頷きながらいった。

 

「まぁ、無理だろうな。あいつ、達皆上百合人は仮にも第一級の魔王だ。

 

三流の魔王が相手して勝てる相手じゃねぇ。」

「そうですねぇ…まぁ、でも実力は測れました。」

 

そういって、その少女は結界を解いた。

その瞬間。そこだけ止まっていた時間は動きはじめ、人が道を通りはじめた。

 

「…強いですけど、油断はありますよ。倒せると思いますよ?殿下なら」

 

その少女はそう殿下と呼ばれた少年へと視線を向けた。

 

「…ふん。どうだろうな。

 

まぁ、やってやるさ。いくぞリン。」

「あいさー♪」

 

殿下とリンはまだ知らない。知れるわけがなかった。

 

彼が『達皆上百合人』が、ただの第一級の魔王ではなく。

 

『 』魔王であることに。

 

サラを自分の宿舎に連れて帰り、ベッドに寝かせた。

傷は浅い。

ただ、気絶させることをしたのだ。

 

そのあたりの手加減はできるのだ。いくら、第一級の魔王とはいえ、だ。

 

百合人はソファに寝転び、考えた。

なぜ、サラがあわな意味のわからないギフトに引っかかるのか。

 

「ふぁ…」

 

百合人は戦闘をしたからか、とてつもない眠気に襲われた。

 

さすがに、魔王といえど欲には勝てない。

 

百合人の意識は、暗闇へと落ちていった…

 

 

 




どうもでございます。
unworldでございます。

前書きでも書いたように、一週間くらい前に書き終わっていたのに、投稿してませんでした。
もうしわけなかったです。

そうですね。これは、別作品という部類になるかもしれませんが、私がアットノベルス時代に書いていたもうひとつの小説のほうを近々、改変して出すかもしれません。その時は、よろしくお願いします。


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『ドールマスターV必要悪の魔王なのでございますよ!うむ、魔王対決の予感だな』

忙しかったんです。許してください。



『人間使い(ドールマスター)

vs

必要悪

なのでございますよ!

うむ、魔王対決の予感だな。』

 

真夜中、月明かりが街を照らすころ窓に、一人の男の影が写りこんだ。

 

「へへっ…すっかり眠りこけやがって…馬鹿な魔王だねぇ…」

 

窓から覗いたのは、仮面。

仮面は自分の指先についた糸を操り、サラの首元にくっつけた。

 

この男は魔王『生物使い(ドールマスター)』

生物が眠ったり意識を失った時にその人物を操るギフトを持った魔王である。

 

その生物をとてつもなく精密に操るには首元に糸をくっつけなければいけない。

それをくっつけた場合。

 

会話

動作

ギフトの使用など、

その生物の全てを操るその力は強大である。

 

だが、あまりにも霊格が違いすぎる場合には操れない。

それは、基本的にギフトの本質であるからあたりまえのことなのだが、

 

「へっ…だが、これでこの魔王を殺せるっ!!」

 

ドールマスターが指を動かすとサラが起き上がる。

その手には、火龍の炎で創りだしたであろう燃え盛る剣が握られていた。

 

サラは、その剣を百合人に向かって振り下ろした。

 

その剣は百合人の体を貫き、その体を燃やした。

 

「はははっ!!

 

やったぞ!!俺はやったんだ!!

必要悪を倒したぞ!!」

 

ドールマスターは興奮のあまり、広場出て雄叫びをあげた。

 

それが失敗だった。

 

「見ぃつけたぜぇ…」

 

街を囲む壁の上、腕を組み、笑みを浮かべる男がいた。

その男はヒョイと壁の上から飛び降りる。普通なら、怖がってなにも出来ないが、この男は普通じゃない。彼は壁に足をつき、跳んだ。

 

その勢いはまさに弾丸の如く。

着地した先の普段は美しいであろうタイルは無残にも砕け散った。

黒いマントをはためかせ、その男。

達皆上百合人は現れた。

ドールマスターの前に現れた。

 

「おまえは!?生きてやがったのか!?」

 

「よぉ、ドールマスターだっけか。

俺を殺したつもりなら、俺の気配をしっかり探れよ。じゃねぇと、てめぇが殺されっぞ」

 

百合人は漆黒のマントを揺らし、ドールマスターの目の前に現れた。

ドールマスターは一瞬にして、力の差を悟った。

 

