夕焼けに写る影の道 (1- kkyu )
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影の戦士


前作なのですが、設定とストーリーの構図にかなり行き詰まってしまったので、先に出来上がっていたコイツを上げます。


……許して?(懇願)


 

 

 

 

 

──── 大切なモノを、沢山失った。

 

 

 

 

「父さん…母さん…あ、ぁあ…あァァァァァァ!!」

 

 

 

 

──── もうこれ以上、失いたくないと思った。

 

 

 

 

「キミがこれから進もうとしている道は、茨の道だ。賞賛も感謝もされず、だが命を懸けて戦わなければならない、影の道だ。それでも、キミはこの道を選ぶのかい?」

 

 

 

 

──── だから、俺は選んだ。

 

 

 

 

 

「……守りたいモノが…場所があるんです。」

 

 

 

 

 

 

 

──── 仮面ライダーになる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕焼けに写る影の道

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連続失踪事件。

今、新聞やニュースなどで騒がれている、謎の事件。都内で散発的に発生し、失踪した人数は今現在10名。しかもその10名には一切関係性は無く、何の手がかりも無く忽然と姿を消している為、足取りも掴めないままになっている。

この花咲川の町でも、連続失踪事件で騒がれていた。

 

 

「ねぇ、蘭!3年生の先輩、一人行方不明になっちゃったんだって!やっぱりあの事件なのかな?」

 

「ひまり、うるさい…。」

 

「あっはは…相変わらず関心ないなぁ、蘭。」

 

 

Afterglow。美竹蘭、青葉モカ、上原ひまり、宇田川巴、羽沢つぐみの幼馴染5人で結成されたロックバンド。彼女達が通っている羽丘学園では、三日前に、3年生が一人行方不明になっていた。

連続失踪事件の11人目が学校に出れば、噂にならないわけが無い。今学内では、その話題で持ち切りになっていた。

 

 

「でも、ホントに怖いよね、連続失踪事件…。しかも学校で出ちゃうなんて…。」

 

「ま〜ね〜。モカちゃんもすこ〜し不安〜。」

 

「いや、モカ…メロンパン食べながらだと全く説得力無いから…。」

 

 

スタジオ練習を終えて、5人で帰る帰り道。彼女達もまた、その噂で話題が持ち切りになっていた。約一名を除いてそれぞれ不安そうな面持ちになっている。それもそうだろう、巷で騒がれている事件が、身近に起こってしまったのだから。

 

 

「しかしまぁ、何の手がかりも無いなんてなぁ…もしかして、幽霊の仕業とか…?」

 

「だとしても行動力あり過ぎでしょ、その幽霊…。」

 

 

しかし、あくまで噂。超常的な事なんてある筈が無い。彼女達はそう思いながら、何時もの帰り道を歩く。その道の先で、未知の存在に遭遇するとも知らずに。

 

 

 

 

 

________________________

 

 

 

 

 

「A小隊!前面で弾幕を張れ!B小隊はA小隊の援護を!」

 

 

 

 

 

 

町外れの廃ビル。その一角で、その戦いは人知れず行われていた。

 

 

 

「顔面を狙え!絶え間無く撃ち続けろ!ライダーが到着するまで持ち堪えるんだ!」

 

 

「くっそがぁぁ!死ねバケモノどもぉ!」

 

 

「中井がやられた!救護班!早く!」

 

 

 

フロア中に絶え間無く響く銃声。落ち続ける薬莢。そして、怒号と悲鳴。普段静かなその廃ビルは、まさに死屍累々の戦場と化していた。

 

『ワーム』

それは、18年前に渋谷に飛来した隕石と共にやって来た、宇宙からの侵略者。その異形は、人間を遥かに凌駕する戦闘能力を持ち、それをもって人間を殺害し、その人間に擬態する。

そう、世間を騒がせている連続失踪事件は、ワームによるモノだ。フロアの端には、羽丘学園の制服を着た、行方不明の生徒の死体が無惨に転がっている。しかし、それに構っている暇は無いと言わんばかりに、銃声はまた鳴り響く。

 

 

「作戦本部より連絡!ライダーの到着、およそ2分!」

 

 

「何としても持たせるんだ!外に出せば一般人に被害が出るぞ!」

 

 

「ぐぁあっ!!」

 

 

「久本ぉ!クソがぁぁぁ!!!」

 

 

 

一人、また一人と、戦う者達が倒れていく。

ワームと戦う彼等は、『NEO ZECT』。ワーム出現当初に発足された組織、ZECTが解散し、再編成された組織。ワームに唯一対抗出来る、『マスクドライダー』を中心に、ワームの殱滅を担う組織である。しかし、マスクドライダーになれるのは、『ゼクター』に適合した人間のみ。限られ過ぎた戦力を補う為に存在するのが、今戦場で戦っている、『ゼクトルーパー』である。

作戦開始時に20名居た彼等は、既に半分以下に減っていた。対して、ワームは…サナギ体が5体。開始時から減っていない。全滅は時間の問題であった。

 

 

 

「隊長!もう既に限界です!」

 

「泣き言を言うな!此処で我々が止めなければ…!」

 

「隊長、前っ!!」

 

 

5体の内の1体が、隊長…菅野に躍り掛る。

完全に隙を突かれた。ヘルメットの中で目を瞑り、死を覚悟する。

 

 

(俺もここまでか…。あーあ…息子を遊園地に連れてく約束、果たせねぇじゃねぇか…くそ…!)

