クリプターってどういう意味だよ (ライトハウス)
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思い切って2部から クリプター編 クリプターってどういう意味だよ

主人公は女好き。


 

 

 

 

 

 

エドワード・エヴァンズ。

 

それが今世での僕の名前だ。

 

今世での、なんて言い方をしていることから察せられるかもしれないが、僕は俗に言う転生者というやつだった。

 

前世は普通の日本人で、普通に産まれて普通に育って普通に生活していた。

 

というか転生する直前までマジで普通に生活していた。

 

深夜にごろごろしながらスマホをいじっていたら眠くなったので寝て、そして起きたら赤ちゃんだったのだ。

 

最初は本当に混乱した。目はよく見えないし周りも何を言っているのかわからない。体中は濡れているし裸だし声を出そうとすれば泣くことしかできない。

 

しばらくたって落ち着いたところで自分がつい先程産まれたのだということがわかった。

 

そしてその考えに至ったとき、僕は正直めっちゃ喜んだ。

 

だって転生だぜ?ラノベやらアニメやらでは転生者は総じて美少女に囲まれるのだ。嬉しくないはずがない。

 

しかも今の自分はイギリス人。両親が美形かつ金髪碧眼であることから僕も将来そうなるであろうことが予想できる。こりゃモテモテコース確定ですわ、なんて思っていた。

 

今になって考えたらアホすぎる。赤ちゃんになるという一大事があったのにまず思いつくのが女の子のこととは。でも仕方ない。男ってのはそういうもんだ。

 

だが、現実ってのはそう上手くはいかない。

 

別に成長したらブサイクだったとかそういう訳ではない。自分で言うのもなんだがかなりの美少年へと育っていった。

 

問題は、僕が四苦八苦しながらも前世に大学受験で培った知識を総動員して英語を話せるようになってきた頃、ある学問を教えられたことだった。

 

家は随分と古風な豪邸だったので帝王学でも学ばされるのかと思ったが、そんなことはなく、もっとぶっ飛んだものを教えられた。

 

というか魔術だった。

 

…………いや、魔術て。ないわー。

 

ドン引きしてる息子に気づくことなく僕の父親は喋り続ける。魔術は崇高なものでうんぬん根源がうんぬん。

 

いや、根源て。Fateじゃあるまいし。え?ゆくゆくは時計塔で優秀な成績を残せ?これから僕の魔術回路について調べる?

 

……この世界、Fateやん。

 

そこから、めちゃくちゃ魔術を頑張った。だって弱かったら死ぬもん。メインストーリーに関わらなければ大丈夫だろうが、転生者である僕が関わらずに生きていけるとは思えない。根源とか研究とかそっちのけでひたすら戦闘向きの魔術を学んだ。

 

幸いこの身体は随分とハイスペックで魔術回路の質と量はうちの家系の中でもダントツだった。あんだけ由緒ある、だとか名門、だとか父は語っていたがうちは魔術師としてはまあまあくらいの家なのでイマイチ参考にはならないが。

 

とにかく、ひたすら魔術関係を鍛え、女の子とイチャつき、体も鍛え、女の子とイチャつきながらロンドンの時計塔に通っていた19歳のとき、とある女の子に声をかけられた。

 

「あなたがエドワード・エヴァンズね。少し時間をもらってもいいかしら」

 

少し偉そうな態度でそう話しかけてきた女の子に、僕は見覚えがあった。

 

というか、オルガマリー・アニムスフィアだった。

 

この世界FGOかよ…………。

 

その後、魔術と科学がうんたらとか貴方は魔術師らしくない柔軟な発想がどうたらとか言われていたが、要はカルデアへのスカウトだろうということで速攻で引き受けた。そらそうよ。だってカルデアにいなかったら焼却された後によくわからんけど漂白されるんだぞ。

 

というわけで、両親の反対を押し切りカルデアへ。スタッフとして働くはずがレイシフト適正やマスター適正が高いことが発覚。晴れてAチームの仲間入りとなったのであった。

 

いや、スタッフじゃなかったら死ぬやんけ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割とマジでどーしようもない。最初のレフ・ライノールによる爆破をどうにもできない。

 

今までただ戦闘で勝つために魔術を学んできた。そのため戦闘訓練ではキリシュタリアと1、2を争うほどの成績を収めている。ただ、知識的な部分では極めて一般的で、下手したらBチームにも劣るかもしれない。

 

そんな僕が本気ではないといえ魔神柱の仕掛けた魔術をバレずに解除できるはずもなく、ただただ時間が流れていった。

 

レフ暗殺計画も考えたのだが、ストーリーと大きく乖離することは避けたい。なるべく僕の知っているFGOの流れで進んでほしいのだ。

 

というか、Aチームのメンバーとそれなりに仲良くできているためキリシュタリアに生き返らせてもらえるだろと考えている。

 

ほかのマスター候補が死のうがどうでもいいし生き返ることが確定なら一度死んでも構わない。クリプターになっても主人公を成長させて敗北すれば味方サポートポジションになれるかもしれないし。

 

あれ、これ結構完璧じゃね?上手くいけばピッ〇ロやベ〇ータみたいな存在になれるぞ。

 

第1部に出てくる美少女サーヴァントとイチャついたり、イケメンサーヴァントと仲良くなれないのが残念だがまあいいだろう。1部も1.5部もわりと死亡フラグあるし。2部は大令呪(シリウスライト)使わない限り死なないでしょ。多分。

 

そうと決まれば話は早い。今のうちにAチームメンバーとの仲をより深めカルデアスタッフの可愛い子には手を出しておこう。コフィンで死んだら2年近く冷凍されちゃうし。

 

欲を言えばオフェリアやヒナコともイチャつきたいがなかなか厳しい。2人ともお堅いし。

 

ちなみにマシュには手を出さない。たしかに可愛いしエロいけどあの子はぐだ男と仲良くなるべきだからな。ぐだ子かもしんないけど。

 

てか僕の担当する異聞帯(ロストベルト)ってどこになるんかね。できれば日本がいいなあ。今世ではまだ一回も行ってないし。

 

結局、大人しく爆破に巻き込まれるという結論に達してからは気楽に日々を過ごせた。ゲッテルデメルングみたいに異聞帯(ロストベルト)の王が美少女だったらいいなあ。スカサハはエロい。

 

エロいと言えば、ダ・ヴィンチちゃんはとてつもなくエロかった。何故か興味を持たれ色々研究されたのだがわかったことは僕が中身がオッサンでも見た目が美少女ならいけるような人間だってことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は随分と静かね?エド」

 

「…………ん?」

 

突然ペペからかけられた声で意識が覚醒する。やべ、寝てた。

 

「カドックにも言ったけれど、アナタも睡眠時間とかちゃんととれてるの?空想樹のことも大切だけど、無理は禁物よ?」

 

いや、時間はあります。普通にスマホいじってたら夜更かししちゃっただけだ。

 

「……貴方、もしかして寝ていたの?キリシュタリア様が今後の話をされていたというのに」

 

そうやってこちらを睨みながら注意をしてくるのはオフェリア・ファムルソローネ。キリシュタリアが僕たちAチームを生き返らせてくれてからすっかり心酔している魔眼持ちのクリプターだ。ちなみに僕を起こしたのはスカンジナビア・ペペロンチーノ。頼れるオネエである。国籍不詳で名前は完全なる偽名だ。

 

「いや、寝てない寝てない。ちょっと考えごとしてたんだよ。ほら、世界平和的な」

 

「へぇ?オレたちは今地球をまっさらにして上書きしようってのに、世界平和なんて考えてたのか?」

 

そうやってニヤつきながら揚げ足を取ってくるのはベリル・ガット。いつも飄々とした態度をとる殺人者である。オフェリアなんかは彼のことを人間として恥ずべき犯罪者だとか言っているが正直どうでもいい。僕からしたら気の良い兄貴分である。

 

「エドワードがそんなこと考えているわけないでしょ。会議で必ず一回は寝るような人間よ。注意するだけ無駄ね」

 

そう言って彼女、芥ヒナコは本に目を落とす。相変わらずクールというか冷たい子だ。僕が日本について詳しいと知ったときは凄い嬉しそうだったくせに。

 

「……確かに、さっきの話じゃないがこの中で一番不真面目なのはエドなんじゃないか?遊び気分ってのとは違うだろうけどな」

 

そう僕を責めるのはカドック・ゼムルプス。才能はないが努力でAチームになった優秀な奴だ。最近はサーヴァントである皇女様にお熱である。

 

「いや、それを言ったらデイビットだってあんま喋ってないじゃん。ほぼ寝てるみたいなもんでしょ」

 

「オレは必要なことと話しかけられたときに発言をしているだけだ。話を聞いていないうえに無駄なことばかり話すお前とは違う」

 

無表情のまま毒舌を吐いてくるのはデイビット・ゼム・ヴォイド。無表情、無口な男だがなんやかんや良い奴だ。天才だし。ちょくちょくおかしいところもあるが魔術師なら普通である。ちなみに個人的にこいつが一番ヤバイと思っている。なんというか底が見えない。

 

「さて、そういえば君の異聞帯(ロストベルト)の話はまだ直接聞いていなかったな。ぜひ聞かせてくれ」

 

デイビットとお互いに貶し合ってると、我らがクリプターのリーダー、キリシュタリア・ヴォーダイムが話を切り出す。

 

「……別に、今のところ何もないけどね。みんな知っての通りうちの異聞帯(ロストベルト)は一番平和だ。完全に異聞帯(ロストベルト)の王によって統制されてる。その王とも良好な関係を築けているしね」

 

「…………そうか。君の異聞帯(ロストベルト)は強大だ、エドワード。だからこそ期待している。君にも可能性があるとね。私が勝つことは明白だが、それでも、君は君の異聞帯(ロストベルト)を育ててくれ」

 

キリシュタリアはいちいちイキってマウント取ってくる。本人からしたら事実を言っているだけなんだろうが知らん奴からしたらイラッとくるからやめた方がいいぞ。この前の会議でそう言ったらオフェリアにボコられたけど。

 

「わかったよ、キリシュタリア。しばらくは園芸にでも専念するさ。樹を愛でるってのも案外悪くない趣味だろ」

 

「……エドワード。貴方キリシュタリア様に対する態度が軽すぎるわ。もう少し真面目に返事をしなさい」

 

オフェリアが母ちゃんみたいなこと言ってくる。彼女とぺぺにはなんかちょくちょく子供扱いされてる気がするけど…………まあいいや。バブみってやつだろ。知らんけど。

 

「……空想樹を育てることを園芸扱いはどうかと思うけどね」

 

最後にヒナコにそんなことを言われ、会議は終わったため僕は通信を切った。てか会議の寝てた部分の内容聞くの忘れてた。どーせほぼ雑談だろうけど。

 

 

 

……今更だけど、結局クリプターってどういう意味だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、僕は日本の出雲にいる。

 

異星の神とやらに直談判したら普通に日本の異聞帯(ロストベルト)を貰えたのだ。やったぜ。

 

さっき会議で報告した通り、空想樹も定着していて異聞帯(ロストベルト)の王とも仲良くやれている。一見何も問題はない。

 

そう。これは僕の個人的な問題だ。僕の異聞帯(ロストベルト)は…………。

 

 

 

 

 

「我が契約者よ。心に曇りが見えるぞ。我らが異聞帯(ロストベルト)は万全である。何に不安が残るというのだ」

 

「んー、よくわかんないね。私たちは神様だから普通は人の心なんて手に取るようにわかるんだけど、エドは別だ。魂が複雑でいまいち掴めない。本当におもしろいよ」

 

「…………………えどわーど、変わってる」

 

悩む僕の前にぞろぞろと歩いてきた三柱の神、こいつらが僕の担当する異聞帯(ロストベルト)()()()である。

 

男なのか女なのかよくわからない見た目に圧倒的な神気。実際彼ら(彼女ら?)には性別がない。男神でも女神でもない、独神(ひとりがみ)だ。

 

いかにも神っぽい偉そうなのは天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)

 

とても神とは思えないフランクな話し方をするのは高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)

 

無口で横文字が苦手そうな神は神産巣日神(カミムスヒノカミ)

 

これら三柱が、天地開闢の際に現れたと言われる五柱の別天津神(ことあまつがみ)の中でも最初に現れた存在。

 

造化三神(ぞうかさんしん)だ。

 

そして、僕はそのまま下を見る。

 

そこには、別天津神の残りの二柱、宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコヂノカミ)天之常立神(アメノトコタチノカミ)がいる。

 

更に、その周りには二柱の独神と五柱の男神、五柱の女神で構成される神世七代(かみよななよ)もいる。神世七代の中にはかの有名な伊邪那岐(イザナギ)伊邪那美(イザナミ)も存在している。

 

他にも、その二柱の子である森羅万象を司る神々、火の神である迦具土神(カグツチ)、太陽を神格化した天照大御神(アマテラスオオミカミ)、月を神格化した神であり、夜を統べると言われる月詠命(ツクヨミ)、あの八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を倒した須佐之男命(スサノオノミコト)までいる。スサノオは何故か草薙剣(クサナギノツルギ)を持って八岐大蛇の上に乗っているが。なんで従えてんだよ。

 

……全く、頭が痛くなる。今、僕の下には強大な力を持つものやそうでないものを含め、数十、数百の神々がいるのだ。

 

他には神使(しんし)と呼ばれる強力な動物もいる。巨大な白蛇にとんでもない魔力を持つ狐や狸、狛犬に麒麟など、空には脚が三本ある巨大な鳥、八咫烏(ヤタガラス)が飛んでいる。

 

一体いつから日本はこんな魔境になったんだ。いや、これも全て僕のせいだ。なんせ僕は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という神代ですら有り得ないような奇跡を起こしてしまったのだ。

 

文字通り、他の奴らとは()()()()()()

 

そのため、日本神話のあらゆる伝承、可能性を同時に内包した日本なんていうとんでもない異聞帯(ロストベルト)を生み出してしまったのだ。

 

そうやって、僕は雲の上の神社に座しながら悩む。

 

まさに絵に描かれたような、光り輝く天の上で。

 

……これ、カルデア滅ぶんじゃね?

 

後悔先に立たず、なんて言うが、まさしくその通りだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異聞深度_EX BC.?????

 

ロストベルト No.0

 

仮想◼️◼️神域 高天原(タカマガハラ)

 

 

 

 





続かない。


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クリプター その1


幕間の物語的なやつです。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、カドック。なんかないの?」

 

「……なんかって、なんだよ」

 

「なんでもいいから暇潰せるやつだよ。お前の部屋魔術だとか神話だとかの堅っ苦しいやつばっかでつまんないんだよね」

 

「じゃあなんで僕の部屋に来るんだ。僕は才能のあるエドと違って忙しいんだよ」

 

そう言って、Aチームのメンバーである彼、カドック・ゼムルプスは僕から目をそらす。机の上にはなにやら書類が置いてあり、彼はそれを熱心に見ている。

 

「いや、才能て。Aチームで一番成績が悪い僕を馬鹿にしてんの?」

 

「なのに戦闘訓練であれだけの結果を残してるからだ。エドも少しは勉強したらどうなんだ?」

 

「勉強?それ人理修復の役に立つの?めんどいし。お前もよくやるよな、ほんと」

 

いや、わりとマジでめんどくさい。魔術関係の勉強は歴史やら文化やら古典やら絡んできて本当に難しいのだ。あんなん誰がやるかっての。

 

そんなことを考えているとカドックがこちらを見てくる。なんだその目。あれだ、ジト目ってやつ。

 

「さっきも言ったけど、Aチームの奴らはお前含め化物ばっかだ。そこに凡人である僕が入っていくには奴ら以上の努力が必要なんだよ。才能の差を埋めるには効率化した努力を続けていくしかないんだ」

 

「……努力、ねぇ」

 

たしかに努力は大事だ。僕がここまで戦闘を得意とするようになれたのはひたすら死にたくない一心で努力をしたからだし、彼もその努力によってAチーム入りを果たしている。

 

「でもさ、息抜きも大事だぜ?努力と同じかそれ以上に。お前なんか趣味とかないの?」

 

「……趣味、か」

 

僕がそう言うと彼は少し考え込む。しばらくすると控えめに口を開いた。

 

「強いて言うなら、ロックだな。ああいったのを聞くのは好きだよ」

 

え、ロック?まじ?意外。

 

「なんだその顔は。僕だって音楽くらい聞くさ」

 

「いや、そりゃ音楽は聞くだろうけど。ロックってのは意外だったわ。魔術師ってのはこう、クラシックしか認めない!みたいな感じかと」

 

「そこまでの奴だったらカルデアになんて来ないだろ」

 

「たしかに。てか何聞くの?アジカン?ウーバーとか?」

 

「あじかん?うーばー?なんだそれ。有名なやつだとボン・ジョビとかクイーンだよ。そのくらい知ってるだろ?」

 

「え?まあ、うん。知ってるけど……」

 

つい日本感覚で話してしまった。まじか、アジカンもウーバーも知らないのか。てかどっからどこまでがロックなのかよくわからんけど。

 

「いや、でもカドックにも人並みの趣味があって安心したよ。サイボーグみたいな生活してんのかと思ってたからさ」

 

「僕をなんだと思ってるんだ」

 

「さっきサイボーグって言ったじゃん」

 

「…………」

 

やめて!なんだこいつ……。みたいな目で見ないで!

 

「ていうか、いい加減出ていけよ。いつまで僕の部屋にいるんだ」

 

「いや、つい暇で。……でも、もう暇じゃなくなった」

 

「?」

 

「前々から思っていたがお前は娯楽を知らなすぎる。このエドワード・エヴァンズが真の息抜きというものを教えてやるよ」

 

「いや、いい。帰れ」

 

即答。だが…………。

 

「いいのか?僕の部屋に来ればエロ本いっぱいあるぞ?もちろん、お前の好きなジャンルの新作もある。だが今来なきゃお前には貸さない。二度とな」

 

ちなみにこいつが好きなジャンルは悪戯好きのクール系皇女様とかいうニッチすぎるジャンルである。入手に苦労するぜ。だが日本にはある。何故なら日本だから。

 

「……チッ。いいよ、行くさ。行けばいいんだろ」

 

チョロい。童貞チョロい。

 

「よし、じゃあ僕の部屋へ行こう。勉強道具は持ってくるなよ?これは息抜きなんだからな」

 

ふっふっふ。こと娯楽において日本の右に出る国はないと言ってもいい。このクソ真面目に新しい世界を教えてやるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソっ!もう1回だ!」

 

「よかろう。何度でもかかってくるがいい」

 

あれから1時間後、僕たちは大乱闘して相手をスマッシュするゲームをやっていた。

 

「というか、どうして勝てないんだ……!操作は一通り覚えたっていうのに」

 

「くぐってきた修羅場の数が違うのだよ。初心者には負けんさ」

 

「いや、ある程度パターンは読めてきた。次は勝つ…!」

 

「ふっ。やってみるがいい」

 

速攻でボコしてやった。

 

 

 

その後も————。

 

 

 

 

「なんでさっき投げた甲羅が効いていないんだ!」

 

「いや、バナナ常に後ろに置いとくのは普通だから」

 

 

 

 

 

「おい、なんで僕だけこんな借金が増えるんだ。それにうんこも大量についてるし」

 

「さあ?まあでもお前運なさそうだもんなあ」

 

 

 

 

 

「このコードで戦闘ヘリが呼び出せるんだよ。あと一定時間無敵とか殴ったら爆発するとかもあるな」

 

「……取り敢えずあの車盗むか」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん、もうこんな時間か」

 

ふと時計を見ると時刻は夜9時。カドックとゲームをやっている内に随分と時間が経ったらしい。

 

「おい、カドック。食堂行こうぜ。いつの間にかもうみんな食べ終わってる時間だよ」

 

「……そうだな、僕も腹が減った」

 

そう言ってコントローラーを置くカドック。そうなるようにしたとはいえ、随分とハマったな。

 

「どうだった?ゲームってのも案外悪くないもんだろ?」

 

「…………まあな。息抜きくらいにはやってもいいかもしれない」

 

微妙に素直じゃねえなこいつ。

 

その後、食堂でお腹を満たした僕たちは再び僕の部屋の前に来ていた。

 

「ほい。約束のエロ本」

 

「……これが新刊か」

 

「ちゃんと返せよ。エロ本って安くはないんだから」

 

「わかってるさ。僕が一度でも返さなかったことがあるか?」

 

ないな。ていうか君エロ本借りすぎでしょ。別にいいんだけど。

 

そうやって僕たちが裏の取引をしていると————。

 

「…………その手に持っているものは、何?」

 

急にかけられた声に反応し振り向くと、そこにはAチームのメンバーであるオフェリア・ファムルソローネと芥ヒナコの二人がいた。

 

「え?これ?いや実はカドックに魔術について教えてもらおうと思って——って、いねえ!いつの間に!」

 

僕の隣にいたはずのカドックが気がつかない内にいなくなっていた。隠れやがったな、あいつ!

 

「……ふーん、魔術?私にはそうは見えないけど」

 

ヒナコが汚物を見るような目で僕を見てくる。いや、違うんだって。マジで。

 

「前々から思っていたけれど、貴方は……その、性に奔放というか、オープンすぎるわ。スタッフの子に手を出してる、なんて噂も聞くし」

 

そう言って、オフェリアが顔を赤らめながらこちらを睨む。やだ、この子意外と初心なのね。

 

「いや、そりゃ可愛い女の子がいたら手を出す————」

 

喋っている途中で頭に衝撃が走る。痛っ。え、普通に殴られたんだけど。

 

「来て。貴方には魔術師としての心構えから教えてあげる。そうすれば少しはマシになると思うけど」

 

「え、ちょ。やだやだ。お前の話長いし。いや、引っ張らないで!あとヒナコも僕の足を踏むな!普通に痛いから、まじで」

 

え、なにこの鈍感系ハーレム主人公みたいな展開。まさか二人とも僕のことを……?いや、ないですね。だって凄い怖い顔してるもん。女の子って怖い。

 

 

 

その後、オフェリアに約2時間ほど説教された。足が痺れた…………。途中からヒナコですら飽きて本読んでたからね。なんなのあの子。

 

ちなみに後日カドックをしばいて例のエロ本は貸しておいた。あの根暗童貞一人だけ逃げやがって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

『……なあ』

 

「ん、どーした」

 

異聞帯(ロストベルト)って暇すぎないか?』

 

「…………わかる」

 

『いや、別に暇ではないんだ。空想樹の安定なんかで忙しいんだが……、こう、少し休憩しようって時にやることがなさすぎる』

 

「いやもう、めっちゃわかる。ゲームとかないし。一応スマホ持ってんだけどネット繋がらないしな」

 

『こっちにもネットなんてないな。というか娯楽が一切ない。全然そういう歴史じゃない』

 

「だよなあ。…………てかさ、ロシアってエロ本とかあんの?」

 

『汎人類史の方はあるだろうけどな、こっちにはないよ』

 

「まあそうだよなあ。スマホでも見れないし。そりゃ汎人類史に負けるわ。スケベ心を忘れた者に勝利は訪れないんだ」

 

『酷い言い様だな……』

 

「てかさ、ふと思い出したんだけど。だいぶ前に貸した悪戯好きクール系皇女様のエロ本って返してもらったっけ?」

 

『あれなら確か返した気が———って、アナスタシア⁉︎』

 

「え、なに、皇女様いるの?」

 

『ち、違う……!これは君とは関係なくて——いや、冷たい!魔力が溢れてる!凍る、このままだと凍る……!』

 

「…………」

 

カドックの情けない叫び声が聞こえたところで僕は通信を切った。どうやら自分が召喚したサーヴァントとは上手くやっているらしい。よきかなよきかな。

 

…………強く生きろ、カドック。

 

 

 

 

 

 





その2はオフェリアを予定しています。オフェリアの口調わからん……。あと早く第3異聞帯の更新こい……!


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クリプター その2

オフェリアはかわいい。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、ぺぺ。隣いいか?」

 

「あら。おはよう、エド。もちろんいいわよ?」

 

とある日の朝、めずらしく早めに目が覚めたので食堂へ行くと随分と混んでいた。

 

普段は寝坊してばかりなので人があまりいないのだが普通の時間に来るとこんなに混んでいるのかと少し驚いた。やっぱ早起きなんてなんの得にもならんな、うん。

 

そんなことを考えているとAチームマスターの一人であるスカンジナビア・ペペロンチーノの左隣が空いていたので許可をとって失礼する。トレーを置いてから顔を上げるとぺぺの正面には同じくAチームマスターであるオフェリア・ファムルソローネが座っていた。

 

「ん、オフェリア。おはよ」

 

「……おはようございます。エドワード・エヴァンズ」

 

…………なぜフルネーム?

 

「オフェリア、アナタ随分とエドに無愛想ね。もしかして二人の間に何かあったの?」

 

「別に何もないわよ。……ただ、あまり話したこともないし」

 

「あれ、そうだっけ?オフェリアみたいな美人さんに話しかけてなかったなんて男として失格だな、僕は」

 

「………………」

 

「あらやだ、私の前で堂々と別の女を口説くなんて。エドったらいけずね」

 

ついつい思ったことを言ったらオフェリアからは冷たい視線が、ぺぺからは熱い視線が送られてきた。

 

……ちょ、冗談でもやめて。僕にそっちの気はないんだ。

 

「……ごちそうさま」

 

そう言ってオフェリアが席を立つ。もう食べ終わったのか?

 

「あれ、もう行くの?」

 

「ええ、私は貴方と違って忙しいから。エドワード・エヴァンズ。貴方もAチームから落とされたくなかったらもう少し真面目に生活することね」

 

そう僕に告げると彼女はさっさとどっか行ってしまった。

 

「……僕、嫌われてる?」

 

「さあ?でもあの子、真面目だから。アナタの雰囲気が気に入らなかったんじゃないの?」

 

「お、おう……。なかなかはっきり言うね……」

 

たしかに、まだ先の話になるが彼女が恋心を抱くのはあの堅物クソ真面目くんであるキリシュタリア・ヴォーダイムだ。僕とは真逆のタイプと言ってもいいだろう。だからってあんなに冷たくしなくてもいいのに…………。

 

たまたま会ったことだし仲良くしようと思ったのだが随分と嫌われてしまった。なんだか告白してもいないのにフラれた気分だ。

 

どうやら、早起きしたって得にはならないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の日、シミュレータによる戦闘訓練を終えると、マスター候補の集団の中からオフェリアが抜け出て話しかけてきた。その顔つきは随分と険しい。

 

「貴方、どうして本気を出さないの?」

 

「……ん?なんの話?」

 

「惚けないで。さっきの戦闘訓練、いえ。今までのも。貴方、本気を出していないでしょ」

 

「え?いやいや、ちゃんとやってるって。真面目にさ」

 

「私にはそうは見えない。……貴方も、魔術師の家を継ぐ者として自覚を持った行動をとるべきよ」

 

「えぇ……。いや、てか何で僕の家のことなんて知ってんの?」

 

「時計塔でも貴方のことは噂になっていたわ。それにエヴァンズ家はそれなりに代を重ねている家でしょう。それくらい知ってるわ」

 

「へー、うちってそんな有名なんだ。初耳」

 

「っ。貴方は……」

 

オフェリアは顔をしかめて何かを言いたそうにしていたが踵を返し去っていった。なんなのあの子、僕のこと嫌いすぎでしょ。

 

にしてもなーんかピリピリしてるなあ。僕は第2部が始まってからの彼女しか知らないからなんとも言えないけど、あんなんだったっけ?スマホ越しに見るのとじゃあ印象が違う的なあれか?

 

なるべくAチームのメンバーとは仲良くしたいがどうやら難しそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた別の日の深夜、僕は一人でシミュレータを使い戦闘訓練をしていた。

 

いつだかのオフェリアに言われた通り、僕は普段の訓練では本気を出していない。自分の本気をあまり見られたくないのだ。

 

目の前にはゴーレムやらゾンビやらの()()()()()()()()のエネミーがうじゃうじゃいる。僕はそれら目掛けて一気に加速すると魔力を拳に纏わせ一気に殴り抜いた。

 

結構な力を込めたので風圧でまとめて数体が吹き飛ぶ。それでも近づいてきたエネミーを今度は蹴りで吹き飛ばす。

 

これが僕の戦闘方法。理論もへったくれもない、その膨大な魔力量に任せた超接近戦である。

 

なんて説明すればいいか、僕の体には魔力をストックできるスペースのようなものがあるのだ。

 

僕はこれを勝手に前世の魂と呼んでいる。

 

おそらく、僕の体には今世の魂と前世の魂の二つがある。そしてそのうちの一つ、前世の魂はいわゆる使われていない状態、空っぽなのだ。

 

そこに常に魔力を貯めまくってる僕は、もともとかなり多かった魔力量がさらにとんでもないことになっている。そのため魔力放出やら身体強化やらをサーヴァントレベルで扱えるのだ。と思う、多分。

 

まあ、理論はどうでもいい。()()()という事実があるのでやっている、それだけだ。

 

だが、こんなサーヴァントみたいな動きあまり見せたくないのでこうして深夜にコソコソ鍛錬しているのだ。

 

そろそろ疲れたので訓練を切り上げシミュレータを切ると、そこには口をぽかんと開けアホ面を晒すオフェリアの姿があった。

 

「あー……もしかして、見てた?」

 

何も言わない彼女にそう問いかけるとコクリと頷く。いや、なんか言ってくれ。

 

しばらくするとハッとしたように口を開くオフェリア。

 

「えと、シミュレータの無断使用は禁止されているはずだけど……」

 

「え?あ、ああ。オルガマリー所長とダ・ヴィンチちゃんに許可もらってるんだよ、特別に」

 

「そ、そう……」

 

そして再び訪れる沈黙。なんだこれ、付き合いたてのカップルかよ。

 

しばらく何を言おうか迷っていると、彼女が真剣な表情で口を開いた。

 

「貴方は、どうしてそれだけの才能を持っていながら、それを活かさないの?貴方が魔術について真面目に学べば家に貢献することだって、根源に近づくことだってできるかもしれないのに…………」

 

……そういえば、彼女は家のことで悩んでいるんだったか。名門であるファムルソローネ家に恥じないように、両親の期待に応えられるように、そうやって育ってきた彼女からしたら、僕のように不真面目な輩が気に入らなかったのだろう。

 

けど、そんなことか。そんなの……簡単だ。

 

「僕が、やりたくなかったからだよ」

 

「やりたく、なかったから……?」

 

「ああ。家のことも、根源とやらも、僕は興味がなかった。だからやらなかった、そんだけさ」

 

「そんな、無責任なこと……!」

 

「できない、って?まあ、たしかにそうかもな。普通はそういうもんだ」

 

でも、人生にはもっと大事なものがあるんだ。それが、僕は二週目でようやくわかった。だから、やりたいことをやってる。死なないように。後悔しないように。

 

「でもさ、自分の人生ってのは自分のもんだぜ?色々あるけどさ、結局のところ一番大事なのは自分が何やりたいかだ。オフェリアはさ、色々見過ぎなんだよ。たまには自分のこと見つめてみたら?」

 

「自分の、やりたいこと……」

 

「そ。止まってばっかじゃ見えないこともあるもんさ。たまには一歩踏み出してみないとな。そしたらなんか見つかるかもだし」

 

彼女は少し背負いすぎだ。見てるこっちが堅苦しくなってくる。せっかく可愛いんだからもうちょっと女の子っぽく笑えばいいのに。

 

「踏み出す、ね……」

 

「どう?なんかのヒントになったなら幸いだけど」

 

「——ええ。なんだか、少し気が楽になったわ。ありがとう、エドワード」

 

そう言って、オフェリアは少し笑った。

 

……おお。

 

「やっぱそっちの方が可愛いよ。笑ってる方が僕は好きだ」

 

「…………」

 

素直な感想を述べると何故か睨まれた。あれ、今けっこういい感じだったのにどうした?

 

「ていうか今エドワードって呼んだ?この前までフルネームで呼んでたのに」

 

「え?本当?気づかなかった」

 

「雰囲気も柔らかくなったし、このまま色んな人と仲良くなってみようぜ。オフェリアって友達少ないでしょ。てかぺぺくらいしかいないんじゃない?」

 

「なっ!!そんなことは…………な…い、と、思う…」

 

あれ、やっぱそうなの?悲しい事実が発覚してしまった。そういえば作中でも芥ヒナコとは関わりがなかったうえにマシュと友達になろうって言えてなかった気がする。

 

「ちょっと、可哀想な子を見る目で見ないで」

 

「いや、なら好都合だ。明日はヒナコとマシュに話しかけよう。他にもロマンや所長、ダヴィンチちゃんなんかも良いかもな。キリシュタリアはまだ難易度高いか…?」

 

「えっ?いきなりそんなに……嫌がられないかしら」

 

「このコミュ障め!いいからやるぞ!とりあえず明日の朝に食堂で話しかけるんだ。友達が増えると楽しいことも増えるし愚痴も言える。普通はオフェリアくらいの年頃の子は親の文句とか言うもんなんだよ」

 

「……色々と、考えが堅かったのはわかったわ。でも、貴方はそれでも不真面目すぎる。目も覚めちゃったし少し魔術について教えてあげる。来なさい」

 

「え、いや、それは別にいいかなーみたいな」

 

「私には色々させるのに自分は何も変わらないつもり?」

 

う、そう言われると断りづらい。

 

「わかった。多少は学んでみるよ……」

 

「ふふっ。よろしい」

 

僕がめんどくさそうに了承すると、彼女は上機嫌そうに笑った。

 

随分と嬉しそうですね…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「なあ、キリシュタリアに告白しなくていいのか?」

 

『……はあ?』

 

「あ、僕には隠さなくていいぞ?クリプターになってから急に様なんてつけちゃってるし、なんかあったんだろ?」

 

『それは……そうだけど、キリシュタリア様に抱いている感情は尊敬と憧れよ。貴方の言うような気持ちはないわ』

 

「またまたぁ。初めてだからよくわかんないんだろ?経験豊富なこのエドワード・エヴァンズが教えてやるって」

 

たしかオフェリアは恋心を下賎なものだと思っているはずだ。まずはその思い込みを正してやらないと。

 

『だから……、っはあ…。本当、何でこんな人…………』

 

「ん?なに、なんか言った?」

 

『いえ。それよりエドワード。貴方クリプターとしての仕事はちゃんとしてる?異聞帯(ロストベルト)の統率。契約したサーヴァント、異聞帯(ロストベルト)の王との関係。空想樹の安定に異聞帯(ロストベルト)の拡大は?それとキリシュタリア様に報告はしてる?次の会議のために詳しい情報もまとめてある?』

 

「ちょ、え、何?なんて?」

 

『どうせ真面目にしてないでしょ?本当、私がいないとちゃんとしないんだから……』

 

オフェリアのため息が聞こえてくる。若干嬉しそうなのは気のせいだろう。呆れられているんだろうし。なんだろう、とても残念な男扱いされてる気がする。

 

 

 

その後、オフェリアの異聞帯(ロストベルト)を訪ねたコヤンスカヤとダメ男トークで盛り上がったらしいが、僕にそれを知る術はなかった。

 

 

 

 




FGOが早くストーリーを更新してくれないと迂闊なこと書けない。


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神話の再現 その1


またまた過去話。


 

 

 

 

 

 

 

 

これは、僕がクリプターになって異聞帯(ロストベルト)を貰ったばかりの話。

 

僕の担当するここ、日本は今や完全に異聞帯(ロストベルト)の王たちによって統率されているが、まだその統制が完全じゃなかった頃。というか今も統制されていると言うよりは反抗する奴がいないってだけで割とみんな自由なんだけど。まあ、ともかく。()()()()()()()()()()()の話だ。

 

と言ってもほんの二、三ヶ月前のことなんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪物退治?」

 

「そ。今エドがいるのは高天原(タカマガハラ)って場所なんだけど、まあここは平和だよ。基本的に。そこのわんぱく坊主が暴れなければだけど」

 

そう言って高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)、通称たかみーが僕の隣に立ち退屈そうな顔をしていた須佐之男命(スサノオノミコト)に目を向ける。というか若干屈んでるからおっぱい見えそう。いや、おっぱいなのか?貧乳と言われればそうなんだけどたかみーには性別の概念がないしおっぱいとは言えないのか?

