クロスアンジュ トライブブラザーズ (マシンクーガー)
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キャラ設定“主人公”(完成間近)

まだ未完成ですが、徐々に追加して行こうと思っております。


《アルトリウス・コールブランド=“アルス・エクシリアス”》《呼名:アーサー》(第六光太子)□□□□□□□

 

Lv.310

 

種族:エクシリア人純血種

 

年齢:1020歳

 

所属:地球連邦第二本部『浮遊大陸 クラウドブルース』

 

メイン職業:【真・勇者】【外使徒】

 

サブ職業:錬金術師・学者・冒険者

 

階級:兵長・光族

 

趣味:料理、カードゲーム

 

好きなもの:愛妻料理、酢豚、杏仁豆腐、冷やし中華、麻婆チキンカレー、過剰な制裁

 

嫌いなもの:ゼノム、お酒、“家族”や“友人”、“国”、“命”を侮辱する者

 

配偶者:フェリシア・時沢・コールブランド(“旧姓”ミスルギ)

    サラマンディーネ(婚約者)

    サヨリ・コールブランド(婚約者)

    マイラ・コールブランド(婚約者)

    スゥシィ・ソルティア(婚約者)

    エミリア・ホルス(婚約者)

 

属性:火、水、風、土、雷、氷、時、空、幻、光、闇、無

 

使用武器:盾剣・双刀・仕込鞭・鎖鎌・槍・太刀・光剣・手甲・弓・銃・弩・戦斧・金砕棒・ロッド・ガンブレード・バトルメイス・バスターソード・ハルバード・大剣・施棍・多節棍・薙刀・細剣・大鎌・双小剣

 

称号:【創生者の末裔】【勇者王】【異界の者】【解放者】【革命王】【指揮者】【大将軍】【騎士王】【覇王】【機甲神】【科学者】【錬成師】【鬼神】【聖魔王】【神殺し】【探索者】【最後の王族】【龍星の巫】【亜神】【剣神】【美の女神の義弟】【創破神の養子】【創造神の使徒】【家族想い】【一夫多妻】【戦闘狂】

 

筋力:22150

体力:67549

耐性:11210

敏捷:20459

魔力:34170

魔耐:10923

理力:20251

 

ーーー【スキル】ーーー

 

・ソルの光[+全能力上昇][+全属性適正上昇][+全属性耐性上昇][+物理耐性上昇][+物理緩和上昇][+衝撃耐性上昇][+衝撃緩和上昇][+イメージ補助力上昇][+計算力上昇][+技能強化][+付与][+革命]

・オーバーブースト[+能力強化][+身体強化][+筋力強化][+瞬発力強化][+剛力強化][+俊敏力強化][+限界突破][並列思考][倍加][+全属性強化][+強化速度上昇][+体力上昇][+魔力上昇][+理力上昇][+倍加][+倍増]

・剣術[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+斬撃速度上昇][+超音波振動適合化][+周波数増強][+耐熱化上昇][+高密度荷電粒子集束化]

・全集中の呼吸[+身体強化][+血流速度上昇][+炎の呼吸]

・棒術[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+衝撃速度上昇][+打撃力強化]

・纏雷[+耐雷強化][+出力調整][+出力上昇]

・二刀流[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+斬撃速度上昇]

・錬成[+生物系錬成][+鉱物系錬成][+元素錬成][+機械錬成]

・創生魔法[+ストック][+拡張数強化][+二重詠唱][+多重詠唱][+複合]

・生成魔法[+能力強化][+自動生成][+イメージ補助力強化]

・再生魔法[自動回復][+回復力強化][+魔力回復強化][細胞活性化]

・空間魔法[+真空化][+聖域][+回復力増強][+再生力増強]

・重力魔法[+魔力操作][+魔力圧縮][+魔力放射][+重圧化]

・魂魄魔法[+精神干渉][+解放付与][+思考解読]

・悪食[+技能数増強][+強奪][+技能強化][+技能複製]

・絶滅者化[+技能強化][+技能付与][+共鳴][+リミッター解除(封印中)]

・神化[+技能強化][+出力調整]

・審判[+称号剥奪][+称号譲渡][+強制化][+絶対神の加護]

・召喚[+召喚数拡張][+治癒空間][+神域][+魔境][+聖域]空き:8

【聖邪神皇子“メルタ”】〜〜〜《封印中》〜〜〜

【次元要塞“ホウライ”】ーーー《建造・改修・修理中》ーーー

・[防衛システムオールグリーン]ーーー全エネルギーシールドスタンバイモード。自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“D”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

・[砲撃システムオールグリーン]ーーー全対地対空フェイザーキャノン・フォトンレーザー・ミサイル=タレット自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“A”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

・[迎撃システムオールグリーン]ーーー自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“I”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

【全領域型戦闘専用艦“アムザニ”】ーーー《造船完了》ーーー

 

【ヤトウ】

 

アーサーの側近であり、光双剣の使い手。冷酷で屈強な外見だが、子供好きで家庭的。ゼロドーンの操舵手を務める。その正体はかつてアーサーの一族であるエクシリア人と共に地球を守護する星竜族の一体ーーー湧水の星竜【リンガルド】であった。

 

【リュウ】

 

アーサーの側近であり、光薙刀の使い手。華奢でいつも優しい頬笑みを浮かべる青年。その正体はヤトウとアケロンと同じ、地球を守護する星竜族の一体ーーー大樹の星竜【グラキオス】であった。

 

【アケロン】

 

アーサーの側近であり、モーニングスターの使い手。幼い少女模した星の竜であり、ヤトウ、リュウと同じくアーサーを敬愛している。その正体は地球を守護する星竜族の一体ーーー岩壁の星竜【アケロニア】であった。

 

 

 

【用語】

 

《スマートソリューション》

AR(拡張現実)型情報端末

三角状の外見をしたウェアラブル・マルチデバイス《スマートソリューション》。デバイスの様なスマートフォン型ではないが、覚醒状態の人間に視覚・聴覚・触覚情報を送り込み、現実空間に仮想アイテムや情報をホログラムの様に投影する事ができる技術。人間達の使っているマナの光よりも高度な技術であり、太陽光によってエネルギーをチャージする事ができる。

 

《マナの光》

人類が進化の果てに得たとされる魔法に似た技術。その実際は、エンブリヲが生みだした新人類に発現する力であり、アウラがその源となっている。作中世界の根幹となる設定で、マナをあつかえることが「普通の人間」の絶対条件である。ドラゴンも使えるが、通常と異なり色が赤い。

念動力のように物質を浮遊・移動させたり、拘束・防護用の結界を張ることも可能。また、統合システムへのアクセスによって情報共有が可能になり、マナ使い間でのコミュニケーションツールともなる。これらマナ技術の発展により、戦争や貧富の差も消滅したとされる。その代わりマナには人間を洗脳して愚民化、痴呆化する機能なども持ち合わせており、人々は自主性や主体性を失い、堕落してしまう事が判明した。

さらにマナの光はかつて、真実の地球で起こった終末戦争前期に発見された高次元エネルギー『ドラグニウム』と言う事が分かり、サラたちの世界に存在するエネルギーで、500年以上昔にエンブリヲが発見したもの。多元宇宙に働きかける力を持ったエネルギーであり、エンブリヲやラグナメイルの超常的な能力の源であった。サラ達の神聖にして母である始祖のドラゴン『アウラ』は現在、エンブリヲの管理下に置かれており、神聖ミスルギ皇国の象徴であるアケノミハシラの最深部に眠っている。

 

 

【original mechanic】

 

AWーCBX008(AT)《ゼノヴィア 》

 

頭頂高 7.3m

全高 7.8m

重量 4300kg

推力 158kN

 

第三の地球の廃墟の地下奥深くにある格納庫に保管されていた旧世界の遺産。データは勿論、機体フレームも完全にラグナメイルと一致した謎の機体。

 

武装

 

多目的腕部アームキャノン

 

ビームシールド

 

アクセラレート・フェイザー《収斂加粒子砲》

 

 

試作参式 滅龍號

 

頭頂高 7.8m

全高 9.1m

重量 4350kg

推力 150kN

 

ゼノヴィアと共に保管されていた機体。データによると、他の龍神器は滅龍號のみと確定。ゼノヴィアと同じ、アルトリウスにしか使いこなせない様に厳重なプロテクトで守られている。

 

多目的腕部アームキャノン

 

ビームシールド

 

アクセラレート・フェイザー《収斂加粒子砲》

 

 

超星神 フラドーラ

 

頭頂高 10.4m

全高 12.8m

重量 5280kg

推力 230kN

 

邪星神 マスラオ

 

頭頂高 9.8m

全高 11.0m

重量 ???kg

推力 ???kN

 

ゼノヴィア、滅龍号と共に眠っていた邪星神。何故遺跡に眠り、そのまま放置されていたのかも不明。

 

???

 

アーサーが作り上げた巨大戦艦。その性能と武装は如何に?



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プロローグ

どうも初めまして『マシンクーガー』と申します。他の作者のクロスアンジュの小説を見て私もクロスアンジュの小説を書きたいと思って、このクロスオーバー作品を作りました。何か誤字や脱字、足りないと思いましたら修正します。下手かもしれませんが、頑張ってこの作品の投稿を頑張ります!
では、どうぞ。


「うああああああああああっ!!!!!!」

 

少年の悲痛の叫び、煉獄の炎が館を燃やし、辺り一面には壁や地面に付着した血、その中に一人…左手に浮かぶ紋章を死んだ魚のような目で見つめ、何かを呟く。

 

「ごめん、皆んな……許してくれ…“ユーマ”…“アリサ”…“てっちゃん”…“シュン”…“ユキ”…“ムツミ”…“かっちゃん”…“ルリ”…“チエちゃん”…“サユリ”」

 

暗い夜、空から雨が降り注ぎ、炎を消して行く。村の家々がズタボロに破壊され、男は皆殺され、女は身体中に白濁液と異臭を漂わせる。またその中には何かによってバラバラにされた死体の肉片が彼方此方に転がっていた。

 

「何で……何でこんな……」

 

少年は虚ろな目で呟く。

 

「何が……何が平穏な世界だ……何がマナこそが人類だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い空、白い雲、透き通っと海にポツンと浮かぶ無人島。岸の上でのんびりと釣りをする男が竿を持っていた。

 

「お、来たか!」

 

男が糸が引っ張られるのを見て、これは大物だと。男は力を振り絞り、竿を力よく引き上げた。すると海の中から釣り針に引っかかった大木と大木にしっかりと捕まっている右腕のない少年が釣られてきた。

 

「海から…子供!?」

 

男は急いで子供を砂浜へ引き上げる。

 

「おい!しっかりしろ!」

 

男は少年の意識を確かめ、額に触れる。

 

「すごい熱だ!」

 

男はすぐさま森の中に連れ、洞窟内にある施設に少年を連れて行く。施設の中では複数の人がベッドに寝かせた少年の安否を確認する。時に、ベッドに横たわっている少年が何かに魘されている事もあった…何かに襲われたり、誰かに謝罪をしていた。

 

「(この少年…何故大木と一緒に流されてきたのだ?むしろ気になるのはどうして儂のマナが砕けた。こやつもしかして例に言う“旧人類”の残党か?しかし気になるのは…彼の右腕と左手だ。なくなった右腕は何かに食いちぎられた後のようだが、左手のあの痣と言うより見たこともない文字が並んだ紋章、目を覚ますと同時に調べるか…)」

 

老人がそう考えていると、少年は意識を取り戻し、目を覚ます。

 

「モーガン、砂浜に女の子が打ち上げられていた!」

 

「何!?」

 

モーガンと言う男は仲間の男と共に砂浜打ち上げられていたと言う女の子を救助する。女の子の方も酷い重傷を負うっており、急いで手術する。施設の人達はその少女の左手を見て驚く。それは少年と同じ、妙な痣が出来ていたことを。それから数日が過ぎ、少年はベッドの上で目を覚ます。隣に座っていたモーガンが声を掛ける。

 

「気がついた様じゃな。」

 

「ここは?」

 

「ここは儂の家みたいなものじゃ。お前、名前は?」

 

「……名前?」

 

「ん?」

 

「僕は……誰?」

 

「お前、自分の名前を覚えていないのか?生まれた場所は?」

 

「……(コクリ)。」

 

「…そうか、“記憶喪失”か。」

 

「記憶喪失?」

 

「自分の事や全てを忘れてしまう……謂わば、心と頭の中の病気になるな。」

 

「病気…」

 

「……良し、決めた。」

 

「?」

 

「記憶が分かるまで、この島で修行して見るか?」

 

「修行?」

 

「この世界の事とこれからの為の力を備える為だ。儂には既に三人の弟子がいる…だからお前は四人目だ。二人は連れさらわれた幼馴染を助けようとここに漂流して来た。きっと仲良くできると思うぞ…」

 

モーガンは少年に手を差し伸べる。

 

「あ、まだ儂の自己紹介がまだじゃったのう……儂の名は“モーガン”だ。」

 

モーガンはそう言い、別の洞窟へと案内する。そこには一人寂しそうな少年と眼鏡をかけたクールな少年と少し筋肉の少年がいた。

 

「お前達、集まれ。新人を紹介する。」

 

「初めまして、え〜っと。」

 

「そうだった、お主は記憶喪失であったな…」

 

「“アーサー”」

 

「「「「「「?」」」」」」

 

すると別の方から松葉杖で歩いている少女が現れた。

 

「アーサー、無事だったのね!」

 

少女はアーサーの所に駆け寄り、抱き付く。彼女の名前は“マイラ” 村に捨てられていたアーサーをマイラのご両親に拾われ、家族の一員として大事に扱われていたと……。

 

「それで、アーサーについて何があったのか知っているのか?」

 

「よく分からない……何も思い出せない。」

 

「そうか…良し!今日からお前達を古の民の一員として丁重に保護してやる!その代わり、皆んなに迷惑をかけるなよ!分かったかお前達。」

 

「「?……はい!」」

 

アーサーとマイラは返事する。

 

「お前達、自己紹介しろ。」

 

「俺はライドル・ヴルム・ヴァーレン。気軽に“ライド”と呼んでくれ!」

 

「僕はエクエス・アルフォート、よろしく。そして…」

 

「……僕はタスク。」

 

「ほら、タスク!」

 

「えぇっ!?」

 

ライドはタスクを無理やり連れて来させ、アーサーとマイラと握手させる。四人はとても仲が良く、喧嘩したり、泣いたり、笑ったり、学び合っていた。

数ヶ月が過ぎたある日、五人は木箱の周りに集まる。

 

「知ってるか?左手の刺し傷を入れ、相手の手の傷と握手を交わせば永遠の兄弟なるって事を!」

 

「そんなの物迷信だろ?」

 

「迷信じゃねぇ!昔そう言う風習があったって親父から聞いたんだ!多分、俺たちは成長し、バラバラになるかもしれない。俺達のこの絆は兄弟として生き続けて行く、どこで何をやろうとも、俺達の絆は永遠に不滅だ!」

 

ライドは針を持ち、手の平に刺す。タスクやエクエス、そしてアーサー、マイラも刺し傷を入れて生き、誓い合う。

 

「これで俺たち!」

 

「私も!」

 

「「「「「永遠不滅の兄妹!!」」」」」

 

ライド、エクエス、タスク、アーサー、マイラの五人はここに、“絆で結ばれた兄妹”

 

だがある日…。

 

……《二年後》……

 

タスクの両親であるイシュトバーンとバネッサ、そして古の民達が皆んな死んだと聞かされた。前線にいたタスクはモーガンや他の仲間達に救助されたが……突然の両親や仲間達の死に、アーサーやライド達はタスクにどうにか慰めようとしたが、どうする事も出来なかった…。

さらに年月が流れ、10年後…。

 

森の中から薬草を取って帰って来たアグニ。洞窟内でモーガンを探していると。となりの部屋にモーガンが血を吐いて倒れていた。

 

「モーガンさん?……モーガンさん!!」

 

アーサーは急いでライドとエクエス、タスク、マイラを呼ぶ。エクエスが急いで薬草すり潰し、薬を作ろうとした時。

 

「エクエス……無理だ。」

 

「何を言っているのですか!?」

 

「儂はもう長くはない……それにいくら薬草で寿命を長引かせようとしても、無駄な事だ。それに、お前達に話しておかなければならない事がある……、これを…。」

 

モーガンは懐から四つの左籠手をアグニ達に渡す。

 

「モーガンさん、これは?」

 

「『ナックルライザー』だ。それはお前達のそれぞれのエレメントと古の民によって開発された支援兵器だ。それを使ってエンブリヲを倒せ…」

 

「何を言っているのですか!」

 

「アーサー、聞け!」

 

モーガンがアーサーの手を掴む。するとアーサーの目の前の光景が変わり、街が戦火に包まれていた。地面には無数の人が石の中に埋められ、黒き雲で覆われた天空には堕天使のようなロボットが浮遊していた。

 

「見えるであろう……古の民達が血も涙もない神によって殺されていく様を!今日からはお前達が最後の希望だ……これからは名乗る時『超星神グランセイザー』だ。」

 

「「「「グランセイザー?」」」」

 

四人はその名を呟くと、モーガンがエクエスに格納庫の鍵を渡す。

 

「これを渡しておく。格納庫にお前達しか扱えない機体がある、それを使いなさい……悪しき力も凌駕するそのグランセイザーは正に希望…後は託したぞ………」

 

モーガンが薄れた声で遺言を言い、息を引き取る。

 

「「「「「モーガンさん!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー達はモーガンの遺体を火葬し、遺骨が入った壺を土の中に埋めて墓標を立ててやる。そしてモーガンの言われた通り、格納庫の鍵を開ける。

 

「これは!?」

 

それは大きくて巨大な機体が並んでいた。紅蓮の大鷲、紫電の甲虫、琥珀の獅子、紺碧の海獣、深緑の大鹿が並んでいた。アーサーはそれぞれの機体の名前を見る。

 

「“フラドーラ”」

 

「“ヴィンセクト”」

 

「“グランヴェ”」

 

「“ゼーア”」

 

「“ドゥケレー”」

 

それぞれの機体の名前を知り、アーサー、ライブ、エクエス、マイラは一人残るタスクに言う。

 

「タスクさん、本当に残るのですか?」

 

「何度も言わせないでくれ…放っといてくれ。」

 

「何だと!まだ言うのか、腰抜け!」

 

「ライド、よせ。」

 

「……チッ!」

 

「タスク、私は信じている……共に誓い合った兄妹として。」

 

「……」

 

タスクは無言のまま、森の中へと入る。そしてアーサー、ライド、エクエス、マイラはフラドーラ、グランヴェ、ゼーア、ドゥケレーに乗り込み、島を出て行く。エクエスはマーメリア共和国に、ライドがエンデラント連合に、マイラがヴェルダ王朝、そしてアーサーがミスルギ皇国へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして20日が経過。ミスルギ邸にてミスルギ皇国皇帝である『ジュライ・飛鳥・ミスルギ』が執務室で第一皇女の娘である『アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ』の洗礼の儀の計画書をまとめていると。

 

「へぇ、娘さんノーマなんだ。」

 

「っ!? 誰だ!?」

 

「驚かせてごめんなさい、皇帝陛下。僕はアグニ 貴方の味方です。」

 

アーサーはジュライ皇帝陛下に全てを解き明そして自分は他の人と違って手から火炎が出せるとのこと。するとジュライがアーサーの左手を見て驚く。

 

「君!その左手の紋章は“炎のドライブ”!?」

 

「炎のドライブ?陛下はこの痣の事を知っているのですか!?」

 

「あぁ、私は数十年前にそれと同じ痣を持つ男を見たことがある……顔は仮面で覆い隠されていたが、名前は……」

 

「お父上、入ります。」

 

「!?」

 

ドアが開き、現れたのは第一皇太子である『ジュリオ・飛鳥・ミスルギ』であった。アーサーは急いでデスクの物陰に隠れ、ミスルギ邸から遠ざかる。木々の枝を忍者のように飛び移りながら、皇帝の言葉に興味を持つ。

 

「(数十年前にそれと同じ痣を持つ男を見たことがある………名前は…)…………皇帝陛下は、一体何を答えようとしたんだろう。明日あるお姫様の洗礼の儀の後、直接聞いて見るか。」

 

アーサーはそう思い、森の中に待機してあるフラドーラの所へ戻る。だが彼は明日ある洗礼の儀で起こる事を知る由もしなかった。




どうでしょうか?誤字と脱字、おかしな文章もありましたらご報告をお願いします。感想もログインや非ログインでも受け付けておりますので、よろしくお願いします。


OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


次はエンディングも出します。


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チャプター01 堕とされし皇女との出会い・前編


お待たせしました。エンディングを考え、やっと投稿できます。

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


 

 

 

『16歳の誕生日をむかえるアンジュリーゼ様を祝福しようと、会場には多くの国民が集まっています。これからアンジュリーゼ様は皇室の方々と共に、アケノミハシラ前の会場へと入られ、いよいよ“洗礼の儀”が執り行われます。』

 

「始まったな、ミスルギ皇国第一皇女 アンジュリーゼの洗礼の儀が。ノーマである彼女は洗礼の儀でバレるかな?」

 

『国民よ、今こそ真実を明かそう。アンジュリーゼは、ノーマだったのだ! バケモノに国を荒らされてなるものか!今こそ真実を明らかにする!それがアンジュリーゼの洗礼の犠だ!』

 

「嘘だろ?……まさかのあの皇女さんの兄貴、妹を普通にノーマだって暴露しやがった。」

 

「ま、お陰で警備があの皇女さんに向けられた。ジュライ皇帝陛下の所に行かないと…」

 

アーサーは混乱の中、ジュライ皇帝陛下の所に行こうとすると、アンジュリーゼを連れて逃げる皇后『ソフィア・斑鳩・ミスルギ』の姿を見る。

 

「しょうがない…」

 

アーサーはジュライ皇帝よりソフィア皇后陛下の所へと向かう。

 

 

 

アンジュリーゼは皇姫である自身に銃を向ける警備の者に無礼をはかる輩[やから]だと言い剣を鞘から抜こうとするが……警備の者は怯えた目で、命令も待たずに発砲してしまうが……皇后陛下はアンジュリーゼを庇い発砲した警備の者に撃たれてしまった。皇后陛下はアンジュリーゼに言い残すと目を閉じてしまう。

アンジュリーゼはそのまま警備の者に取り押さえられ、警備の者たちに連れていかれてしまう。

すると近衛兵が撃たれたソフィア皇后陛下がいない事に驚く。光学迷彩機能が搭載された『OCマント』でソフィア皇后陛下を担ぎ上げ、人混みの中を走り抜ける。森の中に隠しているフラドーラの医療用カプセルにソフィアを寝かせ、マナの光で弾丸を摘出、そしてカプセルハッチが閉められ、中のバイオ液がソフィアの傷口を癒していく。

 

「良し、あとはジュライ皇帝陛下を助けると同時に聞き出すか。」

 

アーサーはOCマントを身に付け、直ぐにミスルギ皇都へと戻る。

 

 

 

 

 

『ミスルギ皇国地下牢』そこには、元皇帝陛下のジュライ・飛鳥・ミスルギが地下牢に幽閉されていた。捕らえよと命じたのは、息子であった第一皇太子 ジュリオ・飛鳥・ミスルギである。ジュリオは皇国を再建する為に、ノーマである妹を16年間も隠蔽し続けたジュライを後日、公開処刑する事となっている。

ジュライは息子であるジュリオや娘のアンジュリーゼ、二人目の娘である第二皇女 『シルヴィア・斑鳩・ミスルギ』の事を考えていると。

 

「よぉ、皇帝陛下。」

 

突然の声に、ジュライは振り向く。そこには衛兵から鍵を盗み出し、鍵を指で回すアーサーの姿であった。

 

「君は!?」

 

「昨夜の話の続きを聞きに来たんだ。」

 

「……もう私は終わりだ。この国は私の息子 ジュリオの物になり、さらに世界に嘘を広めていく。」

 

「嘘を?」

 

「……この世界を作りしお方 『エンブリヲ』にな。」

 

「エンブリヲ……(タスクの両親を殺した敵…)」

 

アーサーはその男の名前に違和感を感じ、鍵を開ける。

 

「さて、話の続きをしよう……君の左手の痣を持った男……その名は『その必要はない』」

 

「「っ!!?」」

 

アーサーの前に現れたのは全身が布で多い包まれた大男であり、腰に大剣を背負っていた。

 

「(いつから!?それに何なんだこの殺気!?)」

 

アーサーはアーミーナイフと拳銃を向けると、大男は左手をアーサーに見せる。大男の左手にアーサーやマイラと同じ、変な紋章があり、見た事も無い文字が並んでいた。

 

「出ていくのだ、虫ケラが。ここはお前の来るところではない…」

 

「ヤダな!先ずお前の名を聞きたい!そして俺の痣とマイラ、お前の痣が知りたいんだ!」

 

「……聞けば、お前は『絶望』する」

 

大男は背負っていた大剣を持ち上げ、アーサーに振り下ろして来た。

 

「っ!」

 

アーサーは大男が振り下ろして来た大剣を回避する。大剣は壁ですら意図も簡単に破壊し、めり込んでいた。

 

「(ゲッ!?なんちゅう破壊力だ!!?)」

 

「お前らは大人しくあの方の為に“贄”を差し出せれば良い物を…」

 

「え?」

 

大男は壁にめり込んだ大剣を抜き、アーサーに構える。

 

「(あの大男は何かを知っている……だけど!)」

 

アーサーは一歩一歩後方へ下がりながらジュライを守り、アーミーナイフと拳銃を構える。

 

「去れ!」

 

大男からとてつもない威圧が放たれ、アーサーの身体中に電流が走る。

 

「(なんだこの男!今……何をした!?)」

 

「今だけは見逃してやる……次、会う時は、殺す!!」

 

大男がさらに威圧でアーサーを抑える。アーサーの心臓が警告音を鳴らしている化のように鼓動が速くなり、すぐさまジュライを救出し、その場から逃げ出してしまった。

 

 

 

ミスルギ邸から離れたアーサーは下水道を通り、皇都から森の中へと入り、止めていたフラドーラに辿り着く。

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

「君、大丈夫か?」

 

額には汗が流れ、荒い呼吸をしながら、アーサーは落ち着きを取り戻す。

 

「えぇ、大丈夫です。(何なんだあの大男は……凄い威圧を出してたけど、アイツ…何なんだ!?)」

 

アーサーはそう思いながらフラドーラに乗り込む。フラドーラの医療用バイオカプセルの中にソフィアが治療されている事と安心するジュライ。そしてアーサーはミスルギ皇国から出る。

 

「さぁ、話してもらいましょうか?」

 

アーサーは操縦席をジュライ方に向けて座る。

 

「…………その男の名は『モルドゥレイス』。」

 

「モルどぅれい……何?」

 

「モルドゥレイスだ。」

 

「名前長…」

 

「その男が私とソフィアに会ったのは12年前……」

 

12年前のミスルギ皇国。雨が降るミスルギ邸にある者が参って来た。その男はこう言った。

 

「ある村が全滅した。調査隊を頼む」

 

その男こそがモルドゥレイスであった。そのモルドゥレイスそう言い、ジュライは構わずミスルギ皇国調査隊を派遣させた。村に到着後、調査隊がそこで見たものは恐ろしい光景であった。村々の家全てが土砂で埋もれ、中にはどう言う事なのかバラバラ死体や腐敗した死体もあった。調査隊は村の人間の死体を回収し、焼却処分していると、モルドゥレイスは焼かれている死体の山を見てこう呟いた。

 

「“ボスキート”」

 

 

……《回想終了》……

 

 

 

 

 

 

 

「“ボスキート”?」

 

「私にも分からない。“ボスキート”が何なのか……エンブリヲなら知っていると思ったが、彼はその言葉に恐怖しながら怯えだしたのだ。」

 

「え?(エンブリヲが……怖がっている?)」

 

「……私が知っているのはこれだけだ。」

 

ジュライはそう言い、冷凍保存状態のソフィアを見る。

 

「……アーサーと言ったな。君に頼みたい事がある」

 

「?」

 

「今の私やソフィアではエンブリヲには勝てない。あんた達、古の民に…最愛の娘であるアンジュリーゼとシルヴィアを守ってほしい!私が今もなお生きていると、奴らはしつこく追いかけて来る。頼む!私をソフィアの側にいさせてくれ!」

 

「……つまり、共に冷凍保存状態になると言う事ですね。」

 

「……そのつもりだ。」

 

「…分かりました。」

 

アーサーはそう言い、ジュライに冷凍保存用のバイタルスーツを渡す。バイタルスーツを着用したジュライはカプセルの中に入り、コールドスリープする

それから数時間後、海上を飛ぶフラドーラは生憎な事に、豪雨が降り注ぐ天候に巻き込まれてしまっていた。

 

「最悪だ……エクエスのゼーアなら水中形態で海中へと潜水できるが、フラドーラは高起動機体だしな…そうだ!」

 

アーサーは何かを思いつき、フラドーラを上昇させる。豪雨と暴風がフラドーラに襲いかかるが、構いもなしで雲の中へと入り、豪雨や暴風もない天空へと到着する。雲から出たフラドーラは静かな天空と雲の上を飛行する。

 

「ここなら落ち着ける…」

 

アーサーはコックピットの後ろに倒し、フラドーラを自動操縦に切り替え、腰を寝かせる。

 

「(他のみんな……今頃、どうしてるかな?)」

 

アーサーは皆んなの事を思いながら、眠る。

 

 

 

夢の中、霧で覆われた森の中、川に流されている一つの籠。すると誰かが籠を拾いあげ、その赤子を見る。

 

『一体……誰の子だ?』

 

拾ったのは勇ましい男性であり、家に帰るとそこには綺麗な金髪の女性がいた。女性の背には産まれたばかりの子を抱えており、何やらぶつぶつと呟く。そして…

 

「良し!今日からお前の名は……“アーサー”だ!」

 

その名を名付けられると、炎の中に変わる。その炎の中に一つの影がポツンと浮かび上がる……何か大声で泣き叫んでいた。さらに驚くのはその影での姿であった。悪魔の様な異形な姿、耳まで裂けた口、右腕の巨大な籠手が紅蓮の炎を纏った鬼神の如く口を開け、笑い声を上げていた。拳には大量の血が付着しておったがその悪魔にはおかしな点が一つあった……“何故、その悪魔は赤い血を涙の様に流して泣いているのか、何のために泣いているのか”。アーサーはそう思い、夢から現実へと目を覚ます。

 

「夢か……(今のが多分、マイラが言っていた俺を育ててくれた……それに何だろう、あの悪魔…何処かで見た事がある。)」

 

アーサーはそう思っていると、コンソールの方に目をやる。

 

「え!?」

 

アーサーは驚く。何故なら時系列が○月□日 ▲曜日が、□月▽日 ○曜日になっていた。つまり、自分は昨日の夜から数日間も寝過ごしていたという事になる。

 

「俺、そんなに寝てた!?」

 

そして最悪な事に、フラドーラの燃料が四分の三まで減少していた。

 

「しまった…燃料の事、すっかり忘れていた。どうしよう…」

 

アーサーは困っていると、レーダーに複数の熱源体の反応が確認される。

 

「雲の下にいるのかな?」

 

そう考えていると、一つの熱源体が群れより離れる。

 

「何だ?一つだけ離れている、行ってみよう!」

 

アーサーは操縦桿を握り、フラドーラを急降下させながら叫ぶ。

 

「装着!」

 

アーサーのナックルライザーに弓の形をした紋章が浮かび上がり、紅き射手の戦士へと変身した。

 

『“セイザータリアス”!』

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある上空では、実兄であるジュリオに暴露されたアンジュリーゼ、後のアンジュは故郷へ戻ろうと、グレイブを動かしていた。しかし、隊列から出たことに、第一中隊副隊長のサリアがホルスターから拳銃を抜き、アンジュに向ける。

 

「アンジュ戻って!もうすぐ戦闘区域なのよ!?」

 

「私の名前はアンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギです。私は私のいるべき世界、ミスルギ皇国へと帰るのです!」

 

「持場に早く戻りなさい!でないと貴方を命令違反により今此処で処罰するわよ!」

 

サリアは銃を取り出し、アンジュを脅しにかけたその時。

 

「アンジュリーゼ様! 私も、私もミスルギ皇国へと連れて行って下さい!」

 

なんとココがアンジュに近寄り、自分も連れて行ってほしいと頼みに来たのだ。

 

「え!?な!何を言ってるの!? ココ!?」

 

「私も魔法の国に!」

 

「ちょっとココちゃん!何を言ってっ!?」

 

その時、特異点が開き、中から青い閃光がココのグレイブを貫こうとしたその時、上空から高速で急降下してきたフラドールのガルクローでココを捕まえて救い出し、その場から離れる。

 

「良し!」

 

アーサーは急いで、気を失ったココをコックピットにいれ、そのまま旋回する。

 

ココのグレイブはそのまま海面へ墜落し、大爆発を起こす。

 

「ココ!ココォォォ〜〜〜ッ!!!!」

 

ココが乗っていない事にまだ気づいていないミランダはただ叫ぶだけであった。そして特異点からこの世界に囚われているアウラを取り戻そうとしている存在【ドラゴン】が姿を現した。アーサーはドラゴンを見て驚く。

 

「あれが“ドラゴン”……」

 

「…な、なんなの?…これ…」

 

アンジュは酷く混乱していたが、ドラゴンが雄たけびを上げて彼女を睨むのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)

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チャプター02 堕とされし皇女との出会い・後編

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


『Dimensional Rift Attuned Gargantuan Organic Neototypes』その意味は“次元を越えて侵攻してくる巨大攻性生物”を表している。

頭の頭文字を取って付けられた名前は現実に存在していいのか…その名は…通称『DRAGON』。今正に、第一中隊とアーサーはそれと出くわしていた。

 

『敵確認を確認!スクーナー級が20匹、ガレオン級が2匹!!』

 

「ガレオン級が2匹!?」

 

「聞いてないよ…!」

 

オペレーターが索敵したドラゴンの数と大型ドラゴン2匹に驚くロザリーと困惑するクリス。

 

「1匹でも厄介なのに、ガレオン級が2匹もくるものか…」

 

そうヒルダは呟きながらドラゴンを睨む。

 

『総員聞け!新兵教育は中止だ!。まずはカトンボを殲滅し、退路を確保する!全機、駆逐形態!陣形空間方陣!』

 

「「「イェス!マム!」」」

 

パラメイルの基本形態であるフライトモードから人型のデストロイヤーモードへと変形し応戦を開始する。

 

「ゾーラ隊長、命令違反の処分は?」

 

『後にしろ』

 

「…イェス、マム」

 

ゾーラに後回しにしろと命令されたサリアは銃を仕舞い、部隊へと合流する。そしてアーサーはフラドールをアンジュのグレイブに接近する。

 

『オイ!お前!』

 

「ひぃっ!!」

 

『お前も戦え!』

 

「嫌です!私はミスルギ皇国に帰ります!!」

 

アンジュは今だに自分の国に帰ろうと言い張る。

 

「お前正気か!?パラメイルは出撃1回分の燃料しかない! それに皇国が何処にあるのかも分からない!そんな身勝手な行動で仲間が死ぬ所だったんだぞ!!」

 

「構いません! 行けるところまで行って…あそこに戻らずに済むのであれば!」

 

流石のアーサーもアンジュのワガママに怒鳴る、しかしそれでもアンジュはまだ懲りてはいない。

っとそこに小型のドラゴン一匹がアンジュに狙いを定めて襲って来た。

 

「ひぃっ!! い!いやああああああああああああ!!!」

 

恐怖に踊らされたか混乱してその場から離れて行く。無茶苦茶な軌道だったがそれでもドラゴンからは逃げて行った。

 

「おいおい…」

 

アーサーはすぐさま後ろを見ると、雄叫びをあげながらガレオン級が迫って来た。

すぐさまグレイスは回避行動を取り、ドラゴンの腹をすれすれで避ける。しかし今のグレイスはココを乗せている為激しい戦闘は無理である。

 

「仕方ない!……ウォーリアモードに切り替えるか!!」

 

アーサーはフラドールを変形させる。主翼が折り畳み、ブースターユニットが後方へと移動し、機首部が前に押し倒され、中から騎士と思わしき頭部が現れ、ガルクローが腕部へとなり、『フラドール (ウォーリアモード)』へと変形した。

ゾーラ達は謎の赤い大鷲が大型のロボットへと変形した事に驚いていた。

 

「何じゃありゃ!?」

 

「うおぉ〜!?カッチョイイ〜!!」

 

軽砲兵のロザリー、重砲兵のクリス、突撃兵のヴィヴィアンがフラドールに警戒したり、興奮したりしていた。

 

「サリア、あの機体は何だ?」

 

「あんな機体…見た事もないわ。(それにあの機体…ちょっとだけ“ヴィルキス”に似ている…)」

 

「どうしたの?サリアちゃん」

 

「何でもないわ」

 

同じく重砲兵のエルシャ、突撃兵のヒルダ、副隊長のサリアは一体のガレオン級と戦っているフラドールを警戒しながらガレオン級を相手する。

 

 

 

 

フラドールは両腕の手首に搭載された近接武器『ガルクロー』を展開し、ガレオン級に切りかかる。ガレオン級ドラゴンは雄叫びを上げ、フラドールに噛み付こうとしたが、フラドールのアッパーカットが炸裂する。そしてアーサーはフラドールを退避させる。

 

「吹き飛べ!!」

 

フラドールの胸から超高温を持つ熱線『アズルストリーム』がドラゴンを焼き尽くす。ドラゴンは悲鳴を上げ、肉片や骨も残す事なく灰にされた。

ドラゴンが一撃で撃破された事にサリア達は驚く。

 

「ドラゴンを…一撃!?」

 

サリア達はそう思っている中、ゾーラのアーキバスの所にアンジュのグレイブが邪魔をする。

 

「いやああああー!」

 

「んなっ!?…」

 

錯乱したアンジュがゾーラの機体に取り憑き身動きを封じてしまう。

 

「アンジュ何をやってるのよ!?」

 

「何しやがる!?アンジュ離れろ!」

 

この隙にガレオン級ドラゴンは翼でゾーラとアンジュを両方を叩き落す。

叩き落された二機は今にも地上に墜落しそうになった。

 

「ゾーラァァァァァァッ!!」

 

ヒルダが悲痛な叫びをあげる。ガレオン級ドラゴンの翼に隊長さん達の機体が叩き付けられ今にも地上に墜落しそうになったその時、フラドールがゾーラのアーキバスとアンジュのグレイブを見事にキャッチし受け止めた。

 

「間に合った様だな。」

 

だが、ドラゴンは第一中隊の隙をつき、海中へと逃げる。アーサーは一息付き、コンソールに表示されているフラドールの残存燃料を見る。

 

「後9.4%か…。このままこの二人を連れて逃げるわけにもいかないし、それに燃料を補給しないと本当に…」

 

アーサーがそう思っていると、フラドールに通信が来る。

 

『こちらはアルゼナルの第一中隊 副隊長のサリアよ。ドラゴン殲滅の協力には感謝するが、軍規により身柄を拘束する。直ちに二人を連れてアルゼナルに投降せよ!』

 

アーサーは通信の内容を聞いて受け入れる。

 

「分かった。燃料も補給したかったから、大人しく拘束する。」

 

「分かったわ(意外と素直…)」

 

サリア達は武器を下ろし、飛翔形態へと切り替わる。アーサーもフラドールをライブモードに変形し、ガルクローでゾーラ機とアンジュ機を掴んだまま、ノーマが収容されている施設『アルゼナル』へと投降する。

 

「第一中隊、所属不明機を拿捕しました」

 

 オペレーターの報告を受け、ジルはモニター越しに所属不明機を見てみる。そこにはゾーラ隊に混じって見慣れない機体がアルゼナルへ向けて移動していた。

 

「(あれが所属不明機か。ライダーはあの機体の中にいるのか。しかしあのパラメイル、どことなくヴィルキスに似ているな。まあ、気のせいかもしれんが…)」

 

ジルがモニターを注視しながらそう思っていると、

 

「司令、あの機体とライダーはなんなのでしょう?アルゼナル以外にパラメイルを所有する組織があるという事なのでしょうか?」

 

エマが不安そうに尋ねてくる。彼女がそう言うのも無理はない。パラメイルがあるのは世界広しといえど、このアルゼナルだけ。というのが彼女が所属するノーマ管理委員会の認識なのだ。アルゼナル以外の組織が所有しているという事はこの世界の秩序と平和が崩れかねない程の由々しき事態なのである。

 

「さあな。奴がどこかの組織の人間か、あるいは個人で動いているのか。どちらにせよ、直接聞き出してみない事には何も分からんさ」

 

尤も、ジルにはエマが言っていた組織に心当たりはあるのだが、それは彼女と一部のノーマが企てている“ある計画”に関わる事なので口には出さない。そしてジルは指令室を出て、格納庫へと向かう。

 

 

 

 

アルゼナルの格納庫では第一中隊のパラメイルが続々と帰投していく中、フラドールもフライトデッキに停泊する。ゾーラとアンジュ、ココはこのアルゼナルの医師であるマギーや看護師が3人を担架に乗せで運んでいく。アーサーはコックピットの中に冷凍保存状態のジュライとソフィアが入ったカプセルを内部に収納させ、パスワードを打ち込む。改めてアルゼナルに入った事を確認し、アーサーはフラドールから降りる。すると。

 

「っ!?」

 

アルゼナルの職員達が銃や警棒を構えて、アーサーとフラドールを囲んでいた。

 

「お前達、銃を下ろせ!」

 

凛とした声がドックに響いたと思うとそこにはジルがエマを伴い、現れたのだった。

 

「さて、お前が所属不明機のライダーだな。私はアルゼナルの責任者である司令官のジルだ。隣にいるのは監察官のエマ・ブロンソンだ」

 

「監察官のエマよ」

 

2人はアーサーに自己紹介をする。アーサーはスーツを解除し、姿を現わす。

 

「ほぉ、それが貴様の素顔か。」

 

黒き髪、炎の如く紅き双眼の若き男性であった。

 

「オ、オトコ!?」

 

サリアがアーサーを見て驚くと、ヴィヴィアンがアーサーに近づく。

 

「ねぇねぇ!さっきの姿どうやってなったの?」

 

「……装着!」

 

アーサーは構わず、グランセイザーへとなり、名前を答える。

 

「セイザータリアス!」

 

「うぉ〜カッコいい〜!」

 

「解除」

 

アーサーは解除すると、ジルがアーサーの左手のナックルライザーを見て呟く。

 

「なるほど、その左手に付けてる物があの姿に変えると言うことか。」

 

「まぁな。」

 

「監察官…」

 

「その左手に付けてる物は没収します。」

 

「え!?」

 

突然ナックルライザーを没収されそうになった事で、アーサーは監察官から離れる。

 

「お前はここやアルゼナルの事を知りすぎた。よって司令部の報告が来るまで、貴様を尋問する。」

 

「えっ!?」

 

警備員がアーサーを囲む。

 

「……ダイブイン!」

 

だが、アーサーはナックルライザーを使い、瞬時にフラドールのコックピットへとテレポートされ、フラドールが起動する。

 

「逃すな!」

 

周辺を囲んでいたパラメイルのアサルトライフルが乱射されるが、フラドールの周囲から光波バリアが展開され、アサルトライフルの攻撃が遮断される。

 

「何!?」

 

そしてフラドールのブースターが火を噴き、急いでアルゼナルから逃げる。

 

「己れ……」

 

ジルは逃げるフラドールに右腕の方の義手でタバコごと握り締める。高機動であるフラドールは通常のパラメイルよりも速く、見事に追撃から逃げた。

 

「生憎だが、フラドールのコックピットを見せるわけにはいかない。」

 

追撃は振り切れたが、問題の燃料が後3%へと追い込まれていた。

 

「はぁ……結局、燃料補給もできないままになるか…」

 

このままフラドールがガス欠で墜落しかけたその時、フラドールに謎の曙光が照らされる。

 

「っ!?」

 

するとフラドールが動かなくなり、上へと上がっていく。

 

「トラクタービーム!?」

 

フラドールはさらに高空へと上がり、やがて雲の上まで来る。そしてフラドールにランディングギアが展開され、雲の上なのに着陸する。

 

「ここは!?」

 

アーサーは目の前の光景に驚く。それは雲の上なのに大昔の家々が立ち並んでおり、その中枢に大きな神社のような建物が見えていた。

アーサーはフラドールから降りると。

 

「「「アーサー!」」」

 

アーサーは呼ばれた方へ振り向く。そこにはかつてモーガンの島で誓い合った義理の兄弟 ライドとエクエス、幼馴染のマイラが走ってきた。

さらに驚く事に、ライド、エクエス、マイラの服装が私服ではなく、装束とスーツが一体化した黒い狩衣であった。(分かりやすく申しますと、ライドの狩衣のラインが黄色で、エクエスが青、マイラはミニスカの狩衣で緑色のラインが描かれている感じです。)

 

「ライド!エクエス!マイラ!?皆んな何でここに!?それにここはなんだ?」

 

「話は……俺たちの先生達や司令官に聞け。」

 

すると正門から、眼鏡をかけた白い狩衣の男性がやってきた。

 

「初めましてアーサー君。僕はこの“浮遊大陸 クラウドブルース”の司令官“アリマ”だ。そして…」

 

「久しぶりだな、アーサー。」

 

「?」

 

次に現れたのは紳士的な服装、屈強な身体をした男性であった。

 

「俺の名は“風澄 東護ノ介”…12年前、お前が務め通っていたドライブ使いの学生寮『超星寮』の教師であり、お前の二番目の師匠と言ってもいい。」

 

「師匠?」

 

アーサーは二番目の師匠と名乗る人物に、首をかしげるのであった。




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チャプター03 十二宮の戦士達

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


 

謎の浮遊大陸 クラウドブルースに連れてこられたアーサーは、そこでライド、エクエス、マイラと再会し、さらにこのクラウドブルースの司令官である“アリマ”とアーサーの二番目の師匠と名乗る人物“風澄 東護ノ介”と出会ったのであった。

 

「俺の師匠?」

 

「そう、12年前……お前がサヨリとマイラの両親に拾われた場所“トリト村”での悲劇から生き残った唯一の生存者でもあるんだ。」

 

「トリト村?」

 

トリト村という言葉にアーサーの頭の中で何かが引っかかる。しかし…。

 

「その村……何だろう?(サヨリとマイラ…姉妹?……トリト村……悲劇?……生き残り?)」

 

アーサーは頭に触れ、思い出そうとすると、東護ノ介がやめさせた。

 

「そうか、無理に思い出さそうとしてすまなかった。私はトリト村や超星寮の候補生達を助ける事が出来なかったから、何とか君の記憶の回復を優先してしまった。それと、このクラウドブルースが何なのか教えてやる。ライド、エクエス、マイラ…アーサーを案内してやれ」

 

「「「はい!」」」

 

ライドとエクエス、マイラは浮遊大陸クラウドブルースのトライブ使い養成軍事組織『“黄昏の王君”』の内部と校内を案内させる。黄昏の王君の校舎は各世界でマナを持つ男性やノーマ達を拉致し、真実を教え、正しい教育を施したり、トライブ使いにしている。学園にはそれぞれのトライブに合わせた学生寮があるとの事。さらにトライブと昔にあった陰陽師の呪術を組み合わせた訓練もある。校舎には食堂、中庭、学生会館、学生寮、図書館、グラウンド、講堂、教会、技術練、ギムナジウム、公園、質屋、書房店、雑貨店、服屋などの購買店が並んでいた。

 

「ライドとエクエス、マイラは島を離れて10日後にここの存在を知ったのか?」

 

「そうだ!そしてお前がここへ来る10日間、このクラウドブルースの学園で勉強や基礎を学んでいたんだ。」

 

ライドはそう言いながら、教室の中を見せる。

 

「ここがライド達の?」

 

「そうだ。俺の専門トライブである大地のトライブ科は皆んな屈強な連中ばっかだからな。肉体と精神を鍛え、さらには大地の波長を感じさせる事が出来る。」

 

「そして私の水のトライブ科は知識、名誉、水の波長を学ぶ専門科だ。大地と風と違って、エリートの部でもあるから、ライドのような筋肉頭の様にはなるなよ。」

 

「エクエス!オメェ!」

 

「まぁ、まぁ、二人とも。今は今はアーサーを見学させてやってるんだから。あ、因みに私のトライブは“空のトライブ”待機中の酸素を色んな物質に変換させて、四大元素のトライブの支援をする役割を持っているの。」

 

「へぇ〜、マイラのトライブはそんな事にも使えるんだ。」

 

アーサーはマイラの能力に感心していると、東護ノ介がやって来る。

 

「さて、案内は済ませたか?お前達に紹介しておきたい8人がいる。」

 

すると教室に8人、それぞれのトライブを使う物が二人組になって入ってきた。

 

「お前達、自己紹介しろ!」

 

「はい!炎のトライブ!獅子座のグランセイザー 『セイザーリオン』“トウジ”です!」

 

「炎のトライブ 牡羊座のグランセイザー 『セイザーミトラス』“ミクモ”よ。トウジは私の双子の弟だから、よろしく。」

 

「風のトライブ 水瓶座のグランセイザー 『セイザーヴェルソー』“ミュリエーナ” よろしくね、射手座の転入生さん。うちはまだリーダーである双子座がいないけど、連れてきたら教えて♡」

 

「風のトライブ 天秤座のグランセイザー 『セイザーダイル』“ガイ”だ。姉貴の言う通り、リーダーを連れてきたら報告してくれ。」

 

「大地のトライブ 山羊座のグランセイザー 『セイザートラゴス』“クサビ”です。私は学生に見えますが、実はもう既婚者です♪」

 

「大地のトライブ 乙女座のグランセイザー 『セイザーヴィジュエル』“ヨーコ”だよ!よろしく〜!」

 

「水のトライブ 蟹座のグランセイザー 『セイザーギャンズ…自分は“マナコ”と言います。」

 

「水のトライブ 魚座のグランセイザー 『セイザーパイシーズ』私は“エミリー”です。ようこそ、クラウドブルースに。」

 

トウジ、ミクモ、ミュリエーナ、ガイ、クサビ、ヨーコ、マナコ、エミリーが自己紹介を終えると、東護ノ介がこれからここに住む家の所在地の地図を渡す。荷物をまとめ持ったアーサーはその家に思わずドン引きする。

 

「ここが……今日から俺が住む家?」

 

和風建築ではあるが、外見や中はゴミや煤でボロボロ、庭は草だらけ、今にも潰れそうな屋敷であった。

 

「これ……一回でも跳んだら床崩れるかもしれないなぁ。」

 

アーサーは少し困っていると、彼の裾を引っ張る。

 

「?」

 

裾を引っ張っていたのは二足で立つまるまる太った鳥であった。

 

「何だこの鳥は?」

 

すると鳥が怒りながらアーサーの顔まで跳び上がり、嘴で彼の顔を突く。

 

「痛だだだだだ!!!!!」

 

その後、アーサーはまるまるとした鳥…この家の式神である『焔』と言うドードーがヂェスチャーしながら説明を聞く。

 

「何?(今から掃除をする!窓拭き、床掃除、草むしり、建て替え、全部!)……ふざけるなぁ〜!」

 

アーサーは焔の頬を引っ張ったり、焔に突かれながら、家や外の掃除を終わらせていく。

 

「終わった〜!」

 

無事に壁を張り替えたり、掃除したり、建て替え、草むしり、綺麗になった家。アーサーは時計を見ると、とっくに午前四時になっておりり、急いで晩御飯改め、朝ごはんを調理する。幸いにも、家には冷蔵庫やガス、電気があったため、アーサーお得意で好きな朝食ができた。(メニューは炊いた玄米、ほうれん草ナムル、味噌汁、ハムエッグ、焼き鮭)アーサーが朝食を食べていると門からブザーが鳴る。

 

『アーサー。私だ、東護ノ介だ。』

 

アーサーは門を開け、東護ノ介を招き入れる。

 

「だいぶん綺麗になったではないか。」

 

「大変でしたよ。入って焔とすぐに掃除して、片付いたらもう未明でした。」

 

「それは大変であったな……そうだ、お前に頼みたい事がある。」

 

東護ノ介はポケットから変な手紙を取り出し、アーサーに渡す。アーサーは手紙を見る。

 

「“ど〜も〜!アリマだよ!早速君に任務だ!下の方で何やらあの皇女さんがラグナメイルを覚醒しようとしてる、そう言う事だから見に行って行ってくれないか?ついでに風のトライブのタスク君も呼ぶ事と神聖ミスルギ皇国に行ってあの新皇帝さんの様子も見に行ってくれないかな〜?ま、報酬はちゃんと給与するし、家賃もタダにしてやるから、んじゃまたな。アリマより♪”」

 

手紙と言うより、任務の内容にアーサーは呆れる。

 

「タスクはちょっと…だがよりにもよってあの皇女さんの偵察とまたあのゲスな国に行かないとダメなのか…。」

 

「そうなるな。」

 

「ハァ…行ってまいります。」

 

アーサーは疲れた体でフラドールがある格納庫へと歩いていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

フラドールに乗って、クラウドブルースから降りていくフラドール。雲の中を降りていくアーサーは途中、昨夜寝てないせいかコックピット内で眠ってしまう。

 

夢の中、アーサーは何かを見ていた。炎の中、笑い声を上げる鬼の右腕を持つ少年が泣き崩れていた。そしてそこに東護ノ介がやって来る。

 

「アーサー!?」

 

「………師匠。僕……僕……」

 

泣き崩れる少年…それは他の誰でも無い幼き頃のアーサーであった。すると館の炎がさらに増し、崩れていく。

 

「ぐ!!」

 

すると館が柱が俺、崖の底へと崩れ落ちる。東護ノ介は何とかアーサーを助けようとするが既に遅し、東護ノ介が手を伸ばしたが、アーサーは手を伸ばさず、そのまま崖の底へと落ちていくのであった。その時、落ちていくアーサーは呟く。

 

「何が…………凄いトライブ使いだよ…」

 

 

すると今度は揺らめく炎へと変わり、中から血だらけで黒焦げになった少年少女が歩いて来る。

 

 

《あぁさぁ…》

 

 

《どうして私達を助けてくれなかったなぉお?あぁさぁあああ》

 

 

《口先ばっかり… 結局一人も救えてねーじゃん…》

 

 

《痛いよおおぉぉぉぉぉ》

 

 

《助けでぇ〜〜……》

 

 

《お前がもっと強かったら 皆んな死なずに済んだんだあ…》

 

 

「違う……僕……」

 

 

《人殺し……このぉ人殺しぃぃいい!!!》

 

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァァァァァァ!!!」

 

 

断末魔の悲鳴と共に、アーサーは目を覚ます。

 

「うわああぁぁっ!!??」

 

額から汗をかき、先の夢のことを考える。

 

「(今のは何だ?……それに、あの焼死体達……何処かで……ダメだ!思い出せない!)」

 

アーサーは頭を抱えながら右腕の義手を見る。

 

「(あの右腕……何だろう、あの右腕を見ていると…)」

 

アーサーは義手を見て、呟く。

 

 

 

「“腹が減った”!………」

 

 

 

アーサーの口が不気味な微笑みと共に、彼の口が耳まで裂け、鋭利の牙、野獣のような眼へと変わった。

 

「…………っ!!?」

 

突然の言葉に驚くアーサー。するとようやく雲を出て、海が見えてくる。

 

「やっと海が見えてきた……。」

 

 

アーサーはフラドールをホバリングしながら下降していると、警報が鳴り響く。

 

「ん?」

 

レーダーをよく見ると、12時の方向に多数の熱源を確認する。

 

「どうやら戦っているようだな。(フラドールの光学迷彩を使おう。)」

 

アーサーはフラドールの光学迷彩システムを起動し、周囲に溶け込むかのように透明化する。

 

「良し、偵察開始と行きますか!」

 

フラドールのバーニアが出力を上げ、熱源反応がある空域へと向かうのであった。

 




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チャプター04 白き天使の覚醒

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


ドラゴンの追撃部隊はサリアを始めとする、ヒルダ、ヴィヴィアン、エルシャ、ロザリー、クリス、アンジュ。

ミランダは機体を失ったココと共にアルゼナルに残り、皆の帰りを待ってくれていた。

 

「お姉様をあんな風にした奴と一緒に出撃ィ!?」

 

「殺す、殺す、ブチ殺す…!」

 

ロザリーは一緒に出撃しているアンジュ不満を漏らし、クリスは物騒な事を呟いていた。

 

「死ににいくそうだよ。あいつ…」

 

「何?」

 

ヒルダの言葉に二人は首を傾げる。

 

「見せてもらおうじゃないか、死にっぷりをさあ!」

 

「おぉ!何じゃあの機体?サリア!サリア!あのパラメイルドキドキしない?ねぇサリア!」

 

「作戦中よヴィヴィアン」

 

サリアはおしゃべりしてくるヴィヴィアンを黙らせる。

 

『目標確認!』

 

「っ!? 来るぞ!」

 

すると取り逃がした瀕死の重傷を負っているガレオン級が海面から姿を現す。

 

「どうする、隊長?」

 

「奴は瀕死よ、一気にトドメを刺す! 全機駆逐形態!!凍結バレット装填!!」

 

「「「「「イェス・マム!!」」」」」

 

サリア達はパラメイルの左両腕部に搭載している“凍結バレット”展開した直後、ガレオン級が吠えて、海面から光弾が放たれる。

 

「は!サリア! 下!」

 

「え?」

 

全員は下から攻撃してくる光線に慌てて避けて、ロザリーとクリスはすぐに被弾してしまう。

 

「ロザリー! クリス!」

 

「待ち伏せていたのか! こしゃくなー!」

 

ヒルダは二人の事の被弾に叫び、ヴィヴィアンは負けないぞっと強気発言で反撃して行く。

 

「こんな攻撃してくるなんて…過去のデータには無い…!」

 

予測外のドラゴンの攻撃にサリアは混乱していた。

 

「どうするの!サリアちゃん! このままじゃ危険よ!」

 

「ど、どうするって…どうすれば」

 

「サリアちゃん!あなたが隊長なのよ!しっかり!」

 

必死に指示を仰ごうとするエルシャだが、混乱しているサリアは中々上手く指示を与える事が出来ない。ガレオン級のドラゴンが迫って来る。

 

「か!回避!!」

 

だが、サリアは遅れておりドラゴンが迫って捕まってしまう。

 

「「サリア!!(ちゃん)」」

 

「くっ!」

 

サリアはコクピットを開けてマシンガンで撃つも、効果全くなく、ガレオン級がサリアを喰おうとして。それにサリアは絶体絶命状態であったその時、アンジュ機がこっちに近づいてくる。

 

「もうすぐよ…もうすぐさよならできる…」

 

「アンジュ!?」

 

ドラゴンの狙いが近づいてくるアンジュに変わり、攻撃を仕掛けようとする。

 

「あいつ、本気で死ぬ気…?」

 

ヒルダだけではなく他の皆にはそのような行動を取っているようにしか見えなかった。だが、ドラゴンの強烈な尾に弾かれたが、アンジュは体勢を立て直す。

 

「いけない…もう一度ちゃんと!」

 

アンジュがドラゴンへ近づこうとすると、ガレオン級ドラゴンは翼が光弾を放ち、アンジュを撃墜しようとする。

 

「ぐ!うぅ…」

 

死ぬ覚悟ができていないのか単に怖いのか回避行動を取ってしまう。

 

「ダメじゃない…ちゃんと、死ななきゃ…死ななきゃ、いけないのに……」

 

アンジュは涙を流しながら、自身の行動に嫌悪していた。その時、頭上からガレオン級が迫り、両翼の手を広げ、ヴィルキスを掴む。

 

捕縛された衝撃で頭をぶつけ、アンジュの左手の包帯が解け、その下から指輪が露出する。額から血が流れ、痛みに呻くアンジュの眼前に喰らうように顔を近づけるドラゴンが迫り、声を引き攣らせる。アンジュは怯えていると、自身の指にはめている母の形見である指輪を見る。その時、アンジュは過去の記憶、母の言葉を思い出す。

 

 

 

……生きるのです、アンジュリーゼ!

 

 

 

 

そしてドラゴンがアンジュに襲い掛かろうと迫る。

 

「いやあああぁぁぁっ!!!!」

 

アンジュの叫びと同時に額から落ちた血が指輪を染めた瞬間、それに応えるようにヴィルキスが白銀の輝きを放つ。その輝きに怯んだガレオン級はヴィルキスを放してしまい、同時にサリアのアーキバスをも解放する。

ヴィルキスを覆っていた錆や汚れは剥がれる様に落ちて四散していく。仮初の装甲を捨てた後からは眩い光が弾け、鮮やかな鎧が姿を見せる。

その光景に戸惑っていたアンジュだが、弾かれるように操縦桿を握り、ヴィルキスを駆逐形態に変形する。姿を現わすヴィルキスは純白の穢れなき装甲を纏い、蒼穹の翼を模したスラスターが開く。関節部に走る金色のコーティングは秘める気高さを象徴するかのようであった。

真紅のバイザーを光らせ、頭部に白銀の天使のモニュメントが燦然と輝くヴィルキスの姿は、まるで裁きを下すために舞い降りた“白き聖なる天使”のようであった。

 

「死にたくない!」

 

すると、ガレオン級が再びヴィルキスに襲い掛かる。

 

「死にたくないいいぃぃぃ!!!!」

 

アンジュは叫ぶとガレオン級ドラゴンに向かって対ドラゴン用アサルトライフルを撃つ。ある程度ダメージを与えるとアンジュはヴィルキスを飛翔形態に戻し、距離をとる。その機動性は先程とは打って変わって大きく向上していた。ガレオン級ドラゴンは今度は光弾を放つ。アンジュはそれをかわしていくと駆逐形態に変形して、ヴィルキスの専用武装である零式超硬度斬鱗刀「ラツィーエル」を使って打ち消していく。そしてアンジュはガレオン級ドラゴンに近づく。

 

「…お前が!」

 

アンジュはラツィーエルを突き構え、ガレオン級ドラゴンの頭部へ深く突き刺す。素早く手放し、離れるとヴィルキスを追尾していた光弾がガレオン級ドラゴンの胴体に直撃する。

 

「お前が死ねええええぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

それに見計らってアンジュは凍結バレットをガレオン級ドラゴンに撃ち込み、同時に頭部に刺さったままのラツィーエルを回収する。ガレオン級ドラゴンは断末魔の悲鳴を上げ、海へ墜落するとたちまち氷原へと変わるのだった。

 

サリア達は眼の前の光景に呆然となっていたが、アンジュはグチャグチャな感情に戸惑っていた。

 

「は、ははは……こんな感情、知らない……」

 

(昂ぶってんじゃねぇか!)

 

「違う!こんなの私じゃない!殺しても…生きたいだなんて…そんな汚くて、浅ましくて、身勝手な…」

 

(それが“ノーマ”)

 

「う…うう…うあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

何崩れるアンジュ、ドラゴンとの戦いを終えた空に黄昏の日が差し照らしていた。その様子を遠くから見ていたアーサーはヴィルキスを見る。

 

「どうやら、覚醒しちゃったようだな……」

 

『そのようだね♪』

 

「え!?」

 

コンソールの画面にアリマの顔が映る。

 

『すまない、すまない。君のフラドールのメインカメラを勝手に改造しちゃった。それにしても、やはり凄い物だ、古の民が強奪したラグナメイルは♪』

 

「知ってたんですね。」

 

『まぁ、ね。さぁ!風のトライブであるタスク君とミスルギのアホ兄貴の行動を頼むよ!』

 

「はいはい…(どんだけお調子者なんだこの人は…)」

 

「何か言ったかな〜?」

 

「いいえ、何も……」

 

アーサーは呆れながら、まず最初にミスルギ皇国へとむかう。

 

 

一方、アルゼナルの墓標ではアンジュがいた。

 

「さようなら、お父様、お母様、お兄様、シルヴィア…」

 

アンジュは失った物を呟き、ナイフで自身の髪を切る。

 

「私にはもう…何もない、何もいらない、過去も、名前も、何もかも……貴方達の様に簡単に死なない、生きるために地面を這いずる、泥水をすすり、血反吐を吐くわ。私は生きる。殺して、生きる……」

 

夕陽が勇ましくなった彼女を照らす。夜、部屋に戻ったアンジュはゴミ箱の中に入っているのを見る。それは先のジャスミンモールで新兵であるココから貰ったプリンであった。アンジュはココから貰ったプリンを食べる。

 

「う…うう……」

 

美味しかったのか、アンジュの目から涙が溢れ、大声で言う。

 

「不味っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アンジュ達やアーサーが知らない間、夜になったアルゼナルの上空から見下ろす2人の男の姿があった。一人は金色の長髪に背広を着た紳士的な印象の青年で、もう一人はズタボロになった布で顔から足まで覆い隠していた。

 

「何をそんなに上目遣いで彼女を見てるんだ?」

 

「……ムカつくからだよ。」

 

「それが“身内”でもかい?」

 

「……うん、やっぱり哀れだよなぁ。何が“私は生きる?”、“殺して、生きる?”……ハァ〜、この世界の事実を知らない身内の馬鹿馬鹿しい事を聞いていると……“ストレス障害”起こしそうだ。」

 

「やれやれ……君は悍ましい青年だよ。」

 

「あぁ〜〜……早くアーサーに会いたいなぁ〜〜!!!」

 

青年の左腕から電流が流れ、黒く禍々しい鬼を模した籠手へと変わる。

 

「神様さん、そろそろ僕はミスルギ皇国の地下に帰らせてもらいますよ。買い取った“豚”を改造したないのですから♪」

 

「……フフフ、良いよ♪」

 

青年は指を鳴らし、彼をミスルギ皇国にへと返す。後に残った青年、改め…【エンブリヲ】は再びアルゼナルを見る。

 

「やれやれ、色々見下す彼を見てて痛々しいものもないな、あそこまでの性格。そもそも私は神様さんではなく“調律者”だというのに。」

 

エンブリヲはそう呟き、その場から消えたのであった。

 

 

 

 

一方、ミスルギ皇国へと戻った彼、地下室の最奥にある隠し部屋、そこには色んな実験材料と拷問具が置かれていた。実験台に寝かされ、生まれたままの姿をし、身体中に血を流す傷や鎖、拘束具を付けられた女性が猿轡と目隠しされていた。戻ってきたユーティスはその指で女性の滑らかな肌を触る。

 

「っ!?っ〜〜〜〜!!!!!」

 

猿轡のせいで大声を上げれない。すると彼のロングコートから金属音を鳴らし、尾先が鋭利の槍をした尻尾を展開する。すると槍の先から注射針の様な突起が現れ、女性の下腹目掛けて刺した。

 

「ん"〜〜〜っ!!!」

 

下腹の激痛に耐えられないほどの悲鳴。そしてその注射針は、女性の身体の中に“何か”を流し込んでいき、女性は苦しげに喘ぐ。

 

数時間後、女性の断末魔の叫びと共に、別の声が地下室内に響いた。それは慈悲や哀れみ、恐怖心といった通常の生き物が持って当たり前の感情を一切持たない、まさに『恐怖』という言葉をそのまま具現化した生命体の産声だった。

 

彼は女性の腹を食い破って出てきた生命体に命令する。

 

「“クラウドブルース”の偵察を頼んだよ♪」

 

彼の命令に首を縦に動かした生命体は背中から四枚の虫の羽を広げ、通気ダクトから入り、外界へと出るのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター05 孤独の少年少女達

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


アンジュがあの戦闘によりヴィルキスを覚醒してから2日後、ミスルギ皇国に到着したアーサーは今のミスルギ皇国の現状を目の当たりにする。そこはかつてのミスルギ皇国ではなく、新皇帝であるジュリオ・飛鳥・ミスルギが統治する『神聖ミスルギ皇国』へと変わっていた。^元皇后であったソフィアはあの時、偽皇女アンジュリーゼの洗礼の儀によって、愚かなノーマを庇った事で遺体は愚か、その痕跡すら見つかっていなく、元皇帝のジュライは拘束された後、幽閉していた筈が脱走し、現在指名手配とされている。

 

「世間はそうなっているが、皇帝と皇后は俺の元冷凍保存状態でで預かってる。」

 

建物の屋上に寝転がったアーサーはアリマから貰った“霊符”で『擬似マナ』で情報を収取をしていた。

そして今日の新聞記事の一覧を見る。

 

「へぇ〜…ノーマを庇う少年少女の四人組か…」

 

アーサーはその記事の内容を見る。神聖ミスルギ皇国へと再建された後、新皇帝ジュリオの命により、ノーマを匿っている人間を徹底的に拘束し、処分をしているとの事。その中で三人の男女がノーマを連れて、逃亡しているとの事。発見次第三人を拘束及び保護、ノーマを拘束しろと載っていた。

 

「拘束って……ドラゴンを倒す兵器にしてるだけじゃないか。(俺の本当の親は知らないけど、二番目の師匠が言うにはマイラの両親に育てられたとは聞いたな…)……ん?」

 

アーサーは下の方から何やら気配を感じ、下を見る。路地裏の道を急いで走るボロボロの布で体全体を覆った四人組。その四人を追いかける警察官、上から見ていたアーサーは建物の上へ飛び移りながら後を追いかける。

 

そして四人組の少年少女は迷路となっている路地裏の道を走り回っていた。

 

「お兄ちゃん! もうダメ! もう走れないよ!」

 

「ミント!もう少しの辛抱だ!警察官から振り切れば大丈夫!」

 

「でも!フェリスお姉ちゃんとクレインお兄ちゃんも見失っちゃったよ!」

 

「大丈夫だ!フェリスとクレインならきっと……っ!!」

 

だが二人が走っている間に最悪な窮地へと堕とされる。そして二人にようやく追い付いた警察官達がやってくる。少年は大切な妹を守ろうと前に出る。すると警察官の頭上から一つの影が飛び降りた。影は赤い鎧を纏い、少年とノーマ、警察官の間に着地して名を言う。

 

「セイザータリアス!」

 

アーサーはセイザータリアスへとなり、警察官をあっという間にノックダウンする。するとアーサーは二人を抱え、下水道の中を歩いていると、少年がアーサーに怒鳴る。

 

「何で…何で僕達を連れ去った!!まだフェリスとクレインが残っているのに!!」

 

「止めておけ……お前達の姉弟はたった今、検察官と警察に拘束された。」

 

「だったら、助けろよ!」

 

「無駄だ……拘束され、彼らに連行されたら、ノーマと協力した事で拷問や処刑が待っている。」

 

「それでも!」

 

「……分かった。全く…(俺はミスルギ皇国のクソ皇帝の監視を頼まれていたのに!)」

 

アーサーは呆れながら下水道の中を走り、二人がいる場所へと向かうのであった。マンホールのふたを開け、森の中へ出たアーサー。するとランスが行き先が違う事に気づく。

 

「おい!行く場所が違うぞ!」

 

「何を言ってるんだ?武装した彼らに、生身やグランセイザーになった俺に立ち向かえって言うのか?戯け者が……」

 

「何だと!!」

 

「ランスお兄ちゃん!」

 

ランスがアーサーに殴りかかろうとするが、ミントが止める。するとアーサーがリモコンのスイッチを入れ、光学迷彩で隠していたフラドーラを起動させる。

 

「これって!!?」

 

「大きな赤い鳥?」

 

 

 

 

 

 

 

その頃、警察と検察官によって拘束された二人はコンテナの中にいた。二人の他にノーマやノーマを庇って捕まった男女がいた。姉弟は後二人の弟と妹の無事を心配していた。

 

「ランスとミント……無事に逃げ切れたかな?」

 

「大丈夫よ、ランス君ならきっとミントと逃げ切れてる」

 

「フェリス姉さん……?」

 

するとコンテナの上から何やら物音が響く。

 

「何?」

 

中にいるノーマ達や少年少女達が怯えていると、物音の声が届き叫ぶ。

 

「“クロスボウパンチ”!!」

 

天井が真っ赤に光、天井がポッカリと穴が開く。すると光が差す穴から、赤い人が顔を出す。

 

「あ〜〜……落ち着いて皆さん。今から助けます」

 

何と、コンテナの上に自動操縦で動くフラドーラにしがみ付いたアーサーがそのままコンテナの中を覗いていた。アーサーは二人やノーマ達を助け、フラドーラをマニュアルに切り替える。

ミスルギ皇国から離れた森の中、四姉弟達は再開する。

 

「「ランス!ミント!」」

 

「お姉ちゃん!お兄ちゃん!」

 

「心配したのよ!」

 

「ごめんなさい!」

 

「ミント、あの人は?」

 

「姉さん、彼は俺達の味方だよ。」

 

フラドーラから降りたアーサーは自己紹介に入る。

 

「さて、自己紹介がまだだったな……俺の名は“アーサー”。射手座の戦士『セイザータリアス』の装着者だ。」

 

「セイザータリアス?」

 

「さっきの赤い姿だ。本当はアホ皇帝の監視を頼まれていたのに、お前らの余計なことで、フラドーラを世間に見られてしまった。」

 

「アホ皇帝って?」

 

「神聖ミスルギ皇国皇帝 ジュリオ・飛鳥・ミスルギだ。」

 

「「「「あ…アホって……」」」」

 

誰もがジュリオの事をアーサーが彼を【アホ】と言っている事に呆然していると、アーサーの擬似マナに通信が入る。

 

「?……もしもし?」

 

『ちょっとアーサー君!!ミスルギ皇国で何をやらかしたんや〜!!』

 

通信して来たのは司令であるアリマであった。

 

「色々ありまして…現在、収容されそうになっていたノーマや他の人達を救出して、そのーー。」

 

『言い訳は結構!!…ま、兎に角その子達を連れて来てくれないかな?彼らをこのままにする訳にもいかないし、君の事やフラドーラも…』

 

「分かりました。」

 

アーサーは通信を切り、四姉弟やノーマと数人の人間達に言う。

 

「良し、お前達をクラウドブルースに連れて行く。決して余計なことをするなよ。」

 

「クラウドブルース?」

 

皆んなはクラウドブルースと言うのに首を傾げる。

 

 

 

 

 

アーサーは皆んなをクラウドブルースに連れて来た。ランス達は雲の上に大陸が浮いている事に驚いていた。

 

「ようこそ、浮遊大陸クラウドブルースに。」

 

「ここがアーサーさんの住んでいる国!?」

 

「大陸が空に浮いているって…」

 

「おとぎ話に出てくる“巨人の国”みたい!」

 

「当然だ…この技術は“来るべき備え”の為でもあるからな。」

 

「「「「“来るべき備え”?」」」」

 

アーサーはその事を話そうとすると、アリマが急いで来て、アーサーの間に割り込む。

 

「はい〜!その話はまた今度!」

 

アリマはそう言いながらアーサーにある事を報告する。その報告を聞いたアーサーは驚き、家に帰ってみると…。

 

「アリマ司令!家がでかくなってるんですけど!!」

 

「すまない、すまない。君が彼等を連れて来た事で家を拡張させたんだ!」

 

その証拠に、普通の和風屋敷がどっかの貴族さんが住む三階建ての大きな和風屋敷になっており、内装も広間、台所も浴場も大幅に広くなり、庭園も池から大きな湖へと変わっていた。アーサーと焔はあまりの出来事に放心状態へとなっていた。こんなに大きく広くなれば、彼等の保護者として扱われ、周りの人から大家族と勘違いされる事に悩んでいた。

 

「ヤバイ……これが世に言う、『責任感』と言うやつか。」

 

「何々?『これからお前は彼等の保護者となるのだ!それなら、俺と同じ式神を増やした方が良い!』」

 

「式神を増やす?そんな事…出来るのか?」

 

すると焔は白紙の霊符を取り出し、液状の墨と筆を持つ。そして式神の資料を見せる。アーサーは丁寧な書き方で霊符に模様と文字を描く。焔と同時に霊符を書き終え、式神を呼び出す。現れたのはスライムであった。

 

「……え?」

 

アーサーはこの時、このスライムを見て思った。

 

「(このスライム…役に立つ?)(いやいやいや!!どう考えても可笑しいだろ!!?)(て、言うか何でスライム?)(もっとこうーー“豊満で形の良いバストとセクシーでグラマーな美女”か、見た目は怖いけど心優しい奴、ツンツンデレデレか気が大人しい美女のお手伝いさんではないのか!?)(しかも何で焔だけあんなスリムでムチムチした美女なんだよ!!)」

 

最後はやましい事も含めてなのか、心を読んでいた焔が呆れる。だがアーサーが呼び出したスライムは驚きの力を発揮していた。居間や広間の汚れ、皿洗いやゴミ処理までしてくれていた。

 

「実は役に立つ!?」

 

アーサーが驚いていると、擬似マナに通信が入る。アーサーは通信を開くと映像に東護ノ介が映る。

 

『アーサーよ、司令部に来てくれないか?』

 

 

 

 

 

東護ノ介に呼ばれたアーサーは、黄昏の王君の中枢であり司令部に来ていた。中は暗く、円形の広間に到着する。

 

「あの…東護ノ介さん、俺を読んだのは?」

 

「上層部の物と私の兄である“風澄 西十郎”が来ている。」

 

すると円形の広間に空間が歪み、現れたのは少年のように若々しい男性であった。

 

「よぉ、『馬鹿弟子一号』。」

 

「馬鹿弟子一号!?」

 

「そう私の兄 風澄 西十郎は……かつてトリト村で親父と超星寮でお前を育てて来た最強のトライブ使いの一人だ。」

 

「東護ノ介さんのお兄さん!!?」

 

「元だがな……今は十二宮と十二支の称号を持つ存在“十二聖将”を守る防人だ。」

 

すると空間が明るくなり、周りに十二人の男女が取り囲んでいた。

 

「一聖将ーー“白羊の騰蛇” 『獅堂 未加』」

 

「二聖将ーー“金牛の朱雀” 『松坂 直人』」

 

「三聖将ーー“双児の六合” 『伝通院 洸』」

 

「四聖将ーー“巨蟹の勾陳” 『三上 辰平』」

 

「五聖将ーー“獅子の青竜” 『獅堂 剣』」

 

「六聖将ーー“処女の貴人” 『早乙女 蘭』」

 

「七聖将ーー“天秤の天后” 『秤谷 仁』」

 

「八聖将ーー“天蠍の太陰” 『反町 誠』」

 

「九聖将ーー“人馬の玄武” 『弓道 天馬』」

 

「十聖将ーー“磨羯の大裳” 『神谷 豪』」

 

「十一聖将ーー“宝瓶の白虎”『雨宮 涼子』」

 

「十二聖将ーー“双魚の天空” 『魚住 愛』」

 

「《我等!初代グランセイザーだ!!》」

 

十二人のの十二聖将ーーー初代グランセイザー達がその名を轟かせる。

 

「そして…」

 

すると初代グランセイザーの真上から、光り輝く白銀に満ちたドラゴンが姿を現わす。

 

「何だ!?……あの【ドラゴン】は!?」

 

「俺達のリーダーであり、クラウドブルースと言う浮遊大陸を創りし御方ーー【雲龍皇(クラウドドラゴン)】であらせる。」

 

黄昏の王君を創設した人物ーーークラウドドラゴンは翼を広げ、アーサーの所へと降りる。

 

 

 

ーーー其方が、新しき人馬の戦士か。

 

 

「は……はい!」

 

 

ーーー良い面構えをしている。だが、お前は自分の嘆きに逃げを感じている。

 

 

「え?」

 

 

ーーー何れ分かる……だが、その前にこのクラウドブルースに奴が来た。

 

 

「奴?」

 

「奴……“奴”と申しますと!!?」

 

 

すると外から警報が鳴り響く。アーサーは不思議に思うと、クラウドドラゴンが呟く。

 

 

ーーー“絶滅者 ボスキート”だ。

 

 

その名の意味がわからないないが、それは敵なのか、それとも絶望を齎す忌まわしき者か、知る由もなかった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター06 絶滅者の咆哮

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)

二話連続更新!


 

遡る事数分前、黄昏の王君 本校舎内部でそれは起こった。突然の爆発に生徒達は驚く。爆発した校舎から異形な黒い怪物が現れ、生徒達を無差別に食い殺していく。駆け付けた斥候部隊も応戦するが、怪物はたった一体で部隊を壊滅打撃に負わせて行く一方であった。

黒い怪物は不気味な笑い声を上げたその時、何処からか轟き叫ぶ声が響く。

 

「“マタドール・バースト”」

 

炎の中から破壊光弾が飛んで来て、黒い怪物に炸裂した。揺らめく炎の中から現れたのは『聖撃砲ブルキャノン』を装備したグランセイザーことライドであった。

 

「セイザータウロン!」

 

ライドはブルキャノンを構え、黒い怪物目掛けて集中砲火する。雷撃を纏った破壊光弾は黒い怪物に炸裂する。しかし、黒い怪物はライドの攻撃を防御しており、ライドに向かって走って来た。するとライドの前に同じ大地のトライブであるセイザーヴィジュエルことヨーコが『聖烈爪レディ・クロー』で黒い怪物の攻撃の軌道を晒す。そしてその隙をつき、セイザートラゴスことクサビが『聖貫槍スパイラル・ホーン』のドリルで黒い怪物を吹き飛ばす。

 

「見たか!俺達 大地のトライブの装着者の力を!」

 

砂埃が舞い上がったその時、砂埃から雷撃を纏った破壊光弾がタウロンを吹き飛ばした。

 

「「っ!?」」

 

二人は驚くと、黒い怪物の肩にタウロンと同じ武器である聖撃砲ブルキャノンが装備されていた。

 

「ブルキャノン!?」

 

黒い怪物が雄叫びを上げ、今度はヴィジュエルと同じ武器の聖烈爪レディ・クローを展開し、ヨーコとクサビに切りかかる。

 

「コイツ、あたし達の武器を見真似ている!」

 

「なら、私に任せろ!」

 

次の声は聖転鋸ブラスト・ソーという大剣状のノコギリを持ったセイザーゴルビオンことエクエスであった。エクエスはブラスト・ソーを掲げ、大波を発生させる。

 

「デ・ストーム!!」

 

大波が一気に黒い怪物や燃え上がっていた校舎を包み込む。

 

「エクエス!おせぇぞ!!」

 

「すまない、人命救助が最優先だったからな。」

 

すると大波で流され、瓦礫に埋もれていた黒い怪物が起き上がり、真っ赤に染まった血眼を輝かせる。

 

「奴は俺達の武器、技を見て真似る事ができる学習能力も持っている。となるとちょっと厄介な相手になるかもしれない。」

 

エクエスはブラスト・ソーを構える。そしてちょうどそこにパイシーズことエミリー、ギャンズことマナコ、ダイルことガイ、リオンことトウジ、タリアスことアーサーも合流する。

 

「ライド!エクエス!皆んな!」

 

すると黒い怪物がアーサーの方を向く。

 

「?」

 

すると黒い怪物が『聖緋弓ファルコンボウ』を展開し、アーサーの技である“バーニングファルコン”を放つ。

 

「《っ!!?》」

 

炎を纏った紅蓮の矢がタリアスに向かってくる。アーサーは急いで聖緋弓ファルコンボウを展開し、同じ技を放つ。

 

「バーニングファルコン!!」

 

アーサーの放った紅蓮の矢と黒い怪物の紅蓮の矢が激突し、周囲に衝撃波が起こる。アーサー達が吹き飛ばされると、黒い怪物も吹き飛ばされる。瓦礫に埋もれた皆んな、そんな中アーサーが起き上がり、周囲を見渡す。

 

「皆んな!……大丈夫か!?」

 

ライド達の安否を確認しようと立ち上がった直後、黒い怪物が現れ、アーサーを首を掴む。

 

「グッ!!」

 

黒い怪物の顔半分がさっきの衝撃波の影響で崩れており、アーサーを睨みながらじわじわと首を締めていく。

 

「カハッッ!!」

 

アーサーが苦しんでいると、気がついたエクエスとライドがアーサーを助けようと黒い怪物に向かって来る。しかし、黒い怪物は不気味な笑い声を上げ、ライドとエクエスを払い除ける。

 

「クソッ…………」

 

アーサーの意識が薄れていく中、ある光景が頭に浮かぶ。紅蓮の炎の中、血の涙を流す悪魔、鬼を模した右腕が浮かび上がってくる。

 

「負けてっ……たまるかあああぁぁぁ!!!!」

 

その時、アーサーの右腕から炎が舞い上がり、形を変えていく。紅蓮の炎の様に光る模様、赤々とした腕、鬼の顔をした籠手、鋼鉄をも溶解してしまう鋭利の爪が生えた。鬼の様な手となったアーサーは黒い怪物の腕を掴む。すると掴んだ手から焼く音と煙が上がる。黒い怪物が悲鳴を上げ、アーサーから手を離す。それと同時に怪物の左腕が溶け落ちる。アーサーは紅蓮の右腕の拳を握り、渾身を込めて黒い怪物に強烈な一撃を放つ。

 

 

ッッッ!!!

 

 

途轍もない衝撃波が起こり、気がつくと黒い怪物の胴体に大きな風穴が空いていた。黒い怪物は何が起こったのか分からなく、血眼の輝きを失い、絶命する。その光景にライド達は驚く。

 

「嘘だろ!?あんな固てぇ奴を一撃!?」

 

「もしかしたら、俺たちの知らないアーサーの力かも知れない。それよりもアーサーを!」

 

「あぁ!」

 

ライド達は急いで倒れたアーサーを運び出す。

 

 

 

 

 

 

医務室ーーーアーサーはそこで目を覚ます。

 

「あれ?ここは?」

 

「気が付いたか?」

 

目の前にライド、エクエス、マイラが心配していた。

 

「あ痛たたたたっ。」

 

「無理するな」

 

アーサーが起き上がろうとするが、右腕に痛みが走る。

 

「すまん……って!?」

 

「ええええぇぇぇぇぇ!!??」

 

アーサーは右腕を見て驚く。夢なら覚めて欲しいほどの禍々しい鬼の腕であった。

 

「その鬼の様な腕……完全にアーサーの身体と一体化しているんだ。手術しようとしても、メスの刃がいとも簡単に溶けてしまうんだ。アーサー…何か、この腕で見たことあるか?」

 

「〜〜〜〜。分からない…けど、頭の中で悪魔がこの腕と同じ鬼の腕を使っていた。」

 

「“悪魔”?」

 

「うん…微かだけど、頭の中や夢でいつも同じ夢を見るんだ。その夢が……」

 

「おぅ…気が付いたか。」

 

医務室に西十郎が来る。

 

「アーサー、ライド、エクエス、マイラ……他の八人も格納庫に集まっている。集合しろ。」

 

突然の事に、アーサー達は急いで皆んなが集まっている格納庫へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

格納庫に着くと、そこにアリマと東護ノ介、そしてトウジ達が待っていた。

 

「あ、来た!」

 

「遅れてすみません!」

 

「アーサー、腕大丈夫か?」

 

トウジがアーサーを心配する。アーサーは右腕を抑えると、妙な違和感を感じた。

 

「あれ!?」

 

さっきまで鬼の腕だったのが、生まれたままの腕であり、しかも義手ではなく、本当の生身の腕であった。そして話は変わり、西十郎がアーサー達に新たな任務を与える。その内容とは。

 

「俺達を下界の偵察任務を与える?」

 

「そうだ、あの黒い怪物が出てきたと言うことは……“奴”も動き出したと言うことになる。」

 

「……“エンブリヲ”」

 

「そして、彼に付き従う最強の七人……“穢れ騎士”もいる。」

 

エンブリヲと彼を守る七人の従者であり騎士もいることに驚くアーサー。すると格納庫が明るくなり、現れたのはフラドーラとヴィンセクト、グランヴェ、ゼーアであった。

 

「“フラドーラ”、ヴィンセクト、グランヴェ”、“ゼーア”……けど、頭部が違う。」

 

「お前たちグランセイザー専用にカスタマイズしたんだ。その為、頭部がお前たちの使っている武器を装備させている事に能力を飛躍的に発揮させることができる。それとアーサー、お前ミスルギの夫妻を隠してただろ?」

 

「え!?(バレた……。)」

 

「《ハアァッ!!?》」

 

「アーサーお前!?」

 

「とんでもないことをしたね。」

 

「何でミスルギ皇室の皇帝と皇后を連れてきたの!?」

 

「それは……色々あって。」

 

皆んなに責められ、アーサーは落ち着いた表情で謝罪する。

 

「言い訳は言わない……“ごめんなさい”」

 

「……ま、兎に角冷凍保存状態は解除して置く。二人には話しておかなければならないことがあるからな。」

 

「……お願いします。」

 

アーサーはそう言い、西十郎が二人が入っているカプセルを運び出す。マイラはここに残って皆んなのサポートをする事になり、風のトライブであるタスクの応酬、及びアルゼナルのノーマ達の行動を探ってくれとの追加命令が下った。11人はそれぞれの機体に乗り込む。アーサーのは頭部に聖緋弓ファルコンボウが装備されたフラドーラに、ライドは聖撃砲ブルキャノンが装備されたグランヴェに、エクエスは聖転鋸ブラスト・ソーが装備されたゼーアに乗り込む。トウジ達もそれぞれの機体に乗り込むと、東護ノ介とアリマ、西十郎が解説してくれる。

 

「新たな機能に、待機中の酸素を取り込んでエネルギーに変えるシステムとここに繋がる次元跳躍ゲートを組み込んだ。そうすれば、いついかなる時でも修理や緊急事態での対応ができる。呉々も気をつけんだよ!」

 

アリマはそう言い、11体のロボットのリフトロックを解除する。機体の推進機が作動し、11人は一斉に発進した。

 

 

 

 

その頃、科学班が回収した黒い怪物……東護ノ介が黒い怪物に驚く。

 

「っ!!……まさか、あの悲劇の再来が来るとは。」

 

東護ノ介が呟く中、別の場所では冷凍保存から目覚めたジュライ皇帝陛下とソフィア皇后陛下を西十郎が尋問していた。

 

「さて、あなた方には……話しておかなければならないことがあります。心して聞いてください、ジュライ皇帝陛下とソフィア皇后陛下…。」

 

西十郎から放った言葉に二人は身の毛もよだつ恐怖を抱え込む。

 

「そ…そんな…!!」

 

「まさか…」

 

「えぇ……馬鹿弟子一号の記憶が戻れば、アイツは真っ先に…“馬鹿弟子二号”に襲いかかる事になります。その時は、覚悟しておいてください…」

 

「何て…ことだ……!」

 

「本当に……申し訳ございません…!!」

 

頭を下げるジュライ皇帝陛下と泣き崩れるソフィア皇后陛下、西十郎は落ち着いた表情で言う。

 

「これは俺やあなた方の責任でもある……馬鹿弟子の始末を私に任せてもよろしいでしょうか?」

 

「頼む…!!」

 

「これ以上…12年前の連鎖を断ち切る為に、アンジュリーゼとシルヴィアを守ってください…!!」

 

「分かった…」

 

ソフィア皇后陛下の頼み事を聞き入れた西十郎は立ち上がる。

 

「何処へ?」

 

「言われた通り…アンタ達の娘であるアンジュリーゼを守りにさ。」

 

西十郎はそう言い、何処かへと消えたのであった。




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チャプター07 皇女、喪失・前編

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


その頃、孤島に残っているタスクは食力確保の為、一人で釣りをし、洞窟へ帰ろうとしていた。

 

「大漁大漁♪これでしばらくは食料に困る事はないな…」

 

しかし、タスクは孤島を去っていった四人の事と今の自分に不安を抱いていた。

 

「……(何やってんだ俺……他の生き物の命を奪って…生きて……何の…ために?それに比べてアーサー達は俺と違って自立した…俺にはどうする事も…。)」

 

タスクは不安げな心を感じながら歩いていると、砂浜にある物が打ち上げられていた。それは全身が純白に満ちた機械の天使であった。

 

「あれは……ヴィルキス…!?」

 

タスクはヴィルキスがここにある事に驚き、ヴィルキスのコックピットハッチを開ける。中には金色の髪、薄紅色の唇、青きライダースーツを着た美少女が気を失っていた。タスクは急いで彼女を運び出し、洞窟の中にあるベッドに寝かせる。体についていた泥を拭き、やましい事をしないように彼女が着ていたライダースーツを脱がしてそれを干す。ついでに彼女の手を縄で縛る。タスクは椅子に座り、彼女を見る。

 

「(ヴィルキスに乗っていたと言う事は、この子が次のヴィルキスのーーー…だとしても、僕にヴィルキスを守る資格なんてない…。)」

 

タスクはそう思いながら、彼女が冷えないように一緒に眠る。

 

 

 

 

 

 

時が遡る事 数時間前ーーー。

 

「総員、戦闘準備!ドアが開くぞ!!」

 

戦闘空域に入った第一中隊、前隊長であったゾーラは意識を取り戻したい所だが、あまりに重傷だった為戦闘に参加する事もできなく、隊長をサリアに回されたとのこと。空間に次元のゆがみは発生し、中からドラゴン達が現れた。すると、アンジュ機がドラゴンの群れへと突っ込んでいった。

 

「アンジュ!勝手に突っ込むな!」

 

サリアが命令しても、言うことを聞かなかった。アンジュはドラゴンに攻撃をする。

 

「はああああっ!!」

 

アンジュが突撃しようとした直後、排熱板から煙が上がる。

 

「アンジュ!!」

 

ヴィヴィアンとが落ちていくアンジュ機。

 

アンジュは必死に機体を立て直そうとした時だ。

 

「助けてやろうか?」

 

ヒルダが手を貸そうとしていた。だが、アンジュはそれを拒否した。

 

「くっ!.....失せろゴキブリ!」

 

アンジュはすぐさま駆逐形態に変形すると一体のドラゴンがアンジュに体当たりし、海へと墜落した。

 

「ヴィルキス!」

 

サリアは海へ墜落したアンジュではなく、彼女が乗っていたヴィルキスの方を心配し、スクーナー級ドラゴンを駆逐していくのであった。

 

 

 

 

 

 

そして、現在の状況ーーー。海へ墜落したアンジュが目を覚ますと、目の前の光景に驚いた。両手が縛られており、その横に茶髪の男性が寝ており、良く見ると裸にされていた。

 

「……え? え!?えぇぇぇぇぇぇっ~~~~~~~~!?」

 

「ご!ごめん!念のために縛らせてもらった…」

 

タスクはアンジュの側から離れ、アンジュは辺りを見渡した。すると近くの机の上に自分のライダースーツが置いてある事に気付き、タスクの方を向く。

 

「君は、どうしてここにっ?、え!?あああっ!!」

 

タスクは飲み物を持ったままアンジュの所に近付いた途端、足元に転がっていた空き瓶を踏んづけ転んでしまい、アンジュの股間に突っ込んでしまった。

 

「っ!?」

 

「っ!」

 

二人はその光景に頬を赤くした。

 

「ごめん!これは「いやああああっ!!」ごべっ!」

 

タスクはアンジュに謝ろうと謝罪しようとした直後、アンジュは悲鳴を上げ、膝でタスクの顔を横蹴りし、さらに腹に足を乗せてから投げ飛ばす。アンジュは直ぐ様縄を切り、ライダースーツを持って洞窟から出て海岸へと向かっていった。

 

「(何なの此処、私....どうして…はっ!)」

 

アンジュは着替えながら今までの事を思い出す。突然ヴィルキスの排熱板から煙が上がり、そこに襲ってきたドラゴンと共に墜落したことを…そう考えているうちに、アンジュの目の前に砂浜に打ち上げられているヴィルキスがあった。アンジュは直ぐに乗り込み、発進しようとするが起動しなかった。

 

「どうして動かないの!?」

 

アンジュは原因を調べようと、排熱板が焦げており、調べると、中からたくさんの下着が詰め込まれていた。アンジュはヒルダの仕業だと知り、悔しながら下着を破り捨てて踏みつけると、

 

「酷いじゃないか、」

 

「っ?」

 

蹴り飛ばしたタスクがアンジュ所に向かって来た。

 

「君は、命の恩人に何て事を....」

 

するとアンジュはホルスターからハンドガンを取りだし、タスクの足元に目掛けて撃つ。

 

「え!?うわぁっ!!えええええっ!!?」

 

タスクは後方に飛び退いて、手を上げる。

 

「それ以上近付いたら撃つわ!」

 

「お!落ち着け!俺は君に危害を加えたりしない!それにもう撃っているし、」

 

「縛って、脱がせて、抱きついておいて?」

 

「え?あ、だからあれは....」

 

「目覚めなかたったら!もっと卑猥でハレンチな事をしてたでしょ!?」

 

「もっと卑猥でハレンチ!?....ハァ、女の子が気を失っている隙に、豊満で形のいい胸の触感を味わおうとか、無防備で、体隅々まで触ろうとか、女体の神秘を存分に観察しようとか、そんな事をするような奴に見える....」

 

タスクは火に油を掛けるような言葉を放ち、アンジュはさらに顔が赤くなり、銃を構える。

 

「そんな事をするような奴だったの!!!?何て汚らわしい!この変態っ!!」

 

「ご!誤解だ!俺は本当に君を助けようとってっ痛~い!!ああっ!!?」

 

タスクは弁明しようとしたが、足元に蟹が近づいており、タスクの足の小指を挟む。タスクはあまりの痛さにアンジュの方に倒れ転び、アンジュの股間に埋まってしまう。

 

「っ?!」

 

男は直ぐに離れるが、アンジュは顔を赤くし、タスクに睨んだ。

 

「なぁぁぁぁぁぁぁっ~~~~!!」

 

タスクは叫び、アンジュは男性に向けて発砲した。しばらくして、

 

「変態!獣!発情期っ!!」

 

アンジュは怒りながら、男性を蔓でグルグル簀巻き状態にして、木に吊して去って行った。

 

「あの~、もしも~し、今のは事故なんだよ~!」

 

タスクは弁明したが、アンジュは無視していた。

 

 

 

 

 

その頃、アルゼナルではヴィルキスとアンジュが海へ墜落したと同時に行方不明との事で、司令室にいるジャスミンと愛犬のバルカン、整備班長のメイ、隊長のサリアがいた。

 

「ヴィルキス墜ちたそうだね。やっと乗りこなせる者が来たと思ったんだがね…」

 

「機体の調子は良かったのに、どうして!?」

 

メイは拳をぶつけながら、悔やんでいた。

 

「考えるのは後よ、今は機体が最優先よ」

 

「分かってる!すぐに回収班を回すよ!」

 

「アンジュもだ」

 

「!?」

 

「アンジュも捜索しろ、最悪…“死体”でも構わん。」

 

「……」

 

 

 

 

アルゼナルの発着場にサリアとメイを含む回収班が輸送機に乗り込み準備をしていると、そこにヴィヴィアン、エルシャ、ココやミランダ、が来た。

 

「メイち~ん!!回収いくんでしょ?アタシ達も行く!」

 

「皆、戦闘でさっき帰ってきたばかりじゃ?」

 

「直ぐに行かないと死んじゃうじゃん?」

 

「「え?」」

 

「アンジュは生きてる!分かるもん!」

 

「早く見つけてあげなくちゃ♪きっとお腹空かしてるわ!」

 

エルシャはサンドウィッチとスープの弁当が入ったバスケットを持っていた。

 

「ココやミランダも?」

 

「はい!」

 

「アンジュを探すなら多い方が良いと、指令にちゃんと許可を頂いたの!」

 

ココとミランダとが言うとヴィヴィアン達は構わず、輸送機の中に入っていった。

 

「ほらほら!レッツラゴ〜〜!」

 

ヴィヴィアンとエルシャ、ココとミランダが輸送機に乗り、一緒にアンジュを捜索するのであった。

 

 

 

 

 

 

その頃、アンジュはヴィルキスに非常食がないかを調べていたが、見つからなかった。

 

「どうして非常食がないの!?」

 

するとアンジュはコックピットを見て、サリアとジャスミンの言葉を思い出す。

 

「ノーマの棺桶か…」

 

すると、ヴィルキスのコックピット内に海水が増しており、アンジュは急いでその場から離れた。

空が曇りだし、雨が降りだし、雷鳴が轟き始めた。

アンジュは大木の穴を見つけて雨宿りするが、飢えと雨の寒さで体が震えるが何か痛みを感じ、足を見ると蛇が噛みついており、急いで振り払い、その場から走り出す。どれぐらい歩いたのか分からなくなり、体力が低下していった。先の蛇の毒なのか、体もだるく雨による体温低下により、アンジュは倒れてしまう

 

「……誰か」

 

助けを呼ぼうが、、彼女を助けにくる仲間はいなかった。

 

「…誰も、来るわけ…ない」

 

アンジュは涙を流し、上手く立ち上がろうとすると、

 

「あの…大丈夫?」

 

グルグル簀巻きにされたタスクがアンジュに声をかける。どうやら同じ場所に辿り着いてしまったようだ。

タスクはアンジュの苦しい表情を見て、何かあったと悟る。

 

「たす…け…て…」

 

アンジュは倒れてしまい、タスクは急いで蔓を切りアンジュの元に向かい抱きかかえて容体を調べる。

左太腿に蛇にかまれた所を見つけ、蛇にかまれたことを知り、急所口で傷口から毒を吸い出して処置をする。そしてタスクはアンジュを抱いて、隠れ家へ連れて帰って、泥で汚れた身体を拭いていた。

その時にアンジュの指にはめていた指輪を見て、自分の幼い頃の事を思い出す。

 

紅蓮の業火が街を覆い尽くし、破壊されたパラメイル、無惨にバラバラにされたメイルライダー、そしてその上を揺らめく様に身体中に顔が浮かび、無数の叫びと産声を上げる巨大な胎児が写る。

 

そしてそこに両親も息絶えて、幼い頃の自分は泣いていた。

 

『父さん!母さん!』

 

すると、泣いている自分は違う方向を見た。片腕を無くして歩いてくる黒髪の女性とヴィルキスが目に映った。すると炎の中に金色の髪をした男の子がタスクに近寄り、呟く。

 

「お父さんとお母さんが死んだ理由を教えてやろうか?それはね………“理想を語るばかりで何も為し得なかった愚物”だったからだよ。」

 

少年の放った言葉が、タスクの心にひびをつけた。そして少年は人を見下す様な目でタスクを見上げ、炎の中へと消える。

 

「ヴィルキス…」

 

タスクの心に不安とあの時の恐怖が染み込んでおり、彼女を見る。タスクは呼吸が安定し寝ているアンジュを見る。どうして彼女がヴィルキスに乗っているのか、何故彼女の機体をこの子が受け継いでいるのかそう思うタスクであった。

 

アンジュは気が付き、辺りを見渡すと最初に目覚めた洞窟だ。

 

「無理しない方が良いよ、毒は吸いだしたけどまだ痺れは残っているから」

 

タスクはアンジュにそう言い、アンジュが身体を起こす。すると自分が着ている物に目をやる。ライダースーツじゃなくワイシャツ姿を見て気付き、思わずタスクを睨む。

 

「言っておくけど、動けない女の子にエッチな事なんてしてないからね」

 

タスクはそう言いながら、煮込んだスープを器に盛り付ける。

 

「もう少し治療が遅かったら危ない所だったんだ、これに懲りたら迂闊な格好で森に入ったらダメだよ」

 

「…余計なお世話よ」

 

アンジュは頼んでもいない顔をしていると、タスクはスープの具をスプーンにのせてアンジュに向ける。

 

「はい…」

 

「え、何?」

 

「食事、君何も食べてないだろ?」

 

「いらないわよ!そんな訳分からない物を…!」

 

すると、アンジュのお腹から音が鳴る。身体が正直なのが恨めしくなってきた

 

「変なものなんて入ってないよ…ほら」

 

アンジュは渋々と口を開けて、食す。

 

「……不味い」

 

そう言いながらも口をアーンッとあけるアンジュ。

タスクはクスリッと笑う。

 

「気に入ってもらって良かったよ……海蛇のスープ」

 

ウミヘビという言葉にギョッとし、飲みこむアンジュ。

 

「少しは信用してくれた?」

 

タスクはそう言うが、アンジュはまだ信用出来ない表情をし、タスクを見る。タスクは少し困った表情をした。

 

「…」

 

「出来ればもう殴ったり撃ったり、簀巻きにしないでくれると嬉しんだけど.....」

 

「……考えとく」

 

そう言いながらアンジュはまたアーンッとし、食べる。

するとある言葉を思い出す。確か、蛇にかまれた部分はと左の太股を見て、頬を赤くする。

 

「どうしたの?痛む?」

 

「……さっき、毒を吸出したって言ったわね?」

 

「うん」

 

「口で?」

 

「うん…あっ!」

 

「ここから…!?」

 

「そっ!それは…!」

 

タスクはアンジュに弁明するが、既に遅かった。

 

「痛だだだだだっ!!」

 

「噛まないとは言ってない!!」

 

何処を噛まれたのか分からないが、何やらよい雰囲気であった。

 




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チャプター08 皇女、喪失・後編

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


翌朝青年は工具を持ってヴィルキスの修理をしていた。するとそこにアンジュがやって来た。

 

「もう動いて大丈夫?」

 

「何してるの?」

 

「……修理…かな?」

 

「直せるの?」

 

「此処にはたまにバラバラになったパラメイルが流れ着くんだ、それを調べて行っている内に何となくね....そこの六角レンチ取ってくれる?」

 

アンジュは横にある六角レンチを青年に渡すとあることに気付く。

 

「マナで動かせば良いじゃない」

 

その言葉に青年は手を止めた。

 

「どうして使わないの?、どうしてパラメイルの事を知ってるの? あなた…一体何者?」

 

アンジュの問いに青年はアンジュの方を向き、名乗った。

 

「…俺はタスク、ただのタスクだよ」

 

青年の名はタスク.......タスクはそう言って作業を再開した。

 

「いや、そうじゃなく」

 

「あっ!やっぱり出力系の回路が駄目になってるのか、でもこれさえ直せば無線は回復する…そうすれば君の仲間とも連絡が取れるよ」

 

「…直したって無駄よ」

 

「え?」

 

「連絡しても誰も来ないし、帰ったって…誰も待ってないもの」

 

アンジュは悲しそうな表情で海の方を向くと、タスクはアンジュに問う。

 

「…あの、しばらくここにいたら?......その、変なことはしないし!」

 

「…そうね」

 

アンジュはタスクの誘いを受け入れ、再び海を見る。その時アンジュは思った。助けてくれたタスク、心配してくれるヴィヴィアンとエルシャ、あの時慕ってくれているココやミランダの事を思いだし、アンジュの心の中に、凍り付いていた心が少しずつ溶けていくような気がした。

 

それから数日後、川辺で二人は寝転んでいた。互いに無人島で打ち解けたり、楽しく日々を暮らしていったようだ。

 

「うわぁ.......こんなに星が見えるなんて」

 

「子供の頃、師匠が良くここに連れて来て、星を眺めていたんだ......気付かなかった?」

 

「空なんて、ずっと見てなかったから....、綺麗.....」

 

アンジュは星を眺めていると、タスクがアンジュの手をそっと握り、顔を赤くしながら言う。

 

「君の方が…綺麗さ…」

 

「え?」

 

アンジュは少しばかりタスクの言葉にドキッとした。

良い雰囲気となり、アンジュとタスクは顔を近づけようとした時にタスクが何かを感じ取ると、アンジュを押し倒し、"静か"にと言われる。

すると空にある物が見える。

 

「あれって、ドラゴン!?」

 

二人は凍結されたガレオン級ドラゴンが輸送機に運ばれていくのを目撃した。

 

「連れていくの!?何処に!?どうして!?」

 

アンジュはタスクに問うと、森の方から鳴き声が聞こえた。

 

「「!?」」

 

すると、森の中から一匹のスクーナー級ドラゴンが現れた。

 

「あれは…!?」

 

アンジュは思い出す。あのスクーナー級ドラゴンは戦っていたドラゴンの一体だと。スクーナー級ドラゴンは凍結されたドラゴンを助けようと輸送機へ目指すと輸送機が反撃してきた。しかし、輸送機は反撃するが全て撃墜されてしまい、凍結されたガレオン級ドラゴンと一緒に島の奥へと墜落した。

 

「逃げるよ!」

 

タスクはアンジュの手を引っ張ってその場を逃げようとしたが、目の前にスクーナー級ドラゴンが落ちて来た。

スクーナー級ドラゴンはボロボロであったが、二人を睨み襲い掛かって来た。アンジュはホルスターからハンドガンを取りだし、対抗するが全く効かなかった。

 

「パラメイル!あれなら!」

 

「でも!まだ修理が!」

 

「直して!」

 

「分かった!」

 

二人はヴィルキスがある海岸へと向かった。

ヴィルキスがある浜辺に着いた二人、タスクはすぐに修理に取り掛かり、アンジュはナイフでスクーナー級ドラゴンと立ち向かった。

 

「急いで!」

 

しかしスクーナー級ドラゴン翼で弾かれてしまいナイフを落としてしまう。

 

「これをっ!!」

 

タスクはアサルトライフルを取りだし、アンジュに投げ渡した。

 

「急いで!」

 

アンジュはキャッチし、スクーナー級ドラゴンの攻撃を回避し、ドラゴンに攻撃する。タスクは急いで修理していく。

しかし、アサルトライフルで攻撃するも、スクーナー級ドラゴンの尾で弾かれてしまった。ドラゴンはアンジュを喰い殺そうした時にアンジュの指輪が光だし、ヴィルキスが起動して、持っていたアサルトライフルがドラゴンへと発砲する。その時の異変にタスクは気付く。

不意をつかれたスクーナー級ドラゴンが怯み、アンジュがこの隙に近くに落ちていたナイフを拾い、飛びかかる。

 

「はあああああぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

アンジュはナイフをドラゴンの首を刺す。

 

「このぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

ドラゴンを刺しまくるアンジュの身体中に噴出するドラゴンの血が大量に付着する。アンジュはなりふり構わずドラゴンを刺し殺していく。タスクは彼女の手を止める。

 

「もう死んでるよ…」

 

タスクがそう言うと、アンジュは刺し殺すのを止める。っとアンジュは我に返ってようやく止まり、その場から少し離れて震え出し、ナイフを捨てて自分の身体をゆする。

自分が先程まで全く別の者になっていた事に気づかずに、ドラゴンに向かっていたことに身体をゆする。

その光景をタスクはジッと見つめていた。

 

朝日が昇り、一筋の曙光が照らす。スクーナー級ドラゴンの死体は海へ攫われ、そのまま流されて行った。二人は光景を静かに見届けていた。

 

「仲間を助けようとしたんだ.……帰りたかったんだね、自分達の世界に…」

 

タスクは墜落した場所の方を見る。

 

「もうこの森にはいられないな…急がなくちゃ。」

 

タスクは森を出る準備に取り掛かろうとする。

 

「君は…どうする?」

 

「一緒に来ない?」

 

「……」

 

「君は、ちょっと乱暴だけど…そのぅ 綺麗だし、可愛いし、美人だし……君の裸も見ちゃったし、あんな事もしちゃったし…責任とるからさ。」

 

するとヴィルキスの方からヴィヴィアンの声が聞こえてきた。

 

『アンジュちゃ…ん、応答願いまーす!もう死んじゃってますか?死んじゃってるんなら、死んじゃってるって言ってくださ〜い!』

 

「何だ?」

 

「こちらアンジュ、生きてます」

 

『嘘っ!?アンジュ!?本当にアンジュなのっ!?』

 

「救助を要請します」

 

『りょっ!了解!』

 

ヴィヴィアンは慌てて通信を切り、アンジュの方はタスクの方を向いて、決意する。

 

「私、帰るわ…今はあそこしか...私の戻る場所はないみたいだから」

 

「うん、そっか」

 

タスクが頷いた直後、アンジュは突然タスクの襟元を掴み、顔を赤めて言う。

 

「いいこと?私とあなたは何もなかった。何も見られてないし、何もされてないし、どこも吸われてない、全て忘れなさい!!いいわね!?」

 

「え!?はい....」

 

「“アンジュ”…アンジュよ」

 

「良い名前だね。またね、アンジュ!」

 

タスクは別れを言い、森の中へと消えるのであった。

 

「変な人……」

 

アンジュがそう呟くと、上空からヘリがホバリングしながら現れる。

 

「ここでクイズです!墜ちたのに生きてる人ってだぁ〜れだ!答えは!アンジュ〜〜!!」

 

ヘリから心配しに探しに来てくれたヴィヴィアンとエルシャ、ココ、ミランダが顔を出す。

 

 

 

 

 

アンジュと別れたタスクは荷物をまとめ、仲間たちの墓を見ていた。

 

「やっと決心したんだね。」

 

突然の声にタスクは振り向く。そこには11年前に契りを交わした義兄弟であるアーサー、ライド、エクエスがいた。

 

「アーサー!?それにライドにエクエス!」

 

「オセェンだよ!お前は!」

 

「全く、君と彼女の光景を見ていると、本当に仲の良いバカ夫婦に見えました。」

 

「え…見てたの!?」

 

「当たり前じゃん、呼びもどそうと思ったらこんな孤島であの皇女さんとデレデレするとは。」

 

「違う!違う!違う!俺は…………」

 

「……まぁ、それは置いておいて。今こうやってタスクもようやく決意したし、12人揃ったな。」

 

「12人?」

 

「俺らと同じ、グランセイザーだ。」

 

するとアーサー達の背後から光学迷彩で姿を隠していたトウジ達が現れる。

 

「タスク…もう一人じゃない。俺達がいる!」

 

アーサーは拳をタスクに向ける。タスクも拳同士で交わし、格納庫に入っていたヴィンセクトに乗り込み、アーサー、ライド、エクエス、トウジ達と共に孤島を出るのであった。




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チャプター09 モモカが来た!

