漫画家と主夫高校生のD×D (カチカチチーズ)
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主夫高校生にチーズ
一頁


この度、短編集の方から独立させました。
というのも、短編集のままだと読まない方が多かったりするので私としては様々な意見などがあると嬉しくなる為、こうして独立させました。
一応現在のメイン作品はUNDEADなので、こちらはサブ作品。投稿はほんとに気分が乗った時ですので話と話の間が空くことがありますがご了承ください。
今回は短編集に投稿していた1話と2話に加えて3話も投稿しています。


 

 

 

 

男の話をしよう。

 

 

憐れな男の話を。

 

 

男は何処にでもいるただの凡人だった。

 

 

友人と笑い、遊び、喧嘩する。

 

 

本当に何処にでもいる男だった。

 

 

非日常とはまったくもって関係の無い人間だった。

 

 

しかし、ある日、男はとある、悲劇を迎えた

 

 

…………それ、は、

 

 

 

 

 

 

 

 

チーズを頭にぶつけた事で死んでしまった!」

 

 

「人の死因で笑ってんじゃねえよ!?」

 

 

今日も今日とて俺の主夫生活が始まる。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

本名、宗像鴎。

高校二年生、年齢十七歳。精神年齢、三十七歳。

趣味、読書、コンビニデザートの食べ比べ。

好きな物、プリン。

嫌いな物、頑固な油汚れ。

そんな、きっと何処にでもいるに決まっている、いや何処にでもいるのは当たり前な俺は現在高校に通いながら主夫をやっている。

いったい俺が何を言ってるのかいまいちよくわからないやつもいるだろう……多分な。だから、まあ、簡単にだが説明してやる。

 

 

居候の為に俺が主夫をしてる、以上。ん?簡単すぎてよく分からない?…………仕方ないか、よしもう少し噛み砕いて説明しようか。転生者で一般高校生よりも精神年齢も経験もある俺はある日からウチに居候している家事が最低限且つ放っておくと食事も睡眠も風呂もやらない憐れな居候の為に高校に通いながら主夫をやっている、という訳だ。わかったな?

まあ、散々酷く言った訳だが……居候はきちんと仕事をして、ちゃんと家賃とか電気代とか食費とか払ってくれてるし、なんというか放っておいたら駄目だから別に俺が主夫してるのは文句がある訳じゃなくてだな?……べ、別にあいつの世話が好きなんじゃなくて、あいつ俺がいなかったらどうなるんだろって心配で……。

 

んん、忘れろ。

さて、先程何気に重要事項を言ったが……俺は転生者だ。

死因は伏せるが哀れにも前世で死んでしまった俺は別になんか神様とか天使とか何かとかには一切出会わずこうして普通に生まれた。当初はこの世界に何の特典というか力もなくて転生したことによってなんというか唖然としていたが……まあ、今ではいい思い出だ。

ん?ああ、そう言えばこの世界がどんな世界か言ってなかったな。

『ハイスクールD×D』一般人にはとんと縁のない世界だよ。

 

 

「おーい、その読者への説明風な独白はあとどれぐらいかかるー?」

 

「人の独白もとい心中を察すな」

 

 

んん、さて。この『ハイスクールD×D』を元にした世界に転生した俺は一体どんな不幸か哀れにも原作の舞台である駒王学園へと入学してしまった。

これも全て乾巧って奴の仕業なんだ。

 

 

「なんだって?それは本当かい?」

 

「ナチュラルに心読むのやめーや」

 

 

まあ、原作になんて関わる気なんざさらさらなく、こうして家で居候の世話もとい主夫をする方が俺としてはしょうに合ってる。

 

 

「それなりに収入がある美少女がいるから仕方ないね」

 

「憐れな子羊たる俺は悲しい事にエロ親父インストールしてる美少女漫画家に売約されてるわけだな」

 

「エロ親父だなんて、失礼しちゃうなぁしょーねん」

 

 

年齢差五歳が何言ってんだ、おい。

まったく……あ、ちなみにだが『ハイスクールD×D』の世界に転生しただけあって一応俺にも神器は宿っている。まあ、神滅具じゃないが流石に……。

さて、そろそろ話は終わりにしよう。居候が腹を空かせているからな

 

 

「箸用意……してんのかよ」

 

「モチのロン」

 

 

用意しておいた皿に煮込んだ角煮と大根をよそい、カウンターへと置けば即座にテーブルへ運ばれ俺は茶碗に米をよそってキッチンからリビングへと向かう。

何が楽しいのか……いや、夕飯がか。ニコニコと笑みを浮かべる彼女の対面の椅子に腰を下ろし彼女の茶碗を手渡す。

角煮と大根にレタスのサラダ、ニラと卵の味噌汁、そして普通のご飯。

どこにでもある家庭の食卓。相も変わらずこれを見ては僅かに笑みを浮かべそうになるがそれは置いといて、俺は目の前の彼女が夕食を食べる様を見る。

 

 

「うーん、やっぱり角煮と大根は最高だねぇ。ビール飲みたい」

 

「今書いてるのが終わったらな」

 

「はぁー頑張るかにゃー」

 

 

転生者という本来有り得ない存在である俺。決して表には出さない……いや、表に出さなかったから辛かったのだろう。真の意味で同類がおらず自分の素性を明かす事の出来ない人生はあまりにも俺に対してストレスだった。そもそも中身が周りと違う。

気にしなければいい事を気にしすぎて何度も吐いた。

そんなある日の事だ。中学校から帰宅途中に吐き気がして、近場の人気の無い公園で吐いた俺は公園の水道でうがいし帰ろうとしたあの時、アレに出会った。今思えばはぐれ悪魔だったんだろう、人気の無い公園の林を巣にしてたはぐれ悪魔に襲われた彼女に助けられた────という訳ではなくむしろ、首を突っ込んできた彼女を結果的に俺が助けたわけなんだが。

その日から俺たちの関係は続いている。

漫画家と世話役。

異物と異物。

似た者同士。

 

 

「あ、しょーねん。銃の細かい所書きたいから後で見せて」

 

「ん、任された」

 

 

俺はこの本条二亜との生活をどうしようもなく気に入っている。きっと何処にでもあるようなこの当たり前な家庭を日常を俺は尊いと思ってる。

奪おうとする奴は容赦なく殺してやろうと思う程度には。

 

 

「……ん?おい、俺の角煮」

 

「美味しかったよ?」

 

「…………ビール次の分書き終わるまで無しな」

 

「なん…だと…!?」

 

 

 

日常系主人公が一番安牌な筈。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

『ロー〇ンのプリン買ってきてー』

 

 

さてさて、場面もとい時間も移り変わって今な訳だが。

深夜十二時現在、二亜が原稿と向き合い始めてかれこれ四時間少しが経って唐突に二亜がアイスを食べたいと言い始め冷凍庫に入っていた俺のパピコを与えようとした所、某お高いカップアイスが食べたいと主張し、あろう事かそこにロー〇ンのプリンを追加するという暴挙を行った為に俺はこうして時間外労働をしている事になる。

まあ、金はあっち持ちで好きな物買っていいと言われたら行くしかないが……ロー〇ンはウチからそこそこ遠くてな……。

 

 

「……でもまあ、夜の散歩と考えれば丁度いい距離、か」

 

 

それにLチキよりもファ〇チキの方が好きだが、から〇げくんが美味しいからな。

…………暇だな。

さて、どうするか。ウチから遠いってことはそれだけ暇な時間が長いわけで、行きは二亜から電話来てたから問題なかったが。

にしても深夜か、最近不審者が多いって学校で言ってたしな………………でも、俺みたいな高校生を狙う不審者なんているわけもないし……いや、いるかもしれないな。人間、だいたいが自分は狙われないと信じてるからな。

大量殺人や拉致被害、そういったモノをニュースとかで見ても人間ってのはだいたいというか殆どが対岸の火事として見て、自分とは関係ないモノとして見るからな。きちんと考えうる可能性として見ないとな。

 

 

「まあ、本当に来たら種類によるがタマを潰して終わらせるか」

 

 

やるにしても買ったものがぐちゃぐちゃにならない程度でな────

 

 

「宗像鴎だな?」

 

 

フラグゥゥゥウウ!!!

独白しながら帰路を歩いていたら、目の前には黒スーツに黒いシルクハットという満場一致で不審者扱いされるであろう初老の男が前方からいきなり現れた!

俺はどうする!?というかこいつ俺の名前知って────

 

 

「黙りか、まあいい。貴様はここで死ぬのだからな」

 

 

そんな事を言って不審者はその手に光の槍のようなモノを手にして……こいつ堕天使か。

…………あー、そうか、原作だとこの時期は原作開始時期。

んじゃ、神器所有者云々のアレか。

 

 

「あー、なんで?って聞くのは野暮なんだろうが教えてくれないか?せめて」

 

「ほう……無駄な足掻きはせず受け入れるのか。いいだろう、貴様の神器は我々にとって邪魔になるかもしれないだから、貴様を殺す」

 

 

はい、ビンゴ。

ひとまず俺はレジ袋を道に置いて、不審者に向き直り

 

 

「オーケー。でもまあ、ウチにはプリンとアイスを食べたいと煩い漫画家が待ってるわけでさ―――――だから殺す」

 

 

瞬間、俺はその手に黒い銃身の短機関銃を握り不審者へと銃口を向けた。

H&K社の作製した9mm口径の短機関銃、UMP9。本来ならば9×19mmパラべラム弾を使用する所だが今回は堕天使が相手という事でガワは同じだが中身をとっ変えた銃弾を装填してある。

 

 

「ッ!神器―――ガァッ!!??」

 

「今回選んだのは汞でさァ。ちと無理矢理作ったもんで、着弾すると割れて中身が出てきてな―――――生物相手だと体内に水銀が溜まるって寸法だ」

 

 

堕天使も生物、汞が効くのは実験済みでね。

そんな言葉を付け足しながら、俺はUMP9の引き金を引き続ける。本来ならそんな早くに毒性は出ないかもしれんが色々弄ってるからなぁ。効果が出るのも早くて助かる。

 

 

「ァァ、ああ、……」

 

「いやぁ、堕天使は処理が楽で助かる」

 

 

UMP9で蜂の巣且つ汞の毒性に殺られた不審者はその場で仰向けに倒れ、その口からいかん色の泡を吹き血塗れになったのを見下ろしUMP9を腰に吊り下げ道脇に置いておいたレジ袋を持ち上げる。

 

 

「次からはどんな神器持ってるか調べてから来ような?……まあ、次回なんて無いけどな」

 

 

そう、最後に呟いて血溜まりも遺体も消えて羽根だけになった不審者の横を通り過ぎた。

 

 

 

 

この後、無事家に着いたわけだが本っ当に残念な事だが俺のパピコを食べていた二亜を目撃した為買ってきたロー〇ンのプリンとハー〇ンダッツは仕方がなく俺の胃袋へと収まる事となった。

憐れ二亜。

 

 

 

 

 




感想等、お待ちしております。あったら筆が持ちやすくなるのでよろしくお願いします


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二頁

 

 

 

主夫系男子高校生の朝は早い。

郵便受けに朝の新聞が投函される頃に起床、なにゆえか下着姿で俺の隣で寝ている自称美少女漫画家の顔にペンギンクッションを被せ、寝間着からそうそうにワイシャツと学生ズボンに着替えてから自室を後にする。

部屋を出れば真っ先に目指すのは洗面所。

顔を洗い、寝癖を軽く整えれば洗面所を後にし玄関を出て、外の郵便受けへと向かう。やはり、朝早くだからかほんの少し冷えた空気に頬を擦りつつ郵便受けを開いて新聞等を取り出してから家の中へと戻る。

 

リビングのテーブルに新聞等を置いてそのままキッチンへ。

軽く冷蔵庫を覗き今日の朝食から夕食までをどうするか考えていく。

今日の朝食は北海道の大叔父が送ってくれたすじこがあるから、すじこご飯に付け合せとして玉子焼きと昨日のニラと卵の味噌汁にしよう。

ふと、ビール棚を見れば違和感がある。あながち有り得ない話ではない為、すぐさま俺はビール棚のビール缶の本数を確認するとやはりというか記憶にある本数と数が合わない。

そうすればどうして二亜が俺のベッドにいたのか自ずと答えが導けてしまう。いや、二亜が俺のベッドに侵入もとい寝ているのはそこそこ有り得る話だが、流石に下着姿なのはそういう事なのだろう。

ひとまず二亜の朝食からすじこと玉子焼きを没収し、焼き海苔とご飯にニラと卵の味噌汁そして朝っぱらから肉も無いのにサンチュを食わせることを決定しフライパンに油を引く。

流石に弁当へすじこを入れるという暴挙は出来ない。

二亜にサンチュを食わせるついでに今日の俺の弁当は焼肉弁当にしよう。一昨日の夜に下校中、値下げしていた為に買ったプルコギ風の味付けをされた肉をフライパンへ投入、それと同時作業にヤカンに水を注ぎ込み麦茶のパックを放り込み火にかける。

適度に火が通ってきた肉を見て、弱火に調節し弁当箱を用意する。

あらかじめ用意しておいたサンチュをまず先に敷き詰め、その上から肉を乗っけていく。

別の容器には昨晩の角煮の煮汁で煮詰めた大根を入れ、白米も用意する。

 

何か男子高校生の弁当としては物足りない気がするがそれは登校中に学校近くのコンビニでデザートを買えばいいのでこれで良しとしよう。

さて、時計を見てみれば時刻はまだまだ六時前。

俺はヤカンにかけていた火を少し弱め、グラスに砂糖を大さじ一掬い放り冷蔵庫から出したコーヒーのボトルを軽く降ってからグラスに注ぎ込み次に牛乳を注ぐ。

おおよそ、コーヒー4の牛乳6の割合なコーヒー牛乳を作って軽くスプーンで混ぜ、何口か飲み喉を潤してから、茶の間にかけている洗濯物を次々と洗濯バサミから外していき一つ一つ種類ごとに分けて畳んでいく。

途中、当たり前な事だが二亜の下着類も出てくるがそれも構わず畳んでいく。そもそも今更下着の一つ二つで動揺するほど初心でもない。なんなら、この前二亜が買ったという馬鹿みたいに透け透けな下着ですら、それを着て見せた二亜ごと鼻で笑ってやった。

童貞を殺すセーター?DIOが似たようなの着てたな。透け透けな下着?素っ裸の方がマシなのでは?とまあ、そんな風にだが。

 

 

 

「あおはよぉーしょーねん……あ」

 

「ぁ?」

 

 

リビングの扉が開いた音がすればその数瞬後に声が響く。

視線を動かさば案の定、寝惚け眼な二亜がいるわけだが……訂正寝惚け眼じゃあないまるで面白いものを見つけたかのような喜悦の浮かんだ面倒な眼をしている。

 

 

「おや?おや?どうしたの?しょーねん、私の下着なんか手に持って!」

 

「黙れエロ親父」

 

 

とてつもなく面倒くさいもといウザったい表情で近づいてきた二亜の頬を先程から地味に食べていたサンチュのまだ口をつけていないモノで叩く。

 

 

「チシャッ!?」

 

「そういや、お前俺が寝た後ビール飲んだろ」

 

 

だから、お前秘蔵の大吟醸はもれなく神社の不知火爺行きな。

そんな俺の宣告に二亜は文句を言おうと口を開けたのでそこにサンチュを突っ込み、沸いて音が鳴っているヤカンのもとへ向かう。

 

 

まったく、朝から大変だ。

これだから主夫系男子高校生の朝は早い。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

主夫系男子高校生の学校生活?普通に前世と何も変わりませんが?

いや、元が女子高だった為か女子生徒の人数が多いな、その分前世の普通の共学高とはまた違った感覚はある。

まず、男の同級生が少ない事だろう。俺のクラス内での比率としては女子8

男子2というモノ、まあその辺は適当にやっているから問題は無い。別にコミュ症という訳でもないから普通に女子生徒とは接してるというかぶっちゃけ対応が歳下へのソレなんだよなぁ、と自覚している。

成績は……まあ、英語が些か悲しいが世界史と国語は基本的に上位を走っている。入学した頃は卒業後は大学へ進学せずに専業主夫として二亜の世話をするつもりだったんだが、その二亜本人に大学へ進学しろと言ってきた為に仕方がなく、誠に不本意ではあるが大学進学をする事にその為に成績はそれなりの所を維持している。英語を除いてだが。

さて、そういった些事は置いといて、だ。

『ハイスクールD×D』と言ったら……やはり気になるは主人公だろう。

 

兵藤一誠。二天龍もといウェールズの赤き竜を封じた神器の持ち主にしてこの世界の主人公、どうして捕まらないのかいやそれ以前に何故に退学になっていないのか分からないほどの変態・性犯罪者。教室内で女子生徒がいるにも関わらずそういった本やDVDを取り出し同じ阿呆共と猥談を始める男。

ふと思ったが高校二年生は十七歳だからそういった本やDVDは購入出来ないのでは?ただの猥談ならば思春期の男子高校生として割り切れるが……いや、周囲の女子生徒の事を一切考えずに猥談をするなど普通の男子高校生でも流石にしないか。

あと覗きは普通に退学または停学案件な気がするのだが。

 

 

「────!」

 

「────!!」

 

「────!」

 

 

さて、まあ、件の変態三人衆だが。悲しい事に俺とアイツらは同じクラスというまあ、二次創作ありがちな関係にあり、朝から猥談をかましている三人衆に五月蝿いなぁと感じているわけだ。

ここでオリ主ならだいたい……まあ、兵藤一誠とそこそこの関係とかアンチ系オリ主ならば朝っぱらから猥談かましてる奴らに文句の一つや二つ、正論または奴らが持ち込んでいるそういう本やDVDを破壊する等の強行手段をするのだろうが、残念ながら日常系主人公な俺はあんな変態三人衆のもとに首を突っ込むなんてノーサンキュー。

というわけでアレらは無視して俺は自分の席で大人しく主婦のお役立ちグッズ本を読み耽る。……うーん、買ってもいいんだが似たようなのが家にあるからなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

授業風景?アイツらは良い奴だったよ。英語以外はな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夕方、既に帰りのホームルームは終わり部活動に勤しむ者、図書館で勉強する者、そのまま帰宅する者、頭が痛くなるような事をする為に馬鹿をしに行く者。各々が各々の目的で教室を後にしていく。

無論、俺は帰宅する者だ。

今日の夕食はどうしようか。朝、冷蔵庫を見たは良いがいまいち決めてないんだよな。

 

 

「二亜に聞くか」

 

 

ポケットからスマホを取り出し、そのまま二亜へと夕食の注文を聞く。

と、すぐに返信が届き確認する。

 

 

『女体盛り』

 

「…………」

 

 

女体盛り……女体盛りねぇ。そうだな、別にそれでもいいか……確かまだプルコギ風の味付け肉が残っているから、昼食と被るが仕方がないプルコギ風の焼肉丼を女体盛りでやってやるか。

その旨を二亜へと送ればすぐさま、先程よりも早くに返信が来た。

 

 

『すいませんでした』

 

「まあ、メインはそれでいいとしておかずは何にするかだな。帰りに惣菜でも買ってくか」

 

 

ポテトサラダ……いや、生ハムが食べたい。昨晩のロー〇ンでの二亜の金の余りでそこそこ高い生ハムを買ってサラダの上に乗っけるか。

あー、あとついでに明日の弁当のおかず買わないといけないな。

……唐揚げにするか。てことは鶏肉買わんと……安かったら嬉しいな。

 

 

 

 

この次の日、兵藤一誠に彼女が出来たという常日頃の彼を知っているものならば有り得ないと断ずるであろう出来事を耳にし、俺は一人細く笑みつつも面倒くさくなる事にため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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三頁

短編集には投稿してい最新話です。

ドルフロ、ネゲヴが全然作れない……どうして?……悲しみしかないのですが?



 

 

 

 

そこにいたはずなのに居なくなった少女。

自分以外の誰の記憶からも消えてしまった少女。

そんな白昼夢か狐に化かされたかのような奇妙な事態に少年、兵藤一誠はしばしの間何事も手につかなかった。そんな彼を気にかけたのだろう、それとも単純にそういう気分だったのか、いつも通りだからなのか、彼の親友である二人の少年・松田と元浜は彼を遊びに誘った。

親友宅で親友秘蔵のモノを楽しんだ兵藤一誠はスッキリしているような、何処か悶々としたモノを抱いているような、そんなふわふわとした感覚のまま一人寝静まった住宅街にて帰路に着いていた。

 

彼の彼女であった少女が誰からの記憶からも消えたその日から兵藤一誠の肉体は何か変化を起こし、彼自身がそれを自覚していた。

朝日……いや、陽の光がうっとおしく気怠く感じ、逆に夜闇の中では身体中に力が漲っていくそんな何処かおかしな奇妙な変化に戸惑っていながらも、少女の喪失を何処か隅の方へと押し込んでいた兵藤一誠。

そんな感覚をこの深夜に思い出したかのように感じた兵藤一誠は首を捻り、今まで隅の方へと押し込んでいたそれが気になった時、ソレは現れた。

 

 

 

 

《――――悪魔、か》

 

 

 

「え――――」

 

 

 

まるでゲームで敵が出現するかのように、本当に唐突に何も無かった場所にそれは忽然と姿を現した。

全身を覆い隠す黒の外套、外套の隙間から見えるのは黒のボディスーツ。唯一隠れていないフードの中身は赤い眼光を持つ金属的でスカルを思わせるマスクを被り、その背には百八十過ぎはあろうソレの身の丈ほどの棺桶が背負われている。

そんな非日常の住人かコスプレイヤーの二択でしかない存在が突如として兵藤一誠の目の前に姿を現した。

そんな存在に兵藤一誠は動けなかった。

どうして、そんな動けない理由を兵藤一誠は自分自身に問いかけるものの答えは一切見つからずソレは一歩、また一歩と兵藤一誠へと近づいていく。

 

 

《いったい何処の悪魔の下僕だ》

 

「え、あ」

 

 

ノイズがかった声音が紡ぐ言葉、それを兵藤一誠は上手く頭に入れることが出来ない。それも当然だろう、高々学生風情がこんな有り得ない非日常の存在を前に平静で居られる訳もなく、軽口が叩ける訳もなく、まともに動ける訳がない。

故にソレの問いかけに答えられるわけがないために、兵藤一誠との距離が三メートルを切った辺りでソレは足を止め

 

 

《何も答えないという事はそういう事か。仕事外且つ弾代にもならんが目障りだ》

 

 

そんな言葉と共にソレは外套から右腕を出す。

幸か不幸かその手に握られているものを見て、兵藤一誠は正気を取り戻す事となった。

 

 

「ひっ……!」

 

 

月明かりに反射する銀色のハンドガン。

5,7mmの小口径、銃身は薄いものの前後に長いグリップは手の小さいものでは扱いづらい仕様、その使用弾のサイズからFive-seveNという名称を持ったFN社製のハンドガンを型に銀を素材としたハンドガン。

流石の兵藤一誠も銃というソレよりは現実的な脅威を前に正気を取り戻し数歩後退する。

 

 

《ふむ、アームの一つも見せれば流石に主を呼ぶと思ったが――――やはり、はぐれか》

 

 

突きつけられるハンドガン。銃身に対して暗い銃口から目を背けられない兵藤一誠は明確に自分の死を思い浮かべる。

両親の事、親友らの事、様々な思い出が走馬灯として兵藤一誠の脳裏を過ぎっていき、ふと兵藤一誠はあの日の事を思い出した。

翼は生えていない、しかし黒。

そして、死の恐怖が蓋をしていた記憶を思い出させる。夕日を背に一人の少女に殺された記憶を────

 

 

《Good-bye》

 

 

ソレの指がハンドガンの引き金へとかけられたのを見て、兵藤一誠はその目を瞑る。自分を殺すものを見たくないかのように。

 

 

 

 

しかし、幸か不幸かその瞬間は何時までも訪れなかった。

そんな事態に兵藤一誠は戸惑いながらも薄目を開ける、すると目に映るのは目と鼻の先にいたソレが十メートルは離れた所にいたからだ。

 

 

「その子に触れないでちょうだい」

 

 

そんな声が路地に響く。兵藤一誠の隣一人の女性が通り過ぎていく。

紅い髪を腰ほどまで伸ばした学生服の女性。

兵藤一誠はその女子生徒を知っていた。

 

 

《Strawberry-blondeよりも紅い髪。……駱駝(グレモリー)の家の娘、か》

 

「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、侵入者さん。この子にちょっかいを出すというのなら容赦はしないわ」

 

 

吐き捨てるかのような言い方をするソレに対して女子生徒、リアス・グレモリーは毅然とした態度でソレを睨みつける。

そんなリアス・グレモリーに対してソレはクツクツとノイズがかった笑い声のようなモノをマスクから零しながらその紅い眼光をリアス・グレモリーに向ける。

 

 

《そちらの下僕というわけか。ならば、きちんと躾ける事だな。そんな放任紛いの教育をしていると、オレの様な賞金稼ぎに狩られるだけだ》

 

「ご忠告痛み入るわ。でも、この街は私の管轄なの……私たちの邪魔をするというのなら、その時は容赦なく滅ぼすわ」

 

《ククッ、その言葉しかと覚えておけ。オレの仕事の邪魔をすれば、骨の一片までもれなく利用してやる。駱駝(グレモリー)の娘》

 

 

渦中の中心である兵藤一誠を置いてきぼりにした二人の会話に兵藤一誠は反応など出来ず、つい尻餅をつく。

しかし、リアス・グレモリーもソレもそんな兵藤一誠には気を配らず目の前の相手に視線を集中する。

 

 

《まあいい。生憎オレの仕事に其方は入っていないのでな、次出会った時は…………いや、どうでもいいな》

 

 

そう最後に言い残して、ソレは踵を返し兵藤一誠やリアス・グレモリーに背を向けて路地を歩き出す。

もはや、ソレが兵藤一誠の生命を脅かす事態は回避された。だからだろうか、兵藤一誠は緊張の糸が切れたのかそのまま瞼を半開きにしてそのまま横に倒れその意識を手放した。

最後にその姿を消していくソレの背負っていた棺桶に刻まれた笑う棺桶のマークを視界に映して。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

日常系主人公とは。

その名の通り、バトル物ではなく日常物での主人公の事だ。

原作主人公の様にバトルしてヒロインが増えるバトル系主人公ではなく、日常を過ごす事でヒロインが増えるのが日常系主人公……まあ、現状俺のヒロインは二亜一人なんだが。

恥ずかしい事言ったわ、忘れて。

 

え?堕天使を蜂の巣にしたって?この世界『ハイスクールD×D』よ?俺、神器持ちよ?しゃあないじゃん戦闘描写があるのは。俺だってさ?別に戦闘がしたいわけじゃないの、ただ単純に硝煙香る日常系主人公目指してるだけなの。

お気にの銀製Five-seveNでバンバンシューティングしたいわけよ。ちなみになんで銀製なのかっていうと単純に二亜の作品の一つがSILVER BULLETだからだよ。

銀の銃じゃなくて銀の銃弾だろって?悪魔とか堕天使とか相手に基本的に汞使ってるだろ?水銀なんだから銀の銃弾なんだよ。

 

 

「ん、あ、……そこ……そう、そこ、いい……」

 

 

そういえば原作開始するけども俺はどうしようか。

オカルト研究部?ナンセンスだな、そもそもそんな部活に入ったら二亜の世話は誰がするのか。俺がするから俺は帰宅部でいい。

 

 

「あ、そこ、もっと、強く……!!」

 

 

ま、原作なんて仕事でもない限り関わりたくない。

というよりも、まともに考えて戦闘中にやばい事を叫んだりそういう事を求める兵藤一誠とあまり関わりたくないというか……うん、もしもその対象が二亜になったとしたらと考えるとなんというか、もう、アンチマテリアルで兵藤一誠の額をぶち抜くわ。

それともエストックで心臓を穿つ、人斬り包丁で胴体を真っ二つ、軍用バイクで轢き殺す、薬品で毒殺、なんならC4で爆殺も可。

 

 

「かもめぇ……もっと……もっとぉ」

 

「そろそろお約束止めようか」

 

「っぬぉ!?待って待って!!タンマタンマ!しょーねん!!しょーねん!??」

 

 

ラノベお約束の喘ぎ声――実はマッサージをやっている馬鹿の脚を痛い様に揉みほぐしながら足で二亜の尻を叩く。

さて、どうして俺が二亜のマッサージをわざわざしているのかというと、単純に今回の分の原稿が書き終わり、担当が受け取りに来るのが明日である為この空いた時間で凝った身体を解してほしいと何やら色々と余計な言葉が着いてきたが頼まれたのでマッサージをしている。

というかだな、今更胸とか尻とかエッチだのスケベだの言われたところで中学生でもないんだから反応しないっての。

 

 

「し、死ぬかと思った……」

 

「無様」

 

「ひ、酷くないかな、少年」

 

 

恨みがましい二亜を無視して、脇に腕を差し込んでそのままうつ向けから膝立ちに起き上がらせる。若干後ろに引っ張りながら。

 

 

「おいおいおいおい、私硬いからこのまま仰向けにならないから、膝、膝が壊れちゃうから、ね、ほら、ね……らめぇぇぇ壊れちゃうのぉおおお!!」

 

「え?壊して?わかった」

 

「ごめん。ほんと、マジで止めて」

 

 

流石にガチトーンで言われると仕方がないから俺も止めるしかない。

二亜の身体を横に倒す。するとすぐに二亜は曲がっていた膝を真っ直ぐに伸ばしてゆったりとし始める。

そろそろ二時か、はよ寝よう。

 

 

「あ、そういえば、件の堕天使だけどさぁ」

 

「ん?……ああ、あのコートの不審者か。それがどうかしたのか?」

 

「仕事の合間にちょろっと調べたらめんどっちいのがポロポロ出たんだよね」

 

「へぇ……まあ、知ってるけども」

 

 

原作知識があるからな。まあ、そんな事は置いといて二亜が調べたという情報にでも耳を傾けておく。あの堕天使は不可抗力だったが他の事は極力首を突っ込みたくない……だが、二亜が頼んでくるというのなら別だ。……あの不審者ことドーナシークはイベント前に殺ってしまったからな、アレがやるはずだった事はしょうがなく俺が代行したが……。

 

原作を考えると俺は二亜の為にも出来ればこの駒王町から出て別の街に住みたいのだが、二亜はネタが取れるから、と何とも不純な動機で引越しを拒否るので諦めざるを得ない。

 

 

「悪魔が敬虔なシスターを凌辱」

 

「とんでもなく悪意のある受け取り方だな、おい」

 

「薄い本ネタ……というか、まあ定番だよね。あ!やっぱり少年もそういうのしたい?」

 

「おい」

 

「ぬふふ、仕方ないなぁ。夏コミのネタにするからそういう趣向で一回やってみる?」

 

「もっとも無駄な霊装の使い方……」

 

 

果たして誰が自分の霊装着衣凌辱プレイを夏コミのネタにすると考えるだろうか。恐らくきっとこいつだけだ。

いや、それよりもだ。俺は途切れた話の続きを二亜に催促する。

 

 

「んあ、……うん、ともかくなんか悪魔がさぁ、凌辱プレイの為にシスターをだまくらかしたりして堕天使のとこに送って、堕天使がシスターのハジメテを奪って死んだ後に堕天使を皆殺ししてからシスターに駒入れて蘇生アンド転生マッチポンプ白馬の王子様をするつもりらしいよ」

 

「色々とツッコミどころがあるがまあ、何となくわかった。それで?お前は俺に何をしてほしいんだ」

 

「シスターはなんとかなるっぽいから、その外道畜生凌辱プレイ大好き変態悪魔をそれはもうヤッて」

 

 

流石に会ったこともない人間だが、それでも同じ女 だからなのかその糞悪魔に容赦の無い殺戮命令を出してくる二亜に俺はクツクツと笑ってしまう。

まあ、俺としても二亜の霊装的にもしも、万が一、いや億が一にあの糞悪魔の手が二亜へと伸びるとしたら……そう考えるとああ、人斬り包丁で素振りしたくなる。

 

 

「あいよ、わかった。んじゃ……日常系主人公に戻る為にちゃらっとしっかり仕事をこなしますよ」

 

「硝煙香る日常系主人公とか支離滅裂だからね?」

 

 

二亜のそんな言葉など軽く流して俺はベッドの下から仕事道具の入った棺桶を取り出して、ニヒルに笑ってみせた。

 

 

「似合わない、減点乙」

 

「泣かすぞ」

 

 

 

 




余談ですが、Five-seveN。一身上の都合で銀色にして主人公に持たせてるんですけど……アレ、GGOでキリトが使ってるんですね。普通に覚えてなかった……黒星なら覚えてたんだけどなぁ

Twitterをやっています。もし何か意見があったり、Twitterで作品についてツイートしているのでそれが見たい方は是非フォローしてみてください。
感想等、お待ちしております


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四頁

ここ最近の投稿スピードが昔に戻ってる気がするチーズ。
ちなみにネゲヴはまだ当たらない



 

 

 

 

暗い夜道、人気のない廃墟へ続く森の道。

そこを音もなく進むのは一つの人影。

 

黒い外套で身を包みその背に笑う棺桶の刻印を施した身の丈ほどの棺桶を背負う髑髏の仮面を付けた一人の傭兵。

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)

こと人外の世界所謂裏の世界においてそう呼ばれる傭兵集団の頭目。

そんな男が極東のさらにその地方都市のこのような所を歩いているのは何故か、そんなものは疑問に思うまでもなく簡単な話だろう。

外套から覗く手に握られているのは銀色のハンドガン。

 

 

《……、はぐれ悪魔》

 

 

銀のFive-seveNを手に、一歩一歩廃墟へと向かっていく傭兵。夜の森で活動する小動物らは一様に傭兵から微かに漏れる敵意にそそくさと巣へと逃げていく。

膝下まで伸びた草を踏みしめ、道を進んでいけばふと、道は開け月明かりがほのかに強く傭兵を照らす。

外套のフードから覗く赤い眼光は開けた空間のやや奥にある三割程が崩れ壁面は蔦が生い茂りコンクリートが露出している位置を見つけるのは些か難しいと言えるような正しく廃墟。

如何にも陽の光が浴びれぬような輩か潜んでいそうな廃墟を前にしてハンドガンを持っていない手で軽く外套の中、腰にあるものを確認し数歩廃墟へと進む。そうすればつい数瞬前から自身を舐め回す様に向けられた視線がより強くねっとりしたものへと変わったのを傭兵はすぐさま察知する。

 

 

『にちゃぁ……不思議なにぉいが……するぅなァ……』

 

 

まるで粘度の高いものがたてるかのような音が静かな廃墟に響き、その後からダミ声のような美しい歌声の様な奇怪極まりない声が続き、何度かの最初と同じ音がたてば崩れて中が見えそうしかし暗闇でまったく中の様子が伺えない廃墟の中からそれは姿を現した。

 

 

『ぬぅぇへへ……美味しいのかな?まずぅいのかなぁ?』

 

《frog》

 

 

それは二、三メートルはあろうかという藤色の蛙のようななにかであった。イボイボとした肌、四足歩行の指先には水掻きと鋭い爪が供えられ、蛙らしい大口……しかしそんな化け物をより一層化け物たらしめているものがあった。

それは顔である。上顎から上にあるのは蛙の顔ではなくまるで処女雪の如くに白い肌ときっと何人もの女性が羨むであろう人間であれば腰ほどまではあるだろう長い濡羽色の髪、その瞳はぱっちりと開きほっそりとした鼻、正しく大和撫子が如き美しい相貌であるがしかし、問題なのはそれがあくまで上顎から上だけであること。

巨大な蛙の姿にそのような顔などアンバランスを通り越して醜悪極まりないものであり、仮にこれが魔女の呪いでこのような姿に変えられてしまったお姫様でキスをする事で呪いが解けると言われようとも十割の男はそのあまりの醜悪さに呪いを解こう等とは考えないだろう。

さて、さらにこの醜悪な蛙の化け物の詳細を伝えるとするならオタマジャクシの名残かなんなのかうねうねと蠢く尻尾とその根元に生えている申し訳程度の蝙蝠のような羽根がある事だろう。

 

A級はぐれ悪魔エル=カロッグ。

『笑う棺桶』にとって、今回の仕事の対象。既に何人もの悪魔や人間を食らっているはぐれ悪魔であるそれを前にしてすぐ様に男は動き出す。

はぐれ悪魔と正面に立たないように横へ回り込もうと走りながら、ハンドガンを向けて撃ち込む。

 

 

『ぬぅへぇ……』

 

 

放たれた銀弾は確実にはぐれ悪魔の脚に着弾するもののやはりその身体の大きさもあるのか対して効いておらずその眼を動かし男を視界に入れる。

瞬間、はぐれ悪魔の僅かに開いた口から男へ向けて何かが飛び出す。はぐれ悪魔の見た目からしてその飛び出したものが何なのかは明らかだろう。

つまるところ、舌である。

 

 

《クソが……!》

 

 

常人では気づけば既にはぐれ悪魔の胃の中であろう速度で放たれた舌は真っ直ぐに動いている男の左腕へと着弾した。これほどの大型であるならば筋肉量も相当なものでそんなはぐれ悪魔の舌が高速で迫り当たれば間違いなく骨の一本や二本は折れるだろう、がしかしだ。それは常人であるのなら。

舌が左腕へと触れた瞬間、男は自らの左腕を弾かせるように動かし左腕の代わりに別のものをはぐれ悪魔の舌先に当てた。

さて、カエルの舌からとある粘液が分泌されているのは知っているだろうか。それは普段はサラリとした粘液であるのだが舌が口から放たれ標的へと着弾するとそのサラリとした粘液は途端に非常に粘度の高い粘液へと変化し獲物が舌から取れないように口の中へ運ぶ事が出来る。なお、口の中に戻れば粘度は最初のようなサラリとしたものへ戻るそうだ。

 

オツムの弱いこのはぐれ悪魔はそのまま舌を口の中へと戻す。舌先に着いたものが何なのかを知らずに。それを見て男はマスクの下で嘲笑し、いつの間にかにハンドガンを握っていた筈の右手にはハンドガンではなく黒いトリガーの様なものが握られている。

 

 

《Composition―――》

 

 

首を掻っ切るように、トリガーを持つ手を動かしトリガーを二度引く。

そうすればソレは起動して……

 

『ぐぅえ?』

 

《C-4》

 

『ぅぅぅええぇ!!??』

 

 

瞬間、はぐれ悪魔の身体が十数倍に膨張する。

CompositionC-4。アメリカ軍をはじめとする世界的に使われている軍用プラスチック爆弾であるそれの主成分にRDXというものがあるがこれには毒性が存在しており、これは人間を含む哺乳類に対して脱力感や目眩、頭痛に吐き気、更には痙攣、意識喪失などの症状を引き出す。水には溶けない為、動物には効きにくいがしかし加熱する事で気化したエアゾルを吸い込めば急性中毒を引き起こしてしまう。

ちなみにだが、最近の爆発物には爆発物マーカーとしてエチレングリコールジニトレートという探知剤を添付する事が義務付けられており、これは毒性の強い第一種指定科学物質に指定されており、その毒性は体内に吸収されやすく、暴露されると初期症状として頭痛や嘔吐感に目眩が起き、暴露が続くと全身の衰弱や疲労感に四肢の疼痛が引き起こされ、死亡する場合がある。

 

見る限りにはぐれ悪魔はC-4の爆発でその身体が四散したわけでは無いようだがその体内でC-4の毒性が残留しているのだろう。

カエルの見た目である為RDXの毒性が効くかは分からないところだが、間違いなくエチレングリコールジニトレートの毒性は体内に残留して影響を及ぼすだろう。

ならば、と男がトリガーを投げ捨て腰の後ろから取り出したるは一丁の銃。

 

銃身長は460mm、口径5.56mm、使用弾薬5.56×45mmNATO弾。

ハンドガンでは些か効果は薄い。故に使うのはイスラエル・ミリタリー・インダストリーズ(IMI)社製の分隊支援火器、軽機関銃ネゲヴである。

男はすぐ様ネゲヴを構え、体内で爆破したC-4のダメージ硬直から抜け出せないはぐれ悪魔に対して引き金を引く。射撃の際の衝撃を一切度外視しての射撃、装弾数150発のベルト式弾倉────無論、改造が施されているのだろうか弾倉はそのまま男の背負う棺桶へと繋がっており一切弾倉が途切れる様子は無い。

やはりと言うべきだろうか、ネゲヴで放っている弾丸一発一発が悪魔や堕天使等の人外にも影響を与える汞である。そんなものが直接何十発も体内に入れば…………

 

 

『ぅぇ、ぅぇ、ぅぇ、ぅぇ……』

 

 

先の毒性もあり、尚且つその身体が蜂の巣と化したはぐれ悪魔はもはや虫の息でしかなく。そのカエルの身体に反した女の顔も見るに堪えないものと化した。

そんなはぐれ悪魔にネゲヴをしまった男は近づいていく。その手に握られているのは銀色のFive-seveN。

 

 

《good-bye》

 

 

 

真夜中の廃墟に乾いた銃声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

深夜二時前。

明日は特に祝日とか休日とかでもないにも関わらず俺は一人ぶらぶらと街を歩いていた。

特に意味は無い。

単純に思春期……いや、人間誰しも一人になりたい時があるだろ?要するにそういう事だ……決して二亜に無茶ぶりされたくないから外にいる訳じゃあない。ホントだよ?

……暇だ、後お腹空いた。

 

こうして一人でいると色々と考える事がある。仕事の時ではあまり考えないことだ……どうして俺なんかがこの世界に転生してきたのだろうか、

いや、よくある神のミスとかそういうのでなったわけじゃない以上、そんな考えはどうして左利きなんだろうと考えるようなもんだ…………なんか違う気がするけども気のせいだろう焼き鳥食べたい。

今でこそ硝煙香る主夫高校生的な日常系主人公をやってるが昔は酷かった酷かった……二亜に会うまでがなぁ……そうだ焼き鳥食べよう。

もも、かわ、つくね、むね……そういや、二亜本当に胸ないな……悲しみ溢れるわ、いや、あるっちゃあるか……ただこの世界の奴らに比べたら無いだけで……あ、涙が……。大丈夫、大丈夫だ、二亜。俺、胸派じゃなくて太ももとうなじ派だから。

 

 

「ウミネコ?」

 

「……?……おうふ」

 

 

そんなアホみたいな……アホみたいってのもあれか。ともかくそんなふうに考え事をしていた俺の向かいから偶然知り合いがやって来て、わざわざ俺に声をかけてきた。

オレンジ色の腰まで伸ばした穹のように蒼い瞳の少女。まだ梅雨前の夜故に寒い人は寒く感じる為、コートを羽織っている俺と同年代と思われる彼女。二亜とはまた別に俺が世話をしている少女なんだが…………。

 

 

「おたく十八でしょ?なんで一人でこんな時間に外にいるんですかねぇ……お兄ちゃん困っちゃう」

 

「……?プリンが食べたくてロー〇ンの」

 

「魔性かロー〇ン」

 

 

なるほど、ロー〇ンのプリンが食べたくて外に出た……理解できる。だけども、そんな歳頃の美少女がフラフラとこんな時間に外に出ちゃあかんでしょうよ、タダでさえ美少女なんだから。後二亜には悪いがなかなか良いものをお持ちなんだから……お兄ちゃん心配。

 

 

「ウミネコは心配性だと思う」

 

「おま、自分が美少女だっての自覚してくんない?何時か変な男にホイホイ付いていきそうでお兄ちゃん心配なんだけど……」

 

「変な人?大丈夫、そこまで私抜けてないから」

 

「なんとも言えんわアルテミシア」

 

 

彼女の名前はアルテミシア。アルテミシア・ベル・アシュクロフト……まあ、わかる人はわかる美少女だ。先程も説明したが彼女も二亜同様俺が世話をしている少女……だがまあ、二亜の様な要介護者では無いので現在俺が仕事で稼いだ金で手に入れたマンション────勿論、防犯セキュリティは万全だ────の一室で一人暮らしをしている。

歳は十八歳になったばかり、俺と同じく駒王学園に通っていて現在は三年生……だが、なんというか天然なのだろうか、こう見えてガチで武闘家男性以上の身体能力があるから不埒な輩に襲われても逆に捻り潰せるのは分かるんだが、無防備に外へフラフラ出るのはなんとかして欲しいものだ。

美少女なんだし、美少女なんだから……もうちょっとね?

ちなみにだが、何か不埒な輩が不埒な考えをしてそれをやろうとしたら俺が狙撃する。……そうだ、護衛でも付けとこう。

 

 

「やっぱりウミネコは心配性だよ」

 

「心配性で何が悪い……まあ、束縛されてると思ってるんなら、仕方ないか……お前の人生だしなあまり口出すのも悪いか」

 

「そこで引き下がる辺り、ウミネコって甲斐性無しだよね」

 

「誰が甲斐性無しだよ……別にいじけないわけないから。なんなら、甲斐性だろ俺」

 

 

経済的に頼れるやん。二亜もそうだが、俺だって結構稼いでるやん。

何なら、アルテミシアさん。お前の家賃諸々俺が払ってんだよ?まあ、その辺はアルテミシアを分かってるから言わんけど。

 

 

「むぅ……それじゃ、帰ろ?」

 

「おう、待て、俺の手を掴んでマンションへ向かうな。俺もお前も明日学校」

 

「一日ぐらい休んでも問題無いと思うな」

 

「なんで、そこでその選択なんですかねぇ……いや、もう、マンションまで送ってくわ。流石に女の子一人で夜道帰らせるのもアレだし」

 

 

なんだろうか。二亜ならある程度ツッコミと称して力押しが効くがどうにも彼女、アルテミシアにはそういうのが出来ない。

やっぱり立ち位置の問題なのだろうか……正統ヒロインなアルテミシアと幼馴染系もとい腐れ縁ヒロインの二亜ではやっぱり扱いが無意識的に変わってしまうものなのだろうか。胸か、胸の差か。あ、ロー〇ンで焼き鳥買いたい。

 

 

「今夜は、寝かせないよ?」

 

「帰らせろ」

 

 

この後、何かあった訳もなく、ロビーでさっさと別れた俺は帰りのロー〇ンで焼き鳥のかわを十本ほど買ったのだが帰る頃には全部食べ終わっていたのであった。

最初の悩み的なのはいったい何処へ消えたのやら……やっぱ悩みより食い気だよね

 

 

 

 




今回はそこそこ長文な気がする……

アルテミシア・ベル・アシュクロフト
デアラのウィザード。可愛い。鴎がとある仕事で拾ってきた鴎の一つ歳上な美少女。身体能力がかなり高い。後、鴎の事をウミネコと呼んでる。それはそれとして鴎と老後をゆったりと過ごす予定。ヒロイン力は二亜よりも上。

後悔はしていない。
後焼き鳥食べたい


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五頁

日が変わる前に投稿するつもりが日が変わってしまった。



 

 

 

「他に何か質問はあるかしら?」

 

 

 オカルト研究部に兵藤一誠が入部して数日、兵藤一誠は悪魔としての活動をしつつ主であり部長であるリアス・グレモリーや先輩悪魔である副部長姫島朱乃や木場祐斗から悪魔やその周辺についての勉強を行っていた。

 自分たち悪魔の長である四大魔王についてや貴族悪魔の関係、そして教会や堕天使等の敵対勢力について。

 それらについて粗方質問し、新人悪魔としてそれなりの質問をした兵藤一誠はふとある事を思い出した。

 

 

「そういえば部長。あの、……この前会ったアイツも祓魔師(エクソシスト)って奴なんですか?」

 

 

 悪魔となったばかりでまだ転生したとは知らなかったある日の夜道に出会った笑う棺桶を背負った黒ずくめの男。

 赤い眼光と銀色の銃、そしてその背に背負う笑う棺桶が強く印象に残る男。

 決して知らないままではいられない男について兵藤一誠はリアス・グレモリーに聞いた。

 

 

「……そうね。一応襲われかけたわけなのだから、説明しておいた方がいいわね」

 

 

 そう言ってリアス・グレモリーは飲んでいた紅茶のカップをソーサーに置いてから、改めて口を開く。

 

 

「『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』……笑っている棺桶のエンブレムを掲げている何でも屋……いえ、正確に言うと傭兵集団ね。人間、悪魔、堕天使、その他の人外、種族問わず仕事を請け負う傭兵」

 

「傭兵……なんで、そんな傭兵が……」

 

「あちらがあの時言ってた通り、まだ悪魔について知らなかったあなたをはぐれ悪魔だと勘違いしたのでしょうね」

 

 

 兵藤一誠のどうしてという疑問もすぐに裏の世界では当たり前な理由で答えられる。

 勘違い。勘違いなんかで殺されそうになった兵藤一誠はその表情を苦々しいものへと変えるがすぐに額に手を当てため息をつくリアス・グレモリーが気になりその苦々しい表情が普段のものへと戻った。

 

 

「部長?」

 

「それにしてもよりにもよって、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)がこの街に来てるなんて……厄介な話だわ」

 

「えっと、どうして厄介なんですか?」

 

 

 そんな兵藤一誠の疑問にちょうど茶請けを持ってきた木場祐斗が答える。

 

 

「悪魔、とりわけ貴族悪魔にとって笑う棺桶(ラフィン・コフィン)は結構扱いづらい問題なんだよ」

 

「扱いづらい?」

 

「ええっと、確か二年ぐらい前だったかな?貴族悪魔の家の一つ、ヴァサゴ家の一部がとある事情で彼ら笑う棺桶(ラフィン・コフィン)を雇ったんだけども、契約を一方的に破って報酬を一切渡さなかったんだ。勿論、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)は仕事をしっかりとこなしたらしいんだけどね、それで報酬を出さずに契約を破ったヴァサゴ家に対して反発、結構な騒動が起きたんだ」

 

 

 そう説明する木場祐斗に兵藤一誠はふと首を傾げる。何せ、ついさっきまでの勉強で悪魔は契約をきちんと守らねばならないと法で決まっていてそれを破れば厳罰は免れないと言っていたというのに、何故そのヴァサゴ家が契約を破ったのかよく分からなかった。

 そんな兵藤一誠の心中を察したのか木場祐斗の話をリアス・グレモリーが引き継いで話し始めた。

 

 

「契約破りについての法はそのヴァサゴ家と笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の衝突が原因で作られた法なの。

何せ、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の報復行為があまりにもヴァサゴ家に与えたダメージが大きくてね、ヴァサゴ家現当主の叔父にあたるヴァサゴ家の最上級悪魔が笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のリーダーに殺されたのだもの」

 

「殺したって……」

 

「これはあくまで噂だけど、そのヴァサゴ家の最上級悪魔は結構性格と言動に難があったらしくてね……笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に属してた女性を無理矢理手篭めにしようとしたとかなんとかで、それで殺されたらしいんだ。それで笑う棺桶(ラフィン・コフィン)は悪魔と距離を置いてるんだ」

 

 

 リアス・グレモリーと木場祐斗の言葉、殺したというあまりにも日常から離れた言葉がさも当たり前のように出てきた事に兵藤一誠は今自分が非日常の中にいるのだと改めて理解し、紅茶を飲む。

 そして、その話題を忘れる為か否か兵藤一誠はまた別の話を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママッ!天井したい!」

 

「石とチケット集めろ」

 

 

 午後七時を過ぎた頃。

 住宅街をやや外側に位置する場所にそこそこ大きめの家宅、我らが宗像家にて夕食を終え使った皿類を片付けていた俺へと某国民的人気アニメの青い耳を齧られたロボットへ縋る永遠の小学生の様な声音で叫ぶのは二亜。

 そんな馬鹿な二亜の叫びを俺は軽く一刀両断しておいて、何故か田舎から来た幼馴染みたいに、来ちゃった、と軽い着替えやカバンを持ってやって来たアルテミシアから皿を受け取る。

 

 

「そんな、酷い……!良いじゃんあたしの稼いだマネーなんだからさぁ」

 

「物を買うならともかく課金は止めるに決まってるだろ。絶対に目を離したら新キャラ出る度にゲットするだろお前」

 

「当たり前じゃないですか、やだー」

 

 

 こいつ……。

 俺はそう呟きつつ受け取った皿を次々と洗っていく。

 何やら、アルテミシアが可愛らしく微笑んでいるがそんなことは一切気にしないでおく。

 

 

「本当にニアとウミネコは仲がいいね」

 

「仲が悪かったら世話しねぇよ」

 

「まあ、何せ同じ墓に入る予定だからねー」

 

「私も同じ墓に入ってもいいかな」

 

 

 アルちゃんなら全然かんげーするよー。とまあ、俺の許可なんぞ知らんとばかりに言う馬鹿に俺はおもいっきり蔑視を向けつつ洗い終わった皿を水切りの為に立てかけていく。

 いや、別にアルテミシアが同じ墓に入るのは問題じゃあない。流石に手を出しておいて突き放すような真似はしない。

 かけていたタオルで濡れた手を軽く拭きつつ、俺はリビングで繰り広げられている会話を無視して冷蔵庫を開ける。決して、手錠やら監禁やら凌辱やらなんやらは聴こえないし知らない、やめろ馬鹿、アルテミシアを其方側に引き込もうとするな……戦争だぞ。

 

 

「……って、あ?」

 

 

 今日、学校の帰りにロー〇ンで買った物を食べようと冷蔵庫の棚を見ている訳だが……おかしいな。ロー〇ンのプリンとプレミアムロールケーキのクリーム単品が影も形もないのですが、これは?

 おかしいなぁ……おかしいなぁ……まあ、夕食を作る時アルテミシアは俺の横で手伝ってくれていたわけで……その際に俺の視界からいなかった奴なんて一人しかいないわけでさ。

 台所からリビングへと歩く俺はそのまま馬鹿の背後に立つ。

 

 

「おい、二亜、俺の、プリンとクリームどうした」

 

「美味しかった」

 

「よし泣かす」

 

 

 俺は二亜の首元に指を当ててそのまま力を込めて押す。そうすれば二亜は悲鳴を上げ始める。

 

 

「ぬぅごごごご……!?」

 

 

 数ヶ月ぐらい前に原稿で肩がバキバキだから、肩をもんでくれーと頼まれた時に発見したこの馬鹿の弱点の一つだ。何故かは知らないが首と肩の間辺りを押されるとこうして呻く。

 本人曰く意外と痛い……具体的には足の小指をタンスの角にぶつけた時ぐらいには痛いそうだ。

 

 

「ちょ、そこ、押すのやめよって言ったじゃんかさー」

 

「俺のプリンとクリーム勝手に食った罰だからしょうがない」

 

「ウミネコ、何かデザートとかないかな」

 

「冷蔵庫の二段目の棚の右側。こいつの杏仁豆腐置いてある」

 

「あ、あった。うん、ありがとうウミネコ」

 

 

 私のなんだけど?ねぇ、そのお礼って少年じゃなくてあたしにじゃない?ねぇ、アルちゃーん

 そんな風にアルテミシアに言う馬鹿を放っておいて俺はスマホに目を通す。

 ゲームやらの通知の中に一つ知り合いからの連絡。俺はそれを開いて見ると、なんともまあ、それ必要か?という情報がズラリ。

 

 

「おい、二亜。アケボシの爺が九時からスカイプしながらマイ〇ラしようだってさ」

 

「はいはーい」

 

「んで……シスコンが発作起こしてる……知るか俺に言うなし」

 

 

 アルテミシアがいつの間にかに入れてくれた麦茶を飲みつつ椅子に座り画面を上にスクロールしていく。

 へぇ、今度キャベツ作るんか……ふむ、ロマネ・コンティか……飲まん二亜に言ったら間違いなく煩いからスカイプする時に口を滑らせないように釘刺しとこ……ん?

 

 

「蝿と蛇とガチョウ足がなんか活発ねぇ……そりゃまあ、もう始まってるわけだしな…………アレら相手にやる仕事はともかくアレらからの仕事は突っぱねるか」

 

 

 とりあえず後で不知火の爺さん行きだった二亜の大吟醸はアケボシの爺に送るとするか……適当に返信してっと。

 

 

「ウミネコ」

 

「なんだ、アルテミシア」

 

「はい、あーん」

 

「ん、美味い」

 

 

 さて、そろそろ時期も時期だし。

 二亜からの仕事を果たす為に棺桶の調整でもしますかねぇ……

 

 

「何故にアルちゃんと少年がイチャイチャしてるのか……解せぬ」

 

「解せよ。嫉妬か?それはどっちに対してだ」

 

「両方ですが、何か問題でもある?」

 

「俺のプリンとクリーム食ったのが問題」

 

 

 

 あ、エウ〇ペ当たったわ。

 

 




なお、作者はエウロペ当たりませんでした。
エウロペを当てた人にはもれなく来月のグラフェスまで必ず四回は足の小指をタンスの角にぶつける呪いをかけます。

ちなみに名前だけなら2回目の不知火の爺さんですが名前しか出ないキャラだから気にしないでね。ちょっと傭兵業でも主夫高校生業でも関係のあるどっかの英雄を保存してそうな隠れ里出身のどっかの学園の学園長してるお爺さんなだけだから。


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六頁

項羽引けないよォォおお!!??
チーズ項羽と虞美人の二次小説書きたいのにぃ
コストコ行ってきました。プルコギベイクはまじ美味かった



 

 

 

 

 アーシア・アルジェント。

 聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)、という俺のソレとはまったくもって真反対な神器を宿して生まれた可哀想な聖女。まったくもって笑える話だがそんなのはどうでもいい、ようは兵藤一誠の為に用意された悲劇のヒロインなわけだ。

 教会も教会だ……黒い人間が多いのだから魔女として追放された元聖女、それなりに容姿も整っているのだし適当に匿って回復道具にでもしてしまう人間がいそうものだが……まあ、御都合主義様々というわけか。

 さて、そんな彼女がこの駒王町へやって来ることで歯車は動く、正確に言えばその数日前に原作が始まるんだが、その辺は置いておこう。ともかく彼女がこの街で見かけられる事で原作のどの辺りなのかわかる訳だが…………。

 

 

《Kiss my ass……》

 

「おやおやおやおやおやおやおやおやぁ……」

 

 

 とある日の深夜。

 俺は住宅街の一角、空き家の多い区画且つウチの近所であるとある家宅の前でとある二人組と鉢合わせた。

 神父の服を改造した不良神父……いや、不良祓魔師。とてもとても、その声が苛立つ白髪少年とその後ろでビクつくシスター服に身を包む金髪の少女。

 ここまで言えばきっとわかる事だろう。

 

 

「死銃パイセンじゃあ、ないですかぁ!」

 

《Just stop harassing me……》

 

「うっわぁ、ひっでぇー」

 

 

 ウザイって何よォ。

 そんな風に喧しい白髪に俺は軽く苛立ちながら、その左手にFive-seveNを右手に刺剣を持ちあくまで自然体で奴を見る。

 そんな俺に察したのか、奴は真っ黒助がしないような悪役めいた笑みを浮かべながらその手に銃と光剣を持ち構える。

 無論、奴の後ろにいる少女はあまりに唐突な事で未だにオロオロしているがその辺はまったくもって問題じゃあない。

 

 

「うんじゃま、死ねやァッッ!」

 

《殺す》

 

 

 今ここでこの男を殺す事に俺は一切、躊躇いはないのだ。

 ああ、ちなみにだが既に人避けのソレは張ってあるので夜の散歩をする人間がここに来ることはほぼ無い。

 まあ、何処ぞのチャリンコ悪魔は来そうではあるがね。

 

 

 互いに銃より放つ弾丸、片や光弾、片や水銀弾という違いがあるが互いに剣でそれを弾く。

 まあ、互いに銃撃で簡単に当たるとは思っていない為に走りながら撃ち、隙を狙ってその剣を振るっていく。

 

 

「オラ、当たれよ、おい!」

 

《それは、こちらの台詞だ……!》

 

「ふ、フリードさん……」

 

 

 おいおい、白髪の心配とは……いや、見る限りまだ、ただのはぐれ祓魔師だと思ってるのか?

 と言うよりも単純に一般人を殺しているのを見てないからか…………せめて、一思いにここで────

 

 

「おっとぉ!?余所見ですかにゃア!!??」

 

《ちっ》

 

 

 顔面もといマスクへと突き込まれる光剣をそのまま身体を仰け反らせる事で回避し、その際に銃撃を受けないように刺剣で奴の銃身を貫く。

 そして、次の瞬間には5.7mm口径のFive-seveNを奴の眉間へと定める。

 

 

《余所見じゃあない。余裕だ》

 

「ッア、ひゃあッ!ところがぎっちょん!」

 

 

 火を吹くFive-seveN、悲鳴をあげる少女。

 鮮血が舞い、そして閃く二振り目の光剣。

 俺も奴も互いに舌打ち、後方へと跳び退る。

 

 まったくもって面倒だ。奴の眉間を狙った銃撃は物の見事に狙いを外し奴の左耳を削って、その代わりと言わんばかりに銃を手放し袖口から飛び出た柄より光の刀身を伸ばして俺の左腕へと斬りかかってきた。

 結果として奴は銃一丁と左耳を半ば失い、俺は左腕の一部が焼け抉れただけ。

 武器を一つ失って得れたのが左腕の一部だけとは奴も嫌な話だろう。

 

 

《面倒な動きだ……》

 

「いやぁ、パイセンに褒められるなんて感謝感激雨あられって感じですかねェえ」

 

 

 ヘラヘラと笑う奴に軽く苛立ちながら、刺剣で貫いていた銃を外し、神器で作り出した簡易的なプレス機でそのまま破壊させ、Five-seveNに新しい弾を補充する。

 左腕は先程から痛みが酷いがそんなものはどうでもいい話で、如何にしてここで奴を殺すかを考える。

 そも、やろうと思えば簡単な話だ。周囲の被害を考えずにサブマシンガンでも撃ってしまえばいい話で、確実性を求めるならHornisse(雀蜂)でも使えばいいのだ。

 だが、ここはあまり人が住んでおらず、更には人避けのソレを張っているとはいえ住宅街。あまり派手な真似はやれない。

 狙撃によるソレも、今回のコレは突発的な戦闘であって、狙撃手も用意はしていない。ああ、まったくもって

 

 

《―――面倒だ》

 

 

 淡く背負う棺桶が嗤う。

 すれば、刺剣もFive-seveNも俺の手から失せていき代わりに現れるのは一種類の銃器。

 Five-seveNの様なハンドガンなどではない、黒く輝く銃身はハンドガンの様に片手で軽々しく弄べるようなサイズではなく、両腕で抱えるサイズのソレ。

 ロシア製の凡用機関銃こと改良型カラシニコフ機関銃────に消音器を取り付けたマシンガンつまるところAEK-999である。

 

 

「いやいやいやいやいやいやいやいや、嘘やん」

 

「えっ」

 

 

 それを今回は両腕に一丁ずつ。

 どうかしてる頭のおかしな大盤振る舞いであるが一切の問題は無い……とは言わないが気にする事は何も無い。

 あまり派手にはやれない、と言ったな。

 アレは嘘だ。全てはリアス・グレモリーら悪魔とレイナーレら堕天使が悪い。

 下手するとアーシア・アルジェントを巻き込むかもしれないがそれはそれだ。神器を抜かれ死んでいくはずだったのに悪魔へと転生させられ戦わなければならないという身勝手な運命よりはこの場で凶弾により命を散らす方がよっぽど人道的だと思う。

 二亜には悪いと思うがその際は煮るなり焼くなり好きにしてもらおうか。

 

 

《Drop The Beat!!!》

 

 

 二丁の銃口を前方へと向け俺はマスクの下で頬を歪ませながら、両人差し指を引鉄へと添えて────

 

 

「おおおぉぉぉおぉおお!!!」

 

《ッッ!!》

 

 

 背後から時刻的に喧しく邪魔でしかない苦情物の叫び声と何かが猛スピードで向かってくるのを理解し、反射的に横へと跳び退く。

 無論、変に暴発されるのも困る為、両人差し指は既に引鉄から外して銃口は上へと向けてだ。

 ともかくソレが俺の横を通過したのですぐにそちらへと視線を向ければ、無理に避けたのか道路に突っ伏している男と近くには家宅の外壁にぶつかって倒れた自転車がある。そこまで見て、俺はこのタイミングがどういうタイミングなのかを理解し舌を打った。

 悪魔契約の常習者だから殺された何某。

 その何某に呼ばれた悪魔。

 その何某を殺したはぐれ祓魔師。

 まったくもって面倒臭い。

 

 

 起き上がった悪魔と聖女が何やら話している。そこにはぐれ祓魔師が割り込み喧しくペラ回しているのを聞き流す。

 両手のAEK-999を失せさせ、苛立たしげに取り出したるはいつも通りのFive-seveN。ソレを一度腰のホルスターに押し込み、ホルスターの隣から消毒済みのサバイバルナイフを引き抜いて、一時的に焼き抉られた左腕の装備を解除する。

 改めて見てそこそこに浅い傷のようだ……炭化してる部分は10mmも無く、施術自体はこの場で充分可能と見える。騒がしいあちらを無視してすぐさまサバイバルナイフの刃先を焼けた傷口を抉るように左腕へと刺し込む。

 痛くはない……いや、嘘をついた普通に痛い。具体的に言うとゴム弾で頬を切る程度に痛い。

 

 さっさと炭化した傷口を切り落としてサバイバルナイフ腰に戻して軽くペットボトルの水で傷口を洗い、無針注射器を取り出して中の薬品を肌に打ち込み、すぐさま包帯を取り出して軽く巻き付けその上から装備をつけ直す。

 チラリとあちらへ視線を向けてみれば足から血を流して痛みに耐えてる悪魔がいて、何やら金髪悪魔とイキリ祓魔師が戦っている。

 はてさて、この場にいる理由もない。だが、収穫はあったわけだ……足の傷の為に学校を休んでその後聖女に治してもらって堕天使に攫われそうしてその日の夜に儀式……状況把握も出来た事だしここはさっさと退散するとしよう。面倒だしな

 

 

 

《結局、大事は変わらず進むわけか》

 

 

 そう呟いて俺は適当にこの場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒い外套……あのはぐれ祓魔師の言葉が本当ならあの場に『笑う棺桶』がいたのね」

 

「は、はい……それに、なんか、あの白髪野郎は俺が来る前に誰かとなんかしてたっぽいんで……嘘じゃないと思います……はい」

 

「そう……私の領地にいったい何の用があるのかしら……」

 

「……はぐれ悪魔狩り?」

 

「それとも堕天使……?」

 

「どんな理由なのか、まだ分からないけれども決してロクな理由ではないのは確かなのでしょうね……イッセー、明日はその傷だし部活は休んでいいわ」

 

「え、でも…………はい、ありがとうございます部長」

 

 

 

 

……………………だってさ」

 

「知らん」

 

 

 数十分は経ち、悪魔達もまたあの場から去っていった頃、黒衣の彼は、宗像鴎は自らの工房で自身の装備の整備をしていた。

 整備と言っても直前を考えれば鴎が嫌いな白髪祓魔師との戦いで使用したFive-seveNと自分の装備の点検ぐらいなのだろう……が、胡座をかいている鴎の足の上にはそのどちらでもなく機材で作られた髑髏があった。

 コンクリートの床に座りながら髑髏の頭蓋を開き中身を様々な機器で弄りながら、背後の簡易ベッドで大きな本の頁を捲りながら笑う二亜を無視する鴎。

 なんとも奇妙だがいつも通りの光景を広げながらただ、黙々と鴎は作業を行う。

 その左腕にはもはや、傷はなく白魚のような肌があるばかり。

 眼鏡をかけながら作業をし続ける鴎に二亜は絡もうとするが作業の邪魔をした際に降りかかる雷を考えると割に合わないとベッド近くの本棚からいくつかの小説を引き抜き読み始める。

 

 

「あ、そういえばしょーねん」

 

「なんだ」

 

「項羽作ろう」

 

「爆死したからって俺にリアルで作らせようとすんのやめろ」

 

 

 




ぶっちゃけフェニックス編ってやることないのよね


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七頁

眠ーい。
レッドドラゴン項羽、リィンカーネーション項羽、型月項羽で融合して万象儀宝貝項羽を作りたい。

カチカチ、カチカチ

なんの音?


 

 

 

 

 

カチカチ、カチカチ

 

 音が響く。

 無機質な音でありながらもまるで生物が警戒するかのような音が。

 暗い暗い深夜に、彼らは警戒音を鳴らしながら階段を一歩一歩確実に登っていく。

 黒い防弾チョッキを黒のジャンパーの上に羽織り、黄色主体の出目でチューブが後頭部より伸びたフルフェイスの不気味なメットを被った者達がその手にサブマシンガンを携えて登っていく。

 

カチカチ、カチカチ

 

 耳を澄ませば聴こえるかもしれない音を顎から鳴らして、彼らは一歩一歩確実に登っていく。

 彼らは群れだ。

 彼らは捕食者だ。

 彼らは、血と鉄と硝煙の眷属(Hornisse)

 

カチカチ、カチカチ

 

 そして、彼らは足を止める。

 眷属であるから、上の指示を待つ為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、いつもニコニコ貴方の隣に這い寄らない硝煙香る主夫高校生こと宗像鴎だよ。

 ……アレだわ、なんか自分でもないわーと思ってるから忘れといてくれるととても助かる。

 さて、昨晩白髪双剣イキリはぐれ祓魔師とやりあった……じゃれあった俺だが何故か理由は分からないが現在学校をサボって街に繰り出している。

 無論、見つかったら何か言われない為に学生服ではなくいつも通りのワイシャツに黒地に黄色がチラチラとある上着を着てだ。元々高めの身長だった事と精神年齢が影響してか歳上に見られがちな事もあって俺は、傍から見れば大学生ぐらいだろう。

 さて、そんな俺の格好なんてものは実際大したもんじゃない、大事なのは俺がどうして学校をサボって街に繰り出しているかだ。

 

 

「いやぁ、悪いねしょーねん。荷物持ち任せちゃって」

 

「まあ、別にこれぐらいなら、いくらでもやるけどよ……」

 

 

 そう言いながら俺は、隣を歩く二亜から渡された荷物に視線をむける。

 近場のデパートにある店の紙袋に入っているのは新しい部屋着やら外着に下着等々。何を考えたのかコイツは、二亜は学校へ登校しようとした俺の手を引っ掴んで着替えさせ、こうして買い物に付き合わせているわけだ。

 まあ、二亜にも言った通り、買い物ぐらいなら別にいくらでも付き合ってやるから別に構わないんだが……なずぇに今日なのか。

 休みの日でもいいだろうに。

 

 

「えぇ?休みの日だと混むからに決まってるジャマイカ」

 

「読むな心」

 

 

 なんとも頭を抱えさせてくれるような理由と読心に俺は呆れつつ、改めて二亜を見る。

 狙ったかのような某思春期の初物男子を殺しかねない服にだいたい肘ほどまでの丈のケープを羽織り長めの靴下を履いた灰髪の美少女。

 そんないつも以上に気合いの入れた装いの二亜を軽く見ていると丁度俺の方を向いた二亜と視線がぶつかった。

 あ、面倒くさ。

 

 

「ん?ん?なにかにゃあ少年。もしかしておねーさんに見蕩れちゃった?」

 

「いや、その胸でよくもまあその服着る気になったな」

 

「がふっ」

 

 

 薄い胸を抑えてショックを受ける馬鹿を放置し、俺はなんともなしに視線を辺りに巡らせ────ふと、とあるゲームセンターで視線が止まった。

 

 

「…………」

 

 

 普段とは少し違う光景

 見知った学生服を来た何某と修道服に身を包む金髪の少女。そんな奇妙な二人組がゲームセンターのとあるクレーンゲーム機の前にいたのが目に止まった。

 

 

「アーシア・アルジェントに兵藤一誠だね」

 

「二亜」

 

 

 立ち直ったのか、と呟こうとしたがいまだその薄い胸を抑えながら、なんとももの悲しげな表情をしてる馬鹿に憐れみの視線を送りつつ彼らへと視線を戻す。

 なんとも楽しそうな顔をしているものだ。

 

 

「もうすぐ二人の間は引き裂かれるってのにね」

 

「なんだ?お前、そんなに悲劇的だったか?」

 

「まさか。その後を考えれば悲劇じゃなくて王道でしょ」

 

 

 死人を許可なく悪魔に変えるのが王道なのかどうかは知らんがね。そう口にして、俺は荷物を持ってない手で二亜の髪を軽く撫で付ける。

 

 

「ふぇ……」

 

「ま、お前に頼まれた仕事はきちんとこなすから安心しろ」

 

 

 カラカラと笑いながらやや乱暴に髪を撫でてから、俺はそそくさと先に進む。

 後ろの方で何やら二亜が騒がしいが気にせず進む。

 その際に俺の意識は常に周りへと向けて。

 

 

 楽しい日常、好きな平穏。

 俺は笑みを浮かべて、それを手に入れる為にどうしようかと嗤うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〈囁告篇帙(ラジエル)〉────」

 

 

 秘め事は須らく暴かれた。

 鴎は嗤い、嗤って、死面を被る。

 

 全知の天使は詳らかにこの夜にて起きる事象を、求める情報を全て余すことなくメーヴェへ晒す。

 

 嗤い、嗤って、メーヴェは狩りの時間だ、と号を告げる。

 

 

カチカチ、カチカチ

 

 

 

 地方都市駒王町。

 地方都市と言えども探せばホテルはそこそこにある。

 何より、この地は自称だが悪魔の領地だ。更には魔王の妹やらなんやら、貴族の子女が領地経営を任される町にそれなりのホテルがないというのは些かおかしいというもの。

 駅近くに建つ八階建てのホテル。バアルの名を冠するそのホテルの最上階の一室にてソレはいた。

 

 ロバまたは蛇、そんな悪魔が今夜このホテルに眷属たちを連れているのだ。

 全ては自分が見初めた美しく可憐な聖女を穢して汚して凌して自分だけのものにする為に。

 

 だがまあ、そんな糞に塗れた汚物掃き溜めの如き理想はたった一人の竜を宿した少年によって木っ端微塵に砕かれてしまうのだが────

 

 それよりも悲劇的な事が今夜起こる。

 

 

カチカチ、カチカチ

 

 

 

「ボス、それで?どうします?」

 

「好きにしろ。お前がやりたいようにやれ」

 

「…………」

 

 

 深夜である為か、殆ど人がいないホテルのロビーを三人の男女が堂々と歩いていく。

 白髪にスーツを着込んだ若き実業家という風体の男、腰まで伸ばした茶髪をサイドテールにし赤い軍服のような制服に身を包む小柄な金眼の少女、そして彼彼女らは率いる様に前を歩くのはコートを羽織った灰髪の少年。

 三人はロビーを通過し真っ直ぐエレベーターへと入った。

 

 

カチカチ、カチカチ

 

 

 徐々に目的の階へと向かうエレベーター。

 

 

「……客は」

 

「八階にはターゲットとその眷属だけ」

 

「清掃係やらなんやらも八階には来ませんよ」

 

「そうか」

 

 

 耳を澄まし聴こえるは警戒音。

 顎から鳴り響く音が段々とエレベーターが上がるほどに大きく強く感じれる。

 そうして、僅かに待てば軽い音ともにエレベーターは八階へと到達する。

 

 

「退路は」

 

「既に転移対策はしてますよ」

 

「まったくもって問題ないよ、指揮官」

 

「そうか、なら―――」

 

 

 エレベーターの扉は開かれる。

 

 

 開いた扉

 匣の中より姿を現したのは三人の殺意。

 髑髏の死面を被った死、黒子の如き覆面を被り両手にナイフを持った黒づくめの何某、黒地に黄色を走らせたコートを着たサブマシンガンを手にする少女。

 

 笑う棺桶の烙印を刻んだ二人の人形(武器)を持って死が悪魔を迎えに来た。

 

 

カチカチ────

 

 そんな彼らに応えるように待機していた群れが、雀蜂(Hornisse)たちがホテル八階へと雪崩込む。

 

 

《では、鏖だ》

 

 

 鴎が嗤った。




ちょっと今回は短めでしたね。まあ、1巻の終盤なんでねぇ。
フェニックスは2話ぐらい日常書いてすっ飛ばしますね。そうしよう。

武器製造
────武器とは命を奪う為の道具だ。兵器よりも規模は小さいけれどもそれは充分に命を奪う。


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八頁

AN-94 AK-12が大好きです☆
ブラダマンテ当たりました……いやぁ、よかったよかった。書けば当たるんですね(シャルルマーニュとアストルフォしか書いてない)


 

 

 

 

 

 鴎は死銃は嗤う。

 黒子の様な身なりの男とコートを着てサブマシンガンを持った少女を引き連れながら。

 彼彼女は人ではない。そもそも生き物ではない。鴎の保有する神器(セイクリッド・ギア)────『武器製造(ウェポン・ワークス)』はあらゆる武器武装を製造する創造系神器だ。保有者のイメージつまりは想像力とポテンシャルによって大きくその性能が上下する創造系神器であるそれは多分に漏れず、鴎という保有者の想像力とポテンシャルに大きく影響を受けていた。

 鴎の『武器製造』は他の同種とは一風変わった性能だった。保有者が想像したモノを作り出すなるほど、そこは同じだ。複数のモノを作り出すには時間もかかるし、精神力も消費する……創造系神器ならば当たり前だ────だがしかし、鴎の『武器製造』にはそんなのはありはしない。

 なるほど確かに、魔剣やら聖剣やら魔獣やら特別なモノを創るのは骨が折れるだろう。だが、だがしかしだ。

 鴎が創り出すのは銃だ、ナイフだ、弾薬だ、爆弾だ、防具だ────実際に一部を除けば大量生産されて然るべきものばかり。そんな量産品を一々一つずつ時間をかけるなどどう考えたとしても効率が悪過ぎる。

 故にそんな鴎の考え、想いを『武器製造』は汲み取り、一度でも創れば型が用意され、創れば創るほど次に創る時間や労力が減少していく。つまるところ効率を伸ばしていく進化を行ったのだ。

 つまり、一度目が面倒なだけという至極当たり前の事で…………そんな鴎はより一層の効率を求めた。つまりは動くのが自分一人というのをどうにかしようとして自分の指示に従う裏切らない手足を求めた。

 その結果がこれだ。

 

 『戦術人形前線(ドールズフロントライン)』────兵士の機械化という武器武装の延長線上、兵器とまではいかないその領域、鴎の手足となる意思を持つアンドロイドすら創り出す事が出来る常時発動型の禁手(バランス・ブレイカー)である。

 

 

《さて、鏖と言ったが……ふむ、女王(クイーン)は尋問する為殺すな。抵抗しなければ他の眷属も殺さず無力化して捕縛しろ》

 

「了解」

 

「ラジャ」

 

 

 名付き戦術人形(ネームド・ドール)である毒ナイフ使い(Johnny black)サブマシンガン(UMP45)は彼より出された命令をすぐさま、同フロア内に侵入した量産戦術人形(マス・ドール)へと通達し各々の武装を構えてフロアを進んでいく。

 静かなフロア────だが、すぐにそれは聴こえる。

 小気味好い炸裂音。

 悲鳴のような音。

 それにJohnny blackは笑みを浮かべる。

 

 

『こちらクラブthree。『騎士(ナイト)』二柱、デリート。オーバー』

 

「UMP45。遺体は一先ず放置。オーバー」

 

 

《奴の部屋は》

 

「ちょうど真ん中の部屋」

 

 

 無線より届いた殺害報告に軽くマスクの下で笑いながら、彼はその手のFive-seveNをリロードし、無線に手を伸ばす。

 

 

《Sterben。端から部屋を開けて中を確認しろ。ターゲットと同室ではないなら殺せ。オーバー》

 

「いいの?指揮官」

 

《素通りする可能性を考えたら、な》

 

 

 そう言いながらフロアの壁。部屋側の壁に触れながら進んでいく彼の背をJohnny blackとUMP45は追いかけていく。

 その道中にも無線は変わらず飛んでくる。

 

 

『こちらクラブfive。『戦車(ルーク)』一柱、『兵士(ポーン)』二柱、デリート。オーバー』

 

『こちらクラブtwo。『戦車』一柱、『兵士』三柱、デリート。オーバー』

 

 

 そういった無線等々を聴きながら進んでいく彼は、ふとある部屋の扉の前でその脚を止めた。

 何かが気になった訳では無い。それを理解したのか、それとも元々そういう機能が付随しているのか、Johnny blackもUMP45もその扉いや扉の先にいるものへと意識をむける。

 

 

《Sterben。クラブfiveからクラブtenをこっちに回せ。オーバー》

 

『こちらクラブone。クラブfiveからクラブtenをそちらに向かわせました。オーバー』

 

 

「指揮官」

 

《揃ったら中へ入る。入ればまず、Johnny blackお前が『女王』の無力化を行え》

 

「加減は?」

 

《手足の一本や二本、と言いたいところだが精々手足の甲を割る程度に納めろ》

 

 

 ラジャ。

 そうJohnny blackが呟くのを聴き流しながら、彼はふと思う。

 暴走フラグが折れるな、と。

 まあ、もとより兵藤一誠(原作主人公)とはあまり密接に関わる気のない彼からすれば兵藤一誠が暴走してその寿命が大きく削れようが削れなかろうがどうでもいい話でしかない。

 何より、そういった危機が無くなれば鍛える理由の一つが失せるわけで、もしも殺さねばならなくなった時に楽になるかもしれない。

 

 

《(まあ、その辺はお好きにどうぞ、なんだがな)》

 

「隊長、クラブfiveからクラブten揃いました」

 

《ン、そうか》

 

 

 やってきたHornisse────雀蜂と呼ばれる量産戦術人形らを確認してから、Five-seveNを握っていない方の手にいつも通りの刺剣を握る。

 それと同時に一体の雀蜂が扉の前で膝を着き、鍵穴へと道具を差し込む。

 普通ならやや少しかかる鍵開け作業(ピッキング)も人間と違って人形である雀蜂はあっという間に終わらせた。

 

 

《ン》

 

 

 指示とも言えぬ呼気の漏れ。

 だが、彼らはそれと共に扉を開き、部屋の内部へと雪崩込んでいった。

 

 

「投降しろ!」

 

「抵抗しなければ殺しはしない!」

 

「────!?」

 

 

 開け放たれた扉より見える部屋の中では。

 何やら空中に投影した映像を椅子に座りながら見ている糸目の青年とそれに傅く五人の少女らと青年の脚の間に跪いている女。

 彼彼女らは皆一様に侵入してきた雀蜂らに目を見開き、何やら動こうとして間髪入れずに炸裂音が響く。

 

 

「ァァァアア!!??」

 

「ディオドラ様っ!?」

 

 

 硝煙を立ち上らせるFive-seveNを降ろして彼は嗤う。

 

 

《抵抗するな。抵抗しなければ殺さない》

 

 

 そんな言葉と共に傍らのJohnny blackが室内を駆ける。そうして、悲鳴を上げた女の頭を床に押さえつけ、追随したUMP45がその人間離れした腕力で青年、ディオドラの右腕を折る。

 あまりにも早いその行動に傅いていた彼女らは反応出来ずすぐさま雀蜂らに魔力封じの縄を後ろ手に締められ、床に座らせられる。

 さながら、強盗がとった人質のような光景だろう。

 腕を後ろ手に縛られた五人の少女に、顔を床に押し付けられ同じく後ろ手に縛られた女、そして右腕を折られ肩より出血し股間を踏み潰された憐れなディオドラ・アスタロト。

 そんな彼彼女らを彼は見下ろしながら、その手の刺剣を弄ぶ。

 

 

《さて、初めましてディオドラ・アスタロト》

 

「な、なんだ、お前は……ッッ、そのマーク……そうか、下賎な傭兵めッッ!!僕を誰だと思っている!!」

 

《ン、清純を穢すことに悦楽を覚える外道畜生だろう?》

 

 

 その言葉に縛られている少女らは表情を暗くし俯く。

 それを視界の端に収めながら、その刺剣をディオドラ・アスタロトの頬に触れさせる。

 

 

《まあ、簡単には殺さんよ》

 

「な、何を、するつもりだ……」

 

《連れて行け》

 

「はっ」

 

 

 雀蜂の一人がディオドラ・アスタロトを人一人は容易く入るだろう麻袋へと無理矢理押し込め口を縄で縛り上げる。その際に中で暴れないように半ばも縄で縛り上げるのを忘れずに。

 そうして、麻袋に詰められたディオドラ・アスタロトはそのまま雀蜂に運ばれそのまま部屋から消える。

 それと入れ替わりでまた一人雀蜂が部屋へと入ってくる。恐らくフロアの部屋を確認していた雀蜂だろう。それが新しい麻袋を取り出しJohnny blackが押さえつけている女をJohnny blackと共にディオドラ・アスタロトのように詰め二人で運び部屋より出ていく。

 

 部屋に残ったのは彼とUMP45、縛られた五人の少女らと五体の雀蜂だけ。

 

 

《……なんともつまらない幕引きだな》

 

「胡座をかいたお坊ちゃんだから仕方がないんじゃないかな指揮官」

 

《ン、それもそうか。あのバアルならともかくあの鬼畜外道畜生に求めるだけ無駄だったな》

 

 

 そう言って彼はUMP45に後を任せ一足先に部屋を出ていく。

 そんな姿に何やら不安でも抱いたか、縛られていた少女らの中で一番大人びた少女が口を開いた。

 

 

「あ、あの……わ、私たちは……」

 

「ん?ああ、そっか……うん、大丈夫大丈夫忘れてないから」

 

 

 早く解放して欲しいのだろう。そんな少女らにUMP45は少女らしい笑みを浮かべながら頷いている、それを見て少女らは安堵の溜息を零す。

 

 

「それじゃ、解放してあげてね」

 

 

 少女らしい笑みのまま告げられた言葉

 雀蜂たちが少女らの前へと並び

 解放に安堵した少女らはその表情を皆一様に凍らせる

 

 何故ならば、彼女らは自分たちへと向けられた銃口を見たからだ。

 そうして次の瞬間に部屋に響き渡るのは彼女らの悲鳴ではなく絶え間ない炸裂音。

 名も無いサブマシンガンが吐き出す幾つもの水銀弾が少女の皮を被った悪魔共の肉体を抉り削り砕き壊し殺していく。

 表情一つ変えずにそんな悲惨な光景を眺め、つまらなさそうにUMP45は踵を返して部屋を出ようと歩き始める。

 

 

「後処理よろしくね」

 

「「「「「はっ」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、指揮官」

 

 

「ン?」

 

 

 ある日の放課後、俺は夕陽に照らされる街をバニラクリームフラペチーノ片手に歩いていた所、カフェラテを片手に持っていたUMP45に絡まれていた。

 仕事とはいえこっちに呼び戻したのは失敗だったか?……絡みがめんどくせぇ。

 

 

「指揮官はさ、日常が好きなんでしょ?」

 

「日常好きだな。ぶっちゃけ二亜やアルテミシアの世話諸々するだけだからな」

 

「じゃあ、なんで戦ってるの?」

 

 

 ────なん、で?