 

「あ?いや、そりゃあん時の俺は若かったからよぉ。今は暴れたりなんてしねえよ」

 

変なことを考えている内に僕のサーヴァントである彼、スサノオは少し気まずそうな、申し訳なさそうな表情で反論する。

 

今の彼はサーヴァントなので生涯を過ごした記憶を持っているのだが、彼にとっての全盛期、つまりは色々やんちゃして暴れていた頃の姿で現界しているため精神が少しだけそちらに引っ張られている。

 

なので度々こうして注意をされるのだ。いつかまた何かやらかすのではないか、と。アマテラスさんなんて未だにスサノオが近づくとちょっとビクッとする。そりゃ引き篭もって出てこなくなった原因だもんね。可愛い。

 

そんなことを考えているとたかみーが話を戻す。

 

「まあ、ともかく今はここは平和だ。問題は下界だよ。基本的にエドを除いて人間は私たちを信仰してくれているから良いんだけど、動物や怪物なんかはそうじゃなくてね」

 

「いや、何で僕だけ除いたのよ」

 

「だって君、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「いやいや、神様スッゲーって毎日感心させられてるよ。尊敬してるし。てか僕イギリス人だし」

 

「……そういうとこなんだけど。まあいいや。とにかく君たちには人間や神様を襲わんとする怪物たちを説得・服従・退治して欲しいって話さ」

 

なるほど、つまりは人助けの怪物退治か。いいね、神話の英雄っぽい。よくわからんけど空想樹の安定にも繋がるんじゃね?多分。

 

「……ん、でもさ。たかみーたちが行けば余裕で倒せるんじゃない?」

 

今僕たちの前でニコニコしているたかみーを見ているとそんな感じは全くしないがこの神、世界を創ったとかいうとんでもない神様の内の一柱だ。下界の怪物退治なんてお茶の子さいさいだろう。

 

「そりゃそうなんだけど、私が降りただけで人間のみんなは大騒ぎだろうし。下界にどんな影響があるかもわかんないし。そもそも力の加減とかわかんないから殺しちゃうし。さっき言ったけどできれば説得・服従して欲しいんだよ。それにこれは君たち主従のテストさ。この歴史の王たちと並び立つ資格があるか、のね」

 

…………なるほど。僕のことを興味深い人間として好んでいてくれてはいるが、それとこれとは別ってわけか。クリプターってのも大変だな。

 

「はっ。良いじゃねえか、マスター。久しぶりに暴れてやるよ。俺のこと上手く使えよ?」

 

えらく上機嫌なスサノオが好戦的な笑みを浮かべ肩を組んでくる。君やっぱだいぶ若い頃に引っ張られてるよね。暴れたがってるよね。

 

「わかったよ。まあ、テストだって言うんならやらないわけにもいかないし。神話の怪物やら動物って言ってもスサノオがいれば平気でしょ」

 

なんて言ったって彼は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)だって倒してみせた神話の怪物退治の英雄だ。この依頼にこれほどぴったしのサーヴァントもいないだろう。

 

あ、そう言えば。

 

「ねえ、たかみー。僕たちってどうやって下界に降りればいいの?なんかエレベーター的なのがある感じ?」

 

「えれべえたあ?……ああ、これか。いや、エレベーターなんてないよ?だからまあ移動手段兼助っ人として神使(しんし)を貸してあげる。有能な子だから大事にしてね?」

 

そう言ってたかみーは去っていった。自分の神殿にでも帰るのだろう。

 

やったぜ。神使(しんし)ってのは神の恩恵や加護なんかを受けた凄い動物だって聞くし、たかみーから有能だって評価も得ている。これは幸先良いぞ。

 

……というか、あの神様エレベーターを知るためだけに汎人類史かめっちゃ未来かのどっちかを()()よね。さらっととんでもない権能使ってるよ。

 

改めてこの異聞帯(ロストベルト)のとんでも具合を実感しながら僕はスサノオと共に指定された場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指定された場所に行くとそこには三本の足を持つ巨大な烏がいた。

 

「あれ、思ったよりでかい」

 

え?めっちゃでかい。これって八咫烏(ヤタガラス)だよね?八咫烏(ヤタガラス)ってこんなでかいの?3.5mくらいあるぞ。羽広げたらもっとでかくなるよな。

 

「そりゃ俺たちが乗るんだからでかくねえとな。二、三人は乗れるぜ」

 

「え?でもなんか八咫って150cmくらいのことじゃなかったっけ?それでもでかいけどさ」

 

「正確には144cmくらいだな。まあでもこの場合の八咫ってのはただでけえって意味だ。八咫鏡(ヤタノカガミ)の八咫なんかもでけえって意味で実際にそんくらいの大きさってわけじゃあねえな」

 

へー、物知り。スサノオって実は頭良い?って思ったけど長さの単位くらい知ってて当然か。むしろセンチとかメートルがわからん奴おったらドン引きするわ。

 

スサノオは八咫烏(ヤタガラス)の背中についた装飾の上に乗る。なんかあれだ、馬によくついてるあれ。用意してくれたのか二人分ついてる。あとは頭にちょっとした兜がついているくらいで基本的には身軽な感じである。触った感じ羽毛がかなり硬いし爪も鋭そうだ。あまり装備を必要としないのだろう。

 

ひとまずスサノオの後ろに乗って足を固定させてから紐みたいなのを掴む。あれ?

 

「なあ、これシートベルトみたいなのないの?飛んだら落ちない?」

 

「そんなんないぜ?だからしっかり掴まっとけ!振り落とされんなよ、マスター!」

 

スサノオがそう言って八咫烏(ヤタガラス)に合図すると飛び上がっていく。体勢を整えると真下に急降下していった。

 

「うっ、ぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」

 

速い速い速い速い速い!なんだこれ!なんかソニックウェーブみたいなの出てない⁉︎音速超えてない⁉︎

 

「はっはー!!良いぜ、ノってきた!行くぜマスター!」

 

スサノオがなんか話しかけてくるが無理!返事なんてできらん!掴まってるのが精一杯だ!

 

僕たち二人を乗せた八咫烏(ヤタガラス)はそのまま地上の目的地へと降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

現在スサノオと僕は森の中を歩いていた。どうやらここらに人を食べる怪物が出るとのことで近くの村の住人が何人も犠牲となっているらしい。

 

スサノオが前を行き森の奥深くまで入っていく。この異聞帯(ロストベルト)はあらゆる神が消滅することなく存在し続けている歴史だ。神話のあらゆる状態がそのままで神が人間と共存しているため人間が自らの力で発展していない。つまり何が言いたいかというと森が全く整備されてない。獣道しかないし植物も生え放題だ。視界が悪く空気中の魔力濃度もかなり高いため魔力で探知することもできない。

 

八咫烏(ヤタガラス)に上空から探してもらってるが今のところ特に合図はない。

 

なんかあれだ。もののけ姫みたい。森の雰囲気とか。たまに精霊っぽいのもいるし、流石ほぼ神代。

 

「なあ、マスター。ホントに化物なんていんのか?俺たち結構歩いたぜ?」

 

「うーん、たしかに。この辺で間違ってはいないと思うんだけどなあ」

 

なかなか見つからない。夜行性とか?てかどんな怪物かも全く聞いてないな。聞かなかった僕もアレだけどたかみーも教えてくれよ。

 

体力的にはまだ全然大丈夫だけど、精神的に疲れてきた。

 

「なあ、スサノオ。ちょっと休憩しよう。喉も渇いたし」

 

僕はそう言って腰を下ろす。にしても本当にどんなのなんだろ。まあでも日本の神話ってそんなに怪物とか出てこないタイプだしなあ。巨大な魔猪とかだろうか。

 

……水飲んだらしっこ行きたくなってきたな。

 

植物をかき分け茂みへ入っていく。トイレとかが近くにすぐ無いのは不便だよなあ。

 

…………ふぅ。スッキリ。にしてもあと何時間探さなきゃいけないんだ?ちょっとめんどくさくなってきたなあ。

 

そんなことを考えながらスサノオの元へ戻ろうとすると、ふと視線を感じた。

 

————なんだ?これ。

 

とてつもない違和感を感じる。視線というか、睨みつけられているような。

 

そのまま振り返ると、巨大な目と視線がぶつかった。

 

でかい、あまりにも。普通なら目というのは生物の中でも小さい部位だと思うのだが、僕の頭より明らかにでかい。

 

そんな目が、こちらをじっと見ている。

 

これは————蛇か?しかし、蛇と言うにはゴツゴツしている。角のようなものも見えるし、蛇と竜の中間のような。頭全体は僕を簡単に吞み込めるほどの大きさだ。

 

瞬間、ほんの少し。

 

ほんの少しだけ蛇が頭が動かしたその瞬間に僕は()()()拳を放つ。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!」

 

アッパー気味に打ち込んだため蛇の上体が浮き上がる。辺り一帯の木が風圧で吹っ飛び、とてつもない暴風が吹き荒れる。

 

なるべく上に衝撃が行くよう殴ったが……僕の周囲数十メートルが荒地になってしまった。まあしょうがない。

 

未だ蛇は雄叫びをあげている。てかやっぱ竜っぽいな。でも見たかんじ胴体の続き方とか蛇っぽいし。腕なんかも見受けられない。

 

「おいマスター。ようやくだな」

 

いつのまにか左隣にいたスサノオが笑みを浮かべながら僕に話しかける。その手には既に彼の宝具、草薙剣(クサナギノツルギ)を持っている。

 

更に僕の右隣には八咫烏(ヤタガラス)が一声鳴いて降り立った。

 

「さあ、行くぞ」

 

前を見据え、蛇を見上げる。本気で殴ったためダメージは入ったようだがその鱗には傷一つ付いていない。更に上体を起こし鎌首をもたげるその姿はかなり威圧的だ。

 

なんてことを考えていると。

 

荒地となった向こう側、森の中から更にもう一匹。蛇の頭が生えてくる。

 

「……ん?」

 

更に横からもう一匹、更に一匹。どんどん木を薙ぎ倒しながら頭が生えてくる。その数は計()()

 

…………嫌な予感。

 

「おいおい、嘘だろ?()()()()()()()()()はずだぜ?」

 

隣のスサノオも冷や汗をかいている。……なるほど。確かにこいつは僕のテストじゃあなく、主従のテストだ。僕と、そしてサーヴァントであるスサノオにお誂え向きってか。

 

地面を盛り上げ、木々を薙ぎ倒し地中から胴体と脚、尾が現れる。

 

こいつ、体を地面に埋め————首から上だけを地上に出して捕食していたのか。

 

そう。これは、まさしく神話の怪物。八つの頭に八つの尾を持つ、蛇であり竜である化物。

 

 

 

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!』

 

 

 

 

八つの頭が同時に吼える。空気がビリビリと震え、体は硬直して動かない。これが——————。

 

 

 

 

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

 

 

 

伝説が、僕たちの前に立ちはだかった。

 

 

 

 

 





続くッ!


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神話の再現 その2


ユーフォが制作したアニメみたいなド派手高速戦闘イメージで補正してください。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそもの話。

 

自分より弱い相手に奇策を使う必要があるだろうか。

 

普通に戦えば勝てる相手に事前に準備し、策を考え、実践する必要などあるだろうか。

 

実力が拮抗しているか、自分より上ならばそうしなければ勝てないかもしれない。だが、そんなことをしなくても勝てる相手には必要ないのだ。極度の心配性でもない限り。

 

つまり、僕のサーヴァントである彼、須佐之男命(スサノオノミコト)がわざわざ酒で酔わせてから討伐したということは、そういうことなんだろう。

 

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)はスサノオより強かった。勝てるかわからなかった。だから弱らせた。

 

地上に追放され、神としての権能の大部分を使えなかったとはいえスサノオは神だ。その力は圧倒的で地上において最強の存在だったと言っても良いだろう。なによりあの頃の彼は若く、まさしく肉体的にも精神的にも全盛期だった。

 

そんな彼がようやく倒した怪物が、今僕らの前に存在している。サーヴァントとなり力が抑えられているスサノオと、ただの人間である僕、そしてあくまでサポートしかしてくれない助っ人の八咫烏(ヤタガラス)の前に。

 

「んー、これ無理じゃね?」

 

「マスター!最初っから弱気なこと言うんじゃねえ!まだ戦ってからそんなに経ってねえだろ!」

 

「いや、そんなこと言ってさあ。スサノオもめっちゃ焦ってるじゃん。やべえって言ってたじゃん。僕の全力パンチもダメージは与えられるけど傷はついてないし」

 

「うるせえ!てめえもマスターなら何か作戦でも提案しろ!このままじゃ全滅だぞ!」

 

振り下ろされた尾を躱しながら僕たちは言い争う。地面めっちゃ割れてるし。パワーやばいな。

 

しかし、たしかにこのままじゃ全滅だ。スサノオの剣すら弾いてるしあの鱗ホント何なんだよ。

 

「ああくそっ!もともとこの剣は()()()()()じゃねえんだよ……」

 

なんかスサノオが言い訳してる。んー、作戦かあ。作戦、作戦……。

 

「あ、そうだ。お酒だよお酒。生前と同じ倒し方すればいいじゃん」

 

少し離れたところに村はあるからそこからお酒でも貰えればなんとかなるんじゃね?勝ったな。

 

「そりゃ無理だ。ただの酒じゃあアイツは酔わねえよ」

 

名案だと思ったのにアッサリ否定される。

 

「アマテラスには嘘ついてクシナダの両親に作らせたって言ったけどよ、あん時使ったのは高天原(タカマガハラ)にあった神が作った酒だ。追放されてた俺にこっそり酒をくれたダチには感謝だが、今は貰えねえだろうな。出発前に用意されてなかったってことはそういうことだろ。()()()()()()()()()()()()ってわけさ」

 

うーん、なるほど。つまりは…………。

 

「結局脳筋作戦しかないね。ごり押しで殴る斬るやってればいつかは倒せるでしょ」

 

「……マジかよ」

 

スサノオが呆れた目で見てくる。しょうがないでしょ!僕いっつもそういうスタイルなんだもん!

 

というかこんな会話しながらも八つの頭と尾が襲ってきているがなんとか躱せている。案外どうにかなるんじゃね?

 

『◼️◼️◼️◼️◼️!!』

 

すると、痺れを切らしたのか八岐大蛇が攻撃の手を緩めた。その隙に僕とスサノオが一瞬で距離を詰め攻撃するが鱗に阻まれ傷はつかない。効いてない訳ではないんだけどなあ。

 

一旦距離をとり体勢を整え、八岐大蛇を見据えると少し様子がおかしいことに気づく。なんか空に向かって口開けてるけど何やってんだ?

 

すると、その開いた口に炎が発生し、どんどん大きくなっていく。魔力が高まっていくのがわかり嫌な予感がした。

 

「え、待って。八岐大蛇って火吹くの⁉︎」

 

「知らなかったのかよマスター!威力やべえから避けろよ!」

 

スサノオがそう言うのとほぼ同時に、とてつもない高温の炎が迫ってきて視界が光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まじか…………」

 

轟音。高熱。その後に残ったのは広大な焼け野原のみ。

 

なんとか躱したが少し火傷を負ってしまった。スサノオも無傷とはいかなかったらしい。八咫烏に関しては僕たちを拾ってくれたのに無傷だが。

 

「八つの頭による同時火炎放射か。一つに束ねるとここまでの威力になるとはよぉ」

 

八咫烏に乗ったまま地上を見下ろす。八岐大蛇の前方数キロメートルはほぼほぼ炎上してしまっている。もし直撃していたらなかなかマズかったかもな。

 

というか、これはかなり危険だ。このまま放置していれば数人の犠牲じゃあ済まなくなる。こいつは、ここで倒さなきゃいけない。

 

「……ん?」

 

()()を使おうかと考えているとスサノオがふと何かに気づく。

 

「なに、どしたん」

 

「いや、こうやって上から見て気づいたんだけどよぉ。アイツ俺が倒した時よりかなり小せえ気がすんだよな」

 

……小さい?そんな、大きくなってるとかならまだしも、生き物が小さくなることなんて————いや、そうか。これは。

 

「……僕はさ。この八岐大蛇、たかみー辺りが用意したと思ってたんだよ。だって八岐大蛇はスサノオが倒してるわけだし。でも、この八岐大蛇は人を殺して食べている。そんな奴をうちの王様が用意するとは思えない」

 

それにこれは依頼を兼ねたテストだ。実際に八岐大蛇をどうにかして欲しいとも思ってるだろうし。

 

「つまり、どういうことだ?」

 

「こいつ、別個体だよ。スサノオが倒した奴とは違う八岐大蛇だ。そもそも生き物ってのは子孫を残すもんだし、八岐大蛇みたいな怪物が急に発生したとも思えない。きっと、どこかで魔力やらの関係で変異した種が世代を重ねてさらに変わっていったんだ。それが八岐大蛇となり、そしてスサノオに退治される前に種を残していたんだ」

 

「あ?ってことは、こんなのが種として繁栄してゴロゴロいるってことか?」

 

きっと、()()()()()()()()()。もちろんそんなに数はいないだろう。寿命も長そうだし個体数自体はかなり少ないはずだ。でも、汎人類史では個体名だった八岐大蛇がこの異聞帯(ロストベルト)では種族名となっている。

 

「人や神を襲わんとする怪物たち、か。こりゃなかなか厳しそうだ。八岐大蛇もあと数体はいそうだし、それに匹敵する奴らもいるんだろうね」

 

「なるほどな。つまりコイツはまだ序盤、こんなとこで手こずってはいられねえってか」

 

そう言って、スサノオは笑う。上等だと、余裕そうに。

 

まったく、頼もしいサーヴァントだね。

 

「スサノオ。()()を使ってもらうから準備しといて。八岐大蛇の動きはなんとか僕が止めてみせるから。出し惜しみは無しだ」

 

「了解マスター!精々気張れよ!!」

 

そう言って背中を叩いてくるスサノオ。いや、強えよ。痛い痛い。

 

「期待してるぜ、日本の大英雄」

 

ともかく、気合いを入れた僕は彼にそう告げると八咫烏から飛び降り八岐大蛇の前に着地する。もちろんスーパーヒーロー着地だ。かなりの高さだったため右拳と右膝が痛いが必要な犠牲だ。かっこよさより優先することなんてあるか?いや、ない。

 

顔を上げ、八岐大蛇を睨む。こっからが本番だぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい!怖い!燃える!

 

啖呵を切ったは良いが火炎放射にはなす術がない。ひたすら躱す。躱す。躱す。

 

くそっ、これ広範囲すぎんだろ!いちいち魔力放出でぶっ飛ばなきゃ躱せないとかどんだけだよ!

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!』

 

更にはこの咆哮、うるさすぎて動きが鈍ってしまう。衝撃波みたいなのも出てるし一体どれだけの音量なんだ。

 

幸いなのは炎を溜めるのには時間がかかることぐらいか。それでも噛みつきや尾の振り回しだけで十分脅威なんだが。

 

高速で移動し頭や尾を避けながら縦横無尽に駆け回る。八岐大蛇の動きを止めるには…………やっぱ脳筋作戦しかないな。

 

しばらく攻撃を躱していると再び炎を溜め始めた。ここでいくしかない!

 

魔力を放出し、一気に飛び上がる。衝撃で地面が割れ灰が舞い、そのまま一直線に頭まで行くと下から顎を殴り抜けた。

 

「う、おおおおおおおお!吹っ飛べぇ!」

 

打撃音と同時に八岐大蛇の上体が逸れる。

 

狙うは————比較的ダメージが通りそうな、腹!!

 

自然落下に身を任せ下へと落ちていく。そのままの勢いで再び地面を蹴り飛び上がった。

 

そして、先程の攻撃によって晒された腹部へ全力の蹴りを叩き込む。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!!』

 

怯んだ!今がチャンスだ。気合い入れろ僕!

 

背後に回り込み巨大な尾の一つを掴む。かなり太いので両腕で抱えるようにし、そして自分の両脚を地面に突き刺し固定した。

 

「今だ!!やれ、倭建命(ヤマトタケルノミコト)!!!!」

 

僕は、遠く離れた場所で八咫烏に乗り、宝具を構えた彼に合図を出す。日本において伝説的英雄であり、草薙剣(クサナギノツルギ)の使い手である僕のサーヴァントに。

 

「了解したぜ、マスター!俺の名は、ヤマトタケル!!その名において、俺の意志に応えろ!!」

 

草薙剣が光り、その周囲に風が吹き荒れる。そして、その刀身が姿を現した。

 

草薙剣は自由に鞘から抜くことはできない。剣の意思と、使い手の意志が抜くべき場であると判断した時のみ、その真価を発揮する。

 

どんどんと高まっていく魔力を察知した八岐大蛇が動こうとするが、それをさせないのが僕の役目だ。尾を掴み引っ張ることで動くことを許さない。残った七本の尾が僕に迫るが全て魔力を放出することで弾く。

 

それでも八岐大蛇はこの状況を変えようとスサノオに火を放つが無駄だ。これまでの被害から見るに火炎放射の射程は約2km。対して八岐大蛇とスサノオの距離はおおよそ3km。八岐大蛇の攻撃は届かない。

 

そして、遂に——————。

 

「いくぜ————『草薙剣(クサナギノツルギ)』!!!!」

 

宝具が、放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

草薙剣(クサナギノツルギ)

 

またの名を、天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)と言う。

 

もともとは須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇を退治した際にその尾から出てきた剣のことをそう名付けたのだ。

 

天叢雲剣はその後スサノオの手によって天照大御神(アマテラスオオミカミ)に献上され、以降は天皇家で武力の象徴として受け継がれていった。

 

そうやって皇族である倭建命(ヤマトタケルノミコト)が天叢雲剣の所有者となったのだが、それだけ長い間存在していたにも関わらず、この剣は伝承の中で一度しか抜かれたことがない。

 

その伝承によると、かつてヤマトタケルが炎に囲まれた際、天叢雲剣が独りでに抜け、彼の周囲の草を薙ぎ、炎を打ち消したという。

 

その力は凄まじいもので、天叢雲剣が薙ぎ払った範囲は約3kmもあったと伝えられている。

 

故に、この一件以降、草薙剣という名が生まれた。

 

草薙剣が抜かれたと伝えられているのはこの一度だけだ。それ以外に使われたという話は残っていない。

 

つまり、逆説的に言えば。

 

草薙剣は()()()()()()()()()3()k()m()()()()()()()とも言える。

 

この剣の、真の能力。

 

それは使用者を中心とした周囲3kmの強制切断。

 

それが僕のサーヴァント、複合英霊であるヤマトタケルの宝具だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

捉えた。

 

スサノオが剣を振り切ったその瞬間、八岐大蛇の頭が宙を舞う。

 

体からごっそり魔力が持っていかれるが、僕の魔力量なら大丈夫だ。というか僕しか耐えられないのではないかと思うほどの量が持っていかれた。ヘラクレスの十二の試練(ゴッド・ハンド)とかこんな感じなんだろうか。

 

そんなことを考えながら八岐大蛇の首が次々と切断されていく様を見ていると——————八岐大蛇の額と胸についていたオレンジ色に輝く石が割れる。その瞬間にとてつもない量の魔力が溢れ出した。

 

何だ?何を…………。

 

すると、膨大な魔力で構成された障壁が出現し、残った三つの頭を護った。

 

「————な、んなバカな!」

 

草薙剣の能力は周囲3kmの強制切断だぞ⁉︎それを防いだってことは、因果や運命を捻じ曲げたってことになる!

 

合計九個の魔石。あれに一体どれほどの魔力を溜めていたんだ。

 

こいつは————一体何年生きている。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!!』

 

咆哮、そして衝撃。

 

「ぐっ、がはっ………」

 

驚愕で生じた隙を突かれ尾で吹き飛ばされたのか。モロにくらってしまった。

 

かなりの速度で吹っ飛んでいるところを、八咫烏に乗ったスサノオにキャッチされる。

 

「わりぃ、マスター。しくじった」

 

「いや、防がれるなんて想像もしてなかったからな。それに五つも頭を削ったんだ。そのダメージは相当なはずだし後はなんとかなるだろ」

 

「……それがそう簡単にはいかなさそうだぜ」

 

何やら深刻な顔で呟くので八岐大蛇を見るとその体は真っ赤に燃え盛っていた。炎の勢いは増していき、かなり離れたここでも熱を感じるほどだ。

 

「……なにあれ」

 

「多分だけどよぉ、尾の中にある金属の効果だと思うぜ。もともと天叢雲剣ってのは八岐大蛇の上に常に雲がかかっていたことからそう名付けられたんだが、その力は八岐大蛇じゃあなく尾の中の天叢雲剣の力だった。今も奴の尾から強い魔力を感じるしなぁ」

 

なるほど。つまり八岐大蛇ってのは取り込んだ金属やら鉱石やら魔力やらを尾に結晶として生成する生き物なのか。そして生成された金属は大きくなっていき、やがて剣の形になり強い力を発揮する、と。

 

「で、アイツは炎を操るって感じ?これピンチじゃね?僕はあんな巨体を抑えてた上に魔力も使って疲弊してるし、スサノオも宝具使うような力ないだろ」

 

僕たちが話している間にもどんどんと炎の勢いは増していき、ついにそれは天に伸び竜巻のようになっていた。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!!』

 

……最後の一撃ってか。あんなん開放されたら僕たちどころかここら一帯の森、下手したら村なんかまで燃え尽きてしまう。

 

「……はあ。言ったもんなあ、出し惜しみは無しだって。しゃーなし」

 

ストックを使おう。膨大な魔力量を誇る僕が十数年間毎日毎日溜めてきた前世の魂の魔力を。と言ってもほんの一部だが。

 

「構えろ、スサノオ。()()()()()()()()使()()の準備だ」

 

「ああ、これで決める」

 

そう言って立ち上がるスサノオ。そして、八岐大蛇を正面に見据えた。

 

ずっと高まり続けた八岐大蛇の魔力もピークを迎える。そして、全身を包み込むほど巨大な炎の竜巻がこちらに放たれた。少しでも触れた瞬間あらゆるものが灰塵と化す。熱波だけで火傷しそうだ。

 

だから頼むぜ、スサノオ。

 

「令呪をもって命ずる!真名を解放しろ!重ねて令呪をもって命ずる!宝具を開帳しろ、セイバー!!!!」

 

瞬間、金色の嵐が吹き荒れる。

 

目の前に立つスサノオの装備が変化する。比較的軽装だった装備に金色の兜や籠手、背中には大輪が現れる。

 

持っていた草薙剣も銀の刃、翠の紐とシンプルなデザインから両刃から三つずつ枝刃が生え黒と金の七支刀(しちしとう)六叉(ろくさ)の矛、七枝刀(ななつさやのたち)とも呼ばれる形となっている。

 

そして何よりもその体から溢れ出る圧倒的な神性。これが、セイバーの須佐之男命(スサノオノミコト)としての力。

 

異聞帯(ロストベルト)のサーヴァントの力。

 

僕のサーヴァント、セイバーは複合英霊だ。一つの身体に複数の霊基が備わった特殊なサーヴァント。

 

もともとこの異聞帯(ロストベルト)に居たスサノオを依代として汎人類史のヤマトタケルを召喚していて、同じ武器を宝具としていることと精神の相性が良すぎたことから意図せずこんなことになってしまったのだ。

 

更に複雑なことに、ヤマトタケルという人物は実在していない。ヤマトタケルとは複数の英雄の伝承によって形作られた存在であり、4世紀から7世紀ごろのヤマトの英雄が複数人集まり召喚されるのがヤマトタケルというサーヴァントだ。

 

その結果、今僕の目の前で天叢雲剣を構える『スサノオ』というサーヴァントが誕生した。

 

「俺の名は、スサノオ!!その名において、この一撃をお前に送ろう!八岐大蛇!!」

 

天叢雲剣を天へ突き出す。スサノオの頭上に雲が現れ、剣を中心に嵐が吹き荒れる。雨が降り、雷が落ち、そしてその力が全て収束していく。これが、三種の神器としての力…………!

 

「吹き荒れろ————『天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)』!!!!」

 

そしてスサノオは——————嵐をそのまま振り下ろした。

 

八岐大蛇の炎など一瞬で搔き消え、風が、雨が、雷が、その巨体を呑み込んでいく。

 

嵐の消えた後には、倒れ伏した八岐大蛇と更地だけが残っていた。

 

 

 

「………………なあ」

 

「……どうした?マスター」

 

「……やりすぎ」

 

 

 

一番ヤバいのはあんな状況で僕とスサノオを落とさず飛んでいた八咫烏だと思いました。まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、目を覚ました八岐大蛇は野生動物らしく自分より強い存在である僕たちに従ってくれた。もう悪さはしないと約束させた後にうちの王様たちによって傷は元通り。もし人を襲ったらとんでもないことになるという御呪いつきで治療してもらっていた。何それ怖い。

 

ていうか意思疎通できたのね君。長いこと生きてるとそうなるんかな。知らんけど。

 

たかみーから一先ず合格とのお達しを受け、高天原(タカマガハラ)に帰ってくるのは下界でゆっくりしてからで良いよと言われたので近くの村に八岐大蛇を退治したと報告しに回った。

 

なんか出発する際にスサノオが八岐大蛇と話してたけどなんなんだろ。まあどーでもいいか。

 

村に着くと村人からは英雄だの神の使いだの言われめっちゃ感謝された。あんまり堅苦しいのは好きじゃないので色々お礼は遠慮したが、お礼にと擦り寄ってきた女の子の好意は受け取っておいた。なんというか原始的だったとだけ言っておこう。新しく教えてあげるのも悪くないよネ。

 

 

 

 

 

 

 

結局、高天原(タカマガハラ)に帰ったのは約一週間後となり、クリプターの会議をすっぽかしてしまったことでキリシュタリアからは「会議には参加してください。」とメールが、オフェリアには通話で叱られた後に「もう……私がいないと本当ダメなんだから」みたいなこと言われた。子供扱いしないでっ!

 

 

 

 

 

 





令呪は異聞帯(ロストベルト)の王たちに回復してもらった。神様すごい。

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鬼のツノってのは一種の性感帯だと思うんですよ、ええ。 その1


どうしても出したくて我慢できなかった。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、僕が知っている異聞帯(ロストベルト)は三つだけだ。

 

一つは、カドックの担当するロシアの異聞帯(ロストベルト)、アナスタシア。

 

二つ目は、オフェリアの担当する北欧の異聞帯(ロストベルト)、ゲッテルデメルング。

 

そして、三つ目は僕ことエドワードが担当する日本の異聞帯(ロストベルト)高天原(タカマガハラ)

 

他の五つの異聞帯(ロストベルト)に関してはfgoのストーリーが更新される前にこの世界に転生してしまったためほとんど情報がない。もう少し真面目に会議に参加していればある程度はわかるのかもしれないがほぼボーッとしていたり寝ていたりする僕には知らないことが多いのだ。

 

まあ、ともかく。僕が知っている異聞帯(ロストベルト)はこの三つなのだが、ぶっちゃけこの中では僕は自分自身の異聞帯(ロストベルト)のことを一番理解していない。

 

というのも、あまりにも僕の異聞帯(ロストベルト)は複雑すぎるのだ。

 

まず神話の神様揃いすぎ問題。更にはとんでもない生き物いすぎ問題。

 

主にこの二つのせいで僕の異聞帯(ロストベルト)はわけわからんことになっている。実際今が何年なのかとか正確にはわからん。僕の予想としては2018年なのだが。

 

この予想が正しいとすれば、この異聞帯(ロストベルト)は神代がそのまま終わることなく西暦2018年まで続いている歴史ということになるが、その場合どのような汎人類史との違いが発生しているかなんて想像もつかない。

 

つまり、何が言いたいかというと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉ!このクソでか狸俺の剣を金○袋で防ぎやがった!!」

 

「また変化(へんげ)される前に倒せ!つか宝具が○玉に負けるって何だよ!」

 

森の奥地に住む神獣クラスの巨大狸だとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばいやばいやばい!こいつ神獣どころか神霊にすら匹敵するぞ!!」

 

「マジでどうなってんだよこの毒は……!俺が指一本すら動かせねえなんて……!」

 

蛇神として恐れられ祠に祀られていた、山を一巻きくらいできそうな神霊クラスの白蛇だとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、こいつ最早神すら超えてるよな。明らかに魔力の桁が違うんだけど」

 

「腹くくれマスター。俺たちマジでここで死ぬかもな」

 

そこらへんの神霊じゃあ束になっても勝てなさそうな九尾の妖狐だとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、あれって中国の神獣じゃなかった?」

 

「さあな、渡ってきて住みついたんだろ。もういちいち驚かねえよ」

 

雷神のごとく雷を司り空を駆ける麒麟だとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ここは一体どんな魔境なのよ。もはや人が住む環境じゃないぜ?ここ」

 

「それ故に我らは人の子へ恩恵を与えるのだ。この地でも生き抜けるようにな」

 

「まあ、それに日本全体で見ればそんなに数がいるわけでもないしね。遭遇することはまずないさ」

 

「いや、あんたらそこに僕とスサノオを送り出してるじゃん。遭遇しまくってんだけど」

 

「…………ふぁいと」

 

「あぁ……僕の癒しはかみむーだけだよ。あめのんとたかみーは鬼畜だし。試練しか与えない神様なんて酷いもんだよ」

 

僕はそう言って寄ってきた神産巣日神(カミムスヒノカミ)、通称かみむーの頭を撫でる。あー、ふわっふわ。嬉しそうに目を細めるかみむーもマジ癒し。

 

「いやいや、私たちだってエドに恩恵与えてあげてるだろう?私とアメノミナカヌシの加護だって無ければとっくに死んでたよ?」

 

「うむ。我が契約者は我らへの感謝の念を抱くべきだ」

 

そうやって反論してくるのは、たかみーこと高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)と、あめのんこと天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)だ。

 

……いや、確かに加護は凄かったけどさ、それ化物どもと戦う前提の加護じゃん。なんかこう遭遇しない魔除けの加護みたいなのつけてよ。テストなんて最早する必要ないのに怪物退治の作業押し付けてるだけだよね。

 

「てかさ、明らかに日本神話で聞いたことないような生き物もいたりするけどこの異聞帯(ロストベルト)どうなってんの?この前の八岐大蛇(炎)とかさ」

 

「ふん、汎人類史と差異が生じるのは必然であろう。何千、何万年もの間我らが存在し続けているのだ。その神性、魔力は周囲に影響を与える。環境が変化すればそこに生まれる生命もまた変化するというものだ」

 

えぇ〜そういうもんかあ?

 

「それに」

 

僕が不満そうな顔をしていることに気づいたのか、たかみーが話を引き継ぐ。

 

「別に全部が全部変わってるって訳じゃないと思うよ。エドが生きてきた歴史と同じように生まれてきたものもあるさ」

 

まあ、たしかに神代には確実にいなかったであろう動物や魔獣、神獣なんかもいるしなあ。これが特異点と異聞帯(ロストベルト)の違いか。歴史が分岐してからある程度の年数が経っていることによって本来の歴史と大きく乖離する。

 

「にしたってさあ、別にもう僕とスサノオがやんなくて良くない?タケにでも任せようよ」

 

「いやいや、あの子がやっても何も面白くないじゃん。人間であるエドが頑張ってる姿が良いんだよ」

 

結局ただの娯楽扱いやんけ!これが神様なりの人間の愛し方ってやつなのか?やっぱズレてるなあ。

 

ちなみにタケってのは建御雷神(タケミカヅチノカミ)のことだ。雷神かつ剣の神でもあり相撲の元祖でもある。バチクソ強い。

 

「くそぉ……こんなのブラックすぎる……!」

 

僕が自分の労働環境に絶望しているとかみむーが肩に手を置いてくる。かみむー………!