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


「食料良し、医薬品良し、」

 

孤島でタスクと別れたアンジュは今日もドラゴン討伐をしに出撃していた。エマが物資を確認している中、ジャスミンも同じようにコンテナのを確認していた。

 

「ブラジャーが入ったコンテナはうちの、下に回しておくれ」

 

「確かに受領しました。今後ともよろしくお願い致します」

 

「では、明後日に」

 

エマは敬礼で通信をつないで話している間に物資に人影が入り込んでいた事に気が付かなかった。エマが通信を終えようとしたその時。

 

「あっ、後もう一つ忘れていました。」

 

「何が…はい〜〜!?」

 

「ほぉ~。」

 

画面に書かれている内容にエマとジャスミンは驚く。

 

任務を終えたアンジュ達はアルゼナルへと戻って来て、更衣室へと向かっていた。その後ろにいるヒルダ、ロザリー、クリスの三人は不満な顔をしていた。

 

「クソ!またアイツだけ荒稼ぎしやがって! 」

 

「何で生きてるの?」

 

「どっちがゴキブリなんだか」

 

するとロザリーは胸からネジを取り出し、アンジュに投げ付けようとする。

 

「アイツのどたまにネジ穴開けてやる!」

 

「ダメたよ、司令に怒られるよ」

 

「バレなきゃ良いじゃない」

 

「そうだね」

 

「だよな!、喰らえ害虫女!」

 

ロザリーがネジを投げようとした瞬間、アルゼナル全体に警報が鳴り響き、ロザリーは慌てる。

 

「ヒッ!?違います!違います!私なにもしてません!そのーー......え?」

 

『総員に告ぐ!アルゼナル内に侵入者有!対象は上部甲板を逃走中!直ちに付近の者は侵入者確保に協力せよ!』

 

「侵入者?」

 

それに驚くエルシャ。上部甲板では警備の者が侵入者を捕らえようとしていた。

 

「そっちに行ったぞ!逃すな!」

 

警備員が警棒を振り下ろすと、侵入者から翡翠色に輝く障壁を展開し、警備員の攻撃を防ぐ。そこに駆け付けたアンジュは見覚えがあった。

 

「マナの光!?」

 

「やめて下さい!私は……“アンジュリーゼ様”に会いに来たのです!」

 

その少女はミスルギ皇国 元第一皇女であったアンジュリーゼを探しにと叫ぶ。

 

「モモカ!?」

 

「?」

 

モモカという少女がその名を言った方向を見る。

 

「もしかして……アンジュリーゼ…様?」

 

モモカはアンジュを見て、泣き出す。

 

「アンジュリーゼ様〜〜!」

 

アンジュの方に走って抱きついて泣きつくモモカ。それに戸惑いを隠せないアンジュ。

 

 

 

数分後指令部ではエマ監察官が突然の来訪者の事で、侵入して来た来訪者の名前と経歴を調べる。

 

「“モモカ・荻野目” 元第一皇女アンジュリーゼの筆頭侍女でお世話をしていた……はい…えぇっ!?」

 

エマは受話器で上司と話し合ってる中で上司がとんでもない命令を下し、渋々了解して受話器を置いた。

 

「ハァ…」

 

「委員会は何と?」

 

隣で煙草を吸っていたジルがエマの表情を見て、察した。

 

「…予想通りですか」

 

「あの娘を国に戻せば、最高機密であるドラゴンの存在が世界に知れ渡ってしまう恐れがあるからと…何とかならないのですか?…あの子達は、ただ此処に来ただけなのに…」

 

「ただ来ただけ…ねぇ。ま、ノーマである私には人の作ったルールを変えられる力などありませんよ。せめて一緒にいさせてあげようじゃありませんか…」

 

ジルは煙草を灰皿に捨てると、ある件を問う。

 

「そう言えば、また問題が起こったそうですね?ジャスミンも驚いていましたよ。」

 

「明日から、ノーマの鬼教官が参られるそうです。」

 

「ある教官?」

 

「その教官…“風澄 西十郎”と言う男性なのです。」

 

「ほぉ…」

 

「驚きましたよ、まさか自分からアルゼナル教官に志願して、持ってきた書類もあって、本当に何者なんでしょう。」

 

「ま、何れにせよ…このアルゼナルで知った者は素直に返されませんから。男性がきようがこようが…私達には関係ありませんからね。」

 

 

翌日、食堂にてある事が起こっていた。

 

「ちょっと誰?あの人…」

 

「目つき怖〜い。」

 

「でもカッコいいよ!」

 

「ねぇ、何か喋ったら?」

 

食事をしている風澄 西十郎は小声でしゃべっている彼女達や先日前の事でイラついていた。

 

「(全く、あの馬鹿弟子一号……あの皇女さんを助けたついでに逃げたとは、今度会ったら仕置きしねぇとな!)」

 

西十郎がイラついていると、別の方から怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「なんたることですか!!」

 

っと大きな声が響き渡る、それに西十郎が振り向くと。モモカがヒルダ達に向かって怒鳴っていた。

 

「アンジュリーゼ様に席を譲りなさい!!」

 

どうやらヒルダ達がアンジュに席を譲らないとの事で口論していたと。西十郎は呆れ返り、アンジュの方へ向かう。

 

「席が譲れないなら、別の席で食えばいいと言うのによぉ〜。」

 

西十郎がアンジュの頭を掴み、引っ張っていく。

 

「あ、アンジュリーゼ様〜!」

 

引っ張らて行くアンジュをモモカが慌てて追い掛ける。

 

「て言うか、なんだアイツ!?」

 

「昨日入ってきた特別訓練教官らしいんだ。」

 

「マジで!?」

 

「でも、何で男がこんな場所に?」

 

「知らねぇよ、でもアイツ…いけすかねぇ。」

 

 

 

アンジュを引っ張っていった西十郎はジャスミンモールの自販機でハンバーガーを食べていた。

 

「何するのよ!」

 

「何も…監察官からどやされないように別の席に座らせただけだが。」

 

「何もあそこまでやらなくても!」

 

「うるせぇ小娘だ。」

 

アンジュががみがみと犬の様に吠えている中、何処からか悲鳴が聞こえてきた。するとマギーや医療班に運ばれているメイルライダーが叫んでいた。

 

「ほれほれ、腕くっつかなくてもいいんかい?……あれ、腕は?」

 

「こちらです。」

 

シーツからドラゴンによって引きちぎれた腕が置かれていた。その光景にモモカは食べていたハンバーガーを吐き出しそうになってしまう。

 

「何なのですか?……ここは一体、何をするところなのです?」

 

「“狩り”よ…」

 

アンジュはそう言い、ハンバーガーの髪を捨てる。

 

「私もいつ“ああ”なるか…」

 

「アンジュリーゼ様…(どうしてしまわれたのですか?あんなの……あんなのアンジュリーゼ様じゃ……傷ついておいでなのですね…お痛わしや、アンジュリーゼ様。)…お救いしなければ!私がアンジュリーゼ様を!」

 

「彼女に余計なことをしない方がいいと思うぞ。」

 

それからと言うもの、モモカは必死にあの頃のアンジュを思い出させようと、ロッカールームにアンジュ用のタンスを置いたり、部屋の内装がお嬢様風な部屋へとビフォーアフターされていたり、翌日、朝食を食べようと食堂に行ってみるとガーデンテラスがレストラン風に改装されておりそこにはテーブルに並べられた料理と案の定、モモカがいた。

 

「おはようございます、アンジュリーゼ様。今日はアンジュリーゼ様が大好きだったヤマウズラのグリル、夏野菜のソース添えになります。これでアンジュリーゼ様も元気百倍に……」

 

「いい加減にして!!」

 

度重なるモモカのお節介に業を煮やしたアンジュは料理をひっくり返そうとテーブルクロスを掴む、下へばら撒かす。

 

「うわぁ!勿体なし!」

 

ヴィヴィアンがせっかくの美味しそうな料理に、声を上げる。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「…アンジュリーゼ」

 

「私の名は、アンジュよ!!何度言ったら分かるの!?これ以上私に関わらないで!!」

 

アンジュはそう言い、食堂を去るのであった。

 

射撃場では、サリアとエルシャが構えていて。最初にエルシャが撃った弾が的に当たらずに壁に当たった。

 

「あら?」

 

そして、サリアが撃った弾は綺麗に的の中心に当たり、エルシャはそれを見て感心する。

 

「ど真ん中!お見事~♪」

 

エルシャは胸元からハンカチで祝った。

 

「いつまで経ってもサリアちゃんの様になれないわね~、何が違うんだろう?」

 

「チッ(四次元バストが…)」

 

サリアはエルシャの巨乳を見て、舌打ちしながら嫌みを思いこんだ。

エルシャが外れた訳はその巨乳が関わっている事に......

 

マサトはサリアみたいにど真ん中を狙ったが、銃身の反動でぶれが生じていると、

 

「嘘!マジかよ!?」

 

「しー!声が大きいよロザリー!」

 

っと何やらヒルダ達が隣で話していた。ヒルダの話によると、どうもモモカはこのままミスルギ皇国に戻されると秘密保持の為に処刑される可能性が高いと聞かされて、それにアンジュは思わず手を止めてしまう。

 

「かわいそうにね~、アンタに関わる奴はみ~んな地獄へ。悪い女だよ、ほんと」

 

それを聞いたアンジュは構わずライフルを構え、的に弾を当てていく。

 

 

 

夜になり、海が見える丘で西十郎は一人でキセルを吸って吐いていた。すると西十郎がポケットからある写真を取り出す。それはかつて彼の教え子であった超星寮のトライブ使い候補生達であった。真ん中に12年前のアーサーがピースサインで写っていた。

 

「もし12年前に…東護ノ介と俺が残っておれば。」

 

西十郎は12年前の記憶の事で悔やむ。炎に包まれる村々、逝かれ狂った小鬼もどきな連中に犯されていく女々、抵抗する者は首を斬首され、そのまま放置されていく。12人の初代グランセイザーとアリマと西十郎と東護ノ介は霊符で自身の愛用の武器を作り出し、邪悪な物を切り裂く純白の鋭利の聖爪と一突きであらゆるものを粉砕する黄金の鋼の籠手を駆使する。黒い怪物と小鬼もどきな連中に立ち向かう。戦いが終わり、雨が降り村々を焼き尽くしていた炎が消えていく。雨が降る暗い中、西十郎は周辺に横たわっている死体に悔やみ叫ぶ。

 

《うあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!》

 

彼は12年前の悲劇の事で一筋の涙を流す。

 

「……俺とした事が。」

 

西十郎は写真をポケットにしまい、部屋に戻るのであった。

 

 

 

甲板ではしばらくして、発着デッキには輸送機が来ていた。モモカを連れていく為の物である。モモカは鞄を持ちながらジルとエマに礼を言う。

 

「短い間ですが、お世話になりました。2日間だけだったけど、とても幸せな時間でしたとアンジュリーゼ様にお伝えください」

 

「……ええ、伝えておくわ。元気でね、モモカさん」

 

エマはこれからモモカに待ち受ける結末を思うと目を逸らさずにはいられなかった。モモカは輸送機の乗組員に連れられて搭乗しようとした。その時であった。

 

「待ちなさい!その子は私が買います!!」

 

果たしてそれは、手に袋一杯のキャッシュを持ったアンジュだった。

 

「もう、アンジュ待ってよ。ホントに人、いやノーマ使いが荒いんだから……」

 

アンジュを追う様にフィオナも来た。彼女の手にも袋一杯のキャッシュがあった。2人はそれをジルとエマの前に差し出す。

 

「は?はぁ~!?何を言ってるの!?ノーマが人間を買うって……大体こんな紙屑同然の金なんかで、「いいだろう」司令!?」

 

アンジュとフィオナの行動にエマは当然ながら難色を示すが、ジルが許可する。

 

「移送は中止する。その娘はアンジュの物だ」

 

ジルの言葉に乗組員は戸惑いながらも了承し、輸送機に乗り込んでいった。

 

「金さえ積めば何でも手に入る。それが此処のルールでしょう?」

 

ジルは不敵な笑みを浮かべながら去って行った。エマは困惑してたがキャッシュ袋をマナで浮かべるとジルについて行くのだった。やがて、アンジュはモモカと向き合う。

 

「此処に……居てもいいのですか?アンジュリーゼ様のお傍にいてもいいのですか?」

 

モモカが感極まった顔をしながらアンジュに尋ねると、アンジュはそっぽを向く。

 

「アンジュ、私の事はアンジュと呼んで」

 

アンジュはそう言うと中へ戻って行った。

 

「はい!アンジュリーゼ様!!」

 

モモカは嬉しそうにアンジュについて行くのだった。

 

「さて…アーサー達は今頃何をやっているのやら。」

 

西十郎は朝日が昇る海を眺め、アーサー達を心配するのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター10 穢れ騎士を追って。

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)

ついに、“彼女”が出ます!


その頃、アーサー達はガリア帝国支配地で情報や探索をしていた。ガリア帝国はノーマの差別意識が強く、元首はミスルギ皇国と同じ皇帝であり、支配権度はミスルギ皇国よりも高く、ノーマをその場で射殺されるか、連行されるか、奴隷にされるかの三つの選択権に分けられているとの事。

トウジとミクモと一緒にいるアーサーはタスク達がいるガリア支配地の孤島に待機していた。

 

「どうだった!?」

 

「ダメだ…タスクの仲間達の痕跡一つも見つからなかった。」

 

「やっぱり、俺一人だけ生き残ってしまったと言う事になるか…。」

 

「無理もない…リベルタスで殆どの古の民が出ていたから。」

 

「……次はマーメリアに行こう。」

 

「そうだな。」

 

誰もがそうしようしたその時、アーサー達の表情が一変する。

 

「《っ!?》」

 

「(何だこの感じ!?)」

 

「(一体何処から!?)」

 

「っ!?上だ!」

 

「《っ!!》」

 

クサビが上空から来る光に反応し、すぐにアーサー達に知らせた。アーサー達はすぐにナックルライザーを起動し、グランセイザーへと変身した。砂埃が起こり、アーサー達が拳を構えていると砂埃が晴れ、それは現れた。赤いプラズマを発生させ、片手に銃剣を持った黒い戦士が赤いバイザーを光らせる。

 

『ほぉ…気配を消した筈なのに俺の攻撃を回避するとは。少々甘く見ていたよ…』

 

「(何だ!?……こいつから出ているこれは何だ!?)」

 

黒い戦士は立ち上がると、ヘルメットが後頭部に装着された機械でできた外骨格に収納される。

「ど偉いさんから聞いているだろ?……“穢れ騎士”達の事。」

 

「《っ!!》」

 

「俺は“カイム”…穢れ騎士『傲慢』担当 四番隊騎士団長だ。」

 

穢れ騎士ーーーカイムと言う男は自己紹介を終える。アーサー達は戦闘態勢をする。

 

「生憎だが、俺達は12人だ。多勢に無勢だぞ…。」

 

「確かに…だがお前達、思い上がって横柄なことはしないと思うんだが。」

 

「何だ!?」

 

「お前達に穢れ騎士の力の一部の力を見せる……しかとその眼に焼き付けるが良い!!」

 

カイムは銃剣を地面に向け、叫ぶ。

 

「“天使を狩りし騎神『ダラム』 我に力を!”」

 

「何だ、この悍ましい気迫は!?」

 

するとカイムの地面が光り出し、後ろから禍々しい黒いロボットが現れる。

 

「何もないところから、機体!?」

 

「“邪星神化!!”」

 

カイムが叫ぶと、彼の身体が粒子へと変わり、機体に吸い込まれる。そして機体のバイザーが光り、動き出す。

 

「人が……パラメイルに!?」

 

『正確に申せば、有機物が大気へと変換され、機体に憑依した。これが穢れ騎士の能力ーーー“邪星神化”だ。』

 

つまり、カイムは身体を粒子化し、機体に憑依している事となる。

 

『そして俺のこの憑代である“邪星神 ダラム”とは……俺のことだ!!』

 

カイムはダラムの身体で素早く動く。

 

「は!速い!!」

 

ダラムが真っ先にクサビを吹き飛ばす。

 

「クサビ!」

 

クサビは何とか回避すると、ある事に気づく。

 

「グランセイザーで良かったけど…コイツの動き、まるで【獣】みたいだ!!」

 

「クサビ!大丈夫か?」

 

「あぁ!」

 

するとダラムが空を飛ぶ。

 

「逃げる気か!」

 

『今日はお前達に忠告及び、挨拶しに来ただけだ。いずれ何処かでまた会うだろう…。』

 

カイムがそう言うと、アーサーを見る。

 

『特にお前。』

 

「俺!?」

 

『いつになればお前は本来の自分に目覚めるんだ!? 12年も経ってまだ思い出さないのか!』

 

「12年前!?カイムと言ったな!お前、俺の何を知っている!12年前って…俺が何を知っているんだ!」

 

『呆れたよ……“自分が犯した【罪】”と“受けるべき【罰】”を忘れるなんて。』

 

「《“罪と罰”》?」

 

皆んなはアーサーの過去を不思議に思うと、カイムはシンギュラーポイントであるワームホールを開く。

 

「あ、待て!」

 

アーサーは急いでフラドーラに乗り込み、カイムの後を追う。

 

「《アーサー!》」

 

タスク達は心配するが、アーサーはカイムが開いたワームホールの中に入り、それと同時にワームホールの入り口が閉じる。

 

「逃がさないぞ!」

 

『しつこい奴だ!』

 

カイムはダラム専用の武装である“邪導騎銃《ダラムボルグ》ライフルモード”乱射する。銃口から紫電の光弾が飛んでくる。アーサーはフラドールのバーディレーザーで応戦していく。するところなのです奥の方にワームホールが出現し、カイムとアーサーは外へと出る。そこで彼はある光景に驚愕する。

 

「これは!?」

 

そこは幾年も時が過ぎた大都市であった。建物には緑の苔が生い茂っており、至る所が崩壊しそうになっていた。アーサーは目の前の光景に見惚れていると、真上からカイムがダラムボルグを構えていた。

 

『終わりだ。』

 

ダラムボルグの銃口から一発の光弾が放たれ、フラドーラのライトウィングに直撃した。右翼を被弾したフラドーラが火を噴き、墜落していく。

 

「まずい!」

 

アーサーは急いでフラドーラの姿勢制御システムとラジエーターを起動させる。さらに落下速度を抑えるため、フラドーラのフロートに搭載された緊急パラシュートを開く。落下速度を緊急パラシュートと反重力システムで何とか速度を落としていくアーサー。フラドーラはそのまま森の中へと突っ込み、木々を押し倒しながら墜落した。数分後、フラドーラから出たアーサーは被弾したフラドーラを見る。右翼と脚部推進器が損傷し、挙げ句の果てにさっきの衝撃で姿勢制御装置と通信装置とレーダー故障してしまった。

 

「最悪だ…」

 

アーサーは呟き、フラドーラの外部にあるコンテナを開く。中にはピストル一丁とマガジン二つ、応急処置キットとセレモニアル・ブレード、雅のお椀と非常食(『カロリーメイト』×3と『ドリンクゼリー』×2)

 

「いって…」

 

アーサーは左太腿を見る。さっきの墜落によって足を怪我していたのようだ。その証拠に血が流れており、早速応急処置を行う。応急処置キットは消毒薬の噴霧器と弾丸摘出用鋏、止血剤製作キット、医療用ステープラー、アドレナリンが入った注射器、包帯であった。アーサーは見るにも痛そうな器具に恐怖を感じ、木の根を思いっきり噛み締める。噴霧器でまず消毒し、医療用ステープラーで縫う。

 

「っ!!!ぐあ"あ"あ"あああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」

 

アーサーは木の根を噛み締めながら涙目で苦痛に耐え、包帯を巻く。

 

「何とか、傷は処置できたが……通信やレーダーもダメ、フラドーラの機能もアウトって……最悪な事態なんだけど。ん?」

 

と、アーサーは在るものを見つける。それは大木が並んだ泉であった。草花や苔、蝶々も飛んでいた。

 

「ここなら水の心配もない…それにしても綺麗だ。(こんな綺麗な泉が家にあったら…)ちょっと喉乾いたな。」

 

アーサーは雅のお椀を取り出し、泉の水を掬おうとした時、泉の中から人影が現れた。

 

「!?」

 

「……!?」

 

黒き長髪、青玉のような瞳、薄紅色の口紅、吸い付くような綺麗な肌、張りのある豊満な胸を持った美少女。それはまるで、お伽話に出てくる泉の女神のようであった。美少女は綺麗な泉に素潜りで浅瀬に戻って来たときに、お互いに視線が合い、一瞬動きが止まる。

 

「「……!!」」

 

アーサーは少女の生まれたままの姿に慌てながら手で顔を覆い隠し、少女は大事なところを背を向け隠す。

 

「な!何者ですの!?」

 

「いや!ごめん!まさか先客がいるって気付かなかった!それで綺麗なーーー!!?」

 

アーサーが慌て、後退りしようとすると下がる。がしかしーーー。

 

「うぇっ!?」

 

足元の石に気付かず転びそうになるが、上手くバランスを取り、そのまま少女のいる泉の方へ転げ落ちてしまう。アーサーは起き上がり、目の前の光景に顔を真っ赤にする。何故なら、彼の目の前にさっきの少女の顔と髪のお陰なのか、それで綺麗な胸のあそこを隠していたが、それがなくなりーー。

 

「ブーーーーーーッ!!!!」

 

アーサーは思わず鼻血を噴き出し、後ろの方へ倒れ込んでしまう。

 

「え!?大丈夫ですか!?」

 

「あ〜〜〜……。」

 

あまりの出来事に、アーサーは昇天していた。美少女は急いで彼を陸に上らせ、在る場所へ運んで行くのであった。

 

 

 

 

そんな昇天しているアーサーはある夢を見ていた。燃え盛る館、数人の子供達が泣き苦しみながら黒く穢らわしい化け物になっていく光景、その中に鬼ような右籠手、背から首を長くした二頭の赫獅子、蠍のような尻尾、昆虫の羽根が生えた緋き紅蓮の悪魔がそれと対を成す青き電流を流す左籠手を持つ稲妻の悪魔と相手していた。紅蓮の悪魔は血の涙を流しながら、耳まで裂けて嘲笑う稲妻の悪魔に怒りを燃え上がらせていた。

 

 

一方でアーサーを運んできた少女は医務室にいる彼の心配をしていると、おかっぱ頭で、ゴーグルと黒と薄緑の縞々のストッキングを着用した天才御殿医「Dr.ゲッコー」があることを言う。

 

「サラマンディーネ様、ご報告がありまして…。」

 

サラマンディーネと言う少女はDr.ゲッコーから話されたことに、仰天するのであった。

 




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チャプター11 龍の巫女

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


 

夢の中、アーサーが一人その空間の中を漂っていると、ある文字が列となって流れて来る。

 

「(何だ、この文字…?)」

 

すると今度は景色が変わる。崩れた遺跡、死体だらけに血の海、その中にフラドーラ、ヴィンセクト、グランヴェ、ゼーア、ドゥケレー、そして鋼の巨人と五枚の翼を広げた紅蓮色の騎神、12人のグランセイザーと白き鎧を纏った『白いグランセイザー』が穢らわしい悪魔とそれを先導するかのように女王蜂の姿をした悪魔が尖兵を動かし、7体のロボットと戦っていた。

 

『灭乌衝突!!』

 

フラドーラは前腕部のガルクローを伸ばし、炎エネルギーで悪魔切り裂く。

 

『勈士卷风!!』

 

ヴィンセクトは全武装を構え、一斉に発射する。

 

『引力破裂!!』

 

グランヴェは2門の巨大ライフル・『ライガーライアット』を取り出し、乱射する。

 

『螺旋破坏!!』

 

ゼーアが両刃の大剣『メイルストローム』を高速回転させ敵を切り刻んで行く。

 

『天神杀人!!』

 

ドゥケレーが左武装のアームキャノン『バズキャノン』から大型ビームソードを伸ばし、悪魔を薙ぎ払う。

 

『对碎片!!』

 

鋼の巨人が拳を発射し、強靭な悪魔を粉砕していく。

 

『不同的世界电子分解ッッッ!!!』

 

紅蓮の騎士が輝く鋭利な爪を光らせる掌から、岩、氷、嵐、炎を発生させる五つの剣が現れ、女王を囲み、光の剣を突き刺す。

 

『アアアアアアアァァァァァァァァァァッッッ!!!』

 

女王は悲鳴を上げ、棺の中へと封印される。

 

「(何だこれ?)」

 

アーサーは驚いていると、何処からともなく声が聞こえてくる。

 

《昔々 数千年前も昔。世界には魔力に満ちた美貌の女王がいました。女王は一族と共に鎮守し、民は貧しくも、女王の魔力の加護で病に倒れることなく暮らしていたと。

 

そんな時、どこからともなくやってきた民族が、“女王は忌まわしき魔女だ、奴は他国の籠を根こそぎ奪い、そして自分の国だけ繁栄に導いていた。”民は女王を疑うが、いい告げられた言葉は本当であった。

 

女王は民族から五人の巫女を攫い、巫女の力を使って恐ろしき魔力で自身の美貌と疫病を操り、先代王族と貴族、民衆を虚言で信じ込ませていたのです。民衆は大激怒し、女王が統治していた国に内乱が起こり、やってきた民族と共に巫女を救い出し、悪しき女王は加担していた貴族と共に火刑された。勇敢に国を強欲な女王の魔の手から六人の民族は巫女姫と共に何処の遺跡の奥に眠りついた。》

 

「(この声…誰だ!?)」

 

声が直接頭の中に聞こえて来ると、閃光が辺りを照らし、目の前に十二の星座模様と十二支の紋章が浮かび上がり、一瞬だけ白い羽衣と腰にマントを羽織ったグランセイザーが見えた。白いグランセイザーはゆっくりと振り向き、アーサーに指を差す。

 

「《足枷を解かない者よ、『裏の真実』と『真なる歴史』に介入せよ。》」

 

「え?」

 

「《足枷を解かない者よ、『裏の真実』と『真なる歴史』に介入せよ。》」

 

「……ん?」

 

アーサーは目の前の明かりで目を覚ます。

 

「ここは?」

 

辺りを見渡すアーサー。そこにDr.ゲッコーがやってくる。

 

「気が付きました?」

 

「?」

 

「驚かせてすみません。サラマンディーネ様、お気が付きになりましたよ。」

 

Dr.ゲッコーがサラマンディーネと言う女性を呼ぶ。現れたのはアーサーがあの時あったあの子であった。

 

「あ!君は!」

 

「はい、お鼻は大丈夫ですか?」

 

「え?……うん。」

 

「貴様!よくもサラマンディーネ様の凛々しい肌を見たな!!」

 

「え!?」

 

青い女性がアーサーに怒鳴る。

 

「まぁ落ち着いて、サラマンディーネ様が言うにはあれは事故だったんだから。」

 

「しかし!この者は姫様の裸を見たんだ!疚しい事するに違いない!」

 

「疚しい事?……っ!!」

 

アーサーはあの時の事を思い出す。その記憶は今もアーサーの頭の中に入っており、消せない記憶でもあった。

 

「す、すまん!あれは本当に事故だったんだ!カイムって言う穢れ騎士を追って、反撃されて墜落して、喉乾いていたからーーーあ!俺の機体は!?」

 

「あの緋き大鷲の事ですか?心配いりません。我々が修理しています。」

 

「良かった〜。」

 

ホッとするアーサーはサラマンディーネに自己紹介をする。

 

「俺はアーサー。黄昏の王君の炎のトライブの使い手『セイザータリアス』だ。」

 

「「「「セイザータリアス?」」」」

 

「…見せた方が良いかな。」

 

アーサーは起き上がり、ナックルライザーを構え、叫ぶ。

 

「装着!」

 

体から炎が湧き出て、鎧へとなり、赤き射手座の戦士へとなる。

 

「セイザータリアス!」

 

「「「「……」」」」

 

「え!?」

 

四人はアーサーの姿を見て動揺していなかった。その後、アーサーのそれからの説明により、サラマンディーネは納得する。

 

「なるほど、あなたはそのカイムと言うエンブリヲの騎士を追って、我々の世界に来たのですね?」

 

「そうなる。それと聞きたいことがあるんだが……」

 

「何でしょう?」

 

「その……君たちの背と尾に…鼻と尻尾が生えているんだけど、“人間”なのか?」

 

「……『人間』ですわ。」

 

「ここへ来た時、街は廃墟だった。だとしたら君たちはーー」

 

「地球がもう一つありましたら?」

 

「!!」

 

「並行宇宙に存在したもう一つの地球、一部の人間がこの星を捨てて移り住んだのです。別宇宙にあるもう一つの星、それがあなた達の地球なのです」

 

「(確かに辻褄が合う。)……何のために?」

 

「この星で戦争が起きたのです、この世界は統合経済連合と汎大陸同盟機構による大規模国家間戦争「第七次大戦」「ラグナレク」「D-War」などと呼ばれる戦争により地球の人口は11%まで減少したのです。更にその引き金を引き起こしたのが…エンブリヲです」

 

「(やっぱり…)どうして何だ?……一体何が戦争を。」

 

アーサーはその事に問うと、ある人物がそれを答えた。

 

「それはーー「ドラグニウム、22世紀末に発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種」?」

 

現れたのは黄昏の王君にいる筈の二番目の師である東護ノ介であった。

 

「東護ノ介さん!?」

 

「あら?先生のお知り合いなのですか?」

 

「うむ、コイツは私の弟子でね。」

 

「まぁ!そうだったのですか。」

 

「東護ノ介さん、知り合い!?」

 

「うむ、姫様は私の二番目の弟子でね。彼女の幼少の頃から修行させているのだ。」

 

東護ノ介はそう言うが、アーサーが問題点を言う。

 

「それより東護ノ介さん!どうしてあなたがここに!?」

 

「穢れ騎士 カイムがこの世界に来たと聞いて、駆け付けて来たと思ったら、お前が鼻血を出して運ばれて行くのを見てな。全く、この姫さんの素っ裸を見て鼻血を出すとは、アホだよ。」

 

「……すいません。」

 

「何はともあれ、無事で良かったよ!」

 

東護ノ介はアーサーの背中をバンバンと叩く。

 

「痛いんですけど…」

 

アーサーは東護ノ介の叩きに耐えていると、ある物を差し出してきた。それは何かのキーであった。

 

「東護ノ介さん、これは?」

 

「分からない、でも……こんなお前宛にこんな手紙があった。」

 

「?」

 

【拝啓 アーサー 。 私は『U.S』Unknown Supporterとも言っても良い。早速君に贈り物があるんだが、もう貰ったかな?

そのキーは君が何れ何処かで使うと思う、だから大事に持っていてくれ。バイなら♪】

 

「……何だこの手紙は?」

 

「書いたものは分からない。私の部屋の机に置かれていたのだ。」

 

「ふ〜〜ん。」

 

「所でアーサー、お前もう動けるか?」

 

「はい…え?」

 

「なら姫さんと手合わせしろ、私の二番目の弟子に勝てると良いがな!」

 

「……はぁっ!!?」

 

アーサーは驚き、東護ノ介に“古代の闘技場”と言う場所に連れられる。マラソン、バイクレース、剣道、VRゲーム、歌留多、大食い、ダンスバトル、柔道服を着たアーサーとサラマンディーネは礼をし、構える。

 

「(今度こそ俺が勝つ!)」

 

「(負けられません!)」

 

両者鋭い眼差しで一歩も動く気配もなく、警戒していた。

 

「東護ノ介さん、こんな事ありました?」

 

「ないなぁ、ただ言えると言ったら、二人は互いの力と威圧がぶつかって、隙を見せないようにしているのだ。(それにしても、俺はアーサーにあんな“競技”を教えた覚えはないなぁ。一体何故だ?)」

 

「さぁ、来い!」

 

アーサーが大声で叫び、サラマンディーネが先方してきた。互いに技を決め合い、そしてアーサーが本領発揮を決める。

 

「せぇ〜〜〜いっ!!!」

 

アーサーはサラマンディーネに投げ技を決めようとして道着を掴むが、サラマンディーネの襟が開いてしまう。

 

「ふぇ!?」

 

あまりの事にアーサーは襟が開き、サラマンディーネの豊満な胸を見てまたしても。

 

「ぶーーーーーー!!!!!」

 

「アーサー殿!見てわいけません!」

 

「き!貴様!よくもサラマンディーネ様を!!」

 

「待て!落ち着いてくれ!今のは事故だよ!」

 

アーサーは顔を赤くし、鼻から出る血をティッシュで拭きながら、慌てる。

 

「まぁ!落ち着いて、ナーガ!アーサーさんは悪気でやった訳じゃないんだから」

 

「しかし!あの者は二度もサラマンディーネ様の胸を!」

 

「まぁ落ち着け。アーサーもあぁ言ってるんだ。許してやれ」

 

「ですが!」

 

「何か?」

 

東護ノ介無垢な笑顔でナーガに威圧をかける。

 

「あ、いえ……その…」

 

東護ノ介の放つオーラがナーガを震え上がらせる。ナーガは冷や汗をかきながら黙り込んでしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

その夜、アーサーは東護ノ介と夜景を眺めながら温泉に入っていた。

 

「極楽極楽♪」

 

アーサーは温泉に和んでいると、東護ノ介の身体に付いている傷跡を見る。

 

「東護ノ介さん、その傷…」

 

「ん?あぁこれか……3年前、“弟子の一人”が裏切ってできた傷だ。」

 

「裏切った?」

 

「あぁ…アイツは真面目であったがある邪法を手にし、罪を重ね続けていった。私は止めようとしたが、返り討ちにされたのだ。」

アーサーは驚く。あの「常軌を逸した戦闘能力」、「生きとし生けるものの中で最強の男」と呼ばれた東護ノ介が敗北寸前まで事に。

 

「所で聞きたいことがあるんですが……」

 

「何かな?」

 

「その……前々から思ったんですけど。なんでサラマンディーネさんと入っているのですか?」

 

そう、実は温泉に入っていたのはアーサーと東護ノ介の他にサラマンディーネも一緒に入っていた。

 

「あの時の話の続きです。」

 

サラマンディーネはアーサーに続きを話す。

 

『ドラグニウム』22世紀末に発見された発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種。

光を照らすそれはやがて兵器にも使われ、戦争の発端となり、地球を滅ぼす事となってしまった。

そしてサラマンディーネの先祖達ーーー即ち生き残った人類は自らを遺伝子改造によってドラゴン化させ、その身にドラグニウムを溜め込む事によって地球の浄化作業を行っている。

元々サラマンディーネの世界にはある指導者ーーー『アウラ』と言う最初のドラゴンの加護によって平和であったが、この世界に襲来してきたエンブリヲと穢れ騎士名乗る者達によってアウラは連れさらわれたと。

さらにもっと驚くべき事に、アーサーが住んでいた世界での人類…意志の力で物理現象に干渉し、物質の浮遊・移動、拘束・防護用の結界の展開、光や熱を発生させられる他、統合システムへのアクセスによる情報共有を駆使してでのコミュニケーションツールともなっていた『マナ』は連れさらわれたアウラにノーマ達によって凍結させ殺したドラゴンを捕獲し、結晶化した心臓からドラグニウムを摂取し、連れ去ったアウラに供給しているとのこと。

 

アーサーの世界での真実を知ったアーサーは自身があの空域でドラゴンを倒した事に心を痛める。

 

「(なんて事だ……彼らは、指導者を救おうと必死で。それなのに、俺は…。)くっ!」

 

「……今は嘆くな。これを知ったからには彼らに協力してくれないか?」

 

「えぇ。」

 

「姫さん…」

 

「分かっております。明日には貴方の機体も修理しております。貴方は…信用できる人物として分かりました。」

 

すると東護ノ介がタオルで目元覆い隠し、アーサーの目を手で覆い隠す。

 

「うわぁっ!何も見えない!」

 

突然目の前が暗くなった事に慌て、サラは頰を赤くしながら風呂から上がる。

 

 

 

 

 

 

翌朝、修理されたフラドーラを東護ノ介がこの世界に飛ぶための大型輸送機へ運ばれていた。

 

「じゃあ…俺は向こうに戻って、仲間達共に行動を探る」

 

帰りを見送るサラマンディーネ。アーサーは荷物をまとめ、輸送機に乗り込もうとする。するとサラマンディーネは何かを決意したのか、アーサーに走って行く。

 

「アーサー殿!」

 

「ん?」

 

その時、サラがアーサーにある物を渡す。それは髪飾りに使う簪であった。

 

「これ……」

 

 

「私からのお守りです、それをどうかずっと持っていて下さい」

 

アーサーはサラマンディーネから受け取った簪を受け取り、頷く。

 

「ありがとう…サラマンディーネさん」

 

「……『サラ』でも構いませんよ♪」

 

「える…うん、分かった。これからは“サラ”って呼ぶ。俺からも、良いかな?」

 

アーサーはサラマンディーネ改め、『サラ』にある物を渡す。それはアーサーのセレモニアル・ダガーであった。アーサーがバインダーから霊符を取り出し、セレモニアル・ダガーに付ける。するとセレモニアル・ダガーの形状が変わり、短剣から短刀へとなった。刃に龍の模様が刻まれ、短刀の刃が伸縮自在になるようになった。

 

「俺からの御守り、もしもの時の為に持っていてほしいんだ。それに…君は美人だし、可愛いし、声も綺麗で…その〜」

 

アーサーは言葉を必死に探そうとしたがどう探せばいいか見つからず、それにサラは微笑みながらアーサーに近づいて……。

 

 

 

 

チュ…

 

 

 

っとアーサーの頰にキスをするサラ。

 

「っ!!」

 

「分かりました。貴方から貰ったこの短刀を大事に『バタン!!』…?」

 

アーサーは真っ赤になった状態で頭から湯気を出しながら倒れて仕舞い、東護ノ介が呆れながら倒れたアーサーを引っ張って行く。

アーサーを乗せた東護ノ介は輸送機を動かし、輸送機に搭載されている超空間ポータルゲートシステムを起動し、クラウドブルースへと帰還するのであった。

 




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター12 サリアの優雅

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


『隊長日誌 三月三日ドラゴン出現。我が隊に出撃令が出される。だが、またもアンジュが命令を無視し独断先行。アンジュ単騎にて突撃し目標を撃破』

 

その日の夜、サリアは自室でこれまでの作業内容を記録に残していた。

 

『規律遵守の徹底それが出来ないのであればアンジュをヴィルキスから降ろすべきだと私は考えている』

 

そうサリアはまとめた内容をパソコンに打ち込んで、データを保存しパソコンを閉じた。

そしてまた翌日後…。

 

『隊長日誌、三月四日。アルゼナル外部より入伝あり』

 

アルゼナルの執務室で外部からの入伝をジャスミンがジル達に言う。

 

「“ガリアの南端に到達、しかし仲間の姿は見当たらず。今後はミスルギ方面に移動し、捜索を続ける”。生きてたんだね、あの鼻垂れ坊主” 」

 

「フッ」

 

「タスク…? はっ!」

 

「そうだ」

 

ジルはサリアがある事に気が付いた事に頷く。

 

「アンジュを助けたのがあいつだったなんてね」

 

「じゃあヴィルキスを修理したのはその『騎士さん』だったんだ!」

 

「多分ね。」

 

マギーがそう言うと、サリアがある事を考え、頰を赤くする。

 

サリアは思わず頬赤くして、アンジュとタスクの事を思う描く。

ジルは煙草に火をつけ、一服した後に言う。

 

「ジャスミン、タスクとの連絡は任せたよ。いずれまた『彼ら』の力が必要になる」

 

「あいよ」

 

「で…問題はこちらか」

 

その言葉にやっと本題が来たとばかりにサリアが表情を引き締め、ジルがサリアに向き直る。

 

「アンジュをヴィルキスから降ろせ、と」

 

連日の戦闘でのアンジュの独断専行・命令違反の数々は既に何度も報告しており、遂に我慢の限界にきたサリアはこの招集の前にアンジュをヴィルキスから降ろす旨を議題としてあげていた。

 

ジルの問い掛けにサリアは厳しい面持ちで頷く。

 

「ヴィルキスに慣れてきたことで、最近のアンジュは増長しています。彼女の勝手な行動は以前のような事故を引き起こす可能性もあります。隊の規律と維持の面から考えても、これ以上大事な『ヴィルキス』を任せてはおけません」

 

理路整然とアンジュの解任を要求するサリアにジルはやや考え込み、持っていた煙草の灰が落ちる。

 

「そうなる前に、何とかするのが隊長の役目だろ?」

 

「!!」

 

「お前なら上手くやれる。期待しているよ、サリア…」

 

 

『隊長日誌 三月五日』

 

食堂でエマが何やら叫んでいた。

 

「ありえないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!」

 

エマはアンジュがモモカを買い取った事にまだ納得していない様だった。

 

「ノーマは反社会的で無教養で不潔で、マナが使えない文明社会の不良品なのよ!?」

 

「はいはい」

 

アンジュは空になった器を置き、モモカが次の食事を差し出す。

 

「モモカさん! あなたはそれでいいの?!」

 

「はい!わたくし幸せです!」

 

満面な笑顔で言うモモカにエマは思わず呆れかえるのだった。

それを見ていたヴィヴィアンは飲み物を飲みながら言う。

 

「良かったねモモカン、アンジュと一緒に居られて」

 

っとその中でエルシャがため息をする。

 

「ん? どしたのエルシャ?」

 

「もうすぐフェスタの時期でしょ? 幼年部の子供たちに色々と送ろうか迷ってるんだけど…」

 

エルシャが通帳を見て苦笑いしながら言い、それにサリアが聞く。

 

「アンジュのせい? 何とかしなくちゃ…」

 

サリアはそう改めて口にするが、前方から気勢を削ぐような嘲笑が降り注ぐ。

 

「どう、何とかしてくれるのさ、隊長さん?」

 

顔を上げると、前方からロザリーとクリスを引き連れて歩み寄ってくるヒルダの姿がある。三人一緒に行動するのは珍しくはないのだが、恐らく昨夜も三人一緒にいたのだろう。

 

サリアにしてみれば、そこもゾーラの時からの悩みの種なのだが。

 

「どんな罰でも金でなんとかするだろうねアイツ…聞きやしないさアンタの命令なんてさ」

 

アンジュの事を考えているとヒルダがサリアに何やら嫌みそう言い放って。

 

「何が言いたいの?」

 

「舐められてるんだよアンタ。ゾーラが隊長だった時はこんな事なかった筈だけどね現隊長さん?」

 

っと挑発行為の様な発言に何が言いたいの?」

 

遠回しに告げるヒルダにサリアが軽く睨むと、ヒルダは鼻を鳴らす。

 

「舐められてるんだよ、アンタ。ゾーラが隊長だった時はありえなかった筈だけどね、隊長さん?」

 

その指摘にサリアはグッと奥歯を噛み締める。

 

「代わってあげようか? 隊長?」

 

嫌味を向けつつニヤリと笑うヒルダだったが、サリアは憮然とした面持ちのまま席を立つ。無視するようにその横を過ぎり、食堂を後にするサリアをヴィヴィアンとエルシャは心配そうに見ているが、ヒルダはどこか愉しげだ。

 

ヒルダにしてみれば、サリアをからかったことで少しはストレスが発散できたかもしれないが、サリアは逆に心労を重ねるばかりだった。

 

 

 

その後、サリアはジャスミンモールを訪れていた。

 

(みんな、好き勝手ばかり……私だって好きで隊長をしてる訳じゃ…)

 

隊の現状に不満を持ち、サリアにばかり負担がのし掛かる状況にストレスは大きかった。元々クセの強いメンバーに副長として手を焼いていたのに、急に隊長に昇格し、今度はすべてを面倒みなければならなくなった。そればかりか、アンジュとセラがあまりに自分勝手な行動を取ることに、もうストレスの限界に達したサリアは、少し気分転換をしようとある物を持ち出してジャスミンモールに来た。

 

入口で煙管を手に座るジャスミンにキャッシュを無造作に放り投げ、顔を上げると憮然とした面持ちでボソッと告げる。

 

「…いつもの」

 

「一番奥のを使いな」

 

サリアの現状を知っているが故に、ジャスミンも深く聞かずに告げると、サリアは荷物を持って試着室の方へ歩いていった。

 

数分後、ジャスミンモールにアンジュとモモカが来た。

 

 

「いつまで下着で寝かせるわけにはいかないでしょ?」

 

「私は別に構いませんが…」

 

「私が構うのよ」

 

アンジュはそう言い、選んだ服のサイズとモモカの体のサイズを合わせる。

 

「ジャスミン、試着室借りるよ」

 

「一番奥のを使いな」

 

キャッシュを数えるのに忙しいのか、投げやりに応えるジャスミンに小さく肩を竦め、そちらへ向かう。ジャスミンがキャッシュを数えている途中、ハッと思い出す。

 

「…………あっ!」

 

その頃、その試着室にはサリアの姿があった。

 

「愛を集めて光をギュ☆ 恋のパワーでハートをキュン♪ 美少女聖騎士プリティー・サリアン☆ あなたの隣に突撃よ♡」

 

一言で形容するなら異様な光景が狭い試着室の中で繰り広げられていた。魔法少女のコスプレをしたサリアの足元には、彼女が愛読している少女漫画があり、サリアが着込んでいるのは、その主人公の服装だった。

 

サリアは度々、こうやってコスプレをして少女漫画のヒロインになりきることで、ストレスを発散していた。ここ最近は特に過度なストレスを溜め込んでいたので、余計に没頭していた。

 

姿見に映る自分の姿に思わず見とれ、魔法少女の衣装を着こなしてポーズを決めて、悦に入っているように笑う。

 

「シャイニングラァブエナジーで、私を大好きになぁれ♡」

 

テンションが最高潮に達し、姿見の前で決めポーズをするサリアの眼に、試着室のカーテンが開かれた。

 

「………」

 

「………っ!!」

 

アンジュは無表情のままカーテンを閉めた。

 

「姫様?」

 

「使用中だった。」

 

「あ〜…」

 

「み…見られた!」

 

そんなジャスミンにダメだしし、アンジュは下着代のキャッシュを投げてその場を後にした。

 

そんな中、試着室に取り残されたサリアは口をパクパクさせながら混乱していたが、やがて状況を理解し、頭を抱える。

 

「(こんなこと、みんなに知られたら……)」

 

混乱する思考のなか、バカにするように笑うヒルダ達から『コスプレ隊長』というレッテルをはられ、ゾーラからは噂を吹きかけられ、さらにはジルの呆れた面持ちで失望する光景がそれこそ鮮明に過ぎる。

 

ヴィヴィアンとエルシャの生温かい視線―――ココやミランダのどこか引かれる顔………現実になれば、サリアは身の破滅だった。

 

なにより、アンジュにまでこの事が知られるのだけは絶対に避けたい。

 

「……こうなったら」

 

項垂れていたサリアが顔を上げると、鬼気迫る――いや、まるで仇敵を狙うほど思いつめた顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

「力加減どうですか?」

 

「良いんじゃない」

 

風呂場でモモカがタオルでアンジュの体を洗っておると、不意に背後のドアが開く音がし、サリアが現れる。

 

「「「?」」」

 

制服姿のまま、サリアが無言で俯きながら佇んでおり、明らかに不自然だった。アンジュを睨みつけ、腰からアーミーナイフを抜き、一気にアンジュに襲いかかる。

 

「殺すっ!」

 

殺気を剥き出しに襲い掛かるも、アンジュは予測済みとばかりに、突き出されたナイフを持っていた洗面器で刀身を防ぎ、動きを拘束する。歯噛みするサリアと冷静に見やるアンジュやモモカは訳が分からずあわあわと混乱する。

 

「何の真似よ!?」

 

「見られた以上、殺すしかない!」

 

「ただ見られただけで、何でナイフ突きつけるのよ!!それに何で殺されなきゃならないのよ!関係もないのに!」

 

「っ!?…関係…ない!?」

 

アンジュはアーミーナイフが刺さっている洗面器を風呂場に投げ捨てる。

 

「関係ないですって!?私達はチームなのよ!なのにあんたが勝手なことばっかりするせいで!」

 

「後ろから狙い撃って、機体を墜とそうとするような連中の、なにがチームよ!」

 

アンジュはサリアの腕を掴んだまま、湯船へと投げ飛ばした。

 

湯船から起き上がるサリアだったが、投げ飛ばされた拍子に剥ぎ取られたのか、上半身が裸になっていることに思わず胸元を隠す。

 

そんなサリアを一瞥し、剥ぎ取った制服を捨てると、アンジュは鼻を鳴らして言い捨てる。

 

「連中を止めないってことは、あなたも私に墜ちてほしいんでしょ?」

 

その指摘にサリアは一瞬詰まり、アンジュはそれみたことかとばかりに言葉を続ける。

 

「あなた達に殺されるなんてまっぴらよ。だから私は、あなたの命令なんてきかないわ」

 

「いい加減にしなさい!!」

 

その自覚はあったのか、僅かにアンジュを動揺させ、サリアは再度掴みかかり、アンジュも反撃しながら力を入れるも、その反動で足元がおぼつき、縺れ合ったまま湯船に落ちる。

 

顔を出すアンジュにサリアは鼻声で罵倒する。

 

「私が隊長にされたのも! みんなが好き勝手いうのも! 秘密を見られたのも! ヴィルキスを盗られたのも!」

 

アンジュの胸を掴み、強く握り締めるサリアにやり返そうと手を伸ばすも、アンジュの手は空を切り、手応えがないことにアンジュは戸惑う。

 

客観的に…それでいて致命的な言刃にサリアは一瞬にして羞恥と怒りで顔を真っ赤にし、胸元を隠す。ワナワナと震えながら、眼に涙を浮かべ、アンジュを睨みつける。

 

「全部あんたのせいよ!」

 

「はぁぁぁぁ?」

 

あまりに支離滅裂な言いがかりにアンジュも思わず上擦った声を上げる。サリアは悔し涙を浮かべながらアンジュに掴み掛かり、アンジュも反撃する。二人が争っていると、背中から別の声が聞こえた。

 

「およ、なんじゃこりゃ?」

 

「あら、大変」

 

ヴィヴィアンとエルシャが眼前で繰り広げられている光景に眼を丸くする。

躊躇うモモカが縋るようにエルシャに頼んでくる。

 

「あ、あの!アンジュリーゼ様を止めてください!」

 

「ここはお風呂場だもの、溜まっていた汚れは全部洗わないとね♪」

 

おおよその事情を察したのか、エルシャは何かを思いついたように室内に戻り、すぐに戻ってきた。

 

「は〜い♪」

 

手に二本のデッキブラシを持っており、戸惑う面々の前で、エルシャはデッキブラシをアンジュとサリア目掛けて放り投げた。

 

突然降ってきたデッキブラシを何の疑問も抱かずに二人はキャッチし、それを構えると今度はデッキブラシを使用しての激突に変わり、よりヒートアップしてしまった。

 

「あとはお二人で〜♪」

 

エルシャはそう言いながら、モモカを連れてヴィヴィアンと一緒にシャワー室へと行く。

 

「あ!アンジュリーゼ様〜!」

 

モモカが叫ぶ中、二人は暴言を吐く。

 

「このド貧乳がぁっ!!」

 

「黙れ!筋肉豚!!」

 

 

 

 

その後、アンジュとサリアは指令室に呼ばれ、エマ監察官に説教されていた。

 

「基地の中ですら、争わなければ気が済まないの!?」

 

エマ監察官が怒鳴りながら呆れ返ってしまう。

 

「はぁ〜これだからノーマは!」

 

「らしくないなサリア…」

 

「…別に」

 

サリアは呟くと、反省文がサリアとアンジュに渡される。

 

「反省文50枚!明日の朝までに!!」

 

「何で私まで?……っくしゅん!」

 

 

 

 

 

翌朝、寝ているアンジュの所に朝食を運んできたモモカ。

 

「おはようございます、アンジュリーゼ様。朝ごはんのお時間ですよ、反省文なら夜のうちに私が全て書き終えましたので御安心を♪」

 

何とモモカはあの反省文ですら書き終えていたのであった。

 

「?」

 

するとモモカは寝ているアンジュの様子がおかしい事に気づく。

 

「あ、アンジュリーゼ様!?」

 

モモカは直ぐに医務室に運びだし、アンジュが風邪をひいた事に急いで看病するのであった。




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誤字報告を待っております。


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チャプター13 波瀾万丈

クラウドブルースに戻ったタスク達は東護ノ介に連れられ戻ってきたアーサーの無事に喜んでいた。しかし……。

 

「…………////」

 

アーサーは頰を赤くしながら空を見上げていた。それを心配するフェリス達。

 

「何か、アーサーさんの様子…おかしくない?」

 

「うん…ここに帰ってきてからアーサーお兄ちゃん、ご飯の時や習い事でいつもあんな風なのよ。」

 

「ほんと…何があったのでしょうかね〜」

 

「あ〜〜〜……サラ…」

 

アーサーが頭の中で彼女の微笑みを浮かべていた。フェリスとミントはその言葉に首を傾げる。

 

「「サラって、誰?」」

 

フェリスとミントは首を傾げるとミントがある事に気づく。

 

「もしかして!」

 

「何か分かったの?」

 

「あのね!あのね!」

 

ミントはフェリスの耳元で話をする。

 

「あ〜〜なるほど!」

 

フェリスが納得すると、一緒に同居しているタスクにその事を言う。

 

「アーサーが『恋』をしてる?」

 

「そうなの、それのせいかご飯の時や習い事でもボォ〜っとしてるの。」

 

「どうにかできない?」

 

「う〜ん。流石にこれは俺もどうしようも出来ない…人は恋をする生き物でもあるし。」

 

「「そこを何とか!」」

 

「わ!分かった!」

 

タスクは二人を落ち着かせ、学生寮にいるライドとエクエスにその事を話す。

 

「「アーサーが恋をしただと!!?」」

 

「うん、上手くは言えないけど……」

 

「「うんうん…!?」」

 

「……何か…“あ〜〜……サラ〜…”って。」

 

「何だとぉぉぉぉぉっ!!?タスクの次はアーサーが恋をする番かよ!!」

 

ライドが悔し涙目でタスクを肩を掴み、揺さぶる。

 

『バリィン!!』

 

「っ!?」

 

その時、後ろから割れる音がして、3人は振り向く。そこにはお茶を持ってきたマイラがタスク達の話を聞いて、床にお茶をぶちまけていた。

 

「アーサーが…他の女に……恋!?」

 

マイラから物凄いオーラが放たれ、タスク達はギョッとする。

 

「ちょっとその事を話してタスクさん!」

 

マイラがタスクの首を掴み上げながら振り回す。

 

「「タスク〜〜!!」」

 

昇天しているタスク、恋のことで燃え上がるマイラをライドとエクエスが止めさせ、落ち着かせる。

 

「落ち着いたか?」

 

「うん、何かごめんなさいタスクさん…」

 

倒れているタスクは横になっていた。

 

「それで、アーサーが恋をしてるってどう言うこと?」

 

「分からないんだ。家に帰ってから、ボォ〜〜っとしてしまってるし、しまいには“サラ”って言う名前を呟いてるしな。」

 

「ほぉ〜〜サラって言うんだ……その女…」

 

「…!!」

 

またしてもマイラから乙女心の闇と言うより、嫉妬のオーラを出す。

 

「落ち着け、落ち着け!」

 

「……それで?」

 

オーラは治ったが、まだ乙女心の闇を出しており、ライドたちは恐る恐る話す。

 

「恋ね……そう言えば、ライド達は恋をした事があるの?」

 

「「え!?」」

 

二人とも図星なのか、顔が真っ赤に染まる。

 

「ふ〜〜ん♪」

 

「「な、何だよ?」」

 

「その人の名前を言ってみてよ♪」

 

「……はぁ!?」

 

「良いじゃないですか!」

 

「う…………」

 

ライドとエクエスは小声で呟く。

 

「るだ……」

 

「りあ……」

 

「ん?」

 

「……ヒルダ」

 

「……サリア」

 

ライドとエクエスはその二人の名前を呟いた。するとマイラがメモ帳を取り出し、ライドとエクエスの情報を記録する。

 

「アーサーが『サラ』、タスクが『アンジュ』、ライドが『ヒルダ』、エクエスが『サリア』……他にもトウジが『ロザリー』でマナコが『クリス』、ガイが『エルシャ』……良し!」

 

「おまっ!いつからあいつ等の馴染みの名前を記録したんだよ!?」

 

ライドとエクエスはマイラのメモ帳を取り上げようとするが、マイラはそれを持って逃げ出すのであった。

 



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チャプター14 暴虐のビヒモス

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


 

「かぜぇぇ?」

 

翌日、朝のミーティングルームにヴィヴィアンの声が響く。

 

「湯冷めしたらしいわ」

 

「休んだら罰金いくらだっけ?」

 

「一日“百万”よ」

 

厭らしい笑みで呟くロザリーにサリアが応える。別に声に出して聞くまでもないことなのだが、わざわざ口して笑い合う。

 

「かわいそうにねぇ」

 

「破産しちゃえばいいのに」

 

アンジュさんがいないところで随分好き勝手言い合うヒルダ達。その後、パラメイルを使用しての訓練を終えた第一中隊は帰還し、解散となった。アンジュがいないだけで、特に問題も起きず、訓練を終えた。

 

ヒルダ達がアンジュの容態にまるで祝杯でも上げるかのように喜々として引き上げる。他人の不幸は蜜の味というが、あまりの小ささに呆れしかでてこない。

 

「ご苦労様、ヴィルキス…どう?」

 

「あぁ、サリア。アンジュが使うとボロボロになるから、メンテナンス大変。」

 

「大事な機体なのに…全く。」

 

「仕方ないよね、稼ぎも危険も全部独り占めしてるんだから。」

 

「危険もって?」

 

「う〜ん、整備していると感じるんだ…ライダーの気持ちみたいなものを。」

 

メイはそう言いながら、ヴィルキスの装甲に触れる。

 

「“もう誰も死なせない…ドラゴンの攻撃は全部一人で受ける”……なんてね!」

 

「考えすぎでしょ…」

 

「でも、アンジュがヴィルキスに乗るようになってから、誰も死んでないよね……私たちの部隊♪」

 

「?」

 

「【2月14日】本日の死亡者“0”【2月18日】本日の死亡者“0”……考え過ぎよ…」

 

サリアがそう深く考えながらパソコンを閉じたその時、突如警報が轟いた。

 

【第一種遭遇警報発令! パラメイル第一中隊出撃準備!】

 

ドラゴンの出現に緊迫した空気に包まれるアルゼナルの警報が鳴り響くなか、ヴィルキスを除いた第一中隊のパラメイルがフライトデッキにスタンバイする。

 

ライダースーツに着替えた面々が待機するなか、サリアが号令をかける。

 

「総員騎乗!」

 

一斉にバイザーを下ろし、各々の機体へと駆け出し、飛び乗っていく。

 

「隊長より各機へ!アンジュは休み…今回の作戦は10機で編隊を組むわ」

 

ヴィルキスのいない中、火力が落ちるのは仕方ない。その分をカバーするため、サリアは作戦を思い浮かべながら、第一中隊は大空へ舞い上がる。

編隊を組んで飛行する第一中隊は観測されたシンギュラーまで接近していた。

 

《シンギュラーまで距離2800!》

 

今回の観測地点はアルゼナル周辺に点在する無人島の一つだ。そして、周辺の空間が乱れ、空気が淀んでいる。

 

「全機、セーフティ解除! ドアが開くぞ! 戦闘隊形!」

 

『イエス・マム!』

 

戦闘地域に入った第一中隊、そこにゲートが開きスクーナー級が無数出て来て、そしてそこに角が生えた巨大なドラゴンが出現し。それを見たサリア達は驚く。

 

「でか!?」

 

「あらあら大きいわ~」

 

ヴィヴィアンが思わず驚き、エルシャは苦笑いしながらのん気に言っていた。

 

「サリア、アイツのデータは?」

 

「あんなの、見た事無いわ…」

 

サリアはデータのないドラゴンに悩まされる中でロザリーとクリスが驚く。

 

「見なことないって事は!」

 

「まさか…まさか!」

 

「初物か!」

 

ヒルダは思わず喜びの笑みを上げる。

 

「初物?」

 

司令室でジル達と見ていたエマは聞き慣れない言葉を聞いて首を傾げる。

 

「監察官は初めてでしたか、過去に遭遇のないドラゴンの事ですよ」

 

ジルはエマにその事を説明し、納得させる。

一方戦場では未遭遇のドラゴンにヒルダ達は盛り上がっていた。

 

「コイツの情報持ち帰るだけでも大金持ちだぜ!」

 

「どうせなら初物喰いして札束風呂で祝杯といこうじゃないか!」

 

「アハハ!良いねぇ!」

 

「こちらサリア!アルゼナルから増援を要請する!」

 

『はぁっ!?増援なんて呼んだら取り分減るんだろうが!』

 

「ゾーラなら初物相手でもビビったりしなかったのにね」

 

「キッ!」

 

ヒルダの行動にサリアは舌打ちする。

 

「付いておいで!ロザリー、クリス!」

 

「よっしゃあ!!」

 

「ま、待って!」

 

ヒルダはロザリー、クリスと共にホーンドラゴンへと向かう。

 

「報酬は私達で山分けだよ!」

 

「何か…髪の毛がピリッピリッする」

 

「え?」

 

突然のヴィヴィアンの言葉にサリアは不思議に思う。

 

「ファイア!!」

 

ヒルダ達は襲い掛かるスクーナー級ドラゴンを撃破して行く。

 

「ファイア!」

 

サリア達も一斉にスクーナー級ドラゴンを撃破していく。

 

「思ってたより動きは鈍チン、背中は重装甲…てことは、ビンゴ!ぷよぷよじゃないか!」

 

ヒルダはホーンドラゴンの周りを確認し、露出している腹部を見て弱点を確認する。

 

「狙いは腹だ!一気に決めるよ!」

 

「よっしゃ!」

 

【ピィギヤヤヤヤァァァァァ!!!!!】

 

ホーンドラゴンが雄叫びを上げるとスクーナー級ドラゴン達が一斉にホーンドラゴンから離れる。

 

「どうしたのかしら?」

 

「ピリッピリッ……ピリッピリッピリッ」

 

「貰ったよ!」

 

そしてヒルダ達が大型ドラゴンに突撃しようとしたその時!

 

「っ!! ヒルダ戻れ!!」

 

ドラゴンが咆哮を上げたと同時にと角が光りその瞬間周囲が何かに包まれた。

ヴィヴィアンが警告を促したが時既に遅くヒルダ達の機体が囚われてしまった。

 

それにヒルダ達は苦しむ。

 

「なっ!?」

 

「う…動けねえ…」

 

「一体何なの…コレ!?」

 

三人が混乱している中、サリア達が上空で見ていると。

 

『新型ドラゴン周囲に高重力反応!』

 

「重力!?」

 

オペレーターからの解析結果に驚く。

更にドラゴンが角を光らし、重力範囲を広げ始めた。

 

「まさか!」

 

サリアが驚くと、重力波の紋章が広くなり、サリアを捉える。

 

「各機駆逐形態!防御体制をとれ!」

 

重力によってサリア、ヴィヴィアン、エルシャ、ココ、ミランダの機体が落下していき、地面に着陸してしまう。するとヴィヴィアンが重力の中、ホーンドラゴンの光っている角を見る。

 

「その角だな!皆んなを離せ!」

 

ヴィヴィアンはレイザーの超硬クロム製プーメランブレードを角に向けて投げるが、重力波の影響でブーメランブレードが落ちる。

 

「あぁっ!」

 

さらに重力が上がり、皆んなの機体が地面にめり込んでいく。

 

「う、動けねぇ!」

 

「うっ!た、助けて!ロザリー、ヒルダ!」

 

「う、動けよ!いくら金掛けたと思ってんだ!とっとと動けよサリア!」

 

「だから言ったのに…部隊の全滅はいけない、最悪…我々の機体だけでも捨てて……っ!?」

 

サリアが必死に考えていると、ヴィヴィアンのレイザーが立ち上がる。

 

「ヴィヴィちゃん!?」

 

「皆んなを…離せ!」

 

ヴィヴィアンは仲間を助けようと落ちたブーメランブレードを拾う。

 

「皆んなを…離せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ヴィヴィアンはブーメランブレードを投げようとした瞬間、ホーンドラゴンの角がさらに光だし、重力を上げる。ブーメランブレードを投げようとしたレイザーの腕が外れてしまう。

 

「グッ!」

 

「ヴィヴィアン!」

 

【ピィギヤヤヤヤァァァァァッ!!!!!!】

 

ホーンドラゴンは勝利に間近なのか、雄叫びを上げる。

 

「このままじゃ三人が…」

 

サリアはヒルダ達やヴィヴィアン達を助ける方法を深く考える。すると通信機から誰かが咳する音を聞く。サリアはその咳する音に聞き覚えがあった。

 

「ヴィルキス!?……アンジュなの!?」

 

 

 

 

数時間前、アンジュはモモカをアルゼナルに養う為、風邪のままキャッシュを稼ごうとしていたのであった。そんなアンジュにモモカは仕方なくアンジュに暖かい服を着させる。

 

『どうしてもとおっしゃるなら!この格好で行ってください!』

 

なんともライダースーツの上に上着と言うカッコ悪い姿。

そして現在に至りながら、アンジュはヴィルキスを動かしていた。

 

「う〜〜、フラフラする。とっとと終わらせよ…」

 

「来るなアンジュ!重力に捕まるだけだ!」

 

「大丈夫よ…いつも通り私一人で充分だから…」

 

しかしアンジュはサリアの命令を全く従おうともしなかった。そんなアンジュにサリアは歯を噛みしめる。

 

「……全く、どいつもこいつも」

 

サリアはそう呟き、機体のコンソールに拳を当て、アンジュに怒鳴る。

 

「いい加減にしろ!!この馬鹿女!!」

 

「っ!?」

 

「アンタ一人でできるほど、このドラゴンは甘くない!!どいつも勝手なことばかりして!!死にたくなければ隊長の命令を聞きなさい!!」

 

「!?…はい!?」

 

「そのまま上昇!」

 

アンジュはサリアの命令に従い、ヴィルキスを空高く上昇させる。

 

「修正!右3度、前方20!」

 

「え〜っと、右ってどっち?」

 

「逆!」

 

高度を修正しながら、ホーンドラゴンの頭上へと向かう。

 

「そこで止まって!」

 

そしてホーンドラゴンがヴィルキスを睨み、重力波でヴィルキスを落としていく。

 

「何か…落ちてない?」

 

呆けているのか、アンジュは落ちている事に疑う。

 

「やっぱり落ちてる…」

 

「熱でそう感じるだけ!!」

 

「サリアちゃん、まさか!?」

 

「今よアンジュ!蹴れぇっ!!」

 

「ほえ…?」

 

「蹴るのよ!私を蹴ったみたいに!!」

 

サリアの命令にアンジュはヴィルキスの脚を動かす。そしてヴィルキスの蹴りがホーンドラゴンの左角に直撃し、角が折れる。

 

「うぅ!うわぁぁぁっ!!」

 

同時にヴィルキスの右脚が破損し、地面に不時着する。そして角が折れた事により、重力で捕まっていたヒルダ達が解放される。

 

「やっとかよ!」

 

「もう!やってくれちゃって!!」

 

「速攻で仕留めるわよ、突撃!」

 

サリア達がライフルを持って突撃するのであった。

 

 

 

戦闘を終え、基地へと帰還した第一中隊は、戦闘後の収支結果を受け取るべく事務へと駆け込み、報酬として支払われたキャッシュは、予想以上の額だった。

 

「うひょお! こんな大金夢みたいだ!」

 

「ううん、夢じゃないよ!」

 

基本的に収入の少ないクリスとロザリーは眼を輝かせて与えられた給料を凝視している。今まで持ったこともないような札束に感極まっている。エルシャはこれで幼年部の子供達にいろいろと用意してあげられると満足気な表情を浮かべ、ヴィヴィアンは言うまでもなく新しい装備を買おうとはしゃいでいる。

 

「本当、私見たことないよ…夢だったら覚めないでほしい――たたっ」

 

「夢じゃないでしょ?」

 

「なんで私の頬を引っ張るの!」

 

じゃれあいながらも、ココやミランダも両手に抱えるキャッシュの束に興奮を隠せずにいる。ヘタをしたら、一生かかっても稼げないほどの額に思えるのかもしれない。

 

サリアはそんな彼女達の様子を見ながら、自身も与えられた莫大なキャッシュにどこか満足気だった。

 

「……少ない」

 

周りがはしゃぐ中、アンジュは不機嫌気味に呟いた。アンジュに支払われた額は、サリア達に比べて極端に少なく、サリアが苦笑を浮かべる。

 

「仕方ないわね。角折っただけだもの……でも、助かったわ。アンタが来てくれたおかげで」

 

サリアは素直に礼を述べたのだが、そんな情緒もぶち壊すようにアンジュはジト眼で手を差し出し、憮然と言い放つ。

 

「迷惑料…貴女の命令に従ったせいで、取り分減った挙句ヴィルキスが壊れたんだから」

 

事実、アンジュのキャッシュがここまで減ったのは、ヴィルキスを破損させた分の修理代も差っ引かれてのものだっただけに、横で聞いていたナオミは表情を引き攣らせる。

 

「……さっきの感謝取り消しよ」

 

サリアは全力で後悔した。やはり反りが合わない

 

「変な趣味…皆にバラすわよ」

 

「!?一生寝込んでなさい!」

 

「何て酷いことを!」

 

そしてサリアは盛り上がるヒルダ達に声を掛けた。

 

「どう、満足したかしら?」

 

サリアの問いに、ロザリーやクリスはやや躊躇いながらも頷き、ヒルダは憮然と睨む。

 

「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。アンジュを後ろから狙うの…もうやめなさい。

そしてアンジュも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。これは隊長命令よ」

 

「へっ、誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって『良いわよ別に』!?」

 

「私の足さえ引っ張らなければね」

 

っとアンジュは予想外に肯定する。

 

「私も良い…かな。今回はティアやアンジュ達が来てくれたお蔭で助かったし…」

 

いつも隠れがちなクリスがそう言う。

 

「ま、まぁ~…アタシはしばらく金がある内は…良いかな」

 

クリスに釣られるようにロザリーも続けて言う。

 

「アンタ達何言いくるめられてるのよ!?」

 

「そ、そういうワケじゃないけど…」

 

「チッ…! 裏切り者」

 

ヒルダは納得できないのか立ち去る。

 

「それじゃあ!行きましょうか!」

 

っとエルシャ達はアンジュを連れて何処かに行ってしまう。グレイスは置いてきぼりになってしまう。

 

女子全員でお風呂に入ろうと提案する。今までのことを全部お湯に流そうという魂胆らしいが、ヴィヴィアンも楽しげにのり、アンジュを捕まえて連行していく。

 

元々アンジュに対しての蟠りも少なかったこともあり、ようやく気兼ねなくできるということかもしれない。その後、アンジュを巻き込んで全員でのお風呂タイムとしゃれ込むことになる。

 

 

 

 

 

翌朝、アンジュはモモカにお召し替えされていた。

 

「全く、酷い目にあったわ。」

 

「でも熱も下がって無事で何よりです……ん?」

 

 

 

「え?これって……」

 

「どうしたの、モモカ?」

 

突然のことに戸惑うアンジュの前で、モモカは空中にウィンドウを浮かばせる。

 

「マナの通信です。でもこれって…これは、皇室の極秘回線です!」

 

ウィンドウに繋がったラインに驚くモモカだが、アンジュの驚きはそれ以上だった。息を呑み、思わずウィンドウを覗き込む。モモカはウィンドウを大きく表示させ、回線を繋ぐ。

 

《モモカ、モモカ聞こえる!?》

 

「シ、シルヴィア様?」

 

ノイズ混じりに聞こえてきた声に、アンジュは眼を見開く。

 

「シ、シルヴィア……!?」

 

久しく聞いていなかった大切な妹であるシルヴィアの声。震える声で呼びながら、回線に近づくと、向こうから切羽詰まった声が響く。

 

『アンジュリーゼお姉様とは逢えた?そこにお姉様はいるの!?』

 

自分の名を呼ばれ、アンジュはビクッと身を震わせるも、声が出ない。だが、その間にも回線から聞こえるシルヴィアの声が上擦ってくる。

 

『あ、離して!助けてお姉さま、アンジュリーゼお姉さまぁぁぁぁ―――』

 

「シルヴィア…!」

 

ウィンドウに手を伸ばそうとするアンジュの前で、回線がシャットアウトされ、掻き消える。伸ばされた手は虚空を彷徨い、モモカは事態に慄きながら口を押さえ、アンジュは妹の悲鳴に呆然と佇んでいるのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター15 夢物語

OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


「あれ?」

 

アーサーは目を覚まし、起き上がる。そこは普通の部屋とは違く、シンプルで和式ではなく、何かが違かった。テレビや机、椅子、棚、教科書、フィギュアが置かれており、さらにはランドセルもあった。

 

「ここ…何処だ?」

 

「『有留斗』!起きなさ〜い!」

 

「有留斗?」

 

アーサーは別の名前で呼ばれた声の主の方へ降りてくる。普通の空間、そこには見知らぬ女性が朝食を作っていた。

 

「有留斗、ご飯食べないと学校に遅刻しちゃうよ。」

 

「え?……うん。」

 

アーサーは返事をし、朝食を済ませて学校へ行く準備をする。アーサーは洗面所の鏡で顔を確認していた。

 

「何で…………俺、ちっこくなってんだ?」

 

アーサーは外見を見る。同じ髪型をしているが、目の色は茶色で普通の少年であった。

 

アーサーは玄関のドアを開け、当たり前な事を言う。

 

「行ってきまーす」

 

「行ってらっしゃい」

 

女性が元気良く返事する少年に向かって行ってらっしゃいという言葉を言った。アーサーは家の前の名前を見る。

 

「“時沢”……(コイツの姓か。)」

 

アーサー街道を歩く少年少女達の列に続いて歩く。歩く事15分、着いた場所は大きな建物であり、ランドセルと名札、席順に従い、席に着く。

 

「有留斗!」

 

「ん?」

 

「昨日描いた絵を見せて♪」

 

「うん(あれ!?何で素直に返事したんだ!?しかも、体が勝手に動く!!)」

 

アーサーは驚きながら、少年が取り出した絵を見る。

 

「(っ!!?)」

 

アーサーは驚く。そこに描かれていた絵は、フラドーラ、ヴィンセクト、グランヴェ、ゼーア、ドゥケレー、鋼の黒い巨人と真紅の騎神、さらにカイムが乗るダラムと他の五機、そして黒いヴィルキスや形状の違うヴィルキス、パラメイル、ドラゴンの絵であった。

 

「(何でだ!?何でこの少年がアンジュ達や他の機体の絵を描いてんだ!!?)」

 

アーサーが混乱していると、少年は次のページを開く。そこにはフラドーラ、ヴィンセクト、グランヴェ、ゼーア、ドゥケレー、黒き鋼の巨人が合体し、ドラゴンの様なロボットと真紅の騎神と天馬型のロボットが合体し、人馬の騎神へと合体しており、鬼を模した左籠手に裁きの槍と弓矢を構えていた。

 

「(何だ?)」

 

すると目の前の空間が一斉に静まり、皆んなが動きが止まる。

 

「あれ…?」

 

「「皆んなどうしたんだ?」」

 

アーサーは途端に声を出すと、別の声と被さる。

 

「「……!?」」

 

アーサーは下の方を向くと、さっきまで憑依していた少年がいた。

 

「「……誰!?」」

 

二人は思わず誰かと問う。数分後、二人は落ち着きながら自己紹介をする。そして少年の名は……。

 

「僕は時沢 有留斗。◯◯小学校二年生。」

 

「俺はアーサーだ。早速だけど、あ…“アルト”あの絵って何だ?」

 

「お父さんとお母さん」

 

「お父さんと…お母さんが?」

 

「うん。僕ね、お父さんとお母さんの事…あんまり知らないんだ。二人とも海外で仕事していて、それでお母さんの妹夫婦のおばさんとおじさんと暮らしてるんだ。」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「あ、いや……何でもない。」

 

「困ったなぁ、今度ある霊獄山にある“煌峯ヶ岳遺跡”見学ツアーの点検をしないと行けないのに。」

 

「煌峯ヶ岳遺跡?」

 

「中央アルプス山脈から見つかった数千年前の遺跡。しかも凄いんだよ!」

 

「何が?」

 

「その遺跡からロボットらしき残骸が見つかったんだ!」

 

アルトはそう言いながら、その遺跡から撮られた写真を見せる。

 

「っ!?」

 

「どうしたの?」

 

「……これ!?」

 

それは形状やフレーム構造は違うが、間違いなくフラドーラとヴィンセクト、グランヴェ、ゼーア、ドゥケレーであった。

 

「その赤い鳥は『ガルーダ』。こっちのカブトムシが『ドルクルス』、黄色いライオンが『ガンシーサー』、青いクジラが『リヴァイアサン』、緑の鹿が『ディアヌス』。何でそんな名前なのかは分からないけど、ガルーダは『鳥類』、ドルクルスが『甲虫類』、ガンシーサーが『地上動物』リヴァイアサンが『水生生物』、ディアヌスが『神獣』って言う感じになってて、それぞれの四機に元素とディアヌスの元素である“無”を合わせば、“『光』と『闇』”が出来るようになるんだ!」

 

「へぇ〜。(“ガルーダ…ドルクルス…ガンシーサー…リヴァイアサン

…ディアヌス”)後、これは?」

 

アーサーが気になった写真に指を指す。それは壁一面に文字や模様、そしてその真ん中に大きな文字が刻まれた石棺があった。

 

「それは…お父さんとお母さんが見つけた石棺。随分前の物で、今度社会科見学でお父さん達が石棺の中に眠っているミイラを見せてくれるらしいの。」

 

「ミイラね〜…あれ?」

 

するとアーサーの体が粒子へと変わる。

 

「アーサー!?」

 

「何だろう……?急に……意識が…………。」

 

アーサーはそう呟き、空間から消えていく直後、目の前の光景から薄っすらと何かが映る。開けた石棺が倒れ、その下から禍々しき邪悪な黒い物体が現れ、遺跡発掘現場を破壊していく。すると真紅の騎神と純白の機龍、紫電の大甲虫、琥珀の黒獅子、紺碧の大海獣、深緑の神獣、黒き鋼の巨人が揃い、ガルーダ、ドルクルス、ガンシーサー、リヴァイアサン、ディアヌス、そしてそれを上回る巨大な白銀の機神がいた。

 

「(あれって……?)」

 

すると真紅の騎神の胸部の水晶体開き、中から白いパイロットスーツを着た人物が現れる。そしてパイロットスーツを着た影はヘルメットを脱ぐ。

 

「っ!?」

 

それは紛れもなくアーサー本人であった。アーサーはもう一人のアーサーに驚く。

 

「(俺!!?)」

 

するともう一人のアーサーから火、風、土、水、そして光の剣を取り出し、左手を掲げる。その時、目の前が光で真っ白に包まれ、アーサーを呑み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「丈夫……」

 

「……?」

 

「大丈夫ですか」

 

「……う?」

 

アーサーは目の前に光に絡み、目を覚ます。

 

「大丈夫ですか?」

 

周りには医療班達がアーサーを囲んでいた。

 

「俺……確か寝て…」

 

「アーサーがお目覚めになりましたよ!」

 

すると戸が開き、ライド達が心配してきた。

 

「アーサー!」

 

「ライド?……それにみんな。」

 

「心配したんだぞ。起きるのが遅いとタスクが起こそうするが、全然起きなかったから。」

 

「俺…変な夢を見てた。」

 

「変な夢?」

 

「うん…なんかーーー」

 

ビィーーーッ!!!ビィーーーッ!!!ビィーーーッ!!!

 

「《っ!?》」

 

アーサーが夢の事を話そうとした直後、警報が鳴り響く。だが次の任務にアーサーの記憶と真相を知るのを皆んなが絶句する事も知る由もなかった。

 




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)


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チャプター16 交差する悲劇・前編

投稿遅れてすみません。物語を書き上げる為にOP、EDを探していました。


 

突然の警報に驚いたアーサー達。東護ノ介が皆を呼び集め、ブリーフィングする。

 

「アンジュが脱走!?」

 

「どうやら神聖ミスルギ皇国皇帝ジュリオはその姫さんが連れていた筆頭侍女を餌にして、アンジュの安否を確認していたらしいのだ。そして彼女の妹であるシルヴィア・斑鳩・ミスルギも彼女を殺そうとしている。さらにその中にヒルダも…」

 

「!?」

 

アーサーは脱走したメンバーに驚く。さらにライドは自分の思い人が脱走した事に疑問を抱く。

 

「オッサン!ヒルダは?ヒルダは何処に!?」

 

「アンジュの方はミスルギ皇国だ。ヒルダはまだ不明だが…」

 

「すぐに助けに行かないと!」

 

ライド達は行動を開始すると、東護ノ介がアーサーに言う。

 

「アーサー…」

 

「?」

 

「アンジュリーゼ達を救出した後、この島に上陸しろ。そろそろ12年前の事を…兄さんと話そうと決意をしたのだ。」

 

「俺の?」

 

「あぁ…」

 

「……分かった。」

 

アーサーはそう言い、格納庫へと向かう。

 

「(本来ならまだ秘密にしておきたかったが、もうこれ以上…あの悲劇を忘れたままでは行かん。アーサー…許せ。)」

 

どう言う事なのか、東護ノ介が格納庫に行くアーサーを見送りながら不安に思う。

 

 

 

「俺達にある『サポートメカ』を渡す!?」

 

格納庫でアーサー達はアリマからある物を配備してくれた。『グランビークル』ーーー超星神をサポートする隠密小型戦闘機。アリマが言うにはアーサー達がこれから使う超星神では物凄く目立つ為、代わりにグランビークルで発進してもらう事に。

 

「「「「これが俺達のグランビークル?」」」」

 

アーサー、タスク、ライド、エクエスがそれぞれのグランビークルを見る。炎のトライブは鳥型のグランビークルであり、それぞれの外観、武装が取り付けられていた。アーサーのは鷲型で炎のトライブの指揮官用グランビークル。トウジのは燕型の超速に特化し軽量グランビークル。ミクモは白鳥型の大型重戦闘グランビークル。

 

「鳥類をモチーフにしてるなぁ…」

 

タスク達のは昆虫型のグランビークルでありアーサー同様、それぞれの外観と武装をしていた。タスクのはカブトムシ型の指揮官用のグランビークル。ミュリエーナのは蝶型の大型爆撃グランビークル、ガイのは鍬形虫型で装甲を見にまとった重装甲グランビークル。

 

「こっちは昆虫だ」

 

ライド達のは陸上生物のグランビークルであった。アーサー、タスク達のグランビークルと違ってキャタピラや自走砲が取り付けられたーーー謂わば“飛行できる戦車”と言っても良かった。ライドのは二連装砲を二門を装備された猛牛型の指揮官用のグランビークル、クサビは機首部にプラズマドリルが装備された山羊型の重戦闘グランビークル、ヨーコは豹型で両翼とランディングにプラズマブレードを内蔵させた強襲グランビークル。

 

「俺らのは陸上と言うより…自走砲みたいだな。」

 

エクエス達のは水性生物型のグランビークルであった。エクエスのは鮫型で潜水できる指揮官用のグランビークル、マナコは外観が鱏型の隠密大型グランビークル。エミリーは鯱型の高速潜水グランビークル。

 

「俺達のは潜水ができるタイプだ」

 

アーサー達はそれぞれのグランビークルに乗り込み、発進していく。

 

 

 

 

 

クラウドブルースから出たアーサー達はミスルギ皇国が支配域の森の中で待っている西十郎と合流する。

 

「お前等、準備は出来てるか?」

 

「《はい!》」

 

「アンジュの方はアーサー、トウジ、ミクモ、タスク、ミュリエーナ、ガイに、ヒルダの方はライド、クサビ、ヨーコ、エクエス、マナコ、エミリーに任せる。」

 

「《はい!》」

 

「それじゃ、行動開始だ。」

 

ライド達はグランビークルに乗り込み、ヒルダの捜索へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

ミスルギ皇国、これから起こるアンジュリーゼの処刑台の周りに集まっている国民に紛れ込んでいるアーサー達。建物の屋上でタスク達がグランビークルを構えていた。

 

『アーサー達は人達に紛れ込んで待機、俺たちは建物の屋上でチャンスを伺う!』

 

「分かった…」

 

小声で通信を終えると絞首刑台に連れていかれているアンジュが歌い出す。

 

「♪〜♪〜」

 

アンジュが母の歌である永遠語りを歌い出す。それを聞いて歌うのを辞めさせようとするシルヴィアとジュリオ。ジュリオが近衛兵に命令し、アンジュの首に絞首の縄を付け、下す。

 

「さらばだ、アンジュリーゼ」

 

「アンジュリーゼ様あああぁぁぁ〜〜〜〜っ!!!」

 

モモカが叫ぶと同時に、上空から閃光弾が放たれ、辺りを眩く照らす。その隙にタスクのグランビークルが動き出し、ジュリオからアンジュの指輪を取り返し、そしてグランビークルのプラズマカッターを発射し、アンジュを吊していたロープを切り。その者は落ちて行くアンジュをキャッチするが…。

 

「うわっ!」

 

バカなのか、アホなのか、タスクがグランビークルから放り投げ出され、見事にアンジュをキャッチするのだが…。

 

「う、うえ~~~!!?」

 

何とアンジュの股間に頭を突っ込んいて、それを見ていたアーサー達は思わずドン引きしアンジュは真っ赤な顔になる。

そいつはもがいていて、アンジュはさらに真っ赤にある。

 

「こ…こっの~~!!!」

 

「ぐほっ!!」

 

アンジュはその人物の腹を蹴り飛ばし、壁に激突した瞬間頭に被っていたローブが取れてタスクの顔が現れる。

アンジュはその人物がタスクだった事に驚く。

 

「えっ?!タ…タスク!!?」

 

「近衛兵!何をしている、早くあの者を捕えぬか!」

 

近衛長官のリィザが近衛兵に命令をする。

 

「それは困るな!」

 

「「っ!?」」

 

すると人混みの中に紛れ込んでいたアーサー達がセイザータリアス、セイザーミトラス、セイザーリオンへと変身し、それぞれの武器を取り出し、必殺技を放つ。

 

「バーニングファルコン!」

 

アーサーが近衛兵に向けて聖緋弓ファルコンボウの炎の矢を放つ。

 

「ブラン・トルネード!」

 

ミクモが聖鉄扇スワンセクターという2本の鉄扇を使って、華麗に振り高熱火炎の竜巻を起こす。

 

「飛燕斬!」

 

トウジは聖双剣ダブル・クレッセントという二刀流の剣を使い、ダブル・クレッセントをクロスして、貯めた炎エネルギーをツバメの形にして飛ばす。

それに続き、ミュリエーナとガイが乗っているグランビークルが空から援護する。

 

「来い!グランビークル!」

 

アーサーが大声で呼ぶと、空からアーサー達のグランビークルが飛んで来た。

 

「ほらタスク!あ〜!気絶してやがる!」

 

アーサーはタスクを揺さぶるが起きなかった。

 

「おい、タスクをグランビークルに乗せて逃げるぞ!」

 

アーサーはアンジュにそう言い、高く跳び上がりグランビークルに乗り込んだ。

 

「パラメイルと同じだわ、モモカ!しっかりつかまって!」

 

「はい!」

 

「逃すな!!」

 

タスクのグランビークルに乗り込んだアンジュとモモカ、そして気絶したタスク。

 

「おのれアンジュリーゼ…!」

 

「感謝してるわお兄様、私の正体を暴いてくれて。ありがとうシルヴィア、薄汚い人間の本性を見せてくれて」

 

アンジュはシルヴィアに向かってじょうだんでもない笑みを見せる。その事にシルヴィアは思わず引いて、アンジュはそのまま叫ぶ。

 

「さようなら、腐った家畜共よ!!」

 

アンジュは飛行艇を動かし、ジュリオは怒りが爆発する。

 

「く!追え!追ええええ!!!」

 

その時、炎の拳がジュリオの右目へ目掛けて飛んできた。

 

「っ!!ぎゃぁああああああああああっ!!」

 

ジュリオの右目に火矢が炸裂し、彼の右半分が大火傷を負う。ジュリオに火傷を負わせたのはコックピットから顔を出し、右腕に鬼の籠手でクロスボウパンチを放っていた。アーサーは舌を出し、アンジュ達の後を追うのであった。

 

 

 

アンジュとモモカを無事救出に成功したアーサー達は素早くミスルギ皇国から脱出し、アルゼナルへと帰投していた。

グランビークルと連結させている輸送艇の中でアンジュとモモカは毛布を渡されて身体を包み、モモカは毛布に包まれながら静かに泣いていた。

 

「申し訳…申し訳ありません。アンジュリーゼ様…」

 

モモカはジュリオに自分が利用されていた事に気付かず、主であるアンジュを危険な目に合わさせて仕舞った事に罪悪感を感じており、必死に頭を下げながら謝っていた。

しかしそれをアンジュは頭を横に振る。

 

「何言ってるのモモカ、お蔭でスッキリしたんだから」

 

「え?」

 

アンジュの意外な言葉にモモカは顔を上げる。

 

「私には、家族も仲間の故郷も…何にもないって分かったんだから」

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「それよりも…!」

 

「痛った〜!?」

 

アンジュが、気絶しているタスクの頬に平手打ちをした。

 

「痛い!!」

 

「どう?目が冷めた?」

 

「あ!良かったアンジュ!無事でって!?」

 

「あなた、またやったわね!!」

 

アンジュはタスクの上に乗っかって、頭をぐりぐり攻撃をする。

タスクは怒っているアンジュの行動に分からずにいた。

 

「何~!? 何が~…?!」

 

「どうして股間に顔を埋める必要がある訳~?意地なの癖なの? それとも病気なの~!!?」

 

「ご!ゴメン!!いででででででででででででででででで!! ゴメン!!!」

 

その事に聞いていたアーサーは思わず呆れる様子になる、そして見ていたモモカはアンジュに問いかける。

 

「あの…、アンジュリーゼ様。そちらの方とは一体どう言う関係で?」

 

「えっ?えっと…」

 

「た、ただらなぬ関係…」

 

っとタスクがそう言って、アンジュはその事に思わず「は!?はぁ!?」と声を上げる

その事を聞いたモモカは嬉しい表情をする。

 

「そうですか! お二人はその様な関係でしたか!男勝りのアンジュリーゼ様にもようやく春が…筆頭侍女としてこんなに嬉しい事はありません」

 

「違〜う!」

 

「いだっ!」

 

「どうしてあそこにいたの?」

 

アンジュが問うと、タスクは頭をすすりながら返答する。

 

「連絡が来たんだ、ジルから…」

 

「ジル…司令が?」

 

「君を死なせるなってね……」

 

タスクは説明し、ポケットからあるものを取り出し、アンジュに渡した。

 

「それとこれ…大事なものだろ?」

 

それは、ジュリオに奪われたあの皇族の指輪だった。

 

「ありがとう…あなた達、一体何者なの?」

 

「俺達は……グランセイザー。そして俺は“ヴィルキスの騎士”だ。」

 

「グランセイザー?……それに騎士って?」

 

「君を守る騎士の事だよ。詳しくはジルに聞いてくれ。」

 

「そうするわ」

 

「あと一つ良いかな?アンジュの髪……綺麗な金色の髪だね。」

 

「///それが……何よ?」

 

「“下も金色”なんだ」

 

「死ねぇ!この変態騎士!!」

 

「あだっ!!」

 

輸送艇内で悲鳴と殴られる音が響く中、アーサー達は呟く。

 

「《タスク…ご愁傷様》」

 

アーサー達は両手を合わせながら、南無阿弥陀と唱えていると、アーサーが東護ノ介の言葉を思い出し、タスク達に伝える。

 

「皆んな、聞いてくれ実は東護ノ介さんがある場所へ来て欲しいと言われたんだ。一緒に来てくれ…」

 

「え?わ、分かった」

 

顔面が酷い痣と傷だらけのタスクとトウジ達はアーサーに付いて行く。その数分後、ライドとエクエス達のグランビークルがやって来る。

 

「おーい!」

 

「ライド達だ!」

 

猛牛と獅子を模した琥珀色のグランビークルと鯱とエイを模した紺碧色のグランビークルがアーサー達のグランビークルに接近する、

 

「そっちも救出したんだな!」

 

「あぁ!それにしても、東護ノ介のオッサンが言っていた島って……あれか?」

 

アーサー達の目の前に見えてくる大きな島…荒れた海岸、断崖絶壁の渓谷と峯山が成り立っていた。

 

「何なんだ?荒れた海岩はあるし、不気味だ」

 

ライドが先の海岸の事で呟いていると、アーサーが渓谷の下にある大きな川を見る。

 

「(あれ?海に通じてる川…何処かで……)っ!!」

 

するとアーサーの視界がノイズで埋め尽くされ、突然と頭痛が起こる。

 

「どうした!?」

 

「おい、アーサー!?」

 

頭痛で頭を抑え、苦しむアーサー。するとと耳から女の子の声が響く。

 

『アーサー…』

 

その時、アーサーの視界がノイズからある皆んなの集合写真が映る。

 

「っ!?」

 

その声の主が誰なのか、同時に頭痛が治る。

 

「頭…大丈夫か?」

 

「うん、平気……もう、治った…(何だろう今の…それにあの写真、女の子の声……)」

 

アーサーはそう考えながら、島の奥へと向かう。数分後、グランビークルを発着させる広間へと着陸し、アーサー達はそこである物を目にする。

 

「何なんだ……ここは?」

 

林と蔓、苔、草に覆われた廃村、火事があったのか数件の家々が黒く焦げた焼け跡であった。

 

「この島で何があったんだ?見るからに廃村だけど……」

 

アーサー達はそれぞれの調査を開始する。アーサーとエクエスはボロボロの雑貨屋の腐敗度を確認する。

 

「どれぐらい古く経過してるんだ?」

 

「12年前だな…」

 

「12年前…それって!?」

 

「分からない…だが、ここで何があったかは俺も知らない。」

 

エクエスはそう言い、焦げた木板に触れる。

 

「この焼け跡…まるで“誰かにを燃やされた”感じなんだ。事故なら分かるんだが…」

 

 

「《っ!!?》」

 

「何…これ…!?」

 

アーサー達が見たもの。それは大きな焼け跡の中に黒く焦げ、石のようになっている子供のバラバラ死体が広がっていた。

 

「人?」

 

アーサー達はその光景に驚いていると周りの空気が時が止まったかのように静寂する。

 

「……え?」

 

ただ一人……アーサーを除いては。

 

「皆んな!?」

 

みんなの動きが完全に止まった空間。

 

「……ねぇ」

 

「?」

 

突然の声にアーサーは振り向く。そこにいたのは白いワンピースと麦わら帽子をした少女であった。

 

「やっと見つけた…」

 

「え?(あれ…俺、この子何処かで見たようなぁ…)もしかして、前に会った?」

 

「うん、“似てる”でしょ?」

 

「名前は?」

 

「名前……【アケロン】」

 

「アケロン?それが名前?」

 

「うん♪……それに私、“怪獣”なんだ」

 

「怪獣って…特撮じゃあるまいし……」

 

「ホントだよ…♪」

 

すると目を離していたのかそこにいたのは少女ではなく、パラメイルやドラゴンを遥かに上回る程の巨体を持つ“竜”がいた。

 

「え?……えぇっ!!?」

 

《私、“人間”に造られた怪獣なんだ♪》

 

「(で、デカ過ぎる!…しかも、口臭い〜!)」

 

怪獣の口臭に気にしているのか、苦笑いしてしまう。

 

《そうだ…》

 

すると怪獣の額にある翡翠色の水晶体が光り、一筋の光がアーサーの手元へと渡される。光が形を変え、黒い霊符と怪獣の銀色の外殻で覆われ、先端に翡翠色の水晶体が付いた杖を渡される。

 

《これ上げる…あの時、“助けてくれた”お礼……》

 

「助けた?お前を?」

 

《うん…君はいずれ、運命をひっくり返す者になる。その時は…歪み過ぎた伯父さんを“怖い人”から解放させて…。》

 

「怖い人?」

 

《いずれ分かるよ……》

 

怪獣はそう言いながら粒子へとなり、杖の結晶体の中へと吸い込まれる。

その時、後方から声がした。

 

「お前達…見たのか?」

 

「《!?》」

 

振り向くと、そこにいたのは西十郎と東護ノ介であった。

 

「西十郎さんと東護ノ介さん!?」

 

「え?知り合いなの?」

 

「ん〜〜、よく分からないが西十郎さんと東護ノ介は兄弟でアーサーの師匠みたいなんだ。」

 

タスクがアンジュとモモカに二人の事を説明している中、アーサーが前に出る。

 

「西十郎さん連れてきました…それで、この島とこの廃墟は何なのですか?」

 

「……ここが、“トリト村”だ。」

 

「え!?」

 

西十郎の言葉に、アーサー達が驚く。そう……この廃村こそが、12年前の悲劇の場所となったアーサーとマイラの故郷。アーサーはトリト廃村を見渡す。

 

「……やっぱり思い出せないか。」

 

「どういう事なんですか…?」

 

「これだけの有様を見て思いださねぇというのは、脳に最大のショックを受けている事になるな。(やりたくはなかったんだが……)よく聞け馬鹿弟子1号……トリト村がどうしてこうなったか話してやる。落ち着き、心して聞け。12年前……」

 

12年前…このトリト村にはトライブ使い…後々次のグランセイザー候補生を育てる施設「超星寮」に何処からともなく“インゴ”と“穢れボスキート”言う悍ましき者が現れ、候補生と村人のほとんどが犯され、殺されていった。これが俗に言う“トリト村の悲劇”となったと…。

 

「ーーーが…真相は全く違う」

 

「……!?」

 

「12年前のあの日…悲劇の起きた夜ーーー超星寮から現れた穢れボスキートなんざ一匹もいねぇ」

 

「え!?」

 

「では何故、候補生の子供達や村の人々は死ななければならなかった?……理由は簡単だ。」

 

西十郎はアーサーを見て、その言葉を言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

超星寮で一人生き残った子供……アーサーが残りの候補生と村人全員を祓い殺した張本人だからだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃の言葉に誰もが声を殺してしまう。

 

「俺が……このトリト村の皆んなを…?」

 

アーサーの額から汗が垂れ流れると、西十郎はポケットからある一枚の写真を取り出し、アーサーに見せる。それはこの焼け跡ーーー超星寮の前で撮られた集合写真、年輩の人達や教師、そして幼年部の子供達と共に真ん中に二人でピースサインをしている少年とアーサーが写っていた。

 

「俺…?」

 

アーサーは幼少の自分を見ていると、彼の耳から無数の断末魔の悲鳴が響く。

 

「ぐっ!!」

 

突然の頭痛に頭を抱えるアーサー。彼の頭の中に少年少女たちの光景が浮かび上がる。

 

『違うんだよ俺…アーサー俺はただ…アーサーみたいに強くなりたかっただけなんだよ…』

 

『“ボスキート”になって醜く生き続けるくらいなら、アーサーの手で祓って…死んで綺麗になってもらえる方がいいなぁ…』

 

『やっと、リリーの所に行ける…リリー…お兄ちゃんそっちに行くね。』

 

『どんな姿になろうとも…僕らはずっと友達だろう…?』

 

三人の少年と一人の少女の顔が浮かび上がった事にアーサーは全てを思い出した。

 

「………………」

 

無言のアーサーにライドが声をかける。

 

「アーサー…?」

 

「思い出した……」

 

「え…?」

 

「全部……思い出した。俺だ……トリト村の皆んなを殺したの……全部俺だ…」

 

アーサーの目には大粒の涙が溢れており、集合写真を見る。

 

「アリサ…テツジ(てっちゃん)…シュン…ユキ…ムツミ…カツキ(かっちゃん)…ルリ…チエ…サユリ…皆んな…」

 

順に候補生の名前を呼んで行くアーサー、そして12年前の悲劇に悲しみの声を上げる。

 

「…………うぐっ…うっ…くあぁ…うああああああ……うわああああああああっ!!なんで…なんで今まで思い出せなかったんだよぉぉお!!12年も…俺は皆んなやトリト村を!!俺は最低な奴だぁぁああああああああっ!!!!」

 

それと同時に、頭上から雨が降り注ぐ。

 

「アーサー…」

 

「顔を上げろアーサー……戦いはまだ…終わってねぇ。最早隠しようもねぇ……穢れボスキートがクラウドブルースやマイラの様に再び現れたのがどういうことか分かるよなぁ……?」

 

西十郎と東護ノ介はアーサーにある事を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

お前の戦いは…それが現れた時点で終わっていなかったんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

東護ノ介の言葉に、アーサーは驚愕する。

 

「……“奴”が……まだ生きている…だと!?」

 

するとアーサーの表情が見る見ると怒りへと変わっていく。その様子にタスクが問う。

 

「西十郎さん、ここで何があったのか教えて下さい…俺達はまだアーサーのことを何も知りません。」

 

「……悲劇の真相の話の続きだお前たち…特にアンジュ…お前は心して聞け。」

 

「先に言った通り…超星寮の候補生達を払い殺していったのはアーサーだ。ーーーだが、候補生達を穢れボスキートにさせたのはまた別の人間だ。」

 

「穢れボスキートに……“させた”…?」

 

「そう…穢れーーー「穢れボスキートというのはマナを持つ人を強制的に人類の捕食者であるボスキートにさせてしまう禁術のことさ♪」……チッ!」

 

西十郎が説明しようとしたその時、横から別の声がアーサー達に説明した。

 

「《っ!!?》」

 

現れたのは顔や全体にフードで見にまとった者がいた。

 

「よぉ、“馬鹿弟子2号”……良く俺と東護ノ介、アーサーとマイラの前にノコノコと姿を現したなぁ…!!」

 

西十郎の言葉にタスク達は驚く。そして頭を覆っていたフードを脱ぎ、顔を表す。

 

「誰、アイツ…?」

 

アンジュが首を傾げると、モモカがその男の顔を見て口を押さえる。

 

「そ…そんな…!」

 

「モモカ…?」

 

「あ…貴方様は…!!」

 

「やぁ!モモカちゃん!12年振りだな〜!」

 

男は元気な声で挨拶すると、アーサーが怒り声を上げ、その男の名を叫ぶ。

 

「…何で、お前が…!!何でお前が生きてやがるんだぁぁぁっ!!?ユゥゥゥマァァァァアアアアッ!!!!」

 

「そして……アーサー!久しぶり〜♪」

 

再び相見えた“友”ーーー今明かされる12年前の超星寮とトリト村、アーサーの身に起こった“愛情”、“友情”、“信頼”、“平和な日常”がーーー“憤怒”、“絶望”、“憎悪”、“残酷な惨劇”の過去が今、アーサーの記憶からその全貌が蘇ったのであった。



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チャプター17 交差する悲劇・後編

とある島の奥にある廃村…【トリト村】 そこでアーサー達は思いもよらない人物と会っていた。その人物の名はーーー。

 

「何で…何でお前が…!!まだ生きてやがるんだ……!!ユゥゥマァァァァァァッ!!!」

 

アーサーは怒り声を上げながら12年前のトライブ候補生であった友人“ユーマ”を睨んでいた。

 

「何でって言われても、見ての通り12年前君から傷はこの通り綺麗になって、ピンピンしてるよ!それよりどうしてそんなに恐い顔をしてるんだい アーサー?」

 

「ぐぅうううっっ!!!!!!」

 

「そんなことより、ここは「生きてたんだねユーマ〜〜」って泣いて喜ぶシーンじゃないのかい?」

 

満面な笑顔を見せるユーマにアーサーは鬼の籠手を展開する。

 

「下らねぇ冗談言ってんじゃねぇぇぞぉおおおっ!!!」

 

アーサーは鬼の籠手から炎を出し、ユーマに殴り掛かろうと飛び出す。その時、地面から黒い蛇がアーサーの身体に巻きつく。

 

「ぐっ!!何をしやがる!!?」

 

「そんなに怒るなよ〜。久しぶり会ったんだから、ゆっくりと話そうよ アーサー〜……僕らは“友達”だろ〜〜?」

 

「友達だと!!?抜かした事を言うじゃねぇぇっ!!12年前の夜!超星寮とトリト村でお前は!皆んなに何をした!!」

 

「何をって…僕は彼らに強大なトライブを与えようとしただけさ。それより、君は皆んなに何をしたんだっけ?」

 

「っ!……俺は…!!」

 

「フフフフ…12年前のあの夜は色んなことがあって……本当に楽しかったね、アーサー……」

 

ユーマはそう言うと同時に、アーサーの記憶に12年前の出来事が振り返る……。

 

 

 

 

 

 

……《回想》……

 

 

時を遡る事12年前……【トリト村 超星寮】午後8時頃、ユーマの部屋にアリサ達を含む数十人のトライブ候補者が集まっていた。テツジとカツキはユーマが行う皆んなを強くする“おまじない”を机を前に移動していた。

 

「おいユーマ!配置ってこんなんで良かった?」

 

「問題ないよ ありがとう」

 

「これで俺たちもユーマやアーサーの様な凄いドライブ使いになるのか。楽しみだな〜!」

 

「どうしたの?サヨリちゃん」

 

「でも、こんな事していいのかな?」

 

「何言ってるのよ、サヨリちゃんもアーサー君と一緒にグランセイザーになりたいんでしょ?」

 

「うん…」

 

「それじゃあ、始めるよ……」

 

ユーマはそれぞれの皆んなの髪の毛が入った黒い霊符を並べ、術を唱える。アリサやテツジ、シュン達はユーマ、アーサーの様なドライブ使いになって、悪い神をやっつける力が得られると楽しみに信じているが、術を唱えているユーマの表情は得体の知れない程の不気味な笑い顔で微笑んでいた。

 

一方、アーサーとリク、リリー、スゥは食堂にいた。

 

「あれ?ユーマとてっちゃん達は?」

 

「皆んなユーマの部屋にいった。何だか秘密会議らしいの。」

 

「ふ〜ん」

 

アーサーはそう言いながら、冷蔵庫の中の物を見る。

 

「大したものがないなぁ。ちょっと何か買ってくる。」

 

「待って、私も一緒に行く。あんたマナ使えないから困るでしょ?」

 

「そうだったな!」

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

「開かない…」

 

「え?」

 

「開かないんだ」

 

「開かない?そんなまさか?鍵が掛かってるんじゃ…」

 

「本当に開かないんだ!鍵も掛かっていないのに!」

 

「はぁ!?ちょっと!」

 

スゥはアーサーの手伝いをする。

 

リクは妹のリリーと一緒にアーサーとリリーを見る。リリーはしっかりとぬいぐるみを抱いていると、廊下から黒い瘴気が出てくる。リリーは何かと廊下の方を振り向いたその直後、何かが吹き飛ぶ音が響いた。

 

「「「っ!?」」」

 

アーサー、スゥはすぐさま振り向く。そこにはリクとリリーの姿が見えなかった。

 

「リク?リリー?」

 

スゥは妹の心配をしに廊下の奥を見る。そこにはリリーとリクが倒れていた。

 

「リク?……っ!!」

 

スゥはリクとリリーを見て驚く。何故なら二人の首は何かに捻られ、四肢がぐちゃぐちゃにされ、既に死んでいたから。するとそこに…。

 

「ア…サー……スゥ…」

 

「アリサ!?」

 

「どうしたの!?」

 

「こ…このままじゃ……ユーマを止めて…」

 

「ユーマ?……ユーマが何をしたんだ!?」

 

「怪物……」

 

「怪物?何の?」

 

「違う!……私、ボスキートになりたくない!!!ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

アリサは絶望と共に、身体が風船の様に膨れ上がり、皮は引き剥がれ、中から血しぶきと共に鬼を模した悪魔が現れる。

 

『ヒィィィィ!!!キヒヒヒヒヒ!!!!』

 

不気味な笑い声を出す悪魔、アーサー、スゥは何が起こっているのか混乱する。

 

「アリサが…ボスキートに!!?」

 

「逃げろ!スゥ、このドアをこじ開けて、外の大人に知らせ……っ!!?」

 

「開かない!」

 

「早く!こじ開けて!」

 

「分かった!」

 

「いやぁぁぁぁ!!!!」

 

「アーサー!!助けて!!」

 

「スゥ!!」

 

「いやぁっ!!私、まだ死にたくない!死にたくない!あーさーっ!!!!《グチャリ!!!》」

 

スゥの頭を首ごと喰らい、そして死んでいたリクとリリーの死体も仲間のボスキート達が貪り食う。あまりの出来事にアーサーは恐怖する。

 

「…な…何っっ…なんだよ!?何だよこれ?……なんなんだこれはああああっ!!!!