 

 

その禍々しい爪が、BDUの装甲を引き裂こうとした。しかし、菅野の覚悟は杞憂に終わる。

 

ズガンッ!!!

 

明らかにトルーパーのライフルとは違う、鈍く叩く音。何処からか飛来したその黒いカブトムシ(・・・・・)が、ワームを弾き飛ばしたのだ。

そして、そのカブトムシと共に、走り来る一人の少年。

 

 

「遅れてすみません!後は俺がっ!」

 

 

「すまない、助かった!…後は頼んだぞ!新道!」

 

 

ゼクトルーパー達の前に出る、新道と呼ばれた少年。周囲を飛ぶカブトムシを手で捉える。そして、ソレを腰に巻いている銀の機械のベルトに、装着した。

 

 

 

「変身ッ!!」

『HENSHIN』

 

 

無機質な機械音声と共に、少年の身体が無骨な装甲で覆われる。

少年の名前は、新道 開人(しんどうかいと)。NEO ZECTに存在する二人のマスクドライダーの内の一人、ダークカブトゼクターの適合者である。

 

 

「はぁッ!!」

 

 

隊長に襲い掛かっていた1体を力を込めて殴り飛ばす。現在のフォーム、『マスクドフォーム』はパワーと防御力に秀でており、一撃一撃が重い。殴りつける鈍い音と共に、ワームが吹き飛ばされる。それを皮切りに、その他のワームが襲い掛かってくる。

腰のゼクトクナイガンを取り、アックスモードに変形。走り来るワームを迎え撃つ。

 

「ふんッ!」

 

振りかぶって来た腕を片手で受け止め、空いた胴体をアックスで斬りつける。斬撃音と共に、金切り声に似た鳴き声を上げる。その隙にと言わんばかりに、残りのワームが襲い掛かる。

背後の1体を後ろ蹴りで蹴り飛ばし、後ろに続いていたもう1体諸共飛ばす。残った1体の繰り出した上段の攻撃をウィーピングで躱し、ボディに一撃。身体がくの字に曲がった所にアックスで斬撃を加える。

それぞれ体勢を崩したワームに追い討ちをかけるように、アックスモードからガンモードに変形、二発ずつ弾丸を見舞う。

ふと背後を見遣れば、ゼクトルーパー達が撤退を始めていた。せめて撤退し終えるまでは、と起き上がろうとするワームに更に弾丸を撃ち込んだ。

怪我人を含め、フロアから撤退した様子を確認すれば、再び体勢を整えたワーム達と向き合う。ゼクトクナイガンを腰に戻し、ベルトのダークカブトゼクターの角を、反対側に切り替えた。

 

 

 

「キャストオフ!!」

『CAST OFF』

 

 

 

無骨な装甲が周囲に弾け飛び、その衝撃で再びワーム達が吹き飛んだ。中から現れたのは、赤黒い装甲。胸元に格納してあった、カブトムシの角が、ヘッドスキンに合着する。

 

 

『CHANGE BEETLE』

 

 

仮の姿のマスクドフォームから、真の姿の『ライダーフォーム』が姿を現す。腰のゼクトクナイガンをクナイモードへ変形させ、逆手持ちで構えた。

 

 

「────ッ!!」

 

 

呼吸を整え、集中力を上げる。迅速に、少ない手で敵を蹴散らす為に。クナイにエネルギーを集中させ、敵が仕掛けるのを待つ。

幾秒かの空白の後。痺れを切らした1体がこちらに向かい走り出し、それに続く様に他のワームも走り出した。

それに合わせ、クナイを構え駆け出した。

 

── 1体目。大きく振りかぶる瞬間に、空いた腹部を辻斬りの如く斬り去る。

 

── 2体目。顔目掛けて突き出した爪を、顔を逸らすことで回避。袈裟斬り。

 

── 3体目。下段から振り上げてくる手を上げられる前に片手で止め、そのまま突き刺す。

 

── 4体目。やられたワームごと纏めて引き裂こうと上段に振り上げてくる。即座にクナイを引き抜き、ターンする様に回避、勢いを利用してそのまま背後にクナイを突き刺した。

 

 

一瞬の剣戟の後、4体のワームが爆散する。しかし、1体だけその場を動かなかったワームが残っている。ソイツに目を遣った瞬間、通信が入る。もうパターンで分かっていた。この感じ、熱気は間違いなく…。

 

 

 

『ソイツの体内温度が急激に上昇している!脱皮するぞ!』

 

 

「分かっています…!」

 

 

 

開人は来るであろう次の形態に身構えた。

サナギ体の表皮が、マグマの様に煮えたぎり、溶け崩れる。中から現れたのは、蜘蛛の様な模様の成虫体。

 

 

 

『アラクネアワーム…その模様はルボアか!』

 

 

「しかし単体です…この場で仕留めます…!」

 

 

 

アラクネアワームは集団になればこそ厄介ではあるが、単体では大きな脅威ではない。やるならば…今だ。

アラクネアが腰を低くして、溜めるような動作を見せる。これも予測できる。

ゼクトクナイガンを戻し、こちらも腰を低く構え、ベルトの横に付いているタッチボタンを押した。

 

 

 

「クロックアップ!!」

『CLOCK UP』

 

 

 

瞬間、自分の見える世界が、アラクネア以外停止する。タキオン粒子が身体中を駆け巡り、時間流が自分の体感で動き出す。

再び集中し、相手が仕掛けるのを待つ。

 

 