 UMP45の言葉は俺の思考を貫いた。あまりにも当たり前の台詞に俺は口を開いて、

 

 

「日常を守る為だろ?」

 

 

 何を当たり前の事を聞いているのか。

 

 

「日常を守る為には自分が強くならなきゃ駄目だろ?そりゃあ何もせずただ日常を過ごしてれば狙われる可能性は低いだろうさ。でも、ふとした時に二亜の力が知られたら?アレはどんな存在からしても喉から手が伸びるほどに求められる力だ。もしかしたら俺の神器を狙ってくるかもしれない。もしかしたらアルテミシアを見初めるかもしれない。そんな時に俺に力がなかったら?何も守れないだろう。それに狙ってくるかもしれないんだ、わざわざあっちから来るのを待つ理由なんてない。俺が戦うのは俺や二亜やアルテミシアの日常を守る為でだから俺が戦うのは仕方ない事なんだ分かるだろう?」

 

「え、あ、うん」

 

 

 なんか、ドン引きしてるんだがこいつ。

 俺、おかしなこと言ったか?……と、ありゃ。

 

 

「ん?どうしたの指揮官」

 

「いや、別に」

 

 

 ふと視界の端にこの街を案内する兵藤一誠と案内されるアーシア・アルジェントを映しながら俺は不敵に笑った。

 

 

 

「そういえば指揮官、ターゲットはどうしたの?」

 

「ン、今頃どっかに沈んでんじゃないか?」

 

 




騙して悪いがこれも仕事なんでな。死んでもらう

戦術人形前線──ドールズフロントライン
……宗像鴎の保有する神器、武器製造の禁手。至ってからは常に禁手状態のままという特異な禁手。アンドロイドという複雑な構造の武器武装をやり幅広くより強力により容易に製造する為の禁手。
……人形を創れば創るほど次に創る人形の製造速度が早くなり量産を容易にするという効率化を求めた禁手である。



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九頁

ヤッハロォォオオオ!!??

グラブルは今日からガチャピンさんとムックが降☆臨
ゼノコロも今日からだお!コロ剣堀の始まりだ


 

 

 

 

 

 パチパチ。

 人気のない静かな図書室、夕陽が窓から差し込み、グラウンドから聴こえてくる部活動に精を出す学生の掛け声、そして図書室で微かに響く算盤の音。

 五月の後半、この日は委員会の仕事だった。

 

 駒王学園図書委員会。

 部活動と違って強制的な委員会活動の中でも最も無難な委員会に入る事となった宗像鴎は誰もいない図書室で一人パチパチと算盤を弾いていた。

 五月という部活動をやるのに寒くも暑くもない丁度いいこの季節、別にまだ試験前という訳でもない為図書室は閑古鳥が鳴くような有様で、更には先生も来ない為に鴎は一人黙々と自分の作業に務めていた。

 作業に集中する為のルーティンである眼鏡をかけて、只管算盤を弾きノートに数字や文字を書き連ねていく。ノートには食費やら娯楽費やらなんやらと書かれており、要するに家計簿を鴎は書いていた。

 

 

「…………食費は問題ない」

 

 

 パチパチ。

 彼はひたすらに家計簿を書いていく。

 正確に言えば家計簿ではないのだが、一時的な家計簿の為の書き留めなのだから、家計簿と言ってもいいだろう。

 

 

「交際費、交通費、同じく問題なし」

 

 

「――――チッ」

 

 

 筆を止め、軽く頭を抑えながら鴎は舌を打つ。

 苛立たしげに筆を置いて、ポケットから出したスマホの電源をつけて何処かへと電話をかける。

 

 

「――――ああ、俺……オレオレ詐欺じゃねえよ。ンとさ、ちょいと聴きたいことがあんだけども」

 

「……ソシャゲの人権キャラが出て、それを当てたのっていつだっけ?」

 

『ええと、二週間前だね』

 

「原稿代諸々入ったのは?」

 

『……二週間前だね』

 

 

 電話先の相手の表情を思い浮かべながら、鴎は目頭を揉みながら眼下の収支等の帳簿を見て口を開く。

 

 

「もう一つ聴いてもいいか?……お前、原稿代何処へやった?」

 

『君のような勘のいい少年は大好きだよ』

 

 

 そんな電話先の相手────二亜の言葉に青筋を立てながら、手元の鉛筆を持つ手に力を加えて

 

 

「ひん剥くぞ馬鹿ッ!?課金する時は言えとあれほど言ったんだが!?」

 

『え!?ひん剥いて無理矢理手篭めにするだって!?うんうん、たまにはそういうプレイもありだねぇ……あ、霊装付けとこうか?』

 

「言ってねぇよ!?」

 

 

 もはや駄目である。

 鴎は折れた鉛筆を備え付けの箱に放り入れ、頭を抱える。

 売れっ子漫画家で容姿も整っていて性格腐ってなくてとても優良物件もとい同棲者としては充分な二亜であるがしかし、その悪癖にはもはや諦めしかない。

 課金癖に酒好き、心の中にエロ親父を飼っているというアレすぎるマイナスポイントに同棲してから果たして何度目になるのか分からない頭を抱えるという行為。だがまあ、それでも突き放さない辺り、惚れた弱味というべきなのだろうが…………。

 

 

「……はぁ、何度も言うが何か出す時はホンットに一言言ってくれ、割とマジで」

 

『あ、うん。あ、じゃあ、今度資料にフィギュア買いたいんだけども――――!?』

 

「寝言は寝て言え」

 

 

 二亜の提案を通話と共にばっさりと切った鴎はこれまた何度目になるのか分からない溜息をつきながら、帳簿やらを纏めてファイルに挟みそのまま鞄へとしまい込む。

 そうして図書委員として諸々の片付けをしていく最中に鴎はふとその片付けの手を止め、図書室の外を、校舎の外ではなくその先、駒王学園旧校舎へと視線を向けた。

 

 

「――――悪魔」

 

 

 吐き捨てる様にいや、文字通り言葉を吐き捨てながら記憶を遡る。

 そうして、思い返すのはリアス・グレモリーのわがまま。つまりは婚約騒動の記憶。

 

 

「……そうか、もうそんな時期なのか……」

 

 

 そんな風に呟きながら、耳を隠していた髪をかきあげて左耳につけていたワイヤレスイヤホンの様なものを引き抜いて口を開く。

 

 

「何かあるまで待機」

 

 

 そう、イヤホンに備え付けられている小型且つ高性能の無線、その先にいる何かに対して指示を飛ばしてまたイヤホンを耳にはめる。

 どうしてわざわざ引き抜いたのか正直、鴎でも分からない。

 

 

「フェニックス編はノーサンキュー。まあ、あちらさんとまったくもって関係無いし、そもそも非公式とはいえレーティングゲームに傭兵召喚は無理だろ」

 

 

「今日の夕飯は何にするか……五月だし五月っぽいものを……」

 

 

 五月っぽい料理ってなんだ……?

 そんな風に夕飯を考えながら、鴎は図書室の窓鍵を確認してから図書室の鍵を閉めてそのまま鍵をしまうために職員室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 ちなみにその日の夕飯は照り焼きマヨネーズに生姜を加えた特製タレを使ったアスパラの豚肉巻きと豆腐の豚肉巻きに決まった。

 二亜は残念ながら、無断課金の罰と称して茹でた枝豆とアスパラに白湯という夕飯となったそうな。なお、二亜の分になるはずだった豚肉巻きはアルテミシア(スタッフ)が美味しく頂きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういえば、兵藤一誠が何やら部活がどうたらで公欠していた。

 確かに婚約騒動でレーティングゲーム前にハンデかなんかで一週間か十日ぐらいの山篭りしてた記憶をあったようななかったような。

 レーティングゲームの特訓は部活動に入るのか……そっかぁ……だとしても公欠はねぇだろ、公欠は。

 

 

「つか、一週間かそこらで勝てると思ってんのが馬鹿馬鹿しいんだが……」

 

 

 サンドイッチを口に運びつつ俺はたらたらとオカ研の奴らもとい悪魔共に対しての文句を垂れ流していく。

 そもそもが話、自分の力を使おうとしてない奴が果たして格上に勝てるのだろうか?例えばネフィリム(堕天使のハーフ)の姫島朱乃、例えば猫又……いや、なんか猫又とは別の猫系妖怪な塔城小猫、そして自分の実力を過信してる我儘お嬢様ことリアス・グレモリー。

 他にも戦闘力なんざ一切無い魔女アーシア・アルジェント、つい数週間前までただの色ボケ猿性犯罪者高校生だった兵藤一誠、そして俺の神器(セイクリッド・ギア)の特化型上位互換である魔剣創造(ソード・バース)を持ちながらなんとも微妙でしかない木場祐斗。

 なんともまあ、決定打に欠けるチームなわけだ。

 

 

「そこそこゲームやってるガキでも分かるわな……囁告篇帙開くまでもないわぁ」

 

「じゃあ、指揮官が不死鳥(フェニックス)と戦うとしたらどうするの?」

 

「そりゃ、一に嫌がらせ、二に嫌がらせ、三四飛ばして、五に無差別砲撃だろ」

 

 

 何を聴いてるんですかねぇ……当たり前のクラッカー過ぎることをき、く、な…………よ?

 んん?おかしいなぁおかしいなぁ、ここ学校の屋上よ?基本的に鍵しまってる屋上よ?

毎度毎度俺が鍵開けやって鍵閉めてる屋上よ?あの二人?んなわけないない、じゃあ、誰って────

 

 

「やっほー指揮官!」

 

「なにゆえにお前がここにいるんだ9」

 

 

 顔を向けて正体を見れば、そこに居たのは白のシャツに黒いコートを着た栗毛ツインテールというどっかの聖剣使いと被る少女もとい戦術人形。

 正式名称UMP9、先日の外道狩りの際に連れてきた名付き戦術人形(ネームド・ドール)の片割れUMP45の妹にあたるサブマシンガンの戦術人形。

 しかし、こいつは本来……

 

 

「お前、ウクライナでの仕事どうした。45は一時的にこっちに呼んだが……お前呼んでないぞ俺」

 

「45姉がね、指揮官にカフェラテ御馳走して貰ってデートしたって言ってた」

 

「デートじゃねえよ、変な妄想してると薄い胸がもっと薄くなるぞって言っとけ」

 

 

 いや、45への文句は置いといてだ。え?何?お前もしかしてそれが羨ましくてこっち来たの?仕事放り投げて?

 そんな俺の心中を察したのか、9はピースしながら少女らしくニッコリと笑みを浮かべ

 

 

「大丈夫大丈夫。仕事なら少し前に一区切りついたから」

 

「は?…………ン、確かに。メール来てるな」

 

 

 9の言葉に若干半信半疑───と言っても七割は疑っていた───に仕事用の端末を見れば、そこには確かに仕事に一区切りがついた旨のメールが来ていた。

 45からのメールもとい簡易的な報告書に軽く目を通し、確認した旨のメールを返信しておく。

 だが、しかし、だがしかしだ。

 

 

「だからといってこっちに来ていい理由じゃないだろ」

 

「えぇ!?いや、まあ、45姉には何も言ってないけど……」

 

「余計に駄目なのでは?」

 

 

 俺は溜息をついて、最後の一個のサンドイッチを9の口に押し込み立ち上がる。

 端末を開いた際にチラリと見たがもう十分もしないうちに予鈴がなるだろう。

 

 

「俺は授業に行くから、お前はもう帰れ」

 

「うん、分かった指揮官」

 

 

 あの二人にもよろしく、伝えといてね〜

 そんな9の言葉を背に俺は屋上の出入口から校舎内へと戻る。

 鍵閉めもして、若干足取りが重いまま階段を降りていく。

 45、9と来て近いうちに他の二人もこっちに来そうで大変だ。こう言ってはなんだが、正直416は面倒臭い性格してるんだよ、なんと言えばいいのかヒステリック?まあ、性格等々は俺が考えてるわけじゃないな、あくまで本家からその辺りは引用してるから……いやぁ、大変だわ。

 

 

 しばらくこの辺じゃ何も起きないだろうし、その辺は気が楽なんだよなぁ

 

 



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聖剣闘争のガンナー
十頁


本作も今回でようやく話数が2桁に!
いやぁ、めでたい……約束に寝坊したけどなぁ……
2018年ももうすぐ終わりですが、その間にもう一話かけるかな?


 

 

 

 

 

 

 

 美味しいコーヒーを淹れるにあたって、コーヒーの抽出方法には複数種類がある。

 大きく分けて四種類。ドリップ、サイフォン、プレス、エスプレッソ……他にも種類があるかもしれないがともかく四種類。香りや酸味、コクなど好みの味によって抽出器具やその方法が変わる。

 飲めれば大してどれも変わらないとか何とか二亜はほざくがやはり、そのちょっとした味の変化が絶妙にマッチするものがあるのだ。それを二亜に説いたところ、「あー、なるほどね。一つ属性が違ったりすると凄く性癖に来るよね!」とかなんとかお前、コーヒーと性癖を一緒にするなよ、スプリングフィールドとワーちゃんに謝れ。ついでにセクハラした事も謝れ。

 まあ、そんな事を宣った日は流石に俺も頭に来たので二亜のデザートをアルテミシアにあげたんだがな。

 

 さて、話は戻るが俺の好みの淹れ方は曰く世界で最もポピュラーで人気のあるらしいドリップ方式だ。

 まずは必要な器具を用意して、普通に水を沸かしていく。その間にコーヒーが冷めないようにするため、ドリッパーや抽出器具、コーヒーカップらをお湯の中───これは既に用意していたけど、コーヒーに使わないお湯───へと入れておくことで温めておく。

 次にパッケージからペーパーフィルターを一枚取り出してささっと折っておく、おっとそろそろ止めないと水が沸騰するな。

 お湯から引き上げ軽く拭いたドリッパーにペーパーフィルターを密着させるように入れて、沸騰する前に火を止めたお湯を用意する。抽出温度はだいたい90度弱だ、沸騰させない方がいい。

 そうして、直前に挽いておいたコーヒー粉をドリッパーにセットしたペーパーフィルターへと投入。この際、表面は平になるように……しかし、中央は気持ち窪ませるといい。

 

 

 さて、こうしてお湯もコーヒー粉も用意したらあとは淹れるだけ────ではなく、まず先に抽出をしなければならない。

 ポットからお湯をそっと置くように粉の中心に細く注ぎ込んでいく、この際にポットの先端が粉面から3センチほど上に来るようにするとコーヒー粉が飛ぶことが無い。

 そうして、しばし蒸らしの為に時間を置くとコーヒー粉は水分を含みふっくらと膨らむ。蒸らしが終われば、粉の中心からゆっくりと外側へのの字を書くようにお湯を細かく注いでいく───一番外へ行けば逆に中心へと戻らせていく。きちんと抽出量を確認しながらお湯を注ごう。

 コーヒーを人数分抽出し終えたら、フィルターを外して片付けて、温めておいたコーヒーカップを取り出しコーヒーを注ぐ。これにて完成。

 そして、冷蔵庫から先日作ったチーズケーキを取り出し皿へと乗っけてフォークと共にコーヒーカップを添えれば、週に一度の俺の楽しい楽しい放課後コーヒータイムの始まりなわけだ。

 

 

「いやぁ、この日の為だけに学生やってるようなもんだよなぁ……」

 

「ふふ、貴方らしい」

 

 

 コーヒーを啜り、チーズケーキを口へと運びながらにへらと笑えば、俺の対面に座る彼女は微笑む。

 二亜ではない、アルテミシアでもない、では誰だろうか。

 さながら銀世界の妖精が如き美しい銀雪の長髪の大半を後頭部で纏め瞼を閉じた学生服を身にまとった少女。

 スラリとした手足になかなか豊かな胸部装甲、日本人離れしたその容姿はロシア人のハーフ故だろうか。そんな彼女の名はドゥヴェーナッツァッチ・クルーガー────という設定だがまあ、ここでは名前ではなく彼女としておこう。

 

 

「それで?俺の家に来るなんて珍しい」

 

「そうかしら?……ええ、確かにそうね。でも、逆に聞くけれど―――私が来るのは嫌い?」

 

「まさか」

 

 

 彼女の悪戯めいた笑みに俺は苦笑しながら、チーズケーキを口に運ぶ。うん、まろやかで美味い。

 

 

「私が来たのは、フフ、9に45とイチャついてたからです」

 

「なに、ドヤ顔してんだよ。ちょっとよくわかんない」

 

 

 彼女は基本的に優秀だ。もし俺がターゲットになったらと考えれば悪寒が止まないレベルで彼女は優秀だ。

 だがまあ、何事にも完璧なんてもんがないように、自称完璧のHK416にもヒステリックな欠点があるように彼女にも欠点が存在しうる。

 それは、まあ、こんな風になんか変な所でポンコツなんだこいつ。

 

 

「ンで?本当の理由は?」

 

「もう……少しぐらい乗ってくれてもいいじゃないですか。―――三大勢力が何やらきな臭いわ」

 

「アイツらが臭いのはいつも通り―――とは、違うわけだ」

 

 

 俺の言葉に彼女は頷き、俺はフォークを手の中で軽く回す。

 そうしながら、俺は脳裏で現在の時系列を思い浮かべ、原作での出来事を想起する。はてさて、フェニックスはどうなったのやら……もしかしたら終わったのかもしれない。そうなると、次の出来事は────

 

 

「ハッ、三勢力揃ってのぶつかり合い……単なる小競り合いなんかじゃあない。時代が動く、その前日譚―――馬鹿じゃねえの」

 

 

 フォークをチーズケーキに突き刺して、俺は未来を吐き捨てる。

 そんな俺を見てもなお、彼女はその微笑みを絶やさずその閉じられた瞼、その向こう側から多くを見透かす冷たい視線が俺を穿く。

 だから、そんな視線に俺はいつも通り嗤って返す。

 

 

「神がいなくても世界は回る?当たり前だ、神がいない世界を俺は知っている。何をお前らが世界の在り方を決めているんだ反吐が出る」

 

「でも世界の在り方なんて、どうでもいいんでしょう?」

 

「まあ、それは当たり前な話だよ。基本的に俺は身内さえ無事なら悪魔が滅ぼうが大丈夫だしな」

 

 

 まあ、ともかく。極論、俺はなんだっていいのだ。二亜やアルテミシアが悪魔の魔の手に捉えられなければ悪魔が生きようが死のうが和平を結ぼうが結ばなかろうがどうだっていいのだ。

 でもまあ、万が一が嫌だから悪魔を殺しにいくのだが。

 はてさてはてさて、どうするかどうするか。主夫高校生らしくするには────

 

 

「貴方は貴方らしくすればいいのでは?」

 

「――――ハッ!それもそうだネ!ま、ひとまずは目先の事だよなぁ」

 

 

 ひとしきり笑った後、耳に突っ込んでいた無線機から通信が入って……

 

 

「ン、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベラルーシ────世界最北の内陸国。

 ロシア、ポーランドの間に挟まれた国であり、嘗てはソビエト社会主義共和国連邦────通称ソ連の一部であった国である。

 ソ連崩壊後は独立し共和制国家となった国で日本では白ロシアと呼ばれている。

 そんな世界最北の内陸国、その北部にある州ヴィーツェプスク。

 人口129万4700人のその州のとある一角に彼はいた。

 

 

 いつも通り、何も変わらない銀のFive-seveNを左手に、刺剣を右手に持って、その外套を血で濡らした死銃がいた。

 彼の足下に広がるのは何人もの武装した人間だったモノ。総じてその身体に刺突の痕を、銃弾の痕を、そしてその頭蓋が吹き飛ばされている。そんな肉塊を軽く蹴って、Five-seveNをリロードしつつその髑髏のマスクの赤い眼光が一点を睨む。

 

 

《……来たか》

 

「ふむ、相も変わらず容赦のない」

 

 

 そんな感嘆する声と共に死銃の前に姿を現すのは黒い衣服に身を包んだ黒髪の偉丈夫。死銃にとって警戒するべき知己の男。

 

 

《コカビエル》

 

 

 旧約聖書偽典『エノク書』にて名を記されし天使の一体であり200体もの同胞と共に人間の女と交わる誓いを立てた、神の子を見張る者に属する堕天使。彼の堕天使は人間に天体の兆、すなわち占星術を教えたという。

 そんな、堕天使の勢力の中でも幹部に位置する堕天使を前に死銃は動かない。

 動けないのではなく、動かない。本来ならば戦うべき相手を前に死銃はその手のFive-seveN、その銃口を向けることすらしない。だが、しかし

 

 

《(ダネル────構えろ)お前が、俺を呼ぶなど、珍しい話だ》

 

「そうか?ふむ、確かに依頼自体は仲介人を挟んでいたな……こうして呼び出すのは何時ぶりか」

 

 

 まるで友人のようにしかし、互いに踏み込まずに語る。

 もしも、どちらかがその力を相手に向けようものなら確実に殺し合いが起きるであろう───とりわけ、死銃ならばすぐさま指示を飛ばすだろう───中、先んじてコカビエルが口火を切った。

 

 

「仕事だ。受けても受けなくてもいい」

 

 

 仮に受けなくても、今日会った事を忘れるならば俺は何もしないし言わない。

 そんな、らしくない言葉を聞いて、死銃はそのマスクの下で訝しげな表情をしながら一歩前へ出る。

 

 

《聞くだけ聞かせろ》

 

「……貴様の事だ。既に知っているのだろうが、ここ最近俺たち三勢力……そのトップ共が何やら企てている。あの魔王など似合わん悪魔共やアザゼルの事だ……何を企てているのかなんとなく察せれる」

 

《ふむ》

 

 

 コカビエルの言葉に死銃は同意しつつ、その次の言葉を予想していく。

 内外共に戦争狂のレッテルを貼られ、堕天使勢力では鷹派の中でもとりわけなこの男が直接依頼を出すなどその内容は概ね一つしかないだろう。

 

 

「和平――――なるほど、理解は出来る。だが納得は出来ん」

 

「そもそもだ。これが戦争に勝った負けたの後に行うのならば俺とて何も言わん!だが、俺たちの戦争は中途半端に終わった……勝敗など何もついていない!何より、何より、俺たちは、堕天使は悪魔は天使は長命だぞ!?悪魔には初代などの嘗ての時代で戦っていた者らが未だに生きている、我々や天界はどうだ……いまだ嘗て同様現役でいるのだぞ!?つい少し前までやり合っていた相手といきなり仲良く出来る訳が無いだろォ!!」

 

 

 そう、コカビエルのその叫びは実に、実に正論であった。

 悪魔も堕天使も天使も嘗ての大戦に参加していた者が多く生き残っている。特に貴族悪魔などがそうだ、老害は政治から身を引いたとしてもその影響力を政界に残している。

 そんな現状で和平など馬鹿のすることでしかない。先の話を知っている死銃、鴎は思う。

 

 

《(アザゼルとしては同一の敵を前にすれば協力し合えると思っているのだろう。事実、先の戦争では二天龍という同一の敵に協力して戦ったからな……だが、今回に関しては外部からの敵ではなく身内から出てきた敵だろうが……)》

 

「だが、奴らはそれに対して何もしない……何もせずに和平などを結ぼうとしている。そこでだ、奴らが、アザゼルがそんな勝手な事をしようというのならば俺も好き勝手やらせてもらう」

 

 

 そこまで聞いて鴎は納得した。

 つまり、コカビエルはただ戦争をしたいわけではないのだ。

 アザゼルへ、自分たちのトップに対する文句を反抗心を、突きつけたいのだ。現実を考え欲しいのだ────だが、それも全て和平を促進させる材料にしかならない。

 

 

「死銃、Sterben。貴様の力を貸せ。俺は戦争を起こす、平和ボケした馬鹿共の頭を殴りつけ現実を見せねばならない。まずはその為の下火を作らねばならない、その為に貴様の力が必要なのだ」

 

《――――ハッ、そりゃなんとも》

 

 

 嗤う。笑う。哂う。

 馬鹿にする為に笑うのではない。

 死銃、宗像鴎は三勢力の人外が嫌いだ。

 悪魔が嫌いだ。子供の内に生きたままセメント漬けにしたい程度に嫌いだ。

 天使が嫌いだ。そもそも悪魔や堕天使に目をつけられ攫われ利用される人間、その原因の根本は死んだ奴らの親玉だからだ。

 堕天使が嫌いだ。神器を持つ存在を将来危険な存在になるかもしれないという理由で殺すから。

 だが、だがしかし。この三勢力の中で一番マトモなのは何処かといえばまあ、どんぐりの背比べ五十歩百歩であるが堕天使がまだマシだろう。無論、ダメ出しする場所は、叩けばホコリが玉で落ちてくるほどにはあるのだが。

 

 さて、そんな堕天使の中で、この男コカビエルはそれなりに信頼はしている男だ。

 初対面の時はともかく、転移封じの術式やら対魔用の物品などの一部はコカビエル経由で得ている程度に。この男、コカビエルは堕天使の中では基本的にマトモだ。

 人間を見下す様な言動をするがしかし、それは一種のツンデレと言えるようなもので、コカビエルにとって人間とは弱く守護せねばならない存在だ、だから弱い人間を戦場から追い出す。無論、強者ならば素直に認める。

 戦争さえ絡まなければ、ツンデレな所さえ微笑ましく思えばこのコカビエルという堕天使は本当にマトモなのだ。何処かの被虐趣味の堕天使とは大違いである。

 

 

「…………頼む」

 

《まあ、勝手に行かれて死んだという話を聴くのは後味が悪い。それに俺は傭兵だ、きちんと報酬さえ出されれば何も言わんさ》

 

「Sterben……感謝する」

 

 

 頭を下げるコカビエルに死銃はヒラヒラと刺剣を持った手を振る。

 それと同時に無線により待機させていた狙撃手を下がらせ、そのまま死体処理班を呼び寄せてコカビエルと共にこのテロリストの簡易拠点だった場所を後にした。

 

 

 




今回は原作3巻に首を突っ込むための前準備という感じです。
コカビエルならしっかりとした実力のある傭兵を雇うだろうなぁと考えての事です


ガチャピンさんは俺たちの真の仲間だ


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十一頁

あけおめことよろ。
今年初投稿。
そう言えば今月にドルフロ『低体温症』来ますね!
ちなみに大陸版はやった事ないので完全初見です。どうすればいいのか分からん。

本作は基本的に主人公中心な描写です。


 

 

 

 堕天使コカビエル。

 原作において体のいい生贄として和平の為に犠牲となった戦争大好きな堕天使。そんな憐れであった筈の男は真摯に自らの心内を吐き出し、呼びかけた。

 だから俺はそんな彼に応えた。

 

 原作通りに彼が和平という茶番の為の口実として生贄に変わってしまうのか、それともそんな原作など乗り越えて彼が望むように戦争が起こるのか、そんな未来の事は俺には分からない。

 だがしかし、一つだけ分かるのは『俺』というイレギュラーがある事だろう。

 だが、何も問題などありはしない。

 俺は傭兵だ。ただの雇われた傭兵、その先の事など考える必要は無い。未来の事は彼が考えるべきことであって俺はそんな彼の為に働く、それが傭兵というものだ。

 報酬相応の働きをする迄だ。

 

 

《だから、死ね》

 

───パスッ

 

 

 何時もの銀色のFive-seveN────ではなく、サイレンサーを付けたトカレフを使ってそれの頭を撃ち抜く。

 やはり、こちらの方が気楽だ。これは純粋に個人の好き嫌いの話であるがこういう仕事柄暗殺以外にも戦争やら紛争やらに駆り出される訳だが、そういった場所ではやはり銀色というのは目立ちやすくなってしまう。

 如何に二亜の提案とはいえやはり銀色の銃を使うのには抵抗があって……いやまあ、別に嫌いじゃあない。だが、やはり、俺的にはFive-seveNよりもトカレフの方が好ましい。

 まあ、この事はあまり口に出す気は無い……以前そんな事をポツリと工房───実家のではなく、東欧ら辺にある『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の工房だ───で零した所、それを耳にしたFive-seveN……人形の方のファイブセブンがガチ泣きしながら捨てないで、と懇願してきた事があったからだ。

 

 流石の俺もそんな事されたら自分の言動に気をつける。ちなみにだが、俺は自分の道具はそれが修復不可能になるまで修復を繰り返して使う主義だ。

 前世でもその辺は小さな頃から強くてな、そうそう本を背表紙がぶっ壊れてマジでページ自体も修復出来なくなるまで読んでたからな……オーキド博士になりたかったな。

 仕事に戻らねば。

 

 

《仕事なんでな、死んでもらう》

 

 

 一人また一人とトカレフの銃弾が教会から派遣された奴らの眉間を撃ち抜いていく。

 コカビエルより依頼を受けてからはや数日。

 俺はコカビエルと現地集合……つまるところ舞台となる駒王町にて合流し、こうして教会から派遣されてきた祓魔師(エクソシスト)を始末していた。

 やはりと言うべきか、コカビエルは教会から三本の他称エクスカリバーを強奪しこの町へと入った。

 確か、夢幻(ナイトメア)天閃(ラピッドリィ)そして透明(インビジブル)だったか?正直なんとも微妙としか言えない能力の他称エクスカリバーを取り戻そうと教会は本命の前菜として雑魚の祓魔師を派遣してきたわけだが…………まあ、コカビエルの琴線には触れないのは当たり前で俺はこうして自分から祓魔師狩りに出向いてるわけだ。

 何故わざわざ自分からか?そんなの簡単だろ?あのイカレ白髪はぐれ祓魔師と聖剣マニアと同じ場所にいるのが嫌だからだ。

分かるか?あの白髪はともかくあの腐れ聖剣マニアは俺の『武器製造(ウェポン・ワークス)』もとい雀蜂や俺の武装を見てなんと言ったと思う!?

「所詮、ただの武器を作るしか能のないガラクタか。聖剣や魔剣といったモノが作れんような木っ端創造系神器に興味はない」クソが死ねば?

 お前、使うのに適性が必要な武器と基本的に使い方さえ教えれば子供でも誰かを殺せる武器どっちが有能だと思ってんだ!?はァー、これだから聖剣や魔剣好きは嫌いなんだよォ!!どうせあの厨二病患者な英雄志望共もそういうんだろぉ!?

 神器製だから、普通のよりもかなり頑丈だし威力もあるし俺の武器だぞ!?軍用バイクを並べてパンツァーファウスト装備させた人形達突っ込ませるぞ!?

 うちの子は強くてカッコよくて可愛いんだよォォォオ!!

 

 

「た、隊長……そ、その辺にした方が……」

 

《ァ?……あ》

 

 

 どうやら、少し冷静さをかいていたようだ。

 先程撃ち抜いた祓魔師の顔がとてもとても見せられるようなモノではなくなっていた。

 後処理が面倒になってしまった遺体を軽く焼かせてから付き添いの雀蜂らに処理させている間、俺はふと夜空を見上げる。

 明日は夕方頃から雨が降りそうだ……ああ、確か、明日は…………気がつけばもうこの辺りなのか。

 依頼が依頼であるため、しばし家庭の事情という事で学校を休んでいる俺であるがそれでも明日に何があるのかは覚えている。

 球技大会だ。なんとも日にちが経つのは早いものだ、つい先日に不死鳥との騒動があったばかりだったと思うがしかしそんな事は気にするだけ無駄だろう。

 

 もしかすればこれから先そんな時系列など覚えている意味がなくなるかもしれないのだから。

 

 

「隊長、処理終了しました」

 

《ン、そうか》

 

 

 後ろから聴こえてきた雀蜂の声に軽く反応しつつ、トカレフに弾を装填しなおして────振り向きざまにトカレフを突き出す。

 

 

「ッ!?」

 

《…………気の所為か》

 

 

 振り返った先にいるのは数体の雀蜂。

 それ以外は誰もいない。誰かに見られていた気がしたのだが…………雀蜂たちも特に反応を示さない以上、雀蜂のセンサーにも引っかかっていないようだが………………ふむ。

 面倒なストーカーでもいるのだろう。

 

 

「隊長……」

 

《いや、なんでもない》

 

 

 まあ、確かにアレらが動く頃ではあるだろうし仕方がないと言えば仕方がないが……変に探られても面倒だ。

 

 

《一度帰投する》

 

「ハッ」

 

 

 傭兵だからな、きちんと報酬云々出されたら仕事を受けざるを得ないがしかし、テロリストの仲間にだけはなりたくないな。

 テロリストになったら、それこそ二亜が狙われる可能性が高くなるし……え?もしもテロリストが二亜を狙ったら?

 殺す。二亜に触れる前に殺すさ。全部な。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年は少し過保護だ。

 あたしはそんな風に思いながら筆を動かす。

 今あたしは少年の実家がある駒王町ではなく、少年が時たま使っているというコテージでアルテミシアちゃんと一緒に少し遅いゴールデンウィークなのかそれとも少し早い夏休みを謳歌していた。

 どうしてこんな時期にコテージなんかにいるのかと聞かれれば、表向きには普段仕事柄家に篭もりっぱなしだからたまにはこうして外へ出るのもいいかな?というような理由であるがそれは先程も言った通りあくまでも表向きという話で、実際は彼の今の仕事が仕事だからだ。

 駒王町を舞台として始まる戦い、その中核に彼はいる。

 彼は、少年は、鴎は過保護だ。

 そりゃあ確かに巻き込みかねないからこうして避難させるのはとても理解できる。だがしかしだ、それだけなら適当な旅館にでも行かせればいい、あたし的には箱根とか行ってみたい。さて、何が過保護なのかと言うとこのコテージの周辺には視認出来ないが軽く十体はいるのだ、彼の人形が。

 メタマテリアル光歪曲迷彩だったろうか、そんななんとも浪漫な、ゲフンゲフン……カッコイイ装備をした人形らがコテージの周辺で護衛しているのだ。

 片手間に検索かけたら引っかかったから分かったんだけども……少し過保護じゃないかなぁ。

 

 

「その辺、どう思う?アルちゃん」

 

「?……ウミネコはウミネコだよ?」

 

「うーん、ナイス天然」

 

 

 私の対面で赤本に手を付けてるアルちゃんはいったい何を言っているのか、と言わんばかりに首を傾げるし可愛いな、おい。

 だけども、まあ、実際そんな彼が好きなんだから過保護だ。何だはあまり言えないんだよねぇ……それにあたしもあたしで心配性だし。

 やっぱりアルちゃんみたいにドンと構えてるのが一番なんだろうね。

 

 

「ま、なるようになれ……が一番なのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら黒狗Один。聖剣使い二名、確認。どうぞ』

 

「こちらдвенадцать。そう、ならそのまま監視の継続を。オーバー」

 

『黒狗Один。了解。Один及びтриの三体で行います。どうぞ』

 

「ええ、それでお願い」

 

 

 そう、相手に告げて彼女は通信を切ってカップに注がれたコーヒーを口にする。

 何時も通り瞼を閉じて、退屈そうな笑みを浮かべながら彼女はコーヒーを口にしている。そんな彼女の対面に座る少女はそんな彼女に首を傾げる。

 

 

「ヴェーナ?どうかしたのか?楽しそうに見える」

 

「そうかしら?フフ、そう見えるのねアン」

 

 

 アンと呼んだカチューシャの様なモノを付けた少女に彼女は微笑みながら言葉を口にする。

 

 

「それは、きっと、指揮官が私を頼ってくれるから……じゃないかしら?」

 

「指揮官が?ああ、それはきっととても楽しくて嬉しいことだ」

 

 

 納得する少女に微笑みながらその瞼を閉じながら視線をテーブルの上に置かれた二枚の写真へと向ける。

 そこには栗毛をツインテールにした少女と青い髪に緑のメッシュを入れた少女、二人の少女が写っていた。

 

 

「聖剣使い。それは指揮官にどんな影響を与えるのでしょうね」

 

 




ちなみにエクスカリバー編はもちろん、あの英雄志望との関わった際にどうなるのかは既に決まってます。


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十二頁

えー、Twitterでも報告したんですけども。
UNDEADの方で筆を動かそうにもなかなか動かせず無理矢理書こうとするとダメになる気しかしないのでしばらくはこっちを優先して投稿していきます。なので、UNDEAD楽しみにしてる方はもう少し待っててね。



 

 

 

 

 降り注ぐ雨。

 この日は、梅雨という事もあるのだろう、土砂降りという何とも気分の下がる天候であった。同日、駒王学園では球技大会が行われていたが雨が降り始めたのは午後過ぎの頃であり、球技大会自体になんら影響を及ぼすことはなかった。

 もしも、この世界のことについて知っているものがいれば、この「球技大会」「雨」からいったい何が起こるのか、理解していることだろう。

 無論、彼は知っている。無論、彼女は知っている。

 この日、いったい何が起きるのか、を。

 

 土砂降りの中、一人の学生服に身をつつむ少年がなぜゆえか傘もささず、雨具も着ずに歩いている。やや俯き気味に歩き手荷物一つ持たぬ少年、事情を知らぬ人間が見ればきっと傘を忘れてしまいしょうがなく手ぶらで帰らざるをえなかったなんとも不幸な少年に映ることだろう。

 だが、そんな少年の顔を見れば別の考えが浮かぶだろう。

 その顔は普通ではない。決して自らの不幸を嘆くような表情などではない。

 その目は濁り、幽鬼を感じさせるような表情、雨で濡れ顔に張り付く髪がより一層彼の表情を暗くさせている。

 彼の名は木場祐斗。駒王学園に通う二年生であり、オカルト研究部————グレモリー眷属に属する『騎士(ナイト)』の役割を与えられた悪魔。

 彼、木場祐斗について話すのならば、一つ重要なことを話さなければならないがしかし、この場においてはその話は割愛するとしよう。

 

 さて、彼がなぜゆえにこのような土砂降りの中、傘もささずに歩いているのか。まずはそのことについて説明するとしよう。

 といっても、説明自体は文にして二行分になるかどうかであるが。

 木場祐斗には復讐しなければならない存在があり、平和に浸かっていた彼はそのことを思い出し自らの主と喧嘩した、その程度で終わる理由である。

 復讐しなければならない、という強迫観念じみたそれはある者からすれば独りよがりと嘲笑するものだが、それは置いておき、木場祐斗の目前で一つあることが起きた。

 

 悪魔である木場祐斗の目前に現れたるは十字架を胸に掲げ真実も知らずに聖を語る者。すなわちは神父である何某。木場祐斗にとって憎悪の対象の一つであるその存在に木場祐斗は一瞬身構えて、次の瞬間には目を見開いた。

 なぜなら、その神父は唐突に腹部から血を滲ませ、口から血反吐を吐き出してその場に倒れ伏したのだから。

 どうして、誰かにやられたのか、いったい誰が────そこまで考えたところで木場祐斗はその手に神器(魔剣創造)を以て魔剣を創り出した。

 

 

「ッ!!」

 

───ガギィィィンッッ

 

 

 土砂降りの雨の中、甲高い金属の嘶きが響き、そして銀閃が煌めき、火花が散った。

 何者かの殺気を感じ取り、その手に魔剣を創り出してみればこれである。木場祐斗はその殺気の持ち主すなわちいま自らの魔剣とぶつかり合っているモノの主を睨む。

 眼前で死んだ聖職者と同じ身なり、つまりは神父。だがしかし、ただの神父などではない。

 わかりやすいほどの殺気を滾らせる者。

 

 

「やぁやぁ、おっひさぁ!」

 

 

 苛立たせるような嫌な笑みを見せる少年神父。それを木場祐斗は知っている。

 白髪のイカれ神父────フリード・セルゼン。つい先日、この街で起きた堕天使による事件で木場祐斗らグレモリー眷属とぶつかり合った輩である。

 ある者からすれば殺したいほどウザったらしい笑みを浮かべたフリードに木場祐斗は怒気を含みつつ口を開く。

 

 

「……まだこの街に潜伏していたようだね?今日は何の用かな?今の僕は至極機嫌が悪くてね」

 

 

 だがしかし、そんな威嚇混じりの言葉にフリードは嘲笑するのみである。

 

 

「そりゃまた都合がいいねぇ。すんばらしいよ!俺っちのほうはキミとの再会劇に涙涙でございまするよォ!」

 

 

 巫山戯た口調で喧しく嗤うフリードに木場祐斗は苛立ちながら、もう片方の手。つまりフリーの左手にも新たな魔剣を創ろうとして────

 

 

「────な」

 

 

 フリードの握る長剣が淡く、否しっかりとした輝きを発し始めた。

 それは悪魔が忌避する聖なるオーラ。天使や堕天使による加護由来のモノでは断じてない、剣より溢れるモノ。

 木場祐斗はそれを知っている。

 その光を知っている。

 そのオーラを知っている。

 その輝きを知っている。

 

 

「神父狩りも飽きてさぁ、あの死銃パイセンも相手してくれなくて暇だったんよ。ちょうどよく。バッチグー。ナイスタイミング。お前さんの魔剣との俺様のイカしたエクスカリバー、どぉっちが上か試しくてくれねぇかなぁ!」

 

「ヒャヒャハハハ!!あ、お礼は勿論するぜ?エクスカリバーでコロコロされるっていう栄誉をさァ!!」

 

 

 エクスカリバー。

 それがフリード・セルゼンが握る剣の名前であった。

 此処に木場祐斗は復讐の機会が訪れた。

 そして、そんな展開を影から見る者がいるのは至極当たり前の話だろう。何せ、これが起きる事を知っていて、敵の情報が得ることが出来るのだから。

 

 

「────オーバー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鴎の朝は早い。

 まだ外が暗いうちに起床し、着替え顔を洗いそして────コカビエルの拠点にて目を覚ました。

 自宅ではなく、更にはそもそも朝でもない。そんななんとも言えない感覚に鴎はため息を吐く。

 

 

《…………》

 

 

 装備の一つである簡易ベッドから起き上がった鴎はベッドを片付けてからその右手を俯き気味の額に当てる。

 未だ、聖剣使いとの接触は無く武装の調整及びコカビエルからの前金として渡された物の整理やら情報の精査などに時間を使って鴎は拠点に篭っている。

 もしもこれがコカビエル側ではなく敵側であるのならば聖剣使いと早期の接触やら悪魔らとの調査などに時間がさけれるのだろうがしかし、立ち位置的にそれはない。

 つまるところ、先を知っている鴎からするとこの時間はわりかし暇なのだ。

 一昨日に撮影したイカれ神父フリード・セルゼンとそれのエクスカリバーを使った戦闘映像を見てそのデータを理解し、それらを自分の武装情報に組み込んで最適化させ精度を高める────そして、暇なのだ。

 

 

《…………さて、どうするか》

 

 

 壁に立て掛けておいた棺桶より適当にショットガンを一丁取り出しながら、鴎は首を捻る。

 アメリカ製ポンプアクションショットガン、Kel-Tec KSGを軽く弄りながらこれからの事に思い馳せる。

 先程も述べた通り、鴎はコカビエル側。原作的に言うのならば主人公らの敵対勢力に雇われている身であり、そうほいほいと動く事の出来ない身である。

 特に鴎は雀蜂をはじめとする自分の手足となる兵が多くいるのもあり、こうして拠点待機に対してノーと答えられない。何せ、頭が動かずとも手足が自由に動いてくれるのだから頭は指示を飛ばすだけでいいのだ。

 しかしだ、鴎は決してじっとしていられる様な性分ではない。コカビエルからはこれと言って今のところ指示はない。遊んでいるフリード・セルゼンや啓蒙が足りていない医療教会の末端にもなれないような出来損ないのジ○ムおじさんもどきであるバルパー・ガリレイと行動したくない。

 では、鴎はいったいどうすれば良いのだろうか。そう、KSGを弄りながら考えて────

 

 

《そうだ、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を貰おう》

 

 

 未来の主人公勢力の強化要因をかっさらうことに決めた。

 

 

《聖剣はともかく、擬態の能力がとても欲しい》

 

 

 そう、笑いながら言葉を口にして棺桶を背負い立ち上がる。

 メインアームにKSG、トカレフTT-33(黒星)をサイドに選び空いた手で刺剣を掴み、死銃は嗤う。

 偏に退屈が紛れるからであり、聖剣という悪魔に対して有効打に成り得るモノが手に入るかもしれないから。

 

 

《────スペードストレート。Aceからfive》

 

『はっ、装備は』

 

《RO635を二、装甲兵三》

 

『了解しました。一分で用意します』

 

《ン》

 

 

 嗤って、嗤って、まるで久しぶりに遊びに出る子供のように何処かウキウキとしながら、鴎は死銃は拠点を後にした。

 

 

 

 

 




コカビエル側だから、書ける描写が少ないんじゃぁ。
結果、んじゃこっちから絡みに行こうという事に決まりましたがね。

そういえばプリヤコラボ復刻来ますね。美優がガチャ追加────それはそれとしてアンジェリカの礼装持ってないんだよね。引かねばならない理由がある。目指せアンジェリカ四凸。

闇古戦場は辛いよ……


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十三頁

ひゃっはぁ!筆がノリに乗ってるぜぇ!
聖剣の中で一番有能なのは擬態だと思うよ!だって、剣以外の形になるやろ?暗殺とかに使えるやん。わんちゃんホルマジオみたいなのが出来そう。

ところでKSG出ないんですが。


 

 

 

 

 

───ギャリィィイ

 

 

 甲高い金属の嘶きが響く。

 ぶつかり合うのは剛と柔。

 人気の無い林の中で彼らは互いの剣を振るい合う。

 片や無骨極まりない灰色の大剣で相手を押し潰さんと振るい、片や細くそこまで長くはない刺剣によりその大剣をいなしながら刺し殺さんと振るう。

 

 

「くっ……!!」

 

《ン、どうした切り姫。その程度か?》

 

 

 灰色の大剣を振るう青髪に緑のメッシュを入れた少女は苛立ち気な表情を顕にしながら、刺剣を振るう黒衣骨面の男、すなわちは死銃へと切りかかっていく。

 歳頃の少女が持てるような見た目では無い灰色の大剣を軽々と振るい怒涛の乱撃を行うがしかし死銃は軽々とその乱撃を受け流していく。

 それはさながら覚の様に彼女の心内を無遠慮に読んでいるかのようで、その骨面の赤い眼光も相まって彼女に僅かばかりの恐怖を抱かせていた。

 

 右からの薙ぎ払い、そこからやや下げつつ返し刃の切り上げからの兜割り。

 大剣というリーチと重みを利用しての連撃に対してやはり死銃は冷静に冷徹に対応してみせる。薙ぎ払いを跳躍により躱し、切り上げに対して大剣の腹に刺剣を合わせる事により力を加え回避、兜割りなど身体を半歩分横にズラす事で回避してみせた。

 それに彼女は軽く舌を打ち、いったいどのようにして、この目の前の存在に大剣を叩き込むかを思考を巡らしそんな彼女に死銃は嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖書に記された堕天使、コカビエルによる聖剣強奪事件。

 聖剣を強奪したコカビエルが向かった先は魔王の妹が二人もいる日本の地方都市であるここ駒王町。

 そして、今回聖剣をコカビエルより奪還する為に二人の聖剣使いがこの街へとやってきた。

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を与えられたカトリック教会所属の聖剣使いの少女、ゼノヴィア・クォルタ。

 擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を与えられたプロテスタント教会所属の聖剣使いの少女、紫藤イリナ。

 見目麗しい戦乙女が二人、白のローブを纏って夕暮れの街を歩いていく。全身を隠す純白のローブであるが傍から見ればなんとも怪しさ極まりない風体である。

 さて、そんな彼女らだがつい先程まで犬猿の仲、討つべき存在とも言える悪魔らの巣窟に足を運んでいた。しかし、それは決して悪魔らを滅ぼす為に足を運んだのではなく今回任務における不可侵条約に近しいものを結ぶ為に足を運んだのだ。

 教会上層部の不安の種。魔王の妹を通じて悪魔と堕天使による共謀。その確認も兼ねての不可侵の取り付けを行い分かったことは悪魔と堕天使は共謀してはいない事とプライドしか能のない紅い魔王の妹君は駆け引きというものを知らずそして自らの下僕の手綱も握れないという事であった。

 なんとも役立つ情報は得なかったがしかし、赤い竜の事が知れただけでも上々であろうか。

 

 ふと、二人の戦乙女その片割れゼノヴィアはつい先程の事を思い出す。

 魔王の妹の眷属との戦いを。自分たちの先輩にあたるという少年との剣戟、憎しみか何かで本来の能力を発揮出来ずに敗北した彼や相方の幼馴染であるという赤い竜を宿した少年。

 何か思うところがないというわけではないが、次関わるとしたら敵対してだろうと思いその時は確実に倒そうと考えて────

 

 

「ん?」

 

 

 その足を止めた。

 自分たちは今日のところはホテルへと戻る為に都心へと足を運んでいた、筈なのに。気がつけば自分たちがいるのは都心ではなく住宅街しかもそれの外れであった。

 明らかにおかしい、そして妙に静か過ぎる、そこまで思考が回ったところで相方が口を開いた。

 

 

「ゼノヴィア」

 

「どうした、イリナ」

 

 

 相方の小さな呟くようなしかし隣にいる自分に伝わるような声量の言葉に視線をやれば、イリナは前方を睨む。

 

 

「多分、そうなんだろうけどさ」

 

「あぁ、そういうことなんだろうな」

 

 

 短く詳しく言わずに伝わる程度にはコンビとしてやっている二人は前方にある廃教会に視線を合わせる。

 つまるところ、この異常事態を起こしている張本人がそこにいるのだ、と二人は理解した。嘗て幼い時分にこの街で暮らしていたイリナは知っている前方の廃教会は嘗て父と共に祈りを捧げていた教会の末路なのだ、とだからこそその胸の内で怒りを滾らせている。

 幼き頃の思い出の地に陣取る何者かに。

 故にイリナは紐のようなものを引き抜く、そうすれば紐は独りでにうねりそしてその姿形を全くの別物へと変貌させてみせた。

 不定形。否、自由自在あらゆる存在に自らを擬態する教会と天界が創り出した彼の騎士王が振るったという聖剣その贋作物。銘を擬態の聖剣。

 そして、ゼノヴィアもまたその背に背負っていた布で覆われた大荷物を晒す。

 無骨極まりない灰色の大剣、しかしそれに込められたるは破壊の意思。イリナのそれと同じ聖剣(エクスカリバー)シリーズの一振り、その銘を破壊の聖剣。

 

 教会より与えられた聖剣を手にして二人は廃教会へと疾駆する。

 罠?無論、理解してるとも。

 だが、それがどうした。罠如き一切合切乗り越えて見せよう、正しく若く経験不足としか思えぬ判断で廃教会という明らかな罠へと二人の戦乙女は乗り込んだ。

 

 

 

「…………っ」

 

「これは……」

 

 

 乗り込んだ先に広がるのはボロボロの内装、カーペットはほとんど剥げ、長椅子は無残にも砕かれ、聖像はそのクビ所か胴から上は見事にどこかへ消え去りステンドガラスなどはほとんど割れている。もはや、紫藤イリナの思い出は何某かにより無残に踏み躙られた後である。

 なんと悲惨、なんと憐れ。さしもの誰かもこれには些か同情を覚えるであろうがしかし────瞬間、彼女らの背後つまり聖堂の扉は勢いよく閉められた。

 

 

「っ!?」

 

「くっ、閉じ込められたわけか」

 

 

 扉に触れるまでもない。

 こんな状況なのだ、閉じ込められたのは簡単に理解出来る。無論、窓があるわけでやろうと思えば簡単に外へ出れるわけなのだが……二人とも敬虔な信徒である為か、聖堂の窓を割るというのは少し気遅れするのだろう。

 だが、敵はそんな彼女らの心内など別に興味は無くて……

 

 

 次の瞬間には二人の側面、つまりは壁側が盛大に吹き飛んだ。

 

 

「なっ!!??」「何!?」

 

 

 土埃を撒き散らしながら、何かの駆動音を響かせて吹き飛んだ壁側から一体の何かが飛び出してくる。

 全体的に茶っ気の装甲に所々黒いパーツがはめられた大柄の全身装甲。1メートル近くはある装甲盾とメイスを持った装甲兵すなわちは、『Aegis』敵対者を棺桶へと沈める者である。

 

 

「何これ!?」

 

「コイツは……まさかっ!!」

 

 

 『Aegis』がその脚裏に備え付けられている駆動輪を動かして、まるで氷上を滑るようにそして暴走車輌が如く二人へと突っ込んでいく。

 それに対してイリナは驚きつつも跳躍し、ゼノヴィアは『Aegis』を知っているのか何やらイリナとは違う意味での驚愕を見せてイリナとは別方向へと避ける。

 だが、その判断は失敗だったのだろう。

 イリナが飛び退いた側の壁が吹き飛びそこよりもう一体の『Aegis』が現れたのだから。

 

 

「嘘っ、二体目!?」

 

《いや、三体だ》

 

「っぁ……!」

 

 

 二体目の『Aegis』にイリナが驚くと同時にゼノヴィアへとそれが現れた。

 天井より落下し、そのままゼノヴィアの首を掴み窓へと投げ飛ばすのは黒い外套に髑髏の面を付けた男。ああ、つまるところ死銃『Sterben』である。

 死銃はそのまま投げ飛ばされ窓を割り、廃教会の隣にある林の方へと飛ばされたゼノヴィアを追う為に窓から聖堂より姿を消した。

 聖堂内に残るのは二体の『Aegis』にイリナ。そして、『Aegis』が崩して出来た穴より侵入する三体目の『Aegis』とサブマシンガンを所持した二体の雀蜂。

 此処に五対一という場が作られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木を蹴りつける。

 その手に握るのは刺剣。

 聖剣使いの片割れにして筋力振りのゼノヴィアへと迫りながら、どうするかを考える。

 擬態の聖剣欲しいな、と突っ込んだはいいがしかしこのタイミングで擬態の聖剣を奪った所でコカビエルからあの腐れジャム野郎へと渡すように言われるのは目に見えている。

 それを考えるとこのタイミングでの強奪は不味い。色々と不味い。

 では、どうするか。それは後で考えよう。

 

 と、何度か木を蹴りつければ正面から大剣、破壊の聖剣を構えたゼノヴィアが突っ込んでくる。俺は刺剣を構えて、それを迎え撃つ。

 

 

「死銃────!!」

 

《ン、久しいな。切り姫》

 

 

 放たれる突きに対して、大剣の腹を転がる様にして回避し刺剣をその首筋へと突き付ける。

 が、しかし、それを咄嗟の蹴り上げで邪魔される。

 しょうがなく、俺は大剣の腹を蹴って距離を作り地面へと着地する。

 あちらも着地し、大剣を構えてこちらを睨む。

 

 

「何故、とは聞かん。傭兵だからな、貴様は」

 

《ン。そちらの方が助かる切り姫》

 

「だから、斬る」

 

 

 相変わらずな言葉に軽く肩を竦め、俺は刺剣を構え直す。

 うん、決めた。流石に殺しはしないが腕の一、二本は貰う。

 そうして、俺とゼノヴィア。どちらかともなく地面を蹴りつけ、目前の敵へとその刃を振るった。

 

 

 

────そして、冒頭へと至る。

 




ゼノヴィアと死銃は知り合い……まあ、仕事上関わる可能性もあるもんね


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十四頁

低体温症、きっつ。
まあ、単純にレベリングが足らんのか。あとSG欲しい。
あと、アーキテクトとゲーガーいいね。そして、あちらのネタバレを見た事でとある人形が作れなくなった……残念。


 

 

 

 

 聖堂内に残された紫藤イリナは思考の片隅で分断されたゼノヴィアの事を心配していた。

 無論、目の前の五体もの難敵と戦いながらだが。

 

 『Aegis』が三体、雀蜂が二体。機動力のあるタンクが三体その脚裏の車輪を唸らせながら三方向からイリナへと迫る。そして、それらの間を縫う様に雀蜂らがその手のサブマシンガンを吹かせる。

 それは常に動かざるを得ない布陣であり、それはターゲットのスタミナを奪う為のものなのだとイリナは理解していた。だがまあ、それが理解出来ているからといってどうにか出来るわけでもなく、イリナはその手の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の能力を利用しつつまるで蝶のように舞い蜂のように刺す────を成そうとするが攻撃に転じようとすればすぐさま雀蜂のサブマシンガンが火を吹き、転ずれなかった。

 

 

「もう!反撃が出来ない────!」

 

 

 まるで無限に銃弾があるかのようにばらまく雀蜂、多少の味方撃ちですらまったく問題ではない『Aegis』らによるシールドアタックやメイスによる乱打。

 明らかに攻撃力、防御力、手数に差がありすぎる。もしもここにいるのが自分ではなくゼノヴィアならば、とそこまでイリナは考えて歯噛みし納得する。

 

 

「だから、ゼノヴィアと私を分断したのね!」

 

 

 破壊力重視の破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)ととある奥の手を持つゼノヴィアならば確かにこの場を切り抜けられるだろう。

 『Aegis』はともかく雀蜂ならばある程度のゴリ押しさえすれば間違いなく確実にゼノヴィアは倒せるだろう。それさえすれば後は『Aegis』らだけ。

 少なくとも逆転の目は生まれるわけだが、あくまでそれはゼノヴィアならばの話。今ここで五体もの人形と戦っているのはイリナである。

 彼女では決め手がない。彼女ではこの状況を打開する為の火力が足りなさすぎる。

 故に彼女はこの聖堂という名の虫かごを蝶のようにではなくバッタのように無様に飛び跳ねねばならない。雀蜂らに食いつかれないように、ゼノヴィアが救援に来てくれるその時を待つしかない。

 

 無論、この聖堂から逃げるという手もなくはないが、間違いなくそれをすれば出る前に狙い撃ちにされるか、仮に出れても聖堂という閉所から解放された『Aegis』がその機動力を最大限に引き出して仕留めにかかるだろう。イリナは抜けてるところはあるが決して馬鹿ではない、その程度の事は理解しているのだから。

 

 

「ゼノヴィア……!」

 

 

 だから、ここにはいない相方の身を案じて言葉が漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、林にて大きな振動と物音が響いた。

 それは重たい何かが倒れた際に生じた様なモノで、事実木が倒れた。

 どうして?そんなのは決まっている。

 

 

「ハアァッ!!!」

 

《脳筋め……!》

 

 

 意気軒昂と、大剣を振るいゼノヴィアはこの林の木ごと死銃を叩っ切らんと言わんばかりに動き、それに対して先程までの受け流しでは面倒だと判断した死銃は木を蹴りつけながら回避に専念し始めている。

 そうして、避ける度に木が砕かれ倒木しその上を死銃が跳ね、さらに木が粉砕されるという伐採場もかくやと言わんばかりの有様がこの場に広がっていた。

 

 

《ッ、予測外だ。ここまで、脳筋とは……》

 

「誰が脳筋だ!」

 

 

 切り上げを寸での所で回避し、刺剣を捨てその手にショットガンを手にする。

 KSGの引き金を引き、銃弾をばら撒きつつ後退────だが、やはり、ゼノヴィアはその大剣を振るう事でKSGの銃弾を弾き落とす。

 死銃は軽く舌を打ち、倒木の足場を軽々とステップを踏みながら銃弾をばら撒いていく。

 当たるものを大剣で弾きながらゼノヴィアはそんな死銃へと距離を詰めていく。パワーに頼った戦い方、決してイリナでは不可能なその戦い方をもってゼノヴィアは死銃へと迫る。

 

 

「死銃ッ!」

 

《やはり、Aegisらよりオレが相手で正解か》

 

 

 そう呟いて死銃は腰元に付けている武装のトリガーを引く。そうすればその武装よりワイヤーが勢い良く射出され、ワイヤー先端部の楔が数メートル上の木の幹へと突き刺さり、その場を蹴り跳ぶ。

なお、その際にKSGはその先端を切断され使い物にならなくなった。

 

「なっ!?」

 

《さて、どうするか》

 

 

 正直に言おう。

 死銃もとい鴎はある意味勢いで彼女らの元へ来たわけで、その本心としては決してこの時点で聖剣を奪うつもりはほとんどなかった。鴎としては六割ほど冗談または退屈しのぎのつもりであった。残りの四割はともかく

 さて、それではどうするか。そう、幹に寄りかかりながら眼下のゼノヴィアを見下ろしつつ死銃は考える。

 いっその事ここでゼノヴィアを脱落させる────そんな考えが一瞬、死銃の脳裏に過ぎるがしかしそんな考えを心の中で嘲笑い一蹴する。そんな事すれば面倒になると死銃は理解している。いまさら、原作と違う展開になることに対して文句などありはしないが、別に現状のゼノヴィアは悪魔などではない。

 故にわざわざ、ここで脱落させるつもりもない。

 では、どうするか。そこまで考えて────不意に死銃の視界に光が迸った。

 

 

《ッ……!》

 

「ちょこまか、と……!!」

 

 

 回していた思考より戻り、ゼノヴィアを改めて見る。

 光は彼女の手に……いや、彼女が握る大剣に。

そう、灰色の大剣、『破壊の聖剣』がその刀身に聖なるオーラを滾らせている。戦闘時に考え事をしていたのが、大きな仇となった。内心で死銃は自身を叱責し、どうするかを反射的に考えていく。

 既に止めることは不可能。

 破壊の聖剣はその名の通り、与えられたその属性を発揮するべくその力を収縮している。

 

 

「動くな。吹き飛ばしてやる」

 

《動くな、と言われて動かん馬鹿が何処にいる……!》

 

 

 身体を捻りながらもその視線は死銃へと向けて、ゼノヴィアは薄く笑う。

 そもそも死銃がAegisらではなく自分自身でゼノヴィアに当たったのか、その大きな理由は手数の問題だった。

 今のような聖剣の溜めを行わう時間を奪う為に手数を求めた、Aegisらではなるほど聖剣の溜めの時間はないだろう。しかし、ゼノヴィアという脳筋のゴリ押しであれば最適化工程(レベル)が一割も終わっていない戦術人形(ドール)は押し切られて破壊されるのがオチだ。

 故にこうして死銃がゼノヴィアにあたったわけだが

 

 

《(余裕ぶっこいて聖剣使われるとか、馬鹿丸出しだろうが)》

 

「『破壊(デストラクション)』ッ!!」

 

 

 瞬間、聖剣が地面に叩きつけられた。

 そうして解放されるのは破壊の光。ゼノヴィアと聖剣を中心に半径数十メートルもの破壊の光によるドーム状の爆発、否嵐が巻き起こる。

 死銃はそのドームより逃れようとしたが、ああ、悲しいかな木々を破壊しながら膨れる為に破壊された木々に巻き込まれ邪魔されながら、死銃は鴎はドームへと呑まれていった。

 教会勢力における切り札の一つとも言える聖剣(エクスカリバー)シリーズ、その中でも破壊に特化した一振り。その真なる力の前に神器を持っているだけの人間など嵐の前の蟻でしかなく、広がった破壊のドームは何時しか霧散し、後にはゼノヴィアを中心とする半径数十メートルの円形の破壊痕が残った。

 無論、そこには死銃の姿などどこにも無く。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 林の中でゼノヴィアの荒い息づかいばかりがやけに響く。

 思いのほか、聖剣の力を使うのに体力を消費したのだろう。肩で息をしながら大剣を下ろして、ゼノヴィアは息を整え始める。

 

 

「奴は…………逃げられた感覚はない、間違いなく巻き込んだ筈だ……」

 

 

 間違いなく、死銃は破壊のドームに呑み込まれた。

 そして、塵一つ死銃の痕跡がないとなれば、それはすなわち死銃が塵一つ残さず『破壊』されたということに他ならない。

 知己の人間が死ぬ、それは彼女らの世界では有り触れた────とは言えないがそれでも有り得ること────である以上、気分が良いものでは無い。それが自分の手でやった事ならば尚更だろう。

 故にゼノヴィアはせめてこれぐらいは、と言わんばかりに胸の前で十字を切って────

 

 

 一瞬、空間が歪んだ。

 

 

「ッ…………がァッ!?」

 

 

 その歪んだ空間にゼノヴィアが違和感を覚えれば、その一拍後にゼノヴィアはくの字に身体を曲げてその場から吹き飛ばされた。

 

 

「ぅぁ……いっ、たい……」

 

 

 痛む鳩尾を抑えながら、ゼノヴィアは先程まで自分が立っていた場所を睨みつける。そうしていると、その場で空間が再び歪み、そこよりそれが現れた。

 

 

 それは死銃(Sterben)────ではない。

 

 

 茶っ気の全身装甲の戦術人形すなわちは『Aegis』

 どうしてここに。そんな考えがゼノヴィアに過ぎった。いや、それ以前に何故に唐突にそこへ現れたのかそれが理解出来ない。

 メタマテリアル光歪曲迷彩。それこそが『Aegis』の姿を隠していた真実であり、そして……

 

 

《────最適化工程五割弱(レベル・五十台):Aegis》

 

 

 『Aegis』の盾の内側より身体を出す死銃。

その姿はほぼ無傷。

 そう、なぜならばあのドームへと呑まれた瞬間に死銃は自身の神器の力を使い自分を盾というシェルターに押し込む形で戦術人形を召喚したのだ。

 故に無傷。

 そして、仕留めた瞬間という大きな隙をついて『Aegis』のメイスがゼノヴィアを殴りつけたのだ。

 吹き飛び鳩尾を抑えるゼノヴィアは当たり所が悪かったか、その場で気絶。

 だがしかし、死銃はそんな彼女に背を向けて、指示を飛ばしていく。

 

 

《帰る。お前達はそのまま撤退。オレは迎えで帰る》

 

 

 そう言って『Aegis』を下がらせ、死銃はそのまま林の外へと向かって歩いていく。

 ちょうど良かった。

 そんなふうに考えながら、林の外にて止まっているモノを見つける。

 

 

「よう、指揮官。迎えに来たぞ」

 

《M16》

 

 

 眼帯に黒い長髪を三つ編みにした少女。

 名をM16A1。死銃の指揮下にある名付き戦術人形(ネームド・ドール)である彼女がバイクに乗りながら手をヒラヒラとしていた。

 

 

《見られてないだろうな》

 

「監視カメラも使い魔も覗き見も何も無いさ」

 

《ならいい》

 

 

 そう言って、死銃はM16の乗るバイクの後部に座りこの場から離れていく。

 

 

 

「なあ、指揮官。ラーメンでも食いに行かないか?」

 

《…………お前なぁ……》

 

 

 




はい、結果ゼノヴィアは思いっきりメイスで殴って気絶させました。
きちんとこの後、イリナに回収されたました。

次は少しUNDEADを進めるのでまた時間がかかりそうです。


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十五頁

えー、前回クソみたいなミスをやらかした鴎です。
悲しいね。
大変だね。
ところで紫式部出ないんだけど?どうして?ねえ、どうして?


 

 

 

 

「ああぁぁぁぁあ……クソミスった……死にたい」

 

「おいおいおい、指揮官死ぬなよ。まだ二亜も死んでないんだからさ」

 

 

 そんな声が頭上より落ちてくる。

 気遣いなどではない。単純な冗談でしかない言葉だが今の俺には少し耳に痛い言葉である。

 故に俺はその言葉を弾く様にフードを被り直す。

 先の戦い。教会から派遣されてきた聖剣使いである紫藤イリナとゼノヴィアを相手にしたあの戦闘で俺は結局の所、特に何か得るものがあったわけでもなくただ単純にあちら側にこちらの戦力の一部という情報を与えてしまった。

 そんなもはや馬鹿丸出しとしか言えないようなやらかしをしてしまった俺は、M16と深夜ラーメンをした後こうしてコカビエルの拠点に戻ってこのようにうでうでしている。

 まったくもって馬鹿らしい。

 一体何年傭兵をやっているんだ、という話だ。

 思い返すだけでも死にたくなってくる。辛い。でだ、そんなクソ雑魚ナメクジな俺は現在M16の太ももを枕に嘆いてるわけだ。膝枕だよ、羨ましいか?羨ましいだろ?嫉妬で泣け。

 

 

「そりゃあ確かに情報だけ与えたのは不味いな。でもまあ、どうとでもなる情報だろ?指揮官」

 

「ン……いや、まあ、Aegis三……じゃなくて四か。それに雀蜂が二体……確かにこれぐらいどうとでもなるが……それでもなぁ……」

 

 

 あのやらかしは傭兵としてどうなんだ?って奴だし……。

 と、そんな俺の心内でも読んだかM16は俺の頭に手を置いてまるで犬かSOPを撫でるかのようにわしゃわしゃと俺の頭を撫で散らかす。

 特に止める理由もない為、膝枕のままM16の手を受け入れる。わしゃわしゃとしているがしかし、煩わしさは一切なく姉らしさのような優しさを感じる……二亜やアルテミシアとはまた違う感覚だ。そもそも今世前世含めて俺は一度も姉というものがいない、ちなみに下も上もいない一人っ子なわけだが……いや、話がズレた。

 

 なんともまあ、クソみたいな醜態もといやらかしをしてしまった俺はクソ雑魚メンタルで胃がキリキリしてるなう。

 まあ、さっきも言ったがそんな俺をM16が慰めてくれてるんだが……アレだな。簡単には治らんな。はぁー、クソ雑魚メンタルですわぁ。

 

 

「指揮官指揮官、まだ仕事残ってるんだからそろそろ、な?」

 

「…………二亜とアルテミシアと酒池肉林したい」

 

「ダメだ、指揮官のクソ雑魚メンタルがイカれてる……」

 

 

 上からなんとも呆れたような声音が聞こえるが無視。俺のクソ雑魚メンタルはもうとっくにぼどぼどなんだよ。

 はぁ……。こちとら、メンタル雑魚くて胃が弱いんだよ。

 だから、俺はもうこのまま寝落ちしようとして────────

 

 

「ン」

 

 

 繋がっている無線からの連絡に目を開いた。

 

 

「…………クソったれ」

 

 

 寝転がった体勢のまま身じろぎして、俺はM16の足元らへんに転がっている死銃のマスクを拾い上げる。

 ……拾い上げたはいいが胃がキリキリすんだが…………

 

 

「どした、指揮官」

 

「Dinergateから無線。聖剣使いが赤いのと接触だとよ」

 

「……?それ昨日も会ってなかったか?」

 

 

 それとは別。

 そんなふうに呟きながら体勢というか身体の向きを変える。さっきまでは外向き……ああ、つまるところM16の反対側に顔を向けていたが現在はM16側に顔を向けている。

 まあ、そうするとどうなるのかというと、まんまM16のお腹を見ることになる。あ、なんかフローラルな香りするわ。やっぱりM16も女なんやな……

 

 

「……な、なぁ、指揮官」

 

「ン……?」

 

「いや、その、な?ちょちょっと腹がむず痒くなるから向き直してくれないか?」

 

 

 可愛いかよ。M16姐さん大丈夫か?