 

「…………えどわーど。今度はさいきん人をさらうって噂のおに————」

 

ダッシュで逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、僕は高天原(タカマガハラ)を降りて地上にいた。ここなら神様もわざわざ降りてこないししばらくはゆっくりできるだろう。休暇だ休暇。

 

八咫烏(ヤタガラス)はなんやかんや神側の味方なので今回は麒麟に乗せてもらった。降りてくる時に雷落ちまくってたけどまあうん。大丈夫でしょ。

 

……走るだけで雷落とすのはどうかと思う。

 

そんなことを考えながらある程度は整備されている道を歩いていく。村やら集落やらに近いと道くらいはちゃんとあるらしい。さて、どこへ行こうか。

 

今考えたら一人で地上に来るのは初めてかもしれない。いっつもスサノオがいたし。もともと一人で過ごすのも好きなタイプである僕からしたらなかなか珍しいことである。まあ異聞帯(ロストベルト)に来たばっかで忙しいのもあるからなあ。

 

目的もなくぷらぷら歩く。たしかここから一番近いのは……ああ、あの村か。あそこの女の子にちょっと会っていこうかな。

 

よし、そうと決まれば早速行くっきゃねえ。そうやってこれからのことを想像しウキウキで足を進めていると。

 

突然、先程まで何もいなかった背後に何かが現れる。そして、その何かは僕の完全な死角から高速で手を伸ばし————————。

 

 

 

 

その手を、僕は掴む。かなりの速さだったが対応できる範囲内だ。

 

「なぁっ⁉︎」

 

驚く声が聞こえる。まさか防がれるとは思っていなかったのだろう。というか随分と可愛らしい声だな。

 

相手が驚いている間に次の行動へ移る。掴んだ手を振り上げると相手ごと持ち上げ、そのまま片手で地面に叩きつけた。

 

「ガ…………っ!」

 

衝撃で小さなクレーターが生じる。てかなんか軽くない?まるで小さな女の子を相手にしているような—————って、ばらきー⁉︎

 

僕を攻撃してきた謎の存在の正体が金髪鬼娘だった件。新しいラノベのタイトルかな?

 

いや、てか、え?茨木童子?なんでいんの?

 

「ぐ……その手を、離せ!」

 

僕が混乱していると下の方から何やら熱気が漂ってくる。気づいたときには茨木童子の全身は炎に包まれていた。そして、そのまま魔力放出による炎が辺り一帯を焼却する。あまりの威力に火柱が立ち上がった。

 

「フハハハハ!人間にしてはなかなかやるようだが吾の炎の前にはこんなものよ!」

 

なんかめっちゃ機嫌の良い声が聞こえる。てか熱っ!あっつ!!

 

急いで拳を振るうことでその風圧により炎を搔き消す。思ったより熱くてビビった。

 

「な……なんなのだ(なれ)は!サーヴァントでもないただの人間が吾の炎を搔き消すなど…………」

 

「そういうお前も、いきなり襲ってくるなんてどういうことだ?大江山の首魁、茨木童子」

 

僕の言葉に彼女は驚いたような顔をしたが、すぐさま不敵な笑みを浮かべた。

 

「ふん、どうやら吾のことは知っているようだな。どういうこととは奇妙なことを聞くものよ。鬼とは人を喰らうものであろう」

 

そう言って彼女は笑う。その手には巨大な刀を構え体は彼女の炎によって熱く燃え上がっている。完全な臨戦態勢だ。

 

まじか。ばらきー普通に好きなキャラだったし敵対したくないんだけど。生で見てもめちゃんこかわいいし。CV東山奈央はダテじゃない。ぜひともキモい!って罵ってもらいたい。僕は前世で間違っている青春ラブコメが大好きだったんだ。由比ヶ浜はどうせ敗けヒロイ—————

 

「うわ」

 

僕を叩き斬ろうと迫る大剣を腕をクロスし防御する。変なこと考えてたせいで間抜けな声が出てしまった。恥ずかしい。

 

次に茨木童子は縦にぐるぐると回りながら剣を何度も叩きつけてくる。いて、いてててててて!!ちょ、痛い痛い痛い!……くそっ!

 

「いっ、てえ、なあ!!!!」

 

直接殴るのは気が引けたので防御用に構えている剣を思いっきり殴り抜く。そのまま力を乗せ茨木童子ごと吹っ飛ばした。森の方へ突っ込んでも勢いは衰えず木をなぎ倒しながらどんどんと奥へ進んでいく。やべ、ついやりすぎた。

 

あああ、どうしよう。かあいいかあいいばらきーを直接ではないといえ殴り飛ばしてしまった。てか完全に敵認定されちゃってるなあ。

 

どうしよう。てか何でいるんだろう。そんな思考に耽っていると前方に何かを見つける。なんか赤い————チカチカしている。あれは、燃えているのか?どんどん近づいてくるにつれ全体も見えてくる。

 

「んなっ⁉︎」

 

あれは、巨大な手だ。茨木童子の巨大な右手が炎を纏いながらこちらに迫ってくる。巨大化ロケットパンチ(炎)と言えばわかりやすいだろうか。

 

羅生門大怨起(らしょうもんだいえんぎ)…………!茨木童子の宝具の一つ。先程も言った通り能力は燃える巨大ロケットパンチだ。

 

まじかよ!普通ただの人間に宝具なんて使うか⁉︎いや、原作でもないことはなかったな。あの世界例外みたいなのが多すぎでしょ。

 

————って、まずい!んなくだらないこと考えてる場合じゃなかった!

 

目の前に迫る煉獄の炎。その勢いは凄まじく手の通った場所は抉れ、燃え上がっていた。んー、どうしよ。

 

とりあえず正面から殴ってみる。えい。

 

茨木童子の宝具と僕の拳がぶつかり合った瞬間に僕の体は炎に包まれ、その衝撃で遥か彼方まで吹き飛ばされた。宝具には勝てなかったよ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、僕は山奥で拘束されていた。

 

縄で木にぐるぐる巻きにされ胡座をかいている。そんな僕の目の前には二人の女の子がいた。

 

僕と女の子たちは初対面なのだが、僕はその二人をよーく知っている。彼女たちの名は、茨木童子と酒呑童子。主に平安時代?辺りで人を攫ったりやらなんやらをして暴れていた鬼である。

 

もう一度言おう。酒呑童子だ。鬼娘だ。酒呑ちゃんだ。

 

……やばい、こんな状態なのにめちゃくちゃ興奮してる。これでは僕が縄で縛られていることに興奮してる変態みたいじゃないか。断じて僕にそんな趣味はない。

 

なら何に興奮しているのかと言うと、僕は前世で酒呑ちゃんが大好きだったのだ。エロ同人でお世話になったサーヴァントベスト5くらいに入る。ちなみに後の四人は頼光さん、ナイチンゲール、三蔵ちゃん、ジャンヌ(オルタ含む)だ。マシュはサーヴァントのカテゴリに入れていいのか迷うな。あと槍トリア(オルタ含む)なんかもなかなかお世話になった。武蔵ちゃんやBB、アビゲイルもなかなか……………。

 

「おい、人間。この状況で一体何を考えている」

 

いかんいかん。一人えちえちサーヴァント選手権を開催してしまっていた。不機嫌そうなばらきーの声で我に帰る。

 

「いや、この縄ほどいてほしいなあって。僕は別に二人に危害を加えたりしないし、敵対もしないって」

 

「ほどいたら逃げるであろう。ただの人間とは思えぬ身体能力の(なれ)にはそのままでいてもらう」

 

んー、まあそう簡単にはいかないよね。

 

「にしても、えらいイケメンやなあ。茨木がこないな男連れてくるなんて想像もしてへんかったわ。少しはそういうことに興味も出てきたんか?」

 

そう言って彼女、酒呑童子が僕に顔を近づけてくる。うわ、良い匂いする。あと服装際どすぎない?下着と同じレベルの露出度である。

 

酒呑童子の発言に茨木童子が顔を赤くしてわちゃわちゃしている。んー、なんだこの状況。てか何でこの二人が僕の異聞帯(ロストベルト)に居るんだろう。雰囲気からして彼女たちは汎人類史のサーヴァントだ。元々この異聞帯(ロストベルト)に居たのではなく最近召喚されたのだろう。

 

あれか?ストーリーで必ず存在するはぐれサーヴァントってやつか?え?ってことはそろそろカルデア来るの?いや、カルデアが来るだいぶ前から召喚されるはぐれサーヴァントも居たか。

 

「なあ」

 

とりあえずアクションを起こそう。このままってのはちょっとな。そう思いイチャついてる二人に話しかける。

 

「まず一つ聞きたいんだけど。僕を襲ったのは僕を喰べるため?サーヴァントなら食事は必要ないと思うんだけど」

 

「ん?そないなこと言うてもなあ。鬼ってのは自分のやりたいことやるもんやさかい、必要あらへんからせえへんってのは違うなあ」

 

なるほど、まあそんなもんか。鬼を理解しようとしたって不可能だろうしそこらへんはいいや。

 

「じゃあ、何で僕をさっさと喰べないんだ?こんな風に拘束する必要はないだろ」

 

「汝のその令呪だ。どうやらマスターらしいが、ここは何だ?日本であることはわかるが、空気中の魔力濃度や人間どもの様子がおかしい。それに、あの樹は何なのだ?攫った人間どもに聞いても知らんと口を揃える」

 

あの樹、か。多分空想樹のことだろう。異聞帯(ロストベルト)についての情報が欲しいってところか。

 

——————ならば。

 

ほんの少しだけ魔力を放出する。二人の顔に緊張の色が宿った。こういう時に大事なのは雰囲気だ。不敵に笑い彼女たちを見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それなら知ってるよ。というより僕がここの管理をしている。僕の名前はエドワード・エヴァンズ。日本の異聞帯(ロストベルト)を担当するクリプターさ」

 

 

面白くなってきた。どうやら今日も退屈はしなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、縛られた状態でカッコつけられてもな…………」

 

「ほんま、おもろい子やなぁ」

 

 

 

 

……微妙にキマらないのはご愛嬌だ。

 

 

 

 





話が進まない。ばらきーと酒呑ちゃんの口調がわからない。鬼娘とイチャつきたい。酒呑ちゃんのフィギュア欲しい。


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鬼のツノってのは一種の性感帯だと思うんですよ、ええ。 その2

少し性的な描写があります。酒呑ちゃんメインで書いてるからしょうがないよね!えちえちサーヴァントについて話し合う某アフレコ動画に酒呑ちゃんの話が出てこないのはおかしいと思う。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒呑童子と茨木童子の二人には異聞帯(ロストベルト)についてちゃんと説明した。

 

というのも僕に敵対するつもりはないとしっかり彼女たちに知ってもらいたかったからだ。アナスタシアやゲッテルデメルングで何故はぐれサーヴァントが敵対したか、それは異聞帯(ロストベルト)の王が民に対して何らかの危害を加えていたからだろう。

 

ヤガは圧政、オプリチニキによって苦しめられていた。だからカドックはビリー、ベオウルフ、アヴィケブロン、アタランテオルタ等を敵に回した。

 

北欧の子供たちはスカサハ=スカディの手によって大人になると殺されていた。それは人間という種を守るための行為だったとは言え、ナポレオンやブリュンヒルデ、シトナイ、あと巌窟王もだったか?まあともかくそこらへんとは相容れなかった。

 

だが、僕の異聞帯(ロストベルト)は違う。基本的に神は人間に信仰されている限りは危害を加えたりしない。もちろん、全ての害から人間を守るという訳でも困難を与えないという訳でもないが、他の異聞帯(ロストベルト)と比べればその差は歴然だろう。

 

つまり、ここで彼女たちと敵対する理由がないのだ。うちは善良な異聞帯(ロストベルト)ですよ、安全ですよとアピールすることが大事なのである。

 

————って、ん?

 

あれ、そう言えば。別に彼女たちって人間の味方じゃねえな。むしろ敵だ、がっつり。

 

あれ、じゃあうちの王様たちとバッチリ敵対するじゃん。今までの怪物たちと同じで鬼とかまんま討伐対象じゃん。

 

…………何か嫌な予感がする。僕の第六感が危険を告げている。

 

何だろうこれ、と思考を巡らせていると酒呑童子に「なぁ、あんたはん」と呼ばれる。あぁ〜方言女子すこ。

 

「ようするに、あんたはんと……神様やっけ?としてはうちらに人を攫うんを止めて欲しいってことやろ?」

 

「ん?まあ、そうだね。僕は二人と敵対したくない訳だし。人を喰べるのを我慢してくれればそうならずに済むんだよ」

 

「ふふっ、我慢て。うちらみたいな鬼が我慢なんてすると思うん?今もあんたはんを喰べるゆうてるんよ?」

 

んー、たしかになあ。でもFGOだと人とか喰べてなかったし他に興味を逸らすこともできない訳ではないんだよな。どうしよ。

 

…………まずは。

 

「なあ、茨木童子」

 

僕が話しかけると「む?」とこちらを見てくる。いちいち可愛い。

 

「僕にかかれば甘味やらが山ほど手に入るよ。神様に頼めばゼロからいくらでも生み出してくれるかもしれないし。でも人を攫うならこの話は無しになるけど、どうする?」

 

「にゃにぃ⁉︎本当かソレは!今すぐ止めるぞ!だからさっさと菓子を持ってこい、人間!」

 

………………思ってた百倍チョロかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「茨木はほんまに甘い菓子を好いとるなぁ。ふふ、うちらにとって一番甘ーいモンが何か、まだわからへんのやね」

 

酒呑童子の申し出により茨木童子が席を外し、僕との二人きりになると彼女はそう呟いた。その顔はとても楽しそうで、茨木童子が愛おしくて堪らないといった感じだ。

 

「その一番甘いモンとやらは、一生僕ら人間にはわかんないんだろうけど。まあ少なくとも人を喰べることではないんじゃない?」

 

せっかく二人きりなので説得を続ける。しつこいかもしれないが協力関係を結びたいのだ。酒呑童子を見つめ返事を待っていると、彼女は優しく笑みを浮かべこちらを見る。

 

「なぁ。あんたはん、別にそないな縄くらい抜けれるんやない?それに茨木に連れてこられた時もずっと意識あったようやし、何でわざわざここに来たん?そもそも、茨木に遭うた時に令呪でサーヴァント呼ぶんも出来たんやろ?」

 

「……別に、鬼の根城に連れていかれるなら好都合だと思っただけだよ。いつでも逃げれるよう構えてはいたしね」

 

「ふぅん…………。あんたはん、不思議やなぁ。うちらに興味があって敵対心はない。せやのにうちらを()()()()()とは思ってへん」

 

そう言って、彼女は僕を興味深そうに見つめ、甘い笑顔を向けてくる。……なんだろう、これは。

 

「…………そうだな。人が鬼を理解しようなんてことは無理だってわかってる。でもさ、ここなら、僕となら。きっと酒呑童子を退屈させないと思うんだよ」

 

ここぞとばかりに彼女を口説く。もちろん人を攫うことを止めさせたいってのもあるが、何というか、僕は彼女と共に居たいと思ってしまっていた。

 

彼女の独特な雰囲気がそうさせるのだろうか。いつもやりたいことをやって、自分の好きなものに執着して、そして不意にそれを壊す。そんな不安定で、鬼としては最も鬼らしくて、正しい姿であろう彼女が、僕は放っておけないのだ。

 

こんな気持ち、前世を通しても初めてだ。人とは違ったその生き方に強く惹かれ、そしてそれを側で見ていたいなんて考えている。これは、きっと。

 

「ふふ、なぁに?そないに熱い目で見られると昂ぶってまうわぁ……。えどわーど、やっけ?ほんまに、食べてしまいたいなぁ…………」

 

そう言って、彼女は僕に目線を合わせた。四つん這いになって、少しずつ、少しずつ近づいてくる。その手は僕の胸の上に置かれ、縛られて座っている僕に跨るように覆い被さるとお互いの息がかかるような距離で僕の目を見つめてきた。

 

ああ、そうだ。これは、きっと———————。

 

 

 

 

良くない感情だ。

 

 

 

 

そして、お互いの唇が重なるその寸前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はい、ストップ!!私たちに仇なす怪物と唐突なラブロマンスを繰り広げてる裏切り者のエド、聞こえてるかな?』

 

空の上から、たかみーの声が聞こえてきた。そのせいで酒呑童子が僕から離れてしまう。ちょっと!今めっちゃ良い雰囲気だったのに!

 

『全く、少し目を離したら別の女の子を引っ掛けてるんだから、しかも今回は私たちの異聞帯(ロストベルト)の敵である怪物に手を出そうとするなんて、許せない!』

 

ぷんぷん、なんて擬音が聞こえてきそうな声色である。若干棒読みなところがめちゃくちゃ嘘臭い。

 

『だから、エドとエドを誑かした鬼には天罰を与えることにします。急に逃げたせいでカミムスヒも傷ついてるし、私も傷つきました。今から送る子たちに協力でも何でもして力を示して。これに懲りたら私たちのお願いは聞くようにねー』

 

そう言うと、たかみーの声は聞こえなくなった。え、何?天罰?マジで?

 

茨木童子にも声が聞こえていたのか「酒呑、何があった⁉︎」と戻ってきた。酒呑童子は「ええとこやったのになぁ……」なんて言っている。全くの同感です。

 

あー、くそ。嫌な予感ってのは当たるもんなんだな。最近は怪物退治もそこまでの頻度じゃなくなっていたし、はぐれサーヴァントなんて新要素をたかみーが見逃すはずがなかった。

 

要はこれもたかみーなりの人間への愛情表現であり暇潰しだろう。試練を与え、それを眺める。神様の無茶振りってやつだ。

 

ふと、僕たち三人の前方。左右から二匹、四足歩行の獣が現れる。

 

一匹は全身を金や赤の体毛で覆われ、巨大な口からは牙を覗かせている。頭部には(たてがみ)のようなものが生え、身体中から闘気を漂わせていた。

 

もう一匹は白や青の硬い皮膚で覆われた獣で、同じように鋭い牙を持っている。鬣は少なく頭部には一本の角が生えていた。体毛が手足と顔周り、尻尾にしかないのも異様な雰囲気を加速させている。

 

これらは、恐らく日本において八咫烏(ヤタガラス)を超え最も知名度の高い神使(しんし)。対の存在であり二匹が一つの存在とされることも多い獣。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️………!!』

 

二匹同時に吠える。低く、唸るような吠え声だ。

 

『獅子』と『狛犬』。

 

神の獣が僕たちの目の前に現れた。

 

 

 

 

 

…………神様の部下ってのも大変そうだな。

 

暇潰しに駆り出された彼らを倒せなんて、やっぱり神様ってのは感覚やらなんやらがズレているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、二人とも。ここは僕と契約しない?」

 

「誰がするか!(なれ)も吾らの敵であろう!」

 

「うちは別にええけどなぁ」

 

あれから、たかみーが寄越した神使(しんし)を前に僕たちは苦戦していた。そのため僕は二人に協力を持ちかけたのだが茨木童子に断られる。賛成っぽい酒呑童子に「酒呑⁉︎」と驚いているが。

 

「うちはエドワードはんに興味あるしなぁ。それにマスターがおらへんうちらが圧されとるんは事実やし」

 

「ぐ、たしかに…………だが……」

 

あっ、いけそう!あと一押し!

 

「冷静に考えてくれ。ここで僕と契約しなければ獅子と狛犬は倒せない。それでも僕は高天原(タカマガハラ)に連れて帰られて終わりだけど二人はどうなるかわかんないぜ?神様たちの気まぐれでいつ消されたっておかしくないし」

 

普段、茨木童子は母親の教えに則り傲慢に、言うなれば『鬼らしく』過ごしているが元来の性格は冷静で慎重なものだ。ぶっちゃけ奥の奥は小心者なのである。そんな彼女が人を襲い続けること、僕と———と言うより神たちと———敵対し続けることのリスクがわからないはずがない。つまり。

 

「ええい!よかろう、契約してやる!ただし調子に乗るなよ人間。これは酒呑が言うからやるのだ。吾らに隙を見せれば喰ってやるからな」

 

茨木童子は生きるためにしか人間を食べなくていいと考えてるはず。要は脅しというか、見栄なのだろう。そう考えると僕を怖がらせようと作っているドヤ顔が可愛い。

 

「よし、じゃあ————やるよ」

 

僕は酒呑童子と茨木童子の二人にパスを繋げる。マスターとサーヴァントの主従契約。僕の身体から二人に魔力が流れ込んでいくのを感じた。

 

「……ええなぁ」

 

「な、これは……」

 

二人が少し反応を変える。多分僕の魔力量に驚いているのだろう。今彼女たちはサーヴァントとして自身の最高のステータスを記録しているはずだ。これも僕の能力の一つと言ってもいいかもしれない。衛宮士郎がマスターの時と遠坂凛がマスターの時でセイバーのステータスが違ったように、サーヴァントのステータスってのはマスターによって変化するものだ。

 

僕はその魔力量によって常にサーヴァントのベストを引き出す。ステータスの値という点だけに注目すれば僕以上のマスターはいないと言えるだろう。性格とか相性とか戦略とか抜きにすればね、うん。

 

そして、僕たちは獅子と狛犬を見据える。物理的にも魔力的にも圧倒的な攻撃力を誇る獅子、同じくその両方で圧倒的な防御力を誇る狛犬。この二匹の連携にどうにも手を焼いていたのだが。

 

連携という点なら、この二人だって負けていない。

 

お互いのことを考えたり気にして動いているわけじゃあない。自分の好きなように動いている。それでも自然と噛み合うというか、上手く動けている。あまり自由に暴れすぎないようにするのがマスターの役目なんだろうがなんとなく止めたくなかった。彼女たちが思う存分暴れられるよう指示を出していく。

 

千紫万紅(せんしばんこう)神便鬼毒(しんべんきどく)

 

羅生門大怨起(らしょうもんだいえんぎ)……!』

 

結局、彼女たち二人が宝具を使用した時には勝敗は決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやあ、はぐれサーヴァント二基と契約してこの子たちを退けるなんてなかなかやるね。今回も楽しませてもらったよ。やっぱり人間が頑張る姿、特にエドのは最高だね』

 

空からたかみーのそんな声が聞こえると獅子、狛犬はどこかに帰っていった。あれ、君たち思ったよりピンピンしてますね。

 

結局のところ、たかみーは僕がサーヴァント、しかも鬼なんていう難しい存在と契約できるかどうかが見たかったのだろう。今回の試練は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

もちろん、僕が交渉に失敗し彼女たちが人を攫い続けるようなら神様たちは彼女たちを殺しただろう。僕とスサノオなり神使なりを使って。

 

最後に『彼女たちは高天原(タカマガハラ)には入れないから地上でどうにかしてね』と言い残すとたかみーの声は聞こえなくなった。神に関しては考えるだけ無駄だと意識を切り替える。鬼よりも存在としては人とかけ離れているのだ。その心中など察することは出来ても理解は出来ないだろう。

 

そんなことを考えていると酒呑童子と茨木童子の二人が僕に話しかけてくる。

 

「これより吾に欠かさず甘味を貢ぐのならマスターとして認めてやろう。吾への畏敬の念と恐怖を忘れぬことだな。フハハハハ!!」

 

「わかったよばらきー。認めてもらえるよう頑張るさ」

 

偉そうな態度をとるばらきー可愛い。「ばらきーとは何だ!」って驚いてる姿も可愛い。

 

「茨木もやけど、うちのこともよろしゅうなぁ、旦那はん。あんまり目移りしたらあかんで?」

 

「…………善処します」

 

自分は色んなものに興味を持つが僕には独占欲を見せるとは、これもまあ鬼らしいと言えるのだろうか。知らんけど。旦那はん呼びに興奮したのは内緒だ。

 

そう言えば、彼女たちはどこで生活しているのだろう。もちろんサーヴァントである二人には睡眠や食事やらは必要ないので住居も必要なさそうだが、鬼がそんな合理的で遊びがない生活をしているとは思えない。それに僕が根城を知りたかったみたいな発言をした時に酒呑童子も特に否定しなかったし。

 

そう思い二人に聞いてみると山頂付近の神社を根城としていた。めっちゃ豪華な神社だ。罰当たりすぎる。

 

この異聞帯(ロストベルト)、神様のために造られたものに関してはとてもしっかりしているのだ。村なんかはそうでもないのに。神様を崇めます!って分にだけ知恵やらなんやらが与えられるのだとか。なんというかその話を聞いたときは共存じゃあなく神に飼われてるみたいだなと思ったがそれ以上考えるのは止めておいた。うちの異聞帯(ロストベルト)にもしっかり闇があったね!

 

僕はいつも高天原(タカマガハラ)で寝泊まりしているのだがせっかく契約したのだしと泊めてもらった。茨木童子は嫌がって別の部屋に行ってしまったが。これが思春期の娘か……この年で中年お父さんの気持ちを知ってしまった。悲しい。今は絆レベル1くらいかな?

 

そして夜、僕は酒呑童子と二人で晩酌していた。僕の身体は爆破で死んだ時の状態で生き返っているため、本来24歳のところが22歳のままなのだ。よってお酒は飲める。前世で20歳になる前に飲んでた気がするけど記憶が混乱しているのかな?気のせい気のせい。

 

てか酒呑童子の宝具めっちゃ美味い。弱めれば飲めるらしいとは知ってたけど本当に飲めるんだな。前世ではそんなに酒に強くなかったのだがこの身体はかなり強いらしくなかなか酔わないので新鮮だ。そのせいで酒呑童子が興奮してどんどん飲まされてるけど。鬼ってマジで酒強いな…………。

 

やばい、かなり酔ってきた…………。なんというか思考がまとまらない。

 

「ふふっ。うちと飲み比べで張り合うんは金髪碧眼の小僧以来やなぁ。旦那はんもそうやけどあん小僧もええ男やったわ」

 

「おいおい、酒呑ちゃん。僕と飲んでるってのに昔の男の話?僕だって金髪碧眼だぞう!」

 

少しムッとする。今まで手を出した女の子が他の男と関係を持っても何も思わなかった。僕だって好き放題やってたわけだし。だがなんとなく嫉妬してしまう。その小僧ってのはどこのどいつだぁ!

 

「旦那はんたら妬いとるん?ほんま可愛いなぁ。ようけ蕩けて、食べ頃やし」

 

そう言って、彼女は申し訳程度に羽織っていた着物を脱ぐ。すると身に纏っているのは黒い紐のような下着だけとなった。ん?これ下着なのかな?だとしたら酒呑ちゃんはいつも下着丸出しってことになっちゃうぞ。それも良いけど。

 

「うちと夜を共にするゆうんは()()()()()()やろ?ずっと熱い視線も感じるしなぁ。骨の髄まで蕩かしたるわ」

 

赤く頰を上気させた酒呑ちゃんがこちらに近寄ってくる。何か彼女に手を出したら無事じゃいられない気がするけど、もうどうでもいいや。何故か抗う気が全く起きない。

 

覆い被さってくる彼女を受け入れ、僕たちはそのまま倒れ込んだ。なんだか、長い夜になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………んっ……なぁ、旦那はん。……そないにうちのツノが気になるん?」

 

「……うん。…………触っても、いい?」

 

「ふふっ。ええよ?旦那はんの好きなようしはっても」

 

「……じゃあ」

 

「………んっ、……ぁ、」

 

彼女のツノは滑らかでつるつるしていて、冷たくて、硬いのに柔らかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

あっぶねえ!物理的にも食われるとこだった!なんだツノ触っていい?って!他にもアレとかアレとかアレとか…………。いや、凄い良かったけどさ……。食われるのだけは勘弁だ。いやー、マジで危なかった。令呪なかったら色んな意味で死んでたわ。

 

………まさかあんなエロ同人みたいな使い方をすることになるとは思いませんでした。

 

 

 

 

 




令呪って夢が広がる。


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設定 その1

設定です。第2部がまだ始まったばかりなこと、作者が割と思いつきで作品を書くタイプなこと。この2つのせいで設定に矛盾が生じたりします。そんな時や設定を変えたい時はこっそり変更する可能性があることを承知しておいてください。なるべくないようにしたいッ!


 

 

 

 

 

名前:Edward(エドワード) Evans(エヴァンズ)

 

性別:男性

 

年齢:22歳

 

身長:182cm

 

体重:76kg

 

血液型:O型

 

サーヴァント:須佐之男命(スサノオノミコト)倭建命(ヤマトタケルノミコト)

 

サーヴァント:酒呑童子(しゅてんどうじ)

 

サーヴァント:茨木童子(いばらきどうじ)

 

 

プロフィール

 

今作の主人公。転生者であり前世は日本人。そこそこ勉強ができ、そこそこ運動もできた。そこそこイケメンだったため何人かの女性と交際経験もある。そこそこな大学に通っていたところ、ある日寝たまま病気により急死。FGOの世界に転生してしまう。

 

転生後はイギリス人で、金髪碧眼の美青年へと成長した。FGOの世界に来たと気付いてからは死なないために戦闘用魔術と肉体の鍛錬を欠かさず続けた。よって着痩せしているがかなり筋肉質。もともと強靭な肉体だった上に魔術回路に関してもかなり良かったため鍛えれば鍛えるほど成長している。エドワードの能力の中で最も注目すべきなのは魔力量や戦闘能力の高さではなく限界の見えない成長性だろう。

 

もともと女好きだったが転生して更にイケメンになったせいで女好きが加速した。二度目の人生だということもあって色々吹っ切れているため言動が自由。寝坊、遅刻、サボり等も多い。そのせいで知識面に関してはAチームマスターの中で一番劣っているが、平均は軽く超えておりなんやかんや才能マンである。

 

戦闘スタイルは基本的に肉弾戦。身体強化、魔力放出などでの超接近戦を得意とし、その動きはサーヴァントに匹敵するほど。基本的に何かに本気になることが珍しいので戦闘能力は未知数。

 

担当する異聞帯(ロストベルト)は日本。異聞深度を測定することができないほど特殊であり汎人類史とはかけ離れている。エドワード本人は自らの異聞帯(ロストベルト)のことはあまり理解していないが、規格外だということは理解できたため異星の神や他のクリプターには異聞帯(ロストベルト)の王たちの力で色々と認識を弄るなどして嘘をついている(王は天之御中主神の一柱だけでサーヴァントは倭建命、他には神使が少し居るだけと報告している)。

 

クリプターとなることには特に抵抗がなかった。決して悪人ではないが全く知らない人が死ぬことを悲しむほど善人でもない。そして知り合いが死ぬのは嫌だと感じる至って普通の精神性をしている。そのため所長とロマンが死んだことは少し心に残っているが結果的には自分の命を優先するような普通の人間。

 

主人公が最も優先していることの一つは原作の流れをなぞることなのだが彼の存在のせいでかなりの相違点が発生してしまっている。もう一つは死なないこと。目標は自分の見れなかった原作の先を知ること。根本的にはただのFateオタク、ファン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真名:須佐之男命(スサノオノミコト)倭建命(ヤマトタケルノミコト)

 

性別:男性

 

身長:185cm

 

体重:80kg

 

クラス:セイバー

 

マスター:エドワード・エヴァンズ

 

属性:混沌・善

 

ステータス:筋力 A+ 耐久 B 敏捷 B+ 魔力 B++ 幸運 D 宝具 A++

 

クラススキル:対魔力 A 神性 B 騎乗 EX

 

スキル:直感 B 魔力放出 B++ 勇猛 A 竜殺し EX

 

宝具:天羽々斬(アメノハバキリ)

 

スサノオ状態の時のみ使用できる宝具。至って普通の剣だが竜種に対して使用する場合に限り切れ味が格段に増す。それ以外には特筆するべきこともない剣である。

 

宝具:草薙剣(クサナギノツルギ)

 

茶色い柄に銀色の刃、翠の紐がついたシンプルなデザイン。普段は鞘に入っており抜くことはできない。鞘に入っていてもある程度の切れ味はある。所有者に抜く意思があり、なおかつこの剣自身が抜くべき時であると判断した場合のみ抜刀することができる。能力は使用者を中心とした周囲半径3kmの強制切断。その際に範囲に入っていたものは硬度に関係なく切断される。範囲は剣を振った軌道に沿った円となる。某狩人×狩人の『円』の角度を抜刀時に調整できると考えてもらえば分かりやすいかもしれない。

 

宝具:天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)

 

スサノオ状態の時のみ使用できる宝具。全体的に黒く、金で縁取ってある。左右の刃からそれぞれ三つの枝刃が生えたデザイン。八岐大蛇の尾から出てきたという剣。嵐(風・水・雷)を自在に操る力を持ち、相応しくない者が持てば形を変え、ただの鈍と化す。ヤマトタケルは相応しい持ち手ではあるがスサノオには遠く及ばないためにその能力の一部しか使用できない。その結果が草薙剣。

 

 

プロフィール

 

異聞帯(ロストベルト)のスサノオを依代に汎人類史のヤマトタケルが召喚された複合英霊。ヤマトタケル自身も4〜7世紀ごろのヤマトの英雄が集まって構成された英霊。身長、体重はスサノオ状態のもの。

 

普段はヤマトタケル状態で現界していてスサノオ状態になると筋力、敏捷、魔力、宝具のランクが上昇する。スサノオ状態では消費魔力が尋常でなく並のマスターなら現界させることもできないほど。特に宝具使用時の魔力消費が酷く、本来なら草薙剣、天叢雲剣はどれだけ魔力を溜めようと使用できない。

 

ヤマトタケルが混ざった存在のため神性のランクは大幅にダウンしBとなっている。

 

本来騎乗スキルはE程度だが限定的に竜種への騎乗を可能とするためEXとなっている。竜種を討伐したことが屈服させた、服従させたと解釈されているため。

 

竜殺しのスキルはヤマトタケル状態では保有していないがスサノオ状態では保有していて、天羽々斬を使用する際にもランクが上昇するためEXとなっている。

 

性格は大雑把で乱暴的、神経質で真面目な天照大御神とは全くもって気が合わない。造化三神(ぞうかさんしん)を含む別天津神(ことあまつがみ)に萎縮せず軽い態度をとる珍しい存在。だが根っこの部分は善性であり、困っている者が居れば手を差し伸べるような性格。櫛名田比売(クシナダヒメ)との結婚などを経験しているため精神的にいくらか落ち着いているが、スサノオとヤマトタケルの若い頃の性格に少し引っ張られている。そのため戦闘などの荒事が好きでありよくエドワードを誘っている。召喚されてすぐに一度だけ闘った際は勝利したものの、自身の本気を引き出したエドワードを正式にマスターとして認めた。あんなに全力を出したのは初めてだったかも、とはエドワードの談である。

 

普段は黒髪で肩までの長さの無造作な髪型をしているが、スサノオ状態になると髪が金色に輝き、腰辺りまで伸びる。キリっとしたイケメン。若干コワモテ。

 

他にも宝具や固有のスキルがあるとのことだがまだ判明していない。謎が残るサーヴァントである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真名:酒呑童子(しゅてんどうじ)

 

クラス:アサシン

 

マスター:エドワード・エヴァンズ

 

プロフィール

 

FGOと別段変わったところはない。周囲の環境のせいか若干鬼としての要素が強く頻繁にエドワードを(色々な意味で)食べようとする。鬼に興味を持ちつつも、理解しようと踏み込んでき過ぎないエドワードを気に入っている。えっちなサーヴァント。それ以上に言葉はいらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真名:茨木童子(いばらきどうじ)

 

クラス:バーサーカー

 

マスター:エドワード・エヴァンズ

 

プロフィール

 

FGOと別段変わったところはない。エドワードのことはマスターとして認めているが自分を怖がらないところなどが気に入らない。あと酒呑童子と仲が良さそうなところも気に入らない。人間にしては色々わきまえてるとは思っている。素直になれないばらきー可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリプター

 

 

 

 

 

カドック・ゼムルプス

 

エドワードとは仲が良い。ゲームをしたりエロ本を借りたりする仲。最初は他者の才能に嫉妬し、自分を卑下し追い込んでいたがエドワードを見ていると何だかばからしくなり少し心に余裕ができた。アナスタシアとは何とも言えない関係。エドワードはさっさと付き合え!と思っているがそう単純でもないもどかしい関係である。ちなみにこの年で女性と一度も付き合ったことがない。童貞。

 

 

 

 

オフェリア・ファムルソローネ

 

エドワードに好意を抱いている。話すようになる前は軽薄で不真面目な態度に不快感を覚えていたが根は悪くないことを知り、以降はその不真面目な部分に母性のようなものを抱く。自分がいなければ何もできないエドワードの世話をすることに喜びを感じるダメ男製造機。自分の悩みを軽くしてくれたことには感謝しているが一方で複数の女性に手を出していることには不満があり、やめて欲しいと思いながら、自分だけ手を出されていないことに女としての魅力がないのではないかと不安がある。キリシュタリアは尊敬しているが恋愛感情はない。そのことを何度エドワードに説明しても照れ隠しだと勘違いされるので少し傷ついている。実際のところエドワードは、自分と真逆のキリシュタリアを好きになるのだからオフェリアには全く脈がないだろう、と思っているだけで興味がないわけではない。

 

 

 

 

芥ヒナコ

 

エドワードとは仲が良い女友達。日本人がいないカルデアで何故か日本に異様に詳しいエドワードと話すことが楽しみの一つ。お互いに恋愛感情はない。もちろん有り得ないことではあるがもしヒナコの方からエドワードに迫ればエドワードは拒まないが。

 

 

 

 

 

スカンジナビア・ペペロンチーノ

 

オネエ。お互いコミュ力が半端ないためエドワードとはすぐに話すようになった。エドワードに母性のようなものを抱いている。偶に熱い視線を送っているがエドワードからしたら冗談なのか本気なのか不明でヒヤヒヤしている。

 

 

 

 

キリシュタリア・ヴォーダイム

 

無自覚イキリ堅物くそ真面目くん。その雰囲気から敬遠されがちだが実は付き合いがかなり良い。エドワードがゲームとか誘えば普通に参加してくれる。初めて自分を弄ったりからかってきたエドワードに心を許しがち。

 

 

 

 

ベリル・ガット

 

カドックとエドワードの兄貴分を自称している。実際面倒見は良い。殺人鬼だがエドワードは知らない誰かを殺してようがどうでもいいと考えている。自分の知り合いに手を出したら流石に止めようとは考えているが。エドワードはよくベリルに適当な発言の揚げ足を取られからかわれる。

 

 

 

 

デイビット・ゼム・ヴォイド

 

天才揃いのAチームマスターの中でも特に天才と周囲から認められている。異端として扱われておりデイビット自身も誰かに理解されようなどとは思っていないが、物怖じせずに自分を貶したり弄ってくるエドワードに少しだけ興味がある。今ではお互いにそのコミュ障度や不真面目さを弄り、貶し合う仲が良いと言ってもいいのかよくわからない関係。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異聞帯(ロストベルト)高天原(タカマガハラ)

 

 

 

 

 

 

エドワードに興味を抱いていたり、その性格、強さなどを認めていたりする。どちらかといえば真面目な神より傍若無人な神との方が仲が良い。中にはエドワードに試練を与え、それを見て楽しむ神もいるがエドワードがそれを乗り越えるため余計に喜ぶ。筆頭は高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)

 

天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)は黒髪ショートで容姿は女性にも見えるが若干男性寄りのキリっとした目つきをしている。あだ名はあめのん。

 

高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)はピンク気味のセミロング。容姿は中性的。あだ名はたかみー。

 

神産巣日神(カミムスヒノカミ)は青髪で背中に少しかかる長さ。容姿は女性寄り。あだ名はかみむー。

 

 

 

 

 

 

 

 

生物

 

 

 

 

 

八咫烏(ヤタガラス)

 

体長は3.5m程で、脚が三本ある烏。羽は硬く嘴や爪も鋭いためかなり強い。しかも最高飛行速度は音速に匹敵する。一部地域では太陽の化身として信仰されているため、光や熱、炎を操ることもできる。かなり万能の神使。善意を持って接してくる者には割とすぐ懐く。

 

 

 

八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

 

言わずとしれた日本神話屈指の怪物。この異聞帯(ロストベルト)では種として繁殖している。と言っても寿命も長く天敵もほとんど居ないため個体数はかなり少なく、多くても一度に五体ほどしか存在しない。それぞれの額と胸部に計九個の魔石が存在し、産まれてから常にそこに魔力を溜めている。

 

更に、八岐大蛇には口にした物を金属として尾の中に生成する能力がある。長く生きた個体はその金属が剣の形となり、食べた鉱石や魔石、金属、生物によって生成する金属が持つ属性が変化するという特徴も持つ。強大な個体は尾の中の剣の能力を自在に操る。スサノオが倒した八岐大蛇の頭上には尾の剣の能力によって常に雲がかかっていたため、尾から出てきた剣は天叢雲剣と名付けられた。水神としての信仰も集めていたのは天叢雲剣により水を操っていたからである。

 

エドワードとスサノオの二人で倒した八岐大蛇は尾に炎を操る剣が入っている。サイズや有する力もスサノオ一人で倒した八岐大蛇の始祖には及ばないがかなりの力を持っている。戦闘で負った傷や使用した魔石は神たちに修復してもらった。現在は自らを負かしたエドワードとスサノオに従っている。スサノオからはパートナーにならないかと提案され、それを受け入れた。

 

 

 

その他

 

巨大狸や九尾の狐、獅子と狛犬、麒麟、巨大白蛇などなど多くの生物が生息している。このどれもに共通するのはとても強大な力を持つということ。獅子と狛犬以外は皆エドワードとスサノオの説得(物理)によって神使となった。この主従でも神たちの加護・恩恵がなければ勝てないレベルの生物ばかり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデア

 

 

 

 

マシュ・キリエライト

 

そこそこ話したことはある。あまり感情が無かった当時のマシュからしたらエドワードは新鮮で珍しく、人間らしいと感じていた。それ故に何故クリプターとなって地球を漂白したのか問い質したいと思っている。

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

エドワードに強い興味を持っている。人の限界を超えた身体能力や魔力量を調べようとしていたが逃げられていた。それとは別で美青年であるエドワードにも関心を持ちその完璧な肉体で誘惑していた。こちらの誘いはほぼノータイムで成功している。ダヴィンチちゃんは生前から美しければ男でもイケるタイプ。エドワードも見た目が美女だったため深く考えず受け入れた。アレが付いてなくて良かったとはエドワードの談。

 

 

オルガマリー・アニムスフィア

 

いつも寝坊で遅刻し、居眠りなどで話を聞いていないエドワードを叱っていた。人間としてはあまり好きではないがその能力は高く買っていたため魔術について話し合おうとしていたがその度に逃げられていた。

 

 

ロマニ・アーキマン

 

サボリ仲間。よく一緒にゲームをしたりアニメを見ていた。何故かエドワードから「ソロモンは心が童貞」「ソロモンが現代にいたら絶対ただのオタク」とよくソロモンの悪口(?)を言われていた。エドワードとしてはロマンの死なない道を考えたが、ロマンの犠牲がなければゲーティアは倒せないという結論に至り諦めた。

 

 

フォウ

 

フォウくんとは普通に仲が良く、懐いていたという程ではないが撫でたりすることは可能だった。時々フォウくんにビビるエドワードの姿が目撃されていたらしい。あんな可愛い動物のどこを恐れていたのだろうか。

 

 

 

その他

 

 

マスター候補からは不真面目なのに自分より上にいるのが気に入らないという理由で嫌われていた。実際にはエドワードの方が努力をしているが適当な彼の姿を見てそれに気づけというのは酷だろう。

 

スタッフからはAチームマスターの中では比較的話しやすいと思われていた。女性スタッフからも人気が高く王子様と呼ぶ女性も居たとか居なかったとか。しかし自身に好意のある女性に手を出しまくっていたため、真面目な女性スタッフからその点に関しては軽蔑されていた。

 

 

 

 

 

 




設定はざっくりこんな感じです。今後変更・追加があるかも。


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かつてのカルデア

メカエリちゃん別タイプ選べるらしいですね。ハロウィンの酒呑ちゃんが楽しみすぎる。あれだけ回しても出てくれない酒呑ちゃんが配布されるなんて。




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつだって、私は人間らしくなかった。

 

感情を表さず、世界を何も知らない。

 

それなのに、どこか諦めているような。そんな私だった。

 

けれど、今は違う。先輩と出会って、数々の特異点を巡って。

 

そして————様々な方と、別れを経験した。

 

所長。ドクター。カルデアスタッフの皆さん。ダ・ヴィンチちゃん。

 

……Aチームマスターの皆さん。

 

正直、あの頃の私は他人に興味を持とうとしていなかったから、全員と関わりがあったわけではない。

 

それでも、今は知りたいと、話したいと思う。彼らと。彼女らと。

 

スカンジナビア・ペペロンチーノ。芥ヒナコ。オフェリア・ファムルソローネ。エドワード・エヴァンズ。

 

この四人とは、比較的話していたかもしれない。

 

友達と——呼んでもいいのだろうか。

 

あの頃しか関わったことがないから、今の私を見たら少し驚くかもしれない。

 

そして、それでも。そんな私を見て、彼らは笑うのだろう。

 

嬉しそうに、優しく。

 

だから、私は彼らに問い質さなければならない。そんな彼らが、何故クリプターとなったのか。何故人類を、汎人類史を、地球を漂白するのか。

 

何故、カルデアのスタッフを、襲ったのか。

 

もし、それでも。……わかり合えたのなら。

 

また、あの時のように—————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、マシュ。ちょっと座らせてもらってもいいか?」

 

とある朝、カルデアの食堂。私が朝ご飯を食べていると前から声がかかった。

 

手を止め、顔を上げると、そこには同じAチームのメンバーであるエドワード・エヴァンズとオフェリア・ファムルソローネの姿があった。

 

「エドワードさん……?は、はい。私は大丈夫ですが……」

 

それを聞いて、彼はニコリと笑うと私の正面の椅子を引き、そこにオフェリアさんを座らせた。彼はその隣に座る。

 

「えっと…マシュ・キリエライトさん、よね。知ってるとは思うけれど、一応。私はオフェリア・ファムルソローネ。よろしくね」

 

「あっ、はい……。マシュ・キリエライトです。よろしくお願いします。オフェリアさん」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「ちょっと、何この空気」

 

先程まで笑顔で私たちを見守っていたエドワードさんが痺れを切らしたのか口を開く。というか、そもそもこれは何なのだろう。

 

「いやね、見りゃわかると思うけどこの子めちゃくちゃ友達少ないのよ。今回はオフェリアの友達を増やそう大作戦第二弾!ちなみに第一弾はヒナコね」

 

私が不思議そうな顔をしていたのがわかったのか、エドワードさんが事の経緯を説明する。

 

「いえ、私が困惑しているのはそこではなく……」

 

もともと、エドワードさんとは話したことがある。私は彼の明るさについていけていなかったが、それでも会話は何度かあった。だからこうして朝に話しかけられることもそこまで珍しいことじゃない。そもそもエドワードさんが朝に起きていることが珍しいとかそういったことを無視すれば。

 

オフェリアさんとこうしてしっかり対面して話すのは初めてだが、言葉を交わしたことがないわけではない。

 

なら、何に困惑しているのかと言うと。

 

今、エドワードさんの「友達が少ない」発言に顔を赤らめながら反論しているオフェリアさんの態度にだ。

 

私の記憶が確かなら彼女はエドワードさんを嫌っていたはずだ。彼に対して苦言を呈するオフェリアさんを何度か見たこともある。なのに、今は。

 

「か、勝手なことを言わないで。私はもう友達が少ない訳ではないわ。ぺぺとヒナコ、それに、その…………おそらく、貴方も……」

 

「えー?僕とぺぺとヒナコの三人だけじゃん。少ないでしょ、十分」

 

「っ!ええ、ええ。そうね。ぺぺと、ヒナコと、貴方。その三人よ」

 

「いや、何で嬉しそうなんだよ……」

 

……何なのだろうか、これは。

 

こんなに生き生きとしたオフェリアさんは初めて見た。いや、こんな偉そうなことを言えるほど関わってきた訳ではないけれど、それでも初めてだと自信を持って言える。

 

だから、何というか————。

 

「綺麗……」

 

ほんの少しだけ、心が動いた音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷっ、くく、ふふっ。『すぐに向かうので用意をしておいてください。コントローラーは持っていきます。』だってよ。くふっ、ヤバイ、ちょっとツボった」

 

現在、私とエドワードさん、オフェリアさん、ヒナコさん、ぺぺさんの五人でドクターの部屋にきていた。あの後、少しオフェリアさんと話しているとエドワードさんから「もっと仲良くなろう!」と連れてこられたのだ。ヒナコさんとぺぺさんも呼んでドクターの部屋に突撃した時はかなり驚かせてしまった。

 

ぺぺさんとはよく話す。と言ってもあちらから話しかけてくれるだけで、私は上手く返事をできている気はしないけれど。それでも、他の人より安心できるような、頼れる雰囲気を持った人だ。

 

ヒナコさんとは会話をしたことがなかったので軽く自己紹介をした。少し冷たいように感じたがエドワードさん曰く照れているのだとか。そんなことを言った彼はヒナコさんに足を踏まれていたが。

 

「いやあ、まさか僕の部屋にこんなに人が来るとはなぁ。教えてくれればお茶菓子くらい用意したのに」

 

そう言って、頭を掻きながら苦笑いするドクター。

 

「いやいや、そんなのいらないぜロマン。お前はこのオタク部屋にあるゲームを貸してくれればそれで十分さ」

 

「エドワード。貴方、もう少し遠慮したらどうなの……」

 

早速ドクターの物と思われるゲームをあさるエドワードさんにオフェリアさんが少し呆れるように注意をする。

 

「オフェリア。僕はもうロマンとその程度の関係じゃないんだ。遠慮もいらない仲って訳さ」

 

「はは…。確かにエドワードくんはよく遊びに来るしね。にしてもこんなメンバーは初めてだけど」

 

「あら、私たちはお邪魔だったかしら?ねえ、ヒナコ」

 

「……何でそこで私にフるのかはわからないけど、そうね。エドワードとドクターがただならぬ関係だってことはわかったわ」

 

「あれ、ヒナコって腐ってる感じ?気づかんかった、マジで?」

 

腐ってる、というのはどういうことなのだろうか。ヒナコさんが腐敗しているようにはとても見えないが。

 

「てか別に僕とロマンの二人きりでって訳じゃないからな。カドックとかキリシュタリアも普段はいる………………ん、よし。あいつらも誘おう」

 

そして、カドックさんからは忙しいからまた今度と断りのメールがきてそのすぐ後、キリシュタリアさんからメールが届いたのだった。

 

「いやー、…………ふふっ。アイツのメールくそ真面目すぎて、ツボる……!」

 

「キリシュタリアってゲームとかするのね、意外」

 

「くくっ、だろ?オフェリアも色々話しかけてみ。知らないことってのはたくさんあるもんさ」

 

知らないこと————。

 

そう、私は、知らなかった。

 

他のAチームの皆さんが、こんなに親しげに話すなんて。ドクターやカドックさん、キリシュタリアさん、エドワードさんが一緒にゲームをするなんて。オフェリアさんとヒナコさんが、ぎこちないながらもお互いを知ろうとしているなんて。

 

もしかしたら、もっと知らないことがあるのかもしれない。いや、きっとあるのだろう。

 

「ねぇ、マシュちゃん」

 

私が思考に耽っていると、ぺぺさんから声をかけられる。

 

「アナタは今、成長途中なの。これから色んなことを知って、どんどん成長していくその途中。焦る必要はないけど、閉じこもってるのももったいないわよ?」

 

————私には、彼の言葉の全てを理解することは、まだできない。

 

それでも、理解したいと。知っていきたいと。少しだけ思えた気がした。

 

前をみる。

 

そこには、いつもと変わらない様子でゲームのコントローラーを持つキリシュタリアさんと、それを見てまたツボにはまってしまうエドワードさんの姿がある。

 

オフェリアさんとヒナコさんも、ついつい笑ってしまっている。そんな中でもキリシュタリアさんはコントローラーを持ち真顔のままだ。

 

「……ふふっ」

 

その様子が何だかおかしくて、つい笑ってしまう。すると、皆さんから珍しいものを見たかのような顔で見られた。

 

「あ、えっと……どうかしましたか?」

 

「いえ、貴方が笑ったの、初めて見たから」

 

「そ、そうでしたか?」

 

オフェリアさんに指摘され、初めて気付く。確かに、笑うこともなかったかもしれない。

 

隣にいるドクターが嬉しそうに、優しい目で私を見てくるのが、どうしようもなくむず痒かった。

 

「は、早くゲームを始めましょう!まずはルールを知っている方でお手本を見せてください!」

 

なんだか恥ずかしくて、無理矢理話を逸らしてしまった。皆さんも特に何か言う訳でもなくゲームを始めていく。そこからも初めてのことばかりだった。

 

ドクターとエドワードさん、キリシュタリアさんの上手さに驚いたり。ヒナコさんと私の下手さに皆さんが応援したり。初めてなのに何故か上手いぺぺさんとオフェリアさんに驚いたり。途中で乱入してきたカドックさんも上手で。キリシュタリアさんが真顔でコントローラーを操作する様子にまたエドワードさんが笑ったり。

 

そうやって、私の休日は初めてだらけの日となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間はすっかり夜となり、今日は解散となった。まだ、キリシュタリアさんやカドックさんとは上手く話せなかったけれど、ヒナコさん、オフェリアさんとはかなり話せるようになった。

 

皆さんが自分の部屋に帰っていき、いつの間にか廊下を歩くのは私とエドワードさんだけとなっていた。

 

「ん、ここ僕の部屋だ。じゃあ、おやすみマシュ。自分の部屋までの道はわかる?送ろうか?」

 

「自分の部屋くらいわかります!……おやすみなさい、エドワードさん」

 

ニヤニヤしながらからかってくる彼にそう返す。ツッコミ、というのをするのもこれが初めてかもしれない。

 

「なあ、マシュ」

 

部屋に入ろうとしていたエドワードさんがこちらを振り向く。……どうしたのだろうか。

 

「きっと、これからマシュはもっと色んなことを経験する。今日なんか比にならないくらい、楽しいことも、悲しいことも。それに、恋なんかもする時がくるかもな」

 

「……恋、ですか?」

 

恋。単語自体は知っている。それでもまるで想像はつかないものだ。自分がすることになるとは思えない。

 

「ま、まだわかんないのは当然だよ。それでも、いつか素敵な相手が現れるさ。例えば、マシュのお手本になるような、人として尊敬できる『先輩』とかね」

 

「先輩、ですか?それならエドワードさんも、ドクターも。他のAチームの皆さんも私の先輩にあたるのでは?」

 

人生という括りなら、このカルデアにいる方は皆私の先輩と呼べるかもしれない。

 

「うーん、何て言うか、まあ。心から先輩と呼べる相手がいたら先輩って呼んでやれ。この人を支えたい、この人の後輩でいたいって思ったらね」

 

そう言うと、エドワードさんは自室へと入っていった。その後、しばらく私は彼の部屋の前に立っていたままだった。どうしてか、彼の言ったことが気になる。心に残る。

 

結局、その疑問が解消されたのは、もっとずっと後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、起きてますか?朝ご飯の時間です。しっかり食べて今日も頑張りましょう」

 

「うん!すぐ行く、マシュ!」

 

そう言って、私の先輩でありマスターでもある彼———藤丸立香が部屋から出てくる。そして私を見つめると、おはようと笑顔で挨拶してきた。

 

「はい。おはようございます、先輩」

 

私も、笑顔で返事をする。自然と彼に向ける、私の最高の笑顔で。

 

「あ、やっと起きたのかい?全く、立香はこんな状況でも変わらないね」

 

「ふむ。これは私が推理するまでもなく導き出せることだが、夜更かしをしていただろう。こんな状況だからこそしっかり休むことは重要だ。そして朝食も一日の活動をより活発なものにする。しっかり食べておくことだね」

 

「ふん!そんなこと言われんでもわかるだろう!私なんてしっかり食べたくとも食べれておらんのだ!……ああ、あの頃の朝食が恋しい……」

 

操縦室へ行くとダ・ヴィンチちゃん、ホームズさん、新所長がそれぞれ先輩に声をかける。先輩は挨拶しながらも新所長をからかっているが。

 

「所長の量だって十分でしょ!普段どんだけ食ってんですか」

 

「なにおぅ!私はおまえたちと違ってエネルギーを使うのだよ!」

 

——こんな時でも、互いを心配している。新所長だって何だかんだ気にかけてくれている。

 

「……ふふっ」

 

自然と、笑みが零れた。随分と笑えるようになったなと我ながら感じる。

 

これも、先輩や特異点を通して出会った方々のおかげだ。

 

ただ、切っ掛けはもっと前にあった。

 

先輩と出会う、その少し前。

 

————だから、私たちは進まなければいけない。救うために。そして、知るために。

 

「……先輩っ」

 

先輩に声をかける。彼はいつだって優しい笑顔で、力強い目で見てくれる。

 

「これからも、見守ってくださいますか?」

 

こんなことを急に聞いて、普通なら変に思うだろう。

 

それでも、彼は。

 

 

 

 

——いつもと変わらぬ笑顔で、応えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




FGOのサントラIIを買っていなかったことを思い出して急いで買いました。早く届け。


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クリプター その3

やっと3章クリアしたので投稿です!

3章のネタバレ含みます。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Aチームメンバーの中で一番最初に気になったのは芥ヒナコだった。

 

そもそもの話として、僕の今世での目的は生き延びることだ。もちろん、自由に生きるだとか原作の先を知りたいだとかもあるが、まあ一番は死なないことだろう。

 

だから僕は戦闘で役に立ちそうな技術は学んできたし、1部と1.5部はレフの爆破を見逃してまで回避した。

 

そんな僕が思うに、生き延びるのに一番大事なこととは「見極める」ことだ。彼我の実力差を。相手の持つ戦力を。

 

まあ当然といえば当然だろう。相手が自分より強いことに気づかなければ負けるし、弱い相手だとしてもその実力差を見誤れば油断や慢心から負けることもある。

 

だから、戦力が不明でイマイチ測ることができないデイビットのことは底が知れないと考えている。

 

だが、そんなデイビットより先に気になったのが、芥ヒナコだった。

 

物静かで、無口で、無表情で、いつも一人で本を読んでいるよくわからない奴。

 

それが一般的な彼女への印象だろう。だが、僕にとっては違った。僕にはわかった。

 

魔力量が異常だとか、本気の戦闘を見たとか、そういう訳じゃない。証拠なんて何もない。だが、僕の勘が告げていたのだ。コイツは強いと。

 

明らかに人間として異常な程の力を有していると。

 

自分を鍛えるため数々の戦闘経験を積んできたが故の、第六感。それが芥ヒナコの異常性を教えてくれていた。

 

そう、だから。僕は————————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ま、クリプターになるんだから当然でしょ!fgoの敵キャラなんだから凄い魔術とか使えるんじゃね、知らんけど!

 

 

 

 

 

特に何も考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、何の本読んでんの?」

 

まだ僕がカルデアに来てそんなに経っていないある日、休憩室にて。

 

カルデアでは、オルガマリーにマリスビリー所長、ロマン、ダ・ヴィンチちゃんくらいとしかまともに会話をしたことがない。そんな僕でも読書好き、という印象を受ける程常に本を持ち歩いている少女、芥ヒナコに声をかけた。

 

「………………」

 

彼女は無言で目線だけをこちらに向ける。その目は明らかにめんどくさがっていた。というよりもはや嫌悪や敵意すら感じる目だ。え?僕そんな嫌われるようなことしたっけ?まだ話したこともないのに?

 

「そこ、座っていい?」

 

僕は彼女の近くの席を指差し、返事を聞く前にさっさと座ってしまった。彼女から向けられる目線が更にきつくなる。

 

「……何の用?」

 

渋々、といった感じで彼女は口を開く。

 

「いや、同じマスター候補なんだし仲良くしようと思ってね。僕はエドワード・エヴァンズ。最近ここに来たんだ。よろしく」

 

「……芥ヒナコよ」

 

僕は握手をしようと手を出したのだが、彼女は自らの名前だけを告げるとその手を無視して再び本に目を落とした。

 

マジで必要最低限の会話のみって感じだな。セリフの全てに三点リーダが付いている気がする。原作ではもう少し喋っていた気がしたんだけど……こんなんだったっけ?

 

初のAチームマスターとのコンタクトがいきなり失敗しそうだった。やっぱ人選ミスったか……?

 

だが、彼女を選んだ理由がある。ここで諦める訳にはいかない。

 

「よろしくヒナコ。僕のことは気軽にエドとでも呼んでくれ」

 

「…………そう」

 

「いやー、ここに来てからまだそんなに経ってなくてさ。友達とかまだ出来てないんだよ。ヒナコが居てくれて良かった良かった」

 

「ちょっと、勝手に友達ってことにしないで」

 

「実はさ、僕ちょっとだけ日本に住んでた時期あったんだよ。日本人が居て安心っていうか。ヒナコは日本のどこ出身?」

 

彼女の話しかけんなオーラとめんどくせえオーラをガン無視して話しかけていく。強引すぎるか?僕だったらこれやられたらムカつく。

 

「ん。それってさ、漢字ばっかだから日本語の本かと思ったけど。もしかして漢文?ヒナコって漢文読めるの?」

 

ふと、彼女の持つ本が目に入った。それは小説ではなく文献といった感じだ。

 

「……まあ、そうね」

 

「僕も日本でちょっとだけ習ったことあるぜ。それアレでしょ?四面楚歌の語源になったやつ。何だったっけ?」

 

古い記憶を呼び起こす。いかんせん前世の中学校時代に習ったものだ。なかなか思い出せない。

 

「…………垓下の歌」

 

僕が一人でうんうん唸っていると、ヒナコがぽつりと呟いた。

 

「あっ!それそれ!えーと、あれだよ。虞や虞や汝を奈何せん。ってやつ」

 

「………………」

 

「懐かしいなぁ。なんかこの部分だけ覚えてんだよな。当時めっちゃ疑問に思ってたから」

 

「疑問……?」

 

すると、ヒナコがようやくこちらを見た。少し雰囲気が和らいだ気がする。どうしたんだろ、急に。もしかして僕が日本の話をしたからか?まあ故郷の話で気分を悪くする人も少ないか。

 

「いやさ、項羽ってなんちゃらの覇王とか名乗って人殺しまくってたんだろ?殺戮やら虐殺やら。なのにこの時だけ妙に人間臭いっていうか……なんか違和感があったんだよ。今までの項羽の人物像と違いすぎるっていうか…………。なんだろ、虞のことを本当に想っていなければこんなセリフ絶対に出てこないと思うんだ」

 

「っ…………!」

 

「まあ、僕は誰かを本気で愛したことなんてないから分かんないけど、何かを感じたんだよ」

 

「…………そう」

 

僕が話し終えると、彼女は一言だけ呟いた。しかし、それはさっきまでの素っ気ない返事とは少しだけ違う気がした。

 

…………この雰囲気なら大丈夫か?

 

「なあ」

 

「……何?」

 

「ヒナコはさ、何がそんなに怖いんだ?」

 

「っ!」

 

ほんの少し、ヒナコは目を見開く。その表情は どうして、と言っているように見えた。

 

「いや、なんというか。常に周りを警戒して観察してるっていうか……一言で言うなら見すぎだ見すぎ。他の奴はともかく僕はすぐ視線に気づいたぞ」

 

「……………………」

 

「何をそこまで警戒してんのか分からんけど、なんかあるのか?」

 

僕は、ヒナコのことを知らない。今日まで話したこともなかったし、原作も2章までしかプレイしていないから。前世の知識なんかも彼女には使えない。

 

彼女の視線には敵意が、憎悪があった。だが、それだけなら放っておいただろう。だからと言って直感的に彼女の強さが分かったから話しかけた訳でもない。

 

彼女は————恐れているのだ。強大な力を持ちながら。そして、どこか諦めている。それが————気に入らない。

 

敵側とはいえヒロイン候補だぞ。いつまでもそんなんじゃ困るってもんだ。ヒロインってのは可愛くてなんぼだろ。

 

「私は…………人間が憎い」

 

今までで、一番の感情を込めて、彼女が言う。

 

「あなたは……人間?」

 

「え?」

 

随分と真面目な顔で訳の分からない質問をされたので気の抜けた声が出てしまった。なに、どしたの急に。

 

「人間は、私を排除しようとする。私に敵意を向ける。私が存在することを拒む。あの人にも…………」

 

ヒナコは諦めたような顔で、憎悪のこもった顔で、燃えるような目で語る。そこには大人しめな少女の姿などなく、()()()が彼女の素なのだと、そう感じられた。

 

「……まあ、人ってのは自分と違うものを嫌い、畏れ、排除しようとするもんだ。自分より強大なものが怖いから」

 

それはどうしようもない。やめろ、と言ったところでこれは個人の問題ではないのだ。大勢が集まる人間という集団だからこそ起きること。なくすことはできない。

 

…………ただ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えが硬い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

キョトンとした顔でヒナコがこちらを見る。まったく、何なんだこいつは!

 

「例えば!明るく元気な田中さんが居たとして!そしたら全国の田中さんは明るく元気なのか!?」

 

「ちょ、え。何の話……?」

 

「否!そうじゃないだろ!暗くてシャイな田中さんもいれば綺麗な田中さんもカッコいい田中さんも可愛い田中さんもいる!それが人ってもんだ!」

 

「………………」

 

「確かにお前が今まで見てきた人間はそうだったのかもな。でもな、全部が全部そうだとは限らないんだよ。嫌いな奴がいたっていい。嫌いな奴ばっかりでもいい。嫌いな奴しかいなくてもいい。でもな、人間そのものを嫌いになっちゃダメだ。まだお前が見てない、接してないもんに勝手に評価下してんじゃねえよ」

 

「そんなの、綺麗事じゃ…………‼︎」

 

「少なくとも僕は違う!」

 

「……!」

 

彼女の目を、見据える。

 

「別に好きになれとも言ってねえよ。嫌うのをやめろとも。ただ知りもしないもんを勝手に決めつけてるんじゃねえよって言ってるんだ。そうやって人間そのものを嫌って、憎んで、警戒してたら疲れるだろ?色々と。だからお前はそんな諦めたみたいな顔してるんだろ」

 

ヒナコに何があったかは、知らない。

 

でも、知らないからこそ言えることってのもある。

 

「上手く付き合っていけよ。嫌い続けるってのもエネルギー使うぜ?テキトーで良いんだよテキトーで。なんか目標があるからカルデアにいるんだろ?だったらそれにエネルギー使え。余計なこと悩んでるよりよっぽどマシだよ」

 

「でも、私は…………」

 

「だから好きにならなくてもいいんだって。ただ嫌いかどうかは接して、知ってから決めるんだ。愛想よくしなくたっていい。適当に気楽にやっとけ。僕みたいにな」

 

 

 

「…………そうね。私には、目標がある。何をもってしても叶えたい願いが」

 

 

 

彼女は一呼吸おいて、口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに、エドワードみたいなのもいるって、わかったし……」

 

その頰は赤らんでいて、目線は僕ではないどこかに向けられている。あらやだ、初心で可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………もしかしたら、違うかもな」

 

「?何の話をしているの」

 

「最初の質問。もしかしたら違うかもなって」

 

「ああ。それは……どうして?」

 

どうして————か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それはもはや人間じゃなく……()()()()()()()()()()()なのかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エドワード、貴方いったい…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやごめん。カッコつけたくてテキトーなこと言った。僕も人間とは違う部分あるぜアピールしとけば好感度上がるかなと思って」

 

でも転生って大体が神のせいだし。ワンチャンあるんじゃね。知らんけど。

 

「はぁ…………。なんだかエドワードを見てると色々バカらしくなってきたわ」

 

「ん、何かそれ今後たくさん言われそうな予感」

 

「ふふっ。……なにそれ」

 

「まあ、僕もAチーム入ることになったから。今後よろしく」

 

「そうなの?じゃあ、よろしく」

 

そう言って、笑う彼女は。

 

自分で美人を名乗っても、名前に美人が入っていても、大丈夫なくらい綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「……どしたの急に。こんな時間に通信なんて。くっそ眠いんだけど」

 

『エドワード、報告があるわ。実はさっき始皇帝のところから帰る途中で項羽様と会って—————』

 

「ほーん」

 

『そしたら項羽様が————』

 

「なるほどなるほど」

 

『次に項羽様に————』

 

「おいおいマジかよ……」

 

『なんと項羽様の————』

 

「そいつぁあすげえや」

 

『今度は項羽様を————』

 

「で、蘭陵王いる?簡潔に言うと何があったの?」

 

『はい。マスターが項羽殿とすれ違い、その際に二、三言葉を交わしておられました』

 

「それをよくこんな長いストーリーにできるな…………」

 

『聴いてる?エドワード。そしたら項羽様が瞼を閉じ瞬きなさったのだけど、その次に呼吸をなさって————』

 

「え、そこまで聞かなきゃなの?今何時かわかってる?これ朝まで付き合わなきゃなの?」

 

『エドワード殿。御武運を』

 

蘭陵王の言葉がいやによく聞こえてきた。どうやら恋する乙女ってのはとてつもない生き物らしい。イケメンゆえの経験からくる同情が多分に含まれた声だった。

 

 

 

 

 




虞美人欲しくて回したら始皇帝きました。嬉しいけど……!お前じゃないんだよ……!

もちろん自分はヒナコが真祖もどきで人間嫌いだということは初めからわかっていましたよ?当然です。うん。あんなに人間恨んでることも分かった上で会話させてましたよ?



前の話と矛盾しないように書くの大変だった……!まあこれも二次創作の良さということで。


急いで書いたので地の文とか付け足して修正するかもです。


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彼らのプロローグ


遂にストーリーの本筋へ……!

原作が3章までしかないので本筋はあまり進まないでしょうが、気長にお待ちください。

ではどうぞ。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようカドック。覚悟はできてるか?」

 

『覚悟だって?別に僕は何もしないさ。彼女と、その兵隊たちに任せてある。それでも十分に達成できる任務だしな』

 

「ま、そりゃそうだな」

 

カルデア。

 

主人公である藤丸立香の拠点であり、僕らが出会い、共に過ごした場所。

 

今からそこに、僕たちクリプターは攻撃を仕掛ける。完全にカルデアの機能を停止させるために。レイシフトという可能性を潰すために。

 

カルデアの中には既にコヤンスカヤや言峰綺礼などこちら側のメンバーが送り込まれている。後はカドックのサーヴァントである皇女様とその兵隊であるオプリチニキが突入するのを待つだけだ。

 

……というか。仮にも思い出の残る場所を壊すというのに通信しているのは僕とカドックとキリシュタリアだけだ。みんな薄情。

 

カドックは皇女様のマスターとして。キリシュタリアは人類への宣戦布告をするために状況を把握しているのだが、僕は第2部の開始を見届けるためだ。テキトーな理由をつけて通信している。

 

『……さて、そろそろだな』

 

先程まで黙っていたキリシュタリアが言葉を発する。

 

異星の神による、地球への侵攻が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り、何も知らないカルデアでは——————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——と、まあ。以上がAチームマスター7人の大雑把な情報だよ。みんな一癖も二癖もありそうだろう?」

 

とある一室。カルデアに対する査問会が行われている現在、廊下で会ったコヤンスカヤの言葉によりAチームマスターのことが気になったオレは、マシュとダ・ヴィンチちゃんの2人に彼らの話を聞いていた。

 

「……なるほど。それがAチームの————って、7人?Aチームって8人じゃなかったっけ?」

 

「あ、先輩。それは…………」

 

疑問に思いダ・ヴィンチちゃんへ確認すると、マシュが少し焦ったように口を開く。どうしたんだろう?