 

── アラクネアがこちらに向かい走り出す。横薙ぎの右フックが飛んでくる。左手でガードし、カウンターの右ストレート。ベルトのボタンを押す。

 

直撃、アラクネアが仰け反る。顔面が逸れた隙に、右脚で腹部に前蹴り。同時にベルトの1番目のボタンを押す。

 

『ONE』

 

直撃、距離が開く。すかさず距離を詰める。アラクネアが反撃の左ストレート。

 

ダッキングで回避、空いた顔面を狙ってカウンターの左アッパー。空いた手で2番目のボタンを押す。

 

『TWO』

 

直撃、顎がカチ上がる。隙を逃さず左脚で足払い。

 

直撃、アラクネアが地面に倒れ伏せる。その隙に最後のボタンを押す。

 

『THREE』

 

起き上がろうとするアラクネアを、右脚の踵落としで抑え込む。切り替えていた角を元に戻した。

 

 

 

「ライダーキック…!」

『RIDER KICK』

 

 

 

もう一度、角を反対側に切り替える。瞬間、タキオン粒子が右脚に集中する。そして……

 

 

 

「はぁッ!!!」

 

 

 

そのまま、踏み潰した。アラクネアは爆発四散し、跡には衝撃でひび割れた床と、蒼白い炎だけがユラユラと揺らめいていた。

 

 

 

『CLOCK OVER』

 

 

 

ベルトの無機質な音声と共に、周囲の時間が再び流れ出す。集中状態を戻し、マスクの中で、ふぅ、と一息ついた。

 

 

 

「ワームの反応は?」

 

 

『あぁ、今ので全て…いや、待て!まだ1体隠れている!』

 

 

「ッ!?」

 

 

 

再び周囲をセンサーで見渡す。しかし、時既に遅し。残ったサナギ体1体は、窓ガラスを割ってビルから飛び降りた。

 

 

「ちっ!逃がさない…!!」

 

 

その後を追うかのように、自身も窓から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

蘭たち5人は、夜の帳に静まり返った住宅街を、談笑しながら歩いていた。

 

 

「も〜!モカってば酷いよ〜っ!!」

 

 

「にへへ〜 ♪」

 

 

何時も通り、モカがひまりを弄り、それにひまりが反応して、それをつぐみが諫め、その遣り取りを巴と一緒に笑う。

何ら変わらない日常だが、この日常が蘭にとっては何よりも大切だった。

こんな日常が、この先もずっと続けば良いのに。今の5人でずっと一緒に居れれば良いのに。

 

 

しかし、現実は非情にも彼女達に牙を剥いた。

 

 

先の曲がり角から、突然緑色の異形が躍り出てきたのだ。一番に気がついたのは、蘭だった。

アレはヤバい。

あの存在の事を知らなくても、彼女の本能が告げていた。先頭を歩いていた蘭が右手で皆の進行を止める。

 

 

「何…あれ……」

 

 

「ん?どうしたんだ蘭、急に立ち止まっ…ッ!?」

 

 

次に気がついたのは巴。それで他の3人も気が付く。全員の背筋が凍り、息を飲んだ。

 

 

「ね、ねぇ…逃げよ…!?」

 

 

ひまりが口を開いた瞬間、その異形は声に気付いたのか、こちらを向いた。

嗚呼、拙い。このままでは、殺される。

身体中が震えている。逃げたい。だけど、脚が震える。

しかし、そんな彼女達を、異形は待ってくれない。こちらに目掛けて、奇妙な声を上げながら走ってくる。

ダメだ、逃げられない。…せめて、他の4人だけでも。

蘭は異形の方を向いて手を広げた。まるで、彼女達を守るかのように。

ギュッと目を閉じ、己の命の終わりの瞬間を、震えながら待った。……しかし、それは来ることは無かった。

 

 

『CLOCK UP』

「斃れ…!」

 

 

一閃。クナイの軌跡が駆け抜け、それは正確に異形の頭部を斬り裂いた。

断末魔の叫びを上げて、異形…ワームは爆散した。

 

 

『CLOCK OVER』

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

間一髪だった。後少しでも遅ければ、彼女の身体は異形により引き裂かれていただろう。人を襲っていると断定した時点で走り出して良かった。

クロックアップを解き、マスクの奥で、やっと一息つく。

 

 

「ワーム、殲滅しました。一般人に怪我は有りません。」

 

 

『あぁ、こちらでも確認した。すまない、まさかもう一匹いるなんて…。』

 

 

「いえ、問題ありませんよ、加賀美さん。結果的には殱滅出来…ッ!?」

 

 

『ん?どうしたんだ開人?』

 

 

 

目を疑った。

自分が守った一般人は…あの日、何も言わずに、自分勝手に残して来てしまった、幼馴染達だった。

言葉が出ない。息を呑んだまま動けない。彼女達を見詰めたまま、立ち尽くしてしまう。

 

 

『もしもーし!開人ー!』

 

 

「────ッ。すみません、帰投します。」

 

 

加賀美さんの声で、漸く硬直から我に返る。

──決めただろうが、あの時。影でみんなを守るって。今更何揺らいでんだ。

心の中で自分で言い聞かせる。彼女達に背を向け、歩き出す。

 

 

「──ま、待って!」

 

 

 

しかし、呼び止められてしまった。

ダメだ、脚を止めるな。止めたら振り返ってしまう。これ以上、決意を揺らがせるな。

言い聞かせる。何度も。何度も。

 

 

「……アナタは、何?」

 

 

言ってしまえよ、自分は『新道 開人』だと。心の暗闇の底で、何かが甘く囁いている。ダメだ、口を開くな。

…一言だけなら、良いのかも。

 

 

「──── … カブト 。」

『CLOCK UP』

 

 

そう一言だけ残し、高速の世界へ消えていった。

 

 

 

 

 

────噫、俺は。まだこんなにも、弱い。






仮面ライダーってやっぱりカッコイイよね!