 あ、ちなみにだが向きは変えるつもりはない。スプリングフィールドは喜んでこのまま寝させてくれたぞ。あ、これは絶対に二亜とアルテミシアには言ってはいけない。

 アルテミシアはともかく二亜は露骨に不貞腐れる。

 

 ああ、でだ。

 話は戻るが。

 

 

「とりあえず、こっちからはしばらく出ない。俺のクソ雑魚メンタル的にも外に出たくない……」

 

「お、おう……」

 

「まあ、あっちから来たんなら……しゃあなしだよなぁ…………」

 

 

 軽くため息をついて俺は少し頭の位置をズラす。具体的に言うとM16の太ももから少しM16に近づいてほとんどスカートら辺に頭を置く。

 M16が何やら一瞬戸惑っているがそんなことは無視無視。

 

 ちなみにだが、こういう風に膝枕をさせてくれる人形は以外に少ない。

 というのも、単純に俺の禁手(バランス・ブレイカー)で製造した名付き戦術人形(ネームド・ドール)の内、I.O.P系列の人形は元々種類も多く膝枕をさせてくれるような人形ばかりじゃあないからだ。

 先程も述べたが膝枕させてくれるのはスプリングフィールドやAR-15にAK-12、ナガンM1895とかROとか。後は機嫌がいいとWAもやらせてくれる。

 え?UMP姉妹?あいつらはSOPMODと同じく俺にさせる側だから。おう、Five-seveNお前もお前で俺にやらせようとするな。

 鉄血系列に関してはノーコメント。

 

 

「ああ、そうだ」

 

「ん?どうした指揮官」

 

「工房に連絡を。一応念のために、Manticoreの用意を」

 

 

 あくまで念の為だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥話はわかったよ」

 

 

 街のファミレスにて木場祐斗は嘆息しながらコーヒーに口をつけた。

 グレモリー眷属が『騎士』木場祐斗は同じグレモリー眷属である兵頭一誠からの連絡を受けてこのファミレスへと足を運んでいた。

 少し不機嫌さ、棘を感じさせる声音の木場祐斗の対面には白いローブを纏った二人組、教会から派遣された聖剣使いである紫藤イリナとゼノヴィアがいる。

 

 

「正直言うと、エクスカリバー使いに破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

「ずいぶんな言いようだな。そちらが『はぐれ』だったら、問答無用で斬り捨てているところだ」

 

 

 そんなふうに棘がふんだんに盛り込まれた言葉を吐きながら睨みあう木場とゼノヴィア。そんな二人に外野であり木場を呼び寄せた兵頭一誠はその首筋に冷や汗を垂らす。

 だが、二人にはそんな兵頭一誠の心内など察することは出来ない。そして、それは他の外野にも言えることで.......

 

 

「やはり、『聖剣計画』のことで恨みを持っているのね?エクスカリバーと――教会に」

 

 

 この状況に油を注ぎかねない紫藤イリナの問いに木場はその目を細めながら、やはり棘のある冷たい声音で肯定した。

 

 

「でもね、木場くん。あの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

「だが、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されるとおもっているのか?」

 

 

 まるで諭すような声音で話す紫藤イリナに木場は憎悪の眼差しと共に紫藤イリナの言葉を切り捨てる。

 なるほど確かに教会という神に仕える信徒が行うには処分という行為はあまりに残酷で非人道的極まりないものであろうがしかし、もしもここに鴎がいたならば彼は笑うだろう。

 今更過ぎる、と。十字軍しかり、魔女狩りしかり、神の名のもとにといくらでも正当化するのが宗教なのだ、と。鴎は笑うだろう。

 さて、木場の言葉に紫藤イリナは困ったようでそんな彼女にゼノヴィアが助け舟を差し出した。

 

 

「その事件は、私たちの間でも最大限に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の責任者は信仰に問題があるとされて異端の烙印を押された。いまでは堕天使側の住人さ」

 

「堕天使側に?その者の名は?」

 

 

 ゼノヴィアの話に興味が惹かれたのか木場はその話の続きを訊く。

 

 

「――バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

「……堕天使を追えば、いつかそのバルパー・ガリレイにたどり着くのかな」

 

 

 ゼノヴィアの口から語られた仇敵の正体に木場はその瞳に強い決意のようなものを浮かべる。エクスカリバー以外にもう一つ明確な目標が判明したからだろう。

 そして、だからだろう。木場は口を開く。

 

 

「僕も情報を提供したほうがいいようだね。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃された。その際に神父を一人殺害していたよ。やられたのはそちらの者だろうね」

 

「「「!」」」

 

 

 それはつい先日に木場が体験した話。

 

 

「相手はフリード・セルゼン。この名に覚えは?」

 

 

 一振りの聖剣を携えた少年神父。その名前に教会組もグレモリー眷属も驚愕した。

 兵頭一誠はとりわけだ。思い出されるのつい先日のこと。彼が悪魔へ転生することとなった一件のこと。

 そして、ゼノヴィアは紫藤イリナと共にその目を細める。

 

 

「なるほど、奴か」

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。十三歳でエクソシストとなった天才。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

「だが奴はあまりにもやりすぎた。同胞すらも手にかけたのだからね。フリードには信仰心なんてものは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意。そして、異常なまでの戦闘執着。異端にかけられるのも時間の問題だった」

 

 

 二人が語るフリード・セルゼンの人物像に兵頭一誠らは苦々しい表情を見せる。

 そこまで語ってゼノヴィアは口を閉じ、目を閉じて――――

 

 

「しかし、フリードか。まさか、ここに来て奴もいるのか……あの時の処理班が始末できなかったツケを私たちが払うことになるとはね。そして、一つこちらから忠告だ」

 

死銃(デス・ガン)。あの葬儀屋…ああ、いや、傭兵があちら側にいるぞ」

 

 

 そう言葉を締めくくり、ゼノヴィアは立ち上がりそのままテーブルの上に連絡先の書かれたメモ用紙を置いてファミレスを後にする。

 そんなゼノヴィアの後ろを追うように紫藤イリナも立ち上がり、

 

 

「あ、イッセーくん。イッセーくんのケータイ番号はおばさまからいただいてるから!それじゃあ、またね!」

 

 

 そう言い残して彼女もファミレスを後にした。

 さながら、嵐が過ぎ去ったような感覚だけが後に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一体の働き蟻がひっそりとファミレスより姿を消した。

 

  

 




あー、M16姐さんに膝枕してもらいたいんじゃあ〜
スプリングフィールドでも可。


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十六頁

早く四巻が書きたい。
少し走り気味になるかもしれないけども頑張るぞい


 

 

 

 

 

 働き蟻の報告より数日。

 教会より派遣された聖剣使いとグレモリー眷属悪魔とシトリー眷属悪魔による聖剣破壊の密約より数日。

 

 その日の学業が終わり、部活動を済ませ訪れた放課後。

 街の中でも人気のない場所を練り歩く集団があった。

 彼らは一応に神父またはシスターの装いをした常人からすればあまり関わり合いになりたくない。そんな彼らはしかし教会の一派ではない。

 彼らがその胸に掲げているのは作り物の十字架。わかる者にはわかるそれ、神父・シスターの装いであるに関わらず偽物の十字架、それがしめすところはすなわちは悪魔。

 そう、彼らはグレモリー眷属とシトリー眷属の悪魔四人。

 

 

「そろそろ夕方か」

 

 

 先日、聖剣使いとの密会より聖剣破壊を目論む四人の悪魔。兵藤一誠、塔城小猫、木場祐斗、匙元士郎、彼らはかれこれ聖剣を探してこのように件のフリード・セルゼンを釣り出すエサとして神父シスターの装いをして練り歩いていた。

 

 

「ふぅ、今日も収穫なしか」

 

 

 既に夕方。各々自身の主に許可を取らずの行動であるため、行動にとれる時間も限られていた。

 そんな限られた時間もじき終わる頃に気落ちするように匙元士郎が呟いた。彼だけはこの事態にほとんど関係なくほぼ巻き込まれたにも関わらず、彼はこの四人の中で一番やる気があった。

 そんな彼に兵藤一誠は共感をするさなか、彼らの先頭を歩いていた木場祐斗がその歩みを止めた。

 

 

「……祐斗先輩」

 

 

 それに続くようにシスターの装いの少女、塔城小猫も何かを感じたようで、次の瞬間に兵藤一誠、匙元士郎の全身を寒気が襲った。それは殺気。

 彼らの近くからソレが飛ばされた。

 

 

「上だ!」

 

 

 匙元士郎が叫んだ。

 それにより全員が上空を見上げれば、そこには―――

 

 

「神父の一団にご加護あれってね!」

 

 

 聖剣を構えた白髪の少年神父が彼らのもとへ落ちてくる。

 それに対して木場祐斗はその手に素早く魔剣を作り出し、神父フリード・セルゼンの一撃を防ぐ

 

 

「フリード!」

 

「その声はイッセーくんじゃあないかぁ!へぇぇぇぇ、これはまた珍妙な再会劇でござんすね!どうだい?ドラゴンパゥワーは増大してるのかい?そろそろ殺していい?」

 

 

 相も変わらずイカレた調子だ、兵藤一誠がその心中で叫んでフリードを睨みながら彼らは来ていた衣服を脱ぎ捨て、普段の制服姿へと切り替わる。

 そして兵藤一誠は赤い籠手を、匙元士郎はその手に黒いトカゲの顔のような手甲を身に着ける。

 

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!」

 

『Boost!』

 

 

 赤き竜を宿した神滅具(ロンギヌス)が高らかに機械音声じみた音声を叫べば、兵藤一誠の力が膨れ上がる。しかし、兵藤一誠は前へと出ず後方に待機し木場祐斗を見る。

 そしてその横で匙元士郎がその手を伸ばし、その手甲のトカゲの口からまるでカメレオンのベロか何かのように黒い触手がフリード目掛けて放たれた。

 

 

「うっぜぇなぁ、おい!」

 

 

 フリードはやはりその手の聖剣を振るって黒い触手を払おうとするがしかし、触手はその軌道を変えて下へ落ちていき、フリードの右足へと巻き付いた。

 予想外のそれに対して流石のフリードもやや焦りながら聖剣で右足に巻き付いた触手を斬り裂こうとするものの触手は実体がないかのように刀身は触手をすり抜けきることが出来ない。

 元々フリードは足の速い戦士である。そして、いまだこの場にいるメンツでは所持しているフリードしか知らない話であるが『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリィ)』というフリードの聖剣の能力は所持者の速度を急激に高めるものであり、こうしてフリードの足を止められたのは運が良かったとしかいいようがない。

 

 

「ありがたい!」

 

 

 故に自由に動けないフリードに対して木場祐斗は一気に距離を詰めて、二振りの魔剣を振るっていく。

 そんな木場祐斗にむかってやはりというべきか、フリードは悪態をつく。

 

 

「チッ!『光喰剣(ホーリー・イレイザー)』だけじゃないってか!複数の魔剣所持、もしかして『魔剣創造(ソード・バース)』でございますか?わーお、レア神器持っているとなんて罪なお方ですこと!死銃パイセンがかっわいそぉ!!」

 

 

 悪態をつきながらもその表情はずいぶんと楽しそうで、兵藤一誠らはやや表情を苦くする。そうこうしているうちにフリードの聖剣は木場祐斗の二振りの魔剣を砕く。

 やはり腐っても聖剣ということなのだろうか。再び魔剣を作り出すが何合かで魔剣は砕けてしまう。

 

 

「木場!譲渡するか?」

 

「まだやれる!」

 

 

 だからだろう。サポートしようとする兵藤一誠の言葉を木場祐斗ははねのける。

 そんな木場祐斗の姿はなんともイライラしているようだ。それもそうだろう、木場祐斗はつい先日にゼノヴィアもといエクスカリバー使いと戦い、負けている。エクスカリバーに二度負けるなど、木場祐斗のプライドが許さないのだろう。

 しかし、戦場にプライドを持ち込むのは命取りになりかねない。

 

 

「ひゃひゃひゃひゃ!こいつで斬られると悪魔タンは消滅待った無しですぜぇ?無いよ?待った無いよぉ!?死んじゃえよッ!!」

 

 

 狂喜的にフリードは飛び出す。それに一瞬焦ったか、一拍遅く木場祐斗は幅の広い魔剣を作り出して受け止めようとするが―――

 青白い聖なるオーラを纏った聖剣の一撃が木場祐斗の魔剣を容易くまるで飴細工を砕くように破壊する。それで終わりなはずもなく、間髪入れずにフリードの二撃目が木場祐斗に襲い掛かる。

 その瞬間、絶叫が響いた。

 

 

「ぅぅぅうおおおおおおおっ!小猫ちゃぁぁぁぁん!」

 

 

 悲鳴をあげながら兵藤一誠が木場祐斗に向けて飛んでくる。

 何故ゆえに後方にいたはずの兵藤一誠が飛んでくるのか、それは簡単――簡単なことかは不明であるが『戦車(ルーク)』の能力により怪力を持つ塔城小猫によりさながらサポート道具のように木場祐斗に向けて投げ飛ばされたのである。

 

 

「木場ぁぁぁああ!!譲渡すっからなぁぁぁ!!」

 

「うわっ!?イッセーくん!!??」

 

 

 そうして、フリードの二撃目が木場祐斗に迫る中、兵藤一誠の籠手が木場祐斗の背に触れて、神器が発動する。

 

 

『Transfer!!』

 

 

 音声と共に木場の身体へとドラゴンの力が流れ込んでいく。

 そうして木場祐斗より可視化された魔力が噴き出す。

 

 

「……もらった以上は使うしかない!『魔剣創造(ソード・バース)』ッッ!!」

 

 

 受け取った魔力を神器へと注ぎ込む。

 そうすれば瞬間、路面から電柱から路地の壁から、ありとあらゆる場所から様々な形の魔刃がさながら花弁が如くに咲き誇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一つ。

 二つ。

 三つ。

 

 

「………………」

 

 

 四つ。

 五つ。

 

 歯車が回る。ピストン運動が稼働する。ベルトが動く。部品が循環する。

 不可思議極まりない魂の片隅に存在する何かが駆動する。

 工場の様な一つの意思に支配された機械群が駆動し、稼働し、起動し、その意思に従って何かを作り出していく。まるで流れ作業のように滑らかに一切の淀みなく、それは形作られていく。

 

 部品が造られ、その部品が組み立てられていく。

 

 そうして、少しずつそれは部品の塊から何か意味ある形へと変化していく。

 

 そうして完成した何かは工場の外へとベルトコンベアで運ばれていき、工場の外へと出た瞬間その姿は消え失せる。

 一つ目を作れば先程よりもやや早く、二つ、三つと複数同時に生産されていく。それは作れば作るほど速度が生産量が変わっていく。

 それは作成効率が突き詰められていくようで────

 

 

 

戦術人形前線(ドールズフロントライン)

 

 

 

 簡易的なベッドに座る彼、死銃の足元からそれは次々と発生する。

 全体的に黒くマゼンタのモノアイを持ち、そこそこの四肢に背中に当たる部分に小銃を装備したそれらがわちゃわちゃと死銃の周りで群れを為す。

 さながら仔犬が如きそれらの名は『Dinergate』正しく死銃の手足の一部とも言うべき働き蟻たる彼らはその名の通り次々とその神器により量産されていく。

 

 

「…………」

 

 

 マスクを着けずにやや俯くようにベッドに腰掛ける死銃の瞳は既につい数日前の様なぐでぐでとしたヘタレ地味たものは一切存在せず、いつも通りいつも通りの仕事の眼をしていた。

 

 

「…………廻れ回れマワレ」

 

 

 歯車よ、廻れ。

 嗤う。嗤う。嗤う。

 もうすぐ、来るぞ。

 嗤う。嗤う。童のように。

 

 

「……さて、そろそろかな?」

 

 

 立ち上がり髑髏のマスクを着ける。

 意識を切り替える為に、まるでスイッチを切り替える様に。

 そんな髑髏の赤い眼光は部屋の扉、その両脇に立つ人形に向けられる。

 

 

「準備はいいか指揮官。私は出来てる」

 

《ン、そうか》

 

 

 少女らしさは置いて、戦士の相を見せるM16A1に首を縦に振り死銃は自身の武装を確認する。

 先日の様なKSGショットガンとトカレフTT-33ではなく、メインにAK-12を装備し、サブにいつも通り銀色のFive-seveNを装備する。

 そんな有り様は前回のような事はもうありえないと言わんばかりのものであり、それは命を奪う者らしい有り様だ。

 

 

《────ン、Sterben。雀蜂とAegisツーマンセルを六用意して待機。そして、Manticoreの起動用意。こちらからの連絡があるまでDinergate以外待機。オーバー》

 

『スペードJack。了解。オーバー』

 

 

 人形らへと指示を飛ばしてから、働き蟻(Dinergate)らとM16を従えて死銃は部屋を後にする。

 もうすぐ始まる。

 油断なく、確実に狩る。

 死銃は、鴎は、その髑髏の下で嗤った。

 

 




次回は楽しい楽しい戦闘回かな。
主人公が介入してるわけでもないから原作から変えれるのが視点とセリフの一部という……


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十七頁

古戦場中だけど投稿☆
まあ、基本的にパソコン執筆しながらスマホグラブルだからなぁ。



 

 

 咲き誇るありとあらゆる魔剣。

 『魔剣創造(ソード・バース)』に対して『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の能力である倍加分を譲渡することであそこまでの数を創造して見せた。しかし、だからどうしたという話だ。

 いまだ木場祐斗の魔剣はフリード・セルゼンの聖剣には及ばない。

 

 

「クソがッ!」

 

 

 現にフリード・セルゼンは悪態をつきながらも伸びゆく魔剣を横なぎに破壊していく。だがそんなフリードに隙を見つけてか、木場祐斗は自身の駒の機能である速度強化によって自身の魔剣を足場にして移動することでフリード・セルゼンを撹乱しようとして―――魔剣が一振り放たれた。

 どうやら移動中に魔剣を抜いて投擲したようだ。しかも一振りではない、数瞬後からそれ以外にも四方八方から魔剣がフリード・セルゼンへと殺到していく。

 

 

「あひゃひゃひゃっ、大道芸かっつの!俺さまのエクスカリバーは『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラビットリィ)』!速さだけなら、てめぇみたいな腐れ悪魔なんぞに負けるわけがねぇんだよぉッ!」

 

 

 そう、狂喜に彩られた表情のままにフリード・セルゼンは魔剣を一振り一振り砕いていく。さらにはだんだんとその剣速は加速していき、常人では決して見えない速度で魔剣を破壊していく。そうして遂には周囲の魔剣を破壊したフリード・セルゼンは木場祐斗へ向かって斬りかかる。

 それに対して当たり前に木場祐斗は持っていた魔剣でそれを防ごうとする。だが、やはりその魔剣も容易く破壊される。

 

 

「死・ね!」

 

 

 もはや回避は不可能。

 フリード・セルゼンの聖剣が木場祐斗へと迫り―――

 

 

「やらせるかよ!」

 

 

 そんな声と共にフリード・セルゼンの体勢が崩れた。

 その場の全員の視線が一人へと集中する。その人物は匙元士郎、彼の手甲より伸びていた触手が彼により引っ張られたのだ。

 それによって、触手が右足に巻かれているフリード・セルゼンの体勢が崩れたのだろう。続けて次の瞬間には触手が淡い光を放ち始め、フリード。セルゼンから匙元士郎へと流れ込むように動く。

 

 

「……こいつは!俺っちの力を吸収してるのかよ!?」

 

「へっ!どうだ、これが俺の神器!『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』だ!こいつに繋がれた以上、てめぇの力は俺の神器に吸収され続ける。そう、ぶっ倒れるまでなぁ!」

 

 

 『黒い龍脈』インド神話における邪龍ヴリトラの魂の欠片を宿した神器の一つであり、兵藤一誠の『赤龍帝の籠手』ほどではないが十分珍しい部類の神器。

 どうやら、宿主によらずかなり厄介な部類の神器であるようだ。先ほどから何度も試しているがフリード・セルゼンはその手の聖剣で神器の触手を切断できていない。

 と、何やら匙元士郎が木場祐斗に向って叫んでいる。それを聞き木場祐斗の表情は複雑なものになっていた。その理由は単純だろう。復讐相手のエクスカリバー、その使い手に自分一人で勝てなかったのだから。

 数瞬おいて、決心したか木場祐斗は魔剣を作り出して―――

 

 

「ほう、『魔剣創造』か?『武器製造(ウェポン・ワークス)』のようなガラクタと違い、使い手の技量次第では無類の力を発揮する神器だ」

 

 

 殺そう。

 魔剣をフリード・セルゼンへ向けようとしたタイミングでそのような世迷言をたれながら初老の男が現れた。

 バルパー・ガリレイ。木場祐斗にとって不倶戴天、復讐の矛先の一つ。

 現に木場祐斗は憎々しげにバルパー・ガリレイを睨んでいる。

 

 

「フリード。何をしている」

 

「じいさん!このわけわかめなトカゲくんのベロが邪魔で逃げられねぇんスよ!」

 

 

 だがしかし、そんな睨まれているバルパー・ガリレイは木場祐斗らのことなどお構いなしにフリード・セルゼンへとアドバイスを行っている。そしてフリード・セルゼンはそのアドバイス通りに匙元士郎の神器を難なく切断して見せた。

 このままでは悪魔らはフリード・セルゼンを逃がすこと間違いないだろう。このままならば――

 

 

「逃がさん」

 

 

 逃げようとしたフリード・セルゼンへと迫る者がいる。

 ―――ギャリリリッ

 そんな火花と金属音を散らしながらフリード・セルゼンとぶつかるのは灰色の聖剣。すなわち『破壊の聖剣』、教会から派遣された聖剣使いゼノヴィア。

 そして、彼女に追従して現れたのは紫藤イリナ。兵藤一誠に軽く挨拶をしながらバルパー・ガリレイへと迫る。

 

 

「フリード・セルゼン、バルパー・ガリレイ。反逆の徒め。神の名のもと、断罪してくれる!」

 

「ハッ!俺の前で憎ったらしい神の名を出すんじゃねぇや!このクソビッチが!」

 

 

 斬戟を繰り広げながら吠え合う二人だが、なにやらフリード・セルゼンが懐に手を入れ、何やら取り出して見せた。

 光球。さしずめ、閃光玉だろう。

 

 

「バルパーのじいさん!撤退だ!コカビエルの旦那に報告しにいくぜ!」

 

「致し方あるまい」

 

「あぁばよぉッ!!」

 

 

 フリード・セルゼンが光球を路面に叩きつければ、次の瞬間には目を覆う眩い閃光が辺りを包み込み、彼らの視力を奪う。

 視力が戻った時には既に遅く。フリード・セルゼンもバルパー・ガリレイもその姿を消していた。

 

 

「追うぞ、イリナ」

 

「うん!」

 

 

 ゼノヴィアと紫藤イリナが頷きあって、その場より駆け出し、

 

 

「僕も追わせてもらおう!逃がすか、バルパー・ガリレイ!」

 

 

 木場祐斗も二人の後を追って、駆けていった。後には兵藤一誠、塔城小猫、匙元士郎だけが残った。

 私もこの場に残る理由はもはやなく、そうそうにこの場を去る。

 AK-1ンン、ヴェーナに何か手土産でも買っていこうか……ああ、そういえば茶請けのクッキーが無くなっていたような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはそこにいた。

 髑髏の死面を付けた者がそこにいた。

 赤い眼光を滾らせながら、獲物が来るのを待っている。

 彼の名はSterben。人形たちの指揮者であり人外を殺す者。

 その視線の先にあるのは一体何か────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 走る。

 コカビエルの拠点へと侵入した三人の剣士。教会の聖剣使いが二人に貴族悪魔の眷属というなんとも異色な組み合わせであるがしかし、コカビエルが堕天使である事を考えればある程度納得が効くだろうか。

 だがまあ、実際の所は片や任務、片や復讐でしかないのだが。

 

 さて、コカビエルらの拠点へと侵入を果たした三人、この拠点そこまで広くないのだがその分些か複雑な造りになっている。

 具体的に言うのであれば唐突に分かれ道が現れる程度には────

 

 

「分かれ道………」

 

「ゼノヴィア!私は右に行くから左お願い!」

 

「わかった。もしもコカビエルと鉢合わせたら私が来るまで待ってろ」

 

 

 やはりと言うべきか、思い切りの良い聖剣使いの二人は互いを信頼しているのかこの分かれ道というものに対して即座に二手に分かれることを判断してみせた。

 無論、敵地で戦力の分散など下策でしかないのだが。それをするということはやはり、それなりに自信があるのだろう────たかが二人でコカビエルらから聖剣を奪取出来ると豪語する程に。

 そうして分かれた聖剣使い。着いてきていた木場祐斗は一瞬逡巡した後、ゼノヴィアが向かった道へと走っていった。

 

 

 選ばれたのは紫藤イリナ。

 ゼノヴィアらと分かれて、廊下を駆ける彼女に迷いはない。

 戦士特有の直感というものなのだろうか、いくつもの扉を無視して真っ直ぐ真っ直ぐ進んでいき、そうしてその前方に一つ扉を見つけた。

 礼儀正しく開けるなんて行為は行わない。

 そも、敵の拠点に礼儀を払う必要は別段存在しない。故に紫藤イリナはその扉に向けてその手の『擬態の聖剣』を叩きつけ、真正面から扉を粉砕する。

 そうした先に広がっているのはちょっとした小さいながらも開けた部屋。内部は袋小路、所々に斬撃の跡が見受けられる。恐らくは聖剣の運用実験でも行っていた部屋なのだろう。そこまで理解した紫藤イリナは袋小路という事もあり、元来た廊下を戻りゼノヴィアと合流しようと考えて、その聖剣を掲げた。

 

―――ギャリィンンッ

 

 そうすれば、次の瞬間に響くのは金属音。

 目を見開きながらも迎撃の構えをとる紫藤イリナ、彼女は構えながらとある事を思い出した彼女が所属するプロテスタントより略奪された聖剣の名を。

 

 

「『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアランシー)』ッ」

 

 

 読んで字の如く、所有者すらも透明にできる能力を持った聖剣。

 その名を零したと同時に室内のどこからともなく声が響いた。

 

 

「見たことあるなぁ……誰だっけ?誰だっけ?―――ああ!局長の娘か!へぇへぇ」

 

 

 軽薄そうな声音に紫藤イリナは眉を顰める。

 

 

「トウジ局長はお元気?」

 

「パパを知ってるの?」

 

 

 だからそんな何某の口から自分の父親の名前が出たことを無視できなかった。

 

 

「知ってるも何も元部下だからねぇ……ちっちゃいころの君も知ってるよ。いやぁ、なかなかいい身体に育ったじゃあないの」

 

「っ……」

 

 

 舐め回すようなねっとりした視線と下卑た声音に紫藤イリナは自分の身体を抱いてこの部屋のどこかにいるコカビエルの配下である聖剣使いを睨む。

 この聖剣使いの言葉が真実であるならば元プロテスタントであるのだろう。明確な元同胞、そして父の元部下、なんと数奇なことだろうか故にこの聖剣使いは己が倒すそう心に決めて。

 

 

 

 

 

 ────瞬間、前方6メートル程で血がぶちまけられた。

 

 

「え」

 

 

《『いいですか?暴力をふるって良い相手は人外共と異教徒共だけです』》

 

 

 死が嗤った。

 

 

 




そう言えば、これはアレなんですが。
鴎の前世、通ってた幼稚園がカトリック系の教会の隣だったんですよ。ええ、幼稚園自体も教会よりなところで。具体的にはお遊戯会?で教祖誕生の話する程度には


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十八頁

古戦場は諸事情というか色々と団内でアレ過ぎて殆ど駄目ですね。
なので、小説の方を進めました。
UNDEADの方はええ、更新が遅れる=セバスが原因だと思ってください

そして、イリナファンの方々すいません。


 

 

《『いいですか?暴力を振るって良いのは人外共と異教徒共だけです』》

 

 

 そんなセリフと共にそれは現れた。

 聖剣使いと紫藤イリナの二人しかいないはずの部屋、聖剣使いのように『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』を使っているわけでないのに誰もいないはずの空間からそれがゆったりとその姿を現した。

 黒い外套に髑髏の死面。背負うは棺桶、その手に握られているのは一振りの刺剣。

 すなわち笑う棺桶(ラフィン・コフィン)、死銃、Sterben。

 嗤う嗤う嗤う。

 

 

「あなたが死銃……」

 

《そういう、お前は…紫藤イリナか》

 

 

 髑髏の眼光を赤く滾らせながら、その手の刺剣を紫藤イリナへと向ける。

 それに対して紫藤イリナもまたその手に握る聖剣を構えなおす。既に彼女の頭の中から先程の元プロテスタントであろう聖剣使いの事は失せていた。何せそんな事を考えていれば────目の前の男に負けるだろうから。

 そんな彼女の心中を理解し、マスクの下で嗤って

 

 

「────ッッ!?」

 

 

 唐突に紫藤イリナの後方からいくつもの銃弾が襲撃する。

 ギリギリの所で回避してみせるがそんな注意を逸らす行動は命取りとなるのは間違いない。

 

 

《そこだ》

 

「くっ……!」

 

 

 回避先へと放たれた刺突を『擬態の聖剣』らしく刀身の形状を広くする事で受け止め、そのまま刀身を滑らせるように鍔迫り合いへと持ち込んでいく。

 なるほどただの剣士で一対一ならばそれで良いのだろう、だがしかしだ。

 

 

《付き合うつもりは、無い》

 

 

 再び銃撃が紫藤イリナを襲う。死銃共々だ。

 

 

「嘘っ!?……カハッ」

 

 

 そのままでは食らうと判断したのだろう。鍔迫り合いを解いてそのまま転がる様に横へ回避しようとして、そこに死銃の蹴りが叩き込まれその勢いままに壁へと転がっていく。

 それによりその場に留まった死銃へと銃弾が殺到するが刹那、死銃の目の前に現れた防弾シールドによって阻まれる。

 

 

《何時から、一対一だと思っていた。ここは、敵地でオレは傭兵だ》

 

「っぅぅ……」

 

 

 その手で刺剣をペンを回すように回しながら、その視線は扉の外、廊下の方へと向けられている。

 暗めな廊下より現れるのは何時もの前開きパーカーを脱いで黄色のベルクル付きワイシャツの上に防弾ベストを着込んだM16。その表情は真剣そのもの。

 

 

「よう、指揮官。待たせたな」

 

専用装備(特殊戦術機動装甲)、ではないがまあ、聖剣ぐらいならば何とかなるはずだ》

 

「ああ、問題ないな」

 

 

 そんな風に会話しながら死銃は血溜り、『透明の聖剣』を渡されていた聖剣使いの遺体から聖剣を回収し、取り出した大型のガンケースに捩じ込んで部屋の片隅へと滑らせる。

 そうしてやっとその視線は起き上がった少女へと向けられた。

 

 

《立つか》

 

「……当たり前、でしょ……」

 

《なるほど。ならば、砕こう。その意思を》

 

 

 降ろしていた刺剣を握る手を上げて、死銃は嗤う。それはまるでオーケストラの指揮者が指揮棒を掲げるかの様でM16もまたその手の自身と同じ名前のアサルトライフルを構える。

 最初から一対一なんてものはない。

 戦士の誇り?そんなものは狗にでも食わせておけばいい。ここにいるのは傭兵とその銃だ。

 いや、そう見ればこれはある意味一対一の戦いなのかもしれないが────

 

 最初に飛び出したのは紫藤イリナだ。

 聖剣の刀身をやや厚みのある形状へと変化させて、まるで跳ね馬の如く戦士としての身体能力を活かした突撃。

 それに対して死銃は棒立ちのままでその前にM16がアサルトライフルを構えて陣取る。

避けない。迎え撃つ。

 

 そんな気概が感じられ、だから紫藤イリナはそのまま突っ込む。

 

 

「いい度胸してるな……!」

 

 

 引き金が引かれ銃弾が迫るが紫藤イリナは冷静にそれを対処する。

 瞬間的に刀身を元のサイズに戻し軽くなった聖剣で銃弾を弾いていく。なんという早業か────だが、やはり少女。甘い。

 M16の股下より紫藤イリナとM16のちょうど真ん中ら辺へと飛び込んでくるものが一つ。

 黒くやや手のひらサイズを逸脱する円筒型に近いもの。

 それがなんなのか紫藤イリナはすぐには理解出来なかった。

 

 

「これって……ッ!!」

 

「流石、容赦ない」

 

 

 XM84。従来のそれより些かグレードダウンした仕様に改造されてはいるがしかし、ソレだけでも充分効果はある。

 円筒型より発せられるのは、閃光。

 つまりはスタン・グレネードと呼ばれる代物だ。

 いきなりの閃光に寸でのところで気づいたとはいえ、その影響は大きい。腕で視界を封じたまではいい、目の前のM16とて閃光に対する対策はしていない。

 一時的に視覚機能を落としている為にほぼほぼ紫藤イリナと同タイミングで視界が復帰するだろう────しかし、忘れてはいないだろうか。

 

 

 

 M16という名の盾で閃光を凌いだ人間がいることを。

 

 

《────》

 

 

 活きの良いセリフなんてものは吐く事は無い。

 視界が封じられている。そんな相手に対して声を上げるなど自ら場所を教える愚行。

 故に無音のままに、M16の背後より躍り出た死銃が、鴎が、Sterbenがその刺剣を紫藤イリナの左肩へと突き立てた。

 

 

「ッアアァァア!!??」

 

 

 ただ突き立てるのではない。傷を深めるように捻りを加えることも忘れずにだ。

 そこに仮にも少女だからという配慮なんてそんなものどこにも無い。

 そして、刺剣による刺突に捻られ傷口が歪んだ事で走る激痛に絶叫する紫藤イリナ、無慈悲にもそんな彼女にローキックを叩き込んで蹴り飛ばす。

 その際に落とした聖剣を近くに蹴り転がしてやってだ。

 

 

「ぁぁ……はぁ……はぁ……」

 

《どうした、終わりか?聖剣使い》

 

「……指揮官。あんまそれ、M4の前でやんなよ?」

 

《オレは心の先生に従ってるだけだ》

 

 

 紫藤イリナの左肩に突き刺さったままの刺剣の代わりにと死銃はその袖から銃剣(バイヨネット)を一振り、腰から銀色のFive-seveNを取り出す。

 

 

《曰く異教徒もといプロテスタントには暴力を振るって良い、と》

 

「指揮官。カトリックだったか?」

 

《幼稚園がそうだっただけだ。気にするな》

 

 

 銃剣の刃先を紫藤イリナへと向ける。

 立ち上がった彼女のその目は決して諦めてはいない。

 

 

「ふぅぅ、ふぅぅ……」

 

《まだ折れないか。なら、折れるまでやってやる。さあ、来い。早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!》

 

「はぁ……はぁ……アーメン!!」

 

 

 刺剣を肩に突き立てられて動かすのが厳しい左腕をだらりと下げながら右手一本で聖剣を握り駆ける紫藤イリナ。

 真正面からなんていう馬鹿な真似はもうやらない。持ち前の身体能力を活かして死銃の握るFive-seveNの狙いを絞らせないように撹乱するように動いていく。

 それに対してだからどうした、と死銃はFive-seveNの引き金を引いていく。

 外す。外す。外す。外す。

 紫藤イリナの狙い通り尽くFive-seveNの銃弾が外れていく。だが数発外れたところで銃弾はまだまだ残っている。

 

 そうして、避けて避けて避けて、瞬時に自身の身体能力を振り絞って加速する。

 狙いは死銃の死角。

 そこへ潜り込みその刀の形をした聖剣を死銃のそっ首へ────

 

 

 死銃の肩越しにM16の銃口が向けられているのが見えた、いや迫る銃弾が見えた。

 

 

「ッ……!」

 

 

 間違いなく死銃の首をそのまま取ろうとすれば逃げ遅れ死ぬ。そんな銃撃にやむなく紫藤イリナは飛び退き回避を優先する。

 放たれた銃弾は、死銃が自分に当たる分だけ弾き、そのまま身体を動かしてFive-seveNの銃口を、狙いを紫藤イリナへと定める。

 

 

《────馬鹿が》

 

 

 引き金を引く。

 のべ四度、放たれた銃弾が回避したばかりの紫藤イリナへと迫っていく。二度目の回避?そんな曲芸じみた行為紫藤イリナでは出来ない。故に銃弾が紫藤イリナに穴を空ける────はずだった。

 

 

「へぇ……」

 

「はぁああ!!」

 

 

 瞬間的に刀身をまるで盾か何かのように変じさせ、銃弾を凌ぐ。そして、そのまま真っ直ぐに突っ込んでくる。

 つい先程前にやった馬鹿みたいな行為。だが、その目に迷い無く、何らかの策意があっての事なのだろう。だから、死銃はそれに対して嗤う。

 

 

《ハッ》

 

 

 Five-seveNを腰に下げ直し、袖からもう一振り銃剣を取り出して迎え撃つ。

 

 

 

 

 

《────訳があるか》

 

 

「え……」

 

 

 いくつもの銃撃が響いた。

 気の抜けた様な声に遅れて鮮血が吹き出す。

 足に、両足に、いくつもの痛みが走る。

 千切れた訳では無い、ただ、ただ、いくつもの穴が空いただけだ。

 背後からのそれに紫藤イリナは振り向いて、いくつものマゼンタ色の光を見てその意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処に行ったのかと思ったらそこにいたのか」

 

 

 M16が初めて知ったように呟く。実際、彼らをどのように配置したのかは一切M16には伝えていなかった。

 そんな彼女を見ながら俺は軽く手を振り、彼らを呼び寄せる。

 まるで子犬の様にわらわらと集まる小型の非人型人形、Dinergateらが上げてくる前足に軽く手を合わせて、倒れ伏す紫藤イリナを見下ろす。

 その左肩には俺の刺剣が突き刺さり、両足の脹ら脛に多くの銃傷を負い、教会の戦士としての服装である黒いボディスーツは銃弾が掠れたか、やや破れ血がプツリと滲んでいる。

 

 

《Sterben。何体か回せ、医療用キットを持たせてだ》

 

 

 通信を簡潔に行って、紫藤イリナの近くに落ちていた『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』を拾い上げる。

 盾の様な形状から人切り包丁の様な形状へと変えて即興ながらも鞘を作りそこへ収める。

 

 

「指揮官。これ」

 

《ン、……ああ、透明のか……コカビエルに渡しに行くぞ》

 

「わかった」

 

 

 M16が拾い上げたもう一本の聖剣が入ったガンケースをそのまま彼女に預けて俺はコカビエルがいるであろう拠点の最奥へ向かうためにこの部屋を後にしようとして、俺は立ち止まる。

 元々のを考えれば紫藤イリナも連れていった方がいいだろう。その為にもせめて軽く止血程度はと思い俺は壁に寄りかかって雀蜂らを待つことにした。

 

 




そう言えばTwitterの方でも言ったんですけどISでチーズ転生短編集に書いてみようかなって。
まあ、何時になるかは分かりませんが待っててくれるとよかです。


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十九頁

筆が止まってたけどもグラブル生放送見ながら頑張ったぞい。
なんやかんやでエクスカリバー編も後半戦。
今月はキツイかもしれないけど頑張るぞい。



 

 

 

 グレモリー眷属らがフリードらとぶつかり合った日の深夜。

 紫藤イリナがSterbenに敗れ去った日の深夜。

 そして、今回の一件における最後の深夜。

 

 静か、あまりにも静かな夜。

 正しく嵐の前の静けさという表現がぴったりとあてはまってしまうほどのこの夜に、最上級堕天使であり今回の事件の首謀者たるコカビエルは駒王学園のグラウンド上空にて椅子を用意し瞼を閉じて腰掛けていた。

 

 彼はそうして想起する。

 先の戦争で散っていった同胞たちのことを。

 先の戦争で生き残った同胞たちのことを。

 そして、これから先のことを。

 今回の一件がうまくいけば再び三勢力間で戦争が起きるだろう、今まで以上の戦争が。そして、その戦争の結果に関係なく間違いなくどの勢力もほぼほぼ壊滅するであろうことは目に見えていることだ。コカビエルとしてはそういう風に堕天使が滅ぶというのはそれはそれで構わないのだ。戦いの果てに死ねるのであれば、納得できる。

 だが、もしもこの一件が失敗に終われば……ほぼほぼ間違いなくアザゼルや魔王が目論む和平が組まれるだろう。

 転がっている問題を無視して。アザゼルがそれを理解しているのかどうかはコカビエルにはわからないことだ、だがわかっていたなら――――

 

 

「サタナエルを止めれていただろうな」

 

 

 かつての同胞の名を呟き、それを最後にコカビエルは瞼を開き眼下に視線を巡らす。

 駒王学園の本校舎の屋上にて銃器を携えて、大型の装甲重機の最終調整を行っているSterben。そして、グラウンドの中央に浮かぶ神々しい光を放つ三本の聖剣。それを中心として魔法陣がグラウンド全体に広がっている・その中央にいるのはフリード・セルゼンとバルパー・ガリレイ。

 聖剣統合という極めて珍しく高度な儀式に対してコカビエルは軽く息をついて再びその瞼を閉じようとし

 

 

「これはいったい……」

 

 

 グラウンドより聞こえた何某の声に閉じかけた瞼を開く。

 見下ろせば目立つストロベリーブロンドが視界に入り、ようやく敵―――戦争経験者であるコカビエルからすれば敵という呼称を使うほどではない雑兵だが―――がやってきた。

 

 

「四本のエクスカリバーをひとつにするのだよ」

 

 

 おもしろおかしそうに語るバルパー・ガリレイに目を細めつつ、コカビエルは声をかける。

 

 

「バルパー、あとどれぐらいでエクスカリバーは統合する?」

 

「五分もいらんよ、コカビエル」

 

「そうか。さて――」

 

 

 バルパーとの会話を終えてコカビエルは再びグレモリーらを見る。

 傲慢そうに自信ありげで堂々としているリアス・グレモリーに対してどこか呆れとも憐れんでいるようにも思える視線を向けつつ召喚の魔法陣を創り上げる。

 組み上げられた魔法陣から一体の獣が姿を現す。

 十メートルほどの黒い体躯、四肢は太く鋭すぎる爪は見るものに恐怖心を抱かせる。闇夜にギラギラと輝くのは鮮血のごとき真紅の双眸。常識の範疇でいうならば最も犬が近しいだろうがしかし、やはり尋常ならざる怪物か、その首は三個。

 すなわちは、ギリシャ神話における地獄の番犬、冥府の門番、ギリシャ神話群の終末要因(アポトーシス)・大地母神の末子・魔獣王テュポーンの仔。

 ケルベロス―――無論、オリジナルなどではないだろう。もしもオリジナルであるならばコカビエルごときでは使役することは不可能であり、そんなことをすればギリシャ神話群が黙ってはいない。では、何か単純に冥界という環境で誕生したケルベロスに似た別種の魔獣だ。神性の欠片も持ち合わせてはいない。

 

 

「だが、まあ、貴様ら程度にはちょうどよかろう」

 

 

 見下すようにそう告げて、再びコカビエルは瞼を閉じる。

 それが合図か何かのように魔獣はグレモリーらへと突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まった。

 学園の屋上からManticoreの最終調整を終えて、数体の雀蜂らと共にグラウンドで行われているグレモリー眷属らとケルベロスもどきの戦いを見る。

 主人公の兵藤一誠は神器(セイクリッド・ギア)を出してやや後方、完全な後方での支援役であるアーシア・アルジェントよりは前にはいるため、後衛というよりは中衛的立ち位置に待機している。おそらくはフリードとの戦闘時のように『譲渡』の力によるサポート役に徹するのだろうが……馬鹿としか思えん。

 如何に空中に姫島朱乃とリアス・グレモリーがいようとも、後方の兵藤一誠とアーシア・アルジェントを狙撃することはあまりに容易い。何らかの策でもあるのか、と見てみても何かあるわけでもないようで、流石の無防備さに待機している雀蜂の何体かが先ほどからちらちら俺のほうに視線を動かしている。

 十中八九、狙撃してもよいかの視線だろう。

 だが、現状は様子見であり如何に馬鹿みたいに隙だらけとはいえ、手を出すのは控えたい。

 流石にコカビエルが文句を言ってくることはないだろうが、それでもいまやるのは遠慮したいところだ。

 

 

《待機。だが、Manticoreはいつでも動かせるようにしておけ》

 

「はっ」

 

 

 

 と、どうやら本格的に始まったか。

 空中を飛ぶリアス・グレモリーへともどきが威嚇して、炎を吐き出した。だがそれはリアス・グレモリーに届かず、前へと割り込んだ姫島朱乃によって凍らされた。いや、炎が凍るってそもそもどういう……?

 それに動揺したかもどきは致命的な隙を晒して、姫島朱乃の後ろから飛び出したリアス・グレモリーが黒い魔力を放った。

 バアル家に継がれる滅びの魔力。サーゼクス・グレモリーの代名詞とも言える力だが、実際のところそこまで強いわけじゃあない。なにせ、『超越者』クラスまでにしか意味はない。それ以上の存在の力には通用しない。

 現状、リアス・グレモリーの滅びが俺に通用するのかは不明だが……まあ、まだ何とでもなるだろう。

 ああ、残念だ。もどきの頭は一つじゃあない。

 ケルベロスもどきなだけはあり、他の首が反応して炎を吐き出す。一度目の炎と魔力がぶつかる中、また別の首が炎を吐き出して拮抗状態を崩しにかかる。そして、とどめと言わんばかりに三本目の首が口を開いて―――その横っ面を殴りつけられた。ああ、塔城小猫か。

 どうやら、リアス・グレモリーに集中していたところをあの小柄さを活かしてうまく近づけたようだが……ケルベロスもどきなのだから炎を吐き終わった首は警戒していればいいものを。

 

 

「隊長。流石にあれは……」

 

《わざわざ犬の援護なんぞしてどうする。黒狗と混合してるなら建築馬鹿のところに送るぞ》

 

「聞かなかった事にしてもらえれば幸いです。隊長」

 

 

 雀蜂との談笑もほどほどに俺は視線を戻す。

 

 

 稲光などが瞬いている中、兵藤一誠らの背後にもう一体もどきが現れる。まあ、そうなるよな。わざわざ棒立ちの奴を狙わないなんて馬鹿な真似はしない。さて、どうするのか、そんな風に見ていれば。

 もどきの首の一つが宙を舞った。犬神の親戚というわけじゃああるまい、故に斬り飛ばされたわけでようよう見れば大剣の聖剣、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』を手にしたゼノヴィアがいた。

 ようやくか。何か、兵藤らへと声をかけて、首を一本失い絶叫するもどきの胴体へと斬りかかった。やはり魔獣、それもケルベロスに似ただけの魔獣では耐えきれないようでその胴体を大きく消失させている。そして、倒れこんだもどきの心臓へととどめをさせば、そのままもどきは霧散する。

 やはり、腐っても聖剣ということか。それに破壊力、攻撃力は十分高い。

 

 

《ン、赤龍帝も動くか》

 

 

 視線をずらせば、兵藤一誠が姫島朱乃とリアス・グレモリーの肩に両手を乗っけている。

 どうやら、倍増した分を譲渡させてるのか。

 次の瞬間、二人から感じる魔力が増大した。まあ、コカビエルからすれば大したものではない変化だが。だが、リアス・グレモリーはなにやら不敵な笑みを浮かべている。もどきを倒せる程度のそれでコカビエルに対しての有効打にでもなると勘違いしてるのか?

 姫島朱乃がその手を天へとかざせば、さきほどまでのモノとは威力が違うであろう雷撃が生まれてく。まあ、もどきも木偶ではない、その場から逃げ出そうとして――地面より生え出たいくつもの刃がその四肢へと突き刺さりその場にくぎ付けにした。

 木場祐斗だろう。

 

 

《Manticore、用意》

 

 

 縫い付けられれば逃げることも出来ず、もどきは天より落ちた雷撃の柱へと飲み込まれた。

 ああ、いやだ。

 これだから雷は。

 俺は余波で少し不調になった無線を踏み砕いて、マスクの下で嗤った。

 

 




次の投稿は何時になるかまだわからないけども、出来るだけ早めに投稿できるように頑張るつもりではいる。
早く4巻が書きたい。
ぶっちゃけケルベロスとミノタウロスってオンリーワンだよね


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二十頁

ようやく書き終わった!
あと隻狼楽しい!DLCが楽しみ!

あ、ダンメモがデアラコラボだったんでまた入れ直したんですけどスマホがクソすぎて、ええ、はい。そんな感じでろくに出来ず何とかガチャを回せば狂三が来ました。
狂三可愛いね、制服姿も精霊姿も好きよ。なんなら、二亜のセフィラを取り込んだ後のあの霊装も好き。


 

 

 無へと消えるケルベロスに似た魔獣。

 その瞬間に間髪入れずにリアス・グレモリーはどことなく勝利を確信したような不敵な笑みを浮かべて、兵藤一誠より倍増を譲渡されたことで明らかに増大した魔力と共にコカビエルへとその手を向ける。

 

 

「くらえ!コカビエル!」

 

 

 そんな勇ましい掛け声と共にコカビエルへと向けられた手より、巨大な魔力の塊を打ち出す。

 

 

「デカい!」

 

 

 その大きさに兵頭一誠はつい口に出す。リアス・グレモリーの眷属である彼がそう口に出すのだ。なるほど、確かにデカいのだろう。

 事実、コカビエルらは知らないが実際に打ち出された一撃は本来のリアス・グレモリーの魔力の十倍以上はある大きさであった。

 これならば、コカビエルを倒すのでは────そう彼彼女らは希望を抱き

 

 

 

 横合いから放たれた砲撃によってその希望は軽々と踏みにじられた。

 

 

「なっ!?」

 

「ふんっ……よけいなことを」

 

 

 自ら迎撃するつもりだったか、コカビエルは少しつまらなそうに鼻を鳴らしながら視線を砲撃の放たれた側へと向ける。

 それに誘われるように兵藤一誠らもそちらへと視線を向ければ、校舎の屋上の縁に腰掛ける髑髏のマスクをつけた黒づくめの何某───死銃Sterbenとその傍らには砲口から硝煙を立ち昇らせる装甲重機に数人の雀蜂。

 

 

《そう言うなよコカビエル。所詮あの程度の一撃だ、手ずから受け止めるほどのものじゃあない》

 

 

 そんなこの場に不思議と良く通る声でせせら嗤う死銃に兵頭一誠らはその表情を顰めるがそんなものどうでもいいと言わんばかりに死銃はからからと嗤う。

 そして、そんな死銃は唐突にその嗤いをやめ、視線を別の場所へと向ける。

 それに周囲が気づくのと同時にその声はあがった。

 

 

「―――完成だ」

 

 

 それはバルパー・ガリレイの声。

 そのとき、グラウンドの中央にあった三本のエクスカリバーがあり得ないほどの輝きを発し始めた。それは正しく儀式の成功に他ならない。

 事実、コカビエルは空中で拍手を送っている。

 

 

「三本のエクスカリバーが一本になる」

 

 

 発せられた輝きが神々しくなり、グラウンド全体へと広がっていく。

 あまりの眩しさに兵藤一誠らは手で顔を覆う中、死銃はその視線をグラウンドの中央へと向ける。そこに見えるのは一振りのエクスカリバー。

 七本に分かれたという聖剣、そのうちの三本がここに一振りになった。

 

 

「エクスカリバーが一本になったことで、下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町全土に退魔の光が満ちるだろう。解除するにはコカビエルを排除するしかない」

 

 

 バルパー・ガリレイの口から語られたその言葉に兵藤一誠ら悪魔は先ほど以上の驚愕を露にする。それも当然のことだろう。

 聖剣の光で構築された退魔の光なんてものが満ちれば彼ら悪魔など一瞬でチリも残らずに消滅するのが目に見えているのだから。

 彼らの頼みの綱とも言える魔王がここに到着するよりも先にこの町の悪魔は消える。故にこの場の者らだけでコカビエルを倒さねばならない。

 

 

「フリード!」

 

 

 そんな悪魔たちの心中などコカビエルにはどうでもよく、その呼びかけにバルパー・ガリレイの隣に突っ立ていたフリード・セルゼンがいつも通りの笑みを浮かべ、コカビエルの意を察して応えるように完成したエクスカリバーの柄を握りしめる。

 それを見て、ゼノヴィアは一人ではフリードに競り負けかねないと判断したのか、フリードへと視線を向けながら木場祐斗へと声をかける。

 

 

「リアス・グレモリーの『騎士(ナイト)』、共同戦線が生きているのならば、あのエクスカリバーをともに破壊しようじゃないか」

 

「いいのかい?」

 

 

 木場祐斗の問いにゼノヴィアは不敵に笑って答える。

 

 

「最悪、私はあのエクスカリバーの核さえ回収できればいい…それに死銃がちょっかいをかけないという保証もないからね、二人でかかったほうが都合がいい」

 

「……わかった」

 

 

 ゼノヴィアの返答に木場祐斗は頷き、バルパー・ガリレイを睨みつけ────それと同時に校舎の屋上から複数の影が降下してきた。

 黒の防刃防弾チョッキに肌を一切露出させず黄色のフルフェイスを被り、その手にはサブマシンガンを携えた者ら、傭兵部隊『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の構成員たる量産戦術人形(マス・ドール)Hornisse、所謂雀蜂らがその視線をリアス・グレモリーらに向ける。

 

 

《そら、暇だろ?遊んでやれよ駱駝女》

 

 

 死面はせせら笑う。

 そのありようは正しく彼らの組織名に相応しいものだろう。

 ここに二人の剣士と一人の剣士による殺し合いが、悪魔らと雀蜂による第二戦が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 銃撃音と共に大量の銃弾がぶちまけられる。

 六体の雀蜂らが携えているサブマシンガンから放たれる大量の銃弾がグレモリーらへと迫る。だが、まあ、流石に真正面からやれば当たり前に反応できるようで姫島朱乃がその手から雷を放出する。

 それによって銃弾は悉く撃墜されていく。

 しかし、しかしだ。

 所詮、それはその場しのぎにしかならない。

 一瞬の安堵の隙を突くように一部の雀蜂がバックパックから手榴弾を外し、投擲し始める。

 

 

「ッ――」

 

 

 投擲されたそれに兵藤一誠は目を見開き、すぐさま近くにいたアーシア・アルジェントを抱きかかえてその場から回避しようとするがそれに対して、他の雀蜂が牽制するようにその足元へと銃弾をばら撒く。

 それにより、その場に釘付けられ────

 

 

「させるとおもっているのかしら?」

 

 

 滅びの魔力が手榴弾を飲み込んで消えた。

 視線を動かせばあきらかに侮蔑の色を眼差しに宿すリアス・グレモリーがいて、俺は嗤う。

 

 

《勝てるとでも?》

 

 

 今回の雀蜂らは比較的製造番号が若いものばかり、故にその最適化工程(レベル)は一割に満たない。だが、それでもグレモリー眷属の能力を考えれば丁度いい程度だ。

 それに万が一のために虎の子であるManticoreを連れてきたのだ。無論、虎の子と言ってもその最適化工程(レベル)自体は二割弱いや一割半といったところか。それでも並みの上級悪魔程度は狩れる性能は持っている。一番の問題点であった、滅びの魔力だがそれに対しては代理人(エージェント)建築家(アーキテクト)の工房から対魔装甲を搭載したManticoreを徴収したため、問題はない。

 あるとしたら、最初代理人が最適化工程が五割を超えているManticoreを用意しようとしたことだろう。聞けば、計量官(ゲーガー)案山子(スケアクロウ)で何とか止め、結果として建築家(アーキテクト)は作品を徴収され、泣きながら引きこもったようだが………代理人何した。

 

 

「雷よ!」

 

 

 と、危ない危ない。

 俺目掛けて降ってきた雷を事前に用意していた避雷針により、その軌道を大きくずらして雀蜂の指揮を行う。

 そうすれば、すぐさま雀蜂六体の内二体がその銃口を姫島朱乃へと向ける。

 ばら撒かれる弾幕、迸る雷、放たれる魔力、それらを見下ろしながら俺はふと、視線を切り剣士組へと向ける。

 

 

《ああ…》

 

 

 木場祐斗、いや彼が手にしたモノを中心として突如、光がグラウンドへと広がり始めた。

 しかし、その光はエクスカリバーのような光ではなく優し気な淡い光。そして、その淡い光に満ちたグラウンドにぽつぽつと小さな光が新たに現れては何かカタチを成し始めている。

 俺はそれらが何なのかを知っている。

 

 

《因子の中身か》

 

 

 木場祐斗を囲むように現れたのは、青白く淡い光を放つ少年少女たち、そう彼らこそが聖剣計画というふざけた計画によって処分された子供たち。

 木場祐斗へむかって何か語っているようだがこの位置からは聞こえない。

 だが、そのあとのそれははっきりと理解できた。

 

 

《聖歌、か》

 

 

 悪魔でありながら木場祐斗も彼らに同調するように聖歌を歌い始めた。聖歌を歌う彼らはまるで汚れを知らぬ無垢な幼い子供の笑顔そのもので────

 

 

『僕らは、一人ではダメだった―――』

 

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど―――』

 

『皆が集まれば、きっと大丈夫―――』

 

『聖剣を受け入れるんだ―――』

 

『怖くなんてない―――』

 

『たとえ、神がいなくても―――』

 

『神が見ていなくても―――』

 

『僕たちの心はいつだって―――』

 

「―――ひとつだ」

 

 

 因子の中身である彼らの魂が天へとのぼり、一つの大きな光となって木場祐斗のもとへと降り、光が木場祐斗を包み込んだ。

 

 

 

 知っているこの先を。

 知っているこの感覚を。

 

 

《おめでとう。心の底から歓迎する、ようこそこちら側へ――――魔剣使い》

 

《だが、てめぇじゃあオレには勝てない。聖魔剣か、すごいなかっこいいな、で?》

 

 

 

 だからどうした。

 

 

 

 

 

 

────死面はその手に奇妙な銃剣銃(スプリングフィールド)を握りながら、けらけらと嗤った。

 

 




最適化工程
・いわゆるレベル。作者考案ではなく、とある作者様が使っているものできちんと許可を取ってお借りしてる表現。
・基本的に量産戦術人形は戦闘情報とかを組み込んで経験値を貯蓄し、その後整理等を行う事で貯蓄した経験値を精算しレベルを上げている。
・名付き戦術人形は戦闘中でも情報等を最適化してレベル上げてる。その為、高レベルが多い。笑う棺桶の名付き戦術人形で最適化工程を上から数えた3人はAK-12、M16A1、錬金術師
八割を超えれば最上級悪魔(タンニーンなど一部を除く)と同等だと思えばいいかな?


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二十一頁

意外と早くに更新が出来た……頑張るぞい
エクスカリバー編も終盤、頑張っていこう


 

 

 

 

 

「――僕は剣になる」

 

「部長、仲間たちの剣となる!今こそ僕の想いに応えてくれッ!魔剣創造(ソード・バース)ッッ!!」

 

 

 魂のそこから吠え上げる木場祐斗のその咆哮に応えるように木場祐斗と共に聖歌を歌っていた聖剣計画の犠牲者たちの魂が木場祐斗へと集束していく。

 魂は木場祐斗の神器と混じり合い、同調し、カタチを成していく。

 魔剣の魔の力と、同志らの聖剣因子という聖に属する力が、本来相反する力が融合していく。

 そんな本来ありえない現象が起きる中、不思議と木場祐斗は落ち着いていた。なぜなら、混ざり合う同志らが木場祐斗に教えてくれているからだ。これは昇華であるのだと。

 次の瞬間、木場祐斗の手には一振りの剣が現れた。

 

 それは魔であり、聖である奇跡の剣。

 

 

「――禁手(バランス・ブレイカー)、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」

 

 

 そう言って木場祐斗は聖魔剣を携えてフリード・セルゼンへと突貫する。

 『騎士』の駒の能力により尋常ではないスピードを出し、フェイントを何度も混ぜ込んで木場祐斗はフリード・セルゼンの視界より脱し、そのまま視界外より襲撃する。

 しかし、それでも木場祐斗の一撃はフリード・セルゼンによって受け止められた。だが、それに対して驚愕することもなく、木場祐斗は不敵な笑みを見せた。

 

 

「ッ!?本家本元の聖剣を凌駕すんのか、その駄剣が!?」

 

 

 フリード・セルゼンは驚愕の声を出す。何故なら彼の持つエクスカリバーを覆うオーラが聖魔剣によってかき消されていくからだ。

 

 

「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。―――でも、そのエクスカリバーでは、僕と、同志たちの想いは絶てない!」

 

「チィッ!」

 

 

 現状にフリードは舌を打ちながらも、木場祐斗を押し返し後方へと下がった。

 そうして改めて構えなおした瞬間、フリードはその姿を消した。

 逃走?一瞬、木場祐斗はそう考えたがすぐさま、とある事を思い出した。統合された聖剣は三本、状況からして統合された三本は奪われた三本、『透明(トランスペアランシー)』『夢幻(ナイトメア)』『天閃(ラビットリィ)』でありこの現象は『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアランシー)』によるものであると断定し、集中する。

 そして、次の瞬間には虚空より剣戟が響いた。

 

 

「なっ!?」

 

「キミの殺気は分かりやすい。例え速度を上げようとも、透明になろうとも、殺気の来る方向がわかれば、防ぐのも容易いことだよ」

 

「ざっけんなぁ!!無敵の聖剣様だろぉ!?殺気程度も透明にしやがれよッッ!!??」

 

 

 虚空より響く、フリードの叫びを聞きながら木場祐斗は聖魔剣を振るう。

 透明な刀身と聖魔剣が何度も火花を散らす。

 それはフリードの攻撃が一度も当たっていないことを示していて、動揺したのか透明化は解除され見事にフリードの姿が現れる。その表情は驚愕と怒りが混ざったような奇妙なものだった。

 

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 

 唐突になんらかの言霊が響いた。

 木場祐斗は一瞬そちらへとわずかばかりに意識を向ける。そこには歪む空間へとその手を入れながら言霊を発するゼノヴィアがいた。

 無造作に歪みを探り、何かを手にしたのか彼女はその手を歪みから引き抜く。

 

 ────そこにあるのは一振りの聖なるオーラを放つ大剣。

 

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。―――デュランダル!」

 

 

 現れたるは彼の聖騎士ローランが振るったといわれる聖剣。

 そのまさかの登場にバルパーもコカビエルも目を丸くする。

 

 

「デュランダルだと!」

 

「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!」

 

 

 そんな彼らに死銃はからからと嗤っている。

 

 

「残念。私はもともと聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたにすぎない」

 

 

 そう言って彼女は片手にエクスカリバー、片手にデュランダルという聖剣二刀流の構えを見せる。

 その構えは付け焼刃のその場しのぎなど微塵も感じさせず、それが本気であることを見るものに理解させた。

 

 

「馬鹿な!私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達してはいないぞ!?」

 

「それはそうだろう。ヴァチカンでも人工的なデュランダル使いは創れていない」

 

「では、なぜだ!」

 

「イリナたちと違って、正真正銘私は天然ものだからだよ」

 

 

 ゼノヴィアの返答にバルパーは絶句していた。

 そう、彼女は木場祐斗やその同志らと違い生まれながらに聖剣より祝福された者だった。

 

 

「そ、そんなのアリですかぁぁぁ!?ここにきてのチョー展開!くそったれのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよォォォォ!」

 

 

 絶叫を上げながらフリードはゼノヴィアに肉薄する。聖剣の力により超スピードで放たれる斬撃は悉く二本の聖剣を扱うゼノヴィアに弾かれいなされる。

 そして、デュランダルによる横なぎによってフリードは吹き飛ばされる。

 その余波でグラウンドの地面がえぐられた。

 

 

「――所詮は、折れた聖剣か。使い手も使い手、このデュランダルの相手にもならない」

 

 

 ゼノヴィアはつまらなそうに嘆息する。

 『破壊の聖剣』を凌駕するその力を振るう者からすれば仕方のないことだろう。

 木場祐斗は吹き飛ばされたフリードを追う。それは次で決めるという覚悟の表れだった。

 

 

「マジかよマジかよマジですかよ!伝説のエクスカリバーちゃんがボロ負けっすかっ!酷い!これは酷すぎる!パイセン助けて!無理っすか、そーっすか!かぁーっ!折れたものを再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか?人間の浅はかさ、教会の愚かさ、いろんなものを垣間見て俺様は成長していきたい!」

 

 

 殺意の弱まったフリードに肉薄する木場祐斗。それにフリードは対応できず、咄嗟にエクスカリバーで聖魔剣を受け止めようとするが────儚く金属音が鳴り響く。

 エクスカリバーが砕けた。

 

 

「――見ていてくれたかい?僕らの力はエクスカリバーを超えたよ」

 

 

 そのまま、聖魔剣はフリードを切り払った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリードは倒れ込み、肩口から横腹までの僕がつけた傷から、鮮血を滴らせる。

 ────勝った。

 僕たちはエクスカリバーを超えた。僕は天を仰ぎ、聖魔剣を強く握りしめた。

 感無量という感情よりも、目標を失った喪失感のほうが大きいように思える。僕が生きる理由の一つが、生きていい理由の一つが、無くなったような────

 

 

「せ、聖魔剣だと……?有り得ない……。反発し合う二つの要素が混じり合うなんてことはあるはずがないのだ…………」

 

 

 バルパー・ガリレイが表情を強ばらせている。そうだった、まだ終わってはいない。

 彼を打倒しない限り、悲劇は続く。もう、これ以上僕たちのような存在は生み出してはいけないんだ。

 

 

「バルパー・ガリレイ。覚悟を決めてもらおう」

 

 

 僕は聖魔剣をバルパーへ向け、斬り込もうとする。さあ、同志たち。これで終わりにしよう!全てに決着を!

 

 

「……そうか!わかったぞ!聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく!つまり、魔王だけでなく、神も────────ぁ?」

 

 

 何かに思考が達したかのように見えたバルパーの首が飛んだ。

 光で斬り裂いたのではない、これは刃で首を刎ねられたのだ。

 バルパーの首がそのまま落下し転がると、同時にバルパーの身体はそのままグラウンドに突っ伏しその断面から夥しい程に鮮血を吐き出す。

 そして、バルパーの向こう側に立っている人物と僕は対面する。

 

 

《いやはや、少ない情報で真実に辿り着くあたり意外と天才だったわけかバルパー・ガリレイ》

 

 

 黒い外套に黒いアーマースーツ、そして顔を覆う髑髏を模したマスク。

 その手に握られているのは一挺の銃────ライフルだろうか、その銃身の先には鋭い銃剣が装備されている。

 傭兵部隊『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』その首魁であり最上級悪魔であるヴァサゴ家の悪魔を惨殺した男。

 

 死銃がそこに立っていた。

 

 つまりはバルパー・ガリレイを殺したのは────

 

 

《初めまして、で悪いが俺とやりあおうか》

 

 

 死面の男はその手のライフルの銃口を、剣先を此方へと向けて嗤った。

 

 




死銃対木場ファイっ!

魔剣創造と武器製造
同じ創造系神器ですからねぇ


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二十二頁

木場対鴎ファイっ!

焼き鳥と豚骨ラーメン食べたい!


 

 

 

 

 

 その手に握るのは一挺の銃剣銃。

 本体である銃の種類はスプリングフィールドM1903と呼ばれるボルトアクションライフル。六十年程昔に生産を終了したある意味骨董品とも言うべきライフルであるがしかし、無意味に死銃は持ち出すことは無い。

 事実、死銃にとってライフルという区分の中ではこのスプリングフィールドに大きく信頼を寄せている。それはこのライフルを元とした戦術人形との関係にも現れており────いや、そんな事よりも彼ら悪魔にとってこのスプリングフィールドは先程から寒気を起こさせる何かだった。

 

 

「……っ」

 

《聖魔剣、カッコイイな。どうした遊ぼうぜ?》

 

 

 髑髏の死面で木場祐斗を挑発するようにせせら笑いながら、死銃はスプリングフィールドに銃弾を装填する。

 選んだのは対人外用に用意した堕天使から得た技術を使用した汞弾ではなく、対重装甲魔獣用に作成したナショナルマッチ徹甲弾。またの名を特殊な技術で作成したタングステン合金を使用した呪装徹甲弾(カースドアーマーピアシング)

 明らかに過剰武装であるそれを装填し、軽く数歩進んで────

 

 

《―――》

 

 

 躊躇い無くその引き金を引いた。

 揶揄う様な仕草からの俊敏な構えへの移行に加えて、それなりに近めの距離からの射撃。

 それは『騎士(ナイト)』である木場祐斗だからこそ辛うじて反応出来るモノでギリギリのタイミングに放たれた銃弾を聖魔剣で弾く。

 だが、その成功に代価は高くついた。

 僅かながらに反応が遅れた為か、弾いた聖魔剣はその刀身が見事に砕け散り、木場祐斗の腕に反動を残した。

 そんな結果に木場祐斗は表情を曇らせながら、両の手で新たな聖魔剣を作成し、死銃へと駆ける。距離は『騎士』という駒の性能からして二、三歩で詰められる程度のもの。

 そんな木場祐斗に対して、死銃は素早いリロードとバックステップを数度行いながら射撃し牽制する。

 今度こそは、と木場祐斗は弾くのではなく上手くいなす事を決め、剣先で微妙に銃弾の先端をずらす事で回避するがいなした際の衝撃は刀身を通してその両腕へと走り抜ける。

 

 

「……まだ、だ」

 

 

 加速する。

 それにより木場祐斗は死銃の目前へと迫る。スプリングフィールドを構えて引き金を引くには距離はやや足りず、木場祐斗の聖魔剣を振るうには丁度いい距離。

 逃げるには速度が違う。故に回避は不能、そう判断した木場祐斗は聖魔剣を振るい────

 

 

「なっ……!?」

 

《馬鹿が》

 

 

 聖魔剣と身体の隙間にスプリングフィールドを横に構えた状態で差し込み左からの攻撃を防御、右からの攻撃は素早く引き金を引く事でそのまま刀身を破壊する。

 木場祐斗は銃というものを使った経験が無い。

 だから、銃の強度というものは知らない。だがしかし、だからといって禁手に至った神器で作成した聖魔剣を弾く様な銃があるのだろうか?

 その答えは簡単だ。

 年季が違う。

 

 

《歩ける様になった赤子が競えると思うな!》

 

 

 スプリングフィールドをそのまま押すことで、木場祐斗の体勢を崩しすぐさま軽く跳び上がって蹴りを木場祐斗の側頭部へと叩き込む。

 

 

「っぅ……!!」

 

 

 瞬時に聖魔剣を間に入れたからか直撃はしていない、だがその代償に聖魔剣は砕け飛び散る破片。それによって木場祐斗は傷つく。

 思わず片目を瞑ってしまった木場祐斗に死銃は嗤い、蹴りの反動を利用しそのまま宙へと浮き上がる。

 その際に片足を木場祐斗の顎へと引っかけにかかる。

 

 

「私を忘れるな!」

 

《ッ》

 

 

 しかし、足は引っかけること無く横合いから突き出された大剣に触れる前に引っ込め、その腹を蹴りつけて木場祐斗から距離を取り直す。

 剣のリーチから外れ、銃のリーチへと佇みながら、即座に新たな銃弾を装填する。

 その流れるような動きは一分の隙もなく、例え本気で木場祐斗が突貫したとしても斬りかかる頃には装填は終わっているだろう。

 

 そんな死銃を睨みながらゼノヴィアは二振りの聖剣の内、『破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)』をデュランダルを引き抜いた空間の歪みへと放り込み両手でデュランダルを握り直した。それは手数ではなく堅実さを求めたが故の判断なのだろう。

 

 

「どうした、そんな所で止まってないで突っ込んでこいチキン」

 

《剣相手に突っ込むとでも?》

 

 

 ゼノヴィアの挑発に対して死銃はそう返し、すぐさまスプリングフィールドを構え引き金を引く。

 放たれるのは三つの銃弾。それをゼノヴィアはデュランダルで受け止める。流石はデュランダルと言うべきだろうか、聖魔剣を砕く銃撃を三度受け止めても傷一つ付かず、だが威力は殺せなかったかゼノヴィアは顔を顰める。

 そんな彼女に死銃は嗤い、更に続けて引き金をを引こうとしてその場を飛び退いた。

 

 

「魔剣よ!」

 

 

 その言葉と共に死銃目掛けて地面から無数の魔剣が生え出てきたからだ。

 視線の先にいるのは木場祐斗。間違いなくこの現象は彼の神器(セイクリッド・ギア)である『魔剣創造(ソード・バース)』のそれだろう。

 例え禁手に至っていてもすぐには聖魔剣をこの魔剣のように生やす事は出来ないようだ。と言ってもあくまでそれは大量にという言葉が頭にくるだけであり、実際は所々聖魔剣が混じっているのが確認出来た。

 

 

《使えるようになったから、となかなか大判ぶるまいだな。ほら、折ってやる》

 

 

 地面に着地したと同時に死銃は迫り来る魔剣群の方向へと軽い踏み込みをすれば、それと同時に木場祐斗の魔剣のように地面から無数の武器が生え出て魔剣群とぶつかり合う。

 無数の多種多様な武器は魔剣のような特殊な力は備えていない。だが、それらは間違いなく神器『武器製造(ウェポン・ワークス)』によって作成された普通ではない武器である。

 創造系神器において被造物は神器の格と練度、所有者のポテンシャルといった諸々によってその性能が大きく変わる。例えば創造系神器の頂点に位置する『魔獣創造』など所有者のポテンシャルもとい想像力が未熟では如何に格が高かろうとも大した力は振るえない。

 さて、ここで『魔剣創造』と『武器製造』を比較してみよう。片や魔剣、片や武器。

 先も言ったように後者は特にこれと言った特殊な力は備えていない、だがこの場において練度もポテンシャルも圧倒的に死銃の『武器製造』が上だ。

 何せ一度に数百を超える人形や武器を製造する事が多いのだから練度など比べる事などそもそも不可能だ。故に、生え出た武器群とぶつかり合った魔剣群は容易く破壊されていく。

 

 

「くっ……」

 

「やはり、あちらの方が上か……」

 

 

 砕け散っていく魔剣に表情を曇らせる木場祐斗に対し、やはりと予想していたゼノヴィアはどう動くべきかを思案する。

 そんな二人を見ながら死銃はスプリングフィールドの銃口を木場祐斗へと向ける。

 そうして引き金を引く。

 

 放つのは二発の弾。それに反応して、木場祐斗は二本の魔剣を創り出し銃弾を迎撃する為に放つ。

 銃弾は魔剣を砕いて、そのまま地面へと落ちる。それを確認する前に死銃は再度銃弾を装填しようとして────目前にまで迫った三本目の魔剣に身体を大きく背面に反らすことで回避した。

 何故目前に迫るまで気が付かなかったのか。それを死銃は心中で考えるが反らす際に視界の端に見えた三本目の魔剣を見て理解した。

 それは暗色、限りなく暗い魔剣だった。

 つまるところこの夜闇に混じるような色合いの魔剣を放つ事で不意を打って見せたのだろう。そして、目論見通りかどうかは分からないが作る事の出来た生じたその隙に木場祐斗は駆ける。

 

 

「聖剣も倒してみせた、僕の、僕らの聖魔剣ならば例えキミの様な奴にだって―――」

 

《負けるわけがないとでも言うつもりか》

 

 

 背面に反った身体が戻る前に木場祐斗がその手の聖魔剣を叩きつけるように振るう。

 それに対して、死銃はスプリングフィールドを振るって対応する。ライフルの銃身に銃剣が備わっている事でその刀身が聖魔剣とぶつかり合う。

 しかし、死銃の体勢が体勢だ。上から叩きつけるように振るう木場祐斗の方が力が伝わりやすい。そして、銃というのは存外に繊細だ。聖魔剣という特異な武器と打ち合えるわけがなく────

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな道理をその剣は覆す。

 聖魔剣の刀身を銃剣が切り裂き、そのまま木場祐斗の肩を僅かに裂く。

 

 

「がぁッッ!!??」

 

 

 瞬間、そんなナイフでちょっと斬った程度でしかない傷がまるで焼き鏝でも押し付けられたかのように激痛と熱を木場祐斗へと叩きつけた。

 そのあまりの痛みに木場祐斗はその場で膝をついてしまい、体勢を戻した死銃がその傷口へと銃剣を突き刺しそのまま銃を固定する。

 それにより再び、先ほど以上の熱と激痛が木場祐斗を襲う。

 

 

「ァァァアアアアッッッ!!??」

 

 

 そのあまりの絶叫に、戦闘中でありながらリアス・グレモリーらは木場祐斗へと視線をやってしまうほどに。

 

 

「祐斗ッ!?」

 

《―――死ね》

 

 

 ゆったりと装填される銃弾。

 しかし、激痛には木場祐斗は動く事が出来ず、それを止められない。

 リアス・グレモリーらも止めに入るには間に合わない。

 で、あれば

 

 

「だから、私を忘れるなと言っただろうが!!」

 

 

 

 もう一人が来るしかない。

 木場祐斗の背後より飛び上がり空中から落下するデュランダルとゼノヴィア。

 木場祐斗をそのまま撃ち抜いたとしても間違いなくそれを回避する事は不可能。ならば対処するには木場祐斗への射撃を止めねばならない。

 しかし、だとしてもデュランダルを防げるかと言われればギリギリ間に合わないというのが答えであり、結局の所手傷を負うことは確定している。

 

 

 

《当たり前だ》

 

「―――!!」

 

 

 木場祐斗が声にならない悲鳴をあげる。

 撃ち抜いたのではない、そのまま銃剣が肩を斬り上げたのだ。

 そして、その勢いのまま銃剣はまるで鞭のようにその刀身をしならせ、伸ばしてデュランダルではなく空中のゼノヴィアへと襲撃した。

 

 

「何!?」

 

 

 驚愕の声と共に何とかゼノヴィアは身体を捻り、ギリギリの所で回避するが完全に回避する事は出来ず、浅くだがその肌を斬られた。

 

 

《悪いな》

 

 

 死銃は木場祐斗の襟首を掴んでゼノヴィアへと投げつけながら、死銃はスプリングフィールドから銃弾を排出する。

 装填した五発全て、排出しスプリングフィールドを無造作に振るう。繊細な銃器をぞんざいに振るうのは他者から小言を言われかねないがしかし、それはまったくもって問題がなかった。

 銃剣の刀身が、銃の銃身が、その形状をまるで粘土でも捏ねているかのようにぐにゃりと歪んで一振りの剣に変わった。

 ゼノヴィアはそれを知っている。

 木場祐斗はそれを知っている。

 

 

 

「何故、お前がそれを持っている」

 

「…………それ、は……」

 

 

 何度も鍛錬でぶつかり合い、何度も指令で振るわれるのを見ている。

 つい先日振るわれたのを見ている、同じモノとついさっき戦った。

 

 死銃、Sterbenがその手に握っているのは一振りの剣。

 

 悪魔を殺す聖なるオーラを纏う剣、すなわちは聖剣。

 

 その名を────

 

 

擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。ああ、やっぱり使いやすくて、手に馴染む》

 

 




今回は戦闘オンリーでしたね。
まさか、これだけで四千超えるとは……
ちなみに好きなライフルはWA2000です!スプリングフィールドも普通に好きだけどね……あ、あくまで銃としての話ですよ?戦術人形云々なら、普通にスプリングフィールドの方が好きです。ツンデレもいいけどお姉さんの方がもっと好き……え?アサルトは魔境ですよ



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二十三頁

投稿☆
二亜以外に誰かデアラキャラ出せないかなぁと考え中の作者です。
周回怨嗟の鬼ってホントに強くて、泣き虫が泣くんじゃなくて俺が泣きたくなる


擬態の聖剣……コカビエルからの報酬の一つ



 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、刃が振るわれる。

 金属でありながら、まるで鞭のようにしなりながら、同時に布の様に柔らかな動きで俊敏にゼノヴィアへと迫る。

 それに対して、ゼノヴィアはデュランダルを振るい弾くが蛇か何か意思でもあるかのように刃がくねり、柄を持つ死銃に従いゼノヴィアへと追撃を始める。

 

 

「くぅ……お前……」

 

《返せと言われても返す気は無いな》

 

 

 死銃本人へと突っ込もうにもゼノヴィアは鞭のように振るわれる擬態の聖剣によりその場から前へと踏み出せない。

 踏み出したくても前へと行けないそんな現状にゼノヴィアは歯噛みしつつも思考は回っている。

 間違いなく死銃の振るうそれは擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)であり、偽物の類などではない。そもそも偽物であれば本物をフリード・セルゼンが振るっていた統合したエクスカリバーの一部になっていた筈なのだ。

 いや、それ以前に何故統合しなかったのか。それこそがゼノヴィアの中に渦巻く疑問であり、同時に統合したエクスカリバーですらデュランダルや聖魔剣に敗れたというのに何故にこの擬態の聖剣は優位に立っているのか、という疑問もあった。

 そんなゼノヴィアの思考でも読んだか、死銃は嗤いながら勢いよくデュランダルへ鞭状の刃を叩きつける。

 

 

《合体すれば足し算か掛け算になると思うか?答えはノーだ!一つ一つが我の強いもんでな、統合すれば強い我が反発しあって実際の性能は通常の聖剣のそれと五十歩百歩でしかない!》

 

 

 デュランダルへと叩きつけた後に長さを元のソレへと戻し、再度その形状をスプリングフィールドへと変化させる。

 ゼノヴィアがそれに反応して向かってくる前に新たな銃弾を装填し、銃撃する。

 先ほどまでの鞭状の刃による連撃ではないそれにゼノヴィアは回避しようとすれば回避出来たがしかし、そうすれば背後にて膝を着いている木場祐斗が蜂の巣となろう。

 流石のゼノヴィアも如何に悪魔と言えども共闘した者をみすみす見殺しに出来るほど非情ではない。故にデュランダルで銃撃を防ぐ事しか出来ない。

 

 

《でだ、俺の神器(武器製造)は聖剣やら魔剣やらは創れんが、こと武器に関しては他の創造系の追随を許さん。調律(チューニング)する事で俺に最適化させ、その性能をより引き出せば―――》

 

 

 ほら、この通り。

 薬莢を吐き出した擬態の聖剣を振るえばすぐさまそれは鞭状の刃に変わってデュランダルへと叩きつけられる。

 ゼノヴィアを攻めさせない。

 ただただ防御のみさせることで体力を削り続ける。

 戦闘において最も重要であり優先すべきは、自身の得意を相手に押し付けること。そうする事で相手に反撃を、相手の得意を行わせない事が最も勝利を手に入れられる近道。

 故に────

 

 

《確かに聖剣を扱う経験はお前の方が上だろうさ。だが、その経験は技術でどうとでも出来る程度のモノだ》

 

 

 ゼノヴィアは勝つ事が出来ず、このまま敗北しかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、お前たち神の信者と悪魔はよく戦う」

 

 

 そんな、戦闘を中断しかねないモノが割り込まなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、お前たち神の信者と悪魔はよく戦う」

 

 

 突然、コカビエルが零した言葉にゼノヴィアらはその手を止めた。

 仕方なく、俺も聖剣の形状をスプリングフィールドへと戻し、その場から数歩下がる。それと共に雀蜂らも戦闘中断を指示して下がらせる。

 それによって、手の空いたリアス・グレモリーがコカビエルに口を開いた。

 

 

「……どういうこと?」

 

 

 怪訝そうな口調で問うリアス・グレモリーにコカビエルは心底おかしそうに大笑いする。魔王の妹といえどもただの上級悪魔と変わらんのに真実など知ってるわけなかろうに。

 

 

「知らなくて当然だ。神が死んだなどと、誰に言える?神の信者共は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?我ら堕天使、悪魔さえも下々にそれらを教えるわけにはいかなかった。どこから神が死んだと漏れるか分かったものじゃないからな。三大勢力でもこの真相を知っているのはトップと一部の者たちだけだ。先ほどバルパーが気づいたようだがな」

 

 

 …………まあ、そうなるな。そんな事が知れれば大変な事になるのは目に見えてる。

 俺からすれば至極どうでもいい事ではあるが。

 

 

「……ウソだ。……ウソだ」

 

 

 みんなで僕を騙そうとしてる……RO……闇医者……う、頭が……いや、悪ふざけはやめとこう。ゼノヴィアが項垂れてその手からデュランダルを落としている。

 その表情は憐れな程に狼狽に包まれている。

 現役の信仰者、神の下僕。神に仕えることを使命として、生きてきた存在────。

 いまここで神の存在を否定されればそうもなるだろう。しかも、コカビエルの戯言と受け止めず真実であると受け止めている。

 

 

「────俺たちが勝てたかもしれないのだ!それを奴はッ!あの戦争で喪った同胞たちの想いを奴は踏み躙った!ならば、ならば、俺が戦争を、再びの血と肉を踏み躙り合う大戦争を!!!」

 

 

 と、何やらコカビエルがヒートアップしてきたな。だが、そんなコカビエルの考えなど彼らには届いてなどいない。

 彼らの視線は彼らの仲間である少女に向けられている。

 

 元聖女であった信心深い少女、アーシア・アルジェント。

 彼女は口元を手で押さえ、目を大きく見開いて全身を震わせている。

 

 

「……主がいないのですか?主は……死んでいる?では、私たちに与えられる愛は……」

 

 

 なんとも悲しい話だ。悪魔になろうとも彼女の信仰心は失せていなかった……これを考えればあの時確実に殺してやった方が明らかに良かったのかもしれないな。

 あの悪魔ではなく、彼女を殺して悪魔の駒で蘇生も出来ぬように遺体を焼いてやれば良かった。それが彼女の為だった。

 コカビエルが何やら追い打ちをかけてるな。奴の語った言葉にアーシア・アルジェントはその場で崩れ落ち、兵藤一誠が抱えて呼びかけている。

 

 

「俺は戦争を始める、これを機に!おまえ達の首を土産に!俺だけでもあの時の続きをしてやる!散っていった同胞たちの為にも、ルシファーを継いだ若造をミカエルを、同胞たちの手向けとする!!」

 

 

 ま、俺としては戦争が起きようが問題無い。

 コカビエルとて望むのは悪魔や天使との戦争であり、他の神話群とやりあおうなど考えてはいまい。それならば、悪魔を消せるならば俺としても手を貸すのは吝かではないからな。

 さて、雇われてる以上、きちんとその目的に手を貸すか。

 俺は擬態の聖剣に新たな銃弾を装填し直し

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁあああああ!部長の乳首を吸うため、やられてもらうぜ、死銃!コカビエルぅぅぅ!!」

 

 

 は?死ね。

 アレは何を言ってる?