 

アーサーは突然の悲劇にナックルライザーを使い、紅蓮の炎を纏った拳で次々とボスキートを祓い殺して行った。

 

 

 

……《回想終了》……

 

 

 

 

 

 

そして12年後の現在ーーー黒い蛇に巻きつかれ、身動きが取れないアーサー、それを嘲笑いながら昔の出来事を語る。それを聞いていたタスク達がユーマの言葉に心を震え上がらせる。

 

「あの二人…何の話をしてるんだ?西十郎さん!」

 

「……心してよぉ〜く聞いておけ。今のが超星寮とトリト村で起こった悲劇だ。」

 

「だけど、分かりません!!?候補生やトリト村の人達に……何があったのですか!?」

 

「そうか……お前達は【穢れボスキート】の事、教師達に教えられなかったんだな。」

 

「【穢れボスキート】……????」

 

「“豊富なマナを持った人間様が強制的に生身のままボスキートへとなってしまう事”だ。そうなっちまうと、罪や破壊をする前に命を絶ってやるしか救う方法がない。」

 

「そんな事!聞いたこともない!!図書室にもそんな物はなかった!」

 

「当然の事だ、この事は俺の様なごく限られたベテランのトライブ使いしか知らない。お前達が守っていた人間もこの事も全く知り尽くしていない…穢れボスキートと言うのは、昔にいた“絶滅者ボスキート”の様な四大元素全てのトライブを得るために、トライブ使い自身がボスキートへとなってしまう最凶最悪の禁邪法とも呼ばれている。その禁邪法を知っているのはさっきも言った様にごく限られたベテランのトライブ使いだけだ…だが、本来知られてはいけない禁邪法をどうやって知ったのか、その邪法を持ち出した奴がいた。そして12年前…トリト村と超星寮の夜に穢れボスキートと穢れに満ちたインゴが出た。」

 

「じ……じゃあ…」

 

「最凶最悪の禁じられた邪法を弄び、超星寮の候補生達やトリト村の連中を快楽に溺れさせた狂人への実験材料にし、若造の人生と全てを狂った恐怖へと陥れたのが…アンジュ…よく聞け。アイツはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

お前の“二番目の兄”ユーマ…否、【ミスルギ皇室第二皇太子 ユーティス・飛鳥・ミスルギ】だ!

 

 

 

 

 

 

西十郎の言葉にタスク達は背筋が一気に凍り付く。ミスルギ皇室にはもう一人の皇太子がおり、それがアンジュのもう一人の兄だと言う事に…。

 

「私の……二番目の…兄…!?」

 

「ユーティス様!何故なのですか!?何故、そんな酷い事をなさるのですか!?」

 

モモカが彼の行為に、疑いが生じ、本当の事を聞き出そうとするが。

 

 

 

「黙れメイド……乳臭い口を閉じれ。」

 

 

 

ユーマの放った言葉にモモカは驚く。

 

「っ!!?」

 

「お前は本当に馬鹿だなぁ…クソな兄貴に利用され、挙句には用済みとしてクソな妹と絞首刑にされるなんて……どんだけお前はお人好しなんだろうなぁ?」

 

「ユーティス様…?」

 

「事実を受け入れろ…筆頭侍女。あれがユーマの本性だ。アイツはあぁやって人を欺き、裏の本質を隠し続けていたのだ。」

 

「そんな……皇帝陛下様と皇后陛下様と共に世界を平和にするのも!!あれも嘘だったのですか!?」

 

かつてユーマはジュライ皇帝陛下とソフィア皇后陛下に約束してなさった。っがしかしーーー。

 

「……理想を語るばかりで、何もなし得なかった愚かな肉塊共。何より気に食わなかったのが、お前が愚妹に尽くす事だ…あの二人がお前にど愚妹に何を託したのか分からないが……良い機会だからハッキリ言えるよ。」

 

 

 

 

【アンジュリーゼとモモカ……僕がお前達やクソな兄貴であるジュリオとクソな妹であるシルヴィアを…兄妹とは思ってはいない。ノーマを反社会的な化物と蔑んだり、お前達の穏やかで無垢な笑顔を見てると虫酸が走るんだよ。それに、お前達にいい兄とクソなジュリオの弟を演じるのは、ストレスでしかなかったよ。】

 

 

衝撃な言葉にモモカは虚ろな目で泣き崩れてしまう

 

「モモカ!あなた……どこまでクズなのよ!!」

 

「何をしてるんだい、僕から言ったこと全て言ったよ。分かったんなら、二人ともとっとと僕の前から消えてくれないかな〜」

 

全く話を聞いていないのか、ユーマはさらに言う。

 

「キッ!あなた!!」

 

その事に頭のネジが外れたアンジュはユーマを殴ろうとしたその時。

 

「ユゥゥゥマァァァァァァッ!!!」

 

「?」

 

黒い蛇に巻きつかれているアーサーが叫び、鬼の籠手から出す炎で黒い蛇を焼き尽くす。

 

「例えお前がどんな事があって!謝っても!反省しても!土下座しても!後悔しても!死んでもっ!俺はお前を絶対っ!!絶対に許さねぇぇぇえええええええええ!!!!」

 

黒い蛇が黒焦げになり、アーサーから離れると、鬼の籠手を向ける。

 

「ふ〜〜ん。許されなかったらどうするんだい?教えてくれよ、アーサー〜♪」

 

「ユゥゥゥマァァァァァァッ!!!今度こそ!!お前をこの手でぇぇぇえええええええええ!!!!!」

 

するとアーサーの首、肩、腰から蟲の羽、二頭の狼、蠍の尻尾が現れる。

 

「あれ?アーサー…」

 

「(まさかリミッターを解除しやがったのか!?)」

 

西十郎がアーサーの姿に驚く。

 

《フハハハハハハハ!!!!》

 

籠手の鬼の模様が変わり、不気味な笑顔と笑い声を上げる。

 

「地獄に落ちれぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

アーサーは鬼の籠手をユーマに向けて殴る。とてつもない衝撃と砂埃が舞う。その中からユーマが飛び現れ、廃墟の屋根の上に着地する。

 

「あ〜、びっくりした!」

 

《フハハハハハハハ……!!》

 

砂埃が舞う中、不気味な笑顔が聞こえる。そして砂埃が消えると、それは現れた。鬼の籠手が異形の怪物の腕へと変わり、顔の右半分が黒く覆われ、額から異形の角が飛び出ていた。さらに首からは不気味な目を描いた模様を持つ蟲の羽。肩からは蛇のように首を伸ばし、鋭利な角を生やし、鋭い牙が立ち並んだ二頭の猛牛。腰から異形の楔形の鎖が生え、その先端部に鋭く尖った矛が蛇の様に動いていた。

 

「アーサー……なのか……!?」

 

「チッ!(馬鹿弟子が…!!)」

 

「うああああああああぁぁぁぁっ!!!!!」

 

怒り声を上げるアーサーは目を血の色に輝かせ、籠手の鋭い爪を突きつけ、ユーマに振り下ろす。しかし…ユーマの左腕が光り、アーサーと違い色と角の数が違う鬼の籠手で止めていた。

 

「ダメダメ〜アーサー〜、全然ボスキートの力を使いこなしていないじゃないか〜…」

 

ユーマはそう言い、デコピンでアーサーを吹き飛ばす。

 

山まで吹き飛ばされたアーサーは再度立ち上がり、ユーマに突撃するが、またデコピンでアーサーを吹き飛ばす。

 

《フハハハハハハハ!!!》

 

不気味な笑い声を出す籠手、アーサーは全身血だらけになってもユーマに怒りの雄叫びを上げる。

 

「ゔ〜〜〜〜っ!!うああああああああっ!!!!!」

 

怒りの雄叫び、さらに不気味な笑顔と笑い声を響かせる籠手、アーサーの姿が見る見ると異形な形へと変貌していく。その姿はまさにーーー【紅蓮の悪魔】であった。その姿を見ていたタスク達が息を殺しながら思う。

 

「(アーサー……お前。)」

 

「(ヤベェ…アイツの怒り……こんなの…初めてだ。)」

 

「(……アーサー)」

 

タスク、ライド、エクエスの三人は互いに顔を見て決意する。

 

「「「装着!」」」

 

「タスク…?」

 

「行くぞ、タスク」

 

「あぁ…」

 

三人の表情がとてもとは思えない程の怒りを露わにする。

 

「もう終わりかい、アーサー?」

 

「う……うう……」

 

ズタボロにされ、身体中が血で染まったアーサーは紅色に染まった野獣の如く目で睨み、鋭い牙を食いしばる。

 

「アーサー!大丈夫!?」

 

「……大…丈夫じゃ…ない…みたい…」

 

アーサーはそう呟く。

 

「っ!!」

 

それを聞いたタスク達はユーマを恐ろしい表情で睨む。

 

「オイ…そこの屑野郎、「ユーティス」って名か。」

 

「調子に乗るのも今の内ですよ。あなたは俺達の義兄弟を痛めつけた……12年前の候補生の無念……今ここで晴らす!」

 

タスク、ライド、エクエスは一斉にユーマに攻撃を仕掛ける。

 

「うらぁぁあああああああああっ!!!!」

 

ライドは聖撃砲ブルキャノンを装備し、エクエスは聖転鋸ブラスト・ソーを持ち、タスクは聖甲銃アイアン・ゲイルというライフルを取り出し、三人は構える。

 

【マタドール・バースト】!!

 

【ファイナル・ジャッジメント】!!

 

【デ・ストーム】!!

 

風、大地、水ーーー三人の必殺技が一気にユーマに向かってくる。っか、しかし……。ユーマは三人の必殺技をあっさりと回避し、そのまま山に直撃する。

必殺技をあっさりと回避された事に三人は驚く。

 

「何で俺たちの攻撃があっさりとかわされるんだ!?」

 

「きっと、何かトリックがあるはずだ!絶対に暴いて…」

 

「ち…がう!」

 

アーサーは血を吐きながらも立ち上がる。

 

「「「アーサー!」」」

 

「奴は……ユーマは【軌道予測】できる奴だ!」

 

“軌道予測”ーーー相手の行動を軌道として先に読み取り、戦闘手段を大幅にしてしまう。

その事にライドが怒鳴る。

 

「アーサー!最初にそれを言え!!」

 

「じゃあ!俺達が攻撃をしようとしても奴には完全に行動や攻撃の軌道が丸見えなのか!!?」

 

「だからってそれぞれのトライブリーダー格が合体技をやってもか!?」

 

「あれ〜?もう終わり……?」

 

ユーマは余裕な面を見せる。

 

「チッ!聞くだけでもムカつくんだが!!」

 

「来ないなら……」

 

ユーマは途轍もない速さでタスク達に接近し、三人の中場に入り込んだ。

 

「「「っ!!?」」」

 

三人は驚いたその直後、ユーマから三本の尻尾が生え、タスク、ライド、エクエスの腹に毒針を刺す。すると刺した場所から黒い筋が浮かび上がり、三人は断末魔の叫びを上げる。

 

「「「うあああああぁぁぁぁぁっ!!!!」」」

 

三人はユーマの毒に苦しみ出す。

 

「ユーマ!貴様っ…タスク達に何をした!!?」

 

「面白くする為、三人の体内に穢れボスキートの力を入れたのさ♪」

 

「お前ぇっ!!、」

 

「ぐああああぁぁぁぁっ!!!」

 

「ううぅっ!……あああああぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぐううぅっ!!痛でぇええええええ!!!!」

 

三人は苦しむ中、アーサーは12年前の悲劇を思い出す。大切な物がまた砂のように崩れていくように…。

 

「ああ…また…俺は………」

 

「さぁアーサー!よく見るが良い!三人が穢れボスキートになる瞬間を!!」

 

絶望に蝕まれていくアーサー……だがその時。

 

「……ま……だだ!!」

 

「ん?」

 

アーサーは苦しみに耐えながらも、立ち上がる。

 

「俺は…父さんと母さん…仲間を殺したお前を絶対に許さない!!アーサーを悲しませるお前を…倒す!!」

 

「っ!!?」

 

「俺もだ…!こんなクズ野郎に怪物にされるなんて……ゴメンだ!親父の仇を取れないなんて嫌だからなぁ!!」

 

「当然ですよ……姉さんを弄んだ事、後悔しろ!!」

 

それに続くかのようにライド、エクエスも立ち上がる。すると三人の目がそれぞれの色によって発光し、毒を浄化する。

 

「この感じ……まさか!?嫌!ありえないっ…外野が…外野三人如きが認められる筈がないっつ!!」

 

ユーマが驚く中、タスク達の身体からそれぞれのボスキートが現れる。タスクの方は大昔の蜻蛉を模したボスキートが現れ、タスクに憑依する。ライドの方は剣歯虎を模したボスキートが現れ、憑依する。エクエスの方は古代鮫を模したボスキートが現れ、憑依する。タスクの両腕から蟷螂と思わしき鎌【邪鎌剣】とアーサーとユーマと同じ禍々しい目の模様が浮かぶ羽が生えていた。ライドは両腕から剣歯虎の頭部を模した収束砲【邪砕砲】になっており、両肩からアーサーとユーマと同じ二頭の狼が首を伸ばしていた。エクエスは両腕から異形の形をした錨【邪禍錨】になっており、アーサーとユーマと同じ腰から蠍の尻尾が生えていた。ユーマは三人の姿に額の筋を浮かばせる。

 

「……!!ふざける……な…っ。ふざけるなよ外野がぁあ…!!」

 

「これが…」

 

「俺達の…」

 

「ボスキートとしての力…」

 

タスク達はそれぞれの武器を構える。

 

「肉塊の仇敵に縋った挙句…その姿は…!!お前らみたいな面白くもない外野が…!!僕とアーサーの同じ舞台に立つことすら痴がましいぞおおおお……カス共ぉおおおおおおおっ!!」

 

怒りを露わにするユーマは鬼を模した籠手を出現させ、向かってくるタスク達に殴りかかる。

 

「じゃあ行くか!!」

 

タスク達は武器を構え、向かってくるユーマに向けて強力な必殺技を放つ。

 

「っ!!」

 

光がアーサー達を眩かせる。光が消えると、三人はどういう事なのか倒れていた。

 

「な〜んてね♪まさか僕をここまで追い詰めるなんてね。」

 

「っ!?」

 

「でも“一撃必殺”とはいかなかったみたいだなぁ…」

 

ピンピンしているユーマはゆっくりと歩くが、アーサー達が驚いていたのは彼の姿のほうであった。

 

「…………な!?ユ…マ!?何だ…何だよお前の…その姿は…!!」

 

「ーーーん?…ああ!」

 

左腕の籠手が右腕にも同じ物が増えており、黒く染まったプロテクトアーマー、悍ましい羽と尻尾、そしてその背後から八つの蛇を模した後光が現れる。その姿は悪魔なのか堕天使なのか分からなかった。

 

「何…あれ…!?」

 

「なんのことはないさ…これが今の僕の本来あるべきの姿だよ。今の僕は……」

 

 

 

 

 

「十三番目のグランセイザー……蛇使い座の力『セイザーアプス』だ!!」

 

 

 

 

 

「十三…番目…!?」

 

セイザーアプスとなったユーマは右腕から光の剣を放出し、タスクに向ける。

 

「そろそろ…終わりにするか!」

 

ユーマが剣をタスク達に突き刺そうとしたその時、空から光弾がユーマへ飛んで来た。

 

「っ!?」

 

雨が降る闇夜の中、蒼色と翠色に輝くラインがユーマに目掛けて光の剣が振り下ろされる。

 

「あれ?君達は……」

 

煙が晴れると、現れたのは蒼色と翠色の追加装甲をした二体のフラドーラであった。

 

「あれは……?」

 

「おやおや、アーサーを守る【懐刀】か♪」

 

ユーマはそう呟くと、二体のフラドーラのコックピットが開き、中から黒の狩衣を来た男が現れる。一人は強く、冷酷な表情をする屈強な男と優しい頬笑みを浮かべる男であった。

 

「ユーティス・飛鳥・ミスルギ……黄昏の王君上層部から、貴様が12年前の大罪が載ってある証文が見つかった。司令や先代達の命により、貴様を反逆者として…討伐する。」

 

「ほぉ〜?と言うことは君達は僕を倒す“討伐隊”と言うことか。」

 

「そうなるな……」

 

すると屈強な男は霊符を手に持ち、唱える。

 

「「喼急如律令!!」」

 

霊符が光り出し、それぞれの武器へとなる。屈強な男は二刀流、優しい男は両刃を構え、ユーマに突撃した。その時、ユーマの目の前から空間が歪み、そこから巨大な剣が突き出してきた。

 

「「っ!?」」

 

二人は急いで回避すると空間からそれは現れた。それはアーサーが最初に出会った巨躯の大男であった。大男は大剣を突き構えると、彼の周りから五人の男女が現れる。その中にアーサー達の知る人物がいた。

 

「お前はカイム!」

 

「久しぶりだなぁ、雑魚ども!」

 

カイムはそう言うと、他の穢れ騎士やカイム、ユーマが叫ぶ。

 

「《我等は【穢れ騎士】……あの“御方”を守護する騎士団!》」

 

「穢れ騎士『憤怒』担当 一番隊騎士団長“モルドゥレイス”!」

 

「穢れ騎士『団欒』担当 二番隊騎士団長“ネフティ”!」

 

「穢れ騎士『愛欲』担当 三番隊騎士団長“バレンティーヌ”!」

 

「穢れ騎士『傲慢』担当 四番隊騎士団長“カイム”!」

 

「穢れ騎士『執着』担当 五番隊騎士団長“ジーダス”!」

 

「穢れ騎士『逃避』担当 六番隊騎士団長“アラマシラ”!」

 

「穢れ騎士『利己』担当 七番隊騎士団長“ユーティス”!」

 

一気に揃った穢れ騎士の団長、そしてそれぞれ一人につき四人の穢れ騎士達が現れ、総合計ーーー三十五人へと増えた。

 

「モルドゥレイス!?……じゃあ…お前が!?」

 

「その通りだ…私はこの場所を訪れ、燃え行く哀れな屍を見た。」

 

「くっ!(まさか俺が探そうとしていた人物が……穢れ騎士の一番隊騎士団長だったなんて!納得が行く……あの威圧感なら!!)」

 

「さらにまだある!」

 

「…!!」

 

「本来穢れ騎士は……“八人”存在する!」

 

「《!?》」

 

「極大まで高めた圧倒的な力!全てのトライブを使えるのに相応しい人物!“二つの呼び名の穢れの称号”!!」

 

 

 

 

 

 

 

「穢れ騎士『絶望、憎悪』担当 八番隊騎士団長“アーサー”…………お前だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

モルドゥレイスが言い放った言葉にアーサー達は驚く。

 

「《っ!!?》」

 

「アーサーが……!?」

 

「穢れ騎士の一人……だと!?」

 

「……嘘だ!」

 

「嘘ではない!」

 

モルドゥレイスはそう言うと、右腕が鬼の籠手へと変わり、籠手が不気味な笑い声を上げ出す。

 

《フハハハハハハハハハ!!!!》

 

「そ……その腕は!?」

 

「その通り……穢れボスキートだ!我等穢れ騎士は……穢れボスキートの力を物にして構成された最強の部隊だ!これこそが……“真のグランセイザー”だ!!偽りのグランセイザーとは全く違うのだ!!」

 

「何が偽りだ!お前らに言われたくない言葉だな!」

 

「まだ分からぬか……ならば見せてやろう!」

 

モルドゥレイスは背中に収納していた大剣を抜き取り、振り回す。するとモルドゥレイスの周囲に風が集まり、竜巻が起こる。

 

「っ!皆んな!気を付けろ!!」

 

「【怒り狂う衝動!!】」

 

モルドゥレイスは振り回していた大剣を一気に振り上げる。集まった竜巻が合体し大きくなり、山に向かっていく。竜巻の風が山を削る。

 

「やっ!山が!!?」

 

「あれが穢れボスキートの力を得た穢れ騎士の本来の力…!?」

 

トウジとマナコが驚くと、モルドゥレイスが轟き叫ぶ。

 

「貴様達に告ぐ!我等、穢れ騎士は……黄昏の王君に宣戦布告出す!!戦争だ!!」

 

モルドゥレイスが放った宣告、ユーマが前に出る。

 

「うっ!……ユーマ!」

 

「……アーサー。僕はね、君の事が大嫌いだけど…グランセイザーとしての素質について全く認めてなかったって訳じゃない。トリト村の連中の中で唯一穢れボスキートの力を自分のものにした君をね。ーーーでも、君は逃げたんだ…絶大な力が手に入る扉の前に立っておきながら、君は罪の意識に負けて引き返してしまった…けど、僕は扉を開け、その先に足を踏み入る事ができた。君の罪はね、アーサー……トリト村の人達と超星寮の連中を殺した事でもない……」

 

 

 

 

 

 

【君の罪は……真に“強くなる”と言う覚悟がなかった事だよ。】

 

 

 

 

 

「っ!!!」

 

「この次会う時は、もう少し楽しませてくれよ……アーサー♪」

 

「待て、ユーマ!!」

 

アーサーが言うもユーマはモルドゥレイスが開いたワームホールに入って行き、姿を消す。

 

「おい!タスク!大丈夫か?」

 

ガイやクサビ、エミリーが倒れているタスク達の安否を確認する。

 

数分後、タスクは目を覚ましたが、ライドとエクエスはあまりにも危険な状態であった為、クラウドブルースへ搬送する事に、タスクは軽傷ながらもアンジュとモモカをアルゼナルへと向かう。アーサーは帰ろうとする西十郎に言う。

 

「師匠……」

 

「ん?」

 

「すみませんが……俺は少しここに残ります。皆んなの墓を作っておきたいのです。」

 

「…………好きにしろ。」

 

西十郎はそう言い、タスクと共にアルゼナルへと帰還する

 

 

 

 

残ったアーサーは助けに来た二人と共に散らばっていた木板に候補生の名前を書き、墓標の代わりに使う。

 

・テツジ…

 

・サヨリ…

 

・アリサ…

 

・シュン…

 

・ユキ…

 

・ムツミ…

 

・カツキ…

 

・ルリ…

 

・チエ…

 

・ロミオ…

 

・リク…

 

・リリー…

 

・スゥ…

 

・マコト…

 

・モモ・…

 

・アラシ・…

 

・シズク…

 

・ケイ…

 

・サアヤ…

 

・アレン…

 

「ディーンおじさん…マーサおばさん…おばさんのお腹にいた赤ちゃん……皆んな……12年間もお前達を忘れてしまってゴメン。」

 

墓標の前涙を流すアーサーを励まそうと二人が来る。

 

「主君…」

 

「……そう言えば、名前を聞いてなかった。」

 

「自分は“ヤトウ”。コイツは“リュウ”だ。」

 

「よろしくです、主君…」

 

「ねぇ、君達が“俺の懐刀”ってどういう事なんだ?」

 

「……“崩壊者”様の命だ。」

 

「【崩壊者】…誰なんだ?」

 

「それは言えない。“知りたければ自分の手で掴み取る”……ーーーっと崩壊者が言ってました。」

 

「え?今、通信ーーー……あれ?」

 

っと、アーサーが突然倒れ込んでしまう。

 

「主君!?」

 

ヤトウとリュウが慌てて体を支える。

 

「大丈夫……さっきの戦闘で無理をしてしまった。今回は休んで家で寝ておくよ…」

 

「送りましょう。」

 

ヤトウとリュウはアーサーを連れてクラウドブルースへと帰還する。

だがこの時、村が見える丘で二つの影がクラウドブルースへと戻っていくアーサー、ヤトウ、リュウを見る。

 

『貴方…やっぱりよ。』

 

『そうか……』

 

『無事にヤトウ君とリュウ君はアーサーと接触し、疲れたアーサーを運んでるわ』

 

『まさかこんな所でまた会うなんてなぁ…我が“千年の友”よ。』

 

謎の男女は空を見上げ、その場から幽霊の様に消えるのであった。



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チャプター18 最果ての悲しみ

内容が途中からぐだぐだですみません。


アーサーの家、フェリスと焔が帰ってくるアーサーの為に料理を作っていた。

 

「アーサーさん、遅いわねぇ」

 

フェリスがアーサーを心配していると、焔がテレパシーでフェリスに伝える。

 

「“彼の事が心配なのか?”……はい、私達はアーサーさんに助けられて、ここで居候……恩人を心配するのは当たり前です。まぁ、これはお父さんが言っていた言葉ですから♪」

 

フェリスは満面な笑顔を表す。焔は呆れた様子でフェリスとテレパシーする。

 

「“恩人を心配するのは当たり前か……もう一層の事、アーサーにその事と自分の今の気持ちを告って、【女房】になれば〜?”…///!?」

 

その言葉にフェリスは顔を赤くし、持っていた包丁を慌てながら焔に振り回す。

 

「ちょっと!何言ってるのですか焔は〜〜!!」

 

焔はフェリスを落ち着かせようとすると、ベルが鳴る。

 

「あ、アーサーさんかな?見てきます。」

 

フェリスはそう言い、ドアを開く。現れたのはヤトウとリュウが身体を支えられた姿のアーサーであった。

 

「アーサーさん!?」

 

「物凄い高熱なのです!急いでください!」

 

「はい!クレイン!ランス!ミント!早く来て!」

 

「どうしたの!?」

 

「アーサーさんが高熱出してるの!」

 

「アーサーお兄ちゃんが!?」

 

「アーサーさん!」

 

「アーサーの兄貴!」

 

クレインとランスとミントは急いで氷水と布団を用意し、アーサーを寝かせる。焔がアーサーを看病していると間、フェリスがアーサーを連れて帰ってきたヤトウとリュウに話しかける。

 

「あのぅ…アーサーさんに何があったのですか?」

 

「……実はーーー」

 

ヤトウとリュウはこれまでの事を全て話す。記憶を思い出した事、トラウマ以上の真相、悲劇を起こした元凶、ユーティスの事、タスク達が穢れボスキートの力を得た事、アーサーが穢れ騎士の一人だった事……その話を真剣に聞いていた四人はアーサーの余りの残酷な事に黙り込んでしまう。だが一人…ランスが声を上げる。

 

「ヤトウとリュウと言ったな……俺もトライブを学びたい!」

 

「……学んでどうするんだ?」

 

「強くなってソイツを倒しにだ!!アーサーの兄貴の友達の仇敵打ちだ!そのユーティスって言う屑野郎は何処にいる!!」

 

「それは分からない…穢れ騎士の行動は全く分かっていないんだ。」

 

「そんな……兄貴をあんな風にした奴をこのままにして良いのか!?」

 

「《……》」

 

ヤトウ達は黙り込んでしまう。その事にイラついたランスは壁を叩く。

 

「……クソッ!」

 

誰もが静寂に鎮まると、アーサーが目を覚ます。

 

「あれ?皆んな…」

 

「《主君!/アーサーさん!/兄貴!/アーサーお兄ちゃん!》」

 

皆んなはアーサーを心配する。フェリスは熱で倒れかけたアーサーをヤトウとリュウが家まで送ってくれた事を話してくれた。

 

「そっか……俺、高熱で倒れかけたんか…。ヤトウ、リュウ…ありがとう。」

 

「人として当たり前な事をしただけです。それにもし貴方の身に何かが起これば…」

 

「良いんだよ。ただの熱だったし、安心しろよ。」

 

「し、しかし…」

 

「まぁ主君がそう言ってるんだ。ヤトウ、落ち着けよ。」

 

「リュウまで…」

 

「それに…俺のやるべきことも思いついたしな。……なんか記憶が全部思い出したら、ちょっとはスッキリするな♪」

 

アーサーがそう言うと、彼の前にジュライとソフィアが入ってきた。

 

「アーサーよ…」

 

ジュライは気まずそうな表情をしながら二人共膝をつき頭を下げ始めた。

 

「えっ!!?なっ…皇帝陛下に皇后陛下まで!?」

 

「此度の件 並びにトリト村と超星寮の悲劇は全て我が息子であるユーティスによる…もの。

 

「息子が……大変なご迷惑…をおかけ致しまし…た」

 

ジュライとソフィアがアーサーに謝罪する。

 

「あぁ、そんな!あなた方は悪くありません!!?」

 

「だからと言って自分達には関係ないと開き直ることなど出来…ない!君がユーティスから受けたもの…が怒りや悲しみなどと言った…言葉で括れるものではないこと…は重々承知して…いるなのに…頭を下げる以外……出来ることが……ない!」

 

「皇帝陛下……皇后陛下……。と…とにかく頭を上げてください、そんな事を言い出したら俺も似たようなものだ。俺だってユーマ…ユーティスと長い時間過ごしたのにアイツの本性を見抜けなかった。そもそも俺が12年前にちゃんと…倒していれば……今、こんな事態になってねぇ…。」

 

「…そう言って貰えると胸が少し軽く…なる…。アーサーよ…不躾を承知で頼みが……ある。」

 

「?」

 

「“バカ息子であるユーティスと兄であるジュリオを葬ってほしい”……」

 

「っ!?」

 

「ユーティスの件は分かっているかもしれない。ジュリオは完全にエンブリヲに魅入られてしまった。彼の行いはノーマ達を完全に根絶やしにする事。斑鳩家や飛鳥家の持つ平和を愛する思いが影で染まった偽善者になる。君が助けた君達に飛んだ無礼な事をしてしまった……心から…謝罪する。」

 

「皇帝陛下…」

 

アーサーは慰めようとするとそれを聞いていたランスが怒鳴る。

 

「ふざけるな!!あんた達が…あんた達がそのエンブリヲに従うせいだろうが!!そのせいでミントは存分に怖い目にあったんだぞ!!慕ってくれた友達が俺たちの妹を連行させようとするわ、守るべき親はいない、親戚も敵になってしまうわ…俺たちを助けてくれたアーサーの兄貴の友達をアンタ達の一族が弄ぶ!俺は…アンタ達一族を…許さないぞ!」

 

「ランス!」

 

クレインが止めると、ランスは舌打ちし、部屋に戻る。

 

「責任者として少し謝罪する。あなた方の件…謹んでお受けします。」

 

三人の意見が一致する。

 

「アーサーさん……」

 

フェリスは無理をするアーサーを心配する。

 

 

 

 

 

 

 

静寂な夜、アーサーはユーマの事を考えていた。

 

 

【君の罪は……真に“強くなる”と言う覚悟がなかった事だよ。】

 

 

ユーマから放った罪の言葉に胸を抑えるアーサー。アーサーは起き上がり、庭園に生えてある桜を見る。

 

「トリト村にも、桜の花が咲いていたな…」

 

雲に隠れていた月が現れ、月光がアーサーを照らす。

 

月光が照らす廊下、フェリスがアーサーを心配しているのか様子を見にきた。

 

「?」

 

フェリスは庭園に何かがいる事に気が付き、そっと覗く。

 

「あ…」

 

ミントがそれに驚く。月光によって煌く神々しい純白の体、 白銀に光輝く翼、神秘的に煌く蛋白石の瞳を持つドラゴンであった。

 

「なんて綺麗なドラゴン……でも…」

 

そのドラゴンを見ると血の様な赤い涙を流していた。するとドラゴンが何かを察知したのかフェリスの方を向く。フェリスはドラゴンに腰が抜けてしまう。ドラゴンがゆっくりとフェリスに近づいて来る。

 

「あ…ああ…!」

 

ドラゴンの鋭い瞳がフェリスを睨む。

 

「い……いや…!!」

 

『大丈夫か?』

 

「…………え?」

 

ドラゴンから突然喋り出した事に茫然する。するとドラゴンの体が光り出し、アーサーへと戻った。

 

「フェリス?」

 

「……アーサー…さん?」

 

フェリスは茫然しながらも、震えながら月が見える廊下に座り、フェリスが入れてくれたお茶を飲みながら説明する。

 

「アーサーさん…その……あの姿は?」

 

「何処まで見てた?」

 

「え!?…いえ、その……月を見ながら赤い涙を…」

 

「そっか……。この姿ね…12年前の悲劇で得た姿みたいな物なんだ。」

 

アーサーは説明しながら右腕の鬼の籠手をフェリスに見せる。

 

「触っても良いですか?」

 

「……良いよ。」

 

「襲ったり、爪で切り裂いたり、噛み付きはしませんか?」

 

「……しない。」

 

フェリスは唾を飲み込み、勇気を出して醜い右腕に触れる。ゴツゴツとした肌ーーーまるで鰐の様な鱗と鮫の様なザラザラした肌、オレンジや赤く輝く鬼の面が炎の様に燃え上がる大鬼であった。

 

「痛くないのですか?」

 

「全くない。元々俺の右腕はトリト村で起こった日に穢れボスキートへとなってしまった友達に喰われたからな……腕も失くなって、超星寮の皆んなが一人…また一人穢れボスキートにされていって…それでも最初はユーマ…ユーティスを止めないと皆んなを戻さないとって思ってたんだけどな。結局…最後は俺も皆んなと同じように穢れボスキートの洗礼を受けてしまった」

 

【どんな姿になろうとも僕らはずっと友達だろう…?】

 

「でも俺も…ユーティスにも理由は分かっていなかった。何故、俺だけが穢れボスキートにはならずに“力”を自分のものにする事が出来た…。それがユーティスにとって俺が求めていた“実験の結果”であり成功作だったって訳だ。あとはまぁ……大体ヤトウ達の言っていた通りだ……」

 

「あのドラゴンの姿も…?」

 

「……うん。あれは力の暴走で得たものなんだ。あの姿で俺はユーティスに勝てた。けど……」

 

アーサーは涙を流しながら、話す。

 

「代償は大きかった…気が付けばマイラ以外生き残りはいなくなって、育ての親であるおじさんとおばさん…おばさんのお腹の中には赤ちゃんがいたが、穢れボスキートとなってしまったおばさんを身篭ったまま殺してしまった…自分の犯した罪とか自分の罰…自分の弱さを恨まなかった日は……ないなぁ…」

 

「ア……………!」

 

フェリスも涙を流しながら、アーサーの悍ましい右腕に優しく触れる。

 

「?」

 

するとフェリスがアーサーの右手を自分の頰に触れさせる。

 

「弱く醜く穢れても……私達は貴方様に助けられました。記憶を失っても…候補生の方々を忘れても…貴方様は十分にお強い…」

 

フェリスはそう言いながらアーサーを抱きしめる。

 

「大泣きしても良いのですよ…」

 

「…………!!」

 

「アーサーさんは12年ものの苦痛を味わっていたのですから…」

 

「………う…うう…!!」

 

アーサーは大粒の涙を流す。フェリスは心の中で思う。

 

「(私は…アーサーさんが好きです。愛しています……例え貴方に運命の人がいるかもしれない。それでも私は貴方を愛し続けます…貴方に助けられたあの日から…)」

 

フェリスは叶わぬ恋を抱き、泣き崩れるアーサー を優しく撫でるのであった。



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チャプター19 動き出す陰謀

翌日、アーサーは病練に入院しているライドとエクエスの見舞いに来た。二人がいる部屋にはトウジ達も来ていた。

 

「本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫だって!見ての通りどこも以上もない!」

 

「とか言って一番無理するだろ?」

 

「何んだと!」

 

元気な二人を見てアーサーは安心する。

 

「でも無理はするなよ、穢れボスキートはかなりの呪力とトライブの力を吸われるからな…下手でもしたら体が消滅して、衣服だけ残ってしまうからな。」

 

「確かに…お前がこれを普通に使えたのは驚いたな。てか、こんなヤバいものをユーティスはどうやって手に入れたんだろう?」

 

「分からない…いつ何処でどうやって知って覚えたのか。……待てよ?」

 

アーサーが突然立ち上がり、深く考える。

 

「どうしたんだ?」

 

「……“内通者”」

 

「《え?》」

 

「もし、クラウドブルースの中に……内通者がいたら?」

 

「《……!!》」

 

ライド達はその事に驚く。確かに辻褄が合う…彼が一体どうやって、厳重封印していた邪法を持ち出したのか。

アーサーは早速クラウドブルース本部の人達に事情聴取をする。

 

 

・彼がここへ来たのが6歳頃であった。

 

・妙にトライブの元である四大元素や陰陽師の呪力を学んでいた。

 

・7歳頃にクラウドブルースを出て行き、超星寮へ転校した。

 

 

三つのヒントを頼りに、アーサーは庭園の湖のほとりで考える。

 

「さて…本題はここからだ。どうやって得たのか……妙に一致するのはこの二つのヒントだ。」

 

 

・妙にトライブの元である四大元素や陰陽師の呪力を学んでいた。

 

・7歳頃にクラウドブルースを出て行き、超星寮へ転校した。

 

 

「多分、この二つのヒントの間に盗んだ……だがどうやって。」

 

アーサーが深く考えていると、昼食のおにぎりを持ってきたフェリスが覗く。

 

「何を深く考えているのですか?」

 

「ん?ユーティスがどうやって穢れボスキートの方法を入手したのか。厳重に封印されていた部屋からドアも開けずに取るっていうのは……相当なやり方をしたんだろう。」

 

アーサーは部屋の見取り図を調べながら、おにぎりを食べる。するとフェリスがあるものを指す。

 

「これは?」

 

「それは式神を使った監視カメラ。それで厳重封印している穢れボスキートを映していたけど、途中で画面にノイズが出て見えなくなったんだ。その数秒後に直ったら穢れボスキートがなくなっていたんだ。」

 

「……そのカメラに何かあるのでは?」

 

「かも知れないんだ……」

 

アーサーは熱心に考えていると、フェリスがアーサーの頰に指先を付ける。

 

「?」

 

「頰にご飯粒がついていましたよ。」

 

「あ…」

 

フェリスの指先にアーサーの頰についていたご飯粒がついていた。

 

「ごめんな、せっかくの握り飯を粗末に…」

 

 

パクンッ♪

 

 

「……え?」

 

「……“頑張ってくださいね♪”」

 

フェリスの満面な笑顔にアーサーは頰を赤くする。

 

「…………///」

 

数十分後ーーー熱心に考えていると、机の上のある物に気がつく。

 

「ん…?」

 

机の上にある物…それは手紙であった。

 

「誰のだ?」

 

アーサーは手紙の封筒を開け、手紙に書かれている文を読む。

 

 

“拝啓 アーサー様にこの手紙を内容を書きました。

君は「過去」「現在」「未来」”を掴んでみたいと思わないか?

罪悪な過去、今の自分を成し遂げようする現在、また一歩前進する未来、それぞれの力と…「愛」「希望」「勇気」を構成要素を象り、【王】の異名を持つ龍は君を選ぶ。君は特別だ…。私は彼女と共に君を待っている……“崩壊者”より。

 

謎の手紙を送ったのはヤトウとリュウが言っていた“崩壊者”と名乗る者からだった。すると手紙と一緒にある写真が出てくる。アーサーはそれを拾い上げ、見る。

 

「何で……俺が?」

 

どこか知らない施設、そこに写っていたのは四人の男女であった。右側の片目が汎用眼帯で覆われたアーサーに黒髪の青年が金髪の美少女と金髪の少年の肩を組んで写っていた。

 

「て言うか……何で俺が写ってるんだ?それにこの黒髪の青年と金髪の美少女……(『黒髪の方はスゲェイケメン』だし、『美少女はセクシーで抜群な巨乳で可愛い』なぁ…それに…この『金髪の少年』……何処かで見たような…)……う!」

 

突然と頭痛が起こり、目の前の光景が変わる。どこか知らない洞窟、写真で見た黒髪の青年と金髪の美少女、黒き鋼の巨神、先端部が巨大なドリルを搭載させた戦艦、紅き騎神、そして…洞窟の奥深く、天井や壁、床一面が凍てつく氷で覆われており、その中にある物が眠っていた。金色に輝く黄金の鱗に覆われた体、腕の代わりに巨大な一対の翼、二本の尾、そして三本の首を持つ途轍もなく巨大な竜であった。のすると黄金の竜が閉じ込めていた氷が割れ、黄金の竜が3本の首を伸ばし、目覚める。

 

《グルルルルルルッ!!!!》

 

黄金の竜はどう言うことなのか左右が四つずつある野獣の如く鋭い瞳で睨み、唸り声と出しながら牙を向ける。

 

「(……え!?何でこっちを睨んでるんだ!?)」

 

《ピィッギャアアオルルルルルルルオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!》

 

黄金の竜が咆哮を上げると黒髪の青年が前に出る。

 

『ライフリンク!』

 

すると黄金の竜が光輝き、黒髪の青年を包み込んで姿を変えた。黄金の装飾、白金に満ちた関節部、金色と純白の装甲を身に纏い、両肩と胸部が三つ首の竜の頭部を模していた。腰部からスカートマントのような八基のパイルが関節部無しで浮遊し、頭部のスリットアイが翠に輝き、声を上げる。

 

「颯爽登場!」

 

背部から黄金に輝く一対の翼と白く美しい天使の翼が四枚も現れ、大きく広げる。黄金の機体は胸部にある三つの結晶体から白く光り、水のように透き通った腕を出し、金髪の美少女へ手を差し伸べる。

 

金髪の美少女は近づいて来た腕の手に乗る。すると金髪の美少女の服装がクラシカルで美しいウェディングドレスに変わる。金髪の美少女は真ん中の水晶体の中にいる黒髪の青年に飛び移り、お互いキスをする。二人は笑顔で満ち溢れると、黄金の機体の手から黄金の装飾と純白に満ちた二丁のライフルと両サイドから黄金の装飾と純白の鞘に収めた二本の剣を装備し、パイルから粒子を放出する。

 

『さぁ!俺達のウェディングロードを作り、アーサーを助けるぞ!』

 

『はい!』

 

『行こう!“魔王”!』

 

《ピィッギャアアオルルルルルルルオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!》

 

両肩と胸部の『魔王』と名乗る部分が目を光らせ、咆哮を上げる。純白の天使の翼と黄金の竜の翼を広げ、洞窟の天井を破壊しながら地上へと出ると、目の前が真っ白になり、覚醒する。

 

「っ!?」

 

アーサーが目を覚ますと、窓に映る夕陽がアーサーを照らす。

 

「夢?(にしてはあの男…俺の名前を言っていたな。)」

 

アーサーはそう考えていると、一階からフェリス達が夕御飯が出来たと呼ばれ、食べに下りていくのであった。

 

 

 

 

 

 

同じ頃、どこか知らない異空間……全面が黒で染まったその間でモルドゥレイスが間の奥にいる者に伝える。

 

「……【父上】」

 

間の奥にいる者……自動移動する事が出来る車椅子に座り、人工呼吸器をマスクと仮面を身につけており、さらには左腕が異様な金属でできた義手をした全身焼けただれた老人が現れる。

 

「モルドゥレイスよ……お前も感じたのか?」

 

「えぇ……崩壊者とその妃がこの地に舞い戻って来たのを感じました。」

 

「……フフフ。」

 

「何故、笑うのですか?」

 

「嬉しいのだ…私をこの様な姿に至らしめ、持てる力の全てを奪った三人を。前に未来などない、我が怒りを存分に思い知るがいい……!」

 

「……(父上…【Father・X】とも在ろう貴方が、何故そこまで三人を?)」

 

モルドゥレイスはそう考えていると、謁見の間にユーティスが来る。

 

「Father・X……僕の“恩師”…」

 

ユーティスは拳を自身の胸に当て、膝まづく。

 

「そのままで良い…ユーティスよ。」

 

ユーティスは立ち上がり、Father・Xは見る。

 

「恩師…僕を呼んだのは?」

 

するとFather・Xは懐からある小さな水晶玉を取り出す。

 

「これは?」

 

「人の業を集める為の物だ…私や君の計画でもあるからな。」

 

「ありがとうございます。貴方様の計画の為に!」

 

ユーティスは拳を胸に当て、謁見の間から去る。

 

「(……もう直ぐだ。我の積年の怨みが、完遂する!!!!)」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

Father・Xの目が赤く染まると、カーテンの奥深くから不気味な咆哮が聞こえて来た。稲妻が光り、カーテンの中にいる巨大な影を照らす。黒と黄金の鱗に覆われた体、腕の代わりに巨大な一対の翼、二本の尾、そして三本の首を持つ途轍もなく巨大な4本足の竜であった。竜はFather・Xと同じ赤い目を光らせ、Father・Xの背後で神々しく居座っていた。



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チャプター20 脱走犯の末路

お久しぶりの更新になります。

無事に年を越したと思いました矢先にインフルエンザで倒れてしまい、救急車で運ばれる羽目となりました。


一方、タスクはアンジュとモモカ、西十郎を連れ、アルゼナルに到着した。

 

「ここでお別れだね。」

 

「行くの?」

 

「あぁ、アーサーやライド達が心配だし、それにまだやるべき事があるから。」

 

タスクはそう言い、グランビークルに乗る。

 

「それじゃ!」

 

「ありがとう、助けに来てくれて…」

 

「え?」

 

「あなたがいなければ、死んでた。」

 

「……震えたよ」

 

「?」

 

「あんなに綺麗で…心を掴まれるような歌声、良い歌だった。初めてなのに何故か懐かしくて、嬉しいような、不思議だった。また聞かせてね…」

 

「えぇ…」

 

二人は別れを告げる。タスクはグランビークルを発進させ、海の彼方へと消える。

 

「アンジュリーゼ様を助けてくださって、ありがとうございました!」

 

モモカも去って行ったタスクに御礼を申し上げる。するとそこにジルがやって来る。

 

「男に送らせるとは、随分良い身分の脱走犯だな」

 

「ジル…」

 

アンジュはジルとタスクの関係をとおうとする。

 

「教えてほしいことがあるの…」

 

「良いだろう…ただし!」

 

しかし、アンジュの腹にジルの拳が当たる。

 

「反省が終わったらな」

 

「あ、アンジュリーゼ様〜〜!!」

 

「小娘の腹を殴るとは…恐ろしい女だ。ジル…話すことがある。」

 

「?」

 

「最悪な報告がある……」

 

西十郎はアンジュを抱え、アルゼナルへと入る。

 

 

 

 

数時間後ーーー。

 

「起きろ、アンジュ」

 

反省房の中で気を失っているアンジュを起こそうとサリアが言う。

 

「……ダメみたいね」

 

「はぁ…やって…」

 

「良いの?」

 

「早く…」

 

「イエス マム…」

 

一緒にいたエルシャがサリアの言うことに従い、バケツ一杯の水をアンジュに掛けた。アンジュはあまりの冷たさに目を覚ます。

 

「目が覚めた?」

 

「ここは…うっ!」

 

「処分を通達するわ。サリア隊 アンジュ脱走の罪により『反省房で一週間の謹慎』。並びに『財産、資産の全てを没収』。勿論、ヴィルキスもよ…」

 

「ケジメはつけなくちゃね…脱走犯だもの。ねぇ…どうして?どうして脱走したの?」

 

「え…?」

 

「私達は赤ん坊の頃からここにいるの…外の世界も知らないし、待っている人もいない、出て行く理由なんてない…外にノーマの居場所なんてない…どうして!?」

 

エルシャの言葉にアンジュは黙り込む。

 

「結局…私達とは違うのよ。信じるんじゃなかった……」

 

サリアはそう言い、エルシャを連れて去る。

 

「……あ」

 

全身素肌のアンジュはベンチに置かれていた毛布を体に巻く。

 

「寒い…」

 

「ぅるせぇ…」

 

っと別のベンチから声がする。

 

「ヒルダ…?」

 

別のベンチに毛布で身体を覆っているヒルダが横になっていた。

 

「近寄んな…」

 

「帰ってきたんだ、あなた…」

 

「いったた…!」

 

「大丈夫?」

 

「近寄んなっつってんだろ!」

 

ヒルダがアンジュに怒鳴りながら起き上がる。アンジュはヒルダの顔に驚く。顔の所々が誰かに殴られた跡と痣が浮かび上がっていた。

 

「あ…どうしたのその顔?」

 

「チッ!」

 

「何を…されたの?」

 

「…聞く前に自分に話な。」

 

「……死刑」

 

「は?」

 

「裸にされて、鞭で叩かれて、罵声を浴びせられて、首を吊られた」

 

「へぇ〜、中々じゃん。」

 

「で、ヒルダは?」

 

「ポリ公50人にボコられた」

 

「まぁ…!」

 

「全員、再起不能にしてやったけどね…」

 

「その割には、随分やられたのね?」

 

「…うっせぇよ。」

 

ヒルダはそう言いながら、横になる。っと、アンジュが言う。

 

「お母さんには…会えた?」

 

「……さぁな。」

 

「…そう」

 

アンジュはベンチに毛布と一緒に置いてあった制服を着替える。

数分後、アンジュが制服に着替え終えると、ヒルダが悪夢に魘されているのか、声を上げる。

 

「うぅ…!嫌だ!嫌だ!ママァ!!ライドォ!」

 

額から汗を流し、悪夢から解放されたヒルダが覚醒する。アンジュはヒルダの言葉に問う。

 

「ママ?ライド?」

 

「…チッ!」

 

ヒルダは舌打ちする。

 

「珍しい…落ち込んでるの?」

 

「あぁ!?んなわけ…!んなわけ……。ママだけは…受け入れてくれると思った」

 

「え?」

 

「ママだけは…ノーマの私を許してくれると思ってた。でも…ダメだった……あれが…ノーマってことなんだ。外の世界に…ノーマの居場所なんてなかったんだ。」

 

ヒルダは先日で自分の身に起こった事を思い浮かべる。10年前、警察官がヒルダの家に訪ねて来た。理由は簡単ーーーシュリーフォークト家にノーマがいるとのことであった。そして案の定、ヒルダがノーマであった。ヒルダの母はお腹を痛めながらも必死に産み、例えノーマである我が娘を守ろうとするが、結局ヒルダは母から引き離されてしまった。それから数年後が立ち、ヒルダはアンジュの協力で脱走したものの、現実を見ることとなってしまった。なんと、信じていた母親は後に産まれた娘ーーー後々ヒルダの妹に彼女と同じ名前をつけていたのであった。ヒルダは信じられないことで、母親から差別され、挙句には母親が警察官に通報、そして殴られる羽目になった…。

 

その事を知らないアンジュはアルゼナルにいるロザリーとクリスの事を言う。

 

「……ここにはいるじゃない。あなたの仲間が…」

 

「仲間?…ヘッ…いねぇよ、そんなもん…」

 

ヒルダはアンジュが帰ってくる数時間前に遡る。

 

 

《ーーー回想ーーー》

 

アンジュがアルゼナルへと帰還する先日、独房で赤子のような姿のヒルダがロザリーとクリスと話していた。

 

「帰ってきたんだ」

 

「なぁ…どうして脱走なんかしたんだよ?何で相談してくれなかったんだよ?私ら友達だろ?」

 

「……友達と思ってなかったんでしょ?」

 

「え…!?」

 

「ヘッ…気付くの遅っ。思ってねぇよ…最初から友達だなんて。うまくやって行くために、アンタ達に合わせてやってただけ…」

 

ヒルダの企みと本性に驚愕するロザリー。

 

「マジ…で!?」

 

「ねぇヒルダ……ペッ!」

 

クリスは見下すような体勢でヒルダの頰に唾を吹きかけた。

 

「っ!!」

 

「…………死ねば良かったのに。」

 

「く、クリス…!?」

 

「行こ、ロザリー…」

 

「は、はい!」

 

「ゾーラ隊長…心配していたけど。ガッカリだわ…。」

 

《ーーー回想終了ーーー》

 

 

 

 

 

「あ〜あ…な〜んにも無くなっちゃったわ。部屋も金もない……もう頼れるのは“アイツ”くらいしかいなくなった。」

 

「アイツ?」

 

「……ライドル・ヴルム・ヴァーレン。私の幼馴染。私はアイツの事を“ライド”って呼んでたけど…アンタには関係ない奴だよ。……でも、裏切られたら…。もういっそのこと、殺してくれないかな〜?」

 

「ダメよ……死ぬのはダメ。」

 

「生きろって?」

 

「……」

 

「フフッ…ハハハッ!流石は元皇女は言うことが違うな!こんなクソったれなどん底なのに、まだ生きろって訳!?希望だけは捨てずにって……ねぇ!?」

 

「臭うでしょ…死んだら。」

 

「はぁ?」

 

「やめてよ、こんな狭いところで…。」

 

「それだけ?」

 

「それだけよ…」

 

「ハハハッ!どこまで自己中なんだよ?クソったれ!」

 

「ふんっ…負け犬が何よ。希望ですって?そんな物…本気であると思ってるの?あるのは迫害される現実とドラゴンと殺しあう日常。全く…馬鹿馬鹿しくて笑えてくるわ。偏見と差別で凝り固まった愚民共、ノーマってだけで馬鹿みたいに否定しかできない…マナが使えないのがそんなにいけないの?違ってちゃ、いけないの?全部嘘っぱちなのよ…友情とか、家族とか、絆なんて。あぁ!!」

 

あまりの事にアンジュは髪を掻き毟る。

 

「!?」

 

「友情って素晴らしいとか、絆こそが素晴らしいとか、平気で口走ってた自分を殴りたくなったわ!」

 

「プフッ、バーカ。」

 

「ホント…馬鹿よ。どいつもこいつも馬鹿ばっかり。世界は……腐ってるわ。壊しちゃおっか、全部…。」

 

「はぁ?」

 

「出来そうじゃない?パラメイルと武器とアルゼナルがあれば。」

 

「陸まで何千キロあると分かってんのか?燃料切れで直ぐドボンさっ。」

 

「長時間稼働出来る機体を造ればいいじゃない。」

 

「食糧どうすんだよ?」

 

「魚なら、取り放題でしょ?何なら、人間達から奪ってもいい。」

 

「機材とかは?」

 

「何とかなるわ。」

 

アンジュはそう言いながら、鉄柵を掴み、イライラと世界の理と秩序に暴言吐く。

 

「私を虐げ、辱め、貶めることしか出来ない世界なんて、私から拒否してやる。こんなに腹立たしくて、苛立たしくて、頭にくる世界……」

 

「“ムカつく”……」

 

「え?」

 

「そう言うの…全部まとめて“ムカつく”って言うんだよ。」

 

「だったら…ぶっ壊してやるわ。こんなムカつく世界、ぜ〜んぶ!」

 

「ハハッ!いいね!協力してやっても良いぜ、私もぶっ壊したい物があるからさ。」

 

「何なら、彼等に協力する?」

 

「彼等?」

 

「私を助けた“グランセイザー”と名乗っていた連中ーーー。」

 

 

 

その夜、アンジュは母の歌である永遠語り〜光ノ歌〜を歌う。その綺麗な歌は浴場にいるヴィヴィアンとエルシャにも聞こえていた。

 

「クイズです!この誰は誰が歌ってるのでしょうか?」

 

「アンジュちゃん♪」

 

「正解!」

 

「ん〜〜♪良い歌だにゃ〜♪」

 

「サリアちゃんに怒られるわよ、アンジュは脱走犯よ、歌くらいで退場されてどうするのって」

 

「そりゃ、怖い!」

 

ヴィヴィアンはそう言い、風呂の中へと潜り、言葉を発する。

 

「おばべりぃ〜〜!わんじゃブゥゥ〜〜!(お帰り〜!アンジュ〜〜!)」

 

 

 

そして、アルゼナルの指令室では、月明かりが照らされる夜を眺め、煙草を吸うジルは煙管を吸う西十郎と話し合っていた。

 

「……ユーティス・飛鳥・ミスルギ。タスクの両親、ヒルダの男、サリアの男の親族を殺した元第二皇太子。穢れ騎士の一人…強敵になるな。」

 

「まぁ、アイツらにも深い事情があるのだ。」

 

西十郎は懐からある物を取り出す。

 

「何だそれは…?」

 

「俺達“黄昏の王君”が使う極秘通信機だ。ウチの司令であるアリマがアルゼナルの司令官であるお前と話したいそうだ。」

 

西十郎はそう言いながら、通信機を起動する。すると通信機からホログラム状で映っているアリマが現れる。

 

「どうも〜、アルゼナルの司令官。私が黄昏の王君の司令官を務める“アリマ”と申す。つい先日にお越しになったアーサーがすまない事をしたな。」

 

「アーサー……あぁ、あの若造の事か。」

 

「そう……早速だが、ジル司令官。我々、黄昏の王君と手を組まないか?」

 

「何?」

 

アリマからの突然の同盟宣言、果たして、交渉の結果はどうなったか…。



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チャプター21 禁断の恋

後書きにご報告があります。


丁度その頃、アーサーはある夢を見ていた。煉獄の炎に包まれたミスルギ皇国。炎の中、ミスルギ皇国の紋章に一つの巨大な影が通り過ぎると、それは現れた。無数にいる穢れ騎士達が次々と上空で爆散していき、影が一機の頭部を掴み上げる。すると右腕に浮かぶ鬼が嘲笑いながら変異し、巨大な騎兵槍へとなった。影は背後から襲うとする穢れ騎士達を背中に生えている触手で払い飛ばしたり、触手の先端にある鏃状の槍からレーザーを発射する。影は巨大な騎兵槍を構え、穢れ騎士に突き刺した。

 

【“外使徒”…数多の世界を破壊し尽くす天使が!!】

 

すると炎が一気に燃え上がり、影を照らす。それは異形な姿へと変異した紅き騎神であり、コックピット内全てが触手と薄い皮膜、粘液状の物質で覆われた繭と化しており、その中に眼帯をしたアーサーがいた。さらにアーサーの腕には黒無垢を着た花嫁姿のフェリスの亡骸を抱え、怒り声を上げる。

 

《全てを……壊すっっ!!!!!!》

 

両目から血の涙を流すアーサーはフェリスを抱きかかえ、ミスルギ皇国、ガリア帝国、エンデラント連合、ローゼンブルム王国、マーメリア共和国、ヴェルダ王朝、アルゼナル、アウラの都、クラウドブルースの全てを煉獄の炎で焼き尽くしていく。

 

《何もない…何もいらない。“フェリシア”がいない世界なんて……滅んでしまえぇぇえええええええええ!!!!》

 

余りの事にアーサーは悪夢から覚醒する。

 

「何だ……今の?」

 

未明の3:42…夜明け前の寝室。額に寝汗をかいたアーサーは起き上がり、浴場へ向かう。それと同時に隣の寝室で寝ていたフェリスが物音に気づき、アーサーが浴場に向かっている姿を見る。

 

「アーサーさん…?」

 

 

浴場のシャワーで汗を流すアーサーは夢の事を考える。

 

「【外使徒】…何だろう、あの姿……前にも何処かでなった事がある……それも“一度でもない”様な…」

 

アーサーがそう考えていると、後ろの戸が開く音が聞こえてきた。

 

「ん?……ブッ!!!!????」

 

何とそれはフェリスであった。タオルで大事なところを隠しながら顔を赤くしていた。アーサーは慌ててフェリスから目を晒す。

 

「な!?何でフェリスが!!?」

 

「その…私も寝汗をかいてしまって…///隣…良い?」

 

「……いっ、いいよ(うわぁ!フェリスの…美乳で巨乳だ!)」

 

アーサーはおどおどする中、フェリスは頰を赤くしながら風呂に入り、アーサーの隣に近づく。

 

「う…流石にこれはやばい。フェリス、やっぱり俺上がるよ…」

 

「あ、待って!」

 

風呂から上がろうとするアーサーを止めようとフェリスが彼の手を掴む。っが、止めるどころかアーサーが足を滑らせフェリスの方へ倒れてしまう。

 

「っ!…大丈…はぁっ!!」

 

「え…?」

 

何と、アーサーがフェリスを押し倒した様な体制になっており、最悪な事にフェリスの身体を覆っていたタオルが剥がれ、彼女の豊満で形の良い胸と無防備で肉体、さらには下の方では女体の神秘である“あれ”が見えていた。

 

「が…が…!」

 

アーサーはあまりの絶景と言うより光景に目を回し、フェリスの胸へ倒れ込んでしまう。

 

「え!?」

 

数分後、アーサーは目を覚ます。

 

「あれ?」

 

「よかった、気が付いて…」

 

フェリスの膝枕から起き上がるアーサーは風呂場から急いで出る

 

「……アーサーさん!」

 

「?」

 

「……“デート”しませんか、今から……///」

 

「……え?」

 

フェリスからの言葉にアーサーは驚き、フェリスとデートする事になった。

 

 

 

 

 

午前9時ーーー私服に着替えたアーサーとフェリスはクレイン、ランス、焔、ヤトウ、リュウ、ミントに留守を任せる。そして二人は商店街を歩いていた。

 

「「///」」

 

「「その/あの……///」」

 

互いに返事し合った事にアーサーとフェリスは頰を赤くする。だがこの時、二人の後を尾行する三人には全く気づいていなかった。

 

「ねぇ、もうやめようよ…」

 

怪しい人物の様な服装をしたマイラと彼女の行動に呆れ返っているライドとエクエスが双眼鏡でアーサーとフェリスの姿を覗く。

 

「ちょっと…あの二人まさかデートしてるんじゃ!?」

 

「まさか?だってアーサーにはサラって言う好きな子が「そんなのどうだって良い!」ゴブゥッ!」

 

「新たな恋敵……さらに増えたよ!!」

 

「「(もしかしてマイラ…アーサーの事ーーー…。)」」

 

ライドとエクエスはマイラの考えている事に呆れ変え、アーサーとフェリスのデートの後を隠れながら尾行する。

アーサーとフェリスは互いに服や髪飾り(フェリスは露出度が多いチャイナ服姿を見て貰うと、アーサーがフェリスの露出部分を見て鼻血を出してしまうハプニングを含めて)、和菓子や洋菓子、ランチを食べたりしていた。尾行していたマイラ達は呆れ返り、寮へと戻っていく。帰ろうとした時、アーサーがある事を思い出す。

 

「ちょっと待ってて」

 

「?」

 

アーサーは花屋で沢山の花を買う。

 

「行こうか」

 

「何処へ?」

 

「“皆んなが安らかに眠っている所”」

 

アーサーはそう言い、格納庫にあるフラドーラにフェリスを乗せ、雲の下へ降下し、トリト廃村へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

黄昏時に見れる夕陽、無残な廃村と化したトリト村、アーサーは花屋で買った花を先日アーサーが作り立て、ユーティスによって穢れボスキートへ変えられた候補生達の墓標の前に置く。アーサーとフェリスは互いに手を合わせ、祈る。

 

「皆んな…仇はとってやるからな。」

 

ーーー《回想》ーーー

 

「神との戦い…ってさ、本当に終わらせられるんだよな……?俺達がいた意味ってちゃんとあったよな……?」

 

「テッちゃん!」

 

「頼むな…あーさー…みんなの分も悪い神様をやっつけてくれよ…?へへへ…結局…俺、最後まで…あーさーにはひとつも勝てなかった……。生まれてきて…なりたいと思ったもの…やりたいと思ったこと……ひとつも……叶わなかったなぁぁ……」

 

「テッちゃぁぁああああああああああああんっ!!!!」

 

《テツジ……》

 

 

 

 

 

 

「外へは出られないし、ここもいつまでも隠れられる訳じゃないーーーそれに…このままじゃ…私も皆んなみたいに……悪魔に…」

 

「……」

 

「そうなる前に…ねぇ、アーサー……お願い」

 

「悪魔になって醜く生き続けるくらいなら、アーサーの手で祓い殺してくれた方がいいなぁ…」

 

「サヨリ…!」

 

「……っ」

 

「ちょ…サヨリ…?」

 

「嫌だぁ…嫌だよぉアァサァア」

 

「!?」

 

「死にたくないっ…死にたくない!死にだぐないよぉぉお!!もっと生ぎでだいよおおおおお…アーサーと一緒に大人になりだいよおぉおぉ〜〜〜〜!!!!」

 

「…あー…さー」

 

「ゴメンねアーサー…ありがと……」

 

 

 

 

 

 

《サヨリ…!》

 

「アーサーさん!?」

 

「ゴメン…やっぱり、俺には最強のトライブ使いにはなれない!俺が未熟者だったから…」

 

「!!」

 

「アリサ…シュン…ユキ…ムツミ…カツキ…ルリ…チエ…ロミオ…リク…リリー…スゥ…マコト…モモ…アラシ…シズク…ケイ…サアヤ…アレン…ディーンおじさんにマーサおばさん…そしてマーサおばさんのお腹にいた赤ちゃん……皆んな…俺が祓い殺したり、食い殺した。俺は人間じゃない……人間の言う通り……俺は【化け物】だ!だから……」

 

パァンッ!!

 

「……そんなこと言わないで、自分を責めないで!」

 

フェリスはそう言い、アーサーにキスをする。

 

「!?」

 

軽く口づけされて言葉が引っ込んでしまうアーサー。フェリスは呟く。

 

「私は覚えてる…警察官や検察官に追われ、囚われている私達を助け、家の無い私達を養い、家族として見守ってくれた。だから今度は…私やクレイン達が、アーサーさん……いいえ、呼び捨てで呼ばせてもらいます。私は…アーサーが好きです!愛しています!」

 

するとアーサーの身体が光り出し、白きドラゴンへとなる。

 

 

“こんな醜い俺でも……愛してくれる?”

 

 

「…はい」

 

 

“たとえ血まみれや、インゴの様な強姦魔みたいな怪物…人を殺めても…?”

 

 

「それでも…私はアーサーが好き!」

 

 

“…………”

 

 

「お願いかあります。私達の…家族になってください……」

 

 

“……フェリスの願い、俺も同じだ。フェリス…俺の家族になってくれ”

 

 

「アーサー…」

 

するとアーサーの身体が見る見るうちに変わり、ドラゴンの翼が生えた人間態へと変わり、翼の鉤爪から触手を伸び、触手から皮膜のような物が現れ、フェリスを優しく包み込みこみ、お互いトリト廃村に黄昏の夕陽が差し込む光の中、唇を重ねる。夜になり、二人は互いが求め合うように激しく、時には優しく合わせ、互いの身体を快楽で蹂躙していく。互いの唇と舌が絡み合い、互いの両手を握りしめ合う。それはまさに“美女と野獣”ーーー禁断の恋であった。

 

「何だろう……どこか懐かしく…何処かで会ったことがある。」

 

アーサーがそう考えていると、目の前の光景が変わり、睡蓮の花が咲く湖の水面の上に立っていた。っとアーサーの衣装も変わっていた…純白に満ちた祭服、背中には真紅に満ちた天使の翼が生えていた。さらにアーサーの目の前に漆黒に満ちた黒無垢の花嫁姿のフェリスが現れる。不気味な黒と赤の瞳が輝き、アーサーに近付き、耳元で囁く。

 

『私は……貴方様を愛している。“殺したい程”……』

 

虚無の中、アーサーの身体が光り出し、姿が変わっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか、Father・X様が言っていた膨大なエネルギー波を放つ空域……ん?」

 

闇夜を照らす月光の彼方、雲の中からそれは現れた。両肩から2本ずつ、計6本生えている伸縮自在の触手、両腕(っぽく見える触手)には槍状の鋭利な手甲、部分的に発光する胴体、背中には甲羅のような外殻に加えて4枚の翼状の突起、頭部で光る三つ目が光り輝いていた。背中から生体エネルギーをジェット噴射し、触手から青白く、虹の様に光る皮膜のような翼を展開しながらジーダの方へ向かってくる。

 

「おい!何だあれは!?」

 

ジーダの穢れ騎士達が目の前に現れたUnknownに警戒すると、一人がUnknownのエネルギー波をスキャンする。

 

「何だこの膨大なドラグニウムエネルギー波は!?」

 

Unknownのエネルギーが増大に上がっている事に驚く。

 

「上がっている!?」

 

「まさか…こいつの身体と呪力そのものがーーーっ!!」

 

そしてレーダーやスキャナーがUnknownのエネルギーに耐えきれなく、測定不良を起こし爆発していく。

するとUnknownの触手の先端にある鏃状の槍から300万サイクルの超音波がジーダ達を襲う。

 

「うっ!!超音波だと!!?」

 

すると鏃状の槍の先端部が光り出し、光線を放つ。

 

「っ!旋回しろ!!」

 

二機は急いで回避できたが、残りの二機が光線直撃かと思いきや、機体諸共一刀両断した。

 

「レーザー兵器…?嫌!」

 

一刀両断された機体は爆発を起こし、墜落する。

 

「超音波を帯びた刃だと!?」

 

ジーダはビームバズーカを放ち、残りの二機の穢れ騎士のビームライフルをまともに受けるが、触手から展開されている皮膜がビームバズーカのプラズマエネルギーとビームライフルのビームを吸収する。

 

「エネルギーを吸収した!?」

 

そして槍状の鋭利な手甲から高圧電磁鞭が伸び、ジーダに向かってくる。

 

「うあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

その後…トリト廃村にUnknownが降り、アーサーへと戻る。洞窟内のテントの中で眠っているフェリスに近づく。

 

「?……アーサー?」

 

「あ、ごめん……起こしちゃったね。」

 

アーサーはそう言うと、首にかけていた物を差し出す。

 

「これ…?」

 

それは黒曜石でできた勾玉であった。

 

「俺の御守り。超星寮の焼け跡で見つけたんだ…子供の頃、どうしてそれを肌身離さず。御守りとしていたんだけど、記憶を失って忘れていたんだ。今の俺には必要のないもの…だからフェリスにあげる。」

 

アーサーは勾玉のペンダントをフェリスの首にかける。

 

「まぁその……綺麗で似合ってる///。だから…それを肌身離さず首に掛けてくれ。もし離れ離れになった時、それを握っていれば繋がっている様にも思うから……」

 

「わかった…これをアーサーと思うわ…」

 

フェリスは勾玉を握り、アーサーにキスをする。

だがこの時、山奥の中の一本杉、干からびて無残な姿へ成り果てたジーダが突き刺さっていた事を張本人であるアーサーとフェリスは知らずにいた。




すいません…なんか、エロス展開になってしまいました。そこで、小説のタグに『ヒロインはサラ』からサラ、フェリス、マイラを含む『ヒロインは多数』に変更しました。


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チャプター22 婚礼の儀

二人が寝静まった夜中、アーサーがとある夢を見る。それはボロボロの服を着たフェリスとクレイン、ランスとミントであった。ミスルギ皇国路地裏ーーー。雨が降る夜のミスルギ皇国…ボロボロの服を着たフェリスが三兄妹に言う。

 

「クレイン、ランス…ミントちゃんをお願い…。」

 

「フェリスお姉ちゃん?」

 

「大丈夫…“夜のお仕事”だから♪」

 

「また…近衛騎士の仕事をするの?」

 

「うん…そうでもしないと、お金が増やせないからね♪」

 

「「「……」」」

 

「ほら!しっかりしないと、お父さんとお母さんが困っちゃうよ!」

 

「「「はい…」」」

 

「じゃあ、行ってくるね♪」

 

フェリスは満面な笑顔で返し、三人を後に路地裏の闇の中へと消える。翌朝、三人が寒くないように寄り添って寝ていると、足音が響く。

 

「三人とも…起きて」

 

三人は起きると、そこには仕事から帰ってきたフェリスがいた。彼女の手には缶詰や水、そして服などがあった。

 

すると目の前の光景が一瞬にして闇へと変わり、目の前に黒い靄で覆われ、膝と頭を抱え、何か小声でブツブツと呟くフェリスであった。

 

「フェリス…?」

 

『私は…穢れた女』

 

「…何で?」

 

「クレイン、ランス、ミントちゃんの生活費を稼ぐ為に、この体を売っている。私はそこらにあるゴミと同じ…。」

 

「そんな事ないよ。」

 

『アーサーは知らないのよ、私達の苦しみを…。』

 

「じゃあ…俺がフェリスや三人を幸福にする。」

 

アーサーはそう言い、蹲るフェリスの体を優しく抱く。

 

『っ!!?』

 

「皆んなまとめて…幸福にする。もう苦しんで身体を売って、あの子達に生活費を稼がなくても良い。俺は絶対にフェリス達を幸福に導く。」

 

『アーサー…!!』

 

すると闇が消え、光満ち溢れる白の空間へと変わる。フェリスの体から黒い靄が消え、背中から白い翼が生える。

 

「後、フェリス」

 

『?』

 

「俺の名前だけど…俺の名は“アーサー”って言うのは誠の名を分かりやすくしたものなんだ。」

 

アーサーはそう言い、本来の名である誠の名をフェリスに言う。

 

「俺の誠の名は『アルトリウス・コールブランド』。ディーン・コールブランドとマーサ・コールブランドから貰った名だ。」

 

《アルトリウス・コールブランド》……御伽話に出てくる“古の王”と“古の剣”の二つの名が揃った名。

 

『“アルトリウス・コールブランド”……。』

 

『私の誠の名は“フェリシア”。『フェリシア・朱鷺・ミスルギ』』

 

フェリスの本名ーーーフェリシア・朱鷺・ミスルギの名にアーサーは驚く。

 

「『ミスルギ』!?」

 

朝日が登るトリト廃村。テントの出入り口の隙間に日の光が差し込み、アーサーの目元を照らす。アーサーは起き上がり、自身の今の姿を見て驚く。

 

「!?」

 

何故、パンツ一枚なのか冷や汗をかくと、隣で寝ているフェリスを見て思い出す。

 

「あ〜…そうだった。」

 

アーサーは納得すると、フェリスが目を覚ます。

 

「おはよう、フェリス…♪」

 

「……おはよう、“アル”♪」

 

「『アル』?」

 

「呼びやすい名前にしたの。ダメ?」

 

フェリスが可愛らしい表情で問いかけ、アーサーはフェリスの可愛さに頰を赤くし、見られないようにする。

 

「い、良いけど…。」

 

「フフフ♪」

 

フェリスは笑顔で返し、アーサーの頰にキスをした。

 

「///!?」

 

「アル!大好き♡」

 

クラウドブルースへと戻った。後日、クラウドブルースへと戻ったアーサーとフェリスはクレイン達に報告する。

 

「「「えぇぇ〜〜っ!!兄貴と姉ちゃん、正式にお付き合いするの!!?」」」

 

「うん、俺たち互いに思いを告って決めたんだ。」

 

三人は憧れであったアーサーが姉の恋人に、将来は“夫”…つまり“義理の兄”になると言う事であった。

 

「え!?何で付き合う事に!?」

 

「色々あって…」

 

「色々!?ま、まさか……結婚と付き合う前に!?」

 

「…………何のことかな?」

 

「したんですね!?完璧に“既成事実”じゃありませんか!?」

 

「そうなの?」

 

「そうですよ!」

 

「ランスお兄ちゃん、きせいじじつって?」

 

ミントが興味深そうな表情でランスに問う。ランスは頰を赤くし、色々焦り考えながらはっきりとした事で答える。

 

「ミント、詳しい事は言えないが……分かりやすく言うと、兄貴と姉貴は近い将来……結婚して、子供もできると言うことになる。」

 

「フェリスお姉ちゃんとアーサーお兄ちゃん、結婚するの?」

 

「まぁ、そうなるな…」

 

「やった!」

 

ミントは大喜びし、家の中ではしゃぐ。

 

 

 

その後、アーサーはライド達にご報告を伝える。

 

「えぇぇっ!?アーサー、お前!」

 

「うん…フェリスと恋人同士になった///」

 

「やるじゃん!」

 

「アーサー、おめでとう♪」

 

「エクエス、ありがとう……マイラ?」

 

するとマイラが怖い表情でアーサーの頭を鷲のように掴みする。彼女の握力がアーサーの頭を掴み潰そうとしていた。

 

「アーサー、私が監視していない間に言えたな!うらやまけしからん!うらやまけしからん!うらやまけしからん!」

 

マイラはアーサーを掴みながら前や後ろへ振りながら揺らす。

 

「はいはい、マイラにもきっと良い恋が見つかるよ!」

 

ライドがマイラを連れて行くと、アーサーはある事を伝える。

 

「三人とも、実はまだ話があるんだ。」

 

「「「?」」」

 

アーサーは素直にフェリスの事を話し、それをジュライ皇帝陛下とソフィア皇后陛下に伝えると…。

 

「バカな、ありえない!!?」

 

「その子が…ミスルギ皇室の者」

 

「えぇ…彼女の本当の名は『フェリシア・朱鷺・ミスルギ』なんだ。ジュライ皇帝陛下、何か心当たりはありませんか?」

 

「分からない…ミスルギ皇室は代々我等に受け継がれてきた筈。何故、彼女達がどうしてミスルギ皇室なのか…。」

 

「《……》」

 

「そう言えば、フェリスちゃん。」

 

「はい?」

 

「前々から気になっていたけど……“フェリスちゃんのお父さん”はどんな人?」

 

「私達のお父さんは……」

 

「その話は…私がしよう。」

 

「《っ!!?》」

 

「《モ……モルドゥレイス!!!!》」

 

突然の強敵がアーサーの家に勝手に来訪してきた事と今ここにいる事にアーサーは驚き、穢れボスキートの力を発動する。

 

「……お父さん!!」

 

「《……え!!!?》」

 

フェリスの言葉に一同が驚愕する。

 

「フェリシアか…随分と久しいなぁ。」

 

「どうして…どうしてお父さんがここに?」

 

「フェリスちゃん!離れて!!」

 

「え?」

 

「コイツは…穢れ騎士だ!!」

 

「……え?」

 

父であるモルドゥレイスが穢れ騎士だと言うことに、混乱するフェリス。

 

「嘘よね。お父さんが……穢れ騎士?」

 

「……あの時の俺も、ユーティスの事で彼らの名前を言うのを忘れていたんだ。その中にモルドゥレイスがいた事も…。でも、何で!!何で!!?」

 

アーサーはモルドゥレイスに問う。

 

「理由は簡単だ。ジーダを殺したお前を『偵察』しにな。」

 

モルドゥレイスの言葉にアーサーは疑問を持つ。

 

「ジーダを殺した?どう言う事なんだ!?」

 

「お父さん…!」

 

「……お前のような“浅ましき売春女”は娘ではない!!」

 

「っ!!?」

 

モルドゥレイスは自分の娘に対して父親とは思えない言葉を放ち、背中に背負っていた大剣を振り下ろす。その時、アーサーがフェリスの前に出て、モルドゥレイスの大剣を受け止める。

 

「謝れ」

 

「何…?」

 

「だから…謝れってんだろうがぁぁあああっ!!」

 

その時、アーサーの髪が伸び始め、毛先が鏃状の槍へと変わり、触手見たいに動き始める。怒りを露わにするアーサーは鏃状の触手『テンタクランサー』を伸ばし、襲い掛かる。

 

「正体を現したか…“化け物”が!!」

 

モルドゥレイスはそのまま庭へと投げ飛ばされる。

 

 

怒りに満ちたアーサーは庭に出ると、庭の池の水面に写る自分の姿を見る。

 

「『な…何だこれは?』」

 

「何を言う…それが本来あるべきのお前の姿だ。」

 

すると今度は別の声がする。現れたのはなんとユーティスであった。

 

「12年前…君はその姿で僕を殺し、他の人達の血肉を啜っていた。」

 

「ユーティス!!」

 

「おっと!勘違いしないでくれる?僕はモルドゥレイスと同じ君を偵察しに来ただけだよ。」

 

ユーティスは宥めていると、彼の後方から黒いワームホールが現れる。

 

「っ!!?」

 

「……お出ましだ♪」

 

黒いワームホールの中から車椅子に座り、人工呼吸器をマスクと仮面を身につけており、さらには左腕が異様な金属でできた義手をした全身焼けただれた老人が現れる。

 

「お師匠様」

 

ユーティスが頭を下げる。

 

「初めまして、火のトライブよ。私がFather・Xだ。」

 

Father・Xと名乗る老人は右手をアーサーに向ける。そしてFather・Xからモルドゥレイス以上の威圧と畏怖、衝撃波が襲い、アーサーは吹き飛ばされる。

 

「っ!!」

 

「《アーサー!!》」

 

「アーサー!!」

 

「フフフ♪」

 

ユーティスはアーサーの元へ走っていくフェリスを見て笑い、彼女の前まで向かい、持っていた剣をフェリスを切った。

 

「!!!」

 

彼女の胸から鮮血が飛び散り、ユーティスの顔にフェリスの返り血が付着する。あまりの出来事に、クレインとランス、ミントが叫ぶ。

 

「姉貴!!!」

 

「姉さん!!!」

 

「フェリスお姉ちゃん!!!」

 

ランスとクレインは急いでマナの光でフェリスの傷口を手当てする。が、しかし…止血しようとした直後、ユーティスはクレインとランスの頭を掴む。

 

「ゴミは…引っ込んでろ!!」

 

ユーティスは掴んだクレインをそのまま投げ捨て、ランスを掴み上げる。

 

「グッ!!」

 

「そうだ…君にはこれをプレゼントしよう♪」

 

ユーティスは微笑み、左腕の穢れボスキートを発動する。すると鬼の顔が形を変え、口へと変わり、クレインの右腕を食いちぎった。

 

「っ〜〜〜!!!!!!」

 

「アハハハハ!!!惨めだな!!売春姉が守っていた弟は!!」

 

誰もが絶望していたその時、ユーティスの横から何かが迫ってきて、それが彼の左目と右肺に突き刺さる。

 

「っ!!!!!!!」

 

「『……外道が』」

 

穢れボスキートの腕から槍状の爪が生え、ユーティスの左目と右肺を突き刺していた。

 

「っ〜〜〜!!!」

 

ユーティスはあまりの痛みに吠え、アーサーの怒り食らう姿を見て血相を変える。

 

「これはちょっと厄介だな。」

 

「撤退するぞ。」

 

モルドゥレイスは大剣を振り回し、アーサーからユーティスを救出する。そしてFather・Xの元へ急ぎ、ワームホールの中へと消える。

アーサーは少し落ち着きを取り戻し、血を流したフェリスの元へ急ぐ。

 

「『フェリス!!』」

 

「ヤバイぞ!」

 

「早く止血剤を!!」

 

ライド、エクエス、マイラが急いでマナの光で治癒するが、切られた傷口から多量の血が出血していく。

 

「『どいて!!』」

 

「アーサー、何をするの!?」

 

アーサーは触手を伸ばし、フェリスをゆっくりと抱え、鏃状の槍をフェリスの傷口に近づける。

「《っ!?》」

 

 

 

 

 

 

 

数時間後ーーー。フェリスが目覚める。

 

「……?」

 

窓の外を見ると、既に太陽が夕陽変わっており、ゆっくり起きる。

 

「私…確か…」

 

フェリスは頭の中で記憶を遡る。アーサーを助けようと向かったが、ユーティスによって切られ、そこで意識を失う。

 

「彼に斬られた筈……何で、私は生きているの?」

 

フェリスは何がどうなっているのか分からなくなると、彼女の横にアーサーが寝ていた。

 

「アル…」

 

フェリスは寝ているアーサーの頰にそっと触れる。すると彼女の頭の中にある記憶が流れ込んできた。それは致命傷を負ったフェリスを抱えたアーサーが切られた傷口に触手を突き刺し、ジーダから吸い取り強奪した生体エネルギーを注入していた。すると彼女の切傷が再生し始めて行く。

 

「もう…死なせない!!」

 

アーサーはそう言いながら、自身の右手に噛み付き、血を摂取する。

 

「アーサー!何をするの!?」

 

「俺の血をフェリスにやる!大丈夫だ!」

 

「無茶よ!」

 

アーサーはそう言い、フェリスの口に移す。するとアーサーから貰った黒い勾玉が緑色に光輝き、意識を取り戻す。

 

「嘘!?」

 

「バイタルが…正常になっている!?」

 

「正常になっているなら良かったじゃない!もう…誰も死なせない。絶対に!」

 

そして記憶が終わり、寝ているアーサーの方を向く。

 

「……フェリス」

 

アーサーは夢の中で彼女の名前を呟く。フェリスは今までの事を悟るーーーモルドゥレイス…父親が家に帰ってこなくなり、今まで弟達と妹の生活費を稼ぐ為に、路地裏の男達に春をひさいで収入を得ていた。だがそれも終わりを告げるかと思った。連行されていた時、暗いコンテナの天井に穴が空き、光が差し込む。そして穴から赤き天使が舞い降り、彼女達を救い出す。彼は天国へ連れて行き、居候させてもらい、さらには自身の過去を聞くこととなった。そして現在ーーー汚れた体、綺麗に透き通った乙女の側に彼女を愛すると誓った天使が一緒にいたことに、目から大粒の涙を流す。

 

「ごめんね、アル。こんな…こんなこんな汚れた私のために…!!」

 

「フェリス」

 

「!」

 

アーサーが目覚め、ある事を言う。

 

「フェリス…実はーーー腹から決めていたことがあるんだ。」

 

フェリスは真剣にアーサーの言う事を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は目覚め、心配していたマイラ達にある決意を言う。

 

「今から“結婚式”を挙げる!!?」

 

突然の言葉ーーーそれはなんと、アーサーの自宅でアーサーとフェリスの結婚式を挙げる事であった。

 

「頼む!!もうこれ以上、フェリス達を辛い事をさせたくない!!契りを交わした義兄妹として頼む!!」

 

みんなの前で土下座するアーサー。ライド達は不安に思っていると、マイラが問う

 

「分かったわ。だけど、条件があるわ…」

 

「?」

 

「その子の事を…本当に幸せにするって約束できる?」

 

「……あぁ。」

 

「モルドゥレイス……アーサーにとっては義父になってしまうけど、倒す覚悟もある?」

 

「分かってる。」

 

「覚悟の上だね!」

 

マイラはアーサーの覚悟を確認すると、肌を取り出し、狐の耳を持った巫女二人を模した式神が現れる。

 

「私の式神“炎舞”と“氷舞”よ。巫女として代わりを務めてくれる。」

 

「フェリス様、白無垢に着替えますので部屋に移動します。」

 

炎舞と氷舞がマイラを連れ、部屋へ案内される。

 

「ありがとう、マイラ」

 

「良いってことよ。アーサーはこれからお姉ちゃんが得られなかった人生を背負って行くんだから、当然のことをしたまでよ。」

 

「うん」

 

「さぁ!神前式、始めるわよ!」

 

マイラが命令し、急いでアーサーとフェリスの神前式の準備をする。

 

 

 

 

 

大広間、白の五つ紋付羽織袴を着たアーサーと黒の羽織袴を着たライド達が居座っていた。そして襖が開き、巫女服に着替えたマイラが問う。

 

「申す!苦痛を投げ捨てて、見目麗しき乙女なり いかに!」

 

「申す!雨露しのぐ屋根もなく、鈍感愚物の男なり、それでもよければお入りください!」

 

襖が広く開き、桜の花びらが舞い飛ぶ。雪のように白く、美しき白無垢を着たフェリスであった。

 

「綺麗だよ…」

 

「うん…///」

 

互いは頰を赤くし、巫女であるマイラが言う。

 

「これより!新郎 ーーー“アルトリウス・コールブランド”ーーー と新婦 ーーー“フェリシア・朱鷺・ミスルギ”ーーー の神前式を行います!!」

 

修祓の儀、祝詞奏上、三々九度の盃、神前腕輪の交換、誓詞奏上、玉串拝礼、巫女の舞、親族盃の儀、斎主挨拶を済ませ、アーサーとフェリスは正式に夫婦となるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

式を終え、二人も寝れる大きな布団が置かれた部屋。和服に着替えたアーサーとフェリスは緊張していた。

 

「不束者ですが、よろしくお願いいたします。」

 

「…うん///」

 

「///」

 

二人は頰を赤くする。

 

「隣…いいかな?」

 

アーサーはフェリスの隣に座る。

 

「「///…」」

 

「(良し!)……」

 

アーサーは何を覚悟したのか、フェリスを押し倒す。

 

「?」

 

「君が今までどんなに辛く苦しい事があったのか、俺は知らない。だけど…これだけは本当の事だ…“愛してる”」

 

「私もよ。アル…“愛しています”。」

 

二人はそれぞれの想いを伝え、互いを見つめ合った後キスをして、アーサーはフェリスを抱きしめた。フェリスもアーサーを抱きしめ返して、二人の深い中へと入って行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、モルドゥレイスは専用の邪星神『アボルピス』に憑依し、穢れ騎士達と共に上空を飛んでいた。

 

「良かったのですか?自分の子たちにあのような事として…」

 

「あの女は……」

 

 

 

 

《Father・Xーーー父上が“ある能力”への固執から子に保持する為に……私の妻を寝取り産ませた子、いわゆる異母妹ようなものだ。》

 

 

 

 

「っ!!?」

 

モルドゥレイスから放たれた言葉に穢れ騎士達がとてつもない程の冷や汗をかくのであった。



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チャプター23 肉親との再会

紅蓮の焔の中、両者片方の目を失ったアーサーとユーティスが穢れボスキートの腕で殴り合っていた。身体中が血塗れなのに、二人は戦いを楽しむかのようにしていた。

朝日が差し込む窓、布団の中でアーサーは目覚める。

 

「(最近、変な夢を見るのが多くなったなぁ…)」

 

アーサーはそう思いながら昨夜の婚礼の義で妻になったフェリスに目を向けると、その愛らしい顔をこちらに向けて、まだ眠っているようだ。

 

「可愛い寝顔だ♪」

 

 

 

「おはよう、フェリス」

 

「おはよう、アル」

 

「「フフフ…♪」」

 

二人はそれぞれの結婚した証拠である腕輪を見せ合う。

 

 

 

 

下に下りると、食卓の上には凄い豪華な朝食が並んでいた。

 

「うわっ!?朝も豪華…」

 

「きっと、私たちが夫婦になった事に、喜んでいるのですよ♪」

 

「「「おはよ〜う」」」

 

「「おはよう」」

 

「いただきます♪」

 

「「「「いただきま〜す♪」」」」

 

「(は〜い、召し上がれ〜)」

 

「ランス、腕の方はもう大丈夫か?」

 

「大丈夫だ♪」

 

ランスは昨日、ユーティスによって右腕を食いちぎられてしまい、アーサーが前に使っていた義手を身につけていた。

アーサー……否、コールブランド家はいつものような朝食を済ませていると、アーサーの通信機が起動する。

 

「ちょ、ごめん……もしもし?」

 

「『アーサーか。君の穢れボスキートの事で話があるのだが…良いか?』」

 

「あ、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お呼びでしょうか、東護ノ介さん。」

 

「あぁ、早速だが…例の穢れボスキートになってくれ。」

 

「……」

 

「分かった。」

 

「東護ノ介さん、これの事で何か知っているのですか?」

 

「君のその姿……まるで『柳星張』なのだ。」

 

「“柳星張”…?」

 

「南方を守護する神ーーー『朱雀』ーーーの異名だ。」

 

「それが…何?」

 

「実は昨夜の婚礼の儀の後、ライドとエクエスに異変が起きたのだ。」

 

「え!?」

 

「出てこい。」

 

「えぇっ!!?」

 

アーサーは二人の姿に驚愕する。ライドは黒い髪が白色へと変色し、獅子のごとく鬣のようになっており、筋肉が更に増え、野獣の目、猫耳、剣のような切れ味を持つ二本の牙、槍のごとく鋭利な爪、四つもある豪腕、尻尾が生えていた。一方、エクエスの方は最早人ではなかった。そう彼は……体全体が鮫肌で覆われ、鱗のような重なり合った形状、下顎の左右両端から大きな牙が1本ずつ、上に向かって生えており、獣のような鋭い眼差し、シャチ背鰭と尾鰭がある『海獣』であった。マイラの方はもののけなのか鹿なのか龍なのか、鹿のような獣のような蹄を持つ脚になっており、顔が猿なのかも分からない人面、頭に無数の角が生えていた。

 

「三人ともどうしたんだ!!?」

 

「知るか!朝起きたらこんな姿になってたんだ!」

 

「全くですよ。俺の方が一番酷い目に遭いましたがね!」

 

「まぁ、そんなヤバくて怖い顔なら……」

 

「何か言った?」

 

「ひぃ〜〜っ!!」

 

怖い目で睨むエクエスにアーサーは怖がる。

 

「でも…何でだ?」

 

「理由は簡単だ…。」

 

東護ノ介はアーサーに説明する。11年前ーーーアーサー、タスク、ライド、エクエス、マイラの五人が兄弟の契りを交わした時、アーサーの血が四人の傷へと入り込み、穢れボスキートの底力が目覚めた事になる。つまり、彼らのDNAにはアーサーの感染した穢れボスキートの細胞が這い回っており、覚醒したアーサーの共鳴によって三人の中の細胞が急激に活性化し、現在の姿へとなっていることとなる。

 

「つまり…俺の力が目覚めた事が原因?」

 

「そうなるな。我々は君達のような途轍もない力を持つ穢れボスキートをーーー『純なるボスキート』ーーーと呼ぶ事にしたのだ。」

 

“純なるボスキート”……純粋な心を持ち、正義の心を持つボスキートとの事。アーサーはとっさにタスクの事を考える。

 

「それだったら、タスクは?」

 

「タスクの方は分からない。現在調査中との事だ。」

 

「そっか…」

 

「……で、元に戻る方法は?」

 

「それに関しては…「私が説明しよう。」…ん?」

 

突然、東護ノ介説明に割り込んで現れたのは高貴な服装と言うより『軍服』と全てが黒のマントをした女性軍人が現れる。

 

「誰?」

 

「紹介しよう。彼女は“メナ”。近衛一番隊隊長“メナ・カレトヴルッフ”大名であるのだ。」

 

「「「「あ、どうも」」」」

 

「それとアーサー、落ち着いて良く聞け。」

 

 

 

 

 

 

 

「彼女はーーーお前の『姉』なのだ。」

 

 

 

 

 

 

アーサーはその時、想像もしなかった事に気付く。アーサーは幼少期、コールブランド夫妻に拾い育てられ、自身の肉親の事と顔を全く知らなかった。そして今、彼の目の前に自分の姉と名乗る女性がいる事に戸惑いを隠せなかった。するとメナがアーサーを優しく抱き付く。

 

「ん?」

 

「すまなかった…お前がこんな酷い目にあっていた事に気付いていれば…。」

 

「……俺の姉ちゃん?」

 

「他にもいる…お前に会いたかった兄上、姉上が…。」

 

するとメナの後ろから数人の男女が来る。

 

「やぁ…“アーサー”、かな?俺は“ヨハネ”。君の兄であり、メナ姉さんの弟だ。」

 

「私は“キーラ”…あなたの一番目の姉よ。」

 

「俺は“ギル”。二番目の兄だ。そして…」

 

次に現れたのは紅き甲冑と純白の巫女服を着た男女であった。

 

「やっと会えた…我が弟よ。私は“クリストバル・カレトヴルッフ”。お前の一番目の兄だ。」

 

「妻の“セレスティナ・カレトヴルッフ”です。私の可愛い義弟君」

 

「この6人が…俺の?」

 

アーサーは肉親である兄と姉達に驚いていると、奥からある男性と女性が来る。するとクリストバル達が膝まづく。

 

「《父上、母上》」

 

男性の方は黄金の髪、女性の方は白銀の髪をしており、肌の色が白 白色と褐色に分かれていた。すると父親が急にアーサーの頭を撫で始める。

 

「…めんな」

 

「え?」

 

アーサーは父親の顔を見上げる。父親は大粒の涙を流し、歯を食いしばりながら、アーサーに思いっきり抱き付く。

 

「本当に…ごめんな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサーは考えながらフェリスに連絡し、親族を連れて家に帰ってきた。御座敷の間で座っている一同はフェリスやクレイン、ランス、ミントを見ていた。

 

「てな訳で…実父と実母、実兄と実姉、義姉さんを連れて来た。」

 

「初めまして、お義父さん、お義母さん、お義兄さんにお義姉さん。アーサーの妻のフェリス・朱鷺・コールブランドです。旧姓はミスルギでした。」

 

「話はアルから聞いてる。アーサーの父の“オリヴァルト・カレトヴルッフ”だ。」

 

「母の“シェレザール・カレトヴルッフ”です。フェリスちゃんにクライン君、ランス君にミントちゃんだったね。辛かったでしょ、お父さんを待っていたのに…。」

 

「はい…」

 

「やっとの再会がこんな事になるなんて。安心して、今日から私達があなた達の親だから♪」

 

シェレザールは優しい微笑みと共にフェリスを優しく抱く。

 

「…お義母さん」

 

フェリスはこんな自分を義娘として認めているシェレザールに涙を流す。

 

「それで、話させて貰うぞ。20年前…俺がまだ赤ん坊だった頃、何があった?どうして、俺は両親と離れ離れになって、トリト村へたどり着いたのか。」

 

「……そうだったな。今こそ話そうーーー我らの父上と母上、祖父と祖母、我ら兄妹の身に何があったのかを。」

 

 

 

 

 

 

 

 

20年前ーーー。異様なワームホールが空から現れ、その中から戦艦と潜水艦を併せたような形状と艦首の巨大なドリルが搭載された万能艦『轟天号』正式名称「第三世代型超神速恒星間航行用超弩級万能時空戦闘艦 “エクシリアン” 」が飛来する。艦橋にはアーサーの実父と実母である「オリヴァルト・カレトヴルッフ」と「シェラザード・カレトヴルッフ」。シェラザードの腕には生まれたばかりの四男でありクリストバル達の末弟「アルトリウス・カレトヴルッフ」を抱いていた。

 

「あなた…着いたのね。」

 

「あぁ…1000年後の未来に。やるのですか?父上…」

 

「当たり前だ。」

 

座っていたのはアーサーの祖父「ウオフ・マナフ・カレトヴルッフ」。轟天号の艦長を務めていた。

 

「この偽った地球に彼ーーー我が師である「エンブリヲ」がいるはずだ」

 

 

 

オリヴァルトの言葉にアーサー一同が声を上げる。

 

 

「はあぁっ!!!???」

 

「「「えぇっ!!!???」」」」

 

「ちょっ!!!???ちょっと待ってくれ!!え……エンブリヲは俺の祖父…と言うより、祖父の師で、エンブリヲは俺達の大恩師という事か!?」

 

「そうだ。エンブリヲは俺たちの祖父の恩師であった。それと話を最後まで聞け、慌てるな…。」

 

 

 

 

 

 

 

エンブリヲを見つけたカレトヴルッフ家はエンブリヲに説得していた

 

「何故だ!?エンブリヲ!!」

 

「フフフ、愚かな一族は滅ぶ運命!!」

 

エンブリヲは自分のラグナメイル『ヒステリカ』が轟天号を襲う。すると轟天号から黒き天使であるヴィルキスこと『ビルキス』に乗ったウオフ・マナフが零式超硬度斬鱗刀「ラツィーエル」を抜刀し、コックピット先端に装備されていたビームライフルを構え、エンブリヲに戦いを挑む。

 

「爺様!!」

 

ウオフ・マナフは必死に戦った。激しい攻防と轟天号からの艦砲支援によってエンブリヲを追い込むが、穢れ騎士達やFather・Xの艦隊が現れ、轟天号が被弾し、ポッドの中に入っていたアーサーが外へと投げ出され、ウオフ・マナフは敗れ、ビルキスはエンブリヲに奪われた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…事が…」

 

「あぁ…祖父が亡くなる直前、俺達に言ったーーー『アルは何処かで生きている。すくすく育ち、私達家族の元へと戻って来る。私が亡くなっても、家族全員で葬儀を行ってくれ…戦いが終わってでも良い!』と……。」

 

「俺の爺さんが…そんな事を?」

 

「あぁ……!!」

 

「だから、俺達兄弟と姉妹、父さんと母さんは決めたのだ。俺達家族を裏切り、祖父を死に追いやった大罪人ーーーエンブリヲとFather・Xから世界を壊し、世界を解放するーーーと…!!」

 

クリストバルはアーサーに真の覚悟を感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、アーサー達は就寝すると、フェリスが夜空に輝く月を見る。

 

「……」

 

フェリスは父であるモルドゥレイスの事を考えていると。

 

「眠れないのか?」

 

っと、屋根の上で盃を持ったクリストバルと一緒に酒を飲むセレスティアがいた。

 

「あ、お義兄さんにお義姉さん…。何をしてるんです?」

 

「見ての通り、月見酒だ。」

 

クリストバルはそう言い、月を見ながら酒を飲む。

 

「しかし不思議だ…」

 

「?」

 

「お前は…モルドゥレイスの子なのに何故そこまで性格が違うのか…」

 

「お母さんの…優しさかな?」

 

フェリスはそう言い、自身の幼少期を思い出すーーー。

 

 

12年前ーーー。当時5歳だったフェリスが母が大事にしていた手鏡を割ってしまい、泣いていた。

 

「どうして黙っていたの?」

 

優しそうな声がフェリスに問う。

 

「怒られると思ったから…」

 

フェリスは正直に言う。

 

「怪我はしなかった?」

 

「怒らないの?」

 

「どうして?」

 

「大切な鏡を割っちゃったから…」

 

「あなたより大切なものなんてないわ、フェリシア…」

 

フェリスの母は優しくフェリスを抱く。

 

「お母さん!ごめんなさい!」

 

「偉いわ、ちゃんとごめんなさいと言えて♪」

 

 

 

 

 

 

フェリスの母の話を聞いたクリストバルとセレスティアは

 

「そうか…。立派な母親であったのか…」

 

「はい…」

 

「これからもアーサーを支えてやってくれ。アイツも何倍もの辛い事を経験しているからな。」

 

「はい。」

 

フェリスはそう言い、家の中へ入る。

 

「報告しなくて良かったのですか?彼女……」

 

 

 

 

 

 

「アルとの“子”を身籠っている事をーーー。」

 

 

 

 

 

 

「無理に辛くしてはいけない。嬉しい事は“サプライズ”にしておけ、彼女がそれに気づいてアルに報告させる方がいい。」

 

「そうですね。」

 

セレスティアがそう言うと、クリストバルが何か厳しそうな表情と、ある事に頭を悩ます。

 

「(だが、何かが違う。あのフェリスと言う少女…)」

 

その頃ーーー。

 

「ったく!!俺らのこの姿はいつ戻るんだ!!?」

 

忘れられていたのかライド達の姿の件でアーサーは気づき、元に戻る方法を教えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愚かなカレトヴルッフ家の兄妹が…ようやく集まったか。」

 

Father・Xはそう呟くと、彼の瞳にある物が写る。それは寝ているアーサーの姿であった。フェリスが優しそうな目で見ている中、フェリスの眼を通じてFather・Xが監視していたのであった。

 

「幸福も大概にしておくのだな、我が“千年の友”よ…」

 

するとFather・Xの目の前にある物が開発されていた。血のように赤いフレーム、血のように鮮血に赫々しい模様が浮かぶ白い装甲と

 

「やっとだ…『邪星神の邪星神ーーー“The king of foul”ーーー』の完成は近い!!!!」

 

《ホォオオルルルルルルルオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!》

 

黄金で黒く、禍々しい三つ首竜が咆哮を上げ、口からプラズマ波を帯びた光線を放ち、開発中のフレームにエネルギーを注ぎ込む。

 

「残るはこの邪星神に乗る『ライザー』と……」

 

Father・Xはモニターに映っているあるカプセルの映像を表示させる。

 

「“コイツ”を完成させなければな……」

 

カプセルの中、バイオ液に入っているのはモルドゥレイスよりも筋骨隆々な肉体を持つ大男であった。Father・Xは不敵な笑いを浮かべると大男は目を開け、黒い眼でカメラを睨み、不気味な微笑みを浮かべる。

 

『私の最高傑作……【インパクター・X】』

 

すると開発されている邪星神の横に既に完成された邪星神が配備されていたのであった。



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チャプター24 襲撃者

「シフト変更?」

 

アルゼナルでは、第一中隊の皆(アンジュ、ヒルダを除いて)が集まり、これからの計画をサリアが説明していた。

 

「今日はエレノア隊、明日はベティ隊へ編成になるの」

 

何故だか分からないが、すき焼きしながら説明を行っていた。ヴィヴィアン達はすき焼きの肉を取ると、エルシャが後から肉全部を取る。説明していたサリアは肉が取れなく、ネギを頬張る。次にロザリーが脱走したヒルダの事を言う。

 

「脱走犯のせいで、こっちは暇だからなぁ」

 

「二度と出てくるな…」

 

「!?」

 

ロザリーの隣に座っていたクリスが毒舌し、ロザリーは引きながら頷く。

 

一方、反省房の方ではモモカがお弁当が入っているバスケットを警護官と話していた。

 

「お願いです!どうかこれをアンジュリーゼ様に!きっと粗末な物を口にされていないはずです、どうか!どうか!」

 

「腹減った…ま、ダイエットと思えばいっか。」

 

「それよりもお風呂よ。今日で何日?」

 

「一週間」

 

「通りでそんな臭い…」

 

「アンタも同じ臭いだよ。」

 

「贅沢言わないから、せめて水浴びでもしたいわ。」

 

 

その頃、第一中隊の隊長のサリアはアルゼナルの上部で何やら花を集めていた。

ある程度集め終えたサリアが紐で花の枝を結ぶ。

 

「あ~、サリアお姉様だ」

 

サリアが呼ばれた方を見ると、幼年部の子供たちとその担当員が居た。

 

「サリアお姉様に敬礼~」

 

子供たちがサリア達に敬礼をし、サリアも子供たちに向かって敬礼をして、子供たちは「サリアお姉様綺麗~」「おっきくなったら第一中隊に入る~!」とそう言って去って行き。担当員も挨拶をして子供たちの面倒を見に行った。

そんな中でサリアは幼い頃の自分を思い出す。自分もかつては当時司令官ではなかったジルの様になりたいと幼い頃からの夢であった……。

 

『私、絶対お姉様の様になる~!』

 

昔の事を思い出しつつも、サリアはそのまま墓地へと向かう。

 

そしてその場にメイも居た。

 

メイの前にある墓にはこう書いてる。

 

【Zhao Fei-Ling】っと…。

 

サリアはメイの元に来て、結んだ花を出す。

 

「これ、お姉さんに」

 

「毎年有難う、サリア」

 

メイがサリアに花の礼を言い、サリアは墓に花を置く。サリアは立ち上がって微笑みを浮かべていて。

それにメイが問う。

 

「どうしたの?」

 

「幼年部の子供たちに、お姉様って呼ばれた。私…もうそんな年?」

 