……サーセン早く前作の設定練り直します。


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背負う代償、動き出す歯車

カブトのライダーキックは何気にライダーの中で一番好きです。

当時ちびっ子だった私にとって、あの飛び上がらずに回し蹴り一本というのは、とても衝撃的でした。


ということで2話です。


 

 

 

 

「── 新道開人、帰投しました。」

 

 

「あぁ、お疲れ!済まないな、本当なら俺が出るべきだったんだが……」

 

 

 

──── NEO ZECT 作戦拠点

 

先程戦闘が行われていた廃ビル近くに設置された、急増の司令部。データ収集の為の機材を大量に積んだバンに、ゼクトルーパー達を輸送する為の装甲車が、其処に所狭しと並べられていた。

その司令部のテントに、新道は帰投した。其処には、モニターと睨めっこをしている男が一人。

NEO ZECT作戦指揮官、加賀美 新(かがみあらた)。NEO ZECTに所属するもう一人のマスクドライダーであり、ガタックゼクターの資格者である。

彼は元々ZECTのライダーであり、解散と共に普通の警察官に戻る予定であったが、未だ暗躍しているワームに対抗すべく、NEO ZECTの作戦指揮官兼ライダーになった。いや、なるしかなかった、と言った方が正しいのかもしれない。

今現在、マスクドライダーとして戦っているライダーは、新道と加賀美のみ。カブトゼクターの資格者、天道総司(てんどうそうじ)は音信不通で何処に居るか分からず、ホッパーゼクターの資格者、矢車想(やぐるまそう)は行方不明。ドレイクゼクターの資格者、風間大介(かざまだいすけ)は、協力者という立場ではあるが、本業のメイクアップアーティストを優先している為、何時でも戦えるワケではない。他のザビーゼクター、サソードゼクターは資格者が死亡している為に使えない。

故に、今のNEO ZECTは事実上二人で戦っている様なもの。今回の様な、現場にライダーが間に合わない事例は、珍しい事では無かった。

 

 

「ゼクトルーパー隊の被害は…」

 

「……今回の戦闘に参加した20人中、4人死亡、3人重症、他13人は軽傷だ。」

 

「──ッ。」

 

 

死亡者が出た。その事実は、開人の胸を締め付ける。ゼクトルーパー隊は謂わば足止め係。やられる事を承知で戦う、歩兵。死者が出る事は珍しくない。最悪の場合全滅も有り得る。ライダーが少ない分、彼等が命を張って戦うしかないのだ。

開人がもう少し大人であれば、割り切っていたのかもしれない。しかし、彼はまだ17歳。人の死…それも、つい昨日まで楽しく談笑していた、自身に近い人間の死は、簡単には受け入れられない。

もっと俺が早く到着していれば、助かっていたかもしれない。そう考えてしまえばしまうほど、苦しくなる。彼が若くして背負った、命の重さであった。

 

 

「…開人、お前はベストを尽くしたんだ。逆に考えてみろ。お前が来てくれたから、16人は助かった。それは、確かにお前が救った命なんだぞ?」

 

「…それでも、4人救えませんでした。」

 

 

加賀美にも、命の重さに耐えられなくなった過去がある。故にその苦しみは同じ様に理解出来る。現に32歳になった今でも、命が失われる事には慣れない。否、慣れてはいけない。

だから少しでも背負う荷を軽くしてやろうと、加賀美も不器用なりにフォローを入れるが、それで納得してしまうほど、新道開人という人間は簡単ではない。

……特に、守る という目標を掲げてライダーになった、開人にとっては。

 

 

「……菅野さんの所に行ってきます。」

 

「あぁ。…遅くならないようにな。お前、明日羽丘学園に編入だろ?準備とかでバタバタするなよ。」

 

「……ありがとうございます。」

 

 

そう一言だけ残すと、ゼクトルーパー隊のテントへ向かった。その背中は、暗く、重苦しく…そして、悲しげだった。

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

「おう、お疲れさん、新道。」

 

 

「…えぇ、ありがとうございます、菅野さん。」

 

 

ゼクトルーパー隊の隊長 菅野は、テントから離れた所に居た。其処には、今回の戦闘で亡くなった4人が、身体を白い布で包まれた状態で横たわっていた。壮絶な死だったのだろう、布に血が滲んで、殆ど赤くなっている。そんな彼等の前でも、菅野は悲しむ素振りを見せずに、開人に接した。

 

 

「…死んだのは、中井、久本、湯川、西郡だ。中井は、さっき息を引き取った。」

 

「…ッ。すみません…俺がもっと速く到着していれば…」

 

「過ぎた事を言っても仕方ねぇだろ。どんなに悔やんでも、コイツらはもう二度と目覚める事はねぇんだ。」

 

 

菅野の一字一句が、深く深く、心に突き刺さる。菅野横に並び、二度と口を開くことも、目覚めることも無くなった人達の前に立った。

ライダーとしてこれまで戦ってきたが、この光景は何時まで経っても慣れない。

 