 え?変態?変態だよな、そりゃ…………やはり、悪魔か。欲望塗れの悪魔……脳髄をぶちまけて殺すしかないな…………というか、おい。

 赤龍帝の籠手がありえないぐらいに輝いてるのですが?はぁ?頭痛い。

 コカビエルなんか目許をひくつかせてるぞ。

 

 

「………………なんだ、お前は?どこの誰だ?」

 

 

 そんなコカビエルに兵藤一誠は堂々と胸を張って答える。堂々とするな。

 

 

「リアス・グレモリー眷属の『兵士(ポーン)』!兵藤一誠さ!覚えとけ、コカビエル!俺はエロと熱血で生きる赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の宿主さ!」

 

 

《………………》

 

「………………初めてだ、赤龍帝に同情するのは」

 

 

 なんて馬鹿らしいのか。

 だが、何故かそんな変態の叫びによってこの場の、彼らに漂っていた絶望感が晴れ活力を彼らに与えていた。

 意味がわからない。

 満身創痍だったはずの奴らが立ち上がりコカビエルや俺に立ち向かう姿勢になっている。まったく理解が出来ない。

 これだから、悪魔って奴は。

 俺は待機させていたManticoreではなく、Aegisを呼び寄せようとして────

 

 

「―――ふふふ、おもしろいな」

 

 

 瞬間、舌を打った。

 空から聴こえてきた突然の声。それを理解したのか俺もコカビエルも空を見る。

 コカビエルに関しては下から見える限りなんとも忌々しいような表情の片鱗が垣間見えている。

 こうなってはもうどうしようもない。

 空より一直線に白い閃光が俺たちと奴らの丁度中間へと降下してきた。そして、地面すれすれの高度で停止したそれはやはり、白かった。

 一切の曇りも陰りも見せない白きもの。

 白き全身鎧。身体の各所に宝玉らしきものが埋め込まれ、当たり前だが顔まで鎧に包まれておりその表情は窺えない。背中から生えている八枚の光の翼は闇夜を照らす神々しい青白い光を放っている。

 

 

サクソンの白き竜(グウィバー)……ちっ、面倒だ》

 

 

 半魔である以上、聖剣の属性を得た呪装徹甲弾は今まで以上の火力を叩き出せるだろうが……まだ完全に扱いきれてはない。

 ならば、ここは……

 

 

「…………赤に惹かれたか。『白い龍(バニシング・ドラゴン)』よ。邪魔立ては―――」

 

 

 ッ────。

 コカビエルが全てを語る前に、彼の翼が宙を舞った。一拍遅れ、彼の背から鮮血が吹き出す。

 奴め……!!

 

 

「まるでカラスの羽だ。薄汚い色をしている。アザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったぞ?」

 

 

 奴め、巫山戯た真似を……!!

 そんな俺の感情を察したのか待機していた雀蜂たちがその手に携えているサブマシンガンへと退魔加工した汞のホローポイント弾を装填し始めているのが視界の端に移るが、俺はそれを無線ですぐさま止めさせ後退の準備を行わせる。

 翼をもがれ、怒り狂うコカビエルだが、一瞬俺へと視線を寄越した。

 それは援護を求めるそれでは無い。

 

 

「貴様……!俺の翼をッ!」

 

 

 故に俺は待機していたAegisへと無線を送る。

 次々と雀蜂たちが装備していたメタマテリアル光歪曲迷彩を起動していき、その場から消えていく。

 …………。空に無数の光の槍を創り出しながら、コカビエル自身は光の槍と剣を持って奴とぶつかり合う……しかし、既に触れられていたからかその力は徐々に半減していく。

 これ以上は彼の栄誉を傷つける。俺はそう判断して自身のメタマテリアル光歪曲迷彩を起動する。

 

 

 

《Auf Wiedersehen……コカビエル》

 

 

 

 

 

 

 




思うんです。
兵藤一誠の前に戦術人形(IOP、鉄血問わず)出したら変態的な思考もするし、視姦されるし、なんなら洋服破壊されそう

まあ、やったら、間違いなくマシンガンで蜂の巣ですが。または……


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二十四頁

コカビエルもといエクスカリバー編のエピローグですね。
令和になるまでに果たして、どこまで書けるかな。


 

 

 

 

 

 

 結局の所、コカビエルは原作通りに白龍皇によって回収され、砕けた聖剣の核も紫藤イリナによって教会へと回収された。

 ゼノヴィアに関しては、神の死というアレなものを知ってしまったが故に破門。

 果たして、教会側の任務は成功と言えるのか。

 奪われた三本の核は回収出来たが、紫藤イリナが所有していた擬態の聖剣はまんまと俺にかっ攫われたわけだからな。

 可哀想とは思うが仕事だからな仕方ない。

 そもそもこれに関しては略奪品ではなく、コカビエルへと一度渡しその後コカビエルから今回の報酬の一つとして俺へと与えられたわけでまったくもって知らん。

 返せと言われても返す気は毛頭ない。まあ、売ってやらなくもないが…………と、それは別にどうでもいい話だ。

 それにしても今回の仕事は存外に美味かった。

 

 

「流石コカビエルだな、金払いが良いし堕天使の技術も結構流してくれた」

 

 

 そう言いながら俺はデスクの上に纏められた書類等々を覗き込む。

 計量官(ゲーガー)案山子(スケアクロウ)をはじめとする何人かの人形たちによってわかりやすく纏められた書類だが…………はーん。

 

 

神器(セイクリッド・ギア)、とりわけ神滅具(ロンギヌス)の摘出儀式の術式ねぇ……実用化は難しいが……」

 

 

 一度実験してみないと分からない、か。

 ふーん、ほーん。

 神滅具ねぇ…………赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とか?ぶっちゃけ二天龍の為にも摘出した方がいいのでは?だが、仮にも魔王の妹の眷属か。

 どこぞの腐れ悪魔と違って実の妹だからな……なかなか面倒だ。

 それに実験だからなぁ……英雄クラブ相手にやるのも失敗時のリスクを考えればパス、白龍皇もまた同意。となると…………うん、今は止めとこう。

 

 

「というか、よう見たら建築家(アーキテクト)かよ、欲しいって言ってんの……うわぁ、面倒くさ」

 

 

 絶対ロクな事に使わない。

 保留。

 で、他には……?

 

 

「人工神器か。そりゃあ人形たちに装備出来たら戦力あがるが…………ぶっちゃけなぁ」

 

 

 戦力を強化を目的とするならばそれこそ人形各々の最適化工程をより高める事が重要であり、装備事態もそこまでの効果は無い。

 未熟なM16に専用装備(特殊戦術機動装甲)を付けようが本人が未熟ならただのサンドバッグにしかならない。

 別の例を挙げるのならば、それこそ技量が大してないのに名剣やらなんやらを振るって強くなった気になる馬鹿だ。

 結局、技量がなければ十全に発揮出来ないのだ。

 

 

「と、なればそちらも保留ですか?」

 

「ま、そうなるな」

 

 

 人工神器についての書類も置き、俺は傍らに立つ代理人(エージェント)が淹れてくれた紅茶に口をつける。

 ここは駒王町の家ではない、俺の傭兵としての拠点であり工房。ちなみにどこの国にあるのかは内緒だが、とりあえずヨーロッパ辺りと言っておこう。

 そうして次の書類を手に取り視線を走らせる。

 

 

「…………へぇ」

 

「どうしました?」

 

「いや……あー、まあ、読めばわかる」

 

 

 失礼します。

 そう断わって書類を受け取る代理人。

 そして、彼女が書類に目を通していくとその表情は段々と引き攣り始めた。うん、まあ、そうなるよな。

 

 

「ご、御主人様……こ、これは……」

 

「言いたいことは分かる」

 

 

 この書類は報告書であるのは他の書類と変わらないが、しかし先程までの書類と違うのはこれはコカビエルからの報酬について纏めたものでは無いということだろう。

 これに記されているのは夢想家(ドリーマー)考案の爆弾について。それもただの爆弾じゃあない……流石に色々とドン引くタイプのアレだ。

 いや、ダクソなら使う時はあるがこれは正直俺も代理人もドン引くわ。

 

 

「却下以外の道はない」

 

「はい……夢想家(ドリーマー)さんに少し言っておきます」

 

「まあ、多分効かんだろうが……頼む」

 

 

 まあ、夢想家には適当に破壊者を与えておけば何とかなる。きっと盛大に弄び倒すだろう。

書類を一応保管しておいて、俺は軽く息をつく。

 指揮官である以上、こういう風に書類仕事をしなくてはいけないのはわかるが未だ慣れない。流石に二年は経つのに慣れていないのはどうかと思ってはいるが…………まあ、いっか。

 

 

「そういえば、御主人様」

 

「ン、どうした?」

 

「御嬢様方に御連絡はされましたか?」

 

「その辺は抜かりなく。後で埋め合わせは要求されたが……別に言われなくともするって……」

 

 

 あ、代理人に笑われた。つら。

 さて────

 

 

アレ(・・)はどうなってる?」

 

アレ(・・)ですか。夢想家もなかなか苦戦しているようです。そもそもアレは本来、我々人形や機器の非生物に対して有効なものでそれを生物に有効化させるというのは……」

 

「まあ、簡単にはいかんさ。でもまあ、12や夢想家、侵入者(イントゥルーダー)、45を考えれば決して不可能じゃあない……これからを考えたら必要だろうし、スポンサーからもGOサイン出てるわけだからな」

 

 

 顔を顰める彼女に俺はけらけらと嗤う。

 スポンサーと言って、ふとある事を思い出す。あの白龍皇だ。

 アレとは別に面識がないわけではない。何度かコカビエルからの仕事でたまたま居合わせた程度だ。え?戦闘?まあ、ふっかけられたが……うん、お気に召さなかったようでそれ以来俺はあまりよく思われていないようだ。

 そりゃあ?わざわざ一対一でやり合う理由なんてないから?

 吹き飛ばしても吹き飛ばしてもそれよりも多く早く生産されていくDinergateの群れで相手したが?傍から見てて笑えたがまあいい……あれ以来特に関わることもなく、今回の一件だ。

 さて、神の死やらコカビエルに関わっていたからと今度の会議に参加させられそうだが参加なんぞしてやるものか。

 雇い主でもない奴の要請なんぞ知らん知らん動かしたきゃ仕事にしろ。

 

 

「それで本当に依頼のていで呼び出されたらどうするので?」

 

「…………え、いや、仕事として呼ばれんなら仕方ないだろ」

 

 

 面倒だが仕事として呼ばれたら流石に行かざるをえない。でもまあ、馬鹿正直に仕事として呼び出すだろうか────いや、ありえない。

 そしたら、流石に呼び出したトップの頭を疑うしかない。いや、既に充分疑っているのだけども。

 

 

「そういえば、御主人様」

 

「ん?今度はどうした?」

 

「近々授業参観があるそうですが…………行きましょうか?」

 

 

「え、やだ」

 

 

 

 

 

 

 授業参観ほど嫌いな学校行事ってないんやが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはあの日に起きた出来事。

 とある男に降りかかった転換点。

 

 

 少年は暗い夜道、路地をひた走る。

 その身体からは少しずつではあるが血が流れ出し、今すぐにでも病院へ行かねば下手すれば死ぬかもしれなかった。

 少年の名はフリード、フリード・セルゼン。

 嘗ては教会の戦士を育成する機関であるシグルド機関という彼の北欧の大英雄シグルドの子孫たちから魔帝剣と呼ばれる魔剣の最高峰たるグラムの真の担い手、すなわち真にシグルドの末裔を創り出す機関で創られた試験管ベビーの一人であった。

 フリードはこの機関で生まれ、多くの事を成してきた。

 と言ってもその殆どが倫理に反したものであるが。故にだろうか、彼は確かにシグルドの血を引く者として優秀ではあったがその倫理観は間違いなく欠如したものであった。

 言動は下品極まりないうえに、性格も徹底的に歪んでおり、また嬲り殺しを好み悪魔だけでなくそれに関わった人間さえも躊躇なく殺害する残虐性をもち、情勢が不利と判断すれば即座に仲間を見捨てられる外道。それがフリード・セルゼンという男である。

 そんな彼はコカビエルの配下として統合されたエクスカリバーを振るい木場祐斗、ゼノヴィアの二人と戦い結果として聖魔剣というイレギュラーによって敗北した。

 本来の歴史であれば彼はその後に白龍皇によって回収されるのだが、この世界では違った。

 

 

 そう、フリード・セルゼンは木場祐斗の聖魔剣によってエクスカリバー諸共斬り裂かれる直前にエクスカリバーの力を使ったのだ。

 それは『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』の力、幻術に特化したその力を使いほぼほぼ無意識的にフリード・セルゼンは幻術を創り出した。質量を持った幻術により、フリード・セルゼンは致命傷を避け他の者たちに気づかれる前に戦場より逃走した。

 エクスカリバーなど回収する暇などなかった、いや正確に言えばエクスカリバーは木場祐斗の聖魔剣によって破壊されてしまったのだ。フリード・セルゼンは天才ではあるがバルパー・ガリレイのような技術者ではない。

 故に破壊された聖剣を修復する事など出来ないわけで、そもそも聖剣を持ち出していこうにも逃走しようとしたことがバレるかもしれなかった。

 

 いや、そんな、建前などどうでも良いのだ。

 

 

「ひ、ひひ、ひゃひゃ……何が伝説だっつの……あんなクソ悪魔の剣にぶっ壊されてる時点で、名前負けブレード確定なんだよ……」

 

 

 悪魔に砕かれた武器にいまさら意味なんぞあるものか。

 そう痛む傷口を抑えながら、フリード・セルゼンは路地をひた走る。その内に渦巻くのは悪魔に斬られたという憎悪と憤怒。だからこそ、今こうして敗走などという憤死しかねない状況を良しとしているのだ。

 このまま逃げ延びていつか必ず木場祐斗を、悪魔どものあの端正な顔を絶望に歪ませてそれを嘲笑いながら殺すのだ。

 そう未来を思い描きながら嗤うフリード・セルゼンは路地の角を曲がって────

 

 

「あ?」

 

 

 その先に二人の少女がいた。

 アジア人ではない、どちらかといえば北欧系かロシア系の顔立ちをした二人の少女。その装いはあの悪魔たちと同じ学校の制服姿。

 それを見て、フリード・セルゼンは嗜虐的な笑みを浮かべた。

 気配からして悪魔ではないのだろう、談笑しながら歩く二人の女子高生だがいまは深夜という時間帯だ。そんな時間帯に出歩いてるなど些か不用心極まりなく、だからこそ不審者に襲われても仕方が無い話だ。

 今はこれで妥協しよう。

 きちんとトドメを刺さなかったから、お前たちの通う学園の生徒が死ぬハメになったのだ。それを知った時の悪魔どもの表情を思い浮かべて絶頂しかけたフリード・セルゼンは懐から光剣の柄を取り出し、二人の少女へと襲いかかった。

 

 

 かくして、悪魔が捕り逃した男は無辜の少女を二人犯し殺した。

 それは悲劇であり、リアス・グレモリーらがフリード・セルゼンに気づいていれば決して起きる事がなかった事だった。

 今回の一件を締めくくったそれは決して良い終わりではなくて────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ターゲット捕捉、任務を開始する」

 

 

 瞬間、それらは現れた。

 黒。黒。黒。

 黒いコートに黒い服、肌を一切露出していない全身黒ずくめの存在。印象的なのは覆面の上に付けられた鴉か何か鳥類を思わせるような銀面。

 彼らは一様にその手に手鎌を、アサルトライフルを携えている。

 

 そんな彼らに囲まれる少女ら、アンジェリカ・クルーガー、ドゥヴェーナッツァッチ・クルーガーの二人は今まさに襲いかからんとしていたフリード・セルゼンを見て片方は興味も無いような、片方は面白そうな表情をする。

 

 

「フリード・セルゼン。速やかに剣を置いて投降しろ、あまり手間をかけたくはない」

 

 

 そんな冷たい声と視線にフリード・セルゼンは苛立つようにその表情を歪める。

 

 

「なんなんですかぁ!おたくらぁ!」

 

 

「そんな事気にしなくても大丈夫よ。そして、さようなら」

 

 

 フリード・セルゼンはアスファルトを蹴り少女の内、目を瞑っている方とその光剣を振るうが、同時に両手両足を撃ち抜く彼らの銃撃によって少女の元へ届かずにアスファルトへと滑るように落ちる。そんなフリード・セルゼンを見下ろしながらアンジェリカ・クルーガー……AN-94は事務的に彼らへと指示を飛ばす。

 

 

「念の為に両肩を外し武装は全て没収してから、工房へ」

 

 

「了解しました」

 

 

 彼ら黒狗は黙々と指示に従ってフリード・セルゼンの両肩の骨を外し、その武装を奪っていく。恐ろしきはこの作業をフリード・セルゼンの意識があるにも関わらず行なっていることだろう。

 

 

「逃走兵の確保の為に私たちに声をかけるなんて、指揮官もなかなか大胆だと思わない?」

 

「12……いや、そうだな。私たちの指揮官だから仕方ない」

 

 

 フリード・セルゼンの悲鳴をバックにその悲鳴が終わるまで二人の戦術人形は己らの指揮官に対して談笑する。

 かくして、一人の逃走者はこの地の悪魔たちが知らぬ間にその運命が定まった。

 

 




次回からは幕間ですね。
鉄血人形や他の戦術人形も出していったり主夫高校生らしい事も書いていきたいと思います。
ところで、兵藤一誠にチーズ転生する作品とか隻狼の太刀足主人公の作品って需要ある?


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乱入会議にドラクリヤ
二十五頁


四巻までの幕間その一。
最近つけ麺を食べてない。食べたい。


 

 

 

 

 

 

「少年!豚骨ラーメン食べたい!」

 

 

「……………………」

 

 

 コイツは何を言ってるのだろうか。

 コカビエルの一件から数日、件の授業参観まで残り一週間を切った頃合い。

 そんな日の夕方、俺はスーパーで安かった鶏肉をそこそこ買って今日の夕飯の為に下味を付けていたわけだが…………。

 

 

「二亜。視力でもイカれたか?俺今何してる?ン?」

 

「胸を揉んでる」

 

「そうだな。鶏の胸肉に下味を付けてるな」

 

 

 言い方を考えろ。

 そんなんだと俺が変態にきこえかねない。俺は兵藤一誠とは違ってノーマルなんだよ。変態じゃねぇよ……。

 普通唐揚げと言えば、鶏ももだが今日買ってきたのは鶏ムネだ。

 俺はひとまず二亜の戯言を右から左へ受け流しながら、作業を続ける。大きめの袋に丁度いい大きさに切り分けた鶏肉を放り込む。些か買いすぎたか、袋が二つ必要になるとは。

 だが、これも良い誤算と考えよう。二つ目の袋に入れる下味のつけダレにはいつも通りの醤油・酒・生姜の混ぜダレにニンニクを追加する。

 

 

「唐揚げもいいけどさぁ……やっぱり油がねぇ」

 

「豚骨食べたいって言ってる奴がなんかほざいてるな」

 

 

 ニンニクつけダレを袋に流し込み、出てこないように袋の口元を掴み、片手で肉を揉みこんでいく。

 唐揚げの下味を付ける際、一晩とか長時間漬けておかないと下味がきちんとつかないと思っている人もいるかもしれないが実際はこういう風にしっかりと下味の調味料を手で揉み込むことでだいたい五分から十分ほど置いておけばきちんと下味がついてくれる。

 

 

「少年、考えてみ?たくさん食べるだろう唐揚げと一杯で終わる豚骨ラーメン。実質豚骨ラーメンの方が油少ないのでは?」

 

「結局唐揚げ食べるのなら、豚骨ラーメン減らした方が油減るだろ」

 

「えぇー」

 

 

 まあ、流石に二袋は多すぎる気もしなくもない。仮にも育ち盛りの範疇であるが俺と二亜だけで全部を食べるというのは少しどうかと思う。

 もし仮にアルテミシアを呼んだとしても流石に年頃の女子を呼んで出すのが唐揚げてんこ盛りってのは……それってどうなんですかねぇ。

 そりゃあ、俺とて男子。仲のいい女子に対して配慮もする。

 

 

「というか、いま俺が現在進行形で唐揚げの下味を付けているのを見てるのに、なぜ故にそんな要求が出来るのか」

 

「仕事終わったから」

 

「だから、豚骨ラーメン啜りながらビール飲みてぇ、と?」

 

「イエスオフコース」

 

 

 滅べ。

 しかし、仕事終わったんか。

 コカビエルの一件じゃあ状況が状況だから、この街の外にしばらくいてもらってたからな……仕事もあまり捗らなかったらしいし…………ううむ。

 いや、だが、だからといってここで退くのはどうかと思うが………………。

 

 

「…………………………はぁ」

 

「お」

 

「あからさまに反応するのやめぃ。まあ、仕事が詰まった理由は俺にあるから仕方ない」

 

 

 今回は俺に非がある以上妥協しよう。

 

 

「とりあえず、これ揉みこんどいてくれ」

 

「はいはーい」

 

 

 先に作っていた袋の方を二亜に手渡し揉み込ませる。

 夕飯を変更するんだこれぐらいの労働は許容してもらわねばならんな。

 さて、豚骨か……この辺だとああ、この前M16と行ったラーメン屋も確か豚骨……人形だからといって他の女子と行った場所に行くのは少し脳無しだな。

 なら、この前、アケボシの翁が教えてくれたラーメン屋に行くか。

 

 

 

「鴎、大変」

 

「ン?どうした二亜」

 

「これ、普通に胸を揉んでる感触がする」

 

「本気で泣かすぞ、おい」

 

 

 これだからエロ親父インストールは……。

 頭抱えたくなったが我慢し、俺はそのまま肉を揉み込み続けた。

 くそ……馬鹿のせいでちょっと意識するじゃんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっす」

 

「…………おぅふ」

 

 

 二亜を引き連れ訪れたラーメン屋。

 扉を開けたら、そこにはカウンターでラーメン啜ってる翁が一人ありけり。

 なんで、この日に限ってこの人もラーメン食いに来てるんですかねぇ。

 ああ、ちなみに唐揚げはそのまま空気抜いて袋の口を締めて、冷凍庫に入れといた。

 明日の朝に幾つか揚げて弁当に入れるか。

 いや、それよりもだ。

 

 

「リゼさんおひさー」

 

「二亜ちゃんもおひさー」

 

 

 お前ら平常運転か!?

 いや、この場合俺か。俺がアレなのか……。

 とりあえず二亜はさっさと翁の隣に座ったから、俺は二亜の隣に座る。

 メニューを開けば豚骨系が多いな。

 

 

「いやぁ、まさかリゼさんも来てたとは」

 

「んー、諸事情でネ。しばらくこの街に滞在するのよ」

 

「へぇー、そうなんですか」

 

 

 なんか、聞き捨てならないことが聞こえたが気にしてはいけない。気にしたら胃が痛くなりそう。

 

 

「濃厚魚介つけ麺900細ちぢれバラチャーシュー、トッピングに煮卵二つとチャーシュー……これもバラで、あとはチャーハン大盛り」

 

「豚骨チャーシューメン、チャーシューはバラで脂多めシナチク少なめ……にしても食べるねぇ少年」

 

「おじさんびっくりだよ、カモたろくん」

 

「誰がカモたろだ誰が」

 

 

 それだと鴎じゃなくて鴨だろ。同じ水鳥でもだいぶ違うぞ、おい。

 ……今度、鴨肉買って鴨丼とか鴨出汁うどん食べたいな。

 

 

「んで、そういえばカモメん、君今度授業参観あるらしいじゃん」

 

「んぐ……」

 

 

 水が気管に入りかけた。

 アレだろ、絶対にヴェーナ辺りに聞いたろう。アンはそういった事はあまり口外しないがヴェーナは違う。

 俺が困る顔でも見ようとしたのか…………はぁ。

 

 

「それがどうした」

 

「ん、いやぁ。まあ、間違いなく来るよなぁと思って」

 

「誰が」

 

「えぇ?知ってるでしょカモメん。シスコン魔王だよ」

 

 

 

 ぁ?

 

 

「うわぁ、割り箸折れた……」

 

「嫌いだもんなぁ」

 

 

 公私も分けれん魔王共なんだから仕方ないのでは?声がイケボだろうが敵なら敵でしかない。

 アレらは為政者としては半端な存在、そう俺は判断している。

 だから、嫌いだ。

 まあ、一番嫌いなのはあの腐れの同族だがな。あれは病原菌の発生源、ヘドロとスモッグを垂れ流す工場、悲劇の印刷者。

 奴だけは間違いなく殺さねばならない。他の三匹はともかくアレだけは…………

 

 

「少年、煮卵貰うよ」

 

「カモメん、俺も貰うわ」

 

 

「…………いや、待てよ!?」

 

 

 こ、こいつら……人が思考を回してるタイミングで人の煮卵を…………外道畜生の類かな?

 まあ、俺の暗い感情を紛らわせようとしたのは理解できるし、その辺は頭を下げる他ない。だが、それはそれこれはこれ。

 

 

「奢れ」

 

「えぇー、おいちゃんに払わせるのかよ」

 

「あのシスコンとAR-15に聞いたぞ。この前ベガスで一山当てたって」

 

「なずぇに従者と護衛から報告されてるんですかねぇ」

 

 

 AR-15に関しては単純に任務だからその辺、俺に報告するから仕方なく無い?俺としてはAR-15がそういう報告してきた事に驚いてる。

 というか、そうだよAR-15だよ。

 

 

「なあ、AR-15からアンタがここに来てる事何も聞いてないんだが」

 

「ン?そりゃ、ラーメン食べたくて先にこっち来たからネ。ユーグリットくんもスターちゃんもそろそろこっちに来る頃合いじゃない?」

 

「えぇー、リゼさん。15ちゃんのことスターちゃんって呼んでるの?あたし許されてないんだけども」

 

「当たり前なんだよなぁ。二亜、お前セクハラするじゃん。M4や416、ROからも苦情きてるぞ」

 

 

 全然悪びれていない二亜に軽くため息をつきつつ俺はつけ麺を啜る。

 しかし、なんでこんなタイミングでコイツはこっちに来るのか……というか護衛を置いて行くな。

 まったく。

 

 

「たくっ、しょうがないなぁ。おいちゃんが奢ってあげよう」

 

「さっすが!」

 

「すんません、餃子一人前と杏仁豆腐お願いします」

 

「遠慮って言葉知ってる?鴎」

 

 

 

 遠慮?知らんなぁ。

 結局、この後追加で馬刺しも食べた。そして、俺らの出費はゼロだった。

 やはりスポンサー様々だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、カモメんちょっと待ってくんね?」

 

「ン」

 

 

 夕食を食べ終え、店を出た二亜、鴎、リゼと呼ばれている老人。

 さあ、帰ろうという所で鴎はリゼに引き止められ、二亜を少し離れた所で待たせリゼのもとに鴎は残る。

 

 

「最近、なかなか笑える奴らが出てきたの知ってる?」

 

「……ブリゲードだったか?テロ屋だな」

 

 

 リゼの言葉に目を細め、周囲に聞こえない声で返答をする鴎。その返答に気分を良くしたか、リゼもまた目を細めるがしかし鴎と違いその表情には笑みが浮かんでいる。

 そんなリゼに鴎はため息をつきたくなるが、飲み込み続きを促す。

 

 

「元々は堕天使の幹部の一人が発端でネ、それとオーフィスが合流したのがいまの組織なわけだが…………まあ、名前が同じなだけで中身はまったく別物だネ」

 

「コカビエルから聞いてはいた。サタナエルだったな」

 

「そ。まあ、今はそこは関係無いから置いといて。あの何時までも古臭い家柄やなんやらにしがみついてカビ始めてる彼らはぶっちゃけどうでもいいけども、主力的なのは自称英雄な神器(セイクリッド・ギア)持ちの一派だ」

 

 

 英雄派と呼ばれる神滅具(ロンギヌス)を三つも有しているグループ。

 神器持ちがメインであるということはすなわちは人間の集団であり、鴎にとって悪魔や堕天使ら人外を相手にするより面倒だと考える一方でその耐久力等を見れば楽に始末できる存在であると判断していた。

 そんなグループの話が出てきたのと同時に何か面倒そうな雰囲気を感じとったか、その顔を顰める。

 

 

「洗脳だろうがなんだろうが、関係無い。結局の所どんな御題目を掲げようがテロ屋に変わりないんだ…………分かるだろ?」

 

「そりゃ、俺とてテロ屋相手に遠慮なんてこれっぽっちもする気は無いが……容赦ないな」

 

「反社会的勢力に容赦する必要ある?それに悪魔だから仕方ないネ」

 

 

 どちらかと言えば俺らはブリゲード側なんだがな。そう呆れたように呟く鴎に玩具を弄ぶような笑みを浮かべながら彼は囁く。

 

 

「何事も合法だよ。非合法なら、つけ込まれるが合法なら堂々と出来て尚且つどうにも出来ずに歯噛みする他派閥を見ながらワインが飲める」

 

「愉悦め。まあいい、テロ屋相手なら多少グレーゾーンなことしても問題ないか」

 

「そそ。あ、そういえば、ルーマニアの吸血鬼の片方がなんか、きな臭くてさ」

 

 

 不意に出た吸血鬼というワードに鴎は片目を瞑りながら、訝しげにリゼを見る。それは彼の腹の中を探る様で。

 

 

「神器に関する情報を集めてる……とりわけ、神滅具や生命や魂系の神器の情報……きな臭いねぇ……もし仮に何らかの切り札を使ってもう片方の派閥を攻め滅ぼしたら?どうなるかなぁ」

 

「前置きはいい。欲しいんだろ?スポンサー」

 

 

「そういうこと。ま、どう合法にするかはおいちゃんに任せときな。だから、情報の裏取りは任せたよ」

 

 

 了解。

 そんなぶっきらぼうに了承した鴎は話は終わりと言わんばかりにリゼに背を向け、そのまま二亜の方へと歩いていく。

 そんな彼の背中を見ながらリゼは嗤う。

 

 

「にしても聖剣ねぇ。アレかな、いざとなった時に俺を殺す為かな?信用ないねぇ……まあ、信頼はされてるようだけども……」

 

「しっかし、辛い話だ。俺ほど誠実な悪魔はいないだろうに。ま、鴎、君の末路を見届けるまでは裏切る気なんかはさらさらない」

 

 

「人間ほど面白いものはない、楽しませてくれよこれからも。宗像鴎」

 

 

 

 リゼ。銀髪の悪魔は子供の成長を見るように、物語を読むように、カラカラと嗤った。

 

 




アケボシの翁
・鴎もとい死銃のスポンサー。
・悪魔で欲望に忠実、故に鴎という人間に興味を抱きその末路がどのようなものなのかが見たい。原作主人公からすれば敵になりうる存在。


まあ、原作キャラだよね。


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二十六頁

祝☆令和!

いや、本当は平成中に投稿したかったんですけどね?古戦場が忙しくて、しまいにはオフシーズンの古戦場とか……それはそれとして令和初ガチャでカイン当たって嬉しいけれども未だにドルフロはネゲヴを出してくれない。
これ以上悲しいとAR-15に専用装備を与える為に掘りにいきかねない……。



 

 

 

 

 

 戦術人形。

 鴎の保有する神器・武器製造の禁手である『戦術人形前線(ドールズフロントライン)』によって製造された銃の名を冠するアンドロイドたちの総称。

 完全量産型である戦術人形は量産型戦術人形(マス・ドールズ)と区分され、銃の名を与えられた自我を持つ戦術人形は名付き戦術人形(ネームド・ドールズ)と区分されている。

 そんな二種類に区分される戦術人形だが、実際はさらに別種の区分がある。

 それは所持している銃種の区分ではなく、存在する銃を冠しているがそうでないかであり、また属する派閥の違い、オリジナル────無論、この世界でいえば彼女らこそがオリジナルでありこの場合は元ネタと言うべきである────を作成した組織の違いとも言えよう。

 基本的に名付き戦術人形であり、実際に存在するまたは存在した銃名の戦術人形が属するIOP────あくまで派閥名であって元ネタと違い正式名称は用いられず専らこの略称を使われている────、そして多くの量産型戦術人形や銃名ではない名付き戦術人形の属する鉄血工造。

 みな、『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』に属し鴎に従っているが感情という機械にとってのバグであるものを組み込んでいるが故か彼女らには至極当たり前のように好き嫌いというものが存在している。

 

 例えば、鉄血に属する夢想家(ドリーマー)と呼ばれる人形はその性格が捻たものだからか単純に性格が悪いのか、比較的メンタルモデルの幼い人形には距離を置かれている────が、なんやかんや泣きつつも仲間意識はある為か破壊者(デストロイヤー)はそんな夢想家(ドリーマー)と近しくしているわけだ。

 同胞だから、同じ派閥の仲間だから、となんやかんやで付き合っていることが多い人形も多いが何事も例外のようなものはそこらにまるで雑草のように生え出ているものである。

 例えばそれは、M16とHK416のような関係であったり…………そういった話はまた今度話すとしよう。

 

 今回の話の舞台となるのはヨーロッパの何処かポーランドより西側にある鴎の工房。

 その日は休日であるからか、その執務室にて鴎は書類に目を通していた。

 

 

「……授業参観とか、嫌いなんだよ」

 

 

 その手に持つのは仕事やそういう関連の書類ではなく、所謂学校からの書類。

 そこに記されているのは今度の授業参観についてであり、鴎としては今すぐにでもシュレッダーにかけたいものだがしかし、悲しきかなここで処分したところで三年生として学校に通っている二人の人形にもこのプリントは来るだろうし、そもそもが話とっくにこの授業参観の情報は人形らやスポンサーへと行っているのである。

 

 

 どうしよもないことこの上ない。

 今では同棲している少女────少女という歳ではなかろうが────の為にも、家事のできる主夫高校生であろうとしている為、勤勉な所が多々あるが元来気分屋であり同時に面倒くさがりな所が多い彼は授業参観やらなんやら、身内が学校へと来る事を好まなかった。

 何故なら学校での振る舞いが知られたりすることがあるからで────

 

 

「御主人様、少しよろしいでしょうか」

 

 

 書類をシュレッダーにかけようとした所で鴎は止まった。

 視線を動かせばそこにいるのはメイド服に身を包んだ女性。だが彼女は代理人(エージェント)ではなく、ブロンドの髪に白を基調としたメイド服を着た別人────正確には別人形と言うべきだろうが────彼女の名はG36。アサルトライフルに分類される銃種の名を冠した人形でありメイドである。

 そんな彼女に鴎は軽く息を吐いてからシュレッダーにかけようとしていた書類をデスクに置いてから一度座り直し改めて彼女へと視線をむける。

 それを了承と捉えたかG36は胸元に抱えていた書類の束をそのまま鴎へと差し出した。

 

 

「IOP側の皆さんからの陳述書です」

 

「え、俺訴えられるの?」

 

「いえ、陳述書と言ってもあくまで皆さんの不平不満をまとめただけのものですのでそんな訴訟などはありませんよ御主人様」

 

 

 G36の言葉に一瞬鴎は身構えるもののすぐさま訂正が入り、胸を撫で下ろしてから手渡された書類、陳述書に目を通し始める。

 

 

「皆さんと言っても全員ではありませんが、抱えている不満があるようで…………」

 

「不満ねぇ……俺セクハラしたことないけど…………いや、あったわ……」

 

「例の赤龍帝に比べれば許容範囲かと思いますが……いえ、そもそもセクシャルハラスメントというのは性的嫌がらせや性的言動等で不利益を受けたり労働環境が害される事であって……」

 

「あ、うん、分かった」

 

 

 これ以上は長くなると鴎は判断して、G36の話を遮る。

 遮られた事は大して気にしていないのか、G36はそのまま陳述書の内容の説明へと入った。

 

 

「陳述書の内容ですが、大多数が副官に関する内容です」

 

「副官?……………………あ」

 

 

 G36の言葉に鴎は脳裏に過ぎる諸々を思い出し、その思考を停止させる。

 魂そのものにかけられた呪いが如く、彼という存在にチーズと胃痛は切り離す事は出来ないが故に。副官という今の今まで片隅に放逐していた胃痛の原因になりかねないモノを思い出した。

 副官とは呼んで字のごとく副官であり、鴎の補佐を務めるわけだが人形らにとって副官というモノは単純な補佐以上の価値であり意味があった。

 

 そもそも鴎はなんやかんや傭兵なんぞしているが、戸籍上高校生つまるところは学生であり毎日毎日ずっとこの工房にいれる訳もなく、魔王の妹であるリアス・グレモリーとソーナ・シトリーの監視という仕事ついでに同学園にて学生をやっているAK-12やAN-94と違い工房にいる人形たちは毎日顔を合わして会話を交わせるわけではない。

 だが、副官という立場はその立場ゆえに鴎に極力付き添っていなければならない────流石に暴論であるが人形らに推しに負け鴎は認めざるを得なかった────、そんな考えにより合法的に鴎の傍にいれるそんな『副官』という立場が彼女ら人形は喉から手が出る程に欲しいのだ。

 

 なお、鉄血に属する人形らは基本的にドライなところが多いためこの副官制度はスルーしている。無論、ドライなところだけが理由ではなく単純にフリーな時間を優先したいというのが大きな理由であるが。

 

 

「副官制度に関して軽いデモがあってからかれこれ一年が経ちますが、そろそろ副官を決めねばまた不満が爆発しますよ?御主人様」

 

「ぅぐ……つか、何故にデモを起こすのか……」

 

「労働環境の改善を目的としているからです」

 

「うちの組織、労基ないだろ」

 

「あったとしても人形には適用されない可能性の方が高いかと」

 

 

 それもそうか、と納得しつつ鴎は陳述書へと目を通していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スプリングフィールドM1903。

 明るい茶っけの長髪を肩ほどで折り返しリボンで纏めた変則的なハーフアップが特徴的であり青い服に白の膝下まであるスカートに身を包んだ正しく絵に描いた様な優しいお姉さんな彼女はこの工房においては要人警護────パーティー会場などが現場である場合にメインで動く部隊の隊長を務めていたり、工房内にある喫茶店のマスターを務めているライフルの戦術人形だ。

 名前からわかる通り、件の聖剣騒動の際に俺が擬態させて使った銃でもある。

 え?銃剣装備出来る銃なんて他にもあるのになんでスプリングフィールドにしたかって?ロマンあるだろ悪いか。

 

 さて、そんな彼女からの陳述だか……G36が言う通り副官制度に対してのものだった。だが、どうやら彼女自身が副官になりたいという訳ではなく、彼女の経営している喫茶店で様々な戦術人形らが副官について愚痴というか不満を垂れているようで早々に決めて欲しいとの事だ。

 ちなみにだが、文面からは並々ならぬ無念さを感じる。彼女は喫茶店の経営上、副官になるのは厳しいからな仕方ない。

 せめて、喫茶店に行く回数でも増やすか…………そうだ今度一緒にチーズスフレでも作ろう。

 

 

「スプリングフィールドにメイド服着せたい」

 

「……せめて、彼女に許可を貰ってから作ってくださいね御主人様」

 

「残念だったなG36。既に何体かの人形用にメイド服は用立てている」

 

 

 無論、元々メイド服なお前には水着あたりを用意したが。

 そう告げれば彼女は頬を赤らめながら軽い咳払いをして、陳述書の続きに目を通すように促す。可愛い。

 うちのメイドが可愛い件について、当たり前だよなぁ。アサルトライフルを使うメイドとか色々と琴線に触れるから最高なんだが……と、そろそろ続きを読もう。

 

 ワルサーWA2000。

 赤みのある黒髪……赤紫が近いか?そこまでは俺にもわからんともかく長髪でサイドテールでスーツに身を包んでいる人形で古き良きツンデレ────だが、殺しの腕は素晴らしい。

 一応スプリングフィールドの部隊に所属しているが基本的に暗殺任務に従事している。俺も時折彼女と同じ銃を使うが……まあ、正直に言えば対物で頭蓋諸共吹き飛ばすのが好きだが。

 軽く脱線したか、話を戻そうデレを隠せん彼女と思ったが意外にもきっちりと副官制度に物申している。いや、物申しているのは俺に対してか。

 曰く、副官を決める事による作業効率等の向上やら定期的な副官替えなどなど……文面だからかツンもデレも見えん。後で弄ぶ。

 

 

 UMP9。

 今日から指揮官も家族だ!

 以上。

 予想を外す気が全くねぇな、おい。いや、正直に言えば能〇ボイスは好きよ?

 

 

 他にも色々あるな……M4とかSOPMODとかKSG……416……95式にグリズリー……ナガンおばぁちゃんもあるやんけ。

 というか、えぇ……副官決めなきゃダメ?

 

 

「駄目です御主人様」

 

「ナチュラルに俺の考え読むのやめない?」

 

「しかし、御主人様が副官を選ぶのに悩むというのでしたら……その……」

 

 

 頬を赤らめながら俺から視線を外すG36。

 可愛いな、おい。

 

 

「……えっと、ですね……その、ご、御主人様がよろしかったら……こ、この……わ」

 

「わ?」

 

「わ……我が妹であるG36Cはいかがでしょうか!?」

 

 

 逃げたわ。

 だが、それも良い。

 

 

「まあ、副官はいい加減決めないといけなかったからな。仕方ない……12?ろくな事にならん。94?12がめんどくせぇ……ネゲヴ?あいつを副官にするのは別の問題が生じてくる。それは45も16も変わらんから……そうなるとある程度自由な隊長または副隊長クラスの人形を選ぶべきで……………………G36で良くない?」

 

「ふぇ!?」

 

 

 えぇ、可愛い。

 可愛いしか言ってない気がするが今回は仕方ない。だって考えてみろ、G36が赤面してるんだよ?可愛い以外の言葉はなかろうよ…………はぇー、全くこれだからアサルトライフル勢は魔境なんだよ。

 陳述書をそのまま引き出しに突っ込みパソコンを起動する。昔はこういったパソコンを使っての作業は苦手だったがかれこれこの五年ほどでかなり使えるようになった。その証拠に数分もあればあっという間に工房の掲示板に張り出す記録が出来上がった。

 最初から副官なんてすぐさま決めればよかったのだ。それをこうもぐだぐだぐだぐだ引き伸ばして────まあ、純粋にめんどくさかったし、決めなくとも問題がなかったから仕方ないのだが。

 

 

 はてさて、印刷したデータを早速G36に預け張り出しに行ってもらい次の事へ思考を回していく。

 マウスを操作して文書作成とは違うタブを開けば、パソコンの液晶にはいくつかの顔写真と文面が広がっていく。

 三つの赤と黒と白。

 

 そして、暗銀。

 話を聞くにもはや、例の会議にスポンサーが出っ張るのは避けられる未来であり、そうなれば彼に雇われている俺らは護衛として会議に出席しなければならない。

 何せ、会議に御孫さんが出てくるんだからなぁ。

 であれば、護衛は必須であろう。俺を含めて三人は用意した方がいい……雀蜂らの量産型よりも名付きの方が性能としてもいいだろう。となれば、一体は元々彼の護衛の任務に付けていたAR-15で構わんがもう一体はどうするか。

 彼女はアサルトライフルであれば、サブマシンガン辺りでも良いのだろうが……45や9は別の任務でいない。

 はてさて、出来れば授業参観とかいう腐れ行事が始まるまでに決めておきたいものだが。

 

 

 




今回は幕間であり、平成終わりということもあって少しはっちゃけ気味でしたがその辺は生暖かく見守ってください。

それと、先日Twitterの方でアンケートをしまして、活動報告の所に作品に関する質問箱を設置する事となりました。
投稿と共に設置されるので詳しくはそちらでお願いします。


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二十七頁

五月中にもう一本書けて良かった。

深層映射、みなさんどうですか?作者は2ー4で詰んでます。
ケルベロス殴れない……悲しみ。ちなみに今回の箱でようやく念願のG36Cが入隊してくれまして、とても嬉しいです。
それはそれとして、早くUMP40を迎えなきゃ


 

「コルトAR-15、帰投しました」

 

 

 駒王町にあるホテル────何処ぞの魔王の親族がいたホテルでも総督のいるホテルでもない────、そのそこそこの部屋にて俺は一体の人形と対面する。

 白いワンピースに黒い上着を着た白桃色の髪の美少女。その名をAR-15、M16と同じAR小隊という小隊に属している人形。

 そんな彼女に俺は軽い笑みを浮かべながら、手を振り応える。

 

 

「つっても、一時的だがな」

 

「はい。スポンサーがこの街にいる間は護衛は私ではなく、他の人形に引き継ぎます」

 

「ン、まあ疲れもあるだろうし、こっちにいる間は適度に休んどけ。面倒事はM16が何とかするさね」

 

「そうさせてもらいます」

 

 

 真面目な彼女の返答を聞きながら、俺は手元の珈琲を飲みつつその視線を彼女とは反対側へと向ける。

 そこにはこの部屋をとった本人であり、AR-15の護衛対象でありながら従者と護衛を置いて先に現地入りするという馬鹿をやった馬鹿だ。

 そんな俺の不躾な視線に気がついたか、何処ぞの馬鹿はルームサービスで運ばれてきた生ハムを口に運ぶ手を止め、悪戯小僧めいた笑みをこちらへむける。

 

 

「なんだなんだ?生ハムはやらないぞ」

 

「食いながら寝るとかなかなか器用な事だな」

 

 

 辛辣だ、とからから笑う奴に俺は呆れながら書類を読み漁る。

 元々会談に参加する際の護衛の片方はそのままAR-15に任せるつもりだったのだが、リゼヴィムの要らない計らいによりこの街にいる間の護衛はM16A1と交換。となれば、自ずと会談の護衛もM16になるわけだ。

 アサルトライフル枠が優秀なアタッカーからタンクに変わるとは正直考えてなかった…………でだ、そうなると必要なのはサブマシンガン枠のアタッカー。

 元々サブマシンガンには盾役を用意するつもりで優秀な妨害系サブマシンガンをピックアップしたのだが、まさかのおじゃん。

 だから、こうして書類もとい名簿を読み漁って、任務の割り振られていない人形の中からサブマシンガン且つアタッカーとなるような人形を探しているんだが。

 

 言うて、わざわざサブマシンガンで探す理由なんてないわけが────気にしては行けない。

 

 

 

 

 何やかんやで雇い主の諸事情に振り回される。なんとも世知辛い事ではあるがやはり慣れというものなのだろう。

 あまりに巫山戯た要求は突っぱねるが今回の護衛を変えるというのはまあ、許容範囲内の話だ。

 

 

「なんというか、リゼヴィム様が申し訳ございません」

 

「ン、いや……慣れてるから気にしないでいい」

 

 

 そんな風に苦笑しながら俺の空いたグラスにカルーアミルクを注ぐのは銀髪────リゼヴィムと違い明るめの銀髪────の男。

 名前をユーグリット・ルキフグス。サーゼクス・グレモリーの伴侶であるグレイフィア・ルキフグスの実の弟でありルシファーの家系に仕える一族の男だ。

 そして、変態である。

 ほぼほぼ初対面の銀髪長髪女性に対して姉になってくれとほざく程度には変態である。何時か、私が姉上になる事だ────とかほざくんじゃないかと戦々恐々としている。

 と、まあ、こけ下ろした訳だが何やかんやで同僚みたいなものだ。片や従者、片や傭兵というかなりの違いがあるがリゼヴィム・リヴァン・ルシファーという男の下で動いている以上同僚でいいだろう。

 

 

「そうそう、おいちゃん授業参観行くから☆」

 

「………………」

 

 

 果たして、今俺はどんな顔をしているのだろうか。

 AR-15が顔を引き攣らせてるあたり、ろくな表情ではないのは間違いないだろう。

 

 

「リゼヴィム様。授業参観にはほぼほぼ間違いなくあの私から姉上を奪ったこそ泥も来ますが」

 

「ま、そうだろうね。で?それが何か問題?」

 

「出来れば、学校で俺に近づいてくれるなよ……」

 

 

 俺の一番の懸念はそれだ。Sterbenとしてならともかく鴎としての俺に人目がある場所では出来うる限り近づかないで欲しい……特に悪魔関係者のいる場所では。

 そんな俺の心中を察してくれたかどうかは定かではないが少なくともリゼヴィムはこっちに視線を向けてなんとも言えない表情でニンマリとしてる殴りたい。

 

 

「まあ?おいちゃんどっかの自称と違って?TPO弁えてるから」

 

「安心……出来るんか、こいつ……?」

 

「出来ないのは間違いないわ指揮官」

 

 

 だよな。

 俺はカルーアミルクを口にしながら、書類を横に置き軽く目を瞑る。

 そうすれば、思考はぐるりぐるりと回っていく。ほんの少しのアルコールの影響もあるのか、いつもよりも妙に冴えわたっているの何ともなくうっとおしく思いながらふとあることを思い出した。

 

 

「ギャスパー・ヴラディ」

 

「ん?あ~確か、グレモリー眷属の元ハーフヴァンパイアだったっけ?それがどうかした?」

 

 

 俺のつぶやきをリゼヴィムが拾うがそんなものは右から左へと流し、アレの神器についてを思い出していく。もはや、授業参観などというイベントは些末事項として切り落としている。

 既に俺の思考に巡るのはその後、この時系列における一番重要なイベントである三勢力による会談一つ。

 視界内の物の時間を停止する邪眼系神器『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』、流石は原作主人公勢というべきかその元ネタともいうべきケルトの魔神の魂の欠片も宿す転生悪魔は神器とそういう事情もありポテンシャルは十分警戒すべきものだ。

 無論、今この時点ではただの雑魚────神器の影響を俺や人形らが受けるのかどうかは分からないため、断言することは出来ないが、わざわざ視界に入ってやる必要もない。敵対すれば視界外からの遠距離狙撃で対処すればいい。

 さて、影響を受けるかどうかは分からないがそれも問題ないはずだ。

 会談にはリゼヴィムもいるのだ、奴の能力上神器による影響は意味を成さない。

 すでに範囲系神器がリゼヴィムを範囲内に入れた場合、発動が無効になるのは知っている。

 

 

「だが、問題はそこじゃぁない。会談などそれこそどうとでもなる、ギャスパー・ヴラディが邪魔になるのはさらにその先だ」

 

 

 そう言いながら、俺はリゼヴィムに視線をよこす。

 視線に込められた意味をリゼヴィムは理解し、笑みを深める。

 

 

「ん~言いたいことはわかるよ。要するに今度の奴でグレモリーのお嬢ちゃんとその仲間やサーゼクスくんが突っかかってくる、そう言いたいんだろう?なあに、そこらは気にしなくてもいいさ、おいちゃんがその辺考えてるから」

 

「なら、いいが……」

 

 

 悪辣な笑みからしてろくなもんじゃあないのは間違いないだろうが、そのあたりはあちらが引き受けている以上任せるほかはない。

 カルーアミルクを飲み干して、俺はソファーから立ち上がってリゼヴィムの皿から生ハムを一枚奪い口に放り込んでからそのままAR-15を引き連れてこの一室を後にする。

 後ろからリゼヴィムが文句を言っている声がするが無視して帰る。

 

 

「寿司でも食って帰るか15」

 

「ご相伴に預かりますね指揮官」

 

 

 

 そうだ、連れてくサブマシンガン。

 あいつにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれおのれおのれぇっ!!あたしも授業参観にぃぃぃ」

 

「先生、原稿優先してください」

 

「そうよ二亜。あなたでしょう夏コミの原稿手伝ってって言ったのは」

 

 

 件の授業参観当日。

 鴎は背中で二亜の嘆きとAR-15や他の人形の声を聴きながら、鴎はさっさと学校へ向かう。既に人形らには二亜の足止め料を握らせている為に少なくとも二亜が突っ込んでくる可能性は失せている。

 ならば、気にすることなどどこにもない。

 清々しく────リゼヴィムによって起きうるかもしれない面倒事を考えれば胃が悲鳴をあげ始める為、そんな気分は早々に失墜したが。

 

 

「つらっ、吐きそう」

 

 

 




今回は授業参観前なので少し短めにさせてもらいました。
UNDEADの方は現在執筆中ですがやはり、難航してますね。


追記────

活動報告にて質問箱始めました。作品に関する質問があればどうぞ


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二十八頁

気がつけば既に書き終わっていた。
何故、だろうな。

ところで皆さんは英語出来ますか?私はもうね、中学の時に躓いてから動けなくなりました。辛うじて何とか出来てはいますが……

それはそれとして、サーモン食べたい


 

 

 

 駒王学園の授業参観、そう言ってはいるが実際のところ公開授業という呼称の方が正しい。

 駒王学園には小等部から大学部まで存在しており、今回のような授業参観では高等部の父兄だけではなく中等部の学生やその父兄も授業を見学できる。

 そういったフリーダムなスタイルのものであるが、とうの高等部の学生からすれば緊張に余計な緊張を被せにきていることが大変なのだ。

 無論、俺のようにそこまで緊張しない人間がいないわけではないが。

 

 

「大変そうね、鴎」

 

 

 と、ここにも緊張しない人間、いや人形が一体。

 

 

「もしもを考えたら胃が痛くなるの仕方ないと思うが?」

 

「フフ、ごめんなさいね。私にはわからないわ」

 

 

 ホームルーム前に寄った自販機スペース。

 あちらも同じ考えだったか、ドゥヴェーナッツァッチ・クルーガーもといAK-12が珍しくAN-94を連れずに一人でいた。

 いつもどおり、瞼を閉じたまま余裕そうな表情を俺に向ける。

 なんとも気まぐれな猫を思わせる雰囲気を醸し出している彼女に俺は肩を竦めつつ、自販機に硬貨を放り込んでいく。

 

 

「それで、護衛決まったの?」

 

「ン、決まった」

 

 

 適当に選んだ桃系の炭酸飲料のボタンを二回押しながら、あくびを噛みしめながら振り向く。

 

 

「あいつも最近暇そうにしてたからな、妹二人には悪いがこれも仕事なんでな」

 

 

「ああ、あの娘にしたのね。いいんじゃない?ん、ありがとう」

 

 

 買ったばかりの炭酸飲料を彼女に投げ渡し、空いている片手をひらひらさせながらその場を後にする。

 

 

「俺はともかくそっちには爺さん行くかもしれんから。ま、がんばりな」

 

 

 

「わざわざ頑張る必要はないと、思うのだけれど…………これはアンにあげよ、流石に炭酸を投げるのは……ねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室において俺の席は窓側の一番目。

 夏場や冬場はいろいろと困るような困らないようなそんな微妙な席位置。例えば、夏場だったら窓から差し込む夏の日差しが暑い、だが逆に窓を開ければそれなりに心地よい風が吹き込んで涼しくしてくれたりする。では冬場は?寒い。外に近いから、寒い。ウォッカでも飲んであったまれとでも?

 それはさておき、既に授業は始まる頃合い。

 授業は英語。死ねばいいのに。

 なんで、仕事でもないのに英語しなくちゃいけないんですかねぇ?

 ドイツ語やロシア語ならともかく、英語とかだるすぎるんだよ。いや?できるよ?クソほどやりたくないし、嫌いだけれども。

 とと、耳を傾ければ、後方つまりは教室の後ろだな。そっちで扉が開きいくつもの足音が聞こえてくる。見学しにきた父兄や中等部の後輩らだろう。ほぼ、それと同時に前の方の扉が開き、いつもよりもやや気合の入った英語の教諭が荷物をもって入ってきた。

 あれはなんだろうか?

 

 袋に包まれた長方形の物体を渡されたので後ろに回していきながら袋をよく見る。

 C4、なわけがねえ。………ン?紙粘土では?

 俺は、いやクラスの全員が怪訝な表情を英語教諭へと向けて――――――――

 

 

「いいですかー、今渡した紙粘土で好きなものを作ってみてください。動物でもいい。人でもいい。家でもいい。自分がいま脳に思い描いたありのままの表現を形作ってください。そういう英会話もある」

 

 

 ねぇよっ!?

 嬉々として語る英語教諭に対して、間違いなく今この瞬間がこのクラスのほぼ全員の心が一致した瞬間だろう。

 なぜ、ほぼかって?恐らく、アーシア・アルジェントとゼノヴィアはそう思ってないからだ。ああ、言い忘れていたがやはりというべきか、ゼノヴィアは悪魔に転生していた。

 いや、それよりもだ。なぜに紙粘土なのか。

 

 

「レッツトライ!」

 

 

 テメェの下駄箱にスライム叩き込むぞ。

 

 

「はぁぁ……何を作れというのか」

 

 

 間違いなく、公開授業だから気合入れた授業にしようとしてから回ったな。

 見事な失敗で嗤えて来るな、それはそれとして何を作るか。銃?正直、作るんなら紙粘土からじゃないほうがいい。無難に無難で鴎でも作るか?

 

 

 

「「「「おおっ!」」」」

 

 

 ‥‥‥なんだ。騒がしいな。

 クラスから唐突に歓声が沸いた。いったいどうしたのだろうか、そう考えながら俺は後ろの方を振り向いて、正直振り向かない方がよかったと思った。

 歓声の中心、そこにいたのは英語教諭と兵藤一誠。恐らくは兵藤一誠の作品が原因であろうが、奴の机へと視線をやればそこにあるのはリアス・グレモリーの紙粘土像で、心の底から見なければよかったと思った。

 やはり変態は変態のようで、衆人環視の前でああいうのを作るとは……いや、いまの発言は取り消そう。いまの発言はクリエイターに対して失礼だわ。こう言い直そう、せめて服着せてやれ。

 その後、クラスの誰かの一言が皮切りに紙粘土像を巡るオークションが始まった。悪夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。

 俺とアーシアは自販機前で偶然部長と朱乃さんに遭遇し、俺が英語の授業で作った部長の紙粘土像について話していたところに、木場と出会い何やら撮影会とやらをしているという魔女っ娘のもとへ訪れたわけなんだが。

 

 

「ソーナちゃん!見つけた☆」

 

 

 魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブのミルキーのコスプレをした美少女が我らが駒王学園の生徒会長である支取蒼那もといソーナ・シトリー会長を見つけたと同時に嬉しそうに抱き着いた。

 これにはさきほどまで生徒会の一員として撮影会をやめさせ、美少女に注意していた匙も目を丸くしている。無論、俺もこれには驚く。

 ‥‥‥ん?今更だけども、なんだか会長とコスプレ美少女似てないか?

 そんな疑問を抱く俺をよそに会長に先導されていたサーゼクス様が構わずにコスプレ美少女に声をかけた。

 

 

「ああ、セラフォルーか。キミもここへ来ていたんだな」

 

 

 ‥‥セラ、フォルー………?ど、どこかで聞いたことのあるお名前ですね。

 

 

「レヴィアタン様よ」

 

 

 ‥‥‥。一瞬、部長の言葉が理解できなかった。そんな俺の心境を読み取ったのか、部長はなんとも言えない表情でもう一度言ってくれる。

 

 

「あの方は現四大魔王の御一人、セラフォルー・レヴィアタン様。そしてソーナの御姉さまよ」

 

「え……えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっっ!!??」

 

 

 俺の絶叫が廊下にこだましていく。

 当然だ!マジで!?嘘だろッ!?ゆ、夢にまで見た妖艶な美人魔王様がこの方ですか!?

 いや、確かにこの方も十分美人だけれども。会長のお姉さまだけあって、部長に負けない美貌だと思う。けど、俺はもっとフェロモン漂う魅惑のお姉さまを想像していたんだ!!

 そ、それなのに、し、真実はコスプレ衣装を着た可愛らしい女の子だと思わなかった。

 

 

「うぅ、もう耐えきれません!」

 

 

 と、俺が驚いている間にあの冷静沈着な会長が目元を潤ませて、この場を走り去っていった。

 

 

「待って!ソーナちゃん!お姉ちゃんを置いてどこにいくの!」

 

 

 あ、魔法少女さまが会長を追って走り出した。

 

 

「ついてこないでください!」

 

「いやぁぁぁん!お姉ちゃんを見捨てないでぇぇぇぇぇぇぇっ!ソーたぁぁぁぁん!」

 

「『たん』付けはおやめになってくださいとあれほど!」

 

 

 ‥‥‥魔王姉妹の追いかけっこ。お願いだからこの悪口を何かの拍子で消さないでくださいね。

 

 

「うむ。シトリー家は平和だ。そう思うだろう、リーアたん」

 

「お兄様、私の愛称を『たん』付けで呼ばないでください」

 

 

 今度はグレモリー一家の方で恥ずかしい会話が始まった。

 

 

「今のを見て平和って言えるのは流石に私も引くな」

 

 

 ――――唐突にそんな一言が俺たちの間に割り込んできた。

 その誰かの声にサーゼクス様が、もう一人の紅髪の男性、確か部長のお父様だ。そのお二人が驚いた表情でその声のした方向へと顔を向けた。

 一拍空けて、会長ら走り去った方向の廊下、その角から男性が二人出てきた。

 その二人の男性に俺は既視感を覚える。どこかで見たことがあるような。

 

 片方はダークシルバーな髪と髭の老人、もう片方はグレイフィアさんのような銀髪の美青年。

 

 

「リ、リゼヴィム・リヴァン・ル、ルシファー様……」

 

 

 え……いま、なんて?

 いま、部長のお父様はなんて言ったんだ……?

 ルシファー?でも、それはサーゼクス様のことじゃ……。

 

 

「やあ、久しぶりだね。グレモリーの少年」

 

 

 そんな気さくな言葉と共に目の前の男は嘲笑するように俺たちを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

―――思えば、この時から既にこいつらは俺たちの平和を壊そうとしていたのかもしれない。

 

 

 

 




リゼヴィム「流石に公私分けないのは引くわ-」

ユーグリット「そのもみあげ引っこ抜くぞ。あと義弟と呼ばれる筋合いはない」

はよ、はよ、AK-12とAN-94、実装はよ

ゴブスレTRPG楽しい


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二十九頁

 気が付けば書き終わっていた。
 そういえば、UMP40当基地に無事着任しました。だが、しかしいまだにビスマルクは母港にきてくれない。
 どうして……どうして……
 


 

 

 

 

 

 リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

 初代魔王ルシファーと悪魔の母と呼ばれるリリスとの間に生まれた息子。聖書においてはリリンという名で記されている彼は原作―――本来の歴史ではこんなところにいるはずのないの男であった。

 本来ならば、永遠とも感じられる悪魔生に飽き、生きる目的も見いだせず自堕落に生きる屍同然な暮らしをこの時点ではしている筈なのだが、しかしこの場にいる彼からはそのような気配は微塵も感じられない。

 それもそうだろう。

 いまここにいるのは本来の歴史のような未知の異世界で魔王になりユートピアを作ろうとする外道でも自堕落な生きる屍同然の男でもなく、たった二人のイレギュラーによって別の目的を見出した男なのだから。

 無論、性根が変わったわけではない。

 現にその悪辣さは変わっていない、だがその代わりほんの少しやり方を変えたのだ。テロリズムもとい非合法で行うから面倒なことになる、ならば合法的にやれば?いったいどこに責められる要因があるだろうか。

 例えどれだけ悪辣であろうが合法であるならば、正義でありどうどうと悪魔らしい行為に手を染められる。鴎によるちょっとばかしの甘言は間違いなくサーゼクスら現魔王にとって厄介な存在を作った。

 

 

 と、そんなことは置いておき、サーゼクス・グレモリーらの前に現れたリゼヴィムは嘲笑するような表情を浮かべながら、気さくに彼らへと言葉をかけたと思えば、セラフォルー・シトリーとその妹が去っていった方へと一度視線を向け再び口を開く。

 

 

「シトリー嬢は僭称しているとはいえ、魔王の立場だろう?にも関わらず、公の場で趣味に走るのは正直どうなのかねぇ?」

 

 

 そんな、普段の悪戯小僧めいた雰囲気は鳴りを潜めて紳士然とした態度のまま非難の言葉を投げかける。

 その非難にサーゼクス・グレモリーは歯噛みする。

 それも当たり前のことだろう。そもそもサーゼクス・グレモリーとセラフォルー・シトリーがこの街に来たのは先日コカビエルが引き起こした事件の中心であったこの学園で三大勢力による会談を行うためであり、その名目でこの街にいる以上公務であり、妹の授業参観だから公務ではない。など効くはずがなかろう。

 公務中なのに私事をするのは認められないのはどこの国でもあることだ。

 

 

「……リゼヴィム殿。何故貴方がここに?いや、それよりもそちらの彼はユーグリット・ルキフグスか……死んだはずでは……」

 

 

 だが、サーゼクス・グレモリーは話を逸らすように、逆に問いただし始める。

 そんなサーゼクスの対応にリゼヴィムの従者であるユーグリットは胸中で蔑み、リゼヴィムは呆れる。無論、そんな感情は思亭は一切出さずにサーゼクスの問いに答える。

 

 

「ふぅ……質問に質問で返すんじゃぁない。だが、まあ、許そう。ユーグリットくん、彼は別に死んではいなかったよ、ただ姿を消していただけ」

 

「次に、何故私がここにいるのか」

 

 

 右手の人差し指を立たせながら、まるで出来の悪い生徒に教えるかのようにリゼヴィムは口を開く。

 

 

「簡単な話さ。昔の契約者の子がここに通っていてね、だが契約者は仕事で来れない。代わりに私に行ってきてくれと頼まれたのさ。つまるところ仕事というわけだ」

 

 

 語られた理由にサーゼクス・グレモリーは怪訝そうな表情を浮かべながらもそのリゼヴィムが契約していたという人間について問いただそうと一歩前に足を踏み出し―――――

 

 

「おや、イッセー」

 

 

 リゼヴィムの後方から兵藤一誠やリアス・グレモリーらにとって見知った顔の人物が呼びかけながらやってきた。なんというタイミングだろうか、兵藤一誠と違い何も裏のことについて知らない一般人である兵藤夫妻の登場に兵藤一誠らは顔を青ざめる。

 だが、そんなものは杞憂だ、とでも言わんばかりにリゼヴィムは肩を竦めてから踵を返す。

 

 

「それじゃあ、また会おう。グレモリーの少年」

 

 

 始まりは唐突に。

 そして、終わりもまた唐突に。

 顔を合わせた兵藤夫妻に軽い会釈をしてから、リゼヴィムとユーグリットは来た時に降りてきた階段を昇って行った。

 その後ろ姿が完全に消えるまで、サーゼクス・グレモリーもグレモリー卿もその表情を強張らせたままだった。

 

 

「えっと、お邪魔しちゃいましたか?」

 

 

 そんな、兵藤父の言葉に一同はようやく緊張を収めることが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「契約者の娘、か……」

 

「まぁ、あながち間違えじゃないわね」

 

 

 階段を昇り、彼らからそれなりに離れたところ。人気も少ない屋上への階段にてリゼヴィムらは声を拾い上げる。

 

 

「おんや、お二人ちゃん。おいちゃんに何か用かい?」

 

 

 声のする方に顔を向ければ見知った顔が二つ。

 学生服に身を包んだ二人の少女(ドール)

 リゼヴィムがこの学園に訪れた表向きの理由にされた少女らであり、魔王の妹及びその眷属を始末する為に学生を演じる二体の戦術人形が不敵に嗤っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユーグリットから聞いたところ、リゼヴィムはサーゼクス・グレモリーと接触したらしい。

 無論、接触といっても大層なもんではなく本当にちょっと顔を合わせて言葉を交わしただけのようだ。まあ、間違いなく煽ったんだろうが……ユーグリットの表情からして物足りなさそうであるのは窺える。

 

 

「まあ、そんなことはさておき。やりますか」

 

 

 茶の間の液晶テレビの前で並んでパーティーゲームをしている二亜やリゼヴィムらを台所から視界の端に収め、学校帰りに買ったいわしを取り出して下処理を始める。

 

 まず、鱗があるため軽く包丁でこそげ落とし、すぐに頭と尾を落とす。

 その後、腹をやや斜めに内臓ごと軽く切り落とす。そうすると、ため水のなかでも洗いやすく仕上がりもきれいになる。今回は数が数のため、こちらの方法でさっさと下処理する。

 次に、ああ、その前にだ。血合いと内臓は残っていると臭みのもとになってしまうため、そのあたりはきちんと洗い落とそう。洗ったあとは水気をふき取り、一尾につきだいたい二、三等分にしよう。ちなみにこれは別にまんまの状態でも大丈夫だからお好みで。

 

 さて、正真正銘次の工程にはいろう。

 といっても、簡単なもので生姜を千切りにする。

 以上、それだけ。

 

 用意が出来たら、鍋を取り出し鍋底に切ったいわしの身が重ならないよう広げ入れて、そこへひたひたになる程度の水と大さじ3杯ほどの酒を投入。最後にそれらの上にさきほどの千切り生姜を乗せる。

 これで準備は終わりだが火をかける前に落し蓋を乗せる。これは普通に木蓋でいいんだが、木蓋だと青魚の匂いが移るため、クッキングシートを丁度いい大きさに切ってのせてもいいらしい。ちなみに俺はこれを代理人に教えてもらった。

 さて、鍋を中火にかける。沸騰してきたらアクを軽くすくって、火をほんの少し落としてから五分ほど煮よう。ああ、このさい、蓋はそのままだ。

 

 

「メインはこれでいいとして、他なんかあったっけな……」

 

「指揮官。手伝いします」

 

「ン、ありがとうAR-15」

 

 

 手伝いを申し出てくれたAR-15の頭を軽くポンポンと擬音が出る感じに触れて、後ろのハンガーにかけていた桃色のエプロンを装備させる。

 うむ、パーフェクトだ。作った甲斐があったもんだ。

 さて、彼女に五分経つまで鍋の方を任せて、俺は冷蔵庫のほうを開く。

 そういえば、浅漬けにしたかぶがあったな、みそマヨで食べることを考えるといわしの味付けはさっぱりめのがいいな。なら、他には…………うーん。

 野菜か。昨晩つくっておいたおひたしでいいな。

 

 

「指揮官、どうすれば……」

 

「ン、ああ、もう五分か。いわしに火通ってるか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「ン、なら砂糖と醤油を大さじ一杯弱入れて、蓋は外し中弱の間で煮詰めてくれ。煮詰めは……八分で頼む。ああ、それと砂糖と醤油を溶かし込むときは箸で隙間を作ってから溶かしてくれ」

 

「はい、了解しました指揮官」

 

 

 と、みそ汁は…………朝のが残ってるからそれを一回火にかけて……ああ、煮詰まるから少し水を足してからだな。

 みそ汁もAR-15に任せて、俺は冷蔵庫から取り出したかぶの浅漬けとおひたしを皿に盛りつけて、テーブルへと持っていく。

 ちらりと視線を動かせば、二亜の操作するキャラがリぜヴィムのキャラに吹き飛ばされていた。わろす。

 

 

「そろそろ夕飯だから、ゲームやめて手伝え」

 

「「えー」」

 

「爆ぜてしまえばいいのに」

 

 

 二亜とリゼヴィムに中指立てつつ、箸立てをユーグリットに渡して俺は台所へと戻る。

 台所に戻れば、しっかりと火加減を見ているAR-15に軽く笑みを浮かべてしまう。どうやら、まだ時間ではないようだ。

 その間に茶碗に炊き上がった米をよそい、温まったみそ汁をお椀に入れカウンターに置きユーグリットに任せる。

 

 

 ああ、イワシの煮つけだが弁当に入れるのはあまりオススメしない。ものがものだからな。

 

 

 

 

 

 





 ただの休暇で授業参観にくるならともかく公務のついでにくのは正直どうかと思うし、そもそも公務で来てるなら相応のふるまいも必要なわけで……にも関わらず公衆の面前で趣味のコスプレとか……しかも外交担当が……国が国なら批判殺到間違いないね。
 久々の主夫高校生はイワシの煮つけでした。
 


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三十頁

なんか、気づいたら書き終わっていた不思議。
 アズレン、ようやくビスマルクをお迎え出来ました。次は彼女とキングジョージ五世の衣装を買わねば……!!まあ、福袋買ってみるのが一番でしょうね。
 UNDEADですが、Twitterでも言いましたが、なんか迷走しているのでいまは主夫高校生を優先させていただきます。



 

 

 

 

 

 特にやることはなかった。

 授業参観の日より早数日。

 俺は普通に学校にいって、リゼヴィムはユーグリットとともに何やらホテルの部屋で悪辣なことを考えていた。

 

 

「まあ、ろくなことにはならないだろうな。あちらからすれば……」

 

 

 軽く息をついてから、体の節々を軽く捻りつつ思考を回していく。

 原作主人公や二次創作主人公のように毎度毎度、イベントがあるわけもなく俺にあったのは今回の大仕事のための前準備等々。楽しいこと……AR-15を揶揄って遊んだことでは?