 

「そう!よく聞いてくれたね!最後の1人はエドワード・エヴァンズ。まあ彼もまた癖の強い人物なんだが……そんなことはどうでもいいんだ!」

 

ずずいっと、ダ・ヴィンチちゃんが目を輝かせ、興奮した様子で近づいてくる。息も荒くなっているような。

 

「特筆すべきはその肉体だよ!たしかに顔も美しいんだが、まあ頑張って探せば見つかるレベルだ。でも、身体は違う!あそこまで完璧な肉体なんて生前でも私は見たことない!今のこの姿は『私が理想の美とする女性』なんだが、もし男性の姿を選ぶのなら彼にしても良いと思うくらいさ。あの均整の取れた四肢にしなやかな筋肉。そしてそれに伴った最高の機能。まさに神が創ったとしか思えない肉体さ!」

 

おっと、何か変なスイッチを押してしまったらしい。困ったような顔でマシュを見ると彼女もオレと同じような表情をしていた。

 

「そ、その……ダ・ヴィンチちゃんは以前からエドワードさんの身体に興味津々でして…………。度々ダ・ヴィンチちゃんが逃げるエドワードさんに解析させてくれ、と迫る姿が目撃されています」

 

「へ、へー。そうなんだ……」

 

チラリと横を見るとダ・ヴィンチちゃんは未だに何か話している。これはしばらくめんどくさそうだな。マシュに聞こう。

 

「その、マシュから見た彼はどうだったの?」

 

すると、彼女は少し考えるように斜め上を見る。

 

「そうですね……。少し説明が難しいのですが、不思議な方でした。不真面目で遅刻も多かったのですが、憎めないといいますか。デイビットさんやヒナコさんといったようなあまり他人と接しない方とも距離を縮めることができる人物でした。そういった意味では少し先輩と似ているかもしれませんね」

 

「オレと?」

 

「あ、いえ。性格は全く違うのですが、どことなく共通点があるというだけです。とにかく、説明の難しい不思議な方でした」

 

マシュがここまで説明に困るというのは一体どんな人なんだろう。ダ・ヴィンチちゃんの言う通り癖が強そうだ。

 

こうして、オレは今更になって彼らの話を聞いた。もともと人理を修復する予定だった、オレの先輩たちの話を。

 

今まで、カルデアにマスターは1人だった。みんな優しくて未熟なオレをとても支えてくれていたが、それでも同じ立場でしかわからない何かがある。

 

そんな、マスター同士という立場で話すことを楽しみにしていたオレには、この後起きることなんて全くもって予想できていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だに、みんな混乱している。

 

一体、何が起きたのか。そんなことを考える余裕もなく、カルデアは崩壊した。

 

突如攻めてきた黒い猟兵。凍らされたスタッフ。ダ・ヴィンチちゃんの死————と思いきや小さいダ・ヴィンチちゃんの登場。シャドウ・ボーダーにホームズと聞きたいことだらけだ。

 

なのに、またしても理解できない事が起きる。畳み掛けるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……通達する。我々は、全人類に通達する』

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、どこからか通信が入る。

 

『この惑星はこれより、古く新しい世界に生まれ変わる』

 

何を言っているのか、さっぱりわからない。

 

『空想の根は落ちた。創造の樹は地に満ちた』

 

叛逆?神々の時代?何のことなんだ?

 

『私の名はヴォーダイム。キリシュタリア・ヴォーダイム』

 

汎人類史の終了?キリシュタリア————ヴォーダイムだって?

 

『8人のクリプターを代表して、君たちカルデアの生き残りに————いや、今や旧人類、最後の数名になった君たちに通達する。————この惑星の歴史は、我々が引き継ごう』

 

「……キリシュタリアさん?たしかに今の声はキリシュタリアさんで————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ン、ンンっ。今のでどうだろうか、2人とも』

 

『いやめっちゃ良かった。威圧感とかヤバイぜ』

 

『……たしかに、今のはラスボス感あったな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………へ?」

 

訳が分からず、つい気の抜けた声が出てしまう。え?なにこれ?

 

『そもそも、練習など必要だっただろうか。宣戦布告などにそんなことしなくとも——』

 

『いやいや、お前それで本番で噛んだらどうすんだよ。めちゃんこ恥ずいぞ』

 

『ああ。それに僕たちも協力して原稿を作ったんだ。ぶっつけ本番で失敗されても困る』

 

『……それもそうだな。感謝する、エドワード。カドック』

 

『いや、それほどのことでもないぜ。……ところで、これっていつやるんだったっけ?』

 

『忘れたのか?種子が降る時に通信を繋げるんだよ。その方が雰囲気出るだろ?』

 

『そうだったそうだった。にしても、さすが神話オタク。演出をわかってるな』

 

『神話オタクは関係あるのだろうか』

 

「……えーと、これは…………。キリシュタリアさんにエドワードさん。それにカドックさんの声ですね…………」

 

誰もが口を開かない静寂の中、マシュが言葉を発する。あ、そうなんだ。こんな声なんだね。

 

『……ん?なあ、キリシュタリア、エド。これ、もう起動してないか?』

 

『え、マジ?やば——————』

 

突然、ブチッという音と共に通信が途切れる。あ、気づいた?

 

「……ん?待て、何だあれ……?」

 

すると。カルデアから脱出した、たった8人のスタッフのうちの1人が何かに気づく。

 

「あれは———隕石?」

 

ソラから、光輝く()()が降ってきた。

 

それはいくつもあって、真っ直ぐに地上に向かって落ちてきている。

 

…………うーん。何というか、素直に驚けない。隕石っていうか、何かっていうか、種子だよね。そう言ってたの聞こえたし。

 

ぼーっとしてその降ってくる種子を見ていると、再び通信が繋がる。

 

『降ってきた降ってきた!急げキリシュタリア!』

 

『あまり急かさないでくれると助かる。噛むかもしれないだろう?』

 

『……そろそろやるから黙れエド。準備はいいか?キリシュタリア。————3、2、1……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……通達する。我々は、全人類に通達する』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、またやるんかい!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレの渾身のツッコミが、シャドウ・ボーダーの中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みんながひと仕事終えた後、僕は自らの異聞帯(ロストベルト)で今日のことを振り返っていた。

 

「いやー、なんとか原作通りに進むのを見届けることができたなあ。なんか途中で通信トラブルがあったけど、まあ聞こえてないだろ。セーフセーフ」

 

あの始めて見た時の絶望感や衝撃を上手いこと演出できたはずだ。なんせ天才キリシュタリアと努力家カドック、それに前世知識持ちの僕が協力し合ったんだから。

 

「————にしても、カルデアのスタッフを何人も殺しちゃったのは申し訳ないなあ」

 

ゴルドルフ所長の雇った警備員は別にいいのだが、カルデアスタッフには少しだけ申し訳なさが残る。死のうがどうでもいいと思ってたんだけどなー。まあ僕もカルデアで過ごした日々があったし。そんなもんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからさ、ホントにすまん!あの皇女様張り切っちゃって凍らせまくってたからさ。オプリチニキどもも容赦ないし……。怖い思いをしただろ?」

 

「————なんで……?私たち、死んだ筈じゃ…………」

 

「あー、いやさ。死んだは死んだぜ。ただ、思ったより後味悪かったからさ。こっそり僕が動いてるっていうか……。可愛い娘もいたしひと肌脱いでやろうとね。まったく、下手すりゃ裏切り認定されるぞこれ」

 

まあ、異星の神の目を誤魔化すなんてことは常にやってるんだ。今更このぐらい大したことないだろ。……こうやって人の罪は大きくなっていくんですね…………。

 

「ま、ともかく安心してくれ。悪いようにはしないさ」

 

何て言えばいいのか。暗躍するのも転生者の特権だろう。

 

「さて、こっから忙しくなりそうだぞ…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて言ったが、ぶっちゃけ暇である。いや、やることはあるんだけどね?忙しいのに暇だなあ、なんて大学生みたいなことを思いながら日々過ごしております。

 

たまに来るオフェリアからの通信に応じたり、ちょくちょく来るヒナコの惚気話に付き合ったり、キリシュタリアやカドックと雑談したり、クリプターの会議に遅刻したり、僕の異聞帯(ロストベルト)に来るコヤンスカヤを口説いたりと、そんな感じですわ。

 

「んー、そろそろ気になるなあ。いしちゃんのとこでも行こ」

 

石凝姥命(イシコリドメノミコト)、通称いしちゃん。あの八咫鏡(ヤタノカガミ)を造った女神様である。

 

「よっすいしちゃん。という訳で八咫鏡出してくれる?」

 

「……どういう訳かわかんないけど、い、良いよ……」

 

そう言って、彼女は自身の宝具としての『八咫鏡』を出現させる。これは謂わばコピーだ。オリジナルの八咫鏡は、アマテラス自身の象徴として祀られた逸話から太陽の権能を一部使えるが、コピーにはそれがない。と言っても、鏡として持っている機能を最高の状態で使用できる宝具なのだが。

 

「ありがと、いしちゃん!流石だぜ!」

 

「あ、あまり近づかないで…………勘違いしちゃうから……!」

 

僕がお礼を言うといしちゃんは頰を赤らめながら離れる。相変わらず男に耐性がないというか……。全然違うけど雰囲気だけで言えばもこっちとか刑部姫(おさかべひめ)みたいだ。喪女っていうか。

 

まあ、ともかく。せっかく出してくれたので早速使用していこう。

 

「ロシアの————異聞帯(ロストベルト)の様子を映してくれ」

 

八咫鏡は、鏡としての機能を最大限発揮できる。例えば、『何かを映す』だとか、『何かを反射させる』など。それが、石凝姥命の宝具としての八咫鏡の能力。これで第2部の1章がどのように進むのか観察するのだ。

 

ただ、この鏡は使用者のイメージが固まっていないとそれを映すことができない。つまりは僕の知らない異聞帯(ロストベルト)を見るには、クリプターをイメージしてその周囲を映して、というのを繰り返して見れる範囲を広げていくしかないのだ。超めんどくさい。

 

なのでプレイしていない3章以降の異聞帯(ロストベルト)は地道に見るしかない。今はヒナコに協力してもらい中国の見れる範囲を広げているところだ。

 

別に勝手にヒナコを映せばいいのだが一応女の子だし。許可は取らないとな。

 

問題はベリルとデイビットがメインの6章と7章だなあ。あいつら絶対めんどくさがって協力してくれねえ。ベリルはもしかしたら協力してくれるかもだが、あいつが見せたがるものなんてロクなものじゃないだろうし。まあ男だしあの2人は勝手に覗けばいいか。

 

こうして、僕はロシアの異聞帯(ロストベルト)の行く末を遠くから見守ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ、うっ、パツシィ……!アナスタシア……!」

 

いやー、マジ感動。これこそ原作キャラの持つ意志の強さだな。イヴァン雷帝も最後までかっけえ。

 

 

 

 

 

 

 

……カドックとアナスタシア。それにヤガも。

 

ロシアの結末には思うところはある。それでも僕は見るだけで何もしなかった。原作の流れも大事だし、下手に動くと何が変わるか分からないから。

 

————だが、一番は。

 

異聞帯(ロストベルト)に生きる者たちの、異聞帯(ロストベルト)を消滅させ進むカルデアの、そしてカドックたちの。

 

その意志を、無駄にしたくなかった。

 

僕なんかが、手を出していいものだとは、思えなかった。

 

「次は北欧、か」

 

…………そこで、オフェリアは死ぬ。自らの眼を捨て、大令呪(シリウスライト)を使い、意志を。覚悟を示して。

 

「————さて、どうすっかね……」

 

僕にも、決断の刻が迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 





原作のシリアスシーンをシリアル()にしてしまっている罪悪感。まあこの作品はこんな感じです。

それを許せる方は今後ともお願いします。


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大切なのは身体の大きさではなく女心を理解しているかどうか その1


お待たせしました(土下座)


 

 

 

 

 

 

 

「え、なにこれ…………寒っ」

 

辺りは一面真っ白の雪景色(氷景色?)。視界は雪やら氷やらで埋め尽くされ、風と共に刺すような寒さが僕の体を襲っていた。

 

なんかあれだな。ロシアが極寒!ってイメージがあったせいで北欧はそんなにだと思ってたけど寒いな普通に。やべえわこれ。まじやべえ。

 

あ、でもあっちの方に見える炎はめっちゃ綺麗だ。いや蒼い炎とかかっこよすぎでしょ。なんだったか、あの炎と氷の間は暖かい地帯だっけ。なら行くしかねえよなぁ!

 

とまあ、ここまで状況を説明すれば分かるだろう。いや、大して説明してないか?まあいい。そう、僕は今北欧の異聞帯にいるのだ。いやー、さすが宇宙をゼロから創った神様。異聞帯を覆う嵐を越えるなんざ余裕ですね。余裕かは知らんけど。

 

だが過程はどうあれ出来たのならいい。偶にはこっちのお願いも聞いてもらわないと割に合わないってもんだ。

 

ちなみに何故ここに来たのか、なんてのはわざわざ言うまでもないとは思うが、一応説明するとオフェリアを助けるためだ。以上。

 

…………いや、実際目的なんてそれだけなんだよな。原作のストーリーやら登場人物の決意なんかを無駄にせず尊重したい、って気持ちに変化がないのは事実だ。ただ。

 

そう、ただ僕は。不器用で、真面目で、寂しがり屋で、責任感が強くて、面倒見が良くて、そして恋する一人の女の子である彼女に。

 

生きていて欲しいだけなんだ。

 

たったそれだけで、僕にとっては十分な理由だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨人王スルト。

 

星を燃やし尽くし、世界を終わらせる存在。

 

北欧の異聞帯においてあらゆる神々を殺し、3000年もの間封印されていた終末装置。

 

フェンリルを喰らったことで氷をも自らの力とし、更には空想樹を取り込み霊基を拡張させた彼は、まさしくこの世界に終末をもたらす者であった。

 

しかし、そんな圧倒的なスルトの前に立ちはだかる者達がいた。

 

彼らは今までいくつもの逆境を乗り越え、覆してきた存在。この世界において勝利を約束された『主人公』。

 

決して諦めず現実に立ち向かうその姿はあらゆる英霊を惹き付け、孤立した戦況を何度も変えてきた。事実、今カルデアの隣には敵であったはずの存在が並び立っている。

 

王であるスカサハ=スカディを筆頭とした異聞帯のサーヴァント。クリプターであるオフェリア・ファムルソローネ。カルデア────藤丸立香、マシュ・キリエライトを中心とする────と敵であった彼女たちは今では共闘しているのだ。スルトというより大きな共通の脅威を前に。

 

だが、そんな彼らも一切の犠牲を払わずに進んできた訳ではない。ここまでの道のりには多くの助けと犠牲があった。今回の異聞帯でもそれは変わらない。

 

「ナポレオン…………」

 

先程まで男が立っていた場所を見つめ、藤丸立香は呟く。

 

可能性の男。人々の願いを叶える者。愛する人の為に命を懸けたナポレオンは、自らの霊基を犠牲にオフェリアの呪いを解き、スルトにダメージを与えた。

 

その宝具は、大砲の軌跡は確かに人の心に残り、『希望』を与えた。英霊も反英霊も生まれないこの世界で。

 

だからこそ、それを見た彼女は動ける。誰かのために。

 

「魔眼と、魔術回路の接続を……解除!魔眼は……力を失い……!要石としての機能も、同時に、消え失せる!」

 

オフェリア・ファムルソローネの魔眼はスルトをこの世に繋ぎ止める要石の役割を果たしている。故に魔眼を破壊さえすればスルトとの契約は破棄され、スルトはこの世界に留まる術を失うのだ。

 

だが、魔眼は脳に強く結びつく。慎重な処置もなく破壊すれば溢れる魔力が彼女の脳を襲うだろう。

 

それでも、彼女は止めなかった。激しい痛みも、恐怖も、止まる理由にはならなかった。

 

「オフェリアさん、もういい!」

 

「まだ、まだよ!更に────」

 

藤丸立香の制止さえ振り切り。

 

「シグルド!真なる大英雄、北欧のシグルド!お願い…………!力を貸して!ただの一度きりで構わない!あれを……!(スルト)を!切り裂いて!」

 

彼女は己のサーヴァントに命令する。クリプターに与えられた()()()()()によって。

 

「輝け、輝け、輝け!私の…………!」

 

大令呪(シリウスライト)。異星の神によって与えられた、通常の令呪の効果を遥かに上回るクリプターにとっての切り札。まさに絶大な魔力を持ったジョーカーだ。

 

しかし、その代償は使用者の命と重く、大令呪を使えばどのような手を施しても死は免れられない。

 

つまり彼女、オフェリア・ファムルソローネは────────。

 

 

 

 

 

 

────────そう、私はここで死ぬ。

 

大令呪を使えばその運命は避けられない。そういう結果だ。

 

彼を、スルトを倒すためにはこれ以外に方法はない。それにこれは私の引き起こした問題だ。自分の失敗は自分で責任を取る。それが私のやるべきこと。

 

大切な友達のため。大事な後輩のため。私に虹を見せてくれたあの英雄のため。キリシュタリア様のため。そして────────。

 

そして。

 

────ああ、こんなことなら言っておけば良かった。彼は結局最後まで、私がキリシュタリア様に恋をしていると勘違いしていた。

 

…………彼は私のことを知ったらどう思うのだろう。哀しんでくれるのだろうか、泣いてくれるのだろうか。そんな不安が過ぎる。いや、きっと彼は優しいから私のために涙を流すだろう。

 

ただ、それはきっと友を失った哀しみだろう。彼にとって私はただの────。

 

…………今更になって後悔が、思い出が溢れてくる。全く、この期に及んで思い出すのは彼の顔ばかり。自分でも呆れてしまう。いつからこんな風になってしまったのか。

 

────────わかってる。彼と出会って、彼と話すようになって、そこからだ。全て彼のせいで変わってしまった。でも、その変化は嫌じゃなくて。私にとってとても暖かくて。

 

「此処に輝け、私の────大令呪(シリウスライト)────!」

 

改めて実感する。やはり、私は。

 

彼、エドワード・エヴァンズのことが好きなのだ。恋をしているのだ。

 

もう会えないけれど、それでもやっぱり。会いたいと、彼にこの気持ちを伝えたいと、そう思ってしまう。でも、それはもう叶わないことだから。だから私は、決意を込めて────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは使わなくていい。オフェリア」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────え?」

 

 

 

私の手に、誰かの手が添えられる。その大きな手は優しく私の手を包み込み、そっと下ろさせた。

 

「どうして、ここに…………」

 

思わず疑問が溢れる。だって、だって彼は。居るはずがないのに。来れるはずがないのに。

 

「どうしてって、なあ?そりゃあ────────」

 

そして、彼────エドワード・エヴァンズは柔らかい笑みを浮かべ、私の頭にそっと手を乗せると、一歩ずつスルトに踏み出していった。

 

 

 

 

「助けに来た。それだけさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああぁぁぁああああああああア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ああああああああぁぁぁアアアあああああああ!!!恥ずかしいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!

 

なーにが『助けに来た。それだけさ』だよ!散々どうするか迷って助けに来るの遅れた挙句「みんなカッコイイから僕もカッコよく決めよう」とか何考えてんだ僕!マジでなんなんだ!

 

やばい、めっちゃ恥ずかしい。周りの視線もやばいし。精神もやばい。さっきからやばいしか言ってねえな。

 

ちらっとオフェリアを見る。どうやら彼女はあまり引いていないようだ。良かった…………純粋な娘で。

 

しかし、今気づいたが彼女の右目からは魔眼を破壊した影響か、血が流れていた。

 

…………ほんと何やってんだ僕。悩んで時間潰したせいで彼女に痛い思いをさせてしまった。大令呪を使わなくても無理に魔眼を壊したら命に危険はあるのだ。さっさと治さなければ。

 

と、いうわけで。

 

「お前みたいなデカいだけのストーカーに時間かけてる暇はねえってことだな」

 

先程からこちらを睨みつけている(?)スルトに向けて吐き捨てる。なんだ、急に知らん奴出てきてイラついてんのか?

 

『ヒトか…………。知っているぞ、エドワード・エヴァンズ。忌々しい……………………』

 

何故だか知らんが名前を知られていた。巨人王に認識してもらえるとは光栄な限りだ。最初からヘイトマックスだが。え、なんかしたっけ?僕。

 

『貴様をオフェリアの中で見た。オフェリアの貴様に対する想いを見た。貴様は特別だ。世界を燃やし尽くすとき、貴様は俺の手で殺すと決めていた。ヒト如きが俺の前に現れたことを後悔するがいい!』

 

そう叫ぶとスルトは自らの宝具を大きく振りかぶる。

 

『塵すら残さず消し飛べ!』

 

そして、限界まで引き絞られた腕は爆発的なスピードで振り下ろされた。

 

僕という個人に向けられるには余りに大きな攻撃。サーヴァントとなった今でも人間を殺すには有り余る力が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、轟音が轟く。

 

「────────そんな、嘘…………」

 

信じ難い光景に意図せず声が零れる。有り得ない、どうして────────。

 

強大な一撃は空気を震わせ、その衝撃は簡単に彼を吹き飛ばし、たったそれだけで彼は宙に舞った。

 

四肢は裂け、身体の至る所に傷が走る。これまでのことが嘘だったかのように、あまりにもあっけなく彼の身体が崩れていく。

 

 

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

衝撃で氷雪が舞い風が吹き荒れる。とてつもない風圧が周囲を襲う中、そんな状況でも彼は。エドワード・エヴァンズは。

 

「オフェリアにセクハラした罰だ。図体がでけえだけの童貞ストーカーが調子乗んなよ」

 

私が憧れた彼は、堂々とした目で()()()()()()()を見据えていた。

 

 

 

 

 

 





先に言っておきますとエドワードはそんなに強くないです。サーヴァントなんかには流石に負けます。スルトなら尚更です。


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大切なのは身体の大きさではなく女心を理解しているかどうか その2

恐ろしく速い更新
オレでなきゃ見逃しちゃうね


 

 

 

 

 

 

 

スルトは状況を理解できなかった。何故自分が飛ばされたのか、何故自分が倒れヒトが立っているのか。何故、倒れてもなお圧倒的に巨大なはずの自分が、ヒト如きに。

 

()()()()()()()()()()

 

『オ、オオオォオオおおおおおオオオ!!』

 

激昂。スルトの頭の中は激しい怒り、それのみに支配されていた。

 

忌々しい、オフェリアに纒わり付く蟲が俺を見下すだと!?

 

それはナポレオンに対する苛立ちなど及ばないほどの怒り。その叫びは大気を震わせた。

 

「な……、信じられないスピードで再生してる!もう動き出すなんて!」

 

『どうやら膨大な魔力を全て再生に回しているらしい。すぐに立ち上がってくるぞ。どうする?ミスター・エヴァンズ』

 

カルデアのマスター、藤丸立香の言葉に反応したのはかの名探偵、シャーロック・ホームズ。レオナルド・ダ・ヴィンチと並ぶシャドウボーダーの頭脳だ。

 

「ふん。勘違いするなよ、ルーラー。俺は決してお前達の仲間になったつもりはない。オフェリアを助ける過程でお前達と同じ相手を敵としただけだ。精々私の邪魔はしないことだな」

 

それに応えるのはクリプターの一員であり、この場において最も異質な存在であるエドワード・エヴァンズ。シャーロック・ホームズはその会話で彼の真意を読み取ろうとしていた。そしてそれは彼に限った話ではなく、この場の大多数が突如現れた人物に警戒の念を抱いていた。

 

「いや、貴方普段はそんな話し方しないじゃない」

 

「それに一人称も俺なのか私なのかはっきりしませんね」

 

ほんの一部を除いて。

 

………………オフェリアはともかく、マシュもなかなか言うようになったじゃないか。成長かなこれも。はい、違いますね。

 

いや、だってねえ。僕の目指す理想はベ〇ータだぞ。そう簡単にデレるとは思わないでほしい。あくまでも最初は「俺はアイツを信用した訳ではないからな」とかサブキャラに言われつつ共闘するキャラである。

 

という訳で。

 

「別に仲間になったわけじゃないからな!取り敢えずスルトを倒すまで協力するだけだからな!」

 

よし、ここまでしっかり釘を刺せば変な勘違いはされないだろう。何故か向けられる視線が少し変な気もするが気のせいだ。多分。

 

なんて、そこから藤丸立香くんとお互い自己紹介をしていたらいつの間にかスルトが立ち上がっていた。

 

『巫山戯るな……!エドワード・エヴァンズ、貴様だけは!』

 

「随分恨まれてますね、何かしたの?」

 

「うーん、何も。強いて言えばさっき殴り飛ばしたくらい?」

 

「そう言えばどうやったの?あれ」

 

「めっちゃたくさんの神様の力で殴った」

 

「え、そんなのあるんですか?」

 

「あるっていうか借りたって感じ?譲ってもらった?的な?」

 

「へぇ、凄いですね!それ」

 

「だろ?実は凄いんだよ僕」

 

「あの、すいません、マスター!エドワードさん!お話している場合ではないかと思うのですが!」

 

「あ、ごめんマシュ」

 

「いやー、マシュも随分元気になったなあ」

 

「エドワードさん!そろそろ真面目になってください!怒りますよ!」

 

「もう怒ってるじゃん…………」

 

年下に怒られた…………。ちょっとヘコむ。特にオフェリアのなんかよくわからん生暖かい視線がむず痒い。どういう視線?それ。

 

ま、確かにそろそろ真面目にやんないとな。正直あのデカブツにはかなりムカついているので本気でいかせてもらおう。

 

「じゃあ早速。スルトを倒すにはここの皆、特にシグルドの協力が不可欠だ。敵同士ではあるけど一旦信じてもらいたい。今だけでいいからさ」

 

「…………しかし」

 

「お願い、シグルド。彼のことは私が保証するわ。だから、今だけでも彼に協力してあげて」

 

「……了解した。マスターの言葉を信じよう」

 

最初は困惑していたシグルドもオフェリアの説得によりなんとかなったようだ。よし、これなら。

 

「まずシグルドには僕のありったけの魔力を()()()()。他のサーヴァントたちにはとにかく防御をお願いしたい。攻撃は僕とシグルド、あと僕のサーヴァントでやる」

 

「貴方のサーヴァントって…………」

 

「ああ、出番だぜ。セイバー」

 

そう告げた瞬間、僕の隣にサーヴァントが現れる。共に多くの試練(という名の神様の暇つぶし)を乗り越えた相棒、スサノオ。

 

いや、マジで絆深まったよ。多分絆レベル8くらいある。そろそろ9になる8。ゲージは割と溜まってるのに数値見たらあと16万とかそんな感じ。

 

「ようやく出番かよマスター、待ちくたびれたぜ」

 

宝具である剣を肩に乗せ、不敵な笑みを向けるスサノオ。準備は万端って訳か。

 

これで役者は揃った。

 

さあ、ここからが第2ラウンドだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………………………………』

 

「どうした?急に黙りこくって。やっとオフェリアのこと諦めたのか?」

 

『否。貴様だけは焼き尽くす。俺の炎はもはや誰だろうと止めることはできぬ。確実に、二度と。先刻のようなことは起きぬ。ここで貴様を────────殺す!!』

 

こちらが準備を進めている間、当然スルトも準備をしていた。自らの宝具を、全力を叩き込む準備を。

 

スルトが剣を掲げる。その剣は太陽の如く輝き、地上では決して存在し得ない温度を発していた。

 

『『太陽を超えて耀け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』!!』

 

繰り出されるは星が生み出した神造兵装。命あるものであれば神をも殺す終末装置。星を燃やし尽くす炎の剣が今、振り下ろされた。

 

「まあ当然、宝具を撃つよな。だからもう一度頼むぜ皆」

 

僕がそう呟くと横にあるサーヴァントが現れる。

 

「貴方のことを信用したわけじゃないけど、そんなこと言ってる場合でもないしね!お願い、バーサーカー!」

 

神霊を複合したハイ・サーヴァントにして疑似サーヴァントでもあるシトナイ。その依り代の縁を利用したバーサーカーの召喚だ。

 

鋼鉄の如き肉体を持つそのバーサーカーが、スルトの宝具を受け止めた。

 

更にはワルキューレ────オルトリンデによる白鳥礼装の補助。スカサハ=スカディによる神鉄の盾の多数同時顕現。ブリュンヒルデ、シグルドによるルーンの防御付与。スルトの宝具解放、その一度目と同じ状況が再び訪れていた。

 

────だが。

 

『無駄だ。二度目はない。この一撃は俺の怒りを、魔力を全て込めた。()()()()()()()()()()()()()()()

 

一度目とは異なる宝具の威力。まさしく巨人王の全力の一撃は絶大な破壊力を誇っていた。

 

「そう。────────一回目とは違う。()()()()()()

 

『────────ばかな、これは……!』

 

拮抗。炎の剣はこれ以上進まず、防御は決して崩れない。

 

「僕が魔力を流し込んでるんだ。とっておきの『貯金』まで使ってな。転生特典舐めんな」

 

『これは…………!スルトの宝具もそうだが、こちらの防御も魔力量が段違いだ!まさか、これを()()()()()()()()()()()()()!?────いやはや、前の私のデータで知ってはいたけど、本当に興味が尽きないね!』

 

ロリダ・ヴィンチちゃんが興奮しているが、今は抑えて欲しいものだ。そして、これで終わりじゃない。

 

「頼む、立香!マシュ!」

 

「ああ!皆頑張ってるんだ。俺だって見ているだけじゃない!マシュ、宝具を!」

 

「了解です、マスター!…………霊基外骨骼(オルテナウス)・出力最大、アマルガムゴート緊急展開!対閃光防御、ボーダー観測機器との同期、完了!宝具を開帳します!────『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!!」

 

マシュの宝具も加わり、剣の動きは完全に止まった。スルトの宝具はもう進まない。

 

「よし、思いっきりやれ!セイバー!」

 

僕がそう叫んだ瞬間、『待て』をされていた犬のようにスサノオが飛び出す。やっぱあいつ戦闘狂だろ。

 

「やっとだな。久しぶりに全力でいくぜ、踏ん張れよマスター。断ち切れ────────『草薙剣(クサナギノツルギ)』」

 

宝具、草薙剣による使用者の周囲半径3kmの強制切断。それを縦に振るえば。目視では高さを確認できないほどの巨人王だろうと。

 

「真っ二つだ」

 

真っ直ぐとスルトの身体に走った亀裂は止まることなく、やがて完全に両断した。

 

『ばかな、ばかな、ばかな!この俺が!ヒト如きに!英霊如きに!』

 

だが、両断されてもなおその再生能力によって傷を塞ごうとするスルト。しかし、そんな時間を与えてやる理由はない。

 

「あとは頼むぜ、二人とも」

 

「ええ────ありがとう、エドワード。……シグルド、今度こそ。あの巨人を────切り裂いて」

 

「了解した、マスター。魔剣起動、魔剣解放、魔剣完了。絶技用意。太陽の魔剣よ、その身で破壊を引き起こせ!────────『壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)』!」

 

そして、遂に。一筋の閃光がスルトを穿いた。

 

『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!オフェリアァアアアアアアア!!!何故だ!俺は!この俺が、ヒト如きに!エドワード・エヴァンズ!貴様如きに!!』

 

悪竜を滅ぼす一撃を受けてなお耐えるスルトに向かって、僕は地面を踏み抜いた。

 

「最後に二つ、教えといてやる」

 

僕はスルトの正面に舞う。遥か上空、巨人の顔の正面に。

 

「まず一つ、僕にはあらゆるもの────山や海、大気や風、自然全てに宿る八百万の神がついてる。与えられた加護なんかじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。一柱につき幾つも、あらゆる権能を。お前が相手してるのは()()()()()()()()()()

 

強く拳を握りしめ魔力を溜める。これで全て終わらせるために。

 

「そして二つ目だが────────」

 

限界まで引き絞られた腕を、全力で振り抜く。

 

「しつこい男は嫌われるぜ」

 

衝撃、轟音。そして爆風とともに、炎の巨人王は完全に消滅した。後には何も、残っていない。

 

「…………ったく。不器用すぎるよ、お前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳で、オフェリアは連れ去ります」

 

「「「えぇ!?」」」

 

皆ビックリしてる。そんなに驚くこと?

 

「よっ、と」

 

「え、きゃっ!ちょ、ちょっと!エドワード…………!」

 

周りが驚いている間にオフェリアを担ぐ。最初は肩に担ごうかと思ったが、それだとあまりにもあんまりなのでいわゆるお姫様抱っこだ。

 

「異聞帯やら空想樹やらはそっちでどうにでもしてくれ。僕が来ず、オフェリアが大令呪(シリウスライト)を使ってたらこの場に僕達はいなかったんだ。つまり今からどっか行っても大丈夫だろ?」

 

「ちょ、何その理論!オフェリアさんも何とか言ってよ!」

 

「────────ぇ?にゃに?」

 

「ダメだこの人!」

 

「元気だなあ立香は。ま、オフェリアの怪我も治さなきゃだし急ぐよ。じゃあな」

 

そう言って僕は自らの異聞帯に帰る。ルー〇ラ的な。何も伏せれてねえなこれだと。

 

「ホントにいなくなった!」

 

立香の声が最後に聞こえてきた気がするが、まあ今はどうでもいいだろう。さらば北欧、ゲッテルデメルング!(キメ顔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ん、ここ、は……?」

 

「お、目が覚めたか」

 

日本の異聞帯、高天原にて。僕のために与えられた部屋で眠っていたオフェリアが目を覚まし体を起こした。

 

「エドワード…………、私────────」

 

「目も、脳も治してもらった。これでもう心配はない。…………ただ、悪い。魔眼は元通りに出来なかった。僕が来るのが遅かったせいだ。ごめん」

 

そう、ここに来てすぐにオフェリアの怪我は治してもらったのだが、魔眼はどうにもならなかった。神様にもできないことはあるらしい。それを伝えるとオフェリアは静かに────そう、と一言呟いた。

 

「いえ。もう良いの。そんなことより────ありがとう。エドワード」

 

彼女も自分なりに考えがあるのだろう。魔眼のことは気にした様子もなく、柔らかい笑顔でお礼を言ってきた。

 

「────────そうか。なら、良かったよ」

 

この笑顔を守れて良かったと、心から思う。

 

「ところで、ここは何処なの?」

 

「ん?ああ。僕の担当してる異聞帯だよ。今は部屋、っていうか家?貰ってるからさ、そこに来てる」

 

「へぇ、ここが貴方の異聞帯…………って、部屋?」

 

「うん、僕の部屋」

 

「じゃあ、このベッドも?」

 

「うん。作ってもらった僕のベッド」

 

「そ、そうなの…………。そう、なるほど。そうなのね……」

 

急に枕をぎゅっと抱き寄せ顔をうずめるオフェリア。疲れててベッドとか久しぶりだったのかな?