元来、ドールマスターというギフトの所持者はあまり強くない。

そのため、強かった死者を蘇らせ、もし強い相手が現れた時に、強かった死者を使い、五分にしていく。

 

そういう戦い方をするのだ。

しかし、今回ドールマスターが動かしているのは、サラ一人。

 

サラも龍の血を引くものではあるが、必要悪とはランクが違う。

 

彼の心に慈悲などないし、遠慮を知らぬ。

 

「く…くっそ!…」

 

彼はサラを諦め逃亡を図る。

ドールマスターには、とある人物から特殊なギフトを預かっていた。

 

端的に言えば、瞬間移動のギフト。

 

彼は一瞬にして、瞬間移動し、何処かへ消えた。

百合人はドールマスターの気配を察知し、彼はその先へむかった。

 

 

「ちくしょぉ…ちくしょぉ!!

あんなんに勝てるわけねーだろ!!

あの女…俺に嘘を教えやがって…」

 

 

ドールマスターはそう思いながら必死にある場所へ向かった。

それは彼の独壇場であり、無敗。

 

幾多の戦士達が散り、埋まる場所。

それは冒涜されることを良しとせず何人たりとも受け付けぬ。

この男以外は。

 

ドールマスターは、墓地の中心にたつと詠唱した。

声高々に死者を冒涜する詩を。

 

「目覚めろ!!『リビングデッド』!」

 

ドールマスターがそう宣言すると

幾人もの戦士が地面から這い上がってくる。

 

「あいつをぶっ潰せぇ!!」

 

ドールマスターは戦士達を操り、百合人の元に向かう。

 

…………

 

百合人はドールマスターを追いかけ、地面に降り立った。

 

そこは墓場。

 

ドールマスターの独壇場である墓場での戦闘は避けたがった百合人ではあるが、ドールマスターの気配はここにある。

 

百合人は地面に降り立ち、戦斧のギフトを展開する。

ドールマスターの気配探ろうと、踏み出した瞬間。

 

地面から人間達が百合人の足をつかもうと手を伸ばしてきた。

 

「な!?」

 

百合人は飛び退き、着地した。

斧のギフト出現させ、構えた。

 

地面から這い出てくる歴戦の戦士達はその身は腐り、眼球は飛び出ている。

 

しかし、その動きは速かった。

すぐさま、近づいてきた屍の首をはね体を両断する。

百合人はその行為に罪悪感も何も思わない。

彼の目的を邪魔するものは全て敵。

 

今の彼にとって、動くものは全て敵。

 

無心で屍を殺す…いや、切り刻んだ。

 

すると、パチパチパチパチ

どこからともなく拍手が聞こえてきた。

百合人はその方向に目を向けた。

 

「いやぁ…すごいねぇ。

さすが、必要悪ってところかよ」

 

そこには、ドールマスターが立っていた。

 

「ドールマスターてめぇを殺す。

もう死者を冒涜するのはやめとけ」

 

ドールマスターは不思議そうに首をかしげた。

 

「ん?なに言ってんだ?てめぇ

死者を冒涜だぁ?

何言ってんだよ。俺はこいつらを生き返らせてやってんだぜ?

むしろ感謝してほしいくらいだぜ

それにぃ…

死者を冒涜してるっつーなら、お前はどーなんだよ。え?

お前はその屍を切り刻み、踏み潰し、それこそ死者の冒涜ってもんじゃねーのかよ?

なんとか言ってみろよぉ!」

 

少しの間静寂が彼らの間を通った。

やがて百合人が口を開いた。

 

「そうだな。

 

てめぇの言う通りかもしれねぇ。

俺はこいつらをまた殺してる。

死者とはいえ、そういうことをするのはまずかったかもしれん。

 

だがな。

俺はてめぇが気にいらねぇ

自分は死者を生き返らせてる?

無理やりだがな。

それに、てめぇのやってきた罪は償わきゃいけねぇ。

だから、俺はお前を殺す。」

 

ドールマスターは待ってましたと言わんばかりに口角を上げた。

 

「おもしれぇ!!

俺を殺してみろ!

この墓場じゃぁ、俺の独壇場だぜぇ?お前が俺に勝てると思ってんなら大間違いだぜぇ!!

お前らいけぇ!