 楽しかった。

 

 

「さて――――」

 

 

 ヴァーリ・ルシファーやカテレア・レヴィアタンに対してどうするかはリゼヴィムに任せるが、それ以外は蹂躙でいいだろう。ついでに何人かを生きたまま回収もしたいがそれは高望みしないでおくとしよう。

 

 

「仕事と行こうか」

 

 

 顔上に上げていたマスクをずり降ろし死銃として切り替える。

 サブはいつも通りのFive-seveNを選び、メインにはAK-12を装備する。ついでにすぐさま切り替えられるように武器庫───神器によって一から作りだすのではなく、あらかじめ作成しストックしている部分。工場に倉庫があるように当たり前のように武器製造にはそういう部分が存在している───にネゲヴやRO635をストックしておこう。

 一応の為にも形状変化しておいたナイフ状の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を左胸のアーマーに忍び込ませておこう。

 ひとまずはこれでいいはずだが、はて。

 

 

「おんや、用意終わったかい?」

 

〈問題ない〉

 

「りょ。そんじゃま、行くとしますかねぇ」

 

 

 あちらも着替え終わったのか、俺に声をかけてきたリゼヴィムへと視線を移せばそこにいるのは魔王というよりかは貴族的な装いに身を包んだ威厳のある老公がいた。

 まさしく知らぬ者がみてもどこかの名家の御老公と思う事だろう。

 どこか、普段の軽さも交えつつ転移術式をユーグリットに用意させているリゼヴィムの背を見ながら俺は待機していた護衛の人形らに指示を飛ばして、術式が終わるのを待つ。

 

 

「リゼヴィム様。転移術式完了いたしました」

 

 

 本来ならば、学園には転移阻害の一つや二つはあるのだろうが先日の授業参観の際にユーグリットが学園内に直接転移できるように細工を行い、昼頃に手駒を侵入させ確実に転移できるように術式の維持を行わせていた。

 さて、行くか。

 俺たちは転移術式へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間帯は深夜。

 すでに学園全体に強力な結界が張り巡らされ、外部からは簡単に侵入することは不可能になっている。無論、逆もまた然りである。

 結界外には天使、堕天使、悪魔の軍勢が囲んでおり、周囲には一触即発の空気が満ちていた。

 そんな学園の新校舎にある職員会議室。

 そこには特別に用意でもさせたのか、職員会議室にあるわけもないような、豪華絢爛なテーブルが置かれており、それを囲むように四人の人影が椅子に腰かけている。皆一様に真剣な面持ちである。

 

 悪魔側。サーゼクス・グレモリー、セラフォルー・シトリー。給仕担当なのか、茶用の台車の傍らにはグレイフィア・ルキフグスが待機している。

 天使側。金色の翼を生やした天使、ミカエル。その傍らに立つのは名も知れぬ天使の女。

 堕天使側。黒い翼を生やした堕天使、アザゼル。その傍らに立つのはリゼヴィム・リヴァン・ルシファーにどことなく似た風貌の少年、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』ヴァーリ。

 

 そんな彼らとは別に壁側に並べられた席に座るのはソーナ・シトリーとリアス・グレモリー、そしてグレモリー眷属六人。彼らが椅子に腰かけたのをサーゼクス・グレモリーは確認し、口を開く。

 

 

「では全員がそろったところで―――」

 

 

 このまま会談が始まる。

 そう、誰もが思って────────だが、まだ役者はそろい切ってはいない。

 

 

 唐突に静かに、会議室の扉が開いたのだ。

 それを感じ取ったがためにサーゼクス・グレモリーは言葉を止めた。

 

 誰もが開かれた扉へと視線を向け、そして扉の向こう側にいる人物に全員が様々な反応を示した。

 

 

「悪いが、この会談。私も混ぜてはくれないかね?グレモリーの少年」

 

 

 そこにいるのは五人の人物。中央に立ち口を開いた暗銀の老公、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。彼の斜め前にて佇むは死面の男、Sterben(死銃)。リゼヴィムの後ろに立つのは三人、一人は従者であるユーグリット・ルキフグス、そして二体の人形。

 予想外の彼らの登場にサーゼクス・グレモリーもセラフォルー・シトリーもさらにはアザゼルが立ち上がってしまう。無論、グレモリー眷属らも反応するがしかし、それよりも彼らが反応したのはリゼヴィムと共にいる死銃である。

 木場祐斗は以前の戦闘で負ったが治療されたはずの肩口の傷がずきりと痛むことにその顔を歪ませ、他の眷属や主であるリアス・グレモリーは怒りの表情を見せる。だが、その矛先であるはずの死銃はどこ吹く風であり、その意識は彼らグレモリ―眷属とは全くの別人へと向けられていた。

 それにはアザゼルも意識を向けていた。

 端正な顔を激憤に歪ませ、今にもリゼヴィムへと飛び掛かる、否殺さんとする男。

 

 

「おい、ヴァーリ!」

 

 

 だから、当のリゼヴィムもそれに気づいた。

 実の孫であり被虐待者であったヴァーリ・ルシファーへとその視線を向けて彼は、いつもどおりにまるで玩具で遊ぶような無邪気な笑みを浮かべるわけでもなく、謀略を紡ぐ悪魔らしい邪悪な笑みを浮かべるわけでもなく、魔王のような威厳ある表情でもなく、ただただ彼はその頭を下げた。

 

 

「は……?」

 

「ヴァーリ。許せ、などとは言わん。ただ、私にはこの頭を下げねばならない理由がある。自己満足、お前はそういうのだろう、それでいい。私を許さなくてもいい」

 

「な……」

 

 

 そんなリゼヴィムを知るアザゼルも、謝罪の対象であるヴァーリもただ絶句するしかなかった。

 ありえない。そうとしか思えぬその行為にヴァーリは気が削がれたのか、先ほどまでの激憤と殺気はなりを潜め……いや、それでも何かあればすぐにでも殺せるような態度を見せる。

 そんな彼の態度にいつでも迎撃するつもりだった死銃は意識を外しつつ、リゼヴィムの腹の内を察して他者に知られぬようにため息をついた。

 

 

〈(絶対にろくなこと考えてねえなこいつ)〉

 

 

 そんな死銃の内心は誰にも届くことはなく、驚愕からもどったサーゼクス・グレモリーが口を開いた。

 

 

「なぜ、貴方がここにいる。いま、この学園には誰も入られないはずだ」

 

「何事も例外はあるという事だよ。サーゼクスくん」

 

 

 そう言いながら、リゼヴィムらは入室しグレモリー眷属らのいる壁とは反対側であり彼らトップ陣とはやや離れた場所にユーグリットと死銃がテーブルと椅子を用意、リゼヴィムはそこへと腰掛けた。

 

 

「そもそも、この場にコカビエルの事件の渦中にいた人物を呼び出したのならば、彼。件のコカビエル側にいた死銃が来てもおかしくはないだろう?そして、彼のスポンサーである私が来てもなんら問題はないはずだ。私には彼をスポンサーとして保護する責任があるのだから」

 

 

 いや、それは違うだろう。そんな死銃の内心が聞こえてきそうであるが、あまりに堂々とそして威厳すら感じさせるリゼヴィムの物言いにサーゼクス・グレモリーもセラフォルー・シトリーも、納得してしまっている。

 嘘だろ。またもやそんな内心が聞こえてきそうであった。

 いの一番に否定すると思われたアザゼルはさきほどの謝罪でいまだ混乱している為、使い物にならずミカエルに限ってはもともと悪魔の問題であるため、我関せずの態度である。

 

 

「さて、もう追加参加者はいない。サーゼクスくん?会談をはじめてくれ……ああ、前提条件である聖書の神の死亡はこちら側はとうに知っていたことであるから確認は不要だ」

 

 

 主導権を容易くサーゼクスへと放り投げたリゼヴィムはまるで子供の御遊戯会でも見ているような余裕ある表情でそう語った。

 

 

 はたして、出鼻から波乱のあったこの会談はたしてまともに終われるのだろうか。

 そんな風に他人ごとな思考を回しながら、死銃はまた周囲に気づかれぬようにため息をついた。

 

 

 

 

 





 次回から会談開始ですね。
 


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三十一頁


 気が付いたら書けていた。

 アズールレーン、福袋買いましてビスマルクの衣装がもらえましたぜ。



 

 

 

 

 リゼヴィムというイレギュラーがあったものの会談自体は順調に進んでいた。

 時折、アザゼルが挿む言葉にこの場の空気が凍り付くこともありはしたが、アザゼルも冗談で言っているのを他のトップは判断し、流れていく。とうのイレギュラーであるリゼヴィムらはその話し合い自体には興味がないのか、ユーグリットが用意した紅茶で喉を潤していた。

 そんなさなかに死銃が連れてきている二人の人形。

 黒い長髪を三つ編みにし、黄色のメッシュをいれた眼帯の少女、M16。

 腰まで届く灰髪に金の瞳を持つどことなく活発さを感じさせる少女、UMP40。

 二人は自身へ向けられる不躾な視線を感じ、視線だけを動かして視線の主を探し始める。といってもあまりに露骨であったために二人は視線の主をすぐさま捕捉する。

 

 自分らの反対側の壁際に並べられた椅子に座る悪魔らの一人。

 今代の赤龍帝である兵藤一誠。普段から、彼を指して変態だのなんだのと言っている死銃を思い出し、そしてその視線に含まれている感情に二人は表情を不快に歪める。

 だが、すぐにその視線は終わる。見れば隣の席に座るリアス・グレモリーが兵藤一誠の手の甲に自らの手のひらを乗せている。

 緊張を和らげるためなのか、それとも眷属の不躾な視線を窘めるためなのか。その真意は分からないが、二人もその表情を引き締めなおす。

 

 

「さて、リアス。そろそろ先日の事件について話してもらおうか」

 

「はい、ルシファー様」

 

 

 と、サーゼクス・グレモリーに促され、リアス・グレモリーとソーナ・シトリー、そして姫島朱乃が席を立ち先日のコカビエル戦についての一部始終を話は始めた。

 軽く、死銃はマスクの下で嗤いかけたが、それは胸中に抑え込み話に耳を傾ける。

 冷静に淡々と自身が体験した事件の概要を話しているが、リゼヴィムや死銃はその声音からわずかに

緊張が孕んでいるのを感じ取り、軽く目を閉じる。

 やはりまだ経験不足である、それが嫌が応にも理解できた。

 だが、それも仕方がないことであるだろう。

 自分の発言で三勢力の何かが変わってしまうのだ。いくら豪胆であろうとも成人にもなっていない少女には荷が重いことは間違いない。

 

 

「―――以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

 

 すべてを言い終えたリアス・グレモリーらはサーゼクス・グレモリーの着席を促す言葉で椅子に腰かけた。そんな彼女にセラフォルー・シトリーはねぎらいの言葉をかけ、この場の全員の視線はアザゼルへと集中する。

 

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 

 責めるような視線を受けておきながらアザゼルは不敵な笑みを浮かべ話し始めた。

 

 

 

「先日の事件は我が堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルが、他の幹部及び総督の俺に黙って、単独で起こしたものだ。奴の処理は『白龍皇』がおこなった。その後、組織の軍法会議でコカビエルの刑は執行された。『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑だ。もう出てこられねぇよ。その辺りの説明はこの間転送した資料にすべて書いてあったろう?俺らが知っているのはそれが全部だし、これ以上は俺らよりもそっちの傭兵に聞いた方が早いんじゃねぇか?」

 

「説明としては最低の部類ですが、確かにいまこの場には実際にコカビエル側に協力した人物がいますね」

 

 

 そんなミカエルが嘆息しながら口にした言葉に今度は件の傭兵である死銃へと視線が移った。

 その視線に含まれるさまざまな感情に死銃は一切物怖じせずに視線をリゼヴィムへと向け、リゼヴィムはその視線を受けて頷いた。

 

 

〈ン、何を話せと?これでも傭兵として誇りはある。契約事項について詳しく話すことは黙秘する〉

 

 

 だから、そんな言葉にリアス・グレモリーらはふざけるな、という感情を露にし─────

 

 

「なるほど、では少なくともリアスの報告と相違はない、それでいいのかね?」

 

〈相違はない〉

 

 

 サーゼクス・グレモリーの質問により遮られた。

 その質問により追及は終了した。それにリゼヴィムは内心呆れ、ユーグリットは内心でサーゼクス・グレモリーの顔面を肥溜めへと叩きつけ、死銃はため息をつく。

 この男らは微塵もコカビエルの心境を察する気がないのだ。そして、その刑罰にも死銃は嘆くしかなかった。

 あの男は、生き恥を晒さねばならないのだ。仲間たちのもとに旅立つことも出来ずに。

 

 

 

 さて、既に彼らの視線は死銃からアザゼルへと戻り、話は進んでいく。

 アザゼルら堕天使勢力の神器使い接収による戦力増強の意図などの話が始まり、面白くなさそうな表情を隠さないアザゼルが和平締結の議案と出したことに各陣営が驚愕し、リゼヴィムらはこの流れをとうに知っていたがために驚愕の色は微塵も出さない。

 和平おおいに結構。

 おおっぴらに悪魔を殺すのが難しくなりはするが死銃からすれば、そんなものは関係のない話であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、傭兵殿。あなたの奪った聖剣を返していただきたい」

 

 

 赤龍帝、白龍皇に対しての意見を求め出揃い、これでほぼほぼ話は終わるかと思えたが、ミカエルがそう俺に対して厳しめな声音で言い始めた。

 無論、そんなことは会談が始まる前から理解していたことだ……しかし、リゼヴィム。

 お前何しに来たんだ?いや、まあ、いい。

 

 

〈悪いがあの聖剣は正式に報酬として、受け取ったものだ。そもそもエクスカリバーという聖剣自体、教会の所有になった逸話はないはずだが〉

 

 

 よくある常套句であるが実際、事実だ。

 エクスカリバーといえばあのアーサー王伝説で、アーサー王伝説には聖杯やら基督教関連の諸々が出てきはするがしかし、エクスカリバー自体は湖の妖精が創ったものであり、アーサー王が死ぬ瀬戸際で騎士ベディヴィエールによって湖の精霊に返還された者のはずだ。

 それに関してはリゼヴィムも肯定している。

 つまり、そもそも天界が窃盗した挙句、変なものにしたならば責められるのは俺ではないはずだ。たぶん。

 

 

「そもそも、エクスカリバーの正統な所有権は天界ではなくペンドラゴン――――アーサー王の末裔にあるんじゃないかね?ミカエル殿」

 

「それは…………」

 

 

 俺とリゼヴィムの反論に言い淀むミカエル。

 どうやら、この反応からしてあまり、声を大にして所有権を主張するわけではないらしい。しかし、兵藤一誠が口を挟んでくると思ったのだが………まあ、いいか。

 

 

「それにだ。死銃も言った通り、この聖剣は彼がきちんとした正規の契約の上で得た報酬であり第三者がこれに対して受け渡しを要求するのはいかがなものか」

 

 

 それっぽいことを言ってるがたしか、こういうのって俺が盗品と知ったうえでもらうとそういう契約は無効になるんじゃなかったっけ?いや、面倒なことになるから言わんけども。

 あ、折れた。

 

 

「わかりました………では、傭兵殿。代わりといってはなんですが、こちらからの仕事を出すときは雇われてもらって構いませんか?」

 

〈正当な報酬さえ払ってくれるなら文句はない〉

 

 

 傭兵だからな。

 信用と信頼を報酬で買ってもらっているわけだから俺の要求は正当であるはずだ。と、ミカエルも納得したようで頷きそのまま閉口した。

 これで終わり、とはいかんようだな。

 向けられる視線の元、アザゼルの方へ顔を向ける。

 

 その表情は不信感、そういったものを感じさせるが……同時に戸惑いを感じさせる。恐らくは俺個人ではなく、リゼヴィムに付いているからというものであり、戸惑いは先ほどのリゼヴィムの行動が原因なのは言うまでもないだろう。

 だが、それでもこちらを侮っているように見受けられる。危険度としては現状あちらからは神器使いの人間としか思われていないのだからこれもある種当然といえよう。

 

 さて、それは置いといてだ。

 こいつは何時動くのか。

 

 

「さて、そろそろ私が来た理由でも話すとしようか」

 

 

 こっちにどこか悪戯小僧めいた表情を見せて、口火を切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、そんなリゼヴィムのことなど一切考慮せず、それは起きた。

 

 

 

 




質問があれば、活動報告の方にどうぞ。

 感想や意見等お待ちしております。


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三十二頁


多分、自分なりにハイペース投稿は今回が最後かな。
次の投稿はまた空きそうな気がする。

それはそれとして病院検査したら結果は来週だから、また来てね!って言われて辛たん。



 

 

 

 一瞬、世界が停止した。

 しかし、それは本当に一瞬の出来事でしかなく、一瞬きの間に世界はまるで飴細工を砕いたかのように、それともガラスを割ったかのような音をたてて動き出した。

 そんな不可解な現象にリゼヴィムは嗤い、死銃は肩を竦める。

 

 

「へ?いま、なにが……」

 

 

 そんな気の抜けた疑問の声をあげる兵藤一誠を無視して、護衛である二人の内M16がカーテン近くへと移動し、窓からグラウンドへと視線を向ける。

 その行動に今起きた現象が何なのか、流石は神器の研究家というべきかアザゼルはすぐさま理解する。

 

 

「そうか……『停止世界の邪眼(フォービトウン・バロール・ビュー)』か」

 

「おまけにテロリストさ。堕天使の総督」

 

 

 肩を竦めながら、窓を親指で指し示すM16にアザゼルはいったいなにが来たのかを理解し、すぐさま死銃はメインアームのAK‐12を取り出し、リゼヴィムへと視線をよこす。

 それにリゼヴィムは頷き、すぐさま死銃は指示を飛ばしていく。

 

 

〈M16、お前はスポンサーの護衛を優先。UMP40、お前は適度に弾丸をばら撒け〉

 

「任せろ指揮官」

 

「りょーかい、指揮官」

 

〈100メートル外だが、まあ、牽制にはなる〉

 

 

 そう死銃が言いながら何やら用意しているのを尻目にリゼヴィムは席を立ち各陣営のトップらを見回しながら口を開く。

 

 

「さて、総督殿がいったとおり今神器が使われた……そういえば、たしかサーゼクスくんキミの妹御の眷属に停止系の神器持ちがいる、そう記憶しているが?」

 

 

 そんなリゼヴィムの責めるような声音に両魔王はその表情を強張らせ、自分の眷属のことを言われていることに理解しリアス・グレモリーは立ち上がり反論しようとするがしかし、いつの間にやら近くへと移動していたグレイフィア・ルキフグスによってそれを止められる。

 

 

「っ!グレイフィア……!!」

 

「お嬢様、落ち着いてください」

 

 

 止められるリアス・グレモリーを横目にいまだ完全に混乱の中にいる兵藤一誠は耳に入ってくる情報にふとした疑問がその胸中に浮かんだがしかし、この現状といまだ混乱しているが為にその疑問が口に出ることはない。

 だが、そんな胸中を見抜いたのか、顔に出ていたのか、リゼヴィムは子供を諭すような表情で口を開く。

 

 

「赤龍帝くん。どうやら、どうして君の仲間が原因と断定されたのか、疑問のようだ」

 

「まず神器を使ったという確証、これは私の力である『神器無効化』が発動したために神器であると断定。次に何故君の仲間が原因であるのか、まあ、これは簡単だろう。少々情報統制がずさんであるのと、現状判断からそうだと推理したのだよ。実際、総督殿も同じ意見のようだしね」

 

 

 それにここの外にいる各勢力の兵は軒並み停止しているようだし。

 そう付け加えながら、リゼヴィムは窓の外をみる。実際、窓の外から見えていた各勢力の手勢はまるで時間が止められたかのよう────実際に時間停止しているわけであるが────にその表情も身体も停止していた。

 そして、同時に新校舎がわずかに揺れる。断続的に

 

 

「魔法使いどもか……放たれてるのから察して中級悪魔程度ってところか」

 

〈大方、どこぞの魔王に対しての不満もとい私怨だろうがな。さて、リゼヴィムどうする〉

 

 

 窓の外。

 グラウンド、その空中に至るまで人影が現れている。よく目を凝らせばそれらは皆一様に黒いローブを着込んだ魔術師の風体であり、彼らは次々と魔力の塊を新校舎へと放っている。そして、窓の隙間からばら撒かれる銃弾が彼らの防御術式を薄紙の如くに喰い破り、一人また一人とその胸や頭に鮮血の花弁を咲かせている。

 弾丸を放つのは死銃の指示を受けたUMP40。

 それらを見ながら、アザゼルは冷静に状況を確認し死銃がリゼヴィムに指示を仰ぐ。

 

 

「んん、まあ、この辺りは私ではなくサーゼクスくんらに任せるとしようか」

 

 

 そう言いながら、再び視線をサーゼクスらへと戻す。

 視線を向けられたサーゼクスは顔をしかめながらも思考を回しているのが理解できた。

 

 

「我々は外には出れない。状況を鑑みるにギャスパーくんを解放するのが先決だろう。少なくともそうすれば、この部屋の外にいて止められている我々の軍勢が動けるようになる………」

 

 

 少なくとも、この場にリゼヴィムがいる限り神器の効果は意味を成さないが、それはあくまでこの部屋の中に限り外の部下たちは神器の力の影響下にある。テロリスト鎮圧のためにも数は多い方がよく、そして身内が捕らわれているというのは見過ごせない。

 そういった観点からの判断にリゼヴィムは目を細め、リアス・グレモリーが強い意志を瞳に宿して一歩前へ出る。

 

 

「お兄様、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。私が責任を持って奪い返してきます」

 

 

 そんな自信に満ちた彼女の進言にサーゼクスはふっと笑い、死銃が呆れた。

 

 

「言うと思っていたよ。妹の性格ぐらい理解している……リアス、旧校舎に『戦車』はあるかい?」

 

「はい、未使用のものが」

 

「キャスリングならば彼らの妨害術式も抜けられるだろう。そして、虚も突けなんてか先んじられそうだ」

 

 

 キャスリング。王と戦車の位置を瞬間的に入れ替えられるチェスのルールの一つであり、レーティングゲームにおける特殊技のそれによる転移を提案するサーゼクスにリアス・グレモリーとグレイフィア・ルキフグスが頷き、すぐさまグレイフィア・ルキフグスが簡易術式を組み始め、サーゼクスが魔力をくべ始める。

 それらから視線を外してアザゼルは自身の戦力であるヴァーリへ指示を出す。

 

 

「ヴァーリ、お前は外で敵の目を引け。白龍皇が前に出れば多少はあっちの作戦も乱せるかもしれねぇ。それに何か動くかもしれない」

 

「俺がここにいることはあっちも承知だろう」

 

「だとしてもだよ。それにあっちの傭兵どもはあの野郎の指示じゃなければ動く気がないようだしな」

 

 

 そう言って、一瞬視線を死銃らへと向けるアザゼルにまるで心外だ、とでも言うように死銃は肩を竦めるがアザゼルはそれを無視してヴァーリに向き直る。

 

 

「いいか、くれぐれも旧校舎を巻き込むんじゃないぞ。これから和平なんだからよ」

 

「ふ、了解」

 

 

 アザゼルの言葉に軽く息を吐きながらも同意し、眩い光を放ちながらその背中に光の翼を展開する。

 

 

「―――禁手化」

 

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!!!!』

 

 

 機械的音声の後に、ヴァーリの身体は真っ白なオーラに包み込まれ、次の瞬間には白い輝きを放つ全身鎧に包まれていた。

 これこそが白龍皇の禁手化、『白龍皇の鎧』。

 その鎧を身に纏ったヴァーリは、キャスリングの準備をしている兵藤一誠と何やら死銃と話し合っているリゼヴィムを一瞥してから、窓を開けてグラウンドへと飛び出していった。

 

 瞬間─────外で爆風が巻き起こり、魔術師たちが白い竜によって蹂躙されていくのが窓から見える。

 

 自身の宿敵であるらしいその姿に兵藤一誠は戦慄し、死銃はどうやって殺すかその手順を構築していく。

 

 

「アザゼル。先の話の続きをしよう」

 

「あん?どの話だ?」

 

 

 魔力を術式にくべ終えたのか、サーゼクスはその顔をアザゼルへと向け、唐突に話を始めた。

 

 

「神器を集めて何をしようとしていた。『神滅具』所有者も何名か集めたようだな?」

 

 

 自分たちが集めた情報。不審なそれをもってサーゼクスはアザゼルへと詰問するが、アザゼルはそれに首を横に振ることで答える。

 

 

「備えてたんだよ」

 

「備えていた?戦争を否定しておきながら不安を煽る物言いですね」

 

 

 ミカエルはそんなアザゼルの具体的ではない答えに呆れる。

 

 

「いったろ?俺らは戦争はしない。だが、自衛の手段は必要だ。別にお前らに備えてるわけじゃない」

 

「では?」

 

「それは――――「『』」っ!?リゼヴィム、てめぇ」

 

 

 アザゼルの言葉に割り込むようにある組織名を語ったリゼヴィムにこの場のほとんどの視線が集中する。

 そんな彼らにいつも通りの笑みを浮かべる。その笑みに否応なく各陣営のトップらは身構えてしまう。

 

 

「どっかの組織の離反者が創った組織が前身のテロ集団でな、おたくら三勢力の危険分子やら離反者ら、他には人外に対して敵対心のある神器もちの人間も合流してる奴らだ」

 

 

 けらけら、とさきほどまでの貴族然、魔王然とした態度はどこかへと消え去り邪悪な悪魔らしい男がそこにはいた。

 危険。そう感じさせるがしかし、ミカエルが情報の為に口を開く。

 

 

「その者らの目的は?」

 

「おいおい、いつだってそういう奴らの目的は単純だろ?現状の破壊、理想の完成。テロリストってのはたいていが一種の思想犯的なものだ。頭の願いとその下の奴らの望みは得てして違うってところも変わらないな。ついでに頭の正体も教えてやりたいが………それは総督殿に譲ってやるよ」

 

 

 椅子に腰かけ、傲慢そうに顎でアザゼルに話を促すリゼヴィム。一同の視線が今度はアザゼルへと集まり、アザゼルはいら立ち混じりに答える。

 

 

「無限。龍神だよ、奴らの頭は」

 

 

 

 その告白にこの場のほとんどのが絶句する。

 それもそうだろう。

 なにせ、それらが示すものは───

 

 

『そう、オーフィスが我々のトップです』

 

 

 声と同時に会議室の床に悪魔の魔法陣が浮かび上がる。

 その魔法陣を知るサーゼクスはすぐさま、グレイフィアにキャスリングの指示を飛ばし、リゼヴィムは新しい玩具の登場に嗤い、死銃もまた嗤った。

 

 

 

 

 




楽しい楽しいリゼヴィムさんによる煽りタイム始まらないよ!

ところで本作のヒロインなんだけど、やっぱりハイスクールD×Dの方からもヒロイン出したいなぁってなった。え?悪魔?無理でしょ。



「人間など劣等で下等でしょう?我々至高の存在たる悪魔の為に生きる家畜でしかない、卑小で愚かな存在」

「いいや、俺はそうは思わない」

「さあ、見せてくれ。お前ならやれるはずだ」



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三十三頁


 これはTwitterのほうでもいったんですが。
 UNDEADの方は極力週一投稿したいと思います。
 といっても、いまだ迷走ぎみであるのは事実なので、投稿できそうな週はTwitterで月曜あたりに報告するつもりです。




 

 

 

 

 

 レヴィアタン。

 これから、現れる存在を思い浮かべながら死銃は嗤う。

 魔王になれなかった哀れな悪魔、自分の実力不足が招いた結果であるに関わらず嫉妬するしか能のない女。その実力は素のアザゼルに届かない程度であり、魔王の末裔であるからか通常の上級悪魔よりかは強いがしかし魔王や最上級悪魔には届かない。そこまで、考えて死銃の脳裏にちらりと一人の少女の顔が浮かび上がる。

 瞬間、マスクの下に浮かんでいた嘲笑の表情は消え失せて、残るのは冷徹な表情。

 まるで気分を害されたかのような、その変化はほとんどの者は気づかないがリゼヴィムやユーグリット、他の人形らは気が付く。無論、その理由を察せれたのはその中でもリゼヴィムだけだろう。

 

 

 広がったレヴィアタンの魔法陣が輝き転移が行われる。

 そうして、現れるのは一人の女性。胸元が大きく開いており、深いスリットも入ったドレスに身を包む褐色の肌をした黒髪の女。

 眼鏡をかけており、その顔だけを見るならば仕事の出来そうなキャリアウーマン、いやどちらかといえば嫌味たらしいきつい女といったところか。だからこそ、なおさら死銃はいら立ちを憶える。

 そんな死銃の心境など女は知るはずもなく、女は不敵な物言いでサーゼクスへと挨拶をする。

 

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

 

「先代レヴィアタンの血を引く者。カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」

 

 

 旧四大魔王が戦争で死に、新たな魔王を擁立しようとした際にルシファーの長子たるリゼヴィムを除いて徹底抗戦を最後まで唱えた他魔王三家の末裔。現魔王らクーデター政権の彼らはタカ派であった彼らを冥界の辺境へと追いやる形でクーデターを終わらせたがしかし、処刑ではなく流刑を行ったことこそが今回のようなテロ勃発の要因の一つであるがそれはまた別の話。

 後世に残した遺恨の種が芽吹き、ここに現れた。

 カテレア・レヴィアタンは挑戦的な笑みを浮かべながら話し始める。

 

 

「旧魔王派の者たちはほとんどが『禍の団』に協力することに決めました」

 

 

 その言葉にサーゼクスは一瞬、リゼヴィムへと視線をやるが件のリゼヴィムは肩を竦めて関与を否定する。

 

 

「カテレア、それは言葉通りと受け取っていいのだな?」

 

「サーゼクス、その通りです。今回のこの攻撃も我々が受け持っています」

 

「――――クーデターか」

 

 

 そんなサーゼクスの言葉にリゼヴィムは眉を顰める。その声音からどうしてクーデターを起こすのか理解できない、そのような感情を感じ取ったからだ。

 クーデターを起こして奪った側がなぜ、クーデターを起こされるのを理解できないのか。軽く呆れつつ、リゼヴィムは事の成り行きを見守る。

 

 

「………カテレア、何故だ?」

 

「サーゼクス、今日この会談のまさに逆の考えに至っただけです。神と先代魔王がいないのならば、この世界を変革すべきだと、私たちはそう結論付けました」

 

 

 聖書に関する存在が消えただけで至ったその考えにユーグリットと死銃は呆れるがそんなことは気づかないカテレア・レヴィアタン。

 

 

「オーフィスには力の象徴としての、力が集結するための役を担うだけです。彼の力を借り、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。―――新世界を私たちが取り仕切るのです」

 

 

 あまりに突拍子もない話だ。

 なるほど無限の龍神ならば世界を壊すことは可能だろう。だが、再構築ができるのかと聞けば不安しか残らない、さらに言うならば世界を壊すのは可能といったが出来るとは限らない。なにせ、そんなことをしようものなら、どこぞの夢幻が出っ張ってくるのは間違いないのだから。

 いや、結果として世界は滅ぶかもしれない。無限と夢幻がぶつかれば、そうなるのは明白だ。

 無論、そのさいにテロリスト共が生きているのかはわからない話であるが。

 

 

 と、そんな風に死銃らが考えている間に話は進み、なにやらセラフォルー・シトリーとカテレア・レヴィアタンが言い争っている。いや、正確に言えばカテレア・レヴィアタンが一方的に憎々し気に吼えているのが正しいだろう。

 

 

「今日、この場であなたを殺して、私が魔王レヴィアタンを名乗ります。そして、オーフィスには新世界の神となってもらいます。彼は象徴であればいいだけ。あとの『システム』と法、理念は私たちが構築する。ミカエル、アザゼル、そしてルシファー――――サーゼクス、あなたたちの時代は終えてもらいます」

 

 

 

 その言葉にミカエルや魔王らは表情を翳らせ──────

 

 

 

 

 

 

「ク、ククク、クゥァアヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒィッッ!?ゲホッゲホッ!?あぁ……嗤い死ぬかと思った………腹と胸と喉とあと顎いてぇぇ……」

 

 

 唐突に嗤ったリゼヴィムによってその空気は変わった。

 嗤い死にかけたリゼヴィムの背をユーグリットが軽く叩き、護衛であるM16がやや前へと出、そして死銃は思考を切り替える。

 

 

「リゼヴィム・リヴァン・ルシファー様?なぜ、あなたがここに……」

 

 

 いまの抱腹絶倒の嗤い声でようやくリゼヴィムの存在に気付いたのか、まるであり得ないものを見るような目でリゼヴィムを見るカテレア・レヴィアタンにリゼヴィムは胸を押さえながら、しかしてその嘲笑の表情は崩さずにカテレア・レヴィアタンに向き直る。

 

 

「世界の改革ねぇ?自分の身の丈に合ったもの目指せよ。そもそもセラフォルー・シトリーにも勝てなかったてめぇが?ツフォーメを差し置いて魔王レヴィアタン?なんだよ、なんだよ、嗤い殺す気かよ」

 

 

 そこにいるのは、怒りと嘲笑の感情をないまぜにした男。

 男から漏れ出る魔力にカテレア・レヴィアタンは無意識に一歩後ずさってしまったが、それに気づき二歩前へと出て、気丈に振舞ってしまう。

 

 

「このレヴィアタンの末裔たる私がセラフォルーに負けると!?」

 

「負けてるから、魔王の座とられてんだろうがガキ。それによぉ、てめぇらが世界を支配なんぞ出来るもんかよ。人間に劣るようなてめぇらが」

 

 

 嗤う。嗤う。嗤う。

 そこにはカテレア・レヴィアタンをひたすらに否定する感情だけが込められていた。

 だからだろう、決して聞き捨てならない言葉も混じっていたこともあり、カテレア・レヴィアタンは怒りに表情を染めて激高する。

 

 

「人間に劣る?我々が?ふざけるのも大概にしてもらおうか、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー!!人間のような劣等で下等、我々悪魔に奉仕し搾取されるためだけに存在する家畜でしかない、卑小で愚かな存在が、家畜如きに我々が劣るはずがあるわけがないだろう!!そして、我々の世界改革を嘲笑う貴様などもはやいる意味も無い。いいでしょう、ここで旧現ルシファー仲良く死ぬがいいッッッ!!!!」

 

 

 全身に魔力を滾らせていますぐにでもこの場の全員を殺さんとするカテレア・レヴィアタン。

 そして、同時に窓際全域が吹き飛んだ。下手人はカテレア・レヴィアタン、ではなくリゼヴィム。

 

 

「いいや――――――俺はそうは思わん」

 

 

 もはや、嘲笑も怒りも鳴りを潜めた。

 魔王らしく、しかしてリゼヴィム・リヴァン・ルシファーらしく。冷酷に処断するように、前へと出された手を降ろしながら彼は語る。

 

 

「人間の可能性。俺はそれを知っている、証明して見せよう」

 

 

 さあ、始めよう。

 

 

「さあ、見せてくれ。お前ならそれが出来るはずだ―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈任務開始――――――――殺す〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈任務開始────────殺す〉

 

 

 

 

 

 

 瞬間、目の前にそれは現れた。

 髑髏を模したフルフェイスマスクをつけた何者か─────リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの言からして、恐らくは人間であろう。その接近にまったく、気が付けなかった。

 回避しようにも、もはや間に合わない。

 

 

「がァッ!?」

 

 

 ッッ!?口内に何か棒状のモノが叩き込まれたッ!??

 叩き込まれた際に前歯が何本か折れ、その勢いままに私の身体は会談会場から追い出される。すぐさま、反撃しようにも私の身体は咄嗟のことで反応できず、ただただ視界だけが移り変わる。

 そうしている内に口内に叩き込まれたものがなんなのか、ようやく理解できた。

 それは銃だ。銃口が私の口内に叩き込まれている………!!!

 

 

〈死ねよ〉

 

 

 無感情なノイズがかった声と共に髑髏の人間がその銃の引き金を引いた。

 

 

「ぁぁぁあああああ―――――――!!??」

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイ!!??

 首裏、と口内に激痛が走る。イタイ。 

 血が、血が、わた、しの、尊いレヴィ、アタンの血が、ッ!?

 銃撃の勢いで、私の、口から銃口が引き抜かれ、そのまま、私は腹を蹴りつけられて吹き飛んでいる。

 

 

〈囀るな〉

 

 

 再び、銃撃が放たれる。

 だが、もう十分だ。私は、激痛に呻きながらもそれを回避し、目の前の人間を殺す。

 

 

 

 





 カテレア対死銃……ファイッ!!

 そういえば、死銃もとい鴎のヒロインが決まりました。
 二亜とアルテミシア以外に二人、内片方はTwitterでも言ってますが、もう一人は内緒という事で。
 それと、活動報告で質問箱してますので何かありましたらどうぞ。


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三十四頁

書ける時に書く、そして投稿する。
それでいいじゃあないか。


 

 

 

 駒王学園のグラウンド上空にて繰り広げられる殺し合い。

 

 片や悪魔、片や人間。翼を持つ種族と持たざる種族。本来成立できぬはずの戦闘がここで繰り広げられている。

 

 

「ああぁぁぁぁっっ!!」

 

 

 絶叫を上げながら膨大な魔力をまき散らしていくカテレア・レヴィアタンに対して、死銃は空中に製造した量産型戦術人形たるScoutらを足場にしながら空中を跳び上がりつつAK-12でまき散らされている魔力の塊を打ち抜きながら冷徹にカテレア・レヴィアタンへと迫る。

 

 

〈邪魔だ〉

 

 

 片手で引き抜いたハンドガンFive‐seveNの引き金を引き、六発の銃弾をカテレア・レヴィアタンへ放つ。だが、戦闘開幕時のような状況でないからか、銃弾にカテレア・レヴィアタンは反応し回避する。

 が、そんなのは死銃とて理解している。

 カテレア・レヴィアタンが回避した先、既にAK-12より放たれた銃弾が迫っている。

 

 

「がッ!?」

 

 

 肩口を抉るように銃弾が彼方へ飛んでいき、カテレア・レヴィアタンが痛みに悶えながらもその手を銃撃後の死銃へと向けてそのまま魔力の嵐を放ってみせる。何体かのScoutが巻き込まれて破壊されていくが死銃は外套の一部を破損させられる程度に損傷を抑えて嵐から逃げる。

 逃げた先に待機していたScoutを足場にして、カテレア・レヴィアタンへと視線を向ける。

 先ほどまでの威厳と自信に満ちた姿はどこへと消えたのか、そこにいるのは肩口や首裏、さらにはわき腹に銃創を負った血濡れの女。

 見た目からしてボロボロであるが、その内側は見た目以上に悲惨である。退魔用に調整された水銀弾。本来、水銀────特に純粋な非化合物ではない水銀は蒸気吸入によって肺へ侵入した場合に限り簡単に人体に蓄積され、逆に蒸気でない水銀は皮膚からゆっくりと吸収される。さらに言えば、消化器からの吸収はさらに遅く、全体的に肺からの吸収でもなければ、対して人体に蓄積されない。

 無論、これは純粋な非化合物の水銀に限るのだが。

 さて、そんな水銀に対し、死銃の使用する退魔用に調整された水銀弾。これには天使や堕天使の祝福つまりは光力が僅かながらに含まれており、光力が悪魔の肉体に流れ込む際に水銀も侵入し悪魔の身体の中におよそ二割程度が蓄積されていくという性質となっている。

 

 

 人間と違い丈夫である悪魔だが、丈夫であるからこそその毒性に長く苦しみ死ぬ。まあ、大抵は銃撃による大量出血か生命活動に重要な器官が破壊されて死ぬのだが。

 

 

 それ以前に初手で死ななかったことは果たしてカテレア・レヴィアタンにとって運がよかったのか悪かったのか、それは誰にもわからない。少なくとも死銃にとっては運が悪かった話ではある。

 

 

〈いい加減に殺すか〉

 

 

 そう呟きながら、手に持っていたAK-12をしまい込み、新たな武装を取り出して見せる。

 軽機関銃ネゲヴ。

 分隊支援火器であるそれの銃口が静かにカテレア・レヴィアタンへと狙いを定める。ゆったりとした動作にカテレア・レヴィアタンはそれを好機と見たか、魔力を再び死銃へと放たんとする。が、そんなことをさせるわけがない。

 死銃の周囲にScoutらが集まり、弾幕を生成しカテレア・レヴィアタンの邪魔をしていく。

 

 

「くっ、ガラクタが……!!」

 

 

 飛行しながらその場を離れるがScoutらが追撃していく。

 そうして、飛行しScoutの追撃より回避していくターゲットを冷たい銃口が捕捉する。

 

 

〈恐れるな。死ぬ時間が来ただけだ――――――〉

 

 

 引き金が引かれる。

 ネゲヴ軽機関銃の銃口が火を吹く。5.56×45㎜NATO弾が逃げ続けるカテレア・レヴィアタンの背を追いながらばら撒かれる。

 その際に地上の魔術師たちが巻き込まれていき、いとも容易く防御術式を食い破られながらその身体をミンチ以上の悲惨なものへと作り変えていく。地上にはサーゼクスによって魔術師の掃討命令を受けた木場祐斗とゼノヴィアがいるがしかし、当たり前のことだが死銃がそんなことを気にするわけがない。

 上空から降り注ぐ銃弾の雨はカテレア・レヴィアタンが複雑に飛行するために流れ弾は様々な場所に動き多くの命を奪っていく。

 

 

 リロード。

 

 リロード。

 

 リロード。

 

 

 神器と接続している以上、リロードという工程は踏まざるを得ないがその弾薬が尽きるということはない。故にこの鉄の雨は途切れるということを知らない。

 そして、それに気づく存在はここにはいないが死銃がリロードするたびに銃撃の火力が上がっている。

 

 

消えろ(マニックブラッド)!!〉

 

 

 そうして、ついに鉄の雨は標的に追いついた。

 

 

「ああああぁぁぁぁぁぁァァァッッ!!??」

 

 

 右足のつま先が雨に触れる。それにより、風穴などという優しいものはない。あるのは既に右足のつま先が、足の甲が千切れ崩れ血を噴き出し、カテレア・レヴィアタンは喉奥から何度目になるのかわからない絶叫をあげる。

 追いつかれたという事実がもはや、逃げ切るという結末をカテレア・レヴィアタンの胸中から消え失せ、そのまま彼女は雨に呑まれてその命を散らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死銃へと予想外の一撃が叩き込まれなかったらの話だが──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旧校舎の玄関をくぐり外へと出た瞬間、俺たちの目の前に轟音を立てて何かが落ちてきた!勢いが強かったのだろう土煙が立ち込めるがすぐに土煙は吹き飛び、そこにいたのは──────

 

 

〈クソが………〉

 

 

 ボロボロの外套を纏った髑髏マスクの男、死銃だった。

 

 

「流石、だな」

 

 

 そんな死銃へと声をかけながら、俺たちの前に眩い輝きを放つ白龍皇が舞い降りてくる。その傍らにはズタボロというかあまりに悲惨な状態になっている知らないお姉さんがいた。

 

 

「はぁ……はぁ、和平が決まった瞬間、拉致した…ハーフヴァンパイアの神器を暴走させ、テロを開始する手筈でした。はぁ……はぁ、頃合いを、見てから私と白龍皇が暴れる。三大勢力のトップの一人でも葬れば良し。会談を壊せればそれでよかったのです……」

 

 

 ろ、露出がすごい服だけれども、あまりにズタボロで、右足何かはつま先がない。

 いや、それよりもこれってどういう状況なんだ!?

 た、確かに死銃が一緒にいた爺さんに対して、白龍皇がすげぇ敵意を向けてたのは分かるけれども。それでも、いまここでやることなんかじゃぁないはずだ。

 そんな俺の疑問なんて知らんと言わんばかりに死銃は立ち上がる。

 

 

〈まぁいい……白龍皇、貴様テロリストに降るのか〉

 

「いや、あくまで協力するだけだ。魅力的なオファーを受けたんでな」

 

 

 え?つまり、白龍皇がテロリストの仲間ってことなのか?

 いきなりのことすぎて、俺は何だか頭が痛くなってくる。だが、やっぱり状況はそんな俺のことを無視して進んでいく。

 

 

「ヴァーリ!!お前!!」

 

「悪いなアザゼル、そういうことなんだ」

 

 

 新校舎の方って、窓が吹き飛んでるっ!?と、ともかく、会議室の方から堕天使の総督アザゼルが声を荒げる。そりゃそうだよな、いきなり身内のがテロリストになるって言ってんだから。

 なら、お、俺たちも戦わなきゃ─────

 

 

「ヴァーリ。ヴァーリ・ルシファー」

 

 

 瞬間、つまらなそうな声が響いた。いや、それより、いまルシファーって?

 

 

「なぁ、我が孫。我が子ラゼヴァンと人の娘との間に生まれた奇跡の子。本当にお前はテロリストに加担すると?本気でそう言っているのか?」

 

 

 死銃と一緒にいた爺さんがアザゼルを押しのけて悲しそうな声音を震わせながらそう白龍皇に訴えている。

 ていうか、白龍皇があの爺さんの孫でルシファーの末裔?そんな漫画みたいなことが本当にあるってのかよ!?

 

 

「ああ、そうだ。それに俺がどうしようと貴様には関係ない」

 

 

 責めるような声で突き放す白龍皇に爺さんは顔を俯かせてる。ふ、二人の間にどんなことがあったのかは知らないけれども二人の間には大きな溝があるのが窺える。

 そして、爺さんは俯いていた顔を上げて……!?

 その表情は悲しみなんてものではなかった。

 

 

 

「じゃあ、死ね」

 

 

 あまりに予想外な言葉が響き、同時に辺り一帯に黄土色の装甲を纏ったでっかい奴らが現れ始めた!?なんだ、あれ!?

 

 

プランB……Aegis起動。手段を選ぶつもりはない。それが仕事だからな〉

 

 

 

 

〈深度演算開始――――最適化強制インストール〉

 

 

 

 俺らを置き去りにして、戦闘が始まった。

 

 

 

 




とりあえずカテレアファンの方、すいません。
別にカテレアが嫌いなわけじゃあないんです。
鴎が悪魔が基本嫌いなだけなんです。


感想を貰えると嬉しいです(直球)


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三十五頁

今週は忙しかったけれども頑張って執筆したお。
あと、健康のために一時間は週三で歩くことにしたよ。

今週はUNDEAD投稿できないかもしれないです。
理由としては今週火曜まで死んでて、昨日この話を書き始めて、明日明後日明々後日は忙しいからですね。


 

 

 

 深度演算。

 それが始まると同時にあらかじめ配備されていたAegisらが起動し、強制ハックが開始された。

 なされるのは彼らの電脳に膨大な作戦データおよび戦術データの強制インストール。これにより本来、時間のある時に蓄積されたデータを整理し精算することで量産戦術人形はその最適化工程を進めるのだが、しかし強制ハックにより死銃の演算処理能力だけでAegis六体分の経験値整理精算を一瞬で行われていく。

 本来専用の機器でも数分は要する作業であるが、『戦術人形前線(ドールズフロントライン)』という常時発動型禁手(バランス・ブレイカー)による大量生産を行っている死銃の演算能力であれば、なにも問題はない。

 無論、仕事が終わればしばらく頭痛に悩まされるという弊害が存在するわけではあるが。

 

 

 さて、強制最適化を成されたAegisらは、速やかにそのモノアイを紅く輝かせて、その脚裏の駆動輪を駆動させてグラウンドをあたかも氷上を滑るように疾走し、白龍皇へと迫る。

 

 

「死銃、本気の君とも戦ってみたいが、ここは観戦させてもらうとしよう」

 

 

 魔王の末裔らしく膨大な魔力を向かってくるAegisらへと放ち、そのまま上空へと戻っていく。そんな白龍皇を視界の端に収めつつ、すぐに視線を満身創痍のカテレアへと向ける。

 その視線、ターゲットの変化を察知したのだろう、放たれた魔力を装甲壁で防御し無傷のAegisらがすぐにカテレアへと標的を変更し、疾走する。

 Aegisらに飛行能力はない、そう見抜いたのだろう。

 カテレアもまたその背から悪魔の翼を生やして、白龍皇同様飛翔する

 

 

 

 

「がぁッ!?」

 

 

 

 ことは出来なかった。

 飛び立った瞬間、その翼が根元から消し飛んだのだ。それにより、カテレアは空中より落下していき落下地点には既にそこを中心にAegisらがメイスを手にして待機している。

 その光景にカテレアはもちろん、この戦闘を見ているほとんどの者らはその後のことを脳裏に過らせ、表情を青ざめる。

 

 

「ひ、ひぃっ……!?」

 

 

 そんな魔王の末裔らしからぬ悲鳴をあげて、カテレアは処刑場へと落下していく。逃れようと無様にその手を上空へと伸ばして。

 

 地に落ちた魔王の末裔に訪れるのは辺境への追放などという生温いものではない、訪れるのは戦いの末の名誉ある戦死ではなく、ただ、ただ、作業的に殺されるという終わり。

 

 

「あぎゃぁッ!?」

 

 

 メイスが足首を。

 メイスが脹脛を。

 メイスが手を。

 Aegisらがその手に握るメイスを振り上げては降ろす、振り上げては降ろすを繰り返していく。

 潰される。弾ける。痛み痛み痛み痛い痛み痛み痛み痛み痛み。

 何もできない、逃げられない。

 死ぬことしかできない。

 

 

 

 だが、魔王の末裔の誇りかそれとも意地か、カテレアはいつ死ぬかもわからない状況でありながらも奥の手である小瓶を取り出して、中に入っていた小さな黒い蛇をなんとか、口に運んで飲み込んだ。

 刹那─────。空間が激しく振動し、周囲一帯に力の波動を波立たせ、カテレアから不気味なオーラが溢れ出ていく。

 その唐突のオーラにAegisらは吹き飛ばされ、死に体であったカテレアは先ほどまでの傷など存在しなかったとばかりの無傷のカテレアが再生している翼を広げて再び、空へ─────────

 

 

 

 

 パアァンッ─────

 

 

 

「は?」「え?」

 

 

 その頭を柘榴に変えて、死んだ。

 

 遺骸はそのまま落下し、塵と変わった。

 

 

〈……次〉

 

 

 死んだカテレアなどもはや興味なく、死銃は次の標的へと視線を向ける。が、先ほどのカテレア同様にオーラがまき散らされながら赤が空へと飛翔する。

 それが白とぶつかり始めたのを確認して、ため息を吐きながらAegisらを下げ、自分は腰からフックワイヤーを飛ばしそのまま校舎へと戻っていく。

 

 

「おかえり。なかなか雑にカテレアを処理したな」

 

〈もはや、アレ如きに構う理由がなくなったからな〉

 

 

 いまだ、カテレアの惨殺により死銃へと話しかけられない三勢力の者らを余所にリゼヴィムが死銃を迎え入れる。無論、死銃の仕事はこれで終わりなどではない。

 リゼヴィムを下がらせたうえで再度、Aegisを展開し窓際へと並べる。

 既に白龍皇の一撃ではAegisへダメージを与えられないのは分かっているためだ。

 

 

「しかし、まあ、赤龍帝ねぇ……」

 

 

 対物ライフルを取り出す、死銃の隣。護衛であるM16とUMP40に守られながら顎髭を摩りつつ、グラウンド上空でぶつかり合う赤と白を見る。

 何を隠そう、いま、グラウンド上空でぶつかり合っているのは、赤龍帝・兵藤一誠と白龍皇・ヴァーリ・ルシファー。つまりは例に漏れず二天龍がぶつかり合っているわけで………。

 

 

〈どうする、ここでやるか〉

 

「いやいや、テロ屋ならともかく手を出すわけにはいかないでしょ。こちとら、対テロリストを謳ってるんだよぉ?」

 

 

 リゼヴィムの言葉に後方でサーゼクス・グレモリーやセラフォルー・シトリーが何か反応しているが死銃にとってそんなものはどうでもよく既に対物ライフルIWS2000を伏せ構えそのスコープを覗く。

 死神の死線は白龍皇へと定まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 赤と白がぶつかっている。

 何やら叫びながら戦っているがそんなものはどうでもいい。

 俺がやるべきは冷静に確実に白龍皇を狙撃する事。

 

 

「引っ掻き回すのに必要だ。撤退させることを考えて撃て」

 

〈了解〉

 

 

 横からリゼヴィムからの注文が飛んでくる。なんともまあ、なかなか面倒な注文だ。

 だが、傭兵なんてもんは基本的に報酬さえきちんと出してくれるなら雇い主にしっかりと応えるものだ。俺が面倒に感じようが感じまいがやらねばならないことではある。

 しかし、そうなると保有能力(スキル)は使えんか。【鷲影強襲】は火力上昇系のそれだからな。

 ともなれば出来うる限り軽傷で済ませる必要があるな。

 対物ライフルを持ち出しておいて、軽傷で済ませようとするのは正直意味がわからない話だが……、いまさら武器を変えるのもどうかと思う、それに相手は神滅具の鎧系禁手だ。

 

 

〈腕がそのまま吹き飛ぶわけもなかろう〉

 

 

 まあ、仕方ない。せめて、銃弾はまともなものにしてやろう。

 なんの変哲もない15.2mmAPFSDS弾を一発装填し、狙いを定める。

 

 

 後方の方でなにやら騒いでいるが………知らん、どうでもいい話だ。

 スコープから見える視界には白い腕になった赤龍帝と笑っている白龍皇が見える。恐らく、白龍皇の力の一片を取り込んだのだろう。理解できない話だ。

 あのまま自滅してくれれば楽だったんだがな。

 

 と、白龍皇が何か始めたな……周囲の木々が圧縮されていく、半減を力ではなく周囲そのものにし始めたか。いつの間にやら赤龍帝の近くにアザゼルが移動しているが、何を…………

 

 

 

「ふざけんなあァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッッッ!!」

 

 

 うるさっ!?

 

 

「貴様ッッ! 部長のォォォォォ! 俺の部長のおっぱいを半分の大きさにするつもりかァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

 

〈帰っていいか〉

 

「い、いや、帰んな、ふ、ぐぅ……ダメ、ヤバい………嗤いそう…」

 

 

 ええぇ……、いや、わかっていたけどさ。

 流石に、ええぇ……。頭痛くなってきた。

 なんなの?ふざけないと死ぬ病気にでも罹ってんの?集中が死んで来たんだが………もうここで赤龍帝を始末したほうが良いんじゃなかろうか。

 と、どうやら意味のわからんパワーアップをし始めた、赤龍帝が白龍皇をぶちのめし始めてる。確かに神器は所有者の想いの丈で強化されるがしかし、流石に意味が分からなすぎるのだが?

 

 

「はひぃ、はひぃ……おいちゃん、死んじゃう………あー、駄目だなありゃ。しゃあない、これ以上はちょっと無理だわ狙撃は中止でいい」

 

〈はぁ…了解〉

 

 

 リゼヴィムの指示にやるせない気持ちと共に俺は立ち上がり、IWS2000を武器庫に収納しつつその視線を赤龍帝らのほうへと向ける。

 そこにはいつの間にかに闇へと消える白龍皇とその仲間である猿。

 既に戦闘は終了し、もはや傭兵のやる仕事はどこにもない、か。

 

 残っていたScoutらを撤収させ、Aegisらも撤収させる。

 こっからはリゼヴィムの仕事だ。

 俺はおとなしく、口を噤んでM16やUMP40のようにリゼヴィムの護衛に徹した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 西暦20✕✕年七月───。

 天界代表天使長ミカエル、堕天使中枢組織『神の子を見張る者(グリゴリ)』総督アザゼル、冥界代表魔王サーゼクス・ルシファー、三大勢力各代表のもと、和平協定が調印された。

 以降、三大勢力の争いは禁止事項とされ、協調体制へ───。

 また、先代冥界代表魔王ルシファーが嫡子リゼヴィム・リヴァン・ルシファーによりテロリスト組織『禍の団(カオス・ブリケード)』に対するテロ組織特殊対策部隊が結成された。

 アースガルド、冥府、須弥山からの委任状を以て三大勢力各代表が飲むこととなったこの対策部隊はリゼヴィム・リヴァン・ルシファーを長官とし、実働部隊としてリゼヴィム・リヴァン・ルシファーの私兵である傭兵部隊『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』が配備されることとなった。

 

 前者の和平協定を会談の舞台となった場所から『駒王協定』と称されることとなった。

 

 

 

 

 

 

 テロ組織特殊対策部隊は命名理由は不明であるが『EXE(エグゼ)』と名付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 立場が立場だから赤龍帝や白龍皇と戦うより、護衛してないといけないから……
 とりあえず、これで四巻は終了ですね。
 次回からは夏休み編だ。

 感想ください(乞食)


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三十六頁

気が付けば書き終わっていた。
俺も何を言ってるのかわからない、以下略。

UNDEADの方は現在執筆中ですが、今週投稿は厳しそうです。


 

 

 

 

 駒王協定よりなんやかんやで数日。

 高校生は間近に迫った夏休みに心を躍らせ、課題に頭を抱えるこの頃だろう。

 傭兵であれども学生である俺もまたしかり。精神年齢三十路を超える俺とてやはり男であることにはなにも変わらず、夏休みは去年同様リゼヴィムが人間界で所有している島のビーチでの三日間あるバカンスを二亜やアルテミシア、人形らと楽しむことが密かな楽しみとなっている。

 え?課題?そんなん英語がクソなだけでなんら問題はない。現国に関しては何をとち狂っているのかしっかり読書感想文なんてものを課題にした挙句に両面ありの文章課題を十五枚、しめて三十種類の文章課題なんぞを出してきたが先も言ってきた通り、英語がクソなだけで他はまったくもって問題ではない。

 こちとら、前世の大学を国語と世界史だけで合格したような人間だぞ?英語?知らない子ですね。

 理科も数学も俺の演算処理能力があれば片手間で終わる。

 

 

 さあ、待つのは楽しい楽しいバカンス!!

 血生臭い戦場や硝煙香る戦場を後にして、遊ぶとしようか!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これはなんぞや」

 

 

 軽く首を捻りつつ、俺は缶に口を付ける。

 キリン缶だが、あくまでレモンなんで飲酒じゃあない。いや、それはともかく、目の前に繰り広げられている現状に俺は疑問しかない。

 

 

「うへへへ……」

 

「振り切りますよぉ…!」

 

 

 終業式を来週に控えた金曜日、その夜。

 なんとか、次回のコミケの新刊作業を終え、あとは印刷するだけとなった二亜は謎のめんどくさいテンションで絡んできたため、二亜のアシスタントをしてたRO635をスケープゴートにしたんだが……酒でも飲ませたかROは目を回しながら振り切ってるし、二亜はシャツを脱ぎ捨ててROの太ももに頬ずりしている。

 うーん、なんともカオス。

 

 

「というか、俺がつまみ用意してる間に二本飲ませたのかよ……」

 

 

 そんな風に呟きつつ、空き缶を片付け用の袋に突っ込んでいく。

 まったく、なんというか……と、

 

 

「かもめぇ」

 

 

 いつの間にに回り込んできたのか、二亜が俺の背におぶさってくる。

 いくら、俺が服を着ているとはいえ、二亜は既にシャツを脱いでいるわけで普通に服を着ている時よりも二亜の感覚が理解できる。如何に二亜が酔っているとはいえ、こんなことをされれば反応しないわけがなく──────

 

 

「まあ、その前に。二亜、お前ザルだろ」

 

 

 俺の言葉に肩へ顎を乗っけてきた二亜の表情と猫撫で声が止まる。

 こいつはザルだ。

 そりゃ確かに酔いはするが、ザルなこいつにとって缶酒二、三本は飲んだうちに入らない。悪酔いしないから助かりはする、まあ、普通に二日酔いは発症するが。

 ともかく、こいつは別に酔ってない。顔をほんのり赤らめてはいるがほぼほぼ正気だ。俺の言葉に固まるあたり、事実であることは間違いない。

 

 

「え、えっと、なんのことでっしゃろ……」

 

「口調おかしくなってるぞ」

 

 

 焼き鳥の皮を食いつつ、口調のおかしな二亜の眉間をぐりぐりと人差し指で押しつつ俺は呆れる。

 まったく、酔ったふりをして何をするつもりだったのか。

 

 

「ナニをだよ」

 

「やかましい」

 

 

 硬直から戻ったか、無駄に決め顔しながらズボンの方に伸ばしてきた手を払って、二亜の顔面にアイアンクローをかましておく。というか、ナチュラルに心を読んできたな、こいつ。

 さて、どうするか。

 如何に人形とはいえROをこのまま放置するのは正直どうかと思うし………RO?

 

 

「RO、どこ行った」

 

 

 ちゃぶ台というか、テーブル挟んだ向かいの床でへべれけしてたROの姿がいつのまにやら忽然と消えていた。

 どこへ消えたのか、お手洗い?まさか、あのへべれけが自主的にいくのは難しいだろう。では、どこへ。

 テーブルの下?潜り込んでも足は見える。

 はてさて

 

 

「かもめ、はな、そ?あたしの、頭弾けそう」

 

「お前はこのままなぁ」

 

 

 二亜の要望は却下して、軽く顏を動かし部屋を見回すがどこにも見当たらない。まぁ、廊下に行って階段上ったりしなければ問題はないだろう。多分きっと、メイビー。

 と、なれば、だ。

 

 

「まずはお前をどうにかするか」

 

「はっ!?あたしに乱暴するつもりなのね!?エロ同人みたいに!?朝〇先生のエロ同人みたいに!?」

 

「…………ハンッ」

 

「鼻で嗤われたッッ!!??」

 

 

 朝〇先生の同人みたいにって、悪いなお前はお呼びじゃないんだ。せめて、アルテミシア並みにしてから来てくれ。

 

 

「胸か!?やっぱり、胸なのか!?ゼロはなにもあたしに応えてくれない!!」

 

「そもそもお前は脚枠では?」

 

 

 アイアンクローを解除し、二亜を背中から引きはがす。面倒なことを喚いてるが適当にあしらいつつ、ももを口に運んで、改めて二亜を見る。

 何故にシャツの下に来ていたのか不明な黒のベビードールに同じく黒いガーターと下着ってこいつ、いつの間に下も脱いでんだよ。馬鹿なの?健全な作品なんだよ?

 

 

「少年のエッチ」

 

「上はいいから、せめて下は穿け馬鹿」

 

 

 俺の視線に気づいたんだろう。にやついた表情で自分の身体を抱きつつふざけたことをぬかす馬鹿に俺は呆れながら皮を食べる。

 まったく、この馬鹿は。どうして、こうもあれなことを言うんですかねぇ………ああ、エロ親父インストールしてるからか。

 

 

「なんか、すごいおかしな認識を受けた気が」

 

「安心しろ。前からその認識だ」

 

 

 俺の返しは予想外だったか、口をとがらせて文句を言いながら二亜はポカポカという感じに叩いてくるが漫画家の腕力ではそこまでの威力は出ず、対して傭兵としてそれなりに鍛えている俺にはほぼほぼノーダメだ。

 ン?諦めたかって

 

 

「ちょ、おま」

 

「ぐへへへ、兄ちゃんいい身体してるやんけ」

 

 

 人の服に手突っ込み始めたし、なんか意味が分からんことを言い始めるし、やっぱり頭大丈夫かこの馬鹿。

 

 

「二亜、おとなしくやめるか、大変なことになるのとどっちがいい」

 

「ふぁっ!?霊装着衣凌辱プレイだって!?」

 

「やっぱり頭沸いてるだろお前」

 

 

 常温で愉快に頭が沸騰してるようだ。

 流石だな。

 え?大変なことってなんなのかって?バックアップとったうえで二亜のスマホのアプリをアンストする。

 

 

「鬼か!?」

 

「だから、ナチュラルに人の心読みに行くのやめろ、馬鹿」

 

 

 流石にこれは額に手を当てる程度にどうかしてると思う。うん、割とマジで。

 さて、そろそろまじめにやるとするか、なあ?

 

 

「え、待と?ねえ、少年、なんで手首回してるの?なんで関節の駆動良くしてるの?え、ねぇ、待とう、いや、待ってください、ほんとマジで」

 

「安心しろすこしキャメルクラッチするだけだ」

 

「安心する要素ゼロでは!?」

 

 

 知らんなぁ。

 逃げようとする二亜の肩を掴み留め、そのままうつ伏せに寝そべらせる。

 体重をかけないように二亜の背に跨り、顎に背を滑り込ませる。

 

 

「助けてぇぇぇ!!」

 

「知らないのか?死銃からは逃げられない」

 

「大魔王の話じゃなかったっけ!?」

 

 

 二亜の悲鳴は無視してそのまま──────

 

 

「さあ、お前の罪を数えろ!!」

 

────サイクロン!ジョーカー!

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 唐突にリビングの扉を開けて飛び込んできた、ROに俺も二亜も固まってしまう。

 こいつ……さては俺の部屋に行ってたな?どうしてわかるのかって?俺の趣味で神器の応用作成した代物を腰に巻いてるからだ。いや、確かにこいつのセリフ的にあってるけれども……ええ。

 

 

「………いま、誰か私を嗤いましたか?」

 

「いや、酔ってるとはいえ滑ってるのはつらいだろうなぁって」

 

「誰か……私を……嗤ってくれよ……」

 

「いつから、お前は兄弟を二度失ってんだ」

 

 

 萎えた。二亜の上からどいてテーブルの上の物を片付けてく。

 なにやら、ROがその場でしゃがんで俯いているが彼女の肩に軽く手を置いてそのまま台所の方へ行く。憐れRO。

 

 

「しきかぁぁぁぁあんんんんッッッ!!??」

 

 

 

 

 

 とりあえず、あとで慰めてやるか。後、M16に教えたろ。

 

 

 

 

 




アズールレーン楽しいな。
RO可愛いですよね。あと、ISW欲しいです

感想を、感想を……


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三十七頁


 先週等はなかなかリアルが忙しく執筆できず、投稿が遅れてしまいました。
 今週は暇な時間がそれなりにあるため、頑張ると思います。ええ、UNDEADも頑張りますよ?


 

 

 

 ROによるW事件の翌日。顔を合わせるとラッキースケベを受けた生娘みたいな反応をしている、ROを余所に俺は一人寂しくノートパソコンをいじる。

 何をしているのかというと、まあちょっとした資金稼ぎだ。

 二次創作あるある株運用。詳しく話すと間違いなく長時間かかるのは目に見えているため、株運用どうこうが知りたければインターネットで調べるかそういう本でも読んでほしい。と、それは置いといてだ。

 わざわざ株運用なんぞをしているのか、というとまああれだよね。まがりなりにも高校生だから傭兵業以外だとこれぐらいしか稼げるものがないからだし、あとは裏技のおかげで負けがないからだというのもある。

 ‥‥‥‥うーん、ようよう考えるとわざわざいまする意味はないのでは?

 最近、主夫高校生らしいことをしていない気もする。

 はてさて、どうしようか?

 

 

「つうわけでどう思う?」

 

「え……す、すいません、指揮官……どういうわけですか?」

 

 

 唐突に声をかけられたからか、うろたえつつも応えてくれるRO。だが、残念なことに話の前後が分かっていない様子。あと質問に質問で返すんじゃぁない。

 いや、それは別にいいんだよ。

 

 

 

「最近、主夫っぽくないなと思ってな」

 

「え……指揮官は主夫よりも傭兵のイメージが強いのですが……」

 

「そりゃ、お前らの前だとそっちのが多いから仕方ないだろ」

 

 

 基本的に工房にいる以上、指揮官としてふるまわないといけんしな。

 それでも俺はあくまで主夫高校生を目指しているわけで、傭兵は副業なんだよ。傭兵が副業な主夫ってなんなの?とは俺自身思うがしかし気にしてはいけない。

 俺としては主夫業に集中したいんだが、そういうわけにもいかず何ともまあ、大変だ。

 

 

「それで、指揮官。少し、話が変わるんですがよろしいですか?」

 

「ン?なんだ」

 

 

 自問自答しているとROが話を切り出そうとしているが、しかし、何故かは知らんが妙にもじもじし始めている。顔もわずかながらに赤みを帯びており、彼女の女子高生のような見た目と風紀委員やいいんちょうてきな気質からしてこの状況を告白する瞬間と誤認しかねない雰囲気を醸し出しているが、いまさらそんなことをするような仲ではないため、まあ愛の告白とかそんな青春じみたものではないだろう。

 あれ?俺って青春してたっけ?二亜やアルテミシアは青春とは言わないから。日常だから。

 で、ROの話とは何か。きっと、ライダーもののDVDの要求だろう。

 

 

「そ、その……………じ、地獄の底まで悪魔と相乗りしてくださいっ!?」

 

「………Oh」

 

 

 そっちかぁ……まさかのそっちかぁ。

 あれだよなあ。彼女の言葉の裏に隠れた真意を察して、俺は目尻を揉む。つまるところ、俺の神器で二人で一人の仮面ライダーやろうってことだろ?

 

 

「RO……残念だけれど、俺の神器じゃ流石に仮面ライダーには変身できないんだよ」

 

「……や、やめてください!?そ、そんな、生暖かな眼差しと表情で私を見ないでください、指揮官ッ!?」

 

 

 わかるよ。

 かわいそうな子を見るような目で見られると本当に恥ずかしくなるよな?でも、やめない。微笑ましいからな。

 俺の神器はあくまで武器を作るものであって、その応用でベルトを本物そっくりに作れただけなわけで変身は出来ないというか概ねそれ用の不思議パワーないとだめだし。ぎりぎりビルドはいけなくもないかもしれない、たぶん。いや、別に側だけならちょっとしたスーツってことで何とかはなるんだよでもまぁ、コスプレの域は出ないだろうし…………。

 はてさて、そんなことは置いておいてROを揶揄ってあそぶとするかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 主夫高校生。

 常日頃から鴎が身内内でそう言っている言葉だが、どうしてそうなりたいのか、そのままでいたいのか、そこにはしっかりとした理由がある。

 もちろん、同棲相手である二亜の家事スキルがあまり高くないというのもあるが、純粋に鴎が二亜に対して恩を返したいというのもあり、そして二亜やアルテミシアと過ごす日常がどうしようもなく好きであるからというのもある。

 故に彼は自分が主夫高校生、いや主夫でなくてもいいのだ、二亜たちとゆったりと生活できるのならば。だが、現実というものは残酷である。

 二亜には力がある。知られれば誰もが喉から手が出てしまうほどに強大で有用な能力。

 故に彼は、殺す。八つ裂きにする。

 二亜の力を狙うかもしれない人外を、ひたすらなまでに殺す。結果として、二亜が狙われるかもしれない要因になろうとも、それでも根絶やしにする。

 その果てに別の存在らが二亜を狙う可能性が存在することを理解しているのかはそれこそ鴎と二亜のみぞ知る話だろうが───────

 

 

 

「指揮官ッッッ!!!」

 

「夢想家、連れていけ」

 

「はぁい、指揮官さん」

 

「し”き”か”ん”ん”ん”ん”ッッッ!!!???」

 

 

 

 場所は打って変わって、工房。

 対テロ対策部隊となることが決まり、諸々の部隊運用の為に必要な書類云々を捌くために一時工房に赴き、執務をこなしていたのだが。

 副官を付けることに了承したと思えば、気が付けばいつの間にかに副官が任命されていたことに軽く鴎は目尻を揉みつつ唐突に執務室に突撃してきた破壊者を何故か副官ではないのに執務室のソファに座って甘味を楽しんでいた夢想家に押し付け、執務を再開する。

 

 

「おかしいなぁ、主夫してねぇなぁ最近って思ってたら気が付けば指揮官業に戻ってるんだが」

 

「はあ…。指揮官殿、主夫をするのは構わないのですが時期が時期ですのでそれは仕方がないと思いますわ?」

 

「いや、まあ、そうなんだが……」

 

 

 同じく副官ではないが、夢想家と違い書類整理の手伝いを買って出た案山子にこぼれ出た愚痴を拾われ鴎は何とも微妙な表情で目を逸らす。

 そんな鴎にジト目を案山子は向けるが軽く息を吐いてから再び書類整理へと戻っていく。

 

 

「─────────指揮官」

 

「ン、すまん。M4」

 

 

 書類整理に戻る案山子の背中を変わらず微妙な視線で見つめていれば、横合いからまた別の少女の声がかかる。その声にハッとした鴎が視線をそちらに動かし、だらっとしていた姿勢を伸ばし書類に向き直る。

 声をかけてきた相手は、暗めな茶髪に黄緑のメッシュを入れた長髪の少女。

 全体的に暗色な装いの人形、M4はやや半開きのどこか冷たさを感じる視線を鴎に向け、鴎はそんな彼女に肩を竦める。

 

 

「最近の指揮官は、浮足立ってるように思います」

 

「……ン、それは、まあ、お前がそう言うのならそうなんだろうな」

 

 

 彼女の非難に対して、コーヒーを口にしながら肯定し軽く鴎は思考を回す。

 M4の非難は事実だ、現にここ最近つまるところ今学期が始まった四月ごろから鴎はやや浮足立ったところが散見されており、無論その理由も既に分かっていることだ。それは原作が始まったという事実による緊張と歓喜のような感情がないまぜになったが故にこうしてM4から非難されるようなこととなった。

 その事実に地味に鴎は心を痛めつつ、首を動かす。

 ある種、こうして主夫業を恋しく思うのも浮足立っていることに起因するのやも知れず、軽く目頭を揉みながら視線を書類へと戻して鴎は口を開く。

 

 

「さて、それじゃあ意識を切り替えるとしましょうかねえ」

 

 

 そう言いながら一番上の書類を手に取り、その文面を読む。

 そこに記載されているのは少し先──────といっても一ヶ月未満であるが──────の仕事。とあるパーティーでの護衛及び周辺警備の仕事であり、現場は

 

 

「冥界ですか……」

 

「ああ、まがりなりにも悪魔勢力もとい三勢力の影響下にある部隊になるんだ仕方ない」

 

 

 影響下といえども、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの私兵である以上悪魔らの好きには出来ることなどどこにもないが。

 

 

「まぁ、護衛対象はリゼヴィムだけ。ある程度は融通が利くだろうな」

 

 

 そう言いながら、鴎はコーヒーを口にした。

 

 

 

 

 





 ひとまず今回までは幕間扱いです。
 次回からは原作五巻に突入していきます。


 対テロ対策部隊としてほぼほぼ政府の影響ガン無視する部隊で悪魔が嫌いとか、もはやそれはゲシュ〇ポみたいなことし始めるのでは?最近、そう思い始めて自作ながら戦々恐々しています。


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人外貴族とメタルソルジャー
三十八頁


遅くなってすいません。
 なかなか、仕事も忙しくなり、軽い筆離れを起こしていて執筆が遅れました。前回投稿したのが何時だろう……1か月前かな?鬱になりそう……


 

 

 

 

 夏休み。

 楽しい楽しい夏休み。

 

 

 しかしてリゼヴィム・リヴァン・ルシファーという名の悪魔により、鴎はその夏休みを奪われることに………。

 

 

 

 デジャヴを感じる」

 

「感じるな、労われ」

 

 

 終業式もとくに何か起きることもなく、俺は夏休みを謳歌することはなく、こうして長期遠征の準備に勤しんでいた。といってもあちらにいる間はリゼヴィムの用意した屋敷に駐在する予定であるから、着替え等々は問題ないだろうが、それでも重要なものは基本的にこちらで用意しなくてはならない。

 というか、そもそも今回の俺の仕事はパーティーの護衛及び警備であって、こんな早くから──────一ヶ月近く前から冥界入りする理由はないと思うのだが、まあリゼヴィムがなんとも微妙な表情をしていたことを考えれば、面倒な理由があるのだろうな、と予想は出来る。

 で、あれば仕方ない。

 M4にこの前言われたように最近浮足立っていることを考えれば、丁度いい。気を引き締めて対応せねばなるまいて。

 

 

「ねぇ、少年」

 

「なんだ、二亜」

 

「単身赴任中に不倫する奥さんとかドラマにいるじゃん?」

 

「まあ、昼ドラとかにあるよな」

 

 

 

 

「あたしがしたらどう思う」

 

「え、相手を拷問して東京湾に沈めるけど」

 

「だよねぇ」

 

 

 ‥‥‥なずぇにこいつは喜んでるんですかねぇ。

 言葉の端々から喜悦を感じる。ええ、なんか病みを感じるんだが、まさかヤンデ────

 

 

「待とうか、少年。流石にあたしはヤンデレにはなりたくないから」

 

「いや、だからナチュラルに心読むのやめろよ」

 

 

 心読んでくるのはもはやヤンデレの域なのではないだろうか。鴎は訝しんだ……まあ、冗談はさておき、こいつのことだ。

 どうせ、最近互いに仕事で絡めなかった弊害でめんどくさい絡みをしにきてるんだろうな、先日の酔ってるときみたいに。

 いや、そういうめんどくさいところも可愛いから好きだが……疲れてるのかな俺?

 

 

「それで帰るのは何時頃になるの?」

 

「さあ、夏休み終わりまでだと思うけれども」

 

「へえ……」

 

 

 あ、なんか、目を細めてる。嫌な予感しかしないんだが………。

 さて、と、とりあえず。二亜を置いておいて、俺は視界の端で何やら作業しているグループへと視線を向ける。そこにはROとAK-12やAN-94がなにやらドリンク片手になんかの書類と睨みあっている。声量はそこまで大きくないためか、三体の会話は聞こえてこない。

 あ、タピオカミルクティーか、あれ。人形だからなカロリー気にせず飲めるのか……。

 

 

「12とROならチャレンジできそうだな」

 

「お?少年、さては喧嘩売ってるな?」

 

 

「はっ」

 

 

 二亜の言葉に鼻で笑って返せば、二亜は無言でそのまま12たちの方へと行く。なにやら、話始めたな……なんか94とROに止められてるっぽいが……あ、12が嗤ってる。予想通り、12が台所の方に行って、その間にROと94が二亜をどうにかしようとしているがアレはだめだな。

 予想以上に俺の言葉が効いたようで………12がタピオカミルクティー持ってきて、乗っけて、落とした。

 知ってた。

 

 

「しょおおぉぉぉぉおねぇぇぇえぇぇんんっっ!!??」

 

 

「おま……」

 

 

 案の定、チャレンジに失敗した馬鹿を俺は顔を覆いながら、呆れ片付けに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部長の冥界への里帰り、俺たちがまず向かったのは最寄りの駅だった。

 いつも電車に乗るときの駅だが……って、あれ?駅に設置されているエレベーターの近くで俺たち同様に駒王学園の制服に身を包んだ集団がって

 

 

「待たせたわねソーナ」

 

「いえ、私たちもいま来たところですので」

 

 

 そこにいたのは、生徒会ことシトリー眷属だった。もしかして、毎年シトリー眷属と里帰りしてるのだろうか。そんな俺の考えでも察したのか、近くにいた木場がこっちに来た。

 

 

 

「いままでは僕たちグレモリーはグレモリーで、シトリーはシトリーで冥界に帰っていたんだけど……今年はどうやら少し事情が違うようだね……」

 

「そう、なのか?」

 

 

 つまり、今回が特殊ってことか……?

 そんなこんなしていたら、先に生徒会の面々が何度かに分けてって、エレベーター?あれってたしか上にしか行かない筈じゃ……とと

 

 

「イッセー、次は私たちよ。来なさい」

 

「は、はい」

 

 

 部長に呼ばれ、木場のとこから部長と朱乃さんのもとへ行けば、俺の他にアーシアとゼノヴィアもやってくる。

 エレベーターを前にしてどうするのか、首を捻る俺たち───特にこの街に昔から住んでいる俺に対して苦笑しながら部長は手招きしてくる。

 それに俺ら新人転生悪魔はお互い顔を見合わせながらも部長に応じた。

 

 

「慣れてる祐斗たちはあとからアザゼルと一緒に来てちょうだいね」

 

「はい、部長」

 

 

 そう部長が言ってからエレベーターの扉はしまって──部長がポケットから取り出したカードらしきものをエレベーターの電子パネルに向けると、ピッとそんな電子音がなって部長のカードが反応したかと思えば

 

────ガクンッ

 

 

「えっ!?」

 

 

 下へ降りる感覚が俺らを襲って、って、えっ!?