 

「……お前が居なかったら、多分俺も死んでいた。全滅していただろうな。…救った命の方が多いんだ、胸を張れよ。逝っちまったコイツらの為にも。」

 

「……出来ませんよ。救えなかった命の前で、胸を張るなんて。」

 

 

訓練の時から良く接してもらった中井さん。お前は身体が細いから、と 筋トレを沢山教えてくれた久本さん。訓練漬けだとイヤになるだろ、と 色んな所に連れ回してくれた湯川さん。男ならメシくらい作れる様になれ、と 料理を教えてくれた西郡さん。

皆昨日まで笑って話してたのに、今目の前に在るのは、物言わぬ屍。

唇を噛み締める。血が出るのではないかという程、強く、強く。己の無力を悔いる。そんな開人の頭を、ワシャワシャと雑に撫でる菅野。

 

 

「……せめて、俺達の手で盛大にあの世に送ってやろうや。その方が、コイツらも喜ぶ。」

 

「……はい。」

 

 

この日で、開人がライダーになって以降失われたゼクトルーパーの命は、32人になった。

 

 

後日、隊長の菅野の手によって、NEO ZECT内で彼等の葬儀が盛大に行われた。死んだ4人の英雄を、盛大に讃えるかのように。

 

 

 

──────────────────────

 

 

夢を見ていた。

それは、自分が両親を亡くした、あの日の夢。

目の前に横たわるのは、胸を指し貫かれた母と、ズタズタに引き裂かれた父。

その横に立つのは、その身体を鮮血で濡らした、漆黒の異形。

異形は、俺を見詰める。気分はどうだ?と嘲笑うかのように。

異形は、俺に歩み寄る。次はお前の番だ、と言わんばかりに。

 

そして、異形は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。何時もの天井、何時もの部屋、何時もの朝日。そして、あの日の夢。

何時も、同じ所で目が覚める。アイツに殺される瞬間に。きっとこの夢は、アイツを殺さない限り、ずっと見続けるのだろう。

何にせよ、この手で決着はつけなければならない。まだ覚醒しきっていない身体をベッドから起こしては、自分の部屋を出た。

 

 

 

「おはよう、開人!おっ、制服よく似合ってるぞ!」

 

「…ありがとうございます。おはようございます、加賀美さん。」

 

 

リビングに向かえば、其処にはエプロンを着けた加賀美が朝食を用意していた。

開人はNEO ZECTに所属して以降、加賀美と寝食を共にしている。最初は一人暮らしをするつもりでいた開人であったが、生活面が心配だから、と加賀美が無理矢理保護者の席に収まった。無論開人は遠慮したのだが、情に厚く熱血漢な加賀美に折れるような形で、今に至っている。

テーブルの上には、トーストとサラダ、目玉焼きにソーセージが綺麗に配膳されている。独身男性が作ったとは思えない程しっかりとした朝食。元々料理には疎かった加賀美だが、ちゃんとしたメシを食わせるため、と必死に覚えたのだ。最初こそ不格好な食事ではあったが、今では主婦顔負けの腕前になっている。勿論開人もゼクトルーパー隊の西郡から教えてもらった腕がある為、最近では当番制で料理を作っている。今日は加賀美が当番だ。

 

 

「いただきます!」

「いただきます。」

 

 

食卓につき、しっかりと手を合わせてから食事に手を付ける。これは開人の死んだ両親からの教えだった。今でも忘れずにやっている。

 

 

「そういえば開人、お前が通う高校って、元々住んでた所の近くだよな?前に言ってた幼馴染達、一緒の学校だと良いな!」

 

 

食事に手を付けながら、何時も通りのテンションで喋り掛けてくる加賀美。それに開人は、苦笑いしながら答える。

 

 

「そうですね……でも、アイツらが何処の学校に行ったかなんて、俺は知りませんから。しかも、一個年下なので、同じ学校でも殆ど会うことは無いと思います。」

 

「分からないぞ〜?若しかしたら、"小さい頃からずっと好きでした!"なんてのがあるかもしれないからな!」

 

 

本当に朝とは思えない程のテンションの高さである。

 

 

「でも、関わるつもりは無いです。あの時、俺は何も伝えずに居なくなりましたから。それに……ライダーである俺に関わるのは、危険です。」

 

「そ、そうか……なら、仕方ないな!」

 

 

そう、これは開人の決意。己がライダーとして、影から皆を守る為につけたケジメ。もし話すことになっても、突き放すつもりでいる。覚悟を揺らがせるつもりはない。流石にこれには加賀美も閉口した。

 

 

他愛も無い話をしながら、朝食を食べ終わり、加賀美は出勤、開人は登校の準備。事前に買った教材をバッグに詰め込む。勿論、いざという時の為のベルトも忘れずに。

今日は駅まで送って貰える事になり、加賀美と一緒に家を出て、車に乗る。

 

 

「もしワームが現れたら、お前の腕時計型端末に直接データが届く様になってる。バイブレーションのリズムは、」

 

「トン、ツー、トントントン、ですね。覚えています。」

 

「よし、なら安心だな!学校裏にダークエクステンダーを置かせてもらってるから、それで出動してくれ!」

 

 

車の中で諸々の確認を済ませながら駅へ向かう。ロータリーで降ろしてもらえば、

 

 

「高校生活、しっかり楽しんでこいよ!あ、彼女とか出来たら俺にも報告よろしく!」

 

 