 

『リビングデッド』!」

 

百合人は小さく小さく言った。

 

「死者は死んだんだ。それ以外でもそれ以上でもないんだ。」

 

百合人は感情を消した。

その目は何も捉えず、屍を切り倒した。

その時ほど、百合人が人を細かく切ったことはないであろう。

 

数時間後。

百合人はドールマスターの首を落とした。

最後の言葉は静かなうめき声。

 

辺りには、血が飛び散り、墓石を汚していたし、道端には異臭を漂わせた肉片が転がっていた。

 

朝日が百合人の顔を照らすと、その惨状はあらわになった。

常人なら言葉を失うだろう。

 

しかし、百合人の顔は晴れ晴れとしていた。

何を思ったのかは、百合人にしかわからないが、何を得たのか。

 

百合人はラブリュスのギフトをしまい。

帰路に着こうとする。

しかし、数十メートル先に黒髪の女の子が現れた。

百合人は目を見張った。

 

その姿は、『リン』に似ていた。

百合人が出会った大人のリンの幼少期の姿の女の子は

何かを投げた。

 

姿に圧倒されすぎて、油断した百合人の腹に投擲されたナイフが突き刺さる。

 

そこには毒でも仕込んであったのか、意識が朦朧としてくる。

ついに、百合人はドサリと地面に顔をつけた。

 

「リ…ン…」

 

そう言って彼の意識は遠のいた。

 




みなさん。
お久しぶりでございます。
unworldでございます。

このところ私の方が多忙でしたので、小説が書けませんでした。
次からは重々気をつけてまいりますので、
これからも応援のほどよろしくお願いいたします


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『必要悪の降臨なのでございますよ!あぁ、俺は死なないよ。』

皆さま、お久しぶりです。unworldでございます。
このところ、創作活動を休止しており、大変申し訳ありませんでした。リアルの事情もありまして、お待たせして申し訳ないです。
小説の説明欄にこの作品は不定期更新です。と書いてはありますが、あまりにも時間がかかってしまい、申し訳なく思っております。

それでは、お楽しみ下さい



アンダーウッドの貴賓室にその女性はいた。

朝早く日が出てくること起床したその女性は、いつものようにメイドに聞いた。

 

「彼は帰ってきたか?」

 

これもまた定例でいつもの答えが帰ってきた。

 

「いいえ。付近を捜索していますが、以前見つかっておりません。」

「……そうか…」

 

彼女…サラは落胆した声をだした。

そうそれは2週間も前の話だ。

サラが目が覚めた場所は自室であったが、自分がどんなように利用され百合人を傷つけたかを聞いた。

 

彼女は自分自身で百合人を探したが全く見つからず、今も見つかっていない。

 

サラだって忙しい身だ。

いつまでも百合人の捜索にうつつを抜かしているわけには行かない。

 

しかし、それでも

 

「百合人…どこに消えたのだ…」

 

彼女の心から罪悪感と酷い脱力感が抜けない。

毎日毎日ひょっこりと百合人が現れるんじゃないかと期待してしまっている自分がいる。

百合人がいつものように窓にちょこんと座り、外を見ながら酒をチビチビと飲んでいるのではないのだろうか。

などと期待してしまっている。

 

しかし、当然そんなことなどはない。現実は彼女の期待通りになど動くわけがない。

 

「また…きっと…会える…」

 

サラはか細い声で自分に言い聞かせた。この2週間。そうやって日を紡いできた。

そうしないとやっていけない。

もし、もし、百合人が死んでいたら……そう思うと、心が折れそうだった。

 

今日はアンダーウッドの収穫祭当日。

しっかりしなくては。

 

着替えながら、そう言い聞かせ、

サラは部屋のドアを開けた。

 

…………

 

百合人の体は毒で汚染され、その自由は効かなかった。

 

高熱でうなされ、頭が割れそうに痛かった。

 

彼が目覚めた場所はやはり意識の中。

自分の闇と光が乖離している場所。

そんな百合人の真相心理の中に『彼』はいた。

 

顔の見えない彼に近づくと、彼は花で遊んでいた。

彼の周りには白い花が咲き乱れていたためそれで遊んでいるのだろう。

 

気づくと百合人の周りにも花が咲いている。

こちらは黒い花だが。

 

黒い世界に白い花と白い彼。

 

白い世界に黒い花と黒い自分

 

決して交わることを知らず、他の色に染まることを知らない白染の花。

 