 驚きを隠せない俺たち。そんな俺たちを見て笑う部長と朱乃さん。

 

 

「この駅の地下にね、秘密の階層があるの」

 

 

 ぶ、部長、俺生まれてずっとこの街で生きてきましたけどそんなのまったくもって知らなかったんですけどもッ!?

 そんな俺の心中を察したのか、先ほどとは違う悪戯が成功したかのような表情で部長は微笑んだ。

 

 

「さあ、ついたわよ」

 

 

 一分ほどエレベーターに乗っていただろうか。

 ついにエレベーターが停止し扉が開けば、そこにはだだっ広い人工的な空間が広がっていた。

 つーか、どう見ても駅のホームだ。多少俺の知ってるものとは差異はあるけども、線路もあって本当に駅らしい……、エレベーターから出て少し待てば木場たちもエレベーターから出てきて合流。

 

 

「みんな集まったところだし、三番ホームへ歩くわよ。ソーナたちも待っているでしょうし」

 

 

 部長と朱乃さんの先導のもと、俺たちは歩き出してその三番ホームとやらに向かう。魔力的な妖しい輝きを放つ灯りが壁に吊り下げられた通路を右に左に行ったりすれば、再び開けた空間に出た。

 そこには列車らしきものがある!!!らしきってのは俺の知る列車と違って鋭角なフォルムといくつもの魔法陣、グレモリーの魔法陣もサーゼクス様の魔法陣もあるけど……もしかして、これって。

 

 

「ふふ、思ってる通りよ。イッセー、この列車はグレモリー家所有の列車なのよ」

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレモリー家所有という言葉に一誠もゼノヴィアもアーシアも、新人転生悪魔一同が驚きを露にした後、リアスの先導により先に待っていたシトリー眷属もとい生徒会の面々と合流する。

 その時、匙をはじめとする数人の生徒会メンバーもまた、今回が初めての主の里帰り付き添いなのか先ほどからちらちらとこの地下駅ホームをせわしなく落ち着かない様子で見まわしている。

 そんな彼らの様子に一誠は自分たちだけではない、という安堵を抱いたのか胸を撫でおろし、そして彼らと共に冥界へ向かうアザゼルはそんな上京したての田舎者じみた反応をする彼らを見て思いっきり笑っていた。

 

 

「アザゼル………あなたねぇ」

 

「いやいや、笑うだろこんなもん」

 

 

 リアスがそれを窘めるが、どこ吹く風と腹を抱えるアザゼル。そんな姿に新人転生悪魔一同はその頬を羞恥で微かに赤く染める。そして、そんなアザゼルにソーナもまた、文句を言おうとして─────

 

 

 

 

「おや、ようやくお着きかな?」

 

 

 

 自分たちと列車の車掌ぐらいしかいないはずの地下駅にて聞き知れぬ女の声が響いた。

 アザゼルは笑いをやめ、リアスとソーナに二人の女王が警戒の視線を声のした方へと向ける。そこはホームの柱の陰、言われなければ気づかないが視界に入れば気が付けるような位置に彼女はいた。

 

 

「ああ、あまり警戒しないでくれ。こちらに敵意はない」

 

 

 くすんだ銀か灰色の髪を短いポニーテールにし、黒いシャツの上から軍服めいたコートを羽織った女。その四肢には見た目にそぐわぬアーマーを着装している。

 身長は女性の中でも高く男性である一誠と同じほどのリアスよりもあり、そしてアザゼルと大差のない長身。

 正しく正体不明の女性の登場に緊張が走り、そんな彼女らの前に手を伸ばしてアザゼルが場を制した。

 

 

「よお、お前さんがリゼヴィムの野郎がよこしたっていう護衛か?」

 

「その通りだとも。アンジェリカ、アンジェリカ・スィエールイ」

 

 

 

 アザゼルの問いかけに不敵な笑みでそう答える彼女の背後から幾数人の黒づくめの猟兵が這い出てきた。

 

 

 

「ただの傭兵だ」

 

 

 

 




G36の水着は可愛い



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三十九頁


 最近、鬼滅の刃がマイブーム。

 オリジナル呼吸考えるけども意外と漢字一文字は難しいね。
 『毒』『嵐』『鮫』『氷』『鳥』





 

 

 

 

 

 発車の汽笛が鳴り響き、列車が動き始める。

 俺たちグレモリー眷属とシトリー眷属、つまりは部長とソーナ会長を除く俺らはみんな揃って列車の中央の車両に乗っていた。どうやら、主は基本的に一番前の車両で、俺ら眷属悪魔は中央から後方の車両らしい。こういうところはすごく貴族的なしきたりをなんとなく感じさせる。

 ちなみにアザゼル先生はあくまで便乗もとい乗せてもらってるだけだからか、俺たちと同じ車両に乗ってて端っこの方で寝てる。

 聞けば、こうして冥界へ向かうときは各々好きにしてるらしいんだが、今はそんな空気が微塵も感じられない。それもそうだろう。

 俺はなんとも言えない、いや一応警戒してるつもりなんだが、そんな表情で前の車両へ続く扉の方へと視線を向ける。扉、その両脇にいるこの空気を作り出した要因の一部、黒づくめの変な鳥マスクの奴らに。

 

 

 ことの始まりはこの列車に乗車する前に遡る。

 

 

 

 

 

 

──────正体不明の女性が名乗ると同時に女性、アンジェリカさん?の背後の陰からいきなり現れてきた黒いコートに黒いズボン、黒い服、そして特徴的な銀色に鈍く輝く鳥の顔めいたマスクの一団。そこに一切の違いはなく、皆一様に同じ格好をしており、まるで一つの画像をコピーしてひたすら並べたかのように寸分違わぬ姿のそれらの出現に俺たち、両眷属はアザゼル先生に止められたが、警戒をやめることは出来なかった。

 だって、しょうがないだろう。

 見知らぬ人間が明らかに怪しげな存在を連れてきたんだから。

 しかし、それらはそんな俺たちのことなんて興味がないかのようにただただその場で軍隊のように休めの姿勢のまま、突っ立っていた。

 

 

 

「ク、クク、クハハハハハアアぁぁ、ぅごほっぐへ……咽た喉痛……ああ、すまない」

 

 

 それと打って変わって、明確な反応を露にするのはアンジェリカさん。

 整った顔を快活な笑みに歪めて……なんか、咽てるんだが。落ち着いたのか、俯かせていた顔を上げて、軽く笑いながら手をひらひらと振りながら、軽く謝ってくる。

 

 

「さっきも言ったがこっちに敵意はないんだ。なにせ、私の今回の仕事は君たちの護衛だからね」

 

 

 そう言いながら、アンジェリカさんは俺たち、いや正確にいえば部長とソーナ会長を見て笑ってる。

 

 

「それで?総督殿、詳細は伝えてるのかな?」

 

「いんや、こいつ等が知ってんのはあくまで諸事情で今回、別々じゃなくて一緒の列車で冥界に里帰りするってことだけだよ」

 

「─────は?死ねよ、カス……ンン、なら護衛する理由と今回の事情を説明させてもらおうか」

 

 

 なんか、言ったか?今。いや、それよりも、木場がさっき言ってたけども今回の里帰りは異例らしいがその理由って………というか、護衛とかなんとか、言ってるし決していい理由じゃないのは理解できる。

 それをこの場のみんなは理解したのか、息をのみ。

 

 

「リアス・グレモリー嬢、ソーナ・シトリー嬢、貴女方と同じ現四大魔王の身内であるディオドラ・アスタロトが数ヶ月前から眷属諸共行方不明となっていたのですが、つい先日我々『テロ対策特殊部隊EXE』が件のテロ共の拠点の一つから押収した文書にてディオドラ・アスタロト及びその眷属らがテロ共に殺されたことが判明しました」

 

「………ッッ!!??」

 

「アスタロト、ベルゼブブ様の生家……ですね」

 

 

 ‥‥どういう意味だ?

 いや、言ってることはなんとなく理解できる。だが、どういう意味だ?

 

 

「旧魔王派の連中の仕業だったか?」

 

「ええ、それで貴女方も狙われる可能性があるため、護衛というわけですよ」

 

 

 あっけらかんにそう言うアンジェリカさんに俺たちはどこかうすら寒いもの感じながらも彼女とその部下たちによる護衛を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い猟兵。

 正式名称は別にあるがもっぱら、そう呼ばれているそれらを率いてグレモリー家所有の列車に乗り込んだ『テロ対策特殊部隊EXE』に属する傭兵アンジェリカ・スィエールイ。

 そんな彼女は列車内で何をしているのだろうか。無論、護衛だがしかしそもそもが話、前提条件が真っ赤な嘘であるのだから真面目に護衛する理由などない。そういうパフォーマンスはしているが。

 では、何をしているか。

 

 

「まあ、普通に書類整理だが」

 

 

 持参のカロリーメイト片手に持ってきていた書類に目を通すアンジェリカ。

 正直、学園生徒として潜入している人形の片割れと名前が被ってしまっているがそんなことは元から織り込み済みであり、いちいち気にしていられない。

 アンジェリカの心内を考えるならば何故ゆえにこんな列車内に来てまで書類整理なんぞをしなければならないのかといういら立ちはあるが。

 

 

「閣下」

 

「ン、なんだ」

 

 

 そんなアンジェリカのもとに一体の猟兵が近づき、その手にもっていた端末を手渡してくる。

 それが何なのかを察したアンジェリカはその表情を面倒くさげに歪ませながら、端末を受け取る。

 

 そも冥界というのは一種の国だ。無論、そんなもの正統所有者とも言える冥府の神々からすればふざけたものでしかないが────ともかく、そこに正式に入るには曲がりなりにも手順が必要なわけだ。裏口入界をするわけにもいかず、こうしてリゼヴィムが用意した端末を用いて人間であるアンジェリカは入界の登録を行う。

 

 

「閣下」

 

「ン」

 

 

 端末を戻して別の猟兵が運んできたココアが入ったマグを受け取ってから、視線を前の車両へ続く扉の方へと向ける。

 アンジェリカらが乗っている車両は兵藤一誠らが乗っている車両よりも前、つまりはリアス・グレモリーらの車両側であり前の車両から来る人物はとても限られている。

 そうして、しばらく待てば扉は開いてこの列車の車掌らしき悪魔が入ってくる。彼にアンジェリカは軽く会釈して、猟兵が端末を車掌に手渡してから車掌も会釈を返しそのまま後方車両へと抜けていく。

 お互い仕事であり特に馴れ合う理由もなければ、過度に警戒する理由もなかった。

 

 そのすぐ後に護衛対象が勝手に予定の席を離れて自分らを無視して後ろの車両に行こうとしたのには止めたが。

 

 

「あー、リアス・グレモリー嬢どちらへ?」

 

「私の下僕たちのところへだけど、何か?」

 

「護衛されている身を自覚してほしいんだがね」

 

 

 何故にそんなことを私が気にしなければならないのか。正しくそうとしか思えない反応を見せるリアス・グレモリーにアンジェリカは微笑を保って見せるが、その心内ではもう既にリアス・グレモリーの身体はネゲヴで蜂の巣に何度も何度も変えてはその頭蓋から何度も何度も脳髄を引きずり出して人形に移し返したりしているが、その心中は一切晒さない。

 

 

「この列車は世界と世界を跳ぶのよ?襲撃される可能性なんてそうそうないわ」

 

「可能性があるから護衛してるんですが?」

 

 

 いかに自作自演であるとはいえ本当に襲撃されないという可能性などないのだ。故にこうして護衛対象が無闇に動かれるのはとても困る。正直に言えばリアス・グレモリーの生死などどうでもいいのだが。

 

 

「あなたなんかに護衛されるほど弱くないわ」

 

 

 

 

 

 そう言い残してリアス・グレモリーは後部車両へと向かっていった。

 その背中を見送りながら、アンジェリカはその表情を引きつらせながらその手に握っていた書類を握りしめながら空いた片手でハンドガンを取り出そうとするが流石に猟兵らが止めにかかったため、仕方なしにその手を手持ち無沙汰の様に空を切らせてから、乱暴に席へつく。

 そうしてから、ふとあることに気が付いてから後方車両で待機している猟兵に無線を飛ばしてから、背を椅子にもたれてそのまま中身だけ眠りについた。

 アンジェリカは起きながら、彼は眠る。

 

 





 次回は冥界ですかね。


 


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四十頁

今回はかなり難産で、自分の中で区切るためにやや短めになっております。

 AUG無事にお迎え出来ました。スキンは残念ながら416は手に入らなそうです……


 

 

 

 

 

 

 グレモリー眷属、シトリー眷属を各領地にある駅にておろし、列車はそのままアザゼルとアンジェリカら傭兵を乗せて魔王領へと向かって走行する。

 

 護衛対象はもうおらず、特にやることもなくなったアンジェリカはそのまま魔王領につくまで仮眠を取ろうとして────

 

 

「よお」

 

 

 猟兵らの報告によって列車内を移動していたのは理解していた男が目前に立ってまるで知己に話かけるように気安く挨拶してきたのを軽く心中で舌打ちながら応対する。

 

 

「どうかしましたか堕天使総督殿?」

 

「なに、お前さんにちょいと聞きたいことがあってな」

 

 

 座らせてもらうぜ?そう、一応断りを入れてから対面の席にすわるアザゼル。

 断りは入れたがはなから拒否は通す気がないらしい。そんなアザゼルに再び舌打つがそれを表情には一切出さずにアザゼルへ対応する。

 

 

「はあ、いったい何をですか?」

 

「お前さん、『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』なんだろ?どうしてそんな傭兵がリゼヴィムの私兵なんぞをやってんのか気になってな」

 

 

 純粋な疑問と猜疑心の入り混じったのが見え隠れするアザゼルの質問、そこからアザゼルはリゼヴィムのことを怪しんでいる、いや疑っていることが理解できるし、また同時にアンジェリカの『笑う棺桶』のことを知りたがっているのだろう。

 故にアンジェリカはほんの少しばかりの建前を口にする。

 

 

「何故と聞かれても、そんなもの彼が『笑う棺桶』のスポンサーの一人だからとしか言えませんが」

 

 

 ありきたりな答え。

 だからだろう、アザゼルはその答えに顔を顰めるがすぐに思案するかのような表情に変わり、ならばとまた別の質問を投げかけ始めた。

 

 

「じゃあ聞くが、お前さんらはスポンサーだからって悪魔にも付き従うのか?」

 

「スポンサーですので」

 

「スポンサーだからで従うのか?」

 

「はい、そういうものなので」

 

 

 あくまで機械的に事務的に質問に答えるアンジェリカに軽く苛立ち始めているのか、アザゼルは脚を組み始め軽く指を膝の上で動かし始めた。その様子を見ながらアンジェリカはアザゼルには悪魔の老公たちほどの狡猾さと政治力はないのだと理解する。長い間政治に携わって甘い汁を啜ろうとする老公が相手ならばもう少し面倒でこちらが食われかねないがアザゼルは悪魔社会のような政治に長く関わっていたわけではなく、ただの組織の長しかも身内しかいない。そんな中で培った政治力など組織の長としてはたかが知れている。

 だからこうして、苛立ちが滲み出てしまう。

 

 

「まあいいか、そんじゃあよおお前さんらのリーダーいるだろ?死銃だかなんとか、お前さんらはそいつのことどう思ってんだ?」

 

 

 死銃────Sterbenの話が出てきた瞬間、アンジェリカの表情に僅かながらの反応が垣間見えた。無論、アザゼルは目ざとくその反応を拾い上げながらもその点には追求せずに返答を待つ。

 アンジェリカにとってこういう質問はとても反応に困る類の質問だった。

 

 

「あー、まあ、いい隊長だと思う。うん」

 

 

 そんな歯切れの悪い回答にアザゼルは反応して

 

 

「なんだ、自分らのリーダーだってのに。なんか問題でもあん──────」

 

 

「小隊長」

 

 

 

 言葉を遮り、猟兵が呼びかけた。その意図をすぐにアンジェリカは理解し、席を立つ。

 

 

「悪いが総督殿。時間のようだ」

 

 

 そう言いながらアンジェリカは視線を窓の外へと向ける。既に窓からは魔王領───都市ルシファードの城が見えている。

 それにアザゼルも気づいたのか、これ以上は何も情報は取れないと判断したのか口を閉じる。その姿にアンジェリカは軽く笑ってからそのまま別車両で待機している猟兵たちのもとへ向かうためにこの車両を後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、アンジェリカちゃん」

 

「……どうも、リゼヴィム殿」

 

 

 魔王領・ルシファードにたどり着いてそうそうに俺は雇い主であるリゼヴィムと出会った、いや正確に言えば他の貴族共の接触を避けるために既に待機していたリゼヴィムと合流したというのが正しいだろう。

 さて、こんな揶揄うような声音のリゼヴィムに内心舌打ちながらもおとなしくついていく。

 俺のすぐ後ろにいる猟兵たちのせいか、時折リゼヴィムに声をかけようとする貴族悪魔らしき奴がその表情を固まらせそそくさとその場から逃げるように消える。

 俺を見つけて顔を顰める貴族も猟兵を見て苦々しい顔をし、先ほどの貴族のようにその場を離れる。

 そんな悪魔どもの反応を見ながらリゼヴィムはカラカラと笑っている。貴族らしからぬ子供めいた笑い方だ。だ。そんな笑い方に俺は軽く抗議の視線を向けるがしかし、リゼヴィムにとっては気にする物ではないらしい。

 

 

「さて、事前に伝えた通り冥界にいる間はうちの屋敷を使ってもらうぜ?ちょくちょく使ってるからわかるだろ?」

 

「まあ。そのあたりは、はい」

 

 

 少なくとも他の貴族悪魔、とりわけヴァサゴに繋がりのある貴族たちからは警戒どころか敵意・殺意しかないのは自覚している。

 故にリゼヴィム直属部隊というポジションを利用する。曲がりなりにも先代魔王の息子の領地で不埒な真似には及ばないだろう───そこまで考えて、だからどうした、とやる馬鹿は出てくるだろうな、と時折存在する馬鹿貴族を思い出し俺は軽くため息をつく。

 なら、警備をきつくするしかない。

 

 

 アンジェリカらしからぬ笑みを浮かべて俺たちはそのままリゼヴィムの領地へと向かった。

 

 

 

 

 

 





 そういえば、ついにネゲヴを我が基地に迎え入れることが出来ました。いやあ、よかったよかった。

 そういえば、アニメだと普通にグレモリーとシトリー同じ列車に乗ってたんですね。



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四十一頁


 今回もやや短めになっております。
 そういえばつい先ほどスプリングフィールドの専用装備が手に入り戦力強化がよりいっそう出来ました。




 

 

 

 冥界入りしたその当日、リゼヴィムの所有している領地にあるとある屋敷───死銃もとい鴎に与えられたその屋敷の外には手斧とアサルトライフルを装備している猟兵たちやサブマシンガンを携えている雀蜂などが厳重に警備している。少なくとも半端な者では侵入したとたんに無残に死ぬであろう警備体制。

 そんな屋敷の中でアンジェリカのガワを脱ぎ捨てた鴎はその表情を引きつらせ、隣に立つリゼヴィムがニヤニヤした表情でそんな鴎を見ている。そして冥界にいる間の副官を任されている人形らもそんな鴎を見て、目を閉じ我関せずを主張する者、軽くため息をつく者、笑う者、と様々な反応をしている。

 さて、鴎はいったいどうしてそんな反応をしているのか。

 

 

 それは間違いなく鴎の目の前の人物が原因だろう。

 

 

「やあ、少年」

 

「なんでお前いんの?」

 

 

 どこかの軍服のような制服に身を包んでいる灰髪の眼鏡をかけた女性。ああ、つまりは本条二亜その人が冥界にいるはずがないのに鴎の目の前に堂々といるのだ。驚くな、といわれてもどだい無理な話だろう。

 故にこうして鴎は顔を引きつらせている。鴎にとって二亜はアルテミシア同様に守るべき存在であり失えない大切な存在。

 そんな彼女がこの冥界にいるという事実はあまりに衝撃的だった。

 

 

「いや、暇だったからつい」

 

「ついじゃねえよ、おい」

 

 

 からからと快活に笑う彼女を見て鴎の中で様々な感情が複雑に入り混じる。こんなところにいたら、悪魔いや三勢力に目を付けられる可能性が生まれるというのに─────

 そんな鴎の懸念を理解しているのか、二亜はその手にどこからともなく本を取り出して優しく微笑む。

 

 

「大丈夫だよ。鴎、あたしがここにいる間、あたしのことは絶対知られないから」

 

「……『囁告篇帙(ラジエル)』の未来予測。だが、『囁告篇帙(ラジエル)』は未来だけは記さないだろう。予測できたとしても覆る可能性がある以上それは」

 

「……鴎があたしのことを守りたいってのはあたしも理解してるよ。だから、言うけどもあたしはさ、引き出しの宝石じゃないんだよ鴎」

 

 

 わずかに可能性があるならば、と拒絶しようとする鴎の頬に両手を当てて二亜はその青い瞳を鴎の瞳に向ける。語気に力がこもったその言葉に鴎は息をのむ。普段はお茶らけた言動をする二亜、そんな彼女から放たれたその言葉には周囲の人形たちも息を呑んでしまい、リゼヴィムはまるで予想していたかのように肩を竦めて笑う。

 ここまで言われて、鴎はどう返すのか。そんなものは決まってる。

 

 

「………っぅ、いいか!不用意に外に出るな。極力他の人形か俺と行動しろ。何かあったらすぐに言え。後、何か食べたくなったら俺を呼べ、わかったな!?」

 

「いろいろ言いたいけど、まあこの辺が妥協点かあ。うん、わかったよ少年」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 頬から手を放しサムズアップする二亜になんとも言い難い表情を向けて長い溜息を吐いて、軽く額に手を当てる。

 そんな流れを見ていたリゼヴィムは鴎の肩を叩きながら笑う。

 

 

「ハハハ、どんまいどんまい気にすんなって。カモメん」

 

「知ってたなら先俺に言えよ」

 

「こっちの方が面白いと思った」

 

 

 リゼヴィムの返答に軽くキレかける鴎だが、その顔の前に手を出され止まる。

 

 

「わかってんだろ?自分だけ蚊帳の外なんて、本人からすりゃストレスたまるって」

 

「それは……わかってる」

 

 

 

 

 

 人形たちと何やら話し込んでいる二亜を視界の端に収めながら、鴎はリゼヴィムにひらひらと手を振ってこの屋敷での自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官」

 

「どうした、M4」

 

 

 執務室でパソコンをいじっている中、唐突に副官を任せていたM4が俺に声をかけてきた。パソコンをいじりながら俺は視線を向ける。

 

 

「二亜。彼女を守りたいなら、どうして今回ここに滞在するのを許したんですか」

 

「……ン、なんとも難しい話だわな」

 

 

 M4の質問はさっきの俺の対応に関する話。無論、普通に考えればそう難しい話ではないだろう。

 だがしかし、まずさきほどの自分の気持ちを言語化するという事に加えて、俺の二亜に対する想いを話すという事は相手がM4であってもなんとも気恥ずかしい話であるから、とても難しい話だ。

 だが、それでも───

 

 

「俺にとってあいつは大事だ。あまり言いたくはないが、たぶんアルテミシアと比べてもあいつの方が大切だと思う」

 

 

 俺の舌は、喉はまるで滑るように言葉を口にしていた。

 

 

「あいつは、あいつだけなんだ。アルテミシアは違う。」

 

 

 アルテミシアは確かに大切だ。それでも二亜ほどの執着心は出てこない。

 そうだろう、アルテミシアは彼女はあくまでよく似た別人なのだから。決してウィザードではないし、あいつのように何かあるってわけじゃない。身体能力が成人男性以上であるだけで只の紛争に巻き込まれただけの少女なんだ。

 だが、だが

 

 

「何度も言うが俺と同じなんだよ。厳密に言えば少し違うけれども、俺とあいつは同じくこの世界にとって間違いなく異物なんだ」

 

 

 あいつは俺と違って転生者ではないけれども。

 たった一人の精霊と転生者。同類がどこにもいない俺たちにとって互いこそが唯一の同類。

 あいつに会えたから今の俺がいるんだ。あいつはどうかは知らんがな……。

 

 

「だから、もう一人になりたくないんだよ。きっとこれはお前たちやアルテミシアがいてもどうにもならない心の孔なんだと思う」

 

「…………」

 

 

 

 そう締めくくった俺にM4は納得したのかどうかはわからないがそれきり何か聞くことはなく作業へと戻った。

 俺もそれを確認して再びパソコンに視線を戻して明日の予定を書き込んでいく。どうやら明日はあの腐れ悪魔を除く若手悪魔たちがルシファードに来て魔王や重臣らに顔見世するようだ。いや、それにしても大変だな。

 二家も次期当主が死んでしまうなんて。まあ、アスタロト家と違ってグラシャラボラス家はスペアがいるようだが……そのスペアに当主の器もとい能力があるのかははなはだ疑問であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば指揮官。今度のコミケに売り子として二亜についていくスオミとスコーピオンが一人雀蜂辺りを借りたいそうですよ」

 

「うぇっ………まあ、別にいいけども。というかROも行くんじゃなかったか?」

 

「ROはコスプレするそうです」

 

 

 あ、メール来た。って、ふぁッ!!??

 

 

 

「なぜにクローズビルドのフルコスッッ!!??」

 

 

 

 

 

 






 RO「私の趣味です!!いい趣味してますよね!」

なおベルト等は鴎趣味作成品である



感想待ってます


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四十二頁

 いがいと早くに投稿で来たぞ!
 そういえば皆さんドレススキンはどうでした?チーズはスプリングフィールドとM950Aのしか手に入りませんでした。
 浴衣はG36Cのを狙っていく予定です!


 

 

 

 冥界での一日目を過ごした翌日。

 なんやかんやで宮廷働きをしているリゼヴィムの護衛としてアンジェリカのガワを被り、猟兵と一部の人形らを連れてルシファードへと向かう。出る際に何やらニヤニヤとしながら猟兵以外の人形を連れていくことを勧めてきたリゼヴィムに軽く嫌な予感もとい面倒な気配を感じるがしかし、それはおとなしく胸の中に収めておく。

 まあ、そういうわけで二亜の護衛として幾体かの人形を残して四体の人形と猟兵四体を引き連れてリゼヴィムとユーグリットの後をついていく。

 

 施設へと転移術式を用いて転移して城内直通の地下通路を通って城へと入っていく最中に軽く偵察用のナノマシンをばら撒きつつ、視線のみを動かして周囲をうかがう。如何に前魔王の嫡子であり一応現政府に属しているとはいえ、ろくなチェックもなくこの城に直通の地下通路を通すのはいくら何でも不用心すぎではないだろうか。

 途中魔力で何らかのチェックを行った様子もなく、その不用心さには流石に頭痛がする。

 

 

「……あの施設の転移術式には一種のパスワードのようなものがあるらしくそれを知っているのはこうして直通通路の通れる一部の貴族だけなんですよ」

 

「なるほど」

 

 

 ユーグリットが察したのかこっそりとそう教えてくれて俺は納得しつつ、頭の片隅で軽く呆れていた。技量の足りない解析では弾かれるだろうが解析特化やそういうハック系統の専門家なら問題なくそのパスワードとやらを引っこ抜けそうだ。

 帰り際辺りに軽くちょっかいでもかけてみるか……。

 

 

 そうして、廊下を抜け城内へと入った俺たち。だが、ここは予定の場所ではない。

 一度、ここをはさんでから目的地へと向かう。なぜこの城を挟んだのか、単純な理由だ。

 もしも、現政府と殺し合うときに拠点の情報を知っていれば有利だろう?そんな、それだけの理由だ。無論、俺らは現政府とやり合うつもりはない。ああ、決してやるつもりはない。俺らは、な。

 さて、軽く通路を確認して、今度こそ俺たちは目的地へと転移する。

 

 

 同都市ルシファード、城の次に大きな施設。今日、ここで若手悪魔らの謁見がある。俺らの仕事とはそこでの警備とリゼヴィムの護衛。

 なんともしちめんどくさい仕事だが仕事は仕事、仕方なし。

 

 

「ま、基本的に無視してな。最悪、俺の名前だしときゃなんとかなるさね」

 

「お前の名前を出すような事態にならなければいいんだがな」

 

 

 からからと笑いながら言うリゼヴィムに俺は肩を竦ませながら、猟兵たちと指揮役に人形を一体、若手悪魔らの待機ホールの方へと向かわせ、俺と他の人形ら、それにユーグリットはそのままリゼヴィムについていく。

 ああ、まったく嫌な予感しかしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下鉄から乗り換え数分、俺らが着いたのはこの都市で二番目に大きい建物の地下にあるホーム。

 若手悪魔、旧家、上級悪魔のお偉いさんが集まる会場と同じ建物。ボディガードさんたちと別れてから乗ったエレベーターの中で俺たちは部長から一つ警告?注意?を言われた。その時の部長はいつも以上に気合の入った言葉で、凄みを感じた。言うなら誰にも負けられない、そんな臨戦態勢時の声音だった。

 それには俺もアーシアも唾を飲み込んで自分を落ち着かせた。他は…やっぱり流石だなって思った。

 木場も小猫ちゃんも朱乃さんもそれにゼノヴィアもみんな、俺やアーシアみたいについ最近悪魔になって裏のこういった物事に関わるようになった奴とは違って落ち着いていた。

 え?ギャスパー?……聞くなよ。

 

 と、エレベーターがついたらしい。扉が開いてエレベーターの外が視界に広がる。

 そこは広いホールだった。近くには使用人らしい人がいて、俺らをというか部長を視界に入れると会釈してきた。

 

 

「ようこそ、グレモリー様。こちらへどうぞ」

 

 

 そういって案内し始める使用人のあとに続く俺たち。通路を進んでいけば、一画に複数人の人影が───

 

 

「サイラオーグ!」

 

 

 どうやら、部長はその人影の一人を知っている様子だった。

 あちらも部長を確認すると、近づいてきた。男性だ。結構デカいな……俺らとおんなじぐらいの年齢だろうか。あと、その体格に見合った武闘家みたいな感じの活動的な服装を着てる。なんだかプロレスラーみたいだな。

 

 

「久しぶりだな、リアス」

 

 

 部長とにこやかに握手を交わしてる。……?なんだか部長やサーゼクスさまにどこか似てる顔立ちをしてる。というか、もしかして部長と同じ若手悪魔?俺でもわかるぐらいの、こうなんかすごい迫力を感じる。

 あとはこの人の眷属悪魔らしい人たちもこちらに視線を向けてきてる。うわぁ、どなたもなんだか強そうですね……。

 

 

「ええ、懐かしいわ。変わりないようで安心したわ」

 

「ああ、初めての者もいるわね。彼はサイラオーグ。私の母方の従兄弟でもあるの」

 

 

 そんな風に部長はこの悪魔さんを俺らに紹介してくれる。………って、従兄弟!?だ、だからなんとなく部長やサーゼクスさまに似てるのか。

 

 

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

 

 バアル!バアルって魔王の次に偉いっていう『大王』じゃなかったっけ!?無知な俺でも知ってるぞ!?ってことは部長のお母さんはバアル家出身の悪魔だったのか?

 それにしても大王か。すげえな、グレモリーは魔王と大王ですか!

 そんな驚く俺を余所に部長はバアル家の次期当主さんとの会話を再開させた。

 

 

「それで、こんな通路で何をしていたの?」

 

「ああ、くだらんから出てきただけだ」

 

「……くだらない?他のメンバーも来ているの?」

 

「アガレスは来ている……そこにゼファードルだ。着いた早々にゼファードルとアガレスがやりあい始めてな」

 

 

 心底嫌そうな表情でそう話す、サイラオーグさんだっけ?というか、何をやり合い始めたんだ?そんな風に疑問を俺は感じて────瞬間、建物が大きく揺れた。

 同時に破砕音も聞こえてくる!?いったい何事!?

 すっげぇ近くから聞こえてきたんですけど!?

 部長もそれが気になったのか、躊躇いもなく音のした方。大きな扉の方へ向かって

 

 

 一瞬、その脚を止めた。

 そりゃそうだろ。

 

 

 

「………問題ない」

 

「……参加者同士のいさかいに我々の介入は許可されていない」

 

「…また、テロリストの報告もない」

 

「ならば待機」

 

 

 扉の前付近に見覚えのある奴らがいたからだ。

 黒づくめの銀鳥マスクが二体。そこにいた。

 いったいどうしてここにいるのか、そんな疑問も脳裏に過ったが部長が再び歩き出したから俺らもそれを追う。

 

 

「まったく、だから開始前の会合などいらないと進言したんだ」

 

 

 嘆息しながらサイラオーグさんが自分の眷属悪魔らしき人たちと部長を追って俺らを追い越していった。

 疑問と不安がないまぜになりながらも俺たちは部長の後を追って、黒づくめたちを過ぎて開いた扉をくぐった。

 

 

 

「は?」

 

 

 扉の向こう。そこに広がっていたのは破壊され尽くした大広間。

 テーブルも椅子も装飾品も全部破壊されている!?

 中央には両陣営に分かれた悪魔の皆さんが睨みあってる!どっちも武器を取り出していて、一触触発という言葉が似あう様相だった。

 一方は邪悪そうな格好の魔物やら悪魔さんたち。もう一方は比較的普通そうな見た目の悪魔の一行さんたち。ただ、両方ともおっそろしいほどに冷たく殺意に満ちたオーラを放っていた。

 怖い!とてつもなく怖い!なんつうオーラの量と質だよ。俺らよりも上に感じる。

 

 

 

 

 そんな中、俺の視界の片隅にこの場の殺伐とした雰囲気とは切り離されたかのように落ち着いた空気の場所が映った。

 壁際に近いところにいる三つの人影。

 内二つは扉前にいた銀鳥マスクだったが、最後の一人はまったく違う人物だった。

 腰ぐらいまで伸ばした黒髪に青いメッシュを入れた、白い軍服みたいな服の上から白いコートを羽織った杖をついている女性。

 

 その視線はまるでくだらないものを見るかのようなモノのように俺は感じた。

 

 

 

 

 




 私用で土用は執筆出来ないんで早くて月曜日に投稿になるかな?次の投稿は
 G36Cが出てくれたら日曜になるかもしれない


 感想ください


 本編最後に出た人形……いったいどこの人形なんだ……


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四十三頁

予定より一日遅れの投稿。

 そういえば、本作は9月10日で一周年を迎えます。




 

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公、アガレス家の次期当主です」

 

 

 そう、眼鏡をかけた悪魔の女性がグレモリー眷属に軽い挨拶をする。

 先ほどまでこの大広間にて行われていたアガレスとグラシャラボラスの次期当主による諍いは現状に呆れたサイラオーグ・バアルの手により──文字通りその手によって──ゼファードルの撃沈で幕を降ろされた。

 その後化粧直ししている間に呼ばれたスタッフらの手により大広間はほぼほぼ元の姿へと修復された。そうして、彼ら若手──撃沈したゼファードルとその眷属らを除いた四家の次期当主らはテーブルを囲んでいる。ちなみにだがソーナ・シトリーのシトリー眷属はゼファードルが撃沈して運ばれていくのと入れ違いにやってきた。

 

 

「ごきげんよう。私はリアス・グレモリー。グレモリー家の次期当主です」

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です」

 

 

 リアスとソーナが挨拶をしてから二人は席に着く。眷属らは各々の主の後方で待機するというなんとも貴族社会らしい扱いである。

 

 

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ」

 

 

 見た目に相応しく堂々と自己紹介する若手ナンバー1の悪魔。彼を最後にこの場の自己紹介は幕を降ろすわけだが、根本の原因は十割あちらにあるにも拘わらずサイラオーグはこの場にいないゼファードルの紹介を始める。

 

 

「この場にいないがゼファードル・グラシャラボラス。先日のグラシャラボラス家の御家騒動で本来の次期当主が不慮の事故死をとげたことで、新たな次期当主候補になった男だ」

 

 

 事故死と説明され、言葉通りに受け取る者がこの場にいるだろうか。いや、一部の者は信じそうであるが。

 無論この件に関しては関係ないという事で真相を闇に葬ってもなんら問題のない話だ。何せ、この件に何も興味がわかないのだから。

 さて、本来ならばここには6人の若手悪魔が揃うはずだった。サイラオーグにより撃沈されたゼファードルはいないのは仕方がないことであるが、ではもう一人の不在者。それはディオドラ・アスタロトという名の現ベルゼブブの身内である男だ。

 表向きには彼は眷属諸共テロリストによって殺されたことになっている。

 

 

「アスタロト家は……現状次期当主になれる者がいないため、ここには不参加らしい」

 

「……残念なことです」

 

 

 目をつむり無念であると感じる若手悪魔ら。

 そんな彼らを彼らより離れた壁際で冷たい瞳で見るのはディオドラ・アスタロトの死の真実を知る、否、殺した側の人形。旧約聖書に記されている都市の名を冠する彼女は今頃どこかの海底で転がっているであろうコンクリートを脳裏に過らせながらもすぐにその思考を抹消して警備に意識を戻す。

 時折、自分たちの方へと視線を向ける腑抜けている一部の眷属悪魔の視線をうっとおしく思いつつもその感情を一切表情に出さない。自分の仕事はあくまでこの場の警備なのだから。

 

 

「ところで、先ほどから気になっていたのですが」

 

 

 ディオドラ・アスタロトを惜しむ空気を裂くようにシーグヴァイラが口を開く。それはこの大広間に入るときと入ってから抱いていた疑問。

 

 

「あちらの方々はどなたで?悪魔ではないようですが」

 

 

 そう言って視線を人形らの方へと向ける。

 それはサイラオーグも感じていた疑問であり、サイラオーグはそのシーグヴァイラの疑問に首を縦に振り視線を向ける。この場において彼らを知るのは既に冥界へと戻る際に見たグレモリー・シトリーの両眷属らだけである。

 ゆえにその疑問にソーナが口を開いた。

 

 

「『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』のメンバーですね。あちらの女性の方は初めてですが、少なくとも部屋前で待機している方々とあちらの二人と同じ格好をしている人達を見たことがあります」

 

「『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』……」

 

「あれが例のリゼヴィム殿の……」

 

 

 この場の全員の様々な感情の入り混じった視線を受けて人形は軽く会釈しすぐに表情を戻す。

 それにこれ以上は何もないと判断したのか全員、視線を戻して呼ばれるまでの談笑を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 使用人の迎えにより大広間を後にし、魔王らと重臣らとの謁見を行った若手悪魔ら。

 重臣らから語られる小難しい偉ぶった言葉の数々や魔王らによる今後の説明などを行われ、サーゼクスの聞いた若手悪魔らの今後の目標。

 魔王になる、と言い張ったサイラオーグ・バアル。

 レーティングゲームの頂点に立つ、と語るリアス・グレモリー。

 他様々な目標が語られていき、最後にソーナ・シトリーが夢を語った。

 

「冥界にレーティングゲームの学校を建てるという夢」

 

 それも現在存在している上級悪魔や一部の特権階級の悪魔のよしみで通えるようなソレではなく、下級悪魔や転生悪魔の通えるという分け隔てない学校。

 そんな真摯な夢。

 しかし、いつだってそんな真摯な夢は心無い老害が踏み躙るものだ。

 

 

「それは無理だ!」

 

「これは傑作だ!」

 

「なるほど!夢見る乙女というわけですな!」

 

 

 嘲笑。嘲笑。嘲笑。

 夢を。ソーナ・シトリーの語った夢と、彼女に降り注ぐのは老害たちによる嘲笑ただそれだけ。

 

 

「私は本気です」

 

 

 それでも、彼女はその胸に抱いた夢を手放さない。

 

 

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常。そのような養成施設をつくっては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰すこととなりますぞ?いくら悪魔の世界が変革の時期に入っているといっても変えていいものと悪いものがあります。まったく関係のない、たかが下級悪魔に教えるなど……」

 

 

 そんな冷酷な言葉に耐えきれない者がいた。彼、匙元士郎は立ち─────

 

 

 

「いいじゃないか。面白そうだ」

 

 

 

 そんな言葉に立ち上がろうとした匙元士郎はその場で驚き固まり、ソーナ・シトリーは目を見開き、老害も魔王もその声の主へと視線を向けた。

 そこは魔王らより一段低い席群の一番端の席に腰かけている老公。それはソーナ・シトリーも見たことがある悪魔。

 暗い銀髪の老悪魔。すなわちリゼヴィム・リヴァン・ルシファー、『リリン』である。

 

 

「前代未聞の下級悪魔転生悪魔の為の学校ねぇ。貴族らしいなんとも傲慢な夢だ。だが、まあだからこそ面白い」

 

 

 悪辣な銀悪魔は面白そうだから、この場を掻き回す。

 最もここで少女の心を丁寧に叩き折るというのも面白い。だがしかし、それよりも面白そうな考えがその邪智の脳裏に沸々と海底から湧き出る酸素のように現れていく。

 その考えを壁越しに察知した外の彼はため息をつく。

 

 ああ、なんて悪魔。

 

 

 

「なるほど、伝統。なるほど、誇り。ああ、正直二代目故、他の者らよりはたいして前者は気にしてはいないが……それらは大事だ。それを無視しての夢ではいけない」

 

「いいかな?ソーナ・シトリー殿。キミの語る夢はそういった現状を踏み躙りかねない考えだ。そんなつもりがなくてもそういうものなのだ」

 

「だが、安心するといい。キミはここで失敗してしまった。大丈夫、失敗など誰だってするものだ────だから、この失敗を糧にどうすればいいのかを考えるんだ。躍起になってはいけない」

 

「頭ごなしに否定されたからと言って意固地になって初志貫徹をしようとしてはいけない。何事も現状に対応した考えをしなくてはいけない」

 

 

 

 その言葉はあまりに甘いものだった。

 まだ二十年も生きていない少女にはその言葉はまるで導きの言葉であった。いや、まるで、などではない間違いなく導きそのものだ。

 なにより悪魔らしい邪悪な囁きは同族にすら絡みつく。

 

 

 

「「「「私は君の夢を否定しない。応援しよう、何時かきっとキミがその夢をかなえられるのを応援しよう。ソーナ・シトリー殿」」」」

 

 

 

 空気が違う。

 それを壁越しに感じ取った彼は再びため息をついた。

 

 

 ああ、また一人。

 

 

 

 

 

 

 さて、話はいつの間にかに流れていき若手悪魔たちによるレーティングゲームを行うことが決まり、日程等は後日通達する旨を魔王によって告げられこれにより、この会合は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レーティングゲーム、といえば魔王様方」

 

 

 

 

 

 いや、終わらない。

 口を開いたのはリゼヴィム────ではなく、また別の悪魔。

 その男の顔をリゼヴィムは覚えていた。自分、いや正確に言えば彼らに対して否定的な悪魔だったはずだ。姓は確か────

 

 

 

 

「なにかね」

 

「リゼヴィム殿の配下である彼ら。なんでしたかな?そうそうテロ対策部隊でしたかな?」

 

 

 その表情はまるで面倒ごとを抱いているかのような顔で

 

 

「あんな人間どもの傭兵風情がテロ対策と言って我々の近くを歩き回るなど……その実力が確かなものなど到底信じきれませぬ。人間如きに何が出来るというのでしょうか」

 

 

「ゆえに我々にその実力を示してほしいのです。無論、人間如きの実力などたかが知れていますがね」

 

 

「つまり、悪魔と彼らでレーティングゲームを行うと?」

 

 

 

 サーゼクスの返答に威を得たように醜悪な顔をゆがめて老害は笑う。それを見てリゼヴィムは思い出す。

 ああ、そうだ。こいつが出どころだったな、と。

 

 

 

「今日、今から、我が一族の者と」

 

 

 

 ヴァサゴの悪魔は嗤った。

 

 

 

 

 

 






ソーナさん、大丈夫?
 はえー、次回どうなるんだろ。


感想待ってます(乞食)


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四十四頁


 明日から旅行に行ってきます。
 旅行中はまちがいなく投稿は出来ないと思いますが合間合間で執筆はしておきたいと思います。
 


 

 

「今日、今から、我が一族の者と」

 

 

 

 ヴァサゴ家。

 現当主ではなく数代前の当主であった重臣であるこの男に俺は眉を顰める。

 確かに一部の重臣が鴎の傭兵部隊に対して良い顔をしていないのも知っていたし、昨晩の二亜ちゃんとの談笑で近々何かアクションを起こそうとしているらしいという情報を手に入れていたが、まさかの今日に突っかかってくるとは思わなかった。さて、どうするか。

 一応念のために複数体の人形たちを連れてこさせていたが……。

 

 

「あー、ヴァサゴ卿。流石に今すぐというのは無理では?」

 

 

 ゲームの盤上も用意せねばならないでしょう?

 そういう意味合いを語意に混ぜ込みつつ言ってみるが───

 

 

「いえいえ、リゼヴィム殿。こちらから提案した以上、その辺りの手間はかけませぬよ。既に用意できていますよ。どうですか魔王様方」

 

「ふむ…」

 

 

 くそったれが。

 まったくもってめんどくせぇ。こういう無能はこういう時に限って根回しやら用意が早々に終わらせてやがる。

 サーゼクスやセラフォルーどもはろくに考えやしねぇ。フォルビウムの禿は軍事関係の統括である以上、俺からの報告以外に実際の目で『EXE』の能力を測りてぇだろうから、こいつも駄目だ。

 ならば、アジュカは?駄目だ。あれはサーゼクスやセラフォルー以上にどうしようもない類だ。───しかたねぇか。

 

 

「そこまで用意できているならこっちは何も言いませんよヴァサゴ卿」

 

 

 もうどうなっても、俺は知らねえからな。

 

 

 

「リゼヴィム殿も了承したのならば、私は特に却下する理由はない」

 

「私もいいと思うよ☆」

 

「俺も特に異論はない」

 

「僕も、それでいいと思うよ」

 

 

 魔王共の許可を取り付けたことで調子にでも乗ったか、それとも思い通りの事態に転んで喜ばしいのか知らんが奴は笑みを浮かべている。

 ああ、ろくなことにならねえじゃんか。

 というか、だな。そもそも鴎とヴァサゴなんて、最初っから厄ネタ以外の何物でもなかったな。おい!!??

 

 

「では。既に試合場への転移術式も用意しております。無論、機材等も準備しております」

 

 

 なにやら、ペラペラ言ってるが……んなものは聞き流して、鴎に連絡し準備させる。

 つうか、いったいどこにこんな自信満々な理由があるのかねぇ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァサゴ家。正確に言えばヴァサーゴ家であるがそんなものは特に何もない。

 アスタロト家と懇意にしている家系であり、そして鴎───『笑う棺桶』と因縁のある家でもある。その因縁とは二年前のヴァサゴ家からの依頼の結末。

 現当主の叔父にあたる最上級悪魔が契約を破り一方的に要求を通そうとしたが故の報復。

 些末事項であるが記すも語るも凄惨な報復を行われたこの現当主の叔父にあたる最上級悪魔は件の重臣にとって目に入れても痛くないほどに可愛がっていた孫であったらしいが、そんなもの彼らにはなにも関係がない。

 

 

 

 さて、そんなヴァサゴ家の悪魔───曰く例の最上級悪魔の子息らしく父親ににて最上級悪魔クラスに手がかかっていると言われている。そんな悪魔とその眷属たちを向かいに、鴎もといアンジェリカと人形たちはこのホールに立っていた。

 父親の仇であると認識しているのか、今にも襲い掛かってきそうな殺気と魔力を垂らしながらヴァサゴの悪魔はアンジェリカらを睨んでいるし、件の重臣も上の方から冷徹な視線を向けている。

 無論アンジェリカにとってそんなものどうでもいいわけでこうしてどこ吹く風と言わんばかりに瞼を閉じて沈黙を保っている。それに伴い、人形らも同じようにしている。

 そんな双方を壁際に用意された席に座って見ている若手悪魔ら。その胸中は各々様々。

 

 悪魔に人間風情が敵うはずがないと高をくくる者。

 見目麗しい人形に舌なめずりする者。

 どうなるのか、と純粋に気になる者。

 この場に死銃がいないゆえに敗北するのだろうと決めつける者。

 

 

 リゼヴィムは呆れつつもやりすぎないように視線を向けるがアンジェリカは普通にそれを無視する。

 

 

 

「おや?死銃殿がおられないようですが…まあ、もう始まるので仕方ありませんな。死銃殿を抜きで始めるとしましょうか」

 

 

 脂付いたにやけた笑みを浮かべながら語るヴァサゴ卿。それを最後に両陣営の足元に魔法陣が展開され、輝き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 輝きが失せたそこに広がるのは森の中。

 やや拓けた場所で高所から見れば一目でわかるようなそんな森に空いた穴という言葉がぴったりな場所。そして、視線を少し上げれば遠くに城のようなものが見える。

 そこまで見てアンジェリカは理解した。つまるところ攻城戦をやらせようというわけだが、視線を動かし人形らを見る。

 あそこに向かう途中で追加で呼び出し増えた猟兵は『兵士』枠として8体。

 名付きは4体、そして自分を含めて自陣営には十三しかいない。それに対してヴァサゴは十六のフルメンバー。数字だけで見れば高々「3」という差でしかないが、攻城戦というのは防衛側の数倍の戦力でやるのが常であり、間違いなく不利である。

 加えて、この立地。明らかに城側から見下ろせるような本陣であり、開幕早々に爆撃も可能だろう。

 

 

「だが、そういった不利を叩き潰すのがこっちのやり方だ」

 

 

 アンジェリカは不敵に嗤って人形たちへ視線を向ける。

 

 

「指揮官殿。どうしますか?」

 

「あちらの情報不足である以上、作戦もやや杜撰になりかねませんが」

 

 

 そう問いかける案山子(スケアクロウ)とジェリコに対して、アンジェリカは口ではなく敢えて機器を用いて伝達する。

 伝達を聞いてすぐさま、行動を開始する2体を余所にアンジェリカは残りの2体の人形へと視線を向ける。片方はここ最近副官を任せている人形であるM4A1。では、もう片方は────

 

 

「フフ、いいねぇ指揮官。こんな面白いことがあるなんてついて来た甲斐もあったってもんだね」

 

 

 臀部まで伸びた真っ白な髪に他の人形らに比べて露出の多い黒と白の衣服に身を包み両刃の特異なブレードを二振り腰に下げた眼帯の女。案山子やM4に比べてジェリコやアンジェリカと同等の外見年齢の戦術人形。

 錬金術師(アルケミスト)の名を冠した人形は愉悦にその見目麗しい顔を歪めている。

 

 

「指揮官。私は少数で飛び込んだ方がいいと思います」

 

 

 M4は相も変わらず対して興味もないのか、低血圧じみた反応を示しなんとも対照的な反応を示すこの場における実力者にアンジェリカは肩を竦めて苦笑し、作り物の紫色の空を見上げる。

 

 

 

「ああ、なんて哀れな話だ。オレの分の獲物は残してくれるかわからないなぁ」

 

 

 そう呟きながら、胸中に渦巻くここ最近溜まっているストレスの発散できるかどうかを心配する。自陣営のことなど一切心配せずに。

 

 

 

『皆さま、このたびはヴァサーゴ家、EXEの『レーティングゲーム』の審判役を担う事となりました、ルシファー眷属『女王』のグレイフィアでございます』

 

 

 と、唐突にこのフィールド全域にアナウンスが流れる。

 

 

『我が主、サーゼクス・ルシファー様並びにセラフォルー・レヴィアタン様、アジュカ・ベルゼブブ様、フォルビウム・アスモデウス様の名のもと、ヴァサーゴ家とEXEの戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願いします。さっそくですが、今回のバトルフィールドはヴァサーゴ家領内にある旧要塞周辺をゲームのフィールドとして用意されました』

 

『両陣営、転移された先が『本陣』でございます。ヴァサーゴ家の本陣は要塞謁見の間、EXEの本陣は森林内部の場になりますが、今回のゲームのルールは攻城戦になります。その為、攻め手側であるEXEの『兵士』はプロモーションするには通常通り敵本陣まで赴いていただきますが、防衛側のプロモーションは攻め手側の『王』が要塞内に侵入することで可能となります』

 

 

 やはり、明らかなEXEの不利。無論、これを抗議したところで『王』つまりアンジェリカが要塞内に侵入せねばプロモーションが出来ないヴァサゴ家の方が不利であると返されるのが落ちだろう。

 プロモーションの可不可により『王』が要塞内に侵入したかどうかわかるという情報の有利があるというのに。

 

 

『以上をもって当ゲームのルール説明を終了とさせていただきます。………では、これよりヴァサーゴ家とEXEのレーティングゲームを開始いたします──────』

 

 

 

 

 グレイフィア・ルキフグスの宣言と共にレーティングゲームが始まった。

 

 

 





 低血圧なM4。この子、少数だと暴れ散らかす子なんです。具体的にはスキルを使うと………


 観想くだちい

 ちなみにどうでもいいことかと思いますが作業用BGMは基本的にACVDのBGM集ですねセリフ付きの


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四十五頁


 旅行明け初投稿。

 


 

 

 レーティングゲーム開始の宣言が盤上に響き渡る中、要塞内のヴァサーゴ陣営はよほどの自信があるのだろうか、本陣である要塞の謁見の間にてテーブルを持ち込み軽くお茶を楽しんでいた。

 無論、ただ楽しんでいるわけではない。

 テーブルの上にはこのフィールドの全体図であろう地図が引かれ、そこにはEXE側の本陣の場所など詳しく記されていた。このフィールドに転移してそんなに時間が経過していないことを考慮するにこの地図に記されている情報等はこっちに来てから手に入れた情報ではなく、ほぼほぼ間違いなくゲーム開始前から持っていた情報であるのだろう。

 さて、そんな地図を見下ろしながら紅茶を口にするヴァサーゴの『王』ドミウス・ヴァサーゴは実の父親の仇である死銃がこのゲームにいないためか先ほどまでの殺意や怒気は鳴りを潜め、冷静に思考を回していた。

 ドミウスは決して愚かな男ではなかった。

 少なくとも今回のレーティングゲームにおいて抱いていた死銃への復讐心とも言えるそれが生まれた原因である数年前の事件においては死銃側に非はほとんどなかったという事を理解している。非があったのはあくまで契約を破った挙句にあちら側にふざけた欲望を押し付けようとした自身の父親であることをしっかりとドミウスは理解していた。

 無論、死銃もやりすぎな気もするが。ドミウスは好色な父親があまり好きではなかった。成人してからはあまり関わらなかったほどに……しかし、好きではなくともドミウスにとってあの男は父親なのだ。故に死銃に殺されたという事実に対して死銃に復讐心を抱きもする。

 

 しかし、目的だった死銃がこのゲームにいない以上、やる気自体は最底辺にあるとは言わないが、少なくとも死銃を相手にすると考えていた時のそれに比べてダダ下がりである。あまり好きではない、どちらかと言えば嫌悪感すら感じる父親の祖父のような男の頼みということもあいまってだ。

 故にドミウスはこうして、開始早々はこうして眷属たちとどのようなゲームを行うかを話し合っていた。あちらには情報がほとんどないためにすぐには攻勢に出ないだろうと考えてのことだ。

 そこに油断も慢心はない。

 

 

 

 

 

 

 あるとしたら、過小評価をした。ということだろう──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「情報がないから時間を空ける──────」

 

 

 

「いささか、嘗めていますわね」

 

 

 

 開始の放送と共にいくつもの影が森を疾駆する。

 前衛を務める二体の猟兵、中衛には案山子(スケアクロウ)とジェリコ、そして後方に猟兵二体。

 あちらがどのように駒を配置しているのか、わからないにも拘わらず何故に要塞へと向けて走っているのだろうか。その答えは単純なものだ。

 

 

「流石は指揮官殿」

 

「ええ、これであちらの不意が打てます」

 

 

 このフィールドへと転移する前────既に扉付近に情報用のナノマシンをばら撒いていたがゆえに、気づかれずにヴァサゴの悪魔らに仕込められ、アンジェリカには彼らの居場所とどのような会話をしているのかが手に取るように理解できた。

 故にこうして開幕早々に六体の人形が駆けていく。

 しかし、残念ながら猟兵もジェリコも案山子(スケアクロウ)も最適化工程は凡そ八割弱。上級悪魔ごときならば容易く仕留められるだろうが最上級に手をかけているというドミウス・ヴァサーゴにはいささか数が足りないだろう。

 その為、彼女らが主力にはならない。

 

 

 

錬金術師(アルケミスト)とM4A1に任せればそれで片付く話ですが……」

 

「私たちは私たちの仕事をこなしましょうか」

 

 

 要塞側面の外壁を視認した瞬間、案山子と前衛の猟兵一体が立ち位置を入れ替え、ビットを飛行させて────

 

 

 

保有能力(スキル)起動(アクティブ):スカーレット・イクリプス」

 

 

 中衛のジェリコの緋色の瞳が淡く輝き、ジェリコの隣で走る猟兵以外が一瞬淡くジェリコの瞳同様輝く。

 それを確認した案山子がビットの砲口にチャージして、何度かその砲口から光を放ち外壁にいくつかの穴を空けて大穴を作り出す。

 瞬時に猟兵らが距離を詰め、壁内の確認を行ってジェリコらにハンドサインを送ればそのまま彼らは突入する。この際、一切無音でありあちら側が索敵やそういった情報系のものを仕込んでいるまたは使用していないことは把握済みであり彼らの侵入は察知されていない。

 

 

「小隊長」

 

「ええ、ここからは各員、既定のアタッチメントを装備し暗殺を」

 

「手足の一、二本は問題ないでしょうが明らかに回復の難しいことや殺しは無しでお願いしますわ。貴方がたに酷でしょうがやりすぎないように」

 

「「「「了解」」」」

 

 

 

 ジェリコの指示に頷き、案山子からの釘刺しに応えて猟兵らは懐から何やら手のひらサイズの厚みのある円盤のようなものを取り出し円盤の上下を回してから自身の胸に押し付けた。

 すると、とたんに猟兵らの姿が消えていくではないか。それを確認してジェリコらも円盤を使用してその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、いまごろジェリコらが要塞内に侵入したころだろう。

 要塞正面に二部隊を用意しながら俺は少し離れたところで要塞内の見取り図を映した端末を見ながらこの語のことを考える。後々のことを考えればあちらの眷属と王を殺すなんてことは駄目だ。

 正直に言えば、M4と錬金術師(アルケミスト)はその辺容赦がないから不安だ。いや、流石にちゃんと指示は聞いてくれるから問題はないと思う。多分

 

 

「なんだ指揮官。あたしが命令を聞かない人形に見えるのかい?」

 

「まさか。単純にやりすぎるきらいがあるだろう?」

 

「ハハッ、否定はしないよ」

 

 

 現状部隊は錬金術師とM4、それに猟兵が一体の第一部隊。そして残りの三体の猟兵と俺の第二部隊。

 何故に部隊を分けたのかというと純粋に主力であるM4と錬金術師らと俺は分かれて動いた方がいいと判断したからだ。

 先んじて侵入したジェリコらによる暗殺による数減らしと主力であるM4と錬金術師による敵主力の蹂躙、そして俺は王を取りに行く。正直手抜き感が否めないが……現状の戦力だとこんなものだろう。もしここに建築家(アーキテクト)がいればジュピターやらManticoreあたりを大量に並べてとても実戦的な攻城戦をしたところなんだが………ないものねだっても仕方がない。

 

 

「M4。準備」

 

「わかってます指揮官」

 

 

 M4に声をかければ返ってくるのは相変わらずのつんけんしたもの。だが、そんなことに対してわざわざ言うことはとくにはない。

 彼女は背負っていた長いケースのようなものを抱え、その先端を要塞正門へと向ける。

 それを見ながら俺はAN-94を取り出し、片手にいつものエストックを取り出して腰に吊り下げる。視界の端では錬金術師も主武装である両刃のブレードを両手に装備しているし、猟兵たちもその手に普段通り手斧やらサブマシンガンやらを携えて戦闘準備を整えている。

 それを確認してから俺は次の指示を出す。

 

 

「既に要塞内のマップ及び敵性反応のポイントの適応を送信した。殺すな出来る限り気絶に押しとどめろ。相手はテロリストではない────無論敵ではあるが」

 

 

 

 そこで一度言葉を区切り、視線をM4に動かす。俺の視線を察したか、M4はこちらを見ずに頷いた。

 準備は良いらしい。

 

 

「やれ」

 

保有能力(スキル)起動(アクティブ):────────刻印付与」

 

 

 冷たい彼女の声と共に砲身と化したケースよりそれは放たれた。

 

 

 

「さあ、仕事の時間だ」

 

 

 

 轟音を立てて正門は爆砕した。

 開始の号砲だと言わんばかりに部隊が粉砕して穴をあけた要塞へと殺到した。

 

 

 

 

 

 

 





 次回からヴァサゴとのレーティングゲーム本格開始ですね。
 いやぁ、マンティコアとジュピター、諸々による殲滅戦とか何時か書きたいですね


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四十六頁


 意外と早くに投稿出来た。
 今回からヴァサゴレーティングゲームが始まりますが、まあ、アレですね!
 



 

 

 

 

 要塞正門が轟音と共に吹き飛び部隊が要塞内へと突入していった。

 既に要塞内の情報はEXE側に丸裸にされておりEXE側は一切の罠の心配をせずに要塞内を突き進んでいく。

 

 前方を走るのは錬金術師(アルケミスト)。鉄血側の人形としてその性能は随一である彼女は先程送信されたデータと敵性反応を確認しながら笑みを浮かべる。

 先の轟音はあちらも聴こえている事だろうし、実際に錬金術師(アルケミスト)の電脳に広がっているマッピングデータ上で敵性反応を示すマーカーが慌ただしく動いている。その動きに軽く唇を舐めるが、突出する事はせずに部隊移動の内に収めて動く。

 戦闘狂のきらいがある錬金術師(アルケミスト)であるがやはりそこは人形と言うべきか、規律を乱すことはしない。だからだろう、やや後方を銃を抱えながら走るM4も猟兵もそれを理解して咎めることはせずそのまま追従していく。

 そして、錬金術師らの部隊より後方を走るのはアンジェリカ率いる部隊。ジェリコら隠密部隊と同じ数であるが、攻撃力自体は名付き戦術人形有する他の部隊よりは低いだろう。それを理解しているのは当たり前であり、またアンジェリカというEXE側の王という急所を晒している事から三体の猟兵に囲まれながら慎重に移動している。時折、反応が無くとも部屋を見つければその中に手榴弾を幾つか放り込みながら。

 

 

 対テロ作戦であればここまでおざなりな真似はしない。しかし、この作戦はあくまで攻城戦であり狙うべきは相手の王のみ。

 人質がいるわけでもなく、何か情報を得るわけでもなく、ただただ倒すだけの戦い。それに何より────攻城戦である以上、要塞を破壊しない理由なんてないのだから。

 

 

「ハッ、おいでなさった。来るぞ」

 

 

 と、ここで電脳に広がるマッピングデータ上で前方に敵性反応が現れたのを錬金術師(アルケミスト)は確認しながらも止まることは無くそのまま敵性反応へと駆けていく。それを察知し、追従する二体も速度を上げていく。

 そうして、前方曲がり角から僅かにソレは見えた。

 

「こっから、音が聴こえたようなッッブベェッ!?」

 

 

 槍だろうか。ソレを見た瞬間、錬金術師は鼻で笑いながら、床を踏み砕き一気に加速。ブレードとブレードの間の空間に槍の柄部分を一切の狂いなく嵌め込んでから、敵ごと引き寄せ驚愕の表情を見せた女悪魔の顔面にその膝を叩き込んだ。

 まがりなりにも女に対してまさかの顔面膝蹴りである。

 女悪魔は女らしからぬ悲鳴をあげながら、鼻から血を出し白目を剥いて壁にその身を叩きつけられた。

 

『……ドミウス・ヴァサーゴさまの『騎士(ナイト)』一名、リタイヤ』

 

 

 そのアナウンスと共にヴァサゴの『騎士』である女悪魔がその場から消えた。審判役の反応からして、間違いなく観戦側は錬金術師の容赦ない膝蹴りに引き攣った表情を見せている事だろう。約一名笑いを我慢していそうであるが。

 

 

「角先を確認せずにそんな風に来るとは、素人か」

 

「屋外戦に慣れている様には見えませんね。よくある伝統的な騎士か何かでしょう」

 

 

 そう吐き捨てる錬金術師に追いついたM4が呆れながら、手榴弾を角先へと幾つか放り込みながら答える。

 

 

「ああ、それと錬金術師。既にあちらはプロモーションしていると思うので、容赦はしなくて大丈夫です。さっきみたいに女だろうが関係なく顔面に入れて大丈夫です、ええ」

 

「……M4……意外とバイオレンスなんだな」

 

「悪魔ですよ?悪魔なら許されます」

 

 

 M4の言葉に軽く引き攣りつつも、引き締め直し錬金術師は角先の確認を終えた猟兵に頷き角先へと突貫していく。

 手榴弾による煙が廊下に広がっているが人形である彼女らにはまったくもって関係がない。視覚能力に相応の対策をしているのは当然の事だ。

 故に煙の向こう側も当然分かっているし、何よりマッピングデータ上に記されている。

 

 

「何か────がぁっ!?」

 

「ぐぎぃッ……ぁ」

 

 

 煙の向こう側で立ち往生していた二人の悪魔。

 ガタイのいい男悪魔の顔面に錬金術師が踵をめり込ませて鼻と歯を折りつつそのまま腹をそのブレードで中身が出ないように切り裂き、もう片方の男悪魔をM4が両膝を撃ち抜いて体勢を崩した所を股間を蹴り上げてその顔を上げさせそこに肘を叩きつける。

 錬金術師といいM4といい、大切な部分を殴りつけるのに一切の容赦がない。この時、観戦側の男性陣のほとんどが冷や汗を書いていたのは仕方が無いことだろう。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『兵士(ポーン)』二名、リタイヤ』

 

 

 アナウンスが響くのを確認してから、三体は要塞を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『兵士(ポーン)』二名、リタイヤ』

 

 

 早くも三人もの眷属がリタイヤしたのを聴きながら、俺は只管室内に手榴弾を投げ込んでいた。いや、悪魔がいないのは理解しているがなんというか、無限手榴弾だからこれぐらいやっても大丈夫だろうという精神で投げている。

 まあ、消費アイテムが無限なら大盤振る舞いするだろう?誰だってそうする、俺もそうする。

 

 と。

 

 

「侵入者────ッア」

 

 

 そりゃ来るわな。

 別ルートからやってきたあちらの悪魔を視認すると同時にANー94ではなく、Five-seveNの方でその右肩をぶち抜く。無論、流石にこんな試合に汞の銃弾は使えないから、普通の5.7x28mm弾を使用している。

 アニメやら漫画やらで肩を撃たれても動いてたりとするが、あんなん普通に致命傷だからな。まあ、こっちの悪魔は少なくとも右腕は使えんだろう。ガッツリ肉抉れてるからな。

 

 

「猟兵」

 

「「ハッ」」

 

 

 俺が声をかければすぐさま二体の猟兵がその手のサブマシンガンを構え、致命傷にならない程度に悪魔を撃ち抜く。

 事前に殺すなと指示したからだろう。極力外側を削っているようだ。

 そうして、悪魔はそのまま倒れ伏して廊下に血の池を作って消えた。失血で気絶したか、そうなる前にリタイヤさせたって所だろう。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『兵士』一名、リタイヤ』

 

「残り十二。兵士は五」

 

 

 そう数えつつ、猟兵に警戒を行わせながら俺は端末のマッピングデータを見る。動揺でもしたか、マッピングデータ上でマーカーが幾つか同時に動き始めている。

 だが、残念な事だ。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『戦車(ルーク)』一名、『僧侶(ビショップ)』一名、『兵士』二名、リタイヤ』

 

「その先にはもう、ジェリコらが待機してる」

 

 

 当たり前の様にリタイヤのアナウンスが流れてきて、俺は軽く笑みを浮かべてしまう。今頃観戦側であの悪魔は引き攣らせていることだろう。何せ、まだ始まってそう経っていないというのに、こうも尽く倒されているのだから。

 正直にいえばワンサイドゲーム過ぎて、すぐにでも本陣を出て終わるのを待ちたいものだ。だが、そんな事をするのは流石に俺もどうかと思うからやらない。というか、そんな外で終わるのを待つだけなら最初から俺がグレネードランチャーでも作成して只管猟兵達に撃たせている。それをやらないのはきちんと配慮しているってことなわけで……まあ、いいか。

 

 

「騎士一、戦車一、僧侶一、兵士三……」

 

 

 このままでは錬金術師辺りに(キング)まで取られてしまいかねない。

 

 

「道のりは当たり前に分かっている。猟兵らも上級悪魔程度は何ら問題ない……錬金術師たちよりも先に本陣に行くしかないな」

 

 

 と、なればさっさと行くとしよう。俺は猟兵らに指示を飛ばして少し急ぎ足でしっかりと警戒しながらヴァサゴの本陣へと向かった。

 

 

 






 感想やTwitterを見ればわかると思いますが、ぶっちゃけただ勝つだけならほんとに数行で終わるんですよね。このレーティングゲーム。
 攻城戦ですから、こう城外に砲台等々を用意してぶっぱなしたりするだけで良いんですから。でもまあ、それすると流石に駄目かな?ってこういう展開に。
 人形強すぎない?ってなると思いますが、レベル的に彼らは上級悪魔程度は普通に倒せるレベルなんです。そもそも特訓して強くなる人間と違い戦闘データと稼働データさえ、あれば強くなる人形は違いますし頭の中中世ヨーロッパ的なところがある彼らと近代装備の人形……ね?


感想待ってます


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四十七頁


 何故か気がついたら新しい話が完成していた……いったいぜんたい何が起こったのかわしにはわからんぜよ……


 ようやくARー15の専用装備が泥りました……長く厳しい戦いだった……次は姐さんのか。



 

 

 

 

「なんだこれは……」

 

 

 誰からともなくそんな言葉が漏れた。

 観戦していた政府の重臣らはそのほとんどが自分たちの脳裏に描き広げていた当たり前のキャンパスにナイフを突き立てられていた。相手は人間ではなかったのか?

 彼らが見るのは思い上がった人間たちを最上級悪魔に手をかけた程の貴族悪魔とその眷属が蹂躙する様であった。だが、だがしかし、なんだこれは?

 自分たちの眼前、複数あるモニターに映るのは悪魔達が尽く蹂躙される様ではないか。まして、倒された全員がろくに戦えずに無力化されているのだから、尚更だろう。

 

 

「(ま、そりゃそうだろ)」

 

 

 そんな重臣どもを冷ややかな目で見つつ、リゼヴィムは軽く欠伸をかく。

 数年前のヴァサゴ家最上級悪魔の殺害。最上級悪魔を殺したという実績がある相手に最上級悪魔に手をかけた程度で勝てると思っているのがちゃんちゃらおかしい話だ、とリゼヴィムは思いつつも思考の端で何となくであるが彼らの考えを理解していた。

 

 

「(あくまで勝ったのはSterben。だから、Sterbenがいない状態なら簡単に勝てるとでも考えたのかねぇ)」

 

 

 一強であるという考え程おかしいものはない。

 彼らは人間───正確に言えば人間なのは鴎ただ一人であるが───その歴史を紐解けばわかる話だろう。確かに中世やらそれ以前は英雄やらなんやらと突出した実力者により戦いは左右されてきた。だが、近代ではどうだ?

 誰でも使えて平均的に戦果を挙げられる、そんな武器が幾つも造られてきた。すなわち、質よりも量、量よりも質を超えた───

 

 

「質と量、どっちも兼ね揃えた部隊ほど厄介なものはない」

 

 

 昔の戦争に現代の銃を装備した兵士を送ってみろ。少なくとも銃弾が尽きるまで戦果が挙がっていく。弱兵が将を討ち取る。

 日本でいえば織田信長が最たる例だろう。

 大量生産された火縄銃によって、弱兵たちが名だたる武将を撃ち殺す。長篠の戦いやらなんやらが有名か。

 そこまで思考を回して、内情を知ってる者としてリゼヴィムは同情のため息を吐く。

 

 

「(ま、最上級悪魔つっても、上下広いからな。タンニーンやらの明らかに元の種族的に悪魔の範疇を超えた最上級悪魔とその下限に手をかけた程度じゃあな……錬金術師(アルケミスト)とM4がいる時点で勝ちの目はねぇよ)」

 

 

 もはや見るべきものはないと言わんばかりに内ポケットから飴を取り出して口に放り込むリゼヴィム。その思考は既にこのレーティングゲームについてではなく、つい先程目をつけたばかりの青い芽をどう育てるかという事に移っていた。

 

 

「(グレモリーと違ってSterbenに敵意がそれほどあるわけじゃねえしな。あー、愉しみだわ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(くっ……何故、こんな事に)」

 

 

 先程から聴こえるアナウンスに表情を歪めながら一人の男悪魔が要塞を駆けて行く。

 正しく巨漢という言葉が似合う偉丈夫な男悪魔はドミウス・ヴァサーゴの『戦車(ルーク)』の一人であり眷属の中でも『女王(クイーン)』に次ぐ実力者であり敬意を払われている眷属悪魔であった。貴族悪魔の出ではなく、主であるドミウス・ヴァサーゴに見出されて眷属となった。

 そんな彼はいまこの現状に酷く焦りを覚えていた。

 

 あまりにも早すぎるゲーム展開。作戦を考える時間もなく、ゲーム開始早々の攻勢。そして、既に自陣の半数がリタイヤしている。

 故に主の命令で前線に向かっているわけであるがしかし、男は止められないと判断していた。

 

 

「(状況から、敵は三部隊に分かれているのだろう。俺と、『女王(クイーン)』に主……止められるのは二部隊、間違いなく敵の一部隊は主の所に辿り着く……)」

 

 

 どうする。そこまで悩んで、男はネガティブな思考を自ら切り捨てた。

 ならば、主のもとにやってくる前に自分が敵の一部隊を早々に叩き潰して戻ってくればいいのだ、と。

 

 

「俺は負けない────」

 

「残念だ。お前の負けだね」

 

「っ!」

 

 

 その脚が止まった。前方に立つのは白髪に眼帯の長身の女。突き出た胸や腹部が見える服装やチラリと白い太ももが晒されたなんとも情欲を誘う風体の彼女、錬金術師(アルケミスト)に男は警戒しながらも喉を鳴らす。

 その両手に持った二振りの両刃のブレードという明らかに危険極まりない代物が見えているが、一瞬惚けて───

 

 

「さよなら」

 

「ヌゥッ!?」

 

 

 その一瞬を狙って眼前に飛び込んだ錬金術師がそのブレードを振るった。しかし、腐っても実力でのし上がってきた故か、その刃が男の胸部を斬り裂く寸前にぎりぎりのところで男は後ろに跳ぶことで回避してみせた。

 錬金術師(アルケミスト)はそれに軽く目を見開いたと思えばすぐさま、その表情を真剣なモノへと変えた。それと同時に男は空気が戦場のそれから恐ろしく冷たいものに変化したことを感じ取った。

 理解してしまった。

 

 

「……」

 

 

 そして始まるのは冷徹な仕事だ。

 床を蹴りつけ、目に終えぬ速度で男の背後に回った錬金術師がその頸椎を断つようにそのブレードを振るう。しかし、経験故の理解か純粋な本能か、男はそれに気が付きなんとかその手に握っていた剣を割り込ませながら反転し下がる。

 

 

「こいつ……いま、殺す気だった!!」

 

 

 容赦を感じれない冷徹な一撃にそう吐き捨てる男。そんな男など心底どうでもいいかのように錬金術師はその機械的な冷たさを感じさせる視線を向ける。

 男は長年の経験からそれが、自分を見てはいないことを理解した。

 自分を通して別の誰かを見ている。なるほど、そういう輩は何度も見てきて相手をしてきた。その度に結果として自分を見させたうえで打ち負かしてきた。

 だが、だが、この目の前の女は違う。

 

 

「てめぇ……!!」

 

 

 何も。何も見ていない。

 それは作業するかのような、視線。自分を通して誰かを見ているわけでもなくただただこの戦いを只の作業と考えているそんな視線であった。故に男は激高した。

 

 

「ぶっ殺すッ!!」

 

 

 人間如きがなんだその目はッ!!

 そう自らに渦巻く怒りの感情を放出させるかのように男は咆哮し、その筋肉を二回りほど膨張させた。その巨躯はこの要塞の廊下の天井に頭をぶつけかねないほどで、だからだろう男はやや前傾姿勢をとる。

 上半身の服は膨張した筋肉により弾けており晒された肌にはうっすらとであるが黒い稲妻のようなものがいくつも浮かび上がっている。

 

 

「……」

 

 

 それを前にしてもなお、錬金術師の視線は変わらない。

 当たり前だ。遊びを入れる理由がないのだから。故に極めて冷徹に錬金術師は床を蹴りつけ男へと向かっていき、当たり前に男も錬金術師を迎え撃つためにまるで獣のように飛び掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錬金術師が『戦車(ルーク)』の男の処理を開始した同タイミング。

 ジェリコら隠密部隊もまた一つの障害に当たっていた。

 

 

「残念だがここで終わってもらう」

 

 

 いったいぜんたいどういう理由か不明であるが、一人の女悪魔がその刃をメタマテリアル光歪曲迷彩のアタッチメントを装備しているジェリコらへと向けていた。

 それはあてずっぽうでもなんでもなく、間違いなく見えているのかそこにジェリコらがいることを理解しているらしい。彼女の周囲にいる三人の悪魔たちはわかっていないようだが。

 その様子を見ながら小隊長を任されているジェリコはこの現状に対応するために目の前の女悪魔を叩くことを決めた。

 無論、この意思は既にネットワークを通じて伝えており無言のまま、猟兵らが周囲の悪魔の対処へと動き始めた。

 

 

「ッ、仕方なし…」

 

 

 見えない部下たちへ迫る猟兵らを見送り、女は目の前のジェリコとを討つために構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




恐らく9月中はこのスペースでは書けるかもしれませんが、10月になったら間違いなくスペースは落ちます。

 ところで、アルケミストってエッッチちな格好だよね


感想くだちい


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四十八頁


 アイスボーン楽しんでますか!?
 作者は楽しく地底に潜って狩りしてます!