などと捨て台詞を吐いて、加賀美は出勤していった。朝の会話を覚えていないのだろうか、と思わず溜息を吐く。しかし、その底抜けの明るさに、元気を貰える。遠くなっていく車の影を見届ければ、駅構内へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

Afterglowの5人は、朝から一緒に登校していた。しかし、その表情に笑顔は無い。それもその筈、昨日の超常的な出来事は、忘れられずに5人の脳裏にこびりついているのだから。

 

 

「…昨日のアレ、一体何だったんだろうな。」

 

 

巴が口を開く。明らかに不安が残っている口振りである。

 

 

「ん〜…、映画の撮影…は有り得ないよね〜…あのバケモノ、爆発して消えちゃってたし〜。」

 

「うん…それに、あの"カブト"って名乗ってた鎧の人…。」

 

 

『カブト』。確かに去り際にそう名乗っていた。まるで、テレビに出てくるヒーローをそのまま連れ出したような、赤黒い鎧で覆われた、謎の存在。5人の中には多くの疑疑問が残ってしまっていた。

急に誰も喋らなくなってしまった5人。この空気を変えるべく、リーダーのひまりが口を開いた。

 

 

「よしっ!昨日の事は取り敢えずまた今度考えよ?この話題だとずっと暗いままになっちゃうし!」

 

「そだね〜。ひーちゃんイイこと言うじゃ〜ん。」

 

 

流石ムードメーカー、としか言うほか無い。ひまりの一言で、5人の雰囲気は自然と柔らかくなった。

 

 

「あ、そういえば。今日は転入生が来るらしいぜ?」

 

「転入生?……何でこんな時期に。」

 

 

突然巴の振った話に、蘭は疑問符を浮かべる。

それもその筈。今は7月の上旬、本来転入の時期は学期初め。この時期に転入など不自然にも程がある。

 

 

「さぁ…アタシもクラスの女子が噂してんのを小耳に挟んだ程度だしな。」

 

「ねぇねぇ!その転入生って男子かな!?女子かな!?」

 

「何か男子だって言ってた気が…」

 

「よしっ!みんなで休み時間に見に行こうよ!」

 

「えぇ……。」

 

 

食い気味に反応してきたひまり。蘭を始めにそれぞれが微妙な反応。彼女達が親しくした男子など、一人しか居ない。あの日何も言わずに居なくなった、開人の事しか。

 

 

「え〜!?でも興味無いわけじゃないでしょ〜!」

 

「まぁ、どんな人かは確かに気になるけど…」

 

「なら決定!2時限目の休み時間に集合ね!」

 

 

優しいつぐみが微かに同意の意を見せた事で、強引に持っていかれる。またか、と蘭は溜息をついた。そんな会話を繰り広げながら、学校へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、彼と彼女達は再び巡り会う。

 

一人は影として。

 

五人は煌めく太陽として。

 

 

──── 運命の歯車が、動き出す。

 

 

 




ライダーが戦っている裏で失われる命って、本編で描かれていないだけで、沢山あると思うんです。
なので、このSSではそっちにもできるだけ焦点を当てて行きたいなと思っています。

時系列、キャラクターなどの詳細設定は後々記しますので、少々お待ちを。

誤字脱字等ありましたら、遠慮なく報告してください。見た通りの駄文ですので。



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学園

作者は最新話投稿への期間が開くにつれて、やる気が無くなっていく怠惰な人間です。

最近はそうならないように、毎日少しずつ書き足しています。その時に何時もコーヒーを飲んでいるのですが……

はい、そうです。ここ最近のカフェイン摂取量がおかしいです。身体に悪いですね。


ということで、3話です。




 

 ──── NEO ZECT 総本部

 

 

 

 

 

「おはよう、加賀美君。」

 

 

 

「おはようございます、八重樫さん!今日もデータ解析、よろしく頼みます!」

 

 

 

 

  警視庁地下8階。メディアにも公にされていない秘匿されたフロア。NEO ZECT総本部のあるそのフロアから、更に一階地下に下りたフロア、NEO ZECT研究開発部に、加賀美は訪れていた。

 

 

 

 

「…で、どうですか。ブラックボックスの解明の方は?」

 

 

「ダメだな。完全にシャットアウトされている。ハッキングも矢張り全部突っぱねられた。」

 

 

「そう、ですか…全く、どうなってるんですかこのゼクターは…。」

 

 

 

 

 大量のモニターに囲まれた部屋、更にその中央の強化ガラスのケースの中に存在する、一つのゼクター。

 新道開人を資格者として選んだ、ダークカブトゼクターである。

 

 ダークカブトゼクターは、11年前、天道に擬態したネイティブが装着していた試作品のゼクターである。しかしそれは、装着者本人と全人類ネイティブ化計画の黒幕である根岸と共に、()()()()()()()()()()()筈であった。実際に、焼け跡を調べて、復元不可能なまでに壊れたダークカブトゼクターとベルトが見つかっている。

 

  しかし、目の前のゼクターは、4年前の8月23日…あの事件の日。当時中学一年生の開人の目の前に()()()()()。試作品から完成品へと変わり、膨大なデータを詰め込んだブラックボックスを内包して。

 

 加賀美をはじめとする研究開発部は、このゼクターの研究とブラックボックスの解明に、実に4年もの時間を費やしてきた。

 しかし、研究は思う様に進まず、ブラックボックスのデータは解明されないまま、今に至っている。

 

 