「まだ17じゃん」

 

「もう17よ…、同い年になっちゃった…『アレクトラ』と」

 

誰かの名前を言うサリアは昔の事を再び思い出す

 

 

10年前……。

 

 

アルゼナルの海岸に、後部から煙を上げるヴィルキスが降下して来た。

ヴィルキスはそのままアルゼナルの海岸に着地する、そしてそこに乗っていたのは当時メイルライダーとして戦っていたアレクトラであるジルだった。

 

「アレクトラ!!」

 

そしてアレクトラの元に、当時司令官であったジャスミンがと部下のマギーと一緒に部下もやって来た。

ジャスミンはアレクトラの右腕が無い事を見て、すぐにマギーに命令する。

 

「マギー!鎮痛剤だ!! ありったけの包帯を持ってこい!!」

 

「い!イエス・マム!!」

 

その様子を上のデッキにいる、まだ当時幼かったサリアとメイが居た。

 

「あれは…お姉様の?」

 

サリアが見ている中で、ジャスミンはアレクトラをヴィルキスから下ろす。

 

「しっかりしろアレクトラ! 一体何があった!?」

 

ジャスミンはアレクトラから事情を聞く、しかしアレクトラはある者からメイに伝言があると言うばかりであった。

それを却下するジャスミンは何があったかと事情を問う。

 

ところがアレクトラは突然ジャスミンへと謝る。

 

「ごめんなさいジャスミン、私じゃあ使えなかった…。私じゃあ…ヴィルキスを使いこなせなかった…!!」

 

っと涙ぐんでジャスミンに謝り、それにはジャスミンは何も言えなかった。

 

「そんな事ないよ!」

 

そこにメイとやって来たサリアが居て、サリアはアレクトラの弱さを否定し、最後に「わたしが全部やっつけるんだから!」とアレクトラに向かって言う。

アレクトラはそれにサリアの頭に手を置いて撫でる。

 

 

―回想終了―

 

 

「全然覚えてないや」

 

「仕方ないわ、まだ3だったもの」

 

サリアは当時3歳のメイに覚えてない事に仕方ないと言い、メイと共に墓地を離れる。

っがサリアはこの時に思った。その時から数年がたち、司令となったジルはサリアにヴィルキスの搭乗を許さない事にかなり不満感が抱いていた。

 

アンジュに出来てサリアに出来ない事は何か…。

サリアは格納庫に付いて、ヴィルキスを見る。

 

「(一体私に何が足りないの…? アンジュと私に一体何が違うって言うの…? …あの子に…ヴィルキスは渡さない!)」

そして同時にアルゼナルの司令室、レーダーに何かをキャッチした。

 

「これは…シンギュラー反応です!」

 

「場所は?」

 

ジルが出現地を特定しろと命令を言い、それにパメラが急いで特定する。

 

「それが…アルゼナル上空です!」

 

何と出現場所はアルゼナル上空、そしてアルゼナルの上空にゲートが出現し、そこから大量のドラゴン達が現れる。

 

「スクーナー級、数は…20…45…70…120…、数特定不能!」

 

「電話もなっていないのにどうして?!」

 

エマが司令室に到着して、電話が鳴らなかった事に疑問を感じていた。しかし今はそんな事を考えてる場合ではない。

ジルはするに基地全体放送で、アルゼナルの皆に言う。

 

「こちらは司令官のジルだ、総員第一戦闘態勢を発令、シンギュラーが基地直上に展開、大量のドラゴンが効果接近中だ。パラメイル第二、第三中隊全機出撃。総員白兵戦準備、対空火器重火器の使用を許可する、総力を持ってドラゴンを撃破せよ」

 

その放送を聞いて、食堂に居たエルシャ達やアルゼナル内にいる者達は直ぐに武器を持って格納庫へとむかう。

 

そしてアルゼナルの対空火器が展開して上空に居るドラゴンを撃ち落として行く。

しかし数が多いのか一向に数が減って行かない。そして一体のドラゴンが司令室へと向かって行き、そのまま突っ込んでいく。

 

パメラとヒカルは慌てて離れて行き、ドラゴンは司令室へと突っ込んだ。

 

「ひっ!!」

 

エマは怯えながら後ずさりをするも、ドラゴンは吠えた時に瞳のハイライトが消えて、マシンガンを構える。

 

「悪い奴…死んじゃえ!!」

 

そのままマシンガンを撃ちまくり、辺り構わずばらまいていく。それもその筈今の彼女は意識が飛んで行ってしまって暴走している状態なのだ。

それにジルはエマに手刀で首を打ち、気絶させて、マグナムを構えドラゴンの頭部に撃ちこみ、それによりドラゴンはそのまま絶命する。

 

すぐさまパメラがコンソールを調べる。

 

「司令!通信機とレーダーが!」

 

「…現時刻を持って司令部を破棄、以降通信は臨時司令部にて行う」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

 

 

 

その頃格納庫で、エルシャ達は侵入してくるドラゴンを撃退していた。

 

「大分減ってきたね」

 

「エレノア隊とベティ隊に感謝ね」

 

「アタシ等の分も稼ぎやがって!…?」

 

突然ロザリーとクリスは不思議な光景を見る。

それはドラゴン達が突如アルゼナルから離れて行く光景が目にして、それにヴィヴィアンが指をさす。

 

「あれ? 逃げるよ?」

 

「どういう事でしょう?」

 

ココがドラゴン達の行動に疑問を感じる中、反省房の中にいるアンジュとヒルダはその中である物が聞く。

それは物と言うより・・・。

 

「何だ…?」

 

「…歌?」

 

そして上空に居るドラゴン立はゲートの回りを飛び回ると、そのゲートから三機のパラメイルがゆっくりと降下してきた。

その内の一機の紅いパラメイルはヴィルキスと同じ間接部が金色のパラメイルであり、そこから歌が流れていた。

 

「♪~♪~♪」

 

その光景を臨時司令部にいるジルが双眼鏡で見ていた。

 

「パラメイルだと…」

 

同じ様にアルゼナルの上空で戦っている中隊の隊長のエレノアもその機体に目を奪われる。

 

「何こいつ? 何処の機体?」

 

皆が見ていると、その機体がいきなり金色の染まり始め、そしてその両肩が露出展開し、そこから光学兵器が発射されてそれにエレノアを含め第二中隊、ベティ隊の第三中隊の数名を含むメンバーは塵に変えた。中隊を消し去った光学兵器はそのままアルゼナルに直撃し、強烈な光が包み込む。

 

サリア起き上がり、目の前の光景を目にする。

そこには半分ほど削られたアルゼナルを目にした。それをチャンスとしたドラゴン達は一斉に向かって行き、サリア達はすぐに体制と整えてライフルを構える。

 

 

一方、独房に居るアンジュとヒルダは先ほどの衝撃で体制を崩していて、頭を押さえながら立ち上がって来る。

 

「いった〜!?」

 

「一体何が?」

 

ヒルダは外を見渡そうとすると、目の前にある物が来る。それは突っ込んで来たドラゴンだった。

 

「い!?」

 

ヒルダは慌ててその場を離れると同時にその場所にドラゴンが突っ込んできて、そのまま檻を突き破って死んだ。そしてそこにモモカが急いで来た。

 

「アンジュリーゼ様〜!ご無事ならお返事を〜!」

 

「モモカ!」

 

「開錠!」

 

モモカは扉の鍵を開錠し、アンジュとヒルダを解放する。

 

「助かったわ!モモカ」

 

「いえ、そんな…!」

 

するとモモカは鼻をつまむ。そう今の二人の体には一週間も風呂に入っていない程の体臭を放っており、流石のモモカもその臭いには耐えれなかった。

 

「モモカ?」

 

「いえ!何でも」

 

「誰よ!こんな事したの!」

 

「「え?」」

 

「せっかく帰ってきたのに!」

 

「パラメイルとこ行きゃ分かるだろ?」

 

「急ぎましょう!」

 

「その前にお風呂に!」

 

「あ!そうね」

 

「んな事言ってる場合か!!」

 

アンジュ達は急いでパラメイルがある整備ドックへと向かう。

 

 

 

謎のパラメイルの光学兵器の攻撃で、戦場の戦況は変わり始めていた。

 

「第二中隊全滅! 第三中隊!隊長以下ロスト!」

 

パメラの報告を聞いたジルはすぐさま次の指示を出す。

 

「残存部隊を後退!指揮系統を第一中隊のサリア達に集約。サリア達を出せ!」

 

「了解!」

 

パメラはすぐに通信し、ジルは上空のパラメイルを見ながら思った。

 

「(あの武装…まさかな…)」

 

そして格納庫内でドラゴンと戦っているサリア達に命令が下る。

 

「了解! 皆!パラメイルに騎乗!」

 

「「「イエス・マム!」」」

 

サリア達が自分達のパラメイルに搭乗している中で、その時にジルからサリアに通信が来る。

 

『サリア、もう説明しなくても分かってるな?』

 

「はい」

 

『それと、アンジュを原隊復帰させろ。』

 

その事にサリアは重い表情をする。

 

『ヴィルキスでなければ、あの機体は抑えられん。アンジュを乗せるんだ。』

 

「だったら…私がヴィルキスに乗って出るわ!」

 

『黙れ!今は命令を実行しろ。』

 

その事にサリアは思わず反論する。

 

「お願いです!司令!!」

 

『黙って命令に従え』

 

そう言い残してジルは通信を切る。それにサリアはどうしても納得が行かなかった。

 

「どうしてよ…ジル。(ずっと…ずっと頑張って来たのに…! なのに!)くっ!!」

 

するとサリアはアーキバスから降りて、ヴィルキスの方に向かい。それにメイが思わず振り向く。

 

「サリア!!」

 

サリアは二人の静止も聞かずにそのままヴィルキスに搭乗して皆に言う。

 

「サリア隊!出撃!!」

 

「「「イエス・マム!!」」」

 

デッキから発進したヴィルキスを含むパラメイル隊はドラゴン迎撃の為に出撃する。

 

「うわぁぁ!!」

 

「皆んな!一旦撤退して補給を!」

 

「ここは私達が引き受けたなり〜!」

 

『は、はい!』

 

「ここはアタシ等が引き受けたなり~!」

 

エルシャとヴィヴィアンが残存隊にそう言って、その部隊は頷きながら撤退して行く。

臨時司令部では発進したのを確認する。

 

「第一中隊、出撃しました!」

 

「よし…」

 

ジルはパメラの報告を聞いて、無線機を取り話す。

 

「アンジュ、聞こえているな?。お前の敵はあの所属不明機のパラメイルだ、未知の大出力破壊を搭載している。注意してかかれ」

 

『分かっているわ、ジル』

 

っとその音声を聞いたジルは驚いた、何とヴィルキスに乗っているのはアンジュではなくサリアであった事に。

 

「サリア!? 何をしているサリア!降りろ!命令違反だぞ!」

 

『黙ってて!!』

 

それにジルはサリアの異変に気付く。サリアはハンドルを握りながら言う

 

「分からせてあげるわ…、私がアレクトラの代わりに慣れる事を!!」

 

っとそう言って通信を切り、それにジルは舌打ちをする。

 

「チッ、馬鹿が…(あれは『皇族』の者しか乗れんものだ!)」

 

 

そしてパラメイル格納庫に到着したアンジュ達は目の前の光景に驚く。

それはアルゼナルの外壁がごっそり抉られていたのと、ヴィルキスがない事に…。

 

「ない!?どうして!?」

 

「まさか!吹っ飛んだのか!?」

 

「違う!サリアが!」

 

「「「!?」」」

 

戦場ではサリア達がドラゴンを撃ち落として行く中で、サリアは単体で不明機のパラメイルへと向かう。っが出力が上がらない事にイラ立ちを現す。

 

「もっと!もっと早く飛べるでしょ!?」

 

その時にドラゴンがやって来て、それにサリアは追い払おうとヴィルキスで蹴る、だが逆に弾かれてしまい飛ばされる。

何とか体制を整えて、呼吸を整えながらもヴィルキスの性能に驚きを隠せない。

 

「嘘よ…ヴィルキスがこんなにパワーが無いなんて…(アンジュの時はもっと…!)」

 

サリアが戸惑っていると、ドラゴンがサリアに襲い掛かる。が、別の方から弾丸が飛び、ドラゴンを撃退する。するとヴィルキスから通信が入る。

 

『ちょっと!胸苦しい!』

 

『狭いんだから我慢しろ!』

 

「え?」

 

『アンジュ!』

 

『ヒルダちゃん!』

 

ヴィヴィアンとエルシャが呼んだ先に、アンジュとヒルダがヒルダの機体に二人乗りでやってきた。ヒルダはサリアに近づき、アンジュが声をかける。

 

「サリア!私の機体返して!」

 

アンジュはそう言い、目の前にいる敵機を睨む。

 

「アイツは私がやるわ!」

 

「私のヴィルキスよ!」

 

不明機と向かって行ったサリアはヴィルキスのライフルで攻撃するも不明機は遊んでいるかの様にかわす。それにはサリアは怒りが溜まる。

 

「馬鹿にして…!」

 

そんな時にジルの言葉を思い出す。

 

《アンジュとヴィルキスがなければ、その機体は抑えられん。》

 

「アンジュなんて…ちょっと操縦が上手くて、器用なだけよ!!」

 

《どんなに頑張っても出来ない者は出来ないのだ》

 

「違う!そんな事ない!」

 

それにサリアは否定するかのように頭を横に振る。

 

「そんなはずない! 誰よりも頑張って来たのよ!!私!!」

 

《無駄だ》

 

っと目の前に不明機が現れヴィルキスを蹴り飛ばし、海へと落ちて行く。

 

「追って!ヒルダ!」

 

「何する気!?」

 

「飛び移るわ!」

 

「はあぁ!?もう、アンタらしいか。突っ込むよ!」

 

ヒルダはアンジュの言う事に従い、落ちていくヴィルキスへ接近する。サリアはヴィルキスを動かそうとするも、反応がなかった。

 

「どうして動いてくれないの!?動いてくれないと…ダメなのよ。大好きなアレクトラの役に…立てなくなっちゃう…」

 

サリアは余りの悔しさに涙を流す。そしてヴィルキスの上にヒルダのグレイブが到達する。

 

「今だ!行け!痛姫!」

 

ヒルダの掛け声と共にアンジュはヴィルキスへと飛び移った。

 

「良し!」

 

アンジュは急いでヴィルキスの操縦桿を握る。

 

「無理よ…落下限界点を超えてる。このまま落ちるしか…」

 

「無理じゃないわよ!この機体なら!」

 

アンジュは操縦桿のアクセルを捻る。するとヴィルキスのモニターが起動し、サリアはヴィルキスがどうして動いたのかも分からなかった。海面ギリギリでヴィルキスが飛翔し、海水が二人を濡らす。

 

「サッパリしたわ!」

 

アンジュは海水で風呂代わりをし、ヒルダに通信を入れる。

 

「ヒルダ!」

 

『何?』

 

「落とすから受け取って!」

 

『はっ!?』

 

その事にヒルダは驚きを隠せず、そしてアンジュがサリアを放り投げた。

 

「うわわわああああ~~!!!!」

 

「ええ~~!!??」

 

ヒルダは突然の事に慌てて拾いに行き、何とかサリアをキャッチして後部に乗せる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…、別料金だぞ!!馬鹿姫!!」

 

それにアンジュは笑みを浮かばせて、不明機を見る。

 

「じゃあ!やりましょうか!」

 

アンジュはヴィルキスを飛翔形態から駆逐形態へと変形させ、不明機へと向かう。不明機も右腕部に装備された伸縮式のソードを展開し、アンジュとの互角の戦いを繰り広げていた。

 

『スッゲ〜!』

 

ヴィヴィアンは二人の戦闘に思わずを声を上げる。不明機は腰部に装備していた銃剣型バスターランチャーを持ち、アンジュに目掛けて撃つ。アンジュはそれを舞うかの如く、光線を回避し、ラツィーエルを振る。不明機は銃剣で防御するが、蹴り飛ばされる。アンジュは不明機との距離を取る。

 

「♪〜♪〜」

 

すると不明機から綺麗な歌が響く。そして機体の色は赤色から金色へと変わり、両肩部が展開する。

 

「っ!?この歌は…!?」

 

不明機から奏でられる歌を聞くアンジュはそれに流れるかのように歌い出す。

 

「♪〜♪〜」

 

するとヴィルキスのモニターが光だし、天使のマークが表示する。それと同時にヴィルキスのバイザーが赤く光り、白から黄金へ変色、不明機と同じ、両肩部が展開し、破壊兵器の発射準備をする。それは近くにいるヒルダ達や臨時司令部のジルも目にする。

 

「あれは!?」

 

「「♪〜♪〜」」

 

ヴィルキスと不明機から一気に光学兵器の破壊光線が発射されて、同時にぶつけ合う。強烈な光が二機を包み込み、アンジュは目を開けると不思議な空間にいた。そして目の前に不明機が現れ、声が響く。

 

「何故偽りの民よ。真なる星歌を?」

 

不明機のコックピットが開き、中から美しく綺麗な女性が現れる。

 

「え?」

 

アンジュも負けず、コックピットから出てくる。

 

「貴女こそ何者!?その歌は何!?」

 

するとアンジュと美少女の回りにある光景が広がる、それはある服装や戦争をしているアンジュ達の姿をしていて、それにアンジュ達は目を奪われる。

っとその女性からの機体にある警報がなり、アンジュの方を向く。

 

「時が満ちる…か。」

 

少女はそう言い、コックピットの中へ戻る。

 

「あ!ちょっと!」

 

「真実は…『アウラ』と共に。」

 

アンジュが慌てて止めようとするが、不明機は生き残ったドラゴンと共に、特異点の中へと消える。

 

『未確認機、ドラゴン、共に撤退しました。』

 

「真実?」

 

アンジュは少女が言った言葉に疑問を抱き始める。そして臨時司令部ではジルがヴィルキスの事を考える。

 

「なるほど。最後の鍵は…“歌”か。」

 

ジルはその事を考えながら、タバコに火を付ける。

 

 

 

一方、サリアはヴィルキスの本当の力と自信がヴィルキスの継承者ではない事に、理解していた。

 

「(あれが本当のヴィルキス…ジルの言う通りだった。)」

 

「やれやれ、何とか終わったみたいね。」

 

ヒルダが落ち着いていると、サリアが抱き着いてきた。

 

「あ、アンジュと全然違う感触。」

 

「えぇ、違うわ。全然違った…。」

 

サリアは悲しそうな表情でヒルダに言う。

 

「ヒルダ…」

 

「今度は何?」

 

「……臭い」

 

「はぁ!!?」

 

ヒルダはサリアの言葉に思わず声を上げる。その後、ジルは不明機の破壊兵器によってえぐられたアルゼナルを眺めていた。するとジルの元にマギーがやってきた。

 

「散々たる有様ってやつだね。マズイ事になった…」

 

「これ以上にか?」

 

「プラントがやられた。」

 

「!?」

 

マギーが放った言葉にジルは驚く。そしてアルゼナル内ではヴィヴィアンが自分の部屋の有り様を見る。

 

「うわぁ!ひっど〜い!……まぁいっか!」

 

ヴィヴィアンはそんな事気にせず、ハンモックの上で横になる。

 

「アンジュ、綺麗な歌だった…にゃ〜……♪」

 

《どれだけ持つ?》

 

《分からん…だが。》

 

この後、ヴィヴィアンの身体に異変が起きている事をアンジュ達は知る由もしなかった。

 

 

 

 

 

その頃、アーサー達は家でのんびりしていたその直後、アーサーを含むオリヴァルト、シェレザール、クリストバル、セレスティア、ギル、キーラ、メナに異変が起こる。

 

「うっ!!?」

 

アーサーの頭に強烈な頭痛が襲い、それにアーサーは思わず苦しみ出す。

 

「どうしたの!?」

 

「頭が痛いっ!痛い!!」

 

アーサーは頭を抑えていると、オリヴァルト達も激しい頭痛に襲われ、倒れる。

 

「《うぅ…!!》」

 

「“ビ…ルキス”ッ!!!!」

 

「ビルキス?」

 

「呼んでいる!」

 

「え…?」

 

「呼んでいるっ!!…ビルキスがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

アーサーの目が真っ赤に輝くと同時に、アルゼナルに格納されているヴィルキスのバイザーが赤く点滅し始める。

 

 

 

 

 

また別の方ではFather・Xとモルドゥレイス、ユーティスは目の前にあるカプセルの前にいた。

 

「ユーティス、それを貸せ。」

 

ユーティスはFather・Xから貰った小さな水晶玉を渡す。水晶玉には紫色に蠢く人の邪な力【マイナスエネルギー】が入っており、水晶玉を機械に入れる。すると水晶玉からマイナスエネルギーが解き放たれ、カプセルの中にいる巨漢の男に入っていく。

 

「最後は…」

 

次にFather・Xが取り出したのは先日のアーサーとユーティスの激闘によって採取できたアーサーとタスク、ライド、エクエスの血液が入った小さなカプセルであった。Father・Xはそれを水晶玉を入れた機械に嵌め込むと、四つのカプセルが移動し、カプセル内の注射器が起動し、巨漢の男の各部に刺す。

 

装置の電源を切る。するとカプセルが開き、中から巨漢の男が身体にバイオ液で濡れたまま起き上がる。

 

「“X”…気分はどうだ?」

 

Father・Xは男に問う。

 

「……俺は。」

 

巨漢の男は辺りを見渡す。

 

「君は12年前に…心が絶望と憎悪に染まったアルトリウス・コールブランドにやられ、瀕死の状態へと追い込まれた。そして今、君は蘇ったのだよ。」

 

するとXが鋭いサメのように並んだ歯を食い縛り、握り締めた拳を地面に叩きつける。地面に激しい亀裂ができ、Xは激しく呟く。

 

「アルトリウス…っ!!あの糞ガキャッ!!痛い目に合わしてやる!!!!」

 

怒り出すXを密かに見るモルドゥレイスとユーティス。

 

「(父上…まさかと思ったが、予想通りであった。コイツだけは世に放ってはいけない。当時のXは目的の為なら手段も問わない。さらには《インゴの将》とも呼ばれ、奴の頭は『酒』『金』『薬物』『戦い』そして『女』の事しか考えない。特に女の場合は何人も犯し、さらには女は喰い殺すと言う。世に放ってはならぬ怪物だ!!)」

 

「(あれがお師匠様の『最狂最悪の切り札』?見た目はただの筋肉だと思うが…)」

 

二人がそう思っていると、XがFather・Xに問う。

 

「っで、俺に捧げる“雌人間”は?」

 

「(出た、Xの悪い癖が…)」

 

するとXがモニターに表示されている物を見る。

 

「コイツは誰だ?」

 

「Father・Xがモルドゥレイスの妻を寝取り産ませた子らしい。」

 

モニターに表示されている人物ーーーそれはフェリスであった。Xは彼女を見て、不気味な微笑みを舌を舐めずる。

 

「……決めた。コイツは俺の女だ。」

 

「私の娘をか?」

 

「そうだ!ついでにアルゼナルにいる雌人間も!」

 

「フフフ…良かろう!好きなだけ捕まえて来い!但し!エンブリヲが必要とする該当するメイルライダーだけは捕まえるなよ…」

 

「(っ!!?)」

 

「(マジかよ…!?)」

 

Xは楽しげな笑い声を上げながら、彼の専用の邪星神『ダイロギアンX』を見上げる。

 

『Now! Hunting time! !』

 

Xの口角から線が現れると、口が耳まで裂け、サメの様に並んだ鋭い歯を噛みながら音を立てるのであった。



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チャプター25 ドラゴンの正体

ある場所に無数の島が浮いていて、その場所に社交場の様な丸くて大きなテーブルが置いてあった、その場所に各国の首相達が集まっていて。

彼らの回りにはアルゼナルを襲撃しているドラゴンの映像が映し出されていた。

 

「ドラゴンが自ら攻めて来るとは…」

 

「それにこのパラメイル、まさかドラゴンを引き連れて?」

 

一人の首相であるエンデラント連合大統領の目に映る映像にはあの不明機が映し出されていた。

 

「シンギュラーの管理はミスルギ皇家のお役目、ジュリオ…いえ陛下。ご説明を」

 

女性の首相であるヴェルタ王朝女王がジュリオにシンギュラーの発生に付いて聞いてきた。

しかしジュリオは頭を傾げながら言う。

 

「それが、アケノミハシラには起動した形跡が全くないのです」

 

「馬鹿な!あり得ん」

 

肥満な首相であるマーメリア共和国書記長がジュリオの説明に納得が行かない事に拳をテーブルに叩き付ける。

 

「直ちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

「だが、そうも行かんのだ」

 

っと年老いた首相であるガリア帝国皇帝がマナで次の映像を映し出す。すると光学兵器を発射する黄金のヴィルキスの映像が映し出された。

 

「この機体…まさか!」

 

「ヴィルキスだ」

 

それにはジュリオを含め各国の元首達は言葉を詰まらせていた。

 

「前の反乱の時に破壊された筈では?」

 

「アルゼナルの管理はローゼンブルム王家の役目。何故放置していた?」

 

それにはローゼンブルム王家の国王は表情を歪めながら黙る。

 

「監察官からは異常なしと報告を受けていた…」

 

「まんまとノーマにあしらわれていたと言う事か、無能め」

 

そう肥満体のマーメリア共和国の書記長は腕を組んで呟く。

 

「これでは一国の王女がノーマごときに誘拐されても無理はない」

 

「むっ?ミスティの事を愚弄するなら、機構とて容赦はせんぞ!」

 

「お二人とも、落ち着いて。」

 

「黙れ小僧!私の娘を拐かしたのは貴様の妹ではないか!」

 

「あれはもう、妹ではありません。」

 

「そんな言い訳が通じるか!この罪人の一族が!」

 

「おやめなさい、今はどう世界を守って行くかを話し合うべき時」

 

ヴェルタ王朝女王が皆にそう言い聞かせ、一人の首相が言う。

 

「ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか?」

 

っとその事に各国の首相達は思わず戸惑いの声が上がる、そして木の裏で聞いていた一人の男性が立ち上がる。

 

「どうしようもないな…」

 

「え、エンブリヲ様?!」

 

ガリア帝国皇帝が思わず言う。世界最高指導者であるエンブリヲは皆の所に行く。

 

「本当にどうしようもないな…」

 

「し、しかし…ヴィルキスがある以上アルゼナルを再建させるには…」

 

「なら選択権は二つだ」

 

それに皆はエンブリヲに目線が行く。

 

「“一、ドラゴンに全面降伏する”」

 

「「「!!?」」」

 

それには思わず息を飲む元首達、エンブリヲは構わず言う。

 

「“二、ドラゴンを全滅させる…”」

 

「そ!そんな…!」

 

「だから…“三、世界を作り直す”」

 

っとそれにはジュリオが反応する。

 

「え?」

 

「全部壊してリセットする。害虫を殺し、土を入れ替える。正常な世界に…」

 

エンブリヲは肩にのって来た小鳥をなでながら言う。

 

「壊して作り直す…、そんな事が可能なのですか?!」

 

それにエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「すべての『ラグナメイル』とメイルライダーが揃えばできる。」

 

「素晴らしい!作り変えましょう、今すぐに!そもそも間違っていたのです!忌々しいノーマと言う存在も!奴等を使わねばならないこの世界も!」

 

「馬鹿な!ここまで発展した世界を捨てろと言うのか!?」

 

「では他に方法はありますか?」

 

「それしかない…」

 

「じゃあ、庭の道具を使うと良い。気を付けて、ジュリオ君♪」

 

「お任せ下さい!エンブリヲ様!!」

 

ジュリオはそう言い、エンブリヲと他の首相達は消える。そしてジュリオはマナを解いてミスルギ邸の執務室へと戻っていた。

 

「出るぞリィザ」

 

側に控えていたリィザにそう告げると、ジュリオは彼女を伴って自室を後にした。そんな彼の執務机の裏に盗聴器が仕掛けられてあるなどとは、ジュリオは思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

「随分と勝手出たなぁ…。“全部壊して新しく作り直す”…か、急がないとな。」

 

タスクはそう呟き、アルゼナルへ向かうためにヴィンセクトに乗り込む。

 

「ん?」

 

すると通信機からアーサーからのメールが届く。タスクはメールの内容を見ていく。

 

“タスク、元気してるか?俺たちは突然の事でアルゼナルへ向かう事となった。お前も急いでアルゼナルに向かってくれ…。それと俺、フェリスと結婚しちゃいました〜♪”

 

「えぇっ!?」

 

メールに写真が添付されている画像が表示される。それは白の五つ紋付羽織袴を着たアーサーと白無垢を着たフェリスが一緒に写っていた。

 

“忙しい事かもしれないが、祝ってくれ♪それじゃあ!”

 

メールの内容を確認したタスクは呟く。

 

「後でアーサーとフェリスに何かプレゼントを考えないとな。」

 

タスクはアーサーとフェリスの結婚祝いの品を考えいたその時。

 

『……♪』

 

タスクの背後からFather・Xが不気味な笑顔で微笑む。

 

「っ!!」

 

タスクは背後から突然の畏怖感に気付き、セレモニアル・ダガーを取り出し、振り向く。しかし、そこに誰もいなかった。

 

「今のは何だったんだ……」

 

アルゼナルへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

一方、クラウドブルースカタパルトデッキにはアーサー達がいた。任務はアルゼナルへの航行とそこの司令官であるジルやノーマ達との同盟の事であった。アーサーは自分のフラドーラに新たな武装の取り付け準備をしていると、フェリス達が見送りに来ていた。フェリスはアーサーに手作りのお弁当を渡す。

 

「じゃあ、行ってくる。」

 

「アル、気を付けてね。」

 

「うん、ミントもお利口さんで待ってるんだぞ。もし寂しくなったら、これを俺だと思ってな♪」

 

アーサーはミントに木彫りの鳥を渡す。

 

他にも長男 クリストバルと義姉 セレスティアは生まれたばかりであるクリストバルとセレスの息子 『ヤマト・カレトヴルッフ』を抱いた。するとフェリスがアーサーに優しく抱きつく。

 

「フェリス?」

 

「ちゃんと…帰って来て。」

 

「……行ってきます♪」

 

アーサーがそう言うと、フェリスがアーサーにキスをする。アーサーは何事もなくそれを受け止め、フラドーラに乗り込み、フェリス達へ大声で言う。

 

「必ず戻ってくるから!」

 

武装したアーサーのフラドーラが発進し、それに続くかのようにそれぞれの武装をしたライド達の超星神達が発進する。するとアーサーのフラドーラにトウジが通信してきた。

 

『奥さんから“行ってらっしゃいのキス”してただろ?』

 

「見てたんか…」

 

『全く…この幸せ者が!』

 

『ハハハ♪』

 

『分からないことがあったらいつでも相談に乗ってやるぞ。“同士”として。』

 

エミリーとクサビも通信してきて、アーサーは呆れる。

 

「さて、行くか!!」

 

アーサー達は急いでアルゼナルへ向かう。それを見送ったフェリスは空を見下ろしていると、急な吐き気が彼女へ来た。

 

「……っ!?」

 

フェリスは急いで化粧室へと入り、手洗い場で吐く。

 

「お姉ちゃん?」

 

心配になったミントとクレイン、ランスが駆け付ける。

 

「姉さん、どうしたの?」

 

フェリスは落ち着くと、自身の下腹部に触れる。

 

「……まさか。」

 

 

 

 

 

 

その頃、アルゼナルでは先の襲撃によって復旧作業が続いていた。ジャスミンはブルドーザーを動かし、撃退したドラゴン達の死体を大きな穴へ落としていく。メイと整備班達は生き残った部隊のパラメイルの大修理、マギーは看護師達が負傷した人達の手当て、そしてアンジュ達はヒルダ達と共にアルゼナル甲板部におり、ジルの前に集合していた。

 

「生き残った者はこれだけか……。指揮経験者は?」

 

ヒルダが無言のまま手をあげる。

 

「全パラメイル部隊を再編成する。暫定隊長はヒルダ、エルシャとヴィヴィアンは補佐に付け。」

 

「はぁ!?コイツ脱走犯ですよ!脱走犯が隊長って!?」

 

「サリアで良いじゃないですか!」

 

尚も食い下がる。余程ヒルダの裏切りが許せないのだろう。

 

「アイツには…命令違反で反省房だ。」

 

「文句あるなら、アンタがやれば?」

 

それまで大人しくしていたヒルダが、気だるい感じでロザリーやクリスに振り返った。

 

「し、司令の命令だし、仕方ないし認めてやるよ。な、クリス?」

 

「う、うん!」

 

慌ててそう言い繕うロザリーにクリスが同調する。こうなるだろうことは予想していたとはいえ、ヒルダは面白くなさそうにそっぽを向いた。

 

「パラメイル隊は部隊編成の後、警戒態勢を張れ。」

 

「《イエス マム!》」

 

総員敬礼を返すと、解散する。命令を下したジルは一服するためだろうか、いつものようにタバコに火を点けた。そして、懐から一枚の紙を取り出すとそれに目を走らせる。

 

「“壊して作り直す”…か。」

 

「ねぇ、私の謹慎……終わったのよね?」

 

不意に、声がかけられる。振り向くと、そこにいたのはモモカを従えたアンジュであった。アンジュは確かめるようにジルに問う。

 

「…あぁ。」

 

「じゃあ全部教えて……約束でしょ?」

 

「このクソ忙しい時にか?」

 

ジルが鬱陶しそうにタバコの煙を吐いた。

 

「皆んなが助かったの…誰のおかげ?」

 

少しの間その場を沈黙が包んだ。が、すぐに、

 

「良いだろう…但し“侍女”は無しだ。」

 

そう切り捨てられ、モモカが「あうぅ〜…」と本当に悲しそうな声を上げた。そしてアンジュはジルの後をついていく。

 

「おい!どこ行くんだ!?このクソ忙しい時に!」

 

そんなアンジュに、ヒルダが毒づく。が、二人の歩みを止めることにはならなかった。

 

「あれ?ヴィヴィちゃんは?」

 

ヒルダの横にいたエルシャがその時始めて、この場にヴィヴィアンがいないのに気づいたのだった。

 

 

 

大破した居住区にあるサリアとヴィヴィアンの私室。ヴィヴィアンがいつも寝床にしているハンモックがグラグラ揺れると地面に落ちた。

 

「(いったい〜!落ちてる、何で?……うわぁ!寝過ごしんぐ!)」

 

寝惚けた様子でヴィヴィアンが呟く。招集がかかっていたにもかかわらず私室で寝ていたらしい。いい加減というか大物というか、流石はヴィヴィアンであった。

ゆっくり目を開けながら、まだ完全に覚醒してないためか周囲を見渡す。と、時計が目に入ったのだろうか、慌てて起き上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アンジュがジルに連れられ、行き着いた場所はシャワールームが崩壊した浴場であった。

 

「何でお風呂?」

 

「秘密の話は曝け出してするもんだ。で、何から聞きたい?」

 

「最初からよ。『ドラゴンとあの女』『私のパラメイルとお母さんまの歌』『あなたとタスクの関係』『“グランセイザー”と名乗る12人』…全部よ。」

 

アンジュは確かめたい事を言い、ジルは話す。

 

「分かった……“昔々、あるところに神様がいました。繰り返される戦争とボロボロになった地球に神様はうんざりしていた…。”」

 

「は!?何の話!?」

 

「初めから全部だろ?」

 

ジルはそう言い、話を続けていく。

 

 

“平和、優愛、平等…口先ではビジネークを謳いながら、人間の歴史は戦争、憎悪、差別の繰り返しです。

それが人間の本質、何とかしなければ、いずれ滅んでしまう…そこで神様は、新しく創ることしました…【新しい人類】を。

争いを好まない、穏やかで賢い人間…あらゆる物を思考で操作する高度情報化社会テクノロジー 『マナ』 凡ゆる争いが消え、凡ゆる望みが叶い、凡ゆる物を手にすることが出来る理想郷が完成したのです。

あとは、新たな人類の発展を見守るだけのはずでしたが、生まれてくるのです。神様が何度操作しても、何度創り直しても、何度システムを変えようとも、マナを使えない女性の赤ん坊が古い遺伝子を持った突然変異が現れた。突然変異の発生は、人々を不安に駆り立てました。

ですが神様は、この突然変異を逆に利用することにしたのです。彼女達は世界を拒絶し、破壊しようとする反社会的な化け物である『ノーマ』だと、人々に植え付けたのです。

マナを持つ人々は、差別できる存在がいることに安堵し、彼らの社会は安定しました。”

 

“こうしてマナの世界は安定し、今度こそ人類の繁栄の歴史が始まるはずでした…しかし、それを赦さない者達がいました。

『古の民』と呼ばれる者達です。彼らは突然世界から追放された『マナ』が使えない古い人類の生き残りの事です。彼らは何度も反乱を起こした。自分達の居場所を取り戻すために、何度も神様に挑み、その度に神様の怒りに触れてしまい、古の民は虫けらのように殺されました。それでも彼らは諦めることなく、仲間達の死を乗り越え、永きに渡る戦いの末、遂に手に入れたのです。破壊と創造を司る機械の天使『ラグナメイル』を。”

 

 

ラグナメイルと言う言葉に、アンジュは気がつく。

 

「それがヴィルキス…」

 

 

“これで神様と対等に戦える…古の民はそう喜び、ヴィルキスに乗り込んだ。だが、彼らにはヴィルキスは使いこなせなかった。『鍵』がかかっていたのさ.....虫けら如きが使えないようにな、古の民は絶望し、ヴィルキスを封印した。残された仲間もあと僅か…このまま滅びようとしていたまさにその時、世界の果てに送られたノーマが、パラメイルに乗ってドラゴンと戦わされていると知ったのは。

そして出会った。”古の民”と”ノーマ”…捨てられた二つの人類が。彼は手を組み、鍵を開く者の出現を待った…そして、ヴィルキスを扱えるノーマがついに現れた…アレクトラ・マリアフォン・レーベンへルツ…王族から生まれた初めてのノーマだ。”

 

「アレクトラ・マリアフォン・レーベンヘルツ…聞いたことがあるわ、確かガリア帝国第一皇女だった。でも、10歳で病死したって…」

 

「バレたのさ…ノーマとね。」

 

“アルゼナルに放り込まれ、自暴自棄だったアレクトラ。彼女の高貴な血筋と指輪が、ヴィルキスの鍵を開いた。彼女の元に、多くの仲間が集まった…・ヴィルキスを導く紅蓮の聖騎士、ヴィルキスを守る紫電の騎士、ヴィルキスと戦う琥珀の戦士、ヴィルキスに知らせる紺碧の諜報員、ヴィルキスを治す深緑の甲冑師、ヴィルキスを強くする漆黒の巨人、ヴィルキスと駆け巡る純白の天馬、医者、武器屋、犬。始まったんだ。捨てられた者達の逆襲…『リベルタス』が。”

 

ジルは過去の出来事を話し終える。

 

「地獄のどん底で、私は使命を得た。“この作り物のクソッタレな世界を壊す”と言う使命をな。だが、私には足りなかった…。全部吹っ飛んでしまった…右腕も仲間も全部…。だが、復讐を終わらせるわけにはいかない…死んでいった仲間のためにも…。そこにアンジュ、お前が現れたんだ。」

 

「っ!?」

 

ジルはアンジュを見る。その一方、反省房で悲しき表情でヴィルキスに選ばれなかった事で悔やむサリアは呟く。

 

「ジルの嘘つき…私じゃ…ダメだったのね…。」

 

 

 

 

「そして…“アーサー”と名乗る者。アイツの乗っていた赤い機体はかつて、『ヴィルキスの聖騎士』であった者が使っていた。あの時は分からなかったが、西十郎やヒルダを運び込んでくれた黄と青の機体がこのアルゼナルへ来て思い出したよ。フラドーラ…元の名は『ガルーダ』。覚えていないか?」

 

「!!」

 

アンジュは最初の出撃でであった赤い機体を思い出す。

 

「(あの赤い機体…私を助けたのは、アーサー!?)」

 

「ヴィルキスの鍵は開いた。お前が壊すんだ、アンジュ…あの歌でこの世界を。」

 

アンジュは全ての話の辻褄が合わさったかのように、指輪を見る。

 

「この指輪を戻したのは…あなただったのね。」

 

「そうだ。」

 

「私を生かしたのは…あなたの復讐の復讐のため…。そのリベルタスのため…」

 

「その通りだ。お前には強くなって貰わなければならなかったからな」

 

「皇女 アレクトラ…か。あなたには感謝してるわ。」

 

「?」

 

「あなたのおかげで私がどれだけ世間知らずで、甘ったれで、人生をなめていたのか、思い知ることが出来たわ。だから…答えはノーよ。」

 

「ほぉ…?」

 

「神様とかリベルタスとか百歩譲って本当だとしても、私の道は、私が決める。」

 

「それがどんなに崇高な使命でも、自分で見て、自分で決める。誰かにやらされるのは御免なの」

 

「では…リベルタスには参加しないと?」

 

「そうか…」

 

アレクトラが分かったかのように、浴場から去ろうとした時、アンジュは肝心な事がまだ話されていない事に気づく。

 

「そういえば、今の話…ドラゴンが出てきてないけど…。」

 

 

 

 

「何か…背が伸びた気がする? 成長期かな?」

 

しかしその時に自分の身体に異変が起きている事にまだ気が付いていない。

そこにエマが通り過ぎて、ヴィヴィアンは気づく。

 

「あ!エマ監察官だ! おーい!」

 

「っ!? え!エマ監察官だ〜〜〜〜!!!」

 

悲鳴を上げながらエマはそのまま気を失い、慌ててヴィヴィアンは駆け寄る。

 

「うわ!大丈夫…って!うわ!」

 

ヴィヴィアンは自分の手を見て驚く、それは全く自分の手じゃない何かの手だった。

 

「何じゃこりゃ?! …うえ!」

 

っとヴィヴィアンは目の前にあった鏡を見て驚く。今のヴィヴィアンは人ではなく『ドラゴン』だったからだ。

 

「これあたし~!!?」

 

「なに?今の」

 

偶然に近くに居たパメラ達が駆け寄り、ドラゴン態のヴィヴィアンを見て悲鳴を上げる。

 

「「「うわあああああああ!!!」」」

 

『(うわ~~~!!!)』

 

ヴィヴィアンも慌ててその場を離れて行き、パメラがすぐに無線で基地内に知らせた。

 

そして今の時間帯となり、臨時司令部で指揮を暫定副隊長のヒルダは各自に指示を与えていた。

 

「ロザリーとクリスは居住区、ココとミランダは整備区、エルシャはサリアを出してジャスミンモールを捜索」

 

「イエス・マム」

 

「他は此処で警備、ヴィヴィアン?ヴィヴィアンは何処?」

 

ヒルダはヴィヴィアンが居ない事に問い、エルシャはそれに答える。

 

「それが部屋にも居なくて…」

 

「何処に行ったんだろう」

 

それに皆は頷いて動く。

 

その頃ヴィヴィアンは何とか食堂の方に逃げ切っていた。

 

『はぁ~お腹空いた~…、う~…何でこんな事に?』

 

すると厨房からなにやら良い匂いがし、それにヴィヴィアンはつられて行く。

目の先には土鍋にカレーが入れてあった。

 

『やっぱりカレーだ~! いっただっきま~す!』

 

っが土鍋を持った瞬間につぶれてしまい、それにヴィヴィアンは頭を傾げる。

 

『あれ?、どうなってるの? あっアタシ今この状態だった』

 

自分の今の姿を忘れる所だったのか頭をかきながらつぶやいてる中でアーサーが見つける。

 

「見つけた!」

 

それに突然の声にヴィヴィアンが振り向く。

 

「いたわ!」

 

食堂に来たサリアとエルシャがライフルを構える。

 

『(サリア!エルシャ!)』

 

ヴィヴィアンは悲鳴を上げながら食堂の外へ飛び立つ。

 

「追うわよ!」

 

ヴィヴィアンは慌てながらアルゼナル上空を飛んでいると、

 

『(アンジュ)』

 

『♪〜♪〜』

 

「これって…!?」

 

「♪〜♪〜(どうしてこの歌を…?)」

 

「何やってんだ、あの馬鹿!」

 

バアァンッ!!

 

「うわぁっ!!殺す気か!あの糞アマ!」

 

「♪〜♪〜」

 

「アンジュ!離れなさい!」

 

「ジル…!?」

 

「ここでクイズです。“人間なのにドラゴンなのってだ〜れだ?”あ!違うか…“ドラゴンなのに人間”…?あれ…あれれ?意味…分かんないよ」

 

自分がドラゴンだった事に戸惑うヴィヴィアンは泣いて混乱している中で、アンジュは優しく声を掛ける。

 

「分かったよ私は…、ヴィヴィアンだって。おかえり、ヴィヴィアン…。」

 

「あ、有難う…アンジュ、分かってくれたの…アンジュだよ」

 

っとヴィヴィアンはアンジュに抱き付いて泣きつき、後からやって来モモカ達今の光景に目を奪われる。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「どうなってんだよ?」

 

「今、ドラゴンからヴィヴィアンが出て来た様に見えたけど……」

 

そこにマギーがやって来て、ヴィヴィアンに麻酔を撃ちこみヴィヴィアンを眠らせて、マギーはヴィヴィアンを抱いてその場から去って行く。

 

見送ったアンジュはアルゼナルの抉られた場所に捨てられているドラゴンの死体の山を見る。その時、アンジュはヴィヴィアンの言葉を思い出す。

 

 

『“人間なのにドラゴンなのってな〜んだ?”……“ドラゴンなのに人間…?”……』

 

 

「っ!? 」

 

「アンジュリーゼ様〜!」

 

そしてジャスミンが死体を集めた所でガソリンをまき、ライターに火をつける、っとバルカンがアンジュ達に向かって吠え、それにジャスミンは振り向く。

 

「来るんじゃないよ!」

 

そう言ってジャスミンはライターを死体の山に投げ、死体を燃やし始めた。

アンジュ達は燃えている死体に驚きの光景を目にする。ドラゴンの死体の中に人間の姿も紛れていた。

 

「何…これ?」

 

「ドラゴンが…人間に」

 

その光景に皆がくぎ付けられてる中で煙草を持っているジルが来る。

 

「よくある話だろ?『化け物の正体は人間でした』…なーんて」

 

それにアンジュは息を飲み、再びドラゴンを見る。そして今までの事を思い出す。自分がドラゴンを殺し……そして倒していく光景に。

っとアンジュは思わず口を抑え、地面に向けて嘔吐する。

 

「う!うえぇぇぇぇ!?!」

 

「!!? アンジュ!!」

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

タスクとモモカが心配する中でアンジュの頭の中は混乱していた。

 

「私…人間を殺していた…? この手で?…この手で…!?」

 

タスクと出会った島で、ドラゴンをナイフで刺した光景……本来ドラゴンのイメージが血まみれの人間へと変わっていく。

 

それにジルは煙草を吸い、吹かしながら言う。

 

「気に入ってたんだろ?ドラゴンを殺して金を稼ぐ…そんな暮らしが。」

 

そしてアンジュはジルを睨みながら怒鳴る。

 

「くたばれクソ女!!!もうヴィルキスには乗らない!!ドラゴンも殺さない!!! 『リベルタス』なんてくそくらいよ!!!」

 

その事にサリアはアンジュが知らないリベルタスを知っている事に思わず反応する。

 

「『神様』に買い殺されたままで良いなら、そうすればいい」

 

そう言い残してジルは去って行く。この時アンジュはこの時に決心した、アルゼナルの司令であるジルを信用する事は出来ないと…。

 

 

 

 

 

ジルが臨時司令部に戻って行く所だった。

 

「『神様』か…」

 

っと誰かの声が聞こえ、ジルは足を止めて振り向くと、そこにはエンブリヲが立っていた。

 

「私は自分から名乗った事は一度もないぞ? 『創造主』と言う意味であれば…正解かもしれんが」

 

世界最高指導者がアルゼナルに居た事にジルはすぐさまマグナムを取り出してエンブリヲに撃ちこむ、しかし弾丸はエンブリヲの身体をすり抜ける様に後ろに木に当たり、ジルはエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ…!!!」

 

「怒った顔も素敵だなアレクトラ…、今は司令官のジルか? ん?…おやおや、まさかあなた方来るなんてな…」

 

っとエンブリヲは違う方向を向いて笑みを浮かべ、それにジルはその方向を見ると西十郎の他に、全身をローブとフードで覆われた二人の男性と女性がやって来た。

 

「お前らは…!?」

 

「お久しぶりですね…“魔王 時沢アルト”」

 

「お前もな…エンブリヲ。」

 

「マリアンヌ様も……相変わらず凛々しくお美しい。」

 

「その声で私に褒め言葉を聞かせないで…。」

 

するとマリアンヌと名乗る女性の後ろから赤いマントを羽織り、仮面を付けた白騎士も現れる。白騎士は懐からレイピアを抜き、二人を守ろうと構える。

 

「何故です?せっかくの【弟】が実の姉と話しているのに?」

 

三人の衝撃的な会話にジルは驚きの表情を現すのであった。



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チャプター26 アルゼナル崩壊

お待たせしました。仕事が忙しく、さらには台詞を考えるのと本編を見ながらどの台詞を使うかに手間取ってしまい、長い文章になってしまいました。誠に申し訳ございません。

尚、今回の話で重要なキーワードが出てきます。


 

 

三人の会話を聞いていたジルは衝撃の言葉に混乱していた。

時沢アルトとエンブリヲが義兄弟関係だった事。自分の知らない事にジルはマリアンヌに向かって問う。

 

「おい貴様!お前がエンブリヲの姉だと!?」

 

「えぇ…貴方は本当のエンブリヲを知らない。いえ…知らな過ぎるのです。エンブリヲ、あなたは何故ここにいるのです?」

 

「私はここにはちょっとした用で来ている。だが姉さん達がここにいる事に…少し誤算だったがな。」

 

「貴方の思い通りにはさせないわ。」

 

「と言うわけだ…エンブリヲ。」

 

アルトは懐から金属の筒の様な物を取り出すと光の刃を伸長させた。白騎士も無言のままレイピアをエンブリヲに向ける。

 

「相変わらず義兄さんは怖い人だ♪もしかして…昔の事をまだ根に持っているのか?」

 

「黙れ…その口で私の事を義兄と呼ぶな。この裏切り者が!」

 

「おや?裏切ったのはあなた方二人では?」

 

「私は忘れないぞ…貴様が未来を照らす光であるラグナメイルを…自分の思うようにし、それを使って【調律者】と名乗り始めたあの日から!」

 

「そう言う貴方こそ…【崩壊者】と言うふざけた渾名は?」

 

「関係ないだろ…お前には!それに“彼”が本来あるべき記憶を呼び覚ませば、お前は“彼”を怒らせ、この世界は忽ち変革される。例えそれが全ラグナメイルが束になってもだ!!」

 

光剣を構え、白騎士と一緒にエンブリヲに向けると、ジルがエンブリヲにマグナムを向ける。

 

「どけ!エンブリヲはこの私が殺す!!」

 

「無理です。貴女にはエンブリヲは殺せません…何故なら貴女はーーー」

 

すると何処からか、マナの映像が表示される。

 

『こちらは、ノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆様、ドラゴンとの戦闘ご苦労様でしたこれより、皆さんの救助を開始します』

 

「これは貴方が?」

 

「フフフ…その通りだよ。」

 

「後で現状が露わになりますよ。」

 

「どう言う意味かな?」

 

「すぐに分かりますよ…」

 

マリアンヌとアルト、白騎士とエンブリヲはその場から消える。

 

「現れたら、後でたっぷりと聞かせて貰うぞ!(確か、アルトと言ったな。奴が言っていた“彼”…ラグナメイルが束になっても勝てない。そのような者が存在しているのか?なら答えは簡単……利用するまでだ!!)」

 

ジルはすぐに臨時司令部へと向かう。そして大使館の横にある甲板部から海を見上げるアルトとマリアンヌ。

 

「(エンブリヲ…いい加減現実を受け入れろ。お前が築き上げたものなんて、所詮はこうなるんだ。」

 

「あなたはクラウドブルースに戻り、この事をアリマ司令と評議会に報告して…ついに『新造人間』達が私達に宣戦布告」

 

「母様…御意に。」

 

白騎士はマリアンヌの命令に従い、その場から消える。

 

「本来なら、ここに来るアルトリウスにこれを渡したいが…。」

 

アルトは懐からある小型カプセルを取り出す。そのカプセルに入っている水色の液体の中、不気味なゲル状の物体が揺らめいていた。

 

「それを無理に彼に返していけない。時が来るまで……。」

 

「そうだな。“調律”、“崩壊”、そして『調和』を齎す運命に導かれし者……私はお前が成すべき使命と6000万年前の“記憶”が蘇るのを待っているぞ、我が友 アーサーよ。」

 

 

 

 

 

 

 

一方、突然委員会の艦隊が海域からやってきて、その放送を聞いていたアンジュ達、その放送を聞いていたモモカは嬉しながらアンジュに言う。

 

「アンジュリーゼ様、助けです! 助けが来ましたよ!」

 

「耳を貸なよ、戯言だ。」

 

「対空防御体制」

 

「「「イエス マム!」」」

 

「アルゼナル 対空兵器を起動!」

 

「やれやれ…平和的に事を進めたかったと言うのに。」

 

「旗艦 エンペラージュリオ一世より全艦艇へ。たった今ノーマはこちらの救援を拒絶した。これは我々…嫌、全人類に対する明確な反逆である。断じて見過ごす訳にはいかん!全艦攻撃開始!」

 

「小娘共、来るよ!」

 

「え?」

 

「クソ!遅かったか!無事でいてくれ、アンジュ!」

 

 

 

 

 

 

「攻撃して来やがった!」

 

「救助だなんて嘘だったんだ…」

 

『諸君…これが人間だ。奴らはノーマを助けるつもりなどない。物のように我々を回収し、別の場所で別の戦いに従事させるつもりなのだ。それを望む者は投降しろ。だが、抵抗する者は共に来い。これより、アルゼナル司令部は人間の管理下より離脱。反攻作戦を開始する。作戦名は…【リベルタス】。』

 

『志を同じくする者は、武器を持ち、アルゼナル最下層に集結せよ。』

 

「お前達はどうする?」

 

「共に参ります。司令と」

 

「サリア、アンジュを必ず連れて来い。」

 

「分かってるわ…」

 

「いつの間にこんな…」

 

「パメラ、操縦席に座れ」

 

「ヒカルはレーダー席、オリビエは通信席。全システム起動、発進準備だ。」

 

「「「イエス マム!」」」

 

 

 

 

 

「反抗ってどういうことだよ!」

 

声を上げたのはロザリーだった。

 

「司令に従って死ぬか、人間共に殺されるか選べってことでしょ」

 

ヒルダがインカムをつけながらそう答えた。そして、

 

「ヒルダ了解。指揮下に入ります」

 

インカムに向かってそう告げた。恐らく通信先はジルか、通信席にいるオリビエだろう。その回答に、ロザリーとクリスは驚いてヒルダを見た。

 

「人間たちには怨みも憎しみもある。反旗を翻すにはいい機会さ。それに、もうすぐ合流するんだ。反る理由なんかないだろ?」

 

『間もなく敵の第二波がくる。パラメイルで迎撃せよ』

 

「イエス、マム」

 

指揮下に入った理由を二人に説明した後で、ジルからの指令を了承するとヒルダは通信を切った。

 

「私も行くわ、ヒルダちゃん」

 

声をかけられ、ヒルダとロザリーとクリスの三人が振り返った。

 

「護らなくちゃね、大切なものを」

 

そこにいたのは、決意を固めた表情のエルシャだった。そしてその周りには、彼女の言うところの大切なもの…幼年部の子供たちが十重二十重に彼女を囲んでいた。

 

「人間に刃向かって、生きていけるわけないでしょ!」

 

そう叫んだのはクリスである。が、

 

「やってみないとわからないさ」

 

ヒルダが不敵な笑みを浮かべた。もう随分、いつもの調子が戻ってきたようである。

 

エルシャが同意すると、子供たちが喜んだ。

 

「そーゆーことさ。そうだろ、アンジュ?」

 

ヒルダが同意を求めるように振り返った。が、

 

「あ…?」

 

そこには先程まで確かにいたはずのアンジュの姿はなかった。

 

 

 

「ヴィルキスが最優先だ! 弾薬の装填は後回し! 非常用エレベーターに載せるんだ!」

 

整備デッキ、メイの指示が飛ぶ。その指示の下、整備班の隊員たちは一丸となってパラメイルの修理と補給を行っていた。

 

「メイ、発進準備は!?」

 

そこに、ライダースーツに着替えたヒルダたちがやってきた。

 

「えっ? ああ、いつでもいけるよ!」

 

メイが答える。ここでもヒルダ復帰の好影響か、メイの表情は先程までと違って非常に明るかった。声にも張りがある。と、

 

「あたしらもね」

 

彼方から声が上がった。ヒルダたちが視線を向けると、生き残った第三中隊の面々が同じようにライダースーツに着替えて、ヒルダたちに向かって敬礼した。

 

「ヒルダ隊長。ターニャ以下五名、出撃準備完了です!」

 

「よし」

 

頼もしい援軍に、ヒルダが満足げに頷いた。一方その頃、姿の見えなくなったアンジュはと言うと、サリアに後ろからライフルを突きつけられ、地下へと下りているところだった。

 

『第一中隊、出撃!』

 

オリビエの号令の下、オールグリーンとなった整備デッキで第一中隊が出撃し始める。まずは、新たに編入された五名が空へと舞い上がった。

 

「マジで人間と戦うのか?」

 

ロザリーが不安を口にする。パイロットスーツに着替えてここまで来たものの、やはり不安は拭いきれないのだろう。と、

 

「何、あれ?」

 

半壊している整備デッキから空を見ていたクリスが何かを見つけて指差した。ロザリーも視線を向けると、青い空を埋め尽くすかのように小型の何かが無数に浮かんでいたのだ。

円盤状のそれは暫く浮遊していたが、遠隔によるスイッチでも入ったのか上下が展開し無数の刃が飛び出た。そしてそれが高速回転して嫌な機械音を上げる。まるで空中浮遊する丸のこのようだった。

と、それが次の瞬間には降下してきてアルゼナルの地表に次々に突き刺さって削っていく。その影響で、整備デッキの一部が爆発、炎上した。

 

「!…退避!」

 

ヒルダが慌てて指示を出してその場から離れる。そのため人的被害はなかったものの、噴煙が収まった後の整備デッキには瓦礫が散乱してすぐには仕えない状態となってしまっていた。

 

「チッ!」

 

思わず舌打ちするヒルダ。

 

『た、隊長!』

 

そんなヒルダに通信が入った。

 

「どうした、ターニャ」

 

ヒルダが応答する。と、

 

『空に、空一面に未確認機が!』

 

先に出て迎撃に当たっているターニャたちが件の小型円盤と戦闘しながら、応援を要請するかのように叫んだ。そのうちの一機、イルマの乗るパラメイルが小型円盤から発射されたワイヤーに絡め取られて自由を奪われる。

 

「た、助けてー!」

 

恐怖に顔を引きつらせながらイルマは助けを求めたが、それは実ることなくイルマは無理やり空域を離脱させられたのだった。

 

『隊長! イルマが、イルマが連れて行かれた!』

 

「連れて行かれた…? どういう」

 

詳しい状況をヒルダが聞こうとしたその時だった。周囲が一瞬で真っ暗になったのだ。何が起こったのか…それは一足先に艦に乗り込んでいたジルたちが把握していた。

 

「発電システム、反応消失。基地内の電源、全てダウンしました」

 

「補助電源機動。攻撃による損傷か?」

 

「侵入者による攻撃です!」

 

状況確認のために尋ねたジルにオリビエが答えた。遂に到着してしまったのだ、人間たちの先鋒隊が。そしてそれによって、惨劇がそこかしこで繰り広げ始められた。

 

 

ジャスミン・モール。

つい先日までは大勢の隊員たちの憩いの場として賑やかだったここも、今では瓦礫の山に埋もれかけた廃墟になっていた。その中で、逃げ遅れた隊員たちが一箇所に集められ、跪かされて両手を頭に置かされている。そんな彼女たちを抑え込むように、何人かの武装した兵士たちがその周囲を囲んでいた。隊員たちは強要されているのか皆一言も喋らないものの、その表情は恐怖で満ちている。

そんな中、武装した兵士の一人がウインドウを開きながらそこに記された情報を滑らせていた。そこにあったのは、メイルライダーたちの一覧表だった。

 

「該当者、ありません」

 

その兵士がウインドウを閉じる。メイルライダーたちにとっては幸いだったが、兵士たちにとっては不幸なことにお目当てのメイルライダーはその隊員たちの中にはいなかった。

 

「本当に、殺すんですか?」

 

ウインドウを閉じた兵士が傍らの兵士に尋ねる。言葉遣いから、恐らく上官なのだろう。

 

「第一目標、アンジュリーゼ。第二目標、ヴィルキス。第三目標、メイルライダー数名。それ以外は処分だ」

 

何の慈悲もなくその兵士はそう告げると銃を構える。そして何一つ躊躇なく発砲し、処分して行く。するとそこに西十郎が現れ、閃光の如く煌めきで兵士達を無残な姿へと変えた。

 

「……ん」

 

すると西十郎が海の方を向く。

 

「やっと来たか。」

 

『敵がアルゼナル内部に侵入! 襲撃目的は、人員の抹殺! 総員退避! 逃げてーっ!』

 

パメラの悲痛な通信がアルゼナル全域に響き渡る。その間も、火炎放射や銃撃などで隊員たちが次々に若い生命を散らしていった。

 

 

 

「エルシャ!」

 

整備デッキでは通信を耳にしたエルシャが慌てて走り出した。その彼女をヒルダが呼び止める。

 

「ゴメン、すぐ戻るから!」

 

一瞬だけ足を止めて振り返ってヒルダにそう答えると、エルシャはすぐに再び走り出した。

 

「ったく!」

 

不満げな表情になって吐き捨てるヒルダ。と、

 

『デッキ上の各員に告ぐ!』

 

ジルからの管内放送が響き渡った。

 

『敵の狙いはヴィルキスだ。対象の地下への運搬を最優先事項とせよ!』

 

「整備班集合!」

 

ジルの通信を聞いたメイが整備班に集合をかけた。

 

「ヴィルキスは手動で降ろす!」

 

『イエス、マム!』

 

メイが判断を下すと整備班はすぐさま手動降下の準備に入り始めた。が、そうしようとした整備班の一人が不意に横から発砲されて絶命する。とうとう、整備デッキにまで攻めてきたのだ。そして時を同じくして医務室前。そこでも銃撃戦が繰り広げられていた。

 

「重傷者の搬送が最優先だ! ちょっとぐらい内臓が出てても我慢しろ!」

 

瓦礫に身を隠してライフルで兵士たちを牽制しながらマギーがそう指示を出す。その指示に従い、ここに身を寄せていた隊員たちは重傷者から搬送していた。

 

『(ったく、きりがないね!)』

 

ドンパチをしながらマギーが内心で悪態をついた。こちらは一人で向こうは数人。状況が不利なのは誰の目にも明らかだった。

今更弱音を吐くわけにもいかず、マギーは辛抱強く応戦を続けていた。と、

 

「助けて私、ノーマじゃない!」

 

パニックになっているのだろうか、助けを求めてエマが銃弾飛び交う中、兵士たちに駆け寄ろうとする。

 

「バカ!」

 

マギーが飛び掛ってエマを押さえ込む。その直後、その拍子に宙を舞った、いつも彼女が被っている帽子の中心を弾丸が正確に撃ち抜いた。

 

「殺されたいのか!」

 

マギーが吐き捨てた直後、その穴の開いた帽子が目の前に転がり、エマは顔を引き攣らせた。

 

「チッ!ここはもうダメか」

 

状況の悪化でマギーはそう判断すると、マシンガンを構えたまま医務室内へと滑り込んだ。

 

「撤退する!ヴィヴィアン!」

 

医務室で未だ意識を失っている彼女を起こそうと、マギーがヴィヴィアンの名前を鋭く叫んだ。が、

 

「該当あり。メイルライダーです」

 

いつの間にやってきたのか、医務室内部にも数人の兵士たちの姿があった。

 

「その子、どうする気だ!」

 

マギーがマシンガンを兵士たちに向ける。だが、僅かに兵士たちの発砲のほうが早かった。

 

「ヴィヴィアン!」

 

慌てて医務室を出たマギーがヴィヴィアンに呼びかける。だが、ヴィヴィアンの意識は戻らなかった。

 

「ヴィヴィアン!」

 

室外からもう一度叫ぶものの、やはりヴィヴィアンの意識は戻らなかった。数名の兵士たちが銃を発砲してマギーを牽制し、残りの兵士がヴィヴィアンを拘束して窓面から室外へと連れ去っていったのだった。

 

 

 

他方、整備デッキ。

乗り込んできた兵士たちと第一中隊は他の場所と同じように銃撃戦を繰り広げていた。と、当たり所が悪かったのか、一機のパラメイルの一部分が爆発して装備が吹き飛ぶ。

 

「あーっ! おニューの連装砲が!」

 

悲鳴を上げたのはロザリーだった。全く運のないことである。

 

「この野郎!」

 

この恨み晴らさでおくべきかとばかりにロザリーがマシンガンを発砲した。ヒルダも同じようにマシンガンをぶっ放す。

 

「もうダメだよ。私たち、死ぬんだ…」

 

一人、悲観的なのがクリスであった。彼女の場合は、もともとの性格に起因しているというのもあるのだろうが。

 

「死の第一中隊が、こんなところでくたばってたまるかってんだ!」

 

「今更隊長ヅラしないで!」

 

「はいはい」

 

激高したクリスを軽く受け流すヒルダ。と、その視界が正面に、こちらに向けてライフルを構えている兵士の姿を捉えた。

 

「危ない!」

 

思わず身を挺してクリスの盾になるヒルダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、崩壊していくアルゼナルを見て、ジュリオは嘲笑っていると…。

 

「へ、陛下!」

 

「どうしたのだ?」

 

「左舷から高熱原体多数がこちらに接近しています!モニターで映します。」

 

マナのモニター画面が表示される。そこに映し出された物はそれぞれ色が違う11機の機体であった。

 

「何だあれは!!?」

 

 

 

 

 

 

 

水飛沫を上げ、アルゼナルへと向かうアーサー達。煙と爆炎に包まれているアルゼナルを見て、ライド達が叫ぶ。

 

「クソ!遅かったか!」

 

「襲撃者は神聖ミスルギ皇帝 ジュリオ・飛鳥・ミスルギだ!」

 

「アイツか…アイツのせいでフェリス達は辛い目にあってきたんだ。その分の苦痛を味あわせてやる!!」

 

大切な妻やその義兄弟達を苦痛へと追いやった張本人に怒りを露わにするアーサーはフルスロットルでアルゼナルへと向かう。

 

「アーサー!」

 

「我々が同行します!」

 

「主君よ!早まってはいけません!」

 

ヤトウとリュウのフラドーラ・リヴァイヴとフラドーラ・サヴァイヴがアーサーのフラドーラと編隊を組む。

 

「ライド!エクエス!アルゼナル内に行って皆んなを助けろ!序でにタスクと会ったら一緒に行動してくれ!」

 

『『分かった!』』

 

「トウジ、ミクモ、ミュリエーナとガイは俺と来い!上空の円盤を殲滅するぞ!」

 

「《おう!!》」

 

 

一方、旗艦 エンペラージュリオ率いる艦隊の南南西上空に光学迷彩でカモフラージュしている穢れ騎士ゴリアテ級七番飛行戦艦『ガニメデ』

 

「ようやく現れたか…待ちわびたよ、アーサー!!」

 

背部にフロートパックを装備させたユーティス専用邪星神『バジリス』がガニメデのカタパルトから発進する。それに続くかのように量産型邪星神『ウィンミラー』も発進する。そして穢れ騎士ゴリアテ級八番飛行戦艦『マルドクス』の格納庫にあるX専用邪星神『ダイロギアンX』のコックピット内で乗り込んだXが過去を振り返っていた。

 

「あ〜…懐かしいなぁ、あのガキがあそこまで成長するとは。」

 

12年前ーーー彼はfarther・Xの命によりトリト村を襲撃、殺しては強姦していく最中、穢れボスキートとして覚醒したばかりのアーサーに挑み、敗北した。そんな彼が目の前で戦っている姿に身体中にある傷が疼いていた。

 

「負けた分……千倍にして返してやるぜ!!!!」

 

Xは裂けた口で笑みを浮かばせながら、ダイロギアンXを起動し、マルドクスから発進した。

 

 

 

上空に飛び回るピレスドロイドの大群、アーサー達は迎撃を開始していた。

 

「クソ!キリがない!」

 

アーサーはビームガンを構え、ピレスドロイドを撃破していた時、左から緊急アラームが鳴る。

 

「っ!?」

 

アーサーは早くもフラドーラの左腕に装備されていた機動防楯を展開し、左からの攻撃を防ぐ。攻撃してきたのはユーティスの乗るバジリスがライフルを持って飛来してきた。

 

「ユーティスか!!」

 

アーサーはすぐさまガルクローを展開し、ユーティスに突撃しようとした直後、何かがアーサーとユーティスの前に現れる。

 

()()()()()()()()()

 

高笑いを上げるX。その声を聞いたアーサーは声の主に驚く。

 

「っ!!?」

 

『俺様も混ぜろよ』

 

「お前は!!?」

 

「そうだよ。もっと面白くする為にお師匠様は…コイツを再生させた!!」

 

『久しぶりのシャバの空気だ!!!!さぁ!楽しい女狩りを始めようか!!!!』

 

XはダイロギアンXの両腕に装備された3連装大型ビームガトリング砲を展開し、敵味方問わず全方位に向けて乱射し始める。

 

 

 

 

 

 

 

「ヴィルキスがまだ整備デッキに…」

 

アルゼナル施設内のどこか。インカムで通信を受けながら、サリアが通信先の相手にそう返した。誰と通信しているのかはわからないが、その内容から恐らくジルかメイのどちらかであろう。

 

「アンジュを届けたら、私もデッキに戻るわ」

 

その言葉通り、サリアはアンジュの背後に回って後ろから銃を突きつけながら進路を誘導していた。先程から構図は全く変わっていない。そして彼女の前には先導するかのように、モモカを抱えたジャスミンとバルカンの姿があった。

 

「…ここ、危ないんでしょ? 逃げる準備なんてしてる場合?」

 

不満げな表情でアンジュがサリアに言葉をぶつける。

 

「言ったでしょう? あんたには、大事な使命があるの」

 

そう返すサリアも、アンジュに負けず劣らずの険しい表情だった。

 

「あんたとヴィルキスは必ず無傷で脱出させる。…それが私の、多分、最後の使命」

 

最後の方は自嘲気味になってサリアが呟いた。

 

「そのためには、仲間の生命も見捨てるってこと?」

 

「…仕方ないわ」

 

サリアの返答を聞くと、アンジュは歩みを止めた。そして、

 

「あの女そっくり」

 

サリアに向かって振り返ると、侮蔑したようにそう吐き捨てたのだった。そう言われ、サリアは思わず息を呑む。

 

「わけのわかんない使命感や、無意味な絵空事に酔いしれてるだけの偏執狂。巻き込まれて死んでいく方は、堪ったもんじゃないわね!」

 

そこまで言ったときサリアから平手が飛んできた。

 

「あんた何もわかってないのね! 自分がどれほど重要で、恵まれていて、特別な存在なのか!」

 

「わかりたくもないわ…」

 

「では、息を止めてください。アンジュリーゼ様!」

 

アンジュが吐き捨てた直後、今までされるようにジャスミンの肩に担がれていたモモカがそう言うとジャスミンから飛び退った。恐らく今までは機会を伺ってタイミングを待っていたのだろう。

 

「せい!」

 

着地の寸前、何か缶のようなものを地面に投げつける。すると、その缶から粉状の中身が一気に周囲に飛散した。

 

「何だいこりゃ!」

 

ジャスミンが悲鳴を上げ、バルカンも同様に苦しそうに吼えた。

 

「アンジュ! 何処に…くしゅん!」

 

口元を押さえながらアンジュを探すサリアだったが、思わずくしゃみが出てしまう。そう、モモカが叩きつけたのは塩コショウの缶だったのだ。

モモカの指示に従ったアンジュは寸でのところで息を止めていたので、被害は最小限に抑えられ、何とか脱出できたというわけである。

…それにしても、実にやり方がレトロな上に都合のいい展開であるが、まあそこは突っ込まないのがお約束であろう。

 

「いつでもお料理できるように…くしゅん! 塩コショウを用意しておいて良かったです…くひゅん!」

 

今来た道を戻りながらモモカが嬉しそうにそう言った。

 

「随分大胆なことするようになったわねえ…はっくしゅ!」

 

後ろを走るアンジュは随分嬉しそうだった。被害は最小限とはいえ、サリアたちと同じようにくしゃみをしているのはご愛嬌だろう。

 

「アンジュリーゼ様の影響で…くしゅ!」

 

モモカも微笑みながらくしゃみをした。

 

 

「サリア、何があった?」

 

インカムの先にいるサリアの様子がおかしいことに気づいたジルが通信を通じてサリアに尋ねた。やはり先程の通信の相手はジルだったようだ。

 

「アンジュに、逃げられた」

 

「連れ戻せ!」

 

回線の先で何故かくしゃみをしているサリアにそう命令する。と、そのとき、何かのコールが鳴った。

 

「指令、外部から指令宛ての通信です」

 

オリビエがジルへと振り返る。

 

「外部?」

 

その報告にジルが怪訝そうな表情になった。

 

「周波数、1・5・3」

 

「私の回線に回せ」

 

周波数を報告したヒカルにそう命じ、自分の回線に通信を回させる。

 

『久しぶりだね、アレクトラ』

 

回線の先から聞こえてきた声は、その通り久しぶりで彼女も良く知る人物の声だった。

 

「タスクか」

 

『アンジュは無事か?』

 

アルゼナルにようやく辿り着いたのだろう、いの一番にアンジュの安否を確かめる。

 

「たった今逃げられたところだ。捕獲に協力してくれるか?」

 

とりあえずアンジュが無事なことにタスクがホッと一息つく。そして、

 

『わかった』

 

そう、返した。一方、整備デッキから立ち去ったエルシャは、こちらもまた銃撃戦を繰り広げていた。通路の曲がり角部分を遮蔽物としながら、マシンガンを連射して敵兵士を倒していく。

 

(皆、無事でいて!)

 

 

 

そして食堂に付いたアンジュとモモカ、モモカはマナの光で灯りを照らしていた。

 

「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」

 

灯りを前に向けた途端二人は息を飲む、そこには焼け焦げた人が沢山いた。それにアンジュはまたしても嘔吐し、それにモモカは駆け寄る。

 

「アンジュリーゼ様! み!水!!」

 

すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカ、アンジュはあたりを見渡していると。

 

「大切な物は失ってから気づく、何時の時代も変わらない心理だ。全く酷い事をする、こんな事を許した覚えはないんだが。(まさかアイツの言う通りになるとは、こんな事なら早急に処分しておけば良かった。)」

 

そこに謎の男が居て、それにアンジュは振り向いてみる。その男こそエンブリヲであった。

 

「君のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは」

 

「えっ?!」

 

その事にアンジュは驚き、エンブリヲは言い続ける。

 

「北北東14キロの場所に彼は来ている、君を八つ裂きにする為にね。この子たちはその巻き添えを食ったようなものだ」

 

バン!!

 

「きゃあああああああ!!」

 

その瞬間キッチンから銃声がし、モモカの悲鳴が聞こえてアンジュはすぐに向かう。

 

向かうと二人の特殊部隊がモモカを狙っていて、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。

アンジュは銃を取り出し、一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。

 

「あなた達がやったの? お兄様の命令で?」

 

「貴様…アンジュリーゼ!」

 

すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。

 

「う、撃たないでくれ…我々は…隊長とジュリオ陛下の命令で『バン!!』

 

問いにアンジュは撃ちまくり、弾切れになっても引き続けていて、それを見たモモカは慌ててアンジュを止めた。

 

「大丈夫です!モモカはここに居ます!!」

 

アンジュはすぐに後ろを見る、あの場所に居たエンブリヲの姿は無く、それにアンジュは決心する。

 

「行かなきゃ…!」

 

「えっ?」

 

モモカはその事に意味が分からずだった、っとそこに…。

 

「アンジュ!!」

 

アンジュは横を見るとヴィヴィアンを背負ったタスクとライド、エクエスがやって来た。

 

「タスク!」

 

「銃声が聞こえてすぐに向かったんだ。でも良かったよ君が無事で…、アーサーが待っているから───」

 

タスクが一安心して話していると、アンジュが言う。

 

「タスク、行かなくちゃいけない所があるの」

 

「え? 何処に?」

 

「いいから!一緒に来て!」

 

アンジュはそう言ってモモカと共に格納庫へ行き、それに慌てるタスク。

 

「ああ!ちょっと待ってアンジュ!!」

 

タスク達は慌ててアンジュを追いかけて行き、ヒルダ達が待っている格納庫へと向かって行った。

 

 

 

そして格納庫ではヒルダ達が特殊部隊と交戦しており、一方的に不利な状況へとなっていたその時。

 

「マタドール・バースト!」

 

別の扉から雷撃を纏った破壊光弾が発射され、特殊部隊を吹き飛ばす。

 

「ヒルダ!無事か!?」

 

「ライド!?本当にライドか!?」

 

「あぁ!後は俺らに任せろ!」

 

ライドはブルキャノンを構え、ヨーコとクサビは鉤爪とドリルを展開し、次々と特殊部隊を倒していく。

 

「モモカをお願い!」

 

アンジュはモモカをヒルダに任せ、ヴィルキスに乗り込む。そして再び格納庫、敵が投げたグレネードがエレベーターシャフトに直撃して、シャフトが崩れる。

 

「エレベーターシャフトが!」

 

「これではパラメイルを下ろせません!」

 

部下の言葉にメイは歯を噛みしめ、不味い状況になって来る事にロザリーが問いかける。

 

「どうするんだよ!ヒルダ!?」

 

「くっそ~…!」

 

「アンジュ!俺に任せろ!!」

 

「サーベル・ファング!!!!」

 

「道を開けてやっ!!」

 

その時、ライドの頰に特殊部隊が撃ってきたマシンガンの弾丸が直撃し、倒れる。

 

「ライド!」

 

ヒルダが心配する中、ライドは起き上がり、風穴が空いた頰を触れる。手は赤く染まっており、頰から多量の血が流れる。しかし…。

 

「ペッ!!この…糞共がああっ!!」

 

ライドが怒りを込み上げ、口に入って歯で受け止めていた弾丸を吐き出し、白き虎…純なるボスキートへと変身し、特殊部隊に襲い掛かる。悲鳴が聞こえる中、アンジュは急いでヴィルキスを発進させる。

 

「ヴィンセクト!」

 

タスクはナックルライザーを掲げると、ヴィンセクトが自動的にタスクの所へ飛来し、ヴィンセクトに乗り込む。怒りの余り、甲板を血の海に染め上げたライドは苦しい表情で荒い呼吸をしていた。

 

「ライド!無理するな!」

 

「うるせぇ!!グランヴェ!」

 

ライドはそう言い、グランヴェを呼び出す。ライドはグランヴェに乗り込むと、ヒルダが駆け寄る。

 

「待てライド!」

 

「心配するな!ヒルダ!もうお前を一人にはさせない、今度は俺が一緒にいる!」

 

「アタシも行かなきゃね」

 

っと肩を抑えながら向かって行く。

 

そして後からやって来たサリアが辺りを見て、外の方を見てヴィルキスが出た事に表情を歪ませる。

 

「行かせない…!」

 

サリアは舌打ちし、アーキバスに乗り込み、アンジュを追う。

 

その頃、特殊部隊に確保されたヴィヴィアンの方では輸送機に乗り込もうとした直後、何かに斬られ、その時、水の弾が激しく特殊部隊の眉間を貫いていく。その正体はクリストバルとギルバートであった。

 

「コイツ等め、人をなんだと思ってやがるんだ。」

 

「落ち着け、今は爺様が乗っていたヴィルキスの確認だ。そして早急に彼女も守るべき対象だ。」

 

「兄さん!あれ!」

 

『《ヴィルキス!》』

 

「くっそーっ! 放せ、放せーっ!」

 

未だ戦闘中の空では、新たな犠牲者が生まれようとしていた。メイルライダーの一人、ターニャが先程のイルマ同様、小型円盤に拘束されて何処かに攫われようとしていたのだ。

 

「メイルライダー定数確保! 基地内でも、確保完了との報告あり!」

 

未だアルゼナルへ向けて推進中の艦隊の中で、ジュリオが報告を受け取っていた。だが、その報告を受けても満足した表情にはなっていない。

 

「…アンジュリーゼは」

 

一番の標的のことに言及されていないのだから当然だろう。今は家族としての縁を切った妹の名を呟く。

 

「第一目標がアンジュリーゼ! 第二目標がヴィルキスと言った筈だろう!」

 

思わず身を乗り出してジュリオが語気を強める。と、不意に警報が鳴った。

 

「本艦に急接近する物体あり!」

 

それを捕捉した兵士がそれをモニターに映す。そこには、ヴィルキスを駆るアンジュの姿があった。

 

「第一目標と、第二目標です!」

 

「アンジュリーゼぇ…」

 

目標が二つ、わざわざ自分たちのところに来てくれることに満足したのか、ジュリオは椅子に深く座り直すと、下卑た笑みを浮かべながらアンジュの名を呟いたのだった。

 

 

 

 

 

フライトモードのヴィルキスが空を舞い、華麗に小型円盤を撹乱する。そしてその隙を見つけてアサルトモードに変化すると、ライフルを乱射して次々に目標を墜としていった。と、全く予期せぬ方向から援護射撃があり、幾つかの小型円盤を落としていく。

 

「!」

 

思わずその方向に振り返る。そこには、

 

「戻りなさい、アンジュ!」

 

爆炎の中から姿を現したサリアのアーキバスがあった。

 

「戻って使命を果たして!」

 

サリアがそう訴えるものの、アンジュは一向に従う気配もなく、ライフルで小型円盤を掃討していく。

 

「何が不満なのよ!」

 

一向に変化の見られないアンジュに業を煮やしたサリアが、正対して再度訴えかける。

 

「あんたは選ばれたのよ、アレクトラに!」

 

「……」

 

アンジュは答えず、ただジッと鋭い視線でパラメイルの中にいるサリアを見据える。

 

「私の役目も、居場所も、全部奪ったんだからそのぐらい「好きだったの」えっ…」

 

アンジュの返答の意味がわからず、思わずサリアが呟いた。

 

「私、ここが好きだった。最低で、最悪で、劣悪で、ごく一部の例外を除いて、何食べてもクソ不味かったけど。好きだった、ここでの暮らし」

 

主人の感情に呼応するかのように、アンジュの左手中指に嵌められた指輪が光り輝き始め、その光を増してゆく。

 

「それを壊されたの、あいつに!」

 

そしてアンジュはいきなりサリアに突っ込むと、ブレードを展開した。

 

「はっ!」

 

突然のことに驚いたものの後の祭り、サリアのアーキバスは反応することも出来ず、振り上げられたブレードで片腕を切断されてしまった。

 

「だから、行くの!」

 

返す刀でブレードを振り下ろし、もう一方の腕を切断する。故障した…というわけではないのだろうが、バランスを失って機体の推進が崩れたのか、サリアのアーキバスは真っ逆さまに墜落してゆく。

 

「邪魔したら…殺すわよ! …それに、さっき選ばれたって言ったけど、私が頼んだわけじゃない!」

 

真紅の瞳が鋭さを増した。その言葉通り、邪魔者は全て殺すと言わんばかりに。

 

「アンジュ、アンジュ!」

 

他方、今しがた排除されたサリアは墜落しながらしきりにアンジュの名を叫ぶ。

 

「許さない…勝ち逃げなんて、絶対許さないんだから!」

 

目尻に涙を浮かべ、まるで呪うかのようにそう吐き出した。

 

「アンジュの下半身デブーっ!」

 

アンジュが飛び去っていくのを背景に、まるで子供の喧嘩のような幼稚な言葉を叫びながら、サリアはそのまま海に着水したのだった。

コックピットの中、海水が迫り、アンジュに何もかも奪われたサリアは絶望していた。するとモニター画面にエクエスのゼーアが助ける。

 

「やれやれ、目標を失って絶望か…無理もない、お前が乗りこなそうとしたあのヴィルキスは……。」

 

エクエスはそう言い、サリアを海中から引き上げる。

 

 

同じ頃、整備デッキでは第一中隊の四人が発進するための準備を終えているところだった。

 

「ヒルダ、発進準備完了!」

 

「了解」

 

メイのゴーサインにヒルダが頷いた。

 

「行くよ、お前たち」

 

「あぁ」

 

「分かったわ」

 

ヒルダ以下二人の返答にこれまた満足そうに頷くと、ヒルダは正面を向く。

 

「ヒルダ隊、出撃!」

 

『イエス、マム!』

 

三人の返答を受けるのを待っていたかのようにヒルダが発進し、その後を、ロザリー、クリスと続く。が、不吉なことにそんな彼女たちから少し離れたところに瓦礫に潜んだ一人の兵士の姿があった。

兵士は銃を装填し、その時を待つ。まずヒルダが通り過ぎ、そしてロザリーが続き、最後にクリス。

そして最初の二機をやり過ごし、最後のクリスが飛び立とうとしたところで兵士が銃を発砲しようとしたその時、マナコが現れ、特殊部隊を切り裂く。

 

「行け、クリス…」

 

マナコはそう呟き、エミリーとライドと共に特殊部隊の残存と交戦するのであった。

 

 

その頃、一人第一中隊の全員と別行動を取っていたエルシャは、ようやく自分の邪魔になる最後の一人の兵士を倒したところだった。

 

「ぐわっ!」

 

アサルトライフルに撃たれて兵士が吹き飛ばされる。手向かってこないことを確認したエルシャは、すぐに目的地へと向かって走った。目的地の部屋は程近く、そこからは聞き覚えのあるオルゴールの音色が奏でられている。負の感情に責め立てられるように、エルシャは走った。

 

「っ!!」

 

そこには特殊部隊の死体が転がり、辺りが血の海に染まっていた。部屋の奥に怖がる人達、聖双剣ダブル・クレッセントを持って全身血の色で染まったトウジが立っていた。

 

「エルシャ…!?」

 

トウジはやってきたエルシャを見て驚く。

 

「もしかして…トウジ君?」

 

 

 

 

その頃、アーサーは一人でユーティス達を相手していた。しかし、フラドーラの各関節がギシギシと音を鳴らしており、アーサーの操縦テクニックの速さに機体が悲鳴を上げていた。

 

「おいおい!いい加減に諦めたら?君は過去で最悪な悲劇で、友達を殺したじゃないか。今も仲間を見殺しにするのか?」

 

「確かにな…絶望し、死にたいと思った。だが、それはもう過去の事だ。俺には新しい仲間や家族もいる、だから!!」

 

「俺はここで負けたりはしない!!」

 

「《っ!?》」

 

突然とフラドーラが光りだすと同時に、コックピット内にいるアーサーの身体が光り始める。

 

「何だ?この不思議なひか……ッ!!!!」

 

「っ!?」

 

「俺達の穢れボスキートが!?」

 

「停止する!?」

 

突然の事に驚くモルドゥレイス達。その時、フラドーラのバイザーが割れる。

 

「《っ!?》」

 

フラドーラの頭部がゆっくりと前を向く。その時、モルドゥレイスやユーティス、X、ネフティ、バレンティーヌ、カイム、アラマシラが恐怖する。フラドーラのバイザーの中に獣のような目があり、モルドゥレイス達を睨んでいた。そしてコックピットの中、アーサーの目が赤から翠色に輝く獣の瞳へと変色し、前方にいるアラマシラとバレンティーヌを睨み、呟く。

 

 

「स्पेस को ट्विस्ट करें…。」

 

 

低い機会音でいじったような言葉、人間でも発音できないそれを呟くと、アラマシラとバレンティーヌの身体が二つへと別れる。

 

「え……やられたの?」

 

「一体…何……」

 

二人の機体が同時に爆発し、炎上しながら海へと墜落する。

 

「《っ!?!?!?!?!?》」

 

「奴の目を見るな!!見ている対象物を睨んで殺されるぞ!!」

 

「くっ!!」

 

「マジかよ、おい!?」

 

「(アーサー、まさかここでヤバい物へと覚醒しちゃったと言うことか?こりゃヤバい……今のままじゃ、多分…勝てないな。)」

 

「撤退するぞ!」

 

「ハァ!?冗談だろ!これから面白いことになるってのによ!!」

 

「X、ここはモルドゥレイスの命令に従った方が良いよ。何か…ヤバいよあれ。」

 

「チッ!」

 

『“偽りの天使”が…俺の“同胞”のテクノロジーの一部を好き勝手に使いやがって。』

 

「っ!?」

 

「(何だ今の!?あの言葉は何だ?あの力は何だ?俺……“前に何処かで使っていた言葉だった”ような…。)」

 

 

 

 

「何をしている!相手はたったの一機だぞ!」

 

っとそう言った途端にブリッジの半分が割れて、ジュリオの前にヴィルキスに乗ったアンジュが現れる。

その隙にリィザはその場から離れて行く。

 

「あ!アンジュリーゼ!」

 

 

バン!!

 

 

 

ジュリオの足に銃弾を撃ち込むアンジュ、それにジュリオはもがく。

 

「今すぐ虐殺をやめさせなさい!! 死にたくなければ!!」

 

それにジュリオはすぐにマナの通信で部下達に虐殺をやめるように指示を出す。

 

命令を言ったジュリオはすぐにアンジュに言う。

 

「辞めさせたぞ!!早く医者を!」

 

するとアンジュはヴィルキスに乗り込み、ラツィーエルを上に構える。

 

コックピットが開き、アンジュが姿を現す。

 

「あ、アンジュリ…」

 

ジュリオがその先を言う前に銃声が響き、自身の左足が撃ち抜かれた。

 

「ああーっ! あっ! ああーっ!」

 

悲鳴を上げ、傷口を押さえてのた打ち回るジュリオ。図に乗った上に勘違いし、パンドラの箱を開けた愚か者には相応しい巡り会わせだった。

 

「今すぐ虐殺を止めさせなさい!」

 

対するアンジュは銃を構えたまま鋭い視線をジュリオに向けている。その表情は怒りに満ち満ちていた。

 

「今すぐ! さっさとしなさい!」

 

アンジュへの恐怖心からか、痛みに顔を歪ませながらもジュリオはマナの力で通信を開いた。

 

「神聖皇帝ジュリオⅠ世だ。全軍、全ての戦闘を停止し、撤収せよ!」

 

『撤収!? ノーマたちは!?』

 

通信の内容を聞いた兵士の一人が尋ね返すものの、それには答えずジュリオは自分の言いたいことだけ言って即座に通信を切った。

 

「止めさせたぞ! 早く医者を!」

 

その瞬間、今度はラツィーエルを掲げる。だが尚も、アンジュはジュリオから離れない。

 

「ま、待て、話が違う!」

 

腰砕け、激痛に耐えながらもジュリオは両手を開いて前方に差し出し、アンジュを制止しようと努める。

 

「早まるな! 要求は何でも聞く! そうだ、お前の皇室復帰を認めてやろう! アンジュリーゼ! どうだ、悪くない話だろう! だから、殺さないでくれーっ!」

 

神聖皇帝の称号が大笑いするほどのみっともない命乞いをするジュリオ。対して、アンジュは何処までも冷徹だった。いや、目の前の愚物がそうすればするほど、どんどん冷めていく。

 

「言うことはそれだけ?」

 

冷たく吐き捨てると、アンジュは銃口の照準を静かにジュリオの額に合わせた。

 

「生きる価値のないクズめ…くたばれーっ!」

 

懇親を込めてラツィーエルを振り下ろした。それに力をかける。ジュリオはアンジュの殺意の前に何ら抵抗も出来ず、悲鳴を上げて最期の時を待つしか出来なかった。そして、もう少しで終わろうとしたその時、目の前に謎のパラメイルがビームシールドで受け止める。

それにアンジュは目の前の光景に驚く。そのパラメイルの肩にエンブリヲが乗っているのだ。

 

「貴方…さっきの!」

 

「エンブリヲ様!! こ、こいつ等を!アンジュリーゼやソイツをぶっ殺してください!! 今すぐ!!!」

 

「エン…ブリヲ?」

 

アンジュはその男がエンブリヲだと知って呟く。

 

「アンジュ、君は美しい…。君の怒りは純粋で白く何よりも厚い。理不尽や不条理に立ち向かい…焼き尽くす炎の様に、気高く美しい物。つまらない物を燃やして、その炎を燃やしてはいけない」

 

アンジュはエンブリヲが何を言いたいのか意味が分からず、ただ唖然としていた。

 

「だから…私がやろう」

 

「え?」

 

「君の罪は…私が背負う」

 

その機体を上昇させて、エンブリヲは何かを歌いだす。

 

「♪~♪」

 

その歌にアンジュとジュリオは聞き覚えがあった、その歌は『永遠語り』だった。

 

「あれは…!?」

 

「永遠語り!?」

 

アンジュの元に向かっているアーサー達は聞こえて来る歌に驚く。

 

「ん!? この歌は!!」

 

「あれって!?」

 

「あれは…まさか!!」

 

同時の外に出ているリィザは【謎の翼】を出して飛んでエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ…」

 

そしてエンブリヲの機体の両肩と翼が露出展開して、ヴィルキスと同じものが出て来る。

 

「ヴィルキスと同じ武器…!?」

 

アンジュが驚いてる中でその機体は光学兵器を発射て、ジュリオが乗っている旗艦へと直撃する。

 

「う!!うう!!うわあああああああああああああああ!!!!!!」

 

アンジュが目の前の光景に驚きを隠せず、ただ跡形もなく消え去った旗艦を見て唖然する。

 

 

その頃、アルゼナル最下層では、あの戦艦が今まさに発進しようとしていた。

 

「注水、始め!」

 

「注水、始め!」

 

ジルの号令にパメラが復唱する。それと同時に、アルゼナルの生き残りを収容したこの戦艦に注水が始まった。ジルの大嘘により、本来辿るべき歴史よりもかなり多くの人員が無事にこの艦に収容されているのは、喜ぶべきことなのだろう。

 

「アルゼナル内に生命反応なし。生存者の収容、完了しました」

 

「メインエンジン臨界まで、後10秒」

 

「水位上昇80%」

 

「防水隔壁、全閉鎖を確認」

 

「交戦中のパラメイル各機には、合流座標を暗号化して送信」

 

「了解」

 

ブリッジでは、次々と報告や指示が飛び交う。

 

「フルゲージ!」

 

「拘束アーム解除。ゲート開け。微速前進」

 

エンジンに火が入る。そして、

 

「アウローラ、発進!」

 

ジルの号令と共に戦艦…アウローラはアルゼナルを後にして発進したのだった。

 

 

そしてアンジュがエンブリヲに問う。

 

「何なの! 貴方一体何者!?」

 

っとエンブリヲは横からの攻撃に気付き、すぐさまかわすとタスクのヴィンセクトとアーサーが直ぐにアンジュの元へ向かって来る。

 

「アンジュ!! そいつは危険だ!! 離れるんだ!今すぐ!!!」

 

「タスク!?」

 

「無粋な…!」

 

するとエンブリヲは目標をタスクに向け、それに歌いだす。

 

「!? 行けない! タスク!アーサー!」

 

「アンジュ!?」

 

「だめええええええ!!」

 

その時、アンジュの指輪が光だし、ヴィルキスの色が青へと変わる。エンブリヲはまたしても光学兵器を発射させる、だがすでに遅しアーサー達の機体はその場から消えていき、海へと直撃して巨大な渦が出来る。

 

「つまらない筋書きだが、悪くない(あの男…何処かで会ったような。まぁいい…)。」

 

エンブリヲはそう言い、その場から消えた。崩壊したアルゼナルの海が見える丘の上に立つアルトとマリアンヌ。マリアンヌは先のアーサーの力に驚く。

 

「アルト…今の見た?」

 

「あぁ見た、間違いない。アーサーよ、ついに本来の力の一部が戻った!【外使徒 アルファリオン】!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る山、枯らされた泉、枯れる草花、地獄へと変わっていく大地の山の奥深くにある神殿らしき建造物の奥の間に二人の人物が戦っていた。一人はアーサーに似ており、背中に片方の赤い翼を広げた青年とフェリスに似た背中に白い翼を広げた少女が剣と杖を構えていた。

 

「लेकिन क्यों! ! उसके पिता को क्यों मारा! ?《何故だ!何故こんな事を!?》」

 

「होहो…यह इसलिए है क्योंकि राजा और भेड़िया आपसे प्यार करने के तरीके में थे। इसके अलावा, मैं केवल एक हूँ जो तुमसे प्यार करता हूँ, मैं तुमसे बहुत प्यार करता हूँ ...《私は…貴方を愛していた。それで気づいたの、私達の愛を邪魔する者がいつか出ると…だからまた気づいたの!私を邪魔するお父様とお母様、そして衛兵や民、国の全てを血の海にしたの!だって私は……》」

 

 

 

「मैं हूँ… एक सच्ची दुल्हन…।《私こそが…真の花嫁って…。》」

 

 

 

その狂気に満ちた瞳と心に男性の心に深い傷ができ、彼女がやった行為と真意に怒りを露わにする。

 

「ऐसे ... इस कारण से आप हैं! ! एक देश! लोगों को! पिता और माता! मेरी बहन! फियोना! !《そんな…そんな理由でお前は国も民を!シェザール王と王妃!父と母!仲間を!“フィオナ”を!!》」

 

 

そしてその悪しき少女は黒く帯びた禍々しい短剣を手に、アーサーに似た男性に斬りかかってきて、そして眩い閃光が大地を包み込み、生命の無い星へと変えた。すると地面からゆっくりと芽が生え、時が進むかのように草花、水が生き返り、人類が誕生し、今の現在へとなる。だが緑溢れる大地の地下奥深くにある古の遺跡、光の左腕と不気味な仮面が女のミイラの顔を覆い隠していた。すると仮面の目から赤黒い瞳を動かし、指と指の間から血涙を流し、呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

||थैंक यू ... आई विल ... अल्फा रियान ... ...♡《おしたえ…します…アルファリオン様…♡》

 

 

 

 

ドス黒く濁った野心と禍々しい手がアーサーの精神を蝕みながら触れようとしたその時、何処からともなく光が差し込み、禍々しい闇を祓う。それは赤と白の二体の神々しい竜と純白の鎧と黒い機械と融合した紅き竜の射手が闇を祓い、アーサーを包み込む。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、コールブランド邸の台所ではフェリスが帰ってくるアーサーの為に料理を作っていた。

 

「(アル、早く帰って来ないかな〜?)」

 

楽しみに待っているフェリスは料理をテーブルの上に置くと、お座敷の掛軸が大きく揺れる。

 

「ん?」

 

掛軸が動いた事にフェリスは掛軸に触れる。すると掛軸の後ろに下へと通じる階段が存在していた。フェリスはマナの光を使って辺りを照らし、下りていく。すると目の前に黒い扉があった。フェリスはドアを開こうとするが全く開かなかった。

 

「どうしよう…あれ?この形…」

 

よく見ると、鍵穴の形が勾玉の形であり、フェリスはもしかしたらと、アーサーから貰った黒い勾玉を差し込む。

 

すると勾玉が翠色に光、扉にその色と同じ光る流動回路が浮かび上がる。すると扉だったのがジグソーパズルのように変形し始め、向こうの道を開けてくれた。

 

「!?」

 

フェリスはそれを見て思わず言葉を失う。彼女が目にしたのは大量の金塊、黄金に輝く金、それぞれの色で輝く宝石、陶器、黄金像、泉から湧き出ている砂金、見たこともない古代の貨幣、工芸品、美術品、高麗茶碗、聖遺物、三種の神器、埋蔵金が現実の山程積み重なったそれは財宝の山と言うより“海が全て金に染まる物”であった。

 

「何?この……宝の海は?」

 

フェリスが金の海に足を踏み入れる。足から貨幣や金の冷たさや感触が伝わり、こ等全てが本物だと確証する。そして彼女の目の前に一つ大きな肖像画が飾られていた。高貴な服装した七人の男女、その中に思いもよらぬ人物まで描かれていた。

 

「アル…?」

 

アルに似たその人物は高貴な服装をし、勇ましい姿、赤い翼をしていた。さらにその肖像画にはタスク、ライド、エクエス、マイラ、ランスに似た人物も描かれていた。

 

「全部見てしまったのだな…」

 

「っ!?」

 

背後から突然の声。フェリスは思わず振り向くと、シェレザールとセレスティアがいた。

 

「お義母さんに、お義姉さん…?」

 

「お義母様…言うのですか?」

 

セレスティアがおどおどしながらシェレザールに問う。シェレザールの心は既に覚悟の目をしており、フェリスに近づく。

 

「何を…ですか?」

 

「私は、あの肖像画に写っている者達を知っている。勿論…“貴女の一族と母親が何者”も…。」

 

「え……?」

 

この後、フェリスはシェレザールから語られる真実に驚愕し、この後に絶望になる程の恐怖を感じるようになり、最後には悲しむ。




今回のキーワード…アルトとマリアンヌが呟いていた【外使徒 アルファリオン】と邸の地下に眠る宝の山とアーサー達の“肖像画”。そしてフェリスの事。

果たして、この三つがいつ、何処でまたキーワードとして出てきて、何を意味し、アーサー達を翻弄していくか、ご期待ください。


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チャプター27 再来訪

遅れて申し訳ありません。長らく文書の改善に時間がかかり、ようやく投稿を再開できます。

では、どうぞ


何処か知らない空間、その空間にある物が映る。燃え盛る炎が巨大都市を包み込み、無数のドラゴンや人の焼死体が転がる中、一人の青年が炎の中で光の剣を手に、全身血だらけの姿、左腕がないままで立っていた。

 

「केवल आप हैं ... बिल्कुल श्रीमान! !(お前だけは…絶対に許さん!!)」

 

アーサーに似た青年は上空を見る。漆黒の暗雲から光が漏れ射し込み、その中からこの世とは思えない生物の大群が現れた。半透明で、脳が透けて見えるクラゲ状の生物は二つの目を変形させ、不気味な微笑みを浮かべる。そしてクラゲ状の生物達が触手を変形させ、砲口へと変わり、ビームを撃って来た。ビームが大地を抉り、青年を巻き込む。

 

「पिता का और माता का, बहुत से हमवतन अफसोस करते हैं! मैं तुम्हें नीचे भुगतान करते हैं! !(父上と母上、多くの同胞達の無念!払させて貰うぞ!!)」

 

アーサー似の青年は剣を天に掲げる。すると黒き雲が天を先、そこから曙光がクラゲ状の生物達を照らし射し込む。眩い光と共に、雲の中から赤、紫、黄、青、緑、黒、白のパーツに分かれた鋼鉄のドラゴンと黄金に輝く三つ首の天龍、そして二体の龍と共に天空の彼方より来たれし白と黒、赤と黄金に満ち、光と闇を超越し機械の大天使、そして神を上回るその輝きがクラゲ状の生物達を眩かせる。さらに地面が大きく揺れ、地中から五体の機神よりも数百倍もある大きさを誇る巨大な要塞と全身が要塞だらけの巨大ロボット及び、数隻の艦隊が現れる。そして青年は剣をクラゲ状の生物に向け、叫ぶ。

 

「जब तक आप अपने जीवन को नहीं मार सकते, तब तक आप जीवन के भविष्य को जारी रखेंगे! !(命潰えない限り、命未来永劫に続く!!)」

 

宣言と共に艦隊から白く満ちた無数の機械天使や機械竜、白銀の龍神、戦闘機が発進され、クラゲ状の生物達を攻撃していく。緑色に輝くビームと青白く輝くビームが直撃、掠れる、避ける、二つの大勢力が激しくぶつかり合う。そして巨大なロボットが腕部を変形させ、数百メートルもある光の剣を放出し、クラゲ状の生物達を塵に変えるか如く、薙ぎ払っていった。するとクラゲ状の生物達の中から鳥のような化け物の大群とクラゲ状の生物達とは全く個体差が違く、人のような目を持つ巨大なクラゲ状の生物が舞い降りる。

 

「ガサボガ、マアガカ ンイウ、ダラウ……」

 

「आपकी महत्वाकांक्षाएं ... हमेशा पूर्णता के लिए तोड़! अनंत भविष्य, खुशी और सम्मान आपके पास नहीं आएगा! !(お前のその野望……必ずや完膚無きまで打ち砕く!未来永劫、お前に幸福や名誉は訪れないだろう!!)」

 

青年は地面に溜まっていた水たまりのようになっていた血に足で踏み込み、彼の流す血涙が滴り落ち、血の溜まりに“ポチャン”という音が鳴った瞬間、アーサー似の青年とクラゲ状の巨大な生物が攻撃を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

白い空間、その奥に色白で黒髪、目の下と手の甲にある赤い文様と太陽を模したと思われる頭の飾りをしたこの世とは思えないとても綺麗で美しい女性が手から生えていた炎のような赤い模様をした翼で赤子をあやしていた。

 

「अचंभा…貴方は私達や他の人の未来を託す希望。」

 

すると女性は左手からアーサーと同じ模様が浮かび上がる。すると模様が緑に光、手から浮き出て赤子の左手へと移る。女性は悲しそうな表情で涙を流すと赤子の左手をなぞっていく。

 

「この力は…私達の先祖と一族から継承してきた大いなる力。時には【善】、時には【悪】と言う使い方がある。使うのは貴方次第、貴方に全てを託す…。」

 

女性はそう言い、赤子の額に優しいキスをすると、身体中傷跡だらけの男が現れ、赤子の頬を優しく触れる。

 

「……お前は愚かな下々の民や真の民の運命を救う救う希望であり、“奴等”にとってたった一人だけの“天敵”。」

 

男はそう言うと、別の方から侍女らしき女性が声をかける。

 

「閣下、大巫女様…そろそろ。」

 

「あなたにこんな宿命を託した私達を許さなくても言い。だけど、私達はあなたを遠くから愛して見守ってます……。」

 

「カレトヴルッフよ…息子を頼む。」

 

「“兄さん”…」

 

カレトヴルッフは男からカプセルに入っている赤子を受け取り、轟天号に乗り込むのであった。

強烈な閃光が目の前を照らされる。現れたのは正座した五人の仮面の者達であった。

 

 

 

 

“アーサーよ、我等はこの聖地にて待っているぞ…。偉大なる我等【凰帝】の一族の世継ぎ。”

 

 

 

五人はそう言うと、天の彼方から赤と白、黄金に輝く竜の人馬の騎神が現れ、咆哮を上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「うう……んんっ……。」

 

見知らぬ土地の廃墟で各部が破損しているフラドーラ。いつコックピットから投げ出されたのか、アーサーがその場で倒れていた。するとアーサーのポーチから黒い霊符と怪獣の銀色の外殻で覆われ、先端に翡翠色の水晶体が付いた杖が飛び出し、水晶体が光り始め、形を変えていく。現れたのはなんとトリト廃村で出会った少女 アケロンであった。

 

「ん〜〜!よく寝た。」

 

アケロンは各関節の音を鳴らしながら身体をほぐしていると、背後に倒れているアーサーを見る。

 

「え?」

 

アケロンはアーサーを起こそうと、長い舌を伸ばし、頰を舐める。

 

「……ん?」

 

それに目を覚ましたアーサーはその方を見ると、長い舌を伸ばす少女が見ていた。

 

「やっと起きた…」

 

「あれ?お前は……アケロン!?」

 

アーサーは起き上がり、辺りを見渡す。

 

「……ここはどこ?あれ?ここって……もしかして!」

 

アーサーはすぐに墜落したフラドーラのコックピットの中へと入り、レーダーを見る。

 

「やっぱり…ここは、真実の地球だ。また、この地に墜落しちゃったんだな。(確かあの時…アンジュと一緒に光に包まれて、俺とヤトウ、リュウ、他にもライドやエクエスを包み込んだ様な……。)そうだ!早速“彼女”達に救難信号を送ろう!」

 

「終わった?」

 

「あぁ、後はサラ達が来るのを待つだけだ。」

 

「そっか…」

 

「そう言えば、ヤトウとリュウの姿が見えないなぁ…」

 

『主君、我等はここにいます。』

 

「ん?」

 

突然何処からともなくリュウの声がし、周りを見る。しかし、何処にもいる気配がなかった。

 

『主君、こっちだ。』

 

「今度はヤトウ、何処だ?」

 

『『ここだ。/ここです。』』

 

アーサーは二人の声がする方を向く。そこはなんと、足の方からであり、よく見ると蒼色と翠色をした宝玉があった。

 

「え!?まさか…お前らなのか!?」

 

『そうです。本来なら元の姿に戻りたいのですが……』

 

「ここへ飛んだ時、時空間の歪みに察知した俺達は【コクーン】へとなり、局所的インフレーションのパルスを防いだのです。そのせいか時間が掛かってしまっています。」

 

「あ、そろそろコクーンがパージされる。」

 

「主君、なるべく数メートル離れてください。10…、9…、8…、」

 

「え!?ちょっと離れよう」

 

アーサーはヤトウがいる場所から八メートル離れる。

 

「3…、2…、1…。」

 

「やっと元に…もど……」

 

アーサーは言葉を失う。二人の本来の姿…それは。ヤトウの方は全身に巨大なヒレを持ち、水晶のような結晶が生えた『水竜』。リュウは長い首で全身に苔や木々を生やした『古竜』。あまりの事にアーサーは気が動転してしまう。

 

『これが我等の本来の姿。』

 

『本来は人間でありましたが、ある事情によって無理やりされました。無論、アケロンもその一人…。ですが、私は覚えています。あのお方が我々を自由にしてくださった事を。』

 

「あのお方?」

 

「……【崩壊者】」

 

「あ、それって!」

 

『はい、貴方を守るよう御命令したのは崩壊者です。崩壊者は貴方に会いたがっていますが、まだ会う時ではないと…。』

 

「何故?」

 

「残念ですが、それは返答できません。崩壊者と会って事情をお聞きください。」

 

「そっか…」

 

そしてアケロンも巨大化し、銀色に輝く鱗が並んだ『冥竜』へとなる。

 

『アーサー…これを。』

 

アケロンが口でくわえている者をアーサーに渡す。それは古い大きな箱で中に入っていたのは赤い宝玉が付いたビンディと新しい狩衣、そして奇妙な模様が描かれたマントであった。

 

「これは?」

 

『崩壊者が着てくれと……。』

 

アーサーは箱に入っていた服を取り出し、今着ている狩衣を脱ぎ、新しい狩衣に着替える。

 

「これ…物凄くカッコいいのか、それか物凄い威圧感と雰囲気を出しているのか…。」

 

アーサーが呟くと、風が彼の着込んでいる羽織を靡かせる。羽織とマントに描かれた奇妙な模様ーーー天に向かう三頭の竜、不死鳥の翼、三つの勾玉ーーーこの模様はまるで家紋か国旗をも表していた。

 

「なんだか王様気分で恥ずかしいなぁ。お前ら、よくこんな派手な服を保存していたな?」

 

『『『……』』』

 

三人がアーサーの言葉に黙り込んでしまう。

 

「え?……なんか、ごめん。あ、ちょうど来た!」

 

すると上空から二体のドラゴンが飛来し、着地する。

 

「って……誰ですか?」

 

ドラゴンの頭から現れたのはセクシーなスーツと腰に刀をぶら下げた綺麗な女性であった。

 

「ご機嫌、アーサーさん。私は神祖 アウラの末裔にして、フレイヤの一族のもう一人の姫 “ファイ”と申します。妹の命により、お迎えに参りました。」

 

「妹?」

 

「お会いなされたのでは?サラマンディーネと言う……」

 

「……え!?サラマンディーネという事は……姉妹!!?(アイツ、姉貴いたんだ。)」

 

「そう言えば、あなた、サラマンディーネの胸を見て噴水のように鼻血を出したってね?」

 

「あぁ!嫌!あれは事故で!決してやましい事では!」

 

「分かってるわ。東護ノ介が色々とあなたについて話してくれたから、味方って分かるわ。ほら、あなたの機体を待っていくから、ドラゴンの頭の上に乗りなさい。」

 

「あ、分かりました。」

 

アーサーはファイの横に座る。っと、アーサーはファイの背中を見る。アウラの民の特徴である羽が虫取られ、何かの焼印が付けられていた。

 

「その背中……」

 

「ん?あ〜、気にしないで。随分前にエンブリヲとアイツにやられたものだから。」

 

「?」

 

「ほら、着くよ。」

 

前方にアウラの都が見えてきだした。都に着いたアーサーは大破したフラドーラを格納庫に入れる。

 

「アル!」

 

突然の声にアーサーが振り向くと、誰かが抱きついてきた。

 

「フェリス!?」

 

アーサーは偽りの世界にいるはずの愛する妻 フェリスやライド達がいる事に驚くのであった。

 

 

一方、ミスルギ皇国へと帰還したユーティス達はミスルギ邸の地下奥深くにある聖堂……そこは仄暗く、人を死に至らしめる程の瘴気が漂い、毒の水が流れる闇の大聖堂『ディスピア』であった。その大聖堂の奥の通路、扉を開ければ目の前にfarther・Xが玉座に座っていた。ユーティス達は膝まづき、先の戦闘の報告すると、farther・Xが立ち上がり、持っていた杖でユーティスの頰にぶつける。

 

「殺し損ねた?アルトリウスがどれだけ“危険な存在”とわかっていながら、殺し損ねただとっ!!?」

 

「申し訳ございません、お師匠様……」

 

「…………まぁ良い。」

 

「え?」

 

「時間はたっぷりとある。」

 

farther・Xはそう言うと懐から短剣を取り出し、自分の手に突き刺し、ドス黒い血をグラスに注ぐ。

 

「飲め……飲めばアーサーをも上回る強大な力が手に入る。」

 

「……“ゴクリ”」

 

ユーティスはfarther・Xの血が入ったグラスを受け取る。その時、グラスに入っている黒血の水面が歪み、水面に写っていたユーティスの思考を歪ませていく。

 

“何でアーサーが主人公気取ってるんだ?”