様々な物と交じりきり、限界まで汚れ他の色に染まりきった黒染めの花。

 

「やぁ、またあったね」

「おう、久しいな。」

 

彼は百合人に挨拶を交わした。

百合人も挨拶を返し、彼の近くに座ることにした。

 

「いやー参ったぜ。ありゃあ即効性の毒だな。

あんなんくらっちまって、魔王としてなさけねーぜ。」

「そうだねぇ。一応、人類最終試練だし、もうすぐ封印指定になるんだっけ?」

「多分な。このアンダーウッドの収穫祭が終わったら…俺「はいはい。ストップ」…そう簡単にしなねぇよ」

 

この○○が終わったら俺○○するんだ。という魔法の呪文があるらしい。

効果?唱えた人は死ぬ。

 

そんなことはどうでもいいが、彼らは世間話をしていたが、話は本題に移った。

 

「はぁ…はー。どーやってここから出ろというんだよ。マジで」

 

百合人はあぐらをかいて座りながら、ため息をついた。

それをみて、彼は不敵に笑った。

 

「まぁ、僕がここの主みたいなものだし、出してあげてもいいんだけどさ。聞いてもいい?」

「出してくれんだろ。何でも答えてやるよ。」

 

そして、彼は聞いた。

 

「なんで君は魔王になったの?」

 

「大切なもんを守るために魔王になった。それ以外に理由なんてねぇ」

 

彼は続けた。

 

「もしも、もしもだ。もし君がこの箱庭世界に呼び寄せられた理由が君を魔王にするためだったらどうする?」

 

百合人はキョトンとしてから、ハッとして答えた。

そしてため息をつき、言葉を紡いだ。

 

「……箱庭世界にそういう魂胆があるかどうかは、この際どうでもいい。つか、別に気にしない。

 

 

ただ、さっきも言ったろう。俺は大切なもんを守るために魔王になった。勇者じゃなくな。

大切なもんを守れない勇者より、大きなもんを救って小物を見捨てる勇者になるならば、

俺は、そいつらに仇なすものを全て壊せる魔王にでもなってやるよ。

そのために俺はいる。必要悪という世界から認められ、しかし、それでも絶対なる悪であり、決して矮小でなく。人から忌み嫌われ石をなげつれられようとも、俺は、気に入らないものを全て殺せる魔王になりたい」

「そのせいで僕は自我を保つのに精一杯だよ」

 

彼は呆れて、嘆息する。

百合人は苦笑しつつ、「苦労をかける」と言った。

 

それでも、彼の顔は晴れやかであった。

きっと百合人がこう答えるということはわかっていたはずなのに。

何かが吹っ切れたような。とても清々しい顔をしていたような気がする。

そして百合人が期待通りの答えを出したことに満足していた。

 

「さて、そろそろこの世界ともおさらばしなきゃね。

君もいつまで寝ているんだと怒られてしまうよ」

「そりゃあ怖い」

 

彼はその言葉を聞いて笑った。

そして、

「オープン」

と言った。

 

すると、後ろに木製のドアが出現した。

百合人は立ち上がり、ノブに手をかける。

 

「そんじゃ行ってくるぜ。俺」

「行ってらっしゃい。僕」

 

ノブを回して、ドアを押した。

すると、まばゆいほどの光が百合人を満たした。

百合人は光の中に消えた。

 

百合人がその場所から、消えたあと、彼は。

 

「君は運命づけられるんだよ。

まだ君はわかってすらいない。その意味をその残酷さを」

 

そういうと、彼は手元に置いてあった本を開く。

 

その本は最後にはこう締めてあった。

 

『断罪が待っている』

 

彼はそのページを閉じると、ため息をついた。

 

「断罪…ね」

 

百合人の運命は奇跡でも起きない限り変わらない。

いや、奇跡が起きようとも変わりはしない。

なぜならそれは『運命』なのだから

…………

 

彼が目を覚ますと、そこは墓地ではなく長イスの上。

 

その場所の天井は高く絵が描かれている。

ここは

その絵が意味するものはよくは理解できないが、

生と死をテーマにしたものだということくらいはわかる。

 

「起きましたか…」

 

百合人は起き上がり、その声の主へ視線を向けた。

 

「多分、あんたが助けてくれたんだろう?