「我々が知るプロトタイプのダークカブトゼクターと違い、今現在存在するどのゼクターよりも高性能であり、更に謎のブラックボックスを内包している…研究者の私からすれば、未来から来たオーパーツとしか思えないよ、これは。」

 

 

  研究開発部の主任である八重樫は、苦虫を噛み潰したような表情で、そう語る。自分達が血の滲む思いで作ったモノを易々と越えられたのだ、無理も無い。

 

 

「あーくそっ!打つ手無しかぁ!」

 

 

 加賀美は加賀美で、頭を掻きながら苦悩の声を漏らしている。しかし、八重樫は長い間ゼクターの研究開発を担ってきた人間。転んでもタダでは起きない。

 

 

 

「……そうでも無いんだな、これが。かなり断片的ではあるが、ブラックボックスから幾つかのワードを拾う事ができた。」

 

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 

「あぁ、コレを見てくれ。」

 

 

 

  八重樫はニヤリと笑みを浮かばせながら、手にあるノート型端末を操作し、一つのページを見せる。それは、強固なブラックボックスからやっとの思いで抜き取った、僅かなデータであった。

 

 

 

「……拾えたワードは、『カブティックゼクター』『type:NEXT』『OVER BOOST SYSTEM』…この三つのみだ。コレが何を意味するのかは、未だ分かっていない。」

 

 

「十分ですよ八重樫さん!大きな一歩です!」

 

 

 

 

  4年の間、まるで進歩の無かったブラックボックスの解明。僅かではあれど、立派な一歩。加賀美はまるで自分の事のように喜んだ。

 

 

 

 

「まだまだ大量の未解領域が残っている。我々はこの研究を進めるから、ワームへの対応は君たちに任せるよ、加賀美君。」

 

 

「任せてください!身体を使うのは、自分達の仕事ですから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ……後に、このデータが地球の運命を左右するという事を、彼等はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新道開人が羽丘学園に転入する理由は二つある。

 

 

 

  一つは、最近起こっているワームによる連続失踪事件である。11人目の犠牲者がこの羽丘学園で出たが、未だに他の犠牲者が見つかっていない。

  この状況を見兼ねた参謀本部が、ここ周辺でワームが出現する可能性が高いという結論を出し、ワーム出現に即座に対応出来るように、開人を転入生という形で常駐させるようNEO ZECT総司令から命令が下った。

 

  しかし、それなら普通に花咲川で生活させるだけで良いのではないか、という意見も出た。これをゴリ押したのが、作戦指揮官の加賀美新と総司令の田所修一である。

 

  開人は、中学一年の時に資格者に選ばれ、中学の三年間を戦闘訓練に費やし、15歳…本来ならば高校に通っている筈の時間を、NEO ZECTの戦闘員として過ごした。

 二人は、まだ若い開人をNEO ZECTに入れた事を、仕方ない事とはいえ後悔していた。まともな青春を送らせずに、戦いの世界へ駆り立てた事を。

 

 故に、今回のこの参謀本部が出した結論を機会に、開人の生まれ育った町で高校生活を送らせようと、二人で結託して計画し、無理矢理意見を通したのだ。

 …最も、全てを捨てる覚悟を決めて町を出た開人にとって、迷惑な話であったが。

 

  これが二つ目の理由。身内の完璧な私情とお節介。見事に振り回されている開人であった。

 

 

 

 

 

 

 

  真新しい制服を身に纏い学校へと入った開人は、現在非常に困った状況に出くわしていた。

 転入生に良くある、職員室が分からないとか、そういうものではない。それは来客用出入口から入校したので、事務員の人に場所を聞いた。

 

 

 

  では、何に開人が苦しんでいるのか。

 

 

 そう、道行く生徒に注目されているのである。

 

 

 

 

「ねぇ、あの人誰だろう…」

 

「うわ、何あの格好良い人…いや、格好良いというより、綺麗?」

 

「え、ていうかアイツ…男?女?…でも、制服は男子だから、男だよな…いや、男装という可能性も……」

 

 

 

 

  勘弁してくれ。俺は客寄せパンダになる為に学校に来たワケじゃない。あと、最後の男子、キミはマンガとアニメの見過ぎだ。

 

 

  廊下を行く生徒が、男子女子関係無くこちらを見ながらヒソヒソ声で話している。正直、ツラい。

 

 

 

 開人の容姿は優れている。それも、メイクアップアーティストの風間が認める程に。

 

  季節に逆らった白い肌に、前髪を右に流した群青色の髪。長い睫毛に切れ長の目。男性と言われても女性と言われても通用する、美人であった。

  以前風間に初めて会った時、いきなり手を両手で掴まれて、メイクさせてほしいと頼まれた事があった。男性がメイクの必要など、と思っている開人にとって要らない話であったので無論断ったが、アプローチは未だに続いている。

 

  転入生というだけで注目されるというのに、容姿が重なれば謂わば当然の事と言えるだろう。しかし、余り注目される機会が無かった開人にとって、この状況は地獄であった。

 

 

 

  ヤバい、この場に留まるのは不味い。

 

  歩くスピードを更に速めて、職員室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──── 職員室

 

 

 

  二度ノックし、中へと入る。

 

  いたって普通の職員室。しかし、職員会議の後なのか、座っている教師は、皆書類と睨めっこしている。とりあえず、一番近くに居る教師に声を掛ける事に。

 

 

「…失礼します。本日付で転入する新道ですが、理事長先生はいらっしゃいますか?上の者から、挨拶する様に言われているのですが。」

 