 

“何でアーサーだけが一番可愛そうと思えるんだ?”

 

“何でアーサーは絶望したのにまだ立ち上がれるのか?”

 

“何故、アーサーは力の門前で立ち止まってしまったのか?”

 

“何故、アーサーに続いて外野三人も僕並みの力に覚醒したのか?”

 

“何であいつだけ幸せな日常を過ごして生きていけるんだ?”

 

“僕が一番な筈!可愛そうなのはこの僕だ!!”

 

“なのに何で!?何で!?何で!?何で!?何で!?何で!?何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で……何でだ!!!!????”

 

彼の心はアーサーに対する嫉妬と恨みと言う穢れに満ちた闇に飲み込まれていく。そして彼を倒そうとある策を思い付き、グラスを受け取る。そして一気に口の中に移し、飲み干す。

 

「っ!!!」

 

飲んだ直後、腹から焼けるような激痛が全身へと伝わり、悲鳴を上げる。

 

「あ``あ``あ``ああああああああああああああっっ!!!!!!」

 

激痛のあまり、その場で転がるユーティス。すると大聖堂の門が開き、中から現れたのは禍々しい鎧を着ており、背中から美しく禍々しい紫の炎を靡かせる翼が生えており、手にアルゼナルを襲撃した神聖ミスルギ皇国皇帝 ジュリオ・飛鳥・ミスルギを抱えていた。

 

「よく着たな…【煉獄皇 イブリートス】」

 

「……」

 

「相変わらず無視か…(実際は私が改造して動く屍にしたがな。イブリートスよ、君に頼みがある。」

 

farther・Xは懐からある写真を四枚取り出し、それをイブリートスに見せる。

 

「そろそろ頃合いだからな。連れて来てくれないか?特に“彼女”は……」

 

farther・Xは不気味な微笑みを返すと、イブリートスは無言のまま部屋を出る。

 

「父上…奴は?」

 

「奴の名はイブリートス。お前達で言う【最初の穢れボスキート】にして、ボスキートのオリジンでもある。」

 

「《っ!!?》」

 

farther・Xの言葉にモルドゥレイス達は任務に向かっているイブリートスを見て驚くのであった。farther・Xはその場から消え、ある異空間へと移動した。そこは薄暗く、何もかも全てが憎悪と破壊に満ちた大地…その中に黒い影が現れる。

 

「もう少しです、我等の【神】よ。もう少しで貴方様がこの次元も支配する時が来るのです。太古の昔、大聖地から追放されたあの日から…。」

 

『ナクトゥ・イ・ニッド・アラン・イマゴ』

 

「怒りをお静めて下さい。あと一歩まで来ております。それに、あの世界にはかつて先史文明を治めていた“光帝 アルファリオン”の末裔である光妖精の姫巫女と竜の姫巫女もいます。」

 

『マゴ!テゴ・アンバタ・サラクポ』

 

「いいえ…アルトリウスはまだ自分の真の力の一歩手前まで踏み出すことしかできていません。私の弟子であるユーティス・飛鳥・ミスルギはそれを成し遂げて見せます!」

 

『ウクートゥ・リハヴジャラム、エニード、アギー!シラクタモン!』

 

「次の段階はもう既に整っています。後はアーサーの本来の力が解放し、彼の【本来あるべきの姿】へと戻れば…我等の【正体】が何か…彼の【一族】がなんなのかをお伝えします。」

 

「ゼクシム、ジコブ、イニー・アグーン・ジャム…。」

 

「イガ・ベリシマ!我等の“崩星皇”様…。」

 

黒い影がその場から消えると同時に、farther・Xもその場から消えるのであった。




どうでしたかな?誤文がありましたらご報告をお願いします。


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チャプター28 アンジュとタスク

アーサーは真実の地球でであった少女 サラマンディーネの姉であるファイに連れられ、前方にアウラの都が見えてきだした。都に着いたアーサーは大破したフラドーラを格納庫に入れる。

 

「アル!」

 

突然の声にアーサーが振り向くと、誰かが抱きついてきた。

 

「フェリス!?」

 

アーサーは偽りの世界にいるはずの愛する妻 フェリスやランス達がいる事に驚くのであった。

 

「何でこの世界にフェリスが!?」

 

「西十郎さんとアリマさんがアーサー達が消えた事に察知して、クラウドブルースごと『緊急転移』って言うのが発令して、そしたらこの世界に来たの!」

 

「て事は……クラウドブルースはこの世界の上空に!?」

 

「えぇ!それと邸もこの大地に引っ越して……あ、それと助けて!」

 

「え?」

 

そう言うとフェリスはアーサーの背後へと隠れる。すると向こうから金髪の青年が目をハートにし、気持ち悪い顔で走ってきた。

 

「待ってくれよ〜!フェリスちゃ〜ん♡」

 

金髪はどうやらフェリスに一目惚れしたらしい。しかし、彼女は既婚者であり、アーサーの妻、幾ら歳が離れて見知らぬ存在だが、アーサーにとってはフェリスを困らせている事に変わりはなかった。金髪の青年が迫る中、クレインとランスが通せんぼする。そしてアーサーは金髪の青年に向かって言う。

 

「誰!?」

 

「何なのですか!?」

 

金髪の青年は突然現れた青年に怒鳴る。

 

「お前!邪魔をすんな!その子は僕と結婚するんだ!ボヘッ!!?」

 

青年の言葉にアーサーの頭の中のネジがポロっと落ち、アーサーの平手打ちが青年に頰に炸裂した。アーサーは無言のまま、青年を叩きまくる。

 

「お!落ち着いてアル!」

 

フェリスはアーサーを落ち着かせようと彼の動きを止めようとする中、青年は悲鳴を上げる。

 

「うわあああぁぁん!!」

 

「あれ!?その悲鳴…お前『アイン』か!?」

 

「え?ひょっとして……アーサー!?」

 

彼の名は『アイン』。かつてアーサーの故郷であるトリト村の超星寮ではA組とB組と言った班に分かれていた。彼はその寮のB組の候補生の一人でもあった。悲劇が起こる2日前、B組は街と言うより、国の社会化見学を含めての2泊3日の研修旅行に行っていた。だが彼等が帰ってきた頃に故郷は焼け野原になっており、彼等の家族も失った。そして現在はーーー。

 

「うわぁぁぁっ!!アーサー!」

 

アインは再会したA組の旧友に会えた事にアーサーに抱きつこうとするも、アーサーに怒鳴られ、さらには穢れボスキートで怒りの拳骨が彼の頭部に炸裂した。

 

「ブベッ!?」

 

「ふっざけんじゃねぇ!何勝手に俺の奥さんに手ェ出そうとしてるんだ!ゴラァ!!」

 

「えぇっ!?ええええぇぇ!!!???お前結婚してたん!?よりによってそんな美人な少女を!!」

 

「お前こそ何だ!再会と思ったら人の嫁に手ェ出そうとしてやがるし!お前の女好きは14年前から変わらないな!!」

 

「良いじゃないか!そうだ!お前!紹介しろ!」

 

「何を?」

 

「女の子だよ!行ったんだろ!アルゼナルに!ノーマの女の子ちゃん紹介〜〜!!!」

 

アインの願望、それは女の子にモテたいと言う事だ。14年も前、アーサーと一緒に女子の風呂を覗こうとしたりしたが、今はそんな事はどうでも良いとアーサーは変わったのであるが、等のアインは全く変わってもいなかった。その事にアーサーやフェリスは別の生き物を見るかの様なドン引きな表情をする。

 

「「……」」

 

「何そんな別の生き物見るような目で見るんだよ!やめろ!!!」

 

アインが叫ぶ中、向こうから別の人影が走ってきた。そして人影はアインに思いっきりのドロップキックをかます。

 

「アイン!またあなた他の女の子を引っ掻き回したね!?」

 

現れたのは赤い髪でポニーテールの女性であった。彼女の名は『ナツキ』ーーーアインと同じB組の候補生である。昔は活発な性格であったが、今では凛々しく美しい女性に変わっていた。

 

「お前……ナツキか!」

 

「え!?まさかアーサーなの!?」

 

ナツキはアーサーを見て驚く。すると今度はB組の候補生達が一斉にアーサーの元に駆け付けてきた。

 

「《アーサー!》」

 

「……お前達!」

 

「ナタリア!ポーラ!ネス!ニック!ツカサ!皆んな!」

 

超星寮の候補生達、B組の皆んなが生きていた事にアーサーは嬉しさのあまり、涙を流す。

 

「久しぶりだな!アーサー!」

 

「お前達も、この世界に来てたんだだな!」

 

ネスはアーサーが生きていた事に驚き、再会に喜ぶ中、眼鏡を掛けた二人の男女がやってきた。

 

「アーサー…」

 

「生徒会長に生徒副会長…」

 

「それは昔の話だろ。」

 

「そうよ、今の私達はもう夫婦であり、名前で呼びなさい。」

 

「あ、そうだったな……「オルト」に「ネーラ」」

 

その後、オルト達はアーサー共にアーサーの邸で話し合う事になった。(因みに彼等の住む場所はアーサーの豪邸となる結果になった。理由は至って簡単、邸の部屋や間が広過ぎて使い分けができなくなってしまったと。)

 

「そうか、生き残ったのはお前とマイラだけか…。」

 

「あぁ…お前らが社会人になる為の研修の修学旅行に行った翌日に起こった事だったんだ。見たんだろ?」

 

「あぁ…帰ってみれば辺りは焼け野原、多くの焼死体、俺達は家族を失った。そこで西十郎さんと東護ノ介さんから聞いたら、アイツが起こしたっと。お前ももう分かるな?」

 

「……ユーティス。」

 

「もし俺達もアイツの本性に気付いていれば……クソ!!」

 

ネスが12年前の悲劇の張本人の本性を気づかなかった事に拳を壁にぶつける。(この時のアーサーはネスの行動に嫌気が差していた。理由は自分の家を壊されるで無いのかと心配しているからだ。)

 

「ところでオルト、お前達は一体何処へ行ってたんだ?」

 

「あぁ、その事だが」

 

「私が話そう。」

 

すると戸が開き、父であるオリヴァルトと母のシェレザール、義姉のセレスティアと二人の甥っ子達が登場する。

 

「あ、父さん、母さん、義姉さん。」

 

「《父さん!?》」

 

「え?アーサー…お前、この人達って…まさか。」

 

「俺の父さんと母さん、義姉さんに甥っ子達。それが何か?」

 

「えぇぇぇ!!?」

 

皆は驚く。アーサーに家族がいた事に。

 

「それで、お前達はこの世界で何してるんだ?」

 

「俺達は作っているんだ…【人工島 アークス】」

 

「人工島 アークス?」

 

「クラウドブルースの半分の大陸。クラウドブルースが軍事施設ならアークスはその両方、環大西洋合衆国【ARUS】と女人国【蓮峰国】そしてこのアウラの都から援助されている。」

 

「へぇ〜、もしかしてトリト村の再建?」

 

「それも含めてな。」

 

アーサーとオルト、互いの知っている情報を話している中、B組の女性陣達がフェリスとセレスティアの胸を見る。

 

「(にしても……)」

 

「「「「「何て抜群な「巨桃」なんだ…」」」」」

 

彼女達がそう思ってる時、フェリスがある事を思い出す。

 

「あ!そうだった!」

 

「私…出来ちゃったみたい///」

 

「何が出来た……え!?まさか!!」

 

「そのまさかです!」

 

「《……》」

 

まさかの事に皆は驚く。

 

「《ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!????》」

 

「私!“妊娠”しました!“双子”も♪」

 

「ぎょええええええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!????」

 

思わぬ朗報に固まっていたアーサーがようやく天高くまで聞こえるほどの叫び声を上げるのであった。

 

アーサーがフェリスと再会してから一時間が経過していた頃、ヴィルキス、コックピット内。アンジュが顔を突っ伏して操縦桿にもたれるように前のめりになって気絶していた。そんなアンジュに横から何かが這い寄ってくる。細長くピンク色のそれは、蛇のようにうねりながらアンジュの顔に張り付いてさわさわとその顔を撫でた。

 

「ん…」

 

その、得体の知れない感触に異変を感じたアンジュがゆっくりと目を覚ます。そして、得体の知れない感触を感じた方向…横に顔を向けた。

 

「ウェ?」

 

そこにいたのは、こちらを覗き込んでいるスクーナー級のドラゴンの姿だった。心配そうな様子で、アンジュを見ている。

 

「! はああっ!」

 

起き抜けにドラゴンの姿を目の当たりにして思わずアンジュが驚いて仰け反った。が、ドラゴンはアンジュに襲い掛かろうとはしない。それどころか、高音で咽喉を鳴らしながら器用に自分自身をちょいちょいと指差した。と、

 

(あたし、あたし)

 

アンジュにはドラゴンがいなないているようにしか聞こえないだろうが、ドラゴンは必死に意思表示したのだ。

 

「…ヴィヴィアン?」

 

(そう!)

 

頷くと、理解してもらえたことを喜ぶかのようにウオオオオッ…と高音で長い咆哮を上げた。

 

「また、なっちゃったんだ」

 

呆れとも驚きともつかない様子でアンジュがそう呟くと、ドラゴン状態のヴィヴィアンがアンジュに顔を寄せる。アンジュはそんな彼女の顔を抱え込むと、慈しむように撫でた。と、

 

「どこも痛くないかい?」

 

不意に、違う方向から声をかけられる。

 

「タスク…」

 

そこにいたのは念のためだろうか、ライフルなどで武装してアンジュに歩み寄ってくるタスクの姿とクリストバルとギルバート、キーラ、ヨハネス、メアであった。その姿を見て先程の…気を失う前のことが頭に次々と思い出される。

 

「私たち、海の上にいたはず!?」

 

しかし…

 

「……」

 

バイザーを外しながら立ち上がると、周囲を見回す。そこにあったのは海ではなく、見渡す限りの廃墟だった。それも廃墟となってから随分経っているのだろう、建物の全面がビッシリと緑で覆われている。360°そういう光景だったのだ。

 

「ここ…どこ?」

 

呆然としながら、アンジュはそう呟くことしか出来なかった。

 

「こちらアンジュ。アルゼナル、応答せよ」

 

アンジュが通信機を使用し、アルゼナルへの通信を試みている。あの後、呆けていても仕方ないという結論に達したのだろう。とりあえず出来ることとして、アンジュは何度も通信を試みていた。しかし…

 

「アルゼナル、誰か生きているなら応答して!」

 

通信が返ってくる様子は全くみられない。その間、ヴィヴィアンは周囲に興味を惹かれたのだろうか、少し離れたところで何かを突いている。

 

(つんつん)

 

それは尋常でないぐらい年月を重ね、信じられないくらい劣化したドリンクの自販機だった。ヴィヴィアンは興味津々といった感じでそれのボタンやレバーをカチャカチャといじり始めた。

 

「モモカ! ヒルダ! 誰でも良いから返事しなさい!」

 

と、アンジュのその剣幕に驚いたのだろうか、ヴィヴィアンがビックリした様子で尻餅をついた。そしてその拍子に自販機にもたれかかってしまい、その衝撃で廃棄同然の自販機から数個の缶ジュースが吐き出されたのだった。無論、外側の自販機と同じく中身のジュースも缶が腐食し、もはや飲めるような状態ではないのだが。

 

「…もう! どうなってるの!?」

 

一向に通信の繋がらない現状に、いらいらした表情と口調でアンジュが吐き捨てた。

 

「俺の方もダメだ」

 

タスクも同調する。こちらもこちらで、通信を試みていたのだろう。が、結果は今の発言でわかるように、何の成果も得られなかった。

 

「全周波数に応答なし。半径5キロに動体反応なし。位置センサーも機能せず…」

 

どうしたものかといった感じでタスクが顔を上げて周囲を見上げる。そして。

 

 

「…こんな場所、俺の知る限り、アルゼナルの近くにはない」

 

自機を降りながら、そう続けた。

 

「大昔の廃墟なんじゃないの? 人類がまだ戦争していた頃の」

 

アンジュが思いついたことをそのまま口に出してみる。

 

「そんな場所が残っているなんて話、聞いたことがないよ」

 

しかし、タスクから返ってきたのはつれない返答だった。

 

「…じゃあ、私たちは誰も知らない未知の世界に飛ばされたってこと!?」

 

アンジュのその言葉を聞き、タスクが少しの間俯いて考え込む。だが、すぐに顔を上げると、

 

「ヴィルキスなら、可能性はある」

 

そう、発言したのだった。

 

「ええっ?」

 

タスクにそう言われ、アンジュは表情を強張らせた。

 

「あの時、奴が放った光。、俺達の機体を護るために、ヴィルキスが何かしたのかも…」

 

そう推論するタスクの脳裏には、ここに来る直前のエンブリヲの攻撃や、自分に向かってくるアンジュの姿が思い出されていた。

 

「ヴィルキスは特別な機体だ。何を起こしても不思議じゃない」

 

「!…そうね…特別、よね…」

 

アンジュは視線を逸らすと息を呑んで呟いた。恐らくは、風呂場でジルから聞いたことを思い出していたのだろう。

 

「ん?」

 

目敏くそれに気づいたタスクが怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「別に。直せる?」

 

「何とか。飛べるぐらいには」

 

「じゃあ、お願い」

 

そう告げると、アンジュはヴィルキスのシートから立ち上がった。

 

「君は?」

 

シートから腰を浮かせたアンジュにタスクが尋ねる。

 

「偵察。敵がまだいるかもしれない」

「わかった」

 

その返答を聞くと、タスクは肩から掛けてあったライフルを外すと、それをアンジュに手渡した。

 

「気を付けて」

 

「うん」

 

小さく頷くと、アンジュはそのライフルを手に取った。と、

 

(アンジュ、アンジュ♪ あたしに乗って)

 

いつの間にか側にやってきていたヴィヴィアンが背中を向けた。

 

「乗れ…ってこと?」

 

「ヴィヴィアンがそう言ってるって…」

 

(そうそう♪)

 

肯定するかのようにヴィヴィアンがコクコクと首を上下させた。

 

「君が、ドラゴンだったなんてね。」

 

(内緒だよ)

 

ヴィヴィアンはしーっとジェスチャーする。アンジュの方はどうも納得できない様子を漂わせながらもヴィヴィアンに乗って周囲の状況を確認しに行った。そしてクリストバル達はタスクに自己紹介する。

 

「アーサーのお兄さんとお姉さん!?」

 

「ビックリだろ?当の本人もビックリしてた。実はこの世界にも、アーサーも迷い込んでいる。念の為、アーサーの方にシグナルを送信させておいた。」

 

「アーサーもここに…。」

 

「……お前の言葉、少し違う事があったぞ。」

 

「え?」

 

「ヴィルキスが力に覚醒していたと同時に、アーサーの力が共鳴しあって、本来の力に覚醒しつつあるのだ。」

 

クリストバルはタスクにあの事を説明する。アルゼナル襲撃の際、ヴィルキスが青い装甲『アリエル・モード』へと変わった瞬間、アーサーの左手の紋章も輝き、タスク達をこの世界に飛ばしたとの事。そして…。

 

「ヴィルキスを作ったのは……アーサーの祖父だ。」

 

「えぇ!?」

 

「それに。この世界の背景を見るのも……“何百年ぶり”であろうか。」

 

「何百年ぶり…?それって…。」

 

「タスク!」

 

アンジュが戻って来てとんでもない事を言う。

 

「ミスルギ皇国!!?ここが?」

 

ミスルギと言う言葉に驚き、タスクがあり得ない表情で言う。

 

「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれはアケノミハシラだった、見間違えるはずがないわ」

 

アンジュは此処がミスルギだと言う証言にタスクはただ唖然とする。

 

「でもおかしいの、ミハシラも街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」

 

そうアンジュは言う。っがその時にグレイスが戻って来る。

 

「アンジュ、その証言だが。ここはミスルギ皇国じゃねぇ。」

 

「えっ!? どういう事よ!」

 

「俺が持っているミスルギ皇国の地図と此処の地図を合わせてみたんだが…」

 

ギルバートは持っている地図と先ほど道端の見つけた地図を広げる。

 

「ミスルギはこれ……そしてこの地図は、東京都って言う街だ。タスク、ミスルギ皇国に東京都って言う街はあったか?」

 

「いや、ミスルギにそんな街なんて聞いたことがない…と言うか、あなた達はこの文字が読めるの!?」

 

「読める。この話は長くなるから言えない…。」

 

ギルバートが何故か落ち込んだ様な表情をする。。アンジュは信じられない事に拳を握りしめる。っとそこにある物が聞こえて来る。

皆はそれを聞いて隠れて武器を構える。

 

すると謎の小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。

 

『こちらは首都防衛機構です、生存者の方はいらっしゃいますか? 首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容ーーー』

 

「タスクさん、聞きましたか?」

 

「ああ、第3シェルター…行って見よう」

 

タスク達はその小型ロボットが言った首都第3シェルターへと向かった。

そしてその場所である一つの事実を知る。

 

「あれか…?」

 

街看板や道路標識を参考に、アナウンスロボがアナウンスしていた施設…首都第三シェルターを目指したアンジュとタスク、クリストバル達。道路状態や土地勘に悩まされながら、ようやくそれらしいドーム状の建物の前に辿り着き、タスクがそう呟いていた。そしてそのまま、四人は肩を並べてその建物に走り寄る。

 

「ここに、生存者が?」

 

アンジュが周囲の様子を窺った。と、不意に上空から人工的な光に照らされ、四人の身体が一瞬で包み込まれる。

 

『生体反応を確認。収容を開始します』

 

その光が消え去ると、先程のアナウンスロボと同じような機械的な合成音声が流れ、ゆっくりと建物の口が開いた。

 

『ようこそ、首都第三シェルターへ。首都防衛機構は、あなたたちを歓迎いたします』

 

アナウンスが流れ終わる前に四人は互いに顔を見合わせ頷きあう。そしてライフルを構えると、慎重に内部に入っていったのだった。

 

『ようこそ、首都第三シェルターへ。首都防衛機構は、あなたたちを歓迎いたします』

 

再び同じアナウンスが流れ、それが合図のようにまた隔壁が上がる。その向こうにある大きなウインドウモニターの中に、このアナウンスの主であろう、何かの制服に身を包んだ若い女性の姿があった。

 

『現在、当シェルターには1コンマ7%の余剰スペースがあります。お好きなエリアをお選び下さい』

 

そのアナウンスが終わるのとほぼ同時に、また左右の壁沿いに沿って無数にある隔壁が次々と開いた。

 

『どうぞ快適な生活を』

 

そのアナウンスに促されるように、アンジュとタスクはとりあえず一番手近な避難シェルターへと足を向ける。が、

 

「っ!」

 

クリストバル達は何かを知っている様な表情を表し、アンジュが口元を押さえ、タスクも呆然と立ち尽くしていた。何故なら、その開いたシェルターの中には、白骨化した死体が無数に転がっていたからだ。

 

「何よ…これ…」

 

あまりの惨状にアンジュは絶句すると、踵を返して先程のところ…ウインドウモニターのところまで戻る。

 

「さっきの貴方!どこ!?出てきて説明して!」

 

すると、それに呼応したかのように再びウインドウモニターが開いた。

 

『管理コンピューター、ひまわりです。ご質問をどうぞ』

 

「コンピューター…だったのか…」

 

タスクは驚きを禁じえなかった。

 

「これってどういうこと!? 誰か生きてる人はいないの!? 何が起きたの!? どうしちゃったのよ!?」

 

多少なりとも混乱しているのだろう。アンジュらしくなく要領を得ない様子で次から次へと矢継ぎ早に質問を浴びせた。が、相手がコンピューターである以上、取り乱すわけはない。

 

『質問を受け付けました。回答シークエンスに入ります』

 

当然のように淡々とそう答えると、直後、ホログラフであろうか上下左右360°がスクリーンのようなビジョンに変わる。そして、次々と四人の予想を超えた事実が伝えられたのであった。まずは戦闘機や戦車や戦艦が飛び交い走り回り航行し、砲撃やミサイルを発射する場面が流れる。

 

「何これ…映画?」

 

『実際の記録映像です』

 

思わず呟いたアンジュに答えるように、コンピューター…ひまわりが続けた。

 

『統合経済連合と反大陸同盟機構による大規模国家間戦争。【第七次大戦“ラグナレク、D war”】などと呼ばれるこの戦争により、地球の人口は11%までに減少。膠着状態を打破すべく、連合側は絶対兵器ラグナメイルを投入』

 

「っ!!あれって!!」

 

目を見開く。新たにそこに映し出されたのは確かに先ほど見たパラメイル…エンブリヲが乗っていたヴィルキスに似た機体とそして…。

 

「黒い…ヴィルキス!?」

 

ヴィルキスが六機も映像に映っていることに驚くアンジュ。

 

「何…するの?」

 

すると、その答えを見せるかのように漆黒のパラメイル…ラグナメイルがギミックを展開させ、ディスコード・フェイザーを次々と街や軍隊に向けて発射する映像に切り替わった。

 

『こうして戦争は終結。しかし、ラグナメイルの次元共鳴兵器により、地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発』

 

そのアナウンスを裏付けるかのように、そして黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、アケノミハシラを壊す映像が映し出される。しかし、アケノミハシラから核爆発でも起こったかのような映像が次々と映し出された。

 

『地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり、全ての文明は崩壊しました。以上です。他にご質問は?』

 

「世界が…滅んだ?」

 

その幕切れに、思わずタスクが呟く。

 

「何なのこれ…? 何の冗談よ…」

 

その幕切れに、思わずタスクが呟く。

 

「何なのこれ…? 何の冗談よ…」

 

そしてまたアンジュも、呆然としながら呟いた。が、彼女は信じたくはないのだろう。

 

「バッカみたい! いつの話よ、それ!」

 

鼻で笑って吐き捨てた。しかし、それが強がりと紙一重なのは冷静に見れば誰にでもわかることだった。

 

『538年前』

 

そして、ひまわりは己の職務を忠実に実行して、いつの話かを回答する。

 

『えっ!?』

 

その回答にアンジュとタスクの戸惑いが重なったのも、当然と言えた。

 

『538年193日前です』

 

ひまわりがニッコリと微笑みながら続ける。

 

『世界各地、20976箇所のシェルターに熱・動体・生命反応無し。現在地球上に存在する人間は、貴方が七人だけです』

 

そして、それが止めになった。そして収穫…といえば収穫を得ると、アンジュとタスク、クリストバル達は元の場所へと戻ってきたのだった。

 

 

「ふふっ、500年…か」

 

夜。椅子に座って焚き火に当たりながら、タスクが思わず乾いた笑いを上げた。その手には、腐食した甘酒の缶が握られている。

 

「…500年も経てば、文字も変わるか」

 

印刷されたその“甘酒”の文字が読めないのだろう。その言葉に力はないが、ヨハネスが翻訳してくれていた。

 

「…あんな紙芝居、信じてるの?」

 

対面に同じように椅子に座っているアンジュは逆に、その言葉は力強かった。認めたくない現実を否定したいがためのものなのだろうが。

 

「あの白骨を見れば…ね」

 

タスクがその手に握った甘酒の缶を地面に置く。

 

「…全部造り物かもしれないでしょう?」

 

「ですがアンジュさん…あれは確かに」

 

しかしアンジュの声はほんの僅かだが震えているように聞いて取れた。

 

「何のためにそんなことを?」

 

頭の後ろで手を組みながら、タスクが呆れたように呟く。これまでの状況から考えても、タスクの意見の方が正しい。が、アンジュはやはり認めたくないのだろう。

 

「知らないわよ、そんなこと!」

 

表情を険しくさせながら勢い良く立ち上がって、タスクに食って掛かった。

 

「私は、この目で見たものしか信じない!」

 

自身の不安を打ち消すためだろうかそう力強く宣言すると、すぐ側で休んでいるヴィヴィアンに近づいた。

 

「ヴィヴィアン、乗せて!」

 

(ほい来た!)

 

了承のいななきを上げると、ヴィヴィアンはアンジュを乗せる。そして、夜の闇へと空高く舞い上がっていった。

 

「……」

 

そんなアンジュを見送ったタスクとクリストバル、ギルバート、ヨハネス、キーラ、メアは、なんとも形容しがたい複雑な表情を夜の闇に浮かべていたのであった。

 

 

 

(あるわけないわ…)

 

タスクと別れ、ヴィヴィアンの背に乗りながらアンジュは一人険しい表情で考え込んでいた。

 

(ここが500年後の、未来だなんて…)

 

そして、ギリッと唇を噛む。

 

(そんな、馬鹿げた話…!)

 

しかし、そのアンジュの思いを否定するかのように、どれだけ飛んでもアンジュを喜ばせるようなものは何一つ出てこなかった。

 

 

「ちょっと、ヴィヴィアン!」

 

ヴィルキスを修理していたタスクが振り返った。散々飛び回ったアンジュたちだったが、収穫はなく、戻ってきていたのだ。

 

「まだ北の方に行ってないじゃない。ほら、起きて。頑張って」

 

アンジュが促すが、ヴィヴィアンはか細い咆哮を上げるだけでアンジュに従う素振りは見せない。だが、それは仕方ないとも言えた。何せ、背中に乗ってるだけのアンジュと違い、ヴィヴィアンは自分の身体に人を一人乗せながら空を飛んでいるのだ。エネルギー消費の激しさはアンジュと比べるまでもないだろう。要するに、疲労困憊なのである。

 

「ヴィヴィアン、ほら、起きて」

 

が、アンジュは納得できないために再びヴィヴィアンをけしかける。その様子に、流石にタスクやクリストバル達も黙っていられなくなった。

 

「アンジュ、その子に無理させちゃダメだ」

 

ヨハネスがたしなめるものの、今のアンジュはその言葉に耳を傾けられるほど精神的な余裕はなかった。それは、その目の下にクマが出来ていることでも十分に窺い知ることが出来た。

 

「起きなさいよ! この役立たず!」

 

アンジュは一度タスクをキッと睨んだ後、ヴィヴィアンに向かって怒鳴る。その剣幕か、それとも言葉の内容にかはわからないが、ヴィヴィアンは怯えて逃げてしまった。

 

「っ!何てことを言うんだ!」

 

その態度や物言いにタスクは思わずアンジュの腕を掴む。だがすぐに、

 

「放して!」

 

鋭く叫ぶと、アンジュは強引にその腕を振り解いた。タスクは困惑したものの、アンジュを諭すように努めて冷静に話しかける。

 

「少し休んだほうがいい」

 

「休んでどうなるの? こんなわけのわからないところに居ろって言うの?」

 

だが、アンジュは聞く耳持たない。そして、

 

「確かめたいのよ! アルゼナルがどうなったか! モモカや皆が無事なのか! …あいつが、本当に死んだのか……」

 

噛み付いた。が、強がっていてもやはり不安を感じているのだろう、最後には勢いなくなってしまったが。

 

そんなアンジュにこれ以上何と言って声をかければ良いかわからず、タスクも戸惑ってしまう。

 

「…貴方だって、早く帰らないと困るんでしょう? あの女が待ってるんだし…ね、ヴィルキスの騎士さん?」

 

イライラした様子でタスクの脇をすり抜けると、アンジュはついタスクに当たってしまうのだった。

 

「そうだ…」

 

振り返り、思わず皮肉めいた口調でアンジュがタスクに顔を向ける。対照的に、タスクはアンジュを揶揄することもなく表情を引き締めて答えを返した。

 

「俺は生命に代えても、君とヴィルキスを護る」

 

「リベルタスのために…ね。サリアと一緒」

 

アンジュの不機嫌は未だ収まらず、そう吐き捨てるとそのまま少し歩き、あらかじめおこしておいた焚き火の前で佇んだ。

 

「私を利用することしか考えてない、あの女の犬。」

 

「違う! 俺は本当に君を…」

 

しかし、今のアンジュにそれ以上何と声をかけて良いかわからず、タスクは言葉に詰まってしまった。

 

「帰れないなら…それでも良いんじゃない?」

 

そのまま、アンジュはやってられないといった態度で焚き火の前に腰を下ろした。

 

「ええ…?」

 

まさかそんな言葉がアンジュの口から出てくるとは思わなかったのだろう、タスクが戸惑うのも無理はなかった。そんなタスクを置き去りにしたまま、アンジュが言葉を重ねる。

 

「だって、あんな最低最悪のゴミ作戦、どうせ上手くいかないし」

 

「…ゴミ?」

 

アンジュが言った不用意な一言に、タスクがそれまでとはまるで違う、底冷えのするような怜悧な呟きを呟いた。その事にメアがアンジュに注意する。

 

「アンジュ!いい加減にしなさい!それとその言葉、今すぐ撤回してタスクに謝りなさい!」

 

「そうでしょう? 世界を壊してノーマを解放する。そのためなら、何人犠牲を出したって構わないなんて…。それで何が解放できるんだか。笑っちゃうわ」

 

「……もう良いです、メアさん…。」

 

怒りからか、タスクはぎゅっと拳を握り締めた。グローブが衣擦れの音を立てる。

 

「…じゃあ俺の両親も、ゴミに参加して無駄死にした…そういうことか?」

 

アンジュに背を向けたタスクが、底冷えする口調のまま淡々と呟く。

 

「!?…えっ…?」

 

アンジュが今までの傲慢な物言いからうって変わって不安げな表情になって振り返る。

 

「…俺たち古の民は、エンブリヲから世界を開放するためにずっと闘ってきた。父さんと母さんは、マナが使えない俺たちやノーマが生きていける世界を創ろうとして闘い、死んだ」

 

口調は抑えようとはしているが、どうしても激情に駆られてきつくなっていく。そして、

 

「死んでいった仲間も…両親の想いも…全部ゴミだというんだな、君は!」

 

やはり激情は抑えきれず、タスクはきつい眼差しを向けて振り返り、初めてアンジュに怒鳴ったのだった。

 

「それ…は…」

 

紅い瞳が不安げに揺れる。ここにきて初めて、アンジュは自分が言いすぎたと理解したのだった。が、覆水は盆に返らず。タスクはそのまま顔を背けてその場を立ち去った。アンジュも何も言うことは出来ず、ただ俯くことしかできなかった。

 

「アンジュ…タスクは複雑な事情がある。俺はそういう人達を色々見てきた。けど、俺達はその人達を励ます言葉をくれるだけしか出来ない。だからこそ、正しい判断を決めるのだ。」

 

クリストバルはそう呟き、タスクを追うのであった。

 

「判断を…決める…」

 

アンジュはそう考えながら、知らずにタスクの心を傷つけ仕舞った事に後悔をしていたのであった。

 

 

その翌日、クリストバル達はタスクと一緒にヴィルキスの修理をしていて、二人の心模様を表すかのように静かな雨も降りしきっている。この日もタスクはヴィルキスの修理に勤しんでいたそんな中、アンジュはただ一人でどこか謝るタイミングを計っていたが、どうにも見つけられずにいた。

 

「(どうしよう…、タスクにどう言えば)」

 

っとアンジュは地下の店にある物を見つけ、それは何処にでもありそうな、色々なアクセサリーを吊るしてある業務用のアクセサリースタンドだった。

 

「わあっ…」

 

嬉しそうな声を上げ、思わずアンジュはそこに近寄った。

 

「これ、可愛い…」

 

その中の一つを手に取るとしみじみと呟いた。可愛いものが好きなのはやはり女性だからか。そして又、アンジュの脳裏に一つの記憶が蘇ってきた。それは、ヴィヴィアンがぺロリーナのマスコットを自分に渡そうとしてくれたときのことだった。

 

「……」

 

それを思い出したアンジュはアクセサリースタンドの一つを手に取ると歩き出す。その表情は、今までのものとは違って晴れやかなものであり、美しい自然な笑みが浮かんでいたのだった。

アンジュがそうしている頃、いつの間にか雲は過ぎ去り、顔を現した太陽は随分傾いてもうすぐ日の入りになろうかとしていた。そんな中、タスクとキーラが額に汗しながらヴィルキスの修理を懸命に続けている。と、不意にその耳に微かだが金属音が聞こえてきた。

 

「?」

 

空耳かと思って顔を上げてみると、修理用に組んだ足場のパイプに、日の光を反射させて輝くネックレスが引っ掛けてあった。キーラはタスクを呼び、引っ掛けてあるネックレスを見る。

 

「アンジュ?」

 

タスクが、見つからないように音を立てないようにその場から立ち去ろうとしていたアンジュに声をかける。タスクから顔は見えないが、思わず立ち止まってしまったアンジュは何ともバツの悪い表情をしていたのだった。

 

「…に、似合うかなって。それだけ…」

 

思うところがあって態度を改めたものの、それでもやはりどんな顔をすればいいのかわからないのだろう、アンジュはタスクに背を向けたままぶっきらぼうにそう答えることしか出来なかった。

そんなアンジュにタスクは少し戸惑っていたが、すぐに笑顔になるとそれを手にしてアンジュに近づく。

 

「どう?」

 

そして、ネックレスをかけながらアンジュに尋ねる。アンジュが振り返ると、そこにはネックレスを首から提げたタスクの姿があった。

 

「いいん…じゃない?」

 

言葉こそ素っ気ないものの、日の光でわかりにくかったが確かにアンジュは頬を染めていた。そして視線を逸らす。

 

「ありがとう」

 

タスクは柔らかく微笑むとアンジュに礼を言った。

 

「疲れただろう? ご飯にしよう」

 

そして食事に誘う。が、

 

「あのっ!」

 

アンジュがそのタスクの足を止めた。

 

「ん?」

 

「あの…ごめん…なさい…」

 

「「「!?ええっ!?」」」

 

小さな声だが確かに謝ったアンジュに、タスクとクリストバル達が驚きを隠せなかった表情をする。

 

「君って…謝れたんだ!?」

 

「これは……驚いた。」

 

「驚きですわ…」

 

「なっ、何よそれ!」

 

思わずアンジュが不満げな口調になる。もっとも、こっちのほうが彼女らしいといえば彼女らしいのだが。

そんなアンジュへとタスクは歩み寄る。そして、ゆっくりと右手を差し出した。

 

「あ…」

 

「俺こそ、きつく当たってごめん」

 

「う、うん…」

 

顔を上げてタスクの顔に視線を合わせると、ぎこちないながらもしっかりとその手を握り返すアンジュ。そこにヴィヴィアンが帰ってきた。

 

「ヴィヴィアン!」

 

アンジュにふぉえ? っという感じで咽喉を鳴らして答えるヴィヴィアン。

 

「昨夜はゴメン。私、言い過ぎたわ」

 

そのまま、ヴィヴィアンの首を包むように優しくアンジュは腕を回した。

 

「ありがとう、ヴィヴィアン」

 

ヴィヴィアンはただ不思議そうに咽喉を鳴らすだけだった。

 

 

翌日、また雲が空を覆う中、タスクとクリストバルが昨日と同じようにヴィルキスの修理に勤しんでいる。ギルバートとヨハネス、キーラとメアは食糧調達に。

 

「ヘックシュッ!」

 

タスクは不意にくしゃみが出し、思わず顔を上げる。今度は雨ではなく雪が空から舞い降り始めていた。

 

「雪……冬が近いか。」

 

「道理で寒いわけだ…」

 

身を震わせながら思わず呟く。そんなタスクの耳に、

 

「タスクーっ!皆んなーっ!」

 

聞きなれた声が届いた。

 

「凄いもの見つけたわ!」

 

ヴィヴィアンに乗って戻ってきたアンジュが興奮気味に話しかけたのだ。どうしたのだろうと呆気に取られたタスク達だったが、誘導された先にあるものを見て成る程これはと納得した。

タスクのマシンのバッテリーからケーブルを繋げて電源として、エンジンを入れる。するとそれは生き返った。

ケバケバしいピンク色のネオンが屋上に設置された建物…いわゆるラブホテルがアンジュの見つけた凄いものだったのだ。(クリストバル達はこの建物が何なのか二人と一匹に何も言わずにしていた。)

 

「屋根もある! ベッドもある! お風呂もある!」

 

「奇跡的な保存状態ですね」

 

内部の一室に足を踏み入れたアンジュはその状況に興奮している。タスクやクリストバル、ギルバート、ヨハネス、キーラ、メア、アンジュとほどではないが、それでも喜んでいるのが窺えた。

 

「きっと名のある貴族のお城だったの違いないわ!」

 

…まあ、確かに城っぽい外観のそれもあるのだが、それでもここが本来何のための施設か知らないというのは幸せである。無邪気に喜ぶアンジュに横から水が注される可能性がないのは喜ぶべきことだろう、うん。

 

「見つけたヴィヴィアンに感謝しなきゃね」

 

アンジュが嬉しそうにそう言うと、ヴィヴィアンもまた嬉しそうに咽喉を鳴らしたのであった。

 

「お風呂入ってくる! タスク、掃除お願いね!」

 

「…はいはい、お姫様」

 

「フフッ。」

 

ウキウキしながらアンジュはヴィヴィアンを伴って浴場へ向かい、タスクとクリストバルは少々呆れながらもにこやかに答えた。

こうして、七人と一匹は久々にゆっくりと休める場所を確保したのであった。

それぞれの部屋を掃除しているタスクとクリストバル、ギルバート、ヨハネスはそれぞれ使う部屋を掃除をする。キーラとメアはクリストバルに先に風呂に入れと言われ、お言葉に甘えてアンジュとヴィヴィアンとの三人と一匹でお風呂を満喫していた。そんな中、アンジュはキーラとメアにアーサーの事を質問する。

 

「アーサーについて?」

 

「うん…あのトリト村って言う場所で。何がどうなってるのか、分からなかった。穢れボスキートとか、12年前の事とか……。」

 

「無理もないよ。あの場にいた本人にとってはトラウマ以上の悪魔だから。アーサーね……“家族と慕ってくれた人達を殺してしまった事に、深い罪悪感”を持ってしまったのよ。」

 

「え……?」

 

「あなたの二番目のお兄さんが言っていたじゃない?『君の罪は真の強さの覚悟を持たなかった』と。その事で、もう誰も失わせない、もう誰も死なせはさせない…誰か守りたい力を持ちたいと言う物に目覚めてしまったのよ。」

 

「(私と同じだ……アイツも私の様な責任感を。)」

 

「ま、それにアーサーは……自分の奥さんや義弟妹を守ろうと力を付けようとしてる♪」

 

「奥さん!?アイツ結婚してたの!?」

 

「先週ね。クリストバル兄さんに続いて、あの子が嫁ゲットした事に私達も驚いたよ。これがその写真よ」

 

「へぇ〜、結構美人じゃない?」

 

「でしょう?」

 

「(なんてデカさなの…。)……ん!?」

 

「何で!?」

 

「え?あぁ〜そっか、アンジュには言ってなかったね。二人とも、アーサーに助けられたのよ。」

 

「アイツが…お父様とお母様を!?」

 

「あなたがアルゼナルに連行された日、ソフィア皇妃はあなたを庇って死にかけたらしいの。皇帝陛下は幽閉されていた所をアーサーは見ていて、二人とも助けてメディカルカプセルの中に入れて治療してたのよ。安心して、二人とも完治してクラウドブルースで保護されてるわ。」

 

「お父様とお母様が…生きている!」

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの風呂をたっぷりと満喫し、ガウンに着替えてゆっくりと寛いでいたアンジュが窓の外を眺めながらそう言った。降り出した雪はいつの間にか積もりだし、見えている光景を白く染め上げ始めている。ヴィヴィアンはその身体の大きさゆえ、アンジュたちとは別の部屋で、今はもうぐっすりと夢の中だった。

 

「ありがとう、タスク」

 

「ん?」

 

タスクは壊れてしまったのか、それとも元から使えないものを使えるようにしているのかはわからないが、床に座ってドライバーを片手にドライヤーを見ているタスクが顔を上げる。タスクも風呂を満喫したのだろう、アンジュと同じガウンに身を包んでいた。

 

「色々と。」

 

背を向けたまま、アンジュが続ける。向かい合わないのは照れ臭さの裏返しだろうか。

 

「沢山のこと知ってるし、いつも冷静だし、優しいし、頼りにしてる」

 

だがすぐにアンジュが振り返って、タスクに穏やかな視線を向けた。

 

「ははは…」

 

突然そう言われて戸惑っているのだろうか、はにかむように微笑むとドライヤーのスイッチを入れた。使えるようになったのか、排気音を上げながらドライヤーが動作する。

 

「私はダメね。すぐに感情的になって、意地になって、パニックになって…」

 

「仕方ないよ。こんな状況なら、誰だってそうなるさ…」

 

タスクがそう返す。二人の間に流れる穏やかな空気が、少し前までのわだかまりやぎこちなさを払拭しているのを感じさせた。

 

「皇女様がノーマになって、ドラゴンと戦う兵士になって、とんでもない兵器に乗せられて、気付いたら500年後…」

 

「そうよね…。ちょっと、色々ありすぎよね」

 

アンジュは窓際から移動して、ダブルベッドにゆっくりと腰を下ろす。

 

「でも、悪いことばかりじゃなかったわ。貴方や、ヴィヴィアンにも逢えたし。色んなこともわかった。…最期まで、わかりあえなかった人もいたけど」

 

そこで、少し表情が曇った。思い出していたのだ、自身の兄であるジュリオのことを。

 

「お兄さんかい…?」

 

タスクもそれを察したからだろう、アンジュと同じように表情が曇り、悲しそうな口調になっていた。

 

「ねえ?」

 

少し時間を置いた後、雰囲気を変えるためだろうかアンジュが問いかけた。

 

「ん?」

 

「あの、エンブリヲって何者?」

 

するとタスクは、床に座ったまま身体をアンジュの方へと向けた。

 

「…文明の全てを陰から掌握し、世界を束ねる最高指導者。俺たちが打倒すべき最強最大の敵…だった」

 

「?…だった?」

 

タスクの言葉が過去形になっていることに、アンジュが首を捻った。

 

「500年も前の話さ」

 

頭の後ろで手を組むと、タスクはおどけたようにそう言った。

 

「そうね」

 

アンジュも静かに微笑む。

 

二人は顔を合わせると、クスクスと笑い合った。

 

「随分遠くまで来ちゃったな…」

 

笑い終わった後、振り返るかのように横を向いておもむろにタスクが口を開いた。

 

「でも、生きてる」

 

タスクの呟きを受けてそう言ったアンジュに、タスクは又視線を戻した。

 

「生きてさえいれば、何とかなるでしょ?」

 

そして、柔らかく微笑んだ。

 

「強いね、アンジュは」

 

タスクが素直な気持ちを口に出した。

 

「バカにしてる?」

 

「褒めてるんだよ」

 

そう言われ、アンジュが嬉しそうに微笑んだ。

 

「さて、と」

 

話はここまでというつもりだろうか、タスクが立ち上がった。

 

「久しぶりのベッドだ。ゆっくりお休み」

 

「タスクは?」

 

そのまま部屋を去ろうとするタスクの背中に、アンジュが声をかけた。

 

「廊下で寝るよ」

 

振り返ってそう答える。まあ、至極当然といえば当然の答えではある。

 

「ここで良いじゃない」

 

が、アンジュはそう答えて同室で寝るように促した。意識しての発言かどうかはわからないが、何とも大胆である。

 

「い、いや、でも…」

 

案の定、タスクが戸惑っている。男として嬉しいシチュエーションには違いないが、かと言って素直に頷けるほどタスクは豪の者ではなかった。

 

「いいでしょ?」

 

そんなタスクにアンジュが追い打ちをかける。上目遣いになり、寂しげな表情をしたのだ。どれだけ男勝りでも、やはり心細いのだろうか。

 

「う…」

 

そんな表情を見せられ、タスクは言葉に詰まってしまう。結果、

 

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

こうなるのも当然のことだった。タスクはそのまま反転すると、ソファーに腰を下ろす。が、その瞬間、ソファーは音を立てて壊れてしまった。やはり経年劣化は否めなかったのだろう。その姿にアンジュは楽しそうに笑い、タスクの悲鳴とソファーが壊れた音で近くの部屋で休んでいたヴィヴィアンや隣の部屋で休んでいたグレイスやティアが思わず目を覚ましてしまっていた。

 

「もう!何してるのよ♪」

 

「ははは…」

 

アンジュの突っ込みにタスクも苦笑するしかなかった。そしてひとしきり笑った後、アンジュは頬を染める。そして、

 

「こっち…来たら…?」

 

と、自分が座っているダブルベッドにタスクを誘ったのだった。

 

「いっ!?流石に、そこまでは…」

 

アンジュの大胆な誘いにタスクも当然のように頬を赤らめる。さて、それでは結果どうなったかというと…。

 

 

(何の音~?)

 

寝惚けた感じの口調でヴィヴィアンが音源であるアンジュの部屋を覗き込む。そしてその瞬間、ヴィヴィアンは固まってしまった。何故かと言うと、

 

『(わ、わ!)』

 

驚きでパニックになりながらそのまま更に顔を近づけて覗き込む。そこには、枕を並べてダブルベッドに入っているアンジュとタスクの姿があったからだ。

 

「ホント、静かね…」

 

「う、うん」

 

「世界には、私たちしか居ないんだ…」

 

「う、ぅん」

 

なんともぎこちない会話である。いや、この場合は初々しいと言ったほうが正しいかもしれない。身を硬くしたまま、タスクがロボットのようにアンジュに顔を向けた。

 

「こんな穏やかな気持ち、何時ぶりだろう…」

 

そして寝返りをうつと、アンジュはタスクに背を向けた。

 

「…私たちを逃がしてくれたのかも」

 

そしてそのまま、独り言のように口を開く。

 

「えっ?」

 

「ヴィルキスが戦いのない、世界に…」

 

そして、アンジュは目を閉じると寝息を立て始める。

 

「あ…」

 

タスクは上半身を起こすとアンジュの顔を覗き込んだ。気持ち良さそうに眠りに就いている。その顔を見たタスクはゆっくりゆっくりと、アンジュを起こさないように慎重にベッドから出て立ち上がる。が、

 

「…しないの?」

 

いきなりアンジュが呟いた。どうやら狸寝入りだったようだ。

 

「ええっ!?」

 

その言葉にタスクが顔を真っ赤にして驚いた。狸寝入りもそうだが、何より発言の内容に度肝を抜かれたのだ。

 

「いやいやいや!」

 

パニクりながら何とかタスクが言葉を続ける。

 

「俺は、ヴィルキスの騎士だ!君に手を出すなんて、そんな!」

 

「もしかして私のこと、嫌いなの?」

 

「そんなことあるわけないだろう!」

 

「じゃあ…」

 

「だから、えーと…」

 

一瞬口籠ったタスクだったが、顔を真っ赤にしたままアンジュから背けると、

 

「お、畏れ、多くて…」

 

蚊の鳴くような声でそう答えたのだった。

 

「はぁ?」

 

思わずアンジュが布団から跳ね起きた。

 

「10年前…」

 

そんなアンジュに、タスクが己の心境を吐露し始める。

 

「えっと…正確には548年前か、リベルタスが失敗した。右腕を失ったアレクトラは二度とヴィルキスに乗れなくなり、俺の両親も仲間も死んだ」

 

アンジュはタスクの言葉を邪魔することなく黙って聞いている。

 

「俺にはヴィルキスの騎士としての使命だけが残された。でも、俺は怖かった。見たことも会ったこともない誰かのために戦って死ぬ…その使命が……。俺は逃げた。あの深い森に。戦う理由、生きる理由も見当たらず、ただ逃げた。義兄弟であるアーサーやライド、エクエス、マイラの思いを投げ捨てて……そんなときに、君と出会った!」

 

アンジュがハッと息を呑んだ。

 

「君は、戦っていた。抗っていた! 小さな身体で……目が覚めたんだ。俺は何をやってるんだろうって…あの時、やっと騎士である意味を見つけたんだ。俺は歩き出せたんだ。押し付けられた使命じゃない、自分の意志で!…だから俺は、君を護れればそれで良いっていうか、その…」

 

「ヘタレ」

 

タスクの独白を、アンジュは容赦なく斬って捨てた。

 

「えっ!?」

 

振り向いたアンジュは不満そうな表情をしている。

 

「でも、純粋」

 

だがすぐにその表情は微笑みに変わった。そしてそのままベッドの上に立ち上がるとガウンを緩め、胸こそ手を交差させて隠していたものの、肩からすべり下ろす。

 

「あっ…あっ…」

 

あまりの展開に、思わずタスクは何も言えなくなってしまう。

 

「私は、血塗れ…」

 

今度はアンジュが独白する番だった。その表情は曇っているが。

 

「人間を殺し、ドラゴンを殺し、兄ですら死に追いやった。私は血と、罪と、死に塗れている。貴方に護ってもらう資格なんて…」

 

「そんなことない!」

 

自然とタスクはアンジュの側に駆け寄っていた。

 

「アンジュ、君は綺麗だ!」

 

その言葉にアンジュの瞳が揺れる。勢いそのままに、タスクはアンジュの両肩に手を置いた。素肌に触れられ、アンジュの身体が一瞬だけ震える。

 

「君がどれだけ血に塗れても、俺だけは君の側に居る!」

 

「暴力的で、気まぐれで、好き嫌いが激しいけど…それでも?」

 

「ああ、それでも」

 

不安げに揺れていたアンジュの瞳だったが、タスクのハッキリとした返事を聞いて救われたのか、諭された後は優しく微笑んでいた。そしてそのまま目を閉じる。

 

「……」

 

タスクも同じように目を閉じると、二人はそのまま唇を重ね合わせたのだった。

 

『(きゃあ~~~!!!)』

 

外からデバガメしていたヴィヴィアンがあまりの展開に叫ぶ。別の部屋の窓から見ていたクリストバルとギルバート、ヨハネス、キーラ、メアが微笑む。それが合図というわけでもないだろうが、予想だにしない来訪者が三人(二人と一匹?)の元に舞い降りてきた。突如、空をつんざくような咆哮が響き渡ったのだ。その直後、地面が振動してアンジュたちが泊まっているラブホも激しく揺れた。

 

「きゃあーっ!」

 

「アンジュ!」

 

足場が柔らかいベッドの上だったということもあり、アンジュはバランスを崩して床に投げ出されてしまう。そんなアンジュともつれるかのようにタスクも床に投げ出された。そしてその直後、窓が粉々に砕け散ったのだ。

 

「ちょっとタスク! あんたまた!」

 

「ごめん」

 

二人には何が起こったかというと、最早お約束のようにタスクがアンジュの股間に頭を突っ込んでいたのである。タスク本人は不意の衝撃からアンジュを護ろうとしたのだが、結果としてこうなってしまっては弁明の余地はない。そんな二人だったが、一体何がと思って先程の衝撃で亀裂が入って外を覗けるようになった外壁に視線を外に向ける。そこには

 

「救難信号を出していたのはお前たちか?」

 

ガレオン級の頭に乗っている人物に驚く、その上に乗っているのはアーサーと二人組の女性だったからだ。

 

「おぉ!タス…ク!?もしかして二人とも……お取り込み中だった?」

 

「アーサーって……!?」

 

「「ドラゴン!?」」

 

「ようこそ、偽りの民よ、我らの世界……【本当の地球】に。」

 

ようやく再会したアーサーとタスク、二人が待ち受ける運命とはーーー。

 

 

 

真実の地球の森林の中、小さな特異点が開き、中から白いローブを見に纏った青年が現れる。

 

「此方ファビアス、目標を発見しました。これより次元迷彩で隠密監視を開始する。」

 

『了解だファビアス。目標が《ソルの光》に覚醒した後、接触し我々の遺物を渡してやるのだ。』

 

「了解だグレファ。通信終了する。」

 

ファビアスと言う青年は双眼鏡である人物を覗く。それは飛行中のドラゴンの頭部に座っているアーサーであった。

 

「あれが【エクシリアの直系】アルトリウス・コールブランド…。我ら共和国の希望にして、平和の光を照らす導士…。」

 

果たしてこの青年は何者なのか。青年は双眼鏡をしまい、迷彩での隠密行動を開始する。

 

 

 

丁度同じ頃、偽りの地球のとある浜辺ーーーそこからプラズマが発し、現れたのは黒いスーツ、各部に銀色の球体が埋め込まれたムーバル・スーツの男性が現れる。男性は辺りを見渡し、インカムで誰かと通信する。

 

「……ここは?」

 

「大丈夫よ、元の世界……彼奴がまだ不完全な状態の世界よ。」

 

「そうか…アイツらがやっている間に、“あれ”を探し、“あれ”を見つけ、この世界に真実と闇をばら撒く。」

 

「そうすれば…farther・Xの履歴と他の一族、ジュリオ・飛鳥・ミスルギの野望も一気に、崩れる“砂の城”へと変わる……。」

 

「そうだ。その為にはこの世界にもいる…闇ブローカーと反政府団体、闇業者と手を組まなければならない。次の未来へ歩む為に!フォロー頼めるか?」

 

「ソルよ永遠に……全力で尽くすわ。」

 

「フッ♪」

 

「来い!『アルティメット・ガルーダ』!!」

 

すると彼の背後からプラズマが発せられ、黄金のアーマーを見に纏ったフラドーラに似た機体が現れる。

 

「待っていろ……今から俺が…“俺達”の戦いを優位にする様に進めてやる!」

 

謎の青年は機体に乗り込み、ミスルギ皇国へと向かうのであった。

 

 

一方、ある者の夢の中ーーー遠い遠い…遥かな場所、人類が未だに到達できない領域…『宇宙』無限に広がる星の海、静寂に満ちた光と闇が重なる場所、二つの力がぶつかり合っていた。一つは不気味な奇声を笑い声として上げる黒い球体、もう一つは光り輝く白い球体と全身機械に満ち、光の翼を噴出する赤き聖龍、小さな青、緑、灰の球体であった。すると聖龍が白い球体に問い掛ける。

 

『我が主よ!これ以上は無理です!無茶です!主は先の【死霊龍王】の戦いで傷は癒えていませぬ!その身体では奴の主である【常黄泉ノ神皇』に勝てませぬ!』

 

『何を言う!傷を癒している間、奴が次の星の生命を喰らうてしまう!』

 

『しかし!!』

 

『それに、後の事はエクシリアの王子であるアルファリオンと生き残った星の民に託しておる!私が見込んだ人間!私の愛する家族でもある!』

 

『主よ!!』

 

『常黄泉ノ神皇!』

 

『……ワタシと一体となれ。そうすれば怒り、悲しみ、ありとあらゆる負の感情もなくなり、幸福だけの存在となる。』

 

『誰がお前の一部など!彼らや民衆はお前を信仰し、微笑んでいた!!なのにリセットするなんて!お前は神でもなんでもない!人を操り人として扱う異形者だ!!』

 

『そうですか、ならば仕方ありませんね。』

 

『っ!!まさか!!?』

 

『そのまさかですよ、【太陽ノ神帝】あなたが救ったエクシリア人と星の民達に…私の刺客達を送りましたの。』

 

『常黄泉ノ神皇!貴様!!』

 

『話はこれくらいにして、あなたも彼等のようにワタシと一つになりなさい!!』

 

『滅びろ!陽光の象徴!!!!』

 

『(常黄泉ノ神皇の力が以前よりも膨れ上がっている!!くっ!信仰者を何だと思っているのだ!!かくなる上は!)』

 

『コロッサス、ヤトウ、リュウ、アケロン…お前達を遥かな未来へ送る。』

 

『『『『ッ!!??』』』』

 

『そこには既に奴がいない時代となるだろう。』

 

『何を言うのですか!?主よ!あなた様がいなくなれば、エクシリアはどうします!?』

 

『心配無用だ。その事は『超星獣万能宇宙戦闘母艦クラウドドラゴン』に任せてある!』

 

『アルファリオンを頼む!!』

 

『……分かりました!主よ!あなた様の無念!彼奴の刺客たる『ゼノム』に我らの裁きの鉄槌で晴らして見せます!!』

 

『さて……殺るか!』

 

白い球体はそう言い、黒い球体へと向かっていくのであった。

 

そしてその者の夢が消え、視界に映る何も無い闇へと戻っていくのであった。

 



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チャプター29 サラマンディーネ

アーサーと再会したアンジュとタスクがドラゴンを従えた女性たちと出会って少し後、何処かへ向かって空を飛行するドラゴンの集団があった。二体の大型ドラゴンがヴィルキスとヴィンセクトを足で掴み、修理が終わった輸送機でドラゴンの後を追う。

 

 

「何処に連れて行く気なんだろう…?」

 

タスクが呟いた。輸送機の中ではアーサーとアンジュとヴィヴィアン、タスク、そして操縦席にいるクリストバルとギルバート、ヨハネス、砲塔二基にキーラとメアが配置についていた。砲塔に乗っているメアがタスクの言葉に返答する。

 

「大丈夫、あなた達ノーマにとっては本当に安全な場所だから♪」

 

メアはニッコリとした笑顔で返すが、一人それに納得しない者がいた…アンジュであった。アンジュは再会したアーサーに言う。

 

「あなた一体何なの?ドラゴンと仲間だって言う事なんて聞いたこともないよ?」

 

「まぁそれに関しては、後で説明するから。」

 

アーサーはそう言い、輸送機の窓を見る。

 

「お!相変わらず迫力あるなぁ!」

 

アーサーが窓の先にある物に興奮する。タスクは何なのかと窓のハッチを開ける。その先に映ったのは。

 

「何よあれ!?」

 

「デカイ…戦艦!?」

 

「ピュイイイ〜!(スゲェ!飛んでる〜!!)」

 

二人と一匹が目にした物ーーー前後に長いスマートな艦橋と、メインノズルより後方に大きく伸びる艦尾部、おまけに2つ並ぶ艦橋や艦首から艦橋の付け根部分まで設けられた艦載機の滑走路兼誘導路を搭載した巨大飛行戦艦があちこちの空中を巡回していた。

 

「あれって戦艦!?」

 

「うん、【ザグザケル級巡洋艦】って言う“地球連邦軍”の主力艦だ。まだまだあるよ。」

 

「地球連邦…軍?」

 

「この世界の国の名前と言うより…世界政府?」

 

「訳がわからないわ!着いたら知ってる事を洗いざらいだからね!」

 

「お、落ち着け!詳しい事と知ってる事を全部彼女が言うから!」

 

「彼女?」

 

「おっと、もう直ぐ着くみたい」

 

アーサーが言ったその時輸送機が揺れて、アーサーとクリストバル達を除くアンジュ達は態勢を思わず崩し、アンジュはタスクの上に乗っかってしまう。

それに二人は思わず顔を真っ赤にして、アーサー達は目を見開いて唖然としてしまう。

 

「ちょ!何処を触ってるのよ!!?」

 

「えっ!? お!俺は何も!?」

 

「何時まで発情してる気!?」

 

「そんな!してない、してないよ!」

 

「終了!閉店!お座り!」

 

「何でしょう?この会話は……」

 

アンジュに同意するかのようにヴィヴィアンがいななき、ティアが呟く。そんなくんずほぐれつのドタバタ劇がコンテナ内で起こっているとは知る由もなく、ドラゴンの一団は目的地へ向かって飛んでいるのだった。

 

 

「着いたわ。出なさい」

 

くんずほぐれつのドタバタ劇の余韻も覚めやらぬ中で輸送機の尾部のハッチが開くと、先程の女性二人がそう言って一行を促した。その手に得物を持っているのがどうにも恐ろしいが。他にも白や銀色を基調とした配色の装甲服で、右腕に銃器を装備した人達ーーー【連邦兵士】も。

言われるがままにアンジュたちが外に出ると、そこには今まで見たこともない光景がアンジュたちの目の前に広がっていた。長い階段の上に巨大な、何処からどう見ても和風建築の建物があったのである。もっともアンジュたちは、この建物が和風建築という工法・技法のものだとは知らないだろうが。

 

「大巫女様がお会いになる。こちらへ」

 

その機体を見て衝撃を受けるアンジュ。対照的に、素直にこちらの言うことにアンジュたちが従ったことで少し警戒を解いたのか、二人は得物を外した。そしてそれとほぼ時を同じくして、ヴィヴィアンが突然悲鳴のような鳴き声を上げると意識を失ったのだった。

 

「ヴィヴィアン!」

 

異変に気づいたアンジュがすぐに振り返る。何故こんなことになったかというと、アンジュからは見えない位置に、麻酔と思われる注射器が刺さっていたからだ。

そして脇から、数人の新たな顔ぶれがヴィヴィアンの元に走ってきた。

 

「ヴィヴィアンに何をしたの!」

 

アンジュが強く詰る。が、二人は外していた得物を構え直して威嚇した。それを見て連邦兵士は主兵装である【アームブラスターガン】構える。、アンジュは悔しそうに唇を噛んで口を噤んだのだった。

 

『連れて参りました』

 

建物内に入り、彼女たちの言う“大巫女様”の御前までアンジュとタスクを言葉通り連れてきた二人が報告した。

 

「ご苦労」

 

アンジュたちの正面にいる、一番高い場所に鎮座している人物が労をねぎらった。御簾に隠れて姿こそ見えないものの、声質からそう年齢がいっていないことが推測される。しかしその座っている場所と、真っ先に口を開いたことから、彼女が二人の言う大巫女様であるのだろうということは容易に推察されるものだった。

 

「異界の女…」

 

アンジュは不満そうに少し顔を上げ、

 

「それに、男か…」

 

タスクは緊張した面持ちで唾を飲んだ。

 

「名は何と申す?」

 

尋問としてはある意味当然の質問をする。が、こういう真似をされて大人しくしていられるような性格のアンジュではない。

 

「人の名前を聞くときは、まず自分から名乗りなさいよ!」

 

この状況下で臆せずにそう言えるあたり、流石に肝が据わっている。あるいは長い皇族生活の影響かもしれない。が、いくら納得できなくてもこの場合の初手としてはあまり賢い選択ではないかもしれない。

案の定、御簾に姿を隠したその他の連中がザワザワとざわめきだしたからだ。

 

「大巫女様に何たる無礼!」

 

後ろの二人のうち、一人が激高して自分の得物に手を掛けた。

 

「アンジュ!」

 

アーサーは自身の顔を手で覆い隠し、呆れる。タスクが窘める。まあ当然だろう。話し合いでいきなり喧嘩腰では纏まるものも纏まらない。だが、アンジュは不満そうな表情を崩さない。

 

「…特異点は開いておらぬはず。どうやってここに来た」

 

だが大巫女様は意に介する要素もなく、違う質問を投げかけた。自分の言葉を無視されたのが気に入らないのか、アンジュは不満そうな表情を隠そうとはしない。

 

「大巫女様の御前ぞ、答えよ!」

 

そして更にアンジュをイラつかせることに、他の連中も口々に質問を向け始めたのだった。

 

「あの機体、あれはお前が乗ってきたのか?」

 

「あのシルフィスの娘、どうしてそなたたちと一緒に…。」

 

「うるっさい!」

 

元々高くないアンジュの沸点がすぐに噴火する。

 

「聞くなら一つずつにして!こっちだってわかんないことだらけなの!大体ここは何処!?今は何時!?貴方たち何者!?」

 

「ちょ、ちょっとアンジュ!」

 

慌ててタスクが宥めようとする。そんなアンジュの態度に、御簾の向こうの人影が一つ楽しそうに口元に笑みを浮かべた。

 

「威勢のいいことで」

 

そしてそのまま立ち上がると、その影はゆっくりと御簾の先から姿を現した。

 

「っ!貴方!」

 

引き続き不快な表情に染まりながらもアンジュが驚いたのは無理はない。何故なら、その姿には見覚えがあったからだ。そう、先程の人間たちによる侵攻の前に戦った人型兵器のパイロットだったからだ。

 

「神祖アウラの末裔にしてフレイアの一族が姫。近衛中将、サラマンディーネ」

 

名乗りを上げる彼女…サラマンディーネに、アンジュは敵意を隠さずにぎりりと歯軋りをすると睨みつける。グレイスはあの不明機に乗っていた女性がサラマンディーネだと知り見惚れる。

 

「ようこそ、真なる地球へ。偽りの星の者たちよ」

 

「知っておるのか?」

 

大巫女がサラマンディーネに尋ねると、彼女はクスッと笑って、

 

「この者ですわ。先の戦闘で、我が機体と互角に戦ったヴィルキスの乗り手は」

 

そう、答えたのだった。

 

「ヴィルキスの乗り手…」

 

その事実に、大巫女は思わず息を呑む。

 

「この者は危険です! 生かしておいてはなりません!」

 

「処分しなさい、今すぐに!」

 

御簾の先にいる他の面々が次々と好き勝手なことを言う。言葉通り、アンジュが危険要素だと判断したからだろうか。

 

「やれば?死刑には慣れてるわ」

 

対してアンジュはぶっきらぼうにそう言い放つ。が、

 

「…但し、タダで済むとは思わないことね」

 

ドスを聞かせて釘を刺すのも忘れない。その迫力に飲まれたのか、御簾の先にいる連中は思わず息を呑んだり、二の句が告げなくなった。

 

「お待ち下さい、皆様」

 

そこにサラマンディーネが割って入る。そして、アンジュたちの元へと歩を進めて降りてきた。

 

「この者は、ヴィルキスを動かせる特別な存在。あの機体の秘密を聞き出すまで、生かしておくほうが得策かと…」

 

その言葉に、御簾の向こうの面々がザワつく。

 

「この者たちの生命…私にお預けくださいませんか?」

 

その事に他の者達はただ黙って聞いていた。

 

 

茶室へ案内されたアーサー達。サラマンディーネはナーガとカナメに言う。

 

「二人はお下がりなさい。」

 

「しかし!」

 

ナーガが躊躇すると、サラマンディーネは微笑む。

 

「「っ!!」」

 

「二人とも、心配するな。いざといなったら俺が守る。」

 

アーサーはそう言い、二人は納得し、部屋から出る。

 

「随分洒落た監獄ね。」

 

「あなた方を、捕虜扱いするつもりはありません。」

 

「「!?」」

 

「シルフィスのあの娘も、治療が終われば直ぐ会えます。御二方の機体も連邦軍の整備班と共に責任を持って修理します。さぁ、此方へ♪」

 

「何なの?」

 

「長旅で」

 

「俺はタスク、アンジュの騎士だ、聞いても良いかな?サラマンディーネさん」

 

「何なりと、タスク殿」

 

「ここは…本当に地球なのか?」

 

それにサラマンディーネは頷く。

 

「それじゃ君達は?」

 

「人間…ですわ」

 

「ああ、それに地球は俺達の星で、人間は俺達だ。だとしたらここは…」

 

タスクがそう言う中でサラマンディーネがある事を言う。

 

「『地球が二つある』っとしたら?」

 

「「「…えっ!?」」」

 

サラマンディーネが言った言葉にタスク達は驚き、サラマンディーネが続けて答える。

 

「並行宇宙に存在したもう一つの地球、一部の人間がこの星を捨てて移り住んだのが、別宇宙にあるもう一つの星、それがあなた達の地球なのです」

 

「地球を…捨てた?!」

 

「何のためにだ!?」

 

「あなた方はあの廃墟を見て来たのではありませんか? この星で何が起きたのかを」

 

「戦争…環境汚染…」

 

「やっと分かったわ。」

 

っと、アンジュが何か納得したかのように返答する。

 

「つまりこうでしょ?あなたがいて、地球が二つあるって事は!!」

 

アンジュはそう言い、茶碗を壁へ投げ捨て、割れた茶碗の破片を掴み、サラマンディーネの背後に回り込み、彼女の喉元に突き付ける。。アンジュはサラマンディーネに言う。

 

「変える方法があるって事ね!」

 

騒ぎに気付いたナーガとカナメが手元の武器を構える。そしてアーサーは穢れボスキートの大きな鋭利の巨爪を伸ばし、その爪をアンジュの顔元に近づけた。

 

「姫様!/サラマンディーネ様!」

 

「おい、アンジュ…言葉は凶器って言うのを分かれ。それと捕虜扱いしないと言っただろ。」

 

「黙りなさい!それとお父様とお母様は何処!?」

 

「…知ったか。だがその前にサラを解放しろ。二人の居場所と安否も必ず教える。」

 

「その前によ!」

 

「ハァ…」

 

アーサーが呆れる。

 

「野蛮人め!やはり早々に処刑するべきだったわね!」

 

ナーガがアンジュに睨み付けると、カナメがタスクの首元に薙刀を近づけて抵抗する。

 

「姫様を離せ!さもなけばこの男を!」

 

「えぇっ!!?」

 

「殺れる者ならやってみなさい!」

 

「え?」

 

「は?」

 

「タスクは私を守る為なら、命も惜しくないって言ってくれた!」

 

「え!?いや、それは…」

 

「私のためなら、喜んで死ぬって!」

 

「うぐ…!」

 

「コイツ…めっちゃ酷いことを口にするな。タスクも自分から死亡フラグ立てる様なセリフを言うなんて…いや、驚きだよ。」

 

すると、サラマンディーネは顔色を変えずに背中のアンジュに向かって話し掛けた。

 

「帰って、どうすると言うのです?」

 

その指摘にアンジュは動揺し、言葉に窮するも、畳みかけるようにサラマンディーネは続ける。

 

「待っているのは機械の人形に乗って我が同胞を殺す日々。それがそんなに恋しいのですか?」

 

「っ、黙って!」

 

己の迷いを指摘され、動揺を必死に押し殺しながら言葉を荒げる。だが、その手が震えていることに、サラマンディーネは小さくため息を零した。

 

「偽りの地球、偽りの人間、そして偽りの戦い――あなた達は何も知らなさすぎます」

 

するとサラが立ち上がり、アンジュの手を握り、何処かへ連れて行こうとする。

 

「参りましょう。真実を見せて差し上げます」

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

「俺も付いて行った方が良いか?」

 

「えぇ」

 

「ナーガ、カナメ。留守を頼みましたよ」

 

そう言い残してサラマンディーネは部屋から出て行き、残されたナーガとカナメ、そしてタスクは呆気に取られたままだった。

 

 

 

サラマンディーネが呼んだガレオン級の頭に乗ってある場所へと向かった。

 

「着きましたわ」

 

サラマンディーネが示す場所の先を見るアーサー達、そこはアケノミハシラと同じ塔だった。

 

「アケノミハシラが…ここにも?」

 

「『アウラの塔』とわたくし達は呼んでいます。嘗てのドラグニウムの制御施設ですわ」

 

「ドラグニウム…?」

 

アンジュは聞き覚えのない物を問い、サラマンディーネは制御施設内を進みながら説明していた。

 

「ドラグニウム、22世紀末に発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子の一種」

 

そしてあるエレベーターの場所に着き、サラマンディーネがそれを操作して下へと向かって行く。

 

「世界を照らす筈だったその力は、すぐに戦争へと投入されました。そして環境汚染、民族対立、貧困、格差、どれ一つも解決しないまま人類社会は滅んだのです」

 

「…よくある話だ」

 

アーサーの問いにサラマンディーネは頷く。人は強大なエネルギーをすぐに兵器にする事を優先とする本質がある、しかし間違いだと知るのはいつも後になり後悔するばかりであった。

 

「そんな地球に見切りをつけた一部の人間たちは、新天地を求めて旅立ちました」

 

「似たような話、聞いた事あるわ」

 

っとアンジュはその事をサラマンディーネに言い、ジルに聞かされていたから当然の事でもあった。

そして目的地へと到着したエレベーターは止まり、サラマンディーネはエレベーターを降りながら言う。

 

「残された人類は汚された地球で生きて行く為に一つの決断を下します」

 

「決断?」

 

アンジュの言葉にサラマンディーネは頷いて言い続ける。

 

「自らの身体を作り変え、環境に適応する事」

 

「作り変える?」

 

アンジュはサラマンディーネが言った言葉を聞き、それにサラマンディーネは頷く。

 

「そう、遺伝子操作による生態系ごと…」

 

そしてアーサー達の前に巨大な空洞が広がり、それにアンジュは問う。

 

「ここは?」

 

「ここに『アウラ』が居たのです」

 

「アウラ…?」

 

アンジュはその事を問うと、サラマンディーネはキオの方を向いて、それにキオは頷き装置である物を映し出す。するとアンジュの目の前に見た事もないドラゴンが現れる。

 

「これは…」

 

「アウラ、汚染された世界に適応する為、自らの肉体を改造した偉大なる子祖。あなた達の言葉で言うなら、『最初のドラゴン』ですね」

 

サラマンディーネの説明にアンジュはまたしても驚きの表情を隠せない。

これ程の真実を聞かされて、戸惑いを表さない者はいない。

 

「私達は罪深い人類の歴史を受け入れ、食材と浄化の為に生きる事を決めたのです、アウラと共に。男達は巨大なドラゴンへと姿を変え、その身を世界の浄化の為にささげた」

 

「浄化…?」

 

アンジュがその事を問い、それをサラマンディーネが説明する。

 

「ドラグニウムを取り込み、体内で安定化した結晶体にしているのです。女たちは時に姿を変えて、男達と共に働き、時が来れば子を宿し産み育てる、アウラと共に私達は浄化と再生へと道を歩み始めたのです」

 

アーサーは元の景色に戻すとサラマンディーネが少しばかり重い表情をする。

 

「ですが…、アウラはもういません」

 

「どうして?」

 

「奴に連れて行かれたんだ」

 

アンジュがそれを問うとサラマンディーネの代わりにキオが言う。

 

「エンブリヲ…ドラグニウムを発見し、ラグナメイルを作り、世界を壊し捨てた。この世界の破滅の元凶として“神に堕落した屑人間”だ」

 

困惑しながら問い掛ける。何故『アウラ』を連れ去る必要があるのか――まさか、一度滅んだ世界が再び再生しようとするのが気に喰わなかったなどというわけでもあるまい。

 

「――あなた達の世界は、どんな力で動いているか知っていますか?」

 

唐突に問いで返され、眼を剥く。

 

「え?……マナの光よ」

 

困惑しながらアンジュが答えるとサラマンディーネはやや表情を硬くし、更に問い掛ける。

 

「なら、そのエネルギーの根源は?」

 

「何言ってるのよ、マナの光は無限に生み出される……って、まさか!?」

 

「そう……そのまさかだ。」

 

無限のエネルギーなんて、ありはしない――どんなものにでも必ずそれを生み出す要因がある

 

『マナ』というものを不思議に思っていた。

 

無限に生み出される万能の光――『人間』であれば、如何なる者だろうと使用できる夢の物質―――だが、それが『まやかし』であるとしたら? 『無』から『有』は生み出せない―――エンブリヲという男が、あの世界を創った。ジルが言った争いを好まない人類のためには与えてやる必要があるのだ。

 

だが、そのために必要となったのだ。『餌』を生み出す『贄』が――『マナ』という餌を―――キオの態度にアンジュも察したのか、眼を瞬かせる。

 

「マナの光、理想郷、魔法の世界。それを支えているのはアウラが放つ、ドラグニウムのエネルギーなのです」

 

「!?」

 

「そしてアンジュ…聞いてくれ、ここからが重要なんだ。アウラは自らドラグニウムは生成できない…だけど、『マナ』は生み出しておく必要がある。そのためにはアンジュ……大型ドラゴンを凍結させ捕獲する必要があるんだ。」

 

あくまでアウラは、マナを生み出すための触媒に過ぎない。だが、あの世界を維持するためには『マナ』が必要だ。それを維持するためには―――アーサーとサラマンディーネの言葉にアンジュは重く頷く。

 

「そうです――エネルギーはいずれ尽き、補充する必要がある。ドラゴンを殺し、結晶化したドラグニウムを取り出し、アウラに与える必要があるのです。それがあなた達の戦い――あなた達が命を懸けていた戦いの真実です」

 

ノーマがドラゴンと戦わされていたのは、『ドラグニウム』を体よく手にれるため――『マナ』を維持し続けるために……人間の世界を『守る』ために―――――告げられた事実にアンジュは衝撃を隠せなかった。

 

どうして10年前に起きた反乱でノーマが粛清されなかったのか―――どうしてドラゴンを狩る必要があったのか―――どうしてそれが『ノーマ』でなければダメだったのか―――改めて胸糞が悪くなる。

 

「分かっていただけましたか? 偽りの地球、偽りの人間、そして―――偽りの戦いと言ったその意味を。それでも、偽りの世界に帰りますか?」

 

その問いにアンジュは一瞬逡巡するも、険しい顔をして答えた。

 

「当然でしょう、仮にあなたの話が全部本当だとしても、私達の世界はあっちよ!」

 

それは己の迷いを振り切るためのものだったかもしれない。だが、その答えにキオが顔を顰め、サラマンディーネはやや失望したように嘆息する。

 

「では、あなた達を拘束させてもらいます。これ以上、私達の仲間を殺させるわけにはまいりませんから」

 

凛と告げるサラマンディーネに気圧されるも、アンジュは反射的に身構える。

 

「やれるもんならやってみなさい! 私がおとなしく拘束されると―――!」

 

握っていた破片を振り上げようとした瞬間、尻尾を振り上げ、破片を叩き落とす。そして、サラマンディーネを守るように羽を広げる。

 

「本性表したわね、トカゲ女!」

 

殴りかかるアンジュの拳をかわし、もう片方の手で左腕を捻って拘束する。

 

耳元で囁く冷淡な声に歯軋りするも、サラマンディーネが静かに答える。

 

「殺しはしません――私達は残虐で暴力的なあなた達とは違います」

 

「アルゼナルをぶっ壊しておいて、何を――!」

 

痛みを耐えながら強引に拘束を解き、アンジュは睨みつける。対峙しながらも、こちらは悠然としている。

 

「アレは龍神器の起動実験です。あなた達はアウラ奪還の妨げになる恐れがありましたから」

 

ドラゴンとの戦いが戦争であった以上、彼女の言葉は正論だ。脅威を排除するために最小の犠牲で最大の結果を齎す――だが、それがアンジュの怒りを煽る。

 

「それで何人死んだと思ってるのよ!」

 

「赦しは請いません。私達の世界を守るためです――あなたが私と同じ立場ならば同じ選択をしたのではないですか、皇女アンジュリーゼ?」

 

「え……?」

 

突然、己の真名を言われ、アンジュは戸惑う。何故、会ったこともないドラゴンがそれを知っているのか――困惑するアンジュに、サラマンディーネはどこか不敵に告げた。

 

「あなたの事はよく聞いていました、リザーディアから―――近衛長官リィザ・ランドック、と言えば分かりますか?」

 

思いがけない名を出され、アンジュは驚愕する。

 

ミスルギ皇室の近衛長官であり、ジュリオの側近―――ジュリオに従い、自分を『アルゼナル』へと送り込んだ―――

 

「リィザが――あいつが、あなた達の仲間……?」

 

上擦った声で呟くと、肯定するようにサラマンディーネは笑った。それが酷く不愉快なものに見え、アンジュは悔しげに歯噛みする。

 

「バカにしてぇ―――!」

 

怒りに顔を真っ赤にし、アンジュは激情のままサラマンディーネに殴りかかろうと再度駆け出すも、寸前で割り込んだアーサーがアンジュの腹部に向けて拳を叩き入れる。

意識が薄れてく中、アンジュはアーサーの行動に問う。

 

「な、何で…?」

 

「いい加減にしろアンジュ、これ以上好き放題暴れるのはよせ」

 

そうキオは言い残して、アンジュはそのまま気を失う。

 

「あっ、う……」

 

するとアーサーはサラマンディーネの方を向き、頭を下げる。

 

「すまない!サラ!」

 

「?」

 

「実は俺、お前の仲間の大型ドラゴンを殺してしまった事がある。あの時の俺は記憶を無くして、彼等の理由も躊躇なく殺してしまった。」

 

「この通り!彼等の親族に賠償金も払う!!」

 

「…顔を上げてください、アーサー。」

 

「私…いいえ、私達はあなたを恨んではいません。お師匠である東護ノ介と彼の兄である西十郎から、記憶を失う前の彼の記憶見て知りました。怒り、憎しみ、悲しみ、絶望に満ちた炎の中、あなたは迷うことなく、彼等の穢れた身体から解放して見せました。ドラゴン達はその事を知り、あなたの深い哀しみを知り、偽りの世界には我々の様に穏やかに暮らしたい物がいたと。」

 

「サラ…」

 

「ありがとう…こんな形だけど、許してくれて。」

 

「当然ですわ、あの時の試合で誰かさんが私の胸部を曝け出した男には…?」

 

「い!いや!あれは事故だって!」

 

「フフフ…冗談ですわ♪」

 

サラは微笑み、気を失ったアンジュを連れて外へ出るのであった。

 

 

 

 

 

「全く、このじゃじゃ馬娘には困ったものだ。」

 

医務室に運ばれ、台に流されたアンジュを見るアーサー。タスクの方はドクター・ゲッコーに連れられ、別の部屋で身体検査を受けているとのこと。するとそこに…。

 

「おーい!アーサー!」

 

は聞き覚えのある声が聞こえて、その方を振り向くとアウラの民の服装を着たヴィヴィアンがやって来た。

 

「あれ?ヴィヴィアン!?お前いつの間に元の人間に?」

 

「さあ~ここでクイズです、私はどうやって人間に戻ったでしょうか!」

 

っとここでヴィヴィアンのお得意のクイズが出て来て、それにレオン達は少々困った。何も知らないのにどうやって人間に戻ったか分からないからだ。

 

「ぶ~!残念! 正解は…え~と~…何だっけ?」

 

「知らないならクイズに出すなよ…」

 

アーサーは答えにならない事に呆れる。っとそこに医者の『ドクター・ゲッコー』がやって来る。

 

「D型遺伝子の制御因子を調整しました、これで外部からの投薬なしで人間の状態を維持出来る筈です」

 

「いやいや、ヴィヴィアンが答えたんじゃないだろ…」

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

アンジュが突然と起き上がり、悲鳴を上げる。アーサーとヴィヴィアンは起き上がったアンジュに驚く。

 

「うわっ!びびった!」

 

「ひぇ〜〜〜っ!!」

 

「あれ?ヴィヴィアン?」

 

「おいっす!」

 

アンジュはヴィヴィアンが元の姿に戻っている事に驚くと、アーサーを見てキッと睨む。

 

「おいおい、あれは彼女を守る正当防衛だったからな。それに手加減もしたんだ!後それにタスクがお前のことを心配してたぞ」

 

「タスクが?」

 

「助けて〜〜っ!!!」

 

《!!?》

 

壁越しに聞こえた悲鳴は当のタスクのものだった。あまりの音量に一瞬驚きに固まるも、アンジュが慌ててベッドから起き上がり、アーサーもやや緊迫した面持ちで聞こえてきた部屋に飛び込んだ。

ドアを潜って飛び込んだ先で繰り広げられる光景に戸惑う。ベッドに拘束されていると思しきタスクの回りには何人もの女性が群がっており、皆一様に顔を赤くしながらも黄色い声を上げて興味津々に見ている。

拷問を受けているわけでもなさそうだが、タスクは先程から必死に抵抗しているも、顔を赤くしており、首を傾げるのみだ。

 

「ちょ、ちょっとあなた達何やってるのよ!?」

 

我に返ったアンジュが女性陣を掻き分けながらタスクに近づき、ようやく状況を視認した瞬間、顔を真っ赤に染めた。

 

「な、なななな!何やってるのよ!?」

 

「ご、誤解だ!俺は何も、って!そこはダメー!」

 

頭を振るタスクは女性が触れる場所に情けない悲鳴を上げ、それに対して周囲の女性陣の黄色い歓声はますます強くなる。

 

「何やってんだか……」

 

アーサーは心底呆れた面持ちで顔を抑える中、タスクに近づいたゲッコーが含むように妖しく笑う。

 

「御協力感謝いたします、ミスター・タスク。人型の男は非常に珍しいので、協力を願い出たのです。彼は喜んで受けてくれましたよ、『性教育』のね」

 

「……『性教育』に、協力?」

 

「はい♪」

 

聞き留めたアンジュは怒りに震える。

 

「へ〜〜…人が大変な目にあってるのに……そう〜」

 

青筋を浮かべて笑うアンジュがピンセットと羽箒を拾い上げ、ピンセットをカチカチと左右に動かす。これにはアーサーも青ざめる。

 

「待って!?…アンジュ!落ち着いて〜!!」

 

「こんのっ!!直結下半身ケダモノ野郎がぁぁ〜〜〜っ!!!」

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」

 

アンジュは叫びながら金棒を振り下ろすと同時にタスクの悲鳴が轟く。タスク…ご愁傷さま……。

 

 

 

 

 

外に出ると、既に陽は暮れ始め、茜色に染まっていた。

 

整えられた庭の中には小さな屋根に覆われた手水舎があり、備え付けの龍の置物から水が流れている。徐に近づき、水で顔を洗う。

 

「ふぅ……」

 

思わず小さく息が漏れる。

 

水で顔を洗うなど久々だ。柄杓で水をすくい、飲み干す。冷んやりとした水が喉を潤し、一息ついた形だ。その横でアンジュもホッとしたのか、リラックスしている。

 

「アンジュ、落ち着いた♪」

 

横で見ていたヴィヴィアンがタオルを取ってきて手渡す。

 

「私汚れちゃった……欲求不満なら、トカゲでも何でもいいのね!あのバカエロタスク!!」

 

タオルで顔を拭いていると、アンジュが不機嫌そうに顔を顰め、タオルを地面に叩き付ける。

 

「と言って嬉しいんだろ?」

 

アーサーの言葉にアンジュの表情が瞬時に赤くなり、同時に激しく狼狽したように取り乱す。

 

「ち、違うわよ! なんで私があんな奴に! 私はただ、あいつがあんなトカゲ女に不埒な真似をしないように……そう!それだけよ!私はあいつのことなんかなんとも思ってないんだからね!」

 

「はいはい♪」

 

必死に弁解するアンジュに相槌を返しながら視線を向けると、奥の通路から見知った顔が現われ、思わず顔を硬くする。その様子にアンジュも振り返ると、苦手そうに顔を顰める。

 

「もう起き上がっても大丈夫のようですね」

 

歩み寄ってきたサラマンディーネがそう話し掛けると、アンジュには嫌味に聞こえ、小さくそっぽを向く。

 

「ええ、手加減なんてしてくれたおかげで」

 

横柄な口調で返すと、控えるナーガやカナメは小さく睨むも、サラマンディーネは些かも害した様子を見せず、クスリと笑う。

 

「そうですか、あの子には手加減を少し覚えてもらわねばならないので」

 

そう切り返され、アンジュはまたも口を尖らせる。すると彼女は不意にサラマンディーネが見知らぬ女性を連れているのに気づき、眉を顰める。

 

その女性は先程から自分の隣を凝視している――正確には、隣にいるヴィヴィアンをだ。戸惑うセラの前でサラマンディーネは真剣な面持ちで視線をヴィヴィアンへと移す。

 

「ラミア、『彼女』です。遺伝子照合で確認しました、あなたの娘に間違いありません」

 

そう呟く内容に眼を見開く。

 

「え?」

 

「ほえ?」

 

アンジュは戸惑いの声を上げ、告げられた当人は自身を指しながらも意味が分からずに首を傾げる。そんなあを余所にサラマンディーネは言葉を続けた。

 

「行方不明になったシルフィスの一族、あなたの子『ミイ』よ」

 

「ミイ?本当にミイなの!?」

 

告げられた内容に弾かれたように駆け出す女性がヴィヴィアンに抱きつき、涙を流す。その光景に眼を丸くするアーサーやアンジュだったが、ヴィヴィアンは突然のことに混乱する。

 

「ああ、ミイ」

 

「いや、だから…あたしはヴィヴィアン…?」

 

抱きしめる女性に戸惑っていたヴィヴィアンは何かに気づき、思わず鼻をきかす。

 

「この匂い、知ってる…エルシャの匂いみたい……あんた誰?」

 

その問い掛けに抱擁していた女性は静かに離れ、涙を流しながら微笑み、口を開いた。

 

「お母さんよ」

 

「お母さん、さん?…何、それ?」

 

意味が分からずに首を傾げるも、見守っていたサラマンディーネが優しげに告げる。

 

「あなたを産んでくれた人ですよ」

 

「ヴィヴィアンのお母さん!?」

 

その意味を理解した途端、傍で聞いていたアンジュが驚く。確かに、ヴィヴィアンがドラゴンだった以上、こちらの世界に家族がいてもおかしくはないが、それでもいきなり母親と名乗る女性が現れれば、戸惑いもするだろう。

 

現にヴィヴィアンは未だに泣くラミアという女性にどう接していいのか分からずに困っている。アルゼナルで親のことなど教えられることはないから無理もないが。

 

「ええ、彼女はお母さんを追って、あちらの地球に迷い出てしまったのでしょう」

 

ドラゴンによる侵攻はもう何十年と続いている。そう考えれば、確かに納得はできるのだが、それでもよくアルゼナルに捕まって無事でいられたものだ。

 

改めてヴィヴィアンを利用した司令に悪態をつくも、それでもそのおかげでヴィヴィアンが母親と再会できたのだから、悪いことばかりではないが。

 

親子の再会にナーガやカナメなどももらい泣きをしており、サラマンディーネは柔らかく微笑む。

 

「ナーガ、カナメ、祭りの準備を…祝いましょう、仲間が10年振りに、還ってきたのですから……」

 

その言葉に二人は大きく頷き、アンジュは首を傾げ、ヴィヴィアンは戸惑いながらも、母親という女性に抱擁されたままだった。

 

 

 

そして夜になり、アウラの塔で皆が集まっていた。そこにサラマンディーネが儀式用の蝋燭を手に持ち、皆の前に姿を現す。

 

「サラマンディーネ様よ!」

 

「サラマンディーネ様ー!」

 

サラマンディーネの後ろにヴィヴィアンとその母『ラミア』が共に居た。

 

「何をするの?これから」

 

「サラマンディーネ様のマネをすればいいだけよ」

 

ラミアがそうヴィヴィアンに言ってほほ笑む、そしてアーサーはその様子を人混みの中で見ていた。

 

「殺戮と試練の中、この娘を悲願より連れ戻してくれたを感謝いたします」

 

そう言った後にサラマンディーネは儀式の蝋燭を空へと舞い上げ、それに皆も同じように舞い上げる。

 

「アウラよ!」

 

『『『アウラよ!』』』

 

ラミアも同じように舞い上げ、隣に居るヴィヴィアンも同じように舞い上げる。

 

そしてアンジュの所にアーサー達がやって来る。

 

「不思議な光景だな」

 

アーサーがそう言ってる中でアンジュはアーサーの方をずっと睨みつけ、それにアーサーは少々苦笑いしながら謝る。

 

「おいおい、ここで揉め事は止めろよ。俺もやり過ぎた事には謝るから、それで勘弁してくれ。それといい加減にタスクを許してやってくれ。」

 

「フンッ!」

 

アンジュはタスクの方も見て、プイッとする。

 

タスクがため息を吐くと同時に月を見て呟く。

 

「同じ月だ。もう一つの地球…か」

 

「夢なのか現実なのか、分からないわ」

 

タスクとアンジュの問いにアーサーも月を見ながら言う。

 

「現実だ。今見ている光景は…」

 

「けど、ヴィヴィアンが人間で良かった」

 

アンジュがヴィヴィアンの方を見ながら言い、それにアーサー達は頷く。

その中でアンジュは不安に思っている事を言う。

 

「これからどうなるの? 私達、こんな物を見せて、どうするつもり?」

 

「知って欲しかったそうです、私達の事を」

 

っとそこにナーガとカナメがアーサー達の元に来ていて、カナメがアーサー達に話し続ける。

 

「そしてあなた達の事を知りたいと、それがサラマンディーネ様の願い」

 

「俺達の…事を?」

 

「知ってどうするの? 私達はあなた達の仲間を殺した。あなた達も私達の仲間を殺した、それが全てでしょ?」

 

アンジュがそうナーガとカナメにそう言うも、カナメは頭を横に振る。

 

「怒り、悲しみ、幸福。その先にあるのは滅びだけです、でも人間は受け入れ、許す事が出来るのです。その先に進むことも…全て姫様の請け売りですが、どうがごゆるりとご滞在下さい…っと姫様の伝言です」

 

「全く、姫様のお人好しには困ったものだ」

 

「聞かれたらぶっ飛ばされるよ」

 

「ごゆるりと…か」

 

「信じるの?」

 

「どうかな?でもヴィヴィアンは楽しそうだよ」

 

ヴィヴィアンは母親と空を見ていた。

 

「…帰るべきだろうか…アルゼナル、リベルタス、エンブリヲ。もしもう戦わなくてもいいのなら…。」

 

タスクのその問いかけにアーサーとアンジュは何も答えられず、ただ空を見上げていた。

 

アーサー達が空へ舞い上がる儀式の蝋燭を見ている一方、オリヴァルトとシェレザールは邸のとある地下である物の用意をしていた。そこは格納庫でアーサーのフラドーラが運ばれていた。その横にある機体が並ぶ。

 

「さぁ…第二フェーズを始めるぞ、『超星神 ガントラス』『超星神 ペガサロス』」

 

『『ठीक है। अल्वारोस के राजकुमार के लिए सब कुछ』』

 

「後はアーサーが我らの一族の源である【ソルの光】に目覚めれば…。」

 

オリヴァルトはもう一つの方を向く。それは天井から光が差し込み、台座に突き刺さった綺麗な剣を見つめるのであった。



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チャプター30 預言者

「誠か!リザーディア!」

 

『はい、大巫女様。神聖ミスルギ皇国 アケノミハシラにて、アウラを発見しました。』

 

「よくぞやってくれた!これより我等は連邦軍の総戦力と共に、全能の母 アウラを奪還する!リザーディア、手筈通り特異点を。」

 

『仰せのままに…。』

 

「クラウドブルース、否、連邦総司令【アリマ・ガリバー】よ。」

 

『要件は分かっている。一度滅んだ文明にて、面白い兵器の復元であろう?』

 

「“機動巨艦”かつて古の人類が開発した万能巨大戦艦。」

 

『それを元に様々な改良と追加武装も行なっている。』

 

「良し。早急に進めておくれ。」

 

『仰せのままに。』

 

「これは、この星の運命を掛けた戦い!アウラと地球に勝利を!」

 

「《勝利を!!!》」

 

 

 

祭りが終わり、アーサーはアンジュとタスクを連れて家へ帰っていった。タスクは兎も角、アンジュはアーサーの屋敷を見て驚く。

 

「ここがアンタの…家!?」

 

「前よりも大きくなってないか?」

 

「あ…やっぱり、タスクも思うか。」

 

屋敷と言うより和風の城であった。(分かりやすく例えると『サマーウォーズ』陣内家の敷地と平安時代の貴族の屋敷、そしてその横に大きな湖を改良させた大庭を持つ屋敷です。)

 

大きな城門を抜け、長い坂を歩き、屋敷に着く。

 

「ただいま〜」

 

「おかえり〜!」

 

帰ってきたアーサーを待っていたのは義妹のミントであった。

 

「お子さん?」

 

「嫌、俺の嫁の妹だ。」

 

アーサーがミントを紹介していると、そこへ夕食の支度をしていたフェリスが来る。

 

「あ、アル!」

 

「おう、帰ったよ。」

 

するとフェリスは横にいる金髪の女性を見る。

 

「あの、タスクさんと一緒にいる女性は?」

 

「分からないかな?元皇女アンジュリーゼだ。」

 

「えぇっ!?」

 

彼女も驚く。容姿端麗、才色兼備で、スポーツ万能で、高貴で礼儀正しく、国民から愛され、同級生からも多く慕われていた皇女の風貌に。そして彼女にとっては…。

 

「何?」

 

「…握手してもよろしいでしょうか?」

 

「え?」

 

そう…フェリスは今も尚、ノーマだったアンジュのファンでもあった。アンジュは突然の事に首を傾げ、フェリスと握手をする。フェリスは思わずはしゃぎ、その場を後にする。そして…。

 

「「アンジュリーゼ!」」

 

突然の呼ぶ声の二人。それはもう会えないと思っていたアンジュの両親であった。

 

「っ!!」

 

アンジュは余りの出来事に、両親の元へ駆け上がり、二人に抱きつく。

 

「お父様…お母様…!!」

 

 

その後、大きな広間、長いテーブルの上にはアーサーとフェリス、焔が作った料理が置かれていた。そんなアーサーはアンジュとタスクにアイン達を紹介する。

 

「じゃあ紹介する。先ずは俺の奥さんと義弟、義妹達だ。」

 

「フェリシア・朱鷺・コールブランドです。」

 

「クレインです。」

 

「ランスだ!」

 

「ミントです!」

 

「“私は焔。アーサーの式神にして誠実で忠実なる侍女です。”」

 

「続いて超星寮のB組の可愛い娘大好きアインだ。」

 

「何で通り名が付いた名前!?」

 

「え?違うの?」

 

「ちか…まぁ良いや。アインです。」

 

「私はナツキです。」

 

「オルトだ。そして妻のネーラだ。」

 

「よろしく♪」

 

そして他のB組メンバー、そしてオリヴァルトとシェレザール、セレスティアと二人の甥っ子達を紹介していく。

 

「覚えた?」

 

「あ…いや…。」

 

「覚えられないよ。こんなにいたんじゃ。」

 

「と思ってお前達の為に作ったよ。」

 

アーサーがアンジュとタスクにコンタクトレンズを渡す。

 

「何それ?」

 

「コンタクト式スカウター。これなら皆んなの名前が表示される。」

 

「ま、取り敢えず!」

 

「《よろしく。》」

 

一同は頭を下げ、料理を食べる。するとアーサーはある事を思い出し、堂々とした姿勢でタスクの方を向く。

 

「あ、それとタスク。」

 

「ん?」

 

「俺、父になります。」

 

「え!?と言うことは…」

 

「フェリスが俺の子を妊娠した♪」

 

「おぉ!フェリス、おめでとう!」

 

「タスクさん、ありがとうございます。」

 

フェリスはタスクに祝いの言葉にお礼すると、アーサーはアンジュとタスクを連れ、ある話をする。

 

「それと二人に話したい事がある。」

 

「「?」」

 

二人は首を傾げると、席を外され、アーサーがフェリスの事について説明する。

 

「それって本当!?」

 

「あぁ…彼女のホームネームはお前と同じ、ミスルギ皇家の名だ。もしかしたらだけど、フェリスはお前の従姉妹にあたるかも知れない。だから…彼女と親しくしてくれ。彼女には唯一の友達が必要なんだ。俺からの願いだ。頼む。」

 

「……分かったわ。」

 

話を終えた三人は席に着き、料理を楽しみながら食べる。アンジュはアーサーの言われた通りに話してみる。彼女も色々な事を話していくうちに、アンジュとフェリスの仲がより深く良くなった事にアーサーはホッとする。アーサーはそう考え、庭の桜を見に。

 

「ゴホッ!!」

 

突然の咳に、手で口を覆う。その手には赤くドロッとした液体が付いていた。

 

「……(最悪過ぎる頃合いだ……。)」

 

アーサーは自身の寿命が数ヶ月だと言う事に気づき、化粧室内で誰にも見られてないか確認し、血を吹き取り、洗い流す。アーサーは顔を洗い、鏡を見ると、目が七色に輝き、ある物が映る。それは燃え盛る邸、人形のような顔を持つ禍々しい機体が血のように真っ赤な色をした鋭利の爪で襲い掛かり、自分の全身を切り裂き、胴体を貫く。その時、白い影が現れ、何かを呟く。

 

『君は明日に死ぬ。死んだ時…君はある世界で真実を知る。そして死ぬ日に君の友人は悪から解放され、善の心を取り戻すだろう。』

 

『……貴方は一体?』

 

『運命は自分で掴み取り、変える物……ユーティスは何かに取り憑かれ、体を操られている。奴からユーティスを解放してやってくれ、彼は今も苦しんでいる。』

 

『どうして?』

 

謎の言葉に影は呟く。

 

『火のドライブを継ぐ者……彼だからだ。』

 

『え?』

 

『お前は火ではない……だけど君はあるドライブの力を持っている。理由は至って簡単な事。君はーーー。』

 

影はアーサーに真実を告白する。

 

『だから…穢れボスキートに適合できたんだ。』

 

『あぁ…。』

 

『明日…死ぬんだろ?』

 

『あぁ…。』

 

『そっか…。』

 

運命を受け入れたのか、影は手を伸ばし、アーサーの頭に触れる。

 

『だが、この未来を見ろ…。』

 

影がそう言うと、目の前の光景が具現化し、未来を見せる。

 

『行く先々、お前は運命に導かれ、正しい方向へと進み続ける。その矢先が…お前を更なる高みへと昇るだろう。乗ってみるか?』

 

影の言葉にアーサーは決意する。

 

『良いよ、あんたの計画…賛同しようじゃないか。』

 

『フフフ…よく言った。さすが……。』

 

