じぇどとうぇるだのおはなしなんだよ!【グランブルーファンタジー】 (生きる核兵器)
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じぇどとうぇるだのおはなしなんだよ!【グランブルーファンタジー】
「やったな、ジェイド!」
ウェルダーは木の上で笑う。
隣にいる親友に。
「ついに島で1番と大木を制覇したぞ!」
「ふぁ〜♪すごいね、うぇるだ!」
親友。形容し難い、彼が。
「すごいのは俺達ふたりだ。」
咎めるように語りかける。
「お前の助言が成功の秘訣だったんだぞ?」
人差し指を立て、教授する。
「じぇどもすごい?」
子ども用の玩具のようなそれは笑顔を見せる。
「わぁ、ふたりともすごいんだよ!」
「ああ、俺達は最高のコンビだ!秘密基地に大木の頂上の葉を飾ろうか。」
そう言い、ウェルダーは葉を摘む。
青々としたおおきな葉。
「ふぁいあ〜!かざるんだよ!」
「フッ……また伝説が増えてしまった。」
ウェルダーはニヒルに決める。
「そのうちきっと全空で話題に━━━」
そこまで言い、言葉を切る。
禁忌にでも触れたかのように。
「っ、あぁ、まぁ、それは…いっか。」
その場には二人しかいない。
だが何故か言い訳をするようにウェルダーは続けた。
「明日は湖で巨大魚を釣ろうぜ!」
代替案。
どうだ、と誰かの顔を見るように。
「ん……」
「どうした、ジェイド?」
微かな声を上げたジェイド。
ウェルダーは見逃さなかった。
「他にやりたいことでもあるのか?」
さっきから黙りこくって顔を上げないジェイド。
「巨大魚は今度でもいいぞ?」
嫌だったかな、と撤回する。
「お前のやりたいことを先にやろう!」
ジェイドは一層辛そうな顔をする。
「うぅん。」
否定。
「じぇど、やりたいことやったよ。うぇるだはそろそろいかないと。」
悲痛。
「行かないとって…」
饒舌なはずのウェルダーは親友の言葉に言葉が紡げない。
「何処に行かないといけないんだ?」
俺の居場所はお前の隣だと言わんばかりに。
「…あっちだよ。うぇるだはかえらないとだめなんだよ。」
「ここはかこもみらいもないせかいだよ。でも、だから、みらいもないんだよ。」
化物は2つ願っていた。
彼の幸せ。
自分の幸せ。
でもそれは、両立できないものだった。
「うぇるだにはみらいがまってる…みんながまってるからかえらないと。」
「…っ、わかった。一緒に帰ろう?あっちだな?」
ウェルダーは手を差し出す。
なんて優しい少年だろうか。
「、うぅん?じぇどは、いけないよ。」
絞り出すような悲痛な声。
つられるようにウェルダーの表情も歪んだ。
「な、なんだと…?親友は…一緒にいるもの、だろう?」
確認するような声色に、“親友”の顔はさらに歪んだ。
「うぇるだ…」
わかってよ。
「俺の事が嫌いになったのか?それとも親友じゃなかったと言うのか!」
どうしてそんな辛いことを言うの。
…君も辛いでしょう?
「…わかった。」
ジェイドが、折れた。
未来を見ずに、2人でこの空間に居たら幸せだろう。
ジェイドは知っている。
この世界は崩れることを。
2人で消えるのも悪くは無いかもしれない。
「…じゃあ、きょだいぎょつりにいこうね!あしたも、あさってもあそぼうね!」
ジェイドは手を伸ばした。
ヒトとは違うその指を、端の指を必死に伸ばす。
「やくそく、ね!」
「…ああ、約束だ。」
ジェイドの視界の端で景色が崩れる。
「うぇるだ、め…つむって?」
「…?なんだ?」
ウェルダーは言われた通り目を瞑る。
「…ずっといっしょだよ、うぇるだ。」
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