それはそれとして、もうすぐデモンエクスマキナの発売日ですね。作者はスイッチないので、とりあえずスイッチライトを買う予定ですので……つまり、早くても20日にならないとやれないという……。まあ、諸事情で20日に買えるかどうかの問題もあるんですがね




 

 

 

 

 

 

 扉から離れた壁際に屈みながら猟兵はその手に握るスイッチを押した。

 

──ドンッ

 

 扉に設置されていた爆弾がさく裂し、小気味いい音をたてて扉が吹き飛んだ。しっかりとした両扉は見る影もなく、爆弾の煙で室内の様子、室内から廊下の様子は互いにしばし視認することは不可能であるが、マッピングデータとマーカーがある猟兵らにはなんら関係のないことである。

 既に待機していた他の猟兵らが室内へと手榴弾を転がしていた。

 立て続けに爆発音が室内から轟き、それらが止んでからようやく猟兵らは室内へと侵入していく。

 

 

 室内に侵入すれば、マッピングデータに記されているマーカーどおり、その場にとどまる悪魔が三体。内一体がほぼほぼ無傷で最奥の椅子に腰かけている。他、二体は完全には防げなかったか、膝をついてボロボロである。

 

 

「ガッ」「うっ」

 

 

 それを視認し、すぐさま猟兵らは二体の悪魔らの両膝両肩を撃ち抜く。

 そこまでやって、ようやくこの部屋───ヴァサゴ本陣にアンジェリカが入ってきた。

 

 

「どうもはじめまして、ヴァサゴの王」

 

「ああ、はじめまして傭兵殿」

 

 

 片や不敵な笑みで、片や苦々しい表情で相手方の『(キング)』を見つめる『(キング)

 

 

 

 

 

 

 ドミウス・ヴァサーゴにとって今回のゲームで起きた尽くが予想外という言葉でしか言い表せなかった。ゲーム開始早々の要塞正門の破壊と侵入、急いで迎撃に向かった眷属たちの早々のリタイヤ、そして自身の信頼している両腕を抑えつつ相手方の『王』が本陣にたどり着いた事。これらすべてがあまりにも予想外であった。いったい誰がこんなことを予想できたのか。

 そう聞けば約一名は予想できていそうであるがしかし、そんなことはドミウス・ヴァサーゴの知ることではない。

 彼もまた『笑う棺桶(ラフィン・コフィン)』の主戦力はあくまでトップである死銃一人であり、その下はそこまでではないと考えていた。無論、決して侮っていたわけではない。

 しかし、悲しきかな悪魔という種族ゆえか無意識ながらも見下し過小評価し、この事態を招いた。リゼヴィムからすれば哀れとしか言えない事態であるがそれは胸中に収めておく。

 さて、ここまで来てドミウス・ヴァサーゴの中に慢心はあるのか?いや、そんなものはない。あるのはいまだ消えぬ過小評価ただ一つである。

 

 

 あくまで目の前にいるのはアンジェリカという聞いたこともないような人間の女であり、最上級悪魔である父親を殺した死銃ではない。ならばなんとかなるであろう。

 そんな評価を抱きながら、ドミウス・ヴァサーゴはアンジェリカを見る。

 

 

「そう睨んでくれるな、ヴァサゴ殿」

 

「睨まれる理由は知らないと言いたいのか?」

 

「まさか」

 

 

 ドミウス・ヴァサーゴのイラついた問いかけにアンジェリカは肩を竦めて応える。その返しにドミウス・ヴァサーゴはより一層イラついていく。

 それを理解しているのかいないのか、アンジェリカは言葉を重ねていく。

 

 

「契約破りのクソ悪魔のことだろう?」

 

「殺す」

 

 

 瞬間、ぶちまけられるのは最上級に手をかけた悪魔による魔力の奔流。

 それに対して直線上にいたアンジェリカは近くの柱裏の方へと飛び込み、射線外の猟兵らは壁際に退避した。眷属?巻き込まれたに決まっているだろう。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『騎士(ナイト)』一名、『僧侶(ビショップ)』一名、リタイヤ』

 

 

 そのアナウンスに一瞬、冷静さを取り戻したかドミウス・ヴァサーゴは舌打ち、魔力を消して柱の方に逃げたアンジェリカを睨む。

 そんなアンジェリカはドミウスを一瞥し、立ち上がる。

 一瞥しただけでアンジェリカはドミウスへと向き直ろうとはしない。それを見て再びドミウスはイラつき魔力を放とうとしてしかし、なにか己の中のなにかがそれに待ったをかけた。それは本能かそれとも理性かはたまた全くべつのモノなのか、それはドミウス自身ですらそれを理解できない。

 だがしかし、その何かに従うべきだという事だけは理解できた。ゆえにその手を止め、ドミウスはアンジェリカを見る。

 

 

「ヴァサゴ。まさか、ここで過去の因縁が絡んでくるとは、な。予想できなかったわけじゃぁない」

 

 

 アンジェリカが歩き出す。ドミウスの方へ────ではない。さきほどまでいた、場所へと戻るために歩き出したのだ。

 

 

「こうして、悪魔に関わった以上。必ずぶつかる問題であるのは理解していたよ。そして、(オレ)はこれを超えるべき────試練であると受け取った」

 

 

 フードを掴み、アンジェリカはそれを被りながら柱の陰に消えた。

 それをドミウスの中のなにかは見逃してはいけないと訴え、そして柱の陰から現れた者に目を見開いた。

 

 

〈ン、故にオレはお前を潰すよ〉

 

 

 黒い外套にフードから見える髑髏のマスク、その手に握られた銀のFive-seveNと刺剣(エストック)

 しばし歩いてからようやく、それはドミウスを見た。

 

 

「死銃……!!」

 

 

 ここに仇が現れた。

 

 

〈It's Showtime〉

 

 

 

 

 

 不気味に髑髏の死面は赤く瞳を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な死銃だと……!?」

 

 

 観戦側ではどよめきにあふれていた。

 それは当たり前だろう。なにせ、この場にいないからゲームを仕掛けたのにその死銃がフィールドにいるのだから。

 まさか直接ゲーム外から転移してきたのではないか、と不正を疑う者もいるがしかし、別目線の映像でアンジェリカが死銃になっていた以上転移ではないのは明白であり、ならば偽物かとリゼヴィムに視線をやれば────

 

 

「ヒャヒャヒャヒャヒャッッ!!!まっじでぇ!?サービス精神旺盛かよ、Sterben。わざわざそれ見してやんのかよ。あー、やっば」

 

 

 そんな風に笑いながら腹を抑えている。

 嗤い交じりの言葉からして、あのフィールドにいるアンジェリカがなった死銃が間違いなく本物であるのは疑いなく、そして

 

 

「死銃は女だったのか!?」

 

「ハハッ、Sterbenの性別を知らないので?」

 

 

 リゼヴィムの煽りめいた言葉が投げこまれるが、そんなことは気にしていられない。

 ただただ、彼らは驚愕するばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈嘗て出会ったヴァサゴの悪魔。奴は我々と契約を交わしておきながら、それを平然と破り捨て、それだけでなく我が同胞にまで手を出そうとした赦せるか?否、赦す理由が無いだろう?〉

 

 

 左手で刺剣をペンの様に回しながら、右手でFive-seveNをプラプラとしながら、俺は目の前の悪魔を見る。

 煽りであるが、それは俺の本心。

 

 

〈オレたちは信頼を金で売っている。だが、金を払うから仕事を請け負うんじゃあない。そんな尻軽な傭兵もどきどもと一緒にされては困る〉

 

 

〈だから、バラした〉

 

 

 俺の言葉に悪魔はその表情を怒りの形相に変えた。それを分かっていながらも俺は言葉を続ける。

 

 

〈まず、その両膝を撃ち抜いて砕いた。次に腕の関節を折り砕いてそのまま背中の方で手の平を重ね杭で固定した。その次は腹を割いてから臓器を丹念に潰した〉

 

「……ろす」

 

〈そうして、自慢だったらしいその見栄えのいい顔を丁寧に削いだ。他にも何かしたが…………まあ、面倒になったからな。猟兵にバラさせた〉

 

 

「殺す……!」

 

 

 まあ、本当にやったのは顔削ぎだけだがな。他は全部面倒になったからやらなかった事だ。ああ、猟兵にバラさせたのは命乞いさせてからやったからこれも本当だったな。

 要するにそういう残酷な事をしようとなる、ぐらいに奴のやった事は俺に怒りを抱かせたわけだ。で?お前はどうだ?

 

 明らかにブチ切れたであろう、悪魔を見ながらFive-seveNを向ける。

 

 

〈あまり強い言葉を使うな。弱く見えるぞ?〉

 

「死ね!!」

 

 

 最上級悪魔に手をかけているに納得する魔力量の奔流を幾本も放ってくるので、それを的確に回避しながら、俺は嗤う。

 

 

 

〈真面目に相手すると思ったか?〉

 

 

 武器製造(ウェポン・ワークス)

 無数の銃剣をばらまいてから、手榴弾をぶちまけて、そこらのキメラをぶち殺す程の爆弾を内蔵したDinergateどもを悪魔へと突撃させた。

 

 

 

 

 

 





 Sterbenの性別知らねぇの?(女とは一言も言ってない)


わざわざ真正面から相手すると思った?相手しないよ☆(下衆顔)


 


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四十九頁

何とか間に合った……
 デモンエクスマキナ今週ですね!でも作者はライト買ってからやるんで来週です!


 ギチギチ、そんな音が聴こえそうな光景がそこにはあった。

 一体の猟兵がその腕で獣の脚を掴み、そのまま身体を絡める事でその場に押し止めていた。

 

 

「……ふぅ」

 

「仕事中ですよ」

 

 

 その様を見ながら、錬金術師(アルケミスト)が壁に寄りかかって火のついていないタバコを口にする。それを咎めるM4に錬金術師(アルケミスト)は悪戯めいた笑みを浮かべて、その火のついていないタバコを口から離してM4に見せる。

 

 

「残念、シガレットだ」

 

「……!!だとしても、仕事中に菓子を口にするのはどうかと思いますが?」

 

 

 軽く目元を引きつかせたM4に軽く手を振りながら、錬金術師はココアシガレットを口に戻す。

 

 

『きぃさまらぁ!!!』

 

 

 そんなまるで戦闘などなかったとばかりに談笑するM4と錬金術師に対して、猟兵に抑えられていた獣───ワータイガーの転生悪魔である『戦車(ルーク)』が激高する。

 それを聞き流しつつもM4は視線を『戦車(ルーク)』に向けて軽く呆れか軽蔑の息を吐く。

 

 

「どうせ、決闘だの正々堂々だのとのたまうんでしょうけど、私たちは傭兵です。依頼された訳でもないのにそんな無駄な事をすると思っているんですか?」

 

『巫山戯るな人間風情が!?』

 

 

 嗚呼、ダメだ。やはりコレはここで殺そう。

 機械的に冷たく、M4は思考を凍てつかせてその手のM4A1の銃口を『戦車』の眉間に突きつける。

 そして、その引鉄に指をかけたところで銃身を上から抑えられた。

 

 

「M4。やめておけ」

 

「………………」

 

 

 錬金術師の言葉にM4は銃を降ろして、そのまま踵を返すついでにその踵を『戦車』の横っ面に叩き込んで、そのままヴァサゴ本陣へと向かっていった。

 そんなM4に錬金術師は軽く肩を竦ませてから、猟兵へと指示を飛ばす。

 

 

「そいつを無力化したら、あたしらも本陣に向かうとしようか」

 

「ハッ」

 

 

 そう言って、錬金術師は『戦車』に視線を向ける。M4の蹴り───人形のそれなりに力が篭もったソレを受けた『戦車』は白目を向きながら呻いている。首の骨は折れてはいないのが唯一の救いだろう。

 もはや立つことはないだろうと判断して、猟兵は『戦車』から手を離し軽くその腹に蹴りを叩き込んでから錬金術師と共に本陣へと向かって歩き始めた。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『戦車』一名、リタイヤ』

 

 

「そういえば、ジェリコらはどうなったんだ?負けてはないだろうけどさ」

 

 

 『戦車』のリタイヤを告げるアナウンスを聞き流しながら、錬金術師は別働隊であるジェリコらが気になった。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、そこはジェリコら別働隊がヴァサーゴ陣営の『女王(クイーン)』らとぶつかりあった場所。

 そこにあるのは適度に痛めつけられ、無造作に放り捨てられたボロボロの『兵士』らと完全に関節を案山子(スケアクロウ)に決められている『女王(クイーン)』がいた。

 メタマテリアル光歪曲迷彩を切っているのか、案山子はその姿を晒しておりそんな彼女に意識が飛びかけている『女王』は睨みつけている。

 しかし、睨みつけているからどうした、というもので案山子は一切緩めずむしろ少しずつ力を入れていくだけである。

 このまま力を入れ続けば、間違いなく『女王』の骨は折れるであろうが───

 

 

「案山子。そろそろ移動しましょう」

 

 

 そんな状況を見かねたジェリコが声をかける。

 ジェリコはメタマテリアル光歪曲迷彩を切っていない為に彼女の声は何も無い場所から響いているが、人形である案山子には場所を把握出来ている為に彼女に視線を合わせる。

 

 

「……そう、ですね。ええ、わかりましたわ。外した時に暴れられても困るので……こう、顎をやってくれますか?」

 

「……はぁ、別に構いませんが」

 

 

 案山子の頼みにジェリコはなんとも言えない微妙な表情を案山子に見せながら、その手に握っている杖を軽く回す。

 基本的にジェリコはメタマテリアル光歪曲迷彩を使用している為、その姿を見るには人形やSterbenの様な装備が必要であったり、理由は全くもって不明なこの『女王』だけであったりなのだが……もしも見えないのならば今からジェリコの放つ一撃を見ることなく気絶が出来るのだろうが。

 

 

「は、な……せ……!!」

 

 

 残念ながらこの『女王』は何故か見える為、ジェリコの一撃を食らわないように案山子から逃れる為に暴れる。

 そんな『女王』に軽く苛立ちつつ、抑える為にちょっと、本当にちょっとだけ力を込めて────

 

 

「っぅ──────」

 

 

 何か折れる音が小さく響き、それに仰け反った『女王』の顔が振り下ろされた杖に直撃し鼻を強打したか鼻血を出しながら白目を向いて沈んだ。それを確認した猟兵らも一先ず放り捨てていた『兵士』らを締め上げて気絶させた。

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの『女王』一名、『兵士』三名、リタイヤ』

 

 

 リタイヤのアナウンスを聴いてから案山子は立ち上がる。そんな彼女をメタマテリアル光歪曲迷彩を切って姿を晒したジェリコが何か言いたげは視線を彼女に向けるがしかし、そんなジェリコの視線から逃れる様に案山子はそのまま顔をズラして別の方向をむく。

 

 

「少し時間がかかりましたが、早く本陣に行きますわよ?」

 

「…………ああ、分かった」

 

 

 ジェリコは軽くため息を着きながら、猟兵らを連れて案山子と共にヴァサゴ本陣へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 無数の銃剣と、無数の手榴弾、無数の自爆Dinergateがドミウス・ヴァサーゴに襲いかかった。

 魔力で無理矢理に対処する?無理だろう、そんな事をすれば大きな隙を晒して死銃による銃撃がドミウス・ヴァサーゴを襲う事になる。

 回避する事で対処する?馬鹿な考えだ。銃剣だけなら回避出来るだろう、だがしかし、手榴弾は爆発するだろうし自走するDinergateが追いかけ先回りし、次々と爆発するのは目に見えている。しかも、わりと速度がありドミウス・ヴァサーゴでは逃げ切る事は出来ないだろうし回避中に死銃が銃撃するであろう事はもはや火を見るよりも明らかな事だろう。

 では、掻い潜って無理矢理に死銃へ突撃する?それが一番何とかなりそうで何とかならない頭の悪い選択だ。そんな事をすれば、死銃は一切容赦なく狩りに行く事だろう。何よりドミウス・ヴァサーゴはあくまで最上級悪魔に手をかけた程度の実力であり、最上級悪魔を殺した事がある死銃には純粋に実力が足らない。

 

 

 ああ、つまるところ。

 

 ドミウス・ヴァサーゴに勝利など存在しないという事だ。

 

 

「ぁ、ぁ、あああ!!ク、クソがァァァアアア!!!!!」

 

 

 銃剣を回避する。だが、完全には避けきれず、身体の端々が切り裂かれていく。手榴弾が次々と炸裂していきその爆発に煽られ、小さくない火傷を負いながら吹き飛びそこにやってきたDinergateたちが自爆していきさらに誘爆していく。

 死銃と猟兵らは早々に室内から出ていき、外からその様を見ている。

 

 

〈少しやり過ぎた気がするが気のせいだろう〉

 

「「「まったくもって気のせいでしょう、閣下」」」

 

〈そう、か〉

 

 

 爆発による煙が消え、そこには大の字でズタボロになって倒れているドミウス・ヴァサーゴがいる。少なくとも胸が上下しているため生きているのは間違いないだろう。

 その近くへすぐに猟兵が駆け寄り、確認を行い始める。

 

 

「……気絶しています」

 

〈ン、そうか〉

 

 

 そうして、しばらく待てば

 

 

『ドミウス・ヴァサーゴさまの戦闘不能を確認、勝者EXE』

 

 

 当たり前だ、と言わんばかりにアナウンスに頷く猟兵らを見ながら、足下に展開された帰還用の魔方陣に身を委ね───試合場から転移した。

 

 

 

 転移の先は先程までの会場。

 そこでSterbenが視線を動かせば、ありえないとでも言いたげな表情や、諦めのある表情を見せる悪魔たち、そしてまったくもって笑えるとでも言いたげな表情を見せるリゼヴィムに軽く肩を竦める。

 これにて閉幕。

 

 悪魔が仕掛けた戦いはEXEの圧勝に終わった。

 

 少なくともヴァサーゴ家の声は間違いなくリゼヴィムよりも弱くなるだろう。自業自得であった。

 

 

 

 




 そういえば、来週からドルフロ新イベというかコラボイベントですね。コラボ先の作品はちょっと作者は分からないのでせう……


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一周年記念

 実は今日でこの『漫画家と主夫高校生のD×D』が一周年を迎えるんです!

 そして、50話目の投稿になります。区切りがいいですね。
 ちなみにしっかりと今回の話の投稿時間も第一話と同じ時間です。

あ、本日の投稿はこれで2話目になります。本編最新話もありますのでそちらもどうぞ。


 

 

 

 バタフライエフェクトという言葉を知っているだろうか?

 

 意味としては二つの同じ事象において、初期条件が違うだけで結果が全くの別物になってしまう現象でこれは気象学用語にある蝶がはねを動かすだけで遠くの気象が変化するという意味の言葉をカオス理論に引用したものであるわけだが、これは世界においても同様のことが言える。

 同じ時間帯同じ状況であるにも関わらず、頭にぶつけたチーズの生産元が変わった程度で彼の転生後での諸々が大きく変わったのだ。

 いったい何を言ってるんだ?と思うかもしれない、ああまた何時ものチーズかと思うかもしれない、少なくとも作者も正直自分で何を書いてるのかよく分からなくなるがしかし、何ら問題はない。

 これはそんな諸々が違う世界をほんの少しだけ覗き見るだけなのだから。

 

 

 

 

 

「…………ふぁっきゅー」

 

 

 彼はそう吐き捨てながら、目の前の光景に頭を痛める。

 彼の目の前には二人の女性が何事かを言い争っている光景が広がっており、その光景はあまりに頭痛を引き起こして然るべき光景だ。

 

 

「いい?貴女みたいなチンケな悪魔風情が、私の、わ・た・し・の一誠に不埒な真似をしないでくれる?」

 

「誰がチンケな悪魔ですって?そもそもこの子は、わ・た・し・の下僕なの。貴女の方こそ変な真似をしないでくれるかしら?」

 

 

 ここは彼の寝室。その中心で片や全裸の白髪の女が、片や制服を脱ぎかけで半裸の紅髪の女が、自分の所有権に関して何やら言い争っている。これを見て頭痛が起きない剛の者はなかなかいないだろう。 

 実際問題、彼───兵藤一誠はこの目の前の光景にもはや頭痛が一周回って痛みを伴わなくなってきて謎のリラックス現象を起こしきっとこのまま布団に入ればのび太並の速度で眠られるだろうという正しく頭がおかしいことになっている。

 可哀想なのでそろそろこんな不毛な争いを終わらせて欲しいものであるがさて、その前になぜ故にこんな状況が起きているのかの説明とそれに至った経緯を軽くこの兵藤一誠について話しながら説明しよう。

 

 

 

 彼、兵藤一誠は転生者だ。

 毎度おなじみとも言えるチーズ転生によりまさかのハイスクールD×Dの原作主人公に転生したわけであるがしかし、『兵藤一誠』───以降、彼の名前には『 』を付けることとする───は原作の兵藤一誠が保有している筈の神滅具である『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を宿していなかった。

 『赤龍帝の籠手』を持っていない兵藤一誠なんてただの性犯罪者でしかないと言われているほどの主人公補正を『兵藤一誠』は持っていないのである。であれば、哀れチートどころかデフォルト装備すらないチーズ転生者。

 となってしまう……だがしかし。

 やはり持っているかチーズ転生者特有の───実際転生してるのは全て同一人物なので特有と付けるべきかは謎であるが───出処不明の謎能力。神様転生では無いため、特典ではないその能力、例えば何故か都合良く『置換魔術』の卓越した使い手になったり、見た目が美少女になったり、技術が高くなったり、武器の扱いが最高になったり、などの謎能力。

 御都合主義なそれらが無論、『兵藤一誠』にも備わっていた。

 

 それはある種、『兵藤一誠』の神器と言えるようなモノ。

 

 その名は『アビータ・EmpressⅢ』

 いったいぜんたいどういう訳かはまったくもって分からないが前世のゲームに出てきた敵キャラが『兵藤一誠』の中にいたのだ。

 それを知った時の『兵藤一誠(八歳)』は胃痛と頭痛で気絶した程に理解出来ない現象である。だが、まあ、あくまでガワだけが『アビータ・EmpressⅢ』なだけであるのか、性格等々は間違いなくゲームの方の『アビータ・EmpressⅢ』とは違うようであった。

 その事に安堵した嘗ての『兵藤一誠(十歳)』であったが、現実の方に出てこれるという事実を知って再び胃痛と頭痛で気絶した。さて、何らかの力を宿していてたまたまそれが精神世界で形成した姿が『アビータ・EmpressⅢ』であったのかはたまた違うのかは未だ不明であるが、『兵藤一誠』はセイレーン繋がりであるのか水の力に長けていた。

 水属性という本当に赤龍帝からかけ離れていく自分に軽く諦観を抱きながらも『兵藤一誠』は自らを鍛え、実体化した『アビータ・EmpressⅢ』から自らの貞操を護りながら、裏の世界に関わるようになってかれこれ六年。

 途中で何処ぞのゴスロリ魔女を溺死させて手に入れた紫炎という厄ネタに軽く吐血しながらも生きていき、先日見事に堕天使に殺された。

 

 

 無論、高々レイナーレ如きに正面から殺される様なやわな鍛え方はしていない。だがしかし、原作による修正力か否か、その日『兵藤一誠』はとてもどうにもならない気だるさを抱きながら買い物をし、その帰りに避ける間もなくその光の槍で串刺しにされた。

 水属性という人体に相性のいい属性であるにも関わらず治癒は上手くいかずそのまま彼は死んでしまった。だが、そこを原作による修正力なのかどうかは分からないが何故かレジ袋に入っていたチラシによって召喚された原作メインヒロインであるリアス・グレモリーによって『兵士(ポーン)』八個で悪魔へと転生したわけである。人生二度目の転生だった。

 さて、その後、自分を気安く呼び捨てにしてくる便宜上の主に中指を胸中で立てながら一人勝手に───『アビータ・EmpressⅢ』は一緒にいたが実質一人である───教会にカチコミをかけて、レイナーレら堕天使やはぐれどもを溺死させて、儀式で死んでしまったもう一人の原作メインヒロインであるアーシア・アルジェントの神器をレイナーレから奪いつつ、彼女の遺体をしっかりと火葬して原作一巻から思いっきり原作を叩き割りに行ったわけであるが………………こうして、今『兵藤一誠』はとてもとても面倒臭い事態にぶつかっている。

 

 

 時間軸としては原作二巻にあたる今であるが、恐らく眷属の中で三人いる男子の中で家族と断言出来るほど近しくはないがそれでも近しい男性という事で選んだのだろうリアス・グレモリーが『アビータ・EmpressⅢ』に襲われそうになっている『兵藤一誠』の寝室に転移してきて、この現状が起きている。

 リアス・グレモリーは嫌いな婚約者との婚約を無くすために既成事実を作る為に『兵藤一誠』に処女を奪わせるつもりであったが、残念ながら『兵藤一誠』の貞操を貪ろうとしている正しくセイレーンな『アビータ・EmpressⅢ』とぶつかり合い、今は互いに所有権を主張し始めていた。

 それをベッドの上で眺めている『兵藤一誠』は先程も説明した通り現状に頭痛が酷くて一周回りリラックスしている為、どうしようもない。だが、リラックスしてる思考の端ではとりあえず目の前の女二人をどう叩き出すかという物騒な事を考え始めている。

 

 

「(流石にはぐれにはなりたくはないな)」

 

 

 悪魔であるリアス・グレモリーは正直紫炎で炙れば終わるのだろうがそうすれば叛逆扱いを受け悪魔内で指名手配を喰らいかねないため、その危険な考えを却下しどうしようもないと諦め始めている。と言うよりもそろそろそのまま寝そうな勢いである。

 『アビータ・EmpressⅢ』はもはやどうしようもない。多分紫炎で焼いてもどうにもならないであろうし、水は効かないのは『兵藤一誠』も理解している。だから『兵藤一誠』はさっさと寝たい。放っておいて寝るのがありだろう。

 

 

「…………(よし、寝よう)」

 

 

 女二人のキャットファイトまでもはや秒読みのタイミングで『兵藤一誠』は決断しそのまま布団の中に身体を潜り込ませて────

 

 

「ッ、この魔法陣は……!」

 

「また、侵入者……!」

 

「(寝させて……)」

 

 

 床に展開された魔法陣に三人は思い思いの反応をする。

 グレモリー眷属の魔法陣より現れたのは銀髪のメイド服を着た妙齢の女性。原作を知る転生者である『兵藤一誠』は初対面であるがその女性の事を知っている───原作知識を抜きにしても裏の世界に関わる中で知ることもあった為、一概に原作知識のおかげではないがそれは横に置いておく。

 

 

「こんな事をして…………お嬢様?」

 

 

 メイド、グレイフィア・ルキフグスはリアス・グレモリーを咎めるような声音で何か言おうとしたが、目の前に広がる光景に言葉が止まるが、辛うじてリアス・グレモリーに呼びかけることが出来た。

 そりゃそうなるだろう。

 目の前で二人の女性が片や全裸、片や半裸で争っていたのだから。そして、最後の一人は布団に入って寝る気満々である。誰だって驚く、『兵藤一誠』だって驚く。

 グレイフィア・ルキフグスの中では今回婚約を破談させようとしているリアス・グレモリーが裸ないしはそれに準ずる格好であるのは予想していたが、まさかの別の女性が全裸なのは予想外であるし、その争いをしりめに寝ようとしてる男性がいるのだから、もうなんとも言えない。

 

 

「グ、グレイフィア……こ、これは」

 

「ああ、貴女が。悪いですけど、この悪魔引き取ってくれませんか?ええ、わ・た・し・の一誠に手を出そうとしたので。私の夜伽を邪魔したので」

 

「しねぇよ。寝させろ」

 

 

 各々の言葉を受けて、グレイフィア・ルキフグスはしばしその場でフリーズし、一分充分に時間を取ってから口を開いた。

 

 

「とりあえず、服を着てください」

 

 

 その一言に『兵藤一誠』の中でグレイフィア・ルキフグスの好感度が地味に上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前は『アビータ・EmpressⅢ』。

 正確に言えば、それは私のガワの名前なのだが、特に私個人を指す名前がある訳では無いので、不便であった為ひとまずガワの名前を使っている。ちなみに一誠からはシシリーと呼ばれたいな、と密かに思っているのだがその旨を一誠に伝えた所、心底面倒臭い表情をされた。

 まあ、それは置いておいて。

 私は目の前の状況に軽くため息をつく。

 

 

「良いですか?淑女たるもの、無闇矢鱈に肌を晒さないものです。ましてや、そのまま争うなんてのはですね」

 

 

 何故、私はこの侵入者の女に説教されているのだろうか…………いや、確かに言い分は分かる。淑女たるものはしたない真似をしたのは私も反省するしかない。流石にあんな風に肌を晒し過ぎたと思う…………いや、本来の私の格好はネグリジェか水着かそんな感じなのだから、露出に関しては問題ないのでは?

 

 

「聞いていますか?貴女」

 

「あ、はい」

 

 

 でも、流石に全裸はアレなので反省ですね。

 さて、この侵入者もといこのメイド悪魔……確か、グレイフィア・ルキフグスでしたか?一誠曰く、現レヴィアタンと最強の女悪魔の座を争い合ったらしいほどの実力者で現ルシファーの妻だとか……なのに何故にメイド?

 現ルシファーはメイド趣味か何かなのでしょうか?

 

 

「はぁ……さて、お嬢様。貴女はグレモリー家の次期当主なのですから、尚更無闇に殿方に肌を晒すのはお止め下さい。ただでさえ事の前なのですから」

 

 

 そう言いながら、あの女悪魔の乱れた服を治しながらそう釘を刺していく彼女を見ながら、私も脱いだ服を着直していく。流石に私も何時もあの格好ではないため、普通の女性らしい服装であるのは事前に忠告しておく。……誰に忠告しているのだろうか?

 ああ、それと一誠は流石に布団から出て軽く頭痛薬を飲みつつベッドに腰掛けている。おのれ、女悪魔め……一誠に頭痛を起こさせるなんて……。

 

 

「お前のせいだからな……」

 

「何の話か、分からないわ」

 

「はァ……」

 

 

 と、あちらは終わったのか、グレイフィア・ルキフグスは私と一誠に向き直り軽く頭を下げてきた。

 

 

「はじめまして。私は、グレモリー家に仕える者です。グレイフィアと申します。以後、お見知りおきを」

 

 

 丁寧な挨拶ですね。それに伴い私と一誠も彼女に軽く頭を下げ簡単な自己紹介を行っておく。

 

 

「どうも、御丁寧に。私はアビータと言います」

 

「……兵藤一誠です」

 

 

 ああ、一誠の挨拶から眠気が感じられる。いったい誰だ一誠を寝させなかったのは……私と女悪魔ですね、分かります。

 

 

「グレイフィア、あなたがここへ来たのはあなたの意志?それのも家の総意?……それとも、お兄さまのご意志かしら?」

 

「全てです」

 

 

 あちらがまた話し始めたので、私は先程の説教で痺れた脚を軽く伸ばしつつ一誠の隣に腰掛ける。隣からとても面倒臭いですっていう気配が感じているけれども、私には何も感じません。だから、どきません。

 あ、殺意になった。

 

 

「ごめんなさいねイッセー。迷惑をかけたわ、明日また部室で会いましょう?」

 

 

 話は終わったのだろう。女悪魔が一誠に軽くそう言ってグレイフィア・ルキフグスと共に魔法陣で一誠の寝室から消え去った。

 ようやく侵入者が帰ったのはいいが何を勝手に一誠の事を呼び捨てでしかも下の名前で、更には変な呼び方で呼んでいるのだろうか?教室で授業中に唐突な溺死とか面白い死に方をさせてあげましょうか?

 

 

「面倒臭い事考えてんな、アビータ」

 

「あら、いいじゃないですか?一誠だって、自分のパーソナルスペースに入られるのは嫌でしょう?」

 

「お前に入られるのも嫌なんだが」

 

「もう一誠たら、そんな冗談言うんだから」

 

 

「ぶっ殺してぇ…………」

 

 

 この後、私は大人しく寝る事にした。

 と言っても残念ながら一誠の布団で一緒にではなく、精神世界に叩き込まれて一人で悲しく寝た。枕が涙で濡れてしまった…………悲しい、グスン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは一体どういうことだ、と『兵藤一誠』は思う。

 思い出すのはつい十日、いや十一日前の事。

 

 さっさと帰りたかったのだが、木場祐斗に声をかけられてしまったが故に仕方なく、仕方なく部室に訪れてみればそこにはやっぱりグレイフィア・ルキフグスがいて、話始めようとしたらやっぱりリアス・グレモリーの婚約者であるライザー・フェニックスが眷属共々御登場。

 リアス・グレモリーとライザー・フェニックスの話し合いを冷ややかな目で見ながらこれから先の事を考えていたところ、特に介入したわけでもないのでそのままレーティングゲームが始まり、そして十日間の合宿特訓というぶっちゃけ付け焼き刃以外の何ものでもないモノに参加させられた。

 そして、終われば、今こうして『兵藤一誠』はレーティングゲームの試合場にいた。

 

 

「はぁ……めんどくせぇ」

 

「……兵藤先輩。部長の未来がかかってるので……あまりそういうことは……」

 

 

 『兵藤一誠』のそんな呟きを拾ったのか、『兵藤一誠』と共に体育館の敵を撃破しに行くグレモリー眷属の『戦車』である塔城小猫が咎める。

 そんな彼女に『兵藤一誠』は軽く肩を竦めながら足を止めずに言い返す。

 

 

「まあ、キミらの気持ちは分かるよ。自分の長年の主があんな軽薄な男と結婚するのは嫌だって。でもさあ、それが貴族社会だろ?グレモリーという家の下にいるんなら、家の為に嫌な相手とも結婚しなきゃいけないもんじゃないか?……まあ、これはあくまで新参者の意見だからスルーしてくれていいよ」

 

「……兵藤先輩は冷たいんですね」

 

「そりゃあ、キミらほどグレモリー先輩と付き合いがあるわけじゃないからね。せいぜい数週間だ」

 

 

 冷静にリアス・グレモリーとその周囲の環境を理解した上で『兵藤一誠』はそう言い放つ。確かに塔城小猫らのようにリアス・グレモリーと長年共に暮らしている者からすれば、『兵藤一誠』の言葉は冷たく突き放すような言葉だろう。だが、『兵藤一誠』の言葉は決して間違ってはいない。

 リアス・グレモリーは悪魔世界の中で公爵という上から数えて早い地位の貴族の娘なのだ。そして、次期当主である以上政略結婚ぐらいは大人しく飲み込むべきなのだ。何せ、それが貴族社会なのだから。

 無論、彼女の兄と義姉の恋愛結婚が多大に影響しているのは間違いないのだろう。だが、それはある種、仕方ないところがある。彼が魔王になるのにそこを反対したら魔王の座を降りかねなかったし、その相手がルキフグスというルシファーに仕える一族であったから許されたという部分が大いにあるだろう。

 結果としてリアス・グレモリーの言い分はあまりいいものでは無い。

 

 

「と、着いたか」

 

「……はい」

 

 

 目的の体育館に着いた二人は裏口から入っていき、演壇の端に立つ。

 場数を踏んでいる『兵藤一誠』と塔城小猫には見ずともコートに敵がいるのを理解していた。

 故に奇襲を考え、『兵藤一誠』がその手に水を纏わせて───

 

 

「そこにいるのは分かっているわよ、グレモリーの下僕さんたち!あなたたちがここに入り込むのを監視してたんだから!」

 

「ま、だろうな」

 

 

 軽くため息を着いて『兵藤一誠』は塔城小猫と目を合わせる。それに彼女は頷き大人しく二人は壇上に出ていく。

 体育館のコートにいるのは四体の女悪魔。

 チャイナドレスを着た女と双子に棍を手にした女悪魔。『戦車』が一に『兵士』が三、自分らと同じ駒の組み合わせであるが数はあちらのが上であるのを理解しつつも『兵藤一誠』には焦りは何も無い。

 極めて冷静に手を握る。

 

 

「……兵藤先輩は『兵士』をお願いします。私は『戦車』を」

 

「……ふぅ、了解」

 

 

 塔城小猫がそのままチャイナドレスの悪魔と対峙し、『兵藤一誠』は一人棍使いの悪魔とチェーンソーを取り出すという頭がとち狂っている双子悪魔の山体と対峙する。

 三体の女悪魔の視線に見下しのソレがあるのを感じながら、『兵藤一誠』はどうするか、思考を回していく。

 

 

「解体しまーす!」

 

 

 そんなことなど関係ないと『兵藤一誠』目掛けて火が入ったチェーンソーを持って明るい声を上げながら双子悪魔が突撃してくる。そして、それに合わせるように棍使いの悪魔も向かってくる。

 

 

「バラバラバラバラバラバラ!!」

 

 

 チェーンソーが床に当たることで火花が散り、息のあったコンビネーションで『兵藤一誠』にチェーンソーを振るう。それを紙一重で回避しつつ、背後から放たれた棍による一撃も回避し軽くその場を飛び退き距離をとる。

 それに追撃をかけてくるがそれらも『兵藤一誠』は尽く回避していく。

 その行動に双子悪魔は文句を言ってくるが『兵藤一誠』からすればどうでもいい話だ。

 

 

 そして────

 

 

「「「ゴボッ!?」」」

 

 

 チェーンソーが止まったかと思えば、唐突に三体の口から水が噴いた。

 それは唾やら胃液やらなんかではない。まるで多量の水を飲んでいたかのような量だ。それをいきなり口から噴いて三体は苦しいのかその手に持っていた獲物をその場に捨てて首を抑える。

 三体の思考はどうして?という疑問と恐怖の二種類が渦巻いていく。それを見ながら、『兵藤一誠』はそのまま三体から塔城小猫が相手をしているチャイナドレスの悪魔に視線を向ける。

 その頃には三体の悪魔は酸欠でその場に気絶し、水を全て吐き散らした。

 

 

『ライザー・フェニックスさまの『兵士』三名、戦闘不能』

 

 

 その場から三体の悪魔が消え、代わりに審判役のグレイフィア・ルキフグスの声がフィールド中に響いた。

 それを聞き流しながら、『兵藤一誠』はチャイナドレスの悪魔の足下に水の塊を叩きつける。

 

 

「なっ!?」

 

「……!!フッ!!」

 

 

 足下に叩きつけられた水の塊に足を取られ、致命的な隙を晒した悪魔に塔城小猫の拳が突き刺さる。間違いなくその一撃は決まり、その場に悪魔は崩れ落ちる。

 

 

『ライザー・フェニックスさまの『戦車』一名、戦闘不能』

 

 

 そのアナウンスを聞きながら、塔城小猫はリアス・グレモリーに報告の連絡をしつつ、先に歩いてる『兵藤一誠』を追いかける。

 『兵藤一誠』に追いついて少し躊躇いながらも、塔城小猫は口を開いた。

 

 

「……ありがとうございます」

 

「ン、どういたしまして」

 

 

 二人の仕事は一先ず終わり、二人は次の戦いの場へと向かう為に体育館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 ああ、まったく面倒だ。

 

 

「……ほう、リアスの『兵士』か。だが、たかだか『兵士』一人でどうなる?」

 

「イッセー!」

 

 

 新校舎の屋上で、俺はライザー・フェニックスとリアス・グレモリーの戦いの間に立つ。リアス・グレモリーはやはり、まあやられたのかその髪も乱れて、制服もボロボロだ。

 よくもまあ、回復役がいないのに耐えれたモノだ。それと何か歓喜な声を上げてるがいらないぞ、そんなもの。

 

 

「それにしても、レイヴェルの奴、見逃したのか」

 

 

 ライザー・フェニックスは俺を見ながら舌を打つ。

 見逃したというか、アレは戦うつもりがなかったから普通にスルーしたんだが……まあいいか。と、奴の隣に奴の『女王』が降り立った。

 

 

「ライザーさま、私が『兵士』の坊やを相手しましょうか?それに『兵士』の坊やが持つ能力が厄介かもしれませんわ。かなりの技巧の水を──」

 

「俺の炎を消されたら厄介だと?バカにするなよ、俺の、フェニックスの炎がこんな下僕如きにどうにかなると?リアスたちの相手は俺がやる。そっちの方がこいつらも納得するだろう?」

 

 

 ああ、俺を置いて勝手に話が進んでいく。

 面倒臭いな此奴。あと焼き鳥食べたくなってきた。それとどうやらあちらは俺の水を蒸発させる気満々のようだ。驕りだな。

 

 

「ふざけないでライザー!」

 

 

 激昴したリアス・グレモリーが魔力の弾をライザーの顔面に撃ち放つ。回避せず直撃して頭部が消し飛んでいるが、やっぱり腐ってもフェニックスというわけですぐさま炎が断面から噴き出して元通りに戻る。

 何事もないように首を動かすライザーにリアス・グレモリーは歯噛みしているが……さてさて。

 

 

「リアス、投了するんだ。これ以上は他の場所で見られているキミのお父上にもサーゼクスさまにも格好がつかないだろう。キミはもう詰んでいる。こうなる事はすでに読んでいたことだ。──────チェックメイトだ、リアス」

 

 

 流石、貴族カッコイイなー。

 

 

「黙りなさい、ライザー。私は諦めない!読んでいた?積んだ?まだ『王』である私は健在なのよ?」

 

 

 ライザーの言葉に不敵に笑うリアス・グレモリー。だが、アンタの実力じゃあどうにもならんだろ。あっちは不完全ながらも耐久型で、アンタは未熟な脳筋だ。どうしようもないだろ。

 だが……まあ

 

 

「……イッセー?」

 

「ほう……」

 

 

 俺は大人しくリアス・グレモリーの前に立つ。無論、リアス・グレモリーを背にしてだ。

 

 

「基本的に俺は面倒臭い事はしない主義だ。アンタとの付き合いはこの数週間しかなくて、俺からすれば貴族社会なんだからこの婚約も仕方ないものだと割り切るものだろう?と呆れていたよ。だが、まあ…………曲がりなりにも俺はアンタの『兵士』なわけで、主の命令に従うのが仕事なわけだ」

 

 

 そう区切って、俺はその腕から紫炎を噴き出させる。

 その光景に軽く目を見開く三体の悪魔。そんなものは無視して俺は嗤う。

 

 

「俺は手段を選ぶ気は無い────これが仕事だからだ」

 

 

紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)

 俺が前任者から簒奪した神滅具。

 それを発動して、俺は漸くライザー・フェニックスを敵と決めた。

 

 

「ライザー・フェニックス。お前の炎が火の鳥と鳳凰、そして不死鳥フェニックスと称えられた一族の業火であるならば、俺の炎は聖十字架、彼の者の血を呑んだ聖遺物による浄滅の紫炎であると知れ」

 

「聖十字架……だと……!?」

 

 

 瞬間、紫炎は弾け『女王』を炙る。

 たったそれだけで『女王』は声にならない苦悶の声を上げてその場から消えた。

 

 

『……ライザー・フェニックスさまの『女王』、戦闘不能』

 

「ユーベルーナ!……貴様!!」

 

「さあ、やろうか。仕事なんでな、悪く思うな」

 

 

 紫炎が炸裂した。

 同時に放った水がリアス・グレモリーを掴んでそのまま校庭へと運んでいったのを確認したと同時に俺はこの新校舎丸ごと紫炎に呑み込ませた。

 

 

「ッゥゥゥ……!!??……クソガキ……!!」

 

 

 流石はフェニックスと言うべきか。寸前でライザーはその場から飛び退き空中に逃げていた。その為、今の一撃から逃れたようだが軽く炙られたかその額に脂汗を垂らしている。

 

 

「どうした、口よりも手を動かせ」

 

 

 そう言いながら俺は紫炎を放つ。無論、ある程度抑えたものである為、ライザーに避けられるがしかし

 

 

「ガボッ!?ゴボッァア!?」

 

「紫炎だけだと思うなよ。寂しいだろ?」

 

 

 ライザーの口から水が溢れる。いつも通り空中の水分を凝固させ、奴の喉に水の塊を作った。

 流石に肺にやるのはアレなため喉から下には落ちないようにしているが、まあ喉に僅かな隙間を除いて水の塊なんか入れておけば呼吸が難しくなって苦しむのは当然だよなぁ?

 後、地味にライザーの周囲の水分が少なくて凝固に時間をかけた。

 首を抑えて苦しむライザーに俺はにこやかに嗤いながら、照準を合わせる。

 

 

「そら、避けンな?」

 

「ッウォアあああ!!」

 

 

 紫炎が苦しむライザー目掛けて放たれる。だが、ライザーは何とかそれを回避しつつも絶妙に喉近くをわざと削らせる。

 それにより水は喉の水は消し飛び、ライザーは大ダメージを受けつつも何とか酸欠を逃れた。しかし、それにしても普通に炎を使ってて、酸欠にならないのだろうか、あちらは。

 俺?なんとかなるその辺は。

 それにしても勇気のある行為だ。フェニックスであるから、多少のダメージは問題ないだろうが俺の使う紫炎は聖なる力を含んでいる。それは間違いなく毒となるが…………いやはや、なんともまあ

 

 

─────愉しいなァ

 

 

「次弾、装填」

 

 

 屋上に広がる紫炎の中から砲身を伸ばす。

 そこに紫炎を集める。

 この行為を理解したか、やられる前にやると言わんばかりにライザーは特大級の業火を生み出して見せてそれを不死鳥の形に変えて俺へと放ってきた。ソレを眼前に噴き出させた十字架の紫炎で完全に受け止め吹き飛ばし、砲身の照準をライザーに合わせる。

 

 

「死ぬよなァ、直撃したら間違いなく。ま、なんかなるだろ?これぐらい」

 

 

 そうして放たれた一撃は一切狂いなくライザーに直撃─────なわけはなく、その前方に俺が作り出した人一人分はある大きさの水の塊に激突して……まあ、あとはお察し。

 

 高温の熱源体と接触した水の塊は瞬間的に蒸発して、ハイ、ドカン。

 

 

『……ライザー・フェニックスさまの戦闘不能を確認。今回のレーティングゲーム、リアス・グレモリーさまの勝利です』

 

 

 そのアナウンスが流れたのを確認して、俺は紫炎を消して首を軽く鳴らす。

 これで俺の仕事は終わり。

 兵藤一誠と違って、リアス・グレモリーを助けに来たわけでもなく単純に仕事だから助けたわけで惚れられる理由なんて何処にもない。あと、俺はアンタのことをリアスではなくリアス・グレモリーとして見てるんで。

 これにて閉幕!エクスカリバーとか面倒臭い話が待ってるけども協力しなくて大丈夫だよね!

 

 

 なんか、俺の中で文句を垂れてる奴がいるが、そんなものは置いといて俺は悠々と転移の魔法陣に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰りなさいよ!私と一誠のパーソナルスペースに平然と踏み込んでくるのやめてくれます!?」

 

「あら、イッセーは私の眷属なの。主と下僕が交流して何か悪いかしら?」

 

 

 いや、悪い事しかねぇよ。

 俺は部屋で起きているアビータとリアス・グレモリーの言い争いに頭痛と胃痛がしてきて……あ、なんか寝れそう。寝よう。

 とりあえず、面倒臭いことしかなかった。死ね、修正力。

 

 

 

 

───────

 

 

私、紫藤イリナ

私が主に仕える祓魔師って事は、幼馴染のイッセーくんには内緒なの

色々あって経費の危機?

助けてイッセーくん!

 

教会シスターナイト、第二聖『ヘルプ!イリナはエクソシスト!』

 

来週も恋にドロップドロップ!

 

 

 

 

「いや、始まらねぇよ」

 

 

 

 

 




『兵藤一誠』
 本作主人公である宗像鴎の死因のチーズの生産地が違うという違いでこうなった。『赤龍帝の籠手』は持っておらず、代わりに何故かアズールレーンに出てくる『アビータ・EmpressⅢ』のガワを持った何かが宿っている。
 容姿は兵藤一誠とは違うバトルものラノベ主人公みたいな感じ(本人談)
 基本的に水属性で胃痛頭痛持ち。
 裏の世界には数年前から関わっており、喧嘩を売ってきたとあるゴスロリ魔女を溺死させて神滅具『紫炎祭主による磔台』を手に入れている。

 そして、まさかのアーシアの『聖母の微笑み』も持ってる。
 アーシアとは面識がなかったから転生するのを頼む理由がなかった為、ディオドラ・アスタロトに転生させられないよう紫炎で火葬した。


『アビータ・EmpressⅢ』
 多分、CV斎藤千和なアズールレーンの敵キャラのガワを被った何か。
 『兵藤一誠』を自らの主と認めている一方、自身の所有物であると考えている。その為、『兵藤一誠』の貞操を狙ってるが無理矢理はせず、本当に拒絶した際はすぐに退いている。



『赤龍帝』
 続かないので出てこないのは間違いないが、設定だけ存在してる。


 続かないのが決まっている。


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五十頁


 どうも。前回から少し空いてしまいました……でも、仕方ないよね!
 少しずつモチベーションも上がってきましたし、頑張りたいと思います。
 それと、今回の投稿から各章分けをしていきたいと思っています。



 

 

 

 ヴァサゴとのレーティングゲームから既に一日が経過し、俺はリゼヴィムと共に列車に乗っていた。

 無論、冥界でとりわけリゼヴィムの屋敷外での活動である為、俺はアンジェリカのガワを装備している。ちなみにだが、このアンジェリカのガワはやっぱり装備だから若干俺より身長がある。あっても誤差の範疇なんだが……だが、とても負けた気がする……悲しい。

 いや、それはそれとしてなぜ故に俺がリゼヴィムとこうして列車に乗っているのか、というとだな。

 

 

「なんでだ」

 

「そこからかよ」

 

「聴いてないんだがそもそも。叩き起されて用意させられたんだが」

 

「なんの事だか記憶にございません」

 

 

 こいつは……。

 猟兵が入れてきたココアに口をつけつつ、朝飯替わりにネゲヴが作ってくれたベーコントーストにかぶりつく。カリッとしかして中身はふわりとしたトーストにベーコンの脂、なかなかどうして美味いもんだ。

 ちなみにだが、俺は朝はパンではなく米派だ。

 

 

「で、どこに向かってんだコレ」

 

「うーん?まあ、他所」

 

「当たり前の答えを出すのやめてくれないか?マジで」

 

 

 本当、めんどくせぇ。

 あ、ココアお代わり。ついでにどんぶりで米。

 猟兵を見送りつつ、俺は軽く首を動かしつつ骨を鳴らす。

 軽く思考を回してみるが、わざわざこいつが出向く場所なんてそれこそバアルとかそういう所ぐらいしか印象がないんだが……はてさて

 

 

「煮卵美味いな」

 

「…………つか、朝からよう食うな。カモメ」

 

「少なめだと持たん」

 

 

 リゼヴィムが何やらアレな視線を俺に向けるが仕方がない。実際、俺はもう先のベーコントーストを三枚食べた後に煮卵五個とどんぶりご飯にベーコン四枚を食べているからだ。

 そりゃそんな反応もするだろう。だがまあ、だからどうしたで終わるんだが。

 リゼヴィムが俺を連れて来たってことは俺を働かせるんだろうし、それならきっちりと働く為にこうして朝飯をしっかり食べるのは普通だろう。あとこの列車、俺がお前から貰ったもんなんだから食料も俺が食っても何ら問題は無いはずだが?

 

 

「いや、確かに問題はねぇけどよ……」

 

「なんだ」

 

「腹減ってくるわ」

 

「何言ってんだ爺。いい歳してるんだろ、朝っぱらからこんな脂っこいもん食ってどうする」

 

「えー!おいちゃんも食べたい!!ベーコン!!!」

 

 

 うわ、面倒くさ。いや、ほんと。

 

 

「閣下」

 

「ン」

 

 

 やってきた猟兵に視線をやればそれが時期到着の報告だと、理解出来た。だから俺は早々な残っているベーコンを噛みちぎりつつ、リゼヴィムに視線を向ける。

 そうすれば、なんともまあ、アレな表情で嗤っている。いやはや、まったくもって嫌な予感しか感じないわけであるが…………はてさて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 列車を降りて、しばし歩くこと数分。

 途中迎えの馬車に乗り込みつつ、乗る際にチラリと見た馬車についていた家紋に既視感を覚えつつ、馬車に揺られる。

 ちなみにだが、猟兵らはついてきていない。それはリゼヴィムの要望故にだ……正直護衛としてせめて二体か三体付けさせろよ、と思わなくないが…………まあそこは俺が後で猟兵を作れば良い話で……まったく。

 

 

「そんな顔すんなよ、仕方ないだろ?」

 

「だとしても、なんだが……はぁ」

 

 

 許せというリゼヴィムに俺は額を抑えながら、何度目になるのか分からないため息をつく。さて、この場所の行く先はどこなのか……あくまで既視感しかないためこの馬車についてあった家紋が何処の家なのかはちょっと思い出せない。少なくともグレモリーやヴァサゴではないのは間違いないだろうが。

 では、どこの家だろうか。

 俺の中で嫌なのはまず、バアルだ。純粋にあまりかかわりあいたくないだけだが……次にグラシャラボラスやアスタロトだ。後者は間違いなくありえない話であるが。

 一番楽なのはアガレスだな。

 仕事の話になる可能性のが高いだろうし、はぐれ悪魔狩りは鬱憤晴らしにうってつけだからだ。まあ対テロ部隊に回すものではないけどな?

 

 と、馬車が止まったか。

 

 

「お、着いたみたいだな。そんじゃ降りるとしようか」

 

「ああ」

 

 

 御者によって、開けられた扉から馬車の外に出ていく。

 そうして、視界に広がるのはまあ、アレだわな。デカい庭みたいな玄関先とそれなりに距離があって奥にある大きな屋敷といういかにもなソレに俺は目を細めつつ、門前に立つ何人もの執事やメイドら、そして一組の男女に視線を移す。

 片や初老の男性。スーツのような貴族服を身に纏い、よく見るような傲慢な貴族悪魔とは違い勤勉さを伺える真面目な管理職という印象が強い男。

 もう片方は、俺もよく知る悪魔の女。と言ってもあちらは俺の事をほとんど知らないのだが…………まあ、いいや。知的クールそんな印象の眼鏡女子。

 うん、ここらで何となく察せられるだろう……ん?これだけじゃあ二つの家が思い浮かぶから察せられない?いやまあ、確かに俺もこれだけの情報だったら、判断は出来ないわ。

 

 

「本日はようこそおいでくださいました。リゼヴィム様」

 

「ああ、お邪魔させてもらうよシトリー卿」

 

 

 薄らと緊張の色を伺える男性、シトリー卿。

 まあ、理解できるよ。確か彼は初代魔王の実子らが政権を握っていた時代からバアル家と内戦が起きる事を察してたらしいし、実の娘が旧政権に喧嘩を売って今では魔王の一角に収まっているのだから。

 魔王の座を放棄していたとはいえ、まがりなりにも目の前にいるのは初代魔王の実子だ。何を言われるか分かったもんじゃあない。

 

 …………ン、ああ、俺らが訪れたのはシトリー家。多分、先日の会合の一件の諸々じゃないかね?その場に俺はいなかったが、リゼヴィムが何かしらよからぬ事を企んでたのは何となく察したが……。

 さて、先程から支取会長もといソーナ・シトリーがシトリー卿以上に緊張した……いや、これ緊張以外にもあるな、恐怖?これは……リゼヴィムじゃなくて俺か。そりゃ先日のレーティングゲームを観ればそうなるのも仕方ないな。

 試合、ゲーム、遊戯、娯楽。そんな考えが強いレーティングゲームであんな明確な戦闘行為を持ってこられれば、ソーナ・シトリーの様な頭が冴えてかつそこまで人間に対して軽視しない悪魔が観れば危険視するのは仕方ない話だろうさ。でもまあ、ガチの攻城戦をしなかっただけでも許されると思う。

 

 

「どうぞ、こちらに」

 

「ああ」

 

 

 と、どうやら屋敷に向かうらしい。

 表には出さずに軽く欠伸をしつつ、進んでいくリゼヴィムらの後を着いていく。ところで、嫌な予感自体は全然残ってるんですけどもどうしてなんですかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 はてさてさてはて、こうしてシトリー家にやって来て俺たちだけどもぶっちゃけやる事なんて、ソーナ・シトリー嬢に対して支援する旨とある程度の道なりに対しての話し合いとか教導するくらいなんだよね。

 いやぁ、リアス・グレモリーとか典型的な傲慢貴族令嬢で半端にペットへの愛情みたいなもの抱いてる兄と義姉に似て頭の中御花畑な奴よりもこういう結構地頭の良い子だと、こっちがしっかりと正論を言えばきちんと噛み砕いて理解してくれると楽だわぁ。

 何せ、噛み砕いて自分で理解してくれるから────存外扱い易い。

 

 こっちに反感ばかりだくような半端に無能で有能な奴よりもしっかりと有能な方が助かるよ。手間がそこまでかからないからにゃあ。

 

 

「ソーナ・シトリー殿。先日にああ言った通り、現状のレーティングゲームの学校は貴族悪魔の子息やコネのある一部の悪魔しか通えない。それがいまの悪魔社会だ、他の老人たちが言っていたが如何に変革の時期であってもすぐにそこまではいけない。それは聡明なキミならば分かるだろう?」

 

「……はい。度重なる変革が混乱を起こしかねないのは」

 

「悪魔社会は長命社会だからね。百年二百年は短いものさ、とりわけその変革の前から生きてる悪魔が普通にいるのだから、尚更だ。それにまがりなりにも貴族社会である以上、既得権益とかも絡んでくる」

 

 

 それにほとんどの貴族は平民に期待してないし、わざわざ新しい原石を探すよりも既にそれなりに見つかって自分の所に利益をもたらしてくれるような都合のいい奴らを求める。

 馬鹿というか、頭のいいというか……楽することしか考えない……まあ、貴族だからなんだろうけどね。

 

 

「こう言っちゃなんだが、甘い汁を吸うのが貴族みたいな所があるからねぇ……で、だ。キミも悪魔である以上長命、分かるだろう?」

 

「性急に夢を成そうとするのではなく、しっかりと様々な基礎を作り込んだ上で地道に進める。ですね」

 

「そう。協力者や支援者を作っていきしっかりと利益を生み出しそれを供給出来て、根回しなどが出来るようになってからようやく理想というものは手がけることが出来る。ほら、人間界……あー、日本の諺にあるだろう?……こう、なんだったか……面倒な道が……」

 

「急がば回れ、の事ですね。リゼヴィム様」

 

 

 少しずつ固い表情が柔んできたか……さて、次はどうするか……まっ、決まってるんだけどね!

 

 

「その通り。まずはその一歩として今度のレーティングゲームに勝つ事だ」

 

「レーティングゲーム……リアスとの試合で…………弱音を吐いてしまうようですが……私たちに勝てるのでしょうか……いえ、決して私の眷属たちが弱いと言っているわけではないんです……ですが」

 

 

 ほほう、なるほど。そっちからそう言ってくれるのか……なんだろ、この子性質の悪い男に騙されそう……心配だわ…………まあ、現在進行形で騙されているというか掌というステージに置かれてるんですけどね!

 

 

「滅びの魔力、最上級堕天使のハーフ、聖魔剣というイレギュラー、回復系神器、ローランのデュランダル、時間停止の吸血鬼、赤龍帝、仙術を獲得しかねない猫魈。いやはや、なんともまあ、面白い個性豊かなバーゲンセールだ。キミの考えは間違えてない……実際にあの場の老人たちの中の下馬評ではキミらの敗北だそうだよ。半数落とせばいいとこ、というレベルのね」

 

 

 俺の言葉に彼女は軽く俯き、表情を暗くする。そりゃそうだろうねぇ……はなから勝てるとは思われてないんだもの。

 だからこそ────

 

 

「だが、それは今の話だ。確かあちらにはアザゼルが着くだろう、そうなればキミらとあちらの差は広がる一方…………で、だ」

 

 

───キミらが試合の為に、これからの夢の為に、強くなりたい、と望むのならば私は手を貸そう

 

 

「ぁ………………」

 

 

 さぁて、仕事してもらうぜ?

 

 

 

 





 おひとり様ご案内☆

 ところで、最近ポケモンものを書こうかな?と思ってたりしてます。


 感想くだちい


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五十一頁

 いつもモチモチ貴方に這い寄る乳製品、カチカチチーズです。モチモチなのにカチカチとはどういう意味なのか。
 先日、オバロダクソな作品を投稿しましたが正直、短編に投げ込んだ方が正解なのでは?と思いかけてますがそこは気にせずいきましょう。

 今回は少し短めになっています。


 

 

 

 

 

〈なるほど、理解した〉

 

 

 理解はしたが、納得はしてないが。そう聴こえてきそうな表情、いや実際にそう思っている死銃───そもそもマスクで表情は伺えるんわけがないのだが───は肩を竦めつつも、目の前の少女らに視線を移した。

 今回の一件の中心人物であるソーナ・シトリー。その傍らに立つ、ソーナ・シトリーと同じく黒髪と眼鏡の少女……ソーナ・シトリーと違うのはその髪がロングである事と一部分がふくよかであることだがそれはともかく、彼女の名は真羅椿姫という名の転生悪魔でありソーナ・シトリーの『女王』。

 そして、二人の後方で一列に並んでいる六人の男女────男女と言っても女子が五人という組み合わせであるが。

 左から金髪の少年、青髪のボーイッシュな少女、赤っぽい跳ねた髪の少女、白髪の少女、おさげの少女、気の強そうなツインテールの少女。死銃はそんな彼女らを軽く見回してから記憶の中から、彼女らの名前を思い出していく。

 思い出していくと言っても、まがりなりにも彼女らは駒王学園の生徒会であり死銃もとい鴎は駒王学園の生徒故にすぐにその名前が引き出せた。

 

 

「シトリー嬢もといセラフォルー殿からは許可は取り付けたから、問題は無い」

 

 

 貴族の皮を被ったままそう言うリゼヴィムに死銃はマスクの上だが目頭に指を当てる。

 この男は相変わらずである。

 

 

〈…………色々と物申したい事があるが、まあ仕事ならば仕方なしか〉

 

 

 彼女らシトリー眷属からすれば、先日駒王町で聖剣事件をコカビエルと共に引き起こし、更にはあともう少しのところで駒王町のあらゆる魔を消しかねない聖剣の聖なる力を増加させた退魔の光を溢れさせようとしていた死銃に対して思う所が多々ある。

 とりわけ、黒一点であり直情的なきらいのある匙元士郎の表情は険しい。

 だが、それらを敢えて無視して死銃はため息をつく。

 そもそもコカビエルの一件はあくまで仕事なのだ、別に死銃が悪魔を消し去りたいから協力したわけでは断じてない───無論、悪魔が嫌いであるから普通に殲滅したいとは考えているのだが。

 

 

「えっと……」

 

〈……Sterbenでいい〉

 

「では、ステルベンさん」

 

 

 もとよりリゼヴィムが持ち込んだ案件故に死銃はこれ以上、何かを言うつもりは無い。何より、仕事なのだから。

 そうして、死銃はソーナ・シトリーへとその右手を差し出す。それにソーナ・シトリーは軽く目を見開いてからその差し出された手を取った。

 

 

「よろしくお願いします」

 

〈ン、よろしく頼む〉

 

 

 互いに短いながらも握手を交わしたのを見て、リゼヴィムは後は任せたとでも言うように手をヒラヒラと振りながらその場を離れていく。その背中に死銃はジト目を向けるものの、直ぐにため息をついてから視線をシトリー眷属へと向ける。

 恐らくこの中で一番手こずるのは黒一点の匙元士郎である事は間違いないだろう。突っかかってくるのは当然として、ならばどうするか。それが一番の課題であると、死銃は再びため息をついた。

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 匙元士郎は駒王学園の生徒会庶務でありシトリー眷属の『兵士』である。彼は十三の時に両親を事故で失い、弟妹二人と共に祖父家で暮らしてきた。だが、その祖父もまた去年病で失った。

 今ではソーナに見込まれた事もあり、シトリー家から援助を受けて暮らしている。一時は一家離散するかもしれなかった事もあり、匙元士郎は自身の主人であるソーナ・シトリーに強い想いと恩義を抱いていた。

 さて、そんな彼であるがシトリー眷属の黒一点であり執念深い性格もあり、シトリー眷属に教練を行う死銃に対して敵意以外のモノが存在しなかった。

 何せ、自分たちのひいては主であり想い人であるソーナ・シトリーの愛する駒王学園で暴れた挙句、駒王町の魔を滅ぼそうとしたコカビエルに組みした死銃を許す事は出来なかった。先日の一件で死銃の中身が女だった事には驚いたがしかし、だからどうしたというのだ。

 会長を悲しませた奴は誰だろうがぶん殴る。その信念を胸に抱き燃やしていた─────

 

 

「ガハッ!?」

 

 

 血反吐を吐き、そのまま地面を削りながら吹き飛ぶ。

 何をされたのか、匙元士郎は理解出来なかった。ただ少なくとも腹をやられたのは理解出来た、そりゃあ腹に鈍痛が走ればその程度のことは分かるだろう。

 さて、彼は何をしているのか?無論、訓練だ。

 と言っても、相手は死銃ではないが。

 

 

〈黒一点。シトリー眷属唯一の男子なんだ、強くあるべきだろう?〉

 

 

 教練を始める際の死銃のその一言に匙元士郎は反射的に頷いてしまった。たった一人の男子なのだから仲間を、会長を護れるぐらいに強くなりたい。そんな本心が反応したが故のものだったのだろう。それを見て、死銃はマスクの下で笑い────今がある。

 シトリー家の領地の中にある適当な山に移動した匙元士郎と死銃はまず先に匙の教練を自らやるつもりはないと言い放った。そんな言葉に匙は食ってかかろうとしたがそれもすぐに抑えられた。物理的に。

 唐突に顔を地面に押し付けられた匙は痛みと状況に戸惑いながらも視線だけを動かして、それが死銃によるものではないと理解し同時にこの抑えつけている誰かが自分の教練相手なのだと理解した。

 

 

「指揮官。この甘ちゃんを私が指導すればいいのね?」

 

〈そうだ〉

 

「ふふふ、このスペシャリストの私に任せなさい!」

 

 

 女の声だ。

 自信溢れるその声を聞きながら、匙はこの状態から逃れようと動くもののそれなりの力が加えられているのか逃れられない。

 それに気づいたからか、匙を抑えている人物は力を抜いて、匙から離れる。力がなくなったことを理解してすぐさま匙は立ち上がる。そうして、自分を抑えていた人物に視線を向ければ、自分と同じぐらいの身長で桃色の長髪に一角が無い六芒星の髪留めを二つ付けた白い軍服の様なモノに身を包んだ女性。

 不敵な笑みを浮かべて匙を見る彼女の名はネゲヴ。

 IMI Negevの戦術人形であり、実働部隊であるネゲヴ小隊の隊長である彼女の実力は、最上位に位置するM16やAK-12、錬金術師とM4と比べれば一段下がるものの並の最上級悪魔ならば蜂の巣に変えられる程である。

 無論、そのような事は匙が知るべくもないがしかし、それでも匙は理解していた。目の前のネゲヴがどう足掻いても自分では勝てないような存在である事を。

 

 

〈というわけだ。匙元士郎、お前の教練は全てネゲヴに一任する。ネゲヴ、任せはするがやりすぎるな〉

 

「了解、指揮官」

 

 

 こうして、ネゲヴによる匙元士郎の教練が始まった。

 

 

 

 

 かくして、匙のほんの僅かな走馬灯地味たものは幕を閉じ、気絶から目覚める。口の中は鉄の味、腹には鈍痛、前方には挑発的な笑みを浮かべる鬼教官。

 まだ始まってから数分とも経っていないのに、こんなにもダメージがある。

 

 

「クソっ.......やってやるよ.......!」

 

 

 会長の為にも、仲間の為にも、と思いをより強固にして匙は立ち上がる。その腕には自身の神器である『黒い龍脈』を発現させており、本気で勝つ為に挑発的な笑みを浮かべているネゲヴへと突貫した。

 

 

「オオォォォオ!!!」

 

「真正面からなんの策も無しに突っ込むのは、甘ちゃんね!」

 

 

「ゲボバァッッッ!!??」

 

 

 前途多難である。

 

 

 

 

 

 





 匙くんを鍛えましょう。
 無理なことは言いません。ただ、しっかりと禁手を使わせる前に勝てるようになってもらいます。
後、アニメの瑞鶴可愛いよ



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五十二頁



 食らえ!これが最新話(なお短め)!!
 鬼滅を読んでる方は知ってると思いますが、ポケモンやってました。楽しいです。
 キョダマカビゴン集まるのが楽しい。



 

 

 

 

 

 

 サイラオーグ・バアル

 リアス・グレモリー

 ゼファードル・グラシャラボラス

 シーグヴァイラ・アガレス

 ソーナ・シトリー

 

 シトリーとアガレス、そしてグラシャラボラスはどちらかといえばどっこいどっこいの一列並びであるがこれが概ね、若手悪魔たちの戦力評価である。バアルは魔力を使えぬ身でありながらその実力で弟を押し退け次期当主と成り上がったのだから妥当と言え、グレモリーは従兄弟と違いバアルの滅びの魔力を受け継ぎ眷属には聖魔剣や赤龍帝、デュランダルがある。

 そして、他三家の若手悪魔はこれと言った突出したものがあるわけでなかった。荒くれ者の多いグラシャラボラス眷属と悪魔の多いアガレス眷属、転生悪魔ばかりのシトリー眷属。頭の凝り固まったような老害らからすればどうしてもこういった順列になるのは当然だった。

 その旨を伝えれば、ソーナ・シトリーは眉を顰める。

 

 

「……そうですか」

 

 

 元から理解してた事だ。凡百の悪魔たちとは違うと言えども知略に富んだ彼女はその実力はトップ2に比べれば劣り、突出した武器が無い。ならば眷属の地力だが、生粋の悪魔や魔獣に人間が敵うかと聴かれれば、苦渋の表情を浮かべながらソーナ・シトリーは首を縦に降ってしまうだろう。

 それは眷属の力を信用していないからではない。むしろ、信用しているからこそ実力差を理解出来てしまうのだ。

 そんな彼女に死銃は嗤う。

 

 

〈それで?高々一ヶ月弱しかない中、リアス・グレモリーに勝てると思うか?〉

 

 

 その実力差は一ヶ月弱の特訓で何とかなるようなものなのか?と。

 その言葉に表情を歪めるソーナ・シトリー。

 パワーが、テクニックが足りない。リアス・グレモリーの持ちうる手札と比べてあまりにソーナ・シトリーには手札が足らない。現状、匙がネゲヴにしごかれ、他の眷属らは雀蜂らによる訓練───身内ではなく且つ女子という点から匙ほどの扱きではない───を行ってはいるがそれでどれほど変わるのか。

 前線に出っ張るよりも後方での指揮がどちらかと言えば向いているソーナ・シトリーにはそれは分からない。

 そんな彼女に視線を向けながら死銃はそのマスクの下でほくそ笑む。

 

 

〈忘れるな。ソーナ・シトリー嬢、君は指揮官だ。盤上においてどのように駒を動かすのかは君次第であり────何より、まだ差は広がっていない〉

 

 

 脚を組み直しながら、死銃はソーナ・シトリーの顔を見る。死銃の言葉に面食らったような表情を晒す彼女に死銃はたたみかける。

 

 

〈実力差?馬鹿を言うなよ、お前たちの実力差など尽くどんぐりの背比べでしかないだろう?明確な実力だけで何とかなるのは相手と己との間に厳然な実力差というものがある時だけだ、どんぐりの背比べでしかない実力差に経験の薄さ、なれば最終的な天秤はどちらに傾くのかは誰にも分かるものか。ならばその天秤を傾けるのに必要なものは何か、それこそが奇策であり相性というものだ〉

 

「っ───」

 

 

 ソーナ・シトリーが息を飲む。

 無機質な髑髏のマスクがまるで嗤っているように見える。

 

 

〈そもそも前提が間違っている。何故?何故?何故?お前は自分が負ける可能性と思っている?自虐で悦ぶ変態か?違うだろう?嗚呼、お前は悪魔らしくないよ、傲岸不遜に笑えよ、「私はお前より強い」と〉

 

 

 指が伸ばされる。

 まるでそれが当然の事のようにその言葉がソーナ・シトリーの中に入り込んでいく。それに抵抗する事などする理由がない、それが当たり前かのようにするりするりと奥へ奥へ侵入していく。

 助け?そんなものはない。

 悪魔の囁きがソーナ・シトリーの心を犯していく。それを気づくことは無い。

 

 

「わた、しは.......」

 

〈勝てよ、そうせねばならない夢があるだろう?〉

 

 

 そもそも言葉使いこそアレであるが、死銃は何もおかしなことは言っていない。正しいことを言っているが為に、それらがソーナ・シトリーへと簡単に入り込んでいくのだ。

 髑髏のマスクの下で鴎は嗤う。

 ああ、愉しい。

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁ……」

 

 

 シトリー領内のとある山で匙元士郎は荒い息を吐きながら、地面に大の字で仰向きに転がっていた。

 全身から汗が吹き出て、至る所に殴打されて痕が覗いている。そんな彼を見下ろすのはネゲヴ。

 

 

「ふーん、結構やるじゃん。意外と根性あるのね」

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 ネゲヴはこのわずか数日の間に変化した匙に賞賛を送る。というのも、ネゲヴによる扱きが始まった初日はほぼほぼ一撃で匙の意識は飛び、冷水を顔面にぶちまけられて起こされる、をひたすら繰り返していた。次の日は扱きをほどほどに筋トレや教導などを行いながら基礎的なモノを上げていく……これらを交互に行っていった結果、匙は見事一度も気絶せずに何とか扱きを最後まで行うことが出来たのだ。

 目まぐるしい成長なのは間違いないだろう。

 しかし、息も絶え絶えな匙には彼女の賞賛は残念ながら届いていない。

 

 

「……水飲める?自分で」

 

「……はぁ……だい、じょうぶ……です」

 

「……そう。それじゃあここに置いとくから早めに飲みなさいね。あ、焦らずに飲むのよ?それで溺死なんて笑えないから」

 

 

 私は教導の用意してくるから。

 そう言い残してから、立ち上がりスカートを軽く払ってから小屋の方へと移動していった。

 そんな彼女を視界の端に映していた、匙は痛む身体に鞭打ちながらも起き上がりネゲヴが置いていった水に口をつける。塩っけと甘みが混ざった丁度いい水に匙は息をつきながら次の教練を思う。

 

 

「…………ちゃんと起きてられるか?俺……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

 

 

 何事も準備というものは大事なものだ。

 例えば、誕生日パーティー。主役の為に、そして、自分たちが楽しむ為に、パーティーを盛り上げる為の準備をする。

 例えば、学園祭。これもパーティーと同じようなものだろう。苦労しながらも試行錯誤してみんなで一つのものを作り上げるこれもまた準備が大切だ。

 

 

 そして、これもまた必然的に大切な準備だ。

 

 

「ぎゃぁあああああああ!!!!」

 

「痛い痛い痛い痛い!!!???」

 

「嫌だ!やめろ!止めくれぇッ!!??」

 

 

 眼下で広がるのは手術台に固定されたとある種族の者ら。可哀想にも仲間たちに見捨てられて、黒狗たちに捕縛された奴ら。

 捕縛された先に待っていたのは楽しいパーティーの為の準備。

 いやはや、カモメに借りててよかった。

 

 

「リゼヴィム様。第二工程が終了いたしました」

 

「ンー、おーけーおーけー。そんじゃ、今週中には仕掛けよっか」

 

「ハッ。では、あの方に伝達を」

 

「うんうん、任せとくよ」

 

 

 下がる黒狗を見送りながら、俺は嗤う。

 楽しみだなぁ。合法的にこんな事が出来るなんてほんっと楽しみだわ。

 

 

 

 






 今回はいわゆる仕込み回ですね。
 仕込みは大切、レストランで教わった




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聖夜の一頁


 食らえ!クリスマスだ!!

 それはそうと来年、一月についに『特異点』イベが始まりますね。
 サンダーの限定ドロップや1294の二人が製造できるでしょうし……MODももうすぐになるでしょう。
 とても楽しみです。


 それよりも先に年始早々限定ドロがありますね!!!