すると影の姿が分かりやすくなる。その影の正体にアーサーは驚くのであった。何故なら…その影の正体はーーー。

 

“年老いたアルトリウス・コールブランド”……つまり未来の自分だったから。

 

未来のアーサーは微笑み、彼の前から姿を消すのであった。



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チャプター31 共鳴戦線・前編

アーサー邸での祝いを終えたアンジュとタスクは神殿前の屋敷にて休んでいた。翌朝、アンジュは起き上がり、外の空気を吸おうと戸を開く。するとこれまでアルゼナル近海での戦闘で見たこともないドラゴン達が浮遊されているのを目撃する。

 

「ドラゴンの星…。」

 

アンジュはそう言い、戸を閉める。っと横に置いてある花瓶と同時に昨夜の言葉を思い出す。

 

《貴方方を捕虜扱いするつもりはありません。》

 

《貴方達を知りたいと…それがサラマンディーネ様の願いです。》

 

サラマンディーネとカナメやナーガの言葉にアンジュはイライラさせる。

 

「何のつもりよ!全く!」

 

とりあえずアンジュは近くのものに座る。

 

「のぉ〜〜〜!!」

 

突然の声にアンジュは下の方を向く。アンジュが座っている場所はなんと、布団でグルグルの簀巻き状態にされたタスクであった。

 

「あ、忘れてた。」

 

「酷い!君が簀巻きにしておいて!」

 

「だって!欲求不満の獣と一緒に寝るのは危険でしょ!?」

 

「だから、あれは誤解だって!」

 

アンジュは昨日のタスクの出来事を思い出す。タスクは彼女達の【性教育】の協力をしていたのだ。アーサーとマイラはその事に大笑いし、タスクと違い襲ってくる危険はないと判断されたようだ。

 

とりあえずタスクを縛ってる縄を解く。まず上の部分が解けた。真ん中の部分も解こうとする。

 

「!?」

 

アンジュはいやらしい視線を感じた。視線の主を見ると、タスクがアンジュの胸元を見ていた。

 

「っ!!どこ見てるの!?」

 

アンジュは慌てて胸元を隠す。

 

「え!?いや…別に。」

 

っと話している中、真ん中の紐も解けたようだ。その時突然タスクがバランスを崩した。アンジュへと倒れ込む。そして最悪な事にアンジュとタスクの寝室の戸が開き、さらにそこへサラマンディーネとアーサーがナーガとカナメ、ヤトウとリュウ、アケロンを連れて部屋へとやってきた。

 

「おはようございます…あら?」

 

女は寝巻き。男に至ってはパンツ一丁。最早二人のそれをしていると思われても致し方ない。アーサーは顔を手で抑え、“お前はまた…”と呟き、リュウはアケロンに二人のハレンチな光景を見せぬ様にし、ナーガとカナメは顔を赤らめていたがサラマンディーネだけは冷静であった。

 

「朝の交尾中でしたか。さぁ、どうぞお続けになって♪」

 

「〜〜〜ッ!!ちっが〜〜〜う!!!」

 

アンジュの顔が一気に赤くなる。タスクを張り手で吹き飛ばすと蹴りを何発も入れのであった。

 

 

 

そこにはヴィヴィアンとラミアがいた。二人とも食事をとっていた。

 

「おかわり♪」

 

ヴィヴィアンはこの世界に来ても早々適応し、元気良く食べてはおかわりをしていた。

 

「もう、ちゃんと噛まなきゃダメよ?」

 

「うん!お母さんさん♪」

 

相変わらずなヴィヴィアンにラミアはホッとする。そしてそこにアンジュ達がやって来る。

 

「あれ?ヴィヴィアン?」

 

アンジュの声にヴィヴィアンは反応する。

 

「うほっ!おはようさ〜ん!」

 

「サラマンディーネ様」

 

「昨日は良く眠れましたか?」

 

「それが、朝までミィとお喋りしていて。」

 

「だから寝不足〜!」

 

サラはラミアと会話をし、それにラミアは少々笑いながら言う。

 

「それが、ミィと朝まで喋りしてまして」

 

「だから寝不足~」

 

それを聞いていたアーサー達は微笑みながら見ていた。アーサー達は食事を摂った後、ラミアがアンジュ達にある事を言った。

 

「家に帰る?」

 

「この子が生まれた家を見せたくて。」

 

「お〜!見る見る!」

 

ヴィヴィアンは興味津々で自分が生まれた家を見てみたいと興奮する。

 

「て事で!ちょっくら行って来るね〜!」

 

ヴィヴィアンはラミアに運ばれながら、皆んなに手を振り、家へと向かうのであった。その光景にタスクは呟く。

 

「親子水入らずか……アンジュ?」

 

「気に食わないのよ、何もかもが……っで。」

 

「はい?」

 

「茶番はいいでしょ?あなた達の目的を教えて…」

 

アンジュはサラ達に本題を聞こうとする。

 

「…腹が減っては戦はできぬと申します。お腹は膨れましたか?」

 

「ええ。まぁ」

 

「では参りましょう」

 

サラ達はとある建物の中へ連れられた。

 

「何ここ?」

 

「古代の決闘場ですわ。かつては多くの武士たちが集い、強さを競い合ったそうです」

 

そうここはアーサーとサラが決闘した競技場であった場所でもあった。

 

「まさか、500年前の施設!?完璧な保存状態じゃないか」

 

施設の保存状態の良さに、タスクが驚きの声を上げた。

 

「姫様自らが復元されたのだ」

 

「ええっ!?」

 

そのことに、更にタスクが驚く。

 

「サラマンディーネ様は、その頭脳をもって旧世界の文献を研究し、様々な遺物を現代に蘇らせておられる」

 

「へぇー…」

素直に感心するタスク。興奮しているのか恍惚としているのか、説明するナーガの頬も赤く染まっていた。

 

「我々の龍神器も、サラマンディーネ様がっ!」

 

そこでナーガの雄弁は途切れた。何故ならカナメに足を踏まれていたからである。

 

「それ、機密事項でしょ!?」

 

「あっ!ご、御免なさい」

 

カナメに指摘され、ナーガはシュンとして縮こまった。

 

「んで、ここで何をするの?」

 

「…共に戦いませんか? 私達と」

 

サラマンディーネの言葉にアンジュは思わず「はっ?」と言葉をこぼし、それにはアーサー達は反応する。

そしてアーサーはサラマンディーネ達の目的を問う。

 

「それはもしや、アウラを奪還する為にか?」

 

「はい、それに目的は違うとはいえエンブリヲを倒す…」

 

「フフフ…ははは」

 

っと突然アンジュが笑い出し、それにアーサーはアンジュの方を向き、タスクが問う。

 

「アンジュ?」

 

「な~んだ、そう言う事、結局は私を利用したいだけなの…戦力として。知って欲しかっただの、解りあえただの、良い人ぶっていたのも全部打算だったじゃない」

 

それにサラマンディーネは笑みを浮かばせて言う。

 

「その通りです、他の者達は兎も角として。あなたはそれなりの利用価値がありますから」

 

っとサラマンディーネの言葉を聞いたアンジュは思わずキレる。

 

「っ!? ふざけるな!私はもう!」

 

「もう、誰かに利用されるのはウンザリ…ですか?」

 

「そう仰ると思い、ここへお連れしました。勝負しましょう、アンジュ。」

 

「勝負?」

 

「そう、互いの未来かけてですわ。私が勝てば、貴方は私の所有物ですわ。」

 

「「っ!!」」

 

「その代わり、貴方が勝てばタスク殿を解放しましょう。」

 

そこで初めてアンジュが、彼女らしい不敵な笑みを浮かべたのだった。

 

「ふふふ…無論、貴方が勝てば、の話ですが」

 

「いいわ。やってやろうじゃない!」

 

「そうこなくては♪」

 

アンジュとは対照的に、了承を得たサラは今までの不敵なものと違い、実に楽しげな笑みを浮かべた。こうして、アンジュは己自身の未来を賭け、そしてそれ以上に溜まった憂さを晴らすためにサラとの勝負に挑むことになったのであった。

 

 

 

 

 

「その球を打ち返して、枠の中に打ち込めばいいのね?」

 

ルール説明を受けたアンジュが確認のためにサラに聞き返す。まず最初にアンジュたちがやってきたのは、屋外にあるクレーのテニスコートだった。当然というかご丁寧にテニスウェアに着替えたその格好は、何処をどう贔屓目に見ても多くの武士たちが集って強さを競い合ったというお題目からはかけ離れている。

…まあ実際、これからやるのはテニスなので当然なのだが。

 

「その通り。では、始めましょう」

 

「サービス!サラマンディーネ様!」

 

審判を努めるカナメがそう宣言する。いよいよ、大勝負が始まりを迎えようとしていた。

…ちなみに、姿の見えないタスクはどうしているかというと、

 

「……」

 

悲しいかな炎天下の中、一人コートの外に追いやられていた。その理由はただ一つ、フェンスを越えてボールが飛び出していったときの球拾いのためである。

タスクは何も言わないものの、るーるーと悲しみの涙を心中で流しているのが容易に推測できるような表情をしていた。が、言っては悪いが部外者の男は置き去りにして、女たちの戦いは着々と始まりを迎えようとしていた。

 

(あのトカゲ女、ぎゃふんと言わせて…)

 

これまでの鬱憤を思い切り晴らそうと意気込むアンジュだったが、それを見透かしたかのようにサラがサーブを打つ。アンジュもエアリアで活躍した運動神経があるからか反応はするものの、そのラケットの先を抜けていった。

 

「あっ!」

 

タスクも反応こそしたものの残念ながら拾えずにボールは転々と後ろへと転がっていった。

 

「15-15! サラマンディーネ様!」

 

スコアボードをめくり、カナメがサラのコートに向かって手を差し出した。

 

「っ!」

 

少しの間固まっていたアンジュだったが、すぐにサラを睨みつける。…それにしても、ここだけ見ればどこをどう見てもスポコンである。競技がテニスだけに、『エース○狙え』の焼き直しといっても過言ではないが、それはとりあえず置いておこう。

 

「あら、速すぎました?」

 

手でポンポンとテニスボールを軽く上に投げながらサラが挑発する。

 

「手加減しましょう、か!」

 

そして再びサーブを打った。唸りを上げて硬球がアンジュに襲い掛かる。しかし、

 

「結構、よ!」

 

今度はアンジュも追いつき、ジャンプしながら打ち返す。

 

「!」

 

それに反応できなかったのか、或いはどうせ取れるわけないという油断からか、サラは一歩も動けずにその脇をボールが通っていくのを見送るだけだった。

 

「フィ、15-15!」

 

驚きながらも審判の役目を忠実にこなすカナメ。そして今度は、アンジュが不敵な笑みを浮かべる番だった。

そして、それに呼応するかのようにサラも不敵な笑みを浮かべる。これを皮切りに、二人の勝負は延々と続いていくのであった。

 

そしてテニスの後に野球、未来的なレース?的なマシン『サイバーフォーミュラ』、ゴルフ、卓球、クレーンゲーム、そしてツイスターゲームまでやり続けていた。

一方その中でもティアは何やら薄々と微妙な違和感を感じていた。

 

「これ…本当に決闘ですか?」

 

そう言いつつもカナメがルーレットの色をと位置を教える。

 

「サラマンディーネ様、右手、緑」

 

カナメの指示にサラマンディーネは言う通りに手を指定の位置に置き、次にタスクがルーレットを押す。

そして色と位置が表示されて言う。

 

「アンジュ、左手、赤」

 

アンジュも言われた通りに手を位置に置く。

苦しみながらサラマンディーネはアンジュに言う。

 

「予想以上ですわ…アンジュ」

 

「何が…?」

 

「少し…楽しみだったのです。今まで私と互角に渡り合える者などいませんでしたから」

 

そしてカナメが次のルーレットの色と位置を言う。

 

「サラマンディーネ様、左足、赤」

 

「ですから…すごく楽しいのです」

 

それを聞いていたアーサー達、しかしアーサーは少しばかりと言うか…少々汗をかきながら頬を赤くしてサラマンディーネを見ていた。

 

カナメの指示通り左足を赤い部分に持っていく。その結果、彼女の尻がアンジュを圧迫する形になった。

 

「くっ!こんのーっ!」

 

負けじと、肩の筋肉を使って掬い上げるアンジュ。体勢を崩して潰れそうになったサラだが、尻尾を使ってバランスを保つことに成功した。

 

「ふふっ」

 

「尻尾使うの反則でしょ!?」

 

余裕の笑みを浮かべたサラが又癇に障ったのか、アンジュが尻尾に噛み付いた。

 

「いやーん!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

可愛い悲鳴を上げながら一度は保ったバランスを崩してしまうサラ。それに巻き込まれる形でアンジュもバランスを崩してしまい。そして両者共にシートの上に崩れ落ちた。

 

「尻尾を噛むのは反則ですっ!」

 

サラが涙を流しながら抗議する。起き上がったアンジュがこれまでと同じように反論するかと思ったが、

 

「ぷっ、あはははははは…」

 

その顔を見て思わず噴き出していた。

 

「泣くことないでしょ、別に」

 

「そうですけど…ふっ、あはははははは…」

 

拗ねた表情を見せたサラだったが、おかしくなってしまったのかアンジュと同じように笑ってしまっていた。

 

「姫様、笑ってる…」

 

「あんなお顔、始めてかも」

「ホッとしてるのか?」

 

「え?まぁ…。」

 

二人の発言を聞きながら、今回に関しては全く良いところの無かったタスクもアーサーも又、彼女たちの横で微笑んでいたのだった。

 

 

 

 

 

その後、アーサーはタスクに話があると男性用のロッカールームに連れて行く、

 

「タスク…お前にだけ、話しておく事がある。」

 

「何?」

 

アーサーは自分の身の事を話す。もう時期に来る寿命、細胞の死滅、延命できない事に。

 

「そんな!!」

 

「事実だ。俺がトリト廃村で穢れボスキートの力を全開にした事で、細胞の殆どが死滅してしまった。だから……俺の余命は後ーーー“3日”ーーーぐらいなんだ。」

 

「何でそんな事…もっと早くに!?」

 

「寿命なんだ。治療法は全くない、延命の措置もない、いつ苦痛や心臓が止まってもおかしくない。だから、お前に頼がある……。」

 

アーサーの頼みにタスクは止めようとする。

 

「やめてくれ…」

 

「俺がくたばったら……“フェリス達を頼む”。」

 

「そんな事!!」

 

思わぬ死を予兆するかの様な台詞にタスクはアーサーに希望を持たせようとする。

 

「絶対に治療法がある!ごめんだが、この事はオリヴァルトさんや皆んなに伝える!」

 

タスクが皆んなのところへ行こうしたその時、地震が起きる。

 

「何だ!?」

 

 

 

そしてそれはシャワー室にいるサラとアンジュも確認できた。

 

「っ!?」

 

「サラマンディーネ様!」

 

ナーガがサラに知らせる。どうやら外で異常な空間が出現したとの事。アウラの塔に謎の竜巻が発生していた。都ではヴィヴィアン達住民もそれを見ていた。

 

「あれは!エアリアのスタジアム!?」

 

その竜巻の様なものはエアリアのスタジアムであったのだ。アンジュは理解が追いつかない。

 

竜巻の様なものは徐々にだが広がっていった。それに何名かが飲み込まれた。すると飲み込まれたものが瓦礫に取り込まれた。物理法則などあったものではない。

 

「焔龍號!」

 

サラマンディーネがそう呼ぶと額の宝石が光った。すると焔龍號がその場へと駆けつけた。どうやらあれば機体の遠隔操作可能な装置らしい。

 

「ナーガは三人を安全な場所へ!カナメは大巫女様にこの事をご報告して!アンジュ!勝負の続きはいずれ!」

 

そう言うと焔龍號は飛び立っていった。

 

「「はい!」」

 

「悪いが、俺も付き合うぜ。フラドーラ!」

 

アーサーはナックルライザーを上に掲げ、名を叫ぶ。するとフラドーラが空中に現れ、自動で変形する。

 

「ダイブ・イン!」

 

アーサーは光となり、フラドーラのコックピットに乗り込む。

 

『サラ!先に行ってるぞ!』

 

アーサーはフルスロットルで謎の異空間へと翔ける。

 

「アンジュ、勝負の続きはまた後で。」

 

サラはそう言い、アーサーと共に謎の異空間へと向かうのであった。

 

アウラの塔を中心とした時空の歪みは徐々にその範囲を拡げており、人々は避難するも、間に合わず、呑み込まれてしまった人は次の瞬間、崩壊した建物の残骸の中へと一体化して息絶えていた。

 

その光景に人々は逃げ惑い、その中にはヴィヴィアンとラミアの姿もあった。実家でお喋りに興じていた中で起きた突然の事態に母親に連れられて避難するなか、吹き荒れる時空嵐にて巻き起こる突風に煽られ、飛んでいた者達は地上へと落とされる。

 

誰もが混乱するなか、崩れ落ちた建物の破片が落下し、その真下にいたヴィヴィアン達を狙う。悲鳴が木霊するなか、真っ直ぐに飛来したビームが瓦礫を撃ち抜き、粉々に粉砕する。

 

皆が上を見るとサラマンディーネの焔龍號がやって来た。

 

「皆さん!すぐに宮殿に避難を!!」

 

それに皆はすぐに避難をし始めて、サラマンディーネは落ちて来るがれきを次々と破壊して行く。

 

「急いでください!…っ!?」

 

っとサラマンディーネは気配に気づく。迫っている異変の空間の中に黒い巨影が浮かび上がる。

 

「あれは!?」

 

空間の中から現れた巨影、それは全身に赤黒く発光するコードの様な編み糸が絡み、巨大な翼を広げ羽ばたく大型の機械龍であった。しかもそれは一つではなく、複数として現れる。

 

「全身機械でできた…ドラゴン!?」

 

アーサーとサラが驚いていると、機械龍が一斉に吠え、口から無数の鉄球を放出する。放出された鉄球が卵の様に割れ、中から見たこともない異形の怪物達が現れ、両掌の白い球体からビームを発射する。

 

「サラ!大丈夫か!?」

 

「えぇ、大丈夫です!」

 

「奴等を食い止める!その隙にサラは逃げ遅れた人達をっ!!」

 

その時、フラドーラの装甲に銃弾が当たりまくる。別の方向からユーティスのバジリスが専用のアサルトライフルを乱射する。アーサーはすぐにバジリスの攻撃を防ぎ、ガルクローを伸ばし、斬りにかかる。ユーティスもフラドーラのガルクローを蹴り防ぎ、蹴り払う。

 

「コイツ!」

 

「掴んだ!そしてさらに!【ゴルスフィスト・モード】!」

 

バジリスの紫に光る流動経路が白く輝く。すると機体から同じ機体が複数増える。

 

「増えた!?嫌、違う、残像…!?」

 

アーサーとサラが驚いた時、バジリスがアサルトライフルを乱射する。さらに残像からも弾丸が飛んできて、アーサーとサラは直様防御体制を取る。

 

「残像の方も弾丸が飛んでくる!どう言うことなんだ!?」

 

「これが敵の科学力!」

 

バジリスは腰に下げていた曲刀『ブナハヴァル』を抜刀し、アーサーに襲い掛かる。アーサーは返り討ちをしようとするも、ユーティスは得意能力である軌道予測でアーサーの攻撃パターン及び、軌道を見て回避し、カウンター攻撃する。

 

「グッ!」

 

「アーサー!」

 

息を荒く呼吸するアーサーに心配するサラ。そしてユーティスがある事を言う。

 

「ハハッ!!知ってるよ!君の身体はもう持たないって!もう時期穢れボスキートの細胞がお前の命を食い尽くしている事を!もう時期立てなくなるんじゃないのか?」

 

彼は寿命の事を知っていたのだ。ユーティスの言葉の意味が分かったサラはアーサーの安否を確認する。

 

「まさか!」

 

「やっぱり、奴にはバレてたか……これも“内通者”の手か。」

 

『(命?内通者?)どう言う事なのです!?』

 

「言葉の通りだ、サラ…。俺はもう時期死ぬ…そしてこの世界や俺たちの組織に…敵のスパイがいるんだ。」

 

「その様な事!?」

 

「恨むなら、アリマ司令に言ってくれ。今は目の前の敵をゴフッ!!」

 

っと突然の吐血にサラが驚く。

 

「アーサー!」

 

サラが心配した直後、異空間の中からそれは現れた。

 

「あれは!?」

 

その姿、巨獣の如く、身の丈、山の如し、複数本もある巨大なテンタクルアームからガリガリとぶつかり合う音を鳴らし、紅く光る目でアーサー達を睨む。

 

「500年前の遺物にして最強にして最大の兵器【デバステーター】だ!!」

 

野獣の様な咆哮を上げるデバステーター、さらにその真下が光り始め、ある物が現れる。大きな艦体、X字型の前進翼、巨大なスラスターバーニア、無数の対空砲『Mk XIマルチタレット:ヒドラ』『120mm 滑腔砲』それは“戦艦”であった。

 

「あれは…一体!?」

 

アーサーは驚く。あの様な巨大戦艦は未来で映っていなかったのだ。

 

「(どう言う事なんだ!?未来が改変されているなんて!?それに…乗っているのはまさかだけど…。)」

 

アーサーは謎の巨艦の艦橋を見上げる。そしてそれは艦橋の方でも同じであった。艦橋から見下ろす影は不気味な微笑みを現し、アーサーとサラを睨むのであった。



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チャプター32 共鳴前線・後編

長らく大変お待たせしました!
遅れた理由と申し上げますと、設定の変更、新たな小説(トライブラザーズ外伝)を投稿するか、文章及び展開の改善です。
単純な事もまともに出来ない事に自分を許さなかったです。
話を変えます、どうぞ、暖かい目でご覧下さい。では…。


突如現れた500前の戦争の遺物【デバステーター】、地中から現れし巨艦。

クラウドブルース司令センター内でアリマはその巨艦に驚く。

 

「馬鹿な!!?誰が機動巨艦の発進を許可したのだ!?直ぐにシステムのシャットダウンをしてくれ!!」

 

『それが!巨艦から見たこともない暗号が流出し、システムのシャットダウンを妨害されました!』

 

「そんな!じゃああの巨艦は一体誰が動かしているのだ!?」

 

アリマやオペレーター達は驚く。

 

 

 

機動巨艦【ヴィルサルディア】かつて500前に起こった終末大戦末期に開発途中されていた戦闘巨艦。対空システム、砲撃システム、防御システムの凡ゆる戦術を組み合わせたそれは攻守一体の存在。ヴィルサルディアは前進翼に装備されているに装備されている副砲“110cmニ連装ホーミングカノン”をアーサーとサラに目掛けて砲撃してきた。サラは迫り来るレーザーに防御体制を取ると、アーサーが前に出て光波バリアでホーミングレーザーを拡散・無効化させる。するとフラドーラと焔龍號、全ての通信がジャックされ、モニター画面が映る。そこに映っていたのは……。

 

「只今より、本計画の為、本当の地球種に向けて宣言します。人類はその外使徒たる射手座のグランセイザー『アルトリウス・コールブランド』の敗北を見る事です。自ら復元した武力を思い知る事ができるでしょう。」

 

「フェリス…!?」

 

「え!?ちょっとこの子!?」

 

「フェリスちゃん!?」

 

「姉さん…何を言ってるの?」

 

皆んなが映像を見る中、フェリスは話を続ける。

 

「その手段として、我々は最も相応しい方法を決めました。それは…“愚かで無意味な地球人類の守護者をヴィルサルディア級で滅ぼす。”」

 

突然の宣告に、司令塔にいるアリマが怒鳴る。

 

「馬鹿な!!他の電脳巨艦もジャックしただと!?君は一体!!?」

 

「我々は『【アルザード帝国】。神聖ミスルギ皇国正当な後継者『フェリシア・朱鷺・ミスルギ』の目を通して、あなた方に話しています。地球連邦、評議会、アウラの民は我々と対等に話す資格などない。貴方方に許される唯一の行為は、これからお見せする我々の新しいおもちゃに恐怖し、我々の障害であるアルトリウス・コールブランドの死に、絶望するだけです。」

 

するとヴィルサルディアの艦体が強く発光し始める。っとヴィルサルディアそのものが変形し始める。副砲だった兵装がスライド移動され両腿部に、80mm対空自動バルカン砲塔システム『Mk XIマルチタレット:ヒドラ』と『120mm 滑腔砲』が指に、主砲『225cm連装高エネルギー収束直撃砲:サラマンダー』4基がそれぞれの両肩部に並ぶ。さらには尻尾、そして龍の様な頭部が完成すると艦体の変形が終わる。

 

「あれは!?」

 

古代竜を思わせる風貌、複数の武装、全身ナノメタルで覆われた巨大な機械獣はゆっくりと地面に着地し、左右の両眼が赤く発光し、不気味な機械音を鳴らす。

 

『これこそ!ヴィルサルディアの真の姿!これが…これが!!超古代機械獣【メカゴジラ】だ!!!』

 

強大な敵『メカゴジラ』。アーサーは体制を立て直し、攻撃に備え、ガルクローを展開する。メカゴジラも手甲部からナノメタルでできた両刃の斬撃兵装『KX-P.MarkII 高周波ソード』を展開し、アーサーに襲い掛かる。フラドーラの爪とメカゴジラの剣がぶつかる。しかし、メカゴジラのパワーがフラドーラを圧倒し、フラドーラを吹き飛ばす。更なる追い討ちに両手の指に搭載されているナノメタル製フィンガーミサイルを乱射し、フラドーラの走行を剥がしていく。アーサーは負けないと思い、フラドーラを全速力で上昇し、太陽の真ん中で止まる。アーサーはフラドーラをライブモードへと変形させると、炎を纏った体当たり【ダイブブレイザー】で仕掛ける。

 

「甘い!」

 

メカゴジラの巨大な尻尾が動き、構える。そして尻尾に搭載されている複数のバーニアから火が噴射し、高速でアーサーのフラドーラごと薙ぎ払う技【プラズマテイルブレード】がフラドーラの左翼を溶接した。被弾したフラドーラは螺旋状に回転しながら墜落。

 

「アーサー!」

 

「サラ!異空間は任せた!俺はコイツを自力で何とかする!!」

 

アーサーはそう言い、脱出システムを作動させる。フラドーラの機体が二つに別れ、内部からグランビークルが飛び出し、無事に脱出した。しかし、デバステーターがテンタクルアームの唸らせ、アーサーのグランビークル目掛けて薙ぎ払う。右翼に直撃し、そこから火を噴くアーサーのグランビークル。コックピット内では額から血を流すアーサーが操縦桿を必死に握りしめ、体制を立て直そうと踏ん張る。しかし、グランビークルは体制を立て直すどころか、逆に燃料を大幅に消費する一方であった。

 

「クソ!!」

 

アーサーはここまで来て、この有り様と思ったその時、彼の左腕の痣が光だし、ある文字に変わる。

 

【Ω】

 

「何?」

 

その時、アーサーの体が白く輝き、墜落するグランビークルから消失する。アーサーのグランビークルはそのまま森の中へ墜落した。

 

だがこの時、別の方角にある森林の中……何かがあった。空間が歪み、そして何かが割れ、その風景だった場所が変わって行く。赤黒く発光する全てが肉塊でできた生命体が蠢き、アーサーが戦っているアウラの都へ…巨大な触手が伸びる。

 

その頃、サラは謎の異空間を止めようとバスターランチャーのトリガーを弾いていた。

 

「どうすれば良いのですか!?」

 

サラが戸惑っている中、大巫女が通信して来た。

 

『撤退するのじゃ、サラマンディーネ。』

 

「大巫女様!?」

 

『龍神器はアウラ奪還に必要な中心戦力、万が一があっては。』

 

「ですが!」

 

『リーベルの民が其方へ向かっている。後は彼等に任せるのじゃ。』

 

「それでは間に合いません!」

 

「撤退せよ。」

 

「民を見捨てるなど…私には!」

 

「これは命令じゃ。」

 

大巫女の命令に従うか、命令に背いて民を守るか…。その時、横からエアリアに使われるタンデム式のエアバイクが飛んで来た。

 

「ッ!!」

 

その時、アンジュが乗ったヴィルキスが飛んで来たエアバイクを破壊してくれる。

 

「何をボケッと突っ立ってるのよ!“サラマンドリル”!!」

 

「アンジュ!」

 

その時に皆の目に異変の空間が人々を飲み込んで行く様子にアンジュはくぎ付けとなる。

 

「何…あれ!?」

 

「間違いない!エンブリヲの仕業だ!」

 

「「え!?」」

 

後から来たタスクの放った言葉に驚く二人。

 

「エンブリヲは時間と空間を自由に操る事ができる。俺の両親も仲間も…石の中に埋められ融合されて死んだ。あんな風に!」

 

その時、エアバイクで下敷きになっているラミアと母を助けようとするヴィヴィアンが映る。

 

「……あ!ヴィヴィアン!」

 

 

自分を庇ってくれたラミアを心配していた。

 

「どうして、こんな危ない事をしたのさ! アタシだったら訓練を受けてるからへっちゃらだったのに!」

 

「子供を守るが…お母さんのお仕事だからよ」

 

その事にヴィヴィアンは目に涙を浮かばせてしまう。

 

「お母さん…さん。」

 

ラミアはそっとヴィヴィアンの頬に触れる。

 

「ヴィヴィアン!」

 

タスクは急いでヴィヴィアンの元へ駆け付ける。そんな中、アンジュとサラは迫り来る異空間に考え込んでしまう。

 

「どうするのよ!サラマンド!」

 

「事態の原因が分からない以上、どうする事も!」

 

「……そうよ!アレがあるじゃない!」

 

「え!?」

 

「アルゼナルをぶっ飛ばしたあの兵器!アイツであの竜巻や空間を消してしまえば!」

 

アンジュが言うあの兵器“収斂時空砲”(ディスコード・フェイザー)の事であった。

 

「……ダメです。」

 

「どうして!?」

 

「収斂時空砲の破壊力では、都は愚か、神殿ごと消滅してしまいます!」

 

「そんなの!三割り引きで撃てば良いじゃない!」

 

「そんな都合良く調節する事はできません!」

 

「様子を聞かないんだから!もうっ!!」

 

迫り来る異空間、タスクとヴィヴィアンは下敷きになっているラミアを助けようと必死になる。

 

「早く逃げなさい、ミィ!」

 

「行かない!お母さんと一緒じゃなきゃ、行かない!」

 

「ミィ…!」

 

ヴィヴィアンがラミアの事をお母さんと言った瞬間、ラミアは思わず嬉し涙を流す。

 

 

アンジュとサラはどうにかして謎の異空間の止め方を考えると、アンジュがある提案を思い付く。

 

「っ!そうよ…別に三割り引きでじゃなくても良いじゃない。」

 

「え?」

 

「あなたが撃った奴を私が撃ち消せば良いじゃない!あの時みたいに!」

 

「ぶつけ合う!?そんなやり方!」

 

「どんなやり方でも、それしかないならやるしかないでしょ!」

 

「ですが…!」

 

「あなた!お姫様なんでしょ!サラマンマン!危機を止めて、民を救う!それが人の上に立つ者の使命よ!!」

 

「っ!!……分かりました、やりましょう!」

 

アンジュとサラは異空間を止めるべく、それぞれの歌を唄う。

 

「♪〜♪〜」

 

「♪〜♪〜」

 

ヴィルキス、焔龍號の両肩部が露出展開し、全身が黄金に染まり、収斂時空砲発射シーケンスを開始する。そしてサラの収斂時空砲が先に発射される。

 

「アンジュ!」

 

「「♪〜♪〜」」

 

アンジュもヴィルキスの収斂時空砲を発射しようとした瞬間、左腕部が爆発し、コックピットが露出し、墜落して行く。

 

「っ!?」

 

『墜ちてますわよ!アンジュ!』

 

「見ればわかるわよ!」

 

『早く立て直しなさい!』

 

「この大事な時に!あなた!世界を滅ぼした兵器なんでしょ!?気合入れなさい!ヴィルキス!!」

 

その時、アンジュの指輪が光り輝く。それと同時に、破損したコックピットハッチ、左腕部が自己修復され、アンジュは収斂時空砲を発射する。互いの収斂時空砲がぶつかり合い、謎の異空間を掻き消す。

 

「何とかなった見たいね!」

 

「えぇ、ですがまだ…。」

 

サラの言葉の続き、それは目の前に立ち塞がるデバステーターであった。二人は武器を構え、此方へ向かってくるデバステーターに警戒すると。機体からアラーム音が鳴る。

 

「上空より飛行物体!?」

 

天空の彼方から光が射し込む。するとデバステーター並みの全長を持つ巨人が光の中から現れ、デバステーターを蹴り飛ばした。

 

「何あれ!?」

 

上空より落下したもの……全身が機械、黄金のフレーム、白と赤を基調とした装甲をした人型のロボットであった。ロボットはデバステーターを睨むと、手を差し伸べる。

 

「アポート…」

 

っと、ロボットは奇妙な言葉を呟く。その直後、デバステーターが機能を停止し、倒れる。するとロボットの差し伸べた手に、デバステーターの心臓部と思われるパーツを持っていた。

 

「え!?何が起こった!?」

 

ロボットはゆっくりとメカゴジラの方を向き、ゆっくりと歩いていく。だが、このロボットの中では世にも恐ろしい事になっていた。紅蓮の炎で燃え盛る超星寮、泣き叫ぶ子供達の泣き声、穢れボスキートとなってしまった候補生達、その中にサヨリ、テツジ、リクの死体で白眼のまま血を流すアーサーが叫んでいた。

 

「俺の人生と幸せを返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

彼の周りには焼け爛れた焼死体、強姦され絶命した死体、首が無い死体、臓器を抉り取られた死体、穢れボスキートになってしまった候補生、村人達の怨念がアーサーを侵食する。ロボットの正体はアーサーであり、ロボットが咆哮を上げ、口から怨念を放出する。

 

「あれって…まさかアーサー!?」

 

「でも…あの姿はまるで…」

 

「「悪魔!!」」

 

誰もがアーサーの姿に恐怖していたその時、彼方から肉塊でできた触手がアーサーに巻き付き、引きずり始める。

 

「ッ!!?」

 

とてつも無い力がアーサーを締め付ける。すると触手に触れてたのか、謎のビジョンが視界に入り込む。そこは研究所であった。その研究所に奇妙なカプセルで横になっているある患者と目の前に金髪の少年、赤髪のツインテールの少女が映る。

 

「これは…俺?」

 

すると、別のドアから研究者達が走って来た。その時、入って来たドアから肉塊が溢れ出し、研究者達に襲い掛かる。研究所の至る所へ肉塊が行き渡り、研究者達を喰らい尽くして行く。研究者と走る少年と少女の姿が見えた。何処かのホールに辿り着くが、ついに肉塊に呑み込まれた…かと思いきや、肉塊が変異し始め、二人を包み込み、液体の入ったカプセルの様な形状をした肉塊の容器に取り込まれる。さらに驚くべき事に、少年と少女の髪も長くなる。そしてビジョンがここで終わると、触手が生えている場所…そこは峡谷であり、下流から上流まで肉塊に埋め尽くされていた。アーサーの巨体が激しく引き摺られ、ついに触手が生えている肉塊に取り込まれる。その時、彼の視界にまたしてもビジョンが映る。そのビジョンとは……。

 

 

 

 

 

 

急いで駆けつけて来たタスク達、取り込まれて行くアーサーに驚く。

 

「アーサー!」

 

「今助けるぞ!」

 

「何なんだあれは!?」

 

アインとナツキがビームガンを構えて撃つ。しかし、肉塊は増殖を止めず、ビームの熱ですら焼かれなかった。

 

「クソ!どうすれば!?」

 

「聞け!皆んな!!」

 

「《!?》」

 

アーサーは取り込まれながらも、先に見たビジョンを伝える。

 

「皆んな…落ち着いて…聞いてくれ。12年前のあの日…トリト村で起こったあの悲劇……あそこで運良く生き延びたのは…………“マイラ”だけだったんだ。俺はあの時…海から落ちて既に亡くなってたんだ!!」

 

「《えぇっ!!??》」

 

「この肉塊が…教えてくれた。俺の死体は…何処かの誰かに拾われ、そして何かの蘇生治療されていた。そして、俺の本当の身体は……この肉塊…これが出来た場所…上流の奥にある研究所に!!もうすぐ俺は死ぬ!だから、試してみたい事がある!!もし失敗すれば、その時は……」

 

アーサーはそう言うと、目を閉じ、何かを集中する。

 

「……見えた!」

 

アーサーが意識の中で集中していた物……それは胎児の様な異形の生命体として眠っている自分であった。アーサーは生命体に意識をリンクさせると、彼の身体が透け、そして粒子になる。肉塊から解放されたアーサーに皆んなが大声で叫ぶ。

 

「《アーサー!!!!》」

 

解放されたアーサーが粒子となって消えて行く光景に、泣き崩れるタスク達。すると皆んなの頭の中でアーサーの声が響く。

 

『万全の装備と体制で上流へ向かえ![黒部ダムの時沢生命工学研究所】!!そこに俺がいる!本当の真実がある!未知のテクノロジーも存在する!戦争の元凶もある!この事は……東護ノ介さんとアリマ司令、そして連邦政府が知っている!1000年前の大事故を隠し通していた事実を…その目で見て確かめろ!!俺の名は…【アルス・エクシリアス】!!アルファリオンの双子の弟!!俺は今からやらないといけない事がある!!』

 

真実の世界から消えゆく意識、アーサーは最後の伝言を伝える。

 

『未来で待ってる!!そして……!!』

 

 

 

 

 

ーーー《A組メンバー全員……サヨリ、テツジ、リク達は……上流にある研究所で……アルファリオンと共に…生きて眠っている!!》ーーー

 

 

 

 

 

アーサーの言葉にタスクやオルト達、通信で聞いていた東護ノ介やアリマも驚く。

 

 

 

 

 

ーーー《ケーニヒス!!後で覚えておけよ!!お前達が隙を出したその時!!俺は復活し、貴様の顔の皮を剥がし!!抉り出し喰らい!!首を取る!!!!》

 

「ほぉ、ならばその宣告…叶わない様にしてやる♪」

 

ケーニヒスはフェリスを使って高笑いを上げ、メカゴジラを巨艦へ変形し、特異点を開きフェリスごとヴィルサルディア級電脳巨艦艦隊を引き連れ、偽りの世界へと戻って行く。最後の光景を己の眼に映るユーティスも笑っていると。

 

「“お前を…絶対に許さないぞ!!”」

 

「っ!!?何だ…今のは!?」

 

突然の頭痛と共に聞こえて来た自身の声にユーティスは頭を抑え付けながら、帰って行く。

 

夕暮れが沈む…一人の若者であるアルトリウス・コールブランドの物語が別の方へと行くのであった……。




さてさて、どうですかな?誤字や脱字に問題がありましたらご報告をお願いします。

アーサーが語った真実の先…1000年前の事件とは…一体。深まる謎ばかりですが、この謎は【日ノ鳥戦記】そして新たに投稿予定の外伝作品【生体黙示録】の話の内容用語として出ます。
乞うご期待下さい!!


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チャプター33 千年前の真実

あの戦いから二時間後……連邦政府はアルトリウス・コールブランドを取り込んだ謎の肉塊の調査をしていた。付近には近づけさせまいと肉塊に対抗するゲートも建造中であった。調査隊は上流にあるとされる時沢生命工学研究所を調べようとドローンを飛ばす。しかし、肉塊から触手が飛び出し、次々にドローンを破壊していった。

 

「これで何機、飛ばした?」

 

「72機、4機だから18回だ。」

 

「無理だと思うぞ、何せドローン飛ばしても直ぐに破壊される。」

 

いくら飛ばしても破壊される事に愚痴る調査隊員、すると横にいる隊員の一人がある事に気づく。

 

「前々から思ったんだけど…これって1000年前の物だよな?」

 

「ん?確か…アルトリウス・コールブランド本人がそう言ってた。」

 

「1000年前となると戦争が再活動始まる前に建造されていた。だったら何で…“光学迷彩機能を持つシールドが劣化しなくて稼動しつつ、1000年間そのまま放置されてたのか?”」

 

「っ!?」

 

隊員は驚く。そう1000年前と言ったら第三次世界大戦が始まる数年前の時代…この研究所も破壊兵器で抹消される筈。だが何故抹消しない?そして放置されつつもシールドは稼動していたのか?肉塊も正常に保っていたのか?深まる謎が多くなるのであった。

 

 

 

 

 

 

一方、タスク達はアーサーが放った1000年前の真実を確かめに連邦評議会に来ていた。太平洋上に建設された人工島『アーク』…外壁にはそれに対抗する防衛兵器が並んでおり、防壁内には高層ビルや街が立ち並んでいた。遠くに大きく空高く伸びているビル並みに高く、ドームらしき建物が見えてきた、そして周りに輸送機や船が辺りにいて、滑走路に着陸や港に停泊する様子が見えた。

 

その様子を見て、タスクとアンジュは思わず目が釘付けとなる。

 

「凄いな…あれがか?」

 

「ああそうだ、あれがこの世界の連邦政府の評議会『地球連邦元老院』だ」

 

「地球連邦元老院…」

 

タスク達は輸送機の発着場に到着し、元老院の中へ入って行く。係員の案内に従い、元老院最高議長であり、大統領である自分がいる部屋の前に着く。

 

「お館様、連れて参りました。」

 

「入っても良いですよ…」

 

ドアの向こうから優しい声がタスク達の心を安らぐ。ドアを開けると、和式の部屋になっており、そこには粗相の無い和服を着た老婆とアリマ、東護ノ介、大巫女、老男男女の12人、そしてオリヴァルトと一緒に抹茶を飲んでいた。初老の男女達がこちらを見ていた。

 

「よくお越しなったわね、私の勇敢なる子供達。」

 

老婆は笑顔でタスク達を見た後、係員を見る。係員は頭を下げた後にその場を去り、残ったオルト達は7人の初老の男女を見る、するとオルトとサラが前に出て言う。

 

「アウラの都から来たオルト・冨岡」

 

「同じく近衛中将サラマンディーネです」

 

「よくぞ参ったね。私が世界評議会最高議長、産屋敷家187代目当主“産屋敷かぐや”と申します。そしてよく来られた別地球から参られた者達よ」

 

産屋敷かぐやが出迎え、それにオルトとサラは頭を下げ、それに釣られるかのようにアイン達も一度頭を下げる、っがその中でアンジュだけは頭を下げなかった。

 

「コラッ!アンジュちゃん!お館様の前よ!」

 

「うるさい!私はどんな人物だろうと頭は絶対に下げない!」

 

「いや下げろ」

 

っとアインとナツキが強引にアンジュの頭を下げさせ、それにアンジュはジタバタと暴れだす。それに東護ノ介たちは思わず呆れながら見ていて、議員たちは笑いながら見ていた。

 

「あはははは、なかなか面白い小娘な事。まるで昔の私みたいで懐かしい♪」

 

議員たちの冗談話の事にアンジュは思わずイラっとする。

 

「何が懐かしいよ!」

 

「あの、お館様…そろそろ本題に。」

 

っとオルトがすぐに気持ちを切り替える、それに対しアンジュの方はまだムスっとした感じだった。

 

「ああ分かっている。では早速だが都で何が起こったのか報告してくれないか?」

 

「はいお館様、実は…」

 

オルトとサラは都の方で何が起こったのかを全て話す、ラグナメイルの襲撃、時空の影響、アルトリウスの消息、正体不明の生命体、千年前の真実のすべてを話し、かぐやはそれに納得する表情をする。

 

「なるほど…アルトリウス・コールブランド、あなたはやはり、運命を背負いし勇者王ですね。」

 

「勇者王?」

 

オルト達が首を傾げる。かぐやがあるメモリを用意していた機器に差し込まれる。部屋が暗くなり、映画のように映像が映し出される。映し出されたのは…。

 

「《アーサー!?》」

 

白く染まり、髪も長くなっていたが、間違いなくアーサーであった。

 

『初めまして、1000年後の皆さん。私はアルファリオン・エクシリアス…アーサーの双子の兄だ。これを見ていると言う事は、時沢生命工学研究所何があったのかを知る事になる。遡る事1138年前ーーー西暦2033年5月14日(火曜日)… 黒部峡谷上流の黒部ダム湖に位置する時沢生命工学研究所にて起きた人工生体の細胞異常増殖事故【D・インパクト】。その内容の全てを話す。』

 

アルファリオンは事の全てを話した。まず最初に、アルファリオンはオリヴァルトの正体…6500億年前に侵略者によって滅ぼされた超古代人類【エクシリア人】の生き残りであり、アルファリオンとアルスことアーサーはその王族最後の末裔でもあった。二人はオリヴァルトの乗っていた時間跳躍機能を持つ方舟に乗っていたが、突然のアクシデントで二人は別の世界、別の時代へと飛ばされた。アルファリオンは本当の魔法が発達した世紀末世界、アーサーはマナと言う偽善に満ち溢れた世界として…。だが、この時、運命の歯車はさらに増えていた。再開した二人が待っていた物…それは植物人間状態になっていたアルトリウス・コールブランドであった。当の本人も身体がもう一つと言うより、新しい身体として復活していて、何が起こっているのか分からない様子であった。さらに、それに続くかのようにサヨリ・コールブランドを含むA組メンバーも復活していた。彼等も自分の幼少期の姿を見て驚いていた。アルファリオンと妻であるフェアリスはエンブリヲの義兄となる【時沢アルト】の両親“時沢夫妻”に相談したところ、ある解決方法があった。

【分離移植手術】ーーー過去へ飛ばされて来たA組メンバーの二つの存在、幼少期と成人期…成人期を極力で幼少期へと若返らせ、二人の脳を入れ替え、傷ついた方の身体を治療すると言う大規模集中治療計画であった。手術は成功し、A組メンバーはそれぞれの暮らしをしながら、12年間待った。“アイツ等”が来なければ……。

12年後、ナノマシンで人工的生体機能を持つアーサー達は待ちに待った手術を開始させた。だがある日、Dr.ベンドロスと名乗るアルザード帝国の刺客が現れ、研究所を乗っ取ろうとした。そしてそれは等々起きた……アルトリウス・コールブランドの治療中に使用していた人工生体の細胞が突如暴走し、爆発的に増殖。飲み込まれた多数の研究職員が死亡した。増殖した細胞はミュータントとなって渓谷全体を覆いつくし、平野部付近まで渓谷を埋め尽くしていった。幸いにも、アルトリウス・コールブランドとA組メンバーの人工生体ユニットは防弾カプセル内でハイパースリープ状態であったが、肝心の本体、そしてアルトリウス・コールブランドの兄妹弟子である小さき少年少女が囚われた。アルファリオンとフェアリス、時沢アルトは泣いた…アルトは私を責めた。お前のせいで父と母、修学旅行で来ていた彼の友人達もミュータントに食われていったと。アルファリオンとフェアリスはその罪を償う為、時沢アルトを弟子として育て、そして一族に伝わる時空の力を与え、【崩壊者】として名乗らせた。だが数百年後に起こったドラグニウムの発見により、事態が急速に激しさを増した。アルファリオンはエリアを守る為、人工生体機能を持つ半永久機關を搭載させた自律式修復システム防護壁『ミスト』開発、エリア全体を光学迷彩で隠し通して来た。そしてついに、1000年……産屋敷家にこの事態を終息に終わらせる精鋭部隊のメンバーを育ててくれると信じていると。

 

『私は野暮用で君達の前に現れる事はできないが、どうか弟…アルス・エクシリアスとA組メンバーを助けて欲しい。』

 

アルファリオンからの映像通信が終わり、【For a new life ...】と言う文字が映る。

 

1000年前の真実を知ったタスク達は今までの事を整列して行く。

 

「だからアーサー達を、狙ったんだな。ケーニヒスにとって、A組メンバーの殆どがアルザードに終焉を齎した災厄として。つまり上流に行けば、アーサー達を復活させる事ができる。」

 

「えぇ、もしかしたら、上流へ向かう途中でアルザードの邪魔が入ると思います。既に精鋭部隊のメンバーも決めております。」

 

「《誰?》」

 

かぐやと東護ノ介はオルト達を見る。

 

「お前達B組メンバーと私と連邦特殊部隊である『F.S.S.』だ。」

 

精鋭部隊のメンバーはオルト、ネーラ、アイン、ナツキ、ナタリア、ポーラ、ネス、ニック、ツカサ、ヒュウマ、スミコ、ナナコ、シノブ、ゲンヤの計14人とF.S.S(Federation Security Service)部隊、そして東護ノ介であった。アークの極秘格納庫に到着したオルト達。そこにはこの日の為に開発していた対用兵器と強化スーツ、必要な物資、戦闘車両が収納されていた。

 

「コイルガンにE.F制式F98アサルトライフル、レールガン、レーザートーチ、ビームガン、パルスグレネードランチャー…スゲェ!いつからこんな凄い武器を!?」

 

「…アルファリオンとアーサーが用意したんだ。」

 

「え?」

 

「二人はこうなると分かって、爆心地へ向かう為の装備や物資、武器を第三の地球で掻き集めてきたんだ。お前達の為に。」

 

「あの二人…俺たちの為に。」

 

「アーサー…」

 

「アイツ…あんな風になってまでも、俺達を今でも信じているんだ。」

 

ナツキとアインは涙を流し、決心する。

 

「皆んな!行こう!アーサー達が待つ…時沢生命工学研究所に!!」

 

「《おぉ!!》」

 

オルト達は一斉に声を上げ、準備をする。D・インパクト即ち爆心地へ向かう為の対ミュータント用強化スーツ【ナノダイバー・スーツ】ーーー全身を覆う構造で人工生体ユニットで構成されており、コイルガンや携帯型レールガン、レーザーガンなど大小様々な銃器の運用が可能となっているほか、足部には高速移動のためのローラーダッシュ機構やジャンプ距離を延ばす噴射機構、スラッシュハーケン射出機構など様々な機能が搭載されている。背中に回収物や予備弾倉を入れる背負子を装着する事になる。輸送機に出来るだけの物資や車両、武器を積んだオルト達はスーツを着用し、オスプレイに乗り込む。そして、東護ノ介も…。

 

「待たせたな。」

 

東護ノ介も強化スーツを着用していた。武装は右腕部にガトリングシールド、左腕部に核融合プロトンキャノンを内蔵させたラジエーターシールド、脚部に歩行及び姿勢を制御する高出力ホバーレッグを装備した強力な武装とスーツであった。タスクとアンジュ、サラ達が心配する中、オルトがタスクに言う。

 

「タスク!アンジュ!アーサーの事は俺たちに任せろ!お前達は次の事を考えて置くんだ!」

 

「「……」」

 

「サラマンディーネ、次なる手は分かっているな。」

 

「はい!」

 

「艦隊の指揮を頼む!それからもし失敗した時にお前も爆心地へと我々と合流してくれ!」

 

「分かりました!」

 

東護ノ介とオルト達を乗せたオスプレイは爆心地である国部ダムへと飛び立つのであった。

 

国部ダム付近 《平野部》……渓谷がミュータント細胞によって侵食されてしまう事恐れた政府は予めに建造していた防護壁をゲートとして役割を担っていた。ゲート前では、既に潜入するF.S.Sメンバーが揃いつつあった。先導するのは勿論…。

 

「待っていろアーサー…お前やサヨリ達、弟子である“ノーリイ”と“ミクリ”を助け出し、手術を成功させてやる…。」

 

アルファリオン・エクシリアスはゲートの向こう…ミュータント細胞に侵食された渓谷、温泉街、旅館、観光地、そして最終地点である国部ダム最大の湖…黒部湖の水上に建つ建物…そう、そこが終着点である時沢生命工学研究所であった。だが研究所の周りをダイソン球の様に覆い囲むミュータント細胞の肉塊、研究所の殆どが肉塊で侵略されているも、一部だけは健全であった。冷凍睡眠施設であった。そこには人工生体ユニットとなっているサヨリ達と本当の体であるサヨリ達が入ったバイオカプセルを肉塊が繭の様に包まれており、今も眠っている。展望ホールでも同じであった。髪が長くなったアーサーの弟子…孤児であったノーリイとミクリであった。そして研究所の最重要ポイントである部屋…ダイソン球様な大型バイオカプセル内のバイオ液で眠る人工生体ユニットのアーサーともう一人のアーサー……首が伸び、後の胴体がミュータント細胞の肉塊で構成された巨体になって、カプセルを覆い被さっていたのであった。

 




さて…続きの設定及び、続きを書いて行きますか!


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チャプター34 黒の破壊天使・前編

タスク達は元老院でかぐや議長達との会話が済んだ翌日、アリマ司令がタスクに話す。

 

「ミスルギ皇国に侵攻!?」

 

「アウラの民であるリザーディアがミスルギ皇国へスパイとして送った結果、報告を得た。彼女の情報によると、神聖ミスルギ皇国の象徴である暁ノ御柱の地下にてアウラを発見したと。」

 

「皇国の地下にアウラが!?」

 

「我々連邦艦隊はこれより、ドラゴン達と共にミスルギ皇国ヘ侵攻し、フェリシア・朱鷺・ミスルギの救出作戦をする。向こうで待っているアーサーの為、我々も全力を尽くす。協力してくれるか?」

 

「勿論です、司令。」

 

タスクはアリマと握手で交わし、事の説明を聞く。

丁度同じ頃、アンジュはサラと温泉に入っている中、サラがミスルギ皇国ヘ侵攻するとの話を聞いていた。アンジュはそれに問う。

 

「それを聞かせてどうするの? 私に戦線に加われっとでも言うつもり?」

 

「…まさか、貴女は自由ですよ?アンジュ。この世界に暮らす事もあちらの地球に戻る事も…。勿論我々と共に戦っても貰えるとなればそれ程心強い物はありませんが。明日の出撃の前に貴女の考えを聞いて置きたくて…」

 

「私の…?」

 

アンジュはそれに頭を傾げ、それにサラは頷く。

 

「あなた達には、民を救っていただいた恩があります。出来る事なら何でもお手伝いしますわ」

 

アンジュはそれを聞いて少しばかり考えいた。

これから自分はどうすべきなのか、どうするのかを…。

その後、アンジュとタスクはそれぞれの話が同じだった事に驚く。そんなタスクの返答は。

 

「悪くないと思うよ。アウラを取り戻せばエンブリヲの世界に大打撃を与えられるのは間違いないからね。」

 

「それでいいのかしら…」

 

っとアンジュのその言葉には振り向く。

 

「信じられないのよ…」

 

「…サラマンディーネさんの言葉が?」

 

「何もかもが…」

 

アンジュは空を見上げながら言い、それにタスクはアンジュの方を見る。

 

「ドラゴンが人類世界に侵攻してくる敵だって言うのも嘘、ノーマの戦いが世界の平和を守るってのも嘘…あれもこれも嘘ばっかり。もうウンザリなの…ドラゴンと一緒に戦って、それが間違っていたとしたら……だいたい、元皇女がドラゴン達と一緒にミスルギ皇国に攻め入るなんて…悪い冗談みたい。分からないわ……何が正しいのか…」

 

「誰も分からないよ……何か正しいかなんて。」

 

「え?」

 

「大切なのは何が正しいかじゃなくて、君がどうしたいか…じゃないかな?君は自分を信じて進めばいい。俺が全力で支えるから…」

 

「バカね……そんな自分勝手な理屈が通じる訳ないでしょう?」

 

「えっ?そう?」

 

タスクはそれに振り向き、アンジュは安心するかの様な雰囲気を見せる。

 

「でも救われるわ、そう言う能天気な所」

 

「フッ、お褒めに預かり。光栄ですっ!!?──」

 

良い雰囲気なのに……転がっていたドライバーに足を取られ、タスクはアンジュの方へと倒れる。

 

「うわああああああっ!?」

 

「えっ!?きゃあああああああ!!」

 

アンジュを巻き込んで倒れ込んで、そこに運悪くヴィヴィアンがやって来た。

 

「アンジュ!アンジュ!お母さんがお礼したいって!」

 

煙が晴れると、そこにはアンジュがタスクに上になって、頭に自分の股を当ててる風な感じだった。

ヴィヴィアンは頬を少し赤くして、“いやんっ♡”と可愛らしいポーズをとる。

 

「~~~~っ!!この、A級発情期がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「あ〜〜〜〜〜っ!!!」

 

アンジュの怒り鉄拳がタスクを大きく吹き飛ばし、彼を宮殿外、つまり下の川へと落ちたのであった。

 

 

そして夜となり、町の人々がアンジュ達にお礼のバーベキューをしてくれて、ラミアがキオにお礼を言った。

 

「本当にありがとうございました、街と私達を護って頂いて。」

 

「私はサラ子…サラマンディーネを助けただけです。それに。」

 

アンジュは崩壊した街やゲートの向こうにいるアーサーの方を見て、辛い表情をしてしまう。

 

「助けれなかった人も…沢山います。」

 

 

一方、川から無事救助されたタスクはあちこち包帯を巻いていた。

手が使いないタスクにアウラの民の女たちがタスクにお肉を食べさえていた。

 

「はい、あ~ん♪」

 

「あ~ん、はむはむ…」

 

タスクが食べてくれた事にその女たちは喜んでいた。

 

「うわ~!食べてくれた~♪」

 

「男の人って可愛い~!」

 

「えっ? そ…そう」

 

っと思わずタスクは笑みを浮かばせながら照れてしまう。「楽しそうね」

 

「あっ」

 

タスクは運悪くアンジュがその場にやって来た事に固まり、そしてアンジュの右手に何やら見覚えのある形をしているバーベキューのお肉串を持っていて(何の形かは言わない。)、アンジュはその先端のキノコをかぶりつく。

 

ガブッ!!

 

「痛い!!」

 

タスクは思わず自分の股をおさえ、女たちは悲鳴をあげてその場から逃げて行く。

それにアンジュは鼻で笑い飛ばし、タスクのそばまで行って隣に座る。お肉を差し出す。

 

「はい、あ~ん」

 

「えっ?」

 

「何?いらないの?」

 

アンジュの行動にタスク達は少々戸惑いを隠せない。

 

「えっ?…な、何で?」

 

「手、使えないんでしょう? 少しやり過ぎたわ」

 

っとアンジュは頬を赤くして、申し訳ない表情をしながら謝る。

 

「こ、このくらいどうってことないさ。アンジュの騎士は不死身だからね」

 

タスクはそれに苦笑いしながらもアンジュが差し出したお肉を食べる。

 

「うん!美味い! アンジュが食べさせてくれると格別だね!、それに一気に直る気がするよ!」

 

「バカ…」

 

その事にアンジュは呆れ返り、街を見渡して、タスクがアンジュに言う。

 

「良い所だね」

 

「モテモテだもんねあんた達、特にタスクが一番…」

 

「えっ!?いや!そう言う意味じゃ…?!」

 

タスクは慌てて言うも、彼が言う言葉には説得力がない。

しかしアンジュはそう言いながらも、タスクの言葉に同意する。

 

「でも本当に良い所、皆助け合ってる生きている…あっ、そっか」

 

「ん?」

 

アンジュは過ぎ通る風にある事を思い出す。それは…。

 

「アルゼナルみたい…なんだ」

 

その事にオリバー達は理解した表情を示し、そしてアンジュは立ち上がる。

 

「私…帰るわ。ヒルダ達が待ってるわ!」

 

「アンジュ…」

 

「それが…貴女の選択なのですね。また…戦う事になるのですね? 貴女と」

 

「サラ子…」

 

「やはり危険です!この者達は我々の事を知り過ぎました!」

 

ナーガは後ろにある刀を手を伸ばしてアンジュ達を警戒する、それをカナメは止める。

 

「でも!アンジュさん達は都の皆を救ってくれたわ!」

 

「それでもこの間まで殺し合っていたんだぞ? 拘束するべきだ!」

 

ナーガとカナメの言い合いを聞いていたアンジュ達、アンジュは決意を決めた表情で言う。

 

「…私は、もうあなた達とは戦わないわ」

 

「ほら!私達は…えっ?!」

 

その言葉にナーガは思わず驚き、タスクもそれに頷いて言う。

 

言葉を聞いたサラは微笑みを浮かばせて言う。

 

「では明日開く特異点により、あちらにお戻りください。必要ならばカナメとナーガを護衛に付けましょう」

 

「さ!サラマンディーネ様!?」

 

ナーガはそれに問うも、そこにアリマ司令が来訪し、言う。

 

「大丈夫ですよ、我々も行きますから♪」

 

「お達者でアンジュ。戦いが終わりましたら、何時かまた決着を付けましょう」

 

「ええ、今度はカラオケ対決でね」

 

っとアンジュとサラは握手をして、それにタスク達は苦笑いをしながら見届けていた。するとサラがある事を言う。

 

「それに、フェリス殿との約束でありますし♪」

 

「約束?」

 

サラが言う約束……それは数日前に遡る事。誘拐される前のフェリスはサラマンディーネとマイラを呼び、仲良くお茶会を楽しんでいると、フェリスは言う。

 

 

「単刀直入に聞きます。お二人共、“アル”の事が好きですよね?」

 

フェリスの言葉にサラとマイラが顔や耳を赤くする。

 

「な!何言ってるのよ!べっ!別に私はあの赤単細胞の事なんて…ほら、アイツっておっぱいが大きい子を見ると鼻血を出してしまうじゃん!?まぁ、でも…お母さん(マーサ叔母さん)も相当あったけど、反応なかったし、それに優しくちゃんと責任感もあるし…。じゃなくて!」

 

「でも、トリト村でサヨリちゃんと言うお姉さんの目を盗んでこっそりとデートしていませんでしたか?」

 

「っ!?何でそれを!?」

 

「本人から聞きました。」

 

「アイツ〜〜!」

 

「それと、サラさんも初めてアルに裸を見られてどう思いました?」

 

「えぇっ!?あっあ!私は!確かに、アーサー殿は私の胸を見ただけで鼻血を出してしまう者でした。でも何でしょう、彼も私を見て頬を赤くして。」

 

「実は結婚する前、聞いたのです。アルは最初、サラさんに初恋したと。」

 

「あ!言ってた!アイツ確かに!」

 

「私はそれを不快に思ってもいません。寧ろ喜ばしく思っているのです。アルの事を心から信じ、支えてくれる者達もいっぱいいる、そして彼の事を心から恋愛を持つものが二人もいるのですから♪」

 

「あんた変わってるわね、不倫相手が出来そうになったら普通問いかけてガンガンと飽きない様に努力するんじゃ?」

 

「その気になったらいつでもしますよ。でもアーサーは結婚して初夜を終えた際に言ったのです。一夫多妻でも構わない、俺は愛人と呼ばない、その彼女達も家族の一員だって。それにアルは将来近いうちに凄い事を成し遂げるかも知れません。そんな凄い運命を背負った人を独占するなんて、私は出来ません。私一人では支えるのにもちゃんと限度もあります。独り占めしたい、そんな理由で彼を縛りたくはありません。」

 

フェリスの言葉にマイラとサラは驚く。そしてフェリスは言う

 

「だから、二人ともや近いうちになる数人…アーサーのお嫁さんになりませんか?」

 

「「……え?」」

 

その言葉にマイラとサラは顔を赤くする。

 

「い、いきなりそんな事言われてもさ…」

 

「え〜っと…その…ううっ。」

 

「サラさん、今でもアーサーの事でドキドキしていませんか?」

 

「……はい。」

 

「マイラさんも、アルの事で心配ですよね?」

 

「そ、そんな事は……ある。」

 

「私は二人や他の候補達と共にアルを支えたいと思っているのです。だから改めて言います。私達、アルのお嫁さんになりましょう♪」

 

「「えぇ〜!!」」

 

その事に二人は顔を真っ赤にし、さらに頭の中で妄想を浮かばせる。ウェディングドレスを着たサラとマイラ、二人の想像が激しさを増し、鼻血を出してしまった事を…。

 

サラの言っていた約束…それはアーサーの妻になる事であった。アンジュとタスクはそれに呆れ、その事に暴走し始めたナーガ、それを抑えるカナメであった。

 

 

 

早朝…、アウラの民がアウラを奪還するべく総力を持って進攻する為、戦力を集結させていた。

 

「リーベルの民、シルフィスの民、待機完了」

 

「ジェノムスの民は、まだ?」

 

「川を渡るのに数分掛かるようです。」

 

その様子に外に居たアンジュ達、その中でヴィヴィアンは感心していた。

 

「お~!ドラゴンのフルコースなり~!」

 

「まさに総戦力…」

 

「まだまだいるな…。」

 

タスクが納得していると、するとタスクの耳元にドクターゲッコが....。

 

「タ〜ス〜ク〜さん♪」

 

「ぞぉ~!?」

 

タスクはビックリして見て、ドクターゲッコーはタスクの腕に抱き付く。

 

「もっと人型の成人男性を観察するいいチャンスでしたのに、残念です♪」

 

「あ、そうですか......」

 

「次回は是非、私と交尾の実験を.....」

 

アンジュがタスクの首根っこを引っ張って、ドクターゲッコーに言う。

 

「御免なさいドクター、これは貴女の実験用の珍獣じゃなくて。私の『騎士』なの」

 

「えっ?」

 

「あ、はい....」

 

アンジュの言葉にタスクとドクターゲッコは唖然とし、タスクとアンジュの様子にヴィヴィアンは思わずからかい始める。

 

「ヒューヒュー♪」

 

二人の行動にアンジュは思わず頬を赤くして、すぐさまヴィルキスの元に行く。

 

「な!何よ!ほら!!行くわよ二人とも!!」

 

「あ、ああ」

 

「お~!」

 

慌てて追いかけるタスクとテンションよく付いていくヴィヴィアン。

 

そしてドラゴン達が集結して、大巫女が皆の前に現れる。そして大巫女はアウラの民達に宣言をする。

 

「誇り高きアウラの民よ、アウラと言う光を奪われ幾星霜…ついに反撃の時が来た。今こそエンブリヲに我らの怒りとその力を知らしめる。我らアウラの子!例え地に落ちてもこの翼は折れず!!」

 

その言葉にドラゴン達は雄叫びをあげて、それにヴィヴィアンもつられるように興奮しながら吠えた。

宣言が終えてサラは焔龍號に乗り込み、皆に告げる。

 

「総司令!近衛中将サラマンディーネである! 全軍出撃!!」

 

焔龍號が発進して、それに続くかの様にナーガとカナメの蒼龍號と碧龍號が続き、ドラゴン達もその後を追いかけるように出撃した。

 

「さぁ、私達も出ましょう。全艦隊、発進して!」

 

オリヴァルト達も、格納庫から修理及び、改造を加えた最強の旗艦『新・轟天号』及び、機動戦艦エクレール、火龍、ランブリング、そして連邦艦であるザグザケル級巡洋艦、ザムギエル級装甲駆逐艦、アムザニ級戦闘艦、ノスティア級護衛艦、そして量産型フラドーラ、量産型ヴィンセクトの部隊も発信する。

 

「行ってきまーす!」

 

ヴィヴィアンは見送っているラミアと皆んなの無事を祈るマイラに言う、特異点に向かっている中でタスクが妙に笑っている事にアンジュが気付き、通信で問う。

 

「何?気持ち悪い」

 

「ああ、いや嬉しくてさ。君が俺の事を騎士として認めてくれたのが」

 

タスクそう言う中、ヴィヴィアンがある事を問う。

 

「ねえねえ、ドラゴンさんや連邦さん達が勝ったら戦いは終わるんだっけ?」

 

「えっ?ああ…多分そうだね」

 

「そしたら暇になるね、そしたらどうする?私はね、戦いが終わったら皆をご招待するんだ。あたしん家に♪タスクは?」

 

「えっ?俺~? 俺は…海辺の綺麗な街で小さな喫茶店を開くんだ。アンジュと二人で…店の名前は天使の喫茶店アンジュ、人気メニューはウミヘビのスープ、二階が自宅で子供が四人……」

 

「ヴィヴィアン、殺していいわよ」

 

っとアンジュが機嫌を悪くしてヴィヴィアンに言い、それにヴィヴィアンは「ガッテン!」と言って銃を取り出してタスクに向ける。

 

「あ、嫌!………俺はただ、穏やかな日々が来れば良い…ただそう思ってるだけさ」

 

アンジュはタスクの言葉にただ黙って聞いていて、次にヴィヴィアンがアンジュに問う。

 

「じゃあ、アンジュは?」

 

「私は…」

 

そしてカナメが皆に言う。

 

「特異点開放!!」

 

すると皆の目の前にシンギュラーが解放されて、それにとヴィヴィアンが見開く。

 

「凄い…」

 

「おお~!開いた!」

 

開放と共にサラがドラゴン軍に向かって叫ぶ。

 

「全軍!我に続け!!」

 

その言葉と共にとドラゴン達はシンギュラーに突入して行き、向かっている中でアンジュはタスクが言った言葉、喫茶アンジュの事を考える。

 

「(悪くないかもね…喫茶アンジュ)」

 

そう思いながらも皆はシンギュラーに向かって行き、オリヴァルト達も付いていった。

 

 

そしてシンギュラーを抜けてアンジュは見渡す。

 

「ここは…」

 

「ここでクイズで~す! 此処は一体どこでしょうか!クンクン…正解は!あたし達の風、海、空でした~!」

 

そして連邦艦隊もシンギュラーを抜けて、偽りの世界に侵入した実感を感じるのであった。

 

「ようやく戻って来たんだ…」

 

「ええ…」

 

だがこの時、サラは座標が違っている事にすぐに、気付く。

 

「到着予定座標より北東4万8000…?! どうなっているのですか!これは!」

 

「分かりません…!確かに特異点はミスルギ上空に開く筈…!」

 

っとその時サラの機体のレーダーに警告熱反応が表示され、それにサラは前方を見る。

 

すると目の前にミサイルが無数に飛んで来て、それにドラゴン達は光の盾を展開し防御する。

 

「何事!!」

 

煙が晴れた途端に無数のドラゴン達が海に落ちて行き。

ガレオン級が吠えた途端に緑色のビームがガレオン級の頭部を吹き飛ばして撃ち落とす、それにサラは目を見開く。

 

「あれは…!」

 

サラ達の前に現れたもの…それは数百機おり、バイザーではなくモノアイ式の量産型ラグナメイルであった。さらにドラゴンや連邦を多い囲むかの様にヴィルサルディア級戦艦が数隻、そしてアルザード艦隊、さらにデバステーター数十機が待ち構えていたそして五体のラグナメイルだけ、装甲のカラーリングが違っており、アンジュ達は驚く。

 

「何ぞ?……あれ!?」

 

「黒いヴィルキス!?」

 

アンジュ達が言うと、黒いヴィルキス達はビームライフルを突き付け、ドラゴンと連邦艦隊に奇襲を仕掛ける。

 

「これは!?」

 

「待ち伏せです…!」

 

サラが言った言葉にナーガとカナメは驚きを隠せない。

 

「待ち伏せ?!」

 

「では!リザーディアからの情報は…!?」

 

「今は敵の排除が最優先です!!」

 

そう言ってサラ達は龍神器達を駆逐形態に変形させて、ドラゴン達に言う。

 

「全軍!!敵機を殲滅せよ!!」

 

サラが先頭に進み、その後にナーガやカナメもあとに続くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ミスルギの拷問部屋では裸で縛り吊る下げられたリザーディアがマナの光で仲間を虐殺されている光景に涙を流す。そしてその隣にエンブリヲとfarther・Xことケーニヒス皇帝が眺めていた。

 

「どうかね?仲間を虐殺される事で大量のドラグニウムが手に入る。リィザ…嫌、リザーディアか。」

 

「(何故…こちらの動きが。どうして?)」

 

「簡単な事だ。我が力は…未来を見ることができる。お前の行動は常に見られていたのだよ!」

 

「何…だと!?」

 

ケーニヒスはそう言うと、艦隊に連絡する。

 

「ケーニヒスだ…恐縮だが、奴ら内、護衛艦が戦艦を守る。先に護衛艦を誘導しつつ、じわじわと戦艦を毒殺する様に殺せ♪」

 

ケーニヒスは悍しい笑顔で激戦の映像を楽しむのであった。



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チャプター35 黒の破壊天使・後編

戦闘を行っている中、ドラゴン達が次々とアルザード艦隊で落とされて行くのをヴィヴィアンが見て、大声で叫ぶ。

 

「ああ!!やめろーーーーー!!!!」

 

「くっ!」

 

するとアンジュがヴィルキスを動かして、最前線へと向かう。

それにタスクが慌ててしまう。

 

「!アンジュ!!」

 

「サラ子を助けに行くわ!」

 

「待ってくれ!相手はエンブリヲとケーニヒスだ!!」

 

「黙って見るつもり!!?私も行くわ!」

 

アンジュはフルスロットルを全開にし、サラを助けに戦場の中へ入る。

 

「クソ!!ヴィヴィアン!しっかり掴まってて!」

 

「おう!」

 

ヴィヴィアンの掛け声と共に、タスクはヴィンセクトの速度を上げ、アンジュを追う。

 

そして戦闘は膠着状態へと陥っており、ドラゴンや連邦艦隊が次々と撃沈されて行く。

サラの焔龍號は蒼い模様があるヴィルキス“クレオパトラ”と右腕に装備されている伸縮式ブレード“積層鍛造光子剣「天雷」”で応戦していた。

 

『戦力!消耗三割を超えました!!』

 

『早くも戦況が維持出来ません!!』

 

ナーガとカナメが左右の通信モニターから報告し合う。

 

「相手は……(考えてみれば多すぎるます、どうすれば!)」

 

サラが現状によって混乱し、クレオパトラがラツィーエルを振り上げる。

 

「っ!!」

 

サラが油断したその時、アンジュのヴィルキスが颯爽と焔龍號の前に現れ、ラツィーエルで防御する。

 

「!?」

 

クレオパトラに乗っているライダーは思わず反応し、アンジュはクレオパトラを一気に吹き飛ばして、その中にいるライダーはヴィルキスを見る。

 

「ヴィルキス…アンジュなの?」

 

ライダーはヴィルキスに呟く。

 

「大丈夫!サラ子!」

 

「アンジュ!」

 

「今の内に逃げなさい!」

 

「出来ません!エンブリヲからアウラを取り戻すまでは!」

 

『馬鹿!周りを見なさい!!こんな状況でアウラを奪還するのは無理よ!』

 

サラはアンジュの言う通りに周りを見渡すと、戦況が混乱状態だ。横で戦っていたガレオン級ドラゴンがデバステーターと応戦するも、胴体を貫かれ、落ちていく。

 

「アンジュの言う通りだ!今は引いて、戦力を立て直すんだ!勝つために!」

 

その事を言われ、少し頭を冷やして操縦桿を握りしめて皆に言う。

 

「アウラ…全軍!撤退する!! 戦線を維持しつつ特異点に撤退せよ!」

 

それによりドラゴン達は特異点に撤退を開始する。

それに緑のヴィルキス『テオドーラ』がビームライフルで追撃していた。するとアンジュがテオドーラに気付いてアサルトライフルのグレネードランチャーを撃ち、それにテオドーラはビームシールドで防御するも、強烈は爆風と吹き飛ぐ。

 

「ぐっ?!!」

 

そして再び攻撃しようとした時にアサルトライフルの弾が切れた事に気が付く。

 

「くっ…!」

 

『アンジュ、これを!』

 

っとサラがアンジュに崩壊粒子収束砲「晴嵐」(対装甲銃剣「震電」装備型)を投げ渡す。

 

「アンジュ。どうかご武運を…」

 

「良いからさっさと行きなさい!!」

 

アンジュは怒鳴りながらも銃剣型バスターランチャーを放ち、サラの撤退を援護する。アンジュは邪星神をバスターランチャーで倒し、飛翔形態へ変形した直後、後方からクレアオパトラが接近する。

 

「やっぱり…」

 

「?…」

 

アンジュはクレオパトラの方を見ると、クレオパトラがフライトモードになり、そのライダーのバイザーが透通って素顔が現る。

その人物はサリアだった事に…。

 

「どうしてあんたが…」

 

「!? サリア…!?」

 

クレオパトラに乗っているライダーがサリアであったことに、アンジュは驚くのであった。

そしてそれはミスルギ皇国にいるエンブリヲ達も見ていた。エンブリヲはサリアに電話しようと受話器を取る。

ヴィンセクトがアンジュの所へ向かうと、ヴィヴィアンがクレオパトラのライダーがサリアと分かる。

 

「サリア…サリアだ!」

 

「え!?」

 

「でも、何で!?」

 

ヴィヴィアンが混乱する。アンジュが怒鳴る。

 

「何やっているのよ!」

 

「質問してるのはこっちよ、どうしてあんたがドラゴンと共に戦って…、それにヴィヴィアンもどうして…」

 

するとレイジアとテオドーラが近くにやって来る。

 

「本当にアンジュちゃん?」

 

「うわ、マジビックリ」

 

「っ!? エルシャに…クリスも!?」

 

三人が敵側になって居る事にアンジュは驚く、するとサリアの元に通信が入る。

 

「こちらサリア…えっ? 分かりました…エンブリヲ様。アンジュ、貴女を拘束するわ、色々と聞きたいことがあるから…二人共、良いわね?」

 

「「イエス、ナイトリーダー」」

 

そう言って三人はアサルトモードに変形し、それにアンジュは驚いて慌てて逃げる。その時、ヴィルキス目掛けてビームが飛んで来る。

 

「っ!!?」

 

上空の彼方、それは現れた。禍々しく滑らかにして異形の装甲、黄金のフレーム、、純白に満ち、赤のライン、蝶の如く妖精の風貌をした邪星神が腰部に装備されたビームレイピア二刀流を抜刀する。

 

「何なのあれ!?」

 

アンジュは戦闘体制に入った直後、目の前から来ていた邪星神が突然と消えた。

 

「消えた!?」

 

その時、アンジュの背後から邪星神が突然と姿を現す。

 

「アンジュ!」

 

タスクはヴィンセクトを変形させ、プラズマシールドを展開する。ビームレイピアのプラズマ刃がプラズマシールドと激しくぶつかる。するとビームレイピアの刃が徐々にプラズマシールドを貫通しようと迫る。

 

「くっ!」

 

タスクとアンジュ、ヴィヴィアン、絶体絶命なその時、横からメーサー光線が飛んできた。邪星神はそれを回避し、防御体制をする。艦砲射撃して来たのはオリヴァルト達が乗っている新・轟天号とランブリング、火龍、エクレール、そして五隻のザグザケル級巡洋艦がメーサー砲で援護していた。タスク達の通信機からオリヴァルトとクリストバル等が安否を確認して来た。

 

「アンジュ!タスク!ヴィヴィアン!大丈夫か!?今からジャンプする!三人とも、轟天号に入れ!」

 

すると、謎の白い邪星神が今度はサリア達に襲い掛かっていた。ビームライフルの攻撃をビームレイピアでの高速突きで拡散させ、ラツィーエルの刃を受け流して回避すると言う蝶の様に舞、蜂の如く刺すかの様な戦い方であった。

 

「ちょっと!仲間でしょ!?」

 

しかし、白い邪星神に乗っている者は反応なしであり、攻撃を続ける。その時、背後から赤いダイロギアンが白い邪星神を抑え付け、命令する。

 

「“フェリシア・斑鳩・ミスルギ”、そこまでだ。」

 

白い邪星神は攻撃を止め、空中で停止する。それよりも、あの赤いダイロギアンのパイロットがモルドゥレイスであり、彼が放った言葉であった。アンジュは戸惑い隠せず、モルドゥレイスに質問する。

 

「どう言うことなの!?それに乗っているのはフェリスなの!?」

 

質問の返答に応じたのか、白い邪星神『アルテギア』のコックピットがハッチが展開する。コックピットは四肢を覆う埋め込み式であり、露出度が高いライダースーツ、さらに背中に六本のチューブが取り付けられており、そこから強化促進剤を投与することになっている。そして彼女の頭を覆うかの様にヘルメット型のデバイスを付けられ、さらに薬を使っての二重洗脳されていた。

 

その姿にアンジュ達は驚く。

 

「やはり…ケーニヒス、お前は自身の血筋の持つ者でさえも道具にするのか?それともアーサーによって“完膚なき”までに追い詰められたことでの復讐か!?」

 

オリヴァルトは過去の事を思い出す。かつてアルザードは第三の地球で軍事拡大を狙っていた。平民や他国の民、さらには亜人種ですら人間扱い、呼ばず、『道具』『醜い獣』呼ばわりであった。さらに彼らは宗教を弾圧し、ケーニヒス…即ち皇帝は神の下に在らず、皇帝こそが神の上に立つ者と言う意味おかしな事を言う。あの当時、先祖代々で連鎖し続けたアルザードにも終焉が訪れた。何も関係ない、何も罪もない人達が穏やかに過ごしていた街を焼き、奴隷狩りをしていた事……それに大激怒したアーサーとA組メンバー、そして彼に忠を抱く仲間達によって、アルザード皇室、一部の貴族、騎士や兵は別次元へ無限追放され、アルザード帝国は滅んだかと思いきや、彼らはゴキブリの様に生き延び、今現在…その復讐でアーサーの仲間であるアンジュ達を殺そうとしていた。

 

そしてフェリスが乗ったアルテギアがモルドゥレイスの命により、攻撃を再開する。新・轟天号を攻撃しようとしたその時、天空の彼方…太陽が上空や海面から海中、深海の闇を照らす。

 

「何だ!?この光は!?」

 

「《っ!!?》」

 

一同がその眩い光に目が眩む。ケーニヒスとエンブリヲはその光に驚く中、それは太陽から現れた。神々しく光り輝く体、鮮やかな白と赤、黄金の装飾が彩られ、施された巫女服、背部から陰陽太極図の光輪を発する光の巨人であった。

 

「何だあの巨人は!?」

 

タスクが驚く中、オリヴァルトとクリストバル達カレトヴルッフ家全員が跪く。そしてオリヴァルトが光の巨人を見てその名を言う。

 

「“曉和神アルス”…!!」

 

オリヴァルト達が巨人に向かって祈り始める。曉和神アルスは光の剣を取り出し、アルザード艦隊に刃を向ける。アルザード艦隊からビームやミサイル類の無数の攻撃がアルスに飛んで来る。アルスは大きく回転切りをし、その直後、跳ね返したビームとミサイルがアルザード艦隊に直撃した。さらに直撃した艦隊から火が吹き、全艦隊が海へと沈む。ドラゴン、連邦ですら勝てなかったアルザード艦隊が一瞬で沈めた事にタスクとアンジュとヴィヴィアンは驚く。

 

「す.凄い…!!」

 

アンジュ達が見惚れる中、ヴィルキスが青色に変色する。何と、曉和神アルスがヴィルキスに何かを指示していた。そしてヴィルキスが光り始め、タスク達を別の彼方へと跳躍した。

 

 

 

 

 

 

そして転移を終えて何処かに到着するタスク達、タスク達は目の前にある島を見る。

そこはアンジュ達にとって見覚えのある島だった。

 

「あそこは…アルゼナル?」

 

アンジュが完全に基地機能を失ったアルゼナルを見て呟き、ただアルゼナルを見て呆然とする。

 

そして夜、アルゼナルの付近の海に着水した轟天号と共に残った連邦艦隊、艦から降りたオリヴァルト達はを連邦軍兵士達にアルゼナル内の少女たちの遺体を回収するよう命令する。クリストバルとセレスティアは回収し、燃え盛る遺体に祈りをしている。その時、セレスティアが呟く。

 

「どうしてここまでこんな酷い事ができるのでしょう…本当の意味で変わらない普通の人間の筈なのに。」

 

「エンブリヲはそうやっていらない物を嘘で洗脳させ、幾度も続けてきた。遺体に触れて分かったのだが、ここへ襲撃してきた兵士達の話によると、ジュリオの狙いはアンジュとヴィルキス、そしてメイルライダーの確保であったらしい。エンブリヲの命令であったにも関わらず、勝手な思想で必要ない彼女達をそのまま銃殺していったとのこと。」

 

「そんな…!!」

 

「この世界の民は異常者だ。こんなのは人間のやる事じゃない…。」

 

クリストバルはそう思いながら、回収された遺体に向けて、ご冥福をお祈りしていた。

 

 

一方、アルゼナル裏口の方では、ヴィヴィアンが魚を美味しくのん気に食べている中、アンジュは暗い表情に包まれていた。

 

「帰って来たんだ…アルゼナルに」

 

アンジュはアルゼナルを見上げて言い、悲しみの声で言う。

 

「皆…何処に行ったの? まさか…」

 

「脱出して、無事で居るはずさ。ジルたちがそう簡単にやられる筈がない」

 

タスクの言葉にアンジュは頷く。そしてアンジュは先の戦いで現れたフェリスの事、光の巨人の事を思い出す。

 

「(フェリス……そしてあの光の巨人…一体、この世界で何が起こっているの?)」

 

アンジュがそう考えている中、ヴィヴィアンは何かに気付き、それを見る。

すると海の方に緑色の光の玉が浮いて、そこから三人の人影が現れる。

 

「え!?何あれ!?」

 

アンジュはそれに怖がりタスクに近寄り、タスクはホルスターからハンドガンを取り出す。

海から上がって来る謎の三人にタスクは冷や汗を流しながらつぶやく。

 

「お化け…幽霊? 海坊主?!」

 

っとアンジュは恐怖のあまりに悲鳴をあげながらタスクに抱き付き。

っと一人の者がアンジュの姿を見て言う。

 

「あ…あ…アンジュリーゼ…様?」

 

「ち!違う!!……私は!!……え?」

 

アンジュは自分の本名を知っている事に反応する。するとその人物はマスクを外すとモモカが現れる。

 

「モモカ…?」

 

「アンジュリーゼ様ー!!!」

 

モモカはアンジュに駆け寄って抱き付き、アンジュもモモカが現れた事に嬉しながら抱き付く。そしてヴィヴィアンはその他の者達を見た時にマスクを外したヒルダとロザリーを見て驚く。

 

「うわ!みんなだ!!」

 

「ヒルダ!ロザリー!」

 

ロザリーはヴィヴィアンを見てビビって引いて、ヒルダは笑みを浮かべてアンジュに駆け寄る。

 

「本当に…アンジュなの?」

 

「勿論よ、ヒルダ」

 

それにヒルダはまた笑みを浮かべる。

っとそこに強化服を身にまとった隊員たちがやって来て、ライフルを構え。それにヒルダ達は慌てる。

 

「な!なんだこいつ等!?」

 

「待って!皆んな!待てヒルダ! 彼らは味方よ!」

 

「はっ?」

 

っと海中から現れたのはセイザータウラス、セイザーゴルビオンになったライドとエクエス、そしてトウジ達であった。

 

「お久しぶりです。オリヴァルトさん。」

 

「お前達も、よく無事だった。」

 

「ライド、エクエス、コイツ等知ってるのか?」

 

「知ってるも何も…彼の名はオリヴァルト・カレトヴルッフ。俺達の所属している地球連邦海軍情報局特務参謀総長。俺達の義兄弟であるアーサーの肉親だ。」

 

「君達がノーマのヒルダとロザリーだな。情報通りだ。」

 

オリヴァルトが丁寧に挨拶すると、ライドがタスクの方を見る。

 

「タスク…アーサーの事は、西十郎さんから聞いた。」

 

するとライドが涙目でタスクに抱き付く。

 

「ごめん…お前等がそんな事になっているなんて……俺、グランセイザー失格だ。」

 

泣くライドにエクエスも涙目でタスクとライド、さらにトウジ達も泣き崩れる特にトウジとミクモの姉弟にとって、アーサーは炎のトライブのリーダーでもあった。そんな二人が中、一人の悔やむ声と泣き声がした。みんなの視線がその方向へ向く。

 

「《ランス!!??》」

 

何と、コールブランド邸で大人しく待っている筈のランスがここに。彼は侵攻するする際に、轟天号の倉庫室に隠れ潜んでいたのだ。その事にタスク、ライド、エクエスが怒鳴るのであった。

 



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チャプター36 決別の海・前編 

無事アルゼナルの皆と合流したアンジュ達、そして轟天号と連邦艦隊はアルゼナルの旗艦であるアウローラと共に海底へと進んでいた。

アウローラのブリッジに居るオリビエが提示報告をする。

 

「第一警戒ライン通過」

 

「まさか生きてたなんて…」

 

ヒカルが別の部屋で話し合っているアンジュ達の方を見ながら言い、それにはオリビエも同意しかねる。

 

「ヴィヴィアンもてっきりロストしたかと思ってました」

 

「今まで何処に行ってたんだ…?」

 

「“シンギュラーの向こう”…だって」

 

っとパメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。

 

「「うっそ~!?」」

 

「本当よ。それにしても…」

 

パメラが共に付いて来ている轟天号とエクレール、火龍、ランブリング、ザグザケル級巡洋艦を見て、あり得なさそうな表情をしながら呟く。

 

「人間が人間と戦う地球連邦、連れて来たのは前の戦闘でアンジュを助けたアルトリウスって言う男の人の親族と仲間達だって言ってたけど…」

 

「今だに信じられません。人間が私達を助けるだなんて…。」

 

そうオリビエはつぶやく。

そして別の部屋でアンジュ達がジル達と自分達が行っていた並行世界の事を話していた。

 

「並行宇宙ともう一つの地球…、ドラゴン、いや…遺伝子改造した本来あるべきの人間の世界…そしてこの世界で暗躍するアルザード帝国とアルトリスの一族を絶滅し、彼らの背後で支援する巨大異次元集団ゼノム…か。」

 

そうジルは呟きながら煙草を取り出す。

 

「彼女達は話し合いが出来るわ。この世界の腐った人間達とは違って。手を組むべきじゃないかしら。ドラゴンと地球連邦と…。」

 

「何?」

 

「ドラゴン達と連邦政府の目的はアウラの奪還、アウラと取り戻せば全てのエネルギーが立たれ、人間のマナも世界も停止するとう話。そして世界の均衡を改善するって。」

 

それにヒルダ達は驚く。

 

「シンギュラーも開けなくなるし、パラメイルも必要なくなる。何よりマナのエネルギーを得るためにノーマがドラゴンを狩る、そんな人間同士食い合う馬鹿げた戦いを終わらせる事が出来るわ。だけど、サラ子達や地球連邦軍の進攻作戦は失敗した、被害は尋常じゃない…互いの目的の為も共同作戦を持つべきだと私は思う。」

 

「敵の敵は味方か、成程…」

 

っとジャスミンがアンジュ達の会話を聞いて納得し、それにロザリーが思わず抗議する。

 

「じょ!冗談だろ!?人間は兎も角!あいつ等は今まで沢山の仲間を殺してきた化け物なんだぞ!! その地球連邦って言う軍隊ならまだしも、ドラゴンと協力~!?在りあねっつーの!!」

 

そんな中でヴィヴィアンが思わず頬を膨らませてロザリーを睨む。

 

「話して見れば分かるわ。」

 

「無駄だ、奴らは信じるに値しない…。」

 

ジルはそう言いながら、タバコを灰皿に捨てる。

 

「アウラなんだか知らないがドラゴン一匹助けただけでリベルタスが終わると思っているのか? 神気取りの支配者エンブリヲと神の頂点と名乗るケーニヒス、さらにはそのゼノムの完全に抹殺し、この世界を壊す…それ以外にノーマを解放するすべはない。忘れたわけあるまい、アンジュ。祖国、兄妹、民衆に裏切られてきた過去、人間共への怒りを。」

 

「っ!!」

 

「差別と偏見なこの世界を打ち壊す。それがお前の意思ではなかったのか?」

 

「それは!」

 

「腑抜けた者だな…ドラゴンに取り込まれ、洗脳でもされたか?それとも、女になったか?」

 

「「っ!?」」

 

アンジュとタスクはさらに驚くも、ジルは言う。

 

「ピンクの花園で男と乳繰り合いたいなら、全て終わらせてからにしろ!」

 

「くっ!」

 

「しかしジル… わたし等の戦力が心持たないのも事実だ。」

 

「サリア達が寝返っちまったからねぇ。」

 

「「「!?」」」

 

「アンジュ、ドラゴン達とのコンタクトはとれるのかい?」

 

「ヴィルキスなら、シンギュラーを開かなくてもあっちまで飛べるわ。」

 

「そりゃ凄い。ドラゴン達と地球連邦、並びにクラウドブルースの共闘。考えてみる価値はあるんじゃないのかい」

 

ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。

しかし、ジルは黙ったまま返答せず、それにオリヴァルトは厳しい表情で見ていた。

 

「ジル…」

 

ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。

 

「………よかろう」

 

そう言ってジルは扉の方に向かう。

 

「情報の精査の後、こん後の作戦を通達する。以上だ」

 

そう言ってジルは出て行く。

 

「なんだか、冷たい感じだな」

 

「アンジュたちが戻って来た事に嬉しがっているのさ。そこはあたしが保障するよ」

 

ジャスミンがそういうが、オリヴァルトはどうにもジルの事が気になる。オリヴァルトはテレパシーでクリストバルとギル、ヨハネ、キーラ、メナに伝える。

 

「(クリストバル、キーラ…ジルの狙いと目的を探れ。ギル、ヨハネ、メナは向こうにいる格納庫にあるあの機体…邪星神マスラオを渡してやれ。)」

 

「「「「「(は!)」」」」」

 

ギルとヨハネ、メナは首をコクリ縦に動かし、行動を開始する。

 

「(ジル…まさかと思うが。)」

 

オリヴァルトはジルに企みに警戒するのであった。

 

 

 

 

アウローラの食堂ーーー

 

「はむ!もぐもぐ…美味~い! いや~!やっぱりリュミエールの食事は美味い!まずいノーマ飯を思い出す〜〜!」

 

「ヴィヴィちゃん相変わらず食べるね〜…」

 

ヴィヴィアンの様子を見てセシルは苦笑いしながら見ていて、その様子にココ達も呆れかえるしかなかった。

するとマギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られて笑ってしまうヴィヴィアン。

 

「ぷははははっ!く!くすぐったい!」

 

「本当に…キャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」

 

「そう…らしい!」

 

「大した科学力だね~」

 

マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。

 

「あ!そうだ! 向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」

 

「バレるから切ったよ」

 

「うわっ!!ひでぇ~!!」

 

ヴィヴィアンの様子にオリヴァルト達は呆れかえってしまい、聞いているクリストバルとキーラもそれに呆れてしまう。

それに……

 

「全く、あの時の皇女様がここまで強くなるとはね〜」

 

そう、元隊長のゾーラだ。

アルゼナルから脱出した後、マギーに治療続けて遂に意識が戻ったのだ。日常生活に支障はなく、復帰できるとの事であった。

 

「それに復帰する理由はあの時助けてくれたアルトリスの坊やに助けられた借りを返す為だからな。新兵二人や皇女さんを助けてくれたおかげで、また“しっとりと遊べる”からなぁ〜♡」

 

ゾーラの性格は相変わらずであった。するとタスクがアウローラの食堂内を見渡す。

 

「アウローラ…まだ動いてたんだ。」

 

「知ってるの?」

 

「古の民が造ったリベルタスの旗艦。俺達はこの船でエンブリヲと戦ってきたんだ。」

 

「ベッドは少し狭いですが、とっても快適です。」

 

「そう、良かった。」

 

「な〜にも良くねぇよ。戦場からロストして、帰ってきたら変な奴ら連れてくるわ。しかも男のノーマって何だよ!全く!」

 

「ハハハ…厳密に言うとノーマじゃ。」

 

「どんだけ自分勝手なんだよ、アンタは!」

 

「ごめんヒルダ♪」

 

「…ふんっ」

 

「何イライラしてんだよ?」

 

「別に!アンタがいなくなってからこっちは大変だったよ!」

 

「そうそう…アルゼナルは壊滅するわ、仲間を大勢殺されるわ…トリト村がある島に避難したと思ったらクリス達が敵になるわ。」

 

「どうして?どうしてサリア達がエンブリヲに?」

 

「こっちが知りてぇよ!避難した先にケーニヒスって言う爺ィが現れたら、サリアとエルシャとクリスが急にボコボコに撃ってきやがったんだ!」

 

「恐らく、ケーニヒスの能力だ。」

 

「《え!?》」

 

「奴は透き通った心や不安を抱く者の心に闇で囁き、勧誘させる事ができる。そう言った心は騙し易いと分かってだ。」

 

「汚ねぇ奴だ!」

 

「待って…と言うことはこの船を守ってるのはあなた達だけなの?」

 

「そうだけど?」

 

「よく沈まなかったね、この船。ケーニヒスの大艦隊相手だとまさかと思って。」

 

「喧嘩売ってんのかテメェは!コイツ等が頑張ってくれたからなぁ。」

 

ロザリーが親指で三人の若い少女たちの方を指差す。

 

ノンナ、マリカ、メアリー。戦力不足でライダーに格上げされた新米たちさ」

 

「私達の後輩です!」

 

「先輩の意地が燃えます!」

 

っとココとミランダが思わず立ち上がってアンジュ達に言い、それにはアンジュ達は苦笑いをしていた。

 

「まあともあれ、このアタシがみっちり扱いたお蔭で何とか一著前に…え?」

 

するとメアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。

 

「あの!お会いできて光栄です!」

 

「えっ?アタシ???」

 

ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。

 

「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」

 

「ずっと憧れていました!」

 

「大ファンです!」

 

「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」

 

ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。

 

「ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」

 

「ハハハ!流石は尊敬する人物を分かってるな!」

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「いや、アレクトラ…じゃなかった。ジルの様子が気になってね。」

 

「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ」

 

「「え?」」

 

「皆んな知ってるよ。司令がぶち撒けたから。自分の正体も…リベルタスの大義ってやつも。」

 

ーーー《回想》ーーー

 

アルゼナルが崩壊し、生き残ったノーマ達はアウローラ に避難。そしてジルはアンジュと同じ、元皇女であった事を話し、目的、そしてノーマ解放作戦であるリベルタスの大義を言っていた。

 

「諸君!人間の残虐さ、冷酷さは嫌というほど知ったはずだ!私は、必ずや元凶であるエンブリヲを倒し、ノーマをこの呪われた運命から解放する!その日まで、諸君の生命、私が預かる!」

 

ーーー《回想終了》ーーー

 

「アレクトラがそんな事を?」

 

「あぁ、最初に会ったのは10年前、お前がリベルタスへコッソリ乗り込んで行く前だったからな。生きててビックリしたよ。それにアレクトラの言った言葉…。」

 

「意気込みは分かるけど、ガチ過ぎてちょっと引くわ。」

 

「あなたにあの人の何がわかるのよ〜!」

 

「か、監察官!?」

 

「エマさんでええよ!エマさんで!」

 

「うっ!酒臭っ!」

 

「この船に乗られてからずぅっとこうなんです。」

 

「しょうがないでしょ〜!殺されかけたのよ〜!私!同じ人間なのに!なのに…なのにね、司令ってば、あたしをこの船に乗せてくれたのよ、今までノーマにひどい事してきた私を……あの人だけよ〜!この世界で信じられるのはノーマだよね〜?ペロリーナ〜!」

 

「はいはい、それくらいにしときな。」

 

「でも、監察官の言う通りだ。」

 

「え?」

 

「私等にとっちゃ、信じられるのは司令だけだからな。この世界で…。」

 

ロザリーの言葉に皆は考え込む。するとオリヴァルトのインカムに通信が入る。

 

「もしもし…」

 

「ーーー俺だ、お義父さん。」

 

「っ…」

 

オリヴァルトはタスク達に聞こえないように、小声で話しかける。その内容はこちらの世界と時間跳躍によって棄てられし邪星神マスラオが来たことであった。

 

「そうか…“邪星神マスラオ”が。」

 

「そうなんだ。それに今のマスラオではケーニヒスを直接倒すことは出来ない。何か考えがあるならーーー」

 

「……ある。」

 

「あるの?」

 

「マスラオ専用として開発した近接武器と外装品なのだが……。」

 

「だが?」

 

「その近接武器は…大昔、兄上がゼノムから奪った物なのだ。その武器はとてつもなく恐ろしい物なのだ。」

 

「どんな?」

 

「兄上が言うには…“生命の健全なる純粋な御霊の精神である【魂】と穢れた御霊の肉体である【魄】を喰らい、力を倍増させてしまう妖刀”だと言う事。我々エクシリアの王族や戦士達はその妖刀を【破魔ノ光剣“ムラクモ”】と名付けた。多くの戦士達はその妖刀を扱えぬ事は出来なかった…何故ならーーー。」

 

オリヴァルトが語る【破魔ノ光剣ムラクモ】にまつわる恐ろしい事実にアーサーは深く考え込む。

 

「それだったら…使う。」

 

「良いのか!?ヤバイ妖刀なのだぞ!?それを使ったらお前!」

 

「何言ってるの?元より俺はそのつもり。それに俺のこの身体は既にボスキートに侵食・汚染されつつある。ドラグニウム・エタニティがあるから…耐えれる。」

 

「自信満々に勇気と覚悟の心理が知りたいぞ…兎に角、妖刀の力に呑まれ掛けたら、絶対直ぐに報告しろ…あの剣は“呪われた怪物”だ。」

 

オリヴァルトはそう言うと、格納庫にある破魔ノ光剣ムラクモの事を気にし始める。

 

 

 

轟天号の格納庫、使われていないハンガーに装着されている大太刀、鞘から柄、柄頭全てにエクリシア文字の呪符や包帯で撒かれており、さらにそのハンガーやデッキの立ち入りを禁止する程の電磁バリアや呪符での結界の厳重にして強固に守られていた。

 

 

 

その頃、アウローラの司令室にて、アレクトラがタバコを吸っていた。だが彼の脳内ではあの忌まわしきエンブリヲの事を常に憎悪していた。

 

《そう…可笑しくなっても良いんだよ。アレクトラ…。》

 

っと吸っていた煙草を握りしめて潰し、恐ろしい表情をする。

 

「エンブリヲ……!」

 

そしてその後ジルは思いついた作戦を考え付く。

しかしそれは、後に重大な結果へと招いてしまう事を彼女はまだ知らなかった。

 

 

まさにその頃、偽りの地球上空に謎の特異点が開く。現れたのはケーニヒスよりも禍々しい闇の大聖堂であった。そして大聖堂内部の王座の間では巨大なモニターに映るエンブリヲとケーニヒスが映っていた。二人は映像を見ている女性に膝まづく。

 

「「ザリマン殿下…」」

 

その女性の名前を言うエンブリヲとケーニヒス。二人が見る映像に映し出される女性【ザリマン】……王座の間…と言うより、女皇の間にて、至高の玉座にて座り、青白い触手と月光のように輝き、高貴なドレスで身を包んだ“絶世の美女”であった。髪の色が純白に満ち、側頭部に生えた青白く輝く半透明な翼、そして猫のような縦長の瞳孔と血のように真っ赤な瞳、神託の杖を常に携え、映像の筈なのにザリマンからでる威圧感がとてつもないものでもあった。

 

『…収穫祭の期限までもう暫く掛かるの?』

 

「は…はい!ですが御安心を!準備速度は何事もなく、奴等に計画は漏れず、全てが順調です!」

 

「……ホントウニ?」

 

その言葉と共に、とてつもない覇気が放たれる。

 

「「!!」」

 

二人はザリマンの覇気に怯え、無言のまま動かなくなる。すると、映像からザリマンがこの世とは思えない形相で首を伸ばして出てきて、ビクビク怯えるケーニヒスの頭上を見下ろし、見下す。

 

「……ソウ、ナラヨカッタ。」

 

ザリマンの言葉と共に、ケーニヒスとエンブリヲは顔を上げる。ザリマンは映像として戻っており、穏やかな表情をしていた。

 

「トコロデ……例ノ“試作品”ワ完成シタノ?」

 

「は!はい!後は彼らの頭脳に駆逐システムをプログラミング、並びにマインドコントロールが済めば、いつでも戦場に出せます!」

 

「ソレワ、ソレワ…タノシミダネェ♪」

 

「「……」」

 

「ソレトモウヒトツ…【アークエンジェル】達ガハヤク遊ビタガッテイルノ。ケーニヒス、エンブリヲ、アノ子達ノ面倒ヲオ願イネ。」

 

「「は…はい!仰せの通りに。」」

 

ビクビクするケーニヒスとエンブリヲ、ザリマンの覇気に怯えながらも、通信が切られた。

 

「予定通り…アンジュを引っ捕えるぞ、エンブリヲ。」

 

「言われなくても、手筈はザリマン殿下の言った通りだ…。」

 

互いの意見が一致する中、エンブリヲは心の奥に密かに隠していたある作戦を実行しようとするのであった。



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チャプター36 決別の海・後編 

 

翌日、ブリーフィングルームにてアンジュとタスク、ジル、ジャスミン、マギー、メイが集まった。

 

「よく眠れたか?」

 

「えぇ…」

 

「それは結構。では、お前に任務を与える。」

 

「「……」」

 

「ドラゴンと接触、交渉し、共同戦線の構築を要請せよ。」

 

「「!!」」

 

その言葉に二人は驚く。

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言うんだ…ドラゴン共と。」

 

「本気なの?」

 

「リベルタスに終止符を打つのはドラゴンとの共闘、それが最も合理的で効率的な判断だと確信した。」

 

「アンジュ!」

 

タスクはアンジュを見て更なる希望が出た事に歓喜する。

 

「では、作戦の概要を説明する。」

 

ジルはそう言うと、デスク表面に地形図が表示される。

 

「これは?」

 

「以前、サリア達との戦闘でラグナメイルに打ち込んだマーカーだ。」

 

「私が作ったんだよ!」

 

メイがそう言うと、ジルからの作戦が伝えられる。

 

ドラゴン達を【緑】連邦を【紫】、アウローラ を【青】、ラグナメイルやアルザード帝国を【ピンク】と【赤】として表示する。

先ず、アンジュ達と合同を共にするドラゴンと連邦艦隊が先行し、ラグナメイルとアルザード帝国艦隊と交戦、帝国艦隊が激減した後、アウローラが浮上、艦隊の背後から奇襲を仕掛け、敵勢力の完全排除。いわゆる陽動作戦でもあった。排除した後、残存勢力を持ってアケノミハシラへ突撃、アウラの奪還という事になる。

 

「でもこれじゃ、ドラゴンや連邦に多大な負担を強いる事になるぞ。」

 

「陽動と言うのはそう言う役割だ。」

 

「サリア達とフェリスはどうするの?」

 

「……どうすると?」

 

「え?助けないの!?」

 

「フンッ…持ち主を裏切る“道具”や敵側に寝返った人間は要らん。」

 

「道具って!?だってサリアよ!」

 

「全てはリベルタスの為の“道具”に過ぎない。ドラゴン共も連邦もお前も私もね…。」

 

ジルからの【道具】という言葉に、アンジュはこの作戦の違和感を察知する。

 

「道具っ!ドラゴンも!?……ねぇ、何を企んでるの!?本当はドラゴンや連邦軍に何をするつもり!?」

 

「……」

 

「答えないと命令は聞かないわ!」

 

「フン…ドラゴン共と強撃?アッハハハハハ!アウローラの浮上ポイントは此処だ!」

 

デスクに表示されたアウローラのマーカーの位置が変わる。

 

「ドラゴンと連邦軍がラグナメイルとアルザード帝国と交戦している間に、アンジュ…お前はパラメイル隊と共にアケノミハシラへ突入、エンブリヲを抹殺しろ!」

 

「はぁ!!?」

 

「ドラゴンと連邦艦隊は捨て駒か!」

 

「切り札であるヴィルキスを危険に晒す様な事は出来んからな。」

 

「冗談じゃないわ!こんな最低な作戦、協力できるわけないでしょ!」

 

「ならば、協力する気にさせてやる。」

 

「モモカ!」

 

「ランス!」

 

「減圧室のハッチを開けば、侍女と小僧は一瞬で水圧に押し潰される。」

 

「ジル!あんたの仕業か!?」

 

「聞いてないよこんな事!」

 

「アンジュは命令違反の常習犯だ。予防策を取っておいた。」

 

「アレクトラ…!」

 

「救いたければ、作戦を全て受け入れ、行動しろ!」

 

「自分が何をしているのか分かってるの!?」

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。あの侍女もお前を動かす道具、お前はヴィルキスを動かす道具、そしてヴィルキスはエンブリヲを抹殺する究極の武器。」

 

「ふざけるな!モモカを解放しなさい!今すぐ!」

 

「ぐっ!!」

 

「上官への反抗罪だ!」

 

「やめろ!アレクトラ!」

 

「ゔっ!!」

 

「さて、お前の答えを聞こうか?」

 

「思ってた通りだ…。」

 

「さぁ、答えは?」

 

「くっクタばれ…プッ!」

 

「痛い目に遭わないといけないようだな。」

 

「っ!?」

 

「ガスか!?」

 

「アンジュ!」

 

「おぉ!これは!オリオリおじちゃんが言ってたプランB!パクッとな!」

 

「話はインカムで聞かせて貰った!思ってた通りだ!」

 

「あの男…何か盛り上がったな、アンジュ…ライド…。」

 

「すまん、ヒルダ…訳はちゃんと話す。」

 

「タスク…貴様!」

 

「出来れば、こんな事したくなかったよ。」

 

「ヴィルキスの騎士が…リベルタスの邪魔をするのか!」

 

「俺はヴィルキスの騎士じゃない。アンジュの騎士だ!」

 

「色気付いたか、ガキがっ!」

 

「モモカ!」

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「ごめんね、君達。時期に目が覚めるから。」

 

「アウローラ、浮上開始。」

 

「ソナーに反応あり!」

 

「多分あの船だわ…」

 

「了解、急行する。」

 