 

「そういえば、その。良かったの?あんなことして」

 

「あんなこと?」

 

「私の異聞帯まで来て、カルデアと協力したことよ。貴方までキリシュタリア様や他の皆、異星の神にも目を付けられたかもしれないわ。最悪ここの空想樹や貴方の大令呪が奪われるかも────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、それならもう無いよ?てかバレてないし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────え?」

 

「ああ、言ってなかったけどオフェリアの大令呪も取っといたぜ。今オフェリアが持ってるのはただの巨大な魔力の塊。使っても死ぬことはないからいつでも使っていいよ」

 

「いえ、そのことはどうでも……よくはないけれども。貴方さっきなんて言ったの?()()()()()()()()()()?」

 

「うん。そっちでもあったでしょ、なんか変な種子が襲ってくること。あんなん起きたら嫌だし伐採した。スパッと」

 

「そ、そんなこと!だって空想樹がないと異聞帯の維持は────。それに、そんなことしたら異星の神にだって!」

 

「だから異聞帯の王たちで維持してるんだよ。それに魔術で監視の目は誤魔化してる。異星の神も他のクリプターもコヤンスカヤだってこの異聞帯の真の姿は誰も知らない。北欧での出来事もだ。今頃オフェリアは大令呪を使って死んだことにでもなってるんじゃないか?」

 

「…………………………!」

 

開いた口が塞がらないとはこのことを言うのだろうか。おーい、オフェリアさん?もしもし?

 

「エドワード…………貴方無茶苦茶だわ」

 

「前からそうだろ?」

 

僕は呆れるオフェリアにそう笑いかけた。二度目の人生ではっちゃけてる奴が常識に囚われると思うなよ!

 

「ふふっ。そうね、貴方は以前からそうだったわ。私がいないとすぐに変なことするんだから」

 

変なこととは心外な。一体いつ僕がそんなことやったんだ。いつもですかね。

 

ふと、良いことを思いついた。オフェリアにも知っていて欲しいしな。

 

「そうだ、落ち着いたらここを案内してやるよ。きっと色々驚くぜ?」

 

翌日、予想通りいちいちリアクションをしてくれるオフェリアをからかいつつ、この異聞帯を一緒に歩き回った。ずっと驚いてて実に面白かったです。

 

まあ、久しぶりに会った酒呑ちゃんがイチャついてきたところを見られ、説教されたのはまた別の話ということで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




インドの異聞帯がめっさ楽しみ。早くこいストーリー!


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リア充爆発しろと思いつつ本当に爆発したらそれはそれで後味が悪い


芥ヒナコにエドワードをどう呼ばせるのかでとても迷いました。「貴方」ってのは違和感ありますし、かといって「お前」呼びはマスターが後輩だからするのでしょうし。

そして悩んだ結果「アンタ」になりました。もしより良い意見があれば教えてもらえるとありがたいです。採用させていただくかはまた別の話ですが(何様なんだ)。


 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、暇だなぁ」

 

「………………………………………………」

 

「ひ〜ま〜だ〜な〜。ひーまひまひまひまひまひまひ…………まひ?麻痺、麻痺?暇?」

 

「……………………………………………………………………」

 

「僕は今なんて言ってたんだ?麻痺?暇?ひまってそもそもなんだ?どういう意味だっけ?暇がゲシュタルト崩壊してきた…………ってかゲシュタルトってなんだ?ひまってのはそもそも────」

 

「黙って」

 

「………………はい」

 

怒られた。かつてないほどの圧で。

 

「…………はぁ。エドワード、貴方少しは静かにできないの?」

 

そう言って呆れたように彼女────オフェリア・ファムルソローネはこちらを見る。その目は眼帯のせいで片方しか見えないが、それでも雄弁に彼女の今の気持ちを語っていた。うるさいと。

 

とある朝、僕は自室にて目を覚ました後もずっと起きずに布団に包まっていた。そんな僕を見かねてオフェリアが起こしに来たのだが、完全に何も考えずぼけっとするモードに入った僕は自分でもわけのわからないことを口走っていた。

 

「いや、一人だとぼーっとするのも好きなんだけどさ。急に誰か増えると暇な時間が辛くて。つまりオフェリアのせいだ」

 

「なぜ私のせいなのかは疑問なのだけど、まあいいわ…………。それより、貴方別に暇じゃないでしょう?ここの異聞帯(ロストベルト)────と言えるかはわからないけれど、ともかくここの管理があるじゃない」

 

「いやあ、それに関してはここの王様たちに任せちゃってるしな。僕の仕事なんてサーヴァントの相手や異星の神の使徒の相手くらいだよ」

 

と、言ってもこの日本にサーヴァントは三騎しかいない。それに訪問してくる使徒だってコヤンスカヤくらいのものである。なんでリンボと神父、謎の青肌(と言えるのか?)巫女は来ないんだろう?まあ来ない方がありがたいのだが。

 

ぶっちゃけあのエセ陰陽師はかませ感漂ってるからまだ良い。ただ異星の神と異星の巫女に関しては、まだ謎が多すぎるのでなるべく来てほしくないのだ。

 

今でこそ僕の異聞帯(ロストベルト)の内情や空想樹・大令呪(シリウスライト)を取り除いたことを隠せているが、それもいつまで続くのかわからないし。

 

恐らく異星の神は、キリシュタリア以外のクリプターに興味ないだろうから誤魔化せている訳で。もし僕にも興味や疑惑を抱いて干渉してきた場合、それでも誤魔化し続けられるかは正直微妙なのだ。

 

つまり神様に頑張ってもらうしかないってことだな。大丈夫、ゼロから宇宙を創る以上に難しいことなんてそうそう無いはず!頑張れ!

 

「────ってわけで、僕は今暇してるんだ」

 

「どういう訳かは知らないけれど、貴方にやる気がないのはわかったわ」

 

そして、オフェリアはベッドに寝転ぶ僕を「ほら起きて!今何時だと思ってるの!」なんて言いながら無理矢理起こす。オカンかお前は。

 

「ぐああああああ!光が眩しい!」

 

そんなことを考えていると、容赦なく戸を開いて部屋に光を入れられる。眩しい!僕は暗くて狭い部屋が好きなのに!

 

「吸血鬼か何かなの?貴方は…………。まったく、私がいないと何もできないんだから」

 

…………吸血鬼、ねえ。

 

オフェリアの慈愛溢れる謎の視線は一旦スルーし、僕はある女性に思いを馳せる。まだカルデアにいた頃、彼女の過去と共に知ったその素性に。

 

芥ヒナコ。彼女は俗に言う吸血鬼だそうだ。

 

と言っても正しくは真祖────更に正しく言うならば『真祖もどき』だそうだが。そこらへんはよくわからん。精霊の一種だとかどうとか。

 

死徒と何が違うんだよ。全部吸血鬼でええやん、と思ったのは秘密である。ていうかヒナコにそう言ったらしばかれた。酷い。

 

そもそもアイツ猫被りすぎだろ。地味だけどちょっと闇抱えたヒロイン候補、とか考えてた自分が恥ずかしいわ。二人きりだと口調荒くなるし。自分で虞美人とか名乗っちゃうし。いくらなんでも自分で美人とか言っちゃうのはないわー。これも言ったらしばかれたけど。項羽以外に厳しすぎる。

 

項羽と言えば、ぐっちゃん(これも言ったらしばかれる)から聞いた話だと項羽の正体はロボットらしい。…………正確には違うかもしれんがまあロボットでいいだろ。ともかくそんな感じだ。

 

つまり何が言いたいかというと、そんなん絶対サーヴァントとして追加されるやん。カルデアでイチャイチャするのが目に見えるわ。ということである。実際、少し前に項羽の姿を見せてもらったが、確実に実装されるなと予想できる容姿だった。緑に光る黒いケンタウロスとか超強そうじゃん。めっちゃ剣持ってたし。

 

ってな訳で、今頃シャドウボーダーは第三異聞帯である中国に向かっているだろうが、僕は今回はノータッチでいこうと思っている。

 

何故ロシアで介入しなかったのか、それはカドックが死なないと知っていたからだ。

 

何故北欧は介入したのか、それはあのままだとオフェリアが死ぬと知っていたからだ。

 

そして今回の中国だが、ヒナコに関しては心配いらないだろうと考えている。少なくとも二千年と数百年は生きてるであろう不老不死の真祖もどきだ。僕が行かなくたって死なないだろうし、どうせ英霊になって項羽とカルデアでイチャイチャするのだ。介入する理由がない。

 

けっ!リア充が。末永く爆発しろ。クリプターになってからの通信でどれだけ項羽との惚気話を聞かされたと思ってるんだ。うちの異聞帯に呼んだが最後、彼女のいない僕は死ぬ。

 

はー、酒呑ちゃん付き合ってくんねえかなあ。無理だよなあ、サーヴァントだし。鬼だし。所詮は身体だけの関係である。僕とは遊びだったのねっ!

 

くそお、前世も含め初めてキュンときたのが酒呑ちゃんとか僕の恋路ハードモードすぎるだろ。文字通り鬼レベル。

 

…………恋愛なんてしたことないし下らない、それが僕の持論だ。所詮男女の関係なんざ打算や欲で塗れたものである。相手は適当に自分のステータスとなるような男を傍に置きたい。僕は女の子とイチャつければそれでいい。相手は本気で僕のことを好きでもなければ愛してもいない。だから僕も適当に相手してやる、それだけだ。

 

だから僕にはわからない。ヒナコと項羽のことも。マシュと立香のことも。そして、今僕の前に立つオフェリアがキリシュタリアに抱く想いも。

 

全て『そういうものがある』と知っているだけで、僕自身の気持ちとしては一切理解できない。

 

…………だからこそ、本能でやりたいようにやる彼女に。鬼という人とは違った、理解できない存在に。

 

僕は惹かれたのかもしれない。

 

「────オフェリア。朝ご飯食べよっか」

 

なんだか目が覚めてしまった僕はようやく布団から出る。朝から変なことを考えてしまったせいか体は重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう朝ご飯なら食べましたー。今はとっくにお昼に────────って、エドワード!貴方なんて格好してるの!?」

 

「え?あ、いや。寝るとき暑くてさ。邪魔くさいし上着脱いじゃうっていうか」

 

「上着も何も、貴方上半身裸じゃない!今すぐ服を着て!!はやく!!!」

 

「お、おう。…………そこまで怒んなくてもいいじゃん」

 

相変わらずの純情少女オフェリアさんである。そんな怒ること?

 

 

 

 

 

「────み、見ちゃった。いいの?こんな…………無料(タダ)で見てしまって……………………」

 

 

 

 

 

………………何言ってんだアイツ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オフェリアが僕の異聞帯に来てからある程度の時間が経った。

 

彼女も今の生活に慣れてきたらしく、高天原(タカマガハラ)にいる神様と会話しているのも見たことある。と言っても優しいというか万人受けする神とだけだが。

 

オフェリアの部屋も僕の家の中に作った。なんでもすぐ連絡を取れるよう近くにした方が安全だとか。高天原で一体どんな危険があるんだと思わないでもないが、特に断る理由もないため受け入れた。そのせいでこっそり抜け出して地上に遊びに行くのが少し難しくなったが。

 

マジでママだなオフェリア。

 

『────────聞いてる?エドワード』

 

「…………ああ、悪い。考え事してた。で、なんだったっけ」

 

『はあ………。だから、シャドウボーダーがここに来たの。今度は私の番ってわけ』

 

「あー、なるほど。もうそんな時期ね」

 

オフェリアがママだとか、そんな下らないことを考えてたとは言えないので通信相手────芥ヒナコの話に乗っかる。

 

『ようやく項羽様と会えたのだし負ける気はないけれど、あの始皇帝が私の思い通りに動くとも思えないわ。カルデアの残党は全力で潰すしかないわね』

 

「容赦ないなあ。全力ってのはぐっちゃんモードってこと?」

 

『ぐっちゃん言うな。あと変なモードをつくるな。ぶっ飛ばすわよ』

 

怖っ。相変わらず項羽や蘭陵王への態度と僕への態度が違いすぎる。そこそこ長い付き合いなのに、絆レベル低すぎないですかね。

 

『…………そういえば、エドワードは良かったの?』

 

「良かったって、何が?」

 

『わかってるでしょ。オフェリアのことよ』

 

「────ああ」

 

そういえば、カルデア勢と僕以外は彼女が大令呪を使い死んだと思っているのだった。ヒナコもその例に漏れないということか。

 

「なんだ、人間のことなのに気になるのか?」

 

『それはそうでしょ。彼女が今までの人間と違うのはわかったし、それなりに仲良くもしてたんだから。だからこそアンタが見過ごしたのがわからない』

 

「ヒナコから仲良く、なんて単語が出るとはなあ。ま、クリプターの関係なんてそんなもんなんじゃねえの。僕が行ったところで何も出来ないし、そもそも行けないし」

 

『……………………そう。まあ、そんなものね』

 

…………彼女には真実を話してもいい気はするが、情報を広げないに越したことはないだろう。サーヴァントとしてカルデアの仲間になることがもしあれば、いずれ知ることもあるかもしれないし。

 

通信越しに見える表情や、声から伝わる諦めの感情────長寿ゆえ、だろうか────に少し心を動かされつつ、オフェリアのことを悲しめる彼女はやはり優しいのだと再確認する。人間嫌いであっても根っこはそうなっているのだ。

 

「ヒナコ、お前は気をつけろよ。せっかく項羽様とも会えたんだしあんま無理せずにな」

 

『アンタに言われなくてもわかってるわ。私は、今度こそ────────いえ。じゃあ切るわね』

 

結局、大した話もせず通信は切れた。なぜ彼女はわざわざそんな報告をしたのだろうか。そもそも────いや。あれは報告というよりまるで()()()()()()だな。

 

ヒナコも本気ということだ。本気で項羽と共に生きる道を探っている。

 

それも愛ゆえ────か?僕にはどうにもわからないが。彼女のその気持ちは応援したいと心から思う。

 

結局、オフェリアのことを彼女に伝えなかったのも。中国に行く気がないのも。僕にとって一番大事なのは僕自身だからだろう。

 

一度死んで、奇跡的に得た二度目の命だからこそ。

 

今度こそ、失う訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、またしてもヒナコから通信がかかってきた。今回は傍にオフェリアもいるので彼女には静かにしてもらおう。

 

「…………ヒナコから?」

 

「おう。だから一応静かにしといてくれると助かる」

 

僕がそう言うとコクリと無言で頷くオフェリア。可愛い。

 

「はい、もしもし。貴女の親友エドワード・エヴァンズですよ」

 

少しふざけると今度は睨まれた。怖い。

 

『……………………』

 

だが、もう一人からは。いつもなら呆れたような声が飛んでくるはずの通信機からは、何も聞こえてこない。

 

「……どうした?なんかあったか?ヒナコ?おーい」

 

『………………………………けて』

 

「ん?」

 

『…………お願い。アンタにこんなこと頼んだってどうしようもないことはわかってる。それでも、私には…………アンタしか思いつかなかった。アンタにしか頼れなかった』

 

ようやく聞こえたその声は、悲痛な声だった。か細い、助けを求める声だった。

 

映し出された彼女の姿は見たこともない大人びた姿で、それでもすぐにヒナコだとわかった。

 

 

 

 

『お願い…………。項羽様を────────助けて』

 

 

 

 

そして、通信が切れる。

 

ヒナコは、項羽が戦わないことを望んでいる。だが項羽はその選択をしない。最後まで戦い、そして敗ける。そんな項羽をヒナコは止めることができない。傍にいることしか、できない。

 

それでも僕を頼ったんだ。最後の最後に、どうしても諦められなくて。僕がどうにかできると決まった訳じゃないのに、それでも。だからこそ、一刻も早く向かわなければ。

 

「…………行くのね、エドワード」

 

急いで外に出ようとした瞬間、不安気な顔をしたオフェリアに聞かれる。

 

……………………そうだ、何故僕は行こうとしている?別にヒナコも項羽も二度と会えないって訳じゃないだろう。少し待てばまた会えるはずだ。なのに今僕は行こうとしていた。中国には行かないと決めたのに。危険で、死ぬかもしれないのに。

 

オフェリアの時と違って今回はそこまでの緊急性はないんだ。行かなくてもいいんだ。なのに、何故……………………。

 

────いや、違うだろ。

 

友達が、アイツが助けてって言ったんだ。なかなか他者を信じない、めんどくさい性格したアイツが。虞美人が、芥ヒナコが。

 

僕に愛だのなんだのはわからないが、でも。他者にそういう感情があって、それがどれくらい大事なのかってことはわかる。

 

たとえ英霊になって会えるとしても、ヒナコはそんなこと知らないんだ。それに、たとえ知っていても。大切な者の死が、別れがとてつもなく辛いってことくらいは、わかる。

 

そんな思いを、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「────オフェリアはここで待っててくれ。すぐ戻る」

 

「…………わかったわ」

 

オフェリアを置いて急いで家から飛び出る。なるべく早く、間に合わなくなる前に。

 

「令呪をもって命ずる!来い、スサノオ!」

 

走りながら叫ぶ。すると僕の右手に三画あった令呪の一つが消え、隣に僕のサーヴァント、スサノオが現れた。

 

「おいおいおい、いいのかよマスター!いきなり令呪使っちまって!!」

 

「急いでるからいい!二画あれば十分だし、そもそも戦闘で使うつもりもない!令呪ってのは奥の手だからな!」

 

「その奥の手を今使っちまったんだが…………」

 

「うるせえ!とにかく、今の僕に権能はないからもう一柱くらい連れてくぞ!神殿に着くまでの間に誰か見つける!」

 

「すげえ無茶振り!……ったく、しゃーねえなあ」

 

この異聞帯の王たちの下に向かうまでの間に連れていく神様を探す。できれば戦闘が得意な神が良いのだが…………。

 

「あ、おい!アイツなんか良いんじゃねえか!」

 

誰かを見つけたスサノオが指を指す。そこにいたのは────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、準備完了!頼むぜ天鳥船神(アメノトリフネノカミ)、あと三柱とも!」

 

「私たち造化三神(ぞうかさんしん)をオマケ扱いとは、酷いなあエドは。私たちの力があって、ようやくその船は異聞帯の嵐を越えられるんだよ?」

 

「あー、ごめんたかみー。もちろんちゃんと感謝はしてる。だから今回も頼むよ!」

 

「はいはい了解。じゃあいくよ、エドとスサノオは一回経験してるから大丈夫だろうけど、初めてのタケミカヅチは気をつけてね」

 

「承知した。気を引き締めておこう」

 

たかみーの言葉に応えるもう一柱の搭乗者、僕とスサノオが見つけたそこらへんを歩いていた神様。彼の名は────────建御雷神(タケミカヅチノカミ)。軍神でもあり雷神、そして剣の神かつ地震の神。戦闘においてまさに最強の一柱と言える神だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、おおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおおお!!!間に合ったあ!」

 

轟音、土煙と共に両者の間に割って入る。僕の背後には既にボロボロで満身創痍の項羽と芥ヒナコ(ぐっちゃんモード)、ついでにコヤンスカヤ。そして、僕の前方には藤丸立香率いるチームカルデアだ。

 

『────な、彼ら壁をぶち抜いてきたぞ!!いくらなんでも強引すぎないかい!?』

 

「いやー、急いでたんでね。悪い悪い。お、立香とマシュは久しぶりだな」

 

「またですかエドワードさん!それに…………今回は味方してくれる、って訳じゃなさそうだね」

 

「はい、マスター。どうやらエドワードさんは敵対する姿勢のようです」

 

「まあな、友達とその旦那助けにきたんだ。悪いが今回は敵だぜ」

 

そして、スサノオと深くフードを被ったタケミカヅチが前に出る。今回はタケの正体は明かさず撤退するまでの時間稼ぎと護衛をしてもらう。いや、マジで百人力だわ。安心感ぱない。

 

「エドワード…………、本当に……………………」

 

カルデアの連中と向き合っていると、背後からなんとも頼りない声が聞こえてきた。まったく、こっちまで気が抜けそうだ。

 

「おう。その姿も随分と美人さんだな、ヒナコ」

 

だから、安心できるように笑いかける。いつも通りに。

 

「…………ふふ。────ああ、もうヒナコじゃなくていいわ。正体はバレちゃってるし、虞美人と呼んで」

 

「わかったぐっちゃん。後は任せてくれ」

 

「……………………まったく、ぐっちゃんはやめてって言ってるでしょ」

 

お生憎、僕は人の話は聞かない男なのだ。諦めるんだな。

 

「いや、いやいやいや。なーにをちょっと良い雰囲気にしてくれちゃってるんですか!エドワードさん、アナタ()()()()()()()()()()!?」

 

「お、コヤンスカヤはチャイナドレスか。いやー、眼福眼福」

 

「くっ!相変わらず話を聞かない方ですね……!」

 

「まあ、知りたきゃ僕の異聞帯にでも来ればいいだろ。()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「……………………ッ!!」

 

「正直もっとやってほしいところではあるけれど、そろそろ真面目になった方がいいんじゃない?エドワード」

 

「あー、悪いぐっちゃん。んじゃま、そういうことだ。次の転移までの時間稼ぎ頼むぜセイバー、と…………まあ、うん。もう一人」

 

「あのフードのサーヴァントの正体を明らかに隠しているな」

 

やめてくれ名探偵。ホームズならこの段階でも真名バレそうだ。流石にそれはないか、はい。てかサーヴァントじゃないし。

 

「虞よ……。この男は────」

 

「項羽様。彼は…………。彼は、私の友です。ですのでどうかご安心を。勝手ながら、私が呼んだのです」

 

項羽は会話ならまだできるようだ。だが今にも活動を停止しそうなことには違いない。カルデアもなかなかやってくれるな。

 

なんてことを考えているところに、紅い稲妻と燃え盛る炎が走る。

 

「先手必勝ぉ!いつまでもグダグダ喋りやがって、たたっ斬ってやるよ!」

 

「同意。隙だらけ、必中」

 

迫るは叛逆の騎士、モードレッドに天界の武将、中壇元帥・哪吒太子。どちらも戦闘を得意とする手強いサーヴァントだ。

 

────だが。

 

「…………なッ!」

 

「……………………!」

 

何度かの衝撃と共に、どちらも防がれる。モードレッドはスサノオが。哪吒はタケミカヅチが。それぞれの攻撃を完全に受け止めていた。

 

しかし更に後ろからも迫る影が三つ、シャーロック・ホームズに赤兎馬、陳宮の三騎だ。赤兎馬はともかく、ホームズと陳宮には何をされるかわからない恐怖がある。だからしっかり妨害させてもらおう。

 

「揺らして分断!できる?」

 

「もちろんだ、エドワード殿」

 

瞬間、僕達より前方────────()()()()()()()を地震が襲う。

 

『なんだこれ!計測の結果としては地震っぽいけど……あまりにも局地的すぎる!』

 

「くっ、…………みんな!」

 

更に体勢を崩しバラバラになったサーヴァントたちを、タケが全て雷の壁で分断する。

 

「これは────なんて密度の魔力だ…………!とてもじゃないが突破できないぞ!」

 

そりゃそうだ名探偵。神の権能だぜ、そう易々と突破されちゃあこっちのプライドが傷つく。

 

「なあ、これ俺必要だったか?」

 

「いや、ここまでハッスルしてくれるとは思わなくて…………」

 

哀れスサノオ。お前はまた別のとこで暴れさせてやる。

 

「さて、そろそろ潮時だ。今回もクリプターを攫うのが僕の目的なんでね。ここらで撤退させてもらうよ、またな。立香、マシュ」

 

「ま、待ってください!エドワードさん!貴方は、貴方は一体────────」

 

「悪いが今は敵だよ、マシュ。僕がクリプターとして生き返る道を選んだ時点でね。()()()()()()()()()()()

 

「それは、どういう…………?」

 

「おっと、準備もできたしこれで本当にさよならだ。今度会う時はちゃんと戦おう」

 

そして、僕達は中国の異聞帯を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、どうして(わたくし)も連れてきたんです?」

 

「いや、なんかこう。ノリで?」

 

「エドワードさん…………アナタ、ひょっとしておバカさん?」

 

ひょっとしなくてもそうかもしれない。僕の計画守らない度は異常だ。でもコヤンスカヤには言われたくない。色々好き勝手やって始皇帝から拷問受けてたやんキミ。

 

取り敢えず日本の異聞帯に帰ってきてから、まず項羽の修復やらメンテナンスを神様たちに頼んだ。ぐっちゃん的には知らない奴らに項羽を任せるのは気が引けるだろうが、ここは僕には免じて任せてもらった。

 

「エドワード…………。その、今回は……本当に、その────」

 

「おっと、そっから先は項羽様がしっかり治ってからだ。今はこうやって無事なことを安心しておけばいいさ」

 

「…………そうね。今はそれでいいわ。でも後で落ち着いたらお礼は言わせて」

 

「まあそれで気が済むならな。感謝は受け取っておくのが一番か」

 

「グっちゃんが人間と親しくしているなんて珍しいですねえ。どういう心境の変化です?オフェリアさんとだってそこまでではなかったでしょうに」

 

「…………うるさいわね。エドワード、なんでこんな女狐まで連れてきたのよ。この異聞帯が滅ぶ前にさっさと追い出すべきよ」

 

うーん…………。怖い。コヤンスカヤはともかく、ぐっちゃんからの敵対心がとんでもない。昔からの知り合いってのは複雑ですな。

 

「あ、そうだ。実はぐっちゃんに会わせたい人がいるんだ。ついてきてよ」

 

「会わせたい人?」

 

「まあ来てよ、絶対驚くぜ?」

 

その後、スサノオとタケとはお礼を言って別れた。いやー、マジでタケ良い神。ザ・武人って感じだし優しい。

 

そして僕の家に向かってぐっちゃん、コヤンスカヤを連れて歩いていると、コヤンスカヤが辺りを見渡しながら口を開く。

 

「相変わらず平和な異聞帯ですねえ。反吐が出そうです。()()()()()()()()()()()()()()()()。ここの空気と貴重な魔獣たちは好きですが」

 

「…………言っとくけど勝手に持ち帰るなよな。もしやったらうちの九尾けしかけるから」

 

「あー、やめてください!(わたくし)アレ嫌いなんです!」

 

「アンタらも大概よく喋るわよね…………。貴方、人間嫌いなんじゃなかったの?」

 

「いえ。好きですよ、ニンゲン♡ 剥製にして飾るくらいには。ただちょーっとエドワードさんは違うと言いますか…………貴方一体なんなんです?異聞帯を移動できたのも気になりますし、ねえ?」

 

ねえ?と言われても。僕は産まれてこのかたずっと人間ですが。転生しただけの。…………それがまずいんですかね。

 

「サーヴァントと王、珍しい魔獣以外は特筆すべきこともない異聞帯、のはずなんですがねえ。どうにも引っ掛かると言いますか。()()()()()()()()()()()?」

 

「別に?僕ほど清廉潔白な人間もいないと思うぜ」

 

嘘です。現在進行形で隠しまくってます。どうやらコヤンスカヤは気づいていないらしく、今回も上手くいってるようで安心した。コヤンスカヤには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ま、というわけでコヤンスカヤはここまでだ。今回連れてきたのは、ぐっちゃんを助ける以外に他意はないって知ってほしかったからだし。なんかあったらまた来てくれ。その時は歓迎するよ」

 

「…………そうですねえ。勝手な行動をしているのはお互い様ですし。今回は素直に帰るとしましょうか」

 

やけに素直に承諾するとコヤンスカヤはどこかへと消えていった。いやー、にしてもエロい格好だった。おっぱいの下半分見えていたがあれはいいのだろうか?いや、僕としては是非とも今後も着てほしいのだが。

 

「…………痛いです、ぐっちゃん」

 

「アンタが変なこと考えてるのが悪いのよ」

 

静かに足を踏まれる。クソっ、僕がMだったらご褒美なのに。残念ながらただ痛いだけだ。

 

……………………というか格好で言えばぐっちゃんもなかなか凄い格好しているが。人妻がそんな格好していいんですか?────あっ!痛い痛い!なんか強くなってる!

 

「…………はぁ。それで、会わせたい人ってのは誰なのよ」

 

僕の家の前に着いたところでぐっちゃんが尋ねてくる。ふっふっふ。きっとビックリするぞ。なんやかんや優しいぐっちゃんだ。喜びを押し殺してツンデレる姿が目に浮かぶ。

 

────かつて、カルデアにいた頃を思い出しながら。

 

僕はオフェリアが待つその家へ、友達と共に、足を進めたのだった。

 

 

 

 

 





個人的に4章が2部の中で一番面白かったです。カルナさんは大分初期に当たった思い入れのあるサーヴァントだったので。勢いで聖杯捧げちゃったけど(あんだけカッコよかったら)是非もないよネ!


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クリプター その4

エドワードがカルデアに所属して何年か経ってから本編開始、という設定だったにも関わらず

カルデア加入時→19歳
本編開始時→19歳

としていました。

よって

カルデア加入時→19歳
本編開始時→22歳(2年凍結されていたので本当なら24歳)

に直しました。

第一部が始まる3年前にマリスビリーが亡くなっているため、エドワードはマリスビリーが亡くなる少し前にカルデアに来た、ということになります。



 

 

 

 

 

「君は異端(イレギュラー)だ。本来七人だったはずのAチーム────『クリプター』の八人目となるのだから。それほど君は才能に溢れている。わざわざ娘を遣った甲斐があったよ、エドワード・エヴァンズくん」

 

 

 

カルデアに来てすぐ受けた検査の結果がどうやら色々特殊だったらしく、いきなりマリスビリー・アニムスフィア所長に呼び出され、そう言われた。

 

これが僕の『最初』だ。カルデアの、Aチームとしての。そしてクリプターとしての。

 

まさかその数ヶ月後に所長が死んで、その娘であるオルガマリーが新所長になるとは思わなかったが。いやオルガマリーが所長になるのは知ってたんだけど、まさか僕が来てすぐにこうなるとは。どうやら自分はかなり遅れてAチームとなったらしい。

 

そのAチームが一体いつから結成されているのかは知らないが、少なくとも僕が入った頃には他の七人は全員いた。

 

まったく、ホントこういうのやめてほしいぜ。一度形成されたグループに後から入る気まずさをあのおっさんは知らないのか。

 

まあ、今回はそんなことを考えていた頃の僕の話だ。具体的には、Aチームで一番最初に話しかけたヒナコ────ぐっちゃんと仲良くなったことで「他のクリプターともすぐ仲良くなれるんじゃね?」と調子に乗っていた頃の。

 

そんな時期の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、今日から皆さんと同じAチームになったエドワード・エヴァンズです。よろしく」

 

「「「「「「「…………………………………」」」」」」」

 

…………うん。まあね、流石にアウェーすぎない?君たち。普通なんかリアクションするだろ。こいつら全員コミュ障なのか?違うだろ?原作ではあんなペラペラ喋ってたろ?

 

「あ、あー。ヒナコとはもうしたからいいんだけど、他の人は名前知らないからさ。自己紹介とか頼めます?」

 

「………………」

 

本当は知っているが、なんとか会話を試みようとそう切り出す。すると、何故かヒナコから睨まれた。え、なに?僕と知り合いだって皆に思われたくない?なにそれ酷い。

 

「おいおい、お前本当に知らないのか?オレはともかく、そこのキリシュタリアやデイビットも?お前さん、時計塔出身だろ?」

 

「まあ、そうっすけど。でも僕サボりまくってたんで」

 

やっと誰か反応してくれたと思ったら、その相手は原作で殺人鬼だと明言されている男────ベリル・ガットだった。まだ大して掘り下げられていないにも関わらず、既にヤバい奴感漂ってるキャラクターである。

 

いや、でも一番最初に反応してくれたし………。やだ、もしかして良い人なの?(チョロい)

 

「あら、随分と良いオトコだからビックリしちゃってた。私はスカンジナビア・ペペロンチーノよ、エドワードちゃん♡」

 

そして、次に反応したのは見るからにオネエであるこれまた怪しげな人物、ペペロンチーノ。こいつもこいつで底が知れないキャラだ。てか変な奴多すぎだろクリプター。カドックとオフェリア以外全員底が知れない感出てるぞ。

 

「まあ、色々気になるとこはあるけど。よろしくお願いします、ペペロンチーノさん」

 

「やだ、カタいのは抜きにして気楽にぺぺって呼んでくれると嬉しいわ。皆にも軽い口調で大丈夫よ」

 

彼(彼女?)がそう言って周りを見渡す。どうやら、雰囲気的に他の人たちも態度は気にしなさそうだ。

 

「……そう言ってくれるなら、まあ崩させてもらうよ。よろしく、ぺぺ」

 

「はぁい、よろしく♡」

 

と、まあ。その後はぺぺのサポートもあったおかげで、

 

 

 

 

 

「キリシュタリア・ヴォーダイムだ。マリスビリーから話は聞いている。君には期待しているよ、エドワード」

 

 

 

「……………………オフェリア・ファムルソローネよ」

 

 

 

「さっき少し話したが、ベリル・ガットっていうモンだ。よろしく頼むぜエドワード」

 

 

 

「……私は必要ないわね」

 

 

 

「カドック・ゼムルプスだ。…………悪いが、ここに来て数日のお前をAチームだなんて認められない。大した結果も示していないのに選ばれるなんて、さぞや才能に溢れる奴なんだろうがな」

 

 

 

「デイビット・ゼム・ヴォイドだ。これから共に行動することも多くなるだろう、よろしく頼む」

 

 

 

こんな感じで上手いこと打ち解けることができた。

 

…………うん。できたって言ってんだからできたんだよ。

 

ちょこちょこコミュ障拗らせてる奴いるけど。デイビットは意外にもフレンドリーだ。無愛想ではあるが。ヒナコはもうちょい空気読もうぜ。

 

なんというか、前世で画面越しに見たのとはまた違った印象を受けるな。やっぱり直に顔を合わせるのは大事だ、と感じる。それにしても彼────スカンジナビア・ペペロンチーノは全く印象が変わらないが。底が知れず、コミュ力はカンスト。Aチームの潤滑油というか、ムードメーカー的な立場らしい。

 

なので、僕が彼とよく話すようになったのも、まあ自然な結果なのだろう。

 

むしろ最初がヒナコなのがおかしい。普通はぺぺが一番とっつきやすいだろ。僕の交友関係の広げ方特殊すぎません?

 

────────ただ、直接見てわかったことがもう一つある。それは。

 

 

 

このオカマ、できる。

 

 

 

戦闘の訓練に明け暮れていた僕は、体術や武術なんかの技術には精通している。だいたいのことはできるつもりだ。

 

そんな僕から見て、彼は明らかに()()()()()()()。体幹や体重の置き方、ちょっとした動きや筋肉の付き方なんかからバリバリ伝わってくるのだ。

 

もちろん負ける気はしないが、それでもいざって時に苦戦しそうだな。彼は同じAチーム。つまりは味方なのだが、まあ怪しいことには変わりない。仲良くなってもある程度は警戒しておこう。

 

ともかく、そんな感じで『Aチーム新メンバー歓迎会』は幕を閉じたのだった。…………誰だよこの名前考えたの。全く歓迎されてる感なかったぞ。

 

え、キリシュタリア?お前が考えたの?マジか、だとしたらセンスなさすぎだよ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、歓迎会から更に数日後────────。

 

 

 

「なあぺぺ、次はどこに行けばいいんだっけ?」

 

「それならあっちに────────」

 

 

 

「ぺぺ、これはどうすればいの?」

 

「これはこうするのよ、エドワードちゃん」

 

 

 

「ぺぺぇ!助けてくれ!報告書の書き方がわからん!!」

 

「あらあら、どうしたのよ。見せてみなさい」

 

 

 

 

 

え、ぺぺ良い人すぎるだろ。警戒?なにそれ。こんな良い人を疑うなんて、そんなのそいつは人間じゃねえ。多少、動きから殺しに慣れてる感出てるくらい些細な問題だわ。良い人だもん、うん。

 

…………いや、陥落するの早すぎとかチョロすぎとか言いたいことはわかる。ひじょーによくわかる。ただぺぺは良い人すぎるんだ。つまりしょうがないね!