一先ず、礼をいうさ。」

 

その神父と思しき人物…いや、もう人物ではない。

それは言うなれば幽霊だろう。

きっともう死んでいるのだ。

 

「かの魔王に礼を言われるなど、恐縮にございますが、随分長いあいだ眠っていらしたんですね。」

「何日くらい寝ていた?」

「2週間と少し。

正確な時間は覚えておりません。」

「…それでも長いな」

 

自分の愚かさ加減に、失望しつつあたりを見渡すと、ステンドグラスに十字架。

明らかに教会であった。

 

場所はきっと歩けばわかる。

なんとかなるはずである。

 

「さてと。助けてくれてありがとうな。」

 

百合人は拳を握りその力を確かめる。

 

…よしいける。…

 

神父はその様子を見て、何か悲しいような辛いような表情をした。

 

「魔王さま…一つ…たった一つ…私の願いを叶えてもらえますか…」

 

神父はそう言った。

百合人はそれを聞いて、神父の方を見る。

腰から下が消えかかっていた。

それで全てを察した。

 

もうこいつは死んでいたんだ。

それも結構前に

 

神父はもう持たないようである。

その魂は今にも消えそうで、姿を映しているその体さえ、ノイズが走り今にも虚空にのまれそうであった。

 

「魔王さま…私はこの教会で神父をしていたものであります…

何人もの子供がいました。ここは、孤児を拾って育てていたんです。

ですが……魔物などに襲撃され、皆殺されてしまいました。」

「そうか。」

「そのことはやはり許すことなど到底出来ようもありませんが、今はもういいのです。

そんなことをしてもあの子達は帰ってきません。

 

ただ、一つ。生前、アンダーウッドの方々はここの施設のことを気にかけてくださいました。アンダーウッドの方々は優しい方ばかりでした。

今、アンダーウッドは危機に瀕しております。

どうか…どうか…魔王さま。

アンダーウッドをお救いください。」

 

神父はそう涙を流し、そう言った。

こいつは本当にアンダーウッドを愛して、アンダーウッドを心配しているんだな。ということは百合人にも容易に伝わった。

だが、

 

「すまない。俺は魔王だ。俺ができるのは、侵略だけだ。救うことが出来るかどうかは保証出来ない。」

 

それは事実。それにましてや彼は悪。

正義になるなど、到底できない。

それを聞くと神父はやはり、何か悲しそうな顔をした。

だが、希望は最後に残るものである。

かつて、パンドラがゼウスに託された箱を興味本意で開け、その最後には希望が残ったように。

その伝承のように、最後に残るべきは希望なのである。

 

「だが、見ていろ。

 

俺は魔王だ。

 

誰が戦いを否定できようか。

誰がその闘争本能を否定できようか。

誰が自分の中にある悪を否定できようか。

それを論破できるものなど、存在しない。

もちろん自信のあるものはいるだろう。

だが、そいつらが紛争を止められるか?止められぬよ。

こうやって、世界中で紛争が起き、人々が死んでいくのだからな。

 

俺は世界に存在を承認された悪である。

いくらでも反抗するものがいるだろう。しかし、拒絶はされぬのだ。

だから、こうして俺がいる。

 

俺は絶対なる悪だ。

それは正義に変わることは決してない。だが、その存在を否定され、世界から仕方ないと匙を投げられた魔王だぞ?

一つの魂を救えないで何が魔王か。

その願い出来る限りはやってみよう。」

 

神父はその悪に圧倒された。

決して悪であることに悪びれることはなく。

恥ずわけでもなく。

 

ただ、悪である。

 

と堂々と自分の悪を掲げた。

 

その姿に涙を流し、

 

「やはり貴方様は魔王でありますな……

この魂…最後に良きものを見れたことを感謝いたします……」

 

そう言って安らかに消えていった。

 

「…なんと儚きものであったのだろうか。

 

その最後、この必要悪が見届けた。」

 

百合人は手を天空に突き出し、「構築」と言った。

すると、百合人にどす黒い『何か』が集まり、それは、かつて彼が操ったラブリュスへと変化する。

それを、振り下ろすとブンと風切り音が鳴り、周りにあった長椅子を吹き飛ばした。

 

百合人は先ほどまで神父がいた場所を振り返り、言った。

それは、一人の魔王として、そして、一人の元人間として。

 

「その願い聞き届けよう。

 

名も無き魂よ。

 