「海面に出たら、直ぐにパラメイルで脱出するわ!準備を!」

 

「あぁ!」

 

「了解!」

 

「分かった!」

 

「OK!」

 

「姉ちゃん!ぐあっ!」

 

「トウジ!ミクモ!」

 

「また敵前逃亡か…!」

 

「ジル!」

 

「あいつ、自分の足にナイフを!」

 

「何と言う執念…!」

 

「逃がさんぞ…アンジュ!リベルタスを成功させるまではな!!」

 

「リベルタスって私がいないと出来ないんでしょ!なのに、私の意思は無視するの!?」

 

「道具に意思など要らん!」

 

「私の意思を無視して、戦いを強要するって…人間達がノーマにさせている事と一緒じゃない!」

 

「命令に従え!司令官は私だ!」

 

「人間としては屑よ!」

 

「退け!アンジュ!コイツをぶっ飛ばす!!」

 

「待って、ライド!」

 

「!?」

 

「ここは私に任せて。」

 

「良いんだな…」

 

「……勝負しましょう。サラ子はやアーサーは人質なんて卑怯な真似しなかったわ!」

 

アンジュはそう言い、懐からナイフを取り出し、構える。

 

「貴女が勝ったら聞いてあげる。」

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「タスク、モモカと下がって。皆んなも、邪魔しないで。」

 

「分かった…。」

 

「気をつけて、アンジュ。」

 

「御武運を、アンジュリーゼ様!」

 

タスク達は下がると同時に、負傷したトウジとミクモも救出するエクエス達。アンジュとジルは互いを睨み合い、互いにナイフの刃を向ける。

 

「この期に及んで、まだ我儘とはな!」

 

「傲慢なのはあなたの方でしょ!」

 

「エンブリヲがいる限り、リベルタスは終わらん!」

 

「囚われて操られているフェリスのお腹には何も罪のないアーサーの子供が宿っているのに!その為ならどんな犠牲も許されるって言いたいの!?」

 

「その通りだ!」

 

「そんなの!そんな戦い!何の意味があるの!?」

 

「お前なら分かるはずだ!皇女アンジュリーゼ!」

 

「世界に全てを奪われ!地の底叩き落とされたお前なら!私の怒りが!!そして!皇女と名乗る怪物坊っちゃんの忌子を孕んだ偽りの姫も倒す!!アイツのせいで、10年前のリベルタスは失敗したんだ!」

 

「え!?」

 

「10年前、あの坊や…アルトリウスがやってきて、彼の力を見た!凄かった!エンブリヲをやケーニヒスを絶望の淵まで追い詰めていた!だが!先走ったある“身勝手な仲間”と幼少期の偽りの姫とあの娘の親を身を挺して庇い、古の民や仲間は死んだ!だから、あの娘も殺さなければ、アルトリウスの思いや無念も晴らせない!その為、敵であるあの女を!エンブリヲを!倒せる!」

 

「ぐっ!!フェリスは…敵じゃない!!」

 

「お前は私だ!お前がエンブリヲと偽りの姫を殺し!リベルタスを成功させるのだ!全てを取り戻す為に!」

 

「私は…私は!」

 

「誰かを自分に託すなんて、空っぽなのね、あなた!」

 

「何が正しいのかって誰にも分からない!けど、あなたのやり方は大嫌いよ!こんな事、絶対にアーサーは喜びもしないし、認めないわ!アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ!!」

 

「黙れぇぇええっ!!」

 

「何故!?…何故分からんのだ!!?」

 

「あなたのやり方じゃ…フェリスと一緒に“喫茶アンジュ”は作れないし、働けないからよ!」

 

「何…!?」

 

「もうやめな…ジル。」

 

「アンタの負けだよ。最近の若いもん達はアンタよりも意思が強すぎだ。」

 

「ジャスミン元司令。」

 

「元司令か…何だ?」

 

「ジルの処遇は?」

 

「…取り敢えず、医務室へ運び、拘束してくれ。」

 

「了解した。」

 

《オリヴァルト中将!》

 

「もう中将と言うのはよせ。これからは”新生エクシリア公国連邦の大公”として君臨する。此奴を医務室に、そして拘束してくれ。」

 

《了解!》

 

「どうするんだい?これから…」

 

「私がやるわ。」

 

「え?」

 

「あの人のやり方は間違っていたけど、やっぱりノーマの解放は必要だもの!私がやるわ…リベルタスを。」

 

「っ!」

 

「私を信じてくれる人と…私が信じる人達と。」

 

「わぁ!綺麗な空!」

 

「さぁ、タスク!私を撃って!サラ子達の所へ行かなくちゃ!」

 

「え!?でも!」

 

「ピンチにならないと、ヴィルキスは跳べないんだから!ほら!早く!」

 

「って言われても!」

 

「じゃあ私やる〜!」

 

「《っ!?》」

 

「今のは!?」

 

「ここにいたのね…アンジュ。」

 

「サリア…っ!?」

 

サリアと同時に、天空の彼方からそれは現れた。

 

巨大にして神々しい、六基のスラスターウィングから放出する蝶の如く光の羽、両肩部分から左右に伸びたアームに接続されている巨大なニードル状の武装、外見を覆う羽衣の様な重装甲をしたアルテギアの強化体ーーー【アルテギア・ゼノムス】であった。アルテギア・ゼノムスに騎乗しているのは操られているフェリスであった。

 

さらにアルテギア・ゼノムスの真上…そして海面が突如暗くなる。それは神聖にして巨大、幾つもの甲板デッキ、無数の主砲タレットと対空兵器

 

闇の大聖堂から戦場を観賞するケーニヒス。だがケーニヒスの身体が変わっていた。それは…彼の身体に装着されていた呼吸器がなく、完全な健康体、白く透き通った髪、老化が消え、青年へと若返っていく。

 

『もうすぐだ…もうすぐ俺の忌まわしきあの悪夢……“10年前のあの日”を抹消する願望が完遂する。我の野望の為、あの忌まわしき存在、待っていろ……【アルトリウス・コールブランド】お前の運命は…既に決まっている。ジュリオとエンブリヲ直属の親衛隊には、立派に働いて貰うぞ。』

 

青年へと若返ったケーニヒスは喜びを上げると、彼の身体に異変が起き始める。若返ったのは良いが、彼の左眼は頭蓋骨ごと陥没、皮膚は火傷で爛れ、右目でアウローラ や轟天号を見下ろす。さらに彼の右肩と左横腹、左の額から側頭部にかけて、巨大な目が肉の中から現れる。闇の大聖堂内で悍しくたくさんの何かが蠢き、絶望の産ぶ声を上げる…それを見つめる五人の影。

 

「やれやれ、ケーニヒスの奴め。ザリマン陛下や私達を信用していないのか?」

 

「ケーニヒスは“怖い”のだ。10年前…彼はあの時、あの場にいたのだから。」

 

「何故分かるのだ?」

 

「俺の能力を甘く見るな……奴の大罪は変わらない。12年前…10年前…彼の苦痛は治らない。奴の…彼の血統因子に眠る“あの化物”が“10年前”の様の世界のように…ならなければ良いんだが。それに油断は禁物であり、無駄口を叩くなだったな。分かっているな?」

 

「ヘイヘイ」

 

「アルトリウスよ…お前は希望を齎す光?それとも絶望を齎す闇?それか……【全てを拒絶する無】?」

 

その者は微笑むと、フラッシュが起こり、彼の影だけ形が違った。そしてその者が立ち上がり、闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

正にその頃、海中を突き進む巨大な影、その大きさは1km以上もあった。そして完成したアーサー専用の超巨大戦艦…。

 

戦艦の格納庫内でアーサーはマスラオに内蔵されているVRシュミレーションシステムで訓練専用のパイロットスーツからある写真付きのペンダントを取り出し、その写真を見て呟き始める。

 

「皆んなへこたれていると思う。だから俺が…“皆んな”と出会う前の俺が喝を入れないとな!!」

 

アーサーはそう言い、ペンダント終う。発光する球体型の操縦桿を掴み、指で操作し始める。

 

「300年前に打ち捨てられたお前の怒りを…ケーニヒス達に絶望を運ぶ死で齎すぞ。マスラオ!」

 

その言葉にマスラオが反応する。エンジン音が起動し、マスラオから不気味な笑い声が轟かせる。さらにマスラオの背後に複数の機体が配備されており、黄緑色の発光するラインと赤く光るバイザーを輝かせる。



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クロスアンジュ Another brothers 日ノ鳥戦記
Another:01【復活の火ノ鳥】


続けて、マシンクーガーが贈る【クロスアンジュ トライブラザーズ】の主人公アーサーの視点でもあり、彼がこれから体験する物語でもあります。(本編である『トライブラザーズ』、外伝的続編である『生体黙示録』に繋がる用語も含まれます。)


黒い空間…その奥に広がるのは、煮えたぎった溶岩、火を噴く山々、熱さに苦しむ亡霊、そこは正に【地獄】であった。その中に最後までやり遂げようとして、最愛の人を奪われ、地に落ちた者ーーー【アルトリウス・コールブランド】は禍々しい熱を帯びた無数の手によって地獄よりもさらに下へと下ろされていた。

 

「自惚れた者が…さっさと地獄に落ちろ」

 

「お前とマイラだけ助かりおって!村の疫病神が!!」

 

「返せ!私の子供を返せ!!バケモノ!!」

 

彼へ暴言を吐く者達…それは12年前にインゴ達によって殺されたトリト村の人達が亡者として彼を責めていた。するとそこに現れたのは彼の愛する妻…『フェリシア・朱鷺・ミスルギ』であった。

 

「アル…お願い、目を開けて!」

 

「……」

 

「お願い…アル!助けて!」

 

すると次に現れたのは、彼の育て親……サヨリとマイラの父 『ディーン・コールブランド』であった。彼は引き摺り込まれているアーサーの頭に触れる。

 

「アーサー…俺はお前を恨んでもいない。お前はサヨリ達を呪縛から救ってくれた。マイラも生きている!お前は私の…私の誇りある息子だ!!」

 

その言葉にアーサーは目覚める。

 

「そうだ…俺はまだ!!!死ねるかぁぁぁぁぁっ!!!」

 

穢れボスキートを発動させ、禍々しい腕を逆に焼き払うと、悪魔へと姿へと変わる。アーサーは燃え盛る地獄から抜け出そうとよじ登って行きく。それから何時間経過したのか、過酷な崖登りも終わりが見えて来る物であった。目の前から光が見えたアーサーは一気に登り、ついに地獄から地上へと這い上がり、復活したのであった。地獄の熱さのせいだったのか、全身汗まみれで身体が物凄くやつれていた。アーサーは這い出た穴を方を向くが、そこに穴は無く、ただの地面になっていた。取り敢えず一件落着なもののここが何処なのか把握できていない彼は森の中にあった川で全身に浸かり、汗を流し、体を冷やし、洗い流す。ふと川の水面に自分の姿が写る。先の戦闘で右目に大きな傷が付いており、髪も白く染まり、背まで長く、毛先が赤く染まっていた。右目は既に失明しており、左目で目の前の状況を確認するしかなかったアーサーはバインダーから霊符を取り出し、眼帯として右目に貼り付ける。そして後髪を侍の様な髪型へと変える。その時気付いたことに、彼の身長や年齢が前よりも若返っており、17歳半の歳と若さであった。

 

「2年半も若返ってやがるし…アイツらよりも。」

 

アーサーはそう呟くと、ある事に気付く。彼の額から角が生えていた。アーサーは角に触れていると、その横に大きな箱があった。

 

「さっきまでなかった筈?」

 

アーサーはそう言い、箱の中を見る。中に入っていたのは弓胴着とそして手の平サイズの紫に光るキューブであった。そしてキューブにある紙が上に置かれており、紙に書いてある文字を読む。

 

「“私を取り込んで”……悪い冗談を。」

 

アーサーは疑心暗鬼になりながらも、キューブを身体に近付ける。するとキューブが強く光だし、アーサーの身体に吸い込まれた。すると彼の身体の中の細胞の遺伝子情報が変異と言うより、進化し始める。すると彼の右耳に三角型の装置が現れ、彼の視界からホログラフが映し出される。そして彼の足元にある物を見ると、二つの武器があり、武器のそれぞれの武器に【beam saber】【composite bow】と表示される。

 

「ビームセイバーとコンポジットボウ…」

 

アーサーは試しに、ビームセイバーのスイッチを起動させる。鍔から長さ1メートルほどの尖形状の光刃が形成される。持ってみると軽い物だが、プラズマの熱エネルギーを持った光刃に触れたら、一瞬で溶断してしまう事は間違いなかった。次は木をベースにし、鉄とワイヤー、そして赤い羽飾りが付いたコンポジットボウを取り出す。アーサーにとっては得意戦術の一つであり、試しにリンゴの木から生えているリンゴの実に狙う。弓矢を構え、弓弦を引き絞り、指から引き離した。矢は見事にリンゴに突き刺さり、木から遠方へ飛ばされた。アーサーは矢が刺さったリンゴを拾い上げ、実を齧る。

すると何処からか、悲鳴が聞こえ、アーサーはその方向へ向く。

 

「何かに襲われてるのか?行ってみないと!!」

 

アーサーは悲鳴の聞こえた方へと走っていく。生死の境の世界…一度死んだ彼の…彼が体験した物語…後の仲間達の悲劇へ誘った元凶としての始まりでもあった。

 



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Another:02【導かれていく責任】

遅れて申し訳ありません!編集及び改善、仕事の忙しさに投稿する時間に手間取ってしまいました。もしかしたら次に投稿するのは数ヶ月か、もしくはその時間を短縮及び読者の皆様方にキャラの紹介もすると思います。

では、どうぞ…。


森の中から悲鳴を聞き、駆け付けるアーサー。そして目の前の森を抜けると、少年と少女がコンクリートでできた壁の前で異形の怪物達に追い詰められていた。アーサーはビームセイバーを展開し、高速で怪物達の胴体を溶断して行く。蜘蛛型、猟犬型の怪物を倒したアーサーはビームセイバーを収め、少年と少女の所へ向かう。

 

「っ!?」

 

アーサーは二人の様子がおかしい事に気付く。少年は大量の汗をかきながら、呼吸困難に陥っており、少女の方は手足の肌がドス黒く、おまけに熱があった。

 

「脱水症に…これは、ペストか!!?」

 

アーサーは二人を治そうにも治療薬を持っていなかった。しかし、まだ希望はあった。

 

「これがコンクリートの壁って言うことは……!!」

 

アーサーは穢れボスキートの爪で壁を突き刺しながら、二人を担いでよじ登って行く。そして案の定、それは的中した。壁の向こう側……そこは、未知の高層ビルで立ち並ぶ廃墟化した街であった。旧市街地内に潜入したアーサーは、建物の屋から別の建物の屋上や屋根の上を飛び歩く。そして彼はある建物を見つける。十字架のマークがあるその大きな建物をフォーカスで確認する。

 

「副都心中央病院…此処なら。」

 

「ペストや脱水症…チッ!医療用ナノマシンは複数あるが、脱水症はやっぱり、水分だからなぁ。塩が必要だ!」

 

アーサーは生体ジェットと生体翼膜を使い、塩がある港、近くの滝水がある場所へ急行する。

 

 

 

 

少年ノーリィはある夢を見ていた…自身の村であった。彼等の村は貧しくも豊かな生活をしていた。だがそれは一変した。突然、村に謎の集団が押し寄せ、ノーリィと妹のミクリを除いた村人全員が皆殺しにされた。集団が言うには、神宝を献上しなかった勇者達の為の見せしめと言う。この間この村にとある勇者の一団が村長の依頼、そしてこの村の子供達と仲が良かった事…だがノーリィとミクリは後悔した。勇者の力を良いことに悪さをする傲慢な勇者によって村の人達や友達、父と母を目の前で失い、ミクリは言葉を話せない症状を患ってしまった。二人は森林を彷徨う仲、ミクリが黒死病に感染してしまう。ノーリィは最後の賭けとして、父と母から教えてくれた旧世界の遺跡がある島がこの世にあると。ノーリィは最後の賭けを信じ、港町から小船を盗み、島へと目指す。だが、航行中に嵐と遭遇してしまい、船がひっくり返り、ノーリィとミクリは海へ投げ飛ばされる。ノーリィは必死に妹を抱え、気が付いたそこは島の浜辺であった。ノーリィは必死に遺跡へ向かおうとした矢先、異形の怪物達に追われる。目の前に壁が立ち塞がり、ノーリィとミクリが前門の怪物、後門の壁と言う事態に絶望を感じたその時、森林の中から光る剣を持った男の人が現れ、怪物達を殺していった。

 

全てを思い出した勢いでノーリィは目覚める目覚めた場所、そこは長く使われていない部屋と毛布とベッド、左腕に液体が入っている袋に筒の様な長い物、そして左手に針が刺さっており、包帯が巻かれていた。

 

「気が付いたようだな。」

 

「?」

 

少年は声のした方へ向く。そこにアーサーが中華鍋で少女に採れたての山菜くずのスープを食べさせていた。

 

「……」

 

「心配すんな、毒なんか入れてない。ほら…」

 

「……」

 

「…美味しい」

 

少年はそのスープの味に思わず涙を溢してしまう。

 

「何でだろう?涙が溢れるほど…懐かしい様な暖かさを感じる。」

 

「う〜〜!!」

 

「腹一杯になったか?」

 

「あ、はい。あ!すみません、自己紹介がまだでした。僕はノーリィ。こっちは双子の妹のミクリ。」

 

「俺はアーサー。外の世界からやってきた。(以外に丁寧でちゃんと名前を俺よりも先に名乗ってやがる。)」

 

「外の世界?もしかして勇者ですか?」

 

「勇者?(あ〜、平行世界から来た者の事か…。)」

 

アーサーはある事を考え込む。

 

「そう言えば、未来の俺が説明してくれたなぁ…。」

 

ーーー回想ーーー

 

「【勇者】?」

 

「向こうの世界に行った時に必ず性格と心の中身を確認すべき人材だ。勇者は時に魔王を倒し、世界を救うと言う説もあるが…裏には己の欲の為にその力と権力、政治を掌握し、自分の身勝手な事をする勇者。俺から言えばこうだーーー【穢れ勇者】…俺はそう呼んでいた。ソイツには気を付けろ…アルザード帝国が作り上げた“アレ”によって人の数百倍の力を手にしてしまっている。使ったらもう…後には引けなくなる。まさに中毒者のように……。」

 

「分かった……」

 

ーーー回想終了ーーー

 

「どうしたのですか?」

 

「いや、ちょっと考えて見たんだけど、俺の早とちりだった。」

 

「…決めた。」

 

「?」

 

「ノーリィと言ったな。お前…“俺の弟子”にならないか?」

 

「弟子?」

 

「俺の元で指導…“育て子”になって、強くなる言う事だ。そうすればお前の妹も守れる。」

 

「……はい!僕、強くなります!だから、アーサーさんの弟子にしてください!」

 

ノーリィの言葉にアーサーは早速、彼を鍛錬に育む。最初は難関であったが、ノーリィは心を折らず、負けず、鍛錬をする。道中、魔物に襲われる事もあったが、アーサー手製の高周波ソードとジェットブーツ、自作のプラズマガンで対応する。そんな時、ノーリィからある事を聞かされる。

それはこの世界の歴史であったーーー。アーサーはその事に驚き、二人が寝ている中で考え込む。

 

「……「第七次大戦」「ラグナレク」「D-War」……俺の知っている事やサラ達の世界の文明に似ている。だがこれだけは言える…此処はドラゴン達の世界でもエンブリヲの世界でも無い……此処は、二つの世界とは違うもう一つの世界だって事だ。」

 

アーサーはそう思いながら、ある事を思い付く。それは日記であった。旧文明の廃墟で見つけた長期保存されていた白紙を数百枚貰い、作業台で日記帳を作ったのだ。そして日記帳にこの世界の事を記していく。

 

「ここって一体何年だろうか…仕方がない、すごろく感覚で記すか。」

 

アーサーは作業中に作成した“コンパス付き記録ボード”に日記を記していく。

 

ーーー「◯月◯◯日 日曜日ーーー私は目覚めた場所…サラ達の世界と似た光景ーーー旧文明時代の廃墟にてやっとの一日が終わった。ノーリィとミクリと言う兄妹を助け、廃墟となっている病院で応急処置と看病した。ノーリイは兎も角、ミクリの方は目の前で両親を失ってしまった事で発声障害を患っていた。何れにせよ、やはりこの娘にはコミュニケーションのリハビリが必要であった。」

 

ーーー「◯月◯◯日 月曜日ーーーここに来て2日目が来た。翌日ーーー私は己が何者で何処から来たのか説明すると、ノーリイとミクリは理解し、納得した。恐らく、彼もまたミクリと同じ障害…即ち優秀な頭脳【サヴァン症候群】であった。彼はその頭脳で私が目覚めて見つけたフォーカスをホログラフィックを見せると、驚異的な操作法でフォーカスの使い方をマスターし、これと同じ物を見つけ出した。

さらに彼は“魔法”と言うこの新世界での法則を知った。この滅んだ世界には扱える者、扱えない者に分かれていた。“私はどうか?”と言うとノーリイの言葉から…“使えるよ”と言った。師になった自分が恥ずかしいと思い、ノーリイから【魔法】を教わり、その分、私はノーリイに【科学】を学ばせた。最初のレッスンは魔力適正検査法である魔力を出現させる事であった。ノーリイが言うには集中力と自分の中にある魔力を出す事が大事と。私はノーリイの言葉通り、互いに両手を向け、魔力を集中させる。するとどうだろう、俺の手から光の球体が現れたのだ。ノーリイはこれが魔力と教え、一緒に持ってきた魔導書に書かれている文と魔法を学んだ。魔法には【属性】と言う物があり、私のいた世界のテクノロジー…【マナの光】【術式】と違い、火、水、風、土、雷、氷、時、空、幻、光、闇、無の12種類の属性に分けられていた。私はその12種類の属性全てを操れると言うことにノーリイは驚いていた。」

 

ーーー「◯月◯◯日 月曜日ーーー私は魔導書に書かれている内容を学んでいる。ノーリイが言うにはこの島【アビス島】から離れた大陸ーーー【グラエキアナ】。その大陸に対立している二大大国が存在する。一つは西方の【エリュシュオン王国】さらにその西方にある対立国【アグリッサ王国】北方に【ルガンナ帝国】南方に【バラニア公国】と言った国々が複数存在する。私が蘇ったこの世界が何なのか分かってきた。此処はドラゴンの世界やエンブリヲの世界でも無い…第三の地球であった事。そして分かった事と言えば、「第七次大戦」「ラグナレク」「D-War」と言う言葉が無く、本当の意味でのパラレルワールドでもあった。だがおかしな事に…この世界にもドラグニウムは存在していた……あの遺跡と機体、そして奴らとの戦いで得た大いなる力、大いなる責任を持ってーーー。」

 

 

 

その内容の日記…それはこう言う事であった。

 

早朝、アーサーは病院の窓から見える海を眺めていた。

 

「静かだなぁ…。」

 

夜明けは来ていないが、月の光が海面を照らす。

 

「暇だし、旧文明の世界を探索してみようかな。」

 

アーサーは簡易作業台機能搭載バックパックを背負い、病院を後にする。

 

 

旧世界の遺跡…そこはまさに真の地球の風景と同じレベルの衰退化であった。ビルや道路のあちこちから生えた草木、苔、さらには路上に錆び付いた車や戦車、飛行機、戦闘機の残骸が転がっていた。崩壊し倒れた建物、地下鉄は雨で水没していた。この島の風景は…とても美しく、とても残酷な世界であった。

 

「この廃墟の風景は真の地球…ドラゴンの世界と同じだ。」

 

アーサーはこの美しい風景をフォーカスを使って、写真として収める。するとフォーカスからある金属反応をキャッチする。アーサーは金属反応が地下にあると分かり、水没した地下鉄から行く事に。穢れボスキートの生態皮膜で潜水及び、泳ぐスピード、さらに触手によって外からの空気、自分の口に触手を咥えながら呼吸する。フォーカスに搭載されているライトを使い、地下鉄にある巨大な穴を見つけ、奥へと泳ぐ。

水から上がったアーサーが着いた場所、そこは巨大な格納庫であった。タッチパネル式のパスコードがあり、アーサーは超音波メスで人が入れるサイズの穴を開け、中へと入って行く。

 

「これって!!?」

 

アーサーは驚く。格納庫にあった物…それはパラメイルであった。

 

「何でこの世界にパラメイルと龍神器が!?」

 

無数に立ち並ぶパラメイルと龍神器。そのどれもが偽りの世界で見たこともない装甲と武装をしていた。するとフォーカスから更なる金属反応をキャッチする。アーサーは反応がする奥へと向かう。

 

「これは…!?」

 

アーサーが辿り着いた場所はとても暗く、その真ん中に巨大な生態皮膜と触手で覆われた球体を見つける。アーサーは恐る恐る球体に近づく…すると球体の一部が触手へと変異し、手の形へとなり、アーサーの手と合わせる。すると球体が破裂し、中から機体が出てきた。

 

「何!?」

 

出てきた機体ーーー黒と赤い色をした装甲、血の色をした関節部、表面には赤いX字のラインマーキングが塗られていた。

 

「この機体…それにこのフレーム…っ!!?」

 

アーサーはその機体の装甲に触れようとしたその時、背後からビームが飛んできた。アーサーは純なるボスキートへと変身し、アンチプラズマフィールドを張り、ビーム攻撃を防御する。

 

「っ!!?」

 

闇の中から現れたのはヴィルキスに似た異形のラグナメイルと焔龍號に似た異形の龍神器、そして格納庫に保管されていたパラメイル、そして巨大にして両腕に重火器を装備し、四本足を持つ多脚式大型パラメイルが武器を構えていた。

 

「嘘だろ、おい?」

 

謎の敵機による一斉射撃。

 

「あれ?」

 

一斉射撃してきた筈…何故、自分はまだ生きている?

 

アーサーは目の前の光景に驚く。それは横で倒れていた謎の機体がアーサーを守るかの様に防御体制をしており、パラメイルのビームを防いでいた。

 

「この機体……“邪星神”が俺を?」

 

邪星神…アルザードが所有する主力機体。その機体…そしてラグナメイル、龍神器、パラメイル、巨大兵器が劣化せずここに保管されていたのか。すると敵機の全てが攻撃を止める。邪星神のツインアイに浮かび上がるゲマトリア数術式が彼等に指令を送っていた。すると邪星神がアーサーの方を向くと、別の方へ指差す。指を差したその先、アーサーがいる周りが水没し、沼地になっていたそしてその先にあるのは古びた聖堂が見えた。

アーサーは沼を渡り、聖堂内へと入り込む。聖堂内は古ぼけており、沢山の教会の椅子が山積みとなっていた。すると祭壇の前に奇妙な銀色のカプセルが置かれていた。

 

「これって?」

 

アーサーはそのカプセルに触れようとしたその時、カプセルが起動し、アーサーの前にホログラム映像が映し出される。ホログラム映像に映し出されたのは“純白の礼装をした老婆”であった。

 

『私は地球星警備団の団長【ユザレ】。未来の彼方に飛ばされしエクシリアの双子の傍の王太子に告げます。』

 

ユザレと名乗るその老婆はアーサーにある事を話し始めるのであった……。




感想・及び、誤字がありましたらご報告をお願いします。


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Another:03【覚醒】

久しぶりの投稿になります!


ある次元にて、巨大な艦隊航行していた。それはケーニヒスが根城にしている筈の闇の大聖堂並みの大きさを持ち、改造された闇の大聖堂であった。その聖堂内のカタパルトデッキにある機体が移送される。

そして、聖堂内の王座の間にて座る高貴な衣服で身を包んだ妖麗な女性。

 

「時は来た!全ての世界、過去、現在、未来を【マナの闇】に染め上げ、全ての秩序を変革する時が!ケーニヒスの元へ向かうよ!彼の最後の晴れ舞台を観覧する為に!」

 

《オオオオオォォォォォォォ〜〜〜〜〜〜!!!!》

 

女性は歓喜を上げると共に、彼女の下にいる“人だった”何かが蠢き、その歓喜と共に雄叫びを上げる。美しく、気高く、禍々しく穢れた歌声が聖堂内に響く。聖堂の中枢からだ。中枢の球状大型ユニットから歌声を発しているのは、【胎児】であった。胎児が自分の能力で形成しているのか、歌声の正体はホログラフィック映像で映し出されたバーチャルアイドルであった。だが問題なのはそれだけではない。なぜなら、その歌声がアンジュとサラ、そしてフェリスの声と彼女の双子の姉であるフェアリスの声、他の歌姫達の声が複合されていたのであった。

 

闇と歌声によって要塞のシステムが起動し、大聖堂は時空を越え、ある場所へと向かっていった。

 

 

地下奥深くにある不気味な格納庫……古い教会……そこにいるアーサーはカプセルから映写されている白い女性“地球星警備団の団長”であるユザレの話を聞いていた。

 

今から6500万年前…かつて地球にエクシリアと言う古代人が繁栄を築き上げいた。彼らは【ソルの光】と呼ぶ念動力のように物質を浮遊・移動させたり、拘束・防護用の結界を張ることも可能。また、統合システムへのアクセスによって情報共有が可能な魔法に似た技術…マナの光の原点である社会化システムを使い、様々な文献、アーティファクト、戦闘・防衛・支援兵器を作り上げてきた民を愛した恒星国家であった。

またソルの光の使い道は幾つもあるが、特に重要なのは…ソルの光の力は強く、エクシリア人の殆どがそれの力の使い道をよく知っていた。赤の他人がこの力の存在を知られれば、他者はその力に目が眩み、己の欲望の道へと走ってしまう。必ず……。エクシリアは代々それを教訓として、ソルの光を正しく使っている。だがそれを知り、エクシリアに厄災を齎した。

【ゼノム】と名乗る異次元人の多種混成集団による侵略であった。ゼノムはそれぞれの六大元素を司りし原初のボスキート六人を将軍にし、ソルの光の五つに分け与えた。しかし、その中で唯一残ったソルの光は…貴方の手に、それを狙うのは原初のボスキートの領将の一角【イブリートス・アルマス・ゼノム】です。

 

ユザレの言葉にアーサーは驚く。

 

「俺のアルファリオンの他に、異母兄弟と姉妹が!?それに俺の中にある痣のこれって!?」

 

「はい…あなたには暁の光王ラースとの間に【曙光と宵闇】の理を携し十人の妻の異母兄弟姉妹家族が生きておられます。第一の曙光妃の妻と宵闇妃との間に生まれし【第一第二光太子と闇太子】、【第二妃との間に生まれし第一第二光姫と闇姫】、【第三のそれぞれの妃から産まれし双極の王子】、【第四から産まれし第三の双極の姉妹】、【第四光太子と闇太子、光姫と闇姫】、そして【第五の幼き光姫と闇姫】を未来へ…ソルの光と希望を託して。」

 

「(俺に…兄貴五人、姉貴四人、弟二人、妹四人…腹違いでありながら凄い家族構成だなぁ。それにしても、俺にはまだ腹違いでありながらの肉親がいたなんて。ソルの光……マナの光の原点にして本来有るべき)」

 

アーサーがそう思っていると、異母兄弟の名前と家族写真が映し出される。

 

【スメラギンガ・エクシリアス】第一王太子

 

【マクシミリアン・エクシリアス】第二王太子

 

【カササギンガ・エクシリアス】第三王太子

 

【レグルス・エクシリアス】第四王太子

 

【アルファリオン・エクシリアス】第五王太子

 

【ヒナホル・エクシリアス】第七王太子

 

【ソラリア・エクシリアス】第八王太子

 

【エメラナ・エクシリアス】第一王女

 

【トワイライト・エクシリアス】第二王女

 

【ヒノカ・エクシリアス】第三王女

 

【エグランタイン・エクシリアス】第四王女

 

【アリーシャ・エクシリアス】第五王女

 

【ミドナ・エクシリアス】第六王女

 

【リーシャルス・エクシリアス】第七王女

 

【シャナルア・エクシリアス】第八王女

 

【エレイン・エクシリアス】第九王女

 

【エリーゼ・エクシリアス】第十王女

 

そして写真に写っていないもう一人の王子【アルス・エクシリアス】……アルトリウス・コールブランドであった。

 

「それと未来から来たあなたと御対面したようですね。他のエクシリアはそう……あなたを含んで、トリト村で静かに暮らしていたエクシリアの末裔達。【エクシリアの防人】」

 

「【エクシリアの防人】…王家を守護する騎士団。サヨリ達はその末裔って事か。それともう一つ……タスクの仲間である【古の民】はまだ何処かにいる?」

 

「……健在しています。彼等はエンブリヲの戦いに恐れを感じ、逃走派として二手に別れました。彼等の末裔は今、別の種族との間に子を成し、穏やかに暮らしています。彼等の印である」

 

ユザレはそう言うと、辺りが明るくなる。眩い光がアーサーを照らす中、目の前にそれは現れた神々しく、勇ましい大きな巨人像であった。

 

「これが……ティガ?」

 

「えぇ…ティガは宿命を終え、異次元の旅へ出て、この地に眠りました。来るべき災厄に備えて……」

 

ユザレは近づき、アーサーにある物を渡す。それは三つの宝玉が入った箱であった。宝玉の中に、【小さくされた光の古代怪獣】が眠っていた。そしてティガの力が眠る神器【スパークレンス】も入っていた。アーサーはスパークレンスを持ち、天空に掲げる。しかし、スパークレンスは輝くことはなかった。

 

アーサーはユザレの語り継がれる言葉と目的、運命を聞き入れたアーサー。するとカプセルの隣に大きな木箱と“和”を基調とした異形の鎧と炎の鍔が付けられた刀、日輪の模様をした花札の様な耳飾りが一緒に入っていた。アーサーは耳朶に穴を開け、そこに耳飾りを付ける。和服の上に鎧を見に纏い、最後に一緒に入っていた不気味な仮面(滝夜叉の鬼面)を付け、顔を覆い隠す。お髪を整え、長い髪をつむじに束ねる。最後に刀とビームセイバー、ロングボウを装備しようと炎の鍔をした刀を握る。

 

「!!」

 

すると刀を握った直後、脳に声が響く。

 

「罪なき人に牙を剥こうものならば この煉獄の赫き炎刀が お前を骨まで焼き尽くす!!」

 

炎を思わせる焔色の髪と眼力のある瞳を持ち、白地に炎の意匠の羽織をした男性がビジョンとして映る。そして背景が変わり、日差しが強く、辺りが炎が噴き上がる世界に変わる。

 

「っ!!?」

 

「よく来たな!鬼もどきのような少年!」

 

っと、彼の背後から熱血感溢れる声がした。アーサーは後ろを振り向くと、そこにいたのは先のビジョンに映っていた男性であった。

 

「自己紹介をしよう!俺の名は“煉獄杏寿郎”!鬼殺隊炎柱を務めていた剣士だ!君は?」

 

「アルトリウス・コールブランド…地球連邦特殊戦士グランセイザー 射手座の戦士だ。」

 

「グランセイザー?それが時代を越えた隊の異名か?」

 

「ま、そうなるな。」

 

「アルトリウスと言ったな。率直だが…各柱の【全集中の呼吸】を学んでみないか?」

 

「全集中の呼吸?」

 

煉獄杏寿郎はアーサーに全集中の呼吸、並びに各流派について教え始めた。

 

【呼吸】ーーー著しく増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込む事で、血管や筋肉を強化・熱化させて瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸術。流派として炎・水・風・岩・雷の五系統が存在しており、他の流派はここから派生している。

 

煉獄杏寿郎が使う流派は【炎の呼吸】と呼ばれ、派生は【恋の呼吸】となっている。

 

【水の呼吸】ーーー派生は【蛇の呼吸】【花の呼吸】【蟲の呼吸】となっている。

 

【雷の呼吸】ーーー派生は【音の呼吸】。

 

【岩の呼吸】ーーー派生は無し。

 

【風の呼吸】ーーー派生は【霞の呼吸】【獣の呼吸】

 

他にも…【ヒノカミ神楽】【月の呼吸】と言う流派もあるが、ヒノカミ神楽は始まりの呼吸と呼ばれ、それぞれの流派の元となった呼吸。月の呼吸と言うのはかつて【ある鬼】が血鬼術と共に編み出した独自の派生。この二つは難関な為、習得は難しいとの事。

 

話を聞き終えたアーサーは鞘から刀…日輪刀を抜刀し、煉獄杏寿郎に向ける。煉獄杏寿郎も鞘から日輪刀を抜刀する。刀身の色が紅く、揺らめく炎が浮かぶ刃紋、そして抜刀した際に刀身から炎が噴出する。

 

「君にはこの精神の中、俺の炎の呼吸を伝承させる。何年も掛かると思うが、外は変わってもいないいつもの光景だ。君なら大丈夫。」

 

煉獄杏寿郎はそう言い、日輪刀を構え、技を見せる。アーサーはそれに付いていき、時には疲れ果て、時には死に掛け、正に地獄の鍛錬でもあった。

 

そして……。

 

「炎の呼吸 奥義“ 玖ノ型 煉獄”!!」

 

アーサーは刀を構え、その奥義を放つ。強大な炎の壁に向けて、灼熱の業火の如き威力で猛進し、轟音と共に炎の壁を抉り斬り払った。

 

アーサーの身体が複数の切り傷跡が見られるが、舞い上がる炎が傷を癒やし、さらにアーサーの髪の毛先が炎のように赤く発光していた。

 

杏寿郎はアーサーの姿と炎の呼吸の伝承が成功した事に納得し、3ヶ月間の修行を終えた。

そしてアーサーは煉獄杏寿郎からあるアドバイスを聞く。

 

「俺からの修行も終わった。この世界は魔法と言うものがあるが、他にも神殿や社、祠がある。そこに行って、3回お辞儀をすれば各流派の柱から呼吸を学べる。」

 

「分かりました。」

 

「うむ!炎の呼吸、確かに伝授した!」

 

煉獄の言葉と共にアーサーは日輪刀を静かに鞘へ納刀する。すると杏寿郎がある事を言う。

 

「不思議に思った事なのだが、君の中には小さいが、強大な力を持った鬼がいる。」

 

「?」

 

「その鬼はどうしても君に何かを伝授したがっている。もし伝授したければ、その鬼に何かを頭の中で問いかけて見れば良いと私は思う。」

 

「分かりました。」

 

「うむ!気をつけて行って参れ!」

 

煉獄がアーサーの旅に不幸が在らんことを祈り、彼を元の世界へと戻させた。

 

精神世界から戻って来たアーサーは格納庫を後にする。

っと、目の前にユザレが現れる。

 

「鬼狩りの者と御対面した様ですね。」

 

「あぁ…。」

 

「それともう一つ、貴方に話しておかなければなりません。」

 

ユザレはそう言うと、あるビジョンをアーサーに見せる。それは禍々しく、恐ろしい闇であった。

 

「【崩星皇“アザトス”】…500年前、この地に現れ、ウルトラマンティガによって封印されし“無”の存在。ウルトラマンティガは僅かな光を生き残った人々に分け与え、魔力を持つ適用生命体を生み出し、この地は世に言う魔法世界へとなった。アルトリウス・コールブランド…貴方はこの世界ではティガであり、唯一無二の絶対的存在なのです。ソルの光と言う存在をこの世界の者に知れ渡れば、それを利用しようとする者達が現れる。それは勿論、貴方の腹違いにして瓜二つの兄であるアルファリオンも異母兄弟・姉妹…そしてあなたの愛する妻であるフェリスに宿し、二つの命も。」

 

ユザレはそっとアーサーの左手の痣に触れ、目を閉じる。すると痣からマナの光とは思えない、黄金に発光する素粒子が噴き出す。そう、これこそがエクシリアの秘宝であるソルの光であった。アーサーは自分の両手が光輝いている事に見惚れ、ユザレがさらに説明する。

 

「闇であり光の意思を持つ者…皆んなに希望を齎す力があなたにはある。あなたはもしかして……。」

 

 

“他とは違う、また別の何かの存在である事…”

 

ユザレが謎の言葉を残したと同時に、映像が消え、カプセルが爆発する。

 

 

 

 

 

格納庫から出たアーサーは廃墟中を歩く。倒れたビルや崩壊したビルには50メートルもある程の人型のめり込んだ跡が残っていた。アーサーは被害跡に触れ、過去を覗く。

 

 

《ーーー回想ーーー》

 

538年193日前……。空は青ではなく黒く、死の空であった。稲光と雷鳴が轟く中、崩壊し、燃え盛る人工島に轟音が響く。【崩星皇アザトス】突如この地球に襲来し、人口の約99.9%が死滅、残りの0.1%の人口はこの人工島アークスで避難していたが、アザトスに見つかり、人類は滅亡寸前であった。だがアザトスの前に、上空から流星の如く、光が参上した。光から現れたのは体長53m、体重4万4千t、体色は赤・青紫・銀、胸部と両脇の中心部にあるカラータイマーを持つその巨人こそ、別の地球より参上した光の巨人【ウルトラマンティガ】であった。

ティガは得意の戦法で崩星皇アザトスを追い詰めていく。両者共々、力は互角…そしてティガは赤く点滅するカラータイマーを鳴らしながら、アザトスにゼペリオン光線を放つ。ゼペリオン光線がアザトスの闇を貫き、闇の中にあるアザトスのクリスタルを破壊した。

悲鳴を上げるアザトスは僅かな闇をティガに纏わり付かせ、ティガを石像に変えようとするも、ティガが最後の力を振り絞り、タイマーフラッシュでアザトスを異次元の狭間へと封印した。ティガは僅かな光を上空に飛ばし、そして石像へとなる。上空へと飛ばしたティガの光は地球の軌道上で破裂、光の雨がアザトスによって滅ぼされた大地を癒す。そしてそこから新たな生命体、新たな社会化システム、新たな文明開化によって再生・誕生させた新しき地球文明……第三の地球改め【ティガの新地球】の幕開けでもあった。

 

《ーーー回想終了ーーー》

 

過去に触れ、この世界の謎を知ったアーサーは光を失い、青銅となったスパークレンスを見る。

 

「お前も…俺と同じ、“運命を切り開く者”だったんだな……」

 

アーサーが何かを閃いたと同時に、朝日が昇る。すると朝日の光が青銅のスパークレンスを当たると、スパークレンスから不思議な光が現れ、アーサーの身体を包み込む。すると純なるボスキートへと強制的に変身すると、体が段々と変異していく。触手から赤を基本に黄色・黄緑色・緑色・白色の美しい羽毛が生え、そこから光と闇の力を持つ炎の翼となり、孔雀の如く虹色に輝く尾羽も生える。さらに髪の色が白から黒と赤、毛先が白へとなり、耳も尖り、そこから赤い羽、側頭部から赤い翼が生える。そして穢れボスキートの腕が赤く染まり、熱く焦げた部位が剥がれ落ち、赤き羽毛、鬼の角を持つ不死鳥の顔をした神々しい腕へと変わった。左腕にも羽毛が生えており、アーサーは背部の六枚の不死鳥の翼を大きく広げる。

 

「これから先…どうなるんだろう。」

 

アーサーがそう思った直後、アビス島上空に巨大なワームホールが現れた。

 

「っ!!?」

 

アーサーが上空に突如現れたワームホールに驚く。するとアーサーだけが宙に浮かび、ワームホールに吸い込まれていく。

 

「(もしかして、未来の俺が見せたあの光景が来ると言うことか!?だったら丁度良い!)」

 

アーサーはそう言いながら、胸に拳を当てる。

 

「(頼む、一度だけでも良い…ユーティスやケーニヒス、Xを倒せる力を俺に!ソルの光を!!)」

 

すると左手の痣の紋章が光り輝き、アーサーを包み込むのであった。



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Another:04【島の秘密】

お久しぶりの更新です!では、どうぞ!


時を遡る事数週間前……トリト廃村…そこはアーサーにとって想い、情熱、友情、愛情、信頼…そして“残酷な悲劇”。その上空にワームホールが開かれる。そこから赤い羽が舞い落ちるのは鳳凰の風貌となったアルトリウス・コールブランドであった。

 

「トリト廃村…」

 

アーサーは村の焼け跡の中を歩き、海を眺める。

 

「(辿り着いた時間は…俺が消えた一週間前か。と言う事は俺が記憶を取り戻す数時間前と言う事になるか。)」

 

アーサーが辿り着いた時間はと場所…それが判明したその時。

 

《こっち…。》

 

「ん?」

 

《こっちだよ…》

 

何処からか、奇妙な声が響き、森の方を向く。

 

「…そうか。」

 

アーサーは何か分かり、森の奥深くへと歩く。

 

 

 

 

 

夜の森の中、アーサーは恐れず突き進む。

 

「クソ…枝のせいで翼が。」

 

木々から生えている枝によって羽が傷付くも、再生していく。するとある事に気付く、傷を付けた枝がどう言うことか、金属化しており、枝の他に葉や先に見える木々も金属化していた。

そしてやっと森を抜けると、月光によって水面が鏡の様に綺麗に輝いており、月夜を反映させていた。そのど真ん中にポツンと巨大な船の残害が水没していた。そしてそこを中心に湖の周りの殆どが金属化していた。

 

「アレは…。」

 

アーサーは羽ばたき、水没した船に近づく。船の外装は錆び付き、船内はボロボロ、そして苔が生えており、300年前も経過していた事が判明する。だがアーサーは見覚えがあった…この船こそがかつてオリヴァルトの船と生き別れ、赤子のアーサーがなっていたとされる“時の方舟”であった。

そしてアーサーの前に小さなカプセルの他に、何か割れるような物を踏んだ。

 

「ん?」

 

アーサーはそれを拾い上げ、指から小さな火を起こし、拾った物を照らす。

 

「あ…。」

 

それは別れる前、最後にと赤子であったアーサーと記念として遺してくれた“両親との写絵”であった。

 

「本当の父さん…母さん…!」

 

アーサーはもう会えない父と母の写真をだきしめか、泣き崩れる。っとカプセルの横のコンソールが点滅している事に気づく。

 

「ん?」

 

アーサーはコンソールに触れる。するとコンソールが強く光り、別の扉が開く。

 

「!?」

 

アーサーは恐る恐る中へ入ると、扉の奥にある物に驚愕する。

それはこの世界にはない古代の銃器や兵器、テクノロジー、遺物、鉱物、植物、化石、本、データ書記等が詰まっていた。その光景は未来アーサーが見せた未来には全くない物であった。

 

「凄い……。」

 

アーサーはそれに驚き、その遺物全てに魅了されていた。本の一冊を取り出し、ページを捲る。それに書かれている事は“魔法”、“科学”、“理力”、“導力”、“霊力”、“呪力”による捜査方法であった。

アーサーはその本に興味を持ち、試しにやってみることにした。

 

「感じろ…己の中にある“ソル”の“音色”として…。」

 

アーサーは自身の身体に流れるソルの光のエネルギーを音色の様に感じ取る。するとアーサーの周りにある物が突然と宙に浮き、そして彼を中心に地割れが起こる。

 

「おぉ!?」

 

突然の理力の習得とコントロールの難しさに驚くアーサー。理力を使った念動力、空気中の量子を感じ取り、それらを術式として学んでいく。そして第三の世界で知った魔法と本に書かれている魔法は異なる術式で書かれており、中でも強力なのは【二重詠唱】と言う口一つで“二つの魔法を唱える”事ができるオーバーマジックが書かれていた。

 

「ん?…これは?」

 

アーサーは本に記されているある【能力】の使い方、その能力の発動条件に興味心身になり、それを習得する。

この空間内は普通ではない、そのことにアーサーはこの空間を【ラプラスの図書館】と名付けた。ドアを開き、外へ出ると、ドアが小さくなり、アーサーの懐の中に入る。

 

「これなら、いつでもどこでもラプラスの図書館に入れるな。」

 

アーサーはそう言うと、コンソールがまだ点滅しており、ラプラスの錬成庫があった場所の奥に、まだドアがあった事に気づく。

 

「アレ!?」

 

懐からラプラスの錬成庫を取り出し、目の前のドアと見比べる。

 

「これじゃない?え!?じゃあ何だ…このラプラスの錬成庫は?」

 

アーサーは不思議に思いながら、もう一つのドアを開ける。開けた先にアーサーはさらに驚く。この世界…真実の地球にも存在しない…ラプラスの錬成庫にあった鉱物と植物、どう言う概念なのか、岩や大陸が空に浮いており、水と空気のある素晴らしき大地であった。

 

「これも凄い……。」

 

ドアを後にし、その大地に足を踏み入れるアーサー。すると森の中から複数の足音と地響きを感じる。そしてそれは現れた。地球のシュモクザメのような頭形状をした頭部に象のような体型をした草食動物の群れであった。さらに既に地球には存在しない筈の絶滅危惧種ドードー、ジャイアントモア、パラケラテリウム、そしてブロントサウルスも現存していた。

 

「……この空間は一体何…!?」

 

アーサーはあまりの光景に驚き、この空間から出る。そして、そのドアを【ラプラスの保護園】と名付け、ラプラスの図書館同様に小さくさせ、懐にしまう。

さらに驚くべき事に、コンソールがまだ点滅しており、アーサーは恐る恐るドアを開く。中にあるもの…ナノメタルで満ち、湖を金属…ナノメタル化させて増殖し、今も稼働している何かの装置であった。

アーサーはその装置とソルの光を使った光学コンピュータを使い、装置とアクセスする。

すると装置が赤く発光し、そこからナノメタルの回路が増殖・生成され、船内の破損部を修理していたその時…。

 

『ーー・ー・・ーーーー』

 

「ん?」

 

装置からモールス信号らしきツートン音が鳴らしていた。

 

『---- ・・ --・-・ ・・ ・・・ / ・-・・ ・・ / -・・・- -・-・- ・・ -・・・- -・--・』

 

アーサーはモールス信号の解読を始める。

 

「……」

 

『---- ・・ --・-・ ・・ ・・・ / ・-・・ ・・ / -・・・- -・-・- ・・ -・・・- -・--・』

 

「…ゴ」

 

『---- ・・ --・-・ ・・ ・・・ / ・-・・ ・・ / -・・・- -・-・- ・・ -・・・- -・--・』

 

「ゴジ…ラ…メザメル…」

 

「“ゴジラ ガ メザメル”…っ!!?」

 

アーサーはモールス信号の解読で得た言葉…『ゴジラ』と言う言葉を思い出す。

 

 

 

 

 

 

ーーー《回想》ーーー

 

13年前…まだアーサーが幼き頃、育ての親であるディーンと共に川辺で釣りをしていると、ディーンは『ゴジラ』について話していた。

 

「ゴジラ…?」

 

「ゴジラ…大昔、人はそれを“獣の王”と呼ばれ、『神』の様に崇められていた。でも、人はその存在を忘れていく内に、神と呼ばれた獣達もまた、姿を消していった。」

 

「お義父さんはゴジラを“見たこと”あるの?」

 

「あるよ、この島の東南部に岬があって、そこにそれに関する秘密の小屋と大きな洞窟があってな。俺はその小屋にある資料でゴジラや他の獣達も知り、確かめに洞窟の中へと入ったんだ。だけど洞窟内は迷路みたいになってて、息も続かないから慌てて出ようした時、微かだが見えたんだ。小さな穴から“青白く輝く発光する影”を。」

 

「ふーん」

 

「何?その顔だとまるで信じていないようだな。」

 

「だってマナの光にそんなもの載ってないし、そんなに大きかったら世界中大騒ぎだよ。」

 

「いやいや、アレは…誰にも知られてはいけないものなんだ。ゴジラのエネルギーはこのマナの光よりも恐ろしい何かで満たされているんだ。」

 

ーーー《回想終了》ーーー

 

アーサーは昔の事を思い出し、ディーンが言っていた場所の近くに建てられていた小屋に入り、水中用スキューバマスクと酸素ボンベ、フィンとスキューバスーツに着替え、海中へと入っていった。

洞窟の出入り口に到着し、アーサーはモーションスキャナーと触手の超音波メスを利用した超音波ソナーで洞窟内の迷路を脳内でイメージさせると、水深6000メートルもあった。そしてその位置から微かだが放射能が確認される。

 

「ゴジラ…。」

 

アーサーは一旦海上へ浮上し、ある事を思いつく。アーサーは懐から光の古代怪獣が眠っている宝玉を取り出し、箱から取り出す。三つの宝玉の内、青い宝玉を取り出すと、ボスキートの手から宝玉が嵌め込めるサイズの凹みができる。アーサーは宝玉を凹みにセットすると、宝玉が青白く光り輝き、飛び出す。光が形を変え、姿を現す。その姿、海竜の如く、身の丈 山の如し、ワニの様な巨大な口と非常に沢山並んだ鋭い牙、背部から生えた巨大な角の様な突起

 

「ゴジラの所へ連れて行って…。」

 

アーサーは古の海獣に道案内をして欲しいと言うと、海獣がアーサーを乗せる。すると海獣やアーサーの身体が青白く輝くゲル状のバイオ液へとなり、洞窟の深部へと入り込むのであった。



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Another05【エクシリアの軌跡】

地下水脈の中を潜水していく海獣とアーサー。すると水脈の奥地から青白く発光する何かが見えて来た。

 

「(お!アレは!)」

 

発光が強くなり、アーサーはついに水脈の最奥地に到着する。そこで目にした光景にアーサーは驚く。

 

「っ!!」

 

それは今も尚、使われてもいない廃墟化した都であった。辺りに広がる無数のクレーターや風穴、ヤトウ、リュウ、アケロンの種族である星竜族の亡骸や超星神の残骸、そしてウルトラマンティガの様な巨人像が転がっていた。

 

「……」

 

アーサーは察した。トリト廃村がある島の地下奥深くにあった古代都市……此処が彼の生まれた故郷『光都エクセリス』であった。すると都の奥深くから青白く輝く巨大な塊が見えて来た。その巨大な塊の正体は球体であり、青白く発光していた。

 

「ゴジラ…」

 

アーサーはゆっくりと手を伸ばし、球体に触れる。すると球体の表面が崩れ始め、その中から巨大な物が眠っていた。それは体長50メートル以上もあり、頭から尻尾にまで生えた鋭利な背鰭、ゴツゴツとした黒い岩肌、鋭い牙と爪、胸部に左眼、凡ゆる所に浮かび上がる複数の傷跡、そう…この巨大な生物にして獣の王として、エクシリアと共に君臨した怪獣【隻眼のゴジラ】であった。ゴジラは片方の鋭い眼でアーサーを睨む。アーサーも警戒し、日輪刀を持った直後…。

 

「ガァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

ゴジラの大咆哮がアーサーを襲う。

 

「ッ!!(やっぱ無理無理無理無理!!!!こんなバカデカく!ドラゴンや邪星神でもない怪獣の王を生身で単体の俺でも無理だ!!やっぱりコイツこそが“神”に相応しいよ!!)」

 

アーサーは心の中でゴジラの気迫に怖気付いてしまう。するとゴジラはゆっくりと別の方を向く。

 

「え?」

 

ゴジラの奥にあるもの…それは光都エクセリスの光城【光宮グロリアス】であった。その城は翡翠色の結晶石に満ち溢れ、結晶石に浮かび上がる赤く発光する術式。

 

「赤い模様…ドラグニウム!!??」

 

ドラグニウム…かつて22世紀末の真実の地球にて発見された強大なエネルギーを持つ超対称性粒子。と言うより、これからのアーサーが生み出してしまうものでもあったが、そのドラグニウムが何故この結晶石の術式…。

 

「っ!!」

 

アーサーは光宮グロリアスに驚く。何故ならーーー。

 

「この光宮グロリアス自体が……“巨大なドラグニウム”。」

 

光宮グロリアスそのものがドラグニウムで満たされた城であり、さらにそのドラグニウムの中枢部から周りのドラグニウムよりも強大なエネルギーを感じ取る。

 

「このエネルギー…普通じゃない。ドラグニウムよりももっと次元を歪ませ、調和させている。何だ!?このエネルギー量は!?普通じゃない!!普通じゃないぞ!?ソルの光で分かる!ゼノムはこれを狙って!?エネルギー名は……【ドラグニウム・エタニティ】!!」

 

その存在…名前を言ったその直後、そのエネルギー源が輝き、ドラグニウム・エタニティの粒子をアーサーへ流し、譲渡させる。

 

「ウゥッ!!!」

 

突然の譲渡に驚くアーサー。しかし、それもすでに遅し、エタニティウムの粒子が彼の身体を這い回り、彼の活性細胞を増幅させる。筋肉繊維が増強し、ソルの光がさらなる力を開花させる。

 

「ソルの…光よ!!」

 

アーサーは叫ぶ。するとソルの光が反応し、彼から緑色に輝く範囲的結界が形成される。

 

「普通よりもさらに出力が上がっている…これだったら!」

 

アーサーはそう言うと、ゴジラを見る。

 

「俺を外へ連れ出して。」

 

アーサーの言葉にゴジラは反応し、アーサーを頭頂部に乗せると、何かを始める。尻尾まで生えた背鰭が青白く発光し、それが段々と背部、頸まで上がり、そして…。

 

「っ!!!!」

 

ゴジラが口から青白く発光する大出力放射熱線を吐き、天井に巨大な風穴を開けた。

 

「な…何ちゅう破壊力だ。」

 

アーサーは翼を広げ、外の光が差し込んでくる外へと出ようとすると、ゴジラを見る。

 

「…ソルの光よ。」

 

アーサーはソルの光で外へと出入りする為の通路を形成する。ゴジラがその巨大な足で光の橋を踏み込み、外の世界へと出る。

 

「ゴジラ!もうお前は自由だ!好きに生きろ!」

 

ゴジラを解放したアーサー。するとゴジラは大咆哮で返す。

 

「ガァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!」

 

ゴジラはゆっくりと動き、森林から海へと解き放たれた。

 

「……俺の故郷を守ってくれて、ありがとう。」

 

アーサーはゴジラがエクシリアにとって、守護神であった事を悟り。自身が乗ってきたとされる方舟の残骸がある湖へと向かう。

湖の水面にゆっくりと着水するアーサー。水面が一滴の雫が落ちたかの様にウェーブが起こる。そしてアーサーは手を伸ばし、方舟の残骸へ翳す。

 

「ソルの光よ!」

 

アーサーがそう言うと、方舟が湖から引き上げられ、陸地へと移動される。

 

「さて、だいたいやることは決めている。」

 

アーサーは引き上げた方舟の船内から物資や道具を一つ残さず取り出し、ソルの光である事を始める。

 

「【変異】」

 

すると方舟の形状が変わり始め、生き物の様な生体細胞が増殖していく。

 

「良し…後は時間が過ぎたら俺の理想とする戦艦が出来上がる。(嘘…本当はラプラスの図書館に書かれていた【エクシリアの高機動戦闘艦】のを見てイメージしてみただけだがな。)さて、そろそろ“皆んな”の所に行くか。」

 

アーサーは皆んな…サヨリ達がいるとされる世界各国へ周る為、翼を広げ、青空へ舞い上がる。

 

「ソルの光…【認識】【識別】【可視化】【地形情報】」

 

ソルの光で偽りの地球の天体図をホログフィックで映し出す。

 

「さらに!ボスキート!12年前のあの日!皆んなを祓い殺した時!彼等のDNAが俺の腕によって取り込まれている筈!ボスキート…皆んなを探して!」

 

鷲の如く異形のボスキートが鳴き声を上げた。

 

「ピィィィィィッッ!!!」

 

すると島から一羽のハクトウワシが舞い上がり、アーサーの横に並んで飛ぶ。その時、ホログフィック映像で映し出された偽りの地球の各地からサヨリ達の情報が表示される。

 

「ローゼンブルム王国に『テツジ』『シュン』『ユキ』『ムツミ』。エンデラント連合に『リク』『リリー』『ルリ』『チエ』『ロミオ』。マーメリア共和国『スゥ』『マコト』『モモ』『アラシ』ヴェルダ王朝『アリサ』『シズク』『ケイ』。ガリア帝国『カツキ』『サアヤ』『アレン』。ミスルギ皇国に『サヨリ』…そしてマーサ叔母さんの三女『マナ・コールブランド』。それから…【エミリア】だな。」

 

A組メンバーと共に【エミリア】と言う名の事でアーサーは首を傾げる。

 

「エミリア?…エミリア…あ。」

 

その名と共にある記憶が目の前に写る。島の中、そして湖、アーサーを乗せた方舟が不時着した場所でもあった。そこで幼少期のアーサーとマゼンタ色の髪、ツインテールをした少女が指切りげんまんをしながら何かの約束をしていた。

 

“大きくなったら、私!アーサー君のお嫁さんになる!”

 

その言葉と共に12年前…さらにその3年前の過去を思い出す。

 

「そうだ…A組にはまだ“呪い”を掛けられていない者がいた!15年前、母親と一緒に引っ越した…あの子が!!」

 

昔馴染みの友がいた事を思い出したアーサーは急いでリク達がいるエンデラント連合へと向かうのであった。

 

だがこの時、アーサーは気づくべきであった……廃墟化した光都エクセリスと光宮グロリアスの間にあることが起こっていた。廃墟の瓦礫がナノメタルへとなり、集まり、巨大な“何か”を建造していく……そして完成したのは巨大な【城】であった。さらに光宮グロリアスが輝き、島の周辺や廃墟をナノメタルへと変異させ、白銀から黄金へと変色し、島を改造し始める。そしてアーサー専用の戦闘艦がついに完成するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー「◯月◯◯日 水曜日ーーーアビス島上空にて謎の特異点が開き、3年後の偽りの地球に無理矢理転移させられた。だが収穫はあった…。トリト廃村の島の地下は巨大な空洞となっており、そこにあったのはかつて6500万年前に存在し、ゼノムから地球を守って滅び去ったエクシリアの都…光都エクセリスと光宮グロリアスの遺跡であった。そして俺はそこである物を手に入れた。【ドラグニウム・エタニティ】“信念に思い描いたものを全て現実のものとする”事ができる無限にして万能の力。実際に使って見るととても恐ろしく、危うくソルの光が暴走しかけた。上手く調整し、有効活用しなければならない。“本当の意味での正しい事に使うべきにして、力があるから何かを為すんじゃなく、何かを成し遂げる為に力を求め使うんだ”という事を…。だから…俺は決めた。次の目的地はエンデラント連合首都“フィラデル”…そこでリクの暴走を止める。皆んな…俺に力を貸してくれたら良いが、精一杯努力してみる事を祈る…。」

 

アーサーの日記…それはこの世界の運命を左右する大事な記録。その日記は三冊用意されていた。一つはオリヴァルト達、もう一つは現在アーサー復活の為に動いているサラとB組メンバー、そして最後の一冊……、ある美少女がアーサーの記したメッセージを読み上げる。その内容は今日の日付が書かれた文書であった。

 

「これをアーサー君が…これから。」

 

少女は日記を閉じ、展望台から見えるエンデラント連合首都フィラデルを見下ろす。

 

「待っててね、アーサー君!」

 

少女は日記をリュックの中にしまい、階段を降り、フィラデルへと向かうのであった。



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Another06【感動の再会?】

お久しぶりです。
仕事が忙しくて考えと修正に手間取ってしまいました。
そして今更ですが、明けましておめでとうございます。


黒い煙が空へと立ち昇る…海面に浮かび上がるのは巨大な戦艦の残骸、そこから紅蓮の焔が噴き出ていた。黒い煙、燃え盛る海と艦艇の残骸、その戦火の中から戦士達の雄叫びが響き渡る。海面に浮かび上がる巨大な影…それは、ケーニヒスの居城にしてアルザード帝国の総本部である天空要塞“闇の大聖堂”であった。だが妙な事に、闇の大聖堂は天空に浮いておらず、逆に要塞の大半が海中へ徐々に沈んでいるのであった。他にもたくさんのデバステーター達も海中へ沈んでいた。

 

大聖堂内部は半壊しており、炎が燃え移り、辺り一面にアルザード帝国兵士や全身『機械でできた純白の騎士』と様々な戦士達の亡骸が転がっていた。さらに別の方では今も尚、戦っている者達がいた。機械でできた純白の騎士が巨大な盾と剣を持って、アルザード帝国兵士を切り付ける。っとその隙にアルザード帝国兵士が騎士の脇腹に剣を突き刺し、もう一人の兵士も騎士に剣を突き刺し、とどめを刺す。そしてそこへ白を基調とした黄金と青紫の重装甲を見に纏い、聖甲銃アイアン・ゲイルが銃剣へと進化しており、セイザーレムルズことタスクは銃剣と化したアイアン・ゲイルも左腕に装備した大型ガントレットシールドからエネルギーシールドを展開し、敵の攻撃を防ぎ、“騎士”の如く敵を粉砕する。タスクはヘルメットのマスクをオープンさせる。だがよく見ると、彼の両目の瞳孔が縦長へとなっており、青紫色に輝き、口も見ると上下左右の狼の如く、鋭利の牙となっていた。

 

するとタスクの上を誰かが飛び越す。その者、巨大な戦斧を携え、蛮族の如く怪物の頭蓋骨と素材で加工した鎧、両腰に日本刀の他に、ウィンチェスターショットガンとライフルを重装備したライドが現れ、兵士達を睨み、唸り声を上げる。兵士達はライドに銃を突きつけ、襲い掛かる。タスクがシールドを展開し、ライドを守り、ライドがホルスターからウィンチェスターショットガン2丁を取り出し、発砲する。帝国兵士達が散弾によって怯むと、二人の背後から紙でできた“式神人形”の群れが形成しながら帝国兵士達を翻弄させる。式神人形を操っている者…いつもの眼鏡をかけ、黄金のポールアームを振り回し、敵を薙ぎ払う。すると三人の前に異形の怪物が口を開き、業火を吐こうした直後、三人の背後に白きローブと和を基調とした巫女服を着用し、魔法陣を展開させ、呪文を無詠唱で発動させるマイラがいた。マイラが展開した魔法陣から機械で満ちた砲台が現れ、異形の怪物に目掛けてエネルギー弾を放つ。異形の怪物が倒れると、タスク達の中から和と洋を複合させた純白の鎧で身に纏し、アルファリオンが現れる。

 

「エクシリアに認められし勇士たちよ!!弟であるアーサーと共に!旧光王にして父“ラース・エクシリア”の為に!!!」

 

アルファリオンが手に持つ赤い刀身をした日輪刀を抜刀、天空へ掲げる。その勢いにアルファリオンの背後にいる“人間”の他に“耳が長い美貌の種族”、“下半身が蛇の種族”、“牛に似た特徴を多く持つ魔族”、“下半身が馬の種族”、“下半身が山羊の種族”、“下半身がクモのようになっている種族”、“トカゲの種族”、“屈強な種族”、その他にも数えきれない肌の種族が武器を掲げ、大声を上げる。

 

《オォォォォォォ〜〜〜!!!!!》

 

皆は戦車の他、パラメイル、量産型フラドーラ、ガンシップ、さらには騎馬に乗り、ケーニヒスがいる宮殿へと駆け上がる。

 

その時、闇の大聖堂の宮殿内の王城の間が大爆発を起こし、壁や天井が一瞬にして塵と化した。その間にて、二つの影が見えてきた。一つは身体中から凡ゆる生物達の部位や人らしき顔が複数飛び出ており、人型とは思えない形状となっていた。そして異形の怪物の胴体の胸部中心にケーニヒスと思わしき…“青年の顔”が浮かび上がっていた。もう一つの影は服は戦闘によってなのかボロボロ、全身返り血や自身の身にある複数の傷によって上半身が半裸で血まみれになった…アーサーであった。

 

ケーニヒスの身体がさらに膨れ上がり、変異し始めながら、アーサーに呟く。

 

「さぁ…貴様のそのマイナスエネルギーを崩星皇アザトス様とザリマン陛下に捧げよ…“真なる穢れの王”よ。」

 

その言葉にアーサーは顔を上げながら呟く。

 

「憎悪…絶望…貪婪…愛欲…傲慢…執着…逃避…利己……お前達は昔の人の恥晒し共だ。」

 

彼の顔ーーー左手から顔面、側頭部や左胸、背中に掛けて浮かび上がる“龍の痣”、増強された筋肉、額から三本もの“赤黒い角”を生やし、眉間から第三の眼が出ていた。さらに、彼の右目が大きな傷によって損傷していた。

 

アーサーは醜悪な姿へと変異を遂げおうする中、赤い刀身をしたムラクモと日輪刀を握りしめる。っと、日輪刀の刀身が黒から赤へと変色し、抜刀の構えを取る。

 

その時、アーサーの背後に巨大な影が現れる。それは鬼神の如く、荒ぶる大海を司る神“須佐之男命”の様な武神…和を基調とした外観、装甲の色は白を基調とした赤と金、後頭部から鬣と思わしき素粒子帯、アーサーによって改造が施された邪星神マスラオであった。マスラオの両手に赤い刀身をした実体剣を二つ持って、アーサーと同じく居合切りの構えをしていた。

 

「日の呼吸 壱ノ型……。ゴォォォォォォォッ!!!」

 

アーサーは息を吸うと、呼吸音が炎が燃え盛る様な音が鳴り響く。ある姿へと変異を遂げ終えたケーニヒスは禍々しい巨剣を持つと同時に彼の背後にいる巨大な何かも戦闘の構えをする。燃え盛る闇の大聖堂内、燃える戦火で悲鳴を上げるアルザード帝国兵士と異形の怪物達…。

アーサーとケーニヒス…互いに睨みながらも、鞘から刀と剣を抜かずに待つ。さらにアーサーのムラクモから禍々しい邪気を放ち、相手を恐怖へと誘う血の如く月蝕の色をした【龍】がオーラとなって姿を表し、アーサーを中心に周回し、一緒に変異したケーニヒスを睨み、唸り声と共に咆哮を上げる。

 

【グルルルル!!!ガァァァァァァァァァァァッ!!!!!!】

 

アーサーの周りに彼岸花が生え、燃え始める。そして闇の大聖堂の各部が一気に大爆発した瞬間、両者は駆け抜け、鞘から刀と剣を抜刀し、刀身からそれぞれのエネルギー波が放たれた。アーサーは先の地獄龍を放ち、ケーニヒスは無数の怨霊を放ち、互いがぶつかり、閃光が煌めくのであったーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その激戦が起こるのは…時を遡る事、“数週間前+三年前”の事であったーーー。

 

エンデラント連合と神聖ミスルギ皇国の別れ道ーーーライドとヒルダの故郷であるこの国に来たアーサーはヒルダが逃走に使っていたバイクがあった古いガソリンスタンドでキャンプをしていた。

 

「ハァ…あの先にエンデラント連合の首都【フィラデル】…。」

 

アーサーがネットワークでリクとリリー達の居所を突き止めようとする。

二人は今、ノーマの人権侵害行為に腹を立て、ノーマと共に生きる共存派性反政府組織【ジャスティス】を築き上げ、ノーマを差別、搬送する者達を殺害して行っている。エンデラント連合大統領はジャスティスの非道差に我慢ならず、精鋭部隊、機動隊、特殊部隊の招集を発令したとの事。そしてノーマや正義を名乗るジャスティスを見つけ次第、強制連行するとの事。

 

「ったく、リクの奴…何やってやがる。相手が全く違うだろ!大体ノーマ管理委員会もあるし、各国が黙ってられる程馬鹿でもないんだ。強行手段で何かすると思う……。チッ、何とかしてこっちに勧誘して、身勝手過ぎる正義を止めないと。それにサラ達が進行し、大失敗するまで…残り数日後だ。それにアビス島に二人を置いて来たこと…あの特異点は何なんだ?あんなもの…未来アーサーが見せた未来には無かった…まさか敢えてわざと見せないようにしているのか?いやでもそれだったらこれから起こること……。」

 

アーサーがそう考える中、ソルの光であるライブ配信がされていた。それはかつてアンジュが容姿端麗、才色兼備で、スポーツ万能で、高貴で礼儀正しく、国民から愛され、同級生からも多く慕われていた皇女として不自由なく暮らして来たが兄にして今のミスルギ皇国皇帝であるジュリオ・飛鳥・ミスルギとして即位した後、アンジュに変わる新たなマドンナが現れた。【ミリア・隼・レーグニッツ】神聖ミスルギ皇国の斑鳩、飛鳥と並ぶ由緒正しき皇室の者でもあった。彼女の一族ーーー【隼家】は“歌の唄い手”でもあり、10年前のノーマ反乱によって唯一の肉親であった母親を亡くし、戦災孤児となっていた彼女を母の弟にあたるレーグニッツ男爵は天涯孤独の身で寂しそうにしていた彼女を養女として引き取り、娘の様に愛し、彼女の皇室を現皇帝であるジュリオが汚名返上してくれた事。その結果、彼女の歌唱力によって皇女時代のアンジュを上回り、ライブ配信を伝って、世界中に彼女の歌が轟いた。前にクラウドブルースにて、ライドとエクエス、フェリスが彼女の歌を聴いていた事を覚えていた。

 

「ミリア・隼・レーグニッツ…もう一人のミスルギ皇国の血筋を持つ者。」

 

アーサーはそう言い、ミリアの歌を聴いてみると…。

 

「♪〜♪〜」

 

「(凄い…)」

 

彼女の歌唱力はとても良く、聴くものを虜にしたり、その歌によって心を癒し、安らぎを与える。

 

「(ライドとエクエス達が虜になる理由が分かるなぁ…そう言えば、フェリスも歌を練習する為に毎日彼女の歌を聴いて、唄いながら練習してたなぁ。)……。」

 

アーサーは一週間前…と言うより数日前、フェリスとデートしてた時、カラオケで彼女の歌を唄っていた事を思い出す。

アーサーかその歌の歌唱力に魅了され、気持ちが和らいでいく。するとソルの光と体内のドラグニウム・エタニティがミリアの歌に反応し、アーサーの周りから光り輝く音符が現れる。

 

「あ…。」

 

次元干渉できるエネルギーであるドラグニウムの影響なのか、音符が現実に具現化した事に驚く。

 

「心に思っている事が現実に…実体化できるんだ。」

 

アーサーはこの未知の力の特徴に感心していると、急激な睡魔がやってくる。

 

「確かに…綺麗な…歌…。」

 

アーサーは椅子に座ったまま、その場で就寝するのであった。

 

 

 

 

その頃、ある少女が夜中の道を歩いていた。少女はアーサーの日記を見ながら、ここへ来る彼を待っていた。

 

「あれ〜?確か、エンデラント連合の道はこの通りの筈なんだけど。(早くしないとアーサー君に会えない…。)」

 

少女が辺りをウロウロしながら見渡す。するとその横に古いガソリンスタンドを見つける。中に入るとガラクタだらけであった。

 

「あ。」

 

すると少女は中に誰かが寝ているのに気づく。その者、赤みがかっている黒い髪、マナの光を切っていないのか、ミリアの歌を聴いたまま寝落ちした少年がいた。

 

少女はその少年にゆっくりと近づき、顔を見る。

 

「!?」

 

少女は少年の顔をまじまじと見つめると、鞄からアルトリウスの日記を開き、中に入っていた“ある写真”を見る。それは幼い頃のアーサーとサヨリ、マイラ、スゥ、そしてあの少女が一緒に寄り添ってピースをしている写真であった。

 

「見つけた…!」

 

その少女は寝ているアーサーと昔のアーサーとの容姿が一致した事に喜ぶ。

 

「(ヒャ〜〜〜〜〜ッ!!!アーサー君だ〜!メチャメチャカッコ良い男性になってる!どうしよ〜!!!)」

 

少女は萌え上がりながらはしゃぐのであった。

 

 

 

 

 

 

そしてアーサーはある夢を見ていた。それは、12年前のあの日……。

 

燃え盛る超星寮…業火で天井が崩れる中、アーサーはユーティスの企みによって穢れボスキート化された友達によって食いちぎられ無惨な姿となったテツジといた。

 

「神との戦い…ってさ、本当に終わらせられるんだよな……?俺達がいた意味ってちゃんとあったよな……?」

 

「テッちゃん!」

 

アーサーはテツジを心配する。食いちぎられた胴体から大量の血が床に流血する中、テツジが力を振り絞り、アーサーの肩に触れる。

 

テツジは成績はアーサーよりも劣っているも、挫けずに努力していた。そして彼には夢があった…それは“大富豪になる”事であった。父と母がローゼンブルム王国で会社設立し、出稼ぎしている

 

「頼むな…あーさー…みんなの分も悪い神様をやっつけてくれよ…?へへへ…結局…俺、最後まで…あーさーにはひとつも勝てなかった……。生まれてきて…なりたいと思ったもの…やりたいと思ったこと……ひとつも……叶わなかったなぁぁ……」

 

テツジは涙を流し、息を引き取る。

 

「テッちゃぁぁああああああああああああんっ!!!!」

 

アーサーはかつての友であったテツジを目の前で失った悲しみに絶望する。

 

 

 

 

 

 

倉庫の中へ隠れたアーサーとサヨリ…アーサーの腕は穢れボスキートの適合に成功したのか、異形の腕へと変貌を遂げ、自我を保っていた。だがサヨリは穢れボスキート化した仲間によって背中に四本の爪による傷痕があり、そこから流れ出る赤い血、そして爪痕の下に穢れボスキート化が今でも侵食しようとしている聖痕が浮かんでいた。

 

「外へは出られないし、ここもいつまでも隠れられる訳じゃないーーーそれに…このままじゃ…私も皆んなみたいに……悪魔に…」

 

「……」

 

サヨリの言葉に動揺しきれず、仲間を食い殺していったアーサーの反応は全く、そして無言…だが彼の瞳が僅かに震えていた。

 

「そうなる前に…ねぇ、アーサー……お願い」

 

サヨリはそう言うとアーサーの右手に触れる。

 

「悪魔になって醜く生き続けるくらいなら、アーサーの手で祓い殺して、綺麗な人のまま死んだがいいなぁ…」

 

サヨリは涙を流し、アーサーに最大の頼みをする。

 

「サヨリ…!」

 

アーサーは失うことに泣き崩れようとした。

 

「……っ」

 

っと、サヨリが勢い良くアーサーに近づき、キスをする。

 

「ちょ…サヨリ…?」

 

突然のことに驚く。アーサー。サヨリがアーサーを強く抱きしめ、大泣きする。

 

「嫌だぁ…嫌だよぉアァサァア〜〜〜ッッ!!!」

 

「!?」

 

「死にたくないっ…死にたくない!死にだぐないよぉぉお!!もっと生ぎでだいよおおおおお…アーサーと一緒に大人になりだいよおぉおぉ〜〜〜〜!!!!」

 

サヨリは成績がアーサーより優秀で誰よりも清らかで御伽話に出てくる“聖女”のような少女であった。そして…。

 

「!!…あー…さー」

 

彼女の腹にアーサーのボスキートの腕が貫く。

 

「ゴメンねアーサー…ありがと……」

 

口から血を吐きながら、燃え盛る炎で塵へと変わるサヨリ。骨も遺灰も残らぬサヨリにアーサーは絶望した。

 

「あぁ…ぁぁぁ…あぁぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!!!サヨリィィィィィィィィッ!!!!」

 

アーサーの断末魔の悲鳴と共にそれは起こった。彼の身体から膨大な闇が噴き出し、彼の身体を取り囲む。

 

「……!?」

 

膨大な闇に取り囲まれたアーサーは目の前が黒に染まる。彼を取り囲んだ闇が形を変え、蛇のように動く赤黒い何かが蠢く。そして彼の憎悪と怨念、苦痛を纏いし“それ”は焼きつくされる村の中を徘徊し、アルザード帝国兵士を襲う。そんな中、一人のが女性が弓を背負い、赤い刀身をした日本刀を持って、アーサーに切り掛かる。記憶薄れていく中、女性が弓を引き絞り、涙を流し始める。すると女性がある事を呟く。

 

「ごめんなさい…アーサー…!!」

 

女性はそう言うと、弓矢を放った。弓矢の鏃が青鈍色に輝き、アーサーの眉間に命中する。すると彼の記憶…12年前の悲劇であった記憶や名前、皆んなと過ごした時間と思い出が消えていく。視界がぼやける中、女性はある人と会話をする。

 

「何故アーサーの記憶を消したのだ。」

 

「アーサーの師…導師“西十郎”。すみません。アーサーにはとても辛い体験を思い返さないようにしたの…。」

 

「そうか…だが消しても、彼の“罪と罰”は消えない、いずれは甦る。代わりにお前が彼の代行者として罪と罰を背負え…。」

 

西十郎はその女性に怒りを表していたが、決して殴り掛かろうとしなかった。女性は倒れているアーサーを優しく抱き抱える。

 

「アーサー…ごめんなさい。私のせいでこんなことになっちゃって…でも1000年後…2000年経った貴方を愛してる…。」

 

女性はそう言うと、人差し指と中指の二本を唇に近づけ、ある光をアーサーの額に付けた。

 

「これは…貴方の本来の力を抑制する為の“封印”…ティガの【光】がと適合したそのボスキートの【闇】が守ってくれる。そして時が満ちたら…“私”の元へ来訪しなさい。」

 

女性は涙を流し、ある光魔法でアーサーを大木に固定させ、海へ放り投げた。

 

「ごめんね…私の“愛しの坊や”…」

 

女性は大粒の涙を流しながら、アーサーの事を“坊や”と言い告げた後、炎の中を大鎌を持った西十郎と手甲を装備した東護ノ介、他にもたくさん人が武器を持ち、炎の中に映る巨大な“赤子”達へと突撃するのであった。

 

 

 

 

 

午前5時22分ーーー早朝。

アーサーは勢いよく起き上がる。

 

「本当の母さん!!」

 

アーサーは辺りをキョロキョロするも、そこには何事もなかったような普通の場所であった。焚き火の火が消え、そこから一筋の煙が上がっていた。

 

「(今のは…俺の失われていた記憶の一部?ダメだ…あの島で記憶を思い出しても…12年前の悲劇の全貌や海へ落ちた痕に…あれ?)」

 

するとアーサーはある事に気づく。

 

「(“10年前”…俺は何してた?)」

 

10年前…リベルタスによって古の民(タスクを除く)が全滅したあの日……。アーサーはあの日…自分は何をしていた?島で皆んなの帰りを待っていた…だが彼の記憶にそんな記憶がないと言う神経が叫んでいた。

 

「ダメだ…思い出せない…」

 

アーサーが思い出そうとした時、横に毛布で身を包んだ何かであった。

 

「え!!?」

 

身を包んだ何かがゴニョゴニョと動いている事にアーサーは驚く。

 

「何何何!!?(完全に熟睡してたから気配を全く感知できなかった!sit!!)」

 

さらに動き、それはゆっくりと起き上がる。

 

「っ!!?」

 

「な〜に〜?朝から騒いで……え?」

 

「……誰?」

 

アーサーがそう言うと、少女が目を凝らしながら、アーサーを見つめる。すると少女はポケットからある写真を取り出し、アーサーの顔を確認すると…。

 

「ん〜〜??!!っ!!」

 

何か分かったのか、少女は両手をアーサーの両肩に強く触れる。

 

「っ!!ソルの光!!」

 

あまりの事に驚いたアーサーはソルの光で障壁を展開する。

 

「うわぁ〜〜〜!!!」

 

少女が吹き飛び、壁にぶつかる。

 

「あ…。」

 

アーサーは思わぬ行動に気付き、ソルの光で傷口を癒す。

 

「痛った〜い!何するの?」

 

「いや、すまない。思わず…。」

 

「それよりも、やっと“アーサー君”に会えた!」

 

その言葉にアーサーはキョトンとする。

 

「え?俺を知ってるの?」

 

「何言ってるの?アーサー君!私よ!わ・た・し!」

 

「だから誰!!?」

 

「“エミリア”よ!『エミリア・ホルス』15年前、トリト村で良くサヨリちゃんとスゥちゃん遊んでいた幼馴染よ!」

 

【エミリア・ホルス】と名乗る美少女は必死に名を思い出させる。

 

「エミリア?誰?どちら様?」

 

「……バカァァァッ!!!」

 

「ブフォッ!!!」

 

その言葉に逆上したエミリアはアーサーに平手打ちした。

 

「信じられない!私の事を忘れるなんて!あんな“約束”もしたのに!」

 

「約束…?あ…。」

 

アーサーは15年前の事を思い出すのであった。

 



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Another07【もう一人の…許婚!?】

お久しぶりの更新です!仕事が忙しくて思わずサボってしまいました!無理をしてまでも絶対に完結して見せます!では!どうぞ!


ーーー《回想》ーーー

 

15年前……偽りの世界では誰もその島がある事を知らない神秘の島。そこに住むのは世界から忌み嫌われた一部の穏健派の末裔達。その中に幼き頃の小さき勇者【アルトリウス・コールブランド】…そして小さな少女もいた。そうこの少女こそ一年後に母に連れられ、トリト村を去る前の少女…【エミリア・ホルス】であった。エミリアはアーサーに呼びかける。

 

「アーサー君!」

 

「ん?」

 

幼少期のアーサーは振り向く。そこには顔を隠しがちなおかっぱの髪と頬に散らばったそばかすが付いた少女【エミリア・ホルス】がいた。エミリアは頬を赤くし、アーサーにある物をプレゼントをする。それは花で作った指輪であった。

 

「あのね、その…私、もっと大きくなったら…アーサー君のお嫁さんになるね…///,」

 

顔を真っ赤にするエミリア。その事にアーサーの答えは……。

 

「うん、良いよ♪」

 

「本当!?わーい♡」

 

エミリアが抱き付き、好き好きアピールをするのであった。

 

ーーー《回想終了》ーーー

 

14年前との約束を思い出したアーサーは大声を上げる。

 

「あ〜〜〜!!思い出した〜〜〜っ!!そうだ!14年前、確かにお前いたし!結婚の約束もした!!」

 

「やっと思い出したのね!」

 

「…てか、お前…何か容姿が違うなぁ。」

 

「違うって?」

 

「黒髪で素顔は“野暮ったく”、“そばかす顔”で“地味な印象”だったんだけど。」

 

「変わったのよ!黒髪をやめて髪を伸ばしてツインテール!それにこれ整形でもなんでもないの!すっぴんは別だけど。」

 

「いや、ごめん。思わず…。それにしても久しぶりだなぁ〜。」

 

アーサーはそう言うとエミリアの両肩に優しく触れ、語り始める。

 

「あの時は良く森の中の花畑でサヨリとマイラとスゥと一緒に花冠を編んで作って頭に飾っていたなぁ、でもお前のお母さんが急な都合で海外へ行くと決まった事でお前が転校した。あの時は俺もサヨリ達も泣いたよ…だけど…だけど…。」

 

するとアーサーは大泣きし始める。

 

「だけどよぉ…!!いきなりすぎんだよ!!お前がいなくなった後、アルザード帝国の奴らに皆んな殺されて、生き残ったのが俺とマイラの二人だけになって、心をぶち壊されて、マイラだけでは足りないほど孤独感を味わってたんだぞぉ〜!!!」

 

さらにエミリアも泣く。

 

「何よ…!!私だって…私だって…お母さんからアーサー君達が殺されたって聞いて一晩中泣いたもん!さらにはお母さんもノーマ達の反乱で亡くなって、お母さんの弟の家族に引き取られて、アーサー君達やお母さんのいない毎日を探してたのよ!そんな毎日を過ごしていた時に、元皇女のアンジュリーゼの公開処刑にアーサー君が映ってて、人気のないこの辺りにいるんじゃないかと賭けて見たら……ようやく会えたぁ〜!!」

 

「ヤンデレ的ストーカーかよ!?でもこうじて会えだ〜!!だのむがら15年ばえのよゔにぼうどっづぇんどいなぐだらないでぐれぇ〜〜っ!!!12年ぼばえのようにうじないだぐないんだぁ〜〜〜〜!!!!」

 

「これがらはずっと一緒だよ〜!!私達死ぬまでずっと〜!!!」

 

アーサーとエミリアは互いに抱きしめ、泣きくじゃりながら二人の再会を喜ぶのであった。

 

 

 

 

再会で号泣していたアーサーとエミリアは落ち着きながら、コーヒーを飲みながら、互いの経緯を話し合っていた。

 

アーサーは12年前…エミリアが去った数日後に新しく入って来た新入生ユーティス・飛鳥・ミスルギの手によって、サヨリ達が穢れボスキートへと変貌を遂げ、村を壊滅された。そして生き残ったのがマイラとアーサー、そして林間学校に行っていたB組のメンバーだけだと言う事。古の民に助けられたアーサーとマイラはそこで12年間、タスク達と一緒に暮らしていた。

 

「まぁ…こんなところだ。今の俺の経緯は。」

 

アーサーは自身の過去をエミリアに打ち明けた。

 

「…グス。」

 

「え?泣いてるの?」

 

「だって…!アーサー君がそんな事になってたなんて…。」

 

アーサーはせっかく美人になったエミリアの顔が涙や鼻水でメイクが台無しにした事に罪悪感を抱き、謝る。

 

「エミリア…泣かせちゃってごめん。それにメイクが凄い事になってる。」

 

エミリアはマナの光で鏡として展開し、自身の顔がホラーな顔となっていた。

 

アーサーは顔洗いの為に水魔法を唱える。

 

「“水よ来たれ”」

 

掌から水の球が現れ、フワフワしながら宙に浮く。その光景にエミリアが驚く。

 

「アーサー君!今水を掌から出したの!?」

 

「え!?そうだけど?」

 

「凄い凄い!本当に魔法が使えるんだ!」

 

「向こうで色々と…な。あ、それよりエミリア、マナの光で誰か友達いる?」

 

「友達?」

 

「A組メンバー…全員に会いたいんだ。リクを止める為に…。」

 

アーサーの言葉にエミリアはその案に賛同する。

 

「それだったら、私も一緒にやるわ。ニュースでリク君を見た時はビックリしたけど、それに少し詳しい人を知ってる。私の後輩なんだけど…ミスルギ皇国にいるの。その人はちょっと…“はっちゃけ”ている人なの。」

 

「“はっちゃけ”?」

 

「うん、名前は【ミリーナ・ディン・メッシーナ】。鳳凰院の生徒会長を勤めているの。後、ジェニスやアディにキッドとカイ、そして行方不明になっている“フェリシア”ちゃんだね。」

 

「え…。」

 

「あれ?アーサー君どうしたの?」

 

「いや…別に。(そう言えばフェリスの奴、鳳凰院で通っていたって言ってたなぁ。)」

 

「一年前だけど、ほら。」

 

エミリアは鳳凰院のOBであった為、フェリスがまだ新入生としての写真をアーサーに見せる。そこには大先輩として彼らを応援するエミリアとフェリス達が集合していた。

 

「あの頃を思いだすわ〜。」

 

「(エミリアとフェリス…良い学園生活をしてたんだな…。でも、良かった。)」

 

「ほら、この子…ミリーナ・ディン・メッシーナ。」

 

エミリアがその子へ指を指す。ダブルピースしている金髪の美少女。彼女がエミリアの後輩にして友人であった。

 

「この子がリクの何か知ってるのか?」

 

「えぇ、彼女……“リク君の幼馴染”で“許嫁”なの。」

 

「……はぁっ!?幼馴染で許嫁〜!!??」

 

アーサーがその言葉に動揺する。それもそうだ…リクはアーサーとユーティスと同等に張り合える呪力を持ち、皆んなの仲を纏めることができる…正に【理想の人】でもあった。しかし彼には問題点があった…それは女の子の前では純朴かつ天然である事を…。そんな彼が幼少期からの許嫁がいる事が一番の驚きでもあった。

 

「私もビックリしちゃったの。リク君とは古い付き合いで一目惚れだったらしく、彼女の父親とリク君とリリーちゃんを養子として引き取ってくれた親が仲の良い関係で、それぞれの家の家系や名を消えさせない願望の為に政略結婚って言う形だったんだけど、ミリーナちゃんがリク君を見て一目惚れして……。」

 

「……マジか。」

 

「マジのマジ…。それからリク君が最近おかしくなったの。」

 

「ジャスティスか…」

 

「うん、それぞれの親は彼を失望して、絶縁しているの。でもミリーナちゃんはそれでも彼の事を心配しているの。」

 

「そうか…。そこまでリクの事を…。」

 

「行ってみる?」

 

「行くしかないだろ、リクの為にも…。」

 

アーサーとエミリアは荷物を纏め、エンデラント連合を後にし、神聖ミスルギ皇国へと歩む。

 

二時間後、高速バスに乗って、神聖ミスルギ皇国へと辿り着いた。前まではアンジュがテレビや雑誌、広告に出されていたが、今ではミリア・隼・レーグニッツで埋め尽くされていた。

 

「スゲェ…(前まではアンジュだったのに。)」

 

アーサーは一変したミスルギ皇国の都市を見渡す。さらにフォーカスでミスルギ皇国の車や路面電車、バス、建物や店をスキャンする。

 

「(必要な地形図と背景をっと…。て言うか俺…何でこのクズ国家を調べているのか…。それに……。)」

 

アーサーはあの日の事を思い出す。あの日…アンジュがまだ皇女だった頃、ミスルギ邸に忍び込み、ジュライ元皇帝に言った言葉であった。

 

 

『「驚かせてごめんなさい、皇帝陛下。僕は“アグニ”貴方の味方です。」』

 

 

「あの時…何で俺はアーサーと名乗らず“アグニ”って…。(アグニ…なんか何処かで聞いたような名前だ…。)」

 

アーサーが深く考え込みながらフォーカスで写真を撮っている姿に問う。

 

「アーサー君、何をしてるの?」

 

「ん?写真を撮ってる。」

 

「へぇ〜、その装置カメラにもなってるんだね。」

 

「うん。」

 

その事を知ったエミリアは色々な店を見て回る。アイスクリームを食べたり、お昼にはアーサーの奢りなのか、ソルの光による【無限ポイント】によって無償でランチを一緒に食べたりした。“因みにフォーカスで思い出も写真に収めた。”

 

「やれやれ…これじゃデートだな。」

 

アーサーがそう言うと、エミリアが言う。

 

「着いたよ。」

 

エミリアは目的地でもあるミスルギ皇国の学生達が通う高等学院【鳳凰院】に着いた。

 

「ここが鳳凰院…(かつてアンジュとフェリスが通っていた学院。)」

 

「あれ?あれってエミリア先輩!?」

 

「嘘!」

 

「エミリアさんだ!」

 

かつてエミリアはアンジュリーゼに勝る程のマドンナであった為、高等2年から3年の学院生から注目されていた。

 

「(凄い人気だなぁ…エミリア。)本当に大丈夫なのか?」

 

「えぇ、言ったでしょ、保証はするって。」

 

「そうだな。」

 

その事を安心したアーサーであったが…。、

 

「エミリアさんと隣にいる男性…メチャクチャカッコいい!!」

 

「イケメン!イケメン!」

 

「ヤバイよヤバイよ!もしかして“彼氏”!?」

 

「(めっちゃ見られてる。)」

 

「大丈夫大丈夫♪」

 

エミリアはそう言う、アーサーの左手に抱き付きながら歩く。

 

「っ!?」

 

《キャアアア〜〜〜ッ!!!!!》

 

多くの女子達から歓喜が上がる。

 

「(やばい…やばいよ。エミリア、本当に大丈夫なのか?)」

 

「♪」

 

アーサーが不安になるも、エミリアは全力アピールを見せつけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー「◯月◯◯日 木曜日ーーー今日、15年前にトリト村から去ったかつてのA組メンバーである【エミリア・ホルス】と再会した。彼女はどうやら、何らかの力で俺の居場所を特定し、追い掛けて来たのだと思う。だけど彼女が無事ならそれで良い。再会した時俺とエミリアは号泣したwwww。

エミリアの奴、昔と違って容姿が半端なく変わった。15年前は黒い髪、前髪で両目を隠し、気弱で地味、顔にそばかすが付いた少女だったが、今ではそばかすの無いピンクでロングヘアーなギャルへと変わった。

そして俺はかつてエミリアとアンジュ、そしてフェリスが通っていた鳳凰院へと向かい、そこにリクの許嫁でもあるミリーナ・ディン・メッシーナに話を聞いてみる事にする。彼女なら…リクの身に何が何が起こったのか聞かれるかもしれない…。




誤字・脱字がありましたら御報告をお願いします。


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Another08【A組との再会①】

【鳳凰院】ーーー皇女として通っていたアンジュリーゼと筆頭侍女のモモカ・荻野目、フェリシアとエミリアが学籍を置いていた高等学院。本来ならアンジュがこの学院のマドンナでもあったが、今ではミリーナが校舎の立場に任していた。そして鳳凰院にはアーサーにとって、かけがえのない唯一無二の“先生”がいた。かつてトリト村でA組の担任、今ではエアリア部の顧問を務める眼鏡を掛けた女教師【キョウコ・林】であった。

 

「先生、久しぶりで〜す!」

 

「エミリアちゃん!?」

 

「先生も相変わらず変わってませんね〜、ところで“彼氏”はもうできたのですか〜?」

 

キョウコ・林の唯一の悩み事…30代間近であるのに彼氏がいない事だ。キョウコはその事でコンプレックスを抱いており、その事を口にするエミリアの頭に空手チョップをした。

 

「痛っ!」

 

「それは言わないで。」

 

キョウコがそう言うと、アーサーを見る。

 

「っ!!?」

 

「キョウコ先生…。」

 

「アーサー!!」

 

「あなた今まで何処にいたの!?あの悲劇の日に皆んなで散々探したのよ!」

 

キョウコがアーサーを見て泣き崩れる。

 

「まぁ!髪の色までも白く、右目のも無くなっちゃって、でも貴方が無事で良かった。見つけられなくてごめんね!」

 

キョウコが嬉しそうにアーサーを優しく抱きしめる。

 

「先生…。」

 

アーサーも今まで優しく接してくれた教師を優しく抱きしめる。

 

 

 

 

その後、アーサーとエミリアはキョウコに事情を話し、生徒会室にいるリクの許嫁“ミリーナ・ディン・メッシーナ”と話していた。

 

「え〜っと…あなたがリクの幼馴染?」

 

生徒会長を務めているミリーナがアーサーに問う。

 

「はい。アルトリウス・コールブランドと申します。アーサーと呼んでも良い。」

 

「あ、どうも…。(あれ?“アルトリウス”…何処かで聞いたことあるようなぁ…。)」

 

ミリーナはアーサーの名前に何か、疑問に思うと、アーサーがリクの件を問う。

 

「さっそくだがすまない、リクはどうしてこんな事を?」

 

「“フェリシア”ちゃんが…連行されたことなの。」

 

「……」

 

「フェリシアちゃんにはノーマの妹がいて、二人の弟のクレインとランス、そしてそのミントと子がそうだったの。“誰か”によってミントちゃんがノーマだって言う事が皆んなにバレてしまって、フェリシアちゃんはミントと弟達を連れて…。」

 

「そうか…。」

 

「リクとリリーちゃん、フェリスちゃんの事で悩んでいた私の事を思いながら各国の法律に反旗を翻したの。あの日にアンジュリーゼ様が絞首刑にされそうになった時、変な反乱分子の人達が彼女を助け出した後、“赤い人”がジュリオ陛下の顔に火傷を負わせた事で…。」

 

「自分達もやれると反乱組織を…?」

 

ミリーナは首を縦に動かし、頷く。アーサーは深刻な表情になる。

 

「……(俺のせいか…俺がアンジュの無能兄貴の顔面に一撃を喰らわせてやったのがそもそもの間違いだったんだな…。)」

 

あの処刑場での出来事がリクとリリーの歪んだ勇気の着火剤になった事に後悔するアーサー。

 

「所で…アーサーさんはエミリアさんの事どう思ってる?」

 

その言葉にエミリアは顔を真っ赤にすると、アーサーは答えた。

 

「……大切な“許嫁”です♪」

 

「「「!!!」」」

 

「許嫁って言っちゃったよ!うわ〜!