 

「どうしたの?ムズカシイ顔しちゃって」

 

「いや。ぺぺが良い人すぎる、と思って」

 

「あらやだ、エドワードちゃんったらホントに人たらしねえ」

 

…………お前だけには言われたくない。

 

なんというかあれだ。もはやママだ。すごく世話焼いてくれるし。視線がオカンっぽいし。

 

────────にしても。

 

最近ちょこちょこ気になっていることがあるんだが…………これ突っ込んでもいいことなのだろうか。

 

「……なあ、別に嫌なら答えなくてもいいんだけど────」

 

うーむ、顔立ち的に可能性はなさそうなんだが…………。

 

『ぺぺってもしかして、日本人?』

 

僕は翻訳機能を一旦切り、日本語で問いかける。今まで英語で話してて思ったのだが、日本人っぽい訛りがあるような、ないような。いやどっちなんだよ。しかし、実際気づくかどうか微妙なくらいの、訛りと言えるかもわからないような微妙な違いなのだ。

 

ともかく、同郷(?)だからこそ感じる「あれ、こいつもしかして日本人じゃね?」感があったのだ。

 

すると、ぺぺは目を見開いてこちらを見てくる。この数日でわかったが、彼はリアクションが些かオーバーだ。

 

『あらやだ、何でそう思ったの?』

 

ぺぺから聞こえてきた言葉は日本語だった。訛りも何もない、流暢な。

 

『いや、なんとなく。てか本当にそうなの?そんな欧米人っぽい顔なのに?』

 

『そう見えるかしら?というかアナタこそ日本語上手ねえ』

 

『まあ、しばらく住んでたからな(前世で、だが)』

 

『やだ、これって運命!?ドキドキしちゃう!』

 

『たしかに、カルデアに日本人はヒナコしかいないしな』

 

『…………あの娘はねえ。どうなのかしら』

 

なんだか意味深に呟いているが、ともかくぺぺが日本人だと発覚したのだ。そこからは日本トークで少しだけ盛り上がった。ちなみに本名だが、そこは教えてくれなかった。今はスカンジナビア・ペペロンチーノが自身の名前であり、それが本名なのだと。

 

まあ、あまり深く突っ込むつもりもないし。本人がそう言うのならそうなのだろう。…………なんか凄い名前っぽい、なんとなく。主要キャラってのはそういうもんだ。

 

「それにしても、エドワードちゃん日本語も話せるのねえ。パーフェクトボーイなの?」

 

「つっても英語と日本語しか喋れないけどな」

 

てかパーフェクトボーイってなんだ。僕のどこらへんがパーフェクトなんだよ。

 

「ドコって…………顔と、身体?」

 

「いやまあ、例えそれらがパーフェクトだとしても中身が伴ってないぞ」

 

「そんなことないわよぉ。それにアナタの身体ってホント凄いわよ?自覚ないのかもしれないけど」

 

自覚は…………まあ、努力した分の筋肉やらは自信あるが。パーフェクトかって言われるとなあ。いや、でもダ・ヴィンチちゃんに初めて会ったとき凄い触られたし、やっば凄いのか?僕。

 

「そうよ?それに、お互い()()()()()()()()()からわかるのよ。アナタ結構鍛えてるでしょ」

 

「まあね。そう言うぺペこそ荒事は得意そうだけど?」

 

「私はそういうの嫌いなのよお。よっぽどのことじゃないとしたくないわ」

 

「だから戦闘訓練もあんま本気出してないの?」

 

「それに関してはエドワードちゃんに言われたくないわね」

 

バレてたか、と彼を見る。「ウフ♡」と満面の笑みを浮かべ、いまいち読めない顔をしているぺぺ。なんか良いなあ、こういう関係も。

 

「…………なあ」

 

「あら、なあに?」

 

「エドワードちゃん、っての。いまいち慣れないし別の呼び方にしてくれよ」

 

「そうねえ、なら何が良いかしら?」

 

「ま、僕もぺぺって呼んでるし。気楽にエドとでも呼んでくれ」

 

なんだか、不思議な気分だった。彼と僕は全くもって似ていない。見た目も性格も、好みだって。

 

ただ、思想というか。価値観というか。()()()()()()()は似ているんじゃないかと。

 

「────────そうね、よろしく。エド」

 

微笑む彼を見て、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

「なあ、一つ気になってることがあるんだが」

 

『あら、何?エド』

 

「アシュヴァッターマンってのは『アシュヴァッターマン』でフルネームなのか?それとも『アシュヴァッター』な男でアシュヴァッターマンなのか?」

 

『そんなこと考えたこともないわねえ。ただ、インドの英雄よ?『マン』が男って意味なのは違うんじゃないかしら?』

 

「いや、もしかしたら『正義の味方、アシュヴァッターマン!!』みたいな感じかもしれないじゃん」

 

『あぁ!?ンな訳ねえだろうが!!ぶっ飛ばすぞ!!!!』

 

「ぐわあああああ!耳が!!うるせえよ、いたのかアシュヴァッターマン!」

 

『マスターがいるんだから当然だろうが。つーか誰だてめぇ!!』

 

「なあ、いくらぺぺの代わりとはいえ怒りすぎじゃない?バーサーカーだよ完全」

 

『こう見えて意外と冷静なのよ?それでもアーチャーって感じはしないけどねぇ。武器飛ばせば何でもアーチャーなのかしら?』

 

『どうでもいいんだよンなことは!結局誰だ!?』

 

『全ては………些事……………』

 

「うわ、なんか見えた!もしかしてそっちの王様来てない!?」

 

『あら、賑やかねえ』

 

『……………………否』

 

 

 

 

 

その後、アシュヴァッターマンの鎧姿を見た僕はますます『アシュヴァッター』マン説を推すのであった。

 

…………あれ絶対仮面ライダーとか戦隊ヒーローの系列だろ。

 

 

 

 

 

 




新イベント…………。オール信長ってなんなんですかね?あと本当にぐだぐだファイナルなのでしょうか。


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彼と彼女の色々

2部4章の話(介入するとは言ってない)です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Fooooo!最高だぜ!!やっばこんくらいのスピードが一番だよな!」

 

「気に入ったようで何より。しかし、私としてはこの躯体の性能に驚いているが」

 

「エドワードォ!!項羽様から下りなさい!ぶっ飛ばすわよ!!」

 

「なに!?くそぉ!項羽、スピードアップだ!ぐっちゃんに追いつかれないで!」

 

「汝の頼みとあらば、そうしよう」

 

「項羽様ぁ!?」

 

お、更に速くなった!凄いな項羽。さすがは神様が修理、メンテナンスしたNEO項羽様だ。

 

さて、今現在項羽の背中に乗りながら、ぐっちゃんに(劇場版HF槍ニキなみの綺麗なフォームで)追いかけられているが、落ち着いて回想といこう。てか怖ぇよ、ぐっちゃん。

 

と、言ってもこの状況からわかるだろうが、項羽の怪我が無事に治ったのである。これも神様やその使いのおかげだ。

 

しかもなにやらパワーアップを施したらしく、改造なんかはしていないが、更なる出力を可能にした。

 

ただでさえアレなのにパワーとスピードが上がるとか、もはや最強じゃね?しかも、汎人類史の項羽の人格インストールとかいうオマケ(ってレベルじゃない)付き。

 

その話を聞いて、ほーん、汎人類史の項羽は人型なんだな、なんてどうでもいいことを考えていると、ぐっちゃんとイチャつく項羽がこう切り出してきた。

 

「エドワード・エヴァンズ、汝は私と虞の恩人だ。故に我が力、此度は汝の為に振るおう。私はあの異聞帯(ロストベルト)において全てを賭して闘い、そして敗北した。ここで再び得た命、その恩義を返そう」

 

いちいち喋り方が小難しいのでよくわからなかったが、要約すると「俺はカルデアに敗けたから一回死んだようなものだけど、ここでまた闘えるようになったから、今度はここで頑張るぜ!」ということだろう。多分、知らんけど。

 

てか汎人類史と異聞帯の記憶を持ちつつ、会稽零式としての性能をMAXで使えるとかやっぱめちゃくちゃ強いだろ。今度修行付き合ってもらおう。

 

とまあ、そんなこんなでバージョンアップした性能を確かめたいらしく、地上に降りた結果こうなったのである。ぐっちゃんは項羽についてきた。つまりはいつも通りだ。

 

まさか冗談で乗りたいと言った結果、本当に乗せてもらえるとは思わなかったが。一応良いとこの出である僕は乗馬もお手の物である。乗馬って言っていいのか、これ?

 

「ふむ、凡その性能は理解した。これで駆動には問題ないだろう」

 

すると、項羽は満足したのか急に止まってしまった。あれ、追いつかれちゃいますよ?項羽様?おーい。

 

「やっと追いついたわ…………。このバカ、さっさと下りなさい。申し訳ありません項羽様。コイツにはよく言っておきますので」

 

「構わぬ。私から提案したことだ」

 

「ほら、項羽もこう言ってるしさ。だからとりあえず離してくれません?そろそろ限界だよ?」

 

「アンタは黙ってて」

 

追いついたぐっちゃんは無理矢理僕を引きずり下ろすと、そのままヘッドロックで僕の頭を捕らえた。こう見えてぐっちゃんは筋力Cくらいあるので普通に痛い。だんだん強くなってるし。

 

いや、でもおっぱい当たっててこれはこれで…………。

 

「変なこと考えんな!」

 

「痛い痛い痛い!なんでわかるんだよ!」

 

更に締めが強くなった。ホントになんでわかるんだ。あれか?精霊だからか?

 

「つーか随分初心な反応するな、ぐっちゃん。実は人妻なのに」

 

「人妻言うな。というか……何よ急に。別に良いじゃない…………。アンタとは違うのよ私は」

 

「?」

 

やけにどもるし、顔も赤い。どういうことかと項羽を見る。

 

「簡潔に言うのなら、私に生殖機能は搭載されていなかった。それはどうやらこの躯体でも変わらないようだ」

 

「項羽様!?」

 

え?つまりはそれって────────

 

「…………言うな」

 

「つまりそれって、ぐっちゃんはヴァージ………………」

 

殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────ってことがあったのさ」

 

「だからヒナコがあんなに怒ってたわけね…………。それは貴方が悪いわよ、エドワード」

 

はい。反省してます。いくら驚いていたとはいえ、この僕が女の子に対してデリカシーのないことを言ってしまうとは。いや、わざとなら割とあるんだけどね?今回は素だった。完全に。

 

「というか、オフェリアはぐっちゃんのことヒナコ呼びなんだな。ぐっちゃんの正体はちゃんと聞いてるだろ?」

 

「まあ、そうね…………」

 

この前、中国の異聞帯からぐっちゃんを連れ帰った際に二人は対面している。その後は二人きりにしてあげたので、どんな会話があったのかはよくわからないが、まあ見た目の変化からしてぐっちゃんの正体についての話は避けて通れないだろう。

 

初めて見た時は誰!?って感じだったからな。僕もそうなったけど。

 

「なんというか、『虞美人』って固いでしょう?それに『芥ヒナコ』って凄く良い名前だと思う。雛芥子をモチーフにしていて、可愛いニックネームみたいでしょう?だからヒナコって呼んでるのよ。本人も嬉しそうにしているわ」

 

「なるほどね、あだ名的なやつか。良いんじゃねえの?」

 

「相変わらず適当な返事ね…………」

 

いや、だって当人たちがそうしてるんだから僕から言えることなんてないじゃん……。

 

「逆にオフェリアのあだ名って無いよなあ。作りづらいし。なんだろう、オファムとか?」

 

「それだけはやめてほしいわね」

 

酷い。否、酷いのは僕のネーミングセンス。

 

「…………でも、確かに私のことはずっと『オフェリア』よね。ヒナコのことは『ぐっちゃん』なのに」

 

「あー、まあね」

 

「エドワードはヒナコの正体をずっと知っていたらしいし…………。それに今回の件。ヒナコの態度も……」

 

「あれ?オフェリア?」

 

「それにエドワードのサーヴァント────あの鬼も色々と……。もしかして私が一番遅れてる?また?今までと同じように?」

 

「お、おーい。オフェリアさーん………………?」

 

「他にも天照大御神(アマテラスオオミカミ)と…………天宇受売命(アマノウズメノミコト)も怪しいわね。二柱とも信じられないくらいの美神(びじん)だし、こんなの勝ち目が…………」

 

どんどん声が小さくなっていく。なんかブツブツ言ってて怖いんだが…………。負のオーラみたいなの見えるし。

 

すると、急にオフェリアが立ち上がる。どしたの?

 

「エドワード!」

 

「はい」

 

「デートに行きましょう」

 

「マジ?」

 

「マジよ」

 

なんだか知らんがデートに行くことになった。

 

…………なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で地上に降り、やって来たのは普通の海岸。急に襲ってきたくそデカいタコや、よくわからんサメっぽい化物をぶっ飛ばした後に砂浜を歩く。

 

「海にもあんなのがいるなんて…………。アレはそのままにしていいのかしら?」

 

気絶したまま海に浮かぶ謎生物たちを見て、オフェリアが呟く。

 

「うーん、まあ動物って上下関係がわかれば大人しくなるし。いいんじゃない?また襲ってくれば今度は殺すだけさ」

 

「…………そう。それにしても、いくら貴方でもあんなのまで倒せるのね。今は神の権能が無い状態でしょう?」

 

「あー、それね。まあ今は()()()()状態だからさ、権能なしでもなんとかなって良かったよ。神様に補充してもらえるとはいえ、そうポンポン令呪を使いたくはないしね。スサノオや鬼っ娘たちも頻繁に呼ばれたら困るだろ」

 

「奪ってる?」

 

僕の発言に不思議そうに首を傾げるオフェリア。あれ、そういえば言ってなかったっけ?まあいいか、また今度で。北欧の時に何も言ってこなかったから知っているものだとばかり思ってたぜ。

 

「……にしても、本当にこんなとこで良かったの?自分から提案しておいてなんだけどさ」

 

「私も賛成したのだから当然よ。海なんてしばらく見ていなかったしね」

 

デートと言っても、(当然だが)この異聞帯には映画館やらカフェなんかない。悩んだ挙句、もの〇け姫っぽい森、海、高天原の凄い神社の三択から海を選んだのだ。やだ…………うちの異聞帯、デートスポット少なすぎ……?

 

「まあ相手はオフェリアだしな。そう気張ってもしゃーないか」

 

「…………どういう意味かしら、それ」

 

静かに睨んでくるオフェリア。眼帯つけてても片目で十分怖いです。

 

「いや、脈ナシだってわかりきってるというか…………。僕はキリシュタリアじゃないし、テキトーな気分転換の相手くらいならチャチャッと済ませますよってことだよ」

 

「…………………………………………」

 

あれ、沈黙?まさかの?怖いので何か言ってくれません?くそ、こういう時はアレだ……!

 

横を歩いていたオフェリアの前に素早く回り込むと、僕は彼女に向かって恭しく礼をする。右手を胸に当て、なるべく優雅に。家の長男として外に紹介されるとき、そして女の子の機嫌を取るときにのみ使用する王子様モード(べつに自分で名付けたわけじゃない)だ。

 

「では、レディ。宜しければ僕が貴方のお相手を。美しき華の隣に立つには、我が身は不足かもしれませんが。この一時、僕がエスコートさせていただきます」

 

そして、手を差し伸べる。なるべく慈しむように、優しく。

 

「────それでは王子というより従者ね。まあ、その態度に免じてエスコートされてあげます」

 

そして、彼女が僕の手を取る。正直、何バカなことをやっているの?みたいな感じで流されると思ったのだが。何故か受け入れられたな。と言っても耳が真っ赤で、照れてるの丸わかりだ。

 

そしてもちろん、途中で止めるわけにもいかずしばらく手を引く。夕暮れに染まる砂浜をお姫様が満足するまで歩き、丁度いい岩に腰をかけた。ハンカチを敷くサービス付きだ。

 

「あら、そこまでしてくれるなんてますます従者ね」

 

「王子様だろうとお姫様相手じゃ従者みたいなもんだろ?僕は尻に敷かれるタイプなのさ」

 

「……とても想像するのが簡単ね」

 

「事実だからな」

 

こんなくだらない会話をできるのも、僕がキリシュタリアじゃないからだ。彼女も気楽に相手できて良い休憩になるだろう。

 

海を見る。果てしなく広がるはずの水平線に見える、嵐の壁を。

 

「異聞帯の嵐、ちゃんと維持できてるようで良かったよ」

 

「空想樹なしでどうやって維持しているのか、私にはさっぱりわからないけれど…………」

 

「そのまんま、()()()()()だよ。伐採したって言ったろ?伐採したものはしっかり利用するもんだぜ。それに、嵐の権能を持つ神霊だって山ほどいる。異星の神にできるなら、宇宙を創った地球の神にもできるさ」

 

「…………エドワードは、凄いわ。いつも誰にもできないことをやってのける。私ではできないことも、貴方は成し遂げてみせる」

 

少し驚いて隣を見る。オフェリアは真っ直ぐ、こちらを見ていた。

 

「どしたん、急に。あんま褒められると調子乗っちゃうんだけど。…………というか、凄いのは僕じゃなくてこの異聞帯だよ」

 

「異聞帯を維持するのも、育てるのもクリプターよ。それに、キリシュタリア様に最も強力な異聞帯が与えられたように、異聞帯とクリプターは密接な関係にあるわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、おう……。ありがとう…………?」

 

マジでどうしたんだ。そんな真っ直ぐな目で見られながら褒められると本当に照れそうなんだが。お前、消えるのか…………?

 

オフェリアは、困惑した僕を見て楽しそうに少し笑う。そして、眼帯を外した。

 

紅く輝く、彼女の瞳。その右目にもはや魔眼としての能力は備わっていなくとも、強い輝きは失われてなどいない。

 

そう、この目だ。

 

彼女の強い意志が宿る瞳。誰かの為に自らの命をも投げ出した、その耀き。

 

僕には、全くもって理解できない。何においても自らの命が最優先の僕には。だから、画面越しに見ていた時からずっと。

 

僕は、彼女の瞳が────────。

 

「ねえ、エドワード」

 

「…………どうした?」

 

「────私、貴方が好き。友達としても、もちろん好きだけど。でも、違うの。別の誰かでもないわ。他でもない、エドワード・エヴァンズに恋をしているの」

 

「────────そうか」

 

「私はずっと、誰かに言って欲しかった。外の世界に出ても良いって。踏み出してもいいんだって。そして、それを言ってくれたのは貴方よ。マシュやヒナコと仲良くなれたのも貴方のおかげ。そして、今私がこうして生きているのも、貴方のおかげなの。だから、私は────────」

 

オフェリアはすこし高揚しているのか、赤くなった顔で話し続ける。恥ずかしがりながらも、僕の目を真っ直ぐ見ながら。

 

そうだ、だから。

 

だから僕は。

 

画面越しに見ていた時からずっと。

 

僕は、彼女の瞳が────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────嫌いなんだ。

 

 

 

 

 

 




日本の異聞帯がこんなことになっていた頃、インドの異聞帯ではペペロンチーノが謀反されてました。インドの神性全てを取り込んだ王に、サーヴァント奪われても生き残ったぺぺさん強すぎない?

それと誤解のないよう言っておきますと、エドワードはオフェリアのこと友達としてとても好きです。異性としてもめちゃくちゃ意識してます。



そして、FGOのストーリーが更新されないと投稿できないこの小説ですが、かなり時間が空くようなら小話やifストーリーでも書こうかと思っています。ifは今のところ「エドワードがう〇ちに行ったことで最初の爆破を免れたら」と「別の理由で生き返ってクリプターと敵対するエドワード」くらいしか思いついていませんが。もし見たいif等あったら参考程度におっしゃってくだせえ。


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彼と彼女とオカマとインド


強化クエのおかげでうちのバスターゴリラも天気の子になりました。今から晴れるよ……!
メイドオルタ?いつか強化くるといいなあ(逃避)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『起源』、というものを知っているだろうか。

 

もちろんその単語自体は知っているだろうが、ここで言う起源とは型月世界における『起源』のことだ。

 

と、偉そうに切り出したは良いものの、実は僕自身もよくわかっていない。

 

まあ簡単に言うと、あらゆるものが持っている自らの本質、宿命、存在意義のことだ。誰しもが起源を持っており、その人物の性格や思考はそれに左右される。らしい。

 

しかし、魔術師の世界ではそれだけでなく、使用する魔術やその適性に影響を及ぼすようなものもある。そこまで強く起源が表に出ている奴は珍しいが。

 

かく言う僕も、少し起源に基づいた能力を持っている身だ。正直その能力が僕はあまり好きではないのだが、だからこそ僕の起源は僕の魔術に影響を及ぼしているのかもしれない。

 

…………なんて引っ張っても特に何かがある訳でもないので、さくっと発表しよう。僕の起源は『奪取』と『譲渡』で、基本的には魔力の移動を可能としている。これのおかげで、北欧では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。『奪取』に関しては、()()()()()ほぼ使えない。遠くからほいほい他人の魔力を奪えたらそれこそ楽だったのだが。もっと頑張れよ、僕を転生させた神様(いるのかどうかは知らんが)。

 

と、まあ。これらの起源のおかげで僕は『強化』と『転換』が得意なのだが(転生を経験したことももちろん関係あるだろう)、僕はこの自身の起源があまり好きではない。

 

最初に言った通り、起源は性格や思考を決定づける。僕は昔からそうだった。他人のものを奪い、そしてそれに簡単に飽きる。飽きて、明け渡す。執着など微塵もないかのように。

 

何が言いたいのかというと、とどのつまり僕は生粋のクズだってことだ。なんと言うか、僕の本当の起源は『性欲』なんじゃないかってくらい女関係がガバガバ。奪うこともあれば、全くの執着もなく手放すこともある。

 

だから、そんな僕には勿体ないのだ。こんなに真面目で、一途で、優しく、綺麗で、他人を想える女の子は。まったくもって()()()()()()

 

彼女はとても魅力的だ。でも、僕は彼女一人を愛することなんてできない。いや、誰かを愛することがそもそもできないのだ。だから僕は変われない。彼女の想いに応えることができない。

 

長々と語ったが、別に起源のせいで人格が曲げられたとかそういう訳ではない。僕の本質がそういう起源なのだ。衛宮士郎のように後天的なものではなく、先天的な起源。

 

だからこそ、どうしようもなく僕はそういう人間で、そういうところが嫌いなんだ。ずっと。

 

そしてそれは、これからも変わらないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、オフェリアの想いには応えられない」

 

「納得いきません」

 

 

 

 

 

…………納得できないって何?

 

「随分と長いこと説明してたけど、それでも私は貴方が好きなの。そんな理由じゃ納得できないわ」

 

「いや、だからさあ。僕はクズでゴミみたいな人間だから。誰か一人の女の子と付き合って────とか無理なんだよ。オフェリアはとても魅力的だし、友達としても凄い好きだ。だからこそ適当に相手したくないというか。相手が適当ならこっちも適当で良いけど、相手が本気なら軽い気持ちで手を出すべきじゃないというか…………」

 

やばい。なんでこんな言い訳してんだ僕。例を見ない長台詞だぞ。

 

居心地が悪くなり、少し頭を掻く。思いの外オフェリアの諦めが悪いというか、意志が固い。

 

「……別に、私一人を見てなんて贅沢なことは言わないわ。エドワードが()()ならそれで良いの。私はただ、貴方に見てほしいの。他の誰かと一緒でもいいから」

 

「…………それが無理なんだよ。オフェリアにはもっとちゃんとした男が似合うし、オフェリアのちゃんとした想いに適当に応えることはしたくない。僕なりのケジメというか…………」

 

なんというか、彼女は今までの子とは違う気がするのだ。僕という存在を隣における優越感とか、ステータスとか、顔や身体目当てじゃない。『僕』を見ている。その上で好意を抱いている。

 

…………本当にやりづらい。()()()()()()。何故、そうまで他人を想える?物語の登場人物だから?少なくとも、僕が元いた世界にそんな奴はいなかった。ぐっちゃんも、マシュも、立香も。みんな簡単に『他人』を『自分』の上に置く。彼らにとって『自分』は一番じゃない。

 

少しだけ、めんどくさい思考に陥る。別に本気で悩んでいるわけじゃないし、解決する気もないが。それでも時々考えてしまう。

 

そんな僕の様子を見て、少しだけ息を吐いたオフェリアが切り出した。

 

「…………貴方の気持ちはわかったわ。でも、別に私のことが嫌いなわけじゃないようだし。意識してくれてるってこともわかったから。これからも私は貴方が好きで、その想いは諦めない。きっと、他の誰かを好きになることもないわ」

 

「…………重いなあ」

 

スッキリとした笑顔でそう告げる彼女に、思わず素直な感想が零れる。重いってなによ、なんてむくれるもんだから、つい僕も笑ってしまった。

 

結局、そのまま二人で僕の家に帰った。行きと同じ、友達のまま。

 

だけど、ほんの少し。

 

気持ちは進んだ気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「どうしたぐっちゃん。何その顔」

 

「オフェリアから色々聞いたのよ……」

 

後日、話があるとぐっちゃんに呼び出された僕は謎の視線を向けられていた。

 

なんというか、怒ったような、呆れたような。そんな視線。

 

「……アンタねえ。散々遊んでるんだからあの子の気持ちにも応えてあげなさいよ」

 

「いやいや、そこは友達として許しちゃダメでしょ」

 

「今更アンタに一途なんて期待してないわよ。それにオフェリア本人がそれでもいいって言ってるんだから」

 

「ぐっちゃんにも言ったのか…………。てかやっぱ人間と価値観違うなあ、真祖」

 

「当たり前よ。人間なんかと同じ価値観でたまるかっての」

 

いやまあそうだけども……。他人の恋愛に関しては奔放なのね。自分はあんだけ一途なくせに。

 

そんなことを考えながら彼女を見ていると、ふと思いついたかのように口を開く。

 

「それに、オフェリアもちょっとは気合が入ったようだし、これからはアピールもしっかりしてくるんじゃないの?」

 

「…………なるほど」

 

たしかに、もう僕に気持ちは知られてるわけだし。そう考えると少し自分の理性に自信がなくなってくるが、まあ頑張るしかないだろう。頑張れ、僕の鋼の意志。

 

「まあでも、気まずくなったりしなくて良かったよ。お互い友達としても好きなわけだし、そこらへんは心配いらなかったね」

 

「ホント、人間は面倒くさいわね」

 

「一番めんどくさい恋愛してる奴に言われたくねえ」

 

あっ、叩かれた。痛い。

 

項羽さま、あんたの嫁さん鬼ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、最近ごたごたしていたが、ようやく色々と落ち着いてきた。異聞帯や空想樹、ぐっちゃんやオフェリアのこともなんとか一段落したのだ。多分。

 

なので、お待ちかねのインド異聞帯観察である。この前ぺぺと通信したところ、なんと自身の異聞帯の王に裏切られたらしい。そろそろストーリーの始まりといったところだろう。

 

しばらくすると、案の定カルデアがインドに現れた。そこからはまあ本当に色々とあったのだが…………。一つ言いたいことがある。

 

 

 

 

ぺぺ、それ僕のポジションじゃね?

 

 

 

 

僕の目標というか、今後の身の振り方として『ベ〇ータ・ピッ〇ロポジション』というものがある。ようするに「最初悪役だったのに負けてからなんやかんや仲間になる奴」だ。

 

最終的にはこれに落ち着くことで生きながらえようと思っているのだが…………。

 

ぺぺに先越された!!!!!!

 

かんっっっぜんに理想ポジションじゃん!シャドウボーダーに乗って、立香やマシュと行動を共にする!そして異聞帯を攻略する!

 

 

…………なんだろう、アルジュナとかカルナとかガネーシャとか。インドは色々とぶっ飛んでて凄かったが、ぺぺが一番記憶に残ってしまった。ほんと生存能力高いな。

 

ちなみに、何度か助けようか迷ったが、デイビットやコヤンスカヤがいたので僕のやることは特になかった。まあさすがに干渉しすぎるのもな。ストーリーの流れ変えちゃうかもだし。

 

……………………今更か。

 

これでカルデアに敗北したクリプターは綺麗に二つに別れたな。カドックとぺぺがキリシュタリアの異聞帯に。オフェリアとぐっちゃんが僕の異聞帯に。

 

ちなみに、ぐっちゃんが僕の異聞帯にいることはクリプターに報告してある。コヤンスカヤがあれだけ目の前にいたので当然っちゃ当然だが。オフェリアについては、未だ死んだということにしているままだ。…………ぶっちゃけ、神様の力で大体のことは誤魔化せることが判明したので、隠す意味があるのかと最近思っている。

 

……まあいいか。クリプターの面々はともかく、異星の神は全くもって信用ならないし。

 

にしても、もう四つ目の異聞帯が攻略されたのか。僕のを含めてこれで半分。もし原作通り進むなら次はキリシュタリアのとこになる。

 

めちゃくちゃ気になるなあ。リーダーが五番目て、普通は七番目だろ。僕がいる時点で順番もクソもないような気はするが。てかよく今まで僕のところ来なかったな。これで八番目とかだったら嫌だよ?ラスボス感出せねえぞ、僕。

 

まあしばらくは適当に修行して待っておこう。生き残るためには鍛錬あるのみだ。タケミカヅチやスサノオ、項羽にも色々教えてもらおう。

 

目指すはストーリーの完結、そして僕の生存だ。そのためなら()()()()()()()()()()()()

 

全てにおいて優先されるべきは僕の命なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────ふと、目が覚める。

 

 

 

未だ覚醒しきっていない意識のまま、私のためにわざわざ用意されたベッドから身を起こす。日本の異聞帯には全く似合っていないが、やはり床に直で寝るよりは落ち着く。

 

辺りを見渡すが、周囲は真っ暗だ。どうやら変な時間に起きてしまったらしい。

 

どうにもそのまま寝れる気がしなかったので、私は灯りを持つと部屋の外へ出た。魔力を通すと光るランプのようなものだ。そして、彼────エドワード・エヴァンズの家の中を歩きながら思う。改めて、同じ建物の中で生活しているのだと。

 

…………意識すると恥ずかしくなってきた。

 

ふられたとはいえ、まだ好きなものは好きなのだ。慣れるのも難しい。

 

……………………ふられたのよね……。

 

「はぁ…………」

 

思わずため息が零れる。諦めていなくとも気が滅入るというものだ。あの鈍感(?)頑固女たらしを落とすにはどうしたらいいのだろうか。

 

一応人妻であり、想い人と相思相愛であるヒナコにアドバイスを求めたりはした。ただ、思ったよりプラトニックというか、純情な彼女の意見はあまり参考になりそうになかった。なにせ恋愛経験が一つしかないのだから。

 

私が言えたことではないが。

 

そんなことを考えながら、水でも飲もうかと歩いていると、ふと物音が聞こえた。

 

なんとなく覚えがあったので、とある部屋に向かう。

 

そこにはやはりというか、色々な武器を振るエドワードの姿があった。

 

彼が深夜に体を動かしていることは珍しくはない。今の私のように眠れない時は少し鍛錬をするらしい。実際今までにも何度か目撃したことはある。そういった時のためにわざわざ運動部屋というか、修行部屋のようなものを用意しているのだ。

 

部屋の中は僅かな灯りのみで、彼は白い月の光に照らされていた。

 

剣や槍、薙刀や日本刀、メイスのようなものやよくわからない武器など、とにかく色々なものを使っている。その動きはとても洗練されていて、型や舞いとは違った印象を受ける。

 

彼が最も効率的に動ける、実戦的であることを突き詰めた動き。

 

それでも、月光に照らされる彼の姿は、とても美しかった。

 

──────彼は、一体何を恐れているのだろう。

 

異聞帯に来る前から、彼はとても強かった。研究や魔術のためではなく、戦闘に関する技術についてのみ、ひたすら鍛え続けてきたらしい。

 

そんな彼は、異聞帯の神様からのバックアップを得て更に強くなった。それこそ、スルトにダメージを与えられるほどに。

 

だからこそ、より疑問なのだ。彼はまるで、何かに追われるかのように自身を鍛え続けている。何故、そこまで自らを追い込むのか。何故、時おりとても不安そうな表情をするのか。

 

私には、わからない。彼はその胸の内を明かさない。

 

それは私を含め、誰にも。

 

いつか、彼を支えられるようになりたい。彼に頼って貰えるようになりたい。いずれ彼の不安に寄り添う者が、私であったならば。

 

しばらく見ていると、まるで最初から気づいていたかのようにエドワードが声をかけてくる。……わかっていたなら反応してくれればいいのに。そんな気持ちも、彼の意地悪気な笑顔を見るとすぐに消え去ってしまう。なんともずるい男だ。

 

今は、ただ。

 

こうして彼の隣にいよう。彼の傍にいよう。

 

それが私────オフェリア・ファムルソローネにできることで、私のしたいことだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





随分前から書いていたので前書きにタイムラグがありますね。

というわけで、これにてインド編(インドとは言ってない)終了です。5章くるまでifでも書いとこうかな…………。投稿するまでに5章きそうとか思った奴はガンドな。

忙しかったのですが、ギリギリなんとか北斎を宝具5にできました。イベントは計画的にやれってあれほど(ry

ではまた、すぐにお会いしましょう(希望的観測)。



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ifというかパラレルというか たのしい人理修復編 オイオイオイ 死ぬわオレ

とりあえず書き始めてみることが大事的な。


 

 

 

 

 

遂に、遂にこの日が来た。

 

レイシフトによる人理修復。そのファーストオーダーの実行日が遂にきたのである。ファーストオーダーとは、よくわからんが、なんか人類の未来なくなってね?やばくね?的な流れで計画された作戦だ。

 

ざっくり説明すると、なんか冬木って場所に人類の未来がなくなった原因あるらしいべ。じゃあタイムスリップしてその原因消そうや。というものである。ざっくりしすぎぃ!

 

だが、実際こんな感じなのでしょうがない。まあとにかく、ここしばらくのカルデアはこのために活動をしてきた。僕を含むAチームや、その他マスター候補を含めた47人の訓練。スタッフやオルガマリー所長、ロマンの研究やら準備。その集大成が今日、いよいよ発揮されるのだ。

 

いや、まあ。どっかのクソダサシルクハットonモジャモジャ杉田のせいで爆発オチが待ってるんですけどね。爆発オチなんてサイテー!

 

と言っても、そこは大した問題ではない。なぜなら僕はほぼ100%復活できるからだ。爆発で死んでも安心である。

 

というのも、キリシュタリアを筆頭に、クリプターの面々とは仲良くやっている。つまり僕一人だけ復活から省かれる、なんてことは起こらないはずなのだ。…………だよね?起きないよね?

 

ぶっちゃけ爆破から逃れることや、仕掛けられた魔術を解除することはできる。ただその場合、レフ・ライノールに目をつけられる可能性があるのだ。最悪ゲーティアに目をつけられたらもうバッドエンド一直線である。そんなん無理ゲーだ。

 

だいたい、1部と1.5部と2部を乗り越えるルートと、2部だけを乗り越えるルートなら後者の方が簡単に決まってる。なら一度死んだとしても、死なないために爆破に巻き込まれようじゃないか。

 

…………オルガマリー所長やロマンには悪いが、僕は僕の命のために行動させてもらう。もしかしたらこの世界の立香くんが頑張ってくれるかもだし。

 

というわけで、あと2年は寝させてもらおう。2年後、目覚めたら僕は人類の敵だ。少しは風格とか出す練習しとこうかしら。

 

そんなことを考えながら、僕はオルガマリー所長に居眠りから叩き起された藤丸立香ちゃんを見ていた。

 

……………ぐだ子かぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぐだ子が追い出されてからしばらく。僕達マスター候補は既にコフィンの中へ入っていた。気分はまさしく棺桶の中の死体である。

 

そんなわけでじっとしていたら、段々不安になってきた。やばい。死ぬのめっちゃ怖い。いや、チキンとか言わないでくれ。いくら生き返ることができるとはいえ、怖いものは怖いのだ。一瞬で死ねたらいいなあ。なんか地味に意識残ってるとかが一番最悪だぞ。

 

…………というかカルデア戦闘服がピチピチすぎて全然落ち着かない。前から思ってたけど皆よくこんなの平然と着れるよな。キリシュタリアやオフェリア、マシュとか、すげえキリッとした顔でこの全身タイツ着るもん。ぐっちゃんと僕だけだぜ、このタイツに抵抗あるの。

 

そんなくだらないことを考えて意識を逸らしていると、外が騒がしくなってきた。いよいよ始まるのだろう。FGOのストーリーが。

 

「……………………」

 

コフィンの中にいても、色々レイシフトの準備をしているのが聞こえてくる。

 

「……………………………………?」

 

待って、やばいかも。

 

「……………………………………………………!」

 

最初はふとした違和感だった。だが、それはだんだん確信へと変わっていく。

 

そして、()()()()

 

 

 

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!お腹痛い!!