この必要悪 『侵略を開始する。』」

 

そして、彼はポケットからある指輪を取り出した。

 

…………………

 

アンダーウッドでは人が逃げまとい、混乱が生じていた。

 

巨龍からレティシアの分体と思しき黒い影達が上空にいる十六夜達の部隊を攻撃、その混乱は凄まじいものとなっていた。

 

そして、地上では巨人族の大群が押し寄せてアンダーウッドに襲撃してきた。

 

戦況は大きく揺らいだ。

バロールの死眼と黄金の竪琴が相手がたにある今。

巨人族は力を増し、アンダーウッドに攻め入っている。

 

地上組はなんとか戦線を維持しているのが、現状である。

 

バロールの伝承にある通り、ケルト神話上、巨人族というのは黒死病によって支配されていた。

 

そもそも、黒死病というのは、ネズミを媒介にし、その感染者を増やしヨーロッパの人口の半分ないし、3分の1を死に至らしめた病気だった。現代において、その病気を克服する方法、治療法は確立されているが、ペストが蔓延したのは14世紀の話。その流行が止まるのは18世紀になってから。実に4世紀。人類の脅威となった病気である。

 

このペストの流行は、ヨーロッパの文化にも大きな影響をもたらすことになった。

ペストは神の懲罰として認識され、人々の中で死後の世界への関心を一層高めることになった。

画家であったミヒャエルヴォルゲムートの作品である『死の舞踏』は、皇帝や貴族、農民や貧民などが骸骨と踊る姿が描かれており、その意味は、皇帝であろうと貴族であろうと農民や貧民であろうと、死という概念によって、無に統合されるという死生観を表していると言われている。

そのため、現世で死後の救われるために生きなければいけないという観念も生まれ、それは現代にも息づいている。

 

閑話休題。話を戻そう。

 

ジンはペストを操り、巨人族を追い詰めていく。

ケルト神話を原初とする巨人族にとっては、ペストの存在は厄介きわまりない。

 

「退きなさい!木偶の坊!」

 

ペストはひらりと急上昇。そのまま敵の本陣に突撃する。

そして、その本陣にいるのは、

最高位の魔法使い。アウラ

 

その姿はローブに包まれその下に隠れる肌をみることは叶わない。

アウラは来寇の書を手に儀式をしていた。

それを止めようときたのだ。

 

「久しぶりね。アウラ」

「あら。黒死班の御子。名無しの元にいるのは楽しい?」

「少なくとも、貴女たちのように不快ではないわ。」

 

刹那。

双掌にこめた8000万の怨嗟の衝撃波がアウラを襲った。

しかし、それは彼女の数歩手前で爆散する。

 

「ハーメルンの笛吹きから切り離されてしまって、霊格が縮小したのね。今の貴女は神霊には及ばない。

ねぇ?私たちのもとにこない?

ふさわしい舞台を用意してあげるわ。」

 

アウラはクスクスと笑いながらも、衝撃波を相殺する。

それはさすがに魔法使い。それもフェイと呼ばれる絶滅危惧種に相当する。その力は強大である。

 

「ねぇ?ペスト。

こちら側につかない?

貴女は単身で神霊になるだけの力があるわ。

それをハーメルンの笛吹きだなんていう無能な三下木っ端悪魔じゃなくて…」

「黙れ」

 

ペストは怒りからか、アウラが張っていた円陣を破った一撃はアウラの頬をかすめ、一筋の赤い線をつけた。

 

ローブの下からでも、驚いているのがわかる。

 

「アウラ。

私は貴女に感謝していた。それは他でもないハーメルンの笛吹きの魔道書を提供してくれたこと。

それは借りでもあったし、義理もあった。でもね。」

 

「でも、オマエは今。この瞬間。それを吐き捨て、捨て去った。

オマエ達にとっては、捨て駒でも、グリムグリモワールハーメルンは私の全てを賭して旗揚げし、彼らが命を捧げたコミュティよ。

交渉は決裂よ。」

 

そういうと、ペストは自分の手にはめられた指輪を握りしめる。

それは自分の達がここにいる証であるし、

今でも、ヴェーザーとラッテンの姿が目に浮かぶ。

 

「終わりよ。アウラ。

お前が侮辱したものは、私にとって全て!