 

 

 

 

 

 

 

 クリスマス。

 曰く、「キリストのミサ」という意味合いで某宗教の中でも一部の教派が行うイエスの降誕祭。ちなみによく間違われるが別にイエスの誕生日ではない。あくまでイエスの降誕を祝う日なだけだ。

 ちなみに俺の中でクリスマスの思い出は?と聞かれると十中八九前世の幼稚園がカトリック教会に併設されたものだった為に、毎年クリスマスにお遊戯会としてイエス関連の劇をやらされた記憶だ。

 ちなみに俺がやったのはヘロデ大王だが……まあ、それはどうでもいい。

 

 さて、クリスマスもとい今週は既に終業式を終え冬休みの真っ最中……他の高校がどうかは知らないが少なくとも駒王学園はそうだった。また、脱線したか……本題に入ろう。

 クリスマスの宗教的意味合いは実際問題、昨今の日本にとってわりとどうでもいいと話なのは前世も今世も何も変わらずいっそ哀れに思うが……まあ、そんな日本人特有の良いとこ取りのごった煮行事等々に対して、俺は特段思うことは無い。デパート近くに行けば休みの学生カップルなどが昼間っからイチャついてるのを視界の端に収めながら呆れる程度だ。

 は?妬み?馬鹿言え。

 家に帰ればお前、胸はねぇがそれなりに美少女な歳上漫画家がウザ絡みしてくるんだぞ?妬む理由があるか?…………いや、待て、少し浮かれてた……忘れてくれ、今のは。

 とにもかくにも、この日本でクリスマスを騒いでいる中、いつも通りウチでは鍋をつついて、溜めていた漫画やらなんやら、ミリタリー系の資料の消化をしていく。

 

 

 はずだったのだが…………AK-12にでも唆されたのか、一部の人形たちがクリスマスパーティーを要求し始めたのだ。指揮官権限で却下することだって出来るのだが、まことにまことに面倒な事に二亜もそれに一つ噛んでいるようで面倒な事になっている。大事なことだから二回言った。

 そもそもパーティー料理といえば?まずポテト、次にチキン、そしてピザやパスタだのと色々と面倒臭いものばかりである。いつも通りに二人分の鍋を作るのではなく、人数分のパーティー料理を作らなければいけない手間を考え欲しいものだ。

 実際問題、そういう料理する側にかかる労力やら疲労やらなんやらを度外視している輩が本当に多い。いや、本当にマジで……誰か手伝い捕まえよう。

 

 

「と、言うわけで栄えある俺の手伝いにお前が選ばれた」

 

「…………指揮官。その、私は戦闘ぐらいしか取り柄がない人形で……い、いや、別に指揮官を手伝いたくない、というわけじゃなくて…………」

 

 

 買い物を終え、帰路に着いていた際に見つけた駒王学園二年生の女子生徒。名前をアンジェリカ・クルーガー、ロシア人のハーフな例の貴族悪魔や眷属とは関係の無い美少女で人気な女子生徒だ。

 まあ、それはあくまでカモフラージュで本来の名前は……本来の名前でいいのか?まあ、ともかく彼女の名はAN-94。AK-12の相方で俺の重宝する戦術人形で駒王学園に潜入させている娘だ。

 電子戦特化のAK-12に対して、戦闘特化という人形で、ちなみに12と違ってそんなに胸はない。だがそれはそれで俺は好きだ。

 とにかく、珍しく一人で帰宅している94を捕まえた俺は彼女に手伝いをさせることにした。些か戦闘特化である点を考えると僅かばかりの不安感が蠢いてしまうが12を手伝いにして、増えるだろう余計な面倒事───12が起こす料理以外での面倒事───を考えれば94はまだマシだ。つきっきりとは言わないがある程度は俺も教えられるからな。

 

 

「お前の料理スキルがどれぐらいかは知らんが、まあ、よっぽど酷くなければ何も言わねぇよ」

 

「し、指揮官……」

 

 

 なんとも自信なさげな94にフォローをしつつ、俺は今日の夕飯をどうするか考える。いや、確かに材料等々は一昨日やさっきに買いに行ったが、それはあくまで材料なだけでまだ何を作るかまでは決まってないんだ。

 まあ、昨晩チキンあたりは準備してたけども。

 あ、そう言えばどうして冬休みなのに94が制服を着ていたのか、それは午後から課外授業があったらしいからだ。一年の俺にはまだないのだが、二年以降はあるらしく正直、戦々恐々としてますが?前世から課外授業って嫌いなんだよね……。

 脱線したな、また。……とても、今更だが、今日は『クリスマス』だ。イブではない。

 イブにクリスマスパーティーをする家庭もあるが俺は25日にやってる。正直、クリスマスは24日の日没から25日の日没までなのだが、日本人からしてそんな本来の枠組みなど全力投球するレベルで気にしないことであるからして、我が家のクリスマスは25日。

 本当のことを言うと純粋に参加したい奴らの時間空いてたのが今日だっただけなんだがね。

 

 

「さて、さっさと帰って料理するぞ」

 

「はい」

 

 

 そう言ってから、俺と94はやや早歩きで家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「…………し、指揮官……」

 

 

 帰宅した俺らに待っていたのはテーブルの上に食べ散らかされた菓子類と空き瓶、空いたペットボトルなどなど。リビングを見れば騒ぎながら菓子類を乱雑に開けてパーティーゲームを楽しんでいる少女らの姿。

 94に荷物を預けて、俺は彼女らの背後へと歩いていく。

 

 

「…………おい」

 

「あ」

 

 

 誰が漏らしたのか、それとも全員からなのか詰まるような声が聞こえ、一拍遅れてキャラクターが場外に落ちていった事を示す音がテレビから響く。

 その手にコントローラーを握ってソファーに座っている彼女ろを見下ろしながら、俺はため息をつく。それに反応して何人かがビクッと肩を跳ねたのを視界に入れつつ、軽く彼女らの顔を見る。

 デストロイヤー、アーキテクト、SOPMODⅡ、M16、サンダー、二亜の計六人。

 唆したであろう黒幕がここにいないのはとても疑問ではあるが、とにかくまずはこの六人の相手だ。

 

 

「別に遊ぶな、とは言わん。菓子や飲み物を飲食するな、とは言わん。だが、分かるだろう?それを許されるのはしっかりと片付けれた奴だけだってのは……な?」

 

「ひぇ……」

 

 

 デストロイヤーが悲鳴を漏らし、アーキテクトとM16そして二亜が大人しくソファーから降りて正座をし始め、SOPMODⅡが固まり、サンダーがオロオロし始めている。

 ……いや、何故にサンダー?俺の記憶じゃあサンダーは真面目だと思うんだが…………アレか、M16に丸め込まれたのか……。

 

 

「とりあえず、16。お前今夜禁酒な」

 

「そんな馬鹿な!?」

 

 

 M16の嘆きを切り捨てて俺は、テーブルの惨状を顎で示せばすぐさまデストロイヤーやサンダーたちが片付けを始め、床に手をついてことたれているM16に視線をやったついでに二亜にも同じ事を言えば同じのがもう一人分増えた。

 それらを放置して、キッチンの方に行く。

 荷物入れ終わったらしい、94の着替えてくるように指示を飛ばしてから俺はいつも通りエプロンを着てから、冷蔵庫を開けて食材を引っ張り出す。

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 鍋に水を入れ火をかける。

 沸騰する間に玉ねぎを半切りにしたものを2ミリから3ミリ程の厚さでスライスしていく。それが終われば別の包丁で大きめの鶏肉を一口サイズよりも一回り程度大きなサイズに切り分けていき、小皿にまとめておく。

 沸騰したのを確認したら小さじ二杯ほどの塩を入れてから二袋程のマカロニを投入していく。五分程放置する間に大きめのフライパンを用意する。

 軽く火をかけておいて、鴎は視線を動かし私服に着替えてきたAN-94に予備のエプロンを渡してから大きめのザルを取り出す。

 

 

「アラームが鳴ったら、鍋のマカロニをザルに上げておいてくれ」

 

「はい、指揮官」

 

 

 指示を飛ばして、鴎はフライパン小さじ一杯半程の油を垂らしてから弱火よりの中火で油を熱していく。温まったのを確認して切り分けておいた鶏肉をフライパンに投入する。木べらを使いながら肉をほぐすように痛めていき、それを一分半近くしたら次は玉ねぎを入れる。

 この際に玉ねぎは先にやや塩胡椒を使って軽めの味付けを行っておくと良い。玉ねぎはだいたい透明感が出るまで炒める。本来ならばさらに一分半ほど炒めればここで椎茸も投入するのだが、残念ながらそこは鴎が椎茸を食べたくないのでスルーし椎茸分の炒める時間を足して二分半炒め続ける。

 炒め終われば一度それをボールに移して次の準備を始める。

 

 

「指揮官、マカロニを上げました」

 

「ン、ならそのボールに全部入れておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 

 AN-94がマカロニを移しているのを視界の端に収めながら、次はバターをフライパンに引いていき大さじ五杯ほどの小麦粉を投入。四十秒ほど小麦粉とバターを絡めたら用意しておいた牛乳をフライパンに入れていく。

 この際に予め量っていた牛乳全てを入れるのではなく三度にわたって入れるために三分の一程度で済ませておく。

 そうしたらボールに分けておいたマカロニと他の具材をフライパンへと投入する。事前にAN-94にボールの中身を混ぜさせておいた為にマカロニと具材が別れて固まってるということはない。普通ならば、わざわざこんなことはしなくてもいいのだが今回は量が量であるためわざわざ分けて作業した。

 火を少し強めにし、木べらで牛乳が跳ねないようにしながらしっかりと混ぜ込んでいく。小麦粉と牛乳が混ざっていけば自ずととろみが着いてくるのが分かり、湯気が立って沸く直前まで火をかけていく。今回は量が量であるため、少し時間がかかるが気にせず。

 

 

「94。冷蔵庫にトルティーヤがあるから、それとわさびマヨネーズにサラダチキンとレタス、あとはスライスチーズを出してくれ」

 

「わかった。指揮官」

 

 

 沸騰する頃合になったのでさらに元々の量の三分の一の牛乳を注いでいく。

 これも先程と同じように混ぜながら湯気が立って沸く直前まで火をかけていく。

 

 

「サラダチキンをそうだな……そこそこの薄さで切ってくれ」

 

「……これぐらいでいいか?指揮官」

 

「ン、それぐらいで大丈夫だな。…………トルティーヤにわさびマヨネーズを塗って……そうそう、そんな感じでいい。その上に切ったサラダチキンを並べていって……そう……そこにレタスを乗せてからチーズだ。わさびマヨネーズをもう一度塗って……じゃあ巻いてくれ」

 

 

 最後の牛乳を入れて混ぜていく。だんだんととろみがしっかりと着いてくればホワイトソースとして完成してくる。ホワイトソースが沸けばそのまま弱火にして十分ほど待つ。

 焦げないように定期的にフライパンの底や淵をへらで混ぜるのを忘れずに行う。

 

 

「巻き終わったか?なら、次はそれを四等分にしていってくれ」

 

「はい」

 

 

 しっかりととろみが強くなればそこで火を止める。

 塩小さじ一杯弱と胡椒を少々で味を整える。これでホワイトソースは完成し、鴎は皿棚から大きめの耐熱皿を取り出してそこにホワイトソースを敷き詰めていく。

 冷蔵庫から取り出したとろけるチーズを取り出して全面に散りばめ、所々に生卵を投入していき一度ラップをかけておく。

 

 

「……オーブンあっためておくの忘れてた」

 

 

 オーブンを付けて温め始める。

 自分のミスに鴎はため息をつきつつ温まる間に他の料理の準備を始めていく。

 

 

 

 

 

 時計の針が六時を示す頃、オーブンへとグラタンを入れてやや経つ中、玄関から音がしているのを鴎の耳が拾い、そちらへと視線を向ければ

 

 

「帰ったわ鴎」

 

「帰りました指揮官」

 

 

 部屋に入ってくるのは二人の少女。

 片やAK-12、片やM4A1。その手には某フライドチキン屋の袋が握られている。そんな彼女らを鴎が迎え、袋を預かる。

 ふと見れば、僅かながら二人の肩に白い粉が着いてるのが見え、それと同じタイミングでリビングの方から人形らの声が聞こえてくる。

 

 

「雪降ってきた!」

 

「いやいや、SOP……外に飛び出すな。待て、分かったな?」

 

「アーキテクト……エージェントに怒られるから辞めてね」

 

「心外なんだけど!?」

 

 

 鴎の視線はAK-12へと向けられる。M4には確かにチキンを買ってくるのを頼みはしたがAK-12に頼んだ覚えはなかった、がまあそれはどうでもいいか、と諦めそのままキッチンへと戻っていく。

 その際に、二人に出来た皿をテーブルの方へ運んでいくのを頼むのを忘れずに。

 

 

 

 

 

 

 

────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 グラタン。サラダチキンのトルティーヤ巻き。フライドチキン。ポテト。

 寿司。ローストビーフ。ペペロンチーノ。

 一部、既製品ではあるものの俺と94の二人でよくもまあ、作ったもんだ。今回の意外な発見は94が料理が得意ということだ。聞けば食事は12と二人で作っているらしく、なるほど確かに得意になるわけだ。

 禁酒宣言を食らったが故にジンジャエールをドカ飲みするM16を嘲笑しながら、一人離れたソファーに座って庭を見ながら俺はトルティーヤを口に運ぶ。

 まあ、なんとも疲れたものではあるが、それなりに満足したパーティーではあったな。

 

 

「なぁに、一人離れて黄昏てるのさぁ、かもめぇ」

 

「…………うわぁ」

 

 

 いつの間にかに着替えたのかサンタコスの二亜が俺の隣に座って撓垂れ掛かってくるが、何故かは知らないが微妙に酒の匂いがするんだよなぁ。

 

 

「禁酒って言わなかったか?」

 

「え?ナニソレオイシイノ?」

 

「…………こいつ……」

 

 

 悪びれもなく……!まあ、別に……クリスマスだからいいか……M16も許してやろう。

 ったく……。

 

 

「……ねぇ、鴎」

 

「あん?」

 

「楽しい?」

 

 

 ………………。

 

 

「楽しいよ」

 

 

 一瞬、驚いたものの俺は二亜の頭を撫で付ける。

 いつもは二亜と二人だけでのクリスマスだったからな。今日みたいな複数人でのクリスマスをやるのは親と一緒にした時以来になるだろう。

 

 

「そっか!それじゃあ、来年もやりたい?」

 

「まあ、こんなに楽しけりゃな」

 

「じゃあ、来年は工房にいる子たちとみんなでやろっか!」

 

「そりゃ、なんとも……大変そうだ…………だが、まあ、きっと、もっと楽しいだろうな」

 

 

 二亜の提案に俺は笑みを浮かべて応える。来年やる時はエージェントやG36、スプリングフィールドら料理の出来る人形らにも手伝ってもらって盛大にパーティーをするとしようか。

 

 

「それじゃあ、また来年もクリスマス楽しみにしてるね」

 

「ああ、楽しみにしててくれ」

 

 

 と、呼ばれたか。

 俺はソファーから立ち上がり、プレゼントを待っている人形たちのもとへ歩いていく。

 

 

 

 

 

「メリークリスマス」

 

 

 

 来年も楽しいクリスマスを。

 

 

 

 

 






コメント待ってます!!


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五十三頁



 あけましておめでとうございます。
 新年最初の投稿です。

 


 

 

 

 ソーナ・シトリーを誑かしはじめて数日。

 と言ったところで未だシトリー眷属の教導を始めて一週間ほどしか経っていないが、そんなことはどうでもいい。なぜなら別にそんなものは重要でもなんでもないからだ。

 ネゲヴに匙の教導を任せ、手が空いている雀蜂と一部の人形に他のシトリー眷属の強化を任せ───何度も言うが流石に信頼関係がそんなに築けていない女子たちの訓練を厳しくは出来ないため、それなりに抑えるようには連絡している───そして、俺は現在ソーナ・シトリーと共に様々な軍略やらなんやらの知識を様々な方法で教導している。

 

 

〈悪いが、今日は昼にオレはいなくなる〉

 

「……昼、ですか?」

 

 

 教導中の俺の言葉にソーナ・シトリーは手元の参考書から顔を上げ、一度此方を見てからすぐに視線を壁にかけてある時計へと移した。

 日本で学生として生活している彼女やその眷属らの朝は意外と早く、少し早めの朝食を食べてから教導をしているため、しっかりと午前中から時間が取れる。

 教導をしている側としてもこうして、時間がたっぷりと取れるのは都合が良い。

 いや、そういう諸々は今は関係の無いことで、理由を聴いてくる彼女に対して仕事だという旨を伝えればすぐに彼女は退く。

 本来、シトリーに頼まれている仕事の最中に別の仕事で席を外すのは褒められた話ではないが今回は事が事であるためリゼヴィムの名前を出して切り抜けさせてもらった。

 こういう時にしか、役立たんからな。しっかりと使わねばならない。

 

 

 だから、オレは事前に用意していた他の戦略及び戦術データを使用して午後に教導出来ない分、普段よりも濃い教導を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 『笑う棺桶』。傭兵部隊として裏の世界に知られている彼らの主な仕事は人外相手の戦闘行為や人外などが関わっている場所に潜入暗殺、部隊の派遣である。

 時折、一部の紛争地帯で数部隊雇われる事があるものの概ね、少数の部隊しか出っ張ってこない。無論、それは『笑う棺桶』側からの制限が設けられている為であり、雇う側も『笑う棺桶』の人員がそこまで多くないと考えているが故にそれでいいと考えていた。中には所属している人員を予測し『笑う棺桶』程度何時でも潰せるだろうと考えているものもいたのは間違いない。

 

 

「と、まあ、久々の大仕事ってわけか」

 

 

 だが、そのような目論見も何もかもコレを見てしまえば破綻する。

 ヨーロッパのとある国の奥地、霧に包まれた場所を囲うように黒い軍勢がいた。

 山々の間、僅かに拓いた土地にいくつもの大型装甲トラックが並び、何台もの大型軍用バイクが唸る中で彼女らは存在していた。

 

 

「腕がなるぜ!」

 

「処刑人……腕がなるのはいいが、あまり期待はするな」

 

 

 おおよそ百は超えるであろう数の雀蜂やピンク色のバイザーを付けたサブマシンガン装備の人形Ripper、シールドを装備した人形Guard、二足歩行をするのであろう機体に立つ長髪の人形Dragoon。

 そして、比較的少ないがそれでもなお、異彩を放つ猟兵。更には待機状態ながらも物々しい雰囲気を放っているManticoreの群れ。

 そんな彼ら彼女らの前にて軍用バイクに寄りかかるのは二体の名付き戦術人形。長い黒髪に無骨なやや大きめの機械腕を持った人形『処刑人』と白髪の人形『狩人』。

 どちらも『鉄血』に属するタイプのハイエンドモデル。

 

 

 

「おいおい、狩人。んな事言うなよ、探しゃあいるかもしれねぇだろ?それに代理人によりゃあそれなりに神器について知ってるんだろ?」

 

「だとしても、だ」

 

「んだよ、つまんねぇな」

 

 

 もうすぐ始まるであろう祭りにワクワクする処刑人を諌める狩人。二人のそれは一朝一夕の関係ではないのが他者からも伺うことが出来、同時にこの一団が決して物見遊山の為に集められた訳では無いということの証明でもあった。

 なお、諌めている狩人もその表情とは裏腹に声音からして楽しみを隠しきれていないのは胸に納めておくべきなのだが、しかしそんな二人を見つめるまた別の少女はつまらなそうな表情で欠伸をする。

 露出がやや多く少女らしい瑞々しい横腹や胸元から肩までを晒す黒髪のスカートを履いた、そんな風体の少女。

 

 

「もうすぐ仕事だってのに、これだから電脳が戦闘面に振り切ってる連中は……」

 

 

 やれやれというふうに手を挙げて首を横に振る彼女に処刑人と狩人はなんとも言えない微妙な表情をするが、彼女はそれに意に返さず手元のパッドに視線を落として操作し始める。

 

 

「…………ふぅん、へぇ、コレも使っていいの?」

 

 

 パッドに視線を落としている為その表情は見えにくい中、口を薄く微笑むその姿は見ていた処刑人と狩人は表情を引き攣らせながら、一歩後ずさった。

 それもそうだろう。

 彼の人形たちは基本的にどれもこれも見目麗しい、彼女もまたその見た目は紛うことなき美少女であるのは間違いない。そんな美少女が微笑むのはとても絵になることだろう、その微笑みが黒い何か恐ろしい寒気すらする何かを宿していなければ。

 もはや、うすら寒いものしか言いようがない。

 

 

「……何よ」

 

「……いや、なんでもない」「こっち見んな……怖ぇよ」

 

 

 そんな二人の態度に苛立ったのか、彼女は顔を上げて睨む。それに対しての二人の返事に彼女は舌打ちながら、再びパッドに視線を戻す────と、思えばすぐさまパッドを横向きにして、画面を横にする。

 その表情は先程の恐ろしい微笑みとは違い、真剣なものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冥界の都市ルシファードにある施設、その一画にて多くの悪魔たちがひしめきあっていた。

 性別年齢は様々で身体付きは勿論、バラバラであったがしかしそんな彼ら彼女らにはとある共通点が存在していた。各々、大型のビデオカメラやマイク、録音機にメモ帳などといった記録道具を大なり小なり持っていた。

 それはすなわち彼ら彼女らがいわゆる『メディア』というものに属する悪魔たちであるのは誰が見ても理解出来ることだろう。

 そんな彼ら彼女らが集まり視線を向ける先にあるのはマイクなどが伸びた壇。しきりに時計を確認する様子などを加味すれば今から始まるものがなんなのか、余程の世間知らずでもなければ簡単に理解出来る。

 

 そして、時計があと数本ほどで五時を示す頃、ビデオカメラなどの機器を操作している悪魔たちは撮影を始め、一部のビデオカメラの傍らで画面に映らないようにマイクを手にした悪魔が話し始める。

 そんな会場の動きを知ってか知らずか扉は開き、会場に一人の銀髪の青年が入り、壇を横切り司会の位置に陣取りマイクを手に取った。

 

 

「長らくお待たせ致しました。これより、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー様が入場いたします」

 

 

 銀髪の青年、ユーグリット・ルキフグスがそう言えば再び扉が開いて中年男性が入場する。

 前後を猟兵に挟まれながら入場したリゼヴィムは普段の貴族らしい服装ではなく決して華美ではないがかと言って安物などでは無い、しっかりとした意匠のスーツ姿。そんな姿がカメラのフラッシュに晒されながらもリゼヴィムは登壇し、傍らに猟兵を待機させた状態で何時になく真剣で凄みを感じさせる表情をしてメディアたちに向き直る。

 ユーグリットはそれを見てから手首の時計を確認する。

 短針は5を指し、長身は12を示した。

 五時ちょうどなったのを確認して、ユーグリットは再び口を開く。

 

 

「それでは、これよりリゼヴィム・リヴァン・ルシファー様による記者会見を始めさせていただきます────」

 

 

 

 何処かでレールが切り替わるような音がした。

 

 

 

 



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五十四頁

 どうも最近、主夫高校生以外をちらちら投稿更新してるチーズです
 特異点はどうでしょうか。チーズは残念ながらエージェントで足踏みしております。
 12が来ないです……はよ来て……


 

 

 

 

 

 カメラのフラッシュがたかれる中、リゼヴィムは一度目を瞑り一秒か二秒してから目と口を開いた。

 

 

「この度、このように大勢のメディアの方々にお越しいただき感謝致します。と、まあ、長々とした前置きは望まれていないのはこちらも理解しております。その為、早々に本題に入らせてもらいます」

 

 

 そう、前置きを切り上げてリゼヴィムは報道陣を見回す。

 

 

「今回この記者会見を開いた理由。それは二つあります。

一つ、我々テロ組織特殊対策部隊『EXE』は件のテロリスト組織に繋がる大きな手がかりを手に入れました。

そして、その手がかりが我々悪魔にとって決して、決して見逃す事が出来ない手がかりであった、というのが二つ目の理由です」

 

 

 二本立たせた指を見せながら、何処か悲痛そうに俯きながらもすぐに顔を上げたリゼヴィムは続きを話し始める。

 

 

「先日、我々は匿名の通報を受け、潜伏していたテロリストの摘発を行いました。その際に得た情報からテロリストの取引現場が判明し、そちらへと赴いたところ……」

 

 

 リゼヴィムは一度言葉を切り、やや前のめりにマイクを掴んで続きを始めた。

 

 

「何人かの子供たちを運ぶ怪しげな集団を発見いたしました。少なくとも魔術師の類でも反政府の者らでもなかった為、我々は慎重に事に当たり、結果として子供たちは無事保護し、そして集団の捕縛を行いました」

 

 

 子供たちを運ぶ。

 その言葉にメディア陣はにわかにざわつき始め、それを眺めながらリゼヴィムは憤慨する様に、そして悲しい様に続ける。

 

 

「激しい抵抗、そして子供たちの安全の確保の為、無事捕縛出来たものは残念なことに数人ほどでした……しかし、それ以上に我々が問題視したのは保護した子供たちです。子供たちの半数が悪魔の子供でした!!これは由々しき事態です」

 

 

 リゼヴィムが声を荒らげながら語るそれはメディア陣だけでなく、メディアを通してこの記者会見を見ている冥界の悪魔たちに強く入り込んでいた。

 これがただの人間の子供だけならば彼ら悪魔はそこまでざわつくことは無かっただろう。どれだけ取り繕っていても、悪魔という種族は人間を下に見ているのだから。

 

 

「これにより我々はすぐさま、捕縛した者らの所属を調べ上げ、押収したテロリストらの資料の解読を行ったところテロリストと癒着している種族及び組織が判明致しました」

 

 

 カメラのフラッシュがたかれていく。

 

 

「吸血鬼・ツェペシュ派です」

 

 

 リゼヴィムの答えに悪魔がどよめきだしながらも、一部の貴族悪魔らはそれに対して納得の意を抱いていた。

 吸血鬼というものは人間を食い物にし、眷属として使役する悪魔に限りなく近い在り方を持つ種族であるがその勢力としては現在、男性の真祖を尊ぶ『ツェペシュ派』と女性の真祖を尊ぶ『カーミラ派』に分かれ悪魔以上に日光に弱いという種族的弱さと勢力的弱さが存在している。

 そんな彼らがテロリストと手を組み、食料の血液の為に悪魔の子供に手を出したというのもやや疑問視する所はあるもののそれも有り得るだろうと納得が出来た。

 

 

「テロリストに流出した神器技術やテロリストらが拉致した悪魔や人間の子供らを食料として手に入れている彼らツェペシュ派は正しく我々悪魔にとって決して見逃す事が出来ない、と我々は考えております。また、間違いではないか、という声もあるでしょうが残念なことに我々はツェペシュ派がテロリストに加担し契約を結んでいたという証拠を獲得しているのです」

 

 

 次々とリゼヴィムの口からたれ流されていく事実がメディアを通して悪魔たちに反ツェペシュ派の種を撒き散らしていく。

 だが、そんな事に誰も気がつくことはないだろう。

 例え、リゼヴィムを危険視していようともテロリストに加担しているツェペシュ派という事実がリゼヴィムの正当性を補完してしまっているのだから。

 

 

「既にこの件について我々はツェペシュ派に対し、使者を送らせてもらいました。ですが返ってきたのは使者の遺体だけ!!これが一勢力の返答であるべきなのでしょうか!?否、否!テロリストとの関係が無いのであれば堂々と否定すればよろしい!!我々対テロ組織特殊部隊『EXE』は吸血鬼・ツェペシュ派をテロリスト加担勢力と認定し、対テロ作戦を行う事をここに宣言致します!!!」

 

 

 まるで捲し立てるように語るリゼヴィムの言葉は先程の種を撒き散らすのとはうって変わり、それはさも当たり前のように悪魔たちの中に流れ込んでいく。

 こことは違う本来の世界線において、とある男が評した『扇動の天才』。正しくいまのリゼヴィムを評すればそれが真実であるのが理解出来る。だが、扇動というものはされている側からすれば扇動されているなどとは気づかない。何故なら、あくまでその意思は自分の中から湧いてきたものなのだから。

 無論、外から影響を受けた自覚はあれども、だ。

 

 

「急過ぎる。まだ他に道が。より調査をするべきでは。など、くどくど言う時間はどこにもない!今回、悪魔の、悪魔の子供たちがテロリストによって取り引きされかけた!自分の子ではない、平民の子供だから、などという考えを抱いているならすぐにそれは辞めるべきだ!この時勢、テロリストが何処に潜んでいるのか分からなくなれば次に攫われるのは自分の子供だ!!ならば、ならば未来の、我々悪魔社会の未来を担う子供たちを護るためにも私はこの決断をした!!!」

 

 

 自分の中の、心中をこうして暴き吐き出す事で彼らはリゼヴィムの凄みに飲まれていく。

 見ていた貴族悪魔らは先程話していた使者の件もあり、ツェペシュ派に自分たち悪魔が侮られている下に見られていると感じ、怒りをいつの間にかに抱き始め。

 平民の悪魔たちは次は自分たちの子供が攫われるかもしれないというリゼヴィムの言葉にそれを無視するという事が出来なくなっていた。

 そして、もとよりリゼヴィムを警戒していた者たちはリゼヴィムの言葉に、リゼヴィムによって引き起こされ始めている反ツェペシュ派の動きに、これから始まるであろう戦争に不安感と焦りを覚え始める。

 そんな彼らの心中を予想しているのか、否か。

 

 

「───また、今回のこの決断について、既にカーミラ派への通達は行っており、あちら側の見届けの元戦端を開かれる事となっております」

 

「せ、宣戦布告などは……」

 

 

 誰もが緊張する中、一人の記者が絞るように言葉を零せばリゼヴィムは視線をその記者へと向ける。蛇に睨まれたように記者は固まるが、そんなものはお構い無しにリゼヴィムは返答する。

 

 

「宣戦布告?それは国同士の戦争に用いるもの、我々が行うのは戦争ではなくテロリストに加担する勢力に対しての武力行使です。戦争では無い、つまり宣戦布告は行いません。何より、既に使者を向かわせた時点で警告は行っています」

 

 

 戦争ではない。その言葉が緊張していた記者たちの空気を弛緩させた。

 戦争じゃあないなら、と心の片隅に転がっていた戦争への忌避感が大人しくなり、より一層悪魔たちはこの作戦に対し肯定の意を示し始めた。そんな空気を察知したリゼヴィムはもはや話すことはない、と退場しようとしたがふと一つ言い残したことがあった事に気がつき、マイクを握り直した。

 

 

「今回の作戦において、相手取るのはテロリストに加担したツェペシュ派の政権であり、無抵抗な民衆に対しては基本的に手を出すことはないのは皆さんも御理解していらっしゃるでしょうが、念の為に告げさせてもらいます…………それでは」

 

 

 そう最後に言って、リゼヴィムは今度こそ話すことはない、とそのまま降壇して猟兵らと共にこの場を後にする。

 そんなリゼヴィムらを引き止めることも無くてただただシャッターが切られる音が虚しく会場に響き、退場したのを見届けたユーグリットがマイクを手にし記者会見の幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 廊下を歩きながら、リゼヴィムは懐中時計を確認する。

 記者会見とは名ばかりな一方的な宣言ではあったものの、リゼヴィムが当初思っていたよりかは時間がかかってらしい。長針が4を超えた辺りである。

 だが、それもリゼヴィムからすればまあ、許容範囲ではある。

 後方から追いかけてくる何某の足音と声が聴こえてくるが今のリゼヴィムにとっては至極どうでもいい事で、付き添いの猟兵たちにそちらの対応を任せ、ユーグリットと共にその場から転移する。

 その表情は喜悦に染まっていた。

 

 

 





 次回、ツェペシュ派対『EXE』

 一体なんのために戦うんだこいつら……あ、テロリストか……


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五十五頁

 古戦場どうですか!
 作者は死にそうです☆




 

 

 

 

 

 

 

 目を開ける。

 どうやら、気を失ってしまっていたらしい。

 身体が気怠く、まるで自分の身体ではないかのような感覚だ。

 私はこのまったく柔らかくないただただ硬い、石か金属か何かで造られた椅子の上でため息をつく。いつもいつも最低限のマナーや教育を受けてはこうしてお兄様と共にお兄様の研究に参加する。

 私に宿っているこの神器を有効に扱う為の研究────

 あの子をこの国から逃がした果てに待っているのがコレだというのならば私は何も言わずただ受け入れるしかないのだが、それでもそれでも私は怖い。

 この神器を使う度に何処か頭の中にモヤがかる様な時間が増えた。先程だってそうだ。

 私は気を失っていた、と思っているがそれが本当に気を失っていたのかどうかなど分からない。自分が意識出来ない空隙の時間、私は何をしているのかまったく分からない。それが私には何よりも恐ろしい。

 そんな時間が日に日に増えている。

 また夜になればお兄様の研究が始まる。次の研究の後にも私はいるのだろうか。

 

 

 嗚呼、私は消えたくない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何事も余裕を持って優雅たれ。と、まあ、どうでもいい事を思い浮かべながら、俺はツェペシュ派攻略の拠点である陣幕にて武装の確認を行っていた。

 ここ最近そんなに使ってないような気もしなくない銀製のFive-seveNを組み立て直して、他の武装の確認をしていく。俺にしては珍しく並んでいるのが銃火器でないものが大半だ。

 無論、あくまで銃火器以外が大半なだけでししっかりと銃火器は用意されている。例えば、ショットガンだったり、アサルトライフルだったりするが……まあ、そこは特にこれと言って問題ではない。

 戦力的に俺個人が戦うところはそんなにないからな。

 

 

「失礼します」

 

「ン、どうした」

 

 

 陣幕の外から聴こえてきた猟兵の声に反応すれば、猟兵が陣幕へと入ってきて敬礼する。

 話を促せば体勢を変えて、本題を話し始めた。

 

 

「ハッ。既にジェド・マロースの準備が整いました」

 

「そうか。時差およそ七時間、といったところだが…………おい、会見は見たか?」

 

「いえ。作業を行っていたので」

 

「ま、そうだろうな」

 

 

 職務に忠実な猟兵が職務中に必要無い記者会見など見るわけもない。

 そう言えば、ツェペシュ派の領域に行くには専用のゴンドラを使って多重結界を通り抜けなきゃいけないんだが、勿論カーミラ派がわざわざこっちに手を貸すつもりもなく俺たちにはその専用のゴンドラは無い。

 なら、どうやって既にツェペシュ派の領域に侵入して霧に包まれる奴らの王都周辺に陣取っているのか、というとだ。

 まあ、内容は至極簡単なものでどんな多重結界だろうが綻びは存在している。そこを事前に調べて手に入れた肉人形をちょちょいと利用してビーコンを作り、俺やハイエンドを転移させてから陣幕を作成したという訳だ。そして、あちらは未だにこっちが内側に侵入した事には気づいてない。

 そもそもあちらは自分らのことを至高の存在と勘違いしている奴らで?更にいえば自分らのこの多重結界を超えるにはゴンドラを使うしかないと思っているし?少なくともそのゴンドラが動いていないのはわかってるわけだからな。

 

 

「会見を見ているかも怪しいところだ。だがまあ、もう既に使者を殺した時点であっちが先に宣戦布告したようなもんだろう」

 

「ハッ、殺していいのは殺される覚悟がある者だけ、という言葉の通りかと」

 

「まっ、流石に無抵抗の民間人……民間吸血鬼?は殺さないでおくが……抵抗してくれば容赦なく殺せ。言葉を無視すれば殺せ」

 

「御意」

 

 

 そう返事をして猟兵は陣幕から去っていく。

 その後ろ姿を見送りながら、片手間で装備リストへと視線を走らせる。

 

 

「───さぁさぁ、どう潰すかね」

 

 

 そんな風に笑う様な言葉を吐きながら、俺は眼を細めていつも通りの死銃のアーマースーツを身に纏う。

 時刻を確認すれば、もうすぐ十一時といったところだろう。

 

 

《さて、そろそろ用意しよう》

 

 

 Five-seveNを腰のホルダーへとしまい、ANー94を装備して他に使う武装等々をしまい込む。

 そうして片付け終え陣幕から出ていく。

 

 

《───ふぅ》

 

 

 陣幕から出た先に広がるのは陣幕前に置かれた軍用車両を前にして隊列を組み待機している猟兵らの姿。

 そんな彼らの前へと俺は歩いていけば、猟兵らの視線は全て俺へと集中するがそこに不快感は無い。と言ったところで別に視線を集めた事による優越感とかがあるわけでもなく、ただひたすら俺は彼らを軽く見合わたす。

 

 

《諸君────私は戦争が好きだ》

 

 

 手を広げ、マスクの下で笑みを浮かべながら俺は語り出す。

 

 

《諸君 私は戦争が好きだ。

 諸君 私は戦争が大好きだ》

 

 

 そこまで言って、俺は広げていた手もマスクの下の笑みも全て、やめてため息をつく。

 

 

《とまあ、何処ぞの少佐地味た宣言をグダグダ言うつもりはない。戦争なんぞするつもりもない。やるのは報復であり実験だ。無論、無抵抗は殺さない、オレらが殺すのは抵抗してくる奴らだ。一応、一応通告は行なえよ?その後は知らん》

 

 

 通告を聴いた上で向かってくるならば、問題は無い。何も憂うことは無い。

 わざわざ机や棚やら何やらをひっくり返して見つける理由もない。

 

 

《オレたちに必要なのは二つ。

 一つはテロリストに加担しているツェペシュ派政府への報復行為であり、政府官僚及び王族の捕縛または殺害。

 二つ、あちらに流出してある神器関連のあらゆる情報を根こそぎ奪う事。無論、これには現品を含む》

 

 

 前まではそんなに欲しいわけでもなかったが、今は別だ。

 実験や最低限の戦力強化には充分必要だし、何よりもこれからの事で北欧やギリシャ、須弥山との交渉やらなんやらの手札にもなりえる。

 彼らも知らないからな、何も問題無くこちらの手元に置くことが出来る。いやはや、楽というかなんというか……まあ、本命の為の試行実験という側面があるからあまり楽観視はしたくないがね。

 

 

《以上を踏まえ、我々は王城に乗り込む。都市部等は処刑人、狩人、夢想家に一任する。何か異論があるものは?…………よろしい》

 

 

 猟兵らを見回し、特に何も無いのを確認してから俺は頷き

 

 

《では、少し早いが。シャスリーヴァ・ワラジデスティヴォァ(メリー・クリスマス)

 

 

 時刻が十一時になったと同時に俺は手元にあったスイッチで特殊無線を起動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特殊無線接続。ジェド・マロースのクラースヌィ ノース オリェーニィ(赤い鼻のトナカイ)起動開始

 

 そんな機械音声が鳴り、それらは一斉に稼働し始めた。

 場所はツェペシュ派の領域の入口付近。メタマテリアル光歪曲迷彩により、姿を消していたそれらがゆったりとその姿を顕にする。

 サイズは大の大人の膝ほどぐらいの体高に大人一人が取れる程度のサイズの幅、側面にはキャタピラが装備された小型戦車を思わせる外見。

 知識があるものはそのおおよその外見からそれが第二次世界大戦時にドイツが開発し使っていた兵器であるゴリアテだ、と分かる事だろう。

 見た目だけならば子供一人容易く乗せられる何とも無骨ながらも可愛らしさが垣間見える兵器であるがしかし、それはあくまで本来のオリジナルのゴリアテの話。

 今回、ツェペシュ派の前に姿を現したのは既存のゴリアテの上部に下半分が隠れた赤い半球が埋め込まれていた。大人が抱えるには大きな赤球に白い半円。そこに可愛らしいつぶらな瞳がツェペシュ派の都市を見ている。

 名をGolyat。合体している小型戦車と同じ名前であり、同じ自走式自爆兵器である。

 

 ゴリアテは本来、75キロから100キロ程の爆薬を積めるがGolyatとの合体により八割ほどの爆薬を積んでいるのだが、そこにGolyatが加わった事でその爆薬量は倍以上。そんな自走兵器がここに数十台も姿を現していく。

 見張りにいた吸血鬼はそんな唐突なゴリアテの出現に思わず目を丸くし、唖然として突っ立っている。そんな吸血鬼など知らないと言わんばかりにゴリアテはそのキャタピラを回して─────

 

 

 

シャスリーヴァ・ワラジデスティヴォァ

 

 

 そんな音声を鳴らしながら、都市の門へと突撃していき次々と盛大に爆発していく。

 対龍種用に調整したGolyatの爆発は門や外壁に炸裂しては凄惨な被害を出していく。見張りの吸血鬼などは最初の爆発に巻き込まれて無惨にその生命を散らした。

 あまりにも唐突な襲撃に門周辺に住んでいる吸血鬼たちは混乱し、そして同時にまた別方向の外壁でも次々と爆発が起こり始める。

 

 

 

 EXEによる報復が始まった。

 

 

 

 





 感想ください(乞食)


 誤字脱字報告ありがとうございます。




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五十六頁



 どうもお久しぶりですね
 久々の投稿です。




 

 

 

 

「い、いったい何が……」

 

「門が……爆発した?」

 

「カ、カーミラ派が攻めてきたのか!?」

 

 

 門とその周辺の外壁が爆砕するなど、ツェペシュ派の歴史に果たして幾度あっただろうか。残念ながらそんな歴史は無いだろう。

 対立しているからといってここまで大仰な侵攻などは互いに経験した事はなく、あったとしても兵を使っての野戦か騎士同士の中世的な戦闘ぐらいか。

 さて、そんな都市部の吸血鬼らからすればあまりにも唐突な門および外壁爆砕。パニックになるのも当たり前と言えるだろうし、ましてや表立ってぶつかり合っている訳では無いが政治的に強く対立しているカーミラ派の存在もある。カーミラ派と繋がっているゴンドラの存在からカーミラ派の侵攻かと疑うのは当然の摂理と言えるだろう。

 門近くにある詰所からこの緊急事態にぞろぞろと吸血鬼の兵士たちがその手に槍やらなんやら前時代的な武装を持って未だ黒煙で全容が隠された門だった場所へと近づいていき─────

 

 

「抵抗するな」

 

「「「!?」」」

 

 

 そんな彼らに投げかけられた言葉が彼らを硬直させる。

 黒煙より現れたのは黒煙よりも黒いコートに身を包む一切肌を露出させぬ銀の鳥面を付けた黒い人型。その手に手斧を携えて、瓦礫を足場にして彼らを見下ろす猟兵は眼球すら隠し、鳥面に空いた目にあたる部分から感じさせるのは敵意でも殺意でもなく、あるのはどうでもいいと言う無関心。はたまた仕事であるという義務感。

 爆砕の次に現れた猟兵の存在に吸血鬼らは動きを止め、敵意を抱く前に猟兵は淡々と語る。

 

 

「我々は『EXE』。対テロリスト部隊である。テロリストに加担するツェペシュ派政府機関の陥落及び報復行為が目的である。抵抗するな、武器を捨て降伏せよ、無抵抗な無辜の市民に我々は危害を加えない」

 

 

 あまりにも一方的な宣言。

 宣戦布告?そんなものは既にとうの昔に済んでいた。ましてや先に行ったのは吸血鬼側なのだ。

 無論、そんなものを知ったことではない兵士らは猟兵の言葉に吸血鬼らしい傲慢ちきな感情のもとに巫山戯るな、とその手に持つ槍を向けながら前へと踏み出し

 

 

「?」

 

 

 次の瞬間にはその全身に蜂の巣をブチあけながら辺りにその肉片をばら撒いて死んでいく。

 あまりにも呆気なく、吸血鬼だった肉はまるでスローモーションでもしたかのようにゆっくりと仰け反りながら宙に浮かびそのまま街路に落下しておびただしい血を流しながら沈んだ。

 周囲の家々の窓から覗き込んでいた住人、一緒にいた兵士たち、街路に出てきていた住人ら全員がその兵士だったモノへ視線を向ける。

 

 

「キャアアアアァァアアッッッ!!!???」

 

 

 誰かの悲鳴を皮切りに周囲から悲鳴や恐怖、ざわめき始め、兵士らは仲間の死に怒りを抱き、猟兵へと向き直ればそこには既に猟兵は一人ではなかった。

 次々と現れていく猟兵らがその手に持つのは手斧ではなくアサルトライフルAK-12。最初の猟兵と違い彼らはそのまま止まることなく都市へと侵入していく。無論、吸血鬼の兵士らは侵入者を迎撃する為にその手の武器を握る力を強めて猟兵らを迎え撃つ。

 

 だが、しかし

 

 

「アアァ!!??」

 

「ギヤァァ!?」

 

「ひぎぃ!?」

 

 

 槍?剣?盾?馬鹿め馬鹿め馬鹿め。

 そんなもの、使える距離に近づかれるより先に殺すのが何より正解だろうが。

 猟兵らが向かってくる兵士らへと銃口を向けて引き金を引けば出来上がるのは犬の餌。

 

 

「抵抗するな」「抵抗するな」「抵抗するな」

「抵抗するな」「抵抗するな」「抵抗するな」

「抵抗するな」「抵抗するな」「抵抗するな」

 

 

 都市に悲鳴が、銃撃が、肉が引きちぎれる音が響き渡る。淡々と淡々と抵抗する吸血鬼を殺しながら猟兵らは生命を感じさせない声音でひたすら降伏勧告を続けながら一歩、一歩、前へと進んでいく。

 そこに殺意はない。

 そこに悪意はない。

 そこに戦意はない。

 そこに敵意はない。

 そこにあるのは義務感だけだ。

 仕事だから、指令だから、命令だから。

 まるで害虫でも処理するかのように猟兵たちは向かってこようとする兵士らを殺していく。恐怖でその場に蹲る住人や戦意を失い武器を落として膝をつく兵士を無視して、猟兵はぞろぞろと門だった場所から溢れていく。もしも空からこの光景を見れば恐ろしい事この上ないだろう。大量の黒いモノが都市に入り込む様など恐怖しかない。

 

 

 

 さて、門以外にも別の場所でも爆発は起きていた。

 門があるわけでもないし完全な外壁は門側以上の爆砕被害を出しており、出来た穴は下手な重機なら二台は同時に通る事が出来るほどのものだ。

 そんな穴より侵入してきたのは猟兵───ではなく、何台もの大型軍用バイクとそれに乗る雀蜂やその他の人形たち。

 彼彼女らはそのままバイクで吸血鬼を数人轢き潰し、後続から他のバイクや大型の装甲トラックが何台も侵入し、そこより次々と雀蜂や人形らが降りていきその銃口を吸血鬼らへと向ける。

 あまりにも唐突なそれに吸血鬼らはやはり驚きを隠せず、その場から動けずただ見ているだけ。そんな彼ら彼女らを憐れむように軍用バイクの一台に乗っていた処刑人と狩人が降り、口を開く。

 

 

「抵抗すんな。無抵抗な奴は殺さなねぇ」

 

「だが、こちらに反抗するものは容赦なく殺す」

 

 

 反論など許さないと言わんばかりの凄みを醸し出す二人に住人らはその場で蹲り、逃げ出すなど様々な中この場に集まってきた兵士らはだからどうしたと自らを奮い立たせて人形らへと向かっていく。

 そんな彼らはやはりと言うべきか、銃火器を手にした人形らの銃撃で容易く死んでいく。

 あまりにも呆気ない。

 あまりにも生命が軽く死んでいく。

 これが戦場というもの。

 処刑人と狩人の隣をバイクが通っていき、その後ろを歩兵が少しずつ進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二箇所からの同時多面侵攻を受け、ざわめく吸血鬼らをよそに門側から新たに数体の影が這い出ていく。

 黄土色の装甲に四脚で移動する無人歩行戦車Manticoreが十機、悠然と進んでいきそれらを護衛する様に猟兵とも雀蜂とも他の人形とも違う流線型のフルフェイスメットを装備しピッタリとしたアーマースーツに身を包みその上から白衣を着るというやや奇抜な風体の人形らが数体Manticoreらの傍らについている。

 そんな一団の中央。彼らに囲われて移動しているのは三人。

 その内の二人、片や彼らは『EXE』の隊長である死銃こと鴎。もう片方は夢想家。本来ならば都市部制圧の司令塔の一人である夢想家がこうして鴎の傍らにいるのかは疑問ではあるが鴎が何も言わないところ問題ではないのだろう。

 そして、最後の一体。周囲のフルフェイス達と近しい風体だが白衣は付けておらず要所要所が異なる意匠であり所々であるがアーマースーツ下の機械部分が見えており、背には何やら小型のタンクのような物を装備している。

 

 そんな一団がゆっくりと、そして確かにツェペシュの王城へと向かっていた。

 その歩みは逃げる場所などどこにもないとでも言うようで、家の窓から覗き見ていた住民たちはその姿に恐怖以外のなにものも感じれなかった。

 

 

「それにしても、まさか第三世代(サード)を持ち出してくるとは思わなかったわ」

 

《そうか?これは正当な作戦であると同時に起動実験だ。第三世代(サード)、それこそモーナァーをこれから動かしていく可能性のが高くなっていくんだ。ここらで対人外用のデータを回収しておきたいのと、何よりもだコイツのデータが欲しい》

 

「───『人工器(マキナ)』ね。いいの?それ、こんなところで出してきちゃって。第三世代ならまだ分かるけれども.......というか、私たち的にはあまり人工器(マキナ)が完成するのは歓迎できないのだけど」

 

《その気持ちは理解出来る。お前らは第二世代(セカンド)のハイエンドモデルだからな、だがまあお前らと人工器じゃあ方向性が違う。早々お前らに変わって人工器が主体になるこたァない》

 

「そぉ」

 

 

 そんな会話をしながら、死銃はその視線を傍らのフルフェイス───人工器から城へと向ける。

 原作、少なくとも本来の歴史の様にあちら側にはリゼヴィムも無限の片割れも、ましてや最強の邪龍もいない。ならば、目下面倒なのは

 

 

《強化された吸血鬼、か.......どこまでデータが取れるか》

 

 

 死銃、鴎はマスクの下でため息をついた。

 

 



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五十七頁



どうもー今回は短めです





 

 

 

 

《無駄な足掻き、としか言えんな》

 

 

 猟兵によって切り拓かれてしまった抵抗した吸血鬼らの屍山血河を背後にして、死銃は吸血鬼の王城の喉元へと迫っていた。

 このまま流れのままに、目標である王城へと乗り込みテロリストと繋がっているきゅけつきらを軒並み縛り上げるつもりであったが、既に王城内へと続く門は固く閉ざされており、それを前にして死銃は呆れたように門の前で嗤った。

 それもそうだろう。

 いくら吸血鬼といえども、その技術力は決してそこまで高いものではない。死銃の中にある知識においては確かに、神器研究などのある程度の技術はあるのだろうが、それはあくまでその研究者である王族の吸血鬼の周囲だけの話だ。

 吸血鬼というものは伝統を重んじる種族であり、故にその生活基盤はどちらかと言えば中世のそれに近しい。ある程度は現代のそれではあるが。

 

 

「隊長、調査終了いたしました」

 

《そうか、結果は》

 

 

 計器を繋ぎ門の調査を行っていた第三世代(サード)が持ってきた調査結果に死銃は耳を傾ける。

 

 

「ハッ、構造材質は御覧の通りですが、確かに吸血鬼由来の術式が仕込まれているようです」

 

《突破は?》

 

「Manticoree十機による一斉射撃であるのならば、十分突破できますが……その、Manticoreは破甲性能が」

 

《そうだ、な……ン、人工器(マキナ)を動かせ、アレなら術式ごと吹き飛ばせるだろう……ああ、しっかりとやる前に警告はしろ》

 

「ハッ」

 

 

 死銃の指示に返事をして、第三世代(サード)は他の人形らのもとへ走っていく後ろ姿を見送りながら、死銃はいつの間にかに持っていたのか、自身の腕の長さほどの鞘に納められた剣を掴んで事前に装備していたものにぶつからない様、腰のベルトに固定し始めていた。

 その様子をなんとも暇そうに見ていた夢想家(ドリーマー)は口を開いた。

 

 

「それ、聖剣でしょ?そんなに気に入ったの?」

 

 

 聖剣。夢想家の質問に対して、死銃は何を隠す必要があると言わんばかりに首を縦に振った。

 

 

《他のエクスカリバーシリーズに比べて、擬態(ミミック)は一番オレに馴染む。聖剣の適性因子の影響もあるだろうが、オレ自身の性分……だろうな》

 

「つまり、指揮官さんは変態ってことね」

 

《否定はしない》

 

「え゛」

 

 

 揶揄い気味に言ってみた言葉の返答に夢想家が変な声を上げたのを尻目に死銃の視線は既に門の正面に一人立っている人工器へと向けられていた。

 そんな死銃の視線を確認し、既に門近くから退避していた第三世代が拡声器を片手に警告を上げる。

 

 

「警告する。警告する。我々は『EXE』対テロリスト特殊組織『EXE』である。我々はこれより、テロリストと繋がっている現ツェペシュ派政権の居城へと押し入る。警告する。速やかに門を開けよ、一切の抵抗を我々は許容しない。我々はテロリスト及びそれに繋がる存在へ一切の手を緩めない。門を開けろ───」

 

 

 そこまで、拡声器で警告した第三世代は一度拡声器を切り、王城からの反応を伺い────一分ほど待ってからその視線を死銃へと向け、死銃の首を掻っ切るハンドサインに頷いてから拡声器の電源をつけ

 

 

「開けろ!!!『EXE』だ!!」

 

 

 そんな叫び声をあげると同時に門の正面にいた人工器が構えをとり、その一部装甲をスライドさせ、蒸気を吹かし、右腕を突き出し左腕で右上腕を掴み照準を固定する。

 それに伴い、右前腕部の装甲が稼働し掌の中心にピンポン玉程度の穴───砲門が開いた。

 一層、吹かす蒸気の量が増え、背負っていた小型タンクが稼働し始める。

 まるで発電機か何かのように忙しなく、タンク内部で何かが駆動して────

 

 

人工器(マキナ)個別名称:赤化(ルベド)───搭載特記機能、稼働実験:4割」

 

《観測準備》

 

「良」

 

《承認、ってぇ!!》

 

 

 死銃の声を合図に、それは閃光した。

 僅かピンポン玉程度の直経しかない掌の砲口よりそれは迸った。紅とオレンジが入り混じったかのような火、それによる熱線。

 熱線はそのまま門へと直撃し、熱線が触れた個所がまるで糸を解いていくように崩れていき、後には大穴を開けた門の残骸だけがそこに残り、微かに大気が焼けた匂いが周囲には漂った。

 熱線を放った、人工器(マキナ)赤化(ルベド)は全身の装甲部から排熱を行い、その場に膝をついた。

 

 

「観測終了。搭載特記機能の稼働実験データを神器回線を用いて工房へ送信、傍受確認、皆無良」

 

 

 そんな報告を受けながら、死銃と夢想家は敵地ながら考察を交わし始めた。

 

 

「性能は十分ね……ただ、四割にしてはチャージが長いんじゃないかしら」

 

《そうだな、フルでこれなら問題はないが四割でこれではな。タンクのエネルギー変換効率が未熟なのかもしれん。工房帰還次第、建築家(アーキテクト)計量官(ゲーガー)に開発部の人形らと話し合う必要があるな》

 

「なら、後は通常戦闘の実験だけども……問題ない?」

 

 

 そう話しながら視線を人工器へと向ければ、既に立ち上がり砲身であった右腕の状態確認を行っていた。

 それを確認して、死銃は視線を焼け消し飛ばされた城門へと移り

 

 

《では、本格的に攻め入るとするか────Manticore》

 

 

 その言葉にManticoreが反応し、次々と王城内へと侵入していきそれを追う様に人工器、第三世代たちが侵入し、死銃の周囲の影が蠢くと同時に無数の猟兵たちが湧きだし、夢想家と彼らを引き連れて死銃は堂々とツェペシュ派の本拠地へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 現在、オリジナル作品を執筆中です。プロローグは書き終わっているのでおりを見て、投稿します。予定としては週一投稿です


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五十八頁




 最近、筆の調子がよこざんすなちーずです




 

 

 

 

 城内へと足を踏み入れた、死銃の眼の前に迫ったのは吸血鬼式の術式で組まれた魔術。

 間違いなく、呪詛が孕んだものであろうそれらが先行したManticoreや第三世代(サード)の間を縫って放たれ、そのまま死銃に───

 

 

《ぬかせ》

 

 

 死銃に触れるよりも先に自ら射線上へと身を投げ出した猟兵へと次々に着弾していく。並みの祓魔師(エクソシスト)であれば一発一発が致命傷たりえるのだろうが猟兵らにはまったく効いた様子はなく、次々とその視線を動かし索敵を開始していく。

 無機物であろうと呪詛は呪詛であるが、死銃が認識していない場所で呪詛を受けたのならばともかく、死銃の認識内でありさらにはせいぜい数メートルほどに猟兵らがいるというのならば話は別だ。

 呪詛を受けると同時に神器による簡易メンテが自動発動していきすぐさま呪詛に汚染されたパーツをストックされているパーツに返還され汚染パーツはすぐに処理されていく。故に彼らに呪いは無駄であり、吸血鬼らも呪詛が効かないと理解してしまった。

 呪詛が効かない以上、やれることは二つ。

 逃げるか、向かってくるか。

 

 

 吸血鬼が選ぶとしたら、当然後者だ。

 

 

 索敵に引っかかったのは前方。鎧を着込み、獲物を手にして爛々とその赤い双眸を輝かせている吸血鬼の群れ。

 そんな抵抗に夢想家(ドリーマー)は嘲笑に表情を歪ませ、死銃は呆れたように腕を振るい───それを合図にまるでバネが弾けるように静観を決めていたManticoreがその重厚な見た目とは裏腹な俊敏な動きで次々と吸血鬼らとの距離を詰めていく。

 吸血鬼らもその速度に目を見開いていた。

 それもそうだろう、あんな重厚な見た目でありながらその四肢を動かして迫ってくる金属塊、それが十機。

 はたから見てもその様は恐ろしいというのに、それを正面から見るなど恐怖以外の何物でもないだろう。

 

 

「う、うああああああぁぁぁぁっ!!」

 

 

 そんな迫る恐怖に耐えきれなかったか、吸血鬼の一体が恐慌に陥りながらもその手に構えた獲物で迫りくるManticoreへと迎え撃とうとして、Manticoreに装備されている小銃が一切の容赦なく火を吹いた。

 鎧に穴を空け、肉を抉り吹き飛ばしていく。城下にいた吸血鬼の兵士らと違うのか吹き飛ばしてから数秒で少しずつ再生を始めようとしていた。

 それを見て、死銃はマスクの下で眼を細め

 

 

「死ね」

 

 

 突撃したManticoreに捕まって移動していた猟兵が飛び降りながらその手に携えた手斧の柄を握り伸ばし、長柄の大斧へと変形させそのまま吸血鬼の首へとその刃を叩き込む。そのまま吸血鬼の首は吹き飛ばす。

 それと同時に待機していた人工器(マキナ)が飛び出して、腰部から引き抜いた手斧で首が飛んだ吸血鬼へと追い打ち気味に胸部を横から両断して見せる。手斧は熱を伴っているのかその刃は赤く発熱し、両断された吸血鬼は炎上しそのまま灰に消えていく。

 

 

《全人形、弾倉変換。猟兵は対吸血鬼兵装を人工器(マキナ)はそのまま焼き殺せ。第三世代(サード)は放射器で焼却》

 

 

 その死銃の指示にManticoreはしばし喧騒を起こし、猟兵はその長斧を炎上させ、第三世代は次々とどこから取り出したか、小型タンクのような物を背負いチューブらしいものでタンクに繋がった銃身とはまた違った装備を構えだす。

 そして一瞬の静寂が訪れた、かと思えばその次の瞬間には前衛のManticoreがその小銃を震わせながら銃弾をばら撒き始める。無論、ただの銃弾ではない。

 対吸血鬼様に調整された代物だ。そう、例えば種族としての能力が強化されていようとも確実にその生命を削り取れるように。

 

 ばら撒かれた銃弾は確実に吸血鬼らの身体を削いでいく。

 再生しようとするよりも早くに吸血鬼は吹き飛ばされ、その肉片を尽く第三世代の装備が火を吹き焼却していく。

 その様はまるで駆除か何かか。

 小銃の嵐と焼却から逃れた吸血鬼は死んでいく同胞の姿に恐怖し同時に逃れたことに安堵するもののすぐに猟兵と人工器によって殺しつくされていく。

 その凄惨極まるさまを見ながら死銃はため息をつき、前方に行かなかった第三世代へと視線を向ける。

 

 

《どうだ》

 

「ハッ、ナノマシン散布終了しております。既にデータ取得が始まっており、目的地は離塔にあるようです」

 

《吸血鬼らしく、地下にあると思ったが……いや、掌握したわけではないから移動したわけではないのか……夢想家、お前は猟兵とManticoreを率いて玉座に行け、オレは離塔に向かう》

 

「はぁい」

 

 

 そう指示を飛ばして、死銃は刺剣を携えて駆けだす。既に目的地への進路は頭の中に入っている。

 吸血鬼の兵士らもあらかた処理し終え、第三世代らと人工器がそれを追いかけていく。

 その背を見送りながら、指揮を任された夢想家が笑みを浮かべて指示を飛ばし始める。

 

 

「それじゃ、いっきにいくわよ。予定通り、無抵抗、投降者は放置。あ、ただ、抵抗したら容赦なくぶっ殺すってことで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、いったいこれはどういうことだ!!」

 

 

 広大な室内。床には真っ赤で大きな絨毯が敷かれており、金糸で縫われたのであろう魔物か何かの刺繍が金色に輝いていた。

 そんな室内の最奥、一段高い場に玉座が置かれそこには一人の男が座っていた。男は正しく王というべき意匠の身なりであり周囲にはやはり男と同じく中世的な意匠の貴族らしい身なりをしている者らと兵士らが集まっていた。

 玉座に座している男はツェペシュ派の現当主、すなわちこの国の正真正銘の王であるのだが、その表情は困惑と憤怒に包まれていた。

 

 

「あ、相手は人間とその人形だぞ!?何故、そんな下等な存在が我らが本城にまで侵入しているのだ!!」

 

 

 つい二十分ほど前、突如として都市正面と都市外壁一部から敵が侵入してきたのだ。襲撃の際、彼らは大いに驚愕し、兵士らを向かわせたが容易く殺しつくされる始末。

 そんな事実に困惑し、とある貴族があることを思い出した。

 襲撃者が警告している分の中にあるEXEという言葉と、それを叫んでいる黒い不気味極まりない風体の存在に聞き覚えと見覚えがあったのだ。

 思い出していけばつい一週間ほど近く前か、カーミラ派を通してやってきたEXEと名乗る組織の使者という明らかに怪しい風体の存在。自らを猟兵と称した存在がいくつもの書類を提示してあろうことか自分たちツェペシュ派をテロリストの一味であると告げてきた時のことだ。あまりに不遜な物言いに彼らはその使者とやらを()()()()()

 

 

 そんなことを思い出した貴族に王や他の貴族らも確かにそんな覚えがあった、と頷き、そして同時に追い返した程度で宣戦布告すらなしとは貴様らがテロリストではないか、と怒りを露わにした。

 そうして、さらなる兵士を送り込んだが、この始末である。術式を用いて強固であるはずの城門はたやすく破られ、こうして本城内にまで侵入される始末。

 そうして貴族や王は口々に誰かへ責任を擦り付けようとし始める中、王族の一人である若者──吸血鬼である以上、見た目通りの年齢とは限らないが──は一人、この玉座の間をひっそりとばれぬ様に抜け出していた。

 

 

「.......クソッ、いったいどこでバレた.......いや、そんな事よりもこの場は資料を隠すべきだ.......私の研究をテロリスト共の繋がりと言われて略奪されるのだけは見過ごせない」

 

 

 そう言いながら、自分にとって重要なモノを隠そうと廊下を走る青年、彼の名はマリウス・ツェペシュ。

 現ツェペシュ派の王の息子であるツェペシュ王家王位継承権第五位であるこの男は研究者の気質が強く、ツェペシュ派がテロリストと繋がる以前からとある神器について研究をしていた。

 大っぴらに研究することは不可能であったがもうすぐ一定の結果が出るはずであった。今回の侵入者と対峙している一部の兵士らにはその研究結果を一部利用しており、実地実験でより良いデータを得ることが目的であったが.......その研究を台無しにしかねない存在らが既に本城に侵入しているなどマリウスには認められなかった。

 少なくとも彼らは最初に玉座の間を制圧しに来るだろう、と考えそれから城内の調査を行われる前に資料の隠蔽もしくはそのまま資料等をもってしばらく城外にある研究施設へと隠れる。そんな選択肢を頭の中で張り巡らせながらマリウスは自身の研究室である離塔へと急いだ。

 

 

 






 こんな奴らが主人公勢なんだぜ?……こわ……焼くのかよ


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五十九頁






 

 

 

 

 離塔にある自らの研究室に辿り着いた、マリウスは自分の手足である下僕たちに命令しながら、研究資料を隠すべく次々と資料を急いで用意した箱の中へと詰めていく。

 詰め方はやや大雑把で次に取り出す際に大いに煩わしく面倒なこと極まりないがだからといって小ぎれいにしまい込むような時間はない。

 マリウスはEXEの実力がどれほどなのか、詳細までは分からない。それでも強化した吸血鬼が混じった兵士らを容易く一掃した点から決して遅いという事はなく、楽観視することはできないと理解していた。

 また、警告を聴く限り、EXEが無力化をしようとしているのではなく、投降又は無抵抗を示さない限りは容赦なく殺しに来ていることから下手な時間稼ぎも難しいと判断していた。

 事実、無駄な時間稼ぎにEXEも付き合うつもりはなく、下手にそうしようものならばそれを抵抗とみなして殺す可能性の方が高い。

 

 

「奴らが求めているのは、我々がテロリストに加担している、何らかの取引をしているという情報……いや、違う。証拠はあるだのと、言っていた……なら……いや、証拠があってもこちら側にそれがなければ……少なくとも父上や兄上らが殺されることとなっても私やアレはとやかくはならんはずだ。例え、カーミラ派がやってきても一族郎党皆殺しはないだろう……ならば、まだ私の研究は続けられる、ここさえ、乗り越えれば……!!」

 

 

 吸血鬼らしい人外じみた、まるで人形のような顔立ちを歪ませながら頬を掻き毟り、もたついている下僕を睨みつけ声を荒げる。

 

 

「何をのそのそやっている!はやくしろ!!」

 

 

 声は荒げども手は出さないのは決して彼が優しいのではなく、こんな状況でそんなことをすれば時間が余計にかかることをわかっているからだ。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 落ち着こうとマリウスは息を吐いてから、一度研究室から出て────

 

 

「マ、マリウス様!?」

 

「一体なんです────」

 

 

 空中渡り廊下、本城側からやってきた自身の手のものである叫びに苛立ちながらも問い返そうとそちらを見れば、瞬間それはそこにいた。

 装甲部から微かに排熱し、カメラアイに該当する部分が外側からは一切窺えないフルフェイス、その手には赤熱した手斧が握られ、もう片方の手には糸束、いや毛髪が握られておりその先には吸血鬼の頭であろうものが床に引きずられていた。

 返り血であったろう、排熱により乾燥しひび割れボロボロと落ちるその赤黒はさながら、都市伝説か何かから飛び出してきた殺人鬼かなにかのようで、それを見たマリウスの口から出てきた第一声は

 

 

「や、やめてくれ!?わ、私はし、知らないんだ。と、投降する!?」

 

 

 命乞いだった。

 それも当然のことだろう。マリウスにとって最も優先すべきことは自身の研究だ。目の前の存在からは血の匂いは感じず、人形であることは理解できた。

 人形如きに命乞いをするなど、例えその場しのぎのものであったとしても認めることはできないがそれでも、なんとか自分の研究を守れるのならば絶対にあとで壊すことを決めて、割り切る。

 マリウスは吸血鬼らしいが同時に妥協が出来た。

 こうして無抵抗、投降の意思さえだせば何も問題ないと考えて────

 

 

「ぎぇっ」

 

「は?」

 

 

 瞬間、自分の近くにいた兵士の頭に何かが刺さった。視線を動かせば、それは手斧だ。先ほどまで人形が握っていた赤熱した手斧。

 それが兵士の頭に深々と突き刺さり、傷口から血が沸騰したのか蒸気が上がり、肉が焼けるような臭いに思わずマリウスは腕で鼻を隠す。

 いったいなぜ、という視線を人形へと向ければ、自分目掛けて何か丸いモノが飛んでくるのが見えた。

 マリウスは思わず、腕を振るいその飛んできた何かを弾く。それは意外に重く、腕に鈍い音が響きそれに苦し気に表情を歪ませ、弾かれ壁にぶつかったものを一瞥すればそれは首だけの吸血鬼。

 つまりは人形が掴んでいた首であると理解し、よりいっそう疑問ばかり募り、もう一度人形を見る。

 

 

「………目標捕捉。コレヨリ焼却ヲ開始、スル」

 

 

 そんな肉声とも機械音声ともとれる声を発しながら、脚部装甲から蒸気を吹かし、人形───人工器(マキナ)赤化(ルベド)はマリウスへと突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本城と離塔を繋ぐ空中渡り廊下にて────

 

 そこは熱が迸っていた。赤化(ルベド)の四肢から炎が溢れ、蒸気を吹かしながら怪物を殴りつける。

 そのたびに怪物の叫び声と殴りつけた際に生じた焼き跡から熱が生じていく。

 赤化(ルベド)が対峙しているのはマリウスが用意していた実験体でありマリウスへと迫ろうとした赤化へとマリウスが召喚したモノ。彼が研究していた代物『聖杯』を用いて吸血鬼をより上位の生命体へと変える途中で生まれた産物。元人間であった吸血鬼の兵士をベースに様々な生物の因子を混ぜ込んで作り出した所謂キメラと呼ばれる存在だ。

 どこかワニのようにも見える犬に似た巨大な四足獣はその大顎を広げ、目の前の人形を喰いちぎらんと迫るが、赤化にとってはあまりに遅い。

 

 

「破壊スル」

 

 

 熱を伴う一撃を鼻っぱしへと叩き込み、吹き飛ばす。

 存外頑丈なのだろう、壁に激突しても壁は崩れなかったために戦いは終わらない。

 その戦闘を横目にいつの間にかに渡り廊下へと辿り着いていた死銃が渡り廊下を進んでいき離塔へと侵入した。

 それをキメラが止めることは出来ず、数人の第三世代(サード)が計器を用意し始めるのを赤化は感知して、吹かしていた蒸気を止める。

 

 

「これより、人工器個別名称:赤化(ルベド)、第二実験を開始する」

 

「─────ッ!!!!」

 

 

 瞬間、機械音声を響かせながら、赤化はその場から突貫し額に突進してくるキメラを迎え撃つ。

 キメラの噛みつきをギリギリまで引き付け、後方へと回避してからそのまま閉じた顎下へと潜り込み、殴り上げる。

 閉じた顎から悲鳴が零れるがキメラはその太ましい四肢で床を踏み掴み、上がった巨体を無理やりに降ろしてそのまま赤化を潰さんとする。

 抜け出すにはタイミングが遅い。

 故に赤化はその場に両足を踏みしめ両腕でキメラを殴りつける。問題なく押し切れる

 

 

「ッ、術式反応!?キメラになっても可能なのか!?」

 

 

 計器の示す反応に観測していた第三世代が驚きを露わにし、その言葉が合図かのようにキメラ自身に重力が発生した。

 どうやら、確実に赤化を潰しにかかるようで───

 

 

「特記機能解放───承認完了:人工神器『黄金錬成(マグヌム・オプス)』」

 

 

 だが、無意味だ。

 床石が溶解する。赤化を中心に熱波が生じキメラがその熱で炎上していく。

 離れているはずの第三世代らの方にまで熱は届き、その熱量が予想外だったのか第三世代らは急いで計器を持って彼らから距離をとり始める。

 

 

「計器を優先しろ!」

 

「データだ!データさえあればどうとでもなる!」

 

「いったい、誰が人工神器(マグヌム・オプス)の使用承認を出した!」

 

「声帯よりも体を動かせ!!」

 

 

 高エネルギーに悲鳴をあげる計器を抱えながらそう、口々に言い合う第三世代。そんな彼らのことなど一切気に掛けることはなく、赤化はキメラの身体を炭化させ、まるで炭カスを踏み砕くかのように容易く殴り砕いてキメラの上に現れた。

 

 

「…………実験、終了」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《御託は良い、全部明け渡せ》

 

「ぐぎぃっ!?」

 

 

 研究室へと足を踏み入れマリウスと顔を合わせた死銃はそんなセリフと共に一切の躊躇なく手にしたFive-seveNの引鉄を引きマリウスの右膝を撃ち抜いた。

 ただの銃弾であれば、吸血鬼にはそこまでの意味はないが当たり前のように死銃ったいの武装は吸血鬼や悪魔といった魔性に対して効果の高いモノばかりであり、とりわけ今回放った銃弾は疑似的な祝福を施した特殊水銀弾であり、体内に残留し毒素を垂れ流しながら再生を妨げるような性質を遺憾なく発揮させ、マリウスを苦しめていた。

 

 

「はぁはぁ……!?」

 

《もう一度言う。すべて渡せ》

 

 

 既に周囲の下僕らは暗殺特化の第三世代が反応される前に首や鎖骨、脊髄に骨盤、といった骨を砕いてから特殊ワイヤーで玉のように縛り上げ、研究室の端に放り投げ万が一再生して下手な動きを見せれば即座にその手に持ったアサルトライフルで何度でも殺せるように整えていた。

 その為、下僕は使えないと知ったマリウスは口を開いた。

 

 

「な、なぜだ!?抵抗もしてない!私は投降するといっただろう!?」

 

《知らん聞いてない》

 

「は!?」

 

 

 何を言っているんだ、こいつは!?

 そんなことを言っているかのような表情を見せるが、すぐにそれも苦痛に歪む。

 何故なら、今度は左膝を撃ち込んだからだ。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!??」

 

 

 絶叫するマリウスはその場に蹲り、死銃はそんなマリウスを見下ろした。

 

 

 

 

 






 吸血鬼戦ももうすぐ終わりですね



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六十頁

 

 

 

 

 

 冥界:リゼヴィムの屋敷、その一角にて────

 

 

 死銃もとい鴎は仕事着である制服に身を通し、自身に宛がわれていた部屋で一人黙々と書類仕事に精を出していた。

 EXEによる吸血鬼ツェペシュ派に対する摘発から早数日が過ぎ、八月も半ばという頃合いにも関わらず仕事をする鴎が目を通しているのは先日の一件の報告書である。

 と、いってもこの報告書自体は既に悪魔社会上層部に提出された後のものであり、内容も提出用に改竄されたものであるが。

 実際にツェペシュ派がテロリストらと繋がっていたという事実はあり、その証拠もまた本当に存在していたため改竄するような箇所はほとんどなかったが、現場にいた人形らと鴎がないように目を通せば明らかに省かれた箇所が数点見つかるが知らぬものではわからないだろう。

 改竄された箇所を挙げるとすれば、まず第一に鴎が投入した第三世代(サード)や実験機である人工器(マキナ)赤化(ルベド)の事だろう。報告書には猟兵や雀蜂、Manticoreなどの人形を使用したことは記載されてはいるが第三世代らの名前はどこにもなく使用した事実はどこにもなかった。

 次に挙げるならばツェペシュ派王位継承権第五位であったマリウス・ツェペシュの一件だろう。彼は下僕らを引き連れテロリストとの繋がりの証拠の一つでもある神器研究についての証拠を隠滅しようとした際に猟兵らと交戦し、その過程で死んだ。ただ、その事実だけが書かれ提出された神器研究資料からも特に何かあったわけでもなく処理された。

 他にいくつか、あるがこの場においては挙げるのは控える。

 

 

 さて、そんな報告書に目を通し、そうしてから人工器:赤化の今回の実験データとその報告書へと鴎は視線を移す。

 いまだ試作段階の人工神器を搭載した実験機。

 コカビエルを通して堕天使から手に入れた人工神器のデータから建築家、計量官、ほか開発用人形を駆使して設計した試作品。聖書の神が創った本物を黄金と考え、鍍金でしかないがそれを目的としたが故に錬金術よりとって『黄金錬成(マグヌム・オプス)』。

 本来なら燃焼、熱は赤化(ルベド)ではなく黒化(ニグレド)であるがわざわざそこまで錬金術を踏襲するつもりはなく、赤いからという理由で熱の機能を選んだのだが……。

 

 

「出力を上げすぎに、ゼロ距離での放出とは……そりゃ、外装焦がした挙句、中身も一部壊れるに決まってるだろ何を考えて……ああ、そこまでまともなAI積んでなかったか」

 

 

 マリウス・ツェペシュの有するキメラとの戦闘時、ゼロ距離での六割火力を行うという頭痛以外なにものでもない選択をとり、自身の人工神器の熱量で外装は焼け焦げた挙句、中身にまで被害を出すという結果をだした。

 何故、このようなことになったのか、それは偏に人工神器を外部取り付けではなく内部取り付けを行い、他の名付きのようなAIを組み込むには容量がなかったという理由があった。

 その事実に鴎は舌打ちながら、改善案を考えるためにペンを片手に軽く頭をかく。

 

 

「やはり、人工神器の方の機能を削って使用容量を減らす……圧倒的に火力過多であるのは認めざるを得ない。火力を優先してAIがお粗末なのは駄目だ。この際、火力を後回しにして、AIを優先に……空き容量で搭載できるまで機能を……」

 

 

 そんな風に頭をこねくり回しながら鴎は思考して────

 

 

「しっきかぁん!!」

 

「…………何の用だ。見ればわかる通り、仕事中なんだが」

 

 

 扉を勢いよく開けて入ってきた数体の人形に鴎は軽く頭痛を憶えながら、そう問いかければ胸元が大きく開いた大胆な服に青いリボンが特徴的な人形が不敵な笑みを浮かべて答えた。

 

 

「聞いたわよ、指揮官」

 

「なにをだ、FAL」

 

 

 嫌な予感が鴎の胸中にふつふつと湧き始め、今からでも逃げ出したくなってくるが、まだ確定したわけではないと己に言い聞かせながら鴎は聞き返して

 

 

「今日のパーティー護衛、指揮官はスポンサーと一緒にいるんでしょ?」

 

「そ、そうだな」

 

「まさか指揮官。いつものアーマースーツで出るつもりではないですよね?」

 

 

 そう言うのは青い上着に白いスカートが映えた変則的なハーフアップが特徴の先のFALより年上らしさが見える人形、スプリングフィールドがにこやかに微笑みながらもどこか凄みの感じる表情でそう問いかけ、鴎は視線を彼女らから外す。

 その反応に彼女らは察し

 

 

「そういえば、指揮官。指揮官この前、女装してたよね」

 

 

 肩を出し、うさ耳のように立たせた黒いリボンに白い髪が特徴な人形Five-seveNが口にした致命的な言葉に鴎は背後の窓から逃げようとして、いつの間にかに近くへ移動していたサンダーに捕まった。

 

 

「指揮官、ドレス着てください」

 

「サ゛ン゛タ゛ァァアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺らグレモリー眷属が全員集合した次の日の夕刻。

 俺は駒王学園の夏服に腕を通し、しっかりと前ボタンを閉じてグレモリーの紋様が付いた腕章をつけた状態で一人グレモリーの本邸にある客間で待機していた。

 というのも、今日はサーゼクス様たち、魔王様方主催のパーティーがあって女性陣はメイドさんたちに連れられておめかし、木場やギャスパーも何やら用事があるとか、なんとか………。

 

 

「ギャスパーの奴、大丈夫か?」

 

 

 俺は昨日からどこか様子のおかしい後輩を心配する。いや、あくまで俺がギャスパーと会ったのが修行に行く前ぶりというのもあって本当は一週間ぐらい前から、なにかおかしいらしい。

 ただ、部長や朱乃さん、小猫ちゃんや木場はなにやらその理由が分かってるらしい。流石に本人に聞くのもアレだから後で部長に聞いてみようと思ってるんだが……。

 

 

「よぉ、兵藤」

 

 

 聞き覚えのある声に振り返ってみれば───匙だった。

 って、なんでここに匙が?

 そんな俺の疑問が表情にでも出てたのか、俺がそれを聞くよりも先に匙が口を開いた。

 

 

「会長が、リアス先輩と会場入りするってんでな。俺らは一回こっちに来たってわけだ。で、会長は先に先輩のところに行っちまって、残った俺はここに案内されたんだ」

 

 

 そう言って、匙は俺から少し離れた席に座り、真剣な表情で言う。

 

 

「もうすぐゲームだな」

 

「ああ」

 

「俺は勝つぞ」

 

「こっちこそ、負けねえからな」

 

 

 俺の言葉に匙は笑みを浮かべ、俺も気づけば笑ってた。

 

 

「先月、会合ん時のこと覚えてるか?」

 

「ああ」

 

 

 唐突に笑みを消して、話を切り出した匙。

 会合の時のことは簡単には忘れないだろう。そう、確かあれは部長たち各御家の次期当主の目標というか夢を語った時にいろいろあって、あいつら『笑う棺桶』がレーティングゲームをしたんだ。

 

 

「俺ら、会長の夢は本気だ。確かに笑われたけれども、リゼヴィム様が色んなことを教えてくれた。会長の夢がどれだけ大変なのか、どんなことをしなきゃいけないのか、会長も俺らもまだまだ甘いし見えてなかった。だから今度のゲーム、俺たちは必ず勝つ」

 

「匙……」

 

「俺たちには経験が必要だ。実績を作って、少しでも会長の夢に近づくんだ。そして、俺はそこで先生になるんだ」

 

 

 先生?確か会長の夢はレーティングゲームの学校を作ることだったはず。それもいま冥界にあるような上級悪魔や一部の特権階級の悪魔が通うようなものじゃなくて、下級悪魔や転生悪魔が通えるような……つまり、匙はそこで子供たちにレーティングゲームを教えたいってことなのか?

 すごいな、こいつは俺よりも将来を見据えてる。

 

 

「俺たちは悪魔に転生したからな、時間だって人間の何十倍もある。だから、リゼヴィム様は俺に言ってくれたんだ。会長の創る学校で教師になる前にまずは普通の教師、普通の人間界の教師になってみなさいって。そうして経験を積んで、いろんな事を教えたいんだ」

 

「立派な目標だと思うぜ、匙。いい先生になれよ」

 

 

 俺とは違う目標だ。何時か上級悪魔になって部長から独立して自分のハーレげふんげふん眷属を持つのが俺の目標。それに対してこいつはずっと主である会長に仕えながら会長を支えていくのが目標。

 同じ『兵士』だからなんとなく俺と同じなんじゃないか、と思ってたけどもやはり人それぞれだ。

 

 

「おう、その為にもひとまずお前らをぶっ倒さなきゃな」

 

「へっ、悪いが俺らが勝つからな」

 

「いや、俺らの経験の為にも負けてもらうからな」

 

 

 もう一度向き合ってお互いに笑い合いながらもその瞳は真剣そのもの。────お互いに負けるわけにはいかないから

 

 

 



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