 

 

 

やばい、めっちゃう〇ち漏れそう!

 

そう、唐突な腹痛である。一瞬「なんかお腹痛いかな?」となった後に「やっぱ大丈夫かも」と思ったが最後。人間が油断した瞬間を襲うビッグウェーブ。

 

ちょ、ちょっと待って。一旦出よう!出発(というか爆破?)が遅れるのは気が引けるけど、漏らすよりはマシだ!

 

そう思いコフィンの扉を開けようとするが────────。

 

開かねえ!なんだこれ!ロックとかかかるの!?マジでやばいって!!

 

今まで、こんなギリギリにコフィンから出ようとしたことがなかったので知らなかった。扉が開かない。完全に閉じ込められている。あまりにもギリギリすぎたのか。しかし、ギリギリというのならこっちのお腹の方がギリギリなわけで。

 

「ごめん、オルガマリー所長!」

 

一応所長に謝りながら、無理やり扉を殴る。焦っていたせいか、扉は衝撃とともにかなり吹っ飛んだ。加減もくそもない。クソはすぐそこに迫っているが。

 

「んなこと言ってる場合か!」

 

コフィンから飛び出すと、華麗に着地。そのままクラウチングスタート。魔力放出による全力ダッシュでトイレを目指す。当然スタッフやコフィンの中のマスター候補達も焦るが、周りの制止の声なんかガン無視である。

 

「ちょっ、嘘!?止まりなさい、エドワード!」

 

「ごめんオルガ、僕は止まらねえからよ!!」

 

オルガマリー所長の焦った顔は可愛いが、今は構っていられない。一刻も速くトイレに辿り着かねば。人間の限界を超えた速度で出口を目指し走り続ける。

 

「エドワード!止まりたまえ!!」

 

すると今度は僕の正面、出口の前に立ち塞がる影が一つ。レフ・ライノール教授だ。おそらくAチームである僕のことはしっかり殺しておきたいのだろう。わざわざ見逃す理由もない。

 

────────だが、

 

「無駄だ……!」

 

一瞬、左に重心を傾ける。目線も少し左に。当然、レフ教授はそれにつられる。そのタイミングで僕は体を左にターンさせ、一気に右へ加速。そのまま壁を走りレフ教授の横を通り抜け、再び床へと着地した。そして僕は、フェイントを織り交ぜることで無事レフ教授を突破し、廊下へ脱出したのだった。

 

あとは時間との勝負!トイレまで僕の脚なら5秒でいける!全力でぶっとばせ!!!

 

結局、無事間に合った僕は便座の上で爆破の振動を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────やってしまった。

 

目の前には瓦礫と炎が広がり、レフ教授による爆破が実行された後だということが一目でわかる状況になっていた。

 

そんな惨状を気にせず、僕はある場所へと足を進める。Aチーム9人目のメンバー、マシュ・キリエライトのコフィンがあったはずの場所へと。

 

そこには、巨大な瓦礫に下半身を潰されたマシュと、そんな彼女に寄り添う藤丸立香ちゃんの姿があった。

 

その光景を見て、ようやく僕は実感する。やってしまったと。完全に1部から参入フラグが立ってしまったと。

 

『コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。レイシフト定員に達していません』

 

『該当マスターを検索中…………発見しました』

 

『適応番号39 Edward(エドワード) Evans(エヴァンズ) 適応番号48 藤丸立香をマスターとして再設定します』

 

『アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始します』

 

機械的な、無機質な音声が響く。

 

「…………あの…………エドワード、さん。せん、ぱい。手を、握ってもらって、いいですか?」

 

マシュが息も絶え絶えといったふうに口を開く。その言葉に、僕と藤丸立香ちゃんは自然と体が動いていた。マシュの両手を、それぞれしっかりと握る。最初は急に現れた僕に驚いていた彼女も、すぐに落ち着いてマシュの手を握り続けていた。

 

二人とも、いつの間にかマシュに寄り添っていた。だが、おそらく、僕と彼女では想いがまるで違うだろう。藤丸立香ちゃんは、マシュの為を想って手を握っているはずだ。でも、僕は違う。

 

これは、覚悟だ。

 

これから先のグランドオーダー。その尽くを乗り越えると。必ず生き延びてみせるという覚悟。もうクリプターとして復活できるかはわからない。ならば死ぬわけにはいかない。

 

─────────そういう覚悟だ。

 

『全工程 完了(クリア)。ファーストオーダー 実証を開始します』

 

いいぜ、やってやるよ。

 

前人未到の聖杯探索、人理修復。

 

何がなんでも成功させて、絶対生き残る!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────と、啖呵を切ったはいいものの。

 

「…………暇だなあ」

 

なんというか、今の僕のテンションは下がりきっていた。あの時はちょっと変なテンションが入っていたが、いざ始まってみると拍子抜けというか。手応えがなさすぎる。

 

手持ち無沙汰気味に、戦利品としてゲットしたボロボロの槍を手の中で回す。周囲は見渡す限りの炎、炎、炎。そして瓦礫。

 

そんな炎上、崩壊してしまった都市を、僕は()()()()()()()()()()()()()

 

これが全て襲ってきたスケルトンの成れの果てだというのだから、ほとほと呆れる。いったいどれだけいるんだ。

 

「マシュやオルガマリー所長、ぐだ子とも合流できないし。通信も繋がらない。幸先悪すぎるわ」

 

思わず愚痴が零れる。ここまでスケルトンだらけだと、そうなってもしょうがないというものだ。

 

まあしかし、全く収穫がなかったわけではない。ボロボロだが武器は大量に手に入れたし、なにより虹色に光る金平糖のような石を拾った。

 

そう。何を隠そう皆大好き、聖晶石である。やったね!これでガチャが回せるよ!

 

まあ、聖晶石といっても要は魔力の塊的なものだ。これを使えば英霊召喚に必要な魔力やらを賄ってくれる、らしい。多分。

 

後は魔力が集まるポイント─────霊脈地に魔法陣的なものを描き、中二リリック全開の詠唱をすることでサーヴァントが呼べる、というわけだ。

 

これでも僕はマスター候補のAチーム。マシュの盾がなくとも自力で完璧な召喚サークルを描き、詠唱をすることぐらい朝飯前である。

 

とりあえず霊脈地を探索していく。すると、洋館のような、屋敷が見える森に辿り着いた。ここなら申し分なさそうだ。

 

…………なんかここ見たことある気が。まあ冬木の街並みはアニメやらで見たことあるし。既視感があってもおかしくないだろう。

 

レイシフト直前の状態からこんなことになったので、一応道具は揃っている。持っていた水銀を使い魔法陣を描けばあとは詠唱のみだ。

 

ちなみに触媒はない。縁召喚、まあ自然と相性の良いサーヴァントがくる召喚方法でいく。

 

「えーと、なんだっけ。あー、『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ』」

 

長ったらしい詠唱を思い出しながら、聖晶石を魔法陣に放り込む。

 

「『閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する』」

 

詠唱が進むと次第に魔法陣が輝き出し、魔力の奔流が溢れる。

 

だからだろうか。

 

溢れ出た魔力に釣られてきたのか、()()()()()()()()()()()()()

 

…………そうだ、そりゃあ見覚えがあるはずだ。

 

FGOでは何かを守っていたために登場しなかったサーヴァント。本来なら放っておいても問題がないサーヴァント。

 

しかし、僕は()()()()()()()()。彼が守るこのテリトリーに。彼が守る少女の遺体に。

 

ここ、アインツベルンの森やんけ────────。

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼!!」

 

木々を薙ぎ倒しながらこちらに向かってくる巨大な影。その姿はまるで岩のようで、彼にかかれば僕なんか簡単に殺されてしまうことは一目でわかった。セイバーオルタによる汚染でシャドウサーヴァントになってるとはいえ、元は万夫不当の大英雄。宝具が使えなくとも勝てるような相手ではなかった。

 

そう、彼の名はヘラクレス。半神半人の伝説の英雄だ。

 

ッッッッッやっばい!!!

 

「『──────告げる!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!』」

 

秘技、超高速詠唱(早口)!

 

「『誓いを此処にッ!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者!』」

 

やばいやばいやばい間に合え間に合え間に合え間に合え!

 

詠唱の途中だろうがお構い無しで迫ってくるバーサーカー。既にその距離は限りなく近い。

 

そして、遂にその斧剣が僕に向かって振り下ろされる──────。

 

「『汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!!』」

 

瞬間、爆発的な光と魔力が溢れる。サーヴァントが召喚される前兆、そして繋がるパス。僕は右手の甲に走る熱を感じながら、簡潔に、わかりやすく、それでいて最優先の命令を下す。

 

「頼んだ!!」

 

すると、青黒い炎と魔力による雷が走り、鋼鉄の如きバーサーカーの巨体を吹き飛ばした。

 

「ハ。ハハハ。クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

そして響く高笑い。マジか、まさかのお前…………!?

 

「俺を呼んだな!復讐の化身を!そうとも、俺こそ黒き怨念。エクストラクラス、復讐者(アヴェンジャー)である!」

 

衝撃によって生じた煙が晴れると、そこには僕の召喚したサーヴァントが立っていた。黒に近い深緑の外套とハット。病的とも言える白い肌。長い白髪の間からは黄金に輝く、復讐に燃える瞳が覗く青年こそ───────巌窟王、エドモン・ダンテス。

 

いや、僕とお前絶対そんなに相性良くないだろ…………!

 

なんの根拠もない直感で、僕はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、始まりました人理修復編。

サーヴァントは本編と色々変えた方がいいかなー、と思いこうなりました。後悔はしていない。

次回で冬木は終わらせたいです(終わらせるとは限らない)


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聖杯さえあれば大抵のことはどうにかなる

毎度のことですが誤字報告ありがとうございます。誤字報告はマジで助かっているのでめちゃくちゃありがたいです。

という感じで、特異点Fはこの話で終わりです。ちょっと長くなりましたが。


 

 

 

 

巌窟王エドモン・ダンテスの攻撃により後方へ飛ばされたヘラクレス。しかし、汚染されていようが流石は大英雄。傷つきながらもすぐに立ち上がり、こちらを睨みながら低い声で唸る。前々から思っていたが、あれどう考えても人の声じゃねえだろ。

 

「どうした、何を呆けている。お前が指示を出さねば死が待つのみだぞ」

 

「…………そうだな」

 

何を考えているのかよくわからない笑みを浮かべながら、こちらを見る復讐者(アヴェンジャー)。そうだ、ここは戦場だ。今こそカルデアでの訓練の成果を、Aチームマスターの力を発揮する時だ。

 

「◼◼◼◼◼◼◼◼◼◼!!!!」

 

しかし、そんな戦略など知ったことかと言わんばかりに真っ直ぐ、単純に、それゆえに強力な突進を仕掛けてくるシャドウバーサーカー。

 

どうする?撤退するか、それとも迎撃か。回避か。防御にまわるか。一瞬のうちにいくつもの作戦が浮かび上がる。刹那の時間は思考により限界まで引き伸ばされ、あらゆるものがスローモーションに見えた。

 

そして、僕が出した答えは──────────。

 

 

 

 

 

「令呪をもって命ずる!宝具で確実に殺せ!僕が殺される前に、絶対仕留めろ!」

 

 

 

 

 

開幕令呪による宝具ブッパだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、さっすが巌窟王。相手がシャドウサーヴァントってのもあったけど、意外とあっさりいけたね」

 

「当然だ。理性を失ったうえに宝具も使えぬ狂戦士など俺の相手ではない。───────保護すべきものだけは本能として残っていたようだがな」

 

結局、宝具さえ撃ってしまえば割とこっちのモンだよね。カルデアの令呪は強制的な命令権がない代わりに、一日一角補充されるし。使い所は大事だが切るときは切る。そういう手段(カード)だ。

 

ともかく、そんな令呪によってバックアップを得た彼の宝具、『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)』によってバーサーカーは消滅した。スカスカシステムのせいで親の顔より見た宝具である。

 

そして、ヘラクレスとの戦闘を終えた僕達は現在、カルデアの面々と合流するために崩壊した都市をブラブラしていた。もちろんしっかり探しつつ、ブラブラだ。

 

巌窟王には『巌窟王(モンテ・クリスト・ミトロジー)』という常時発動型宝具でステータスやクラスを隠蔽させている。ゲームではあまり関係なかったが、現実ではこういった情報一つが命取りとなるのだ。そこらへんしっかりしないとね。ちなみにこの宝具、めちゃくちゃいっぱい効果がある。これからも活躍してもらうこと間違いなしだ。

 

そんなふうに、ちょいちょい遭遇する雑魚エネミーは自分で倒していると、ようやくカルデアの面々を発見した。

 

かなり露出度の高いピチピチコスチュームに身を包む、デミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライト。四苦八苦しながら指示を出している新米マスター、藤丸立香ちゃん。なんとか威厳を保とうとしつつも、涙目&へっぴり腰&脚ガクガクの、オルガマリー・アニムスフィア(幽霊)。そしてカルデアからホログラム越しに通信しているロマニ・アーキマン。

 

ようやく、我らがカルデアの(今の状況での)最高戦力が揃ったのだった。

 

…………改めて、ヤバいね。

 

実際、今マシュは二騎のシャドウサーヴァントを相手に苦戦している。遠くからだし、相手は黒い靄みたいなものなのでよく見えないが、おそらくランサーとアサシンだろう。真名はそれぞれ武蔵坊弁慶、呪腕のハサンだ。ということは、もうシャドウライダー、メドゥーサは倒したということか。

 

そして、どうやら戦闘は始まったばかりらしい。つまりこのタイミングで確かキャスターのクー・フーリンことキャスニキが助けに入ってくれるのだが、それを当てにするのもアレなので早めに僕達も助けに行くとしよう。

 

「というわけで、いくよアヴェンジャー」

 

「いいだろう。だがキャスターが此方を観察している。警戒を怠るなよ、マスター」

 

なんと、キャスニキの視線に気づいていたとは。相変わらず底の知れないサーヴァントである、と同時に頼もしくもあるが。

 

「…………どうやらお前も気づいていたか」

 

「当然。というかあっちがそんなに隠してないしね。危険を察知できなきゃ生き残ることもできないってものさ」

 

自らのサーヴァントに探られている気もするが、軽く流しておく。残念ながら僕からは何も出てこないので、さっさと助けに行くのがベストだ。

 

ということで、シャドウランサー、シャドウアサシンの隙をつくために急襲を実行する。マシュに攻撃を加えようとしていた彼らを、僕と巌窟王でそれぞれ跳ね除けた。

 

「ヌゥ……!何者ダ…………!?」

 

「ふっ。聞かれたからには答えよう。僕こそが人理継続保障機関フィニス・カルデア所属Aチームマスター、エドワード・エヴァンズ!そして!」

 

「クハハハハハハハハハ!そのサーヴァント、エクストラクラス、アヴェンジャー!!」

 

あら、意外とノリが良い。

 

「二人揃って」

 

『エドエドコンビ!』

 

ドカーン。

 

決めポーズと共に背後で巌窟王の炎が燃え上がる。こいつ、粋な演出しやがるぜ……!ちなみに僕のポーズはギ〇ュー特戦隊のリ〇ーム。巌窟王は背中を向けながら少しだけ前を見るいつものポーズだ。

 

「えぇ…………」

 

ぐだ子の呆れたような、引いたような声が聞こえた気がするがそこはスルーだ。気にしたら負けである。

 

「え、エドワードさん!ご無事でしたか────────」

 

「えどわあどおおおおおおおおおおお!!!!」

 

嬉しそうにこちらを見るマシュが何かを言おうとしていたが、その言葉はどっかのポンコツ所長の情けない声で掻き消される。

 

「わたし、ほんっっっとうに不安だったの!いきなりこんなことになって、レフとは連絡つかないし!ロマニが最高責任者になってるし!唯一無事なマスターは魔術の『ま』の字も知らないド素人だし!なのにサーヴァントはマシュ一人で、よくわからない変なサーヴァントにも襲われるし!私本当に────────!」

 

「あー、わかったわかった。オルガマリー所長はよく頑張ったよ。えらいえらい」

 

顔面を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしたオルガマリー所長が僕の腰にすがりついてきた。正直汚くてちょっと嫌なのだが可哀想になってきたので思わず頭を撫でる。

 

「Aチームマスターの貴方がいるなら何も問題ないわ!それに強そうなサーヴァントを連れてるし、令呪も出現してる!これでこの特異点も修復できたも同然ね!」

 

落ち着いたのか、少しマシな顔になったオルガマリー所長がそう言って胸を張る。なんというか。

 

「随分と高く評価してくれてるようだけど、どったの?遂にデレ期がきたの?」

 

「いえ、貴方って人としても魔術師としてもクズだけど、こんな状況ではとても頼もしくて……!戦闘に関する魔術だけは一流だから!」

 

お、おう…………。全く褒められてる気しないけど。全然デレ期じゃなかった。

 

「うわー…………。金髪碧眼の外人さんだ」

 

そんなとき、横から小さな呟きが聞こえる。どうやら藤丸立香ちゃんが喋ったのかな。

 

「ハロー、ミス立香。僕の名前はエドワード・エヴァンズ。気楽にエドとかエドワードって呼んでくれ」

 

「は、はろー!じゃあよろしく、エド!えっと、私のことももっと気軽な呼び方でいいよ?」

 

「じゃあ立香ちゃんで。よろしく立香ちゃん」

 

「うん!」

 

パッと、花のような笑みを浮かべる立香ちゃん。なるほど、かわええ。

 

そんなことを考えていると、通信越しのロマンが逸れた話を元に戻す。

 

『いやでも、所長の言うことはともかく。エドワードくんがいるのは本当に心強いよ!これでマスターもサーヴァントも二組!あっちと対等だ!』

 

「────────いや、()()()()()()()()。軟弱男」

 

興奮した様子で喜ぶロマンの言葉に、突然現れた男がそう返した。ロマンが「軟弱男…………また言われた……」とへこんでいる。

 

「……!あなたは…………?」

 

困惑した様子で尋ねる藤丸立香ちゃん。それに対し急な乱入者は、

 

「ここの聖杯戦争のサーヴァント、キャスターだ。一先ずアイツらをどうにかしようぜ」

 

獰猛な笑みで、協力を申し出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の戦闘はカットである。だってすぐ倒しちゃったんだもん。

 

そこからは原作同様順調だった。突如現れたキャスター、クー・フーリンとお互いに情報交換した後、キャスニキの宝具特訓により仮ではあるがマシュは宝具の発動に成功した。違いがあるとすれば、魔力量や契約後のサーヴァントのステータスなどを鑑みた結果、僕がキャスニキの仮マスターになったことくらいか。キャスニキも絶好調だぜ!って感じでテンションアップである。

 

「それにしてもすげえな、坊主!キャスターのクラスじゃあちと物足りねえ感じだったが、このステータスならあの野郎とも決着をつけられそうだ」

 

そう言って僕の背中をバンバン叩くキャスニキ。強いなあ。

 

ちなみに、あの野郎とはご存知赤い弓兵。シャドウ化してるのかしてないのかよくわからんアーチャー、エミヤだ。

 

今、僕達はこの特異点の原因と思しき冬木の大聖杯を回収しに、アーチャーとセイバーの元へ向かっている。

 

うーん、他のサーヴァントはともかく。この二騎とにかく意味深なことを言いまくる。特異点Fは伏線と共に謎も多く残る場所だ。正直今は触れる必要がないというか、原作では現段階で全く触れられていないので突っ込むつもりもない。やぶ蛇になっても嫌だし。

 

結局、やることはエミヤとアルトリアオルタを倒して聖杯回収。これだけである。

 

「というわけで、どんな事情があろうとここは通してもらうぜ」

 

「…………そうか」

 

眼前にはエミヤ。対するこちらは僕とキャスニキ。巌窟王にはマシュ、立香ちゃん、オルガマリー所長について行ってもらった。すぐに追いつくつもりではあるが。

 

予想通りというかなんというか。キャスニキとアーチャーは意味深な会話を交わしている。…………二部まで生き残れたとしても憂鬱だなあ。謎を残すなよ、怖いだろ。

 

が、しかし。僕は空気なんて読まない。会話の途中だろうが攻撃をしかける。アーチャーもまさかマスターの方から突撃してくるとは思わなかったのか、一瞬反応が遅れた。

 

「くっ…………!」

 

流石はサーヴァント。結構本気で迫ったのだが防がれてしまった。そこで背負っていた武器を取り出す。最初は槍での突き。防御されるのと同時に壊れたので今度は剣を取り出す。また壊れる。

 

……いや、スケルトンの武器脆いわ。

 

一旦離脱しつつ苦し紛れに弓で矢を放つ。しかしその攻撃も例の夫婦剣、干将と莫耶に防がれてしまう。お返しとばかりにブーメランのようにその剣を投げてくるが、こちらも咄嗟に弓で防御する。一合で砕け散ったが。

 

だがまあ、一瞬でも動揺を誘えたなら十分だ。キャスターが宝具を発動するための時間稼ぎはできた。

 

入れ替わるようにキャスターが前に出る。アーチャーは戻ってきた剣で斬りつけようとするが、キャスターは杖を槍のように回し、突き、薙ぎ払う。さすがはクー・フーリン。僕の身体強化もやりつつ宝具も準備しながらで、なお戦闘ができるとは。

 

そしてアーチャーの体勢が崩れた瞬間、キャスターの宝具が発動する。

 

「今だ、キャスター!」

 

「おうよ!焼き尽くせ木々の巨人!『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!」

 

まるで藁人形をそのまま巨大にしたかのような、燃え盛る巨人が現れる。その巨人はアーチャーを捕らえると、そのまま押し潰した。

 

「──────────なるほど」

 

僕の魔力によって炎の勢いが増した宝具は、そのまま何かに納得したように呟くアーチャーを燃やし尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これ、僕達必要か?一瞬そんな考えが過ぎる。このまま僕とキャスニキ無しでも勝てそうっちゃ勝てそうだ。

 

冬木の大聖杯とセイバーが待つ洞窟内部の空洞、そこに僕とキャスニキが着いた時には、既に戦闘はクライマックスだった。

 

全てを呑み込む闇と力の奔流。セイバー、アルトリア・ペンドラゴンオルタの宝具。聖杯のバックアップにより連発を可能としたそれを、マシュの宝具で対抗し、なんとか防いでいる。

 

今も辛うじて拮抗しているのは彼女───────藤丸立香ちゃんのおかげだろう。彼女は令呪を使用し、マシュの盾を、マシュを、自らの手で支えていた。

 

そうだ。これだ。

 

主人公とマシュの出す輝き。絶体絶命の時にこそ、より色濃く光るその強い意志。これがこの旅には不可欠なんだ。

 

巌窟王にはあまり手を出すなと言ってあったので、今も大人しく二人を見守っている。オルガマリー所長は腰抜かしてた。

 

僕が生き残るためには、このグランドオーダーを乗り越えるには、二人の成長が不可欠なんだ。マシュと立香ちゃんが成長しなければ僕は生き残れない。

 

そして、どうやら冬木は乗り切ったようだ。セイバーの宝具が消えた後には、しっかりカルデアの面々が生き残っていた。

 

「よく頑張ったよ、二人とも」

 

「エド…………!」

 

今にも倒れ込みそうな立香ちゃんを支える。マシュはまだ自分の力で立てているが、彼女はただの人間だ。その負担はサーヴァントとは比べ物にならないだろう。

 

「だから、後は任せてくれ」

 

「────────うん!」

 

僕と巌窟王、キャスニキの三人が前に出る。女の子三人組には後ろで休憩してもらおう。

 

「────────来るか、カルデアのマスター。クリプターよ。よもやキャスターまで従えているとはな」

 

「従えてないよ、これは対等な関係、協力だ」

 

「………………フッ」

 

僕を見て少し笑う騎士王(黒)。くそお、意味深な雰囲気出しやがって。謎の伏線を張るなっての。

 

恨みがましくセイバーオルタを睨む僕の横で、キャスニキが彼女が喋ったことに対して驚いている。セイバーは割と喋るイメージだが、彼の中では違ったらしい。

 

まあ話もひと段落ついたところだし、とりあえず。

 

「『譲渡(gift)』」

 

巌窟王とキャスニキ、ついでに後ろで疲労困憊のマシュと立香ちゃん、オルガマリー所長にも僕の魔力を流し込む。滅多に使わない僕の起源由来の魔術だ。

 

『────────な、これは!他人の強化!?強化魔術が得意というのは知っていたけど…………そこまでできるなんて!』

 

「凄い…………。なんだか元気になってきました」

 

「ほんとだ、でもロマン。これってそんなに凄いの?」

 

「貴方ねえ!凄いも何も、他者の強化なんて強化魔術の中でも最高難易度とされる高等魔術よ!?それこそキャスターのクラスを持つサーヴァントならまだしも、生身の人間がそこまでの領域に辿り着くには想像を絶する才能と研鑽が──────────」

 

「ストップストップ。そんなに褒められると照れるから」

 

信じられないといった様子で立香ちゃんにオルガマリー所長が捲し立てるが、話が長くなりそうなので一旦止める。急にめっちゃ褒めるやん、この娘。

 

ともかく、これでキャスニキのルーンによる強化もあって準備は万端だ。

 

セイバーに宝具を撃つ隙は与えず、一気に畳み掛ける。

 

まずはキャスターの魔術で遠距離から牽制。その対応に追われているセイバーを巌窟王と僕で叩くというシンプルな作戦だ。

 

僕とキャスターの立ち位置逆じゃね?

 

思わずそんなことを考えてしまうのもしょうがないというものだ。近づく程に強くなるセイバーの圧。これ以上進めば殺されると本能がざわつくが、理性で押さえつける。

 

ルーンによる炎に包まれながらも、セイバーにダメージが入っている様子はない。流石の対魔力といったところか。しかし、巌窟王も怨念の炎を用いて更に追撃していく。うちのパーティー炎使い多いな。

 

そんな炎の中から抜け出してきたセイバーを僕が押さえる。黒く染まった聖剣、エクスカリバーを振るうが、魔力で強化した拳で受け流す。素手で防がれるとは思っていなかったのか、少しセイバーの動きが鈍る。

 

そんな僅かな隙もチャンスだ。相手に体勢を整える時間を与えず連続して拳を繰り出す。そんな中でも躱しているのは、未来予知のレベルまで到達した直感スキルの効果か。それでも只の人間だと侮りがあったせいか、右脚での蹴りが脇腹に入る。

 

「ッ……!」

 

そのままの勢いで脚を振り抜く。飛ばされたセイバーは壁に激突し、そこに巌窟王とキャスターの追撃が降り注いだ。

 

「よし!二人とも宝具を撃て!魔力のことなら心配いらない。思いっきりやれ!」

 

「よしきた!くらいな、『大神刻印(オホド・デウグ・オーディン)』!」

 

「いいだろう。『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)』…………!」

 

未だ立ち上がれないセイバーに、二つの宝具が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、意味深なことを言うだけ言ってセイバーは消滅。様子からして全力じゃなかったな、あのサーヴァント。

 

すると、突然キャスターの身体が消えていく。

 

「おぉお!?やべえ、ここで強制帰還かよ!?チッ、納得いかねえがしょうがねえ!坊主、お嬢ちゃん、あとは任せたぜ!次があるんなら、そん時はランサーとして喚んでくれ!」

 

「おー、助かったよキャスター。またな」

 

「ありがとう!クー・フーリン!」

 

キャスニキは最後にこちらに向けて笑いかけると、そのまま消滅した。わかってる。協力感謝するぜ、クー・フーリン。

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ」

 

そして感傷に浸る間もなく現れるレフ教授。その存在に驚きつつ、オルガマリー所長は嬉しそうに駆け寄るが、続く言葉に足を止めた。

 

いや、実際ここのオルガマリー所長ほんと可哀想。やめたげてよ、彼女メンタル弱いんだから。

 

「それにしても、まったく忌々しい。エドワード・エヴァンズ。君は特に殺しておきたかったのだがね。クリプターを一人とはいえ逃してしまうとは。いや、ここは君の直感に敬意を表しておくべきかな?」

 

「ん、ありがとうございます」

 

お礼を言うと凄く嫌そうな顔をされた。解せぬ。

 

しかしそんな表情もすぐに消え、残虐な笑みに変化する。オルガマリー所長の下をわざわざ爆発源にしたことや、今のカルデアスの状態を見せるなど、こいつなかなかのサディストである。

 

そんなことを考えていると、やがてオルガマリー所長が宙に浮き、カルデアスに向かって引っ張られる。カルデアスは、まあよくわからんけど凄いものなので触ったら分子レベルまで分解され死んでしまうらしい。

 

そんなものに段々と引き寄せられていくオルガマリー所長。その顔は恐怖に歪み、涙で濡れていた。

 

「いや────いや、いや、助けて、誰か助けて! わた、わたし、こんなところで死にたくない!だってまだ褒められてない……! 誰も、わたしを認めてくれていないじゃない……!」

 

彼女の悲痛な叫びが洞窟内に響き渡る。

 

「どうして!? どうしてこんなコトばっかりなの!?誰もわたしを評価してくれなかった! みんなわたしを嫌っていた!やだ、やめて、いやいやいやいやいやいやいや……! だってまだ何もしていない!」

 

彼女とカルデアスの距離が、近づいていく。

 

「生まれてからずっと、ただの一度も、誰にも認めてもらえなかったのに──────!」

 

そして、ついに彼女の身体がカルデアスに呑まれる──────

 

「それは違う、()()()()()()

 

その前に、僕が進む。

 

「え、エドワードさん!危険です!」

 

マシュが制止するが、進み続ける。マシュは今立香ちゃんを止めるのに両手が塞がっている。こちらまで来ることはないだろう。

 

「オルガマリー、お前は凄い。その若さでマリスビリー所長の後を継いで、カルデアのトップになっている。それに魔術の才能や努力だってアニムスフィアの名に恥じないものだ。だから」

 

「そんなに自分を卑下するな。そして、()()()()()()()()

 

オルガマリーの目を見て、はっきりと告げる。

 

「あ────────、エド、ワード…………」

 

彼女が、こちらに手を伸ばす。必死にこちらへ向かって、叫ぶ。

 

「──────────助けて!エドワード!!」

 

その言葉が聞きたかった!

 

「『奪取(grab)』!」

 

僕の起源を利用した魔術、その二つ目。魔力等、相手のものを奪うことができる魔術だが、本来ならそこまでの効果は発揮できない、使い勝手の悪い魔術だ。

 

でも、今はオルガマリーの同意がある。そして、オルガマリーは完全な精神体、肉体がない状態だ。

 

「─────────だったら」

 

オルガマリーの身体がこちらに引き寄せられる。カルデアスから離れ、僕の方へ。そして、カルデアスの引力から逃れた瞬間。

 

「奪える」

 

僕の腕の中に、彼女が現れた。

 

「あ…………!」

 

「さっきぶりだな、オルガマリー」

 

そう言って彼女の涙を拭う。いつまで泣いてるつもりなんだこの娘。

 

「ふん、その程度で助けたつもりか?所詮彼女の肉体は爆破で死んでいる。カルデアへ戻った瞬間、消滅することは変わらない!直にこの特異点も崩壊する!」

 

そんないい感じの雰囲気を台無しにするレフ教授。その後はご丁寧にも状況の説明をしてくれた。要約すれば人類の未来は完全に焼却され、残っているのはカルデアだけという状態らしい。まあ知ってるけど。

 

言いたいことだけ言った彼は満足そうに消えていった。ここで僕達を始末しないあたりバカだよなあ。まあここの崩壊と一緒に消滅すると思ってるんだろうけど。

 

「空間の崩壊開始……!このままでは危険です!レイシフトの準備を、ドクター!」

 

『やってるよ!でもごめん、そっちの崩壊の方が早いかも!そのときは各自で頑張ってくれ!』

 

…………帰れる、よな?

 

「ね、ねえ…………」

 

すると、僕の腕の中で縮こまっていたオルガマリー所長が声をかけてくる。

 

「ん、どうした?」

 

「そ、その。このまま帰ったら私、消滅しちゃうのよね?」

 

「ああ、大丈夫ですよ。そこはなんとかします。というわけで」

 

「?」

 

オルガマリー所長が首を傾げる。かわいい。

 

「僕と一つになろう。オルガマリー所長」

 

「へっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、無事レイシフトは完了。僕達はカルデアに戻ってくることができた。その後の様子としては、マシュは大丈夫そうだが、立香ちゃんはまだ眠ったままだ。まああんだけ色々あれば疲れるのもしょうがない。

 

「むしろ平気そうな貴方がおかしいのよ、エドワード」

 

「いやいや、これでも普段から鍛えてるからね。別におかしくないぜ、オルガマリー所長」

 

呆れたような顔で僕に話しかけてきた女性、オルガマリー・アニムスフィア。彼女は無事肉体がある状態でこのカルデアに帰還することができた。

 

一体どうやってオルガマリー所長を生き返らせたのか、答えは単純である。聖杯に願ったのだ。

 

もちろん、おそらく聖杯に願ったところで死者は蘇らないだろう。だが、彼女は精神や魂はしっかり残っていた。

 

なので、まずは『奪取(grab)』で()()()()()()()()()()()()()のだ。一つの身体の中に魂を二つ入れる、なんてことは本来なら不可能だが、僕ならできる。魂の容量が二つ分ある僕なら。

 

まあ、空いた部分に魔力を溜めていたせいで結構キツかったが、そこは気合いで我慢した。

 

後は聖杯に「カルデアにある彼女の肉体を完全に直してくれ」と願ったのだ。さすが聖杯、しっかり彼女の綺麗な身体に直してくれた。あとはその身体に『譲渡(gift)』で彼女の魂を移せば、無事オルガマリー所長の復活である。やったね。

 

え?どこで聖杯を手に入れたかって?確かに、セイバーが持っていたのはどこかから与えられた聖杯だ。あれに万物の願望器としての機能はない。

 

だが、冬木で起きていた聖杯戦争。その本来の聖杯ならどうだろうか。僕はキャスターと契約したマスターで、最後まで勝ち残ったサーヴァントはキャスターだ。他のクラスのサーヴァントは全員倒している。

 

つまり、僕は聖杯戦争に勝利したマスターとして聖杯をゲットしたのだ。

 

あの空間が崩壊するギリギリに出現したので本当に焦った。タイムラグあるのは駄目じゃないですかね?

 

ちなみにその聖杯はオルガマリー所長の身体を直したら消滅した。なので結局僕達が回収できた聖杯は一つだけである。

 

まあでも。

 

「あの……。エドワード、その…………」

 

「ん?どしたの、モジモジしちゃって」

 

「うるさいわね!はぁ…………。本当に貴方って人は」

 

なぜか呆れられた。いや、理由ははっきりしているな。僕が思ったことなんでも口にしちゃうからですね、はい。大人しく彼女の言葉を聞こう。

 

「その……ありがとう。今回は、貴方のおかげで助かったわ。…………だから、感謝しておきます」

 

そうだな。聖杯は使ってしまったが、この照れ顔を守ることができたと考えれば。

 

安いものだろう。

 

 

 

 

 

 




冬木の聖杯に万物の願望器ってほどの力がなくても、塵になった死体を綺麗にするくらいならできるだろっていう考えから産まれたガバガバ理論です。暖かい目で見守ってくだせえ。


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