 

「ちなみにアーサー君、魔法が使えるの♪」

 

「え?」

 

アーサーはミリーナに水魔法、火魔法、土魔法、風魔法、光魔法、闇魔法、雷魔法、氷魔法を見せる。

 

「マナの光よりも凄い!」

 

ミリーナが驚く。

 

「え!?どうやったの?アーサーさん!手から水や火や砂や風が出てきたんだけど!?!?」

 

「魔法使いですから。」

 

「凄い!この人材は欲しいわ!」

 

「ダメよ、アーサー君は私の将来の旦那様なの…フフフ♪」

 

「///…。」

 

エミリアはそう言いながらアーサーに抱き付き、大好きアピールをする。

その後、ミリーナはマナの光を使い、ミリーナの親友であったリクの妹【リリー・マッケナー】との通信を開く。

 

「出れると良いが…。」

 

「大丈夫よ…アーサー君ならきっと…。」

 

二人がそうこう言っていると通信が開かれた。ノイズが多く発生する映像が晴れ、“彼女”が映し出される。昔と変わらない小麦色の褐色肌、私服の上に防弾ベストを着た美少女…12年前、リクと共に穢れボスキート化した仲間によって喰われたリクの妹…リリーであった。

 

「ミリーナちゃん、どうしたの?」

 

「ごめんなさい、急な電話で。本当だったら通信はダメだって言われちゃうね。」

 

「それで…どうしたの?」

 

「実は…リク君やリリーちゃんに会わせたい人がいるの…私の近くにいるけど。」

 

「近くに?」

 

「やっほ〜!リリーちゃん!」

 

「エミリアさん!?」

 

「久しぶりだね!」

 

「どうして!?」

 

「訳は後。会わせたい人は私じゃないの。」

 

エミリアはそう言うと、アーサーが顔を見せる。

 

「久しぶりだな…リリー・マッケナー。12年ぶりだ…。」

 

「この人が?会わせたい人がいるって言ったのに……言ったのに…。」

 

リリーはアーサーの顔を見ながら12年前の事を思い出す。そして…彼女は半泣き状態になり、目玉が飛び出る。

 

「えぇぇぇぇぇ〜〜〜〜っ!!!!ア〜〜〜サ〜〜〜お兄ちゃ〜〜〜んッッッ!!!???」

 

リリーは泣きながら確かめる。

 

「嘘だ!12年前に亡くなったはず!」

 

「……13年前、良く西十郎から怒られたり、森の中で迷子になってリクと一緒に見つけたら小便漏らしてただろ?」

 

その言葉にリリーは顔を真っ赤にする。だがそれを知ってるのは紛れもなくあの場にいた兄ともう一人の義兄的な存在であった人物……。

 

「ア〜サ〜お兄ちゃんだぁ〜〜〜〜っ!!!!」

 

リリーが号泣する。

 

「久しぶりだな、リリー。」

 

「本当にアーザーお兄ぢゃんなの!?」

 

「俺じゃなかったら何だよ?」

 

「あぁ〜〜!!!」

 

リリーはさらに号泣する。っと、泣き声に気付いたのか扉が開き、現れた影。

 

「リリー!お前!」

 

「お兄ちゃ〜〜ん!!」

 

「お前!もう切れって……え!!?」

 

「やっほ〜リク。久しぶりだな…。」

 

「……アーサー、か?」

 

「13年前…西十郎さんからバリバリ怒られただろ。そして森の中で俺と一緒にリリーを探しに行った。」

 

「!!!」

 

リクは13年前の事を思い出すと同時に、それを知っているのが他の誰でもないアーサーだって事を。

 

「お前…今更だが顔見せるなよ…。」

 

リクは泣き顔を見せないつもりなのか、顔を下へと向けるのであった。

落ち着きを取り戻し、リクとアーサーは映像での面会をする。

 

「落ち着いた?」

 

「すまん、お前に恥ずかしいとこを見せてしまって。」

 

「率直に言おう…ジャスティスを直ぐにその基地から逃げろ。」

 

「何…?」

 

「本当に倒すべき敵は人間でもない…。今から話すことは絶対な事だ。良く聞いて、この世界の諸悪の根源はゼノムだ。ゼノムは俺達の想像を遥かに越えた本物の“怪物”達なんだ…。」

 

「「ゼノム……?」」

 

「……やっぱり、そっちへ行った方が良いか?」

 

「え?」

 

「ちょっと待ってくれ…。」

 

アーサーはそう言うと、懐から【ラプラスの図書館】へと通じる扉を取り出し、その場で開き、中へと入る。

 

「「え!?」」

 

生徒会室の筈なのに、扉の向こうには大量の本棚がある空間に驚くエミリアとミリーナ。アーサーは探したい能力を言う。

 

「検索開始…【GATE】。内容“瞬時に移動できる魔法”、追記“記憶によってできる魔法”。」

 

すると本棚からある2冊の本が飛び出し、アーサーの元へ来た。本のタイトル名に【GATE】と【RECALL】と言う文字が浮き出る。アーサーは無属性魔法の一つ【GATE】と【RECALL】と言う魔法を学習する。

数分後、扉が開き、アーサーが出てくる。

 

「覚えたよ。」

 

アーサーは余裕満々な表情でミリーナに頼み、リクとの通信を開かせた。

 

「アーサー、急に通信してきて一体何を?」

 

「ちょっとお前達の基地の外観を見せろ。」

 

「え?」

 

「良いから。」

 

「え!?分かった…。」

 

リクは言われた通り、基地の外観を移す。

 

「山の中にあるのか?」

 

「あぁ、フィラデルよりも離れた場所で、古の民の隠れ家でもあるんだ。」

 

「そうかそうか…良し。把握できた。今そっちに向かう。【RECALL】。」

 

「リコール?」

 

「【GATE】。」

 

アーサーがそう言うと、リクの背後からワームホールが現れ、中からアーサーが出てきた。

 

「やぁ!」

 

「「っ!!?」」

 

「…アーサーか?」

 

「うん、そうだよ。」

 

「今、どうやって?」

 

「“魔法”と言ったら?」

 

アーサーはそう言うと指先から火を着火させたり、水や旋風、石を出現させる。

 

「…ヤバッ。」

 

リクは突然の事に放心してしまう。数分後、我に戻ったリクはアーサーを接待室へと案内させた。勿論、エミリアとミリーナも連れて。

接待室の椅子に座るアーサーは目の前にいるリクと話していた。

 

「…つまり、ゼノムっていう本当の化け物達がお前の本当の両親を殺した連中が本当の敵であり、他の世界を遊び道具にしているって事なのか?」

 

「そうだ。」

 

アーサーは掌からソルの光を使ったゼノムのホロ映像を出現させる。それに映るのは青白く輝きながら透き通るクラゲの様な化け物。

 

「何だ…この化け物は!?」

 

「これがゼノムだ。」

 

「俺たちは…こんな奴らに良い様に振り回されていたのか!?」

 

「…そうだ。」

 

「冗談じゃない!じゃあ今までノーマが化け物って罵られていたのは!?」

 

リクが怒りながらアーサーにその事を聞くと、アーサーは真実を悟った。

 

ノーマの正体、マナの光や人間、世界の情勢や闇を聞いたリクは頭を抱える。

 

「なんて事だ…俺たちは…俺たちジャスティスはこんな奴等の為に良い様に使い捨ての如く弄ばれていたのか…?」

 

「マナの光が…そんなシステムだったなんて…。嫌…こんなの高度社会化システムでも平和でも理想郷でもなんでもない!どうして私達はこれを平然として使ってたの!!?」

 

ミリーナも叫ぶ。

 

「全部が嘘だったんだ…マナの光は恩恵でもなんでもない…人の意思を完全に狂わせる手錠で呪いだったんだ…。」

 

「マナの光は真実の地球で戦っているドラゴンの声とノーマの接触よって、精神干渉を破壊し、マナの光が使える人間の本性やゼノムによる精神支配を破壊できる。だがエンブリヲはそれを利用し、マナの光に“ノーマ”を嫌悪をさせる様にプログラミングさせた…。」

 

「それってつまり……。」

 

「この世に生を受け、産まれてきたノーマを…ゼノムの為の生贄としてだ。」

 

アーサーから放たれた真実に動揺し始めるミリーナとリクとリリー…。

 

「そんな…!!」

 

「酷い…あまりにも酷すぎるわ!」

 

「そしてマナの光の事でもう一つ伝えたい事がある。マナの光はーーー。」

 

アーサーはその事を話した。話が終わるとリクとリリーが泣いていた。

 

「ごめん…アーサー…。俺、何にも知らなかった…。」

 

「あ〜ざぁ〜お兄ぢゃん!!本当にごべん!!ぞんなことになっでだなんて〜!!!」

 

リクとリリーの他にミリーナも泣いていた。

 

「気にしなくても良いんだ。俺で何とか解決策を見つけてみるから。」

 

「そうはいかん!お前、そんな身体でずっと皆んなのために!」

 

「良いんだ。時間がないから手短に言う。“第一…この反乱はお前達では勝てない。俺と組むかこの世界の人達の権力によって殺させるか”。“第二…お前…許嫁を困らせた事。絶対に許さない”。“第三…12年前に俺がいなくなったあの後、テツジ達に全員連絡する事(具体的内容は俺が呼んでいる事)。”」

 

「…無茶苦茶だ。(手短って言ってたけど結構長いぞ、オイ。)」

 

「心配するな。お前達の安全は保障してやる。知り合い…B組メンバーが連邦軍や研究員、ジャーナリストとして活躍している。」

 

「B組!?と言う事は…。」

 

「オルト達がいる。ネーラにアイン、ナツキ、ナタリア、ポーラ、ネス、ニック、ツカサに皆んなも。」

 

「アイツらも!?」

 

「あぁ。」

 

「そうか…行方不明となっていたが、そうだったのか。」

 

「それともう一つ、大事な話がある。」

 

「大事な話?」

 

「ミリーナさん、リリー、あなた方も含めて。」

 

「え?」

 

「私も?」

 

「率直に言おう…“フェリス”は生きている。」

 

「「「っ!!?」」」

 

「フェリスちゃんが!?」

 

「生きてる…。」

 

「フェリスさんは何処に!!?」

 

「……ゼノムの手中だ。」

 

「何だって!!?」

 

「え!?どうしてそんな事を!?」

 

「……俺がフェリスの旦那だからだ。」

 

「「「旦那!!?」」」

 

「って事は…アーサーお兄ちゃん!結婚したの!?」

 

リリーが驚くと、アーサーは白無垢姿と披露宴の写真を見せる。その事に3人は驚く。

 

「マジか!」

 

「あぁ!フェリスちゃん!こんなに綺麗で羨ましい!」

 

「アーサーお兄ちゃん…まさかフェリスさんをたらし込んだの?」

 

「違うわ!助けた時に彼女が熱愛したんだ!」

 

「ふぇぇ〜〜っ!!??」

 

「それに…フェリスは俺の子供を身籠っているから。」

 

「「「なぁ〜〜〜〜〜っ!!!!!?????」」」

 

フェリスの結婚、妊娠報告に3人一同は勢いよく叫ぶ。

 

「こ!コイツとんでもない野郎だ!!」

 

「え!?でも身籠るにしては何か判明するの短くない!?」

 

「それなんだけど俺の細胞に…お前達にとってはトラウマものだけど…ボスキートによる活性細胞によって受精率が高くなってるし、それに胎児の成長がやや上がっているって向こうにいる医学に詳しいスペシャリストからその情報が分かったんだ。」

 

「え!?因みに…伺うぞ。それ…エミリアの前でーーー。」

 

「知ってますよ。」

 

「「「「えぇっ!!??」」」」

 

「アーサー、お前が驚いてどうするんだ?」

 

「いや…初耳。」

 

「嘘だろ。」

 

エミリアはそう言うと懐からある日記を取り出す。それはボロボロだが紛れもなくアーサーの日記であった。

 

「俺の日記!!?」

 

「これに書かれているのを見て、アーサー君のお嫁さんが私も含めて“12人”の事も書かれているの。」

 

「「「「12人!!!???」」」」

 

「アーサー君って結構『家族想い』でしょ。それだと思うの。」

 

「12人って…。これ史上最大の一夫多妻制の家族構成になるなぁ、異母兄弟や姉妹、従兄弟姉妹、さらには義兄弟の契りをしたタスクやライド、エクエス…さらにはフェリスの遠い親戚でもあるアンジュを含めた皇帝陛下と皇后陛下も…。」

 

「おい、考え過ぎだ。全く、お前のその仲間意識と重度の家族想いは変わらないようだな。」

 

「言ってろ。お前もリリーも俺の家族の一員でもあるから。めちゃくちゃ頼りにしてる。」

 

「「……///」」

 

「何んで黙るんだ?」

 

「いや!別に!」

 

「(照れてるね。)」

 

「(リク君のあんな顔…初めてかも。)」

 

その後、アーサーはエミリアとミリーナを先に返すと、基地の中を見て回る。

 

 

基地内には色んな物質とジャンクパーツ、数人の子供やノーマの子達がいた。こんな人数にはしっかりとした人数分が必要じゃないかと思われたが、リクは言う。

 

「テツジの奴からの支援だ。」

 

「テツジからの!?」

 

「あぁ。アイツは凄いぞ…父親が管理する大企業【渡月】と大富豪の連盟組織である未来派共同体を取り仕切っているんだから。」

 

「それじゃあ…ジャスティスの支援者って事か!?」

 

「それだけじゃない…渡月のCEOでありながら凄い功績を成し遂げた事で、ローゼンブルム王国国王にとんでもない要求をした…。」

 

「どんな?」

 

「…“お嬢様を私に下さい”っと。」

 

「……はぁっ!!?ミスティ・ローゼンブルム王女にお付き合いの許しぃ〜っ!!?それで!?」

 

「国王からの返事は……OKだと。」

 

「マジか!!アイツ…玉の輿狙いじゃなかろうなぁ!?昔っから金銭的な夢を持っていたからなぁ…本当に夢を叶えるなんて…。」

 

「アイツがローゼンブルム王国に引っ越した後、高等時代に“彼女ができた”って報告され、相手は“中等学院のミスティ”って聞いた時はびっくりしたよ。」

 

「え!?中等生だった頃の王女様を?」

 

「あぁ。」

 

「……やるな、テツジの奴。」

 

「それとまだある。ヴェルダ王朝にいるアリサもまた、功績を成し遂げた。彼女は昔、ゴスロリ服が趣味だった為かイラストデザイナーの社長にまで昇りつめようとしてやがるんだ。」

 

「スゲェ…。テツジとアリサの奴…功績上げるねぇ。」

 

「それとスゥとカツキも功績を上げてやがるぞ。」

 

「スゥとカツキも?」

 

「スゥは看護師として頑張っているし、カツキは弁護士。他にもーーー。」

 

リクはA組メンバーの現在を話し始める。

 

・『シュン』は王国時報社に就職し、記者として務めているとの事。

 

・『ユキ』は王国の介護福祉団体に就職。

 

・『ムツミ』は老舗百貨店「ローテリアコーポレーション」の責任者となっており、ライバル店の登場で落ち込んだ経営の立て直しに奔走しているとのこと。

 

・『ルリ』は自身が書き綴っていた作品が受賞されたことにより、作家デビューが決まったとの事。 デビュー作がその手の愛好家には非常に好評で、「先生」と呼ばれている。

 

・『チエ』は世界中で神出鬼没・都市伝説かの如く現れ、謎めいた占い師をしており、彼女に占った人達は絶対にその運命が当たると言う事実。(マジかよ…。)

 

・『ロミオ』はエンデラント連合とマーメリア共和国との交渉や輸送機などを運搬をする海運局に就職。

 

・『マコト』はロミオと同じく、エンデラント連合とマーメリア共和国の海運局に就職。

 

・『モモ』は細かい作業が得意分野だった為、宝石店を営んでいるとの事。アラシと結婚しており、愛娘がいるとの事。

 

・『アラシ』はモモと結婚し、夫婦で宝石店を経営している。

 

・『シズク』はヴェルダ王朝で放送局に就職。現在はダラーナ支局に配属され番組作りに励んでいるとの事。

 

・『ケイ』は大の料理好きだった為、両親が経営しているヴェルダ王朝風中華料理店で手伝いをしているとの事。(チキンカツのせ麻婆カレーがまた食べたい♪)

 

・『サアヤ』は帝国時報社に就職。ローゼンブルム王国にいるシュンとは凄く競い合っているとの事。

 

・『アレン』は世界各地を旅をし、芸術家として頑張っているとの事。

 

A組メンバーのその後の人生にアーサーは感動していた。

 

「皆んな…それぞれの夢を叶えたんだ。あ、そう言えばサヨリは?」

 

「サヨリか。彼女は普通だよ。幼稚園の先生として活躍している。」

 

「そうか…。」

 

「俺は防衛大臣になりたかったが…今じゃレジスタンスのリーダーだ。おまけにアーサーは軍の特務大佐…比較できないよ。」

 

リクが比較的な言葉にアーサーは言う。

 

「じゃあなれよ。諦めるな。ゼノムを倒せば真実の地球でその名が轟く。連邦と共に加勢してくれた者として、上層部が考えてくれるぞ。その為には…!」

 

アーサーは立ち上がり、交渉・要求・条件を言う。

 

「“俺の傘下に入ること”、“ジャスティスの解散の発表”(俺直属の部隊になる事)そして“入隊した分きっちりと腕と脚や自分の脳を動かし、皆んなに迷惑かけた分働く事。”…良いか?破ったら軍法裁判にかけられ、軍刑務所に送られるからな!!」

 

アーサーは腕を組み、途轍もない威圧でリクを圧迫感で上から見下ろし、そして仁王立ちする。

 

「は…はい。」

 

リクは思わず腰を抜かしてしまう。さらには背後にいたジャスティスの皆さんも含めて…。

 

基地内を見て回ったアーサーはリクに連れられ、格納庫へと辿り着く。

 

「ここが格納庫だ。」

 

格納庫は広く、ハンガーには寄せ集めのジャンクパーツで装甲板で装備されたパラメイルがあった。すると一つのハンガーにあるパラメイルにアーサーら驚く。それはリクが使っている黒いカラーリングが塗られ、主翼部と頭頂部のアンテナが改造が施されていた。グレイブであった。問題はそれではなく、その“グレイブ”であった。

 

「そのグレイブは打ち捨てられていたのを直して、リク様にカスタマイズしたんだ。」

 

「このグレイブ…“あの人”のか?」

 

「あの人?」

 

「最初見た時、装甲が黒く、赤いカラーリングもあったか?」

 

「え?あぁ…。」

 

「やっぱり…。これイシュトバーン…古の民の一人で俺の義兄弟であるタスクの父親のグレイブだ。」

 

アーサーは12年前、モーガンと共に彼を手厚く看病し、さらには三ヶ月間のサバイバル知識を身につけさせてくれた恩師の一人……イシュトバーンがフラッシュバックの如く、思い出す。

 

「飛べるのか?」

 

「あぁ、テツジが秘密裏に整備してくれていたからな。」

 

「アイツにも感謝しないとな。この機体は今は亡きイシュトバーンの機体でもある。リク、大切に扱ってくれ…。」

 

「分かった。」

 

アーサーはそう言うとGATEを開く。

 

「もう行くのか?」

 

「できればゆっくりと話したかったが、生憎俺には時間がない…でもお前が勇気を出して皆んなに俺の事を連絡してくれたら、それはそれで助かる。」

 

「…待ってくれ。それだったら良いものがある。」

 

リクは別の部屋へと移動し、棚から各国に関する資料や街の写真が貼られた地図を出す。

 

「皆んなと会うなら、これを持って行け。俺はお前のように魔法が使えない…でも、お前のおかげでやっと自分を取り戻せた。良いぞ…ジャスティスの解体、改めて【義勇軍】として、エンブリヲとゼノムを倒し、フェリシアの救出に専念する。」

 

アーサーは地図を受け取るり、GATEの先へと進む。そしてGATEが閉じ、その場で消える。

鳳凰院の生徒会長室に待たせていたエミリアとミリーナがいた。

 

「どうだった?」

 

「解決。そして…。」

 

するとミリーナからマナの光での通信が入る。相手はリクであり、ミリーナは掛ける。

 

「もしもし?あ、リク君!ーーーうん、分かったわ!」

 

通話を切り、ミリーナが報告する。

 

「リク君が君の両親や彼の両親と話がしたいって。」

 

「そうか…俺もいてやろうか?弁護する為に。」

 

「いや、良いって。これは自分の問題でもあるからって。」

 

「そうか、分かった。」

 

その後、アーサーとエミリアは鳳凰院から出ていく。夕陽の光で照らされるミスルギ皇国の都市の中を歩くアーサーとエミリア。するとアーサーがある事を言い出す。

 

「さてと、俺は疲れた…エミリア、お前の“家”に止まって良いか?」

 

その言葉にエミリアがもう一度聞き直そうと返事をした。

 

「……ほえ?」

 

「…ほえって何だよ。いずれは“嫁”になるお前の家に泊まってちゃ悪いか?」

 

「…あ!いやいや!全然!!(こんな展開ずるいよ〜!!)」

 

エミリアの両頬がリンゴのように真っ赤になり、両手で両頬を抑え、首を横に振るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ある会社にてーーー。

 

「わかった?この男の子の居場所…」

 

「それが…まったくわからなくて…」

 

マナの光で映し出されたアーサーの写真。ある高貴なスーツを着た女性とスタッフが何かを話していた。

 

「何者なんだろう?」

 

「本当に素人なのかな?」

 

デスクでそれぞれの仕事をしているスタッフ達がマナの光での通信をしながら、彼の情報を探ろうとしていた。

 

「こんな子が埋もれてたなんてねぇ、シュン!」

 

「はい!」

 

女性が言った男の名前ーーー12年前、超星寮にて穢れボスキートとなり、アーサーによって祓われ、何者かの手によって生き返った友の一人【シュン・貝塚】。現在の彼はローゼンブルム王国時報社に就職し、記者として務めていた。そんな彼はマナの光でミスルギ皇国で話題となっている“超絶美系の青年”の事で雑誌に掲載されていた。シュンは頑張るぞっと言う雰囲気を出す。

 

「絶対に捕まえるわよ。どこの事務所よりも先に。彼にコンタクトを取って」

 

「わかりました!」

 

シュンは社長の命令を従い、直様ミスルギ皇国へと向かうのであった。

 



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Another09【A組との再会②】

その頃、ある施設にてーーー。

 

『緊急事態!ラボ02にてハザードレベル05が発生した!!首謀者は【ジオット】と判明!』

 

施設内でアナウンスが聞こえる中、別の通路から銃声が鳴り響く。アルザード帝国警備兵達がサブマシンガンを乱射していた。銃撃によるフラッシュに写る巨大な影、銃声が段々と静かになって行き、そして…。

 

「あ…あぁ〜!!!やめろぉぉぉ〜〜〜!!!!!」

 

一人の警備兵が悲鳴を上げながらサブマシンガンを乱射するも…。

 

グシャリッ!!

 

肉が抉れる音が聞こえた。通路に転がるのは警備兵達の無惨な姿と血の海となっており、監視室も何者かによって監視員が殺されていた。そして研究所が爆発し、巨大な開閉ハッチが吹き飛び、それは爆炎の中から現れた。

 

「フンッ!どうやら実験は成功みたいだな…。」

 

炎の灯りで写る巨大な影の形が変貌を遂げ、小さくなる。それは眼鏡を掛け、奇妙なインナースーツを着用した男性であった。

 

「最初から私に射てば良かったんだ。じゃなければアルザード帝国のケーニヒスやエンブリヲ、ゼノムの女王たるザリマンにこき使われずにすんだ。だが、それも終わりだ。」

 

男はそう言うとある者に通信をする。

 

「おい、ユリウス。命令がある。」

 

『このユリウスにお任せを!』

 

発声られた陽気な雰囲気をした機械音声、彼の人工知能にして側近【ユリウス】が会話する。

 

「よく聞け、これより私はゼノムを叩き潰す。その為にはある男の接触、誘導し、3年前の過去へと行くぞ。」

 

『承知しました!このユリウス、必ずや目的を果たします!』

 

「期待しているぞ。」

 

男はそう言うと、ユリウスとの通話を終える。そして男はデバイスからある青年の顔写真が映る。

 

「ミスルギ皇国で話題となった謎の美青年……ユリウスよ、私の目的の為に励んでくれよ。」

 

男は不適な笑みを浮かべ、森の中へと消えた。それと同時に燃え盛る研究所の下から巨大な箱が引き上げられ、光学迷彩で隠すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

一方、アーサーは寝床確保の為、エミリアの家に泊まることとなった……。

 

「……マジか。」

 

アーサーは驚く。エミリアの家はなんと……“豪邸”であった。池に大庭、ミスルギ邸に負けないくらいの広さでもあった。ドアが開き、中にはメイド達がズラッと整列していた。

 

《おかえりなさいませ、お嬢様。》

 

「お、お嬢様!?」

 

エミリアがこの邸のご令嬢だと言う事に驚くアーサー。そしてエミリア

の元に紳士な御老人が近づく。

 

「おかえりなさいませ、エミリアお嬢様。」

 

「暫く留守にしてごめんなさい。爺や。」

 

エミリアは謝罪する。彼の名は【ラムズリー】ーーーエミリアの充実な執事として務めており、エミリアの服を外出用から邸内での礼装な服へとマナの光で変わらせた。

 

「あなたがエミリア様が仰っていたアルトリウスですね。」

 

「え、はい。」

 

「この度は長旅でお疲れ様です。そして…。」

 

《エミリアお嬢様をどうか末永くよろしくお願いします。》

 

「///!?」

 

「も〜!爺や!」

 

「ホッホッホッ♪そうでした♪まだご結婚なされてなかったのですね♪」

 

ラムズリーが笑う中、エミリアは顔を真っ赤にしながら説教する。アーサーはエミリアの邸内のお風呂に入っていた。

 

「にしても広いなぁ…俺の邸の2倍もある大浴場だ。」

 

大浴場と言うより、真実の地球にあったとされる古代ローマの“スーパー”銭湯そのものであった。石造りでできた階段や柱、石壁、その光景にアーサーを驚かせる。

 

「偽りの地球の文明も悪くないな…。」

 

アーサーはそう言うと、辺りを見渡す。

 

「誰も……見ていないな。」

 

っとアーサーはソルの光でトリト廃村に改修されている方舟の状況を知る。

 

「着々と作られているな…。それに今の時間帯だと…丁度トリト廃村に来ている俺とフェリスがイチャイチャしている頃だな。」

 

アーサーはそう言いながら改修されている方舟にある設定を組み込んでいく。

 

「(後はこうして…)良し!」

 

「何が良しなの?」

 

「俺の船のシステム設定だよ…ん?んんっ!!??」

 

っと彼の横にタオルを覆い隠し、髪を束ねたエミリアが一緒に入っていた。

 

ニコッ♡

 

エミリアはアーサーにウィンクすると、アーサーの顔が真っ赤となり、そして…。

 

「ぶぅーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

アーサーは思わず鼻血を噴き出してしまい、気を失う。エミリアは慌てながらアーサーを運び、扇風機でアーサーを冷やすのであった。

 

意識を取り戻したアーサーはソルの光で和服に着替えたアーサーはエミリアに呼ばれ、横長いテーブルの上には豪勢な料理が置かれていた。フルコースの定理になっており、前菜、スープ、魚料理、肉料理、ソルベ、ローストの肉料理、生野菜、甘味、果物、コーヒーなどが置かれていた。アーサーは料理を味わうのであった。メイドに自身が泊まる部屋へと案内されたアーサーは豪華な内装がされた部屋のベッドの上で横になり、夕食の事を考えていた。

 

「(西洋料理とか久しぶりだな……東洋料理の日本料理に中華料理、インド料理、ベトナム料理系は知っていたけど。第三の地球に戻される前に考えとこ。)」

 

アーサーがそう考えていると、ドアの向こうからノック音が聞こえてきた。

 

「アーサー君」

 

「ん?鍵なら開いてるよ。」

 

入ってきたのはエミリアであった。

 

「どうした?」

 

「今度は何処に行くのかなって。」

 

「あぁ、その事。」

 

アーサーはリクから貰った世界地図とパンフレット、さらには観光地の写真を取り出す。

 

「次に行くのは…ここ。」

 

アーサーが指差した国……【ローゼンブルム王国】であった。

 

「テツジ君達がいる場所ね。」

 

「あぁ。向こうではリクが皆んなに電話していると思う。それに…。」

 

アーサーは12年前の事を思い出す。

 

「アイツに…どうしても謝りたくて。助けられなくてごめんって。」

 

「大丈夫よ、皆んながアーサーを許してくれる。絶対に!」

 

「そう願おう…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、リクは責任を持って皆んなに電話していた。話し相手はヴェルダ王朝にいる【アリサ・リ・アトラルカ】であった。そんなアリサは不機嫌そうな表情をする。それもそうだ…相手はテロリストとなった友との対面でもあるのだから。

 

「何の様?間抜けなテロリストさん…。」

 

「……」

 

「何とか言ったら如何なの?」

 

「…すまない。」

 

「それだけ!?ふざけるにも大概にしなさいよ!!アンタねぇ、前まではできる男なのに今はガキでもする様な野蛮な事をして!御両親に迷惑かけてんじゃねぇよ!!」

 

アリサはリクに怒鳴る。

 

「……言い訳はしない。本当にすまない。」

 

「……それで?私に話があるのは?」

 

「…アーサーが帰ってきた。」

 

「……はぁっ!!?」

 

その言葉にアリサは驚く。

 

「帰ってきたんだ…俺の前に。」

 

「冗談はやめて…もうあの頃の事は思い出したくないの…!」

 

「嘘でもない…あの悲劇は序盤に過ぎなかったんだ。」

 

「序盤に?」

 

「ユーマも……生きてやがった。」

 

「っ!!!」

 

「ユーマ…!!」

 

アリサは12年前…あの悲劇の事を思い出す。ユーマが提案したもっと強くなれる力の習得方法。アリサは胡散臭い話かもしれなかったが、人気者になれるなら、得ようとした結果。彼女は穢れボスキートになり、アーサーに襲い掛かり、そしてアーサーに祓い殺された。

アーサーとユーマが生きている事に恐怖を露わにしていた。

 

「私は関係ないわ……関係ない…関係ない…関係ない…関係ない…!!!」

 

映像に映る恐怖に怯えたアリサの哀れな姿にリクは言う。

 

「アーサーが言っていた。」

 

「?(まさか恨んでいるの!?そんな筈ない!そんな筈ない!ノーマと同じ化け…)」

 

「……“生きてたなら、謝りたい”って。」

 

「……え?」

 

「アイツ…12年前の事でかなり後悔してたんだ。幸いにもマイラが生きてた事で何とか…それでもアーサーにとってはトラウマとしてたった一人で抱え込んでいたらしいんだ。俺はそんな彼を助けたい…頼む、皆んなと電話して、連絡を取り合おう。アーサーが戻って来てくれたって。」

 

「…証拠は?」

 

リクはある情報をアリサに送信した。内容はミスルギ皇国で今話題となっている美青年の事であった。

 

「これが……アーサー。」

 

外見は変わってもアリサには分かる。瞳の色、顔立ち、間違いなくアルトリウス・コールブランド本人であった。

 

「連絡してみれば?」

 

「……。」

 

アリサはリクから送られてきた情報と一緒にエミリアのメールアドレスが入っていた。

 

「アーサーの奴…エミリアの家に泊まってるとの事だ。」

 

「泊まって……はぁっ!!?」

 

リクの言葉にアリサの中にある何かのスイッチがオンになった。

 

 

 

 

アーサーとエミリアはヴェルダ王朝で次に何をするのかを企画していた。だがエミリアは翌日には仕事の都合で来れないとの事。アーサーが困っているとエミリアから通信が来た。

 

「あ!アリサちゃんからだわ!」

 

「お、リクの奴が上手くやったみたいだな。」

 

アーサーの祈りが届き、エミリアは回線を開く。映像に映る凛々しく美しくなったアリサ。アリサも美少女になったエミリアに驚く。

 

「アリサちゃん!」

 

「エミリア!」

 

「「久しぶり〜!!」」

 

感動の再会と共に、エミリアは隣にいるアーサーを映す。

 

「…アーサー?」

 

「そうだけど。ゴスロリ服大好きだったアリサ。」

 

「やっぱりアーサーだった〜〜〜!!!!!!」

 

アリサは号泣し、それを見ていたアーサーが笑う。落ち着きを取り戻したアリサはアーサーの話を聞く。12年間の事、これからやろうとしている事、真実も含めて…。

 

「そんな事が…。」

 

「あぁ、頼む。他の皆んなと話がしたい。今、リクとリリーが世界中にいるA組メンバー全員に話している。でもリクとリリーだけじゃ心細い…お前も割り込んで説得してくれ。」

 

「……分かったわ!」

 

アリサはそう言い、電話を切る。

 

 

 

 

数時間後…エミリアに何件ものメールとメッセージが届く。

 

「わわわっ!?こんなにも!」

 

「任せて…ソルの光よ。」

 

アーサーはエミリアさんマナの光を強化する。すると映像に映るのはリクとリリー、アリサ、そしてテツジ、カツキ、アレン、…そして…。

 

「アーサー君!!」

 

二人の幼馴染ーーーいや、家族の一員。マイラと同じ金髪、背まで綺麗に伸びた長髪、やっぱり幼い頃からなのか、癖毛が治らず、今でもお下がりのベレー帽を被ったアーサーの許嫁の一人『サヨリ・コールブランド』と黒髪のポニーテール、12年前から呪力が低くコンプレックスを抱いていたが、アーサーに励まされ、それからアーサーに好意を持ちながらあの悲劇によって穢れボスキート化したアリサによって喰われ、その彼女が今生きている事ーーーもう一人の許嫁『スゥシィ・三木閉』であった。

 

「サヨリ…スゥ…!!」

 

二人の許嫁が生きている事にアーサーは涙を流す。そして親友である【テツジ・金井】がアーサーに言う。

 

「アーサー!俺は?」

 

「テツジだろ…その変なピアスしてるの、お前だけだぞ。」

 

アーサーの言葉にテツジは涙を流す。

 

「本当にごめん…あの時、ユーティスの野郎に騙された挙句、お前の右腕を俺は…。」

 

「もう良いんだ。昔の事は。」

 

「それでも謝りたいんだ…俺は!」

 

泣き喚くテツジ。アーサーはGATEを使い、テツジのオフィスへと行き、テツジを励ます。

魔法が使える事でテツジ達は驚いており、記者であるシュンとサアヤは突如ミスルギ皇国に現れた謎の美青年がまさかの幼馴染であった事に驚いていた。

 

「いやぁ…見違えたな!アーサー!」

 

「12年…そりゃ変わるよ。」

 

「でも本当の事よ!あんなにやんちゃで皆んなの人気者がまさか!……“◯⬜︎△*”になった感じ。」

 

サアヤの変な発言にアーサーは思わず「?」となる。

 

「何?」

 

「ごめん、上手く言葉で表せないほどのイケメンになってて。」

 

「あぁ、これ?これ3年前まで若返ってしまったんだ。」

 

その言葉に皆んなは驚く。

 

《若返った!!??》

 

「本当ならもっとイケメンだよ。」

 

《もっとイケメン!!??》

 

「ちょっと待ってよ、俺達今20歳だよな!?と言う事はアーサー…君…。」

 

「現在17歳だ。」

 

「美青年じゃなく“美少年”!!??」

 

「一体何がどうなってそんな事に?」

 

「詳しい事は…俺の話を聞いてくれ、俺が12年間何処で…何をしているのか。」

 

アーサーは正直にこれまでの経緯を話すーーートリト村での悲劇の最中に起こった力の暴走、それを何者かの手によりサヨリ達は蘇生され、自分は別の島へと流され、唯一生き残っていたマイラも含め、古の民によって救出されるも、古の民達はこの世界で暗躍するエンブリヲと彼の本当の両親や一族を滅ぼした異次元人ゼノム、島を襲ったゼノムの配下的集団アルザード帝国によって滅ぼされた。だが希望が絶ったわけでもなかった…ノーマや古の民の生き残りでもあるタスクやライド、エクエス、堕とされし元皇女のアンジュや本当の地球にいるアーサーの婚約者の一人でもあるサラマンディーネや地球連邦が抗っていた。そして自分が数週間前、三年前、そして1000年前の事と真実も全て…。

 

アーサーの話に号泣するテツジ達。

 

「お前…そんな使命を?」

 

「あぁ、神様…どうして…どうして!?」

 

「アーサー…あなた、今そんな事になってたなんて……全然、気付けなかった。ごめん…アーサー…。」

 

「いや、良いんだ。謝るのは俺の方だ。もし生きていたら俺はお前らを巻き込む形で大戦に巻き込むかもしれなかった事もあるし…。でも気付いたんだ…これは俺の“問題”だって事。」

 

「いやいや!そうはいかん!」

 

「そうよ!流石にあなたの話を聞いたら落ち着いて、はいどうぞご遠慮なくって訳にはいかないよ!」

 

カツキとモモも泣きながら疑問もなく答える。

 

「信じられるの?」

 

「だってアーサー、“嘘が下手すぎるもん”。」

 

アレンの言葉にアーサーは…。

 

「…マジ?」

 

「お前忘れたのか?っと言っても、嘘ついていたら絶対に顔に出やすいからなぁ。」

 

「どんな風に?」

 

アレンがアーサーの嘘をついた時の顔を真似する。

 

「プフッ!」

 

あまりにも変顔過ぎたのか、アーサーは思わず笑ってしまう。アレンの変顔は可笑しかった。

 

「あ!そうだ!まだ言ってなかった事があった!アーサー…結婚、おめでとう。」

 

「あ、いや……ありがとう。でも、俺…これから嫁…12人も作らないと…いけないらしい。」

 

アーサーの問題発言に皆は驚く。

 

《12!!??》

 

「おまっ!!お前!!とんでもねぇアーサーだ!!」

 

「この野郎!か弱い17歳の女の子を娶るなんて〜!!オマケに妊娠させておいて!!」

 

「……殺す。」

 

皆んなの罵声とサヨリからの怖い発言にアーサーは仰天する。

 

「何で!!?」

 

《黙れ!アーサー!!》

 

「そこに正座!」

 

テツジ達の圧にアーサーはその場で正座する。

 

「は…はい。」

 

その後、彼はこっぴどくテツジ達からの説教を喰らうのであった。

 

 

ーーー「◯月◯◯日 金曜日ーーー、エミリアから聞かされたリクの事、彼の婚約者であるミリーナと言う少女の友達が連行されたフェリスの為に反乱活動していたとのこと。俺は何とかエミリアに連れられ、ミスルギ皇国にある鳳凰院に行き、そこでミリーナと接触。ミリーナと共にリクとリリーの説得に成功した。その夜、リクがA組メンバーに俺の生還報告した事により、テツジ達が泣いて笑っていた。まぁ、その後は色々あって皆んなからお説教されたが、皆んな無事で元気だったのが良かった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、トリト廃村がある島ではとても凄い事になっていた。“あの二人”は気づいていなかったが、島の周りの海域から黄金の柱…否、【黄金の浮遊城塞】が浮上し、島が変異し始める。

 

そしてかつてアーサーを乗せた方舟付近の湖の中央から巨大な物が突き出た。それは隻眼のゴジラであった。ゴジラは湖から上がると、ゴジラの尻尾から頸まで生えた背鰭が青白く発光し始めて、そして…。

 

「ガァァァァァァァァァァァァッッ!!!」

 

大咆哮を上げると共に、口から最大の放射熱線を天空へと放った。さらに島が地割れし、変形し始める。湖の水が地下奥深くにある遺跡へと流れ落ちる。そこには純白のプレートと黄金のナノメタルに満ちた巨大な建造物があった。その奥に“ある棺”が翠色に発光し、棺の蓋が開いた。中に入っていたのは古の服装をした少女のミイラであった。するとミイラの肌が段々と膨れ上がり、痩せ細った体系が元の姿に、そしてミイラが目を覚ますのであった。

 



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Another10【異母妹】

 

アーサーがホルス邸にいる丁度その頃、トリト廃村がある島にて異変が起きていた。黄金の浮遊城塞都市、ゴジラ、そしてーーー。

棺の中から現れたミイラ……否、純白のインナースーツを着用し、ヨロヨロと壁を伝って歩く少女であった。少女は必死に歩むと、彼女の背後から翠色のエネルギーラインを発光させる浮遊ドローンが現れる。

 

「“ウィスプ”…」

 

『ウィスプ』と言うメイドタイプの浮遊ドローンはモニター画面で顔のシルエットを表示し、満面な笑顔を表現する。

 

「ウフフ…。」

 

少女の名は【エリーゼ・エクシリアス】エクシリア光国第十王女にしてアーサーの異母妹の末妹でもあった。

 

「ソルの光よ…。」

 

エリーゼはソルの光で人工冬眠装置用のインナースーツから動きやすい私服へと変える。

 

「この時代の人達ってこんな派手な服を着るんだね。」

 

エリーゼがそう言うと、ウィスプがある情報を得て持ってきた。

それはこの世界の情勢と用語、理であった。

 

「何これ…!?マナの光を使えるものが人間って!?使えない物達を迫害しているの!?」

 

エリーゼはその事に驚くと、大事な事を思い出し、ウィスプに問う。

 

「ウィスプ…私、“どれぐらい眠って”いたの?」

 

質問の内容にウィスプはエクシリア文字を使って年数を表示させた。

 

「6500万538年192日」

 

「そんなに永い年月も!!?お兄ちゃんやお姉ちゃんは!?」

 

ウィスプは特殊なセンサーでエクシリア人をサーチすると、エクシリア人を見つけた。

 

「見つかったの!?」

 

エリーゼは問う。ウィスプはエクシリア人を見つけることができる理力でその者達の顔を映し出す。

 

「“アルファ”お兄ちゃんと“マクシミリアン”お兄ちゃん!」

 

エリーゼは驚く。かつて光国の宰相を務め、エクシリア光国次期光王となるべき異母兄であるスメラギンガと共に民を導き、ゼノムに立ち向かった光国“最強の騎士王”と呼ばれた実力者。

エリーゼもまた末妹でありながらも民を愛し、異母兄と異母姉、増してや異母と実母を家族として愛し、“宵闇の姫”とも呼ばれ、マクシミリアンと共に得意の魔法で敵を撹乱していた。

 

するとエリーゼがある事に気づく。

 

「あれ?アルファお兄ちゃん?……じゃない!」

 

エリーゼは気づく。アルファリオンは髪の色が白銀である事を。その者の髪の色は赤と黒が混じった純白の髪である事を。

 

「アルファお兄ちゃんじゃないなら…この人は?はっ!!」

 

エリーゼは思い出す。かつて、父王であるラース王が私達家族にはもう一人の兄弟とも呼ぶべき者がいると。その者は訳あって、遠い未来へと飛ばし、来るべき大戦に備えて鍛錬しているとのこと…その者の名は…。

 

「アルス…エクシリアス……そうだわ!アルファお兄ちゃんの双子の弟!私にとっては会うことが出来なく、生き別れたもう一人のお兄ちゃん!」

 

エリーゼはもう一人の兄の存在を思い出す。すると、城内から鐘の音が鳴り響く。

 

【光宮グロリアスの王座の間】ボロボロであったそこは黄金に満ちており、ラース王が座るべく玉座がポツンっとあった。

 

エリーゼは虚の玉座の前で膝間付き、座ることの許しなのか、敬意を表し、玉座に座る。エリーゼは落ち着き、王座に座ることで光宮グロリアスのメインシステムとサブシステムにアクセスする。

 

「良かった!メインシステムのブロックの半分が生きてた!しかも制御ができる!」

 

エリーゼはメインシステムのブロックに破損が見られるも、重要なシステムとプログラムが生きていた事にホッとし、光宮グロリアスに電源を入れた。

光宮グロリアス宮殿内から起動音が聞こえ始めると、グロリアスから黄金に満ちたナノメタル【スーパーナノメタル】が内蔵されているファブリケーターシステムで銃撃・砲撃システム、管制・戦術システム、防衛・救助システム、補給・改修システム系建築物を3Dプリンターのように建造し始める。するとエリーゼがある事に気づく。建造の他にも艦艇のデータが入っていた。エリーゼは開くと【ノーマ管理委員会直属国際救助艦隊】と表示され、中に入っていたのは彼らが使う艦艇であり、旗艦の【エンペラージュリオ一世】と巡洋艦【デファイアント】【マリポーサ】【カラドレッサ】護衛艦の【フォーチュネイト】【オーベルト】【マーランド】の設計図であった。

 

「これ…この時代の人間達が使う兵器。」

 

その時、エリーゼの元に“ある者”の通信が入り、ソルの光での回線を開いた。

 

「あなたは…!」

 

エリーゼはその者の話を聞くのであった。



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Another11【養母、そして想い人の再会】

翌日、アーサーとエミリアの方はミスルギ皇国にいるサヨリに会う為、彼女ともう二人…アーサーにとって育ての母である『マーサ・コールブランド』と彼女のお腹にいた娘『マナ・コールブランド』が住んでいるマンションに来ていた。

 

「あ〜…眠い。」

 

昨日はA組メンバーによってアーサーは夜更かしする羽目になり、彼の目の下にクマができていた。

 

「自業自得、それにサヨリちゃんやスゥちゃんにマイラちゃんも許嫁にしちゃってるから、当然よ。」

 

「ハァ…」

 

「ホラ、ため息吐かずに堂々と!だ・ん・な・様!」

 

エミリアはビシッとアーサーに喝を入れる為、彼のお尻を摘み捻る。

 

「痛っ!!」

 

アーサーは声を上げ、お尻をさすりながら部屋のインターホンを押す。

 

「はーい?」

 

聞き覚えのあるおっとりとした女性の声が発声機から出た。アーサーは勇気を出して、返答する。

 

「マーサ叔母さん…俺です。アーサーです…。」

 

するとインターホンの音が切れ、ドアの向こうから走り音が段々と聞こえ、扉が開く。扉の先に待っていたもの…。

 

「うぅ…!!ア〜サ〜!」

 

サヨリとマイラと同じく、金髪で長髪、普段と変わらない容姿と美貌を持つ女性。アーサーにとって育ての親にして母である…マーサ・コールブランドであった。我が子が帰って来たかのようにマーサは涙を流す。

 

「…叔母さん。」

 

 

マーサは号泣しながらアーサーに近づき、頬に触れる。

 

「ごめんね…探しきれなくて。」

 

12年前のあの日…何者かの手により生き返ったマーサ達は必死にアーサーを探すも見つけきれず、諦めてしまった。だが今、親のいない独りぼっちとなっていた彼と再会した事にマーサはさらに号泣する。

 

「アーサ〜!!!ごめんね〜!!」

 

そんなアーサーはマーサを優しく抱き締める。

 

「アーサー君…?」

 

っと奥の方から別の声がした。休日だったのか、リクからの連絡でアーサーが生きていた事に喜び、今ようやく会えた。マイラと比べられないほどの綺麗な金髪のロングヘアー、幼い頃からくせ毛が気になっていたのか、ベレー帽を被っていたが、今でも被っている…アーサーの幼馴染にして兄妹の様に育った家族の一員ーーー【サヨリ・コールブランド】であった。

 

「アーサー君…!!」

 

「サヨリ…!!」

 

「「うあああああああ〜〜〜〜〜!!!!」」

 

 

 

再会をお喜び、アーサーはマーサとサヨリ、そして義理の弟である『アベル・コールブランド』にこれまでの経緯を説明した。

 

「そんな事になってたなんて……辛かったね!」

 

大粒の涙を流すマーサとサヨリ、それもそうだ。売春してまで弟達に食料を手に入れていたフェリシアと12年間孤独感に歳悩まされていたアーサー、そんな二人の新婚生活を見事にぶち破ろうとしている本当の敵に弄ばれている事に。

 

「アーサー君、ごめんね…私達こんな生活をしている人生なのに…全然知らなかった!!」

 

するとマーサがアーサーの両手を握りしめる。

 

「安心して!必ずやフェリシアちゃんを助けてやるわ!」

 

「本当に?でも俺、皆んなをこれ以上戦いに巻き込むのは…。」

 

「大丈夫!私たち村人達は世界中で情報活動しているのよ!(本当は向こうでの生活が困難なのかの相談会なんだけど…。)」

 

「本当ですか!?じゃあ、A組メンバーの連絡先もですか!?」

 

「勿論!」

 

「良し!」

 

「良かったね〜!」

 

「でも条件があるわ……。」

 

「「条件?」」

 

マーサはマナの光で棚からある物を取り出し、それをテーブルの上に置く。アーサーとエミリアはそれを見て驚く。

 

「あ!これって!」

 

「なっ!!?」

 

エミリアはそれを見て何かを思い出す中、アーサーがそれに驚愕する。

 

「エミリアちゃん、並びにサヨリとマイラ、そしてスゥちゃんとの…“許嫁同盟”の協定認証よ♪」

 

それはある書類…否、書類に記された指印と幼少の頃のアーサーとサヨリ、エミリア、スゥシィの写真が入っていた。

 

「……嘘だろ。」

 

アーサーは驚くと、マーサは話し始める。

 

 

 

 

ーーー《回想》ーーー

 

15年前ーーーエミリアの母である『シレーヌ・ホルス』とサヨリとマイラとマナの母『マーサ・コールブランド』、スゥシィの母『アニー・ソルティア』による…“愛妻会議”が行われていた。

 

「皆様にはとても良い気分でもありますが、人生に関わる重大な話になりますね。」

 

指揮するのは愛妻会議会長を務めるマーサであった。

 

「あの子がまさか…私の娘やあなた方の娘等の求婚を許すなんて……。」

 

娘を口説いた事に不安するシレーヌ…。

 

「良いじゃないですか〜♪一夫多妻製一家は面白いですから♪」

 

穏やかな表情をするアニー…。

 

「良くないですよ!アニーさん!唯でさえ、アーサー君が3人を受け入れるなんて…ありえないわ!」

 

「でも…呪力が弱かったスゥちゃんを気遣ってくれたのは何処の誰ですか?」

 

アニーは怖い笑顔でシレーヌに圧をかける。

 

「う…それは。」

 

シレーヌは恐る恐る黙り込むとマーサがおっとりとした表情である提案をする。

 

「そこで良い提案があります♪」

 

「「?」」

 

「【許嫁同盟】って言うのはどうですかね?」

 

「「許嫁同盟?」」

 

「許嫁同士が互いに助け合う協定の事です。家族思いて本当の親を知らなくても私たちの事を実の親の様に思ってくれているアーサー君を一人にさせない為でもあるのです。それにこの協定は独占権や浮気を禁止する法で。それで良いですか?」

 

「「そうしましょう。」」

 

ーーー《回想終了》ーーー

 

 

を思い出したアーサーは

 

「した…確かにあの時サヨリやマイラやスゥやエミリアとの将来の約束をした…。しかも何も知らずに指印までして…。あ〜〜!俺は何でこんな大事な約束まで忘れてしまってたんだろ〜〜!!??」

 

「しょうがないよ、あの悲劇だから全部忘れたくなるよ…。」

 

「まさかあの人が僕の義理のお兄さんだったんだ。」

 

「そうよ。」

 

「ふ〜ん。(なんか…普通な人。)」

 

「良いの?泊まらなくて?」

 

「うん、他の皆んなにも急いで会わないと行けないから。」

 

アーサーはそう言うとヴェルダ王朝の観光地スポットの写真を見ながら唱える。

 

「【GATE】」

 

「「「え?」」」

 

「それじゃあ♪」



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Another12【A組との再会③】

 

その頃、とある洞窟にてある事が行われていた。複数のロボットが機材を運び、そして開発。それを指揮するのはアルザード帝国を脱走し、ザリマンに復讐しようとするジオットであった。

 

「ユリウス…【ヘリオス】の再起動は出来そうか?」

 

『外部の修理は完了。ですがメインブロックの半分…デバステーターに必要な無人制御に必要なオーバーライドが修復不可能なレベルに達しています。』

 

「そうか、良しオーバーライドシステムを処分し、有人制御オーバーライドシステム、そして全天周モニター、リニアシート搭載のコックピットにしろ。あと電子解析システムも組み込め。」

 

『了解しましたジオット様。このユリウス、全力で成し遂げます。』

 

ユリウスはジオットの命令に従い、作業を進める。ジオットは改修されるそれを見上げる。

 

「ヘリオス…第三の地球でお前はティガによってアザトスと共に海底の中に沈んでいた。だがザリマンは利用価値があるとされ、回収され、私の元へと送られた。それが判断ミスだと思えよ…ザリマン!!」

 

ジオットはとてつもない形相でザリマンに復讐の炎を燃え上がらせる。作業ロボットによって改修されるのはかつてティガが戦ったとされるアザトスの命令に従っていた存在ーーーデバステーターの無線制御、統率・指令・解析・連携・戦法を能力として持つ【リーダー級デバステーター“ヘリオス”】であった。

 

 

 

 

【ヴェルダ王朝】ーーー人口は5万2000人以上。首都は“オーデリー”であり、女性中心の国家で王族や政府の役目はすべて女性である。女王が統治し、ミスルギ皇国とはとても友好関係である。

ここにA組のメンバーである『アリサ』『シズク』『ケイ』がいて、リクとリリーとサヨリ、そしてマーサ叔母さんが連携をとってエンデラント連合やマーメリア共和国、ガリア帝国とローゼンブルム王国にいる『ルリ』『チエ』『ロミオ』『テツジ』『シュン』『ユキ』『ムツミ』『スゥ』『マコト』『モモ』『アラシ』『カツキ』『サアヤ』『アレン』そして村人全員にも連絡し、アーサーの生存が伝わっている。

 

アーサーはソルの光で転移魔法【GATE】でミスルギ皇国からヴェルダ王朝へと転移した。

ヴェルダ王朝の街は活気であり、屋台が並んでいた。

 

「ミスルギ皇国と違って、賑やかだな。」

 

「そうだね!」

 

エミリアがそう言うと、アーサーの袖を誰かが引っ張る。

 

「ん?」

 

アーサーが振り向くと、そこにいたのは大きな縦ロールをツインテールにした小さな少女であった。

 

「あら?」

 

エミリアは少女に気づく。

 

「あなた、何処の子?お嬢ちゃん迷子?」

 

「ううん、“アルスお兄ちゃん”に会いに来たの!」

 

「アルス?」

 

「アルス…もしかしてお前…」

 

アーサーはその少女の顔に見覚えがあった。アビス島でユザレが見せた古の映像で異母兄弟・姉妹が一緒に写真に写っている姿を…その中に一人の顔を思い出す。

 

「“エリーゼ”?」

 

「うん!」

 

アーサーは今、目の前にいるのが生き別れた異母妹…その末っ子である事に驚く。

 

「マジか!よく来たな!」

 

「あの人がアルスお兄ちゃんの所へって!」

 

エリーゼが指差す。人混みの中に立つのは“白騎士”と呼ばれる時沢アルトとマリアンヌの護衛を務める者であった。

 

「アイツは…。」

 

アーサーは白騎士を見た直後、白騎士は人混みの中に紛れ込み、姿を消した。

 

「……。」

 

「アーサー君、今の人って?」

 

「あぁ…。」

 

アーサーはなんだか嬉しそうな表情をする。その後、アーサーは路地裏に隠れ、エリーゼから詳しい情報を聞き出す。

6500万年前、かつて地球にはエクシリアと言う種族が住んでおり、高い知性を持ち、国を築き上げ、地球外に生息する知的生命体と共に繁栄していた。

しかし、その地球に突如、ゼノムの王である【ザムザ・ゼノムス】ゼノムの女王【ザリマン・ゼノムス】が舞い降り、民衆に言った。

 

“裁きを司り、絆を紡ぐ【曉和神アルス】の信仰を止め、この全知全能の主である我らゼノムを崇め讃えよ”っと…。

 

ゼノムの王ザムザはエクシリアを精神干渉し、彼らを洗脳しようとするも、曉和神アルスの加護、ソルの光での二重障壁によって守られ、エクシリアはゼノムの思想を見抜き、大否定した。

そしてエクシリアとゼノムの大戦争が始まった。ゼノムは幾多の次元を行き来し、知的生命体がいる星を武力行使を行い、その星の文明の技術を使って他の星を侵略していた。さらに彼らのテクノロジーは【スナッチ】と呼ばれる能力で機械は愚か、生物や死骸に寄生する事ができると言う事実。エクシリアは劣勢に立たされた。最後のうつては……。

 

っとエリーゼが言うのを止める。

 

「それ以上は…言えないのか?」

 

「うん…!」

 

エリーゼが涙を流すと、アーサーが大体の事に察した。

 

「(恐らく本当のお父さんと産み母親と母達が残ったんだろう…可哀想に。)」

 

アーサーは泣くエリーゼを優しく抱きしめる。

 

「大丈夫…大丈夫…もうお兄ちゃんいるから。」

 

「うん…。」

 

「ところでアルスお兄ちゃん…。」

 

「ん?」

 

「このお姉さんは誰なの?」

 

「…俺の“嫁さん候補”」

 

「え!!?」

 

「しかも6人も嫁候補もいる。大家族だよ。」

 

「えぇ〜〜っ!!!???」

 

「初めまして、アルス…と言うか、アルトリウス・コールブランドの第六夫人となるエミリア・ホルスです。」

 

「あ、ごめんなさい、あまりの出来事でつい取り乱してしまいました。初めましてエクシリア光国第十王女“エリーゼ・エクシリアス”です。以後、お見知り置きを、エミリア“お姉ちゃん”(^-^)」

 

「お…お姉ちゃん////!!??」

 

その言葉と無邪気な笑顔にエミリアは嬉しがり、思わずエミリアを抱きしめる。

 

「も〜!エリーゼちゃんったら可愛い〜!」

 

「ちょっと!?お姉ちゃん!?」

 

うんとエリーゼを可愛がるエミリアにアーサーはニッコリとする。その後、アーサーは待ち合わせ場所でヴェルダ王朝のアパレル大企業【AVANTE】の社長“アリサ・リ・アトラルカ”と眼鏡をかけたロングヘアーの女性“シズク・西園寺”、大食漢で巨漢の“ケイ・リー(邢李)”が来るも。

 

「可愛い〜〜っ!!!!」

 

アリサとシズクがアーサーの異母妹のエリーゼにご執心であった。

 

「お兄ちゃん!この人達をどうにかして〜!」

 

「耐えろ、その内治る。」

 

「そんな〜〜〜!!!」

 

エリーゼは叫ぶ中、ケイが「アハハ」っと呟き呆れる。

 

「それにしてもお前も変わったなぁ、ケイ。前まではごく普通の太った子だったのにポッチャリで頭髪もないお坊さんになっちゃって…。」

 

「そう言うアーサー君も益荒男みたいで勇ましくなっちゃって。」

 

「お前が幸せそうで羨ましいよ。」

 

「ありがとう^_^」

 

ケイは相変わらずのほほんとした性格であった事。そして…。

 

「お前はもう覚えてないかも知れないが……穢れボスキートになったお前によって俺の右腕は食いちぎられたからな。」

 

「……すまん」

 

「まぁ、気にすんな。アレはユーティス……。」

 

するとアーサーはユーティスの件で話を止める。

 

「どうしたの?」

 

「アリサ、シズク、ケイ…実はその事で話がある。」

 

「「「?」」」

 

アーサーは覚悟を決め、3人にユーティスの事を話す。その内容は……ーーー。

 

「アイツを許す!!??」

 

「あぁ…ユーティスは元はあんな奴じゃない。ユーティスの身体を乗っ取り、操っている奴がいるんだ。だから……。」

 

「冗談じゃないよ!私達は今でもあのクズに怒りを抱いているし、それに今のミスルギ皇国も嫌ってるのよね!」

 

「言いたい事…怒り…それも分かっている。でも怨みを抱いても何も変わらない…“人は光になれる”、“人は過ちを許される”心を捨てないで…それはノーマも同じなんだ。」

 

「「「……。」」」

 

「お兄ちゃん…。」

 

「……(やっぱり、いつものアーサー君だな。)」

 

アリサは吹っ切れたのか、指を三本立てる。

 

「三つ条件がある。一つ目、“私たちをアンタの旅に同行させる”事よ。」

 

「はぁっ!?」

 

「何?なんか文句あるの?」

 

「バカか、第三の地球や第四の地球へも行くんだぞ。危険な旅にもなるし。」

 

「それがどうしたの?私はここまでやっと上り詰めた。それをお偉いさんはノーマを駆逐する為に勝手に“世界を壊して、世界を創り直す”…それが許せないの。だから…二つ目、“私の会社を2号店と3号店ーーーつまりバックアップを第三・第四の地球に築かせる”事。三つ目、“貨幣経済システムを教える”事。分かった?」

 

「分かった。でもお前良いのか?貨幣経済システムを教えろって言うけど…クレジットやキャッシュ、円やドル、ウォン、ポイント、元、ユーロ、ルピー。そうなると破産かブラック企業家へとなるんだぞ。それに会社のバックアップって…逃げる為のシェルターとしてか?」

 

「逃げる為のシェルター…それもいいね!」

 

陽気なアリサにアーサーは頭を抱える。

 

「もしもの時の為のバックアップ(臨時会社)。無論、テツジ君の企業とは良い関係なの。あ、それとそれだったらテツジ君の企業もお願い。」

アーサーはアリサの欲求に呆れる。

 

「ハイハイ…。」

 

「あ、そうなると通商的な組織になるわねぇ…。」

 

アリサの言葉にアーサーが反応する。

 

「商業ギルドに登録すれば良いじゃないか。」

 

「商業ギルド?」

 

「組合って言っても良いかな。俺がこれから旅する世界はマナの光が全く届かない、違う世界ーーー本当の魔法が存在する世界だ。無論、【魔物】もいる。そんな魔物の討伐、資源の採取、依頼主の護衛を担当する“傭兵”天職【冒険者】が存在している。」

 

「冒険者…あ!ファンタジー小説の用語にある冒険者。つまり冒険者ギルドの別のギルドって言うことね!」

 

「そう言う事。テツジとアリサ、他にも色んな組合がお前達の企業を嗅ぎつけると思う。その為にはランク上げをしておけ。」

 

「ランク上げ?階級でもあるの?」

 

「あぁ、向こうではかなり差別意識が高く、ステータスとレベル、ランク、職業のこの四つで差別的階級で決められている。特に一番差別されている職業、ランクが“錬成師”、“錬金術師”、“Fランク”この三つだ。アリサとケイ、シズクにもしっかりとランクと階級が表示されているけどな。」

 

「「「えぇっ!!??」」」

 

アリサ達はその事に驚くと、アーサーがソルの光で彼らのステータス値を見せる。

 

《アリサ・リ・アトラルカ》

 

Lv.83

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:女

 

年齢:20歳

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

体力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

耐性:〜〜〜《封印中》〜〜〜

敏捷:〜〜〜《封印中》〜〜〜

魔力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

魔耐:〜〜〜《封印中》〜〜〜

 

 

《邢李“ケイ・リー”》

 

Lv.79

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:男

 

年齢:20歳

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

体力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

耐性:〜〜〜【封印中】〜〜〜

敏捷:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔耐:〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

 

《シズク・西園寺》

 

Lv.71

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:女

 

年齢:20歳

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

体力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

耐性:〜〜〜【封印中】〜〜〜

敏捷:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔耐:〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

ーーー【スキル】ーーー

 

〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

 

《アルトリウス・コールブランド=“アルス・エクシリアス”》《呼名:アーサー》(第六光太子)□□□□□□□

 

Lv.310

 

種族:エクシリア人純血種

 

年齢:1020歳

 

所属:地球連邦第二本部『浮遊大陸 クラウドブルース』

 

メイン職業:【真・勇者】【外使徒】

 

サブ職業:錬金術師・学者・冒険者

 

階級:兵長・光族

 

趣味:料理、カードゲーム

 

好きなもの:愛妻料理、酢豚、杏仁豆腐、冷やし中華、麻婆チキンカレー、過剰な制裁

 

嫌いなもの:ゼノム、お酒、“家族”や“友人”、“国”、“命”を侮辱する者

 

配偶者:フェリシア・時沢・コールブランド(“旧姓”ミスルギ)

    サラマンディーネ(婚約者)

    サヨリ・コールブランド(婚約者)

    マイラ・コールブランド(婚約者)

    スゥシィ・ソルティア(婚約者)

    エミリア・ホルス(婚約者)

 

属性:火、水、風、土、雷、氷、時、空、幻、光、闇、無

 

使用武器:盾剣・双刀・仕込鞭・鎖鎌・槍・太刀・光剣・手甲・弓・銃・弩・戦斧・金砕棒・ロッド・ガンブレード・バトルメイス・バスターソード・ハルバード・大剣・施棍・多節棍・薙刀・細剣・大鎌・双小剣

 

称号:【創生者の末裔】【勇者王】【異界の者】【解放者】【革命王】【指揮者】【大将軍】【騎士王】【覇王】【機甲神】【科学者】【錬成師】【鬼神】【聖魔王】【神殺し】【探索者】【最後の王族】【龍星の巫】【亜神】【剣神】【美の女神の義弟】【創破神の養子】【創造神の使徒】【家族想い】【一夫多妻】【戦闘狂】

 

筋力:22150

体力:67549

耐性:11210

敏捷:20459

魔力:34170

魔耐:10923

理力:20251

 

ーーー【スキル】ーーー

 

・ソルの光[+全能力上昇][+全属性適正上昇][+全属性耐性上昇][+物理耐性上昇][+物理緩和上昇][+衝撃耐性上昇][+衝撃緩和上昇][+イメージ補助力上昇][+計算力上昇][+技能強化][+付与][+革命]

・オーバーブースト[+能力強化][+身体強化][+筋力強化][+瞬発力強化][+剛力強化][+俊敏力強化][+限界突破][並列思考][倍加][+全属性強化][+強化速度上昇][+体力上昇][+魔力上昇][+理力上昇][+倍加][+倍増]

・剣術[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+斬撃速度上昇][+超音波振動適合化][+周波数増強][+耐熱化上昇][+高密度荷電粒子集束化]

・全集中の呼吸[+身体強化][+血流速度上昇][+炎の呼吸]

・棒術[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+衝撃速度上昇][+打撃力強化]

・纏雷[+耐雷強化][+出力調整][+出力上昇]

・二刀流[+攻撃力強化][+強化速度上昇][+斬撃速度上昇]

・錬成[+生物系錬成][+鉱物系錬成][+元素錬成][+機械錬成]

・創生魔法[+ストック][+拡張数強化][+二重詠唱][+多重詠唱][+複合]

・生成魔法[+能力強化][+自動生成][+イメージ補助力強化]

・再生魔法[自動回復][+回復力強化][+魔力回復強化][細胞活性化]

・空間魔法[+真空化][+聖域][+回復力増強][+再生力増強]

・重力魔法[+魔力操作][+魔力圧縮][+魔力放射][+重圧化]

・魂魄魔法[+精神干渉][+解放付与][+思考解読]

・悪食[+技能数増強][+強奪][+技能強化][+技能複製]

・絶滅者化[+技能強化][+技能付与][+共鳴][+リミッター解除(封印中)]

・神化[+技能強化][+出力調整]

・審判[+称号剥奪][+称号譲渡][+強制化][+絶対神の加護]

・召喚[+召喚数拡張][+治癒空間][+神域][+魔境][+聖域]空き:8

【聖邪神皇子“メルタ”】〜〜〜《封印中》〜〜〜

【次元要塞“ホウライ”】ーーー《建造・改修・修理中》ーーー

・[防衛システムオールグリーン]ーーー全エネルギーシールドスタンバイモード。自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“D”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

・[砲撃システムオールグリーン]ーーー全対地対空フェイザーキャノン・フォトンレーザー・ミサイル=タレット自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“A”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

・[迎撃システムオールグリーン]ーーー自立可動式次世代群体遠隔操作兵器【アイテール・ユニット=タイプ“I”】〜〜〜《修理中》〜〜〜

 

【全領域型戦闘専用艦“アムザニ”】ーーー《造船完了》ーーー

 

 

 

エリーゼ・エクシリアス(第十王女)

 

Lv.92

 

種族:エクシリア人純血種

 

年齢:746歳

 

職業:【真・勇者】【ウォーロック】

 

階級:光族

 

趣味:かくれんぼ、冒険

 

好きなもの:ドリアードベリーのタルト、ストロベリーケーキ、綺麗な花、過剰な制裁

 

嫌いなもの:ゼノム、お酒、“家族”や“友人”、“国”、“命”を侮辱する者

 

属性:火、水、風、土、雷、氷、時、空、幻、光、闇、無

 

使用武器:ロッド、エネルギーピストル

 

称号:【慈愛の光女】【博愛主義】【家族想い】【黒魔導士】【亜神】

 

筋力:8202

体力:12000

耐性:9500

敏捷:9250

魔力:12000

魔耐:11004

 

ーーー【スキル】ーーー

 

・ソルの光[+全能力上昇][+全属性適正上昇][+全属性耐性上昇][+物理耐性上昇][+物理緩和上昇][+衝撃耐性上昇][+衝撃緩和上昇][+イメージ補助力上昇][+計算力上昇][+技能強化][+付与][+革命]

・マナブースト[+魔力上昇][+理力上昇][+霊力上昇][+限界突破]

・生成魔法[+能力強化][+自動生成][+イメージ補助力強化]

・再生魔法[自動回復][+回復力強化][+魔力回復強化][細胞活性化]

・空間魔法[+聖域][+回復力増強][+再生力増強]

・重力魔法[+魔力操作][+魔力圧縮][+魔力放射][+重圧化]

・魂魄魔法[+精神干渉][+解放付与]

・召喚[+治癒空間][+神域][+魔境][+聖域]空き:2

【ウィスプ】

 

エミリア・ホルス

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:女

 

年齢:20歳

 

メイン職業:歌姫

 

サブ職業:大学生

 

配偶者:アルトリウス・コールブランド(婚約者)

 

・マナの……ひか……Kmpfen000D8B9A723E9FF198X8D99AF199281910

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アリサ、ケイ、シズクは兎も角、アーサーとエリーゼのオーバースペックなスペックとエミリアの複雑なノイズに皆は驚く。

 

「「「「な…何だこれ〜!!!!????」」」」

 

アーサーは周りに迷惑をかけないように魔法を使い、空間魔法で防音効果を持つ魔法を付与する。

 

「ちょっと!エミリアちゃん!どう言う事!?マナの光がデタラメよ!」

 

「えぇ〜っと…。」

 

「あ…アーサー君にエリーゼちゃん…君達は…本当に“神様”なの?」

 

「「知らない。」」

 

「(え〜〜!?)」

 

アーサー達がその事に動揺している最中、足に小型カメラが取り付けられた鳩がアーサーを監視し、分析していたのであった。

 

 

ーーー「◯月◯◯日 土曜日」ーーーヴェルダ王朝にてアリサとケイ、シズクと再会した。アリサの奴は私達も第三の地球へ連れて行く要求をしてきた。本当だったら真実の地球で避難させた方が良かった。それにしてもアリサ達のあのステータスは何だ!?封印中ってなってるけど!?エミリアもおかしくて、それに俺の異母妹であるエリーゼと再会するなんて!それに……俺はあの白騎士を知ってる。あの人は相変わらず好きな色が“白”で、仮面もアレだ……。兎に角、次に行くのはマーメリア共和国…スゥシィとマコト、モモ、アラシがいるアラシとモモは俺よりも先に夫婦でしかも子持ち、二人からこれから生まれてくる俺とフェリスの子の為の準備や育児を聞かないとな。そしてスゥシィは…あの悲劇の時、俺の隣にいた…そして迫り来る仲間によって目の前で食い殺された…こんな俺を許してくれるだろうか?

さて、そろそろ終わらないと…。もう…時間がない…。

 

 




キャラ設定(主人公)もう少しで完成に近づいております!そして他のキャラのステータスもいずれかは封印を解きます!


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Another“13”【A組との再会④】☆

お久しぶりの投稿です。では、どうぞ


雨が降り注ぐ廃墟、辺り一面に崩れた建物や瓦礫の数々、そこに花束を持ってくる一組の夫婦。夫は二つの花束を廃墟の前に置き、妻も夫と一緒に廃墟の前で念仏をする。

 

「だぁ〜」

 

っと妻の胸の中でスヤスヤと眠っていた“小さな赤子”が目を覚ます。

 

「ん?あら、目が覚めちゃったのかな?」

 

妻が起きた赤子をあやす。

 

「【セレニア】…俺は今でも大罪人なのかな?」

 

「何を言ってるのですか?大丈夫ですよ、連邦政府はあなたの罪を許しています。それに“アルトリウス様”や“皆様”も。」

 

「そう言う意味じゃないんだ。」

 

「?」

 

「この国の末路と同じなんだ…。僕の祖国はかつて長い歴史と様々な伝説を持ち、万世一系の皇族によって統治されていたが、それは真実の歴史を隠す為のまやかし…。本当は本家を迫害し、分家が統治する為の闇深い国であった事。さらには本家は“この忌まわしき【アーケディア天帝国】”によって…だがその呪い、血塗られた歪んだ思想を、それを僕の一族…僕の代で全て終わらせた。父と母、妹と共に大戦で国民を見捨てて…。今は“兄の愚業”の罪滅ぼしだ。」

 

「それは…私も同じです。私もあなた様と同じ皇族です…“純血を祖父に奪われ”、“一族や民を殺めてきた”この私…。その結果、あの“忌まわしき国”は滅んでしまいました。それでも私を唯一愛してくれたあなたによって助けられ、そしてこの子にも出会えなかった。」

 

妻は腕の中で眠る赤子を見て微笑む。夫は泣きくじゃりながら妻を優しく抱きしめる。

 

「ぞうだな…!僕は死んでいった民の分も一生背負わないといけない!この子や生まれてくる孫や子孫に忌々しいしきたりや風習を揉み消し…そしてミスルギの汚名返上をしないとな!」

 

夫は妻からの言葉に勇気を貰うと。降り注いでいた雨が止み、雨雲が晴れ、太陽の光が夫婦と赤子に差し照らされる。

っとそこへある数人の人物がやってきた。夫は振り向き、その者達の顔を見て呟く。

 

「父様、母様、アンジュリーゼ…!」

 

その者達…夫の親族…ユーティス・飛鳥・ミスルギの父…元ミスルギ皇国皇帝“ジュライ・飛鳥・ミスルギ”と元皇妃“ソフィア・斑鳩・ミスルギ”、そして妹の“アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ”であった。

 

「お前もここへ来たと言う事は、弔いに?」

 

「えぇ…。」

 

そして、彼らの所に複数の男女が現れた。12名の女性と、一人の男。そして五人の子供もいた。

 

「アーサー、君も来たのか。」

 

「あぁ。」

 

その者、顔を上げる。十二人の愛する妻、息子、そして娘を儲け、偉大なる勇者の王【アルトリウス・コールブランド】が崩れ去ったアケノミハシラを見上げる。

 

「あの“忌まわしき国の皇帝”と…ザリマンとケーニヒスや穢れ勇者達によって散った…“仲間”や“あの子”を弔いにな…。」

 

アルトリウスがそう言うと、彼の隣にいるのは彼の愛弟子達、その中にノーリイとミクリもいた。

ノーリイは懐から花束を取り出し、崩壊したアケノミハシラの前に置き、合掌し、祈り終えると、懐からもう一つ取り出す。

それは“朽ちた花で編んだ小さな指輪”とアーサーが撮ったであろう写真付きのロケットであった。写真にはアーサーの周りにユーティス、ヤトウ、リュウ、アケロン、ノーリイ、ミクリ、さらにはタスク、ライド、エクエス、マイラ、サヨリ、エミリア、リク、テツジにアリサを含むA組メンバーとオルトとネーラ、アインとナツキ達Bメンバー、そして“セレニア”と言う女性の他に小さな少女も写っており、少女がノーリイに抱きついていた。

ノーリイはその少女の写真に涙を流し、雨降る空を見上げ、その少女の名を言う。

 

「“ニア”……。」

 

 

 

 

 

 

その悲劇ーーーアーサーにとっては2年後と1000年間、そして数週間後でもあった。

 

アーサーが次にGATEを使い、辿り着いた場所は【マーメリア共和国】。人口約76万人。元首は珍しく、大統領ではなく書記長。ここでもノーマへの差別は激しく、共和制国家なのにノーマは論外。

 

「(吐き気がする。)」

 

アーサーはそんな事を考えながら、待ち合わせ場所まで向かう。今回エミリアは風邪を引いている為、家で安静に寝て待つようにと言われているとの事。

着いたのは近くの広場であった。アーサーが広場の噴水で待っていると…。

 

「アーサー!」

 

「ん?」

 

現れたのはワンピースを着たアーサーの幼馴染にして許婚…スゥシィ・ソルティアであった。

 

「本当に…アーサー…なの?」

 

「あぁ、12年前…あの時悲劇の際に一緒に逃げようとするも…。本当にごめんな。」

 

スゥの問いに答えたアーサー。それもそうだ、12年前…突如、テツジ達がユーティス(取り憑いた“ソレ”)によって穢れボスキート化し、アーサーと逃げようとするも捕まり、目の前で喰われる…そんな彼女が今では凛々しい女性となって復活したのだ。

 

「?」

 

「良いの…もう良いの…あの悲劇の事は鮮明に覚えている!」

 

スゥは涙を流す。

 

「スゥ……。」

 

アーサーは手を差し伸ばすと、誰かが木の裏に隠れている事に勘づく。

 

「そこに隠れている“夫婦”とマコト…隠れてないで出てこい。【パラライズ】。」

 

アーサーがスタン効果のある魔法『パラライズ』で尾行者をッスタンさせる。

 

「「「ギャァ〜!!」」」

 

木の裏から悲鳴がする。っとそれは傾れ込むかのように

 

「アーサー君!ひど〜い!お陰でネネちゃん泣いちゃったじゃない!」

 

「お前…容赦なさすぎだろ。」

 

「無茶苦茶だ…。」

 

「あ…あなた達///!?」

 

「あともう少しで良いイベントと展開だったのに〜!」

 

「ば!バカ〜〜〜〜ーーーっ!!!!!」

 

「アハハ」

 

スゥシィがモモ達にお説教する最中、彼女の怒りに呆れるアーサーであった。

その後、アーサー皆んなのステータスを確認していた。

 

《スゥシィ・ソルティア》

 

Lv.45

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:女

 

年齢:20歳

 

配偶者:アルトリウス・コールブランド(婚約中)

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

体力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

耐性:〜〜〜《封印中》〜〜〜

敏捷:〜〜〜《封印中》〜〜〜

魔力:〜〜〜《封印中》〜〜〜

魔耐:〜〜〜《封印中》〜〜〜

 

ーーー【スキル】ーーー

 

〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

《マコト・渡月》

 

Lv.54

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:男

 

年齢:20歳

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

体力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

耐性:〜〜〜【封印中】〜〜〜

敏捷:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔耐:〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

ーーー【スキル】ーーー

 

〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

《モモ・L・円堂(旧姓“杏”)》

 

Lv.71

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:女

 

年齢:20歳

 

配偶者:アラシ・円堂(夫)

    ネネ・L・円堂(娘)

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

体力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

耐性:〜〜〜【封印中】〜〜〜

敏捷:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔耐:〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

ーーー【スキル】ーーー

 

〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

 

《アラシ・円堂》

 

Lv.79

 

種族:エクシリア人混血種《神造人間》

 

性別:男

 

年齢:20歳

 

配偶者:モモ・L・円堂(旧姓“杏”)

 

ーーー【ステータス値】ーーー

 

筋力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

体力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

耐性:〜〜〜【封印中】〜〜〜

敏捷:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔力:〜〜〜【封印中】〜〜〜

魔耐:〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

ーーー【スキル】ーーー

 

〜〜〜【封印中】〜〜〜

 

 

「「「「なぁっ!?!?!?!?」」」」

 

皆んなのステータスにも【封印中】と言う文字が表示される。

 

「やっぱりだ…何で封印されているんだ?そもそも、何で皆んなこんなも以上なレベル何だ?」

 

「以上なレベル?他の人達はどう視えるの?」

 

「レベルが一桁だけなんだ。オマケにステータスも10以下ばかり。」

 

「そうなの?」

 

「何で私達にはこんなにも……。」

 

「「「……。」」」

 

スゥ達が考え込むと、マコトがある仮説を言う。

 

「もしかしたら…過去にアーサーと同じ様に記憶を操作されたとか?」

 

「「「「……まさか〜?」」」」

 

「おかしいだろ…彼等のステータス値が視えてお前らだけ《封印中》って。どう考えても過去に何か……。」

 

その時、アーサーはある事を思い出す。

 

「どうしたの?」

 

「いや、ちょっと待て……可能だとすれば、12年前のあの悲劇…俺はあの時、誰かに救われたような気がする。」

 

「誰かって…?」

 

「ある女の人が…皆んなを失ったショックでボスキートへとなった俺を元に戻した後…そこから記憶がないんだ。その後にお前達が生き返った…。もしかしたら、過去…俺に何かをした“その人”…今度はサヨリ達を生き返らせ…待てよ、それだとおかしいあのステータス値を上げるには訓練しないと…そうか!」

 

その時、アーサーはある事に気づく。

 

「できる…この短期間で高レベルとステータスを身に付ける方法が…【精神干渉】と【時空魔法】だ!」

 

「精神干渉?」

 

「時空魔法?」

 

「ラプラスで調べたんだ。書斎の方でそれに関するものがあって精神に干渉し、精神と時を遅延させるものがあり、こっちの一時間が向こうでは一年…一年で千年と言う形になっている。」

 

「それって精神的苦痛じゃない?」

 

「逆だよ、それだけの苦痛を得た分、超人並みの力を発揮できる。恐らく君たちは誰かによって鍛えられ、時が来たら封印が解け、本来の力と“記憶”を取り戻すと言う事になる。」

 

パチパチパチパチ。

 

「?」

 

っと別の方から拍手音が聞こえてくる。アーサー達は音がする方へ振り向く。そこに立っていたのはエリーゼを連れてきた“白騎士”であった。

 

「見事だ、アーサーよ。」

 

「あなたは?」

 

モモは白騎士に問い掛けると、アーサーが微笑む。

 

「やっぱりあなたでしたか。」

 

アーサーがそう言うと白騎士は仮面を外し、皆に素顔を見せる。

 

「白騎士…だがこれは、仮の姿だ。」

 

「「「「あなた様は…!!?」」」」

 

「やっぱり…。」

 

白騎士ーーーかつて12年前、あの島の悲劇にて村の者達を守っていた。“彼”は負傷し、愛娘を守る為、海へ流し、そして負傷した。だが彼を助けたのは紛れもなくアルファリオンの弟子である時沢アルトとマリアンヌであった。二人は必死に魔法や科学力を結集した力で“彼”をーーーアーサーを拾い彼を家族の一員として、妻のマーサ、娘のサヨリとマイラ、そして生まれて来てくれた息子アベルを愛する父ーーー【ディーン・コールブランド】は帰って来た。

 

「ディーン叔父さん!!??」

 

12年間行方が分からず、死亡したと思われたディーンが生きてた事に驚くスゥ達。

 

「久しぶりだな、お前達。アーサーも。」

 

「えぇ。」

 

「よくぞ彼等のステータスの謎、見事に解いたな。はなまるだ^_^」

 

ディーンは満面な笑顔で得点スコアを報告する。

 

「よしてください、もう子供じゃありませんから。」

 

「そうだったな。」

 

「ディーン叔父さん!一体これはどういう事なんですか!?」

 

「それについては説明しよう」

 

ディーンはそう言い、指をパチンッと鳴らす。すると周りにいる人達の活動が停止し、時間が止まる。

 

「アーサーの答えの意味は言葉のまんまだ。その通り、君たちが死んだあの日、“彼女”によって生き返り、真実の地球でアーサーと共に生体治療が施され、数千年間の精神世界で本来の力と当時の出来事を封印されている状態のままこの世界で復活を果たしたのだ。」

 

「「「「えぇっ!?」」」」

 

「やっぱり…。話してください…何故、記憶までも?」

 

「話が長くなるぞ…。12年前のあの日ーーー。」

 

ディーンは全てを話す。12年前のあの悲劇を……。



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Another“14”【12年前…。】☆

お久しぶりの投稿です!最近仕事はおろか、受注数が半端なく増えていたので…はい。
無駄口は置いておいて、では、どうぞ。


 

20年前ーーー。

 

かつてここはエクシリア光国が眠る地でもあった。生き残ったエクシリア人は時が来るまでこの島の住人として生き、持つべき技術と文化、力を封印し、穏やかに生活していた。そして時を越え、後から来訪したエクシリア光国近衛将軍ディーン・コールブランドはそこでマーサと出会い、恋に落ち、そして結ばれた。そして山の麓にて揺れを感じ、行って見ると、エクシリアの戦艦“アムザニ”が不時着し、燃えていた。アムザニのハッチを開き、燃え盛る艦内を掛ける。そして救命ポッドの中で眠る赤子を見つけたディーンは赤子のデータを見る。

 

「アルス・エクシリアス…っ!!!」

 

ディーンはその名に驚き、ソルの光で救命ポッドのロックを解除し、アルスを連れ出し、アムザニから逃げ出した。

 

ボロボロになりながらも自宅へ生還したディーンは産まれたばかりの娘であるサヨリを抱いたマーサと話し合っていた。

 

「あなた、その子は?」

 

「ラース王の六番目の子だ。私がかつて仕えていた王の子…いや、この世界だと本物の神の一族の生き残りだ。恐らく、ゼノムはこの世界にも干渉している。そこでだ。俺はこれから“かつての仲間達”を集める。」

 

「仲間達と言うと…もしかして。」

 

「あぁ、私がかつて“異世界”に行って、共に冒険した仲間達だ。時間魔法で連れてくるつもりだ。そして元の時代に返すつもり。」

 

「それはできない。」

 

「「?」」

 

っと、彼等の隣りに聞き慣れた人物いた。時沢アルトとマリアンヌであった。

 

「お前は?」

 

「お初にお目に掛かります。ディーン・コールブランドよ…。」

 

時沢アルトは説明する。かつて彼の父母がエクシリア文明の研究をし、21世紀中期にてエクシリア技術の一つを蘇らせた【生体進化技術“エヴォルブラスト”】。

エクシリア人は次元操作できる“強力な兵器”と言うもの使い、時間と空間を司り、星々の生命体や生物からDNAを採取し、自身の身体…即ち遺伝子を調整・改良し、自身の能力の進化・生体武器、超科学と究極魔法、宇宙理力、さらには外骨格にナノメタルで改造を加え、情報量のオーバーロード化に成功させていた。

時沢夫妻の性格はマッドサイエンス的でもあったが、その技術によって新たなる人種が生まれた。

『ミュータント』ーーー通常の人間よりも遥かなる高い運動能力、免疫・治癒力、長寿命を備え、過酷な環境下・宇宙環境で生じる身体機能障害の完全適合、基礎学力も遥かに高い“新人類”が誕生した。

時沢夫妻は新人類ミュータント達の為に養成学校を築いた。授業内容の殆どは凡ゆる災害による救助活動・建設の現場・介護分野・IT企業であった。この計画は次世代の新たな未来に希望を齎す筈であった。

だがその計画を軍の過激派が横暴な手を使い、その計画内容の全てを軍事的兵器計画に変更してしまった。

それにより、次世代人種『エヴォル』、旧世代人種『イノセンス』による第三次世界大戦が勃発した。

時沢アルトは夫妻が起こしてしまった事に悲しんだ。その為に両親が計画した養成学校を開き、マナの光を持つ人種とそれを持たない女性種ノーマ…そしてマナが使えない古の民達…そしてミュータント達が共に道を歩める未来の為に…。

 

その育成計画に二人は考えていた。

 

「……すまない、少し考えさせてくれ。」

 

ディーンは自室の部屋へ行き、ある事を考えていた。

 

「(…未来の若者の為に。)」

 

「(お考え中すみません。)」

 

「!?」

 

っと、突然の念話に驚くディーン。声の主はマリアンヌであった。

 

「(何だ?)」

 

「(あなた様にはもう一つお話があります。)」

 

「(話?)」

 

マリアンヌは全てを話す。エヴォルブラストによる計画の真相の全てを…。

 

「(そう言う事だったのか…。)」

 

「(はい、その全てをゼノム…ザリマンによって遊戯の用語的システムにされました。ですが希望はあります。これを見てください…。)」

 

マリアンヌはそう言うと、能力でディーンにある物を渡す。それは手紙であった。ディーンが手紙の内容を見て、涙を流す。マーサもディーンが見せた手紙の内容に涙をし、二人は決心する。

 

「この計画…やりましょう。」

 

「本気ですか?」

 

「あぁ…。」

 

「既に“彼等”と連絡を取っています。」

 

「それは助かる。」

 

ディーンは仲間達との連絡が取られていた事に安心し、計画が実行された。村の人達はディーンの話を受け入れ、育成計画に協力してくれた。アーサーを除くサヨリ達は見事にエヴォルブラスト計画に成功し、次世代人種として、未来を託される存在となった。何の問題はなかった…いや、何の問題は無かった筈だった……。

そう、“彼奴等”が現れまでは…そして“あの悲劇”が起こるまでは…。

 

 

ーーー12年前ーーー

 

燃え盛る家、老若男女の飛び交う悲鳴、ディーンは双剣を手に死姦していたインゴーーーゼノムの配下属組織であるアルザード帝国によって拉致された“犯罪者の慣れ果て”を切り殺していた。

 

「お前らぁぁぁっ!!!!!」

 

ディーンは怒りで戦火の中を突き進む。同じ頃、魔導師のローブを着用し、魔導杖を持ちながら魔法でインゴ達の侵攻を防ぐ【結界師“キョウコ・林”】と魔導書を手に背部に装備した白兵戦仕様無線式多目的遠隔兵器【スラスター・ファンネル】を駆使し、敵を魔弾で射抜き、魔素で構成させたエネルギーブレードで切る、そして貫く。【賢者“羽間西十郎”】が戦っていた。

 

「西ちゃん!!早くあの子達を!!」

 

「分かっている!!“馬鹿弟子”達!!生きててくれ!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

掛け声がする上空へ二人は見上げる。

 

「旋風真空斬!!」

 

現れたのは拳闘士として踵落としと共に真空波を放つ西十郎の弟【闘士“羽間東護ノ介”】が技を決める。

 

「兄貴!早くアーサーの所へ!!」

 

「けど西くん!この数は!」

 

東護ノ介とキョウコ・林が言い合っている最中、ディーンが駆けつける。

 

「私が行く!」

 

ディーンが燃え盛る超星寮を見上げる。っとその時、超星寮から光の柱が出現する。

 

「「「「っ!?」」」」

 

超星寮が崩れると、“それ”は現れた。かつてアーサーは空想がとても広く、空想上の生き物が描かれたカードに写る強大な生き物を描いていた。

ディーンは覚えていた…その絵を。それは空想にして伝説…鱗から無数に生えた赤黒い触手、全てを焼き尽くす炎、凍てつかせる吹雪、塵と化す砂塵、吹き荒らす嵐、それですら超越し、光と闇の性質、頭部は愚か、胴体、両腕、両脚、尻尾、翼にそれぞれの火、水、土、風、光、闇の六大属性を司りし神龍ーーーアーサーが趣味で遊んでいたカードゲームでこよなく愛し、そしてリクを激しく追い詰める最強の能力を持つ……その名は…。

 

「おいおい…!?」

 

「嘘っ!?あれって!?」

 

「まさか…あれ…アーサーの!?」

 

「かもしれない…!だがあの姿は!!」

 

ディーン達は恐怖する。龍…否、龍達は唸り声を上げ、燃え盛る村にいる龍を見下ろし、大咆哮を上げると共に彼等はその名を言う。

 

『『『『『『ガアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!!!!!』』』』』』

 

「「「「【覇星龍神“ウルティマ・ゼニス”】!!!!」」」」

 

ウルティマ・ゼニス…“究極の至高”を意するそれは限りなく暴れた。島が全壊するかと思った…。ディーン、キョウコ、西十郎、東護ノ介の他【“錬成師”星川真原】【“剣聖”天上弥助】【“呪術師”李 雲嵐】【“付与師”カムトーガ・早野】【“聖騎士”天野川相馬】【“治癒師”カリーナ・キャンベル】……忘れもしない…6人の仲間達。

 

四人は絶望した…目の前にいるのは神を超越し、万物を司る怪物の王…それが想像上の存在が現実に…。ウルティマ・ゼニスが四人を見下ろし、不気味な笑みを浮かばせ、最大出力のエネルギー砲を放とうと大口を開けた瞬間、闇夜の月から無数の光の矢が降り注ぐ。

 

『『『『『『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!!』』』』』』

 

「何!?」

 

「一体何が!?」

 

ディーン達が驚いていると、闇夜が突然と昼間になる。月も太陽へと変わると同時に“それ”は舞い降りて来た。

 

「「「何!?」」」

 

「…っ!!」

 

西十郎達達は太陽から舞い降りるそれが放つ光で目が眩む中、ディーンはそれに驚き、その者の名を言う。

 

「テラス様!!」

 

その者、日本神話の神服と装束を羽織り、霊弓と神刀を携えし、天照の女神……だが、ディーンは覚えていた。彼女の事。

彼女はかつて、ラース王と共にゼノムを圧倒し、多くの妻の候補でありながらも彼女達と仲が良く、勇ましき神の一族の王族として民を愛した女皇…【テラス・エクシリアス】ーーーアルトリウスの実母であった。

 

「テラス様…よくぞ生きてて…!」

 

「何も言わないで…。今は、“アルス”を何とかしなければなりません。」

 

テラスはそう言い、ウルティマ・ゼニスを睨む。ディーン達はウルティマ・ゼニスがアルスことアーサーだと言う事に驚愕する。

 

「アイツが…馬鹿弟子だと!?」

 

「でも…何でカードの姿に!?」

 

「坊やの能力は…“創生者”。空想や伝説、神話などの架空の存在を実態化させ、現実にできるラース王の力の一つ。しかし、坊やは絶望、恐怖、怨念、死、孤独に囚われている状態……そして坊やは具現化させたあの怪物の力と体内に埋め込まれ絶滅者ボスキートの細胞と適合させられた事で、実態化したウルティマ・ゼニスは原初のボスキートとなり、全ての能力を司りし“五番目の領将”となりました。」

 

「つまり…アーサーは?」

 

「えぇ…無理矢理、ゼノムの最終兵器の“一つ”にされたのです。ですがアレはまだ不完全体…まだ助けられます。」

 

テラスはそう言い、霊弓を構える。

 

「そう言えば!サヨリは!?」

 

「……」

 

「そんな…!」

 

ディーンは三児を身籠った愛妻は愚か、二人の愛娘を失った事にショックを受ける。

 

「貴方は生き残っている方の救出をお願いします。」

 

「テラス様!」

 

ディーンはテラスからのお告げに驚くと、テラスが真っ先にウルティマ・ゼニスに突進する。ウルティマ・ゼニスが火を司る龍神の頭部をうねり動かし、強力な多連術魔法【マルチプル】を展開し、無数の魔法陣を出現させる。

 

「アレは!上級魔法の一つ!【クリムゾン・ジャベリン】だと!?」

 

「しかもマルチプルって…あんな数を!?」

 

マルチプルーーー極限魔法の【二重詠唱化】に作用される魔法の一つ。大多数の相手を識別情報を確認し捉え、敵を自動的にロックオンする。

ウルティマ・ゼニスは紅蓮の炎を纏った聖槍をミサイルの様に放つ。

無数のクリムゾン・ジャベリンが迫り来ると、テラスが叫ぶ。

 

「【マルチプル】【ホーミング】!」

 

テラスもマルチプルを使い、光り輝く聖槍【シャイニング・ジャベリン】を展開し、【ホーミング】機能による迎撃を開始した。

 

『『『『『『ガァァァァァッ!!!!』』』』』』

 

ウルティマ・ゼニスが咆哮を上げると、彼奴の身体に異変が起き始める。ウルティマ・ゼニスの6体の龍神達が呻き声を上げ、苦しんでいた。

 

「苦しんでいる…!?そうか!!」

 

テラスは何をかんじとり、ソルの光を使う。

 

『『『『『『ガァァァァァァァァァァァァ〜〜〜〜〜ッッ!!!!』』』』』』

 

ソルの光で構成された拘束魔法と光の鎖、さらには金色に輝くピラミッドで封じ込めるテラスは叫ぶ。

 

「“分かれよ、それぞれの力を持ちし六天龍の神々よ、テラス・エクシリアスの名において、核となりし《穢れし龍の神》より離れ、蛮神として我の眷属となれ”!!」

 

テラスの言葉に反応しウルティマ・ゼニスが輝き、火、水、土、風、光、闇を司る六体の龍へと分離した。そして六体の龍の神達を総合させ、強大な力へと変えていたエネルギー源……赤黒いそれは姿を見せる。

赤黒く蠢く無数の触手ーーー【恐怖】【絶望】【破壊】【後悔】【殺戮】【偏見】【憤怒】【色欲】【嫉妬】【怠惰】【悪意】【傲慢】【憎悪】【狂気】【呪怨】【暴食】【貧食】【強欲】【憂鬱】【汚染】【虚飾】の理を放出し、細身の身体(右腕を除いて。)漆黒に染まりし不死鳥の翼も羽毛、の風貌をした悪魔…否、全ての怨念を司り、穢れに満ちた絶滅者…龍の神々の力を吸収し、グランセイザーの能力のオリジンにして今、アーサーの悲劇により現世に蘇った絶対生命体ーーー【絶滅龍“ボスキート・グライズ”】であった。

 

ディーン達はその姿に恐怖する。それもそうだ…そのボスキートの右腕は紅蓮の炎を纏っており、鬼面が浮かび、禍々しい目でディーン達を睨みながら不気味な高笑いをしていた。

 

『フハハハハハ!!!!』

 

『ガラガラガラガラ!!!』

 

ボスキート・グライズも高笑いを上げると、右腕から霊符が飛び出し、術式を無詠唱で発動させた。結界で空気を圧縮し、板状のブロックを形成。そしてそれを自分の周りに浮遊させると、俊足で浮遊する壁を蹴り伝って、テラス達の方へ急接近して来た。

 

「っ!!」

 

さらにボスキート・グライズはソルの光で脚力に電磁誘導力に加え、身体強化を付与させ、リニアによる超音速移動でテラスに攻撃して来た。

 

「(は!速い!!!)」

 

ボスキート・グライズの電磁誘導力による蹴りがテラスが展開した光学障壁に炸裂する。すでに障壁には大きなひび割れが起き始める。

 

「(このままでは!!)」

 

テラスが圧されていると、キョウコが自身の最大結界術【新法界】を発動し、光の霊符が付けられた鎖でボスキート・グライズの動きを止める。

 

『ガァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

ボスキート・グライズが鎖を破壊しようと尻尾を変異させ、尾の先端部が骨の刃が重なり合った【生体チェーンソー】で切り刻んでいく。キョウコはその時、鬼の形相をしたアーサーことボスキート・グライズにビビり上がる。

 

「(こわあぁぁーっ!!!ホントめちゃくちゃ怖すぎる!!本当にアーサー君なのって言いたい!!!ひぃーっ!!)」

 

キョウコが怯える最中、結界が破壊され、真っ先にキョウコに向かって生体チェーンソーを突き伸ばして来た。

 

「させるか!!」

 

っと、キョウコの前にディーンが立ち塞がり、二刀流で生体チェーンソーを受け流した。

 

「西十郎!東護ノ介!」

 

「「おう!!」」

 

西十郎と東護ノ介が攻撃を仕掛けようとしたその時、別の攻撃が来る。

 

「「っ!?」」

 

上空を見ると、ボスキート・グライズから分離させられた六体の龍神…火を司る龍神【ロード・ドライグ】水を司る龍神【アビス・ラハヴ】地を司る龍神【タイタン・ビヒモス】風を司る龍神【ゲイルククルカン】光を司る龍神【クズノリュウ】闇を司る龍神【ヨモツノオロチ】がボスキート・グライズを守り始める。

 

「厄介な事だ…!」

 

ディーンが六体の龍の神に刃を見せると、ボスキート・グライズが咆哮を上げる。

 

『ガァァァァァァァァァァァァッ!!!!』

 

『『『『『『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!』』』』』』

 

六体の龍神達も咆哮を上げると、ボスキート・グライズの身体から【六つの光】が生み出される。そして光は形を変え、“龍神”へとなる。

 

雷を司る龍神【ボルテックス・アトラス】氷を司る龍神【ノースブリンガー】時を司る龍神【クロノス・クロッカー】空を司る龍神【ヘルメス・ライジング】幻を司る【プルート・ヴァーミンガム】無を司る龍神【エターナル・ドラゴニス】…そして十三の龍神として君臨した原初のボスキート化したアーサー…『穢』を司る龍神【ボスキート・グライズ】が睨む。

その光景にディーン達は恐怖する。

 

「(嘘…だろ!?)」

 

「あ…ああ…!!」

 

「(こんなの…どうやって切り抜ければ良いんだ!?)」

 

「無理だ…相手は“龍”にして“神”…!!私達がまだ若き頃に倒したあの世界の“魔王”とは違う!!想像によって現実化したは本物!!」

 

「……ディーン・コールブランド、羽間西十郎と東護ノ介、そして林京子。これから私は彼の力を封じ込めます。その後に、村の者達全員を生き返らせます。」

 

「テラス様は?」

 

「私はその後、エクシリア光家が遺した“大いなる財宝”を探します。アレをゼノムに盗られる訳にはいきません。既にスメラギンガとは話をしており、彼を復活させ、9年後に来訪するアルスを迎えに行くでしょう。」

 

「スメラギンガ光太子殿下が!?」

 

「テラス様!」

 

「行きなさい!!!」

 

テラスがディーン達を転移門で何処かへと飛ばす。

 

テラスはある物を装備する。それはかつて、エクシリアの戦士達や騎士、さらにはスメラギンガや兄弟姉妹でさえも扱う事ができなかったゼノムから奪いし破魔の光剣ムラクモであった。

 

「主よ、汝はここに宣告します。絆を再び結びつけ、互いの相互理解、理の調停・調和を司るエクシリアの最高神【曉和神アルス】と全知全能にして多次元宇宙の意志【ウオフ・マナフ】の意志決定よ、私に力を……坊やを元に戻す力を…。」

 

テラスは破魔の光剣ムラクモを掴む。

 

「ッ!!」

 

テラスは苦しむ。破魔の光剣ムラクモがテラスの寿命や魔力、理力、ソルの光、そして己の魂魄が食い尽くされていく。

 

「破魔の光剣ムラクモ……やはり私の力や“血筋”でも認めないのね。」

 

テラスがそう言うと、ムラクモの柄頭に埋め込まれた大きな紫色の珠から禍々しい龍が現れ、ボスキート・グライズや龍神達に威嚇する。

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

《ッ!!!!》

 

「まだ終わらない。来るべき厄災…そしてこの世界の真実……坊や…アルファリオンと光家の血を繋ぐ者、そして“88”人の星座の“真の試練”果たし、力を宿し、光と闇の性質を持つ“真の勇者”の為にも…!!」

 

テラスの言葉と共に、破魔の光剣ムラクモを鞘から抜刀し、封印を解いた。鞘から抜かれたムラクモの刀身は漆黒であったが、突然と血のように“真っ赤”に染まり、柄の紫の球から現れた龍ーーー【獄龍】ーーーが姿を現し、龍神達とボスキート・グライズを睨む。

 

『ガアアアアアアアアァァァァァァァッ!!!』

 

地獄龍の咆哮と共に一斉に龍神達が苦しみ、“カード”へと変わった。

 

『ッ!!?』

 

ボスキート・グライズは何が起こったのか、周りを見る。しかし、そこに下僕である龍神達はいなかった。さらに燃え盛る家や超星寮から数千枚のカードが飛び出し、カードへとなった龍神達と共にムラクモの紫の球の中に吸い込まれる。

 

テラスは吸い取った吸い取ったカード…“彼等”に念話する。

 

「(お願い…坊やを止めるために…一度だけ…力を貸して。)」

 

テラスが念話したその時、クロノス・クロッカーがテラスの視界を変え、未来を見せる。それは我が子であるアルスことアルトリウスとアルファリオン、スメラギンガ達兄弟、姉妹、仲間達のこれから辿る彼等の軌跡の数々……。そしてアーサーとフェリスとの間に芽生えたテラスの血を引く新たな二つの生命、アーサーを熱愛する美少女達……。

 

「(坊や…あなたったら本当に“あの人”にソックリになっちゃって。)」

 

テラスは微笑み、刀身を力強く握りしめる。刀身をさらに赤く輝かせ、【赫刀】へとなり、彼女の右半分の顔面に昇り龍の痣が浮かび上がる。さらに鬼の様な縦長の瞳孔、鋭い牙に爪、額に2本の角が生え、額中心部から“第三の目”が開眼した。

 

「スゥ…」

 

テラスは目を閉じ、呼吸をする。

 

「ゴオオオオ!!」

 

呼吸音が燃え盛る炎の如く、さらには口元から紅炎が吹き出る。テラスは歯を食いしばりながら、ボスキート・グライズに向かって駆ける。

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

咆哮と共にボスキート・グライズも右腕を変異・肥大化させ、巨大な骨と血肉で構成させた生体エネルギーブレードを…さらに左腕も変異させ、双刃剣型の生体エネルギーアローを形成し、テラスに襲い掛かる。

 

「日の呼吸“陸ノ型”【日暈の龍・頭舞い】…!!!」

 

テラスがそう呟くと同時に一気にボスキート・グライズへと突撃し、幾つもの円を繋ぎながら龍を象るように戦場を駆け巡り、ムラクモを振るう。

 

『ガァァァッ!!??』

 

ボスキート・グライズは何が起こったのか、彼の顔面や首、胴体、四肢、翼、尻尾に激しい痛覚を感じると、バラバラになり…日の呼吸による斬撃と陽炎が穢れた力を清め…祓い…消された。

 

『オォォォォォォォ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!』

 

ボスキート・グライズが断末魔の雄叫びを上げ、最後の力を振り絞ろうと口から獄炎を吐こうとした。

 

『ッ!!??』

 

だが、その前にテラスはソルの光で弓を引き絞り、涙を流し始める。すると女性がある事を呟く。

 

「ごめんなさい…アルス…否、アーサー…!!」

 

女性はそう言うと、弓矢を放った。弓矢の鏃が翠色から青鈍色に変色し、ボスキート・グライズの眉間に命中する。

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァッッ!!!!!!!』

 

と同時に消え、右腕を失い、A組メンバーの返り血が付着し、ボロボロの“我が子”へと元に戻った。

 

「ッ!」

 

テラスは大粒の涙を流し、落ちる間際で無惨な姿、本当の母との触れ合いすらできなかった我が子を優しく受け止め、抱きしめる。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

テラスが泣き崩れる最中、アーサーの身体から黒い何かが出てきた。

 

「!?」

 

黒い物体は形を変え、漆黒に満ち、赤い眼光、炎の髪を持った“子供”……容姿がアーサーになる。

 

「?」

 

テラスはムラクモを突き付けると、アーサーの容姿をしたそれはゆっくりと近づき、ムラクモに触れる。するとムラクモの柄の紫の珠から地獄龍が現れ、アーサーに似たそれと共に彼の傷を癒す。

 

「あなた達…。特に君は…ボスキートなのに、他のとは違う……優しさをあなたは持っている。あなたの名前は…“アグニ”…あなたの名は“ボスキート・アグニ”なのね。」

 

【アグニ】ーーー炎の神と崇められているそれはボスキートでもあり、唯一完全な人型であり、優れた知性があり、慈愛を持っていた。先のアーサーがアグニと名乗っていたのは己の存在意義を忘れないが為の発言であった。

 

「“神の名”を持つボスキート…あなたが出たとなれば、坊やもウオフ・マナフと曉和神アルス、そして巫女王たる私にも認める程の存在……“あの子達”もまた…。」

 

「テラス様!」

 

炎の中、走ってくるのは避難したディーン達であった。

 

「テラス様!ご無事で…っ!!」

 

ディーンはボロボロのアーサーを見て驚く。

 

「あぁ!!アーサー君!」

 

キョウコもアーサーの姿に思わず驚く。

 

「アーサー…。」

 

「馬鹿弟子…。」

 

東護ノ介と西十郎も彼の姿に目を逸らしてしまう。特に西十郎は自身の怖い性格でも受け入れてくれた唯一無二の人格者ーーー弟子がこの様な有様になった事に後悔していた。

 

「本当だったらこんな事をするべきではなかった。俺達が…弱かったからだ。“あの世界”へ召喚され、仲間達と共に魔王を討ったあの頃に…その実力に心酔し過ぎていた。すまん、アーサー…。」

 

「あなた方にお伝えしておきます。彼は目を覚ますが、あの時の出来事をきっかけにさらに壊れ、体内のボスキートが目覚めるも思うのです。」

 

「えぇっ!?」

 

「ですから私は…矢に込められたソルの光で彼の記憶を封印しました。今の彼は自身の名前ですら知らないでしょう。」

 

「何故アーサーの記憶を消したのだ。」

 

「アーサーの師…導師“西十郎”。すみません。アーサーにはとても辛い体験を思い返さないようにしたの…。」

 

「そうか…だが消しても、彼の“罪と罰”は消えない、いずれは甦る。代わりにお前が彼の代行者として罪と罰を背負え…。」

 

西十郎はそのテラスに怒りを表していたが、決して殴り掛かろうとしなかった。

テラスは倒れているアーサーを優しく抱き抱える。

 

「アルス…アーサー…ごめんなさい。私のせいでこんなことになっちゃって…でも1000年後…2000年経った貴方を愛してる…。」

 

女性はそう言うと、人差し指と中指の二本を唇に近づけ、ある光をアーサーの額に付けた。

 

「これは…貴方の本来の力を抑制する為の“封印”…ティガの【光】がと適合したそのボスキートの【闇】が守ってくれる。そして時が満ちたら…“私”の元へ来訪しなさい。」

 

女性は涙を流し、ある光魔法でアーサーを大木に固定させ、海へ放り投げた。

 

「ごめんね…私の“愛しの坊や”…」

 

テラスは大粒の涙を流していた。

 

「っ!!」

 

っと、テラスが何かに反応し、焼け落ちた超星寮から禍々しい“赤子”が現れた。

 

“マァマ…”

 

赤子は何を求めているのか、“ママ”と言う。

 

「アレは…一体何なんだ?」

 

「やっぱり…!」

 

「“やっぱり”?テラス様…アレを知っているのですね?」

 

炎の中を大鎌を持った西十郎と手甲を装備した東護ノ介、他にもたくさん人が武器を持ち、炎の中に映る巨大な“赤子”達へと突撃するのであった。

 

“マァマ〜…”

 

その赤子から放たれた言葉…どこか寂しく…どこか痛々しく…何かを訴えるかの如くの“救いを求める言葉”でもあったーーー……。

 

 



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クロスアンジュ Another brothers 生体黙示録
Another00:【千年呪縛】


3/9に内容文を改善しました。


元老院から離れたオルト達は1000年前の大事故である【D・インパクト】が起きた黒部渓谷へと向かっていった。現在、ゲート先にあるミュータント細胞の処理は済ませているが、いつ再活性化するか分からない状況であった。

平野付近の前線ミュータント対策本部としてキャンプ場となっており、連邦兵士達がそれぞれの役割、潜入の準備を進めて行く。そしてオスプレイが到着し、オルト達はテント内にいるアルファリオンと出会う。彼の素顔に一同は驚きを隠せなかった。

 

「やっぱ、改めて本人を見ると全く違うね。」

 

「えぇ、特に目の色が…。これなら区別ができます。」

 

ナツキとネーラはアルファリオンの瞳の色が青色に驚く。アーサーが赤、アルファリオンが青と言う区別が付けれる。

 

「お前達、よく来たな。」

 

東護ノ介はアルファリオンの前で敬礼する。

 

「(え!?東護ノ介さんが敬礼!?)」

 

アインが驚く中、アルファリオンは返答する。

 

「東護ノ介と西十郎は俺が鍛え上げた立派な弟子だ。」

 

「《えぇっ!!?》」

 

何と、アルファリオンは東護ノ介の師である事に驚く。だがわかる事はただ一つ、東護ノ介の人間離れしたとてつもない力の原因は、アルファリオンの指導法であった事。するとテントへ入ってきた別の人物。

 

「《フェリスちゃん!!?》」

 

何と、ケーニヒスによって誘拐された筈のフェリスがここにいる事に一同は驚く。

 

「フェリスは、私の双子の妹です。私の名はフェアリス・朱鷺・ミスルギ……フェリシアの双子の姉です。」

 

「双子の…姉?」

 

「はい、映像で説明されてなかったのですが、全てをお話しします。」

 

フェアリスは軽くお辞儀をし、アルファリオンと共に潜入の準備を進める。オスプレイに乗り、ゲートへと向かうオルト達は先の話をしようとフェアリスに言う。フェアリスは落ち着いた表情で続きを始める。

彼女はかつて、星の海からの侵略者によって、原子レベルまで体の生態情報を分解されていたとの事。しかし、分解された生態情報の核が偽りの地球へ到達し、女性の胎内に宿り、受精卵と共に双子の姉妹が生まれた。それがフェアリスとフェリシアであった。双子の姉妹の力は恐ろしく、

10年前のリベルタスーーー古の民とノーマの反乱と呼ばれる解放戦争。あの当時、古の民と共にエンブリヲの抹殺をしようと彼等のリーダーの参謀を務めていたブライス・鳳凰・ミスルギと彼の妻 オウカ・朱鷺・ミスルギ、タスクの両親であるイシュトバーンとバネッサ、そしてアレクトラと共にエンブリヲのいる場所へ奇襲を仕掛けた。しかし、エンブリヲの背後からそれは現れた。【アルザード大帝国】…強欲と略奪、無慈悲なる虐殺を繰り返す狂人帝国の参戦により、古の民とノーマの戦士達は次々に殺されていった。彼等はこの世界とは違う力【魔導】と言うもので武力行使を開始し、世界の半分が奴らに侵略されていった。そんな地獄の最中、奴等を追いかけ、時空を渡ってきた戦士達【勇者同盟“カタロン”】が来訪し、世界中にいるアルザード大帝国の主要幹部をねじ伏せて行った。彼等はノーマ、人間、ドラゴン、別世界に生きる種族達が当たり前の人生の為に蔑んできたマナの光を持つもの達を助け、真実を教え、彼らを仲間としてアルザードに立ち向かった。

当時、カタロンを指揮していたのはアルファリオン、時沢アルト、アーサー、光輝、プライマス、異世界の勇者、転生者、“異世界のプレイヤー達”、“異星人達”の各代表者であった。その数はアルザード大帝国をも揺るがす程の桁数で、勢力、戦術、武力、治安維持力も完璧であると。第四皇太子である【シュヴァルツ・アルザード】も父である大皇帝【ケーニヒス・アルザード】に反感を抱いていた。アルザードは“過激派”と“穏健派”の二つの性格に分かれており、一族の80%を占めていた過激派に対抗する為、穏健派全員はアルザードを脱退…カタロンと同盟を結び、共に生きる共和派として【新生アルザード公国】を樹立し、ケーニヒスに宣戦布告。彼等の技術にアルファリオンは喜び、真実の地球にいる地球連邦政府との同盟、友好条約を締結し、アルザードに立ち向かった。その結果、アルザード大帝国は推されていった。奴等の皇帝であるアズラマダフ大皇帝はアルファリオンとアーサーによって首を刈り取られた。だが、奴らは隠し玉を備えていた。あの当時、アレクトラはイシュトバーンに惚れていた…だが、彼は最愛の妻と息子に恵まれていて、アレクトラはその事に嫉妬していた…そんな彼女にエンブリヲが囁き、彼女の純血を奪い、洗脳した。最後の抵抗をしようとアーサー達はアルザード大帝国残党とエンブリヲに終止符をしようと奇襲を開始する。だが、その矢先に待っていたのはーーー。

 

話の続きにオルトがブチギレる。

 

「じょ!冗談じゃない!汚ねぇぞ!!ケーニヒス!!」

 

オルトが怒る中、フェアリスとアルファリオンは涙を流し、アインを含むB組メンバー全員が泣き出す。ネーラはその事に反感を抱く。

 

「何よそれ!…酷い!」

 

「その結果、リベルタスは失敗……精神と心を壊されたアーサーは戦意喪失、ケーニヒスはその力に覚醒し、勇者同盟カタロン、地球連邦、新生アルザード共和国を圧倒し、アルザード大帝国残党はアルザード帝国と言う隠れた国家として偽りの地球に潜み続けた。」

 

「そんな…。」

 

真実の話を聞いた一同。その時、東護ノ介が外の様子を確認する。

 

「お前達、話はそこまでだ。もうすぐ目的地に着くぞ。」

 

オスプレイが目的地であるゲート前に到着する。改めて、ゲートの大きさに顔を見上げてしまうオルト達。

 

「これが…ゲート。」

 

その大きさはダムの様に大きく、ミュータント細胞が登らない様にゲートの周りには電磁バリア、さらには対地対空迎撃システム『フェンス』が数百機並んでいた。オルト達は戦闘車両、多脚砲台、ニ脚の移動用車両、そして局所攻守専用グランヴェに乗り込むオルト達。護衛はナツキ、アインであった。ゲート前には検問所があり、東護ノ介は自身のIDカードとハザードスキャンを行う。

 

「通って良し。」

 

防護服で身を包んだ検査官がオルト達の武運を祈るかの様に遠くから敬礼をする。巨大なゲートが開き、オルト達はついに……五回も続けた世界大戦が始まってしまったとされる禁断の聖地へと入って行くのであった。

 

その頃…元老院では、産屋敷かぐやがパソコンで時沢研究所に関わるデータを調べていた。

 

「1000前…時沢生命工学研究所で一体何があったのか。何故、幼少期のアルトリウス・コールブランドと幼少期のA組メンバーが生きている事に?…12年前…本当は何があった?全部が謎だ…その100年後にドラグニウムが発見される……あまりにも偶然過ぎる、まるで……」

 

「意図的に仕組まれていた。」

 

「?」

 

かぐやの前に現れた男性と女性が呟く。

 

「あなた方は?」

 

「時沢アルト…。」

 

「マリアンヌ…。」

 

「時沢…まさか!!」

 

「えぇ…時沢は私の苗字です。そして、アルトリウス・コールブランドの医師の名は……『時沢総一郎』私の父であり、研究所の責任者です。」

 

時沢アルトが放った言葉に驚くかぐや。っとその時、かぐやに電話が鳴る。

 

「もしもし?……何だって!?」

 

電話の内容…『アウラ奪還作戦及び、アルザード侵攻及びフェリス救出作戦は敵に情報が漏れ、アルザードとエンブリヲによる罠によって大半を失い、撤退して帰って来た』との事であった。そして後の……彼等の運命を大きく揺さぶる程の左右の分かれ道になってしまう事を、オルト、ネーラ、ナツキ、アイン達と東護ノ介、そしてサラマンディーネ等を迷わす事を知る良しもなかった。

 



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