「ッ!?は、はい!少々お待ち下さい!」

 

 

 焦った様な、驚いた様な反応を見せれば、職員室の奥の部屋…理事長室であろう部屋へと足早に駆けていった。

 

 その瞬間、職員室に居る教師達が、一斉に開人に視線を向ける。

  コイツが例の…、とでも言いたげな視線。どうやら、あまり歓迎されてはいないようだ。

 

  しかし、これは開人の予想通りであった。

 

  今回の転入は、政府からの直接的な()()()

 いや、お願いはあくまで建前。学校側からすれば、()()に等しい。

 勿論、NEO ZECTやワーム、マスクドライダーの様な機密事項は全て伏せてある。しかし、誰も事情を知らないというのは納得がいかないだろうと、事前に加賀美から、理事長と校長、更に自分のクラスの担任にだけは事情を把握して貰っている。勿論、口外禁止で。

 

 しかし、その他の教師については別である。それに関しては、政府からこう伝える様に命令されている。

  内容は、簡単に言えば『彼は政府の勅令で重要な仕事を請け負っているので、極力彼に協力するように』だ。

 事情を知らない教師からすれば、いきなり爆弾を渡された様なものである。いい顔をされないのは寧ろ当然と言っても良い。

 

 あぁ、だからあの反応か、と内心で納得すれば、先程の教師が理事長室から出てきて、再び足早に駆け戻って来た。

 

 

 

「理事長が此方でお待ちですので、ど、どうぞお入りください!」

 

「分かりました、ありがとうございます。」

 

 

 

 その教師に連れられて、理事長室に通される。中で待っていたのは、理事長らしい恰幅の良い男性が一人、その両隣に、教師らしい初老の男性と、二十代であろう若い女性が立っていた。

 

 

 

 

「お待ちしておりました。羽丘学園理事長、秋山憲仁です。」

 

「新道開人です。本日からお世話になります。あと、私は今日から指導される立場ですので。敬語等使わず、普通に接して頂いて結構です。私としても其方の方がありがたいので。」

 

「…そ、そうかね?…コホン、では、お言葉に甘えて、そうさせてもらおうかな。」

 

 

 

 理事長 秋山と握手を交わす。重要人物という事に緊張しているのか、表情には出ていないが掌が若干湿っている。手汗でもかいていたのだろう。

 開人としても、緊張されたままでは話にならないと思い、生徒として接して貰うようにお願いをする。

 その言葉に若干安心を見せたのか、敬語が取れる。

 

 

 

「政府の方から、事情は聞いているよ。学校側も、最大限協力するから、キミは安心して勉学に励んでおくれ。……おっと、紹介が遅れたね。右の先生が、青井先生。この学校の校長先生だ。」

 

「校長の青井です。これから宜しく。」

 

「左の先生が、佐々木先生。キミが転入するクラス、2-A組の担任の先生だ。困った事があれば、何でも彼女に言ってくれ。」

 

「担任の佐々木です。出来る限り新道君の力になるから、何でも言ってね?」

 

「…はい、宜しくお願いします。」

 

 

 

  二人とも握手を交わす。どうやら、根回しはしっかりとなされている様だ。

 

 

 

「それじゃあ、もうすぐ朝のホームルームが始まる。後は佐々木先生に任せてあるから、以降は彼女に。それじゃあ先生、よろしく頼むね。」

 

 

 

  理事長がそう話を締めくくれば、佐々木先生と一緒に理事長室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私が呼んだら中に入って来て。」

 

「分かりました。」

 

 

  ──── 2-A組 教室前

 

 騒がしい教室の中へ、佐々木が入っていく。

 開人は呼ばれるまでの間、廊下の壁に寄り掛かり、加賀美から渡された腕時計型端末を眺めながら、今朝の加賀美の言葉を思い返していた。

 もしかしたら、この学校に蘭たちが居るのかもしれない。

 有り得ない話では無い。昨日この町で起こったワームとの戦闘で、彼女達の姿をこの目で見たのだから。

 

 それにしても、大きくなっていた。自分の知る小学生の頃とは、まるで別人だった。

 ちゃんと五人とも一緒だった。きっと、今もみんな仲が良いままなんだろうな…良かった。

 

 様々な思いが、開人の心を巡っていく。

しかし、それ故に開人の心を苦しめる。

 蘭たちに会えば、自分の手で突き放さなければならない。

 もしそうなってしまった時、本当に自分に出来るのか。ずっと一緒にいたみんなを突き放すなど。

 

 ……出来る出来ないの問題じゃない、やらないといけないんだ。蘭が、巴が、モカが、ひまりが、つぐみが、みんなが大切だからこそ。

 

 

「それじゃあ新道君、入って来て。」

 

「……はい。」

 

 

「じゃあ、自己紹介、宜しくね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……俺が影で、守らないといけないんだ。

 

 

 

「今日からこのクラスに転入する、新道開人です。中途半端な時期の転入になりましたが、宜しくお願いします。」

 

 

 

 

 





主人公の容姿が出てきましたが、分かりにくいと思うので簡単に説明しますと、
「宝石の国」のアンタークチサイトの髪色を、ラピスラズリにした感じです。

あと、ちょっとずつオリジナルのキャラクターが入ってきますので、今度から後書きに大まかな説明を載せていこうかと思います。

細々とした設定は、別の機会にしっかり記載しますので、少々お待ちを。


……あ、宝石の国、面白い作品なので良かったら是非。


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