ここに決別が成されたわ。

あとは殺しあうだけよ。古き魔法使い。」

 

「……そう。とても残念だわ。」

 

アウラは本当に残念そうに肩を落とした。それが演技かどうかは定かではないが、その結果が彼らにとって大きな痛手になることは間違いない。

 

そして、その時に 飛鳥とディーン

サラ。龍角をもつ鷲獅子同盟の幻獣たちがアウラの前にたった。

それは事実上の勝利であることに変わりない。

 

「お疲れ様。ペスト。」

「まだ何も終わってないけどね。」

 

飛鳥とペスト。

いや、その場にいるアンダーウッドの仲間達は勝ちを確信したはずだ。

 

だが、

「勝ちを確信したようだけど……

残念ながら、貴方の負けよ!!」

 

アウラはバロールの死眼を掲げる。

その瞬間。黒い光が天を貫き、

黒死病から解放された巨人族が取り囲む。

 

「なっ!?」

 

その叫び声と雄叫びが飛び交い、一気に窮地に追い込まれる。

サラは愕然とし、絶望した。

 

…あれだけやったのに…

 

巨人族の巨体の後ろに逃げていくアウラを見る。

 

「アウラァ!!」

 

ペストはそう叫ぶ。

だが、アウラは止まらないし、この窮地は変わらない。

 

巨人族の腕が振るわれる瞬間。

ペストがポツリとその言葉を紡いだ。

 

最強を呼ぶであろうその言葉を。

人が等しく願うであろう。

それを叫び、その言葉を紡ぐ権利はすべての生物にある。

 

「助けて…」

 

その言葉はすぐに巨人族の雄叫びにかき消され、無意味となる。

 

だが、それは無意味ではなかったようだ。

 

突如、暴風が巨人族をなぎ倒す。

暴風の中に、かすかに聞こえる大笛の音はどこかで聞いたことのある音であった。

 

その後に聞こえてきた音はすべてのモノを魅了し、聞き惚れる。

その音もまた、彼女にとっては少し懐かしい音であった。

 

「ウチのマスターに手ェだしてくれんなよ。巨人族」

「助けに参りましたわ。マスター」

 

その特徴的な容姿と服装の悪魔がペストの眼前に現れる。

その二人はペストにとって、懐かしく。そして、掛け替えのない仲間であった。

 

「ヴェーザー…ラッテン…」

 

涙を流し、膝をつく。

現実とは思えないことに、思考がまとまらない。

 

巨人族は怯んでいたが、すぐに回復し、ペストに襲いかかる。

だが。

 

漆黒の刃が巨人族を切り倒した。

黒光りする軌跡だけが、巨人族を翻弄した。

 

そして、彼が姿を現した。

漆黒の光が天をさし、

その降臨を告げていた。

地上に降臨した魔王は巨大な両刃斧を振り回し、告げた。

 

『巨人族よ。

お前は我の仲間と呼べるモノたちに手を出した。

身の程をわきまえよ。』

 

『我は必要悪の魔王

 

我に挑みかかろうとする者よ。

その意気やよし。

だが、勝てると思うなよ。』

 

その圧力は凄まじいものだった。

霊格はかなり高位のモノ。

 

『さぁ、我もその遊び(ゲーム)に混ぜてもらおうかの。』

 

この魔王の降臨によって、戦況はぐちゃぐちゃに壊れた。

 

最悪のギフトゲームは終盤の鐘を打ち鳴らす。

 

 

………………

 




あとがきです。

1年ぶりです。
本当にお久しぶりでございます。

えーまぁ事情というのはですね。
楽しかった高校生活にさようならをしてきました。
そして、新しい学校にこんにちはをするための通過儀礼のための勉強などをしていました。

要するに受験というやつです。はい。

まぁ、第一志望は無理だったものの第二志望に進学できました。
英語が曲者でした。英語だけはやりましょう。最近は英語重視の学校も多いですから。

「勉強中でもこんなに短いんだから書けやボケェ!!」って言われるかもしれません。

はい。全くその通りでございます。

いや、自分ではかなりの量書いているつもりなのですが、いざ上げてみると「あれ?短いなぁ」なんて思ってます。

次回からばしばしやっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。あ、ギフトゲームが気になる方は是非、原作本をご購入ください。

それでは、あとがきも長くなりましたので、ここで締めさせていただきます。
最後まで見ていただきありがとうございました。
それでは。


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